仮面ライダートライズ (ちくわぶみん)
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登場人物と設定(随時更新予定)

登場人物

小野寺 翔琉<オノデラ カケル>(22)/仮面ライダートライズ

駄菓子屋「みやじま」に住み込みで働きながら、「町の何でも屋」をやっている青年。その幅は子猫探しから悪党退治まで幅広い。

性格は熱血で無鉄砲。人一倍正義感が強く、他人の悩みに首を突っ込まずにいられないお人好しであり、人助けのためなら自分の身も省みない。

愛車はHonda CRF250L

 

有働 涼葉<ウドウ スズハ>(21)

明朝新聞の新人記者。取材をきっかけに翔琉とマヒロに出会う。

持ち前の明るさとノリの良さが災いしてマヒロ漫才のようなことを繰り広げる羽目になることもある。

愛車はHonda フォルツァ

 

マヒロ

呪導により破滅に導かれたディメンション1791の異次元人だが、今までの記憶を失っている。ゴーグルをつけた軍帽にと軍服にマントと、大正ロマンを彷彿とさせる10代前半の少年のような恰好をしている。ある事件をきっかけに、翔琉と出会い。持っていたカメンデバイザーを託す。

翔琉たちのいる世界に来てからは、「みやじま」の翔琉の部屋を間借りして生活している。

 

深津 五木<フカツ イツキ>(21)

警視庁の若い刑事。刑事課から特殊犯罪捜査班に配属された。

涼葉とは高校時代からの知人。真面目で知的な性格だが、正義感は人一倍強く、たとえドーグでも勇敢に立ち向かうほど。

Honda インサイトの覆面パトカーを愛用している。

 

宮島 正樹<ミヤジマ マサキ>(42)

駄菓子屋「みやじま」の店主。うだつの上がらないいい加減な性格だが見ず知らずのマヒロを下宿させるという温厚な兄貴的な人物。

実は元暴走族の総長だとか…?

 

 

 

関連用語

駄菓子屋「みやじま」

正樹が経営している駄菓子屋。翔琉の何でも屋もここを拠点としている。

住宅街、そして近場に小学校があるのも幸いし、そこそこ繁盛している。

一見すると普通の駄菓子屋に見えるが、駄菓子屋内のホーロー看板が飾ってある壁を開けると、秘密ガレージにつながっている。

この秘密ガレージで、ドーグに関する情報を整理したり、カメンチャージャーのエネルギーをチャージている。

 

呪導

ダイシュリョウと呼ばれるボスが中心となり、ドーグチャージャーの流通で数多の並行世界を侵攻をしてきた秘密結社。

少なくとも本編の数年前から翔琉たちがいる世界の侵攻を始めており、それぞれの並行世界にディーラーと呼ばれる売り手を使って、ドーグチャージャーを流通させている。

真の目的は不明だが、理想の世界を作り上げるのが目的のようだ。

 

ドーグチャージャー

ニンゲンをドーグに変貌させる積層電池型アイテム。文字通り道具の力を司るエネルギーが込められている。

ドーグチャージャーをある程度使用したり、持ち主の負の感情が高まると、内部のエネルギーが減少し、ロストエナジー状態になる。

ロストエナジーでドーグに変貌すると持ち主の生命エネルギーと引き換えにドーグとなる。その際、持ち主の肉体は切り離され、エネルギー体に持ち主の意識が宿った状態になる。

そのため、元の人間の姿に戻れなくなる代わりに、戦闘力が格段に増大する。

撃破すると、ドーグチャージャーは完全に破壊される。それにより持ち主に意識が戻る。

 

強力なドーグチャージャーを使えば使う程戦闘力等も格段に上がるが、その分ドーグチャージャー内の毒素が強く。

持ち主の身体次第では意識不明、または廃人化するリスクがある。

 

 

 



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ライダー設定(随時更新)

仮面ライダートライズ

小野寺翔琉が変身する仮面ライダー。

決め台詞は「バッドエンドは、俺が打ち砕く!」

 

ビギニングジェネレーション

1号・クウガ・ゼロワンのカメンチャージャーで変身するトライズの基本形態。

頭部は1号のマスクにクウガのクラッシャー、ゼロワンの触覚。胸部装甲はクウガとゼロワン。腕部装甲はクウガと1号。脚部装甲は1号とゼロワンを模した構造になっている。

変身音声は「うなれ正義の必殺キック!ライジングジェネレーション!!

1号とゼロワンの持つ飛蝗を模したジャンプ力に、クウガが得意とする格闘術を織り交ぜた戦法を得意としている。

 

 

グランディックパワード

BLACK・J・アギトのカメンチャージャーで変身するトライズの派生形態。

頭部はJのマスクにアギトのクロスホーン・BLACKのクラッシャー・体のアンダースーツにはJの黄緑色のライン、胸部・肩装甲はアギトとBLACK、腕部装甲はJとアギト、脚部装甲はJとBLACK、腕と足の各部はBLACKのパワーストライプを模している。

変身音声は「叩け大地の鉄腕ナックル!グランディックパワード!!

アギトの持つ戦闘力とBLACKの格闘術にJの超パワーを上乗せした剛腕戦法を得意とする。

 

 

スパーキングビートル

ストロンガー・ブレイド・カブトのカメンチャージャーで変身するトライズの派生形態。

頭部はブレイドのマスクにカブトのホーン、ストロンガーの複眼とクラッシャー、体の各部はストロンガーの赤いライン、胸部・肩装甲はストロンガーとブレイド、腕部装甲はブレイドとカブト、脚部装甲はブレイドとストロンガーを模している。

変身音声は「轟け甲虫のスパーク!スパーキングビートル!!

ストロンガーとブレイドが得意とする電気攻撃のほか、カブトのような高速戦闘が得意。

 

 

 

ツール

トライズドライバー ベルト音声イメージ:太田真一郎

翔琉がトライズへの変身時に使用する変身発動端末。

大きめのMP3プレーヤーのような形をしているカメンデバイザーと、ベルトのデバイザーバックルで構成されている。変身時には、カメンデバイザーのサイドを展開して3つのカメンチャージャーを装填する。その後にカメンデバイザーをデバイザーバックルにセットすることで、接続が完了し、カメンデバイザーに装填されたカメンチャージャー内の仮面ライダーのデータがデバイザーバックルに転送され、「カメントライズ!」の音声と共に装填したカメンチャージャーに対応したデータ体のライダーを召喚し、粒子状に分解され、体の各所の表面上をアーマーのように覆うことで装着者にそれぞれのライダーの特性を付加させ、変身を完了させる。

 

カメンチャージャー

トライズが使用する積層電池型アイテム。仮面ライダーの力が込められている。先端には対応するライダーの紋章があり、裏面にはライダーのアルファベットとナンバーが記されている。中心のラベルには、対応するライダーの全身のグラフィックが描かれている。

 

トライジングキャリバー

トライズが使用する万能可変銃剣。X・ファイズ・ビルドのカメンチャージャーを解析して作られた。

刀身はセタップ固形炭素とB-T-0NE強化鋼を混ぜ合わせた特殊金属で形成されており、厚さ30センチの鉄板を紙のように切り裂く切れ味を誇る、フォトンΦエネルギーを刀身にチャージすることで切れ味を増幅させるレーザー剣となる。

刀身をスライドさせることにより、刀身が分割され、レールガンモードに変形する。レールに磁力エネルギーに変換したフォトンΦエネルギーを流し、刀身同様セタップ固形炭素とB-T-0NE鋼で構成された弾丸を高速で発射する。

 

マシン

サイクライズチェイサー

トライズ専用のバイク型マシン。

翔琉が乗用しているCRF250Lがトライズドライバーの変身信号を受け、モーフィングすることにより変形する。

変形元のCRFの特性を活かした小回りが利き高い機動性を発揮する。

無公害イオンエンジン・フォルティシモにより、時速300キロを超えるスピードを誇りながらも、排気ガスを一切出さない。

最高速走行からの急減速による停止時にはリアカウルからドラッグシュートタイプの小型パラシュートを展開して急減速する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから先、仮面ライダートライズに関するネタバレとなっております。見たくない方はブラウザバックを"強く"推奨します。それでもいいという方は、ここから先の空白を反転してご覧ください。

クインテットタイフーン

1号・2号・V3のカメンチャージャーで変身するトライズの強化派生形態。

頭部はダブルライダーの複眼、触覚にV3のクラッシャー、体の各部はV3のようなボディカラーにダブルライダーのコンバーターラングとV3の胸部プロテクター。

腕と足の装甲は、サイクロン号とハリケーンを模した装甲になっており、装甲各部のスリットには風力エネルギー吸入インテークが備わっている。

変身音声は「集え3つの正義の烈風!クインテットタイフーン!!

腕、足に風のエネルギーを纏った格闘戦を得意とする。

 

マジカルドラグーン

龍騎・ウィザード・セイバーのカメンチャージャーで変身するトライズの強化派生形態。

頭部はウィザードの宝石に龍騎のフェイスガード、セイバーのソードクラウン、胸部は龍騎の装甲にウィザードの宝石、腕の装甲はセイバーの腕部装甲に龍騎の装甲、ウィザードとセイバーのローブを装備し、セイバーの足装甲と龍騎の足装甲を模している。

変身音声は「燃えよ炎の聖なる魔龍!マジカルドラグーン!!

ウィザードのようなXMAのような戦闘の他、魔龍聖剣・ドランベルジュを使った剣術を得意とする。

 

魔龍聖剣・ドランベルジュ

マジカルドラグーンが使用する龍を模したフランベルジュ。

刀身は常に赤熱状態にあり、その温度は鉄の塊をも溶かすように切り裂くほど。

柄頭にカメンデバイザーをリードすることで必殺待機状態に入る。さらに柄頭にトライジングキャリバーを合体することによりドランベルジュ・マキシマムモードになる。



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第1話「バッドエンドを砕く者」

てなわけで散々Twitterで言っていた三位一体電池ライダーの1話です。
ノリと勢いで書いたので雑だと思いますが是非


新西暦2019年4月3日、もうすっかり辺りも暗くなっていった頃、今は誰にも使われていない廃倉庫に赤いスカジャンに黒いTシャツとカーキ色のカーゴパンツに身を包んだ20代の青年と、ゴーグルがついた軍帽を頭につけ、黒い軍服の上にダークネイビーのマントを羽織った恰好をした少年がいた。

その手にはシルバーのアタッシェケースが握られている。

傍からみれば軍服のコスプレをした少年を連れた男に見えるだろうが、そうとは思えないと確信できるものがあった。

青年と少年の眼前に、黒服に身を包んだ集団がいるのだ。

 

「そのガキを渡してもらおうか」

 

その瞬間、黒服たちは懐から角形電池のようなものを取り出し、それを掌に差す。

 

[GUNtrooper!]

 

そんな電子音が流れ、黒服たちの身体は働きアリを彷彿とさせるようなボディに白骨のような白いマーキングが施された兵士・ガントルーパーに変貌を遂げた。

アントルーパーは手に握られた機関銃の銃口を、少年と青年に向け、引き金を引く。

それに気づいた青年は少年の腕を引き、避ける。青年と少年はトラックの廃車体に身体を隠す。

少年はふとアタッシェケースを開く。その中には、MP3プレーヤーのような装置と、先ほどの黒服たちが持っていたような角形電池に似た、中心部には何かの戦士の全身像が描かれたアイテムが入っていた。

 

「お願いです。この世界を守る『守護者』になってください」

 

少年は今、隣にいる青年に突拍子もなくこう言った。

 

「…は?」

 

と青年は困惑の表情を一瞬浮かべたが、アタッシェケースの中のデバイスとアイテムに両手を延ばし、それを掴んだ。

それとタイミングを同じくして、再び銃声が響いた。

このままで俺もコイツもまずい。青年は立ち上がり、本能のままにアイテムをデバイスに装填した。

トラックの廃車体は爆発を起こす。ガントルーパーたちは始末を終えたと確信した

…かに思えた

 

[カメントライズ!]

 

その音声を聞いたガントルーパーたちは一気にざわついた。

炎を上げている廃車体の向こうには、深紅の複眼にアンテナのような触覚、さらには全身の各部には緑・赤・黄色のアーマーを纏い、異形の戦士のシルエットが浮かんでいたのだった…。

 

 

 

第1話「バッドエンドを砕く者」

 

 

 

それから時が経ち、新西暦2020年。

晴天新聞社の若き女性記者、有働涼葉は閑静な住宅街を愛用のバイク・フォルツァを押しながら歩いていた。

 

「『街一番の何でも屋・小野寺翔琉』…。地域面を飾るには地味すぎるけど…」

 

と涼葉はつぶやきながらも、その小野寺翔琉という男を探していた。

それから間もなく、涼葉の視界には3階建で、1階には「駄菓子のみやじま」と書かれた店舗テントがある建物が目に見えた。

涼葉はそれを見て立ち止まり、バッグから記者の要ともいえる手帳を取り出した。

 

「駄菓子屋を拠点にしているって話は聞いているけど…。『駄菓子のみやじまを拠点に』…。うん、ここみたい」

 

涼葉は店の前ににフォルツァを停め、店に入る。少し新しめの外装とは裏腹に、いかにも駄菓子屋の店内ともいえる内装になっていた。だが、誰もいなかった。

 

「あれ?留守?」

 

と、誰もいない駄菓子屋に涼葉の声が響き渡ったが

 

「ここに何の用?」

 

と涼葉の声に答えるかのように少年とも少女ともとれる声が聞こえた。

涼葉は見渡すと、上のロフトからゴーグルが付いた軍帽と軍服にマントという時代錯誤にも甚だしい少年が顔を出していた。

 

「あー…。ここに用件があって…」

「正樹のオジサンなら、近所の酒屋さんに買い出ししているからいないよ?」

「じゃなくって、ここに『街の何でも屋・小野寺翔琉』って人がいるとかで」

「あー、その人なら今」

 

その時、外からバイクのエンジン音が聞こえ、止まった。

そこから数秒経って、涼葉の後ろの戸が開いた音が聞こえた。

涼葉が振り向くとそこには、緑のジャケットに側面に赤いラインが入った黒いズボン、蛍光イエローと黒いスニーカーの青年がそこにいた。

 

「あれ?オヤジさんは?」

 

と、青年は口を開いた。

 

「正樹のオジサンは買い出し。それとその人、翔琉に用件あるってさ」

「俺にお客?」

 

青年・小野寺翔琉は涼葉の許に近づく。

 

「あ、あの。私こういうもので」

 

