アサルトリリィ MIX BLOOM (カッパサン)
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プロローグ
「1」彼女は木葉奈々


第一話です。

原作キャラは出ません。

次で出します。


先の見えない大海原…

 

微かに出てる大陽…

 

そして、海の上で浮かび、集まっている異形の生物…

 

小型で虫の羽根を生やし、空を飛んでるのがおよそ30体で、海から出てきたカニに似た大きな生物が3体。

 

群れをなして、何処かへ向かうよう動いていた。

 

その群れに向かおうと一隻の空母がやって来た。

 

 

 

青一色に染まった空母の艦板には、10人の少女達が様々な武器を持って立っていた。

 

 

その中でも一人、更に前に立つ赤茶色のショートヘアーの少女は、目の前の生物達を見つめていた。

 

動きやすさを意識した青のスカートと白のワイシャツの制服に白のハイソックス。

 

腰に着けてるのは、青のコアが埋め込まれた約50センチの剣。

 

右手に持つは、赤のコアが埋め込まれた約150センチの大刃の剣。

 

 

他の少女達は青のスカートと青の学ラン、異なる武器を持ち、目の前の生物達を見ていた。

 

 

 

 

 

そんな中、空母にあちこちに取り付けられたスピーカーからアナウンスが流れた。

 

 

「もうすぐヒュージとエンゲージに入ります。ブリッジに着いたブルーガード一同は直ちに戦闘体制に入ってください。敵の数はミドル級が30体、ラージ級が3体。エンゲージに入り次第、攻撃を開始してください」

 

 

艦板にいる少女達はアナウンスを聞いた後、すぐに手に持ったCHARMと呼ばれる武器を起動させる。

 

すると、CHARMと呼ばれる武器のコア部分にルーン文字が浮かび上がる。

 

 

 

「みんな、相手がミドル、ラージだからって油断は禁物よ。まず取り巻きのミドル級を先に殲滅する。ラージ級の3体はその後よ」

 

 

前に立つお姉さんらしさを見せる黒髪のポニーテールの少女が振り向き、他のリリィ達に指示を出す。

 

 

ブルーガード リーダー 2年生 榛名咲樹(はるな さき)

 

CHARMは大剣のダインスレイフを更に大型化した改造機、カリバーン。

 

 

 

 

 

 

 

「咲樹さん、ラージ級の方は私に任せてもいいですか?いやむしろお願いします」

 

 

元気な赤茶色のショートヘアーの少女が咲樹に単独でラージ級に挑むことをお願いする。

 

 

ブルーガード エースアタッカー 1年生 木葉奈々(このは なな)

 

CHARMは赤の長剣のカナベラルと腰に着けた青の短剣のブルメリア。

 

 

 

 

 

 

 

 

「奈々ちゃん、流石に危ないよ…ラージ級が3体だし」

 

 

おしとやかな青髪のロングの少女が奈々を気使う。

 

 

ブルーガード ロングシューター 1年生 森坂穂香(もりさか ほのか)

 

CHARMはグリップ付いた長い砲身に大きめの刃が付いたアステリオンを両刃にした改造機、ドラゴンランス。

 

 

 

 

 

 

「また一人で勝手なことを…」

 

 

クールな銀髪のショートヘアー少女が奈々の発言に呆れる。

 

 

ブルーガード インターセプター 1年生 倉木真子(くらき まこ)。

 

CHARMは片刃の大型剣、ティルフィングの改造機…ボルカノン。

 

 

 

 

 

「木葉さんはエースアタッカー。最前線に立って戦うのは利にかなってるけど…それだけじゃないでしょ?」

 

 

落ち着いた茶色のセミロングの少女が奈々の考えに付いて問う。

 

 

ブルーガード タンク 1年生 塔ノ木綾瀬「とうのき あやせ」

 

CHARMは60センチの大きな盾、イージス。

 

 

 

 

 

 

奈々「ラージ級以上のヒュージは激しい弾幕を出すから、取り巻きを片付けてる間に邪魔されたら不味いでしょ?」

 

 

奈々がラージ級の敵を引き受ける理由を皆に伝える。

 

 

「で、奈々が囮になる。ってことか」

 

 

ボーイッシュな黒髪のショートヘアーの少女が奈々がラージ級を相手にする理由を理解し、その答えを言う。

 

 

ブルーガード フロントアタッカー 1年生 篠ノ井黒江(しのの くろえ)。

 

CHARMは先端にブレードが付いた銃剣武器、グングニルの改造試験機…グングニルMk.2。

 

 

 

 

 

 

「まあいいじゃないでしょうか?今いるリリィの中では奈々ちゃんが1番強いのだし」

 

 

大人の女性を連想させる飴色のウェーブロングの少女が奈々の強さを再認識させる。

 

 

ブルーガード セミリーダー 2年生 海道寺麻耶(かいどうじ まや)。

 

CHARMは片刃が左右に付いた弓になる武器、アルテミス。

 

 

 

 

 

 

「奈々、無理すんなよ」

 

 

クールな金髪の少女が奈々を気使う。

 

 

ブルーガード フロントアタッカー 1年生 野崎周子(のざき しゅうこ)。

 

CHARMは両端に刃が付いた巨大な斧の武器、アイゼンタイタン。

 

 

 

 

 

 

「奈々の事だから心配は入らないわね」

 

 

優等生振りを見せる赤髪のツインテールの少女が自信げに奈々を助けると言う。

 

 

ブルーガード オールラウンダー 渡部奈緒子(わたべ なおこ)。

 

CHARMはグランギニョル製の実験機、ラビアンローズ。

 

 

 

 

 

 

「皆さん、エンゲージまで後30秒です」

 

 

一見普通の水色のボブカットの少女が作戦開始の時間を伝える。

 

 

ブルーガード フォワード 1年生 雪野未菜(ゆきの みな)。

 

CHARMは黒江と同じグングニルMk.2。

 

色は白一色である。

 

 

 

 

 

 

 

咲樹「……わかった。私達がミドル級を全て倒すまで持ちこたえるんだよ。いい?」

奈々「持ちこたえる?倒すんじゃなくて?」

咲樹「は?」

 

 

奈々の発言に咲樹はきょとんとした。

 

 

「エンゲージまで後15秒」

 

 

アナウンスで我に帰る咲樹。

 

 

咲樹「まぁいいか。あまり無理はしないで」

奈々「よーし、いってきまあす!」

 

 

そう言って奈々は不思議な光を体にまとい、ヒュージの群れに向かって飛翔した。

 

 

穂香「さ、咲樹ちゃん!?」

周子「もう行っちゃった…」

真子「全く…」

黒江「まさに鉄砲玉だねあれは」

麻耶「まぁあの子なら大丈夫そうだしね」

綾瀬「その分楽できるし」

未菜「奈々さんっていつもあんな感じですか?」

奈緒子「まあね」

 

 

と、余裕なのか全員が奈々の事で話していた。

 

 

咲樹「もうすぐエンゲージに入る。各自、それぞれの役割をこなしつつミドル級を撃破せよ!」

全員「了解!」

 

 

咲樹の指示に残り8人の少女達が返事をする。

 

そして…アナウンスよりカウントダウンが……

 

 

5……

 

 

4……

 

 

3……

 

 

2……

 

 

1……

 

 

 

「「「「「「「「「エンゲージ!」」」」」」」」」

 

 

 

エンゲージの掛け声により戦いの合図が上げられ、全員戦闘体制に入った。

 

 

同時に、咲樹、黒江、周子、奈緒子が足に光を集め、共に飛翔する。

 

戦う場所は海な為、降りるところは無い。

 

その為彼女達は、海での戦闘を想定し、マギと呼ばれる力を使って空を飛ぶ戦法を使って、ヒュージと呼ばれる敵と戦っていた。

 

そして、マギを持つ少女達はこう呼ばれていた。

 

 

「リリィ」

 

 

50年ほど前に突如現れた生命体…ヒュージに対抗できる兵器…CHARMと呼ばれる武器を扱える少女の事である。

 

政府はこれにともない、ガーデンと呼ばれる機関を各地に設立し、ヒュージに対抗するためのリリィ達を育成していた。

 

また、ヒュージには様々な個体が存在する。

 

ヒュージには、スモール級…ミドル級…ラージ級…ギガント級等が存在する。

 

ミドル級までなら通常の兵器でも撃破可能だが、ミドル級以降になると、リリィでないと決定打にならない。

 

これは、ヒュージがマギを宿してるのが理由である。

 

マギの量が高ければ高いほど、その体は強固に、強力になるからだ。

 

対しリリィの武器であるCHARMも、マギを込めればより強力になり、ヒュージに対抗できるのだ。

 

 

また、リリィにはそれぞれの固有能力が存在する。

 

それが、レアスキルと呼ばれる能力である。

 

 

 

咲樹「黒江、周子、奈緒子、短期決戦で行くよ」

 

 

そう言って咲樹はレアスキルと呼ばれる力を発動する。

 

すると、周囲にいるリリィ達のCHARMが金色の光に包まれた。

 

 

黒江「CHARMの力が強くなって…!」

周子「咲樹さんのレアスキル、とても助かるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル レジスタ

 

周囲にあるマギの純度を上げ、リリィの攻撃力を高める効果を持つ花形スキルと呼ばれている。

 

その他にも重要な効果があるのだが、今は伏せておこう。

 

 

 

 

 

 

黒江「短期決戦打からね。やらせてもらうよ!」

 

 

そう言って黒江もレアスキルを発動した。

 

すると黒江の姿が消え、ミドル級の一体の後ろに現れた。

 

 

 

 

 

 

 

同時にいつの間にミドル級が横に切り裂かれ、爆散した。

 

 

黒江「………遅いよ」

 

 

と、笑みを浮かべる黒江。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル 縮地

 

高速移動が出来るようになり、速さを活かした回避、連続攻撃が可能になる。

 

 

 

 

 

穂香「攻撃する可能性のあるヒュージは私が倒します!」

 

 

 

ドラゴンランスを構えた穂香がレアスキルを発動。

 

遠くから掩護射撃をするミドル級に狙いを定め、ドラゴンランスのトリガーを引くと、ランスの砲身からビームが放たれ、標的のミドル級の一体を貫き、撃破した。

 

 

 

 

レアスキル 天の秤目

 

視力を強化させ、遠くからでも正確に狙えるようになる。

 

スナイパーにはうってつけなスキルである。

 

 

 

 

麻耶「穂香さん、手伝うわ」

 

 

麻耶もレアスキルを発動し、アルテミスを構えた。

 

すると麻耶は、中距離にいるミドル級を左から倒すのではなく、ばらばらに敵を倒していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル ファンタズム

 

 

少し先の未来を予知できるスキルで、いくつもの仮定の世界線を覗き見て欲しい結果に至るための動きや条件を空間単位で瞬時に理解できる数少ないスキル。

 

 

先程麻耶がばらばらに敵を倒していったのはミドル級の攻撃の順番をファンタズムで予測して行った行動であった。

 

 

 

少しずつミドル級を減らしていくリリィ達。

 

しかし一部のミドル級が陣形を組み、艦板にいるリリィ達に向けてレーザーを連射してきた。

 

 

 

 

 

 

 

綾瀬「無駄だよ」

 

 

綾瀬が前に立ち、レアスキルを発動すると、艦板にいるリリィ達に光のバリアが貼られ、ミドル級のレーザーを防いだ。

 

 

綾瀬「お前達じゃ僕のヘリオスフィアは抜けないね」

穂香「綾瀬ちゃんありがとう」

麻耶「チームの盾…本当に頼もしいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル ヘリオスフィア

 

マギ光帯バリアを作り、味方の防御力を向上させるスキル。

 

マギを浄化する効果もある。

 

 

 

 

 

周子「流石にのんびりはしてられないな」

 

 

 

 

そう喋りながら周子もレアスキルを発動した。

 

同時に周子はアイゼンタイタンを上に掲げた。

 

 

 

 

 

 

すると、アイゼンタイタンが大きくなり、そのまま振り回して周囲に近づくミドル級達を一掃した。

 

近くにいた黒江は巻き込まれないようにかわした。

 

 

 

黒江「危ないな」

周子「ごめんごめん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル エクステンション

 

持っているCHARMにマギを込めることで一定時間巨大化させる能力。

 

CHARM以外の一般の武器の場合でも巨大化は可能。

 

実は巨大化した物はほとんどの物質がマギで構成されているため、実際はマギの塊をぶつけてるだけである。

 

マギの消費量が多く、一般のリリィでも2回が限度である。

 

 

 

 

 

真子「前衛、斜線上から離れて!」

 

 

周子、レアスキルを発動し、向かってくるミドル級達を変形させたボルカノンを構えると、赤い極太レーザーを放ち、ミドル級達を倒していく。

 

周子の指示で前衛にいるリリィ達は退避してるため当たらなかった。

 

 

 

黒江「いつ見てもすごい威力」

咲樹「フェイズトランセンデンス…流石火竜と呼ばれるだけの事はある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル フェイズトランセンデンス

 

 

一定時間、使用できるマギの量が無限になり、通常より強力な攻撃が可能になるが、使用後は動けなくなるほどマギが低下してしまう。

 

しかしある程度使いこなすとデメリットがなくなり、使用後でも戦闘可能になるので非常に強力なスキルとなる。

 

 

 

 

未菜「私だって!」

 

 

新米リリィとして入った未菜はこの戦いが初であり、まだレアスキルを持っていないものの、それでも確実にミドル級を変形させたグングニルの射撃で倒していく。

 

 

 

 

 

麻耶はもう一つのレアスキルを発動し、周囲の状況を確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル 鷹の目

 

空から地上を見下ろすように状況を把握するスキル。

地味に見えるが、かなり重要な能力である。

 

 

 

 

 

基本リリィのレアスキルは一つまでとなっているが、麻耶はレアスキルを二つ所有するデュアルスキラーと呼ばれる人材でもあった。

 

 

 

 

鷹の目で戦況を見つつ、ファンタズムで敵の行動を読む。

 

麻耶はこのチーム、ブルーガードの中で司令塔の役割りを持っており、勝利に大きく貢献している。

 

 

麻耶は鷹の目で空から見下ろした戦場のイメージを脳に浮かばせ、そこからヒュージの残りを確認した。

 

 

 

 

 

麻耶「ヒュージはミドル級が7体、ラージ級は…あら?」

穂香「どうしました?」

麻耶「ラージ級…後1体だわ」

未菜「1体!?」

 

 

3体いたラージ級がいつの間にか後1体になった事に驚く。

 

 

綾瀬「予想通りだね」

未菜「ど、どういうことですか!?」

真子「先に奈々がラージ級に向かった。その後は…もうわかるでしょ?」

 

 

 

綾瀬と真子は把握していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故なら、一人で相手をしていた奈々がもうラージ級の2体目を倒していたからだ。

 

空を自在に飛ぶ彼女はいつの間にか髪の色が真っ白になり、瞳は紅く光っていた。

 

 

 

麻耶「ルナティックトランサー…今や彼女の十八番ね」

奈緒子「バーサーク状態からコントロールできる者なんて、早々いませんから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル ルナティックトランサー

 

マギの力を暴走させ、ヒュージに近しいエネルギー分を人の身に宿すことで心拍指数、腕力、重力を無視できる強力なレアスキルだが、所有者によっては精神が不安定になるデメリットもあり、味方にも攻撃してしまう事も確認されている。

 

しかし奈々の場合、感情のコントロールが出来てる為、このレアスキルはメリットしかない。

 

デメリットがなければ、これは最強のレアスキルと呼べよう。

 

 

 

 

 

 

 

奈々はルナティックトランサーを発動させ、傷ひとつ付くこともなく2体のラージ級を連続攻撃で沈めたのだ。

 

そしてこれから奈々は残りの一体を相手にする。

 

 

 

 

 

奈々「後1体!」

 

 

最後のラージ級に目を向けて奈々はマギを推進力に変えて突進した。

 

対しラージ級は無数のレーザーを放つが、奈々を捕らえることが出来ず、奈々の素早い動きに全てかわされてしまう。

 

 

 

 

これは、奈々がルナティックトランサーの特性の一つ、重力無視を応用した戦法で、マギの推進力と組み合わせることで縮地に近いスピードを出せるのだ。

 

 

 

 

そのスピードを生かし、奈々はラージ級をすれ違い様に何度も赤い剣、カナベラルで斬りまくった。

 

何度も切りまくられて、ラージ級の甲羅は容易く砕け散った。

 

仕上げに奈々は、ラージ級の砕けた甲羅に向けて頭上から落下し、カナベラルを突き刺した。

 

 

突き刺したカナベラルから大量のマギがラージ級の中に流れ込み、光が漏れ出す。

 

 

 

 

 

 

ラージ級は断末魔をあげながら膨れ上がったマギによって爆散した。

 

爆発直前に奈々は退避したので怪我はなかった。

 

 

 

 

 

 

麻耶「敵ヒュージ全滅。ミドル級、ラージ級、全て撃破。皆…お疲れ様」

 

 

 

 

鷹の目でヒュージはもういない事を確認し、皆に戦闘が終了したことを伝える。

 

リリィ達が次々と艦板に降りていき、奈々が最後に降りてきた。

 

ルナティックトランサーを解除し、奈々の髪の色と瞳の色は元に戻った。

 

 

 

 

奈緒子「早いわね。奈々」

奈々「あの種は硬い代わりにレーザーの命中制度が悪いからね」

 

 

 

奈々の元に咲樹と麻耶が来た。

 

 

 

咲樹「今回はルナティックトランサーを使ったのね。調子はどうなの?」

奈々「ブルメリアのお陰でマギは浄化されてますから大丈夫です」

 

 

 

奈々の腰に付けてるCHARM、ブルメリアはマギを浄化する機能を備わっている為、奈々がルナティックトランサーを使った際にスイッチが入り、自動的に浄化されるようになっている。

 

 

また、奈々はマギの量が他のリリィより倍近く持っており、長時間の戦闘が可能である。

 

 

奈緒子「これならブレイブを使う必要はないわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル ブレイブ

 

 

触れた相手の精神の安定をもたらし、ポテンシャルを一定時間上限開放させることができるスキルで、ルナティックトランサーで溜め込んだ負のマギを浄化させる効果がある。

 

 

 

穂香「奈々ちゃん、お疲れ様」

 

 

穂香が飲み物の入った水筒と紙コップを持ってやって来た。

 

水筒は10人分の量が入る大きさで、取っ手がついていた。

 

 

奈々「穂香ちゃんもお疲れ」

 

 

奈々がコップを受け取り、穂香に飲み物を注いでもらうと、穂香はそのまま残りの全員にコップを渡し、同じく飲み物をコップに注いだ。

 

 

真子「所で咲樹さん、東京まで後どのくらいでしょうか?」

咲樹「後25時間位で着くね」

麻耶「長い討伐活動だったからね、東京に着いたら美味しいお店に行きたいわ」

 

 

 

 

咲樹達の活動は、海に生息するヒュージの討伐がメインで、戦艦内での生活を余儀無くされる。

 

彼女達が陸地に上がれるのは一月に一回位。

 

海での生活を快適にするために一人の艦長は彼女達リリィのモチベーションを配慮し、使わなくなった空母の改装を行わせた。

 

それが彼女達がいる戦艦…クジラ艦である。

 

クジラ艦の内部は住みやすさを意識した作りとなっており、小さな町として機能している。

 

これは移動住宅というよりは移動街船と呼ぶべきか。

 

少女達だけでなく、多くのスタッフ、移住する子供、大人等の市民達もこの船に住んではお店や農家、学校等と、様々な施設が作られ、今やクジラ艦に住む人はリリィを除き、合計400人以上。

 

また、クジラ艦内にはリリィ専門の育成施設、ガーデンもあり、そこでリリィ達の育成を行っている。

 

現在いるリリィは咲樹達を含め30人と少ないが、戦闘面では他のガーデンにも負けない。

 

このクジラ艦は町としての機能を持つ反面、最低限の武装しか装備していないが、ほとんどの戦闘はリリィ達に任せており、クジラ艦が主に戦うことはない。

 

そもそもクジラ艦には子供や町の人がいるため、前に出ると危ないからである。

 

 

 

奈緒子「そういえば奈々、明日、本当に鎌倉府に行くの?」

奈々「うん」

綾瀬「鎌倉府と言えば、百合ヶ丘女学院がある場所か」

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院…

 

鎌倉府に設立されたお嬢様学校を母体にしたリリィ教育の世界的な名門ガーデンである。

 

 

 

 

黒江「奈々は2年前にそのガーデンにいたの?」

奈々「うん。十分強くなったし、明日には百合ヶ丘に戻ろうと決めてるからね」

穂香「何だか、寂しくなるね」

奈々「暗くならない暗くならない。時々メールやテレビ電話をするからそんな顔しないの」

奈緒子「奈々の言うとおりよ。この子だって帰る場所があるんだから」

奈々「あ、そうだ。咲樹さん、代わりのCHARMを後で…」

咲樹「いや、持っていって。今は奈々が持っていた方がそのCHARMも喜ぶよ。それに、あの子達もね…」

 

 

 

 

奈々が使ってるCHARM…カナベラル、ブルメリアは元々本人の物ではない。

 

本来の持ち主が戦えない状態な為、彼女が代わりに使っているのだ。

 

咲樹はカナベラルとブルメリアはしばらく奈々が持っていてほしいと言ってきた。

 

 

奈々「……分かりました。大切に使います」

咲樹「よし、皆、今日は特別に自由休みにするよ」

全員「はい!」

 

 

咲樹と奈々を残し、皆は艦板から階段で降りていった。

 

 

咲樹「奈々、今日はゆっくりと体を休めなさい」

奈々「いいんですか?」

咲樹「ヒュージの反応はない。安心しなさい」

 

 

咲樹から今日はもう安全だと聞いた奈々は気持ちを入れ換える。

 

 

奈々「はい。木葉奈々、ゆっくりと休ませて頂きます」

 

 

そう言って奈々も階段へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を見た咲樹は、再び空を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲樹「見ているか…美鈴…お前の教え子は立派に強くなったよ」

 

 

 

 

 

咲樹は、今の気持ちを口に出すのだった……

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

二水「次回は最強のリリィがやって来ます!」

 

奈々「いや、君誰!?」

 

 

 

 

NEXT 白井夢結は巻き込まれる

 

 

 

 

 

 




今回の話の時間軸はアサルトリリィBOWQUETの3話の後半辺りです。
次回はアニメ4話でまだ夢結がテラスで梨璃に会う前のタイミングで事件が起き、その後奈々が接触します。
2話は更にオリキャラを出すのでお楽しみください。

ちなみに生徒ではありません。



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「2」白井夢結は巻き込まれる

奈々「うーん…!」

 

 

彼女、木葉奈々はベッドから起きた。

 

奈々がいるのは自分の部屋である。

 

ベッド、机、テーブル、タンス、これらは全て木材から作られており、壁紙も整備され、エアコンとテレビ、トイレとシャワー、キッチン等が完備しており、とても船の中とは思えない部屋になっている。

 

また、このクジラ艦は揺れに強い設計になってるため、この船で暮らす人達に船酔いが起こった事は誰一人いなかった。

 

テーブルの隣には、沢山の荷物を入れてパンパンになった大きなショルダーバッグが置かれていた。

 

今日は奈々がクジラ艦を出る日。

 

奈々は窓のカーテンを開け、外の風景を見た。

 

外は見渡す限りの大海原…と思いきや、微かに陸地が見えてきた。

 

 

奈々「鎌倉府が見えてきた…そろそろ着替えて行くとしますか」

 

 

奈々は私服に着替え、荷物を肩に背負って部屋を出ていった。

 

 

部屋を出ると、奈々は廊下を歩き、真っ先に病室へ入っていった。

 

 

病室にはベッドが2つ置いてあり、青髪の少女と赤髪の少女が2本のホースに繋がれたまま眠っていた。

 

 

2つのベッドの中央にあるテーブルの上には、名前の入った札があり、そこには、桜田加奈(さくらだ かな)、桜田理亜(さくらだ りあ)の名が書かれていた。

 

奈々「加奈さん、理亜ちゃん…もう少しだけ、二人のCHARMをお借りします」

 

 

奈々は2本のCHARMを腰に収め、眠っている二人に礼をすると、部屋を出た。

 

奈々が次に訪れたのはミーティングルーム。

 

しかし中は誰一人いなかった。

 

隣にある黒板には、チョークで木葉奈々のお別れパーティーと大きく書かれていた。

 

昨日の夜、奈々はここで皆からお祝いされたのを思い出した。

 

今までにない盛り上がりで楽しんだ事を思いながらも、いざ終わると寂しい感じもした。

 

それでも自分は百合ヶ丘女学院に戻らなきゃ行けない。

 

 

 

 

 

2年前…リリィになるために奈々は鎌倉府に建てられた百合ヶ丘女学院に入学した。

 

ちなみに補欠合格である。

 

彼女はCHARMを使えるようにするために練習を始めた所、姉妹の二人と出会った。

 

二人は姉妹といっても血の繋がりはない。

 

二人はシュッツエンゲルの契りをかわした姉妹なのだ。

 

高1の上級生はシュッツエンゲルと呼ばれ、中3の下級生はシルトと呼んでいる。

 

奈々はシュッツエンゲルのリリィからマギの扱い、CHARMを使った戦い方を教わるようになり、日々努力していき、自らの力を付けていた。

 

そんなある日、悲劇は訪れた。

 

それが、甲州撤退戦…山梨県で起きた戦いである。

 

彼女にとって始めての実戦は不安でいっぱいだった。

 

それでもやってくる大量のヒュージを奈々は倒していった。

 

倒して、倒して、倒しまくって…気を失うまで戦い続けた。

 

しかし気が付いた頃には犠牲者が出てしまっていた。

 

それは、奈々に戦い方を教えたシュッツエンゲルの少女だった。

 

姉を失い、心に大きな傷を負ってしまったシルトの少女を前に奈々は何を言ったら良いかわからず、それっきりシルトの少女とは会っていなかった。

 

自分の未熟さに落ち込む奈々の元に、クジラ艦の艦長からスカウトの電話が来た。

 

強くなりたいのなら、私の船に来なさい…と。

 

奈々はその用言をのみ、学園から姿を消した。

 

皆を守れる程の力を付けたら、戻ってくることを誓って…

 

それから今に至る。

 

エースアタッカーと呼ばれるまで強くなった奈々。

 

そして今日がその時である。

 

奈々はミーティングルームから出ていき、今度は商店街のような場所に出た。

 

今の時間は7時過ぎ…現在は人が歩き、店を開く店主、畑から野菜を収穫する農業者など見かける。

 

ここはクジラ艦の中央に作られた場所で、様々な建物が建てられており、一般人達がここで暮らす場所でもある。

 

道路の先には、小中高共通の学校とリリィ専門のガーデンが建てられいた。

 

反対側の通路は公園。

 

子供達の遊び場や、カップル達がゆっくりする場所になっている。

 

 

奈々「ここに来るのも最後か…」

 

 

そう思いつつも、奈々はこの商店街を出た。

 

 

そして奈々が最後に訪れたのは、物資搬入口の扉前。

 

色々な食料、本、電化製品等の物資はここで行っている。

 

この先に入れば、クジラ艦とはお別れになるだろう。

 

迷わず奈々は扉を開けた。

 

そこには、昨日戦ったメンバー達と、不参加だったリリィ達が奈々を迎えていた。

 

 

 

奈々「皆…!」

咲樹「来ると思ったよ」

穂香「最後は皆で見送ろうって決めたんだ」

 

 

 

司令官からの伝言と仲間のリリィ達を前に奈々は涙が出そうになった。

 

 

そんな中、綾瀬が1隻の小さなボートを奈々の目の前で指差した。

 

 

綾瀬「皆で作った特製ボートだよ。モーターボート並の速さが出るから気を付けてね」

奈々「おおー」

黒江「百合ヶ丘でも元気で」

周子「奈々と出会ってからの二年間、楽しかったよ」

奈緒子「あんたが出ていった後、今度はあたしがエースアタッカーの座を手にいれるわ」

真子「時々メール寄越しなさいよ」

麻耶「司令官は今回手が放せなくてここには来れなかったけど、伝言を託されたわ。「君との2年間、楽しかったよ」」

奈々「あはは、司令官さんらしいね」

 

 

最後に麻耶は奈々の肩に右手を置く。

 

 

麻耶「奈々さん、貴女がこの船で学んだ技術と経験…百合ヶ丘でも活かせる事を期待してるわ」

 

 

皆の思いがこもった言葉で奈々は気持ちを入れ換え、笑顔になる。

 

 

奈々「ありがとうございます。そして皆さん、今までお世話になりました!」

 

 

奈々は感謝の言葉を皆に伝え、礼をした。

 

そして奈々はボートに乗り、荷物をベルトで固定させ、エンジンを掛ける。

 

奈々は再び皆の方へ顔を向ける。

 

 

 

奈々「皆の事…忘れないよ。それじゃ!」

 

 

エンジンを掛けた奈々のボートは動き始め、大海原へと飛び出していった。

 

次第に遠くへ向かったボートは小さく見えていく…

 

 

咲樹「いってしまったね…」

周子「あっちでもうまく行くといいな」

麻耶「思ったんだけど、あのボート、皆で作ったって言ってたよね?」

綾瀬「そうですけど?」

麻耶「まさか咲樹さんもその中に?」

咲樹「私が入ったら悪いの?」

麻耶「胸ポケット…少し膨らんでるわよ」

咲樹「そうか?入れてはいないんだが…」

 

 

そう言いながら咲樹は自分の胸ポケットを探った。

 

すると、大きめの六角ネジが2本入っていた。

 

 

咲樹「…………………あ」

穂香「咲樹さん……」

麻耶「何故ボートの製作に咲樹さんを加えたのかしら?」

 

 

おしとやかな麻耶から微かな怒りのオーラを皆は感じ、怯む。

 

 

咲樹「…………まあ何とかなるでしょ。奈々なら」

麻耶「誤魔化さない」

綾瀬「でも工具箱も入れてあるから修理は出来るはずだけど…」

 

 

そう言われて咲樹はボートに置くはずの工具箱を持っていた。

 

これにはリリィ達も言葉をなくす。

 

 

麻耶「咲樹さん!!!!!」

 

 

麻耶の怒りの声がクジラ艦十に響き渡った。

 

 

 

 

 

一方、ボートで鎌倉府に向かう奈々は問題が発生した。

 

なんと、エンジンが動かなくなったのだ。

 

奈々は動かなくなったエンジンを確認すると、ネジが2本入ってない事がわかった。

 

 

奈々「これ…咲樹さんだな……」

 

 

犯人が解ったとしても、今の奈々にエンジンを直す術はない。

 

工具もないので直しようがないのだ。

 

これには困った奈々。

 

 

奈々「うーん…後もうちょっとなんだよね」

 

 

奈々の視界には運良く鎌倉府の浅瀬が見えていた。

 

問題はどうやって行くかである。

 

そう考える奈々。

 

 

奈々「!?」

 

 

奈々が何かを察知し、周りを見た。

 

すると、奈々の反対側に小型ヒュージの群れがやって来た。

 

 

奈々「うわ、ヒュージ!?」

 

 

見た限り、ヒュージの数は50体以上。

 

中にラージ級以上の敵はいないようだ。

 

さすがにボートの上で戦うのは望ましくない。しかも相手は小柄な為、下手すればボートに被害が及ぶので、是非避けたい。

 

安全な場所で戦うのが一番だが、肝心のエンジンが動かなくなってるので仮に逃げたくても逃げれない。

 

 

奈々「……さすがに面倒だけど仕方がない…!」

 

 

奈々はボートの後ろに立ち、両手を海に向けてマギを溜め始めた。

 

その間にヒュージの群れは徐々に近付いてくる。

 

後数秒もすれば奈々に接触するだろう。

 

しかし、それが奈々の狙いだった。

 

 

奈々「これなら!」

 

 

奈々は溜め込んだマギを真下の海に向けて放ち、爆発させた。

 

爆発の衝撃で至近距離のヒュージ達は全て吹き飛び、奈々を乗せたボートはその反動で空へと飛んでいった。

 

 

 

奈々「ふう…何とかなった…」

 

 

奈々は咄嗟にボートにしがみついていた為、放り出されなかった。

 

更に飛んでるボートはそのまま鎌倉府の方へ向かっている。

 

 

奈々「とりあえずは安心………」

 

 

気を抜く奈々だが、ここで一つの問題が浮かんだ。

 

どうやって降りるかである。

 

 

奈々「……………不味い?」

 

 

そう考えてる内に上昇するボートは一定の高さに着くと、ゆっくりと急降下し始めた。

 

 

奈々「いーーーーーーーっ!!???」

 

 

と、歯を見せながら急降下していく奈々のボート。

 

しかし落ちる先には、鎌倉府の浅瀬がくっきりと見えていた。

 

そしてその場には人らしき何かが沢山いた。

 

 

奈々「あれってまさか…ってそれどころじゃない!落ちる前に緊急装置とかないかな…ん?」

 

 

奈々が見つけたのはby綾瀬と書かれた緊急装置である。

 

 

奈々「良かった、綾瀬ちゃんのなら信用出来る。ほい!」

 

 

奈々は緊張装置のボタンを押した。

 

すると、ボートの周りからクッションのようなものが出てきた。

 

そして同時にボートは浅瀬に一度バウンドし、再び着地した。

 

 

奈々「おお…助かった…」

「むぐっ!?」

 

 

着地と同時に誰かの声がした。

 

 

「きゃあああお姉様!!?」

奈々「?」

 

 

少女の声に奈々は気付く。

 

辺りを見渡すと今、お嬢様らしさを感じさせる黒い制服を着た少女が3人と教師らしき服を着た女性が一人いた。

 

皆それぞれCHARMを持っていた。

 

 

奈々(あの制服…百合ヶ丘女学院の?)

