衛宮さんの今日のごはん (パーカス)
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冬の日の鍋

初めまして
私の身勝手な妄想で生まれたありえない物語…
出来るだけ努力はしますので、よろしくお願いいたします


★商店街

 

 

「うわ、降ってきたな……」

 

そう言い赤髪の少年は商店街を歩く。少年は学ランの姿で商店街に赴いていた。

 

「こう寒いと夕飯は温かいのがいいよなぁ……」

 

彼は雪が降る中、今日の夕飯のメニューを考えその食材を買いに来ていた。

 

「えーと、白菜に長ネギ……きのこも入れたいしな…あとは魚」

 

両手には先程買った食材を持ち、鞄を肩に掛け、白い息を漏らしながら、街を歩く。

 

「よし、大体は買えたな。あとは〜」

 

彼の名は、衛宮士郎

 

 

 

これは彼のなんでもない日常の一幕である

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

俺は雪が降る中、夕飯の食材を買いに街を歩いている。ちなみに学校帰りで、部活が少し長引いてしまい今日は少し遅めの下校になってしまったので、少し早足で目的の店に向かっている。何で俺がこんなにも早足で店に向かっているのかは理由がある。

 

夕飯を待たせている人がいるからだ

 

俺が少し遅くなってしまったこともあり、もしかしたら彼女はもう家でお腹を空かして待っているかもしれない…

俺はそう思いながら、次の店に向かっていた時、

 

「……士郎さん」

 

後ろから声を掛けられた。

俺はその声の正体を知っていた。

俺は笑みを浮かべながら、振り返った。

 

「まだ帰ってなかったのか?───蘭」

 

そこには黒い髪に映える、一本入った赤メッシュの少女────美竹蘭がギターを肩に担ぎながら立っていた。

 

「……うん、ちょっと皆と話しがあって」

 

そう言うと蘭の後ろから4人の少女が現れた。

 

「やっほー」

「士郎さん、こんにちは!」

 

白髪の少女───青葉モカと茶髪の少女───羽沢つぐみが挨拶を交わし、その後ろにピンク髪の少女───上原ひまりと赤髪の少女───宇田川巴が立っていた。

彼女達は蘭の昔からの友達でいつもこのメンバーと一緒にいることが多いらしい…

 

「こんにちは、つぐみ達もいたんだな」

 

「はい、さっきまで私の店にいました」

 

「へぇー、勉強か?」

 

「いえ、バンド関係です」

 

なるほど…そういえば蘭達は5人でAfterglowていうバンドグループだったな……

あとひまりと蘭…勉強って言った途端視線を逸らすな

 

「シローさんは何してたのー?」

 

「ん?俺は夕飯を買いに来てたんだよ」

 

そう言い俺は手に持ってる袋を持ち上げ彼女達に見せる。

 

「もしかして、今日は鍋ですか?」

 

「流石つぐみだな。今日は寄せ鍋にしようかと思ってるんだ」

 

今日は寒いし、とつぐみ達に言う。

 

「寄せ鍋かー、モカはお腹が空いてきましたー」

 

「モカはいつもお腹空いてるでしょ?」

 

「それは心外だよー」

 

モカが涎を垂らし、お腹を摩る。

そしたら本当にモカのお腹からグーっと可愛らしい音が鳴った。

 

「本当にお腹空いてるんだね……」

 

「さっきあんなにパン食ってたけどな……」

 

「パンは別腹だよー」

 

モカはニコニコした顔で応える。毎回思うけど、彼女の胃袋ってどうなってるのだろう?

 

「うぅぅ、太らないモカが羨ましいぃ!」

 

「ひまりは……まぁ……うん」

 

「何!?巴ちゃん何が言いたいの!?」

 

「……また増えたんだね」

 

「言わないでぇぇぇ!!」

 

蘭のトドメの一言でひまりはその場にしゃがみ込み、両手で顔を抑えながら悶絶している。

 

……聞かなかったことにしよう

 

「それで君らはこれからどうするの?」

 

「……そろそろ帰ろうって話をしてました」

 

「そうなのか?俺もあと肉買ったら帰るし、一緒に帰るか?」

 

「……はい」

 

俺はそのまま蘭と一緒にスーパーに寄って帰ろうとモカ達に伝えようとした時、

 

「ねぇーシローさん」

 

「どうした?」

 

「買い物に付き添うから今日の夕飯食べさせてー」

 

「はぁ!?」

 

モカの提案にひまりは驚きながら立ち上がった。つぐみ達も結構驚いているみたいだ。

 

「……ひまり、うるさい」

 

「ご、ごめん……で、でも!」

 

「まぁ確かにひまりの言いたい事はわかるけど」

 

「シローさんいい?」

 

「俺は別にいいけど、それを決めるのは俺じゃないしな…」

そう言い俺は蘭を見る。

 

実は俺は蘭の家に3ヶ月前からお邪魔させてもらっている。

まぁ理由は蘭の親御さんと大分前から縁があり、その御縁から蘭の家にお邪魔することが多々あった。

そして今回、蘭の親御さんが長い間家を空け、蘭を1人にしてしまうのでしばらくの間、俺に家事などを任せたいという親御のお願いで、俺はそれに了承し蘭の家に居座っている。

 

一応家事は俺がやってるが、家の主人は今は蘭になっているので、決定権は蘭にある。

 

「どうする?蘭」

「……私はどっちでもいい」

 

「と!いう事はぁ!」

 

「いいよ」

 

「「やったぁー!」」

 

「ちょっ!」

 

モカとひまりが蘭に抱きつき喜んでいた。

 

「えっと量は大丈夫なんですか?」

 

「ん?鍋だから量の心配はしなくていいぞ」

 

「そ、そうなんですか……じ、じゃあ私もいいですか?」

 

「いいけど…」

 

「わ、私もいいか?」

 

「おう、大丈夫だぞ?」

 

つぐみと巴も一緒に食べに来るみたいだ。少しだけ量を増やしとこう……

 

「じゃあ皆でスーパーに行くか」

 

「「「おー!」」」

 

俺達はスーパーで肉を買った後、モカ達と一旦別れ、蘭と一緒に家に帰宅した。

 

 

★美竹家

 

 

家に入り、食材と共にキッチンへ行き、手を洗い鍋を取り出す。

 

「さて、始めますか」

 

まず初めに水を入れた鍋に昆布を漬ける。

これは30分くらい漬けておく。

魚は薄く塩をふって15~20分放置。

野菜やらきのこやらは適当な大きさに切る。

ネギは斜め切り、白菜は芯の方を斜め切り葉の方をざく切りにし、えのきは石づき落としてほぐす。

 

15分が経ち、魚から水分が出てきたら、お湯を流しかけてすぐ氷水に入れ、水気を取ったらOK。

 

「さて、下準備は出来たな」

 

そこで家のインターホンが鳴り、蘭が玄関の方へ向かって行った。蘭が帰ってくるとその後ろに私服姿のモカ達が現れた。

 

「「「「お邪魔しま(ー)す」」」」

 

「いらっしゃい」

 

「シローさんできたー?」

 

「あと少しで完成だからコタツで温もって待っててくれ」

 

「はーい」

 

モカ達は荷物を隅に置き、コタツの中に入った。

 

「さて、と 」

 

沸騰したら昆布は取り除いて醤油、みりん、生姜、酒、塩を入れる。

具はすぐ火が通るもの以外を先に入れ、春菊とか長ネギ、アサリなんかは仕上げに入れる。

 

俺は小皿に汁を入れ、味見をする。

 

「よし」

 

俺は鍋を持ち、蘭達の所へいく。

 

「出来たぞー」

 

真ん中にコンロと鍋を置き、蓋を開ける。

 

「お待ちどーさま」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

皿に盛り付け、順に渡していく。

 

「では」

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

全員が同時に食べ、もぐもぐ、と言う音だけが聞こえる。

 

「は〜あったかい」

 

「うん、出汁が美味しい」

 

「はぁ〜モカちゃん幸せー」

 

「おかわりちょーだい!」

 

「……おいし」

 

それぞれに感想を述べながら、徐々に鍋の中の具が無くっなっていった。

 

「はぁ〜美味しかったぁ〜」

 

「そうだね〜」

 

蘭達が幸せそうな顔をしている全員の顔を見て、少し笑みを浮かべながら

 

「では」

 

俺は立ち上がり、キッチンの方へ向かう。

 

「やや腹に余裕を残した所で……本日の〆です」

 

ご飯を水で洗ってぬめりを取り水気をしっかり取っておく。

鍋に残った具は一旦取り出してアクを取り…ご飯を入れる。

弱火~中火であまりかき混ぜない。

溶き卵で閉じて三つ葉を入れたら

 

「雑炊……完成」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

雑炊の前に蘭達は目を輝かせていた。

 

「やっぱり鍋の時は雑炊だな」

 

「玉子ふわふわ〜」

 

美味しそうに蘭達は食べ、そして雑炊を完食し全員でご馳走様ー、と言った後、モカ達は笑いあっていた。

 

「はぁ〜もう悔いはなーい」

 

「ハハハ、確かに美味しかったな」

 

「店で出して見ようかな〜?」

 

「え?つぐみマジで言ってる?」

 

そんな彼女達を他所に蘭はお腹いっぱいなのかふぅ…と溜息をついていた。

 

「どうだ?」

 

「え?」

 

俺は蘭に鍋は気に入ったか?と、聞いてみた。

すると蘭は

 

「……とても、美味しかったです」

 

頬を少し赤らめさせながら、応えた。

 

「そうか」

 

俺はその一言で満足し、蘭の頭を撫でた。

 

「また鍋作ってやるから、またこのメンバーで食べような」

 

「……はい」

 

彼女の微笑みに俺もつられ、笑みをこぼす。

その後、頭を撫でていたのがモカ達にバレ、私達も!と言い出し4人の頭を撫でてあげた。

 

 

外はまだ雪が降り続いている。

 

 

明日は積もってそうだな……

 

 

俺はそう思いながら、鍋を洗いにキッチンへと向かった。




キャラクターの喋りの時
「おはよう」

士郎「おはよう」

どちらがいいでしょうか?
ぜひ教えてください


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バイト

毎週日曜日に投稿できるように頑張ります。



戦闘系のジャンルも出そうかな…(独り言)


★桜丘男子学園

 

 

放課後

 

「おーい!衛宮ー!」

 

廊下を歩いていると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえ振り返る。

 

「どうした?」

 

「もう部活終わったのか?」

 

「おう、そっちも終わったのか?」

 

「もちろん!」

 

俺にそう話し掛けてくる男は、小島大輝…身長は俺と変わらないくらいで部活はサッカー部に入部している。俺と学校でよく一緒に昼を食べたりする仲だ。

 

まぁ、根は良い奴なんだけどなぁ……

 

「で、何で呼んだんだ?」

 

「ふふふっ、聞いて驚くな!それはな────!」

 

大輝はニヤニヤしながら、教えてくれた。

 

「今から商店街に行ってナンパしようと思ってな」

 

やっぱりか……

 

「ハァ……またか」

 

「何言ってんだ!ナンパは男の夢だろ!?」

 

「いや、俺に同意を求めても……」

 

小島大輝……実は結構変態な奴なのだ

毎回商店街に出向いては、ナンパばっかりしまくる。

そして毎回失敗に終わる。

なのにコイツはまだ諦めず、ナンパを続けている。

 

「また失敗に終わるぞ?」

 

「フッ……今回は1人で行くんじゃないぜ…」

 

「先に言っとくけど、俺は行かないぞ?」

 

「えー」

 

「バイトだし」

 

そう言うと、大輝は少し残念そうな顔になった。

 

いや、そんな顔されてもナンパの為にバイト休まないからな?

 

「まぁーバイトなら仕方ねぇか」

 

「悪いな」

 

「別にいいさ、他の奴らと行くから」

 

「そういえば今回1人じゃないって言ってたな」

 

「あぁ!サッカー部の奴らと一緒に行くんだ!」

 

「……そうか、まぁ頑張れよ」

 

「おう!じゃあな!衛宮!」

 

そう言って大輝は走り去って行った。1人取り残された俺は、一応ナンパが成功することを少し祈りながら帰る支度し、学校を出てバイト先に向かった。

 

 

★羽沢珈琲店

 

 

ここが俺のバイト先───羽沢珈琲店だ。

店名で分かると思うが、ここはつぐみの店でバイト先どうするか悩んでいた所、つぐみに自分の所で働きますか?という嬉しい提案をしてくれた。

その結果、俺は羽沢珈琲店でバイトさせて頂くことになり、週3でここで働かせてもらっている。

 

「あ!士郎さんいらっしゃい!」

 

「こんにちは、つぐみ。すぐに着替えてくる」

 

「はーい」

 

俺はつぐみに軽く挨拶し、更衣室で正装に着替え厨房に行く。

 

「お疲れ様です」

 

「おぉ、衛宮君かい」

 

俺はつぐみの父さんに挨拶してから、皿洗いを始めた。

 

「いやー衛宮君が来てくれて私は嬉しいよ」

 

「ありがとうございます」

 

「料理も絶品で、掃除も完璧!こんな人材今探しても中々見つからんよ」

 

「そんな事ないと思いますけど……」

 

苦笑いで答え、皿洗いを続ける。つぐみはホールで客の注文を聞いており、つぐみの父さんは料理を作り、俺は基本店内の清掃と皿洗い、たまに料理を作る事もある。

 

「そういえば衛宮君」

 

「はい?何ですか?」

 

「つぐみとは上手くいってるかい?」

 

「え?」

 

この人はいきなり何を言っているんだ?

 

「えっと、仲良くはしてもらってますね」

 

「……そうかい」

 

「……」

 

「……それでいつつぐみと付き合うのかね?」

 

「へ?」

 

本当にこの人は何言ってんだ!?

そう思っていた時、

 

「ちょっとお父さん!!」

 

つぐみが厨房に入ってきた。

 

「つぐみ!」

 

「何士郎さんに変な事言ってんの!!」

 

「だがつぐみ……」

 

「これ以上変な事言うんだったらもうお父さんの事無視するからね!!」

 

「!そ、それだけは!!」

 

目の前で家族喧嘩(?)が行われている。俺は皿洗いが終わったからそろそろホールの掃除を始めたいんだけど、入口でやってる為出ることが出来ず、家族喧嘩(?)を見守る。

 

「全く……」

 

つぐみは溜息混じりで、土下座している自分の父を見下ろしている。

 

これが上下関係というものか……

 

俺は変な事を考えていると

 

「そういえば士郎さん」

 

「ん?何?」

 

「ちょっと来てください」

 

俺はつぐみの後をついて行く。

俺はそこで見慣れた客がいることに気付いた。

 

「蘭達、いたのか」

 

「おーシローさん」

 

「やっほ〜!」

 

モカとひまりが俺に笑顔で挨拶を交わす。

そんな中、蘭だけ頭から煙を出しながら倒れていた。

 

「なぁ、蘭どうしたんだ?」

 

「今、ひまりと蘭の勉強会なんだ」

 

「あぁー」

 

俺は巴からそれだけ聞くと納得した。つまり、テストが近くて焦っているって所かな?

 

「で、俺が呼ばれた理由は?」

 

俺はつぐみに問いかけた。

 

「えーと、蘭ちゃんが元気になるような事できないかなーって」

 

「俺でも無理な気がするけど……」

 

「じゃあ何か元気が出そうなご飯とか作れませんか?」

 

「ん〜」

 

元気が出そうな料理か……

 

「元気が出るか分からないけど、まぁ作ってくるよ」

 

「おぉーじゃーモカのも〜」

 

「じゃあ私にも!」

 

「私も食べてみたいな」

 

「わ、私も食べたい!」

 

「わかった、でも許可を貰わないと」

 

「大丈夫!私がいいって言ってるから!」

 

「は、はぁ」

 

この店の店長はつぐみなのかもしれないな……

 

俺は再び厨房に戻り、つぐみの父さんに材料を少し分けて貰った。

貰った材料は生鮭に玉ねぎ、しめじ、人参、パセリ、か……

 

「よし、じゃあアレを作るか」

 

まず初めに生鮭に酒を少しと両面に塩を少しふって、5~10分放置

切り身から水分が出てきたら、よく拭き取る

次に玉ねぎ、人参は薄めにスライス、しめじはほぐしておく

鮭に塩コショウで味付けして、ここでホイル

玉ねぎ、人参をしいて細かく砕いた固形コンソメをふりかけ、鮭、しめじをのせたら最後に5~10gのバターをのせる

ホイルは両端を包んでフライパンに並べ、蓋をして弱火で15~20分蒸し焼きに

 

「あとは汁物も用意するか……」

 

「ほう、美味しそうな匂いがするじゃないか」

 

振り返ると、つぐみの父さんがいた。

 

「何を作るんだい?」

 

「材料に生鮭があったので、ホイル焼きを作っています」

 

「ふむ、次は何を作るんだい?」

 

「えっと汁物を作ろうかな、と」

 

「なら汁物は私が作ろう」

 

「え?いいですか?」

 

「構わんよ」

 

つぐみの父さんは笑いながら、汁物の準備を始めた。

 

 

ホールの方では─────

 

「美味しそうな匂いがする!」

 

「あぁ〜お腹空いてきた〜」

 

「モカはいつもだろ?」

 

「……美味しそうな匂い」

 

「あ、蘭。起きた?」

 

「つぐみのお父さんが作ってるの?」

 

「違うよ。士郎さんが今作ってるの」

 

「士郎さんが?」

 

「そう!勉強で頑張ってる私達の為に!」

 

「ひまり、気持ちは分かるけどちゃんと進んでるか?」

 

「いや〜ハハハ……」

 

「ひまりらしい〜」

 

 

蘭達の笑い声が厨房の方まで聞こえてきた。

 

「楽しそうだな」

 

さて、こっちも仕上げますか

 

ホイルを皿に移して、あとは最後にパセリを加えて…

 

「出来たかい?衛宮君」

 

「はい!出来ました」

 

「よし、なら持っていこう」

 

俺は皿をつぐみの父さんと手分けして、運び出す。

 

「できたぞー」

 

蘭達は一斉にこちらに振り向く。

 

「えーと鮭のホイル焼きです、どーぞ」

 

俺は蘭達の前に置いていく。

 

「美味しそう!」

 

「ヨダレが止まらいね〜」

 

「ホント美味そう」

 

「流石士郎さん!」

 

「……美味しそう」

 

5人それぞれに感想言ってから、手を合わせる。

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

蘭達は鮭を先に食べる。

そして目を光らせた。

 

「美味しい!!」

 

「うん!これ本当に美味しい!」

 

「頬っぺた落ちちゃう〜」

 

そこで俺は小皿を差し出す。

 

「士郎さん、それは?」

 

「これはわさびマヨネーズ、少し醤油をたらしても美味いんだがバター醤油は定番だし、今回はこれを作ってみたんだ」

 

巴はわさびマヨネーズを鮭につけ、食べてみた。

 

「めっちゃ美味いんだけど!?」

 

「そりゃよかった」

 

巴のオーバーリアクションに俺は笑いながら、応えた。

チラッと蘭の方を見ると、美味しそうに食べていた。

 

「蘭」

 

「……何ですか?」

 

俺に唐突に呼ばれ、蘭は箸を咥えながらこちらを向く。

 

「分からない所があったら言ってくれ。俺も手伝うからさ」

 

「!……はい」

 

蘭は少し笑顔になり、ホイル焼きを食べ進める。

結果的に、蘭達は元気になり勉強に結構集中できたらしい

 

力になれて良かった……

 

俺は彼女達の幸せそうな笑顔を見て、そう思った。

 

 

 

 

 

 

ちなみに大輝は、ナンパに失敗したらしい




次回は、Roseliaのメンバーが登場します!


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CiRCLE

今回は少し長くなりました。
意図せず長くなったので、自分でも少しビックリしてます。笑


無駄話が過ぎましたね、それではどうぞ!


★CiRCLE

 

 

「どうして……」

 

俺は受付に立ちながら、1人でボヤいていた。

 

「どうしてこうなったんだ……」

 

 

 

 

───昨日…

 

 

「おーい!衛宮ー!」

 

「お?どうした?」

 

部活が終わり、今から帰ろうとしていた時、大輝ともう1人の友達の中井達也に呼び止められた。

 

「さぁ、行こうぜ!」

 

「は?」

 

大輝は元々国語が苦手とは知ってたけど、ここまで酷いとは……

まるで内容が頭に入ってこない

 

「ごめん、どうゆう事だ?」

 

「えー、今ので分かろうぜ 」

 

「無茶言うな、あんな説明で分かる訳ないだろ!」

 

「いやーこれを手に入れてな!」

 

そう言うと、1枚の紙を手渡してきた。

そこには─────

 

CiRCLE

受付、機材点検できる人募集!

履歴書不要!証明書だけ!

面接だけ!

 

と、書かれていた。

 

「へー、こんな所があったんだ」

 

「何!?お前知らなかったのか!?」

 

「お、おう。今初めて知ったよ…」

 

「かぁ〜遅れてるね〜!」

 

「悪かったな!遅れてて!」

 

大輝が手で目元らへんを押さえながら、ヤレヤレと頭を振っていた。

何かムカつく…

 

でもこのバイト先結構いいほうだと思う。

給料もそこそこ良いし、機材点検や受付はやっていく内に覚えられるから、とても働きがいのある場所だと思う。

でも何する場所かわかんないな…

 

「なぁ、ここはどんな所なんだ?」

 

「俺が説明しよう」

 

先程から黙っていた達也が、眼鏡をクイッと上げ説明を始めた。

達也は容姿通りに頭は良い方だ。

 

だが実はコイツは─────

 

「ここはあの有名なバンドグループ【Roselia】が、いつも練習に来ていると言われる店なんだ!他にも色々と─────」

 

そう、達也はバンドやアイドル系が大好きで、俗に言うアイドル系オタクという部類の人間だ。

だから、毎度毎度俺に色々アイドル系の物を提供して俺にも達也と同じ道を歩ませようとしてくる。

 

悪いヤツじゃないんだけどな…

 

「────という店なんだ、わかったか?衛宮」

 

「お、おう。説明ありがとう」

 

「よし、じゃあ早速CiRCLEに向かうぞ!」

 

「あ、ごめん。俺普通にいつものバイトがあるからパス」

 

「「ダニィ!?」」

 

息ピッタリで反応してる…

スゲェ…

 

「お、おい衛宮、お、俺達…友達…だよな?」

 

「お、おう」

 

「じ、じゃあ、一緒に…行くよ…な?」

 

「…ハァ……わかったよ、明日土曜日だし1人で受けに行くよ」

 

「おぉー!心の友よぉぉぉ!!」

 

「フッ、俺は信じてたぜ!衛宮なら来てくれるってな!」

 

「そ、そうか。まぁお前達は面接頑張れよ!」

 

「当たり前だ!必ず受かってみせる!」

 

そう言い、俺は2人が受かる事を祈りながら彼らの行く末を見守った……

 

 

───土曜日ッス

 

 

「よし、行くか!」

 

俺は自分の証明書を鞄の中に入れ、CiRCLEに向かう準備を終わらせる。

 

「…士郎さん?出掛けるんですか?」

 

玄関で靴を履いていた時、後ろから声をかけられ振り返る。

そこには、蘭が眠そうな目を擦りながら立っていた。

 

「あぁ、バイトの面接に向かうんだ」

 

「…つぐみの店で働いているのに、増やすんですか?」

 

「まぁ、学校の友達に行こうって言われたからな…断る理由もなかったし、1度受けてみようと思ったんだ」

 

「…ちなみに何処に行くんですか?」

 

「んー?確かCiRCLEだったかな?」

 

「──え?」

 

靴を履き終え、立ち上がり蘭を見る。

蘭は何故か驚いたような顔をしていた。

 

「どうかしたか?」

 

「な、なんでもないです…」

 

「?じゃあ、行ってきます」

 

「…行ってらっしゃい」

 

俺は愛用のチャリに乗り、目的地までそこそこスピードを出しながら向かった。

 

 

 

 

「……」

 

蘭は士郎を見送ったあと、すぐにLINEでいつものメンバーに報告した。

 

《速報。士郎さんがCiRCLEにバイトの面接を受けに行った。》

 

LINEでそう送ると、一瞬で既読が4になり返信が返ってきた。

 

《嘘!?それマジ!?》

《おーマジですか〜》

《じゃあもし士郎さんが受かったら、受付で出会う事になるね》

《まぁ士郎さんなら確実に受かりそうだけどな》

《それわかるー》

《ん〜もしかしたら士郎さん、シフト減らすかな?》

《それはありえる》

 

といったように盛り上がっていた。

それよりもっと重要な問題があった。

 

《どうする?多分士郎さんの事だから、他のメンバーの女の子とも仲良くなるかもしれない》

《シローさん、女たらしだからねー》

《モカ、それ絶対士郎さんに言わないでね》

《おっけー》

《確か今日あこが練習しに行くって言ってたから多分いるとおもうぞ?》

《まぁいるよねー》

 

そう、士郎は優しすぎる故に女の子に懐かれやすい

そして運悪く今回、CiRClEにはあのグループがいる…

 

蘭は悩み抜いた末────

 

《今回は早くCiRCLEに集合しよう》

《了解!》

《おっけー》

《わかった》

《了解》

 

蘭は急いで自分の部屋に戻り、着替えに行った。

 

 

 

 

自転車を漕ぎ続け、CiRCLEの前に到着した。

 

「ここか…」

 

自転車を駐輪場に置き、店内へと足を踏み出す。

 

「いらっしゃい!」

 

店内に入ると、受付に女性が立っていた。

 

「えっと、バイトの面接をしに来たんですけど」

 

「おぉーじゃあ今から面接するね!」

 

「え!?ここでですか!?」

 

俺がいる場所バイト普通にロビー…

明らかに客が目立ち、何より俺が恥ずかしい

 

「じゃあ証明書を見せてくれる?」

 

「は、はい」

 

言われるままに証明書を渡し、受付の女性からくる質問等に答えられるよう準備する。

 

「あれ?君、昨日来た子達と同じ学校なんだね」

 

「はい、2人に言われてここを知りましたので」

 

「なるほど、じゃあ君も彼らと同じ理由かな?」

 

「同じとは?」

 

アイツら何言ったんだろう?と気になり、質問してみると、とんでもない返答が帰ってきた。

 

「え?ここなら可愛い女の子が来るからって」

 

「………」

 

あまりの衝撃に口開けたまま固まってしまった。

 

アイツら…馬鹿だろ…

 

「あれ?君は違うの?」

 

「当たり前ですよ!俺はそんな目的の為に面接受けに来た訳では無いですよ!」

 

「なるほど〜」

 

ハァ…これは落ちたかな…

第一印象…いや風評被害によりバイト落とされるって何か悲しいな。

アイツら絶対許さねぇ…

 

俺は学校で大輝と達也を懲らしめることを決め、証明書を返して貰ったら帰ろうか悩んでいた時────

 

pururu……と電話が鳴った。

 

「はい……あ、わかりました。はい。はーい」

 

女性は電話を切り、俺に証明書を返してきた。

返って来たので、帰ろうかと立ち上がり

 

「じゃあ、俺はこれで────」

 

「じゃあ衛宮くん、受付よろしくね」

 

「…え?」

 

帰りますと言う前に女性に言葉を遮られた。

更には受付を任された。

 

 

「え?ちょっ────」

 

「これが今日来る人達ね。で、この人が来た時は部屋の番号が書かれた鍵を渡せばおkね。あとはドリンクとかはこの説明書にあるから読んでおいて」

 

「え?いや、あの」

 

「あ、そうそう忘れてた。私は月島まりな、まりなって呼んでね!」

 

「いや、だから」

 

「じゃあよろしくね!」

 

そう言い、まりなさんは奥に入っていった。おそらくさっきの電話でのやり取りの事だと思うけど…

 

「……」

 

 

────そして今に至る

 

「ハァ…」

 

まりなさんが有無を言わさずどっかに行ってしまったので、仕方なく受付にいるが

 

「……」

 

やることが無さすぎて、少し暇を持て余している。

すると店の扉が開いた

 

「いらっしゃい」

 

店内に入ってきのは5人組の女の子達だった。

 

「貴方は?」

 

銀髪のロングの子が俺を見ると、誰?といった顔をしていた。

 

「えっと、ここでバイトすること?になった衛宮士郎だ。よろしく」

 

「何で疑問形か分からないけど、よろしくお願いするわ」

 

俺はまりなさんから貰った紙を確認する。

 

「えっと、予約してた湊友希那さん、今井リサさん、氷川紗夜さん、宇田川あこさん、白金燐子さんで間違いないですか?」

 

「えぇ」

 

「えっと、7号室の鍵です」

 

「ありがとう」

 

そう言い、彼女達は部屋の方へと向かって行った。

それと同時に少し思った事があった。

 

「どっかで見た事あるような…」

 

いくら思い出そうとしても、思い出せないのでその内思い出すだろうと思い、掃除することにした。と言っても、コップを拭くことしかないけどな…

 

 

 

 

しばらくして、コップを全てを拭き終わり次の仕事をしようと席を立った時、湊さんが部屋から出てきた。

 

「どうしたんだ?」

 

「えぇ、少しお腹が空いてしまって…」

 

「なるほど」

 

すると湊さんのお腹から可愛らしい音が鳴った。

 

「……」

 

湊さんは顔を赤くして、顔を逸らす。俺は少し笑みを浮かべながら、彼女の髪を撫でる。

 

「え?」

 

「少し待っててくれ」

 

俺は奥に入り、厨房に立つ。

 

「さて、丁度昼頃だし、アレを作るか」

 

まず和辛子とバターを混ぜ合わせ、パンを塗るようの辛子バターを作っておく。

マヨネーズ、粒マスタード、蜂蜜、粗挽き胡椒を混ぜ、これはサンドイッチ用のソースにする。

お湯に塩をひとつまみ

葉物野菜は火の通りにくい茎の方から入れ、1〜2分茹でる。

茹でたら氷水にさらし、しっかり水気を取っておく。

玉子は塩で下味を付け、スクランブルエッグに

ベーコンは少し多めの油をひき、弱火〜中火でこんがりと

焼き終わったら余分な油はキッチンペーパーなどで取る。

そして食パンの片面に辛子バターを塗り、中身をのせていく。

出来たらすぐに切らず、パンが乾燥しないようラップなどをかぶせ、平らなもので軽く5〜10分ほど押さえて具材同士を馴染ませる。

最後に包丁で好みの大きさに切って…

 

「サンドイッチの完成っと」

 

結構作ってしまったけど、まぁ彼女のメンバー達にもあげればいいかな…

 

「さて、持っていくか」

 

サンドイッチが乗っている皿をロビーにいる湊さんの所まで向かう。

 

するとロビーが少し騒がしいことに気付いた。

理由は────

 

「「…」」

 

「ちょっと蘭?湊さんと何で睨み合ってるんだよ!?」

 

「…別に睨んでない」

 

「私も睨んではいないわ」

 

「いや、睨んでたよ?」

 

「に、睨んでましたよ?」

 

「蘭も睨んでたよ〜」

 

「結構マジの睨みだったぞ」

 

「あこもそう思った!」

 

「「だから睨んでないって!」」

 

湊さんのメンバーの子達と蘭達がいた。

てか、蘭達もここの常連なのか?

そういえば蘭の部屋を掃除しに行った時、ギターあったな…

蘭達もバンドやってるのかな?少し聴いてみたいし聞いてよう。

 

「パンの匂い〜!」

 

「お、よくわかったなモカ」

 

「あ!やっぱりいた!」

 

「やっぱり?」

 

「蘭から聞いたんだよ」

 

「なるほど」

 

「シローさん、そのパンはー!」

 

「ん?サンドイッチだけど」

 

俺は湊さんの前に置く。

 

「はい、お待ちどうさま」

 

「食べてもいいのかしら?」

 

「そのために作ったんだよ、作りすぎたしみんなで食べてくれ」

 

「…じゃあ頂くわ」

 

サンドイッチを全員に2個ずつ渡し、皆で手を合わせ───

 

『いただきます』

 

全員が同時にサンドイッチを齧り、モグモグと食べる。

 

「美味しい!」

 

「確かに美味しいです…」

 

「とても栄養バランスが整っていて美味しいです」

 

「これは山菜が入ってるの?」

 

「あぁ、丁度冷蔵庫に入ってたから使ったんだ 」

 

「……」

 

湊さんは黙々とサンドイッチを食べていた。

 

「お口にあいましたか?」

 

「…えぇ」

 

「それは良かった」

 

俺は美味しそうに食べている彼女達を見て、笑みを浮かべ、蘭達の所にいく。

 

「まさか蘭達が来るとは思わなかったよ」

 

「そういえば言ってませんでしたね」

 

「何を?」

 

「あたし達【Afterglow】ってバンドグループなんだ」

 

「へー、そうだったんだ」

 

「…黙っててすみません」

 

「別に気にしてないさ」

 

そう言って蘭の頭を撫でる。

 

「バンドっていう道を選んだのは、蘭だ。なら俺は全力でそれを応援するまでだ。頑張れよ!」

 

「…はい」

 

何故か耳を赤くして顔を逸らす蘭。

改めて言われて恥ずかしかったのか?

 

「シローさん、その応援は蘭だけー?」

 

「そんなことないさ、みんな応援してるよ」

 

「任せて!私がリーダーらしく皆を導くから!」

 

「え〜?ひーちゃんがリーダーなの?」

 

「ちょ!モカ!?」

 

ハハハっと笑い、湊さんの所まで戻る。

 

「少しは元気出たかな?」

 

「え?どういう…」

 

「湊さん、元気がなさそうだったからね。余計なお世話をしちゃったね、ごめん」

 

「いえ、そんなことないわ」

 

彼女は笑みを浮かべ、後ろをみる。

 

「私は少し焦っていたのかもしれないわ…本当にこのままでいいのか?って、そして紗夜達に当たって自分でもどうすればいいか分からなくなって…」

 

彼女は頭を下げ、氷川さん達に謝った。

 

「ごめんなさい」

 

「…頭をあげてください、湊さん」

 

「でも…」

 

「私はそんなの気にしてないよ」

 

「あこも気にしてないよ!」

 

「わ、私もです!」

 

「リサ、あこ、燐子…」

 

「湊さん」

 

氷川さんは湊さんに笑顔で────

 

「私は…いえ、私達は湊さんと一緒に上を目指したい。だから、一緒に悩み抜きましょう」

 

「紗夜…えぇ、そうね。ごめんなさい、私は1人で悩み込もうとしていたわ。でも…それじゃあ意味がない」

 

「そうそう、皆一緒でそれを突破していこーう!」

 

「おー!」

 

湊さん達が仲直りをしている所を遠目で見ていたら、まりなさんが帰ってきた。

 

「やっぱり君に任せてよかったよ」

 

「そうですかね?」

 

「うん!衛宮くん、これからよろしくね!」

 

「はい、お願いします」

 

俺はCiRCLEの面接に合格し、新しいバイトを始める事になった。

 

 

 

 

 

 

これが後に、色々な個性的なメンバーと仲良くなる始まりの日とは、まだこの時は知らなかった…




余談(?)です
戦闘系の物を書こうと思います!
(だがいつから書くか決まってないぜo(`・ω´・+o) ドヤァ…!)


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星の筍

文章力がほ゛し゛い゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!


誰かください(´;ω;`)


てな訳(?)で第4話です!
どうぞ!


「たけのこ?」

 

「…はい」

 

今日は昼過ぎに学校が終わり、今日は部活とバイトがないので遠回りして帰っていた。

しばらく歩いていると金髪のツインテールの女の子───市ヶ谷有咲に出会った。

 

そして彼女の手には紙袋が握られていた。その中身には───たけのこ

 

何故

 

 

「えっと…」

 

「…いりませんか?」

 

有咲からたけのこが入った紙袋を差し出されるが、少し状況を理解できず、困惑する。

 

すると有咲の後ろから

 

「有咲ー!どうだったー?」

 

猫耳のような髪をした女の子────戸山香澄が手を振りながら走ってくる。その後ろから3人の女の子も後から走ってきた。

 

「どうも何も士郎さんを困らせてるよ!香澄の案のせいで!!」

 

「えー!?」

 

どういう事か分からず、首を傾げていると2人の女の子が近付いてきた。

 

「ごめんなさい、困らせちゃいましたね」

 

「香澄ちゃんの案で士郎さんなら何か美味しいもの作ってくれるって」

 

「なるほど」

 

ポニーテールの女の子────山吹沙綾と、ショートカットの女の子────牛込りみが説明をしてくれてやっと理解出来た。

 

要するに香澄が俺にたけのこで何か料理を作って振舞って欲しい、ということだろう…

まぁ別に断る理由もないし

 

「別にいいぞ」

 

「本当ですか!?」

 

「おう、ていうかそのたけのこどうしたの?」

 

「えっと実は────」

 

沙綾から聞いた話だと、学校の帰りに困っていたご老人を助けて、そのお礼としてたけのこをくれたらしい。

それでそのたけのこを俺に渡す為、じゃんけんをして勝った有咲が俺に届けに来た、という事らしい…

なんで勝った有咲が届けに来たのか分からないけど、まぁ良いことをした彼女達に何か振舞ってあげようとやる気が出た。

 

「さて、たけのこでどんな料理を作って欲しいか何か要望はないか?」

 

「んー、パッと思い付くのは筍ご飯?」

 

「それでもいいけど、何かもっと別のが食べたいね」

 

「たけのこの里!」

 

「それはお菓子だバカ!」

 

どうやら思い付かないらしい

俺も何がいいかと悩んでいると

 

「士郎さんは今日の夜、何を作る予定だったんですか?」

 

ロングヘアの女の子───花園たえが聞いてきた。

 

「んーそうだな、今日はグラタンにしよっかなって思ってて────そうだ!」

 

「士郎さん?」

 

「グラタンにたけのこを入れてみるってのはどうだ?」

 

「グラタンに?」

 

「そう」

 

「それいい!!」

 

「じゃあ決まりだな」

 

さて、あとは何処で作るか……

多分今日は、蘭がモカ達と一緒にいるらしいからしばらくは帰って来ないからな…

 

そう悩んでいると香澄が

 

「じゃあ有咲の家でやろう!」

 

「はぁ!?なんで私の家何だよ!」

 

「だって有咲の家が1番広いし、士郎さんが行ったことある家って有咲の家しかないもん」

 

「うぐッ」

 

香澄の言う通り、俺は何度か有咲の家にお邪魔させてもらってることがある。まぁ、基本有咲の家の蔵掃除を手伝いに行ってるだけだけどな

 

「〜ッ!!分かったよ!じゃあ私ん家行くぞ!」

 

「やったー!」

 

渋々といった感じで、有咲は自分の家でやることを許可したようだ。

俺は有咲に小さい声で囁く。

 

「本当にいいのか?」

 

「別にいいですよ、香澄の無茶には慣れますから……」

 

有咲は苦笑いで応える。

俺は少し歩く速度を落とし、後ろから彼女達を見る。彼女達が楽しそうに話をしていると、蘭達が楽しそうに話している風景と重なった。

 

俺はその風景に笑みがこぼれ、彼女達の後ろを歩いて行く。

 

 

◆市ヶ谷宅

 

 

有咲の家に着き、俺は有咲にキッチンに案内してもらっていた。

 

「冷蔵庫にあるもの勝手に使ってください」

 

「了解」

 

そう言って香澄達がいる所へ戻ろうとしている有咲を俺は咄嗟に呼び止める。

 

「あとさ!」

 

「え?」

 

「俺のことタメ口で話してくれていいぜ」

 

「い、いや、だって士郎さんは年上…」

 

「別に俺は気にしないからさ」

 

俺は彼女とは3回くらい話した事があるけど、いつも使いづらそうな敬語で話していて、香澄達と話していている時素の自分で話せて楽そうに見えた。なら俺は素の彼女と話がしたい。

 

「で、でも…」

 

「別に無理にとは言わないさ、でも出来ればタメ口でいいってだけさ」

 

「……分か…った」

 

「ありがと」

 

「!!」

 

俺は笑みを浮かべながら、彼女の頭を撫でる。

何か撫でるのが癖になってる気がするが……

 

「よし、じゃあ作ってくるから有咲は香澄達の所にいてくれ」

 

「お、おう」

 

有咲は耳を赤くしながらキッチンから出て行き、香澄達の所へ戻って行った。

 

「さて、始めますか」

 

まず初めにアク抜きをしていたたけのこをマカロニくらいの大きさで薄切りに

玉ねぎも薄切り、鶏もも肉は一口大に

アスパラは固い根元部分の表面をピーラーで薄くむき

塩を加えた湯で固めに茹であげ

氷水に落とし、食べやすい大きさに切る

マカロニはたっぷりのお湯で茹でる

フライパンに油を引き、鶏もも肉、玉ねぎ、たけのこの順に炒め

マカロニ、水、牛乳を加え煮立たせたら、シチュー粉を加えて味やとろみを調整

耐熱皿に盛り付けたらアスパラチーズをのせる

最後にパン粉を少々振り掛けたらオープンレンジへ

10〜15分経ったら─────

 

「うん、焼き目がいい感じだ」

 

さて、香澄達がいる所に持って行くか

 

 

「うわぁー!いい匂い!!」

 

「ホントだ!」

 

1個1個慎重に持ってき、彼女達の前に置いていく。

 

「はい、お待ちどーさま」

 

「美味しそう!!」

 

「これは楽しみ!」

 

「じゃあ食べようか」

 

 

『いただきます』

 

 

シャクシャクと音を立てながら、美味しそうに食べる香澄達。

 

「ん〜!!美味しい!!」

 

「ホントおいしー!」

 

「食感がいいね」

 

「たけのこってグラタンに合うんだ〜」

 

「…美味しい」

 

それぞれ感想を言い合いながら、食べるスピードを止めることなく、食べ続ける。

俺も自分のを1口食べてみる。

 

うん、上手く出来てる

 

俺は再び香澄達を見る。

彼女達は笑顔で仲良く話し合いながら、食べ続けている。

俺はその光景に口角が上がり、微笑むようにその様子を見ながらグラタンを食べ続けた。

 

 

 

彼女達が、ずっと仲良く笑顔でこれからもい続けて欲しいな…

 

そんなことを思いながら、彼女達の笑顔を見続けた。




次回の投稿日がちょうどバレンタインデー!!
つまり次回は、バレンタイン回!!


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バレンタイン

今回は蘭視点!!

しかし文章力が皆無なので結局変わらん!!

だが!!
私は一向に構わん!!
という者だけ、ご覧ください!!


2月13日

 

 

 

 

 

あたしはいつもより早く起き、キッチンに立っていた。明日の為に、ある物を作るために下準備をしている。何でこんな事をしているのかって?だって明日は女の子にとっての大事な日だから

 

それは──────

 

 

 

バレンタインデー

 

 

 

あたしはバレンタインの為につぐみの所でモカ達と練習をしてきた。何回も失敗し続けたけど、それでも作り方を覚える事ができた。

 

「……大丈夫、やり方は覚えてる」

 

あとは手順を間違えないようにするだけ……

 

深呼吸をして、心を落ち着かせる。少し落ち着いてからつぐみのお母さんから貰った作り方が書いた紙を見ながら、チョコ作りを始めた。

 

まず初めにバターを室温に戻しておき、クルミは160℃のオーブンで5~6分で空焼きし、型に合わせてクッキングシートを切っておく

混ぜ用のクルミは包丁で軽く刻み、薄力粉と純ココアパウダーは合わせておく

チョコレートは刻み、湯せんにかけ溶かす

ボウルにバターを入れ泡立て器でクリーム状にしたら、グラニュー糖を加え、バターが白っぽくなるまでよく混ぜる

溶き卵を2~3回に分けて加えよく混ぜたら溶かしたチョコレートを加え混ぜる

薄力粉と純ココアパウダーを混ぜ合わせたものをふるいながら入れ、刻んだクルミを加えたら切るようにサックリと混ぜる

クッキングシートを敷いた型に生地を流し入れ、表面を平らにし飾り用のクルミを散らす

オーブンは事前に170℃に温めておき15~20分ほど焼く

串を刺して湿った生地が少し付く程度でオーブンから出し、余熱で火を通しながら冷まして完成

 

「あとはブラウニーを切って……ん?」

 

紙の端に何か書いてる……?

 

『思いが伝わるといいわね!応援してるわ!』

 

あたしは顔が熱くなっているのが分かった。多分今顔が真っ赤になってると思う。

 

まさかつぐみのお母さんにバレていたなんて思わなかった……

 

「蘭?」

 

すると後ろから突然声を掛けられた。その相手はもちろん

 

「し、士郎さん」

 

「おう、おはよ」

 

士郎さんは笑顔で挨拶をしてきた。

 

「お、おはようございます……」

 

あたしは少しぎこちない挨拶を返す。

 

「珍しいな、蘭がキッチンにいるなんて。何か作ってるのか?」

 

士郎さんはキッチンに入って見に来ようとしてるのを───

 

「ま、まだ完成してないので、見ちゃダメです!」

 

「お、おう」

 

あたしは大きな声で見られることを拒み、士郎さんを止める。

 

「えっと、出来たら呼んでくれ」

 

士郎さんはそう言い、自分の部屋まで戻って行った。

 

「ハァ……」

 

何とか士郎さんに見られずに済んだ。

あたしは急いでブラウニーを一口サイズに切り、ラップをして冷蔵庫に入れる。

 

 

その後士郎さんに終わったことを伝えに行き、一緒に居間に向かっている時、士郎さんに質問された。

 

「なぁ、何を作ってたんだ?」

 

「内緒です。あと冷蔵庫に入れてますけど見たら駄目ですよ?」

 

「り、了解」

 

士郎さんには、明日まで楽しみに待ってもらうことにした。

明日が、少し楽しみになった。

 

 

 

2月14日

バレンタインデー

 

 

 

とうとうこの日がやってきた……!

あたしは昨日と同じ時間に起き、冷蔵庫に入れてあるブラウニーを取り出し、包み紙に入れラッピングをする。

 

「よし……!完成……」

 

あとは士郎さんに渡すだけ…

しかしここで少し問題が発生していた。

 

今、士郎さんが家にいないのだ

 

理由はまぁ、部活の練習らしい

朝早くから練習が始まるらしく、あたしが起きた時にはもう家にはいなかった。

士郎さんが帰ってくるのは昼過ぎらしいので、それまでの間少し退屈になっちゃった。

 

「……」

 

何もする事が思い付かないので、部屋でギターでも弾きにいこうと立ち上がった時、スマホが鳴った。

 

「?ひまり?」

 

相手はひまりからで、士郎さんにチョコ渡したいから家に行っていい?とLINEがきていた。

 

『今、士郎さん部活でいないよ』

『えー!嘘ー!』

『本当だよ』

『えー、じゃあ蘭の家に遊びに言っていい?』

『言ってること変わってなくない?』

『意味が違うよー!』

『じゃあモカちゃんも行こう〜』

『アタシも行こうかな』

『私も行く!』

 

といった感じで、あたしの家にモカ達が来ることになった。まぁ、暇してたから別にいいけど……

 

数分後にモカ達が家に来て、次のライブの話をしていた。

 

「じゃあ次のライブもいつも通り頑張ろう!」

 

「お〜」

 

「それにしても士郎さん遅いな?」

 

「そうだね、もう少しで1時半だよ?」

 

士郎さんから12時くらいにLINEで『今から帰る』と来てから1時間くらい経っている。士郎さんの学校は家からあまり離れていないし、自転車でいつも向かっているから遅くても20分くらいの距離なのに、あまりにも帰ってくるのが遅すぎる。

 

「どうしたんだろうね?」

 

「電話してみる?」

 

んー、とあたし達が悩んでいると玄関が開く音が聞こえ、

 

「ただいま」

 

と、待ち望んだ人の声が聞こえた。

私達は玄関まで向かいに行く。

 

「おかえりなさい」

 

「「「「お邪魔してます(〜す)」」」」

 

「おう、ゆっくりしていってくれ」

 

士郎さんは鞄と紙袋を起き、靴を脱ぎ始める。

 

「士郎さん、この紙袋って何ですか?」

 

ひまりが紙袋の中身を見ようと覗きながら聞く。

そこには────

 

「あぁ、チョコレートだよ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

何で男子高の士郎さんがチョコを貰ってるの?まさかそっち側の人がいて、士郎さんにチョコをあげたの?てか、見た限り結構貰ってるよ?

 

「こ、これは誰から……?」

 

ひまりが勇気を出して、士郎さんに質問する。

 

「ん?えっと香澄と有咲、りみに沙綾、たえと友希那に紗夜、後はリサにあこに燐子からだな」

 

あたし達はポカーンとしていた。士郎さんの帰りが遅かったのはそういう事だったんだ……

 

「士郎さんこれ全部食うの?」

 

「まぁ、貰った物を粗末にしたくはないからな……」

 

やっぱり士郎さんは優しい……

正直こんなに沢山のチョコを今日中に食べろって言うのは地獄だと思う。それでも士郎さんは、今日中に食べ切るだろう……

 

だって、この人はそういう人だから────

 

「じゃあ優しいモカちゃんは明日食べてもらうことにしよー」

 

「え?」

 

モカはそういうといつの間に持っていたのかチョコを士郎さんに渡した。

 

「今日中に食べなくていいけど〜明日には食べてね〜」

 

「お、おう、ありがとう」

 

「わ、私も明日食べてくれたらいいです!」

 

「アタシのも明日食べてくれ」

 

「私のも明日に食ってください!」

 

そう言いひまり達はチョコを士郎さんに渡していく。

 

「あぁ、ありがとう、有難く頂くよ」

 

士郎さんは笑顔でチョコを受け取り、紙袋と鞄を持ち部屋に向かう。

 

「蘭はあげないのー?」

 

「わ、渡すよ」

 

あたしは冷蔵庫からブラウニーを取り出し、士郎さんの部屋に向かう。

 

「し、士郎さん!」

 

「ん?何だ、蘭?」

 

部屋には士郎さんが上着を脱ぎ、ハンガーに掛けようとしていた所だった。

 

「こ、これ!」

 

あたしは士郎さんにチョコを差し出した。

 

「それって昨日作ってたやつだよな?」

 

「は、はい……」

 

士郎さんはチョコを受け取り、あたしの頭を撫でてきた。

 

「これってつまり蘭の手作りだよな」

 

「は、はい」

 

士郎さんの顔をうかがうように見てみると、笑顔で頭を撫でてくれた。

 

「嬉しいよ、ありがとう」

 

士郎さんの顔が至近距離にあった。それも目と鼻の先に……

あたしは顔が熱くなって倒れてしまった。

 

「え!?ちょ、蘭!?」

 

士郎さんはあたしを支えながら、声をかけ続けている。

でも今のあたしには聞こえなかった。

 

でも一つだけ言えることはある。

 

 

 

士郎さんにチョコ渡せてよかった

 

 

 

 

あの後目が覚めたらモカ達にいじられ続けた。だから士郎さんにされたことをモカ達に経験させたら、あたしと同じように倒れてしまった。

 

 

 

 

 

後、配達で大量のチョコが送られて来た。

士郎さんは遠い目をしながら、少し青ざめてた。




次回以降の更新は、本当に不定期更新になります。
ですので、必ず来週の日曜日に更新されるとは限りません。大変勝手ながらご了承ください。

ですが、更新する曜日と時間は変わりませんので



それでは……

ヾ(▒_▒⊂ )))Σ≡サラバ


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笑顔の昼飯

(゜∀。)ウェェェェェェェイ!

頭が(•▽• )パアだぜェェェェェェ!!


(*´Д`)ハァハァ



本編どうぞ


「見つけたわよ!士郎!!」

 

昼飯の買い出しに向かっていると、後ろから金髪の女の子が笑顔で走ってきた。

 

「こころか?」

 

その女の子は、弦巻こころ

花咲川女子学園の1年で、いつも元気な女の子だと俺は思っている。あと詳しい話はあまり知らないけど、確かお金持ちの家の者らしくいつも黒服の人が近くにいるらしい……けど

 

「おはよう、こころ。ところで黒服の人は?」

 

「おはよう!!今日()置いてきたわ!!」

 

そう、こころはいつも俺の前だけ、黒服の人が現れない────いや、家に置いて来ることが多いのだ。

理由は知らないけど、何で俺の時は呼ばないんだ?と思い、この前聞いたんだが……

 

「気にしなくていいわ!!」

 

と、笑顔で返されそれからあまり聞かずにいたんだが……

 

「なぁ、前にも聞いたけど何で俺の前の時だけ黒服の人達を呼ばないんだ?」

 

それでもやっぱり、気になるので再度聞いてみた。

 

「知りたいの?」

 

「おう、教えてくれないか?」

 

「んー、いいわよ!!」

 

「ホントか!?」

 

ダメ押しで聞いてみたけど、今日は教えてくれるみたいだ。そこでふとこころの顔を見ると、いつもより笑顔な気がする。

何か今日はいい事があったのか?

まぁ、それは後で聞くとして、今は何故黒服の人を呼ばないのか聞かないと

 

「それはね──────」

 

こころが次の言葉を口にしようとした時、前方から大きな声を上げながら俺に突撃する子がいた。

 

 

「し━━━━ろ━━━━さ━━━━ん!!!!」

 

 

「グホッ!?」

 

視界にオレンジ髪がチラッと写り、確認しようと顔を前に向けた瞬間、腹部に何かがぶつかった様な衝撃がきて、そのまま勢いを殺さず俺は後ろに転倒する。

いや、何かがぶつかった様なじゃない……何かがぶつかって来た。

倒れた俺に乗っかるように座っている女の子を見て、俺は何が起きた理解できた。

 

「きょ、今日も元気だな……はぐみ」

 

「えへへ」

 

彼女は北沢はぐみ

よくコロッケを買いに行く時に、精肉店で接客をしてくれているこころと同じ学校に通っている女の子だ。運動神経が抜群で確か地元のソフトボールのエースでキャプテンって本人から前に聞いた。

 

「は、はぐみちゃん、士郎さんが困ってるから降りてあげよう?」

 

すると近くからそんな声が聞こえた。

 

「あら!花音も来てたのね!!」

 

「ちなみにあたしもいますよー」

 

はぐみに腹の上から降りてもらい、声のした方を見る。そこには、水色の女の子───松原花音と黒髪の女の子───奥沢美咲がいた。

 

「おはようございます、士郎さん」

 

「お、おはようございます!し、士郎さん」

 

「おう、おはよう2人とも」

 

よっ、と掛け声と同時に俺は立ち上がり、砂を軽く払い落としながら質問をした。

 

「3人でお出かけか?」

 

「花音さんとは一緒に買い物に行く約束をしていて、はぐみとは先程出会いまして、一緒に買い物に行くことになったんです」

 

「そうだったのか」

 

「薫さんも誘おうと思ったんですけど、演劇が忙しくて来れなかったんです」

 

「それは残念だったな……」

 

瀬田薫

羽丘女子学園の2年で、よく男子と間違えられる程のイケメンな女の子。演劇の才能は相当なものらしい……

まぁ、今日は残念ながら忙しくて来れないみたいだけど……

 

「士郎さんはこころと買い物ですか?」

 

こころとはぐみが何か話しているのを余所に、俺は美咲と花音と雑談をしていた。

 

「いや、こころとはここに来る前に会ったんだ。俺は今日の昼飯の買い出し」

 

そう言い俺はポケットから今日の買いに行く物のメモを取り出し、2人に見せる。

 

「士郎さん、今日の昼は何を作るつもりですか?」

 

「ん?実は家にパスタがあってな、今日はそれをメインに作るつもりだ」

 

「いいわね!それ!!」

 

するとこころが目をキラキラと輝かせながら、俺の事を見ていた。

 

「食べてみたいわ!!」

 

「はぐみも食べてみたーい!」

 

隣ではぐみも目を輝かせ、2人揃って手を挙げる。

 

「あたしも食べてみたいですね」

 

「わ、私も」

 

すると美咲や花音までも食べてみたいと挙手してきた。こころとはぐみは言いそうだと思っていたけど、美咲と花音が言うのは少し予想外だった。

俺が驚いた顔をしているのが気付いたのか美咲が、怪訝そうな顔で質問してきた。

 

「こころ達はいいのに、あたし達は駄目なんですか?」

 

「え?でも買い物の途中なんだろ?」

 

「えっと、じ、実は今からお昼食べに行こうって思っていたので……」

 

「だから士郎さんの手料理を今日のお昼にしようかな?って思ったんですよ」

 

「な、なるほど」

 

「もしかして、迷惑……でしたか?」

 

花音が心配そうな顔をしながら、こっちを見ていたので俺は断る理由もないので、首を振りながら否定する。

 

「そんなことないさ、俺の手料理で良ければ食っていってくれ」

 

「わーい!!」

 

「流石士郎ね!!」

 

そんなに嬉しかったのか、こころとはぐみは俺に抱きついてきた。結構な勢いで抱きついてきたけど左右からだったので、何とか倒れずにすんだ。

 

「じゃあ早いとこ食材買って帰るか」

 

そう言って、俺達は商店街を歩いて行った。

 

 

 

◆美竹宅

 

 

 

「……おかえり、士郎さん」

 

「ただいま、蘭」

 

買い物が終わり、俺達は居候させてもらってる蘭の家に来ていた。

 

「こんにちは美竹さん」

 

「こ、こんにちは」

 

「こんにちは、松原さん、奥沢さん」

 

2人は蘭に挨拶して玄関に入る。ちなみにこころとはぐみは─────

 

「「こんにちは!!」」

 

「こ、こんにちは……」

 

大きな声で挨拶してから靴を脱いでから

 

「「お邪魔してます!!」」

 

と言って、居間の方に走って行った。

 

「ごめんなさい、こころとはぐみが」

 

「いえ、別に気にしてないです」

 

そう言って、3人は俺と一緒に居間の方に向かう。居間に着くと、こころとはぐみは大人しく座っていた。

 

「ここで待ってるわ!!」

 

「お、おう」

 

俺は少し早足でキッチンの方へ向かう。キッチンに着き、エプロンを着て袖をまくる。

 

「さて、始めますか」

 

あさつきは小口切り、しょうがは千切り、玉ねぎとニンニクは薄切りに

弱火にかけたフライパンにオリーブオイル、バターを入れて溶かし

しょうが、ニンニクを加え焦がさないように炒め、香りを出す

玉ねぎを加えて炒め、更にしらす、酒、胡椒を加えて炒める

沸騰させたお湯に塩を入れパスタを茹でる

 

「と、その間にこれを切っとかないと」

 

それはスーパーでこころが、これ入れましょ!!っと言って買ってきた生わかめ

 

水で洗い、茎部分を除き食べやすい大きさに

パスタの茹で汁を具材を炒めているフライパンにお玉1杯分加え、茹でたパスタはフライパンに入れて絡め生わかめを投入

全体的に絡めながら30秒~1分程炒めたら、香り付けの醤油を鍋肌に沿わせながら加えて全体的に絡め

お皿に盛り付けあさつき、白ごまをふりかけて……

 

「よし……!」

 

俺は皿を持ち、居間に向かった。

 

「美味しそうな匂い……」

 

「完成したのね!!」

 

「えー、今日のお昼は生わかめとしらすのパスタです」

 

皿の皆の前に置いていく

 

「お待ちどーさま」

 

全員に行き渡り、そして手を合わせる。

 

『いただきます』

 

そしてそれぞれの速度で食べていく。

 

「美味しいわ!」

 

「わかめの歯ごたえもいいですね」

 

「美味しい……」

 

皆が美味しそうに食べてるを見て、俺は自然と笑みが溢れた。

 

「士郎!」

 

呼ばれた方を振り返ると、こころが笑顔で────

 

「美味しいわ!ありがとう!!」

 

そんな彼女の笑顔につられ────

 

「どういたしまして」

 

俺も笑顔で返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばあの大量のチョコ送ってきたのってこころか?」

 

「そうよ!!」

 

「……えっと、次からはやめてくれ」




中々戦闘系の小説が書けないし実行できない今日この頃

誰か時間と文章力をください(´;ω;`)


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いつも通りのバイト

今回は料理場面がナシ



そして今回、多分駄作




◆羽沢珈琲店

 

 

学校終わり、いつものバイト先───羽沢珈琲店で厨房で皿洗いをしていた。今日は客が少なく、やる事があまりない……皿洗いも終えてしまい、ホールの方も掃除済みなのでやる事を本当に失ってしまった。ふぅ…と溜め息をつきながら、近くにあった椅子に座る。

 

「今日は客が少ないな……」

 

そんな愚痴を零しながら、時計を確認する。

時刻はまだ17時58分

バイトを上がる時間は20時なのでまだまだ時間がある。今日はつぐみが学校で用事があり今は居らず、蘭達もこの時間帯ならいつもいるが『つぐみの手伝いをする』とLINEが来ていたので彼女達も今頃学校にいるのだろう……

 

「ハァ……」

 

また溜め息を零し、ホールの方に目をやる。30代女性が2人ぐらいしか今はいなかった。前来た時はもう少し客がいた気がするけど、今日はその2人しか来店していない。つぐみのお父さんとお母さんは先程食材の買い出しに出掛け、今は店員が俺1人しかいない。

 

つまり話し相手も居らず、ただぼーっと客が来るのを待っているだけなのだ

 

そして時間だけ過ぎて行き、店にいた女性2人も会計を済ませ帰って行き、店に誰にも居なくなった。食器を洗い、今俺はテーブルを拭いていた。そして拭いていた手を止め、ふと周りを見渡す。

 

店って誰もいないと、こんなに静かなんだな……

 

そんな事を思いながら、テーブルを拭き始める。

 

こんな静かな日も……会っていいかもな……

 

そんな時、店の扉が開き見覚えのある客が来店してきた。

 

「今終わりましたー!」

 

「まさかこんなにも時間食うとは思わなかったな」

 

「モカちゃんはクタクタだよ〜」

 

「モカは何もしてなかったじゃん!!」

 

「ひまりもあまりしてなかったけど」

 

「ウグッ」

 

来店と同時に賑やかに入ってきた彼女達────バンドグループ【Afterglow】の蘭、モカ、つぐみ、ひまり、巴

 

「いらっしゃい、用事は終わったのか?」

 

「はい!バッチリ終わりました!」

 

「それは良かった」

 

つぐみと軽く話してから、4人を席に案内する。すると───

 

「こんにちは」

 

その声のした方へ振り返ると、バンドグループ【Roselia】の湊が来店してきた。。その後ろには同じメンバーの紗夜、リサ、あこ、燐子がいた。

 

「いらっしゃい」

 

「空いてるかしら?」

 

「えぇ、ご案内します」

 

俺は彼女達を蘭達の席近くのテーブルに案内する。

 

「あ!おねーちゃんだ!!」

 

「ん?あこも来てたのか?」

 

「うん!友希那さん達と来たよ!!」

 

あこが嬉しそうに巴と話している横で蘭と湊が、何故か喧嘩腰に(士郎から見たら)会話していた。

 

「……こんにちは、湊さん」

 

「……えぇ、こんにちは、美竹さん」

 

何で睨み合ってんだ?(士郎から見たら)

彼女達ってそんな仲良くなかったっけ?(士郎からみt)

まぁ、そろそろ注文も聞きたいし、座ってもらおう。

 

「そろそろ注文取りたいから席に着いてくれないか?」

 

「……はい」

 

「……分かったわ」

 

2人は何事もなかったかのように席に着く。そこで俺は注文を聞き出す。

 

「それでは注文を─────」

 

「こんにちはー!!」

 

大きな挨拶と共に来店してくる客が現れた。

 

「ちょっ!そんな大きな声出すな!!」

 

「香澄流石にそれは店側に迷惑だからやめようね?」

 

「はーい」

 

店に入ってきたのは、どうやら香澄達のようだ。

俺はつぐみに注文取りを任せ、香澄達の所へ向かう。

 

「店内で大きな声を出すなやめてくれよ?」

 

「ごめんなさい」

 

「分かればよろしい」

 

さて、こっちもフルメンバーで来店してきたな……

香澄、有咲、たえ、りみ、紗綾の確か【Poppin’Party】ってバンド名だっけ?この5人もバンドグループだったんだよな……CiRCLEでバイトしてた時に初めて知った。

 

「さて、席にご案内します」

 

「はーい」

 

と、移動しようとした瞬間

 

「士郎━━━━━!!!!」

 

そんな声と同時に俺の脹ら脛に何かが飛んで来た。勿論それに瞬時に反応出来ず、俺は勢いを殺さず後方に倒れる。

 

「グホッ!?」

 

勢いよく後ろに倒れ、一瞬気を失いかけたが何とか気を取り戻し、ぶつかって来た者を見やる。

 

「入店早々タックルはやめてくれ……こころ」

 

「タックルじゃないわ!!抱きつきよ!!」

 

そんなとても耀かしい笑顔を見せてくれるこころ。そして突然俺が転倒したからか、店内にいた蘭達は俺に駆け寄って来てくれる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、勢いが強過ぎて倒れただけだよ」

 

俺は笑いながら大丈夫、と言いながら立ち上がる。

 

「ごめんなさい士郎さん、こころを止めれませんでした」

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

店前で美咲と花音が頭を下げ、謝ってきた。

 

「大丈夫だよ、顔を上げてくれ」

 

俺は2人に顔を上げるように言い、後ろにいた2人にも挨拶する。

 

「いらっしゃい、はぐみ、薫」

 

「こんにちは!」

 

「やぁ、士郎、久しぶりだね」

 

「あぁ、そうだな。久しぶりだな薫、劇は順調か?」

 

「ふっ、勿論さ。私の子猫ちゃん達も頑張っているからね……儚い……」

 

「そ、そうか、まぁせっかく来てくれたんだ、席に案内するよ」

 

俺は改めて香澄達とこころ達を席に案内する。

 

 

やっぱり俺には騒がしい空間の方が向いてるようだ……

 

 

先程の静寂な空間とは一転、何とも騒がしくそして楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

俺は言葉には出さないが、心の中で呟く。

 

 

 

 

 

こんな時間が、いつまでも続きますように

 

 

 

 

 




今回、頭が脳死して駄作回になってしまったかもしれません。
ご了承ください


次回は、Pastel✻Paletteが登場!!


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機材の師弟

ハッハッハっ

前回投稿出来ずすみませんでした━━━━━━━━━━━━━━━!!!!

そしてこれからも投稿出来ない事があるかもしれませんがその都度、活動報告にて連絡させていただきますので、何卒ご了承をぉぉぉぉぉぉ!!


てな訳でどうぞ⤵


とあるスタジオの機材置き場

そこで1人の少女が機材トラブルに四苦八苦していた。

 

「えっと、これをこうして……あれ?」

 

「どう?麻弥ちゃん、直りそう?」

 

「んー、ジブンじゃとても出来そうにないっス」

 

「えー。麻弥ちゃんでも無理なの?」

 

「はい、役に立てなくて申し訳ないっス……」

 

「そんな事ないわ。麻弥ちゃんはよく頑張ってくれたわ」

 

そう言って、微笑む。

 

ここはPastel✻Palettesの事務所にある機材置き場……あと2日で撮影がある為、機材のチェックをしていた時、機材トラブルが発生し、今に至る。

今機材を点検していた少女───大和麻弥は相当な機材オタクでよく機材の点検をしていたのだが、今回の機材トラブルは麻弥でも分からないほど難航していた。

その後ろで彼女の背中を見守っていた───氷川日菜と白鷺千聖

2人は落ち込んでいる麻弥を励ましながら、どうするかスタッフと相談していた。

 

「どうしましょうか……」

 

「確認したところ修理に来る人が今忙しいらしく、早くて2日後にこちらに来るそうです」

 

「2日後……」

 

「それじゃあ予行練習ができないってこと!?」

 

「そうなりますね……」

 

「彩ちゃんとイヴちゃんに連絡は?」

 

「先程しました」

 

「そう……」

 

あまりの緊急事態に現場の空気が徐々に不安になり、スタッフ達が慌ただしくしていた。そこに2人の少女が息を切らしながら部屋に入ってきた。

 

「予行練習出来ないって本当ですか!?」

 

「彩ちゃん、少し落ち着いて」

 

慌ただしく入ってきたのは丸山彩と若宮イヴ

彼女達はどうやら走ってきたらしく汗を少々流していた。スタッフからタオルを貰い、汗を拭き取りながら話を聞く。

 

「じ、じゃあ今日と明日の練習は……」

 

「残念ながら無理そうね」

 

「そんなー!」

 

「仕方ないわ、麻弥ちゃんでも無理みたいだし、それに修理に来る人は2日待たないと来られないみたい」

 

ほぼ全員が諦めかけていた時

 

「……あの人なら」

 

「麻弥ちゃん?」

 

千聖達が不思議そうな顔をしている中、麻弥はすぐスマホを取り出しある人に電話をする。

 

「あ、もしもし麻弥です。あの実はお願いがあるですけど────」

 

 

 

 

「えっと、ここ……だよな」

 

俺は家で服を畳んでいた時、電話が鳴りすぐに来て欲しいと言われ、指定された場所に自転車で向かっていると、着いた場所がまさかのアイドル事務所だった。

 

「ここって……アイドル事務所だよな?」

 

聳え立つ建物を見上げ、呆然と立ち尽くす。────そこに。

 

「待っていましたッス!士郎さん!」

 

建物から麻弥が笑顔で出て来た。

 

「来てくれたんスね!」

 

「まぁ今日は何もする事がなかったからな、それにすぐ来て欲しいなんて言われたらそりゃ急いで来るよ」

 

「本当に助かるッス!じゃあ早速案内するッス!」

 

「え?あ、ちょ───」

 

俺は麻弥に手を引かれながら建物中に入っていく。

 

建物の中に入ってしばらく歩いていると、スタッフの方か分からないが色んな人にジロジロ見られ少し落ち着かない……

 

「な、なぁ麻弥」

 

「何ですか?」

 

「今更だけど俺みたいな部外者が簡単に入っていいのか?」

 

「士郎さんが来ることはちゃんと許可も貰ってるっすよ?」

 

「そ、そうか?で、でもさっきから視線が……」

 

「まぁ確かに珍しい方ッスからね。あまり気にしないで欲しいッス」

 

「そ、そうか」

 

麻弥の言う通りに気にしないで行こう……!

……いや無理があるよね?

 

視線を気にしながら、麻弥は目的の部屋に着いたみたいだ。

 

「ここッス」

 

そう言って扉を開け、中に入っていく。

 

「連れてきたッス!」

 

俺も後に続いて入ると中に麻弥と同じくらいの歳の女の子がいた。

 

「麻弥ちゃん、その人が?」

 

「はい!ジブンが尊敬する機材の専門家ッス!!」

 

「いや、人より詳しいだけで専門家じゃないからな?」

 

麻弥がとんでもない嘘を付いていたので咄嗟に突っ込んでしまった。俺はすぐ姿勢を正して監督の方に挨拶をする。

 

「えっと、衛宮士郎です。話は麻弥から聞いています」

 

「そうか!麻弥ちゃんから聞いていたけど、結構若いんだね!」

 

「えぇ、今は高校3年です」

 

「私より1つ歳上なんですね」

 

「えっと君は……?」

 

「私は白鷺千聖です。自分で言うのも何ですけどよくテレビで出ているんですが……」

 

「ご、ごめん、あんまりテレビとか観なくて……」

 

「そうなんですか、それなら仕方ないですね」

 

彼女はフフフ…と微笑む。

なんとなくだけど、彼女は結構大人びてるな……

すると、後ろから誰かが抱き着いてきた。

 

「うおっ!?」

 

「えへへー、あたしは氷川日菜だよー」

 

ニコニコと笑顔で抱き着きながら自己紹介をしてくる。

……ん?氷川?

 

「……もしかして紗夜の妹か?」

 

「え!お兄さん、おねーちゃんの事知ってるの?」

 

「あぁ、バイト先でよく会うよ」

 

「へぇー、そうなんだ!」

 

紗夜の事を話をしたら、彼女はとても嬉しそうに笑う。

もしかして紗夜の事が、好きなのか?

