STARWARSーWHAT IF (AlexGarcia)
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プロローグ
新しい物語の始まり


初めましてこんにちは。アレックスガルシアです。
初心者ですが頑張って書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。
最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


尚、私は現役高校生の為、投稿頻度はあまり高くないと思います。また、文章が弱かったり、表現が下手かも知れませんがご了承ください。スターウォーズファンの方々に楽しんでいただける作品にする為に頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします!

それでは皆さん、フォースと共にあらん事を



 

銀河は分断された。

 

ジオノーシスの戦いの後、ドゥークー伯爵のドロイド軍は驚くべき速さで主要なハイパースペース航路を支配。クローン軍主力との分断に成功した。兵力を失ったジェダイの将軍達は銀河外縁部での拠点確保に失敗。多くの星がドゥークーの分離主義派に加わっていった。

 

ジェダイ達は戦いに明け暮れ、治安を維持するものは誰もいなくなった。混乱と犯罪が蔓延。無法化した銀河で罪も無い人々が犠牲となった。そんな中犯罪王ジャバ・ザ・ハットの息子が宇宙海賊に誘拐された。息子の身を案じるジャバは切羽詰まってジェダイに助けを求めたが、それにどう応じたものか、ジェダイは慎重だった…………

 

 

22 BBYーーコルスカ宙域ーー首都惑星コルサント

 

 

「ジャバを助けよう。これこそ待ち望んだチャンスだ。その息子ジェダイが救い出す」

 

とジャバからのホログラムメッセージを見ながらシーヴ・パルパティーンことパルパティーン議長は話す。

 

「うーん気が乗りません。犯罪王と取引をするとは……共和国のためにはならないかと」

 

そう難色の意を示すのはマスタージェダイのメイス・ウィンドゥだ。彼の後ろにはマスタープロ・クーンとルミナーラ・アンドゥリの二人が立っている。二人とも口を開きはしなかったが、マスターウィンドゥと同意見のようだ。

 

「その気持ちは分かるが他に手はなかろう。銀河外縁部はジャバの支配領域、軍の移動に航路の確保は欠かせん」

 

「この誘拐には裏があります。何か匂います」

 

「ではできるだけ多くのジェダイを送り込め」

 

「無理です最高議長。ドロイド軍のグリーヴァス将軍に兵力を割かれ、現時点で動けるジェダイはスカイウォーカーとケノービだけ。惑星クリストフシスをおとしたばかりです」

 

「では直ぐ連絡を取れ」

 

 

ーーヴェネター級スターデストロイヤー〈レゾリュート〉

 

 

艦内でウルフ・ユラーレン提督は今まさにマスターヨーダとマスターウィンドゥからの通信を受けていた。

 

「ケノービ将軍と話したい」

 

「連絡が取れんのです。太陽風のせいかあるいは通信システムが切れているか、とにかく一時的な遮断です」

 

「伝令を派遣しよう。重大な命令があるのじゃ」

 

「確実に届けてほしい。できるだけ早く」

 

「了解です。補給物資を積み込み次第直ぐに」

 

「そんな時間は無い。今すぐ出発させるのじゃ」

 

「分かりましたヨーダ。伝令が着き次第空荷の輸送船で星まで送り、増援は改めて送りましょう」

 

「うむ、そうしてくれ」

 

「して伝令はどの様な物なんです?」

 

「物では無い、人じゃよ。今回はスカイウォーカー将軍とケノービ将軍のどちらにもサプライズがあるのでの」

 

そう言いながらヨーダは少し笑った。

 

「そうですか……」

 

ユラーレンはヨーダがサプライズと言った事に驚いたが顔には出さずに通信を切り、輸送船の準備を命令した。

 

 

サヴァリーン宙域ーー惑星クリストフシス

 

 

惑星内では銀河共和国のグランド・アーミーと独立星系連合のドロイド軍が惑星の覇権をめぐって争っていた。

 

「敵が戻ってきた!」

 

そう軍全体に叫ぶのは選ばれし子と呼ばれるジェダイ、アナキン・スカイウォーカー、スカイウォーカー将軍である。

 

「勝利宣言は早いと言っただろう。補給のために船を帰したのは間違いだった」

 

そう落ち着いた雰囲気で淡々と話すのはアナキンのマスターであるオビ=ワン・ケノービだ。

 

「帰せと言ったのはあなたですよマスター」

 

アナキンは納得がいかないとオビ=ワンに訴える。

 

「よし諸君、敵の第二波が来る」

 

「レックス、部下を連れて続け」

 

「コーディ、戦闘配置につけ」

 

「野郎ども続け!」

 

そう言って走り出したのはオビ=ワンの部下で最も頼りになるクローンコマンダーのコーディだ。

 

コーディの掛け声で他のクローントルーパー達も「うおー!」と雄叫びを上げながら前線へと突っ込んでいく。

 

クローン軍対ドロイド軍、そんな戦いは今ではどこへ行っても簡単に見れる様になった。オビ=ワンやアナキンももう戦いの日々に慣れてしまった。今では共和国の平和のためになると信じながら戦っている。この時はもう既にどのジェダイもジェダイのあるべき姿を見失ってしまっていたのだ。

 

そんな中オビ=ワンとコーディは最前線で敵の攻撃を防ぎながら反撃をしていた。

 

「スカイウォーカー将軍は何をしているんでしょう?」

 

「心配ない。あいつに任せておけ」

 

そう二人が会話をしてる間にもクローン兵達はどんどんとやられていってしまう。オビ=ワンは前方に見える数体のテクノ・ユニオンが開発したオクトゥプタラ・コンバット・トライ=ドロイド、別名マグナ・トライ=ドロイドを見て溜め息を吐きたくなった。だが、アナキンならやってくれるだろうという絶対的な自信が彼にはあった。そしてオビ=ワンはオクトゥプタラ・コンバット・トライ=ドロイドよりも高い場所から高まるアナキンのフォースを感じた。

 

「作戦指示願います」

 

キャプテンレックスがアナキンにそう声をかける。

 

「ついてこい」

 

そう振り向きざまにニヤリと笑いながら一言だけ言った彼は高台から軽くジャンプをしてオクトゥプタラ・コンバット・トライ=ドロイドの上に着地してライトセーバーを起動させて構える。さっきまで彼が立っていた場所ではレックス達がジェットパックを起動させて飛び降り始めた。

 

するとアナキンの存在に気がついた他のオクトゥプタラ・コンバット・トライ=ドロイドは狙いを変えてアナキンだけを狙う様になった。そしてその敵の行動の変化をオビ=ワンは見逃さなかった。

 

「今だ、行け!」

 

直ぐにオビ=ワンは指示を出して軍を前進させる。オビ=ワン率いるクローン軍はドロイド軍を次々にスクラップにしていった。しかし、クローン達の犠牲も少なくはなかった。

 

そんな中アナキンは別のオクトゥプタラ・コンバット・トライ=ドロイドのブラスター光弾を上手く偏向しながら自分が載っているオクトゥプタラ・コンバット・トライ=ドロイドに別のドロイドのブラスター光弾を当て、破壊していく。そんなアナキンの一連の動きは誰が見ても分かるほど鮮やかで綺麗な物だった。あっという間にアナキンは全てのオクトゥプタラ・コンバット・トライ=ドロイドを倒してしまった。しかしそれでもどんどん敵の増援が出てくる。

 

「増援を要請しましょう」

 

アナキンがオビワンの隣に戻ってきてそう言う。

 

「そうしたいが提督と連絡が取れない」

 

しかし、敵もまたクローン軍が持つ重砲に悩まされていた。装甲型強襲用戦車、略称AATで進軍中のウォーム・ロースサム将軍は一旦撤退を選ばざるをえない状況だった。ロースサムはこのままでは勝てないと分かり、作戦を練り直すために部隊の退却を命じた。

 

「退却しています」

 

アナキンはドロイド達が退却し始めたことに驚きながらもオビ=ワンに伝える。

 

すると同時に二人の頭上を輸送船が通り過ぎた。

 

「援軍がきたようだな」

 

オビワンはそう告げ、アナキンとR2を連れて輸送船の着陸予定場所へと向かった。

 

「クルーザーが戻った」

 

「という事は待望の増援到着ですか」

 

「これで問題は一気に解決だ。新しい部隊に補給物資、新しいパダワンも一緒のはず」

 

「いきなり戦場にパダワン見習いをよこすなんて無茶ですよ」

 

「マスターヨーダと話し合ってな。お前も弟子を取らないか?良い先生になれる」

 

「ハハっ遠慮します」

 

「アナキン、教える事は特権だ。それに、次の世代を鍛えるのはジェダイの義務でもあるんだぞ?」

 

「任務の足手纏いになります」

 

二人が話している内に輸送船のハッチがゆっくりと開き始める。完全にハッチが開くと一人の少女が降りてきた。

 

「なんで子供が?」

 

「あーそれで君は誰だ?」

 

オビ=ワンとアナキンは動揺を隠せない。

 

「私、アソーカ。マスターヨーダのお使い。あんた達に今すぐジェダイ寺院に帰るように伝えろって言われたんだ。緊急だって」

 

そう、彼女こそがアソーカ・タノ。まだ若いが、成長すれば素晴らしいジェダイになる。

 

「気づいてないかもしれなが今ここでも緊急事態なんだ」

 

「そう。通信状態が不安定だが、ずっと増援を呼びかけてる」

 

「何も連絡が無いからマスターヨーダが私と彼をよこしたんだってば」

 

「はあ、まいったな。状況が全く伝わってない」

 

アナキンはやれやれといった反応をする。

 

「すまないがお嬢さん君と一緒にマスターヨーダがよこした彼というのは?」

 

「ああ、彼ならもうすぐで降りてくるよ。この輸送船を操縦してたのも彼なんだから」

 

「輸送船を操縦?」

 

オビ=ワンは思わず聞き返した。輸送船を操縦したがるジェダイなんて聞いた事が無い。でももしかすると…………

 

「そう!操縦も上手いしすっごいんだから」

 

アソーカはそう高いテンションで答える。

 

オビ=ワンはそれを聞いて考え込む。何故か今の話を聞いていただけで懐かしい友の姿、もとい相棒を思い出したからだ。いや、あいつはもうオーダーを去ったはず。

 

そんな彼を見てアナキンが声をかけてくる。

 

「マスター?どうかしたんですか?」

 

「いや、なんでもない。古き友の記憶が蘇ってきただけさ。してもう一人のジェダイとは誰かな」

 

「マスターから古き友という言葉を聞くなんて珍しいですね」

 

アナキンがそう言うとオビワンは遠い目をして笑った。

 

そして、アナキン、オビ=ワン、アソーカの三人はもう一人のジェダイが輸送船から降りてくるのを待った。

 




読んで頂きありがとうございます。

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失われし20人

この回で主人公登場です。


輸送船の奥に人影が見えるようになる。ジェダイと賞金稼ぎの間をとったような服装で腰のベルトに二本のライトセーバーと二丁のブラスターピストルをぶら下げた男はゆっくりと輸送船から降りてくる。その男は三人から顔が見える場所までくるとこう言った。

 

「久しぶりだなオビ=ワン。それにアナキンも」

 

「な、なぜお前がここに……」

 

オビ=ワンはあまりの衝撃に固まってしまう。今までどこにいたのか、何をしていたのかも分からなかった親友が突然目の前に現れた。彼の親友は最後に見た時よりも少し老けたぐらいでまだ全然若かった。今はオビ=ワンと同じで髭を生やしている。よくイケメンと言われるオビ=ワンとはまた違ったタイプのイケメンでオビ=ワンは二人で行った任務先でよく女性に絡まれた事を思い出す。しかし、いったい何故ここに。彼はオビ=ワンの知る限りではジェダイオーダーを追放されたはずだ。そして今ではジェダイ公文書館に並ぶ失われし二十人の銅像の十九人目だ。そして皮肉な事に二十人目は彼のマスターであるドゥークーだ。

 

「あなたは!」

 

アナキンも彼の顔を見て驚きの声を上げる。

 

「ねえ二人とも?彼を知ってるの?」

 

一人だけ状況が理解できないアソーカがオビ=ワンとアナキンに問いかける。

 

「ああ、彼の名はガル・アーラ」

 

オビ=ワンはアソーカにガルを紹介する。

 

「よろしくなアソーカ」

 

「よろしくねマスターガル」

 

「ところでアナキン。何故お前はガルを知っているんだ?」

 

「前に話したじゃないですかマスター。僕の母をタスケンレイダーから救ってくれた人がいるって。その人がガルだったんですよ。それにアミダラ議員の専属護衛もしてました。」

 

「お前、タトゥイーンにいたのか?都会の惑星を重点的に探したのが間違いだったか……」

 

「いや、色んな惑星を転々としてた。そんな事より感動の再会トークは後だ。アソーカからマスターヨーダのメッセージは聞いたな?」

 

「ああ、だが今ここを離れるわけにはいかない。どうにかして増援を呼ばないと」

 

「なら俺が乗ってきたクルーザーを中継して繋いだらどうだ?」

 

そんな中、ユラーレン提督率いる艦隊はクリストフシスを封鎖している分離主義艦隊によって猛攻撃を受けているのだった。

 

「一旦引き上げて増援を待とう。よし、退却!」

 

ユラーレン提督は賢明な判断を下す。

 

そんな中オビ=ワン達四人から通信が入り、その通信にクローンが対応する。

 

「分離主義派と交戦中ですがなんとかコンタクトを取ってみます。お待ちを」

 

少しの時間が経ち四人の前にはマスターヨーダのホログラムが現れた。

 

「マスターケノービ、アソーカとガルに会えたようじゃの」

 

「マスターヨーダ、敵に兵力で圧倒され、苦戦中です。反撃も困難。退却しようにも身動きならない状況です。支援船は全て破壊されました」

 

「分かった。すぐ増援を送ろう。久……り………………」

 

「マスターヨーダ、マスターヨーダ?」

 

急にマスターヨーダのホログラムが乱れ始め何も聞き取れなくなった。

 

「通信途絶しました。軌道から離れないと。マズい、敵の増援が現れました。すぐ戻ってきます」

 

「もうしばらく頑張れって事か」

 

アナキンはウンザリしながら喋る。

 

「失礼お嬢さん。正式な紹介がまだだったな」

 

「私新しいパダワンのアソーカ・タノ」

 

「私はオビ=ワン・ケノービ。君のマスターだ」

 

「よろしくって言いたいところだけどマスター?私、マスタースカイウォーカーにつけって言われてるの」

 

「なに?おいおい冗談だろ。何かの間違いだ。パダワンが必要なのはこの人だ」

 

そう言いながらアナキンはオビ=ワンの事を指さす。

 

「違う。マスターヨーダがハッキリ言ったもん。アナキン・スカイウォーカーに弟子入りし、ジェダイの訓練を受けるがよいって」

 

「でも、どう考えてもそんな……」

 

「もういい、その話は後だ」

 

ガルが止めに入る。

 

「ガルの言う通り。グズグズしているとドロイドに重砲陣地の裏に回られる」

 

「レックスと一緒に戦況を確認します」

 

「この子も連れて行くといい」

 

オビ=ワンがそう言うとアナキンは渋々アソーカを連れて行った。ガルはそんな三人のやりとりを懐かしいものを見るかのような目で眺めていた。しかしオビ=ワンが急にガルの方を向いて話しかけてきた。

 

「それで?たっぷりお前の言い訳を聞こうじゃないか」

 

「お、おう。本当に久しぶりだなオビ=ワン。もう十年か?俺がジェダイオーダーを辞めてから」

 

「そうだな。それでお前の復帰を知っているのは?」

 

「今のところマスターヨーダとお前達三人だけだ」

 

「あの二人にはこの事を伝えたのか?」

 

オビ=ワンはあえて名前は出さなかったが、ガルにはそれが誰を指すのか直ぐに分かった。

 

「あれ以来彼女達とは話しもしていない。それにあの二人はきっと俺の事なんて忘れてるさ。俺の邪魔が無くなって立派なジェダイになっていることだろう」

 

「内一人は本当に…………」

 

オビ=ワンは大事な事をガルに伝えようとしたが、途中でガルに遮られてしまった。

 

「そういえばマスタークワイ=ガンは元気か?」

 

「マスタークワイ=ガンは元気さ。ジオノーシスで危うくお前の元マスターに殺されそうになったがな」

 

「あーそれはすまなかったな。でもこうやってまた戻って来れた事を嬉しく思うよ」

 

「はあ、お前の事だからどうせオーダーを追放されたって情報は嘘だと思ってた」

 

「嘘だな。俺が船から降りてきた時あんなに驚いた顔してたくせに」

 

「うるさいぞ」

 

「ははは。もっと話したい所だが俺達は俺達でできることをするぞ」

 

一方で、クリストフシスにある高層ビルではレックス達クローンが監視を続けていた。

 

「状況は?レックス」

 

「動きありません。攻撃に備えているのかと。このお嬢ちゃんは?」

 

「マスタースカイウォーカーのパダワンよ。名前はアソーカ・タノ」

 

「パダワンは持たないと仰っていたかと」

 

「そうさ、このお嬢ちゃんの誤解だよ」

 

「お嬢ちゃんはやめて!離れないからね。スカぴょん」

 

それを聞いたレックスは我慢できずに笑い出してしまう。

 

「今なんて呼んだ?礼儀ってものを知らないのか?お前はどう見てもパダワンになれる年じゃない」

 

「あんたの目にはね。マスターヨーダはそう思ってない」

 

「だがここにマスターヨーダはいない。力があるなら自分で証明しろ。ついでにキャプテンレックスから礼儀も学ぶんだな!」

 

アナキンはさっき笑われた仕返しにワザとレックスに任せる事にした。

 

「ああ……はい。行こうかお嬢ちゃん」

 

「パダワンよ!」

 

レックスはアソーカを連れて地上に戻った。重砲の間を歩きながらアソーカが提案をしてくる。

 

「もう少し後方に下げた方が良くない?ここでは誘爆の危険がある」

 

「アドバイスには感謝するがね。スカイウォーカー将軍はここでいいと言っている」

 

「キャプテンっていう事は大佐よね?でもって私はジェダイ……ランク的には私のほうが上って事でしょ?」

 

「戦場ではランクより経験が全てに勝る」

 

「そっか経験が全てに勝るなら早いとこ経験したいな。って何あれ?」

 

「ああマズい。エネルギーシールドだ。こいつは難しい戦いになる」

 

レックスはそう言いながら前方から徐々にドーム状に広がってくる赤いエネルギーシールドを睨んだ。

 

「経験をしたいと言ったなアソーカ。嫌って言うほど経験する事になるぞ」

 

そう言ってオビ=ワンとガルがいる本部に急いで戻っていく。本部ではオビ=ワンとガル、アナキンの三人が既にホロマップを見ながら作戦を考えていた。

 

「スカイウォーカー将軍、そちらは?」

 

「ああ、彼はガル・アーラ。マスターの相棒で僕の母の命の恩人だ」

 

「へえ、そんな凄い人が来てくれるなんて」

 

「よろしくキャプテンレックス」

 

ガルは初対面のレックスの名前をうっかり呼んでしまう。しかし周りの誰も反応しなかったので彼は放置することに決めた。

 

「よろしくお願いします。アーラ将軍」

 

「それじゃあ本題に入ろうか。シールドジェネレーターの位置はここだ」

 

ガルがホロマップ上の場所を指で刺して位置を教える。

 

「部隊の進軍より少し先んじて有効範囲を拡大している」

 

「重砲ではシールドを破れません」

 

「敵が近づいたらビルの中に誘い込むしか無いな。それでようやく対等に戦える」

 

オビ=ワンが髭を触りながら慎重な作戦を出してくる。

 

「シールドがそんなに問題だったら無くしちゃえば良いじゃない」

 

「言うだけなら簡単だ」

 

「いや僕も彼女に……賛成だ。誰かがシールドジェネレーターをぶっ壊す。それしかない」

 

「いいだろう。では、お前達二人で敵陣に忍び込み、この問題を解決できるかな?」

 

「頼んだぞアナキン、アソーカ」

 

「はいマスターケノービ、マスターガル」

 

「決めるのは僕だ」

 

「レックスとガルと私が敵を引きつける。その隙に気づかれないでこの奥まで潜り込めたら……」

 

「急ぎませんと、敵は大軍です。重砲の援護無しに戦えば我が方に勝ち目はありません。敵はシールドの傘に守られ、真っ直ぐ重砲陣地に向かっております。時間の勝負です」

 

「なんとかするって。さあ、マスター行こう?」

 

「この戦いに生き延びられたらじっくり話し合おうじゃないか!」

 

先に歩き出したアソーカを追いかけながらアナキンは言う。そんな二人を見ながらレックスは笑顔になる。

 

「あの二人良いコンビになりますな。成功すると?」

 

「思いたい。敵が重砲陣地に達する前にシールドを消せなかったら生き延びるチャンスはほぼゼロだ」

 

オビ=ワンはホロマップで敵の進軍状況を見ながらそう言う。

 

「まあ俺とオビ=ワンが本気で戦えばなんとかならんでもないがな」

 

「そうかもなガル。久しぶりにお前のライトセーバーが光るところを見たいよ」

 

「失礼ながらアーラ将軍はどれぐらい強いのでしょうか?」

 

レックスはオビ=ワンに質問する。

 

「あんまり持ち上げるような事はしたくないが平気でマスターウィンドゥレベルの強さはあるな」

 

「そんなに強いのに何故今まで戦争に参加していなかったのでしょうか。それに名前も初めて聞きました。」

 

「それは当然だ。私だってガルが戻ってきた事に驚いているんだしな。こいつは約十年前ジェダイオーダーを去ったんだ」

 

「そうだったんですか。どうりで噂すら耳にしないはずです。ですがケノービ将軍の相棒だったのであれば信頼できます」

 

「やめてくれ。こいつは私の相棒なんかじゃない」

 

「はは、ご冗談を。アーラ将軍と話すときの将軍はとても楽しそうですよ」

 

レックスに笑いながらそう言われたオビ=ワンは自分が久しぶりの親友との再会で喜びの感情を隠せていない事に気がつき恥ずかしくなったのだった。

 




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クリストフシスの戦い

バクセル宙域ーー惑星テス

 

 

惑星テスの高台にある古い僧院ではドゥークー伯爵のパダワンのアサージ・ヴェントレスがマスターであるドゥークー伯爵と通信をとっていた。

 

「ジャバの息子を古い僧院に連れて参りました。ここなら安全でございます」

 

「よーし、でかした。全て計画通り運んでおる」

 

「はい。仰せの通りに」

 

すると突然ホログラム状態のドゥークの横からシスの暗黒卿ダース・シディアスが通信に入ってきた。ヴェントレスは急いで頭を下げ、跪く。

 

「ジェダイがドゥークだけでなくハット一族と戦う。そうなる日も遠くはない」

 

そんなやりとりが行われている古い僧院の下ではハットが雇った賞金稼ぎのあとをつけていたクローン達が様子を伺っていた。

 

「状況はどうだ?」

 

「賞金稼ぎどもはあそこに登った」

 

「ウィンドゥ将軍に、見つけたと連絡しろ」

 

 

コルスカ宙域ーー首都惑星コルサントーージェダイテンプル

 

 

「どうした?コマンダー」

 

「ジャバ・ザ・ハットは息子の捜索に賞金稼ぎを雇っています。尾行したら惑星テスの僧院に行きました。ジャバの息子は中にいると思われますが警備が厳重で手が出せません」

 

「分かった。近くに潜んで新たな指示を待て」

 

「はい。将軍」

 

通信が終わり、ウィンドゥはヨーダの方を向く。

 

「さて困ったの。オビ=ワンはドロイド軍に手こずっておる」

 

「私にお任せを」

 

ウィンドゥはそう言って通信を始める。

 

「ワーツ提督に繋げ。スター・クルーザー三隻を借りたい」

 

「はい。将軍」

 

「この事件、裏がありそうじゃ。マスターケノービの救援にはわしが行こう」

 

 

サヴァリーン宙域ーー惑星クリストフシス

 

 

「それで?どうすんの?」

 

「はっお前に考えがあると思ったが?」

 

「ううん。あるのは若さとやる気!経験があるのはそっちでしょ?そいつを学ばなきゃ」

 

張り切ってそう言うアソーカを見てアナキンはバレない程度に少し微笑んだ。

 

「まずシールドの内側に潜り込み、次に戦車をやり過ごす」

 

「それより迂回したほうが楽だよ」

 

「時間がかかりすぎる」

 

「真ん中をすり抜ける?」

 

「無理だな。ドロイドに変身すれば別だが」

 

「分かった降参。最初のレッスンね。あんたが答えを出すまで待つよ」

 

「いや、待たなくていい。閃いたぞ」

 

アナキンとアソーカは潜入作戦を開始させた。一方でオビ=ワンとガルは敵との交戦がもう始まるというところまできていた。

 

オビ=ワンとガルの後ろでは重砲が、広がり続けるシールドに向かって撃ちまくっている。

 

「忌々しいシールドだ。びくともしないぞ」

 

オビワンが遠くを見ながらそう言う。

 

「だから言っただろオビ=ワン。重砲でシールドは破れない」

 

「私もアーラ将軍と同じ意見です」

 

「分かっていたがね。試してみないと」

 

「そういうところ全く変わってないな」

 

「ガル、うるさいぞ。レックス、砲兵に退却を命じろ」

 

オビ=ワンとガルが各兵に指示を出す。アナキンとアソーカは道にたくさん落ちている崩れた建物や残骸の中にあった箱状の物の中に身を隠してドロイド軍が過ぎるのを待っていた。シールドはどんどんと近づいてくる。

 

「もうすぐシールド内に入るぞオビ=ワン」

 

「レックス、先頭は私とガルでいく。それと戦車には近づくな」

 

「了解です、ケノービ将軍」

 

レックスが答えると同時にオビ=ワン達は遂にシールド内に入った。

 

「ガル、今日はどっちでいくんだ?」

 

「それはもちろんライトセーバーさ」

 

ガルはニヤリと笑いながら二本あるうちの片方のライトセーバーを取って起動する。空気に響く起動音と共に鮮やかな黄色の光刃が姿を表した。

 

「その色、懐かしいな」

 

そう言いながらオビ=ワンもライトセーバーを起動する。

 

「そっちの個性的なヒルトもだけどな」

 

そう言いながら二人は息のあった動きで同時にフォースジャンプをする。急に空から二人のジェダイが自陣の中心に現れた事にドロイド達は気づかない。しかし一体のB1バトル・ドロイドが二人の接近に気づき間抜けな声を上げる。

 

「あっジェダイだ!」

 

その声が聞こえる範囲にいたドロイド達が一斉に二人を狙って撃ち始める。それをオビ=ワンとガルは華麗にほぼ全てのブラスター光弾を偏向し沢山のドロイドを倒していく。オビ=ワンとガルの活躍であっという間にドロイド達の陣形は崩れ始めた。それを最初から狙っていた二人はレックス達に合図を送る。ほとんどのドロイドが二人のジェダイを狙い始めたところで後ろからレックス達が一気に攻め上がる。ドロイド達は急いでクローン達に狙いを戻そうとしたが、時既に遅くドロイド軍の大隊はもう既に壊滅状態に追い込まれていた。しかしこの騒ぎに気がついた敵の本隊がジリジリとこちらに近づいていた。

 

「将軍、もう少しで敵の本隊がこっちに来ます。流石にこの人数で敵の本隊は相手にできません」

 

「レックス、軍を重砲陣地まで下げろ。ここはオビ=ワンと二人でどうにかする」

 

「ですがアーラ将軍」

 

「ガルの言う通り、何としても重砲を守るんだ。私とガルで奴らを止める」

 

「しかし……」

 

「これは命令だ!キャプテン」

 

珍しくオビ=ワンが強い口調になる。レックスは黙って兵達に撤退を命じて後方へ走っていく。

 

「さて、これでやっと本気を出せるかな?」

 

「だな。ガル」

 

二人は他に見てる人がいなくなった事をいい事に懐かしい技を使う事にした。前方からは数十体の隊列を組んだB2スーパー・バトル・ドロイドが迫ってきている。そしてライトセーバーを持つたった二人のジェダイを見て彼らは勝利を確信した。何故かオビ=ワンとガルはライトセーバーを消して腰のベルトに戻し、目を瞑る。ドロイド達はそれを見て更に勝利を確信する。しかし次の瞬間B2スーパー・バトル・ドロイドの軍は全て吹っ飛ばされ、バラバラのスクラップになった。また、その直ぐ後ろに迫っていたAATも破壊された。これを常人が見たら何が起きたのか全く理解できないだろう。普通のジェダイが見ても驚く威力だ。オビ=ワンとガルの二人はお互いにフォースを溜め、お互いに共鳴し、一斉に前方に放ったのだ。ここまで強大な威力と破壊力を持つフォースプッシュができるのはこの二人が揃った時だけだろう。

 

「気分爽快だなオビ=ワン」

 

「ああ、失った物を取り戻した気分だ」

 

二人は一瞬和やかな雰囲気に包まれたが直ぐにライトセーバーを手に取り、次に来る大軍に備えた。

 

「さてとガル?上手い時間稼ぎの方法は思いついたかな?」

 

「いや、特に何も」

 

「なら私のプランで行こう」

 

そう言いながらオビ=ワンはワザと追い込まれているように演出しやすい袋小路へと移動を始めた。

 

「はあ、最高のプランだな。嫌な予感がするよ」

 

ガルはため息を吐きながらオビワンの後を追いかけて行く。袋小路に入った途端オビ=ワンはブラスター光弾をドロイド本隊に偏向する確率を下げ、ワザと自分達が追い込まれているように演じ始めた。それを見たガルも同じ事を始め、ホルスターからブラスターピストルを抜いて右手のライトセーバーを防御専用、左手のブラスターを攻撃専用として使い始めた。それでも二人の動きは息が合っていて無駄が無く、鮮やかだった。そんな事を続けていると二人の目の前の道を塞ぐようにして一台のAATが近づいてきた。AATは二人の目の前で停止し、他のドロイド達も降伏を促すかのように二人を取り囲んで狙いを定めたまま動かなくなった。オビ=ワンはガルにだけ見えるように微笑してみせた。オビ=ワンの考えに気がついたガルはオビ=ワンと一緒にライトセーバーを消した。するとAATの上部にあるハッチが開き、分離主義の将軍ウォーム・ロースサムが姿を現した。

 

「悪名高きケノービ将軍とお見受けしたが」

 

「降伏する」

 

そうオビ=ワンが言うと目の前のB2スーパー・バトル・ドロイドがオビ=ワンに近づき彼のユーティリティ・ベルトにぶら下がっているライトセーバーを乱暴にひったくっていった。別のB2スーパー・バトル・ドロイドもガルに近づいた。しかし彼は自分の武器が乱暴に扱われるのが嫌なため、自ら二つのライトセーバーと二丁のブラスターピストルを二人が立っていた場所から離れた場所の地面に置き、誰も触るなと強い気迫で威嚇した。それを感じたロースサムはドロイドにガルの武器の回収を止めるように指示した。

 

「では将軍、部下に武装解除を命じてもらおう」

 

オビ=ワンはその声を聞きながら座るのに手頃な瓦礫とテーブルになりそうな瓦礫をフォースで浮かして自分の前に持ってきた。それを見たガルはやれやれといったジェスチャーをしながらオビ=ワンが運んだ瓦礫とは違う少し離れた場所の瓦礫の方に移動し、一人で座り始めた。

 

「まずは掛けて話そう」

 

「正気かね?将軍」

 

「敗北を認めたんだ。降伏条件について話し合うのが筋だろう?」

 

「小細工は無しだからな、ジェダイ」

 

「勿論だ。お互い文明人として話し合おう」

 

それを聞いたロースサムはAATからサーヴァント・ドロイド、通称サービス・ドロイド(使用人ドロイド)と一緒に降りてくる。それを待つ間、オビ=ワンがガルの方に目をやると必死に笑うのを我慢しているのが分かった。彼はそれを見てもっとワザとらしい話し方をしてやろうと思うのだった。

 

「敵将同士がこうしてあいまみえる機会など滅多にない事だ。あなたの名声は銀河に轟いてる」

 

オビ=ワンの言葉をしっかり聞きながらロースサムは瓦礫に腰をかける。

 

「どうも、こちらこそ光栄だ。潔く降伏を決断してくれて嬉しい」

 

「状況の的確な判断は将たる者の務めだ。ごほ……んん……何か飲み物をいただけないかな?」

 

「おい!何か飲み物をお持ちしろ」

 

ロースサムはそう使用人ドロイドに命令した。

 

「ありがとう。手早く済ませよう」

 

 

ーーヴェネター級スターデストロイヤー

 

 

「ユラーレン提督、クリストフシスに接近しました。分離主義派が封鎖線を張っています」

 

「艦隊を散開。クルーザーで輸送船を守らせろ」

 

「イエッサー」

 

ブラスト・ドアが開きヨーダが中に入ってくる。

 

「提督、急がねば。ケノービ将軍が危ない」

 

「あの封鎖線を破るのは簡単ではありません。以前も救援にしくじりました」

 

「この前は船の数が足りなかった。今回は違う。力尽くで突破するのじゃ」

 

一方で敵の懐へ潜り込んでいるアナキンとアソーカは箱を被ったまま移動している時にドロイデカにぶつかったりと色々とあったが何とか敵のシールドジェネレーターのすぐ近くまできていた。

 

「離れるな。用心して行かないと」

 

「お先!」

 

アソーカは油断して走り出す。

 

「待て!」

 

「なんで?すぐそこじゃん早く!」

 

そう言いながら走るアソーカは地面から生える細いアンテナようなものに引っかかり躓いてしまった。するとその引っかかったアンテナが次々と赤く光警報音のような物を鳴らし始める。アソーカは急いで立ち上がったがもう既に周りの地面が砕け、中からLR-57コンバット・ドロイドが出てきていた。

 

「ドロイドに構うな!爆薬を仕掛けろ!」

 

アナキンは走りながらライトセーバーでまだ完全に起動できていないコンバット・ドロイドのうちの数体を倒し、叫ぶ。アソーカは急いでシールドジェネレーターに近づき、爆薬を一つセットしたが、一番近くにいたコンバット・ドロイドに狙われていた。それにギリギリのところで気づいた彼女はコンバット・ドロイドの股の下に滑り込み、ライトセーバーを起動させる。そしてコンバット・ドロイドが彼女にもう一度狙いを定めようとしている隙にフォースジャンプでコンバット・ドロイドを飛び越えて反対側に移り、胴体とタンクの様な頭との繋ぎ目を横から綺麗にセーバーで一刀両断した。その残骸をフォースプッシュして得意げに飛ばすアソーカ。しかし、タンクの様な頭が転がった先にあったのはさっき彼女が引っかかったのとは別のアンテナ達だった。その上を転がり続けるコンバット・ドロイドの頭。アナキンがせっかく数を減らしたコンバット・ドロイドもまた地面から出てきて増えてしまった。

 

「ごめん」

 

「お前どっちの味方だ!」

 

「爆薬セットする……」

 

アソーカは反省しながら急いで爆薬をセットする。

 

「終わったら手を貸せ!」

 

アナキンがコンバット・ドロイド達の猛攻撃を防ぎながら叫ぶ。

 

「スカぴょん、そこ動かないで!」

 

アソーカはそう叫び目を瞑る。手を伸ばしてフォースを使った。

 

「何だ?おいおいおい」

 

自分の後ろにある壁が倒れてくるのに気がついたアナキンは驚きの声を上げる。倒れてきた壁にはちょうどアナキンが潜れるぐらいの穴が空いていたのだ。アナキンの周りにいたコンバット・ドロイド達は全て壁に潰された。

 

「僕まで死ぬとこだ!」

 

「ちゃんと考えてるし」

 

「僕一人で片付けられたんだ」

 

「助けてあげたのに何よ」

 

アナキンとアソーカが揉めながらも爆薬セットに成功した中、レックス達は重砲陣地で苦しい戦いを続けていた。

 

「キャプテン、ケノービ将軍とアーラ将軍が捕虜に。残りこれだけです」

 

「持ち堪えるんだ!シールドを広げさせたら終わりだ!一歩も退くな!」

 

クローン達は何とかドロイド軍との戦闘を続けているものの明らかな劣勢だった。

 

「敵が多すぎる!」

 

「退却!」

 

「退け!」

 

「一人やられた!」

 

「衛生兵を呼べ!」

 

そんな声があちこちから聞こえてくるのだった。

 

一方でオビ=ワンとガルはロースサムとの優雅なお茶会を続けていた。そしてオビワンはしっかりと使用人ドロイドに飲み物のお代わりを注文していた。ちなみにガルはもういつ飲み物を吹き出してもおかしくない状況まで来ていた。

 

「ああ……美味しい。それにもちろん私の部下を捕虜とした後は彼らの食料や収容所の手配も必要となりますなあ。その用意は?」

 

「ええいもういい!時間稼ぎか!」

 

「とんでもない。細かく詰めるべき事柄は山ほどあります」

 

そう言いながらオビ=ワンはロースサムにウインクをした。それを見たガルは我慢ができなくなり遂に笑い出した。ロースサムはテーブル代わりに使っていた瓦礫をひっくり返して怒りをあらわにした。

 

「拘束しろ!」

 

そう命じられたオビ=ワンの後ろにいた二体のB2スーパー・バトル・ドロイドはオビワンの二の腕を片方ずつ掴み空中に彼の体を浮かせた。ガルの近くにいた二体のB2スーパー・バトル・ドロイドも同じ様にしようと近づこうとしたが見えない壁に押し返されて前に進む事ができずにいた。しかしその異変には誰も気がついていない様だった。

 

「今直ぐ部隊に戦闘中止を命じるのだ。さもないとこの場で貴様を処刑する!」

 

「もうシールドが消える頃だと期待してたんだが……」

 

オビ=ワンがボソッと独り言を呟く。

 

「爆薬はセットしたのか?」

 

アナキンが不機嫌そうにアソーカに聞く。

 

「もちよ」

 

「では早くやれ」

 

アソーカも不貞腐れながら爆薬を起動した。大きな爆発音と共にシールドジェネレーターは粉々に吹き飛んだ。ついさっきまでずっと広がり続けていたシールドは消え始める。

 

「お待たせ!」

 

シールドが消え始めた事に気がついたオビ=ワンはそう言うとB2スーパー・バトル・ドロイドを振り解いて後ろに大きくジャンプする。

 

「ガル!」

 

その合図でガルはオビ=ワンにフォースで引き寄せた自分のライトセーバーの内の一本を投げて渡した。それを受け取ったオビ=ワンはまた素早くジャンプし、ロースサムの直ぐ後ろに飛び降りて彼の首に黄色の光刃を近づけた。それを見た他のドロイド達が一斉にロースサムを巻き込んででもオビ=ワンを撃とうとする。しかしロースサムは急いでそれを辞めさせた。

 

「よせ!撃つな」

 

「ああ、シールドに何か起きたようですな?将軍?」

 

シールドが消え始めたのを確認したレックスは部下に命令する。

 

「砲撃だ!目標、敵戦車!」

 

シールドを失ったドロイド軍は重砲の連射によって呆気なくやられて行く。

 

そしてオビ=ワンの元にはユラーレン提督からの通信が届いた。

 

「ケノービ将軍聞こえるか?封鎖線を突破した。敵艦隊は退却したぞ。もうすぐそちらに増援部隊が着く」

 

オビ=ワンとガルが空を見上げるとLAAT/i、リパブリック・アタック・ガンシップが通り過ぎるのが見えた。そして二人の目の前にもガンシップが降りてきた。ハッチが空き、ヨーダが降りてきた。

 

「完璧なタイミングです。マスターヨーダ」

 

アソーカは今回の身勝手な行動でアナキンのパダワンになるのは無理だと思い、一人落ち込んで地面に座っていた。するとアナキンも隣に座り始めた。

 

「お前は無鉄砲すぎる。とてもオビ=ワンのパダワンは務まらない。でも…………僕のなら別だ」

 

その言葉を聞いたアソーカは目を見開いて笑顔になる。

 

それを見たアナキンも優しく微笑み返した。

 

「来いよ」

 

アナキンはアソーカを連れて二人の事を迎えにきたガンシップが着陸する場所に向かった。二人がガンシップに乗ると中ではレックスが待っていた。

 

「お見事でした将軍。それに君もな」

 

アソーカはレックスにも褒められて更に笑顔になる。

 

その後アナキンとアソーカはヨーダ、オビ=ワン、ガルのいる集合地点に向かうのだった。




最後まで読んで頂きありがとうございます。
それでは次回の投稿をお楽しみに!フォースと共にあらんことを



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さあ惑星テスへ

読んでくださりありがとうございます。
明日、明後日も1話ずつ投稿する予定です。


アナキンとアソーカを乗せたガンシップがヨーダ、オビ=ワン、ガルの近くに着陸する。

 

「どうもありがとうレックス」

 

「どういたしまして」

 

「マスターヨーダ、マスターケノービ、それにマスターガル?」

 

アナキンはガルの事をマスターと呼んでいいのか悩みながらもマスターを付けて呼ぶ。

 

「アナキン、俺のことはガルで呼んでくれていい」

 

「分かりましたガル」

 

「あまり敬語も好きじゃないが……まあ好きなようにしてくれ」

 

「ふむ……新しいパダワンに手こずっておるのか?」

 

ヨーダはアナキンとアソーカの距離を感じ、尋ねる。

 

「状況は私からマスターヨーダに説明しておいた」

 

「パダワンを持つ余裕がないならこの子はオビ=ワンかガルに預けて……」

 

「いえ、待ってください。アソーカがたぶんに荒削りな事は認めます。しかし、充分に実戦を積み忍耐を学べば必ずものになります」

 

「では連れていくがよい。テスの惑星系へ」

 

「テス?あそこはドロイド軍も避けて通る辺境です」

 

「ジャバ・ザ・ハットの息子がさらわれた」

 

「ジャバの息子を助けろと言うんですか?」

 

アナキンは信じられないといった表情でヨーダに聞く。

 

「アナキン、ドゥークーに優位に立つにはハット族を味方にしないと」

 

オビ=ワンがアナキンを宥める。

 

「ジャバとの交渉はオビ=ワンがする。お前の任務は子供をさらったならず者を見つける事じゃ」

 

「行こうよマスター。ちょろそうな任務じゃん。あたしレックスに兵隊集めさせとくね」

 

アソーカはそう言ってこの場を離れた。

 

「大丈夫だアナキン。私がお前に教えたようにやればあの子もまともになる」

 

「マスター、最初からあなたの企みだった様な気がしてきました」

 

アナキンはそう言い残してアソーカを追いかけた。

 

「忍耐か……オビ=ワン、お前の周りにはそれができない奴ばっかりな様な気がするがな」

 

ガルが笑いながらそう言うとオビ=ワンはガルの事を少しこづいた。

 

「ほっほっほ。本当に久しぶりじゃのうガル」

 

「ええ、マスターヨーダお久しぶりです。復帰の許可ありがとうございます」

 

「そなたの復帰の件じゃが評議会にはまだ話しておらぬ。まあ議論の余地はないのじゃが。マスターウィンドゥはあまり喜ばないかもしれぬ」

 

「大丈夫です。もしダメでも一応共和国との契約もあるので。それに彼とは聖堂にいた頃から馬が合わなかったので」

 

「頼むからまた評議会のメンバーと揉めて追放とかにならないでくれよ?」

 

「その件については色々皆誤解しておる。ガルはあの時自ら聖堂を去ったのじゃ。たしかに当時の評議会のメンバーとはそなたのマスターと同じように上手くいっていなかったがの」

 

「そうなんですか?マスターヨーダ」

 

「そうじゃ。そしてガルはわしからの直接の依頼を裏で色々やってくれていていつも助かっていたのじゃ」

 

「それは驚きです」

 

「ちなみにマスタークワイガンもこの事をずっと知っておるぞ?」

 

それを聞いたオビ=ワンは驚いた。

 

「ところでマスターヨーダ、自分は次にどうすれば?」

 

「うむ。少しの間オビ=ワンと一緒にアナキンとアソーカの様子を見てほしい」

 

「分かりました。では自分も惑星テスへ向かうとします」

 

ガルは軽くヨーダにお辞儀をしてその場を去った。

 

「さて、ジャバ・ザ・ハットと交渉するとなると私もこれで失礼しなければ」

 

そう言ってオビ=ワンは近くに止めておいた彼専用のデルタ7Bイーサスプライト級軽インターセプターに乗り込んで飛び立つのだった。

 

その頃タトゥイーンのジャバの宮殿ではジャバの雇った賞金稼ぎ達が綺麗に頭だけの状態で帰ってきていた。それを見たジャバは最高議長にすぐ連絡を取り、何故ジェダイが自分の子供を助けようとしないのかと尋ねた。最高議長からもう既にジェダイが動いていると聞いたジャバは共和国がジャバの支配領域での安全航行を望むならそうすべきだと脅したのだった。

 

 

バクセル宙域ーー惑星テス付近ーーアクラメーターⅠ級アサルト・シップ〈デファイアント〉

 

 

「大尉、誘拐犯に見られなかったか?」

 

「はい、スカイウォーカー将軍。自分らは偵察のプロです」

 

「賞金稼ぎはどうした?まだいるのか?」

 

「そうは思えません。姿を見かけませんので」

 

「それで敵の戦力は?」

 

「少なくとも二個大隊のドロイドが要塞化された修道院を守っており、まともには難しいかと」

 

「よくやった。休んでくれ」

 

アナキンはそう告げてレックス達の元に向かう。そこではアソーカがクリストフシスでの活躍をクローン達に得意げに話していた。みんな笑いながら楽しそうに話している。

 

「よし諸君。任務はこれからだ」

 

「イエッサー。みんな聞いたな?解散!」

 

レックスがそう言うと全員が出撃の準備を始めに行く。

 

「ジェダイは常に謙虚であれと習わなかったのか?このお調子者め」

 

アナキンは冗談半分でそう聞く。

 

「ごめん、みんなに元気分けてあげようと思って」

 

「マスターガルも僕たちと一緒のガンシップに乗りますか?」

 

「ああ、喜んで。だから呼び捨てで構わないと言っているのに。俺はマスターの位を持っていない…………多分な」

 

「それでもマスターの相棒で親友であったのであれば僕にとってあなたはマスターです。それにあなたには母を救ってもらった恩があるので」

 

「いや、それよりタトゥイーンで一緒にいた時みたいにしてくれていい」

 

「それなら僕は喜んで」

 

「良かった」

 

「了解です」

 

アナキンと話し終えたガルはガンシップに乗る前に誰かに通信をし始めた。

 

「こちらガル。これから惑星テスに降りる。援護に来てくれ」

 

「了解」

 

「オビ=ワンの艦隊の援護を先にしてその後船をいつでも入れられるようにしといてくれ」

 

 

アケニン宙域ーー惑星タトゥイーン

 

 

オビ=ワンのインターセプターがハイパースペースから抜けた。R4が不安そうな機械音を鳴らす。

 

「心配ない。今ジャバの機嫌は悪くないはずだ」

 

そう言いながらハイパードライブリングとの接続を切り、タトゥイーンの地上へと降りてゆく。オビ=ワンはインターセプターをジャバの宮殿の入り口付近に着陸させる。すると中からジャバの通訳を務める3POシリーズ・プロトコル・ドロイドとその護衛が一緒に出てきた。オビ=ワンはローブを着て急いで外へ出た。

 

「賢明にして偉大なジャバ様をお待たせしてはいけません」

 

「もちろん。そのつもりはない」

 

そうオビ=ワンが答えると宮殿の中へと案内され、ジャバの前に立たされた。

 

「偉大なるジャバ。ただいま御子息の捜索に最強のジェダイが向かっております。必ずやいい結果が」

 

「アーウマカガスミモマカビトビバスキ」

 

「慈悲深きジャバから一つだけ条件があります。彼の可愛いプクプクちゃんをさらった悪党を引っ立てろと」

 

「プクプクちゃん?」

 

オビ=ワンは思わず聞き返してしまう。

 

「イチョトサビースカ!」

 

「生死は問わないそうです」

 

「オーヲトキカワタクチョイセバラティオンバー」

 

「ジェダイが失敗すればドゥークー伯爵とドロイド軍にやらせると」

 

 

バクセル宙域ーー惑星テス

 

 

ガンシップ内でガルはオビ=ワンからの通信を受ける。

 

「ガル、話し合いがついた。ジャバは息子を無事タトゥイーンまで連れ戻すのに星が一回りする余裕しかくれなかった」

 

「充分だ。俺たち三人でなんとかする」

 

「油断しないでくれよ。誘拐犯の正体がまだ分からないんだ。交渉を終えたら私もそちらへ飛ぶ」

 

「了解」

 

ガルは通信を切る。

 

ちょうどその頃、敵のドロイド達もガンシップの接近に気がついていた。

 

「何かやってきます。何かははっきり分かりません」

 

「気に食わん。迎撃準備」

 

「でも〜味方だったら?」

 

「黙れ、指揮官は自分だ」

 

「ラジャーラジャー」

 

ドロイド達は迎撃準備を始めた。

 

「離れるなよ。できるならな」

 

アナキンはガルとアソーカの顔を見ながら言う。

 

「そんなのかるいってマスター」

 

「アナキン、それは俺にも言ってるのか?」

 

「もちろん」

 

アナキンはガルに笑ってみせる。

 

「仕方ないアナキン。君がおいていかれない様に援護しよう」

 

ガルもそう言って笑い返した。

 

すると突然ガンシップに衝撃がくる。修道院を守っているドロイド達が発砲を始めたのだ。

 

「将軍!弾幕が厚い」

 

パイロットがアナキンにそう告げる。

 

「ブラストシールドを閉じろ!下に潜れ」

 

「イエッサー」

 

ブラストシールドが閉じ、一気にガンシップ内の雰囲気がピリつく。

 

「ゾクゾクする。ね?マスターガル」

 

「ああ俺もこうやって戦闘に参加するのは久しぶりだからな」

 

アソーカとガルはソワソワし始めている。どうやら二人は意気投合できそうだ。

 

ガンシップ内に赤い照明がつき、船内全体が赤くなる。

 

「リッジ、無線をチェックしろ」

 

「了解」

 

「レッドライトスタンバイ」

 

レックスの掛け声でクローン全員がいつでも飛び出していける様に準備する。

 

「地獄の楽園にようこそ」

 

パイロットはそう言いながらガンシップを着陸させる。それと同時に船内の照明の色が赤から緑に変わった。

 

「グリーンライト!」

 

「ゴー!ゴー!」

 

ブラストシールドが開き、一番最初にガルが飛び出して行く。次にアナキン、アソーカ、レックスとどんどんと船を降りて行く。

 

ガルは降りてすぐにライトセーバーを取り、上から雨のように降ってくるブラスター光弾を跳ね返す。全員が攻撃を避けながら修道院のふもとに向かっていた。修道院ではドロイド達が発砲を続けていた。

 

「セクター11374265に砲火を集中しろ」

 

「1137…………もう一度お願いします」

 

「いいからあそこを狙え!」

 

アナキン達は敵の砲火を避けながら修道院のふもとに到着した。

 

「僕に続け!」

 

「さ、お楽しみはこれからだよ?」

 

「競争といくか?」

 

「先に行っていいよ?」

 

「なら俺が一番最初に!」

 

ガルが勢いよくフォースで跳躍してかなりの高さまで上がる。そして崖に垂れていた蔦を掴みながら徐々に上へと登って行く。

 

「ズルいぞガル!」

 

急いでアナキンもガルの後を追いかける。クローン達もケーブルを発射して崖を登り始める。最後になったアソーカも直ぐに後を追ったが、自分の横をほぼ垂直の崖を難なく徒歩よりも早いリズムで登り始める全地形対応戦術攻撃兵器、略称AT-TEを見て名案を思いついたのだった。

 




恐らくプロローグの時点でかなり正史と違う点がちょこちょこ出てくると思いますがお付き合いください笑
それでは次回の投稿をお楽しみに!フォースと共にあらんことを


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テスの修道院

現在の順位・ガル→アナキン→レックス→アソーカ

 

「レックスも参加するか?」

 

ガルが左手で蔦を握り、右手のライトセーバーでブラスター光弾を偏向しながらレックスに声をかける。

 

「あー参加してもいいですが、フォースの使用を無しにしていただかないと……」

 

「流石にそれはキツイ」

 

アナキンが隣からそう言う。

 

「じゃあ私とどっちが早いか競争する?」

 

「それならいいでしょう。ついてこられるかな?」

 

レックスがアソーカの申し出を許可する。そしてレックスは急に崖を登るスピードを上げた。

 

レックスがガルとアナキンに追いつくスピードで登ってくる。アソーカは崖を登るのにまだ慣れないようでスピードが安定しない様だった。

 

「三人とも!そうやって先頭に入れるのも今のうちだよ!」

 

アソーカがそう叫ぶ。それを聞いた三人がアソーカの方を振り返るとさっきまで後ろにいたはずのアソーカがいなくなっていた。

 

「こっちだよノロマさん達!」

 

アソーカの声が急に横から聞こえるようになる。アソーカは崖を登るAT-TEのコックピットの上に立ちライトセーバーで敵のブラスター攻撃を防いでいた。

 

「彼女なかなかやりますな」

 

「俺達も負けていられないなアナキン」

 

「僕達もそろそろ本気を出さないと」

 

ガルとアナキンの崖を登るスピードがあがる。しかし安定した速度で崖を登り続けられるAT-TEとはどうしても差が生まれてしまう。

 

「ガル、このままだと負ける」

 

「何か他の方法を考えよう」

 

ガルとアナキンは敵の攻撃を防ぎながら良い移動手段を探す。するとちょうどシングル・トルーパー・エアリアル・プラットフォーム、略称STAPに乗ったB1バトル・ドロイド達がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「アナキン、あれで行こう」

 

「いいね。その作戦のった!」

 

二人は顔を見合わせるとライトセーバーをしまい、同じタイミングでフォースを使って跳躍し、STAPに向かって飛んでいく。ガルは空中でホルスターからブラスターを抜き、自分が乗りたいSTAPに乗っているドロイドの頭を撃ち抜き、アナキンが乗ろうとしているSTAPのドロイドもついでに倒した。二人は無人になったSTAPに乗り移り一気に崖を登り始めた。

 

「お先に失礼!」

 

ガルがそう言いながらアソーカとレックスの横を通り過ぎて行く。

 

「ちょっとズルいよ!」

 

「早く着いてこい!レックス、続け!」

 

アナキンもガルの後を追いながらそう声をかける。

 

「イエッサー!そんな無茶な……」

 

ガルとアナキンの無鉄砲な行動を見たレックスは自分にもフォースが使えたらなと思うのだった。

 

STAPに乗ったガルとアナキンは崖を登りながら途中にいるDSD1ドワーフ・スパイダー・ドロイド、別名バローイング・スパイダー・ドロイドを次々と倒して行く。

 

「もっと早く動かして!」

 

アソーカはAT-TEのパイロットに向かって文句を言う。

 

ガルとアナキンは修道院まで登るとSTAPを乗り捨て、ドロイド達の中心に降りる。しかしドロイド達は二人を囲んで迫ってくる。

 

「降伏しろジェダイ」

 

二人は何も言わずにライトセーバーを起動してドロイドを一気に倒して行く。二人が倒したドロイドの残骸が勢い余って下に落ちていった。二人がドロイドを全て倒すと修道院の中からドロイデカ三体が転がってきた。ドロイデカは直ぐに体を開き、シールドを起動する。

 

「アソーカのバカが、離れるなと言っておいたのに」

 

競走を提案したはずのアナキンが文句を言う。

 

「俺に任せろ」

 

ガルはそう言ってフォースを溜めてドロイデカに向けて前に放った。ガルの放ったフォースプッシュは三体のドロイデカを吹き飛ばしてバラバラのスクラップにした。

 

「わお、こんな倒し方があったなんて」

 

アナキンは感心したという顔をする。

 

また修道院からは新しいドロイデカが七体転がって来始めた。しかし、ガルとアナキンの前に到着する前に二人の後ろからの攻撃でドロイデカ達は粉々に吹き飛んだ。二人が振り返るとそこにはAT-TEとその上に乗ったアソーカがいた。

 

「これなら文句ないよね?スカぴょん」

 

「まあそのうち来るとは思ってた」

 

「制圧完了」

 

レックスが横から声をかけてくる。

 

「よくやった。負傷者の手当をしろ」

 

「了解しました。ガンシップは安全な距離を取れ」

 

「それでアソーカとレックスはどっちが先に着いたんだ?」

 

ガルが二人に聞く。

 

「私の方が先だったと思う」

 

「残念ですがほぼ同時だったと思われます」

 

「なら一位は僕とガルで二位はレックスとお調子者って事だな」

 

「次は負けないからね二人共」

 

「ええ、私も今度はジェットパックを使って参戦しますので」

 

そんな四人のやりとりを修道院の上層階でヴェントレスとRA-7プロトコル・ドロイド、別名インセクト・ドロイドが見ていた。

 

「ドロイドはその役を果たした。次はお前の番だ」

 

ガル達はドロイドの残骸を見ながら相談していた。

 

「海賊にしては兵隊が多すぎる。背後にドゥークーの匂いがする。早くジャバの息子を探そう」

 

「ちょろいって。あとはもう楽ちんよ」

 

「そのちょろいはやめろ」

 

アナキンはそう言いながら修道院を目指して歩いて行く。それに合わせて全員が動き始めた。修道院の入り口の大きな扉が上に開き、次々と中に入って行くがそこは暗く感じの悪い所だった。レックス達クローンはヘルメットのライトを付ける。

 

「どうも気に食わん。きみの悪い所だな」

 

レックスがそう言う。

 

「ここってボマール僧の修道院の様子にそっくり。ジェダイ寺院で習った教科書に載ってた」

 

「密輸業者がここを乗っ取り、自分達のアジトに改造したらしい」

 

ガルがそう答える。

 

「お坊さんは黙ってたの?」

 

「相手は密輸業者だぞ!逆らえば殺される」

 

アナキンが強い口調で答える。

 

ガルが何かが接近してくるのに気が付き直ぐにライトセーバーを起動させる。静かな修道院内に起動音が響き渡った。ガルが見る先にはこちらに向かって歩いてくるインセクト・ドロイドがいた。

 

「あー良いやつ?それとも悪いやつ?」

 

「分からん」

 

「何者だ?」

 

アナキンがライトセーバーを起動しながら声をかける。

 

「ああ、ただの管理人でございます。バトルボット共に脅されておりました。おかげで救われました」

 

それを聞いたアナキンとガルはライトセーバーを消す。

 