涼葉はジャケットのポケットの名刺入れから名刺を出す。

 

「新聞記者・有働涼葉?」

「口コミで聞いたんですが、この街には何でも屋がいると聞いて」

「うん」

「それが記事になるかなぁって…」

「ならないでしょ、こんな自称・街の何でも屋が…」

 

と、先ほどの少年がロフトから顔を出しながら毒舌を吐く。

 

「おぉーっと。そりゃねーぜマヒロ…」

 

それを聞いた翔琉は若干うなだれる。

 

「考えてもみなよ、そこのおねーさん。何でも屋なんて気取っているのに駄菓子屋に下宿と兼業をやっているこんなのが新聞の記事になると思う?」

 

少年・マヒロは少し醒めた目で涼葉に言う。

 

「地域面なんだけどね…」

 

とその時

 

「子供らのたまり場で現実みたいな事言うな。店が泣くぞ?」

 

と若干九州の訛りが特徴的な男性の声が聞こえる。一同は声のした方向である戸を見ると、白いTシャツにサロペットの40代前半

のレジ袋を持った男性がそこにいた。

 

「あ、オヤジさん」

若干うなだれ気味の翔琉がその男性をオヤジさんと呼んでいることから、涼葉はこの駄菓子屋の店主・宮島正樹であると確信していた。

 

「マヒロ。お前も言い過ぎだ。コイツの自称何でも屋でこの店やれているようなもんだから否定もできねぇぞ?」

 

と、正樹はマヒロを諭す。

 

「んで、そこの嬢ちゃんはどっちの客だ?こっちかそっちか」

「どうも、こっちの客みてぇだ。しかも新聞社の記者だと」

「ほぉーん。なんだお前の自称何でも屋も遂にゴシップになるほどになったかぁ」

「オヤジさん!」

「じょーだんじょーだん」

 

正樹は笑いながらそう言った。

 

「ったく…。んで、なんで俺に取材を?」

「うちの新聞とっていれば分かると思うんですが、地域面の『口コミ発見!!あなたの街のスーパーヒーロー!』という地域にいる各方面の人々を取材している週1の連載の取材で…」

 

とその時だった、駄菓子屋の前をパトカーがサイレンを鳴らしながら走っていった。

 

「わりぃ、それは後になるかもな!」

 

何かを感じた翔琉は、一目散に駄菓子屋を出ていき、停車してある愛車のCRF250で、そのパトカーの後を追った。

 

「ちょっと!」

 

涼葉は急ぎでフォルツァに跨り、それを追った。

 

 

パトカーを追ってきた翔琉が目にしたのは、ビルの外装が道路に散らばっている光景だった。隣接するビルには、爪で引っかかれたような傷跡や火の手が上がっている。車道を見れば車が無残にも切り刻まれていた。

被害が大きかった建物には「宿木書房」という文字がでかでかとあった。

既に周囲には警察による規制線が張られており、あたりは緊迫していた。

 

「派手にやってくれたなコレは…」

 

翔琉はCRF250を降りようとしたとき、フォルツァに跨った涼葉がやって来る。

 

「なんでここに!?ってそっか、アンタ新聞記者だから来るには来るか…」

「これは、なんかの事故?にしては引っ搔き傷って何ってなるか…」

 

翔琉は規制線を前に立ち尽くした。是が非でも事故現場に入りたいようだ。

 

「もしかすると、ここに入りたがってるとか…?」

「あ、いや、滅相もない」

 

翔琉はなんとか誤魔化すが…

 

「絶対嘘。目の泳ぎ方が完全にそれだもん」

「さすが新聞記者、他人の心までお見通しってか…」

 

新聞記者である涼葉に論破された翔琉は、少し苦笑い気味に言う。

 

「でも、貴方が記者の相棒ってことになれば容易いかもしれないけどね」

「…へ?」

 

 

「すいません。晴天新聞の有働と…」

「お、小野寺です」

 

涼葉は規制線にいる警察官に身分証明を見せるが、翔琉はそれがなかった。

 

「あの、そちらの記者さんも身分証明書を…」

「あ、彼は本日付けで当新聞社に配属になったので身分証の発行は暫くになるそうなので勘弁できません?」

 

と、涼葉は警察官に得意の話術で交渉した。

 

「そうですか…。分かりました」

 

警察官の了解をもらった涼葉と翔琉は規制線を潜り抜ぬけた。

 

「記者権力ってすげぇな…」

「まぁね」

 

現場では消防隊や救急隊や警察がせわしく移動している中、涼葉は短髪のダークブルーのスーツを着た男性刑事と思われる人物が目に入った。

 

「深津警部!」

 

涼葉がその人物を呼ぶ。するとその呼びかけが通じたのか、男性刑事が涼葉の許へ駆け寄る。

 

「涼葉さん!ここに来ていたんだ」

「近くにいたらパトカーのサイレンが聞こえてきたんで追っていたらここに」

「で、この人は?」

 

男性刑事・深津樹は見ず知らずの翔琉を指さす。

 

「あ、俺こういうものっす」

 

翔琉はジャケットの胸ポケットから名刺を取り出す。

 

「『迷子探しから悪党退治まで 町の何でも屋・小野寺翔琉』…?ダメだよ涼葉さん、勝手に部外者入れちゃ…」

「ごめん。今回きりにするから…。で、どういう状況?」

「うーん…。こんなデカい引っ搔き傷、少なくとも人間業じゃできないことだね、コレで3件目だよ…」

 

樹は呆れながら涼葉に報告する。涼葉は手帳にそれをメモする。

 

「3件目…?」

 

涼葉は樹に聞いた。

 

「うん。1件目は神代地区、2件目は三沼地区。でもこの事件、1件目は壁の引っ搔き傷だけだったんだけど、2件目からは車とかを巻き込んで、今回はそれに近隣のビル。なぜか規模がどんどんデカくなっていってるような気がするんだ。まるで何かを予感しているみたいに…」

 

翔琉は涼葉と樹の会話に耳を傾けながらも、手にした赤い大型のMP3プレーヤーのような端末で事件現場を片っ端から撮影する。

 

「この被害規模、呪導のドーグか…」

 

翔琉はそう呟いた。それと同時に涼葉が寄ってくる。

 

「こっちは取材終わったけど、そっちはどうなの。何でも屋さん?」

「まぁ、別にどうって…。そう言うそっちは?」

「こっち?樹さんの話だと、似たようなのが数件だって」

「そうか。やっぱな…」

 

翔琉は意味ありげに言った。

 

「どうしたの?」

「あ、いやなんでもねぇ。そうだ、そのさっきの取材の件、今日じゃなきゃダメか?」

「え、これの掲載自体は再来週分だから締め切り間に合えば別にいいけど…」

「そうか、だったらその取材明後日に出来ないか?」

「い、いいけど…」

「それじゃまた!取材場所はあの駄菓子屋で構わねーから!」

 

そう言って、翔琉はCRF250で帰っていった。

 

「ってか、なんでこの事故現場に行く理由があったんだろう…。ますます謎過ぎる…」

涼葉はそう呟いた。

 

 

「ただいまぁ~」

 

あれからしばらくして、翔琉は駄菓子屋に戻ってきた。

 

「おうおかえり、マヒロならあそこだぞ」

 

と正樹は右の壁を指さす。

翔琉はそこに立ち、縦に並んだホーロー看板を扉のように開けた。その先には、ガレージのような秘密基地があった。

 

「お帰り。送信されたデータは見ておいたよ」

 

マヒロはソファーベッドに寝転びながら、タブレット端末を操作していた。

 

「あとついでにあのおねーさんと刑事さんだか樹さんだかよく分かんない人の話も盗み聞きしておいたから」

「いや言い方!まぁいいか」

 

マヒロがサラッと放った法律ギリギリの発言にツッコミつつも、翔琉は基地の壁に備え付けられた黒板に先ほどの事をまとめた。

 

「この事件、翔琉はどう見る?」

「どうもこうも、確実に人間離れした業は確実に呪導のドーグの仕業で間違いねぇな」

「それに、あの引っ搔き傷はクローかトライデントのドーグチャージャーを持っていないと無理な破壊だね」

「どっちかか…」

「それと、あの刑事さんの話の1件目と2件目の場所。特定はできてるよ」

 

マヒロは場所をプリントアウトしたものを翔琉に渡す。

 

「全部芦屋出版のグループ企業か…。今日一番被害が出かかった宿木書房も芦屋グループではトップレベルの関連企業だったな…。こうなると、まさかな」

「そう、そのまさかだよ。ドーグチャージャーを持っている者が狙う最後の場所。そこは…」

 

 

翌日、涼葉は他の取材のために芦屋出版を訪れていた。

 

「まぁ、昨日の何でも屋さんは明日来ていいって言われたからいいんだけど、やっぱりあの事故現場にいたのが気になるぅ…」

 

そう思いながら、人々は行き交う芦屋出版の前の広場を歩く。

 

「しかし、『魔殺の剣』の作者さんとのインタビューって逆に緊張しかないって…」

 

そう涼葉がつぶやいた時だった。

突如、紫のジャージを着た若者が涼葉の眼前に現れた。

 

「お前も芦屋の人間か?」

「…?」

 

突然の男の問いかけに思わず涼葉は首をかしげる。

 

「ならば、ここで芦屋ごと無残に切り刻まれろぉ!!」

[CLAW!]

 

男はジャージズボンのポケットから角形電池型のアイテム・ドーグチャージャーを取り出し、首に差した。

男の身体はみるみるうちに変化を遂げ、腕、足、肩に鉤爪のようなパーツを身に纏った異形・クロードーグになった。

その光景を見た人々は思わず悲鳴を上げて逃げ去る。

クロードーグは、腕の鉤爪からエネルギーを飛ばし、周囲の物を容赦なく切り刻んでいく。

涼葉はその破壊行動に恐怖感情が芽生え、腰を抜かしてしまう。

クロードーグが涼葉に迫る。涼葉は思わず死を覚悟する。

 

…しかし。

 

突如としてバイクのエンジン音が鳴り響く。猛スピードでツッコんできてのは、涼葉にとっては昨日見かけたCRF250だった。

そう、それに跨っているのは翔琉だ。後席にはマヒロもいる。

翔琉は涼葉とクロードーグの間にCRF250を停車させる。マヒロは降りてすぐさま涼葉に駆け寄る。

 

「だいじょうぶ?おねーさん」

「なんで、君たちが…?」

「なんでかって?悪党退治するためだって」

「悪党退治…?あっ!」

 

涼葉は思い出した、昨日樹に渡した名刺に「迷子探しから悪党退治まで」と書かれていたことを。

 

「察しがついたか?そう言う事だよ」

 

翔琉は微笑みながらそう言った。

 

「なんだ貴様…!?」

 

クロードーグは突如現れた乱入者ともいえる翔琉に啖呵を切る。

 

「おぉーっと。さてはお前、『ディーラー』に言われてないな。赤いデバイスを持つ男に気をつけろってな」

 

そう言うと翔琉はCRF250を降りながら左手に持ったMP3プレーヤーのような赤い端末・カメンデバイザーをクロードーグに見せる。

 

「ま、まさかお前が…」

「そういうこった。悪党どもの作る結末を覆す者・仮面ライダートライズとは俺のことよ!」

 

翔琉はカメンデバイザーの正面下部にあるボタンを押した。

 

[トライズドライバー・スタートアップ!]

 

その電子音声と共に、翔琉の腰にはグラフィックボードのようなバックルをしたベルトが展開される。

そして、ベルトの右側にあるホルダーから角形電池型アイテム・カメンチャージャーを3つ取り出す。

それぞれのカメンチャージャーには仮面ライダー1号・仮面ライダークウガ・仮面ライダーゼロワンが描かれている。

カメンデバイザーのサイドを開き、そこに3つのカメンチャージャーを1つづつセットする。

 

[1号!・クウガ!・ゼロワン!カメントライズ!]

 

装填を知らせる電子音と、鼓動を揺るがす待機音声が流れる中、翔琉は左手首のスナップを利かせ、カメンデバイザーのサイドを閉じる。そして両腕を下から上へ大きく回し、右手をベルトの上へ、左手を右上へと構える。

 

「変身!」

 

その掛け声とともに左手に持ったデバイザーをベルトにセットし、右手を左上に構える。デバイザーが装填されたベルトには、デバイザーを保護するカバーが展開された。

それと同時にベルトから1号・クウガ・ゼロワンのデータを形成。翔琉の右前にクウガ、左前にゼロワン、正面に1号のホログラムがうつしだされ、翔琉の身体に融合し、体全体を覆うアンダースーツの上に頭部は1号のマスクにクウガのクラッシャー、ゼロワンの触覚。胸部装甲はクウガとゼロワン。腕部装甲はクウガと1号。脚部装甲は1号とゼロワンを模した装甲を形成する。

 

 

[うなれ正義の必殺キック!ライジングジェネレーション!!]

 

 

変身完了を知らせるかのように頭部の複眼が赤く光る。

ここに今、仮面ライダートライズが姿を現したのだ。

 

「バッドエンドは、俺が砕く!」

「なんなの…今の状況…!?」

 

 

その光景を見た涼葉は唖然とするしかなかった。

 

 

「まさかディーラーが言っていたヤツに出会うとはなぁ!!」

 

クロードーグは、足の鉤爪からエネルギーを飛ばし、トライズに襲い掛かるが。

トライズはそのエネルギーを踏み台にして跳躍。飛び蹴りでクロードーグに先制攻撃を与える。

クロードーグは腕の鉤爪で攻撃を与えようとするが、トライズはそれを回避、パンチで応戦し、連続回し蹴りでクロードーグにダメージを与える。

 

「えげつねぇ戦法期待してたんだが、そのナリからするとズブズブのド素人だな!」

「なめやがって!!」

 

するとクロードーグは全身の鉤爪からエネルギーを飛ばした。蹴りや肘鉄でそれを弾き飛ばすも、一部は想定外の攻撃だったのか、攻撃を受けて吹っ飛ぶ。

 

「どうだ?ズブのド素人ではないだろ?」

「だな、だがもうそれは見切った!」

「ほざけ!」

 

クロードーグは再び鉤爪の総攻撃を開始するが、先ほどと同じく蹴りや肘鉄で弾き飛ばし、それ以外の攻撃はなんとエネルギーを掴み、それを投げ返した。

 

「なんだと!?」

 

クロードーグははそれをもろに喰らう。

 

 

「なんなの!?今の…」

「今のは仮面ライダークウガと仮面ライダー1号が持つ格闘性能と仮面ライダーゼロワンの持つラーニングであのときの攻撃を計算して導いた最適解がアレってこと」

「クウガに1号にゼロワン?」

 

マヒロの口から自分の知らない単語が出てきて思わず涼葉は混乱する。

 

「全く、これだからこの次元のニンゲンは…つまり彼は今、1号とクウガとゼロワン。3人の戦士の力で戦っているってこと」

「は、はぁ…?」

 

 

 

「そろそろフィニッシュに行くか!」

 

トライズはドライバーからデバイザーを引き抜き、ボタンを2回押し込む

 

[チャージングバースト!]