 

「こら日菜ちゃん、早く士郎さんから離れなさい」

 

「えー」

 

「日菜ちゃん?」

 

「はーい」

 

千聖のおかげで日菜は俺から離れる。正直助かった……歳が近い女の子に抱き着かれるのは、結構恥ずかしかった……

 

「じゃあ次は私かな?」

 

「あぁ、お願いしていいか?」

 

「はーい!私は丸山彩って言います!よろしくね、お兄さん!」

 

「あぁ、こちらこそよろしく」

 

彼女と挨拶をしていると、唐突に白髪の子に腕を触られる。

 

「これは……!」

 

「えっと、君は?」

 

「はっ、失礼しました。私は若宮イヴと申します!いきなりですが、質問いいでしょうか!」

 

「お、おう。何だ?」

 

「シロウさんは何かブシドーを習われていますか!?」

 

「ぶ、武士道?えっと弓道部には入ってるけど……」

 

「士郎さんって弓道をやられているんですね」

 

「あぁ」

 

「しかも士郎さんは弓道の試合で1位取った事もあるんスよ!」

 

「えぇ!?凄い!」

 

「そんな事ないさ。1位取れたのはたまたまだよ」

 

「たまたまだとしても、1位を取られた事があるんですよね?」

 

「あぁ」

 

「なら謙遜せず素直に受け取るべきですよ?」

 

「……そうだな、ありがとう」

 

「いえいえ」

 

「彩もありがとな」

 

「えへへ」

 

彩は頬を赤らめながら可愛いらしい笑顔で返す。すると先程から固まっていたイヴが、大きな声を出す。

 

「シロウさん!!」

 

「うおっ!?ど、どうした?」

 

「イ、イヴちゃん?」

 

イヴは俺に頭を下げ、衝撃の発言をする。

 

「お願いします!私を弟子にしてください!!」

 

「……は?」

 

あまりにも唐突過ぎてマヌケな声を出してしまった。他の子達も突然過ぎて固まってしまっている。────ただ1人除いて。

 

「ずるいッスよイヴさん!ジブンだって士郎さんの弟子になりたいんスよ!」

 

「えぇ!?」

 

「麻弥ちゃんも!?」

 

2人は俺に詰め寄り、弟子にしてくれとせがむ。

2人の必死差は凄く、これにはスタッフの人も何も出来ず、黙って見守っている。

そこで俺は──────

 

「ちょ、ちょっとストップ!今はとりあえず先にするべき事をしよう!な!」

 

「そうよ2人とも。どうして士郎さんに来てもらったか、忘れてない?」

 

千聖の言葉に二人はハッと思い出したようだ。

 

「そ、そうッスね。今日は士郎さんに見てもらいたい物があるんッス」

 

そして麻弥は見て欲しい機材を持ってくる。

 

「これなんですけど」

 

「ちょっと見せてもらうぞ」

 

俺はそう言い、その機材に触れる。

目を瞑りそして心の中で、ある言葉を唱える。

 

────解析、開始(トレース・オン)

 

触れた機材の回路を辿り、不備の部分を探し出す。そして、探し出して数秒で不備の部分を見つけ出し、そして小さく呟く。

 

「……見つけた」

 

「士郎さん?」

 

目を開き、麻弥に工具を持ってきてもらう。

 

「何かわかったんですか?」

 

「あぁ、すぐ終わるから待っててくれ」

 

そう言って俺は作業を始める。

 

 

 

 

「凄い……」

 

ジブンは士郎と出会ったのはCiRCLEに立ち寄った時に出会った。その時私は遠くから見ていたが、士郎が機材に触れると目を瞑り、しばらくそのまま動かない。

 

まるで、機材の声を聞いているかのように─────

 

ジブンにはそんな大それた事は出来ない……

ジブンはその時から、この人の弟子になりたいっと思っていた。ジブンも、この人のように機材の声を聞いてみたいと思ってしまった。

そしてジブンは士郎さんに近付き、お願いをした。

 

「お願いします!ジブンを弟子にしてください!!」

 

「……え?」

 

それが士郎さんとの最初の会話だった。

 

そして今、目の前で初めて見た時と同じように士郎さんは目を瞑り、機材の声を聞いている。

彩さん達も、士郎さんの集中力に驚いているみたいッスね。

 

「凄い集中力……」

 

「何かこっちも黙っちゃうね」

 

「確か弓道って結構集中力がいるって聞いた事あるわ」

 

「流石シショウです!」

 

皆さんも士郎さんに尊敬の目で見ていますね。

あとイヴさん、何ちゃかり弟子を名乗ってるんスか?

 

そして士郎さんは目を開き、ジブンに小道具を貸して欲しいと言ってきたっス。つまり士郎さんは不備の部分を見付け出した、という事ッス。

だって士郎さんは機材の声を聞いているですから!

 

だから、必ず、士郎さんに弟子と認めて貰えるように頑張りますから……

 

───待っていて下さいっス、師匠

 

 

 

 

「いや〜、ありがとね!士郎君!君がきてくれてほんと良かったよ!」

 

「ハハハ、お役に立てて良かったですよ」

 

機材の不備部分を直し終え、監督さんに伝え早速試すと無事動き、麻弥達を練習させに行かせた。

 

「君さえ良ければ将来ここで働かないか?」

 

「とても魅力的なお誘いですが、流石に自分じゃ足手まといになると思いますので、遠慮させていただきますよ」

 

「そうか?君ならやって行けると思うのだがな〜、ま、私は大歓迎だからもし興味が湧いたら連絡をくれ」

 

「はい、その時はよろしくお願いします。では」

 

「いつでも見学しにおいで!」

 

俺は監督さんに外まで送迎してもらい、そこで別れた。俺は一応麻弥に『俺は帰るから、練習頑張れよ』と送り、自転車で帰路を辿った。

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ってアイドル系の番組を見ていたら、蘭に「え?士郎さんってアイドルが好きなの?」と怪訝そうな顔をしながら誤解をされ、その誤解を解くのに2時間掛かった。




今回も、食事回がありませんでした!

ですが次回はあると思います!!

あと麻弥視点でもしかしたら麻弥の口調にあってないって思われる方がおられるかもしれませんが、そこはオリ設定として見逃してください_○/|_ 土下座


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コンビニの助っ人

今回はコンビニ編
Afterglowのメンバー全員がコンビニ店員として働きます!


★オマケ
令呪を持って命ずる……!!俺に文章力と大いなる語彙力をォォォォォォォォォォ!!!!



ではどうぞ⤵


「いらっしゃいませー」

 

コンビニのレジで商品のバーコードを読み取り、接客をしている男の姿があった。

 

「3点で合計460円です」

 

商品を袋に詰め、レジ打ちをする。

 

「460円丁度お預かりします」

 

客からお金を受け取りレシートを渡す。

 

「ありがとうございましたー」

 

笑顔で客を見送る。

これの繰り返しを約1時間くらい続けている。

 

「ハァ……」

 

ひっそりと溜息をついていた時

 

「お疲れ様」

 

声がした方へ見遣ると、笑顔でこちらに近付いて来る女性がいた。

 

「疲れた?」

 

「あぁ、コンビニの店員って結構疲れるな」

 

「アタシはもう慣れたけどね」

 

クスクスと小さく笑う。それに対し俺は苦笑いで

 

「流石だな、リサ」

 

彼女の名を口にする。

 

俺がコンビニで店員をしている理由は約2時間前に遡る。

 

 

 

 

 

☆3時間前

 

俺は家で家事をしていた。蘭はひまり達とCiRCLEに行くらしく今は家に1人でいる。今日は部活も特にそれといった用事もないので、部屋を掃除していた。

あらかた掃除が終わり、居間でくつろごうと向かっていた時、LINEが届く。

 

「ん?」

 

メッセージ私は見ると、送り主は蘭だった。

『士郎さんって今暇?』といった文が送られてきた。

 

「まぁ、掃除も終わったから暇っていえば暇だな……」

 

『暇だよ』と返信すると、すぐ既読がつき返信がくる。『今から羽沢珈琲店に来て』と送られて来たので『わかった』と送り、家を出た。

 

羽沢珈琲店に着くと店前で蘭達を見付けた。

 

「あ!士郎さんきたー!」

 

「こんにちは、士郎さん!」

 

「シローさん、やっほ〜」

 

「待たせてごめん!」

 

「いや、そんな事ないぜ。それにアタシ達が勝手に呼び出したんだし」

 

俺は蘭達の元まで少し駆け足で近付き、呼び出した理由を聞く。

 

「それで俺は何で呼ばれたんだ?」

 

「実は─────」

 

「モカちゃんを助けて欲しいのだー」

 

蘭が答えようとすると横槍が入る。

 

「どういうことだ?」

 

モカの言ってることがイマイチ理解出来ず蘭に聞いてみた。

 

「モカがアルバイトしている所で今日急に人員不足になったみたい」

 

「そこでアタシ達が手伝いに行こうって話になって」

 

「でもどうせならもう1人くらい人手が増えたいいかな〜って思って」

 

「士郎さんを呼ぼうって事になったんです」

 

「なるほど……」

 

要するにコンビニにヘルプとして行くって事か……

 

「てかモカってアルバイトしてたんだな」

 

「それは心外ですなー。モカちゃんだってやる時はやるよー?」

 

「い、いや、別に疑ってるわけじゃないんだが……」

 

今までのモカを思い出すと、コンビニで働くモカの姿が全然想像がつかない。

 

「ま、まぁともかく!俺は別にいいぜ」

 

「ありがとーシローさん」

 

「じゃあ早速向かおうぜ!」

 

「おー!」

 

俺達は目的地のコンビニまで歩き出した。

 

 

コンビニに着きレジを見ると、男の人が1人だけ立っていた。

 

「おぉーモカちゃん、その子達が手伝いに来てくれた子達かな?」

 

「お疲れ様でーす、あたしの友達でーす」

 

「そうかい!ほんと助かるよ!それじゃあモカちゃん、お友達を裏に案内してきな、服は予備のがあるからそれを使ってね」

 

「さぁーモカちゃんについてこーい」

 

モカに続いて蘭達が着いて行く。俺は裏に行く前に先程の男性に話しかける。

 

「えっとモカっていつもあんな感じですか?」

 

「そうだよ、お陰でモカちゃんはこのコンビニのアイドルになってるよ」

 

「は、はぁ……」

 

ま、まぁ迷惑になってないならいい……かな?

 

「君もモカちゃんの友達かな?」

 

「まぁ、そうですね」

 

「いやーモカちゃんも隅に置けないな〜!」

 

「え?」

 

男性は俺をジロジロ見ながらいきなり笑い出した。あとこの人店長だ……名札に書いてあったよ……

 

「まさかこんなに頼り甲斐がありそうな男を捕まえているなんてな!これは将来モカちゃんは幸せになりそうだね!」

 

「そ、そうですか……」

 

いきなり笑い出したと思ったら今度はよく分からない話をしてきた。ちょっと理解出来なかったけど、モカは将来幸せになるのは間違いないだろう。

なんせモカの周りには蘭やひまり達がいるんだ。喧嘩する事もあるだろうけど、彼女達なら何とかやってのけるはずだ。

 

「いや〜君のような子ならモカちゃんを任せられる!頼んだよ!!」

 

「いや、あなたモカの親でも何でも無いですよね!?」

 

「何言ってるんだ!私はモカちゃんの店長だよ?」

 

「店長だからってそんな権限ないですよ!?」

 

と、店長とレジ越しに言い合っていると、店の扉が開いた。

 

「お疲れ様です」

 

「おぉ、リサちゃんお疲れ様!」

 

そこにはRoseliaの今井リサがいた。

 

「リサ?」

 

「あれ?士郎さん、買い物?」

 

「いや、今日は助っ人としてここに来たんだ」

 

「あぁ〜、モカが言ってた助っ人って士郎さんのこと?」

 

「まぁ、そうだな。今日はよろしく頼むよ」

 

「任せといて!先輩としてしっかり教えてあげるから!」

 

「お手柔らかに頼むよ」

 

リサと軽く挨拶を交わし、笑いながら会話をしていると

 

「ま、まさかリサちゃんとまで仲良しだったのは!?これは中々相手が手厳しいぞ!モカちゃん!!」

 

「さっきから何言ってるんですか……」

 

もう店長さんと話す事に疲れ、少し呆れ顔で店長を見遣る。

 

「安心したまえ、士郎君!君がどちらを選ぶかは君次第だからね!私は何も言わないよ!!さぁ!若き少年よ!青春を謳歌するが良い!」

 

「だからさっきから何なんだよ!?」

 

この時、俺の口調は敬語からいつもの口調で突っ込んでる事に気付いてなかった。だが、隣でこの光景に微笑んでるリサがいたことは気付いていた。

 

 

 

「全く……あの店長さんはいつもあんなんなのか?」

 

「んー、アタシもあんなテンションが高い店長さんは見た事ないかな?」

 

店長さんと会話を終え、リサと一緒にスタッフルームに向かい、制服を着る。

 

「あの人と話していると何か疲れてくるよ……」

 

「そう?士郎さん結構楽しそうだったよ?」

 

「冗談はやめてくれ……」

 

苦笑いで答え、俺は蘭達と所へ向かう。

 

「あ!士郎さん遅いよ!」

 

「悪い、店長さんと話し込んじまった」

 

ひまりが頬膨らませて怒ってきたので、俺は謝罪の言葉と一緒に軽く頭を下げて謝る。

 

「そういえば店長さんと士郎さんの声こっちまで聞こえてたけど何の話してたの?」

 

蘭に問い掛けられ、俺は言おうか迷ったがあまり関係ない話をしていたので、はぐらかす事にした。

 

「ん?あー、あまり気にしなくていいよ」

 

「ふーん」

 

「それより早速始めようよ!」

 

「そうだな、でも人数が多いから二手に分かれて1時間事に交代制にしていこう」

 

「クジはもう作ってあるからみんな1本選んで!」

 

いつの間にかつぐみがクジを用意していたらしい……俺達はつぐみの言われた通りに1本選び、掛け声と同時に引く。

 

「いっせのーで!」

 

結果は……

前半:士郎、蘭、リサ

後半:モカ、ひまり、つぐみ、巴

 

「うん、バランス良く別れたね」

 

「そうだな、両方に経験者がいるからいい按配で別れてる」

 

「じゃあ早速始めようー」

 

「おー!」

 

 

という訳で冒頭に戻る

始めた時間が11時くらいだったので今は13時くらいまで時間が進んでいる。

 

「商品はもう並べ終えたのか?」

 

「元々あんまり減ってなかったからすぐ終わっちゃた」

 

「そうか、ならこっちは大丈夫だから蘭の手助けしてやってくれないか?」

 

「りょかーい」

 

そう言ってまだ客の相手をしている蘭の方へ向かっていた。俺とつぐみはこういう接待業は今までやってきたのであんまり困らなかったが、こういう事を初めてやる蘭とひまりは結構四苦八苦しているみたいだ。

巴はすぐに接待業にも慣れ、蘭やひまりみたいに困っていた所は見なかった。

才能っていうのか?こういう事をすぐ慣れて出来ちゃう事を。

それに対してひまりは

 

「何でそんな簡単に出来ちゃうの!?」

 

「いや、えっと、何となく?」

 

「うぇぇぇぇん!!巴が虐めてくるよぉぉぉ!!」

 

「えぇ!?」

 

といった感じでスタッフルームに入ってきてひまりがリサに慰められていた。

 

「おーい、交代の時間だぜ」

 

「ん?もうそんな時間か」

 

「あぁ、あとご馳走様。美味しかったぜ」

 

「それは良かった。結構急いで作ったから味見してなかったから少し心配だったんだが」

 

 

 

実は後半組と代わる時

 

 

「シローさんご飯持ってない?」

 

「え?ご、ご飯?持ってないけど……」

 

「えー、モカちゃんお腹ペコペコだよー」

 

「モカやめて!私も我慢してるんだから!」

 

「そういえばまだ何も食べてなかったな……」

 

「あたしも……」

 

「……わかった、今から急いで作ってくるよ」

 

「え!?今からですか!?」

 

「丁度俺は今から休憩時間だしな、少し待っててくれ」

 

そう言って俺は家まで全力で走り出した。

幸いにもそこまで遠くなかったので、そこまで疲れる事はなかった。

俺は家に入り、キッチンに立ち何を作ろうか悩み込む。

 

「手軽に作れて食べれるやつか……アレを作るか……」

 

 

まず初めにフォーク等で海苔に細かい穴をあけておく

次にスパムを5mm~1cmの厚さに切って、きゅうりは斜め切り

市販の白身魚のフライは海苔の横幅より小さいサイズに切って、レタスは食べやすい大きさにちぎり水気を取る

油をしき、卵に塩を少々ふってかき混ぜ炒り玉子に

フライパンでスパムを焼く

醤油、砂糖、みりん、酒、粒胡椒を加え入れ、中火で焦がさないように照りが出るまで焼き粗熱を取る

全形海苔は横半分に切っておき、ラップを敷いて切った海苔をのせ、塩をふり、ご飯を適量のせて

その上に具材をのせていく

一つはごま、スパム、炒り玉子、きゅうり

もう一つはレタス、白身魚のフライ、タルタルソースの順で

中央で折り曲げ、具材をサンドしラップで巻き包んで完成!

後は人数分……いや、モカとひまりはよく食べそうだからそれなりに多めに作っておこう

 

 

「よし!後は持っていくだけだが、流石にこれを持ちながら走ると形を崩しそうだから自転車で行こう」

 

俺は自転車のカゴにランチバックを入れ、コンビニまで漕ぎ出した。

 

店に入った時には時間が55分になっていた。

 

「あ、シローさん」

 

レジにもたれかかっているモカを見て苦笑いを作りながらランチバックを見せる。

 

「作ってきたぞ」

 

「おぉ〜」

 

「休憩時間に食ってくれ」

 

「りょかーい」

 

そう言って俺はスタッフルームに入る。

 

「……!士郎さん!」

 

「士郎さん!本当に作ってきたんだ……!」

 

「まぁな」

 

ランチバックを机の上に置き、制服を着る。───すると。

 

「士郎さん、休憩しなくていいの?」

 

「ん?大丈夫だよ、そんなに疲れてないしな」

 

「……ならいいけど」

 

「ありがとな、蘭。心配してくれて」

 

「……別に」

 

蘭は顔を逸らし、俯く。そんな蘭の頭を俺は撫でる。

するとこの光景を見ていた人物から冷やかしを言ってくる。

 

「熱々だね〜」

 

ニヤニヤしながら見ていたリサがいた。蘭はすぐ顔を赤くし俺から少し距離を取った。

 

「いや〜ほんと傍から見たらもうラブラブのカップルだよ〜?」

 

「カ、カップ────!?」

 

「冷やかしはやめろよ、リサ」

 

「え〜」

 

俺はそのままスタッフルームから出て行き、ひまり達の元へ向かう。

 

「おーい、そろそろ交代だー」

 

「はーい」

 

「やっと終わった……」

 

「お疲れ、ひまり。ご要望のご飯は机の上に置いてるから好きに食ってくれ」

 

「やったー!」

「あ、でも全部食べるなよ?蘭とリサの分も考えて食ってくれよ?」

 

「はーい」

 

そういった感じで後半組と交代して、1時間勤務を果たしにレジに立った。

 

 

 

「さて、蘭とリサにも伝えてくるか」

 

「いや、アタシが伝えとくから先に裏に行ったら?」

 

「そうか?じゃあお言葉に甘えて」

 

俺は巴に言われた通りに先にスタッフルームに入って行った。そこには、綺麗に平らげられた後のラップのゴミが片付けられていた。

 

「おぉ〜これが士郎さんが作ったおにぎりか!」

 

「美味しそう」

 

後ろから声が聞こえ、そっちに見遣ると蘭とリサがいた。

 

「さぁ、俺達も食べようぜ」

 

俺はランチバックからおにぎりサンドを取り出し、蘭とリサに渡す。そして席に座り、手を合わせる。

 

「「「いただきます」」」

 

同時におにぎりサンドにかぶりつく。

 

「美味しい〜」

 

「……」

 

リサは頬に手を当て美味しそうに食い、蘭は何も言わないが目を爛々と輝かせながら食べていた。

 

 

 

 

さて、ひまり達が終わった次の時間がラストだ。

ラストまで気を引き締めて、頑張りますか……!

 

 

俺はそう思いながら、おにぎりサンドにかぶりついた。




次回は……ななななんと!!
青タイツさんが出てきます!!
お楽しみに!!


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槍兵と魚

2週間?3週間ぶりですね!
いや~最近忙しくてかく時間ありませんでした!
すみません!


晴れ渡る空の下で、釣り堀にたった1人座り込んでいる男がいた

 

涼しい風に当たり、海の波音を聞きながら男は静かに獲物が掛かるのを待っていた。

ルアーが沈み男は竿を引き上げる。

そこには針に掛かった魚がいた。

 

「お、今日は大漁だな」

 

 

そんな男を遠くで見ていた人がいた。

 

「アイツ、何してんだ?」

 

赤銅色の髪をした男───衛宮士郎は男の方を見ながらそんな事を呟いた。

 

 

 

────遡る事数分前

 

 

 

今日は部活もないし、気分転換に海に行くか、なんて思ったのが事の発端だった。

俺は必要最低限の物だけ鞄に詰め、海の方まで歩いて行った。

海の方へ近付くに連れ香る塩の匂い、そしてここまで聞こえる海の波音……

それだけで気分がスッキリした感じがした。次第に視界いっぱいに広がる海が現れた。

 

「海に来たのって、何年ぶりだっけ……」

 

そんな事思いながら、岸辺の方へ歩みを進めていく。すると堀の方に人が居ることに気が付いた。どうやらその人は釣りをしているみたいだった。

 

「釣りか……」

 

釣りといったらアイツが思い付くのが何故か気に入らないけど……

 

「ん?」

 

岸辺に近付くに連れて堀にいる人物が誰なのか判明した。

 

青髪の大男でさらに、見間違いじゃなければ俺はアイツのことをよく知ってる。

 

「アレって……ランサー?」

 

ランサー。真名はクー・フーリン。

ケルト神話の半神半人の大英雄で、1度俺を殺した事があるサーヴァントだ。

 

いや、てか何でアイツがここにいるんだ?

 

「アイツ、何してんだ?」

 

俺は話し掛けに行く為に、ランサーの方へ向かう。

 

「よ」

 

ランサーの近くまで行くと脇目でこちらを見ながら、返事をしてくる。

 

「よ、ってこんな所で何してんだよ」

 

「見てわからねぇか?釣りだよ」

 

「いや、それは知ってるけど……」

 

何でここにいるんだ?と聞く前にランサーが答える。

 

「前の釣り堀がよ、あの赤いのに取られちまったから移動してきたって訳だ」

 

「な、なるほど」

 

要するにアイツに釣り場所を取られたから仕方なくこっちに移動してきたって事か……

俺はそう思いながら、現在の成果を聞いてみる。

 

「釣れるのか?ここ」

 

「おう、ぼちぼちだな」

 

そう言いながら魚の入ったバケツを見せてくる。

 

「結構釣れてるな……」

 

「そうか?」

 

「ここの釣り堀はアジが釣れるのか……」

 

「持ってくかあ?」

 

「え、いいのか?」

 

「おう」

 

なら、有難く頂くとしてこれを使って何を作ろうか……

 

「ん〜これだけあったら、なめろうとかやってみたくはある」

 

「なめろう?って何だ?」

 

「アジをさ、きざんで葱とか生姜、味噌なんかを混ぜ合わせたやつ」

 

「へえ〜」

 

「ご飯の上にのせて食べても美味いだろうな〜」

 

俺はなめろうの完成図を思い浮かべながら話していると

 

「そこまで言われちゃあ、しょうがねぇ」

 

ランサーは立ち上がり、こちらに振り返り

 

「坊主、それ俺にも食わせろ」

 

「は、はぁ!?」

 

ランサーのとんだ提案に俺は驚きの声を口にする。

 

「いいじゃねぇか、それにそんな話を俺にした坊主が悪い」

 

「いや別にいいけど、大丈夫なのか?」

 

「何がだ?」

 

「いや、この後の事とか」

 

「別に対した用事もねぇし、坊主がいなけりゃ今日はずっと釣りしてただろうし大丈夫だ」

 

「そ、それならいいんだけど」

 

こうして、俺はランサーと一緒に帰路を辿ることになった。

 

 

 

帰路を辿っている際、ランサーが酒を買い出しそれに付き合わされ、ちょっと帰る時間が遅れてしまった。

 

「そんなに酒買って飲めるのか?」

 

「何だ、坊主飲めるのか?」

 

「未成年だぞ、俺は!」

 

「こまけぇ事を気にするなよ、大きくなれねぇぞ?」

 

「余計なお世話だ!」

 

ランサーの手には酒が沢山入った袋が握られており、俺は溜息をつきながら家まで向かう。

 

「そういや坊主」

 

「なんだ?」

 

「セイバーとは会ったか?」

 

「え?セイバーと?いや、まず家に帰ってないから会ってないけど……」

 

「なら、顔を見せに行ってやれよ?この前会った時顔暗そうにしてたからよ」

 

「セイバー……」

 

確かにセイバーと最後に話したのは3ヶ月も前だったっけ……、そろそろ顔を出しに帰る事もしないとな

 

「わかった、ありがとなランサー」

 

「おう、気にすんな」

 

俺とランサーは軽い雑談を交わしながら、家に向かった。

 

 

★美竹宅

 

 

「はぁ〜、ここが坊主が住んでる家か?」

 

「そうだけど……」

 

ランサーは家の前で何か思ったのか辺りを見渡している。

 

「坊主の家と似てんな」

 

「まあ、言われてみれば確かに似てる所は多いけど、そんなに気になる事か?」

 

「いや〜、ここまで似てると何か坊主の家に邪魔しに来てるみたいでよ」

 

「そうか?」

 

「ま、気にしても仕方ねぇ。早く入ろうぜ」

 

玄関を開け、中に入ると居間の方から楽しそうな話し声が聞こえた。

 

「お?先客か?」

 

「多分蘭の友達だな、今日来てたんだな」

 

「らん?」

 

「この家の持ち主」

 

「はぁ〜、なら挨拶しとかないとな!」

 

そう言ってランサーはドカドカと居間へと歩いて行った。

 

「お、おい!ちょっと待てよ!」

 

 

 

「あれ?士郎さん帰って来────」

 

「ん?どうしたのひま────」

 

「……」

 

「おーい、3人とも!帰ってこーい!」

 

「お〜、大きな人がいるね〜」

 

5人は突如現れた青髪の大男にそれぞれの反応を示す。

 

「蘭っていう嬢ちゃんは誰だ?」

 

ランサーはそう言うと蘭が更に表情を強ばらせる。───すると。

 

「おい!ランサー!自分の荷物くらい自分で持っていけよ!」

 

「お?悪ぃ悪ぃ、忘れてたわ」

 

「ったく」

 

大男の後ろから見知ったそして、今この瞬間を待ち望んでいた人物が姿を表した。

 

「士郎さん!」

 

「ん?あぁ、ただいま。みんな遊びに来ていたんだな」

 

「お、お邪魔していますって、それより!その人は?」

 

「えっとコイツは────」

 

「坊主とは昔からの縁でよ、今日は美味い飯を食いに来たんだ」

 

「シローさんのご飯は格別だよ〜」

 

「あぁ、士郎さんのご飯は美味しいからな。食べたくなるのも分かるよ」

 

「へぇ〜、やっぱ坊主の飯はうめぇのか」

 

「それはエモいくらいに〜」

 

「ほう?」

 

モカと巴がランサーと雑談していたので俺はその合間にキッチンへ向かおうとすると、蘭とひまりに捕まった。

 

「ちょ、士郎さん!あの人本当に知り合いなんですか!?」

 

「あ、あぁ、知り合いだけど……」

 

「あの人、絶対年上ですよね!?」

 

「まぁ大分歳は離れてるな」

 

相手はケルト神話の大英雄様だからな……

 

「まぁあんな性格だけど根は優しい奴だから話してみたら?」

 

「は、はーい」

 

「……わかった」

 

そう言うと蘭達はモカと巴の元へ向かった。

 

さて始めるか

 

 

まず初めに生食用のアジは皮を剥き、中骨を取り除く

長葱、みょうがはみじん切り、しょうがはすりおろす

 

 

「さて、次は────」

 

「おう、坊主」

 

後ろを振り返るとランサーが立っていた。

 

「何か手伝ってやろうか?」

 

「え?」

 

「こまけぇ事は頼むなよ、向いてねぇから」

 

「え、じゃあ今からアジをきざむけど、やるか?」

 

「任せとけ」

 

 

アジを細く……切りきざみ……

 

 

「お、おお……ズタズタだ」

 

早すぎて残像が見えるとかなんだよ

 

 

粘り気が出てきたら、きざんだ長葱、みょうが、しょうが、味噌、風味付けの醤油を加えて混ぜるように叩く

 

 

もう1品くらい作るか……

 

 

三枚に卸し、軽く塩をふり、5分ほど置いたアジは出てきた水分をペーパー等でよく拭き取っておく

大葉は軸を切り、大根はおろし、梅干しは種をぬき包丁で叩きペースト状にする

アジの皮目に浅く切れ目を入れ、身側には叩いた梅干しをぬり大葉をのせ、頭側から巻き楊枝で止める

これに片栗粉を満遍なくつけ、余分な粉を落とす

フライパンに少し多めの油をひき、中火で全面が満遍なく焼けるように転がしながら焼いて、火が通ったら完成!

 

 

(あとは盛り付け……の前にちょっと味見を)

 

箸でひとつまみして口に持っていく。

 

(……皿まで舐めたくなるほどだからなめろうだっけ)

 

思った以上に美味しかったのでもうひとつまみといこうとするが、そこを何とか耐え抜いた。

 

 

ご飯の上に海苔を揉みながらちらし、きざんだアジを盛り、白ごまをふりかけて……

 

 

「出来たぞー!」

 

「「待ってました!」」

 

ランサーともう1つ女の声が聞こえてきた。

 

「ひまり、また太っちゃうよ?」

 

「うグッ!お、美味しいご飯作る士郎さんが悪い!」

 

「確かにそれは一理ある」

 

「あるんだ……」

 

「えーっと、もういいかな?」

 

「お願いしま〜す」

 

「えー、本日のご飯は、アジのなめろうとアジの梅しそ巻き、あと骨煎餅です」

 

料理を全員の前に置いていく。俺も席に座り、全員が揃った所で

 

『いただきます』

 

なめろうを口に入れ、それぞれに幸せそうな顔をする。それを見てランサーが

 

「いいねぇ、美人のそういう顔は。作りがいがあるってもんだ、なぁ坊主!」

 

「う、まぁ、うん」

 

「び、美人ってそんな〜」

 

ひまりは嬉しそうにして、蘭とつぐみは顔を赤くして、巴は少し恥ずかしそうにハハハと笑い、モカはあまり気にせずなめろうを頬張っていた。

 

「美味しいね〜」

 

「アジって美味しいんだな、あこにも食べさせてやりたいよ」

 

「まだアジ残ってるし作り置きして持って帰るか?」

 

「いいのか!」

 

「あぁ、別に構わないよ」

 

「ありがとな、士郎さん!」

 

「あ、でもこれは今しか食えないかもしれないな」

 

「それって?」

 

俺は冷蔵庫からある容器を持ってくる。

そしてなめろうにかける。

 

「出汁茶漬けの完成」

 

「士郎さん!私にも!」

 

「あたしも欲しい」

 

「モカちゃんも欲しいぞ〜」

 

「ハイハイ、全員に行き渡る量あるから焦るなって」

 

それから全員に作り置きの出汁をかけ、蘭達は美味しそうに頬張る。

 

「魚1匹でこうも色々食えるもんかね」

 

「色んな味が楽しめていいだろ?」

 

「ま、美味しい事には変わらねぇから別にいいけど」

 

そして全員が食べ終わる。

 

「ごっそーさん、美味しかったぜ!やるな!坊主!」

 

ランサーは勢いよく俺の背中を叩いてくる。

 

「いっでっ!?」

 

バンッ!と背中を叩く音が居間に響き渡る。

 

「いや〜久しぶりに美味い飯食ったわ!坊主、また頼むわ!」

 

「お、おう」

 

背中を擦りながら、応える。

食器を洗う為キッチンへ向かうと、何故かランサーが手伝いにきた。

 

「ん」

 

「……」

 

「ほれ、早く受け取れ」

 

「……何の真似だ?」

 

「なに、一宿一飯の恩義っていうだろ?」

 

「一宿一飯って、それ泊まるって意味もあるからな!?」

 

「いちいち細かいねぇ、坊主は」

 

皿洗いが終わり、手を拭いているとランサーが冷蔵庫を開け、自分が買った酒を取り出す。

 

「よっし、食後の酒盛りと行こーかね!!」

 

「いや、全員未成年だから飲まそうとするなよ!?」

 

「お酒いっぱいあるね」

 

「私達にも何かないんですか〜士郎さん!」

 

「おいおい、士郎さんに集るなよ」

 

「ハァ、皆んなの分もジュース買ってあるから」

 

「流石シローさん」

 

色々とツマミやお菓子を広げ、その後を皆で楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

ちなみにランサーが酒を飲みきるまで、晩酌は続いたという




ランサー登場回!
彼の登場シーン必ず釣りと決めていたのだよ……( -ω- `)フッ

次に登場するサーヴァントは誰かな!?



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GW1日目 ポピパ

さぁ、始まったぜ!!
GWに最大5本投稿!!

正直にいってこれを考えた時は⚪ぬかと思った……


だが、私はこれをやり遂げる!!
という訳でどうぞ⤵


★花咲川女子学園

 

「明日からゴールデンウィークだ〜!!」

 

「嬉しそうだね、香澄」

 

「だってゴールデンウィークだよ!?いっぱい楽しい事できるじゃん!」

 

「幸せな頭してんな」

 

「それが香澄ちゃんのいい所だよ」

 

「そうね」

 

花咲川女子学園校門前で、他の生徒が下校している中に一際目立つくらい騒がしく帰っているグループがいた。

 

花咲川女子学園で結成され、ガールズバンド時代にキラキラ輝く5人組の女子高生バンドグループ……

 

ガールズバンド『Poppin’Party』

 

自分達の気持ちを音にのせて、たくさんのドキドキを届ける為に日々ライブをしている

 

そんな彼女達は今、ある事で難航していた。───それは。

 

「ゴールデンウィークは何して過ごす?」

 

「うーん、バンド練習でもいいけどせっかくなら思い出にある事もしたいよね」

 

「私は皆に合わせるわ」

 

「じゃあ有咲の家に行こう!」

 

「毎回毎回私の家に来るんじゃねぇよ!!」

 

うーん、と彼女達は悩みながら帰路辿っていく。そこで香澄が何か思い付いたかのように目を輝かせる。

 

「どうしたの香澄?」

 

「皆んな、いい案が思い付いたよ!!」

 

「いい案って?」

 

「それはね─────」

 

 

 

★CiRCLE

 

「ふぅ……」

 

一方で士郎は、CiRCLEにて荷物の整理を行っていた。約1時間前にまりなから呼び出され、荷物運びを任されて運び出した数は49個に至る。

そして士郎の目の前には最後の1つ

 

「これで……ラスト!」

 

荷物を勢いよく持ち上げ、落とさないように慎重に運び出す。中身はおそらく機材類の物で重さで少しでも傾いたら、そのまま倒れそうになる。倒れる事を何とか避ける為に、ゆっくり慎重に運び出す。

 

「よし、何とか終わった……」

 

落とすこと無く荷物を無事運び終え、終えた事により疲れが一気に現れ、汗を拭きながらその場に座り込む。

疲労により、少し荒い息を整えようとしばらくその場にいると頬に冷たい物が当たる。

士郎は後ろを振り返ると───

 

「お疲れ様」

 

「何とか運び終えましたよ、まりなさん」

 

まりなから渡されたドリンクを受け取り、飲み始める。

 

「ごめんね!今日シフト入ってないのに呼び出しちゃって!」

 

「いえ、こっちも暇だったんで大丈夫ですよ」

 

「いや〜、本当に助かったよ!ありがとう!」

 

「どういたしまして」

 

士郎はその場から立ち上がり、身体を伸ばす。

 

「機材チェックしてきますね」

 

「え?いいの?」

 

「せっかくですから、最後までやって行きますよ」

 

そう言って士郎は、部屋から出ていった。

 

 

それから数分後……

 

「こんにちはー!」

 

「いらっしゃい、あれ?今日予約してたっけ?」

 

「いえ、今日は別の用事でここに来ました」

 

「別の用事? 」

 

香澄はキョロキョロと辺りを見渡し、まりなに質問する。

 

「士郎さんっていないんですか?」

 

「士郎さんは今日はいないんじゃないかな?」

 

「何で沙綾が知ってんだ?」

 

「この前私の店でね、シフトの曜日を教えて貰ったんだ」

 

「へぇー」

 

香澄はそれを聞くと残念そうな顔をする。

 

「じゃあ今日はいないんだ……」

 

「そう香澄の思いどおりになる訳ないだろ」

 

と、香澄を押して店から出そうとする有咲とそれに続いて出ようとするメンバーを見てまりなが

 

「士郎君ならいるよ?」

 

とさぞ当然かのように応える。

 

「え……いるんですか!!」

 

それを聞いた香澄が目を輝かせてくる。

 

「うん、今日ちょっと荷物が届いてね。流石に私1人では無理ってなって駄目元で士郎君にお願いしたら、引き受けてくれたんだよ、ホントいい子が来てくれたもんだよ〜」

 

まりなは嬉しそうに話す。

 

「じゃあ今士郎さんはここにいるんですね」

 

「うん、今機材チェックしに行ったから、あそこの部屋にいるんじゃないかな?」

 

まりなが指を指した部屋に香澄は誰よりも先にその部屋に入っていく。

 

「こんにちはー!」

 

「うおっ!?か、香澄?今日来る日だったのか?」

 

士郎は突然背後から大声が聞こえ、驚きながら振り返り笑顔でその場にいた香澄と会話を交わす。

 

「違いますよ?」

 

「え?じゃあ今日は何の用事で来たんだ?」

 

「士郎さんを探しに来ました」

 

「お、俺を?」

 

理由を聞こうとした時、香澄の後方から

 

「このバカすみ!!何の許可もなく部屋に入って行くなよ!!もし間違った部屋に入ったらどうするんだよ!!」

 

「そ、その時は謝る……てかバカすみって私の事!?」

 

「それ以外誰がいるだよ!このバカすみ!!」

 

「うわぁー!有咲が怒ったー!!」

 

「待ちやがれー!」

 

香澄と有咲はそのまま部屋から出ていき、香澄の叫び声と有咲の怒り声だけが聞こえてくる。

 

「何だったんだ……?」

 

「あ、本当にいた」

 

すると今度は別の3人───たえ、りみ、沙綾が現れた。

 

「こんにちは、士郎さん」

 

「あぁ、こんにちは。今日は一体どうしたんだ?」

 

「あれ?香澄から聞いてない?」

 

「聞く前にどっか行っちゃったからな」

 

「あー」

 

遠くから聞こえてくる声に3人は納得した。たえ、りみは止めてくる、と言って部屋から出ていった。

 

「で、俺に用があるんだろ?」

 

「そうそう、香澄がね考えた案なんだけど士郎さんゴールデンウィークって何か予定ある?」

 

「いや、基本家にいるから予定っていう程の事はないな」

 

「それなら良かった、実は士郎さんにお願いしたい事があるの」

 

「お願い?」

 

「私達の練習を見に来て欲しいんだ、お願いしてもいいかな?」

 

「逆にいいのか?俺あんまりバンドとか詳しくないから」

 

「大丈夫、感想は欲しいけどただ私達の練習の成果を見て欲しいだけだから」

 

「なるほど、了解。そういう事ならお言葉に甘えて見学させてもらうよ」

 

「流石士郎さん!」

 

沙綾は他の4人にこの事を伝えに部屋から出ていく。士郎は丁度機材チェックが終わったのでそのまま沙綾の後に続いて部屋から出る。

 

ロビーで正座で怒られてる香澄とバカすみ!と連呼している有咲、その有咲を宥めようとしているたえとりみを見つけた。

 

「まだ怒ってたんだ……」

 

「ハハハ……」

 

士郎の問いに沙綾は乾いた笑いで応える。

士郎は有咲の元まで近付き、頭に手をのっける。

 

「そこまでしといてやれ」

 

「へ?士郎さん!?」

 

香澄に怒る事だけ考えていて、近付いてきた士郎の存在に気付かず、更に頭に手をのっけられて有咲は顔を真っ赤にして困惑する。

 

「香澄」

 

士郎は正座で座っている香澄に話し掛ける。

 

「はい?」

 

「沙綾から内容聞いたけど、是非ともお前達のバンドを俺に見せてくれ」

 

「え!いいんですか!!」

 

「でも、感想とかはあまり期待すんなよ?音楽系では素人なんだから」

 

「はい!それでも大丈夫です!」

 

「そっか、なら明日楽しみにしとくよ」

 

士郎は笑みを浮かべながら、まりなの方へ向かう。

 

「という訳で明日頑張るぞー!」

 

「「おぉー!」」

 

「楽しそうだね」

 

「私はどっちでもいいけど、見てくれる人がいるなら頑張るだけ。別に香澄の為じゃないし」

 

「全く素直じゃないね」

 

「な!?どういう事だよ!おたえ!」

 

そして再び騒がしくなるのだった。

 

 

 

翌日

 

「今日は来てくれてありがとうございます!」

 

予約していたスタジオに6人入り、1人は席に座り楽器を持った5人をみる。

 

「では、1曲目……いきます!」

 

センターにいる香澄が元気よく曲名を告げ、曲を奏で始める。

音楽をあまり聞かない士郎にとってはどれも聞く歌や曲は初めての事で、楽しそうに演奏する5人を見た後、静かに目を瞑り、歌と曲を集中に聞き入る。

 

時間は思った以上に早く過ぎ、もう6曲目が終えた。

 

彼女達は額から流れる汗を気にする事無く、次の曲へと奏でて行く。そして士郎は気付いた。彼女達が今やってる練習の方法が……

この部屋には彼女達と士郎しかいない……だが、彼女達は今ここにはいない、まるでライブのように大勢の客を相手に演奏をしているように感じた。彼女達一人一人に浮かべている笑みは仲間と共にバンドをする楽しさともう1つ、客を楽しませたいといった感情があるようにも感じた。

 

「ふぅ……」

 

そして10曲目が終わり、練習が終了する。

 

「どうでしたか!士郎さん!」

 

「あぁ、お疲れ、心にまで響くようなとても素敵な音色だったよ」

 

「やったね!」

 

「頑張った甲斐があったね」

 

「でも流石に疲れたね」

 

「そうね、少し休憩しようか」

 

「さんせーい」

 

「お、ならこれ食うか?折角貴重な時間をくれた訳だし、お礼という事で」

 

士郎は自分の鞄からクッキーを取り出した。

 

「クッキーだ!」

 

「色んな味があるから、好きなやつを選んでくれ」

 

「わーい!」

 

5人がクッキーに目がいってる時に士郎はふと思った事を聞く。

 

「そういえばこれって俺がいるだけでいつもの練習と変わんないよな?ゴールデンウィークっていう貴重な時間使っていいのか?もっとこう、どっか遊びに行く、とか」

 

「これでいいですよ!私達が話し合って決めた事ですし」

 

「そうなのか?」

 

士郎が不思議がっているのを見て、香澄達はお互い顔を合わせて笑いあった。

 

 

 

 

 

成功だね!!

 

 

 

 

 

ゴールデンウィーク1日目 Poppin’Partyのお礼




(○゚∀゚)ガハッ∵∴


つ、次はAfterglowだな……頑張るぞ…!


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GW2日目 アフグロ

2つ目!アフグロ!!

逝くぜ!




★羽沢珈琲店

 

「……いよいよだね」

 

とある店の一角で、5人の少女達がいた。

 

「……皆んな、準備はできてる?」

 

テーブルには5人分のカップとスイーツが並んでおり、その真ん中に1枚の紙が置いてある。

 

「アタシは準備バッチリだぜ」

 

「わ、私は少し心配なところがあるかも……」

 

「モカちゃんはバッチリだよ〜」

 

「私もバッチリだよ!……多分」

 

その紙のタイトルはデカデカとこう書かれていた。

 

「今日実行するのは、前々から計画していた案─────

 

 

 

“士郎さんにあたし達のライブを楽しんでもらう会”を実行します」

 

 

 

ゴールデンウィーク2日目 天候:晴れ

 

「なぁ……前々から思ってたけどタイトル変えないか?」

 

「えぇー!いいじゃん!」

 

巴の発言にひまりが席を立ち、抗議する。

 

「こうゆうシンプルなタイトルって何かイイ感じじゃない!?」

 

「あたしは長いと思いま〜す」

 

「つ、つぐなら分かってくれるよね!?」

 

「え!?わ、私はー、えっと……」

 

つぐみはそのまま顔を逸らし、黙り込んだ。

 

「ら、蘭なら分かってくれるよね!?」

 

「タイトルはこの際どっちでもいいけど」

 

「ひど!?」

 

蘭に話を振るが、冷たくあしらわれひまりはショックを受け、そのまま隣の巴に泣き付いた。

 

「それで話を戻すんだけど……」

 

蘭がそう言うと4人は真剣な面持ちで話を聞き入る。

 

「本来は昨日行う予定だったけど、士郎さんに予定があって出来なかったけど今日は暇って聞いたから」

 

「で、その肝心の士郎さんは?」

 

「あたし達よりも遅い時間に来てもらうように伝えた」

 

「あと何分位で来そう?」

 

蘭はスマホの時間を確認する。

 

「多分もう家を出てこっちに向かってると思う」

 

「もうそんな時間でしたか〜」

 

「じゃあアタシとつぐで先にCiRCLEに行って準備してくる」

 

「任せたよ!」

 

「お母さん、行ってくるねー!」

 

巴とつぐみは店を出て行き、CiRCLE方面へ向かって行った。その数分後に入れ違いで士郎が店に入店してくる。

 

「ごめん、待たせたか?」

 

「そんな事ないですよ」

 

士郎はいつものジャージ姿で店に訪れていた。何となく士郎がいつものジャージ服で来ることが予想出来てた3人は顔見合せて笑みをこぼしていた。それを不思議そうに見てる士郎を置いて

 

「今日呼ばれた理由って何だ?」

 

「実は士郎さんに折り入ってお願いがありまして」

 

「お願い?」

 

「シローさんにあたし達のバンドを見て欲しいんだよ〜」

 

「バンドを?」

 

「そう!私達のバンドを見て感想とかくれたら万々歳!」

 

「別にいいけど、俺あんまり音楽聞かないから対した感想は言えないぞ?」

 

「大丈夫です、ただ今日はあたし達のバンドを見て欲しいだけです」

 

「俺何かで良ければ」

 

士郎は笑みを浮かべながら、応える。

 

「じゃあ早速CiRCLEへレッツゴー!」

 

ひまりの掛け声と共に士郎達は店を出て、CiRCLEへと向かった。

 

 

★CiRCLE

 

「お、やっとお出ましか」

 

「おぉ、巴か。もうこっちにいたんだな」

 

「あぁ、話は蘭達から聞いただろ?だから楽器とか下準備等を先にしていたんだ」

 

「なるほど、つぐみも巴と一緒に準備か?」

 

「はい!士郎さんを迎える人はそんなに多くなくてもいいかなって思って」

 

士郎が納得していると、受付の方から見知った顔をした人が姿を現した。

 

「やっほー、士郎君」

 

「まりなさん、こんにちは」

 

まりなはニヤニヤしながら、士郎に近付き話し掛ける。

 

「聞いたよ?今日はAfterglowのメンバーのバンドを見るそうじゃない」

 

「え?ええ、そうですね」

 

「君、これがどれだけ凄い事かわかってる?」

 

まりなに言われてる事がまだ理解出来ず、頭を傾げる士郎。更に近くにいる蘭達も何の話か分からず頭に?を浮かべていた。

 

しかし、彼女の次の発言でAfterglowのメンバーの心に火を付ける事になる

 

「今有名なバンドグループの演奏を独占で見れるのよ?昨日はPoppin’Partyで今日はAfterglowでしょ?ファンが聞いたら、羨ましがられて大変な目に合うわよ?」

 

『!?』

 

「そこまでですか……?」

 

「彼女達の人気を舐めてるの?」

 

「舐めてるつもりはないんですが……」

 

かぁ〜、と声を上げながら士郎の背中をバシバシ叩き始める。

 

「恐れ入ったよ!君の人望には!この前だってRoseliaのメンバーと楽しそうに会話してたしね!」

 

「確かに彼女達と話はしてましたけど、あれは料理の感想を聞いてただけですし」

 

と、他愛のない会話をしていると後ろから何やら鋭い視線が刺さっているのを感じ、振り返りそして後悔した。

 

「……士郎さん、昨日の用事って」

 

「あ、あぁ、えっとポピパ?の子達が聴いて欲しいって言われてそれで」

 

「シローさんが取られちゃった〜、シクシク」

 

「お、おい!泣き真似はやめろって」

 

「私達がいながらポピパの方へ行っちゃうなんて!」

 

「ちょ、言い方!」

 

「アハハハ!士郎さんが困ってる所悪いけど、この光景結構面白い」

 

「なんでさ!?」

 

「士郎さん……」

 

「やめてくれ!つぐみのは精神的にもダメージが入るから!」

 

誰からも助けの手をくれず、1人重い足取りでスタジオに入って行く士郎だった。

 

 

 

「まさかポピパのメンバーに先越されていたなんてね」

 

「音楽をあまり聞かない士郎さんだからこそ、聞いてもらったのかまたは、もっと別の感情で聞いてもらったのか」

 

「べ、別の感情って?」

 

「つぐとひーちゃんにはまだ早いお話ですね〜」

 

「ちょモカ!?私を子供扱いしてない!?」

 

「待って!?何で私も含まれてるの!?」

 

「気の所為だよ〜」

 

「「それ絶対気の所為じゃなーい!!」」

 

逃げるモカに追いかけるつぐみとひまりを見ていた蘭に巴が語り掛ける。

 

「じゃあアタシ達はどうしますか?」

 

「そんなの決まってる」

 

蘭が喋り出すと追いかけっこしていた3人が動きを止め、蘭の方へ見やる。

 

 

「“いつも通り”やっていこう」

 

 

その言葉を聞き、4人は笑いながらそれぞれの楽器を持ち、スタジオに入って行く。

 

士郎は椅子に座り、楽しみに待っていた。

 

「Afterglowです。今日は士郎さんにあたし達のバンドを楽しんで貰えるようにいつも通り頑張ります。よろしくお願いします」

 

蘭がそう言うと、一瞬スタジオが静寂に包まれる。そこに巴のバチが静寂を切り、演奏の合図を鳴らす。

 

Afterglowとは、彼女達が変わりゆく環境の中、5人でいつも一緒にいられる場所として結成されたバンドグループで、いつも集まって練習する時間が放課後───つまり夕方なのでバンド名に夕焼けという言葉を入れたら何時でも思い出せるといった意味で『Afterglow』と名が付いたのだ。

そんな彼女達をいつも近くで見ていたつもりだった士郎だが、今日初めて自分が知らない彼女達の顔を見た。彼女達がバンドをやっていた事は知っていた。それでも尚、日常とバンドとの差は著しく違っていた。そんな彼女達の事を最初は驚きはしたが、徐々に歌や曲に聞き入るようになる。そして士郎は思い知った。

自分が知っていたのはただ日常を楽しむ彼女達だけで、それ以外の所での活動をしている彼女達の事は全く知らなかった事を……

 

(これは蘭のお父さんも気づいていないかもしれないな……)

 

士郎は心からそう思った。

 

だって今の彼女達を見て、バンドをやめろ、何て言葉出せる方がおかしい……

 

だって─────

 

 

 

こんなにも彼女達は楽しそうで、そして何より俺から見た彼女達は……

 

 

 

 

─────輝いて見えるのだから

 

 

 

 

 

 

 

ゴールデンウィーク2日目 Afterglowの“いつも通り”




次はパスパレだったな……

よっしゃ〜!頑張るぞー!


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GW3日目 パスパレ

(-_-)zzzおやすみ





「ふぅ、洗い物はこれで終了っと」

 

士郎はいつもの日課である家の掃除を始めていた。時間はまだ早朝の6時半、蘭はまだ部屋で寝ている。本来であればそろそろ起こしに行かなくてはならないが、今はゴールデンウィークで更には昨日のバンドの件で疲れてると思うので、士郎は今日ぐらいゆっくり休んで貰うため自分からは起こしに行かないようにしていた。

 

「しかし昨日の蘭達、凄かったな……」

 

士郎は食器を拭きながら昨日の事を思い出していた。

 

いつも近くで見てきたつもりだったが、士郎は自分でも知らなかった彼女達の一面を初めて知り、嬉しくもありそして悔しくもあった。

 

悔しさは蘭達に対してじゃなく、自分に対してだ。

 

いつも近くにいたのに、彼女達の事を何にも理解していなかった自分に対して悔しく思っていたのだ。

 

「俺も……まだまだだな……」

 

笑みをこぼしながら、ボソッと呟く。

士郎は暗くなった自分を戻す為、頬を叩く。

 

「よし、気分がてら外に出るか」

 

そう言って置き手紙を置いてから家を出ていった。

 

 

 

★商店街

 

何の宛もなく外をブラブラと歩き始め、商店街へとやってきた士郎は久しぶりに街を探索する事にした。

 

「この辺りを探索するのは初めて来た時以来だな……」

 

あの時の光景を思い出しながら、商店街を歩き続けていると1枚のポスターに目に入った。

 

「これって……」

 

そこには『Pastel✻Palettes GW LIVE!!』とデカデカと書かれた宣伝ポスターだった。

 

「確か、あの子達もバンドをやっていたよな……」

 

もしかしたら、香澄達や蘭達以外のバンドを見たら何か掴めるものがあるかもしれない……

そう思った士郎は開催地を確認して、そこに向かう事にした。

 

 

 

 

 

「はい、ではそれでいきましょう」

 

開催地でライブの準備が最終段階まで迫っていた時、少しトラブルがおき、現場のスタッフと千聖が話し合っていた。

 

「こちらの問題はこちらでどうにか出来そうですが……」

 

「やはり問題はこれですね……」

 

その問題点とは今日行うライブで機材や照明担当していたスタッフの人が突然来れなくなり、更にはそこに代わりに担当してもらうスタッフも居らず、困難を極めていた。

 

「照明は他の人に回せますが、流石に機材の方までは……」

 

「ジブンが行けたらいいんスけど……」

 

「流石に麻弥ちゃんを抜く訳には行かないわ」

 

「そぉッスよね……」

 

うーん、と悩んでいると彩が1人ここにいない事に気が付いた。

 

「あれ?日菜ちゃんは?」

 

「ヒナさんなら先程までアソコにいましたよ?」

 

しかしイヴが指さした方向に日菜はいなかった。

 

「え、待って!?日菜ちゃんどこ行ったの!?」

 

問題事がもう1つ増えた時だった。

 

 

 

 

「やっぱり人が大勢いるな」

 

開催地に着くとそこには大勢の人で賑わい、用意されていた椅子に座れなかった人はその場に立って始まるのを待っていた。

あまりに人が多すぎて見易い場所を探す為に辺りを歩いていると、背中に誰かが見知った声と共に抱き着いてきた。

 

「お兄さん!こんにちは!」

 

「うおっ!え?」

 

振り返ると金髪の髪にサングラスを付けた女の子がいた。だが、士郎にはこの女の子と面識がなく、一体誰なのか思考をフル回転させながら考えていた。

 

「あ、そういえばあたし変装してたんだった。うっかりうっかり♪」

 

舌を出し、てへぺろ、と言いながら士郎の手を引っ張り人気があまりない場所まで連れていき、金髪の髪───カツラを取った。

 

「あ、君は!」

 

「やっほ〜、あたしの事覚えてる?」

 

「勿論だよ、君は紗夜の妹の日菜ちゃん、だろ?」

 

「大正解!」

 

日菜は嬉しそうに拍手し、サングラスを外した。

 

「まさかお兄さんがあたし達のライブ見に来てくれるなんて嬉しいな〜」

 

「この前事務所にお邪魔させてもらった時から、興味はあったからな。っていいながら今日ライブが会ったのは初めて知ったけどな」

 

苦笑しながら応えると、日菜は笑いながら

 

「アハハハ!それでも見に来てくれたんでしょ?じゃあ許してあげる!」

 

「ありがとな」

 

許しを得て苦笑から自然の笑みに変わった士郎だったが、1つの疑問に思った事ができた。

 

「そういえば日菜はここにいていいのか?もうすぐライブ始まるんだろ?」

 

「あ〜、それがね────」

 

日菜から説明を受け、士郎は今彼女達が今どういう状況に陥っているか理解した。

 

「なるほどな……じゃあ下手したら今日は中止になるかもしれないって事か」

 

「そうなっちゃうの、うーん、何とかならないかな〜?」

 

そこで日菜はあ!、と声を出し、何か閃いたのか目をキラキラさせ、そして何故か士郎を見ながら応える。

 

「お兄さん、麻耶ちゃんの師匠さんだったよね!」

「なんでさ……俺は麻弥の師匠じゃないぞ?」

 

「つまりお兄さんは機材に詳しい!」

 

(話聞いてないな、こりゃあ……)

 

要するに、と日菜は士郎の手を掴み、お願いする。

 

「お兄さん!あたし達のライブ、手を貸して欲しいの!」

 

「まぁ……大体は予想出来てたけど……本当に俺でいいのか?」

 

「うん!お兄さん以外いないの!もうあたしの中でるん♪って来たから!!」

 

「えぇ……ま、まぁ、俺で良ければ手を貸すよ」

 

「やったー!じゃあ早速レッツゴー!」

 

「え、ちょッ!」

 

日菜は士郎の腕に抱き着いて、仲間達の元へ向かって行った。

 

 

 

「日菜ちゃーん!どこ行ったのー!」

 

日菜がいなくなって彩と麻弥、イヴの3人で探す事になり楽屋の辺りを散策する。

 

「本当にどこいっちゃったんだろ、日菜ちゃん」

 

「ここら辺に居ないってことスかね?」

 

「じゃあをハンイを広げて見ましょう!」

 

「そうだね、範囲をもうちょっとだけ広げて探そうか」

 

「日菜さん何処に行ったんスかね……」

 

「あたしがどうかしたの?」

 

「それが日菜ちゃんが居なくなっちゃったの」

 

「なるほど、じゃああたしも探すの手伝うよ!」

 

「ホント?ありがとう!」

 

「じゃあ探しに行こうー!」

 

「「「「おー!」」」」

 

「なんでさ……」

 

「「「え?」」」

 

我慢出来ず、士郎はこの流れに終止符を打って出た。

 

「て、ええええ!?お兄さん!?それに日菜ちゃん!?」

 

「し、士郎さん!まさかここにいるなんて驚きッスよ!」

 

「シショウ!お疲れ様です!」

 

「なんでさ……」

 

ツッコミを入れるのに多少疲れてきた士郎だったが、まだ挨拶をしていないのでとりあえず挨拶をかわす。

 

「こんにちは、話は日菜から聞いたぞ」

 

「え?」

 

「って事は!」

 

「俺で良ければ手を貸すよ」

 

「やったー!」

 

「それじゃあ早速チサトさんの所へいきましょう!」

 

「ちょ、押すな引っ張るな!?自分で走れるから!?」

 

士郎はイヴと日菜に引っ張られ、そして後ろから彩と麻弥に押されながら、千聖がいる楽屋へと向かう。

 

「千聖ちゃーん!」

 

彩と声がし、扉の方へ目をやるとそこには先程まで彩達が探していた日菜と今回の非常事態を解決してくれる強力な助っ人、士郎がいた。

 

「士郎さん、こんにちは」

 

「あぁ……こんにちわ……」

 

ここに来る途中で色んな目にあい、少し疲れ気味になっていた。

 

「どうかされたんですか?」

 

「いや、気にしないでくれ……」

 

「そうですか、それと日菜ちゃん、どこに行ってたの?」

 

「え?えーっと、か、観客席にお兄さんが見えたからさ!助っ人として来てくれないかな〜?と思って飛び出しちゃった!」

 

日菜は千聖から放たれた鋭い視線に怯えながら、嘘つく。そこに助け舟がでる。

 

「あぁ、観客席から見てたら日菜が来てな、話を聞いて俺が了承したんだ」

 

「そうですか……確かに士郎さんに来て頂けた事は私達にとって嬉しい事ですが……わかりました。士郎さんに免じて説教はなししてあげます」

 

「やったー!」

 

「けど、次また同じ事を仕出かしたら有無を言わさず説教だからね?」

 

「は、はい!」

 

「それじゃあ士郎さんに早速お願いしてもよろしいですか?」

 

「分かった」

 

「お兄さん、頑張ってね!」

 

「それはこっちのセリフだけどな、まぁやるだけやってみるから、そっちもライブ頑張れよ!」

 

「はい!」

 

「任せておいて!」

 

「ジブンも頑張るっス!」

 

「ブシドーのココロで頑張ります!」

 

「それでは私達は向こうでライブ衣装に着替えてきますので、この後暇なら裏側から見ていってください」

 

「あぁ、そうさせて貰うよ」

 

「それでは」

 

そう言ってスタッフと共に5人は部屋を出ていった。

 

「さて、始めますか」

 

「こちらの機材なんですが───」

 

 

結果から言うと、直す事に成功した。

流石に苦難なくとはいかなかったけど、何とか直す事が出来た。この事をスタッフに伝えると感謝を述べたあと、監督が呼んでいる言われ、案内された場所に向かう。

 

「やぁ、また君には助けられたね」

 

指定された場所に監督が椅子に座っていた。

 

「ど、どうも」

 

「立ち話もなんだ、椅子に座ったらどうだい?」

 

「じ、じゃあ失礼します……」

 

士郎は空いた椅子に座り、監督が見ている方向を見る。そこには大きなテレビがあり、画面には彼女達が映っていた。

 

「話は聞いたよ、今日はあの子達のライブを見に来てくれたんだってね」

 

「いえ、今日たまたまライブある事を知って、それで───」

 

「それでも見に来てくれたんでしょ?なら変わりはないさ」

 

「そ、そうですか」

 

そこで話が途切れたので、士郎はテレビに目をやる。

そこには先程まで楽屋で個性それぞれに発動させて笑いあって彼女達ではなく、正しく“アイドルの顔”で笑顔を絶やさずステージに立っていた。

 

「驚いているようだね」

 

監督に見透かされ、驚きながらみる。

 

「君には先程までの騒がしかった彼女達が1番印象に残っているのだろう。だが、今ステージに立っている彼女達を見て自分が思っていた印象がグルッと変わったんじゃないか?」

 

「……その通りです」

 

香澄達や蘭達の時もそうだ。

いつもの日常の顔が彼女達の顔と、勝手に決めつけそして理解したつもりでいた。

 

だが、実際は違う。

彼女達はバンドという顔を持ち、いや、或いはまた別のものでもまた違った顔を持っているのかもしれない。士郎が知っているのは彼女達のほんの一部の素顔でしかないのだ。

 

「人にはね、士郎くん。それぞれの感情を持った笑顔があるのだよ」

 

「感情を持った……笑顔?」

 

「そう。怒りを催す笑顔や、悲しみを表す笑顔、そして楽しみに満ち溢れた笑顔。言い出したら数え切れない程の笑顔があるね。その中で君は幾つの笑顔を人に見せてきた?」

 

監督に言われ思い出そうとするが──────

 

「分かる訳がないよね?だってそれが当たり前なんだから」

 

士郎は監督の方へ目をやるが、監督はテレビの画面を見たまま話を続ける。

 

「その笑顔を自分で引き出そうとしたら、それは作り笑いと変わらないんだから」

 

なら、と士郎が何かを言う前に監督が答える。

 

「答えは簡単。きっかけだよ。何かに対して感情を抱くきっかけさえあれば人は無意識に見せるのだから」

 

彼女達をご覧ん、と監督が言う。

 

「今の彼女達はどんな表情をしている?怒りに満ちた笑顔か?それとも悲しみに満ちた笑顔かな?」

 

彼女達の顔をよく見てみる。

一見どこでも見せる笑顔だが、何故かそれが違うように感じてしまった。

 

「……何かに対して喜んでいる笑顔?」

 

「私も同じ答えだよ、でもね私は他にもこう思うんだ

 

 

────何かを楽しんでいる笑顔ってね

 

「何かを楽しんでいる?」

 

「そう、彼女達の場合はアイドルを楽しんでいる、に当てはまるのかな。アイドルは時としてバッシングを受けたり、嫌がらせを受けたりする事がある。それでも彼女達がアイドルという存在である限りそれを最大限楽しんでいこうって、彼女達の中ではそう思っていると私は思うんだ」

 

監督の話を聞いて、黙り込んだ士郎

 

「それが正解かどうかは分からないよ?だってこの世界に答え合わせするものは存在しないのだから。思う事は人それぞれってことよ」

 

そこでやっと監督は士郎の方をみる。

 

「君はどうかね?」

 

「俺……ですか?」

 

俺は……どうしたいんだ?

 

「まだ……分からないです」

 

「なら、君から知りに行ったらいいんじゃないか?」

 

「え?」

 

「君には借りがあるからね、彼女達の練習を見に来てくれてもいいし、他の子の事が気になるならその子のを見にいけばいいよ」

 

「……」

 

「君が悔いの無い道を選ぶ事を私は勧めるよ」

 

「悔いの無い……道」

 

俺はまだ、彼女達の事を知らなすぎる……

なら、俺がやる事はただ1つ

 

「監督さん、ありがとうございます。おかげで自分なり答えが出ました」

 

「それは良かった」

 

「それから麻弥達にも伝えてください。色々と勉強になった、ありがとうって」

 

「任せておいて」

 

士郎は視線をテレビの画面に向ける。画面には彼女達が笑顔で客に手を振っていた。

 

 

知らないといけない……

俺が知らない……彼女達の世界を……

 

 

 

 

 

 

 

「それでここで働く気になってくれたかね?」

 

「監督さん、いい雰囲気が台無しです……」

 

 

 

 

 

 

ゴールデンウィーク3日目 Pastel✻Palettesのアイドルの“笑顔”

 




何かパスパレじゃなく、監督さんの話になってる?

知らんな!!

次はRoseliaだァ!


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GW4日目 ロゼリア

Zzzz……






★CiRCLE

 

 

今日はCiRCLEのバイトが入っており、受付の所でスタッフとして立っている。しかし、士郎は仕事とは別の考え事をしていた。

 

何を知れば、彼女達の事をよく知れるだろう……とか

 

何を学べば彼女達の見てる景色が見れるだろう……とか

 

士郎は思考を回しながら、考える。

幸いにも客は来ず、予約入れてる客もあと1時間近く先の事なので、仕事を放棄してる、とまでいかずにいた。

 

士郎の頭の中には、昨日の監督の言葉が過ぎり続ける。

 

 

『人にはね、士郎くん。それぞれの感情を持った笑顔があるのだよ』

 

 

『怒りを催す笑顔や、悲しみを表す笑顔、そして楽しみに満ち溢れた笑顔。言い出したら数え切れない程の笑顔があるね。その中で君は幾つの笑顔を人に見せてきた?』

 

 

『君が悔いの無い道を選ぶ事を私は勧めるよ』

 

 

「悔いの無い選択、か」

 

考えれば考え込むほど、分からなくなってくる。

士郎の表情は徐々に曇っていく。どれだけ悩んでも望む答えは出ない。それどころか逆に悩みが増えていく。こういう時にすぐ答えを出せない士郎は自分が悔しくなっていた。

 

しかし、時間はそれを許してはくれない……

 

悩み続けていると、扉が開き2人の女性が入ってくる。

 

「あら?士郎さん?今日バイトの日だったんですね」

 

「あ、ほんとだ、てあれ?士郎さん?」

 

紗夜とリサが来ている事に気が付かず、まだ頭を抱えたまま俯き続ける士郎。そんな士郎を心配に思い、駆け寄る2人。

 

「士郎さん?大丈夫ですか」

 

「士郎さん?おーい、士郎さーん」

 

「え……うおっ!?」

 

2人が顔を近付け、そこでやっと士郎は2人の存在に気が付いた。

 

「ふ、2人共早いな、まだ予約時間より早いぞ?」

 

士郎は時計を見ながら、2人に言う。

 

「早めに着いておいた方が時間を無駄にしなくて済みますからね……それより」

 

「どうした?」

 

2人は士郎の顔を心配そうにみる。

 

「大丈夫?士郎さん、何か俯いてたし、アタシ達が近付いても気づかなかったし」

 

「あ、あぁ、ごめん。ちょっと考え事をしてた……」

 

「それに顔色も悪いですよ?」

 

「そ、そうか?」

 

「そうそう。いつもは頼りになる士郎さん!って感じだったけど今の士郎はなんか疲れ果てた士郎って感じ」

 

「それほど深刻な悩みでしたら私達に相談してください。微力ながら力になれると思いますので」

 

「いつもお世話になってるからね、お姉さんに話してみ?」

 

「お姉さんって……俺より1つ歳下じゃないか……」

 

「細かい事は気にしないの、ささ、話してみ?」

 

士郎は話すかどうか悩むが、これは自分の問題だと決めつけ断ろうと言葉にする。

 

「いや、大丈夫だ。特に困るような悩みじゃ───」

 

 

「なら、私達に話してもいいんじゃないでしょうか?」

 

紗夜に言葉を遮られる。更にはリサに詰め寄られる。

 

「いつも助けて貰ってるし、これくらいの恩返しはさせてくれないかな?」

 

「で、でも───」

 

「そうですね、士郎さんにとって私達は信用に値しないっということなのでしょう」

 

「そ、そんな事思ってないぞ!」

 

「なら話してくれもいいんじゃないでしょうか?」

 

ウグッと小さく呻き声を上げ、言葉に詰まる。

 

「……アタシ達にも、何か手助けさせてくれない?」

 

トドメにリサからの涙目で、士郎は腹を括り話す事にした。

 

「ハァ……俺の負けだ、話すよ」

 

そう言うと、紗夜は呆れた顔と共に溜め息をつく。

 

「最初からそう言えば良かったんです」

 

「まぁまぁ話してくれるみたいだから結果オーライでしょ?」

 

そんな紗夜をリサが宥める。

 

「アンタも涙目で詰め寄ってただろ……」

 

「気にしない〜気にしない♪」

 

リサの相変わらずの対応に溜め息を零しながら、話し出す。

 

「特に深刻、て感じの問題じゃないんだ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「蘭やモカ達、それに香澄達や麻弥達の事を俺は知らなすぎるのかもしれないなって思って……」

 

「どういう事です?」

 

「簡単な話、俺は彼女達の日常面の顔しか知らないってなだけだよ」

 

「つまり士郎さんは───」

 

「彼女達の近くで支え続ける為には、他にもっと知らなきゃいけない事もあるんじゃないか?て思ってな」

 

「美竹さん達なら、そんな事しなくても近くに居てくれるだけでいいと思っていますよ?」

 

「あぁ、おそらく蘭達ならそう言うだろう。だからこれは俺の我儘でもあるんだ。アイツらの為に力になってやりたいって」

 

「なるほどね」

 

士郎の話を聞き、2人はどうすればいいか考え出す。そこにリサが────

 

「あ!ねぇ紗夜、こんなのはどう?」

 

何か思い付いき士郎に聞かれないように、紗夜に耳打ちする。

 

「それは名案ですね」

 

「でしょ?」

 

「早速湊さんに連絡してみます」

 

紗夜はスマホを取り出し、店から出て行く。そんな状況を理解できてない士郎はリサに問いただす。

 

「お、おい、一体何の話を────」

 

「ねぇ、士郎さんってまだ休憩って取ってない?」

 

「え?あ、あぁ、まだ取ってないけど」

 

「じゃあさ、その休憩時間の10分くらいアタシ達にくれない?」

 

「い、一体何する気なんだ? 」

 

「それは起きてからのお楽しみ〜♪」

 

 

 

 

数分してから湊とあこ、燐子が入店してくる。

 

「話は紗夜から聞いたわ」

 

「いや、俺はまだ聞かせれてないが」

 

「シロにぃ、まっかせておいて!あこがビシッと決めるから!!」

 

「何を!?てかシロにぃ?」

 

「そう!シロにぃ!」

 

ニッコニコで応えるあこ、その隣に立っている燐子は───

 

「ち、力になれるかどうか分かりませんが、が、頑張ります……!」

 

どういう事が状況をまだ理解が出来ず、リサの方へ振り向くが、笑顔で返された。

 

「では、スタジオへ向かいますよ」

 

「俺もか!?」

 

「アタシ言ったよ?10分時間を頂戴って」

 

「た、確かに言って承諾はしたけど……」

 

「つべこべ言わずに行きますよ」

 

「お、おい!ちょ───」

 

士郎に有無を言わさずスタジオの中に押し込むRoselia

中に入ると士郎を椅子に座らせ、自分達は楽器のセットを始める。

 

そこでようやく彼女達の意図を掴んだ。

 

「あ、やっと理解した?」

 

「あぁ、やっと理解したけど、理由がまだ分からない……」

 

「士郎さんが他の子達の日常以外の顔を知ったきっかけってバンド経由でしょ?」

 

「あ、あぁ」

 

「なら、バンドの事について知ればその子達の事も分かってくるんじゃないかなって思って」

 

それに、とリサは付け出し─────

 

「アタシ達の事も知って欲しいしね!」

 

そう言うと演奏する準備が出来たらしく、湊が

 

「貴方には私達『Roselia』の実力をその目で確かめて貰うわ」

 

そしてあこのバチを3回叩いた後、彼女達『Roselia』のバンドが始まった。

 

 

士郎は彼女達の技術の高さに驚かされていた。士郎は『Poppin’Party』『Afterglow』『Pastel✻Palettes』の3つのグループのバンドしか見て来ていない素人同然だが、それでも彼女達のバンドには何か惹かれるものがあった。士郎はそれが答えかもしれない、と考えるがやはりどれだけ聴いてもその答えは掴めず、その代わり彼女達が今までどれほど努力し高みへと目指したか、身にしめて分かった。

 

 

「ふぅ……どうだったかしら?」

 

演奏が終わり、湊は士郎に感想を求める。

 

「あぁ、率直に言うと凄い、としか言い様がないな……俺には音楽の知識とかあまり無いから専門的な感想は述べれないが、素人の俺から見たら5人共凄くカッコよかったよ」

 

「ふふん!」

 

あこがドヤっとした顔し、それを見た士郎は笑みを零す。そこにリサが士郎に問い掛ける。

 

「それで何か掴めた?」

 

「いや、まだ分からないままだ……でも聴いてると何か掴めそうになった事はあるが、そのまま聴き入っちゃってな」

 

頭を掻きながら、謝罪を述べる。

 

「ごめん、俺の為に時間を使ってくれたのに」

 

しかし、それを咎める声は上がらず、代わりに────

 

「なら、また聴けばいいじゃん」

 

「え?」

 

「何も謝る事の程じゃないわ、私達はやりたい事をやっただけで、逆に士郎さんの時間を使って聴いて貰ったのに答えが掴めなかったのは、私達の技術不足なだけです」

 

「そんな事はないさ!湊達はよく頑張ってたさ!掴めなかったのはただ俺の───」

 

士郎が次の言葉を発する前に、リサに遮られる。

 

「じゃあお互いに悪かったって事にして次に進んで行こう、ね?」

 

「……そうね」

 

リサの言葉に湊は納得したが、士郎は納得いかず言葉を続ける。

 

「でも俺は君達の練習時間を借りてまで聴かせて貰ったのに……俺は……」

 

「じ、じゃあ、また来たら……いいんじゃないかな……?」

 

「え?」

 

燐子の発言に士郎は間抜け声を出した。

 

「し、士郎さんさえ良ければですが……」

 

「あら、名案ね」

 

「そうですね」

 

「りんりん冴えてる〜!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

Roseliaの中では納得したが、士郎がまた納得言ってないのか食い下がる。

 

「俺がいたら君達の練習の邪魔になるだろ?君達に迷惑はかけたくない。それに───」

 

「士郎さん」

 

彼女達は笑みを零しながら呆れ顔で応える。

 

「最初に言ったでしょ?アタシ達はやりたい事をやってるだけだって、それに迷惑かけてるのはアタシ達の方だよ?」

 

リサは言葉を続ける。

 

「この前バイト先で人数不足だからって、助っ人で来てくれたよね?アタシも嬉しかったし、店長さんも喜んでたよ?」

 

「私は貴方に色んなアドバイスを貰ったわ」

 

「私も貴方には迷惑をかけてしまう事が多々ありまし、それに妹のピンチをいつも助けてくれて、ありがとうございます」

 

「こ、この前わたしが人に話しかけられて、戸惑っていた時に、助けてくれましたよね」

 

「あこはね!いつもおねーちゃんと仲良くしてくれているのと、いつも美味しいご飯を作ってくれて嬉しかった事かな!」

 

リサは士郎に近付き、問い掛ける。

 

「アタシ達はいつも士郎さんに迷惑をかけちゃってるから、逆に士郎さんから迷惑かけちゃってくれてもいいんだよ?」

 

「そんな迷惑だなんて思ってないさ」

 

「私達もですよ」

 

「え?」

 

「私達が練習している所を見てもらっても迷惑だなんて思いませんよ」

 

湊は士郎に近付き、微笑む。

 

「私達に恩返しをさせてほしい」

 

その後ろで紗夜、リサ、燐子、あこが微笑む。それを見た士郎は驚いた顔をしたが、彼女達の意思は本物だと分かり、諦める。

 

「そこまで言われちゃ、頼るしかないな……お願いしてもいいか?」

 

湊は微笑み返す。

 

「フフ……えぇ、勿論よ。貴方の迷惑────

 

 

 

 

 

 

 

──────Roseliaが引き受けたわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールデンウィーク4日目 Roseliaの恩返し




見てくれてありがとう!!

