ようこそ実力至上主義の教室へ〜間違った青春はとある教室で始まる〜 (らふ)
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邂逅

突発的思考で描いたものですが、暇つぶしであれどやり始めたら最後までやるつもりですので、よろしくお願いします。とりあえず一話長くなっきもしないでもありませんがすたーと


比企谷八幡の独白

 

独白と言えないのかもしれない。

独白と断ずることはできないのかもしれない。

俺はいつも思ってきたことだ。

人間誰しもが優秀であるはずがない。それ故に才能に僻むものも出てくる。

どんなに努力したって埋められない才能の差に打ちひしがれたものだっているのだろう。

俺だってその1人だ。

いつだって自分の環境は自分で作ってきた。

そして失敗して、崩壊して、欠如となった。

俺が望んだわけじゃない。俺以外の俺をよく思っていない連中が俺を排除しようと躍起になっただけだ。

失敗するたびに俺は世界を知っていった。

世界は自分に優しくなどなく、世界は自分を排除することで成り立つことが多いのだと。

俺が望んだわけじゃないだが、俺がいないことを望んだ世界を望む方が成功するのだ。

だから俺は断言する。

青春なんてものは存在しない。存在するとしたら俺を除いた青春だ。

 

故に俺は世界最高の不良品だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都高度育成高等学校。

胡散臭さ100%を誇る唯一無二の高校だ。

ちがうか?違うな。

真面目に説明すると希望する進学、就職先にほぼ100%こたえるという全国屈指の超超名門校。高度育成高等学校。

 

そのキャッチコピー?の通り超胡散臭い。希望する進学就職先に100%答えるって絶対嘘だ。若しくは超厳しい学習教育をさせるかのどっちかだろう。

信じたら信じたでまじいいことないから。これ俺ソース。

 

ノート取ってないから貸してと言われて貸したら、全然帰ってこなかったりとか。

 

それで返してって言ったらなんて言ったと思うあいつ。知らないって言うんだぜ?もう絶対信じん。

 

これはゲームとかでも言えることで、借りパクなど常套句いや、むしろ借りパクしかないまである。

 

今俺は何をしているか。

 

そりゃもちろん本読んでるけど、そうじゃない、バスに乗って学校に行っているのだ。

 

どこに行っているんだってか、そりゃもちろん高度育成高等学校だ。

 

今は四月。入学式がある。あぁー学校行きたくねぇ、どっか別の世界軸に行って田舎にでも暮らしてぇ。

 

何はともあれ、今は学校に向かっているバスに乗って座席に座りゆらゆらとそれはもう幽霊の如く揺れている。

 

幽霊は言い過ぎだな。

 

そんなことを考えているうちに搭乗客はどんどん増えていく。

 

乗り合わせている客はほとんどが高校の制服を見に纏っている若者たちだ。

 

ふとすると、仕事に追われフラストレーションを溜め込んだサラリーマンが痴漢しちゃおっかなと間違いっておいおいほんとにやるなよ。あなたも結構目が腐ってますね。分かります。分かりますよその心情。

 

俺のすぐ前に立つ老婆なんて足元がふらふらしていて危なっかしい。

 

まぁ、俺には全然関係ないし、座っているこの座席を離れる気なんて毛頭ないがな。

 

気の毒な老婆なんぞ忘れて新たな学校生活に想いを馳せよう。あぁーーーーー

 

あれ?なんか今学校に入ってもボッチな俺が目に浮かんだぞ?なぜかな、かな?

 

 

 

 

「席を譲ってあげようとは思わないの?」

 

 

あぁ俺のことじゃないなこれはと思いながらも自然と声のする方を見る。

 

 

 

優先席にドカリと腰を下ろしたガタイの良い若い金髪の男。というか高校生。彼の真横にはさっきの年老いた老婆。その老婆の隣にはOL風の若い女性が立っている。

 

「そこの君、おばあさんが困っているのが見えないの?」

 

OL風の女性は席を譲ってやってほしいと思っているようだな。譲ってやってさらーとフェードアウトすれば良いものを……俺ならそうするけどななんならそもそもそれを先に予見して最初から優先席に座らないまである。

 

静かな車内での声はよく通り、周囲の人たちから自然と注目が集まる。

 

「実にクレイジーな質問だねレディー」

 

クレイジーって、どっちかっていうと君の方が狂っているように見えるのは俺だけなのかな。無視すれば良いものを。

 

脚を組みなおし言う。

 

「何故この私が老婆に席を譲らなければならないんだい?どこにも理由はないが」

 

「私が座っているのは優先席であって法的な義務はどこにも存在しない。それは今現在この席を有している私が判断することなのだよ。若者だから席を譲る?ははは、実にナンセンスな考え方だ。」

 

うん。完全にあいつ別次元だな。よく見てみると筋肉も周囲から浮くくらいついているし、喋っていることも少しめちゃくちゃだが筋は通っている。

 

ああ言う人間は面白い。周囲から浮くが絶対に自分を曲げないため強い。

 

桁外れに強いのだ。

 

故に自信もつくからああなったんだろう。

 

なんて考えながらも俺の座っている席も優先席なんだよなぁと思う。どうしよ、こっちに火種がうつらないことを願うしかないな。

 

「私は健全な若者だ。確かに立つ事にはさほどの不自由は感じないがしかし座っている時よりも体力を消耗することは明らかだ。意味もなく無益なことをするつもりにはなれないねぇ。それともチップを弾んでくれるとでも言うのかな?」

 

面白いこと言うなあいつ。確かにあれが立っているところなど想像できないが

 

「そ、それが目上の人に対する態度?」

 

「目上?君や老婆が私よりも長い人生を送っていることなど一目瞭然だ。疑問の余地もない。だが、目上とは立場が上の人間を指して言うのだよ。それに君にも問題がある。歳の差があるとしても、生意気極まりない実にふてぶてしい態度ではないか」

 

「なっ、あなたは高校生なんでしょう?!大人の言うことを素直に聞きなさい」

 

うわー大の大人が情けねぇー論法で負けてやがるよ。俺の野次馬精神がものを言う、そうだもっともっと言えーー。こっちに火種がうつらないように。

 

「も、もう良いですから」

 

あの老婆、騒ぎを大きくしたくないんだな。わかってるねぇーめんどくさいよね当事者はそういったものに関わりたくないのに巻き込まれることは多々ある。

 

俺も結構あるんだよな。第三者が変に騒ぎ立てて事態が面倒になったこと

 

だが、OLはまだ怒っているどころかさらに怒りをともしたような顔になっている。

 

「どうやら君よりも老婆の方が物分かりが良いようだ。いやはやまだまだ日本文化も捨てたもんじゃないね。残りの余生を存分にたのしみたまえ」

 

うんうん。随分と偉そうだなぁ。

流石にあれは自信がつきすぎなんじゃないのか?

 

無駄に爽やかな葉山風スマイルの劣化版?みたいなものを浮かべると金髪は爆音だだ漏れで音楽を聴き始める。勇気を出して進言したOLは悔しそうにしていた。

 

そりゃそうだよな、あいつの言い分も間違っちゃいない。少し背徳的なところはあれどな

 

「すみません」

 

OLは悔しそうに必死に涙を堪えながら小さな謝罪の言葉を口にする。

 

こちらに火の粉が降りかからないように必死に気配を消しているが、よかったあいつにヘイトが向かってて

 

心底どうでも良いな

 

と思いかけた

 

 

 

 

「あの。お姉さんの言う通りだと思うな」

 

 

思いがけない救いの手だ差し伸べられた。

 

それは誰であっただろうか。昔の幼い頃の面影をちゃんと残し、びっくりするほどの可愛い笑顔の

 

そして僅かに影を携えた少女は。

 

それは櫛田桔梗。

 

彼女にとってはそうでないかもしれないが、俺にとっては再会だった。

 

 

 

 

 

 

 

だが思った、かわらねぇなこいつもと




小説書くのって意外と疲れるのですが、やっぱり楽しいです。もうちょっと文才があればよかったのですが………

ここから先はまだ考えていないです。少しはこんなだったら面白そうだなぁーとか漠然としたものはありますが、仕上がっていないです。こちらについてもそのうちアンケート取らせていただきますのでその時はご協力お願いします


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第二話彼と彼女は何を望むのか

はーい。らふです。
1週間投稿なので書きました。
なかなかに描くのが面白い。
それでなかなかにいちゃつき具合がむかつく
そんな二話でした。
八幡が違和感を感じる回でもあります。


ではーすたーと!


俺は不良品たりえる人間なはずだ。

なのにどうしてあの学校に入ることができたのだ?

不思議だ。不思議でしょうがない。

ならば、学力だけでは決まらないとでもいうのだろうか。

下らない妄想でしかないが、学力だけで入れるか否かを問う学校なんぞ面白くないからな。

そう言ったものもあってもおかしくないのであろう。

その、根拠のない空想が今後どんな影響をもたらすのかも知らないが、入ってみてのお楽しみだな。

くくっ、今年は退屈しなさそうだ。

ただし、俺が1人でいることは違いねぇようだがな。

それでも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ、くぁー……ついたか。」

 

なんだか、バスが長かったように感じなくもないが。それだけ老婆に席を譲って欲しいと見えるあの人たちもあの人たちだよなぁ。

 

どうしてことを穏便に済まそうという心根がないのかねぇ。心底不思議だ。

 

入学式があるのだが、どうしてもいけ好かない。何か悪い思い出でもあるのだろうかと考えてみる。

 

入学式に対しての黒歴史はないはずなんだけどなぁと、思うのだが、俺はどうも入学式が嫌いだ。

 

なんでって?そりゃお前。俺が1人になるからに決まってんだろ。

 

クラス内での自己紹介しかり、俺だけ名前間違えて呼ばれる呼応しかり、いい思い出がない。

 

東京都高度育成高等学校、日本政府が作り上げた、未来を支えていくであろう若者を育成する。それを本願に据えた学校。

 

今日から俺が、通わなければならない学校。

 

これから始まる学校生活に思いを馳せ。あぁ、クソみたいなボッチ生活が見える〜

 

行くか。

 

「ねぇ」

 

「……」

 

ふぅ、ちょっと張り切り過ぎてしまったかもな。ちゃんとした学校だからいじめはないはず。そしてあいつらもこの学校には来ていないはず。そう信じたい。

 

「ねぇ、そこの君」

 

「…」

 

お、見えてきた。クラス表だ。人がたかっててよく見えないな。ほーうどれどれー

 

「ねぇ、聞いてってば」ガシッ

 

「ほひゃあ。…………こほん、なんだよ」

 

「いや、驚きすぎだよ?」

 

なんだよ。俺に用があるやつとかいたのかよ。びっくりしたー。

 

もう俺は一歩を踏み出したところなので、よくわからないが、後ろにも似た様なやt………………

 

ありゃ、相当やばい化け物だな。見ただけで凍りつく様な無機質な瞳はそれを物語っている。

 

俺には関係のないことだろが、関わらない様に気を付けよう。どこであって刺されるかもわからんしな。

 

「ねぇっ、君さ、さっきなんで譲らなかったの?」

 

「そりゃーお前、面倒だからに決まってるだろ。周囲の視線を浴びるってのはボッチに耐え難しことなんだ」

 

「ん…………うん。続けて」

 

「つまるところ、ぼっちは1人を望んで1人であることを強いられるんだ。孤高の1匹狼。分かるか?」

 

「うーん。わかんないけどっ」

 

こいつ俺のことを忘れているんだな。ならよかった。忘れていてくれるなら申し分ない。完璧だよお前。俺はこれからも1人でいられるんだからな。

 

だが、それは早々に挫かれることになる。

 

「久しぶりだね!!八幡くん」

 

そう言ってウインクしてくる。うん。お前高校生やめて秋葉のアイドルでもやってろ、売れるから。

 

「久しぶりだな。俺は別にお前に会いたくはなかったんだが」

 

「ぶぅー、そんなこと言わないでよ。私は八幡くんと会えて嬉しいよ?」

 

うるうるとさせながら詰め寄ってくる。近い近い。そういうのは他のやつにやれって何度も言わなかったか?

 

忘れてんのかな?人がいるところでやったらそれへんな目でしか見られないからやめといた方がいいと思うぞ。

 

「いや、可愛いんだけどな。もうちょっと自重しろ?な?俺と付き合ってるとか勘違いされてもあんま嬉しくないだろ?」

 

「うぅん、それはそれで…………」

 

「あん?なんて?」

 

「いやいや、なんでもないよっ!それより八幡くんは何組だった?」

 

「お前はもう見たのかよ」

 

「まだなんだー。今見るとこっ」

 

「ふーん。俺は別に何組でもいいんだがな」

 

「ぶぅー、そういう時はお前と一緒のクラスがいいって言ってくれた方が嬉しいんだよ?」

 

「いやー、俺はそんなこと………」

 

「私はあるんだから」

 

「お、おう」

 

昔から少し気が強い部分があったのだが、それも強化されてるみたいだな。少し違和感を感じる部分もあるし………

 

そこは取り敢えず後々考察するとして、今はクラス表だ。どのクラスに所属するか、これで結構高校生生活が変わったりするものだ。

 

高校生生活はこれが初めてなのでそれはおかしいのだが、俺はそう考えている。

 

えーっとー

あった

 

Bクラス

比企谷八幡

 

ふぅー、とりまあれは見つけることができたのだが、こいつはどうだ?

 

「うーん。あった!むぅ、残念八幡くんと違うクラスだ」

 

「そうか。そりゃ残念だったな。」

 

「そういう割には残念そうに見えないんだけど」

 

「こう見えて内心凄く残念がってるんだよ。あぁー櫛田と同じクラスじゃなくて残念だなぁ」

 

「むむぅー、昔みたいに桔梗って呼んでよっ!!」

 

「いや、呼ばん。」

 

「なんでっ!!」

 

「そう声を荒げるなよ、なんでって、そりゃあー恥ずかしいからに決まってるだろ」

 

「むぅ、じゃあ呼べる様になったらでいいからそう呼んで?」

 

「呼べる様になったらな」

 

「絶対呼ばない気でしょ」

 

はっ、何故気づいた?こいつもしやえすp「ぱーじゃないよ。純粋には八幡くんの考えていることがわかるだけ」

 

「まぁ、いつか呼ぶから勘弁してくれ」

 

「呼んでよ?」

 

「あぁ。だからもう離れてくれ」

 

「ご、ごめん。迷惑だったかな?」

 

その言葉にくらっとくる。なんだか、ヒロインが吐く様な言葉をすらっと。こいつ男の理想とする女だな。

 

ん?男の理想?なんだかどこかで聞いた様な言葉だな。

 

さっきから外野がうるさいんだよ。「リア充は爆発しろ」だの、「羨ましい」だの、「そこ変われ」だの。

 

うっせえつの。最初については同感です。リア充爆発して欲しいですよね。

 

「迷惑じゃないが、せめて人気のない場所でしてくれ」

 

「うん。じゃあ、人気のない場所で今度うんと甘えるねっ⭐︎」

 

「そうだな。人がいない場所ならな、人がいない場所」

 

「うん?それより八幡くん!もう入学式始まるよっ。教室行こう?八幡くんは違う教室だから途中で別れることになるけどそれまでは一緒に行けるでしょ?」

 

ね、と同意を求めてくる様に言ってくる。そうだな。わかってるよ。分かってる。漸く別れることができることにホッとしていることくらい分かってる。

 

だけど、こいつの変わった部分はなんだったのか。それだけは頭に纏わり付いて離れなかった。




oh〜yeah I
二話終了だぜ!
はい。この話は1週間投稿ですので、ちょうど1週間たった今書きました。
書き進めるペースが速くなってきたので、またタイトルを増やすかもしれませんが作者の突っ走りだと思ってください。
だーれがヒロインだっ?


ではではー


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第三話それは彼女の始まり

はい。こっちはあまり描くつもりはなかったんですが、君の膵臓を食べたいを見て描きたくなりました。
早めに進めるつもりなので、よろしくお願いします

ではーすたーと


 

某月某日曜日    日記

 

 

私は周囲に真剣に真摯にそして真面目に向き合ってきた

どんなことだって真面目に、クラスの揉め事だって友達を優先して守るのではなく、中立の立場を持ってやり過ごす。

ある日された友達からの相談だって、真剣に話を聞いて、解決に促した。

友達から聞くいつもの愚痴だってなにが原因なのかきっちり聞いて、本質を掴む。

最初は揉めたりしたけれど、それはまだ私が未熟だったのか今ではすっかりなくなった。徐々になくなるにつれクラスは団結していき、今では愚痴すらも聞かなくなった。

私は何事も真剣に真摯にそして真面目に向き合うことは大事でそれがいかに大切かを学んできた

なら、、、ならば、、、、

この気持ちにもちゃんと向き合えるだろうか

それに私は答えられない何も誰にも

応えられない

でも、いつかきっと応える

 

自分が何もかもすべてさらけ出せ得る日を望みここに記します。

 

 

 

                       一ノ瀬帆波

 

 

それはいつの日記だったとだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、一ノ瀬穂波は高校生活からリスタートする。そう決意して高度育成高等学校の門を潜る。

 

桜の花が辺り一面に咲き誇り乱れ散り、今の季節を思わせた

 

私は桜の花が好きだ。自分の髪色に似ていることもあるけど、何より明るく散っていく花弁を見るだけでも時が過ぎていく、その時間が好きなんだ。

 

門を潜るとたくさんの生徒が見えてきて、この人達と学校生活を送るんだーと思うと楽しいという感情とともに緊張も感じた。

 

ある場所に人が集まっているのを見ると、其処にクラス表が載っていることに気づく。

 

私も其処に行き、自分のクラスがどこなのかを見る。

 

えとえと…………

 

一年Bクラス

一ノ瀬帆波

 

 

あった。私のクラスはBクラス。

私の再出発はBクラス!!

 

よーし、がんばるぞ!

 

私は一層気合を入れ、教室へと向かう。見ると、ある男女が教室に近づくと離れていった。

 

カップル?

 

入学初日にカップルなんて早すぎない?と思いながらも、男の方に目がいく。

 

これでもかというほどに猫背で、つむじの部分にちょこんと立つなんだか可愛く感じるアホ毛。

 

その背中が、妙に頭から離れなくなったのは多分気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣の人同士などで簡単に自己紹介を済ませている姿が多く見られ、仲良くしようという気迫が感じられた。

 

「えーと、私は白波千尋。貴方は?」

 

隣の席に座る、ショートヘアの頭に花飾りをつけた少女が話しかけてくる。

 

「あっ、私は一ノ瀬帆波だよ!よろしくね」

 

「うん。よろしく一ノ瀬さん!」

 

私も隣の席の人が話しかけてきたので自己紹介し返す。

 

白波の第一印象はおどおどしてて可愛いがしっかりしていそうな子だ。

 

まずはこの子から友達になろうかな。

 

始業を告げるチャイムがなる。少し遅れて、私服?を着た教師が入ってくる。

 

見た目からの印象はちょっとだらしなさそうだけど、協調性はありそうな、ひょっとしたら20代で通じるくらい若そうな茶髪のロングでポワポワした雰囲気の教師?が教卓に立つ。

 

 

「は〜い、私がこのクラスの担当となった一年Bクラス担当の星乃宮知恵で〜す。皆〜よろしくねー。普段は〜保険医を担当していまーす。

 

卒業までの三年間はー私が担任として君達と学ぶことになると思いまーす。

 

今から1時間後に入学式が体育館であると思うんけど、その前にこと学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらうね〜これは入学案内の時に配ったものでもあるよー」

 

 

気の抜けた自己紹介と、説明にポカンとしている生徒が数名いるが、皆ちゃんと聞いている。

 

 

ふと、窓際に座る生徒が目に入る。

普通こんなにキョロキョロしないのだが、今日は少し緊張しているのか気が収まらない。

 

彼はさっき見た猫背の生徒で、こんな目してるんだーってくらい腐った目をギンギンに光らせながら教師を睨んでいる。

 

あっ、先生が彼に向かってウインクした。

 

それに反応したのか否か、彼はビクッとして目を逸らす。

 

なんだかあせあせして可愛いなぁ。

 

 

おっといけない。よそ見はいけないなと思い、教師に向き直る。

 

「今から配る学生証カードはーそれを使って敷地内のすべての施設の利用、売店等で商品の購入をすることができるようになってるの。

 

でもーポイントを消費することになるから要注意ね〜

 

学校内においてこのポイントで買えないものはないから安心してね。学校の敷地内にあるものならなんでも購入可能だから」

 

ふーん。随分と便利な作りになってるんだなぁ。

 

つまり、この学校に置いてこの学生証と一体化したポイントカードは現金と同じってことだ。

 

これは、買うものに気をつけないとかな。

 

 

「施設では、機械に学生証を通すか、提示することで使用可能でーす。使い方はシンプルだよねぇ〜

それからそれから、ポイントは毎月1日に自動で振り込まれることになっているから〜

君達全員には平等に10万ポイントが振り込まれているはずなので確認してね〜

一ポイントには1円の価値があるので忘れないように」

 

最後はちゃんとしようとしたのか、気を引き締めるような仕草をする。

 

教室内でこそこそと話し声が聞こえるが、おそらく支給額の多さについてだろう。

 

 

驚くよねー。私もそうだもん。十万円も毎月支給してくれるってところは少し怪しい気がしなくもないけど、国からそんな額を支給してくれることに驚く。

 

「ありゃ、あんまり驚かないんだね〜入学を果たしただけでも君達にはそれほどの価値と可能性があるってことだよ〜

 

このポイントは卒業後に学校が全て回収することになってて現金化はできないからためてもあまり得はないよー

 

振り込まれた後は君たちの自由。好きに使ってね〜

 

ポイントがいらないって人は誰かに譲渡することも可能だよー。

 

だけどー無理やりカツアゲするような、そんな真似はダメだよ?学校はいじめに敏感なんだから」

 

すでに静かになっていた教室内で、星乃宮先生はぐっと背伸びをして、やっと終わりと言わんばかりに

 

「それじゃー説明は終わりだよ。良い青春をね⭐︎」

 

きらんとまたウインクを彼にして、立ち去る。彼はまたビクッとして、うつ伏せた。

 

じわじわ汗かいてるけど大丈夫かな?

 

なんだか不安もあるけど、でもでも、楽しみ!!

 

よーし、Bクラスがんばるぞーー!

 

 

 

 

 

 




はい。一ノ瀬回です。
pixivでアンケートとっていますので、これから先一ノ瀬視点か八幡視点かを決めます。
どちらでかいていても、物語上の設定は変えるつもりはありませんので、よろしくです。

一ノ瀬帆波の始まりどうでしたか?

ではではー


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第四話彼と彼女の過去

早めに投稿しないといけないので前書きを省きます。ご了承ください。ではー、すたーと



私はあの時のことを絶対に忘れない。どんな事があっても、あの生徒の行く末を見守りたいから。

 

忘れてはいけない、過去なんだ。

 

私は教員免許、一種免許を取った後、経験としてとある小学校担任となった。

 

あれは4年前だろうか

 

恐らく小学校6年生の担任となったはずだ。

 

 

とある小学校で自己の自己紹介を終え、最初の色々の説明を尽くしそれも終えた後。

 

ここで、一年過ごすのかと、児童たちを一通り見た時、少し寒気が立ったんだ。

 

あの自動はなんなのかと、一見腐った目だが、その奥には憎悪でもない、醜悪とも取れない光があった。

 

もう一度あの児童はなんだと見返すが、その腐った目に引き込まれそうで怖かった。

 

なるべくあの児童には関わらないようにしようかなと思うと同時にそんな感情とは矛盾する一つの思いができた。

 

 

あの児童の行く末を見てみたい

 

 

それは単に好奇心とも取れるのだが、直後その想いが膨れ上がる。

 

睦月のことだ。

 

とある生徒と生徒とが喧嘩していた。

 

その生徒たちは以前から仲が悪くクラスで対立していて、一度片方の生徒が相談に来ていて、それを聞いてもう片方の生徒に相談しようと思っていたんだけど。

 

 

 

 

 

ある日、其の亀裂が埋まっていた。

 

 

 

 

ある児童に聞くと、物を盗んだ児童がいて、その子を糾弾していると、喧嘩してたのが、その子を心配してのことだったと片方が気付いて治った。

 

私は其の児童を最初は馬鹿な生徒だなぁ、と思いながらも少し感謝してた。

 

ヘイトを集めて一体どうすんだと思った。

 

 

だけど、其の児童は彼だった。

 

彼が動いちゃったんだよね……

 

彼はそのクラス間の関係を見越してとある策を打った。

 

当然それに気づいたのは後のことだったけどね。

 

 

 

 

 

態と、片方のシャープペンだったかな?それを盗んでヘイトを彼に当てることで、憎悪の対象を移したんだ。

 

私は其の方法を良いことだとは思わない。だけど、其の方法で解決した彼を労うべきだと思った。

 

少しでも報われないとかわいそうだから。物を盗んだのなら悪いことだけど、こう言ったやり方でないといつかまた亀裂を生む。

 

今回は片方の児童がもう片方の児童を思っていたから解決したけど…………

 

其の時思った。

 

それを全て見越してのことだったなら?全て見越しての最善手。解決策。計算し尽くしての行動。それは憶測の域を出ないのだが、そうであるに違いないと思った。

 

そんなことをするような子には見えないしね。

 

そうだったなら、恐ろしい。

 

自己のリスクヘッジをも捨てて、解決するためには其の計算の中に自己をも加える。

 

他人を動かすのではなく自分を動かして

 

私はその子の全てを見た気がした。

 

経験が物を言うとはいうが、其の経験全てが醜い物なら、という事例が彼だった。

 

それを知って駆け出した。

 

彼を追い、話した。

 

彼は本当に興味深い。面白い児童であるとともに悲しい生徒だなとも思った。

 

それが始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は高度育成高等学校の入学式。

そして、新任教師である私は、全てを説明されて、Bクラスの担任を請け負った。

 

さてさて、Bクラスの生徒はどんなかな〜

 

と思いながらガラガラガラと扉を開けぐるっと生徒たちをみる。

 

うぅ、昨日お酒飲みすぎたかな。少しよろけながら、みっともない姿を見せまいと、ピシッと肩筋を張る。

 

 

うーん。気合入れないと!

よし、と。さてさて、まずは説明するか

 

 

「は〜い、私がこのクラスの担当となった一年Bクラス担当の星乃宮知恵で〜す。皆〜よろしくねー。普段は〜保険医を担当していまーす。

 

卒業までの三年間はー私が担任として君達と学ぶことになると思いまーす。

 

今から1時間後に入学式が体育館であると思うんけど、その前にこと学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらうね〜これは入学案内の時に配ったものでもあるよー」

 

少し気を抜いちゃったかな。私のこういう癖はいつまでも抜けない。

 

うまくいかなかったことはないからいいかな。これでも。

 

ふとした拍子で、クラスの窓際の席を見る。

 

本当に自然に、自然と目がいった。

 

あれ?あれあれあれ?

 

なんでここにいるの?こんな偶然ってある?

 

私は胸が高まった気がした。また、あの生徒の先生でいられる。あの生徒の行く末を見れる。

 

高校でダメなら大学教授でもいいと思ってたんだけど、まさかこんな場所で会えるとは。

 

高鳴る鼓動を抑えられず、ウインクをする。

 

やっちゃった。と思ったが、後悔より期待が勝った。

 

ビクッとした彼はだらだらと汗をかきながら、よそ見している。

 

気付いてるなぁ〜これは。

 

何も変わってないんだね。あの頃から、私の知る君なんだね。

 

ちょっと安心した。私としても、彼には彼のままいて欲しかったのだと思う。

 

それで、少し悲しくなった。彼には進んで欲しかった。進んだ先を見て欲しかった。

 

そんな矛盾した気持ちが胸の中を渦巻くが、今はするべきことをしなきゃいけない。

 

今ここにいるのは彼だけじゃないのだ。忘れちゃいけない。

 

「今から配る学生証カードはーそれを使って敷地内のすべての施設の利用、売店等で商品の購入をすることができるようになってるの。

 

でもーポイントを消費することになるから要注意ね〜

 

学校内においてこのポイントで買えないものはないから安心してね。学校の敷地内にあるものならなんでも購入可能だから」

 

言い、もう一度彼を見る。さっきまでとの様子とは違い、何か分析するような目だった。

 

ありゃ、気づかれちゃったかな?この学校のやり方は面白いからねぇ〜彼には最高の学校だと思うんだけど、やっぱり其の考えは間違いじゃないみたい。

 

アホ毛がピクピクしてる。なんだか可愛いなぁと思いながらも、説明をしなければと視線を外す。

 

 

「施設では、機械に学生証を通すか、提示することで使用可能でーす。使い方はシンプルだよねぇ〜

それからそれから、ポイントは毎月1日に自動で振り込まれることになっているから〜

君達全員には平等に10万ポイントが振り込まれているはずなので確認してね〜

一ポイントには1円の価値があるので忘れないように」

 

 

それを聞いて、こそこそと話し声が聞こえるが、あまり驚いた様子はない。

 

さっすがーBクラス。

 

このくらいじゃ驚かないか。もちろん彼も驚いてないどころかよそ見して鼻歌歌ってる。

 

ちょっと余裕すぎない??あっ、私から目を逸らしているだけか。

 

ふふっ、可愛いなぁもう。

 

あ、喋らなくちゃ

 

 

「ありゃ、あんまり驚かないんだね〜入学を果たしただけでも君達にはそれほどの価値と可能性があるってことだよ〜

 

このポイントは卒業後に学校が全て回収することになってて現金化はできないからためてもあまり得はないよー

 

振り込まれた後は君たちの自由。好きに使ってね〜

 

ポイントがいらないって人は誰かに譲渡することも可能だよー。

 

だけどー無理やりカツアゲするような、そんな真似はダメだよ?学校はいじめに敏感なんだから」

 

少しずつ情報を開示する。

 

この学校のやり方もいやらしいよねぇ。私がこの学校を卒業した時もそうだったっけ。

 

最初はポイントの額に少なからず驚いたけどこのことを聞いて色々考えたなぁ、ポイントの賭けとか、お金持っている人は出る時にトレードでもするのかなぁとか思ったり。

 

楽しかったけど、それはもう過去の話、今は教師の立場なんだ。気を引き締めないと!!

 

少し強張った体をぐっと伸ばす。

 

やっと終わったー

 

「それじゃー説明は終わりだよ、良い青春を⭐︎」

 

ぱちっと、彼に再度ウインクする。

 

またビクッとして、机に伏す。だらだらと汗をかき続けているところを見ていると昔を思い出す。

 

ふふっ、やっぱり、なーんにも変わってない。

 

少しつまらないなぁ。

 

私が変えてあげなくちゃね⭐︎

 

 




はいっ、第四話です。いかがでしたでしょうか
こちらも時間短縮の為省きます。ご了承ください。
では続きます。


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第五話行動の真価

俺は変わらない

変わることは自殺だ。自分を捨て逃げた先にあるのは自分じゃない、他の知らない誰か。

もう一度言う。俺は変わらない。

人間簡単に変われない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、こっち見てー!!」

 

クラス内で大きな声が上がる。先生の説明を終え、クラス内が喧騒に包まれた時だった。

 

ふぅ、あの先生怖え。あれは確か小学校の時の先生だ。

 

何故か、途中からすごい絡んでくるようになって、怯え怯え過ごしていたのを覚えている。

 

あの先生はポワポワしているようで、鋭い。あの瞳で見られていると自分の心情が見透かされているように感じる。

 

お前の考えていることはわかっていると

 

そう言われている気がする。

 

それより、クラス内自己紹介が始まったようだな。

 

なんか、委員長がどうとかこうとかいってるけど、俺には関係のないことだ。

 

俺が委員長になることなんてないだろうしな。

 

心配は杞憂。

 

さてと、俺の番が回ってこないうちにとんずらさせていただきますか

 

「はーーい、そこの君待ってーーーーーー」

 

おそらく俺のことじゃない。どこから回ろうかな。店も見ておきたいし、図書館とかあるか確認しておこうかな。

 

そう考えながらスタスタと歩き出す。

 

いや、なかなか広いなここ。高度育成高等学校、どんだけ金を注ぎ込んでるんだよ。力入れすぎだな。

 

監視カメラについては後々考えよう。この学校の構造を頭の中にインプットして置いて、損はないはずだ。

 

すたすたすたすた

 

とんとんとんとん

 

すたすたすたすた

 

とんとんとんとん

 

あれ?なんか、俺の歩くリズムに乗ってきている奴がいるんだが、もしかしてストーカー?つけられちゃってる?

 

考えすぎだな。

 

しかし、確認しておこう。監視カメラのある場所で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、そこで隠れているやつ出てこい」

 

「あ、あははー早く気付いて欲しかったんだけどな〜」

 

「あれ?お前は確か……」

 

 

そこにはストロベリーブロンドのロングヘアでスタイルがいい美少女がいた。

 

確か委員長だとか、騒がれていた奴だ。え?なんでここに?いや、本当に。こんな場所にいていい奴じゃないだろ。

 

「私は一之瀬帆波だよ。一緒のクラスの人には全員自己紹介終えてきたから」ハァハァ

 

息を切らせている。あぁ、歩くペース早すぎたか。さっきから妙に騒がしいと思ったらこいつが呼んでたのか。

 

「まぁ、少し落ち着いて話そうぜ」

 

「そうだね。歩くペース早いんだね、、、追いつけなかったよ。」

 

「現に今こうしているが?」

 

「いや、もうちょっと歩いてたら離されてた。もうちょっと加減してよぅ」

 

「すまなかったな。それで、俺に何のようだ?俺はこれから学校探索で忙しいんだが」

 

「そういっても、あまり時間ないと思うんだけど、入学式まで」

 

「いや、大丈夫だ。ちゃんと計算してあるから、少し歩くだけでは遅れない」

 

「それでも、クラスで自己紹介とかしなくていいの?」

 

「いい。というかする必要がないな。俺みたいな協調性がない奴がいてもクラスが迷惑なだけだ」

 

「んー、そんな卑屈な考え方しなくていいと思うんだけど」

 

「卑屈なんじゃない。単なる事実を語っているだけだからな」

 

そうだ。事実だ。俺を除くクラスでクラスが成立するなら、俺はそこにいちゃいけない。居座ることは一部の生徒にとって邪魔であることが多いからな

 

「でも、君を邪魔だと思う人はいないと思うな」

 

「お前がそう思っていてもいるんだよ、そういう奴が。だから放って置いてくれ。俺はここの大まかな情報を知らなくちゃいけないんだよ」

 

「ふーん、じゃあ私もついて行く。」

 

「はぁ?!俺の話聞いてなかったのか?俺はクラスに戻らないんだぞ?」

 

「それでもついて行く。君なんだか、危なそうなんだもん」

 

「はぁ、もうなにもいわねぇよ。ついてくるならついてこい。何もないだろうがな」

 

「やったー。じゃっついて行くね。文句言わないでよー」

 

「あぁ、何も言わないっていったからな、それでもいいんなら」

 

「えぇー、喋ろうよ?」

 

「いやだ。」

 

「むぅー、君は面白い人だと思ったんだけどなぁ」

 

「俺が面白いなら、クラスの中で大人気になっているはずなんだがな」

 

自分で言ってて、ありえねぇなと思う。ありえない話だ。中学でも少数の人間としか付き合ってこなかった俺が?ないな。絶対。

 

「ふふっ、そうだね。君だってなれると思うよ、人気者」

 

「なれねぇよ、絶対な」

 

「じゃあ、俺は行くが、本当についてくんのか?」

 

「うん。もうあとちょっとしか時間ないけどね」

 

そうして、結局俺も話しながら何となくこんなのもいいなと感じていた。この時はやはり気が緩んでいたのだろう。俺は絶対に曲げない。自分を周囲を。曲げない。

 

あれから一之瀬とはいろいろ話したが、会ったばかりなので、趣味とか、中学の話とか、好きなものとか嫌いなものとか、当たり障りのない話を続けた

 

「ねぇ、比企谷君。何で先生にウインク投げられてたの?」

 

「あぁ、あれな。あれは………」

 

予鈴がなる。入学式の15分前の予鈴だ。そろそろ戻らないとな。

 

それに、過去の話はしたくない。嫌われる未来しか見えないからな。

 

「おっと、もう入学式始まるな。行くぞ?」

 

「……………いつか、きっと教えてね」

 

本当に踏み入っていいのか、試すような顔をしている。

 

だからおどおどと、上目遣いで聞いてくる。

 

「そんな顔すんな。あんま、面白くない話だよ」

 

「うん。約束ね」

 

約束。脆い上にしまいにはぐちゃぐちゃにされかねない、あまりいい思い出がないワード。

 

だけど、信じていい気がしたのは気のせいだろう。

 

 

 

 

 

学校の教室の窓から一つの視線が向いていることをこのとき気づかなかった。

 

 



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第六話才能

どんな学校であれど入学式はお堅いものが多い。

理事からありがたいお言葉をもらい、新入生挨拶があって、入学式は終わる。

そして昼前、先生たちから敷地内の一通りの説明を聞き、解散となる。

俺はこの学校を探索するつもりだが、他の生徒は寮に入ったり、クラス内での話し合いがあるだとかで集団になっている。

 

そして、喧騒はさって行く。

人と共に去って行く。

やはり学校が違うだけで中学と何らかわんねえな。

 

廃りそうな気持ちを抑えながらも、俺は学校を探索する。

あっ、あそこにも監視カメラが。

恐らく、この監視カメラには意味がある。防犯上の意味もあるんだろうが、生徒全員の監視という意味合いもあるのだろう。

 

ポイント制度というのも胡散臭い。先生の言葉では毎月10万ポイントもらえるとは言ってなかったしな。

 

品行素行が悪い生徒を戒律する為のルールが、多分ある。

 

そしてそれはポイントの増減にも関係するということだ。

 

こういうことを言うと小町的にポイントが高そうなものなんだが、今は小町なんていないからな。そう思うと少し悲しくなて行くのを感じるのだが、3年後帰ったら、目一杯愛でてやろう。

 

ともかく、ポイントの増減は存在すると思う。

 

根拠はもしあると仮定して考えた場合の合点が良い点が多いからだ。

 

まずは、国が本当に月10万なんて額を出すのか。

もし本当に月10万円なんて額を出してしまったら

生徒40x3x4x100000

その答えを見たら明確だろう

俺は数学が苦手なので、暗算はできないのだがな。

一年間での計算だとおっそろしことになると思うのでありえない話ではないもだろう。

 

核心には至ってないけれど。

 

 

そんなことを考えていると、コンビニが見えてくる。コンビニなんてあったんだな。

 

ちょっと寄ってくか。

 

中に入る途中、叱責が聞こえてくるので思わず振り返る

 

「一年だからってなめんじゃねえ、あぁ!?」

 

なにこれ?犬の遠吠えか?

 

「2年の俺たちに対して、随分と………」

 

どうでもいいので、早く店の中に入り、店の物を物色する。

 

はぁ、不良もいるのかよこの学校は。ほんっっと一筋縄じゃ行かなそうだな

 

あれ?あいつなにやってんだ?ま、ま、まさか万引き?!

 

うん。見なかったことにしよう。そうしよう。早めに店を出て早急にここを離れなければ、そうし………

 

「貴方は本当に万引きすると思いますか?」

 

「っ!!?」

 

いきなり、俺の横からひょっこり小さな少女が現れる。

 

ここがポケモンの世界ならどうする?

 

形振り構わず逃げの一手だ。

 

こいつは俺の危険信号がビクビク言ってる。

 

ほら、その証拠にアホ毛がピコーンピコーンってなってるだろ?俺のアホ毛便利だなぁ。確か陽乃さんもあった時ビクビクしてたな。

一年にの時にあったっきりだけど。あれ?確か高校…………

 

いや、これ以上考えることはやめよう。怖い怖い。もしこの学校にあの人がいるかもしれないなんて事を考えるのは考えるだけでも身震いしそうだ。現に今ブルブル震えてる。その時は葉山に押し付けよう。いや、葉山はここにいないか。くそ。

 

取り敢えず。逃げますか。こんな奴に関わってたら学校生活が崩壊する。絶対断固拒否で無理だ。

 

「じゃっ、俺は用事があるから。お前に用はないんだ。分かったらバイバイ」

 

ひゅーと駆け出そうとしたが、あれ?進めない。

 

見ると、首根っこを掴まれていた。

 

「貴方、なにを逃げ出そうとしているんですか。貴方に喋りかけているんですよ。話はまだ終わってません」ググッ

 

ぐいぐい引っ張ってくる。うわー下っ端みたいだなぁ。こいつより上に位置することなんて、人生三回繰り返しても無理そうだけどな。

 

こいつは先天性の天才だ。

 

「い、いやー俺の危険信号がびーびーなってるので早くここから立ち去りたいなぁと。というか、ここから立ち去らないと俺が死にそうだなぁーと」

 

「?何を言ってるんです?あなたが死ぬなんてありえ無いですよ正気になってください」

 

「いーやーだー。俺は帰る。お前なんかと話しているとある人を思い出すんだよ」

 

「うるさいですね。泣きますよ?いいんですか?ここで私が泣けば、あなたのことは定員に伝わり、このコンビニに入るたびに女の子を泣かせた腐った眼の男という肩書がついて回るのですよ?」

 

「おいおい、俺を潰すつもりかよ。わかった。分かったから泣かないでくれ。この学園入った以来そんな根も葉もない噂がながれたら俺が行きにくくなるだろうが。」

 

ほんとにやめてくれ、俺の腐った目と合間って余計に悪く見えちゃいそうだろうが!

 

「貴方に少し興味が湧きました。その疲れ切ったサラリーマンのような眼差し、どうやったらそんな目になるのか気になります」

 

「いやいや、お前それ失礼だって気付いてないの?今俺すっごい傷ついたよ?ねぇ、トラウマレベルだよ?」

 

「知りませんよそんなこと。私は貴方の目に興味があるんです。どんな人生を送ったらそんな目になってしまうのか」

 

「う、うん。お前ほんと失礼なやつだな。もう分かったよ。見るよ。見てやるよ、万引き現場を。」

 

「分かっているのならいいのですよ」

 

「俺はわかりたくもないけどな」

 

「そんなこと言わないでください。泣いちゃうかもしれませんよ」

 

「あぁーーーーー!面倒だな。黙ってみてろ」

 

「しょうがないですね」

 

そう言うとやっと黙り込む。おせぇよ。早く黙りこめ。もっと言うなら、俺と会った時から黙り込んでろ。そしたら俺は速攻無視して帰るから。

 

 

見てると、万引きをしようとしている少女は何らや躊躇っているようで、するか否かを悩んでいるようだった。

 

はぁ、心底どうでもいいし帰りたい。

 

そうして、目の前の少女が万引きするのを見守るのだった。

 



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第七話………思わぬ邂逅

あれから、少し経ったのだが、結局盗むに至らなかった。

仕方がないと思うがな。人がきたんならむすめるものも盗めまい。

 

そう、少女の後ろに人が横切って、その瞬間諦めたように店をさっていった。

 

潔いのか諦めが良いよいのか、取り敢えず、こいつがどう動くのか、それが見ものだな。

 

絶対何かしそうだもんな、こんなキラキラした目を向けてるとなると、なお一層その疑いは増す。

 

はぁ、こいつは俺の関わりたくないランキング堂々たる上位に君臨しそうだな。因みに一位は陽乃さん。あの人だけは関わりたくない。これだけは言える。

 

彼女も悲惨だな。こんなところを入学初日に見られてしまって、こいつなら絶対脅し文句に使うぞ。間違いなく。

 

「で、お前はどうするんだ?」

 

わかってる。ここで返す返答なんてわかっている。絶対にこいつは『そんなの決まってるでしょう?これを脅し文句に使ってこき使わせますわ』だ。

 

「そんなの決まってるじゃありませんか。この証拠品に使って、入学初日から退学したくなかったら私のお願いを聞いてくださいと言います」

 

少々違ったようだが、これはこれでもっと酷いよな。お願いって言ってオブラートに包んでる感じがいやらしい。

 

おっと、俺はここいらで退場するとしようかな。こいつとか変わってるとろくなことが起きそうな気がしない。これは決定事項だ。100%ろくなことが起きない。ここは二度目の逃げだ。

 

 

「貴方、さっきの今でまたそんなことを企んでたんですか?早く諦めてはどうです?私から逃げられるなんて天才的な知能犯でもない限り無理ですよ」

 

「うわー、じゃあ俺は逃げられないわけだ。」

 

「いえ、貴方なら逃げ出しそうな気もしますけどね。」

 

「じゃあ何か?俺は天才的な知能犯ってわけか?俺のことdisってる?そんな肩書お前くらいしかあいそうな奴いねぇよ。ね?天才的なドSの知能犯さん?」

 

「むぅ、何ですか?私に喧嘩売ってるんです?買いますよ。潰してあげます。それこそ徹底的に立ち直れなくなるまで」

 

「怖い怖い。そんなことされたら俺の学校生活はどうなるんだよ。ほんとにやめてくれ」

 

「許して欲しいですか?そうですねーうーーん。

 

 

では、貴方の携帯番号教えてください。それで許してあげます」

 

「ふーん?俺がお前に番号教えると思うか?」

 

誰が教えるかよ。教えたら教えたで『ここにポイントを振り込んでください、さもなくば貴方の身元を一般公開します』とか言われそうだし。いや、これはガチのやつか。

 

教えないと後が怖そうでもあるしな。しょうがないか、教えるとしようか。本当に不本意だが。

 

この時点で、俺関わりたくないランキング2位、絶対に許さないランキング上位に君臨したのは始めてだよ。この女王さまみたいな空気感が空気を張り詰めていることを知って欲しいです。

 

「ほれよ。」

 

「携帯ごと渡してくるですね……初めて見ましたよ。こんな人。」

 

「俺もお前みたいな奴は……………

 

2人目だな」

 

「あれ?私みたいな人に会ったことあるんですか?どんな人でしたか?」

 

「お前見たく威圧感は放ってないんだけどな。自分の目的のために最初から最後まで、悪者であろうとしたよ。

 

目的も全て自分のためじゃなくてな。怖いけどすごい人だったよ」

 

「?死んだんですか?」

 

「死んでねぇよ。不謹慎だな。まだ生きてるよ。あの人はそう簡単にくたばらない。

 

それこそごき「何かな………今なんて言おうとしたのかな」

 

 

この声は!?

 

い、いやまさかな。この高校に行ったなんて聞いてないし、あの人がここにいるはずもない。

 

「……」

 

いないんだ。いないいないいないない。

 

本当にいないよな?

 

じゃあさっきの声は?

 

俺は振り向くのに少々、いや結構の時間を要した。後ろを振り向くのには覚悟がいる。

 

あぁ、こんな感覚初めてだ。

 

きっと鬼を目前とした人はこうなるんだろうな。鬼が目の前に立ってたら、状況を理解するのに時間がかかる。

 

例えが悪いな。この場合は魔王だ。魔王を目前をした時こんな心境になるんだ。

 

少しずつ、ぎぎぎと音がするようなゆっくりとした振り向き方をする。

 

はぁ、やっぱりか。

 

「なんでこの学校にいるんですかね。それと

貴方との年齢差って3歳差くらい離れてませんでしたっけ?」

 

「ぶぅー、久しぶりに会ったのに最初の言葉がそれ〜?比企ヶ谷くんってそんなに酷い人だったっけ〜?」

 

けたけたと笑いながら近づいてくる。近い近い。そして怖い怖い。ほら、鳥肌立ってる。この人はどうも苦手なんだよなぁ。はぁ。

心の中でため息をつく。リアルでやってたら長くなりそうなため息だな。

 

「俺が酷い人なら酷い人でいいです。それより質問に答えてください。なんでこんなところにいるんですか」

 

「相変わらずイケズだなぁ。比企ヶ谷くんは。私は、2歳しか離れてないよ。比企谷君にいわせれば災難かな?」

 

いえいえ、そんなことはありませんよと言おうとした、けど遮られる。

 

「あれ?貴方どこかでお会いしたことがあるような気がしますね」

 

「あ、坂柳さん所の娘ちゃんじゃない。久しぶりだねぇ。私のこと覚えてる?確か三年に、企業の代表で集まるパーティであったはずだけど」

 

 

「あぁ、貴方でしたか。陽乃さん。雪ノ下建設のご令嬢。しっかりとした人格の方だったと記憶しています」

 

あれま、こいつでも萎縮しちゃうものなの?陽乃さん、怖っ。まさに魔王。

 

「ふふっ、ありがと」

 

思ってないよ。思ってない顔だよこの人。つまらないなぁとかいう顔してるんだもん。怖い怖いよ。

 

「それより場所変えようか。」

 

一呼吸おいて告げる。あの私帰ってもよろしいでしょうか…………

 

だめですね。はい。いわなくてもわかってますんで、ついて行きます。



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第八話彼と教師

午後7時を回り、夕が沈み切った頃に、俺は寮に入る。

 

一回フロントに管理人から直に402と書かれたカードキー、寮のルールが書かれたマニュアルを受け取る。渡されたマニュアルにはゴミ出しの日の規定、騒音注意の呼びかけ、水道、ガス、電気の無駄な使用を控えること等基本的なことが記されている。つまり、生活に必要な費用はポイントで払わなくても良いということだ。

 

「そりゃあ、そうだよな。最低限のルールは守らないと。寮で生活するんだし。当たり前のことだよな。それよりも」

 

それよりも今日あったことが頭から離れない。忘れたいけど忘れられないなこれは。はぁ、なんであんなことになったんだろ。俺どこかで間違えましたか?