「ハットはどこにいる?」

 

「あいつらは囚人を地下牢に閉じ込めました。地下は危険です。どうかくれぐれも御用心を。召使いは置いて行かれた方が」

 

「召使いがこれを持ってる?」

 

アソーカは召使い扱いされた事に苛立ち、ライトセーバーを起動してブレードをインセクト・ドロイドの首元に近づける。

 

「私はジェダイの騎士。今は……見習いだけど」

 

アナキンとガルの視線を感じたアソーカは直ぐにライトセーバーを消して、訂正した。

 

「それは、ご無礼を致しました」

 

「ハットはアナキンとアソーカに任せる。俺はレックス達と一緒にここで見張りをする」

 

「分かった。レックス、僕が戻ってくるまでガルの指示で動いてくれ」

 

「了解ですスカイウォーカー将軍。よろしくお願いしますアーラ将軍」

 

アナキンとアソーカは地下を目指して行った。そんな中ヴェントレスは作戦を第二段階へと移行させようとしていた。そんなヴェントレスのパーソナル・ホロプロジェクターにドゥークー伯爵から通信が入る。

 

「奴らは僧院を制圧しました。スカイウォーカーもいます。ハットの子を探しに今地下へ」

 

「上出来だヴェントレス。全て計画通り運んでおる」

 

「今直ぐにも始末できます」

 

「焦るな。証拠が先だ。復讐のチャンスはいくらでもある」

 

「マダム、ジェダイが地下に入りました」

 

B1バトルドロイドがそう知らせた。

 

そんな中、地下の廊下を歩いているアナキンとアソーカは敵の気配を確実に感じ取っていた。

 

「マスター?これって罠だよ。気づいてる?」

 

「もちろん」

 

「またドロイドが二体いた」

 

「分かってる」

 

「なんでほっとくの?やっちゃってもいい?」

 

「そうだな。そんなに汗をかきたければ好きにしろ」

 

「はあ!」

 

アナキンの許可をもらったアソーカは急にライトセーバーを起動して直ぐ後ろについて来ていたB1バトルドロイドの武器を切り落としてからドロイド自体を斜め下から一刀両断し、その直ぐ後ろにいたドロイドのブラスター光弾を偏向して倒し、最後の一体の頭を切り落とした。

 

「悪くない。ちゃんと先に武器をやったな」

 

「誰かさんより上かもよ?」

 

アソーカが調子に乗る。するとアナキンは何故かライトセーバーを起動した。そして彼の背後に向かってセーバーをさした。するとドロイドの悲鳴が上がった。

 

「どうかな?見落としだぞ」

 

「あんたに残しておいたの」

 

アソーカは頬を膨らませてそう言った。

 

二人は細い廊下を進んでいく。そしてアナキンがとある牢屋の前で立ち止まった。

 

「さらわれたハットはこの中だ」

 

「うう……分かる。臭うもん」

 

アナキンがフォースでドアを開けた。するとハットの息子が地面を這いながら近づいてきた。

 

「思っていたよりずっと小さいな」

 

「わぁ、まだ赤ん坊じゃない。これなら仕事もうんと楽になる。なんて可愛いんだろ」

 

「こいつが大人になった姿を見てから言え」

 

 

アケニン宙域ーー惑星タトゥイーン

 

 

オビ=ワンを待っていたR4がスターファイターに乗ったオビ=ワンに電子音で話しかける。

 

「ああR4、私も早くさよならしたい」

 

オビ=ワンはファイターを離陸させてジャバの宮殿を離れていく。それをドゥークー伯爵がジャバの宮殿の入り口で見ていた。オビ=ワンが完全に去ったのを確認するとドゥークーは宮殿内に入っていく。そしてジャバ・ザ・ハットの前に立つのだった。

 

「偉大なるジャバ・ザ・ハット、御子息の知らせです。御子息をさらったのはジェダイの仕業と分かりました」

 

ドゥークーの発言によって宮殿内がざわつく。

 

「ドゥークーワナジャミーミーシカー」

 

「どうしてそれが分かったのかと仰っています」

 

「蛇の道は蛇、それよりもっと大事なことが。警告です。ジェダイがあなたをねらっていますぞ」

 

「アーウォンカーミーチースカー」

 

「賢明なるジャバは証拠をお求めです」

 

「もちろんお見せしましょう」

 

 

バクセル宙域ーー惑星テス

 

 

クローンがガルの元に来てパトロールの結果を伝える。

 

「アーラ将軍、ドロイドは見当たりません」

 

「ご苦労。休んでくれ」

 

ガルはそう言いながらアナキンに通信をする。

 

「アナキン、外は今のところ異常無しだ。間も無く正午になるぞ」

 

「了解、子供は見つけた。ケノービ将軍はまだ来ないか?」

 

「まだ来ないな。もう少しかかるだろう」

 

「何かあったらまた連絡を」

 

「了解」

 

アナキンはガルの返答を聞いてから通信を終了する。

 

「マスター?ジェダイの訓練に子守なんてなかったよ?どうすれば良い?」

 

「その臭いチビを可愛いと言ったのはお前だ。お前が抱いていけ」

 

そう言ってアナキンはアソーカを待たずにガル達の元へ帰り始めた。

 

 

ーーヴェネター級スターデストロイヤー

 

 

オビ=ワンがレゾリュートに帰ってきた。そしてファイターから降りずにコーディに伝える。

 

「コマンダー、ユラーレン提督に直ぐ船を出すよう伝えてくれ。ガル達を助けにいく」

 

「はい、将軍」

 

「そうだコマンダー、一つ聞きたいんだがもう一台のクルーザーはなんだ?色がおかしかったが……」

 

「ああ、あれですか。護衛のアーラ艦隊です」

 

「アーラ艦隊??」

 

オビ=ワンはその名前を聞いて驚愕するのだった。

 




また明日も投稿します〜
それではフォースと共にあらんことを


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分離主義派の思惑

コーディとオビ=ワンが話しながらユラーレン提督の元に帰ってくる。

 

「残念ですがアーラ艦隊に関しては自分も噂でしか聞いたことがありません」

 

「噂?」

 

「ええ、大隊のキャプテンやコマンダーが我々クローンではなく賞金稼ぎだとの噂があります」

 

「まあ、あいつならやりそうな事か……」

 

「それにファイターは個性的な物が多く、護衛艦隊のはずなのに異常なまでの強さと隊の結束力で、空中戦、地上戦でも今のところ犠牲者はほぼゼロに近いとか」

 

「そんな事あり得るのか?」

 

「分かりません。ですがアーラ艦隊の存在が確認された今、その噂が本物かどうかはこの目で確かめられそうです」

 

「確かにそうだな。ユラーレン提督、今戻りました」

 

「お疲れ様です。準備が出来次第惑星テスに向かいます」

 

「アーラ艦隊と通信をしたいんだがいいか?」

 

「もちろんです。先程まで作戦会議を行っていましたので」

 

「ありがとう」

 

オビ=ワンはそう言いながらアーラ艦隊と通信を始める。

 

「初めまして私はオビ=ワン・ケノービ」

 

「おーあなたがあの有名なケノービ将軍ですか。私はキール。アーラ艦隊の提督です」

 

そう言って現れたホログラムに映るのはガルと同じぐらいの年齢の男だった。

 

「キール提督、お会いできて光栄です」

 

「いえいえこちらこそ。本物のオビ=ワン・ケノービを見れるなんて最高ですよ」

 

「ははっ、そうですか。それは嬉しいですな。ところでガルから連絡は?」

 

「ファイターをいつでも受け入れられるようにしておけと言われただけで特には」

 

「分かりました。それでは作戦通りに頼みます」

 

「了解です」

 

オビ=ワンは通信を終え、テスへ出発した。

 

 

バクセル宙域ーー惑星テス

 

 

「おチビちゃんのご感想は?まだ可愛いか?」

 

「いいえ、だんだんあんたに似てる気がしてきたな」

 

そう言いながらアソーカはジャバの息子をアナキンに向ける。

 

「ほら、双子みたい」

 

「じゃあ僕もおんぶしてくれるか」

 

アナキンは冗談で返す。

 

すると突然ジャバの息子が咳をし始めた。

 

「マスター、この子病気みたい。燃えるように暑いよ」

 

「本当だ……直ぐ船に連れて行かないと。トルーパー、バックパックを貸せ」

 

アナキンはジャバの息子のおでこを触りながらそう言う。

 

「ヘタね。私がする」

 

「ハットは嫌いだ」

 

そんな話をしながらジャバの息子をバックパックに固定しようとしているところを上層階からヴェントレスとインセクト・ドロイドが録画をしていた。ヴェントレスはすぐにドゥークーに通信をする。

 

「マスター、ご要望の録画を終えました」

 

「すぐ送信しろ。次はガキを奪い返すのだ」

 

「そしてジャバの元へ届けるのですね」

 

「その通りだ。しくじるなよ」

 

 

アケニン宙域ーー惑星タトゥイーン

 

 

ドゥークーがヴェントレスから届いた映像をジャバに見せ始めた。アナキンがハットは嫌いだと発言したのを聞いた瞬間宮殿内がどよめいた。それに実際はジャバの息子は体調が悪く泣き叫んでいただけだったがそれを知らないジャバはドゥークーの言い分が正しいと信じ込んだ。

 

「ご覧の通り御子息をさらったのはジェダイ。陛下を謀っております」

 

「ジェダイプードゥー」

 

「ご安心を、既に我がドロイド軍が救出に向かっております。無事戻られましょう」

 

「ンーインミキーバーガンドゥークーチコポブンゲナー」

 

「偉大なるジャバは見返りに何を望むかとお尋ねです」

 

「共和国との戦い、我が方についていただければ身にあまる幸せ」

 

 

バクセル宙域ーー惑星テス

 

 

ガル達三人はアナキンが乗る予定のジェダイスターファイターを経由してオビ=ワンと通信をしていた。

 

「ガル、子供は見つけたか?」

 

「ああ、アナキンとアソーカが見つけてくれた。でもこの事件の影には分離主義派がいるな。ドゥークーの匂いがする」

 

「この子の臭いも相当だけど」

 

「我々を利用してジャバを分離派に取り込もうとしてるな」

 

「マスターケノービ、もう一つ問題が。この子は重病なの」

 

「タトゥイーンまでもつかどうか……危ないです。僕らの立場は微妙になる。そもそもハットとの取引が間違いだ」

 

「銀河外縁部の航路はハット族が支配してる。ジャバの協力が戦いの行方を左右する。もしその子の身に何かあれば協定どころかハットを敵にまわすぞ」

 

「マスター、また問題が」

 

アソーカが空を見ながらそう言う。空からはC-9979着陸船、通称トレード・フェデレーション着陸船が二機と可変翼自動推進式バトル・ドロイド・マークI、別名ヴァルチャー級スターファイターが数十機修道院に向かって降下してきていた。

 

「迎撃配置につけ!」

 

レックスが支持を下す。

 

「AT-TEは全火力を着陸船に集中させろ!一機は確実に撃ち落とすんだ!オビ=ワン、出来るだけ早く来てくれ。これはかなりヤバそうだ」

 

ガルはそう言って修道院の門に向かって走っていく。

 

「アナキン、どうなってる」

 

「敵襲です。後でまた連絡します」

 

アナキンは通信を切りガルの後を追いかけていく。

 

「来い!ブリキ野郎!」

 

クローン達はドロイドファイターを撃ち続ける。そしてガルの判断のおかげで着陸寸前まで来ていた着陸船の内一機を破壊することに成功した。ヴェントレスはあまりにも的確な判断で迎撃をしてきたクローン達に驚いていた。しかしもう一機の破壊できなかった着陸船からはドロイド達が続々と降りてきていた。

 

「全火力を表門に集中!」

 

ガルの合図で全員の狙いが空から地上のドロイドに変わる。

 

「AT-TEは徐々に修道院の入口へ下がりながら攻撃してくれ。門の近くにいると危ない。退却時は乗り捨てて良いぞ」

 

「了解です、アーラ将軍」

 

「アナキン!一緒に来てくれるか?」

 

「もちろん!アソーカ、先に修道院に入って子供を守ってろ」

 

アソーカはそれを聞いて不服そうにしながらも修道院に向かって走り始めた。ガルとアナキンはレックス達の前に一瞬で跳躍し、着地と同時にドロイド達をフォースで吹き飛ばした。

 

「アナキン、暗黒面の匂いがする。どこかにヴェントレスがいるぞ」

 

ガルがアナキンに警告をしながらジュヨーを使って華麗な動きでドロイドを両断していく。ガルとアナキンはなんとか敵を門から中に入れないように奮闘したが、徐々に数に押されて後退せざるを得ない状況だった。

 

「退却!」

 

アナキンの掛け声で全員が修道院の入り口に向かって後退し始める。ガルは全員が安全な場所に後退できるまでずっと先頭でブラスター光弾を防御し続ける。しかし、敵はガルよりも後ろのAT-TEに目をつけたため、瞬く間にAT-TEの足をやられてしまった。AT-TEは全六本中の前二本をやられてしまったため体制を維持できずに前に倒れる。ガルはほぼ全員が修道院の入り口に入った事を確認すると急いでもう一本のライトセーバーを起動してAT-TEのコックピットを壊した。そして使うライトセーバーを一本に戻し、中から負傷したクローントルーパーをフォースで引きずり出した。

 

「トルーパーしっかりしろ」

 

「う、ああ……アーラ将軍ありがとうございます」

 

「トルーパー、攻撃は全て防御するから入り口まで全力で走れ」

 

「分かりました」

 

そう言ってトルーパーは修道院の入り口に向かって走り出す。ガルは徐々に後退しながらドロイドを何体か倒していく。負傷したトルーパーが入り口まで来るとアナキンが声をかけてくる。

 

「ガル、これで全部だ!ドアを閉める!」

 

「了解、アナキン!」

 

ガルはそう言ってフォースで跳躍し入り口まで一瞬で到着した。その瞬間アナキンは制御装置で入り口のドアを閉めた。それを見ていたドロイドがヴェントレスに報告をしに行った。

 

「マダム、ジェダイ達は正門から中に逃げ込みました」

 

「これで袋の鼠だよ」

 

「キャプテン、ケノービ将軍の援軍が来るまでここでに立て篭もる」

 

アナキンは修道院内でレックス達に新しい指示を出す。その様子をアソーカはジッと見ていた。

 

「なんだ?」

 

「マスター?ここであいつらを防ぎ切れると思うの?逃げ道を探すべきだよ」

 

「僕らの任務はその子を守る事だ。無茶はできない」

 

「無事タトゥイーンに送り届けるのが任務でしょ?時間が無くなるよ」

 

「名案でもあるのか?」

 

アナキンにそう聞かれたアソーカは答えに詰まる。しかしR2が後ろで電子音を鳴らしたことでアソーカは逃げ道を見つけた。

 

「あるよ?ああ、あると思う……R2に聞いて?」

 

「よーしお調子者、お前を信じてみよう。キャプテン、ここを守っていてくれ。ガルはどうする?」

 

「俺はここでヴェントレスを迎え撃つ」

 

「分かったくれぐれも気をつけて」

 

そう言ってアナキンはアソーカとR2を連れて別の逃げ道を探しに行った。レックス達クローンはもし入り口が開いた時のために戦闘配置につき始める。そんな中ガルはAT-TEを操縦していたクローンの元へ向かった。

 

「状態はどうだトルーパー」

 

「ああ、将軍わざわざありがとうございます。もう大丈夫です。腕を折ったぐらいです」

 

「そうか」

 

ガルはそう言いながらトルーパーが怪我した方の腕に手を当ててアーマーの上からフォースで傷を癒した。

 

「将軍?何をなさっているのですか?自分みたいな量産型のクローンにその力を使われるのはもったいないです」

 

「俺はそうは思わない」

 

「ですが、自分はなかなか隊にも混ざれずにいる厄介者です」

 

「そこは問題じゃない」

 

「キャプテンにも何度迷惑をかけた事か」

 

「お前、名はなんという?」

 

「自分はCT」

 

「番号ではない。皆から呼ばれる名を聞いている」

 

「自分はスタップです」

 

「スタップか良い名だな。いいかスタップ、いくらお前達クローンが同じ顔で同じ遺伝子から生まれていたとしても全てが同じなんてことはない。一人一人が違った個性を持ち、一人一人が生きているんだ。人間と同じさ。だから俺はお前を助けた。助けを必要とする者を全力で助けるのは当たり前だ。これはジェダイだからではなく、生きとし生けるものの使命だからだ。まあこれは、ワガママでジェダイオーダーに馴染めずにかつて脱退した俺の持論だがな」

 

ガルは笑いながらそう言って立ち上がり、その場を去ろうとした。

 

「いえ、将軍。そうやって言ってくれるのはとてもありがたいです。助けてくださって本当にありがとうございます」

 

「気にするな。そういえば隊に馴染めないと言ったな。このままここでやるのもありだが…………俺の艦隊に空きがある。気になったらシャアク・ティに聞いてみてくれ。俺の艦隊は一匹狼ばかりだぞ」

 

ガルはそう言ってドアがいつ開いても良いようにドアの目の前に向かった。すると横から先程のやりとりを見ていたレックスが声をかけてくる。

 

「アーラ将軍、スタップを助けてくださってありがとうございます」

 

「レックス、勝手に勧誘してしまってすまない」

 

「いえ大丈夫です。あいつはアカデミー時代の成績と個人での戦闘の実績は申し分ないのですが、どうもこの隊に馴染めないようでして」

 

「お前も感じていたか」

 

「ええ、将軍はいつから?」

 

「崖を登っていた時からだ。あの時はスタップの操縦するAT-TEだけが俺達四人についてきていた。だからアソーカもAT-TEの上に乗る事を考えたんだろう。彼は個としての能力が高すぎるのかもしれん」

 

ガルの回答を聞いたレックスは心の底から驚いた。これだけの短い間でそれに気づく者はほとんどいない。どれほどクローン、いや、戦闘での一人一人をよく観察しているのかが分かる。それに戦況の理解がとても早い。これほどのスピードはアナキンと同じでほぼ無鉄砲と思われても仕方がないと感じた。

 

「そろそろヴェントレスがこの扉を開ける頃だろう。俺は初め、ライトセーバーを使わずにブラスター二丁で行く。レックス以外のクローンはスパイダードロイドを狙って集中放火しろ。レックスは援護射撃と爆薬を的確な位置に転がしてくれ」

 

「了解です将軍。よし、みんな聞いたな?ブリキ野郎共をスクラップにしてやろうぜ!」

 

レックス達が戦闘配置につくのと同時にガルはフォースでヴェントレスに向けて威圧を始めるのだった。




今回初登場のキール提督ですが彼は皆さん知っての通りオリジナルキャラです。のちに彼の素性についての回がありますのでお楽しみに。
さてさてアーラ艦隊のメンバーについてですがかなりぶっ飛んだメンバーを採用しています。個人的に賞金稼ぎは雇い主さえ違えば良い人にも英雄にもなれる才能があると思っているので皆さんが知っている一面とは違う彼らの顔が見れるかもしれません(笑)

それでは次回の投稿をお楽しみに。フォースと共にあらんことを


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修道院からの脱出

修道院に入るためにドアを開けようとするヴェントレスはガルからの威圧を感じていた。

 

「この威圧は…………」

 

ヴェントレスはガルの威圧に恐怖を感じてた。彼女はマスターのドゥークーの事を思い出した。いや、それ以上かもしれない。あのダース・シディアスにも匹敵するかもしれない。それを感じた彼女は自然と身体が動かなくなっていた。

 

「何故?この私が……ジェダイに対して恐怖を…………感じている?何者なんだこの奥にいるジェダイは……」

 

ヴェントレスは一人呟きながら修道院内から発せられる圧力に耐えていた。

 

「どうしたんですかマダム」

 

「私は単独でこれから動く。あんた達は正面から入りな」

 

「ラジャーラジャー」

 

ヴェントレスはガルの威圧に負け、正面入り口から入るのを諦め、別の入り口から中に入ろうとするのだった。

 

ガルはヴェントレスが正面入り口から遠ざかっていくのを感じていた。

 

「怖気付いたか、妹弟子よ」

 

ガルはそう一人でボソッと呟いた。

 

一方でアナキン達はメインコンピューターにアクセスしているR2の反応を待ちながら少し休息をとっていた。

 

「ようやく眠ったか。下に置いてお前も休め。長い一日だったからな」

 

アナキンはアソーカを気遣って優しい言葉をかける。

 

「大丈夫、背負ってる。疲れてないよ」

 

「じゃあ好きにしろ。何で僕の言う事を聞かない?」

 

「ちゃんと聞いてるよマスター。子供扱いされるのが嫌なだけ」

 

「我慢も修行の内だ。何を意固地になってる」

 

「パダワンに相応しいって証明したいの」

 

「昔、あるジェダイが言った。何事にも偶然はない。君が僕についたのはフォースの意思だ。君を死なせたりしたくない」

 

アナキンの言葉を聞いたアソーカは静かにバックパックを地面に下ろした。

 

そんな中、修道院の入り口ではB1バトルドロイドが閉まったまま開かない入り口を開けようとコントロールパネルを開けて奮闘していた。

 

「赤いのか?」

 

「違う」

 

「青いのか?」

 

「ちがーうそれじゃない」

 

「じゃあ黄色だ」

 

そう言いながら黄色いコードを切る。すると入り口が開き始める。

 

「扉が破られるぞ!」

 

ガルがそう声をかけて全体に注意を促す。

 

入り口が開くと外からはB1バトルドロイドとB2バトルドロイドがゾロゾロと中に入ってくる。しかしドロイド達は入り口から中に入った瞬間にガルのブラスターピストルでやられていく。

 

「新手だ!気をつけろ!」

 

クローンの一人がそう声をあげるとスパイダードロイドが中に入ってこようとするのが見えた。しかし、ガルの作戦もあってスパイダードロイド達は集中砲火で直ぐに倒されていく。また、ガルも敵のブラスター光弾を避けながら的確な射撃でドロイド達を倒していった。

 

アナキンはガル達が戦いを始めた事に修道院の揺れで気がついた。

 

「ヤバイ雰囲気だ」

 

アナキンがそう言った直後にR2が電子音を鳴らして修道院内のホロマップを投影し始めた。

 

「裏手にプラットフォームがある」

 

「良いぞ、ガンシップを呼べる。案内しろR2」

 

アナキンはそう言いながら地面に置いたバックパックを拾い上げてアソーカに手渡した。

 

「ありがとうマスター」

 

「手が空いてたらガルにも来てもらおう。ヴェントレスが近くまで来てるのを感じる」

 

アナキンは歩き出しながらガルに通信をする。

 

「ガル、聞こえるか?もし手が空いてるなら援護が欲しい」

 

「良いぞ今すぐ行く。どこで待ち合わせを?」

 

「裏手にプラットフォームがある。場所はR2が送る」

 

「了解」

 

ガルはR2からの座標を待ちながらドロイド達を殲滅していった。修道院の入り口が狭いおかげで今のところこちらが劣勢にはなっていない。

 

「レックス、これから俺はアナキンの援護に行く。ここは任せても良いか?」

 

「もちろんです。アーラ将軍」

 

「頼もしいかぎりだ。何かあったら直ぐに連絡を。急いで駆けつける」

 

「ありがとうございます。でもここは自分たちだけで大丈夫です」

 

「分かった」

 

ガルはそう言いながらR2から送られてきた座標を確認し、すぐに裏口に向かい始める。しかし途中で後ろから名前を呼ばれた。

 

「アーラ将軍!」

 

ガルが振り返るとそこにはさっきまで後ろで治療を受けていたスタップが立っていた。

 

「どうしたスタップ」

 

「自分も戦いに戻ろうと思います」

 

「そうか……ならこれを使え」

 

ガルは一瞬悩みながらブラスターを持っていないスタップに向かって自分のブラスターピストルを二丁とも投げて渡した。

 

「そんな……いいんですか?」

 

急な事にスタップは動揺が隠せないでいる。

 

「ああ、その代わり絶対に死ぬなよ。そのブラスターピストルは必ず返してくれよ」

 

「もちろんです将軍」

 

「なら今直ぐ行ってレックスの補佐をしろ」

 

「イエッサー!」

 

急いでレックスの元に向かうスタップの背中を見ながらガルは彼ならもっと出世するだろうと確信した。

 

一方でアナキンとアソーカを追うヴェントレスは修道院の外にいるドロイドからの通信を受けていた。

 

「マダム、共和国の援軍が到着したとの連絡です」

 

「急がねば」

 

「ラジャーラジャー」

 

「私が任務を果たすまで引きつけておけ。分かっておるな?」

 

「イエッサー。いえ、マム……サー。ファイター発進!」

 

ドロイドの合図で地上に降り立っていたドロイドスターファイター達が次々と空に飛んでいった。

 

 

ーーヴェネター級スターデストロイヤー〈レゾリュート〉

 

 

レゾリュートのハンガーが開きオビ=ワン率いる中隊が次々と発進した。

 

「スカイウォーカーが危ない。やる事は分かるな?」

 

オビ=ワンが他のファイターに通信で話しかける。

 

「はい、将軍」

 

「アーラ艦隊は作戦通りに」

 

「了解」

 

オビ=ワン達が修道院に近づくと反対側から沢山のドロイドスターファイターが接近してきてすぐに戦闘が始まった。そしてちょうど修道院の裏口についたアナキン達はオビ=ワンに通信をしようとしていた。

 

「こちらスカイウォーカー、位置を確認後直ちに医療チームを送れ。どうぞ?」

 

「アナキン、聞こえるか?アナキン!」

 

オビ=ワンがアナキンに呼びかける。

 

「答えろ。だめだ、通信を妨害されてる。こっちよりアナキンの方が楽だと良いが」

 

「オビ=ワンと交信できない。ガルとレックスと話せるかやってみる」

 

そう言いながらアナキンはガルに通信を始める。

 

「ガル、今どこにいる?」

 

「もうすぐ着くから待ってろ」

 

「了解」

 

ガルとの通信を切り、次はレックスに通信をする。

 

「レックス、どうぞ、聞こえるか?レックス?」

 

「ええ、将軍。中庭で戦闘中」

 

「助けはいるか?」

 

「こっちは大丈夫です」

 

「分かった。くれぐれも気をつけて」

 

「もちろんです将軍」

 

アナキンがレックスとの通信を終えると同時にガルも裏口に到着した。

 

「待たせて悪かった。オビ=ワン達は?」

 

「それが戦闘中でしかも通信を妨害されてて連絡が取れない」

 

「それならどっかで飛べる船を探すしかないか」

 

「でもそんなのどこにあるの?」

 

「なあ、あれってプラットフォームじゃないか?」

 

ガルが少し先にある別の建物のような場所を指さす。

 

「本当だ。船も見えるぞ」

 

「でもどうやってあっちまで行くの?」

 

三人がそんな話をしているとR2が電子音を鳴らして警告してくる。三人が振り返ると数体のドロイデカがこちらに向かって転がってきていた。

 

「最悪、また玉転がし」

 

「R2、ドアを閉めろ」

 

アナキンに言われてR2は急いで制御パネルに接続してドアを閉める。しかし少し時間が経つとドアの中心が燃えるように赤くなってきていた。

 

「ヴェントレスだ」

 

「逃げ場がなくなったな」

 

「なら戦わないと!」

 

アソーカは直ぐにライトセーバーを起動した。しかしアナキンとガルはすぐ近くを飛んでいるキャン=セル達を目にして直ぐに良い事を思いついた。

 

「アナキン、あれに乗るか?」

 

「大賛成です」

 

二人は揃ってフォースを使い、キャン=セルと心を通わせようとする。

 

「二人とも何してるわけ?もうヴェントレスが来るよ!」

 

アソーカが焦りながら声をかける。アナキンとガルはその声を無視してキャン=セルをプラットフォームまで近づける事に成功した。そして二人は直ぐに飛び乗った。

 

「飛び乗れ、お調子者」

 

「やだけどしょうがない!」

 

アソーカはそう叫びながら二人が乗っているキャン=セルに飛び乗った。三人とR2が裏口から飛んだ直後にヴェントレスがドアを焼き切って裏口へ出てきた。

 

「スカイウォーカー…………」

 

ヴェントレスは苛立ちながらそう一人で呟いた。

 

「伯爵が状況報告を求めておいでです。ジェダイは逃げたと報告しましょうか」

 

空気の読めないB1バトルドロイドが一体、彼女の後ろからそう声をかける。それを聞いたヴェントレスは無言でフォースを使い、裏口からそのB1バトルドロイドを崖の下のジャングルに落とした。その時B1バトルドロイドは間抜けな声で「なんでぇ〜?」と言いながら落ちていった。

 

 

バクセル宙域ーー惑星テス上空

 

 

「ケツにつかれた!」

 

「撃たれた!振り切れません!」

 

オビ=ワンのファイターには次々とそんな声が入ってくる。

 

「俺達が援護する。落ち着け」

 

どこからともなく聞いたことのない声が通信から聞こえ、助けを求めていたクローン達のファイターの周りのドロイドファイターが次々に倒されていく。それを見ていたトルーパー達はアーラ艦隊の強さに驚愕した様子だった。

 

「助かりました。ついパニックに」

 

「気にするな。誰にでもあることだ」

 

その声の持ち主が率いるファイター達はオビ=ワンの前に姿は表さなかった。

 

「どうやら建物の東側で戦いになってるようだ」

 

オビ=ワンがコックピットから下を覗いて伝える。

 

「そのようです」

 

それにオッドボールが返答する。

 

「ということは戦いあるところにガルとアナキンありだ。彼らを助けにいくぞ。全機、私に続け」

 

ちょうどその頃ガル達三人は修道院から少し離れた場所にあるプラットフォームに到着した。プラットフォームにある船、G9リガー級軽貨物船<トワイライト>を近くで見てアソーカがすぐに嫌そうな顔をする。

 

「このポンコツで逃げようっての?さっきのトンボの方がマシよ」

 

「エンジンがかかるかやってみろ。エンジンがあればだが……」

 

アナキンもあまり自信が無さそうに話す。ガルとアナキンは他の方法があるかどうかについて話し始めた。

 

アソーカが一人でトワイライトに近づいていくとハッチの近くに人影があるのに気がついた。

 

「あんた!管理ドロイドじゃない。そんなとこで何してるの?」

 

「ああ、はい。お嬢様、いえ、ジェダイの騎士見習い様でしたか。私戦いが恐ろしくてここまで……」

 

「よーし、積み込み完了だ。さっさとズラかろうぜ…………?」

 

B1バトルドロイド達がトワイライト降りてきて管理ドロイドに話しかけた。

 

「卑怯者、許せない!」

 

アソーカはそう言いながらライトセーバーを起動してB1バトルドロイドに飛びかかった。

 

「やっちまえ!」

 

管理ドロイドはさっきまでの態度とは打って変わって攻撃的な発言を始めた。アソーカとドロイドが戦っているのに気がついた二人は少し呆れていた。

 

「まーた始めたな」

 

「アナキン、そろそろ行くか」

 

「そうしよう」

 

二人はR2とジャバの息子を連れてゆっくりとトワイライトに向かった。二人がハッチまで来た時にはアソーカがもう管理ドロイドを含めた全てのドロイドを倒していた。三人はドロイドの残骸を足で退けながらトワイライトの船内に入っていった。

 

「コマンダーコーディ、ガンシップ、攻撃開始だ」

 

オビ=ワンがレゾリュートにいるコーディに通信でそう告げる。

 

「イエッサー、ゴー!ゴー!ゴー!」

 

コーディの合図でレゾリュートのハンガーからガンシップが発進した。ガンシップとオビ=ワンは中庭で戦闘中のレックス達の元に一目散で向かった。

 

「R4、操縦を代われ」

 

オビ=ワンはそう言って修道院の中庭の真上に差し掛かった瞬間にファイターから飛び降りてレックス達の加勢に入った。ガンシップ達も次々に着陸して増援が降りてくる。

 

「あの三人はどこだ」

 

オビ=ワンはレックスの隣でブラスター光弾を防ぎながら聞く。

 

「まだ建物の中かと」

 

「ドロイドは任せる。三人を探しに行く」

 

そう言いながらオビ=ワンは急いで修道院へと入っていった。




できればこれからは三日に一回ぐらいのペースで投稿できたらなーっと思っています。
まあできればなんですけどね……

それではまた次回でお会いしましょう。フォースと共にあらんことを


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タトゥイーンを目指して

えーとこの回から色々とおかしくなっていきます。What Ifなのでどうかあしからず。

メンバーに関しては自分の好きな賞金稼ぎを選びました。


アケニン宙域ーー惑星タトゥイーン

 

 

ジャバの宮殿内の陰でドゥークーは少し焦りを感じていた。ヴェントレスからの報告がいまだに届かないからだ。弟子からの通信を待てないドゥークーは自ら通信をする事に決めた。

 

「ジャバの息子は取り戻したのか?」

 

「今もスカイウォーカーの手にあり一時的に見失いました。しかし生きて惑星系からは出しません」

 

「言うまでもないが、ジャバを引き入れた方が外縁部での戦いに勝利する。ジャバの息子、生かしたまま連れ戻すのがお前の役目」

 

「承知いたしました。誓ってきっと」

 

「そう願うぞ。お前のためにも」

 

「お待ちを!」

 

ヴェントレスはそう言うと突然振り返りライトセーバーを起動した。

 

それを見たドゥークーは何も言わずに通信を切った。

 

 

バクセル宙域ーー惑星テス

 

 

ヴェントレスが振り返った先にいたのはライトセーバーを起動させたまま走ってくるオビ=ワンだった。

 

「マスターケノービ。いつもスカイウォーカーの後追いか?来ると思ってた」

 

「アナキンが大暴れした後には何故かお前がいるな。ヴェントレス」

 

そう言いながらオビ=ワンはソレスの構えをする。そんなオビ=ワンを前にヴェントレスは経験の差からも一旦退く事にした。

 

「殺せ」

 

彼女は後ろに控えていた二体のB2バトルドロイドに命じて修道院内の奥に走っていった。しかし、ソレスを極めたオビ=ワンにとって二体のB2バトルドロイドなど相手にもならなかった。ものの数秒で二体のドロイドはスクラップにされ、オビ=ワンはヴェントレスの後をゆっくりと追っていった。

 

「よし、おうちに帰ろう」

 

アナキンがそう言いながらトワイライトの操縦席に座る。そしてエンジンをかけようとしたが、トワイライトは唸り声のような音を出すだけで電源すらオンにならなかった。

 

「ああ、ダメか……」

 

アナキンはそう言いながらも何度もエンジンのボタンを連打する。その度にトワイライトは唸り声のような音を上げた。

 

「落ち着けアナキン、これは連打ゲーじゃない。R2、燃料系統を全開にしてみてくれ」

 

ガルがアナキンを宥める。R2はガルの言った通りにトワイライトにアクセスして燃料系統を全開にした。すると、さっきまで明かりすらついていなかったトワイライト内の電気がつき、エンジンもかかり始めた。

 

「偉いぞR2」

 

ガルがそう褒めるとR2は嬉しそうに電子音を鳴らした。アナキンはエンジンを本格的にかけ、トワイライトを離陸させた。

 

「ガル、そういえばさっきの連打ゲーっていうのは?」

 

「いや、気にしなくていい。酒場のスラングみたいなものだ」

 

「最近はそんな言葉が流行ってるんですね」

 

アナキンにそんな事を言われながらガルは内心ヒヤヒヤしていたのだった。少し飛ぶと修道院上空で戦闘が起きているのが見えてくる。それを見たアソーカはジャバの息子を抱いて外の状況を見せようとした。

 

「ほら、マスターケノービが来てるよ。本物の戦いが見られるな」

 

「おい、待てよ。それじゃ今までの僕の戦いは?」

 

アナキンが聞き捨てならないと反応する。それはガルも同じようだった。

 

「しーらない。子供のチャンバラじゃないの?」

 

「そりゃあ面白い。仕事に戻ろう。クルーザーに戻ってこの子の治療をする」

 

「それはかなり俺も傷つくんだが?まあいい、俺の艦隊のクルーザーに行こう」

 

ガルとアナキンは口には出さなかったが、子供のチャンバラ呼ばわりされた事を結構気にしていた。

 

「ヴェントレス、いるのは分かってる。隠れても無駄だ。苛立ちを感じる。当てようか?ジャバの息子を追いかけてるんだろ?」

 

オビ=ワンがそう言った瞬間に背後の上空からヴェントレスが飛び降りてくる。オビ=ワンは彼女の二本のライトセーバーの攻撃を分かっていたかのように余裕の表情で受け止めた。ヴェントレスはアクロバティックな動きでオビ=ワンから一旦距離を取り、自分の腰に巻いていたマントを取ってオビ=ワンに向けて投げた。目眩しのつもりで投げたマントだったが、オビ=ワンは簡単に両断し、ヴェントレスの追撃を受け止めた。

 

「まだまだ打ち込みが甘いな」

 

オビ=ワンは余裕の表情でそんな事を言う。

 

二人は暗い修道院の中で戦い続ける。しかしオビ=ワンはアナキン脱出のための時間稼ぎをする事を目的としたため、ヴェントレスの攻撃は彼に全く通らなかった。ソレスを極めた者にとってどんな攻撃も効かないとはこの事だろう。オビ=ワンは時間稼ぎをしながらかつてのガルとの会話を思い出した。

 

『お前はソレスを鍛え続けろ。誰かがもう良いと言っても続けるんだ』

 

『それじゃあ攻撃手段がないじゃないか。少しは攻撃的な型を覚えなくては』

 

『ソレス以外は人並みに覚えればいい。そうすれば防御からのカウンターなんかも上手くできるようになるだろう』

 

『それなら分かった。でもならなんでガル、お前はソレスを鍛えない』

 

『俺には俺に合ったやり方がある。俺はダークサイドに近い方が本領を発揮しやすいんだ』

 

『それは故郷によるものか?』

 

『そうかもしれないな。でも俺は人それぞれに合った型を見抜ける』

 

『ならソレスがこの私に合った型という事か』

 

『ああそうだ。まあどうせお前にはチノ=リとブラ=サガリがあるんだけどな』

 

『ん?ガル、そんな型聞いた事ないぞ?』

 

『いや、忘れてくれ。ただの言い間違えだ』

 

かつての若きガルはそう言いながら必死に笑いを堪えていた。そんな和やかな日常もかなり遠い昔の思い出だ。

 

オビ=ワンは気がつくとヴェントレスとの戦いを昔聖堂でよくやっていたガルとの手合わせの風景と重ねていた。そしてオビ=ワンは気がつく。

 

『そうか。ヴェントレスはガルの妹弟子にあたるのか……』

 

一方でガル達三人乗るトワイライトはクルーザー近くまで来ていた。

 

「マスター、今日はマジ、集中して良い子で頑張ったけど。やってみると意外とチョロいんで拍子抜け〜」

 

アソーカがそう言うとガルは突然まずいぞといった顔をし始めた。その直後トワイライトに衝撃が走り、船全体が揺れた。

 

「もっと集中しろ。ややこしい事になりそうだ」

 

アナキンはそう言いながら目の前で繰り広げられる共和国艦隊と分離主義艦隊の戦闘の中に突っ込んでいく。敵のファイターを避けながら飛んでいると後ろに何機か付いてき始める。それに気づいたアナキンは急いで回避行動を取った。

 

「どこか着艦出来そうなクルーザーはないか?」

 

アナキンがそう言うとガルが突然通信を始める。

 

「こちらガル・アーラ、現在トワイライトに乗っている。手の空いてるものに援護を要請したい」

 

「了解だ。ガル」

 

通信の相手は直ぐにそう答えた。

 

「グリーン・リーダー、イエロー・リーダーをそっちに向かわせる。それまで耐えろ」

 

「了解。アナキン、少しだけ持ち堪えられそうか?」

 

「もちろん。お安い御用です」

 

アナキンはそう言いながらニヤリと笑ってトワイライトを急旋回させた。アソーカはあまりに急な衝撃でハットの息子と一緒に後ろに倒れてしまった。

 

「R2、武器を充填しろ!」

 

アナキンがそう命じるとR2は直ぐに武器を充填する。

 

「ガル、射撃は任せたぞ」

 

「言われなくても分かってる」

 

ガルはそう言いながら照準装置も使わずに目の前にいたドロイドスターファイターを倒した。

 

「操縦が上手いのはお前だけじゃないからな?」

 

ガルはアナキンにそう言う。

 

「驚きです」

 

アナキンはそう言いながら笑い、次の敵に向けて旋回を始めた。しかし、最初に後ろについてきたドロイドスターファイター達が五機に増えて後ろから迫ってきていた。

 

「これは振り切れるか?」

 

「やってみます」

 

アナキンはそう言いながら直ぐに回避行動をとり、敵の追跡を逃れようとした。しかし、元々オンボロだったトワイライトには乱暴な操縦で限界が来ていたようで、急に至る所から警告音が鳴り始める。

 

「これはかなりまずいぞ」

 

アナキンがそう言いながらも敵の攻撃を避け続ける。

 

すると突然通信が入り、頼もしい声がコックピット内に響き渡った。

 

「遅くなったなガル。スレーヴⅠ援護に入る」

 

「こっちもオッケーだ。ハウンズ・トゥース援護に入る」

 

その声が響くと同時にトワイライトの後ろを追跡してきていたドロイドスターファイターが全て撃破された。

 

「助かった。ありがとう、ジャンゴ、ボスク」

 

「気にするな」

 

「これぐらいお安い御用よ」

 

「とりあえず俺のクルーザーまで戻ろう。そっからこれからの作戦を考える」

 

「了解」

 

「分かったぜボス」

 

「アナキン、あの緑のクルーザーが見えるだろ?あれが俺のクルーザーだ」

 

「了解」

 

アナキンとアソーカはガルに聞きたいことが沢山ありそうな顔をしていたがガルはそれに気が付かないふりをした。

 

「キール、ジャバの息子に治療が必要だ。医療班の準備を」

 

「もうしてある。ガル、艦尾ハンガー前のシールドを下げる」

 

「よし、今向かう」

 

ガルがそう答えると同時にアナキンはトワイライトのスピードを上げた。

 

そしてトワイライト、スレーヴⅠ、ハウンズ・トゥースの三機は敵に邪魔されることなく安全にクルーザーに着艦した。

 

「アナキンは俺と一緒に作戦室へ。アソーカはハットの子供を医療班に渡してから来てくれ」

 

「了解ですマスターガル」

 

三人はトワイライトから降りてそれぞれ別れて移動する。ガルとアナキンの元にはそれぞれの船から降りてきたジャンゴとボスクが合流した。四人がクルーザーの作戦室に着くとそこには数人のガルの仲間が待っていた。しかしそこにはクローントルーパーは一人もおらず、全員が個性豊かな格好をしていた。

 

「あの……ガル?紹介してくれるか?」

 

アナキンが耐えきれずにガルに質問する。

 

「まあ、待て。アソーカが来てから紹介しよう」

 

ガルはそう言ってキールの元に向かう。

 

「よう、キール。元気してたか?」

 

「お前こそ」

 

二人は拳をぶつけ合って挨拶をする。

 

「早速お願いなんだがフュークとメリダにカミーノで合流すると伝えてくれ。それと残りのクルーザーとライロスに飛ぶ準備もな」

 

「了解」

 

キールはそう言うと作戦室を出て行った。そしてキールと入れ替わりでアソーカが作戦室に入ってくる。直ぐにアソーカはガルとアナキン以外のメンバーから見下されるような目で見られているように感じた。

 

「おお、アソーカ戻ってきたか。よし、それじゃあ紹介しようか。こちらはアナキン・スカイウォーカー将軍。そして隣にいるのが彼のパダワンのアソーカ・タノだ」

 

「よろしく頼む」

 

「よろしくねみんな」

 

アナキンとアソーカは軽く挨拶をする。

 

「それでさっき部屋を出て行ったのがキール提督だ。それとこっちにいるのは……」

 

「自分で自己紹介ぐらいできる。ジャンゴ・フェットだ」

 

「俺はボスクだ」

 

「ザム・ウェセルよ」

 

「僕はボバフェット」

 

「俺はセリパスだ。よろしくな」

 

「とまあこんな感じだ。あとはここにいないがフューク、メリダ、エンボ、スギ、ラッツ、ルーミなんかもいるぞ」

 

ガルは今この場所にいないメンバーの名前をズラッとあげる。全員の名前を聞いたアナキンとアソーカは驚愕の顔をしていた。

 

「どうした?二人とも顔色が悪いぞ?」

 

ガルが心配そうに二人の顔を見る。

 

「いや、ガル?なんでこんなにも有名なバウンティハンター達が一箇所に集まってるんだ?」

 

「ああ、それか。まあ話すと長くなるが巨額の富と友情さえあればやっていけるさ」

 

ガルはそう言いながら軽く笑った。他の賞金稼ぎ達もガルにつられて笑っている。

 

「一応ガル艦隊のメインメンバーは共和国から特別雇用された賞金稼ぎなんだ。僕達は全員が賞金稼ぎをやりながらこの艦隊でも働いている。だからそんなに全員のメンバーが揃うことはないんだ」

 

そうボバが捕捉する。

 

「そういうことね」

 

アソーカが納得といったリアクションをする。

 

「ところでこれからはどうするんだガル」

 

アナキンもそれなりに状況を理解して話題を変える。

 

「このまま俺のクルーザーで行くのは良くないだろうな。それにトルーパーを連れて行くのもあまり良くないだろう。だからアナキンとアソーカはジャバの息子を連れてトワイライトで。俺は自分の専用機で護衛として同行しよう」

 

「いい考えだ。なら俺達は何かあった時にそっちに行けるように近くの星で待ってる」

 

「そうしてくれると助かるよジャンゴ」

 

「よし、作戦開始だ」

 

ジャンゴがそう言って一同に解散を命じた。ガル、アナキン、アソーカの三人はタトゥイーンに向かう準備をするためにハンガーに向かった。

 

「アーラ将軍、専用機の準備できています」

 

「ありがとう。いつでも離陸できるようにしておいてくれ」

 

ガルは話しかけてきたトルーパーにそう答える。

 

「ねえ、マスターガル?このファイターは何て言うの?見たことないんだけど」

 

「ああ、これか。俺が特注で作ったファイターさ。名前はRZ-2 Aウイング・スターファイター、略してAウイングだ」

 

ガルは自慢げにスターファイターを見せる。

 

「へー凄いのに乗ってるのね。私のマスターとは大違い」

 

「おい、聞こえてるぞお調子者」

 

遠くからトワイライトの最終確認をしているアナキンが反応してくる。するとハンガーにジャバの息子を連れたキールがやってきた。

 

「ガル、忘れ物じゃないか?」

 

「忘れてるわけないだろう。ジャバの息子はアソーカに預けてくれ」

 

ガルがそう言うとキールはアソーカにジャバの息子が乗ったバックパックを渡した。

 

「薬で眠ってるだけだから気にしないでね。もう病気は治ったから」

 

「ありがとうございます。さあおうちに帰ろ?」

 

アソーカはジャバの息子に話しかけながらトワイライトに向かって行った。キールは周りに人がいないのを確認するとガルに小声で話しかけた。

 

「ここから先どうするつもりだ」

 

「分からん。原作通りならトワイライトは砂漠に墜落。そしてアナキンがドゥークー、アソーカがマグナガードを相手にするはずだ」

 

「そんなの分かってる。お前はそこでどうする気なんだ」

 

「アナキン達を追いかけて…………いや待てよ」

 

ガルはそう言いながら通信を始める。

 

「あーボバ?もしジャンゴが許可したら一緒に着いてきてくれないか?」

 

「分かったよ。親父に聞いてみる」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

「それで?」

 

キールがガルの考えを今すぐに教えろと言った顔で見てくる。

 

「アナキン達のトワイライトは墜落させない。俺がマスタードゥークーと戦う」

 

「お、おい、本気か?」

 

キールは驚きながら聞き返す。しかし、ガルがドゥークーの事を伯爵じゃなくマスターと呼んだ事に気がつき彼が何を考えているのかを察した。

 

「もちろん。でも俺は時間稼ぎをするだけだ。そうだ、パドメに連絡は?」

 

「まだしてない」

 

「あーじゃあ俺達が出発した後に連絡をしといてくれ。それとエンボがもう既にコルサントで潜入してるはずだ」

 

「了解。後で言っておく」

 

ガルとキールが会話を終えるとちょうどハンガーに武装してヘルメットを被ったボバが入ってきた。

 

「ボバ、こっちだ!」

 

ガルが呼ぶとボバは走りながら二人の近くにきた。

 

「親父が一緒に行ってもいいってさ。で、僕はどうすればいい?」

 

「アナキン達と一緒にトワイライトに乗ってくれ」

 

「あのオンボロに?だったら一人でスレーヴⅠを操縦するよ」

 

「いや、今日はあのオンボロに乗ってくれ」

 

「分かったよ。じゃあ今度Aウイングを操縦させてくれよな」

 

「仕方ないな。ちゃんとジャンゴに許可取ってからにしろよ?」

 

「分かってるって〜」

 

そう答えながらボバはもう既にトワイライトに向かって走り出していた。その姿を見ながらガルは絶対今の聞こえなかった事にするなと思った。

 

「はあ……勝手に乗せるとジャンゴに怒られるから俺から先に聞いておかないとな……」

 

ガルはそう呟きながらAウイングに乗り込んだ。

 

「アナキン、準備はいいか?」

 

ガルはトワイライトに向かって通信で話しかける。

 

「こっちは準備オーケーだガル」

 

「私はマスターの隣って決まってるの!」

 

「この船で射撃をするのは僕だ!」

 

アナキンの後ろでアソーカとボバが席を取り合っている声が聞こえてくる。ガルは巻き込まれると面倒な事になると思い、急いで通信を切って離陸準備を進めた。

 

「よし、トワイライト、Aウイングいつでも出ていいぞ」

 

少しするとキールから離陸の許可が降りる。

 

その後トワイライトとAウイングは離陸しタトゥイーンのジャバの宮殿を目指した。




さあ今回ついに発表となったアーラ艦隊のメンバーなのですが……
フューク、メリダがキール提督に続くオリジナルキャラでそれ以外は正史に出てくるキャラです。

もう既になんでこいつ生きてるの?!ってなる方もいると思いますがこのプロローグが終わり次第ep1前から話が始まりますのでそこで色々と解明されていくので楽しみにしていてください。

それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらんことを


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誘拐事件の真相

コルスカ宙域ーー首都惑星コルサント

 

 

「お久しぶりです。キール提督」

 

そう言いながらナブー選出の議員、パドメ・アミダラはキールからの通信を受けていた。

 

「ガルからの伝言がある。今回のジャバの息子誘拐にはコルサントにいるズィロ・ザ・ハットが関わっている可能性が高い。コマンダーフォックス達を連れて調査に向かってくれ」

 

「それは本当ですか?」

 

「ああ、ガルが言うんだから間違いないだろう」

 

「分かりました。一応フォックス達には準備をさせておきます」

 

「それとガルの仲間のエンボがもう既に極秘で潜入している。もし困った事があれば彼を頼ってくれ」

 

「承知しました。アナキンとガルにはくれぐれも気をつけてとお伝えください」

 

「了解ですアミダラ議員」

 

そう言いながらキールは通信を切った。

 

「ああ、パドメ様、最高議長がお呼びです」

 

「3PO、最高議長には今は手が離せないと伝えておいてください」

 

 

バクセル宙域ーー惑星テス

 

 

オビ=ワンとヴェントレスは修道院内で長い戦いを続けていた。

 

「ジェダイを陥れようというドゥークーの企み、思い通りには行かんぞ」

 

「貴様が死ねば真相は闇」

 

ヴェントレスは今まで二本で使っていたライトセーバーを繋げてダブルブレードライトセーバーにした。

 

「そこまで似てるのか」

 

オビ=ワンは思わずそう口に出してしまう。

 

「何の事だ」

 

ヴェントレスは分からないといった顔をしながらオビ=ワンに襲いかかった。

 

一方でガルとアナキン達はハイパースペースにジャンプしようとしていた。

 

「よし、ハイパースペースにジャンプだ。R2、ナビゲーションプログラム。座標、ロックでき次第ジャンプする。ガル、そっちは?」

 

「既にロック済みだ。そっちのタイミングに合わせる」

 

「了解」

 

R2が電子音を鳴らして座標がロック出来たことを知らせる。

 

「よしハイパースペースにジャンプする」

 

「了解」

 

「遅れるなよ?」

 

「はっ遅れるとするならそっちのオンボロに決まってる」

 

そんな冗談を言いながらガルの乗るAウイングとアナキン達を乗せたトワイライトはタトゥイーンへ向けてハイパースペースにジャンプした。

 

そんな中、修道院外の橋の様な場所でオビ=ワンと対峙していたヴェントレスは突然上空に目を向ける。

 

「私も感じた。アナキン達は去った。お前の負けだヴェントレス」

 

オビ=ワンがそう言うとヴェントレスは今までよりももっと攻撃的な動きをするようになる。それは彼女の心の中の焦りを表しているのだった。

 

「ドゥークーのご機嫌が悪くなるな」

 

オビ=ワンは余裕の表情でヴェントレスを焚き付ける。さらに彼女を焦らせて彼女の動きに隙を作るためだ。

 

「ジェダイのクズが!」

 

ヴェントレスはそう言いながらオビ=ワンに見えないように一度下がり左手首を触る。

 

「ハットの子は無事だ。もう戦う意味は無くなった。諦めて武器を捨てるんだな」

 

オビ=ワンが降伏を促す。しかしヴェントレスはドロイドスターファイターを逃走用に呼んでいた。ドロイドスターファイターが橋の近くまで来ると彼女はフォースを使って大きく跳躍し、ドロイドスターファイターの上に着地してその場から逃げ去った。

 

飛び去っていくスターファイターを眺めながらオビ=ワンはライトセーバーを消した。

 

 

アケニン宙域ーー惑星タトゥイーン

 

 

ジャバの宮殿では今この瞬間にヴェントレスからの連絡が来たドゥークーがジャバの目の前で通信を受けていた。

 

「共和国はクローンの大軍を動員。ジャバの御子息を見つけた時にはもうスカイウォーカーに殺された後でした」

 

ヴェントレスの発言で宮殿内の空気が一気に変わる。

 

「可哀想な事を……そこまでやるとは予想できなかった。せめてジェダイは倒し、仇は取ったか?」

 

「いえマスター、ジェダイは今タトゥイーンに向かっています」

 

「重ね重ね残念だのう。後程じっくり事情を聞こう」

 

ドゥークーは弟子の失態に苛立ちを隠せなかった。

 

「はい、マスター」

 

ヴェントレスはそれを感じ、強ばった表情になりながらそう答えて通信を切った。

 

「ムタジェダイマタアマタトゥイーン」

 

「偉大なるジャバは何故ジェダイがタトゥイーンに来るのかとお尋ねです」

 

「陛下を殺めるためです。これでジェダイの企みは明らか、御子息の救出を請け負ったのは陛下の信頼を得んが為。今スカイウォーカーは真の目的を果たしにまいります。すなわちハット一族の抹殺であります」

 

「ジェダイスリモ!」

 

「もし陛下のお許しさえあれば、わたくし自らスカイウォーカーの相手をいたしましょう」

 

ドゥークーがそう言い終えると彼の後ろに四体のIG-100マグナガードが姿を表した。

 

一方でガル達はハイパースペースから抜けてタトゥイーンのすぐ近くまで来ていた。

 

「はあ……この砂の塊、ひさしぶりだな」

 

アナキンが独り言のように呟く。

 

「この任務が終わったら実家に寄って飯でも食べていくとするか」

 

しかし通信がオンになったままだったようでガルがそう答える。

 

「じゃあ二人で行くか。そうだ、チビの具合はどうだ?」

 

「まだ薬の効果でぐっすり眠ってる。寝てる姿ぐらいはかわいいって認めるでしょ?」

 

「静かなだけマシだとは認めるが、可愛くはないね」

 

アナキンは笑いながらそう答える。

 

「アナキン、どうやらお迎えが来たようだぞ」

 

ガルが通信でそう伝える。

 

「本当だ。攻撃機接近!」

 

彼らの背後にはローグ級スターファイター、別名マグナガード・ファイターが四機付いてきていた。

 

「こっちは俺に任せろ。ボバ、もし危なかったら頼んだぞ」

 

「分かってるよ」

 

「ガルの愛用のファイターがどれほどのものか観察してやる」

 

「いいぞ。Aウイングが何故一番か見せてあげよう」

 

ガルはそう言いながら速度を思いっきり上げてUターンをした。そしてものの数秒の間にガルは前方に見える四機のファイターを破壊したのだった。

 

「おい、嘘だろ?」

 

「何あれ?すっごいね」

 

「やっぱりガルの操縦は親父と同じぐらい凄いな」

 

トワイライトに乗っていた三人からは驚きの声が上がる。しかし喜んでいられたのもつかの間で今度は八機のマグナガードファイターがレーダーに現れた。

 

「おいおいこんなに多かったか?」

 

ガルは思わずそんな言葉を発する。

 

「R2、着陸の準備を」

 

アナキンは急いで逃げる準備をする。

 

「残りは全部倒す。ドゥークーには気をつけろよ」

 

「了解!」

 

アナキンはそう答えて回避飛行をしながらタトゥイーンへ降下を始めた。

 

「さあ、ショータイムと行こうか!」

 

ガルはAウイングの船内で一人そう叫びながら誰も見ていない宇宙空間で八機のファイターを相手に楽しむのだった。

 

地上ではスカイウォーカーを取り逃がし、もう既に宮殿近くまで彼がきているという報告をドゥークーが受けていた。

 

「これは困った事になったの……」

 

ドゥークーは次にどうするか考えていた。しかし、マグナガードから未確認のファイターも存在していたとの報告を受けて彼は一旦宮殿から離れる事を決めたのだった。

 

「懐かしいフォースを感じるわい…………」

 

ドゥークーはそう呟きながら一人で上空を見上げた。

 

「アソーカ、着陸に備えろ」

 

「分かってるよマスター」

 

「ボバも準備してくれ」

 

「言われなくても分かってる」

 

三人を乗せたトワイライトはジャバの宮殿付近にゆっくりと着陸した。三人はジャバの息子を連れて宮殿へゆっくりと向かっていった。

 

一方でガルはマグナガード・ファイターを全て倒してアナキン達の着陸予定場所に向かおうとしていた。しかし、急に彼のコムリンクが鳴り始める。

 

「こちらガル。要件をどうぞ」

 

「まだこのチャンネルを使っているとは驚きだな」

 

ガルのコムリンクからは懐かしのマスターの声が響いた。

 

「このチャンネルの存在を覚えてるマスターにもですけどね。今どちらです?」

 

「今はジャバの宮殿から離れた場所にいる。して要件はなにかな?」

 

「久しぶりに顔でも見に行きますよ。少し待っててください」

 

「そうか……楽しみにしておこう我が弟子よ」

 

コムリンクから聞こえる彼のマスターの声はドゥークー伯爵ではなく、彼がよく知るマスタードゥークーのものだった…………

 

アナキン達三人はジャバの宮殿の入り口で待たされていた。

 

「もう長すぎるよ」

 

「忍耐も訓練の内の一つだぞ?お調子者」

 

二人がそんなやりとりをしていると入り口が開き、中からブラスターを構えた護衛とプロトコルドロイドが出てきた。

 

「こちらへどうぞ。おっと武器をお預かりします」

 

プロトコルドロイドがそう告げるとアナキンとアソーカは素直にライトセーバーを渡そうとする。

 

「いや、二人とも渡さなくていい。おいドロイド、ガルとボバが来たと伝えてくれ」

 

ボバがプロトコルドロイドにそう告げる。

 

「かしこまりました。ボバ様でしたか。失礼いたしました。お二人は武器はそのままで大丈夫です」

 

ドロイドはそう言って宮殿内へ歩き出した。アナキン達三人はジャバの目の前まで案内され、横一列に並んだ。

 

「ジェダイの騎士アナキンスカイウォーカーとそのパダワンです。それとガル様の仲間のボバフェット様です。伯爵が仰った事とは違い、御子息をお連れです。それにボバ様が一緒にいる時点で伯爵が我々を騙していた可能性が高いと思われます」

 

ドロイドはそう説明してジャバの反応を待つのだった。

 

その頃ガルはAウイングをドゥークーの目の前に着陸させて外に出ようとしていた。

 

「久しぶりだな我が一番弟子よ」

 

ドゥークーがガルにそう声をかける。

 

「元気そうな顔が見れて嬉しいですよマスター」

 

ガルはAウイングを飛び降りながらそう答える。

 

「久しぶりに手合わせといこうかね?」

 

ドゥークーがそう聞くとガルはライトセーバーを一本だけ起動してフォームIIマカシの体制に入った。その後ドゥークーは何も言わずに自分のライトセーバーを起動した。

 

何も無い砂漠の中で黄色と赤の光刃が重なり合う。二人の戦いは鮮やかでまるでショーのようだった。お互い敵同士のはずなのに二人の動きはお互いの動きに合わせているかのように見えた。

 

「腕を上げたな我が弟子よ」

 

「あなたの教えのおかげですよ」

 

「そろそろこの私と組む気になったかね?」

 

「逆に俺と組む気にはなりましたか?」

 

「それはまだ考え中と言ったところかな?」

 

そう言いながらドゥークーはガルに優しい笑みを見せる。ガルは彼がこんな風に笑うのは今となっては自分といる時だけだという事を知っている。

 

「久しぶりに見ましたその笑顔」

 

「どうやらそなたといると何もかも忘れてただの師としていられるようだ」

 

ドゥークーはそう言いながら師として弟子に教え込むようにライトセーバーを動かし始めた。ガルとドゥークーはジェダイとシスではなく、師と弟子としてライトセーバーを交えた。それはまるで親子でもあるかのように……

 

宮殿内でアナキン達と現状の確認と説明をしていたジャバの元に突然通信が入る。

 

「ズィロ叔父上からの連絡です」

 

そう言いながらプロトコルドロイドはホログラム通信を受ける。するとアナキン達とジャバの間に見知った人物のホログラムが現れた。

 

「初めましてジャバ陛下。私は銀河元老院のアミダラ議員。あなたを陥れた陰謀を暴きました。ドゥークー伯爵と共謀して御子息を誘拐し、罪をジェダイに被せたのは」

 

そう言ってパドメのホログラムからズィロ・ザ・ハットのホログラムへと変わる。

 

「ズィロタジャムジースカ!」

 

「ウニータマボムジャバ」

 

「ヲタコイワ」

 

「ノモタジャバ。悪いのはドゥークーよ!」

 

「ワー!イナタズィロキース」

 

ジャバが怒鳴り終えるとズィロのホログラムからパドメのホログラムへと戻る。

 

「ズィロはハット一族の手で厳しい処分を受けるでしょう」

 

「これで敵対行為はやめ、共和国の交易路通過を認めてくださいますね?」

 

「グトゥババダンブア」

 

「ジャバ様は協定締結に同意なさいました」

 

「決して後悔はさせません」

 

「グンウィトリパブリカハトブーキ」

 

「クローン軍のジャバ領域通過を認めます」

 

「議員、感謝の言葉もございません」

 

「いいえ、マスタースカイウォーカー。共和国と私こそあなたに礼を言わねば」

 

パドメはそう言い残して通信を終えた。

 

「ハット一族に対する犯罪でドゥークーを裁きの場に引き出してくれたら、ジャバ様は喜ばれます」

 

「ああ、約束しよう」

 

アナキンはお辞儀をしてジャバの前から去り、ガルに通信を始めた。

 

その頃ガルとドゥークーは砂の上に座り、世間話をしていた。

 

「おっとアナキンから通信です。そろそろ戻らないと怪しまれます」

 

「私もマスターに今回の作戦が失敗した事を知らせなければ。それではまたな。我が一番弟子、ガル・アーラよ」

 

「ええ、またいつか。マスタードゥークー」

 

二人はお互いの専用ファイターに乗り込み、それぞれのいるべき場所に帰っていった。

 

ファイターに乗り込み、タトゥイーンから去ろうとするドゥークーは彼のマスターであるダースシディアスに連絡を始めた。

 

「残念でしたマスター。これでジェダイ軍は外縁部への補給ルートを確保します。我らの戦い、ますます困難になりましょう」

 

「小さな勝利はジェダイにくれてやれ。この戦いの勝ち目、我らの方にでた」

 

ジャバとの協定締結を終えたガル達はヨーダとオビ=ワンが来るのを宮殿の入り口で待っていた。少しするとガンシップがこちらにきているのが見えて来る。

 

「やっとお迎えだ」

 

「長い一日だったな」

 

「そう?私は割と楽しかったけど」

 

「僕も戦闘に参加したかったな」

 

「それでガル、飯はどうする?」

 

「一回お互いのクルーザーに帰ってからお互いの専用機でモスアイズリーまで行こう。手土産も買いたい」

 

「そこは気にしなくても」

 

「なら私はボバと一緒にクルーザーで食べるね」

 

「は?誰がお前なんかと一緒に食べるか」

 

「おい、ボバ。歳も近いんだし仲良くしておくに越したことは無いぞ?お互いを信頼できるようになれば俺とジャンゴみたいな関係にだってなれる」

 

「分かったよガル」

 

「なら決まりね!一緒に美味しいもの食べに行こ」

 

四人が楽しそうに話しているところをガンシップ内から見ていたヨーダとオビ=ワンはお互いに顔を見合わせて、ガルが戻ってきた事による周りの雰囲気の良い変化を感じ取っていた。

 

 

ーーアーラ艦隊〈メインクルーザー〉

 

 

ジャバとの細かい協定に関する話や今後の話などはヨーダとオビ=ワンに丸投げしたガルは一人クルーザーに帰ってきていた。ガルは船内の自室でアナキンの実家に行く準備をしていた。

 

「はあ、これからは本格的にクローン戦争か。一瞬ですら気が抜けないな……」

 

ガルはそう言いながらおもむろに隠し扉のような場所を開け、中からジェダイホロクロンを取り出した。ガルはそのホロクロンを部屋の中心に置き、側で瞑想を始めた。

 

少しするとホロクロンが空中に浮き始め、立方体の八つの角が外れてホロクロンから映像が流れ始めた。

 

 

 

「私はマスターオビ=ワン・ケノービ。残念な報告だ。帝国の邪悪な暗闇に我々ジェダイも、共和国も飲み込まれてしまった。これは粛清を生き延びたジェダイへの警告と励ましだ。フォースを信じよ。聖堂に戻ってはいけない。時代は変わった。今未来は不確かな物となった。全員が試されている。我らの信念、信頼、そして友情。だが耐え抜かねばならない。耐えればいつか新しい希望が生まれてくる…………フォースと共にあらんことを」

 

 

 

映像が終わり、ガルは自分の拳を床に叩きつけた。

 

「ここまでやっても何も変わらないのか…………」

 

その日、ガル・アーラは何を犠牲にしてでも未来を変えてみせると改めて誓った。




これでプロローグが終了になります。
次回からはガルの出生や幼少期の話になります〜
EP1前の話はレジェンズのストーリーとオリジナルのストーリーの混合になっていきますのでできる限り面白くできるように頑張ります!