 

 

先程叫んでいたのは、四ツ葉のクローバーの髪飾りを着け、片っ方テールにした桃色の髪の少女だった。

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳梨璃(ひとつやなぎ りり)

 

CHARMはグングニル。

 

 

「ヒュージが来ると思ったら、空からボートが…!?」

 

 

面子の中で小柄なショートヘアーの少女が驚いていた。

 

 

1年生 二川二水(ふたがわ ふみ)

 

CHARMは梨璃と同じくグングニル。

 

 

 

「それより梨璃さん、お怪我はありませんか?」

梨璃「う、うん。大丈夫」

 

 

令嬢と呼ぶべきか、そんな感じのロングウェーブの少女が梨璃と呼ばれる少女に気を使う。

 

 

1年生 楓・J(ジョアン)・ヌーベル

 

CHARMは尖った形の二枚刃が特徴の実験機、ジョワユーズ。

 

 

「空から戻ってくるとは、相変わらず無茶苦茶な事をするなお前は」

 

 

教師を思わせる黒いスーツを着たショートヘアーの女性が奈々に話しかけてきた。

 

 

椿組 教師 如月出雲(きさらぎ いずも)

 

 

奈々は彼女、出雲に覚えがあった。

 

 

奈々「そのしゃべり方は、出雲センパイ!」

 

 

奈々は久しぶりの出雲との再会に喜び、ボートから降りてきた。

 

 

出雲「2年ぶりだな木葉…マギがますます強くなったのを感じたぞ」

奈々「分かりますか。流石センパイ」

出雲「後、私は学院を卒業して教導官兼教師だ。センパイではなく先生と呼べ」

奈々「おっと失礼しました、出雲先生」

二水「あの先生、この子は?」

 

 

二水が出雲に奈々の事を聞く。

 

 

出雲「お前達とは初対面だったな。彼女は木葉奈々。2年前にお前達と同じ百合ヶ丘女学院に入った私の後輩で、更なる鍛練の為にブルーガードに入った経験もあるすご腕のリリィだ」

楓「ブルーガード!?ってまさか…!」

二水「はい!海でのヒュージ退治を主に活動とする、トップクラスのリリィ達で構成されたエリート部隊!その一人が今ここに…ぶふぉ!!?」

梨璃「二水ちゃん!?」

 

 

ブルーガードについて力説し、興奮の余り二水は鼻血を出す。

 

 

奈々「うおっ!大丈夫!?」

出雲「いつもの事だ。気にするな」

二水「はい…心配要りませんので…」

 

 

鼻をつまんで鼻血を止める二水。

 

 

奈々「ところで先生、夢結さんは今どこに?」

 

 

奈々は夢結と呼ぶ少女を探していた。

 

 

出雲「………まだ気づかんのか?」

奈々「何がですか?」

出雲「後ろに下敷きになっている。ボートにな」

奈々「え!?」

 

 

奈々が後ろを振り向くと、ボートがひっくり返っており、目の前には白く長い髪をした紅い目の少女が怒りのオーラを出しながら奈々を睨みつつゆっくりと近づいてきた。

 

 

2年生 白井夢結(しらい ゆゆ)

 

 

CHARMはグングニルを大型化した攻撃特化のブリューナグ。

 

 

奈々「な!ルナティックトランサー!?って夢結さん!?」

 

 

ルナティックトランサーを発動した夢結を前に奈々は竦み上がる。

 

 

梨璃「ああっ、お姉様がまたルナティックトランサーを!?」

出雲「心配するな。このパターンはいつもの事だ」

梨璃「いつもの!?」

楓「確かに、様子が違いますわね」

 

 

夢結のレアスキルはルナティックトランサー。

 

本来、髪の色が白くなるのは完全な暴走状態になってる証拠なのだが、今回に限っては知らずに力を制御している。

 

それは、過去に夢結が奈々のトラブルに巻き込まれる度にルナティックトランサーを発動しているからである。

 

 

夢結「帰ってきて早々ボートをぶつけてくるなんて何を考えてるのかしら?」

奈々「こ、これは、たまたまですよ、たまたま。そもそも夢結さんがここに来るとか分からなかったんですから」

夢結「わかってたら、するつもりだったの?」

奈々「はい…………あ」

 

 

ついにボロを出してしまった奈々。

 

 

夢結「…言いたいことはそれだけのようね……」

 

 

そう言って夢結はブリューナグを構えて奈々に襲いかかる。

 

 

 

奈々「うぎゃああああーーーーー!!!??」

 

 

 

 

奈々の断末魔が遠くへと響き渡った。

 

久しぶりの再会は、夢結からのお仕置きという形でお開きとなった。

 

尚、夢結のルナティックトランサーは奈々にお仕置きしたあと、すぐに治まった。

 

 

 

……………………………………………………………………

 

 

 

二水「次回は遡って、先生が梨璃さんと出会う話になります!」

奈々「私の出番、あるの?」

 

 

 

 

NEXT 一柳梨璃は出会う

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

この小説の各キャラクターの設定

 

 

 

木葉奈々

 

主人公。普段はお調子者+ツッコミ系で、時に真面目になり、他人の為に頑張る仲間思いの強い子。戦いでは戦術にも強い。

 

イメージボイスは喜多村英梨。例えるならネプテューヌシリーズのユニ。

 

 

一柳梨璃

 

アニメ基準だけど、舞台版の設定も混ぜていく。あんまり変わらない?

 

 

楓・J・ヌーベル

 

こちらもアニメ基準だが、舞台版の要素も取り入れたい。セクハラ属性も一応。

 

 

二川二水

 

舞台版基準。「ぶふぉ!!?」の鼻血シーンを多くしたい。

 

 

如月出雲

 

オリキャラで教師。夢結より2歳年上で椿組の担当教師。リリィの能力もあるため教導官をこなす。

 

実力は夢結以上。

 

 

白井夢結

 

イメージ的にはアニメ版基準で行きたい。

 

 

 




奈々は無事鎌倉府にたどり着き、夢結に制裁を受けました(笑)

次の話はアニメ版4話の前半の一部の後にアニメの1話から3話までの話を書きます。

主人公の出番はありません(笑)。



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League of Gardens
「3」一柳梨璃は出会う


今回のお話は、アニメ4話の最初の後、1話の時間軸に入ります。

その間、奈々ちゃんはお休みです!
ごめんチャイ!


百合ヶ丘女学院 理事長室

 

 

中央の机には、理事長と書かれた札が置かれ、席には歳を取った男性が座っていた。

 

 

百合ヶ丘女学院 理事長代理 高松咬月(たかまつ こうげつ)

 

 

目の前のソファーには百合ヶ丘の制服を着た奈々が座っていた。

 

ちなみに奈々の制服は上着の代わりに黒のベストを着ている。

 

これは奈々からの要望で、学院は承諾してくれた。

 

 

高松「君が帰ってきた…と言うことは…」

奈々「はい。ブルーガードでの強化期間を終えてきました。2年前の悲劇を生み出さない為に」

高松「甲州撤退戦か…」

 

 

甲州撤退戦…

 

2年前に起きた、山梨県に大量発生したヒュージと戦った事件。

 

その戦いで、奈々は仲間を一人失った。

 

力不足を感じた奈々は、スカウトしてきたブルーガードに入り、様々な特訓をこなしていった。

 

全ては、あの時の悲劇を生み出さない為である。

 

 

奈々「それで、私の入るクラスの事ですが…」

高松「うむ。君のクラスは椿組となっている。初めて接触した3人との印象も良いと如月君からの要望だ」

奈々「それは私からお願いしたい所でした。ありがとうございます」

高松「礼は彼女に言ってほしい。木葉君、良き学院生活を期待してる」

奈々「はい。失礼いたしました」

 

 

 

奈々は高松理事長代理に礼を言いつつ、理事長室から出ていった。

 

 

そしてそのままカフェテラスにやって来た。

 

席には、紅茶を飲んでる夢結とテーブルに寄っ掛かってる梨璃の姿があった。

 

 

奈々「夢結さん、席空いていますか?

夢結「ええ。構わないわ」

 

 

奈々は夢結と梨璃の横の席に座った。

 

 

奈々「こうして夢結さんといるのも2年ぶりですね」

夢結「……私に言うことがあるんじゃないの?」

奈々「?」

夢結「何故私と先生に連絡しなかったの?帰ってくるなら連絡しても良かったのに」

奈々「あの時の夢結さんのままじゃ余計言えませんよ」

夢結「………確かにそうね。奈々、結構見違えたわね」

奈々「それなら夢結さんだって、シュッツエンゲルになるなんて、ビックリしましたよ」

夢結「梨璃のお陰よ」

 

 

夢結は優しい表情で奈々と話している。

 

 

奈々「で、肝心の梨璃ちゃんはというと…」

 

 

奈々は梨璃の方へ顔を向けた。

 

 

梨璃「えーへーへー…」

 

 

テーブルに寄っ掛かってる梨璃は、幸せな顔で弛んでいた。

 

 

奈々「完全に弛んでいる……」

夢結「梨璃。あなたそろそろ講義でしょ?予習は?」

梨璃「分かってはいるんですけど、今こうしてお姉様のお顔を見ていられるのが幸せで幸せで〜」

 

 

この完全に弛んでいる梨璃を見て奈々はカチンときて、梨璃の両肩を揺さぶった。

 

 

奈々「って、なーに弛んでるの!リリィなんだからもうちょっとシャキッとしなさいよ!!」

梨璃「そ、そんなこと、い、言われたって~…!」

 

 

奈々に揺さぶられても、梨璃は弛んだままである。

 

 

夢結(まさか、シュッツエンゲルになった途端にここまで弛むとは、迂闊だったわ…)

 

 

夢結は梨璃の変わり様に悩む。

 

と、そこへ二人の少女が通ってきた。

 

 

3年生 ロザリンデ・フリーデグンデ・フォン・オットー

 

銀色の長い髪が特徴。

 

 

3年生 田村那岐(たむら なぎ)

 

飴色の長い髪に黒いリボンを結んでいる。

 

 

那岐「あら、ごきげんよう」

ロザリンデ「ごきげんよう、奈々さん、「ゆり」さん」

 

 

梨璃と夢結にユリと呼んで通りすぎていった。

 

 

梨璃「え?あ、あはは……ごきげんよう」

奈々「ごきげんよう」

夢結「はて、ユリさん?誰かと間違えたのかしら…」

奈々「いや、あれは二人に言ってますよ。恐らく」

夢結「え?」

梨璃「ああそれ、カップルネームです」

夢結「カップルネーム?」

梨璃「これです!」

 

 

そう言って梨璃はカバンから新聞を取り出した。

 

タイトルには、リリィ新聞と書かれている。

 

作ってるのは二川二水。

 

内容にはこう書かれていた。

 

 

『号外』異色のシュッツエンゲル誕生!

 

その下には、夢結と梨璃の写真が左右に写され、真ん中には夢結×梨璃と印刷されている。

 

 

これを見て、奈々と夢結は言葉を失う。

 

 

梨璃「週間リリィ新聞の号外です。ほら、横に並べると、ユ・リ。って読めるんですよ。あはは、やだなぁ~ここまですることないのに~二水ちゃんったら~」

奈々「ふ、二水ちゃん…」

 

 

いつの間にか周りには、沢山の生徒が集まっていた。

 

みんなからユリ様とか言われまくっていた。

 

これに対し夢結の怒りが爆発しそうな事に危機感を感じた奈々。

 

 

奈々「ちょっとみなさん、これ以上夢結さんをからかうのは…」

夢結「!!!」

 

 

怒りが頂点に達し、髪の色が白く、目の色が紅くなった。

 

 

奈々「っておいー!!??」

梨璃「お、お姉様ー!!!??」

 

 

このあと、奈々と駆けつけた出雲によって夢結のルナティックトランサーは静まり、被害は出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「全く…あの状況でルナティックトランサー発動とか、洒落になりませんよ…」

夢結「ご、ごめんなさい…」

奈々「梨璃ちゃんも少し自重して」

梨璃「ご、ごめんなさい…」

 

 

梨璃と夢結は反省した。

 

 

出雲「夢結が時々暴走するのは日常茶飯事だ。気にするな」

 

 

出雲も奈々達と同じテーブルの席に座っていた。

 

 

夢結「先生…ルナティックトランサーを日常茶飯事と捉えるのはどうかと…」

出雲「それより問題は一柳だな。弛んでばかりいるのは良くない。だから一柳、お前に課題を与える」

梨璃「課題?」

 

出雲「お前を含めた9人で「レギオン」を作れ」

 

奈々「レギオン!」

梨璃「わかりました!……えっ、レギオンって、何でしたっけ?」

 

 

思わぬボケに二水が奈々達の所でずっこける。

 

 

梨璃「ふ、二水ちゃん?」

二水「ご、ごきげんよう…ははは…」

奈々「いつの間に…!」

出雲「二川、この馬鹿者にレギオンについて説明しろ」

二水「は、はい!」

 

 

二水が立ちあがり、レギオンに関して説明する。

 

 

二水「レギオンとは、基本的に9人1組で構成される、リリィの戦闘単位のことです!」

奈々「団体ならレアスキルによる恩師も受けれるから個人で戦うより戦闘が安定する。ラージ級以上の敵を相手にするならレギオンは重要だからね」

 

 

二水に合わせて奈々が繋げて説明した。

 

 

出雲「その通りだ。特にギガント級のヒュージはレギオンでないと倒すのは難しい。分かったか一柳」

梨璃「ええ、まあ…」

 

 

まだ完全に理解出来てない梨璃。

 

 

夢結「所で二水さん…」

二水「あ、はい!」

夢結「お祝い…ありがとうございます」

 

 

怖い笑顔で二水に圧をかける夢結。

 

 

二水「ど、どういたしまして……」

 

 

流石の二水も後退する。

 

 

奈々「自業自得だね…」

梨璃「でも、どうして私がレギオンを?」

出雲「最初に言ったぞ?お前は弛んでると。だから課題を与えた。せっかく白井とシュッツエンゲルの契りを結んだんだからリリィらしい所を見せたらどうだ?」

梨璃「わかりました!私、精一杯頑張ります!」

 

 

梨璃がやる気になったのか、席を立つ。

 

 

出雲「おお、やる気のようだな一柳」

梨璃「はい。何たってお姉様のレギオンを作るんですから」

 

 

梨璃の言葉に紅茶を飲んでた夢結が吹いてしまう。

 

 

出雲「……そうきたか」

二水「私もお手伝いしますね!」

梨璃「ありがとう。頑張るよ!」

二水「では早速勧誘でーす!」

梨璃「あ、待ってよ!二水ちゃん!」

 

 

と言って梨璃と二水は走っていった。

 

 

奈々「早!?」

夢結「わ、私の…?」

出雲「失敗も経験の内だが、あの梨璃なら簡単に達成できるだろう」

夢結「何故そう思えるんですか?」

出雲「勘だ」

 

 

レギオンの話を終え、今度は奈々が話しかける。

 

 

奈々「所で夢結さん、梨璃ちゃんとはどういう流れでシュッツエンゲルになったんですか?」

夢結「それ、答えなきゃ駄目なの?」

出雲「知らなくて当然か…丁度いい機会だ。お前に話しておこう。長いぞ?」

奈々「構いませんよ。梨璃ちゃんと出会ってからの話でいいですから」

出雲「白井もいいか?」

夢結「そうですね、構いません」

出雲「分かった。それでは話そう」

 

 

そう言って出雲は話す。

 

彼女が百合ヶ丘女学院の入学式当日の頃の話を……

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

 

とある駅で、スーツを着た一人の女性が電車を待っていた。

 

 

女性の名は如月出雲。

 

3年前に百合ヶ丘女学院に入学し、リリィとして活躍した者である。

 

そんな彼女が今日から教導官兼教師として、自分の学んだ経験と知識を新米リリィ達に伝える為に、百合ヶ丘女学院へ向かっている途中であった。

 

暫くして次の電車が止まり、出雲はその電車に入り、席に座った。

 

扉は締まり、電車は動き始めた。

 

 

電車は海岸の方へと走り出していた。

 

と、そこへ出雲は海の先に何かを見つけた。

 

 

それはまるで、海を吸い上げて渦を作った竜巻のようであった。

 

 

出雲「ヒュージネスト…か…」

 

 

ヒュージネスト

 

ヒュージの親玉的存在であるアルトラ級が作り出したもので、そこからヒュージを生み出し、他の地域を侵略して来る。

 

 

出雲「いつかはあの渦を消したい所だな…ん?」

 

 

出雲の近くに桃色の髪の一人の少女がやって来た。

 

黒い制服を着てる所、百合ヶ丘女学院の生徒だろう。

 

背中には、大きなアタッシュケースを背負っていた。

 

 

少女は声をかけてきた。

 

 

「あの…空いてますか?」

出雲「ご覧の通りがらがらだ。構わんさ」

「は、はい。ありがとうございます」

 

 

少女は出雲と向い合わせで座った。

 

 

出雲「お前、百合ヶ丘の入学生か?」

 

 

出雲が少女に声をかける。

 

 

「はい。貴女もですか?」

出雲「ああ。今日から教師を勤めるものだ。私は如月出雲だ」

「私は一柳梨璃です」

出雲「ふっ、宜しくな」

梨璃「こちらこそ!」

 

 

そう話してる内に電車は目的地の駅に止まり、出雲と梨璃は降りていった。

 

 

そのあと二人は百合ヶ丘に向けて徒歩で進んでいた。

 

 

出雲「お前は分かっているのか?」

梨璃「?」

出雲「百合ヶ丘に入るということは、リリィになることだ。リリィはヒュージと戦う使命を背負う事になる。分かっているか?」

 

 

出雲の質問に梨璃は少し戸惑いつつ、今のリリィになる気持ちを伝えた。

 

 

梨璃「私、2年前にリリィに助けてもらったんです。その時私は、助けてくれたリリィに憧れを抱いたんです」

出雲「………そうか」

梨璃「あのお方のようなリリィになってみんなを守りたいと…だから私は、そのリリィの通う百合ヶ丘女学院に入ろうと決めたんです」

出雲「なるほどな」

梨璃「まぁ、補欠合格ですけど」

出雲「どのような形であれ合格は合格だ。もし私がお前の担任になったら一人前のリリィにさせるため、しっかり叩き込んでやろう」

梨璃「お、お手柔らかに…」

 

 

そして二人は百合ヶ丘女学院の校門前までやって来た。

 

梨璃が進もうとした瞬間、1台の豪華な車が梨璃の前に止まった。

 

そして車のドアが開き、そこから黒い制服を着た茶色のウェーブがかかった髪の少女が出てきた。

 

見るからにお嬢様を思わせる外見である。

 

 

「ドア位自分で開けます。今日からは自分の面倒は自分で見なくてはならないんですから…あら?」

 

 

そしてその少女は出雲に目があった。

 

 

「ごきげんよう」

出雲「ごきげんよう」

梨璃「え?」

「貴女方、もう帰って宜しくてよ」

出雲「は?」

「私、付き人は必要無いと申し上げたんですのよ」

出雲「誰が付き人だ。私は教師だ。それにこの子は…」

梨璃「私は、百合ヶ丘の新入生です!」

 

 

梨璃と目があった瞬間、その少女は心に何かが撃たれたような快感を受ける。

 

 

(何何何ー!?このキラキラした瞳、さくらんぼのような唇…可愛い…可愛いすぎますわー!女の子の可憐さを全て合わせた方が今ここにー!)

梨璃「?」

 

 

快感を受けた少女は梨璃に近づく。

 

 

「貴女、お名前は?」

梨璃「は、はい。一柳梨璃です。よろしくお願いします」

 

 

梨璃の言葉を聞いた少女は再び快感を受ける。

 

 

 

(ああ…声までも可愛い…ああああ…!!)

 

 

出雲「お前はまさか、グランギニョルの総帥の娘か?」

 

 

出雲の質問に少女は正気に戻り、質問に答える。

 

 

「ええ。私は楓・J・ヌーベルと申しますわ」

梨璃「グランギニョル?」

出雲「有名なCHARMメーカーで、彼女はその総帥の娘だ。更に彼女は中等部時代、鎌倉府の5台ガーデンの一つ、聖メルクリウスインターナショナルスクールで大きな成果を残した優秀なリリィでもある」

 

 

その話を聞いた梨璃は憧れの眼差しで楓の手を握る。

 

 

梨璃「凄いですね!」

 

 

 

楓に三度目の快感が襲った。

 

 

楓(この憧れの眼差し…まっすぐに突き刺さる…私もう…やられてしまいましたわ……)

 

 

そう感じつつ梨璃に対する目の色を帰る楓。

 

 

楓「梨璃さん、人目見たときから、貴女に運命を感じましてよ」

梨璃「運命!?」

楓「きっと私達は、赤い糸で結ばれていますのよ」

梨璃「赤い糸?」

楓「照れているのね…可愛い方、顔が赤いわー」

 

 

と言って梨璃のお尻を触ろうとする楓。

 

しかし出雲によって阻止される。

 

 

出雲「セクハラは御法度だぞ」

楓「セクハラではございませんわ。私の手が長いだけですもの」

出雲「そんな下手な言い訳を…早く行くぞ」

 

 

楓を加えた出雲と梨璃は校門を通っていった。

 

 

と、そこへ…

 

 

「あーーーっ!!?楓・J・ヌーベルさんと如月出雲様!?」

 

 

目の前に梨璃より背の低い少女が楓と出雲を見て興奮していた。

 

 

「一人は有名CHARMメーカーグランギニョルの総帥の娘にして優秀なリリィ!もう一人は百合ヶ丘で戦神と呼ばれた最強のリリィ!」

 

 

そう力説してる内に二人の少女がやって来た。

 

一人はライトブラウンのロングヘアで、後ろ髪の一部を黒いリボンで纏めている少女。

 

 

1年生 郭神琳(くぉ しぇんりん)

 

 

もう一人は黒髪のストレートヘアで左側にシュシュも付けた緑の瞳の少女。

 

 

1年生 王雨嘉(わん ゆーじあ)

 

 

「ああ!台北出身の留学生で中等部時代から高い実力を発揮されている郭神琳さんと!優秀な姉と妹を持ったアイスランド出身の王雨嘉さん!ああやっぱり百合ヶ丘に入学できてよかったー!こんなに素晴らしいリリィ達に出会えるなんてー!!ぶふぉ!!?」

 

 

興奮していた為か、少女は鼻血を出してしまう。

 

 

梨璃「ど、どうしたの!?」

「ずびばぜん、興奮して鼻血が…」

 

 

鼻を指で詰まんで鼻血を押さえる少女。

 

 

楓「なんですの貴女は…」

「私、有名なリリィに会うと興奮して鼻血を出してしまうんでふ…」

出雲「大丈夫なのか?」

「はい、いつもの事ですから…所で貴女は?」

 

 

鼻血は止まったようだ。

 

 

梨璃「私、一柳梨璃っていいます」

「一柳さんですね。私は二川二水です。よろしくお願いします」

梨璃「梨璃でいいよ。こちらこそよろしくね。二水ちゃん」

二水「はい。梨璃さん」

出雲「あいさつは終わったな。早く行くぞ」

楓「行きましょう梨璃さん…とそこのちびっ子」

二水「ちびっ子!?」

梨璃「う、うん」

 

 

四人は校門を通ったあと校舎にたどり着く。

 

しかしそこで沢山の生徒が集まっていた。

 

 

梨璃「?」

二水「なんでしょう、揉め事でしょうか?」

出雲「私が先に見てくる」

 

 

梨璃達を残し、出雲は生徒の集まりへ向かう。

 

生徒達が見ていたのは、背中に武器らしき物を背負った小悪魔っぽい桃色のロングの1年生が、黒く長い髪の少女を睨んでいた。

 

 

「中等部以来お久し振りです、夢結様」

 

 

アールヴヘイム 1年生 遠藤亜羅椰(えんどう あらや)

 

 

夢結「何かご用ですか?遠藤さん」

亜羅椰「亜羅椰と読んで頂けませんか?そして入学のお祝いに、CHARMを交えて頂きたいんです」

 

 

夢結を前に少し前に進む亜羅椰。

 

その光景を見た出雲は…

 

 

出雲「遠藤亜羅椰…またアイツか…」

 

 

遅れて梨璃達もやって来て、夢結が亜羅椰に絡まれてるのを目撃した。

 

 

梨璃「やっと着いた…と思ったら、何ですか?あれ」

楓「大方、血の気の多いリリィが上級生に絡んでいるんですわ」

梨璃「そんな!リリィ同士CHARMを向け合うなんて!」

出雲「リリィと言っても、16〜7の小娘だ。こういうこともある」

梨璃「こういうこともって…ん?」

 

 

梨璃は視界に映る黒い髪の少女に目が入った。

 

 

梨璃「あの人は…」

出雲「一柳、あの子が気になるのか?」

二水「あの人は白井夢結様。どのレギオンにも属さない孤高のリリィです!」

出雲「詳しいな」

二水「防衛省発行の官報をチェックしていればこの位。あ、あっちの方は遠藤亜羅椰さん!中等部時代からその名を馳せる実力派です!」

 

 

梨璃が夢結を見てる間、他では…

 

 

「亜羅椰の奴、夢結様に何やってるのよ!」

 

 

と、緑髪のロングの少女が言う。

 

 

アールヴヘイム 1年生 田中壱(たなか いち)

 

 

「喧嘩やってるんだよね?いっちゃん」

 

 

灰色の長い髪の少女が隣の金髪のショートヘアーの少女にくっつきつつ目の前の状況を見ていた。

 

 

アールヴヘイム 1年生 江川樟美(えがわ くすみ)

 

 

壱「止めます?天葉様」

 

 

壱がどうするか天葉と呼ぶ上級生の金髪少女に聞く。

 

 

アールヴヘイム 2年生 天野天葉(あまの そらは)

 

 

天葉「私は興味あるかなぁ?」

壱「じゃあ見てますか」

 

 

という流れで話は纏まる。

 

代わって夢結と亜羅椰の方は…

 

 

夢結「お退きなさい。時間の無駄よ」

亜羅椰「なら、その気になって貰います」

 

 

と言って亜羅椰は右手に着けた文字が掘ってあるリングを左手に持ち変えた武器に触れさせた。

 

するとリングの文字が光り、片刃の武器は変形し、斧状の武器に変わった。

 

 

出雲(アステリオン…3つの形態を持つ汎用性の高い武器か…)

梨璃「変形した…!?」

出雲「あれが決戦兵器「CHARM」だ。リリィの武器であり、ヒュージに対抗できる……ん?」

 

 

出雲が話してる内に梨璃は飛び出して行った。

 

 

出雲「人の話を聞かないとはな…」

 

 

一方夢結と亜羅椰は…

 

 

夢結「手加減はしないわよ」

亜羅椰「あら怖〜い。ゾクゾクしちゃ〜う」

 

 

二人が戦いを始めようとする次の瞬間、梨璃がいつの間にか二人の間に入っていた。

 

 

梨璃「駄目ですよ!リリィ同士で戦うなんて!」

 

 