 

今日何があったか率直に伝えると

 

坂柳、雪ノ下さん意気投合

俺連行

会話進行中雪ノ下さん

思いついたように発言

「比企谷くん、生徒会入らない?あ、拒否不可能ね?強制的にだから。拒否ったらわかるよね?」

と言われ、拒否するまでもなく俺連行

坂柳、

「私も自分の力で入りますので待っていてください。時が来たら立場譲ってもらいますよ」

と発言。坂柳out

雪ノ下さんに俺連行

一緒に申請

俺疲労

帰宅

 

伝わりにくかったか?

 

坂柳が、会話する内に雪ノ下さんと意気投合して、知ってるカフェがあるからーと店に連行され話進めていくと、生徒会の話になって、雑務の席が空いているから〜と何故か俺に入れといわれ拒否しきれず、坂柳が挑発的なことを言って帰る。

 

雪ノ下さんと生徒会室に申請に行き、堀北副会長に会って、何故か『面白いやつだな』と言われ、少し話をした後に俺は疲れ切ってここに来たというわけだ。

 

くっ、あの人がこの学校にいるなんて、知ってたら俺は絶対に入学しなかったのに………

 

疲れ切った気持ちを抑え、エレベーターを使う。気持ち切り替えるか、何か別のことを考えよう。そう思いマニュアルを開く。

 

あっ、寮は男女共用になってるみたいだな。はぁ、高校生にそぐわない恋愛は禁止ってか。俺はそんな相手いねいから問題ないな。欲しくもないけど。

 

早く寝たい。

 

思いながら、やっとお手当ての階層につく。402号室はっと、ここか。

 

カードキーで部屋を開けて、入る。

 

今日は色々なことがあったな。それはもう忘れたいくらいに。沢山。

 

早く寝たいので、制服のまま、ベッドに転がる。

 

今は、部屋着を買い忘れたとか、部屋に必要なもの取り揃えないとなとか、そういう気持ちじゃなく、ただただ、寝たいという気持ちが勝ってた。

 

おやすみ俺。そしてさようなら平穏の日々。ぼっちライフよ!

 

腐るような気持ちを抱きながら徐々に意識を失っていく。微睡の中で本当は何を考えていたのかは誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流石に授業初日で普通の授業を始めることはないのか授業の大半は教育方針などの説明で終わった。

 

俺としては、先生たちは明るいが、先々まで考えているのか、不用意な発言はしなかった。流石万全の教育体制。先生までもちゃんとしてるとは恐れ入りました。恐れ入ったのは昔の先生と変わっていないということもあったことも含まれているのだが。

 

先生のポワポワした雰囲気に付け入って、眠りこけるやつとかもいそうなものだったが、皆真剣に聞いている。俺ならこの間に一睡入れようものだけど、皆真剣に聞いているのに俺1人だけ眠りこけるような精神ではない。ぼっちの名は伊達ではないのだ。

 

本当のところを言うと監視カメラで監視されている状態で寝たらどんなペナルティがあるか分からないから怖いってのもあるんだが。

 

あの先生さっきからずっとこっち見ながら話してくるんだよな。そ、そんな見ないでっ、背筋が凍るから。

 

ほら、なんかウインクしてくるし、何回目だよそれ。年弁えろ……………とは言えない。どう見ても20代前半にしか見えない。ごめんなさい。

 

そんなことを延々と考えて、時には冷や汗をかきながらもやっと終わったのか、徐々に生徒たちが弛緩した雰囲気を醸し出す。

 

中昼休みになった。生徒たちは席を立ち、つい先日顔見知りになったはずなのに緩んだ顔で塊になって食事へと向かう。

 

はぁ、俺はぼっちプレイスでも探すとしましょうか。出よ異空間!!これは材木座の特権でしたね。はい。喜んで譲ります。私にその時期は通り過ぎました。

 

どこかではちま〜んと聞こえたのは気のせいだろう。そう信じたい。

 

「ねぇ、八幡くん。」

 

耳元で囁かれて、ついビクッとなる。こ、このシチュエーションどこかで見覚えがあるぞ。

 

張り詰めた空気とどこかポワポワとした空気が混じって、奮い立たせるような冷気。

 

ばぁ、教師だろあんた。

 

星乃宮先生

 

「あはっ、久しぶりだね〜八幡くん。正確には4年ぶりかな?私のこと覚えててくれたかな?」

 

「はぁ、あんたみたいな教師を忘れるわけないでしょう?星乃宮先生」

 

「ちょっと〜それどう言う意味かなー?ことと次第によっちゃ怒るよ?」

 

「文字通り印象に残る先生だったって意味ですよ。それ以上の意味はありません」

 

「ならよろしい。私は誰にも忘れられないような教師を目指しているからね〜」

 

「それもう達成してますから。で、どうしますか?場所変えますか?」

 

「う〜ん。気が効くようになったね。もしかして、女でもできた?」

 

「聞き方がおっさんくさいですよ。俺に彼女なんてできると思ってるんですか?」

 

「あは、あはははは〜」

 

「笑ってごまかさないでください。」

 

「で、できるわけないと思うな〜。うん。八幡くんだもんね。ありえないか」

 

側から見たら中良さげに見えるかもしれないが、俺はこの教師と仲がいいわけではない。それこそ、何度も何度も喧嘩しあった仲ではあるけどな。

 

それにこの人は、雪ノ下さんみたいな強固なものじゃないけど、中々の物を持っている。いや、被っているのかな。その仮面を。

 

「じゃっ、場所を変えようか。私としても教師と生徒が変に接触してたら怪しまれるからね。」

 

「ルール見たいなものがあるんですよね」

 

有無を聞かずに歩き出す。ここするような話じゃないしな。場所を変えないと、星乃宮先生もそう思ったのか歩き出す。

 

「?な、なんのことかな〜」

 

「惚けても無駄ですよ。衆人環視、教師の放任、ポイント制度。これで気づけない人なんていないでしょ」

 

「え?それこそ場所を変えて話さなきゃ。話の腰を折って悪いけど、今はその話は謹んで。」

 

「了解です。俺としても、ペナルティを負うのはご勘弁ですからね」

 

「あはは〜。あそこ入ろっか」

 

笑いながら誤魔化す。やっぱりビンゴみたいだな。答え合わせと行きますか。と言っても合ってるかわからないけどな。なんせ授業初日な訳だし。

 

そして、見えてきたカフェに入る。

 

案内された席につき、コーヒーを頼む。俺も同じ物を頼むが、昨日買った練乳と砂糖を出す。

 

日々常備しているからな。コーヒーくらいは甘い方がいいに決まってる。これ俺自論。

 

コーヒーが運ばれてきて、それに持ってきた砂糖と練乳をぶっかけると、話を進める。

 

「ふぅ、それでどうなんです?」

 

「いや、それよりもまず、八幡くんが入れたカロリーの塊が気になるんだけど…」

 

は?何言ってんのこの人。コーヒーったら砂糖と練乳入れるに決まってるでしょ。馬鹿なの?

 

「何言ってるも馬鹿も八幡くんだと思うけど………そんな物体に入れちゃったら糖尿病かかっちゃうよ?」

 

心配したような、引いたような、微妙な様子だな。いや、あれは引いてる。ドン引きってやつだ。

 

そんなに驚くことでもないだろうに。マッカン愛用者にとってこれは常識だ。あれ?マッカン愛用者以外は常識じゃないか。

 

「それよりも話を進めましょう。俺の考えでは

 

 

まず衆人環視の観点から、あっ、衆人環視って言うのはカメラの向こう側で見ている人たちのことです。」

 

「………続けて」

 

なんだか空気が重苦しいんだけど、なんかあったのかな先生。まさか…………また彼氏に振られたとか?

 

「ふ、振られてないし!!私は振る側だよ〜?八幡くん」

 

一変してゾッとした冷ややかな空気が流れる。あれ?なんか間違ったか?取り敢えず、この話題には今後一切触れません。ご容赦を(T . T)

 

そして、より緊迫した雰囲気になり、話は進んでいく。それは先生を驚かすには足る話だったようで…………

 



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第九話何故こうもうまく行かないのだろう

今日は本当に連続投稿でしたね。
ではー九話どうぞ!


「では、話を戻しますね。衆人環視の観点から、なんらかの監査を行ってるというか考えを持ったんです。

 

ほら、俺みたいな素行の悪い生徒とかいたら注意するでしょう?あれの極地だと思うんです。

 

品行素行の悪い生徒を自己的に正すように促す。そう言った考えの極地だと。」

 

 

そっとするような雰囲気は拭えてないのだが、少し張り詰めた空気感だったので、俺も少し緊張したのか汗をかいている。いや、単に暑いだけか。

 

星乃宮先生は目をつぶって真剣に聞いている。時節うんうんと頷くのはその表れだろう。この先生ほんとは何歳なのかな?あの独n………………寒気がしたぞ。

 

そういえば、あの先生は元気にやってるかな。結局俺は更生せずにこの学校に来てしまったわけだから、少し悪いと思ってるが、この学校を進めてくれたのは正解だったな。俺の考えではぼっちの楽園なのだから!

 

「あちら側で見ている人のことは全く知りませんが、厳正な考査のもとポイント調整を行っているんだと思ったんです」

 

「ふーん。ポイントはどうして絡んでくると思ったの?ただ生徒が悪さしないように監視カメラをつけているともとれるよね?」

 

「それは、先生の言った言葉から証明できます」

 

「?私何か言ったかな?」

 

「言ったじゃないですか。ここは実力で生徒を測ると。それは品行素行なども含まれているんじゃないですか?それがわかっている人間ならそんなことはしないと」

 

「確かにそれは言えてるね。話を遮ってごめんね。続けて」

 

少し考え込むような仕草をして、話に戻る。俺にはそれが俺の証明を否定したいために材料を探しているようにしか見えなかった。

 

先生も昔から変わってねぇな。

 

「そして、生徒の放任。これはそう言う学校なんだと割り切れば納得がいく話のように思えますが、この学校でそれはありえません。

 

 

それら三つは、生徒個人の実力を測り、ポイントの増減があるんじゃないかとそう思ったわけです。どうです?納得行きましたか」

 

「ぷっ、あははははははははははは。はーっ、笑った笑ったー。そうだね、八幡くんだもんね、ふふっ、そう言う考えになるよね」

 

「な、なんです?間違っていたなら指摘してくださいよ」

 

「間違ってるけどそれは言えない。私は教師だよ?どれだけ八幡くん仲がよかろうと学校のことを教えるのは禁止っ!わかるよね八幡くんなら」

 

「?俺なら?そこで俺に限定される意味が分かりませんが、そうですね。俺が喋った以外、若しくはそれ以上のルールがあるなら教師側が教えることは反則、贔屓になりますよね」

 

「どちらかというと反則かな。それもルールなの。八幡くんは勝手に理解したようだけどね〜」

 

なんだか、間違ってるぞーって暗に言っているように感じる。なんだかむかつくな。また今度考えてみよう。

 

「はぁ、まぁまた今度考えてみます。それで、星乃宮先生はどうしてこの学校で教師をやられてるんです?」

 

「なんだかインタビュアーみたいだね……そうだねー強いて言うなら八幡くんが入学すると聞いたからかなぁ」

 

「適当なこと言わないでください。先生の考えなんてわかってますよ。それは勿論おとk、ぼぎゃあああああ、び、びっくりしたぁー、そんなこと言うわけないじゃないですか。勿論先生の野望のためですよね」

 

ほ、ほんとだよ?!だから、その指をやめてっ!?その掴んだ手が今度はどの方向に曲がるのか気になるわけがないんですから。全く興味ないです。だから、指を折ろうとしないで!

 

それでも、俺の手はガッチリと掴まれて微動だにしない。こ、この人なんかやってるのか?!びくともしないぞ?俺の手を返して!!

 

「次言ったらどうなるかわかるよね〜?ねぇ、この手がどの方向に折れるか気にならない?」

 

「いいえ、全く気になりません。だから俺の手を離してくださいお願いしますなんでもしますから」

 

「うん。物わかりの良い八幡くんは好きだよ私」

 

何故でしょう。好きと言われても嬉しくもなんともないこの心境。うん。間違いなく握られてる手のせいだな。

 

 

「譲歩として八幡くんは、私専属の雑用係として雇われること!異論反論抗議質問一切受け付けません。」

 

「は、はぁあああああああ?!何言ってるのこの先生、俺もう頭が回らないよ」

 

な、何言ってんだ?この先生は。いきなりそんなこと言われるとまじで意味がわからなくなってくる。

 

専属の雑用係だあ?なんでだよ。どっからそうなったんだ?

 

「勿論理由はあるよ?一つは八幡くんが、学校のルールに少し間違ってるけど気づいたこと!それも初日で。これ、ありえないことなんだよ?」

 

「えっ?そうなんですか?誰でも気づきそうな物ですけど」

 

「いやいや、みんなそんな周り見てないから。なんなら十万貰えてラッキー位しか考えてないから。」

 

「監視カメラくらいなら気づくんじゃ……」

 

「それも気づくのは一握りの人間だけ。初日だとそんなもんだと思うよ。後々みんな気付くだけで」

 

「へ、へぇ。そうなんですね。俺は何かあるんですか」

 

 

「学校側は気付いた人には時が来るまでみんなが気づいちゃいけないからって言う理由でポイントを払って黙っていてもらうんだよ」

 

「へー。俺ポイントもらえるんだ。ありがとうございます。でもそれだけでもないんでしょう」

 

「そうだね、二つ目は〜私に男の話をした。どうせあの後、男を探すため〜だとか言おうとしたでしょ?わかってるんだからね?」

 

「ぐっ、べ別に男を探すためじゃないですよ。」

 

「じゃあなんのためなのかなぁ?」

 

「お、男を吸い尽くすためーとかっ………て痛い痛い。すいません、冗談ですよ、本当に痛いですから」

 

本当に怖いこの先生は。俺も少し武術をしているが、この人だけは倒せそうにない。

 

つ、強いっ!!

 

あと、本当に痛いんです。この手離してください。お願いします。あ、雑用の件は却下で

 

「三つ目は単純に八幡くんに興味があるからだよっ!因みに契約書書いてもらうから、拒否できると思わないでね」

 

「は、はあああああああああああああ?」

 

俺って何故かわからないけどここ最近叫んでばっかじゃないか?気のせいですかそうですよね。

 

じゃないとこんなに驚かねぇからな!!

 

はぁ、厄介ごとがまた一個増えた。神様がいるなら教えてくださいぼっちってなんですか?

 

 

 

 

 

 

そして、その後契約書を書くなりなんなりで色々あったが(先生はなんで予め紙持ってるんだよ。それに書いてあった文字も喋った内容と全く同じとか、先見据えすぎ。)何事もなく?雑談に戻っていき、すっかり話し込んでしまった。

 

俺が通っていた中学の話とか、先生の前の担任していた小学校とか、そんな話だった。

 

いやいや、先生だから話しやすいとか全然ないですよ?ただね話しないと怒るからな、ぷんぷん言いながら怒るからなこの人。ぷんぷんは言わないか。

 

話し込んでると日も沈み………って、は?え?もしかして俺、さぼっちゃった?授業さぼっちゃった?

 

そう思い先生に確認する。

 

「先生。今日って授業ありましたっけ?」

 

「いやー、さぼっちゃったねー。これで共犯だね?八幡くん」

 

「は、はは。マジですか………」

 

「あは、嘘だからそんな顔しないの。私の冗談だよ」

 

「ふぅー。驚かさないでくださいよ。びっくりして心臓跳ね上がるじゃないですか」

 

あはははー。良かったー。今日が授業初日でほんとによかった。

 

「あ、でも、部活動説明会はあったよ?ありゃ、私悪いことしちゃったかな?そしたらごめんね」

 

「いえいえ、部活動説明会なんてぼっちの俺には行く必要ないですよ」

 

「それもそっか。これで納得しちゃうのも八幡くんだからなんだろうね〜」

 

え、それはちょっと酷くないですかね。俺だからってなんだよ俺だからって。

 

「でも〜八幡くんはなーんにも変わってないんだね〜」

 

その言葉にゾッとした。俺はこの言葉を一度投げかけられたことがある。それは、同じ人ではないのだが、面影が重なり、どちらがどちらかわからなくなる。

 

この先生は、、、、、

 

「少しがっかりだけど、これからよろしくね〜八幡くん」

 

本当になんなんだろう。

 

 

 

 

 

 

後日

俺は部活動説明会出ていなかったことで『なんで私が頑張って説明してたのに聞きに来てくれなかったの?』とか言われたが、知らない。そう思いを率直に言うと、何故かカフェに連れて行かせろと言われ、なんでこうなるのかと嘆きたい夜だったそうな。




はーい。
何話連続だったでしょうか。
投稿ペースが早かったら遅かったり、すみません。
俺ガイルとひぐらしとのクロスはまだ構想が終えてませんので、時間がかかります。ご了承ください。


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第十話ならば彼は今どこにいるのか

省略させていただきます


「それでね、それでね。真島先生が堅物すぎて超つまらないのー。」

 

「知りませんよ。それと真島先生に失礼ですよ」

 

「いいのいいの、ちょっとくらい愚痴ったってバレないから」

 

「バレた時が大変なんですよ。俺の場合、独り言で愚痴言っただけでも教壇立たされて謝罪しましたからね」

 

「……………その謝罪シリーズ何個あるの」

 

「俺が謝罪した数なんて星の数ほどありますよ」

 

なぜ、こうなったのか。俺にもわからないが、俺は今話しながら雑務をしている。

 

「ほ、星の数なんだ。よく耐えたね……私が知ってるだけでも…………結構あるか」

 

「そうです。人の黒歴史なんて数え切れないほどあるんです。妙に探り入れられて笑いもんにされた暁には泣きますよ俺」

 

「はははー、私はそんなことしないで弄るかなー」

 

「いや、弄っちゃダメでしょ。せめて慰めて」

 

「だって、八幡くんは慰めなんて求めてないじゃない。それなのに慰めちゃっていいの?」

 

「嘘でも慰めてほしいです。」

 

と、こんな調子で話しているが今絶賛作業中である。こんな話しながらでもできる作業じゃないからね。

 

プリント見ながらクラスの名簿に名前書いたり評価書いたり点数記入したり、あれ?これって俺が弄っても大丈夫な奴なのん?絶対ダメな奴だよね?観覧禁止な奴だよね?!

 

「あぁー、そのプリントね。君は生徒会に入ってるからそう言った情報もある程度のぞけるはずだよ」

 

「えぇー生徒会すげぇ。それにしても、先生がなんで知ってるんですか」

 

「そりゃ、クラス担任なんだから知ってるに決まってるじゃない。私を誰だと思ってるの」

 

「そうでしたね、星乃宮先生でしたね。そう言った情報を真っ先に欲しがるのは先生の性分でした。」

 

「そんなことよりもさ、今日のプールどうだった?」

 

「は?なんのことです?」

 

「今日でしょ。プール授業があった日は。どうだった?女子の水着見れて嬉しかった?」

 

「いやいや、どこの変態ですか。俺は女子の水着見て興奮したりしませんよ。」

 

「そこの部分八幡くんは冷めてるよねー。もっと青春を謳歌しなきゃ。」

 

「青春は嘘であり、悪である」

 

「え?なに?どうしたの急に」

 

「あ、いや、俺が中2の時に中学生生活についてのレポートの時に書いたんです。そんな文を。それを今思い出しまして」

 

「へぇー、で、中学生は謳歌できたの?」

 

興味津々と言わんばかりに聞いてくるが、面白い話なんてないぞ?中学校生活なんてろくなもんじゃなかったんだから。

 

それでもこの人は話せって言うだろうな。気がものすごく乗らないが話をするか

 

そして俺の中学校生活を話した。

 

それを時に目を腐らせ、時に目を輝かせ聞いていた星乃宮先生は、つまらなくならないよう気を使いながら話していたのだが、それは全くの杞憂の様で、楽しそうだった。

 

ついでとばかりに今思いついた話をする。

 

「あ、それでですね。俺虐められてたんです。それが嫌で学校も一時期休んでたんですが、ある日に起こったことがきっかけで……」

 

 

「はぁ?いきなり話が飛んだ様に思えるけどなんで虐められてたの?」

 

「それはさっき話したはずですが、もう一度話をしましょうか」

 

「俺とーーーとの接触を」

 

その瞬間、先生はなぜか目をキラキラしながら、次の言葉を待っていた。

 

そんな面白いかねぇ、俺の話は。

 

 

そして言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は虐められていた。

 

虐めと言っても暴力や陰口だけなのだが、其は一向に止まなかったので少し困っていた、というか疲れていた。

 

理由は確か修学旅行先での嘘告白。これが理由となっていたはずだ。

 

あれ以降、徐々にエスカレートしていき、終いには暴力に走る様になっていたというわけだ。

 

痛かったし、スポーツをやっているわけじゃないから防ぎようがなかった。

 

あの手の連中はただ暴れたいだけだから、俺を標的として楽しんでいただけだと思うが、こうなるんなら嘘告白なんてするんじゃなかったな。

 

葉山らは見かけた時は止めてくれたものだが、葉山がずっとつきっきりというのは出来ない。

 

だから、それは止まらなかった。

 

で、ある日のことなんだが、男たちにナンパされてて困ってる人いや、面倒だけど、一応助けた。

 

助け方に問題があったのかな、お礼も言わずに何処かにさっていった。

 

方や俺はボコボコにされ、そうになったのだが、誰かに助けてもらった。

 

やっぱ助け方間違えたんだろうな。ナンパ男たちに俺がナンパしとくからお前たちはそこらで見張ってろなんて、この腐った目じゃなければ言っても仕方ねぇぞ?

 

そいつは、助けてくれた後、何やら面白いだの、お前みたいなやつは初めてだの、ごちゃごちゃ言いながら、何処かに連れられ、ジムに着いた。

 

その時は『は?なんでジム』とか思ったけど、今になれば納得がいく。

 

何かしらの自信をつけさせたかったのだろう。体を鍛えれば、いじめも防止できるし泣く泣くやったのだが、ハマると面白く、毎日通って、そいつとは結構話もした。

 

何度か喧嘩もしたが、俺が叶うはずもなく、負けて仕方なく謝る、が多かったのだが、ある日そいつから別れを告げられた。

 

『俺は、お前のことをよく思ってるが、それは俺だからだ。そうじゃねぇやつの方が多い。そう簡単に人を信じるなよ』

 

と言い、去っていった。

 

くそ、かっこいいじゃねぇかとなんだか少年漫画というか喧嘩漫画風の事を考えながら、そいつとは別れた。

 

それは中学3年のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってわけですけど、そんな面白い話でもないでしょう?」

 

「そうだねー、それよりさーその雪ノ下さんって人はどうなのー」

 

「本当に興味なかったんですね。興味ないなら途中で行ってくださいよ。雪ノ下とはクリスマスイベントが終わってからはジムを通い始めましたからね。そこで終わってます」

 

「ふーん。八幡くんの中学は昨日聞いてからちょっと期待してたんだけどなぁ。彼女の1人や2人くらいは作りなよ〜」

 

「いや、2人つくっちゃまずいでしょ。それ以前の問題として俺と付き合ってくれる人なんていないでしょ」

 

「いるかもしれないよぉ?」

 

なんだこの先生は。生徒と恋話とかするか普通。いろんな意味で常軌を逸しているな

 

「いるなら見てみたいものですね」

 

「そうやって誤魔化すんだねー。それも、今までの積み重ねの影響か…………」

 

「何を言ってるんですか?俺は俺ですよ。他の何者でもない俺。変わるわけがないじゃないですか」

 

「自覚なしってのもなー。うーん。そうだね。それはそれで君らしいか。うん!決めた!私八幡くんを更生させるよ!!」

 

「はぁ。」

 

ため息をついた。何故だろうか。こんな事を言うのは2人目だということと、

 

「期待しちまってるんだよなぁ」

 

わずかな期待からだ。



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第十一話3人の進む先

今日は休日。

最早というか、すでにバイトとして扱われている、先生の手伝い(下っ端、下請け、もしくはこき使い、などの雑務を示す。)が無い。

友人関係、知り合い、他人関係も何にもないため、これは詰まるところ、ゆっくりと休めるということだ。って最後のすでに無関係なんだが。ぼっち最高、全人類誰もがボッチになれば良いものを。そしたら戦争も諍いも無くなって平和になるのに。

 

俺という人間が今日という休日をどう過ごすか、そんなのはもう決まっている。

少し考えればわかることだ。

 

人間は厳しいブラックな職場でキチキチのスケジュールの日々を過ごしたらどうなってしまうのか。休みもほとんどなく、日々デスクに向き合い、その傍には常にred bullと書かれた缶が覗く。既に5徹以上っていやいや生めかしいからやめて!リアルすぎるでしょ。俺も考えていて嫌になってくるわ。

 

つまりそういうことだ。人は休日という存在をオアシスとしその日の過ごし方なんて既に決まっている様なものなのだ。

 

うん、寝る!

 

これ一択に尽きる。

 

俺は知らないのだが、こういう過ごし方をしている人間は多いんじゃ無いだろうか。最近は、休日の過ごし方と言ったら、取り置いておいたアニメの流し見、溜まっている本の積読、勉強、これくらいしかないか。

 

休日を寝て過ごすとなれば、話は早い、あんなクソビッ、、、、、、、ひっ

何でもないです。ただただ血迷っただけです。だからこんな遠くまで念力みたいなことしないで、お願いだから。

 

というか本当にあの先生はどうして俺に異常に構うのだろうか。俺みたいな人間に関わっても得する様なことはないだろうに。まっ先生だからか。そう考えると納得が行く。

 

何で休日まで先生のことを考えなければならないのか、そんな落ちる気持ちを抑えながら、しょうがないかあと思い着替え始める。休日くらい羽目を外して遊ぶか!だらだらしててもしょうがないしな!一応金はあることだし、確か20万だったかな。初日から、金をどう使おうかどう使おうかと悩み、変なところでストイックさがでたのか、全く使っていない。

 

まぁ、月の無料商品はもう買い尽くしたし、もう無料商品は買えないので金は時期に消費されていくのだが、今はこうしておこうと考えているのだ。

 

ふぅ、こんなに金があるなら、少し使うか。まぁ、我慢したのが無駄にならない様に地道に使っていくがな。

 

よーし、そうと決まったら出ますか。

 

もう既に着替えは終わっており、出る準備は整っているなだが、何故か嫌な予感がする。

 

何故だろう。

 

ここから出たら不幸な目に遭ってしまう様な。

 

 

疲れてるのかな。うん。疲れてるな。主に先生のせいでどっぷり疲れてたわ。

 

そのせいで今はマッカンよりもレッドブルが欲しくなってるだよな。

 

鞄を持ち外へ出る。

 

空は一面青く、ここから見える景色の先には海があり輝いていたが、日照りはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、遊ぶって言ってもな」

 

今日は遊ぼうと意気込んでいるのだが、いかんせんすることがない。

 

ゲーセンでも行くか。

 

無駄遣いする金もあるわけだし。これから先無駄遣いすることもなさそうだしな。

 

と思ったのだが、

 

「ねぇ、八幡くん?だよね」

 

「…」

 

誰だよ比企谷くん。早く返事してやれよ。

 

さてと、俺は今日を無駄にしないためにも早くゲーセンに行くか。久しぶりに行くことになる。そう思うと少し楽しみに思うが、別にゲーセンですることがあるわけじゃない。言ってもmjか上海くらいしかすることないしな。クレーンゲームは別、あれは小町と行くときにすることだ。

 

そういえば小町どうしてるかな。元気にやってると良いが。俺といなくても小町はハイスペックだから心配ないと思っていたが、少し心配になってくる。

 

さてと、確か道はこっちだったよな

 

「ねぇってば。」

 

誰かが俺の肩をちょんちょんとついてくる。地味に痛いので、つい振り返ってしまう。

 

「こんにちは!八幡くん」

 

そこには、櫛田がいた。いや、正確には3人。櫛田と顔がまだ見えないのだが、もう2人いる。

 

2人で話し込んでいる様だ。

 

恐らく背丈と服を見ると女性?なんだが、用がないなら帰っても良いだろうか。というか帰りたい。今すぐに

 

「帰らないでね?八幡くん、呼んでも応じてくれないし、帰っちゃったら連絡できないから」

 

「ん?ってことは俺に何か用でもあるのか?」

 

「勿論。偶然なんだけどね。私は用はないんだけど」

 

「そ、そうか」

 

「あぁー、違うよ違うよ?私は用がないけど、八幡くんと会えたのは嬉しいから」

 

「あれ?なんか意味を取り違えてる様な気がしなくもないけど……

 

それより、そこの2人、用がないなら帰るぞ」

 

なんで帰る方向になっているのか。俺は確かゲーセンに行こうと思っていたはずなんだけどな。

 

こうなってしまったからにはしょうがない。帰って、寝るのもまたよしだ。

 

「まっ、待って!!ちょっと深呼吸させて。少しだけで良いから」

 

「ん?」

 

聞いたことがある様な声音だった。いや、これは聴きなれている声だ。このいかにも悩みないですよーと言った風な声音。

 

も、もしかして……………

 

 

「なぁ、櫛田。」

 

「なぁに八幡くん」

 

「俺やっぱ帰るわ。ごめん」

 

「え?ちょ、ちょっとーまっ…………」

 

そう言った刹那。ガシッと音がした。それこそ、びくともしないくらいにガッチリと。

 

な、何だ?う、動けないだと?

 

「ダメだよ〜比企谷くん。君はすーぐ逃げようとするんだから。」

 

雪ノ下さんだった。俺の肩を物凄い力で掴み、一歩も動けない。こ、この人ほんとに人なのか?人間辞めちゃってない?

 

「ゆ、雪ノ下さん。離してください。俺はここから逃げないといけないんです」

 

「だーめ。ちゃんと向き合うこと!!じゃないとお姉さん悲しいな〜」

 

「俺はあんたのお姉さんじゃない。離してくれ」

 

尚も足掻くが、全く歯が立たず、動けない。

 

そうしている間に向こうは話が整ったのか後ろでせーのと声が聞こえる

 

まじで今日はなんなんだ?厄日?それともなんか憑いてるのかな、今度お祓いでも行こうかな。

 

諦めかけた。

 

いや、既に諦めていた。

 

俺が不運なのは決まっている。

 

だが、俺が置いていき、諦めていたものが、また見つかるかもしれない。

 

そんな予感。

 

ただただ、呆然とした日々を送ると決まっていた歯車が少し動いた気がした。

 

 

のは、気のせいだった。

 

「う、うああああああああああああ」

 

「「きゃあああああああ」」

 

どかすか、と転げ落ちる。

 

おいおいこいつら何をしようとしてたんだ。いきなり俺に突撃してきて全員転ぶとか、殺しに来てるだろ。

 

「あはははははは、比企谷くん。顔をあげたら?」

 

雪ノ下さんにそう促され、顔を上げる。そこには、誰であっただろう、見間違えるはずもない……………

 

「雪ノ下……………それと由比ヶ浜も」

 

2人だった。

 

 

 



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第十二話雪ノ下陽乃

「はぁ、それで、何故突撃してきたのか、何故ここにいるのか、何故少し時間おいたのか、何故雪ノ下さんが混じってるのかとか聞きたいことはいくつもあるんだが、まず聞きたい。何故ここにいる?」

 

「むぅー、比企谷くんひーどーい。比企谷くんいるところに私ありっ!だよ?」

 

「どんなキャラだよ。それ単なるストーカーじゃねぇのか?」

 

「姉さんに追われる比企谷くんも不憫ね。大丈夫よ姉さんにちょっかいかけられる気持ちはわかるわ。」

 

「いや、そこに共感求めてないんだけど、てか質問に答えろよ。なんでいるんだよ」

 

「ヒッキー久しぶりなのにひどい!」

 

相変わらず面倒な面子だな。どこに視線を置けば良いかわからず、チラッと櫛田に視線を送る

 

「あははー、八幡くんって人気者なんだね」

 

視線を向けると櫛田は我関せずといった感じで、気まずそうに苦笑いしている。

 

あぁ、わかるぞー知らんやつ奴らに囲まれてると自分が何話せば良いかわからなくなるよな。

 

あと、グループの中心のやつが抜けた時の会話の続け方がいまだにわからん。あっ、俺友達いないから一生分からなくても良いやつだこれ。

 

「あっ、ねぇねぇ由比ヶ浜さん、そのネイルいいね。どうやってつけたの?」

 

「あっ、これねこれねー自分でやったわけじゃなくてーーーー」

 

櫛田に気づいたか気づいてないかわからないが、アイコンタクトを送って、それに気づいたのか由比ヶ浜と話し始める。

 

ナイスだ。女子トークって結構ジャンルの幅が広いから話のネタに困らないよな。

 

俺がナイスとばかりにサムズアップするが、それに気づきぱちんっとウインクする。

 

可愛いなこいつ。洗練されたアイドルって感じだ。ふっ、こうやって男どもを落としてきたんだろうな。俺には効かんけど。俺の防御防壁は健全だ。そう簡単に破れねぇよ。

 

「…………由比ヶ浜さんは放って置いて話を戻しましょうか。姉さんはいつまでもへこたれてないで話に入ってきて」

 

あれ?由比ヶ浜に対する扱いが前よりも雑になってる。あの距離の近さに慣れたってことか。雪ノ下のファイヤオールも随分と厚くなったな。

 

「ぶぅー、雪乃ちゃん前よりも冷めてない〜?ひどいなぁもう」

 

「姉さんはもうちょっと身の振り方を考えた方がいいと思うわ。

 

それで、私達がここにきた理由だけど、そんなに難しいことじゃないの」

 

「あぁ、雪ノ下はなんとなく想像がつかんでもないが、それじゃ由比ヶ浜はどうなんだって話になるしな」

 

「えぇそうよ。貴方が考えてることはわかるわ。でもそうじゃないの。私達がここにきた理由はーーーーー」

 

「私達がここに来た理由はヒッキーを追いかけてきたからだよっ!」

 

どんと、テーブルを叩かんばかりに力強く告げる。

 

お、おう、こいつらもしかしていい奴?

 

「ってのは建前で、あのまま総武高に進学するのは華がないと思ったからなんだけどね」

 

っておい。感動を返せ。俺を追いかけてきたって言われてぽろっといきそうだったけど今ので全部台無しだよ。なんだよ華って、高校に求めるもんじゃねぇよ。

 

「はははー、ゆきのん素直じゃないんだから〜私は勿論ヒッキーを追いかけてきたよ」

 

そう言われて、なんと返せばいいかわからない。こういう言葉をもらうことが少ないからかな、それともいないから?絶対後者だな。

 

「八幡くんがここにきたからっていうのはわかるけど、どうして八幡くんが入学する予定の高校がわかったの?」

 

そうだ。それも気になるな。大体想像がつくが。

 

「そんなの決まってるよ。平塚先生が教えてくれたんだ。ヒッキーの受ける高校を」

 

「平塚先生って?」

 

「それはねーーーーーーー」

 

「………櫛田さんと由比ヶ浜さんって結構相性がいいのかしら…………」

 

雪ノ下がぽーっとした様子で見ている。なんだなんだ?もしかしてこいつ………

 

「妬いてるのか?」

 

「そ、そんなわけないじゃない。由比ヶ浜さんが誰と親しくしようと由比ケ浜さん次第だわ。私そうもこうもどうして貴方はそんなことばかり言うのかしら。貴方だって櫛田さんと随分と仲良く、それも旧知の仲の様に振る舞っていたじゃない。それもあるのにどうしてそんな発言に至るのかしら。やはり貴方の脳は変なところで活発になるのね。そもそも…………」

 

「長い、長いよ。そもそも、俺は櫛田と旧知の仲だからな。それ以上でもそれ以下でもない。だから話を戻すぞ」

 

「ねぇねぇ、気になったんだけど、比企谷くんと雪乃ちゃんってどういう関係?」

 

「「は?」」

 

「いやだってー、君達の方が旧知の仲の様に見えるよ?もしかして付き合ってる?」

 

「ば、ば、ば、馬鹿言わないで姉さん。どうしてこんな男と恋人にならないといけないの?そんなの地球がひっくり返って海水が全部蒸発するくらいにありえないことだわ。こんな目が腐ってて、捻くれてて、それなのに誰にでも優しくて、チャームポイントのアホ毛が揺れるところが少し可愛くて、そんな人と付き合うなんてあ、ありえないわ」

 

「雪乃ちゃん、火をみるよりも明らかだよ?誰がどう見たって十中八九ひk「ね、姉さん余計なこと言わないで」もがもが」

 

これ以上は言わさんとばかりに口を塞ぐ。雪ノ下さんがもがもが言ってる。ふぷっ、可愛い。魔王みたいな雰囲気纏ってるから怖いと言った感情しか湧くことがなかったけど、可愛い。いいぞーもっとやれ。見てると面白いから

 

それにしても、何故こうなった?

俺の休日をかえせ!!!

 

 

そんな思いを胸にため、雪ノ下に訊こうと思っていたことを訊く。

 

「で、雪ノ下はクラスどこなんだ?」

 

「私はDクラスよ。由比ヶ浜さんもD。それがどうかしたのかしら」モガモガ

 

「んー、俺の考え違いだったかな。」

 

「何が?」

 

「いや何、クラスごとに振り分けられた生徒の実力が違うのかなって」

 

「へぇー」

 

漸く解放されたのか雪ノ下さんが興味深そうにこちらを見つめてくる。

 

こ、これが蛇に睨まれる蛙って奴か?あっ、かえるって認めちゃったよ。俺はカエルじゃないからね。小学校の頃言われて少し傷ついたんだから。

 

「どうして、そう思ったのかしら」

 

「そんな大きなことじゃねぇよ、ただ、クラスごとに人物の能力が似通っているから多いからそう思っただけだ」

 

「貴方、まだそんなこと考えて過ごしてたの?はぁ、やっぱり変わらないわね」

 

「そう?雪乃ちゃん今の話聞いて面白そうだなーって思わなかった?」

 

「今の話のどこに面白い要素があるのかしら。それが本当だったら私は面白くないわ」

 

「どうしてそう思うの?」

 

「それだったら私がDクラスに振り分けられる意味がわからないわ。比企谷くんがBクラスに振り分けられる意味もね」

 

「そう?雪乃ちゃんならわかるんじゃない?」

 

「勝手なことを………」

 

「わっ、ゆきのんどうしたの?」

 

 

雪ノ下が立ち上がって起こるが、ここカフェだからな?あんま大きな声出すなっての由比ヶ浜も反応しただろうが。櫛田もほらビクッとしたし。

 

「雪ノ下は少し落ち着け。雪ノ下さん、俺は仮定で話してるんです。事実であるかのように話さないでください」

 

「てへ。比企谷くんが面白いこと言うからだよ。でも、比企谷くんが本気でそう思ったなら、生徒会に入れた甲斐があったかな」

 

「はぁ?」

 

 

そんな驚くことか?雪ノ下さんなら俺を絶対入れると思ったけどな。こきつかいとして。ここの学校って俺をこきつかいたがる奴多くね?俺が知ってるだけでも2人、いやもしかしたらあいつも入れて3人か。

 

「でねでねー、私このモデルさんが好きでーいつもこの人が来ているような服着てるんだよー」

 

「へぇー、あ私もこの人知ってるよー」

 

櫛田と由比ヶ浜は仲良いことで。ほらほら楽しく話してんだからそんなめんどっちい話を振るな。俺と櫛田らは全く別の話してるけどな。

 

そして、雪ノ下櫛田を睨まないであげて!!

 

はぁ、俺ゲーセン行こうと思ってたんだけど……………



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第十三話本当の姿

それから、雪ノ下等と話が進み、あぁだこうだ言う内にどんどん俺が帰りたくなってきて、帰ろうとしたら、今日の俺の用事を聞いてきた。

 

「ねぇ、比企谷くん。今日はどこに行こうとしてたの?」

 

「家です」

 

「はーいダウト。寮とは真反対の方向でしたー。」

 

「くっ」

 

「はい、話す話す」

 

「姉さん。比企谷くんが困ってるじゃない。比企谷くんは自分が生きているのが愚かしくなってきて死に場所を探していたのよ。詮索するのは野暮だわ」

 

「いやいや、違うからね?生きていくのが恥ずかしくなる生き方ってどんな生き方だよ。お前の方がよっぽど困るわ!!」

 

「…………比企谷くん。辛かったら相談してね」

 

「しねぇよ!少なくとも雪ノ下さんにだけは絶対しない、それに俺は辛いことなんて何もない」

 

「はぁ、今日は日々の疲れを癒すためにゲーセンに行く予定だったんだよ」

 

「えぇー逆に疲れない?」

 

「比企谷君の存在を隠すためにはうってつけの場所だわ」

 

雪ノ下は会話してると一回は絶対毒舌じみた発言をするよな。どんだけ俺を罵りたいんだよ。あっ、俺はそう言う趣味はないのでお帰り願います。その目で踏まれても即チェンジ願うぞ?

 

「あぁ、そうさ俺の余りある存在感を隠すためには超うってつけの場所だ」

 

「そうね、ゲーム機に座っていても、いつ入ったのこの人って思われるくらい存在感が余ってると思うわ」

 

「いや、それ存在感マイナス出ちゃってるよ。あまりあるどころか0通り超してマイナス言っちゃってるよ」

 

「うーーん。ヒッキー用事あったのかー。じゃあ行こうよゲームセンター!!」

 

「「はぁ?」」

 

「ふふっ」

 

「由比ヶ浜ちゃん、凄いね……」

 

うん凄いと思う。いきなりそんな提案できるその胆力が。

 

最も、櫛田は別の意味で言ったと思うがな。うんうん。この面子喋りにくいよねー。わかるよ櫛田。お前は同士だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、ゲームセンターに来ているのだが、俺は相変わらずmjをやっている。ゲーセン来たらまずこれやるんだよな。ログインボーナスとか貰うために。

 

「あっ、八幡くんここにいたの?」

 

「く、櫛田がどうした?今いいところなんだけど」

 

「むー、そんなゲームやってないで私と話しよ?」

 

「いや、今は捨て牌に目が離せなくてな。よしっ待牌きたー!!ロン!ざまぁみろ」

 

「ねぇー、八幡くん話しよ?」

 

「ちょっと待ってくれあと一局で決まるから………」

 

「むぅ、それっ、はいいくよー」

 

俺の手を掴んで何処かへ連れていくが、あぁー本当にあと一局で決まったのに!ちょっとくらい待ってくれてもいいじゃない

 

ぷんぷんと、顔に出てたのだろうか、櫛田が何故かあわあわしてる。

 

「あっ、えーっとね?どうしても話したくて……でもあそこじゃ他の人に聞かれるし…………」

 

「まぁ、そうだよな。俺と話がしたかったんだよな。すまん。すっかりゲームに見入ってたわ」

 

麻雀の場合まさにそう。捨て牌とかに集中するからほんと目が離せない。あれ自動でやってると気づいたらロンされてて、跳び満とかだったらほんと泣く。

 

「本当ごめんな」

 

ナデナデ

 

なんだか泣きそうな目で謝ってくるのでつい頭を撫でてしまった。

 

そんな顔するなっての。美人が台無しというわけでもなく、これはこれで………違う違う、兎も角、泣いてると守ってあげたくなっちゃうからその顔はやめて。

 

まぁ、これもこいつにとっては演技なのかもしれないが。

 

ぽー

 

顔赤らめてるが、ずっと頭から手を離す。これ以上撫でてると通報されかねんからな。こいつにも悪いし。

 

「あっ、むぅ」

 

あれ?なんか怒ってます?おっかしいな手は離したはずなんだけどな

 

「モウチョットナデテホシカッタナ」

 

「あ?」

 

「な、なんでもないよ八幡くん。それでね、話がしたいんだけど…………あ、あのスロットの台とかでいいよね。あそこで話しよう?勿論遊びながらでもいいよ」

 

「おう。っておお!」

 

そのスロットの台を見ると懐かしのアニメの台だった。

 

「どうしたの?」

 

「あぁ、いや、このアニメの原作の作者さんが好きでな。このアニメの雰囲気もそれにあってて、八九寺の家に帰るシーンとか本当感動したわ」

 

「はちくじ?」

 

「あ、ごめん。しらねぇよな。今度本屋行くからついでに買っといてやるよ。」

 

「ありがとっ。それやってていいから話するよ」

 

「おう」

 

テンション上がる〜俺この台で当たり出したことないからな〜。解呪の儀まで行ったことはあるけどATまで到達したことないんだよな〜。

 

と、ワクワクしているが、話をするということを忘れないようにする

 

「で、話ってなんだよ」

 

「うん。私ね、昔友達がいなかったの」

 

「うん。知ってる。」

 

そのくらいのこと気付いなかったと思ってんのかよ。俺はとっくのとうに気付いてたよ。友達がいたら話しかけてすらなかっただろうしな

 

「え?えええ?バレちゃってたの?あははー私もまだまだ甘いのかなぁ」

 

「いいから、話を続けろ」

 

「うん。それでね、ある日、そんな私の前に、ある1人の男性が現れたんだ」

 

「おう」

 

男かー、櫛田に男は寄ってくるだろうなー。こんな可愛いし、うん当たり前だな。

 

「その男性は傍目から見て腐ってて、全く寄り付きたくないとも思ったんだよね」

 

「うんうん。わかるぞー、俺もそうだったからな」

 

「八幡くんは思う側じゃなくて思われる側だよね」

 

あははーと苦笑しながら言ってくる。痛い、言葉が痛いよっ。

 

「それで、その人は外側じゃなくて内側だったの。

 

話はこれからなんだけど。外側じゃあまり良くないけど、内側はその倍以上かっこよくて優しくて捻くれてたの」

 

「ふーん。そんな奴いるんだな」

 

「でね、その人は私のこと全部見透かしてた。だから、私の何がいけなくて友達ができないのとかも全部わかってたんだ。」

 

「へぇー、すげぇ奴もいたもんだな」

 

目の前のスロットでは、今忍野忍が廃墟でヘルメット被って座ってる。無表情だなー。

 

「うん。本当に凄いのその人は。その後も私の持つ悩みを解決してくれた。ううん、あれは解消っていうのかな。それは私の望むやり方じゃなかった。その行動の意味がわかる人はあの先生以外誰にもいなくて、その時私は先生しか頼れなかった。先生は慰めてくれた。後にどうしたらいいかも全部教えてくれた」

 

「先生優しいなー、理想の教師像だな」

 

そう言いながらスロットのボタンを押す。あーあとちょっとで50ゲーム行くなースロットゲームっていちいち押すのが面倒だよな。ってもこれがいいんだけど。

 

「そんな優しい彼なんだけど行く中学校を教えてくれなかった。話の持っていき方とか工夫したけど全然ダメで、頑なに教えてくれなかった。だから、中学校では一緒になれないのかなっていつも部屋で泣いてた」

 

「そいつ酷いなーいく学校くらい教えてくれてもいいものを」

 

「そうだよね。酷いよ。酷い!」

 

「あぁ、ひど…………………お前大丈夫か?」

 

「えっ?」

 

視線の先にいた櫛田は俺から見てすごく溜め込んで吐き出すのが難しそうな、そんな顔をしていた。

 

「話せ。全部。お前が日頃溜め込んでる口も含めて全部。今ここで話せ。分かってる。周囲に人がいないか常に確認してるから」

 

「な、なんで」

 

「なんで分かったかってか?そんなの他の人には騙せても俺の目は騙せねぇよ。お前いつも演技してるだろ」

 

「そ、そんなことは……」

 

「いいや、お前はいつも役者であろうとしている。わかるよ。俺もそんな時期があった。自分の中にある自分のあるべき姿を思い浮かべてそれにあった行動をする。でもな……」

 

 

溜め込んでいう。手はなおもバーを下ろしたりボタンを押したりしている。これぞ俺がたまにやるスマホ見ながらスロット打つ改だ。

 

「演技して、その先にあるのが破滅だったらそんなの間違ってるだろ」

 

「間違ってる?」

 

櫛田を見ると目がうるうるして、先を促してくる。だからなくなっての。

 

「あぁ、そうさ他の人が望んだ姿を筋書きされた通りに演じているだけじゃその先には破滅しか見えないし、何よりお前がそれを全部お前が背負うのは間違ってる。はずだ」

 

「はずって…………八幡くんらしいね。言い切らないところとか、そうやって理屈こねて言ってくるところとか………………」

 

「ふっ、俺は俺だからな」

 

「あは、やっぱりかっこいいや。ねぇ、八幡くん。頼み事していい?」

 

「あぁ、なんでも言ってくれ。」

 

人が望む姿というものを再現して、実現して、投影して、そうやって行き着いた先が櫛田なんだろう。

 

でも、それは本当に自分と呼べるのだろうか。

 

誰かが、思い描いて、誰かが喋って、誰かが伝えた姿が、自分が見た姿と異なっていることは多々ある。

 

でもそれは自分の欲望にかなっていないからそう見えるだけなんじゃないだろうか。

 

欲望に忠実になって

 

欲望のまま動いて

 

欲望を求め抜いた結果櫛田という存在が生まれたのではないかと思う。

 

結局櫛田は犠牲者なのだ。

 

誰かが求めた姿なんてどうでもいい。お前はお前だ。他の誰でもない。お前なんだ。そこにあるのは絶対に本物なはずだ。

 

だから、今は、今くらいは

 

「今くらいは泣いてもいいよね」

 

「あぁ、好きなだけ泣け。」

 

本当の姿でいて欲しい

 

 



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第十四話思いがけない名前

あの日。櫛田は全て吐き出した。俺に対して思うところもあったのだろう。それも含めて全て。しかし雪ノ下らの悪口を言うのはやめてあげて。あの人ら君を心配してのことだったって言ってたからね。

 

雪ノ下は見抜いていた。櫛田の内なる姿を。それを出会った当初の由比ヶ浜と重ねてしまったのだろう。相談せずとも今度は間違えないようにと慎重に話を聞いていたらしい。

 

で、その途中で俺に出会ったと言うわけだ。

 

それなら最初から俺に相談すれば…………ダメでしたね。俺最初は家で寝て過ごそうとしてました。すいません。

 

と、言うわけで、無事櫛田の件は解決した。ちゃんと解決した。

 

最もあれから櫛田は妙に俺に近づいてくるんだが、なんなんだろうか。

 

昼食は教室まで来て呼んでくるし、下校は絶対一緒に帰るし、休みの日なんかはずっと俺の部屋にいるし。最後のなんか俺のカードキーまで持ってるからな。見せられたときはびっくりしたわ。なんでこいつ俺のキー持ってんのって。

 

聞いたらなんて言ったと思う?八幡くんに愚痴を聞かせたいからとか言うんだぜ?その一言で全部冷めたわー。いやもともと期待してないんだけどね。

 

それにそう促したのは俺だし。あいつも辛いことや苦しいことはたくさんあるだろうしな。吐き出す相手くらい俺がなってやるよ。まぁ、俺で務まるかどうかは別だが。

 

そう言った感じで、無事4月を終えた。

 

長かったー。なんだか妙に長く感じた一ヶ月だったが、無事終わり、今日も俺のボッチライフは健全だ。

 

だから、櫛田に会わないよう早めに出るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は会わないといいけどなぁ」

 

そんなことをぼやきながら家を出る。ちゃんと鍵はかけるが、今はこんな鍵あまり役に立ってないんだよな。指紋認証にでもすればいいのに。そうしたらぼっちの理想郷が実現する。

 

「あっ」

 

「あっ」

 

鍵を閉めて、家を出た時。隣人が同時に家を出てきた。

 

確かこいつは

 

「あー、遅くなってすまん。俺はお前の隣の部屋の綾小路清隆と言う者だ。」

 

「お、おう、妙に堅苦しいなおい。俺は402番号室の比企谷八幡だ。」

 

「よろしくな」

 

「俺はよろしくするつもりなんて毛頭ないがな」

 

本当に毛程もない。しっかし、薄気味悪い奴だな。この無表情と言い、なんだか陽乃さんのポーカーフェイス強化版みたいだな。薄気味悪い。

 

「え、そんなこと言われたのは初めてだ。」

 

「俺も同級生に〜と言う者だって自己紹介されたのは初めてだけどな」

 

「…………それにしても、どうやったらそんな目になるんだ?」

 

「おいおい、あっていきなりそれかよ。もっとなかったのかよ。」

 

「うーん。その猫背よく電車とかで見かけるブラック企業の業務員みたいだなとかか?」

 

「ちげぇよ、もっと酷いなオイ。お前………もしかして、俺と同種か?」

 

「同種?なんのことだ?」

 

「ぼっちかってことだよ。お前友達とかいそうにねぇからな」

 

「ブーメランぶっ刺さってると思うが、俺はいるぞ」

 

「え?!ちっ、当てが外れたか似非ぼっちめーーーーーーー

 

 

 

 

変なやつと会ったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月最初の学校開始を告げる事業チャイムが鳴る。程なくして、ポスターを持った星乃宮先生がやってくる。その顔はいつもより険しい。生理でも止まったんですかーとか絶対言わない。というかあの先生の場合、こういうときは決まってーーー

 

 

「はーーい、これからー朝のホームルームを始めまーす。うぷっ」

 

ほらやっぱりな。この先生の場合こうなんだよ。調子が悪いときは決まって酒飲んでる。あれに近寄ったら酒臭くて敵わない。介抱するなら尚更だ。

 

その役はいつも俺に任される。このクラスの人たち俺のことを星乃宮先生の付き人だとでも思ってるのか?ちげぇよ、この人の付き人になるならまだ雪ノ下さ………いや、雪ノ下さんでも同じだな。それ以上か?ともあれあの人たちは関わり合いたくもない人たちだ。

 

ピコンと、Lineの通知音が聞こえる。

 

『なんで先に行ったの?!ぷんぷん』

 

ぷんぷんって可愛いなおい。Lineとかだと顔文字とか使うこと多いけど、文字とかで可愛いセリフはかれると可愛いなおいってなる。

 

それはさておき、後で謝っておかないとな。毎日一緒に登校するってのもどうかと思うんですけどね。

 

「そこ、スマホいじらな………げほっ」

 

「せんせー大丈夫ですかー」

 

「ちょっ先生、酒臭っ」

 

「また酒飲みすぎたんですかー?」

 

「あのー先生ポイントのことなんですけどー」

 

「あー、ポイントね。ポイントの件はーこれを見たらわかると思うよー………うげっ」

 

さっきから吐きそうになっているが、それを介抱するの俺だからな?先生わかってんのか?