それではまた次回の投稿で。フォースと共にあらんことを


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Season1
全ての始まり


どうもお久しぶりです。なかなか投稿が出来ずに申し訳ありませんでした。現在期末試験が近づいているため投稿頻度を五日に一回程度に下げさせていただきます。なんとか五日に一回投稿できるように頑張ります。
それでは新章をお楽しみください。


50 BBYーークエライ宙域ーーダソミア

 

銀河系のアウター・リム・テリトリー、クエライ宙域、ダソミア星系に属すダソミアは、太陽の光を反射して赤く光り輝く惑星で、大陸には森林や深い湿原が広がっていた。森林地帯の草木はしおれ、常に霧が立ち込めていた。ダソミリアンと呼ばれる惑星の住民は、女性のナイトシスターと男性のナイトブラザーに別れて生活していた。ナイトシスターは魔法を使うことができ、マザーのリーダーシップのもと、惑星の男たちを支配していた。ダソミリアン・ザブラクの男たちは、女たちから隔離された村で生活を送った。

 

そしてこの日、ダソミア史上初の奇妙な事件が起こった。

 

「マザーこれはいったいどういう事でしょう」

 

「私にも分からぬ」

 

そう話すのは一人のナイトシスターとマザーのタルジンだ。二人の目の前には一人の産まれたばかりの人間の赤ん坊がいた。

 

「人間の子供が産まれるなんて……」

 

「どういう事であったにせよこの子は私の息子よの」

 

タルジンはそう言いながらその赤ちゃんを優しく抱き上げた。

 

「大切に育て上げなければ……」

 

タルジンはこの出来事に困惑していたが彼にはどこか特別な力があると彼女はもう既に感じ取っていた。

 

一方で赤ん坊として生まれた彼はただただ混乱し、そして衝撃と恐怖を感じているのだった…………

 

 

 

 

 

 

さて、自己紹介をしようか、俺の名前はアレックス・ガルシアどこにでもいる普通の青年だ。特に何の特技も無い。いわゆる普通の人間だ。

 

まあ異常なまでにスターウォーズオタクだったが別にそれは問題じゃないだろう。それがどうしたものか突然気がついたら目の前にテレビで見たことのある顔が目の前にあったんだ。

 

目を開けたらマザータルジンだよ?まじでビックリしたわ本当に。

 

俺はその瞬間にすぐに理解した。

 

物凄くリアルな夢を見ているのだと。

 

だって映画の世界に転生とか聞いた事ないでしょ?え?聞いた事ないよね?

 

ある?

 

よし、なら詳しくその話教えてもらおうじゃないか?

 

はあ……取り乱してすまない。

 

とにかく俺はリアルな夢を見ているらしい。

 

てことだからじゃあなみんな。おやすみ〜

 

 

 

 

 

 

「うわあ!」

 

そう言いながらアレックス・ガルシア、もといガル・アーラは叫び声を上げながら目を覚ました。

 

「はあはあ……くっそ悪い夢を見た気がす…………」

 

そう言いかけて彼は自分の置かれている状況を改めて理解した。

 

『ああ、そうだった。夢じゃないんだったわ。現実を見なきゃ……』

 

そんな事を思いながら彼はタルジンの腕の中でまた眠りについた。

 

あれから一年が経った。あれほどまでにジェダイ達に嫌われていたはずの惑星ダソミア。しかしそこでの生活は特に苦でもなかった。彼はどうにかして自分が転生するに至った経緯を思い出そうとしたが何故かそれに関する記憶やそれより少し前の記憶は靄がかかったかのように見えないのだった。

 

ガル・アーラ、現在1歳。

 

 

 

それから一年が経ち、2歳になったガルはダソミアでそこそこ幸せに暮らしていた。

 

「ガル〜今日も一緒に遊ぼ!」

 

そう言いながらガルの元を訪れたのは同じく2歳になるナイトシスターの娘のメリダだった。

 

「はあ、そんなに毎日来なくても……」

 

ガルはそんな彼女の誘いを渋々ながらも一緒に遊ぶのだった。

 

ダソミア初の人間の男の子供が産まれたという話は直ぐに部族内に広がった。

 

その事をよく思わないナイトシスターやナイトブラザーが多くいるのはスターウォーズオタクだったガル自身もよく知っていた。しかしそれはガルが異常なまでのフォースの才能があると分かるまでの話だ。彼は言葉の話せないうちから自分の欲しいものをフォースで遠くから引き寄せることができた。まあ本人としては動きたくなかったというのが本心だったが。

 

そしてタルジンは何故かガルをナイトブラザーの一員として育てるのではなくナイトシスターと一緒に育てると決めたのだった。

 

それはガルにとって良いものであり、少し辛いものでもあった。部族の長であり、母でもあるタルジンから直々にダークサイドのフォースに関する知識や魔術などを学べることはガルにとってとても有意義な時間だった。でもナイトシスターと一緒に育てられるということは周りは全て女性。ましてや同世代の男友達や頼れる兄貴分なんかもいない。そんな彼に優しく接してくれるのは彼が生まれた時に立ち会ったナイトシスターの娘のメリダだけだった。他の同世代の女子はガルの事をあまり良くは思っておらず、彼は孤立していくいっぽうだった。

 

また、唯一頼れるのは自分の兄だと教えられたモールとサヴァージだけだった。しかしガルは一度も会うことができないままでいた。タルジンがそれを許さなかったからだ。この時既にタルジンは気が付き始めていた。ガルの中でライトサイドのフォースも一緒に強くなっている事を…………

 

 

 

ガル・アーラ、現在3歳。

 

ガルはもうこの年には他の同世代のナイトシスターやナイトブラザーを遥かに凌ぐ能力と知識を手に入れていた。元々スターウォーズオタクだった彼にとってフォースというものは知っているようで実態を感じられない神秘的な物だった。しかし、それは地球にいた時の話だ。今では実態を感じることができる。それにより彼のオタク心は発狂し、彼は毎日毎日フォースや魔術に関する勉強を熱心にしてきた。

 

また、フォースの強い惑星ダソミアに生まれた影響からか彼のフォースの才能はとてつもない物だった。しかも、魔術の才能もピカイチという素晴らしいチート性能だったのだ。

 

その頃、同じく3歳になったメリダはあまり魔術に関する才能があまりなく、ずっとガルと一緒にいたせいか同世代の女子とも交れずに一人でいる事が多かった。そんな時に彼女を助けたのはガルだった。ガルは自分と一緒にタルジンから直接教えてもらおうと彼女を誘い、たまには彼自身が先生にもなりながら彼女の能力向上に手を貸すのだった。二人は同世代の中では嫌われていても大人達からの評価は最高であった。

 

 

 

ガル・アーラ、4歳になりました。

 

そんなある日、ガルはメリダとの魔術の訓練中に彼女の中にフォースの才能が目覚め始めている事に気がついた。

 

「なあメリダ?」

 

「ん?どしたの?」

 

「いや、最近新しい力に目覚めてこないか?」

 

「新しい力って?フォースの力とか?」

 

「そうそう」

 

「うーん……特に感じないかな。でも……最近ガルと一緒にいるとガルのフォースとの繋がりを感じる、かな?」

 

「うーんやっぱりメリダにもフォースを使える日が来るのかもな」

 

そんな話をしながらも二人は今日も真面目に魔術の訓練に挑むのだった。

 

そして二人の中の繋がりは日に日に強くなっていく。

 

 

 

ガル・アーラ、5歳です。

 

この歳になるともう既にメリダの魔術の才能が開花し、ガルよりも全然優秀な魔女になりつつあった。

 

「やっぱり魔術は女子の専売特許なのかな〜」

 

ガルはそんな事をボソッと訓練中に呟く。

 

「それはそうに決まっておろう。この銀河で魔術を使えるのは今のところナイトシスターとお前だけなのだから」

 

タルジンがガルの頭を優しく撫でながら言う。

 

「それでも充分凄い事だって。男子で使えるのはガルだけなんだよ?」

 

「天才のお前に言われるとなんか腹立つ」

 

「そ、そんなこと言わないでよ。ガルにはフォースもあるんだからさ。ね?」

 

 

 

ガルはフォースを極め、メリダは魔術を極める。そんな構図がいつしか出来上がっていた。

 

この日、ガルとメリダはいつものように二人でダソミアの森の中を探索していた。

 

「ねえ、やっぱり私もフォース感じるかも」

 

メリダはそんな事を言いながらテンションを上げる。

 

「そう?じゃあ瞑想でもしてみる?」

 

ガルがそういうとメリダは大きく頷いた。

 

二人は向かい合ったまま座り、あぐらを組んだ。

 

二人は目を瞑り、ガルが伸ばした両手をメリダが握った。

 

二人の間にフォースが流れ始める。メリダはまだフォースの使い方を理解できていないのでガルがメリダの体にフォースを流し込む形を試した。

 

「そうだなとりあえずフォースが見せてくれるビジョンでも見ようか」

 

ガルはこの世界で起こる未来を知っているせいからか未来のビジョンを見るのがとても得意だった。

 

「分かった」

 

二人はその後、一切話さなくなった。

 

ガルとメリダの二人にビジョンが見え始める。

 

『ん?ビジョンに写ってるのはこの森だ。これって未来のビジョンだよな?』

 

ガルはそんな事を思いながらビジョンを見続ける。

 

そのビジョンはあまりにも鮮明にハッキリと見えた。

 

森の中を歩く人。

 

近づいてくる音。

 

手にはブラスターを持っている。

 

ブラスター?

 

よそものか。

 

どこに向かってる?

 

男だ!

 

何の用だこの森に。

 

これはいつの未来だ?

 

そんな事を考えながらもビジョンはどんどんと進んでいく。

 

そのブラスターを持った男は森の中を歩き続けてふと立ち止まり、ブラスターを構えた。

 

誰を狙っていやがる?

 

ガルはビジョンを見る視点をその男の視点と同じ場所に変えた。

 

嘘だ。

 

メリダ?

 

そこには地面に目を瞑って座る自分とメリダがいた。

 

これは全く今の状況と同じ……

 

男はブラスターの引き金を引き、メリダを撃った。

 

メリダの苦しむ声が上がり、彼女の意識が段々と遠のいていくのが分かる。

 

マズい!

 

ガルは急いで目を開き、全身にフォースを集めて目にも止まらぬ速さで動き、ビジョンで見た男がブラスターを構えていた射線に入ってメリダを庇うように抱きついた。

 

「ごめん、メリダ」

 

その直後、ブラスターの音が森の中に鳴り響いたと思えばガルは自分の体が燃えるように熱くなった事に気がついた。メリダから離れて熱い部分を確認すると自分の腹に綺麗な丸い穴が開いていた。

 

「ダンクファリック」

 

ガルはそう言いながら直ぐにフォースに手を伸ばし、自分を撃った男をフォースチョークで締め上げて殺した。しかし、ガルの意識も直ぐに遠のき始め、何が起きたのかやっと理解ができたメリダが彼の名前を叫ぶ声はもうガルには聞こえなくなっていた。ガルは朦朧とする意識の中でたとえライトサイドのフォースでなくとも訓練をずっとしてきた事に感謝するのだった。大切な人を守れた事がとても嬉しかった。地球にいた頃の自分の過去とは違い…………

 

「ガル!ねえ、ガル!起きてってばガル!」

 

そんな彼を抱きかかえていたメリダはただただ彼の名前を必死に呼び続けた…………




オリジナルのストーリーを書くのって難しいですね。普通に自分の想像力が無くて虚しくなります。
そういえば最近WandaVisionというドラマにハマっているんですがあの脚本を考えたりしてる人は凄いですね。どうやったらあんなストーリー展開を考えられるんでしょうか。
まあこれからも地道に頑張っていきます。

それではまた次回の投稿で。フォースと共にあらん事を


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憧れの場所

試験勉強の息抜きに話を書いていますがなかなか時間がかかるので大変です。
まあオリジナルストーリーを書こうと思った自分がいけないんですけどね……
それでは新話お楽しみください。


……………………………………………………

 

 

 

 

 

…………目が覚めるとそこは知らない天井だった。

 

 

ガルは体を起こしながら当たりを見渡す。しかしそこは全くの見覚えがない場所だった。

 

まさか自分は死んだのかと思い体に目をやると穴が開いていたはずの腹には焦げた痕すら見当たらなかった。

 

ガルが誰かいないのかと声を出そうとすると突然近くのドアが開いた。

 

「これはこれはようやく目が覚めたようじゃの」

 

ガルが声がした方を見るとそこには彼がテレビや本で何度も見た事のあるマスターヨーダがいた。そして彼の隣にはこれまた見覚えのある男が一人。ドゥークー伯爵だ。

 

「俺は何でここに?」

 

ガルは大好きなキャラに会った興奮を抑えながらゆっくりと聞く。

 

「それはこっちが聞きたいものだな」

 

そう言いながら二人の後ろから現れたのはマスタークワイ=ガン・ジンだった。

 

生きている。あの大好きなキャラがみんな生きている。だんだんガルは自分の中の興奮を抑え込めなくなってきていた。

 

ガルが憧れの三人をボーッと見続けているとドゥークーがガルのベッドの近くまで寄って心配してくる。

 

「マスター、落ち着いてください。彼の検査はまだ終わってはいないのです」

 

「クワイ=ガンの言う通りじゃぞ?」

 

「申し訳ありませんマスター。して君の名前は?」

 

「ぼ、僕はガル・アーラです」

 

ガルは自分の周りで起こっていることの処理ができずに困っていた。彼は正直ダソミアに産まれたって時から薄々気がついていたはいたが、まさかこれから自分がクローン戦争を経験し参加する事になるかもしれないとは全く思ってはいなかった。

 

せいぜい魔女狩りが起きるあたりまでは穏便に暮らせると思っていたのだ。でも今現在自分の周りにジェダイが三人いる時点でもうほぼ確定だろう。ガルはジェダイの訓練を受けさせられるのだろう。

 

「ガル・アーラか良い名じゃの。わしの名前はヨーダじゃ」

 

ヨーダはそう言いながら優しくガルに微笑んだ。

 

「私の名前はクワイ=ガン・ジン」

 

「私はドゥークーだ」

 

ガルは何も言わずに会釈をした。

 

「ここがどこだか困惑している様だな」

 

「心配するでない。ここは惑星コルサントにあるジェダイ寺院の医療センターじゃよ」

 

「えっコルサント?」

 

ガルは思わず間抜けな声を出してしまう。

 

「逆にここをどこだと思っていたんだ?」

 

「いや、ダソミアの近くの惑星かなと……」

 

ガルがダソミアという言葉を口にした瞬間三人全員がガルの顔を見た。

 

『あーヤバイ。迂闊にヤバイ事を口走っちゃった。ダソミアって単語は絶対良くないよね。知ってたよ』

 

「ガル、君はダソミア出身なのか?」

 

クワイ=ガンが真剣な眼差しで聞いてくる。

 

「ええ、まあ…………はい。五年前ダソミアで産まれた唯一の人間が自分です」

 

「これはこれは驚いたのお」

 

「ええ、まさかダソミアにダソミリアンではなく人間が生まれたなんて……しかもここまで強力なフォースを持って」

 

「この事に関しては我々だけで隠し通しておく方が良さそうですなマスター」

 

三人はガルから少し離れた場所でコソコソと話し始めた。やはりダソミアという単語とそこに唯一産まれた人間という点が引っかかったのだろう。三人は少しの間話し続け、クワイ=ガンとドゥークーはヨーダを一人部屋に残して出て行った。

 

「してガルよ。ここまではどうやってきたのか覚えているのかね?」

 

「それが全く覚えていないんです」

 

「そうか……不思議な事もあるもんじゃのう。お主は一昨日の朝方に聖堂の前に倒れていたのじゃ」

 

「えっ聖堂の前に?」

 

「身に覚えがないかの?」

 

「ええ全くないですね」

 

「そうかそれなら仕方ないのう。一応これから数日は健康に関する検査をさせてもらうがそれでもいいかの?」

 

「はい、もちろんですマスターヨーダ」

 

ガルがさも当然かの様にヨーダの事をマスターをつけて呼ぶとヨーダは目を丸くして驚いた。

 

「そなたは色々と不思議な点が多いのう。そういえば最初にそなたを発見した者には後でお礼を忘れん様にな」

 

「その……自分を発見してくれたのって?」

 

「ああ、そうじゃったな失念しておったわい。最初に発見したのはジェダイ・イニシエイトのオビ=ワン・ケノービとシャアク・ティの二人じゃよ」

 

「わ、わかりました。ありがとうございます」

 

「うむ。これで今日は失礼させてもらうかの」

 

ヨーダはそう言いながらゆっくりとガルの病室を出て行った。

 

「嘘だろ……シャアク・ティとオビ=ワンにも会えるのか……ヤバイなこれ。毎日興奮して大変な事になるぞ。と、とりあえず最初はお友達から始めないと……それにジェダイになれるかもしれないのかあ」

 

その後ガルは一人病室でぶつぶつと自分の大好きなキャラ達に会える事に対する興奮を呟いていた。

 

一方でドゥークーとクワイ=ガンはガルの事についてのいくつかの検査資料を見ながら話をしていた。

 

「マスターこの検査結果を見てください。彼のミディクロリアン数が計測不能になっています」

 

「流石にこの数値は我がマスターでも出せないであろうな。ましてやどのジェダイでも……」

 

「彼はもう既にかなり強力なフォースを持っていると思われます」

 

「面白いことに彼はダソミア出身とは思えぬ程にライトサイドのフォースが強かったな」

 

「ええ私も同感です」

 

「よし、然るべき時がきたら私が彼を鍛えよう」

 

「本気ですかマスター?」

 

「ああ、彼ならお前みたいにジェダイ評議会と揉める事もないだろうしな」

 

「ははは、マスターが言えたことですか?」

 

二人はそんな会話をしながら笑い合っていた。

 

 

 

それから二日後、ガルは朝からずっとソワソワしていた。

 

ついに憧れのシャアク・ティとオビ=ワンに会えるのだ。

 

ガルは朝ご飯を食べ終わってから少しするとフォースで二人が近くに来たのを感じた。少しすると扉が開き中に若きシャアク・ティとオビ=ワン・ケノービが入ってきた。

 

「元気そうで何よりです。私の名前はシャアク・ティ」

 

「僕はオビ=ワン・ケノービです」

 

「初めましてシャアク・ティ、オビ=ワン・ケノービ。俺の名前はガル・アーラです」

 

「あなたについてはいくつかマスターヨーダから聞いています。もし良ければジェダイ聖堂を案内したいと思っています」

 

「えっいいんですか?」

 

「もちろん。これからは私達の仲間になるのかもしれないのですから」

 

シャアクはそう言って優しく微笑みガルのいるベッドに近づいて手を差し伸べた。

 

ガルと同い年の5歳とは思えないほどの大人っぽさにガルはただただ圧倒されるだけだった。オビ=ワンに関しては全てをシャアクに任せているのかほとんど喋らず動かなかった。

 

彼女の手を握ったガルはその温かさと綺麗な手に少しドキッとした。しかし突然彼女に強い力で引っ張られ、ガルはバランスを崩して思わず彼女に抱きつく形になってしまった。

 

「何というかその……あなたは近くで見ると更に美しいんですね」

 

ガルは何も考えずにそんな事を言ってしまう。

 

自分がマズい事をまた口走った事に気がついた時にはもう遅かった。

 

しかし、オビ=ワンは突然笑い出し、シャアクは頬を赤くしてガルから目を逸らしていた。

 

『あれ?』

 

そんな事を思いながらガルは彼女から離れる。するとシャアクは顔を赤くしながら咳払いをした。

 

「えっと……そういう事は聖堂内を案内してる時は言わないようにお願いします」

 

「わ、分かりました」

 

「それとオビ=ワンは笑いすぎです」

 

そんなやりとりをしながらガルは聖堂内を案内される事になった。病室から出たガルは興奮が抑えられず、ずっとハイテンションだった。いくつか案内をされて最後に連れて行かれたのはジェダイ・アーカイブだった。

 

「そしてここがジェダイ・アーカイブです。私は少し用があるのでここでオビ=ワンと一緒に好きに見てていいですよ」

 

「分かりました。じゃあまた後で」

 

「また後で」

 

彼女はそう言いながら手を振って走り去っていった。

 

「もしかして彼女に惚れたのか?」

 

さっきまでほとんど喋らなかったオビ=ワンが急に声をかけてくる。

 

「いや、でも凄く美しいのは確かだ」

 

「そうか。そういえば初めて君を見つけた時彼女も君の事を美形で魅力的だって言ってたぞ」

 

「えっ」

 

「良かったなガル」

 

オビ=ワンはそう言いながらアーカイブ内を歩き出す。

 

「でもジェダイは恋愛禁止だろ?」

 

ガルが後を追いかけながら聞く。

 

「まあ確かにな。でもまあルールなんて破るためにある様な物だしな」

 

『オビ=ワンって昔はこんなやつだったのか?めっちゃ意外なんだが』

 

「そ、そうか」

 

「ところでガルは何歳なんだ?」

 

「俺は今5歳だと思う多分」

 

「じゃあシャアクと同い年じゃないか。私は今9歳だな」

 

「えっそんな年上なんだ。もっと近い歳だと思ってた」

 

「まあ気にするな」

 

二人はアーカイブの中を歩いていく。

 

「何か見たい情報でもあるかい?」

 

「ホロクロン保管庫は?」

 

「あそこはまだ入れないぞ。というかどうして保管庫の存在を?」

 

「まあ自分なりにジェダイの事は調べたからね」

 

「そうか勉強熱心なんだな」

 

「あ、ありがと」

 

「それでジェダイの訓練は受けるのか?」

 

「いや、どうだろうね。俺はあんまり良い場所の出身じゃないから訓練は受けられないかも」

 

「そんな事はないよ」

 

シャアクがそう言いながら帰ってくる。

 

「おかえりシャアク」

 

「ガルのクラスは私とオビ=ワンと同じのにしておいたから」

 

「えっ?それはそれで結構キツくない?」

 

「大丈夫だガル。マスターヨーダに直接教えてもらえるんだから」

 

「まあ頑張ってみるよ」

 

「それでこの後私達はランチだけど一緒に食べる?」

 

シャアクにそう誘われたガルはすぐさま「もちろん」と返事をした。




次回投稿はなるべく早くできる様に頑張ります!

それではまた次回の投稿で、フォースと共にあらんことを。


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ジェダイへの道

突然コルサントで目が覚めたあの日から六日がたった。

 

この六日の間はこれといって大きな出来事はなく、ガルはいつもオビ=ワンとシャアクと一緒にいた。オビ=ワンもシャアクもガルといるのが好きな様で看病やお見舞いを理由に毎日病室を訪れては彼を外に連れ出して聖堂内を散歩するのだった。

 

ガルは何度か精密検査を受けたが特に身体には異常がみられないとの結果が出た。しかし、彼自身は何故自分の身体にあったはずの傷が消えているのか、何故ダソミアからコルサントに移動していたのかとずっと考えていた。

 

「何か考え事をしている様じゃの?」

 

ヨーダが彼の病室を訪れてそう尋ねる。

 

「マスターヨーダ、いらしていたんですか。少し自分の身に起こったことについて考えていました」

 

「それで答えはでたのかの?」

 

「いえ、残念ですが……」

 

「そうか。それならジェダイの訓練を受けてフォースのトレーニングを本格的にしてみるのはどうじゃ?そうすれば今見えない物でもいずれ見えてくる事になろう」

 

ガルは正直ヨーダのその言葉を待っていた。スターウォーズオタクだった頃から憧れていたジェダイになれる道がついに現れたのだ。

 

「もちろんやります!マスターヨーダ」

 

ガルは興奮しながら元気よくそう答えた。

 

「うむ、けっこう。けっこうじゃ。なら今日の午後からオビ=ワン達と一緒に訓練に参加してみるかの?」

 

「えっそんなに簡単に決めちゃって良いんですか?」

 

「実はもうわしとドゥークー、クワイ=ガンの三人から評議会には説明してあるのじゃ。そしてジェダイ評議会は其方に訓練を受けさせる事を許可したのじゃ」

 

「それなら良かったです。でも反対意見は出なかったんですか?」

 

「特にはない様に思えたがのお」

 

ヨーダはそう答えた。しかしガルはダソミア出身で唯一人間の自分が何の反対意見も無くジェダイになれるなんて事がないのを知っていた。あらかた優秀なジェダイ三人の意見に黙って頷くしかなかったのだろう。あるいはまだ評議会に報告してないか……

 

「では今日の午後から訓練に参加しようと思います」

 

「じゃあまた後でのガル」

 

ヨーダはそう言って出て行った。

 

ヨーダが病室を出て行って少しすると外でバタバタと走る音が聞こえてくる。その足音はガルのいる病室の前で止まった。ドアが勢いよく開きオビ=ワンとシャアクが入ってきた。

 

「ガル、どうだった?」

 

シャアクがベッドに駆け寄りながら聞く。

 

「今日の午後から二人と一緒に訓練を受ける事になったよ」

 

「本当か?ついに一緒に訓練できるんだな」

 

オビ=ワンは満面の笑みでそう言う。

 

「やったね!今日の訓練は私が隣でリードしてあげます」

 

シャアクもガルの訓練決定に凄く喜んだ。

 

ガルは二人と一緒に喜びながらも自分の知っていた大人の二人とはだいぶかけ離れたキャラに裏では少々困惑していた。

 

一方でドゥークーとクワイ=ガンはヨーダに彼の訓練決定についていくつか質問をしていた。

 

「マスター、何故評議会に黙ってこんなことを」

 

「マスタードゥークーの言う通りです。彼の様な色々詳細不明で強力なフォースを持つ者を簡単にジェダイ・イニシエイトにするのは危険です。もっと検査をしてからでないと。それにミディクロリアン値や彼のフォースの強さからもしかすると彼は選ばれし子かもしれません」

 

「そなた達の言いたい事もよく分かる。大丈夫、評議会には後で報告しておくでの」

 

ヨーダはそう言いながらすぐに立ち去ってしまった。

 

「マスタードゥークー、彼をどう思いますか?」

 

「どうやらこれで彼のマスターは私に決まりの様だな」

 

「話を聞いてますか?彼は選ばれし子なのかもしれないのですよ?」

 

「あの子が本当に選ばれし子だと思うの?」

 

話をしていた二人の後ろから一人の女性が現れる。

 

「タ、タール?」

 

クワイ=ガンは驚いた表情で彼女の名前を口にした。

 

「なによその反応は。私があなた達の話を盗み聞きしたとでも?」

 

「い、いやそんなつもりはないが……」

 

「マスターヨーダから話を聞いたのよ」

 

「何故タールまでガルの話を知る必要がある?」

 

ドゥークーは率直な疑問を彼女に投げかけた。

 

「さあ?マスターヨーダからはそなたも知っておかなければならないって言われたわ」

 

「そうか……」

 

ドゥークーは腰を下ろして考え込みながら答えた。

 

「マスター、やはり彼はマスターヨーダから見ても特別な存在という事ですよ。これはやはり確定なのでは?」

 

「もしそうだとしても特別扱いをする必要はないさ。いずれ答えは見えてくる」

 

ドゥークーはクワイ=ガンを宥める様にそう言った。

 

午後になり、ガルはシャアクと二人で訓練がある中庭の訓練場に向かっていた。

 

「ガルってどこからきたのですか?」

 

シャアクは突然空から降ってきたかの様に現れたガルにずっと同じ質問を繰り返していた。

 

「遠い惑星かな」

 

そんな彼女に対してガルはいつものようにそう答えてはぐらかした。

 

訓練場に着いた二人はオビ=ワンと合流し、他のイニシエイト達と一緒にマスターヨーダが来るのを待った。少しするとヨーダがゆっくりと歩きながら現れた。彼の腰のベルトには映画でよく見た彼が使うライトセーバーがぶら下がっていた。しかしガルはそのライトセーバーの横にぶら下がっている訓練用のセーバーに気がついた。それを見た彼は興奮を抑えるので誠意一杯で離れたところから彼を観察しているドゥークー達三人の存在に気がつかなかった。

 

「ガル、ちょっとこっちに来てくれるかの?」

 

「はい!」

 

ガルは即答し、急いでヨーダの元に向かう。

 

ヨーダはベルトから訓練用のライトセーバーを取るとガルの手の上に乗せた。

 

「これは訓練用のライトセーバーじゃ」

 

「はい!知ってます!ありがとうございます!」

 

ガルは大喜びしながらそれを受け取った。

 

その後ヨーダの掛け声で他のイニシエイト達は並び始め、ガルはシャアクとオビ=ワンの間に立つ事にした。

 

その日の訓練はフォームIのシャイ=チョーについてだった。他のイニシエイト達はあまり上手く動くことができていなかったが、ガル、オビ=ワン、シャアクの三人はほぼ完璧にできていた。これにはガル自身もものすごく驚いた。しかしよくよく考えてみれば彼は地球にいた頃に週ニでライトセーバーアカデミーなるものに通い、ep3でのオビ=ワンとアナキンの戦闘を友達と再現したこともあったのだ。そんな彼がフォームIで失敗するはずがない。訓練の間三人は一切喋らず、フォースでお互いの動きを感じながら動いていた。

 

ガルは二人のフォースと繋がり、二人の動きにリードされた。

 

しかし、オビ=ワンとシャアクは逆の事を思っていた。

 

二人はガルとフォースで繋がった事により、自分たちの動きが今までに比べて格段に向上している事に気がついた。そしてガルをリードしようとしていた二人はまるでガルから教えられている様に感じたのだった。

 

この異変にドゥークー達が気が付かないはずもなく、三人はガルの能力をさらに正確に図る必要があると感じていた。

 

訓練が終わり、ガル達三人の元にドゥークー達がやってきた。

 

「ガル、初めての訓練はどうだったかな?」

 

「凄い楽しかったですマスタードゥークー」

 

ガルは満面の笑みでそう答えた。

 

「君の動きは素晴らしい物だったぞ」

 

「本当に今日初めて訓練を受けたとは思えないほどにね」

 

ガルはクワイ=ガンとタールに褒められて上機嫌になった。

 

「ありがとうございます!マスタークワイ=ガン、マスタータール」

 

ガルはそう答えた直後にタールと会うのは初めてだと気がついたが誰も気がついていなさそうだったため、そのまま何事もなかったかのようにして話を進める事にした。

 

「そういえば皆さんは何故ここに?」

 

「少し今の君たちの技量を測ってみたくてな。もしよければ数ヶ月後に三人揃ってトレーニング・リモートを使った修行をしてみないか?」

 

ドゥークーにそう言われたガル達三人は「もちろんです」と即答するのだった。

 

 

 

 

そしてガルがジェダイのトレーニングを始めて四ヶ月が経ったある日、ついにトレーニングリモートの訓練があるとドゥークーから連絡があった。

 

 

三人がドゥークーに案内された部屋にはもう既に全ての準備が整っていた。中に浮いた十個のトレーニングリモートが訓練開始の合図を待っているところだった。

 

「ガルは初めてだから説明するがこのトレーニングリモートは自由に動き回って君に対してブラスターを発射する。でも質力は最低に設定されているから身体に当たっても電気が流れる程度だから安心してくれ」

 

「分かりました」

 

「それと三人には今回目隠しをしながら訓練を行ってもらう」

 

ドゥークーの言葉を聞いたオビ=ワンとシャアクは不安そうな顔をしたが、ガルは物凄く楽しそうな顔をしているのだった。

 

その後三人は渡された布を目元に巻き、視界を完全に遮断した。

 

「それではトレーニングを始める。ライトセーバー起動」

 

掛け声がかかり三人はライトセーバーを起動する。それと同時にトレーニングリモートも起動し、部屋の中を自由自在に動き回り始めた。

 

オビ=ワンとシャアクは直ぐに防御の姿勢を取りどの方向から攻撃が来てもいいように備えた。しかしガルは防御の型を取らずにジッとその場を動かずにいた。

 

「彼は何をしてるのかしら?」

 

別室から観察していたタールがガルの行動に目をつける。

 

「あれは周りの状況を把握しているのか?」

 

「いつ見ても不思議な少年じゃのう彼は」

 

偉大なマスタージェダイ四人が真剣にガルの行動を観察している一方でガルは夢にまでみたトレーニングに興奮していた。

 

正直今のガルにとってこのトレーニングは簡単と言っても良いだろう。何故ならガルはもう自分の周囲の動きをフォースで感じ取ることができるからだ。それに今では彼は未来のビジョンを簡単に見る事ができる。たとえ目が見えなくてもトレーニングリモートがどこを狙ってどのタイミングで撃ってくるのかを容易く把握できるのだ。

 

そしてガルはその見えるビジョンをオビ=ワンとシャアクにも共有していた。この時三人のフォースはいつものように一体化していた。

 

トレーニングリモートが一斉に三人を目掛けて発砲してくる。しかし三人は一切動じずに全ての攻撃を無駄の無い動きで防御していく。

 

三人の光刃は円を描くように優雅に動く。どの光弾も三人の光刃に防がれていた。

 

この時三人は気がついていなかったが各々が違った型で自分の事を守っていた。

 

オビ=ワンはフォームIII、ソレス

 

シャアクはフォームII、マカシ

 

そしてガルはフォームVII、ジュヨー

 

三人の動きは洗礼され、全員がイニシエイトである事を忘れさせるほどのものだった。

 

オビ=ワンは全ての攻撃を正確に防御し、シャアクはトレーニングリモートに光弾を偏向しようとした。ガルはそんな二人の前に立ち一番多くの光弾を防ぎ、偏向していた。オビ=ワンとシャアクの集中が切れた一瞬や彼らが防ぎ辛いであろう攻撃は全てガルが予測して守っていた。その時の彼の顔は一切笑っておらず、彼の姿からは何かしらの覚悟が感じられた。

 

それはまるで三人の未来を示しているかの様に思われた。

 

 

それに、それぞれがこれから歩む道も……




定期テストなんて無くなればいいのに……

それでは次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を。


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初の任務

気がつくとガルがジェダイイニシエイトになってからもう一年が過ぎていた。

 

 

 

44 BBYーーコルスカ宙域ーー首都惑星コルサントーージェダイテンプル

 

 

ガルはいつもの様に親友のオビ=ワンとシーリ・タチと一緒にジェダイ公文書館で勉強をしていた。

 

「そういえば私聞いたんだけどさ。オビ=ワンとガルがそろそろ誰かのパダワンになるかもしれないって」

 

「えっそれは本当か?」

 

ガルは読んでいた本を閉じてシーリから詳しい話を聞こうとする。彼の隣で静かに記述の課題をしていたオビ=ワンも少しクールに振る舞いながらも彼の顔には喜びと期待が滲み出ていた。

 

「う〜んでも今すぐってわけではないみたい?なんかシャアクも同じタイミングでなるって噂も聞いたよ」

 

シーリがそう曖昧な答えをするとガルとオビ=ワンのテンションは明らかに下がった。

 

「なーんだその噂ね。もう結構前から言われてるよ」

 

「私達も最初は期待してたんだがマスタークワイ=ガンにあと一年は無いって言われてしまってな」

 

「そ、そうだったのね。なんかはやとちりしてごめんなさい……」

 

シーリは申し訳なさそうな顔をして二人に謝罪した。

 

その後二人との勉強を終えたガルは自室に向かって歩いていた。

 

しかし彼の目の前にとある人物が現れた。

 

彼の前に颯爽と姿を見せたのはオビ=ワンがクローンウォーズで苦手と言っていた人物。

 

クインラン・ヴォスだ。

 

しかし今の彼はマスターソルメのパダワンだ。だが彼の雰囲気からはアニメで見ていた頃と変わらないものが感じられた。ルールに縛られない変わり者の雰囲気だ。

 

「よう!お前がガルか?」

 

元気よくクインランに話しかけられたガルは今すぐにでも逃げ出したい気分だった。正直オビ=ワンが苦手と言っていた理由もよく分かる。

 

「おいおい勘弁してくれ。イニシエイトの俺に何の用があるって言うんだよ…」

 

ガルはクインランが近づいてくる間にボソボソと独り言を言った。

 

「は、はい自分がガルです」

 

ガルはオドオドしながら答えた。

 

「お!そうか。これからよろしく。俺はクインラン・ヴォスだ。気安くクインランと呼んでくれ」

 

「は、はい」

 

「それじゃあマスターヨーダに呼ばれてるから一緒に行くぞ」

 

「え、ええ?」

 

ガルは困惑した。クインランと一緒に呼ばれるなんて嫌な予感しかしないからだ。

 

「じゃっ俺は先に行ってるぞ!」

 

そう言って走り去って行ったクインランをガルは慌てて追いかけた。

 

 

 

「お!やっときたな。この中でマスターヨーダが待ってる」

 

「ハアハア………やっときたってどこで待ってるか教えられてなかったんですけど」

 

ガルは上がった息を整えながら答える。

 

「あー忘れてたわ。まあでも俺の後追ってくれば来れるっしょ」

 

クインランはそんな事を言いながら部屋の中に入って行った。

 

「何なんあいつクッソ腹立つ」

 

ガルは吐き捨てるようにボソッと呟いた。

 

部屋の中ではマスターヨーダとマスターソルメが待っていた。

 

ガルは嫌そうにしながらもクインランの隣に立った。

 

「急に呼び出してすまない。そういえば君は初めて会うんだったな。初めまして、私はクインランのマスターのソルメだ」

 

そう言いながら彼はガルに握手を求めた。

 

「ええ、よろしくお願いしますマスターソルメ」

 

ガルはソルメと握手をしながらそう言った。

 

「マスター、何で俺たちは呼ばれたんですか?」

 

「まあそう焦るなクインラン」

 

「うむ。今回二人を呼んだのはとある任務に参加してほしいからじゃ」

 

「「任務?」」

 

ガルとクインランは同時に全く同じ反応をした。

 

「そうじゃ。詳しい説明はマスターソルメに任せておる。明日の正午に三人には惑星ライロスに向かってもらう」

 

ガルはマスターヨーダのその一言である事に気がついた。

 

マスターソルメとクインランがライロスに任務で行く。それはアイラ・セキュラとの出会いが待っているという事だ。しかし、ガルはつい最近になって思い出してきたスターウォーズのレジェンズ知識と今現在で違うところがいくつかある事に気がついていた。

 

彼の知る限りではクインランとアイラがライロスで出会うのは46BBYのはず。しかし今現在は44BBYだ。それに今考え直すとマスタータールは何故か盲目ではなく、パダワンを持っていなかった。しかもオビ=ワンはレジェンズの設定より若くなっていた。

 

「ガル、聞いておるかの?」

 

「あっはいすいませんマスターヨーダ」

 

ガルはそう謝った後も自分がこの世界にいるせいで何かが起こっているのでは無いかと疑い続けた……

 

 

 

「ねえ、話聞いてますか?」

 

「……………………」

 

「ガル?大丈夫?」

 

シャアクがガルの顔のすぐ近くまで寄ってきていた。

 

「うわっ!」

 

ガルは驚きのあまり椅子から後ろに倒れてしまった。

 

「大丈夫か?何か悩み事でもありそうな顔だな」

 

「いいや、大丈夫さオビ=ワン。ちょっとこの後の任務のことで考え事してて」

 

ガルは正直今回の任務について疑問が多かった。マスターヨーダは新しい育成プログラムだと言っていたが正直なところ今回の任務に彼自身が選ばれる理由は特に見つからなかった。何かしらの考えがあって決まった事なのだろうが。

 

「クインランと一緒にライロスに行く件だろ?まあイニシエイトがマスターヨーダから任務を任されるなんて前代未聞だからな」

 

「私はこの任務は反対です。ライロスなんて何があるか分からないのに」

 

「まあ大丈夫だと思うよ。多分死にはしない」

 

ガルはそう言いながら先程まで飲んでいたブルーミルクをまた飲み始めた。

 

「ガル、そろそろ行くぞ」

 

任務の準備を終えたソルメが声をかけてきた。

 

「はい。マスターソルメ」

 

「荷物は?」

 

「一応これだけです」

 

そう言いながらガルは着替えと小物を入れた鞄二つをソルメに見せた。

 

「コンパクトだな」

 

「まあ必要な生活必需品しか入ってないので」

 

「それが普通だよな……」

 

ソルメはそう言いながら何か悩み事があるかの様な顔をした。

 

「そうだ君たちも見送りに来るか?」

 

ソルメがそう聞くとオビ=ワンとシャアク、シーリは喜んでついてきた。

 

全員がプラットフォームにつき、少ない荷物を積み込み、離陸準備を万全にし、マスターヨーダが見送りにきてもまだ姿を見せない男がいた。

 

「遅すぎませんか?」

 

「いつものことだよ」

 

ソルメにそう言われたガルはジッとクインランがくるのを待った。そして体感で十五分ほど経ってやっと彼は姿を表した。

 

「待たせて悪い!」

 

「遅すぎるぞパダワンよ。マスターヨーダを待たせた挙句、イニシエイト達の前でだらしない姿を見せるなんて……」

 

「それは申し訳ないです」

 

「それで荷物は準備してきたのか?」

 

「いえ、このままで行こうと思ってます」

 

「はあ……」

 

ソルメがさっき困った表情をしていた理由がガルには直ぐに理解できた。しかしガルはどうせこんな事になるだろうと思い、もう既に手は打ってあった。

 

「あのマスターソルメ、クインランの荷物は予めに準備してあります。さっき自分が持っていた鞄の片方が彼の分です」

 

「ほ、本当か?」

 

ソルメは驚いた様で声が裏返っていた。

 

「まあ彼ならそうかなと。それと必要なければ無理に着替える必要は無いですクインラン」

 

「おう気が効くな!」

 

「何というかもし良かったらクインランのマスターになってくれないか?」

 

あまりの感動にソルメはガルに対して急に変な事を言い出してきた。

 

「えっ!絶対嫌です!」

 

ガルはそう言いながら船に逃げる様に乗って行った。それを追いかける様にソルメとクインランも船に乗った。そんな三人を見ながらヨーダは優しく微笑んでいた。

 

「彼がいると周りは笑顔になれるのお」

 

ガル達の乗った船が離陸していくのをヨーダ達は最後まで見送った。

 

そんな中シャアクが一人で下を向きオビ=ワンとシーリにだけ聞こえる声でこう言った。

 

「私……何か嫌な予感がするわ」

 

オビ=ワンとシーリも同じ事を思っていたのか何も言わずに黙っていた。

 

「ま、まさか……私の恋敵が現れそうなよ…かん…?…???」

 

それを聞いたオビ=ワンとシーリは…………

 

 

 

「そっちかい!」とツッコミたくてたまらなかったらしい。

 

 

 

ガウラス宙域ーー惑星ライロス付近

 

 

「よし任務の前の最終確認だ」

 

「準備オッケー」

 

「ライトセーバーの点検も終わりました」

 

「よしじゃあ今回の任務の確認をするぞ。今回はワンパを含む違法野獣のディーラーを探す事だ。私はまずセキュラ一族との会談をしてくる。評議会が言うにはセキュラ一族の中にも関与している者がいる可能性があるそうだ。その間二人にはハット族でその野獣を保持している奴をあたってほしい。相手はハット族だ。決して無駄な争いは起こすなよ?誰から買ったか聞くだけでいいからな」

 

「分かりました」

 

「了解」

 

「よし、着陸準備にかかろう」

 

ガルは初の任務で緊張していながらもコックピットから本物の惑星ライロスを見て涙を流しながら感動していた。

 

「何て綺麗な色をしているんだろう……」

 

ガル達を乗せた船は街のプラットフォームに着陸した。

 

船から降りるとそこにはクローン戦争が始まる前の美しい朝のライロスの街が存在していた。

 

「私はポルセキュラとロンセキュラと話してくる。何かあればコムリンクで知らせろ。ちなみにあのデカイ建物がハットのいる所だ」

 

ソルメが指差した所にあった建物はタトゥイーンにあるジャバの宮殿の様だった。

 

ガルとクインランはくだらない話をしながら宮殿を目指して歩いた。しかし宮殿に着いて直ぐにハットと会話できると思いきやバーで少々お待ちをと言われてしまった。

 

「はあ、何で待たされなきゃいけないんだ」

 

「まあまあ落ち着いて。さっき貰ったクレジットで何か飲み物を買うかしよう」

 

クインランにとって待たされるのはかなりのストレスの様だった。クインランはハットの側近らしい人物からもらったクレジットを半分ガルに渡して一人でバーカウンターに行ってしまった。

 

ガルは中身は青年だが実年齢はまだ六歳だ。まあでも何故か地球の十歳と変わらないぐらいの体型をしているが……

 

ガルは一人で広いバーを見て回ろうと歩き始めた。生まれてからずっとダソミアとジェダイテンプルでしか生活してこなかったガルにとって荒くれ者や色んな種族が沢山いる酒場は憧れの場所だった。しかし子供はどうやら目立ってしまうらしい。ガルは直ぐにガタイの良い、いかにもチンピラなような大人達に囲まれてしまった。

 

「ゴファイイママタリファ」

 

「ああそうだな」

 

「おいガキ金よこしな。さっきハットの側近から金もらったのは見てるんだよ」

 

「うーんそうですね〜嫌です。でもまあサバックでなら勝負してあげても良いですよ?」

 

挑発する様な目でガルは返答した。まあガルはただサバックがやりたかっただけだ。

 

「おお、良い度胸じゃねえか」

 

「ハハハ、ムサイビーサバック」

 

「良いぜちょうど今空いてるテーブルがあるからあそこに行こう」

 

三人に奥の部屋に連れられてガルはサバックのテーブルに案内された。そこではもう既に四人のプレイヤーが白熱する戦いをしていたようで、ギャラリーが大興奮していた。

 

それを見ながらガルはその場を空気を深く吸い込んで堪能しながらこう言った。

 

「楽しくなってきたぞ!」




期末テストが来週にあるので来週の金曜日までおそらく投稿が途絶えると思います。

そういえば一昨日の夜中テスト勉強した後に寝る前に少し話書こうかなと思ってiPadをいじっていたら知らない間にX-men アポカリプスを最後まで見ていました。いや〜やっぱりX-menは最高ですね。いつかX-menのWhat Ifも書いてみたいな〜なんて思いました(笑)

それでは次回の投稿で。フォースと共にあらんことを


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白熱するサバック

サバックのルールやゲーム進行に関して知識が乏しいためフワッとした説明しかしていません。もしかしたら誤りがあるかもしれないです。


ガルは一番左の椅子に座り、テーブルにクレジットを載せた。

 

先程のゲームで勝ったのはトランドーシャンの男だった。

 

どうやらここで行われているサバックは普通の物のようだ。

 

サバックは技術と運の両方が必要とされるゲームであり、最小で2人、最大で8人までのプレイヤーが参加することができる。主なゲームの目的は、手札のカードの合計をプラス23もしくはマイナス23にしてサバック・ポットを勝ち取ることである。

 

サバックのデッキは76枚のカードから成る。そのうち60枚の札は各15枚ずつ「フラスク」 「セーバー」 「ステイヴ」 「コイン」の4種のスートに分かれている。各組のカードには1~15までの数字が割り当てられ、12より上の数字は絵札になっている。

 

ここのサバックはコレリアンスパイクでもジャバックでもないらしい。ガル的にはハンとランドがやっていたコレリアンスパイクの方がやってみたかったのだが。

 

ガルは他のプレイヤーを見る。その中で一人の男にガルの目が止まった。その男はかなりのクレジットをテーブルの上に乗せていた。しかしその顔は一切笑っておらず、それよりも焦っている様に見えた。どうやらこのテーブルでいいカモにされているらしい。ガルがそんな事を思っている間にサバックがスタートした。

 

ガルは試しに所持していたクレジットの三分の一を賭けた。

 

ディーラーがデッキをシャッフルし、自分を含む各プレイヤーに一枚のカードを順番に配った。ディーラーはもう一度同じ動作を繰り返し、全員に二枚のカードが渡った。各プレイヤーに伏せた状態のカードが二枚与えられた後、ディーラーの左から順に手札の合計値をコールする。

 

一番初めにコールした男は15

 

次は20、14、5、−8、−6

 

そしてあのカモの男は4だった。

 

ガルの手元に来たカードをめくると合計は17だった。

 

その後、ディーラーの左から順に、各プレイヤーはデッキから新たに1枚もしくはそれ以上のカードを引くことができ、手札を捨ててデッキから引いたカードと交換するか、スタンドするかを選択できる。

 

他のプレイヤーが終わった後にガルは一枚だけカードを引く事にした。

 

彼の手元に来たカードの数字は6だった。これでガルのカードの合計は23になった。

 

これはフル・サバックといって、これよりも強い役はピュア・サバックと「イディオット」の絵札と数字の「2」および「3」(スートは問わない)から成るイディオット・アレイしか存在しない。

 

ガルは6のカードを干渉フィールドに置いた。そしてその後サバックシフトは起きなかった。

 

他のプレイヤーが最終合計値を言っていく。そしてあの男は22と宣言した。その時の彼の顔は勝ったと言う自信に満ち溢れていた。他のプレイヤー達も彼に負けたと思った様でがっかりとした様子だった。

 

もうこの場にいる誰もがガルが勝つとは予想していない様だ。まあそれに他のプレイヤーの後ろには観客がいるのに他の誰も彼の後ろに立っていないのが全てを物語っていた。

 

ガルはそんな彼が勝利を確信してサバックポットに手を伸ばした瞬間に

 

「フル・サバック」

 

と宣言した。

 

その場にいた全員の視線がガルに注がれているのが分かった。

 

次の瞬間観客達は大いに沸き、他のプレイヤー達は悔しそうな表情を露わにした。

 

ガルはカモにされている男に申し訳ない気持ちになりながらもサバックポットのクレジットを全て回収した。

 

次のゲームがスタートし、ガルの後ろにも観客がつく様になった。他のプレイヤー達はガルにだけは負けたく無い様で、目つきがかなり真剣になっているのだった。

 

しかし、ギャンブルというものは常に運さえあれば勝てるというものである。

 

次の試合でガルの手元に最初から来たカードの合計は23だった。もうこれはほぼ勝利が確実になった様なものだ。他のプレイヤーからの視線が自分に向いている事が分かっていたガルはワザとらしく不安そうな顔をしたり貧乏ゆすりをしていた。