 

必殺状態に移行を知らせる電子音性が鳴り、再びドライバーにセットする。

トライズは跳躍を活かしてクロードーグに最接近し、アッパーで斜め上空に吹き飛ばす。

両足に蓄積されたエネルギーを一気に解放し、高く跳躍。その跳躍はクロードーグを追い越した。

 

「ジェネレーションストライク!!」

 

右足にエネルギーを集中。急降下の勢いを利用してトライズはクロードーグに必殺の一撃を浴びせる。

その一撃を受けたクロードーグは地上に墜落し爆散。トライズはアスファルトをめくりながら着地する。

爆炎の向こうにはクロードーグとなっていた男が倒れ伏していた。

 

「いっちょ上がりっと!」

 

それを確認したトライズは変身を解き、翔琉の姿になる。

マヒロもふところからペンのようなものを取り出して、涼葉に向ける。

 

「え、何するつもり!?」

「トライズの存在は完全シークレット。おねーさんには悪いけどすべて知っちゃってるから記憶を消させてもらうね」

 

突然マヒロにそう宣告された涼葉だったが…

 

「私、今この世界で何が起きているのか知りたいの。さっきの鉤爪の異形もそうだけど、あの人の変身とか言ってなっていた仮面ライダーとか。私にも知る権利があると思うの!」

今まで少しなよなよしていた涼葉が強く言ったことにより、マヒロも思わずたじろいだ。

「だったらよ。これから話すこと、鼻で笑わないことを約束してくれるか?」

「約束する。私もジャーナリストだし、真実は絶対に信じるから」

 

翔琉の問いかけに涼葉は強気に応える。

 

 

 

「そうか、クローもやられたか。随分と頑張ってくれてはいたんだが、残念で仕方がない」

 

とある洋館の一室。その玉座に座る壮年の男はそう呟いた。

その男の眼前には4人の男女が跪いている。

 

「トライズ。やはり我々の理想郷の邪魔者になるか…!」

 

壮年の男の瞳は赤く輝いていた…。




というわけで、三位一体電池ライダー・トライズが勝手に始まりました。

今年はライダー50周年、公式もやりそうで怖いのがなんとも言えません…w


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第2話「俺たちは三位一体」

 「約束する。私もジャーナリストだし、真実は絶対に信じるから」

 

翔琉の問いかけに涼葉は強気に応える。

 

「そうか、だったら話はあの駄菓子屋でやるか、マヒロ。警察と消防には?」

「すでに連絡済み。最短でも500㍍先の派出所のお巡りさんが来るかも」

「さすが、仕事はえぇな」

 

と、その時だった。地響きが起こり、彼らの眼前に斧の刃を身に纏った異形・アックスドーグがそこにいた。

 

「まだいたか!?」

 

翔琉は再びカメンデバイザーを構える。

 

「しくったか、鉤田諒」

 

アックスドーグは鉤田と呼ばれるさっきまでクロードーグだった男を担ぎ、手に持っていた手斧で地面を打ち壊し、逃げていった。

 

「逃げた!」

「ったく、共犯者がいたとはな」

 

翔琉は、捲れ上がった地面の周囲を捜索すると、あるものが目に入った。

それは破られた雑誌の切れ端だった。そこには「読者アンケート2位『彗星王子』」と書かれていた。

 

「何それ?雑誌の切り抜き?」

 

と、涼葉が駆け寄る。

 

「だろうな。連中、何を企んでやがる」

 

 

 

第2話「俺たちは三位一体」

 

 

 

 それから幾多の時間が経ち、翔琉たちは駄菓子屋の秘密ガレージにいた。

最初に来たときはこの部屋があることも分からなかった涼葉が驚愕の表情を浮かべたが、先ほどの翔琉が仮面ライダーであるという事から少し納得してしまっている。

 

「それで、さっきの話の件。教えてくれる?」

「おねーさんみたいな新聞記者とかいう部外者には言いふらしたくないんだけど…」

 

とマヒロは口を尖らせる。

 

「おいおいマヒロ。ちったぁそのニンゲン嫌い克服しただどうなんだ?」

「なんでさ?僕みたいな異次元人がこの世界のニンゲンに関わったらとんでもないことになるって…」

「強がり言うな。言わねぇとオヤジさんに頼んでニンジン増やすぞ?」

「ニンジン…ヒッ…ごめんなさい……全部話すから許して……」

ンジンという言葉が弱点なのか、マヒロはソファーベッドのクッションを上にして丸まって防御の姿勢をとった。

 

「どういうこと?ニンジン嫌い?」

「まぁ、そう言うこった」

 

 

 「あの怪物はドーグ。呪導と呼ばれる組織が創った異形兵器」

 

マヒロは再び向き直り、涼葉に説明を始めた

 

「呪導?」

「異次元から侵攻してきた地獄の軍団。つまりあのドーグってのはその先兵」

「げぇ…。私らの知らないところでそんなのが侵攻しているんだ。ってことはあの爪のドーグだった鉤田ってひとのあの斧のドーグはその呪導の先兵ってこと?」

「間違いじゃないけど少し間違い。ドーグになるにはドーグチャージャーと呼ばれるアイテムを使って変貌する。そのドーグチャージャーを売りさばく『ディーラー』と呼ばれる者が売りさばいている。彼らはそこからドーグチャージャーを買った者。ある意味奴らの被害者だよ」

「売りさばく売人がいたり、なんだか違法薬物みたい…」

「ま、理屈とすれば似たようなもんだ。強力なドーグチャージャーを使えば使う程中毒症状を起こして廃人となっちまったのと戦ったことがあったからな」

「でも、なんで呪導は私たちのいる世界を狙っているの?」

「それは分からずじまい。異次元人のボクでもわからないんだ…」

「い、異次元人!?」

 

涼葉はマヒロが異次元人であることに驚きを隠せなかった。涼葉から見ればただ軍服のコスプレをした少年にしか見えていなかったからだ。

 

「あぁ、マヒロは異次元世界の住人だった。だがマヒロはそれ以外の記憶が思い出せないんだ…」

「うん、僕が何者なのかも……」

「記憶も喪っていたんだ…」

「ただ覚えているのは、仮面ライダーの知識と、どこかの施設でコレが入ったアタッシェケースを持っていたってことだけは覚えてるんだと」

 

と、翔琉はカメンデバイザーを涼葉に見せた。

 

「あ、そう言えばそれ!何なのそれ?」

「それはカメンデバイザー。カメンチャージャーに秘められたマテリアエネルギーをリリースして融合・現実化をさせるカメントライズを発動させるための変身デバイス」

「カ、カタカナが多くて何が何だか…」

「まぁ、つまりは」

 

そう言うと翔琉は壁に立てかけてあるカメンチャージャーの充電装置から1号のカメンチャージャーを取り出した。

 

「これに秘められた力を開放して、俺が変身するトライズの力の源になるってことだ」

 

「そういえば、このカメンチャージャーに描かれている人って何なの?」

 

と涼葉はカメンチャージャーに描かれているレジェンドライダーを指した。

 

「それが仮面ライダー」

「仮面ライダー?」

「あぁ、マヒロが言うには『数多の世界に存在するといわれている人間の自由と平和を守るために戦う正義の異形の者』だそうだ。その方々に倣って俺も仮面ライダートライズって名乗ってるんだ」

「自由と平和…」

 

涼葉は無意識にその言葉を反芻する。

 

 

 とその時だった。

 

『本日正午過ぎ、岩宮地区のごみ処理施設付近にて男性が発見されました。男性は同じく岩宮地区在住の鉤田 諒さん28歳で…』

とラジオからニュースが流れた。翔琉はすかさずラジオのボリュームを上げる。

 

『ごみ集積業者が血を流して倒れている鉤田さんを発見し、110番通報しました。鉤田さんの命に別状はなく全治3か月の重傷です』

「鉤田諒…。あの斧のドーグがあの爪のドーグのことをそう言っていたよね?」

「恐らく、斧…アックスのドーグチャージャーを持つ者が口封じをしようとしたとみられるね。全く、これだからニンゲンは業が深いよ」

 

マヒロがお得意の毒舌を吐いているいっぽうで、涼葉は熱心に手帳のページをめくっていた。

 

「あ、やっぱり!!」

と涼葉は大きな声を出す。突然のことにマヒロも翔琉も耳をふさぐ。

 

「あの鉤田って人、鼓太郎って漫画家のアシスタントだ!!しかも前に私が取材している!!」

「漫画家!?…ってことは…もしかするとこの切り抜き…」

 

翔琉は先ほど現場で拾った雑誌の切り抜きをポケットから出す。

 

「それ、先週の週刊コミッキングダムの読者投票だよね?」

 

涼葉はスマホを取り出し、コミッキングダムのホームページを開いた。

そのページには「読者投票結果発表!」と書かれたページがあり、順位が並んでいる。1位は「魔滅の剣」、2位が「彗星王子」とあった。

 

「そうか…。そう言う事か!マヒロ、魔剣の剣の作者さんのSNSがあったら数日前までの件をまとめてくれ」

「わかった」

 

翔琉はひらめき、壁にある黒板に今までのことを書き綴った。マヒロもタブレット端末を操作して調べ始めた。

 

「翔琉、ビンゴだよ。今を時めく超売れっ子漫画家の水無月 阿蔵は神代地区と三沼地区、それに昨日の矢土地区でそれぞれ取材を受けていたよ」

「って私も今日水無月先生の取材のために芦屋出版に行く予定だったんだ!ってどういうこと?あのドーグも何か目的が?」

「俺たちは当初、クロードーグの目的は今までの場所から芦屋出版の関連企業の襲撃だと思っていたんだ。だが、出版社に襲撃なんてどういう考えしてるんだと思ったが確証は持てた。これは芦屋出版の襲撃事件じゃねぇ。水無月先生の襲撃事件だったんだ…!!」

「だけど、その襲撃はボクらが食い止めた。それで主犯格のアックスドーグが出てきたというわけになるね」

「ってなると次は…」

「見っけ!阿蔵先生は今日午後からのシーサイドFMの生放送番組に出るみたい」

「そこで決まりだな!んじゃ、行ってくるわ!」

「私も行く」

 

と、涼葉も立ち上がる。

 

「いや、アンタは行くな。事実を知った以上、巻き込むわけにはいかないしな」

「それでも、私はこの世界の真実を知りたい。それが私の目指す理想のジャーナリストの本心だもん!」

「…仕方ねぇな。アンタにはあの現場の恩があるからな。いいぜ」

 

翔琉は昨日の現場のことを思い出し、涼葉に恩返しといわんばかりの許可を出した。

こうして2人は駄菓子屋を退出、それぞれのバイクに乗り、現場へと向かった。

 

「ちょいとさっきの会話聞かせてもらったわ。いいチームワークじゃねぇか」

 

それを見た正樹はマヒロに笑いながらそう言った。

 

「お人よしの自称・何でも屋と、勝手な押しかけジャーナリストだけどね…」

 

先の正樹の言葉を受け、マヒロも苦笑い気味に答えた。

 

「そうじゃねぇよ。情報集めが得意なあの嬢ちゃん。それに、ドーグ対策の専門家のお前の情報を得て行動に移す翔琉。ここまで三位一体すぎる奴らもそうはいねぇぜ?」

「三位一体…?」

「元は宗教由来の言葉なんだが、読んで字のごとく3つの存在が1つにまとまっているって事だ。頭脳のお前と、知識の嬢ちゃん。それに行動の翔琉。行動が出来ても、事件の全貌や、犯人の行動が分からなきゃ事件は解決できない。逆もまた然りだ。まぁ、つまりはお前らはまとまっている最高の3人組だってことだ。俺が言うんだ。誇っておけ」

 

正樹はマヒロにヤングドーナツを渡しながらそう言った。

 

「でも正樹のオジサンはいいの?」

「俺?俺はあくまで駄菓子屋の店主だからな。何でも屋ではねぇだろ」

 

 

 

 「シーサイドFMのスタジオ・シーサイドステーションから生放送でお届けしております!『DJ・Gooのグー!グー!アフタヌーン!!』」

シーサイドFMの演奏所兼本社のシーサイドステーション。ここではこの局の名物パーソナリティ、DJ・Gooという男が、午後の代名詞といえる番組の進行を難なく進めていた。

 

「本日2時台はこのコーナー!『話題のあの人サーチんGoo!!』。本日はこのお方を招いてのトークです!今、世間を賑わせている大人気漫画『魔滅の剣』の生みの親、漫画家の水無月 阿蔵先生です!はい拍手ー!」

「皆さんどうもこんにちは。『魔滅の剣』を描いています。漫画家の水無月 阿蔵です。本日はよろしくお願いいたします」

 

30代の若き女性漫画家・水無月阿蔵のラジオ生収録が今、始まった。

収録されているガラス張りのスタジオの前には、大勢のファンが駆け付け、賑わっていた。

その人だかりから外れた車道に、黒いXR230に寄りかかる男・鼓太郎こと小野田鼓太郎だ。

 

「水無月め…。お前さえいなければ、俺がトップを獲れていたのに…貴様だけは…貴様だけは…!」

 

鼓太郎は懐からドーグチャージャーを取り出し、人だかりに向かって歩き出す。

それを1人の影が遮った。翔琉だ。すぐそばには涼葉もいる。

 

「そのチャージャーを捨てろ。今すぐにだ」

「なんだアンタら。あの時もいたなぁ」

「なんで水無月先生を狙うの?」

「俺はただ、漫画が好きなんだよ。好きで好きでこの世界に入って、こうやって漫画家になった。そしてファンからも編集からも信頼を得て人気作家となった。だが、アイツが、水無月が人気が出てきたら編集者もファンもそっちに行っちまった。ただそれだけだ!文句あるかよ!」

 

涼葉の問いに鼓太郎は激昂しながら答える。その声はスタジオ前の群衆をも振り向かせた。

 

「そんな理由かよ。だったら漫画で水無月先生を見返せ!そんな異形の力を頼るんじゃねぇ!自分の力さえあれば壁だってなんだって超えられる!」

「うるせぇ!だからぶっ潰してやるんだよ!俺から何もかもを奪ったアイツを!すべてを!!」

 

鼓太郎は手に持ってあるドーグチャージャーを再び構えた。

 

[ENERGY LOST!]