え?料理シーンはどこいったって?


ハッハッハ!!




ゴールデンウィークの話ではお見逃しください!!
私のネタが切れてしまいますので、何卒!!!!



次回がゴールデンウィーク最後の日 『ハロー、ハッピーワールド!』です!!


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GW5日目 ハロハピ

最後のパーティー!!

ハロー、ハッピーワールド!だぜ!


逝くぜ!!



「士郎!今日は笑顔がないわね!どうしたのかしら!」

 

「そ、そうか?そんな事ないと思うけど……」

 

商店街

いつもの買い出しで商店街を歩いているといつの間にか隣にいたこころと会話を交わす。

 

「えぇそうよ!士郎はいつも笑顔だったわ!でも今日は何か違うみたい」

 

「こころの気の所為とかじゃないのか?」

 

「そんな事ないわ!あたしはいつも士郎の顔を見てたから気の所為なんてないわ!」

 

「お、おう……」

 

何の恥ずかしも無くそう宣言するこころに少し気圧される。

 

「それで士郎は何に悩んでいるのかしら?」

 

士郎はその発言を聞くと驚き、こころの方へ顔を向ける。こころは純粋な目で士郎を見続ける。

しかし士郎にはこころの目が何故か自分の考えている事全て見通されている気がして、生きた心地がしなかった。

 

「なんで……そう思うんだ?」

 

「んー」

 

士郎は何故そう思ったかこころに問いただすとんー、と唸りながら考え出した。そして出た答えが────

 

「分からないわ!」

 

「───え?」

 

笑顔で返ってきた応えに士郎は呆然とする。

 

「なんでそう思ったかは分からないわ!でもそんな気がしたの!」

 

「なんじゃそりゃ……」

 

士郎は微笑を浮かべながら呆れる。まさか自分でも分かっていないとは予想だにしてなかったようだ。しかしこころに指摘された通り、士郎はまだ悩んでいた。

 

どうすれば彼女達の世界に足を踏み入れる事ができるのか?

 

Roseliaの彼女達にはバンドの事を学べるとして、本当にそれだけいいのか?まだ何か足りないような気がする……

といった感じで士郎はまだ足りないピースを埋めるため悪戦苦闘をし続けている。

 

「……別にこころが気にするような───」

 

「それでも話してみたら、何か変わるかもしれないわよ!」

 

言い切る前に、言葉を遮られる。そして先程までの笑顔とは違い、真剣な面持ちで士郎を見ていた。そんなこころを見て、観念してこころに明かした。

 

「ハァ……そんな対した悩みじゃないよ、ただ……アイツらの世界に入る為には、何か足りないものがあるような気がして」

 

「アイツら?」

 

「蘭達の事だよ」

 

士郎は何故こんな事を思い出したのかこころに正直に話出した。

 

「───てな感じで、ココ最近悩む事が多くなってな」

 

「そうだったのね……」

 

「まぁこれは俺の問題だし、こころが悩む事はないさ」

 

「……」

 

士郎が抱えた悩みを打ち明けたるとこころは黙り込み、その場に留まる。

 

「こころ?」

 

士郎はこころの傍まで駆け寄り、名前を呼び続ける。

 

「こころ?おーい、こころー」

 

すると──────

 

「閃いたわ!!」

 

「うおっ!?」

 

突然大きな声を出し、士郎の手を掴む。

 

「待ってて!すぐ準備するから!」

 

「え?え!?何を!?」

 

「それじゃあ行くわよ!!」

 

「ちょ、まっ、うわぁぁぁ!!!!」

 

こころに引っ張られそのまま連れて行かれる。

 

 

 

「……なぁ、ここって……」

 

「わたしの家よ!」

 

そう、こころに連れていかれた場所は、目の前に正しく金持ちといった家があり、そして表札には『弦巻』と書いてあった。

士郎は呆然とその家を見上げていた時

 

「あれ?士郎さん?」

 

名前を呼ばれ振り返ると、花音と美咲がいた。

 

「やぁ、2人共こんにちは」

 

「こんにちは」

 

「こんにちは。士郎さんはどうしてここに?」

 

「いや、それがこころに連れてこられて何が何だか……」

 

「…………こころがご迷惑をおかけしました」

 

美咲は何かを察し、頭を下げ謝罪する。

 

「いや、別に迷惑だなんて思ってないから大丈夫だよ」

 

顔を上げて、と士郎に言われ美咲は顔を上げる。そこでやっと本題に入った。

 

「それで2人はどうしてここに?」

 

「私達はこころちゃんに呼ばれて……」

 

「そうよ!」

 

こころは笑顔のドヤ顔で応える。

 

「ねぇ、こころ。グループLINEであたし達を呼んだって事は……」

 

「えぇ!今日やるわよ!」

 

「……意図は分からないけど、今日の客は1人なんだね」

 

「何の話だ?」

 

「後々分かりますよ」

 

「あとは薫とはぐみだけね!」

 

そう言ってこころの家の前で待つこと数分後に、薫とはぐみが現れた。

 

「おまたせー!」

 

「やぁ、待たせたね」

 

「これで集合ね!」

 

こころは門の扉を黒服の人達に開けてもらい、士郎達は中に入っていく。

 

「薫にはぐみも来てたんだな」

 

「私はこころに呼ばれて来ただけだよ」

 

「はぐみもそうだよ!こころんが今からある人を笑顔にしたいから来て欲しいって言ってたから来たの!」

 

「ある人?」

 

士郎はある人とは誰か分からず考えていると、薫が少し意味深な事を口にする。

 

「なるほど……確かに笑顔がなくなっているね。それを今から私達の演奏で笑顔にする、という事か……あぁ、儚い……」

 

「どういう事だ?」

 

薫の言って意味が理解出来ず、聞いてみるが全て儚い……が返って来たので、聞くのをやめた。

 

こころに案内された場所はCiRCLEのスタジオによく似た施設だった。

 

「さぁ、始めるわよ!」

 

こころがマイク前に立ち、他の彼女達も各々準備を始める。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!もしかして今から───」

 

「えぇ!ハロー、ハッピーワールド!のライブを始めるわよ!!」

 

「マ、マジか……」

 

士郎が彼女の行動力に驚いていると、美咲が士郎の肩に乗っける。

 

「諦めてください、こころはやると言ったらやる人ですから」

 

「全くこころには驚かされてばかりだよ、みさ……き?」

 

しかしそこに立っていたのはピンク色の熊だった。

 

「どうかしましたか?」

 

「え?あ、いや……え?」

 

士郎はどう言えばいいか分からず、率直に聞く。

 

「美咲……だよな?」

 

「ミッシェルです」

 

「え?いやだから───」

 

「ミッシェルです」

 

「え、」

 

「ミッシェルです」

 

「あ、はい」

 

有無を言わせない程の圧力を感じ、士郎は大人しく引き下がる事にした。

 

「それじゃあ早速行くわよ!!」

 

こころの元気の良い返事と共に、演奏が始まった。

 

 

ド派手なパフォーマンスでこころが幾度か危険な動きをしていて、士郎は何度か助けようと動き出した事があったが、彼女達の演奏には人を笑顔にさせる力があるみたいだった。最初こそ心配な面持ちで見ていたが、徐々に聴き入っていくと、曲と共に楽しそうに笑顔で歌いそして奏でている彼女達を見てつられて笑顔になっていた。

ただこころは士郎が笑顔になるのを見たら、歌の途中なのに─────

 

「あら!素敵な笑顔ね!!」

 

なんて話し掛けてきて、士郎は集中しろよ、と笑顔で指摘する。そんな彼女の自由すぎる演奏が終わりを迎えた。

 

「どうだったかしら!」

 

こころはステージから降り、士郎の元まで駆け寄る。

 

「あぁ、とても良かったよ。けど、何回か危険な動きしてたけど、あれ怖いから出来るだけやめてくれないか?」

 

「そうかしら?ちょっとはっちゃけすぎたわね!」

 

「はっちゃけすぎてアレなのかよ……」

 

こころは笑いながら仲間の元まで戻って行き、士郎は椅子に座る。その隣で誰かが座ってきた。

 

「悩みは解消したかな?」

 

「薫……」

 

まさか薫にもバレているとは思っても見なかった士郎は、どうしてわかったのか聞いてみる。

 

「何で、分かったんだ?」

 

「私は演劇をしているのは知っているだろ?それのお陰か人の感情を読み取るのが得意になってね」

 

「……凄いな」

 

と薫と会話してると

 

「やっぱり悩み事があったんですね」

 

後ろからいつの間にかミッシェルの着ぐるみを取っていた汗だくの美咲がいた。

 

「やっぱりって、美咲も分かってたのか……」

 

「確信はなかったですが、多分悩んでいるな〜って思って」

 

「そんなに俺ってわかりやすいか?」

 

「いや、士郎は分かりにくい方さ。ただ士郎の場合は隠せる領域を超えてしまったらわかりやすくもなるけどね」

 

「つまり今の俺は───」

 

「隠せる範囲を超えてしまった、という事さ」

 

薫にそう告げられ溜め息を零す。だから監督さんにも紗夜やリサにもバレてしまったんだな、と士郎は心でそう呟く。

なら隠しても仕方ないなと思い、士郎は悩みを口にしようとした瞬間─────

 

「ただ私は士郎が何に悩んでいるかは聞かないさ」

 

「え?」

 

薫にそれを止められてしまった。

 

「人は悩みを抱える生き物だからね、何も珍しい話でもないさ。でも私はこうも思ったりもするんだ、悩んでいる時間を作る位ならもっと別の事に時間を割いてやることの方が利口ではないのか?ってね」

 

そして薫は士郎に振り向き、笑顔で告げる。

 

「私の知っている士郎はお人好しの士郎だ。何かに悩み続け時間を浪費している間に、私はその先に進ませて貰うよ。それが嫌なら悩み事の時間を作るよりもっと違う事に時間を使ったらどうだい?例えばそうだね、私と一緒に演劇でもやってみるか?士郎なら才能もあるし、何より私と同じ舞台に立てるよ」

 

「遠慮しておくよ、俺には演劇は向いてないしそれに演劇で薫に追いつこうなんて夢のまた夢だよ」

 

「ハハハ、儚いね!」

 

そう言いながら薫はこころ達の所へ戻る。

 

「薫さんの意見にあたしも賛成ですね」

 

「美咲……」

 

「士郎さんが何に悩んでいるか知りませんが、もし美竹さん達でのバンドの手助けをしたいって言うなら悩んだって無駄だと思いますよ。多分美竹さん達は貴方が居てくれるだけで励みになっていると思いますから」

 

「……」

 

答えを突かれ、何も言えなくなる士郎に美咲は言葉を続ける。

 

「それでも士郎さんが納得しないのでしたら、一旦その悩みを置いて別の事した方がいいですよ?悩み過ぎると逆に答えが見つかりにくいですから」

 

「……」

 

「何ならミッシェルやってみます?2代目ミッシェル、多分こころは喜んで採用してくれますよ?」

 

「い、いや、それは遠慮しておくよ」

 

「残念です。まぁあたしが言いたいのは悩み事は一旦忘れて何か楽しい事やってみたらいいと思いますよ。その為に多分こころはこのライブを開いた訳ですし」

 

「そう……だったのか……」

 

美咲もこころの所へ戻って行く。

士郎は1人椅子に座りながら、考える。

彼女達の意見はごもっともだ。確かに悩み過ぎると答えが出にくくなり、永遠に悩み続ける事になる。

頭に過ぎるのは美咲の言ったあの台詞

 

“その為に多分こころはこのライブを開いた訳ですし”

 

何故自分の為にこんな大掛かりなセットまで用意したのか……

 

そんな事を思っているとふと思い出す。

 

 

彼女と初めて会った時の会話を──────

 

 

『貴方は何か夢とか持ってるの?』

 

『ん?あぁ、俺は“正義の味方”に憧れているんだ。おかしいだろ?』

 

『そんな事ないわ!素敵な夢よ!』

 

『そ、そうか、ありがとう』

 

『あたしはね、世界を笑顔にする事が夢なの!』

 

『へぇー、いい夢じゃないか』

 

『ありがとう!それにあたし達の夢って似てるわね!』

 

『似てる?』

 

『そうよ!貴方は正義の味方、あたしは世界を笑顔に、ほら似てるわよ!』

 

『ま、まぁ、似てる部分はあるな』

 

『ならあたし達で協力していきましょ?そしてもっと素敵な事になると思うの!』

 

『ハハハ、じゃあ正義の味方らしくこころの夢の手伝いをしていこうかな』

 

『あら!じゃああたしも士郎が笑顔で居続けられるようにするわ!』

 

 

 

士郎はそうか、と納得する。

彼女はあの時の約束を守ろうとしている。俺から自然に出てくる笑顔が無くなったから、俺を笑顔にしようと頑張ろうとしていたんだ。

 

「ハハハ、全く、情けないな……」

 

あの野郎がいたら今頃、完膚無きまで罵倒されつづけられていただろう……

 

士郎は自分の頬を叩き、気を引き詰める。

 

悩みがなんだ、これが俺の……“正義の味方”の壁になるんだったら、何度だって乗り越えてやる

俺は約束したんだからな、“正義の味方”が“世界を笑顔に”したい少女の手助けをするってな

そして、AfterglowやPoppin’Party、RoseliaにPastel✻Palettes、そしてハロー、ハッピーワールド!の皆んなの手助けをして行く。

 

それが今の俺に出来る“正義の味方”だ

 

士郎は立ち上がり、こころ達に近付く。そして、笑顔で告げる。

 

「ありがとう、悩みが吹っ切れたよ」

 

彼女達は皆んな笑顔で答えてくれる。そしてこころは最上級の笑顔で──────

 

 

 

 

──────素敵な“笑顔”よ!

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールデンウィーク5日目 ハロー、ハッピーワールド!の笑顔




ゴールデンウィーク投稿週間、終了!!


自分なり頑張りました
ぶっちゃけ、文章力がないのでしんどかった……


次回からいつも通り日曜日の20時で不定期投稿が続きます!

え?何故不定期かって?ふふふ……


チ───(´-ω-`)───ン


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里芋の煮っころがし

……特に書くことが思い付かなかった

どうぞ⤵


「シショー!!」

 

商店街

士郎はいつも通り今日の献立を考えながら、食材を買いに商店街を歩いていると、突如後ろから声を掛けられ振り返る。

 

「イヴ?どうかし────」

 

士郎が声を掛ける前にイヴは士郎の手を掴み、懇願する。

 

「シショー!私に……里芋料理を作ってください!!」

 

「───え、はい?」

 

突然の事で士郎は理由が分からず、間抜けな声を出す。しかしイヴの方は目をキラキラと輝かせながら、真剣な眼差しで士郎を見つめる。

 

「えっと、どういう事だ?」

 

やっとの事で士郎はイヴに質問する。

 

「はい!実は────」

 

 

────それは数分前に遡る。

 

 

イヴ達は今日の収録を終え、事務所から立ち去ろうとしていた時だった。

 

「今日もお疲れ様〜」

 

「えぇ、明日も頑張っていきましょ」

 

「もっちろん♪でも、流石に今日は疲れたな〜」

 

「お腹も空いてきたッス……」

 

「どっか食べに行く?」

 

5人は事務所の廊下を歩きながら、話し合う。

 

「流石にこの時間帯だと人気のお店はいっぱいでしょうね……」

 

「ポテト食べに行く?」

 

「日菜ちゃん、アイドルやってるのだから栄養管理はしっかりしないと駄目よ?」

 

「はーい」

 

スマホで色々な飲食店を探すが中々決まらず、どうしようかと悩んでいると

 

「おーい!」

 

後ろからスタッフが走って来ていた。

 

「あら、スタッフさん。お疲れ様です」

 

「お疲れ様、君達これ要らないか?」

 

そう言ってスタッフが手に持っていた袋を開ける。

そこには─────

 

「里芋?」

 

「そう、里芋」

 

中には里芋が沢山入っていた。

 

「実家から送られて来たんだけど、こんなに沢山あっても食えないから困っていてね。出来れば貰ってくれないか?」

 

「そういう事でしたら……」

 

千聖は里芋が入った袋を受け取った。

 

 

 

「さて、これをどうしましょう……」

 

受け取ったのはいいものの、その後の事をあまり考えていなかった5人は里芋をどうするか悩んでいた。

 

「う〜ん、誰か里芋で料理できる?」

 

「わ、私はちょっと……」

 

「私は一応料理は出来るけど、里芋は料理した事がないわ」

 

「ジブンも無理ッス……」

 

「里芋……初めて見ました」

 

「うーん、あたしもあまり得意じゃないし……どうしようか?」

 

うーん、頭を悩ませながら商店街を歩いていると、見知った人物が歩いていた。

 

「ねぇ、あれって」

 

「士郎さんですね」

 

「お兄さんって料理得意だっけ?」

 

「大の得意ッスよ」

 

彩は何か思い付き、千聖達に話す。

 

「じゃあお兄さんに作ってもらおうよ!」

 

「それいいね!それじゃあ早速───」

 

「士郎さんの予定も聞かずにお願いするの?」

 

「「うっ」」

 

千聖からの正論に彩と日菜は走り出しそうな脚を止める。千聖は溜め息をついていると、1人居ないことに気付く。

 

「あれ?イヴちゃんは?」

 

「イヴさんならもう士郎さんの所まで走って行ったッスよ」

 

「え───」

 

そう言って麻弥は指を指す。

千聖は麻弥が指を指された方向へ目をやると、シショー!と叫びながら走っているイヴの姿を見つけた。

 

「イヴちゃん……」

 

「私達も行こ!」

 

彩がそう言って日菜と一緒に士郎の所へ駆け出して行く。

 

「あの子達は……」

 

「ま、まぁまぁ、ジブン達も行きましょう?」

 

「……そうね」

 

そして千聖と麻弥も後に続いて駆け出して行った。

 

 

♢

 

 

「なるほど、つまり里芋を貰ったからそれを俺が料理すればいいんだな?」

 

「いいんですか?」

 

イヴの説明の合間に彩達が現れて、その後の説明を千聖から聞いた。

 

「別にこの後用事もないしな、それに里芋か……いつぶりだろうな」

 

「お兄さんは里芋食べた事があるんですか?」

 

「あぁ、あるよ」

 

「へぇ〜」

 

士郎は説明を聞いた後里芋の他に合いそうな食材を買い足し、今は魚屋の前に来ている。

 

「魚も買うんですか?」

 

「あぁ、芋だけじゃなくあと3品くらい作ろうと思ってるんだ」

 

「そうなんですか?」

 

「アイドル様ご要望の里芋を使った煮っころがしに小松菜の和え物と味噌汁、でメインを今が旬のさんまにしようと思うんだ。脂がのってて美味いぞ?」

 

そう言うと彩達の口から涎が少し垂れそうになっていた。その中で千聖だけは涎を垂らさず、冷静に分析していた。

 

「食事のバランスも考えられた構成……流石士郎さんですね」

 

千聖の褒め言葉を素直に受け取りながら、魚屋のおっちゃんに話しかける。

 

「さんまください」

 

「あいよ、お?アンタ士郎って名前か?」

 

「え?」

 

唐突に魚屋のおっちゃんに名前を言われ、疑問に思った士郎だったがおっちゃんから貰った1枚の紙で納得した。

 

「ほれ、伝言じゃ」

 

「伝言?」

 

その紙にはこう書かれていた。

 

“よぅ、坊主。こっちの魚屋でもバイトすることにしたわ。だからよ、また飯食いに行くから、そん時は美味い飯頼むわ”

 

この紙を見て、士郎は誰なのか理解した。

魚屋でバイトして尚且つ、自分の事を“坊主”なんて呼ぶ奴はアイツしかいない……

 

ランサーの野郎……

 

士郎は苦笑いを浮かべながら、心の中で悪態をついた。

 

 

 

◆美竹家

 

食材も買い終え、士郎達は家に来ていた。

 

「まさか本当に蘭ちゃんの家に住んでいたなんて……」

 

「ハハハ……俺もおじさんに言ったんだけど、蘭の事を任せたって頼まれてな」

 

「士郎さんだから安心して任せる事が出来たんだとジブンは思うッス」

 

「そうかな?」

 

「本当なら男女2人っきりで住ませるのはよくないんですが、士郎さんは別って私も思いますよ?」

 

「私も思ったー!何だろ、何かこう……そう!お兄ちゃんがいるみたいな感覚になって安心出来ちゃう!」

 

「おねーちゃんとおにーちゃんか……悪くない!士郎さん!あたしのおにーちゃんにならない?」

 

「なんでさ……」

 

「こう、るんっ☆てきたから!」

 

玄関から騒がしく入るが、家には誰もいなかった。

 

「あれ?蘭ちゃんは?」

 

「ん?今日はモカ達とバンドの練習に行ってるぞ」

 

「へぇ〜、じゃあ今家には誰もいないの?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

士郎は食材をキッチンに持っていき、早速料理を始めようとする。

────そこに。

 

「士郎さん」

 

千聖が袖を捲り、キッチンに入ってくる。

 

「私も手伝います」

 

「作る数が多いから、助かるよ」

 

「私も手伝います!」

 

「じゃああたしもやろうかな〜」

 

「ジブンもやるッス!」

 

「私もお手伝いします!」

 

「なら、まずは里芋の皮むきからだな」

 

士郎は里芋を見て、布巾と包丁を取り出す。

 

「新物とそうじゃないのもあるから二手に分かれてむいていこうか」

 

話し合った結果

布巾組……彩、日菜、麻弥

包丁組……士郎、千聖、イヴ

となった

 

「新物なら布巾で擦るだけでむけるけど、そうじゃないのは里芋の上下を落として気持ち厚めにむいていってくれ」

 

「わかりました」

 

千聖とイヴは手際よくむいていき、彩達の方も楽しそうに布巾で擦っていく。

 

里芋はぬめり取りの為に1度下茹でをする

沸騰したお湯に里芋を入れ、3~4分茹で、そのまま流水にさらしながら芋のぬめりを洗い流す

鍋に里芋と里芋が被る程度出汁を入れ、火をかける

煮立ったら砂糖、酒、みりんを加え、落とし蓋をして煮汁が少し煮立つ程度の弱火で5~6分

醤油を加え更に5~6分煮詰めていく

煮汁が小さくなったら焦がさないように鍋をゆすりながら、里芋に汁を絡ませ、ツヤが出てきたら完成!

 

「わぁ……美味しそう……」

 

じゅるりと涎を垂らすアイドル達を横目に、士郎は次の工程に進む。

 

丸一尾の魚を扱う時は必ず水洗いしてから魚の頭を持ち、包丁をねかせ気味で頭から尾っぽの向きで軽く擦る感じでする

下処理をし、水で魚のぬめり等を洗い流したら、よく水気を取る

臭み抜きの為さんま全体に軽く塩を振り10~15分放置

水気が出てくるのでこれを拭き取る

さんまの皮に軽く切れ込みを入れ、今度は味付けの為塩をふり焼いていく

 

そんな時、玄関が開く音が聞こえた。

 

「ただいま…………え?」

 

居間に入るとまさかパスパレのメンバーがいるとは思わず、素のリアクションをしてしまう蘭だった。

 

「おかえり、蘭」

 

「お邪魔してます」

 

「「蘭ちゃんおかえり〜!」」

 

「美竹さん、お邪魔してるッス」

 

「お邪魔してます!」

 

「……何で?」

 

やることが無くなったから、彩と日菜が何故いるのか説明をする。

 

「蘭ちゃんの事は彩ちゃん達に任せましょう」

 

「そうだな、じゃあこっちは残りもやっつけちまおう」

 

小松菜は茹でたら氷水に落として熱を取る

おひたしに入れる油揚げは油抜きをする

味噌汁は沸騰させないように気を付ける

 

「あとは盛り付けて……完成!」

 

出来た料理をテーブルに並べ、各々席に座り手を合わせる。

 

『いただきます』

 

先に里芋から口に入れ、美味しそうに頬張る。

 

「美味しい!!」

 

「えぇ、いい味が出てとても美味しいわ」

 

「ん〜!おいひい〜!」

 

「いくらでも食べれそうッス!」

 

「これが里芋料理……美味しいです!」

 

「うん……美味しい」

 

それぞれ感想を述べながら里芋を口にする。

 

「里芋は一晩置くともっと味が染みて美味しいだろうな」

 

「そっちも食べてみたいな〜」

 

「魚もふっくらとしていて美味しい……」

 

「お兄さん、料理上手ですね!」

 

「そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

彩の褒め言葉に笑顔で返す。その真隣で食っている日菜が蘭に頭を下げて懇願する。

 

「蘭ちゃん!お兄さんをください!」

 

「駄目です」

 

「そこを何とか〜!」

 

「駄目です」

 

そのやり取りを士郎達は笑いながら見ていた。

 

 

 

 




見て下さりありがとうございます!

え?季節がおかしいって?

気にしなさんな……


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ミルフィーユカツ

最近料理ネタより、話入ると前のネタが尽きかけている人です。はい。


ハハ☆





★CiRCLE

 

士郎は今、CiRCLEでRoseliaの演奏を聴いていた。

 

 

 

────数分前

 

ゴールデンウィークに彼女達から聴きに来てもいい、と許可を貰っていたので、今日は何の予定もなかった士郎は湊達が今日CiRCLEでバンドの練習をする事を聞き、彼女達に聴きに行ってもいいか?と連絡した所、秒でOK!、と返ってきた。

 

CiRCLEに着くと、まりなが受付でニコニコしながら待っていた。

 

「聞いたよ〜、今日Roseliaのバンドを聴きにきたらしいじゃない」

 

「何でそんな不敵な笑みを浮かべてるんですか……」

 

「いや〜だって、ね〜」

 

教える気が一切無いのかニヤニヤしたまま、応える素振りを見せない。そんなまりなを見てか士郎は諦め、湊達がいる部屋を聞き、部屋に向かった。

 

「お〜、やっと来たね」

 

「待たせて悪い」

 

「いえ、時間通りですので謝る必要はありません」

 

士郎は中に入ると既に準備が出来ている湊達に謝りながら、席に座る。士郎が座ると同時に湊達はギターやバチを構える。

 

「今日はこの前聴いて貰った曲ともう1つ新しい曲を聴いてもらおうと思うのだけど、いいかしら?」

 

「願ってもない事だ、よろしくお願いするよ」

 

「まっかせて!!あこ達がビシッ!!って決めるから!」

 

「ハハハ、期待してるよ」

 

「ふふん!」

 

あこはドヤ顔で応える。

それを合図に湊達は演奏を始めた。

 

 

 

Roseliaのバンドを見聴き入って約2時間が経過し、最後の演奏が終了した。彼女達の頬には本気で取り組んだからか汗が垂れ流れていた。

士郎はそんな彼女にまりなから貰っていたタオルを渡し回った。

 

「お疲れ様」

 

「どうだったかしら?私達の演奏は」

 

「あぁ、相変わらずの感想で悪いが、とても良かったよ」

 

「そう、それは良かったわ」

 

「悪いな、聴かせて貰ってるのにアドバイスになるような事言えなくて」

 

「気にしてないわ、貴方にはどちらかというと客として聴いて貰えた方が嬉しいから」

 

「そうか……でも何か恩返しとかさせてくれないか?」

 

「別に大丈夫よ、私達が勝手にやってるだけ、士郎さんが気にする事はないわ」

 

「それでもやっぱり何かさせてくれないか?」

 

「そんな事言われても、貴方には色んな所で助けて貰ってるし、これ以上望むのは……」

 

湊が頭を悩ませ考えていると、後ろからあこが元気な声で応えた。

 

「あこ、シロにぃのご飯が食べたい!!」

 

「あ、それアタシも思った!コンビニバイトの時に持ってきてくれたご飯が美味しかったから、また士郎さんの手料理食べたいな〜って思ってた!」

 

「日菜もこの前士郎さんの料理が美味しかったっと嬉しそうだったので……少し気になっていました」

 

「わ、わたしも……士郎さんの料理……食べてみたいです」

 

「と、メンバーは言ってますけど湊さんはどうする?」

 

士郎は少し悪戯心で湊に聞くと、湊は反論する事を諦め

 

「……えぇ、私も士郎さんの料理が食べたいわ」

 

「ハハハ、了解」

 

湊達が退出する準備を始めたので、士郎は先に部屋を出て受付の所で待つことにした。そして当然受付にまりながいた。

まりなは士郎の姿を見つけた瞬間、またニヤニヤと不敵な笑みを作り出した。

 

「何で俺の顔を見た瞬間、笑みを浮かべるんですか?」

 

「えぇ〜、だって、ねぇ〜」

 

最初と同じ件をしてきたので士郎は湊達が出てくる前に聞き出そうと詰め寄る。

 

「そろそろ教えて下さいよ」

 

「いや〜、士郎くんがとうとうね〜」

 

「いや、だから何なんですか?」

 

「でも気を付けてね、Roseliaの子達人気のバンドグループなんだから」

 

「それは知ってますけど」

 

「でも私は応援してるから!」

 

「はぁ……」

 

駄目だ、全く内容が掴めない……

 

士郎はこれ以上聞いても無理そうと察し、湊達が来るのを待った。

 

 

 

湊達が部屋から出てきて、ニヤニヤしたまりなに挨拶を交わしてからCiRCLEを後にし、士郎達は美竹家に来ていた。

 

「入ってくれ」

 

『お邪魔します』

 

湊達は士郎に案内された居間に入り、腰を下ろす。

 

「美竹さんはいないのかしら?」

 

「あぁ、蘭なら今日はモカ達と遊びに行ったぞ」

 

「そうなの?」

 

「なんでも今日は絶対買いたい物が発売されたらしい」

 

「へぇ〜、蘭がそんなに執着するなんて珍しい」

 

「いや、蘭はただと付き添いらしい」

 

「あ、そうだったの?じゃあ誰が……」

 

リサの疑問に士郎が応えようとする前に、燐子が答えを出した。

 

「上原さん……?」

 

「お、正解だ。知ってたのか?」

 

「は、はい。この前、絶対欲しいって言ってたので……」

 

「へぇ〜」

 

「と、俺は料理の準備しないとな、じゃあ出来上がるまでゆっくりしといてくれ」

 

「はーい」

 

士郎はキッチンに立ち、冷蔵庫から今日の作る食材を取り出す。

 

「さて、始めますか……!」

 

まず初めに、ボウルに卵、小麦粉、水を全て入れ、混ぜ合わせておく

キャベツは千切り、トマトとレモンはくし切り

更にレモンは絞りやすいように切り込みを入れる

豚ロース肉に酒と塩コショウを軽く振り、擦り込み

6~7枚(約120g前後)を脂身部分が交互になるように重ねて形を整える

肉を先程混ぜた液にくぐらせ、パン粉をむらなく付ける

この時にパン粉が付いていない部分がないように手の平で上からしっかり押さえるようにする

160~170度に前後の油で3~4分ほど揚げる

大きな泡が小さくなり、音も細かく高くなってきたら揚げ上がりのサイン

最後に強火にして取り出し、揚げ終わったカツは油切れをよくする為にバット等に縦に置く

 

 

 

「いい匂いがしてきた!!」

 

「これはアタシもお腹がなりそうになるよ〜」

 

「今井さん?アタシもってどういう……」

 

「えぇ〜それはね〜」

 

リサはチラッと湊の方へ目をやる。その当の本人は目を逸らしていた。

 

 

 

揚がったカツをひと口サイズに切り、切ったカツをつけあわせ等と一緒に皿に盛り付けて

 

「完成!」

 

「「おぉ〜」」

 

士郎は皿を湊達の机まで持っていき、目の前に置いていく。

 

「お待ちどーさま」

 

目の前にあるカツに目を輝かせるRoselia

士郎はその様子を小さく微笑みながら、白米と味噌汁を持ち運ぶ。

 

「今日の本日の献立ミルフィーユカツです」

 

「ミルフィーユって何?」

 

「ミルフィーユってのはフランス発祥の菓子の一種なんだ」

 

「え!?これお菓子なの!?」

 

「いや、これはそのミルフィーユの形状に似せたものなんだ、実際食べて見れば分かるかな」

 

「では、いただきましょう」

 

全員を手を合わせ

 

『いただきます』

 

そして湊達はミルフィーユカツを食べる。

 

「ん〜サックサク♪」

 

「お、美味しいです……!」

 

「頬っぺた落ちちゃいそう……!」

 

「なるほど、豚肉が層になっているんですね」

 

「薄切り肉を重ねてミルフィーユみたいにしたんだ。それと1つ1つ中の具材を変えてみたんだ。そっちがナス入りで、その横が大葉とチーズ」

 

湊達は各々好きな味のカツを食べ、食に手を止める事が出来なくなっていた。

 

「層になっているから色々はさめるワケね……これは中々なものね……」

 

「英気は養えたかな?」

 

「えぇ、十分すぎるくらいにね」

 

「それは良かった」

 

「だから覚悟してなさい」

 

湊がそう言うと紗夜達は箸を止め、士郎の方へ見る。

 

「私達が頂点にたった時、最初に貴方へ最高の演奏を聴かせてあげるわ」

 

湊達の目は夢へ目指す覚悟の眼をしていた。士郎はそんな彼女達を見て、笑顔で応える。

 

「あぁ、その頂点に達した君達のバンドを、楽しみに待ってるよ」

 

そんな士郎の言葉を聞き、湊達は笑みを浮かべた。

 

「ま、その間も士郎さんにはアタシ達の演奏を聴いてもらうんだけどね」

 

「たしかにな」

 

ハハハと笑いあい、今日というこの日を楽しく過ごしたRoseliaと士郎だった




次回はなんと………サーヴァント追加!!

さぁ!一体誰が来るんだ!!


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絶景にぎり

とある休日の日、家で家事をしていた士郎の元に香澄達と一緒に紫髪の長身長髪の女性が立っていた。

 

「久しぶりですね、士郎」

 

その女性は爽やかな笑顔と共に、士郎に語りかける。

 

「ラ、ライダー!?」

 

 

 

★美竹宅

 

「ここが今の士郎の家ですか」

 

「まぁ、俺の家っていうか居候させて貰ってる家だな」

 

士郎は人数分のお茶を居間にもち入り、机に置いていく。

 

「お茶しか出せないけど、いいか?」

 

「お構いなく」

 

そう言うと紫髪の女性────ライダーはコップを手に取り、お茶を啜り飲む。

 

「はい、香澄達のお茶」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

士郎からお茶を差し出され手に取るが、それよりももっと気になる事があり、お茶を口にしようとはしなかった。

 

「あ、有咲、聞いてみてよ!」

 

「は!?何で私なんだよ!香澄がいけよ!」

 

「おたえちゃん、聞きにいける……?」

 

「んー、紗綾いける?」

 

「えぇ!?私は、む、無理かな〜?」

 

香澄達は部屋の隅で小さな声で話し合い、それを離れた所からライダーは微笑みながら見ていた。

 

「何してんだ?」

 

キッチンから出てきた士郎は、香澄達が固まって話し合ってる光景を目の当たりにして、率直な感想を述べる。

 

「なぁ、ライダー。香澄達は何やってるんだ?」

 

「さぁ、私にも分かりません。ですが、彼女達は元気で優しい子という事は分かります」

 

ライダーはここに来るまでの過程を士郎に話す。

 

 

 

 

「困りましたね……」

 

ライダーは1号機からおり、手で押しながら商店街を歩いていた。

 

「確かランサーの証言ですと、もう少ししたら着くはずなんですが……」

 

ライダーは商店街に並んでる商品に目を向けながら、目的地を探す。

ライダーが辺りをキョロキョロと見渡していた時

 

「あの!何かお困りですか?」

 

後ろを振り向くと5人の少女達がそこには居た。

 

「実は人を探していまして、その人の家まで行く道のりが分からず……」

 

「そうなんですか……その人の名前って教えてもらえませんか?」

 

「衛宮と言います。衛生の衛に宮城の宮と書きます」

 

「え?」

 

ライダーがそう言うと、5人の少女達は何か思い当たる節があるのか、お互い顔を見やりそしてライダーの方へ見る。

 

「それって下の名前に士郎ってつきますか?」

 

「士郎を知っているのですか?」

 

「はい!士郎さんにはいつもお世話になってます!」

 

真ん中に立っていた少女は嬉しそうに話を始めようとして、ツインテールの少女に止められる。

 

「香澄の話はどうでもいいから、早く士郎さんの所へ案内した方がいいだろ」

 

「それもそうね、じゃあ有咲には香澄の相手を任せるわ」

 

「は?え?ちょっま────」

 

有咲が何か言う前に香澄に抱き着かれ、それを放置してたえはライダーに話しかける。

 

「という訳で私達が士郎さんの家まで案内します」

 

「それは嬉しいですが……あちらはほっておいていいのですか?」

 

「あれは日常茶飯事なので気にしないでください」

 

たえの発言に後ろにいた2人はハハハと笑いながら、香澄と有咲の方へ目を向ける。

 

「有咲〜」

 

「ちょっ、くっつくな!離れろ!」

 

引っ付く香澄を頑張って剥がそうとしている有咲を見て、ライダーは微笑みながら

 

「仲がいいんですね」

 

と呟いた。

 

 

 

 

「なるほどな、だから香澄達と一緒に来たのか」

 

「彼女達には感謝しかありません」

 

ライダーと士郎は未だ部屋の隅で話し合ってる香澄達に目を向けながら話し合っていた。

 

「じゃあ俺は1号機のメンテナンスをしてくるわ。どうせこの後も漕いで行くんだろ?」

 

「助かります」

 

そう言って士郎は居間を後にし、1号機のメンテナンスに向かった。そこでやっと話し合いが終わったのか部屋の隅に居た香澄達がライダーの方へ向き直った。

 

「あれ?士郎さんは?」

 

香澄は先程までいた士郎がいなくなってる事に気付き、部屋を見渡す。

 

「士郎なら先程、1号機のメンテナンスに向かわれましたよ」

 

「そ、そうですか」

 

香澄達は意を決したのか、真剣な顔でライダーに質問を問い掛ける。

 

「ラ、ライダーさん!質問いいですか?」

 

「構いませんよ」

 

「士郎さんとライダーさんって、どういう関係なんですか!?」

 

「私と士郎の関係、ですか……」

 

ライダーは目を瞑り、そして優しい笑みと共に応えた。

 

「士郎との関係は食を共にし、そして時には桜や凛、そしてセイバーと一緒に買い物に行くくらいの関係ですかね」

 

「桜?凛?セイバー?」

 

「私と士郎の知り合いですよ」

 

なるほど、と香澄達は納得しそして『士郎さんって女性知り合い多くない?』と思ったが、それはそっと心の底に沈めておいた。

 

「じゃあ次の質問です!ライダーさんは士郎さんの事をどう思っていますか?」

 

「私は士郎の事を、面倒みがいい弟と思っていますよ」

 

そうライダーが応えた時、士郎が居間に帰ってきた。

 

「メンテナンス終わったぞ、あと香澄達は時間大丈夫なのか?」

 

「へ?」

 

香澄達は時計に目をやると、時刻はもうすぐ14時に指しかかろうとしていた。

 

「あ!!もうすぐ予約した時間だ!」

 

「急いで行けば間に合う!!」

 

「それじゃあ士郎さん、ライダーさんお邪魔しました!」

 

そう言って慌ただしく香澄達は家を出て行った。

 

「本当に元気な子達ですね」

 

「あぁ、それが香澄達の良いところでもあるけどな」

 

2人して笑い合い、そしてライダーがお茶を飲み干し立ち上がる。

 

「私もそろそろ行きます」

 

「わかった……あ、ちょっと待ってくれ」

 

そう言って士郎はキッチンの方へ向かい、包みをライダーに渡す。

 

「これは?」

 

「おにぎりだ。休憩する時にでも食べてくれ」

 

「ですがこのおにぎりは─────」

 

「あぁ、俺が後で食べる用に作ったやつだ」

 

「なら私が食べるのは……」

 

「気にするな、それにお腹空いてるんだろ?」

 

ライダーは頬を赤らめ、否定しようとするが

 

「バッチリ聞こえたよ、ライダーが喋っている時にお腹が鳴っているのを」

 

士郎に完全に聞かれており、否定することが出来なくなった。

 

「遠慮しなくていいよ、まだ余ってるし後から作るよ」

 

士郎に笑顔で言われ、ライダーは断れなくなり包みを受け取る。

 

「では、有難くいただきます」

 

「おう!」

 

そしてライダーは1号機に跨り、ペダルを漕ぎ出した。

 

 

 

しばらく漕いで行き、ライダーは山の山頂でおにぎりを食べていた。

 

「……美味しいですね」

 

そんな後ろから長身の男性が近寄って来た。

 

「よぉ、やっぱりアンタも来たか」

 

「それはこちらのセリフですよ、ランサー」

 

そう呼ばれたランサーは、ライダーを通り過ぎ、柵に凭れ掛かる。

 

「何か用ですか?」

 

「なに、アンタが来てるって事はブリテンの王様が来てると思ってな」

 

「残念ですが、セイバーは来ていませんよ」

 

「見りゃわかる、でもどうせそろそろ来んだろ?」

 

「……」

 

ライダーは押し黙る。

 

「やっぱりな」

 

その沈黙にランサーは何か納得し、歩き出す。

 

「別にお前の勝手だが、坊主にはちゃんと言っておいた方がいいぞ」

 

そう言ってランサーは立ち去った。

 

「……勿論です」

 

ライダーはもう一度景色を眼に写し、おにぎりを食べ続けた。

 

 

 

 

 

士郎は蘭と共に晩御飯を食べ終え、食器を洗っているとチャイムが鳴る。

士郎は手を拭き、早足で玄関に向かいドアを開ける。

 

「はーい?」

 

「こんばんは、士郎。包みを返しに来ました」

 

「ライダー!別に返さなくても良かったのに」

 

「いえ、貴方に言っておきたいことがありまして」

 

そう言うとライダーは、士郎に先程までの笑顔を消し、少し苦しそうな顔で言葉を告げる。

 

「セイバーが近々この街に来ます。お願いです。セイバーを止めてください」

 

「セイバーを止めるって……何を……」

 

「今のセイバーは───────

 

 

 

 

 

 

 

 

─────貴方の知るセイバーではありません

 

 

 

 

 



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騎士王様と親子丼

ライダーが家に訪れてから1週間が経とうとしていた。

 

彼女が言うセイバーは、まだこちらの街には来ていないみたいだった。その一方で、士郎はライダーが最後に言った言葉が頭から離れずにいた。

 

 

“今のセイバーは、貴方の知るセイバーではありません”

 

 

俺の知らないセイバー……

一体どういう事だ?

 

士郎はこの1週間頭を誤せていた。そのせいで授業にも集中出来ず、バイト中でもぼーっとしてしまい客の注文を聞き逃してしまう始末……

 

周りで見ていた蘭達は心配そうにしていたが、士郎は大丈夫、大丈夫と言い張り、蘭達には教えずにいた。

 

だが家でもこのような状態の士郎を何度も目撃していた蘭は、流石にもう我慢ならずモカ達と共に士郎に言い寄る事にした。

 

「士郎さん」

 

蘭に声を掛けられ、士郎は後ろを振り返ると蘭の後ろにモカ達がいた。

 

「あぁ、モカ達来てたのか。いらっs────」

 

「教えてください」

 

士郎が最後まで言い切る前に蘭がそれを遮るように被せてくる。

 

「士郎さんは、何に悩んでいるんですか?」

 

「え?」

 

そんな蘭の質問に士郎は敢えて惚けてみせるが

 

「な、なんの事だ?」

 

「流石に言い逃れは無理じゃないかな〜?」

 

「え?」

 

「あれだけ士郎さんらしくない所を見せられると流石に分かるよ」

 

「いつもの士郎さんなら注文を聞き逃したりなんかしないはずです!それも1日に何回も!」

 

「そうそう!あとは、えーっと……何だっけ?」

 

「えぇ!?あ、あとは……えっと……」

 

ひまりに聞かれ、つぐみは頭を悩ませる。そこに巴が助け船をだす。

 

「ま、まぁ要するに何か悩み事があるんじゃないか?って事だよ」

 

「悩み事吐いちゃえ〜」

 

とモカ達が詰め寄ってくるが、この事に関しては蘭達を巻き込みたくないと思った士郎は、彼女達の優しさに感謝を伝えながら断ろうと微笑みかける。

 

「心配してくれてありがとな。でもこの事に関しては俺の力で解決しなくちゃならない気がするんだ。だから────」

 

「士郎さん、前に言いましたよね」

 

断りの言葉を言おうとした時、蘭が再び遮るように被せてきた。

 

「悩みは自分1人の力じゃ解決しない、なら信頼できる人に話して一緒に解決に勤しんだ方が早く解決するって」

 

蘭は士郎は目をじっと見つめながら質問する。

 

「士郎さんにとって、あたし達は信頼出来ない人何ですか?」

 

「そ、そんな事ないさ!蘭達には信頼してるし、尊敬もしてる……でも」

 

「なら!」

 

蘭は声を荒らげるように言い放った。目に涙を浮かべながら……

 

「あたし達にも士郎さんの悩みを解決させる手助けをさしてくださいよ!」

 

蘭の必死な行動に、士郎は少し怯みながら目を逸らす。

 

「けど、これには蘭達にも迷惑をかけるかもしれない……」

 

「それならあたしの方が士郎さんに余程迷惑をかけていますよ!士郎さんに無茶なお願いしたり、いつも家事を任せっきりにしたりしています!」

 

「アタシ達も士郎さんに何かと迷惑をかけてるしな」

 

「士郎さんには前に店を1人で任せてしまった事もありました!」

 

「いつも家にお邪魔すると、私達の分の美味しいご飯を作ってくれます!」

 

「迷惑をかけてるのはいつもあたし達の方だよね〜」

 

「そんな、別に迷惑だなんて思ってないさ!」

 

「ならあたし達も士郎の悩みが迷惑なんて思いません!」

 

「───ッ」

 

蘭の肩を支えるようにつぐみと巴が掴む。

 

「もう教えてくれてもいいんじゃないか?」

 

「あたし達は本気だぞ〜」

 

士郎は彼女達の圧に負け、手を挙げながら降伏する。

 

「わかった……俺の負けだ。正直に話すよ」

 

その言葉を聞くと彼女達は互いを見遣り、笑い合う。そんな彼女達を見て、士郎は思わず微笑みを浮かべた。

 

「俺が悩んでる理由が知りたかったんだろ?」

 

「はい」

 

「実はな───ッ!?」

 

士郎が次の言葉を口にしようとした時、背中に悪寒が走り口を閉じる。

 

「士郎さん?」

 

蘭達は不思議そうに士郎を見ていると、玄関のチャイムが鳴り響く。

 

「?誰かな」

 

蘭が玄関に向かおうとするところを士郎が止める。

 

「俺が行ってくるよ」

 

「え?」

 

そう言って士郎は玄関に早足で向かう。

 

玄関に向かうと士郎は改めて感じ取った。その扉の先から明らかにヤバい雰囲気を……

 

実は士郎は悪感を感じた時と同時に玄関先からただよらぬ気配を感じていた。おそらく相手は魔術師かサーヴァントのどちらかだろうと考え、蘭を呼び止め士郎自ら会いに行くことにしたのだ。

 

そして感じ取った気配は、魔術師ではなくサーヴァント……

 

そこで士郎は思い当たるサーヴァント達を思い浮かべる。

 

ランサーなら、チャイムは押すが勝手に中に入ってくるから違う

ライダーなら、こんな悪感を感じるような気配はしないはずだから違う

アサシンがこっちに来るはずもないし、キャスターは俺がこっちにいることすら知らないと思うから違う

あの野郎は、絶対に俺に会いに来るわけないから論外

 

 

そして行き着いた答えは───────

 

「ライダーが言ってた、俺の知らない……セイバー」

 

士郎は唾を飲み込み、意を決して扉に手をかけ開ける。

 

 

そこで立っていたのは───────

 

 

 

「久しぶりですね、シロウ」

 

 

「セイ……バー……」

 

 

士郎にいつも向ける微笑みと共に、いつもと変わらない服をしたセイバーが立っていた。

 

「どうかしましたか?私が居ることに驚いているのですか?」

 

「ま、まぁ、確かにそこにも驚いたけど……」

 

士郎は困惑していた。

ライダーから聞いた話だと“自分の知らないセイバー”と聞かされていた。

だが実際は、どうだろうか?

 

金髪の髪に翠色の瞳、そしてセイバーの感情によって動くアホ毛、そして白い洋服に青いスカート……

 

どっかどう見ても士郎の知るセイバーそのものだった。

 

「えっと、セイバー、どこか悪いところとかあったりするか?俺がいない間に」

 

「悪いところですか?……特に思い当たりませんね……」

 

「そ、そうか」

 

とりあえずセイバーがいつも通りで良かった……と安心した。─────その時。

 

 

「1つ挙げるとしたら、シロウがいなかった事ですかね」

 

 

全身に悪寒が走り、冷や汗が止まらなくなった。

目の前にいるのはいつものセイバーのはず……なのに、なんでこんなにも寒気がするのか?

 

そこで士郎は違和感に気付いた。

 

彼女の容姿は変わっていない……しかし、彼女の瞳には士郎の知る翠色の瞳……ではなく、()()()()に変わっていた。

 

「セイ……バー……?」

 

「なんて、冗談ですよ。シロウが用事で家を出なくてはならない事は知っています」

 

セイバーはいつものように微笑む。

先程のような翠色の瞳で─────

 

「そういえばタイガからシロウにと預かっていた物があるのでした」

 

「え、あ、そ、そっか。とりあえず中に入ろうか」

 

「えぇ、失礼します」

 

士郎はセイバーを居間まで案内する。

 

「あ、やっと帰ってきた……って、えぇぇぇぇ!?」

 

「おぉ〜綺麗な人ですな〜」

 

「と、とと巴ちゃん!凄い美人な人がいるよ!?」

 

「お、落ち着けってつぐみ!」

 

4人それぞれにリアクションをしているが、唯一リアクションを起こさなかった人物がいた。

 

「……」

 

蘭だ

 

蘭は驚きはしたもののすぐにセイバーを見つめていた。

 

「シロウ、こちらの娘達は?」

 

「あぁ、この家の持ち主の蘭と、あとは蘭の友達だよ」

 

「なるほど」

 

そう言うとひまりが近付いて来て、手を差し出す。

 

「こんにちは!私、上原ひまりって言います!よろしくお願いします!」

 

セイバーはひまりの手をじっと見たあと、微笑みながらその手を握った。

 

「はい、よろしくお願いします」

 

ひまりは嬉しそうにしながらつぐみ達の方へ駆け寄る。

 

「めっちゃ手スベスベだったよ!?それにめっちゃ綺麗な人だった!」

 

そんなひまりとは裏腹につぐみ達は

 

「さ、さすがひまりちゃんだね……」

 

「初対面でここまで出来るって逆に凄いよな」

 

「ひーちゃんは何も考えずに行くからね〜」

 

「モカのそれは褒めてるの!?」

 

ひまりを宥めながら、次につぐみから順に名乗り始めた。

 

「えっと、羽沢つぐみです!士郎さんにはいつもお世話になってます!」

 

「アタシは巴。宇田川巴だ」

 

「あたしはー青葉モカっていいま〜す」

 

「はい、よろしくお願いします。セイバーといいます」

 

4人は名乗ったが未だ名乗らず黙っている蘭に士郎は、不思議に思い呼びかける。

 

「蘭?大丈夫か?」

 

「え?あ、はい」

 

そう言って蘭はセイバーの前に立った。

 

「美竹蘭……です。士郎さんにはいつも家事やご飯など作ってくれています」

 

「そうですか、ふふ、シロウらしいですね」

 

そんな時、微笑んでいたセイバーからお腹の鳴る音が聞こえた。

 

「……」

 

セイバーは少し頬を赤らめながら下を向く。そんなセイバーを見て思わず笑ってしまう。

 

「な!?シ、シロウ!何故笑うのですか!」

 

「いや、ごめん。なんか久しぶりだなって思って」

 

「全く……」

 

セイバーの反応を見て、士郎は先程の玄関での出来事の事を頭の隅に置いて、今やるべき事をする事にした。

 

「そろそろ昼過ぎだし、ご飯でも作るか」

 

「食事ですか!」

 

ご飯と聞いた途端、セイバーは目を輝かせる。

 

「あぁ、ちょっと待ってくれ」

 

そう言って士郎はキッチンへと向かった。

 

 

 

「さて、何を作ろうか」

 

士郎はそう言ってセイバーが持っていた大河からの贈り物をみる。そこには

 

「卵?」

 

そう、卵が入っていた。

しかもそこそこ高いブランドの卵だ。

何故?と思いながらも卵と共に入っていた紙に目をやる。

 

『これが届いてるって事は無事にセイバーちゃんがそっちに行ったって事よね!セイバーちゃん、士郎に会えなくて結構寂しそうにしてたわよ。だからセイバーちゃんにもそっちに居座れるように美竹さんのおじ様に話通しておいたわ!だからセイバーちゃんの事もよろしくね★』

 

「藤ねぇ……」

 

行動が早すぎる大河に士郎は、苦笑いを浮かべた。士郎の脳内で高らかに笑っている大河が想像できた。

 

「鶏肉がまだ残ってるし、玉ねぎもある……よし」

 

士郎はエプロンを着用し、料理を始める。

 

鶏もも肉のスジや軟骨が残っている場合は綺麗に取り除き

2cm大に切ったら

醤油、みりん、酒、砂糖を合わせ、切った鶏もも肉を入れて5~10分程漬け置く。

玉ねぎは薄切り、三つ葉は3~4cm幅にざく切り

卵は割って軽く溶いておく

 

 

 

 

「セイバーさん」

 

居間で士郎の料理を待っている間に、セイバーに聞きたい事を聞こうと蘭は語りかける。

 

「貴方から見た士郎さんってどんな風に見えてますか?」

 

「私から見たシロウ、ですか……そうですね……」

 

セイバーは悩んだ素振りをみせ、そして答えが見つかったのか蘭を見つめる。

 

「人一倍のお人好し、でしょうか」

 

セイバーはそう言って、士郎の背中を見つめ微笑んだ。

 

「自分の事は二の次に考えて行動する困った人ですよ」

 

「そうですか、士郎さんらしいですね」

 

そこでやっと蘭が笑顔を見せた。

 

 

 

 

漬けておいた鶏肉を調味料ごと鍋に投入

更に玉ねぎ、水、市販の鰹粉末、出汁を入れたら強火で火にかける

煮立ったら中火にして3~4分程煮る

 

 

そこでふと居間に目をやると、セイバーと蘭達が楽しそうに会話してるのが目に入った。

 

「楽しそうだな、セイバー達」

 

 

肉と玉ねぎに火が通ったら溶いた卵を3回に分けて入れる

1/3量を中央から端にかけて『の』の字を書くように細い糸をたらすイメージで入れる

玉子が固まってきたら2回目も1/3量を先程と同様に回し入れ

2回目の玉子が固まってきたら、3回目も回し入れて火を止める

ご飯を盛った丼に盛り付けて三つ葉をのせて完成!

 

 

「出来たぞー」

 

「待ってました!!」

 

「もうモカちゃんはお腹ペコペコですよ〜」

 

士郎は机の上に丼を置いていく。

 

「えー、今日のご飯は親子丼です」

 

全員に行き渡ると、手を合わせ掛け声をだす。

 

『いただきます』

 

各々が口に含み、幸せそうな笑みを浮かべる。

 

「美味しいー!」

 

「玉子がふわふわだ」

 

「鶏肉も美味しいよ!」

 

士郎はふとセイバーの方を見ると、美味しそうに食べる姿が見えた。

 

「美味しいです、シロウ」

 

「それは良かった」

 

そんなセイバーの顔を見て微笑んでいると、隣から腕を軽く引っ張られる。

 

「士郎さん」

 

振り向くと口元に米粒を付けた蘭が何かを言いたそうにしていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「セイバーさんは……その……今日帰られるんですか?」

 

「え?」

 

「出来れば……もう少し居て欲しいって……思って……」

 

だんだん声の声量を落として顔を俯く蘭を、士郎は微笑む。

 

「その事なんだがセイバーにもこっちで住んでもらう事になったんだ」

 

「そうなの!?」

 

何故か蘭ではなく、ひまりが驚いた。

 

「あぁ、蘭のお父さんから許可も貰ってるから」

 

「タイガには感謝しなければいけませんね……」

 

セイバーはスプーンを置き、蘭の方へ向きなおる。

 

「ラン、今日からよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、よろしく、お願いします……」

 

お互いに頭を下げ、ひまり達が喜ぶ。

 

「後でセイバーさんにいっぱい質問していいですか!」

 

「わ、私も聞きたい事あります!」

 

「んー、アタシは多分聞きたい事は聞いてくれそうだし、ストッパーにまわろっかな」

 

「モカちゃんも質問しまくるぞ〜」

 

謎の盛り上がりを見せているモカ達を見守るように見ていたセイバー。

そんなセイバーを安心した様子で士郎は見ていた。

 

良かった……いつものセイバーのままで……

 

ライダーのあの言葉で1週間近く悩んでいたが、今思うとそれが杞憂だったと感じホッとしていた。

 

これからは、セイバーに彼女達を──────

 

 

 

「騎士王からは」(翠色の瞳)

「逃れられんぞ?」(金色の瞳)

 

 

 

 

セイバーのボソッと小さく呟いた言葉と瞳の色が変わっているところが目に入った。

 

 

 

これからはセイバーと“一緒に”彼女達を見守ろうと心誓う士郎だった




セイバーの軽い詳細

・容姿はセイバーだが、士郎の事を思うとセイバーオルタ化する。(尚、それは数秒だけ(士郎が見た限り))



最初はもっと重くした方がいいのかな?って思ったけどこの作品に重い描写入れたら全く違う作品になりそうだから没しました。あとは自分的にこれからの事を考えるとしんどくなりそうだからやめた(σº∀º)σドヤ


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夢と剣

言い訳させてくだせぇ

実は先週の日曜日に投稿しようと思ったんですけど、その日がイヴちゃんの誕生日だったじゃないですか?
見たら分かると思うんですけど、今回の内容はイヴちゃんの誕生日には出せないな、と思い投稿しなかったんですよ。
あとは、また新しい内容の小説を書いてまして、いつか投稿しますが、その代わりこっちの投稿ペースが下がりますのでご了承を

では⤵


小雨が降る日曜日の昼過ぎ、食器を拭いていた士郎の元にメールが届いた。

送り主は麻弥で、内容が『今日、握手会があるので来て欲しい』と書かれてあった。

 

「シロウ、何処か行かれるのですか?」

 

「あぁ、ちょっと知り合いに呼ばれてな」

 

食器を拭き終え、玄関で靴を履いていると後ろからセイバーが声を掛けてきた。そんな時、士郎はある考えを思い付く。

 

「セイバーも一緒に来るか?」

 

「よろしいのですか?」

 

「あぁ、セイバーにもいつか紹介しようと思ってたし、それに街もついでに案内出来るからな」

 

「なるほど、それならご一緒させてもらいます」

 

セイバーは微笑みながら、傘を持ち靴を履いて2人で家を出て行った。

 

 

 

目的地までの道のりで他愛のない話をしながら色々な店を見てまわっていた。

 

「そういえば今日ランを見ませんでしたが、何処かに行かれるのですか?」

 

「あぁ、モカ達と一緒にバンドの練習しに行ったよ」

 

「バンド?シロウ、バンド、とは何ですか?」

 

「バンドてのは、楽器を演奏する集団の事を言うんだ」

 

「ほぉ、ではラン達はそのバンドというものをやっているのですね」

 

「そうだな、ちなみに蘭はギターとボーカルだな」

 

「ボーカル?」

 

セイバーはまた頭上にハテナを浮かべていた。

 

「あれ?蘭から聞いてなかったのか?」

 

「いえ、ランからギターを実際に見せてもらい理解はしましたが……ボーカルとは何ですか?」

 

「ボーカルは歌い手の事だな」

 

「歌い手……つまりランはギターを弾き、更には歌えると?」

 

「まぁそうだな」

 

「流石ランです!」

 

セイバーはまるで自分の事のようにドヤ顔で喜んだ。その様子を見て、士郎は微笑を浮かべた。

 

「蘭のチームはあと、モカと巴、ひまりにつぐみだな」

 

「な!?モカ達もバンドをやっていたのですか!?」

 

セイバーは驚愕した顔で、士郎を見やる。

 

「5人で1チームだからな、バンド名がAfterglowだな」

 

「Afterglow……彼女達にピッタリの名前だと思います」

 

セイバーは微笑みながら、目を瞑る。そして次の瞬間、彼女のアホ毛がピーンと立った。

 

「この匂いは……!?」

 

「え、ちょ、おいセイバー!?」

 

突如セイバーが走り出し、士郎はその後を追う。

 

「ここは……」

 

着いた場所は、パン屋だった。しかも士郎がよく知る人が営んでいる店

 

「シロウ!見てください!とても美味しそうですよ!」

 

セイバーは涎を少し垂らしながら、パンを見やる。

─────そんな時。

 

「あれ?士郎さん?」

 

店から沙綾が出て来た。

 

「あぁ、おはよう沙綾。今日も店番か?」

 

「はい、今日は親が少し外出してて」

 

沙綾は視線を士郎からガラスに張り付いているセイバーに向ける。

 

「えっと、この人は士郎さんの知り合い、ですか?」

 

「えっと、まぁ、そうだな」

 

士郎はまだガラスに張り付いたままのセイバーに近付き

 

「何か買ってくか?」

 

「な!?いいのですか!?」

 

セイバーは目を輝かせ、勢いよく振り向くがすぐ我に返る。

 

「い、いえ、別に私はそこまでお腹空いてはいませんが、シロウがどうしてもと言うのであれば仕方ありませんが私も仕方なく頂きましょう!えぇ!私は別にお腹が空いている訳でありませんが!」

 

「わ、分かった!分かったから!」

 

早口で喋るセイバーを落ち着かせて、沙綾にオススメのパンを7つ選んで貰い、買って行った。

 

 

 

 

 

「そういえばシロウ、何故パンを5つ多く買ったのですか?」

 

目的地までもう少しの所で、セイバーはパンを食べながら質問してきた。

 

「今から会う人の分も買ったんだよ」

 

「5人もいるのですか?」

 

「あぁ、それも結構人気な人達だな」

 

そして目的地まであと少しという所で、何やら騒ぎが起きていた。

 

「何だ?」

 

「シロウ、あちらの方で騒ぎがあるみたいです」

 

セイバーが指した方角には──────

 

 

 

 

 

「いい加減にしてください!」

 

そこには5人の女の子とそれを守るように立つ大人達と対立するように立つ男が3人いた。

 

「貴方達が何と言おうと彩は私達の仲間です!」

 

「流石のあたしも許せないな〜、彩ちゃんに謝って!」

 

千聖と日菜が男達に怒りを顕にしながら叫び、イヴと麻弥は彩は慰めながら背中を摩る。

 

「事実だろ?俺そいつを見てるだけ鬱陶しかったんだよ、早くやめてくれねぇかな?」

 

「貴方ね!!」

 

「落ち着くんだ千聖君!」

 

「落ち着いていられません!仲間を侮辱されたんですよ!?許せません!!」

 

「それでも落ち着くんだ!ここで騒ぎ起こしてしまえば君達の顔に泥を塗ることになるぞ!?」

 

「それでも構いません!私はあの男が彩に謝るまでやめるつもりはありません!」

 

「やめるんだ!日菜君も落ち着くんだ!」

 

何とか千聖と日菜を止めている監督とスタッフ

しかし男達は反省する気はおろかまだ偉そうに侮辱する。

 

「だいたいそんな奴がアイドルとしてやって行けるんだったらそこら辺の奴でもなれるだろ」

 

「君達もいい加減やめるんだ!それ以上は名誉毀損で訴えるぞ!」

 

「はっ、俺は普通に意見を言ってるだけだぜ?何か悪い事でもしましたか〜?」

 

「貴方達、いい加減に───!」

 

「いい加減にしろ!」

 

まだ罵倒しまくる男の肩を掴む者が現れた。

 

「士郎さん!?」

 

「士郎君!」

 

士郎は男を睨むように見ながら肩を強く掴む。

 

「何だお前?」

 

「何も知らないお前らなんかに彩を馬鹿にする権利なんてない!」

 

士郎は声を荒げながら怒る。

 

「俺はアイドルとは何なのか詳しくは知らない……それでもアイドルが大変で苦しい事が沢山ある事は知っている。その中で有名になろうと思うとその何倍の苦難が待ち受けているんだろう。そして彩は仲間達と共にその苦難を乗り越え、今に至った。彼女達の苦難を知らないで偉そうに人を馬鹿にするなよ!」

 

「うるせぇな!この野郎!」

 

男は肩を掴んでいる士郎の手を振りほどき、そして士郎に殴りかかった。

 

『士郎さん!!』

 

「士郎君!!」

 

士郎はそのまま倒れそうになるのを踏ん張り、口から出た血を拭う。

 

「倒れてたまるかよ……」

 

「はぁ?」

 

「人を馬鹿にするような奴の拳で、倒れてたまるかって言ってんだよ」

 

「てめぇ!!」

 

そのまま士郎は男に3発も喰らい、よろけるが踏みとどまる。

 

「ハハ……」

 

士郎は嘲笑うように男を見遣り、煽る。

 

「どうした?倒れてないぞ?」

 

「ッ!てめぇ!!」

 

「夢があるから、人は何かを頑張ろうと思える。人の夢を応援しようと思えるから、支え合える」

 

士郎は睨み付ける

小雨は徐々に止み上がる

 

 

「お前なんかに彩の夢を馬鹿になんてさせねぇ」

 

 

士郎は拳に力を込める

雨は止み、日差しが差し込める

 

 

「彩の夢は決して、その道がどんなに険しくても!決して諦める事なんてしない!」

 

 

そして高らかに叫ぶ

日差しが士郎を照らしあげる。

 

 

 

「彩の夢は、間違いなんかじゃないんだから!!!!」

 

 

 

士郎は地を蹴り、男の顔をめがけ拳を振り上げた。

男はそのまま地に倒れ、鼻から血を流した。

 

「いってぇ……」

 

男は自分の鼻に触れ血が流れているのに気付き、士郎を睨む。

 

「てめぇ……調子こいてんじゃねーよ!!」

 

男が殴りかかろうとした時、遠くからパトカーのサイレン音が聞こえてきた。

 

「は!?何で警察が!?」

 

「君達が士郎君を殴っている間に通報させてもらったよ。これだけの目撃者がいるんだ。言い逃れはできないぞ?」

 

「チッ……行くぞ!」

 

男3人は人を押しのけながら、何処かに行ってしまった。

士郎は男達がいなくなるのを確認した後、地面に座り込んだ。

 

「士郎さん!」

 

千聖達が近付いて来て、士郎の傍に座り込む。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。こんなのアイツの拳に比べたら全然……」

 

「アイツ?」

 

「い、いや、何でもない!それより!彩」

 

涙を流しながら、蹲っていた彩に語りかける。

 

「士郎さん……」

 

「俺は彩の夢が間違っているなんて思っていない。それどころが尊敬してるんだ」

 

「尊敬?」

 

「あぁ、彩は夢を諦めずずっとアイドル目指してきたんだろ?それに比べて俺は夢を何度か諦めかけた事があるんだ」

 

「士郎さんが?」

 

「彩、この先あんな奴みたいに嫌味を言ってくる奴が現れるかもしれない。それでも彩はアイドルとしてやっていくのか?」

 

彩は士郎の問いに俯き、そして覚悟した目で応えを述べる。

 

「勿論です!私は……アイドルを諦めたりしません!」

 

「彩ちゃん……」

 

「流石彩ちゃん♪」

 

「アヤさん!私はずっと一緒にいますからね!」

 

「ジブンもッス!彩さんの為なら頑張るっス!」

 

イヴと日菜が彩に抱き着き、千聖と麻弥は微笑みながらその光景を見ていた。

 

「これから大変だけど、頑張れよ。俺も応援してるからな」

 

「はい!」

 

彩は最高の笑顔で返事をした。

それと同時に警察の人達が到着した。

 

「士郎君!怪我しているだろ?」

 

「大丈夫ですよ、これくらい」

 

監督の質問に士郎はそう応えセイバーを呼ぼうと振り返ると、セイバーの姿はどこにもなかった。

 

「あれ?セイバー?」

 

「ん?誰かいたのかね?」

 

「いえ、あの金髪の女性見ませんでしたか?」

 

「金髪の女性?あぁ〜そういえばその金髪の人から君に伝言を預かっているよ」

 

「伝言?」

 

「えっと、確か───────

 

 

 

 

 

──────少し用事を思い出しました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうする?」

 

男達は路地裏で溜まり、警察のサイレン音が鳴り止むのを待っていた。

 

「大丈夫か?」

 

「いってぇ……あの野郎、覚えてろよ……!」

 

男は鼻血を止めながら、今日殴り返してきた男を憎むように愚痴る。

 

そこに───────

 

 

 

「ようやく見つけました」

 

 

 

1人の女性が路地裏に入ってきた。

 

「何だお前は」

 

「貴方達にはまず感謝を」

 

「は?」

 

男達は何言ってるか分からないといった顔で女を見る。

 

「貴方達のお陰で士郎のカッコイイところが見れました。そこには感謝しましょう。ありがとうございます」

 

「お前、何言って────「ですが」ッ!?」

 

次の瞬間、女の雰囲気がガラリと変わり、それは男達に絶望と恐怖を与えた。

 

「お前達の行いは私の許せる範囲を超えた」

 

ようやく見えた彼女の瞳は、美しくもありそして、おぞましさも感じれる金色の瞳が、男達を見据えていた。

 

 

 

「覚悟はいいな?下等生物」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────私の愛する鞘を傷付けた事、後悔するがいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、男達は警察に捕まったが、何かに怯えた様子で発見されたという




セイバーオルタ再び

我が愛する鞘(士郎)を傷付けた者、騎士王の鉄槌を受けるべし


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プールと茶漬け

とにかく暑っつい!