一方出雲達は…

 

 

楓「り、梨璃さん!?」

二水「梨璃さん何時の間に!?うっ!」

 

 

二水の頭に灰色のツインテールが乗っかった。

 

二水の横には、灰色のツインテールの少女がいた。

 

 

1年生 ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス

 

 

ミリアム「なかなかすばしっこい奴じゃな。じゃが、一歩間違えれば切られ兼ねんぞ」

二水「(ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス!?)ぶふぉ!?」

 

 

興奮してまた鼻血を出す二水。

 

 

ミリアム「うおっ!?」

出雲「ティッシュだ。それで鼻血を止めろ」

二水「あ、はい!」

 

 

一方楓は梨璃の元へやって来た。

 

 

楓「梨璃さん、危ないですわよ!」

梨璃「だけど…」

亜羅椰「あなた達邪魔よ!」

夢結「良いわ。面倒だから、3人纏めていらっしゃい」

梨璃「私も!?」

楓「私は梨璃さんが危ないから止めに来ただけですわ」

亜羅椰「もう!私だけ見ていて下さい夢結様!!」

 

 

そんなやり取りをしてるその時、百合ヶ丘女学院の鐘がなった。

 

 

出雲「この鐘の音は…!」

 

 

皆は鐘の音に気付く中、出雲は今の鐘の音が何を意味するのか分かった。

 

 

「何をなさっているんですか、あなた達!」

 

 

 

後ろ髪を止めたダークブラウン色の髪の少女がやって来た。

 

左手には亜羅椰と同じCHARMを持っていた。

 

 

生徒会 3年生 出江史房(いずえ しのぶ)

 

 

出雲「先程の鐘…何かあったのか?」

史房「出雲先生!?はい。先程、校内の研究施設から2体の生体標本のヒュージが逃走したとの報告がありました」

出雲「ヒュージの特長は?」

史房「四足歩行型で、周囲の環境に擬態すると報告があります」

出雲「処理はどうする?捕獲か?それとも退治か?」

史房「出来れば捕獲で…って出雲先生も手伝ってくれるんですか?」

出雲「久しぶりに暴れたくてな…任せてくれ」

史房「しかし、CHARMが…」

 

 

そう言う史房だが、出雲は鞄から小型の斧状の武器を取り出した。

 

 

 

出雲「グングニル・カービンだが、これで十分だ」

史房「でも流石に一人は…」

出雲「ならば、ここは私が決めていいか?」

史房「え?構いませんが…」

夢結「私は一人で十分です」

 

 

勝手に先に行く夢結。

 

 

出雲「単独行動は許さん。団体で行動しろ」

 

 

出雲が夢結を止める。

 

 

夢結「必要ありません。仲間等、足手まといです」

出雲「団体で行動出来ないような者には任せられんと言っているんだ。私と行動してもらうぞ」

夢結「………わかりました」

出雲「さて……」

 

 

出雲は周りにいる生徒から連れていく者を探す。

 

 

彼女は梨璃と楓を指差した。

 

 

出雲「ヌーベル、一緒に来い」

楓「よろしいのですか?」

出雲「お前はリリィとして実力がある。たよりにしてるぞ」

楓「お任せください」

 

 

楓は協力に入る。

 

 

史房「実戦経験の無いものは体育館へ」

亜羅椰「ちょっと、私の勝負~!」

壱「行くよー、亜羅椰」

 

 

天葉、樟美を追うかのように壱は亜羅椰を連れて体育館へ向かう。

 

他の生徒達も次々とこの場を離れ、体育館へと向かった。

 

 

出雲「さて…行くか」

梨璃「私も連れてってください!」

 

 

残った梨璃が出雲にお供したいと申してきた。

 

 

楓「梨璃さん!?」

出雲「二川には言ったのか?」

梨璃「先に行っててと言ってきました。私も…お役に立ちたいんです!」

 

 

梨璃の意思は固いことを出雲は感じた。

 

 

出雲「白井もいいな?」

 

 

出雲に言われ、夢結は梨璃に顔を向けて…

 

 

夢結「…いらっしゃい」

 

 

夢結は迎えるように梨璃の同行を承諾した。

 

 

梨璃「…………はい!」

出雲「決まりだな。残りの生徒を頼むぞ」

史房「はい。お気をつけて…」

 

 

 

 

史房をその場に残し、三人は出雲と一緒に逃げたヒュージの処理に向かった。

 

 

 

 

 

 

探索を開始してから数分後…出雲、夢結、楓、梨璃の四人は危険区域となってしまった隣町にたどり着き、逃げたヒュージを探していた。

 

四人ともCHARMを右手に持って常に警戒している。

 

梨璃のCHARMはグングニル。

 

CHARMメーカー、ユグドラシルで作られた汎用性の高い武器で、梨璃のような初心者でも扱いやすく作られている。各パーツのコストが低く、替えが効く。

 

 

夢結のCHARMはブリューナグ。

 

ケルティックデール社が作った攻撃特化の武器で、形状がグングニルに近い。

 

防御にもマギを回してるグングニルと異なり、こっちはマギを全て攻撃に回してる為、防御面に不安がある。

 

頑丈な分、使用してる部品はかなりの値な為、一部のガーデンしか運用が許可されていない。

 

 

楓のCHARMはジョワユーズ

 

自分の父の会社、グランギニョル社で作られた高級実験機である。

 

ハサミのような形状で、他のCHARMとデザインが異なる。

 

 

出雲のCHARMはグングニル・カービン。

 

元のグングニルを簡略化した使いやすさを意識した量産型であり、カスタマイズもしやすい。しかし性能はグングニルより劣る。

 

 

 

 

 

彼女達がしばらく進んでいくと、廃虚となった街並を目撃した。

 

電信柱は傾き、何年も使っていない無人のバスはボロボロに、ほとんどの建物はえぐりとられたり、茂に覆われ、道はボロボロ…前にあった町の活気は何一つ感じられない。

 

しかし、ここも今は動物達の住み処と化している。

 

 

梨璃「凄い…これ、ヒュージと戦った後ですか?」

出雲「そうだ。リリィとヒュージが戦った爪痕だ」

楓「学院自体が海から襲来するヒュージを積極的に誘引し、地形を利用した天然な要塞になるので、周囲の市街地に被害が及ぶ事を防いでいるのですわ」

 

 

更に探索し、今度は切通しと呼ばれる場所に着く。

 

 

楓「はぁ…何なんですの?この道は」

夢結「切通しと言って、1000年程昔に作られた通路よ」

楓「はぁ…歴史の勉強になりますわね」

 

 

 

 

探索から数時間経過し、彼女達はベンチがある草原に着く。

 

三人が辺りを探索してるのに対し、楓は疲れてベンチで休んでいる。

 

 

楓「はぁ…入学式の前から草臥れ果てましたわ…」

出雲「この程度で根を上げるとは情けないぞ」

楓「そう言いますけど…」

出雲「ほら、一柳を見ろ」

 

 

出雲に言われ、梨璃の方を見た楓。

 

梨璃はまだ懸命に周りを見渡し、探索をしていた。

 

 

出雲「新米にしては中々根性のある子だ。お前も少しは見習っ…て?」

 

 

いつの間にかベンチにいた楓がいなくなり、梨璃と一緒に探索をしていた。

 

 

楓「梨璃さん、二人で探索をしましょう!」

出雲「……やれやれ」

 

 

楓は心配いらないだろうという所で探索を再会する出雲。

 

その時、何かの気配を察知した。

 

 

出雲「……この負のマギの気配は…!」

梨璃「何も出ませんね。もうちょっと奥まで行きますか?」

楓「そうですわね…」

 

 

二人は気付いていない。

 

そして、梨璃の後ろの岩の穴から刃のような足が現れた。

 

それに気付き、出雲が動く。

 

 

出雲「一柳、ヌーベル、伏せろ!」

梨璃「え?」

楓「何ですの?」

出雲「早く伏せろ!!」

 

 

咄嗟に出雲はグングニル・カービンのグリップを持ち変え、岩の穴から出てきた刃のような足に向けてトリガーを引き、放たれた無数の光弾を浴びせる。

 

一方梨璃は楓の背中を押して一緒に伏せた為被害はなかった。

 

光弾を受けた刃のような足は一旦引っ込んだ。

 

 

夢結「一柳さん!」

 

 

夢結と出雲は梨璃と楓の元へ駆けつけた。

 

 

梨璃「今のは…!」

出雲「ヒュージだ。すぐにCHARMを構えろ」

 

 

出雲の指示に三人はCHARMを待機状態から武器の形態に変形させる。

 

 

楓のジョワユーズは刃の部分が二つに開き、中から機銃が出てきた。

 

シューティングモードに変えたジョワユーズで楓は梨璃の前に立つ。

 

 

楓「梨璃さんを襲うヒュージは私が退治しますわ!」

梨璃「わ、私も…」

 

 

梨璃は持ってるグングニルを起動させようとするが、反応しなかった。

 

待機状態から変形しなかったのだ。

 

 

梨璃「動かない!?」

楓「えっ!?」

 

 

出雲は梨璃がCHARMを起動できないのに気付き、梨璃の元へ来る。

 

 

出雲「一柳、CHARMとの契約はまだ済んでいないのか?」

梨璃「は、はい…」

出雲「CHARMは契約をして、初めて使えるようになる。CHARMと一緒に配布されたマニュアルに載ってた筈だが、見ていないのか?」

梨璃「うう…ご免なさい…」

出雲「見ていないとはな…困った子だ」

楓「仕方ありませんわ。梨璃さんはまだ初心者ですから」

出雲「いや、そこは自重すべきだろ…」

 

 

呆れたのか、出雲は左手で頭を抱える。

 

 

夢結「先生…少しの間、周りの警戒をお願い出来ますか?」

出雲「?……分かった。ヌーベル、ヒュージを二人に近づかせるな」

楓「は、はい」

 

 

出雲と楓は2手に別れ、周囲の警戒を行った。

 

 

梨璃「ゆ、夢結様?」

夢結「CHARMの契約…略式だけど、今してしまいましょう。CHARMを持って」

梨璃「はい」

 

 

梨璃はグングニルを右手に持った。

 

夢結はグングニルを持った梨璃の右手に自分の右手を添えた。

 

すると、梨璃が付けてたリングが光だした。

 

 

梨璃「っ!!」

夢結「略式と言う事になっているけど、これが本来の形なの。指輪を通じて、あなたのマギがCHARMに流れ込んでいるわ」

梨璃「マギが…」

 

 

略式の契約を行っている二人を見守る楓。

 

そしてすぐに周囲の警戒に切り換える。

 

 

楓「先生、梨璃さん達を守りますわよ!」

出雲「さっきそう言ったんだが、やる気が出たならいいさ」

 

 

出雲も警戒体制に入った。

 

その時、楓が敵の気配に気付く。

 

 

楓「来ましたわ!」

 

 

楓が上を向くと、先程のヒュージが現れた。

 

外見は、球体の体に足となる4つの刃が付いた姿である。

 

急降下してくるヒュージを、楓はジョワユーズを構えて、落ちたヒュージを受け止めた。

 

ところが、徐々に押されていき、楓の足下はクレーターが出来ていく。

 

しかしそこへ出雲が現れ、グングニル・カービンでヒュージを叩き飛ばした。

 

追撃を仕掛けるため、楓はジョワユーズをブレイドモードに切り換え、攻め立てる。

 

しかしヒュージは刃の足の上部分を分離させ、鞭のように振るいながら楓の連撃を全て受け止める。

 

 

出雲「厄介な奴だ」

 

 

出雲も接近し、至近距離で持ち変えたグングニル・カービンの光弾をヒュージに浴びせる。

 

そこに楓が連携で仕掛けるが、ヒュージは飛び上がり、白いガスを撒いた。

 

 

楓「ガス!?」

 

 

ヒュージが放ったガスは梨璃と夢結の方にも及んでいた。

 

 

夢結「大丈夫、ただの目眩ましよ」

 

 

周囲はガスで覆われ、視界は悪くなった。

 

 

楓「これじゃ、私のカッコいいところを梨璃さんにお見せできないんですってば!」

 

 

視界が悪くてヒュージの攻撃を避けることしか出来ない楓と出雲。

 

 

出雲「下手に動くと相手の思うつぼだ。慎重に行動…」

楓「いいえ、ここは攻めて行きますわ!」

 

 

と言って楓が動く。

 

 

出雲「おい!慎重に行動しろ!」

 

 

代わって梨璃と夢結はまだ契約の真っ最中である。

 

基礎的な準備を終え、夢結は手を離す。

 

 

夢結「CHARMが起動するまで、手を離さないで」

梨璃「は、はい…夢結様…いつまで?」

夢結「その時になればわかるわ」

出雲「二人とも後ろだ!」

 

 

二人の後ろにヒュージが現れた。

 

すぐにCHARMを構える夢結だが…

 

 

梨璃「待ってください!」

 

 

何かに気付いたのか、梨璃が夢結の腕を掴み、そのまま一緒に伏せる。

 

 

夢結「え!?」

 

 

何とヒュージが二人をすぐに襲わず、飛び上がった。

 

更にヒュージがいた後ろから楓がジョワユーズを向けて突っ込んできた。

 

 

楓「り、梨璃さん!?」

 

 

楓の攻撃は、梨璃の咄嗟の対応により当たらなかった。

 

しかし先程飛び上がったヒュージが今度は上から二人を襲うが…

 

 

出雲「姑息な真似をする…!」

 

 

出雲が現れ、グングニル・カービンで降下するヒュージを受け止め、そのまま上空に弾き返した。

 

更にそれをフルスイングで周りを振るうと、周囲の煙幕が振り払われた。

 

 

視界がよくなった所で楓が合流してきた。

 

 

楓「申し訳ありません、梨璃さん、夢結様!」

出雲「人の話を聞かないからだ」

夢結「あのヒュージ、私達の合い打ちを狙ったわ」

 

 

夢結はヒュージの先程の行動を理解した。

 

もし、梨璃が気付かなかったら楓と夢結が同士討ちにあっていただろう。

 

 

楓「まさか、ヒュージがそんな知恵を?」

出雲「一柳、よく気付いたな」

梨璃「あはは、田舎者なもんで視力には自信あります」

 

 

そう話してる内に地響きが起きた。

 

 

梨璃「な、何!?」

出雲「ヒュージだ。白井の方から来るぞ!」

 

 

出雲の指示に合わせ、夢結は大きな剣、ブリューナグを構える。

 

すると、夢結の側にヒュージが現れた。

 

出現の瞬間に合わせ、夢結はブリューナグで大きく降り下ろす。

 

直撃はしたものの、まだ倒れない。

 

すかさずヒュージは反撃に応じ、夢結を空中に打ち上げ、連続で仕掛けるが、夢結は一つ一つの攻撃を受け流してはかわしていく。

 

しかし、隙を見せた夢結にヒュージは無数の触手を伸ばして夢結を巻き付き、拘束した。

 

 

梨璃「夢結様!」

出雲「まだそんなかくし球があったか…!」

 

 

出雲は夢結を助けにグングニル・カービンを構えるが、ヒュージがそれを逃さず、残った触手による連続攻撃による妨害に阻まれでしまう。

 

夢結を拘束している触手に攻撃しても他の触手に防がれ、触手からの攻撃も出雲の反応の早さで防がれる。

 

お互い手一杯である。

 

 

楓「先生!」

梨璃(何とか…しないと…!)

 

 

この場をどうにかしたい梨璃。

 

その時、梨璃が握っていたグングニルが動き始め、マギクリスタルにルーンの模様が浮かび上がった。

 

 

梨璃「CHARMが…!」

 

 

梨璃のグングニルはそのまま変形し、ブレイドモードへと変えていった。

 

梨璃がグングニルを使えるようになったことを楓は、梨璃の側によった。

 

同時に気付いた出雲は二人に指示を伝える。

 

 

出雲「触手を斬れ!」

 

 

出雲の指示を聞いた梨璃と楓は…

 

 

楓「梨璃さん、一撃で決めますわよ!」

梨璃「うん!」

 

 

二人はCHARMを構え、夢結を捕らえてる触手に向かって突撃した。

 

 

梨璃「やああああっ!!」

楓「やああああっ!!」

 

 

二人の一撃で、夢結を拘束していた触手が全て斬られ、夢結は脱出した。

 

同時に出雲への攻撃も緩くなり、出雲は咄嗟に残りの触手をアックスモードに切り換えたグングニル・カービンで切り裂いた。

 

 

出雲「白井、同時に行くぞ!」

 

 

伝え、出雲は夢結と一緒に更に形状が変化しそうなヒュージを十文字に切り裂いた。

 

ヒュージは動かなくなり、青い液体を撒き散らしながら近くの崖に倒れた。

 

ぶつかったことで崖が崩れ落石が発生し、楓に襲いかかる…

 

 

梨璃「楓さん!」

 

 

危機を察知した梨璃が楓を安全なほら穴に押し飛ばした。

 

しかし落石と青い液体は梨璃の頭上に落ちていく。

 

 

夢結「梨璃!」

 

 

夢結がすぐさま梨璃を覆い隠すかのように庇う。

 

しかし、謎のバリアが二人を落石と液体を弾き返した。

 

 

梨璃「!?」

夢結「これは…!」

 

 

バリアは出雲が張っていたものだった。

 

 

出雲「大丈夫か二人とも」

梨璃「今のは…」

夢結「レアスキル…ヘリオスフィア」

梨璃「レアスキル?」

出雲「リリィにはマギ以外にも、所有する力…スキルが存在する。リリィが覚醒することで使えるようになる強力な力はレアスキルと呼んでいる。今使ったヘリオスフィアもそのレアスキルの一つだ」

梨璃「レアスキル…」

夢結「ありがとうございます」

出雲「お前達は仲間だ。助けて当然の事。それよりヌーベルの救助をしなくていいのか?」

梨璃「え…ああっ!?」

 

 

楓が飛ばされたほら穴は落石で塞がれ、ヒュージの液体による被害はなかった。

 

 

出雲「ヌーベルを救出したら、お前達二人は検疫を済ませておけ。ヘリオスフィアを張ったとはいえ、液体を少しは浴びてしまっているからな」

 

 

出雲の言う通り、二人の体には少しだけ青い液体を浴びていた。

 

四人は学院に戻った直後、梨璃と夢結を検疫室に連れていき、出雲は一人で理事長室に向かった。

 

 

出雲は理事長代理の高松咬月に今回の件について説明した。

 

 

高松「報告ご苦労だった。今回手伝ったリリィ達の為に入学式の時間はずらしておこう」

出雲「ありがとうございます。それと、クラス割りについてですが…」

高松「それなら既に決めておいた。これをみてほしい」

 

 

と、高松は各クラスごとに生徒の名前が載った紙を出雲に渡した。

 

 

高松「君の担当するクラスは椿組だ」

 

 

高松から出雲の担当するクラスを聞き、出雲は椿組の生徒リストを見た。

 

そこには、一柳梨璃、二川二水、楓・J・ヌーベルの名前が載っていた。

 

更に出雲は、ある生徒の名前に目を向けた。

 

郭神琳、王雨嘉、安藤鶴紗(あんどう たづさ)の三名の名前である。

 

他のクラスの生徒の名前も見てみると、ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウスと神楽月涼(かぐらづき りょう)の名前にも目が行った。

 

 

高松「気になった生徒はいたかね?」

出雲「ええ。どれも教えがいがある生徒ですよ」

高松「気になった生徒は見つかったか?」

出雲「はい。椿組の一柳です。彼女はリリィになったばかりですが、着眼点が良く、反応の早さも中々のものです。しっかり訓練すれば白井と並ぶほど強くなるはずです」

高松「彼女を高く評価しているのだね」

出雲「そこで今度、彼女を含む特定の生徒を厳選して訓練を行いたいと思います。他の生徒の実力も見てみたいので、それで今後の方針を固めていこうと思います」

高松「君の指導は大きく評価している。彼女がどのように化けるか、期待しているよ」

出雲「はい。それでは…」

 

 

出雲は生徒のクラス表をバインダーにしまうと、高松に礼をした後に部屋を出ていった。

 

 

理事長室を出た出雲は…

 

 

出雲「訓練が楽しみだな…」

 

 

と、期待しながら廊下を歩いていった………

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

 

 

二水「次回は皆で共同訓練です!」

楓「誰ですのあの子?」

 

 

 

 

 

next 王雨嘉は勇気を出す

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

次回からのキャラ設定

 

 

安藤鶴紗

 

舞台版よりアニメ版の方がキャラが濃いのでそっちで行きます。

 

やべぇキャラが気に入ったので…

 

 

 

郭神琳 王雨嘉

 

アニメと舞台、どちらも大きな変化は無さそう。

 

現状維持で行きます。

 

 

 

吉村・Thi・梅(よしむら てぃ まい)

 

舞台版の方がしっかりしているけど、こちらはアニメ基準で行きます。

 

うっかり舞台版の設定で書いたりするかも…

 

 

 

ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス

 

舞台版のだとバカっぽく感じるためアニメ基準で行きます。

 

舞台版の「これは妄想ではない!わしの頭の中の物語じゃ」は笑えるwww

 

 

 

次回の新キャラ

 

神楽月涼

 

舞台版ミリアムの代理。少々キザな性格で楓をライバル視してる子。

 

ミリアム同様工廠科に所属し、CHARMの整備もこなす。

 

 

 

 

 

 

 




次回の内容はアニメ2話の一部と舞台版の最初の訓練のシーンを書いていこうと思います。

一柳隊結成前のメンバーが全員揃います!

お楽しみに!


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「4」王雨嘉は勇気を出す

遅れてしまいました。
完成までの話が思い付かず、時間がかかりました。
それでは第4話どうぞ。



逃亡したヒュージの討伐から次の日の朝…

 

 

出雲は朝早く百合ヶ丘女学院の校門を通っていった。

 

そのまま職員室へ向かおうとしたが、地面に転がってる黒い何かが出雲の目に映った。

 

出雲はその黒い何かを拾った。

 

拾ったのは、どこかに跳び写ろうとしてる黒猫のストラップだった。

 

 

出雲「黒猫…?」

「あっ、それは…!」

 

 

出雲の元へ誰かが来た。

 

来たのは王雨嘉だった。

 

出雲は拾ったストラップが誰のものか悟り、雨嘉に差し伸べる。

 

 

出雲「王雨嘉だな?」

雨嘉「はい…後、そのストラップ…」

出雲「わかっている。お前のだろ?」

雨嘉「は、はい!ありがとうございます」

 

 

雨嘉は出雲からストラップを受け取る。

 

 

出雲「自分の持ち物は管理しておけ。大切なものならな」

雨嘉「はい。すみませんでした」

 

 

雨嘉は出雲に礼をし、そのまま立ち去ろうとするが…

 

 

出雲「……王、お前の姉と妹はアイスランドで今も活躍してるんだったな」

 

 

出雲の話題に雨嘉は少し動揺し、その場に止まる。

 

 

雨嘉「……はい」

出雲「王瑞希(るーしー)と王莉芬(りーふぇん)、私は1年前、彼女達に会った事がある」

雨嘉「えっ?」

出雲「ヘイムスクリングラトレードゴードに試作品のCHARMを送り届ける任務中、敵の奇襲に会って…数分後、協力に駆けつけてきたガーデンのリリィ達と力を合わせて戦った事があったな。その時、駆けつけたリリィ達の中にいた二人が私が当時着てた制服に気付いてやって来た訳だ」

雨嘉「そうだったんですか…」

出雲「その後、二人と話してるうちにお前の事を聞いた訳だ。自分に自信がないってな…」

雨嘉「…私、私は姉や妹に比べて、出来が悪いから…心配されてるのだと…」

 

 

雨嘉は中等部時代、アイスランドのガーデンで姉と妹と一緒にリリィをやっていたが、二人のリリィとしての強さにプレッシャーをかけられ、自信を失っていた。

 

3年生になると、百合ヶ丘女学院に転入するよう言われ、彼女はより自信をなくしていた。

 

自分はいらないのではないかと…

 

しかし出雲はこう答えた。

 

 

出雲「出来が悪いとは思えんがな」

雨嘉「えっ?」

出雲「お前の戦闘スペックは姉と妹同様、十分に高い。その気になれば優秀なリリィとしての風格を手に入れるだろう」

雨嘉「や、やめてください!私はそこまで強くは…」

出雲「始めから強い人間なんていない」

 

 

出雲の言葉でハッとする雨嘉。

 

 

出雲「みんな色々なものを積み重ねて、始めて強い人間になれるんだ。姉や妹も始めから強い訳じゃない。王家の人間だろうと関係ない。お前に足りないのは自信だ。少しは自分を信じたらどうだ?」

雨嘉「…自信……」

出雲「私は行く。言われたこと、頭に叩き込めよ」

 

 

と言って出雲は雨嘉と別れ、校舎へと入っていく。

 

 

 

昼休み、出雲は新しいCHARMを借りるために、学院の地下にある工廠科へと向かった。

 

 

出雲「流石にカービンではこれから先がきついだろうな…」

 

 

出雲がここに着た理由は、ヒュージ討伐に使用したグングニル・カービンの替わりになるCHARMを借りるためである。

 

グングニルの派生機であるグングニル・カービンは使いやすさを重視した作りになっているが、出雲の使用してるカービンは低コストの素材を使ってるため必要なマギの貯蔵量に制限がある。

 

CHARMはリリィが持つマギをの量次第で強力かつ頑丈になるのだが、流石に限界がある。

 

昨日のヒュージとの戦いで出雲は全力を出せなかったのだ。

 

次はそうは行かないと思った出雲は別のCHARMを工廠科から借りることにしたのだ。

 

 

そんなこんなで、出雲は工廠科の扉を開けた。

 

中は工房らしい場所で、そこには自分のCHARM、ブリューナグの部品交換をしにやって来た夢結と、現在渡されたブリューナグの部品を交換してる最中の髪飾りを着けた青髪の少女がいた。

 

 

2年生 真島百由(ましま もゆ)

 

 

出雲「失礼する…先客がいたか…」

夢結「……何かご用でも?」

出雲「新しいCHARMを借りに来たんだ。そっちはブリューナグの点検だな」

夢結「…はい」

 

 

夢結は表情を一つも変えずに出雲に目を合わさず話していた。

 

 

「おお、貴女は出雲先輩ではありませんか!」

 

 

女なのに膝が見えるほどの長さのズボンをはいたボーイッシュな青のショートヘアーの少女がやって来た。

 

 

1年生 神楽月涼(かぐらづき りょう)

 

 

涼「去年の東京防衛戦での活躍はこちらでも伝わっております」

出雲「神楽月か、確かシエルリント学院から転入してきたアーセナルだったな」

涼「はい。そして少し前、レアスキルに目覚めてリリィになりました。現在リリィとしての訓練もこなしております」

出雲「うむ、いい心構えだ。後私の事は先生と呼べ」

涼「それは失礼しました。出雲先生」

 

 

礼儀良く話す涼。

 

 

そこにメンテナンスを終えたブリューナグを持った百由がやって来た。

 

 

百由「終わったわよ。夢結…って先生今来たの?」

出雲「用があって来た。先にそっちの件を済ませてからでいい」

百由「オッケー!」

 

 

百由はブリューナグを夢結に渡した。

 

渡されたブリューナグは砲身以外が新品同様に変えられていた。

 

 

百由「どう?」

夢結「ええ。良いわ」

百由「少しガタ付いてたから、幾つか部品を交換しといたわ。銃身は後2回出動したら交換よ。覚えといてね~。私忘れっぽいから。どういたしまして!」

出雲「先に言うのは不自然だぞ?」

夢結「ええ。ありがとう」

 

 

と、お礼を言って夢結はそのまま受け取ったブリューナグを持って工廠科から出た。

 

 

百結「全く、可愛気が無いんだから…」

出雲「……」

 

 

出ていく夢結を見て出雲は思った。

 

白井夢結…かつては仲間と共に戦ってきた彼女が、今は「2年前」の出来事で心を閉ざし、一人で戦おうとしている。

 

このままではいつか命を落としかねない、彼女を昔の頃に戻さないと…

 

 

百由「それで先生、何の用でここに?」

出雲「新しいCHARMを借りに来た。マギの貯蔵量が多く、シンプルでシャープな物をお願いしたい」

百由「……難しい事を言いますね…シャープと言ったら、グングニルかトリグラフじゃ駄目なんですか?」

出雲「確かにシャープだが、シンプルではないからな」

百由「前に使ったヨートゥンシュベルトは?」

出雲「卒業後に遭遇したラージ級相手に修復不可能な状態まで全損してしまってな…やはり第1世代のじゃ無理があったな」

百由「あれだけ使い込めばダメになりますよ…となると一から作るしかありませんね…」

出雲「時間はあるのか?」

百由「ちょっと新しいCHARMの刃を作ってる最中なの」

 

 

出雲は作業台から少し離れた所にある釜を見た。

 

蓋は閉まっているが、隙間から光が出ていた。

 

 

出雲「………CHARMの部品を作ってるのか?」

百由「ええ。少しでも性能のいい物を作りたいので…手が離せません」

出雲「そうか…邪魔するわけにはいかないな…」

 

 

代わりのCHARMがないことに悩む出雲。

 

そこへ涼が話しかけてきた。

 

 

涼「先生、CHARM選びにお悩みでしたら僕が専用のCHARMを用意しましょうか?」

出雲「いいのか?」

涼「中等部時代、僕はアーセナルとしての能力向上のため、日本武器CHARM職人に弟子入りした事があるんです。日本刀のCHARM制作はお手のものですよ」

 

 

CHARM開発の技術を学んだ涼は入学前、この百合ヶ丘女学院にいくつか自作の日本刀のCHARMをいくつか出してる。

 

彼女の作った刀のCHARMは変形、飛び道具等の機能を捨てて、高威力、強度の高さ、使いやすさを意識した作りになっている。

 

最大の人気は、和をイメージしたデザインである。

 

これらが合わさって、生徒達からかなりの評価を貰っている。

 

出雲は涼のCHARM制作の腕を見込み、頼むことにした。

 

 

出雲「日本刀…頼んでいいか?」

涼「3日後に完成する刀のCHARMで良ければ」

出雲「構わん。CHARMのテスト運用も出来ればやってやろう」

涼「それは是非僕からもお願いします。希望があれば制作中に色々調整しますけど」

真島「私も見てみたいわね。涼さんの新しいCHARM。こっちのCHARM開発のヒントが見つかるし」

 

 