 

ドーグチャージャーからその電子音声が流れると同時に、意思を持ったかのように動き出し、鼓太郎の身体にひとりでに挿される。

赤黒い光が鼓太郎の身体を包むと同時に、アックスドーグに変貌すると同時に、鼓太郎の肉体が排出された。

その光景をみた群衆は蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げる。スタジオ内にいた人物も避難した。

 

「一体どうなってるの?あの時のドーグとなり方が違う!」

「ドーグチャージャーってのは、怪物に変貌するためのエネルギーが蓄えられている。エネルギーが完全に底を尽きるとニンゲンの生体エネルギーと引き換えに強大な力を手にする。つまりアイツは最終段階になっちまったってことだ。だが心配すんな。どんなドーグでも止められる力がこれにはある!」

 

翔琉はアックスドーグを見据えながらカメンデバイザーを取り出した。

 

[トライズドライバー・スタートアップ!]

 

起動と同時に翔琉の腰にはバックルユニットが装着される。

ベルトの右側にあるホルダーから1号・クウガ・ゼロワンのカメンチャージャーを3つ取り出す。

カメンデバイザーのサイドを開き、そこに3つのカメンチャージャーを1つづつセットする。

 

[1号!・クウガ!・ゼロワン!カメントライズ!]

 

装填を知らせる電子音と、鼓動を揺るがす待機音声が流れる中、翔琉は左手首のスナップを利かせ、カメンデバイザーのサイドを閉じる。そして両腕を下から上へ大きく回し、右手をベルトの上へ、左手を右上へと構える。

 

 

「変身!」

 

 

その掛け声とともに左手に持ったデバイザーをベルトにセットし、右手を左上に構える。デバイザーが装填されたベルトには、デバイザーを保護するカバーが展開。1号・クウガ・ゼロワンの力を持ったアーマーが展開され。翔琉は仮面ライダートライズとなった。

 

「バッドエンドは、俺が砕く!!」

 

トライズはそう高らかに宣言し、アックスドーグに立ち向かう。

トライズは跳躍力でアックスドーグを飛び越え、アックスドーグが振り向いたと同時に前蹴り。さらに跳躍してかかと落としを決める。

アックスドーグも負けじと手斧を取り出し、トライズに斬りかかろうとするが、トライズは斧を踏み台にして再びアックスドーグを飛び越す。

 

「そう言えば言ってなかったな、なんでアシスタントまで加担させた!」

「あいつはいつだって俺の忠実な右腕だ!今回の件もアイツに任せていたが、どうも情けが出ちまったようでなぁ!少し制裁を加えてやったんだよ!」

 

アックスドーグはトライズに向けて手斧をブーメランのように投擲。トライズは蹴りでそれを弾き飛ばす。

アックスドーグは分が悪いと判断したのか、XR230に跨り、その場を逃げ去る。

 

「野郎。逃げても無駄なの分かっちゃいねぇな」

 

トライズはそう呟くと翔琉の愛車であるCRF250に跨る。すると、ボディに亀甲模様が浮かび、CRFボディがブラインドのように反転して、黒いボディに、赤・金・蛍光イエローのラインが入ったボディに入れ替わる。これがトライズの専用マシン・サイクライズチェイサーだ。

 

「アイツを追ってくる、ソイツは頼んだ!」

 

トライズは鼓太郎の身体を涼葉に任せて、逃げたアックスドーグを追った。

 

 

 

 XRで逃走を図るアックスドーグ。周囲の人々も、車に乗った人も斧の姿をした異形がオートバイに乗っている姿を見て驚きの表情を浮かべている。

その時、後ろから風をも切り裂くようなエンジン音がアックスドーグの耳に伝達してきた。そう、サイクライズチェイサーを操るトライズだ。

アックスドーグはその姿をみて、再びアクセルをふかし加速するが、乗っているバイクの数倍の加速力を持つサイクライズチェイサーにかなわず、追いつかれる。

アックスドーグはトライズに殴りかかろうとするが、トライズはそれを手で弾き飛ばす。それならばとアックスドーグは手斧でサイクライズチェイサーごと斬りかかろとするが、トライズはハンドルを操作して車体ごと回避する。

追い打ちにアックスドーグは手斧を投擲、対向車線を走っていた自動車のタイヤに直撃。自動車はスピンした。

 

しかし、トライズは自動車をジャンプで飛び越え、着地、それと同時に急加速し、アックスドーグと並ぶと、トライズはシートを台にしてアックスドーグを蹴り飛ばす。たまらずアックスドーグはバイクから振り落とされる。

トライズもサイクライズチェイサーから降りた。

だが、アックスドーグはエネルギー手斧を集中させ、大きな斧に変化させ、トライズに突撃、斬撃を浴びせる。その威力はアスファルトをも削るほどだ。

それを食らったトライズは吹き飛ばされる。

 

「なるほどな、悪あがきの怪力か…。それならこっちもあるぜ!」

 

トライズはデバイザーを引き抜き、1号・クウガ・ゼロワンのカメンチャージャーを取り外す。そしてベルト右のホルダーからBLACK・J・アギトのカメンチャージャーを取り出し、デバイザーにセットした。

 

[BLACK!・J!・アギト!カメントライズ!]

 

トライズは再びデバイザーをベルトにセットする。

それと同時にベルトからBLACK・J・アギトのデータを形成。翔琉の右前にJ、左前にアギト、正面にBLACKのホログラムがうつしだされ、トライズの身体に融合し、頭部はJのマスクにアギトのクロスホーン・BLACKのクラッシャー・体のアンダースーツにはJの黄緑色のライン、胸部・肩装甲はアギトとBLACK、腕部装甲はJとアギト、脚部装甲はJとBLACK、腕と足の各部はBLACKのパワーストライプを模した装甲を纏う。

 

「叩け大地の鉄腕ナックル!グランディックパワード!!」

 

今ここに、トライズ第2の形態・グランティックパワードが現れた。

 

「そんなはったりが通用すると思うか!」

「だったら試してみな!自慢の斧がぶっ壊れても知らねぇぞ?」

「何を!」

 

アックスドーグは大きな斧をトライズに向かい投擲する。トライズの複眼が赤く発光しトライズは右手で受け止める。右手首のパワーストライプが発光し、握力を増強し、斧を粉砕した。

 

「なっ!?」

「これがマジの怪力ってやつだ!」

 

トライズは走りながらアックスドーグに接近してパンチも猛攻を放つ。その威力はアックスドーグを軽々と吹き飛ばすほどだ。

 

「そろそろフィニッシュに行くか!」

 

トライズはドライバーからデバイザーを引き抜き、ボタンを2回押し込む

 

[チャージングバースト!]

 

必殺状態に移行を知らせる電子音声が鳴り、再びドライバーにセットする。

トライズは右指をJの字に構えると頭部のクロスホーンが展開し、右腕のパワーストライプにエネルギーが限界まで蓄積され、手首のスリットからは蒸気が噴き出す。

アックスドーグはそれをも気にせず飛び掛かる。

 

「パワードジャッジメント!」

 

トライズは飛び掛かったアックスドーグに必殺の右ストレートを叩き込んだ。

その右ストレートをどてっぱらに食らったアックスドーグは大きく吹き飛ばされ、コンテナに激突し、炎を上げて爆散した。

 

 

 それから数分が経過し、トライズから変身を解いた翔琉が駄菓子屋に戻ってくる。

戻ってくる道中、涼葉から鼓太郎の意識が戻り、病院に搬送されたという連絡を受けたため、駄菓子屋に直帰した。

店の前のウッドデッキにはヤングドーナツを食べながらタブレット端末を操作しているマヒロがいた。

 

「お疲れ。自体が重くなる前に対処出来てよかったよ」

「…って涼葉は?さっき連絡あってこっち戻ってるって聞いたが」

「あー…。あのおねーさんなら……」

 

とマヒロは向こうを指さす。すると

 

「いやぁ、嬢ちゃん。DIYの才能大ありじゃねぇか!」

「そんなことないですよ。ご主人の技術でカバーできたところがありますからぁ」

 

翔琉はその方面を見ると、涼葉は正樹と看板を造っていた。

 

「オヤジさんも涼葉も一体何造ってんだ…!?」

と翔琉は若干困惑していた。

その看板には「迷子探しから悪党退治までの何でも屋 やって(ます)」という看板が書いてあった。

 

「オヤジさん…これ…」

「そういうこった、嬢ちゃんの提案で駄菓子屋と何でも屋の複合店舗でやっていこうってなってな!」

「名案でしょ?」

「名案もどうもあるか!俺の何でも屋は街の口コミで回ってこそ意味あるんだよ!」

「そういう口コミとかだと広がんないでしょ?」

「口コミで回るってのがいいんだよ!ってかマヒロ!なんで止めなかった!?」

「え?だって正樹のオジサンがヤングドーナツを毎日2つにするって言われたら乗るしかないじゃんか……」

「うぉぉぉい!?なんでヤングドーナツで買収されてるんだよマヒロ!?」

「よーし!今日から何でも屋小野寺開業でーす!!」

「俺の許可なしに勝手に開業するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

翔琉の少し哀れな叫び声が街中に響き渡った。

だが、これは彼らにとって長く続く戦いという物語の1ページに過ぎなかった。




お読みいただきありがとうございました。

おかげで色々創作意欲がひらめきーんぐしています()


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第3話「我は制裁代理人」

 もうすぐ昼になろうとする頃、翔琉は店先を掃除していた。外は雲一つのない青空だ。

 

「うーん…。どうにもこの看板外してぇが、もう覚悟は決まってるしなぁ…」

 

翔琉はふと目に入った何でも屋の看板を見て若干意気消沈しかけるが、すでに覚悟を決めて掃除を再開する。

すると、眼前に紺のインサイトの覆面パトカーが停車する。そこから降りてきたのは、この前の現場にいた刑事の樹だった。

 

「こんにちは~って、アレ?あの時の何でも屋さん!?」

「あ、あの時の刑事さん!なんでこんなところに?」

「昨晩、この付近で奇妙な事件がありまして、聞き込み調査のためにこちらに…」

「奇妙な事件…?」

 

 

 

第3話「我は制裁代理人」 

 

 

 

 奇妙な事件。その樹の言葉が気にかかった翔琉は、店の中で樹の話を聞くことにした。店の主である正樹もそれに加わった

 

「それで、その奇妙な事件って一体なんです?」

「早い話が、傷害事件なんです」

「「傷害事件…?」」

「えぇ。日曜日の深夜に芝倉地区の国道を走っていた暴走族が何者かの襲撃を受けて。現場近くの工場の監視カメラから、バイクを粉々にした後に人影がものすごいスピードでこっちの方面に逃げていくのが目撃されたんです。」

「バイクを粉々…少なくとも人間がなせる業ではないな…」

「うーん…。その頃俺たちの寝ていてよくわからなくて…。力になれなくてすいません…」

 

翔琉は申し訳なさそうに樹に謝った。

 

「いえいえ…。そうだ、せっかくだから、これとこれ買っていっていいですか?」

「おう、合わせて52円」

「はい。あ、レシート大丈夫です。ご協力ありがとうございました」

 

樹は駄菓子を2つほど買った。

 

「絶対に捕える…。絶対に」

 

そう呟きながら店を出ていき、インサイトに乗り込み。駄菓子屋を後にした。

「オヤジさん…」

「あぁ、あの刑事さんの話。ドーグの仕業で間違いねぇな…。」

 

樹が去った店内。2人はドーグの仕業であるとにらんでいた。

 

「それに、あの刑事さん。とんでもないもの抱えてそうな気がするしなぁ…」

 

 

 

「やっほー」

 

それから2時間ほど経過した頃、まるで顔なじみかのように涼葉が駄菓子屋の中にあるガレージに入ってくる。

だが、それを気にせずに翔琉はボチョークでボードに何かを書き。マヒロはタブレット端末を操作して何かを調べている。

 

「どう?何か依頼があった?何でも屋さ~ん?」

 

涼葉はチョークで単語を並べている翔琉に再び声をかけた。

 

「あるわけねぇだろ。ったく、こちとらドーグがまた暴れてるってのに…」

「またドーグが?…って、何単語羅列しているの?この前も思ったけど…」

 

涼葉がボードを見ると、「芝倉地区」「国道」「暴走族→オヤジさんの話だとあの周辺はエンドリーマーの縄張り」「族同士の抗争?」などの単語が並べられていた。

 

「あ、これか?なんだろう。文字を羅列していたらマヒロがそれを整理して情報を導きだしてくれるんだ。そのためにやってるんだ」

「へえ~…って、文字から察すると昨晩、芝倉地区の国道で起きた暴走族襲撃の事件でしょ?記事はおろか警察の発表もないのになんで2人知ってるの!?」

「あー。それは…」

 

翔琉は先ほど、樹が来た事と、事件の内容について涼葉に話した。

 

「なるほどね。この方面にドーグが逃げていったと。そのメカで何とかならないの?それって」

 

涼葉はふとした疑問を翔琉にぶつけた。そのメカというのはカメンデバイザーの事である。

 

「そのカメンデバイザーはあくまで変身用と解析用のデバイス。ドーグの発見器なんかじゃないから」

 

と、マヒロはタブレットを操作しながら涼葉の疑問に答えた。

 

「なるほど、ちょっと不便すぎるね…」

「まぁな。ところであの現場でも樹って刑事と顔なじみだったんだけど、知り合いなのか?」

「深津警部?私の高校の同級生。しかも3年連続生徒会に在籍して3年生では生徒会長やっていた人。普段も素行が悪い生徒とかも容赦なく指導していたからね…。それでついたあだ名が『鬼の樹』」

「ハハハハ。なんか分かる。すごい生真面目な刑事って感じしていたしな」

「おねーさんの友達の刑事さんの話で絶賛盛り上がってる中悪いけど、なんか結びつきそうなサイト見つけたよ」

 

マヒロはあるサイトを表示したタブレット端末を翔琉に見せる。

 

「『制裁代理人・Dr.レンチの正義執行室』…?」

「うわぁ……。いかにもなアングラのサイト。時代錯誤も甚だしくない?」

 