 

やれやれと思いながらも、貼られていくポスターを見る。

 

それは俺の予想していた、数字が書き込まれていた。

 

「Aクラスが940クラスポイント、私達Bクラスが650クラスポイント、Cクラスが490クラスポイント、Dクラスが0ポイント。ありゃ、Dクラスはポイントを全て吐き出しちゃったみたいだねー。ということで、これが今月与えられるポイントとなっています。

 

 

ポイントはー一クラスポイント100ポイントの計算となっていていまーす。

 

げほっげほっ」

 

はぁ、今はクラスポイントのことより星乃宮先生が心配だよ。なんで保険医が酒飲みすぎて吐きそうになってるんだよ。

 

「はーい、先生」

 

「なーに、一ノ瀬さん」

 

あいつ一之瀬っていったか?なんかこの学園の顔面偏差値が異常に高いような気がするのは俺だけなんだろうか。

 

「ポイントの詳細を教えてもらえませんでしょうか」

 

「ごめんね〜それは言えない約束になっているんだ〜」

 

「そうですか」

 

「他に質問ある人ー。ないなら、次のポスター…………おぇっ」

 

いや、まじで吐かないでくれよ。吐いたやつ俺が処理するんだから。まじでやめてくれ。

 

「次はこれを見てー」

 

あぁ、俺が整理した、あのプリントの束か。大変だったなー生徒個人個人の能力の整理。あれすっごい疲れんだよなー

 

「みんな十分できてるみたいだねー。先生は感激だよー。………えっぷ」

 

 

俺は先生に全く感激できないんだが。もうちょっと量を調節してください。

 

「うんうん。十分できてるよー。特に葉山くん。君は見事学年三位誇るべきだよこれは」

 

「あん?なんだって」

 

生徒の視線が瞬時にこちらに向く。あれ?発言しちゃった?!思わず声に出たって感じだな。

 

「すみません。」

 

「八幡くん。気を付けてね。では、今日のホームルームはこれにて終了!今日の説明は絶対覚えておくこと。じゃないとーAクラスは目指せないからね。ではー………………げほっえぷっ」

 

「あっ、先生ー大丈夫?!」

 

先生はもうちょっと酒癖を治してほしいところだな。いつもいってるんだけどな。それよりも……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十五話葉山隼人の進む道

考えてみればなんのことはない。記憶の節々から葉山隼人という名前は出ていたはずだ。

 

プリント整理しかり、自己紹介時しかりな。

 

しかし、葉山隼人はクラスの中心人物じゃない。

 

俺にも認知されない知名度とは総武中いた頃の皆んなの葉山隼人像と異なる。

 

我こそはスクールカースト最上位なりと言わんばかりに由比ヶ浜らと関わっていたはずだ。

 

ならば何故?この学校にいることはなんとなく理解できるがその辺りの実情をあまり理解できない。

 

葉山隼人は何故昔のように振る舞わないのか。

 

その疑問だけが頭を埋め尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今はホームルームが終わり授業が始まる15分前。その曖昧な時間帯に俺はこれからの身の振り方を考えていた。

 

おそらく葉山は俺のことを認知している。さっきのことと言い雪ノ下さんのことと言い、俺の知らない場所でだってあるかもしれないし、星乃宮先生の手伝いとかはまさにそうだ。

 

はぁ、と少し気落ちするが葉山との関係は未だ不全。

 

互いのことを認め合っているが、その実好いてはいない。

 

そんな葉山なんだが、

 

「やぁ、比企谷くん。君もここにいたんだね。知っていたよ」

 

「知っていたなら態々言いに来なくてもいいんじゃないのか」

 

キャーハヤマクンガヒキガヤクントハナシテルヨー

ワーナンカアブナイフンイキダー

ハァハァ

 

あれ?最後のなんかやばくなかったか?まさかここにもいないよな海老名さん。くれぐれも鼻血飛ばさないようにな。三浦いないんだから。

 

「ははっ、そうだね。無駄だったかもしれないが、俺としては重要な情報なんだ。元々知ってたんだけどね」

 

「はぁまぁ、お前が誰から聞いてここに来たのかはわからないが、十中八九理由あっての入学だろ?」

 

「……理由のない入学なんてないと思うけど、そうだね。俺は比企谷を追いかけてここにきたわけではない」

 

「んなこと知ってるよ。お前の目的は雪ノ下だろ?」

 

「あぁ、分かるんだね。そのことについて話したい。今日の放課後でどうだ?」

 

「いや、放課後か…………放課後は櫛田いるかもしれないけどそれでもいいか?」

 

「櫛田さんってえっと…………Dクラスの?」

 

「そうだよ。てかお前友達じゃないのかよ。てっきり櫛田とか平田とかの面子集めてグループ形成してんだと思ってたけどな」

 

「ふっ、君は変わらないね。ダメだよ。櫛田さんに話す内容でもないだろから」

 

「分かった。まぁなんとかするわ」

 

「よろしく」

 

短い言葉を区切りに授業開始五分前のチャイムが鳴る。それは区切りとしてとても丁度良いものだったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。櫛田が教室に来て八幡くーんと叫んでいたが今日は堪忍してくれと言いしゅんとなって友達と帰っていった。

 

Bクラスの人は俺のこと振ったー女子を泣かせたーだのいうのやめてね。あれで結構言われた側は傷つくんだよ?

 

俺の黒歴史フォルダーがまた一個追加された。

 

何はともあれ放課後だ。

 

葉山との話の予定がある。彼奴とは話したくないんだが、仕方なく付き合ってやるか。こう言ってるとなんだか俺の方が偉く感じるのが不思議。

 

「比企谷、帰るぞ」

 

「そうだな。お前と一緒に帰る日が来るなんてな。中学生との気の俺が見たら鼻で笑うだろうな」

 

「鼻で笑うどころか引くんじゃないのか?こんな俺俺じゃないって」

 

「そうだな。てかなんの話だよ。早く話せ。俺も暇じゃないんでない」

 

「君はいつも暇そうじゃないか。と言っても最近は星乃宮先生につきっきりだからそうとも言えないのか」

 

「そこは触れないでくれ俺のミスでああなったんだから」

 

「そうだね。それじゃあ話に戻ろうか。

 

 

俺のここへ入学した理由だったね。それは、君と雪ノ下さん達の行く末を見るためだよ」

 

「んなことだろうと…………ってええ?なんで俺含まれてんの?俺のことを追いかけてないんじゃなかったのかよ」

 

「君のことはついでさ。雪ノ下さんはプロムを終えて確実に成長したはずだ。しかし、君の存在が左右するはずだったにもかかわらず君は逃げようとしだじゃないか」

 

「うぐっ………べ、別に俺は逃げようとなんて………」

 

「したさ。君は目の前の本物という存在を目視しておきながら怖くなったんだ。

 

それで、自分を2人と引き離すことで逃げようとした。

 

それは………「やめろ」」

 

「俺は逃げようとしたんじゃない。彼奴らに必要なのは俺じゃないってことが分かっただけだ」

 

「君は君の存在の価値というものを理解していない。

 

こんな話を生徒会長選挙の時にもしたね。君は常に自己を周囲から切り離して考えている。

 

そう考えると今回のこともその表れと見える」

 

「勝手に理解してんじゃねぇよ。そんなのお前の思い過ごしかもしれねぇだろ」

 

あぁ、腹立たしい。理解しているんだろが、俺の内実を理解していない。

 

俺は怖かったのではない。目前に控える本物という存在に足がすくんでしまっただけだ。だから、あの関係性より前の関係性に戻りたかった。それだけなのだ。

 

「ははっ、君は変わらないんだね。改めて言うよ。」

 

「……」

 

「俺は君が嫌いだ。俺は君を見ていると劣っていると感じる。そのことがたまらなく嫌で過去を見ている気分になる。俺が切り捨ててしまった過去を振り返ってしまうんだ。

 

だから嫌いだ。でも、そうやって何かに怯えて逃げる姿はもっと嫌いだ。

 

君は自分のことをもっとよく考えろ」

 

「はっ、自分のことくらい自分でわかってるっての。お前に言われるまでもなくな」

 

そんなことよく分かってる。自分がなんでここにいるかも、なんで彼奴らに言わずにここを入学先にしたのかも。俺が何故あの関係性を手放そうとしたのかも。

 

全部わかってるはずなんだ。

 

「なら、安心だね。それで君はこれからどうするんだい?」

 

「は?なんで俺のこれからを聞くんだ?」

 

「聞くさ。ここには陽乃さんも、雪ノ下さんも結衣も、そしてあの人もいる。そんな状況下で君が動かずにのさばってるなんてことはできないだろう」

 

「そんなことないと思うぞ。俺は情けないやつだからな。動かずに働きたくないでござるって言ってるよ」

 

「ははっ、働きたくない云々は言ってそうだね」

 

「それよりも、お前なんでスクールカースト上位の奴らとつるんでないんだ?」

 

話があらぬ方向へと進んでいくので俺の一番の興味であった、こいつの内情だ。マラソンの時に言ったあの言葉が左右しているとは考えにくい。

 

こいつは今何を考えているんだ?

 

「ふふっ、そうだね。

 

 

俺も本物を見つけてみたくなった。じゃダメかい?」

 

 

「は?」

 

 

今何考えてるんだこいつって考えてた俺を殴りたい。

 

何故その言葉を知っているか問う以前に何言ってんのこいつ。



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第十六話呼び出しと邂逅

葉山隼人の行く末とはどうなるのか。それが気になってしまった。

 

元々俺は葉山を憎んではいても嫌っちゃいない。いや、同じことか。

 

葉山隼人の行く末。

 

彼奴は確実に前に進もうとしている。その証拠として彼奴は皆んなの葉山隼人を辞めた。

 

それは、俺の存在が影響しているんじゃないかとも思う。

 

俺は周囲から孤立して離別している存在。中学の時いじめられている時それをみたらすぐに助けてくれた。それは、罪悪感を抱くには十分すぎるほど十分だ。

 

俺が、周囲から孤立している状態をみて、自分の弱点みたいなものに気づいたんじゃないかと思う。

 

葉山隼人の弱点。皆んなの葉山隼人の弱点。それは輪に入っていない人物の影響だ。

 

葉山はあれで優しい。だから、それゆえに脆い部分がある。孤立した人物の存在だ。

 

俺は一度葉山のグループのために動いたことがあるが、あれの表れと言えるだろう。

 

あの時本気で俺にヘイトが集まるように仕向けていたらどうなっていたか。

 

それは計り知れないが恐ろしいことになっていたのだと思う。

 

それを防ぐため、その輪自体を作ることをやめた。

 

葉山は成長している。

 

ならば俺は成長できるのだろうか。

 

前に進めない俺を嘲るように前に出てきた葉山。それは俺が欲しかったものなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、なんで葉山もここにいるんだよ」

 

気萎えする。何故葉山がここにいるかなんてことはもうすでにわかっているはずなのに、どうしても胸に痞える。

 

結局俺の探していたものはなんだったのか。

 

そんなことを考えるようにもなっていた。

 

『1年Dクラスの綾小路くん。担任の茶柱先生がお呼びです。職員室まで来てください』

 

たらららーんと心地よい効果音の後無機質の案内声が学校中に響く。

 

どうしよっかなー帰ろうかなーとうむうむ畝ってると、続いて声が聞こえる

 

『ついでに一年Bクラス比企谷八幡くんもきてください』

 

おい、ついでってなんだよ。ついでって。後出し感半端ないんだけどやめてくんないついでで呼び出すの。

 

てか、誰だよ。

 

そんなのあの人に決まってるんだけどな。呼び出し方然りこう言う時に呼ぶ人然り、決まっている。

 

さてと、どうせ酒に酔い潰れたとかで介抱してやらないといけないだろうから、行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

またも校舎の中に戻り廊下を歩き続ける。そんな自然な動きにこの学校にも慣れてきたんだなと感じる。

 

と言っても教室には全く慣れてないけどな。未だ友達0人。俺のボッチ感が半端ない。

 

きっと俺はボッチになるために生まれてきたんだ。と、変な考えが浮かんで来るうちに御目当ての職員室に着く

 

と、目の前にどこか見覚えのある奴に出会う。あれーこいつ誰だったっけ。たしか呼ばれていたような。

 

 

「あれ?お前どっかでみたような…………確か袋小路だっけ?」

 

「は?違う違う。行き止まってねぇよちゃんと綾で繋げ」

 

「ああ綾小路か。あの朝にあった失礼な奴」

 

「失礼なんじゃない。ただ事実を言っただけだ」

 

「世の中にはな公然と事実を言っただけで公訴する奴だっているんだぞ?」

 

「そんなことよりも、何故お前もここにいるんだ」

 

「話を聞け話を。俺も呼ばれたからだよ。まぁ、理由は概ね想像できるが」

 

星乃宮先生は加減を知らないからな。うん。俺が解放してやるのは必然だな。はぁ、誰かもらってやって。

 

いや、あの人の場合貰う側か。平塚先生に見せてやりたいぜ。悪い見本として。

 

「俺は何故呼ばれたか想像つかないけどな」

 

「そういやお前はなんで呼ばれたんだ?俺はついでとかぬかしてたけど。」

 

「ついでって。お前も苦労してるんだな。俺はどうして呼ばれたんだろうな」

 

「ふーん。なんかやらかしたのか?例えば暴力事件とか」

 

「何故俺が暴力事件を起こすと思うんだ?そんな奴に見えるのか?」

 

「しらねぇけど、お前随分と鍛えてるだろ。体躯のブレとか全く見えねぇぞ?俺が知っている人間の中で一番だ」

 

「……………俺は運動してない。偶然そう見えただけなんじゃないのか」

 

「はっ、お前がそうならそうでいいんだろうよ。ただ、それが剥がされるのも時間の問題かもな」

 

「???」

 

なんかすごいはてなマーク頭に浮かべてるがそんなに不思議なことか?俺はお前がそうなるのは目に見えてるぞ?

 

「なんのことか分からないが、星乃宮先生ならきたぞ」

 

「は〜い。八幡くんようやくきたー。遅いよ〜」

 

何この人。こんな甘い声出す人だったっけ。あ、そうでしたね、ピッチなんでしたね。由比ヶ浜以上のびc「それ以上考えたらどうなるかわかるよね」

 

さ、さー、イェッさー。なんでもありません。素敵な先生は、超美人で、超優良物件だと思います。是非俺が貰いたいくらい。

 

「じゃあ、あの席に着いて。今日は各生徒の部活関連の資料の整理だから。今日頑張ったら給料プラス時給1万円だよ!本当私的にポイントたかーい。」

 

「はいはい、ガチでポイント高いですね。あと小町のネタパクらないでください。あなたの年齢的に俺は兄じゃなくて弟なんですから」

 

「私は兄弟いなかったから八幡くんみたいな生徒がいてくれて嬉しいよ?」

 

なんだか今日はやけに声が甘い。何故だ?いつもはこんなにドギマギしないんだけどな。

 

「それに俺はポイント困っていませんから別に給料とかいらないんですよ」

 

「えー?釣れないなぁ。八幡くんが、弟になってくれたら一緒の部屋に住まわせてあげるよ?」

 

だから、声が甘い。この人は美人というより可愛いだからこういう声が出せるんだろうが、口の中にリンゴ詰め込まれてるみたいだからやめて!!

 

「へ、へぇ、それは興味深いですね。教師の部屋ってどんな感じなんですか?」

 

「うーん。あまり教えるなって言われてるんだけど、八幡くんにならいいかな。あっ綾小路くんいたの?君は絶対に喋らないでね⭐︎」

 

「は、はい」

 

ほら、綾小路顔赤くなってるだろ。あれ?なんで顔赤くなってんだ?無表情が張り付いてそうだったからこんな顔するとは思ってなかったわ。

 

「あ、あとサエちゃんなら今外しているから一緒に中に入って待ってる?八幡くんもいるよ」.

 

 

「おう、綾小路も行くぞ。俺とこの人だけじゃあ、少しいや結構変な雰囲気になるからな」

 

「絶賛今なっていると思うんだがな。いや、いいよ、俺は廊下で待ってる」

 

「えー綾小路くんってさー結構モテるでしょ。私は星乃宮知恵っていうの。佐枝ちゃんとは高校の時から親友で、紗英ちゃんちえちゃんって呼ぶ中なのよ?」

 

「へぇー、そうなんですか?星乃宮先生ってそういう話全然しないから」

 

うわ。綾小路どうでもいいような顔してやがる。こんな顔を星乃宮先生に向けたら………

 

「ねえ?さえちゃんにはどうして呼ばれたの?ねぇねぇどうして?」

 

「さぁ、俺にもさっぱり」

 

「分かってないんだ。理由もつけずに呼び出したの?ふーん」

 

じろじろ綾小路を見ている。うわーそんな反応したらこの人の場合そうなるわな。こいつ女性とかをそういう目で見ることないだろうシナ。

 

うわー、初対面の生徒指でツンツンしてるよ。やっぱり俺らの先生は格が違う。いや、ベクトルが違うな。別の意味で。

 

「何やってるんだ?星乃宮」

 

 

 

これが俺とこの先生とのファーストコンタクト。この時はまだ別クラスだし絡むことはないと思っていた。

 



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第十七話それは親友なのか悪友なのか

茶柱先生は、綾小路を伴って去っていった。なんの用事なのか気になるなぁ。

 

 

「先生から見て綾小路という人間はどう映りましたか?」

 

いきなり直球勝負。いきなりすぎるとは自分でも思うのだが、こういう聴き方をしないとはぐらかされるからな。

 

それに教師としての意見を聞いたい。

 

綾小路はやはり危険人物なのかと。

 

「あは、いきなり直球だね。うーん。私から見てああいう人間は危険だと思うな」

 

「教師年との意見ですか?それとも星乃宮自身の意見ですか?」

 

「勿論、私個人だよ」

 

「は?」

 

「私個人の意見っ!綾小路くん見ないな雰囲気の人には会ったことはない。だからこそ危ないと思えるんだよねー。」

 

「つ、つまり勘だと?」

 

「そう!勘だよ!勘!私の勘が要注意人物だって言ってるんだよね〜」

 

「ふっ、星乃宮先生の勘はあてになりそうですね。でもそれだけではないんでしょう?どこか核心に迫る何かを握ってるんじゃないですか?」

 

「何を根拠に言っているのかなー」

 

恐っ。この人恐い。俺がハッタリで言ってんのにすごい食いつきだ。この人ならサメの如くガッツリ行きそうだから尚恐い。

 

「根拠なんてありませんよ。ただの勘です。」

 

「ぷっ、あはははははははははは。やっぱり八幡くん面白ーい。」

 

「星乃宮先生の数十倍俺の勘は当たりますからね」

 

「そうだね。八幡くんの勘は外れなさそうだ。ならその八幡くんに聞くけどさ」

 

「なんでもとは言いませんが、答えられる範疇なら」

 

「Aクラスに上がれると思う?」

 

「ふっ、愚問でしょう。今のところはあり得ませんね」

 

「ふーん。その心は?」

 

「そりゃあ坂柳がいる限りどうにもならないですよ。あれは本物ですからね。ただし……」

 

 

「ただし?」

 

「坂柳が知らない所影響の範囲、所謂死角を突けばなんとかなると思います」

 

「うーん?死角?でもそれをなくすのが部下の役目なんじゃないの?」

 

「はは、部下の存在も知ってるんですね。星乃宮先生、もしかして独自で情報を集めてる?」

 

「い、いやーなんのことかなー」

 

「まぁ、いいです。星乃宮先生、くれぐれも退職にならないように、慎重にお願いしますね」

 

「八幡くんに言われなくても分かってるもん」

 

もんって、いい歳して………やべぇ、可愛いしか思い浮かばねぇ。この人なら何やっても可愛いような気もするな。これは最早第二魔王だ。そう呼ぶことにしよう。

 

「ねぇ、八幡くん?今余計なこと考えなかった?」

 

「い、いえ、何も考えていません!」

 

「ならいいけど…」

 

あ、危ねぇ、この人普通に心読んでくるからな。恐いからやめてくれ。

 

「私さぁー八幡くんの考えてることなんとなくわかるんだよねー」

 

「え、エスパーかよ」

 

「それでね。いつか、壊れてしまわないか怖いんだ」

 

「え?急になんの話?」

 

何を言ってるんだこの人は。壊れる?何が?

 

しかし、そう考える気持ちの反面、なんとなくそういうことなんじゃないかという気持ちが出てくる。

 

「Bクラスは恐れてる。何をとは言わないけど、何かの拍子にそれが壊れてしまいそうで心配だからその時は…「壊れませんよ。絶対に。」

 

 

「そもそもの話壊れる前提で話してるのは間違ってるし、俺はその何かが壊れてしまうなんて思いません。」

 

「で、でも、その時は八幡くんは「俺は壊しませんよ。誰かが壊すならそれを阻止するだけです。」」

 

星乃宮先生はなんと言おうとしたのだろうか。言わせない。俺は望んでいない。

 

「これだけは言わせて。傷つくのは禁止だよ?」

 

何故か目をうるうるとさせ、懇願するように言ってくる。

 

分かってるっての。俺は俺のやり方を変えない。だが、これまでで学習した。そのやり方は良くも悪くも解消でしかないと。

 

俺は未だ答えを探してる。

 

そしてその答えはBクラスにある気がするんだ。だがらーーー

 

「俺は俺ですよ。それ以上でもそれ以下でもないんです。だから、先生がしてる心配は絶無ですよ。」

 

「な、ならいいんだけどね。さぁー、仕事も終わり終わりっ!八幡くんもお疲れ様。」

 

話はこれで終わりとばかりに早々に切り上げようとしている。

 

はぁ、やっぱり先生は先生だな。

 

妙に安心している自分が少し腹立たしいが、これでいいのだろう。

 

これから先何があろうと俺は俺だ。変わらないし変われない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふあぁああ。すっかり夜にだなー。」

 

ひとりごちりながら帰路に着く。空には星々が輝いているが、未だ廊下にいる自分が不思議でしょうがない。

 

なんか、先生のいるところ俺あり見たくなっちゃってるな。あれ?もしかしてこういうところが先生の付き人だと思われる原因なのかな?

 

そう考えながら、すらーっと、特別棟を横切ろうとした、が、それは叶わぬものだった。

 

目の前には暗くなった校舎の中で煌びやかに輝くはずもないただの闇が潜んでいた。

 

ただの暗部。

 

確か石崎と言ったか?はっ、お前らみたいな野郎が俺に勝てると思ってんのかよ。あいつならともかくな。

 

「よし、やっちまうぞ」

 

「ははっ、あの人の言った通りだったぜ。おいお前いつもここ通ってんだってな。いつも思ってたけど、お前の目気持ち悪いんだよっ!!」

 

荒荒しい上段蹴り。そんな雑多な蹴り当たるかよ。

 

「うぉっと。あれ?なんで避けれんだよっ…………あれ?」

 

「おい石崎こいつ……………くぁっ」

 

素早く手刀を頸髄あたりに当て気絶させる。こう言ったあらごとはヤンキーの専売特許じゃねぇんだぞっと。

 

続けて下腹蹴り。それも急所近辺にあて身動きを遅くさせる。

 

後ろに迫っている感覚があるから後ろ蹴りを繰り出す。

 

その際は必ず気絶するよう手加減はしない。顔面の骨折れてもしらねぇぞ?

 

ここらは監視カメラがないため、思う存分やれるが、念のため指紋は残さないよう手を使わない。

 

これで終わりかな、と思いながら続けて迫っている相手に三日月蹴り。

 

最後とばかりに蹴ると場が静かになる。

 

いっときの静寂。

 

^だが、それはすぐに打ち破られることになる。

 

「よう、よくもまあ俺の部下をやってくれたもんだな。」

 

「何言ってんだよ。仕向けたのお前だろ。なぁ翔」

 

「ふっ、久しぶりだな。八幡」

 

はてさて、ここで沈黙が続いた方が良かったのか、この邂逅はこの先どう言った形で影響していくのか、誰にもわからない。

 

だが、こいつは俺の初めての親友だ。



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十八話それは感動というよりエモい

何故か今日は昔馴染みの人に会う。

葉山然り翔然り

最も俺が本当の友達と言えるのはかけるしかいないから、葉山は昔馴染みというか腐れ縁にあたると思うんだがな。

其は由比ヶ浜だって雪ノ下だって、腐れ縁だ。

だから友達だと言える人間は翔しか居ない。

過去に色々あったが、それはここに至るための布石だったのだと思う。

ここまでの駒だったのだ。

 

だから俺はあえてビショップで攻める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、八幡にとって俺はキングってわけか?」

 

「は?なに?俺の考え読めるの?エスパー?」

 

「ははっ、八幡もそういうこと全部顔に出るからな。わかるんだよ。」

 

「そういう翔もいつもこう言ったことに対して揚げ足とってくるよな。」

 

そうだ、こいつの場合、いつも俺が言ったことに対して揚げ足を取ろうとする。それも面白くていいんだけどよ。

 

「あん?取られる揚げ足があんのが悪いんだろうが」

 

「いやいや、とる方も面倒じゃないの普通に会話した方が楽しくない?」

 

「八幡とする会話が普通であると思うか?」

 

「ふっ、それこそないな。」

 

「そうだ、今王っていたっけど、八幡クラスでなんかしてんの?あいつらお前の部下みたいだったけど」

 

その割には超弱かったけどな。もうちょっと武道を習ってたらそこそこいい線いったと思うんだけど。

 

「あぁ、こいつらは俺の部下だ。だが、八幡にはちっと弱すぎたか?」

 

「お前くらい強い方が珍しいと思うけどな」

 

「違いねぇ。だが、八幡には負ける気はさらさらないぞ?」

 

「あ?そもそも戦う機会だってないだろ」

 

こいつは曲がりなりにも俺の友達だ。戦うなんてことはないだろう。そもそも、俺お前よりも強くねぇし。

 

「八幡はこの学校のルールをしらねぇのか?」

 

あぁ、そういうこと、つまりこの学校にいる限り友であろうと親友であろうと悪友であろうと

 

「敵ってわけか?」

 

「そうだろ。八幡はどうなんだ?俺のこと敵だと思ってるか?」

 

「思ってるって、まだ今日再開したばかりだろ。どっちかっていうと思ってないな。甘い考えだと思うなら笑え。でも今日はお前と会えて嬉しいよ」

 

「ふっ、こいつらの壮大な歓迎はどうだった?」

 

「最高だったよ。悪い意味でな」

 

「ははっ、そりゃあいいご回答なことで。」

 

「はぁ、翔と会うんだったらもう少し違う相方の方が良かったような気がするんだが。」

 

「八幡と感動の再会なんてできるかよむしろこれよりひどくなかっただけましだと思え」

 

うわぁ、なん想像できた。こいつもっと酷いのも考えてたのかよ。まぁなんだか………

 

「らしい……な。」

 

「そうだろ?俺はらしいだろ?」

 

「ははははははははははっ。そうだな」

 

俺から笑い出し、連なって翔も笑い出す。なんだかこんな気兼ねなく笑ったのは久しぶりな気がする。

 

こいつとは中々気が合うからな。やっぱり気を使わなくていいという点においては最高の友達だな。

 

「お前といたら何か、日々の重荷から逃れられる気がするわ。」

 

「八幡、案外クラスの重要人物になってるたちだろ。聞いたぞ星乃宮先生落としたのか?」

 

「落としてねぇよ。なんだよその攻略するのが俺みたいな言い方」

 

「あぁ、八幡なら攻略される側か。苦労してんだな」

 

「まぁ、最近はそれも楽しいと感じているんだけどな。」

 

「八幡は振り回されてばかりだろうからな。で、ここらで再会の長話は切り上げと行くぞ

 

 

お前に重大な話がある」

 

 

「重大って、つまんない話するなよ?」

 

「恐らく八幡には好都合な話のはずだ。

 

八幡、お前俺の部下、いや協力者にならないか?」

 

「断る。」

 

「ふっ、だろうな。そういうと思ったわ。お前はやはり、部下よりも協力者よりも

 

 

 

 

「「友達………だな。」」

 

 

 

ふぅ、こいつと会ったらいきなり喧嘩でも始まるかと思ったけど、そうならなかったのは俺もこいつも、進めたんだろうな。

 

俺も、頑張りますかね。

 



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第十九話噛み合わない面子

昨日翔と久しぶりに会って話したが、やはり友達とはいいものだな。俺は何故ぼっちと名乗っていたのだろう。

俺は今日から新ボッチ党を形s…………ダメですよね。分かってます言ってみただけです。すみません。

というわけで、翔とはあれから連絡先を交換して、Lineも交換してわかれた。

その前に、今後のクラスの動きについて少し話したがな。

 

翔も翔で色々考えているようで、クラスごとに重要人物ごとに分け、どう動いていくのか大まかな考えを話してくれたので俺はそのかわりに俺が危険人物と据える人物について話した。

 

勿論坂柳は入っている。翔が葛城はどうなんだと聞いてきたのだが、あんなの敵じゃないだろと言ったらそりゃそうだよなと返した。当たり前のことを聞きやがって。

 

後の危険人物は綾小路清隆だな。あいつはなに考えてるかわからない。というのが一番怖いのだが、その実目に浮かべる感情は皆無、言動も少し不自然で、謎が多い要注意人物。

 

翔はそんな金魚の糞は知らんと言ってたが、お前そんなこと言ってると痛い目見るぞ?知らんけど。

 

まぁ、そんなこんなで今日も早めに家を出たのだが……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでいるんだ?葉山………」

 

そう、何故か俺の目には葉山隼人が見えるのは何故だろうか。何故二回も使っちゃったよ。

 

俺まだ寝ぼけてるのかな。もう一回寝よう。そして起きない。次起きるのは俺の顔にシワが増えた頃かな。。

 

遠い目で葉山を見つめていると、、

 

「ふっ、ふふふっ、そんな顔すると思ったよ。だが安心してくれ俺だけじゃないというか俺は被害者だ」

 

「はぁ?被害者だと?俺は今絶賛被害受け中なんだが」

 

「違うよ、君はまた被害受ける側だ。安心してくれ」

 

「いやいや、これからまた被害受けるって言われて安心できるもなにもあるかよ」

 

「そんなこと言って俺も一緒に被害を受けるんだからそれでなしにしてくれ」

 

「はぁ、納得いかねぇが分かった。ただし俺にも一つ条件がある」

 

「なにかい?」

 

「友達を呼んでいいか?」

 

「友達いたのか?別に呼んでもいいがその友達も被害を受けることになることを覚悟しておけ」

 

「お前がそういうってことは相当なんだな。分かった。」

 

そう言い、スマホをトントンといじる。翔、朝早くにすまないが俺と一緒に登校してくれないかっと。これでいいよな?間違ってないよね?

 

あっ、翔がまだ登校してないとは限らないのかと思いながら少し心配していたがその心配は無用のようだった。

 

『分かった。お前の部屋は402号室だったよな。すぐ行く』

 

既読がすぐつきメッセージが返ってくる。

 

友達いなかったからこういうの新鮮だわー。少しはやる気持ちを抑えて葉山に向き直る。

 

「少しだったらくると思うから待ってていいか」

 

「あぁ、それだったらあの人も呼んでおかないと後で拗ねるからね、

 

 

おーーい、陽乃さーーん。出てきていいですよ」

 

「ひゃっはろー、比企谷くん。二十二日と3時間16分ぶりだねー」

 

えっ、なにこの人怖い。なんで俺と会って別れて、日にちと時間まで完全把握してんの。超怖い。え?まじのストーカーですか?

 

「のんのん!違うよ比企谷くん。前にも言ったけど比企谷君のいるところには常に私がいるんだよ?」

 

「やめろ!!妙に現実味を帯びた回答するんじゃねぇ!!もうちょっと加減を知れ雪ノ下さんは!」

 

「あははー、やっぱ比企谷くんはそうでなきゃねー。君もそう思うでしょ隼人」

 

「……比企谷は変わらないですからね。俺もそれを知って安心しましたよ。もし俺の知らない比企谷になっていたら少し残念に思ってでしょう」

 

「ふーん。君はそれでいいと思うんだね?」

 

「ああ。人に強要されて出来た人間なんて自分とは呼べないだろう?」

 

「隼人も少し変わったんだね。なーんかちょっと面白くなったけど、前より歪になったね」

 

「はぁ、俺は比企谷に色々と考えされされましたからね。比企谷は俺じゃねぇ周囲が変えたんだよとか言いそうですけど」

 

「お、おい」

 

なんだよこの雰囲気。蛇と獅子が睨んでるみたいなんだけど。こわっ。どっちの方が強いんだろ?因みに俺はどっちかっていうと蛇を押します。

 

どっちが蛇でどっちが獅子なのやら。

 

そんな変なことを考えてるとトントンと階段を降る音が聞こえてくる。

 

「よう、八幡。昨日の今日でどうした?」

 

そこにはこの場の救世主翔がやってきた。ナイスタイミング!!お前分かってるじゃねぇか!

 

こういう時持つべきものは友だよなって思う。あれ?俺ぼっちだったような………

 

「あ、雪ノ下さん。ふっ、こんな朝からどうした?まさか八幡と付き合ってるとかいわねぇよな?」

 

「あははー、わかるー龍園くん。比企谷君がお世話になった人にお礼参りしようって言ってねー」

 

「あん?八幡がテメェなんかと付き合うかよ。あいつが付き合うのはもうちょっと捻くれてて誰よりもカッコよくて優しい女じゃねぇと俺が許さねぇ。

 

おい八幡お前騙されてるぞ」

 

「いやいや、俺この人と付き合ってないからね?誤解だから。そして未来永劫付き合うことはないから」

 

うん。絶対ない。この人と付き合ったらめっちゃこき使われそうだし、束縛も強そう。うん彼女にしたくないランキング堂々たる一位だn「比企谷くん。それ以上考えたら生徒会長権限で君を退学にさせるからね?」

 

ま、まじこえぇ。無理。絶対ないから翔は勘違いするな。

 

「ははは、比企谷の周りはいつも騒がしいな。」

 

「あん?テメェ誰だ?」

 

「あっ、挨拶もせずにごめんね。俺は葉山隼人比企谷のーーーなぁ、比企谷俺とお前との関係ってなんだ?」

 

「う、うわぁ、それ雪ノ下さんに前言われたことあるけど答えたくねぇ……」

 

「はっ、面白そうなやつだけど俺には一歩劣るな」

 

「君はその割にはCクラスのようだけど?」

 

「なんでお前が俺の所属するクラスを知っている」

 

「……俺はただ学校生活を平穏に送りたいだけだよ」

 

「あ、それ俺も思うわ」

 

「八幡は絶対に平穏な日常なんか送れないと思うから安心しな」

 

「だから、それが安心できないんだっての」

 

いやまじで、平穏なんて二文字俺の生活の前には浮かびさえしない。最近は本当に。

 

「ははっ、比企谷君たち男同士で話すのもいいけど、私のことを忘れないでもらえるかな」

 

「そういやいたんだったな。"現"生徒会長の雪ノ下陽乃さん?」

 

「龍園君は活発だなー。うん。男はそう出なくっちゃね。見習わないとダメだよ?比企谷くんと隼人も」

 

 

「「いやいや男前すぎるから」」

 

よく見ると嫌なメンツだなこりゃ。



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第二十話やはり俺がデートとか誰であっても間違っている

「それでね、今日呼んだ理由はね。実は隼人はぜーんぜん関係ないの」

 

何この人いきなり何言ってんの?葉山かわいそっ。へへっざまあみろ。あ、俺も巻き込まれてるんでしたね。

 

「はい?じゃあなんで僕はここにいるんだい?」

 

(そーんなの自分で考えたら?」

 

「はっ、テメェはそこの爽やかイケメンとイチャコラしてろ。俺は八幡と行くからな」

 

「ちょっ、龍園くん。私がしてあげたこと忘れてないよね?」

 

「くっ、だからテメェは面倒なんだよ」

 

「ねー、隼人私って面倒かな?比企谷くんも」

 

「はは、面倒だと思うよ」

 

「100人中100人が面倒だと答えるでしょうね」

 

「テメェが面倒でなくて誰が面倒だと言えんだよ」

 

うん。ここにいる面子だけでも全員なんだから誰が答えてもこれだろう。面倒。わかるぞー。

 

「むぅ、この人達酷い!私のどこが面倒だって言うの!」

 

「何ってなぁ?」

 

葉山が同意を求めるようにこちらを向いてくる。

 

うん。わかるぞ葉山全部だよな。全部面倒だからこれと言って絞れないんだよな。

 

はぁ、これだから面倒なおn「比企谷くん。私もう怒ったよ!!もうぷんぷんだよ!!!私の怒りが有頂天!!むぅーむぅーーー!」

 

十中八九演技だ。うざいあざとい可愛い。あぁー、あ俺には戸塚がいる。こいうう時は戸塚のことを考えればいいんだ。

 

なんて簡単なことだろうか。戸塚のことを考えるだけで俺の心はカタルシス。天へ浄化していくー。

 

「もういい!君には今日一日付き合ってもらうことと休日にデートしてもらいます!!ちなみに拒否権はなし!断ったらわかるよね?」

 

うわぁ、目のハイライトが仕事してねぇ。ちゃんと仕事して、疲れてるかもだけど、そんな目してたら休日出勤のサラリーマンもドン引きだよっ!!

 

「はっ、テメェなんかに八幡とデートさせるかよ。お前がデートすんなら俺もついていくぜ」

 

「ははっ、面白そうだし俺もついていくよ。比企谷もいいよな?」

 

「よくねぇよ!!どこをどう見たら良いって事になるんだよ!テストの回答欄間違えて0点とった気分だよ!最悪だ。いや災厄だ!絶対いかn「比企谷くん?行かないわけにはいかないよ?」……すいません。行きます行かせていただきます」

 

だめだ。俺にこの魔王は倒せそうにない。後30回転生しても勝てそうにない。

 

どんな無理ゲーだよ。勝てるわけねぇよ。RPG最強じゃねぇか。

 

「でもー、うーん。私は1人で行きたいしー。むー。あ、そうだ!!1人ずつ何時間かに分けてデートしよう!!」

 

「な、何言ってまんだこいつ………誰かしめだせ」

 

「無理だよ比企谷。この人を倒せる人なんてこの世界に探しても数人いるかいないかだろう。……………諦めろ」

 

「俺は別に良いけどな。テメェが八幡とデートするってのは見過ごせねぇが。」

 

おいおい、間違ってるぞ。お前と俺もデートするって事になるからなそれ。こえぇよ。海老名さんがいたら鼻血吹いてぐふふって言ってるのが想像つくし、よかった海老名さんがこの学園にいなくてほんとよかった。

 

てか、デートしねぇからな?

 

「じゃあ、来週の土曜日にデートしよう!!ここにいる人たち全員で時間ごとに分けてね。それで良いよね」

 

「くっ、何故俺が比企谷と……」

 

「俺はかまわねぇぜ」

 

「いやいやいや、疑問ありまくりで俺は断固拒否したいんだが。」

 

「だめだよー比企谷くん。拒否したらどうなるか。分かってるよね?」

 

「もうそれ何度聞いたことか、どうせあれだろ友人関係ぶっ壊すとかだろ?残念だったな俺に友達は……………

 

ごめんいたわ。やっぱなし。行きます行かせていただきます。だから翔は睨まないでくれ」

 

翔がすごい睨んでくる。その顔まじで怖いからやめてくれ。

 

「は、ははっ、比企谷の周りは本当にきついな」

 

「だろ?分かってくれたか?」

 

「分かったけど、俺には無理な世界だね。できれば今後一切関わりたくない」

 

「俺もそうなんだけどな」

 

「と言うことで!!デート決まりました!土曜日は絶対開けておいてね?ねー比企谷くん。

 

 

 

生きてることが辛くなる環境って山ほどあるんだよ?」

 

「ひっ」

 

「おい、八幡ハッタリだよ。そんなのに騙されてんじゃねぇよ」

 

「およよ、怖い。怖いよ。行きますから。さっ、学校行こう。早く!早くいくぞてめぇら」

 

「なんだ比企谷。お前学校好きだったか?」

 

「早くいかねぇと次々変な事決めてきそうで怖いんだよ。行くぞ」

 

と耳打ちで言う。本当に怖いからな。今日でもう恐怖に達したわ。

 

これはもう呪怨の伽倻子レベル。

 

この人がエッジボイスで迫ってきたら相当怖いんじゃないか………とは心の火でも思いません。だから雪ノ下さんその目はやめて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、今デートに来てんだが、何この格好。

 

馬子に衣装とはよく言ったもので、俺はリア充が着るような、紺色のダメージジーンズと橙色のトレンチコートを着ていて、着ているとなんだかリア充に目覚めたような気がする。

 

さらに眼鏡をつけている。

 

これに関しては遊びだ。雪ノ下さんが眼鏡とか似合うんじゃないと言ってきて、翔がこいつは目が腐ってるがその他は抜群だからな。と言って、葉山は魂が抜けていた。大丈夫かよ葉山

 

眼鏡をつければさらにリア充感が増して、ついでにビジネスマンらしさが漂うようになった。

 

おー、俺がボッチやってるのがビジネスって感じがしてきてこれはこれで………すいません。俺がボッチやってるのは俺の性からでしたね。

 

そんなこんなで、今は樹木の下で待ち合わせているんだが、気が乗らん。てか最初は誰だったっけ。

 

えーっと、

 

 

「よう、八幡。やっぱそっちの方がかっこいいな」

 

「か、翔」

 

そこには俺と全く同じ服を着た翔がいた。あ、あれ?俺の目が腐ってるのかな。

 

 

腐ってるのはもともとでしたね。

 



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第二十一話彼女の独白

「はぁ、なんで俺とお前がデートしてんだろうな」

 

「あん?あの人が言い出した事だろ?俺は別にあいつとお前とがデートする時間が減らせればそれで良いんだしな」

 

うわぁ、こいつ超友達思い。優しいなぁ。それなら普段から他の人にも優しくしてればいいのに。いや、無理か。こいつにそれを求めるのは癪だしな

 

昔からこうだったし、別に何もいうことはないよな。翔は翔だ。ちょっと変なとこあるけどそれを除けばただのいい友達だ。

 

こうやってデートするようなことがない限りそんなことは考えず、適当に過ごしてたんだろうなーと考えると今日はいい日?になりそうだと思う。

 

「まぁ、いい機会だよな。俺とお前がこうやってデートだなんて」

 

「あぁ、そうだな。八幡誘ったら絶対こねぇし」

 

「いやいや、誘うことがあるのかよ」

 

「デートじゃなくてもな、もともとあまり話さなかったろ俺ら」

 

「そうだな、翔と出会った時は全くと言っていいほど喋らなかったな」

 

「八幡は良くも悪くも引くからな。だからこちら側が引っ張らないと釣り合いが取れねぇんだよ。」

 

「あ、なんかそれわかるかも。噛み合わない奴とか絶対いるよな」

 

「あぁ、それが俺らだったろ?」

 

そうだったかな。俺と翔は最初は仲良くなんてなかった。あったのだって偶然だし、それが縁と言えるものではなかったはずだからだ。

 

まぁ、そんな関係だったのが何を間違ったらこんな関係になってしまうのか。それは俺に聞いてみてもわからない。それこそ全くな。

 

だからあの出来事は良くも悪くも影響したってことだろう。

 

「まぁ、昔のことは関係ねぇよ。今を楽しもうぜって事で、あのカフェ入ろうぜ」

 

「ああ。……………ああ?!」

 

そのカフェはカップル限定のカフェだった。はぁ?いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。

 

首をこれでもかとばかりにぶんぶんぶん振る。

 

「なんだ?何か不都合でもあんのか?」

 

「え?お前はいいのかよ?」

 

ちょっと鳥肌が立ちながら翔の方を見る、多分俺の首はギシギシ言ってる事だろう。

 

こ、こいつ自分が何言ってるか分かってんのか?

 

「あぁ、カップル限定ってとこか?別にいいだろLGBTの問題だってあるんだし。俺は気にしねぇぞ」

 

え、えぇ。何言ってるか分かってないだろこいつ。

 

無理だよ、無理無理無理。なんで男子とはいらねぇといけねぇんだよ。女子ならともかく………女子でもないな。

 

うーん。そう考えたら性別っていう概念を無視すればいけるのか?