百由は涼の技術を高く評価しており、たまに涼がCHARMをいじくる所を覗いたりしている。

 

 

三人がそう話してる時、ドアが開き、梨璃、楓、二水、ミリアムがやって来た。

 

 

梨璃「わっ!眩しい!」

百結「ごきげんよう。ちょっと待って。これからCHARMの刃を硬化処理する所なの」

 

 

釜からCHARMの刃を取り出すと、今度は低温の油に入れて刃を冷却する。

 

 

百由「いらっしゃい。梨璃さんと楓さんね。えーとあなたは…」

二水「二水です!二川二水!」

 

 

鼻血を警戒し、両手で鼻を押さえる二水。

 

 

百由「宜しく二水さん」

出雲「一柳とヌーベル、二川とグロピウスか。何の用で来たんだ?」

ミリアム「この者達にCHARMの事をもっと教えようと思ってな…」

涼「き、君は…!」

 

 

突然楓の姿を目撃した涼が楓に指を指す。

 

 

楓「!?」

涼「君は、楓・J・ヌーベルではないか!」

梨璃「楓さん知り合いですか?」

楓「いえ、この子の事は知りませんわ」

二水「彼女は神楽月涼さん!日本刀のCHARMを作った有名なアーセナルです。ぶふぉ!!?」

 

 

警戒を緩めてしまったのか、興奮してまた鼻血を出してしまう二水。

 

 

梨璃「うわ、二水ちゃん!?」

涼「僕は覚えてるぞ。中等部時代僕が自作のCHARMをメルクリウスに送り届ける最中に目撃したんだ。ヒュージと戦う君の姿を…その華麗なCHARMは僕の心を鷲掴みにし、虜にした。そして僕は理解した…君こそが僕のライバルに相応しいと!」

楓「私は知りませんわ。それに貴女とは会ってもいないし、ライバルでもありませんわよ」

二水「私の知ってる情報では、彼女は中等部時代、アーセナルとして活動していて、シエルリント学院に入ってた記憶が…」

ミリアム「お主また、いつもの妄想か?」

涼「妄想ではない!これは僕の記憶の物語だ。もう一人の君だってそうだろ?」

ミリアム「もう一人のわしってなんじゃ!!と言うか、そういうのを…!」

二水「あのー…」

ミリアム「なんじゃ?」

二水「思い出したんですけど、シエルリント学院と言えば中二病育成ガーデンとして名の高い…名門校だったと…」

梨璃「中二病?」

 

 

と、楓、二水、ミリアムの3人は涼を可哀想な目で見た。

 

 

涼「そ、そんな目で見るなー!」

 

 

恥ずかしくなって顔を赤くする涼。

 

 

涼「……そうだよ…そうなんだよ…僕は四年前、同級生からアーセナルになるならここがいいよとオススメされて、いざ入ってみたら、外から隔離された異質な世界だった。リリィを魔女と呼び、見るに耐えないネーミングの必殺技の数々。皆おかしいんじゃないかと思った事もしばしばあった…辞めたいと思った事もあった。けどアーセナルの技術力を得るためには耐えるしかなかった。本当に辛い3年間だったよ。お陰でこの通り僕も中二病が移ってしまった。今となっては思い出したくない過去だよ」

 

 

と、話し、涼は疲れたかのように頭を下げる。

 

 

楓「…自覚はしてるんですわね…というか、ごめんなさい」

百由「私はそんなの気にしてないわよ」

 

 

そういう話題もありながら、百由は冷却した刃をゆっくりと取り出す。

 

 

百由「さあ、上手く言ってよ…」

 

 

取り出した所でしばらく待つと、何かの金属音が響いた。

 

 

涼「割れたね。これ」

 

 

それを聞いた百由は崩れ落ち、頭を抱える。

 

 

百由「ああ…この一月の努力の結晶が~」

出雲「熱疲労に耐えられなかったようだな」

梨璃「あの…それは?」

 

 

落ち込む百由に変わって涼が説明する。

 

 

涼「CHARM専用の刃さ。一般的な刃と違ってこの刃にはルーン文字…マギを制御する術式が細かく刻まれている。リリィのマギがこの術式によって活性化することで、ヒュージの体を覆うマギを中和させ、傷を負わせられる。CHARMがヒュージにダメージを与えられる理由の一つだ。マギにはマギを、ヒュージがマギを宿す以上…対抗できるのは同じくマギを宿す者、リリィのみという訳だ」

出雲「これはもう知っているな?」

梨璃「はい。習いました」

ミリアム「こんな物もあるぞ」

 

 

ミリアムから渡されたのは、長い金属の筒らしき物だった。

 

 

梨璃「これは…」

ミリアム「CHARMの銃身じゃ。よく見い」

 

 

ミリアムに言われ、梨璃はCHARMの砲身の中を覗きこんだ。

 

良く見ると、ライフラインに術式が刻まれていた。

 

 

ミリアム「ライフリングにも術式が刻まれておる。弾がここを通る時に魔法マギと共に術式が刻まれると言う訳じゃ」

百由「ヒュージと違ってリリィはCHARMを依代とする事で魔法マギを制御するんだけど…はあ…やっちまった~」

出雲「気分転換に食事でも取ったらどうだ?時には休息も必要だ」

 

 

と、百由に休むよう伝える出雲。

 

 

変わって食堂…

 

食堂にやって来た梨璃達と百由、出雲は昼食を取っていた。

 

ミリアムと涼はCHARMのメンテナンスでこれなかった。

 

 

そんな中、百由は大きなお皿4つ重ねたまま完食してきた

 

 

出雲「食べ過ぎじゃないか?」

百由「いいんです!」

 

 

梨璃は百由に夢結の事を話した。

 

 

百由「しっかし、よりによって夢結とシュッツエンゲルだなんてねぇ」

梨璃「はい。でも全然相手にして貰えなくて…あの、夢結様が今使っているチャームは…」

楓「ブリューナクですわ」

梨璃「2年前に使っていたのは…」

百由「ダインスレイフね」

梨璃「何故夢結様はチャームを持ち替えたんですか?」

百由「成る程ね。それは本人に聞くしかないでしょうね」

梨璃「百由様は何かご存じなんですか?」

百由「知ってるわ。けど教えない」

出雲「私も同様だ」

梨璃「何故ですか?」

百由「本人が望まない事を私がペラペラ喋る訳には行かないでしょ?」

梨璃「?」

出雲「一柳、もし誰かがお前の事を他の人間にベラベラと話されたらどうする?そういう事だ」

百由「リリィは税金も投入される公の存在であるけど、その個人情報は本人がそれを望まなければ一定期間非公開にされるの。個人の心理状態が戦力と直結する上に、感じやすい10代の女子ともなればまあ仕方ないかもね」

楓「あのお方、感度高そうには見えませんけど」

百由「感じ過ぎるのよ。感じ過ぎて振り切れてしまった。おっと言い過ぎた。後は本人に聞いて話してくれるならね」

 

と、話を切った百由だった。

 

 

楓「梨璃さん、どうしてそこまで夢結様に拘りますの?」

梨璃「初めて出会った時の夢結様と、今の夢結様はまるで別人みたいで…私…それが不思議で。知りたいんです」

出雲「白井がそれを望んでいなくてもか?それとも、お前なら白井を変えられると?そんなのはお前のエゴじゃないか?」

梨璃「それは…そうかもしれないですけど…何が夢結様を変えてしまったのか。夢結様が胸の内に何をしまっているのか。私それを知りたいんです」

 

 

引き下がる様子はない梨璃に、出雲は何かを思い付く。

 

 

出雲「一柳、3日後にお前とヌーベル、二川を含む10名で共同訓練を行う。白井に認めたければ、その力を示すしかない」

梨璃「先生…」

出雲「シュッツエンゲルの契りを交わせる…とまでは行かないが、お前に対する印象は少し変わるはずだろう」

梨璃「先生…ありがとうございます!」

出雲「その代わり、私は優しくないからな。覚悟しておけ」

 

 

出雲が梨璃に指を指す。

 

 

梨璃「は、はい!」

楓「これはもう当たって砕けるより他になさそうですわね。ここは私も一肌脱いで、必ず梨璃さんと夢結様にシュッツエンゲルの契りを交わさせてみますわ。そしてそのあかつきには…!うふふ…完璧ですわ!」

二水「楓さん、妄想がダダ漏れです」

出雲「抜け目のない奴だ」

 

 

 

それから数時間後…午後のホームルームで出雲は3日後の訓練に参加する生徒に話をした。

 

クラス外の参加生徒はメールで伝えた。

 

 

そんなこんなで、3日後…

 

一足早く出雲が訓練場に到着した。

 

時刻は午後3時を回っていた。

 

 

出雲「ちょっと早すぎたか…」

 

 

訓練を始める時間まで、まだある。

 

出雲はそれまでの間、準備運動を行った。

 

それから数分後、涼が横に長いアタッシュケースを持って到着した。

 

 

涼「すみません先生、最後の調整に時間を掛けてしまって…」

出雲「構わん。訓練までまだ時間はある。それでそのアタッシュケースは…」

涼「はい。完成しました」

 

 

涼はアタッシュケースを地面に置いて、出雲の前で開けた。

 

中には変わった日本刀が2つあった。

 

柄は少し長く、刃は直径1メートル。

 

鍔の所はマギクリスタルコアが内蔵され、左は砲身、右にはひし形のパーツが取り付けられていた。

 

まさにシャープな形状である。

 

片方は黒塗りでもう片方は白一色であった。

 

 

涼「僕が作った日本刀のCHARM、黒鉄(くろがね)と白銀(しろがね)です。過去に作った虎鉄の強度とマギによる強化を更に向上させ、牽制向けの飛び道具を追加した仕様となっています。先生はこちらの黒鉄を使ってください」

出雲「これか…」

 

 

出雲は指輪の付けた右手で黒鉄を持ち、契約を始めた。

 

すると、マギクリスタルコアにルーンが浮かび上がり、契約は完了した。

 

 

出雲「良く馴染む…」

涼「素材は耐久性に特化した物を、使ってるコアも大容量の物にしました」

 

 

出雲は持ってたリモコンを操作し、ヒュージに似たドローンを一体だけ呼び出す。

 

出雲は黒鉄を構えてマギを込める。

 

そして向かってくるドローンを黒鉄で3度も斬り、3つに分けた。

 

そこから黒鉄を横に向けてトリガーを押し、無数の弾丸をドローンに浴びせた。

 

ドローンは落ち、3つに分けられた胴体は無数の穴が出来ていた。

 

 

出雲「いい…この感じ…神楽月、気に入ったぞ!」

 

 

出雲は黒鉄が気に入ったようである。

 

 

涼「喜んでいただいてうれしい限りです」

 

 

涼は残った白銀を右手に持っていた。

 

既に契約を完了していた。

 

 

出雲「神楽月はそのCHARMか」

涼「テスト運用はこちらも兼ねてますから。こちらは性能も少し違います」

出雲「訓練で是非見せてもらうぞ」

 

 

そう話してる内に、二人がCHARMを持ってやって来た。

 

一人は白井夢結。もう一人は緑髪のショートヘアーの少女である。

 

 

2年生 吉村・Thi・梅(よしむら てぃ まい)

 

彼女の所有CHARMは父が開発に関わった大刃のタンキエム。

 

 

夢結「早いですね。先生」

梅「梅達が一番だと思ったんだけどな」

出雲「予定より仕事が片付いただけだ」

 

 

話をしてるうちに梅は出雲の持ってるCHARMに気付く。

 

 

梅「お、先生新しいCHARMか?」

出雲「神楽月が作った最新のな」

涼「先生、お二人も訓練に入るんですか?」

出雲「今回の訓練対象は1年生のみだ。二人には訓練のサポートを手伝ってもらう」

 

 

そして数分後、梨璃、二水、楓、雨嘉、神琳、無口な金髪のポニーテールの少女がやって来た。

 

 

1年生 安藤鶴紗(あんどう たづさ)

 

 

遅れてミリアムもやって来た。

 

 

梨璃「もう夢結様達、集まってる!」

二水「先生が新しいCHARMを!」

ミリアム「あれが涼の作った刀のCHARMか…良くできておる」

出雲「全員来たな。CHARMもちゃんと持参してる。1年生全員並べ」

1年生達「はい!」

 

 

1年生達が横一列に並ぶ。

 

 

出雲「よし、まず訓練を始める前に各自、自己紹介をしろ」

梨璃「自己紹介?」

出雲「リリィ足るもの、仲間との交流も大事なことだ」

楓(めんどくさいですわね)

鶴紗(めんどくさ)

 

 

そう考えてる二人の足下に突然チョークが飛んできた。

 

チョークは地面に当たり、粉々になった。

 

 

楓「ひっ!?」

鶴紗「!?」

 

 

それを見た二人は恐怖を感じた。

 

無表情の出雲からは恐ろしいオーラを発していた。

 

 

出雲「今、めんどくさいとか考えてただろ?しゃきっとしろ」

二人「は、はい!」

 

 

残りの6人も危機感を感じ、気を引き締め。一人一人が前に立ち、自己紹介を始めた。

 

 

梨璃「一柳梨璃です」

二水「二川二水です!」

楓「楓・J・ヌーベルですわ」

雨嘉「王雨嘉です」

神琳「郭神琳と申します」

鶴紗「…安藤鶴紗だ」

ミリアム「ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウスじゃ」

涼「神楽月涼です」

出雲「よし、次は2年生、お前達の番だ」

 

 

2年生の二人も自己紹介をする。

 

 

梅「吉村・T・梅だぞ」

夢結「……白井夢結よ」

出雲「そして今回お前達の指導を担当する如月出雲だ。よろしく」

1年生達「よろしくお願いします!」

 

 

1年生達は礼をしながら挨拶をした。

 

 

出雲「うむ、いい挨拶だ」

楓「ちょっと宜しいでしょうか」

出雲「なんだ?」

楓「何故ミリアムさんと涼さんがいらっしゃるのですの?椿組ではありませんけど…」

出雲「二人はレアスキルに覚醒したばかりの新米リリィだ。そして今回はCHARMの試験機の運用を兼ねている」

二水「先生の持ってるそのCHARMもですか?」

出雲「ああ。グロビウスのCHARMはニョルニール。ユグドラシル社CHARM「ミョルニール公開コンペ」の出品機体だ。そして神楽月のCHARMは白銀。強度の良さと近接戦闘に特化した機体だ」

楓「そうでしたか…ですがライバルと言った割には、レアスキル覚醒したばかりとは…とんだ拍子抜けでしたわ」

涼「あながち間違ってはいないよ」

楓「?」

涼「僕には夢があるんだ…」

雨嘉「夢?」

 

 

涼は握りこぶしを作り、自分の夢を告白する。

 

 

涼「僕の夢…それは世界一のCHARMを作り上げる事!有名CHARMメーカー、グランギニョルを越える物をこの手で生み出す事なんだ!」

二水「ぐ、グランギニョルを越える物!?」

神琳「す、すごい夢ですわね…!」

ミリアム「大きく来たのう…」

 

 

彼女、神楽月涼の夢に驚く皆。

 

 

 

特に、楓の反応は大きかった。

 

 

楓「なるほど…たいした夢ですわね…」

 

 

涼の夢の告白で闘争心に火が付いたのか、楓はジョワユーズを涼に向けた。

 

 

楓「前言撤回します。貴女をライバルとして認めますわ!グランギニョルにケンカを売ったことを…このジョワユーズで思い知らせてあげますわよ!」

涼「ようやく火が付いたみたいだね。僕にとってグランギニョルは最大の関門。望むところだよ。楓・J・ヌーベル…君にもこの白銀の性能を見せて上げるよ!」

 

 

涼は白銀を横に向け、楓の前に出す。

 

 

楓「初心者でも手加減しませんわよ」

涼「僕もだって人並み以上の特訓をしたからね。全力でいかせてもらうよ」

 

 

お互いに対抗心が宿った。

 

 

梨璃「うわぁ……」

ミリアム「お互い燃えておるのう」

 

 

といった所で…訓練は始まった。

 

 

出雲「まずは射撃訓練だ。CHARMをどれだけ使いこなせるか見せてもらうぞ」

 

 

訓練場には専用の円形の的が沢山用意されていた。

 

 

出雲「最初は王、郭、安藤!」

 

 

呼ばれた3人は位置に立ち、CHARMを機動させ、シューティングモードへと変形させて構えた。

 

 

郭神琳のCHARMは媽祖聖札(マソレリック)。

 

量産されていない世界で1つしかない盾に似た円形の機体で、神琳の戦いに合わせた調整が施されている。

 

シューティングモードは外側に砲身が出てきただけであり、変形構造は少ない。

 

 

王雨嘉のCHARMはアステリオン。

 

シンプルな構造だが、距離を選ばない汎用性の高い機体である。

 

シューティングモードは刃の下部分が反対に周り、前にスライドした形態である。

 

撃つときは刃の下部分に付いたグリップを利手で扱う。

 

 

安藤鶴紗のCHARMはティルフィングの量産テスト機。

 

単体の攻撃性能が高い上に、砲塔部分を切り捨てたショートブレードモードという形態を持つ高級CHARMの1つ。

 

シューティングモードは柄の部分が90度周り、砲身が露になった状態で。肩に背負って撃つスタイルとなっている。

 

 

梅「まずは5発。始め!」

 

 

梅の合図で神琳、雨嘉、鶴紗は的に5発命中させた。

 

特に雨嘉の射った的は中心をしっかり捕らえていた。

 

 

梅「うん、全員5発命中だな」

出雲「流石だ。特に王のは見事な射撃だな」

雨嘉「あ、ありがとうございます…!」

 

 

喜ぶ雨嘉の隣で神琳は頬笑む。

 

 

出雲「他の二人も中々だったぞ。次はヌーベル、神楽月、グロビウス、前に出ろ」

 

 

楓、涼、ミリアムが入れ替わりで的の前に立つ。

 

 

楓はジョワユーズをシューティングモードに変形させる。

 

涼は白銀を横に構える。

 

ミリアムのニョルニールは先端の斧の上部が開き、隠れていた砲身を前に向けた。

 

これがミリアムのニョルニールでのシューティングモードだろう。

 

 

梅「始め!」

 

 

梅の合図で3人は射撃を行った。

 

これも問題なく5発命中。

 

 

出雲「流石だな」

楓「動かない的なんて大したことありませんわ」

涼「右に同じく」

 

 

二人は的の中心を僅かな擦れがあったものの、当てていた。

 

しかしミリアムは外してはいないものの、中心からちょっとずれていた。

 

 

出雲「グロビウスのCHARMはもう少し調整が必要だな」

ミリアム「うむぅ…」

梨璃「みんなすごい…」

出雲「感心してる暇はないぞ。次は一柳、二川の番だ」

梨璃「は、はい!」

 

 

梨璃と二水が入れ替わりで前に出た。

 

梨璃、二水の持つCHARMは、同じグングニルであった。

 

 

出雲「ここでお前達二人の持つCHARM、グングニルについて説明する。グングニルは初心者でも扱いやすいポテンシャルの高い機体だ。近距離のブレイドモードと中距離のシューティングモードの2つに変形する。今回は射撃の訓練な為、シューティングモードの扱いになれてもらう。構えろ」

 

 

出雲の指示に二人はグングニルをシューティングモードに変形させる。

 

梨璃は今回、CHARMをしっかりと変形させていた。

 

 

出雲「マギの扱いは覚えたようだな」

梅「では、始め!」

 

 

梅の合図で二人はグングニルを構え、弾を5発撃ち出した。

 

 

しかしこの後夢結が頭を抱える。

 

二水は5発とも的に当たっているが、梨璃の的だけ当たっていなかった。

 

 

梅「ん?全部外れてるぞ」

出雲「一柳、目をつぶってやれと誰がいったんだ?」

 

 

梨璃は弾を撃ち出す時、目をつぶっていたため、狙いがそれてしまったのだ。

 

 

出雲「戦場では目を瞑るのは自殺行為にあたる。その事も頭に入れておけ」

梨璃「ご、ごめんなさい…」

 

 

そこへ夢結が助け船にやって来た。

 

 

夢結「梨璃さん、見ておきなさい…こう撃つのよ」

 

 

夢結が右手で持ってるブリューナグをシューティングモードに変形させ、左手を砲身を抑え、梨璃が狙おうとした的に5発撃った。

 

 

二水「うわぁ…!!」

神琳「5発とも、全て中心に…!」

出雲「流石白井…見事な射撃だ」

 

 

狙った的は5発とも中心に当たっていた。

 

しかも1発目で開けた穴を残りの4発が通っていた。

 

 

梨璃「うわぁ…」

夢結「……ちゃんと見てた?」

梨璃「は、はい!」

 

 

夢結はこれ以上なにも言わず、元の位置へと戻る。

 

 

出雲「一柳は後で射撃の特訓だな…他のみんなは実力申し分ない…さて、それじゃそろそろ…」

「ちょっと待ったー!」

 

 

突然聞き覚えのある声が聞こえた。

 

やって来たのはメガネをを掛けた少女、百由だった。

 

 

ミリアム「百由様!」

出雲「真島か、なにか用か?」

百由「思ったんだけど、ここにいるのはほとんど実践経験のある子達でしょ?動かない的が相手じゃ物足りないと思いますけどね?」

出雲「何が言いたいんだ?」

百由「訓練の事で提案があるんだけど?」

出雲「提案か…聞かせてもらおうか」

百由「これから8人には、模擬ヒュージ戦で実力を競ってもらうわ!」

二水「模擬ヒュージ戦!?」

百由「しかも、2チームに別れてヒュージの撃破数を競う対決方式よ!」

楓「対決?」

出雲「真島、それを行おうにも準備が…」

百由「準備ならもう済んでますよ」

出雲「早いな。というかこうなることをわかってやったな?」

百由「バレたか」

 

 

一方、生徒達は…

 

 

涼「いいですねえ。楓に白銀の性能を見せつける絶好の機会ですよ」

楓「言いましたわね。ジョワユーズが貴女のCHARMより優れてる事を教えて差し上げますわ!」

 

 

二人の対抗意識が更にヒートアップする。

 

 

梅「なるほど、面白そうだな!」

出雲「おい何かってに…」

夢結「…」

楓「私は梨璃さんのチームに入りますわ!」

梨璃「え、私のチーム!?」

涼「二水、君はこっちに入ってくれ。鶴紗も一緒に」

鶴紗「めんど…わかった」

 

 

出雲にやられた事を思い出し、危機感を覚えた鶴紗は渋々涼のチームに入る。

 

 

神琳「面白いですわ。私、雨嘉さんとは競ってみたいと思ってましたの」

雨嘉「わ、私なんか…」

 

 

引っ込もうとする雨嘉だが、朝に出雲から言われたことを思い出すと、表情が変わった。

 

 

雨嘉「うん…私、負けないよ…!」

神琳「え!?」

 

 

雨嘉が口にした予想外の答えに驚く神琳。

 

 

雨嘉「ん?どうかしたの?」

神琳「雨嘉さんがその気になるなんて思わなかったから驚いたわ」

雨嘉「そう?」

神琳「いいわ。勝負よ!」

ミリアム「じゃあワシと雨嘉は梨璃のチームに入ることになるな」

雨嘉「よろしくお願いします」

梨璃「わ、私まだCHARMの扱いがまだ…」

楓「大丈夫ですわ。梨璃さんは私が守って差し上げますわ!」

 

 

と言って梨璃に抱きつく楓。

 

そのまま楓の右手が梨璃のお尻を捉え……

 

 

出雲「スキンシップという皮を被ったセクハラはやめろ」

 

 

突如出雲が楓のセクハラを止める。

 

 

楓「皮を被ったなんて、言いがかりですわ」

 

 

 

という感じでチームは決まった。

 

場所は代わって外の廃虚エリア。

 

梨璃が逃げたヒュージを探すために訪れた場所であり、ここが2チームが競う戦いのフィールドになる。

 

 

梨璃、楓、ミリアム、雨嘉のチームと…涼、神琳、二水、鶴紗のチームは、それぞれ指定されたエリアに着いた。

 

周囲には百由が用意したミドル級の模擬ヒュージがあちこちに動いていた。

 

 

百由「ざっと30体は用意したわ」

出雲「出しすぎだ。模擬ヒュージの思考はどうなんだ?」

百由「普段は特定の範囲を移動しますが、相手が視界に10メートル以内に入ると殺傷力のない弾を撃つように設定してあります」

出雲「なるほどな。まあそれぐらいがいいだろう」

 

 

2年生の二人は外の環境が気になった。

 

 

梅「風が強いな…」

夢結「ええ…これでは攻撃の軌道が読みづらいわね」

梅「そこが勝負どころだな」

 

 

2チームの方は、それぞれの特徴を話しつつ作戦を立てている。

 

 

涼「テスタメントとファンタズム、それと鷹の目か…模擬ヒュージ戦では必要不可欠なスキルだな」

二水「ところで涼さんのレアスキルは何ですか?」

涼「ゼノンパラドキサだ。素早く動きながら攻撃を簡単に出来るようになる戦闘特化のスキル」

神琳「円環の御手と並ぶ程の強力ですね」

鶴紗「で、戦法は?」

 

 

鶴紗に言われ、涼は戦術を皆につたえる。

 

 

 

もう一組のチームも、戦術をたてていた。

 

 

楓「まずは私と梨璃さん、ちびっ子2号と雨嘉さんの二組で模擬ヒュージを倒して行きますわ。それぞれが単独で撃破するより、撃ち漏らした敵をまとめて倒す方が確実に撃破数を多く稼げますわ」

ミリアム「そうじゃな…って、誰がちびっ子2号じゃ!というか、何故この組み合わせなのじゃ?」

楓「梨璃さんはまだ初心者ですわ。そのため現場はカバー出来る者が必要になりますわ。ちびっこ2号のCHARMは射撃より近接戦の方が活躍出来ますし、後方は射撃の得意な雨嘉さんが適任ですし、彼女と組んだ方がバランスよく戦えると判断したまでですわ」

 

 

中等部時代、楓はレギオンの予備隊でファンタズムを複数扱える司令塔として活躍してたため、指揮能力は高い。

 

多少下心はあるものの、的確な戦法を3人に伝えているので非常に心強い。

 

これにはミリアムと雨嘉も反対するなく戦法を受け入れる。

 

 

ミリアム「わかったのじゃ。この勝負、お主の戦術が重要だからの」

雨嘉「私も意義ありません」

梨璃「わ、私も頑張らなきゃ…」

楓「梨璃さん、ここは夢結様にいいところを見せつける絶好のチャンスですわよ。頑張ればシュッツエンゲルの夢も叶うはずですわ!」

梨璃「楓さん…うん。私やるよ!」

楓「その意気ですわ!」

雨嘉(初心者のこの子も頑張ろうとしている…私も頑張らなきゃ…!)

 

 

梨璃の頑張りに感化したのか、雨嘉の自信が更に強くなる。

 

 

ミリアム「張り切っておるのう」

 

 

ミリアムが感心する中、アナウンスが響いた。

 

 

出雲「準備はいいな?それでは始めるぞ」

 

 

出雲の合図に向けて各チームのリリィ達がCHARMを展開し、構える。

 

 

出雲「対抗戦…始め!」

 

 

開始の合図と共にゴングの音がフィールド場に響いた。

 

 

百由「いつの間に持ってきたんですかそれ?」

出雲「対戦と言ったらこれだろ」

 

 

各チーム、それぞれの戦法で模擬ヒュージ討伐に向かう。

 

 

戦陣を切ったのは楓。

 

シューティングモードのジョワユーズで空を動き回る模擬ヒュージを撃ち倒していく。

 

それに付いていくかのように、梨璃がグングニルをシューティングモードに変えて同じく模擬ヒュージを攻撃していく。

 

夢結が先程梨璃に見せた構え方を試したが、まだかすり程度だが、狙いはよくなってきている。

 

グングニルのシューティングモードは、光の弾を連続で撃ち出す中距離に適したレーザーマシンガンタイプ。

 

命中精度もよく、初心者の梨璃でも扱いやすい。

 

 

梨璃「まだ当たらない…」

楓「いえ梨璃さん、少しずつ上手くなっていますわ。その調子ですわよ!」

梨璃「うん、ありがとう」

 

 

と、梨璃を誉めてる楓。

 

 

ミリアムと雨嘉は…

 

向かってくる模擬ヒュージをミリアムがニョルニールのアックスモードでなぎ倒し、逃げる模擬ヒュージを雨嘉がアステリオンのシューティングモードの後方射撃で確実に撃ち抜いていく。

 

 

ミリアム「やるのう」

雨嘉「これぐらい普通だと思いますけど…」

ミリアム「いや、そこまで正確な射撃、他のリリィには出来ん。頼りにしておるぞ」

雨嘉「……はい!」

 

 

ミリアム、雨嘉のペアは問題なしである。

 

 

一方相手の涼率いるチームは二人いるアタッカーを生かし、大きく前進していった。

 

 

向かってくる模擬ヒュージの群れを涼が右手に持った白銀で斬り倒しながら、鶴紗が続けてティルフィングのブレイドモードで叩ききる。神琳が媽祖聖札のシューティングモード、二水がグングニルのシューティングモードで溢した敵を撃ち抜いていく。

 

涼の立てた作戦は、相手チームの陣地に早く着いてからUターンして模擬ヒュージを倒す戦法である。

 

こうなると相手チームの周囲にいる模擬ヒュージが減ってしまい、不利になってしまう。

 

 

涼「よし、順調だ」

鶴紗「ちょっとセコい」

神琳「でも、いい作戦ですわ」

二水「私、今有名なリリィ達と一緒に戦ってる!ここまで嬉しいことは…ぶふぉ!!?」

 

 

模擬ヒュージ戦でも興奮して鼻血を出してしまう二水。

 

 

神琳「あらら、大丈夫ですか?」

二水「ごめんなさい、大丈夫ですから…」

涼「ティッシュあげるから、これで鼻を塞いで」

 

 

すぐに駆けつけた涼が二水にティッシュを渡す。

 

 

二水「あ…ありがとうございはふ…」

 

 

順調に進む涼のチーム。

 

そんな中、神琳は了解の新しいCHARMの性能に驚いてた。

 

 

神琳(涼さんの白銀…細めの刀身なのに刃こぼれがない…!)