翔琉はタブレット端末を操作して、『依頼掲示板』と呼ばれるページを開いた。

いくらかスクロールしていくうちに、翔琉のスクロールの指が止まった。

 

「もしかするとこれか?『出来るのなら、芝倉地区にいるエンドリーマーをやっつけてほしい。何が旧車会だ。所詮近所迷惑だ。』…。書き込みは今日から2日前か」

「ってなると、昨晩襲撃が起こせるのも合点がいくね。恐らくここの書き込みと一致する事件があるかも。新聞社に戻ってアーカイブ調べてくるね」

「おう、頼んだ。こっちからも色々当たってみるわ」

 

翔琉たちは、事件捜査の行動を始めた。

 

 

 

 ほぼ時を同じくして、岩積地区の築半世紀のアパート。その部屋の一室で20代後半の男が机にあるパソコンの画面を見ていた。

 

「エンドリーマーの制裁完了…と。次の依頼は…これか」

 

男は書き込みを見る。そこには『七浦工業の木宮Mgめ。部下に終業後の対応押し付けて自分だけ帰りやがって…。レンチさん、ソイツをぶちのめしてくれ』とあった。

 

「依頼受託…と。さーて、覚悟してもらおうかぁ?」

 

男はそう言うと、場所を特定しだした。パソコンのある机には『WRENCH』と刻まれたドーグチャージャーが置いてあった…。

 

 

「そっちは進展あったか?」

 

 夕方、芝倉地区の商店街にて聞き込みを終えた翔琉は、通話で新聞社に戻った涼葉と連絡をとった。

 

『デスクにも聞いてみたんだけど、似たような事件が最近多発していたみたい。マヒロくんから貰った以来の中にあった人達の殆ども書き込みの数時間から数日後の間に何者かの襲撃に遭ってるとみて間違いないかも。そっちは?』

「酒屋さんのご主人の息子が、残業から帰るときに人影が南に向かって走っているのを見かけたとか。それしか情報は見いだせなかった。もうちっと情報集まったら連絡する。またな」

 

そう言うと翔琉は通話を切り、商店街を抜けると、樹とばったり再開した。

 

「あれ?さっきの何でも屋さん。どうしてここに?」

「あ…。いや、ちょうど買い出しに出かけようかなぁと思っていたんですが、お店が定休日なこと忘れてて…」

 

翔琉は刑事である樹に詮索させないように何とか誤魔化した。

 

「そうなんですか。それは大変でしたね…」

「刑事さんは、昼間からずっと聞き込みに?」

「えぇ、事件発生とされる時間帯が深夜というのと、そんなに車どおりが少なかったのもあって、あんまり証言と言える証言は集められずに1日が終わりそうな気がしますね…」

「お疲れさんです…」

 

翔琉は自動販売機で缶コーヒーを2つ買い、そのうちの1つを樹に渡した。

 

「あ、すみません貰っちゃって」

「警察官の仕事って大変なの、俺も知ってるんで」

「あれ?ってことは一回……」

「警察官になろうと思ってて、だけど警察学校落ちて…」

「そうだったんですか。それであの何でも屋を?」

「あながち間違いでもないんすよね。警察官じゃなくてもいいから誰かのためになりたいって思ってこの稼業始めたようなものなんで。そういや、刑事さんはなんで警察官なんかに?」

「僕ですか?それは……」

 

話を遮るかのように、樹の覆面パトカーから通信受信音が聞こえる。樹はすかさず無線機を取った。

 

「はい。こちら302」

『本部から301、新見地区の工業団地内の七浦工業の倉庫にて襲撃事件の通報あり。マル被は覆面に全身プロテクターのようなものを装備し、武装し立て籠もっている模様。至急向かってください』

「302、了解」

「何か事件が…?」

「えぇ、コーヒーごちそうさまでした。また会ったらお代の方払うので、それではまた!」

 

樹は覆面パトカーに乗り込み、去っていった。

 

「七浦工業に覆面に全身プロテクター…まさか!」

 

通信の内容を少し聞いていた翔琉は、カメンデバイザーを取り出し、ベルトを起動し、ベルト横のカメンチャージャーをセット。

 

[トライズドライバー・スタートアップ!]

[1号!・クウガ!・ゼロワン!カメントライズ!]

「ヘンな予感が当たりませんように!」

 

停車してあったCRF250に乗り込み、発進。

ある程度速度が回ってきたタイミングで、デバイザーをベルトにセット。

 

「変身!」

[うなれ正義の必殺キック!ライジングジェネレーション!!]

 

翔琉はトライズに変身。変身信号を受けたCRF250も、サイクライズチェイサーに変形し、一目散に現場へと向かった。

 

 

 

 それから数分経過して、樹は現場に到着した。

 

「宮内さん、状況は?」

「まだ建物内部に作業員が数名残っている。1分後に突入予定だ。行けるか?深津」

「はい、人を守り、悪人を裁くのが俺たち警察の役目ですからね」

「裁くんじゃなくて、捉えるだけなんだがなぁ…」

 

樹の先輩刑事の宮内淳はそう呟きながらも、突入口である裏口に身を潜めた。

 

「16時28分、突入開始!」

 

淳のその言葉を合図に淳や樹をはじめとした刑事や警官たちが突入を開始する。

 

「なんだ!?あれは…」

 

そこで樹たちが目にした光景は、レンチドーグが右手のモンキーレンチのようなアームで男性の首を持ち上げている光景だった。

周囲の機械類はレンチドーグが破壊したのか、ぼこぼこに凹んでいた。

樹は目の前の光景を疑ったが、すかさずホルスターから拳銃を取り出し発砲した。

しかし、それはレンチドーグにとっては痛くも痒くもない攻撃だった。

 

「ケーサツもオレの正義の執行を邪魔するつもりかぁ!!」

 

レンチドーグは、締め上げていた男を投げ飛ばし、標的を樹に変えた。

樹も再び拳銃を発砲するが、レンチドーグには全く効かない。

この時、樹の脳内には死が過った。

 

「父さん、母さん。ゴメン……」

 

その時だった。

サイクライズチェイサーに跨ったトライズが壁を突き破り現れたのだ。

トライズはそのままレンチドーグをはね飛ばす。

 

「勇敢過ぎても殉職が待ってるだけだぞ?刑事さん」

「あんたは…?」

 

トライズはサイクライズチェイサーを降りて、レンチドーグを向く。

 

「その腕見るに、レンチのドーグチャージャーか。それで正義の味方面していろんなヤツの生活をバラバラにしたってわけか」

「貴様っ…ディーラーが言っていた仮面ライダーか!」

「あぁ、その通りだ!」

 

トライズは跳躍パンチで一気にレンチドーグに接近、ストレートをレンチドーグのどてっ腹に叩き込む。

怯んだ隙に追い打ちの回し蹴りをレンチドーグの頭部側面に当てる。

 

「このっ…!」

 

レンチドーグは右腕のモンキーレンチでトライズをひっ叩く。あまりの威力にトライズはよろめく。

 

「やるじゃねぇか!だったらこっちも!!」

 

デバイザーを引き抜き、1号・クウガ・ゼロワンのカメンチャージャーを取り外し、BLACK・J・アギトのカメンチャージャーに入れ替え、デバイザーにセットした。

 

[BLACK!・J!・アギト!カメントライズ!]

[叩け大地の鉄腕ナックル!!グランディックパワード!]

 

トライズはグランディックパワードへと姿を変え、レンチドーグに強力な蹴りとパンチの連撃を打ち込んだ。

 

「こうなれば…!」

 

レンチドーグは右腕のモンキーレンチの顎を開き、キャノン砲を展開。そのエネルギー弾をなんと、先ほどの男性を介抱している樹たち警官に向かって発射した。

 

「あんなのありかよ!」

[チャージングバースト!]

トライズは駆け出し、必殺状態に移行。樹たち前に立つ。

 

「パワードジャッジメント!」

頭部のクロスホーンが展開し、両拳にエネルギーが集中。エネルギー弾を拳で弾き返し、トライズの眼前で爆発した。

爆炎が晴れると、そこにはレンチドーグの姿は消えていた。

 

「逃がしたか…。だが、悲惨な結果を回避できただけで上出来か…」

 

トライズは男性が救急車に運ばれていく光景を見てそう呟いた。

 

 

「全く、危ないところでしたねぇ。金光さま」

「申し訳ねぇ……」

 

 そう離れていない倉庫内、逃げたと思われたレンチドーグは、全身に盾のような装甲を纏ったドーグに平謝りをしていた。どうやらこのドーグの援助がありレンチドーグは命からがら助かったようだ。

 

「あくまでサービスの一環です。契約した顧客を守るのがディーラーの務めですから」

 

盾の装甲のドーグは変身を解き。黒いスーツを身に纏った男に戻った。

レンチドーグも金光という男の姿に戻る。

 

「それでは私はこの辺で。良き未来を…」

 

男はそう言うと金光の許から離れた。

 

「トライズ…。やはりアレは私の盾の餌食に相応しい……!!」

 

男の手には「SHIELD」と刻印された端子が金のドーグチャージャーが納まっていた。



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第4話「正義という武器」

「お前なんつー時間帯にアップしてるんだよ」
ってツッコミは無しです()


あとがきに重大発表もありますのでお楽しみに!


「逃がしたか…。だが、悲惨な結果を回避できただけでマシか…」

 

トライズは男性が救急車に運ばれていく光景を見てそう呟いた。

先ほどまで、トライズはレンチドーグと交戦し、人々を守っている隙にレンチドーグはどこかへと撤退していったのだ。

トライズはライジングジェネレーションへと戻り、サイクライズチェイサーに跨った。

その時、何かの気配に気づき振り向いた。気配の正体は樹だった。

 

「刑事さん…?」

「貴方がなぜあの怪人を追っていたかは深追いしません。だけど、これは俺たち警察の事件なんです。何があれ部外者であるあなたが関わってはなりません」

「でもさっきの怪物を見たならわかるはず…」

「俺は刑事であり、正義の人間です!!あのような怪人が起こした犯罪でも、捕らえる権利は俺たち警察にあります。だから手は出さないでください」

 

樹はその言葉と共に踵を返し、離れていった。トライズはそれを見ているしかなかった。

 

「刑事さん、何をそうまでして正義にこだわって…」

 

 

第4話「正義という武器」

 

 

「ただいまぁ~」

 

 辺りがすっかり暗くなったころ、翔琉は駄菓子屋のガレージに戻ってきた。

マヒロはいつものように椅子に座ってタブレット端末で調べ物をしている。

その近くの作業台には、全体がシルバーのボディに赤と青のラインやマーキングが入った銃剣のようなものと、3つのカメンチャージャーが置かれていた。

 

「おかえり。戦闘データに目を通したけど、能力とか外見見るにレンチのドーグチャージャーで間違いないかも。もしかするとあのとっておき使う羽目来るかもね」

 

マヒロはそう言いながら、作業台にあった銃剣を指さした。

 

「ったく、あんな遠距離攻撃できるって聞いてねーぞ?どうなってんだ?」

「たかがドーグ、されど侵略兵器だからね。ボクらが知らないうちにアップグレードして以前闘ったレンチの個体にはない遠距離攻撃機能を拡張したのかも」

「ホントに、どうすることもできねぇよなぁ~。お、今日はハムカツか」

 

そう言うと翔琉はテーブルにある翔琉用に作り置きされた晩御飯を食べ始めた。

 

「あと、あの刑事さんって人。とんでもない闇抱えてる感じがしたけど。ニンゲンの刑事って種族はそんなものなの?」

 

ふと、マヒロが翔琉にそう問いかける。マヒロからしてみれば、職業は種族と同じと考えているのだ。

 

「うーん…」

「刑事、というか警察官はそんな正義感で殴りつけるような人ばかりじゃねぇな。ごく稀だ。翔琉、それだけで足りるか?」

 

翔琉がマヒロの問いの答えに言葉を詰まらせていると、正樹がガレージの入り口から顔を出して言った。

 

「全然大丈夫。帰り際にコンビニでおにぎり買って食べたから」

「オジサン。どういう事?オジサンも警察官と知り合いなの?」

「まぁ俺も昔暴走族っていう野蛮な種族の出来損ないみたいなのにいてな。そこにいるおっさんの刑事が何べんも説教をしてくれた。俺たちは自分たちが常に正しい、俺たちが正義なんだって主張していた時に刑事が言ったんだよ。『正義正義と囚われているようじゃ、人間ってのは同じ過ちを繰り返す。正義は自分のためにあるものなんかじゃない』ってな」

「正義は自分のためにあるものなんかじゃない……」

「正義ってものは自分のために振りかざすもんじゃねぇ、隣にいたり、どこかにいる誰かを守るためにあるものなんだと。その言葉で俺はすっかり目を覚まして今日に至るってわけだ」

「よっ!元港連合総長!!」

「だからそれを言うなって!マヒロに伝わらないだろっ!」

 

男3人の笑い声が、ガレージの中にこだました。

 

 

 翌日、翔琉は晴天新聞の本社の前で待ち合わせをしていた。

晴天新聞の社屋がある海星ビジネス地区は、2年ほど前の再開発で、近代的な外見に様変わりしていた。

周辺のビルとも相まって、そこは少し近未来の都市のようにも思える。

翔琉の前を人々が慌ただしく行き来している。

 

「お待たせ。急に連絡するからやるべき仕事全部切り上げてきちゃった」

 

涼葉がやって来る。待ち合わせの相手は涼葉だったのだ。

 

「悪かったな。今度缶コーヒー驕るから勘弁してくれ…」

「多分、あの復讐代行の事だろうと思ったから、ハイ。うちの新聞社のアーカイブだけだから、ちょっと欠けている部分もあるかもしれないけど」

 

涼葉はバッグからA4サイズのファイルを翔琉に手渡した。受け取った翔琉は一通り流し見する。

 

「サンキュ。あ、それともう一つあるんだけど」

「なに?」

「あの刑事さんの事、詳しく教えてくれないか?」

 

 

 それから、翔琉と涼葉は海が見渡せる海浜公園に移動した。

その合間に、今までの事の経緯を涼葉に話した。

 

「そう言う事だったんだ…」

「あぁ、なんかあの刑事さん、刑事にしちゃとてつもないく大きな何かを背負っていた。顔なじみだからわかるんじゃねぇかなぁって。分からなかったらそれでいいが…」

「恐らく、あの事なのかも…」

「あの事…?」

 

涼葉は、樹の過去である「あの事」について話し始めた。

 