 

まぁ、今後こいつとの付き合いにヒビが入ってもいけねぇし。

 

「はぁ、まぁ分かったよ。入ればいいんだろ入れば」

 

「あぁ、だから入るぞ」

 

カップル限定と書いているからにはそれを徹底しているのか全員が男女で座っている。

 

は、はぇええええええ。

 

絶対場違いだろ帰るぞと視線で送るが、へぇーとばかりに視線を巡らせている。

 

は、はぁ?こいつなんです店の中感心したように見てんだ?帰るぞと念を送り続ける。

 

ようやく気づいたのかこちらに向く。

 

お、おうやっと気づいたか、さぁかえるぞと言おうとすると…………

 

「何名さm…………………あの、ここカップル限定って書いてあるの読みました?」

 

「おう、読んだぜ?だから俺らはカップルだが?」

 

「は、はぁ?あ、すみません。で、でもですね。ここはカップル限定なのであって……「あ?なんだテメェ?」

 

ひっ、すみません。ご、ご案内しますね。」

 

うわぁー定員さん怖がってるよ。てか俺らカップルじゃねぇからな?翔の表情変わらなすぎて怖いんだが。

 

「こ、こちらの席でよろしいでしょうか」

 

可哀想すぎるんだけどこの店員。めっちゃビクビクしてるよ。ほら足とか震えてる。立ってるのがやっとって感じだ。

 

俺がすみませんとばかりに頭を下げるとキッと睨みつけてくる。お前のせいだぞと言ってる気がしたが、瞬時に目の色を変えてーーー

 

 

「あ、あのすみません。ーーーーあっ」

 

 

こちらに向けて倒れてくる。なんだなんだ?と思っていると。しゅっと俺のポケットの中に紙を入れる。

 

「これ私の連絡先です。今日の夜お電話下さいね」

 

「はぁ?」

 

「あん?どうした?おい店員転げてんじゃねぇよ。躾はちゃんとされてんだろ」

 

「は、はい。」

 

 

そして俺の耳に、では待ってますねーと耳打ちしてホールのほうに戻っていく。

 

え、なんだったの?

 

俺のポケットをがさがさと探ってみると紙が見つかる。

 

そこには手書きのメールアドレスと電話番号が書いており、なんだったのかと疑問ばかり浮かんでくる。

 

そういえば今日は視線が痛くないな。そこが関係しているのか?

 

まあ、今日は翔と葉山と雪ノ下さんとのデートに集中しよう。気を抜くと倒れそうだしな。

 

「はぁーい。お待たせしましたぁ。カップルジュースでーす。」

 

なんか妙に甘ったるい声でジュースを持ってくる。あれ?俺らなんなんだっけ。もう八幡訳がわからないよ。

 

「さぁ、八幡飲むぞ」

 

 

そこからの記憶はない。うん。気を失ってよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうー比企谷くん?隼人とのデートもちゃんとしなきゃ」

 

「いやいや、翔だけで充分ですよ。俺には荷が重すぎます。既に死にそうな俺にとってはね」

 

ほんと死にそうだった。世の中のカップルとはなんなのか。痛いほど知らされた。

 

カップルってなんなんだろう

 

 

「だめだよー悦に浸ってちゃー日が暮れちゃう。早く私とのデートもしなきゃ」

 

「わっ」

 

俺が放心してると、雪ノ下さんが俺の手を取って歩き出す。早めにスタスタと歩いて行くため、俺が後から引っ張られる形となり非常に歩きづらい。

 

雪ノ下さんはこうでないとな。

 

「はぁ、自分で歩けますからいいですよ」

 

「えー?そう?でも私はこっちのほうがいいなぁ」

 

「ねぇ、雪ノ下さ「陽乃」……………雪ノ下「陽乃!」……ゆき「陽乃!!!」……………」

 

 

「雪ノ下さんじゃなくて陽乃って呼んでほしいな」

 

夕に照らされたその顔は少し悲しげで儚かったが、実に美しかった。

 

それで、つい見惚れてしまい、答えるタイミングを失ってしまう。どう答えればいいのかも忘れてしまった。

 

「陽乃…………さん」

 

「陽乃!!!」

 

むぅーと言わんばかりにいじけた様子で張り合ってくる。はぁ、あんた俺より年上だろいいのかそれで。

 

「うん。私は比企谷君より年上だよ。でもね、私にとっては弟みたいな存在なの。」

 

「弟?俺がですか?」

 

「そう弟。とっても手のかかる弟。隼人も昔はそう思ってたんだけど、最近は可愛げがなくて弟だとは思えないんだ。」

 

「それは陽乃………さんが思ってるだけで、あいつは姉だと思ってるんじゃないですか?」

 

「ううん。隼人にはたくさんひどいことしちゃったしそうは思ってないはずだよ。それよりも……………」

 

「ちょっ、……………」

 

そう言いながら、俺のほうに倒れかかってくる。

 

俺の胸に顔を埋めてくる。

 

それは普段の陽乃さんとは異なって見えて、どこか違った。

 

「私ね、結構我慢したと思ってるんだ。妹のため妹のためって、全部やってきた。」

 

「はい。でもそれは間違いだったですね」

 

そう。間違い。陽乃さんが見せてきた、完璧な姿の影響かそうでないかは知らないが、雪ノ下の人格構成の大半は陽乃さんのコピーだろう。

 

だから、陽乃さんと俺はそれを間違いだと言った。

 

「でも、そんな考えこそが間違ってたのかもしれない。私がこの前雪乃ちゃんを見た時、なんて思ったと思う?」

 

「うーん。歪とかですか?」

 

「ぶっぶー。第不正解だよ。君にはまだそう見えるのかもしれないけど、あの子はもう私の影を追ってない。」

 

「そうですね。それだけは断言して言えることだと思います」

 

「私はあの時思ったの。私なんかより遥かに成長してるって」

 

「ふっ、まぁ色々ありましたからね」

 

「あは、なんで比企谷くんが偉そうなの」

 

こいつめと、俺をデコピンしてくる。地味に痛い。力こめやがって。

 

それにしても、苦しかったのか。自分の行動に意味がなかったかもしれないと、そう思ってるはずだ。

 

雪ノ下は成長した。陽乃さんより成長したかどうかはわからないが、成長した。

 

多分雪ノ下自身が陽乃さんの影を追っているということに気づいたのだろう。

 

去年と一昨年は色々あった。

 

そこで成長した雪ノ下は以前より遥かに逞しく見えるはずだ。

 

それに対して、陽乃さんは自分が動いたことで、もうちょっとうまくやれたのではないかと、そう思ったのだろう。

 

だから、俺が在すべき行動とはなんなのか、それくらい分かってるはずだろ。比企谷八幡。

 

「無駄なんかじゃないですよ。貴方はちゃんと役目を終えました。なら、今すべきことなんて貴方なら簡単でしょう」

 

「うっ…………ひくっ………どうすればいいのかな、どうすれば許してくれるかな」

 

気づけば泣いていて、その体はボロボロになっているように見えた。

 

傷ついて傷つきすぎて、その先にあるのが破滅ならどんなに辛いことだろう。だから、慰めなんていらないはずだ。

 

「ちゃんと正直に謝りにいきましょう。陽乃さんと俺で」

 

「……そんなことで許してくれるかな」

 

俺の胸に顔を埋めて泣いている。この人も吐き出したかったのだろう。だからこんなデートなんて仕向けて場を作った。そこまでするのはこの人しかいないと思うが、それでも行動したのだから。それに答えるのが筋だ。

 

「あいつなら笑って洗い流してくれますよ。もう、姉さんったら、とか言ってな。」

 

「ふふっ、似てなーい。」

 

「だから大丈夫です。逆にあいつが許さないなんてあり得ないですよ。俺がリア充になるくらいあり得ないです。」

 

「あはは。そうかもね。でも。私は君のこと好きだよ。」

 

「俺は陽乃みたいな人はあまり好きじゃないんだけどな」

 

「ぶぅー、って、あれ?今陽乃って……」

 

「さぁ、そろそろ帰るぞ。今日ももう暗いしな」

 

「ふふっ、初めて呼び捨てのしかも名前で呼んでくれたね。ねっ、私も八幡って呼んでいいかな?」

 

「勝手にしろ。明日雪ノ下に謝るんだろ?さっさと帰って寝るぞ俺は」

 

「俺はって。そこは私も含まれてるんじゃないのー?」

 

つんつんと頬を突っついてくる。ええい恥ずかしいし、可愛いからやめろ。こっちだって結構勇気振り絞ってやってんだぞ?気づいてるだろこの人。

 

「今日はありがとね」

 

 

「それはいいかr……………」

 

頬に何かが当たる。それは少し暖かくて、湿っぽくて、柔らかくて、束の間の間何が起こったのかわからなかった。ただこれだけは分かった。この人は変わらずにいるのだろうこれから先も。ずっと。

 

そこに俺がいるのかどうかはわからないが、この人なら無理やり詰め込んできそうだなと少し呆れていた。

 

ただし、俺はこの日のことを忘れないだろう。いい意味でも、悪い意味でも、絶対に。



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第二十二話生徒会長

「ふぃー、なんだかなぁ。俺ぼっちじゃないような気がするんだよな。気のせいだよな。だって俺はぼっち!!ぼっちは俺の心の中で生きる!!」

 

「なにを気持ちの悪いことを言っているのかしら。ヒキガエルくん?ゲコゲコ泣いてないでどいてもらえるかしら」

 

「はぁ、おいお前さ。ついさっきあったばっかりなのにそれはないんじゃねぇの?」

 

本当まじなんなのこいつ。俺が自分のことをボッチだということのなにが悪いんだよ!俺はぼっち!いつだってぼっちだ!だからお前は退けよ。

 

「はぁ、またゲコゲコゲコゲコと、なんなの一体。私は本を読んでいるのだけれど。」

 

「俺だって本を読んでるんだ。横からギャーギャー叫ばないでくれ迷惑だ」

 

「ふん。貴方は私が叫んでいるように聞こえるの?目だけじゃなく耳も悪いなんてね。精神修養の旅にでも出れば?」

 

「でねぇよ!余計なお世話だ。」

 

「はぁ、まぁいいわ。私はいくからまたゲコゲコと鳴かないでね?」

 

「だからカエルじゃねぇっての!」

 

「じゃ」

 

「はぁ、なんだか出会った当初の雪ノ下を見ている気分だわ」

 

そう、雪ノ下雪乃も昔はあんな感じだったのだ。もうちょっと頭いい感じだけど、雰囲気が似ている。

 

何かを追いかけて、その域を出ることがない枠にはめられた一人。

 

そこからはみ出ないようにと気をつけるうちに誰かの背中を追っていることに気づかない。

 

まぁ、ただの昔話だな。

 

さて、俺も行くとするか。

 

あれ?あいつ櫛田じゃないか?どうしてこんなところに。絶対勉強とか………しそうだな。ごめんあいつならするわ。テストとかでも高得点取らないと気が済まないタイプ

 

「ん?あっ!八幡くんだ〜!やっはろー」

 

こちらにとててててと寄ってくる。可愛いなこいつ。頭でも撫でてやろう

 

「ひゃっ、は、八幡くんくすぐったいよぉ〜」

 

ナデナデ

 

「「んー?!」」

 

あれ?なんか怒ってる奴が見えるんだが。しかも馬鹿そう。いかにも俺学校生活を楽しみたいからとか言って勉強しないタイプ。

 

うわぁ、すごいなこいつ。勉強したくなさそうなのにこいつ目的で誘ったってわけか?これもストレスになってそうだし、後で聞きに行ってやろう。

 

「あぁー、俺はお邪魔みたいだし退散するわ。頑張れよ櫛田。後綾小路も。堀北は知らん」

 

「私も貴方のことなんて知らないわ」

 

「おいおい、堀北、そう言って比企谷はいい奴だぞ?目は腐ってるが」

 

「それだけでプラスをマイナスに覆しているじゃない。絶対に無理よ。なんであの男がBで私がDなのか意味がわからないもの」

 

う、うわぁ、あいつ好き放題言ってるなー。俺のいないとこでやってくれよそういうのは。

 

結構心にくる。まじでやめてくれ。

 

「はぁ、まぁ、俺は帰るわ。てことで」

 

その場をさる。堀北とはあまり関わりたくない。過去の自分を見ているようで心底嫌になる。そんな自分を感じるのが嫌で、俺は関わりたくないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、生徒会というか陽乃に呼ばれてたんだった。

 

忘れてたてへぺろとか言ったら殴られ、…じゃないな。殴られるどころか一生モンのトラウマを作られるまである。とんだ魔王様だな。

 

ということで、先週の出来事は忘れよう。うん。俺はなにもなかった。翔のやつとデートしたり、カップル限定のカフェに入ったり、陽乃さんの内情聞いたり、キスされたりなんてされていない。俺は無実だ。なにもしてないしされてない。

 

ということだから、なにもなかったでいいんだよね?

 

「いいわけないじゃない。貴方は生徒会の一員だよ?私がそんなの見逃すわけないじゃない。比企谷くん以外の人ならともかく」

 

「そ、そうですか。知らないけど陽乃は、もうちょっと謹もうな?」

 

「むぅー、私はいつも謹んでいるつもりだよ?八幡が勝手にそう言ってるだけじゃない?」

 

「この、お・れ・はいつもそれに振り回されてるの!陽乃の妹だってそうだぞ?」

 

そうやって、陽乃の頭をグリグリとする。痛い痛いと頭を抑えるがなおもグリグリとする。

 

ちょっと涙目になっていて可愛い。こんな表情もできるじゃねぇか、魔王様?

 

「むぅー、八幡が意地悪してきまーす。」

 

「ふっ、陽乃がこんな姿見せるとはな。なかなかの大物だな?」

 

「大物だなんて滅相もないですよ。堀北副会長様」

 

「副会長と呼ぶな。俺の名は堀北だ。それだけでいい」

 

「うす。堀北さん」

 

「いやー、堀北くんとも早速仲良くなってくれて嬉しいよ。ねー、堀北くん。次の生徒会長の件について八幡に話してもいいかな?」

 

「…………随分と信頼してるんだな。こいつになら問題なと思うぞ。」

 

「やーっぱ、人の能力見るのにたけてるよねぇ堀北くんは。堀北くんの推しは誰だっけ?」

 

「推しなとくだらない。俺が選ぶのは南雲くらいしかいないが、あいつは少々危険とも見える」

 

「堅物の考え方だよねー。もうちょっと視野を広げれないの?ほら鬼龍院さんとかさ」

 

「あいつは論外だ。話にならん。そんなことお前だって分かってるだろ。」

 

「じゃあさ。八幡とかどう?」

 

「は?」

 

は?俺が生徒会長?なに言ってるんだ陽乃さん。俺は生徒会長なんて向いてないぞ?というかぼっち至上主義の教室を作り上げるまである。

 

「八幡が生徒会長の学校見てみたいなー。」

 

「冗談が過ぎますよ陽乃さん」

 

「べーつに冗談じゃないよ。ね、堀北くん」

 

「うむ。こいつが生徒会長か…………陽乃よりも強いのか?こいつは」

 

「あららー、悔しいの?そっかー、まだあれを根に持ってるの?そんなんじゃ妹に顔向けできないよ」

 

「お前に言われるまでもない」

 

「いや、あんたが言えることじゃないだろ」

 

「あははー、それもそうだね。でも私は比企谷君を推すかなー君が生徒会長になった学校は楽しそうだし」

 

「よしてくださいよ。俺はそゆなた「うん。いいかもしれないな。南雲よりかは安心できるし、こいつの思考力はそれに値する。歓迎するよ。」……は?」

 

「やったー!歓迎されちゃったよ、八幡くん。よかったねー。君生徒会長なれるかもよ?」

 

「いやいや、おかしいだろ。なんで俺が生徒会長なんかに。それに俺雑務として入ったんですよ?そんなこ「お前の能力を見て判断したことだ。お前の異存なんて聞いていない。生徒会長の仕事をいまからでもおぼえてもらうぞ?」

 

「はぁ?陽乃さんもなんとか言ってくださいよ」

 

いや、まじでこのまま話が進んだらいい方向に傾かない。やばいぞ。生徒会長なんてやるものか!それに一年で生徒会長………いや、いたな一色もそうだったわ。

 

やべぇ、冷や汗かいてきたー。絶対無理だからな?生徒会長とかなってもすること分からないし。

 

 

「え?私はもう八幡を生徒会長にするつもりだったよ?それこそ君がこの学校に来た時から」

 

「はぁ。もう、なんでもなれ。俺は石石になる。そして修行僧になる。なにも考えない。なにも考えない俺こそ真の正義」

 

「うわぁー現実逃避しちゃったよ。まぁでも、もう決まっちゃったから情報は各クラスに伝達してるけどね。

 

次期生徒会長はなんと一年B組の比企谷八幡。

 

彼は目が腐ってて、性格もひねくれてるけど、実はかっこよくて、優しくて、とっても強いんだよって流しちゃった♩」

 

「チーン」

 

「はぁ、陽乃は少しやりすぎだ。俺は比企谷が生徒会長になることには全面的に同意するが、本人の了承なしなど鬼のすることだぞ」

 

いや、鬼というか魔王ですよこの人は。世界の魔王です。絶対世界征服するとか言い出しますよ。

 

「ぶぅー鬼ってなによー私は八幡くんが断ってしないっていうだろうから無理やり押し付けただけだよ?」

 

「いやどっからどう見ても鬼だろ。なに言ってんの陽乃」

 

「ふふふー。やっぱり陽乃って呼んでくれるのは嬉しいな〜♫」

 

そう言いながらほっぺをすりすりしてくる。ええい鬱陶しい可愛い、鬱陶しい可愛い。

 

「はぁ、今日も学校は平和だなー。」

 

と、俺は現実逃避するのだった。

 

 

コンコン

 

「あのすみません。面接に来たんですが、よろしいでしょうか?」

 

「どうぞ、入ってこい」

 

「失礼しまーs………あれ?比企谷くん?どうしてここにいるの?」

 

「いや、俺は「八幡はねー、雑務そして次期生徒会長なんだよ!」

 

おい、俺はまだやるって決まったわけじゃないぞ?」

 

「もう決まったようなものだよー」

 

「ええええええええええ?!そうなんですか?比企谷くんが?それは嬉しいやら羨ましいやら」

 

「………で、ご用件はなんだ?」

 

「あ、あの、私生徒会に入りたいと思って」

 

「うむ。陽乃。どうだ?」

 

「ふーん。あまり見込めなさそうねー。Bクラスの事情は八幡から大まかだけど聞いてるから、そこまで期待できないんだけど……」

 

「そ、そうですか。はっきり言ってもらえてよかったです。ではしつれ「でもいいよ!面白そうだから入れてあげる!!でも、八幡と同じ雑務ね」

 

 

「は?はあああああ?!だからなに言ってんだよ陽乃さん。」

 

「あら、八幡は面白そうじゃない?これから先の生徒会のことを考えれば私が入れておくことに大分意味があると思うんだよねー」

 

「はぁ。どうせ拒否権はないんでしょう。俺はもう諦めましたよ」

 

「…………ふむ。実権は俺にはない。最終決定は陽乃だから、お前が意味があると言ったら意味があるんだろう。分かった。生徒会に歓迎しよう一之瀬」

 

「あれ?なんで私の名前知って…………って?いいんですか?!私が生徒会に入っても」

 

「勿論いいよ。これからが楽しくなりそうだね?八幡♫」

 

「はぁ」

 

溜息をつかざるを得ない。というかこの人どこまで見えてるんだ?そこが見えない。でも、それに付き合うのもいいかなと思う俺がいる。

 



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第二十三話高度育成高等学校の生徒会

「ねぇ、比企谷くん。私たちなにをすればいいのかな?」

 

「俺でなく、陽乃に聞けよ。俺は何にもしら「のんのんだよ!八幡。君は今日次期生徒会長!そして、庶務長なんだから!」

 

「はぁ?生徒会長の件にも依存があるってのに、なんだよその役職は!!」

 

いやいや、次期生徒会長の件についてもわけわからん状態だが、しょむちょうにかんしてもわけわからんぞ?なに言ってんだこいつ。一発殴っていいかな?いや、殴ったら殴ったで面倒そうだな。

 

「八幡は分かってないねー。こりゃもうちょっと重い役職が必要かな?」

 

「い、いや、もうやめて俺のライフはすでにゼロですよ……」

 

「あははー、比企谷くんも苦労してたんだね…」

 

「ばっかお前この人と付き合ってたら苦労しかしねぇよ。誰だよこの人産んだやつ。あっ、大魔王さまでしたねすみません」

 

 

本当誰が産んだのかなぁ。いや、俺あったことあったわ。てか気に入られてたわ。はぁー、男は辛い。

 

「比企谷くん。思っていることと喋っていることが逆だよ?」

 

「たうわ!ま、まじか、陽乃ご、ごめ「八幡そーんな風に思ってたんだね〜お姉さんがっかりだよー。これはもう…………」

 

 

「ちょっ、なにする気で……………」

 

 

「じゃじゃーん!!!八幡今日から副会長ですっ!!!異論反論抗議質問口答えついでに私を蔑ろにするのをやめてもらいます!!」

 

「はぁ。まじでこいつなに言ってんの。誰かー通訳頼むー」

 

あぁー外国人とかネイティブだとまじなに言ってるかわからん。俺の勉強不足かな?てか、勉強したらこの人の言ってることわかるようになるかな?いやならん断言できるな。

 

「ふっ、陽乃は本当に君のことが大好きなんだな」

 

「え、ち、ちょっと堀北くんやめてよ〜。そ、そんなんじゃないからね//」

 

「ほう、まぁ、お前がそう決めるならもうなにも言わん。だが、これだけは聞いておくぞ。南雲はどうするんだ?」

 

「はぁ?南雲?あいつはもういいでしょ、解任で」

 

いや超あっさりー。そして南雲さん誰だか知らないけどご愁傷様です。

 

「はぁ、あいつを解任させたらなにかしらの手段で攻撃してくるぞ?それをお前は………防ぎ切れるな。なぜ防ぎ切れないと思ったんだ俺は」

 

「ねー。簡単でしょ?まぁ、即解任ってのは癪だし、うーん。じゃあ3人副会長で!!」

 

「ねぇ、この人まじなに言ってんの?」

 

「やはり陽乃はいつも面白い回答を出すな。大丈夫なはずだぞ。まぁ、ルールを変えるということはポイントがいるから、恐らく500万pptかかるがな。」

 

「即払いでいい?後で書類出しておくね」

 

「分かった。」

 

ねぇなんで500万ポイントも即決で出せるの?この人らの住む次元が違うような………そう思ってる間は生徒会長なんて無理なので拒否してもいいでしょうか?ダメ?……そうですか。

 

「なぁ、一之瀬これでも生徒会入るのか?」

 

この人らの話はついていけない。突飛な事ばかり思いつくから、それに付き合わされてきた堀北さんはいつも苦労してんだろうな。それはもう慣れるくらい

 

もしかして、俺が副会長になったらもっと付き合わされるとかないよな?な?俺副会長になることなんて絶対認めないからな?

 

「うん。入るよ!楽しそうだよね!わぁーここで三年間過ごすのかー」

 

そう言いながら室内をぐるっと見回す。

 

うわー浸ってるよ。この人らは大事な場所なんて思ってないと思うけどな。俺はどうしたらいいんだろう。

 

漠然と考えるか、これからについて。

 

はぁ、暗い未来しか待ってないような………あれ?俺生徒会長になるんだよな?ってことはやりたい放題?もしかして俺最強?

 

ふ、ふふっ、ふふふふふっ。これはいいこと思い付いたぞ。

 

生徒会長になる日が楽しみだ。普通の学校生活なんて糞食らえだしな。めちゃめちゃになった学校を陽乃に見せてやる。後悔するなよ?

 

「比企谷くんちょっと怖いよ?あの人たちと同じような雰囲気を纏ってるよ?」

 

「あ?俺は常に正常だぞ?なに言ってんだ?」

 

俺の口癖になりそうだな。なに言ってんのお前。うん。最近はよく使うな。こういう学校だからなんだろうな。普通に生活してたらこんなことにはならなかったはずだし。

 

「そ、それならいいんだけどね。大変だね比企谷くんは」

 

「おう。陽乃には勝手に色々と決められるしな。まだ慣れてないけど。」

 

「ふふっ、名前呼びなんだね。仲良さそうだなー」

 

「うんっ、八幡くんとは仲良しだよ〜」

 

「ちょっ陽乃っ」

 

不意に抱きついてくる。そういうのは好きな人にやれ。めちゃくちゃドギマギしちゃうだろうが。

 

少し頬を赤らめながらも離せと言う。

 

「い・や・だよー。八幡が私に抱きついてくれるまで話さないもんっ」

 

いや、もんって。あれ?こんな可愛かったっけ陽乃って。昔はもっと魔王様みたいな人だったようなーー、いや今もだな。この人は魔王だ。間違いなくな。

 

しょうがないな。

 

「抱きついてやるから離せよ」

 

「ええー、そんなこと言って抱きついてくれなんk……ガバッ」

 

「あ、あわわわわわ。私の目の前で抱きついちゃってるよぅ///」

 

「ほう、こんな陽乃は初めて見るな。」

 

一之瀬はあわあわ言って顔を染めてるし、堀北会長はほうと感心めいた顔でこちらをみている。

 

当の陽乃はと言うと

 

「ぽー////」

 

すっごい顔を染めてるけどどうしたんだ?はぁ、ちょっとからかいすぎたかな?まぁ日頃の仕返しといえばいいだろう。やられてばっかじゃいられないもんね!!

 

「あははー、ほ、本当に抱きついてくれるとは思わなかったなー。」

 

「また要望があれば抱きついてあげますよ」

 

耳元で囁くように言う。ふっ、完璧だ。俺史上耳元で囁かれた時の反応は決まってる。

 

『うわー、今なんかぞわぞわってしたー。やめてくれないそういうの』

 

完全拒否の白目アンド一生関わってこないプレミヤがつく。

 

そうしてくれると…………あれ?

 

 

「うん///その時はお願い。あはー、なんかこの部屋暑いねー//暖房効きすぎなんじゃない?」

 

「暖房なんてこの時期にはつけないはずだがな。やはり比企谷は面白い。こんなようのみたことないぞ。写真撮っておこう。」

 

「あはー、私も誰かと付き合ったらあんなことするのかな///」

 

一之瀬ぽしょぽしょ言ってるが、お前恋愛耐久なさすぎだろ。そして、陽乃さんはいつ引いてくれるの?俺待ってるんだけど。

 

「えっ?!暖房効いてないの?あははー、私の勘違いだったかな。今日はやたら暑いなぁー」

 

パシャパシャとカメラの音が聞こえる。いや、堀北さんまじで撮ってんのかよ。後でそれ寄越せ。俺がからかうときに使ってやる。

 

その音を聞いてか、一之瀬がビクッと反応する。

 

「あっ!そうだ!今日を記念してみんなで写真撮りましょうよ!写真」

 

「え〜なんの記念?」

 

陽乃さんは漸く熱が覚めたのかつまらなそうな顔してえーと呟く。

 

「写真などくだらん。お前らで勝手に撮ってろ。その間俺は陽乃の撮った写真を鑑賞している」

 

「堀北さんもですよ!記念は…………うーーん、記念は………」

 

「八幡くん副会長記念日ってのはどう?」

 

「あっ、それいいですね!それで行きましょう!じゃっ、撮りますよー」

 

と言いながら、人をこっちこっちと引っ張っていく。こ、こいつ上級生相手に物怖じしないなんて………できるっ!?

 

そして正面に俺と陽乃さんその両脇に一之瀬と堀北さんの

 

堀北   一之瀬

  陽乃八幡

 

と言った配列になった。

 

「ちょっ、勝手にとら………パシャ」

 

その写真は一生の宝物となり、八幡の部屋に飾られることとなる。

 

これが、高度育成高等学校の生徒会の、本当の始まりと言えるのだろう。



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第二十四話彼女お借りします(仮)

「それじゃあ八幡。全校生徒へのスピーチをしてもらうよぅ?」

 

「はぁ?俺がボッチだってこと知ってる?」

 

「えっ?比企谷くんぼっちだったの?」

 

「比企谷がボッチなどあり得んだろう。陽乃と話せている時点でぼっちという可能性は失せた」

 

いやいや、俺ぼっちだからね?ぼっちなめんなよ?クラス内でのグループ然り、体育のペア作り然りその輪の中にいつも入っていないのが俺ことぼっちだ。

 

そんな俺がスピーチだと?引かれるに決まってんだろうが!そんなことは絶対しない。なんと言われてもだ。ぼっちは人前に立つことを嫌う。晒し上げられるのはもっと嫌いだ。

 

「いやいや、俺はボッチですよ」

 

「えー。比企谷くんぼっちだったんだ。へぇー私が友達になってあげるよ!」

 

「八幡は友達いるよね〜。ほらあの龍園くんとかそうでしょ?」

 

「あいつは親友だ。友達ではない」

 

「いや、それまったく同じだと思うんだけど」

 

いや、親友と友達は位が違う。親友の方が高い。だから、親友と友達は別枠……なはずだ。

 

「とにかく、生徒会に入った以上、生徒総会で、一言添えて発表してもらいます。これに関してはもう決まってることなのです。」

 

「はぁ。まぁ、いいよ。陽乃さんの好きにしてください。俺は俺のやり方でやらせてもらいますんで」

 

「比企谷くんどんなスピーチするんだろうな〜」

 

「比企谷がスピーチだと!?そんなの大爆笑するような内容に決まっているだろう?」

 

「いや、さりげなくdisるのやめてもらえますか?俺だってやりたくないんですから」

 

「まっ、よろしくねー。」

 

「はぁ。」

 

やはり俺の生徒会活動は間違っている。そもそも俺生徒会なんて入りたくなかったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、あなたはなんでいるんですか?というか、休日でしょう?貴方は休日は寝て過ごすか、酒を飲み明かすかの二択でしょうが。」

 

「ひーどーい。八幡くんそんなふうに考えてたんだ〜。私は八幡くんが疲れているだろうから労いに来てるんだよ?」

 

何故か俺の部屋に居座ってる先生と…………

 

「お前はこなくていいんだぞ?てかなんできた」

 

「酷いなー。私比企谷くんと今後について話そうと思ってきたのにそれはないよー」

 

一之瀬。いやまじでなんで来てんの?まぁ先生はたまに俺の部屋で仕事とかやっているから分からなくもないけれども。でも一之瀬は今日初めてだろう?なんで来たのか聞くのが筋じゃないのか?それとも俺が間違ってる?

 

「ねぇ、一之瀬さんは八幡くんとお友達?」

 

「友達ですよ?」

 

「え?友達?誰が?」

 

「むぅー」

 

え?俺に友達とか、いるっけ?龍園は親友だし、櫛田は付き纏ってくるだけだし、先生は先生だし、陽乃はなんだ?お姉さん?だし、葉山は赤の他人だし、坂柳は俺をおもちゃとしか見てないし、あれ?俺の人間関係めちゃくちゃじゃね?いつからこうなった?

 

ともかく俺に友達はいない。ぼっちはぼっちを貫くのだ。ぼっち万歳!

 

「俺はぼっちですよ。それ以上でもそれ以下でもありません。それよりもなんでここにいるんですか。それだけが知りたいです」

 

「あぁ、今日は私たちとお出かけしてもらうよ。最近八幡くん付き合ってくれないんだもん」

 

「私は話しに来ただけだけど……」

 

「おう、なら帰った方がいいんじゃないか?」

 

うん。絶対帰った方がいい。むしろ帰れ。回れ右して帰れ。そして俺は寝る。一生寝る。

 

「うーーん。私も星乃宮先生についていくかな。だから、帰らないよ?」

 

「はぁ。で、俺は今日何をすればいいんですか?」

 

「ふふふっ、その言葉を待っていたよ!!今日は一日私の彼氏になって貰います!!拒否権はなし!ついでに給料はあり!1時間15000ポイントだよっ!」

 

「はぁあ?あれですか?今巷で有名なレンタル彼女ってやつですか?やだよ。なんでだよ」

 

「拒否権はなし!!だから、一之瀬さんはご退場願います」

 

「む、むむ。星乃宮先生が生徒とただならぬ関係だって言いふらしますよ?」

 

「ふふん。言いふらして見なさい。別にいいのよぉ?本当に付き合っちゃっても、ね?八幡くん?」

 

「いや、付き合わねぇし。」

 

こんな美人教師と付き合うくらいなら、もうちょっと別の可愛い…………なんか寒気が。

 

とにかく、こんな男侍らせるのが日課みたいな教師と付き合うなんてあり得ない

 

「ふーん。八幡くんは、そうなんだねー。でも、一之瀬さんには関係ないよね。八幡くん生徒会入ってるしなぁ〜そういうところはちゃんとルールごと変えてくれるしなぁ」

 

「変えねぇよ。こえぇ。陽乃が当然の如くルール変えてたの見るとなんとも言えねぇのがほんと怖い」

 

「でしょ〜。ね、一之瀬さん?分かったよね?今日は譲って?」

 

「ぐ、ぐぬぬ〜。わ、私だってひ、比企谷くんと付き合えるもん!」

 

「はぁ。お前何言ってるのか分かってんのか?俺だぞ?俺。そんなくだらない挑発は無視しろ無視」

 

「わ、わわ。私も今日比企谷くんをか、彼氏にします!1時間10000ポイントで!」

 

「はぁ、やめとけって言ってんのに」

 

「ふふん。じゃあ決まりだね!一之瀬さんは午後遅くから。私は午後から。でいいよね?」

 

「もういいよ。それでいいから。着替えるからあっち行っててくれない?」

 

「ふふふー。八幡くんの今日の服はじじゃーんこれだぁ!」

 

「そ、それは!?」

 

そう、それはあの日来た服だった。な、なんでこの先生があの日来た服を知って………

 

「はーい、問題です、なんであの日来た服を知ってるでしょうか〜ヒント電話番号」

 

「はっ………」

 

も、もしかしてあの店員は、ま、ま、ま、まさかこの人本人だったってことか?あれ?でもめっちゃ緊張してたような……

 

「ぶっぶー。あの日電話番号を聞いたのは別人だけど、あれは私の友達でねー。たまにいくんだよねあのカフェ。

 

あの子はね七海真美って言ってねー、確か二年生だったかなー。あそこで権利買ってバイトしてるんだよー」

 

ああ、なんか、櫛田みたいなやつだったよな。ガクガク震える演技をしてたような。ちょっと胡散臭い奴。

 

あの日夜電話したのはあいつだったのか。

 

「あの先生。バイトする権利って何ポイントで買えるんですか?」

 

「えーっと、三十万ポイントだったかな。よく買えたよねーあの子。あ、あれでねあの子結構裏表ある性格で結構面白いんだよ?」

 

「知ってますよ。」

 

「へぇー、なんの話ししてるんですか?」

 

一之瀬が私興味ありますとばかりに話に入ってくる。

 

「八幡くんの好きな人の話。八幡くんはねーこう見えて面食いだから可愛い子が好きなんだよ〜一之瀬さんとか」

 

「わ、私は可愛くなんてないですよ。ね、ねぇ比企谷くん」

 

「ふ、お前が可愛くなくて誰が可愛いっていうんだ?知りたいな」

 

「は、はぅー。ち、違うよ。私じゃなくて陽乃さんとかにいいなよそういうのは」

 

「陽乃?どうして陽乃が出てくるんだ?」

 

「も、もうなんでもいいから。私は先に出てるね。ほら、星乃宮先生も」

 

「えぇー、分かったよ一之瀬さん。八幡くん。今日あの子にも会うからね?」

 

「は、はぁ?何……ってもういないし。早すぎないか。」

 

そうか、あの日カフェで会ったあの子にか。猛烈に逢いたくないのだが、会うのなら仕方ない。あの日の格好で行きますか。

 

あの日のあの格好であの時の心情………は無理だな。翔のやつ悪ふざけがすぎるぞ。



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第二十五話彼女お借りします(仮)中編

「着替えたか………な?あれ?部屋間違えた?」

 

「いやいや、間違えてますよ。俺の部屋なんで出てってもらえますか?ちなみに帰ってもらうまでがワンセットでお願いします」

 

「ははー、比企谷くん。イケメンだねー」ポワー

 

なんか一之瀬が旅に出でいるような気がするんだが、それは置いといて、帰れよ。俺は一人が至高なんだ。

 

「ははー、八幡くんなんだよね?」

 

「え?俺は葉山隼人ですよ?」

 

「そんな嘘が通用すると思わないこと。はぁー、こんなイケメンなら普段からそうすれば」

 

「はぁ?俺がイケメン?寝言は帰って言った方がいいですよ。うん。だから帰ろう」

 

「帰らない。はぁー。よし。出ようか。八幡くんは荷物持ったよね?」

 

まぁ、確かに荷物は持ってもう出ようとしてたところだが、このまま帰っていいですかね?あ、ダメですか。すいません!だから睨まないで!

 

「はわー、比企谷くんがイケメンだよぉ//」

 

「おぉーい、帰ってこーい。俺はイケメンなんかじゃないぞー、普段の目の腐りようを思い出せー」

 

ペチペチと一之瀬の頬を叩く。女子の肌ってすべすべで柔らかいよな。男子の肌ってなんなんだよって思うくらい。

 

ぷにぷにぷにぷに、あれ?音が変わってないか?

 

「むぅー、比企谷くん私のほっぺをぷにぷにしないで。」

 

「あははー、一之瀬さん、これ素だから諦めた方がいいよ。ラッキースケベだと思って見逃すほかないよ?」

 

「なんだよラッキースケベって、んなことあるかよ。」

 

ラッキースケベってなんだっけ?しらねぇけどまぁいいか。

 

「むー。早く離してっ。ふん。」

 

離すとそっぽを向く。あれ、なんか一之瀬が可愛く見えるのは何故なんだろう。ぼーっとしていると、

 

「八幡?一之瀬さんに何してるのかな?私にもして?」

 

「何言ってんだよ。先生はちょっと謹め」

 

「はっ、ご、ごめんね〜。じゃあ行こうか」

 

「はぁ、これからの気が知れる。」

 

「ははー、比企谷くん、頑張ろうね」

 

「はぁ。」

 

ああーあ。帰りたい。そして寝たい。こんなブラックな学校来るんじゃなかったよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わー。結構人いるんだねこのカフェ。カップル限定?って書いてあったけど、私達入っても大丈夫なの?」

 

「大丈夫。大丈夫。私も男連れずに入ってるから。案外甘いもんだよー。」

 

「はぁ。この人本当に教師なのか?」

 

まじで不思議。この人が教師なのは多分世界七不思議の中の一つに入るだろう。

 

「私は教師だよ。八幡くんの」

 

「俺のってなんだよ。あー、店員さん。カップルジュースはいらな………「はーい。あっ、………この前の……」

 

「ああ、あの時のな。まぁそれはいいから、コーヒーくれ。」

 

「店内には、カップルジュースしかないんです。それ二つ持ってきますね?おまけでもう一つも」

 

「は、はい」

 

耳元で喋るのやめてくれ。あれはまじで鳥肌が、ゾワゾワって立つ。

 

てか、どっかで聞いたような声だな。何処だっけ?

 

「それじゃあ、お持ちしますので少々お待ちください」

 

あ、俺の家だ。

 

小町の声にすっごい似てる。まじで。だから聞き覚えがありすぎてどっかで聞いた声だなーって思ったんだ。

 

まぁ、小町には何の関係もないよな。え?ないよね?

 

「ねー、凄い店員でしょー一之瀬さん。八幡くんにこしょこしょ話してたの見た?」

 

「は、はい。あれはびっくりしましたね。本当に店員なんでしょうか。」

 

「あれで店員やってんのよー。ねー怖いよねーあ、因みにあの子のクラスはBだよ。私達と同じ。」

 

「へぇー、どうでも良いけど、分かりました。あ、あと比企谷くん。あのジュースは私飲まないからね?」

 

「分かってるよ。先生もそr「私達は一緒にのも?」………くっ、やっぱそうなるのか」

 

俺達が座っているテーブルは、こんな感じになっている

 

星乃宮 一之瀬

 

 

八幡

 

だから、俺が正面の正面に座っている、星乃宮先生と一緒に飲むことになるのだ。

 

くっ、あの時の再来だな。翔と一緒に飲まなくて済んだあれをこの先生とやるのか………

 

はぁ、気兼ねなく過ごせるはずだった休日は何処へ行ったんだろう。

 

「お待たせしましたぁ。ちょっと寄ってください♡」

 

「はいよ………………って何で!?」

 

「え?私の分も持ってきたんだけど」

 

「いやいや、え?どういうこと?もう八幡分からない」

 

最近はよく分からない事が多すぎて対応ができない。やべぇ、語彙力も失ってきたぞ。

 

俺はもう何も考えない。今日は無心で過ごそう。それが良い。

 

「まぁ、いいからいいから。どうぞ先生。あ、比企谷くんは電話番号教えてくれてありがとね?」

 

「あ、ああ。仕事戻らなくていいのか?てか戻れよ」

 

「ふふっ、戻らなくていいんだよ。それよりも一緒に飲まない?」

 

「飲まねーよ。それとあざとい。お前それ効くと思ってんの?」

 

「は、はぁあああ?ちょっ、先生ばらしたの?」

 

「ふ、ふふふっ、ふ、あははははははははははは。は、はぁあ。ち、違うよ。八幡くんはこういうのすぐ分かるからね。諦めた方がいいと思うよ」

 

「はぁあ。なんだそういうことか。私は七海麻美。この通りこれが私。分かる?」

 

「まだ、お前じゃないな。だけど、分かったよ。櫛田と似ているな。ただ、櫛田の方が深い。お前は何というか浅いな」

 

「な、なんだって!!私は真剣に」

 

「まあまあ。八幡くんも、ダメだよ気にしているところをそんな簡単に言っちゃー」

 

「そ、そういうことじゃないんですよ先生」

 

「まっ、いいから。仕事戻れよ。また連絡するから」

 

「くっ、覚えてろよ先生。」

 

「ははー、やっぱ面白いねー」

 

「はぁ、よくわかんない奴とよく一緒にいられますね」

 

「教師だからねー。ああいうのは放って置けない性分なんだ。でさ、一緒に飲もうよ」

 

あいつの置いて行ったコーヒーも手元にある。

 

一之瀬はちゅーちゅージュースを吸ってるし、てか無言。まじ怖い。じと目でずっとこっちを見てくるところとかまさに怖い。なんなのこの子。

 

「い、いや、あいつが置いt「はい!ちゅー。」

 

「ひ、ひゃああああ…………」

 

ちゅーちゅー

ちゅーちゅー

 

すっごい顔近い。多分俺の顔は真っ赤だ。そしてちゅーちゅージュースを吸っている。はは、ははは。も、もうなんか搾り取られた感じd「あー!八幡ここにいたー!!」

 

も、もうなんなの?

 



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第二十六話彼女お借りします(仮)後編

「はぁ、で、何で陽乃さんがここにいるんですか?」

 

「何でって!八幡が休日は毎日デートしてくれるって言ったじゃない!忘れたの?」

 

「は、はぁ?ねぇ一之瀬翻訳頼む。」

 

「え!えーっと、私のこと放って置いて何処ほっつき歩いてるの!もっと私に構って!それとも私のこと嫌い?かなぁ」

 

「何お前………凄いな。え?こいつもしかして陽乃さんの言ってることわかるの?分かんないの俺だけ?」

 

「私だって分かるよー、私より星乃宮先生に構ってあげなさい!星乃宮先生のこと好きなんでしょ?」

 

「いやいやいや、捏造だろそれは。はぁー。何なのかなぁこのミスマッチは」

 

俺にだって分かる言葉はあるんだぞ!先生は俺との距離をもうちょっとあけましょう。そうした方が絶対身のためですよ。主に俺の。

 

星乃宮先生に一之瀬それに陽乃さんを混ぜたガチミスマッチ。

 

だめだろこれ。

 

「みすまっち?八幡は、私のこと嫌い?」

 

「くっ、………き、嫌いじゃねぇけどよ。もうちょっと自重しようぜ?な?」

 

「うぅーん。分かった。八幡がそういうならっ♫」

 

「ね、ねぇ一之瀬さん。この人達付き合ってるのかしら」コソコソ

 

「い、いやー、付き合ってはないんですけどね。いつも甘々な雰囲気ですよー。なんか大人?の雰囲気みたいな?」コソコソ

 

「八幡も満更では無さそうだけど、これ私負けた?」コソコソ

 

「はい?何言ってるのか分かりませんけど、

星乃宮先生に勝てる相手いるんですか?」コソコソ

 

「はい?」

 

「は?」

 

あ、話噛み合ってねぇぞこいつら。話すんなら俺のいないところで話せ、聞こえてんぞ。

 

はぁ、陽乃さんは、俺にとってなんなんだろうな。

 

「なぁ、陽乃は俺にとってなんなんだ?」

 

「うーん。友達はありえないし、弟は拒否されたし、知り合いとか絶対嫌だし。じゃあ間を取って彼氏ってのはどう?ねっ、八幡♡」

 

「最後のハート飛ばすのやめてくんない?すっごいあざとい上に可愛いんですけど。はぁ、俺は友達だと思ってたんだけど」

 

「え?友達とかありえないよぉー、あ、あと可愛いって言ってくれた、は、はぅー」

 

「くはっ………そ、そうですね。はぁ。」

 

なんか、心が折れた気がする。ぽっきりといや、バキッて音したな。うんばきっといったわ。はぁ。

 

「ねぇ、八幡くんばっきりとやられたね。あれは友達以上の関係がいいって奴なのに、可哀想。」コソコソ

 

「陽乃さんですからねー。勿論友達以上を求めると思ってました。私と比企谷くんは友達ですけどね」コソコソ

 

「えっ?友達なの?」

 

「え?はいそうですけど」

 

「う、うぅー、一之瀬お前だけだよそう言ってくれるのは!」

 

ガッチリと手を握る。ウンウン。お前だけだ。そう言ってくれるのは。だけどおれはぼっちだから友達なんていないけどなぁ。

 

「ねぇ、先生。あ、私の名前は陽乃です。」

 

「あ、貴方が陽乃さんねー。お噂はかねがね。」

 

「それで相談なんですけど、最近八幡がつれないんですがどうしたらいいでしょうか?」

 

「んなの知るかぁ!!惚れ気ならしなくて結構!」

 

「ははー、もしかして先生ともあろうお方が嫉妬してます?私生徒会長だから、八幡をいっつも連れ回せるんです。どうですか?羨ましい?」

 

「くっ………わ、私だって八幡くんを私専属雑務にしてるから居れる時間は長いもん!」

 

いや、お前らそれで聞こえてないと思ってんの?俺の正面切って話してるからな?気づいてるだろ?

 

はぁ、やっぱり俺がカップル限定?カフェにいるのは間違っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これからどうするんです?星乃宮先生?」

 

「今日は、先生じゃありませーん。」

 

つんと効果音がしそうなはぶてたような態度をとる。

 

おいおい、可愛いなおい。この人こういうところは可愛いのになぁ、なんか残念美人臭が半端ないんだよなぁ。

 

「何か言った?」

 

やばい、やばいよ目のハイライトが仕事してない。こっわっ。やめて!ハイライトさんちゃんと仕事してっ。

 

「はぁ、普段からそうしてれば可愛いのに。なんていうのほら、素の感じっていうの?残念美人臭がしますよ」

 

「う、うるさいっ。そ、そういうのは言わない約束でしょ。か、か、可愛いって言ってくれたのは嬉しいけどさ、ほら」//

 

なんか頬を染めて言っているが、もうちょっと自重すれば結婚とかできると思うのになぁ。あの平塚先生だってそうだろ。

 

「ま、まぁでも、知恵って呼んでくれたら許してあげるよ?」

 

「は、はぁ?何言って…「残念美人とか女性に言う言葉じゃないよね〜。酷いなぁ八幡くんはー」はい、ごめんなさい。呼びます。呼びますからその腕を離して!」

 

俺の腕を引っ張られて、何処かよく分からない場所に歩いている。

 

暗い影の刺す路地裏らしき場所に出ると

 

「ねっ?呼んでくれるよね?私は、八幡くんがそう呼んでくれたら嬉しいな」

 

「くっ………」

 

路地裏は狭く、俺に抱きつく形となって、俺に迫ってくる。

 

俺を上目遣いで見つめてきて、心なしかその目はうるうるとしているように見えた。

 

うっ、グッときました。すいません。俺はぼっちだが、くっ、この先生可愛すぎるだろ。

 

「わ、分かりました。智恵、これでいいか?」

 

「は、はわわ。ど、どうしよう、八幡くんに名前で呼んでもらえたよぉ。///」

 

「お、おい。早く行くぞ。智恵。遊ぶんじゃなかったのかよ」

 

「わ、分かった。じゃ、いこ八幡⭐︎」

 

ぐっ、可愛い。この人本当に教師だよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ、何であの教師の相手してるとこんなに疲れるんだろう。

 

落ちる気持ちを抑えながら、次は一之瀬の相手をする。

 

「はぁ、一之瀬?お前はこんなことしなくてもいいんだぞ?」

 

「う、ううん。私は比企谷くんと、そ、その恋人になれて嬉しいよ?1日でもさ」

 

「いい奴だな。お前は。」

 

「そ、そうかなぁ。比企谷くんだっていい人だと思うよ」

 

「ふっ、お前には遠く及ばねぇよ。一之瀬。」

 

「わ、そそうだね。」

 

なんか頬を染めて俯いてるんだけど、危ねぇぞ?ほら前の人だって避けながら歩いてるだろ?

