架空国家 共和連合及び豊後王国召喚 (おさとー)
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厄災 共和連合側
今回は原作の日本国よりもハードにするつもりですのでお気をつけを。
2023年12月
共和連合首都ハバナ
大統領官邸
繁栄の限りを尽くすカリブ海諸国及び中央アメリカ共和連合と呼ばれる巨大国家。世界の守り手と言われ最高の軍事力と高い経済力を誇る国。そんな国の大統領官邸の執務室にその男はいた。
「今年もこれで終わりか」
そしてその男は執務室の窓からビルの光や空中投影パネルの広告の光で照らされている首都を見渡した。
「ここまで来るまで約2年。復興が終わってしまえばなんとも呆気ないものだな」
大統領官邸の、それも執務室で話している彼こそは共和連合27代大統領、マティアス・トーレスその人であった。
地獄のような戦場を走り回り、ついに一昨年終結した第三次世界大戦。その被害からようやく復興し初の年末であった。
「それにしてももうすぐか、軌道エレベーターの運用開始は」
ーーーーーーーーーー軌道エレベータ
1999年に完成した世界各地に点在する、いや点在''した''3基の軌道エレベータのうちの一つである。1985年の月面遺跡の地上落下による遺跡の中身の広範囲飛散、それに伴う大規模な環境汚染や国連崩壊の後、新たに誕生した地球国家統一会議、通称GNUCによる復興活動で誕生したものの一つである。加盟国各国の経済を発展させることを目標として建設されたが2010年に始まった第三次世界大戦でアメリカと中国の軍事侵攻によって東南アジアとハワイの軌道エレベータが両国軍に接収。軍事利用されたためGNUC軍の反撃時に攻撃目標とされ東南アジアとハワイの軌道エレベータは倒壊した。そのため地球上に残っている最後の"完成済"の軌道エレベータである。
「なんとも早いものだな。そう思わんかね、副大統領」
そう声をかけた先には一人の女性が座っていた。見た目は30代前半程度、髪の毛は銀髪の白人女性が座っていた。
彼女はアリス・シルフィード。共和連合の現副大統領にして北欧からの移民でもある彼女は初の移民系副大統領として有名である。
「当たり前じゃない。私たちがこの1年間、どれだけ苦労したと思っているのかしら? 戦後の財政難にクーデター未遂、更には崩壊液による被害などなど……。数えればキリがないわ。南米のゲルマニアが消えたことによる経済的な混乱もそうですけどアメリカは最後の最後に余計なことをしてくれましたから。全く、米中連合に北蘭島以外の遺跡があったのかしら」
ーーーーーーーーーー崩壊液、コーラップス液
古代文明が作り上げたもので正確には液体ではなく素粒子が集合し流動している物体。既に製造法が解明されたが、崩壊液生成装置を新造した場合のコストが原子力航空母艦10隻分などというふざけたコストとなっているため古代文明の残した遺跡にあった崩壊液生成装置を修復し使用している。
その性質を利用した
「遺跡があったところで今の中国とアメリカにはダーティボムの製造は不可能だ。そもそもあの二カ国の遺跡は全技術を豊後と我が国が回収しその後爆破したため開発も不可能だろう。最悪我が国にはテンペストシリーズと豊後から購入したアマノムラクモノツルギシリーズもある。今もし我々が消えても軌道上の攻撃衛星による懲罰も可能だ。何かあっても我々が負けることはほとんどないだろう」
その後も二人は気のしれた友人……と言うよりかはもっと距離の近い恋人のように喋り続けていた。そして年越しまで残り1分というところでマティアスがある話をし始めた。
「そうだ、君には伝えておこう」
「何を?」
「先日豊後からコーラップス液の挙動がおかしくなっていると連絡が来た。昨日我が国も万が一の場合を考えて確認したところコーラップス液、特にダーティボムの挙動がおかしくなっていた」
「ダーティボムの挙動がおかしくなっていたって……万が一の場合を考えてコーラップス液の非活性化処置が必要だと思うのだけれど」
「既に非活性化処置は済ませてある。その上でレベル5の地下隔離施設に保管した。豊後も同様の措置をとったと連絡が入っている。今後の方針を決めるために年明けに豊後の安之倍大統領と首脳会談を豊後ので行う予定だ。そのために君には年明けの会見でこのことを発表して欲しいんだ……なんだ? 地震か、結構強いな」
年が明けた瞬間、共和連合全土が震度5弱の地震に見舞われた。
地震が収まってから外を見ると先程まで夜だったのに日が昇っていた。それを見たふたりは
「「……は?」」
と揃えて口を開けてしまった。
それが30秒ほど続くと外からノックされた。
『大統領、失礼します!』
そう言って入ってきたのは報道官であった。
「現在我が国の全ての衛星との通信が途絶し、GPSは機能不全を起こしています! そのため稼働中だったハイパーウェイ(自動運転車両高速道路)では手動運転が可能な車両以外全てが停止。また我が国の領空を飛んでいた全ての航空機が空港に殺到しています!」
報道官からの報告を聞いた副大統領は倒れ大統領は頭を抱えた。「なぜ復興が終わったばかりの我が国がこんな目に遭わなければならないのか」と。
そんなことを考えると科学長官が走って執務室に入ってきた。
「大統領! 我が国の原子炉のコーラップス制御機構に異常が発生し、第4世代以降の全ての原子炉が停止しました!」
ーーーーーーーーーーコーラップス制御機構
第4世代以降の原子炉にはコーラップス液の物質を分解する性質を利用し、放射性物質以外での核分裂反応を使用した原子力発電を可能としている。そのため我が国は基本的には第4世代以降のコーラップス制御機構を搭載した原子炉を主流に電力を賄っている。
そんな中大統領は頭を抱えながら報道官に質問をした。
「……各国と連絡は取れないのか」
この質問に対し報道官はこう答えた。
豊後のみ連絡が取れました、と
これを聞いた大統領は頭の中でこの先半年の政策や資源管理などを即座に考えこう命令した。
「全大臣を全て招集しろ! また現時刻を持って我が国で産出しないレアメタルや鉱産資源の使用を全て制限! 安定供給が可能になるまで以後は政府が全て管理する! また副大統領は現時刻を持って解任、意識が戻って脳に障害がないことを確認できるまで議員停職とする!」
三時間後ーーーーーーーーーー
「これより全閣僚による会議を始める。アリス・シルフィード副大統領は先程倒れたため一時的に副大統領の任を解き議員停職とした。そのためハンス・ハルトマン議員を副大統領に一時的に置かせてもらう。異論は?」
『異議なし!』
「よろしい。まずはーーーーーーーーーー」
その後会議は朝の8時まで続いた。その結果以下の5つが決定した。
・国内で手に入りずらい資源は政府が管理する。
・燃料などは豊後王国に送る分を考え一部は統制する。
・豊後と即座に軍事同盟を結ぶ。
・失業者などは新たにできる深深度地層資源採掘や漁業農業などで活用する。
・徴兵制を一時的に復帰させる。
この5つは午前10時の記者会見にて公表されることとなった。
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