「暑い日にはやっぱり……!!」

 

ひまりは透き通った海を前に、手を高らかに上げ喜ぶ。

 

 

「海だ〜!!」

 

 

「まぁ、プールだけどね〜」

 

そんなひまりにモカが冷静なツッコミをかます。

 

今日は士郎とセイバー、そしてAfterglowのメンバーと海!……ではなく、プールに遊びに来ていた。

何故プールに来ているのかは、この発端は1週間前の出来事に遡る。

 

 

─────1週間前

 

 

士郎は家に帰ると、蘭とセイバーに正座を要求され、説教されていた。

原因はあの時の握手会での出来事についてだ。

 

「士郎さんの性格は分かっていましたが……怪我してまでもやりますか?普通」

 

「グッ……返す言葉もございません…」

 

「シロウは変わりませんね…自分の事は二の次に考えて行動する……悪いとは言いませんが少し自分の事も気にかけてください」

 

「…はい、この度は大変ご迷惑をおかけしました」

そんな3人の様子を遠くから見ている4人の姿があった。

 

「士郎さんらしいっていえばらしいよな」

巴は軽く笑みを零しながら、

 

「心配したんですからね!」

つぐみは頬を膨らませながら怒り、

 

「どぉ〜どぉ〜、つぐ落ち着いて〜」

モカは珍しくもつぐみを宥める役回りをしており、

 

「心配させた罰として何か奢ってください!」

ひまりは士郎に何か奢る様にとせびる。

 

「……また太るよ?」

 

「ちょぉぉ!?何で知ってるの!?」

 

「この前普通にボヤいてたぞ?結構神妙な面持ちで」

 

「うぅぅぅ!!別に太ってなんかないもん!!」

 

と、ひまりは泣き喚く様子を今度は士郎とセイバーが微笑みながら見守っていた。

 

「確かに心配させたお詫びに何か返せたらいいが……何かあったかな?」

 

と士郎が悩んでいると、セイバーがポケットからとあるチケットを取り出す。

 

「セイバーさん、それは?」

 

「今日シロウと買い物途中で回したクジの景品です」

 

そのチケットには、『期間限定!プール入場無料券』と書いてあった。

 

「プール入場無料券!?」

 

「あぁー、確かに近くあったな」

 

「そうなの?」

 

「あこと買い物してる時に、たまたま近く通ったんだ。その時にプールがある事を知ったんだよ」

 

「あたし達がいつも通る道とは真反対にあるからね〜、気付かないのも無理ないよ〜」

 

しかし、そのチケットは5枚しかなく、誰か2人が留守をする事になってしまう。

セイバーは士郎の顔をチラ見した後、わざとらしく溜息をつきながら、ドヤ顔で応える。

 

「仕方ありません、このチケットは元はシロウから頂いたクジ券で手にした物です。ここはシロウの顔をたててあげましょう。えぇ!仕方ありませんから!」

 

「いいのか?セイバー」

 

「はい。実際シロウは何も悪い事はしていませんので、今回は特別に許します。という訳でラン、このチケットを貴方達に譲ります」

 

「…え、でもこれはセイバーさんが……」

 

「私は構いません。楽しんで来てください」

 

セイバーは笑顔で蘭に5枚のチケットを渡す。受け取った蘭だが、モカ達も同様に少し困ったような顔をしていた。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、その…」

 

「アタシ達だけで行くって、何かちょっと気が引けるっていうか…」

 

「私達の事でしたらお気になさらず。帰ってきた時に、色々と教えて頂けたらそれだけ涼みますから」

 

セイバーに言いくるめられそうになった時、家のチャイムがなり、士郎が玄関まで向かう。

 

「はーい」

玄関を開けるとそこには、配達員の方が立っていた。

 

「美竹さん、で間違いないでしょうか?」

 

「はい」

 

「こちら美竹さん宛のお届け物です」

 

そう言って配達員から封筒を1枚受け取る。受け取った後、配達員はお別れの挨拶をしてからバイクに跨り、行ってしまった。

 

士郎は玄関で封筒を開け、中身を取り出す。そこには、一通の手紙とチケットが入っていた。しかも2枚も……

 

誰からだ?と思い、手紙を拝見する。どうやら監督さんかららしい……

内容はこう書かれていた。

 

 

『士郎君、あの時はありがとうね

君のお陰で彩くんはアイドルを辞めることなく、仲間と共に今もアイドル業に励んでいるよ

本当にありがとう

この手紙と一緒にお詫びの品としてプールの入場無料券を入れてあるから、この前の金髪の子と一緒にプールで涼んで来な!

最後にもう一度言わせて貰うけど、今回は……いや、今回所ではないな、いつも、私達や彼女達の事を助けてくれてありがとう』

 

 

最後まで読み切り、士郎は軽く笑みを浮かべながら呟く。

 

「いつも助けられているのは、こちらの方ですよ」

 

士郎はチケットを手に取り、居間に戻る。

 

「セイバー」

 

「はい?」

 

「どうやら俺達も行けるみたいだぞ」

 

士郎はチケットをチラつかせながらそう言うと、セイバーだけでなく、蘭達も驚いていた。

 

「えぇ!?士郎さん!何でチケット持ってるんですか!?」

 

「さっき知り合いの人から届いたんだよ。丁度2枚あるから、これで全員で行けるな」

 

そう言うと、蘭達特にひまりとつぐみはセイバーに抱き着いて喜んだ。

その後お互いの予定が合う日を決め、皆んな嬉しそうに何して遊ぶか気が早くも話し合っていた。

 

 

 

そして、今日に至る

 

 

全員水着姿に着替え、施設内にある流れるプールに、ウォータースライダーを見渡し、どれから行くか話し合っていた。

 

すると士郎は空いてるレジャーシート場所に、荷物を置きその場に座り込む。

 

「……士郎さん、何してるんですか?」

 

「俺はここで座って見てるから、蘭達は楽しんで来なよ」

 

「は?」

 

「…え?」

 

蘭が発したとはとても思えないような引く声で応えられ、士郎は若干ビビりながら呼び掛ける。

 

「…ら、蘭?」

 

「……」

 

とても気まずい雰囲気を漂わせていると、まさかの人物から助け舟が出てくる。

 

「まぁまぁ!蘭も士郎さんもそうピリピリしてないで早く泳ぎに行こう!」

 

「うぉ!?ちょ、ひまり!そんなに引っ張るなって!」

 

「ひ、ひまり…ちょっと待って…」

 

士郎と蘭の言葉に耳を傾けず、そのままプールにダイブする。当然士郎と蘭も同じようにダイブする。

ダイブした事により、スタッフさんに「飛び込まないでくださーい」と注意される。

ひまりは楽しそうにはしゃぐ。その様子を見て、士郎と蘭はお互い顔を見合わせて笑い合う。

 

「アタシ達も行くか」

「そうだね!」

 

「モカちゃんはスライダーに行きたいぞ〜」

 

「スライダーですか?私も行きたいです」

 

その後、セイバー達と一緒にウォータースライダー各種を楽しみ、波のプールでリレーをしたり、ビーチバレーで士郎とひまりとつぐみ対蘭と巴とセイバーの対決をしたりと、クタクタになるまで遊び尽くした。

 

 

 

「疲れたー……」

 

「ひまりが1番はしゃいでたもんな」

 

「あたしも疲れたよー」

 

「モカは途中から流れるプールで浮き輪に乗りながら巴に押してもらってただけじゃん!」

 

「えぇ〜、そうかなー?」

 

家に帰って来て蘭達は机に突っ伏しながら、全員蕩けていた。

 

「セイバーさん、どうでした?」

 

「はい、とても楽しかったです」

 

セイバーはとても嬉しそうに笑う。士郎はその蘭達のだらけ具合の様子に小さく笑いながら、お茶を蘭達に渡していく。

 

「これから夕飯だけど、蘭達食べられるか?」

 

「うーん、食欲が湧かないんだよねー」

 

「……え?嘘でしょ?ひまりが?」

 

「蘭は私の事をなんだと思ってるの!?」

 

ハハハと、皆んな笑い合い、ひまりがもぉ〜!と叫ぶ。

 

「でも確かに食欲があんまり湧かないよな…」

 

「確かに…」

 

そんな言葉に士郎は今日の夕飯をどうするか悩み、そしてキッチンの方へ向かって行き、冷蔵庫から容器を取り出す。

 

「士郎さん?お茶ならこっちにありますよ?」

 

「いや、これは出汁。作り置きしてるんだ」

 

「へぇー、そうなんですか…」

 

「夕飯にこれを使うんだけど、多分皆んな食べれるんじゃないかと思う」

 

 

出汁の取り方は、昆布を使う前に砂や汚れを落とす感覚で軽く拭いて、水1ℓに昆布を入れて一晩漬け置き

それを鍋に移し、中火で火にかけ、沸騰する直前に昆布を取り除く

80~100cc程の差し水を入れて温度を下げ、1度火を止めて鰹節を1度に入れる

再び火を点け、弱火で一煮立ち寸前まで加熱

アクを取り除き、火を止め、浮いている鰹節が鍋底に沈み始めたら金網や布巾などを使ってこす

こした出汁を鍋に戻し、天然塩、醤油、みりんを入れて一煮立ち

その後、よく冷やしておく

 

 

「のせる具は…と」

 

鮭を焼いて、骨を取り除き、身をほぐしておく

きゅうりは小口切り

生姜とみょうがは細い千切り

切ったきゅうりは塩水に少し漬けたら揉み、水で洗ってから水気を軽く絞っておく

 

 

「よし…出来たぞー!」

 

『おぉー!』

 

士郎は出来た料理を皆んなの前に順に置いていく。

 

「はい、おまちどーさま」

 

「これって……」

 

「冷やし茶漬けだ」

 

「冷やし茶漬け?」

 

「冷やしたご飯に冷たい出汁とかお茶をかけて食べるんだ。食欲無くても食べやすいと思う。もっと暑い日なら氷を入れてもいけるし」

 

「美味しそう…!」

 

「鮭のほぐしたのとかみょうが、生姜、塩昆布にごま味噌、色々用意してみたから好きなの入れて食ってくれ」

 

各々好きな物をご飯の上に乗せ、出汁をご飯にかけると全員手を合わせる。

 

『いただきます』

 

口に入れた途端、全員の目が輝き食べるスピードを止める事無く茶碗の中身を綺麗に全て平らげた。

 

「これ美味しい!」

 

「食欲無かったのに……」

 

「おかわりあるけどどうする?」

 

「おかわり!」

 

「アタシもおかわり貰おうかな」

 

「私も!」

 

全員がおかわりを何回もしていき、炊飯器の中身が空になる頃、蘭達のお腹も満腹に達した。

 

「あぁ〜、美味しかったー!」

 

「これなら家でも出来そうですね」

 

「あこにも食べさせてあげたいし……士郎さん!後で料理レシピ貰ってもいいかな?」

 

食器を洗っている士郎に語り掛ける。

 

「別に構わないぞ、後で紙に書いて渡すよ」

 

「わ、私も!」

 

「お?これは羽沢珈琲店に新商品追加ですかな〜?」

 

「…確かに暑い日とかには人気出そう」

 

セイバーは夕飯を食う前よりも元気になった蘭達を微笑みながら立ち上がり、士郎の元に向かう。

 

「シロウ」

 

「ん?どうした?セイバー」

 

「また……プールに行けるでしょうか?」

 

「そうだな…また行けるといいな」

 

セイバーと士郎は蘭達の楽しそうな顔を見ながら、また行ける事を願うのだった……




今回はプール編でしたが、もしかしたら8月に海編を投稿するかもしれません
期待せず、気長にお待ち頂けると幸いです!


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男子学生の1日

今回はガルパメンバーはあまり出ません。
今回の主体は士郎と愉快な男友達との1日です。




★桜丘男子学園

 

 

 

「おーい、衛宮ー!」

 

廊下を歩いていると、後ろから見知った声で呼ばれたので振り返る。

 

「大輝?なんか用か?」

 

「用も何も、最近お前家の用事とバイトであんま遊べなかったからなー、久しぶりに遊びに行こうぜ!」

 

「あー…それについては申し訳なく思ってるよ」

 

「別に気にすんな!お前にも色々事情があるの知ってるし……で?いつ遊べる?」

 

士郎は脳内でここ1週間の予定表を思い浮かべ、いつ空いてるか探し出す。

 

「うーん、明後日ならバイトもないし、特に早く帰る用事もないな」

 

「マジか!じゃあ明後日の放課後な!他にも来れる奴見つけとくわ!」

 

「あ、おい!」

 

士郎が何か言う前に大輝は走り出し、人混みの中へと消えていった。

 

「ったく…」

 

士郎は愛想笑いしながら、自分が目指していた場所まで歩き出す。

 

目的の場所に着き、扉を2回ノックしてから部屋に入る。

 

「失礼します」

 

「お、待ってたよ、士郎くん」

 

眼鏡を掛けた男が書類に目をとおしながら、出迎えてくれる。

士郎が来た所は、生徒会室

士郎はとある企画で、クラス代表の実行委員に選ばれ、今日はその各実行委員が集まり、会議する為に士郎はここに足を運んだのだ。

 

「好きな席に着いてくれ、他の人達が集まり次第始めるからね」

 

「了解です」

 

言われた通り士郎は空いた席に座り、今回の議題についてどうするか悩み、その後続々と実行委員達が生徒会室に入ってき、人数が揃ったので、会議が始まった。

 

「えー、暑い中集まってくれてありがとう。今回の議題なんだが─────」

 

お互いに意見を出し合い、時間が来たので今日はお開きになり、士郎は帰宅する為教室に鞄を取りに戻っていると

 

「衛宮ー!」

 

振り返ると、大輝と達也が俺の鞄を持ちながら歩いて来た。

 

「実行委員おつかれ〜、ほい、お前の鞄、教科書とか入れてるから確認よろ」

 

「お、おう、サンキュー」

 

「衛宮、お前はこれから帰るのだろ?」

 

「まぁな、買い出しもこの前やったから寄り道せずまっすぐ家に帰るさ」

 

「なら途中まで俺達と一緒に帰ろうぜ」

 

「了解」

 

鞄の中身を確認し、置き忘れもなかったので大輝達と一緒に帰ることにした。

 

商店街を通りながら、他愛の話をしながら帰宅していると

 

「あ、そういえば衛宮、CiRCLEのバイト受かったんだな」

 

「え、なんで知ってんだ?」

 

「部活の友達がCiRCLEでお前を見掛けたって聞いてな、ったく…水くせぇじゃねぇか!俺達に内緒にしやがってよォ!」

 

大輝が腕を士郎の首に巻き付け、頭をグリグリと拳を回す。

 

「し、仕方ないだろ!?大輝達が落ちて俺だけ受かるなんて、言い難いに決まってるだろ?」

 

「衛宮よ、俺達を侮ってもらっちゃ困るぜ。お前だけ受かった、なんてナンパに失敗してビンタされるより痒いぜ!!」

 

「いやドヤれる事じゃないからな!?何やってんだよ!」

 

達也のドヤ顔に咄嗟にツッコミを入れた士郎だったが、実際大輝達と受かった事言おうか迷っていたのでこうも軽く流してくれた事に、内心で安堵した。

 

「大丈夫だ士郎!CiRCLEで彼女作れなくても明後日は俺達とナンパすれば見つかるかもしれん!!」

 

「その為に遊びに行くなら俺は行かないぞ!?」

 

「照れんな、衛宮」

 

「照れてねぇよ!!」

 

バカ騒がしく帰路を辿った士郎達であった。

 

 

 

そして迎えた明後日……

 

「よし……行くぞ!野郎共!!」

 

「おぉー!!」

 

「俺ら3人しかいないぞー……」

 

校門前でテンションが高い2人に付いて行けず、少し距離を離して立っていた。

 

「なんだ〜衛宮〜、テンション低いぞ〜」

 

「逆に何でそんなにテンション高いんだよ……」

 

「当たり前だろ!?ナンパメンバーが増えたんだ!ここまで喜ばしい事はないぜ!」

 

「しないから」

 

「「ダニィ!?」」

 

校門前で少し目立ちながら、大輝達と茶番をそこそこやって(やらされて)から、士郎達はショッピングモールに向かって行った。

 

 

★ショッピングモール

 

 

「さて、早速始めるか……」

 

「そうだな…始めるか…」

 

2人は士郎の方へ振り返り、ドヤ顔で宣言する。

 

「「ナンパをすr「しません」─────えー」」

 

「当たり前だろ?茶番はもういいから早く行こうぜ」

 

「ノリ悪いなー、ま、いいけど」

 

大輝と達也はちぇー、と言いながらゲームセンターの方へ向かって行き、士郎はその後に続いて歩き出した。

 

と、ここまでは良かったもののゲームセンターに着いた時、学校帰りやただ遊びに来ていた女性達を見つけると、士郎を置き去りにし走っていきました。

 

「はぁ…後で拾ってやるか…」

 

士郎は若干呆れながらも折角ゲームセンターに来たのだから、少しばかり周りの探検をしに行きました。

 

「へぇー、今はこんなにも種類があるんだな…」

 

コインゲームやらクレーンゲームなどに目を向けながら、辺りを探索していると、突然後ろから─────

 

「シロにぃ〜!」

 

と抱き締められ、慌てて後ろに目を向ける。そこには

 

「あこ?」

 

「うん!あこだよ!シロにぃ久しぶり〜!」

 

あこが嬉しそうに笑い、士郎から離れる。

 

「確かにあこに会うのは久しぶりな感じがするな」

 

「そうだよ!あこ寂しかったよ!」

 

「ごめんごめん!また今度何か作ってあげるよ」

 

「ホント!?シロにぃの料理おいしいから楽しみ〜♪」

 

「そういえばあこはここで何してるんだ?」

 

「おねーちゃんと来たんだけど、買い物終わったら呼びに来るからゲームセンターで遊んできなって言ってくれたから」

 

「なるほど、巴もいるのか…」

 

「会いに行く?」

 

「いや、やめとくよ、買い物の邪魔しちゃ悪いし」

 

 

その後、軽くあこと談話した後別れ、大輝達と所へ向かう。そこには本試合に負けてしまったといった感じの雰囲気で椅子に座っていた。

 

「おーい」

 

「あぁ……衛宮か……」

 

「よく……無事だったな…」

 

2人は真っ白に燃え尽きた表情で、士郎を見てきた。

 

「もう……駄目だ…俺たちは……」

 

「あとは……任せ…た…」

 

何でここまでなってるかは分からないが、とりあえずナンパに失敗したんだな、と悟り、呆れながらも2人にジュースを渡す。

 

「元気だせよ、今度なんか作ってやるからさ」

 

「うぅぅ…衛宮〜」

 

「心の友よ〜」

 

変な事をしなければ、モテるのに…と内心で思った士郎だが、敢えてこの事は口にしない。すぐ調子にのるから

 

少し頼りなくどうしようもない奴らだが、この学校で出来た初めての友達なので、何かと世話を焼いてしまう自分に少し呆れながらも、こんな日常を楽しく思う士郎だった…




さぁ久しぶりの男2人組だぜ〜!
次回は海編かまた別の何かを投稿したいな〜


今回はバンドリのメンバーじゃなく、士郎の通う学校の友とのバカ騒ぎな日常編でした〜





(※こんなノリの男子友達が自分の学生の時に実際にいました)


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猛暑の日のかき氷

最近暑くないですか?
熱中症にならないように気をつけてくださいね!






「────でー、今日すごく暑いですよねー?」

 

「確かに、今日は一段と暑いよな……」

 

CiRCLEの受付で座っていると、汗を流しながら暑そうに団扇を仰いでいた美咲が士郎の前に現れる。今日はハロハピのメンバーが練習に来ており、今は休憩中……という事で美咲は1番冷房が効いている受付に涼みに来たのだ。

 

「一応楽屋にも冷房は効かせてるけど、部屋そんなに暑いのか?」

 

「普通ならいい温度だと思いますけど、あたしはミッシェル着てやってますから、2倍に暑いんですよねー……」

 

「……えっと、熱中症には気をつけろよ?」

 

「体調管理は勿論してますよ。ただここ数日暑さが異常過ぎて、ミッシェル着るの躊躇っちゃうんですよね……」

 

美咲の言う通り、ここ数日猛暑の日々が続き、空を見上げると雲ひとつも無く、風は吹くが生暖かい風しか吹かず、外に出て数分後には大量の汗を掻く……そんな日々が続いている。

夏っぽいといえばそうだが、明らかに体調管理をしっかりしなければ熱中症になってしまう状況だ。

 

「美咲ちゃん?」

 

美咲が士郎と会話していると部屋から花音が出て来た。

 

「あれ?花音さんも涼みにきましたか?」

 

「えっと、部屋から美咲ちゃんがいなくなってたから探そうと思って……」

 

「すみません、ちょっと暑くて……」

 

「ほんとだ……ここ涼しいね……」

 

「士郎さんはここにずっといるんですよ?いいご身分ですよねー」

 

「なんでさ……」

 

美咲から含みのある笑みを向けられ、士郎は若干呆れながらも微笑を浮かべる。

 

「いやーっ、あたし達が暑さを我慢しながら練習しているのに、士郎さんは涼しい所で座っているだけですか?」

 

「いや、これが俺の仕事なんだけど……」

 

「み、美咲ちゃん……!」

 

「えーっ、残念だなー」

 

士郎はそこで美咲の考えに気付き、困った笑みを浮かべながら両手を上げ降参する。

 

「分かった…俺に出来ることっていったら、料理とかしかないけどそれでいいか?」

 

「えぇ!?……いいんですか?」

 

「あぁ、といっても何を作るかはまだ見当もついてないんだけどな」

 

頭を悩ませ、何作るかは迷っていると、丁度いいタイミングでこころ達が部屋から出てきた。

 

「あら?花音、ここにいたのね!それに美咲も!」

 

「ここは涼しいね……いきしは気付かなかったけど、一汗かいた後でここに来ると気付く……あぁ、なんて儚いんだ……!」

 

「ホントだ!ここ涼しい!!」

 

こころ達が来た事により、受付所が賑やかになる。それを見ていると、ある事を思い出す。

 

「あっ、そういえばこんなんあったな」

 

そこで士郎が取り出してきたのはペンギンの形をした機械だった。

 

「わぁ、可愛い……!」

 

「これは……?」

 

「これはかき氷機だな」

 

「いやいやそこじゃなくて……」

 

唐突に出てきたかき氷機にツッコミどころ満載だったので、美咲は突っ込まずにはいられずいつもの調子でツッコミどころ満載を入れる。

 

「何であるんですか……」

 

「まりなさんがな、知り合いから貰ったみたいなんだけど、自分は使わないって言って置いてったんだ」

 

「それなら外の屋台で使えばいいじゃない?」

 

「そうは言ってもねこころ……見た目が……」

 

「あぁ、明らかに自家用なんだよな……」

 

愛らしい見た目をしたかき氷機を可愛がる様にこころ達は囲みながら眺める。

唯一参加してない美咲だけは、士郎に質問する。

 

「それで何でアレを取り出したんですか?」

 

「ん?いや、アレを見た時にさ、何となく作ってみようって思ってな、一応氷と果物を用意してたんだ」

 

「何で見ただけで……?」

 

「えっと……それについては俺にも分からん……」

 

士郎は奥から氷と切り分けたフルーツ等を持ってくる。

 

これらの材料は全て少し前に士郎が下準備した物だ。

 

 

まず氷は天然水に砂糖を溶かし、冷蔵庫で冷やし固める

使う時は氷の表面が少し溶けてくるまで放置

 

そして士郎は、ついつい興が乗ってしまいバニラアイスも作り出した。

 

ボウルに卵を割り、砂糖を1/2量入れ、ふわふわになるまで泡立てる

別のボウルに純正生クリームと残りの砂糖1/2量を入れ、軽く角が立つくらいに泡立てる

これらを合わせバニラエッセンスを2~3滴加え、ヘラでさっくりと混ぜ合わせ、冷凍出来る容器に移し4~6時間程冷やし固める

 

フルーツは切り方等はそれぞれで、オレンジは身と皮の間に包丁を入れ、皮を切り込み、くるっと皮を入れたり、クシ型に切ったリンゴをVの字に切り込み、ずらしてみたり、イチゴはヘタごとVの字に切り、縦半分に切る。すると、ハート型のイチゴが完成!など、色んな形にしたりする。

 

 

かき氷機に氷を入れ、皿をセットし、頭のハンドルを回す。

すると、皿に切り刻まれた氷が溜まっていく。

 

「これに……」

 

士郎はかき氷にフルーツとバニラアイスを乗せ─────

 

「はい、まず1つ目のかき氷完成!」

 

『おぉー!』

 

「先に誰が食べる?」

 

「じゃあ……美咲ちゃんから」

 

「え?」

 

まさか自分にくるとは思ってなかったのか、間抜けな声が出てしまう。

 

「あたしはそれでいいわよ!」

 

「私もそれで構わない」

 

「じゃあ次はぐみね!」

 

「いやいやいや、ちょっ」

 

美咲が反論する前に決定されてしまい、次に出来た時の食べる順番を決めていた。そんな困った顔をしている美咲に花音が笑顔で話す。

 

「私達の中で1番暑さに耐えてたから……美咲ちゃんが1番に食べるべきかなって、思って」

 

「花音さん……」

 

花音の意見に否定出来ず押し黙ってしまい、何とか反論しようと口を開こうとした時に、士郎に止められる。

 

「譲ってくれてるんだったら、素直に食べたらどうだ?」

 

「で、でも!」

 

「何かと含みのある言い方で俺にここまでさせたのは誰だっけ?」

 

「それは!暑い中頑張ってるこころ達の為を思って─────あっ」

 

そこで美咲は隠してた本心が口に出てしまった事に気付く。士郎はやっぱりか、と言って笑う。

 

「美咲ちゃん……私達の為に……」

 

「……えぇ、そうですよ。士郎さんに色々嫌味を言ってこころ達に何か作ってもらおうって」

 

「なら仲間の為に気遣えるなら、花音達の気遣いも汲み取ってやれよ」

 

そう言って士郎は出来たかき氷を美咲の前まで持っていく。美咲は観念したのか、そのかき氷を受け取り口を運ぶ。

 

「……美味しい」

 

「それは良かった、よし!あと4つ作るか!」

 

そして士郎は4人分のかき氷を作り、こころ達はそれを美味しそうに食べていく。

 

「とても美味しいわ!毎日でも食べたいくらい!」

 

「こ、こころちゃん、流石に毎日はお腹壊しちゃうからやめよう?」

 

「見てー!ライオンにそっくりでしょ!!」

 

「あぁ、そして見かけに勝らず食感も完璧……これは子猫ちゃん達にも食べさせてあげたいよ……!」

 

彼女達の様子を遠目で見ていた士郎の横に、美咲が来た。

 

「士郎さん」

 

「どうした?」

 

「……嫌味な言い方して、すみませんでした」

 

「気にすんな、別に気にしてないから」

 

「でも……」

 

それより、と士郎はもう一度こころ達の方へ目を向ける。それに釣られて美咲もこころ達に目を向けた。

 

「美咲が望む光景にはなったか?」

 

「まぁ……そうですね」

 

美咲は小さく微笑みながら、そう応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

外は猛暑で暑いが、内はかき氷のおかげで涼しい気分になった日であった




かき氷は美味しいね!
また暑くて溶けそうになった時にまた作りたいぜ!


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海の浜で花火を

皆さんはこの夏、楽しんでますか?






「せーの……」

 

 

 

『海だー!』

 

 

 

太陽の光に反射し煌めく海に向かって、大声で叫ぶ少女達がいた。海はそんな少女達を誘う様に静かに波を立て、潮の香りを撒き散らす。

 

「香澄!早くこっち来て手伝えよ!」

 

「はーい!」

 

少女達は海を背にして走り出す。

 

今日、彼女達……ガールズバンドのメンバーは2日間の合宿で海に来ていた。

元の発端は、1週間前CiRCLEでまりなから出された案だった……

 

 

 

─────1週間前

 

「海、ですか?」

 

いつもの様に受付の場所に座り仕事をしていると、まりなから何の前触れもなく「海に行きたい!」と言ってきた。

 

「行けばいいじゃないですか?」

 

「分かってないな〜士郎くんは!」

 

呆れ顔で返され、士郎は怪訝そうな顔を浮かべる。

 

「私一人で行っても楽しくないでしょ!!」

 

「それなら諦めるしか……」

 

「でも海に行きたい!」

 

「えぇ……」

 

どうしたらいいか解らず、若干相手するのが面倒くさくなっていた時、まりなは何か思い付いた。そう、それは─────

 

 

「合宿っていう名目で一緒に来てもらえばいいんだ!」

 

「なんてはた迷惑な……」

 

 

まりなに呆れた目を送るが、当の本人は一切気付いておらず、彼女の中で徐々にスケジュールが組み上げられていた。

 

「まず彼女達がいいか聞いてから決めないと迷惑ですよ?」

 

「それなら心配いらないわ!今丁度彼女達練習中だから聞いてくるわ!」

 

そう言ってまりなは彼女達が練習している部屋に向かって行った。

士郎はこの強引さをどっかの誰かを連想したが、あれは制御出来ない虎と解釈し、連想するのをやめる。その時何故か「誰が虎じゃー!」と聞こえた気がしたが、幻聴だろうと無視する事にした。

 

しばらくすると、ウッキウキで帰って来たまりなに捕まる。

 

「来週、予定空けといてね」

 

「え?……まさか」

 

まさかまりなの我がままが通る訳がないと思っていた士郎だったが、その期待は裏切られた。まりなはニッコニコで親指を立てる。

 

「全員……OKだって!」

 

「嘘だろ……」

 

「あとついでに上の人からも許可下りてるから」

 

「なんでさ……」

 

こういう時だけ手が早いまりなに完敗して、降参する。

 

「じゃあ来週からはまりなも彼女達もいないんですね」

 

「え?何言ってるの?」

 

「え?」

 

まりなは当たり前のように応える。

 

「士郎くんも行くんだよ?あ、これは先輩命令でもあり上司命令でもあるから拒否権はないよ?」

 

「な……な……」

 

 

 

「なんでさー!」

 

 

 

その日、CiRCLEから男性の悲鳴声が聞こえたと言う。

 

 

 

─────そして現在

 

「さ、海の家に着いたら荷物置いて、そこから自由にしていいからね!」

 

『やったー!』

 

「あ!勿論、バンドの練習も出来るからしたい人は私に言ってね〜」

 

まりなの指揮の下、目の前に見える海の家に向かって岸辺を歩き続け、最後尾の士郎は重い荷物を肩に担いでいるところを声を掛ける者がいた。

 

「シロウ、持ちましょうか?」

 

「いや、大丈夫だセイバー。そっちも重いのにこっちの物まで持たされないよ」

 

士郎の言うようにセイバーは肩にクーラーボックスを担いでおり、中には大量の飲み物と氷が入っている。

 

「ご心配なく。サーヴァントですから人よりも軽く重い物は持てますよ」

 

「それはそうだけど……じゃあ見栄を張らせてくれ」

 

「……なるほど、でしたら私も引き下がるしかありませんね」

 

「ありがとな」

 

「いえ、感謝するのは私の方です。私も海に連れて来て下さりありがとうございます」

 

そう本来であれば、部外者であるセイバーは家でお留守番のはずですが、蘭や香澄達のお願いでまりなに言ったところ数秒でOKが出たらしく、こうしてセイバーも一緒に海に来れているのだ。

 

「それなら蘭達に礼を言ってくれ。俺じゃなくて蘭達がお願いしたからな」

 

「はい、後で改めてお礼を言います」

 

そう話していると、海の家に到着した。

 

「はーい!じゃあ今から部屋決めするよー!まぁもう決めってるんだけどね!」

 

そう言ってまりなはグループ事に1枚の紙を渡す。海の家は二階建てで、彼女達は二階の部屋でまりなと士郎は1階の部屋の様だった。

 

「で、セイバーさんなんだけど……」

 

まりなは少し困った顔をしながら言う。

 

「セイバーさんは私と同じ部屋で寝てもらいたいんだけど、初対面で同じ部屋で寝るっていうのは、ちょっとね……」

 

「ご心配には及びません。その場合、シロウの部屋で寝ますので」

 

「うーん、それが1番だと思うけど、流石に男女2人っきりで同じ部屋はちょっと……」

 

まりなが悩んでいると、蘭が挙手する。

 

「セイバーさんはあたし達の部屋で寝ればいいんじゃない?」

 

「おぉ〜、名案だね〜」

 

「確かに1部屋6人が最大だから、丁度いいな!」

 

蘭の意見にアフグロのメンバーは賛同するが、それを否定する意見も現れた。

 

「えぇー!セイバーさんは私達の部屋で寝てほしい!」

 

「その話なら私達も黙ってはいられないわね」

 

「私達もセイバーさんとお話したい!」

 

「あら!とても素敵な考えね!私達も参加するわ!」

 

そして話し合いは更に発展し、最終的には代表者のじゃんけんによって決着が着いた。

 

「えー、じゃあセイバーさんはAfterglowのメンバーの部屋で寝る、という事に決まりました!」

 

この結果に納得いかない顔をしている者もいたが、夜寝る前に女子会する、という事で納得した。

 

「えー、先程も言った通り、部屋に荷物置いたら自由行動してOK!練習する時は私に言いに来てねー!じゃあ、解散!」

 

そう言うと彼女達は二階に登っていき、士郎も自分の荷物を置こうと部屋に向かった。

 

「あ、士郎くん!」

 

すると、まりなに呼び止められる。

 

「今から買い物行く?」

 

「まだ足りない食材を買いに行こうとは思ってますけど……」

 

「じゃあさ─────」

 

 

 

 

 

士郎が買い物から帰って来ると、遠くから皆のはしゃぐ声が聞こえた。チラッと窓を覗くと、楽しそうに遊んでる彼女達がいた。士郎はその光景を微笑みながら見守り、そしてキッチンへと向かった。

 

「さて、今日も始めますか……!」

 

 

まず初めに作るのは、麺つゆ

鍋にみりん、砂糖をいれ、沸騰させてアルコールを飛ばし、醤油を加えてひと煮立ちしたら、火を止めてアクを取る

そして前に作り置きしていた出汁を使う

出汁を合わせれば麺つゆの完成!冷蔵庫などで冷やしておく

 

具材をそれぞれ食べやすい大きさに切る

万能ねぎとみょうがは小口切り、きゅうりにザーサイは千切りに、裂けるチーズは細かく裂く

水を沸騰させたら強火でうどんを茹でる

麺100gにつきお湯1Lが目安

冷凍麺は高温で手短に茹でるのがポイント

冷水にとり、手早く麺を冷やして締めたらザルに上げてしっかりと水気をきる

急激に冷やす事で加熱の進行が止まり、麺の表面も締まりコシのある麺になる

 

 

「よし、あとはこうして……できた!」

 

 

出来上がった品を机に並べてゆく。

並べ終わり、皆を呼ぼうとした時

 

「わぁー!美味しそう!!」

 

「これは……うどん、でしょうか?」

 

既に帰って来ており、皆頭や首ら辺にタオルを巻きながら、集まってくる。

 

「そう、んで、具を適当に用意したんで皆好きなようにのっけてくれ」

 

「えぇ〜、悩んじゃうな〜」

 

「あの時の冷やし茶漬けと似てるね!」

 

「シロウ、オススメはどれですか?」

 

「ん?俺はみょうがと……」

 

「おねーちゃん!玉子とって!」

 

「はいよ」

 

 

皿に麺を盛り、その上に好みの具をのせて麺つゆをかければ……完成!

 

 

『いただきます!』

 

 

麺を啜り、出汁を飲み、味わう。

 

「んん〜、美味しいー!」

 

「出汁も美味しいわね」

 

「えぇ!最高よ!」

 

「色んなトッピングで味わい方も変わるんだね……パンにも使えないかな……

 

「お〜?新作の予感ー」

 

そして、全員が食事を終え士郎が皿を洗っていると

 

「えー、では今からメインイベントを実施したいと思いまーす!」

 

「メインイベント?」

 

「全員!浜辺に集合!」

 

そう言って先に浜辺へと向かったまりなに続いて訳も分からず、彼女達も続々と浜辺に向かう。

 

「まりなさん、今から何するんですか?」

 

「それはね……これだ!」

 

まりなが指指した方角には士郎がいた。そしてその手にはバケツと袋が握られていた。

士郎はバケツをその場に置き、袋の中身を取り出す。

 

「あ!花火だ!」

 

「夏といえば花火でしょ!という事で士郎くんに買ってきてもらいました!」

 

彼女達は各々花火を取り、士郎が火を点火しその火に花火を近付ける。

すると─────

 

「おぉ!」

 

「綺麗!」

 

綺麗な火花を散らし、真っ暗な浜辺に輝きが現れる。

それから色々な花火を点火させ、最後の花火……線香花火だけとなった。

 

「ここで1つ!勝負といきましょう!最後まで残ってた人の勝ちね!」

 

「勝負となれば負ける訳にはいきませんね!」

 

「セイバーさん、やる気ですね……!」

 

「負けませんよ!」

 

 

 

 

夜空に輝く満天の星空と、地を舞う綺麗な火花……

この夏、最高の思い出になったのは言うまでもなく、いつまでも笑い続けるのだった……




8月後半ちょっと雨風多過ぎやしませんか?
これじゃ何処に行けないよ……




※来週の日曜日は投稿休みの予定ですが、気が向けばこの話のセイバー視点を出したいと思います。ほんと気が向けばなので、期待しないでください


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とある少女の悩み事

雨は振るくせに暑い……
この世の地獄だァァァ!!






★羽沢珈琲店

 

 

「と゛う゛し゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!」

 

店の一角のテーブルで濁点の入った声を出しながら項垂れている少女とそれを慰めている3人の少女達がいた。

 

「元気だせってひまり!そんなに大差ないだろ?な!」

 

「うぅぅぅ」

 

巴はひまりの背中を擦りながら、慰める。しかしひまりは涙目になりながら、項垂れ続ける。

 

「……これはどういう状況なんだ?」

 

「おぉ〜、シローさんやっほー」

 

注文を聞きにきた士郎はこの惨状に理解出来ず、思わず口に出してしまった。

 

「えっと、実はひまりがな……その……」

 

巴が言いずらそうにひまりの事をチラチラと見ていると、代わりに応える者が現れた。

 

「太ったんだって、確か─────」

 

「それ以上は言わないで!!」

 

蘭が何の躊躇いもなく暴露し、更にはどれくらい増えたか詳しく話そうとしていた所を先程まで項垂れていたひまりが顔を上げ、止める。

 

「何言っちゃおうとしてるの!?乙女のプライバシーだよ!?」

 

「なんとなく?」

 

「今日の蘭、なんか容赦がないよー!!」

 

更にダメージを負い、ひまりは巴に泣き付く。

 

「えーっと……」

 

「ひまりちゃん、まだ落ち込んでるの?」

 

すると士郎の後ろから声が聞こえ、振り返るとつぐみが立っていた。

 

「士郎さんも困ってるし、そろそろ落ち着こ?」

 

「……うん」

 

「ていうか、何で今になって体重の事気にしてるの?」

 

「やっぱり今日の蘭ってなんか容赦ないよね!?」

 

ひまりが蘭に襲いかかろうとしているのを巴が止めている所を尻目に、士郎は小声でつぐみに聞く。

 

「ひまりになんかあったのか?」

 

「えっと、私達の学校ってもう少しで体育祭なんですけど、詳しくは言えないんですけど、そこの一種の項目でとある衣装に着替えるんですけど、その代役にひまりちゃんが選ばれて……」

 

「あー……」

 

士郎は何かを察し、これ以上聞くのを止めた。

そして蹲ってるひまりに声を掛ける。

 

「えーっと、ひまり?別に大丈夫だと思うぞ?ひまりスタイル良いし、何着るか分からないけど似合うと思うぞ?」

 

「……士郎さんの変態」

 

「シローさんはえちちだね〜」

 

「なんでさ!?」

 

慰めるつもりが、まさかのモカと蘭に責められる士郎だった。

 

「元はと言えば……」

 

そこでひまりは顔を上げ、士郎に指を指す。

 

「士郎さんのご飯が美味しすぎるのが原因なんですからね!!」

 

「えぇ……」

 

怒りの矛先が理不尽過ぎて、士郎は反論する事も出来なかった。

 

「ひまり、流石にそれは無理あると思うぞ……?」

 

「だってそうじゃん!あんなに美味しいのいくらでも食べたくなるでしょ!?」

 

「まぁ……分からんでもないけど」

 

「こうなったら士郎さんに責任とってもらいます!」

 

「なんでさ……」

 

士郎はそう応えるが、内心では確かに自分のせいでもあるな、と納得しているところもあった。

何故彼女だけ体重が増えたのかは謎だが、そこはあえて考えないようにした。

 

「じゃあ俺は何をしたらいいんだ?」

 

「そうですね……じゃあダイエットしてる人にピッタリな料理を作ってください!」

 

「え、今?」

 

「今!」

 

「料理ならメニュー表から選んでくれ?」

 

と、言った時つぐみの父が顔を出す。

 

「士郎君」

 

「店長?」

 

「新メニュー、歓迎だよ」

 

親指を立て笑みを浮かべるつぐみの父に、士郎は微笑を浮かべた。

 

「はぁ……じゃあ作ってくるわ」

 

「やったー!」

 

厨房に向かい、つぐみの父と会話する。

 

「いいんですか?本当に」

 

「士郎君が考えるメニューなら大歓迎だからね」

 

「そんなに期待されても……」

 

とりあえず士郎は、厨房にある食材を並べ何を作るか考える。いつもなら食材を見ただけでこれ作ろ、と思えるが今回はダイエットにピッタリな料理を作るので、中々に何を作るか決まらない。

 

そして1つの食材に目に入る。

 

「これって……」

 

士郎はその食材を手に取り、そして料理に移った。

 

 

まず始めに水洗いし、その後に食べやすい長さにカットする

お湯で2~3分程茹で、アクと臭みを抜き、ザルで水気を切る。

ボウルに卵(全卵)、粉チーズ、牛乳を入れ、よく混ぜ合わせる

ベーコンは8mm角の棒状に切り、玉ねぎは薄切り、にんにくは芽を取りみじん切りに

フライパンにオリーブオイルをしき、ベーコンを中火~強火で炒め、ベーコンから油が出てきたら弱火でじっくり炒める

ベーコンにきつね色の焼き目がついたところで、弱火のままにんにくを加えて香りを出し、次に玉ねぎを加えて炒める

玉ねぎに火が通ったら水洗いしカットしたものを合わせて塩をひとつまみ加えて炒め、全体が馴染んだら1度火を止め、先程混ぜ合わせた卵液を鍋の中心に落とす

全体に絡むように手早く混ぜ合わせる

再び弱火にかけて手早く混ぜ合わせ全体的にとろみをつける

味をみて塩、粉チーズで調整、とろみが固いと思ったら牛乳を少し足す

皿に盛り付け、粉チーズをふり、粗挽き胡椒を強めに振りかけたら……完成!

 

 

「おぉ〜、いい匂いしてきたね〜」

 

「ほんとだ」

 

「あれ?この匂いって……」

 

そして士郎が作った料理をひまりの前に置く。

 

「お待ちどーさま」

 

「ちょ、士郎さん!これ、カルボナーラじゃないですか!?どこがダイエットにピッタリな料理なんですか!」

 

「まぁ、食べてみたらわかるよ」

 

「勿論食べますけど!」

 

そう言ってフォークを手に取り、手を合わせる。

 

「いただきます!」

 

ひまりはヤケクソでカルボナーラを口入れる。すると何か違和感に気付き、不思議そうな顔をする。

 

「どうしたの?ひまり」

 

「士郎さん、これパスタじゃないですよね?」

 

「あぁ、パスタの代わりにしらたきを使ってるんだ」

 

「しらたきって鍋とかに入れるやつか?」

 

「おう、カロリーが気になるなら具材を変えればいけるかなって思ってな」

 

士郎が説明してるのを余所に、ひまりは手を休めることなく、カルボナーラを食べ進める。

 

「そんなにがっつかなくても逃げたりはしないと思うぞ?」

 

「シローさん、あたしも食べたいな〜」

 

「アタシも気になるな」

 

「……あたしも」

 

「分かってるよ、食材は余ってるし作ってくるよ」

 

「わ、私も後で食べたいです!」

 

「了解」

 

そう言って、士郎はしらたきカルボナーラを作りに厨房に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

この日以来、しらたきカルボナーラは羽沢珈琲店の女子受けメニューとして人気の品になったとか……




※セイバー目線のお話は外伝として、またいずれ投稿します


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体育祭《前編》

皆は体育祭あったかな?

ちなみに自分は体育祭でリレーに出て2位でアンカーに渡して1位取ったよ!






『只今より、羽丘女子学園、花咲川女子学園の合同体育祭を開始します』

 

雲1つも無い天候の最中、少女達はクラス対抗……ではなく学校対抗の体育祭が行われようとしていた。

 

 

 

何故学校対抗の体育祭になっているのかは3週間前に遡る……─────

 

 

 

★CiRCLE

 

「ん〜……」

 

「つぐみ?どうしたんだ?」

 

CiRCLEでバンドの練習をしに来ていた蘭達。その時に機材に少し違和感を感じ、士郎に見て貰う為に部屋に呼び、その点検が終わり帰ろうとしていた時、何かに悩みながら唸っているつぐみに目がいった。

そして士郎は気になり、声を掛けたのだ。

 

「士郎さん……ちょっと困った事になりまして……」

 

「困った事?」

 

その続きは巴が応える。

 

「何か今まで1番盛り上がりそうな体育祭の案を考えて欲しいって言われたみたいなんだ」

 

「へぇー」

 

「そんな事言われても思い付かないよ……」

 

「つぐみも大変だな……」

 

苦笑いでつぐみの苦労に同情していると

 

「そうだ〜」

 

モカが何か思い付き、士郎に近付く。

 

「シローさんも一緒に考えよー」

 

「え!?俺も!?」

 

「確かに……士郎さんならなんかいい案出てきそうだな!」

 

「巴も何言ってんだよ!」

 

士郎は蘭に目線で助けを乞う。が

 

「……一緒に考えて」

 

救いの手は差し伸べられず、万事休すに追い込まれた士郎だったが、まだ助けてくれそうな人物が1人残っていた。

士郎はひまりに目を向け、助けを乞う……と思ったのだが、なにやらひまりはひまりで何かに悩んでいた。

何に悩んでいるかはひまりの手元を見ればすぐ理解できた。

 

「ひまり?大丈夫か?」

 

「助けて!士郎さん!!」

 

「えっと、どこが分からないんだ?」

 

「このページ全部!!」

 

ひまりは教科書を士郎に見せながら、目を潤ませていた。

 

「ひーちゃん、まだ復習課題終わってないのー?」

 

「仕方ないじゃん!わかんないだもん!」

 

夏休み明けのテストで悪い点数を取ってしまったひまりは復習課題を出されたみたいで、それに悪戦苦闘していた。そしてひまりの他にもう1人復習課題を出されていた人物がいた。

 

「そういえば蘭も復習課題出てなかったっけ?」

 

「あたしはもう終わらしたよ」

 

「嘘!?」

 

自分と同じ境遇だった友がまさかの裏切りに衝撃を口を開けたままひまりは固まってしまった。しかし幼き頃からの友だからこそ、その真意が理解出来た。

 

「それシローさんに教えてもらってやったよねー」

 

「うっ……」

 

「どうなんだ?士郎さん」

 

「あぁ。確か夕飯後に、教えて欲しいところがあるって言いに来てたな」

 

「ちょっ……士郎さん!」

 

蘭が頬赤らめながら怒りに来るが、その前にひまりが蘭に対して怒る。

 

「ズルい!士郎さんに聞いてやるなんて反則だよ!」

 

「いや、課題に反則もなにもないじゃないか?」

 

「別に……いいじゃん、分からなかったんだから……」

 

「それは別にいいよ!ただ純粋に羨ましいだけだよ!」

 

「それただの八つ当たりじゃん……!」

 

と、言い合っていると

 

「もう!そんな事で喧嘩しないで私の悩みを解決出来る案を考えてよー!」

 

「「は、はい……すみませんでした」」

 

つぐみの一声で2人は喧嘩を止め、大人しくなる。

 

「で、どうする?」

 

「シローさん、何かないのー?」

 

「そうだな……」

 

今まで1番盛り上がりそうな案……中々に難しい注文に流石に何も案が思い付かない士郎だったが、ふとセイバーとの会話を思い出した。

 

 

 

「シロウ、ランやカスミ達は同じ学校ではないのですか?」

 

「あぁ、香澄と蘭のグループはグループ同士で同じ学校だけど、他のグループは別れてるな」

 

「何故同じ学校にしないのでしょうか?」

 

「それは俺にも分からないさ」

 

「同じ学校の方がいいと私は思うのですが……」

 

 

 

この会話を思い出し、士郎はある事を思い付いた。

 

「学校対抗の体育祭、てのはどうだ?」

 

『学校対抗の体育祭?』

 

「そ、近くにある学校、花咲川女子学園と対抗の勝負をするんだ。確か向こうの学校も体育祭が近かった気がするからな」

 

「で、でも!それって可能なんですか?他校との合同体育祭って……」

 

「可能かどうかは俺にも分からない……でも間違いなく今までにない体育祭になると思う」

 

「確かに……そんな体育祭聞いた事ないし、見た事もないな」

 

「でもどうやって花咲川女子学園に申請するんですか?」

 

「学校がやってくれてもいいんだけど、そこは生徒の頑張りも見せないとな」

 

士郎はスマホを取り出し、あの少女に電話を掛ける。

 

「……あ、もしもし?忙しい中悪いな、少しお願いがあるんだが、そっちの学校ってもう少しで体育祭があったよな?……そこである提案があるんだが─────」

 

蘭達は誰に電話をしているのか分からず、話は先々進んでいく。

 

「─────あぁ、助かったよ、ありがとな」

 

「士郎さん、誰と電話していたんですか?」

 

「ん?千聖にな、仕事で忙しかっただろうに無理言っちまったな……今度詫びの品でも持って行くか」

 

士郎がそう呟いていると、つぐみは何かを察し企画書へと手を動かせる。

 

「つぐみ?」

 

つぐみの様子に困惑する蘭とひまり、そしてつぐみ同様に察した巴は苦笑いし、モカはその様子をパンを食べながら見ていた。

 

 

「さぁ、あとは学校の生徒達の正念場だ。頑張れよ」

 

 




飯テロは後編で投稿させていただきます
(べ、別にネタが無くなってきたから前後編に分けてる訳じゃないよ!?)


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体育祭《後半》

今回は長い
そしてネタが尽きた(遠い目)



「本当に実現しちゃうなんてね……」

 

蘭達は放送を聞きながら、目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。

CiRCLEで士郎が提案した学校対抗の体育祭……

結果は両校の許可が下り、そして両校の実行委員同士で話し合って今日という体育祭が実現したのだ。

 

蘭曰く、提案した士郎は

 

「まさか本当に実現させるなんてな……」

 

と苦笑いで言っていた模様

 

「おーい!」

 

聞き覚えのある声が聞こえ、その方向に振り返ると香澄とその後ろに有咲達がいた。

 

「今日はよろしくお願いします!」

 

「あぁ、よろしくな!」

 

香澄達と挨拶を交わしていると、いつの間にか他のメンバーも集まってきていた。

 

「負けないよ?紗夜、燐子!」

 

「手を抜いたりはしません。全力で相手をします」

 

「えぇ、勿論よ」

 

「が、頑張ります!」

 

「日菜ちゃん!麻弥ちゃん!負けないからね!」

 

「あたしも本気で行くよ!」

 

「ジ、ジブンも頑張るっス!」

 

「ブシドーの力を見せるときです!」

 

「儚いね……まさか君と戦う事になるとは……」

 

「そうね、でも手は抜かないわよ?」

 

「こちらも同じさ、いい劇にしよう!」

 

「劇じゃなくて体育祭ね」

 

「楽しみね!」

 

「こころちゃん!負けないよ!」

 

「いや、そっちは味方」

 

「はぅぅ、緊張してきた……!」

 

そんなこんなで、放送から開会式の合図が流れたので、この場の離れ指定された列へと並びに行く。

その道中で

 

「そういえばあこちゃんは?」

 

「あこなら士郎さんと一緒にいると思うぜ」

 

「そっか、なら安心だね!」

 

「あぁ、士郎さんには感謝してもしきれないくらいだぜ。アタシとあこの分の昼も作ってくれるからな」

 

「ん?と、巴?もう一度言ってくれる?」

 

「え?士郎さんには感謝しきれない?」

 

「その後!」

 

「アタシとあこの分の昼も作ってくれる?」

 

「何それ!?初耳だよ!あとズルいよ!」

 

ひまりは巴に詰め寄りながら、激怒する。

ひまり同様に巴に詰め寄る者もいた。

 

「流石のモカちゃんも許せないですな〜」

 

「てかこの事蘭は知ってたの!?」

 

「士郎さんが教えてくれた」

 

「うがー!」

 

「ひまり、うるさい」

 

喚き散らすひまりを宥めながら、列の方へと進む。

 

『只今より、第1種目めの開会式を行います。花咲川女子学園、羽丘女子学園の生徒の皆さんは朝礼台に注目してください』

 

放送の指示通りに朝礼台に体を向けると、花咲川学園と羽丘学園の理事長が台の上に上がってきた。

そこから2人の理事長の長い話を聞き終え、そしてここからが本当の─────

 

『続いて第二種目めの競技に移ります。出場する両校の生徒の皆さんは、準備してください』

 

 

─────乙女達による熱い激戦の開幕だった

 

 

士郎達はテントの貼られた観覧席で蘭達の体育祭を見ていた。

 

「シロウ、ランがやる競技はいつ頃でしょうか?」

 

「ん〜、まだ先だな。でも今から始まる競技には彩とひまりがやるみたいだぞ」

 

「なんと……!それは是非とも応援しなければ」

 

「セイバーはどっちを応援するんだ?」

 

「確かに、アヤの事も応援したいですがヒマリも応援したい……どうすれば……」

 

セイバーは真剣に悩み始め、士郎は微笑を浮かべながら自分の考えを伝える。

 

「じゃあ両方応援したいいいんじゃないか?」

 

「それはズルくなってしまうのでは?」

 

「確かにな、でも今回は贔屓するよりいいと思うんだ」

 

「!……確かに、一理あります。では私はアヤの事もヒマリの事も応援しましょう!」

 

そう言ってセイバーは前を向く。すると今度は隣から質問が飛んできた。

 

「ねぇシロにぃ、今から始まる競技って何だっけ?」

 

士郎は行われる競技の書いたしおりを確認する。

 

「えっと、障害物競走だって」

 

「障害物競走?それは何ですか?」

 

「まぁ簡単に言うと目の前にある邪魔な物を乗り越えつつ、1位を目指すリレーって感じだな。あ、ほらあんな感じの物」

 

士郎が指さした先では、先生がネットやハードルなどを設置していた。

 

「なるほど、これは中々に難しそうですね……」

 

「あぁ、ひまり達がどう乗り越えるか楽しみだな」

 

 

そして準備が完了し、第二種目障害物競走が始まった。

 

「位置について…………よーい……ドン!」

 

合図と共に一斉に走り出す。レーンは4レーンあり、各学園で2組で走る事になっている。

第1走者の人達は数多くの障害物に手こずりながらも、次の走者へとバトンを渡していく。そして先に第3走者だった彩に順位が1位でバトンが回ってくる。

彩が走る道にはハードル、ネット、麻袋といった順番に配置されていた。アイドルでもある彩はハードルは難なくクリアしたが、ネットで思った以上に進めず2位との差が縮まってしまった。そしてネットを抜けた先では麻袋が待っており、その中に入って一定の距離をジャンプして行く。彩のターンは終わり次の走者にバトンを渡す。

そしてその隣でもバトンが渡され、第4走者のひまりに回ってくる。

ひまりの走る道はハードル、フラフープ、パン食いといった順番だった。ひまりは1個だけハードルに失敗するも1位の人とほぼ同率で走り、片足だけで置かれたフラフープの中を踏んで行く所で1位を出し抜いた。そして最後の障害物、吊るされたパンを口でゲットして通過して行く所でひまりはジャンプを何回も繰り返しながらパンに食らいつこうと必死に頑張っていた。そうしている間に他の走者達も同じ難関に来たが、ひまりは誰よりも早くパンをゲットし、アンカーにバトンを回したのだった。

結果は1位羽丘①、2位が花咲川②、3位が花咲川①、4位が羽丘②といった順位となった。

 

「負けちゃったー!」

 

「でも彩さん早かったですよ!」

 

「う〜、でも!まだ始まったばかりだからね!負けないよ!ひまりちゃん!」

 

「私も負けません!」

 

そして障害物競走は終了し、次の競技の準備が始まった。

 

 

「中々の接戦でしたね」

 

「あぁ、彩もひまりも中々にいい勝負してたしな」

 

「次は誰か出るのですか?」

 

「次は綱引きで……花咲川では香澄達と美咲とイヴと紗夜、羽丘はつぐみと日菜と麻弥が出るみたいだな」

 

「ほぉ、一気に知り合いが出てきましたね」

 

「そうだな、どっちが勝つか楽しみだな」

 

「えぇ、応援しがいがあります!」

 

 

縄の準備ができ、出場する生徒達は縄を軽く持ち座る。

縄は2本あるが、1本目の所には美咲とイヴ、紗綾にたえがおり、そして2本目に香澄とりみ、有咲に紗夜そして対立につぐみと日菜に麻弥といった組み分けとなった。

 

「負けないよ!」

 

「わ、私だって!」

 

先生がスターターピストルを空に掲げ、打ち鳴らす。

 

それと同時に、両者一斉に縄を引き激しい攻防戦を繰り広げる。観覧席からは声援が挙げられ、より盛り上がりを増す。

先に決着が着いたのは1本目の方で、花咲川学園が勝利を収めた。2本目はまだ決着が着かず、声援は続く。縄を引く生徒達は険しい顔を浮かべながら、足に力を込め相手の引きに耐えたり、引き上げたり努力している。しかし、そんな攻防戦も長く続く訳もなく体力の限界を超えた者の数で決着が着いた。

 

『只今の勝負、花咲川女子学園1本、羽丘女子学園1本。よって最終結果、両校同点になります』

 

綱引きで同点という結果に収まった。

 

「負けちゃったね」

 

「ごめんね、最後の方で力抜けちゃって……」

 

「別にりみが悪い訳じゃないから」

 

「えぇ、お互い全力を出し合って負けたのなら、悔いることはないですよ」

 

「そうだよ〜、あたしも結構ピンチだったし!」

 

「ジブンも途中から力入らなかったッス!」

 

「ナイスファイトー」

 

「はい!とても良かったと思います!」

 

第三種目綱引きは無事終わり、次の種目へと移った。

 

 

「次の種目で午前の部は終わりみたいだな」

 

「次っておねーちゃんが出てくるんじゃなかったっけ!?」

 

「あぁ、巴とはぐみがやるみたいだな」

 

「ちなみに競技は?」

 

「徒競走だな」

 

「なるほど……実にトモエとハグミらしいですね」

 

 

今回の走者で巴とはぐみは両方ともアンカーとして走る事になっている。

今回はレーンは2つだけとなっている。つまりどちらが勝てばそれだけ点差を広げられるのだ。

 

第1走者がスタートライン上に立ち、そして先生がスターターピストルを空に掲げる。

 

「位置について…………よーい……!」

 

ピストルが打ち鳴り、両者同時に走り出す。観覧席からの声援は勿論の事、待機中の走者達も大きな声を上げながら応援する。若干羽丘学園の方が有利な状況で第2、第3走者へとバトンが渡っていく。そして第4走者で花咲川学園とかなりの差を広げ羽丘学園はアンカーである巴にバトン渡され、全力で走り更に差を開けていく。このまま独走かと誰もが思いったが、後ろから徐々に差を縮めて来るアンカーのはぐみがいた。

巴との差は徐々に詰められ、ゴールまでもう半周の時にはすぐ後ろにいた。巴も抜かされまいとスピードを上げるが、はぐみも更にスピードを上げていく。あと数メートルの地点では抜いたり抜かされたりと激戦を繰り広げ、そして同着ゴールを果たした。

しかし、それは遠くから見ていた観覧席からの視点、ゴールテープを持っていた2人は審判にどちらが先に着いたかを伝える。

 

『只今の勝負…………羽丘女子学園の勝利です』

 

それを聞いた途端、羽丘学園の生徒そして先生が大声で叫び歓喜した。

息を整えながら巴は、はぐみに近寄り手を差し伸べる。

 

「いい勝負だったぜ!ありがとな! 」

 

「はぐみも楽しかった!!またやろうね!」

 

「あぁ!」

 

はぐみは差し伸べられた手を握り返し、大はしゃぎで笑う。

 

『これにて午前の部は終了と致します。午後の部の始まりは開始する10分前に放送でお伝えします。皆様、お疲れ様でした。この後は各先生の指示に従って─────』

 

こうして午前の部は羽丘学園が1歩リードした状態で終了した。

 

先生の話を終え、蘭はモカ達と合流し士郎達を探し始めそして、すぐ見つける事ができた。

 

「士郎さん!」

 

「お、いたいた。お疲れ様」

 

「ふっふっふー、モカちゃんの活躍を見てくれたかな〜」

 

「ってモカはまだ何もやってないでしょ!?」

 

「そうだっけー?」

 

「まだまだ元気そうだな。じゃあ早いとこ昼食べるか」

 

「もうお腹ペコペコだよ〜!」

 

士郎は笑いながら、「こっちだ」と案内して行く。着いた先には日陰にレジャーシートが引かれ、そしてそこにセイバーとあこが座っていた。

 

「おねーちゃん!!カッコよかったよ!」

 

「ありがとな!」

 

「お疲れ様です。とても良い勝負を見させてもらいました」

 

「いや〜、照れちゃうなー!」

 

そう談話していると

 

「お待たせしました」

 

声のした方へ振り返ると千聖が立っており、その後ろには彩達もいた。

 

「いや丁度いいタイミングで来てくれたよ。さ、好きな場所に座ってくれ」

 

「お邪魔しまーす!」

 

彩達はレジャーシートに荷物を置き座っていく。

千聖は士郎の方へ向き直り、頭を下げる。

 

「この度は呼んで下さりありがとうございます」

 

「そう畏まらなくてもいいさ、食事は皆楽しく食べた方がいいしな」

 

「えぇ、ならそうさせてもらうわ」

 

千聖は彩達の方へ向かっていった。その隙をついて蘭が士郎に質問する。

 

「何で呼んだの?」

 

「まぁ彼女の協力のお陰でこの企画成り立ったからそのお礼かな?あとはセイバーが皆と仲良く昼が食べたいって言ったから」

 

「皆?」

 

疑問が生まれたが次の光景で一瞬で理解できた。

 

「待たせたわね」

 

「お待たせしました!」

 

「待たせちゃったわね!」

 

ガールズバンドがここに全員集合を果たした。

大きなレジャーシートは人と荷物でいっぱいになった。

 

「あれ?皆ご飯は?」

 

「あら?聞いてないの?」

 

ひまりがえ?と疑問そうにしていた時、士郎が鞄から沢山の容器を取り出す。

 

「えー、今日の昼はセイバーとあこと協力して作りました」

 

その容器の蓋を開けると、

 

「唐揚げだー!」

 

「美味しそう!!」

 

容器には唐揚げや卵焼きやらおにぎりやら色々と入っていた。

 

「流石にこの量だからな、1人でやるのはキツかったから2人にも協力してもらったんだ」

 

 

まず初めに鶏肉を1口大のぶつ切りにし、にんにく、生姜をすりおろし、下味用の醤油、塩、胡椒、酒を合わせ、切った鶏肉をよく揉み5分ほど置く

漬け込んだ鶏肉は調味料をきり、溶き卵に漬け馴染ませるように混ぜたら同量の小麦粉、片栗粉を混ぜたものを肉にまぶす

 

(これはあこにお願いしよう)

 

「あこ、お願いできるか?」

 

「任せて!」

 

160~180℃程度の油で1~1分半揚げ、油切れの良いバット等に上げて1分弱余熱で肉に火を通す

お玉等で叩き、軽く亀裂を入れて再び揚げる。これを2回、3回繰り返す

中心まで火が通ったら最後に200℃程度の高温で30~40秒揚げ、取り出して完成!

 

「セイバー、出来た物を容器に入れていってくれ」

 

「任せてください」

 

 

「といった感じで効率的に作っていったんだ」

 

「なるほど」

 

「じゃあ皆手を合わせて……」

 

『いただきます』

 

全員が唐揚げを口に入れ、美味しそうに頬を緩ませる。

 

「美味しい〜!」

 

「疲れが一気に取れちゃうくらいだよ!」

 

「卵焼きも美味しいわね」

 

と各方面から喜びの声が上がる。

 

「てか士郎さんが用意してくるならなんで教えてくれなかったの?」

 

「教えたじゃん」

 

蘭はひまりの疑問に当たり前のように言い放つ。

 

「いつ?」

 

「LINEで」

 

「なんて?」

 

「昼は購買で食べよって」

 

「それだけで分かるわけないでしょ!?」

 

見事な漫才に笑いながら、士郎は午後の競技に出る彼女達に応援の声を上げる。

 

「頑張れよ!どっちも応援してるから!」

 

「えぇ、私も応援してます」

 

「ファイトー!」

 

「任せて!みんなを笑顔にしてみせるわ!」

 

「こころ、それ趣旨変わってるよね?」

 

「そうかしら?」

 

笑い合いながら、昼を取りそして午後の部の開始の放送が鳴った。

次の種目は、玉入れ

参加するのは、こころと花音、燐子に千聖そして対立にモカにリサ、湊に薫が出場する。

 

「燐子が相手でも手を抜かないよ!」

 

「お、お手柔らかに……」

 

「楽しい勝負になりそうね!」

 

「そうだね、儚い勝負をしようじゃないか!」

 

白線が引かれた所で横1列に並び、スタートの合図を待つ。

 

「位置について…………よーい……ドン!」

 

一斉に飛び出し、地面に落ちたボールを拾い上げ、ネットに投げ入れる。

流石の身体能力を持ったこころは何故かステップを踏みながらボールを投げ入れそれは全てネットの中に入ってゆく。花音や燐子は投げ入れるはするが、中々入らず四苦八苦していた。千聖はそんな2人に綺麗に投げ入れる方法を教えていた。

リサは何故かモカから渡されるボールを受け取っては投げ、を繰り返していた。そんなモカは近くに来たボールを拾ってはリサに渡していく。湊は前半では順調だったが、たまたま取ったボールがまさかの猫ちゃんの顔が描いており、投げれず固まっていた。そして薫は何故かボールが回ってくる事がなかった。それもそのはず、薫が取る前に周りの女子生徒が回収して投げて入れているからだ。本人曰く、「私を守る為に頑張ってくれていのだよ……あぁ、なんて儚いんだ……!」らしい。

 

結果は見事、花咲川女子学園の勝利

 

「薫、あなた投げてた?」

 

「子猫ちゃん達が私の所へ来るボールを全て回収していってね、この儚い勝負を見届けていたよ」

 

「ごめんなさい、まさか猫ちゃんのボールがあるなんて知らなくて……」

 

「あれはたまたま混ざっちゃったみたいだから友希那のせいじゃないよ!ね?」

 

「モカ、あんたサボってたでしょ」

 

「えー、心外ですな〜。ちゃんとやってたよー?ボール拾いー」

 

「うぅぅ、全然役に立てなかったよ……」

 

「そんな事ないですよ、花音さんは頑張っていましたよ」

 

午前と比べ平和的に終わった玉入れに和みながらも、次の種目へと集中する。

 

 

「シロウ、次はついに」

 

「あぁ、蘭が出場する競技だ」

 

「ちなみにランは何の競技に?」

 

「えーっと、借り物競走らしい」

 

「借り物競走とは?」

 

「えっと、まぁ簡潔に言うと紙があってその紙に指定された物等をゴールまで持ってそれが合っていたら勝ちっていうやつだな」

 

 

説明が終わると競技の準備も完了したらしく、放送が入る。

 

『只今より、借り物競走を行います。そこでご来場の保護者の皆様にお願いがございます。借り物競走に出場されてる生徒達の指定された物をお持ちである又は、指定された人物であるのでしたら快くご協力お願い申し上げます』

 

放送からのお願い事に耳を通しながら、出場する生徒達が並び出す。出場する生徒は蘭含め6人。

 

『それでは只今より最終種目、借り物競走を行います』

 

「位置について…………よーい……ドン!」

 

両者一斉に走り出し、机の上にある紙を1枚選び中を見る。─────そして。

 

「誰か万年筆持っていませんかー!」

 

「誰か今犬を連れている人はいませんかー!」

 

それぞれ指定された物を探し求め始める。

しかし、蘭だけがその場から動かずただ辺りをキョロキョロと見渡すだけだった。

 

「ランは何を引いたのでしょうか?」

 

「さぁ?」

 

すると蘭の目が合い、こちらへとまっすぐ向かってくる。

そして士郎の目の前まで来て

 

「……来て」

 

と士郎の手を引っ張りゴールまで向かう。

ゴール前でマイクを持った実行委員に紙を提示する。

 

「では、紙に書いてる事を口に出してお答えください!」

 

「……お世話になってる人」

 

「蘭……」

 

蘭は頬を少し赤らめながらそう答える。

 

「ちなみにどんな所でお世話に?」

 

「いつも美味しいご飯を作ってくれたり、困った事があったらいつも助けてくれる……」

 

「なるほど……合格!1着ゴールです!」

 

そして1着は羽丘学園となりそれに続いて続々とゴールしていった。

 

 

最終結果で僅か2点差で羽丘女子学園が勝利を収めた。

 

帰り道、いつものメンバーと士郎達を含めて帰っていた時、士郎は蘭に感謝の言葉を伝えた。

 

「ありがとな、蘭」

 

「え?」

 

「そう思っていてくれて嬉しい」

 

「……あたしの方こそありがとう、ございます」

 

お互い顔を見合いそして笑いあった。

その様子をモカ達に見られ、弄られながら帰路辿った。

 

 

 

 

 

 

彼女達を照らすように夕日は静かに沈んでいった……




次回の更新はもしかしたら伸びるかもしれません
気長にお待ち頂けると幸いです!



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Trick or Treat!

去年のハロウィンで、

トリックオアトリート!
お菓子をくれてもイタズラするぞ!

と、知り合いの妹さん達に言われ、お菓子と彼女達のイタズラに付き合ってあげました
(その後、知り合いに締め上げられました)


今回は勝手ながらアプリゲームのエリア会話で出てきた会話の続きの話として書かせてもらってます。そこのとこご理解頂けると幸いです⤵


「へぇー、そんなイベントがあったんだな」

 

家で掃除をしていた士郎の元に、商店街で謎解きをし終えた蘭達がいた。

 

「あれ?士郎さん今日セイバーさんと商店街で買い物してましたよね?」

 

その疑問にセイバーが変わりに答える。

 

「はい、シロウのお手伝いで街にいましたが、謎解きには気付きませんでした」

 

「ちなみに士郎さん達は何を買いに行ってたの?」

 

「それはな……これだ」

 

そう言うと士郎は袋からある食材を取り出す。

 

「……かぼちゃ??」

 

「そう、かぼちゃ」

 

テーブルに小ぶりなかぼちゃが3つ並ぶ。

 

「もしかして今日のご飯ってかぼちゃ?」

 

「ハロウィンだからな、丁度いいだろ?」

 

士郎はエプロンを身に着け、料理を始めようとする。

そこで香澄がある案を思い付き、蘭達に話し、そして士郎の方に振り向く。

 

「せーの、」

 

『トリックオアトリート!!晩飯くれなきゃイタズラするぞ!』

 

と、満面の笑みで言ってきた。

半数は少し赤らめながら言っていたが……

 

「いや、お菓子じゃないのかよ」

 

士郎はそれに対し、苦笑いでツッコんだ。

 

「まぁ、巴から事情は聞いてたから別に構わないけど、流石に作るのに時間かかりそうだから何人か手伝って欲しいんだけど」

 

「じゃあ私が手伝うよ」

 

「わ、私も!」

 

沙綾とつぐみが手を挙げ、士郎の元に近寄ってくる。

 

「助かるよ」

 

「あたし達は何をすればいいかしらっ!」

 

「それじゃあ、こころ達はテーブル拭きと出来た料理を運んでくれ」

 

「任せて!」

 

そう言って、渡した布巾を持って元気よく香澄の元へ戻るこころを見届ける。

 

「さて、俺達も始めますか」

 

「はい!」「は〜い!」

 

「シロウ」

 

と、セイバーに呼ばれ振り返る。

 

「どうした?」

 

「ラン達の方は人手が足りてるようなので微力ながらお手伝いさせてください」

 

「そうか、いや助かるよ」

 

そう言ってセイバーを含め4人で料理の方へ手を付け始めた。

 

 

まず1品目

かぼちゃの上部1/4を目安に切り落とし、中の種やワタをスプーンなどで取り除く

 

 

「こんな感じですか?」

 

「そうそう、あと固くて切れなかったらレンジで1分くらい加熱したら取りやすくなるから」

 

「はい!」

 

 

くり抜いたかぼちゃとフタはラップをし、電子レンジの600Wで10~15分程加熱

高温短時間だと割れるから低い温度でゆっくり加熱する

ベーコンは1cm幅、玉ねぎとマッシュルームは薄切りにしておく

マカロニは塩を入れたお湯で袋の表記時間通りに茹でておく

レンジで加熱で柔らかくなったかぼちゃの内側をスプーンなどで軽くこそぎ、80g前後取る

オーブンで焼く場合はこの辺りで予熱を始めておく

中火でバターを熱し、ベーコンを炒め、軽く焼けてきたら玉ねぎとマッシュルームを炒める

玉ねぎがしんなりしたら1度火を止めて小麦粉を入れ、再び中火で粉気が無くなるまで炒める

牛乳を3~4回に分けて入れる

茹でたマカロニ、こそいでおいたかぼちゃ、固形コンソメを入れ、塩、胡椒で味を調える

少しとろみがついたら火を止め、中をくり抜いておいたかぼちゃに注ぎ入れる

 

 

「ほぅ……かぼちゃを器として使うとは」

 

「器のかぼちゃも食べれるからな?」

 

「こんな事が出来るなんて……知りませんでした……」

 

 

あとはピザ用チーズとパン粉を適量かけ、180度のオーブンで10~15分焼く

様子を見ながらチーズに焼き目が付けば出来上がり!