 

それを見た他のプレイヤーは安心をしたのかガルから注意を削いだ。

 

「レイズする」

 

ガルはそう宣言してさっき勝ち取ったクレジットを全て掛けた。

 

観客達はまた沸き、他のプレイヤーはガルの挑発に乗るかどうか悩み始めた。

 

「俺もレイズしよう」

 

そう言って全額を賭けたのはさっきガルに喧嘩を売ってきたやつらの内の一人だった。彼はどうやら今の自分の手札に自信があるらしい。

 

「ガキにはサバックの厳しさってのを教えてやらなきゃな。フル・サバックだ」

 

その男は笑いながらカードをテーブルの上に叩きつけた。

 

観客達から歓声が上がり、その後全員がガルに注目する。

 

「いや〜残念残念。サバックの厳しさを実感するのは君の方みたいだな。ピュア・サバック」

 

ガルは笑い返しながら二枚のカードをテーブルにゆっくりと置いた。それを見た観客は大盛り上がりだ。

 

「嘘だ!」

 

全額負けた男は怒り、テーブルを叩いてそのまま部屋を出て行ってしまった。

 

そして残りのメンバーだけで次のサバックが始まっていく。

 

次のゲームではトランドーシャンの男が勝った。そんな中ガルはサバック中毒になりそうな勢いだった。ギャンブル中毒の恐ろしさをガルは侮っていたのだ…………

 

一方でバーカウンターに座っていたクインランはバーテンダーから話を聞いていた。

 

「そうですねお客さん。この建物にはワンパがいたはずです」

 

「それは誰から買った?」

 

「さあ?それは分かりませんが近くの森でそういう類の獣が目撃されたって話がありますね」

 

「森か……その森はここからどれぐらいの場所にある?」

 

「この街をでて東に行けば直ぐですよ」

 

「ありがとう助かる」

 

クインランはそう言って席を立ち、ソルメに通信をしようとバーの陰に移動した。

 

「マスターソルメ、恐らくバイヤーが隠れ家にしている場所が分かりました」

 

「そうか、私もちょうど有力な手がかりを手に入れた所だ。これから付近の森をセキュラ一族と捜索する」

 

「それなら街から出て東にある森を捜索してください。どうやらそこでは目撃者もいるらしいです」

 

「ちなみにハットからは何か聞き出せたか?」

 

「それはまだですね。今は待たされている状態です」

 

「分かった。くれぐれも慎重にな」

 

ソルメは通信を切り、捜索隊のメンバーに東の森を重点的に捜索すると指示を出した。

 

ソルメ達が東の森を捜索するとバイヤーの隠れ家はあまりにもあっさりと見つかってしまった。しかしそこにはバイヤーの姿はなく、違法野獣が沢山檻に入れられたりしているだけだった。

 

クインランはソルメ達が隠れ家を見つけたとの連絡を受けた後にやっとハットのいる部屋へと呼ばれた。

 

そして当然その間もガルは任務を忘れてサバックを続けていた。

 

「俺は20だ。残念だったなこれで三人とも負けだ」

 

ガルが満面の笑みで話しかけているのは最初に絡んできた男達の最後の砦だった奴である。

 

「ウディカマ!」

 

その男は怒り狂い、自分の持っていた手札を口の中に放り込んで出て行った。この時テーブルに残っているのはガル、トランドーシャンの男と二人にちょいちょいカモにされる男の三人だけになっていた。

 

トランドーシャンの男は次のゲームで最後にすると宣言した。

 

そして彼は最後の最後でしっかりと勝ってその場を後にした。

 

とはいえ今のガルの手持ちは最初よりも軽く数十倍に増えていた。その時、ガルも次のゲームで辞める気でいた。

 

再度ゲームが始まり、彼の手元に来たカードはイディオットの絵札と数字の2だった。そしてカモの男は自分のカードを見た瞬間に目の色を変えた。

 

ガルは一枚カードを引いて大きい勝負に出た。そして引いたカードは3だった…………

 

「レイズする」

 

カモの男はそう言って残っているクレジットの殆どを賭けた。彼はドヤ顔でガルの方を見ていた。これから自分が最強の一手で負けるとも知らずに。

 

「オールイン」

 

ガルはそう答えた。

 

観客全員がざわつき、カモの男は顔が引き攣っていた。しかしその男はそこで引き下がらなかった。

 

「残りのクレジットとこのブラスターも賭ける」

 

そう言いながら彼は精神不安定状態になりながらも自分のホルスターからブラスターを抜いてクレジットの山の上に投げた。

 

これにはガルも驚いて固まって動かなくなってしまった。彼はギャンブルの恐ろしさをそこで実感したのだ。これから目の前で一人の男が一文無しになる姿を目撃するのだから。

 

しかしそれを見た男は勝ったと勘違いしてしまいウッキウキで手札をテーブルに置いた。

 

「ピュア・サバック」

 

「ごめんなさい。イディオット・アレイです」

 

ガルが申し訳なさそうにカードをテーブルに置くと観客は今日一番のお祭り騒ぎになった。

 

相手の男は空気が抜けたかの様になって動かなくなった。

 

ガルは全クレジットをしまってからブラスターを持って席を立ち、彼をたたえる観客達の間を通って部屋を出てクインランを探し始めた。しかしバーには彼の姿がなかった。そしてガルは彼がいたであろうバーカウンターに足を運んだ。

 

「すいませんさっきまでここに不機嫌そうな青年が座ってませんでしたか?」

 

「ああ、座ってたね。てか君も相当若いね。もしかしてうちで威張り散らしてた奴らをサバックで負かした奇才って君の事かい?」

 

雰囲気の良い紳士的なバーテンダーのおじさんは興味深そうにガルの事を見ながら答えてくれた。

 

「ええ、まあ多分俺ですね」

 

ガルはカウンター席に座りながら答える。

 

「そうかそうかそれは愉快な話だね。それに君はさっきの青年と同じでジェダイ見習いの様だしね」

 

「バレてましたか」

 

「いやいや歳をとるとなにかとめざとくなるもんでね」

 

ガルとバーテンダーのおじさんが楽しく世間話をしているとガルの隣の席に蝉の抜け殻の様な様子の男が座った。

 

「お客さんどうしたんだい?もしかしてここの青年にサバックで大負けでもしたのかい?」

 

おじさんが笑いながらそういうと隣に座っていた男はガルの方をまるで壊れたドロイドが動くかの様にギ、ギ、ギと首を動かして見た。ガルの顔を見たその男は何の表情もせずにただ呆然としていた。そして次の瞬間彼の目からは大量の涙が流れた。

 

「ちょっ、ちょっと大丈夫ですか?」

 

ガルは慌ててさっき全クレジットをサバックで失った彼を慰めた。そしてやっと泣き終わった彼に一杯の飲み物を奢り、少し話を聞いてみることにした。

 

「あの……自分が言うのもあれですけど。そんなに泣くならもうギャンブルは辞めたらどうですか?」

 

「た、確かにそうですよね」

 

「ええ、本当にそう思います」

 

「それにしても兄ちゃん運がなかったね〜ガル君が強すぎたのさ。初めてのサバックでここまでの成績出したプレイヤーは普通いないからね」

 

「でもあの場面でまさかイディオットアレイが出るなんて…………」

 

「完全な運ですね。というか何故あんなに号泣を?」

 

「いや、その、すごく恥ずかしい話になるんですが……」

 

男はそう言ってここまで何があったのかを話した。

 

彼の名前はディル。奥さんと一緒に賞金稼ぎをしているらしい。

 

「その奥さんにはギャンブルを禁止されているのに、よりによって今日は早く仕事が終わってしまって、友達の誘いを断れずにこのバーに来たと?」

 

「なんかマスターやけに説明口調じゃありません?」

 

ガルはおじさんの話し方に違和感を感じて突っ込んでみたが無視された。

 

「それで友達がサバックちょっとやろうぜって言うからちょっとだけやったんですよ」

 

「そしたら想像以上に儲かってしまったと」

 

「そうなんですよ!俺なんていつもカモにされてるだけだったのに」

 

「それで歯止めが効かなくなって挙げ句の果てに最後に絶対勝てると思ってたガル君の挑発に乗ってブラスターまで賭けちゃったと」

 

「はい……そうです」

 

「やっぱりマスター説明口調すぎやしません?」

 

「それですっからかんになって妻に連絡して全部包み隠さず話して謝ったんですけど。結婚記念のペアルックのブラスターをそんな簡単に賭けるなんて信じられないと言われてしまって……」

 

「いやディルさんバカなんですか?」

 

ガルも信じられないといった顔になる。

 

「それで挙げ句の果てに離婚だって言われました」

 

そう言いながらディルはガルの方をジッと見つめていた。

 

「いや、あの別にブラスターを返すのは全然良いんですけど二度とギャンブルしないって約束できます?話聞いてるとあなたの奥さんがあまりにも気の毒過ぎて」

 

「えっ俺は?」

 

「いやあなたは自業自得です」

 

ガルがバッサリ切り捨てるとディルはまた傷ついている様子だった。

 

「はあ……ほらこれがあなたのブラスターです。それとクレジットも少しどうぞ。これで奥さんに何か買ってあげて許してもらってください」

 

「あ、ありがとうございます!この恩は一生忘れません!」

 

「そういえばここら辺で違法野獣を取引してるディーラーを知りませんか?」

 

「知らないですね。でも何か分かったら教えますね!」

 

ディルは嬉し泣きをしながらブラスターと少しのクレジットを握りしめてバーから走り去っていった。

 

「ガル君もお人好しだね〜」

 

「別に良いんですよサバック自体を楽しむことはできたので」

 

「そうかいそれなら良かったね」

 

「ええ、じゃあ俺はここら辺で失礼しますね。知り合いを探さなきゃいけないんで」

 

ガルは飲み物の料金とは別にチップとしていくらかクレジットを置いて席を立った。

 

「ガル君、また来なね」

 

バーテンダーのおじさんは最後まで紳士的な人でガルはとてもこのバーが気に入ったのだった。それと同時にジェダイとして生きるのは自分には合わないのではないかとも思い始めるのだった。




テスト前半がいろんな意味で終了しました。

フォースと共にあらんことを。


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アイラセキュラとの出会い

テストが終わって色々と忙しい日々がやっと終わりました。久々の投稿です!楽しんでいってください。


ガルがバーの外に出ると明らかに外が騒がしくなっていた。ガルは急いで歩いている人の中の一人の人を呼び止めて何があったのかと質問した。

 

「どうやらハットの飼っていた野獣が暴れてるらしい。場所は離れてはいるが一応ここも危ない。あんちゃんも早く避難したほうがいいぜ」

 

「それはどこですか?」

 

「広場だよ」

 

「ありがとう助かります」

 

「ちょっと!そっちは広場だぜ?」

 

ガルが広場に向かって走っていくのを見た男はそう叫んだがガルの姿はもう既に見えなくなっていた。

 

ガルは全速力で広場に走っていた。クインランの居場所がわからない以上この事態に対処しなくてはいけないのは自分だと分かっていたからだ。ガルが広場に着くとそこにはもう既に数人が倒れていた。暴れ回っているのは一匹のワンパと一匹のガンダークだった。

 

「おいおいワンパだけならまだしも」

 

ガルは正直この場を対処できる自信がなかった。

 

しかし一人のトワイレックの少女に向かってガンダークが走っているのを見てガルは全力のフォースプッシュをガンダークにぶつけるしかなかった。ガンダークの全身は簡単に吹き飛ばされ、広場の壁に直撃した。ワンパを他の大人達が相手にしてる内にガルは彼女の元に向かった。

 

「大丈夫?」

 

ガルが優しく彼女に話しかけると少女は泣きながらもガルに優しく抱きついた。

 

「よしよし」

 

彼女の頭を撫でながらガルはどこか安全な場所に逃げる様にと言って直ぐにワンパの対処に向かった。

 

訓練用のライトセーバーを起動してみたのは良いものの訓練用という事で出力が低いせいでワンパの腕を切り落とす事は叶わなかった。ワンパの攻撃はかなり大振りな物が多かったが、未だに打開策を見つけられないガルは徐々に防戦一方になってしまっていた。それにワンパの様な大型野獣の攻撃を何発も受け止められるほどガルの腕は成長していなかったのである。ガルが押されている所をトワイレックの少女は逃げる事も忘れて彼を心配そうに見つめていた。

 

「ガル!もう少し耐えろ!」

 

どこからともなくクインランの声が聞こえてくる。

 

「分かった!」

 

ガルはそう答えながらももう既に彼の腕の限界が近づいていることに気がついていた。

 

少し経つとガルの頭上からクインランのフォースが感じられる様になる。ガルはそれを感じた瞬間に後ろに飛び退き、上から降りてくるクインランのために場所を開けた。

 

ワンパがガルの動きに驚いている間に真上から降りてきたクインランがライトセーバーでやつの頭目掛けて降り下ろす。クインランのライトセーバーはワンパの体を綺麗に左右に分かれる程に一刀両断した。

 

ガルはその光景を見てかなり気持ちが悪くなった。

 

しかしそんなことを思っている暇も無く、ガルが倒したと思っていたガンダークが崩れた壁の瓦礫の中から起き上がってきた。ガンダークはガルとクインランには目もくれずに先程仕留め損ねた獲物に向かって一直線で突進する。

 

ガルとクインランが振り返るとガンダークの向かう先にはさっき逃げたと思っていたトワイレックの少女が立ちすくんでいた。

 

それを見た二人はすぐにフォースを使って周りの時間を引き伸ばし、全速力でフォースダッシュをして彼女を助けようとした。

 

しかし二人の今いる場所からでは彼女の元に辿り着いたときにはもう間に合わない事がガルには分かってしまった。このままではまずいと思った彼はどうにかして打開策を考えようとした。そして唯一思いついたのがガンダークの射線に自分が入って代わりに攻撃されることだった。ガルの中で何がそこまでさせるのかを本人は分かっていた。恐らく彼女はアイラ・セキュラだろう。そして彼女はかつての彼の推しキャラの一人なのだから。そしてここは彼女の死ぬ場所ではない。死んではいけない。

 

ガルは何の合図もせずにクインランが向かう場所とは全く違う、ガンダークの目の前に移動した。それに気がついたクインランは彼を止めようとしたが間に合わなかった。

 

ガンダークは突然目の前に現れたガルに一瞬驚いた様子を見せたが、次の瞬間にはガルに対して片方の手で薙ぎ払うかの様に攻撃をした。ガルもできる限りの防御をしたものの、ガンダークの大きな手と鋭い爪を完全に防ぎ切る事はできなかった。鋭い爪はガルの右半身の腕や脇腹に深く刺さり、彼の体はそのまま広場の壁まで一気に吹き飛ばされた。

 

「ガル!!」

 

クインランが名前を叫ぶ。しかしその時にはもう彼の目の前にガンダークが迫ってきていた。

 

クインランは覚悟を決めてライトセーバーを構えた……

 

 

 

アイラセキュラにとって同族のトワイレック以外の生物はあまり良いイメージがなかった。

 

何故なら彼女は自分の同族が他の生物達の奴隷にされている所を何度も見てきていたからだ。それを見るたびに彼女は悔しい気持ちに襲われた。

 

そんな中彼女はセキュラ一族としての身分を隠して生活を始める事になる。それは彼女が一番嫌いなものだった。ハットの奴隷としての生活である。奴隷としての生活は今の所問題が一切無かったがこの日は違った。いつも大人しくて人の言う事を聞くワンパとガンダークが突然暴れ出したのだ。そんな緊急事態の状態で真っ先に切り捨てられるのは奴隷である事も彼女は理解していた。

 

これから起きる自分の未来を受け入れようとしたが幼い彼女にとってそれはかなり難しかった。彼女は気がつくと涙を流して泣いていた。周りの大人達は殆どが自分を置いて逃げた事、残っている大人も自分を助けることをする気がないと彼女は気がついてしまった。だからガンダークが一直線に向かってきた時も逃げる素振りも見せずに死を覚悟した。しかしガンダークは彼女の近くまで来ると急に真横に吹っ飛んだ。

 

一瞬何が起きたのか理解が出来なかったがそれは自分を助けるために誰かが行った攻撃だと分かった。そして近くまで寄ってきて心配をしてくれたその人にアイラは感謝も覚えたがどうせ名声のために助けに来たのだろうという思いが出てきてしまった。そんな彼は優しく逃げろと言ってくれたにも関わらずあまり強いようではなかった。ワンパの攻撃にかなり押されている様子だった。彼女も何か助けたかったが何もできることが無く、ただずっと静かに応援し続けることしかできなかった。

 

少しするとどこからともなく現れたもう一人の男の手によってワンパは倒された。彼女は助けてくれた青年に感謝を言おうと思ったがその前にさっき倒したと思ったガンダークが復活し、また自分の事を狙っている事に気がついた。あの距離からじゃ絶対に間に合わない。

 

今度の今度こそ自分の死を悟った。しかしあの青年は自分の体を囮にしてワザと時間を稼いだ。絶対に重傷を負うと知っていたはずなのに。

 

アイラは分からなかった。そこまで彼が命をかけてまで自分を守る理由があるのかと。

 

 

 

クインランの額を一筋の汗が流れる。この時、彼は今まで感じた事の無いほどの恐怖を感じていた。仲間の一人をやられ、自分もどこまで保つか分からない状況で恐怖を感じない者がいないはずがない。

 

ガンダークといえばあの全盛期のオビワンとアナキンでさえ手こずる様なクリーチャーなのだ。そんな生き物をパダワン見習いのクインランとイニシエイトのガルの二人で対処できるはずがない。

 

クインランは今までにないほどの集中力を持ってガンダークに挑んだ。目まぐるしく光刃が動き、攻撃をいなしていく。しかしワンパとは全く比べ物にならない攻撃の速さや正確さにただただやられていくだけだった。どれだけ防御をしようとしても四本もある腕から繰り出される攻撃は予想をするのがとても難しく、避けるので精一杯だ。加えて後ろには守らなければいけない少女いるとくれば下手な動きもできない。クインランの体には防ぎきれなかった攻撃による浅い傷が増えてきていた。

 

クインランは一瞬できたガンダークの隙を突き、四本の内の一本の腕を切り落とす事に成功した。しかし大振りな攻撃をしてしまったためにクインラン自身にも隙が生まれてしまった。その隙をガンダークは見逃さなかった。大きなクリーチャーは切られたのとは反対の手で正確にクインランの手元を狙った攻撃をした。彼の手は鋭い爪で引っ掻かれ、ライトセーバーは遠くの方に飛んでいってしまった。

 

この時クインランは自分の死を確信した。確信した途端彼の体は今まで感じた事のないほどの恐怖を感じた。そして彼は目を閉じて恐怖に打ち勝とうとした。しかし実際は恐怖の元はガンダークによって殺される事ではない事に彼は気がつけなかった。

 

いつまでもトドメを刺してこないガンダークに違和感を覚えたクインランは恐る恐る目を開ける。すると目の前ではあの巨体のガンダークが中に浮き、苦しみ悶えていた。

 

クインランがガルの飛ばされた方向を見るともうほぼ瀕死に近いはずのガルが血だらけの右半身を引きずる様にしながらゆっくりと歩いてくる。しかし、彼の目は今までとは違った色をしていた。少し黄色になっていたのだ。彼の顔は怖いほどに無表情で何を考えているのかも分からなかった。

 

彼のフォースは大きな渦の様にあたり一面に充満していた。

 

すると突然さっきまで何の反応も見せていなかったアイラが走り出して急にガルに抱きつく。

 

「ダメ!お兄ちゃん戻ってきて!」

 

アイラの突然の行動にクインランは全く理解が出来なかった。しかし彼女が小さい体から持てる力を全て使ってガルの何かを止めようとしているのは彼にも理解が出来た。彼女はガルの凄まじい勢いで暴れるフォースの中に自分のフォースを流して彼との強い繋がりを実感した。ガルとアイラのフォースが完全に一体化するとガルのフォースは徐々に大人しくなっていった。そして彼の目の色も前のものに戻っていた。

 

我に帰り、ガンダークを拘束しておける程の力を失ったガルはもう一度ガンダークが襲ってくるのではないかと思い最後の力を振り絞ってアイラを庇おうとした。しかし、ガンダークは暴走したガルの力に怖気付いたのか急に大人しくなり、その場に静かに座り込んで何もしてこなくなった。

 

「おーいガル?お礼にたまたまだけど例のディーラー捕まえたけどどうする?って大丈夫か!?」

 

何も知らずに広場に意気揚々と現れたディルは広場で倒れている人達や瀕死の状態のガルをみて驚きの声を上げた。

 

「良く……見つけてくれたな。助かるよディル……」

 

ガルはそう言い残して意識を失った。

 

 

コルスカ宙域ーー首都惑星コルサントーージェダイテンプル

 

 

ガルが目を覚ますと目の前には見た事のある天井があった。

 

「また病室生活に逆戻りか」

 

ため息混じりにそう言いながら上半身を起こすと右半身に鋭い激痛が走った。

 

「痛っ!今回はしっかり傷も残ってるのか」

 

ガルはやれやれといったリアクションをしてこれから少しの間は安静にしておこうと決めたのだった。

 

暗い部屋から外を見るとコルサントの綺麗な夜景が見えた。辺りを見回すと自分の足元に誰かが突っ伏して寝ているのが見える。

 

「シャアクか?」

 

ガルがそう聞くと寝ていた誰かは体を起こして顔が見えるところまで近寄ってきた。

 

「元気なった?ガルさん?」

 

そこにいたのはトワイレックの少女。アイラセキュラだった。

 

「何で君がここに?」

 

「えへへ、ガルさんを助けるときにフォースを使ったのが分かったらしくて私もジェダイになるためにここに来たの」

 

「そ、そうなんだ。てかそのさん付けやめてほしいな。ガルって気軽に呼んで」

 

「ガルね!分かった!」

 

そんな反応をする彼女を見てガルは妹ができた様な気持ちになった。

 

「でねでね、私ガルの弟子になりたいの!」

 

「俺の弟子?それは無理だよ」

 

「えーダメなの?」

 

「ダメっていうか急すぎるっていうか……」

 

ガルがそう答えると彼女は明らかにシュンとしていじけ始めた。

 

「はあ……まあ訓練が再開するまでは面倒を見るよ」

 

「本当?やったあ!」

 

それを聞いた彼女は大喜びし、ガルのベッドにダイブした。

 

「痛ったあ!」

 

彼女がダイブした事による衝撃でガルの怪我が少し悪化したのは彼の中だけでの秘密である。




この回から何話かは疲れてヤバかった時期に書いた回なので正直なところお蔵入りにするか悩みました。でもまあWhat Ifだしいいかな〜って思って投稿してます。
あまりにも批判が多かったりしたら編集するかもです!笑

それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を。


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大きな覚悟

次の日、ガルは目が覚めると外はまだ薄暗く、辺りは静けさに包まれていた。

 

ガルは痛む体を慎重に起こしてぼーっと外の景色を見ていた。少しの間外の景色を見ていると外の空気を吸いたいという衝動に駆られた。ガルは最小限の動きで身支度を済ませ、体への影響を最小限に抑えた。

 

病室を静かに出て、通路に出る。この時刻には瞑想のための静寂を妨げないように、通路のグローロッドの光量は抑えられている。ほとんどのジェダイはまだ眠っているか、瞑想中のいずれかである。

 

ガルはそんな微量の明るさの通路をゆっくりと歩いていく。そして景色の良いバルコニーに着いた。外ではコルサントの夜間の灯火が所々まだまたたいている。日の出まではもう少しだろう。数台のエア・タクシーがスペース・レーンに向かって下降している。もう数十分ほど経てばこれらのレーンは交通車両でひしめき合う事になるだろう。

 

ガルは大きく深呼吸をした。

 

「はあ…………何やってるんだろうな俺」

 

彼は深呼吸をした後すぐに大きなため息を吐いた。

 

ガルの中には迷いがあった。ジェダイテンプルに来てから気がつけば一年以上が経ち、他のイニシエイト達とも仲良くなれた。しかし、そこまでの経験をしても自分がこの世界の住人だと実感することはできなかったのである。ガルにとってこの世界はどこまでもスターウォーズの世界だった。どこで何をしていようが彼は周りで起こることをまるで至近距離で映画を見ているかの様な感覚で過ごしてきたのだ。

 

でも今回の任務でガルは大きな事に気が付かされた。この世界は自分の知っている物語のスターウォーズでありながらもリアルな世界である事に。自分の行い一つで死ぬはずの運命じゃないキャラ達を死なせてしまう。ほんの一瞬の気の緩みや自分の間違った行いのせいで。

 

それはガルにとって悪い事に思われたが良いことでもあったのだ。今回のアイラ救出を得て彼の中には一つのしっかりとした目標が出来上がった。

 

 

かつてスターウォーズファンだった自分が出来る事……

 

 

それはこれから起こることに事前に対策を施してかつての推しキャラ達を死なせない事。

 

それをするにはシディアスよりも裏で根回しをして、暗躍しなければならない。

 

またガルの推しキャラはダークサイドのメンバーにもいるのだ。

 

この目標を成し遂げるにはそれなりの覚悟が必要になる。しかしガルの中でそれを決めるには時間がかからなかった。彼はコルサントの街並みを眺めながら心に誓った。自分の何を犠牲にしてでも推しキャラ達を死なせないことを。

 

 

徐々に空が赤くなり始めた頃、ガルは誰かがこのバルコニーに向かって歩いてきている事に気がついた。今の自分の姿をマスタージェダイ達に見られたら怒られると思った彼は急いで物陰に隠れてやり過ごそうとした。

 

気配はバルコニーまで来てちょうどガルの隠れているところから少し顔を出せば誰が来ているのか見れる様になった。ガルはそっと顔を出して様子を伺った。そこにいたのは彼の良く知る人物で親友のシャアク・ティだった。ガルはそこにいるのが彼女だと分かった途端、安堵した。そしてゆっくりと隠れている場所から出て、彼女の横に気配を消して並んだ。シャアクはガルの接近に直前までに気が付かなかったが、突然隣に現れた彼に何の反応もせずにただじっと日の出を迎えるコルサントの景色を見ていた。

 

ガルもコルサントの日の出に見惚れた。彼はバルコニーに手すりに手を置き、ゆっくりと明るくなっていく街をずっと見ていた。するとガルの手の上にシャアクが手を重ねてきた。それに驚いたガルがシャアクの方を向いて何か言葉を発しようとする。

 

しかし、彼が言葉を発する前に信じられない事が起きた。

 

 

 

シャアクがガルにキスをしたのだ。

 

 

 

ガルは一瞬驚いた表情を見せただけで決して彼女のキスを拒む事はしなかった。二人はコルサントの朝日に照らされながらキスをし続けた。この瞬間を誰かに見られでもしたら二人は直ぐにでもジェダイから追放をされるだろう。少しの時間が経ち、二人は顔を離した。シャアクは何も言わずにガルに抱きつき、彼の胸に顔を押しつけて涙を流し始めた。ガルはただ呆然と立ち尽くしていた。何のせいで今こんな事になっているのか全く予想も理解もできなかったからだ。シャアクは簡単には泣き止まず、ガルはずっと彼女を抱きしめ続けた。

 

 

やっと落ち着いたシャアクと一緒にガルは自分の病室に帰っていた。二人はさっきとは打って変わって終始無言でお互いの顔を見ることさえしなかった。病室に入り、部屋のドアを閉めて少ししてからやっとシャアクは口を開いた。

 

「さっきはごめんなさい。感情のコントロールが効かなくて……」

 

「い、いや別に気にしなくていいよ……」

 

二人の間にまたも気まずい沈黙が訪れる。

 

最初に沈黙を破ったのはガルだった。

 

「シャアクがそういう気持ちを持っていてくれたのは嬉しいよ」

 

その言葉を聞いたシャアクは顔を赤くして下を向いてしまった。

 

「べ、別にあなたが好きとかそういうわけじゃないの。五日前にあなたが意識不明の重体で聖堂に運ばれてきたとき私どうしていいか全く分からなくて……」

 

その後シャアクはガルが意識不明だった間に何があったのかを包み隠さずに話した。

 

 

六日前ガルがアイラを救い、ガンダークによって瀕死の怪我を負わされたあの日。ガルはその場にたまたま駆けつけたディルによって救出された。ディルは直ぐにクインランのコムリンクから彼のマスターであるソルメに連絡を取り、自分の船で一旦応急処置をすると告げた。その後ディルの船で応急処置を受けたガルは死ぬ事は無かったが依然意識は戻らず、フォースで彼の命の危険を感じたソルメはそのままジェダイ聖堂に彼を送ってほしいと頼んだのだった。

 

次の日、ジェダイ聖堂でガルが帰ってくると聞いていたシャアクとオビ=ワンは彼の帰りを楽しみに待っていた。しかしプラットフォームに着いた船は行きに乗っていた船と違い、周りのジェダイマスター達が慌てて何かを準備していたのを見て二人は物凄く不安になった。船から最初に降りてきたクインランは体のあちこちに傷やあざがあり、いつもの元気な彼とは全く違った雰囲気を醸し出していた。医療班が到着し、クインランをタンカーに乗せて連れて行く。次に降りてきたのはもう既にタンカーに乗せられていたガルと見知らぬ男と少女だった。それを見たオビ=ワンはすぐにタンカーに近寄り、ガルの名前を呼びながら医療班に着いて行った。しかし、シャアクはあまりの恐怖にその場を動く事ができずにいた。その後なんとか平静を取り戻した彼女は緊急治療室に向かった。

 

部屋の外ではさっきの男と少女とオビ=ワンが待っていた。オビ=ワンが男からガルの状況を聞いていたがシャアクはその話よりも泣きながら緊急治療室の扉に手を置き続けているトワイレックの少女が気になった。シャアクには彼女から流れるフォースが感じられた。

 

「なんで泣いているの?」

 

シャアクが優しく話しかける。

 

「お兄ちゃん苦しんでる。私と繋がってないとまた暴走しちゃう」

 

そう答える少女にシャアクは困惑した。

 

ガルが暴走したとの発言にも驚いたが、それよりも彼女が言った繋がっているという発言がシャアクの心に引っかかった。彼女はこの任務が始まる当初自分とガルの関係にとって良くない存在が現れることを感じていたがここまでの事が起こるとは予想もしていなかった。この時、ガルとアイラの間にはシャアクが入る事ができないほどの強い繋がりが既に存在していたのだ。

 

その後、無事手術を終えたガルは前に使っていた病室に移されたが意識はまだ戻らなかった。もしもの事を恐れたマスタージェダイ達はシャアク、オビ=ワン、シーリの病室への立ち入りを禁止したのである。しかしアイラの出入りだけは禁止されなかったため、シャアクの不安は更に大きくなっていった。

 

日に日にガルとの繋がりが強くなる彼女を見てシャアクは自分がまるで二人に置いていかれてしまったような錯覚に陥ってしまった。

 

そして今日突然朝早くに目が覚めた彼女は何を思ったか日の出が見たくなりあのバルコニーを訪れたのだ。

 

 

「それで結局私はあなたにキスをしたって事……」

 

「要するにアイラに嫉妬して自分が先に行動を起こそうと思ってキスをしたと」

 

「はい…………」

 

「そっか」

 

ガルはそう言って笑った。

 

「あいつはどうせ俺以外の奴と恋に堕ちるだろうよ」

 

ガルの中でこの事に関しては自信があった。彼の知っている限り彼女と恋に堕ちるのはノートランのジェダイ、キット・フィストーだからだ。

 

しかしその自信も一瞬で打ち砕かれる事になる。

 

病室のドアが突然開き、アイラが入ってくる。彼女はガルのいるベッドに向かってまた飛び込んできた。

 

そして何を思ったか彼女は

 

「おはよガル、大好き」

 

と言ってガルの頬にキスをした。

 

この瞬間部屋の空気は真夜中のホスよりも寒くなった。

 

近くに座っていたシャアクは固まって動かなくなり、ガル自身も今起きた出来事を処理するのに精一杯で目を見開いたまま硬直していた。そんな中状況が理解できないアイラだけがガルにちょっかいを出し続けていた。

 

 

色々ゴタゴタがあった後、ガルは瞑想中のヨーダの部屋を訪れていた。

 

「元気になったようで何よりじゃ。呼び出してしまってすまんの」

 

「いえ、気にしないでください」

 

「ガルよ、そなたには謝らなければいけないのう。今回の任務は評議会で新しく決まったイニシエイト強化プログラムによるものなのじゃ」

 

「そうだったんですか……」

 

「最近フォースの暗黒面が強くなってきていてな。皆が焦ってしまっていたのじゃ」

 

「それは自分も感じます」

 

「やはりか」

 

「ええ」

 

「とにかく少しの間は安静にしていてほしいのじゃ」

 

ヨーダがそう言った後に部屋にジェダイ評議会のメンバーのメイス・ウィンドゥが入ってきた。

 

「失礼しますマスターヨーダ、アイラ・セキュラの検査結果が出ました」

 

その言葉を聞いたヨーダは立ち上がり、部屋を出ていった。

 

ガルもその後について行こうと部屋を出ようとしたがメイスに止められた。

 

「君には今回の任務の事で聞きたい事がある」

 

「分かりました」

 

「助かる。今回の任務でアイラ・セキュラを助けるためにわざとガンダークの前に飛び出したというのは本当か?」

 

「はい。あの場面で彼女を助けるためにはあの方法しか無かったと思います」

 

ガルは彼の目を見ながら堂々とした態度で答えた。

 

「そうか。ならあながちこのプログラムも失敗というわけではないな。君は私が聞いていたよりも優秀なジェダイのようだ」

 

「ありがとうございます」

 

そう答えながらもガルは褒められた事に驚きはしなかった。ジェダイの中で自己犠牲が評価されるのはとうに知った事だったからだ。

 

「そういえばディーラーはどうなりましたか?」

 

「ああ、あの後ディルからマスターソルメが身柄を引きついだ。どうやらハットの側近と手を組んで商売をしていたらしい。急にワンパ達が暴れ出したのもその側近がやったそうだ」

 

「そうですか。それでは自分はこれで失礼します」

 

ガルはお辞儀をしてから部屋を出た。

 

「あ〜なんかめっちゃ疲れたわ今日」

 

ガルは自分の部屋に帰る途中に久しぶりにオビ=ワンとコルサントの街に出て飯を食べようと思うのだった。




今回の回で多くの読者様が離れていくような気がする〜 
えーと散々悩んだ挙句、恋愛の描写も書くことを決めました。理由としては自分はコメディを描くのが苦手というところとコメディか恋愛の描写がないとシリアスすぎてなんか全体的に話が暗くなってしまうような気がしたからです。
まあムンディさんは一夫多妻だしね?許してくれるよね?

あっあとこの場を借りてキット・フィストー様にはお詫び申し上げます。アイラを勝手にガルのヒロインにしてごめんなさい……

それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を。


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コルサント・ナイト・ディナー

オビ=ワンの自室を訪れたガルは夜飯を外に食べに行こうと誘い、その後は夜になるまで病室で大人しくしていた。

 

夜になり、二人は人の気配が無い聖堂のプラットフォームに来ていた。

 

「なんでプラットフォームなんかに?」

 

オビ=ワンは訳が分からないと言った表情でガルを見つめる。

 

「今日はいつもと違うとこで食べたくてな」

 

「それはいいな。でもプラットフォームで飯は勘弁してくれよ?」

 

「そんな訳あるか。ほら、やっぱりまだあった」

 

ガルが指をさす方にはディルの船がタラップを下ろした状態で止まっていた。船内の光が暗いプラットフォームを若干明るくしている。

 

船を見つけたガルは船に乗り込み、ディルを探した。

 

「ディル?まだいる?」

 

ガルがそう声をかけると

 

「人の船に勝手に忍び込むなんてよっぽどのワルだな」

 

後ろからディルの声が聞こえてくる。

 

二人が振り返るとそこにはどこから現れたのか分からないがとにかくディルがいた。

 

「ディル、命を救ってくれてありがとう」

 

ガルはそう言いながら頭を下げた。

 

「は?いやいやそんなに凄い事はしてないって。それで何の用?こんな夜遅くに感謝の話だけをしに来たようには見えないけど」

 

「もし良かったらコルサントの美味しい店を教えてくれないか?」

 

「あーいいよ。俺もこれからちょうど飯食べに行くとこだったし」

 

「ありがとう。今日は俺の奢りで」

 

ガルはそう言いながらクレジットの入った袋をディルに見せた。

 

「お前って嫌味な奴だな」

 

「ガル、そんな大金一体どこで?」

 

「まあまあ、それはディルのオススメのお店に着いてからな」

 

ガルはそう言ってオビ=ワンをあしらった。

 

「それじゃあディル様オススメのオシャレなコルサント・ナイト・ディナーに向かいますか!」

 

ディルは胸を張ってそう言った。

 

 

コルサントーーココ・タウン

 

 

エアタクシーを降りた三人はディルの後ろを離れずに進んだ。

 

「ディルまさかとは思うが……」

 

ガルは嫌な予感がしたため確認をしようとする。

 

しかしその予感は的中する。

 

「ようこそ!デックス・ダイナーへ!」

 

ディルが胸を張って紹介したそこはエピソード2でオビ=ワンがパドメの暗殺をしようとした賞金稼ぎの手がかりを探しにやってきた場所だった。

 

「ここってダイナーだよな?」

 

「そうだけど?でもここの飯はすごく美味しいから」

 

「分かったよディル、信じるよ」

 

「よし、じゃあ行こう」

 

ディルが先頭に立ってダイナーに入って行く。

 

ガルとオビ=ワンはフォースでダイナーの中で自分達が店に入ってくるのを待っている人物がいる事に気がついた。

 

「オビ=ワン」

 

「ああ」

 

二人は顔を見合わせて頷き合い、こっそりと訓練用のライトセーバーに手を伸ばした。

 

三人が店の中に入ると店内の明かりが明らかに暗めにしてあった。

 

「デックスいるか?」

 

ディルが大きな声で店主のデックスを呼ぶ。

 

しかしその声で店の厨房から出てきたのは一人の女性だった。しかしその女性から一切の敵意を感じ取れなかったガルとオビ=ワンはライトセーバーから手を離した。

 

「あんたどのツラ下げて帰ってきたの?」

 

女性が強めの口調でディルに話しかける。

 

「うっ……」

 

ディルは急に後ろに立っているガルとオビ=ワンの間に入り込もうと後ろに下がりながら体をねじ込んでくる。

 

「えっとこちらの方は?」

 

ガルがディルに説明しろといった視線を向ける。

 

「えーっとその〜この人が前にバーで話したうちの奥さんです」

 

それを聞いたガルとオビ=ワンは面倒な夫婦喧嘩に巻き込まれるのを瞬時に察した。

 

「えっとそっちの二人は?」

 

ディルの奥さんは旦那以外の人物が一緒にいたのに気がついていなかったらしく恥ずかしそうにしながら声をかけてきた。

 

「どうも、自分はガル・アーラです。あなたの旦那さんに命を救われたものです」

 

ガルはそう言いながらしっかりと頭を下げた。

 

「私はオビ=ワン・ケノービです。ガルの親友です。そちらのお名前を伺っても?」

 

オビ=ワンもガルに続いてお辞儀をした。

 

「私はリオ=ベラ・トリスです。ベラって呼んでください」

 

一通りの自己紹介が終わり、店内のムードは最初の時と同じムードに戻った。ガルとオビ=ワンは何も言わずにありえないスピードで二人から一番遠いテーブル席に座った。

 

「ちょっ!」

 

ディルは二人が逃げた事に気がつき助けを求めようとするも、もう既に遅かった。

 

「ディル、あんたはこっちに来なさい話があります」

 

ベラはディルの耳を掴んで厨房の奥に引っ張っていった。

 

ガル達は誰もいない薄暗い店内でじっと外の街の様子を見ていた。少しするとオビ=ワンがゆっくりと口を開いた。

 

「なあ、ガル?一つ聞いていいか?」

 

「なんだ?」

 

「どうしてあのトワイレックの少女……いや、アイラ・セキュラをあそこまでしてでも助けたんだ?」

 

「助けたかった。だから助けた。それじゃダメか?」

 

「ダメじゃ無いが……どうしてそこまで自分を犠牲にできる?」

 

オビ=ワンのその問いにガルは正直に答えるべきかどうか悩んだ。

 

しかし、オビ=ワンに嘘をつく理由がなかったガルは正直に答える事を選んだ。

 

「自分の命を賭けてでも救える命があるなら救いたい。俺はそう思ってる」

 

そう言いながらもガルは自分が何故そこまでしてこの世界のキャラ達を死なせたく無いのかは理解できていなかった。それは彼の過去に関係があるのかもしれないが、その時の記憶はもう既に彼の中からは消えてしまっていた。

 

「じゃあ残された人間はどうする?お前が瀕死の重傷を負った瞬間、私とシャアクとシーリにはあり得ないほどの苦痛が走ったんだぞ!全員がその苦痛の理由が分からずにただ困惑していたというのに」

 

珍しくオビ=ワンが感情的になったのを見たガルはその迫力に圧倒されて答える事ができなかった。

 

「ジェダイは執着心を捨てなきゃいけない。そんなの分かっている。でもそれができるほど私達はまだ大人じゃ無い。だからもうせめて大人になるまでは無茶な事はしないでくれ」

 

「いやオビ=ワン…………執着心を捨てる必要はない。というか捨てられないだろう。俺はそう思う。それにジェダイはジェダイの掟に執着しすぎてるしな」

 

「でもそれは……」

 

オビ=ワンは言い返せなかった。ガルの言う事も一理あると思ってしまったからだ。

 

「それに悲しくならないか?本当の意味で執着心を捨てたら仲間が死のうが誰が死のうが悲しむ事は無い。感情を失うのと同じ事だぞ?そんな風になるならジェダイを辞める方がましだ。古くからの由緒正しい掟に従うのを悪い事だとは思わないが、時代は変わったんだ。時代に沿った新しいジェダイのあり方があると俺は思ってる」

 

オビ=ワンはガルの言葉を真面目に聞いていた。今までこんな考えを持っていた人間に出会ってこなかったからであろう。彼の中には今までジェダイに対して抱いた事のなかった疑問が生まれていた。

 

「俺はお前、シャアク、シーリ、アイラの身に何かあったら平静でいられないだろう。絶対に俺は復讐を誓う」

 

「ガル…………」

 

「それがジェダイの道を外れていようが関係ない。どのみち…………俺はジェダイにはなれないさ」

 

ガルはこの時既に気がついていた自分にはライトサイドのフォースとダークサイドのフォースが仲良く存在する事に。それに彼にとってもうジェダイでいる事の意味はほぼ無くなっていた。シディアスの上を行くならずっとジェダイ聖堂にいただけでは達成できない。

 

ジェダイという称号はただの足枷でしかなかった。

 

「なんでそんな事」

 

「俺は感情を抑える気もない。何故なら俺は強くならなきゃいけないからだ」

 

ガルの力強い答えを聞いてオビ=ワンは何も言えなくなった。

 

オビ=ワンにはガルの考えが手に取る様に分かった。彼が考えているのは周りのことだけなのだと。彼にとって自分自身の心配をするより他人の方が大事なのだと。

 

「大丈夫だオビ=ワン。俺を信じろ。俺はこう見えても色々考えてやっているんだ」

 

オビ=ワンの不安を感じたガルが彼の心を見透かしたような顔で言ってくる。しかしそれよりもオビ=ワンはガルのいつもと違った雰囲気を感じとっていた。

 

「今日何か合ったのか?」

 

「何かって?」

 

「いや、それは分からないがいつもと違う何かを感じる」

 

オビ=ワンの鋭い発言にガルはビクッとした。

 

「い、いや特に何もない」

 

「本当か?」

 

オビ=ワンはガルの目をジッと見つめる。

 

ガルもジッとオビ=ワンの目を見つめる。

 

少しの時間が流れてついにガルが観念して白状した。

 

「シャアクとアイラと…………キスしました」

 

急に縮こまって話し始めるガル。

 

「は?」

 

オビ=ワンは口を開けたまま炭素冷凍でもされたかの様に一切動かなくなってしまった。

 

「おーい大丈夫か?」

 

ガルがオビ=ワンの顔の前で手を振っても彼は微動だにしなかった。

 

少ししてもオビ=ワンが動かなかったためガルは最終手段に出る事にした。

 

「お前がシーリの事好きなの知ってるぞ」

 

ガルがそう言うとオビ=ワンは急に動いた。

 

「そ、そんな事はない」

 

「否定できてないぞ」

 

まったくガルの言う通りでその時オビ=ワンの顔はもう既に赤くなっていた。

 

「私の話はいいんだ何でそんな事?どこでしたんだ?」

 

「聖堂の最上階のバルコニーと病室」

 

「本気か??誰かに見られたら追放されてもおかしくないんだぞ?」

 

「急だったから止めることもできなくて」

 

「それでこれからどうするんだ?」

 

「いや特にいつも通り過ごしていくつもりかな。まあ何とかなるっしょ」

 

いつものしっかりとした雰囲気と違いガルはなんとなく戸惑っている様な雰囲気だった。

 

オビ=ワンがガルの二人に対する気持ちを確かめようとした時、店の入り口が開いて中に二人の人物が入ってきた。オビ=ワンにはただの客が来たようにしか見えなかったが、その二人を見たガルの目はいつになく輝いていた。




今の自分だと一週間に一度の投稿が限度な気がする……
まあでも頑張ります。本当に。
話を書いていて伏線を沢山散りばめようとしているんですけど全部回収できる自信がありません(笑笑)
それでは次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を。


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意外な二人組

店に入ってきた二人組はいかにもバウンティ・ハンターという格好をしていた。

 

オビ=ワンは厄介ごとに巻き込まれそうな気がして身構えたが普通に席に座ったのを見て安心した。そして彼はこの店に入ってからまだ一度も店主を見かけていない事に気がついた。

 

すると店の裏口が開く音が聞こえ、中に店主らしき人物が姿を現した。

 

「よお!ジャンゴにザムじゃねえか、いらっしゃい。遅くなってすまねえなちょいと買い出しに手間どっちまって」

 

この店の店主、ベサリスクの男性、デクスター・ジェットスターが二人の賞金稼ぎに声をかけた。

 

「やあデックス、ベラに誘われて来たんだが。今日は貸切って言ってなかったか?」

 

そう言いながらマンダロリアンアーマーに身を包んだジャンゴがガルとオビ=ワンの方を向く。

 

「おお、そういえばそうだったな。そちらのお客さん、どなたかの招待で?」

 

そう聞かれたガルは直ぐに立ち上がり自己紹介を始めた。

 

「はい。ディルに誘われて来ました。どうもガル・アーラです」

 

「同じく、オビ=ワン・ケノービです」

 

「おお!君がサバックの天才ガルか。よろしくな。俺はジャンゴ・フェットだ」

 

「ザム・ウェセルよ。ジャンゴの親友で一緒に賞金稼ぎをやってるわ」

 

ガルとオビ=ワンは二人と固い握手を交わして四人で並んでカウンター席に座る事にした。

 

「そうだワシも自己紹介しねえとな。デクスター・ジェットスターだ。デックスで構わない。飯は今から作るからちょいと時間かかるが話でもして時間を潰しててくれ」

 

デックスが厨房の奥に消えるとジャンゴがヘルメットを脱いでテーブルの上に置いた。

 

「それでディルは?」

 

「ディルならさっき奥さんのベラに引っ張られてどっかに行きましたよ」

 

「ああ、怒られてるのか」

 

ガルの返答にジャンゴはやっぱりなというリアクションをした。

 

「それはそうでしょ。だってあのバカはベラとの結婚記念のブラスターまで賭けたんだから」

 

ザムは当然だという顔をしながらジャンゴにそう言った。

 

「本当に相手が君で良かったよ」

 

「ガル?お前もしかして任務先のライロスでサバックしてたのか?」

 

「い、いや?そ、そんなことするわけ」

 

「だからさっきあんなにクレジットを持ってたのか」

 

オビ=ワンが心底呆れながら納得しているとWA-7ウェイトレス・ドロイドのFLOが四人分のアルディーズを持ってきた。

 

「それでどれぐらい勝ったんだ?」

 

ジャンゴはアルディーズを飲みながらガルに聞く。

 

「ざっと10万クレジットは」

 

そう言いながらガルもアルディーズを恐る恐る舐めてみた。初めて飲むアルディーズは普通に美味しかった。

 

一方隣で飲んでいたオビ=ワンは口に含んでいたアルディーズをガルの儲かった金額を聞いた瞬間に吹き出していた。それはそれはもう綺麗な吹き出し方でアメリカで人気の王道シットコムでもここまで綺麗な吹き出し方はできないだろう。

 

「うわーおフラーハウスみたいだね」

 

ガルはそう言いながら笑った。

 

しかしオビ=ワンは笑えないようだった。

 

「鼻に入った」

 

そう言いながら物凄く痛そうにしていた。

 

その間、ジャンゴとザムは天才だなとガルの事を褒めていた。

 

褒められて嬉しくなったガルはジャンゴ達に相手のプレイヤーの表情をどうやって読み取るかなど細かい説明をしていた。

 

すると店の厨房からげっそりと痩せ細って生気が失われているディルをベラが引きずりながら出てきた。

 

「あらジャンゴとザム、もう来てたのね」

 

「ああ、予定より仕事が早く片付いてな。そこの死にかけのバカは大丈夫か?もう許してもらえたのか?」

 

「はい……なんとか……」

 

弱々しい声でディルが返答する。

 

「そうだディル、さっきジャンゴさん達にサバックの必勝法を教えてたんだけど聞きたい?」

 

ガルがニヤニヤしながらそんな事を言う。

 

「えっ?聞きたい聞きたい!」

 

さっきまで死んでいたはずのディルの目は急に息を吹き返し、懇願する眼差しでガルを見つめた。

 

しかしそんなディルをベラが許すはずもなく。ディルはすぐにベラに耳たぶを掴まれて強く引っ張られた。

 

「あんたさっきもうギャンブルは二度としないって言ったでしょうが!」

 

「はっはいいいい!」

 

ディルは怯えながらそう答えた。

 

そしてその様子を見ながらガル達は笑っていた。もう既にガルにとってこの場にいるメンバーとの過ごす時間がとても有意義で楽しかった。

 

しかし、それを横から見ていたオビ=ワンは楽しみながらも自分の親友が賞金稼ぎ達とどんどん仲良くなっていくのを不安に思っていた。ガルがジェダイでいる事にあまり意味を感じていないと気がついてしまったからこそ彼は不安だった。ガルがいつかジェダイオーダーをやめると言うのではないのかと……

 

 

一方ジェダイ聖堂ではアイラをジェダイ・イニシエイトにする事が正式決定されようとしていた。

 

「マスターヨーダ、私はあまり気乗りがしませんな」

 

ウィンドゥは顎に手を当てながら悩んでいる。

 

「何が問題だというのじゃマスターウィンドゥよ」

 

「いえ、彼女自体に問題はありません。私が言っているのは彼女とガル・アーラの繋がりの事です」

 

「ガルが何か悪い事をしたとでも?」

 

彼の発言にドゥークーが質問する。

 

「私が言っているのは彼の能力と彼女の証言だ。彼女は彼が暴走したと言っていた。しかし、それを知っているのは彼女だけだった」

 

「何が言いたい?」

 

「今朝、彼と話した時に彼は普通にしていた。まるで暴走などしなかったかのように」

 

「しかし、彼女の証言が嘘だとは思えないとな?」

 

「はい、マスターヨーダ。彼女は彼の暴走を彼とフォースで深く繋がる事で抑えたと言っていました」

 

「となると」

 

「彼は力をコントロールできていない可能性が高い」

 

このウィンドゥの発言を聞いた全員が同じ事を考えた。ガルは予定よりも早く誰かのパダワンにしなければいけないと。

 

「その彼が暴走した時に一番被害に遭うのは繋がりの強い彼女本人だろう」

 

「確かにマスターウィンドゥの言う通りじゃの。しかし今回は繋がりの強い彼女がいたからこそ、ガルの暴走は止まったのじゃ。その彼女が修行を積んで立派なジェダイになれば彼を支える良き存在になってくれるとは思わぬか?」

 

ヨーダの問いにウィンドゥは直ぐには答えなかった。

 

少しの間ウィンドゥは自分の中で注意深く考えてから口を開いた。

 

「アイラセキュラの件に関しては賛成しましょう。ガルの件に関してはまた後日ということで」

 

 

そんな事を知りもしないガルはデックスが作ったご飯を物凄い勢いで食べていた。

 

「何これ!美味すぎる!」

 

スターウォーズの世界で食べる初めての家庭的料理は信じられないほど美味しかった。材料は正直なところ怖くて聞けないのがガルの本心だったが、美味しければそんなものは関係ないと考えるようにした。

 

そんな中隣に座っているオビ=ワンも黙々とデックスの手料理を食べていた。

 

「凄い勢いで食べるな二人とも」

 

ジャンゴは二人の様子に驚いていた。

 

「子供は沢山食べないとね」

 

ザムがお酒を飲みながら優しくそう言う。

 

ディルとベラも二人の様子を微笑みながら眺めていた。

 

賞金稼ぎの四人にとって子供とこうやって普通に触れ合う瞬間などほとんど存在しないのだ。

 

ジャンゴ達は密かに自分達も普通の生活ができて家庭が持てたらなと考えてしまっていたのだった。

 

ガルはふと地球の頃の自分の家族について考えた。しかし、存在していたはずのその記憶は彼の頭の中には浮かばなかった。ただ心に幸せな気持ちと孤独、悲しみ、憎しみが同時に訪れただけだった。

 

彼の中で地球にいた頃の記憶はほぼ全てと言っていいほど消えていた。ただ覚えているのはスターウォーズに関する記憶だけ。その記憶でさえ、徐々に歳を重ねる事に怪しくなってきているというのに。

 

だから彼はデータメモリにできる限り覚えている事を記録しておいた。誰かに見られる可能性もあるためセキュリティロックは頑丈にし、そのメモリはどのデバイスにもアクセスできない。簡単に言えばWi-Fiにすら繋げられない様に設定されているのだ。そのためそのデータを見るにはガルがコルサントにいる時は肌身離さず持っている薄型データパッドを使わなければいけない。逆に言えばそれが壊れたりすればそのデータは一瞬にして失われるわけだが……

 

いずれパルパティーンに勘付かれるのを恐れた彼はエピソード1の時代になる頃には全てのデータを消すつもりでいる。まあどうせ見られても理解できないのがオチだ。彼のデータは英語と日本語、スペイン語の三つに分けられて記録されている。この世界にとったら解読不可能の文字だ。

 

そんな中ガルは密かにダソミアに帰りたいとも思っていた。親友のメリダの事が心配だったのだ。

 

一方で彼が生きている事なんて知る由もないメリダはダソミアで一番の戦士になろうとタルジンの元で奮闘しているのだった。今の彼女は大人のナイトシスター達と同じぐらいの強さになっていた。

 

二度と大切な存在を失わないために。




そういえばThe Bad Patchの新しい予告編が公開されましたね!
レックスやエコーの再登場はもちろん凄く嬉しいんですけど個人的にはフェネックの登場がめちゃくちゃ嬉しいです。自分はMandalorianの中でフェネックが一番好きなキャラなので(笑)
最近調子がいいので五日に一度の投稿ぐらいできそうかな?って感じです。本当に気分屋ですいません……
それではまた次回の投稿で。フォースと共にあらん事を。


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昇格は突然に

あれから月日が流れ、もう半年が経とうとしていた。

 

それぞれが日々、成長していた。

 

ガルは前回の暴走以来、特に問題は起こらなかったがあの日以来異常なまでの能力の向上が見られた。一度に放出できるフォースの波の大きさが増し、彼と共に戦う者に起こる能力向上も格段にレベルが上がっていた。

 

ガルと共に戦うことの多いシャアクはその恩恵を一番受けていた。彼女の動きは更に俊敏になり、彼女のフォースダッシュはジェダイマスター達にも負けない程になっていた。

 

オビ=ワンはシーリとの繋がりが強くなり、彼女の事を大切に思う気持ちが強くなりつつあった。しかし、この後はどうせサティーンに恋をするのだが。

 

彼はムンディのように一夫多妻でもするつもりなのだろうか。とガルは心の中で密かにほくそ笑みながら考えていた。

 

どの口が言えたものだろうか。

 

ガルとシャアクの関係は特に今までと変わらなかった。可もなく不可もなくといったところだ。あのキスによるプライベートの変化は全くなく、そんな事すら無かったかのようだ。

 

ただ一つあげるとすればシャアクが明らかにアイラに対して対抗心を抱くようになったこと。しかしアイラは年上のシャアクを全く意識する様子も無く、ただひたすらにガルの隣にいようとするだけだった。

 

また、ディルやジャンゴ達との交流の回数は増え、今ではガル一人で会う時もあればシャアクを連れて一緒に聖堂を抜け出すこともしばしばだった。

 

ディルやジャンゴはガルの事を歳の離れた弟のように思っていた。二人はいつか必要になった時のためにジェダイでは嫌う者が多いブラスターの練習をガルに薦めた。二人は断られるのを覚悟していたが意外にも、ガルは喜んで二人に教わると答えた。一流の賞金稼ぎ達の下でのブラスター練習はガルの新境地を開いた。今ではそこらの二流賞金稼ぎよりも腕が良くなっている。ベラやザムも賞金稼ぎを差別しないガルをとても気に入っていた。

 

アイラは小さいながらにも先輩のガルやオビ=ワンに追いつこうと毎日必死にトレーニングをしていた。

 

そんな中、彼女はガル以外にも強いフォースの繋がりを持てる人間を見つけた。それはもちろんクインランだった。二人の間にはガルとの繋がりとまでとは言えなかったが確かな物があった。彼女は次第にクインランが自分の師匠になるのではないかと考えるようになった。一方でガルに対しては何とも言えない複雑な感情を抱くようになってしまったのだった。

 

 

コルサントーーココ・タウン

 

 

今日はガルとオビ=ワン、シャアクの三人でデックスダイナーに訪れていた。ディル達は本業が忙しくていなかったが、夜ご飯はどこよりも美味しいこのダイナーが良いとガルがうるさかったため他の二人は半ば強引に連れてこられたのだった。

 

三人はテーブル席で他の客を観察しながらご飯を食べていた。

 

すると突然ガルのコムリンクが鳴り出した。

 

きっとマスターの誰かからだと思い、焦ったガルは口の中の食べ物を急いで飲み込んでから一人外へ出て人通りの少ない場所で通信を受けた。

 

「はい、ガルです」

 

「ドゥークーだ。明日の朝に大事な話がある。オビ=ワン、シャアクを連れて一緒に広場に来てくれ」

 

「分かりました。それじゃあおやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ。それと明日は早いんだから早めに帰ってくるんだぞ?」

 

ドゥークーの言葉にドキッとしながらガルは通信を切った。

 

ガルは直ぐにダイナーに戻り、話の内容を二人に伝えたのだった。

 

 

 

次の日、朝早くに起きた三人は言われた通りに広場に集まっていた。

 

コルサントの朝日が三人の姿を照らす。オビ=ワンは清々しい顔をしていたが、ガルとシャアクの二人はどうもあの日のキスの事を思い出してしまうようでお互いに恥ずかしそうな顔をしていた。

 

少しするとヨーダを先頭にドゥークー、クワイ=ガン、タールが三人に向かって歩いてきた。

 

それを見た三人は背筋を伸ばし、綺麗な姿勢でマスター達の話を聞く準備をした。

 

「うむ、全員揃っておるの」

 

そう言いながらヨーダはドゥークーの方を向く。

 

「今日から君たち三人をパダワン見習いに昇格する事が決定された。君たち三人のマスターは私を含めたクワイ=ガンとタールの三人だ」

 

その発言にガル達は歓喜する。

 

「ガル、君のマスターはこの私ドゥークーが務めよう」

 

「オビ=ワン、君のマスターは私だ」

 

「これからよろしくねシャアク」

 

それぞれがお互いのマスターと固い握手を交わす。

 

彼ら全員がいずれこうなる事を予想していただろう。

 

だから誰一人として不安の表情を見せたりしなかった。全員が自信に溢れた顔をしていた。

 

「悪くない組み合わせじゃ。それでは最初の訓練といこうかの。そなた達三人は異例の進級速度の為まだ自分のライトセーバーを作っておらんじゃろう?」

 

ガル達三人は頷く。

 

「氷の惑星イラムに行ってギャザリングを行ってくるのじゃ」

 

ヨーダの言葉を聞いたガルは喜びと不安の感情の両方が自分の中で大きくなっていることに気がついていた。

 

ギャザリングはジェダイ・オーダーの訓練生に課せられる通過儀礼だ。惑星イラムの洞窟において、各々のライトセーバー制作に必要なカイバー・クリスタルを見つけ出す試練であり、フォースを使い、個人が抱える恐怖や過ちを克服しなければクリスタルを手に入れることはできなかった。

 

ギャザリング修了後、訓練生たちはヒュイヤン教授のもとでライトセーバーの制作方法を学ぶ事になる。

 

ギャザリングの伝統はジェダイ・オーダーの夜明けまで遡り、クローン戦争の時代まで数世紀にわたって受け継がれていた。この通過儀礼は若きジェダイ・イニシエイトたちがそれぞれの内面にある恐怖や過ちを乗り越え、ライトセーバーの製作に必要なカイバー・クリスタルを見つけ出すことを目的としており、氷の惑星イラムにあるジェダイ・テンプルで執り行われた。ギャザリングに参加するイニシエイトは、旧共和国時代から1,000年以上にわたって使用されている宇宙船<クルーシブル>でイラムへ運ばれている。

 

オビ=ワンやシャアクは自信に満ちた顔をしていたが、ガルだけはそんな顔をする事はできなかった。

 

彼は自分の内にある恐怖が何か理解できていたからだ。そしてイラムの洞窟ではそれが確実に彼自身の目の前に形になって現れるだろう。過去からは決して逃れられないとでも言うかのように……

 

ヨーダからの説明を受けたガル達はマスター達三人と一緒に直ぐにイラムに旅立つ事が決定された。

 

 

「ねえねえ、ガル?あなたは何色だと思う?」

 

シャアクがガルの隣を歩きながらクリスタルの色の予想を聞いてくる。

 

「さあ?無難に青とかじゃない?」

 

「お前なら変わった色が手に入りそうな気がするけどな」

 

「みんな揃って青の方がいいだろ?」

 

「それもいいけど全員同じ色っていうのもなんかね…」

 

「確かにあんまりだな」

 

「ならやっぱりガルだけ違う色だな」

 

「何でそうなるんだよ!」

 

三人のやりとりを後ろから見ていた彼らのマスター達は彼らのパダワン達がこのテストを合格すると確信していた。

 

 

未知領域ーー惑星イラム

 

 

六人のジェダイを乗せたクルーシブルがイラムに着陸する。

 

イラムに降りたガルはいつものように目を輝かせていた。彼はクローンウォーズでのイラムの回とフォールンオーダーでのイラム探索が大好きだったのだ。

 

オビ=ワンやシャアクも美しい雪と氷のコントラストを見て興奮していた。

 

「懐かしいですねマスター」

 

「そうだな。我が弟子よ」

 

「イニシエイトの頃を思い出すわね」

 

三人のマスター達も幼い頃の思い出に浸っているのだった。

 

ガル達はテンプルの前まで案内された。

 

テンプルの入り口は氷で閉ざされていた。

 

その場の全員が何も言わずにフォースを使い、協力してその氷を動かして道を切り開いた。

 

開いた入り口から中に入っていく。階段を降りるとそこにはホールがあり、そこでマスター達の案内は終了になった。

 

「特に注意することなどは無いが、日が沈む前までに戻ってくるようにしてくれると助かる」

 

ドゥークーがガル達に向かって言う。

 

「マスター、そんないい加減でいいんですか?」

 

「別に今回は正式な訓練でも無いんだし大丈夫よクワイ=ガン。それにこの子達ならやれるわ」

 

「はい!私達はすぐにこの洞窟から出てきてこの訓練の最速記録を更新すると思います」

 

「それには私も賛成です」

 

シャアクとオビ=ワンが食い気味で答える。

 

「あなたは?ガル」

 

タールがガルの事を見つめる。

 

「自分はじっくり時間をかけて自分と向き合いたいと思います」

 

ガルのその返答は彼の心の奥底から湧き出たのかと思うくらい重く、説得力のあるものだった。

 

「うん!良いわね、あなたらしいわ。あなたならきっと良いジェダイになれるわ」

 

そう言いながらタールは彼の頭を優しく撫でた。

 

「私の自慢のパダワンに色目を使わないでくれるかな?タールよ」

 

それを見たドゥークーがすかさず反応する。

 

「二人とも良い加減にしてください。さあ、三人はもう行くといい。己と向き合って自分に合った色のクリスタルを見つけてくるんだ」

 

「「「はい!」」」

 

三人の元気な返事がホールに響き渡る。

 

三人は小走りでホールから続く洞窟へと入っていくのだった。




投稿が遅れた言い訳をさせてください。先週友達に誘われてAPEXを始めました。そうしたらどハマりしてしまってここのところ毎日やってしまっていました。本当に申し訳なく思っています。
それでは次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を!