「高校入って間もないころなんだけど、深津警部の両親は交通事故に遭って亡くなっちゃってね…」

「事故?」

「うん、そこで犯人も捕まったんだけど、その人は医学界の権威的の存在だったから、本来課せられる刑罰よりすごく軽い刑罰だけで済んじゃって…。でも2年後の再審でちゃんとした刑罰を与えられて終わったんだけどね」

「刑事さんの過去に、そんな事が…」

 

翔琉は樹の過去に愕然としていた。真面目そうな刑事の裏に、そのような過去があったからだ。

 

「それからかな。校則違反する生徒たちにも容赦しなくなったの。それが原因で何度か謹慎になったって話も聞いているし、それも校内だけじゃなく、校外の人たちにも手を出したって話しもあるし…。多分ドーグが立ちはだかっても深津警部の場合やりかねないからね…」

「そっか…。なんか悪かったな。他人の過去まで聞かせてもらって」

「ううん。別に」

 

 

 「あの工場にいた人が自供した?」

「あぁ、なんでもこのサイトに冗談で書きこんだんだと」

 

同じ時刻、警察署の刑事課で樹は敦からある証言を聞いた。

敦の机に置かれたノートパソコンには、『制裁代理人・Dr.レンチの正義執行室』のサイトが表示されていた。

樹は有無を言わず、サイトの『依頼掲示板』ページを開いた。

 

「これは…」

「驚いたろ。全部ここ数日以内に発生した襲撃・傷害事件の被害者の名前と一致してんだ。恐らく犯人は七浦工業にいたあのスパナみたいな恰好をしたヤツで間違いねぇだろ」

「宮内さん、コイツの…」

「居所だろ?サイトのIPアドレスを基に午前中に別の捜査官が向かったらもぬけの空。俺たちが来るのを悟ったか。それとも偽のIPアドレスだったのかは捜査中」

 

敦の言葉に樹は拳を握りしめ、机を思い切り叩き、唇をかみしめる。

 

「気持ちはよくわかる。こんな連続襲撃犯を俺たちは逃したくない。そんな焦ることはないぞ?」

 

樹は敦の言葉を受け止めながらも、視線は画面にあった。

そんな時、新たな書き込みを見つける。

それは、「聖剛大学のセクハラ学長を消してほしい」という内容だった。

聖剛大学、それは聖剛学園地区にある大きな大学。敷地内には付属高校と付属中学がある。樹と涼葉もこの付属高校の卒業生だ。

その書き込みを見た樹は思わず駆け出し、刑事課を後にした。

 

「…ったく、アイツも若いなぁ」

 

敦はそうぼやくと、椅子から立ち上がり、刑事課を後にした。

 

 

 「ここか…」

 

それと同時刻、レンチのドーグチャージャーを持つ金光は、聖剛大学の正門前に姿を現した。

 

「待ってろよぉ。俺が制裁くわえてやるからな…!」

[WRENCH!!]

 

金光はドーグチャージャーを掌に差し、レンチドーグへと姿を変える。

その光景を見た人々は驚き、悲鳴を上げながら逃げ去る。

正門にいた警備員はレンチドーグの前に立ちはだかるも、人間の数倍の力を持つレンチドーグにはかなわず、蹴散らされてしまう。

若者の希望が溢れるこの学び舎も、悲鳴と混沌が渦巻く場となるのも時間の問題だった。

 

 

 「また新たな書き込みが!?」

 

数分前に涼葉と別れた翔琉はマヒロからの着信に受け答えていた。

 

『うん、場所は聖剛大学。内容はセクハラ学長の抹殺だって』

「分かった。すぐに行く」

 

翔琉は通話を切ろうとする。

 

『あ、待って』

 

と、マヒロに遮られる

 

「なんだ?」

『バイクに積ませた例の"とっておき"、仮に使おうとしても100%の力は引き出せそうにないから気を付けてね』

「分かってる。あるもんのチャージャーでどうにか補填すりゃ90%くらいは出せるんだろ?とりあえず切るぞ」

 

そう言い、通話を切った。

CRFに跨り、ヘルメットをかぶる直前、翔琉は先ほどの涼葉の言葉を思い出す。

 

「多分ドーグが立ちはだかっても深津警部の場合やりかねないからね」

 

翔琉はふと何かを思い。CRFのエンジンをかけ、聖剛大学へと向かった。

 

 

 それから数分が経って、単独で樹が聖剛大学の構内を走っていた。

既に避難をしている学生たちから、体育館に学長が連れ去られたという証言を受け、樹は拳銃を片手にたった一人で大講堂に向かっているのだ。

 

「絶対に…。今度こそ逃がさない!俺の、正義の名に懸けて!!」

 

樹は重い体育館の扉を開いた。アリーナには、さっきまで体育の授業が行われていたのだろうか、スポーツ器具が散乱している。

 

「警察だ!動くな!!」

 

樹は体育館の舞台を見た。パイプ椅子に括りつけられ、ぐったりとした学長と、今にもとどめを刺そうとしていたレンチドーグの姿があった。

 

「なんだよ。誰かと思えばこの前のケーサツかよ。ったくしつけぇな!」

 

レンチドーグは舞台から飛び降り、樹に向かう。樹も拳銃で応戦する。

 

「そんなもの聞かねぇって言うの分かんねぇかなぁ!」

 

レンチドーグは樹が放った弾丸を右腕ではじき返す。

樹は拳銃を捨て、右腿のホルスターから警棒を引き抜き、接近戦に移行する。

袈裟に叩くも、レンチドーグにはこれといった致命傷を与えることはできない。

レンチドーグは警棒を弾き飛ばし、右腕のアームで樹の首根っこを掴み、縛られている学長の方へ投げ飛ばす。

 

「邪魔しないでほしかったが。まぁ、制裁対象が増えただけった考えりゃ得かぁ!」

 

レンチドーグは右腕のモンキーレンチの顎を開き、キャノン砲を展開した。どうやら砲撃で仕留めるつもりだ。

 

「あの世で後悔するんだな!今までの苦行を!!」

 

レンチドーグはキャノンにエネルギーを充填し、樹たちの方面に放つ。

 

その時だった。

 

バイクのエンジン音が鳴り響き、レンチドーグの背後から翔琉の乗ったCRFが扉を突き破ってきたのだ。

CRFはその勢いで、レンチドーグをはね飛ばす。エネルギーは暴発し、明後日の方向に発射され、爆発した。

CRFは樹の前でスピンし、停車した。翔琉は樹に振り向く。

 

「大丈夫っすか。刑事さん!」

「何でも屋さん…。なんでここに?あなたみたいな一般人がここに来ちゃ危険で!ここは、俺が…!」

 

翔琉に避難を促した樹に、翔琉はそれを遮るかのように言う。

 

「アンタは確かに正義の味方の刑事さんなのは知ってる。だけど、正義正義って囚われているうちは、それは正義の味方なんかじゃない。ただ自分が正義という武器を振りかざしているだけに過ぎないんだ。いいか、刑事さん、それにそこのドーグ!正義ってのはな、自分にあるためじゃねぇ。隣にいる誰かや、知らない誰かを守るための武器なんだ。やりすぎた正義なんてそれは正義じゃない!!」

「じゃぁ、どうすれば目の前の怪物を裁って言うんだ…!」

「刑事さんはあのドーグの人物を裁け。俺が、あのドーグを裁く!」

 

翔琉はそうまくし立てると、カメンデバイザーを取り出し、ベルトを起動した。

 

[トライズドライバー・スタートアップ!]

 

デバイザーに1号・クウガ・ゼロワンのカメンチャージャーをデバイザーにセット。

 

[1号!・クウガ!・ゼロワン!カメントライズ!]

「だから見ていろ…。俺の…変身!!」

[うなれ正義の必殺キック!ライジングジェネレーション!!]

 

翔琉はトライズに変身。その光景をみた樹はあっけにとられた。

 

「何でも屋さんが、あの時の…!」

 

樹の言葉に、トライズは少し振り向き、レンチドーグに向かい駆け出す。

 

 

起き上がったレンチドーグはヤケだと言わんばかりにトライズに向かい砲撃を放つが、キックや掌底で跳ね返されてしまう。

 

「なっ!?」

 

それを見たレンチドーグは敵わないと思ったのか、キャノンを格納し、接近戦に挑む。

レンチドーグは右腕でトライズを叩きのめそうと試みるが、寸のところでジャンプで翻されてしまう。

 

「埒が明かなくなる前にとっておき使わせてもらうぜ!トライジングキャリバー!」

 

トライズがそう叫ぶと、CRFから変形したサイクライズチェイサーの後部からシルバーのボディと、赤と青のラインとマーキングが入った銃剣・トライジングキャリバーが飛び出し、トライズの手元に収まった。

 

「さぁて、行くぜ!」

 

トライズは大きくジャンプし、落下しつつレンチドーグの身体を縦に斬る。そこから横一線に斬る。

 

[レールガン!]

 

そこからさらに、刀身を動かすと刀身が開き、レールガンモードに移行。

引き金を引き、レンチドーグに高速で発射される弾丸の雨あられを浴びせた。

 

「そろそろフィニッシュだ!」

 

トライズはベルト横からX・ファイズ・ビルドのカメンチャージャーを取り出し、銃の撃鉄に当たる位置にあるスロットにカメンチャージャーをセットする。

 

[トリプルチャージ!マキシマムブースト!]

 

3つのカメンチャージャーの認識完了を知らせる電子音が、必殺状態に遷移したことを告げ、警告音のような待機音が鳴る。

トライズは引き金を引いた。銃口から赤い円錐状のマーカーが射出され、レンチドーグをロック。

そこからトライズは高く飛びあがると、トライズの足元にはグラフのようなエフェクトが展開され、レンチドーグを動けないように捕縛。

捕縛を確認したトライズは再びソードモードに変形。

 

「決めるぜ必殺の新技!唐竹・ボルテックリムゾン!!」

 

トライズは空中で縦回転しつつ、斜め落下の勢いでレンチドーグを振り下ろし、両断する。

必殺の一撃を食らったレンチドーグは間もなく爆散。ドーグチャージャーが金光の身体から飛び出し、粉々に砕けた。

トライズは樹に向き直り、サムズアップをする。

 

「終わったぜ。刑事さん」

 

樹もサムズアップで返した。

 

 

それからしばらく経過し、聖堂大学の構内は警察により規制線が敷かれた。

その光景を翔琉と樹は見ていた。

 

「あの、助けてくれて…。ありがとうございます」

樹は翔琉に向かって頭を下げた。

 

「その、僕はただ漠然と悪を裁きたいからって安直で単純すぎる理由で警察官になった人間だから、正義の使い道ってものを間違えていたに気づかなくて…。ただ過ちを繰り返してばかりで…」

「いや、それに気づけるってことは、まだ根っこに正義の心があるってことなんじゃないっすかね」

「え…?」

 

樹は翔琉の言葉に驚く。

 

「だって、間違いに気づけずにいたら、きっと刑事さんもあのドーグみたいになっていた。だけど、心の中でそれが間違いだと思っていたから今の刑事さんがいるんだと思うんすよ。それに、悪を裁くためって理由もカッコいいってじゃないっすか。なんか刑事ドラマみたいで」

「何でも屋さん…」

「それと、その何でも屋さんって言うの、ヤメにしません?俺にも小野寺翔琉ってちゃんとした名があるんですから、深津警部?」

「…そうですよね、翔琉さん」

「おーい、深津。いつまでそこでボヤっとしてるんだ!そろそろ署に戻るぞ!」

「あ、はい!」

 

樹は遠くにいる敦のもとへ向かおうとする。

 

「あ、深津警部!」

 

だが、翔琉が飛び留めた。

 

「なんですか?」

「あの…。俺が変身したこと、署の人たちには内緒にできます?」

「もちろん。僕だけの黙秘事項にさせていただきますから!」

 

樹はそう言いながら敬礼し、その場を去る。

 

「さてと、俺も帰るかぁ…」

 

翔琉はCRFに乗り。その場を去っていった。

 

 

だが、それを目撃している男がいた。黒いスーツを身に纏った男。

そう、あの時ドーグレンチを助けたシールドのドーグチャージャーを持つ男だ。

 

「アレがトライズになった男…。実に興味深い。だが、私の鉄壁を崩せるほどではなさそうですがねぇ…!」

 

男は薄ら笑いを浮かべながら、翔琉が去っていく様子を眺めていった。




というわけで、ライダーでは珍しい(?)武器初登場回となりました。
ちなみにお察しのいい方ならわかりますが、どこかにあのライダーのあの名シーンモドキが紛れ込んでいます。
当てた方は何もプレゼントはありませんので悪しからず。


というわけで重大発表です。
私ちくわぶみん、Twitterフォロワーであるエミヒロ君のオリジナルライダー作品「仮面ライダー妖」の不定期ながら委託投稿をさせていただくことになりました。

執筆・企画:エミヒロさん (TwitterID:@710EjfQ4fVlK3wb)
原案・投稿:ちくわぶみん (TwitterID:@im_a_tikuwabu)
イラスト:熊0803さん  (TwitterID:@@N1lo1Vc5zmlDa4g  ハーメルンID:174759)

この3人によるチームでお届けです。
どうか、こちらも投稿次第よろしくお願いします!