 

「一之瀬?調子悪いのか?ちょっと熱測るぞ?」

 

「え、ひ、ひゃあ…………」

 

うーん。あまり熱くないな。熱はないみたいだけど。

 

「あれ?熱ないけどどうしてだ?あれ?一之瀬?おい一之瀬!!」

 

「は、はわぁー。」

 

「危ねぇな。おーい大丈夫かー?」

 

「はぅっ。だ、大丈夫だよ!さ、デート行こう!」

 

「いや、お前無理してるだろ。少し休もうぜ。」

 

「そうだね…………」

 

あ、あそこに公園のベンチがある。あれに座るか。

 

「おい、一之瀬あれに座るぞ」

 

「う、うん。」

 

そう言いながら座る。

 

「ふぅー。今日は疲れたなぁ。」

 

「あははー比企谷くんは陽乃さんとか星乃宮先生とかに好かれてるからねー」

 

「いや、絶対あの目はおもちゃを見る目だぞ?現に陽乃さんとかは俺をおもちゃとしか思ってないだろうし」

 

「あははー、いつもの陽乃さんを見てると否定できないのが残念だなぁ。」

 

「だろ?でもあの人小町にも会ってるからなぁ。そこが一番怖い。」

 

「え?小町って?」

 

「あぁ、俺の妹のことな。いやー今小町どうしてるかなぁ。」

 

「へぇー、妹いたんだー。」

 

あれ?なんか目の色変わってない?え?どうしたの?なんかあった?

 

「それでな、世界一可愛い妹こと小町は、いつも帰ったらお帰って言ってくれてな。本当可愛くてお前にも見せてやりたいくらいだよ」

 

「へぇー、あ、因みに私も妹いるんだけど、多分小町ちゃんより可愛いけどね。」

 

は?何言ってんの?こいつ。小町より可愛い妹がいてたまるかよ。小町は最強だぞ?俺の妹より可愛いやつなんているわけないだろ

 

「あぁん?小町より可愛いだって?そんなのいるわけないだろ!」

 

「いいや、いるね。私の妹なんてまさに可愛いよ。寝る時とかおねぇちゃんおねぇちゃんって言ってね」

 

「は?俺の小町だって、昔はお兄ちゃんお兄ちゃんっよく言って寝てたわ!」

 

「あぁん?」

 

「んん?」

 

なんか睨み合いが始まったけど。俺は間違ってない。俺の妹を悪く言った一之瀬が間違ってる。

 

 



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第二十七話ぼっちのための学校

「ーーこれからの学校生活を思い、生徒一人一人がどう考えて学校生活を送って行くかーーー」

 

はぁー、堀北副会長頑張ってるなー。ファイトー!俺は今めっちゃ緊張してます。絶賛緊張中です。

 

何故かって?そりゃ決まってるだろ。なんで俺が挨拶なんてしないといけないんだよ。

 

さっき南雲副会長見たけどすっごい怒ってたぞ?どうしてくれんだ陽乃!!

 

というわけで、俺は今舞台裏にいるんだが。

 

「ねぇ、比企谷くん?緊張するねー。」

 

「うん。まぁそうだな。こういうのは俺初めてだし」

 

「あははー、比企谷くんはこういうのしない人だよねー。」

 

「うん。陽乃さんが俺を副会長にしなかったら絶対してないな。」

 

「ふふ、そう考えたら陽乃さんに感謝だね」

 

「なんでだよ。感謝するのは間違ってるだろ」

 

「ええーなんで?陽乃さんに比企谷くんを生徒会に入れてくれなかったら私たち会えてないんだよ?ほら比企谷くんいつもすぐ帰っちゃうし、全く構ってくれないじゃん」

 

「はぁー?構うって、構う必要なんかないだろ?」

 

「ぶぅー、そうやっていつも逃げるんだもん。そんなこと言ってると……」

 

「そこうるさいですよー。副会長さんが喋っていますから黙っていてくださいー!」

 

そうだよ。黙ろうな。

 

一之瀬は不貞腐れた様子で、もうなんで私だけみたいに呟いてる。可愛い。なんかこいつが可愛くみえるんだけどなんで?

 

まぁいいか。

 

「これを持ちまして、生徒会会長代理の副会長の言葉を終了させていただきます。」

 

てか、陽乃さん休んで……あれ?あそこいるな?なんで生徒と一緒に並んでんの?おかしいだろ。お前が本来は喋るんじゃねぇのか?

 

「では、続きまして、次期生徒会会長、副会長の比企谷八幡さんの就任の言葉です。」

 

 

 

 

アレナンデヒキガエルガアノバショニイルノアヤノコウジクン

シ、シラネェヨソレハコンドアッテキケバイイダロ

ソンナコトイッテアナタアイツノミカタシテルンジャ

チチゲェヨ

フーン

 

「なんか喋ってるけど。まぁいいか。一之瀬俺は行くからそこで待ってろ」

 

「う、うん。」

 

そう言って、俺は壇上を颯爽と歩く。こういう場は自信がないと務まらない。

 

ふん。陽乃俺を生徒会副会長にした恨みここで晴らさせてもらう。

 

礼をして、俺の前に置いてある、先週に書いた文を読み上げる。

 

「この度、縁あって生徒会副会長にさせていただいた。比企谷八幡です。私のクラスは一年Bクラスです。

 

生徒会長様にこの役職を与えていただき本当に感謝し、感謝したりません。しかし、私は生徒会に入ることを容認していませんでした。」

 

 

ここまで言うとザワザワと聞こえる。おい何言ってんだあいつ?ふむふむ。目腐ってるけどなんか面白いこと言いそうだぞ?ふむふむ目が腐ってるは余計な。ちっ、あの時会ったけど今度こそは私の男にしてやる。ふむふmひえええええ?恐っ。やめて!お前の男になんて絶対にならないから!!

 

「だから、私は独自で、そして、一人である委員会の役職を作ろうと思います。

 

勿論その役職には私が委員長として就任させていただくこととなります。

 

では、その委員会の名前を言いましょう。」

 

ごくんと聞こえた。あいつ何言うつもりなんだとか、あなたはゲコゲコ言ってればいいのよとかって、へ?堀北は黙ってような?

 

「その委員会名は!!

 

ぼっち委員会!!

 

ぼっちのボッチのためのぼっちによるぼっちの委員会。

 

この委員会の仕事は風紀委員に似ていて、ぼっちの救済処置とも取れる活動です!!

 

それは!

 

ぼっちがいたら気軽に声をかけてあげる事です!!

 

ぼっちは治りません!ぼっちを直すためにはコミュニケーションが必要です。

 

全生徒に告げる!!

 

俺は生徒会長になった暁にはぼっちのための学校を作ると宣言する!!

 

ぼっちの生徒諸君!!我らはぼっちだ!!ぼっちで何が悪い!!さぁ、ぼっちのため学校を作るぞ!!」

 

 

おおおおおおおおおおおおおお!!!!

 

大歓声だ。生徒はぼっちも多かったのか涙を流してうんうんと頷いている人もいる。拍手をしてわああーと言っている人もいる。

 

堀北はと言うと

 

「何がぼっちのための学校よ。あれ?綾小路くん?何笑ってるの?あなた笑うことあったの?」

 

「ぷっくくくく。くくっ。あ、ああごめん。」

 

 

ふむ。綾小路はぼっちの資格があるかもな。ちょっと審議してみよう。

 

「ふぅ、これで私の就任の儀を終わります。ぼっちの生徒諸君!我らはぼっちだ!!ぼっちの学校をu「はっ、………生徒会副会長の言葉でした。中々奇抜でユニークな就任の儀でしたね。では次、生徒会庶務一之瀬帆波さん。どうぞ」

 

ええー、俺のこと等閑に扱いすぎじゃない?ひでぇ、まぁいいけど。ふっ、これでぼっちに安全の学校作りができるぜ。

 

おい、陽乃さん!何爆笑してんだよ。こっちまで笑い声聞こえてくるんだけど、やめてくんない?俺のスピーチ笑うの。俺超頑張ったでしょ?

 

「あー、比企谷くん。凄いね。わ、私も頑張らなくちゃ。」

 

「うんうん。その気合いだぞ!」

 

なでなでと撫でる。頑張れよ一之瀬

 

 

「わ、わわ。が、頑張る」

 

ん?顔が赤いが大丈夫か?そろそろ行かないといけないだろうから、俺は退場しますか。

 

「じゃあな。また」

 

「ま、ま、ままたね」

 

焦っちゃって可愛い奴め。うん。頑張れよ一之瀬。

 

「で、なんでいるんですか生徒会会長の言葉を読まなかった陽乃さん?」

 

「そんなの楽しくないからに決まってるじゃない。八幡のスピーチ聞く方がよっぽど楽しかったしね。」

 

「はぁ、俺はその我儘にいつまで付き合えばいいのだろうか。」

 

「ふっ、比企谷はやはり面白いな。ぼ、ぼっちって………くくっ」

 

何笑ってんだよ堀北さん。そんなに面白かったか?俺のスピーチ。誰でもあんな感じだと思うんだけど。

 

「いやいや、八幡だけだからね?あんなスピーチするの。ふ、ふふっ、ぽ、ぼっちのための学校って」

 

「陽乃はそこか、俺はぼっちの生徒諸君のところからツボに入ったぞ?」

 

「堀北さんまで笑わないでください。俺先生からめっちゃ睨まれたんですからね?ほらあの茶柱?先生とか、真嶋先生とかに、他の先生は腹を抱えてましたが、星乃宮先生はダメですね爆笑してました」

 

「当たり前だろう?あれを見て笑わない人がいるのか?俺だって笑ったのに……くくっ」

 

「あはー、あれを笑わない人は私もいないと思うなー。雪乃ちゃんだって笑ってたんだし。あ、でも一之瀬ちゃんはぽけーとしてたけどね」

 

「はぁ、別にいいじゃないですか。俺は陽乃さんに一矢報いりたかっただけですよ。委員会は作りますが。」

 

「ふふっ、作るんだね。ぼっちの委員会ぼっち委員会だっけ?入ってくれる人いるの?この学校では委員会は最低5人まで集めないと作れないよ?」

 

「なんとかしてみますよ。俺のぼっちに対する情熱はとまるところを知りませんから」

 

「ぽ、ぼっちねぇ。………くくっ、やっぱ笑いが止まらない。あ、一之瀬ちゃんひゃっはろー」

 

「やっはろー」

 

「あ、あれ?由比ヶ浜?」

 

「え?誰?私は一之瀬だよ?何言ってるの?比企谷くん。」

 

「ご、ごめん。凄い似てたもんだからつい」

 

ええー、声めっちゃ似てたんだけどなぁ。気のせいか?一之瀬の声ってまじ由比ヶ浜に似ているよな。今度由比ヶ浜に会わせてみようか。

 

「いやー、結構緊張するもんだね。聞いてた?比企谷くん。」

 

「え?ごめん、全く聞いてなかった」

 

「も、もう。聞いてよ!」

 

俺の胸をぽかぽか叩いてくるが、それ可愛いだけだからな?なんの効果もねぇぞ?ただ一之瀬の可愛い度数が高くなるだけだ。

 

「はぅー、一之瀬ちゃんかぁいいよぅー。おっ持ち帰りぃー!」

 

「ひ、ひゃあー、や、やめてください。陽乃さん。こんな場所で」

 

「ほらほらー、良いではないかー!良いではないかーー」

 

「く、くすぐったいですってば……ひゃっ………あぅ………や、やめてってば」

 

涙目になっている。かわいそかわいそです。骨は拾ってやるからな。俺?俺は鑑賞してます。だって可愛いんだもの。

 

「も、もう、陽乃さんも大胆ですね」

 

「いやー、ついかぁいく見えてしまってねー。いやー、一之瀬ちゃんがこんなにもかぁいいとは。」

 

「陽乃さんは加減を知りませんから」

 

「ふふふっー。一之瀬ちゃんかぁいい!!私の妹になる?」

 

「や、やめてください。ひ、ひゃっ、そんなとこ触らないで、だれ、だれかーー!!あっ、比企谷くん助けて!!」

 

「えっ?やだよ。この人に逆らうとどうなるかわかんないんだもん。頑張れ」

 

「そんな励ましいらな………ひゃう。た、助けてよぅ」

 

「陽乃。やめてあげろ。そろそろ生徒総会も終わる。あと、比企谷、お前は先生たちからの言葉を覚悟してろ。絶対なんかあるぞ」

 

「うす。ほら一之瀬〜帰るぞー!」

 

「ひ、ひきがやくん。わ、わたしもうおよめにいけないよぉー」ヒグッ………エグッ

 

「そん時は俺が貰ってやるから、早く行くぞ」

 

「ほ、本当に?絶対だよ?」

 

「おう、絶対だ。」

 

あれ?俺何言ってんだ?俺は専業主婦志望だしこれで合ってるよな。うん。

 

「生徒会副会長の比企谷はいるかー。あ、いた。おいテメェ!」

 

俺の胸ぐらを掴んでくる。え?暴力ですか?南雲さんそれはまずいですよ?

 

「………共感した!!俺はお前の下に着くぜ!」

 

「「「「……は?はあああああああああ?」」」」

 

え?こいつ俺の就任に反対してたんじゃなかったっけ?あれ?

 




どうでしたか?ぼっちのぼっちによるぼっちのためのぼっちの学校。
ぼっち至上主義の教室への道は長いぞ!八幡!


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第二十八話ぼっちとぼっち

はぁ、どっぷり疲れた。

南雲副会長が、俺に賛同するだ、感動しただ言ってきて、陽乃さんと堀北さんがひとしきり笑ったあと、理由を聞いて、、、いやーまさか、南雲副会長が昔ぼっちだったとな。あんなイケメンのボッチがいるんなら世界中ぼっちだらけと言っても過言ではないな。

いや過言か。

 

まぁ、何はともあれ、ことひと段落区切りを得て、俺は今生徒会室にいる。生徒会副会長になるにあたって書類整理しているのだ。

 

はあ面倒極まりない、唯一の救いは横に一之瀬がいてくれていることだ。陽乃さんなんか速攻で帰っていったからな。あの人が真面目に仕事してるとこみたこともないのだがちゃんとやってんの?今度聞いてみようちゃんと仕事してるんですかーって。いや絶対怒られるな。やめとこう。

 

とういことで、横で一之瀬がパソコンをカタカタやっているんだが、そんなことより俺の仕事が終わりそうにない。マジで泣きそうなんだが。

 

俺が仕事を真面目にこなすのは間違っている。うん、俺に仕事なんてさせるんじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえば一之瀬さぁ」

 

「ん、何かな比企谷くん。」

 

「お前本当に庶務でいいの?陽乃さんが勝手に決めたけどお前なら会計とか広報とかの方があってんじゃねぇの?」

 

マジでそう思う。こいつは庶務とかいう広範囲の仕事よりも一つに絞ってやったほうがやりやすいと思うんだが。

 

広報とか絶対あってるだろ。ほら、人が寄り付きそうな広告とかめっちゃ作れそうだし。

 

「うーん。陽乃さんが決めたってのもあるけど……………一番は………」

 

「んなに?」

 

結構気になる。こいつが生徒会に入った理由はなんとなくわかるけど役職についてはよくわからないからだ。

 

「庶務にいた方が陽乃さんたちと深く関われそうだしね」

 

「あー、陽乃さんね。お前も物好きだな」

 

「違うよ、陽乃さんたちだよ。だから比企谷君と入ってるの。私は比企谷君と関わるのも楽しいよ」

 

「あぁーはいはい。楽しいねー。」

 

「むぅー、適当すぎじゃない?もうちょっと気を利かせてくれてもいいじゃん。ほら、俺も君と一緒にいるの楽しいよとか!」

 

「どこの少女漫画の世界だよ。そういうのは想像だけで十分だ。現実に持ってくんな」

 

「むー、比企谷君が冷たいです。ね、ねぇ、私生徒会に入ってよかったのかな?」

 

「いきなり唐突に何?」

 

「いや、私本当は最初は入れてなかったっぽいじゃない?本当に入ってよかったのかなって」

 

「それこそ、心配無用だ。お前がこの生徒会室にくるという事実があった限り」

 

「ん?私がきたらってこと?」

 

「お前は絶対に生徒会に入れる。俺が陽乃さんに頼み込んででも、それこそ土下座靴舐めしてでもな。」

 

「ふ、ふーん。ちょっと最後意味わかんなかったけど、そ、そうか。」

 

「そうだ。お前は(生徒会に)必要な存在だからな。お前がいないと(生徒会が)成り立たない。お前は(生徒会の中で)一番だ。」

 

「は、はぅー。ひ、比企谷くん。そそそ、そんなふうに思っててくれたんだ。ま、まだ答えられないけど、か、考えておくね」///

 

ぼわっと湯煙が上がる。あれ?ここそんなに暑かったっけ?一気に室温が上がったような気がするんだが。

 

一之瀬は沸騰したやかんみたいになってるし。どうした?熱でもあるのかな。

 

「ちょっと熱測るぞ。」

 

「ひゃっ、ひ、比企谷くん。な、何を」///

 

「落ち着いてろ。お前熱あるだろ?」

 

「ね、熱なんかないよ。そ、そ、それよりも仕事終わらせないと!」

 

はぁ、こういう奴は休まずに仕事する。だから、翌日に熱とかで休む羽目になるんだ。だから、俺は

 

「だめだ。ちゃんと休め。ちょっとだけでもいいから。な?」

 

「う、うーん。本当にいいんだけどなぁ。じゃあちょっとだけ休むね」

 

そう言って椅子にダラーと座る。うんうん。だらけ最後だよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というかこの学校の予算って結構多く貰ってんだな。

 

多分生徒一人十万の計算だから3800万なんだろうけど、一学期でこれってやばくね?学校の生徒会運用にここまでかかるのは驚きなんだけど。

 

まぁ、これで仕分けしてっと。はい終了。ちょっと外の空気吸ってくるかな。

 

 

「ねぇ、君さ、自分の実力を隠して生きてて楽しい?」

 

「いきなり何を言ってるのか全然わかりませんね。俺はただの無能ですよ?」

 

「ふーん。そういうのはあまり好きじゃないなぁ。ねぇ、君さ!」

 

陽乃さんと………綾小路!!?あいつら何話してんだ。きっと恐ろしい会話をしているに違いない。学園トップクラスの恐ろしい人間たちだ。

 

「生徒会入ろうよ!!八幡出ておいで〜!委員会役員見つかったよ〜」

 

はっ、な、なぜわかった?こ、こいつ、気配察知スキルまで取得しているのか?!ま、魔王め。

 

「いるのはわかってるんだよー。ほら、綾小路くん。君にぴったりの役目を与えるよ!」

 

「や、やめてください。俺はこの学校で静かに暮らせればいいんです……はなしてください。」

 

「いーやーだー。君には生徒会庶務になってもらいます。異論反論抗議質問一切取り受けず、した場合は…………退学?」

 

「いや、退学はまずいでしょ。てか、離してやってくださいよ。ふっ、まぁ綾小路なら軽々と解けるだろうがな。」

 

「っ……………比企谷お前わかってたのか?」

 

「何をだ?まぁ、俺はお前が真のボッチだってことくらいしかしらねぇよ。なんだ、これからよろしくな」

 

「………え?俺はいること決まってるの?」

 

「お前はうちの委員会で引き取る。だから、生徒会に入れん。それでいいだろ陽乃」

 

「ちぇー、面白そうな子だと思ったんだけどなぁ。」

 

いやいや、あんた面白そうな人がいたらそうやって誘うのかよ。やばい人だ。陽乃の域には達したくない。

 

「まっ、いいよ、八幡が言うなら持ってきな。私は他の子を探すよ」

 

「うん。物わかりのいい陽乃は好きだよ」

 

「は、はぅっ〜いきなりずるいよぉぅ、八幡そういうのは違う場所でね?」

 

「あ?ああ。」

 

「なぁ、お前たち付き合ってるのか?」

 

「付き合ってねぇよ」

 

だからなんでだよ。俺がこんな美人で魔王でちょっと可愛い人と付き合えると思ってんのか?舐めんな。

 

「えぇー、私は付き合ってると思ってたのになぁ」

 

「え?は、陽乃さん。マジでよしてください、は、はなして」

 

やばい。陽乃さんが思いっきし抱きついてくるせいで、こ、呼吸ができん。し、死ぬのか俺は。

 

「むぅー。これくらいでいっかー。ま、綾小路くんの引き取りについてはちゃんとしときなよ?」

 

「分かってるよ。」

 

「じゃねー。」

 

やっと去っていったか。あの人は本当に嵐みたいな存在だな。

 

「な、なぁ、俺ってマジで入らないといけないのか?」

 

「ま、まぁ助けると思って、頼む。というかお前委員会入らないと陽乃さんに引き取られるぞ?あの人は見つけた獲物は逃さないから」

 

「わ、分かったよ。入る。お前のボッチ委員会とやらに入ってやるよ。興味あったしな」

 

「ほう。やはりぼっちはぼっちに好かれ合うものなのか?」

 

よかった。綾小路が真のボッチぽくて。おっけ。これで一人獲得だな。

 

「いや、違う。今日のあれだよ。ぷっ、お、思い出したら腹が………あれ、人生で初めて笑ったからな」

 

「は?大袈裟すぎたろ。まぁ、お前が入ってくれるならよかったよ。お前はボッチno.1だ。」

 

「ん?ぼっちナンバー?」

 

「そうだ。委員会のメンバーにはナンバーをつけて管理する」

 

「なら名前もつけた方がいいんじゃないのか?」

 

「それだ!お前冴えてるな。うーん………」

 

こいつの名前なんだっけ…………綾小路清隆、綾小路清隆。

 

うーん。

 

渾名とかつけたことないし。わかんねぇな。うーん。あ、そうだ。

 

「ぼっちナンバー1ぼっちネーム清お前は今日から清だ!!」

 

「は?」

 

何その目。こいつ何言ってんのみたいな目やめて!お前普段から無表情なんだからそういう顔されるとめっちゃ怖い。

 

「だから、名前だよ。委員会メンバー、集まるかわからんけど、そのメンバー同士で呼び合う呼び名」

 

「あぁ、なんかそういうのいいな。うん。それでいいぞ。」

 

「これからよろしくな清!」

 

「よろしく、…………なぁ、お前の名前は?」

 

「俺か?俺のボッチネームなんにしようかな」

 

「ヒキガエル?」

 

「やめろ!過去の古傷が疼くだろうが!」

 

「ふ、嘘だよ。ぼっちナンバー八ぼっちネーム八でいいんじゃないか?」

 

「お、おう。なかなかいい名前を思いつくな。びくったぞ?」

 

「俺にはそういうセンスがあるのかもな」

 

「うん。あると思うわ。じゃあお前はぼっちネーム命名係に任命!」

 

「な、なんだその微妙な係は。」

 

「ま、いいじゃないか。とりあえずこれからよろしくな!」

 

「お、おう。」

 

反応がちょっと微妙だけど、こいつはこいつだしな。これからが楽しみだ。

 

その日ぼっちとぼっちが手を取る委員会の結成が結成したのだった

 



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第二十九話彼女お借りします(本)

「はぁ、今日は早く帰れる。やったぜ。いつもいつも仕事に追われて…………あれ?俺ってもしかして気づかぬうちに社畜に?!」

 

と、ひとりぼやきながら帰路に着いている。というか、何故俺は生徒会に入って、先生と仕事の手伝いをしてと、仕事に追われてるんだ?

 

もしかして俺の前世はデスマーチに追われて自殺したサラリーマン?!

 

な訳ないか。怖いからやーめた。ブラック企業とか正にこの学校のことだろ。

 

「はぁ、ブラックだなぁ。何か楽しいこ………と………いやいや、これはないよな」

 

ぼやき続けながらスマホをいじってるとある画面に飛ぶ。

 

『レンタル彼女』

 

いや、なんでだよ!俺普通にスマホいじってたよね?

 

てか、レンタルしてまで彼女欲しいとか世も末だな。

 

俺は彼女なんぞいらん。彼女より友達が欲しい!これ絶対!だから、そこのリア充は直ちに爆発しましょう。

 

俺のそばを通ったイチャイチャカップルにヤジを飛ばす。いや、念を飛ばしているのか?

 

「清にでも報告しとくかな。」

 

Lineを開き、清のページに行く。昨日交換したんだよなぁーとほくほく顔で、スマホをつつく。

 

『レンタル彼女ってのがあるんだけどお前使う?』

 

なんか不自然だな。いきなり使う?って聞くのはちょっと違うような。

 

うーん。なんて送ろうかな。これなんてどうだろうか。

 

『レンタル彼女ってのがあるんだけど、一緒に使う?』

 

いや、変わってねぇ、変わってねぇどころか衰退してる。

 

一緒に使ってどうするよ。俺は彼女なんていらんつってるのに。

 

まぁ、いいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、数十分経って清からメールが届いた。

 

『八、レンタル彼女というのがあるんだけど、一緒に使ってみないか?』

 

 

うん。なんでお前やねん。おっとよくわからない関西弁が………

 

おかしいだろ。そもそも俺メール送ってないんだけど。こわっ。

 

 

あーやだやだ。俺はそんなのつかわねぇよと。

 

『俺らはぼっちだ!そんなくだらぬ物使ってたまるか!獅子奮迅の我らボッチが、そんなものを使ってたまるか!真っ直ぐ前へ突き進め!!』

 

いや、材木座入ってる。材木座入っちゃってるよ!え?もしかして乗り移ってる?恐っ。やめて!俺の体!

 

『え?八ってそんな喋りかだったか?ともかくお前の分も予約しておいた。後でポイント寄越せよ』

 

 

何勝手に決めちゃってんの?陽乃さんなの?はるのっちゃうの?やめて!!お前まで陽乃見たくなっちゃったら手がつけられない!返して!純粋だった清を返して!!

 

と、くだらないことを考えながらも、レンタル彼女についた思いを馳せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい。更科るかと、桜沢墨です」

 

「今日はよろしくお願いしますね〜」

 

「はぁ。俺は比企谷八幡よろしく〜」

 

「俺は綾小路清隆」

 

うわ、清お前もしかしてキメ顔の練習でもしてたのか?!めちゃめちゃカッコよく見えるぞ!ほ、ほら、そこのおどおどしてることか目をキラキラさせてるし。

 

「むー。あの!なんなんですか!この人は!あなたのお友達さんですよね?」

 

ビシッと指を刺し、こいつは邪魔だと宣言してくる。え?俺?一瞬時が止まったのかと思ったよ。え?何?何が悪いところでもあった?

 

「なぁ、八、お前ため息はないだろ。そうやってると彼女なんてできないぞ?」

 

「うるせぇよ。彼女なんてできてたまるか。ぼっち仲間が何言ってんだよ」

 

「俺はぼっちだが、友達はいる」

 

「くっ、裏切り者め」

 

こ、こいつそういえば友達いたんだったな。くっ、裏切りものめ。二回もいっちゃったよ。

 

「あは……は、な、……なんか……も…う…わた…したち…いらない?」

 

「帰っちゃポイントもらえないでしょ」

 

「はぁ、ポイントのためにやってるの丸出しだし」

 

「くっ、くぅー!なんでこんな人の彼女なんかに!!」

 

「おい、八そういう時は仕事のためだし仕方なくの方がいいと思うぞ」

 

「あ、あぁそうか。気が効くな清は。じゃあ、そう…「うっさい!!むっかー!あんたほんとうざい!しねば?」

 

「おいおい、死ねはないだろ。しねは。せめて消えろくらいに」

 

「きめた!今日はあんたに私を金のためにじゃなくて私がやりたいから本気でやってるって証明してあげる!!」

 

「はぁ?なんだよそれ。別にそんなのしなくてもいくらでも認めてやるぞ?」

 

「いいや、あなたに心から認めてもらわないと気が済みません!だから今日は付き合ってもらいますよ!!」

 

「はぁ。清なんでこいつ選んだの?」

 

「え?八はそういう人の方が好きかなと思って」

 

「いや、そういうわけじゃ………俺はもうちょっとおとなし…「ん?」……なんでもないです」

 

この更科ってやつ怖い。俺は本音で喋ってるだけなのにすっごい睨んでくるんだけど。マジ怖いやめて!その顔すんのやめて!!

 

「まぁ、いいわ。取り敢えず三時間ね。7時まで。桜沢さんもここでお別れでいい?」

 

「う、うん。じゃあ、………行こっか……き……清隆くん。」

 

「あぁ。八もうまくやれよ。さっきみたいなことしてると痛い目見るぞ」

 

「ふっ、俺はあれが素だからな。かわらねぇよ。じゃっ、また明日な」

 

「ほら、さっさと行きますよ。」

 

手を握ってスタスタ歩くのだが、手が痛い。力!力を抜いてっ!痛い、痛いよ。

 

「痛くしてるんです。はぁ、取り敢えず安直に服でも買いに行きますか?」

 

「安直にって…………まぁ、分かったよ。でもちょっと待ってくれ。見つかりたくない相手がいるからメガネだけはさせてくれ。」

 

「?めがね?ふふん。あなた眼鏡をつければその目がかくせる………と………………///」

 

「あん?何してんだ?さっさと行くぞ。1日彼女してくれるんだろ?早く」

 

「くっ………なんであんたそんなイケメンなのよ。私の目が狂ってるのか?」

 

「うんうん。現実逃避はいいが俺はイケメンなんかじゃないからな〜戻ってこーい」

 

なんかこういうシーン何度も見るなぁ。今後も見るのかな。

 

てかこいつ何気に可愛いな。絶対言わないけど。

 

「はっ、じゃっじゃあ行きましょうか。むー。なんか負けた気がします」

 

「はぁ?俺が負けてんじゃねぇの?負けることに関しては俺が最強。そう考えたら。俺まじ強い」

 

「貴方が強いなんてことないと思いますけど。なんか納得いきます」

 

ほっぺを膨らませて悔しいですとばかりにこちらを睨んでくる。

 

その目にはわずかに涙を溜めており可愛さを引き立てていた。

 

くっそー、言動を除けば可愛いのに残念!

 

「なんか目がやらしいです。ぶっちゃけきもい」

 

「きもいとな。ちょっと傷ついた。まぁ最初に変なこと言った俺が悪いしな。悪かったよ。謝る」

 

と言い、頭を下げる。誠意は十分に込めているはずだ。俺が誠意を込める時は謝る時と人にご飯を奢ってもらう時だ。

 

「べ、別にいいですよ。もう怒ってないですし。そのかわり、今日は楽しみましょう。時間も少ないですしね!」

 

捲し立ててあわあわと言っているが、許してくれるならありがたい。最初の印象が最悪だったしな。

 

「まぁ、許してもらえたならよかったわ。じゃあ行くか。まずはーーー

 

よかった。許してもらえなかったら、俺に悪い噂でも流れたらたまらないからな。例えば女子に悪口言って泣かせたーとか。これ結構きついからまじで

 



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第三十話彼女お借りします(本)後編

「あー、なんかさ。あ、なんでレンタル彼女してるんだ?」

 

「えー、まず効くとこがそこ?」

 

いや、だって何話したらいいかわかんないんだもの。

 

気まず過ぎだろ。歩いてる時こんなにも気まずくなるとは思わなかった。

 

今服屋に歩いて行っている。いやー、バイクとか欲しいなーこういう時喋らなくても済むからマジ欲しい。

 

「はー、いいですよ。話します。

 

 

私は生まれた頃からの病気があるんです」

 

 

あれ?なんか重そうな話が始まったよ?あれ?おかしくない?そんないけないとこついちゃった?

 

戻して!つい1分前の俺に戻して!

 

「っ、………それで」

 

「徐脈性不整脈、いや徐脈のほうがわかりやすいかな。それに患っていて、激しい運動だったり、興奮することだったりをすると目眩とか息切れとか起きちゃったんだ。

 

で、他の人と違う自分をみて、ドキドキを感じれない自分が嫌になって、恋してみたいなぁって思って、この仕事をしてるの」

 

「ほう、じゃあこの仕事をする理由は恋したいから、なんだな」

 

「そう。でも貴方みたいな人とは絶対にならないけどね。べー」

 

「ふっ、俺もお前みたいな彼女はいらないよ。ルックスは可愛いけどな」

 

「か、かわ」

 

「お、ついたぞ。って、ここ男性服の店じゃねぇか。お前が服着るんじゃないのか?」

 

「えへへー、いやー八幡くんはかっこいいから服着せたくなっちゃって」

 

「こういう時だけ彼女ヅラするな。はぁ、まぁいい。入るぞ」

 

「あ、まってー」

 

とてとてと追いかけてくる。いや、可愛いところはあるんだけどな。

 

それから少し時間が経ち、

 

「こんな服なんてどう?絶対似合うと思うんだ」

 

「いや、お前はしゃぎすぎな。もうちょっと自重しような」

 

「むぅー、うるさい!別にいいじゃん。なんか楽しくなっちゃって。」

 

「俺は疲れるだけなんだよなぁ。なぁ、別の店行かない?疲れたんだけど」

 

「まだダメですよ。そんなに時間たってないじゃないですか。ほらこの服も着て」

 

「はぁ。分かったよ。これで終わりな」

 

「まだあり「こ・れ・で、終わりな?」

 

「むぅー、わかりましたよー。これで終わりにします。」

 

「うん。わかればよろしい。じゃっ着てくるからそこでまってろ」

 

「うん!まってますね!」

 

いや、お前無駄に元気だな。どうした?なんかいいことでもあったのか?いや悪いことしかないと思うんだが、ほら俺に会ってしまったこととか。

 

「はぁ、なんでこんなことになったんだか。清に今度あったら締めてやろう。そうしよう」

 

そい言いながら、着替える。布と布がさすり合う音がしばし響きそれを鬱陶しく思ってくる。

 

「それで、着替えたが?」

 

黒いスーツに身を包みサングラスを目につけたしょうねn…………っておい!なんだよこの格好は!!

 

「うん!かっこいい!!あれだね、なんかこう、えーじぇんと?みたいだね!」

 

「いや、そこはエージェントよりSPの方が分かりやすかっただろ。」

 

「そうそう!それそれ!」

 

「なんかお前由比ヶ浜みたいなやつだな」

 

「由比ヶ浜?誰それ。早く次行くよ。」

 

「へいへい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるカフェで話をしている。人はだいぶ空いていて、俺らの話し声が結構響く。

 

「それで、今日はどうだった?楽しくは………なかったよな。普通に考えて」

 

「むぅ、そりゃそうだよ。比企谷くんは、終始目逸らしっぱなしだし、会話はかみかみだし。苦笑い多いし」

 

「お、おう悪かったな。お前のノリについていけなくてな。」

 

「むぅー、そういうところもだよ!そこは無理にでも俺が悪かったっていうところだよ!」

 

「は、はは、そ、そうだな。」

 

「でもまぁよかったです」

 

「は?」

 

「点数つけるなら20点」

 

「それは百点満点でだよな?」

 

ここで、20点満点でとか言ったら八幡的にポイント高いんだがそれは絶対にあり得ないだろう。

 

「そりゃ百点満点で、ですよ。内割は、彼氏っぽくなかったのが30点マイナス。ちょっとキモかったのが20点マイナス。私基準の彼氏を演じてくれなかったのが50点マイナス。」

 

「いや、最終的に0点になっちゃったし」

 

「でも、イケメンだったのと、私のレンタル彼女をする理由の話を聞いても笑わなかったので20点!ですよ!」

 

は?笑う?あの話のどこに笑う要素があったんだ?笑う箇所なんて全くなかっただろ?

 

「は?あの話に笑う要素なんてなかっただろ?」

 

「ふふっ、みんなはそうじゃないみたいですよ?」

 

「は?よくわらかないんだが。」

 

「私、こういう話を普通にできる人って今までいなかったんです。でも、比企谷くんと話してるとそんなのどうでもよくなってて、なんで話せなかったんだろうとか思うの」

 

「ん?別に俺じゃなくてもそういう話は誰にでもできるだろ。」

 

「できないよ、まっ、そゆこと!私は話したかったの!」

 

「ふーん。いいんじゃないか?話さなくても。話すのなんてただの自己満足だろ」

 

「は?なんでいい話風にまとめてるところを汚すんですか?」

 

いやいやいや、目が怖いからハイライト消えてるから。マジ怖いその目を俺に向けないで!!

 

「だってそうだろ。聞いて欲しいなんて自分の承認欲求が働いてるからこそだ。本当に話したくないことは話さない。聞いて欲しいからこそなんだ。」

 

「は、はぁ。」

 

「つまるところ、お前は誰かに話せばそれは達成されたわけで俺に話すことでもなかったってことだよ」

 

「いや、なんでその結論に至るんですか!私はチャチャを入れずに聞いてもらえたのが嬉しかったのに!!」

 

「いや、後からがっつり話変わってだだろうが。別に感動要素なんてないだろ」

 

「そんな、なんでもないかのように話せるのが羨ましかったんですよ!!」

 

「あぁん?しらねぇよそんなこと!」

 

「なんですって!!」

 

「あ?」

 

もう、この子何?誰か!誰かこの物凄い気まずい雰囲気をどうにかして!なんで喧嘩見たくなってんだよ!

 

「呼ばれて飛び出てひゃっはろー!!あれーなーに喧嘩しちゃってるの〜」

 

「いや、呼んでないんですけど。てか来ないでくださいよ!何?俺にGPSでも埋め込まれてる?なんで俺のいるところがわかった」

 

「ん?そんなの直感と勘だよ?私が八幡のいるところ見つけられるのは主にその部分!」

 

「え、え、え?何この超美人なお姉さん。も、も、もしかして比企谷くんの彼女?」

 

「正解〜私は八幡の彼女の雪ノ下陽乃です!ところで貴方は〜八幡の何?」

 

「わ、わ、私は、私は比企谷くんの彼女です!!」

 

は?何言ってんのこいつ。馬鹿なの?馬鹿でしょ。やめて!ばちばち火花散ってるから!!

 

「ふーん。あ、八幡は私の八幡だからあげないよ?これ絶対だから」

 

「え?比企谷くんは私のですよ?あげるわけないじゃないですか」

 

「いや、お前らどっちも彼女じゃないし、彼女なんていらないから。やめて!」

 

「え?そうなの?」

 

「そうだったの?」

 

「「なーんだ。」」

 

いや、俺に彼女なんているわけないだろ。馬鹿なのかこいつら。俺に彼女いるんだったらこんな場所いないわ!!もっとこう、セレブな場所で『ザギンでシースー行っちゃう?』とか言ってるわ!

 

いや、それ彼女いても言わないな。俺には縁のない場所だ。

 

「はぁ、ねぇ、貴方これから話さない?」

 

「はい?何を話すことがあるんですか」

 

「八幡のこととか話すよ?これまでの八幡君のこと。」

 

「はっ、、それは是非!」

 

「じゃっ、八幡君またね!」

 

「ひ、比企谷君またね」

 

「あぁ、少なくとも更科とはまた会うことはないだろうな。」

 

「むぅー。じゃあね!」

 

そう言ってカフェを出て行く。

 

はぁ。やっぱ、彼女とかいらねぇ。俺に彼女とかいたら1週間で別れる自信あるわ。うん。



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第三十一話捻くれぼっちは人気少女の夢を見ない

あれから1週間がたった。

なんにやかんや言って陽乃さんは俺に無理やりレンタル彼女をさせたり、清の方はうまく行って彼女の方が懐いていたみたいだし、チッなんだよ清隆君って。リア充は爆発しろ!

 

と言うことで、清は何度か桜沢すみという女の子を呼び出しデートをするうちにデート以外でも会うようになったとか。

 

ちっリア充は爆発しろっての。

 

俺はと言うと生徒会はこの時期物凄い忙しい様で、ざわざわとする騒音がなる生徒会室の中一人カタカタとパソコンを弄っていた。

 

生徒会予算、年中行事の書類整理、新入生のデータベース管理。

 

などなど、仕事が山積みでパソコンから目が離せない。

 

くそ、清は今この瞬間あの子と遊んでるってのに、なんだよあいつぼっちじゃなかったのかよ!!

 

ちらりと見えるその顔には一筋の涙が溢れる。

 

く、悔しくなんかないもんね!!

 

と言いながらもめっちゃ悔しい。あいつは先に彼女作っちゃう人間なんだろうな。友達に『あ、俺彼女できたからわり、遊びいけねぇわ』みたいなこと言う奴なんだろう。そして皆は心の中でリア充は爆発しろと絶叫する。

 

くっ、もう解任しちゃおうかな。

 

ま、そんなことより仕事仕事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえばー、今日は小テストありましたよねー。陽乃さん」

 

「えー?あー、あったねー」

 

なんだこの噛み切れないかんじ。絶対なんか隠してるぞ陽乃。こう言う時の陽乃さんの慌てようは異常。すぐバレるから前のような凛とした感じがいいと思うぞ。あれはあれできついか。

 

小テスト。毎年行われるらしいが………毎年行われると言う以外は何も怪しいところなんてないんだよな。

 

あれ?毎年行われるなら、過去問とか同じ問題なんじゃね?ほら、学校側がいちいち考えて作るのめんどくさいし、実力を図ると言う点で気づく生徒がいるかどうか試す機会としては絶好だろ。やっべー俺冴えてるー。

 

「ふふふ、陽乃さん。今期のテスト売ってくださいよ」

 

「ははー、やっぱやるねぇー八幡は」

 

「へへ、陽乃さんほどじゃないですよ」

 

「で、何ポイントで売って欲しい?」

 

「3万ポイント出します」

 

「いいよー。明日まで待っててね」

 

「ね、ねぇ、比企谷くん。テストなんか買ってどうするの?」

 

一之瀬がぽかんとした顔で聞いてくる。

 

あぁ、こいつ今何も考えてねぇな。口開けてぽかんとしてるとかアニメ以外で初めて見たわ。ほら、目を丸にしてるぞ。

 

「まず仮説を立てます。毎年度のテストは同じものである。ここまではいいか?」

 

「え?そうなの?」

 

「お前最近由比ヶ浜に似てきたな」

 

「に、似てないし!!」

 

「ほらそう言うところとかさ。で、仮説を立てた時、一つの理論が邪魔をするそれを理論Aとする。」

 

 

「りろんえー?それでそれで?」

 

「お前とりあえず、由比ヶ浜と付き合うのやめたらどうだ?もうそこまで行ったら由比ヶ浜となんら変わらんぞ?」

 

「むむぅー、由比ヶ浜さんは馬鹿だけど私もあんなんじゃないもん。馬鹿にしないで」

 

「いや、その発言がもう由比ヶ浜を馬鹿にしてるんだが。はぁ、それで、その理論Aに当てはまるものは?」

 

「当てはまるー。うぅーん。あっ、過去問は今年とは全く違う内容であるとか?」

 

「そうだな。まぁ、これは連続体基礎論といって、その条件に当てはまるもののまぁ平面上にある情報を収束して、一つの線にする。その中ではある意味矛盾も含むが、そこに決定性があれば後付けできるってことだよ。だから、この場合、情報量が勝っていて、信頼性があるのはテスト内容が同じだと言うことだ。」

 

「れんぞくせい?うぅーん。頭痛いなぁ」

 

「…………今度雪ノ下に徹底授業してもらうか。陽乃はわかりましたか?」

 

「うん。つまりは当たって砕けろだよね!因みに、私に当たってくれてもいいんだよ?今なら砕けません!」

 

「いや、そう言うのいいんで。やっぱわかるんだな」

 

「まぁー、私も八幡君の時もわかってたから、クラスの全員に配ったしね」

 

 

「さすが陽乃さんです。じゃっ、これ3万ポイントです」

 

「はい確かに。でも八幡も男らしいね〜」

 

「ふっ、当たり前ですよ。なぁ一之瀬」

 

「えっ。な、なんのことかなぁ。」

 

「おいおい。なぁ陽乃さん」

 

耳打ちで話す。マジでやばいぞこの一之瀬は可愛いけど、Bクラスの委員長?としては頼りない。ほらDクラスのリーダーを由比ヶ浜にしてみろ。クラス崩壊は…………しそうにないと言うか、成立しそうなのが怖いんだが。やっはろーとかいいながらクラスが団結してそう。

 

「考えることを放棄しているっていうか、馬鹿になってますよね」

 

「そうね。由比ヶ浜さんと付き合っていたってのもあるんだろうけど、一つは八幡君の存在かもね」

 

「ふっ、まぁそんなところだとは思いましたよ。つまり、俺に頼りすぎていると」

 

「そう。最近はいつも比企谷君の隣にいるから私は何も考えなくてもいいって思ってるんじゃない?」

 

「と、いうよりかは由比ヶ浜見たくなっちゃってるんですけど………」

 

「そうなんだよねー。声が似ているからか、由比ヶ浜ちゃんにしか見えない。」

 

「そうなんだよな。はぁ、どうす………「えいっ」……っと、わわっ」

 

いきなり陽乃さんに押され、バランスを崩してしまう。っとととと、うわっ。

 

後ろにいた一之瀬を巻き込んで転げてしまう。

 

「うわーーー!!」

 

ガシャン

 

と、音がして椅子から転げ落ちた一之瀬は、俺の下に転がる。

 

あれ?俺の下?

 

恐る恐る下の方へ視線を向けると、一之瀬が下敷きになっている。あれ?これってもしかして、

 

ラッキースケベですか?

 

そう、俺は一之瀬の豊満な胸を鷲掴みにしていた。はっ!何してんだ俺よ!だから手を止めてくださいお願いします。

 

「い、いやっ、で、で、でも、ヒッキーなら……」

 

「いやいや、え?ヒッキー?」

 

「ひ、比企谷くんなら……」

 

「言い直しても同じだから。はぁ。で、何がしたかったんですか?陽乃さん」

 

「ふふーん。胸を鷲掴みにして謝りもしないんだー」

 

「ごめんなさい。一之瀬さん」

 

「あっ、う、うん。いいよ。」

 

一之瀬は目を逸らし顔を真っ赤にしている。はぁ、今日のことは悪いのは俺だし今度何か奢ってやらんとな。

 

「はぅー、陽乃わかっちゃったー!君!一之瀬さんじゃない!由比ヶ浜さんでしょ!!」

 

「は、はぁああああああああああ?何いってんの陽乃さん」

 

「えぇー?八幡ならわかると思ったのにー。さては一之瀬さんのことあまり見てない?本物の一之瀬さんにちくっちゃおうかなー」

 

「やめてください。見てます。見てますから」

 

「へぇー、あの豊満な胸を?いやらしいねー。私ので我慢してよもう。」

 

「なんなんだこの謝り損な感じ」

 

「ということで!由比ヶ浜さん!一之瀬さんのところに行くよ!」

 

当の一之瀬IN由比ヶ浜はぽけーとしている。な、なんかその体でやっても似合うのか、も、もしかして一之瀬も実は馬鹿なのか?いや、それはないな。多分。

 

「な、なんで私のこと分かったんですか?」

 

不思議とばかりに聞いてくるが、陽乃さんがわからないことなんてないでしょ。頼れるお姉さんだぞ?

 

「ふふん。まぁそれはいいから。いくよ!一之瀬さんが大変なことになってるかもしれない」

 

「はぁ。わかりました。」

 

「わ、わわっい、いこうか。」

 

なんで俺の周りには事件しか転げ落ちてないのだろうか。



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第三十二話捻くれぼっちは人気少女の夢を見ない中編

「で、一之瀬と由比ヶ浜お前らなんか心当たりあるのか?」

 

「え?私は全く心当たりないけど」

 

今、由比ヶ浜と、一之瀬と陽乃と俺とでカフェに来て話をしている。

 

このカフェも使い慣れたなと思いながら、中々良いところだと思い直す。

 

リア充が、たくさん入り浸っているところを除けばだが。

 

ところで俺らは側からみればリア充に見えないこともないのか?

いや、俺がリア充なんてありえない。天と地がひっくり返るくらいありえない。寝言は寝ていえ。

 

というわけで、一之瀬と由比ヶ浜がなぜ入れ替わっているのかその経緯を問いただす。

 

「わ、私もないかなぁ。あはは」

 

「ダウト。お前そんなんで騙されるとでも思ってんのか?」

 

「うぐっ。い、いやー私何もないよ?学校生活楽しいし」

 

「なんで、俺が学校生活のことを聞いていると思ったんだ?」

 

「うぐぐっ…………分かったよ。言うよ。でも絶対何もしないでね?」

 

「はぁ?俺が何かすると思ってんのか?」

 

俺は何もしないというか何もしないで生きているまである。人は何もしなくても生きていけるのだ。ソースは俺。休日とかバイトだるくてばっくれてばっかだけど生きていけてる。

 

「ヒッキーは、絶対なんかする人だから」

 

「はぁ、言ってみ。何もしないから」

 

「お願いだよ?絶対だからね?」

 

「てか、そういうのは雪ノ下とかに喋ってないのかよ。あいつ絶対なんかするだろ」

 

「だから、喋ってないんだよ。それに当事者だし、そんなわけだから」

 

「ふーん。まぁ、言ってみろよ。」

 

「うん。じゃあ喋るね。私、総武中の時はスクールカースト上位なんて言われてきてたけど、ゆきのんたちと話しているうちに変わっちゃったじゃん?」

 

「まぁ、あいつと関わっていると無理にでも変わるよな。」

 

「私は変わった。それを私は良いことだと思っている。ここまでは良いかな?」

 

「うん。俺もそれは良いことだと思ってる」

 

「ねぇ、一之瀬ちゃん?だよね。私たちいらなくない?」コソコソ

 

「えっと、で、でも私は少し関係あるし聞かなきゃ」コソコソ

 

「えぇー、私帰って良いかな?」コソコソ

 

「だ、ダメですよ!」コソコソ

 

「そこうるさい」

 

「「はい」」

 

こそこそと何話してんだよ!ちょっと俺も混ぜてください。いや、俺が混ざったら気まずくなること請け合いだな。

 

由比ヶ浜は変わった。それは分かっていることだ。いろいろな出来事があってあいつだけでなく俺らは変わったんだ。

 

だが、その話とどう関係してくるんだ?