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オビ=ワンの見た幻影

三人が洞窟を進んでいくと目の前には三つに分かれた別々の道が存在していた。

 

「さてと俺達が一緒なのもここまでなのかな?」

 

ガルの発言によって他の二人も改めて気合を入れ直した。

 

「じゃあまた後で」

 

オビ=ワンがそう言いながら一番右の洞窟へと進んでいく。

 

「そうね」

 

シャアクは一番左の洞窟へ。

 

「じゃあ数分後に」

 

ガルはそう言いながらも二人の姿が見えなくなるまでその場から一歩も動かなかった……

 

 

オビ=ワンはゆっくりと洞窟の中を進んでいく。

 

この後何が起きて、何を見るのかは誰にも予測ができない。オビ=ワンは正直なところもう既に自分がこの状況に恐怖を抱いている事が分かった。

 

慎重に一歩ずつ確実に歩いていく。すると少しドーム状になった開けた場所に出た。

 

異常な緊張のせいで疲れたオビ=ワンは一瞬だけここで休む事にした。洞窟の壁にもたれかかり楽な姿勢をとる。

 

すると彼は自分が通ってきた道から足音が聞こえるのに気がついた。彼は直ぐにこれから訪れる出来事に対処しようとした。しかし、そこに現れたのは先程別の道に進んだはずのガルだった。

 

「ガル?ここで何してる?」

 

オビ=ワンがガルに近づこうとすると彼は焦った様子で話しかけてきた。

 

「今すぐ逃げろ!この洞窟には邪悪な奴が住んでる!」

 

意味のわからない事を言うガルにオビ=ワンは混乱した。ところが次の瞬間、こちらに向かってきていたガルの腹から赤い光刃が姿を表した。オビ=ワンが状況を理解する前にガルからは苦しみの声が上がる。オビ=ワンは目の前で起こっている事が幻影であると分かっていても恐怖を感じられずにはいられなかった。

 

ガルが致命傷を負った時と同じ苦しみが彼を襲う。

 

最後の力を振り絞って逃げろと叫ぶガルを尻目に、オビ=ワンは全速力で洞窟の先へと走りだした。

 

オビ=ワンは振り返らずにどんどんと洞窟を走り抜けていく。親友を殺した正体不明の人物の気配が感じられなくなるまで……

 

 

 

気がつくと彼はジェダイ聖堂の中にいた。

 

いつもと変わらない光景が彼の目の前では起こっていた。しかし、いつもと違う事もあった。みんなが大人になっていたのだ。

 

そしてオビ=ワンは何故かジェダイ公文書館へと向かおうと思った。

 

公文書館に着いた彼はそこに置いてある銅像をゆっくりと見ながら歩いていた。するとその内の一つに見覚えのある顔を見つけた。急いで銅像に駆け寄り、そこに記されている名前を確認する。

 

そこにはハッキリとこう書いてあった。

 

『脱退した優秀なジェダイナイト・ガル・アーラの功績をここに記す』

 

その文字を読んだ彼は自分の恐れていた事態が起きてしまったと錯覚した。ガルはジェダイを辞めたという情報がオビ=ワンの頭の中で渦巻いた。

 

「あら?オビ=ワンじゃあないですか。どうしたんですか?古き友の顔が見たくなりましたかな?」

 

優しく声をかけてきたのはジェダイマスターのジョカスタ・ヌーだった。

 

「え、ええそうですね。彼の事を思い出してしまって」

 

「そうでしたか。もう何年になりますかね。彼がここを去ってから……」

 

彼女の目には寂しさと悲しみの両方が混じっていた。

 

「彼のマスターも元気にしていますかね。まさかマスターとパダワンの二人ともがジェダイを辞めるなんて思ってもいませんでしたからねえ」

 

「えっマスタードゥークーもやめたんですか?」

 

「そうですよ。ガルがここを辞めてから数年後に。覚えてらっしゃらないんですか?」

 

「い、いやあ覚えているさ」

 

その後、オビ=ワンは公文書館を後にして自分の自室に帰る事にした。

 

彼は自室のドアを閉めながら今の自分の状況を理解しようとしたが、何一つ理解できる事が無かった。オビ=ワンは頭を抱えながら目を瞑る。

 

そしてもう一度目を開くとまた違う景色に変わっていた。そこではガルを含めた大勢のジェダイ達が一本の大きな木の前で立ち、おしゃべりをしていた。

 

ガルやシャアク、シーリがこっちを見ながら笑顔で手を振っている。

 

その光景はもはや異様としか言いようがなく、どうにも気持ちが悪かった。

 

状況を理解できていない彼に向かって一人の女性が話しかけてくる。

 

「これが今のあなたの望んでいる物よ。平和。あなたは自分にとって大切な人を失ってしまうのを心の底から恐れているのね」

 

「そんな事はない」

 

「あら、認めないの?まあそれでも良いけどクリスタルが手に入らないわよ?」

 

その女性はイタズラな目つきでオビ=ワンが見つめる。

 

「はあ……分かった。私は家族同然の親友を失うのを恐れている」

 

「そう、やっぱりね。じゃあその恐怖に打ち勝ってみる?」

 

「ああ。やってみようと思う」

 

「まあどうせ彼がいればあなたがそんな思いをする事は無いんだけどね……」

 

「それはどういう?」

 

オビ=ワンが女性の気になる発言に質問をした瞬間に目の前が光に包まれてしまった。

 

 

次に彼が立っていたのは闘技場の観客席のような場所だった。困惑しながらもオビ=ワンは闘技場で戦っている人間がいる事に気がついた。そこで戦っている者の姿を確認するために観客席の一番前に行くと歳をとった自分とフードを被った何者かが戦っているのが見えた。

 

そしてオビ=ワンはその場で立ち竦んでしまった。

 

何故なら歳をとった自分が握っていたライトセーバーの光刃の色が血のような赤色をしていたからだ。

 

 

「あれは一種のあなたの未来の姿ね。でもその恐怖を克服できればあなたも強くなれるわ」

 

いつのまにか現れていたさっきの女性がオビ=ワンの隣でお菓子を食べながらくつろいでいる。

 

「あれが私の未来なのか??」

 

「そうね、未来っていうか別のタイムライン?まあ面倒な話は省くね。あそこにいるあなたは仲間や親友が何人も死んじゃってああなっちゃったのよ」

 

「そ、そうなのか……」

 

オビ=ワンは困惑の表情をする。彼は全く予想もしていなかった。まさか自分が一人前のジェダイになる前に、暗黒面に堕ちた自分の姿を目撃するなんて。

 

「じゃあとっとと未来のあんたを倒してきなさい!」

 

女性がそう言ったかと思うと、オビ=ワンの体は歳をとった自分の前に移動していた。

 

「お前は誰だ」

 

未来の自分はゆっくりと近づきながら声をかけてくる。

 

「私は過去のお前だ」

 

オビ=ワンはそう答えながらも腰にかかっている訓練用のライトセーバーを手に取ろうとはしなかった。

 

「俺を殺しに来たのか?」

 

「いや、私は自分の未来を、そしてこれから起こる事を受け止めに来た」

 

「受け止めにきた?冗談言うなよ。若くて弱い今のお前に何ができる?ならせいぜい受け止めてみな」

 

そう言いながら彼はフォースを貯めて若き自分に放った。

 

そして若きオビ=ワンの体は闘技場の壁に叩きつけられた。彼は口の中に滲む血の味を感じながらもしっかりと前を見据えて立つ。

 

「受け止めると言う意味をお前は分かっているのか?全員の死を受け入れられるのか?生き残ったのは俺だけなんだぞ!」

 

「それでも私は精一杯大切な者を失わないために動く!」

 

「そんな言葉……誰が信じるか」

 

歳をとったオビ=ワンは冷たい目をしながら赤い光刃を光らせ、若いオビ=ワンの腹に付き刺そうとした。

 

しかし、光刃は彼の腹に刺さる事はなく、刺さる寸前で止まったのだった。若いオビ=ワンがゆっくりと歳をとった自分の顔を見ると彼の目からは雫が流れていた。

 

「お、おかしいな……どうせ同じ事の繰り返しだって分かっていても期待せざるにはいられないのかな」

 

そう言いながら彼のライトセーバーを握る手は小刻みに震えていた。

 

「どうして……?」

 

「お前、本気で運命に抗ってくれるな?」

 

歳のとったオビ=ワンは若き自分にそう強く聞いた。

 

「ええ」

 

そう言いながら若きオビ=ワンは頷く。

 

「分かった。ならいいか、今から言う事をよく覚えておくんだ」

 

そう言いながら歳のとったオビ=ワンはライトセーバーを消した。

 

「………………ガルを信じろ」

 

長い沈黙の後に彼の口から放たれた言葉はその一言だった。

 

彼の言葉の意味が今のオビ=ワンには理解ができなかった。自分がガルを信じなくなる瞬間など訪れるのだろうかと。

 

「それとお前にはこれを渡そう」

 

そう言いながら彼がベルトのパックから取り出したのはブルーのライトセーバークリスタルだった。

 

「これがあればお前は優秀なジェダイマスターになれる」

 

そう言い残して歳のとったオビ=ワンはその場から去っていってしまった。

 

オビ=ワンが渡されたライトセーバークリスタルを握りしめていると女性が声をかけてきた。

 

「私からも一言。ガル、ううん、アレックスの事を信じて。彼ならきっとこの銀河も救ってくれるわ。いつもみたいにね」

 

彼女がそう言い終えるとオビ=ワンの目の前はまた光に包まれるのだった。




今回から謎が残る回が続きますのでご承知の程よろしくお願いします。
そういえばマーベルの話になっちゃいますけどマドリプールの公式サイトができましたね。存在しない街の公式サイトを作る辺りやっぱり流石ですよね。なんというかマーベルの脚本家とか制作の人ってどんな頭してるんだろうって思います。天才すぎますよね。
それでは次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を!


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シャアクの見たビジョン

他の二人と別れたあとシャアクは洞窟を走りながら進んでいた。

 

「絶対に私が一番に外に出てみせる」

 

そう呟きながら洞窟の奥へ進んでいくと先の方から光が見え始める。

 

彼女がその光を目指してフォースダッシュで近づいていくと外に繋がっていることがわかった。恐る恐る外の様子を確認するとそこには広大な草原、広い海、少しのマグマが存在していた。

 

これが何を意味しているのか分からなかった彼女は草原に足を踏み入れ、遠くに見える土煙を目指すことにした。

 

シャアクは一切歩くスピードを落とさずにどんどんと草原を進んでいく。何も恐れる事は無いと言わんばかりに。

 

数分走り続けると土煙が上がっている場所を目で確認する事ができるようになっていた。そこにあったのは墜落したあり得ないほど大きい艦だった。

 

「あのサイズは今まで見た事がない……」

 

シャアクは多少の不安に駆られながらもその艦の残骸に近づいて行く。触れる事のできる距離まで来てやっと彼女は気がついた。この艦の全長はこれよりももっと大きいということに。

 

何故なら今彼女の目の前にあるのはその宇宙船の半分より後ろの部分だけなのだ。

 

「これは軍事用の船?あまりにも巨大すぎるわ」

 

彼女は艦の残骸をかき分けながらボロボロの艦内へと足を踏み入れる。艦内の設備を確認しようとしたが、特にめぼしい物は無く、ただの鉄の塊だった。

 

捜索を諦めて外に出ようとすると近くで誰かがうめき声を上げた。恐る恐る声の方向に向かって歩いていくとそこにはトワイレックの女性が怪我をして倒れていた。

 

「大丈夫ですか??」

 

彼女が慌てて駆け寄るとその女性はシャアクの顔を見て安堵の表情を浮かべた。

 

「無事だったのねシャアク。助かったならよかった」

 

そんな事を言う女性の顔を見ながらシャアクは自分の前にいる人物が大人になったアイラなのだと気がついた。大人になった彼女の顔立ちは物凄く美人で、体型は文句のつけようがないほど完璧だった。

 

そんな彼女の姿を見てシャアクは自分の負けを確信した。ここまでの逸材を自分は敵視していたのかと思うとかえって恥ずかしくなるのだった。

 

「ええ、私は無事よ。大丈夫、ガルが助けに来てくれる」

 

そんな事を彼女はいつもの口癖で言ってしまう。その言葉を聞いたアイラはキョトンとしていた。

 

「どうしたの?」

 

シャアクが焦って聞くとアイラは答える。

 

「ねえ、ガルって誰?」

 

「えっ?」

 

シャアクは驚いてアイラの顔を見る。

 

「そのガルって人は誰なの?」

 

アイラは至って真面目な顔で彼女の方を見ていた。

 

ガルを知らないと言った彼女の顔に嘘はなかった。しかし、シャアクは全く意味が分からなかった。ガルの事を知らないアイラにどういう対応をするべきかも考えられなかった。

 

「ううん、なんでもない。私があなたを守るわ」

 

シャアクはそう言いながらアイラの応急処置をし始める。

 

すると突然アイラの顔が恐怖に染まる。

 

「音がする……」

 

「なんの?」

 

「やつの……サイボーグの音が……」

 

シャアクが耳を澄ませるとこちらに向かってくる機械の足音のような物が聞こえてきた。

 

「ここにいて…」

 

シャアクは怯えるアイラを置いて音がする方に向かって静かに歩いてゆく。足音は彼女が艦の外に出る直前に止まった。そして次に訪れたのは静寂だった。

 

彼女は腰にかかっているライトセーバーに手をかけ、起動した。

 

ライトセーバーの起動音が広い艦内に響き渡る。彼女の構えるライトセーバーの光刃の色は深い青色だった。

 

そしてまた静寂が訪れる。シャアクは緊張していた。

 

彼女の額を一滴の汗が流れる。

 

次の瞬間アイラが叫んだ。

 

「上よ!!」

 

シャアクはその声を聞き、上を見上げるよりも前に自慢のフォースダッシュで後ろに後退した。

 

そして彼女が去ったその場所にはなんとも表現のしづらい全身が機械で覆われた虫のような人物が地面に機械の足が刺さったまま立っていた。恐らくアイラの警告がなければシャアクはタダでは済まなかっただろう。その人物は何も言わずに腰にある二本のライトセーバーを起動させてシャアクを睨んだ。

 

「あなた何者?」

 

シャアクは警戒をしながら問いかける。

 

その人物はシャアクの問いに答えるはずもなく一直線に彼女の元へと走り出した。

 

また、シャアクもその人物に向かって走り出す。

 

二人はお互いが近づいた瞬間に回避行動をとった。そしてフェイントの攻撃を繰り出す。シャアクの光刃は相手の二本の光刃を弾き返す。そして空いている方の手でフォースを使い、相手の腰にかかっている残り二本のライトセーバーの内の一本を取り、起動しながら間合いを取る。

 

自分のライトセーバーを一本取られた相手は怒りの目つきになった。そして相手の攻撃は一気にスピードが増す。シャアクでも防ぐのが精一杯なほどのスピードでライトセーバーをグルグル回しながら徐々に彼女を追い詰めていく。

 

そんな中、彼女は気がついた。相手の腕が機械である事を。

 

「くっ……」

 

追い詰められていくシャアクは苦し紛れの奇策に出た。

 

一度間合いを取り、一本のライトセーバーを相手に目掛けて投げる。そしてそのライトセーバーと同じスピードで相手に近づき、相手がシャアク本体に気を取られている隙に飛んできたライトセーバーに持ち替え、回避行動をとりながら相手の腕を目掛けて攻撃をする。

 

そして彼女の作戦は成功した。しかし、もう一度間合いを取ろうと飛び退いた彼女の脇腹には鋭い激痛が走った。その箇所を見ると丸い穴が空いていて皮膚が焼き切れていた。

 

「マズい……」

 

痛みを堪えながら相手を見ると何故が腕の数が二本から三本に増えていた。そして三本全てにライトセーバーを握っていた。

 

その光景を見ながら彼女は全身の力が抜けていくのに気がついた。

 

『あっかなりマズい。ガルがここにいればこんな事には……』

 

ゆっくりと倒れていく彼女に対して機械の男は容赦なく光刃を振り下ろそうとしていた。

 

『ガル…………助けて』

 

そう心の中で祈りながら彼女の意識は遠のいていった。

 

完全に瞼が閉じる直前に機械の男が何者かによって吹き飛ばされているような気がしたがそれは彼女には分からなかった。

 

 

 

次に目が覚めると彼女は土煙が上がる荒野に倒れていた。

 

彼女は痛む体を起こしながら辺りの様子を伺う。そして自分の周りにあるものを見て絶句した。

 

彼女の周りには無数の死体があったのだ。

 

あまりの光景にシャアクは吐き気がしたが我慢した。目をよく凝らすと遠くで座っている人影が目に入った。

 

彼女は周りの死体を踏まないようにしながらその人影に向かって歩いていく。

 

徐々にその人物の背中が見えて来る。そしてその後ろ姿にはどこか見覚えがあった。

 

「ガル!」

 

彼女は名前を叫びながら彼に近づいた。

 

大人の顔になったガルはゆっくりと後ろを振り向き、彼女の顔を見て優しい笑顔を見せた。

 

「シャアクか……」

 

彼は少し口を開いたが、彼の声は元気が無く、擦れていた。

 

「大丈夫?」

 

彼女が心配そうに問いかけるとガルは静かに頷いた。しかし、シャアクはすぐに気が付いた。ガルが全然大丈夫ではない事に。

 

よく見ると彼の顔にはいくつもの切り傷があり、腕や手は血まみれになっていた。

 

そして一番の衝撃は彼の片目が無くなっていた事だった。

 

「シャアク……すまなかった。守れなくて」

 

そう言い始めるガルの言葉は後悔と悲しみに満ち溢れていた。

 

「こんな事を言うのもなんだが……君の活躍をこの目で見られなかった事を後悔してる」

 

「どういう意味?」

 

シャアクは意味が分からなかった。しかし、彼女の問いに彼は答えなかった。

 

「これを使うといい」

 

ガルは自分の足元にあったボロボロのライトセーバーのヒルトをフォースでこじ開け、中から青色のライトセーバークリスタルを取り出した。

 

「あ、ありがとう」

 

「じゃあな」

 

「え?」

 

「君たちに会えて本当によかった」

 

そう言った彼の姿はもう既に薄くなりかけていた。

 

「今思えば一度も君達に愛してると伝えられなかったな………………」

 

彼の全身は砂のように粉々になって上空に向かって飛んでいってしまった。

 

そして彼女の周りにあった物全てが砂のように消えてゆく。気がつくとシャアクは少量の涙を流しながらホールに立っていた。




次回から二話ぐらいは色んな人に怒られそうな話になると思います多分ww
まあ楽しみにしていてください。
最近口癖が疲れたと眠いになってきて嫌気がさしてます。やっぱり普段から健康的な生活を心がけないといけませんね。
それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を。


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ガルの見たヴィジョン 前編

今回のお話は分かる人には分かる人物が登場します。スターウォーズの世界に彼らが干渉してくる事はありませんのでご安心ください。登場は今回と次回のみです。まあ、What ifだから許してね?


ガルは怖かった。

 

自分の知らない過去を知るのではないかと。何か忘れたいと思っていた事を思い出すのではないかと……

 

だから彼は進めなかった目の前の洞窟に。

 

「はあ………」

 

ガルは深いため息を吐く。そしてゆっくりと地面に腰を下ろそうとした。

 

しかし、彼が地面に手をつくと洞窟全体に嫌な音が響いた。

 

 

ピシッ

 

 

「えっ……なんか嫌な予感がっ!」

 

次の瞬間、洞窟の地面が崩壊しガルはなす術なく下へと落ちていくのだった。

 

 

目が覚めると彼は上質なフカフカのベッドの上にいた。部屋の窓からは爽やかな朝日が差し込んでいた。

 

彼は瞬時に理解した。ここは地球だと。

 

 

しかし、この部屋と家具は彼にとって初めて見る物だった。

 

ガルはベッドから体を起こして部屋を出ようとする。すると突然ベッドの脇に置いてあったラジオが流れ出す。

 

「やあみんな!もう朝だよ!まだ寝てるのかい?それじゃあ今日も番組を始めようか!1962ね……」

 

ラジオを直ぐに消すガル。

 

「あっなんか今重要な事を言いそうな気がしたけどまあいいや」

 

そう言いながら彼は寝ていた部屋から廊下に出た。

 

廊下はとてもオシャレだった。色の濃い木材が良い味を出していた。そして西洋風の作りでお城を連想させるような内装になっていた。恐らくこの建物は物凄い豪邸だろう。

 

彼が壁に見惚れたり、家具に見惚れたりしながらゆっくりと廊下を進んでいく。

 

『アレックス?もう起きたのかい?』

 

後ろから突然男性が声をかけて来る。

 

ガルが振り返るとそこには一人の若くてイケメンな男性が立っていた。

 

『早起きだね。まだみんなは眠ってるよ。そうだ、散歩でもするかい?』

 

ガルは何も答えなかったが彼は一人で先に歩き始めてしまった。

 

ガルは急ぎ足で彼の後を追っていく。あの男性にガルは見覚えがある気がした。彼の名前や関係は思い出せなかったが。

 

『今日の朝ごはんは何がいいかい?』

 

彼はキッチンで冷蔵庫の物を確認しながら言ってくる。

 

「なんでもいいです」

 

『そっか。了解』

 

そう言いながら彼はまだ冷蔵庫を漁っていた。

 

そしてガルは重大な事に気がついた。今自分の前にいる男は今まで一切言葉を発していなかったという事に。

 

彼の声はガルの頭の中に響いて聞こえていただけだった。

 

「あの、あなたの名前は?」

 

ガルは居ても立っても居られなくなり彼の名前を尋ねた。

 

「ん?アレックス大丈夫か?」

 

初めて彼は口から言葉を発した。

 

彼はガルの事を心配そうに見ながら顔を見つめ、自分のこめかみに右手の人差し指と中指をを当てた。

 

「不思議だ。今日は君の心が読めない」

 

「それであなたの名前は?」

 

「残念だがそれは答えられない。これは君の欠けてしまった記憶の一部だ」

 

彼は申し訳そうな顔をしながら続ける。

 

「君が私達の事を知らなくても私達は君の事を知っている」

 

「そうですか……」

 

「そんな悲しい顔をするな。いずれ思い出せるさ」

 

「それなら良いんですけどね」

 

「こんな風に君とゆっくり話すのは懐かしいな……」

 

「………………」

 

「もう覚えてないだろうけど、ここは私達の全ての始まりの場所だよ」

 

「始まり……」

 

「一緒に訓練をし、戦い、酒を飲んだ。バラバラになっても結局全員がここに戻ってきた」

 

彼はそう言いながら大きなリビングの壁にかかっている一つの写真を複雑な表情で見つめた。

 

「彼女以外は…………」

 

ガルもその写真に目を移す。そこには一人の女性の写真が飾られていた。その女性はとても綺麗でガルは写真から目が離せなくなった。

 

「おっと、残念だけど私の時間はもう終わりみたいだ」

 

「えっ?これって時間制なんですか?」

 

「ああ、じゃあまたいつかな。これだけは忘れるなよ。私達全員は君がいたから助かったんだ。自分を責めるなよ」

 

彼はそう言いながら優しく微笑んだ。すると徐々にガルの目の前が光に包まれていく。

 

『アレックス、これだけは忘れるな。真の集中力は怒りと平静心の間だ』

 

全てが光に包まれる直前にそう彼の声がガルの頭に響いた。

 

 

 

次にアレックスが立っていた場所は何とも言えない古代風の修道院の様な広い部屋だった。

 

「ようこそ。ミスター・アレックス、お茶をどうぞ」

 

そう言いながらスキンヘッドでジェダイのチュニックに似た黄色の服を着た女性が部屋の陰から現れる。

 

ガルは湯呑みを受け取り、恐る恐る舐めてみる。

 

「美味しい…」

 

「こうやって話すのも久しぶりですね。お元気にしてましたか?」

 

「え……ええ、まあなんとか」

 

「やはり私達の事は覚えていませんか……」

 

彼女はガルの心を読んだかの様な顔をする。

 

「どうやったら記憶を戻す事ができますか?」

 

「そうですね。では魂で記憶を治す方法をお教えしましょう」

 

「魂?」

 

「アストラルディメンションでならあなたの記憶を修復する事はできるはずです。かなりの時間がかかってしまうと思いますが……」

 

「アストラルディメンション?何を言ってるんですか?」

 

「おや?それも忘れてしまいましたか?なら一度体感してもらいましょう」

 

彼女はそう言うとガルの腕を掴んで彼の体を勢いよく引き寄せた。そして引き寄せられるガルの体の胸の辺りに向かって素早くて力強い綺麗な張り手をした。すると彼の体は力が抜けたかの様にグッタリしてしまった。しかし、その様子をガルは自分の体の外で少し上の高さから見る事ができていたのだ。

 

「これどうなってるんだ…?」

 

ガルは自分の半透明になった体を見ながら混乱する。

 

「今あなたが存在しているそこがアストラルディメンションです」

 

「これが……ここでなら記憶を修復できると?」

 

「ええ、そこでなら少しずつなら思い出すことができると思います」

 

「そうですか……」

 

そう言いながらガルは自分の身体へと戻った。

 

「あなたはほぼ全ての事を忘れてしまっているのですね」

 

「ええ、残念な事に」

 

「やはり無理に別の世界線に行くのは体に悪影響だった様ですね……」

 

「別の世界線?」

 

「それも覚えていないのですか……なら、これをするしかありませんね」

 

彼女はそう言いながらガルのおでこに親指を当てながら言う。

 

「目覚めなさい。さあ!」

 

するとガルの体はいきなり後ろに吹き飛ばされた。

 

そしてガルは目を奪われるほど綺麗な色で作られた世界に飛ばされる。

 

『マルチバースには無限の宇宙が存在します』

 

彼女がそう言うとガルはまたどこか別の場所へ飛ばされて行く。

 

次に彼の目の前に現れたのは鏡の様なクリスタル状の物に囲まれた世界だった。

 

『終わりのない世界』

 

『善意に溢れ命を育むものや、悪意と欲望に満ちた物もある』

 

「こんな事……ありえるのか?」

 

『ええ、あなたなら理解し、適応できます』

 

『このマルチバースをまたにかけてあなたが存在する意義とはなんでしょうミスター・アレックス』

 

「意義…………」

 

『もっと話していたいところですが残念です。私の時間はこれで終わりの様ですね。忘れないでください私が見えなかった未来をあなたが見せてくれたのです。またお会いしましょうアレックス』

 

そして彼の体は勢いよくどこかへ吹き飛ばされた。

 

 

 

「うわあああああああああ!」

 

今、ガルは終わりの見えない穴をあり得ないほどのスピードで落ち続けている。途中、フォースを使ってスピードを抑えようとしたが失敗に終わり、他にも色々試したがことごとく失敗していた。

 

「あっワシの番か。忘れておったわい」

 

そんな声が穴に響き渡る。

 

するとさっきまで先が見えなかった穴の先が見えて来た。そう、物凄いスピードで近づいてくる地面だ。

 

「嘘嘘嘘嘘これは無理!」

 

ガルは急いでフォースを地面に向かって放ったがもう既に手遅れだった。そして大きな音と土埃を立てて彼は地面に落下した。

 

「いってえ……これは絶対に骨が何本か逝ったわ」

 

ガルは地面にグッタリと寝たままでいた。

 

「すまぬすまぬ完全に忘れておったのじゃ。呼び出してすまないのお」

 

ガルにそう言いながら近づいてきたのはファーザーだった。

 

「あなたが何故ここに??」

 

ガルは地面でグッタリしたまま喋る。

 

「まあそれは後で話すとしてまずは立ち上がってくれぬか?」

 

「無理です。あなたが俺の存在を忘れていたせいで骨が折れました。治してくれないと立てません」

 

さらっと嫌味を言うガル。

 

「そんな事を言わんで立ってくれぬか?もし怪我をしたなら自分で治してみると良いぞ。体の中でフォースを循環させて痛む箇所に集中させるのだ」

 

ガルはファーザーに言われた通りにしてみる。

 

目を瞑り、自分の体全体にフォースを循環させる。そして痛みがある部分に重点的にフォースを流し、徐々に治していく。

 

「うむ。初めてにしては上出来じゃな」

 

「そりゃあどうも」

 

ガルはチュニックについた土を払いながら立ち上がる。

 

「さあついて来い。そなたとは話したいことがたくさんあるのじゃ。この世界の未来を知る者、ガル・アーラよ」

 

ファーザーとガルは遠くに見える大きなタワーに向かってゆっくりと歩き始めた。




さてさて、ガル(アレックス)の素性が少しづつ分かってきましたね〜
彼は一体何者で何のためにこの世界に存在しているのか……残念ですが彼の詳しい素性、出身や謎の人物達の名前はこのStarWars-What Ifシリーズでは解明されません!断言できます。これは大きな伏線なのです。(彼の素性に関する別シリーズをもう既に用意しているのでお楽しみに)

それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を!


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ガルの見たヴィジョン 後編

祝お気に入り数125!!
でも特にスペシャル回とかではありません。前回同様、What Ifなので許してね?


二人はクローンウォーズ・シーズン3でアナキンが試験を行った場所で空を見上げながら話していた。

 

「さて、どこまで話したかの」

 

「俺が本当に未来に起こる出来事を知っているのかっていうところまでです」

 

「そうじゃそうじゃ。それで実際はどうなのかな?」

 

「まあ基本的に俺が何もしなければ起こりますね。多分。逆に俺が余計な事をすれば悪化もします」

 

「そうか」

 

「ええ」

 

「ならワシらの未来も知っているとな?」

 

「それはもちろん」

 

「どうか正直にその未来を教えてはくれぬか?」

 

ファーザーは心から未来の出来事を知りたがっていた。今、銀河はより複雑になり、暗黒面の力も強くなってきている。そんな事もあり、歳をとった彼にはこれから起こる未来を予測するのが困難になってきているのだった。

 

「どんな結果でも傷つきませんか?」

 

「ああ」

 

ファーザーの力強い返事を聞いたガルは一度深く深呼吸をしてから口を開いた。

 

「残念ですが……ドーターやサンを含めた全員が死んでしまいます」

 

その言葉を聞いたファーザーは衝撃のあまり膝から崩れ落ちた。

 

「そ、そんな……ワシだけならまだしも我が子達まで……」

 

全員が死ぬという発言がよっぽどのショックだったのかファーザーは胸を苦しそうに抑えてそのまま倒れ込んでしまった。

 

「お父様!」

 

どこからともなく女性の声が響き、ガルは何者かに体当たりをされて吹き飛んだ。吹き飛ばされたガルはなんとか空中でバランスを保ち、上手いこと地面に着地する。

 

「これはなんのつもりだ?」

 

「あなたこそお父様に何をしたの!」

 

そう叫びながらガルとファーザーの間に立ち塞がったのはドーターだった。

 

「父さんに何をした!」

 

そして鬼の形相のサンもその場に突然現れ、参戦する。

 

「俺は何もしてないぞ!」

 

「うるさい黙れ!お前みたいな素性の分からない余所者を呼ぶべきじゃないと注意したのに…」

 

「とにかくあなたにはここを出ていってもらいます」

 

そう言いながら二人は翼の生えた獣へと姿を変え、ガルに攻撃を仕掛けてきた。

 

「こっちの話を少しでも聞いたらどうだ?」

 

ガルは突進してきたドーターの上を華麗にフォースで飛び越えながら叫ぶ。しかし獣に姿を変えた二人は言葉を発する事もせずにただ怒りの咆哮をあげていた。

 

「人の話を聞く気は無しって事か」

 

説得を早々に諦めたガルはかつてアナキンがクローンウォーズでした事の真似をする事にした。ファーザー達が住んでいる惑星はフォースで出来ている。ガルはそのフォースを最大限に使ってドーターとサンに戦いを挑んだ。ガルの体から自然と流れ始めるフォースの大きな波はドーター達に衝撃を与えたらしく一瞬だけ二人の動きが鈍くなった。それをしっかりと狙っていたガルは渾身のフォースプッシュを二人に放った。

 

大きな音と衝撃が辺りに響く。二人はアリーナの壁にめり込んでいた。しかし、あまり致命傷にはならなかった様で二人は人間の姿に戻ってフォースの攻撃を仕掛けてくる。ガルは慌ててサンのライトニングを避け、ドーターのプッシュを吸収した。

 

「そこそこの実力がある様ですね」

 

「でも残念。俺達には寿命が無い。殺せないぞ?」

 

「それなら跪かせて大人しくさせるまで!」

 

ガルは全身の力を振り絞ってドーターとサンをフォースで上から押さえつけようとする。二人は苦しそうな表情をしながらゆっくりと地面に倒れ込んだ。しかし、二人の動きを完全に止めるまでにはいかなかった。二人が地面に倒れ込んだ事で完全に油断していたガルに対してドーターとサンはプッシュとライトニングを同時に放った。

 

最初にプッシュがガルの体に直撃し、彼の体は簡単に吹き飛ばされた。そして空中を飛ばされている彼の元にライトニングも追い討ちをかける様に直撃をしてくる。ライトニングで痺れていたガルは上手く受け身を取ることも出来ずにそのまま地面に落下した。

 

彼は意識を直ぐに取り戻すと全身の骨という骨が悲鳴をあげているのが分かった。急いでフォースを使って全身の怪我を治してゆく。フォースの惑星のおかげで怪我はありえないスピードで回復をしていく。

 

「私達の事をフォースで押さえつけるなんて事、できるはずがありません」

 

「俺達も舐められたものだな」

 

「そうかい。分かったよ…」

 

最低限の治療を終わらせたガルは口から血を吐きながら立ち上がった。

 

「ま、まだ抵抗する気ですか?」

 

ドーターとサンは身構えた。

 

「ああ、もちろん」

 

ガルはそう言いながら先程よりも強力なフォースで彼らの体を押さえつけた。

 

「くっ……まだこんな力を持っていたなんて」

 

サンはそう言いながら徐々に跪いていった。

 

しかし、今のガルの力は純粋に怒りから来ていたのだった。そのためサンには強く効いてもドーターは先程と変わらない様子を見せていた。

 

「どうやらあなたは力のコントロールが苦手の様ですね」

 

ドーターが皮肉じみた事を言ってくる。

 

このままだとガルが負けるのはもうほぼ決定している。そんな焦る彼の頭にあの言葉が響いた。

 

『アレックス、真の集中力は怒りと平静心の間だ』

 

「怒りと平静心の間………」

 

そう小さく呟きながら彼はゆっくりと目を閉じた。

 

そして自分の中で存在するライトサイドのフォースとダークサイドのフォースを互いに見比べた。それを見た彼は光と闇は表裏一体という言葉の意味を理解した。

 

彼は目をゆっくりと開き、もう一度ドーターとサンを強力なフォースで押さえつけた。ドーターにはライトサイドのフォース、サンにはダークサイドのフォースで。すると、二人は今までとは違った反応を見せた。一切抵抗できないままあっさりとガルの前に跪いたのだ。ガルはゆっくりと息を整えながら二人を押さえつけるのをやめた。

 

「うむ。上出来じゃの」

 

「えっ?」

 

ガルが後ろを振り返るとピンピンしたファーザーが現れた。

 

「悪くなかったぞ。流石だな。もうフォースを使いこなせる様になるとは」

 

「ファーザーこれはいったいどういう事ですか?」

 

「ほれ、自分の顔を良く鏡で見てみるといい」

 

そう言われながら渡された鏡の様なものに顔を写すとガルの目の色がとても綺麗な緑色になっていた。

 

「これは……」

 

「光と闇の合わさった力を使えるようになった証拠だ。ソナタなら暗黒面に堕ちる事もなかろうて」

 

「お父様!大丈夫でしたか?」

 

「娘よ、驚かせてすまなかった。彼の来訪を頑なに嫌がるお前達に彼の真の力を見せてやろうと思ってな」

 

「父さん、たしかに俺たちの判断が間違っていたのかもしれない」

 

「すまなかったな。ガルよ」

 

「いえ、まあ死んでないんで大丈夫です」

 

「そういえばソナタはギャザリングの途中だったのだろう?」

 

「ええ、そうです」

 

「ならソナタにはこれを授けるとするかの」

 

そう言いながらファーザーはドーターとサンに目で合図をした。するとドーターとサンは空に向かって両手を挙げた。二人が両手を挙げるとアリーナに光と闇が同時に広がり、そして二人のちょうど真ん中で二つのクリスタルが形を作り始めた。そのクリスタルはガルの元へとゆっくりと向かってくる。

 

「これを使うといい」

 

「ありがとうございます」

 

ガルが両手に握りしめた美しいクリスタルの色は目を奪われるほど綺麗な黄色をしていた。

 

「では少しお茶でもしてゆくと良いぞ」

 

そう言いながらファーザーはタワーの中へと戻って行った。

 

「さあ、一緒に」

 

ドーターに促され、ガルもタワーへと入るのだった。

 

 

 

それからガルは三人と少しの間お茶をし、帰ることになった。

 

「今日は色々とありがとうございました」

 

「こちらこそ。また来ることがあるだろうからな」

 

「ええ、そうですね」

 

「ソナタの助言には感謝するぞ」

 

ファーザーはゆっくりと笑みを浮かべた。その後ろではドーターとサンが軽く手を振っている。それに対してガルも微笑み返す。

 

「いいえ、ただ俺は貴方達三人に幸せな未来を送って欲しいだけです」

 

そう言いながらガルはファーザーが開けたゲートの様な物の中へと姿を消した。

 

 

 

ゲートに入ったガルはてっきり帰れると思っていた。しかし、ゲートの先は何も見えないただの暗闇だった。

 

「おいおい、嘘だろこれ」

 

ガルは絶望した。何故ならその場所は何も存在しないただの無だったからだ。

 

とりあえず彼は前へと進むことにした。しかし、どんどんと歩いていようがいまいがそこには何も無かった。

 

すると突然、彼の肩に誰か手が乗せられた感覚がした。

 

「うわあ!!!」

 

一瞬で回避行動をガルは取る。彼の肩に乗せられたその手はとても硬く、人間の物とは思えなかったのだ……

 

「誰だ!そこにいるのは!」

 

ガルは怯えながらも声をかける。

 

少しの沈黙が開け、暗闇からマントを付けた全身が硬い金属でできた様な姿の者が声をかけてきた。

 

「君なのか?」

 

その人物の声は男のものだと直ぐに分かった。

 

「誰ですかあなたは」

 

「すまないが時間がない。今どこにいる?」

 

「どこって?」

 

「どこの世界線にいるんだ?」

 

「どこの世界線って……スターウォーズの世界だが?これも何かの記憶の一つか?それともビジョンか?」

 

「ヴィジョンだ。分かったありがとう。君を見つけられて良かった。必ず助けに行く」

 

そう言ってその人物は姿を消してしまったのだった。それと同時にガルも気がつくとホールに戻ってきていた…………

 

 

 

年代?¥#-*?;/:*ーー?%#¥?宙域ーー惑星?#¥;/*

 

 

「彼を見つけた!今すぐみんなに連絡を!」

 

そこでは先程ガルの前に現れた人物がそう叫んでいた。

 

「よし……これで一人目だ」

 

「それでアレックスの居場所は?」

 

「スターウォーズの世界にいるそうだ」

 

「スターウォーズってあの映画の?」

 

「そんなバカな……」

 

全員が想定外の答えに動揺していた。

 

「とりあえず私は今すぐあの二人に伝えてくるわ」

 

一人の女性がそう切り出す。

 

「ああ、そうしてくると助かるよ」

 

そう言いながら彼はまた目を瞑った。

 

 

ーーsomewhereーー

 

 

「二人とも!アレックスが見つかったわ」

 

そう言いながら女性が部屋に慌てて入ってくる。また部屋の外の廊下はアナウンスが流れ、多くの人が慌てながら行動していた。

 

「本当か!」

 

「ええ」

 

「あいつは今どこに?」

 

「それがスターウォーズの世界がなんとかって」

 

「そうか……」

 

「よし、はるき。準備しろ」

 

「準備って何の?」

 

「あのバカを助けに行くんだよ」

 

「フューク、行くってどこだよ?」

 

「決まってるだろあそこに」

 

「ま、まさか…………」

 

「ああ、そうさ。だからすぐ準備しろ」

 

二人は荷造りをするために部屋を出て行こうとする。

 

「二人とも行くってどこへ?フューク?」

 

彼女の問いに彼は振り向きながら決心をした顔でゆっくりと答えた。

 

 

 

 

「……………………クラコアさ」

 

 

 




さっき確認したらお気に入り数が125になっていて愕きました。物凄く嬉しいです!こんな僕のストーリーを面白いと言って読んでくださる皆様には本当に感謝しかありません。いつも応援ありがとうございます。
さてさてここに来てフュークとキールの伏線がチラッと出てきましたね〜彼らは一体どうやってスターウォーズの世界へと渡ってくるのか……物凄い謎ですねw
それでは次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらんことを!


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ライトセーバー製作

ホールに帰ってきた順番はシャアク、オビ=ワン、ガルの順番だった。

 

 

シャアクは他人に頼らずに一人でも一人前に戦える様になりたいと思い。

 

オビ=ワンは大切な物を守る事、そしてそれを失った時の対処法を学ぼうと思った。

 

一方のガルは自分の存在意義についてと記憶の修復に力を注ごうと考えるのだった。

 

 

ホールにガルが戻ってきた時、シャアクとオビ=ワンは彼に直ぐに抱きついた。二人の抱きつく力はいつもより強かった。

 

「二人とも大丈夫だ。俺はここにいる」

 

「ああ、知っている。いなくなってくれるなよ親友」

 

「ええ、あなたはここにいる。しっかりと私達の腕の中にね」

 

ガルには二人がどれほど恐ろしい幻影を見たのか想像ができなかった。三人が抱き合っているところにドゥークー達がやってくる。

 

「どうやら三人とも成功した様だな」

 

「よくやったぞオビ=ワン」

 

「あなたも偉いわシャアク」

 

「ガル、どうやら君はまた一段と成長した様だな」

 

「ええマスター、何があったかは言えませんが自分の目の色が変わった事だけ言っておきますね」

 

ガルの発言にドゥークーは返答はしなかったが、明らかに動揺しているのが分かった。

 

「目の色が変わった?それはどういう……」

 

クワイ=ガンが顔を顰める。

 

「まさか黄色なんて言わないわよね」

 

そう言いながらタールがガルの元に駆け寄る。彼女は彼の目を覗き込むと安堵の声をもらした。

 

「はあ〜ビックリした。綺麗な緑色になったのね。良いと思うわ私は。それにあなたに似合っているしね」

 

「なんだ。それなら安心したぞ」

 

クワイ=ガンも表情が和らぐ。

 

「ガル、クリスタルの色は何色だ」

 

ドゥークーの低い声がホールに響き渡る。

 

「色は………………黄色です。しかも二つ」

 

彼の言葉を聞いたマスター達は揃って動きを止めた。大方ガルの想像通りの反応だった。

 

「あなたって…」

 

「凄すぎるな…」

 

「良くやったぞガル。帰って評議会の無能どもの度肝を抜いてやろう」

 

そう言いながらガルの頭を撫でるドゥークー。

 

船に乗った三人は今回の早期昇格についての経緯を説明された。その中で評議会のメンバーの殆どがこの件に反対だったと明かされた。彼らの見解ではシャアクとオビ=ワンはおろか、ガルでさえもライトセーバークリスタルを手に入れられないだろうという物だった。

 

それを聞いた三人は自分たちの手に入れたクリスタルを評議会のメンバーの前で見せびらかすのがとても楽しみになるのであった。

 

ガルが今回のギャザリングで得た物は大きかった。自分の前に現れたテレパシーの使える人物、マルチバースを教えてくれた女性、自分の事を探している何か……これらの謎を彼は今すぐにでも解明したくて仕方がなかった。そして何故自分は無理をしてまでこの世界に訪れたのかを知る必要があった。しかし、それは途方もなく先の見えない物だった。

 

彼はライトセーバーの製作を始めるまでの空き時間に船の中でアストラルディメンションに入り、自分の記憶を修復しようと頑張った。ところが全く成果がでなかったのだ。アストラルディメンションで自分の記憶を遡り、修復を試みるが、その記憶の情景すら現れなかった。彼は酷く落ち込み、深いため息をついた。

 

「どうしたのだ?パダワンよ」

 

いつのまにか部屋に入ってきていたドゥークーが壁に寄り掛かりながら声をかけてくる。

 

「マスターですか。ノックぐらいしてくださいよ」

 

「すまない。瞑想の邪魔をしないようにしていたのだが」

 

「そういう事でしたか………って普通そういう時は部屋の外で待つか後で来ますよね?」

 

「はっはっはっ、そうだったな。次からはそうしよう。ところで、ライトセーバーを作る時間だぞガル」

 

「分かりました」

 

そう返答したガルは立ち上がり、ドゥークーと共に部屋を出てシャアクとオビ=ワン元へ向かった。

 

部屋に着くとそこには既にシャアクとオビ=ワンが待っていた。

 

「これで全員揃ったかな?」

 

「「はい、マスター」」

 

オビ=ワンとシャアクが返答する。

 

「では全員クリスタルをテーブルにおけ。これからレッスンを開始する」

 

三人は直ぐに自分のクリスタルをテーブルの上に優しく置いた。

 

「よし、紹介しよう。ライトセーバーの設計製作技師ヒュイヤン教授だ」

 

「この子らか。珍しいなここまで若いのは中々いないぞ。ちゃんとギャザリングは通ったのか?」

 

「もちろんです」

 

「確かだろうな?私がこの船でこれまでに教えたジェダイは数知れず。この先もまだまだ続くはず。私のメモリーバンクにはこれまでに作ったライトセーバーの記録が漏れなく詰まっている」

 

そう言いながらヒュイヤンは制御パネルのボタンを押し、彼らが置いたテーブルの中心から沢山のライトセーバーのヒルトのホログラムが映し出される。

 

「好みはどれかな?ストレートタイプ?それともカーブタイプか?象嵌細工を施すか?他にもいっぱい種類があるぞ。どうだ?」

 

「太古の戦いからジェダイの唯一の頼りはライトセーバーだった。まて、君がダソミア出身の人間か?」

 

「はい。そうです」

 

「なんと珍しい。それにクリスタルの色も黄色。君は特別な何かがありそうだな。ライトセーバーもユニークな物にしないとな。よろしい手を出して。どんなセーバーが欲しいか形を見せてくれんか?」

 

「…………旧共和国時代のライトセーバー」

 

「なるほど……ユニークだな。ちょっと待ちなさい」

 

そう言いながらヒュイヤン教授は沢山の棚がある場所に入っていく。

 

「どこにしまってあったかな……そうだこの長らく開けてない棚の中だな」

 

ヒュイヤン教授が開けた引き出しはガタガタと音を立てていた。相当長い間この船の中で保存されていた証拠だろう。

 

「これだこれだ!この材料達なら君の求めるものにぴったりだろう」

 

ヒュイヤンはガルの前に箱を置くとシャアクとオビ=ワンにもライトセーバーのイメージについて聞き始めた。ガルの前に置かれた箱には綺麗な装飾を施した部品が沢山入っていた。そしてその全ての部品が歴史を感じられる物だった。

 

「凄い……オールドリパブリックのやつみたいだ…」

 

彼は小さな声で喜びの反応をする。

 

その間にシャアクとオビ=ワンも自分のイメージにあった部品を揃えてもらい歓喜していた。

 

「では、始めよう。やるべきことは山ほどある」

 

それを聞いたガル達は部品を箱から出してテーブルに広げる。

 

「さて、最初は自分のイメージに合った組み合わせを探すとこからだ。フォースを使い、沢山の部品の中からこれだというものを探し当ててくれ。そうしたら次のステップだ」

 

ガルは言われた通りにフォースを集中させ、沢山の部品の中から自分のイメージに合うものを探す。沢山の乱雑に広げられた部品の中からいくつかの部品が徐々に浮き上がってくる。三人共ほぼ同じタイミングで部品決めは終わり、ヒュイヤンは驚いていた。

 

「では次はフォースを使いながら部品をいかにズレなく組み立てるのかが重要だ。バッテリーの向きなどを間違えるなよ?それでは始め」

 

三人は両手を自分の部品に向けて伸ばし、フォースを使い始めた。少しすると部屋にはヒュイヤンが動くときの機械音しか聞こえなくなった。

 

三人はここでお互いのフォースと繋がっていた。そしてドゥークー達は別室で彼らの大きな一体化したフォースを感じ取っていた。

 

「彼らは優秀ですね」

 

「そうだな」

 

「だが……誰か一人がいなくなれば実力はガクッと下がるであろうな」

 

「それはどうでしょうドゥークー。少なくとも私のパダワンはガルから受けた恩恵でもうすでにかなり個人としての能力が格段に上がっているわ。下手すれば普通のジェダイナイトじゃ今の彼女に勝てないかもしれないわね」

 

「それは私のパダワンにも言えます。オビ=ワンと木刀で手合わせをしたさいに彼の防御体制を崩すのにかなりの工夫が必要でした」

 

「なら彼らは本当に優秀なのであろうな。私のパダワンが一番優秀なのだがな」

 

「何それ自慢?シャアクが一番に決まっているわ」

 

「マスターには失礼ですがオビ=ワンが一番だと思います」

 

「ははは、どうかな?」

 

ガル達の中が深まる一方でドゥークー達三人の関係も深まっていくのだった。

 

「よし!できた」

 

ガルは自分の目の前に浮かぶ綺麗な装飾の二本のライトセーバーヒルトがあった。

 

彼のヒルトはオールドリパブリックに出てくる皇帝ヴァルコリオンのパダワンの兄弟が使っていた物に酷似していた。派手な見た目で、左右全く違うデザインというのはガルのこだわりだった。

 

「うむ!上出来だな。それに、とてもユニークな機能が付いているな?」

 

「はい」

 

ガルは答えながら目の前のライトセーバーヒルトをフォースで動かして二本を一本に結合した。

 

「ほお、興味深い。ダブルブレードライトセーバーにもなるのか。本当に君は変わっているな」

 

ヒュイヤンは感心しながら彼のライトセーバーをマジマジと隅々まで見ていた。

 

「ここまで完璧なものは本当に旧共和国時代以来だな。君は彼らのように強いフォースを持っているのだろう。少し試しに振ってみると良いぞ」

 

そう言い終えたヒュイヤンはシャアクの元へと向かうのだった。

 

ダブルブレードから二本のライトセーバーに戻したガルは自分のライトセーバーを両手に握り締め、起動させた。綺麗な起動音が部屋に響き、美しい黄色の光刃が二本姿を表した。

 

そして遅れてシャアクとオビ=ワンも彼の近くに来てライトセーバーを起動させる。二人は映画の時と全く同じヒルトを作っていた。

 

四本のライトセーバーが薄暗い部屋を明るく照らしていた。

 

「これでジェダイ・マスターへ一歩前進したな」

 

「ええ」

 

「………そうだな」

 

三人はお互いを見つめ合い、改めて信頼し合うのだった。




お久しぶりですAlexです。
本当は5月4日のフォースの日にこの回を投稿したかったのですが中々書けずに結局今日になってしまいました…………本当にすいません。
それでは次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらんことを!