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第5話「悪魔のチェーンにご用心」

創作意欲のエンジンがブルンブルンしてます()
新フォーム登場回です。ご覧あれ。


「おじさーん、ありがとー」

 

時刻は15時を回ったところ。駄菓子屋「みやじま」から数人の小学生が出ていく。

背中にランドセルを背負っていることから、下校途中だとうかがえる。

 

「おう、また明日か明後日な~」

正樹は小学生の列にそう別れの挨拶を告げた。

それと入れ替わるように、買い出しに行っていた翔琉の乗ったCRF250が停車してきた。

 

「ただいま~」

「おう、すまなかったな。買い出しまでさせちって」

「これがおつりと、あとこれ」

 

翔琉はグロテスクな怪獣のようなキーホルダーを正樹に渡した。

 

「なんじゃこれ…?」

「コンビニのスピードくじで当たったやつ。ほら、オヤジさんってそういうキモかわいい?怪獣の人形みたいなの集めてるじゃん。なんなら店にも飾っているし…」

「まぁ、そりゃそうだけど。アレはあのサイズ感だからいいわけであってなぁ…」

 

翔琉と正樹が軒先でそんな雑談をしていると…

 

「あの…すいません」

 

と、高校の制服を着た女子高生が話しかけてきた

 

「どうした?」

「ここで何でも屋をやっている人がいるって聞いたんですが…」

 

正樹の問いに女子高生がそう答えた。

 

「そうだけど…」

「あの、助けてほしいんです!!警察とかに知られたら、親に怒られるんです…」

 

女子高生は声を張り上げそう言った。

 

 

第5話「悪魔のチェーンにご用心」

 

 

事態を重く見た翔琉は女子高生を店に上げ、話を聞くことにした。

女子高生の名は新藤 春香。美園地区の櫻岡女子高等学校の3年生だ。

 

「さっき言っていた、助けてほしいって話。詳しく聞かせてくれるか?」

 

翔琉は春歌にそう聞いた。

 

「実は…。私、前にNewtuberのカミシロユウキに自撮りの写真を強要されていて…!!気づいたときにはもう手遅れで、学生証の写真も後らされて、アイツに弱み握られて…」

「カミシロユウキ?昨日元アイドルの子とデキ婚発表したあの?」

「あぁ、アイツ?」

 

翔琉も正樹も驚きの顔を隠せなかった。

何を隠そう、Newtuberのカミシロユウキはその顔立ちの良さから瞬く間にトップに躍り出て、カリスマという呼び声も名高い存在だったからだ。

その「できちゃった婚」の報道は昨日のスポーツ紙の一面を飾るほどの大ニュースだったのだ。

 

「確かにそんな事やってりゃ、親御さんには言えないわなぁ…」

 

正樹はそう呟く。

 

「とにかく、相談には乗るし、このことは警察にも言わないし、君の親には言わない。だから心配しないで。な?」

 

翔琉は春香に優しく諭した。

 

「こっちから解決策を探してみるから、何かあったらここに連絡して」

 

翔琉は駄菓子屋の電話番号と翔琉の携帯番号を書いたメモを春香に手渡す。

「…分かりました。ありがとうございます」

 

安堵の表情を一瞬浮かべた春香は、店を出ていった。

「しかし、とんでもねぇ一大スキャンダル掴んじったな…」

 

春香が出ていった店の中で正樹はそう呟く。

 

「そうっすね…」

 

翔琉もそう言うしかなかった。どうやら、何か気にかかることがあるようだ。

 

 

「これでよし…」

春香は駄菓子屋「みやじま」からそう離れていない公園のベンチに座っていた。

携帯で、先ほど渡されたメモの携帯番号を登録し終えていた。

 

「よかった…。これで私の心の荷が下りればいいけど」

春香はそんなことをつぶやきながらベンチから離れ、公園を出ていった。

だが、その光景を陰で見ている男がいた。

 

「まずいなぁ、そこまでやられると…。でも、キミとオレはの鎖は、一生断ち切れないようにしてあるからねぇ…」

 

その男の手には、『CHAIN』と書かれたドーグチャージャーが握られていた。

男はその光景を見終えると、停車してあった高級スポーツカーに乗り込み、その場を後にした。

 

 

「カミシロユウキ?」

 

数分後、すっかりこのガレージに気に入っているのか、よく来るようになった涼葉がそう言った。

 

「ってあのNewtuberでしょ?昨日元アイドルの渡部夕夏と婚約発表した。しかもできちゃった婚」

「確かだけど、俺の記憶が正しければなんだ、一回ソイツ女性絡みで問題起こしてなかったか…?」

 

こういうことはジャーナリストが詳しいと判断したのか、翔琉は涼葉に聞いた。

涼葉はバックからノートパソコンを取り出し、調べ始めたが

 

「見っけ、カミシロユウキって人、2~3年前に交際していた女性に酔った勢いで暴力振るって暫く活動止めてたみたいだね」

 

机でタブレット端末を操作していたマヒロに遮られた。

先を越された涼葉は思わずずっこける。

 

「ちょっと!ジャーナリストの仕事取らないで!」

「そう言われるのを予測していればボクに先を越されないで済んだんじゃない?」

「ぐぬぬ…」

 

マヒロの反論に何も言えなかった涼葉だった。

 

「で、なんで今頃カミシロユウキ?デキ婚発表のニュースで気になったとか?」

「いや、違うんだ。実はさっき女子高生から依頼があってな。なんでもカミシロユウキに自撮り写真を強要させられて、後に引けなくなって俺に相談されたんだ」

「なにそれ一大スキャンダルじゃん!!」

「うるさっ」

 

涼葉は声を張り上げた。思わず翔琉もマヒロも耳をふさぐ。

 

「でもな、女子高生曰く親にバレたくないから大ごとにしたくないんだと。警察にも探偵にも相談できなくてここに持ち込んできたんだって」

「う~ん…。なんだかフクザツ…。私もその子の立場になったらそうするかも…。だけどジャーナリストだからそっちも……」

 

涼葉の女としての心と、ジャーナリストとしての心の葛藤が続いたが

 

「でもたとえNewtuberであれなんであれ、そんなことするなんて最っ低!女の敵!!スクープはいらないからソイツにギャフンと言わせてやるー!!」

 

涼葉はそう一念発起すると、ガレージを出ていった。

 

「いや、女ってカタキが現れるとああなるの?」

 

マヒロはその光景に呆れかえっていた。

 

「いや、多分アイツだけだな…」

 

翔琉はその問にそんな事しか言えなかった。

 

 

それから翌日、春歌は通っている女子高校から帰路についていた。

その時突如翔琉の眼前に黒いSUVが止まり、数名の黒服を着た男たちが降りてきた。

 

「お前が新藤春香だな」

黒服の男がそう尋ねる。春香は思わず戸惑う・

 

「クライアントの要望だ。お前を潰せと」

男たちはドーグチャージャーを取り出す。

 

[GUNtrooper!]

 

男たちはドーグチャージャーでガントルーパーと呼ばれる戦闘兵に変貌を遂げた。

ガントルーパーは一歩、また一歩と春香に近づいていく。

 

その時だった、ガントルーパーの背後から翔琉の乗るCRF250がガントルーパーたちをはね飛ばした。

 

「大丈夫だったか?」

 

翔琉はCRF250を降りるや否や、春歌の無事を確認した。

 

「私はなんとも…。翔琉さん、どうして?」

「恐らくカミシロユウキの取り巻きか本人が君を襲うって最悪の事態に備えてついて行ってたんだ。ゴメンな」

「いえ、助かりました!」

「おのれぇ…。貴様!」

 

それを遮るかのようにガントルーパーの隊長各が声を上げた。

 

「春香。下がってな!」

 

翔琉はカメンデバイザーを取り出し、起動した。

 

[トライズドライバー・スタートアップ!]

デバイザーに1号・クウガ・ゼロワンのカメンチャージャーをデバイザーにセット。

[1号!クウガ!ゼロワン!カメントライズ!]

「変身!」

[うなれ正義の必殺キック!ライジングジェネレーション!!]

 

翔琉はトライズに変身。手にはトライジングキャリバーを手にしている。

 

「来な!」

 

トライズはガントルーパーに啖呵を切った。

ガントルーパーは有無をも言わずにトライズに突撃する。

トライズは間合いを取り、跳躍。落下の勢いでガントルーパーの1体を叩き斬る。

ガントルーパーの一体が銃の装備を捨て、背面から警棒のようなロッドを手にしてトライズを突こうとする。

然しトライズも、空中に宙返りしそれを躱す。

 

「ちょうどいいや。お仕置きの電気、喰らわせてやるぜ!」

 

トライズはデバイザーを引き抜き、1号・クウガ・ゼロワンのカメンチャージャーを取り外す。そしてベルト右のホルダーからストロンガー・ブレイド・カブトのカメンチャージャーを取り出し、デバイザーにセットした。

 

[ストロンガー!ブレイド!カブト!カメントライズ!]

 

トライズは再びデバイザーをベルトにセットする。

トライズの右前にブレイド、左前にカブト、正面にストロンガーのホログラムがうつしだされ、トライズの身体に融合し、頭部はブレイドのマスクにカブトのホーン、ストロンガーの複眼とクラッシャー、体の各部はストロンガーの赤いライン、胸部・肩はストロンガーとブレイド、腕部はブレイドとカブト、脚部はブレイドとストロンガーを模した装甲を纏う。

 

「轟け甲虫のスパーク!スパーキングビートル!!」

 

ここにトライズ第3の形態にして雷の力を司るスパーキングビートルが姿を現した。

 

「姿を変えようが無駄だ!」

 

ガントルーパーの隊長格は再び啖呵を切る。

 

「それはどうかな!轟雷ソニック!!」

 

トライズがそう発すると、トライズの姿が見えなくなり、それと同時にガントルーパーがなぎ倒される。

 

「こ、これはどういうことだ!?」

「答えは簡単。超高速で叩きのめしただけだ!」

 

轟雷ソニックとは、スパーキングビートルだけが持つ加速能力。トライズはこの能力を活かし、ガントルーパーを見えない速さで倒していったのだ。

 

「ボルトを上げるぜ!電撃ストレート!」

 

トライズはガントルーパーの隊長格に、電気エネルギーを秘めた拳を打ち出す。

ガントルーパーは大きく後ろに吹っ飛ぶ。

 

「そろそろフィニッシュに行くか!」

 

トライズはドライバーからデバイザーを引き抜き、ボタンを2回押し込む

 

[チャージングバースト!]

 

必殺状態へと移行したトライズの右足に、稲妻のようなエネルギーがチャージされていく。

 

トライズは高く跳躍した。

 

「メガスパークキック!!」

 

右足にチャージされた電気エネルギーを載せた必殺のキックは、ガントルーパーの隊長格を撃退するのに十分だった。

ガントルーパーの隊長格の身体から、ドーグチャージャーが排出される。それを確認した翔琉が隊長格に駆け寄る。

 

「なんであの子を狙った!?」

 

もう白状するしかないと諭したのか、隊長格は口を開く。

 

「か、カミシロユウキ…。ソイツのサポートで、我々は…」

「カミシロ!?まさかアイツもドーグチャージャーを!?」

 

その時だった。翔琉の方向からまっすぐに伸びた鎖が飛んできて、隊長格の身体を貫いた。

隊長格は無残にも消滅した。

翔琉は鎖が飛んできた方面を振り向く。そこには、右腕を伸ばした、腕、足、そして首にはチェーンがぶら下がり、胴体にはチェーンが巻き付いたような見た目をしたドーグが立っていた。

 

「その鎖…。ってことはチェーンか…。そんで正体はアンタか。カミシロユウキ!!」

「ご名答~!さっすがぁ!」

 

鎖のドーグことチェーンドーグは、変貌を解いた。

そこにいたのは、話題に挙がっていたNewtuber・カミシロユウキこと神代結城本人だった。

「なんでこの子を…春香を狙う!?」

「なんでって、キミは世間知らず?こんな事実をばらまかれたら婚約したオレとて、立場が危ういからね。せっかくまたここまで上がってこれて、その子とかによって地位をまた蹴落とされたら生活もままならない。理由はそれだけ?理解った??」

 

結城はNewtubeと変わらずのテンションで翔琉の問いをいなす。

「とりあえずは現段階では警告だけにしておくよ。それと春香、もしキミがまたこんなバカなマネをしたらどうなるか。理解ったよね?アディオース・仮面ライダー!」

 

結城はそう言うと、停車してあった高級スポーツカーに乗り込み。去っていった。

翔琉はその光景を、拳を握り締めて見ているしかできずにいた…。




というわけで、スパーキングビートル初登場回でした。

とりわけ今回のチェーンのドーグチャージャーの持ち主は…。ご察しの通りモデルがいます。言わないでください()


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第6話「負を断ち切る剣となれ」

まさか1年経ってるとは思いませんでしたごめんなさい()

2022年こそはスピード上げていきます…



 チェーンのドーグチャージャーを持つカミシロユウキとの遭遇から翌日。翔琉は駄菓子屋内のガレージで今までの事と、涼葉から貰った情報をもとに整理をしていた。

 

「そんなことまで!?ホント最っ低!女の敵超えてる!!」

 

ガレージ内で涼葉が声を上げる。

 

「まさに、鎖に繋がれたように弱みを握られてるってことでしょ?」

「そういう事だな。アイツの言葉を見るに、自分の悪いところをばら撒かれない彼女を、恐らくほかにもいる女性にも……」

 

翔琉は「立場が危ういからね。せっかくまたここまで上がってこれて、その子とかによって地位をまた蹴落とされたら生活もままならない」という結城の言葉から、被害者は複数人いると推測した。

 

「でも、その春歌って子がとんでもなくソイツの近くにいるってことは分かった事でしょ?その子を餌に釣れば…」

「いや、それがアイツ。ガントルーパーまで雇ってた。呪導に金をつぎ込むほど、あの一件は知られたくないのだろうな…」

「ガン……?」

 

涼葉は聞きなれないガントルーパーという単語に?が浮かぶ。

 

「ガントルーパー。つまりは呪導の戦闘兵さ」

「えっ、なんでその戦闘兵がバックアップしているの?もしかすると神代祐樹って……」

「ドーグチャージャーを持つ者は追加の金さえ払えばチャージャーのエネルギーの補充やら、それでこそガントルーパーのサポートだって受けられるんだ。多分神代祐樹は大金つぎ込んでガントルーパーのサポートを受けさせて弱みを握っている女の人らを監視させてる…だろうね」

「是が非でも自分の手は汚さないで他人にやられてるの?ますますゲスじゃん!こんなのがカリスマ扱いされるってどうかしてるよ!!頭来た!!次はNewTuberの不祥事特集やってやるー!!」

 

そう言うと涼葉は駄菓子屋を出ていった。

その光景を翔琉は苦笑いするしかなかった。

 

 

第6話「負を断ち切る剣となれ」

 

 

『まぁ、デキ婚ってカタチになっちゃったのはアレだけど、仲間のNewTuberもどんどん結婚していってるし、結婚適齢期もギリギリだったんで今回の婚約に至った感じっすね』

「女に手を出しておいて、よくもまぁこんなこと言えるなぁ」

 

休憩に入った正樹はカミシロユウキが生出演していたTVのワイドショーを見ていた。昨晩の話もあったのか、不快感を示して即座にチャンネルを変えた。

翔琉はスマートフォンである動画を見ていた。

 

「顔の良さとあの手のトークでファンとかいろんな女の人に手を出したって感じだろうなぁ…。アレから察すると…」

「っつたく、大体コイツのどこがいいんだかなぁ…」

「まぁ、今の世の中って予想だにしないことが流行ったりする時代だからなぁ…。もしかしたら来るかも。駄菓子ブーム」

「オイ何言ってんだ。駄菓子は毎年ブームぞ!そら、休憩終わり。業務再開!」

 