 

 

「士郎さん!」

 

「お、おう」

 

「これ店で出してもいいでしょうか!?」

 

「別にいいけど……」

 

「ありがとうございます!!」

 

とても嬉しそうにしているつぐみに微笑を浮かべながら、沙綾の元をいく。

 

「どうだ?出来そうか?」

 

「うん、こっちは順調だよ」

 

 

そして2品目

ワタを取ったかぼちゃを3cm角に切ったら、電子レンジで600W3~4分程加熱

玉ねぎは粗みじんに、茄子とトマトは賽の目切り

しめじも他の食材の同じくらいの大きさに切り、ニンニクはみじん切りにする

鍋に油をひき、弱火でニンニクを炒めて香りを出したら合いびき肉を炒める

ここにかぼちゃ以外の野菜を加えて炒めたあと、かぼちゃとウスターソース、トマトケチャップ、粗挽き胡椒を加えて全体を混ぜ合わせる

オーブンで200度に予熱しておく

パイシートを耐熱皿の大きさに合わせて敷き、フォークで等間隔に数ヶ所穴をあける

パイシートの上に先程炒めた具材を入れたら、パイシートで網目模様を形どって、溶いた卵に塗る

200度のオーブンで20~30分程焼いたら……完成!

 

 

「うん、いい感じに出来てるな。流石本職!」

 

「パイはそんなに作った事ないよ?」

 

「そうか?それにしては慣れた手つきだったけど」

 

「お父さんの隣で見てたからね、あとは士郎さんの教え方かな?」

 

そう言って沙綾は士郎から受け取っていたメモ紙を取り出す。

 

「これのお陰で迷う事なく、作れたからね」

 

「ならそのメモあげようか?」

 

「いいの?店で出しちゃうかもよ?」

 

「あぁ、好きに使ってくれ。それは今から沙綾のもんだ」

 

士郎はそう言って笑った。

 

「シロウ!」

 

「じゃ、引き続き頑張ってくれ……どうしたー!セイバー」

 

士郎はセイバーの方へ駆け寄って行った。

 

「ほんと……お人好しですね、士郎さんは」

 

「大変です!ミキサー?という物から変な音が!壊れませんか!?」

 

「大丈夫だから!それであってるから!」

 

作業は順調に進み、そしてついに─────

 

「出来たぞー!」

 

『おぉ!』

 

テーブルの上に並べられていく。

 

「えぇー、今回はかぼちゃグラタンにかぼちゃのミートパイ、そしてかぼちゃのポタージュです」

 

「美味しそう!!」

 

「とても豪華ね!!」

 

「かぼちゃづくしのハロウィンパーティーってやつだな!」

 

各々席に着き、皿とフォークなどを配り食べる準備を整える。

 

「さて、じゃあ折角だし暖かい内に頂こう」

 

全員が手を合わせ

 

『いただきます』

 

それぞれ好きな方から口に運び、味わって食べる。

 

「……美味しい」

 

「あぁ……この感じ、心が満たされていくこの感じ……!表現したくても表せないこのもどかしさ……なんて儚いんだ……!」

 

「このパイとっても美味しいよ!沙綾ちゃん!」

 

「えへへ、ありがと!このグラタンも美味しいよ」

 

楽しく談話を挟みながら、食のペースは止まらずあっという間に食べ終えてしまう。

 

「あ〜満腹だよ〜」

 

「美味しかったね?美咲ちゃん」

 

「そうですね、かぼちゃに無限の可能性を感じさせられるなんて思いませんでした」

 

「まぁ、他にもかぼちゃ料理はあるしな」

 

「士郎さんはこの料理を何処で?独学ですか?」

 

美咲の質問に対して士郎は首を振る。

 

「料理が好きな知り合いにアドバイスを貰ったんだ。こういう料理はどうですか?ってな」

 

「なるほど」

 

お腹が満たされ寛いでいると、こころが立ち上がり目を輝かせながら宣言する。

 

「それじゃあそれぞれ始めましょ!!」

 

「え、こころ?もう少し休んでからでも……」

 

「それだと時間が勿体ないわ!早速始めましょ!」

 

「ですよねー」

 

美咲が諦めたのと同時に士郎とセイバー以外が立ち上がる。

 

「何かするのか?」

 

「ハロウィンといえば何だと思いますか?」

 

士郎は自分の質問を質問で返され困惑する。

 

「え?えーっと、お菓子を貰う?」

 

「半分正解よ!!」

 

「え?半分……?て、こころその格好……」

 

士郎はいつの間にか魔女の格好をしていたこころに驚きを隠せなかった。

 

「正解はコスプレをしてお菓子を貰いに行くのよ!さぁ!士郎もセイバーも着替えて!」

 

「着替えてって言われても……俺もセイバーもコスプレの衣装とかないぞ?」

 

士郎の発言にセイバーは頷く。

心配ないわ!っとこころは言い、どこからともなく2人分の衣装が現れる。

 

「これに着替えて!」

 

「え?いやまず何で持ってるんだ!?いやそれより何処から取り出した!?」

 

「士郎さん……諦めましょう。こうなったらこころは言う事聞きませんから」

 

美咲に肩を叩かれ、同情される。

 

「美咲も早く着替えましょ!」

 

「はーい」

 

美咲は蘭達の後に続いて部屋から出ていく。

 

「えぇ……」

 

「シロウ」

 

「セイバー?」

 

「こうなったら仕方がありません。この際楽しんで行きましょう!」

 

と割とノリノリのセイバーに押し負け、士郎も着る事が確定された。

 

それでも皆が楽しんでくれたらそれでいいかな?

 

と心の中で思い、こころから渡された衣装に着替えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに士郎は悪魔の格好、セイバーは魔女の格好で商店街を渡り歩いとか……




暑いと思ったら今度は急に寒くなりましたね!
昨日まで半袖でいたのに……


ちなみに香澄達のハロウィン衣装はゲームで登場してる衣装なのでどんな衣装かは調べてね(ちなみに自分はハロウィン衣装のキャラは一体も持ってないぜ★‪(´;ω;`))


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アイドルホットケーキ

✞ trick or treat ✞


お菓子をくれなきゃ投稿しないぜ〜!
(この後親と友達から菓子を貰いました)







『お疲れ様です!』

 

「はいおつかれー、今日も良かったよ〜」

 

今日の撮影を終えた彩達はスタッフや監督に挨拶を交わし、次の仕事の内容を聞く。

 

「次なんだが、料理番組の方を収録する事になっていたんだ」

 

「へぇー、料理番組……美味しい物が食べれるのかな?」

 

「勿論!一流のシェフに来てもらって料理を振舞ってもらい、君達はその味の感想を言ってくれればいいんだよ」

 

彩達はそれを聞き、目を輝かせていたが、千聖は監督のある言葉を聞き逃していなかった。

 

「ですが先程、なっていたんだ、と言っていましたよね?何か問題があったんですか?」

 

「あぁ、実は来てくれる筈だったシェフさんが体調不良を起こしてしまってね、出来なくなってしまったんだよ」

 

「えぇー!」

 

「その人は大丈夫なんですか?」

 

「聞いた話だと熱を少々って感じらしい。だからそんな大事なことではないみたいだよ」

 

良かったぁ、と安心したが監督は頭を悩ませていた。

 

「んー、どうしたもんかね……」

 

「その料理番組だけなかった事にとか出来ないんですか?」

 

「もう局と話ついちゃってスタジオの準備も出来てるんだよね……」

 

監督は他のスタッフを呼び、どうするかを話し合いに彩達から離れていった。

そして彩達の方でもどうするか話し合っていた。

 

「どうなっちゃうんだろう……」

 

「最悪の場合、局に謝罪の電話をしてその番組を取り止め、他の番組に回して貰うしかないわね」

 

「でも監督さんはそんな事したくないんだよね……」

 

「カントクさんは私達の為にいつも動いてくれてますからね!」

 

「えぇ、でも今回は監督さんにもスタッフの方々にもこれ以上迷惑掛けられない……だからこの仕事は下りましょ?」

 

千聖がそう言うと他の4人は頷き、監督の方へ歩み寄る。

 

「監督さん、今回の仕事は─────」

 

すると、近くからプルルル、という着信音が鳴り響いた。そして先の言葉を電話の着信音がかき消した。

 

全員が辺りを見渡して探していると、恥ずかしそうに小さく手を挙げる人がいた。

 

「申し訳ないッス……ジブンのスマホ、ミュートになってなかったッス」

 

「別に今は休憩中だから構わんよ、ほら出てあげて」

 

「すみません、失礼するッス」

 

麻弥はスマホを耳に当て、電話に出る。

 

「もしもし、お久しぶりッス!士郎さん!」

 

麻弥が士郎という名を口にすると彩達や監督が急いで麻弥に目を向ける。

 

『久しぶりって、最近会っただろ?』

 

「あはは、ただのジョークッスよ!」

 

『全く……今大丈夫なのか?掛けといてあれだけど』

 

「はい、今は休憩中なので何の問題もないッスよ!」

 

『そうか、それは良かった。実は少しお願いがあってな─────』

 

麻弥は真剣な顔で士郎の話を聞き、何故か頷く素振りを見せたりしながら話し合いは進んで行った。

 

「─────分かったッス!」

 

『助かる、ありがとな』

 

「いえいえ、むしろジブンの方が士郎さんに良くしてもらってるので少しでも恩返しになるのならいつでも協力するッス!」

 

『そんな事ないけどな……じゃ、仕事頑張れよ!』

 

「はい!ありがとうございます!」

 

と麻弥が電話を切ろうとした時

 

「ストーーーップ!!」

 

「へっ!?」

 

『うおっ!?どうした!?』

 

その前に監督が止め、麻弥に近付く。

 

「相手は士郎君かね?」

 

「え、えぇ、そうッスけど……」

 

「少し代わってもらってもいいかな?」

 

「は、はい」

 

麻弥は言われた通りスマホを監督に渡し、監督は電話に出る。

 

「やぁ、士郎君!元気にしてるかな?」

 

『えっ監督さん!?げ、元気にしていますけど……』

 

「それは上々、実は君に折り入ってお願いがあるんだがいいかな?」

 

『何ですか?』

 

監督は笑みを浮かべ、次の言葉を告げる。

 

 

「士郎君、テレビに出てみないかね?」

 

 

 

士郎は監督に指定された場所へやってき、監督が来るのを待っていた。

 

「俺がテレビに、か……き、緊張するな……」

 

監督からのテレビ出演の誘いに断りはしたものの、困っていたから結局その話を受け、士郎は今こうして指定場所にいるが、少し後悔していた。

 

「いや、監督さんには前にお世話になったんだ!ここで返さないつ返せるか分からない……心決めるか……!」

 

と言葉で言い聞かせ、監督達が来るの待ち続ける。

しばらくすると黒い車が止まり、中から彩達が出てきた。

 

「あ!士郎さん!」

 

「シショウ!!」

 

彩達は士郎に駆け寄り、各々挨拶を交わし士郎は監督の方へ向き直る。

 

「やぁ、士郎君。まず初めに今回この話を受けてくれてありがとう」

 

監督はそう言い、士郎に頭を下げて礼をする。

士郎は咄嗟の事で驚きながらも頭を上げるように監督に言う。

 

「今回の撮影、君にとってメリットは少ないかもしれない……もしかしたら君に対して誹謗中傷の意見も出てくるかもしれない……そうなった場合我々が全力でサポートするから安心してほしいが……」

 

「監督さん、俺はその事を承知の上で来ています。覚悟は出来てます」

 

監督は士郎の眼が冗談では無いと語っているのを理解し、笑みを零した。

 

「分かった……では今から今回の撮影の内容を確認する。分からない所は各自必ず聞きに来なさい」

 

そして士郎達はスタジオに入り、それぞれの準備を始める。

 

番組の時間は長くて15分だ。本来はもっと長かったが異例に更に異例な事が重なった事により、局と話し合って決まった。

そして今回は士郎が料理を作り、彩達に食べさせる……ではなく、誰でも簡単に作れる料理を彩達と一緒になって作って食べる、といった内容に変更された。

そして今回作る料理は初めっから監督に伝えているので、材料等の心配はなく、あとはグダグダにならず時間通りに終える事が課題だ。

 

「本番まであと5分です!」

 

彩達は先に表の方へ準備し、士郎は名前が呼ばれるまで裏側で待機する。

 

「本番まで5、4、3」

 

スタッフが指でカウントし、合図を出す。

 

「皆さん、こんにちは!Pastel✽Palettesです!今回はお家で誰でも簡単に作れる料理を実際に作っていこうと思います!」

 

「皆は料理は出来るの?」

 

「私は苦手かな……」

 

「ジブンも少し……」

 

「私はよく料理するわね」

 

「私も料理しますね!」

 

「なるほどー、では今回彩ちゃんと麻弥ちゃんでも簡単に作れる料理を教えてくれる人にご登場してもらおうー!どうぞ!」

 

日菜の合図と共に、士郎は表へと歩き出した。

 

「どうも」

 

拍手の中、頭を下げながら彩達の近くまで歩いていく。

 

「はい!今回はこちらの方!衛宮士郎さんに来てもらいました!」

 

「衛宮さんは高校3年生で弓道部に入部していたみたいですね」

 

「しかもその弓道の腕前は見事なもので、前の弓道の大会では日本一を勝ち取ったそうです!」

 

「そしてそんな衛宮さんですが、なんと料理が得意らしいです!ですので今回は衛宮さんに料理を教わっていきたいと思います!よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします」

 

企画進行などは彩達がやっていく、という事なので士郎は必要な事以外言葉にせずにいたが、あまりのスムーズ差に驚きながらも、必死に食らいつこうと努力する。

 

「では今回は何を作るんですか?」

 

「今回は誰でも簡単に、という事なのでホットケーキを作っていこうと思っ……てます」

 

いつもの感覚で喋っていたが、テレビという事で瞬時に丁寧語に言い換える。

 

「なるほどー、では早速作っていきましょう!」

 

エプロンを着用し、材料を机の上に並べ料理の準備ができた。

 

「では、作っていきましょう。まず始めに─────」

 

 

まず始めにボウルに卵、牛乳を入れてよく混ぜる

これにミックス粉を加えて混ぜる

 

 

「コツとしては強く混ぜる、じゃなくて切るように混ぜるようにして方がいいですね」

 

 

そしてフライパンで焼く前に、フライパンをよく熱しておく

フライパンをよく熱した後、濡れた布巾の上に1~2秒置き、その後に混ぜた物をフライパンに入れ焼く

火は中〜弱火にして20~30cm上からお玉1杯分、流し込む

2~3分すると表面に小さな気泡が出てくるので生地をひっくり返し2~3分焼いたら……

 

 

「ホットケーキの完成!」

 

『おぉー』

 

「あとはバターを乗っけて、ハチミツを掛けてやれば……完成!」

 

全員が出来上がったのをカメラで映してからスタッフが用意した席に着き、手を合わせる。

 

『いただきます』

 

ナイフで1口サイズに切り分け、口に運ぶ。

 

「ん〜!美味しい!!」

 

「生地がふわふわで食べやすいわね……」

 

「ふわふわにするコツはさっきも言ったけど、強く混ぜ過ぎないこと、あとは粉を混ぜたら早く焼くのと生地を焼き始める時の温度が重要だから、それさえ出来たらふわふわに作れると思う」

 

「これはジブンでも家で作れそうッス!」

 

「お腹が空いた時に早く作れますね!腹は減っては戦は出来ぬ!っです!」

 

美味しそうに食べているとスタッフから終わりの合図が出され、千聖が食べるのをやめる。

 

「そろそろお別れの時間になりました。衛宮さん、今回は来て頂きありがとうございます」

 

「いえいえ、こちらの方こそ」

 

「それでは本日はここまで、また何処かでお会いしましょう。以上Pastel✽Palettesとゲストの衛宮士郎さんでした」

 

千聖達が手を振っていたので士郎もつられ手を振り、スタッフが終わった事を知らされる。

 

「終わりました!お疲れ様です!」

 

それを聞いた途端、士郎は肩の力を一気に抜け落ち、背もたれに体重をかける。

 

「はぁー……終わった」

 

「お疲れ様です、士郎さん」

 

「あぁ、千聖もおつかれ」

 

脱力して目を瞑っていると、誰かが近付いて来ている足音が聞こえ、瞼を開ける。

 

「お疲れ様、士郎君!初めてにしては結構良かったよ!」

 

「ありがとうございます……」

 

苦笑いで返す士郎に監督は豪快に笑って見せる。

 

「アハハハッ!緊張したかい?」

 

「えぇ、改めて千聖達は凄いんだなぁって実感しました」

 

「あの子達は何度もテレビに出てるからね」

 

「尊敬しますよ……あ、ホットケーキ入ります?」

 

「ありゃ?余ってたかい?」

 

「えぇ、材料がまだ……ここにいるスタッフの皆さんにも英気を養えるか分かりませんが、少しでも休めるなら」

 

「なるほど、なら私が皆集めておくよ」

 

そう言い残し監督はスタッフに大声で集まるように招集を掛けていた。

士郎はその間脱力した身体をシャキッと正し、再び生地作りを始めた。─────すると。

 

「手伝いますよ」

 

千聖が横に立ち、ボールを持ち同じように生地作りを始めた。彩達もそれが目に入り、同じく手伝いを始め出した。

 

「今日はありがとうございました」

 

「……!あぁ、こっちも貴重な体験が出来たよ、ありがとう」

 

そして士郎達はスタジオにいるスタッフ一同にホットケーキを提供していき、スタジオ一帯が甘い匂いに包まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、士郎さんがテレビに出てる」

 

「ホットケーキですか……シロウ!私にもホットケーキを!」

 

「はいはい、夕食の後でな」

 

家に帰ってもホットケーキを作る羽目になる士郎だった




※ここだけの話

実は最初はバンドリじゃなく、プロセカで書こうとしていた


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学園祭準備

飯テロなし






土曜日の早朝、男子校では生徒達の声で賑わっていた。

 

「こっちにネジもってきてくれ!」

 

「誰か足場抑えてくれ!」

 

「こっちも頼む!」

 

各教室、廊下から声が飛び交う。

士郎はその中を駆け足で通り過ぎて行く。

 

「ごめん、ちょっと通るぞ!」

 

彼の腕には大量のポスターとペンキ等を抱えており、自分の教室の元まで駆けていく。

 

「ペンキ追加持ってきたぞ!」

 

「ナイスだ士郎!そこに置いといてくれ!」

 

「分かった」

 

自分の教室に着くと、教室の飾り付け、看板等がほぼ完成状態まで近付いていた。

士郎は言われた通りペンキを近くに置いて、自分の役目を果たしに教室を出ようした時

 

「おーい、士郎ー」

 

「大輝?そっちは終わったのか?」

 

「あぁ、まだ未完成だけどな。今は少し休憩中だ。そっちは?」

 

「ペンキ追加を届けたから後はポスターを貼りにこれから校舎を回っていこうとしていた所だ」

 

「なら手伝うぜ。1人より2人の方が早く終わるだろ?」

 

「悪いな、休憩中なのに」

 

「気にすんな!」

 

士郎は持っていたポスターを半分渡し、手分けして貼りに行く為に別々の方向に走って行った。

ポスターを貼りに回っていると、他のクラスの露店等が目に入る。

 

「へぇー、ここは射的するのか……他のクラスも気合入ってるな」

 

そしていつの間にか走っていた脚が歩いてるのに気付き

 

「いけねぇ!早く貼り終わらさないと!」

 

また校内を走って行った。

 

ポスター貼りが終わり、教室まで帰って来ると既に貼り終えていたのか大輝が待っていた。

 

「おぉ、そっちも終わったのか?」

 

「あぁ、なんとかな。そっちは?って聞くまでもないか」

 

「へへっ、まぁな!」

 

友の笑みに釣られ自分も笑みを零し、それから士郎は新しい仕事を貰い大輝とは別れた。

別れ際に

 

「こっちも終わったら手伝いに行くわ」

 

と言いながら去って行ったので、士郎は笑いながら見送りそして作業を始める。

貰った最初の仕事内容は、簡単に言うと機材チェックだけだった。機材に不備はないか又は問題なく使う事が出来るかの確認だった。

これに関しては何も問題無く難なく終え、次の仕事に移っていく。

次は屋台で使う材料の間違いがないか、そして予定個数あるかの確認を取っていた。─────すると。

 

「おーい、手伝いに来たぞー」

 

自分の作業が終わった大輝と同じく作業が終えてきた達也が声を掛けてきた。

 

「うげっ、頭使うのは勘弁願いたいぜ……」

 

「お前は運動馬鹿だからな、全く……だから失敗ばかりするんだぞ」

 

「お前だってナンパ失敗してんだろ!」

 

「俺の場合はタイミングが悪かっただけで作戦は悪くなかった。そうだ、タイミングが悪かっただけだ!」

 

と、馬鹿な喧嘩をしている2人に呆れながらも助けに来たことに対して感謝し頼み込む。

 

「喧嘩は後で好きにやっていいから!大輝はあっちのダンボールをこっちに持ってきてくれ!達也は俺と一緒に個数確認をお願いしたい」

 

「おう!任せろ!」

 

「いい構成だ。適材適所、という訳だな。任された!」

 

2人の協力もあり、順調に作業が進み、更には大輝の呼び掛けにより人手がさらに増え、予想していた時間より早く終える事が出来た。

 

「流石にクラス2つ分の人数が協力すれば物事も早く終わるものだな」

 

「あぁ、大輝には感謝しないとな」

 

「運動馬鹿であるのと同時に顔が広いのが奴のいい所だな、この学校内だけだが」

 

「ハハハ……」

 

上げて落とす達也の発言に士郎は笑みを零し、1つ気になった事を達也に聞く。

 

「そういえば達也」

 

「何だ?」

 

「なんかお前の口調、少し変じゃないか?」

 

「ほう……そこに気付くとは、流石は士郎。俺が認める友だな」

 

達也は眼鏡を少し上げ、レンズが光る。

 

「俺が調べた結果、こういう口調の方がモテる、という情報を得てな。だから今のうちにこの口調に慣れておこうと思って練習中なんだ!」

 

「へ、へぇー……」

 

聞いた事に少し後悔していた士郎だったが、達也は何かを思い出し士郎に詰め寄った。

 

「そういえば士郎、俺からも聞きたい事があるんだが」

 

「何だ?」

 

「この前、今大人気“Pastel✽Palettes”のテレビ番組に出ていなかったか?」

 

「え?……あぁ、確かに出たな」

 

そう口にすると、肩を掴まれ激しく揺さぶられる。

 

「やはり貴様だったか!何故か見た事ある奴がいるなー!と思っていたら!クソ……なんて羨ましい奴なんだお前はッ!!」

 

「おーい、口調戻ってるぞー」

 

「構わん!」

 

「なんでさ……」

 

その話を聞いていたのか周りにいた男子達も士郎に詰め寄ってきた。

 

「その話確かなのか!?」

 

「まさかアイドルに興味無さそうな士郎が……アイドルの番組に……!?」

 

「俺の日菜ちゃんはやらんぞ!」

 

「なんでてめぇのになってんだよ!」

 

「実物のイヴちゃんはどうだった!?」

 

「バカおめえ!千聖ちゃんが1番に決まってるだろ!」

 

「何言ってんだ!麻弥ちゃんだろ!?」

 

「彩ちゃんは可愛い、異論は認めん!!」

 

男子達から質問攻めに合う前に先生が止めに入り、作業に専念する方向に進んだ。

 

「はぁ、助かった……」

 

「あぁ、聞きたい事色々あったが……仕方ない、作業を早急に終わらせるか」

 

「終わっても質問は受け付けないからな?」

 

「「ダニィ!?」」

 

「大輝いたのか」

 

「さっきもいたぞ?」

 

大輝の方の作業が終わり、士郎と達也の方もそろそろ終わりが見えてきた頃、士郎は改めて2人に感謝を伝えた。

 

「手伝ってくれてありがとな、助かったよ」

 

「なに俺達は友達だろ?当たり前の事をしただけだ」

 

「何も感謝される事はない」

 

「けど……」

 

すると、大輝が何か閃いた。

 

「あ、なら今度ライブのチケット取ってくれよ」

 

「ライブ?」

 

「CiRCLEで行われるライブだよ」

 

「あぁ〜、そういえばまりなさんがそんな話してたな」

 

「な?いいか!?」

 

「はぁ……わかったよ、一応取れるか聞いてみるよ」

 

「よっしゃ〜!」

 

「おい士郎!勿論俺の分も……!」

 

「はいはい、2人分聞いとくよ」

 

2人は拳を手に掲げ、涙して喜んでいた。その様子を士郎は微笑を浮かべながら、見守っていた。

 

 

 

午後6時を回るくらいの時間に終わり、士郎は自転車で帰路を辿っていた。

しばらくこいでいると、見た事ある後ろ姿をした5人組を見つけた。

 

「よ、モカ達も帰りか?」

 

「あ!士郎さん!」

 

「もうモカちゃんはお腹ペコペコですよー」

 

「モカは途中からサボってたじゃん!!」

 

「えー」

 

士郎は5人の歩くペースに合わせ自転車から降り、隣を歩く。

 

「士郎さんも学園祭の準備?」

 

「あぁ、てか凄い3日になりそうだよな」

 

「1日目が士郎さんの学校で2日目がアタシ達の学校、3日目が花咲川って順番だもんな」

 

「ほんと奇跡だよね」

 

士郎は手で自転車を押しながら5人の話に耳を傾けていると

 

「士郎さん」

 

「ん?どうした、蘭?」

 

「……お腹が空きました」

 

顔を隠しながらそう言う蘭だったが、耳が赤くなっているのを士郎は見つけると笑みを零しながら

 

「そうだな、セイバーもお腹空いてるだろうし、早く帰ってあげよう」

 

「あたしも食べた〜い!」

 

「モカちゃんも食べたいですぞ〜」

 

「アタシも食べたいな」

 

「わ、私も!」

 

「はいはい、じゃあ早く帰って準備しますか」

 

そう言うと駆け足で家に向かって行く5人を後ろから眺めながら、その後を追う士郎だった。




楽しかった 『学園祭』!!編


٩(・ω・)วlet's go!



※16時に間違えて公開設定してしまったので、だいぶ焦りましたが誰も見てませんよね?( ´;゚;∀;゚;)


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学園祭1日目 桜丘男子学園

※文化祭→学園祭に変更しました







「野郎共ッ!準備はいいかッ!?」

 

『オッス!!』

 

「今日は学園祭だ!気合入れていけよッ!!」

 

『オッス!!』

 

「勝ち取りに行くぞッ!!」

 

『うぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

「……なんだこれ?」

 

朝からハイテンションなクラスに士郎は微笑を浮かべながら、その様子を教室の端の方で見ていた。

 

「朝から元気だな……てか勝ち取るって何を?」

 

「んなもん決まってるだろ?」

 

士郎の独り言にいつの間にか隣で立っていた大輝が応える。

 

「他クラスよりも人気になり、学校の賞をゲットする為だ!あと可愛い女の子に会うこと!!」

 

「後者の発言以外は納得するけど、賞なんか貰えるのか?」

 

「あぁ、先輩から聞いた話だとな!」

 

士郎は再びお祭り騒ぎしてるクラスを目に移す。あれは果たして賞が欲しさへの雄叫びか、それとも大輝が言った後者の発言へ対する雄叫びか、士郎は少し考えるが考える事でもない事にすぐに気付き、自分の任された持ち場に向かう。

 

「なぁ、士郎はどう思う?」

 

「何がだ?」

 

「今日来る美少─────」

 

「持ち場に戻れー」

 

「何だよー、聞いてくれてもいいじゃねぇかよー」

 

「それが真面目な話ならな」

 

「俺は真面目だぜ?」

 

大輝がドヤ顔でそう言い放ち、士郎は溜息をつきながら無視しようとしたが、ある事を思い出す。

 

「そういえば大輝って前半組か?」

 

「あぁ、前半働いて後半から屋台巡りを達也とするぜ?」

 

「なら先に言っとくけど、俺の知り合いが昼過ぎに来るから。ナンパとかやめてくれよ?」

 

「フリか?」

 

「怒るぞ?」

 

大輝の発言に握り拳を作りながら構え、それを見た大輝は両手を挙げて降参する。

 

「冗談だっての、でも挨拶はしてもいいよな?」

 

「それくらいはいいけど、ちなみに理由聞いていいか?」

 

「ダチの友は俺の友ッ!!っという理由で?」

 

「友じゃなくて知り合いだって言ってるだろ……」

 

士郎は頭を手で抑えながら呆れながらも、相変わらずの友達思いである事に笑みを零した。そこに放送が流れる。

 

《予定時刻となりました。生徒の皆さんは持ち場にお着き下さい。これより第25回桜丘男子学園、学園祭を開催します。繰り返し連絡します。予定時刻と─────》

 

「どうやら始まるみたいだな」

 

「士郎も料理、頑張れよ!俺も接客頑張るからさ!」

 

「あぁ、沢山お客さんを招き入れてくれ」

 

「任せろ!」

 

そう言って大輝は教室の外へと出て行った。横目で窓を方を覗くと、校門から大人数の人影が目に入った。

 

「さて、こっちも準備しますか!」

 

 

時刻を12時を過ぎる頃、教室には席いっぱいにお客さんが座っていて、大繁盛と言ってもいい程に沢山の人が来てくれていた。その中には顔見知りがいたり、彼女達も来てたりしていた。しかし、少し忙しかったので顔を出せず挨拶を交わせなかった。

 

「悪いことしたな……」

 

「どうかしたか?」

 

思った事が言葉に出てしまい、一緒に料理をしていた達也に聞かれる。

 

「いや、さっき知り合いがいたんだが……」

 

「何?何故それを早く言わない。言ってくれればお前の分も俺達がやっていたのに」

 

「いや、それの為に俺の仕事を代わりにやってもらうのは流石に気が引けるから。それに今は私事を持ち込む事じゃないしな」

 

「全く……これだからマジメ君は。そんなんだとモテないぞ」

 

「余計なお世話だよ!」

 

時間帯的にそろそろ前半組の終了しそうな時、士郎が達也と他愛もない話をしていると、時間的に最後のお客さんが来店した。その人物は──────。

 

「おい見ろよあの人!めっちゃ美人じゃねぇ!?」

 

「金髪であの美顔は滅多にお目にかかれないもんだぜ?」

 

「すげぇ……アニメみたいな人って実際にいるんだな……」

 

そんな話が士郎の耳にまで届き、扉の方に目を向けそしてその金髪の人に近付く。

 

「いらっしゃい、セイバー」

 

「シロウ、お待たせしました」

 

まさかの状況に達也も周りにいた男子達もそして何故か教室の外からこっちを見ていた大輝も呆然としていた。

 

「こちらに店に来るまでに、とても美味しそうな店がいくつかありまして……」

 

「なるほどな、昼はどうする?」

 

「お昼はこちらで頂こうと思ったのですが……」

 

士郎は時計に目を向ける。確かに時間的にもう前半組が終わるのでここら辺で切り上げ、30分後に後半組にバトンパスする流れだ。

次に士郎は委員長に目を向ける。前半組の店長役の委員長にどうするか聞いてみようと思ったが、委員長は士郎を見るなり深く頷いた後、親指を立て笑った。

 

「特別に許可してくれたみたいだ」

 

「本当ですか!」

 

「あぁ、委員長─────いや、店長にお礼言わないとな」

 

セイバーは士郎が見てる男に近付き、頭を下げる。

 

「ありがとうございます」

 

「い、いえ!お、お客さんを持て成すのが当然ですから!で、では!ごゆっくり!」

 

と、カチカチになりながらその場去る。

 

「じゃあ席に着いて待っててくれ、何かご希望はあるか?」

 

「いえ、シロウにお任せします」

 

「了解、じゃあちょっと待っててくれ」

 

士郎は厨房の方へと戻り、早速料理を始めようと袖を上げていると

 

「お、おい!士郎!あの美人と知り合いなのか!?」

 

「あぁ、大輝には言わなかったか?」

 

「言ったけどあんな美人だと思わねぇよ!?」

 

「確かにセイバーって美人だもんな……とりあえず俺は料理を作るから話はまた今度な」

 

そう言うと士郎は料理に取り掛かった。

 

 

干し椎茸を水につけて戻しておく

かにかまぼこは細かく裂き、水煮タケノコ、干し椎茸、長葱はそれぞれ千切りに

ボウルに卵を割り入れて軽く溶いておく

フライパンに多めの油(約大さじ1~2)を入れ熱し、切った材料を軽く炒め、そこに水、鶏ガラスープの素、塩、胡椒、酒の合わせ調味料を加え入れる

全体が馴染んだら溶いておく玉子のボウルに加えて、水溶き片栗粉大さじ1も加えて、全体をざっくり混ぜ合わせる

フライパンを綺麗にふき、再び多めの油を熱し、強火から中火の火加減で先程炒めた物を加え入れる

ヘラなどを大きく動かしながら全体を半熟にする

形を円形に整えたらフライ返しなどで玉子をひっくり返し、中は半熟で外面がある程度固まったら皿に盛る

 

次にしょう油あん作り

フライパンに水、鶏ガラスープの素、塩、砂糖、しょう油、酒を入れて煮立たせる

全体を混ぜながら水溶き片栗粉を様子を見ながら加えてとろみをつける

皿に盛り付けた玉子にしょう油あんをかけ、グリーンピースをのせたら完成!

 

 

「さて、届けるか……ん?」

 

セイバーの元に大輝がいるの見つけた。他の男子は遠くから見ていたが、大輝とセイバーが異様に仲良さそうに話していた。

 

「でさ!士郎の野郎は俺の事を見捨てやがったんだよ!酷くないですか?」

 

「シロウらしい考えですね」

 

「確かに士郎らしいといえば士郎らしいですね!」

 

「なんの話してるか知らないけど、基本的にお前が変な事をしてる時は見捨ててるな」

 

士郎はセイバーの前に出来た料理を置く。

 

「おまちどーさま、ふわふわかに玉です」

 

「おぉ……!これがかに玉ですか!」

 

「案外早かったな」

 

「そうか?てか、何の話してたんだ?」

 

「言ったろ?友として挨拶する!って」

 

「明らかに挨拶じゃなかったぞ、俺が聞いた内容は」

 

大輝に真意を問いただしていると、セイバーが代わりに応えた。

 

「彼にシロウの学校生活はどうなのかを聞かせて頂いていました」

 

「そうそう」

 

セイバーは士郎に微笑み掛ける。

 

「良き友をもちましたね、シロウ」

 

「……ッ─────」

 

唐突にそう言われ、そして更には微笑みを掛けられ、士郎は少し気恥しそうに頭を掻きながら、セイバーにご飯をすすめる。

 

「ほらセイバー、熱い内に食べた方が美味しいぞ」

 

「それはいけません!では早速いただきます」

 

セイバーは美味しそうにかに玉を頬ばっているのを横目に大輝がこずいてくる。

 

「今照れたろ?」

 

「気のせいだろ」

 

「えー」

 

「早く達也と回ってこいよ!」

 

「イエッサー!」

 

大輝は笑いながら軍隊みたく敬礼をして、達也の方へ駆けて行った。

 

「ったく……」

 

「シロウ」

 

「ん?どうしたセイバー」

 

「とても美味しいです」

 

「それは良かった」

 

かに玉を美味しそうに食べるセイバーを見守りながら、食べ終わるのを待つ士郎だった。

 

 

 

 

この後、セイバーは屋台の食べ物屋を全て踏破していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終的に、賞は取れなかったが2位を勝ち取ったのだった。




次回は察してると思いますが、次にメインで出るのはその子達です


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学園祭2日目 羽丘女子学園

毎回本文の初めの文で、中々決まらなくて1時間位悩んでる






羽丘女子学園の校門に立て掛けられた《学園祭》と書かれた看板……

 

校内では生徒達の声だけではなく、他校の学生や子連れの家族など大勢の人達で賑わっていた。

それは昨日の男子校同様にプラカードを持ちながら宣伝する生徒や、出店で客を構える生徒達もいた。

 

「いらっしゃいませー!」

 

「ぜひ遊びに来てくださーい!」

 

その宣伝の間を通り抜ける2組の男女がいた。

 

「こっちも結構盛り上がってるな」

 

「えぇ、楽しみです」

 

士郎達は校門前で受け取ったパンフレットを見ながら目的地の方まで進んでいく。

 

「校舎に入って2階が蘭達の屋台で、その1個上が湊とリサの屋台……で、西校舎で麻弥と日菜の屋台で、14時から体育館で演劇部の公演、か……セイバーはどこから行く?」

 

と士郎は隣にいるセイバーに振り返る話し掛けると─────。

 

「……そうですね、1番近いラン達の屋台へ行きましょう!」

 

口をモゴモゴしながらいつの間にか買っていたのかたこ焼きやりんご飴、焼きそばを持っていたセイバーがいた。

 

「いつの間に……」

 

「とても美味しいですよ、シロウ」

 

「いや、それは良かったけど……」

 

セイバーはまた別の屋台を見つけると、目を輝かせながら買いに行ってしまった。

 

「ハハハ……まぁ、セイバーが楽しそうならそれでいいんだけどな」

 

苦笑いしながら、注文しているセイバーの元へ駆け寄って行った。

 

 

 

「予定よりちょっと遅くなったけど、この時間帯なら空いてるかもな」

 

「すみません、シロウ……行く先々で美味しそうな物が目に入ってしまい、食べずにはいられませんでした……」

 

「別に責めてないさ、それに今日は楽しむ為に来てるんだからセイバーは間違ってないさ」

 

「……!えぇ、そうですね!では早くラン達の元へ向いましょう!」

 

校舎に入り階段を2階分上り、パンフレットと照らし合わせながら蘭達の屋台へと辿り着いた。

 

「お、ここみたいだな」

 

「“バンド体験”ですか……なんだがラン達らしいですね」

 

「そうだな、ていうかよく許可取れたな……」

 

「シロウ、中に入りましょう」

 

「お、そうだな」

 

教室の扉を空け、中に入ると─────。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

「え、モカ?」

 

「お〜、シローさん来てくれたんだね〜」

 

少しだらしなく座っているモカが受付の所にいた。そして士郎は中に入り気付いた事があった。

 

「ここ音楽室だったんだな……教室の名前が隠されてて分からなかったけど」

 

「音楽室なら防音だからいくら弾いても迷惑にならないからね〜」

 

「へぇー……蘭達は?」

 

「ひーちゃんとトモちんとつぐは教える側でモカちゃんと蘭は受付スタッフにまわってるよ〜」

 

「そうなのか?でも……」

 

受付にモカ1人しか居らず、なんなら受付の座席はモカが座っている席1つしかなかった。

 

「あぁ〜、蘭はあたし達とは別のクラスだからね〜。もう1つ隣の教室で受付してると思うよ〜」

 

「ランのクラスではバンドが出来る人がラン以外にいるんですか?」

 

「バンドじゃないけど吹奏楽の人達が教えてるよ〜。あたしのクラスと蘭のクラスは合同でやってるけど、教えるのはちょっと違うんだよね〜」

 

自分のクラスも巴達以外に吹奏楽の子達が教えてる、とモカは付け足し、チケットを渡してくる。

 

「こちら入場チケットになりまーす、頑張ってね〜」

 

「お、おう」

 

モカからチケットを受け取り、中に入るとモカの言う通り何人か知らない子達がトランペットやらフルートなどを熱心に教えていた。

と、そこに士郎達の存在に気付き、近付いて来る生徒がいた。

 

「来てくれたんだな、士郎さん、セイバーさん」

 

「あぁ、巴は何を教える役なんだ?」

 

「アタシか?アタシはこれだ」

 

巴の後に続き向かうと、そこにはドラムが置かれていた。

 

「トモエ、こちらの楽器は何ですか?」

 

「これはドラムって言う楽器ですね」

 

「ドラム……どうやって音を出すのですか?」

 

「こうやって……」

 

巴は軽くドラムを叩き、音を聴かせる。

 

「なるほど、こちらの楽器は叩けば音が出るのですね」

 

「やってみますか?」

 

「えぇ、お願いします」

 

セイバーは巴と立ち位置を入れ替わり、巴のようにドラムを叩いてみせる。

 

「おぉ……」

 

セイバーは多少驚きながらも、初心者とは思えないほど上手くドラムを叩き出した。

 

「セイバーさん上手いですね!」

 

「凄いなセイバー、俺なんて前叩かせもらってけど全然駄目だったのに……」

 

「いや、前の士郎さんの方が一般的に普通なんですよ?」

 

セイバーのまさかの才能に巴と士郎は賞賛の声を上げる。セイバーは目を輝かせながら、士郎の方を見る。

 

「シロウ!とても楽しいです!」

 

「良かったな、セイバー」

 

すると、士郎の隣からひまりがひょこっと顔を出して来る。

 

「セイバーさん!ベースもやってみますか?」

 

「ベース、ですか?……えぇ!お願いします」

 

セイバーは巴に撥を返し、ひまりの方へ向かって行った。

 

「じゃあ次は士郎さんの番だな!」

 

「え!?お、俺?」

 

「せっかく来たんだから何かやっていかないと楽しくないでしょ?」

 

「た、確かに……」

 

「さぁ撥持って……一緒に叩こうぜ!」

 

「お、おう!」

 

30分近く巴の指導を受け続け、あっという間に退場の時間となった。

 

「あ、もう退場の時間だ」

 

「もうそんな時間なのか?あっという間だったな……」

 

「あぁ、今日はありがとう」

 

「こっちこそ、来てくれてありがとな!」

 

士郎は鞄を拾い上げ、思い出したかのように巴に向き直る。

 

「またドラム、教えてくれるか?」

 

「……!勿論、アタシに任せな!」

 

セイバーに声を掛け、つぐみとひまりに別れを告げて受付のモカの元まで戻る。

 

「おつかれさま〜、どうだった?」

 

「あぁ、貴重な時間だったよ」

 

「えぇ、それにとても楽しかったです」

 

「それは何より〜、あーそれと午後からあたし達も屋台巡りするからもし行けたら一緒に巡ろ〜」

 

「あぁ、それじゃあまたな」

 

「バイバ〜イ」

 

教室から出て、士郎達は次の目的の場所へ目指す。

 

「それにしてもセイバー、ベースも出来たらしいな」

 

「えぇ、キーボードは少し難しかったですが、ツグミのお陰で覚える事が出来ました」

 

セイバーは指でエアキーボードを見せてくる。

 

「俺はやっとドラムのコツを掴めてきたのに……流石だなセイバーは」

 

「いえ、私が出来るようになったのはラン達のバンドをいつも近くで見ていたからです」

 

「え?蘭のは分かるけど、巴やつぐみのも見たことあるのか?」

 

「えぇ、シロウが居ない時にラン達の練習を見学させてもらってます」

 

「知らなかった……」

 

そんな話をしていると、目的の場所に着いた。が─────。

 

「あれ?閉まってる?」

 

「シロウ、この紙を見てください」

 

士郎は言われた通りにその紙に目を向けようとした時、

 

「あれー?士郎さんとセイバーさんじゃん!やっほー!」

 

手を振りながら、こちらに向かって来る4人の姿があった。

 

「日菜?それに麻弥にリサ、湊まで」

 

「そこでたまたま会ってね、ところで士郎さん達はここで何してるの?」

 

「え?今から湊達の屋台行こうかって話して来たんだが……」

 

「……残念だけど、私達の店は午前の部が終わって今30分休憩中よ」

 

「ちなみにジブンの所もそうッスね」

 

そう言われ、教室に貼られた紙を改めて見ると

 

午前の部が終了しました

次の午後の部が始まるのは14時を予定しております

 

と書かれていた。

 

「もうちょい早かったらまだやってたけどね?ゴメンね!」

 

「いや、謝る事じゃないさ。時間を見ていなかった俺に非があるしな」

 

「私も時間の事を考えていませんでした……」

 

「まぁまぁ!……そうだ!今から演劇部のやつ見に行くけど、一緒に行く?」

 

「あぁ、俺達も見に行きたかったから誘ってくれてるのは嬉しいな」

 

「じゃあ一緒に行くっス!」

 

「えぇ、共に行動しましょう!」

 

と話合い体育館へ目指している時、スマホから通知音が聞こえ取り出す。

相手はモカだった。

 

『やっほー、今どこにいるー?』

『今、麻弥達と出会って演劇部の劇を見に行く為に体育館に目指している途中だけど』

『おぉー、じゃあモカちゃん達もそっちに向かうねー』

 

「モカ達も体育館で合流するみたいだ」

 

「了解ー!」

 

 

 

体育館着き、蘭達が来るのを待っていると──────。

 

「お待たせしましたー!」

 

「いや、こっちもさっき着いたばっかりたから大丈夫だぞ」

 

「おや、アコも一緒だったんですね」

 

「うん!おねーちゃんと出会ったから一緒に行きたいって言って着いてきたの!」

 

「それは良かった、私もアコと一緒に入れるのは嬉しいですから」

 

「えへへ!」

 

あこはセイバーとハイタッチしながら、嬉しそうに笑っていた。士郎はそんな様子を見ながら、蘭に話し掛ける。

 

「お疲れ様、大変だったか?」

 

「……コンビニバイトの時よりは楽だった」

 

「ハハハ、確かにその通りだな」

 

「……士郎さん、ドラム叩いたんですよね?どうでした?」

 

「いや、直すのは得意でも扱うのは素人なんだって改めて理解させられたよ」

 

「士郎さんも一緒に練習しますか?」

 

蘭は不敵な笑みを浮かべながら、聞いてくる。

「ハハハ……あぁ、また今度頼むよ」

 

と、笑みを浮かべ返した。

 

「おーい、もうすぐ始まっちゃうよー!」

 

リサからの報告を聞き、士郎達は体育館へと入っていった。

 

 

 

「あぁ、ジュリエット……君はどうしてそこまで儚いんだ……!」

 

公演してからしばらく時間が経ち、士郎は演劇のレベルが高過ぎる事に驚きを隠せなかった。

特に1番の衝撃は、薫の演技力だ。

いつもの彼女を知っている士郎だったが、今の彼女は完全に役になりきり、まるで本物のような立ち振る舞い、そして観客を魅力させるような演技を見せ付ける。

 

(千聖が言ってた事って、これの事か……)

 

現役アイドルの彼女さえも、認めざるを得ない程の演技力……

改めて士郎は薫の事を評価した。

素子であり、演劇の知識もない自分がこう言うのも失礼なのかもしれないが、心の中で彼女に向けてこう告げた。

 

─────とても儚い演劇だったよ

 

 

演劇が終わり、次何処へ行こうかと話し合っている時、セイバーが士郎の元へ近付いて来る。

 

「どうかしたか?」

 

「いえ、今回も前回もこんなに楽しい時間を頂いたのに、私は何も返せないのが少し……」

 

暗い顔をしたセイバーに、士郎は近くに売っていたクレープを頼み、セイバーに渡す。

 

「シロウ、こちらは……?」

 

「クレープって名前だな」

 

「いえそうではなく、何故……?」

 

「いいから、食べてみな」

 

セイバーは言われるがままにクレープを口に運ぶ。

 

「……美味しいです」

 

「その顔だよ」

 

「───え?」

 

セイバーは呆気に取られ、士郎はそのまま言葉を続ける。

 

「今クレープ食べて笑顔になっただろう?それがちゃんとお返しになってるんだよ」

 

「笑顔が……」

 

「楽しんでもらう為にやってるんだから、ちゃんと楽しんで笑顔を見せたらいいんだよ。それがお返しになるんだから」

 

「……えぇ、そうですね。今日も、そして明日も楽しんで行きましょう!」

 

「あぁ!」

 

お互い顔を見合い、そして笑い出す。

 

「あー!クレープズルい!私も食べる!!」

 

「お〜、モカちゃんも食べたいぞー」

 

「ふ、2人とも!」

 

いつの間にか話し合いが終わっており、クレープに目移りしていた。

士郎とセイバーは、クスッと笑い合う。

 

「よし、じゃあクレープ欲しい人は手を挙げてろー!」

 

士郎がそう言うと、全員手を挙げる。

 

「全員かよ!?」

 

「だって、ね〜」

 

「2人だけとかズルいしな」

 

「ったく、仕方ないな」

 

士郎は各々好きな味を頼み、会計を済ませる。

 

 

 

 

 

このあとも色々と買わされた士郎だったが、彼女達の楽しそうな笑みが見れて嬉しそうだった。




セイバーがバンド……?
そういえばセイバー似のフォーリナーでいたような……

気のせいか!


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学園祭3日目 花咲川女子学園

※この話の誤字等あれば報告よろしくお願いします


学園祭編最終話です




「よく来たわね!士郎!セイバー!さぁ、案内するわ!」

 

「お、おう」

 

士郎とセイバーが花咲川女子学園の校門前に到着すると、校門で待機していたこころに呼び止められる。そして“案内”と書かれた旗を手に持ちながら校内へ入って行ったこころの後を着いていく。

 

「まさか待っててくれたのか?」

 

「えぇ!2人にはとても感謝してるわ!だからその恩返しね!」

 

「私はココロ達に何もしてあげられていない気がしますが……」

 

「そんな事ないわ!セイバーが居てくれるだけであたしはいつもハッピーだわ!」

 

なんの躊躇いもなく笑顔でそう答えるこころに面食らい、そしてセイバーは笑みを零す。

 

「ココロは相変わらず面白いことを言いますね」

 

「そうかしら?セイバーが笑顔ならそうなのかもしれないわね!」

 

楽しそうに話をしているセイバーとこころを遠目で見守っていた士郎だったが、聞きたい事があったので楽しく話をしているところ悪いと思いながら話に割って入る。

 

「そういえばこころ達の所は何の屋台を出しているんだ?」

 

「あたし達の所はラストにやるのよ!」

 

「ラスト?……演劇でもするのか?」

 

「いいえ、違うわ!あたし達がやるのは─────

 

 

 

 

───────パレードよ!」

 

 

「「パレード?」」

 

 

 

「ここが香澄達の屋台の所ね!」

 

看板には“うさぎパン”と書かれていた。

 

「パンって事は沙綾が主体に動いてるのか?」

 

「サアヤの作るパンですか!?それはとても楽しみです!」

 

目を輝かせているセイバーに、微笑を浮かべながらも中に入って行く。

 

「……うさぎパンってそういうこと?」

 

中に入ると、店員がうさ耳を付けてパンが置かれた商品棚の所に立っていた。そしてパンは普通にメロンパンやあんぱん等うさぎ要素は全くなかった。

 

「あ!士郎さん、セイバーさん!いらっしゃいませー!」

 

士郎達の存在に気付いた香澄が持ち場を離れ、士郎達の元まで駆け寄って行った。

 

「今出来たてのパンが入ったばかりなんですよ!」

 

「なんと!それはとても良いタイミングでした。シロウ!今すぐそのパンを頂きましょう!ココロもです!」

 

「分かったから落ち着けって、セイバー」

 

「えぇ!同席させてもらうわ!」

 

空いてる3人分の席を確保し、パンが並ぶ商品棚をまじまじと見つめる2人をよそに、士郎は香澄ともう1人の女子に話し掛けられていた。

 

「士郎さん、来てたんだね」

 

「こころが案内してくれてな、てかうさぎパンってそういう意味だったんだな」

 

「うさぎ耳はおたえが提案して、パンは私が提案しました!」

 

「可愛いでしょ?」

 

「確かに可愛いけども……は、恥ずかしくないのか?」

 

「「別に?」」

 

「恥ずかしくない筈がないだろッ!!」

 

と、裏から顔を真っ赤にした有咲が現れた。

 

「おかえり有咲、材料は?」

 

「それはりみが沙綾の所へ届けに行った─────じゃなくて!」

 

有咲は手をプルプルと震わせながら、怒りを顕にする。

 

「うさぎ耳を付けるのは各個人の意思って話だっただろ!?なんで私も付けてるんだよ!」

 

「可愛いよ!有咲!」

 

「う、うるさい!そんな事言われてもう、嬉しくなんかないわ!」

 

「士郎さんも可愛いと思うでしょ?」

 

「え?あ、あぁ、可愛いと思うぞ」

 

「―――ッ!?わ、私は持ち場に戻るからな!サボるなよ!」

 

有咲は顔を真っ赤にしながら裏に消えて行った。

 

「な、なんか悪い事しちゃったか?」

 

「そんな事ないですよ。多分嬉しくて顔を見せれなくなっただけですね」

 

遠くの方で、うるさい!と有咲の怒声が聞こえてきた。

 

「と、とりあえずパン買っていくな?」

 

「お買い上げありがとうございます」

 

セイバー達の元へ戻ると、もう商品棚の所には居らず席に座ってパンを食べていた。

 

「もう食べてたのか」

 

「シホウ、さきのいたたいてまふ」

 

「口の中無くてから喋りなさい」

 

「とても美味しいわ!流石沙綾ね!」

 

皿山盛りに積まれたパンを美味しそうに食べるセイバーとこころと、周りの驚愕した顔と視線に居心地悪そうにパンを食べる士郎だった。

 

パンを食べ終わり、次の屋台へと案内を始めるこころ

 

「次はこっちよ!」

 

その後に続いて士郎達が歩くが、その道中彩と千聖に出会う。

 

「あれ?士郎さんとセイバーさん!こんにちは!」

 

「こんにちは。士郎さん、セイバーさん」

 

「えぇ、こんにちは。アヤ、チサト」

 

「お2人で屋台巡りですか?」

 

「いや、こころの案内してもらってるんだ」

 

そして士郎の隣にいつの間に引き戻ってきたこころと挨拶を交わす。

 

「こんにちは、こころちゃん!」

 

「えぇ!こんにちは!」

 

「2人は今から何処行くんだ?」

 

「イヴちゃんの屋台へ行こうと思いまして」

 

「いいわね!みんなで行きましょ!」

 

そしてこころを先頭にイヴの屋台へと目指した。

 

 

「ここよ!」

 

「へぇー、こう言うのも失礼だけど珍しいな」

 

入口に大勢の女子の姿を見て士郎は思った事を口した。

看板には“武士道体験”と書かれていた。

 

「柔道場、弓道場……そして剣道場の3つを借りての屋台らしいですね」

 

「ほぅ、剣道……ですか」

 

セイバーの小言が耳に入り、何故か慌てて話を変えようと動く。

 

「お、男とかは分かるけど女子もこんなに興味があるなんて知らなかったな」

 

「イヴちゃんの影響でもあるかもしれませんが、私達の学園は結構そういうのが好みなんですよ?」

 

「へぇー……」

 

この時、士郎はパッと思い浮かんだバカ2人にこの事を言ってやろうかと思ったが、早々にやめた。

 

「とりあえず中に入ろ!」

 

受付の方へ向かうと、丁度タイミング良くイヴが現れた。

 

「あれ?みなさん!へい、らっしゃい!」

 

「イヴちゃん、それ違うよ?」

 

千聖ではなく、受付にいた子がツッコミを入れる。

 

「凄い汗だね!」

 

「はい!先程剣道でとてもいい試合をしてきました!」

 

「そうなんだ!」

 

「先輩方も何か参加されますか?といっても今は見ての通り嬉しい事にお客さんで予約いっぱいで剣道だと約1時間待ちです」

 

受付の子に受付シートを見せてもらいながら、そう説明を受ける。

 

「す、すごいね!」

 

「柔道だと30分ですね、弓道は……同じく30分位です」

 

「他も待ち時間が長いですね……」

 

んー、と悩んでいると─────。

 

「並びましょ!」

 

と笑顔でこころが言う。

 

「こころちゃん?」

 

「あたし、士郎の弓道が見たいわ!」

 

「お、俺の?」

 

「えぇ!セイバーからとても凄いって聞いてるわ!とても興味があるの!」

 

「えぇ、シロウの弓の腕前は確かです。私が保証しましょう」

 

「そういえば士郎さん、弓道の大会で1位を取ったんでしたよね?」

 

「そうだけど……」

 

「私も士郎さんの腕前、見てみたいですね」

 

「私も!」

 

後に引けなくなり、士郎はやむを得ず弓道のところに受付を済ませる。

 

「はい、受付完了です。それではしばらくの間、外で─────」

 

「弓道、1つ空きが出来ました!」

 

イヴが嬉しそうにそう報告して来る。

 

「あれ?30分とか言ってなかったか?」

 

すると、イヴの隣に2組の女子学生が現れる。

 

「私達の予約分、譲ります」

 

「そんな!悪いって!順番来るの待つから!」

 

「いえ、私弓道部なんで部活の時にいつでも出来るので」

 

「だからって……」

 

「それに先程話を小耳に挟みまして、大会へ出られた方の実力が見てみたいっていうのが本音ですね」

 

「えぇ……」

 

まさかの出来事に士郎はどうしたものか、頭を悩ませる。

 

「どうされますか?入れ替えは可能ですが、もししないのであれば次のお客さんに回されますが」

 

んー、と悩んでいるとシロウと、セイバーに声を掛けられる。

 

「人の好意は素直に受け取るべきですよ。謙虚なのは悪い事ではありませんが、時と場合によっては他者を傷付けてしまいますよ」

 

「……はぁ、わかったよ。じゃあ有難くやらせてもらうな」

 

「はい!」

 

士郎は弓道場に入り、指導する子から弓と3本の矢を受け取る。

 

「使い方は知ってるから大丈夫だよ」

 

「分かりました。それでしたら練習を────」

 

「いや、練習もいらないかな」

 

「え?」

 

士郎は矢を番え、弓を構える。

 

 

的は自分の位置から見て約28m

風は運良く吹いて居らず、あとは中心目掛けて放つだけ

心に焦りを無くし、射型に全神経を集中させる

姿勢を保つ為、体幹でバランスを取り弦を引く

正射必中、『真』の弓は偽らない

 

熟された矢は空を舞い、的中心(獲物)を目掛け放たれた

 

矢は重い音を響かせながら、的を射貫く

位置は目標通り、ど真ん中

集中は切らさず、すかさず二矢目を構える

一矢目同様に標的を変えず、中心に弓を構える

二矢目はやや右ズレたが、問題なく中心を射貫く

三矢目は先程よりも修正を入れ、弓を構える。

的の中心の幅は約7.2cm

その内2本の矢が射貫かれており、若干難易度が上がる

だが、やる事は変わらない

そして最後の矢が放たれた

 

重い音を響かせ、辺りは静寂に包まれる。

 

 

「ふぅ……」

 

士郎は弓を下ろし、的に刺さった矢を見つめる。

 

「す、すごい……三本とも、中心です!」

 

その声と共に周りから盛大な拍手が行われる。士郎は周りに頭を下げながら、弓を返しセイバー達の元へ戻る。

 

「お見事です、シロウ」

 

「あぁ、ありがとう」

 

セイバーから鞄を受け取り、肩にかけていると興奮したようにこころ達に詰め寄られる。

 

「すごいわ!士郎!本当にすごいわ!」

 

「すごいかった!もうほんっと……凄かった!」

 

「えぇ、士郎さんの集中力……私達まで緊張しちゃったわ」

 

「こっちもいいところが見せれて良かったよ」

 

すると、イヴが目を爛々としながら士郎の手を掴む。

 

「シショウ!!お見事です!」

 

「あ、ありがとう。……いや、師匠じゃないからな?」

 

「やはりワタシはまだまだミジュク……これからもセイシンします!」

 

「お、おう!頑張れよ!」

 

そして士郎達は“武士道体験”の屋台を出て行き、次の場所へと目指した。

ちなみに順番を譲ってくれた子達は、士郎の弓道を見てすぐ自分達の力にならないか勉強しに部室に向かったらしい

 

 

 

こうして時間は過ぎて行き、途中で彩と千聖と別れ今度は紗夜と燐子と合流し、こころの案内の元屋台巡りを楽しんだ。

 

時刻は午後4時半となり、空は段々と暗くなりかけていた。

 

「今日が最終日でしたね……」

 

「あぁ、そうだな……」

 

「……とても楽しい3日でした」

 

セイバーはそう言いながら、笑みを浮かべる。

 

「何を言っているんですか」

 

すると、後ろから呆れ声が聞こえた。

 

「これが最後、みたいに言ってますが、この先まだまだ行事は色々とあります。この3日だけで満足は早いと思いますよ」

 

紗夜はポテトを片手にそう言ってくる。

 

「そ、そうですよ……ま、まだまだイベント、た、沢山ありますよ?」

 

「サヨ、リンコ……」

 

「そうだな、まだまだ楽しい事はいっぱい起きるんだ。それにそれが待てないんだったらいつもの日常を楽しくすればいいんだよ」

 

「シロウ……」

 

「それに今日はまだ楽しそうなイベントが残ってるだろ?まだテンション下げるのは早いんじゃないか?」

 

「……ふふっ。えぇ、そうですね。私としたことが弱気になってしまいました。シロウやサヨ、リンコの言う通りこの3日だけが楽しい時間ではありませんね。毎日を楽しめるように努力しなければ!」

 

「ようやくセイバーさんらしくなりましたね」

 

「よ、良かった……」

 

お互い笑いあっていると、見覚えのある人が目に入った。

 

「松原さん?」

 

「ふぇ?さ、紗夜ちゃん!」

 

花音は嬉しそうに士郎達の元へ駆け寄る。

 

「士郎さん達も一緒だったんですね」

 

「あぁ、花音はあそこで何をしてたんだ?」

 

「え、えーっと……」

 

顔を赤くし、その様子を見て状況を理解した紗夜はすぐに花音を助けた。

 

「松原さんは私とここでおち合う約束をしていまして、合流できて良かったです」

 

「え?う、うん!そうだね」

 

とそうこうしてるうちに、校内放送が流れた。

その声は放送部のアナウンス……ではなく

 

『レディース&ジェントルメーン!!待ちに待ったパレードの時間よ!最後まで楽しんでいってね!』

 

こころの楽しそうな声が放送され、そのあと愉快な音楽が校内中に流れ始めた。

 

そしてグラウンドにブルーシートで隠されたどデカい物が光始めた。そしてそれは動き出し、ブルーシートがズレ落ちる。

 

そこにあったのは─────。

 

「……なんでさ」

 

あまりの衝撃に士郎はそれしか言えずにいた。

それはとても巨大な幸せを呼ぶ青い鳥だった。

しかも青い鳥は羽が動き、青い色だけでなく7色に光始めていた。そしてその足元では、吹奏楽が演奏をしながら行進していた。その中にははぐみの姿もあった。

そしてこころは青い鳥の頭の上でステッキを振っていた。

 

「流石こころですね。私達が想像出来ない事をやってのけますね」

 

「いや、普通の学生には出来ないからな?」

 

「あれは弦巻さんだからこそ出来る技です」

 

「お、奥沢さんは何処にいるのでしょうか?」

 

「あ、美咲ちゃんは放送室にいるよ!」

 

理由はこころ達にミッシェルだとバレる可能性があるから裏方に回る、と裏方作業へ志願したらしい。

 

周りのお客さんも驚きながらも、楽しそうに写真を撮ったりパレードを楽しんだり、それぞれの楽しみ方で楽しんでいた。

 

「全く、こころには勝てないな……」

 

士郎は苦笑いを浮かべながら、楽しそうにステッキを振っているこころに目を向ける。

 

「えぇ、彼女は楽しみ方を極めていますね」

 

「まぁ、夢が世界を笑顔にするって言ってる位だからな」

 

「それはシロウもじゃないですか?」

 

「え?」

 

士郎はセイバーを見るが、セイバーは士郎を見ず答える。

 

「今日はとても楽しく終われそうですね」

 

「……あぁ、そうだな」

 

士郎は再びパレードに目を向ける。セイバーだけじゃなく、紗夜も燐子、花音も楽しそうにパレードを見つめる。

 

「今日も明日も、1日ハッピーで終わりましょ!!」

 

こころの声に同感するように生徒達、そしてお客さんが観声を上げ、拍手を挙げる。

 

 

 

 

 

学園祭最終日、夜空同様に輝く青い鳥は伝承通りに各学園、そして周りの地域に幸せを呼んで来たのだった




こころが有能過ぎて、現実味が無いこと考えてもやってのけてくれる……!

感謝!!


今回で学園祭編は終了!
次回からまた飯テロ再開していきます!


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準備とおでん

寒い……




「こちらはどうでしょうか?」

 

「めっちゃいい!それも買っていこ!」

 

ショッピングモールでは大勢の人が賑わい、そして至る所の店にはもうクリスマス仕様の飾り付けがされている店もあった。

その中に雑貨屋で商品を見て回っているセイバーとあこ、そして近くで見守る士郎の姿があった。

 

「シロウ、こちらの買い物が終わりました」

 

「あぁ、あとは湊達と合流するだけだな」

 

「りんりんにメールしたから、多分そろそろ返信来ると思う!」

 

あこがそう言ってると、丁度返信が返ってきた。

 

「りんりん達の方も終わったみたい!」

 

「なら合流するか、集まる場所は最初に出会った場所でいいか?」

 

「えーっと……うん!いいみたい!」

 

「じゃあ、早速向かうか」

 

士郎達は1番初めに出会った場所へと向かった。

 

そう実は士郎とセイバーは本来別の用事でショッピングモールに来ており、そこでたまたま湊達に出会い手助けをしていたのだった。

 

 

─────約1時間前に遡る。

 

 

「えーっと、後は洗剤、その次に─────」

 

士郎がメモを見ながら残りの買う物を確認しながら歩いていると、隣で一緒に歩いていたセイバーがふと目を向けた先に見覚えのある5人組を見つけ足を止める。

士郎は隣にセイバーがいない事に気付き、後ろを振り返ると一点を見つめるセイバーを目にする。

 

「どうしたんだ?セイバー」

 

「シロウ、あちらを……」

 

セイバーが指を指した方を目で追いながら見ると

 

「あれは……」

 

 

 

「どうしましょうか……?」

 

「うーん、提案したのアタシだけどいざ実行に移すと色々と問題が出てくるよね〜」

 

「いえ、リサの案は悪くないわ。ただ私達では力不足なだけよ」

 

「ど、どうしますか?手助けを……」

 

「おねーちゃんに聞いてみようか?」

 

彼女達─────Roseliaのメンバーは案内表の横でとある問題に悩まされていた。

そんな彼女達に声を掛ける者が現れた。

 

「湊達も買い物か?」

 

声のする方へ振り向くと、士郎とセイバーが立っていた。

 

「シロにぃ!セイバーさん!こんにちは!」

 

「えぇアコ、こんにちは」

 

「お2人も買い物ですか?」

 

紗夜は士郎の手に握られている袋を目にしながら質問する。士郎はその視線に気付き、袋を軽く持ち上げる。

 

「まぁな、あと洗剤とか買ったら終わりだな。そっちは?」

 

「えーっと、アタシ達の方は……えへへ」

 

照れくさそうに頬を赤くして頭を搔く素振りを見せるリサに不思議そうな顔をする士郎とセイバー。

 

「士郎さん、セイバーさん、手を貸していただけないでしょうか?」

 

「ちょ、紗夜!?」

 

言おうか迷っていたリサに代わって紗夜が士郎達に協力を願った。

 

「どちらにしても人手を探していたのは事実です。でしたら協力を要請した方が問題は解決するのでは?」

 

「……一理あるわね。士郎さん、セイバーさん、お願いできるかしら?」

 

「俺は別にいいけど」

 

「えぇ、荷物持ちなら任せてください」

 

士郎とセイバーがそう言うと、湊達はそれぞれ安堵と喜びの顔を浮かべた。

 

「で、何を手助けすればいいんだ?」

 

「実はクリスマスの日にCiRCLEでクリスマスパーティーをする事になってー、スタッフの人も呼んでイブまでには準備を終わらせようって話になってね」

 

「え?俺聞いてないけど……」

 

「あれ?まりなさんが後で伝えとくって言ってたんだけどな〜?」

 

脳裏にまりながサンタの帽子を被り高笑いしているのが、何故か想像出来てしまい、士郎は苦笑を浮かべる。

 

「で、アタシ達は飾り付け&盛り上げ用の雑貨等を買ってくる係になってね〜」

 

「それでリサの案で二手に分かれて買う事にしたのだけど……」

 

湊は未だおさまる様子のない人混みに目を向ける。

 

「結構人混みが凄くてね〜、これだけの人混みだとはぐれちゃいそうで手分けして買うのは無理かもって話になっててね」

 

「なるほどな、確かに時間が時間だしな。ここからまた増える可能性だってあるもんな」

 

「それでどう分けましょうか?」

 

「そうね……士郎さんとセイバーさんの所にあこが入ってもらいましょう」

 

「はーい!」

 

「貴方達はこのメモに書いてある物を買って欲しいわ」

 

湊からメモを受け取り、軽く目を通す。

 

「了解。じゃあ早速向かうとするか」

 

「はい」「はーい!」

 

「私達も向かいましょう」

 

「そうですね」「わ、分かりました」「了解〜!」

 

そして二手に分かれて、リスト通りの商品を買いに向かった。

 

 

 

「お、もう着いてたみたいだな」

 

「あ、ホントだ!おーい!!」

 

あこが手を振りながら向かっていると、士郎達の存在に気付き、荷物を持ち近付いて来る。

 

「無事買えたみたいですね」

 

「あぁ、本当ならもっと早く終わってたんだけど、途中俺の用事で時間を食っちまった。ごめん」

 

「気にしなくていいですよ。元はその用事で来ていたのに私達が止めてしまったのが原因ですから」

 

「でもこの後飾り付けの準備もあるんだろ?なのに俺のせいで時間を遅らせてちゃったのは事実だしな……」

 

と士郎はブツブツと小声になりながら考え事をし始めた。

 

「あの士郎さん?」

 

「全く……こうなったシロウは止められませんから、素直に受け取ってあげてくれませんか?」

 

「アハハ……セイバーさんに言われたらね〜」

 

「確かに士郎さんの性格を考えるとそうした方が得策かもしれませんね」

 

そうこう言ってるうちに士郎が何か思い付き、スマホを取り出し誰かと通話をしだした。

 

「もしもし、士郎です。忙しい中すみませんが実はお願いがありまして─────」

 

 

CiRCLEに着き、中では香澄達が楽しそうに店の飾り付けをしていた。

 

「あ、おかえりなさーい!てあれ?士郎さんにセイバーさん!」

 

「あぁ、飾り付け作業おつかれさん」

 

香澄の声を聞いてか、他で作業をしていたメンバー達もぞろぞろと顔を出して来た。

 

「士郎さん、セイバーさん!こんにちは!」

 

「友希那先輩達、お疲れ様です!」

 

「えぇ、頼まれた物は全て調達できたわ」

 

士郎はまりなを見つけ、駆け寄っていく。

 

「お疲れ様です、まりなさん」

 

「士郎君もおつかれ!ごめんね!連絡し忘れちゃって!」

 

「別に大丈夫ですよ。それより電話のお話した件ですが……」

 

「バッチリ!確保しておいたよ〜。あとは好きに使っちゃっていいよ」

 

「ありがとうございます」

 

士郎が礼を言うと、まりなはいいのいいの、と言いながら香澄達のいる方へ向かっていき

 

「さー!今日は出来る所まで飾り付けを終わらせちゃいましょう!そして今日は特別に士郎君が晩御飯をご馳走様してくれるみたいでーす!」

 

「ホントですか!?」

 

士郎に視線が集まり、笑みを浮かべながら言う。

 

「あぁ、みんなが頑張ってるからな。もし良かったら晩御飯を食べていってくれ」

 

「わーい!」

 

「さー、士郎君のご飯が出来るのが先か、私達が飾り付けを終わらせちゃうのが先か、勝負しましょう!」

 

「いやいや、勝てないですよ!?」

 

「流石にこの数を今日中にはな……」

 

「最初から諦めてたら何も得られないよ?さぁ!皆の衆、かかれ!」

 

まりなが掛け声をあげ作業に取り掛かると、半分からは元気な声ともう半分からはヤケクソになって声をあげていた。

士郎はその光景に笑いながら、キッチンへと向かう。

 

キッチンには、士郎がまりなに頼んでおいた鍋が置かれていた。

 

「さて、始めますか」

 

 

おでんつゆ用の出汁と薄口醤油、酒、砂糖、塩を鍋に入れ、一煮立ちさせたら火を止めておく

大根は2~2.5cm幅の輪切りにして皮を厚く剥き、面取りと隠し包丁を入れたら米のとぎ汁で下茹で、串が通ったら水によくさらす

卵は固茹でにし殻を剥く

じゃがいもは皮を剥き半分に

出汁に使った昆布を2cm幅に切って、結び昆布を作る

こんにゃくは塩もみ後、片面に隠し包丁を入れて食べやすい大きさにしたらお湯で茹でてアク抜き

さつま揚げ、揚げ練り物、製品等はザル等に並べ、熱湯を回しかけ油抜き

厚揚げ、がんも、油揚げ等の豆腐製品はお湯で2~3分茹で油抜きしたら、それぞれ食べやすい大きさに切る

油揚げと餅は半分に切り、油揚げの中に餅を入れ、水で戻したかんぴょうか楊枝で止める

つみれやはんぺん等は下処理なし、そのまま食べやすい大きさに切る

鍋におでんつゆをはり、大根、ゆで玉子、こんにゃく、結び昆布を入れ、沸騰したら弱火にしコトコトいう程度の火加減で30~40分煮込む。

おでん種は味のしみこみにくいものからつゆの味を出すもの、味がつゆに出やすいものの順で入れていく

ちくわ、さつま揚げ、やさい天、ごぼう天、厚揚げ、がんも、じゃがいも、餅巾着を加え10~15分弱火で煮込む

魚河岸揚げ、鰯つみれを加えて更に3~5分煮込む

鍋を火から下ろし新聞と毛布でくるんで、2~3時間置いておく

最後にはんぺんを入れ、温めたら完成

 

 

「さて、持っていきますか」

 

鍋を持ち、彼女達がいるに向かった。

 

「いい匂いがしますな〜」

 

「モカ、口より手を動かして」

 

「確かにいい匂いがするな」

 

「もしかしてもう出来ちゃったの!?」

 

ひまりが声をあげ、外を見ると空は暗く白い雪が淡々と降っていた。

 

「て、もう夜じゃん!」

 

「ほんとだ」

 

彼女達が窓の外を見つめていると、美味しそうな匂いが近くまで香ってきた。

 

「お待たせしました」

 

「待ってました!」

 

士郎は用意されていた机に鍋を置き、蓋を開ける。

 

「えー、今日は冬の定番のおでんです」

 

『お~』

 

もう1つの鍋も運び出し、そして全員に行き渡るように皿に盛っていく。

 

「全員、行き渡ったかー?それじゃあ─────」

 

『いただきます』

 

口に運び、熱そうにしながらも美味しそうに食べる。

 

「ん〜、美味しい!!」

 

「大根、味がしみて美味しいですね」

 

「餅うま〜い!」

 

「シロウ、この白い物はなんでしょう?」

 

「それははんぺんだな」

 

各々美味しそうに笑い合いながら食べ続けていると、ふと外を見た蘭が呟いた。

 

「……雪、結構降ってきた」

 

士郎も外の景色に目を向ける。

 

「これは明日積もるかもな……」

 

「じゃあ明日は皆で雪合戦しよ!」

 

「1人でやってな」

 

「やろ!有咲!」

 

「やらない!」

 

 

 

 

 

白い雪は未だに降り続ける。




寒い日々が続いて今にも死にそうです……

次回はクリスマス編!なので次の投稿は25日に投稿します!
時間はおそらく0時に投稿すると思います!