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Season2
ラグーン6での訓練


今回からSeason2が始まります!是非楽しんでいってください〜


ディープスペースから見ると、惑星ラグーン6は微細な星々の中にあって、青白くきらめく星間物質の霧の背後にその姿を隠している。輸送船が下降するにつれ、霧はビュースクリーンの上を縦横に飛び回るキラキラ輝く粒子となって晴れていき、やがて船は惑星の大気圏に突入する。大気は澄んで美しく、水を思わせる透明感に満ち溢れている。眼下に輝くのは、緑の光を放つ宝石のような惑星本体だ。

 

そんな景色を12歳になったばかりのガルは覗き込みながらおもわず息をのんだ。それはシャアクとオビ=ワンも同じで、これほどまでに美しい惑星へ訪れるのは、初めての経験だった。

 

ドゥークーもガルの肩に手を置きながら、同じように前に乗り出した。

 

「こんなに美しいとはな……長らく忘れていたよ」

 

同行しているジェダイのパイロット、ウィンゾ・バイカートも頷いた。

 

「私も毎回ここを離れると忘れてしまうが、次に来たとき、改めて驚き直すよ。いつ見ても、息を呑むほどに美しい物だな」

 

「星外から誰も移住していないというのは驚きだな……」

 

「政府が元老院に惑星の運営を信託しているからだ」

 

オビ=ワンの発言にクワイ=ガンが返答する。

 

「ここに住んでいるのは、この星に古くからいる少数の部族だけね。星の訪問に関しては元老院が部会を作って対応しているし。星外からの訪問が許されるのはジェダイだけで、どんな時でも、一度に沢山の人数で訪れることは許されていないの。それに惑星外からのアクセスは厳重な管理下にある。これだけの手立てを講じて初めて、ラグーン6は惑星政府の望むような形で、外からの影響を受けずに昔のままの姿を保っていられるのでしょうね。だから船の通る航空路も、工場も、都市も、何一つないのよ」

 

「ラグーン人は、けっして外からの入植者を許してこなかったのさ。おっロスト山脈が見えてきたぞ。あそこに着陸したらお別れだな」

 

ウィンゾは肩越しに、ガル達に笑いかけた。

 

今回の訓練で、ガル達は荒野の中でウィンゾを追跡する。この訓練はマスターとパダワンの信頼と絆をより強くする事が主な目的だ。ラグーン6で、ウィンゾを追いながら岩だらけの荒れた土地を進むときに、信頼できるのはお互いしかいない。

 

「一日もたたないうちに見つけてみせますね」

 

ウィンゾに対してシャアクはニヤリと笑いながら話す。

 

「おや、たったの一日というんだな。自惚れが強いな。他の二人も心の中ではそう思っているのが分かるぞ?」

 

「いえ、そんなつもりは…」

 

すぐにオビ=ワンが反応する。

 

「君はどうなんだい?」

 

「自分としては速さよりも、どこまでマスターや仲間と協力できるかを重要視しています」

 

「おお、素晴らしい答えだ。予習済みか?ははっ、まあいいこれで私の残す手がかりはもっと難しくなったぞ。自身満々なパダワンの鼻をあかして教訓を与えるのは、いつでも楽しいものだ」

 

船は花が咲き乱れ丈の高い緑の草がざわめく原野をかすめて飛んだ。草原の上には雪を積らせた山々が広がり、その懐には小さな草地が抱かれている。

 

ウィンゾは慣れた手つきで、船を山肌に囲まれて外からは見えない、ある地点におろした。そして昇降板(ランプ)を出すと彼らの方へ向き直る。

 

「よし、以下を確認してほしい。コムリンクを船に置いていくこと。ホーミング・デバイスやドロイドは使用できない。頼るべきは、お互いとフォースだけだ」

 

六人はほぼ同時に頷く。全員が今言われた事は充分承知していたが、これもウィンゾの訓練の恒例行事の一部だった。ウィンゾは渡されたコムリンクを、安全な保存用容器の中にしまった。

 

「もし、私を見つけられなかった場合には十日後にここに戻ることにしよう」

 

サバイバル・パックを肩にひょいと乗せて言葉をきると、ウィンゾは別れを告げる代わりに一つ頷いた。

 

「フォースが共にあらんことを」

 

ウィンゾの目がイタズラっぽく輝く。

 

「恐らく、君たちにはたっぷり必要だろうからな」

 

ウィンゾは軽々とした足取りでランプを降り、あっという間に移動し、姿を消した。

 

「ウィンゾは私達を迷わすのを楽しみにしているな」

 

「そうですねマスター。完全にシャアクの発言のせいでしょうね」

 

「ちょっとガル?」

 

「いや、どちらにせよ今一番期待値の高いパダワン三人と優秀なマスター三人がいれば彼も本気を出すだろう」

 

「しれっとあなたってそういう事言うわよね」

 

「うるさいぞタール」

 

「それで、どれぐらいの時間の余裕を与えるんですか?」

 

「そうだな二、三時間というところだ。それだけあればこの周囲の様子も少し探れるし、食事もできる。どうだ、嬉しいだろう。一旦出発したら携帯食とタンパクキューブでしのがなくてはならなくなるが、今はまだ船の厨房を荒らしに行けるぞ」

 

クワイ=ガンはオビ=ワンに射抜くような視線を投げた。

 

「この訓練は私達が学ぶ事を目的としている。だが同時に楽しい物でもあるのだ」

 

「そうなれば料理担当はおのずと決まってくるわね」

 

タールの発言によってその場の全員の視線がとある人物へと移る。

 

少しの沈黙がその場に流れ、彼は渋々承諾した。

 

「分かりましたって。作れば良いんでしょ?作れば」

 

「やった!ガルの美味しい料理が食べれるなんて!」

 

シャアクは両手でガッツポーズをしながら喜んだ。

 

そんな彼女の反応を横目で見ながらガルは厨房へと向かっていった。

 

六人はガルが作った食事を、花々に囲まれながら草地に座って食べた。朝の太陽は美しく輝き、ガルは肌に降り注ぐ確かな暖かさを感じていた。全員が彼の料理に夢中になっている間、ガルは皆より早く食事を済ませてまた船に入って行った。

 

厨房でガルは皿を片付けながら考え事をしていた。

 

夢にまでみたライトセーバーを作ったあの日からもう五年という月日が流れていた。この五年間でガルは最高の生活を送ってきていた。特に誰かの命が危険に晒される事もなく、ただただ自分の力を増やすことにだけ集中する事ができた。ドゥークーと一緒に派遣された任務はどれも刺激的で彼にとって良い勉強になっただろう。時にはソルメ、クインラン、アイラと組んで一緒に任務に出たりもした。

 

彼にとってタールに起こるはずだった悲劇が起こらなかった事はとても意外だった。もう既にここ数年の出来事に変化が起こっているのは明らかだった。しかし、この銀河が徐々に変化し、あちこちで戦争の火種になりえる出来事が多発しているのも事実だった。ガルは頭の中で色々な事を考えながらシャアク達の楽しそうな声がする外へデザートのケーキを持ちながら戻っていく。

 

「お!ベストタイミングだよ」

 

オビ=ワンは直ぐに立ち上がって皿を受け取りに来る。

 

「デザートまで食べられるなんてこれ本当に訓練かしら?私達がこの訓練をした時ここまで贅沢は出来なかったのだけど」

 

「ケーキは用意しておきました。皆さんが喜ぶと思って」

 

ガルはそう言いながら一人一人にケーキののった皿を配っていく。このケーキは久しぶりにこの六人で一緒にテンプルの外で訓練ができると知った彼がデックスのダイナーでウッキウキで作った物だ。

 

「では、自分は厨房にいます。食べ終わったら呼んでください。片付けはやりますんで」

 

ガルは空になったお盆を抱えながら船へと戻っていった。

 

シャアクはガルと一緒にデザートを食べられない事を残念に思いながら、一番最初に食べ終えて彼の元に行って少しでも一緒に話をしていたいと思っていた。

 

彼女の中には大きな不安があった。二人が初めて出会ったあの日、コルサントの朝日に照らされながらキスをしたあの日、それは彼女にとってつい最近の事のような物だった。しかし、ギャザリングを行ったあの日以来、ガルは日に日に笑顔を見せなくなり、常に何かを悩むようになってしまった。一番の問題は彼が嘘をつくことに関して、上手くなってしまった事だった。今の彼女では彼の嘘を見破るのは難しいだろう。それに、ライトセーバー製作を終え、三人が一緒に誓い合った時に彼が放ったあの言葉、今のシャアクにはそれも同じくとても気がかりだった。

 

『ジェダイマスターか……ならなくてもいいかなあ』

 

と彼はボソッと言ったのだ。

 

彼は誰にも聞こえていないと思っていたのだろうが彼女にはハッキリと聞こえていた。当時の彼女にはその言葉の意味が分かっていなかった。しかし、今の彼女には分かる。ガルはどこかのタイミングでジェダイオーダーを去ろうとしているのではないかと。そんな彼を彼女は少しでも長く引き留めたかった。だから彼女は最近、カウンセラーに関する勉強も始めた。少しでも彼の心の支えになりたかったのだ。

 

彼女はケーキを誰よりも早く食べ終わると厨房へすぐ向かった。

 

そこではガルが地面から30センチメートル程浮いた状態で座禅を組んで瞑想をしていた。彼の周りにはいつくもの小さな石が不規則に彼の体を中心に円を描くように回っていた。

 

「ガル?」

 

シャアクは恐る恐る声をかけてみる。しかし、返答はなかった。彼女はガルの正面に座り込み、座禅を組んだ。そして瞑想を始める。

 

少しの時間が空き、彼女の体も浮き始める。そしてガルと同じ高さの場所で止まる。すると、先程までガルを中心に回っていた石達が二人の周りを回り始める。

 

『何か用かい?』

 

シャアクの頭にガルの声が響く。

 

『特には無いわ。ただあなたが心配なだけ』

 

『心配ね…………俺はいつも元気さ』

 

彼は優しくそう答えた。

 

『目を開けてごらん?』

 

シャアクは頭に直接聞こえる彼の声に従って目を開けた。

 

「これって……」

 

シャアクは思わず息を呑んだ。何故なら彼女の目の前にはあの日のコルサントの朝日が広がっていたからだ。

 

「俺達の記憶だ」

 

彼はただそう言ってコルサントの朝日を見つめていた。彼の目には若干の涙が溜まっているような気がしたがシャアクには確かめる術が無かった。

 

少しの時間が流れ、彼らはゆっくりと床に降りてゆく。徐々に周りにあった石も床に落ちてゆく。そして二人はゆっくりと目を開いた。

 

ちょうど良いタイミングでオビ=ワンとマスター達が皿を片付けに厨房に来ようとする音が聞こえてきた。ガルは立ち上がりシャアクの手を取って立ちあがらせた。

 

「心は落ち着いたか?」

 

「ちょっとはね」

 

「それなら良かった」

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「一人でどっかに行ったりしないよね?」

 

シャアクのその質問にガルはジッと動かなくなり一瞬何かを考える素振りを見せた。しかし、すぐに優しく微笑みながら答えた。

 

「さあね。でもそうだとしても帰ってくるよ必ず」

 

「それってどういう……」

 

「さあ!パダワン、行くぞ。出発だ」

 

シャアクの声は厨房に訪れたクワイ=ガンの声にかき消されてガルの元には届かないのだった。




今回のシーズンではファントム・メナス直前まで続いていきます。
そういえばディズニーがもうほぼ本物に近いライトセーバーを開発しましたね!あの映像を見た時は本当にビックリしました。あれでなんでも斬る事ができたらもう最高ですね。まあ絶対凶器になるんで免許とか必要になりそうですけどねww
それではまたお会いしましょう。フォースと共にあらんことを!


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ウィンゾの痕跡をたどれ

六人はウィンゾの姿が消えた方向へと出発した。

 

最初のうち、追跡は簡単だった。ジェダイなら察知できる程の手掛かりを、わざわざ隠した様子もなかった。簡単なもので言えば、森の地面に積もった落ち葉の乱れだとか、かすかな靴跡の窪みとかだ。約二時間後、初めて彼の向かった方角を特定できなくなって、しばし途方に暮れそうになったが、ガルが木の葉から彼の綺麗な銀髪を見つけた。

 

「こっちですね」

 

満足げな声でガルは言った。

 

その後ろでドゥークーは自慢げな顔をしながらクワイ=ガンとタールを交互に見た。ドゥークーはそんな事をしながらも、もうガルに教えなければならない事はほとんど残っていないと感じる事が多くなってきたと思うようになっていた。ドゥークーでさえ、ガルのフォースを自在に使う腕に驚かされる事がよくあるのだ。

 

「ウィンゾは知恵を振り絞って最高の目眩しをかけるがいい。さもないと、ガルは夜になる前に彼を捕まえるだろう」

 

遠くを見ながら言うドゥークーを見てガルはしっかりとフラグが立った事を感じ取った。

 

案の定、日も半ばを過ぎると、六人全員が迷ってしまったと認めざるをえなくなった。ウィンゾの残す手掛かりはますます難しくなり、シャアクの自信満々の余裕も、今では何がなんでも見つけ出すといった頑強な決意へと変わり始めていた。

 

いらだったシャアクは突然、ピタリと足を止め、足元にあった石をさっと拾い上げると、森の中に力任せに投げ込んだ。石は木にぶつかって大きな音を出した。

 

「気分が良くなったか?」

 

オビ=ワンがシャアクに尋ねる。

 

「ちっとも」

 

「そうでしょうね。苛立ちもこの訓練の一部よ、ヤングパダワン」

 

「分かってますって」

 

シャアクは呟く。

 

「苛立ちを呼吸と共に飲み込んで、そして心から去らせるんでしょ?」

 

「その通りよ」

 

タールは静かに答えた。そしてしばらくシャアクをジッと見ていた。

 

「それで?」

 

「それで…なんですか?」

 

「あなたが息を吸い込んだようには見えなかったけど?」

 

タールの発言がシャアクの忍耐をピリピリ刺激しているのがガルとオビ=ワンにも簡単に伝わった。しかし、これも小さなテストの内だと分かっていた彼らはシャアクが息を吸う前にわざとらしく大きな音で深呼吸をしてシャアクに息が吸いやすい環境を作った。

 

それに気がついたシャアクは目を閉じて、大きな深呼吸をした。

 

「来た道を引き返しましょ」

 

タールが今来た道を向きながら提案する。

 

「そうですねマスター。まだ一日は終わっていませんし」

 

「恐らくどこかで間違って曲がったのだろう」

 

ドゥークーはそう言いながらガルの元に近づき、その後耳元で何かを少し囁いた。

 

頭上の暑く重なる葉を通して、木漏れ日が筋になって差し込んでいる。六人は眩しい陽だまりから陰へ、そしてまた陽光の中へと移動した。太陽の光は肌に暖かく、陰はひんやりと心地よかった。大気は清々しく、呼吸を何度もしたくさせるレベルだった。こんな日には、道に迷うのも悪くないと全員が思っていた。

 

突然、シャアクはしゃがみ込み、そこにある跡をじっくりと眺めた。

 

「ウィンゾはここで立ち止まったみたいです」

 

そう言いながら何かが通ってできた道の土を指した。

 

タールも同じようにかがみ込む。

 

「恐らくそうね」

 

「間違いないです!」

 

シャアクの声は興奮で大きくなる。

 

「それから、ここの草地を通っていったと思います。こっちの方へ」

 

シャアクは踏みならされた道を外れて森の中へと進んでいく。他のメンバーも彼女の後を追っていく。午前中いっぱいかけて地面や木の葉に僅かな手掛かりを探させた後で、ハッキリとした手掛かりを残す。それがウィンゾの作戦の一部なのだろうかとガルは悩んでいた。それに先程、ドゥークーと確認しあった事もあるため彼はより一層警戒を強めていた。

 

シャアクは深い森を抜けて道をたどった。ウィンゾの跡をつけるのはずっと楽になっていた。地面は柔らかく、踏まれた木の葉はまだ湿っている。ドゥークー達はガル達を先に立って歩かせた。ドゥークー達は森の香りを楽しみながらゆっくりとついていった。

 

一番先頭のシャアクが足を止めて振り返る。

 

「前方に空き地があるわ」

 

ウィンゾにバレないようにするために声をひそめながら彼女は言った。

 

「それに洞窟もいくつか。もうそろそろウィンゾに追いついたと思います。残った跡がまだ新しいですし」

 

「いや、シャアク、焦るな」

 

ガルは彼女の肩に手を置き、先に行くのを止める。

 

「何かが変だ。マスター?」

 

「ガルの言う通りだ。まずい事になったぞ」

 

ドゥークーが自分たちがどこにいるか知った時には遅かった。彼らはマリアの縄張りに踏み込んでしまったのだ。マリアは三列になった歯を持つ獰猛な肉食獣で、動きは早く、身軽で油断ならない生き物だ。

 

「……あれは何?ガル」

 

シャアクはすぐ近くの影の中に溶けこんでいる灰色の体毛を見ながらささやく。

 

「何もせずにゆっくりと……後退するぞ」

 

ガルも小声で答える。

 

しかし、二人が数歩しか退かないうちに、一頭がみじろぎするのが見えた。そして次の瞬間、長く尾を引く叫びが上がった。二個のギラリとした目が開き、マリアの喉の奥から聞こえる低い唸り声がしたと同時に六人全員がライトセーバーを起動していた。

 

ドゥークーとマリアが飛び出したのは同時だった。ドゥークーは空中を飛ぶ獣を素早く、鋭く切りつけた。マリアは咆哮をあげてドサリと地面に落ちた。

 

群れの残りが咆哮のせいで一斉に体を起こした。クワイ=ガンは素早く目でマリアを数えた。二十四頭。だが、巣穴にもっといる可能性がある。マリアは細身で手足が長い動物だ。一頭が前に進んで鼻をひくつかせた。三列になった黄色みを帯びた歯を剥き出すと、獰猛な目が光った。

 

「中々魅力的なやつらね」

 

そう言いながらもシャアクはライトセーバーを油断なく構えている。

 

「一緒にゆっくり後退するぞシャアク。こっちは六人もいるから襲っては来ないと思うけど、かかってきた時には油断するなよ」

 

ガルは早口に言った。

 

「マスターヨーダと共に、こいつらと戦った事がある。恐ろしいほど反射神経が鋭いぞ」

 

「私もタールと一緒に戦った事があります。戦いになれば恐らく木の上からも襲ってくるだろう。こちらをバラバラにして、周りを囲もうとするぞ」

 

ガルとシャアクは用心しながら他の四人の元まで下がった。

 

「その時はどうやってやっつけたんですか?」

 

オビ=ワンが尋ねる。

 

「なんとか逃げるので精一杯だった」

 

「私達はできなかったわ。先住民に助けてもらったの」

 

「マスター達でも?」

 

シャアクの顔に一瞬不安な様子が走った。

 

「そうだ…気を抜くなよ」

 

ドゥークーの掛け声で六人はまた一歩後ろに下がる。

 

すると突然唸り声を上げながら群れはざっと前に広がった。タールの目に、いくつかの青い影が群れからさっと離れて木の方へ移動するのが見えた。それに二頭が巧みに左側からガルとシャアクに向かってきていた。

 

「シャアク、ガル」

 

「見えてますマスター」

 

「大丈夫です」

 

マリアがシャアクを急襲した。突発的なスピードに驚いてシャアクはあやうくつまずきそうになりながらも、彼女はなんとか自分のスピードをフォースで向上させ、ライトセーバーをあげて獣の首めがけて切りつけた。

 

次に攻撃を受けたガルは自分に向かって綺麗に一直線に飛び込んでくるマリアに向けて片方のライトセーバーを投げつけた。彼のライトセーバーは縦に円を描きながら飛んでいき、マリアの鼻先から光刃が入り込み、続いて胴体へと進み、尻尾の先から出てきた。要するに綺麗な二枚おろしにしたということだ。ガルは勢い余って飛んでくる片方のマリアの胴体を避けながら投げたライトセーバーをフォースで引き寄せ、手の中に戻した。

 

タールは左側から回り込んで近づいてくる別の一頭に気を配りながらも、シャアクとガルに二人が上手くマリアを始末したのをたしかめた。クワイ=ガンの視線は木々を抜け目なく探っている。そこでは、四頭のマリアが枝から枝へと飛び移っている。

 

「なにをしても、絶対に後ろを取られるなよ」

 

ドゥークーはライトセーバーを振り回してマリアに飛びかかりながら、全員に声をかけた。

 

マリアは唸り声をあげて暗闇の中へと後退りする。目だけがギラついている。

 

オビ=ワンはクルリと後ろを向くと、背後にいつの間にか回ってきていた三頭をフォースプッシュで払いのけた。別の四頭が木から飛び降りてきたのは、まさにその時だった。

 

一番最初に気が付いたガルは跳躍すると、オビ=ワンの助けに入った。二人は背中合わせになって、歯を剥き出す獣達と戦った。他の四人も直ぐに助けに入ろうと動いたが残りのマリア達がそれを許してはくれなかった。

 

周囲は、どの方角を見ても空気中を飛び回る青い毛と、尖った黄色い牙でいっぱいになったように見えた。マリアは激怒して攻撃してきた。

 

ガルとオビ=ワンはとにかく不意を突かれないように気をつけながらカウンター攻撃を繰り返していた。マリア達が間合いを取るために二人から多めに距離をとった瞬間にガルは二本のライトセーバーを一瞬でダブルブレードライトセーバーに変え、勢いよくブーメランの要領で投げた。彼の黄色の光刃は横向きに綺麗な円を描きながら飛んでいく。彼は飛んでいくライトセーバーをフォースを使って巧みに操っていた。彼のライトセーバーはあっという間に二人の周りにいたマリアを黄色の残像を描きながら切り刻んでいった。その後ガルは自分の手の中に引き戻したライトセーバーをまた二本に分割した。

 

ドゥークーとシャアクは隙を見て攻撃に転じた。二人の青い光刃は影の中で青い残像を描き、全身を一つの武器へと変える。跳躍し、蹴り、踏みつけ、優雅に回避した。シャアクは絶妙のタイミングで気管に手刀を深々と打ち込んで、マリアの体を宙に飛ばした。くぐもった唸り声は、後ろ向きに、木の尖った太い枝に突き刺さると、甲高い悲鳴に変わった。ドゥークーは左手を伸ばして数頭のマリアを軽々と中に弾き飛ばした。

 

クワイ=ガンとタールは群れの中で明らかに強さが違う六匹と戦っていた。そのマリア達はまるでジェダイの動きを知っているかのようだった。素早い回避行動で光刃を華麗に避けていく。しかし、そんな獣達よりもクワイ=ガンとタールの方が遥かに速かった。六匹のマリア達は余裕を持って二人の斬撃を避けていたはずが、急に彼らの体に二人の光刃が入り込んだ。二人はわざと攻撃のスピードを遅くしてマリア達の目をそのスピードにならしたのだった。彼らの目は遅めのスピードの攻撃に慣れてしまっていたため、二人のフォースで増幅したハイスピードの攻撃には対応できなかったのだ。最後にタールに切られたマリアは命尽きる最後まで二人の事を睨んでいた。

 

そして六人はなんとか合流した。マリアの群れは最初の半分以下に減ったかと思われたが、気が付かないうちに新しいマリアが巣穴から出てきていた。それでも残りは十五頭だった。彼らの一番近くにいる集団のうち数頭は足に怪我をして引きずっていた。あとは唸りながら丸く固まっている。まだ歯を剥き出して六人に吠えているものの、攻撃が散発的になってきているのに全員が気がついていた。相手も、これほどの反撃に合うとは思ってもいなかったのだろう。

 

「後退を続けるんだ」

 

クワイ=ガンは小声で言った。

 

「ゆっくりと直接彼らを見ないように」

 

マリアは後退する六人を追ってきたが、数メートルの距離を保っていた。ガルはマリアが攻撃してきたのを責めるつもりはなかった。むしろ、ジェダイの方が彼らの縄張りに足を踏み入れてしまったからだ。彼はそれだけの事で一つの群れを全滅させてしまいたくなかった。

 

六人は後退のスピードを少し上げた。するともうマリアはついて来なかった。ひとかたまりになって後退していく六人に向かって、怒りを込めて吠え立てている。陰が徐々にマリアの姿を飲み込み、やがて六人に聞こえるのは猛々しい唸り声だけになった。

 

シャアクはライトセーバーの光刃を収めながら、胸を撫で下ろした。

 

「あの声だけでも充分恐ろしいですね。私達をつけてくると思いますか?」

 

「どうでしょう。彼らはずる賢いけど元々単純な生き物だから」

 

タールの言葉にクワイ=ガンが続ける。

 

「あいつらは自分のねぐらを守っていたいだけさ。真昼間で幸運だったな。まだ狩りをする気分じゃなかったのだろう」

 

「じゃあもっと凄い攻撃を仕掛けてきたかもしれないと?」

 

オビ=ワンは信じられないといった顔をしながら聞く。

 

「それに、もっと長時間にわたっていたであろうな」

 

ドゥークーがライトセーバーをベルトに戻しながら答える。

 

「諦めることもないだろうし」

 

ガルも付け加える。

 

「ここは平和な惑星だと思ってたのに」

 

シャアクがふてくされながら言う。

 

「どうしてウィンゾは私達をマリアの巣に誘い込んだんでしょう?いくらなんでもやりすぎですよ」

 

オビ=ワンが納得がいかないといった顔をしながらマスター達に聞く。

 

「ウィンゾのせいじゃない。俺たちが手掛かりを読み間違えたんだ。とりあえずもう一度戻って別の手掛かりを探そう」

 

そこへガルが割り込んで回答した。

 

六人は急いで自分たちの足跡を逆にたどって森を抜け、先程の手掛かりの場所に屈み込んだのだった。




最近寝たのに眠い日々が続いていて死にそうです。というかもう雨の日が多くなってきてて頭痛が何回も来そうで怖い……できる限り五日に一回の投稿ペースを守ろうと思いますがもしかしたら遅れてしまうかもです。

それではまた次回の投稿でお会いしましょう!フォースと共にあらんことを


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異変の正体

「私のミスです。道の端で草が踏まれて平らになっていたのを見て、ウィンゾだと思ったんです」

 

シュンとしながらシャアクは喋る。そんな彼女の肩に手を置いてガルは慰める。

 

オビ=ワンは近くにあったウィンゾが残したと思われる踵の跡に気がついた。ウィンゾは足跡が残るほどに、しっかり体重を足にかけていた。という事は、彼はしばらくここ間ここで立ち止まったのだろう。ジェダイにとってはいとも簡単な手掛かりだ。ウィンゾは隠しもせず、事実をわざわざ読み取りにくくもしてはなかった。

 

「マスターこっちです」

 

オビ=ワンが呼びかける。

 

「今度こそ間違いありません」

 

他の五人は道を横切ってオビ=ワンのいる方へと向かう。そこでは平坦な地面が急に岩だらけの斜面に落ち込んでいた。

 

「見てください、ここ、そしてこっちにも」

 

オビ=ワンは道を離れ、岩から岩へと飛び移りながら斜面をくだった。

 

「ウィンゾはこの道を進んだんです」

 

シャアクもあとを追いながら話す。

 

オビ=ワンとシャアクは急な坂をずんずんおりていく。足取りは確かで素早かった。斜面の一番下に着くと、そのまま深い森に飛び込む事になる。頭上に覆い被さる枝が、ずべての光を遮っている。六人はしばしそこで足を止めた。暗さに目が慣れるのを待つためだ。高い木々は平たく長い葉をつけ、厚い樹皮が太い幹からめくれ上がっている。オビ=ワンは再び地面を丁寧に調べ始めた。

 

ガルはその場を動かず探った。視線は地面を、岩を、周囲の木々を順に見ていった。

 

これといった手掛かりが見つからず、ムッとしながらオビ=ワンは体を起こした。

 

するとガルが一本の木に向かっていくのが見える。

 

「ここで休んで、指で木の幹に触った」

 

ドゥークーはガルが見つめる、微かにささくれだった樹皮をみた。

 

「どうしてそれが分かる?この辺りの木は全て樹皮が剥けかかっている」

 

「樹皮にそって垂れている樹液を見てください。ここに指紋があります。ぼかしてありますが、でもちゃんとあります」

 

「そうだな。では彼はどっちへいったのかな?」

 

ドゥークーはガルの何も見逃さない鋭敏な目を楽しんでいた。

 

ガルは地面に目を移すと数秒で手掛かりを見つけた。

 

「こっちです」

 

五人はガルの案内で先を進んでいく。厚い針葉樹の針と樹皮のカーテンの中を移動した。上方に浮かぶようにそびえる山の姿は、もう見えなくなっていた。緑の香り高い洞窟に、すっぽりと隠れてしまったかのような気分だった。

 

そうこうするうちに、木が突然なくなって、垂直な岩壁が目前にそびえ立つ。その壁は僅かに湾曲していて、彼らを取り込むように三方向に伸び上がっていた。進む道はない。今来た道を戻るしかなかった。

 

「行き止まりだ」

 

オビ=ワンはガッカリしながら岩壁を見つめる。

 

「いや、ウィンゾがこの道を来たのは確かだと思う……」

 

ガルはそう言いながらじっくりと岩壁の上部を観察した。

 

「あそこに洞窟があるわ!」

 

シャアクが指をさしながら声を上げる。その先には確かに洞窟があった。その入り口はジェダイならばフォースを使った跳躍で楽にたどり着ける場所にあった。

 

「どうやらウィンゾはあそこを通ったらしいな」

 

「だが、あれほど体格のがっしりとしたウィンゾが入ったとは考えにくいのだが…」

 

ドゥークーがクワイ=ガンの意見に意を唱える。確かに彼の言う通りで洞窟の入り口はかなり小さめでウィンゾが入るには少し大変そうに感じられた。

 

「ならマスター、彼はどこに行ったとっ!?」

 

言葉の途中でガルは瞬時に先程来た森のどこからか発射されたブラスター光弾に驚きながらもライトセーバーを起動して防御した。

 

「どうなっているんだ……?」

 

クワイ=ガンが困惑しながらライトセーバーを起動する。他の四人も直ぐにライトセーバーを起動した。

 

「やはり何かがおかしいと思えばそういうことか……」

 

ドゥークーが考え事をしながら呟く。

 

「どうやら私達は騙されていたようね」

 

タールが頷く。シャアクとオビ=ワンは状況を理解できずにいた。

 

「マスター、洞窟からも人の気配を感じます。どうやらこれは罠のようです」

 

ガルがドゥークーに報告する。

 

「やはり我々はウィンゾではない何者かに騙されていたということか」

 

ドゥークーの言葉を聞きながら全員の集中力が一気に向上する。

 

それは六人のジェダイが森に向かって飛び出した瞬間だった。洞窟の入り口から何者かによって発射された二発のブラスター光弾は彼らの横を通り過ぎて森林の中へと飛んでいく。そしてその光弾は彼らが今から攻撃しようと思っていた者達に直撃した。その時、もう既にドゥークーは洞窟の入り口に瞬時に跳躍していた。彼の降り立った場所には武装してスナイパーライフルを構えた二人組がいた。

 

「君達は誰かな?」

 

ドゥークーは静かに、そして冷静に問いかける。防御体制をとっているように見せかけて彼のライトセーバーは最短で武装している内の一人の首を飛ばせる位置に待機させていた。

 

「悪かった!まさかジェダイだとは思わなかったんだ!」

 

大声で弁明する一人の男。

 

「どういう事だ?」

 

ドゥークーは警戒を緩めない。しかし、下にいるガルの声が聞こえて来る。

 

「マスター!攻撃をやめてください!その声には聞き覚えがあります!」

 

「ガル?ガルなのか!!」

 

その男はガルの名を呼び終えると立ち上がりながらドゥークーの方へ向いてヘルメットを取った。もう一人も彼に従って同じ動きをしてヘルメットを取った。もう一人は綺麗な女性だった。

 

「攻撃をしてしまって申し訳ない。俺はディルだ。ライロスでガルの命を救ったあのディルだ」

 

「君があの噂の?」

 

それを聞いてドゥークーはライトセーバーを消したが、まだ疑いの目を向けていた。

 

「ディル!」

 

いつの間にか洞窟の入り口に現れたガルはドゥークーの横を勢いよく通り過ぎてディルに抱きつく。

 

「久しぶりだな!ガル!一年ぶりか?」

 

二人が感動の再会をしている間に隣にいた彼の妻のベラがドゥークーに従って下の森林まで降り、今回の経緯の説明を始めた。その隙にシャアクとオビ=ワンもディルとガルの元に駆け付けたのだった。

 

そんな中でガルは内心、大きく困惑していた。そう、何故ならこれはレジェンズでも語られる事のなかった完全な自分が存在する事による影響で起こっているオリジナルな事件だったからだ。

 

「初めまして偉大なるジェダイマスターの御三方」

 

ベラは畏まったお辞儀をしながら挨拶をする。

 

「初めまして。貴方がベラね?シャアクからよく聞いてるわ」

 

「よろしく」

 

「それで状況を説明してほしいんだが?賞金稼ぎである君たちが何故この惑星に?それに何故私達ジェダイを襲う?」

 

「私達は仕事の依頼があってここまで来ました。他の賞金稼ぎ達と一緒に。獲物はこの惑星に来て生態系を荒らす他惑星から来ている不法侵入者だと伝えられて……」

 

「どういう事だ…?」

 

ドゥークー達は悩んだ。彼女の言っている事に嘘がなかったからだ。

 

「さっき君達が撃った二人も賞金稼ぎか?」

 

「ええ、私達と一緒にきた班のメンバーです」

 

「班?」

 

タールが聞き返す。

 

「はい。この作戦には全部で三つの班が組まれています。そしてその全ての班が別々に行動していて、一番多くの賞金首を捕まえた班が一番多くのクレジットを貰えるんです」

 

「いったい雇い主は誰なんだ?」

 

「それが雇い主は不明で。この仕事は私とディルのように、かなり仕事ができると評判の良い賞金稼ぎ達に指名依頼として突然入ってきたんです」

 

「その感じだと私達狙いなのは確かね……」

 

「タール、どこかの任務で誰かに恨まれたんじゃないか?」

 

「そんなわけないでしょ?って言いたいけど心当たりが多すぎるわね」

 

「最近だとジェダイが武力行使に出ることが多くなってしまっているからな……」

 

ドゥークーも頷く。

 

「とりあえずはウィンゾを見つけてこの惑星を抜け出した方が良さそうだな」

 

「そうだな。もう一人のジェダイがいたんだが知らないか?」

 

「それなんですけど………別の班が狙っているはずです」

 

ベラは物凄く申し訳なさそうにしながら答える。

 

「マスターウィンゾが捕まった?」

 

洞窟から降りてきたオビ=ワンの声には衝撃が感じられた。その後ろにいるガルとシャアクも同じ反応をする。

 

「まだ決まったわけではない」

 

クワイ=ガンが三人を落ち着けるために優しく話す。

 

最後に降りてきたディルはホロマップを起動しながらドゥークー達の元に近づいた。

 

「ベラ、他の部隊の位置が分かったぞ。あいつらは約束の集合地点に向かってるみたいだ」

 

「ありがとうディル」

 

ベラはディルからホロマップを受け取りながら話す。

 

「この地点で私達は貴方達を捕まえて集合する予定になっていました。彼らがここに向かっているということはもう一人のジェダイの方は捕まってしまったということでしょう。でも安心してください。この依頼では必ず生きて捕らえることが条件だったので無事なはずです」

 

「そうか、ならそこへ急ごう。どこかへ連れて行かれる前にウィンゾを助けなければ」

 

ドゥークーが指示を出す。

 

「私は一度船に戻って現状の報告を評議会にしてきます。最悪の場合は応援も」

 

「私も一緒に行くわ」

 

タールがクワイ=ガンに賛同する。

 

「なら残りのメンバーでウィンゾの救出に向かうとするか。君たちにも協力してもらうぞ。ディル、ベラ」

 

「ええ」

 

「もちろん」

 

「そうだ、もしよかったらどっちかコムリンクを貸してくれない?私達訓練の一環で今通信デバイスを持っていないのよ」

 

「ああ、それならそこで気絶してる奴らのコムリンクを奪うのはどうだ?」

 

ディルはそう言いながら草をかき分けてスタンモードにして気絶させた賞金稼ぎの装備品を漁りはじめた。

 

「よし、あった」

 

ディルは見つけたコムリンクをタールとクワイ=ガンに投げて渡す。

 

「そこの二人は縛り上げておいて後で回収するとしようか」

 

「そうしましょう」

 

「よし、パダワン達よ。これからは対人戦に優れた敵との戦いになるぞ。一切油断するなよ」

 

ドゥークーのその言葉を聞きながらもガルはこの惑星から感じられる暗黒面のフォースが強まっていることをひしひしと感じていた。それに彼はこの事件における黒幕の正体がなんとなく分かったような気がしていた。

 

その後、クワイ=ガン、タールと別れた四人のジェダイと二人の賞金稼ぎはホロマップを頼りに集合地点を目指すのだった。




本当は昨日に投稿するつもりだったんです……許してくださいw
そういえばTitansのシーズン3がNetflixオリジナルからHBOmaxに移行してるっぽいんですよね……日本でのHBOmaxはU-NEXTになるとかふざけたことを言ってるんでなんかもう訳わからんです。なんでNetflix original seriesだったはずのドラマが勝手にシーズン3から移行するんですかね。あーあ。まあどうせ見たいからU-NEXTにも加入する未来が見える……なんか愚痴みたいになってすみません。
それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらんことを!


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賞金稼ぎを追跡せよ

ドゥークーとディルを先頭に彼らはホロマップを頼りに、岩の多い小高い丘を上り、また丈の低い草が生える野原へと下った。足もとは柔らかい湿地で、前方には黄色い花をたくさんつけた肩の高さまでの茂みが多く生えた、沼地が広がっている。

 

凄く綺麗な花に目を奪われ、いつの間にか手を伸ばしていたシャアクはガルに止められて気がつく。よく見ると、真っ赤な棘が黄色の花を取り巻いている。

 

「マスタードゥークー、戻って別の道を探しませんか?この茂みを無理に通ればボロボロになります」

 

オビ=ワンが提案する。

 

その言葉を聞いてドゥークーはためらった。確かにオビ=ワンの言う通りだった。しかし、一刻も早くウィンゾを救うにはこの近道を通らなければならなかった。

 

「マスター」

 

ガルが静かに声をかけた。ドゥークーにも、その音が聞こえていた。かすかなクルーザーのエンジンの唸りだ。二人は瞬時に空を探すが、何も見えない。

 

「みんな、姿勢を低くして伏せるんだ」

 

植物が生えていないところにかがみ込んで、茂みの下に隠れる。その間にも全員が油断なく空を監視している。青い空に銀色の光が煌めき、クルーザーが矢のように視界に入ってきた。

 

「早いし、機動性もあるみたいね」

 

目を細めて観察しながらシャアクが報告する。

 

「操縦席の両側にブラスターキャノンを装備してる」

 

「あれはサイナーのアドヴァンスド・プロジェクトで技術カスタマイズさせたやつだ。おおっと、まずいぞ」

 

ディルが説明している途中でクルーザーは急旋回すると真っ直ぐ彼らのもとへ向かってくる。ベラはあたりを見回した。

 

「どうする?隠れるとこはないし、戻れば野原で丸見えよ」

 

ドゥークーはベルトからライトセーバーを取り、起動した。前屈みになって棘の生えた茂みを手際良くくり抜いていく。茂みはみるみる消えていった。

 

「やっぱり凄く便利な道具よねそれ」

 

ベラはほれぼれしたように言った。

 

クルーザーが低空飛行でこちらに向かって来る。レーザーキャノンが突然、速射のけたたましい音を立て出した。

 

「走れ!」

 

背後の茂みがパッと炎をあげ、ドゥークーはみんなを急かした。自分の作った穴に駆け込むと、ライトセーバーを短い弧を描くように振り回しながら、茂みの奥へと通路を切り開いた。ドゥークーは一分の隙もない正確さでライトセーバーを振るって、茂みの上面からすぐ下に穴を切り開いていった。そのため上空からは、茂みには何も変わりがないように見える。彼らが内部で進んでいるのをうかがわせる道筋は見えないだろう。

 

ドゥークーの動きは俊敏だった。だが、原野の幅いっぱいにジグザグを描いて進んだために一行は少し疲れ始め、長く鋭い棘で引っ掻き傷が無数にできた。それでもドゥークーは休むことなく進み続けた。そしてクルーザーに乗った賞金稼ぎも諦めず、何度も茨の原野に急降下を繰り返した。時には砲弾が至近距離に当たり、彼らはブラスター・ビームの熱を直に感じる程だった。

 

「これも君のマスターの作戦かい?」

 

ディルが息を切らしながらガルに尋ねた。

 

「ああ。今はマスターを信じて進むしかない」

 

「ほらディル、あんた日頃からトレーニングしとかないからこんな時になって疲れるのよ」

 

「うるさいなベラ。あーあジェットパックがあった頃が懐かしい……」

 

泣き言を言うディルにベラが喝を入れる。

 

「黙ってしっかり走りなさいディル」

 

「はい………」

 

相変わらずベラに対しては頭が上がらないディルを見ながらガルとオビ=ワン、シャアクはクスクスと笑っていた。

 

そんな五人に何の反応をみせないドゥークーは無言のまま、一行を原野の先端まで導いた。前方にはまた一つ、岩の多い丘が続き、そこから山へと伸びる丘陵地帯が始まっていた。

 

「ガル、ついて来るんだ。オビ=ワンはシャアクと組め。二人一組で動くぞ」

 

「あのクルーザー、無理な急降下で負荷をかけ過ぎたせいで前方のレーザーキャノンから微かに煙が上がってるな」

 

「本当だ。オーバーヒートしてる。だからワザと何度も撃たせたんですね」

 

オビ=ワンは先程のドゥークーの作戦に感心した。

 

「その通りだ。さあ、行くぞ」

 

六人は自然の険しい丘陵の地形を利用し、周囲の岩の陰に隠れながら素早く移動した。何度もクルーザーは六人に対してレーザー砲を発射しながら直下降を繰り返したが、深い山肌の突出した岩が防壁になった。

 

「ちょっとした事を試したいんだけどいい?」

 

シャアクがオビ=ワンに尋ねる。

 

「いいぞ」

 

「ならあいつの注意をここに引きつけておいて」

 

クルーザーが機体を傾けてまた急接近へと態勢を入れかえるいなや、シャアクは突出した岩の上に出ると、隣の岩に向かって跳躍した。次いで、またその隣の岩へと飛ぶ。瞬く間にシャアクは、オビ=ワンを狙って急角度で突っ込んでくる低空飛行のクルーザーよりも高い位置に出た。

 

そして、シャアクは堂々とライトセーバーを起動した。天に向かって輝く深い青色の光がクルーザーに乗った賞金稼ぎの注意を引いた。賞金稼ぎは機体を反転させると、一直線にシャアクに向かってきた。レーザーキャノンが光を発する。シャアクは登る時に足がかりに使った突出した岩を迂回しながら、地面に向かって飛び降りた。彼女を追うクルーザーが、すぐ後ろから突っ込んでくる。同時に、レーザーキャノンが岩を砕いた。粉砕された岩が雪崩状になって、クルーザーの船体めがけて降り注いだ。

 

シャアクは待っているオビ=ワンの隣へ、軽く着地した。

 

「今のは凄かった。流石だなシャアク」

 

「ありがとう」

 

少し離れた場所から状況を伺っていたガルがクルーザーから目を離さずにドゥークーに報告する。

 

「シャアクのおかげで左舷からもっと煙が出始めました。レーザーキャノンの過熱でしょうね」

 

「なら我々も続いて仕上げといこう」

 

ドゥークーは山に向かって飛び上がった。ガルも後に従って、岩棚を伝い山頂まで移動した。張り出した岩の陰に隠れるように、堆積した厚い雪の層があるのが見えた。岩が朝の陽光を遮っているので、雪はまだ解けていない。

 

「クルーザーが戻ってきたら、ケーブル・ランチャーを発射して飛ぶんだ」

 

マスターの作戦を察したガルは頷いた。

 

「上手くいかなかったら、あそこへ宙吊りだ。ただの良い的になってしまうからな。片手をライトセーバーのために開けておくんだぞ?」

 

ニヤッと笑いながらドゥークーはジッとクルーザーの動きを目で追った。

 

「いいか………いけ!」

 

二人はケーブルランチャーにぶら下がって大きく体を揺らすと、山肌を蹴って離れた。この突然の意外な動きに賞金稼ぎは驚き、クルーザーは二人を追って矢継ぎ早に攻撃しながら下降に転じた。

 

ブラスター光弾の轟音と熱が、雪と氷塊の雪崩を引き起こした。一面に広がった雪の幕がクルーザーに直接覆い被さり、瞬間的に賞金稼ぎは完全に視界を塞がれた。ガルとドゥークーは、雪崩が通り過ぎるのをケーブルランチャーにすがって持ち堪えた。見れば、クルーザーは異常なよろめく飛び方で、岩の山腹目掛けて真っ直ぐ進んでいる。

 

クルーザーが山に衝突する直前、船荷用ドアが開いて一台のスウープ・バイクが勢いよく飛び出した。それに賞金稼ぎが乗っているのが見えた。その場から一目散に去ろうと急上昇するスウープバイクに二発のブラスター光弾が撃ち込まれる。この瞬間を待っていたディルとベラがスナイパーで撃ち抜いたのだった。スウープバイクはその場で爆発し、乗っていた賞金稼ぎは山と同じ高さから地面へと勢いよく吹き飛んでいった。

 

クルーザーは山に激突して、燃料の漏れる音に続き轟音が上がった。炎をあげて金属片が雨にように降ってくるのを、ドゥークーとガルは岩棚の陰に隠れてやり過ごした。

 

二人が地上に降りると、四人が駆け寄ってきた。

 

「とりあえず一人片付いたな」

 

「ああ、でも今の爆発音で他の奴らが気がついていないと良いが……」

 

ドゥークーとディルは話し合いながら出発の準備を整え始める。

 

「さっきの凄かったなシャアク」

 

「そうでしょ?強くなったのはあなただけじゃ無いんだからね」

 

「知ってるよ。華麗で優秀なジェダイさん」

 

ガルがシャアクをいじるつもりで言ったその言葉はシャアクには違う意味で聞こえたらしく、彼女は顔を赤くして彼から目を逸らしてしまった。

 

「ああ、マジか……」

 

ディルがホロマップを見ながら焦った様子になる。

 

「どうしたの?」

 

「ベラ、奴らの動きが止まった。急がないと奴らは罠をいくつも仕掛けてくるだろう」

 

「なら急ごう。私達ならいくつもの罠を仕掛ける時間さえ与えずにたどり着ける」

 

ドゥークーの返答を聞いた六人は急いでその場を出発して敵が待ち構えている場所へと向かった。

 

彼らが走りながら進んでいくと道は曲がって、原野を見下ろす張り出しにでた。原野にはたくさん花をつけた枝が重なりあって、一面ピンク色の絨毯のようだった。

 

「こっちだ。あの野原の先で奴らは待ってるはずだ」

 

「ああ、ウィンゾを近くに感じる。注意して進もう」

 

ディルの発言にドゥークーも賛成する。

 

六人は慎重に岩から岩へと飛び移りながら斜面を降りた。ディルとベラはスナイパーでの援護射撃をする事が決まっていたため、少し離れて降りてくる。原野に着くと、木の花の芳香が鼻をくすぐった。これが他の時であったら、全員が美しさに見惚れてしばし足をとめたであろう。

 

木々の幹はほっそりした三角形だったが、枝は太く幅もあった。花は驚くほど大きくびっしりと咲いていたので、木々の先端は、まるで泡立つピンク色の波のように揺れていた。

 

ガルは警戒して、原野を注意深く見回した。ところが、警戒とは裏腹に、ガルが見たのは木の下で眠っているウィンゾだった。

 

「マスター」

 

「私にも見える……だが、何かがおかしい…」

 

「あそこにいるウィンゾからは、全くフォースを感じられません」

 

シャアクが顔を顰めながら言う。

 

ドゥークーは一歩前でた。しかし、それはガルが見ているウィンゾの方向では無かった。

 

「マスター?」

 

ガルは自分のマスターがウィンゾの方に進んでいくのを見た。

 

しかし、それは別の木の下で眠る別のウィンゾだった。

 

彼らの前には、また別のウィンゾが、そしてまた一人別のウィンゾが見えてきた。次々と現れるウィンゾ。しかし、そのどれもが本物のジェダイではなかった。ウィンゾ本体の姿が投影された像に過ぎなかった。

 

「ホログラムだ」

 

オビ=ワンが言った。

 

「全部が?」

 

ガルはドゥークーの顔を見ながら全員に聞いたが、彼らにそれを知る方法は無かった………




最近とあることが原因でNiziUにほんの少しだけハマったAlexです!
なんかすいません。話の中でコメディ要素を出すのが苦手なので後書きでボケてみました。笑
はあ…もっとコメディに強くなりたい。このままだと自分の話がずっとシリアスで暗い話になりそうな気がする。という事でちょっとアンケートをとってみたいと思います。今回だけのアンケートです。

それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を!


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賞金稼ぎ達との戦い

「二人は援護しやすい場所で援護を。周りの賞金稼ぎの対処を頼む。ウィンゾの救出は我々だけで対処する」

 

「了解」

 

ディルはベラを連れて見晴らしのいい場所に向かって行った。

 

「奴らの狙いは、我々を原野に誘き出す事だ」

 

ドゥークーは三人に小声で話す。

 

「我々がウィンゾに駆け寄り本物ではないと分かって、また別のウィンゾに走る、そうさせたがっているのだ。だから、それはやるまい」

 

四人はその場から一切動かなかった。フォースを使うのだ。

 

四人は心を澄まして手を伸ばし、自分たちの周囲にフォースを集めた。仲間のジェダイが危機にある。その思いと緊迫感がフォースとの繋がりを更に強めて、フォースを集める力を緊急に引き上げた。四人のフォースはガルを軸に一つに繋がり更に強さを増した。

 

ドゥークーはガルがフォースを掴む力を感じた。いつものように、その強大さにたじろぐ思いだった。

 

全員がもう一度、草地を走査する。今度はどの像が幻影か、どの像が本物のウィンゾかが見えた。真っ直ぐに本物のウィンゾを見つめると、それに答えるようにフォースの高まりを感じた。

 

彼らのライトセーバーがベルトから離れる音は、ほんの微かなささやきにも似た音にすぎなかった。すっと移動する気配は、空気の揺らぎほどの動きでしかなかった。そう、次の瞬間四人全員が先程までいた場所から姿を消していたのだ。流石のディルとベラも目の前で起こった出来事に混乱していた。ドゥークーはすぐ後ろに三人のパダワンがついてきているのを感じていた。耳が捉えるよりも、感覚が先に捉えていた。

 

突然、ウィンゾの体が空中に跳ね上がった。心臓が口へせりあがってくるような気持ちで、オビ=ワンはウィンゾが木の梢から宙吊りになるのを見守っていた。体を麻痺させる薬品か何かを使われているに違いないという考えが、ガルの心に浮かんだ。まるで操り人形のごとく、力無く垂れ下がる手足の骨が抜けたような動きがその証拠だった。

 

怒りがガルの胸の底に芽生えた。そして、ガルの放出するフォースが一気に増加する。

 

攻撃がやってくる前からガルは予期していた。賞金稼ぎ達が自分たちを誘き寄せようとしているのは明らかだったが、小細工は気にもとめなかった。賞金稼ぎ達と相対する準備はできていた。

 

攻撃が上からくる。ガルは完全に予測していたが、他の三人は別だった。立ち並ぶ木の上から、毒のついた矢が雨のようにバラバラと降ってきたのだ。

 

「フレシェット榴散弾だ」

 

ガルがフォースで全てを払い除けながら他の三人に素早く報告する。ドゥークーはすぐさま頭上に広がる枝に注意を向けた。二人の賞金稼ぎの姿を捉えた。その二人の賞金稼ぎの四肢は長く、先端には鉤爪のようになった指がついている。巧妙に気に登ったり、枝からぶら下がって木々の間を移動するのに適した体だ。さらに、枝にとまる一匹の鳥に目に入った。羽は木の花と同じ色で、周囲に溶け込んで見えにくい。大きな翼を脇にたたんでいても、全長はゆうにガルと同じぐらいある。

 

二人の賞金稼ぎは枝を渡って移動すると、鳥は腹立たしげに鳴き声を上げた。ドゥークーは頭上の高い枝目掛けて跳躍し、片手で枝を掴んで反動を利用して、更に高く飛び上がった。鳥が怒ってドゥークーを攻撃しようとしたがガルのフォースで体を拘束された。鳥はガルの方を瞬時に見て睨んだが、彼の顔を見て少しの時間が経ち、睨むのをやめた。ガルは鳥の敵意が消えたことを確認するとフォースの拘束をといた。鳥はすぐさま先程の賞金稼ぎ達二人を追って飛んでいった。

 

「流石だなガル」

 

「ありがとう。動物との繋がり方を教えてくれたのはお前だけどな」

 

「二人共あれ見て!」

 

シャアクが別の方向からくる凄く綺麗な物に注意を促す。

 

「避けろ!ストクリ・スプレー・スティックだ!」

 

ガルは細かい青色の霧がこちらへ向かってくるのを見て叫んだ。

 

三人の反射神経は寸分の遅れもなかった。逡巡も無くさっと横に飛んで、霧を避けた。青い飛沫は、ちょうど今まで三人が立っていた場所を直撃した。

 

「マズいな。止まらないで動き続けろよ?失神はしたく無いだろ?」

 

オビ=ワンが言う。

 

「絶対に当たらないから」

 

シャアクが嫌そうな顔をしながら答える。

 

そして三人の前に新たな噴射がどっと押し寄せた。三人は再び跳躍した。その間にも攻撃者の位置を正確に割り出そうと、周囲の観察を怠らない。

 

「あの木の方へ進む間に、誰かが岩を迂回して奇襲をかけられるかどうか見てみよう」

 

「私が行く」

 

シャアクがガルの作戦に賛同する。

 

「ダメだ。危なすぎるぞシャアク。ストクリ・スティックは二百メートルの射程があるんだぞ?」

 

「心配するな今の俺たちならやれる」

 

そう言いながらガルは二人の顔を交互に見た。

 

「絶対だ」

 

「ええ、できるわ」

 

「はあ……そこまで言うなら私も賛成しよう」

 

シャアクは岩陰からさっと走り出した。シャアクはフォースに乗って思いきり跳躍する。彼女の反射神経とタイミングは、それは並はずれて素晴らしいものだった。噴射が当たり損なうように、しかし、ほんの少しの差で外れて、攻撃してくる相手に今度こそはと、もう一度攻撃したいと思わせるように計算した動きをしている。攻撃者の全ての注意は、シャアクに向けられていた。

 

ガルは精神を集中すると、自分の周囲の自然と一体になるために、フォースに心の手を伸ばした。森の音が遠くなった。もはやガルの耳には、風にそよぐ木の葉のざわめきも、時折密やかに動き回る小動物の立てる音も、枝と枝が触れ合って立てる音も聞こえなかった。聞こえるのは、ただストクリ・スティックの立てるかすかなシイーッという音だけだった。

 

右前方三十度。

 

ガルはX-MENのクイックシルバーかと思う程の速度で走る。彼の動きはあまりの速さで周りの時間の流れが遅くなっているのかと思うほどだった。ガルは割り出した位置に急接近する。地面を踏みしめて走るブーツは、音を立てない。完全にコントロールされた呼吸は、乱れ一つ聞こえない。

 

敵の姿が前方に見えた。ターシャ人の男だった。ターシャ人の特徴的な何本ものくくった短い髪と、ストクリ・スティックを軽く構えた十一本の指がある手がハッキリ見えた。男は一列に並んだ木の後ろに立って逆方向にいるシャアクを狙っている。

 

ガルは二本のライトセーバーを起動させるとジャンプした。しかし、ターシャ人の男は彼に気がつかないのか全くの反応を起こさなかった。ガルはライトセーバーで攻撃するのをやめて、ターシャ人の男を真後ろから蹴ることにした。

 

だが、ここにきてガルは初めて気がついた。自分の動きが早すぎて周りの動きが物凄くスローになっている事に。だが、それに気がついたときにはもう遅かった。ターシャ人の男を蹴ると彼の体は通常の蹴りで飛ばされるよりも遥かに何倍も早い速度でその場から吹き飛ばされ、落下先の柔らかい地面を一メートル程抉ってやっと止まった。そして、ガルが地面に降り立つと周りの時間の流れが通常に戻った。

 

オビ=ワンはただただ驚愕していた。気がつくと姿を消していたガル。しかし、彼がこの場を物凄いスピードで走ったというのが瞬時に理解できた。彼がありえないほどのスピードで走った証拠があったのだ。そこには今までになかったはずのものができていた。地面から生えていたはずの草が綺麗に無くなっている新しい一本の道が彼の前に存在したのだ。

 

 

一方でドゥークーは二人の賞金稼ぎをジックリと確実に追い詰めていた。鳥の援護もあり、彼らは木から木へと移動するのが困難になっているのだ。二人の内一人が我慢できずに狙いをドゥークーから鳥へと移す。ドゥークーはこの瞬間を狙っていた。彼は大きく跳躍してあっという間に彼らがいる木に接近する。彼は自分のライトセーバーをガルの様にブーメランの要領で投げ、鳥の方に集中している賞金稼ぎをあっという間に切り刻んだ。もう一人の賞金稼ぎの顔に怒りの表情と悲しみの表情が入り混じったものをしっかりと見届けたあと、空中でフォースを引き寄せ、残った方の賞金稼ぎをフォースで拘束した。木の枝へと綺麗な着地をしたドゥークーは賞金稼ぎに問いかけた。

 

「ウィンゾに何をした?」

 

「俺の妹を殺したな!!」

 

「ウィンゾに何をしたのか聞いている。彼の周りに他に何か罠はあるか?」

 

「答えるわけないだろ!」

 

「はあ……まあならいい。後は好きにしていいぞ」

 

ドゥークーはそう言いながら近くの枝に止まって待っていた鳥の方を向いた。鳥はドゥークーに答えるように翼を広げた。

 

「ま、待ってくれ。あなたはジェダイだろ?ジェダイは抵抗しない物に対しては攻撃しないんじゃなかったか?」

 

自分が死ぬかもしれないと悟った彼は急に態度を変える。その様子をドゥークーは何も言わずにじっと見ていた。

 

「わ、分かった!あのジェダイの下に塹壕がある。あとその木のいくつかの枝を一度切ってまた繋げた。どうだ、これでいいだろ?」

 

「そうか、ありがとう」

 

ドゥークーはそう言いながら賞金稼ぎをフォースで拘束しながら木を降りる。それに従って鳥も地面に降りた。

 

「お、おい?あんたが欲しがった情報は話したはずだ。助けてくれるよな?ジェダイなんだろ?」

 

「ああ、ジェダイならそうだな。だが彼はジェダイじゃない。君達に巣を荒らされたことを相当怒っているみたいだぞ?」

 

ドゥークーは自分のライトセーバーをフォースで引き寄せてベルトに収めるとその場から立ち去ってゆく。

 

「やっやめろおおおお!」

 

彼の叫び声は少しすると急に聞こえなくなった。恐らくあの大きな鳥が彼の喉元に鉤爪を突き立てたのだろう。

 

ドゥークーはウィンゾの元に戻ると彼を拘束から解放した。注意深く地面に寝かせ、全身を隈なくチェックした。片足に長い切り傷があり、腕には打ち身があるように見えた。肩にブラスター光弾による傷もあり、きっとかなりの痛みに耐えているのだろう。ドゥークーは自分のキットからバクタを取り出すと、ウィンゾに与えた。

 

 

その頃、ディルとベラの元に戻ったガル達はお互いの無事を知って安心していた。ディル達は四人の賞金稼ぎを倒していた。揃ってウィンゾの元へ向かおうとしたその時だ、ガルの耳に、かすかな笛のような音が届いた。小さな金属製の球体が唸りをあげて耳の側を飛びすぎ、空中に弧を描くのが光って見えた。

 

「地面に伏せろ!!」

 

ガルは大声で叫ぶが早いか振り返り、球体が飛んでいった方に跳躍して、フォースをものすごい勢いで集めて、目に見えないフォースでできた大きな壁を作り上げた。それとほぼ同時のタイミングで爆発が起こる。

 

サーマル・デトネーターが十メートル程離れた地点で爆発したのだ。デトネーターは、半径二十メートルの破壊領域を持つ。後一歩フォースを集めるのが遅ければ全員が危なかった。

 

そして少し離れた木々の陰から十五体のアタック・ドロイドがこちらに向かってくる。リパルサーリフト・エンジンを搭載しているため、地面の少し上を滑るように移動してくる。

 

木の多い場所から離れてしまったため、防御に使えるものは何もない。戦いを避けたくても避けようがなかった。ガルは正直なところ賞金稼ぎに少しウンザリしていた。

 

「ガル、ドロイドの相手は我々でする。お前はドロイドの持ち主と戦ってくれ」

 

「了解した」

 

三人の手には既にライトセーバーが輝いていた。ガルの合図でオビ=ワンとシャアクは進んできたドロイドに向かって、ブラスター光弾を弾きながら徐々に前進した。その後ろでディルとベラがタイミング良く援護射撃をしてドロイドを倒していく。

 

ガルはデトネーターが飛んできた方向に走り出す。少し進むと攻撃者の姿がハッキリと見えた。プラストイド製の装甲をつけた、痩せて上背がある男だ。さまざまな武器を吊るした二本のハーネスを互い違いに体にかけている。ベルトには、まだ沢山のサーマル・デトネーターが装着してある。

 

男は、ガル目掛けてデトネーターの一つを軽く投げつけた。ガルはライトセーバーで弾き飛ばせなかった。落ちたデトネーターまで充分に近づけなかったのだ。爆発はかっきり六秒後、それまでに破壊領域から脱出しなければいけない。

 

ガルはベルトのケーブル線を引き出すと、投げ輪にしてデトネーターを引っ掛けた。そのままぐいと引くと反動をつけて、攻撃者の方向に飛ばし返した。敵は素手を伸ばしてデトネーターを受け止めようとしながら、やるな、といわんばかりに、ニヤリと笑った。ガルは男の口元から白い歯が溢れるのを見た。男は受け止めたデトネーターを後方に投げた。そこで爆発が起こったが、誰にも影響は無かった。

 

男の動きは今までの賞金稼ぎ達とは明らかにレベルが違い、洗礼されていた。それに加えて、ジェダイの苦手である遠距離戦を狙ってくるあたり、彼は最初からこの惑星でジェダイと戦うことを想定していたのだろう。

 

しかし、今回の依頼でディル達を含む賞金稼ぎは獲物の詳細を偽って知らされていた。となると導き出される答えは自ずと一つだった。

 

「お前、賞金稼ぎじゃないな?」

 

ガルは二本のライトセーバーを構えながら男に問いかけるのだった。




前回のアンケートに回答してくださった皆様本当にありがとうございました。結果としては作者に任せるが一番多かったのでこれからも自分の好きにやっていこうと思います。笑
という事でこれからもStarWars What Ifをよろしくお願いします。
それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらんことを!