 

「でね、ここからが問題なんだけど。私は周囲に合わせて生きてきたじゃん?それがなんだか面倒になってきて、素で話すようになったんだ」

 

「おう、由比ヶ浜も成長するんだな」

 

「うっさい。ヒッキーだって変わってるじゃん。で、そしたらそれはそれで問題になって、話についていけなくなったりしたらハブられることが多くなって」

 

「あぁー、分かるわぁ。よくわからん話でも知ってるふうに喋らなきゃ雰囲気ぶち壊しにすることって結構あるよな。」

 

「私は知らないことなんてないけどね」

 

「陽乃さんは別次元だからあてにならないんだよ」

 

「ぶぅー、ひーどーい。泣いちゃうよ?」

 

「おう、泣けなけ。あ、ほんとに泣くのやめて!俺が悪いみたいじゃん」

 

「ふふん。わかれば良いのよ」

 

「なんか納得いかねぇ。まぁ良いや続けろ」

 

「あれ?ヒッキーって陽乃さんと仲良かったっけ?続けるね。

 

最初は小さなことだったんだけど、どんどんエスカレートしていって、初めはハブられたり、既読無視とかだったんだけど、話しかけても無視してきたり、終いには…………うぅっ。」

 

「話したくないなら無理に話すな。ふむ。そういう話か。で、そこがどう繋がって入れ替わるなんてことになるんだ?」

 

「………私何やってるんだろうって思い出してきたところに、一之瀬さんがいたの。みんなに囲まれて、信頼されて、それが羨ましかった。なんで私もこうしなかったんだろうって後悔もした。」

 

「はぁ、なるほどな。その羨望が、功を奏したか、わるく働いたのか、今こうなってると」

 

「そう。だから全部私のせいなの。私が悪いんだよ?だから、ヒッキーは何もしないで。お願い。」

 

「そう言われてもな。………陽乃と一之瀬は今の話聞いてどう思った?」

 

「最低だね。私のクラスにそんなのいたらどうなってたか」

 

「私だったら〜徹底的に潰して、並べて晒しあげるけど」

 

「とりあえず陽乃は自重しような。まじで怖いから。ふっ、ふふふふっ、ふははははは。」

 

「えっ、どうしたのヒッキー。」ヒキッ

 

いや、露骨に引くのやめて!名案思いついただけだから。まじで引かないで。でもこの案は櫛田がいないと成り立たない。しかも喧嘩両成敗みたいなやり方だしな。いっそ俺がヘイトスピーチでもしようか………

 

「ヒッキーはやめて!ほんとお願いだから。私の問題は私で解決するからさ。」

 

「三浦がいたらな。」

 

「あー優美子ね。優美子がいたらこうはなってなかっただろうし………」

 

「まぁ、あいつがいたら尚めんどくさい…………ん?面倒臭い?」

 

「どうしたの?比企谷くん」

 

「あぁ、多分あいつらはことを大きくしたくないよな?せめて身内だけで済ませたいからクラス全員でとかはしていない」

 

「クラス全員で無視とか八幡じゃあるまいし」

 

「俺は余裕であったけどな。」

 

うん。学校全体で無視しようってのもあったな。校内放送で晒し上げ、学校全体で無視しようって呼びかけて…………くそっ、なんで先生まで無視してやがったんだよ。

 

「相手は晒しを怯えてる。そこをつけば簡単だ。あちら側がそうでるならこちら側はもっと多い人数でかかれば良い。敵を晒し団結力を補うこともできるし……」

 

「ね、ねぇ、ヒッキー?」

 

「八幡は、何か考えてる時は黙り込むからね〜。いやーこういうところも凛々しくてかっこいいんだけどね〜」

 

「よし。明日から学校が楽しくなるはずだぞ。良かったな由比ヶ浜。」

 

「はい?」

 

「まぁ、聞いてくれ、お前が虐められてる証拠はあるところから入手するとして、どう対処するかだ。」

 

「いや、だから何もしないでって……」

 

「その言葉は拒否させてもらう。第一それでお前が傷ついて良い理由にならないだろうが。

 

まっ、それは置いといて、対処方法だが、俺がお前を虐めている体にして、同情を引き寄せる作戦だが「それはだめっ!!」………分かってるよ。それはしない。だから…………

 

 

お前今一之瀬の体だよな?だったら、その生徒たちが見ているところで、由比ヶ浜と同盟を締結しろ。

 

『私一ノ瀬帆波は、由比ヶ浜結衣に、同盟を締結します。締結する内容は、Bクラスに流れた有益な情報の提供。Dクラスに流れた有益な情報の提供。

 

提供する情報は自由。

 

なおその情報は各クラスの全員に通達すること。虚偽、転載、コピー等は認められない。』

 

ってな。」

 

「は?はははっあははははは。八幡くん、やーっぱ面白い。そんな考えなんだ。でも、ちょっと変わったね」

 

「ふ。まぁ、これで良いだろ。「ダメだよ!私は良いの!勝手なことしないで!!」はぁ。だめだ。これが一番穏便な解決方法なんだ。

 

まぁ、櫛田を通して周知の事実として流すことはできなくもないが、それは由比ヶ浜がちくったとかそういうデマが流れても癪だしな。」

 

「そ、それでもだめだよ!!私は……私は………と、とにかくだめなの!私は帰るね」

 

「はぁ。まぁ、これはお前が解決する問題でもあるしな。でもこれは覚えとけ。誰か頼らないとお前死ぬぞ?」

 

「は、はぁ?なんでそうなるの?」

 

「人間誰かに頼らないといけない場面ってのは多々ある。それを全て掻い潜って、一人で解決することも出来る。それは俺がやってきたことだがな。

 

でも、お前はそれをする覚悟があるのか?」

 

「そ、それはないけど。」

 

「だったらするな。お前はお前でいろ。それだけだ。まぁ、友達を大切にしろよ」

 

「ヒッキーもたまに良いこと言うよね。分かった。でも、一之瀬さんには迷惑するね。」

 

「あははー、なんせ今は私が由比ヶ浜さんの体だしねー。良いよ。この問題が解決するまで手伝ってあげる。だから、由比ヶ浜さんは待ってて!」

 

「一之瀬さんも優しいね。バイバイ。ヒッキーと、一之瀬さんと陽乃さんも」

 

「バイバイガハマちゃん」

 

「さよなら、由比ヶ浜さん」

 

とてとてと帰っていく。忙しなく響くその音には焦りが混じっているように見えたが、やはりしくじったか。

 

「ふふー。私はあの方法を出した理由知ってるよ〜。でも、今は一之瀬さんがいるから黙っておくね」コソコソ

 

くっ、やっぱり気付いていたか。陽乃さんは本当に怖い。敵に回した時勝てる気が全くしないのもあるが、その知性が本当に怖い。

 

「なぁーに二人で話してるんですか?」

 

「あはー、なんでもないよ一之瀬ちゃん。一之瀬ちゃんも大変だねー」

 

「そうですよ。今日体を見たら全く違う人になってたんですから。まぁ、仲が良い生徒で本当に良かったです。これが、全く知らない生徒とかだったら」

 

違う生徒だったら。一之瀬は仲良くなって、そこから解決に導いていくだろう。だが、一之瀬はそう考えない。謙虚とでもいえばいいのだろうか、一之瀬は自分を持ち上げて考えることがない。ほんといい奴だよな。お嫁にもらいてぇぐらいだよ。

 

「はぁ。一之瀬は何にもしなくていいよ。恐らく、動くのは」

 

動くのは誰であろうか。そんなの決まってる。由比ヶ浜の親友ともいえる人物で、俺が何度も罵倒されてきた。その人物は

 

そんなの決まってる。

 



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第三十三話捻くれぼっちは人気少女の夢を見ない 後編

昨日は話し込んで、作戦を考えた。由比ヶ浜が言った何もしないなど愚の骨頂だと言える。由比ヶ浜はそれでいいんだろうけど、自分自身が傷ついてそれを周囲が認めてるなんてだめだ。

 

自分だけが傷ついていい世界なんて誰も傷つかない世界じゃない。誰も傷つかない世界というのは、こうやって作るんだ。

 

見せてやるよ。由比ヶ浜お前が望んだ世界を。

 

 

 

 

 

 

 

 

先程、メッセージを開いて、一之瀬が書いたメールは全部無視されていた。

 

 

「うぅー、比企谷くん。やっぱり結構きついねこれ。」

 

「おう、よく耐えたな。褒めてやる」

 

ナデナデ

 

頭を撫でながら褒める。一之瀬にものしかかってきた虐めの重荷は後々成長の糧となるだろう。だから、その未来への投資として、僅かながらの褒美。

 

撫でてやることなんて誰にでも出来るが、そこに少しでも気持ちが混ざっているといいなと思いながら。ゆっくりと撫でる。

 

「はぅー、ね、ねぇ、比企谷くん。本当にやるのあの作戦。比企谷くん目立っちゃうよ?」

 

「いいんだよ。ぼっちは目立ってこそ本当のボッチとなる。あれ?これやって俺無視とかされないよね?」

 

「あははー、比企谷くんに話しかける人がいるのかどうかも怪しいけどねー」

 

「その言葉が痛い。ぐさっときたぞ今。まぁ、大丈夫だよ。俺がどんなに批判されても、やることは変わらん。」

 

「ふーん。比企谷くんって変わってるよね」

 

「はぁ?いきなり何言うんだ?俺なんか普通だろ。むしろ普通すぎて俺が浮くまである」

 

「いや、普通じゃないよー。比企谷くんはいい意味で変わってると思うな〜」

 

「はぁ。いい意味でも悪い意味でも変わってるって言われて喜べるようなポジティブなやつではないんでな」

 

「そう言うのなんて言うと思う?」

 

一之瀬は試すような目で俺を見てくる。ここで俺はなんて答えればいいのだろうか。正解はなんなんだろうか。と逡巡し、行き着いた答えは

 

「ふっ、男らしいっていうんだろ?」

 

「ぶっぶー、違います!そう言うのひねデレって言うんだよ」

 

「………なんだその造語聞いた覚えがあるんだが」

 

寧ろ言われ慣れてその言葉が染み付いてきたまである。いやいや、俺はひねデレじゃねぇっての。なんだよひねデレって。俺のことなめてんのか?

 

その時一之瀬はばっと振り向いて、髪が巻かれ、風となってこちら側に吹いてくる。

 

桜の匂いのするシャンプーか何かを使っているのか、桜のフレグランスが漂い、こちら側に吹いてくる。

 

その匂いは確かに一之瀬の存在を際立て、俺に伝ってくる。

 

「私は好きだよそう言うの」

 

俺はそんな一之瀬の顔を見ることも出来ず、確かにある一之瀬の存在を姿からか由比ヶ浜と重ねてしまい、どちらがどちらか判別がつかない。

 

だが、しばしの緊張から解かれ、やっと一之瀬と由比ヶ浜の違いというものに気づき、はっとする。

 

それに気付いても、やはりそれは照れ隠しだったのかもしれない、と思い直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でさー、それでさー」

 

「だよねー、それまじあるわー」

 

「ちょっ………」

 

由比ヶ浜(中は一之瀬)が試しにとばかりに話しかけようとするが、あははーと笑いながら完全にわざととしか見えないぶつかり方をする。嫌味なやつだな。

 

しゅんとなっている一之瀬の側によると、慰めに頭を撫でてやる。流石に可哀想だしな。中身が違うのにそうやって避けられるのは辛いことだろう。

 

そういえば由比ヶ浜は今どうやっているのだろうか。

 

俺の想像ではBクラスで薄気味悪い笑みを浮かべながら仲良く振る舞っているように思えるが………それもそれで、由比ヶ浜ならうまくやれそうなのが怖いところだよな。

 

「とりあえず、ホームルームが終わるまでの辛抱だ。由比ヶ浜には知られるなよ。あと、…………雪ノ下。お前には世話になる」

 

「本当よ。なんで私が」

 

雪ノ下こいつの存在が、今は必要だ。俺らは教室の隅で、話しているが、俺はそう長くは居れない。別クラスだし、さっきから視線が痛い。

 

「すまん。お前の助力が必要なんだ。由比ヶ浜といつも一緒にいるお前にしか頼めない。お願いだ」

 

「そうじゃないわ。なんで先に私に話してくれなかったの?」

 

「は?」

 

俺にぶつけられる言葉が俺の考えていたものとは相反する内容であり、それが本当に俺にぶつけられた言葉なのかと半疑になる。

 

「由比ヶ浜さんは私に知られるのが怖かったようだけど、その話は昨日のうちに私に知らせておくのが筋なんじゃないのかしら。」

 

「そ、そうだな。でも、お前が反発する恐れが「ないに決まってるじゃない。」……はぁ?」

 

自分でも気が抜けたような頓狂な声が漏れる。は?何言ってんのこいつ。本当に雪ノ下なのか?

 

「私はそう言うのに敏感だと自負していたのだけれどまだまだ未熟みたいね。私が反発なんてすると思う?それなら貴方は私のことをまだまだ知らないってことになるわね」

 

「ふっ」

 

つい鼻で笑うが、悪い意味じゃない。いい意味で笑ったのだ。気の合う仲間が見つかった時のような、そんな笑い。

 

やはりこいつは俺が思っている以上の人間だ。期待を外させてくれない。

 

「とにかく、私はその作戦乗ったわよ。それよりも貴方聞きたいことがあるのだけれど……」

 

「なに?お前に聞かれるようなことなんてないと思うんだけど」

 

「貴方就任の儀の時派手にやらかしたわよね」

 

「ああ、あれね。ぼっち委員会。いいと思うんだけどなぁ」

 

「別に存在を否定してないわ。貴方が委員長ということが癪なだけで」

 

「は?俺以外の敵人がいると思ってんの?」

 

「いるじゃない。私よ!私こそがぼっち委員会の委員長いや、総裁にふさわしいとおもうの!」

 

「え?」

 

こいつなに言ってんのと視線で送ると、少しびくっとなるが、それ以外に反応がない。

 

ちらと一之瀬の方を見るが、雪ノ下の剣幕に捲し立てられたのかぽけーとしている。

 

つまり一之瀬もこいつなに言ってんのと思っているのだ。

 

「ふ、ふたりしてそんな顔しなくてもいいじゃない。私はそう思って口にしただけなのだし……」

 

「ああ、そういう意味じゃないんだけど……いやそういう意味だな。まさになに言ってんのこいつと」

 

「ふ、ふーん。比企谷くんも偉くなったものね。昔は私に毒舌を振る舞われ、ひいひい言ってたくせに」

 

「ひいひい言ってた覚えは一切ないんだが」

 

「兎に角、私こそ真のぼっちよ!貴方が総裁なんて認められないわ!ということで、私も委員会に入れなさい。」

 

「いや、お前のその勝負心もうちょっと違うとこで生かせないのか?」

 

「何か?」

 

「い、いえ、何もありません。だからその目はやめて!」

 

「ふん。わかればいいのよ。で、私の役職はなにかしら」

 

「へ?」

 

こいつちょっと陽乃さんに似ているな。似ているいうか姉妹なのだし当たり前のことだと思うけど、こういうところ少し似ている。

 

変なとこで真面目になんだよなぁ。

 

「………今までの詫びとして副総裁、副委員長の役職を任します」

 

「光栄ね。じゃあ。この話はこれでおしまい。貴方が副会長になっているという話も、由比ヶ浜さんのことでの詳細も聞かないわ。

 

だから、派手に暴れましょう」

 

「そうだな」

 

鼻で笑い、これからやることを脳内でもう一度シュミレートする。

 

さぁ、派手に暴れるか。

 

思ったんだけど、副総裁ってなに?お前やっぱぼっちだったのな。変んねでなお前も。てか、由比ヶ浜いるんだからぼっちじゃなくね。お前やっぱずるいわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホールルームが終わる鐘が鳴ったあと、俺はDクラスに駆けつけて、教壇に立つ。

 

隣には雪ノ下がいるが、それも必要なことだ。

 

この解決策では雪ノ下を後ろ盾にする。

 

まぁ、ただの宣言に近いけどな。

 

「では、貴方達には聞いてもらうことがあるわ」

 

教室の後ろの席では由比ヶ浜の姿をした一之瀬が怯えている。クラスで信頼を寄せられている一之瀬には結構辛いことだろう。

 

生徒達はびくっとして、俺たちに向く。

 

中には席を離れ友人らと話している生徒もいて、席を後ろ側に向けていた生徒もいたが、こちらに向く。

 

だが、今すぐにやめさせることなので、問題はない。

 

正攻法で攻める。

 

「単刀直入に言う。このクラスでいじめが起きている。その事を何人の生徒が知っている。」

 

パラパラと手が上がるが、その数は3〜4人くらい。その中にはいじめをしているグループの人間もいたが、誰も自分からいじめるような人ではなかった。

 

「ちょっ、あんたなに手をあげてんのよ」コソコソ

 

おーい、こそこそ言ってるが聞こえてるからなー。馬鹿かよあいつ。まぁ情報は割れてるから意味ないんだけどな。

 

「おーい、虐めてるグループは割れてるからなー。」

 

「さて、このヒキガエルは置いといて」

 

生徒はぽかーんとしている。堀北なんかはクスクス笑ってるけどな。覚えとけよ!あいつ。

 

「由比ヶ浜さんを追い詰めたのは誰?今手をあげるなら容赦してあげるけど、手をあげないなら………」

 

「と言うわけで、虐めの首謀者〜手を挙げろ〜。分かってるからな〜」

 

シーンとした教室に手をあげる生徒など見受けられない。

 

やはりでないか。

 

「ふっ、ふふふふっ、ふははははははははは。お前ら。最初聞いたよな?学校はいじめに敏感だって」

 

それを聞いて数人の生徒がびくっとする。ビンゴ。やはり、篠原らの下位グループだったか。

 

清ないす!クラスのグループラインのチャット情報を3万で買ったが、まじでありがたい。やっぱ持つべきものはぼっちだよな!

 

ちらともう一度生徒達に向き直る。既に汗をだらだら流している生徒もいるがもう遅い。

 

「そして、俺は生徒会副会長。お前らが虐めているところを見ればどう反応するかなんてDクラスでもわかるよな?」

 

「ちょっと比企谷くん。私もDクラスなのだけれどそのくらい考えなくてもわかるわよ」

 

その返答に高円寺が、ふふっと爽やかな笑みを浮かべる。

 

あいつ、こうやって空気を穏和させて、あいつらの反応を見ているのが分かってるな?

 

「さぁ、早く出ろよ。今なら許してやる。でないなら。。その時考えさせてもらうわ」

 

「ねぇ、私たち出たほうがいいのかな?」コソコソ

 

「い、いや、でも私は関係ないし。貴方が出なさいよ!」コソコソ

 

「そもそも、私はいじめるの反対だったし」コソコソ

 

「はぁ、出ないのか?十数えるうちに出ろよー、はい十!」

 

あえて緊張を増長させる数数えで、適当な声のカウントをする。

 

「九」

 

緊張を増長させる目的はない。ただ、早く出てきてほしいがためだ

 

「八」

 

ここから先は読めている。俺がなにをして雪ノ下がなにをするかも

 

「七」

 

「す、すみませんでした!!わ、私が、私が虐めを起こしたんです!」

 

確か、篠原と言ったか?あいつがリーダー格だったよな。なるほどね。責任追求はなし、か。潔いのか、ただ怯えた結果なのか、わからないけど。

 

「はぁ、ちゃんと出てきてくれたか。お前達が由比ヶ浜をいじめていた奴らだな。」

 

「はい、本当にすみませんでした。」

 

ほう、少しは立派なようだな。クラスの中心である教壇でちゃんと謝れるとは。

 

「まぁ、お前らがちゃんとけじめつけてくれるなら、それでいい。生徒会もそれ以上は求めねぇよ」

 

「け、けじめって………」

 

「まずは由比ヶ浜に謝ること。これは何よりも先にやれ。だが、今すぐやれとは言ってない。こちら側にも事情があるからな。その件が片付いたら謝ってもらう。

 

つまりは俺がその場をセッティングするから、お前達は待ってろ」

 

「は、はい。」

 

「お前らもだぞー佐藤と松下」

 

「「は、はいっ」」

 

揃って、返事をするが、片方はなんだか胡散臭い。あまり関わりたくないやつだな。陽乃さんの超劣化版みたいなやつ。

 

「次に、今月のポイントを由比ヶ浜にやれ。これは命令ではない。お前らに俺が提案するだけだ。勝手にしろ」

 

ポイントをやれってところでは少しびくっとして、僅かに顔を歪めた篠原だったが、次の言葉を聞いて安堵したかのような表情を見せた。

 

「次に、由比ヶ浜に仲良くしてやってくれ。これも命令ではない。……」

 

 

その時、偶然なのか、或いは移動教室か何かだったのか知らないが、一之瀬の姿をした由比ヶ浜が通った。

 

チラッとこちらを見て、少し残念そうに顔を顰めたが、すぐに正面を向く。

 

「あと、由比ヶ浜はお前らのことを憎んでいない」

 

「へ?」

 

「そんな驚くことか?由比ヶ浜はお前らについては一切怒ってねぇよ。寧ろうまくやれなかった自分に怒ってるくらいだ。」

 

「ほ、本当なの?由比ヶ浜さん」

 

泣きそうな表情で由比ヶ浜の姿をした一之瀬に顔を向けるが、一之瀬は。

 

ニコッと笑顔を向け、怒っていないとばかりに頷く。

 

「ゆ、由比ヶ浜さぁああん。ご、ごめん。本当にごめん!!」

 

3人とも一之瀬の元に走っていき、抱きつく。

 

結局俺はこう言うのが見たかったのかもな。ちゃんと解決して、前に進む。そんな姿が俺は見たかったのかもしれない。

 

「は、あははー。分かった。分かったからはなして〜」

 

「いいや、離さない。ごめん。ごめんね」

 

「私達もごめん。私が止めてればよかったのにね」

 

「私もごめん。由比ヶ浜さんとちゃんとそうだんしてれば…」

 

だから、お前は胡散臭いっての。もうちょっとちゃんと演技しような〜

 

「最後は言わなくてもいいだろうが、あえて言う。仲良くしろよ」

 

と言い。俺は教室をさる。雪ノ下はどうしただろうか。

 

俺の予想では、微笑をしながら、ゆっくりと席についたのだと思う。優しい微笑みを由比ヶ浜に向けながら。

 

やはり移動教室だったのか、移動していた、一之瀬の姿も、少し笑っているように見えた。

 

「ふっ、由比ヶ浜も明日の学校が楽しくなるといいな」

 

 

 

 

 

 

 

「なーに言ってんの。比企谷」

 

「はっ?!お、お前………」

 

恐る恐ると言った風に振り向く。その時間は妙に長く感じられ、それは振り向きたくないと言う意思の元かもしれなかった。

 

なんでここにいる

 

「久しぶり〜って言っても一年ぶりかな。比企谷」

 

「折本」

 

折本かおりの姿がそこにあった。

 

俺が捨てていった過去の変貌が、

 

見えた気がした。

 



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第三十四話些細な疑問

はい。私の小説では全て一日進行なので、執着心を持たないと物語が進みません。早く進め。そう思い、今回の回を書きました。
八幡は俺ガイルで起こった全てのイベントを消化しています。
折本はその賜物とも言えるでしょう。
だから、その先を見るために


すたーとです!


またしても、こんな場所にいるはずがないと思われる、折本かおりという存在が俺の思考を引き立てる。

 

雪ノ下等に関係するのか、それとも単なる偶然なのかは定かではないが、それは今関係のあることじゃない。

 

「何故お前がここにいる?どうして、この学校に来た?」

 

「比企谷は相変わらずだねー。私が来た理由なんてどうでもいいでしょ。取り敢えず再会を喜ぼうよ」

 

身を乗り出してそう言うが、俺はどうにも釈然としない想いを抱えながら、そんな気分じゃないと、呟く。

 

本当にそんな気分じゃないんだ。さっきまでの気持ちはどこへ行った。俺はつい先程まで今程の気持ちを抱えていなかったはずだ。

 

今のような暗い気分にはなっていなかったはずだ。

 

「そんなしけた顔してると人生損するよー。」

 

「俺は人生の半分は損して生きてきたからな」

 

「なにそれ、まじうけるんですけど」

 

「いや、受けねぇし。」

 

と、お馴染みと言えるような会話を交わすが、どうやってもモヤがかった思考は晴れない。

 

「質問に答えろよ。なんでここにいるんだ」

 

葉山の時もそうだ。総武中時代の頃のメンツを見ると思考にモヤがかかる。

 

何か引っかかるような、何か、大切なことを忘れているんじゃないのか。そんな気分になる。

 

「ははー、私はただ私のいける一番いい高校がここだったってだけで、何もないよ?比企谷さては疑ってるなー?」

 

「なにも疑ってねぇよ。ただお前がここにいることが不自然なだけだ」

 

「何気にひどっ。比企谷そういうとこ抜けないよねー。」

 

「まぁ、俺は俺だからな。」

 

「なにそれ?うけるんですけど」

 

「いや、だから受けねぇって。」

 

「まぁ、私はなにも理由なんてないんだけどさ。比企谷はどうなの?」

 

「は?」

 

「いやー葉山くんにも聞いたよ。比企谷はまず久しぶりって挨拶より先になんでここにいるのかを聞いてきたって。別におかしくはないけどさ」

 

「いや、そりゃ挨拶よりなんでここにいるのか聞くだろ」

 

「聞かないと思うけど。比企谷だけじゃん?そんなの聞くの。イェーイとか言って喜ぶと思うけど」

 

「いや、それはお前だけな。はぁ、なんでこの学校には昔馴染みが多いんだ?」

 

「そんなの知らないし。まっ、私達もまた会えたんだしさ。喜ぼうよ!」

 

「いや、喜ぶよりまず先に萎えたんだが」

 

「いぇーい!」

 

「い、いぇーい」

 

と、ハイタッチするが、乗り気に慣れない。俺自身に思うところがなかったわけじゃないのだろう。

 

ただ、何故自分は葉山らがここにいることを不満に思ったのだろう。そこが、突っ掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業中も何故か折本の言葉が突っ掛かって離れない。離してくれない。突き離し離そうとするのだが、時間が経つにつれそれは染み付いてくる。

 

何故俺は挨拶より先にここにいる事への疑問を抱いたのだろうか。

 

その疑問を俺は答えられずにいる。

 

俺自身に突っ掛かる問題でもないはずなのにそれは解いてくれない。

 

「はぁ。なんなんだろうなぁ」

 

一人思わずぼやいてしまう。授業中であるはずなのに、それさえも考えず、ぼやいてしまう。

 

「そこ、独り言言わない。八幡くん!次言ったら仕事量5倍だからね!」

 

「う、うす」

 

返事した声は自分でもわかるほどに腑抜けており、周囲も目を丸くしている。

 

数秒ほど立ち、自然に温和されていく雰囲気の中、ぽつぽつと笑うものが現れ、次第にそれは全体へと広がっていく。

 

わはははははははは

 

教室全体に笑いは広がり、少し暖かい空気に包まれるが、やはりその中にも折本はいた。

 

意識すると見つけることはたやすい。

 

それは逆に意識しなければ見つけることは難儀になると言えなくもないが

 

全く持ってその通りであるため、そんな声が出たら反論なんてできないだろう。

 

その時葉山はどうしていただろうか。

 

一人笑っていた。周囲に溶け込むことのない、屈託のない笑み。

 

それはどこか薄気味悪かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でさー、比企谷ー」

 

「な、なぁ、まずこの状況を教えてくれないか?」

 

そこには葉山、折本のペアで、俺に話しかける図が出来上がっていた。

 

いや、なんで?

 

折本が話しかけてくる、いや、折本が単独で話しかけてくることには違和感バリバリだが納得はいく。

 

どうして葉山も話しかけてくることになるのか。え?なんかした?俺。

 

「ははっ、比企谷は好意とかに疑り深いからな。人の好意にはまず何かが隠れてるじゃないかとか考えてるんだよな」

 

「あーそれあるー。比企谷小学校の時とかちょーきょどってたしー」

 

「う、うぐ」

 

痛いところをついてくるな。小学校の時は本当にやらかしたと思っている。はぁ、若かりし頃の思い出……………

 

いい思い出が一つも思い至らないのが味です。そう考えたら俺の人生既に毒味。青春なんて二文字は片鱗も覗かせない。悲しいかな、これが俺の人生だ。

 

「折本さん比企谷はそう言うところが面白いんじゃないか」

 

「そうだよねー。小学校の時とかはそんなこと全然考えなかったしー。」

 

「お、比企谷のいいところがわかるようになったのか?」

 

「うん!普段とかちょーきもいけど、やる時はやるよねー」

 

おいおい、二人して何話してんだよ。俺のいいところとか全然ないから。強いて挙げるとすれば専業主婦になりたいってことくらい?

 

「「いや、それはまじないから」」

 

「………葉山まで」

 

「はは、比企谷はいつまでもそんなこと言ってるからな。現実を見ろ。ほら」

 

「……ん?」

 

葉山がクラスメイトを指差して、見ろよと、促してくるためそれに首肯し、首をそちらに向ける。

 

やはり悲しいかな、クラス全員が首を傾げたり、目線を逸らしたり、あははーと苦笑いしてたり、引いたりしていた。

 

くっ、なんで俺たちの会話聞いてんだよ。お前らも各自で話してんだろが、集中しろ集中。

 

「ほらな。比企谷、現実はどうだった?」

 

「タバスコ一本飲みした気分だわ」

 

「はははー、そう言う意味わかんないこというのも比企谷だよねー」

 

「そうそう、八幡くんはそう言うところが楽しいよねー。愉快な仲間たちが集まるのも納得だよ〜」

 

「ねー。未だにきょどってるところを除けばいいところはいくらでもあるよねー」

 

「そうそう。折本さんも分かる?なんでこんな奴がと思っている奴らが、本当の八幡くんを見る所って本当笑えるんだよね〜」

 

「あ、それ昔のわた…………あれ?私誰と話し……星乃宮先生!?」

 

「はろろーん。はーい星乃宮先生で〜す」

 

「はぁ、何やってんだよ知恵。」

 

「「「「「「「知恵?!!!!!?」」」」」」

 

クラス全員が驚いたように発声するが、え?なに?なんか間違えた?

 

 

「ち、ちょっと比企谷、こっち来ようか」

 

葉山と折本がこっちに来いと裾を引っ張ってくる。え?どこにつれていく気?ま、まさか体育館裏で俺を締める気か?!

 

ひええ、怖い。




はい。続きます。この問題に対しては二話続いて疑問を解消するに至ります。長い目で見守ってください。
今日はもう二話くらい投稿すると思います。
ではではー


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第三十五話折本かおりは足元を見る

「なぁ、比企谷。お前星乃宮先生とどういう関係なんだ?」

 

いきなり直球だなおい。もう少し捻らなくてもいいのかよ。星乃宮先生なんかん?ってはてなマーク浮かべてるし、ちょっと可愛い。

 

「知恵と俺の関係なぁ。なぁ、なんなんだ?」

 

「ええー?私たちの関係は彼氏彼女の関係でしょぉ?何言ってるの八幡くん」

 

「いや、お前が何言ってんだ。悪いな葉山そういうわけだから。ってちょっと待て待て!お前ら絶対勘違いしてるぞ!!」

 

「い、いやー、比企谷も、大人になったんだねー」

 

苦笑いをして少し引いている折本と

 

「ふっ、俺はそれでも別にいいんだけどな。」

 

なんだか少し安心しているような葉山の姿があった。

 

「えぇー。なんか知恵誤解されてんだけど」

 

「私のせいなの?私は本当のこと言っただけなのにぃ」

 

なんか可愛いなこいつ。知恵の浮かべる顔色はまさにおねだりするときのそれだった。

 

昔、小学校の時にしてほしいこととかあったらこんな表情してたなぁ。

 

でもなんで今そんな表情をするんだろう。

 

俺は頭にはてなを浮かべ、知恵に聞く

 

「なぁ……………いや、なんでもねぇ。知恵はさ、俺がこの学校に来たって知ってどう思った?」

 

「え?そんなの元々知っ………じゃなくて、八幡くんがいるのを知った時すっごく嬉しかったよ?」

 

ちょっと言葉を詰まらせていたが、なんて言おうとしたんだこの教師。

 

まぁ、そう言ってもらえるのは本当にありがたいことだ。

 

「葉山はどうだった?」

 

続けて葉山にも聞く。俺は葉山に対してなんでこいつがここにと酷い反応を示したのだが、葉山はどうだったのだろうか。

 

「俺か?俺は比企谷がいてくれてよかったと思ったよ。違う学校だったらどうしようかとも考えてたしね。」

 

はい。希望通り?の回答ありがとう。そうだったなこいつは俺がこの学校に入学するのを知ってて入学したんだったな。

 

「じゃあ、折本は?」

 

「私?!私はえ〜っとー。言わなくてもいい?」

 

「はぁ?まぁ言いたくないならいいけど」

 

ええ、ここで言わないってことは俺に対して強烈な嫌悪感を抱いたってことですか?え?違うよね?顔を逸らさないで!

 

「まぁ、悪い感情じゃないから安心して?」

 

「それならいいんだが。そうか。少なくもとなんでこんなところにいるなんて回答はないわけだよな」

 

「俺は比企谷がいることがわかっていたからもあるから、もし知らずに入学してたらそんな感情を抱いても仕方ないんじゃないのか?」

 

「そうか?」

 

「そうだよ。別におかしなことじゃないさ。なぁ折本」

 

「私は少しなんでここに比企谷が!って思ったけど……」

 

「思ったのかよ。」

 

いるじゃねぇか。

 

「てか、お前らいつの間に仲良くなったんだ?」

 

「えー?それ聞いちゃう?まぁ、たいしたことないんだけどね。あの頃葉山くんにいろいろ言われちゃったじゃん?」

 

「ジャンって言われても………あれか?あの合同イベントの時のやつか?」

 

あの時は俺も少し荒ぶっていた。だから、反省すべき点はいくつもあったけど、葉山が言ったことは少なからず正しかった。

 

「そうそれ。あの後さ、いろいろ考えたんだ。比企谷がさ、悪く見えちゃう理由ってなんなんだろうって考えたら私にもその理由があるんじゃないかと思って」

 

「は?お前にそんな理由……「あったんだよ。それで、見る方の見方が悪いと見え方も最悪になるって気づいて」

 

その言葉を聞き、俺は葉山から与えられた言葉だけでここまで変わったと考えても合点がいくわけでもなかったが、納得のいく言葉でもあった。

 

「見る方の見方が悪い、か」

 

「そう、見方が悪くなっちゃうと、後はなし崩し的にバタバタと良いところが倒れていって」

 

恐らくそれはいじめの助長。バタバタと倒れていく良点はいつしか悪点となり、それら全てを含めて対象者への悪意へと変わる。

 

「ああ、それで、悪いところだけしか見えなくなる、か。」

 

 

「そう。そんな感じだと思うの。だから、私は変わろうと思ったんだ。周囲に合わせるとか、人の見方とか変えてみようと思った。」

 

「でも、それと葉山と仲良くなるのにどう関係が?」

 

「いやー、その、蟠りっての?そういうの嫌いだから無くしておこうと思って。」

 

「ははっ、俺は別に怒ってはなかったんだけどね。比企谷への言い分が気に入らなかっただけで」

 

「本当ごめんね。葉山くんも比企谷も」

 

「俺は別に」

 

「俺もなんともないよ」

 

「はははー、折本さん。私のこと覚えてる〜?」

 

「ほ、星乃宮先生。星乃宮先生もほんとすみませんでした!」

 

すげぇ、直角90度くらいペコリと頭を下げる。折本星乃宮先生と接点あったっけ?

 

「うんうん。覚えてくれてたなら良いんだよ。本当は八幡くんに謝ってくれただけでも十分だったしね。」

 

「それでも、すみません。」

 

「いいよいいよ、頭を上げて。折本さんは成長してるんだし、謝意を見せてくれればそれで十分。」

 

「ありがとうございます!」

 

にぱーと、涙を浮かべた笑みで折本は言葉を返す。折本は成長している。その言葉に、何故か心が揺らいだ気がした。

 

 

 

 

 

「それでさー、雪ノ下さん?にも謝りたいんだけど、比企谷紹介してくんない?」

 

「ああ、お前も丁寧なやつだな」

 

「ええー、それないわー、私はちゃんとしたいだけだし」

 

別にと、頬を染めていってくるが、多分俺はこういうところを好きになってたんじゃないかと改めて考える

 

まぁ、今では黒歴史だが、それでも納得する現在ができてるなら、いいんじゃないかとそう思った。

 

「まぁ、わかったよ。そういうことなら雪ノ下等も喜ぶだろう」

 

雪ノ下と会ったことはあるはずだが、話を数回交わした?だけで、それで終わっていたはずだ。

 

「うん。改めていうけど、比企谷本当ごめんね。小学校の時」

 

「別にいいよ。俺も怒ってない。俺が悪いところの方が多いしな」

 

「あはー、比企谷は変なところ真面目だよねー。怒ってそうだったから怒られるかと思ったんだけど……」

 

「別に怒るようなことでもないだろ。俺が出した結果だ。全て俺が起因している。お前が謝る必要なんて元からないんだよ」

 

そう。俺がして起きて終わったことは、全て俺の責任となって返ってくる。俺は間違えたのだと後から後悔する。そんな連続だった。

 

「それでも、謝らせて。」

 

だが、謝罪は受けておかないとダメだ。俺が俺であるためにも、その道理に反しないためにも

 

「ごめん」

 

その謝罪は俺の頭にすり抜けるように入ってきて、次第に声という振動になって体に染み付いてくる。

 

折本かおりは前に進んでいる。



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第三十六話比企谷八幡の独白

俺のこの学校への入学の理由。

それが胸に突っかかって未だ離れない。

俺はどういう意図があってこの学校に来たのか。

その答えは近くにあることを知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

「……折本さぁ、お前こんなやつだったっけ?」

 

「えぇー?それうけるわー。私はいつもこんな感じだし?」

 

「比企谷、諦めた方がいい。折本は難儀なやつだぞ」

 

「いや、何よりも先にお前が混じっていることに対して違和感を覚えるんだが」

 

葉山、折本、俺の順に横並びで廊下を歩いている。移動教室だからなのだけれど、葉山がいるのが気になって仕方ない。

 

「まぁまぁ、いいじゃないか」

 

「だよねー。私も葉山くんもクラスで浮いてるとこあるし」

 

「は?お前等クラスで浮いてんの?」

 

初情報なんだが。こいつ等はどこでもやっていけそうな奴らなのに超意外。まじか、イケメンでも浮くことってあるんだな。美人ギャルでも浮く………なんでもありません。だから俺の腕を引っ張らないでもげる

 

「ったく。葉山くんもそうだよね」

 

「俺はどう接すればいいのか分からなくなってね。こんな不器用なやつだったんだって知ったよ。」

 

少し後悔が滲むような言い方をしてくる。口惜しんでいるように口にするが、葉山自身どう思っているのかが理解できない。

 

こいつは昔の葉山隼人ではない。何を考えて生きているのか、よく分からなくなっている。

 

「あー、わかるわぁそれ。Bクラスの生徒はなんか一体感っての?結構暑い感じだから、適当にやり過ごしてたりするとダメそうだしねー」

 

「折本の言い分だとBクラスに合ってないな折本は。」

 

「何その言い方〜私は別にそれでもいいから葉山くんとかと絡むようになったんだけど」

 

「は、ははっ、俺は別に頼んでないんだけどな」

 

額に汗を浮かべて視線をあっちこっちさせている。

 

葉山苦労してんだな。だが、俺も苦労してんだぞ?主に翔とか。彼奴方向性がおかしいというかなんというか、最近なんか一緒に住まねぇか?とか言ってきやがったしな。

やだよ。お前と暮らしてたらろくな目に合わなそうだもん。蛇の道は蛇ってな。怖い。言ったら教育とかなんとか言って山に連れ出されそうだけど。

 

「私は上っ面だけで付き合っていくのが嫌になったの。だから、葉山くんとか比企谷と一緒にいると変に気を使わなくていいから楽なだけ」

 

「なんかそれわかるわー。変に気を使ったりしてると痛い目見るよな」

 

「比企谷は、黒歴史レベルで痛い目見るよねー」

 

「比企谷。俺はわかってるからな」

 

「なんでお前俺のことを温かい目で見てんだよ。やめろ!そういう同情いらないから!」

 

黒歴史なんて山ほどあるぞ。

 

例えば、勇気出して女の子に話そうとしたあの日。

 

 

『これねー。まじいけてるよね〜』

 

『それまじあるわ〜』

 

『何お前勝手に話に入って来ないでくれる?まじキモいんですけど。』

 

『ぐはっ』

 

『もう行こ〜』

 

いや、短すぎる上に辛い。会話10秒で終了したんですけど。あれ?俺空気読めてなくね?しかも話し方三浦に超そっくり。

 

「そういえば比企谷。お前一之瀬といい雰囲気だよな?」

 

葉山が空気を読んだのか沈みかける気持ちにストップをかける。ありがとう葉山。その気遣いはまじで心が痛む。

 

てか、一之瀬と俺が関わっていることをなんで知ってんだよ。ま、まさかお前。

 

「お前、まさか、一之瀬のこと……」

 

「は、ひ、比企谷…「なーに?珍しい組み合わせだねっ。」

 

一之瀬が、葉山を掴み話に入れてとばかりに顔を覗かせる。

 

ひょこんと顔を覗かせる一之瀬は目をキラキラさせている。何期待してんだこいつ。というか由比ヶ浜との入れ替わり戻ってよかったな。

 

「ちょっ、ちょっと、一之瀬さん。そろそろ離してくれないかな?」

 

「あっ、ごめんね」

 

「いや別にいいんだけどな」

 

「ならよかったよ」

 

何こいつ。なんか見てるとイライラしてくるんですけど。ほら、血管立ってる。

 

「なぁ、お前等どういう関係なんだ?」

 

「え?葉山くんとは何もないよ?」

 

「ひ、比企谷そういうことは聞くもんじゃないよ」

 

あたふたして、少し焦っている。イライラする。こうやってまざまざと見せつけられていると嫌でもイライラしてくる。 

 

あぁー、お前等ってそういう関係だったんだな。お幸せに。そしてささやかな悪意を込めて爆発しろ。

 

「そうか。ならいいんだ。」

 

足早にさる。早くこの場から去りたい。何故か分からないけど、目根に釘を打ち付けられ、その場所から早く去りたいという気持ちが勝ってしまった。

 

何をしているんだろう。分からないけど、俺は痛くなった胸をそっと撫でる。

 

教室へついた俺は机に伏せるが、葉山や折本は一之瀬らと話しているようだ。

 

何故か、話しかけられないか、話しかけてきたらどうしようか、そんなドキドキした感覚が襲う。

 

「では、4時限目理科の授業を始める。」

 

机に顔を伏せていてはクラスポイントが引かれると思い、顔を上げる。

 

その時の俺の顔はどんな風だったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ねぇ、比企谷くん。」

 

「あ?なんだ?」

 

「ひっ、ど、どうしたの?」

 

「ほっとけよ。寝不足なだけだ。」

 

違う。そうじゃない。俺は気づけていないだけだ。何が大切で、何が要らないか。その区別がつかないだけなんだ。

 

「で、でも、顔怖いよ。今日は休んだら?ほら保健室に行く!」

 

「大丈夫だ。それとも、俺が体調不良だとなんか不都合でもあんのかよ」

 

少々意地悪な問いだと思う。だが、俺は同情が欲しいわけではない。ただ知って欲しいだけなんだ。

 

「ふ、不都合なんて無いけど。でも、心配だし。」

 

「一之瀬は優しいよな。誰にでも優しくて、正しい。だけどな、俺はそうじゃない。お前が思ってる奴じゃないんだ。

 

そのひねデレっての?そんなんじゃない。もっと醜い何かなんだよ」

 

「…………比企谷くんはそんなんじゃない。」

 

違うと、強く言うが、だからなんだ。俺が俺の考えている自分でないかなんてどうでもいい。俺はただ知りたい。

 

「行動全てに打算が含んであって、それらは俺の意志のもとじゃない。俺の背後には得体の知れない化け物が居座っていて蠢くたびに俺は状況に合った行動をする。

 

そういうのなんていうか知ってるか?偽善者って言うんだよ。」

 

「そ、そんなんじゃ、そんなんじゃないっ!!!!!比企谷くんはいつもいつも周囲のことばかり考えて!自分のことはいつも後回し、だから、自分にとってそう思えるだけで………私たちはちゃんと分かってるから。。ちゃんと、比企谷くんのこと………」

 

 

喋り続ける声は次第に薄れていく。それは今の俺たちにはぴったりの表現だろう。

 

薄れ薄れていく声を聞きながら、響く声が聞こえて来なくなるまで何秒かかっただろう。

 

世界が止まったように思えた。時間が経つのが遅く、呼吸が荒いのか喉がひりひりしてくる。

 

空からポツリポツリと降ってくる雨になす術なく当てられている俺たちはその雨に比例し言葉が消えていった。

 

少しばかりの時間を要しようやく頭に浮かんだ言葉がまとまったのか、言葉を紡ぐ。

 

「俺は自分が好きだと思っていたが、本当は嫌いなんだ。

 

人と喋る時きょどる俺。女性と喋る時声が上ずる俺。自己紹介の時噛む俺。喋る内容がいつも斜め上な俺。捻くれた回答ばかり出してきた俺。女性を直視することができない俺。たまに緊張した時声が裏返る俺。いつも問題ばかり起こしてきた俺。濁った目をしている俺。喋る内容と考えている内容が噛み合わない時がある俺。甘いコーヒーばかり飲んで、糖尿病になり気味の俺………

 

まだまだあるが、俺はそんな俺が嫌いだ。

そして最後に付け加える

 

 

一之瀬帆波と関わる比企谷八幡が大嫌いだ。」

 

一之瀬ははっと顔を上げて、俺の顔を覗く。今の俺の顔は酷く醜いだろう。だが、そんなことはどうでもいい。

 

俺の目が腐っているなんて、とっくに分かっているのだから。どうでもいい。

 

俺はただ知って欲しい。そして俺も知りたい。

 

この感情の名前を。



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第三十七話疑問の不正解

答えを求める。その答えがなんなのかを探求する。

 

知ろうとすればするほど、締め付けられ、答えを出すことができない。

 

俺があの時抱いたあの感情は、俺の判断を鈍らせる。

 

やめろ。お願いだからやめてくれ。

 

疼く俺の胸を押さえながらその場を去る。

 

踏み締める足音は次第に大きくなり、俺はまた何か失ってしまったのではないかと今更ながら思う。

 

あぁ、どうでもいい。俺はこんな自分が大好きだからな。そこには僅かながらの矛盾を孕みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ。俺はどうしてしまったんだか。」

 

日はすっかり落ちてしまい。寒くなった風はちろりと俺の肌を舐める。肌はひんやりとし、身震いをしてしまう。

 

いやに肌寒い夜だ。

 

公園の時計を見ると6時近くで、薄暗くなった空気をよぎりながら、俺の気分を霧散したいばかりか、校舎の屋上に登り、ってあれ?綾小路?

 

「おい?清お前何してんだこんなとこで」

 

「い、いや、見ちゃいけない物を見てしまって」

 

少し焦った様子で、矢継ぎ早に言葉を捲し立てる。

 

ははーんさてはお前、着替えでも見たのか?とは冗談でも口に出せない。そんな気分じゃないからな。

 

「ちょっと見せろ」

 

そう言って清の横を横切り、屋上で何が起こっているのか見る。

 

「ーうざい!!むかつく!!死ねばいいのに!!」

 

それは櫛田だった。櫛田が発しているのか分からないほどに低く重い声で、

 

「自分が可愛いとお高くとまりやがって!どうせアバズレに決まってんのよ!あんたみたいな性格の女が勉強なんて教えられるわけないっつーの!!」

 

「なるほど………取り敢えず、清はその携帯を俺に渡して早く去れ。」

 

一応状態は把握した。清の持つ携帯には少しデコレーションがなされている。

 

それは清がつけるには少々不自然だ。櫛田のものだろう。

 

つまり櫛田に渡すためにここに来たが、見てなはいけないものを見てしまい、足を止めてたのだろう。

 

「お、おう。八は大丈夫なのか?」

 

「俺のことは心配いらねぇよ。あいつは俺がなんとかする。お前には荷が重いだろ?」

 

「………分かった。櫛田のことは誰にも言わない。それを櫛田に伝えておいてくれ」

 

「うん。お前みたいに物分かりのいい奴は好きだよ」

 

「俺も八みたいに捻くれた奴は好きだな」

 

「「ふふっ」」

 

こしょこしょごえで話していたが、それすらもなんだか笑えてしまい、小さな声で笑い合った。

 

少しこいつにも感情が芽生えてきてるのか?