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クリスマスパーティー

今回は思ったより短いと思います




12月25日

クリスマス

 

 

★CiRCLE

 

 

『メリークリスマス!!』

 

全員がクラッカーを鳴らし、盛大に祝った。

 

「いや〜ギリギリ間に合って良かったね〜」

 

「まぁ、色々あったからな」

 

巴がそう言うとこの場にいる全員が、作業していた時の光景を思い出す。

 

まだ冬休みに入っていないので学校がある彼女達だが、放課後行ける人だけCiRCLEに向かい、作業を進める方針で行っていた。

当然士郎の学校もまだ冬休みに入っていないので士郎の方も放課後に手伝いに来ていた。

他にもバイトがあったり、テストがあったりと色々とやる事があり、中々作業が進めず焦りに焦っていた。そこに強力な助っ人が加わり、ギリギリではあるがクリスマスまでに間に合ったのだった。

 

「本当にありがとうございます、セイバーさん!」

 

「いえ、力になれたのならなによりです」

 

「あとランサーさんも手伝ってくれて助かりましたよね!」

 

「そういえばランサーさんは?」

 

そう、強力な助っ人とは、セイバーとランサーだった。

セイバーは勿論最初から手伝っていたので何も疑問ではなかったが、何故ランサーが手伝いに加わっていたのか?

 

 

それは、士郎が手伝いを頼んだからだった。

 

 

 

「よォ、坊主が何か手伝ってほしいって言われたから手伝いに来たぞー」

 

そう言いながらランサーはCiRCLEに入ってき、辺りをキョロキョロしているとセイバーがランサーに近寄って行く。

 

「何故ランサーがここに!?」

 

「さっきも言ったけど、坊主が手伝ってくれってお願いされてな。まぁ暇だったから、手伝いに来たんだよ」

 

セイバーは怪しむようにランサーを見つめる。

 

「そんな睨みなさんな、困ってんだろ?」

 

「くっ……!確かに貴方の力を借りられるのなら、作業はより早く進めれるのは確かです」

 

「だろ?」

 

セイバーは悩み抜いた末、私情を押し殺す事にした。

 

「……分かりました。であればこの度はこちらの手伝いに加わる事を許しましょう」

 

「何だ?手伝いするのに騎士王さまの許可が必要なのか?」

 

近くで見ていた士郎に、ランサーはそう疑問をぶつける。士郎は苦笑いになりながら応える。

 

「いや、そんなことはないけど……」

 

 

 

といった感じで、ランサーの協力も加わり、今日というクリスマスパーティーが行うことが出来たのだ。

 

「ランサーは今日別のバイトだってさ」

 

「えぇ!?ランサーさん働き過ぎでは!?」

 

「彼なら大丈夫です。気にしなくてもいいと思いますよ」

 

セイバーは淡々と言い放った。

そんなセイバーを見て、蘭達が小声で話し合っていた。

 

「なんかセイバーさん、ランサーさんに対して冷たくない?」

 

「辛辣、ていうのかしら?中々に冷たいわね」

 

「手伝いに来てくれた時も帰らそうとしてたしね」

 

そんな事を小声で話し合っている蘭達とは裏腹に香澄やこころ達は楽しそうにセイバーと談話していた。

 

「はーい!みんなちゅうーもーく!!」

 

すると、まりなが全員に呼びかけ、自分に注目させる。

 

「料理の前に、今日というパーティーの立案をした香澄ちゃんに何か一言!言ってもらいましょーう!」

 

まりなが香澄に手招きし、前に立たせる。

 

「今日は私の我儘に協力してくれてありがとう!!みんなのお陰で、今日というクリスマスパーティーが出来ました!だから今日は─────」

 

香澄は大きく息を吸い、そして─────。

 

 

「─────最高のクリスマスにしましょう!!」

 

 

香澄の言葉に全員が笑みを浮かべ、拍手を送る。

 

「はい!香澄ちゃん、ありがとね!さて、お待ちかねの料理です!料理したのは〜……勿論士郎君!!」

 

まりなに指をさされ、士郎は照れ臭そうに頭を搔く素振りをする。

 

「今日はクリスマスという事で、ちょっと奮発しました」

 

そう言って士郎が持ってきた料理は─────。

 

「ローストビーフだ!!」

 

「なるほど、あの肉の塊がこのように」

 

皆が目を爛々と輝かせローストビーフを見つめる。

 

 

 

─────数時間前。美竹宅

 

 

「おー、厚みが凄いな……」

 

士郎は今回の為に奮発して買った肉を眺める。

 

「と、見とれてる場合じゃないな」

 

士郎は裾を捲りあげる。

 

 

肉を調理する1~2時間前に冷蔵庫から取り出して常温に

普段使う感覚より少し多めの塩を肉に振り、叩いたにんにくと共に肉にすり込む

ラップにくるみ、15~30分放置し味を馴染ませる

フライパンに油をひき、弱火で肉をすり込んだにんにくを炒め香りを出す

にんにくを取り出して強火で4面を約2分ずつ焼き、しっかり焼き目をつける

蓋をして火を止めて余熱で5分火を通す

肉をひっくり返し、再び蓋をして極弱火で3~4分加熱

串を肉の中心まで刺し、数秒後に抜いた串を唇の下に当てて串が温かく感じれば火が通っているサイン

最後に粗びき、胡椒を肉全体に少し強めに振り、焼き終わった肉をすぐにラップで包み、更にアルミホイルで包んで30分ほど肉を休ませたら完成!

 

 

「んで、フライパンに残った肉汁をソースに使ってと……」

 

 

 

 

「じゃあみんな〜!手を合わせて〜!」

 

まりなが掛け声をあげると、全員手を合わせる。

 

『いただきます!』

 

ローストビーフを口に運び、そして彼女達の頬が蕩けた。

 

「ん〜!美味しいー!!」

 

「えぇ!とても美味しいわ!」

 

「おてもおいひいよ〜!」

 

「口の中なくてしてから喋れ!」

 

楽しそうにはしゃぎながら料理を食べている彼女達を見守りながら、士郎も料理を口に運ぶ。

 

「シロウ」

 

「ん?どうした、セイバー?」

 

「今日は、とても賑やかな食卓ですね」

 

「あぁ、でも悪くはないだろ?」

 

士郎が笑いながら、質問する。

セイバーはその質問に笑みを浮かべながら、答える。

 

「えぇ、とても楽しいです」

 

「そっか」

 

セイバーと談話していると、蘭達が士郎達の方へ近寄ってきた。

 

『メリークリスマス!士郎さん!』

 

彼女達が笑顔と共に来たので、士郎はセイバーと顔を見合わせた後、同じように微笑みながら応えた。

 

「あぁ、メリークリスマス」




メリークリスマス!!

次の投稿は年明けですかね?

ならば今年最後の挨拶と感謝を!
いつまで経っても成長しない自分ではありますが、いつも見て下さりありがとうございます!
来年には自分も成長してるといいな〜と希望的観測を願いながら、今年最後の投稿とさせていただきます!


それでは皆さん…………おサラバ!!


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初詣とお雑煮

あけましておめでとうございます!!

年明け一発目の投稿です




元旦

 

 

神社には大勢の参拝客で賑わっていた。

 

「おー、やっぱり結構人混んでるな」

 

「元旦だもんねー」

 

そしてその中に浴衣姿の蘭達の姿があった。

 

「セイバーさん、大丈夫ですか?」

 

「はい、大丈夫です。少し歩きずらいですが……」

 

「着物なんて着る機会あんまりないもんね〜」

 

屋台に目を向けながら、前へと進み続ける。

 

「シロウ、参道の方の屋台にはいませんでしたね」

 

「そういえば士郎さんは何処にいるの?」

 

「行く前に聞いたら境内(けいだい)の方を手伝うって言った」

 

「シローさんは働き者だねー」

 

士郎を探しながら社殿へと進んでいると

 

「おーい」

 

蘭達が探していた人が向こうからやってきた。

 

「……と、着物着てくるとは聞いてたけど……」

 

士郎は蘭達の着物を見て、動揺する。

 

「ふっふー、シローさんはあたし達の着物姿に見惚れているみたいですな〜」

 

「あ、あぁ、みんなその、凄く似合ってる、見違えた」

 

「そう言われるとちょっと気恥しいけどな」

 

蘭達は士郎と同じように頬を少し赤らめる。

セイバーは士郎に質問する。

 

「シロウ、どうでしょう?似合っていますか?」

 

「あぁ、似合ってる……けど、その着物借りたのか?」

「いえ、こちらは大河が用意してくれました。とても艶やかな衣服ですね」

 

「藤ねぇいつの間に……」

 

聞くと年明け前の日に士郎かいない時に着物が届き、そして今日まで隠していたらしい。

 

「それにしても……こんな日くらい休んでもいいんじゃないですか?」

 

「人手が足りないって言うからさ」

 

つぐみの質問に士郎は頭を掻きながら応える。

つぐみは睨むように目を細める。

 

「働きすぎだと私は思いますよ?」

 

「いやー……大輝のじいさん……えーと俺の友達のじいさんの頼みだし……バイト代も出るんで」

 

ジトーっとつぐみだけでなく、蘭とひまりそしてセイバーにも睨まれ、士郎は申し訳なさそうな顔をする。

 

「去年はトモちんがシローさん側だったよねー」

 

「アタシも頼まれたから手伝ってただけなんだよな……」

 

モカがニヤニヤしながら巴に言うと、巴は苦笑いで応える。

 

「で、でも頼まれたの午前中だけでこの後自由なんだ、一緒に周らないか?」

 

「……!はい!」

 

「えぇ、是非」

 

士郎がそう言うと、嬉しそうにつぐみとセイバーが返事を返す。

 

 

 

その後お参りを済ませ、おみくじ引き、これからどうしようかと悩んでいた。

 

「うぅぅ……」

 

「ひまり、まだ引きづってるの?」

 

「だって私だけ凶だったんだよ!?みんな小吉だったのに!」

 

「セイバーさんだけ大吉だったけどね」

 

おみくじでセイバーは大吉、士郎達は小吉が当たり、ひまりだけが凶を引く、という結果になりひまりが拗ねてしまったのだ。

巴に慰めるのを任せて、ここからどうするか残りのメンバーで話し合う事にした。

 

「こっからは俺は別行動だな」

 

「何か用事があるんですか?」

 

「あぁ、この後CiRCLEで香澄達と新年の挨拶しに行くんだろ?俺も実はまりなさんに呼ばれてな。その時にお雑煮を作るんだが、流石に全員分を一気に作れないからみんなが来る前に少しでも作っておこうて思ってな」

 

「なるほど〜」

 

「でしたら、私はシロウの手伝いに回ります」

 

「じゃあ一旦、士郎さん達とはここで解散だね」

 

そして蘭達と別れ、2人だけになる。

 

「ほんとに良かったのか?別に蘭達と一緒に居ても良かったんだぞ?」

 

「いえ、私は充分満喫しました」

 

「セイバー……」

 

セイバーはとても満足そうに笑みを零す。

 

「それにシロウを見張らないとまた無茶をしそうですから」

 

「えぇ……」

 

階段を降りていると、前から白髪の女の子が着物姿で登ってきた。本来であればあまり気にしないのだが、何故か目に入り、横を通り過ぎるのを目で追いかける。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、ちょっとな」

 

その子は登った先で待っていた4人の女の子達と一緒に参道の方を歩いて行った。

 

「何でもない、早く向かうか」

 

「えぇ」

 

 

 

神社から離れ、CiRCLEに到着した。

まりなは他の作業しており、他のスタッフに話を通してもらい、キッチンに向かう。

 

「えーと、材料は鰤、里芋、どんこ干し椎茸に大根……」

 

材料を確認し、準備が出来たところで─────。

 

「さて、早速作っていこう。……と思うんだけど」

 

士郎は袖を上げながら、セイバーの格好に目を向ける。

 

「流石に着物着た状態だと汚しかねないからな、必要な時に呼んでいいか?」

 

「えぇ、分かりました」

 

「よし……じゃあ早速─────」

 

 

どんこ干し椎茸は30分以上水につけて戻しておく

戻し汁は出汁に使用するのでとっておく

鰤に骨があれば取り除き、塩をふり30分程置き

鰤を熱湯にくぐらせて表面が白く変色したら冷水に入れ、皮部分の細かな鱗などを落とす

大根はいちょう切り、金時人参は花の型抜きで抜く

里芋は六方に剥き、熱湯で1分程茹でてから冷水で洗い、ぬめりを取る

小松菜は塩を加えた熱湯で茹で、冷水で洗い絞ったら4~5cm幅に切り、水気を絞る

かまぼこは1cm幅に切り、椎茸が大きい場合は食べやすい大きさに切る

鍋に出汁を入れ大根、人参、里芋、椎茸、鰤、酒、塩、椎茸の戻し汁を入れて沸騰させないように煮る

餅を焦がさないように焼き、具材に火が通ったら薄口醤油を加えて味を調整

各自材を器に盛り付け

最後にお好みで柚子皮を添えて……

 

 

「よし、完成……!」

 

士郎が丁度お雑煮を完成させたタイミングで、セイバーが士郎を呼びに来た。

 

「シロウ、ラン達がラウンジにもう集まっています」

 

「お、ならタイミングバッチシだな。セイバー、運ぶの手伝ってくれるか?」

 

「はい、お任せ下さい」

 

セイバーと手分けしてお雑煮をラウンジにいる蘭達の所へ運び出す。

 

「あ!士郎さん!」

 

「おぉ香澄、あけましておめでとう」

 

「あけましておめでとうございます!!」

 

ラウンジに着くと全員集まっており、そして着物姿の彼女達に驚き、入口で足が止まってしまう。

 

「ふふふ、驚きましたか?シロウ」

 

「あ、あぁ、まさか全員着物姿なんて思わなかったよ……」

 

「そう言う士郎さんは、私服なんですね」

 

「まぁ午前中はずっと手伝いに回ってたからな」

 

「まぁ士郎さんらしいですね」

 

その言葉にほぼ全員が頷き肯定する。

 

「と、とりあえず!お雑煮出来たから!」

 

お雑煮を全員に渡していき、いき渡った所で全員手を合わせる。

 

『いただきます』

 

汁を啜ったり、具材を先に食べたり、食べ方は違えど全員ホッコリと温まった顔を見せる。

 

「美味しい〜……」

 

「元旦からお雑煮ってすっごくお正月を満喫してる気がする!」

 

「とても美味しいわ!」

 

「雑煮って地域毎に中身がぜんぜん違うよな」

 

「へぇー、そうなんだ」

 

 

 

 

年始に雑煮を食べ、仲間と元旦を共に過ごし、幸先の良いスタートを切ったと全員が思うのだった。




改めて……
あけましておめでとうございます!!

もうすぐでこの小説を投稿して1年が経とうとしています!……をこの投稿をしようとしている時に気がつきました!

ここまで頑張れたのは見て下さる皆さんのお陰です!

まだまだダメ文章力ですが、これからも頑張らせていただきます!!


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お茶会

『今日、あたしの家に来て欲しいの!待ってるわ!』

 

 

昼過ぎ、こころからメールが届いた。

詳しい内容は書いてなかった為、意図は掴めないがとりあえず向かえば分かるだろう、と思い支度を始めた。

蘭は仲間達とバンドの練習をしに行ってるので家にはセイバーと士郎の2人だけ。

 

「セイバー、ちょっとこころに呼ばれたから行ってくるな」

 

「はい、行ってらっしゃい。お気を付けて」

 

セイバーに留守を任し、士郎は玄関を開け家を出ようとした。その時、家の前に黒い車が止まっているのに気が付いた。

士郎が困惑していると、車から黒スーツをきた人が降りてきた。

 

「衛宮士郎様でお間違いないでしょうか?」

 

「あ、あぁ、確かに俺が衛宮士郎だけど……アンタ誰だ?」

 

士郎が質問すると、黒スーツの人は背筋を伸ばし、頭を下げ謝罪する。

 

「これは失礼しました。私はこころお嬢様の執事─────言わば召使いです」

 

「こころの?」

 

「はい。この度はこころお嬢様の命により、衛宮士郎様を御迎えに上がりました」

 

そして召使いと名乗る人は車の扉を開け、どうぞ、と案内する。そのタイミングで、士郎の携帯にメールが届く。相手は─────こころだった。

 

『案内の人を送ったわ!』

 

送られてきたメールはその一言だけだった。士郎は、そんだけかよ、と内心でツッコミながらもこころにありがとうと送り、そして召使いの人に向き直る。

 

「それじゃあ、よろしくお願いします」

 

「お任せ下さい」

 

士郎は車に乗り込み、こころの家へと発車して行った。

 

 

 

 

「相変わらずデカイな……」

 

車から降り、まず出た言葉がそれしかなかった。

ゴールデンウィークの時も家に上がらせてもらったが、それでも尚、目の前の屋敷を呆然と見上げるしかなかった。門の前で止まっていると─────

 

「あれ?士郎さんも呼ばれてたんですか?」

 

声のする方へ振り返ると、そこには美咲がいた。

 

「あぁ、こころが来てくれってメールが来たからな……てことは美咲もか?」

 

「あたしの方は、元々この曜日に話し合うって事になってまして」

 

「なるほど……ん?てことは」

 

「ハロハピ、全員集合してると思いますよ」

 

そう言いながら美咲は自分のトーク画面を士郎に見せる。そこにはグループトークで集合時間など話し合ってる会話があった。

 

「まぁ士郎さんが来ることは伝えられていなかったので驚きはしましたけど」

 

「俺も来て欲しい、しか言われてないからな……」

 

士郎も自分のトーク履歴を美咲に見せる。美咲は苦笑いを浮かべながら、溜息を吐いた。

 

「よくこの文脈で来ようと思いましたよね」

 

「まぁ、相手がこころだったし……それに家の前で召使いさんが待ってたからな」

 

「逃がす気ゼロですよね……」

 

「逃げる気とかなかったんだけどな……」

 

美咲と軽く会話していると、門が開き士郎を送り届けてくれた召使いが現れる。

 

「お待たせしました。衛宮士郎様、奥沢美咲様、弦巻邸へよくお越しくださいました。それではご案内致します」

 

召使いの案内の元、士郎と美咲はこころが待つ部屋へと向かった。

 

しばらく歩き、1つの扉前で立ち止まり召使いが扉を開ける。

 

「こころお嬢様、衛宮士郎様と奥沢美咲様をお連れして参りました」

 

すると、扉の奥から入ってちょうだい!と元気な声が聞こえた。

 

「失礼します」

 

召使いが扉を開け、それに続いて中に入る。

 

「来たわね!」

 

部屋にはこころ、そしてはぐみに薫、花音がいた。

 

「あれ〜?士郎さんも来てたの?」

 

「まるでサプライズだね、実にこころらしいよ……!」

 

「美咲ちゃん、士郎さん!こんにちは!」

 

花音達と挨拶を交わし、指定された席に座り召使いからお茶を頂いた。

 

「それでこころ、士郎さんを呼んだって事は何かするの?」

 

「えぇ!今日はとてもおもしろそうな遊びをしようと思うわ!」

 

「遊びって言っちゃったよ……」

 

目を爛々と輝かせているこころとは裏腹に美咲は何か嫌な予感を感じたのか、少し嫌そうな顔を見せる。

 

「それでこころ、その遊びはどんな遊びなのかな?」

 

「それはね!─────

 

 

──────かくれんぼ、よ!!

 

 

「……え?」

 

こころがやりたい遊びが、かくれんぼと知り呆気に取られる。

 

「すごく楽しそう!!さんせーい!」

 

「ふふっ……とても儚い提案だね。勿論私も参加させて貰うよ」

 

しかし、唯一呆気に取られなかった2人はやる気満々に参加する。そこで美咲と士郎はようやく気を取り戻した。

 

「かくれんぼか……この歳になってからやったことなかったな」

 

「わ、私も賛成、かな」

 

「……不安な事はまだあるけど、花音さんがやるならあたしも参加するよ」

 

「決まりね!」

 

全員が賛成し、次に鬼決めを始める。

 

「鬼は……士郎ね!」

 

「俺なんだ……」

 

「範囲はここ全部ね!」

 

「……ん?ここ全部?」

 

士郎は疑問に思い、近くにいた召使いと目が合う。

 

「弦巻邸の家の範囲はあちらの山まででございます」

 

召使いは窓の先にある山を指した。

 

「いや広すぎだろ!?」

 

「こころ、流石にそれは広すぎるから!もっと狭めよ?」

 

「そう?ならこの家と家の周りが範囲ね!」

 

「それならまぁ……」

 

まだ充分広すぎるが、先程よりも狭まったので渋々だが了承する。

 

「じゃあ1分後に探しに来てね!」

 

「わかった」

 

「行くわよ〜?ょーい、ドン!!」

 

こころの合図と共にかくれんぼがスタートした。

 

 

 

 

かくれんぼが始まって3時間経ち、ようやく最後の1人を見つける事が出来た。

 

「長かった……」

 

途中からかくれんぼじゃなくなった気がしたが、そこは気にしないでおく。

 

「じゃあ次はお茶会をしましょうか!」

 

「お茶会?」

 

「えぇ!みんなで花園の所でお茶をするの!」

 

こころがそう提案すると、召使いがすぐ手配しますと言って、部屋を出ようとしていたので、士郎はそこである頼みを申し出た。

 

「あの、邪魔じゃなければ俺も手伝わせてくれませんか?」

 

「しかし衛宮様はこころお嬢様のお客様、お手を煩わせる訳には……」

 

「じっと待ってるより何かしてるほうが落ち着くんで、むしろ手伝わせてもらった方が気が紛れるので」

 

召使いがどうしようか困り果てていると、こころが助け舟を出す。

 

「あら、士郎も何か作るの?それはとても楽しみね!」

 

こころにそんな事を言われては召使いも諦めるしかなく

 

「かしこまりました。それでは厨房までご案内致します」

 

召使いに案内され、厨房まで向かう。

 

「すみません、無理言って」

 

厨房に着いた頃に、士郎は召使いに謝る。

 

「いえ、お手伝い頂けるのはこちらとしても嬉しい事でもあります。それに衛宮様の料理はとても美味しいとこころお嬢様から常々伺っておりましたので」

 

「いや、ここで出されてる料理と比べたら全然ですよ!」

 

「……なるほど、お嬢様の言う通り貴方は謙虚過ぎるようですね」

 

「え?」

 

召使いは棚から3段スタンドを取り出し、士郎の前に置く。

 

「お茶会ではこちらの物を使います。最上段はデザート、中段にはスコーン、そして一番下の段にサンドイッチを用意します」

 

「なるほど……」

 

「では衛宮様にはサンドイッチをお願い出来ますか?」

 

「分かりました」

 

「材料などはお好きに使われても構いませんので」

 

召使いはそう言うとメイド達にデザートとスコーンの準備を指示しに向かった。

 

「じゃあ早速……始めますか」

 

 

まずは下準備

バターとクリーム、チーズは室温に戻し柔らかくしておく

サラダチキンを手作りする場合は、鶏ムネ肉に砂糖をまぶし揉みこんで10分おく

沸騰したお湯に塩と酒を加え、鶏ムネ肉を入れ、再沸騰したら火を止めて蓋をし、20分ほどおく

手でさわれるくらいに冷めたら手で細かくさいておく

 

そしてここからサンドイッチ作り

まずきゅうりのサンドイッチを作る

きゅうりの皮を剥き斜め切りに、バットに並べて塩をふり5分ほどおく

水分が出てきたらワインビネガーを全体にふりかけ、更に10分おく

キッチンペーパーで水気をよくとり、パンにバターを塗ったらきゅうりを並べ、胡椒をふり、もう1枚のパンで挟む

次はスモークサーモンとクリームチーズのサンドイッチ

パンの片面にクリームチーズを塗る

その上にスモークサーモンを並べ、胡椒とケッパーをちらし、もう1枚のパンで挟む

最後はチキンのカレー風味サンドイッチ

玉ねぎを薄切りにして塩を少々ふり揉む

玉ねぎが辛い場合は水で洗い、水気をきる

ドライフルーツとナッツ類は細かくきざみ、ボウルに玉ねぎ、さいておいたサラダチキン、きざんだドライフルーツとナッツ類、無糖ヨーグルト、マヨネーズ、カレー粉を入れて混ぜ合わせる

パンに混ぜ合わせた具材を均等に広げ、もう1枚のパンで挟む

挟んだパンは乾燥しないようにラップで包み、上から軽く押さえておく

時間があれば冷蔵庫で30分ほど休ませる

パンの耳を切り落とし、切り分けて完成!

 

 

「よし……!」

 

「出来上がりましたか?」

 

「あ、はい」

 

召使いは出来上がったサンドイッチに目を向け

 

「失礼ですが、味見させて貰えないでしょうか?」

 

「俺の方からもお願いしたかった所です」

 

そう言って士郎は、味見用のサンドイッチを召使いに渡す。召使いはそれを口に運び、士郎はドキドキしながら感想を待つ。

 

「……ふむ」

 

「……」

 

「……衛宮様は誰から料理を学んでいるのですか?」

 

「えっと基本は独学で……」

 

「なるほど……」

 

召使いは何も言わず、数秒してから笑顔で感想を述べた。

 

「とても美味しかったですよ」

 

「良かった……」

 

「ではこちらのサンドイッチを持って行きましょう」

 

召使いは、サンドイッチを持って行く前に、士郎に向き直り呼び掛ける。

 

「衛宮様」

 

「はい?」

 

「もっと自分に自信を持ってください。貴方は少し謙虚過ぎる」

 

「え?」

 

「それではいつかご自分を傷付ける事になります。他人に気を使い過ぎるのも、大概にした方がいいでしょう」

 

召使いは笑顔を見せる。

 

「これは貴方よりも長く生きてる年長者からの助言でございます」

 

「……!」

 

「お嬢様方をお待たせさせ過ぎるのもよくありません。早くお届けに参りましょう」

 

 

 

「来たわね!」

 

花園に着くと、そこにはもう机と椅子が用意されており、士郎の分の椅子も用意されていた。

 

「大変長らくお待たせいたしました」

 

そして机の真ん中に3段スタンドを置く。

 

「わぁ〜!美味しそう!!」

 

「衛宮様がお作りになられたのは下段のサンドイッチでございます」

 

『おぉ〜』

 

全員に皿がいき渡り、メイド達からお茶を頂き、早速食べようとするが、手が止まった。

 

「あれ?お茶会って別にいただきますって言わないでいいんだっけ?」

 

「こころ、どうなの?」

 

「ならお茶会じゃなくて、いつも通りのあたし達でいただきましょう!」

 

「そんな簡単に決めていいの?」

 

「もちろんよ!だっていただきますって言った方が楽しいでしょ?」

 

その言葉に士郎達は笑みを零す。

 

「楽しいかどうかはともかく、士郎さんが作る=いただきますって言うのが定着してるのは確かだよね」

 

「あ!それはぐみも思ったー!」

 

「確かにそうだね。ふふっ、いつの間にか私達は彼色に染まられていたんだね……あぁ、なんて儚いんだ……!」

 

「う、うん!士郎さんが作ってくれた料理、心が温かくなるよね」

 

「じゃあ決まりね!それじゃあ─────」

 

『いただきます』

 

サンドイッチを口に運び、美味しそうに食べる。

 

「う〜ん!美味しい!!」

 

「えぇ!とても美味しいわ!」

 

「ちょ、2人ともそんなに急いで食べると喉詰まらせるよ!」

 

「美しい花を目に写しながら、サンドイッチを頂く……これ程の贅沢があっていいのか不思議に思ってしまうね」

 

「うん……わ、私、こ、こんな贅沢していいのかな……!?」

 

そんな彼女達を見守るように見ていた士郎に召使いが後ろから話しかけて来る。

 

「貴方様はお嬢様方の笑顔を作られました。これを見てもまだ自分の力ではないと申しますか?」

 

「……流石にそこまで自分を否定はしませんよ」

 

「おそらくこころお嬢様は衛宮様のことを思い、本日の会談を遊びに変えられ、そして最後にはお茶会といった手段を取られたのだと私は思います」

 

士郎はまさかと思いながら、こころに目を向ける。すると、こころも士郎の視線に気付き笑顔を向けてくる。こころの笑顔に微笑を浮かべ返す。

 

 

 

 

 

まさかな、と思いながらお茶を啜る。

それと同時にまた彼女に助けられてしまったな、と何故か嬉しそうに思う士郎だった。




次回!ついに新グループが!?



※この話で省略されたかくれんぼ回は外伝編で投稿させていただきます
外伝編はというのはこの話を書いてる時に思い付きました。なので投稿する日も決めてません。決まり次第、活動報告で報告させていただきます


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イチゴのミルクレープ

バレンタインの回!
でもバレンタインの日じゃない!

(ノ≧ڡ≦)☆


「いちご……ですか?」

 

セイバーは士郎が持っている大量の苺に反応する。

 

「あぁ、前に藤ねぇから送られて来たんだ」

 

ご丁寧に手紙付きで、「お土産あげるわね!セイバーちゃん達と分けて食べてね」と書かれていた。

 

「では、今日はこのいちごを使われるのですね」

 

「そうしようと思ったんだけど……」

 

士郎は頭を掻きながら困った表情を浮かべる。

その顔を見てセイバーも察する。

 

「なるほど、確かにランがいないのに私達だけで食べるというのは……」

 

「苺の数的にも大丈夫ではあるけど、2人だけで食べるっていうのもな……って思っちゃって」

 

うーん、と2人は悩み、どうしようか考えていると、

 

「せっかくだから蘭が帰ってくるの待つか─────ん?」

 

玄関のチャイムが鳴り、士郎は早足で向かう。

玄関を開け、そこに立っていたのは香澄達だった。

 

「……香澄?」

 

「こんにちは!士郎さん!」

 

「どうしたんだ?こんなに大勢で……て、初めましての子がいるけど?」

 

香澄の後ろにたえ、りみ、沙綾、有咲と並びそして有咲の隣に白髪のショートヘアの子が立っていた。

 

「あ、そういえば士郎さんは初めて会ったよね?」

 

「ん?この子も香澄達と同じバンドのグループなのか?」

 

「私達とはグループ違うけど、そうだね。Morfonicaってバンドグループだよ」

 

たえの説明を聞き、その白髪の子に目を向ける。その視線に気付き、白髪の子は頭を下げ自己紹介を始める。

 

「は、初めまして!倉田ましろ、て言います!士郎さんの事は香澄さんから色々と聞いていました!えーっと、と、とても料理が上手い人って!」

 

恥ずかしそうにしながらも色々と何か話そうと頑張っているましろに微笑を浮かべながら、自分の自己紹介を始める。

 

「俺は衛宮士郎、ちょっとした事情があって今は美竹の家に居候させてもらってる。バンドとかはあんまり力になれないけど、困った事があったらいつでも言ってくれ」

 

士郎はそう言って、ましろに手を差し伸べる。ましろも慌てながら差し伸べられた手を握る。

 

「こ、こちらこそよろしくお願いします!」

 

お互いの自己紹介が終わり、士郎は香澄達に質問をする。

 

「ところで香澄達は何しに来たんだ?」

 

「そういえばそうでした!士郎さんは何してたんですか?」

 

まさかの質問を質問で返され、苦笑いで答える。

 

「藤ねぇから苺が送られてな、それをどうしようかセイバーと話し合っていたんだ」

 

「いちご!?」

 

何故か香澄は目を爛々と輝かせ、涎を垂らす。その頭を有咲がシバく。

 

「いちごで悩むって何かあったんですか?」

 

その2人を他所に沙綾が士郎に質問する。

 

「あぁ、蘭がいないのに先に食べていいのか?ってセイバーと話し合っててな、数的には問題ないんだけど俺とセイバーだけで先に食べるっていう罪悪感がな……」

 

士郎は苦笑いを浮かべながら頭を搔く。そんな士郎に沙綾とりみは同情し、あぁー、と声を漏らす。

 

「それ蘭がいないから食べづらいの?」

 

そんな中、たえだけが何か考えながら士郎に疑問をぶつける。

 

「まぁ食べようと思えば食べれるけど、2人で食うより多い方がいいって話になってな」

 

たえはその言葉を聞いた瞬間、笑みを浮かべる。

 

「じゃあ私もいちご食べたいなー」

 

「ちょ、おたえ!?」

「おたえちゃん!?」

 

たえの突然の発言に驚愕する。

 

「だっていちごなんて久しぶりだし、沙綾もりみも食べたいでしょ?」

 

「た、べたい……けど!」

 

「香澄は賛成でしょ?」

 

たえは後ろで有咲に抱きついてる香澄に話しかける。

 

「もちろん!!有咲も賛成だってー!」

 

「ちょ、私は何も言ってないだろ!?」

 

有咲の叫びをスルーし、次にましろに聞く。

 

「ましろは?」

 

「え!?わ、私は……その……」

 

「食べたい?」

 

たえがそう聞くと、顔を赤くしながら頷く。

 

「はい、多数決の結果賛成の勝ちで」

 

「えぇ!?おたえちゃん多数決取ってたの!?」

 

「絶対適当だろ!」

 

玄関前で言い合いをしてる光景を見ながら笑っていると、後ろからセイバーが話しかけてくる。

 

「良いのではないでしょうか?」

 

「セイバー」

 

「タイガの手紙にも書いてある通り、分け合うという手立てをとるのはどうですか?」

 

「確かに藤ねぇの手紙には3人で食べろなんて書いてなかったもんな」

 

そう考え込むと、すぐに答えを捕まえ香澄達の方を向く。

 

「じゃあ食べてくか?いちごのミルクレープ」

 

 

 

 

「さて、じゃあ早速作りますか」

 

 

まず初めに卵と牛乳は常温にしておく

次はボウルに生クリームと練乳を入れ、9分立てにする

いちごは約3~5mm厚に切る

続いて生地作り

バターはレンジで温めて溶かす

ボウルに全卵(ぜんらん)を割りほぐして、牛乳とバターを加えて混ぜたら、ホットケーキミックスをふるいに入れ更に混ぜ、こし器または網目の細かいザルなどでこす

時間があれば冷蔵庫で30分~3時間程寝かす

 

 

「続きは30分経ってから焼くとして、その間に晩飯の下準備でもしとくか?いや、それとも他の事をした方がいいのか?うーん……」

 

 

 

キッチンで1人悩む士郎を他所に居間では、セイバーとましろがお互いに頭を下げ、挨拶をしていた。

 

「倉田ましろです!その、よろしくお願いします!」

 

「セイバーです。マシロ、こちらこそよろしくお願いします」

 

セイバーを見た時から、ましろは頬を赤らめながら見惚れていた。その様子を見ていた沙綾達は彼女の肩を軽く叩きながら、頷く。

 

「わかるよ、セイバーさんめっちゃ美人だから見惚れちゃうよね」

 

「は、はい!まるでおとぎ話に出てきた人みたいに綺麗で優しくて……」

 

と、意識がどこかに旅立っていったましろにセイバーが話しかける。

 

「マシロ、1つ聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「……へ?あ、はい!何ですか?」

 

「マシロもバンドをやってると聞きました。それはつまりカスミ達のように仲間と共にやっているんですよね?」

 

「はい!透子ちゃんにななみちゃん、つくしちゃんにるいさんがいます!」

 

そこでましろはハッと気付く。つい名前を挙げていったけどセイバーには誰の事かさっぱり伝わっていない事に。

そこですぐ仲間達の説明に入ろうとしたましろよりもセイバーが先に話し出す。

 

「なるほど、でしたら貴女の友達にもお伝えできないでしょうか?」

 

「え、何をですか?」

 

「シロウと私に、貴女方のバンドを聴かせてもらえないでしょうか?と」

 

「え」

 

「シロウはCiRCLEのバイトをしてまして、私も臨時としてやらせてもらってるので、もし宜しければCiRCLEで聞かせてほしいです」

 

セイバーのお願いに耳を疑う。

 

「……いいんですか?」

 

「私もシロウも、バンドについて勉強の途中なのでぜひ貴女達のバンドも聴きたいと思ったんです」

 

そう言われ、彼女は嬉しそうに笑いながら

 

「私はみ、みんなに伝えておきます!」

 

「ありがとうございます、マシロ」

 

セイバーも笑みを浮かべて感謝を述べる。

 

「じゃあ私達も聴きに行っていい?」

 

「えぇ!?」

 

会話に香澄達も参加し、居間では騒がしく賑やかだった。

 

 

「……さて、こっちもそろそろ始めますか」

 

あまりにも騒がしかったので、途中から会話を聞いていた士郎だったが、30分以上経ったので料理を再開し始めた。

 

 

フライパンに薄く油をひき弱めの中火にかけ、お玉8分目程の生地を中央に流し入れ、手早くフライパンを傾けて生地を円形に広げ、表面がかわきフチが竹串などで持ち上げれるようになったら、ひっくり返す

裏面を5秒ほど焼いたら、バットの上などに取り出し平らに伸ばして冷ます

これを生地が無くなるまで繰り返し、焼き上がった生地は乾燥しないようにラップに包んで冷ます

焼いたクレープ生地を1枚置き、生クリームを全面に均等に繰り広げる

これを生地、生クリーム、生地、生クリーム、生地、生クリームと苺、と3枚毎に苺を挟みながら重ねて作っていく

ラップをかけて冷蔵庫で1時間以上冷やして……完成!

 

 

─────1時間後

 

「よし、出来たぞー」

 

『おぉ〜!』

 

完成品を居間の机に置き、人数分に切り分ける。

 

「お待ちどーさま」

 

「うわぁ!美味しそう!!」

 

「これが士郎さんの言ってた……」

 

「そう、イチゴのミルクレープ。セイバーが食べたいって言ってたからな」

 

セイバーは記事を取り出し、全員に見せる。

 

「こちらのページを見て、食べたいと思ってしまい……」

 

「あぁ……確かにこの写真を見せられたら、食べたくなるよね」

 

「そしてその写真のやつが今目の前にある、と」

 

「早くみんなで食べよ!!」

 

全員にいき渡り、手を合わせる。

 

『いただきます!』

 

フォークで各々の1口サイズを切り取り、口に運ぶ。

 

『美味しい!』

 

「いちごの酸味が効いてるな」

 

「生クリームもさっぱりしてて美味しいです!」

 

みんなすぐに食べ終わり、次へ次へとミルクレープを切り分け取っていく。

ましろも食べ終わり、次へいこうか渋っていると、香澄が皿に乗っける。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ね?士郎さんの料理、美味しいでしょ?」

 

香澄は口にクリームを付けながら質問する。ましろはそれに微笑みながら、答える。

 

「はい、とても美味しいです!」

 

士郎料理の虜が1人増え、笑顔を見せる人も1人増えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、君ら何しに来たの?」

 

『あっ』




この後、彼女達からチョコをもらった士郎だった。












告:タグに“Morfonica”が追加されました
追加は21時に行います




※お知らせがあります
活動報告に書いてあるので、見てください


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Morfonicaと……【前編】

アレレ?ワタシドレクライヤスンダノカナ?


大変ながらお待たせしました!!



「ごめんなさい……巻き込んでしまって……」

 

「気にする事はないさ、俺も気になってはいたから寧ろ誘ってくれて嬉しかったよ」

 

窓際の席に座りながら、手で顔を覆い隠すましろを士郎が慰めていた。

 

土曜の昼過ぎ、士郎はましろと一緒にショッピングモールのカフェに来ていた。

2人のテーブルには2人分のパフェとドリンクが置かれていた。が─────

 

「けど……まさかドリンク1つでストローが2本なのは流石に驚いたな……」

 

「うぅぅ……ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

そう、2人が頼んだ品は“カップル限定パフェセット”だったのだ。

 

元々2人は約束などしておらず、ましろがカフェのサンプル品を眺めていた所をたまたま士郎が声を掛け他愛の話を交わしていると、その場面を店員に見られカップルと勘違いされ店内に案内されたのだ。

 

「うぅぅ……何であの時にカップルです、なんて言っちゃったのぉ……私……」

 

「あはは……ま、まぁ、折角だしパフェ食べようか」

 

「はい……」

 

ましろは顔を赤らめながら、パフェを口を運ぶ。

 

「……美味しい」

 

「あぁ、生クリームがいい感じ味を出してる……これは俺には再現できないな……」

 

士郎はそう感想を口にしながら、ましろの方を見る。先程の赤面してる彼女ではなく、とても美味しいに食べている美少女がいた。

そんな顔を見て、士郎は笑みを零しながらパフェを食べる。

 

ましろは今、幸せだった。先程までの羞恥など何処へ行ったのか……本来は眺めるだけで済まそうとしていた時に、士郎がましろに話し掛けてくれた事により、中にいた店員が2人をカップルと勘違いされた。士郎はすぐに訂正しようとしたが、ましろが珍しく大きく宣言したのだ。

 

「こ、恋人です!!」

 

士郎の腕に捕まり、カップルを思わせる様な雰囲気を頑張って作り出し、カップルとして店内に入る事が出来た。

しかし、ましろは店内に入ってすぐ後悔した。

会って数回の男性─────士郎を自分の目的の為に利用した事に……

だが士郎は、別に気にしてない、とましろを慰めたのだ。

嫌われても仕方ない……そう思っていたましろだったが、士郎はそんな事を微塵も考えていなかった。

ましろは、士郎の優しさが心地よくそして、恥ずかしくなり士郎の顔をまともに見れなくなっていた。

だが、彼女は今日という日を忘れないだろう……

 

それはいい意味でも、悪い意味でも─────

 

「美味しい……」

 

それは突然起きた。

ましろがクリームを口に運ぼうとしたその時─────

 

「あー………?」

 

たまたま店内の窓を見ると、そこには

 

「「「「……」」」」

 

「……」

 

見覚えのある顔が4人いた。

 

「…………─────ッ!?」

 

ましろは声に出ない悲鳴を上げた。

そこにいたのは、同じバンドメンバーの桐ヶ谷透子、広町七深、二葉つくし、八潮瑠唯だった。4人それぞれ違う表情を浮かべながら、ましろの事を見ていた。

 

「なんッ!?どうし……!?えっ!?」

 

「ど、どうした?ましろ?」

 

そこで士郎はようやく気付いた。

自分達の席の窓の外からこちらを見てくる彼女達を。

 

「うおっ!?……えっと、友達か?」

 

「は、はい……友達、です」

 

ましろは再び手で顔を覆い隠しながら、答える。彼女の耳は真っ赤に染まっていた。

 

「えっと、会計しとくから会いに行けば?」

 

「そ、そんな!私が勝手に巻き込んだのに、払わせるなんてできません!」

 

「じゃあ、また今度何か返してくれたらいいから、な?」

 

「で、でも……」

 

「友達を待たせるのはよくないぞ?」

 

「うぅ、ず、ズルい……」

 

ましろは渋々承諾し、外にいる仲間の元へ向かった。

 

 

店の外へ出て行き、つくし達の所に向かった。

 

「あ〜、しろちゃん来たよ?」

 

「み、みんな!何でいるの!?」

 

「私は普通に買い物をしに来たのだけど」

 

「そこでましろちゃん以外のメンバーとたまたま会っちゃって」

 

「もしかしたらシロもいるんじゃ?って話してたら、ね」

 

「うぅぅ……」

 

ましろは、今日で何度目かの赤面を見せる。

 

「てかシロと一緒にパフェ食ってた人って誰なの!?めっちゃ気になるんだけど!」

 

「私も思った!何かいい雰囲気だったよね?あの人誰なの!?」

 

つくしと透子がましろに詰め寄り、聞き出そうとしている様子を冷めた目で瑠唯は見つめていた。

 

「倉田さんの事情なのに何故あんなに聞きたがるのかしら……」

 

「まー、実際私も気になるしね〜」

 

「貴女もなのね」

 

「るいるいは気にならないの?」

 

「気にならないわね」

 

そんな時に、会計を終わらせた士郎が店から出て来た。その瞬間を見ていた透子は、目を光らせ士郎の元まで走り、手を取った。

 

「え?」

 

そして有無を言わさずましろの元まで連れて行く。

 

「さぁ!洗いざらい話してもらうよ!」

 

「え、えぇ……」

 

士郎は困惑しながらも、状況を理解しようと模索する。

 

「って、士郎さんじゃないですか!」

 

模索していると、そんな声が聞こえ振り返る。

 

「あれ?つくし?」

 

士郎もそうだが、つくしや周りのメンバーも驚いていた。

 

「え?ふーすけ、知り合いなの?」

 

「うん、バイト先の先輩」

 

「二葉さんって確か羽沢珈琲店でアルバイトをしていたわね」

 

「そうだよ!でもまさか士郎さんがましろちゃんと付き合ってただなんて……」

 

「えぇッ!?」

 

つくしの発言にましろは顔を真っ赤にしながら、弁解しようと頑張っているが、頭がパニックを起こしていて中々言葉が出て来なかった。

それを見ていた士郎は、誤解を解く為に代わりに話す。

 

「何か勘違いしてるみたいだけど、俺とましろは別に付き合ってる訳じゃないぞ?」

 

「でもカップル限定のパフェ食べてたよ〜」

 

「あれは、店員さんが俺達をカップルと勘違いしてただけ」

 

士郎は降り掛かる彼女達の質問攻めに答えていく。

 

「私もう帰っていいかしら?」

 

「えぇー!どうして?」

 

「たまたま目的が同じだったから一緒にいただけで、ここで時間を潰すのなら私は先に行かせてもらうわ」

 

瑠唯がましろ達に背を向け歩き出すと、つくしと七深と透子がそれを食い止める。

 

「ちょちょちょ、もうちょっとだけ!ね?」

 

「それにしろちゃんとつーちゃん以外初めましてだから挨拶くらいしよ〜?」

 

「……確かにそうね」

 

何とか留める事に成功し、そして改めて自己紹介を始める。

 

「Morfonicaのギター担当してる桐ヶ谷透子です!」

 

「ベースを担当してまーす、広町七深だよ〜」

 

「バイオリンを担当してます、八潮瑠唯です」

 

自己紹介を聞いていると、バンドでは珍しい楽器の名前が挙げられた。

 

「へぇー、バイオリンを含めたバンドか……ましろから聞いた事あるけど、1度聴いてみたいな」

 

「機会がありましたら」

 

「あぁ、その時はお願いするよ」

 

士郎は笑みを浮かべながら次は自分の自己紹介を始める。

 

「俺は衛宮士郎、つくしと同じ羽沢珈琲店でアルバイトしていて、あとCiRCLEのスタッフとしても働いてるから、もしかしたら会えるかもしれないな」

 

他にも手伝いとして色々な場所で働いているが、アルバイトとして主な2つを挙げた。

 

「CiRCLEのスタッフさんもやってたんだ!じゃあもしかしたらあたし達、何処かで会ってたかもしれないね!」

 

「かもしれないな」

 

透子と笑いあっていると、何かを思い出しハッとした顔をする。

 

「じゃなくて!本当に付き合ってないの?」

 

「つ、付き合ってないよ!し、士郎さんにはもっと素敵な人がいるから……」

 

「え?もし彼女持ち?まさかシロをナンパ……!?」

 

「なんでさ!さっきも言ったけどましろと会ったのはたまたま!あと彼女はいないよ!って恥ずかしい事言わすな!」

 

「自分から言ったよー?」

 

それからなんとか誤解が解け、士郎は説明で疲労困憊状態に陥った。

 

「ハァハァ……まさか誤解を解くためとはいえ、こんなにも疲労するとは……」

 

「アハハ、ごめんなさい。ちょっと士郎さんの反応が面白くて」

 

「だろうな!途中から分かってたよ!」

 

疲労してる士郎を心配そうに駆け寄るましろとつくし、そしてそれを眺めながら呆れてる瑠唯。

 

「人を虐めて何が楽しいのかしら……」

 

「ちょ、虐めてないよ!変な事言わないでよ!」

 

「虐めてるのと大差変わらないわ」

 

そして透子と瑠唯が口喧嘩を始め出した。

 

「ふ、2人とも落ち着いて!」

 

「また喧嘩しちゃった……」

 

「止めなくていいのか?」

 

「しろちゃんが止めに行ったから大丈夫だよ〜」

 

七深が言う通り、ましろが2人の仲裁に入っていき、無事止める事が出来た。

 

「あ、そうだ!」

 

つくしが何か思い付き、ましろ達に提案する。

 

「これからみんなでスイーツ食べに行こう!そうすればみんな平等になるでしょ?」

 

「でもここら辺でスイーツ出してる店なんてあった?」

 

「え?んー、ましろちゃんが行ってた店のパフェは……」

 

「あの店は基本珈琲一色でパフェはカップル限定だから行っても珈琲しか頼めないと思うぞ?」

 

士郎の一言によってつくしの提案は叶わぬものとなってしまった。そう、士郎達がいるショッピングモールは飲食店はあるが奇跡的にもスイーツ系の店が一切なかったのだ。

 

「じゃ、じゃあ今からスイーツ店の方まで向かうのは……」

 

「その場合は、私は遠慮させてもらうわ。今日は買い物をしに来ただけだから」

 

「んー、私も今日は流石に無理かな〜?」

 

「アハハ、実はあたしも……」

 

「そ、そんな……」

 

つくしは膝から崩れ落ちそうになるが、なんとか留まる。

 

「士郎さんは今日何か予定あるんですか?」

 

「ん?俺は今日はバイトだな。明日はカフェのバイトだけど」

 

ましろと士郎の会話が耳に入り、再び皆に提案する。

 

「あ、明日!明日ならどう?」

 

「明日なら予定はないかな?」

 

「特に考えてはいないわ」

 

「ノープラン〜」

 

それを聞くとつくしは顔を明るく笑顔を見せ、予定を組み始める。

 

「じゃあ明日昼過ぎに集合ね!集合場所は……どうしよっか?」

 

「行く場所も決めといた方がいいよね」

 

「うーん、それじゃあ……」

 

つくしはパッと後ろにいる士郎が目に写った。

 

「……羽沢珈琲店でいいかな?」

 

「え?」

 

まさかの提案にメンバーじゃなく士郎が反応した。

 

「おー!賛成!」

 

「広町的には士郎さんの作る料理が食べたいかな〜」

 

「いや、なんで俺の料理なんだ?」

 

「だって前にしろちゃんが士郎さんの料理をべた褒めしてたから〜、やっぱり気になるじゃん?」

 

士郎は横にいるましろを見ると、真っ赤にした顔を隠しながら

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

と謝っていた。

 

「はぁ、わかった。おやっさんには俺から言っとくよ」

 

「やったー!」

 

「私は一言も行くなんて言ってないわよ」

 

「どうせ暇なんでしょ?なら行こ?」

 

「はぁ……確かに個人的にも衛宮さんの料理は気になってはいたから」

 

「最初っからそういえばいいのに」

 

「……やっぱり行くのやめるわ」

 

そこから再び2人の口喧嘩が始まり他の3人が仲裁に入っていく光景があった。




今回は前編後編に分けての投稿です!
次回は飯テロありで投稿します!

この度は私事の事情で大分投稿が遅れた事をお詫び申し上げます。
こんな事は今回限りだと願いながらも、いつもの通常投稿をしていきたいと思います!

(投稿が空いたから文字ミスが多いかも……)


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Morfonicaとチョコバナナケーキ【後編】

オラに文章力を分けてくれぇぇぇぇ!!






「士郎くん、つぐみをよろしく頼むよ」

 

「唐突に何言い出してるんですか」

 

士郎はつぐみの父と厨房で注文された料理を手分けして作っていると、何の前触れもなくそんな事を言い出すつぐみ父に慣れたようなツッコミを入れる。

「いや、最近君の周りに可愛い子がたくさんいるみたいだからね、親として娘の将来を考えて先手を打っておかないといけない、と思ってね」

 

「娘の将来を案じるなら何もせず見守る方がいいと思いますよ。あと、後ろで顔真っ赤になってるその自慢の娘さんはどうするつもりですか?」

 

士郎は後ろにいる確実に怒っているつぐみに冷や汗をかきながら、つぐみ父に問いかける。

 

「士郎くん……あれは娘の愛情なんd」

「馬鹿ァァァ!!」

 

つぐみ父の後頭部に注文表が飛んでくる。そして投げた本人は息を荒くしながら、厨房から出て行った。

 

「……だ、大丈夫ですか?」

 

「フッ、なにつぐみから愛情をくれただけさ」

 

この時、士郎は思った。

あ、この人もうダメだ、と。

 

「ところで話は変わるが、今日言っていた子達はいつ頃くるのかね?」

 

「確か昼過ぎだったと思います」

 

「ふむ、スイーツを作るって言ってたね。材料は足りるかね?」

 

「ここに来るまでに自分なりに材料は買ってきました。流石に注文にない物を使う訳にはいかないので実費で買ったんですけど、器具とかは出来れば貸してほしいと思ってまして」

 

つぐみ父は士郎の背中を叩きながら、豪快に笑う。

 

「気にせず使いなさい。それに君が作る料理に興味がある。もしかしたらそれが新しい品になるかもしれんからね」

 

「いやいや、流石にそれは期待し過ぎですよ」

 

「私は本気なんだけどね……つぐみにも聞いてみるといいよ。それにイヴくんにも」

 

そう言って士郎をホールの方へと送り出していった。

 

ホールに出ると、つぐみとイヴが何か談話していた。

 

「はぁ、まったくお父さんって何で余計な事してくるんだろう……」

 

「それは愛情だと思います!」

 

「イヴちゃんも同じ事言うんだ……」

 

つぐみがため息を吐いていると、後ろから士郎が声を掛ける。

 

「まぁおやっさんも心配だから気にかけてくれたんだろう。そこはちゃんと分かってやってほしい」

 

士郎は、頬掻きながら付け加える。

 

「まぁでも、流石にあれはやり過ぎな気がするけどな」

 

士郎が苦笑いを浮かべて笑うと、つぐみは何か諦めたかのように落胆した顔をしていた。

そんな時、店の扉が開き新たな客が来店して来た。

 

「あ、いらっしゃいませ!」

 

「ヘイ!らっしゃい!!」

 

「イヴちゃん、ここ喫茶店!」

 

そんなやり取りをしている中、士郎は来店して来た5人組の客に挨拶を交わす。

 

「いらっしゃい、待ってたよ」

 

「こ、こんにちは!」

 

5人組の客はましろ、透子、七深、つくし、瑠唯の5人だった。

 

「いらっしゃい!つくしちゃん!」

 

「いらっしゃいです!」

 

「つ、つぐみ先輩!イヴ先輩!こ、こんにちわ!」

 

つくしがカチコチになりながら挨拶を交わす。

 

「それじゃあ席に案内するよ」

 

ましろ達を席まで案内し、注文する品を聞き取る。

 

「それでご注文は?って聞くまでもないか」

 

「もちろん!昨日言った士郎さんが作るスイーツで!」

 

「楽しみだね〜」

 

「それとアイスコーヒーをお願いします」

 

「はいよ、じゃあしばらくお待ちください」

 

士郎はそう言って厨房の方へ歩いて行った。

厨房に向かうと、つぐみ父が調理器具を洗って待っていた。

 

「用意はできてるよ。それじゃあお客さんの期待に添えるよう頑張りな」

 

「ありがとうございます!……さて」

 

まずは下準備

卵は常温に戻しておき、バターはレンジで温めて溶かしておく

加熱し過ぎると爆発するので10秒ずつ加熱

フリーザーバッグを用意し、オーブンを180℃に予熱しておく

バナナは皮を剥きスジを取り除き、飾り用に使う1/2本は約5mm幅の輪切りにする

板チョコを袋のまま叩き、好みの大きさに砕く

フリーザーバッグに輪切りしていないバナナ、卵、上白糖(じょうはくとう)、バターを入れ、潰すように揉み混ぜる

さらにホットケーキミックス、ココアパウダーを加えて粉っぽさがなくなるまで揉み混ぜたら、砕いた板チョコを加えて軽く混ぜる

 

 

「袋に入れて混ぜたら、袋の端をカットして、これで絞って入れられる」

 

「と、その前にクッキングシートを敷いて……」

 

型に生地を流し入れ、生地を全て入れたら型ごと20cm程の高さから2~3回落として表面をならす

飾り用のバナナを上に並べ、180℃に予熱したオーブンに入れて40~45分焼く

途中10~15分程焼いたところで、ナイフで生地の中央に切れ目を入れ再度焼く

竹串を刺して生地が付いてこなければ完成!

生焼けの場合は5~10分再加熱する

粗熱が取れたら型から外して……

 

 

「よし……!完成!」

 

士郎が出来前を見ていると、後ろから覗き込んでくる人がいた。

 

「ほう、チョコバナナケーキかい?」

 

「あ、はい。この前知り合いにすすめられて作ってみたいとは思ってたんです」

 

つぐみ父が匂いを嗅ぎ、そして笑みを浮かべる。

 

「美味しそうな匂いをしている。早速彼女達にお出しするといいよ」

 

「はい!」

 

士郎は出来た品をましろ達の元まで持って行った。、

 

「う〜ん、美味しそうな匂い!」

 

「えー、お待たせしました。チョコバナナケーキです」

 

そしてどーぞ、と言いながら机の真ん中に置く。

 

「わぁ、美味しそう……!」

 

「んん〜、いい香りが漂ってる〜♪」

 

「じゃあ早速頂いちゃおう〜」

 

「えぇ、そうしましょう」

 

「それじゃあ手を合わせて……」

 

『いただきます!』

 

5人にいき渡るように切り分けられたケーキをそれぞれの大きさの1口を口に運んでいく。

 

「う〜美味しい!!」

 

「ほんのり温かくて、ふわふわだ……」

 

「バナナの甘みも効いて美味しいよ〜」

 

美味しそうに食べているましろ達を見て士郎は頬を少し赤らめながら、補足を足す。

 

「一晩置くとしっとりして味が馴染んでくるらしい」

 

「そっちの味も気になる!!」

 

「し、士郎さん!これ私にも作れますか?」

 

「あぁ、特に難しい事はやってないからな。もしよかったらレシピ書いて渡そうか?」

 

「本当ですか!?」

 

ましろは驚きのあまり席から立ち上がり、そしてすぐに我に返り頭から湯気を出しながら大人しく座り直す。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「気にする事はないさ、それでお嬢様方は満足ですかね?」

 

士郎は改めてましろ達に問いかけた。

 

「満足!」

 

「とても美味しかったです」

 

「広町的にも大満足かな〜」

 

「私も満足です!」

 

士郎は最後にましろを見る。ましろは笑みを浮かべながら、応える。

 

「とても……美味しかったです!」

 

「そっか……なら良かったよ」

 

こうしてMorfonicaと士郎の初絡みは大成功に終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シショウの料理は天下一品です!」

 

「流石、この店を継ぐ未来の店長だ」

 

「イヴちゃんとお父さんは、何でドヤ顔なの?」




誰がァァァ!!
読解力と文章力をくれぇぇぇぇ!!



(あと余談ですけど、七深と透子の口調が分からなすぎておかしくなってるかもしれないけど、許してください。ついでにどんな口調か教えてくれたら嬉しいです)


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テスト勉強とさっぱりスムージー

今回は短いです





「うぅぅ……」

 

「……」

 

「えっと……これはどんな状況なんだ?」

 

美竹家のリビングで机に突っ伏して呻き声をあげるひまりとその隣で同じく突っ伏してる蘭がいた。

その状況を見守る様に苦笑いしているつぐみと巴、そして面白そうにその光景を眺めるモカ。

 

「実は今日、テスト勉強の為に集まったんですが……」

 

「思った以上に蘭とひまりの精神面的にダメージが大き過ぎたみたいなんですよ……」

 

「それで2人共休憩中らしいよ〜、3ページしか進んでないけど」

 

「「うぐっ」」

 

モカの一言にダメージを受けた2人が呻き声を上げる。状況を理解出来た士郎はつぐみ達と同じ様に苦笑いを浮かべる他なく、2人に声を掛ける。

 

「えっと、だ、大丈夫か?」

 

「……大丈夫じゃないですよ〜……」

 

「……もう見たくない」

 

どうやら相当堪えてる様で、顔が見えなくとも2人の苦痛な表情が目に浮かぶ。

 

「俺も手伝ってあげたいんだけど……」

 

彼女達が今勉強しているは、英語。

 

「正直英語はあんまり得意じゃないから、戦力になれないんだよな……」

 

「そういえばセイバーさんは?」

 

「セイバーなら、散歩に出かけてるよ」

 

先程士郎とセイバーは買い物に出かけ、帰る途中セイバーから、少し散歩してから帰ります、と別れて帰って来たのだ。

 

「ねー、いつまで寝てるの〜?」

 

「うぅぅ……ずっとこうしていたい……」

 

「今日こそはって意気込んでたのは誰だっけー」

 

「うぐっ」

 

モカにダメージを与え続けられているひまりに、つぐみが慰めに入る。

 

「だ、大丈夫だよ!もうちょっと休憩したら始めよ?」

 

「うぅぅ、つぐみー!」

 

ひまりとつぐみが抱き合っていると、蘭がようやく体を起こし、ため息をつく。

 

「何かいるか?」

 

「……飲み物ください」

 

「了解」

 

士郎はそれだけ聞くと、キッチンの方へ向かって行った。

 

「何作るんですか?」

 

「ちょっと作ってみたいものがあってな」

 

そう言って士郎はミキサーを取り出した。

 

「ミキサー?」

 

「あぁ、ちょっと前に有咲のところで見つけて貰った物なんだ」

 

ミキサーを机に置き、笑みを浮かべる。

 

「そんなに時間は掛からないさ。まぁ、何が出来るかは楽しみしてくれ」

 

「おぉ〜、楽しみだね〜」

 

「さて……」

 

 

ミキサーの容器に冷凍ミックスベリー、ヨーグルト、牛乳、はちみつか砂糖を入れる

入れた後は、なめらかになるまでミキサーにかける

出来上がったらコップに入れたらミントを飾って……

 

 

「出来たぞー」

 

『おぉー』

 

机に出来上がった物を置いていく。

 

「ジュース?」

 

「ベリーのスムージーだな。冷凍ベリーとヨーグルトをミキサーで混ざたんだ」

 

士郎の説明を聞き終え、5人はスムージーを口にする。

 

「美味しい!」

 

「あぁ、さっぱりしてて美味しい!」

 

「なんか元気出てきたー!」

 

「じゃあ勉強も頑張ろ〜」

 

「うっ、なんか途端に元気なくなってきた……」

 

ひまりの手のひら返しの早さに全員が笑う。

 

「で、元気は出たか?」

 

「……はい」

 

「それは良かった」

 

蘭の笑ってる顔を見て、士郎も笑みを浮かべる。

その後、テスト勉強に士郎も加わり一緒に勉強したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかしたのですか?ランサー」

 

「いやなに、まさかセイバーが1人で買い物来るとはな」

 

「ここに来るよう呼んだのは貴方ですよ」

 

「まぁな」

 

ランサーは接客をしながら、セイバーと話し合う。

 

「で、何の用ですか?」

 

セイバーの問いにランサーは間を空け、そして答える。

 

「さっきそこでアンタ似のやつが歩いていてな」

 

「私似の?珍しいですが、何も私に言うことではないはずでは?」

 

「本来ならそうなんだが、そのアンタ似の奴が()()()()()()だったらどうする?」

 

「なっ!?」

 

ランサーの言葉に、驚きを隠せないセイバー。

 

「もしかしたらこの街に─────

 

 

 

─────何かとんでもないもんが起きるかもしれねぇ

 

 

 

 



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お弁当の定番 玉子焼き

「うー、やっと今日でテストが終わるー!」

 

「あと午後のテストをやり終えたらな」

 

彼女達は、羽丘女子学園の屋上に集まり、昼休憩をしていた。

 

「蘭はテストどうだった?」

 

「……やれるだけの事はやった」

 

「そっか、なら心配なさそうだな」

 

巴の問いに蘭はそう答えると、巴は笑みを浮かべる。

 

「そんなことより早く食べようよ〜、モカちゃんお腹空いたー」

 

モカはお腹を押さえながら、昼食を急かす。

 

「はいはい、じゃあ食べよっか!」

 

各個人、自分の弁当を取り出し手を合わせる。

 

『いただきます』

 

弁当の蓋を空け、中身を確認する。

 

「あ……」

 

蘭がそう言葉を漏らす。その声を聞き、4人が蘭の弁当の中身を見る。

 

「どうしたの?」

 

「え、いや、玉子焼きが入ってる、て思って」

 

まさかの答えに驚き、そして彼女の弁当はいつも中身が違う事を思い出した。

 

「何か玉子焼きに思い出とかあるの?」

 

「特にないけど……士郎さんが作る玉子焼きはとても美味しいから」

 

 

 

 

朝起き、リビングに向かうと士郎がキッチンで自分のと蘭の弁当を作っている最中だった。

 

「おぉ、おはよう蘭」

 

「……おはようございます」

 

 

蘭の存在に気が付き、挨拶を交わす。

 

「テーブルの上に朝ごはん置いてるから、先に食べておいてくれ」

 

「はい」

 

士郎の言う通りテーブルには朝ごはんが置かれており、それを食べながら士郎の方を見る。

 

「これとこれは出来たから、あとは……」

 

 

卵を割り、泡立てずに白身を切るように溶いて、塩、醤油、みりん、水、お好みで砂糖を加え入れ、これを混ぜて《卵液》を作る

玉子焼き器を中火にかけ、サラダ油をひく

卵液の1/4量を玉子焼き器の全体に広がるように入れ、ある程度火が通ったら手前に寄せ固め芯を作る

芯を再び奥に持っていき、空いた部分に油を吸ったペーパーで軽く油をひいたら、卵液1/4量を入れる

焼いた芯の下にも箸を入れて卵液を流し込んで、7~8割くらいの半熟具合に焼けたら、折りたたむように巻く

これは卵液が無くなるまで繰り返す

最後は玉子焼き器の手前の角を利用して形を整えつつ、焼き目をつけて完成!