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悪化する状況

「ほう、よく分かったな。まあ流石ジェダイと言ったところか」

 

男は感心した様子を見せる。

 

「お前が黒幕か?」

 

「さあ?もしお前が俺に勝てたらヒントをやろう」

 

「戦う前から勝てると信じているのか。慢心は後に己を滅ぼすことになるぞ?」

 

「それはどうかな?」

 

男はまたニヤリと笑いながら新しいデトネーターに手をかけた。

 

彼は動く必要がない。何故なら彼の武器は、距離があっても発射できるものばかりだった。一方でガルは敵に近づこうと画策しなければいけなかった。

 

デトネーターが猛烈な勢いで飛来する。時には石を投げてそらし、ケーブル線の投げ輪で捕まえる物もあった。だが、ほとんどは走って逃げ切らなければならなかった。

 

ガルの足は柔らかい地面と所々にある雪との格闘で疲れを覚え始めた。あとどれぐらいこれを続けられるかという疑念がガルの頭によぎった。

 

その時だ。攻撃者の男の側の雪面から湯気が上がっているのが見えた。目を凝らすと、水が反射して光るのが見える。温泉だ、ガルは瞬時に悟った。その後ガルはわずかに男の右寄りに移動した。動くたびに、少しづつ男を泉の方へ誘導していく。

 

男のベルトには、まだ十個のデトネーターが残っている。ガルはチャンスを見つけて跳躍した。頭を低くして、すかさず飛んでくるデトネーターを避ける。爆発。ガルは衝撃波が押し寄せてくるのを皮膚に直に感じた。着地が乱れ、雪の上に危なっかしく降りると、ズルズルと斜面を攻撃者の方に滑り落ちていく。そこへ、二個のデトネーターが飛んでくる。ガルはやけくそになりながら片手を大きく振り、フォースでデトネーターを空中で薙ぎ払った。

 

男までかなり近くまで迫った時、ガルは危険を承知で真っ直ぐ男に向かって跳躍した。彼を後退させるのが狙いだった。そして、男は後退した。その拍子に、氷で滑って後ろ向きに倒れ、泉の中につっこんだ。

 

男は足を滑らせて水面下に沈み、ふたたび姿を表して立ち泳ぎをした。頭を振って目の前にかかる髪を払うと、ガルを尊敬のこもった目で見つめた。

 

ガルは泉の縁に立って、手を差し伸べた。

 

「後十五秒だぞ?」

 

「その通りだ」

 

攻撃者の男も、高すぎる熱は誘導反応を引き起こすことを知っていた。サーマル・デトネーターが暴発するのだ。

 

男の目は、銀とライラックの中間の鮮やかな色だ。上唇に傷がある。長い髪は銀色の紐を使い、後ろで一つに束ねてあった。

 

「こっちへ来い。危害は加えない」

 

手を伸ばしたままガルは言った。

 

「お前がやらなくても他のやつがやるんだ」

 

男は言った。

 

「俺は元々この場所で賞金稼ぎどもと一緒に彼女に殺される予定だったらしい。俺はこの楽な死を選ぶ。お前は彼女の恐ろしさを知らないんだ。ピラミッド自体から来る力をな」

 

男の言葉を聞いてガルはこの事件の黒幕を確信した。当たって欲しくなかった予想が的中してしまったのだ。

 

「ジェナからお前を守ってやる」

 

ガルは黒幕の名前をだして説得しようとした。男はガルの口から放たれた名前を聞いて動揺した様子を見せた。

 

「大丈夫だ。彼女の目的は知っている。俺ならお前を助けられる」

 

「ああ、だが彼女が真実を知ればお前よりも遥かに強くなるだろう。それに彼女はもう既に二人のジェダイを手に入れたという連絡を受けている。助けたければ彼女の研究所に行け。フッまあ助けられればの話だがな。」

 

男は観念したように目を閉じた。

 

「今すぐこっちに来い!」

 

ガルは泉の上で手を伸ばした。

 

「ダメだ、できない」

 

男は答えた。

 

「最後に、一つだけ言わせてくれ。お前のような強き者に最後を見届けてもらえて嬉しいよ。俺を救おうとしてくれた事に感謝する。じゃあな、ジェダイ」

 

「よせ!!」

 

ガルは泉に飛び込んだ。だが、既に手遅れだった。サーマル・デトネーターが爆発した。水がぐうっと盛り上がって、ガルの顔を打った。息が詰まって足が滑り、水面の下へ沈んだ。爆発の煽りで押し寄せる大波と格闘しながら浮上した。煙が渦巻いて広がってきた。

 

やがて煙が晴れると、濁りがおさまった水の表面からずっと下に、あの男の体が底のない深みへと、渦に巻き込まれて沈んでいくのが見えた。

 

 

オビ=ワンは温泉へ急いだ。ガルは、もう既に自力で水から上がって泉の縁に立っていた。湯気の立つ水が足元にたまり、雪を溶かしている。

 

煙と水蒸気を透かして、オビ=ワンは友の顔に浮かんでいる悲しみを見てとることができた。周囲には嵐の様な強いフォースが渦巻いていた。ガルはまるで身に纏って暖をとるかの様にフォースに心の手を伸ばし、自分の周りに集めていた。彼の目は遠いところをジッと眺めている。

 

「ガル…………大丈夫か?」

 

「知り合うこともなかった男に、別れを告げているんだ」

 

ガルはそっと言った。言葉の端に見える相手への敬意に、オビ=ワンは驚いた。

 

「あいつはお前を殺していたのかもしれないんだぞ?」

 

「だが、そういう結果にはならなかった。彼の目に残っていた善良な光を俺は救ってやれなかった……」

 

「そ、そうか…」

 

オビ=ワンは言葉では肯定していながらも、ガルの行動を理解できなかった。

 

「それと最悪のニュースがある」

 

「それは?」

 

「マスタークワイ=ガンとマスタータールが奴らに捕まった。この事件の黒幕は科学者、ジェナ・ザン・アーバーだ」

 

ガルはハッキリとそう口にした。

 

ジェナ・ザン・アーバーとはレジェンズに出てくる科学者でガルがよく知っている人物だった。かつて彼女はフォースの謎を解き明かすために任務中のクワイ=ガンを襲って監禁し、彼を殺すギリギリまで実験を行ったのだ。だが今のところその事件は起こっていなかったため、ガルは彼女の存在をほぼ忘れかけていたのだ。そして、今のところタールが死んでいない事に安心していたガルだったが、その考えは消えて無くなった。この事件で彼女が死の危機に直面する確率は高いだろう。

 

ガルの発言を聞いたオビ=ワンは衝撃のあまり言葉を失った。

 

「大丈夫かオビ=ワン」

 

「…………大丈夫なわけないだろうガル」

 

「だよな。とりあえずみんなの元に戻ろう」

 

ガルの発言にオビ=ワンは黙って頷くと一人で先に走って行ってしまった。

 

ガルも彼を追って歩き出そうとする。しかし、突然訪れた急激な鋭い頭痛によって彼は膝から綴れ落ちた。

 

次の瞬間彼の頭にはクワイ=ガンとタールの苦しむ姿が映し出された。それがフォースの見せる未来のビジョンなのか現在の映像なのかそれは分からなかった。ただ言えるのは一刻の猶予も許されない状況だということだった。ガルは痛みを堪えながら立ち上がり、オビ=ワンの後を追った。

 

全員が初めにいた場所に集合したのはガルが到着した直後だった。

 

「状況を説明してくれガル」

 

ドゥークーが真剣な目で聞く。

 

「今回の一連の事件の裏にいるのは科学者のジェナ・ザン・アーバーです。彼女はフォースの謎を解き明かすためだけに我々ジェダイを狙ったんです。そして彼女はマスタークワイ=ガンとマスタータールを攫いました。今すぐにでも二人を助けに行かないとマズイです」

 

「そんな……」

 

シャアクが顔を手で覆う。

 

オビ=ワンも岩に腰をかけながら目を瞑っていて、平静を保とうと努力しているのが分かった。

 

「何故そんなに詳細を知っている?」

 

「恐らく彼女の護衛を努めていたであろう男から聞きました。彼を助けることはできませんでしたが……」

 

「護衛?」

 

ディルが聞き返す。

 

「彼は賞金稼ぎ達に紛れて恐らく全員を監視していたんです。それに今回、集合地点に集まった全員がその場で殺されていた可能性があります」

 

「そうなの…?」

 

ベラの顔がこわばる。

 

「マスター、今すぐ全員で助けに行きましょう!」

 

ガルが焦りながら言う。しかし、ドゥークーはウィンゾの様子を確認しながら首を振った。

 

「ダメだ。ウィンゾの容態が想像以上に悪い。今すぐコルサントに向かって適切な治療を受けさせねば」

 

「なら俺一人でも行きます」

 

「それは許可できないパダワン」

 

「許可は取りません。今回の件の原因は自分にあります。最悪の場合、責任は自分でとります」

 

ガルはハッキリとした口調でそう述べた。彼のその言葉を聞いたドゥークーは何も答えなかった。しかし、止めることもしなかった。

 

「俺達なら一緒にいけるぞガル」

 

ディルとベラが彼の近くに来て肩に手を置く。

 

「ありがとう二人とも」

 

「なら今すぐにでも出発するか。俺達の船ならちょうど集合地点の近くに止めてある」

 

「よし、今すぐ行こう」

 

ガルはそう言ってディル、ベラと共に歩き出した。

 

その姿を後ろで見ていたオビ=ワンとシャアクは彼に行かないで欲しいと伝えることができなかった。その場を去って行く三人の姿があまりにもしっくりときすぎていたのだ。

 

「あいつは今回の事でジェダイを辞める気なのかもな」

 

「そうね………」

 

シャアクは最悪の事態を想定して自分の目から涙が流れている事に気がついた。

 

「二人共、大丈夫だ。あいつなら上手くやってみせるさ」

 

ドゥークーは三人の後ろ姿を見ながら言った。彼の顔は確信に満ちていた。

 

「さあ、我々も先ほど見つけた船に乗ってコルサントまで行かねば」

 

ドゥークーはそう言いながらウィンゾを優しく抱え上げて歩き出した。




お久しぶりです。更新が遅くなって申し訳ないです……
現在定期テストが近いのと偏頭痛が酷かったので話を書く時間がありませんでした。
次回の投稿は一週間以内に一回できれば良いかなと思っています。少しの辛抱をお願いいたします。
それでは次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらんことを!


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クワイ=ガンとタール

どうも皆さん。お久しぶりです。
大変長らくお待たせいたしました。投稿再開でございます。
遅くなってしまって本当に本当に申し訳ありません!
色々ありまして今後のストーリー展開に関してのプランとある程度の予定をしっかりと作っていました。それに続編についても………

というわけでWhat Ifシリーズ復活であります!

後書きにはサプライズで、今後予定している新シリーズの予告編を載せておきますので是非後書きまで読んでいただけると嬉しいです。

それでは次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらんことを!


クワイ=ガンとタールの出会いはガルやシャアクと同じ、ジェダイ・イニシエイトの頃だった。

 

ジェダイは産まれてまもない頃からその素質を見出され、遠くの惑星からジェダイテンプルに連れて来られる者が多い。彼らは親からの愛を知らない。そしてジェダイの教えを小さい頃から教えられる。それはある一種の洗脳のようなものだ。

 

そこで教えられるのはジェダイの常識をベースに作られた常識。決して銀河での常識では無い。

 

そして一番の問題はジェダイの掟にある。

 

そう、ジェダイは恋愛を禁止されている。

 

小さい頃からそれを教えられた者達は恋愛を禁止されている為、生物が抱く普通の感情を知る事ができない。そして気がつく事ができないのだ。

 

大切な人がいても自分の中でその人を愛していると気がつけないのだ。

 

その気持ちは相手を失いそうになって初めて実感できるようになる。そして本人をその感情が支配する。愛、喪失感、怒り、復讐心、後悔。

 

たしかに訓練を受けて他人に感情を抱かない、人の心を失ったジェダイであればそれは問題ないのかもしれない。だが実際そんな事ができるジェダイはほとんどいない。

 

だから苦しみ、暗黒面に行く者がいるのだ。

 

これが大きな問題である事を今のジェダイ達は理解していない。恋愛感情について、そしてそれに対する対処方法を教えなければ根本的解決にはならないだろう。

 

クワイ=ガンとタールもその例だ。

 

二人は幼少の頃から仲が良く、共に訓練やミッションに行った。二人は長い年月を共に過ごしてきた。一般人からすれば二人が結婚しない事が不思議でたまらないだろう。そのレベルで仲がいいのだ。

 

二人の関係が急速に近づいたのは二十歳にちょうどなった年でのミッションだった。

 

当時二人はジェダイ狩りを行なっている賞金稼ぎを逮捕する為に惑星ラクサス・プライムを訪れた。そこで賞金稼ぎとの死闘を繰り広げ、クワイ=ガンは足に怪我を負った。最終局面で賞金稼ぎはたくさん積まれたジャンクの山を爆破した。その爆発で山が崩れ、怪我で動けないクワイ=ガンを守るためタールは崩れ落ちてくるジャンクをフォースで防がなければいけなかった。しかし、そのタイミングを狙っていた賞金稼ぎは彼女の目を狙ってナイフを投げた。それに気がついた彼女は瞬時に防ぐ事ができないと理解した。そして、彼女は自分の目よりもクワイ=ガンの命を優先したのだ。

 

その時何故自分がその行動を取ったのか彼女は理解できなかった。だが次の瞬間更に理解不能な出来事が起きる。

 

怪我をしていたクワイ=ガンが最後の力を振り絞って彼女の前に突然現れたのだ。

 

「あっ!」とタールが叫んだ時にはもう二本のナイフはクワイ=ガンの脇腹に刺さっていた。

 

彼女は自分の前で力が抜けて倒れていくクワイ=ガンをただ見つめることしかできなかった。

 

その後すぐにミッションに来ていた他のジェダイが助けに入り、クワイ=ガンは一命を取りとめた。

 

ミッションの後、クワイ=ガンの病室でタールは疑問に思っていた事を尋ねる。

 

「ねえ、なんで私を庇ったりなんかしたの?」

 

「分からない……ただ、あの瞬間君が自分の目を犠牲にしてまで私を救おうとしていたのが分かって…………」

 

クワイ=ガンは途中で黙ってしまい、最後までハッキリと言おうとはしなかった。

 

「それで??」

 

タールがクワイ=ガンの態度に少し苛立った雰囲気を出す。

 

「いや、その………」

 

クワイ=ガンは困ったなという表情になる。

 

しかし、タールはタールで譲る気が無かった。彼女にもどうしても確かめたいことがあったのだ。

 

「早く言いなさい。私達何年も一緒にやってきたじゃない。今更隠し事は無しよ」

 

「はあ………………分かった。正直に言おう。君の綺麗な目が失われるのが嫌だったんだ」

 

クワイ=ガンは彼女から目を逸らしながら答える。

 

「えっ?つくならもっとマシな嘘をつきなさいよ。私の目なんて綺麗じゃないわ」

 

クワイ=ガンの想定外の回答にタールは混乱しながら答える。

 

「いや、君はとても綺麗な目をしている。何度その瞳に心を奪われそうになっ…」

 

「ちょっとちょっとストップ!ダメダメ!これ以上は言わないで……聞いた私が悪いけどなんか凄く恥ずかしいの」

 

あたふたするタールを見ながらクワイ=ガンは笑顔になった。

 

「わ、私も同じ気持ちよ。もうこれでこの話はおしまい!」

 

そう言ってタールは早々に話を切り上げてしまったのだった。

 

 

 

それからどれほどの年月が経っただろうか。

 

二人はあの日以来お互いの抱いている感情に関する話はしていなかった。

 

確かな確信が無いから、お互い自分の正直な気持ちを打ち明けるのが恥ずかしかったのだろう。

 

そうこうしているうちにその日は訪れた。

 

ラグーン6での訓練だ。

 

ガル達と別れた二人は訓練のスタート地点を目指してずんずんと歩いて行く。一度通った道をもう一度通るのは意外と楽だった。二人は一切道に迷わずに船の止まっている地点に戻ってきたのだった。

 

船は出発した時と全く変わらぬ様子だったので、二人は胸を撫で下ろした。

 

「さて、コルサントに応援を要請した後、この船でガル達を迎えに行かないとな」

 

「そうね。できる限り急ぎましょう」

 

二人は船のランプを上り、中へと入る。しかし、大きな異変がそこにはあった。

 

更にウィンゾが訓練の初めに全員から預かったコムリンクを入れた容器が無くなっていたのだ。それに気がついた二人は緊張感を高めながら操縦席近くの制御パネルでの通信を試みる。しかし、通信は妨害電波によって防がれてしまっていた。

 

「これはまずいな」

 

「ええ。とりあえずこの船でみんなを迎えにいきましょう」

 

タールはそう答えながら操縦席に座り、素早く船のエンジンを入れて離陸準備に取り掛かる。クワイ=ガンも後に続いて副操縦席に座った。

 

突然、船が大きな揺れに襲われる。目の前の地面で爆発が起こり、岩や土を空中に巻き上げた。更に右手でも新たな爆発が起こる。

 

「攻撃だ!」

 

クワイ=ガンが叫ぶ。

 

その間も四方八方から一度にブラスター光弾が笛のような音を立てて弾けた。光弾が船体にも当たり、煙が船の外に充満した。

 

二人は最短の手順で離陸準備を済まして船を飛び立たせようとする。しかし、次の瞬間二人はフォースに大きな乱れを感じた。お互いの顔を見合わせると二人は、激しいブラスターの攻撃も船外の爆発もいっさいが存在しないかのように、コンソールをしっかり握りながら精神を集中していた。そして二人は暗黒面が沸き起こってくる原因を突き止めた。

 

タールは急いで操縦席から立ち上がり、制御パネルのすぐ下のカバーをライトセーバーを起動して切り開いた。

 

「見つけたわ」

 

「爆弾か。もしさっき離陸してたら、吹き飛ばされてたな」

 

タールの手に握られた黒い箱を見てクワイ=ガンが反応する。

 

「解除は無理ね。今すぐここから出ましょう」

 

タールがランプを下ろしながら言う。

 

二人は出口に向かって走った。ランプを駆け降りるクワイ=ガンの目が、貨物口の前にいる黒衣の人影をチラリと捉えた。女が船から急いで距離を取ろうとしているのが分かった。

 

二人がランプを降りきる前に爆発が起こった。

 

二人は爆風で宙に吹き飛ばされた。

 

煙があたりに充満し、視界が悪くなる。頭を上げて当たりを見回したクワイ=ガンは、口の中に広がる刺激性の強い煙にむせながら、何とか膝で立とうとした。

 

渦巻く煙の中で目を凝らして、タールの無事を確認した。

 

しかし、ホッとしたのも束の間で、クワイ=ガンの体に鋭い衝撃が走った。誰かが彼を背後からスタンモードのブラスターで撃ったのだった。

 

タールが地面を這いながら自分の元に近づこうとする姿を見ながら彼の意識は暗転した。

 

 

 

惑星Ventruxーーアーバーインダストリーズ

 

 

 

クワイ=ガンの意識がはっきりとしてきたのはジェナの研究所に到着し、実験台のような場所に縛り付けられた後だった。彼は目を開けると自分の体が異常にダルい事に気がついた。それに加えて思考速度まで低下しているようだった。

 

「薬の影響か……」

 

クワイ=ガンはボソッと呟く。

 

「そうよ。気がつくのが早いわね。流石はジェダイといったところかしら」

 

クワイ=ガンの独り言に返答するように女性の声が部屋に響く。しかし、彼女の姿は部屋の中には無かった。

 

「誰だ……私達ジェダイを狙うとは」

 

クワイ=ガンはボヤける頭をフル活動しながら会話を続ける。

 

「それに、返答に問題も無し。凄いわね。ジェダイってここまで規格外なのかしら」

 

しかし、声の主はクワイ=ガンの返答をあっさり無視した。

 

「ここまでくると薬の量を増やしてみないといけないわね。先にあの女ジェダイの方の薬を増やしておいて」

 

「よせ………!」

 

声の主がタールの事を口にした途端クワイ=ガンが急に大声をあげた。

 

「か、彼女ではなく私に投与すると……良い。私の方が…彼女よりもっと優秀なジェダイだ」

 

苦しそうな声を出しながらクワイ=ガンは宣言する。

 

それを聞いた声の主はクスッと笑いながら答えた。

 

「分かったわ。二人共の薬の量を増やすわね。それじゃあやって」

 

彼女が言い終えると部屋のドアが開く音がし、一人の男が入ってくる。男は迷いもなくクワイ=ガンの近くに寄り、首元に正確に注射をさした。

 

みるみるうちに視界がボヤけ、クワイ=ガンは再び眠りに落ちるのだった。

 

その姿をモニターで観察していた声の主、ジェナ・ザン・アーバーは手元にあるタブレットへと目を移す。そこにはクワイ=ガンとタールの実験経過が記されていた。

 

「面白いことが分かったわね……どうやらあの二人、お互いの事を心配しているようね」

 

ジェナは先程のクワイ=ガンの発言に興味をそそられていた。その理由は彼より先に意識を取り戻していたタールにあった。彼女は何よりも先にクワイ=ガンのことを心配していたのだ。

 

「ジェダイって恋愛が禁止されていたんじゃなかったかしら……」

 

ジェナはそんなことを呟きながらタブレットを机の上に放り投げ、部屋を出た。

 

彼女は部屋を出た後、長い廊下を歩いてゆく。そして、その廊下の突き当たりにある部屋の前で止まった。部屋の作りは頑丈でいくつものセキュリティがかけられていた。それらを解除した彼女は部屋へと入って行く。

 

部屋の中には一つの大きな柱のようなものが存在していた。そしてその中に何かが保管されている。

 

その柱は強化ガラスで出来ていて、真ん中に一つのとある物が浮遊していた。

 

「これで、私も遂にフォースも真実を知れるのね!」

 

そう大声をあげる彼女の目はとても輝いていた。

 

そして、その声に反応するかのように保管されている物体は赤く光ったのだった。




ーtrailerー

太古の昔より、そのキューブは存在した。

どこから来た物だか不明だが、そのキューブには世界を生み出し、生命で満たす力が秘められていた。我々の種族もそうやって誕生し、調和して生きていた。だがこの強大な力をある者は善のために、ある者は悪のために使おうとし、戦争が始まった。精算を極めた戦いで我々の星は破滅し、キューブは遥か宇宙の彼方に消えた。

我々は故郷を甦らせようとキューブを探して銀河に散った。あらゆる星、あらゆる世界を探し……望みが潰えたかにみえた時、新たな手がかりを得て我々は未知の惑星へと向かった。


地球へと……


だが時は既に遅かった……



Second series of What If









Transformers-What If


Coming on This Winter


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アーバーインダストリーズ

大変申し訳ありませんでした。完全にスランプ状態だったため投稿を長い間お休みしてしまいました。
徐々にですが復活させていこうと思っているので長いスパンで見守っていただけると嬉しいです。
かなり久しぶりの執筆の為、文章力の低下、展開の速さに違和感などあるかもしれませんが優しい目で読んでいただけると嬉しいです。


アーバーインダストリーズはこの惑星の住人にとって信仰の対象とも言えるほど重要な物だった。

 

今から数年前、惑星Ventruxは正体不明の伝染病が大流行した。街にはいくつものデマが流れ、大混乱状態だった。政府は崩壊し、惑星を見捨てて出て行く者も多かった。しかし、そこで手を差し伸べたのがジェナ・ザンアーバー率いるアーバーインダストリーズだった。

 

彼女はどの研究者よりも早く正体不明の伝染病の正体を突き止め、街の住人達を救ったのだ。その後、彼女はアーバーインダストリーズの本社を惑星Ventruxに移し、惑星の復興に尽力する。

 

だが、彼女がおかしくなりはじめたのはちょうどその頃からだった。

 

ある時、街の住民は彼女が大切そうに握りしめているピラミッド状の何かに強い不快感を覚えたという。

 

彼女をよく知る者はそれの正体を聞いた。しかし、何も答える事はなかったという…………

 

 

 

この日も惑星Ventruxはいつもと変わらず綺麗な青空をしていた。

 

街に降りようとする船は昼の太陽に照らされて輝いていた。

 

いつもと変わらない日常。

 

気持ちのいい昼下がり、多くの人は外で昼食を取りたがるだろう。

 

街から離れた場所にあるあの建物の惨状を見るまでは……

 

アーバーインダストリーズの巨大な建物からは煙が上がり、その建物のおおよそ四分の一が吹き飛んでいた。そしてその残骸の上にはディルの船が止まっていた。

 

 

 

ーーアーバーインダストリーズ

 

 

 

「緊急!緊急!侵入者あり!!至急応援を!」

 

「どうなってる!誰か状況説明……グハッ!」

 

あちこちから聞こえる助けを求める声。吹き飛ばされる研究員達。

 

そこに広がる光景の全てが異様だった。

 

「お前!ここがどこだか分かっているのか?」

 

駆けつけた一人の警備兵がブラスターを構えながら声をあげる。

 

警備兵が銃口を向けた先には白い煙に包まれた三人の人影があった。

 

「こっちこそ聞くがお前らが今守ってる実験体がジェダイだって知ってるのか?」

 

その声の主は警備兵に一瞬で近づき、鋭い蹴りを腹に当てた。警備兵は苦しい顔をしながら一瞬で気を失った。

 

「はあ……この施設にいると吐き気がする!」

 

ガルは吐き捨てるように言う。

 

「なんでだ?」

 

ディルが不思議そうな顔をしながら聞く。

 

「分からない。ただ無性に殺意が湧くんだ。何故かこの施設自体を破壊したい衝動に駆られる」

 

ガルは荒い呼吸をしながら答える。

 

「だから初っ端から施設を爆破したのね」

 

ベラが納得しながら先に続く廊下にスモークグレネードを投げる。

 

「さっきのデータの通りだとジェダイ二人はもっと先の部屋で捕まってるな」

 

「二人のフォースがかなり弱っているから正確な位置が割り出せない」

 

「なら急ぎましょう」

 

三人は続く一本の長い廊下に入っていくのだった。

 

 

 

「へえ……ジェダイと残りの二人は私が雇った賞金稼ぎ。悪くない組み合わせね」

 

施設の監視カメラ映像を見ながらジェナは嬉しそうに笑う。

 

「ねえ、そこの二人?例の武器の使用を認めるわ」

 

ジェナは自室の入り口付近に立っている警備兵に指示した。二人の兵士は軽く敬礼をすると急ぎ足で部屋を去っていった。

 

「さあ、研究もほとんど終わったし。私はそろそろこの施設から離れる準備をしないと!」

 

 

 

ガル達三人は長い廊下を何人もの警備兵を殺しながら進んでいく。

 

「こいつらどっから湧いてきてんだ?」

 

「本当に……おかしいわね」

 

「どこかに隠し通路でもあるんだろう」

 

三人は突然目の前や背後に現れる警備兵に警戒しながら先へと進んでいく。

 

少しするとまた進行方向に数人の人影が現れる。

 

ガルが一番最初に先頭の一人をライトセーバーで切り裂く。そしてディルとベラがブラスターを正確に連射する。

 

三人の連携は完璧だった。

 

全員を倒した三人はまた長い廊下を進み始める。しかし、突然ガルは歩みを止めた。

 

次の瞬間金属製の球体が一直線で近づいてきた。

 

「グレネードだ!」

 

ガルの反応はいつも通り俊敏なはずだった。しかし、彼がフォースでグレネードを押し返そうとしている時には既にグレネードが爆発し、吐き出された真っ白な煙が彼の頭の上からかかろうとしていた。

 

「ガル!」

 

ディルは急いでガルを後方に引き戻した。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ……特に問題は無さそ…」

 

ガルの言葉が途中で止まる。

 

「何?どうしたの?」

 

ベラが心配そうに聞く。

 

「この煙を絶対吸うな。今来た道をすぐ戻るぞ!」

 

そう答えながら走るガルの様子は明らかにおかしかった。何故なら彼の頭の中にある一つの恐ろしい言葉が浮かんでいたからだ。

 

 

『自我抑制ゾーン』

 

 

かつてレジェンズの小説で一度目にした言葉。

 

ジェナザンアーバーが作り出した謎の施設。ジェダイですら抗えないほどの効力を持った薬。それは思考力、行動力を低下させる。なのに異常な幸福感をもたらす。さらにその薬はフォースとの繋がりを強制的に断つことができるのだ。

 

あの一瞬、グレネードから出た煙を少しだけ吸ってしまった彼は確信した。

 

「あの薬はもうこの時代から完成してたのか……」

 

背後から迫る白い煙を感じながら三人は来た道を走りながら戻って行く。

 

「ベラ!タイミングを合わせてグレネードを設置するぞ!」

 

「了解!」

 

「ガルは白い煙をフォースで押し留めてくれ!」

 

「分かった」

 

「俺の合図でいくぞ。3、2、1、今だ!」

 

ディルが叫ぶと共にガルは振り返りフォースの壁を作って白い煙を圧縮しながら押さえつけ始めた。その隙にディルとベラが廊下の床、壁、天井にグレネードを設置する。

 

「よし!走れ!」

 

ディルの掛け声で三人は再び廊下を走り始める。

 

三人が爆発の範囲から離れた直後、ディルがグレネードを起動した。大きな爆発音と共に金属の壁が吹き飛ぶ音が廊下に響く。そして白い煙は爆発の影響で空いた外に通じる大きな穴に吸い込まれ、外に吐き出されていった。

 

「間一髪だったわね」

 

「よくあんな作戦思いついたな」

 

「さっき建物内のデータを盗んだときに長い廊下が外に一番近い場所に作られてたのを思い出したんだ」

 

三人はそれぞれ息を整えながら話す。

 

「ああ、だからあんなに敵も大量に突然出てこれるわけか」

 

「で、どうしましょうか。この道はもう使えないわよ?」

 

「そうだな。遠回りだがもう一本の道を行こう」

 

「それと恐らくだが俺はもうあの薬の効果を少なからず受けてる。さっきから反応速度が徐々に低下してるんだ」

 

ガルが自分の手を握ったり広げたりして、自分の体を確認しながら話す。

 

「それはマズいな……」

 

「なら先頭は私達が行くわ。ガルは後ろから来るかもしれない敵をお願いね」

 

「すまない。助かるよ」

 

三人は会話を終えると別の廊下へと足を進めて行く。

 

すると今度は今までと違い、一切警備兵が姿を見せなかった。

 

三人は警戒しながら廊下を進み続ける。

 

「もう逃げたのかしら?」

 

「いや、安心できないな。相手は科学者だぞ?」

 

「ディルの言う通りだ」

 

ガルがそう答えた次の瞬間、廊下の壁にもたれかかる人影が見え始める。

 

恐る恐る近づくと気を失っている研究員だということがわかった。

 

「どうやら右足と左腕を折られてるみたいだ」

 

ディルがそう告げる。

 

「私達以外にも誰かいるって事?」

 

ベラが研究員の容態を確認しながら聞く。

 

「二人ともこっちを見てみろ」

 

ガルが廊下の奥を見ながら話す。

 

彼の見つめる先には殺された警備兵と研究員の死体がいくつも存在していた。

 

「これはどうやらライトセーバーで切り殺されてるな」

 

ガルは死体の傷を観察しながら言う。しかし、そこにある死体の傷はあまりにも雑なものだった。

 

「そうか……とりあえずあの研究員に話を聞いてみるしかないな」

 

「ええ、そうね」

 

三人が負傷した研究員の元に戻ると彼女はちょうど意識を取り戻していた。

 

「大丈夫か?」

 

ディルが顔を覗き込みながら声をかける。

 

「え…ええ。なんとか…いっ…」

 

研究員は体を起こそうとして自分の体にはしる痛みに顔を顰めた。

 

「無理に動くな。何があった?」

 

ディルが優しく話す。

 

「うぅっ……私、まさか研究対象がジェダイだと知らなくて……そ、それにあのピラミッドが私達を……」

 

彼女は痛みを堪えながら話す。しかし、途中でまた力尽き、気絶してしまった。

 

「例のピラミッドか。これでこのなんとも言えない気持ちの悪い感じがする理由がわかった。やっぱりこの建物のどこかにあるんだな」

 

「ピラミッドってなんのことだ?」

 

「それ私も知りたかったの」

 

ガルの方を見ながら二人が聞く。

 

「ピラミッドっていうのは恐らくシス・ホロクロンの事だ。ジェダイとは似て非なる存在であるシスの全てを記録した物だ」

 

「シスって本当に存在するんだな」

 

「ええ、私も故郷で物語として聞いたことはあるけど実際に存在するとはね」

 

「故郷の物語?」

 

「ええ、私達の故郷にはシスが出てくる話が何個かあるわ」

 

「そうなのか」

 

ガルはシスが物語に出てくると知ってかなり驚き、もっと詳しく聞きくなった。しかし今はクワイ=ガン達の救出に集中しなければと思い、それ以上の質問をやめた。

 

「さて、色々状況は整理できてないが先を進むとするか」

 

「ええ、何よりも救出が先ね」

 

三人は再び廊下を早足で進み続ける。

 

「なあ、あれ誰かジッと立ってるよな?」

 

ディルがかなり先に見える人影らしきものを指しながら言う。

 

「確かにそうだ」

 

「誰かを抱えているわ!」

 

相手の様子に気がついたベラが急に走り始める。

 

「焦るな!」

 

ディルが叫ぶもすでに遅く、ベラは人影に近づいていった。二人は焦りながらベラの後を追い走った。

 

 

 

そして人影の正体を知った全員がその足を止めた。

 

 

 

そこにはタールを抱えながらただ黙って立ち尽くしているクワイ=ガンがいた。ガルは目の前にいる彼からはフォースを感じることができたが、タールからは感じることができなかった。

 

さらに、クワイ=ガンもほぼ死んでいるも同然だった。彼は一切その場から動かず何の反応も見せなかった。まるで広い平原に立つ一本の木の様だった。

 

二人の生命の光は今にでも消えていきそうだった。

 

「そんな……」

 

悲痛な声を出しながらベラは顔を覆う。

 

「間に合わなかったのか」

 

そう言いながらディルは自分の拳を壁に叩きつけた。

 

ガルはただ呆然と二人の姿を見ていることしかできなかった。

 

 

 

彼は救えなかったのだ。自分の愛する者達を。救うと誓った命を。

 

 

 

ガルはがむしゃらに強大なフォースを集めて彼らの傷を癒そうとした。しかし、彼らの生命の光が戻ることはなかった………

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!!なんでだ!!何がいけない!!」

 

ガルの集めるフォースは竜巻の様になり、あたりに充満していた。

 

『そこの者達を救いたいですか?』

 

どこからともなく突然ガルの頭に声が聞こえ始める。

 

『救いたいなら求めるのです』

 

『何を?』

 

『知識と力です。あなたなら理解できるはず』

 

この時ガルは、今聞こえる囁きは研究所内のどこかにあるシス・ホロクロンから来ている事を悟った。

 

『さあ!求めるのです。あなたが欲しがっている物を今すぐ!』

 

聞こえる声はより一層と強くなり彼の心を乱した。

 

普通ならこの誘惑に耐え、彼らの死を見届けるのがジェダイの道なのだろう。だが、彼はそんな事、どうでも良かった。

 

『よこせ!お前の知識と力の全てを!』

 

『いいでしょう。私の力を貸してあげましょう』

 

そう声が聞こえた直後、ガルの体に強大なダークサイドのフォースが流れ込んできた。

 

「うっっ……」

 

あまりの衝撃にガルは気持ちが悪くなりそうだった。

 

しかし、徐々に体が慣れ、ホロクロンの声を聞きながらクワイ=ガンとタールに歩み寄り、彼らの体に触れた。

 

彼は自分の持てる全てのフォースを集め、全力のフォースヒーリングを行った。フォースヒーリングを行使した直後、彼の体には大きな脱力感が走った。

 

それから数分が経ち、彼は二人から手を離した。

 

何度も意識が飛びそうになったが、何とかガルはやり遂げたのだ。

 

先程まで、今にでも消えそうだった二人の生命の光は輝きを取り戻し、いつものクワイ=ガンとタールに戻っていた。

 

『良く耐えました。あなたなら私に残る記録を理解できるでしょう』

 

ホロクロンから声が聞こえ、ガルは成功した事を知った。

 

「ははっ…やった。やった!」

 

ガルは喜びのあまり、飛び跳ねた。

 

「ガル!お前何したんだ?」

 

「フォース・ヒーリングを成功させたんだ!」

 

ガルは得意になりながらディルに自慢した。

 

「なんだか分からないが凄いな!」

 

「だろ!」

 

そしてその直後、大量の血反吐を吐いた彼は意識を失い、地面に倒れるのだった。




いつも読んでいただいている皆様、大変お待たせしてして申し訳ありません。これからもゆっくりですが頑張っていきますのでWhat If Seriesを応援よろしくお願いいたします。
次回の投稿は来週の土曜日までにする予定です。
それでは皆さんフォースと共にあらんことを!


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1つの光

この回を書いたときにクリスマスあたりに公開したいなと思ったのでクリスマスに公開する事にしました!
このシリーズで珍しく暗くない明るくハートフルな回だと思います。是非楽しんでいってくだい♪
Merry Christmas!!


大量の血反吐を吐いたガルはクワイ=ガン達と共に直ぐにディルの船に運ばれ、彼はその後すぐに意識を取り戻した。

 

また、クワイ=ガンとタールの容態は回復したものの未だに意識が戻らず、ディルの船の寝室で寝かせて様子を見ることとなった。

 

意識を取り戻したガルはディルからその後の報告を聞くためコックピットに来ていた。

 

「それで、何で血を吐いたんだ?」

 

ディルが操縦席から聞いてくる。

 

「さあな。でもほら、ピンピンしてるし大丈夫だろ」

 

そう言いながらガルは軽く踊ってみせた。

 

「ならいいけど。驚かせるのはやめてよね」

 

「そんなつもりは全くなかったんだが……すまない」

 

「そうだそこに置いてある食事を食べるといい」

 

ディルの言葉を聞いたガルは目の前に置いてあった食事を直ぐに手に取り、口にかきこんだ。

 

「それで現状の説明なんだが……」

 

「ん?どうした?」

 

ガルがご飯を食べる手を止めて聞く。

 

「いや、あの後の報告と悪いニュースがあってな。どっちが聞きたい?」

 

「先に報告からで頼む。その間に飯を食べるから」

 

「了解。あの後、俺たち二人で施設を隈なく調べたが、生存者は残っていなかった。それにシス・ホロクロンを厳重に保管していたと思われる部屋には何も残っていなかった。恐らくはジェナに持ち去られたんだろう」

 

「そうか…まあ今手に入れたところでジェダイに没収されるのがオチだ。逆に持ち去ってくれたなら感謝だな」

 

ガルは口に入った食べ物を飲み込んでからそう答える。

 

「それで……悪いニュースの方なんだが」

 

「ホロクロンが置いてあったと思われる部屋のデバイスにこんなものが残ってた」

 

ディルはそう言いながらガルの前にデータパッドを置く。そこには多くの名前が載っており、名簿になっていた。

 

「これは?」

 

「どうやらジェダイを攫う前にあの研究所では多くの孤児が連れてこられて実験されていたみたいだ」

 

「おいおい……」

 

ガルは手に持っていた皿を置いてデータパッドを直ぐに触り始めた。データパッドに載っている名前は下にスクロールすればするほど新しい名前が沢山出てきた。

 

「ざっと百人弱ってところか?」

 

ガルは名簿を見ながら聞く。

 

「分からない。まあだがそんなとこだろう」

 

それを聞いたガルは特に何も答えなかった。

 

「この広い銀河に孤児なんて数えられないほどいるのは分かってるでしょう?だから自分を責めたって何の意味も無いわよ?」

 

ベラがデータパッドの画面に釘付けになっているガルの背中をさすりながら慰める。

 

「分かってる。そういえばあの怪我してた研究員は?」

 

確かにそうだと思い、ガルはなんとか割り切ることにした。そして新たな疑問を投げかける。

 

「あれ?そういえば彼女を見なかったわね」

 

ベラが今ままで忘れていたという様な返答をする。

 

「俺も見てないな」

 

「そうか。なあ、あの研究員の特徴覚えてるか?」

 

「特徴?髪の長い女性だったな。だが、顔はあんまり良く覚えてないな」

 

「えっ?髪はショートだったわよ?」

 

ベラがディルの言葉に驚きながら反論する。

 

「やっぱりか……」

 

「やっぱりってどう言うことだ。ガル?」

 

「俺も顔を思い出せない。それに彼女の髪は長くてドレッドが混じっていた」

 

「全員の記憶が違っているなんて変ね…」

 

「これでハッキリしたな。恐らくあの研究員がジェナ・ザン・アーバー本人だったんだろう」

 

「なんだって?」

 

「どうしてそうなるの?」

 

確信を持った様子のガルを見て、二人は困惑していた。

 

「彼女はヴォイド(空虚)だったんだ」

 

「「ヴォイド??」」

 

ガルの言葉の意味を理解できないといった表情を二人はした。

 

「ヴォイドという者たちは、見た目には実際のエネルギーを発していない様に見える。ちょうどホログラムの様に」

 

彼は二人が理解しやすい様にホログラムを起動してみせる。

 

「だが、本当に少数の強力な者になると、ジェダイの知覚を持ってしても、たんにうつろだという印象しか与えないのだという。ゆえに、ハッキリとフォースの暗黒面が脈打って感じられる者よりも、危険だと言える。ヴォイド達は、暗黒面を隠せるほど狡猾で集中力がある。しかも、その隠し方は完璧に近く、ジェダイからもしばらくは正体を隠し通せるんだ」

 

「そんなのが存在するのね」

 

そう反応するベラと同時にディルの船の通信機が鳴った。

 

「そろそろ帰るか。一応マスタージェダイが無事って事だけは報告済みだから、残りの報告はお前が頼むぜ?」

 

「私達、あの頭の硬い人達苦手なの」

 

「ははっ、了解した。やっぱりそう思うのかみんな」

 

ガルは少し笑顔になりながらジェダイ聖堂からの通信に応じるのであった。

 

 

 

 

ガルがジェダイ聖堂と通信していた頃、ディルの船の寝室ではクワイ=ガンが悪夢にうなされていた。

 

『助けてクワイ=ガン!!』

 

夢の中ではタールがそう叫ぶ声が繰り返され、自分の腕の中で彼女の生命の光が失われる最悪の瞬間が何度も目の前に映し出される。

 

その映像は彼にとって耐え難いものだった。目を瞑って耳を塞ごうが何も変わらない。彼の腕の中で愛する彼女が息を引き取ったのは紛れもない事実だった。

 

クワイ=ガンはあの時何故彼女を助けられなかったのかと、何度も何度も自分を責めた。

 

そして何年も昔に封印したはずの感情が溢れ出てきた。いや、封印などしていない、ただ見て見ぬふりをしていただけだ。彼は常に彼女の側にいて離れなかった。それは紛れもない愛の証だった。

 

 

タールを愛していたのだ。

 

 

その事実から常に目を背けて生きてきた彼は今になってとてつもない後悔をした。

 

『はあ……なぜずっと側にいたのに少しも伝えなかったのだろうか』

 

彼は夢の中で静かに呟いた。

 

『長い間共に生きてきたのに一度も思いを伝えられずにこの人生を終えてしまうなんて……』

 

『自分は死んだのだろうか……いや、私もあの傷で生きていられるはずがない』

 

『ああ、タールよ。こんな不甲斐ない私を許して欲しい。この歳になっても愛する者に気持ちを伝えられないなんて……ジェダイの道ではいけないと分かっていても、君を心から愛していたのだ。心から』

 

クワイ=ガンはタールの事を思いながら静かに涙を流した。

 

『どうしても君に伝えたかった…………この気持ちを』

 

そう言いながら彼は静かに目を閉じた。

 

次の瞬間、彼は目を覚まし、自分がまだ生きている事を悟った。

 

「生き残ってしまったか…」

 

彼はそう呟きながら目からこぼれ落ちていた大量の涙を手で拭った。痛む上半身をゆっくりと起こしながら彼は目の前の壁をただ見つめていた。

 

「君を何としてでも守ると誓ったはずなのに……」

 

そう呟いた直後、

 

「どうやら私も生き残ったみたいね」

 

クワイ=ガンのベッドの反対側にあるもう一つのベッドから聞き覚えのある声が響く。

 

その声は優しく、そして絶望していた彼の心を温かくした。部屋は暗く、姿を確認することはできなかったが、そこには紛れもなくタールのフォースが存在していた。

 

「まさか……」

 

クワイ=ガンは体が痛むのも気にせず、ベッドから這い出てタールの元へと向かった。

 

「タール、タール……」

 

彼は何度も彼女の名前を呼びながらもう一つのベッドへと近づく。そしてベッドで体を起こそうとしている彼女に抱きついた。

 

「ちょっ、ちょっとクワイ=ガン痛いわよ」

 

彼女は驚いてそう言ったが抱きついてくるクワイ=ガンを止めはしなかった。

 

「ああ……タール。すまない、許してくれ。君を守れなくて」

 

あのクワイ=ガンが泣きながら彼女に謝る。

 

「良いのよ、気にしないで。本当に」

 

そんな彼を見ながら彼女は笑顔になった。そして彼女の目からも自然に涙が流れてくる。

 

「長い間一緒にいて一度も言わなかった事を伝えようと思う。いや、伝えなければいけない事だ」

 

クワイ=ガンはタールから離れて彼女の目を真っ直ぐ見つめる。二人共泣いていて顔はぐちゃぐちゃになっていたが、どこか幸せそうな表情をしていた。

 

「タール、結婚しよう。君を愛している。心から」

 

覚悟を決めた彼の目には一点の曇りもなく、愛する彼女の綺麗な目だけを見つめていた。

 

「ええ、ええ。私もよクワイ=ガン。あなたを心から愛してる。結婚しましょう」

 

彼女は何度も頷きながらクワイ=ガンのプロポーズを承諾した。彼女は今まで彼が見たどの笑顔よりも美しく笑った。

 

「は、はは。今私は君と婚約したのか?」

 

「ええそうよクワイ=ガン。私達婚約したのよ!」

 

そして見つめ合った二人はキスをした。

 

「私を離さないでね」

 

「ああ、君を決して離さない」

 

その後、二人は抱き合いながら再びキスをした。

 

 

 

 

 

(一週間後)

 

 

 

 

 

コルサントーーココ・タウン

 

 

今日もここ、デックス・ダイナーは貸切の予約が入っていた。店の中は派手な飾り付けがされ、完全なお祝いモードだ。厨房ではデクスターが大慌てで何かを作っていた。

 

「ガル、シャアクは来たか?」

 

店の様子を外から覗くガルに対してオビ=ワンが声をかける。また、店先で話す二人は珍しくチュニックとローブではなく、正装だった。

 

「いや……自分の中で気持ちの整理ができるまでは祝えないって言ってた」

 

「そうか…まあ難しい事だしな」

 

オビ=ワンは納得しながら答える。

 

「逆にお前は何であんなに簡単に受け入れられたんだ?」

 

「何で……か。元々勘づいてはいたし、考え方も変わったんだ」

 

「マジで言ってるのか?」

 

ガルはあのお堅いオビ=ワンが今言った言葉を信じられなかった。

 

「ああ。それもこれも全部お前の影響だけどな。はあ、ジェダイの掟に疑問を持つことになるなんて……」

 

「ふふっそうか。それなら良いんだ。疑問を持つ事は自然なことだぞ親友」

 

「よせよ。お前に親友とか呼ばれるとなにかまた悪影響を及ぼされそうな気がする」

 

オビ=ワンはそう言いながらニヤッと笑った。

 

「あ!二人共そこにいたんですね。マスタークワイ=ガンが結婚指輪が無い無いって大騒ぎしてるんで手伝ってください!」

 

アイラが立ち話をしていた二人を連れ戻しにやってきた。

 

「えー勘弁してくれよ」

 

「何でこうも私のマスターは結婚直前に色々やらかすのだろうか」

 

ガルとオビ=ワンはグダグダ言いながらもアイラに連れられて店内へと戻っていく。

 

 

クワイ=ガンとタールがディルの船内で婚約したあの日からもう一週間が経っていた。その後、コルサントに着いた一向はジェダイ聖堂へと一番に向かうのではなく、デックス・ダイナーへと向かった。しかし、ガルだけはジェダイ聖堂へ先に帰る様にとクワイ=ガンに言われ、聖堂のプラットフォームで降ろされた。そしてガルはたった一人で評議会の前で現状報告と今回の行動に対する責任を負わされることになったのだ。

 

だがガルが去った後、評議会メンバーのマスターヨーダ、ドゥークー、プロ・クーン、キ=アディ=ムンディの四人が今回の件に関しては非難すべきではなく、称賛すべきだとの意見を出した。その後四人の説得により、最後まで不服そうな顔をしていたマスターウィンドゥもそれを承諾し、ガルのナイト昇格を早めるという結果になった。ドゥークーはしっかりとした状況を判断をした上で仲間を決して見捨てずに希望を持つガルの姿勢に我々ジェダイも見習うべきだと言った。しかし、多くのジェダイはそれに難色を示した。

 

次の日、クワイ=ガンとタールに呼ばれ、五人のジェダイはデックス・ダイナーへと向かった。そして五人は正式にクワイ=ガンとタールが秘密裏にここデックス・ダイナーで結婚すると伝えられた。ドゥークーはそれを聞き、すぐに祝福した。オビ=ワンとガル、アイラも二人の結婚を喜んだ。だが何故かシャアクは気持ちの整理ができないと言いダイナーを飛び出してしまった。彼女の後をガルは追いかけたが、特に状況が変わる事はなかった。

 

そして現在、デックス・ダイナーには神父さんの前で向かい合うクワイ=ガンとタールの姿があった。

 

そんな二人を見守るのはドゥークー、ガル、オビ=ワン、アイラ、ディル、ベラ、ジャンゴ、ザム、デクスターの九人だった。たった九人だけの参列者でも二人の結婚には充分だった。

 

「フォースの繋がりが消えてもお互いを愛し続ける事を誓いますか?」

 

「はい。誓います」

 

「ええ、私も誓います」

 

二人は神父さんの言葉に即答し、熱いキスをした。

 

その瞬間、九人は起立して、大盛り上がり。

 

「おめでとう!パダワンよ」

 

「おめでとうございますマスター!」

 

各々が祝福の言葉を述べ、クワイ=ガンとタールの二人は抱き合いながら終始とても幸せそうだった。

 

「さあ!ケーキの登場だぞ」

 

デクスターが厨房から大きなウエディングケーキを運んでくる。

 

「沢山食べてくれよ俺も手伝ったんだ」

 

「えっジャンゴが?」

 

「なんだガル、気にいらないか?せっかくエプロンまでつけて本気で作ったのに」

 

ジャンゴが笑いながら聞く。

 

「いやそうじゃなくてキャラじゃないというか、エプロンしてケーキ作りをしてるところが想像できない」

 

「私もだ」

 

ガルにオビ=ワンも賛同する。

 

「それなら二人にも見せたかったわ。彼が私の持ってる可愛いエプロンを着てケーキ作りを一生懸命頑張っているところ」

 

「ザム?その話はしない約束のはずだが?」

 

「あれ?そうだっけ忘れちゃってた。アハハ」

 

ザムはイタズラっぽく笑う。

 

「そこまでしてくれた事に本当に感謝するよ」

 

「いや、気にしないでくれマスタークワイ=ガン・ジン」

 

「クワイ=ガンで良い」

 

「そうか。とにかく結婚おめでとうクワイ=ガン」

 

「ああ、ありがとう」

 

その後、クワイ=ガンとジャンゴは軽くハグをした。

 

デックス・ダイナーでは今、クワイ=ガンとタールがディルとベラから結婚生活のアドバイスを聞き、ジャンゴとザムはドゥークーと銀河の情勢を話しつつ二人の関係の進展を聞いたりし、アイラはオビ=ワンにイジられながらもデクスターから料理の仕方を教わっている。

 

こんな光景が信じられるだろうか。

 

そう、今目の前に広がる全てのものはガルが思い描いていたそのものだった。たとえこれから乗り越えなければならない困難がいくらあろうとも頑張っていけそうなほど、この瞬間は素晴らしいものだった。ただじっと少し離れた場所から見ているだけでも泣きそうになってしまいそうなほど美しく平和で完璧だった。しかし彼は、それと同時に寂しさも覚えた。皆が笑っている中やはり自分だけはどこか違うのだと思い知らされているようだったからだ。

 

一人だけ彼らの本当の関係性を知っている人間。それは彼らを救うためには大事な事だが、それが故にガルは完全に彼らと打ち解けることができないのだ。彼らを心から信頼し、愛している気持ちは変わらない。だがやはり心の片隅には自分はただの傍観者であるという思いは消えなかった。まるで自分がスターウォーズというストーリーを書くライターであるかの様に。

 

ガルはこの完璧な瞬間を忘れないように記憶しようと思った。一人で少し距離の離れたカウンター席から彼らの声、笑顔を見て彼は胸が一杯になった。

 

「さあ!ガル考案のスカイランタンをやってみましょ!」

 

「そうね外も良い具合に暗くなってきたわ」

 

そんなみんなの会話が聞こえ、ガルは急いで準備に取り掛かった。

 

デックス・ダイナーの外に出た一行はそれぞれのランタンに火をつける。

 

そして順番に空へ向かって手を離す。最後にクワイ=ガンとタールが二人で一つのランタンを空に放った。

 

たとえランタンの数は少なくても、夜のコルサント上空に上がっていくランタンはとても幻想的だった。

 

「綺麗…」

 

「ああ」

 

その場の全員が上空のランタンから目が離せないでいるようだった。

 

そんな全員の背中を見ながらガルはやる気に満ちていた。

 

彼にとって遂に自分の力でこの世界の未来を変える事ができたという事実はとても大きな成果だった。未来はいい方向に向かっている。そう信じて彼はまた新たな一歩を踏み出していく。今日見たこの素晴らしい関係を壊さないためにも。

 

そして彼は思った。

 

『さあ、準備しよう。次はマンダロアだ』




こうやって書いていて思うんですけど全然ファントム・メナスに行かなくないですか?w
そろそろ飽きてきている人もいるかもしれませんがどうか今後ともお付き合いください。予定ではマンダロア編でSeason2が終わり、Season3前半でファントム・メナス前日話を書こうと思っています。まあこの後season4と5があってまた長〜い道のりですクローンの攻撃までは……

というわけで皆様、Merry Christmasです。年内にマンダロア編をできる限り進めたいと思います!
それではまた次回の投稿でお会いしましょう〜フォースと共にあらんことを!