 

 

そんな両チームの様子をドローンで確認して、タブレットで観覧している出雲と夢結、梅と百由は…

 

 

百由「皆飛ばすわね~」

梅「両チーム、中々やるな!」

夢結「……」

出雲「まだ序盤だ。勝負はこれからだろう…」

 

 

と、両チームの戦いを見守る出雲達だが…

 

外を見ると、遠くから何やら黒く巨大な人のようなものが両チームのいるフィールドにやって来た。

 

 

出雲「!?」

梅「どうしたの?」

出雲「ラージ級がこっちに来る…両チームはまだ気付いてない…!」

夢結「合流した方がいいわね…」

 

 

百由をその場に残し、出雲は黒鉄を起動させる。。

 

 

出雲「真島は模擬ヒュージを撤退させた後、オペレートを…吉村、白井は一柳のチームと合流しろ。神楽月のチームは私が行く」

夢結「わかりました」

梅「後輩たちを助けないとな!」

百由「ついでにヒュージの捕獲も…」

出雲「却下」

 

 

と言って出雲は涼のいるチームに向かって跳んでいった。

 

夢結と梅も後から梨璃のいるチームの元へ向かっていった。

 

 

代わって梨璃のいるチームは突然模擬ヒュージが去っていったのを見て違和感を感じた。

 

 

梨璃「あ、あれ?」

楓「模擬ヒュージが去っていく…」

ミリアム「何かおかしいのう…」

梨璃「楓さん危ない!」

 

 

突然梨璃が何かに気付き、楓を庇い避ける。

 

その後、楓のいた場所にビームが着弾した。

 

 

楓「この攻撃は…!?」

雨嘉「皆、あっちを見て!」

 

 

雨嘉が指差した先を梨璃達は見た。

 

すると、巨人のようなものがこちらに向かってきた。

 

 

ミリアム「模擬じゃない、本物のヒュージじゃ!」

雨嘉「さっきのはあのヒュージから…!」

 

 

巨人のヒュージは梨璃達に再びレーザーを放つが、後から夢結と梅がレーザーを弾き返し、梨璃達の元へ合流し、目の前のヒュージを睨みつつCHARMを構えた。

 

 

夢結「皆、訓練は中止よ!」

梨璃「夢結様、まさかあれは…!」

夢結「ヒュージよ。しかもラージ級…!」

ミリアム「ラージ級じゃと!?」

夢結「しかも2体同時よ」

雨嘉「2体!?

梅「ここからは梅で夢結で対応するぞ!」

夢結「皆は一足先に校舎に戻って!」

「いや、戦ってもらう」

 

 

涼のチームを連れた出雲が合流してきた。

 

 

梨璃「二水ちゃん、皆!」

出雲「ラージ級の他にも、取り巻きのスモール級、ミドル級もいる。1年生達はこのまま取り巻きの殲滅をやってもらう」

二水「ええっ!?」

涼「それって実戦ってことに…」

夢結「先生、まだ彼女達に実戦は…」

出雲「実戦に勝る訓練はない。それに取り巻きがいてはお前達も全力をだせんだろう?」

夢結「しかし…!」

出雲「彼女達はリリィだ。リリィならやることはお前もわかっているはずだ…」

楓「その通りですわ。リリィたるもの、ここで逃げる何て出来ませんわ!」

神琳「私もです!」

ミリアム「わしもじゃ!」

雨嘉「はい!」

鶴紗「敵は倒す…!」

涼「そういうことですよ」

梨璃「私も戦います!」

二水「は、はい!」

 

 

全員、戦う気満々である。

 

 

梅「困った奴等だな…なあ夢結」

夢結「……わかったわ。皆はスモール級、ミドル級を頼むわ」

出雲「極力固まって行動しつつ取り巻きを確実に仕留めろ」

1年生達「はい!」

 

 

1年生達は取り巻きのスモール級、ミドル級の処理に向かった。

 

その後、百由からの通信が出雲の端末から聞こえてきた。

 

 

百由「3分後に別のラージ級をこっちで確認しました。すごいスピードでこっちに来るから気を付けて!」

 

 

百由からの通信を聞き、出雲は夢結、梅にそれを伝える。

 

 

出雲「別のラージ級が3分後に来る。早めに片付けるぞ。この一体は私がやる。お前達はもう一体をやってくれ」

夢結「はい」

梅「そうだな!」

 

 

出雲を残し、夢結、梅はもう一体のラージ級へ向かった。

 

残った出雲とラージ級は互いに睨み合う。

 

まず先手を切った出雲がラージ級に対し、牽制を仕掛ける。

 

黒鉄を横に構えてトリガーを引くと、柄に取り付けられた2本の砲身から無数の光の弾を撃ち出す。

 

しかし、強風のせいで弾の軌道がずれてしまい、狙いがそれてしまう。

 

それでも弾のいくつかはラージ級に命中した。

 

 

出雲「さすがに遠距離でこの風は読みづらいか…なら」

 

 

遠距離では部が悪いと考えた出雲は近接攻撃に切り替え、ラージ級に攻撃を仕掛ける。

 

 

出雲「この黒鉄の切れ味…お前で試させてもらう」

 

 

出雲はラージ級の周囲を跳び回りながら右手に持った黒鉄で何度も切りつける。

 

たった数秒で、ラージ級の体には大きな傷が数ヶ所付き、ラージ級の右肩は切り取られ、それぞれ青い液体を吹き出していた。

 

 

出雲「いいCHARMだ。これほどの切れ味に加え、刃こぼれもないとは…素晴らしい」

 

 

出雲は黒鉄の性能を改めて実感した。

 

一方、夢結と梅ももう一体のラージ級に遠距離で攻撃するも、こちらも強風によって攻撃が逸れてしまう。

 

 

梅のCHARM、タンキエムは片刃の大剣だが、変形時は刃の先端が2つに別れ、砲身が露になる。

 

それを重機関銃のように持ちかえて撃つのが、タンキエムのシューティングモードである。

 

威力はあるが、命中精度は普通に悪い。

 

強風が吹く環境なら尚更である。

 

 

梅「風が強くて…軌道が読めない…!」

夢結「!」

 

 

これではらちが明かない為、二人はCHARMをブレイドモードに変形させ、近距離で短期決戦を狙う。

 

そして遅れて1年生組が取り巻きのヒュージ達を全て片付け、こちらに向かってきた。

 

 

涼「ラージ級はまだ健在か…」

ミリアム「見たところ攻撃をかなり受けてるようじゃが、まだ耐えておる」

二水「出雲先生の方は…」

 

 

二水が出雲の方を気にする。

 

神琳が少し離れたところで戦ってる出雲の方を確認した。

 

 

神琳「すごい…一人であのラージ級を追い詰めてる…!」

楓「前にヒュージを相手にした時よりも動きが違いますわ。それに新しいCHARM…すごいですわね」

涼「CHARMもそうだけど、それ以上に先生のマギが強いのは驚いたよ…」

 

 

と、話してる内に出雲がラージ級の一体を倒した。

 

 

二水「先生がラージ級を一体倒しました!」

ミリアム「もう一体は…!」

 

 

夢結と梅が戦ってるラージ級も少しずつ追い詰めてられている。

 

 

夢結「そこ!」

 

 

夢結がブリューナグに更にマギを込めて攻撃力をあげた後、そのままラージ級に攻撃しようとした。

 

しかし次の瞬間、夢結の横から新たなヒュージが飛んできた。

 

サイズからして、ラージ級だろう。

 

その姿は、鳥に似た頭に無数の翼を付けた異形の生物である。

 

 

梅「もう一体!?」

夢結(不味い…避けられない!)

 

 

鳥のヒュージが夢結目掛けて光のビームを放つ。

 

空中では体勢を変えられない為、夢結に攻撃を避ける手段はなかった。

 

 

梨璃「危ない!」

 

 

突然夢結の横に現れた梨璃がグングニルで放たれたビームを受け止めるが、弾き返される。

 

 

梨璃「きゃあ!」

 

 

しかし、弾き返されたビームは夢結に当たらず、空に反れていった。

 

 

夢結「梨璃さん!?」

二水「梨璃さん!」

楓「梨璃さん!」

 

 

二水と楓が、飛ばされた梨璃の元へ来た。

 

 

梨璃「あいたたたた………」

二水「梨璃さん大丈夫ですか!?」

梨璃「うん、大丈夫」

楓「突然の奇襲から夢結様を守る梨璃さん。なんてたくましい…!」

 

 

梨璃を讚美する楓。

 

と、そこに、先程奇襲を仕掛けた鳥のヒュージが1年生達の元へ現れ、同時に取り巻きのスモール級、ラージ級も数体現れた。

 

こちらは2種とも4枚の虫のはねが生えた目が付いた鉄の球体の姿をしていた。

 

その数はスモール級、ミドル級、ラージ級を含み19体。

 

ビームを弾き返した梨璃を危険視し、狙いを変えたようだ。

 

 

二水「さっきのヒュージが!?」

梅「不味い!」

 

 

梅は助けに行こうとするが、突然鳥のヒュージが遅れて来た出雲によって横に飛ばされた。

 

 

梨璃「先生!」

出雲「遅れてすまない。あのラージ級は私に任せろ。新たに現れた取り巻きは頼むぞ!」

 

 

取り巻きのスモール級、ミドル級を1年生組に任せ、出雲は飛ばした鳥のヒュージを追いかける。

 

対し、鳥のヒュージを追いかける出雲にミドル級達がレーザーを連射したが、当たらなかった。

 

 

梅「夢結、梅達もこのヒュージを!」

夢結「ええ」

 

 

二人も仕切り直して今相手にしているラージ級に再び攻撃を行う。

 

一方、合計18体のスモール級、ミドル級を相手にする1年生達は…

 

 

二水「スモール級とミドル級…結構いますね…!」

神琳「スモール級とはいえ、油断は出来ませんわね…それにこの数…」

 

 

敵の数はこちらの倍…ミドル級はスモール級の後ろで止まっていた。

 

このまま攻めても、後ろにいるミドル級の集中砲火を受けるため迂闊に近付けない。

 

 

涼「問題はあのミドル級だ。見たところ支援に特化したヒュージのようだ。早めに片付けたいが、援護射撃に加え、この風だ。遠距離攻撃はあてにならない」

鶴紗「それでも…倒すだけだ」

楓「大丈夫ですわ。ここは私が…!」

ミリアム「ワシに任せい!!」

 

 

突然楓と鶴紗が攻撃を仕掛ける前にミリアムが前に立った。

 

ミリアムの体から紫色のマギが溢れていた。

 

 

涼「ミリアム、そのレアスキルはまさか…!」

ミリアム「受けてみよ、ワシの渾身の…一撃じゃー!!」

 

 

ニョルニールを前に構え、溜め込んだマギを巨大ビームのように放出し、周囲のスモール級、ミドル達を巻き込んだ。

 

 

雨嘉「やった!

梨璃「ミリアムさん凄い!」

二水「ミリアムさんのレアスキルは、フェイズトランセンデンスですね!」

ミリアム「どうじゃ!これで全部倒したはず……」

 

 

ミリアムが突然力が抜けたように大の字に倒れた。

 

 

梨璃「ミリアムさん!?」

ミリアム「か、体が…うご…かぬ…」

 

 

見た限りミリアムは立ち上がれる力が無いようだ。

 

 

涼「その様子だとフェイズトランセンデンス、実戦では初めてのようだね」

梨璃「どういうことですか?」

二水「フェイズトランセンデンスは、一定時間マギを無限に使用できる強力なレアスキルですが、使いこなせない内はこのように動けなくなるんです」

涼「更に、使用後は一時的にマギが低下する」

楓「ぶっつけ本番で初めてレアスキルを使うなんて、なに考えてますの…って聞いてますの!?」

ミリアム「…」

 

 

返事がない……ミリアムは気を失っているようだ。

 

 

涼「マギを使い果たして気を失っているな、これは…」

鶴紗「気を付けて…まだ敵がいる!」

 

 

皆が鶴紗の方へ向くと、ダメージを受けたミドル級が数体残っていた。

 

スモール級はミリアムのフェイズトランセンデンスで全てやられたようだ。

 

 

雨嘉「ミドル級が…」

神琳「倒しきれなかったようですわね。ですがこれだけなら…」

涼「次は僕に任せてくれ」

 

 

涼が白銀を構え、レアスキルを発動する。

 

 

二水「り、涼さん!?」

涼「僕のレアスキルは、取り巻き相手との相性がいいからね」

 

 

そう言った後、涼が普段より早く動き、残ったミドル級達をすれ違い様に一瞬で斬り倒した。

 

 

梨璃「ヒュージが一瞬で…!」

二水「今のは…!」

神琳「ゼノンパラドキサ…!」

 

 

 

レアスキル ゼノンパラドキサ

 

「縮地」と「この世の理」のサブスキル…Whole orderとインビジブルワンの効果をあわせ持った複合スキルであり、高速移動しながら同時攻撃が可能となる。

 

もしもの時の緊急回避にも使える。

 

 

 

 

涼のお蔭で取り巻きのヒュージは全て倒され、残すは出雲、夢結、梅が戦ってる2体のラージ級である。

 

しかし、出雲はともかく、夢結、梅のマギは残り少ない。

 

夢結と梅が戦ってるラージ級は結構大きいため耐久力が

高い。体のあちこちに沢山の斬られた傷が出来たものの、まだやられる様子がない。長引けば二人が不利なる。

 

 

神琳「雨嘉さん、ミドル級のコアを狙って下さい」

雨嘉「神琳!?」

神琳「二人のマギも残り少ない上にこの強風…でも貴女のレアスキルと腕なら、ラージ級のコアを狙えるはずですわ」

雨嘉「でも…」

神琳「大丈夫ですわ。雨嘉さんなら出来ます。自分を信じて」

梨璃「雨嘉さん!」

楓「悔しいですが、ここは貴女が頼りですわ。私達では狙えませんもの」

 

 

皆が信じてくれてることに自信が出たのか、雨嘉は決意した。

 

 

雨嘉「………やってみる!」

 

 

雨嘉が高い建物に跳び移り、シューティングモードに変形したアステリオンを構えた。

 

更に自身のレアスキルを発動し、夢結と梅が戦ってるラージ級に狙いを定める。

 

 

涼「あれは、天の秤目か」

二水「遠く離れた敵も数分の誤差もなく把握する」

 

 

雨嘉がラージ級に狙いを定めるも、強風が狙いを妨害する。

 

 

雨嘉(また風が…やり過ごす。ううん、いける!)

 

 

強風に関わらず、雨嘉は軌道を読み取り、ラージ級の頭部目掛けて精密射撃を数発撃った。

 

弾は全て頭部を貫き、大きなダメージと一時的な隙を作った。

 

 

梅「今だ!」

夢結「はあああ!!」

 

 

雨嘉が作った隙を狙って、夢結と梅は残ったマギをCHARMに込めてラージ級の両肩、体を切り裂いた。

 

手応えがあったのか、ラージ級は倒れた。

 

 

梨璃「やった!」

神琳「流石でしたわ。雨嘉さん」

鶴紗「出雲先生の方は…」

二水「………あちらもどうやら終わった見たいです!」

 

 

鷹の目を使った二水は、出雲が鳥のヒュージを倒したことを確認し、皆に伝えた。

 

エリア内にいるヒュージはもういない。リリィ達の勝利であった。

 

 

神琳「雨嘉さん、貴女はもっと自信を持っていいですわ。そうでしょ?」

雨嘉「神琳…うん!」

 

 

戦いが終わり、リリィ達は集合した。

 

 

出雲「よくやったお前達。突然のヒュージの襲来に怯みなく戦った行動はリリィとして恥ずかしくない」

1年生組「はい!」

梅「梅も驚いたぞ。ここまでやるなんてな。良かったぞ」

夢結「………そうね」

出雲「神楽月、このCHARMのお蔭で全力を出せた。データは後で真島から貰ってくれ」

涼「いえいえ、こちらこそデータ収集に強力してくれてありがとうございます」

出雲「思わぬトラブルがあったが、今日の訓練はここまでにする。各自身体を休めておけ。ヌーベルはグロビウスを保健室に連れてってくれるか?」

楓「本当なら梨璃さんを背負いたかったですが、今回は我慢しますわ」

 

 

楓は今、フェイズトランセンデンスの反動で眠っているミリアムを背負っていた。

 

 

二水「私も手伝います」

出雲「よろしい。全員…解散!」

 

 

解散の号令に全員は別々に校舎へと帰ることとなった。

 

楓も帰ろうとした所、涼がやって来た。

 

 

楓「涼さん?」

涼「楓、トラブルがあったけど、君のジョワユーズ…中々良かったよ」

 

 

涼が楓のCHARMを誉めた。

 

 

楓「あ…貴女の白銀も、中々でしたわよ」

 

 

楓の返しの誉め言葉で涼も笑みをとる。

 

 

楓「ですが、グランギニョルのCHARMはこの程度では御座いませんわよ。次のヒュージ戦でその真価を見せますわ!」

 

 

と、自信げに自分のCHARMが優秀であることを涼に告げる楓。

 

 

涼「ふふっ、こっちも白銀を更に磨きをかけて見せてあげるよ!」

 

 

同じく涼も自分のCHARMもこれから強くなることを楓に告げる。

 

と、お互い笑みを浮かべつつ、楓と涼、二水は校舎へと帰っていった。

 

 

出雲も一旦帰ろうとするが、雨嘉がこっちにやって来た。

 

 

出雲「王か…どうした?」

雨嘉「先程は、ストラップを拾って頂いた後にアドバイスをありがとうございます」

出雲「アドバイス?」

雨嘉「自分を信じたらどうだと言われて、私は自信を持とうと考えることが出来ました。今回のヒュージ戦でも、他の皆からも私を信じてくれて、私ならやれると思い始めました。だから私も、これからも自信が持てるよう頑張りたいと思ってます」

出雲「当たり前だ。お前は強い。だからその力でお前の守りたいものを守ればいい。いいな?」

雨嘉「はい!」

 

 

雨嘉と別れ、出雲は百由の元へ向かった。

 

百由はノートパソコンで今回現れたヒュージ達のデータを整理していた。

 

 

出雲「何か分かったか?」

百由「先生の言った通り、このヒュージ達…行動が少し戦略的になってる」

出雲「やはりか…1年生達の戦ったミドル級が何故かスモール級の後ろで反撃に備えてた…普通じゃあり得ないことだ」

 

 

出雲は1年生達がスモール級、ミドル級の取り巻きと戦ってる所をチラチラと見ていた。

 

 

百由「考えるヒュージなんて…初めて聞いたわ」

出雲「今後の対応が必要になるな…私はもう少し黒鉄をならしておく。残った模擬ヒュージを用意しといてくれ」

百由「分かりました。準備するから一足先に行っててくださいね」

出雲「ああ…任せる」

 

 

そういう流れで出雲は残った模擬ヒュージを相手にしたのち、校舎へと帰っていった…

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

二水「次回は夢結様がルナティックトランサーを…!」

奈々「絶叫リリィの再来ですか?」

夢結「誰が絶叫リリィよ!」

 

 

 

NEXT 白井夢結は受け入れる

 

 

 

 

 

CHARM紹介

 

 

黒鉄(くろがね)

 

涼が出雲の要望通りに用意して作った日本刀ベースの実験機で、近接戦闘に特化した仕様になっている。

 

発注した新型のマギクリスタルを搭載したことで他のCHARMよりも沢山のマギを込められるため、全力を出せばラージ級を一撃で倒すことも可能である。

 

刀身が他のCHARMと比べて細いのにも関わらず、独自の方法によりダインスレイフ級の強度を持つ上に威力も高い。

 

鍔のところにはコアとレーザーバルカンの砲身が取り付けられているが、あくまで牽制程度の威力しかない。

 

 

白銀(しろがね)

 

涼が黒鉄と同時に作り上げたCHARM。

 

性能は黒鉄とほぼ同じだが、この白銀はレーザーバルカンの代わりに高威力のビームが撃てるアーチャーモードの変形が可能。

 

近距離、遠距離、どちらにも対応出来る。

 

 

虎鉄(こてつ)

 

涼が最初に作った日本刀の形を模したCHARMで、白銀、黒鉄の基となった機体である。

 

近接専用で飛び道具は搭載されていない。

 

第一世代CHARMであるヨートゥンシュベルトの上位互換ととらえるぐらいに、ダインスレイフ並の強度とグングニル並の威力を兼ね備えてる。

 

涼は百合ヶ丘に入学する前に量産する予定だったのだが、他のCHARMよりも製作に時間がかかるため、用意できたのは僅か5本のみである。

 

虎鉄の性能テストを生徒達の前で披露して以来、今も注文が来る程の人気のあるCHARMとなっている。

 

 

 

 




次の話はアニメの第3話の内容に近くなります。
投稿まで時間が掛かるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。


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「5」白井夢結は受け入れる

結構掛かりましたが、ついに過去編ラストです。
今回はアニメ三話にちょっとアレンジが入ってます。
それでもよろしければどうぞ!


 

訓練明けの次の日の朝…いつものように出雲は校門を通り、校舎内の廊下を歩いてた。

 

すると、掲示板の所に1、2年生達が集まって何かを見ていた。

 

その場には、楓、ミリアム、アールヴヘイムの面子もいた。

 

 

 

 

楓「はああ…なんて羨ましい~!」

ミリアム「ほう…」

天葉「まさかあの子が夢結にね…」

樟美「亜羅椰ちゃんも狙ってるよね?」

亜羅椰「敵ではないわ。あの孤高のリリィと呼ばれた夢結様があの子と結ぶなんてありえないもの」

壱「だといいけどね…」

出雲「ちょっと見せてくれ」

 

 

 

 

出雲は掲示板の方を見た。

 

そこに載っていた物は…

 

 

 

 

 

「週刊リリィ新聞」

 

 

発行者の名前は、二川二水と載っていた。

 

特に大きい記事にして載ってるのが…

 

新入生リリィ、一柳梨璃…孤高のリリィ、白井夢結様に大胆告白!

 

その内容は…

 

 

 

出雲の訓練中に襲ってきたヒュージの群れを退き、校舎に帰る中、梨璃が夢結に「私と…シュッツエンゲルの契りを結んでください!」と言った事も書かれていた。

 

 

 

他にも…

 

如月出雲、新CHARMでヒュージ達を撃退!

 

王雨嘉と一柳梨璃、白井夢結様と吉村・T・梅様のピンチを救う!

 

とか言った内容も書かれていた。

 

 

 

 

これが出た時点で、梨璃の事を知らない者はいないだろう。

 

ちなみに廊下の先には…

 

 

 

 

 

 

二水「号外!号外!週刊リリィ新聞ですよー!」

 

 

 

二水が発行した新聞の束を左手に持ち、生徒達に配っていた。

 

 

 

 

出雲「二川…やってくれたな…しかし、一柳も人気者になったものだ…」

「ちょっとちょっとちょーっとぉ!!?」

 

 

 

後から梨璃がやって来て、身体を張って掲示板の新聞を隠す。

 

 

 

 

梨璃「なんなのこれー!!?」

二水「週刊リリィ新聞です!」

梨璃「リリィ新聞!?」

ミリアム「ラージ級を倒した事より、告白を一面に持ってくるとは中々のセンスじゃのう」

梨璃「これ聞いてたの?」

二水「ええ、私感動しました!」

出雲「ヌーベル、グロビウス、二川」

 

 

 

 

出雲が梨璃達の元にやって来た。

 

 

 

 

楓「あ、先生ごきげんよう」

梨璃「ご、ごきげんよう…」

出雲「朝っぱらから騒がしいと思ったら二川の仕業とはな…」

二水「捏造は一切してませんよ」

出雲「そっちじゃない。私は人のプライベートをな…」

 

 

 

 

と、話す内に他の生徒が出雲に気付いた。

 

 

 

 

「あっ、如月出雲先生!」

「一人でラージ級を2体倒すなんて素晴らしいです!」

「流石戦神と呼ばれるだけありますね!」

 

 

 

 

次々と出雲の元に生徒達が集まって来ていく。

 

 

「今度ご一緒に付き合って頂けますか?」

「お昼、紅茶はどうですか?」

「私の、お姉さまになって下さい!」

 

 

 

生徒達の勢いに出雲は溜め息を付く。

 

 

 

 

出雲「やれやれ………」

 

 

 

 

結局チャイムが鳴るまでの間、出雲は生徒達に足止めを食らうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数時間後…

 

もうすぐ昼休みを迎える直後、ヒュージ襲来の鐘の音が鳴り、出雲は梨璃、二水、楓を誘い、校舎の屋上へ向かった。

 

何故か屋上にはパラソルを指したテーブルがあり、お菓子と紅茶まで付いていた。

 

そこには、夢結の姿もあった。

 

 

 

 

梨璃「先生、ここで何をするんですか?」

出雲「リリィの戦いというのをここで見てもらう。今回の班はトップレギオンのアールヴヘイムだ」

梨璃「トップレギオン?アールヴヘイム?」

 

 

 

 

初めて聞く用語に困惑する梨璃。

 

 

 

 

出雲「…そういえばまだレギオンについて話してなかったな。レギオンというのは9人一組で構成されたリリィの戦闘単位…要するにリリィのチームだ。戦いにとって数で攻めるのは戦闘の基本だが、レギオンはそれ以上の働きをしてくれる。それを見て…」

二水「そして!アールヴヘイムは伝説のレギオンと呼ばれた初代の名を引き継いだ百合ヶ丘最強のレギオン!!ぶふぉぁ!!」

 

 

いきなりアールヴヘイムについて力説し、興奮のあまり鼻血を撒き散らしそうになる二水。

 

 

 

 

梨璃「わわ、二水ちゃん!?」

楓「ちょっと!鼻血を飛ばさないで下さる!?」

二水「す、すみまへぬ…」

出雲「………来るぞ」

 

 

 

 

出雲がそう言うと、遠くの海から何かが映った。

 

 

 

 

二水「ヒュージです!」

 

 

 

 

ティッシュで鼻血を拭き取った二水が鷹の目を使って遠くの海からヒュージの姿を確認した。

 

 

 

楓「噂の鷹の目ですわね」

 

 

 

 

更に突然大地が揺れだし、遠くに建てられた防衛軍の基地から無数のミサイルが放たれ、海の中のヒュージを捉えるが、バリアによって防がれてしまった。

 

バリアに着弾し、爆発してもヒュージの体には触れておらず、ダメージはなかった。

 

 

 

 

梨璃「な、何!?」

出雲「防衛軍からの攻撃だ。だが近代兵器ではラージ級以上のヒュージに痛手を与えることができない」

 

 

 

 

一方ミサイルを受けたヒュージは梨璃達のいる学院の方向へ進んできた。

 

 

 

 

梨璃「気のせいか、こっちに向かってませんか!?」

夢結「百合ヶ丘女学院は、リリィの養成機関であると同時に、ヒュージ迎撃の最前線よ」

 

 

 

 

夢結が説明に入ってきた。

 

 

 

 

梨璃「そうか!ヒュージの襲来をここに集中させて、周りの被害を抑えるんですね!」

夢結「そして、多くのリリィが集まるここは、ヒュージにとっても見逃せない場所に移るでしょうね」

出雲「そろそろアールヴヘイムが動く。彼らの戦いをよく見ておけ」

梨璃「はい」

 

 

 

 

梨璃、二水、楓はヒュージのいる方向へ視点を戻すと、百合ヶ丘の制服を着た9人のリリィがCHARMを持って、まだ上陸していないヒュージの元へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

天葉「遅れないでよ!皆ー!」

 

 

 

天葉が樟美を含む他7名と共にヒュージに向かっていた。

 

 

 

 

2年生 アールヴヘイム サブリーダー 渡邉茜(わたなべ あかね)

 

1年生 アールヴヘイム 高須賀月詩(たかすが つくし)

 

1年生 アールヴヘイム 金箱弥宙(かなばこ みそら)

 

1年生 アールヴヘイム 森辰姫(もり たつき)

 

 

 

 

亜羅椰と壱は丁度いい高台で待機していた。

 

 

 

 

壱「新人相手にスパルタじゃありません?天葉様」

亜羅椰「そんなに意地悪されたら惚れちゃいます」

 

 

 

 

亜羅椰の言葉に移動中の樟美が反応し、注意する。

 

 

 

 

樟美「天葉様は私のだから!」

「無駄口叩くな。ほら行くよ!」

 

 

 

 

薄紫のロングの少女が注意する。

 

 

 

 

 

 

 

2年生 アールヴヘイム 番匠谷依奈(ばんしょうや えな)

 

 

 

 

 

亜羅椰が特殊な弾を自分のCHARM、アステリオンに装填した。

 

 

 

 

亜羅椰「ノインヴェルト戦術…一番槍は私が行かせてもらいます!」

 

 

 

亜羅椰のアステリオンから魔法の弾が放たれた。

 

 

 

 

 

 

梨璃「あれは…!」

出雲「魔法球…マギスフィアとも呼ばれている。今アールヴヘイムが行っているのは、ノインヴェルト戦術だ」

梨璃「ノインヴェルト戦術?」

出雲「放たれたマギスフィアを9人以上のリリィ達がパス回しをしながらマギスフィアの威力を高め、最後の一人が高めたマギスフィアを敵にぶつけるリリィ達の必殺攻撃だ」

二水「その代わり!その威力と引き換えにリリィのマギとCHARMを激しく消耗させる、文字通り諸刃の剣です!」

 

 

 

 

話に二水が割り込んできた。

 

 

 

 

出雲「二川…まあいい。ノインヴェルトの使用ば、マギを消耗だけでなくCHARMが破損することもある。消耗したマギは休めば回復するが、戦場でのCHARMの破損はリリィの生死に直結する」

 

 

 

 

と話してる内にマギスフィアが最後の一人、天葉に飛んでいった。

 

 

天葉「これでどうだぁ!!」

 

 

天葉は8人分のマギが込められたマギスフィアを水中にいるヒュージに向けて自分のCHARM、グラムで叩き撃った。

 

 

撃たれたマギスフィアは水中にいるヒュージに直撃し、爆散した。

 

 

 

 

 

出雲「………倒したな」

梨璃「わかるんですか?」

出雲「マギの反応が消えたのがわかる。それよりどうだ?アールヴヘイムのノインヴェルト戦術は?」

梨璃「は、はい。凄かったです…それしか思い付かなかったので…」

二水「私はアールヴヘイムの活躍が見れて良かったです!しかもノインヴェルト戦術まで見れるなんて、むぐっ!?」

 

 

出雲が鼻血を警戒したのか、二水の鼻を左手で抑えた。

 

 

 