弁当に入れる時はすぐ切らず、余熱で完全に火を通し粗熱が取れてから切る

 

 

「完成、と」

 

「ご馳走様でした」

 

弁当が完成したのと同時に蘭が朝ごはんを食べ終え、食器を渡しにきた。

 

「ありがとう、それとこれが今日の弁当だ。テスト最終日、頑張れよ!」

 

「はい、士郎さんもテスト勉強頑張ってください」

 

「おう!」

 

蘭がそう言い、弁当を鞄に入れようとした時、ある違和感に気付く。

 

「そういえばセイバーさんは?」

 

「セイバーならさっき出て行ったぞ。なんか探し物があるらしい……なんだろうな?」

 

 

 

 

今朝の士郎との会話を思い出し、少し微笑む。

 

「へー、てかやっぱり蘭の弁当作ってたの士郎さんだったな」

 

「蘭〜、その玉子焼きを一口恵んでくだされ〜」

 

「別にいいけど」

 

蘭はそう言って玉子焼きを半分に切り分け、分けた半分をモカの弁当の中に入れる。

 

「ありがと〜」

 

「ずるい!私も一口欲しい!」

 

「いいよ」

 

半分になった玉子焼きをひまりにあげると、嬉しそうに目を爛々と輝かせていた。

 

「巴とつぐみは?」

 

「アタシは別にいいよ。また今度士郎さんに直接お願いするから」

 

「私も大丈夫だよ。それに蘭が1番楽しみにしてたんでしょ?」

 

2人にそう答えられ、蘭はようやく自分の弁当に手を付け始めた。

 

「……」

 

玉子焼きを口に入れ、頬を少し赤らめながら美味しいそうに食べる蘭だった。

 

「そういえば、最近セイバーさんって何かバイトでもしてるの?」

 

何か思い出したかのようにひまりは蘭に質問する。

 

「どうして?」

 

「この前、薫先輩から聞いたんだけど、なんか接客してるセイバーさんを見たんだって」

 

「アタシもあこから聞いた事あった!でも確かあこが言うにはセイバーさんの妹さん?がいる、て言ってたな」

 

「セイバーさんに妹さんなんていたの?」

 

「聞いた事ない」

 

その話はモカもつぐみも持っていた。

モカの話では、やまぶきベーカリーでパンを買って行ったらしい。更に沙綾が言うにはセイバーさんだったけどセイバーさんじゃなかったと混乱していたらしい。

つぐみの話では、自分の店にきたらしいが、あまりにも別人感があり話をかけに行けなかったらしい。

 

「一体どういう事なんだ?」

 

「セイバー似の人がいたって言っても声色(こわいろ)も同じなんて事はないと思う……」

 

「そういえば今日セイバーさん、何か探し物しに朝早くから出掛けたって士郎さんが言ってた」

 

「探し物?なんの?」

 

それは分からなかった蘭はその問いに首を振り、分からないと答えた。

 

 

 

 

 

セイバー似の話は、彼女達だけでなく、他のガルパメンバー達の間でも話題になっていた。



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小さき彼女とほっくりコロッケ

「えーっと、じゃがいもと玉ねぎ、それとキャベツ……あとは……」

 

士郎はショッピングホールで今日の献立の買い出しに出ていた。カゴの中にはある程度の食材が入っており、そろそろ会計に向かおうとしていた。

 

「ん?」

 

会計を済まそうとレジに並んでいた時、チラッと見た窓にセイバーらしき人影が目に入った。

 

「セイバー?」

 

最近何かと外出が多くなっていた彼女だったが、今日は家にいると聞いていた士郎は、錯覚か?と思いながらも少し気になり、会計を済ませた後、彼女が歩いて行った道のりを辿って行った。

 

「んー……やっぱり見失ったか?」

 

会計が早く済んだからといって士郎がセイバーの姿を見て、その後店から出た士郎との時間はそこそこ時間が空いていた。

流石にここから見つけ出すのは至難の業などで諦めて帰ろうと引き返そうとした時─────

 

「シロウ?」

 

後ろからセイバーの声が聞こえた。その声に振り返り─────

 

「おぉ、セイ……バー?」

 

そして疑問をもってしまった。

疑問を持つのも無理はなく、何故なら彼女の姿がいつもよりも……

 

「どうかしましたか?」

 

 

小柄になっていたからだ。

 

 

「セイバー……だよな?」

 

「?はい、セイバーですけど……?」

 

「えぇ……」

 

士郎の頭の中がこんがらがっていた。いつもの凛々しい彼女ではなく、どこか幼げがありそして小柄な身長をしているのにも関わらず、顔や髪型、口調までも士郎の知るセイバーと瓜二つなのだ。

 

「それよりシロウ!何処に行ってたのですか!探しましたよ!」

 

「え?いや、今日買い物に行くって伝えて……」

 

何故か話が噛み合っていないかったので、戸惑いながらもどう答えるか迷っていると、セイバーが士郎の手にある買い物袋に目が映る。

 

「今日の献立はなんですか?」

 

「ん?あぁ、今日はひき肉が安かったからな。コロッケにしようかと思うんだ」

 

「それはとてもいい案ですね!私も手伝います!」

 

「え?」

 

「そうと決まれば早く帰りましょう!」

 

彼女に背中を押され店を出て行った。

 

 

 

家に帰ると、士郎が知るセイバーの姿をいなかった。つまり、何か魔術的なものを受けて小さくなったのかな、と思い、彼女に話を振ろうとした時

 

「さぁ!始めましょう!」

 

エプロン姿をして、やる気いっぱいの彼女を見て士郎は笑みを零し、話は別に後で聞くことにした。

 

「じゃあ悪いけど手伝ってもらっていいか?」

 

「はい!勿論です!」

 

「じゃあまず……」

 

 

じゃがいもの芽をとったら皮目に1~2mmくらいの切り込みを1週入れて、蒸し器で加熱する

沸騰するまで強火で加熱したら弱火にして20~30分

 

 

「じゃがいも蒸している間に中に入れる具の準備をしよう」

 

「はい!」

 

 

まずは定番、ひき肉

油をひいたフライパンに玉ねぎを入れて塩コショウ少々

中火で少し色が付くまで炒めたら、豚ひき肉を入れて火が通るまで炒める

次にツナキャベツ

キャベツは荒みじん切りに

フライパンにツナ缶の油と汁を入れて刻んだ玉ねぎに塩コショウを少々

中火で少し色がつくまで炒めて

キャベツとツナを加えて強火で1分くらい炒めて、余分な水分を飛ばす

 

最後は鮭コーン

鮭を焼いて骨と皮を取り除いたら身をほぐす

コーン缶は汁気を切っておいて、フライパンにバターを溶かし、みじん切りにした玉ねぎを入れて塩コショウを少々、中火で少し色が付くまで炒めたら、ほぐした鮭とコーンを加えて軽く炒め、醤油を鍋肌にそって少し回し入れる

 

 

「さてと、じゃがいもは……うん、串が通るようになった」

 

串でじゃがいもを刺し、出来具合を確認する。

 

「冷たい水に10秒くらい浸して……水から上げて皮をむくんだけど」

 

セイバーにじゃがいもを渡し、切れ込みを入れた線の左右を持ち引っ張る。

 

「うわぁ……こんなに綺麗に剥けるんですね!」

 

 

剥いたじゃがいもは大きめのサイコロ状に切って、熱いうちにさっき用意しといた具材とじゃがいもを混ぜて、塩コショウして味を整える

バットに広げて冷蔵庫で冷ましておく

冷めてきたら、3種類をそれぞれ8等分にして小判型に形を整えて、卵、薄力粉、水を混ぜ合わせた液、パン粉の順で衣をつける

油の温度は170~180℃くらい、綺麗なきつね色になるまで揚げる

最後にこれを皿に盛り付けて……

 

 

「定番のひき肉とツナキャベツに鮭コーン、3種のコロッケ完成!」

 

「うわぁ!美味しそです!」

 

「じゃあ早速頂きますか」

 

2人は手を合わせ─────

 

『いただきます!』

 

サクッとコロッケを1口サイズに切り、口を運ぶ。

 

「美味しいです!」

「コーンのプチプチしたのがいいよな、鮭も合う」

 

「じゃがいもがごろっとしていてこの食感が……」

 

ほんとに美味しそうに食べる彼女が顔がセイバーと同じだったので、作る前に聞こうとしたことを今聞くことにした。

 

「なぁ、ちょっと聞きいたことが─────」

 

そう言いかけた時、スマホから通知音がなり内容を確認する。送ってきた相手は蘭だった。そして、衝撃なメッセージが届いていた。

 

『今からセイバーさんと家に帰ります。モカ達が家に来ます』

 

“今からセイバーさんと家に帰ります”この一文を見て、すぐ今ここにいるセイバーに目を向ける。するとセイバーは何かを悟ったかのように笑みを浮かべていた。

 

「アンタは一体……」

 

そして家のチャイムがなり、玄関が開く音がした。それと一緒に少女達の声も聞こえた。

 

「士郎さんただいま」

 

「お邪魔しまーす!」

 

そして何も知らずに入ってきた5人は居間の光景に驚愕する。

 

「え、セイバー……さん?」

 

「はい、私を呼びましたか?」

 

そして彼女達の後ろからセイバーが顔を出す。そして自分と瓜二つの顔を持った彼女に目を向ける。

 

「貴女は……」

 

「え!?セイバーさんが2人!?」

 

「もしかしてドッペルゲンガー?」

 

「ちょ、怖いこと言わないでよ……」

 

蘭達が取り乱す中、セイバーと小柄のセイバーはお互い見合い、そしてようやくセイバーは士郎に告げる。

 

「シロウ、ありがとうございます。私の()に世話をして頂いて」

 

「あ、あぁ……え?妹?」

 

士郎は2人の顔を見比べる。それは蘭達も同じように驚きながらも見比べる。

 

「た、確かに顔はそっくりだけど……」

 

「セイバーさんに妹がいたんですか?」

 

「はい、隠していてすみません」

 

セイバーが頭を下げ謝罪し、そして小柄なセイバーは自己紹介を始める。

 

「初めまして、セイバー・リリィと申します!」

 

それに吊られるように蘭達も自己紹介を始める。その横でセイバーは士郎に部屋の外へ出るように促す。

 

「シロウ、先に言っておきますが彼女は妹ではありません」

 

「うん、まぁそうだろうとは思ったけど……」

 

「そして彼女は私です」

 

「え?ど、どういう事なんだ?」

 

セイバーの説明を聞く限り、リリィはセイバーと分離した存在らしく記憶は引き継いでいるが、体は幼く出来てしまい、口調もどこか上品らしさを持っている。そして1番の違いが彼女ほど大食いではなくなってしまったのだ。

更に何故分離したのか原因がまだ分かっていないみたいだった。

 

 

「じゃあ、えーっとリリィ?はどうするんだ?」

 

「彼女は今、別の場所でお世話になっているそうです」

 

「詳しくは聞いてないんだな?」

 

「えぇ、私も数日前に出会ったばかりだったので」

 

扉の隙間からリリィを見る。彼女は今、蘭達と楽しそうに話をしていた。

 

「まぁ、悪い奴には見えないし、別にいいんじゃないか」

 

「確かにそうですが……」

 

「それに原因が分からない以上、下手に攻撃したらセイバーもダメージを負うかもしれないし」

 

「んぐっ……」

 

士郎はそれに、と付け出し彼女を見る。

 

「俺はあんなセイバーがいてもいいと思う」

 

「……そうですね」

 

セイバーも士郎の意見に賛成し、彼女を見守るように見つめる。が

 

「しかし、私より先にシロウの料理を頂くのは許せません」

 

「え?ちょ、セイバー?」

 

セイバーは居間に帰り、リリィに文句を言いに向かった。

そしてそれを止めようと蘭達が奮闘する。

 

「ははは、これからまた更に騒がしくなりそうだな」

 

士郎は笑いながら、セイバー同士の仲裁に向かっていった。




リリィ参戦ッ!!


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花嫁アイドルと和菓子

もう最近、ネタ切れ感がパない
ネタ探しに出かけねば……







今朝、麻弥からLINEが送られてきた。

 

『今日、事務所に来れますか?』

 

そのメールを確認し、行けることを伝えると士郎は行く前に差し入れを作り、そして事務所へと向かった。

 

 

 

 

「ん?」

 

事務所の中に入ると、スタッフ達全員が慌てて社内を走り回っているのが目に写った。

何かトラブル事があったのかと思いながら、麻弥を探す。すると、士郎の名前を呼びながらこっちの向かってくる人影が見えた。

 

「士郎君!いや〜グッドタイミングだよ!」

 

「こんにちは、監督さん」

 

監督が嬉しそうに士郎の肩を掴み、体を揺さぶる。

 

「本当に君だけが頼りなんだ!力を貸してくれ!」

 

「えっと、どういう事でしょうか?」

 

「話は後だ!来てくれ!」

 

そう言って士郎は監督に連れていかれ、駆け足で関係者以外立ち入り禁止の扉を勢いよく開けて目的地まで向かう。

事情を全く分からない士郎はまだよく状況が理解出来ず、監督に連れられるままに進んで行く。

 

連れられた場所は整備室だった。

 

「実は今日の撮影で1人急病で来れなくなってしまってね。その子は機材系の担当でね。急遽代用として出来る人がいないくて、そんな時に士郎君が来てくれたんだよ!」

 

「……なるほど」

 

「こんな事頼むのは普通ではいけないんだが、君の力を貸してくれないか?」

 

監督は士郎に頭を下げ、懇願してきた。それを見て士郎は若干困り顔を見せながら、頭を上げるよう促す。

 

「分かりました、力になれるか分かりませんが手伝わせてもらいます」

 

「ありがとう!!」

 

もしかして麻弥はこの事でメールしてきたのか?とそう思いながら、任された仕事を始めるのだった。

 

 

 

「終わったぁー!」

 

思った以上に苦戦を強いられ疲労困憊の士郎。

床に寝転がりながら、休憩をとる。

 

「お疲れ様。いや〜本当に助かったよ!」

 

そんな時、監督が整備室に入ってきて水とタオルを渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

「いやいや、礼を言うのはこっちの方だよ。本当に今日はありがとう」

 

差し出された水を飲み、タオルで軽く汗を拭う。

少しリラックスが出来た時に、監督から質問が飛んできた。

 

「そういえば、士郎君は今日どんな用事でここに来たのかな?さっきの差し入れの為かい?」

 

「え?この事で呼ばれたんじゃないんですか?」

 

何か話が食い違っている感じがして、士郎はここに来た経緯の説明を始めた。

 

「なるほど、麻弥ちゃんがね……あ、なるほど、そういう事か」

 

「何がですか?」

 

説明を終え、監督は麻弥が士郎を呼んだ理由について何か心当たりがあるのかポンッと手を叩き納得した。しかし、士郎はまだどういう理由で呼ばれたのか理解が出来ていないので、今度は監督からの説明を望んだ。が─────

 

「まぁ、見た方が早いね」

 

と言い、場所だけ教えてもらい、そこに向かうように言われた。それに従って指定された場所まで向かっていると、聞き覚えのある話し声が聞こえた。

 

《やっぱりジブンには似合わないッスよー!》

《そんな事ないよ!》

《はい!お似合いですよ!》

《そうそう!もっと可愛いとこ見せちゃおう♪》

《その姿で走り回っちゃ駄目よ!》

 

「賑やかだな……」

 

士郎はそう思いながら、扉をノックする。

 

「衛宮士郎です。監督さんに言われてここに来ました」

 

《え!?士郎さん!?》

《どうぞ入って下さい》

《ちょ、千聖さん!?》

 

「えっと、じ、じゃあ失礼します……」

 

本当に入っていいのか悩んだが、一応入室の許可はもらったので部屋の扉を開ける。するとそこには─────

 

「─────!」

 

「し、士郎さん!こ、これは……!」

 

そこにはウエディングドレスを着た美しい女性が5人いた。それは士郎には予想だにしない光景だったので、扉の所で固まった。

 

「あ、士郎さん固まっちゃった」

 

「おーい、士郎さーん!元気ー?」

 

「え、あ、うん。元気……だけども……その格好……」

 

士郎が指差したのは彼女達の姿。白を基調としたドレス、そしてそれを着こなす彼女達に士郎は直視出来ずに目を逸らす。

 

「どうですかシショウ!」

 

「に、似合ってますか?」

 

「あ、あぁ、みんな似合ってるよ。うん」

 

士郎は頬を赤らめながら、チラッとチラ見だけしては目を逸らし続けていると、彩達も恥ずかしくなったのか頬を赤らめ、視線を逸らし始める。

 

「どうだい?うちの花嫁アイドル達は?」

 

すると、監督が部屋に入って来て士郎に向けてそう投げかけた。

 

「監督さん!」

 

彩の声に超えるかのように右手に持つ袋を持ち上げる。

 

「士郎君からの差し入れだよ」

 

そう言って机に置き、中身を取り出した。

 

「これは……」

 

 

 

「差し入れ何にするか……」

 

士郎はキッチンの前で何を作るか悩んでいた。

 

「6月だし、アレ作ってみるか……」

 

 

まず初めに耐熱皿を水に濡らしておく

ボウルに上新粉、砂糖、白玉粉を入れ、白玉粉の粉をつぶしながら混ぜ合わせる

その後、水を少しずつ入れながら、よく混ぜ合わせる

ザルでこして、50ml程取り分ける

耐熱皿に注ぎ入れ、ふんわりラップをかけて、600wの電子レンジで4分程加熱する

取り出して、甘納豆を全体に敷き詰め、取り分けたザルでこした物を全体に回しかける

ふんわりラップをかけて、600wの電子レンジで3分程中に火が通るまで

加熱します

粗熱を取り、三角形に切り分けたら……

 

 

「完成っと」

 

形を崩さないように気をつけながら、保冷バッグに入れ袋に詰め込み事務所へと向かったのだ。

 

 

「えーっと、今回は京都の和菓子、水無月です」

 

『おぉ〜』

 

「ちょうど人数分あるから、みんなで分けて食べてほしい」

 

そう言うと、スタッフの人が皿とフォークを持ってきてくれた。そして全員に行き渡ると─────

 

『いただきます!』

 

各々の1口サイズに切り分け、口に運ぶ。

 

「美味しい!」

 

「うん!なんかるんっ♪ってきちゃった!」

 

「古風を感じます!」

 

「士郎さん、この豆は?」

 

「それは甘納豆だな」

 

士郎は、千聖に甘納豆について説明を始める。

 

「甘納豆も和菓子の1つで、発酵食品の納豆とはまた別物だけど、無理はしなくていいぞ?」

 

「大丈夫ですよ。納豆とは違うことは知ってますし、それに士郎さんが作ってくれた物ですからね」

 

「ははは、そう言って貰えると作ったかいがあったよ」

 

士郎は美味しそうに食べている彼女を見ていると、1つ思い出したことがあった。

 

「そういえば麻弥、俺を呼んだ理由ってなんだったんだ?」

 

「へっ!?い、いや〜、その〜」

 

麻弥が口篭り、そして意を決したのか覚悟を決めた顔を見せた。

 

「ジ、ジブン達のドレス姿を見せたかったから呼んだッス!」

 

「そ、そうなのか」

 

理由を聞いて、士郎はまた頬を赤らめ目を逸らす。

 

「あぁー!また目を逸らした!」

 

「シショウ!しっかり見てください!」

 

「し、士郎さん!どうですか?似合ってますか?」

 

「私も士郎さんからの感想、聞きたいですね」

 

5人の花嫁に詰め寄られ、士郎は─────

 

「な、なんでさぁー!!」

 

士郎は耐えきれず絶叫上げた。

 

「ハッハッハ、士郎君はモテモテだね!」

 

それを傍から見ている監督とスタッフ達は笑っていた。




次回は、最後のバンドグループ回だ!(おそらく)

期待せず待つがいい!


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RASとCorn

日々成長というが、自分の場合成長してない気がする……






★CiRCLE

 

 

「お疲れ様です」

 

昼過ぎに士郎はダンボールを持ちながら、バイト先であるCiRCLEに出向いていた。

すると裏からまりなが現れ、挨拶を交わす。

 

「お〜、士郎くん。おはよー」

 

「お疲れ様です、まりなさん」

 

挨拶も交わしたので、着替える為に士郎も裏に入ろうとした時、まりなに止められる。

 

「あー、ちょっと待ってちょうだい」

 

「なんですか?」

 

「実は今、友希那ちゃん達が来ててね」

 

「はい、それがどうかしたんですか?」

 

まりなは困った顔をしながら、士郎に伝える。

 

「ちょっと今ね……別のバンドグループの子達と揉めてるの……」

 

「え?友希那達が揉め事を?」

 

そんな事をする子達では無いと思っていた士郎にとっては、非常に驚きな事であり、そしてまりながその先に言うセリフを先読みしてしまった。

 

「……まさか」

 

「ちょっと止めて来てもらってもいいかな?」

 

「なんでさ……」

 

想像通りの展開すぎて頭を抱える。しかし、友希那達が何故揉めているのか気になったので、渋々ではあるものの承諾した。

 

「分かりました……制服に着替えた後向かいます」

 

「ごめんね!ありがとう!」

 

士郎はすぐ制服に着替え、まりな教えられた場所へ向かう。すると、そこには友希那達のRoseliaと士郎の知らない子達が6人いた。─────たった1人を除いて。

 

「リリィ?」

 

「あ!シロウ!!」

 

リリィは誰よりも早く士郎の存在に気付き、飼い主を見つけた犬のように跳ねるように士郎の元へ走ってきた。

 

「姉さんから聞いていました!本当にここでアルバイトをしてたんですね!」

 

「あ、あぁ、そうだけど……リリィはなんでここにいるんだ?」

 

「私ですか?私はですね─────」

 

「リリィ?その男は知り合いなの?」

 

リリィが答えようとした時、後ろから猫耳のヘッドホンを付けた少女に声を掛けられる。どうやらいつの間にか注目を浴びていたみたいだった。

 

「あ、ごめんなさい。こちら、私の姉の……なんでしょうか?」

 

「そこで俺に振るのか!?」

 

士郎はどう答えるか悩むが、自己紹介が先だと思いそのついでに今回の騒動の内容を聞き出す事にした。

 

「えっと、ここCiRCLEでアルバイトしてる衛宮士郎です。えっと、揉め事があったと報告を受けて来たんだけど、何があったか教えてくれないか?」

 

士郎の問いにリサが代わりに答えてくれた。

 

「えっと、実はね?本当ならそこまで大きな事にしたくなかったんだけどね……ん〜、なって言ったらいいのかな?」

 

リサもなんとか伝えようとするが、どう伝えていいか分からず困り果てていた。

 

「彼女が練習の邪魔をしに来たのよ」

 

「邪魔とは言いがかりよ!ワタシは、湊友希那!貴女に用があるのよ!」

 

「その用ならもう聞いたわ。もういいかしら?」

 

「No!答えをまだ聞いてないわ!」

 

再び揉め始めた2人を他所に他のメンバーが士郎に挨拶しに来る。

 

「ご迷惑をおかけしてごめんなさい!チュチュも悪気はないんです!」

 

「今回はちょっと熱が篭もり過ぎただけなんだ」

 

「そうなんだ……えっと、君達は……」

 

士郎が聞くと、リリィが答え始めた。

 

「この人達はRAISE A SUILENと言うチュチュさんが作ったバンドグループです。そのメンバーのレイヤさん、ロックさん、マスキングさん、パレオさんです!」

 

リリィが名前を呼び、呼ばれた彼女達は順に自己紹介を始める。

 

「レイヤです。本名は和奏レイ……RAISE A SUILENのボーカルとベースを担当してます。

 

「朝日六花……あ、ロックです!ギターを担当してます!よ、よろしくお願いします!」

 

「佐藤ますき。チュチュからマスキングって呼ばれてる。担当はドラムだ」

 

「RAISE A SUILENのキーボードメイド、パレオと申します!よろしくお願いします!」

 

「ん?キーボードメイド?」

 

聞き覚えのない言葉が出て聞き返す。

 

「はい!キーボードメイドです♪」

 

「そ、そうか……キーボードメイドか……」

 

聞いても答えが返ってきそうになかったので、聞くのは辞めることにした。すると、今度はパレオが士郎の顔を見て、声を上げる。

 

「あぁー!」

 

「ど、どうしたの?パレオ?」

 

唐突に大きな声を上げたので、友希那とチュチュも驚き言い合いをやめた。

 

「あの!もしかしてテレビに出たことありませんか!?」

 

「え?あ、あぁ、1度だけ出たことあったな」

 

「やっぱり!それってアイドルの料理番組でしたよね!」

 

「あぁ、彩達の番組に出さしてもらったな」

 

士郎はそう言いながら、あの時の風景を思い出す。

士郎が思い出に浸っているとパレオが小刻みに震えていた。

 

「はぁ〜、パレオ感激です!」

 

「うぉっ!?」

 

唐突に顔近くまで近寄られ、驚きながら1歩下がる。

 

「まさか有名人である士郎さんに出会えるなんて……!」

 

「有名人、では無いと思うぞ?」

 

士郎が否定していると、リサ達が会話に入ってきた。

 

「士郎さんが知らないだけで結構有名だよ?」

 

「え?」

 

「私もよく耳にしますね」

 

「わ、私も、聞いた事があります……」

 

「あこもあこも!おねーちゃんと買い物してた時に聞いた事あるー!」

 

まさかの本人が知らない間にそんなことになっているとは思ってもみなかったようで、困惑していた。

 

「もしかして花ちゃんが言ってたしろうさんって……」

 

「香澄先輩が言ってた人って……」

 

「この人だったのか」

 

RASのメンバーもどうやら士郎の事を知っていたようだった。

すると、チュチュが士郎に接近する。

 

「貴方がシロウだったのね!」

 

「うぉっ!?」

 

チュチュは士郎をジロジロと観察しながら、

 

「リリィがいうスゴい人とは思えないけど……まぁいいわ!」

 

「ハ、ハハハ……」

 

チュチュは士郎にある頼み事をする。

 

「Mr.シロウ!ワタシに貴方の料理を食べさせなさい!」

 

「えっと、注文って事でいいのか?」

 

「えぇ、貴方が噂通りの料理人なら簡単なことでしょ?」

 

「その噂ってのは気になるけど、まぁ作って来いって言われてるのなら作ってくるけど……何か作ってほしいものでもあるか?」

 

「んー、特にないわね……そこは任せるわ」

 

「了解、他の皆はどうだ?」

 

士郎は他の子達にも注文があるか聞く。すると、見事に全員が食べたいと言い、士郎は急いで厨房に向かう。

 

「あ、それともう揉め事はやめてくれよ?他のお客さん達に迷惑がかかっちまうから」

 

『ごめんなさい』

 

行く前にしっかり注意し、そしてまりなに注文を受けた事を伝え厨房を借りる。

 

「んー、なんでもいいか……」

 

何を作ろうか悩んでいると、丁度今日持ってきたダンボールの中身が目に入った。

 

「あ、そうだ」

 

 

まず初めに米をといでお釜に入れたら、既定の水位まで水を加え、30分程米を吸水させる

とうもろこしは半分の長さに折り、包丁で身をこそぐ

とうもろこしの身と芯を釜に入れ、酒、塩を加えてご飯を炊く

その間に先程こそいでおいたとうもろこしと打ち粉用の薄力粉を加え、表面に粉が満遍なく付くように混ぜる

別のボウルに薄力粉、水、塩を入れ、切るように軽く混ぜたら、薄力粉をまぶしたとうもろこしに加え入れ、すくって落とすようにざっくり混ぜる

170~180度の油にタネを大きめのスプーンひとすくい程の量を入れ揚げていく

1~2分程揚げたら、バットへ縦に置いて、油をきり塩を少々ふる

吹き上がったら芯を取り除き、バターと粗挽き胡椒を加えて混ぜ合わせ、ご飯と天ぷらを皿に盛り付けたら……完成!

 

 

「ん〜、いい匂いがしてきた〜♪」

 

「この匂いって、とうもろこし?」

 

「大正解」

 

レイヤの疑問に答え、そして姿を見せる。

 

「えぇー、本日の料理はとうもろこしご飯と天ぷらです」

 

そして机に並べて置く。

 

「これが貴方の料理ね……」

 

「あぁ、まぁ本当なら昨日の方が食べ頃だったんだけど、それでも甘さは残ってるから美味しいと思う」

 

「じゃあ手を合わせて〜」

 

あこがそう言うと全員が手を合わせ─────

 

『いただきます!』

 

サクッと音が鳴り、そして次々に感想が零れ落ちる。

 

「甘いですね……」

 

「うん!とうもろこしってこんなに甘くなるんだ!」

 

「士郎さん、これあたしにも出来ますか?」

 

「作り方は簡単だし、なんならレシピ書いて渡そうか?」

 

「ありがとうございます!」

 

マスキングと料理の話をしている横で、パレオはチュチュに士郎の料理はどうか聞く。

 

「どうですか?チュチュ様!美味しいですよ!」

 

「……Delicious(美味しい)、えぇ、そうね」

 

するとチュチュは士郎の元に行き、指を指す。

 

「Mr.シロウ!貴方を料理人として雇うわ!」

 

「なんでさ……」

 

士郎は初めてこころに会って飯を作ってあげた時にも言われた事がある事を思い出す。

 

「……流石にそれは聞き捨てならないわね」

 

「えぇ、私も流石に止めさてもらいます」

 

「んー、アタシも止める側かな?」

 

「わ、私も……」

 

「シロにぃはあこが守る!」

 

Roseliaがそれに猛反対をみせ、チュチュに攻める。しかしパレオが士郎に余計な質問をしたせいで更にヒートアップする。

 

「士郎さんは、料理以外に何かされますか?」

 

「料理以外なら基本家事が得意かな?掃除は軽くだけど毎日やってるし、あとはバイトを2つ掛け持ちしてるから基本休みとかは1週間に1回あるかないか位かな。あぁ後、知り合いの爺さんの手伝いに行ったりもするな……あと学校で色々と手伝いとかで遅くまで居ることがあるくらいかな?」

 

「働き過ぎだろ……」

 

あまりの士郎のスケジュールにボソッと本音を漏らすマスキング。

 

「言い換えるわ!やっぱりRAS専属のスタッフとして雇うわ!」

 

「確かに士郎さんの様な人がスタッフにいると安心するかも」

 

「パレオはチュチュ様の案に賛成です!」

 

「それも認めないわ」

 

そしていつの間にかRoseliaとRASの士郎争奪戦へと趣旨が変わってしまった。

 

「なんでさ……」

 

士郎がこの光景を見て、嬉しさと呆れが混じったため息を吐く。

 

「それほどシロウが魅力的なんです」

 

すると、隣にリリィがいた。

 

「私はシロウの魅力にこんなにも気付いてくれていることに、嬉しく思ってます!」

 

「ハハハ、俺も嬉しいけど、ここまでは求めてないかな?」

 

目の前の光景を目の当たりにしながら、応える。

 

「彼女達と一緒は楽しいか?」

 

「はい!とても楽しいです!」

 

「そっか、それは良かったよ」

 

士郎はリリィの本当に楽しそうな顔を見て満足し、彼女達の争いを止めに入った。

 

 

 

 

 

 

ちなみに、チュチュの提案は断りはしたが、困った時は助けに行く、と伝えた。




もうキャラ多すぎてパンクしそうだぜ……

次回は、ハロハピかポピパかな?




告:タグに“RAISE A SUILEN”が追加されました
追加は21時過ぎに行います



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暑い日のとろろ蕎麦

熱中症には気を付けよう!





「あぁぁぁつっっっっぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

「言うな!余計に暑くなるだろ!」

 

香澄の悲痛な叫びを上げ、それに有咲が怒鳴る。

 

猛暑が続くこの頃、香澄達───“Poppin’Party”はその中でバンドの練習をしていた。

 

「でも流石にここは暑すぎるよ……」

 

「まさかクーラーが壊れて扇風機1台しかないのはちょっとね……」

 

そう、彼女達はCiRCLEではなく別の施設を借りて練習しに来ていたのだが、運悪くその施設のクーラーは壊れており各部屋に1台だけ扇風機が完備されてるだけなのだ。

当然、扇風機1台では涼しくなるはずもなく、練習に集中出来ず、暑さにバテていた。

 

「今からCiRCLEに行っても予約いっぱいらしいから無理っぽいよ」

 

「そんなー!」

 

窓から曇りひとつも無い青空が彼女達を照らす。流石にこのままでは本格的に暑さにやられると判断し、とりあえず施設から出ることにした。

 

「これからどうする?」

 

「どうするもなにも、こんな暑さじゃ練習に集中出来る訳ないだろ」

 

「本当に今日は快晴だよね……」

 

4人が歩きながら談話してる中、香澄だけ先頭を歩き何処かへ向かっていた。いつものこと過ぎて気付かなかったが、香澄が一体何処かへ向かっているのか知らない有咲達は香澄に問いかける。

 

「香澄ちゃん?何処に向かってるの?」

 

「え?士郎さんの家だけど?」

 

「いや、なに当たり前でしょ?みたいな顔してんだよ!」

 

「流石にいきなり士郎さんの家に行っても迷惑なだけだと思うよ?」

 

沙綾の質問に答えるかのようにスマホを見せる。そこには士郎とのやり取りが書かれていた。

 

『士郎さん!今日暇ですか?』

『今買い物の途中だけど、それが終われば暇かな?』

『今日のお昼、士郎さんの家で食べてもいいですか?』

『別にいいぞ、ちなみに何か食べたいとかあるか?』

『特にないです!』

『なら、先に家に行っておいてくれ。セイバーが留守番してくれているはずだから』

『わかりました!』

 

ね?という顔を見せる香澄に有咲は蹴りを食らわす。

 

「ちゃっかりお昼もお願いしてるね」

 

「アハハ……、まぁ確かに士郎さんの家ならここから近いね」

 

「そうだね」

 

「はぁ……士郎さんも士郎さんだよ。なんで当たり前のように許可出してんだよ……」

 

若干呆れてる人もいるが、全員が士郎の家に行くことを否定せず満場一致で向かう事になった。

 

 

 

★美竹家

 

「暑い中、よく来ました。シロウから話は聞いています。どうぞ」

 

家に着くと、セイバーが出迎え彼女達をいつもの居間へと案内する。

 

『お邪魔します!』

 

居間に着くと、外とは打って変わって涼しい風が出迎える。

 

「涼しい〜」

 

「やっぱり扇風機とクーラー効いてるのと違いが出るね」

 

「そりゃ香澄とおたえは扇風機占領してたからな!」

 

「まぁまぁ、落ち着いて、ね?」

 

それからして玄関が開く音が聞こえ、足音が段々居間へと近付いて来た。

 

「お、もう来てたのか。いらっしゃい」

 

その足音の正体は、士郎だった。

 

「お邪魔してまーす」

 

「お腹空いてるだろ?今から作るから待っててくれ」

 

「やったー!」

 

「ちょま!?引っ付いてくるな!」

 

香澄と有咲のじゃれ合いを笑いながら暖かく見守っていると、セイバーが近付いてきた。

 

「おかえりなさい、シロウ」

 

「あぁ、ただいま。今から作るから机拭いといてくれるか?」

 

「お任せください」

 

士郎はセイバーに任せ、キッチンに立ち、早速料理を始める。

 

「今日は暑いからな、そんな日にはこれがいいな」

 

 

まず初めにたまごを割り、白身と黄身に分けて、黄身だけを醤油と塩昆布に30分漬け込む。

その間に他の食材を作る。

長芋をすりおろしとろろにする。

青ネギは小口切り、みょうがは千切りにする。

オクラをさっと塩茹でしてから2mm幅で切る。

切り終えたオクラとみょうがはボウルに入れ和えておく。

蕎麦を茹で流水で熱をとったら、蕎麦の上にとろろ、ボウルに入れたオクラとみょうがを添える。

その上に醤油に漬け込んだ黄身を崩してかける。

最後に青ネギをトッピングし、麺つゆをかけごま油をひと回して……完成!

 

 

「お!出来ましたか!?」

 

「えー、今回はとろろ蕎麦です」

 

そして机に並べていく。

 

「お待ちどーさま」

 

「あれ?有咲のとこだけネギないの?」

 

たえの指摘に士郎は余りのネギを持ってくる。

 

「前にネギが嫌いって聞いたから抜いたんだが、ただのお節介だからもし欲しかったらお好みで入れてくれ」

 

「い、いや、ありがとう……ございます」

 

そして全員着席すると、手を合わせる。

 

『いただきます!』

 

蕎麦を啜る音を部屋全体に響かせながら、黙々と1口目を食べる。

 

「美味しい〜!」

 

「夏って感じがするね」

 

「うん!」

 

「みんなで行った合宿思い出すね」

 

「あ〜、あの時の花火やった日の……」

 

彼女達だけでなく、士郎も合宿の時を思い出していた。

 

「確かに行ったな……もう今年は行かないだろうな」

 

「どうしてですか?」

 

「CiRCLEを利用してくれるグループが多くなってきてな、流石に前の時みたいに合宿ってなったら相当な人数になっちゃうから今年は実施できないと思うんだ」

 

「そんなー!」

 

香澄がショックで声を上げるが、士郎がある案をを出す。

 

「じ、じゃあ、バーベキューなんてどうだ?あとは流しそうめんとか」

 

『バーベキュー?流しそうめん?』

 

まさかの提案に全員が疑問をもつ。

 

「あぁ、知り合いの爺さんに言えば流しそうめんが出来るくらいの竹をくれると思うし、バーベキューなら多人でやったら楽しいと思う」

 

「何それ、楽しそう!」

 

「でも、場所も決めなきゃいけないし、ましてや他の子達が行けるかも分からないから、提案しといてアレだけど無理じゃないかとは思うけど……」

 

「大丈夫です!」

 

士郎の不安を拭うかのように、自信に満ちた目で見つめる。

 

「私に任せてください!」

 

「え?」

 

「こうなったら香澄は止められないな……はぁ……」

 

「私達も出来る限り、他の子達に伝えていこっか」

 

「うん、実現出来るといいね!」

 

「そうだね」

 

勝手に進んでいく話に、士郎は置いていかれ、言葉を発せずにいた。

 

「彼女達の判断力、そしてチームワークには見習うべきものがありますね 」

 

セイバーは彼女達を暖かく見守りながらそう応える。

士郎は、その言葉に同意し苦笑いを浮かべる。

 

「あぁ、全くその通りだな」

 

「私は彼女達ならやってのけると確信が持てます」

 

ですから、と後に続けて士郎を見る。

 

「私達も色々準備しておくといいでしょう」

 

「……そうだな。俺達なりに出来る準備はしておくか」

 

「はい」

 

 

 

 

果たして彼女達の計画は実現できるのか?

今も尚、見せ続ける青空は彼女達を照らし続けていた




暑すぎる……と、思ったら今度は雨が降る……イミガワカラナイヨ





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夏野菜たっぷり南国風カレー

最近、暑い日と雨の日の交互が続いてる気がする……







「今日の夕飯、何にするかなぁ」

 

士郎はテーブルに肘を乗っけながら、今日の献立を考える。

すると、机の上に水の入ったコップが置かれる。

 

「シロウ、水をどうぞ」

 

「ありがとう」

 

セイバーが入れてくれた水を頂き、2人で外を見ながら談話する。

 

「ラン達は大丈夫でしょうか?今日は暑いようですから……」

 

「一応そこら辺の対策はしてるらしいから大丈夫だと思うけど、夏バテにならないとも限らないしな……」

 

ミーンミーン、と蝉の声が鳴り続ける。

 

「がっつり肉系でもいいけど、夏は食欲落ちることもあるらしいからな」

 

「私は大丈夫ですが、その可能性もあるのですね」

 

「あぁ、どうするか……ん?」

 

すると、玄関が開く音が聞こえ、そして聞き覚えのある少女達の声が聞こえた。

 

「蘭達が帰ってきたみたいだな」

 

「えぇ、彼女達の分のお水を用意してきます」

 

セイバーが立ち上がり、キッチンに向かった後に彼女達が部屋に入ってきた。

 

「ただいま」

 

『お邪魔しまーす!』

 

「あぁ、おかえり」

 

部屋に入るやいなや、モカとひまりは机に突っ伏して溶ける。

 

「暑くて溶けちゃうよ〜」

 

「外暑すぎだよー!」

 

「確かに今日は一段と暑かったな」

 

巴が笑いながら手に持っていた袋を机に置く。

 

「ん?巴、これは?」

 

「実は知り合いの方から貰ったんですよ」

 

その袋の中身は、野菜だった。

 

「茄子にトマト、とうもろこしもあるのか」

 

「貰ったのはいいけど、量が……」

 

巴はアハハと微笑を浮かべて笑う。

 

「確かに巴ちゃんの家にダンボールで大量にあったね……」

 

「そこでシローさんにあげよ〜って事になったのさー」

 

「なるほどな」

 

士郎は野菜を手に取りながら、頭に今日の献立が出来上がった。

 

「今日の夕飯はこれで決まりだな」

 

「シロウ、今日は一体何を作るのですか?」

 

5人分の水を持って戻ってきたセイバーの質問に答える代わりに、笑みを浮かべる。

 

「あぁ、今日は夏にピッタリのやつを作ろうと思う」

 

「夏にピッタリ?」

 

士郎はキッチンに向かい、料理の準備を始める。

 

「アンタらも食ってくか?」

 

「勿論!」

 

「お腹空いた〜」

 

「お願いします!」

 

了解、と返事し、エプロンを付ける。

 

「さて、まずは─────」

 

 

にんにく、生姜はみじん切り、他の材料は一口大に切る

鍋に油を引き、ズッキーニ、茄子を高温で炒め、6割ほど火が通ったところで皿に取り出す

鍋の温度を下げ、新たに油を引き、中低温でにんにく、生姜を焦がさないように炒め香りを出し、玉ねぎを加え、塩少々をふり、玉ねぎがしんなりするまで炒める

鶏肉を入れ炒め、表面の色が変わり焼き目がついたらパプリカ、かぼちゃ、とうもろこしを加え炒め、全体に油が回ったら水を具がかぶる程度加え中火で煮込む

 

 

「さて、ここでこれを使う……」

 

 

かぼちゃに火が通ったらココナッツミルクを加える

トマトと先に炒めておいたズッキーニ、茄子、いんげんを加え入れ、市販のカレールーを溶かしたら……完成!

 

 

「お、いい匂いがしてきたな」

 

「この匂いって……」

 

士郎がキッチンから出てくる。

 

「えー、今回は巴が持ってきてくれた夏野菜全部入れてみた南国風カレーです」

 

置かれたそのカレーの匂いに全員が幸せそうな顔をする。

 

「ん〜美味しそうー!」

 

「早く食べよう〜」

 

「じゃあ早速……」

 

全員手を合わせ─────

 

『いただきます!』

 

スプーンを手にし、カレーを1口食べる。

 

「ん〜まろやか!」

 

「でも、私の知ってるカレーと違うような……」

 

「実はカレーにココナッツミルクを入れてるんだ」

 

「なるほど、いつものカレーとはまた違う味わい」

 

「とうもろこしも甘くて美味しい……」

 

「暑い時にあえてカレーってのもいいもんだろ」

 

順調に食べ進め、全員の皿が空になる。

 

「あぁ〜お腹いっぱい」

 

「ひーちゃん食べ過ぎだね〜」

「モカだけには言われたくない!」

 

ひまりとモカは3杯もおかわりしていた。

 

「うぅ……また太っちゃうよ〜」

 

「だ、大丈夫だよひまりちゃん!」

 

「そうだよ!まだ増えた訳じゃないだろ?」

 

つぐみと巴がひまりを慰めるが、ひまりには一向に届かなかった。

 

「うぅ、セイバーさんが羨ましいよ……そんなに食ってるのに……」

 

「私ですか?」

 

セイバーは5杯目のおかわりをしようとしていた。その光景に慣れてはいるが、それだけ食って太らないセイバーに疑問を持たずにはいられなかった。

 

「セ、セイバーはそういう体質なんだよ。それに俺から見るとそんなに太ったようには見えないぞ?」

 

「そ、そうかなー?そうですよね!」

 

「ひまり」

 

「蘭?」

 

蘭はひまりの肩に手を置き、笑顔を見せる。

 

「体型が変わってもひまりはひまりだよ」

 

「蘭……!」

 

ひまりは嬉しそうに涙を浮かべる。

 

「あれ褒めてるのか?」

 

「ま、まぁひまりがいいならいいんじゃないんかな?」

 

「そ、そうだね」

 

「ひーちゃんは単純だね〜」

 

幸いにも士郎達の声は聞こえておらず、また傷付くことはなかった。

セイバーだけなんの話か分からず、彼女達の仲の良さに微笑みながら、5杯目を平らげるのだった。

 

 

 

 

 

夏の暑さはまだ続く。

そして、あの計画が実現される事になろうとは、士郎はまだ知らなかった。




最近、モチベが落ちてるね……
暑いからかな〜?(現実逃避)


それはそれとして誕生日おめでとう!ロック!


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夏に流れる水の音

最近、タイトル決めるのに1時間かけてる…
そして悩んだ結果が、シンプルすぎる…






「士郎さん!流しそうめんしましょう!」

 

「……」

CiRCLEで、スピーカーの調整をしていた士郎の元に香澄が近寄り、近寄るやいなや唐突に笑顔で話し出した。

 

「えーっと、前に言った件の話か?」

 

「はい!前に士郎さんから提案してもらった流しそうめん計画です!」

 

香澄が言うように、流しそうめんの話は士郎が1番先に提案したものだった。故に士郎はその事をしっかりと覚えていたのと同時に、実現不可能だろうとも思っていたのだ。

この計画は、大前提に全員が集まらないと出来ないといった欠点から始まる。別に全員が集まらないと出来ない、なんて事はないが、香澄からの主張では全員揃ってこそ楽しくなる、という事で全員集合がまず大前提。

2つ目の欠点が、それを実行する場所と資材。資材である竹はなんとか用意できるが、大人数でやる場所がないのだ。蘭の家でやるも流石に30を超える人数が来るのは行けない事はないが、蘭の父さんがそれを許可するかは別なのだ。

他にも色々と問題はあるが、この2つに比べると小さい事なので、まだ大丈夫な方だった。

 

そんな実質不可能な計画を、香澄はやろうと提案してきたのだった。

 

「やるのはいいが、全員集合してやるのはもういいのか?」

 

「勿論、全員集まってやりますよ?」

 

「他の子達も色々と忙しそうだし、無理なんじゃないか?」

 

士郎は香澄の提案を出来るだけ否定したくはなかったが、今回は仕方なく諦めるように促す。─────が。

 

「??」

 

何故か顔を傾げ、頭に“?”を浮かべる。

 

「いや、だからな─────」

 

士郎が説明しようと話し出すと、それを遮るように声を被せて言う。

 

「みんな来ますよ?」

 

「─────は?」

 

まさかの発言に硬直する。最近士郎の周りで他の子達と会う事も話す事も減り、忙しいんだな、と解釈していたのだが、そんな彼女達全員が集合するなんて誰が予想出来るだろうか?

 

「え、マジ?」

 

「マジのマジですよ?あとは士郎さんが参加するだけです!」

 

「いや、俺は別に断るつもりは一切ないが……大丈夫なのか?」

 

「何がですか?」

 

「いや、ほら、香澄達もそうだけど今ライブとかの準備や練習で忙しんだろ?そんな無理に集まらなくても……」

 

彼女達の活躍を知るからこそ心配するが、それは逆に彼女達に不安を与えていたようだった。

 

「そんな事ないですよ!みんな久しぶり集まれて嬉しそうにしてましたし、士郎さんとあんまり会えなかったので会うのを喜んでいましたよ!」

 

彼女は笑顔で続ける。

 

「士郎さんがいたから私達はここまで来れたんです!士郎さんのおかげで私達は笑顔でいられたんです!」

 

その瞳は光り輝き、見る者を魅力する。

 

「士郎さんからいっぱい貰った物を私は返していきます!返し終わっても、私は士郎さんに渡していきます!それは、他のみんなも同じだと思います!」

 

香澄は士郎に、笑顔のまま、瞳を輝かせたまま、手を差し出す。

 

「私達からの贈り物、受け取ってくれませんか?」

 

士郎は呆気に取られ、そして笑みが零れる。

 

やっぱり、香澄達には敵わないな……

 

「じゃあ有難く受け取らせて貰うよ。ありがとな」

 

士郎は礼を述べながら、その手をとる。

 

「はい!まだまだありますので、全部受け取って下さい!」

 

「そうだな、今回は俺がした提案だからな。しっかり働かせもらうとするよ」

 

「お願いします!」

 

香澄に決行する日付と場所を教えてもらい、彼女は帰って行った。

士郎は1人残された部屋で、頭を掻きながら笑みを浮かべていた。

 

「参ったな……いつも貰ってるのは俺の方なのにな……」

 

 

 

 

士郎はキッチンで、そうめんを茹でながら、下準備していた。

庭では楽しそうな笑い声を耳に入れながら……

 

そう、1番無理だろうと思っていた美竹家の庭で流しそうめんをやることになっていたのだ。

 

蘭の父さんに蘭本人が伝え、無事許可が降りたようだった。

蘭の父さん曰く、「夏を友達と楽しむなら、別に構わない。それに士郎くんもいるなら安心だ」とのこと。

 

やる人数は言わなかったらしいが、流石に30人越えの人数でやるとは蘭の父さんは思ってないだろう。

 

ちなみに料理係が士郎で、彼女達が竹の設営といった形で分かれている。

 

 

ちょま!水をこっちに飛ばしてくるな!

えー、有咲水浴びたいって言ってたじゃん!

浴びたいって言ったけど誰もかけろとは言ってないだろう!!

 

モカ!なんで日陰でサボってるのよ!

え〜、モカちゃんはひーちゃんに手柄を譲ってるだけどよー?

何意味わかんない事言ってるのよ!早くこっち来て手伝う!

そんなー

 

この竹!今こそブシドーの力を見せる時!です!

イ、イヴちゃん!落ち着いて!

そ、そうスっよ!怪我するッス!

ブシに情けは無用です!お覚悟ー!

ストップー!

 

この竹……

友希那、どうかしたの?

いえ、なんでもないわ

そんな事言わずに〜、ね?

……この前見た動画の竹を思い出しただけよ

あ〜、前に見てた猫の?

……

 

ちょ、こころ!それ危ないから早くやめて!

美咲ー!これ楽しいわよ!一緒やりましょ?

やらないから!てかなんで竹の滑り台が出来てるのよ!?

なんて儚いんだ……!

儚くない!!

 

倉田さん、この竹を持ってくれるかしら

う、うん!

この竹はどうするの〜?

それはそこに置いておきましょう

こっちの竹は?

まだ使わないから広町さんと同じ場所に置いて来てちょうだい

めっちゃルイが仕切ってる……

 

チュチュ様!こちらの設営が終わりました!

こっちも終わったぜ

なら、あとはこれを繋げれば終わりね

……届く?

……パレオ!

はい!チュチュ様!

 

 

「楽しそうにしてるな……」

 

士郎は笑みを浮かべ、自分の作業に戻る。

 

「そうめんはもう出来るから、あとは……」

 

 

ホタテ貝柱を先に茹でておく

その間に玉ねぎ、ネギ、人参を千切りにして水にさらす

薄力粉と塩を氷水でさっくりと混ぜ合わせる

その後に茹でておいたホタテ貝柱と桜えび、千切りした野菜を、混ぜ合わせた氷水に、混ぜ合わせ馴染ませる

お玉やヘラなどで使用し、少量ずつ適量の180度の油で揚げる

途中、少し固まってきたらひっくり返し、箸を刺して火の通りをよくする

カラッと揚がったら……完成!

 

 

「さて、持って行くか」

 

庭に向かうと、既に完成していた。

 

「おぉ、凄いな」

 

「シロウ、出来たのですか?」

 

セイバーは士郎の存在に気が付くと、手に持つ料理に目を向けながら話しかける。

 

「あぁ、せっかくだからかき揚げも作ったから、食べてみてくれ」

 

そして士郎が来たことによって、流しそうめんが始まった。

 

「それじゃあ、流すぞー」

 

1番先にそうめんを取ったのは、香澄だった。

 

「1番乗り!」

 

「いいな〜!」

 

「次よ!次!」

 

それから次々とそうめんを流して行き、全員がちゃんとそうめんを取る事が出来た。

 

「うーん!夏はそうめんだよね!」

 

「そうですね!」

 

「かき揚げも美味しいわね」

 

「ね!なんかるんっ♪てきちゃった!」

 

みんなの顔色がとても嬉しいそうな表情をしていて、士郎も自然と笑い、そうめんを流していく。

 

士郎はそうめんを流す担当を巴達に変わってもらい、1人縁側に座り、彼女達を眺めていた。近くにある為か、彼女達の話し声と一緒に風鈴の音も鮮明に聞こえる。すると、士郎の隣にセイバーが座る。

 

「ん?どうかしたかセイバー?もうお腹いっぱいなのか?」

 

「いえ、少し涼もうと思いまして」

 

「なるほどね、確かに今日は暑いもんな」

 

そう呟きながら、一緒に香澄達の様子を眺める。

とても楽しそうに夏を満喫してる彼女達を見ていると、セイバーが話しかけてくる。

 

「シロウは楽しんでますか?」

 

「え?」

 

唐突な質問にセイバーを見る。セイバーは士郎の方を見ず、香澄達の方を見つめる。

 

「……そうだな。楽しんでいるよ」

 

「それは良かったです」

 

「セイバーはどうだ?」

 

「私は─────」

 

彼女は目を瞑り、笑みを浮かべながら士郎を見つめる。

 

「ラン達とそして、シロウと会った日からずっと楽しくもあり、幸せですよ」

 

セイバーのその一言に呆気に取られる。そんなことを余所にセイバーは立ち上がり、振り返る。

 

「では、そうめんをおかわりしてきます」

 

士郎の返事を待たず、それだけ言うと香澄達の元へ向かって行った。

 

「ったく。セイバーにも敵わないな……」

 

士郎は笑みを浮かべながら、小さく呟くのだった。

 

 

 

夏の風で鳴り響く風鈴は、どこか涼しさを送り届けていた




前半の香澄のセリフ、LAST STARDUST 聴きながらやってたらいつの間にか出来てたw
(σ・∀・)σウケル


※夏の暑さと某ウイルスにはお気をつけ下さい


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ハロハピソテー

最近、夏バテしました
皆さんは気を付けてくださいね





「ショッピングに行きましょ!」

 

玄関を開けた先で、挨拶の前に放たれた一言がそれだった。

 

 

「えっと……とりあえずおはよう、こころ」

 

「えぇ、そうね!おはよう、士郎!じゃあ行きましょうか!」

 

完全に彼女のペースに持ち込まれ、士郎はやや強引に連れ出された。

 

 

 

 

「あ、こころやっと来た……」

 

「おーい!こころーん!こっちこっち!」

 

こころに連れられるがままに進んでいると、ショッピングモールの出入り口にはぐみ達が手を振って待っていた。

 

「士郎さん……!おはようございます!」

 

「あぁ、おはよう花音」

 

「士郎さん、こころがご迷惑をお掛けしました」

 

「いやいや、気にしてないから大丈夫だぞ」

 

花音と美咲と挨拶を交わし、こころの代わりに説明を始める。

 

詳しい内容を聞いたところ、今日はこころの家で遊ぶ予定だったが、こころが唐突にショッピングに行きたいと言い出し、今回の件に至ったらしい。

 

「それでなんで俺も呼ばれた……てか、連れてこられだけど……」

 

「えっと、そ、それはですね……!」

 

「“士郎も誘って行きましょ!”って、唐突に言い出して私達に先に行かせて士郎さんのところに向かったって感じですね」

 

「もし俺が家にいなかったらどうしたんだ?」

 

「多分その辺は大丈夫だと思いますよ?こころのことだし」

 

果たして美咲のこの言葉はこころを信じての事なのか、経験があってこその呆れと諦めの意味なのかは士郎には分からなかった。

 

「それじゃあ行きましょ!」

 

「そうだね、時間は有限さ」

 

「レッツゴー!」

 

 

こうして、6人揃ってショッピングを楽しんだ。

 

 

「あ〜、楽しかった!」

 

「いやいや、こころ、あんた買いすぎでしょ……」

 

外で黒服の人達が大量の荷物を車に入れてるのを横目にしながら、美咲は呆れる。

 

「士郎は何か買ったのかい?」

 

「あぁ、色々と雑貨用品を買ったかな」

 

お互いに買った物を見せ合った後、これからどうするかはぐみがこころに質問する。

 

「こころん、これからどうするの?」

 

「そうね、何かやりたい事はあるかしら?」

 

「私からは特にないね、美咲はどうだい?」

 

「あたしも特に案はないよ、花音さんは?」

 

「わ、私もないか────」

 

その時、可愛いらしい腹の音が鳴り、鳴らした張本人はみるみる顔を赤らめさせる。

 

「ふえぇ……」

 

「あー、えっとあたしもお腹空いてきたし、ご飯にしない?」

 

「そうね!ご飯にしましょ!」

 

「それじゃあ、どこで食べるの?」

 

みんながうーんと、唸り声を上げながら悩んでいると、士郎はこころと目が合う。

 

「士郎に作ってもらいましょう!」

 

「お、俺?」

 

「確かに!しろろんさんの料理、久しぶりに食べたい!」

 

「とても素敵な提案だね……!私もそれで構わないよ」

 

流れ的に士郎が作る事が確定しているようだったので、士郎は最後に2人に賛同するか聞いてみる。

 

「2人はそれでいいか?」

 

「わ、私はいいです!」

 

「あたしもそれに賛成ですね」

 

「わかった、一応今日の晩御飯の下準備はしてあるから、あとはメインを何するかなんだが、何かリクエストはあるか?」

 

士郎はみんなに聞くと、こころが何かを思い出し大声を上げる。

 

「そうだわ!」

 

『??』

 

 

 

ショッピングを終え、士郎達は美竹家に来ていた。

 

「あれ?今日はセイバーさんと美竹さんは?」

 

家に入ると、誰も居ない雰囲気を感じ、士郎に質問する。

 

「蘭は今日モカ達と合宿練習で、セイバーは藤ねえ……俺の姉の家の方に帰ったよ」

 

「へぇー」

 

「それじゃあ、早速作るから居間でゆっくりくつろいでくれ」

 

士郎はそう言って、キッチンに立ちエプロンを付ける。

 

「さてと、まずは……と、その前に」

 

士郎は冷蔵庫からボウルを取り出す。

それは、士郎が言っていた下準備していたカルパッチョだった。

 

 

完熟トマトは皮を湯剥きし、1~2cmの角切り

きゅうり、セロリ、玉ねぎ、黄パプリカは3~5mmの角切り、バジルはみじん切りに

ボウルにトマトジュースと先程切った野菜、白ワインビネガー、塩、粗挽き胡椒、ホットペッパーソース、オリーブオイル、砂糖を入れ、混ぜ合わせる

味を調整して冷蔵庫で2~3時間冷やして……野菜から水分が出るので、よく混ぜたら器に盛って……完成!

 

 

「これは出来て……さて、お次は」

 

士郎の目の前にカジキマグロが置かれていた。

このカジキマグロは、ショッピングモールでこころが黒服を呼び、そして俺に渡してきたとても高級なカジキマグロだった。

 

「……庶民の俺には絶対手が出せない物なんだけどな……これ食ったら安い方のカジキマグロ食べれるかな?」

 

そんな不安を振り払い、早速料理に移る。

 

 

ニンニクは厚めの薄切り、レモンはくし切りに

オクラは固い茎とガクの周りを剥き、塩でもんだら軽く下茹でして冷水に取り、冷めたら水気を取る

マヨネーズと粒マスタードを混ぜ合わせておく

カジキマグロに塩をふり、低温で熱したフライパンに多めのオリーブオイルとニンニクを入れ、香りが出るようにじっくり炒める

ニンニクを取り出し、カジキマグロを入れ、中火~強火で両面焼く

全体でだいたい2~3分

カジキマグロが焼きあがる頃に下茹でしたオクラを加えて焼き、最後に粗挽き胡椒をふったら取り出す

フライパンにニンニクを戻し、酒・塩を加えひと煮立ち

最後にバターを加え、溶かしたらソースの出来上がり

皿にカジキマグロ、オクラ、レモンを盛り、ソースをかけて……完成!

 

 

「出来たのかしら!」

 

「えぇ、今夜はカジキマグロのソテーとガスパチョです」

 

料理を机に置いていき、全員に行き届くと手を合わせる。

 

『いただきます!』

 

口に含み、よく噛み、味わって食べる。

 

「美味しい!」

 

「ガスパチョってどこの料理なんですか?」

 

「俺も詳しくは知らないけど、スペインの料理らしい」

 

「これなら野菜たくさん取れていいですね」

 

「マグロも美味しいよ!」

 

「このソテーの香ばしい匂いと身の柔らかさ……とても感動的だよ……!」

 

「えぇ!とても美味しいわね!」

 

楽しく談話を挟みながらも晩御飯を食べ、いつの間にか完食していた。

 

『ご馳走様でした!』

 

「美味しかったね!」

 

「うん!とても美味しかったです……!」

 

「そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

士郎は一通り皿洗いを終え、こころ達がいる居間に戻る。

 

「それにしても士郎さん、料理のリスト多くないですか?よく材料見ただけでこれ作ろうって、思いつきますよね」

 

「そうか?普通だと思うけどな」

 

そう話していると、こころがまた何か閃き、立ち上がる。

 

「なら今度、士郎を先生にしてあたし達で料理を作りましょう!」

 

「また唐突に……今度は料理なの?」

 

「えぇ!とても楽しい事になると思わない?」

 

こころの提案にメンバーは─────

 

「何それ、楽しそう!」

 

「みんなで料理……あぁ、なんて儚いんだ……!」

 

「まぁ、あたしも今回は賛成してもいいかな?花音さんは?」

 

「わ、私も賛成です!」

 

「決まりね!そういう訳で士郎!お願いね!」

 

速攻で決まった案に、士郎は彼女達の仲の良さを実感し、笑みを零す。

 

「了解。やる時に連絡くれたら俺なりに準備はするよ」

 

士郎が承諾すると、彼女達は早速今後の予定などを組み始めた。

 

 

 

 

 

彼女達は世界を笑顔にする為、今日も笑顔で先陣を切り前へと進んで行く




ネタ切れ……

\(^o^)/オワタ


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男子学生の1日 #2

今日の飯テロ無し


「おーい!衛宮ー!こっちだー!」

 

「あぁ!今行く!」

 

士郎は友の声に答え、野原を進んで行く。

 

「ここなら景色もいいし、軽く運動もできるぞ!」

 

「確かに……でもボールも何も持ってきてないぞ?」

 

「まぁ、運動しに来た訳じゃないからな」

 

そう、彼らは久しぶりに3人で集まり、のんびり1日を過ごしに来ていた。

 

「それにしても惜しかったな、あと2点取れてたら勝ってたのに」

 

「仕方ねぇよ、相手側のディフェンスが固すぎて全然攻めれなかったからな」

 

大輝と達也は野原に寝転びながら、愚痴を零す。士郎もその隣で座り込む。

 

「寧ろあそこまで追い詰めれた事に褒めて欲しいくらいだわ」

 

「俺はあんまりサッカーのルールとか知らないけど、大輝はよくやった方なんじゃないのか?」

 

「いやいや、これまた全然なんですわ〜」

 

大輝は天に仰ぎながら、目を閉じる。

 

「大輝は点数をよく稼げたが、その後の行動が上手く立ち回れなかったからな」

 

「悪いな、あの時のパス受け取れなくて」

 

「あれは仕方ない事だ」

 

大輝と一緒に達也も心地よい風に吹かれながら、愚痴を零す。

 

「そういや衛宮はどうなんだ?弓道」

 

「ん?俺は別に対して変わりないぞ?」

 

「いやいや、あれがずっと続いてるってマジかお前」

 

2人は士郎のセリフにドン引き顔を晒す。士郎の弓道の腕前を知ってるからこそ、驚きよりドン引きしてしまうのだ。

 

「こりゃ他校の弓道の子が可哀想だな」

 

「そういや噂で、学園祭の時に女子高の弓道で、とんでもない記録を出した男がいたって聞いたけど、これ絶対アンタだろ?」

 

「確かに花咲川の弓道はやったな……てか噂になってるのか?」

 

「そら凄い噂でっせ旦那」

 

「誰が旦那だ」

 

3人は口を止める事無く、何分間も話題尽きず話し、笑い続けた。

 

 

「ふぅ……流石に笑い疲れた」

 

「もうすぐ昼だし、飯食おうぜ」

 

「あ、それならにぎり作ってきたけど、食うか?」

 

「「だべる!」」

 

士郎は、勢いよく起き上がってきた2人に微笑を浮かべる。

 

士郎はバックからおにぎりサンドを取り出し、好きなものを選ばせる。

 

「てか、久しぶりじゃね?衛宮の手料理食うの」

 

「確かに」

 

「まぁ、最近忙しかったのもあるし、まず大輝達に作るなんてそうそう無いしな」

 

3人は談話しながらおにぎりを食べ進めていく。

この3人の他にも人はいたが、男だけで来ている人達はいなかった。

 

「……周り見てたらなんか虚しくなってきた」

 

「それ言うなよ……」

 

「別にいいんじゃないか?」

 

「お前にはまだ可愛い子がいるからな!」

 

大輝は半ギレで突っかかってくる。

 

「でもまぁ、こんな光景も俺達らしくていいかもな」

 

「何しんみりとした事言ってんだよ、お前には似合わねぇよ」

 

大輝のセリフに達也はあぜけ笑う。

士郎もそれにつられ、笑い出す。

 

「別にいいだろ?今日ぐらいは」

 

「まぁ、確かに今日位は見逃してやるか」

 

「なんで上から目線なんだよ」

 

3人は笑い、そして昼飯を終わらせる。

 

「さて、午後からどする?」

 

「そうだな〜、衛宮はまだ行けるか?」

 

「今日はアンタらに付き合うって言っただろ?」

 

「よし!ならゲーセン行こうぜ!」

 

「よっしゃ!ならさっさと行こうぜ!」

 

「はいはい」

 

3人は立ち上がり、最後にタイミング良く吹いてきた風を正面から受けて、歩き出した。

 

「あ、ちなみにナンパは却下な?」

 

「「ダニィ!?」」

 

 

 

3人の男子学生の1日は、まだまだ笑いが尽きないみたいです。




久しぶりの登場!!
皆さんはこの2人、覚えてましたか?
自分は半分忘れかけていましたꉂꉂ(ˊᗜˋ*)


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祭りのポンチ

「よし、それじゃ行くか、セイバー」

 

「えぇ」

 

士郎とセイバーは昼過ぎ頃にとある場所へ手伝いとして、向かって行った。

 

 

 

 

 

 

「で、士郎さん達はこの祭りに参加してるって訳ね!」

 

「参加と言うより、屋台の手伝いに来てるみたいだけどな」

 

商店街で開かれた小規模の祭り……

小規模という割には大勢の人で賑わっていた。

その中に、彼女達の姿もあった。

 

「ねー、まだ着かないのー?」

 

「まだ少ししか歩いてないでしょ!」

 

「モカちゃん、後ちょっとで着くと思うから頑張って!」

 

「およよ〜」

 

彼女達─────Afterglowは今日の祭りに関して来るつもりはなかった様だったが、士郎とセイバーが屋台の手伝いをすると聞き、全員集合し祭りを堪能していた。

 

「この焼きそば、美味しい……!」

 

「確かに美味いな!」

 

「このたこ焼きも美味ですな〜」

 

「焼きそばにたこ焼きにりんご飴に綿あめに……あぁー!全部食べたい!」

 

「ひ、ひまりちゃん落ち着いて!そんなに食べたら士郎さんと所に着く前に、お腹いっぱいになっちゃうよ!」

 

5人は色々な屋台を見て周りながら目的の場所に向かっていると

 

「あ、蘭ちゃん達だ!!」

 

前方から香澄達が、特に香澄が急速に接近してきた。

 

「みんなも来てたんだ!」

 

「別に、たまたま」

 

「またまた〜結構乗り気だったの誰だっけー?」

 

「っ!?モカ!」

 

モカにバラされ、キレる蘭。そしてそれをいつものように宥める巴とつぐみ。

 

「そういえば香澄達も祭りに参加しに来たの?」

 

「本命は士郎さんの屋台にお邪魔しに行くことなんだけどね」

 

ひまりの質問に沙綾が答え、それに同意するように有咲達が頷く。

 

「じゃあ私達と同じなんだね!」

 

「なら一緒に行って方が良さそうだな!」

 

「うん!みんなで一緒に行こ!」

 

彼女達はその後も周りの屋台で買い物などしながらも、士郎が手伝いをしている屋台へと到着した。

 

「あぁ、来てくれたのか、わざわざ」

 

すると屋台から士郎が顔を出しに表に出てきた。

 

「えーっと、勢揃いだな……一緒に行動してたのか?」

 

「途中で出会ってそのまま一緒に来ました!」

 

「なるほどな……まさかの全員集合するとは思わなかったよ」

 

香澄の元気のいい返事に笑いながら理解しながらも、何かまだ驚いているようだった。

 

「士郎さん、なんでそんなに驚いてるんですか?」

 

「あぁ、実はな……」

 

「もう彼女達も来てくれたのです」

 

士郎が言う前にセイバーが奥から現れ、そう告げる。

それに続くように、“彼女達”も顔を出す。

 

「待っていたわ!早く中に入りましょ!」

 

「か、香澄さん!お先に頂いちゃってます!」

 

「ほら早く入って!」

 

「先に頂いてるわ」

 

「遅いわ!ラン・ミタケ!もう一度ワタシと勝負─────んん!」

 

「はーい☆チュチュ様、席に戻りましょう!」

 

蘭達が来る前に既に集合しており、先に料理を食べていた。

 

「まさかの全員集合には、俺も流石に驚いたよ」

 

「それだけ士郎さんの人望が凄いって事です!」

 

リリィも姿を見せ、持っていた材料を机に置く。

 

「リリィちゃんも来てたの?」

 

「はい!私はお手伝いする側で来ました!」

 

リリィはそのまま仕事に戻る。

 

「さて、じゃあ早速食べてくか?」

 

「もちろん!」

 

「その為に来たからな」

 

「なら空いてる席で待っててくれ、すぐに作る」

 

そう言って士郎は料理を始める。

 

「と言ってもあとは盛るだけなんだけどな」

 

 

まず初めにフルーツポンチ作り

ボウルにみかん、桃、パイナップル、さくらんぼをシロップごと入れる

キウイとバナナも1口大に切り、ボウルに加え入れ、レモン汁を加えて軽く混ぜる

その後、冷蔵庫で2時間以上冷やす

 

次に白玉だんご作り

ボウルに白玉粉、上白糖を入れたら水を入れてこねる

ボロボロとまとまらない場合は、水を少しづつ加えてこねる

耳たぶ程の固さで生地が手につかず、ひとつにまとまる程度にする

生地を1個8~10gになるように等分し、形を丸く整えてから中央を指で押してくぼみを作る

鍋にたっぷりのお湯を沸騰させ、白玉を入れる

全ての団子が浮いて1~2分したら冷水にとり冷ます

すぐに食べない場合は水をきり、ラップを敷いた皿へ

重ならないように並べ、更に上からラップをして、乾燥しないように密着させて冷蔵保存

 

白玉は冷やしすぎると固くなるが、電子レンジで30秒~1分加熱すると柔らかさが戻る

加熱した後、冷水で冷ましてからフルーツポンチに加え、炭酸水をお好みの量加え入れて完成!

 

 

「はい、お待ちどーさま」

 

「うわぁ!美味しそう!」

 

「じゃあ早速─────

 

『いただきます!』

 

パクっと1口食べる。

 

「んんー!冷たくて美味しい!!」

 

「白玉がモチモチね」

 

「ね!とても美味しいでしょ?」

 

「なんでこころがドヤってるの?」

 

彼女達が美味しそうに食べていると、屋台前の人混みが多くなっていた。

 

「フルーツポンチ1つください」

「こっちは2つくれ!」

「私も─────」

 

「あ、はい!少々お待ちください!」

 

いつの間にか行列が出来ており、士郎とセイバーとリリィがそれぞれ役割が分けて、接客していた。

 

「何やら忙しそうだね」

 

「どう考えても私達が呼び水になってしまったみたいね」

 

「え!そ、それってかえって迷惑にしちゃった!?」

 

「売り上げ的には万々歳だと思うけど」

 

その後しばらく接客を続け、並ぶ客が居なくなった頃合である老人がやってきた。

 

「よう坊主、悪いな。無茶な願い言って」

 

「大輝のじいさん!もうそっちは大丈夫なんですか?」

 

「おう、あんさんのお陰でな……いや、あんさん達のお陰、の方がいいか?」

 

「そうですね、セイバー達も手伝ってくれたんで」

 

それを聞き、ガハハと豪快に笑い士郎の背中を叩く。

 

「よし、ならこっからは祭り楽しんで来い!勿論後でバイト代は嬢ちゃん達と一緒に渡したるから帰りには寄ってくれよ?」

 

そして士郎達は今日の仕事を終え、今も待っていた彼女達の元へ向かう。

 

「今日はもう上がっていいって」

 

「じゃあ今から皆で屋台巡りへ、ゴー!」

 

『ゴー!』

 

香澄達のテンションに笑いながらも、皆で楽しく屋台を巡って行くのだった。




どうも、最近階段につまづき、両肘両膝怪我した者です

皆さんはこのような事がないように足元には注意してくださいね
勿論、某ウイルスにも気を付けてね!


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ツンデレ?3人と鍋焼きうどん

最近疲労が凄いわ……

(´‘▽‘`)ハハッ☆





学校が休みのいつもの美竹家……

 

士郎が台所で皿を洗い、蘭が手伝いとして机を拭いていた。今日はセイバーが用事で家にいないが、いつもセイバーも蘭と一緒に手伝いをしている。

皿洗いと机を拭き終えると、士郎はそのまま部屋の掃除を始め、蘭は部屋でギターの手入れをするのがいつもの光景だ。

 

─────だが、今回は違った。

 

ガッチャン、と何かが割れる音が鳴り響いた。

 

その音の発生源は台所……そう、士郎が皿を落としてしまったのだ。

蘭はその音に反応し、台所を覗くように向かう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あぁ、平気だよ。手元が狂って皿を落としてな……」

 

やっちまった、と唸りながら、欠けた皿の破片を拾っていく。

 

「割れたのそっちにも飛んでないか?あと足、気をつけてな」

 

蘭は拾うのを手伝おうと座り込み、たまたま士郎の顔を見た時、何か違和感を感じた。

 

「……士郎さん?」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「いえ……顔が─────」

 

ピンポーン、と言いきる前に蘭の声を遮るようにチャイムが鳴った。

 

「はーい」

 

士郎はそのチャイムに反応し、ある程度破片を1箇所に固めてから玄関へと向かった。

士郎が玄関を開けた先には、有咲と美咲がいた。

 

「こんにちはー士郎さん」

 

「こ、こんにちは」

 

「あれ?2人で来たのか?」

 

「今ここで出会いましたよ?あたしはこの前お借りした本を返しに来ました」

 

「わ、私は蔵の掃除を手伝ってもらったからそのお礼に来ただけで……」

 

「とりあえず外は暑いだろ?中に入りな」

 

士郎は2人に家に上がるよう促す。2人はお邪魔します、と一言上げて家に入る。

家には蘭も出迎えに来ていた。

 

「いらっしゃい、有咲、奥沢さん」

 

「美竹さん、お邪魔します」

 

「お邪魔します」

 

と、挨拶を交わし、顔を上げた時美咲は気付いた。

 

「士郎さん、顔赤くないですか?」

 

「え?」

 

美咲の指摘に蘭は同意するように声を出す。

 

「やっぱりそうですよね」

 

「言われてみたら確かに赤いな……」

 

有咲も認め、3人揃って士郎を見つめる。

 

「え?な、何?」

 

「失礼」

 

すると、美咲が手を伸ばし、士郎の額に手を当てる。

 

「熱い……」

 

一応、体温計でも測ってみると。

 

「……思ったより高いな」

 

「やっぱり熱でしたね」

 

「朝から頭が働かないような感じがしたのはこのせいか」

 

「今日は安静にしておいた方がいいと思うけど」

 

有咲に言われ、士郎はそれに賛同する。が

 

「そうだな、残りの皿も片付けて部屋の掃除を軽く済ませて、後で薬でも飲めば……」

 

『士郎さん』

 

大人しく休もうとしない士郎に、3人が詰め寄り今度は、提案ではなく……命令する。

 

『休む!』

 

「は、はい」

 

あまりの剣幕に士郎も流石に大人しくならざるを得ず、薬を飲み、自分の部屋で布団に入る。

 

「さて、じゃああたし達は士郎さんの代わりに掃除を済ませちゃいますか」

 

「なら私は部屋の掃除をしとくよ」

 

美咲と有咲は早速取り掛かろうとしていると、蘭が2人に頭を下げる。

 

「2人とも、ありがとう……」

 

「別に頭下げる程の事じゃないですよ」

 

「むしろこれくらいやらせてもらわないと、あのお人好しさんの恩返しにもならないしな」

 

その言葉を聞き、蘭は嬉しくなり、笑みを零した。

 

「よーし、それじゃあ頑張りましょうー」

 

『おー』

 

3人は一致団結して、部屋の掃除を始めた。

美咲は皿洗い、有咲は部屋の掃除、蘭は洗濯物を取り込み畳む。

それぞれ受け持った仕事をやりこなし、時間も夕暮れ時になる。

 

「思った以上にハードだった……」

 

「美竹さんの家、こころよりマシとはいえ広すぎ……」

 

「士郎さん、1人でいつもこなしてたんだ……」

 

3人は疲労感に襲われながら、居間に戻る。

すると、台所に士郎の姿があった。

 

「え、士郎さん?」

 

「何してるんです?」

 

士郎はエプロンを着けて、今まさに料理をしようとしていた。

 

「え?夕飯を作ろうと思って……熱も引いてきたし、半日も休んだら大分楽になっ─────」

 

『休みなさい!』

 

士郎が言いきる前に遮り、声を荒らげる。

 

「治りかけが大事なんですよ!ちゃんと寝てなさい!」

 

「こんな時ぐらい休めよ!」

 

「言うことちゃんと聞いてください!」

 

「す、すみません」

 

士郎は蘭に背を押されながら、自分の部屋へと帰った。

 

「じゃあそろそろ夕飯を作りましょうか」

 

「私にも出来る事ってある?」

 

「あたしも手伝う」

 

「じゃあ3人で分担してやりますか」

 

そして美咲の提案で、鍋焼きうどんに決まった。

 

 

まず始めに、昆布は軽く拭き、30分以上水に浸けておく

鶏もも肉は1口大に切り、長ねぎとなるとは太めの斜め切り、ほうれん草は4~5cm幅のざく切りに

1人用の土鍋に昆布ごと昆布出汁に入れ、火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す

粉末鰹出汁、薄口醤油、みりん、塩を加え入れたら、茹でうどん、鶏もも肉、なると、長ねぎを入れて、麺が出汁の色に染まるくらいまで弱火で煮込む

ほうれん草を加え火が通ったら、麺の中央に卵を割り入れて、火を止め蓋をする

余熱で玉子が好みの硬さになったら完成!