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マンダロア派遣

お久しぶりですAlexです。投稿再開します。


マンダロア宙域ーー惑星マンダロア付近

 

 

『よーし、後数分で着くからな。覚悟しとくんだぞ』

 

船内には操縦席からアナウンスするクワイ=ガンの声が聞こえていた。

 

「マンダロアなんて考えられないわ」

 

一人で頭を抱えながらシャアクが言う。

 

「そんな事言うなよ。俺達の助けを必要としている人がいるんだから」

 

「ガルの言う通りだぞ」

 

「はいはい!そうですねーもうナイトに昇格したガルさんは流石ですね〜それにもうすぐでナイトに昇格できるケノービさんも」

 

「はあ……いつまでその事引きずるつもりなんだ」

 

「もういいよ好きに言わせとけ。アイラ、準備に行くぞ」

 

そう告げた彼はアイラと一緒に部屋を出て行く。

 

「ちょっと……なんなのよ腹たつんだから本当に」

 

二人が出ていった途端、シャアクが愚痴をこぼす。

 

「少しは大人になったらどうだ?マスター達の結婚を祝わず、ガルには終始突っかかる。最近は私とアイラにも」

 

「だって……」

 

「受け止められないのは分かるが、お祝いの言葉ぐらい言えただろう。二人は君を信頼しているからカミングアウトしたんだ」

 

「結婚式に出なかった時点でもう私はタイミングを見失ってたわ」

 

「別にいつでも良かったはずだ。二人なら君からの言葉に必ず喜ぶ」

 

「それにその後すぐガルがナイトに昇格するって聞いて凄く不安になったの」

 

彼女の言う通りあの結婚式の後、一ヶ月もしないうちにガルはナイト昇格が決定したのだ。

 

「それにあなたまでナイトに昇格するって聞いて……もう私一人だけ取り残された気分…」

 

明らかにシャアクは凄く落ち込んでいた。

 

「私のナイト昇格に関する話はまだ決まったわけじゃない。ただの噂だよ」

 

「でも最近あなたはマスタークワイ=ガンとよく重要任務に派遣されるし、今回の任務もそう。しかも何故かガルはアイラと二人で任務に出る事が多くなったわ。それに聖堂でもガルとアイラが一緒にマスター達から呼ばれることも多くなったし」

 

「なあイライラの原因って本当はそれじゃないか?」

 

「それって何よ?」

 

「ガルがアイラとずっと一緒にいる事だ」

 

「えっ??」

 

シャアクは驚いて聞き返す。

 

「やっぱりな」

 

「ちょっと。ねえ、やっぱりって何よ」

 

「マスターの結婚やガルの昇格が君を不安にする要因だとは思っていたが、本当はただガルとアイラに嫉妬してるからだな?」

 

「……………」

 

「答えないって事は図星だな」

 

オビ=ワンは笑う。

 

「安心しろシャアク。ガルは今、恋愛について考える暇が無いって言ってたぞ。でもそう言いながら君を常に気にかけていた」

 

「本当に?」

 

「ああ、本当だ。ガルはそれに私と君二人のナイト昇格を推薦している」

 

「本当に!?なにそれ私全然聞いてない!」

 

嬉しそうな声を上げるシャアク。

 

「だってあの日以来君はみんなを避けるだろう?」

 

オビ=ワンにそう言われたシャアクは何も言い返せないという様子だった。

 

「まあとにかく今はそういった類いの考えは捨てるんだ。これから我々は内戦真っ只中のマンダロアで護衛任務に就く。気を引き締めるんだ」

 

「分かってるわよそれぐらい」

 

二人が会話を終えた頃、船はもうマンダロアに到着しようとしていた。

 

 

 

ーー惑星マンダロア

 

 

 

プラットフォームに着いた一向は警備兵達に連れられ、スピーダーに乗り街中を走っていく。そして少しすると彼らの目の前には学校の様な建物が見えてくるのだった。

 

スピーダーを降りた彼らは建物内へと案内される。

 

「ねえ、ここって学校?」

 

「そうだよな」

 

「こんな場所で警護にあたれって話なのか?」

 

「流石にそれはキツいわよ」

 

クワイ=ガンと少し距離を空けて歩く四人はそんな会話をする。

 

「大丈夫だ四人とも。ここは首都からかなり離れた場所にある。それにここは旧王立アカデミーといってマンダロアで一番警備が厳重な場所だ」

 

クワイ=ガンが宥める様に話す。

 

「そういう言葉って信頼できないわよね」

 

「まあね」

 

「じゃなきゃ俺達の事も呼ばないしな」

 

「同感だ」

 

案内された部屋に着くまで四人は静かに文句を言い続けていた。

 

案内された部屋はいかにも教室という様な部屋だった。それにガルはこの部屋のデザインに見覚えがあった。それはクローンウォーズ時代に出てきたマンダロアの王立アカデミーと内装がほぼ同じだったのだ。

 

その部屋には二人の少女がこちらを向いて立っていた。そしてその二人を守るようにして警備兵が四人もついていた。

 

そしてジェダイの到着を確認した警備兵の一人が口を開いた。

 

「さて、ジェダイの皆様、ご紹介させていただきます。こちらはサティーン・クライズ公爵、そしてこちらは妹のボ=カターン・クライズです」

 

彼女達の名を聞いてガルはいよいよこの時が来たかと思った。

 

「おい、オビ=ワン。公爵を凝視するな」

 

ガルは隣でサティーンに見惚れているオビ=ワンに、二人だけに聞こえる声で注意をした。

 

「う、う、うるさい」

 

オビ=ワンから変な声がでる。

 

「ちょっ、笑わせるなアホ」

 

ガルは笑いを堪えながら話の続きを聞く事に集中した。

 

その後彼らは現状のマンダロアと今後の作戦についての話を聞いた。

 

現在この旧王立アカデミーでは普段と変わらず授業が行われているそうで、ガル、シャアク、アイラの三人はその警備強化に当たってほしいとの話だった。そしてクワイ=ガンとオビ=ワンはサティーンの身辺警護を任された。とは言っても実質オビ=ワンが常に彼女の警護をし、クワイ=ガンが内戦真っ只中の首都でサティーンのメッセージを伝えるといったものだった。

 

「良かったじゃないか公爵と二人っきりで」

 

「お前なぁ……覚えとけよ?」

 

「えっ?なんのことかな?」

 

ガルがトボけた顔をしながら答える。

 

「忘れないからな……」

 

「そこはありがとうじゃないのか?」

 

ガルは笑いながら答える。何故なら最初の話ではガルがサティーンの身辺警護をする予定だったのだ。しかし、彼はそれを聞いた途端にオビ=ワンを推薦した。その場にいた全員が驚いたが、彼の巧みな会話術で反対意見を全てねじ伏せたのだ。

 

「サティーン公爵、警備隊長のお二人が到着したそうです」

 

警備兵がサティーンの耳元で囁く。

 

「さて、今回皆さんと行動を共にする警備隊長を紹介します。入りなさい」

 

彼女が合図すると教室のドアが開き、二人のマンダロリアンが入ってきた。

 

ガル達は振り返り、その二人に注目した。その二人のアーマーはとても個性的なデザインをしていて、洗練されていた。

 

しかし、その姿を見た直後ガルは何かを感じた。

 

「ディル?」

 

そして、ふと何故かそう思った彼は気がついた時にはそう言っていた。

 

「バレたか」

 

二人のマンダロリアンはそう言うとヘルメットを取った。マンダロリアンアーマーに身を包んだ二人の正体はやはりディルとベラだったのだ。しかし、それを見たクワイ=ガン達は驚いた。

 

「やっぱりディルじゃないか!それにベラまで」

 

ガルは喜びの声を上げる。

 

「よお、元気してたかみんな」

 

「ベラ、久しぶり!」

 

アイラがベラの元に駆け寄る。

 

「ガル、半年間元気にしてたか?」

 

「まあ、それなりに。それよりなんでここに?家業を手伝うんじゃなかったのか?」

 

「これが家業さ」

 

ディルは自分のアーマーを指差しながら答える。

 

「また君たちに会うとはな」

 

「お久しぶりですクワイ=ガン。タールとは上手くやっていますか?」

 

ベラが軽く会釈をしながら挨拶する。

 

「ああ、心配ありがとう」

 

「あの〜ディル叔父さんと皆さんはお知り合いなんですか?」

 

知り合いだけで盛り上がっていた七人の後ろから公爵の声がする。

 

「「「「ディル叔父さん???」」」」

 

ガルを含めた四人は咄嗟にサティーンが公爵である事も忘れて素で聞き返してしまった。

 

「そうだ俺がディル叔父さんだ」

 

「「えっ……」」

 

ガルとオビ=ワンは同じ反応をしながら二人揃って嫌そうな顔をする。

 

「お、おいそれはどういう反応だ?」

 

予想外の反応にアタフタし始めるディル。

 

「あんな私生活ダメダメなディルが高潔な血筋だなんて私絶対信じないわ……」

 

シャアクも現実を直視できないといったリアクションをする。

 

「おいおいおい、酷すぎないか?」

 

「私も聞きましたよガルとの出会いは例のサバックだったって」

 

アイラも同じ様な反応を見せる。

 

「叔父さんまたサバックやったんですか?ベラさんにあれ程止められていたのに」

 

「いやそれはもう何年も前の話で…てかなんで俺は叔父さんでベラは名前呼びなの?」

 

「叔父さんはもう叔父さんですけどベラさんはまだお姉さんなので」

 

ボ=カターンがサティーンを遮って答える。

 

「ちょっとそれ酷くない?」

 

皆に散々悪口を言われたディルはどんどん元気がなくなっていく。

 

「全員そろそろやめてあげなさい」

 

クワイ=ガンが止めに入る。

 

「とにかく。私はこれから首都へ向かわなければならない。後のことは君たちに任せてもいいかな?」

 

「はい。マスター」

 

「もちろんです」

 

「ええ」

 

「任せてください」

 

四人は自信満々の返事をした。ディルとベラもクワイ=ガンの方を見て頷く。

 

また、このディルイジりの一件がきっかけとなり、サティーン、ボ=カターンとガル達の関係は一気に縮まることとなったのであった。

 

 

 

 

 

だが、四人は知らなかった。この護衛任務がもたらす最悪の結末を。




お久しぶりです。長い間投稿をお休みして申し訳ありませんでした。
投稿を休んでいた理由はいくつもありますが、実際一番の大きな理由はスランプになり、話を書けなくなってしまっていた事です。シリーズ全体を通した展開やエンディング、続編の構成は完璧にできているのですが、それを文字におこして書くとなると急に書けなくなっていました。
ですが、やっと少しずつ書けるようになってきましたのでかなりスローペースですが定期的な投稿を再開しようと思います。
新話を楽しみにしてくださっている読者の皆さん、本当にお待たせいたしました。
また、完結せずにこのシリーズを終わらせることは絶対にないのでそれは安心していただいて大丈夫です。
次回の投稿は20日(日曜日)を予定しております
それではまた次回の投稿でお会いしましょう。
フォースと共にあらんことを!


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交換留学生

最近gunpowder milkshakeを見に行きたくて仕方がないAlexです。それでは新話、まったりとお楽しみください。


首都へと向かうクワイ=ガンを見送った一向は早速警備業務へ就こうと建物内の宿泊用の部屋で準備をしていた。

 

「なあ、ここのセキュリティについてどう思う?」

 

オビ=ワンがライトセーバーの質力調整をしながら話す。

 

「さあね。でも私達を呼ぶってことはあまり良くないのは事実ね」

 

「シャアクの言う通りだ。この建物で実践を積んだ警備員は一握りぐらいしかいないだろう」

 

ガルも賛成する。

 

「なら結局のところ私達任せって事ね」

 

「まあ実際のところそうだろうな」

 

オビ=ワンもやっぱりかというリアクションをしながら頷く。

 

「まあでもディルとベラがいるだけマシだな」

 

「そうね」

 

「そういえばあのボ=カターンって子、私達ほどではないけどかなり訓練している様だったわ」

 

シャアクがそう言った瞬間、その場の四人全員が何かを感じ取って動きを止めた。その後、四人は決して何も喋らなかったが揃って同じことを考えていた。

 

上の換気口に誰かが潜んでこの会話を盗み聞きしていると。

 

すぐにシャアクがアイラに目くばせをする。するとアイラは静かに頷き部屋から出ていった。

 

次にガルとオビ=ワンはライトセーバーを起動し、換気口の人がいると思われる部分に光刃で目にも止まらぬ速さで穴を開ける。直後、切り抜いた部分の金属が落ち、それと一緒に落ちてくる二人の人影が見えた。

 

「「きゃっ!」」

 

咄嗟の出来事に驚いたのか落ちてきた二人の人影は可愛い悲鳴を上げた。

 

しかし、オビ=ワン、ガル、シャアクは容赦なくライトセーバーの光刃を二人の少女の首元近くに置いて相手の様子を見た。

 

「我々の会話を盗み聞きしていたのは君たちだな?」

 

オビ=ワンがゆっくりと問いかける。

 

「誰の指示だ」

 

ガルも続く。

 

「別に誰の指示でもないです………」

 

一人の少女がおずおずと答える。

 

「こんな時期に私達ジェダイの会話を盗み聞きする事が誰の指示でもないですって?あなた達名前は?」

 

シャアクは彼女の言うことを信じられないという様子を見せる。

 

するとシャアクの問いに黙っていたもう一人の少女が答える。

 

「私はパドメ・アミダラです」

 

彼女は名前を言いながら立ち上がる。

 

「ふぁっ????」

 

ガルは突然ありえないことを言い始めた彼女に対して思わず変な声をあげてしまう。

 

「えっ、ふぁっ?」

 

シャアクも同じ反応をした。と思っていたが彼女はガルに向かってその言葉を投げていた。オビ=ワンも咄嗟に笑いを堪えながらガルの方を見る。

 

やっと状況を理解したガルは首を横に振り、集中し直した。

 

「その隣の彼女は?」

 

ガルは毅然とした態度で質問する。

 

「彼女は何も悪くありません。私が無理やり付き合わせてしまっただけなんです」

 

パドメが彼女を庇う様にして話す。

 

「いえ、私がパドメ様を誘ったのです。私の名前はコスカ・リーヴスです」

 

彼女の口から出た名前を聞いて、ガルはもう一度ふぁっ???と言ってしまう寸前で我慢した。

 

ガルは平静を装いながら、光刃を首元に向けられる二人の少女の顔を交互に見た。こんなことがありえるのだろうか。明らかにファントム・メナスの時点でオビ=ワンとパドメは顔見知りで無かった。それに彼女はもう既にナブーの女王になっているはずだ。なのに何故、今こんな内戦真っ只中のマンダロアにいるのだろうか。時代的に考えて今はファントム・メナスの約一年前程なのに……

 

「二人ともセーバーを消せ。どうやら俺達はかなり厄介な事に巻き込まれているかもしれないぞ」

 

色々な事を考えながらガルはため息を吐いた。

 

「なっどうしてそう言えるんだ?」

 

「ガルの言う通りだわ。オビ=ワン、彼女の服装をよく見て」

 

そう言いながらシャアクはパドメの服を指差す。

 

「ああ……君はこの惑星出身では無いな?」

 

オビ=ワンはパドメの服の装飾を見て気がついた様だった。

 

「そこまで見破られてしまいますか……」

 

パドメは驚きながら答える。

 

「彼女はナブー王室の一員で惑星ナブーの次期女王であります」

 

コスカが詳細を話す。

 

「何でそんな人がマンダロアなんかに?」

 

「オビ=ワン、その言い方はよせ。誰がこの会話を聞いててもおかしくない。それに、侯爵専属護衛のお前が口にして良い言葉じゃないぞ」

 

「すまない、気をつける。それで二人は何故換気口に?」

 

「そ、それは……」

 

「パドメさんはこの王立アカデミーの交換留学生としてこちらの学校に来ているんです」

 

「交換留学生?」

 

「聞いて呆れるな」

 

シャアクとオビ=ワンは暗い顔をする。何故なら二人は瞬時に彼女が置かれている状況を理解したからだ。

 

「どうなってるんだ…この王立アカデミー内に今後二つの惑星と銀河の未来を担う事になる二人が同時に滞在しているなんて。誰かの陰謀としか思えない…………」

 

ガルは少し離れた場所でぶつぶつと独り言を話し始める。彼には現在起こっているイレギュラーな現象に対しての正確な処理の仕方が分からなかった。ただ、彼自身の存在と今までの行いによってこの現象が起きているということは紛れもない事実であった。

 

タイムライン改変によって起こるバタフライエフェクト。それはガル自身も想定していたが、それがこのタイミングで起こるとは想像もしていなかった。

 

「畜生、タイムラインについての知識をもっと師匠から聞いておけばよかった……」

 

彼は咄嗟に自分の口から飛び出した師匠という言葉に違和感を覚えた。かつて自分が師匠と呼んでいた人物は誰なのか……

 

ふと思いついた顔はギャザリングの際にアストラルディメンションという奇妙な物を教えてくれたあの女性だった。だが、今の彼にそれ以上のことを考える時間はなかった。

 

そう、今目の前にいる人物を何が何でも守らなければならないからだ。

 

「とりあえず詳しい話はアイラが戻ってから聞こう」

 

ガルは顔を上げるとシャアクとオビ=ワンに向かってそう告げる。

 

「分かった」

 

オビ=ワンはそう答えると切り抜いた部分の金額を元の場所にフォースを使って持ち上げ、ライトセーバーの熱を利用して溶接した。

 

少ししてアイラが一人の少年を連れて帰ってきた。

 

「盗み聞きしていたもう一人を捕まえたよ」

 

「流石だ。お疲れ様」

 

オビ=ワンがアイラを褒める。

 

彼ら四人が換気口に誰かがいると気がついた時、その少年はいち早く姿を消していた。

 

「さて、君の名前も聞かないとね」

 

シャアクが声をかける。

 

彼の名はカイル・キースといって、コスカと同じマンダロア出身の少年だと言うことが分かった。アイラと同い年らしく、二人はかなり早い段階で打ち解けていた。しかしガルは彼から感じる事のできるフォースに何処か違和感があった。だが、その違和感も一瞬だけだったため、気に留めない事にした。

 

パドメ達に一通りの自己紹介を終えたガル達は盗み聞きをしていたわけを聞いた。どうやらコスカとカイルはいつもサティーンやボ=カターンと仲が良いらしく、そんな二人のために派遣されたジェダイの素性を知りたかったらしい。

 

また、パドメも自分の脅威になりえる存在かどうかを確認しておきたかったとの事だった。そんな彼女がマンダロアにきた理由はナブーのアカデミーで命を狙われたからだそうだ。事件後、ナブー王室は信頼のおける者に助言を求めたらしい。その結果、パドメをマンダロアに極秘留学させるという事になったそうだ。

 

その話を聞いたガルはこれが仕組まれて起こっている出来事だと確信した。この世界の政治家や貴族は頭の悪い人物が多いのは知っていたがまさかここまで酷いとは彼も考えてはいなかった。ナブー王室が助言を求めた相手が完全に黒幕である事は確実だった。また、王室内に彼女の即位を嬉しく思っていない人物がいるというのも事実だ。もし、マンダロアで何も起こらなくても当分の間はパドメの護衛を務めなければならないだろう。彼女を失えば全ての計画が水の泡になる。ガルは何としてでもこの護衛任務期間中に彼女の信頼を得なければいけない。

 

そんな事をガルは考えながら一日の残りを過ごした。

 

一日目は意外にも旧王立アカデミー内やその周辺の町で異変は起こらず、とくに暗黒面のフォースを感じることもなかった。オビ=ワンとサティーン公爵は瞬く間に打ち解け、アイラとカイルはもう友達になっている様だった。また、シャアクはディルとベラの仕事を手伝い、ガルはボ=カターンとコスカに頼まれて二人に稽古を付けていた。

 

その夜、クワイ=ガンからの連絡を受けた四人は首都の状況を聞いた。現在戦況としてはサティーン派閥の方が優勢で、あと二週間もすれば内戦は終結する可能性があるという。しかし、クワイ=ガンはこの派遣には何か裏がある可能性が高いと言い、今一度集中し直す様にと強く念押しした。

 

二日目、ガルとシャアクは共にボ=カターンとコスカに戦闘訓練を行っていた。

 

「1、2、3」

 

シャアクのカウントと共にガルはライトセーバーを動かす。

 

「なあ、本当にこのレッスン必要か?もう軽く一時間はやってるが」

 

ガルは面倒くさそうな顔つきでボ=カターン達に聞く。

 

「もちろんです!いずれダークセーバーを手にしたときには絶対に必要になる知識なので!」

 

ボ=カターンが目をキラキラさせながらそう答える。

 

「はあ……俺の教え方は型なんかよりも実践派なんだけどな」

 

「ガル、つべこべ言わないでやって。カウントに遅れてるわよ?」

 

「はいはいさーせんした」

 

ガルはウンザリした表情をしながら雑な返事をする。

 

「はいじゃあもう一回最初から」

 

ガルの態度が気に入らなかったのか、シャアクはそう言いながらニッコリと笑った。

 

「は?????」

 

「はい!1、2、3」

 

シャアクはガルの発言を完全に無視しながら楽しそうにカウントを再開する。

 

「いやだああああああ」

 

その日、アカデミーの訓練場からはガルの苦しむ声とシャアク達の楽しそうな笑い声が響いていたという………




さてさて今回はちょっといつもと違う感じのテイストでお送りします。マンダロア編に関しては色々ぶっ飛んだ展開にしようと思っています。多分……
ということで次回の投稿は30日を予定しております〜
それでは次回の投稿でお会いしましょう!
フォースと共にあらん事を!


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ターニングポイント

時間が遅くなりましたがnew episodeお楽しみください!


マンダロア滞在七日目の夜、アカデミー内の訓練場ではガルによる訓練が今日も行われていた。

 

「Solus. T’ad. Ehn」

 

ガルのカウントと同時に訓練場内にはライトセーバーとベスカー金属がぶつかり合う時に発生する澄んだ衝撃音がこだましていた。

 

彼の黄色く光る光刃はコスカが一番防ぎやすい場所を狙って打ち込まれる。そしてコスカは当然のように光刃をベスカーの槍で光刃を受け止めに動く。しかし、ガルはもうひとつの光刃で彼女の死角から攻撃を繰り出す。彼の作戦に気がついたコスカは急いで腕の個人用エネルギーシールドを起動させ光刃を防ごうとした。だが、彼女のシールドが起動するよりもガルの光刃が彼女のガントレットに到達する方が速かった。そしてエネルギーシールドの起動に気を取られていたコスカは、最初に防ごうとしていた光刃がもう既に自分の脇腹近くで止められている事に少しの時間が経ってから気がついた。ガルは悔しそうにする彼女の顔を見て軽く笑うとライトセーバーの光刃を消した。

 

「はあはあ……流石にキツすぎます」

 

コスカが肩で息をしながら話す。

 

「まだはじめて二十分程しか経ってないぞ?」

 

「でもこの槍でその二本のライトセーバーの力に勝てるわけないじゃん」

 

「なら一本でやってみるか?」

 

「本当に?それなら楽勝!」

 

さっきまで死にそうな顔をしていたコスカが急に元気を取り戻す。

 

「その余裕いつまで続くかな?」

 

ガルは微笑みながらライトセーバーを一本だけ起動させる。

 

そして、そんな二人を遠くからアイラとカイルが観察していた。

 

「あれならコスカが勝てるんじゃない?」

 

「まさか!ガルは素手でも彼女よりもっと強いよ。それに私なんかよりもね」

 

「へえ、そうなんだ」

 

「うん。だからいつも色んな事を率先してやるんだ。一番危険な事をね……」

 

アイラはそう言いながら悲しそうな顔をする。

 

そんな彼女の表情を見たカイルは自然とアイラの側に寄り添っていた。

 

「大丈夫?」

 

しかし、カイルの問いにアイラは何も答えず、その場を立ち去った。

 

「あーあもう少しだったのにな」

 

アイラの後ろ姿を見ながらカイルは静かにそう呟いた。

 

そんな事を全く知らないガルとコスカはまだ訓練に没頭していた。

 

「Solus. T’ad. Ehn」

 

「ぐ…………」

 

「コスカ、力で対抗しようとするな。上手く槍の特性を活かすんだ」

 

「そんな事言ったってやっぱりライトセーバー重すぎ」

 

「もう一度行くぞ。Solus. T’ad. Ehn」

 

今度は容赦なくコスカの防ぎにくい場所を選んでガルは攻撃していく。

 

「Solus. T’ad. Ehn. Cuir」

 

ガルはコスカの持つベスカーの槍をライトセーバーで弾くと直ぐに彼女に首元に光刃を近づけた。

 

「はい!そこで終了」

 

突然訓練場にシャアクの声が響く。

 

「なんだよシャアク、良いとこだったのに」

 

「どこが良いところよガル。コスカの事ボコボコにしてたくせに」

 

「いやそれはな…」

 

「まあとりあえずコスカと私は夜の見回りがあるからもう行かなきゃ」

 

「そうか。じゃあ、お疲れ様コスカ。また明日な」

 

「え……明日もこの訓練ですか?」

 

コスカが物凄く嫌そうな顔をする。

 

「大丈夫、明日は私もアイラも一緒だからガルの好きにはさせないわ」

 

その言葉を聞いたコスカは心底安心した様子だった。

 

 

シャアクとコスカが去った後、ガルは一人訓練場内で瞑想をする事にした。何故ならここ数日、アカデミー付近でフォースの暗黒面を感じる事が多々あったからだ。オビ=ワンも同じく感じ取っており、いつでもサティーンを連れて逃げられる様に準備をすると言っていた。

 

「まあ、ダメ元だが……メリダを救えた時の様に未来のビジョンを見れる事を祈ろう」

 

そう独り言を言いながらガルは瞑想を始める。

 

彼は周囲に存在するフォースを集め、次第に自分の体の中へ循環させる。呼吸の数をコントロールし、フォースと一体化する事に努める。すると、自然に彼の体は地面から離れ、浮かび上がり始める。彼の集中力が最高に高まった時、竜巻の様に力強く、しかし穏やかに吹くフォースの渦の中に何かしらの映像が写された。

 

そこでガルは変わり果てた王立アカデミーの建物を目にした。衝撃で固まっている彼をよそにビジョンは次に王立アカデミー内の映像へと移動する。

 

外と変わらず、建物内もひどい有様だった。あちこちから火の手が上がり、アカデミー内は何かが焦げる匂いと血の匂いで充満していた。アカデミーの廊下へとビジョンは進んでいく。そこではライトセーバーを手に必死に何かを守りながら戦っている自分の姿があった。

 

『ああ………マズい。最悪のビジョンだ』

 

そうガルが思ったのは自分が守っている人物達の惨状を見たからだった。

 

シャアクとアイラは変わり果てた姿で床に倒れており、重傷を負ったコスカが必死に二人の名前を呼び続けていた。しかし、二人はもう既に息をしていない様子だった。自分はそんな中でも必死に戦い続けていた。そして、彼の手に握られていたのはシャアクとアイラのライトセーバーだった。

 

『クソ…またこんなビジョンを見なきゃいけないなんて……』

 

シャアクとアイラの死を目の当たりにしたガルの心は酷く荒れていた。

 

ガルはこの惨劇の首謀者を探そうと更にフォースを無理に集め、ビジョンの先を見ようとする。彼の心は怒り、泣き叫んでいた。

 

そして立ち上がる煙の中に一人の人影が映る。そしてその人影はこちらに向かって歩いてくる。

 

『よし、良いぞ。もう少し!こいつの顔さえわかれば後は殺すだけだ』

 

徐々にその人影は煙の中から出てくる。

 

『もう少し!もう少し!もう少し!こいつの正体を知らなければ!こいつを殺さなければ!』

 

『ガル!』

 

突如、どこからともなく、彼の名前を呼ぶ声が響く。

 

『ガル!ガル!』

 

彼の名を呼ぶ声に気を取られている隙にビジョンは薄く靄が掛かり始め、見えなくなってしまった。

 

「ダンクファリック!」

 

ガルは目を開けるとそう悪態ついた。ゆっくりと地面に降りながら彼は自分の名を呼んだ人物の顔を見た。

 

そこには完全武装したディルとベラが立っていた。二人の武器は真っ直ぐガルへと向けられていた。

 

「何でそんな格好をしてる?」

 

ガルは腰のライトセーバーへと徐々に手を伸ばしながら聞く。

 

「それはこっちが聞きたい」

 

「自分の武器に手を伸ばす前に周りの惨状を見てから言いなさい」

 

ディルとベラの声から彼を警戒しているという事がよく分かった。

 

ガルは手を止めて辺りを見回す。

 

「これは………」

 

言葉を失うガル。

 

「お前がやったんだ全て」

 

ディルはそう言いながらやっと警戒を解き、ヘルメットを脱いだ。

 

訓練場内の武器や防具が全てぐちゃぐちゃになっていたのである。またなかには強い力で握り潰されたかの様な物、無理に捻じ曲げられた様な物もあり、より一層異様な雰囲気を醸し出していた。訓練場の壁には凹みなどが更に増えていた。

 

「パドメがあなたの異変に気がついたのよ」

 

ベラはそう言いながらコムリンクを取り、パドメに彼が無事であると通信した。

 

「それで、ここで何してた?」

 

「未来のビジョンを見るための瞑想を……」

 

「これが瞑想?はっそれでここまでする価値のある未来は見えたのか?お前はベラの事をフォースで弾き飛ばしたんだぞ!」

 

珍しくディルがガルに詰め寄る。

 

「ディル、今はよして。とりあえず私達の部屋でゆっくり話しましょ」

 

ベラの提案にガルは黙って頷いた。

 

「はあ……分かった。じゃあついてこいガル」

 

そう言うとディルは歩き出し、ガルは二人が使っている宿泊用部屋に案内された。部屋に入ると、中ではアイラとパドメが座りながら喋っていた。そして二人はガルの顔を見ると心配そうな顔をした。

 

「やあ、二人とも。心配かけたみたいでごめんな」

 

ガルはそう一言告げると近くにあったソファに座る。そんな彼の頭にベラは優しくキスをしてアイラとパドメの近くに座った。

 

「まあ、水でも飲め」

 

ディルがガルに水の入ったコップを渡してくる。

 

「あ、ありがとう」

 

ガルはゆっくりと水を飲んでいく。

 

「なあガル、ジェダイでいる事ってそんなに大事なのか?」

 

ディルは自然な雰囲気で突然そんな事を言い出す。

 

その言葉にガルもアイラも驚いた様子を見せる。

 

「俺の親戚にもジェダイだったやつがいるんだ」

 

ディルは遠くを見ながら話し続ける。

 

「そいつは俺の弟みたいなやつだった」

 

「でもジェダイは……」

 

アイラが何か言いかけたところでガルは彼女に対して何も喋るなという合図を送る。

 

「幼い頃に一族から離され、テンプルに連れて行かれたからもう会えないだろうと思っていた。でもアイツは戻ってきた。ここマンダロアに」

 

話し続けるディルの顔はとても寂しそうで今にも泣きそうだった。

 

「ガル、今のお前にソックリだったんだ。自由奔放で仲間の事を思い続ける優しいやつで……」

 

「ディル………何が言いたい」

 

ガルは慎重に問いかける。

 

「分からない…………ただお前を見ているとアイツと同じ末路を辿る気がするんだ」

 

「どう言う事だ」

 

ガルのその問いにディルは答えなかった。

 

そして長い沈黙が訪れる。

 

 

 

 

 

 

「彼は私達を守るために死んだのよ」

 

なかなか口を開かないディルの代わりにベラが答えたのは数分が経った頃だろうか。

 

その言葉を聞いたガルとアイラは何も言えなくなってしまう。

 

「…………俺が昔アイツにした質問を、ガル、お前にもするぞ」

 

「………何だ?」

 

「ジェダイを辞める気はないのか?」

 

そうゆっくりと発言したディルの目は本気だった。

 

少しの間沈黙が続き、やっとガルが口を開く。

 

「分からない。分からない……」

 

「本気なの?ガル……」

 

彼の返答を聞いたアイラが何故か絶句しながらガルに問いかける。

 

彼女はガルがジェダイを辞める気はないとキッパリ回答するものだと思っていたのだ。彼女にジェダイというあたらしい世界を教え、ジェダイとして成長しながら活躍する彼に憧れていた彼女にとって先ほどのガルの言葉は耳を疑うものだった。

 

これまで見てきた完璧なガルという理想像はここにきて彼女の中で大きな音を立てながらどんどんと崩れていく。

 

今、彼女の目の前にいるのは優秀なジェダイナイトのガル・アーラではなかった。

 

何がここまで彼女を苦しくするのかは理解できなかった。憧れていた彼に対する失望なのか、それとも彼の悩みに気がつけなかった後悔なのか。それとも全く別のものなのか……

 

彼女は気がつくと部屋を飛び出してシャアクの部屋に向かっていた。

 

「追いかけなくて良いの?」

 

ベラが優しくガルに聞く。

 

「いいんだ。いずれ俺はジェダイを辞めようと思っていたから」

 

「本当なのか?」

 

ディルが驚いて聞き返す。

 

「ああ、本当だ。俺がいる事によって全員が弱くなってる」

 

「弱くなる?」

 

「戦闘面や多くの面ではみんなが強力になったと言える。だが彼女達の内面を弱くしてしまった……」

 

ガルは下を向きがら話す。

 

そう、今彼が一番後悔していたのはこれだった。最初はオビ=ワンの堅物キャラを崩して、マスター達の考えにも少し柔軟性をもたらすのが目的だった。だが、想定外の問題が起こった。それはシャアクとアイラの事だった。二人とも映画やアニメでは強力で内面もかなり柔軟ながらジェダイとしてしっかりとしていたイメージがある。しかし、彼自身でも理解できないほど彼女達の内面は変わり果ててしまった気がして仕方がなかった。

 

それは彼にとっては凄く良い結果であり、嬉しいことでもあった。だが、彼女達の内面が弱る事によって彼の知らないうちに暗黒面に囚われてしまわないかが気掛かりだった。さらに彼が先程みたビジョンでもそうだったように、シャアク、アイラの二人が余計な事件に巻き込まれる件数が明らかに増えていた。

 

ガルは二人と過ごした時間とその間に自分が抱いてしまった気持ちに蓋をしなければいけない日が近いのだと悟っていた。

 

所詮自分はこの世界の住人ではないのだからと……

 

「なあもし俺がジェダイを辞めたら……」

 

そう言いながらガルはディルとベラを見つめる。

 

「ああ、お前の帰る場所はここにある」

 

ディルはガルの目を真っ直ぐ見つめながら答えた。

 

その言葉を聞いてガルは呆気に取られた。

 

優しく微笑むディルとベラの目はガルの心を見透かしているかの様に見えた。




いやーちょうど今日配信のムーンナイトを見たんですけどやっぱりオスカーアイザック良いですね。彼は正直なところMCUでもエンサバヌールとして出てきて欲しかったのが本音ですが………とはいえ面白かったですよ〜ムーンナイト。

ところで!Transformers What Ifに関してなんですがthis winterとか言っときながら四月中に投稿スタートの予定です!もしかするともしかしてTransformersの方が予定話数がStarWarsより少ないので先に話が終わる可能性がありますと言っておきます……

という事で次回の投稿は4月8日の金曜日です!
それでは次回の投稿でお会いしましょう。
フォースと共にあらん事を!


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選ぶべき道

皆さんお久しぶりです。予定日より三日ほど遅れてしまいました……
新話お楽しみください!


「ああ、お前の帰る場所はここにある」

 

その言葉を聞いたガルはゆっくりと微笑んだ。その笑みだけで彼の考えている事がわかるほど、ただただ優しいものだった。

 

「なあ、ガル。俺達、実は今回の件が終わったら少しの間バウンティハンターを休もうと思ってるんだ」

 

「……また何で?」

 

「ベラと一緒にジャンゴ達ともよく話したんだが、マンダロア内戦が終わったら俺達で故郷マンダロアに残って一緒にこの国の再建を手助けしようって」

 

「そうなのか……」

 

ガルはそう答えながら悲しそうな顔をした。彼ら四人がデックスダイナーから姿を消してしまうのは彼にとってとても寂しい事だった。

 

「それでね。私達からあなたに提案があるの。本当は伝えないでおこうと思ったんだけど……」

 

ベラが言いづらそうな顔をしながら話し始める。

 

「提案って?」

 

「ガル、私達と一緒にマンダロアに残らない?」

 

ベラの口から出たその言葉にガルは驚いた。

 

「本気で言ってるのか?まだ俺はジェダイを辞めるかも決めてないのに」

 

「だから言ってるんだ。別に今すぐ決めなくても良い」

 

「そうか……分かった」

 

そう考える様子を見せながら答えるガル。だが実際は、もう既に彼の心の中ではジェダイを辞める決心がついていた。

 

「ジェダイとしてじゃなくても人を救えることを忘れないでくれガル」

 

ガルはディルが言った言葉を聞いてハッとした。

 

今までジェダイをやめようとか色々と口では言っていたものの、長い間ジェダイとして色々な出来事を経験してきたため、彼の頭の中にジェダイとして彼らを救うという事ばかりを中心に考えてしまっていた。だが実際、ディルの言う通りだった。たとえ自分がジェダイでなかったとしても歴史を変えて彼らを救う事ができるという事を今になって気付かされたのだ。必要だったのはジェダイである彼らと関わるきっかけだけであり、友情や恋愛は必要ない事なのだと。

 

その事実は彼にとって一つの輝く新しい道が現れた様なものだった。

 

自分がジェダイとして常にオビ=ワンやシャアク、アイラと共に生活をしなくても、今後彼らが危険な時にだけ姿を表せば救える。そう何故なら彼はこの世界で起こる出来事を知っているのだから。そうすれば余計な事件に皆んなが巻き込まれる可能性も極限まで下がるだろう。

 

そう結論づけたガルは遂に全ての決心がついた様だった。

 

「そうだなディル。お前の言う通りだよ」

 

ガルがそう答えるとディルとベラは驚いた表情をした後、直ぐに笑顔になった。

 

「今すぐ辞めるとは言えないが、辞めるタイミングはもう決めた。近いうちにここに戻ってくると約束するよ」

 

「そうか。俺達は当分の間マンダロアから何処にも行かないだろう。だからまあそんなに焦らなくても良いからな」

 

「ありがとう」

 

ガルはそう言って部屋から去ろうとする。

 

「なあ、よかったら今日はこの部屋に泊まっていくか?アイラがあの感じだとお前の部屋に戻るのは気まずいだろうし」

 

「ああ、じゃあお言葉に甘えてそうさせて貰うよ」

 

ガルはディルの申し出を快く承諾した。まあ正直今日部屋に戻るのは何が何でも避けたかったというのがガルの本音だ。

 

その日、ガルはディル達の部屋で一夜を過ごす事になった。

 

今のアイラ達への心配の気持ちが最初こそは強かったが、彼女達を助ける事に繋がるのだと自分に言い聞かせ続けたガルは、眠りにつく頃にはもうすでに心配の気持ちは消えつつあった。たとへ彼女達を傷つけてしまっても生きていればきっと良い事や幸せな出来事があるのだから大丈夫だろうと………

 

 

次の日、どうもアイラ達と顔を合わせるのが気まずかったガルはいつもの戦闘訓練ではなく、パドメが出席している政治に関する授業の特別講師として働く事にした。

 

「政治の腐敗は人民に選ばれた代表が、自らの利益を優先させた時に起きる」

 

ガルは教団に立ちながらかつてアソーカがクローンウォーズでやっていた事の真似をしながら授業を進める。

 

「強欲が原因って事ですか?」

 

パドメが質問する。

 

「そうだ。指導者が金や権力と引き換えにモラルを失えばそれはもう終わりだ。その惑星では人民の苦しみをよそに、欲に取り憑かれた政治家や役人の間に賄賂や恐喝が蔓延する。そして社会は乱れる」

 

「では、政治に関わるものは皆汚れてしまうと?」

 

「とは言えないが……まあ大半が何かしら小さな隠し事を持っているだろう。問題は常に誘惑にさらされているという事。市民が気をつけていないと腐敗はすぐに根を張る。最悪の敵は社会の内部に潜んでいる。だから、人民はその内なる脅威に対抗しなくては」

 

「でも指導者に逆らえば反逆罪になる」

 

パドメ以外の生徒も質問を投げかける。

 

「指導者の監視は市民の義務だ。相応しくなければクビにすればいい」

 

「そんな事どうやって?」

 

「腐敗の実像を明らかにする事だ。他人任せにせず、自分達で。まあ、それでももしどうにもできないのであれば、全くの第三者に協力を依頼すると良い。特にジェダイとかな」

 

「ジェダイは政治の腐敗に加担しないと?」

 

「ははっ、当たり前だろ。ジェダイなんていうものは頭のイかれた集団だぞ?政治や金になんて興味すら無い。だから公平な立場で平和の守護者として君臨しているんだ」

 

ガルは笑い飛ばしながら話す。

 

「だから今のうちに言っておくぞ。もしこの中で数年後に政治に関わる仕事をする者がいたら、俺の授業を忘れるなよ。ジェダイはいつでもこの惑星の政治の調査ができるからな」

 

彼の言葉を聞いた生徒達は黙って頷いていた。

 

授業が終わり、お昼休みにカフェテリアへ来ていたガルは貧相な食材でできる最大限の料理をしていた。

 

「ハア……何でこんなに疲れるんだろうか」

 

ガルは炒め物をしながらボソッと呟く。

 

「お疲れなんですか?」

 

そんな彼の後ろから元気な声が聞こえて来る。

 

「どうしたんですか?アミダラ殿下」

 

と彼は返事はしたものの、全く振り返りもせずに黙々と料理を進める。

 

「あなたの授業には感動しました。是非もっと色々と教えてくださると助かるのですが……」

 

「勘弁してくださいアミダラ殿下、私は現在お昼休み中です」

 

「だからこそ今こうやって質問に来ているんじゃ無いですか」

 

「殿下、少しは老いぼれの私を労ってください。今日だけでもう四時間も授業で立ちっぱなしなんです」

 

「あなた、そこまで私と歳は離れていませんよね?」

 

「まあそうですけど…こっちは数々の修羅場を乗り越えてきているんで」

 

「それなら私だって!」

 

中々引き下がらないパドメに痺れを切らしたガルは料理の火を止めて振り返った。

 

「はあ……それで?何が聞きたいんです?ここまでしつこくするという事は相当な質問なんでしょうね?」

 

王女に対してあり得ないほどの態度で話すガル。

 

「自分の身を守る方法を教えてください。そしてナブーの王女として私が今後一人で戦っていくために」

 

パドメはガルの目を真っ直ぐ見つめてその言葉を述べた。

 

その彼女の目を見たガルは今この瞬間が彼女の護衛を務めるチャンスだと確信した。

 

「なら正式にアミダラ殿下の方から私を指名した護衛依頼をジェダイ聖堂に発注してください。そうすれば私はこのマンダロアの任務が終わり次第、殿下と共にナブーへ行き、護衛、そして武術の師匠として隣に立てるでしょう」

 

ガルは珍しく背筋を伸ばし、しっかりと喋る。少しでも可能性が高まる様に。

 

だが、実際のところパドメの護衛になる事は不可能に近いだろうとガルは思っていた。

 

「分かりました。今すぐジェダイ聖堂に正式に依頼して参ります」

 

彼女はそう言って優雅にお辞儀をするとカフェテリアから去っていった。

 

「あれ??意外と簡単だったな……」

 

ガルはブツブツと独り言を言いながら料理を再開するのだった。

 

料理を終え、席にやっと座って昼食を取り始めた頃、カフェテリアにオビ=ワンが入ってきた。

 

「よお、ガル。今日は戦闘訓練じゃなくて座学の講師をしてるそうじゃないか。なんかあったのか?」

 

「いや、特に何もない」

 

ガルは素っ気無い返事をしながら食べ続ける。

 

「それなら良いが」

 

「ん、大丈夫だ。なんか食うか?」

 

「いや、サティーンと食べて来たから大丈夫だ」

 

「そうか」

 

「そうだガル、聞いてくれ」

 

「なんだ改まって」

 

「昨日なんだが……」

 

途中で急に黙るオビ=ワン。

 

「ん?なんだよ。最後まで言えよ」

 

「騒ぐなよ?昨日、夜景を見ながらサティーンとキスをした」

 

「?!?!まじで?!」

 

「大きい声出すなって!」

 

オビ=ワンに怒られながらもガルは親友の恋が上手くいっている事を知って嬉しくなった。

 

その後、ガルは食事をしながらオビ=ワンの惚気話を散々聞かされた挙句、さらにサティーンとシーリの二人が好きかもしれないとかいう訳の分からない話を永遠とされるのだった。

 

「そうかそうか、良かったじゃないか。嬉しいよそれが聞けて。おっとそろそろ時間だから行かないと」

 

話している途中にガルのタイマーが鳴り、彼は残った食事を保存容器に入れて次の授業の教室へ行く準備を始める。

 

「なあ、ガル」

 

急いでカフェテリアを去ろうとするガルをオビ=ワンが呼び止める。

 

「ん?どうした?」

 

ガルがそう問いかけるがオビ=ワンはジッと彼の目を見つめたまま喋らなかった。

 

「何見てる」

 

痺れを切らしたガルがもう一度問いかける。

 

「お前を見てる。一人で皆んなを守ろうとするなよ。一人で抱え込む事は無い。お前の帰る場所は俺達と一緒だろ?」

 

オビ=ワンはガルの雰囲気から何かを感じ取ったのだろう。彼は心の底から目の前にいる親友の事を心配していた。

 

「急に何を言い出すんだよ」

 

「なあ……親友だろ?」

 

オビ=ワンは問いかける。

 

「だと良いんだけどな。本当に…でも俺を信じろ。俺はこう見えても色々考えてやってるんだ」

 

ガルはそう答えるとカフェテリアから去っていくのだった……




最近ブリジャートン家にハマってしまったAlexです。やっぱり恋愛もの系は面白いですね〜ラブロマンスやラブコメのお決まり展開とか本当に楽しみながら見れますw
最近もうガルの恋愛描写描くのやめようかなって思い始めてます。何というかやっぱり彼はいつになってもこの世界に馴染めない様な気がして来たので……

というわけで次回の投稿はTransformers What Ifの準備もありまして22日の金曜日を予定しています!
それでは次回の投稿でお会いしましょう。
フォースと共にあらん事を!


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襲撃

お世話になっておりますAlexです。新話お楽しみください!


その日、一日中授業に出ていたガルは酷く疲れた顔をしながらディルの部屋のソファに横たわっていた。

 

部屋にはまだ誰も帰って来ておらず、彼はただ一人で部屋の明かりを消して真っ暗なままの状態でただただ天井を見つめていた。辺りには何も聞こえない。完璧な静寂だった。

 

普段の彼であれば瞑想かアストラルディメンションで意味の無い記憶修復方法を試していただろう。だが今日の彼にそんな気は一切起きなかった。

 

ただただ純粋に疲れていたのだ。心も体も。

 

徐々に時間が経っていき、知らぬ間に彼は眠りについていた。

 

体感で一時間が経った頃、部屋に近づいて来る足音で彼は目を覚ました。

 

彼が部屋の電気をフォースでつけた直後、部屋の扉が開き、ディルとベラ、パドメの三人が入ってきた。

 

「よお、寝てたのか?」

 

「いや、今起きたところだ」

 

「そうかそれなら良かった。アミダラ殿下からお前に話があるそうだ」

 

その言葉を聞いたガルはなんの話だがピンときた。

 

「そうか。ではアミダラ殿下、それは護衛任務に関することですかね?」

 

ガルは体を起こしながら聞く。

 

「はい!先程、承諾の連絡がありました」

 

「そうですか。それなら良かったです」

 

そう答えながらもガルはジェダイ評議会の判断が早すぎる事に驚いていた。そんなにも自分を厄介払いしたいのかとガルが考えてしまうほど異常に速い決定だった。

 

「では早速訓練場で前にコスカとやっていたみたいに訓練をして欲しいのですが……」

 

「えっ今からですか?」

 

ガルはそう答えながらもソファから立ち上がり、もう訓練の準備をはじめようとしていた。

 

しかし、その瞬間建物全体が大きく揺れ、更にガルは突如鋭い頭痛に襲われたためよろめいた。その直後、フォースによってガルの頭に何者かに攻撃を受ける警備兵の悲鳴が聞こえる。

 

「今のなんだ?」

 

「マズい、敵襲だ!」

 

ガルがそう答えたと同時にディルのコムリンクに連絡が入る。

 

「どうした?」

 

『敵襲です!!敵はマンダロア兵士約四十名程、今すぐ応援を!正面門、破られそうです!』

 

通信先からはブラスターの音や爆弾の音が鳴り響いていた。

 

「よし今すぐ行く!ベラ!」

 

ディルがそう言うとベラはディルに向かって棚から取ったヘルメットとブラスターを投げて渡した。

 

「ガル、パドメを守ってちょうだい」

 

ベラがヘルメットを被りながら喋る。

 

「分かった」

 

ガルはそう頷きながらオビ=ワンに通信する。

 

「オビ=ワン、大丈夫か?」

 

『ああ、私達は大丈夫だ。こっちはもう逃走準備中だ』

 

「それなら良かった。もし裏口がダメなら、下水道に見せかけた隠し通路が地下にある。そこから逃げろ」

 

『分かってる。ガル、お前はどうするんだ?』

 

「俺はできる限り時間を稼ぐ」

 

『オビ!正面入り口が破られるのも時間の問題です!』

 

『分かってる!じゃあまた後でな。ガル、死ぬなよ』

 

「そっちもなオビ=ワン。それともうサティーン公爵にオビって呼ばれてるんだな」

 

『う、うるさい!』

 

そう言い残してオビ=ワンは通信を切った。

 

「アイツはアホなのかマジで」

 

ガルは思わず思った言葉が口から出てしまう。

 

「ガルってそんな喋り方もするんですね」

 

彼の後ろから今の発言を聞いたパドメが話しかけてくる。

 

「いや、忘れてください。今はあなたの身の安全が一番です」

 

ガルは誤魔化しながら対応する。

 

「そうですか。分かりました」

 

「ええ、必ずあなたを守ってみせます。さて、シャアクやアイラ達と合流しなければ」

 

パドメを連れたガルが部屋を出た時には、アカデミー内の非常灯が赤く点灯し、警告アラームが建物内全域に響き渡っていた。そして二人は当初予定されていた緊急避難場所へと走っていく。

 

緊急避難場所に指定されていたのはアカデミー内の訓練場だった。

 

ガルとパドメがたどり着いた頃には、生徒の殆どがもう既に集まっていた。

 

「遅くなった。シャアク、状況は?」

 

ガルはシャアクに話しかける。しかし、彼女はガルの方を少し睨んだだけで彼の質問には回答しなかった。更にアイラは彼と目を合わそうともしなかった。

 

「あまり良くないわね。精神的にやられてる生徒が何人もいるわ。もし戦闘になればこの戦い厳しくなるわよ」

 

その様子を見ていたボ=カターンが代わりに説明する。

 

「それに万が一の場合の戦闘員が少なすぎる…」

 

続けてコスカが不安げな顔つきで話す。

 

「そうか……とりあえず俺達ジェダイ三人とボ=カターン、コスカは常に戦闘できる状態に備えよう」

 

「ガル、それならカイルも戦える」

 

ボ=カターンがそう答える。

 

「私も戦えます」

 

パドメも自分の護身用ブラスターピストルを見せる。

 

「アミダラ殿下、それは許可できません」

 

ガルは彼女の目を見ながら答える。

 

「いいえ、私は戦います。それにずっと思っていましたがその呼び方は気に入りません。ガル、私は自分の身は自分で守ると決めているのです」

 

「ですが……あなたにはまだ充分な実力が…」

 

「私もこの国の未来のために戦いたいのです。お願いですガル。それにもしもの時があってもあなたが守ってくれるのでしょう?」

 

「アミダラ殿下、それでは先程と言っていることが真逆……」

 

「何か文句がありますか?ガル」

 

パドメは笑顔で無言の圧をかけてきた。

 

「はあ……分かりました。俺達七人は戦闘準備、ディルからの連絡を待つ」

 

映画やアニメの時と変わらず意志の強いパドメにガルは根負けするのであった。

 

 

 

一方でオビ=ワンとサティーンは裏口からの避難に失敗し、地下の秘密通路へと向かっていた。

 

「オビ、私のせいで迷惑をかけてごめんなさい」

 

「気にしないでください。これもジェダイの役目です」

 

オビ=ワンはサティーンの方を向いて答える。

 

「そうですか……」

 

サティーンは少し残念そうな顔をする。

 

「あそこが秘密通路の入り口であっていますか?」

 

「そうです!」

 

長く薄暗い通路を抜けるとそこには頑丈そうな金庫の様な扉が存在していた。二人は固く閉ざされた金庫の様な扉の横にある他とは少しだけ色が濃い金属の壁を押し込む。その金属の壁は鈍い音を立てながら奥へと押されていき、カチッという音がなる。すると金庫の様な扉が自動的に開きはじめた。

 

そして扉が開くと大きな下水道が目の前に現れる。

 

サティーンは少し安心した表情を見せたが、オビ=ワンは違った。

 

「ここもバレている??」

 

オビ=ワンがそう呟いた瞬間、ニ発のブラスター光弾が下水道の奥から急接近するのを感じ取る。

 

オビ=ワンはライトセーバーに手を伸ばして間一髪のところで一発目の光弾を防いだ。しかし、二発目には間に合わず、光弾は彼の左肩をカスった。

 

「ぐっ……サティーン、さがってください。どうやらここもバレているようです」

 

オビ=ワンは痛む左肩を押さえながら話す。

 

「そんな……オビ、大丈夫ですか?血が出ています!」

 

オビ=ワンは絶望した表情のサティーンを横目で見ながらコムリンクでガルに連絡を取る。

 

「こちらオビ=ワン、マズい事になった。誰でも良いから今から援護に来てほしい」

 

コムリンクをしまったオビ=ワンは右手でライトセーバーを構えながら徐々に後ろに後退していく。下水道の奥からは推定六人の足音が聞こえて来る。しかし、オビ=ワンのコムリンクからは未だに誰の返答もなかった。

 

オビ=ワンは開いた扉をフォースで閉じ、腕が痛むのを我慢しながらライトセーバーで溶接を始める。

 

だが、扉の向こう側にいる襲撃者達も馬鹿ではないようで完全に溶接が終わる前に突破しようと急いで扉に向かって走って来る足音が聞こえてきた。

 

「頼むガル、お前の助けがいる」

 

オビ=ワンがそう呟くと直ぐに、

 

『分かってる。もう向かってるから少し待ってろ』

 

彼のコムリンクからそう声が聞こえ、オビ=ワンは安堵した。

 

 

 

そんな中、ディルとベラはアカデミー正面入り口で苦戦を強いられていた。

 

「隊長!こちらの残りはもう二桁を切っています!」

 

「持ち堪えろ!ここを突破されたら全てが無駄になる。ベラ!準備は?」

 

「今してる!もうこれだから本当にベスカーって厄介なんだから!」

 

ベラは悪態を吐きながら必死に標準を定める。

 

「隊長、本当に副隊長の小型誘導ミサイルの精度を信じているんですか?」

 

「ああ、そうだ。それしかこの場を打開する手がない。もうジェットパックミサイルも残っていないしな」

 

「ですがこのままでは!」

 

「分かってる!時間稼ぎなら俺に任せろ」

 

そう言いながらディルは立ち上がり、ジェットパックを起動した。

 

ディルはジェットパックを使い、地面スレスレを一瞬で敵兵士の近くの遮蔽物まで移動する。そして彼は、遮蔽物を上手く使いながら兵士の胸のアーマーにブラスターを撃つ。しかし、ベスカーのアーマーに守られた兵士は苦しそうな声を上げながら地面に片膝をつくだけだった。だが、ディルにとってはその一瞬が最大のチャンスだった。膝をついた兵士の胸と頭に向かってブラスターを瞬時に二発更に撃ち込み、相手の体を仰け反らせその隙にできたヘルメットと首元のアーマーの隙間から見える相手のアゴを狙って最後の一発を撃ち込んだ。

 

倒した兵士の元へディルは急いでジェットパックで移動し、兵士が付けていたジェットパックのミサイルを奪って自分のジェットパックへ装填しながら相手へと標準を定める準備をする。

 

彼が新たな敵へ標準を定めたその時、ベラが声を上げた。

 

「準備完了!」

 

その声と共に、口笛のような音が辺り一体に響く。その音は敵兵士達の首元を正確に狙って進んで行く。そしてその音が近づいていった敵兵士達は次々とヘルメット内が光り、ドサドサと倒れていく。その状況に残りの敵兵士達は戸惑いを隠せないようだった。

 

「今だ!前進!」

 

ディルの掛け声で残りの警備兵達が前進し、戦況は一気に覆る。

 

警備兵達は残った力を振り絞って戦った。アーマーを撃たれても膝を付かず、相手のミスを伺う。敵兵士達はベラが使った未知の武器を警戒しているようで、それ以外の事への注意が散漫になっていた。そこへすかさずディルが近寄り、兵士を倒していく。そしてアカデミー側の上空から現れた敵の援軍を乗せた輸送船をディルは慣れた手つきでロックオンし、ジェットパックミサイルで軽々と破壊した。そんなディルの行動に動揺を隠せない敵達へ向かって容赦なくベラのホイッスリング・バードが飛んでいく。

 

彼らが気がついた時には四十名程いた敵の兵士の数は二人へと減っていた。残った二人を降参させ、捕虜にした後、ディルとベラは一息ついていた。

 

「はあ、はあ……久しぶりだな。こんなに危険な戦いをしたのは」

 

「そうね。でも分かってたんじゃない?ここに帰ってくるというのはどういう事かって」

 

「まあ……そうだな」

 

ディルはそう言いながら寂しい目をした。

 

「ねえ、私達の秘密、ガルにはいつ伝えましょうか……」

 

「それはこの内乱が終わった時にしよう。この残念な惑星に平和が訪れた時にな」

 

ディルはそう答えた。それに対してベラも黙って頷いた。

 

そしてディルはコムリンクでガルへと通信を始めるのだった。




さてさてそろそろドクスト2公開とフォースの日が同時に来ますね〜
はやくマカヴォイ世代のX-MENの復活をスクリーンで見たいものです。
ところでTransformers What Ifはおそらく29日に初投稿となると思います!是非お楽しみに!

そして次回の投稿は5月1日の日曜日を予定しています〜
それでは次回の投稿でお会いしましょう!
フォースと共にあらん事を!


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