出雲「興奮はいいが、鼻血は押さえておけよ」

二水「は、はい、わかひわひた…」

楓「流石アールヴヘイムと言っておきますわ」

 

 

 

楓の感想が終わった次に出雲は夢結の方へ目を向けたが、そこに夢結の姿はなかった。

 

同じく梨璃は夢結の事が気になっていた。

 

 

 

 

出雲「ところで一柳、お前は昨日訓練の後に白井とシュッツエンゲルの契りを交わそうとしたな。どうなったんだ?」

梨璃「……それが…」

 

 

 

梨璃は出雲に昨日の事について話した。

 

 

 

 

昨日の訓練を終えた後、梨璃は夢結にシュッツエンゲルの契りを交わすことをお願いするが…結果、断られてしまったとのことであった。

 

 

出雲「なるほどな…今のアイツならそう答えるな」

梨璃「私、2年前にリリィに助けられたと話しました。そのリリィが夢結様だったんです。私がリリィとしての道を選んだのも、夢結様のお陰でもあるんです」

出雲「それで、お前はもう一度白井にシュッツエンゲルの契りを結ぼうと考えてるのか?」

梨璃「はい。あの時夢結様は、断る際に…「私は憧れるような者じゃないと…貴女が後悔するだけよ」と…言ってました」

出雲「アイツ…そう言ってたのか…」

梨璃「初めて出会った時の夢結様が何故変わってしまったのか…私は知りたい…そして今度は私が夢結様を守りたいんです」

出雲「守りたい…か…お前にそれだけの力があるのか?」

梨璃「今はありません…でも、私は夢結様を救いたいんです!」

 

 

引く気のない梨璃の決意に出雲は……

 

 

 

 

 

 

出雲「一柳…放課後、CHARMを持って訓練室にこい」

梨璃「えっ!?」

出雲「お前の決意…私に示してみろ」

 

 

そう言って出雲はその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後、梨璃は愛用のグングニルを持って訓練室にやって来た。

 

楓、二水も梨璃に付いてきた。

 

そして訓練室にはすでに出雲が黒鉄を起動させて待っていた。

 

 

出雲「来たか、一柳」

梨璃「あの、先生…先程の言葉はどういう…」

 

 

梨璃が話してる間に出雲は黒鉄を梨璃に向けた。

 

 

梨璃「!?」

出雲「お前はこれから私と一対一で模擬戦をやってもらう。一度でも私を仰け反らせたらお前の勝ちだ。白井の横で一緒に戦うなら、これくらいはやってみせろ」

梨璃「は…はい!」

 

 

梨璃はすぐにグングニルを起動させて両手で構えた。

 

出雲も黒鉄を構え直す。

 

 

 

楓「待ってください!梨璃さんはまだ初心者ですわよ!」

出雲「知ってる」

二水「それなら少し手加減したほうが…」

出雲「甘く見るな!!」

 

 

出雲は甘く見た二水に黒鉄を向ける。

 

 

 

出雲「戦場では生きるか死ぬかのどちらかだ。生半端な実力と判断を持つようでは、やられるだけだ。白井もまた度重なる戦場で戦い、生き延びてきた」

二水「!?」

楓「それはそうですが…」

 

 

納得のいかない楓。

 

 

出雲「始めるぞ。どこからでもこい」

梨璃「………」

 

 

梨璃がグングニルを構えたまま出雲の動きを警戒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

出雲「誘いには乗らんか…ではこっちから行くぞ」

 

 

出雲が先に動き、一瞬で梨璃の近くまで来た。

 

 

梨璃「!?」

 

 

突然の接近に対応出来ない梨璃に対し、出雲は黒鉄の横凪ぎで梨璃をグングニルごと押し返す。

 

仰け反り、後退した梨璃だが、出雲の重い一撃で痺れてしまう。

 

 

 

 

梨璃「くうっ!!」

出雲「これが実戦ならお前はやられていたぞ。立て」

梨璃「……はい!」

 

 

梨璃は体勢を直したが、出雲はすぐに接近し、梨璃にもう一度黒鉄の重い一撃を当てた。

 

梨璃はグングニルで防御したが、重い一撃に耐えられず、また仰け反ってしまい、今度は立てないほどの痺れを受け、膝をついてしまう。

 

 

二水「ああっ!」

楓「梨璃さん!」

出雲「立て。この程度、耐えて見せろ」

梨璃「は………はい…!」

 

 

再び構える梨璃だが、痺れてて思うように動けない。

 

しかし相手は待ってくれない。

 

出雲は梨璃にもう一度重い一撃を浴びせた。

 

 

梨璃「きゃあっ!!?」

 

 

梨璃も3撃目の一撃に耐えられず、後ろに飛ばされてしまい、倒れてしまう。

 

 

梨璃「うう…」

出雲「立て。それとももう終わりか?それでは…」

楓「随分と手荒いことを…!」

 

 

 

 

放っておけないのか、楓がジョワユーズを展開させ、梨璃の前に現れた。

 

 

二水「楓さん!?」

出雲「ヌーベル…何の真似だ?」

楓「梨璃さんを放ってはおけませんわ。私にマゾっ気があれば堪らないでしょうね」

出雲「何が言いたい?」

 

 

 

 

 

楓「出雲先生…戦神と呼ばれた貴女の噂には唯一語られなかった事実があります。2年前に貴女はレギオンを結成した後、訓練を行った事がありました。しかしその訓練は、大量に発生したヒュージの討伐でした。もはや実戦に向かうようなものですわ。初めてヒュージを目の辺りにした仲間のリリィ達は恐怖で戦えず、全員逃げてしまわれました。この訓練が原因でレギオンの仲間達はリリィを辞めて百合ヶ丘から出ていった…卒業まで貴女はレギオン結成を禁じられてしまった。間違っていませんね?」

二水「楓さん、それは…!」

 

 

楓が話した語られなかった過去について出雲は…

 

 

 

 

 

 

 

 

出雲「お前の言う通り、私は2年前に結成したレギオンのリリィ達をヒュージ退治に連れてった。そしてリリィ達は学院から出ていった」

楓「わかっていらっしゃるなら、先程の梨璃さんへの容赦のない指導は間違いだとわかるはずですわ!」

出雲「甘い!!」

楓「!?」

 

 

出雲の渇に楓と二水は怯む。

 

 

出雲「そんな甘ったれたことでリリィとして戦って行けると思うな。もしリリィの一人が逃げたせいで仲間の命を失った時はどう責任取るんだ?」

楓「そ…それとこれとは…!」

出雲「同じだ。例え完璧な作戦でも、一人欠けてしまえば簡単に崩される。無数の柱で支えた家も、一本取ってしまえば簡単に崩れ落ちるようにな」

 

 

 

出雲の正論に言い返せない楓。

 

しかし楓はその場を引かない。

 

 

 

出雲「もし解っているのなら、退いてもらおうか?」

楓「いえ、退きません。やるのであれば…私がお相手して差し上げます!」

 

 

そう言って楓はジョワユーズを構える。

 

 

 

出雲「代わりに相手するのは構わん。だが勝ったところで、一柳の為にはならんぞ?」

 

 

出雲は黒鉄を楓に向ける。

 

 

楓「勝手なことを言わないでくださいまし!私は梨璃さんが辛く傷つくのを見たくないだけですわ!」

出雲「それが理由なら…もはや言うことはないな…一瞬で倒す…!」

 

 

二人がにらみ合いつつ、武器を構えるが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って…ください!」

 

 

グングニルを拾った梨璃が出雲の前に出た。

 

 

楓「梨璃さん!?」

二水「梨璃さん!?」

出雲(先程の3連撃を受けてもまだ動けるとは…)

梨璃「良いんです。私、私…皆より遅れてるから……やらなくちゃいけないんです。だから先生…続けさせて下さい!」

 

 

梨璃は再びグングニルを構えた。

楓も梨璃のやる気に水を指さないように下がる。

 

 

 

出雲「……フッ…いい目をしている。いいだろう…気が済むまで相手をしてやる」

梨璃「……お願いします!」

 

 

 

その後も梨璃は出雲の一撃を何度も受け続けるものの、結局出雲に一撃を与えられず、今日の模擬戦は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

二日目の放課後、再び模擬戦を挑む梨璃だったが、結果は昨日と変わらず、全敗だった。

 

 

 

 

出雲「今日の模擬戦はここまでだ」

梨璃「はぁ……はぁ……」

 

 

今回も体力の限界なのか、梨璃は大の字で倒れたまま疲れはてていた。

 

そこへ出雲はこう言った。

 

 

 

 

 

 

出雲「一柳、明日は体を休めておけ」

梨璃「え?」

出雲「体調管理もまたリリィの仕事だ。模擬戦は明後日行う」

 

 

 

そう言って出雲は訓練室から出ていった。

 

 

 

 

二水「出雲先生…実は優しかったり?」

楓「ただの気まぐれではなくて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

休みを挟んでの四日目…3度目の模擬戦を挑む梨璃。

 

今回も惨敗であった。

 

そんな梨璃を思う出雲は…

 

 

 

 

出雲(今回の一柳…動きが見違えているが…まだまだだな)

 

 

そんな風に考える出雲。

 

そして訓練室の端っこには二人の模擬戦を観戦していた夢結がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜……出雲は理事長の許可をもらい、夜の見回りを行っていた。

 

と、出雲は何かを目にした。

 

何と訓練室の扉から明かりが漏れていた。

 

 

出雲(こんな時間に練習か?いい心がけだが…)

 

 

出雲は扉のすき間を除いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんと訓練室には、梨璃が夢結から訓練を受けていた。

 

 

 

夢結「ヒュージとは、通常の生物がマギによって怪物化したものよ。マギという超常な力に操られているヒュージには、同じマギを使うリリィだけが対抗出来る」

 

 

そう言って夢結はブリューナグを構える。

 

 

夢結「マギを宿さないCHARMなど、それはただの刃物よ。このブリューナグも」

梨璃「は、はい!」

 

 

梨璃もグングニルを構える。

 

 

夢結「もっと集中なさい。そうすればCHARMは重く、強靭になる」

梨璃「……!」

 

 

梨璃はグングニルにマギを集中させ、夢結からの攻撃に備えた。

 

 

その様子を見た出雲は少し微笑むと、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、七日目にして5回目の模擬戦が行われた。

 

今回のギャラリーは楓と二水だけでなく、雨嘉と神琳、梅と夢結、ミリアムと涼の姿もあった。

 

梨璃と出雲の模擬戦に興味を持ち始め、やって来たのだ。

 

 

二水「今日でもう七日目…」

楓「あのスパルタ教師の模擬戦に付いていける人なんて、梨璃さん以外いませんわ」

 

 

そして中央に立つ出雲と梨璃。

 

 

出雲「私の勝負にここまで付いてくるとは、流石だな。一柳」

梨璃「い、いえ!?私なんてまだまだですよ」

出雲「フッ…まあいいさ。では始めようか」

 

 

 

出雲は黒鉄を構える。

 

そして梨璃もグングニルを構えた。

 

 

 

 

しかし梨璃の構え方がいつもと違っていた。

 

出雲はその型に覚えがあった。

 

 

 

出雲(あの構え…なるほどな、乗ってやろう)

 

 

 

出雲は梨璃の構えに警戒することもなく、正面から攻めた。

 

対し梨璃は出雲の重い一撃をあえて受け流した。

 

 

出雲「!?」

 

 

攻撃を受け流されてしまい、出雲はそのまま後ろに流される。

 

 

梨璃(マギを…集中…!)

 

 

その隙を逃さないと、梨璃が出雲の後ろに回り、マギを込めたグングニルの一撃を降り下ろした。

 

しかし出雲も簡単にはやらせない。

 

すぐに体勢を立て直し、梨璃の一撃を黒鉄で受け止める。

 

ところが、梨璃が降り下ろした一撃は重く、受け流しからのリカバリーをした出雲に、攻撃を踏ん張る力はなく、後ろに弾かれてしまい、仰け反ってしまった。

 

 

 

 

 

勝負ありである。

 

 

二水「やりました!」

楓「ようやくマギが入りましたわね!」

 

 

ギャラリーの方も驚きを隠せなかった。

 

 

ミリアム「出雲先生が体勢を崩したぞ!」

涼「確実にカウンターが決まったね」

雨嘉「梨璃、すごい…」

神琳「見事な一撃でしたわ」

夢結「………」

梅「夢結が教えたお陰だナ」

 

 

 

一方出雲は梨璃の急な成長ぶりと、攻撃を防がれたこたに驚く。

 

 

出雲「………」

梨璃「あの……先生…?」

 

 

梨璃が声をかけるものの、出雲は反応しない。

 

 

 

 

 

 

しかし出雲急に笑い出した。

 

 

梨璃「せ、先生!?」

出雲「まさか攻撃を受け流すとはな…見事な戦い方だったぞ。一柳」

梨璃「あ、ありがとうございます」

出雲「お前を見てると、アイツを思い出すな」

梨璃「アイツ?」

出雲「2年前、この百合ヶ丘に補欠合格で入った生徒がいてな、その子が私の言うアイツだ。ある日私はアイツから強くしてほしいと頼まれたことがあってな、それで私は要望通り、模擬戦を行ったんだ。当事のアイツは全然弱かった。しかし何度も倒れはその度に立ちあがり、また倒れては立ちあがり、諦める事ははなかった。今のお前のようにな。アイツが私から一本取ったときも1週間後だったからな」

梨璃「そうだったんですか…」

出雲「とにかく、マギの扱いもだいぶ物に出来たな。これなら背中を預けられ…」

 

 

と、話してる間に鐘の音が訓練室に響き渡った。

 

 

梨璃「!?」

出雲「ヒュージがやって来たか…」

 

 

出雲は黒鉄をしまい、訓練室にいるリリィ達に告げる。

 

 

出雲「ここにいる全員でヒュージ討伐に向かうぞ!」

 

 

出雲は今いる全員でヒュージ討伐に向かうことを告げる。

 

 

夢結「待ってください」

 

 

突然夢結が止めた。

 

 

出雲「何だ白井」

夢結「その前に、梨璃さんの身だしなみを整えておきたいのです…百合ヶ丘女学院のリリィたる者、戦いの場にこんな乱れた格好で立っては示しが付きませんので」

 

 

 

梨璃の身だしなみは少し乱れていた。

 

 

 

出雲「……20分後に現場に集合。しっかり整えておけ」

 

 

 

 

そう言い残し、出雲はその場を出ていき、現場えと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後……現場にたどり着いた出雲と後から来た梨璃、楓、二水、ミリアム、涼、雨嘉、神琳、梅、夢結は廃虚となった街の海の向こうに見えるヒュージを目撃した。

 

肉眼では小さな岩山がこっちに来るぐらいしか確認できない。

 

 

 

 

楓「上陸までは、まだ少し余裕がありそうですわね」

梨璃「先生、今回はここにいる全員ですか?」

出雲「当たり前だ。ヒュージの種類は山ほどある。どんな攻撃をしてくるかわからない。対処しやすくするには多い方がいい。それにお前達は経験済みのリリィだ。ここからは実戦経験を地道に積んでいく」

二水「私もですか!?」

出雲「お前には鷹の目を使って状況を報告する役目がある。いいな?」

二水「は、はい!!」

出雲「王、天の秤目でヒュージの姿を私に教えてくれ」

雨嘉「え?」

神琳「なるほど…天の秤目ならヒュージに気付かれる事もなく遠くから観察が出来ますわね…雨嘉さん、お願いしますわ」

雨嘉「うん、わかった」

 

 

 

雨嘉はレアスキル、天の秤目を使い、海の向こうのヒュージの姿を調べた。

 

 

 

出雲「どうだ?」

雨嘉「はい。大きさからしてラージ級だと思います。ただ…何かいびつな形をしていて…」

出雲「いびつな形だと?」

涼「まさかそのヒュージは…」

楓「さて、やりますわよ梨璃さん!」

梨璃「うん、頑張ろう」

 

 

 

出撃に張り切る梨璃だが、出雲に止められる。

 

 

 

出雲「いや、ここは私と白井、吉村で行く」

梨璃「えっ!?」

楓「どういうことですの!?」

出雲「王に天の秤目で調べたところ、レストアの可能性が高い」

「ふぅーん。レストアね」

 

 

 

梨璃の後ろに百由が現れた。

 

 

 

梨璃「百由様?レストアとは一体…」

百由「損傷を受けながらも生き残ったヒュージがネストに戻って修復された個体。それを私達はレストアード。レストアと呼んでるの。何度かの戦闘を生き延びた手合いだから、手強いわよ」

涼「特にレストアにやられたリリィ達も少なくないからね」

ミリアム「最近は出現率が上がっていると聞くのう」

出雲「相手がレストアである以上、恐らく一筋縄ではいかんだろう。それに取り巻きが後から奇襲してくる事も想定するなら…1年生組は警戒しつつ後方を維持。後の状況判断はヌーベルに一任する」

楓「わかりましたわ」

出雲「行くぞ、吉村、白井」

 

 

 

出雲は梅、夢結の二人を連れてヒュージの討伐に向かった。

 

一方ヒュージも、出雲達の接近に気付き、大きく飛び上がった。

 

その姿はスペースシャトルのような翼が付いた巨大な球体であった。

 

ヒュージは出雲達を潰そうとするが、簡単にかわされる。

 

そこからヒュージは前の片足で振り払うが、これを出雲達は散開してかわす。

 

更にヒュージは背中から無数の球体ミサイルを発射し、出雲達を狙うが、出雲は黒鉄で斬り壊し、夢結と梅はかわしていった。

 

 

 

 

梨璃「・・・凄い。夢結様、そしてお二人も…」

ミリアム「じゃが、夢結様ちょっと危なっかしいのう」

百由「憖テクニックが抜群だから、突っ込み過ぎるのよねぇ」

 

 

 

 

夢結はヒュージの体を登り、上からブリューナグで殻に攻撃した。

 

すると殻に付けた傷後から小さな光が見えた。

 

 

 

 

夢結「あれは………っ!?」

 

 

よそ見したのか、ミサイルが夢結に向かってきた。

 

しかし出雲が入り、ミサイルを黒鉄で斬り、破壊した。

 

遅れて梅も合流する。

 

 

出雲「何よそ見してる!私が前に…!?」

 

 

出雲の指示を無視して夢結は再びヒュージに向かう。

 

 

梅「夢結!」

出雲「あの馬鹿者が…!」

夢結「はああああ!!」

 

 

 

夢結が真上から殻に向けてブリューナグでの渾身の降り下ろしを仕掛けるが、ミサイルがブリューナグに付着した。

 

しかし夢結は構わずブリューナグでミサイルごと殻にぶつけ、殻を破壊した。

 

破壊したヒュージの殻の中は、無数のCHARMが刺さっていた。

 

アステリオン、ティルフィング、グングニル、ブリューナグ…折れてはいないものの、コアは砕けており、ただの刃物と化していた。

 

出雲、梅もその光景を目にした。

 

 

出雲「このボロボロのCHARMはまさか…!」

梅「此奴、どれだけのリリィを…!?」

出雲「……CHARMはリリィの体の一部のようなもの…戦場でCHARMを手放す事は…!?」

 

 

出雲の脳裏に何かが浮かび、夢結の方を見た。

 

この光景を見た夢結は息があれ始めていた。

 

不味いと感じた出雲は夢結に声をかける。

 

 

 

出雲「白井、早く下がれ!」

 

 

呼び掛けるも、夢結は聞いていない。

 

それどころか、夢結の髪が少しずつ白くなっていくのが見えた。

 

そんな夢結の元へ梅が駆けつける。

 

 

梅「もういい!下がれ夢結!」

出雲「駄目だ吉村!」

 

 

出雲が梅を呼び止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方夢結の髪の色は完全に白くなり、瞳の色は赤く光っていた。

 

 

 

 

夢結「うわあああああああ!!!!」

 

 

夢結が大きな悲鳴を上げ、自身の中にあるマギを暴走させた。

 

梅はその暴走したマギが起こす衝撃波で飛ばされるも、体勢を立て直した。

 

 

出雲「大丈夫か?」

梅「ああ…先生…あれは…!」

出雲「間違いない……」

 

 

 

出雲は夢結の変わり様を見て解った。

 

 

 

 

 

 

 

 

出雲「レアスキル…ルナティックトランサーだ。完全暴走状態のな…!」

 

 

出雲はなぜ夢結がルナティックトランサーを発動させたのか解った。

 

 

 

 

 

 

 

夢結は2年前、甲州撤退戦でヒュージと戦っていた。

 

しかしその戦いで夢結は自分のシュッツエンゲルを失ってしまった。

 

ルナティックトランサーを持つ夢結には疑いをかけられたこともあったが、証拠が不十分だった為疑いは晴れた。

 

しかし夢結自身はルナティックトランサーの影響なのか、記憶が曖昧な状態だった。

 

あの戦い以来、夢結はルナティックトランサーを封印し、他から距離を取るようになってしまった。

 

 

今回夢結はヒュージの背中に刺さった主を失った無数のCHARMを見たことで過去の悲劇を思い出してしまい、それがトリガーとなり、ルナティックトランサーを発動してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結「ウワアーー!!!」

 

 

 

突然暴走した夢結がブリューナグを持ったまま出雲達に襲いかかった。

 

すぐに出雲が黒鉄で夢結のブリューナグを受け止める。

 

 

梅「夢結!」

出雲「やはりこうなるか…いい加減使いこなせばいいものを…!」

 

 

ルナティックトランサーによるトランス状態は自身の能力を脅威的に上げるが、精神が不安定になり、敵味方関係なく襲いかかる危険性を持っている。

 

大きなメリットがあると同時に、大きなデメリットも兼ね備えてるのだ。

 

その為ガーデンによってはルナティックトランサー持ちのリリィを差別することもある。

 

 

出雲「マギが空になって、ルナティックトランサーが解除されればいいが…」

 

 

そう言ってる内に再び無数のミサイルが夢結と伊豆に向かって飛んできた。

 

 

出雲は夢結から離れ、ミサイルをかわす。

 

対し夢結はブリューナグの一降りで残りのミサイルを全て破壊した。

 

しかし夢結の呼吸は荒く、非常に危険な状態であった。

 

 

 

出雲「流石にそうは行かないな」

 

 

夢結を気絶させるしかないと、出雲は黒鉄を構え直し、覚悟を決めるが…

 

 

「夢結様ーー!!!」

 

 

突然夢結の異変に気付いた梨璃がやって来た。

 

 

 

出雲「一柳!?」

夢結「ウワアーー!!!」

 

 

 

夢結が梨璃に攻撃してきたが、梨璃はグングニルで受け止める。

 

すると、グングニルとブリューナグの接触部分にマギが収束し始める。

 

 

出雲「これは…!?」

梨璃「す、すみません!」

夢結「見ないで…」

梨璃「え!?」

 

 

 

 

マギが弾かれ、梨璃は飛ばされるも、後からやって来た楓に助けられる。

 

梅、百由、他のリリィ達も合流する。

 

 

 

 

楓「梨璃さん!何をなさいますの!?」

梅「バカかお前は!」

出雲「危ない奴だ、なにも考えずに突っ込んできた訳じゃないが…一体なんだ?」

梨璃「……私、今、夢結様を感じました」

涼「感じた?」

楓「何を仰いますの!?」

百由「マギだわ。CHARMを通じて、梨璃さんのマギと夢結のマギが触れ合って……」

 

 

百由の説明に出雲は納得した。

 

 

 

確かに梨璃と夢結の間には、通常より密度の濃いマギが出来ていた。

 

 

楓「そんなCHARMの使い方、聞いた事ありませんわ」

ミリアム「じゃがありえるのう!」

梨璃「私、前に夢結様に助けて貰った事があるんです!今度は、私が夢結様を助けなくちゃ!」

出雲「………やれるのか?一柳」

 

 

出雲が梨璃に夢結を止められるか確認する。

 

対して決意を持った梨璃の答えは…

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「……………はい!!」

出雲「……一緒に来い。白井の所まで連れてってやる」

梨璃「はい。よろしくお願いします!」

出雲「残りの者はヒュージを遠距離から迎撃しろ。その間に白井を助け出す」

 

 

出雲は梨璃を連れて夢結の元へ再び飛翔する。

 

 

ミリアム「正気かお主ら!!」

楓「もう…後でお背中流させて頂きますわよ!」

梅「しょうがないな!」

涼「僕も行こう!」

 

 

楓、梅、涼も後を追う。

 

 

神琳「参りますか?雨嘉さん」

雨嘉「うん!梨璃と先生を援護しよう」

 

 

雨嘉、神琳も一緒に向かう。

 

 

百由「私もCHARM持って来れば良かったかな?」

ミリアム「ううぅぅ……わしも行けば良いんじゃろうが!!!」

 

 

百由を残し、ミリアムも皆の元へ向かった。

 

楓、涼がミサイルを切り払い、梅はタンキエムを変形させ、シューティングモードでミサイルを迎撃する。

 

雨嘉、神琳は楓達がこぼしたミサイルを狙撃して撃破していく。

 

そして出雲と梨璃は再び夢結の元へ来た。

 

 

出雲「白井をヒュージから離す。その後は任せるぞ!」

梨璃「はい!」

夢結「!?」

 

 

出雲が重い一撃を夢結に浴びせ、遠くへ飛ばした。

 

同時に梨璃が夢結を追う。

 

 

梨璃「夢結様ー!!!私に、身嗜みは何時もきちんとしなさいって言ってたじゃないですかー!!」

夢結「!?」

梨璃「夢結様!!!私を見て下さーーーーい!!!!」

夢結「ウワアアアーー!!!」

 

 

夢結は仰け反ったにもかかわらず、すぐに体勢を立て直し、ブリューナグで攻撃するが、梨璃はグングニルで受け止めた。

 

 

すると再び二つのCHARMからマギが集り、それは圧縮したマギの球体へと変わっていった。

 

 

 

 

出雲「マギスフィアか…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結「がっかりしたでしょ…梨璃…」

梨璃「!?」

夢結「これが私よ…憎しみに飲まれた…醜く浅ましい…ただの化け物!!」

梨璃「それでも!夢結様は夢結様です!私の憧れ、私の大切な人です!!!」

夢結「!!」

梨璃「夢結様ーーー!!」

 

 

 

梨璃はそのまま夢結に抱き付く。

 

すると自然に夢結の髪の色が元の黒へと戻っていった。

 

 

出雲「ルナティックトランサーが解除された…!」

 

 

ルナティックトランサーが解除されたことで夢結はかつての落ち着きを取り戻した。

 

一方出雲はレストアの相手をし、ミサイルを破壊していた。

 

本来なら他のリリィがミサイルを迎撃するはずだが、このタイミングだ取り巻きのスモール級が数十体現れたのだ。

 

その為皆は取り巻きの撃破に集中しなきゃ行けないためレストアと戦ってるのは出雲だけである。

 

しかし出雲の顔に焦りはなく、余裕があった。

 

 

 

出雲「さて、そろそろか?」

 

 

 

出雲はレストアを相手にしながら誰かを待っていた。

 

そしてその誰かが来た。

 

 

梨璃「先生!」

夢結「ここは私達が!」

 

 

梨璃と夢結がマギの力で空を自在に飛びながら二人でマギスフィアを互いのCHARMで運んでレストアの頭上にやって来た。

 

よく見ると、レストアの背中には大きな傷口があった。

 

出雲が黒鉄で切った後である。

 

 

夢結「梨璃、行くわよ。一緒に…!」

梨璃「はい!」

 

 

二人はそのまま急降下し、マギスフィアを下に向けた。

 

 

 

 

梨璃 夢結「はああああーーー!!!」

 

 

二人のマギスフィアがレストアの傷口に直撃し、レストアは爆散した。

 

爆発と同時に無数のCHARMの残骸が飛び散った。

 

レストアヒュージは、梨璃、夢結の手によって討伐された。

 

取り巻きのスモール級も全て片付き、他の皆も梨璃達の元へ向かっていた。

 

 

梅「やったな…夢結…!」

出雲「やっと一歩踏み出せたな…」

 

 

二人は心が少し開いた夢結に安心感を感じた。

 

 

 

 

 

 

しかし出雲はけじめを付けるために気を引き閉めた。

 

一方レストアを討伐した梨璃と夢結は出雲達の元へ来た。

 

 

夢結「先生…私は……っ!?」

 

 

夢結が出雲に謝罪の言葉を言おうとする前に、出雲は夢結の頬に平手打ちをした。

 

 

梨璃「!?」

梅「先生!?」

 

 

対し夢結は叩かれた頬を押さえ、後悔の表情を見せる。

 

そんな夢結に出雲はこう答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出雲「少しは仲間に頼れ。あんな無茶はもうするな。いいな?」

 

 

そういい残し、出雲はその場を去っていった。

 

そんな出雲の言葉を聞き、夢結は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結「…………はい!!」

 

 

感謝の返事と共に礼をした。

 

他の皆が梨璃達と合流し、皆は強敵に勝った喜びを上げていた。

 

その声を聞いた出雲は、僅かながら笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュージ討伐から数分後…梨璃と夢結は、百合ヶ丘から少し離れた丘の上の墓地にやって来た。

 

二人が訪れたのは、とある人物の墓だった。

 

その墓には、川添美鈴(かわぞえ みすず)と名前が彫られていた。

 

 

 

 

 

夢結「ソメイヨシノの花を咲かせるには、冬の寒さが必要なの。昔は春の訪れと共に咲いて、季節の変わり目を告げたと言うけれど、冬と春の境目が曖昧になった今、何時咲いたら良いか、戸惑っているようね」

梨璃「…?」

夢結「ん?」

 

 

 

 

夢結が手に持ってるペンダントを梨璃が見ていたのを気付き、夢結はペンダントの蓋をスライドさせた。

 

そこには、飴色のショートカットの少女が写った写真が露になった。

 

 

梨璃「この方が、夢結様のシュッツエンゲル…?」

夢結「そう。私のお姉様…」

梨璃「川添…美鈴様…」

 

 

夢結は、美鈴の墓に語りかけた。

 

 

 

 

 

 

夢結「お姉様…見ていてくれてますか?お姉様が亡くなってから…私は自分を責めてばかりいました。お姉様の最後を思い出そうとして、自分の戦い方を…忘れてしまっていました」

梨璃「夢結様…?」

夢結「でも…今やっと、私に笑いかけてくれたお姉様の姿を、思い出すことができました。そうしたら…このままではいけないと、私も…お姉様の笑顔の先にいた私に戻らないといけないと、そう思うことができました。そうさせてくれたのは…」

 

 