 

 

「いい匂い……」

 

「じゃあ持っていきますか」

 

うどんを持って士郎の部屋へと向かう。

 

「士郎さん、お加減どうですか?」

 

「夕食が出来ましたけど、食べれそうですか?」

 

「持ってきてくれたのか、悪いな」

 

昼頃よりも大分顔色が良くなり、いつもの調子に戻っていた。

 

「はい、どうぞ」

 

「おぉ、鍋焼きうどんか」

 

「消化のいいものと思って冷蔵庫にある物とうどんを使わせてもらいました」

 

「それは気にしなくていいさ、ありがとな。それじゃあ早速……」

 

士郎は手を合わせ─────

 

「いただきます」

 

うどんを1口啜り食う。

 

「……うん、温かくてホッとする」

 

「私達3人分担して作ったからな」

 

「あたしはあんまり手伝えなかったけど……」

 

「そんな事ないですよ。美竹さんには煮込む作業をやってもらいましたから」

 

3人会話を聞き、自分の為に作ってくれたうどんを見てつい嬉しかったのか士郎は笑みを零した。

 

「3人とも、ありがとな」

 

士郎の感謝を耳にし、3人は顔を見合せそして笑う。

 

「次から体調悪くなったらすぐに言ってくださいね。お手伝い位、あたしにもできますから」

 

「士郎さんは体調崩そうが無理やりやり通すもんな」

 

「あぁ〜それ分かります。士郎さんならやりかねませんもんね」

 

「うぐっ、今回は本当にお手数お掛けしました」

 

士郎の反省に3人は嬉しそうに笑いあった。

それから飯を食べ終え、皿を回収して部屋を出て行った。

 

「じゃああたし達もご飯にしますか」

 

「お腹減りましたもんね」

 

「有咲、士郎さんに対して途中からいつもの有咲で話してたね」

 

「あー確かに」

 

「そ、それは士郎さんが!」

 

居間に戻るまでの間でも楽しそうな会話が聞こえ、士郎は笑みを浮かべ、そして眠りに着いた。

 

 

 

 

 

 

後日、士郎が熱出した事が他のメンバー達が知り、家に全員が訪れ、全員にスイーツを作ってあげたのだった。




全く手付かずの小説あるけど、新しい小説作ろうか悩んでる……


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Trick or 芋?

じっさいにスイートポテトをたべました
おいしかったです






『Trick or Treat!!』

 

「お、おぉ……」

 

玄関のチャイムが鳴り、作業を一旦手を止め、出迎えに向かうと開けた先に、彩達がハロウィンの仮装をしながら待っていた。

 

「士郎さん、こんにちはー!」

 

「あぁ、こんにちは。そうか、今日はハロウィンだったな」

 

「あれ?お兄さん、知らなかったの?」

 

「いや、知らなかったて言うより忘れてた、かな?」

 

士郎は頭を掻きながら苦笑いを浮かべ答える。

 

「じゃあお菓子用意してないんですか?」

 

「いや、一応お菓子はあるけど……」

 

と、士郎はハッと気付いた。

 

「悪い!寒かっただろ?中に入ろう」

 

彩達の格好は露出が多く、今日の天気はとても気温が低く寒い風が吹いていた。そんな格好で外で長話など彼女達にとって地獄でしかない事に士郎は気が付いたのだ。

士郎の気遣いに彼女は甘え、家の中へと入って行った。

 

『お邪魔します!』

 

家の中に入ると、とても甘い匂いが漂っていた。

 

「いい匂い〜!」

 

「お腹空いてきました!」

 

彩とイヴがお腹を抑え、4人で笑いあっていた。千聖だけ士郎がいる台所の方へ向かい、匂いの正体を見つけた。

 

「芋ですか?」

 

「あぁ、藤ねぇから……あー俺の姉から送られできたんだけど……」

 

士郎はそう言いながら、苦笑いですぐ近くにあるダンボールに目を向ける。その視線を辿って千聖もそのダンボールを目にする。

 

「中を見てもいいですか?」

 

士郎は、いいよ、と許可を出すと、リビングで笑いあっていた彩達も台所に訪れ、一緒にダンボールの中を覗く。そこには……。

 

「うわぁ、いっぱい……」

 

「芋ッスね……」

 

ダンボールいっぱいに詰まっている芋を見て、彩達もどう答えればいいか分からず、呟くように応えた。

 

「ほんとこんなに沢山送られても困るんだよな……」

 

「確かに……これは多すぎますね」

 

千聖は立ち上がり、士郎の手元にある切られた芋に目を向ける。

 

「それで、士郎さんはこちらの芋を使って料理していた最中だったのですか?」

 

「あぁ、それに作ろうって思った理由は他にもあるんだけどな」

 

「他に?」

 

千聖はその他の理由を聞こうと質問を投げかける前に、遮られる。

 

「わぁ!スイートポテトだ!」

 

「とても美味しそうです!」

 

「ジブンもヨダレが出ちゃいそうです……!」

 

「うんうん!あたしも!」

 

4人がキラキラと目を爛々と輝かせていた。

士郎は笑いながら、質問する。

 

「食ってくか?」

 

「いいですか!?」

 

「あぁ、それにお菓子貰いにきたんだろ?」

 

『わーい!』

 

士郎はもう出来上がったスイートポテトを一旦冷蔵庫に直し、新しいさつまいもを取り出す。

 

 

さつまいもは両端を少し多めに切り落とし、2~3当分にしたらすぐ水につける

皮近くのスジを身に残さないように皮を厚めにむき、1cm厚に切ったらすぐに水にさらす

水に5~10分つけおき、途中2~3回水を替えてアクを抜く

白く濁らなくなったら軽く水気をきり、さつまいもを300gになるように量る

耐熱皿にさつまいもを平らに並べてラップをかけたら、電子レンジの500wで3~4分加熱、串が通ればOK

熱いうちにさつまいもを好みの粗さに潰す

砂糖、無塩バター、牛乳を加えて混ぜる

生地が乾いている場合はさらに牛乳10mgを少しずつ加える

さつまいもの水分量で牛乳の量を増減させて、スプーンですくって成形できる程の固さに調整

牛乳を入れすぎた場合はラップをせず、レンジで加熱し水分をとばす

少し入れすぎた程度なら冷蔵庫で冷やすと生地が固くなる

生地を8等分にし、それぞれをラグビーボール状に成形したら、アルミカップの上にのせる

卵を割り、卵白と卵黄を分けたら卵黄のみを溶き、ハケやスプーンで成形した芋の表面に塗る

トースターやコンロのグリルなどで焼き加減を見ながら3~5分焼く

きれいな焼き目がついたら……完成!

 

 

「おまちどーさま」

 

『わぁ!』

 

先程見たスイートポテトとは違い、出来たての香りとほっくらとした湯気を出していた。

 

「それじゃあ早速!」

 

手を合わせ─────

 

『いただきます!』

 

1口食べ、もぐもぐと口を動かし味わって食べる。

 

「美味しい〜!」

 

「優しい甘さですね」

 

「頬っぺた落ちるッス〜」

 

「気に入ってもらえて何よりだよ」

 

士郎は台所から彩達の美味しそうに食べている所を見守りつつ、また新しくスイートポテトを作っていた。

 

「お兄さん、また作ってるの?」

 

「ん?あぁ、後でこころ達が来るからな」

 

士郎がそう答えると千聖は何か納得したように、なるほど、と呟いた。

 

「スイートポテトを作っていたのはこころちゃん達の為だったのですね」

 

「あぁ、夕方くらいにメールがきてな。今日お菓子が食べたいわって、今思い返せばハロウィンだからと、納得してるよ」

 

「ハロウィンの事忘れるなんて、士郎さんお疲れなんですか?」

 

「昨日までテストだったからな。そこまで考える暇がなかったみたいなんだ」

 

ハハハ、と士郎が笑って答えていると、玄関のチャイムが鳴り響く。

 

「噂をすれば、と」

 

士郎は手を止め、玄関に向かう。

 

「ハッピーハロウィンよ!士郎!」

 

「あぁ、いらっしゃい」

 

魔女の格好したこころと、後ろで同じく仮装している美咲達に挨拶を交わす。

 

「こころちゃん!ハッピーハロウィン!」

 

「あら!彩達もいたのね!とても素敵な一日になりそう!」

 

「千聖もいるなんて……今日はとても恵まれているのかもしれないね……!」

 

「貴女はいつも幸せそうね」

 

彩達もこころ達と挨拶を交わし、士郎は微笑ましそうに見守る。

 

「さて、外は寒いだろ?中に入ろう。ちゃんとお菓子も用意してあるから」

 

「流石士郎ね!とても素敵よ!」

 

こころと一緒にはぐみと薫が、お邪魔します、と言いながら入っていき、それに続いて彩達も中に戻る。

 

「し、士郎さん!こんにちは!」

 

「士郎さん、こんにちは。ちゃんと体調管理してますか?」

 

「こんにちは、体調管理はちゃんとしてるよ。もうあの時みたいに迷惑かけないようにね」

 

痛いところを突かれ、士郎は苦笑いを浮かべる。

 

「ならいいですけど……あ、あと戸山さん達も後から来るそうですよ」

 

「は、はい!それにパレオちゃん達も」

 

「全員集合か……なら早く全員分作らないとな。2人も早く中に入りな」

 

「「お邪魔します」」

 

 

 

 

 

 

 

Trick or Treat!

この後全員分にスイートポテトを振舞った後、士郎も夜のハロウィン祭りに強制的に連れて行かされるのだった。




本当にすみません!
忙しくて合間合間に文章書いているんですけど、間に合わない事が多くなってしまいました!


まぁ、それはともかくTrick or Treat!!
みなさんもいっぱいお菓子貰いにいきましょう!


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モニカプリン

ハロウィン回です
時系列は基本無視スタイルなんでご了承ください
m(_ _)m







「やぁ、ましろ」

 

「し、士郎さん!こんにちは!」

 

商店街で買い物をしていると、同じく買い物中のましろと出会う。出会った場所は八百屋前で、彼女の手にはかぼちゃを持っていた。

 

「かぼちゃ買うのか?」

 

「え、あ、こ、これは!その……」

 

ましろは士郎に指摘され、説明しようとテンパりすぎて、かぼちゃを落としそうになる。そこをなんとか士郎が受け止める。

 

「あっっぶないッ!ふぅ……」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「いや大丈夫だ。ほら、この通りかぼちゃも無事さ」

 

士郎は改めてましろに深呼吸をさせてから、説明を聞く。

聞いた所、ハロウィンのお菓子を作ろうと材料を買いに来たが、いざ考えると何作ろうか悩み、かぼちゃを入れたお菓子を作る事に決めたのだが、今度はかぼちゃのお菓子の種類の多さに四苦八苦し、ようやく作るお菓子が決まったが、1人でちゃんと作れるか心配になっていた所を士郎が声を掛けた、との事。

 

「力になれるか分からないけど、手伝おうか?」

 

「え!?いいんですか!?」

 

士郎の提案に飛び付くように食いつく。

 

「で、でも、士郎さんも用事があるんじゃ……」

 

「特にこれといった用事はないから大丈夫さ」

 

それに、と付け加える。

 

「かぼちゃのお菓子は自慢じゃないが、色々作ったことがあるかな。色々と手助けできるかもしれないぞ?」

 

ましろは心強い助っ人に嬉しくなり、頭を下げ、お願いする。

 

「お願いします!手伝ってください!」

 

「勿論だ。だから頭上げて」

 

そして2人は買い物を済ませ、美竹家に戻り、キッチンで2人並ぶ。

 

「じゃあ早速、作っていくか」

 

「では、私は味見担当をしますね」

 

「セイバーさん!よろしくお願いします!」

 

「こちらこそ、楽しみしてますよ、マシロ」

 

家にはセイバーだけいたので、お菓子作りすると伝えると、「それでは、私は完成を待っていますね」と言って居間で座って待つそうだ。

 

「よし、なら早速作っていこうか。レシピを見せてくれるか?」

 

「は、はい!こちらです!」

 

士郎は渡されたレシピを見て、準備を始める。

 

「かぼちゃプリンか」

 

「はい、これなら出来そうかな〜って、思いまして……」

 

「まぁ、見た感じ調整など間違えなければ大丈夫そうだからな」

 

棚から容器を取り出し、エプロンを着用する。

 

「それじゃあ、始めますか」

 

「はい!」

 

 

小さめの鍋にグラニュー糖と水を入れて中火にかける

 

「菓子作りに大事なのは分量をきっちり守ることだ。料理と違い、最後に調整が難しいからな」

「は、はい!」

 

赤茶色になってきたら、鍋を火から濡れ布巾の上に下ろしてお湯を加え、ゴムベラで素早く混ぜてカラメルソースの完成

熱いうちに容器に均等に流し入れて平らにする

冷えると固まる

 

「容器は冷たいと割れることがあるから、あらかじめ温めておいた方がいいな」

「な、なるほど……」

 

かぼちゃは種やわた、皮を取り、電子レンジで600wで3~4分ほど加熱

串が通るほど柔らかくなったら裏ごし器でこす

オーブンは160度に予熱しておく

ボウルに全卵とグラニュー糖を加え、白っぽくなるまでよく混ぜ牛乳を加える

 

士郎のアドバイス等をメモりながら、率先して自分で作っていく。

「フフ……」

セイバーは一生懸命に作ってるましろを見て、微笑む。

 

裏ごししたかぼちゃを加えて混ぜ、再び裏ごし器でこす

天板にカラメルソースの入った容器を並べ、先程の生地を流し込む

天板に熱湯をプリン生地の高さまで注ぎ入れ、160度に予熱したオーブンで20~30分ほど蒸し焼きに

 

「あとは待つだけだな。少し休憩しようか」

「は、はい!」

「お茶を用意しますね」

セイバーにお茶を入れてもらい、少し休憩を挟み作業に戻る。

 

串を刺して生地が付かないならOK

粗熱がとれたら冷蔵庫で冷やし、生クリームなどをトッピングして……完成!

 

「でき、た……!」

 

「完成だな」

 

早速頂くために、スプーンを2人に渡し手を合わせる。

 

『いただきます!』

 

スプーンで掬い、1口それぞれ食べ、声を上げる。

 

「美味しい……」

 

「えぇ、とてもなめらかですね」

 

「そうだな、これならパイとかにしても良さそうだな」

 

3人はプリンを完食、そしてましろが一緒に作った4人分のプリンを士郎が包みに入れて渡す。

 

「はい、どうぞ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

袋に入れ、玄関で別れの挨拶をする。

 

「今日はありがとうございました!」

 

「気にするなって、こっちも美味しい思いしたし」

 

「マシロ、貴女が作ったプリン、とても美味しかったですよ。自信を持ってください」

 

「士郎さん、セイバーさん!ありがとうございます!」

 

ましろは頭を下げ、感謝を伝える。

 

「またお願いしてもいいですか……?」

 

ましろは少し言いずらそうにしながらも質問をしてみる。すると、士郎は笑顔で答えた。

 

「勿論だ。また来てくれ」

 

「今度はどんなお菓子か、楽しみに待っています」

 

ましろは嬉しくなり、頬赤らめながら頭を下げ、感謝し続けた。

 

 

 

 

「って感じで、士郎さんとセイバーさんの手伝いのお陰で出来たの」

 

「そうだったんだ」

 

練習の休憩の合間に、ましろはメンバーのみんなに士郎と一緒に作ったプリンを差し入れに出していた。

 

「ハロウィンだから、かぼちゃを使ったお菓子を作ったんだね〜」

 

「うん!でも、私1人だと不安だったから、士郎さんには感謝しきれないよ」

 

「あの人のことだから、当たり前とか思っていそうね」

 

「そういえば士郎さんって、料理が得意だって言ってたもんね」

 

プリンを食べ終わり談話していると、透子がある提案をする。

 

「じゃあ今度は、皆で士郎さんにお菓子作り学びに行こうよ!」

 

「それいいね!」

 

「私もお菓子作りは興味あり〜!」

 

「なんとも傍迷惑な……」

 

「で、でも士郎さんはまた来なって言ってくれたから!多分大丈夫、なはず……」

 

今度は、皆で士郎のとこでお菓子作りを学びに行くと計画を立てる。

 

次に作るのは何かな、とまた一緒にお菓子を作るのを楽しみ待つましろだった。




戦闘系のやつを書きたい!
でも時間が無い!
これほど滑稽な話があるかい!?
((┌(。△。)┐))ワッハッハ


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チュチュのお料理教室

さぁ、頑張ってこー






「Mr.シロウ!ワタシに料理を教えなさい!」

 

「……はい?」

 

土曜の昼過ぎ、リリィに呼び出されマンションへ向かうと、中ではリリィと一緒にチュチュとパレオも待っていた。

チュチュは士郎が部屋に入ってきたのを確認した後、勢いよく立ち上がり士郎を指さしながら、お願いする。

 

「えーっと、料理を教えてほしい、だっけ?」

 

「えぇ、そうよ!」

 

士郎はリリィ達の方を見る。2人はその視線に気付くと、チュチュの代わりに説明をする。

 

「実は今日、皆さんで練習する予定なんですけど、その時にレイヤさん達を驚かせたいって料理をするって意気込んじゃいまして……」

 

「リリィさんもパレオも1週間前から料理のお手伝いをしていたんですけど、中々上手くいかなくて……」

 

「クッ!まさかワタシがここまで料理のセンスが無いなんてッ!」

 

どうやら1週間前から料理の練習をしていたらしいが、上手くいかず、四苦八苦した挙句、リリィの提案により助っ人を増やす事にしたらしい。

 

「なんの料理を作ってたんだ?」

 

「ハンバーグにカレー、あとは玉子焼きとかですかね」

 

作った物を挙げていったが、パレオの表情から察するに出来はイマイチだったらしい。

ハンバーグはパサパサ、カレーはトロリではなく水、玉子焼きは黒焼きに……。

 

「それ、俺が助っ人入っても無理じゃないか?」

 

「いえ!士郎さんならやってくれるはずです!」

 

「頑張ってください!」

 

「丸投げかよ!?」

 

と言いつつも、任されたからにはなんとかしてあげたい士郎。

まず、冷蔵庫の中身を拝見させてもらうことにした。

 

「こちらがキッチンです!」

 

「やっぱりキッチンも広いな……それにちゃんと綺麗にしてある」

 

「勿論です!私はこれでもメイドですから!」

 

士郎はパレオが、そういえばキーボードメイドって言ってたな、と思い出しながら、色々と拝見させてもらう。

 

「んー、食材を見るに色々と案はあるが、どれも初めて作るにしては難易度が高いものばかりだな……」

 

「どうしましょう?」

 

士郎は悩みながら、チュチュの方を見る。その視線にチュチュは頭を傾げ、不思議そうな顔をする。

士郎はなにかに頷き、チュチュの方へ向き直る。

 

「なぁ、チュチュ。少し手順は多いが、試してみないか?」

 

「え?」

 

士郎はじゃがいもを取り出し、チュチュに渡す。

 

「肉じゃがを作ってみないか?」

 

チュチュは士郎の手の中のじゃがいもを見つめる。そして─────。

 

「No problem!それを作ってみせるわ!」

 

じゃがいもを受け取る。パレオは嬉しそうにしながら、どこから取り出したのかクラッカーをリリィと一緒に鳴らす。

 

「よ、よし!じゃあやってくか!」

 

 

 

4人共、エプロン姿に着替え、キッチンに立つ。

 

「今回は基本俺が手伝うけど、パレオもリリィもいるか、分からなかったら気軽に聞いてくれ」

 

「えぇ、そうするわ」

 

「なら、始めますか」

 

 

まずじゃがいもとにんじんは皮を剥いて、じゃがいもは4等分、小さいのは2等分で

 

「にんじんは1口大に乱切り……ってわかるか?」

 

「乱切り……?」

 

「回しながら斜めに切るって感じかな、やってみるか?」

 

「も、勿論よ!」

 

玉ねぎは芯を残したままくし切り

しらたきは食べやすいサイズに切って、熱湯で1分位茹でたらアクを抜いて、水にさらしてザルで水気を切る

次にグリンピースなんだが、さっと湯通しすると缶詰の臭みが取れる

その後冷たい水にさらしてこれもザルで水気を切る

 

「で、次牛肉を炒めるんだけど、鍋を温めたら油入れてくれ」

 

「わかったわ……」

 

「肉に火が通ったら取り出してな」

 

同じ鍋に油を少し足して玉ねぎとにんじんを炒める

玉ねぎの色が透き通ってきたら、じゃがいもを加えて炒め、次にしらたき、油を具材に馴染ませる感じで

出来たら具材に被るくらい水を入れて、油、砂糖、みりん、酒、粉末鰹出汁を加える

炒めた肉を上からフタするみたいにして乗せ、落とし蓋で蓋をする

中火~強火にして5~10分くらい煮る

アクが出たらこまめに取る

じゃがいもに火が通ったら醤油を加えて強火で10~15分くらいに、焦がさないように水気を飛ばしつつ煮て

 

「あ、鍋が重いから俺がやるよ」

 

途中で1回鍋ゆすって上下をひっくり返す感じで

汁気が¹∕₃くらいになったら、火を止める

盛り付けの時にグリンピースを散らして……完成!

 

 

「じゃがいもの中央まで味を染み込ませたいんなら、このまま3時間以上寝かせる。冷める時に味が染み込んでいくから火にはかけない」

 

「そうなの?」

 

「あぁ。で、どうする?」

 

「……レイヤ達に食べさせたいから寝かせましょ」

 

チュチュの決定で寝かせることにした。という事で、士郎は帰ることにした。

 

「出来上がりは食べていかないの?」

 

「食べたいけど、俺の方も晩飯の準備をしないといけないからな」

 

士郎は靴を履き終え、振り返り笑う。

 

「また作ってくれ」

 

そう言って、士郎は帰って行った。

 

 

 

 

「で、本当に作ったの?」

 

「Of course!早速食べてみなさい!」

 

パレオに肉じゃがを持ってこさせ、6人の皿によそう。

 

「いい匂いですね!」

 

「見た目も悪くないな」

 

「ちょっと、それどういう事よ!」

 

「まぁ、前回の黒い玉子焼きを見た後だからね……」

 

「ウグッ、こ、今回は大丈夫よ!」

 

6人、手を合わせ─────

 

『いただきます!』

 

1口食べ、それぞれ感想を述べる。

 

「美味しい……」

 

「美味いな」

 

「今回のは上手く出来てるね」

 

チュチュも1口食べて、頬を緩ませる。

 

「美味しいですね!チュチュ様!」

 

「あ、当たり前よ!ワタシが作ったんだから!」

 

「料理は続けますか?」

 

リリィに言われ、全員から注目を集める。チュチュはスプーンを置き、首を振る。

 

「シロウには悪いけど、もう料理はこりごりだわ。ワタシは食べる側の方がいいわ」

 

チュチュは笑いながら、応えた。

 

 

 

 

 

 

「シロウ、今日の夕飯はなんでしょうか?」

 

「今日は肉じゃがさ」

 

「美味しそうな匂いがします」

 

「もう出来たから2人とも皿とか用意してくれないか?」

 

士郎は鍋を机の真ん中に置く。

 

 

「おまちどーさま」

 

 




最近、朝が寒くて昼には暑い……
何故…


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具材たっぷり豚汁

大変長らくお待たせしましたm(_ _)m





「ハァ……ハァ……」

 

士郎は今、絶体絶命の危機に瀕していた。

 

「まずいな……」

 

夕暮れの森の中、冷たい風さえ感じられない程士郎の体は熱を発していた。士郎が熱を発している原因は“焦り”。

では何故焦りを見せているのか?その訳は、目の前にいる怒りをあらわにしている猪が答えだった。

 

 

何故こうなったのかは、時は遡る─────。

 

 

 

家で皿洗いをしていた所、一通のメールが届く。送ってきた相手は麻弥だった。送り主が分かると、すぐに内容を確認する。

 

「イノシシ狩り?」

 

 

士郎は指定された場所へ向かい、そこにいたメールの送り主─────麻弥達を見つける。

 

「お、いたいた」

 

「あ、士郎さん!こんにちはッス!」

 

「シショウ!お疲れ様です!」

 

「だから師匠じゃないって……」

 

士郎は5人の少女……パスパレの彼女達に挨拶を交わす。

周りにはスタッフの方と猟師の人達が何人かいた。

そこで士郎はメールを貰ってから1つ気になる事があったので彼女達に質問する。

 

「イノシシ狩りってアイドル的に大丈夫なのか?その、言い方が悪いけどイノシシを倒しに行くんだろ?」

 

「安心してください。本当にイノシシを倒しに行くのではありませんから」

 

「それはよかった……ん?なら、イノシシ狩りって何するんだ?」

 

「今回はほとんど森の散歩になりますね、あとは罠等の説明をしてもらったりします」

 

どうやらイノシシ狩りにおいて狩りに使う道具やイノシシと出会った時の対応の教えらしい。

流石にイノシシを彼女達の前で倒しに行く訳じゃなく、ほぼ森の散歩と聞き、どこか安心した。

そんな時、どこか聞き覚えのある声で呼び掛けられる。

 

「おぉ、坊主じゃねぇか!」

 

「ラ、ランサー!?何でアンタがここに!」

 

ランサーは帽子を脱ぎ、手で回しながら答える。

 

「知り合いのおっちゃんに参加しねぇか、て誘われてな。まぁ暇だったし着いて来たって感じだ」

 

「そ、そうなのか」

 

「それに嬢ちゃん達も行くって聞いたからな、知り合いがいるなら尚更行くしかねぇだろ?」

 

ランサーは、日菜とハイタッチして互いに笑い合う。

 

「おーい!そこの背の高い青髪の兄ちゃん!」

 

猟師の人に呼ばれ、トラ柄の上着を渡される。

 

「兄ちゃんは背が高いから合うサイズが無くてね、1番デカいこれを着ておいてくれ」

 

「俺はいい」

 

「そうもいかなくてね、こちらの為と思って着てほしいよ」

 

「ほー」

 

ランサーはそう言われ、仕方なく上着を羽織る。それに続くように士郎達も同じ柄の上着を羽織る。

 

「久々に腕が鳴るねぇ」

 

「程々にな……」

 

ランサーと会話してると、周りのスタッフや猟師も会話に入ってくる。

 

「それにしても兄さんガタイいいな、何かスポーツかやってましたか?」

 

「ん?あぁ、()()()()

 

少し?と士郎は疑問を浮かべながら、言葉にはしなかった。

 

森に入ってから数分が経ち、周りを見渡しながら先へと進んで行く。

士郎達の前では、カメラが回り彩達が猟師の説明を聞きながら、順序よく進行が進んでいるみたいだった。

 

「なぁ坊主」

 

そこに小声でランサーが士郎に語り掛けてくる。

 

「さっきから嬢ちゃん達は何してんだ?」

 

「さっきも説明した通り、テレビの撮影だよ」

 

「確かによく見るが、こんな事しながらやってたんか」

 

ランサーは興味深そうにしながら、彼女達を見つめる。

 

「それにしてもいねぇな。なんでぇ、ここらのケモノは臆病なのか?」

 

「今回は会わないルートを行ってるみたいだからな。まぁ、イノシシも生き物だからもしかしたらこっちに近付いて来るかもしれないらしいけど」

 

「そういうの任せとけ」

 

「ハハハ……大英雄に守ってもらえるなら安心だな……」

 

森の奥に入るにつれ、道が増えたりしていきそして士郎は─────。

 

「て……あれ?」

 

 

迷子になっていた。

 

 

「さっきまで一緒にいたのに、はぐれた?」

 

士郎は周りを見渡し、ランサー達を探す。すると、ガサッと草木を押し退けて来る音が聞こえた。

 

「なんだ、そこにいたの……か」

 

そう言って士郎は振り返る。しかし、そこに居たのは人でなく、イノシシだった。

相手がイノシシだと分かった瞬間、一瞬で血の気が失せ顔を真っ青になる。

 

イノシシは今すぐにでも突進してきそうな気迫を感じさせながら、お互いに距離を空け見合う。

 

(落ち着け……イノシシと出会ったら落ち着いて後ろを向かずに速やかに後退すること……)

 

士郎はゆっくりと後退しながら、頭を冷静にさせる。

 

(刺激しないように、大声を出さないように)

 

ゆっくりと後ろに下がる。が

 

「うわっ!!」

 

下がった先に運悪く陥没しており足場がなく、足を滑らせ転倒する。

 

「いっつ……っ!?」

 

転倒した際、驚きのあまり声上げてしまい、イノシシを興奮させてしまった。

 

(しまっ─────)

 

イノシシは勢いよく走り出し、士郎に向かって突進!─────せず、空へと飛んで行った。

 

「え?」

 

士郎の目の前にはランサーが立っていた。

 

「しまった。加減を間違えた」

 

ランサーはそう言って茂みの方へ歩いて行った。

 

「え?ランサー?」

 

士郎は何が起きたか分からず、混乱した。とりあえず士郎はゆっくり立ち上がり、転んだ際に着いた土等を払い落としていると─────

 

「よぉ坊主、こいつどうする?」

 

「え」

 

ランサーは先程飛んでいたイノシシを回収してきたのだった。

 

 

 

「いや〜、よく1人で担いで来れたなぁ」

 

最初の広い広場に全員帰って来ており、ランサーがイノシシを倒した事に盛り上がりを魅せていた。

 

「あんな軽々と持ってくるし、一発で倒しちまったって言うし、これかも手伝わんか?」

 

「やめとく」

 

猟師にスカウトされてるランサーを他所に士郎は彩達に心配されていた。

 

「ランサーさんがいなかったら士郎さん危なかったんですよ!」

 

「あ、あぁ、反省してるよ……」

 

「ほんとッスよ!どれだけ心配したと思ってるんですか!」

 

「ご、ごめん……」

 

「まぁまぁ、無事だったのだからそのくらいにしてあげたら?」

 

千聖の助け舟により、渋々許される士郎。

 

「そういえばあのイノシシどうなったの? 」

 

「向こうで解体してるらしい」

 

「もしかして食べられるの!?」

 

「残念だけど少し時間かかるみたいだ」

 

「なーんだ、残念」

 

日菜は口を尖らせながら、残念がる。

 

「うー、寒くなってきた」

 

「日が落ちたら一気に寒くなってきたな」

 

そう言って士郎は自分の鞄からある物を取り出す。

 

「まー、そうなるかと思って一応温まりそうなやつ準備はしておいたんだけど」

 

『お〜』

 

 

まずは下準備

大根、にんじん、里芋の皮を剥く

ごぼうは皮を剥がず、土汚れを落とす

皮が気になる場合は包丁の背でこそぐか、アルミホイルで擦ると皮が薄く剥ける

こんにゃくはアク抜きが必要な場合は塩で揉むかお湯で軽く湯がす

里芋は1口大、大根はいちょう切り、にんじんは半月切り

ごぼうはささがきして水をさらす

こんにゃくは4.5cm程の短冊切り、しめじは軸を取り小房に分け、長ネギは斜め切りに

長ネギは白い部分と青い部分を別にしておく

 

士郎は猟師からコンロと鍋を借りて、最後の仕上げをする。

 

鍋にごま油を入れ熱し、切った野菜を加え炒める

この時には長ネギの青い部分は入れないこと

大根が透き通ってきたら、豚コマ肉を加え更に炒め、肉に火が通ったら、木綿豆腐を手で崩しながら入れる

水1ℓを加え、沸騰したらアクを取る

粉末鰹出汁と味噌を1/2量溶き入れて弱火で20~30分煮込み、煮詰まってきたら水を約200cc程足す

大根や豆腐に味噌の色が染み込み、全体的によく煮込めたら味噌の残り1/2量を溶き入れる

水や味噌で味を調整し、長ネギの青い部分を入れて火が通ったら……完成!

 

 

「豚汁の完成。イノシシの肉じゃないけど、具も沢山入れたから食べごたえあるぞ」

 

器に注ぎ、全員に配って行く。

 

「お、美味そうじゃねぇか。それじゃまぁ────」

 

『いただきます!』

 

先に渡ってきた人達から豚汁を食べて行く。

 

「う〜ん!美味い!」

 

「ハァ〜身体が温まっていくよ〜」

 

「相変わらず坊主の飯はうめぇな!」

 

士郎は全員に渡し終えた後に、豚汁を啜り、笑みを浮かべる。

寒い星空の下で、温もりでいっぱいになっていた。

全員に行き渡ると




お待たせしました!
しばらく体調不良等で手付かずにいました
休みが多くなる事もありますが、暖かい目で「また休んでら〜」と軽い気持ちで見守って下さい


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クリスマスケーキ

MERRY CHRISTMAS!!!!

最高の1日を過ごすが良い!
我が許そう! By何処かの英雄王




─────12月24日。

 

 

クリスマスイブである今日。街では色々なイベントや子供達へのプレゼント配布等、色々な行事が行われている─────はずだった。

 

 

「寒いぃぃぃぃ!!!!」

 

ひまりは体を震わせながら、蘭達と商店街を歩いていた。

 

「まぁ、今日は確かに冷えるな」

 

「冷えるってレベルじゃないでしょ!?」

 

「モカちゃんも流石にこれは無理……」

 

「……寒い」

 

運悪く今日の天気は冷たい突風が吹く程風が強く、気温も零度を下回る程、寒冷化していた。

お陰で外でやるイベントは中止、商店街でも客の通りが極端に少なくなっていた。けれどイベント自体はショッピングモールの方に移り決行するらしく、子供達の楽しみだけは守られたみたいだった。

 

「うぅぅぅ、巴ぇ〜暖めて〜!」

 

「ハイハイ、あと少しで着くから頑張ろうな」

 

「蘭〜引っ付いていい〜?」

 

「ちょ、モカ離れて、歩きにくい」

 

4人は冷たい風に吹かれながら、ようやく目的の場所に辿り着いた。

そして、扉に手をかけ開ける。

 

「あ、いらっしゃい─────って、どうしたの皆!?特にひまりちゃん!大丈夫!?」

 

彼女達が目指した場所は、羽沢珈琲店。

今日は店を貸し切りにしてもらい、クリスマスパーティーをしに集まったのだ。

 

「うぅぅぅ、つぐ〜!温かい物を恵んでください〜!」

 

「う、うん!分かったから席に座って待っててね」

 

そう言ってつぐみは厨房の方へ行き、蘭達も席に座り心を落ち着かせる。そのタイミングで声をかけられる。

 

「寒い中、お疲れ様です」

 

「あれ?もう来てたんですか?紗夜さん」

 

「えぇ、私達も巴さん達が来る数分前に来たところなんです」

 

紗夜が振り返る先には友希那達が座っていた。多少体を震えさせながら……

 

「えっと、そちらも寒い中、お疲れ様です」

 

「えぇ……ありがとうございます……」

 

店の中は暖房が着いており暖かいとはいえ、外の寒さを耐え忍びながらやって来た代償は大きかった。

 

「それに私達の他に、もう来られてる人達もいますよ?」

 

「え?」

 

すると、裏からエプロン姿のつぐみ─────ではなく

 

「ヘイ!ラッシャイ!!」

 

「イヴちゃん!それ違うから!てか今のわざとだよね!?」

 

「おー!流石ツグミさん!ノリツッコミです!」

 

パチパチと手を叩き、イヴは褒め喜ぶ。

 

「イヴちゃん!?来てたの?」

 

「はい!アヤさん達も一緒です!」

 

イヴが言うと蘭達が座っている席から見えなかったが、チラッと日菜が顔を出して手を降ってくる。

 

「あちゃ〜、バレちゃった☆」

 

「バレた、というよりイヴちゃんが教えたのだけどね」

 

そして、それに続いて他のメンバーも顔を出す。

 

「もう声を出してもいいかしら!」

 

「やっほー!皆元気ー?」

 

「息を潜め、そしてスポットライトの様に目が集まった瞬間に華麗に登場……あぁ、なんて儚いんだ……!!」

 

こころ達が彩達の後ろの席から顔を出し、場を明るく盛り上げる。

3人の後ろで頭に手を当て、困った顔をしてる美咲を置いて……

 

「もうほとんどメンバーが揃ってるね」

 

「あとは─────」

 

そう言いかけた時、扉が開かれる。

 

『寒いぃぃぃぃ!!!!』

 

そんな一声と共に、中へと入ってくる。

 

「うぅぅぅ!寒いよぉぉぉ!!」

 

「なんで今日はこんなに寒いだよ!」

 

「あはは、まぁ冬だし、ね?」

 

「つ、つくしちゃん!?大丈夫!?」

 

「だだだだだいじょうぶぶよ」

 

「完全に壊れてる!?急いで暖めないと!」

 

「パパパレオ!温かい飲み物!」

 

「はい!頼んでおきますね!」

 

ぞろぞろと体を震えさせながら、空いてる席にグループ同士で座る。

 

「これで全員集合、かな?」

 

「みたいですね」

 

香澄が有咲に引っ付きながら、辺りを見渡す。

 

「士郎さんは?」

 

その疑問に他のメンバーも思い、同じく辺りを見渡す。

 

「士郎さんなら─────」

 

「ここにいるぞ?」

 

つぐみが答えようとすると、裏から士郎が顔を出てきた。

 

「って、大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃないですよ!今日めっちゃ寒くて!」

 

「確かに今日は寒いよな」

 

と、士郎は喉を鳴らし、全員の注目を集める。

 

「えー、今日は寒い中集まってもらってありがとう。今日はクリスマスイブだからケーキを作ってみたから、みんなに食べてほしいと思ってる。今日集まった事に後悔させないように、とはいってほしいなとは思ってるけど、楽しい日にはしようと思っている」

 

そして士郎は裏に戻り、つぐみとイヴも一緒に裏に入り、料理を持って帰ってきた。

 

「今日は腕によりをかけてみんなに振舞おうと思っている。存分に召し上がれ」

 

そして、席に色々な料理が置かれ、クリスマスパーティーが開始された。

 

 

 

「ふぅ、美味しかった!」

 

「いや〜、心も体も温まっちゃった!」

 

それぞれ談話していると、

 

「さて、ならもうシメの物を持ってくるか」

 

士郎はそう言って、席を立ち厨房に向かう。

 

 

─────彼女達が店に来る前。

 

「さて、始めるか」

 

つぐみの父─────この店の店長から食材や調理器具を好きに使って良い、との許可を貰っているので、士郎は早速料理を始める。

 

 

まず初めに準備として、型の底と側面に、オーブン用の紙を敷く

そしてあらかじめオーブンを160℃に温める

フライパンの深さの1/3程まで水を入れ、中火にかけて鍋肌がフツフツとしてきたら火を止める

シロップの材料は合わせてよく混ぜ、砂糖を溶かして冷ましておく

最初に作るのはスポンジの生地

ボウルを卵、砂糖を入れてハンドミキサーで軽くほぐす

約80℃の湯を入れたフライパンで湯煎にかけながら、ハンドミキサーで泡立てる

卵液が温まったら湯煎から外す

ハンドミキサーを持ち上げた時に生地がモッタリと落ちて、重なるくらいまで2~3分間泡立てる

その後、ハンドミキサーを低速でさらに1分間泡立てる

薄力粉の半量をふるい入れ、ゴムべらで底からすくい上げるように混ぜる

粉っぽさがなくなったら残りの半量をふるい入れ、同様に混ぜ、粉っぽさがなくなったら、更に10回混ぜる

プレーンヨーグルトとごま油を別のボウルに入れ、馴染むまで泡立て器で混ぜる

その後、先程作ったものをゴムべらで1すくい分加え、泡立て器で馴染むまで混ぜる

混ぜた後、ボウルに加え戻し、ゴムべらで底からすくい上げるように、全体にムラがなくなるまで混ぜ合わせる

型に流し入れ、10cm程上から台の上に落として気泡を抜き、160℃のオーブンで30分間焼く

焼き色がつき、真ん中に竹串をゆっくり刺して生地がつかなければ、すぐに型ごと10cm程上から台の上に落とす

型から外して網にのせ、側面の紙を外して冷ます

底の紙も外してポリ袋に入れ、涼しい場所か冷蔵庫で2時間以上休ませる

冷ました後、スポンジは厚みを半分に切る

いちごは洗ってヘタを除き、2/3量を縦半分に切って紙タオルで水気を拭く

続いてクリームを作る

ボウルに生クリームと砂糖を入れ、底を氷水に当てながら、ハンドミキサーで垂らした時に重なるくらいの堅さ、七分立てに泡立てる

別のボウルに1/3量を移し、ツノが柔らかく立つくらいの堅さに泡立て器で整える

スポンジの断面にシロップを1/3量ずつ小さめのスプーンで塗る

下半分の断面に1/3量にしたクリームを適量を薄く塗って、縦半分に切ったいちごを適量に並べる

上からもクリームを適量に塗りいちごで覆う

スポンジの上半分をのせ、1番上に残りのクリームを塗る

ケーキの上に七分立てのクリームの半量をのせ、ナイフで広げる

はみ出したクリームは、側面にも広げるように均一に塗る

ジッパー付き保存袋を角から折り込んで三角形にし、テープでとめて絞り出し袋を作る

残ったクリームを泡立てて入れ、袋の先を1cm程切り、ケーキの上に丸く絞り出す

残りのいちごを飾り、30~1時間冷蔵庫で冷やす

 

 

「そして、出来上がったのがこちらでございます」

 

『おぉ〜!』

 

出来上がったケーキに彼女達は感嘆な声を上げ、順番に切り分けたケーキを受け取り、席に着く。

 

「それじゃあ、改めてもう一度─────」

 

 

『いただきます!』

 

 

肌寒く風が強い日……それでも、友達や家族と迎えるクリスマスは、どこか温もりを感じる日になるかもしれない……

そんな1日を過ごしたのだった




寒い!以上!!


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大晦日の年越しそば

あけましておめでとうございます!
今年もいつも通り頑張っていきます!





大晦日

 

 

「大掃除も終わったし、あとは年が変わるのを待つだけだな」

 

士郎がそう呟き、隣にいた蘭とセイバーが反応する。

 

「ランの家はとても広いですからね。掃除が少々大変でしたが」

 

「ごめんなさい、掃除のお手伝いをしてもらって……。助かりました」

 

「いいえ、お安い御用です」

 

士郎達は商店街を歩きながら、のんびりと談話をする。

 

「さて、年明けからしばらくこの辺の店も閉まっちまうし、今のうちに買い物しておかないと」

 

「荷物持ちならおまかせを」

 

「あたしも持ちます」

 

しばらく歩き続けていると、人混みが多くなっていき、セイバーはその人混みを不思議そうに見ていた。

 

「今日はなんだか人が多いですね」

 

「ん?あぁ、まぁ目的は俺たちと一緒だろうな」

 

「私達と同じ、といいますと、正月の為の準備でしたか」

 

そしてセイバーは少し考えことを始め、そして質問をする。

 

「そういえば正月というのは具体的には何をするのですか?」

 

「確か……新年を祝うための行事、だったと思います」

 

「それで合ってるぞ。正月飾りに門松っていうやつとか鏡餅なんか飾ったり、あとおせち料理を食べたり……」

 

「おせちは知っています。タイガが教えてくれた事がありました。多種多様な料理が重箱に詰められているあれですね」

 

「そう、中に入れる豆だったり数の子……かまぼことか一つ一つに意味があったりするんだよ」

 

スーパーに入った士郎は買い物をしながら、説明を続ける。

 

「例えば豆だったら、“まめ”に働けるように健康であれ、とか」

 

「なんと、正月という祝いの日に相応しい料理なのですね。頂いてみたいです」

 

「まぁおせち料理は明日、その前に今日の夕飯はこっち」

 

士郎は手に取った商品をセイバーに見せた。

 

 

 

「ただいま」

 

家に帰ると、聞き覚えのある笑い声が聞こえ、居間の方へ向かうと

 

「あ〜おかえりなさい、士郎さん、セイバーさん」

 

「ただいま、てもう溶けてるな……」

 

コタツに取り込まれたひまりに、若干呆れ顔で見つめる。

そして、コタツを囲むように座っている巴とつぐみも同じ意見なのか、苦笑いを浮かべていた。

 

「あはは……まぁ寒い中頑張って歩いてきたから、その、今回は許してあげてください」

 

「まぁ、いいけど……そういえばモカは?」

 

士郎がそう言うと蘭が下を指さす。

その指した先に、頭だけ出してコタツに入り込んでいるモカがいた。

 

「ん〜」

 

「……まぁ、こうなる事は大体分かっていたけど」

 

士郎はキッチンに向かい、セイバーにコタツで休憩、と提案し、ものの数秒でコタツに取り込まれた。

 

「さて……」

 

士郎はエプロンを身につけ、袖を捲る。

(今日はこれ一択、かえしは先にやったんでOK)

 

 

“かえし”とは麺つゆの素になるものの事

鍋にみりんを入れ、沸騰させてアルコールを飛ばし、弱火にしてざらめ糖を入れて溶かす

醤油を加え、弱火で焦がさないように加熱し、鍋縁の醤油が小さく泡立ち、表面にアクが現れたら取り、火を止めて自然に冷まして完成

 

(で、昨日から浸けといた昆布と)

 

出汁昆布は水に浸けておき、その水ごと鍋に入れ、沸騰寸前になったら昆布を取り出す

弱火にしたら鰹節を入れて30~40分煮出し、こし布等でそれをこせば出汁の完成

続いて長ネギは小口切り、小松菜は茹でて食べやすい長さに切り、かまぼこは8mm幅程度に切る

海老は殻と背ワタを取り、尾の剣先を少し切り水を出す

塩、片栗粉、酒少々で海老をもんだら水で洗い、キッチンペーパーで水気を取ったら、腹側に5ヶ所程1/3程度の深さまで切り込みを入れ、腹を下面にし、上から押して“ブチッ”と筋が切れる感触がなくなるまで伸ばす

卵、冷水をよく混ぜ、薄力粉を加え、縦に切るように混ぜる

海老に打ち粉をし、余分な粉を叩き落としたら、海老の尻尾を持ち衣をつけ、170~180℃の油で揚げていく

具材から出る泡が小さく多いから、大きく少ない量になっていき、パチパチと大きな音に変わってきたら揚げ上がりの合図

油をよく切り、海老を立ててバットに取り出す

出汁とかえしを合わせて温めて味を調整し、少し固めに茹でたそばを冷水にさらし、水気を切る

お湯でそばを温め、器に盛り、つゆをはり、海老の天ぷら、長ネギ、小松菜、かまぼこ、柚子皮を添えて……完成!

 

 

「よし」

 

出来上がった料理を持っていく。

 

「はい、年越しそば」

 

「トシコシソバ?普通にそばと違うのですか?」

 

「そうだよ!」

 

「年越しそばはおせち料理みたいに意味があるからね」

 

「そうなのですか?」

 

「あぁ、そばは他の麺類よりも切れやすいんで今年の“厄”を断ち切る……とか、細く長く伸びることから健康長寿とかの縁起担ぎだな」

 

「なるほど」

 

セイバーは年越しそばを見つめながら、

 

「では、これを食べて皆が健康であるように」

 

『いただきます!』

 

麺をすする音、咀嚼音が部屋に鳴る。

 

「う〜ん!美味しいー!」

 

「おぉ〜生き返るね〜」

 

「やっぱり年末最後は年越しそばだな」

 

「このスープ美味しいです!」

 

全員楽しそうにそばを食べていた時、士郎はふと思い出した。

 

「どうかされましたか?シロウ」

 

「いや、そういえば年越しそばの由来って色々あるんだが、その中に1つにこんなのがあってさ」

 

 

“末永くそばにいられますように”

 

 

士郎に注目が集まり、その視線に気付いた士郎は頬を掻きながら

 

「っていう……まぁ、その……来年もよろしくな」

 

「……えぇ、こちらこそ」

 

「よろしくお願いします、士郎さん」




良い年を(`・ω・)bグッ!


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みんなで作る餃子

今回は私の大好物でございます!
(о'¬'о)ジュルリ





肌寒い風が吹く今日。

士郎はこころの招待を受け、弦巻家に来ていた。それは士郎だけでなく、各バンドグループの彼女達もこころに招待を受け、遊びに来ていた。

 

「待っていたわ!早速入ってちょうだい!」

 

彼女の家の中へ案内され、執事、メイドに多大なる接待を受けながら、大広間に集まる。

 

「で、今度は何する気なの?こころ」

 

美咲は何か嫌な予感を感じながらも、この中の代表としてこころに質問を投げかける。

 

「あれ?美咲ちゃん達も知らないの?」

 

「わ、私達もこころちゃんに何も教えられてないの」

 

「メンバーにさえ、内容を隠す……まさに“敵を騙すにはまず味方から”だね!」

 

「言ってることは分かるけど、使い所間違えてない?」

 

彼女達が意図を探っていると、こころが目を輝かせ高らかに答える。

 

「今日は、みんなで夕食を作ってみようと思うの!」

 

『……えー!?』

 

間を空け、驚きの声を上げる。

 

「ちょ、こころ!?突然何言い出してるの!?」

 

「そんなにおかしいことかしら?とても楽しそうだと思わない!?」

 

こころは士郎の元へ走り出し、そしていつもの突撃をかます。

 

「グボッ!?」

 

「いつもあたし達にご飯を作ってくれるじゃない?その時の士郎がとても楽しそうだったの!」

 

いきなりの突撃に耐え切れず、倒れてる士郎の上でこころは理由を打ち明ける。

 

「だから!あたし達もその楽しさを体験しようと思うの!」

 

「理由は分かったけど、士郎さんから下りてから言いなさいよ!」

 

美咲に回収され、士郎はようやく起き上がりこころに向き直る。

 

「確かに料理は好きだけど……」

 

「あたし達が料理を……」

 

「とてもめんどくさいわね」

チュチュは本当に面倒くさそうに溜め息を吐きながら、それでもやらない、とは言わなかった。

 

「珍しく協力的なんですね」

 

「shut up!余計な一言よルイ!貴女もそう言いながらやる気あるの!?」

 

「それなりに、と言っておきます」

 

「私に出来るかな……?」

 

「出来ますよ!ジブンも微力ながらもお手伝いします!」

 

「私もお手伝いさせていただきます!なのでアヤさんも自分を信じてやってみましょう!何事にもチャレンジあるのみです!」

 

チュチュと瑠唯の言い合いが起き、ましろ達がそれを止めに入り、他のメンバーはやる気を見せ、結局全員がこころの提案に賛成という結果になった。

 

「みんなやる気なのね!とてもいい事だわ!」

 

「それでこころちゃん!何を作るの?」

 

「これだけの人数となると、それなりの量がある物じゃないと足りなくなるな」

 

「なら案内するわ!着いてきて!」

 

香澄の質問にこころは笑顔で、厨房へと案内する。

厨房に着くと、その机には沢山の野菜や肉、そして餃子皮と書かれた皮が大量に置かれていた。

 

「作る料理って、餃子か?」

 

「えぇ!餃子なら全員で作れるって聞いたわ!」

 

士郎はチラッと入口に目を向けると、いつもの召使いがこちらを覗いていた。目が合うと会釈をしてきたので、士郎は小さく会釈を返す。

 

「さぁ!みんなで作っていきましょう!」

 

『おー!』

 

半分以上が乗り気で取り掛かる。そして残りは半ば面倒くさそうにしながらも、一緒に取り掛かる。

 

「……よし!俺もやりますか」

 

 

まずキャベツを粗みじんにし、塩をふたつまみ程振って、全体に混ぜたら10分置く

長ネギはみじん切り、ニラは小口切り

ニンニクと生姜をすりおろしたら、醤油、酒、鶏ガラスープの素、砂糖、味噌、水を合わせる

剥きエビは背ワタを取り、軽く刻んでおく

先程のキャベツはよく揉んで水分を出し、更にキッチンペーパー等に包んでよく揉み、水気を絞る

ボウルにひき肉と塩ひとつまみを入れ、粘り気が出るまでよく混ぜ、キャベツ、ニラ、長ネギ、エビ、先程合わせた調味料を追加し、更に混ぜる

混ぜた餡は冷蔵庫で冷やしておき、味を馴染ませる

 

「よし、包んでいこうか」

 

餃子の皮の中心に餡13~15gをのせ、皮の縁に水を付け、包んでいく

餃子をのせるバットには薄く小麦粉を振っておき、作り終わったものは乾燥しないようラップをかけておく

 

「ん〜、上手く包めない」

 

「やっぱり難しいよね」

 

「具を少し減らして包んでみたら?」

 

全員で考え、そして協力し、餃子がもりもり出来上がっていく。

 

温めたフライパンに油をしき、餃子をある程度の間隔で並べ、再び火を点ける

軽く皮に焼き色が付いたら餃子が1/3浸かる程の熱湯を注ぎ入れ、蓋をして強火で2~3分程焼く

水気がある程度なくなったら蓋を取り、水気を完全に飛ばし、強火のままごま油を少量回しかけ、良い焼き色が付くまで焼く

ヘラで餃子をフライパンから剥がし、皿に盛り付けて……完成!

 

「どんどん焼いていくから、持っていってくれ」

 

『はーい』

 

そして作った餃子を全て焼き終え、テーブルへと並べていく。

 

「よーし、じゃあ早速頂こうー!」

 

『いただきます!』

 

サクッと咀嚼音が鳴り、そして頬を緩める。

 

「ん〜美味しい!」

 

「自分で作った料理をみんなで食べるっていいね!」

 

「この変な形をしてる餃子も美味しいわ」

 

「What?なんでそれをワタシを見ながら言うの聞いてもいいルイ!?」

 

「ま、まぁまぁ2人とも落ち着いて!」

 

ワイワイとはしゃぎながら、美味しそうに餃子を食べていく。士郎はその様子を黙ってみていると、隣に座っているこころから、笑顔が送られる。

 

「士郎!とても楽しいわね!」

 

「……あぁ、そうだな」

 

士郎は笑顔で返し、それに満足したのかこころは他のメンバーの所へ向かい、餃子を口に突っ込みに行った。

 

士郎は、こころに言われた“楽しそうに料理している”が、自分でもようやく分かった様な気がした。

 

 

「明日は、何を作ろうかな」

 

 




次回……最終話


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衛宮さんの今日のごはん

最終話です





学校の下校時刻。

 

俺は今日の献立を頭で考えながら、帰りの支度を済ます。

 

「おーい、衛宮ー」

 

「一緒に帰ろうぜー」

 

「あぁ、すぐ行く」

 

学校の友人である大輝、達也が教室扉の方で壁にもたれかかって待っていてくれた。

 

「悪い、待たせた」

 

「よし!じゃあ帰り際に商店街寄って行こうぜ!」

 

「賛成ー、めっちゃ腹減ってるから何か買い食いしてくかー」

 

「俺も買い物したいし、同じく賛成だな」

 

そう言って俺達は、学校の校門を抜け、商店街へと足を進めた。

商店街に辿り着くと俺は近くの八百屋、肉屋に1件1件寄って買い物していった

 

「悪いな、付き合ってもらって」

 

「気にすんな、勝手に着いてきてるだけだしな」

 

大輝と達也は嫌な顔一つもせず、俺の買い物に付き合ってくれた。むしろ今日の献立の案も一緒に考えてくれたよ。

 

「なんなら俺ん家と同じで鍋にしようぜ」

 

その一言で今日は鍋にする事にした。

 

「てか、久しぶりじゃね?俺達が一緒にこうしてだべりながら帰ってるの」

 

「まぁ、互いに忙しかったからなー」

 

「確かにな……ん?」

 

魚屋近くまで来ると、見知った顔が接客業をしていた。

 

「おぉー坊主じゃねぇか!」

 

「えっと、バイト中か?」

 

「おぉ、見ての通りだ」

 

ランサーは笑いながら、魚を売り出してくる。

 

「活きのいい魚ばっかりだ!どうだ?買ってかないか?」

 

「悪いな、今日は鍋にするから。また今度安いのを買いに来させてもらうよ」

 

「ほー、鍋か……」

 

あ、まずい。そう思った時にはもう遅かった。

 

「坊主、俺もそれ食いに行かせてもらうわ」

 

「はぁ、言うと思った……」

 

「ったりめぇよ!それに最近坊主の飯を食ってなかったからな!じゃ、よろしくな!」

 

そう言って俺達は魚屋から離れて行った。

 

「衛宮、あんなガタイのいい人と知り合いだったのか?」

 

「知り合いというかなんというか……」

 

なんと言えばいいのだろうか?

俺は考えたけど、別に言う必要ないな、と思い話を逸らして話題を無理やり変えた。

 

あの後、しばらく買い物を続け、鍋の材料を買い込み終え、大輝と達也と別れ、今帰路を辿っていた。

家に向かい、歩いているといつの日かの光景と重なった。

 

「確かあの時もこんな肌寒い日だったっけ」

 

そう干渉に浸っていると、後ろから声をかけられた。

 

「士郎さん」

 

「ん?おぉ、蘭。それにひまり達も一緒か」

 

いつもの彼女達が笑顔で挨拶を交わすので、俺もそれに応え笑顔で挨拶をする。

 

「今、帰りか?」

 

「はい、士郎さんも帰りですか?」

 

「買い物帰りだな、今日は鍋にしようと思ってな」

 

袋を持ち上げて、中を見せる。

 

「おぉ〜、じゃあ今日は鍋パーティーだね〜」

 

「楽しみ!」

 

「え?どういう事だ?」

 

俺はなんの事か分からず、質問をするが何故か彼女達も疑問そうな顔をする。

そうすると、蘭が思い出したかのようにハッと顔を上げる。

 

「士郎さんに伝えるの忘れてた」

 

「えぇ!?ちょ、蘭ちゃん!?」

 

「そりゃあ士郎さんも分からない訳だよ」

 

つぐみは驚き、巴は苦笑いを浮かべる。

 

「ま、まぁ、結構買い込んだし、多分大丈夫だと思うぞ?」

 

ランサーが来ると聞いたあの時に、更に野菜や肉等を買い足しに戻ったから、ひまり達の分も確保は出来ている……はず。

 

多少の不安も残りつつも、俺達は家に帰ってきた。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい、シロウ、ラン」

 

「セイバーさん!お邪魔します!」

 

「おや、ヒマリにモカ、それにトモエとツグミも一緒でしたか。ゆっくりしていってください」

 

俺は靴を脱ぎ、家に上がると居間からランサーが顔を出す。

 

「よぉ、邪魔してるぜ」

 

「ランサーさん!?」

 

「ん?なんだ嬢ちゃん達も一緒か!今日は祭りだな!」

 

そう笑っていると、居間から他に笑い声が聞こえた。

 

「え?他に誰かいるのか?」

 

「なんだ坊主、知らなかったのか?これで嬢ちゃんら全員いんぞ?」

 

俺は驚きながら、居間に入る。そこにはランサーの言う通り香澄達がいた。

 

「あ、士郎さん!お邪魔してます!」

 

香澄が笑いながら、全員の代表として挨拶をしてくる。

俺はいつもの光景に笑いながら、事情を飲み込む。

 

「シロウ、今日もみんなでご飯ですね」

 

「そうだな、いつも通り賑やかになりそうだな」

 

俺は材料をキッチンに持っていき、料理の準備をする。とランサーが袋を持ってくる。

 

「そういや坊主。これ魚屋のおっちゃんがくれたんだが、坊主にやるよ」

 

「いいのか?」

 

「まぁ俺には必要ねぇからな」

 

中身は新鮮な野菜類だった。

おぉ、これは地味にありがたい。それに鍋の具材としても使える……。

 

「さて、始めますか」

 

まずは鶏つみれの種作り、長ネギをみじん切りに、生姜はすりおろし、ボウルに鶏ひき肉と塩を入れて粘り気が出るまでよく混ぜ、卵、長ネギ、生姜、酒、片栗粉を加えて混ぜ合わせる

大根は皮をむき、円を描くみたいに力を入れないで細かい粒になるようにすりおろす

すりおろしたら、鍋に軽く汁気をしぼり入れる

その他の野菜、焼き豆腐、豚バラ肉は食べやすい大きさに切り、餅は焼いておく

大根のしぼり汁を入れた鍋に、水と顆粒鶏がら、スープの素、塩、酒、みりんを混ぜ合わせたものを加え、ひと煮立ちさせる

弱火にして、鶏つみれの種をスプーンで1口大ずつすくったら、鍋に落とし入れ、鶏つみれに火が通ったら、皿に取り出す

アクを取り除く

白菜、長ネギ、しめじ、焼き豆腐、豚バラ肉を入れて火を通し、春菊、餅、鶏つみれ、大根おろしを加え、ひと煮立ちしたら……完成!

 

 

「よし、出来たぞー!」

 

『おぉー!』

 

机にカセットコンロを置き、その上に鍋を乗せる。そして、鍋の蓋を開ける。

 

「今日は大根を使ったみぞれ鍋です」

 

人数分の器によそい、そして手を合わせる。

 

「それじゃあ─────

 

『いただきます!』

 

ホカホカと湯けむりをあげてる鶏つみれを食べてる。

 

「この肉うめぇなぁ!」

 

「こちらの鶏もふわふわで美味しいですね」

 

「大根ってこんなに美味しかったけ?」

 

「おろし方もあるけど、ランサーが持ってきた大根が甘い大根だったからってのもあるな」

 

「心染みますね〜」

 

「とても美味しいわ!」

 

「えぇ」

 

俺はスープを啜りながら、周りを見る。

いつもの光景、見慣れた食卓。

でもどこか、いつもより違って見えた……。

 

「どうかしましたか?シロウ」

 

「いや、なんでもない。それよりよそうか?」

 

「えぇ、お願いします」

 

セイバーから皿を受け取り、具をよそう。

 

今日も賑やかなに食卓を囲う。

 

 

明日は何を作ろうか?

 

 

明日はどんな事が待ってるのだろうか?

 

 

それを楽しみにしながら、今日も食卓を囲う

明日もまた、みんなでここで─────

 

 

 

 

『ごちそうさまでした!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衛宮さんの今日のごはん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後まで見て下さりありがとうございます!!

活動報告にて、最終話を終えての個人的な感想とこれからについて、書いています。
ぜひ見ていってください!

約2年間、ありがとうございました!!


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外伝
海の浜で花火を


予定していたセイバー側の話です


「海……ですか?」

 

「あぁ」

 

夕飯の準備中の士郎から、バイトの仕事で海に行くと伝えられた。

 

「蘭も俺と一緒で合宿に行くから、悪いけど1日留守を頼んでもいいか?」

 

「えぇ、もちろん。構いませんよ」

 

「悪いな、作り置きはして行くから夜に食べてくれ」

 

「わかりました。それで海にはいつ行かれるのですか?」

 

士郎は手を休めること無く、料理しながら応える。

 

「1週間後だな。だからこれから色々と準備しなけきゃな……」

 

「そうですね、楽しんで来てください」

 

「あぁ、と言っても俺は蘭達のオマケだからな。彼女達をサポート出来るように頑張って来るよ」

 

「えぇ、そうしてください」

 

この話は終わり、セイバーにとって関係のない話……だと思っていた。

 

 

 

 

「シロウ、持ちましょうか?」

 

「いや、大丈夫だセイバー。そっちも重いのにこっちの物まで持たせられないよ」

 

1週間後の合宿にセイバーもいた。

セイバー自身も前日まで知らず、留守番する気でいた。しかしそれを香澄達が変えた。

セイバーは留守番と知ると、全員でまりなに頼み込みそしてまりなはそれを迷う事なく許可した。

最初はセイバーは遠慮し断ろうとしたが、士郎が─────

 

「別にいいんじゃないか?一緒に来ても」

 

「ですが!」

 

「許可したのがまりなさんだからな、諦めた方がいいぞ。あの人は藤ねぇ並に強引だから……」

 

士郎は諦めた顔をしながら、笑顔を見せた。

そして、セイバーも無事海に行ける事になったのだ。

 

「私も海に連れて来て下さりありがとうございます」

 

「それなら蘭達に礼を言ってくれ。俺じゃなくて蘭達がお願いしたからな」

 

「はい、後で改めてお礼を言います」

 

士郎はその返事を聞くと、笑みを浮かべながらセイバーと共に彼女達の後に続いて行った。

 

 

 

 

士郎が食材を買いに出かけて行った後、セイバーは何しようか悩んでいると、香澄達に声を掛けられる。

 

「セイバーさん!私達のバンド聴きに来てください!」

「セイバーさん、あたし達のバンド聴きに来てくれませんか?」

「セイバーさん!私達の音楽、聴きに来てください!」

「セイバーさん、貴女の感想が聞きたいから私達の演奏を見に来てくれないかしら?」

「セイバー!あたし達と一緒に歌いましょ!!」

 

『え?』

 

ほとんど同タイミングでセイバーに話し掛ける。

 

「……誰から先に聴いてもらう?」

 

「私達は最初じゃなくてもいいわ」

 

「私達も準備とかあるから、後かな?」

 

「だったらクジで決めましょ!」

 

そしてこころは紙に番号書き、5枚にちぎり美咲が番号が書かれた方を隠すように握る。

 

「それじゃー1枚選んでください」

 

代表の5人が1枚ずつ手に取り、美咲が手を離す。

順番はハロハピ、パスパレ、ロゼリア、ポピパ、アフグロの順に決定した。

 

 

セイバーはまず初めにハロハピのバンドを聴きに向かった。

 

「待ってたわ!さぁ、早速始めましょ!!」

 

こころの掛け声で始めようとしている所に、セイバーがある事を思い出し、静止の声を上げた。

 

「少しいいでしょうか?」

 

「あら、どうしたの?」

 

「演奏を聴く前に1つ質問をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

「えぇ!もちろん構わないわ!」

 

元気よく返事をするこころに少し笑いながら、質問を投げかける。

 

「貴女達にはシロウがどんな人に見えるか、それを聞かせてほしいのです」

 

この質問はアフグロ以外の他のメンバーにも投げかけた。

 

ハロハピの回答は─────

「とても素敵な人だと思うわ!」

「料理がとても美味しい!!」

「演技においても彼は中々の逸材だと思っているよ」

「と、とても優しい人、かな?」

「士郎さんは自分を卑下にする事が多いかな」

 

パスパレの回答は─────

「料理が美味して、凄く優しい人だと思う!」

「あたしも同じ!」

「でもあの人はいつも自分を下に見てるわね」

「シショウはとても凄い人です!」

「士郎さんはシブンが尊敬してる人ッス!」

 

ロゼリアの回答は─────

「彼の手際の良さにはいつも感謝してるわ」

「そうですね、機材の不調もそれほど時間もかけず直されていきますからね」

「あと色々と頼んだら手伝ってくれたりしてくれるよね〜」

「あこもこの前、勉強で分からないところ教えてもらったよ!」

「し、士郎さんとは……よく話せます……」

 

ポピパの回答は─────

「料理が美味しくて、優しくて、何でもできる人!」

「それは言い過ぎだろ!」

「でも本当に何でもできそうに思えるよね」

「士郎さんって苦手な物ってあるのかな?」

「んー、そういえば知らないね」

 

セイバーは彼女達の回答を聞き、彼女達は蘭達同様に信頼できると確信した。

士郎は今の自分に彼女達の力になれていないと思っている。

そんな彼の事を理解している、または信頼している人達がいた。

 

 

最後にアフグロの所へ向かうと

 

「どう?セイバーさん」

 

部屋に入ると蘭達が質問を投げかけてきた。

どうやら他のメンバーから話を聞いたらしく、彼女達の回答を聞き、どう思ったかを聞くために待っていたのだ。

 

「私達の事、信用出来ますか?」

 

「……えぇ、疑ってしまいすみませんでした」

 

「セイバーさんの気持ちも分かるし大丈夫ですよ!」

 

「それにこれからは私達の事を信用してくれるって事ですよね?」

 

つぐみの問にセイバーは笑みを浮かべ、頭を下げる。

 

「えぇ、改めてよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、お願いします」

 

蘭は手を差し伸べる。その手をセイバーは見つめ、そしてその手をとる。

 

「おーこれでいっぱいお話できるね〜」

 

「その前にアタシにはやることがあるだろ?」

 

巴がそう言うと、蘭達は笑い準備する。

セイバーは席に座り、始まるのを待つ。

 

「じゃあ蘭、今日はどうする?」

 

「もちろん─────

 

 

 

─────“いつも通り”でいくよ!

 

 

 

彼女達のバンドを聴き終えた後、一緒に海で遊び尽くしたのだった。




書き始めはちょっと良かったけど、後半から着地点が見つからなくなった……


まぁ外伝だから許してください


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特別編
ガルパ5周年記念:彼の騎士は


※まだ本編に登場していないグループとも接点を持っている世界線です。


ガルパ5周年記念で書いた話です。
本来日曜日に投稿しようと思いましたが、忙しく急遽投稿日変更をしました



CiRCLEのイベントで彼女達による“35人ライブ”が終わり、まだ会場の熱が収まっていない中、会場のスタッフとして今も走り続けている者がいた。

 

「衛宮君!こっち、お願いできるかな?」

 

「今行きます!」

 

「衛宮くん!後でいいから店の見回りお願いしていい?」

 

「はい!わかりました!」

 

他のスタッフさんと連携を取りながら着々とこなしているが、流石に人手不足な為、右へ左へと走り回っていた。

 

「よし……えっと、次は─────」

 

次の場所へ向かう為、メモを確認していると

 

「お?坊主じゃねぇか」

 

「ん?ランサー?」

 

思いっきりイベントを楽しんでいるランサーが、焼き魚を食いながら近寄って来た。

 

「アンタ……楽しんでるな……」

 

「まぁな、それにしてもこんな祭り事にも仕事か?」

 

「仕方ないだろ?人手が足りないって言われたんだから」

 

「相変わらずのお人好しだな」

 

ランサーと軽く会話し終え、店の見回りを始める士郎……とランサー。

 

「……何でついて来るんだよ」

 

「坊主に着いて行った方が色々と見て回れそうだしな!ま、細かい事は気にしなさんな!」

 

「はぁ……邪魔だけはしないでくれよ?」

 

「おう!」

 

と、元気よく返すランサーに士郎はため息をつきながら見回りを始めるのだった。

 

 

見回りを始めてしばらく経ち、士郎とランサーの2人に近付いて来る女性がいた。

 

「まさかシロウがランサーと共にしているとは……」

 

「勝手に着いてきてるだけだからな?」

 

「まぁセイバーは分かるが、まさかライダーまでこっちにいるとはな」

 

「たまたまこちらに寄った時にセイバーに誘われまして、折角なのでご一緒させていただいています」

 

セイバーとライダーと出会い、今度は4人で店を回り始める。

士郎が何故着いて来るのか、質問するとセイバーは悲しそうな顔をしながら

 

「ランサーは良くて私は駄目なのですか?」

 

と言われ断れず、着いて来る事を渋々承諾した。

それから全ての店を回り終え、士郎は次の仕事に向かう為、セイバー達と別れ他のスタッフさんの所へと走って行った。

 

そんな背中を眺めるセイバーに、ランサーは話し掛ける。

 

「んで?どうなんだよ」

 

「何がですか?」

 

「何がって、決まってんだろ?坊主の事だよ」

 

ランサーの言葉にセイバーは顔の表情を変えずランサーを見る。セイバーと一緒にライダーもランサーの方を向き、質問する。

 

「士郎がどうかしたんですか?」

 

「最近、坊主の隣にあの嬢ちゃん達がいつもいるからな。それも友以上の感情とみた。それはセイバーも気付いてるんじゃないのか?」

 

ランサーが言う“嬢ちゃん達”とは、蘭達の事である。ランサーはそんな事を何故セイバーに質問するのか。それはある事件が関係していた。

 

「で、どうなんだよ」

 

「それを聞く理由を聞いてもいいですか?」

 

「俺としてはまた“あんな状態”になられたらたまったもんじゃないからな」

 

“あんな状態”とは、士郎と離れて3ヶ月の間にセイバーの身に起きたとある変化……

翠色の瞳から金色の瞳に変わり、おまけに性格や雰囲気まで変わり果ててしまう。

サーヴァントである彼らが寒気を感じさせる程の非情さに徹しきった存在だった。

 

「それで?答えを聞かせてもらえるか?騎士王さま」

 

ランサーはセイバーを睨むように見つめる。ライダーも彼女の答えを待つ。

セイバーの出した答えは……

 

「彼女達は、とても良い娘達です」

 

セイバーは笑いながら、遠くで士郎を囲んで話し合ってる彼女達を見る。

士郎は困った顔をしながらも、楽しそうに嬉しそうにしながら彼女達の話を聞いたり連れ回されたりしていた。

 

「シロウがあれほど楽しそうにしていますから」

 

「確かにそうですね」

 

「まぁ、あの嬢ちゃん達面白いからな」

 

ランサーもライダーも同じように笑い、士郎達の方を見る。35人の少女達を相手する士郎はとても忙しそうにしていた。それを見たランサーは豪快に笑い、ライダーも小さく笑いを見せる。そしてセイバーも─────

 

「けれど─────

 

 

──────勝ちまでは譲らんがな?

 

 

()()()()が士郎を見つめる。

隣にいたランサーとライダーは冷や汗を流す。

 

 

彼の知らない所で、彼女の中に新たな戦火が生まれたのだった。




5周年おめでとうございます!!   
もっと早めに祝おうと思いましたが、忙しく投稿出来ませんでした。
6周年では超大型アプデがあると聞き、とても楽しみです!
けど、1年後には多分今投稿中の「衛宮さんの今日のごはん」は終わってると思いますがね( ´_>` )ハッハッハッ
でももしかしたら2nd seasonとして投稿してるのかもしれませんが、それは未来の自分に託しましょう!

それでは、サラバ〜!!


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