小さなことなのだが、綾小路にとって大きな変化だ。こいつ無表情が染み付いていたからな。最初あったときなんか、怖って思ったけど、こいつは徐々に成長しているのだろう。それは決して悪いものではないはずだ。感情を持たない綾小路が、いつしか人間らしい人間に、か。

 

 

綾小路清隆も、やはり前に進んでいるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、櫛田はどうしたんだよ」

 

屋上だからなのか風力が強く、教室にした時より尚肌寒い。

 

よだつ肌をさすりながら、櫛田に聞く。

 

「別に。鬱憤が溜まってただけ」

 

櫛田の声は少し冷たい。だからなのか、俺の声も少し冷たくなる。

 

「そう言ってもフェンスを蹴ることないだろ。」

 

「そう言う気分なの。あぁー!堀北の奴!」

 

堀北のことほんとに嫌いなんだな。俺も嫌いだけど。

 

「はぁ。お前も気苦労が絶えないんだな。」

 

「そう言う八幡こそ、今日はなんだかやつれて見えるけど?」

 

少しだけ言葉が温かい。

 

「俺の話を聞いてくれるのか?」

 

少し間を置き、一呼吸を終えてから答える。

 

「勿論。八幡が今日何があったのかを聞きたいな?」

 

うわっ、そう言う時だけ表の姿になるなよ。ちょっとどきっとしてしまったじゃねぇか!そして鳥肌が立った。まじ怖い。

 

「まぁ、大したことでもないんだけどよーーーーーー

 

 

 

 

 

今日何があったかを事細かに話して、俺は櫛田に何を求めていたのだろう。櫛田はどう言う反応をとるか分かっていたのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん………頑張ったね。八幡くん。私は、あなたの事、受け入れる。」

 

「は?え?幻滅しないの?女の子に酷いこと言ったのに」

 

一之瀬には酷い言葉をぶつけてしまった。それ故に後悔もしている。そんな状況なのに………

 

「だって八幡が求めているのはそんなことじゃないでしょ?同情とか、慰めとか。くそっ!胡散臭い!!堀北もそうだよ!いつもいつもあんな目を向けてきやがって!」

 

堀北に対する不満をぶちまけてくるが、あれ?今俺のこと話してるんじゃなかったっけ?

 

「だから、八幡がそんな顔する必要なんかない!!私は、私だけはあなたの事を見捨てなんかしない」

 

そう言い抱きしめてくる。

 

そうだ。俺はこう言う温もりが欲しかったんじゃないのか?

 

温もりが欲しくて、俺は行動してきたんじゃないのか?

 

ならば俺が欲しかったのはなんなのか。

 

「考える必要なんてない。私は貴方を受け入れる。だから、貴方も受け入れて?私を」

 

「ふっ、お前のことは最初から受け入れてるよ。お前を嫌いになることなんてない」

 

「うぅぅうー。八幡くんはそう言うところ変わってないよね」

 

抱きしめられてる中、顔を赤らめながら視線をちらちらと彷徨わせていた。

 

あわあわとしながら顔を赤らめる様子はなんだか可愛い。

 

「だから、八幡くんも、私と変わろ?いやな自分なんか切り捨ててさ」

 

 

そう言って俺の胸に顔を埋めてくる。すりすりとしてくる様子はまじで可愛い。

 

そうだ。俺は変化を求めていたんだ。周囲が変わったのに自分だけ取り残される、そんな環境が嫌になって、俺は強く求めたんだ。

 

だが、これが合っているのかどうか、そんなことは誰にも分からない。

 



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第三十八話果実は甘いがその味は

カーテンから漏れる光を眩しく思い、思わず手で光を遮る。

 

朝かと思い、徐々に思考が冴えてきて、昨日何があったのかを鮮明に思い出していく。

 

あぁ、そうか、あれから櫛田が………

 

「……………くぅ………………くぅ」

 

「ん?」

 

そういえば俺服着替えて寝たっけ?あれ?寝るまでの記憶がないんだが、どういうことだ?

 

と、自分の着ている服を確かめるべくつい下を覗くと……………

 

「ふぁ?!な、な、な、ななんでここに櫛田が!?」

 

「くぅ……………八幡くん」

 

寝言で俺の名前言ってる。めっちゃ可愛い。じゃなくて!!え?なんで?!なんでここに櫛田が!?

 

「な、なぁ、起きろ〜櫛田?」

 

「もうちょっとだけ…………八幡くん」

 

多分寝言で言ってるんだろうがめちゃくちゃ可愛い、なんなんだろうな女子の寝起きの声とかめっちゃ可愛いよな。

 

ぽしょぽしょと何か言ってるが、冴えてきていた思考がカチンと氷雪地帯に立ったみたく凍る。

 

な、なんで!?

 

「く〜し〜だ〜起きろ〜」

 

普段なら俺も二度寝してあわよくば、三度寝までするが、今は緊急事態なのでそうはいかない。

 

「もう………八幡くんったら、そんなとこ触らな……ひゃっ」

 

「いやいやいや、俺そんな変なとこ触ったか?」

 

やべぇ、頭が混乱してきた。なんなんだ?この状況は

 

櫛田が俺に抱きついて眠っている。規則的にはかれる吐息が妙に艶かしくて可愛い。じゃなくて!!

 

「はぁ。もういいや。この様子じゃ起きないだろうし、起きたら起きたで面倒だろうし………俺も寝よう。」

 

この逆転の発想には驚かれるだろう。だが、俺は寝る。現実を放棄して、the 男の二度寝だ!因みに選択肢は寝るか、寝るしかない。寝るしかねぇな。

 

少し緊張して寝れなかったが、次第に意識が朦朧としてきて、やがて微睡の中へと迷っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぅ……………はっ!え?」

 

ベットの中へ潜っているのかカーテンの日差しは当たらない。

 

そのことに少し疑問を持ちながらも妙に熱気の篭る布団の中をモゴモゴと動く。

 

あれ?人?

 

「ひゃっ」

 

私が抱きついて眠っていたのは抱き枕ではなく、ある男性だった。

 

「は、八幡くんか……」

 

彼が誰かを知って、安心する。だが、その安心は恥じらいに変わっていく。

 

そ、そっか私八幡くんと…………

 

それを知って恥じらいに混じり、嬉しさが込み上げてくるのを抑えられない。

 

嬉しい。でも、そう言葉にして仕舞えば壊れてしまう気がして……

 

だから、私はこの時間をもうちょっと堪能しようと彼に抱きつく。

 

う〜ん。やっぱりいい匂い。八幡くんの匂い嗅いでると落ち着くんだよね。シトラス系の香りなのに少し桜の匂いがして、甘くてとろけそうになる。

 

くんくんと匂いを嗅いでいると変な気分になっていく。

 

だから、匂いを嗅ぐのは抑えて、彼の顔に頬ずりをする。

 

なんだか犬みたい。と、笑ってしまうが、やはり彼に包まれていると安心して、ちょっと変な気分になる。

 

彼が起きるまですりすりすりすりと、布の摩り音?みたいな音が室内に響き、ベッドの上には男性と女性が抱き合って眠っている姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なぁ。もうやめないか?」

 

「良いじゃんちょっとくらいさ」

 

「は、早く学校行かないと……」

 

「もうちょっとだけこうしていよ♪」

 

「はぁ、あと五分だけな?」

 

「うん♪」

 

現実逃避で二度寝をしたはいいが、すでに時間は遅刻寸前まで迫っている。

 

はぁ、クラスポイント引かれるな。まぁ、それでもいいんだが。

 

「八幡くんの肌すべすべだね〜頬ずりしてると気持ちいいよ」

 

「そうかよ。頬ずりするはいいが、俺を離してくれないか?う、動けん」

 

「まーって。あと五分だけ、でしょ?」

 

「う、うぐぐ」

 

あ、あと5分もこの状態だと?!こいつ俺を殺す気か?反金縛り状態だぞ?

 

因みに金縛りにあった時はまじで動かなくなるから怖い。今も全然動かないがな。

 

 

その華奢な体のどこにそんな力あるんだよ。前世はプロレスラーか?雁字搦めの達人?どちらにしても怖い。

 

「な、なぁ?お前はいいのか?」

 

「ん?何が?」

 

きょとんとしただろうか?いや頬ずりしながらきょとんはないな。可愛すぎてさらに頬ずり………される側ですね。すみません。

 

「いや、俺なんかと寝て……そのしちゃってよかったのかってことだよ」

 

昨日の事は正直覚えていない。だが、もしもしてしまったのなら責任は取らなくちゃいけない。

 

それくらいの覚悟はある。櫛田は俺には勿体ないほどの美少女だ。星乃宮先生のようにやって捨てるなんて事は絶対にできない。男なら覚悟決めなくてはならない。

 

「ん、私ねいつも思ってたんだ。少女漫画みたいな世界だったらどんなに楽なんだろうって」

 

「は?あぁ。そういうことか。」

 

櫛田はその身に抱えられないほどの重荷を背負っている。この年で、その小さな体で。物凄い重荷を。

 

だが、少女漫画みたいに簡単な世界だったならどんなによかったのだろう。単純明快で、ドキドキするシチュエーションがあって日々の生活は輝いている。そんな生活だったらどんなにいいことか。

 

「だからね。私恋に憧れてたんだ。焦がれてたのかな。だから、私は………」

 

「私は?」

 

もう少しで五分が経つはずだ。やっと離してもらえるか、と思い始め体を起こそうとするが……

 

「私は八幡くんがいい。」

 

抱き締める力を一層高め、ぎゅっと締め付けられる。

 

ちょっと苦しくて、櫛田の弾力が………げふんげふん。そういうのはなしな。

 

上に跨っている櫛田が俺の顔に近づく。さっきまで頬ずりしていたためか頬が心なし赤い。

 

目がうるうるとしていて、宝石のように輝く目はすでに真っ赤に染まっている顔と相まって庇護欲を唆る。

 

守ってあげたい。そう思ってしまう。

 

「だから、これは挑戦状。八幡くんは誰にも渡さないからね」

 

「うっ………」

 

可愛すぎて、声が漏れる。熱気が篭る室内はいつしか甘い雰囲気で一杯になっていた。

 

そして、俺の頬に櫛田の顔が落ち、少しの湿り気と体温がこちらに伝わってくる。

 

それは早朝のことだった。



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第三十九話過ぎ去ることはない

私はいつも真面目だ。

なんだって真摯に真剣にそして真面目にとりかかってきた。

だけど…………

 

今はそれも考えられない。

 

思考がぐちゃぐちゃになって、比企谷くんのことだけで埋め尽くされている。

 

昨日あった比企谷くんとの出来事。

 

一方的な拒絶だったけど、多分比企谷くんにも事情があったんだと思う。

 

止むに止まれぬ事情が。

 

だがら、私を拒絶して、最後あんなことまで言ったんだ。。。

 

私のせいなんだと思う。私が気付いてあげられなかったから。私がその何かに気付いてあげられていれば、こんなことにはならなかった。

 

全部私の責任。

 

だから私は心に嘘をつく。

 

比企谷くんに関わるのをやめようと、そう考えた。

 

だって、私は苦しいし辛いけど、比企谷くんはそれ以上に私に関わるのが辛いんだと思う。

 

だから、私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月15日金曜日。早朝である6時半に外を出て、白波ちゃんを待つ。どんなに苦しくても友達は裏切ってはいけない。そう思い、ちょっと今日は早くきた。

 

「一之瀬ちゃん!おはよっ」

 

「あ、おはよう白波さん」

 

白波千尋。クラスメイトで私の一番の友達。親友と呼べる存在だ。

 

いつも私のことを気遣ってくれて、何より可愛い。でもちょっと目が怪しいのは気のせいだよね?

 

最近スキンシップも多いし………

 

でも、頭を埋め尽くしているのは昨日の出来事で、会話は上っ面になってしまう

 

私はどうしたらよかったんだろう。

 

 

そんな考えばかりしか頭の中にはなかった。

 

「ね、ねぇー!ねぇってば!一之瀬さん?大丈夫?」

 

「はっ、だ、大丈夫だよ。それでなんの話だっけ?」

 

「そ、そんのはどうでもいいよ?だから、保健室行く?」

 

「いや、大丈夫だって。ちょっと昨日雨に打たれただけだから」

 

雨に打たれた。本当のことだ。雨に打たれ、それは自分の責任を追及するかの如く降りかかってきた。

 

私は比企谷くんに甘えすぎていたのだと思う。

 

比企谷くんはいつもそばにいてくれて、私を守ってくれて、包んでくれた。

 

それは暖かくて、ずっと浸かっていたいと思える沼。

 

多分私はその沼にどっぷりと浸かってしまった。

 

そっか、だからなんだ。だから……

 

「ねぇ!もう保健室行こうよ。体調悪そうだよ?」

 

「だから、わたしは大丈夫だって!」

 

「ひっ………い、一之瀬さん今日少し変だよ?どうしたの?」

 

白波ちゃんが、心配気に聞いてくる。あぁ、わたしはなんてことをしてしまったんだろう。

 

わたしの周りにはこんなに心配してくれる人がいるのに、それを無碍にするなんて………

 

「ご、ごめんね。白波ちゃん。大丈夫だから。……大丈……夫だか……ら。」

 

そう言ってると更に感情が込み上げてきて、それが涙となってこぼれ落ちる。

 

限界だ。私にはこんなの耐えられない。

 

「無理そうなら、私も保健室ついて行くからさ。いこ?」

 

「うん。。。ごめんね。。。」

 

私が泣いているのは病気で苦しいからだと思っているのか言及してこない。

 

気遣いなのだろうか?それなら本当に出来た子だと改めて思う。

 

「いいよいいよ。いつも一之瀬さんには助けてもらってるし。私一之瀬さんと同じクラスで良かったっておもってるよ?」

 

「ありがとう。そう思ってくれるのは嬉しい」

 

「あはは。一之瀬さんがいてくれたから私があると思うんだ」

 

「え?いきなり何?」

 

これまで必死に込み上げてくる感情を押さえてきたのにちょっと腑抜けた声が響く。自分でも驚くほどに間抜けな。

 

「だから、苦しい時は言って?私達は一之瀬さんの力になりたいの」

 

「そ、そうだね」

 

白波ちゃんは私を抱きしめてそう言ってくるが、スキンシップが激しくないだろうか。

 

そう考えているうちに暗い感情は少しずつ霧散していった。

 

こんなに苦しくなるのはあの事件以来かな。私の罪。背負って以降初めて。

 

そうやって自分の感情に騙し騙し嘘をつき、そのすべてを解消しかけた時、私は見てしまう。

 

これ以上苦しくなりたくないのに、

 

辛くなりたくないのに

 

現実はそれ以上の重さを背負ってやってくる。

 

 

 

私は比企谷くんが櫛田ちゃんと腕を組んで登校しているのを見てしまった。

 

 

仲が良さそうな雰囲気からは私に負荷しか与えてこない。

 

 

そっか。その為なんだ。その為に私を拒絶したんだね。比企谷くん。

 

私はその場に崩れ落ちポロポロと涙を零す。手を地面につけながら泣いてしまう。溢れる滴は地面に落ち、次第に溜まって行く。

 

アスファルトの地面は冷たさしか伝わってこない。

 

地面に落ちる涙は水紋となってぽちゃんぽちゃんと落ちる。

 

私はもうダメだ。比企谷くん。お幸せにね。

 

「一之瀬さん!一之瀬さん!!!!」

 

白波ちゃんの声をBGMに私は気を失って行く。

 

そこで落としたのはなんだったのか。本当に涙だけを落としたのか。本当に落としたのは涙だけでなく別の何かではなかったのか。

 

私は比企谷くんに何を抱いていたのだろう。

 

だが、その答えは残酷と化して帰ってくる。

 



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第四十話欠けら

「一之瀬さん!!!一之瀬さん!!一之瀬さん!!」

 

「…………八幡くん。行ってあげて」

 

「は?いいのか?」

 

超腑抜けた声が出る。たが、こいつが言ってることが本当に正しいのか分からなくなる。

 

俺だぞ?昨日話しただろ?俺がやってしまった結果だ。それを自分で治せと?お前は本当にそう言うのか?

 

「うん。そうだよ。実際は悔しい。悔しくて悔しくて堪らないし、私自身行って欲しくないと思ってるよ。」

 

それに一之瀬さんに対しての悪口を吐いたりすることも結構あったしね」

 

「お、おう。最後の部分はいらないな。」

 

へぇー、一ノ瀬のこと嫌ってたのかこいつ。初耳だけどなぜか納得がいく。

 

「でもね。私は八幡くんはやっぱり、八幡くんであってほしいと思ってるんだ。」

 

「は?どう言うことだ?」

 

「一つ安心できる点もあるしね。………でも!」

 

俺の目の前にステップを踏むように近く。

 

だんと音がするが音すらも可愛らしい。

 

こいつはこいつで考えている。俺のことや一之瀬のことそして、自分のこと。

 

全て考えた結果こうすることが正しいと答えを出したのだ。

 

だから、俺はその意思に沿うしかない。

 

俺は俺だけれどここで行動しなければ俺でなくなる気がする。

 

そう考えると同時に駆け出していた。自分で、答えを出した。

 

その答えは果たして合っていたのだろうか。

 

「ちゃんと私に答えを出して!それが条件!よろしくねっ⭐︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一之瀬!!」

 

「あ、比企谷くん……」

 

白波という奴が睨んでくる。いやいや目力入りすぎだからね?お前それどうやってるの?まじで怖いんだけど。

 

ギラギラとする眼差しの向こうには背景として炎が上がっているかに見えた。

 

メラメラメラメラと暑苦しい奴だな。ほんと鳥肌立つんでやめてもらっていいですか?あ、だめ?だめかぁ。

 

兎も角、こう睨み付けられていては俺としては不名誉だ。

 

だが、そんなことは今どうでもいい。一之瀬のことをなんとかしないと。

 

「一之瀬、お前どうした」

 

「ぅっ…………ね、ねぇ、比企谷くんはさ櫛田ちゃんとはどんな関係なの?」グスッ

 

涙まじりのかすれ声で、それ程に苦しいことだったのかと改心する。

 

「俺と櫛田?友達でもないし、そういや俺達って……」

 

振り向いて櫛田に聞こうとする。

 

しかし櫛田はもう去ったようで、その場にいなかった。

 

周囲を見渡してどこかにいるか探したが見つからない。

 

彼奴言うことだけ言ってどっか行きやがった。今度会ったら覚えてろよ。

 

「櫛田と俺は………うーん。幼馴染かな?」

 

「…………そっか。そうだったんだ」

 

一之瀬は顔を俯かせたまま、涙をぽたぽたと流し続けている。

 

それをみているとなんだか心が痛くなる。

 

一之瀬には笑っていてほしい。だが、そんなことは今言ってもしょうがないことだ。

 

目前にある問題を解決しよう。

 

「なぁ、一之瀬お前はどうして泣いているんだ?」

 

「比企谷くんには関係ないはずです!早くどっか行ってください。私は一之瀬さんを……」

 

「ねぇ、白波さん。ちょっとこっちきてようか」

 

その声の跡を辿ると、櫛田がいた。

 

櫛田は目を虚として白波に話しかけて引っ張って行く。

 

「ちょっ、く、櫛田さん!離して!」

 

「外野は黙ってろ!」

 

「ひっ」

 

おいおい、お前いいのかよその顔晒して。少なからず昔から抑えてただろ。

 

昨日の今日ではないけど、櫛田も成長してるのかな。

 

そうだといいけど。

 

「じゃあ、いこっか。八幡くんごゆっくり」

 

「はぁ、取り敢えずありがとな。」

 

「どういたしまして」

 

そう言いさる。櫛田ありがとな。今は一之瀬とちゃんと話さないと。

 

「話を戻すぞ」

 

「う、うん」

 

一之瀬は尚も泣き続けている。心が痛いが自分の招いた結果だ。俺が受け入れなければならない一つの事実。

 

「まず、昨日のことは謝る。悪かった。」

 

「むぅー、そんなんじゃ許せないもん」プイ

 

そっぽを向いている。あ、あれなんかまずった?俺が今できる最高の謝罪だと思ったんだが。

 

「私ね、比企谷くんと会った時なんて思ったと思う?」

 

「ああー、ぐれたヤンキー?」

 

「それどちらも意味変わらないよ?私、比企谷くんと会ったとき思ったんだ、え?何この人これまで合ったどのタイプの人とも違うって」

 

「はぁ。まあ俺みたいな奴はそうそういないと思うけど。」

 

「そうだよね。いないよね。比企谷くんみたいな人は。」

 

「なんだか言葉に悪意を感じるんだが」

 

雪ノ下ほどではないけど悪意を感じた。堀北は論外。あれは悪意の塊だ。

 

 

「悪意が含んでるんだからしょうがないです。それでさ、思ったんだ、この人を友達にさせるって」

 

「ふーん。突飛な考えだな。俺に関しては実現性皆無だ。」

 

「ふふっ、そうだね。比企谷くんは友達になってくれないよね。」

 

そりゃそうだ。俺だぞ?俺が友達なんて作れると思うか?ないない。先輩にタメ口使っていいよって言われてタメ口をその場で使うくらいありえない。あれ?それはなんだかありそうなんだが。

 

「だけど、私はそれ以上を望んじゃったからなのかな。」

 

「ん?それ以上?」

 

なんだろう、ここから先は何か大事なことを言うような、言わなければならないことを言うような雰囲気になっていく。

 

「望んじゃいけないものだったと思うんだ。私の胸の内に秘めておかないとダメなんだって。

 

だから私は比企谷くんに関わるのをやめる。」

 

「はぁ?なんで急に。俺はそんなこと……」

 

別に望んじゃいけないものなんてないだろ。お前が願ってそれが叶わないからってどうして俺と関わらないことに繋がる?

 

お前の胸の内に秘めておく必要なんかないだろ。どうしてそれを吐かない?吐けば楽になるのに、どうして?

 

わからないことだらけだが、一つだけ言えることがある。

 

今日からこいつと関わることはなくなりそうだと言うことだ。

 

「だから、もどそ?入学式の日にさ。」

 



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第四十一話彼はそこで何を見るのか

あ、あれ?

 

気付いたらそこは知らない世界だった。

 

と言うわけではない。だが、なんらかの変化が起きている。

 

俺の眼中に広がる世界観は歪だった。一度は自分の目を疑い、目を何度も何度も擦った。しかし夢でもなんでもない、リアルだった。

 

ならばこの歪な世界はなんなのか。その答えを知るためには俺はもう一度問うことになる。

 

自分の胸にもう一度、

 

俺がこの学校に来た理由はなんなのか。

 

それをそろそろ答えなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、なんだってんだよ全く」

 

 

そう、俺の目の前に広がる世界は、入学式の頃合いのようだった。

 

はぁ?夢じゃないんだよな?

 

この件には確実に一之瀬と関係があると思うのだが、一ノ瀬の姿は見えない。

 

探すしかない、か。

 

この世界には全く納得できず、未だ夢か夢じゃないか定かではないのだが、関係ない。

 

一之瀬にはもう一度言わなければならないことがある。

 

この世界の一之瀬が、あの世界の一之瀬とどう関係するのかはわからないが、これは俺が俺自身が解決すべき問題なのだ。

 

俺自身が向き合わなければならない問題。

 

目を逸らし続けていたのはやはり俺だったんだ。

 

だから

 

「お、おい一之瀬!!」

 

一之瀬を見つけ駆け寄る。一之瀬は少しビクッとして、こちらをきょろっと向いてくる。

 

「え?どちら様?」

 

「え?は?一之瀬だよな?」

 

「そ、そうだけどなんで名前知ってるの?」

 

「は?おま、何言って、「話がそれだけならもう行くよ。バイバイ。またどこかでね。」

 

「え、ちょっと!待ってくれ!」

 

腕を掴む。少々強引になってしまい、周囲の人達に注目される。

 

「お、俺と友達になってくれ!」

 

「すみません。いきなり言われても困ります。」

 

「そ、それだけだ。なってくれないならそれでいい………」

 

 

「ふーん。いいよ。なってあげる。比企谷くん。今日からお友達だね!」

 

「は?」

 

まじのガン見。は?いやそこ断るところじゃないの?

 

それよりも、何故こいつはさっき起こったことを知らない。

 

一之瀬は戻ろと言った。そして、実際に戻った。だが、一之瀬はそこにいないのか?

 

もしかして、戻ると言うのは一之瀬自身の記憶を失って戻ると言うことなのか?

 

分からない。考えても考えても分からないが………

 

「お、おう。よろしく」

 

「よろしくね比企谷くん」

 

おいあいつナンパに成功したぞみたいな声が聞こえてくるが、どこをどう見たらナンパなんだか。

 

はぁ。まぁ、何も落着してないけど、一件落着かな。

 

「まぁ、教室行こうぜ。」

 

「う、うん」

 

少し後ろをついてくる。とてとてとてとて、と音が聞こえてくるが、可愛い。やっぱ一之瀬はこうでなくちゃな。

 

俺と一之瀬の関係性はリセットされた。だが、一之瀬は一之瀬だ。どんなに変わろうとも、一之瀬自身は変わらない。

 

 

相変わらず、なんで過去に戻ったのか納得できないがな!!!

 

 

 

 

 

「梓川、あんなそんなとこで何してんの?」

 

「あ、ああ、いや、お前今日は何日だ?」

 

「はぁ?今日は4月五日でしょう?何を言ってるの?」

 

「あ、いや、ならいいんだ。また4月五日か……」

 

「貴方はさっきから何を言ってるの?」

 

「気にしないでくれ。血迷いごとだ。」

 

「そう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ。結局やり直した先でもぼっち。俺はなんなんだろうか。前世もぼっちだったとか?俺の天命は専業主婦ではなくぼっちだとでも言うのか?職業ぼっち。あ、哀愁が漂うな。

 

「なーに考えてるの比企谷くん。また捻くれたこと考えてそうだな〜」

 

「あ、ああ。っておい。俺はいつも捻くれたことを考えているわけじゃないぞ。お前も変わんねぇな」

 

「ふふっ、じゃっ、説明始まるから席に戻るね?」

 

「お、おう」

 

一之瀬が自分の席に戻り、真剣に黒板を見ている。

 

あれ?友達になったのは嬉しいけど、なんかおかしいような………

 

 

それはいいか。俺はぼっちを脱却したんだ!それを今は喜ぼう!

 

いえーい!リア充最高!!!

 

まずはザギンでシース………あれ?ぼっち脱却したからってリア充ってわけにはならないよな。

 

てことは、俺はぼっちではないが、リア充ではない。でも、なうはぼっちではない。

 

うーん。微妙なんだが、ぼっち脱却を今は喜ぼう!!

 

って言ってる場合じゃないんだよな。俺の残念ぼっち感が半端ないのは仕方ない。

 

ぱちんっと知恵がウインクするが、そうか、ここは過去だから知恵って呼んじゃダメなのか。

 

星の宮先生はこちらを向いてウインクしてくるが、何分2回目の4月5日なのでなんのことはない。

 

俺もウインクを返そう。

 

ぱちん。うわぁ、星乃宮先生すげぇ引いてる。やばい。俺のウインクそんなキモかったか?

 

でも、微笑みながらこちらをずっと見ている。

 

にこにこしているのがすごくきみ悪く、なんだか蛇に睨まれているようですっごく怖い。

 

俺の心の奥底に潜み密かに蠢く何かを見透かされているようで、俺は肩を竦める。萎縮したとも言う。

 

「では」

 

そう言い、先生は去っていくが、最後したウインクはなにを表していたのか。それは気掛かりにもならなかった。

 



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第42話甘い風に吹かれて

ここから話が狂い狂いおかしくなっていきますので見てくださる方も酔わないようにお気をつけください。


ぼっち最高。

 

 

クラスで委員長委員長とか騒ぎ立てる奴らにバレないようこそっと抜け出す俺。ぼっちは視線を気にする。周囲の悪意にも機敏で人からの視線でどう思われているか分かってしまう。

 

入学ぼっちとかwwあの人かわいそうだなー,目が腐ってるwwおいそこ。俺めっちゃ気にしてんだぞ?自重しろ。

 

というわけで、ぼっち確定演出プラスオプション悪口までついてちょーお得。もう死にたいくらい。

 

ふと時計を見ると針は昼過ぎを指しており時間的には昼食の頃合いだった。

 

そろそろいい時間だな。入学式の日って何してたっけ?先生にウインクされて…あ、一之瀬に追いかけられたんだっけ?でも、誰もついてきてないような……

 

 

がばっと後ろを振り返るが誰もいないどころかシーンと静まっている。

 

え?まさか……元の世界線と全く違うってこと?は?俺に死ねとでも言うのか?

 

と言うことはぼっちの生活に戻って、まだぼっちになるってことだろ?あれ?戻るって言わなくね?ぼっちがぼっちになるなら、変わらん!

 

全然問題なかったわ。

 

つまるところぼっちはどんな状況下に置いてもぼっちになれる。そういうことだ。

 

とまあ、前置きという名の愚痴はどうでも良くて、、、どうしよう。。。

 

俺これまでの人生史上初のタイムスリップ?いや、タイムバック?巻き戻し?逆再生?逆再生は違うな。

 

くっ、あれだな朝起きたら昔にタイムスリップしてましたって方がよかったな。問題は一之瀬が、戻したのか、一之瀬は第三者で全く関係がなく他の誰かが関係しているのか、若しくは、、俺がその中心にあるのかだ。

 

第三の可能性はこの際無視して、、、俺としては俺に接触のない人間が中心に立っていることが理想なのだが、というか一之瀬や俺が関係しているなんて考えたくないのもあるが。。

 

あ、一之瀬。。。。じゃない。陽乃さんだ。

 

「はろろーん。比企谷くん。久しぶりだねぇ。」

 

「陽乃さんですか」

 

彼女はきょとんと首を傾げ、それから数秒経ち何かを理解したかのように徐々に目を見開いていく

 

「え……………えぇ………は、陽乃って///」

 

疑問符を浮かべているのに何故か顔が赤い。ほのかに赤らむ顔はすぐに下を向き、彼女の人差し指と人差し指をちょんちょんとしだす。

 

え?こっちが疑問符を浮かべたいところなんだが……えっ?

 

「ね、ねぇ、……その……私も八幡って呼んでもいいかな?///」

 

「ひぇっ?……………こほん。あぁ。そういうことか」

 

俺としたことが見落としてた。陽乃さんと俺はここに来てから名前で呼び合うようになったんだったっけ。

 

「ん??」

 

「いや、なんでも無いよ、雪ノ下さん」

 

「……っ!?い、いや」ギュッ

 

「ててて……どうしたんです?」

 

いきなり服を掴んでくるから体勢が崩れ、倒れそうになる

 

えええ、何か間違えたか?陽乃さんは……いや、雪ノ下さんはこの世界では久々に会う………腐れ縁?のはずだ。だから、ここで馴れ馴れしくされるのは嫌なはずだ。

 

俺だって知らんやつにいきなり話しかけられて馴れ馴れしくされるのは嫌だしな。

 

あれ?俺この人と無関係?俺が旧知だと思っているだけでこの人にとって無関係である可能性もあるわけだよな。

 

俺がそう思っているだけで、相手がどう思っているかなんてわからない。

 

「ふふ。やーっぱ比企谷君だねぇ。物事を一歩引いたところから見て考える。それは他の人から見たら客観的だと捉えられるかもしれないけど自分を引いた結果なだけ。

 

 

お姉さんそういうところ好きだよ」

 

 

「は?え、えと……ちょっ!?」

 

さっきまで少し離れたところから話し合っていたはずなのに何故か俺の目の前、いや、俺の顔の前にいる。

 

ちょっ、おかしいだろ、初対面でないにせよ、普通こんな距離になるか?

 

雪ノ下さんは俺のガチの目の前に現れ、体と体が密接し、俺はそろそろと後ろに下がる

 

雪ノ下さんもそれを分かってか、一歩下がれば一歩近づき、一歩下がれば一歩近づきと無限ループが生まれた。

 

だが、後ろには当然建物があるため無限ループにはならず、十歩くらい下がったところで背中が壁に当たる。

 

「なんなんですか一体。いきなり近ずかないでくださいよ。勘違いしっ!?」

 

身長差はあまりないので、雪ノ下さんと俺の顔はほとんど同じくらいの高さにある。

 

すると、ドン!と鈍い音が響き、雪ノ下さんの手が壁を叩いたのだと認識する。

 

そんなことしてたら店の人に迷惑だろ。とか考えてる余裕もなくこの空気にただただ当惑するばかりだった。

 

なぜ?どうして?と頭の中でくるくるくるくると周り、目の前の現実に思考が追いつかない。頭で考え、そうする内に、心臓がバクバク脈打つ

 

言うまでもなく緊張していた。バクバクいっている心臓は脈打つことをやめず次第に息が荒くなっていく。

 

あれ?俺の理性どこ行った?とふざけてもいられない。

 

 

「勘違いじゃないよ。私は八幡君だからこうしてるんだよ。」

 

「い、い、いや、や、やめて、離れてくださいよ雪ノ下さん」

 

言うが離れない。寧ろ先程より密着している気がする。あ、あれ?この人俺のこと押しつぶそうとしてる?なんの恨みがあんのこの人………

 

心臓は気づくと治まってきているが

 

「いやだっ。陽乃って呼んで。この八幡君が八幡君だったから嬉しくて………だから………もっと…」

 

「うっ………!?」

 

近づいていた顔はさらに近づき、肌と肌が密着する。体は既に身動きが取れるはずもなく、俺の目が見開いていくのを秒で感じた。

 

唇が少し湿り、小さな音が鳴り響く。

 

「ん……………んちゅっ………」

 

「ん!?ん〜///」

 

その瞬間何をされているのか気付き、思考が漸くまとまっていく。陽乃さんに迫られてキスされている。

 

「ん……………っはぁはぁ………んっ……くちゅ……」

 

「ん〜!!!?ちょっ……はな……ちゅっ……ん〜!?」

 

何度も何度も繰り返されるキスに必死に抗おうとするが、効くはずもなく、なすすべもなく、されるがままになる。

 

そうしていく内に……

 

「んちゅっ……………っ………はぁはぁ……はぁ」

 

「………………」

 

キスをされ続け、俺の頭は何も考えられなくなった。陽乃さんにキスされたとか、この後どうしようとか、そんなことも、考えられず、冷静になった頭はまたも困惑する。

 

いや、困惑しているわけじゃない、陽乃さんの雰囲気につられ、それに溺れていっているだけだ。

 

陽乃さんの雰囲気とその行動に………

 

浸かって出られなくなる……

 

体は正直なのか陽乃さんの体を抱く形になって………

 

「え?は、八幡君?!」

 

反対側の壁に押しつけ今度は陽乃が困惑する顔を見せる。甘く溶けるような艶美な彼女から俺はどう見えただろう。

 

この後は覚えてない。ただ、これからどうすればいいかだけはここで分かった気がする。

 

俺は後悔しないために進まなければならない



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第43話こころ

然し……然し君、恋は罪悪ですよ。解っていますか

 

 

 

ふと、そんな言葉を思い出す。夏目漱石の『こころ』だ。中学生の頃読んだ時は酷く感動して、我ながらひねくれた解釈をしたものだ。

 

先生も、kも、奥さんも、みんな心のうちは"独り"なのだ。

 

先生は独りが故に自分のエゴイズムに苦悩し挙げ句の果てにKと同じ道を辿る。

 

奥さんは先生に胸の内を明かされずずっと独りだった。

 

Kは言わずもがな最後まで独りであったために一生を終える。

 

 

3人がそれぞれ独りであり、"私"の行く末は読者である私達が想像しなければならない。

 

夏目漱石が、ひいてはこころが本当に伝えたからったのはなんであろうか……

 

私達に寄り添う形で与えられる問という名の小説は幾重もの問題を示してくれる

 

 

 

だから俺は『こころ』という小説を読み、問題は人の心の部分であり、それは善悪問わずあるがまま動き続けると説いた。

 

そしてその答えは……

 

人間は独りになった時にこそ………死ぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた酒飲んでないんだから。だ、ダメだって!」

 

体が怠い。至る所が軋んで、ぎしぎしいっていう事を聞いてくれない。その理由は昨夜にあるだろう。

 

絶対許さん!

 

実はあの後

 

 

路上でいつまでも接吻を交わすという不純異性交流ともとれる行為を30分と続けた後、何故か陽乃の部屋で夕食をご馳走してくれるという話になり、ご馳走になった後すっかり寝ている陽乃さんに毛布をかぶせ……

 

最中に、陽乃が俺の足を縺れさせ、俺を転ばせる。

 

「あ、あんた起きてたんですか?!」

 

「ちょっ……は、陽乃さん。ま、待ってください。俺たち学生ですよ?だ、だめ」

 

「いいじゃない。減るもんじゃあるまいし。そ・れ・に………」

 

陽乃は俺の上に乗っかり、ニヤリと嫌な笑みを浮かべつつ、上から順にボタンを外していく……おいおい、まてまてまてまて!

 

「だめだ……ダメらよぉ……」

 

陽乃さんは俺の耳をぺろりと這うように舐め、俺の胸を抱くようにする。

 

少し気が抜けて変な声が出るが仕方ない事だろう。

 

然し、俺たちは学生だ。身分を弁え、法律や世間体を気にしなければならない年柄であるし、何より不純異性交流というのはまずい。何がまずいかっていうとマジまずい

 

つまりそういうことだ!

 

「どいてくださいってば!」

 

勢いよく、ガバッと起き上がろうとした瞬間、腹部に重い体重が掛かる。

 

あ、いや重くはないよ?重くはないからね?

 

「ん…………」

 

呼び掛けてもなんとも言わない陽乃さんの様子に違和感を覚えた。

 

俺の腹の上から退けないし、揺すってみてもうんともすんとも言わない。

 

これはもしや………

 

「ちょっ、陽乃!」

 

気になったので、少し大きな声で呼びかけてみても反応なし。

 

さらに気になったので、刺激を与えないようにゆっくりとなるべく触らないように陽乃の頭を上げてみると

 

すやすやと寝ていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれから、微動たりともしない陽乃さんをどかそうにもどかせなくて、めちゃくちゃおも「は・ち・ま・んくんっ♫なにいってるのかな?」

 

記憶の中の陽乃が何か話しかけてくる。何を言っているのかよくわからないけどあれは………怒ってる?

 

「今日の八幡君は余程死にたそうだね〜なんなら手伝ってあげようかな〜勿論物理的に」

 

いやいや、昨日こんなこと言わなかったぞ?てか、立場的に陽乃さんはこんなこと言えないはずだ。だから違う。違うんだ!これは幻覚で………そう!夢だ!これは夢なん

 

「夢じゃないよー。って、それはいいとして……八幡君。あの子なんとかしなよ?ずーっと見てきてるから」

 

ちっ、これは本物か……ほっぺたつねっても痛くないし…実証は陽乃さん。言いながら俺のほっぺたぐにぐに抓ってきて超痛い。力込めすぎだっての。

 

陽乃は視線であの子あの子と言ってくる。

 

陽乃のことだから指を指すことはなく視線で示してくるのだ。少し切長で美しくも儚いその瞳でなにを示しているかを追う。

 

あいつは……やっぱりな

 

 

あの子とは彼女のようで、何処かでみた探偵ドラマの一部分であるかのように壁から半身を預けてチラッと覗いている。

 

あきらかにこちらを覗いてきて、何かを確認するような眼差しでこちらをみてくる

 

 

 

 

一之瀬穂波。彼女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽乃さんには先に行ってもらって一ノ瀬と二人で話す機会を得る。

 

機会を得ると言っても、一ノ瀬はまだ視界の先にいるので先ず俺が彼方に行ってからだが。

 

 

取り敢えずあちらにいかなければ話にもならないので、一直線に一之瀬の方へと向かう。

 

早く話せねば、そう思いながら一ノ瀬の元へ着いたが、一之瀬の驚き方が面白かった。びくびくびくっと体を痙攣させたかと思うと、壁に埋もれていった。

 

無論壁に埋もれていくことはないのでぴたっと張り付いているだけなんだがそれが妙にウサギを彷彿とさせて面白い。

 

「は、はち……比企谷君どうしたの?」

 

と思うと、しゃきっと体を張り起立する。うわ、こいつ絶対学級委員やってた奴だろ、変なとこで真面目なんだよな。だがすまん、現在進行形で学級委員やってる奴だった。

 

「まぁ、いいから話しながら歩こうぜ」

 

「うん………」

 

一ノ瀬は何故かうるうるとした目で同意し、俺の後ろからとことことことことついてくる。

 

足音が一々可愛いんだよな。そしてみんなの前では堂々としている姿も俺の前ではおどおどしている姿も。どんな顔も、目も、口も………

 

あれ?これじゃあ俺が一之瀬のこと好きみたいじゃないかよ。馬鹿いうな、俺が好きなのは小町だけだ!いや、小町と同じくらい一ノ瀬のことも好きな気が………

 

なんだかもやもやとした思考を巡らせながら口を開ける

 

「なぁ、一ノ瀬。なんで昨日から俺たちのことストーカーしてたんだ?」

 

 

周りくどいのは面倒なので直球で行く。一ノ瀬の答えを鈍らせないためにもこれは正しいだろう。

 

彼女は当然の様にぶるぶると震えだし、また泣きそうになる。

 

子鹿みたいで可愛いな。まぁ、子鹿なんて動物園でもあまりみねぇけどさ。

 

「あ、あぁ、いやごめん。脅かすつもりじゃないんだよ。ただ、質問で……」

 

げほげほと不意に咳き込む。最近咳が酷くて夜起きることもあるのだが、別段痛い訳でもないし、問題視はしていない。恐らく風邪かなにかだろう。

 

「え?比企谷くん?!八幡君!!」

 

何か叫んでいるが聞き取りづらい。もう少し俺の耳に寄せていって………くれ

 

視界が少しずつ閉ざされていき、倒れ落ちる体が咳き込んだ際に塞いだ手を見る。俺の手は

 

 

 

 

 

鮮やかな赤で染められていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は殉死という言葉を忘れていました。平生使うことのない言葉だから



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第44話散りゆくは桜の花か

ぱちりと目を開け、開けた視界は白い天井を映した。

 

電灯と真っ白な天井は清潔さを強調し、静かな室内は俺の目覚めに不快感を与えることはなかった。

 

少しばかり下腹部が痛むが気にならない程度だったのでどうということはなかった。

 

「はちまんくん………はちまんくん!!」

 

体に重い衝撃が走り、なんだかよくわからない状況を更に複雑化した。

 

「は?え、は?」

 

抱きついてきたのはやはり一ノ瀬だったのだが、起きて数分もたたないうちからいきなり抱きつかれたとあっては一ノ瀬も別の美少女に見えるという物だ。

 

つまるところ、何この状況…………

 

知らない部屋で眠ってていきなり一ノ瀬に抱きつかれて…ってどゆこと?

 

いまいちはっきりとしない思考を一旦塞き止め一之瀬に聞く。

 

「なぁ、俺あれからどうしたんだ?」

 

「うぅ………」

 

「一之瀬?」

 

再度一之瀬に声をかけた。こんなキモい奴には返事も返す価値がないというあれですかね。……あの純真無垢な一之瀬がっ……ついに、ついに人並みに……

 

軽いショックを受けながら、短いため息をつく。

 

「い・ち・の・せ?」

 

「ごめんね。もう少しだけだから……もう少しだけこのままでいて」

 

「???」

 

一之瀬は離すそぶりを見せず同じ姿勢のまま動かない。同じ姿勢というのは抱きついたままってことですがいいんですか?俺ですよ?分かってますー?

 

一之瀬の声には何故か重みを孕んでいるような気がして、聞き返したい気持ちがしたのだが

 

だからもう少しだけこのままでいよう。

 

暖かい気持ちに包まれながら

 

「よかった……目を覚ましてくれてありがとう…」

 

??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか」

 

数分経つと一之瀬は泣き止んだようで、俺からすっと離れる。体に触れていた熱が名残惜しそうに冷めていく。べ、別に残念だとか思ってないんだからね。

 

それよりこの状況を説明してほしい。あの後どうなったか大体の事情はわかるのだが、一応確認はしておきたい。

 

「うん。ごめんね。」

 

ごめんね?どういうことだ?一之瀬が謝る理由なんて………ま、まさか

 

「お前……嫌なのに抱きついてたのか?だから、泣いて「違うよ。」???」

 

一之瀬は涙を拭く動作を見せ、少し笑う。

 

「そういうところ鈍いよね。」

 

鈍いってなんだよ。俺が鈍いなら誰も彼もが鈍くなるぞ?俺は鈍いというかむしろ敏感な方だ。敏感で過敏でだから、いつも

 

一之瀬は居住まいを正して、真剣な雰囲気を醸し出し始める。

 

「落ち着いてきたから少し話させて」

 

「あ、あぁ。あの後のことも含めて聞かせてくれ。」

 

「じゃあ話すね。あの後八幡君は血を吹いて倒れたのーー」

 

そうか、最後視界に捉えたのは俺の血だったのか。そうなれば納得がいく。ここに運ばれたのも。

 

「倒れたのも、ここに運ばれたのも、胃潰瘍って病気のせいでーーー」

 

驚かない。驚くはずもなかった。そんなことそもそも知っていたから。

 

「原因は恐らく過度のストレスだって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人目を忍んで泣き出した一之瀬をなんとか宥めていく。と言っても頭を撫でているだけなんだが。

 

「大丈夫だって。そんな泣くな一之瀬」

 

「だって、もう起きないかもって………思っちゃって…」

 

んなわけあるか。俺を病人のように扱うな。病人だけど。

 

「俺は大丈夫だって言ってんだろ。そんなすぐ死ぬような体をしてねぇ。耐久性抜群、特に悪口特化だ。」

 

「何それ」

 

一之瀬は少し笑って、心配したような顔を止めた。

 

笑ってくれるなら、安心できようものと言った感じに俺も緊張をぼぐす。

 

そうだ。この際丁度いいし、色々と聞いておくか。まぁ、固く聞く必要もないし、談笑に交えて聞くか。

 

「なぁ、俺のことよりさ、一之瀬こそ大丈夫か?」

 

「え?わたし?」

 

「そう。お前も色々溜め込んでるだろ。」

 

見ればわかるというのは傲慢な考えだけど、やつれているのは声の調子からもわかる。何かためこんでるというのもそこからきているが、実際どうなのかは分からない。

 

「そうかも。主に…………」

 

チラッとこちらを見てくるが、は?なに?俺が原因ですか?うざくてごめんね………

 

「すまん。俺が原因だよな。すまん。もう話しかけないようにするわ……」

 

「ち、違うよ。八幡くんが悪いんじゃなくて……ううん、悪いのは私の方だよ」

 

「一之瀬……お前なんかあったか?話せ」

 

多少強引でも話してくれないと進めないため、俺は一之瀬に強く言う。

 

「う、うん。………………ごめん。話せないや」

 

「そうか。まぁ、俺は友達すら居ない奴だから話せないかも知れないが、話せる奴には話しとけよ」

 

押してダメなら諦めるしかない。だが、もう少し……もう少しだけ踏み込みたい。

 

一之瀬が嫌じゃないなら、俺を嫌ってないならに限るけど、一歩踏み出したい。

 

俺は初めてそう思えたんだ。

 

「ちょっとこっちきてくれるか?」

 

「ん?」

 

「耳が悪くなったみたいで、もう一度さっきのセリフ言ってくれないか?」

 

「わ、わかった。」

 

近くに寄るのが恥ずかしいのか頬を赤らめて近づいてくる。

 

俺の耳元までくると、咄嗟に、体を此方へ寄せる。

 

小さい頃小町と遊んでいるときによくやってやったやつをやろうとして手元がすべる

 

「わ、わわっ」「っとおい!」

 

 

 

 

 

何か柔らかいものが俺の唇に当たる。

 

 

 

 

窓から当たる風が遮られ、俺の上には僅かな暖かみが宿っている。彼女の重さは自然と重くは思わず、軽かった。

 

 

「ああああああは、は、八幡くん?」

 

慌てふためく、彼女の頬にはほんのりと赤みが走っている。目をくるくると回し沸騰しているみたいだ。なにこいつ可愛い…

 

「ちょっと予定とずれたが………こういうのもいいだろ」

 

「よよよよくないよ!八幡くんにはっ!」

 

キスをしてしまったのはまずいと思ったから後で謝るが、まだ何かあるのか?まぁ、俺も大胆な行動するようになったなとは思うが。

 

「八幡くんには彼女がいるから…………二人も」

 

「ん?ちょっと悪いな。全く聞こえんかったわ。もう一度頼めるか?」

 

「だ、だから、八幡くんには二人も彼女いるかろ……ダメだよこういうの」

 

「ちょっ、暴れるなっての。………」

 

一之瀬が俺の胸の上でバタバタと暴れるので宥めるように頭を撫でる。

 

ん、こいつなんて言った?