そう言って、夢結は梨璃に視線を向けた。

 

 

梨璃「夢結…様…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結「私…白井夢結は、一柳梨璃をシルトとし、シュッツエンゲルの契りを結ぶことを…ここに誓います」

 

 

 

そう言って夢結は梨璃を抱き締めた。

 

 

梨璃「え!?」

夢結「梨璃…これからも、よろしく頼むわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結からシュッツエンゲルの契りを誘われて、梨璃は笑顔になり、涙目になった。

 

 

梨璃「はい!お姉様!!」

 

 

夢結を姉と呼び、梨璃もその契りを結んだ。

 

この時より、一柳梨璃と白井夢結のシュッツエンゲルが誕生したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ある少女が空気を読まずに二人の姿をカメラで激写していたのだ。

 

 

二水「いいです!とってもいい写真が取れました!これで明日のリリィ新聞の一面は決まりです!」

梨璃「ふ、二水ちゃん!?」

 

 

二水を追うように楓、梅もやって来た。

 

 

楓「梨璃さん本当に良かったですわね~!私嬉しくて涙が…!」

梨璃「楓さん!?ってまた手がお尻に!?」

 

 

相変わらずスキンシップという名のセクハラをする楓。

 

 

梅「良かったな。夢結!」

夢結「…ええ」

 

 

その様子を遠くから見た出雲は、その場を立ち去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

出雲(川添…見ているか?お前のシルトはシュッツエンゲルになったぞ。お前が白井を導いてくれたように、今度は白井が新たなシルトを導いていくだろう。どうか…見守ってくれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜………

 

出雲は学院の屋上で黒鉄を構え、何度も素振りをしていた。

 

自分の型を磨くためにやってるらしい。

 

 

そこへ、夢結がやって来た。

 

 

夢結「また素振りですか?先生」

出雲「白井か…寝付けないのか?」

夢結「そんなところです」

 

 

出雲は素振りを止め、近くのテーブルに置いてある紅茶の入ったティーカップに手を取る。

 

 

夢結「梨璃に模擬戦をしたのは、私の為ですか?」

出雲「一柳の為だ。彼女を見てると、アイツのことを思い出してな…」

 

 

出雲の言うアイツ…夢結は解った。

 

 

 

 

 

 

夢結「木葉…奈々…」

出雲「ブルーガードに入らせてからもう2年経つな」

夢結「甲州撤退戦の後…あの子には申し訳ないことを言ってしまったわ」

出雲「大したことで無かろう。アイツの事だ。その程度で気にする人間じゃない」

夢結「それはそうですが…」

出雲「アイツが帰ってきても、普通通りでいい。アイツの事を思うならな」

 

 

そう言って紅茶を飲み干すと、再び中央に立ち、黒鉄を構える。

 

 

 

 

 

出雲「久しぶりに一戦交えるか?」

夢結「?」

出雲「CHARM…持参してるんだろ?」

 

 

出雲の言う通り、夢結の背中にはブリューナグが背負っていた。

 

 

夢結「やはりお見通しですね…」

 

 

夢結はブリューナグを抜き、構えた。

 

 

出雲「私相手にどこまてやれるか試してやろう」

夢結「私を甘く見ないでください」

 

 

そして二人は模擬戦を始めたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

出雲の回想はここで終わった。

 

 

 

 

奈々「それで、勝負はどうでした?」

夢結「私の惨敗だったわ。一本とれたのは一度だけだったわ」

出雲「これでも鍛えてるからな。今度は木葉、お前がやるか?」

奈々「遠慮しておきますよ。まずは夢結さんに勝たないと」

夢結「私を踏み台にするつもり?」

奈々「何言ってるんですか、私にとって夢結さんはライバルですよ?元々私の目標は、夢結さんに勝つことですから」

夢結「……そうだったわね」

出雲「2年前、白井に負けてからそう言ってたな」

 

 

夢結は席を立ち、奈々に顔を向ける。

 

 

夢結「奈々、久しぶりに訓練に付き合ってもらえるかしら?」

奈々「いいですよ。私もそうしようと思いましたし」

 

 

奈々も席を立つ。

 

 

出雲「私はしばらくゆっくりしている。後でお前達の訓練を見に来る」

夢結「はい。先に行ってるわよ」

 

 

と言って夢結は訓練室に向かうため、その場を出る。

 

 

奈々「2年間の成果を見せてあげますよ!」

 

 

奈々も夢結の後を追った。

 

一人残った出雲は、空を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出雲「………いい後継者が出来たな…川添よ」

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

二水「次回はあのヒュージとの再戦です!」

奈々「あの時の借りを返す!」

 

 

 

next 木葉奈々は手の内を明かす

 

 

 

 

 

 




木葉奈々、2話ぶりの登場ですwww

次の話は舞台版の安藤鶴紗の話とアニメ6話の内容になります。

お楽しみに!


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「6」木葉奈々は手の内を明かす

第6話です。

納得出来る話にするために投稿が遅くなりました。
亀更新な感じになったと思います。
今回の話も文字数が多くなりましたが、次は短いかも知れません。
それではご覧ください。


木葉奈々は、白井夢結と一緒に訓練を行っていた。

 

その訓練内容は………

 

 

 

 

奈々「…………………」

 

 

射撃訓練だった。

 

夢結は訓練用のグングニル・カービンを片手で持ち、的の中央を適格に命中させてるのに対し、

 

奈々は同じグングニル・カービンで両手で持ってるのに、的に一才当たらなかった。

 

 

夢結「これが貴女の2年間の成果なの?」

奈々「私は射撃が苦手だって知ってるでしょ!」

 

 

自身が言った通り、奈々は射撃が苦手である。

 

2年前、グングニルを使ったときから彼女は苦手だったのだ。

 

CHARMを変えても、射撃の扱いが変わることはなかった。

 

そこで奈々は短所を補うのではなく、長所を伸ばす方針に切り替えた。

 

 

結果、完全近距離特化の戦闘スタイルを確立させた。

 

また、使っていたCHARMは近距離特化のダインスレイフだった。

 

その為か、戦闘スタイルが夢結と少し被ってる事もあってか、戦闘では同じ前衛で戦っていたのだ。

 

今回、ブルーガードにいた時の訓練は、アタッカーとしてのスキルを優先した為、射撃の訓練は本の少し。

 

なので奈々の射撃スキルはわずかしか鍛えられていない。

 

 

奈々「私は純粋な近接型ですから、射撃は必要ありません」

梅「あははは…いいんじゃないか?近接特化。梅は嫌いじゃないゾ」

 

 

同じく訓練していた梅が言う。

 

 

夢結「何いってるのよ。いくら長所を伸ばしたとはいえ、射撃は大事よ。取り巻きの駆除、牽制、活躍できる場面は多いもの。梨璃も最近は射撃が上手くなってるんだから、貴女も射撃の腕を磨かないと…」

奈々「一応牽制の術はありますよ」

夢結「えっ?」

 

 

奈々は訓練用に用意され第一世代CHARM、ヨートゥンシュベルトを手に取る。

 

そしてそのまま的に向けて、ヨートゥンシュベルトを素早く振ると、マギの刃が放たれ、的を半分に割った。

 

 

夢結「マギの剣圧…!」

梅「これは考えたナ」

 

 

割れた的は、しっかり中央から割れていたのがわかる。

 

先程のマギの刃は、確実に中央を捉えていたのだ。

 

 

奈々「ブルーガードで学んだ術です。これなら十分牽制に使えますよ」

夢結「………貴女らしいわね。短所を補うのではなく長所を伸ばす」

奈々「長所の向上は短所を補える。ブルーガードの教導官から言われた教訓ですからね」

梅「純粋な近接特化として固めていってるナ」

奈々「遠距離で戦うのは私の性に合いませんから」

夢結「……そういえば奈々」

奈々「?」

夢結「レアスキル、覚醒したの?」

 

 

夢結が奈々に突然レアスキルの事を質問した。

 

 

奈々「唐突にレアスキルの質問ですか?」

夢結「少し気になったのよ。貴女が何故CHARMを2つ持ってるのか…」

 

 

夢結は奈々のベルトに付けた2本のCHARMに気付き、質問をした。

 

 

奈々「この2本ですか?」

 

 

奈々はグングニル・カービンをテーブルに置き、腰に付けた2本のCHARM、カナベラルとブルメリアを外し、二人の前に見せた。

 

 

梅「大きめの剣のCHARMと短剣のCHARMか」

奈々「何故私が2本持ってるか…夢結さんはどうお考えで?」

夢結「そうね…基本、リリィはCHARMを一本しか扱えない。CHARMを2つ以上所持する理由としては2つあり、前者はCHARMが壊れたときの予備用として。後者はCHARMを2つ以上扱えるレアスキル、円環の御手を所持してる事。見たところ貴女が持ってるその2本はどちらも上等な物で、代えになる物はそうそうない。その2本のCHARMに付いてる傷から使い込まれてる事がわかるから前者じゃない…だとすると…」

奈々「私が後者、つまり円環の御手を持ってると…」

夢結「そう考えたけど…円環の御手に覚醒するスキラー数値は85以上が条件。入学当時の貴女のスキラー数値は50。円環の御手の修得条件を満たしてない。だから後者も違う。前者でも後者でもないとすれば、考えられるのは…私たちも知らない新たなレアスキル…円環の御手に近い能力を持ったレアスキルを貴女が持っていることかしらね」

 

 

夢結が推測で奈々がCHARMを2本持ってる理由に付いて述べてみた。

 

 

奈々「………」

夢結「……まあこれ以上詳しくは聞かないわ。貴女のレアスキルは実戦で見せてもらうわ」

奈々「わかりました。その時になったら…」

 

 

奈々は2本のCHARMを腰に納める。

 

 

奈々「所で梨璃ちゃん、どんなレギオンを作るんでしょうね」

夢結「さあ…正直。梨璃にメンバーを集められるとは思わないけど、時には失敗も良い経験になるでしょう」

奈々「どうですかね…前の話を聞いたところ、もしかしたらやりきるかもしれませんよ?」

梅「そう聞くと、本当にやるかもナ」

夢結「そうかしら…」

奈々「なんで疑問系?梨璃ちゃんのシュッツエンゲルなのに?」

夢結「まだなってから1日しかたってないんだけど…」

梅「奈々はレギオンに入るのか?」

奈々「しばらくはフリーでやっていこうと思ってます。元々私の戦闘スタイルは単独に強いので…」

梅「昔の夢結みたいだな」

夢結「昔の私…奈々みたいだった?」

 

 

夢結との練習を終えた奈々は気分転換に庭へやって来た。

 

 

奈々「?」

 

 

奈々は目の前に金髪の少女を見つけた。

 

安藤鶴紗である。

 

 

鶴紗「!?」

 

 

鶴紗は茂みの音に気付き、振り替える。

 

なんと茂みの中から出て来たのは黒猫だった。

 

黒猫は元気よく鳴いた。

 

 

鶴紗「はぁ…何だ猫か」

 

 

本来なら振り替えって去っていく筈だが、鶴紗は別人になったかのようにおかしなテンションで黒猫に近付いた。

 

 

鶴紗「ニャニャ〜!こんな所で何してるニャ〜?」

奈々(!!!??)

 

 

流石の黒猫もかなりビビった。

 

 

鶴紗「迷子になったかニャ?お腹空いてないかニャ?猫缶あるから一緒にどうかニャ〜?」

 

 

徐々に表情がやばくなっていく鶴紗。

 

しかし、鶴紗は奈々の気配に気付き、奈々の方へ顔を向けた。

 

 

奈々「やば!?」

 

 

それに対し、奈々は危機感を感じ、この場を去ろうとしたが…

 

鶴紗に肩を捕まれた。

 

 

鶴紗「今の見たな……!!」

 

奈々「うぎゃあああああーーー!!!??」

 

 

奈々の断末魔が学院中に響いた。

 

 

 

 

そんなこんなで、3日後…

 

午後の食堂で夢結と食事を取ってる奈々の前に、梨璃が6人のリリィを揃えてきた。

 

 

奈々「ほらね?」

夢結「ビックリしたわ。ほんとの意味で」

 

 

梨璃の後ろには、二水、楓、ミリアム、雨嘉、神琳、梅がいた。

 

 

梨璃「お姉様のお陰でこんなにいい仲間が出来ました!」

夢結「私は何もしてないけど…」

奈々「短期間で残り一人か…すごいな梨璃ちゃん」

夢結「ええ。ここまで集まるなんて、思っていなかったわ。梅は梨璃のレギオンに入ったのね」

梅「また夢結と一緒に戦えるからナ。そうだろ?」

夢結「そうね。よろしく頼むわ」

奈々「他の皆も梨璃ちゃんに協力したんだね」

楓「当然ですわ。梨璃さんいるところに私あり!ですわ」

二水「私も梨璃さんのレギオンに入った以上は足を引っ張らないよう頑張ります!」

ミリアム「夢結様の戦いに興味あるのもそうじゃが、またこの面子で一緒に戦えるのが嬉しくての」

雨嘉「梨璃に入ってほしいと言われて、私も梨璃の力になりたいと思ったから」

神琳「私も雨嘉さんとどう意見ですわ」

 

 

全員、梨璃に協力する気満々のようだ。

 

 

奈々「これで8人か…後一人だね」

梨璃「それなんだけど…奈々ちゃん、レギオンに入ってくれないかな?」

 

 

梨璃の誘いに奈々は…

 

 

奈々「ごめんなさい」

 

 

と、お辞儀をして断った。

 

 

梨璃「ええ!?」

神琳「まるで彼女に告白を断られた彼氏の光景ですわね」

楓「どうしてですの?梨璃さんの誘いを断るなんて…」

奈々「ごめん。私、しばらくはフリーで行こうと思ってるんだ。レギオンには入らないけど、協力はするから」

二水「奈々さんは他のレギオンからも誘われてるんですか?」

奈々「まあね。全部断ったし…でも誘うならもっといいリリィがいたはずじゃない?ほら、涼ちゃんとか」

二水「涼さんは違うレギオンを作りたいからと断られました」

奈々「同じ椿組の鶴紗ちゃんは?」

梨璃「鶴紗さん?実は…誘えなかったの」

二水「話しかけようとしたら、睨まれてしまって…」

奈々「鶴紗ちゃんらしいな…一度も誘ってないならチャンスがあるんじゃないかな?」

梨璃「うーん、誘いたいんだけど、今日は欠席だったから」

奈々「そうだった」

梨璃「…鶴紗さん、いつも一人でいるみたいだけど…」

梅「ああいう子は、なにかしら重いものを背負ってるからな。夢結みたいに」

夢結「何故私の方を向くのかしら?」

梨璃「だったら尚更、鶴紗さんをレギオンに入れないと…!」

夢結「…………梨璃」

 

 

夢結が話に入ってきた。

 

 

梨璃「お姉様?」

夢結「たとえ鶴紗さんの秘密を知っても?」

梨璃「………はい!」

 

 

一方、奈々は何故、安藤鶴紗が欠席したことについて考えていた。

 

 

奈々(そういえば、最後に会った時は頭を怪我してた…鶴紗ちゃんは木の上から落ちて怪我をしたって言ってたけど……まさか…!)

 

 

奈々は鶴紗がいない理由に、1つの答えを見出だした。

 

と、その時…!

 

 

 

 

鐘の音が響いた。

 

ヒュージ襲来の合図である。

 

 

梨璃「これは…!?」

夢結「ヒュージが来たわね」

二水「今日の当番はたしかアールヴヘイムの方達でしたね」

ミリアム「ワシ達はどうするんじゃ?」

夢結「アールヴヘイムは百合ヶ丘トップのレギオンよ。彼らの戦いを見るのもいい勉強になるわ。今後の為にも、ノインヴェルト戦術はもう一度見ておいた方がいいわ」

楓「それが懸命ですわね」

雨嘉「ノインヴェルト戦術…」

神琳「マギスフィアをパスで回しながらマギを溜め込み、相手にぶつける必殺武器ですわね」

二水「その代償として、マギとCHARMを大きく消耗してしまいます」

夢結「下手すれば、CHARMを破損してしまう可能性もある」

梨璃「出来るかな…私達に…奈々ちゃんは…あれ?」

 

 

いつの間にか奈々の姿がなかった。

 

 

ミリアム「いつの間にかいなくなっておる」

夢結「こんなときに何処へいってるのかしら……ん?」

 

 

夢結がテーブルに目を向けると、夢結が楽しみに残していたケーキが無くなっていた。

 

 

夢結(………奈々ね)

「そこにいたか…」

 

 

出雲が梨璃達の元へやって来た。

 

 

梨璃「先生どうしたんですか?」

出雲「さきほどのヒュージ襲来の合図とは別のヒュージが街の近くに現れた」

梨璃「ええっ!!?」

 

 

なんと別のヒュージが現れたことを出雲が皆に告げた。

 

 

出雲「襲来するヒュージはギガント級。今街で暴れているヒュージはラージ級だ。現在アールヴヘイムは街の外に待機しているが、ラージ級まで相手にしたらマギを消耗しかねん。お前達は発生した街に向かい、ラージ級を撃破しろ」

梨璃「先生、奈々ちゃんいなくなっちゃって…」

出雲「心配はいらん。一足先に現場に向かっている。それにもうひとつ重要な情報だ」

梨璃「重要な情報?」

 

 

 

 

 

出雲「安藤鶴紗が、政府からの依頼で現在ラージ級を相手にしている」

 

 

 

 

変わって、廃虚となった街の外れでは…ラージ級が暴れており、そこで戦ってるのは鶴紗一人だった。

 

相手にしているヒュージは前に梨璃と夢結が止めを刺した哺乳類のラージ級に少し似ていた。

 

鶴紗は専用の大剣CHARM、ティルフィングで大きな一撃を何度も与えるが、ラージ級はまだ倒れない。

 

鶴紗に焦りの色が見え、大きな隙を作ってしまい、ラージ級の口から炎が吹き出され、鶴紗は飲み込まれるように炎を受けてしまう。

 

 

鶴紗「くっ……この程度…!!」

 

 

鶴紗はティルフィングを盾にして炎を防ぐものの、制服の袖が焼かれて、腕が露出していた。

 

しかも腕には火傷の跡が残っていた。

 

ところが、鶴紗の腕の火傷が徐々に消えていき、もと通りに治っていた。

 

 

彼女は普通の人間ではない。

 

薬を投与されて人工的に強化されたリリィ…ブーステットリリィである。

 

彼女は過去に「GEHENA(ゲヘナ)」と呼ばれる組織に捕まり、否人道的な人体実験をされた経験があった。

 

彼女にとってそれは地獄のようなものだった。

 

実験されては苦しみ、次第に自分の体じゃなくなっていく恐怖感を何度も味わってきた。

 

しかし彼女は百合ヶ丘に保護され、ようやくGEHENAからの呪縛から逃れた。

 

 

 

はずだった……

 

 

 

なんと、GEHENAは政府を通して彼女に単独でのヒュージ退治をやらせようとしたのだ。

 

当然それは、ブーステットリリィの戦闘データを集める為のもので、彼女は再び利用されていた。

 

 

 

 

 

結局、彼女はGEHENAからの呪縛からは逃げられてはいなかったのだ。

 

それでも、彼女…安藤鶴紗は戦うしかなかったのだ。

 

リリィとして……

 

 

 

再びラージ級に挑む鶴紗…

 

しかし油断したのか、ラージ級の前足が鶴紗を捉え、近くの地面に押し潰された。

 

幸い鶴紗の倒れた地面は柔らかった為、危機を脱したが…ラージ級は再び炎を吐こうとした。

 

動きたいが、鶴紗の体はラージ級の前足で固定されて動けない。

 

しかも、鶴紗の表情からは僅かな絶望感が出ていた。

 

鶴紗は右手に持ったティルフィングを手放し、ラージ級の方へ伸ばした。

 

 

鶴紗「………お前なら………私を…殺せる……?」

 

 

鶴紗のその言葉は、生きることを諦めた発言だった。

 

再び炎を吐くラージ級…

 

しかし、突然飛んできたマギの刃がラージ級の頭に当たり、一瞬だけ仰け反った。

 

今の一撃でラージ級は倒れ、炎は吐かれなかった。

 

更に鶴紗を押さえてた前足が離れて、自由になれた。

 

 

鶴紗「!?」

「やっと間に合った…!」

 

 

鶴紗はその体を起き上がらせると、目の前には黒いコートを羽織った少女…奈々の姿があった。

 

 

奈々「本当に無茶しちゃって…まあ私も人の事言えないけどね」

鶴紗「どうして…ここに…」

奈々「鶴紗ちゃんの事だからまたGEHENAの奴が政府を通してヒュージ討伐を頼んできたんでしょ?本当に懲りない奴だよ」

鶴紗「そうじゃない!何故私を…助けたの?」

奈々「私が助けたかったから。ただそれだけ」

 

 

起き上がったラージ級に再びマギの刃を飛ばし、倒転させる奈々。

 

 

鶴紗「私を…助けたかった…?」

奈々「あと、聞こえたけど…私を殺せるなんて言葉…口にしないで!」

鶴紗「!?」

奈々「自分の体が皆と違うからだったら理由にならないよ。君は百合ヶ丘のリリィ、安藤鶴紗であってそれ以外の何者でもないよ。いつまでも一人で抱え込むのはやめて、仲間に頼ったらどうなの?」

 

 

鶴紗がブーステットリリィである事を知っているから言える説得力のある発言を吐く奈々。

 

 

鶴紗「でも…私に仲間なんて…」

奈々「いるよ。周りにほら」

 

 

いつの間にか鶴紗の近くには、梨璃が駆けつけていた。

 

 

梨璃「鶴紗さん、大丈夫?」

鶴紗「貴女は…!」

 

 

後から来た夢結と梅は奈々と同じ前衛に付いた。

 

 

夢結「奈々、また勝手に…」

奈々「これが私の十八番ですんで」

梅「ハハハ…梅はそういうの嫌いじゃないゾ!」

夢結「梅、笑い事じゃ…!?」

 

 

再び起き上がったラージ級が奈々達に攻撃を仕掛けるが、先に奈々が動き、腹にCHARMによる突進攻撃を仕掛けて仰け反らせた。

 

そこに夢結と梅がCHARMで同時に攻撃して、ラージ級の動きを妨害する。

 

 

楓「流石夢結様、負けられませんわ!」

ミリアム「ワシもじゃ!」

神琳「雨嘉さん、援護をよろしく!」

雨嘉「うん、任せて!」

 

 

更に後から来た楓、ミリアム、神琳、雨嘉がそれぞれのCHARMをシューティングモードに変形させ、遠くからラージ級の前足に連続射撃を行い、再び倒転させた。

 

 

二水「周辺にラージ級以外のヒュージは居ません。このまま外に押しきってください!」

 

 

同じくやって来た二水がレアスキル、鷹の目を使って周囲の状況を把握しながら皆に戦況と対応策を伝えている。

 

 

梨璃「もう、鶴紗さんを一人で戦わせたりしません!」

鶴紗「どうしてこんなことを…!」

梨璃「同じ訓練に参加した仲間ですから!」

鶴紗「仲間…!」

 

 

仲間と呼ばれた鶴紗に僅かな安心感が生まれた。

 

そこに夢結が現れた。

 

 

夢結「メールの内容で、鶴紗さんの政府からの依頼は不正と見なされ、取り消されたわ。先生がGEHENAの者が政府に紛れ込んでることを報告したらしいわ。今後政府もGEHENAに対して警戒を強めるよう約束したわ。GEHENAも迂闊に手を出せなくなるでしょうね」

鶴紗「!?」

 

 

出雲の働きによってGEHENAの企みを見破ったことでGEHENAは鶴紗に手を出せなくなった。

 

これは即ち、鶴紗が本当の自由を手に入れた証である。

 

そんな鶴紗の表情には希望が生まれていた。

 

 

梨璃「鶴紗さん、一緒に戦いましょう!」

 

 

梨璃が鶴紗の前に左手を差し伸べた。

 

その行動に、鶴紗は手放したティルフィングを拾い、左手で梨璃に握手した。

 

 

鶴紗「わかった。私も、仲間として戦う。梨璃のレギオンに入って皆と戦う」

 

 

そう言って鶴紗は梨璃の前で初めて笑みの表情を見せた。

 

 

梨璃「ありがとう!」

二水「これで9人揃いましたね!」

梨璃「うん!」

奈々「喜ぶのは後にしてくれない?」

 

 

奈々が梨璃達にそろそろ戦うよう伝える。

 

 

夢結「アールヴヘイムが安全に戦えるよう、まずはこいつを片付けないと…」

奈々「それなら代理がもう来てますよ」

夢結「代理?」

 

 

夢結達の後ろから2本のCHARMを持った2つに別れた髪を三つ編みにした栗色の髪の少女が駆け付けてきた。

 

 

レギンレイヴ 1年生 六角汐里(ろっかく しおり)

 

 

奈々「汐里ちゃんってことは、レギンレイヴが駆け付けてきたの?」

汐里「はい。梨璃さん達と入れ替わりでラージ級を倒せと先生に言われました」

奈々「先生が?」

汐里「ギカント級を仕留め損なった時の予備軍として待機しろとの報告です…!?」

 

 

そう言って汐里は再び襲いかかるラージ級に対し、左手に持ったティルフィングで叩き斬りながら右手に持ったメイス型の武器、シャルルマーニュで連撃を繰りだし、ラージ級を横に倒させる。

 

 

梨璃「CHARMを2本同時に扱ってる!?」

二水「あれが汐里さんのレアスキル、円環の御手です!」

 

 

 

 

レアスキル 円環の御手(サークリットブレス)

 

通常は同時に一つしか扱えないCHARMを二本同時に扱えるレアスキル。

 

威力が2倍と思われがちだが、2本持って使う時は片方に通常の4分の3しか出せないため、総合威力は1,5倍となる。

 

それだけでもかなり強力であり、ヒュージとの戦いではゼノンパラドキサと並ぶほどのレアスキルである。

 

また、リリィバトルクロスと呼ばれる戦闘服、キャバリエと呼ばれる大型パワードスーツを扱うときにはこのレアスキルは必須条件となる。

 

 

 

 

次第に、レギンレイヴのリリィ達が集まって来た。

 

 

夢結「ありがとう汐里さん。皆、すぐにアールヴヘイムの元へ急ぐわよ」

梨璃「はい!」

奈々「汐里ちゃん、あとお願い!」

 

 

そう言って梨璃達と奈々はラージ級との戦闘領域から離れていった。

 

 

汐里「皆さん……お気をつけて…!」

 

 

ラージ級は、汐里含むレギオン、レギンレイヴが代わって討伐を引き受けることとなった。

 

 

 

 

 

 

一方、梨璃達と奈々は、アールヴヘイムがギガント級ヒュージと戦ってる姿を目撃した。

 

 

梨璃「もう戦闘が始まってる!?」

 

 

戦ってるヒュージは4つの足で跳ぶ巨大なつぼみのような姿であった。

 

ヒュージは、つぼみの上部から金属製の触手を伸ばし、アールヴヘイム達を攻撃していた。

 

 

梨璃「大きい……」

奈々「あれがギガント級。レギオンによる団体で挑まないと倒せないボス級の相手だよ」

楓「私も実際にギガント級は初めて見ましたわ」

二水「どどどど、どうしましょう!?ギガント級が目の前に…!」

ミリアム「落ち着かんか」

奈々「それよりも、今の状況…」

梅「ああ。押されてるな…アールヴヘイム」

奈々「あのヒュージ、もしかして陽動を仕掛けてきた…!?」

夢結「そのようね。それにあのヒュージ、リリィ達をまるで恐れてない」

奈々「となると…レストア…!」

夢結「あり得るわね」

 

 

ヒュージの触手攻撃は休む間もなく続き、至るところに振り回されている触手にアールヴヘイムのリリィ達は防御するだけで手いっぱいである。

 

 

亜羅椰「くっ、こいつ、戦い慣れてる…!」

 

 

キリがないと悟った天葉は近くの建物に着地し、特殊な弾を自分の大剣CHARM、グラムの装填口に入れる。

 

 

天葉「アールヴヘイムはこれより…上陸中のヒュージに…ノインヴェルト戦術を仕掛ける!フィニッシュは亜羅椰に任せる!」

 

 

天葉はシューティングモードに変形させたグラムを構え、離れたところに飛翔している依奈に向けてマギスフィアを発射した。

 

依奈は飛んできたマギスフィアを自分のCHARM、アステリオンで受け止め、次のメンバーに向けて飛ばす。

 

 

二水「アールヴヘイムがノインヴェルト戦術を仕掛けるみたいです!」

夢結「梨璃、よく見ておきなさい。これからレギオンとして活動する貴女にとっては必要なことよ」

梨璃「はい。お姉様」

 

 

梨璃達がアールヴヘイムのノインヴェルト戦術を見る中、奈々はヒュージに違和感を感じた。

 

 

奈々(あの触手…前に見たことが…それに…このマギは…!)