翔琉と正樹はそんな会話を繰り広げて、駄菓子屋の業務を再開しようとしたその時だ。

翔琉のスマートフォンの着信音が鳴った。相手は春香からだった

 

「もしもし?」

『あ、何でも屋さん。実は話があるんです』

 

 

 テレビ局の地下駐車場。玄関から神代が出てくる。

駐車してある愛車の高級スポーツカーに向かおうとしていたが、我が目を疑った。

高級スポーツカーのボンネットに腰かけている黒いスーツ姿の男がいたのだ。

 

「全く、大事な顧客のクルマに腰かけるって、御宅らどーいう神経してんの?」

「これはこれは、神代様。お変わりなくてうれしいです」

 

神代の言葉の先制攻撃を難なくかわしたスーツ姿の男は屈託のない笑顔でそう言った。

 

「お聞きしましたよ。どうやらサポートがお邪魔だったようで」

「ちげーっつーの。御宅らの傭兵共の口が軽すぎるんだよ。あんな正義の味方の仮面ライダー様になんてことバラしてるんだよ。個人情報とかの秘密は完全黙秘ってお約束じゃないのか?」

「これはこれは。サポート達にはきつく言っておきます」

「んで、用件は?」

「いえ、私はその要件でこちらに」

「あっそ。んじゃこの辺で」

 

神代はそう言うと高級スポーツカーに乗り、地下駐車場を後にした。

駐車場を出るときに、子供を連れた女性を目撃した神代の脳裏には、ある過去の光景が浮かんだ。

 

―「どうしてアンタはダメな子供なの!?」

―「何をやってもダメじゃない!」

―「なんで言う通りにしないの!?」

 

幼少期の神代に母が怒鳴りつける光景。

時たまに彼はこの光景をフラッシュバックするのだ。

 

「本当にコレで、人の愛を知れるのか…?」

 

神代はポケットからチェーンのドーグチャージャーをおもむろに取り出し、呟いた。

その呟きはスポーツカーの中にしか響かなかった。

 

 

 

 その頃、翔琉は春香の高校から近いオープンカフェにいた。

先ほどの春香の電話は、春香が翔琉に会わせたい人物がいるという内容だったのだ。

入ると、奥のテーブル席に私服姿の春香と、黒いパーカーを羽織った30代前半と思われる男性が座っていた。

翔琉は春香と男性の向かいに座った。

 

「ごめん。すごく待たせちゃった?」

「いいえ。私たちもつい数分前にここに来たので」

「で、この人が俺に会わせたい人?」

「ユウキの知人の鈴宮拓海って言います。タックンって名前でNewTuberやっている者です」

 

拓海は神代との関係を事細かに説明した。

どうやら、小学校時代から親友で、最近の天狗のような神代に心底うんざりしているようだった。

翔琉も今回の事件についてを一樹に話した。

 

「そ、そんなことが…。アイツ、とうとう物理的に怪物になり果てて…」

「まぁ、あながちそんな感じです。で、話って?」

「その、こんなこと言うのはアレなんでしょうけど、アイツを救ってやることってできませんか?」

「救う…?」

「それってどういう?」

 

翔琉と春香は拓海の想定外の言葉に首をかしげた。

拓海は春香の問いかけに対して重々しく口を開いた。

 

「春香さんをはじめ、いろんな人がアイツのせいで苦しんでいるのは分かってるんです。だけど、一番苦しんでいるのはアイツなんだと思うんです。アイツ、実は小さいころから母親に虐待されていて、それが原因で恐らく『人の愛』に飢えてるからこそああなったんだと思うんです。この負の鎖をつないでいるのはアイツだろうけど、一番負の鎖に絡まっているのはアイツなんじゃないかなって…。変ですよね。そう考えるって…」

 

拓海から告げられたあのチャラい男とは重苦しく、壮絶な過去。

気のせいか、カフェテラスの雰囲気も少し重いように感じた。

 

「いい事じゃないですか。そういう考えが出来るって」

 

その重い雰囲気を遮るかのように、翔琉は言った。

 

「翔琉さん…」

「俺も思うんですよ。人間ってどんな悪に染まっても、ほんの0.1%の良心があるんじゃないかって。」

「そうですか。ありがとうございます」

 

翔琉は即座に涼葉に電話を掛けた。

 

「もしもし?ちょっと思いついた作戦があるんだけど、いい?」

 

 

それから数時間が経過した廃倉庫。

神代の乗った高級スポーツカーが入っていった。

 

「どしたの?こんな時に連絡って。ようやく諦める決心でもついた?」

 

降りて早々神代は歩きながら軽口を放つ。

神代の眼前には春香の後ろ姿が見える。

 

「まー、俺にも非があるよ?あんな綺麗なコに告白されたら速攻結婚ルートまっしぐらになるし?でも君たちみたいな子猫ちゃんを捨てると何言い出すかよくわからないし、だからこs…」

 

何という事だろうか。春香は振り向きざまに神代の頬に向かって右ストレートを繰り出したのだ。

たまらず神代はぶっ倒れる。

 

「つくづく思ったけど女の敵のレベルはみ出してるし!!どういう思考回路してるの!?」

 

ただでさえ殴られた神代は再び驚いた。

春香の服装のはずなのに、別の女の声がしたからだ。

顔を上げるとそこには、春香の恰好をした涼葉がいたのだ。

 

「なっ…。え!?誰だよアンタ!」

「誰って、全世界の女の味方のジャーナリスト・有働涼葉よ!覚えておきなさい!!」

「その辺にしておきな涼葉…」

 

涼葉にとって女の敵とみなした神代をぶん殴ったことにより意気揚々となった涼葉は堂々と名乗る。

物陰に隠れていた翔琉は涼葉を窘めた。

 

「っ…。どういうことだ!?まさかお前ら、俺をハメたってのかよ!?」

「その通り!目には目、歯には歯、動画には動画のネタよ!!」

 

どうして涼葉が春香の恰好をしているのか。

事の発端は数時間前にまで遡る。

 

 

「作戦って…何するの?春香ちゃんまで連れてきて」

 

電話で呼び出され、廃倉庫で落ち合った涼葉は春香を連れた翔琉に聞いた。

 

「ドッキリだよ。アイツに対する」

「ドッキリ?」

「題して、『春香ちゃんかと思ったら、実は涼葉だったドッキリ』ってとこ。まぁつまり本人かと思ったら全然本人じゃなかったってことかな」

「あー、だから春香ちゃんをがそんな荷物持ってるって事ね…」

 

涼葉は視線を春香に移した。

春香の手にはボストンバッグがあり、その中に春香の衣服が入っていた。

 

「でも、アイツに仕掛けるのなら他のネタとかなかったの?」

「まぁ、あるにはあったけど、コレだよ」

 

翔琉は涼葉にある動画を見せる。それは昼間に翔琉が駄菓子屋で見ていた動画だった。

 

「『大スターかと思ったら、実はそっくりさんだったドッキリ』…?これが一体」

「目には目、歯には歯、動画ネタには動画ネタってことだよ。それに涼葉、『一発ぶん殴りたい~!』って顔してただろ?そういうことだ」

「げっ、バレてた…」

 

数日前の時点ですでに見透かされてはいるが、感情が表に出てしまう涼葉は少し赤面気味になる。

 

「まぁ、とにかく。アイツをおびき寄せて、ぎゃふんと言わせるドッキリだよ。涼葉はとりあえず着替えてきてくれ。そしたら春香ちゃんはこの場所にいるってことを連絡して」

「でも、こんなところにいるの不自然がらない?」

「むしろあそこまで執拗になってるし、何なら春香ちゃんの方から降参宣言を兼ねるからな。不自然がりはしないさ」

「そんなもんかなぁ…?」

 

涼葉は若干不安を覚えながらも、ボストンバッグを持って出て行った。

 

 

「ハメたというわけか…そこまでして倒したいか…!」

「倒す?違うな」

「はぁ?怪物の力持ってる俺をどうやって救うってんだ?仮面ライダーが?」

 

結城はチェーンのドーグチャージャーを持ちながら翔琉を睨みつける。

 

「その自覚あるなら、まだ戻れるかもな。普通のニンゲンに」

「どういうことだよ?」

「さっきお前の友人とやらに依頼されてついでにお前の境遇も知った。『愛に飢えた怪物となったお前を救ってほしい』って。ホントはお前が一番苦しみの鎖に絡まってるんじゃないのか?」

「それが、それが何だってんだよ…!お前に何が分かるってんだよ!!」

 

翔琉の言葉が図星だったのか、結城は少し言葉を詰まらせながらも、翔琉に反論をする。

 

「俺はお前とは境遇が違うから何も分からない。だけど、愛に飢えているからって鎖に繋いで居続けさせることは、『愛』なんかじゃない。それは単なる『呪縛』でしかない。お前がやっていることは、母親がお前にやった事と同じだ!」

「うるせぇ…!うるせぇんだよ!!」

 

結城はドーグチャージャーを胸に突き刺し、チェーンドーグへと変貌する。

 

「みんなそうやって俺に同情やお節介しやがって…。同情するんだったら、俺の苦しみを味わいやがれ!!」

 

チェーンドーグは右腕の鎖を翔琉の方向に伸ばす。

翔琉の危機を察知したのか、トライジングキャリバーが飛来し、それをキャッチした翔琉は鎖を切り裂く。

 

「だったらその苦しみの鎖、俺が断ち切ってやるよ」

[トライズドライバー・スタートアップ!]

[1号!クウガ!ゼロワン!カメントライズ!]

 

翔琉はトライジングキャリバーを地面に突き刺すと、カメンデバイザーを取り出し、ドライバーを起動。

デバイザーにカメンチャージャーをデバイザーにセットした。

 

「変身!!」

[うなれ正義の必殺キック!ライジングジェネレーション!!]

 

翔琉はデバイザーをベルトに装填し、トライズ・ライジングジェネレーションとなった。

トライズとチェーンドーグが向かい合う。廃工場が一瞬の静寂に包まれた。

その静寂を引き裂くかのように、チェーンドーグが鎖を伸ばしながらがトライズに迫る。

トライズも突き刺したトライジングキャリバーを手にし、鎖を斬りながらチェーンドーグを迎え撃つ。

 

「これじゃぁいくら鎖を切っても近づけやしねぇ…。だったらコイツ使ってみるか!」

[トリプルチャージ!マキシマムブースト!]

 

トライズはアマゾン・真・オーズのカメンチャージャーを取り出し、トライジングキャリバーにセットした。

刃先から緑色のエネルギーが放出され、それが長い三つ又の爪となった。

 

「そんなハッタリが通用すると思うか?」

「そう思えるなら食らってみろ!ワイルドデザイアクロー!」

 

チェーンドーグは尚鎖を伸ばしてくるが、トライズは大きく跳躍し、それを避けながら、トライジングキャリバーを横に薙ぎ払った。

その爪は鎖をも粉砕し、チェーンドーグの胸部にダメージを与える。

ダメージを負った隙に、一気に近寄り左上から右下にかけて袈裟に切り裂く。

 

「味な真似しやがって…。だがなぁ!」

 

チェーンドーグは再び腕からチェーンを伸ばそうとするが、その腕からチェーンが伸びることはなかった。

それもそのはず、先ほどトライズがワイルドデザイアクローで腕にあるチェーンの射出装置を破壊していたからだ。

チェーンドーグは再びトライズに向き直ると、トライズはスパーキングビートルに姿を変えていた。

 

「お前、さっきお節介云々って言ったよな?」

「あぁ。それがどうしたってんだ?」

「悪いな。俺は超絶お節介人間な何でも屋を売りに生きているからな。例えお前みたいな悪人だろうが、救ってくれって言われようが言われなかろうが、救わなきゃ気が済まないからな!」

 

トライズは啖呵を切ると、ドライバーからデバイザーを引き抜き、トライジングキャリバーの銃身にあたるスキャナーにデバイザーをスキャンした。

 

[デバイザー・コンファーム!フィニッシュムーブメント!]

「超電!マキシマストレートフラッシュ!」

 

トライジングキャリバーの刃先に赤・青・黄の電気エネルギーが蓄積され、カード型のフィールドが展開。

超高速でフィールドを通り抜け、チェーンドーグを切り裂く。

トライズの必殺剣を食らったチェーンドーグは断末魔の叫びを上げずに爆散。

結城の姿となり、身体からドーグチャージャーが排出され、粉々に砕け散った。

 

 

それから暫く経過し、結城は駆けつけた樹たち警察により現行犯逮捕となった。

春歌も、警察などから詳しい内容の聴取のため、樹と共に警察に向かう事となった。

 

「あの、ありがとうございます。こんな弱い私を助けていただいて…」

 

春歌は翔琉に一例をして、感謝の意を伝えた。

 

「春歌ちゃんだって、十分強いと思うぜ?」

「えっ?」

「一歩踏み出して、誰かに助けを求めたって事は、心が強いって証拠だと思うんだ。今の世の中、言いたいことも言い出せないかもしれない。だけど、自分から一歩踏み出せば、何かが変わる」

「何かが、変わる…」

「あぁ。強い心さえあれば、前に踏み出すことだってできる。それさえ忘れなけりゃ。どうにだってなるからな」

「翔琉さん、本当にありがとうございました!」

 

翔琉からの激励を受けた春香は、樹の乗るパトカーに乗り込み、廃工場を後にした。

翔琉と涼葉も廃工場を後にした。

 

「はぁ~…。私もやってみようかなぁ…。New Tuber」

 

帰路に付く道で、涼葉はいきなりNew Tuberになりたいと言い出した。

 

「涼葉にできるのか?ただでさえ雑誌記者なのに!?」

「いいじゃん!ウチの新聞社副業禁止じゃないし、ちょっとお金に困りかけてるし~!」

「いや、ああいうのは絶対大変だぞ?最初から一攫千金掴む気でいると尚更だって!」

「でも、翔琉の何でも屋にお客さんが舞い込んでくるかもよ?」

「…!」

「あ~!ちょっと考えてたでしょ!」

「考えてねぇ!俺の何でも屋は口コミが…」

 

そんな2人の仲睦まじい光景を見ている影がいた。

地下駐車場で結城と会話をしていたディーラーの男だ。

 

「やられましたか。そうなれば、私が本格的に彼らの前に出た方が良さげでしょうねぇ」

 

ディーラーの男の屈託そうな笑顔が夕陽に照らされた。

その男の手にはシールドのドーグチャージャーが握られていた。



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