 

「彼女いるのにそういうことやったら彼女さんに悪いよ……」

 

思いっきり息を吸い込んで一之瀬に伝える。

 

「な……なぁ?お前ほんっっっとうに俺に彼女がいると思ってんのか?」

 

「うん。。櫛田さんと陽乃さん」

 

「はぁ。。。俺に彼女が出来るならなんで葉山は彼女できてないんだよ。しかもあの二人かよ。」

 

「葉山くんは関係ないんじゃ…」

 

「いいから、聞け。結論から言うが、俺に彼女なんか出来るわけがないだろが。逆にほしいくらいだよ。」

 

「え?」

 

一之瀬はなに言ってんのこいつみたいな目と見てくるが俺からしたらお前がなに言ってんのって感じなんだけどな…

 

「年齢=彼女いない歴随時更新中の俺が彼女なんてできたら………いや、俺レンタル彼女使ったよな。もしや表では彼女なんぞいらん!と言っておきながら心の内では欲しがってるんじゃ……」

 

「は、ははは。……そっかぁ〜」

 

急に脱力したように暴れるのを止める。

 

「お前まさか、そのことで悩んでたんじゃ……」

 

「わ、わー違う!違うからぁ!」

 

「ははは。可愛い奴め。あんま暴れんなよ」

 

急に静かになったかと思えばまた暴れだすから、頭を撫で続ける。

 

「つかさ、もうお前が過去に戻したって事でいいんだよな?」

 

「あ、あちゃー。」

 

「どうなんだ?」

 

いやりと笑みを浮かべるが、大して意味はない。一之瀬を責めるつもりは全くないからだ。

 

「いや、別に良いんだけどさ。全然怒こってないし。ただ、戻せるんな「ん……」?!」

 

唇に柔らかい物が当たる

 

「………!?」

 

「また、しちゃったね」///

 

こ、こいつ。なにしたかわかって………

 

 

 

 

 

 

 

ぷつりと糸が切れる音がした気がした。

 



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第45話還ってきた日常

生徒会室の喧騒年々この時期になると増していくようで、ガヤガヤとした音は鳴り止まず、背後や目の前から次次と声が飛び交う

 

時は6月2日ジュンブライドはまだ去っておらず、ただただ蒸し暑い。

 

蝉はないていないものの、じくじくと照らす太陽は同じくらいの厭わしさだった。

 

あれから1ヶ月経ったのだと思うと、未だあのことが頭から離れない

 

一之瀬があの時何故キスしたのかその答えがわからずにいる

 

そして頬に残るこの赤らみも

 

いまだ分からずにいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堀北 陽乃

     八幡 

     一之瀬

 

と言う席順なのだが、、、

 

 

「ずばり!恋でしょ?八幡くん恋してるんだー?」

 

「はぁ?」

 

絶賛仕事中の陽乃さんは俺の頬をツンツン続きながら言う。う、鬱陶しい。

 

「だれー?」

 

「いやいや、俺が恋なん…」

 

「私でしょー?」

 

言い終えてないんですけど。人の話ちゃんと聞こうねー

 

「違います」

 

さも残念かと言うように仰向けになる。おい、生徒会長。

 

「ぶぅー、つまんないのー」

 

「はいはい。仕事してください」

 

生徒会長だから仕事溜まってんだろ。全く。と思いながらうつ伏せになった陽乃の頭を撫でる。

 

「むぅー」

 

一之瀬が不満気味な視線を向けてくる。あ、これ前もあったわ。確かこういう時は……

 

同じように頭を撫でてやる

 

「えへへー」

 

一之瀬は花を咲かせたように微笑む。畜生、可愛いなぁ。

 

多分俺は今至極だらしない顔をしていることだろう。

 

だが、そんなこと構うことなく一之瀬の頭を撫で続ける。

 

和むわぁー。

 

「ねぇねぇ」

 

「?」

 

陽乃がとんとんと肩を叩いてくる。

 

「一之瀬ちゃんでしょ?」

 

「???」

 

なに言ってんのこいつ。一之瀬に恋してるだと?なめんな。一之瀬は愛でるものだ。恋なんてしてはいけない。戸塚と同じだ!あれ?俺戸塚に恋してたような……

 

「あれまー、自覚なしかー。まだ………」

 

「おい。陽乃仕事しろ」

 

「そーんなおいのび太みたいに言われてもさ〜」

 

陽乃はまたもうつ伏せになり仕事なんて嫌々いやー!と言う。

 

いや、俺も仕事嫌いだけどさ。生徒会長様はちゃんとしないと。あ、やべ、俺副会長だった、これ以上の仕事はご勘弁です。

 

「駄々をこねるな。ほら、お前が副会長にした比企谷だって一之瀬の頭を撫でながらキーボードを叩いているではないか。だから陽乃も寝ながらでも良いからキーボードを叩け」

 

「ほ、堀北くんってたまに頭がいいのか悪いのか分からないこと言うよね」

 

「あ?」

 

「ひゃー、堀北くんかっくいー、よー、いけてるぅー」

 

「はぁ。」

 

堀北さんは溜息をつきどうしたものかと考える仕草をする。

 

堀北さんも苦労が絶えないな。分かるぜその気持ち。言ってもどうにもならんときあるもんな。

 

陽乃に限って言えば一生だろう。がんば!堀北さん。俺は一切知らないので。後のことはよろしくです。

 

「よしっ!終わった。俺帰りますね。頑張ってくださーい」

 

素早く椅子から立ち。此処にはもう用はないとばかりに足早に立ち去る。

 

ふっ、あばよ陽乃さん。そして堀北さんはご愁傷様です。一之瀬はまた明日な。

 

だが、陽乃は異議があるようで、うつ伏せていた手をこちらに向ける。ゾンビみたく。

 

「えぇー!まってよーハチエモーン!」

 

それ、材木座とキャラ被ってるからな。そんなこと言っても帰らせていただくとしよう。ぼっちが呼んでいるんだ。

 

さて、さ「八幡くん!また明日〜」

 

まだいよ……いや、帰る。ぼっちを待たせたとあっては俺のぼっちのなが廃るからな。よし!

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、仕事だ。休まず働けよ陽乃」

 

「ひえぇーー」

 

「むー」

 

彼女は二人の会話を聞かず黙々と仕事を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

「おう、八幡」

 

あれ?清は?どこいった?

 

「金魚の糞ならいねぇぜ。ちょっと用事があるから帰るっていってたが、なぁ、八幡」

 

「な、なんだよ。おいおい、睨んでくんなこえぇよ。何?」

 

翔はギラギラとしためでこちらを睨んでくる。その瞳はさながら蛇のようでかっこいいのだが、睨まれる側としては怖いだけだ。

 

「………お前なんで金魚の糞に八って呼ばれてんだ?いつから仲良くなった」

 

「あ、それならぼっち委員会に清を入れてからだな。それがどうした?」

 

「あぁ、八幡が作ったあの変な委員会な。」

 

「そんなに変じゃないけどな」

 

言うほど変じゃないだろう。あの委員会の活動内容としては風紀委員とにかよる点がある以外まともな委員会だ。

 

ネーミング以外全く変じゃない。

 

「くくっ。決めたぜ。俺もその委員会に入る。だから……」

 

「おう。これで四人………か」

 

「なぁ。委員会に入ればお前のこと八って呼んでいいんだよな?」

 

「あ?勿論だが……てか、そう呼ばないといけないけど?」

 

「く、くくっ」

 

何がおかしいのか忍笑いのような笑いをたえながら拳を掲げる。

 

翔は合わせろと目で言ってくるため、その拳を俺の拳と合わせる。

 

ごんっ

 

と、音が響き、拳が合わさる。

 

俺と翔はぼっちであれど親友だ。

 

「「これからもよろしく。八(翔)」」

 

 

 

 

 

 

「あ、今度Dクラスに仕掛けるがお前には危害を加えねぇからな」

 

てか、翔の名前どうしよう



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第46話ととめどなく流れるは

自分でも書いててコミカルな作品だなーと感じる。文才ないのは許して


毎日次々と溜まっていく仕事を消化しながら、ため息と共に一息つく

 

生徒会室とは別にあるのが此処執務室なのだが、半ばパソコンルームにすら見える部屋だ。

 

主に仕事を憎む小童達があつまりその恨みをパソコンにぶちまけるための部屋なのだが、それにしては皆疲れが溜まっているようにも見える。

 

俺は目の前の奴が原因で疲れが溜まっているのだが、これは一生付き纏う問題だろう。

 

ただ一つ言いたい………

 

「あのー、陽乃。なんでいつも俺の近くに座るんすか?」

 

「へぇー…」

 

「わわっ、八幡くん」

 

一応仕事にひと段落終え、外の空気を吸いに出る。

 

執務室はクーラーが設備されているが指定温度以下にはできないため熱気が一定以上篭ってしまう。家ではクーラーをガンガンにしていた頃が懐かしい……ちょうど二ヶ月くらい経ったのかな

 

無論外に出ても暑いのだが、夕方なので日も暮れ始め、気温も少しずつ下がっていっているためか心地よい。

 

グランドを見れば部活終わりで帰る人達がちらほら見え、鞄を背負った人が多く見える。

 

さながらタバコを吸うサラリーマンのように、大きく息を吐きすいする。

 

「八幡くん?あ、やっぱり八幡くんだ。」

 

「櫛田…か?」

 

声のする方に向き答える。色々あったからかこいつとは久しぶりに会う気がするな。

 

「こんにちは!久しぶりだね」

 

「そうだな。あれ以来会ってなかったし」

 

櫛田と最後に会ったのは一ヶ月前、あれが終わって一度会ったっきりだ。

 

「どう?そっちは」

 

「あ?あぁ。なんだかんだ言って楽しいよ」

 

「そっ」

 

「?」

 

そっちはという言い方に少し気がかかるが深い意味はないのだろう。俺には俺の櫛田には櫛田の生活があるように

 

「私はあまり楽しくないかな。堀北はいつもどおりうざいし、それに……」

 

「?それに?」

 

「八幡くんはどこ探してもいないし」

 

「?俺を探してたのか?いつも執務室にいるんだけど」

 

櫛田が俺を探す理由は分からないが俺を探してたのなら早く言ってくれれば……

 

あぁ、そういやこいつに番号とか教えてないんだっけ?

 

「執務室………分かった覚えとくね」

 

「用事ある時はそこにきてくれ。最近は先生の仕事より生徒会の仕事が多いからな」

 

「八幡くん忙しそうだもんね」

 

俺は花壇を覆っている白いレールを掴み体重をそこにかける。

 

仕事が多くて、胃がキリキリするくらいだよ。まぁ、楽しいから別に気にしないけどな。

 

「たまには私に頼ってくれてもいいのにさ」

 

櫛田は爪先で石を蹴りながら一人ごちるが、何言ってるのか聞こえないため、大方俺の悪口でも言ってるんだろうと予測する。

 

「そうだ!私八幡くんの連絡先知らない」

 

「まぁ、そうだな」

 

「知らない」

 

「俺も知らん」

 

「知らないんだもん。」

 

もん?俺も櫛田の連絡先は知らないが、あれだな一つ思うところあるとしたら、マッカン飲みたい。

 

「もう!なんで通じないの?携帯出して!」

 

「は、はぁ。ほれ」

 

こいつなんで怒ってんの?怒る所あったかと思うと………そう言うことか。連絡先教えてってことね。最初からそう言えよ。ぼっちには会話の省略は通じん

 

「躊躇なく渡せるのすごいね……ここをこうして……よし、完了。」

 

と言って俺の携帯を渡してくる。流石女子高生タップ速度が速い。恐るべしコミュ強。

 

「ありがとね。」

 

「こんなのなんでもねぇよ。既に何人かはとは交換してるしな」

 

「そ、そうなんだね。因みに聞くんだけど、その中に女性はいるのかな?」

 

さっきまで朗らかとしていた表情が一変して眉間に青筋が立っているが、どうしたんだ?

 

俺の携帯に登録している番号で女性の数は……生徒会で一之瀬と陽乃と橘書記と、あとは役員数名(5人)と雪ノ下と由比ヶ浜は交換したし、堀北とはしたくなかったけどしたな。折本ともしたし、あと坂柳ともしたな。あとは更科ともしたし、七海だな。くらいか?

 

案外女子が多いもんだな。の割には男子は多分少ない。いや、数えたくない。俺のぼっちが見に余るからな。

 

「えっと、15人かな。どうだ?少ないだろ。お前の心配にはおよばねぇよ」

 

「……………それで少ないと思ってるの?」

 

リア充ってそんなもんなんじゃないのか?前ニュースでやってたぞ?39股しているやつがいたってニュース。あれに比べたら15人なんて細やかなものだろうが。その中で親しい奴なんて………あれ?みんな親しいよつな…気のせいだよな。

 

「………が………証……だから。」

 

「あ?なんつった?」

 

「むぅ。八幡くんなんて知らない。」

 

「あ、おい!まてよ!」

 

櫛田が何か呟きながら走っていく。器用な奴だな。

 

「又連絡するからね〜!」

 

全く。器用な奴だ。

 

さて、俺も仕事に戻るとするかな。

 

夕日は沈みかけ少し雲がかった太陽は俺達に幻想を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青春してるね〜〜いいなぁ。わたしにはあんな時代なかったのに」

 

手が長い髪をくるくるとし、ポワポワとした雰囲気の彼女はひとりぼやく。

 

「まっ、いいや。彼には三年間そばにいてもらうんだし、青春もいいよね」

 

上から覗いていた彼女は窓を閉めて、自分の仕事に取り掛かる。

 

「はぁ。彼氏欲しいなぁ……あ、彼氏だったら八幡くんみたいな生徒がいいよね」

 

「星乃宮、彼氏なんて作っても長く続かないんだからやめとけ」

 

「えぇー、ひどーい!」

 

「はいはい。そんなこと呟いてる暇あったら早く仕事終わらせろ。」

 

「ぶーぶー。仕事が多すぎるんですぅー!」

 

「子供か。多いなら比企谷にでも任せとけばいいだろ。」

 

「むぅ、それはダメだよ。」

 

彼女は縮こまって否定する。

 

「どうしてだ?雑務だろ?」

 

「彼最近忙しそうだし、それに元々私の仕事もあって忙しそうにしてるんだから悪いでしょ」

 

「ふっ。お前らしくないな」

 

「私は私だもん」

 

彼女は一言言い切る前に仕事につく。

 

 

職員室でも、生徒会室でも、続く日常は止まらない。

 

 

 

 

「はぁ。初めて陽乃が大変なところを見た気がするぞ」

 

「???」

 

皆様々な反応を見せるため少し動揺する。首をあっちらこっちらと振るが呆れたような、可哀想なものを見るような目でみてくる。

 

陽乃や一之瀬や堀北さんだけじゃなく執務室にいる全員がそんな目でみてくるため、きつい…俺は何か間違ったよぅた…

 

 

 

「八幡くん、そんなこと言ったらめっだよ?陽乃さんだって……」ゴニョゴニョ

 

「あ?なんだよ」

 

「な、なんでもない。ともかくめっ!」

 

「???」

 

一之瀬は妹をあやすかのように言ってくるが、なんなんだ一体。はっ、まさか俺を虐めて遊ぼうとかいう陽乃さんの陰謀なのでは……だから、副会長とか次期生徒会長を押し付けたりとか……

 

「はーちーまーんくん?」

 

「ひ、ひゃい!!誠に申し訳ございませんことをねがいま〒°#」

 

即土下座。日本代々伝わる伝統美。誰にでもできて純真な誠意を伝えるために一番の姿勢。

 

これを見れば誰であろうと許さざるを得ない。土下座とは魔王に対して一番効能がある特効薬みたいなもので………

 

「八幡くん。顔は上げなくていいから、ちゃんと聞いてね」

 

「は、はいぃ…」

 

流石魔王。顔は上げなくていいからとな。やはり俺らとは格が違う。このまま頭に足をつけられないだろうか……八幡心配

 

あ、特殊性癖じゃないのでご褒美じゃないです。だからやめて!一之瀬はそんな目でみないでっ!!

 

「私は八幡くんとずっといたいの。分かるかな」

 

「はい!(終始いじり倒して玩具にするために…か)」

 

「だから、いつも一緒に入れて嬉しいんだよ?ね?これからもよろしくね?」

 

「はい!滅相もございません!」

 

「???まぁ、いいわ。許してあげる。」

 

「ははー!我が生涯最高の至福!わ^>♪¥・=#」

 

「あれー?大丈夫?八幡くんー」

 

陽乃さんが満面の笑みでそう言ってくるが、悔しすぎる、逆えん。この人には吉田沙織20人くらい連れてこないと勝てん!

 

おお、神よ。なぜ人類最強を世に生を残したのですか?

 

みぞうちあたりが少しいたい気がするが、この姿勢がきついからだろう。

 

そんなことより、周囲の目がきつい。「女王と家来みたいだねー」とか「いやいや、女王と下僕でしょー」とか、「魔王と下僕じゃない?」とか、様々な意見が飛び交う。俺的には魔王と下僕が一番近く思える。

 

 

(((((魔王とペットだ!!)))))

 

「い、いや、でも、あれだよな。陽乃は毎日仕事せず俺にちょっかいばかりかけてくるしな。」

 

「え、え?違うよそれは反応が面白いからで……」

 

「そうだな」

 

機会を得たとばかりに堀北さんも乗っかってくる。ふ、いいぞ。これは!

 

「陽乃は毎日仕事ではなく比企谷をいじり遊んでいる。それで、溜まった仕事は俺達副会長に回す。」

 

「う、うぐ。だ、だから違うって……」

 

「何が違うんだ?遊び通している時のお前の顔をみろ。なんだこのだらけた様は。橘書記」

 

「はい。これを」

 

(((((どこから現れた?)))))

 

あれ?橘書記?今までどこにいたんだ?堀北さんが呼んだらいつも影から出てくるが……もしや、忍者?!

 

「ご苦労。さて、陽乃これを見ろ。」

 

堀北さんは陽乃に数枚の写真を見せる。全部陽乃が近くで撮られた写真だった。頬を突いて微笑んでいたり、俺を指差して爆笑していたり、こちょこちょしていたり。

 

ほんと何してんだこの人は……

 

「うぅ………ただ、私は八幡くんと一緒にいたいから……」

 

漸く白状したとばかりに言うがなんの言い訳にもなってない気がする……あれ?言い訳?よくわからんくなってきた。

 

「それがどう言い訳になるんだ?」

 

堀北さんもそう思ったようで俺の気持ちを代弁してくれる。あ、俺だけじゃなかったんだな。

 

「ぅっ……ぐすっ……私の仕事を八幡くんに回したらもっと執務室にいてくれるんじゃないかって……」

 

「?!?」

 

(((((陽乃会長……乙女ね(だな))))))

 

堀北さんは衝撃を受けたように一歩後ずさる

 

「八幡くん、教師の雑務も多いし、ここにいる時って大体忙しい時だから……」

 

だ、騙されるな!これもなんの言い訳にもなってないからな!!堀北さん?!

 

「………そうか。女なら頑張れよ」

 

いや、それは男に言うセリフd

 

「うん。私頑張るね!」

 

いつのまにか泣いていた陽乃はいつのまにか泣き止んでいた。

 

「おい。これって比企谷副会長の仕事をもっと増やせばいいんじゃね?」「そうしたらもっとここにいられるしね!」「そうと決まれば……」

 

お、おい?何やら不穏な声が聞こえるんですけど?!俺はこれ以上仕事しないですよ!!絶対やらんからな?!

 

「これもお願いしまーす。副会長」

 

「あ、じゃあこれもお願いします。ちょっと面倒くさい作業ですが一度やれば簡単ですので」

 

「これも頼みまーす」

 

「これも」

 

「あ、あれも」

 

これよあれよと積み重なっていく書類の量が山になっていく。

 

あぁ、これがエベレストへ登る登山家の感情か………のぼれるかな……

 

ついにその量はパソコンの高さを超えて超不自然に映った。

 

最後にこれだけ言わせてもらうが

 

「陽乃…………」

 

(๑˃̵ᴗ˂̵)てへっ

 

「お前最初から分かっててやったな?」

 

頭ん中でシチュエーション組んでやっただろこいつ。陽乃……恐ろしい子っ

 

「私は嘘ついてないよ〜だ」

 

陽乃は策士です。挑む際には回復の薬とかけらを山積みにしてマスターボールをいくつか持っていくと良いでしょう。ただし、ボールには入るか分かりません。

 

 

一之瀬が感心したようにみてるが………お前もあんな風にならないよな?八幡超心配

 



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第47話混み帰る過去の流れ

「はぁ?DクラスとCクラスが?」

 

「いやー、なんでも須藤くんcクラスの生徒に殴りかかったって。面倒くさいから八幡くんと堀北君が見てきてよ」

 

確か、月初のポイントは入っていなかった。その理由は喧嘩だと聞いていたが、dとcだったのか。

 

陽乃さんは心底興味ないと言った風に机にうつ伏せになっている。見慣れた光景だけど見慣れちゃまずい奴だよな。

 

見てきてよとはおそらく審議のことだろう。いやいや、あれは生徒会長だけg

 

「陽乃、今回ばかりは参加を見送ることはできない。」

 

「なんでーー!」

 

机の上でばたばたばたばたと駄々をこねるように暴れる。

 

子供か。。。この人仮にも生徒会長で俺の一つ上だったよな?やべぇ、後輩にしか見えないんだが。

 

「はぁ。お前はそうやって前も審議を他の人に代行させたじゃないか。」

 

「やだやだやだー!」

 

陽乃さん………貴方今おいくつ?とは、聞かない。口が裂けても言えない。

 

それにしても、"須藤"か。確か、清の友達だったような気が……

 

「俺が行きます」

 

「はぁ?いや、無理しなくていいんだぞ比企谷。こいつは俺が引っ張ってでも連れていくからな」

 

「だから、行かないってばー!」

 

「確かめないといけないことがあるので、行かせてください!堀北さんも面白いものが観れるかもしれませんよ?」

 

「ほう?お前が面白いと言うからには相当面白いのだろうな。」

 

「あ、いや、そう言われると面白くないかもしれないです」

 

俺は一歩引いて答える

 

面白いよな!みたいに考えを固定されると逆に面白くなく思えてきてしまうからついこう言ってしまう。

 

「なら、俺も行こう。書記と副会長二人の"三人で"な」

 

会長はニヤリと笑って陽乃に呟く。

 

堀北さん……あんたすげぇや。もっとだ!もっと言ってやれ!

 

やーいわーいと思考するうちに、堀北さんと俺は自分の席から立つ。

 

あ、これガチで行くやつだ。ということで陽乃はそっとしておいてやろう。

 

「むぅ。二人して置いていく気なんだー?」

 

もうすでに会議室へ行こうとしている俺たちはまだ何か言おうとしている陽乃を見る。

 

「ん?誰のことだろうな。俺は"堀北さんと"行くっつったんだけもなぁ。」

 

「そうやって意地悪するんだ?いいよ。私八幡くんの仕事増やしておくから」

 

びくっ。と、俺の身体が身震いしたような気がしたが気のせいだろう。び、ビビってないし。仕事が増えてもいいぜ。俺は程々にで抜くからな。覚悟しろ!俺。

 

「行きましょう堀北さん俺達は亡骸に用はない筈です。」

「それもそうだな。では、陽乃執務室は任せたぞ」

 

「いやいや、堀北さん、お留守番任せたぞでしょ」

 

陽乃に刺激するように言う。

 

その瞬間、陽乃さんの額に青筋が走る。

 

く、くくっ。効いたようだな。あまりこう言った表現は使いたくないのだが。。

 

陽乃はカタカタと肩を震わせ憤りを感じたように周囲の温度を下げる。

 

「行く。私も行く」

 

「いいのか?無理しなくてもいいんだぞ?」

 

 

「そうだぞー、お昼寝の時間はどうしたー?」

 

「比企谷。昼はもう過ぎたぞ?」

 

「あ、そうでしたっけ」

 

「…………っ。早く行くよ!」

 

いつのまにか俺の前にいる陽乃は早く早くと急いてくる。

 

誰が行きたくないって言ったんだよ。全く。さっきまで怒ってたのはどうしたんだよ。あれか?毎秒で感情が更新されんのか?

 

斯ゆう俺も少し足の速さが上がっているのだが、まぁ多分気のせいだろう。

 

堀北さんが何か言う。

 

「ふっ。お前等が来てから一層騒がしくなったな」

 

位置的に俺は聞こえなかったが、陽乃には聞こえたようで

 

「ばーか」

 

心底楽しそうに彼女は呟いた。

 

やはり俺は彼女には勝てない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡くん!………あれ?」

 

がらがらっと執務室の扉を開ける誰もいないためかしんと静まっているる。ただ、一つの机に大量の紙束が積もっているのが見えた。それが不自然に見えたので、彼女は呟く。

 

「おかしいなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなりました」

 

「まだ予定時刻ではありません。気になさらず」

 

cクラスの生徒は既に来ていて、坂上先生も席についている。

 

これでは印象の差としてはcクラスが遥かに優位に見える。

 

清が来ているためどうなるかはまだわからないから、これからだな楽しみは。

 

俺は半ば演技を視聴するように彼等を見る。

 

……陽乃は資料を見ながらだらけていたり、堀北(妹)は堀北さんを見ていたり、そうするうちに清達は席についた。

 

「ではこれより先日に起こった暴力事件について生徒会及び事件の関係者担任の先生を交え審議をとり行いたいと思います。進行は生徒会書記橘が務めます」

 

橘さんはそう言って軽く会釈する。

 

「まさかこの規模の揉め事に生徒会長が足を運ぶとは。珍しいこともあるものだな。いつもは橘だけの時が多いだろうに」

 

「わ・た・しは来るつもりなんて「陽乃」……こほん。こちらが出向く必要のないものに立ち会うことはありません」

 

「そ……そうか」

 

陽乃は見るからに不機嫌だ。あまりきたくなかったのだろう。だが、顔は少し微笑んでるように見える。

 

なんだこの矛盾した表情は………

 

橘書記はすらすらと概要のみを話していく。

 

ほうほう。

 

つまり、双方の言い分が食い違っていて、

 

Dクラスは呼び出されて喧嘩になった。

 

Cクラスは呼び出されて一方的な喧嘩になった。

 

ということで、どちらかが真実でどちらかが嘘であると……

 

あれれーおかしいよーめちゃくちゃどうでもいいんだけど……

 

「ふざけんなよ小宮!テメェが俺を呼び出したんだろうがっ」

 

「身に覚えがありません」

 

はぁ、俺がきたの間違いだったかなぁ。清は全く動かないし…………

 

俺まで面倒になってきたので目をつぶって時が流れるのを待つ。こうやって試験中に寝てたわ。

 

だんっと強い音が響いたり、叫び声が響いたりしたが、あまり気にしない。

 

ふと隣を見ると陽乃はぐでーといつものような姿勢になっている。おい。

 

「ちょ、な、や、やめっ!?」

 

ほうほう。あれはあれだな。好きな子をいじめたいとi………違うな。意識を覚醒させるためだな。多分堀北は堀北さんと兄弟間での喧嘩?みたいなものがあ流のかも知れんり知らんけど。

 

「しっかりしろ堀北。お前が戦わなきゃこのまま敗北だ」

 

「っ……」

 

あぁー、清も頑張ってそうなことが窺えるな。堀北涙目になってるけど大丈夫か?

 

「……失礼しました。私から質問させていただきます」

 

「おっけー」

 

間の抜けた返事が聞こえるが堀北さんはそれに溜息をつく。

 

「先程、あなた達は須藤くんに呼び出されたとおっしゃいましたが、須藤くんは一体誰を、どのような理由で呼び出したんですか?」

 

正攻法だなー。ぼやけている部分や曖昧な部分を問いただしてボロを出させる。

 

だが………

 

「俺と近藤を呼び出した理由は知りません。部活が終わって着替えてる最中に今から顔を貸せって言われて………俺たちが気に入らないだとか、そんな理由じゃないでしょうか。それがなんだって言うんですか」

 

 

「ではどうして特別棟には石崎くんがいたのですか?彼はバスケット部員ではありませんし、無関係な筈です。」

 

「それは用心のためです。須藤くんが暴力的なのは噂でしたから。」

 

「暴力を振るわれるかも知れない。そう感じていたと?」

 

「そうです」

 

このやり方では終わりが見えない。理とする部分を用意してきた言葉でやり躱す。やはりお前か……翔。

 

俺はこの前翔に投げかけられた言葉を思い出す。Dクラスに仕掛ける。この前言っていたのはそう言うことだったのかと今更気づく。

 

「あー!Dの主張は終わり?」

 

堀北の議論を聞いていた陽乃は面倒そうに一言言う。

 

「須藤くんが相手を殴りつけたことは事実です。しかし先に喧嘩を仕掛けてきたのはCクラスです。その証拠に一部始終目撃していた生徒もいます」

 

「では、Dクラスからの報告のあった目撃者を入室させてください」

 

ここのところ清自身が際立った行動をすることは、表ではありえないだろうし、証人が出てきたところで怪我をさせたのは明白だから妥協案を探して終わるだろう。

 

ねぇ、陽乃連れて帰っていいかな?と、視線で堀北さんに向けるが冷たい目で返される。

 

一緒になって来なければよかったー!!

 

と、

 

「1ーD 佐倉愛里さんです」

 

 

は?いや……………………

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬彼女と目があった気がした

 



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第48話規範

俺はあの少女のことを知っている。

 

彼女が俺の事を知っているかは兎も角として俺は彼女のことを記憶している。

 

俺だけが知っているなんてことになれば自意識過剰となり何か言われるかも知れないが、多分その恐れは杞憂だ。憶測でしかないが彼女も俺を知っているだろう。

 

あれは俺でも記憶しているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某日の学校帰りのこと。

 

中学生の俺は学校帰りに遊ぶ人もいないし、友達もいるはずがない俺は普通に帰っていた。

 

いつもどおりの帰り道。なんの変哲もないアスファルトで埋められた道を歩き今日の晩飯は何かなとか、あの先生の新作が出たって書いてあったけどもう売ってるのかなとか、適当な事を考えてあるいていた。

 

そこへ、女性のものと思われる悲鳴が響く。

 

女性の悲鳴が響こうと知った事じゃない。この時期も流石俺といったばかりに平和主義でも戦争主義でも無かった。

 

だが、女性の悲鳴はついに俺の目の前で響く。面倒だ面倒だと思っている割には足は現場に歩き出し、目の前にまで来ていた。

 

「あん?何見てんだ?」

 

ーーーからはもう星乃宮先生に言ったのでわかると思う。ボコボコにされて、翔に助けられて、彼女は去った。

 

だからここで、論点にすべきなのはその少女…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は確かに見ました。」

 

佐倉愛里。彼女である。

 

「最初にCクラスの生徒が須藤くんに殴りかかったんです。間違いありません。」

 

彼女の出した声には前聞いた声と違い、張りがあった。

 

何かを覚悟してきたのだろうか?それは一重に成長したと言っていいかどうかはわからないが、俺の知っている佐倉とは違っていた。

 

そう。前会った彼女の声と違っていたのだ。

 

「すまないが私から発言させてもらってもいいだろうか」

 

すっと坂上先生がてをあげる。

 

ならば彼女は何が変わったのか。思考?性格?態度?容姿?事情?

 

俺は恐らく冷静ではない。だから、こう、次次と感情が舞い出てくるのだろう。

 

「本来、極力教師は口を挟むべきではないと理解しているが、この状況はあまりに不憫でならない。生徒会長、構わないかな?」

 

「許可します」

 

「佐倉さんと言ったね。私は君を疑っているわけではないのだが、それでもひとつ聞かせてくれ。君は目撃者とて名乗り出たのが随分遅かったようだが、それはどうしてかな?本当に見たのならもっと早く名乗り出るべきだった。」

 

ただ一つ、俺は理解しようとしている。過去に、現在に繋がる、一部分。そして、これから先。未来を。

 

「それはーーその………巻き込まれたくなかったからです………」

 

「どうして巻き込まれたくないと?」

 

「………私は人と話すのが、特異じゃありませんから」

 

「なるほどよくわかりました。ではもう一つ。人と話すことが得意じゃない貴方が週が明けた途端目撃者として、名乗りを上げたのは不自然じゃありませんか?これではDクラスが口裏を合わせて貴方に嘘の証言をさせようとしている風にしか見えない」

 

得意じゃないことは初対面の印象から誰でもわかることだろうと思う。だが、坂上先生はそれも込みでDクラスは計算してるんじゃないか?と疑いを持ちかける。

 

当たり前の手法、論法だが、今は悪くさえ思えてくる。

 

「そんな……私はただ本当のことを……」

 

「幾ら話すのが苦手だとしても、私には自信を持って証言しているようには思えない。それは嘘をついているから、罪悪感に苛まれているからではないのかな?」

 

「ち、違います。」

 

それは俺も考えたことだが、清は基本的に無関心。堀北に至っては善悪に縛られ、常にレールの上を行く写実主義者。いわゆるリアリストだ。

 

Dクラスに現状。表向きの天才は清と高円寺くらいのものだろう。

 

これを以て有り得ないと断言する。そして、恐らくこの審議は地続きのまま終わるだろう。

 

裏はみえても、表しか出ない。

 

「私は君を責めているわけではないよ。恐らくクラスのため、須藤くんを救うため、嘘をーーーーーーー

 

 

 

この敷かれた道は俺を否定しているようにみえて気に入らない。

 

壊したい壊したいと思っていても、表に出る自責が悪心を堰き止める。

 

だから、これからも俺は"常識"という概念と向き合っていくのだろう。今の佐倉を見たことによって次次と湧き出た感情はそのためだ。

 

俺のすぐ前で、向き合っている姿が見えたから安心した。そして、俺の先を行く彼女を見て羨望した。

 

俺は一言言いたい。昔に戻って、一瞬だけだったが面識を持った彼女に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

審議が俺の考えた通り妥協点を模索すると言う段階で決着がつく。話にならないとばかりに堀北はその場を後にして、Cクラスの生徒は堂々と去っていった

 

残っているのは俺と、陽乃(既に寝ている)と堀北さんと清、あとは佐倉だけだ。

 

彼女も俺に気づいていたのか、ただ単に清に付き添いたいだけなのかは知るところではないが、こちらに歩いてくる。

 

位置的に堀北さんと清、俺と佐倉という組み合わせで対面する。

 

「久しぶりだな。佐倉」

 

その言葉はあまりに簡単すぎて、

 

「あなたは……あの時のヒキタニさんですよね」

 

「ち、違う。それは渾名だ。俺の名前は比企谷だ。」

 

「あ、あぁあ、ご、ごめんなさい」

 

佐倉は取り乱して謝る。

 

ヒキタニ、は俺史上最も出てきた渾名であり、その頻度はヒキガエルに次ぐ。最初言われた時は涙で枕を濡らしたが今では言われてもなんとも思わないくらいには成長した。成長?成長だよな。

 

「それよりも、がんばったな。」

 

「………私は知っていること^_話しただけだよ」

 

「証言者がいるだけでも清や堀北にとってありがたい筈だ。結果はどうあれ、な。」

 

「ありがとう……」

 

「うんうん。素直にものが言えるようになったんじゃないのか?」

 

何故か自分のことのように嬉しく思い、そう口にする。

 

不良から助けた(られた?)時は名前と少しお礼言っただけで帰っていったからな。

 

言いながら頭を撫でる。

 

「ひっ………ご、ごめんなさい。まだ慣れてなくて。」

 

「そうだった。佐倉は男性が苦手なんだったな。ごめん。うざかっただろ」

 

「いえ……男性が苦手なだけだから、八幡くんが悪いというわけでは…」

 

「え……名前?」

 

「ひ、ひきぎゃ、ひきた、ひきたに……

 

「あ、あぁ。もういいわ。大体わかった。」

 

こいつ喋らなすぎて舌がうまく回らないんだな。それか緊張して?俺と話すことに緊張はしないだろうから多分前者。

 

俺も半年以上人と喋ってない時期があってうまく口が回らなかったことがある。佐倉と同じかどうかはしらんが。

 

「で、今回はまたどうして…あ、ごめん。ゆっくりでいいからな」

 

「大丈夫。私、ちゃんとするから。。」

 

 

 

「いやいや、無理してちゃんとする必要なんてないだろ。自分の行動に制限ばかりかけていたら息苦しいぞ。俺だってダメダメなところいっぱいあるが、直そうとしてないしな」

 

佐倉の言葉が気になり、長く言ってしまう。余計なお世話か……俺ができていないことを他人にアドバイスするなんて馬鹿げてるしな。

 

「うん………ありがとう」

 

「気にする程度でいいんだが……今日はよくきたな。俺だったら絶対行かないから、羨ましい……」

 

本心。少人数でも人の前で話すとなると臆するものだが、緊迫した空気だと尚更きつくなる。

 

生徒総会の時俺は結構緊張して、何かトラブルが有れば話せなかったかもしれない。

 

「ううん。頑張らなきゃいけない理由があるから……八幡くんにだっていずれわかるよ」

 

「は??」

 

「がんばって……ね………」

 

言い切る前に清の側に寄っていく。伝えたいことは伝えたので思うところはない。

 

そこで色々考えてみるのだが………

 

「なるほど…な」

 

分かったようでわからなかったが、俺が進む理由にはなったのだと思う。

 

佐倉は進もうとしている。多少間違った方法であれど、自分と向き合おうとしているのだ。

 

俺も、胸につかえていたものがとれた気がして、また前へ進もうと思った。

 

 

 

 

「そちらは終わったか?」

 

「そうですね。俺と佐倉が話す事はもうありません。」

 

「そうか…………それから佐倉と言ったな」

 

堀北さんは清の後ろに隠れている佐倉に声をかける。

 

「証拠は審議に出すだけの証拠能力を有していた。しかし、覚えておく事だ。その証拠の評価と信用は証明力で決まる。今回お前の証言が真実として認識される事はないだろう」

 

事実だが、言い方がきつい。

 

清の後ろあたりから忍び泣く声が聞こえる。

 

「私は本当のことを」

 

また面倒なことになりそうなので火種が広がらないようにここで打ち切りにさせてもらう。堀北さんも分かってるはずだしな。

 

「堀北さん。本人も重々承知しているはずです。今回のことは証言者が悪いんじゃ無くて始めからCに傾いていたという事実が悪かったんでしょう?」

 

「む、確かにそうかも知れないが、証言者に技量があれば、状況を一変させることはたやs「はーい!すとっぷすとっぷ。私が寝ているのに騒ぎ立てないで!」

 

「…………」

 

おい。清。そんな目で見てやるな。あれでも寝起きなんだよ。あれ?なんで寝起きなんだろ。

 

「もう終わった事だし何処か食事でも行かない?」

 

「い、いや。俺にはまだ言わないi「学くんはしつこい!早くいくよ」

 

陽乃は堀北さんの袖を引っ張り反対方向へ行こうとする。

 

「あ、俺は行かなくても大丈夫ですよね」

 

予め予防線を貼る。行きたくないというのが本心だ。

 

「は?は・ち・ま・ん君もいくよね⭐︎」

 

「………はい。是非ご一緒させてください」

 

ひっくり返るのが早いって?馬鹿いうな。魔王様だぞ?あ、違ったお代官様だぞ?逆らえるものか!

 

いえ、睨んできたのが怖かったというのが本心です。はい。

 

「じゃっ!お・ふ・た・りはぁ二人であつーi「やめっ、皆まで言おうとすんなよ。堀北さんも早く行きましょう」

 

変なことを口走ろうとしたため咄嗟に陽乃の口を塞ぐ。

 

堀北さんは頭にはてなマークを浮かべている。あ、恋愛感情とかに疎そうですもんね。でも、俺も分かってますよ。は「八幡君!」

 

「それじゃあ、綾小路君と……佐倉ちゃん?だっけ?お元気で〜〜」

 

「あの、いたいって!!」

 

「はぁ。これだから陽乃は。」

 

かたや糾弾して、かたや呆れ、かたや元気に、かたや泣き、かたや無感情に…非日常はいつしか日常となる。



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第49話合宿

季節も、7月へと移り変わり、夏の暑い気候へと足を踏み込む。綾小路等が審議に来た時はまだ暑いが、蒸し暑いまではならなかった。

 

あの審議は結局2回目が行われることはなく、Cクラスが最終的に折れて終わった。

 

どうせ綾小路が脅すなりして終わらせたのだろう。Cクラスは翔がけしかけた従者みたいなものだし、予想外の展開に対処することは出来ないだろう。

 

監視カメラとか取り付けて学校側は既に知っているとか脅せばちゃんちゃらおしまいだしな。

 

ちらほらと見える人の影は悠然として俺の前を過ぎ去るが、その姿は俺を嘲笑っているようで胸を蝕む。

 

暑さで身が焼けそうな想いをするが、俺のこの蒸し暑い思考だろうが、夏の暑さだろうが、全部吹き飛ばせないじめじめとした湿度と目の前のバカンスだかでいっぱいだった。

 

陽乃さんに言われた一言。

 

「これ終わったらバカンスになるから、頑張ってね〜」

 

 

この一言だけで頑張れた。この蒸し暑いなか必要か不必要かで言えば絶対に必要じゃない任務が与えられていた。

 

おいおい、陽乃さんよぉ、こりゃちっと酷じゃねぇけぇ?

 

一見楽に見えそうなのにこの暑さの中見回るという楽じゃない作業に少し腹が立つ。

 

くっそ………だましよったな陽乃……俺らのバカンスは8月6日。ちょっと考えれば分かったこと。

 

バカンスとは、教師が言った胡散臭い行事の一つだが、陽乃が言えば清廉な行事に見えるのはなぜだろう……

 

今度は絶対騙されない!

 

絶対の意思を持ちおおおお!と意気込んでいる時、視線の先があるアクセサリー店を据える。

 

 

 

 

特別試験がある少し前のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あちーー、あ、はちまんくんーアイス買ってきてくれたー?」

 

陽乃はいつもに増してだらーとしている。その額や体にはじっとりと汗が染みつき、キラキラ光っていた

 

だが、ここは執務室ではなく生徒会室であり、汗が出る理由がわからない。

 

生徒会室ではクーラーが何台も設置されている筈であり、陽乃はそれをいつもガンガンにかけているため暑さなど訪れることがなかった。

 

寒すぎたくらいなのだ。

 

なら、またどうして………

 

「あー、きょうはてんけんび。れいぼうかけちゃだめだって」

 

 

そう言えば堀北さんがそう言ってたような………あれ?ならなんでここにいるんだろう……

 

「八幡くんは〜すぐ職員室に行こうとするからね〜〜」

 

「俺の考え読むのやめてください。職員室に行こうとするのは仕事があるからです」

 

「そこに山があるから見たいな言い方〜」

 

「事実ですから。俺はそこに仕事の山があるから仕事をするんです」

 

仕事の山はたまりにたまり、時期に山となって俺を襲う。恐らく、仕事とは生きていれば積み重なるもので逃げられない。逃げようとすれば蛇に睨まれ、やがて食われる。食われる前に仕事を終わらせなければ………社畜となる。これ、人の真理なり……

 

「八幡は直ぐに逃げようとするからね。私が抑えておかないと他の場所に目くじら立てるんだから」

 

「そんなこと知らないですよ。俺の自由でしょが。大体、陽乃が重ねるんだぞ?俺の仕事は!分かってるのか?」

 

「知らないよ〜それよりアイスまだー?」

 

「逃げた………まぁ、子供っぽくなった陽乃も可愛いか………ほれ」

 

俺の持っているアイスを陽乃のほっぺたにつける。まだ、行って帰ってきて数分しか経ってないからこんなに暑くても溶けていない筈だ

 

「ひゃっ……むぅ。でも、可愛いって///」

 

やれやれとばかりに陽乃の元へアイスをおき、ソファで寛ぐが、何処からか湯気が飛んでくる……湯気は俺の鼻腔をくすぐりなんだか少し甘く感じる。くすぐったくて、とろけそうになる……

 

おいおいアクション映画かよ。。俺特撮苦手なんだけど。あ、プリキュアは好きだぜ?

 

湯気が立ち込める場所に探りを入れ、やがて陽乃の方から出ていることを悟る

 

陽乃をみると顔を赤くしているが………あそこから湯気出てんのか。最近のパソコンすげぇとか思ったけど人工なのね……

 

「どしたー、可愛い可愛い陽乃ちゃん?」

 

「や、やめて……私可愛くないもん」

 

な、なに?!陽乃が、陽乃が照れてるだと?!こ、これはもう事件だ!陽乃が照れるなんて今後30年あるかわからないぞ?

 

記念に写真を撮っておこう?

 

ポケットにあるスマートフォンを取り出し、ぱしゃりと写真をとる。

 

うむ。やはり可愛いな

 

「もう知らないし……八幡くんのことなんか知らない」

 

「はぁ?」

 

「だって、写真なんか撮って……どうせその写真をグループ内でひけらかして私のこと魔王だなんだ言うつもりでしょ」

 

「む、むぅ……」

 

痛い所ついてくるな。実際魔王が照れたぞ?!と言うつもりだったのだが、可哀想だしやめておくか

 

「言うつもりだったんだ〜酷い子。だから、八幡くんのことなんか知らないもん」

 

もんって。。。だが、俺はこの人のおかげで成り立っているところもあるし、なんだかんだで助かってるし……

 

「すみません。俺で良ければなんでも「言ったね?言ったからね?!やったー!」い、いややっぱなんでもはな「話が違うよ!なんでもだよ!な・ん・で・も。」く、くぅ」

 

そう凄まれると断りづらいというか、自分で言ってしまったことなので、断れない。

 

しょうがない……押してダメならなんとやらだ。

 

「分かりました………ただしきついのはやめてくださいね」

 

「八幡くんは何をされると思ってるの?!」

 

陽乃は驚いたように俺に聞いてくる。

 

そりゃ、あんた目隠しと足舐めを数十分した後、し「何考えてるかはわかったわ。」

 

「はぁ。私がそんな下らない事する訳ないでしょ」

 

そ、そうですか。。案外しそうな気がしますけどね。

 

「なら、何する気なんですか?」

 

「八幡くんには〜バカンスについてきてもらいまーす!」

 

「はぁ。」

 

何言ってんのこの人。誰かー、翻訳お願いしまーす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで……どういうわけなんだか。やってきたのが無人島。名目として生徒会メンバーのみでの合宿らしい。

 

キラキラと輝く海と、俺の思考はぐわんぐわんと揺れており、溜息をつくばかりだ。

 

広い砂浜と奥に広がる森は俺の目を歪ませるばかりだ。

 

じりじりとして、蒸し暑いのはここも変わらず健在だった。

 

「なぁ、俺なんできたんだっけ」

 

「んー、八幡くんは………あれ?なんできたんだっけ」

 

「いや、俺が聞いてるんだけど……」

 

「そんなことより遊ぶぞー!おー!」

 

「お、おー!」

 

一之瀬は引きつった笑いを浮かべて腕を高らかに上げる。

 

陽乃に無理して合わせているのが目に見えている。わかるぞ、陽乃さんのテンションはいつも分からんからな。慣れろ。そうすれば可愛く思えてくるから。これ、俺ソースな。

 

「一之瀬は無理して調子に合わせようとしなくていいんだぞ……」

 

「比企谷。諦めろ。陽乃はいつもこうだ」

 

既に堀北さんは遠い目をしている。おい、あんた……同士だな。。。

 

「ほ、堀北副会長、私まできてよかったのでしょうか」

 

「橘書記。お前は陽乃が何かした時の証拠係となる。お前がいることで助かる時があるんだ」

 

「…………」

 

「な、なぁ、一之瀬。橘書記って堀北さんのこと……」

 

「八幡くん?橘先輩がどうしたの?」

 

こそこそと話し声が聞こえないように離れて話す。しかし、生徒会メンバーも人数が多く、20数名できているため相当小さな声で話さないといけない。

 

「好き………だよなあれは。」

 

「何言ってるの?単純な好意じゃないのかなぁ。」

 

「はぁ?あれ見ていってん「なになに〜八幡くん私も混ぜて〜」………」

 

陽乃が来てから話す気が失せた。別に俺がどうするというわけでもないため、聞くことをやめる。

 

「ねぇねぇ、なんの話ししてたの?」

 

「それはたち「たち……たち……風立ちぬ!そう風立ちぬが面白いねぇー、って話してたんです」

 

一之瀬の口を押さえて口を出させない。

 

無論、風立ちぬの話なんてしてないし、風立ちぬは見ていないため話すことなんてできないから、陽乃が知らないことを祈って話す。

 

「へぇー、私風立ちぬは観てないんだよねー、今度見てみるから話しようよ!」

 

「そ、そうですね……あの作品は素晴らしいので、また今度話できたら……」

 

や、やべぇ、風立ちぬ見ないといけなくなったぞ………

 

「そうだね。一之瀬ちゃん窒息しちゃうから離してあげてね。じゃ」

 

陽乃さんは堀北さんの所へ戻っていく。

 

ん?んんん?今何か頭の中に引っかかったような………気のせいかな。

 

「ぷはぁ。はぁ。。はぁ。。。八幡くん酷いよぉ」

 

「あ、ごめんごめん。忘れてたわ。」

 

一之瀬を離してやり、呼吸ができるようにしてやる。

 

でも、堀北さん、陽乃、橘書記を見ているとなんだか引っかかりもやが取れないままだった。

 

合宿には南雲や2年生の面々も来ており、波乱を生みそうなのを楽しみに思っていた




ここまでしかないので、すぐに書き留めていきます。一日二、三話ではくらいでいいですか?構想が終わったらまた連絡します。文才が無くて面白くないかもしれませんが、私の作品をどうぞよろしくおねがします


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