 

 

一方、アールヴヘイムはノインヴェルト戦術によって育てたマギスフィアを最後の一人にパスした。

 

 

壱「亜羅椰、お願い!」

亜羅椰「不肖、遠藤亜羅椰…フィニッシュショット、決めさせて貰います!!」

 

 

マギスフィアをアステリオンで取り込んだ亜羅椰は、狙いやすい建物に着地し、シューティングモードに変形させたアステリオンをヒュージに目掛けてマギスフィアを発射した。

 

狙いはしっかりヒュージを捉えた。

 

ギガント級を倒すのに必要なマギはマギスフィアに十分入っている。

 

当たればギガント級ヒュージを倒せる。

 

 

 

 

 

 

 

はずだった……

 

 

 

 

 

何とギガント級ヒュージは、マギスフィアが当たる直前にバリアを張り、亜羅椰が発射したマギスフィアを正面から受け止めていた。

 

 

天葉「何!?」

壱「フィニッシュショットを止めた!?」

亜羅椰「嘘!?」

 

 

ノインヴェルト戦術のマギスフィアを受け止められていた事に驚きを隠せないアールヴヘイム一同。

 

 

ミリアム「何じゃーー!?」

夢結「!?」

 

 

夢結は見た。

 

ヒュージが張ったバリアの模様には、ルーン文字のようなものが浮かび上がっていた。

 

 

奈々「あれは…ルーン…ということは…!」

 

 

奈々はヒュージが張ったバリアの正体がわかった。

 

 

天葉「こんにゃろーーーー!!!」

 

 

天葉がマギスフィアに向かって接近し、グラムでマギスフィアを押し出し、ヒュージのバリアをぶち破ったが、その代償としてグラムが半壊してしまう。

 

しかしバリアを破ったことで押し出されたマギスフィアはヒュージの上部に当たり、大爆発を起こした。

 

天葉は樟美によって助けられ、大爆発から逃れた。

 

現在は樟美の傘をさして上空で待機していた。

 

 

樟美「もう…天葉お姉様危ないです」

 

 

ノインヴェルト戦術を使ったことで、アールヴヘイムのリリィ達のマギはかなり消耗しており、CHARMは殆どが半壊…特に天葉のグラムは使い物にならなくなっている。

 

CHARMが無ければリリィは戦えない…

 

アールヴヘイムにとって、これ以上の戦闘は不可能となった。

 

 

天葉「不本意ですが、アールヴヘイムは撤退します……くっ!」

 

 

悔しさと共に、天葉はアールヴヘイムのメンバーに撤退の指示を与え、戦闘領域から撤退し始めた。

 

 

そして残ってるのは、待機中の9人揃ったばかりの梨璃達と奈々のみであった。

 

 

楓「アールヴヘイムが、ノインヴェルトを使って仕損じるなんて…」

鶴紗「今回のヒュージ…何時もと違う…」

梨璃「………あれ?」

 

 

梨璃が何かに気付いた。

 

 

二水「どうしたんですか梨璃さん」

梨璃「奈々ちゃんがいつの間にかいない」

ミリアム「なんじゃと!?」

雨嘉「あっ、あれ!」

 

 

雨嘉が見つけた指を指した先には奈々がヒュージに向かって先行していた。

 

 

楓「奈々さん、また勝手に…!」

神琳「まるで鉄砲玉ですわね」

夢結「仕方ないわ。いつもの事よ…でもあの子がヒュージの方に向かって行ったってことは…」

 

 

夢結は奈々の行動で理解した。

 

まだヒュージはやられていないと…

 

 

ミリアム「マギスフィアは直撃したはずじゃか…」

梨璃「動いてます…!」

雨嘉「え?」

梨璃「あのヒュージ、まだ動いてます!」

 

 

梨璃もヒュージはまだやられていない事に気付く。

 

 

 

一方奈々は瓦礫や建物に跳び移り、ヒュージに向かって飛翔していた。

 

とある疑問を持ちながら…

 

 

奈々(バリアによってノインヴェルト戦術の威力は大きく削られた。まだヒュージは生きている。特にあのバリア…もしかしたら…!)

 

 

奈々はカナベラルを起動させ、動き出したヒュージから繰り出した2本の触手を弾いてはかわしていく。

 

 

奈々「叩き割る!」

 

 

そしてヒュージへの攻撃射程に入った奈々はそのまま頭上から突進し、ヒュージのつぼみの上部をかち割る。

 

すると、ヒュージのつぼみの部分が大きく2つに割れた。

 

そこで奈々は何かを見つけ、驚いていた。

 

 

奈々「………やっぱり」

 

 

奈々の考えは確信となった。

 

ヒュージの割れた上部の中には、なんと大剣のCHARMが刺さっていた。

 

そしてそのCHARMに奈々は覚えていた。

 

 

奈々「夢結さんの……ダインスレイフ…こいつが食べていたのか…」

 

 

2年前…甲州撤退戦で夢結が当時使っていたCHARM、ダインスレイフ。

 

その時にいた夢結のシュッツエンゲル…美鈴が重傷を負ったまま、夢結のダインスレイフを持ってギガント級ヒュージと戦ったが、残ったのは遺体となった美鈴の体だけだった。

 

それっきり、夢結のダインスレイフはその姿を眩ましていた。

 

奈々は思い出した。

 

あのヒュージは、2年前に現れたものと同じだと…

 

その証拠に、目の前のヒュージの体には、古傷が残っていた。

 

これは美鈴が付けた傷だと…

 

しかし一つだけ引っ掛かるところがあった。

 

ヒュージの中に刺さっていたダインスレイフが何故起動しているのかを…

 

 

奈々「本来リリィしか扱えないはずのCHARMをヒュージが何故使っている……?」

 

 

先程アールヴヘイムのノインヴェルト戦術を受け止めたあのバリアはダインスレイフから発したものであることは間違いない。

 

それをヒュージが使ったとなると、ヒュージはマギを操ってCHARMを使ったのだろうか……

 

しかし考えてもしょうがない。

 

今、奈々の目の前には美鈴を殺したヒュージがいる。

 

奈々にとって美鈴は便りになる戦いの先輩だった。

 

今こそ、リベンジの時である。

 

 

奈々「久しぶりだよ。2年前にあんたと出会ってから、私は悔しい思いをしてきた…けどそれも終わり…美鈴さんに代わって私がお前を…」

「よくも美鈴お姉様をおおおおーーー!!!」

奈々「え!?」

 

 

突然髪を白くさせ、瞳の色を紅くした姿の夢結がヒュージの方へやって来た。

 

 

奈々「げっ、ルナティックトランサー!?」

 

 

夢結はどうやらこのヒュージが美鈴を殺した相手だと思いだし、ルナティックトランサーを発動させてしまったらしい。

 

しかも完全な暴走である。

 

 

奈々「よりによって今戦わせたくない人に…!」

 

 

ヒュージも気になるが、今の夢結には、ヒュージを倒すことしか頭にない為危険である。

 

奈々は真っ先に夢結を止めるためにある方法を行うため、夢結に向けてカナベラルを振るう。

 

夢結もブリューナグで鍔迫り合いに入る。

 

 

夢結「退きなさい…そいつは私の相手よ!!」

奈々「いつから夢結さんの相手になったんですか?あれは私の獲物です!」

 

 

突如、ヒュージの触手が二人に襲いかかるが、切り払われる。

 

その勢いで奈々は再び夢結と鍔迫り合いに入り、押しきっていく。

 

 

夢結「邪魔よ!!」

 

 

夢結のブリューナグに力が入り、奈々を押していくが、奈々もカナベラルで押し返していく。

 

 

奈々「どっちが!!」

 

 

奈々もマギを高め、夢結を後ろへ押していく。

 

 

奈々「2年経っても変わりませんね。その暴れ牛ぶりは!」

夢結「誰が暴れ牛よ!!」

 

 

今度は割れた動体の内側から無数のレーザーが発射されてきたが、奈々は避けずに夢結をはじき、レーザーをカナベラルで全て弾き返した。

 

避けることは容易だが、ルナティックトランサー状態の夢結は回避の行動を取らないため被弾の恐れもある。

 

奈々はそれを避けるために回避は取らなかったのだ。

 

 

奈々「暴れ牛でしょ!その暴れぶり…頭に角付けたらどうですか?似合うと思いますよ!」

夢結「言わせておけば…!!」

 

 

二人は3度目の鍔迫り合いしながら低レベルの口喧嘩をしだした。

 

しかしそんな口喧嘩に付き合う夢結には、先程の暴走時の感情が少しずつ薄れていった。

 

その様子を見たヒュージの攻撃範囲内から離れている梨璃以外のメンバー達は…

 

 

楓「あの低レベルの口喧嘩はなんですの…?」

ミリアム「ヒュージがいる中でよくやれるのう」

神琳「いえ、ただの口喧嘩では無さそうですわ」

鶴紗「何かあるのか?」

神琳「夢結様の動きが、ルナティックトランサー発動前の動きに少しずつ戻ってきてます」

二水「ええーっ!!?」

楓「そんな偶然なこと…!」

梅「偶然ではないゾ」

 

 

梅が話に入ってきた。

 

 

二水「梅様!」

梅「2年前に夢結がルナティックトランサーを発動した頃、奈々が夢結を止めた頃があってな…その時も夢結に対して口喧嘩をしたそうだ。すぐに解除とはいかなかったが、ルナティックトランサーの効力を早めに切らせることが出来たんだ」

鶴紗「そんなことが…!」

神琳「奈々さんが夢結様を煽ってるのはその為…!」

 

 

代わってヒュージの近くで奈々はまだ夢結と戦っていた。

 

 

奈々「いつもイライラしてるのもよくないっすよ。胃がやられますよ?」

夢結「誰のせいだと思ってるのよ!!」

 

 

次第に夢結の動きがスムーズになっていく。

 

と、そこへ…梨璃が夢結を追いにやって来た。

 

 

梨璃「お姉様ー!!」

夢結「!?」

奈々「梨璃ちゃん、今来ちゃダメ!!」

 

 

梨璃の接近に気付いたヒュージは、梨璃に向けて触手を伸ばした。

 

梨璃は触手をグングニルで次々と弾くが、今度は無数の触手が梨璃を包むように拘束した。

 

 

夢結「梨璃!!」

奈々「梨璃ちゃん!!」

 

 

二人は助けようとするが、梨璃を拘束した触手は突然爆発を起こし、二人を吹き飛ばした。

 

 

 

 

ルナティックトランサーが解除され、気を失っていた夢結は目を覚ました。

 

 

夢結「り…梨璃…皆…何処…?」

 

 

目の前を見ると、梨璃を拘束した触手が砕け落ちており、梨璃の姿はなかった。

 

 

夢結「!?」

 

 

夢結は、梨璃がヒュージにやられたのかと思ってしまう。

 

しかし…

 

 

「夢結さん!」

「お姉様!!」

夢結「!?」

 

 

上空から梨璃を担いだ奈々が夢結の元へ降りてきた。

 

夢結「梨璃!」

梨璃「お姉様!」

 

 

奈々から降りた梨璃は拘束から無理に脱出したことで刃にヒビが入ったグングニルを捨ててそのまま夢結を抱く。

 

 

奈々「梨璃ちゃん無茶しすぎだよ。とはいえ、あの状態からよく抜け出せたよ」

梨璃「ここを離れましょう!!」

 

 

梨璃は夢結を連れて後退しようとするが…

 

 

夢結「…ダメ…あのヒュージにはダインフレイフが…私とお姉様の…だから…!」

梨璃「お姉様!!」

夢結「!!?」

 

 

梨璃が夢結に怒鳴って気が付かせた後、夢結を担いでヒュージの攻撃圏内から離れだした。

 

一方ヒュージも、二人を逃がさないと触手を伸ばすが、奈々が放ったマギの刃に妨害される。

 

 

奈々「よそ見をするな!」

 

 

夢結を担いだ梨璃は攻撃圏内から無事離れ、雨嘉の横を通っていく。

 

 

雨嘉「行って、梨璃!」

梨璃「すみません!すぐ戻りますから、ちょっと待ってて貰いま…あ痛!!」

 

 

遠くで梨璃が転んだような声が聞こえた。

 

 

梅「大丈夫か、梨璃!!」

梨璃「大丈夫ですーーーー!!」

 

 

大丈夫な事を遠くにいる梨璃は梅に大声で伝えた。

 

 

鶴紗「本当に大丈夫か?」

 

 

梨璃と夢結が一時離脱し、現在戦場にいるリリィは二水、楓、ミリアム、雨嘉、神琳、梅、鶴紗、奈々の8人である。

 

 

雨嘉「待ってろって?」

神琳「持ち堪えろって意味ですわね」

梅「人遣いが荒いぞ。夢結のシルトは」

ミリアム「どうする?ワシ等も他のレギオンと交代するか?」

 

 

楓が二水を背負ってやって来た。

 

 

楓「ご冗談でしょ?梨璃さんの死守命令は絶対ですわ!」

二水「そこまでは言ってないと思いますけど!楓さんに賛成です!」

 

 

後から奈々もやって来た。

 

 

二水「奈々さん、どうでしたか?」

奈々「うん。どうやらあのヒュージはダインスレイフの影響で強くなってると思う。ギガント級でもあそこまで激しい攻撃は普通してこない。かなりの強敵だね。あれは」

神琳「確かに強力でしたわ。ただあのヒュージはCHARMを扱い切れず、マギの炎で自ら焼いているわ」

奈々「となると、まずはダインスレイフを抜くことが先かな?二人が復帰するまでの間、私達でダインスレイフを取り戻す。CHARMがなくなってしまえば多分弱体化するはず」

神琳「ええ。その後夢結様が復帰すれば、勝機はあります!」

奈々「となれば、まずは邪魔な触手を全て倒すのが先決だね。引き続き私がおとりになるよ」

ミリアム「大丈夫なのか?」

奈々「これが私の戦いかただからね」

 

 

そう言って、奈々は単独でまたヒュージに向かっていくが…

 

 

「木葉、お前は白井の元へ向かえ」

奈々「?」

 

 

呼び掛けたのは今到着した出雲だった。

 

 

二水「先生!」

楓「今まで何をしてましたの!?」

出雲「悪いな。政府とのやり取りに時間がかかった。お前達のやり取りは聞いている」

神琳「これは説明する手間が省けましたね」

出雲「というわけだ。木葉、レーザーの方は任せろ。その間、白井を説得してこい」

奈々「わかりました。大至急行ってきます!」

 

 

おとりを出雲に任せ、奈々は捨てたグングニルを拾い、夢結と梨璃の元へ向かった。

 

 

梨璃「お姉様…」

 

 

遠くから梨璃の声が聞こえた。

 

どうやら半壊した建物の中で夢結と一緒にいるようだが、肝心の夢結は混乱してる。

 

奈々は建物の裏に隠れて、梨璃と夢結のやり取りを聞く。

 

 

夢結「見ないで…私を見ないで…」

 

 

聞いた所、夢結の精神は不安定のようである。

 

 

夢結「ルナティックトランサーは、とてもレアスキルなんて呼べるものじゃない…こんな物…ただの呪いよ…」

奈々(夢結さん…)

 

 

夢結の心境を思う奈々…

 

 

夢結「憎い…何もかも憎くなる!憎しみに呑み込まれて…周りにある物を傷付けずに居られなくなる…呪われてるのよ…私は…!」

 

 

夢結は自身のレアスキル、ルナティックトランサーを許せなかった。

 

 

夢結「美鈴お姉様を殺したのは私だわ!私が…この手で…あのダインスレイフで…!」

梨璃「…!」

奈々「ふざけるな!!」

 

 

奈々が頭にきて、夢結の胸倉を掴んだ。

 

 

梨璃「奈々ちゃん!?」

奈々「夢結さん…今の言葉を取り消してよ…!取り消せ!」

夢結「嫌よ…私はヒュージと何も変わらない!!」

梨璃「お姉様!!」

夢結「嫌!見ないで!!」

奈々「!!」

 

 

暴れる夢結に奈々はそのまま壁に押し付ける。

 

 

奈々「わかったような口を聞くな!あんたにヒュージの何が分かるんだ!私達と変わらない?全然違うんだよ!美鈴さんはヒュージと戦ったんだ!あんたには何の関係もない!」

夢結「そんなの奈々に解る訳がない!」

奈々「わかってないのはあんただ!夢結さんがこんなに思ってる人を手に掛けるはず無い!」

梨璃「奈々ちゃん…」

奈々「あんだってわかってるはずだろ!?なのに何子供みたいに駄々こねて……!?」

夢結「…………」

 

 

奈々は夢結が涙を流したのを見て血の気が引き、胸倉を離した。

 

 

 

夢結「私は…梨璃を守れない!!シュッツエンゲルになる資格も無い!!」

梨璃「…!」

奈々「…!」

 

 

梨璃と奈々は驚く。

 

ここまで弱音を吐く夢結ははじめてであると。

 

 

夢結「独りで居たかった訳じゃない…独りでしか居られなかっただけよ…私には…何の価値も無い…」

 

 

挫けて折れた夢結に対し、奈々は…

 

 

奈々「価値なんて、一人で決めるものじゃありませんよ。私から見て夢結さんは価値のない人間じゃありません」

夢結「そんなこと…」

奈々「梨璃ちゃんがそれを証明してますよ」

梨璃「そうです。お姉様とシュッツエンゲルになれて、私、凄く嬉しかったんですよ!」

夢結「解らない…私には解らないわ…あなたの気持ちなんて…私に愛されるのが…嬉しいなんて…」

奈々「……そうやって自分を責めても何の解決にもなりませんよ」

夢結「あなたに何が解るのよ!!」

 

 

まだ受け入れない夢結に奈々はある話題を明かす。

 

 

奈々「1年前…私の大切な友達が殺されました」

夢結「!?」

梨璃「えっ!?」

奈々「クジラ船に滞在してた頃、私はブルーガードの第4部隊でヒュージの討伐に向かった事がありました。私は仲間の負担を減らすために前線に立ち、一人でヒュージの取り巻きを片付けようとしました。しかし途中、ギガント級の攻撃が割り込んできて、私は重傷を負いました。気が付いた頃には戦闘が終わっており、生き残ったのは私一人だけだと、他の仲間から聞かされました」

夢結「…!」

梨璃「一人…!?」

奈々「私は自分を責めていました。私がもっと強ければ…皆を死なせずに済んだのにって…今の夢結さんみたいに…」

夢結「奈々…」

奈々「そんなとき、美鈴さんの言葉を思い出したんです。後悔する暇があるなら今やるべきことをした方がいい。あの言葉のお陰で今の私がいるんです」

夢結「……美鈴お姉様が…?」

奈々「私の大切な友達は私の心の中で生き続ける…夢結さんの心の中にも、美鈴さんがいるように…」

 

 

夢結は奈々を見て感じた。

 

この子は自分以上に大切な物を失い、背負ってる物があると…

 

それでも懸命に生きてるのだ。

 

それに比べたら、今の自分が恥ずかしいと夢結は悟った。

 

 

奈々「それに、梨璃ちゃんのシュッツエンゲルは、やっぱり夢結さんしかいませんよ。それだけで十分資格になります」

夢結「奈々……!」

 

 

奈々の言葉は正しかった。

 

2年前、梨璃を助けたから…彼女はこうして夢結の元にいるのだと。

 

そこへ梨璃が自分の額を夢結の額に優しく当てる。

 

 

梨璃「お姉様…もしお姉様がルナティックトランサーを発動したら、また私が止めます。何度でも止めます。何をしても止めます。例え、刺してでも…だから…」

 

 

梨璃も、奈々も、夢結の事を思い、信じていた。

 

ならばそれに答えなければと夢結も決心した。

 

 

夢結「………ありがとう、梨璃。それに、奈々も」

 

 

迷いが消えたのか、笑顔になった夢結が二人に礼を言った。

 

 

梨璃「はい……お姉様」

奈々「………もう大丈夫ですね?」

夢結「ええ。心配かけたわね」

 

 

もう夢結は大丈夫だと、奈々は悟った。

 

 

奈々「さて、お二人はもうしばらく待っててくださいね。ルナティックトランサーを使ってマギを消耗してますしね」

梨璃「え?」

夢結「そうだけど…何をする気なの?」

 

 

そう言って奈々は梨璃にグングニルを渡し、少し離れた所に跳び移る。

 

 

奈々「先程言いましたよね?ルナティックトランサーを呪いと…でも私は違うとはっきり言えます。あれは誰かを救う為の力であり、希望でもあるんです。それを今から…証明します!」

 

 

奈々は一旦深呼吸した。

 

そして、間を空けて…

 

 

奈々「むうん!!」

 

 

体に力を溜めるような姿勢から、奈々は赤い光を体に宿し始めた。

 

すると、奈々の髪が赤茶色から白に変わっていった。

 

 

梨璃「な、奈々ちゃん!?」

夢結「それは、まさか…!?」

 

 

二人はかなり驚いていた。

 

奈々が使ったのは、レアスキル、ルナティックトランサーである。

 

特に髪の色が白くなる現象は、完全な暴走状態である証拠。

 

奈々は二人の方に振り向く。

 

奈々の瞳は紅く光っているが、表情は普通だった。

 

 

奈々「見ててください夢結さん。これが本当のルナティックトランサーの使いかたです!」

 

 

そう言って奈々はヒュージに向かって飛んでいった。

 

その名の通り、空を飛んでいったのだ。

 

 

梨璃「空を飛んでる!?」

夢結「あれは…ルナティックトランサーの特性を…!」

 

 

ルナティックトランサーには身体強化だけでなく、重力や呼吸、腕力の影響を無視できる性質を持つが、他のルナティックトランサー持ちのリリィでさえ、空を飛ぶ前例はなかった。

 

それどころか、奈々は完全な暴走状態でありながら梨璃と夢結に対し普通に喋っていた。

 

 

一方ヒュージと戦ってる皆は、触手を一つ破壊したものの、それでも触手の数が多く、苦戦を強いられていた。

 

出雲が何本か触手を引き受けつつ、レーザーを封じようとするが、レーザーが発射される部分は固く、中々破壊できない。

 

長引けば、マギ不足は免れない。

 

と、そこへ、ルナティックトランサーを発動した奈々がやって来て、ヒュージに向かっていった。

 

皆も奈々に気付くが、奈々の変わりように驚く。

 

 

鶴紗「あれは…奈々か?」

ミリアム「何か髪の色が白くなっておらぬか?」

雨嘉「まさか、ルナティックトランサー…!?」

 

 

ヒュージの近くで戦ってる出雲も奈々に気付く。

 

 

出雲「あれは…木葉か?ルナティックトランサー持ちか?」

 

 

奈々は二水の横を通りすぎる前に指示を伝える。

 

 

奈々「皆!私が攻撃を誘導するから、触手の切断をお願い!その後先端部を私が切るから…!」

二水「あ、はい!!」

 

 

そう言って奈々は二水の横を通りすぎていく。

 

 

楓「奈々さん、普通にしゃべっていません?」

梅「奈々、ルナティックトランサーが使えるのか?」

神琳「コントロール出来てる…でもあの髪の色は…!」

 

 

奈々はヒュージの近くまで来た。

 

よく見ると、半分に割った動体が元通りにくっついていた。

 

触手の数は5本あり、1本は半分以上の所から破壊された後があった。

 

 

奈々「もう再生している…ならもう一度割るだけだ!」

 

 

そしてこっちに飛んできた出雲とバトンタッチする。

 

 

奈々「先生!」

出雲「レーザーの方はもうすぐ再生する。気を付けろ!」

奈々「了解!!」

 

 

奈々かヒュージの頭上に飛び、そのまま急降下して、カナベラルをヒュージの動体に打ち当てた。

 

すると再びヒュージの動体が開き、ダインスレイフが露になった。

 

しかし奈々の方へ、5本の触手が伸びてきた。

 

 

奈々「邪魔するなって言うの?こっちの方だぁ!!」

 

 

奈々はカナベラルを右手に持ち帰ると、なんと腰に付けていたもう一つのCHARM、ブルメリアを左手で取り出したのだ。

 

短剣のCHARM、ブルメリアは刀身から1メートルの青いマギの刃を展開した。

 

 

奈々「はああああああ……!!!!」

 

 

奈々は気合を入れながら次々と襲ってくる触手を2本のCHARMを交互に使いながら打ち返していく。

 

その2本のCHARMの刃が描く赤と青の残像は、奈々の剣舞を美しく見せる。

 

特に奈々がCHARMを降る早さはかなり早い上に、1本1本正確に打ち返していった。

 

そして触手の攻撃が止まると、奈々はその隙を逃さんと、触手の付け根をカナベラルで切り落とした。

 

 

残り4本。

 

 

しかし、割れた動体の内側からレーザーが放たれるが、奈々は体を捻りながら2本のCHARMで全て弾き返していく。

 

 

一方、奈々の戦いを見ていた二水達はかなり驚いていた。

 

 

二水「すごい……というか、CHARMを2本同時に使ってる!?」

 

 

二水はレアスキル…鷹の目を使って、奈々の戦いを観戦して驚いていた。

 

 

ミリアム「マジか!?」

楓「本来リリィは1本しかCHARMを扱えないはずでは!?」

二水「円環の御手を所持してるリリィなら可能ですが…」

 

 

と、話しながら触手の破壊を行っている。

 

楓はミリアムと一緒に触手の付け根を正確に攻撃し、破壊。

 

 

残り3本。

 

 

鶴紗「けど、リリィが持てるレアスキルは一つだぞ」

梅「ルナティックトランサー使ってるからナ」

 

 

鶴紗、梅のブレイドモードからの同時攻撃でもう一つの触手を破壊した。

 

 

残り2本。

 

 

雨嘉「レアスキルを2つ持つリリィなのかな…あの子」

神琳「デュアルスキラー…でしょうか」

 

 

雨嘉、神琳の中距離からの間接への射撃で5本目の触手も破壊した。

 

残り1本。

 

 

鶴紗「エンハンスメント…いや、あれはブーステットリリィ専用のスキル…奈々はブーステットリリィじゃないから使えるはずがない。そもそも、円環の御手に派生するサブスキルがない。じゃああれは一体…」

出雲「それは直接本人に言えばいいさ。今はこいつの触手を破壊するのが先だ」

 

 

出雲が単独で最後の触手を黒鉄で切断した。

 

 

二水「全ての触手は切り落とされました。残る先端部は大町3丁目と6丁目交差点に展開中!」

出雲「吉村、今のうちにダインスレイフを抜いてこい!」

 

 

と、出雲が梅に指示を伝える。

 

 

梅「人使い荒いなあ先生は…けど、あのダインフレイフ!絶対取り戻す!」

 

 

そう言って梅はレアスキル…縮地を使ってヒュージの元へ向かった。

 

 

楓「無論です!ヒュージがCHARMを使うなんてありえませんわ!」

 

 

楓は半分切断された2本の触手の内の一本の攻撃を受け流していた。

 

所が受け流していた触手が地面に落ちた。

 

奈々が5本目の切断部を切ったのだ。

 

 

楓「…仕事が早いことで…」

ミリアム「ルナティックトランサーもこうして見ると、頼もしいのう」

出雲「お陰で活路が見えてきたな…!」

 

 

一方奈々は直ぐに最後の触手の先端部を切り落としていた。

 

 

奈々「これで全部!後はダインスレイフを抜けば…って!?」

 

 

触手を全て切断した奈々だったが、いつの間にか新たな触手が2本も現れたのだ。

 

 

奈々「もう再生している…早すぎ!」

梅「奈々!」

 

 

梅が縮地で奈々の元にやって来た。

 

 

奈々「梅さん、ダインスレイフをお願いします!触手は私が処理します!」

 

 

梅にダインスレイフを任せ、奈々は再生された2本の触手を切断しに向かうが…

 

 

雨嘉「やらせない!」

神琳「私達がいることもお忘れなく!」

 

 

雨嘉と神琳が2本の触手の一つを弾き返す。

 

 

ミリアム「ワシも目立ちたい!」

 

 

ミリアムがニョルニールを真上に構え、もう一つの触手を弾く。

 

 

奈々「皆…!」

 

 

そしてダインスレイフを抜こうとしてる梅の隣には、楓と鶴紗が一緒に手伝っていた。

 

 

鶴紗「戦ってるのはお前だけじゃないって訳」

楓「そういう事ですわ。私達はリリィですもの!」

 

 

と、奈々に言う鶴紗と楓。

 

驚く奈々だが、再びヒュージの内側が光り、レーザーを放とうとしていた。

 

 

奈々「またか、そうはさせ…」

「そうはさせないわ!」

「そうはさせません!」

奈々「ええっ!?」

 

 

なんと復帰した梨璃と夢結がシューティングモードからの連射攻撃で左右の動体を攻撃していた。

 

 

奈々「梨璃ちゃん、夢結さん、復帰早!?」

 

 

一方梅、楓、鶴紗が抜こうとしていたダインスレイフはやっと抜けた。

 

 

梅「抜けた!」

奈々「ちょっと失礼します!」

 

 

奈々はCHARMを一時腰にしまうと、梅、楓、鶴紗をまとめて掴み、大きくジャンプしてヒュージから離れた。

 

ヒュージは内側からレーザーを放ったが、直前で標的がいなくなった為、内側同士に当たって爆発を起こした。

 

雨嘉、神琳、ミリアム、出雲も後退し、攻撃範囲外にいる二水の元に全員集まった。

 

 

二水「皆さん、ご無事で!」

梅「ふぇ…取り返したぞ…」

楓「死守命令…果たしましたわ!」

梨璃「大丈夫ですか!?皆さん!これが…あのヒュージに?」

 

 

梅は抜いてからしっかり持ったダインスレイフを皆に見せた。

 

 

梅「これ、やっぱり夢結が使ってたダインフレイフだな。傷に見覚えがある」

夢結「ええ」

奈々「あのヒュージを相手に行方を眩ませていたけど、ようやく戻ってきた…夢結さんのダインスレイフ」

梨璃「これがお姉様の…」

二水「それより奈々さん、大丈夫なんですか!?」

 

 

二水は奈々を心配した。

 

奈々の髪の色はまだ白いままで、瞳の色は紅く染まっている。

 

奈々はまだルナティックトランサーを発動していたのだ。

 

 

神琳「ルナティックトランサー…まだ続いてるようですね」

楓「大丈夫ですの?貴女も相当マギを使っていますけど」

奈々「その心配なら大丈夫。まだマギは3割しか減ってないから」

二水「3割!?」

夢結「なんともないの?」

奈々「全然」

 

 

ルナティックトランサーをまだ発動中の奈々には何の症状も無かった。

 

呼吸も安定してる為、普段通りと変わらない。

 

 

奈々「それを言うなら夢結さんだって日常生活にルナティックトランサー使ってるじゃないですか」

夢結「あれは誰のせいだと思ってるのよ…」

出雲「話はそこまでだ。今はアイツを倒すのが先だろ?」

 

 

出雲が話を切り、ヒュージの方へ指を指す。

 

ヒュージはダインスレイフを抜かれてもまだ動いていた。

 

自分の放ったレーザーの直撃を受けても大城な痛手には至らなかったようだ。

 

しかし触手は2本のままで他の触手は再生されていなかった。

 

動体も2つに割れたままである。

 

 

雨嘉「あいつ…まだ動いてる!」

出雲「ギガント級がそう簡単にやられるはずがない。だがCHARMを失ったあいつにはもうバリアははれない。ここからが踏ん張りどころだ」

 

 

皆にそう伝える出雲。

 

そこで梨璃が提案を出した。

 

 

梨璃「あの!私達でやってみませんか?」

楓「何をです?」

梨璃「ノインヴェルト戦術です!」

奈々「アールヴヘイムがやったあの戦術?確かにギガント級に有効だけど、行けるの?」

梨璃「今動けるリリィは私達しかいないもの。だったらやるしかないよ」

楓「ですがノインヴェルト戦術には専用の弾がないと…」

 

 

先程アールヴヘイムのリーダー、天葉がノインヴェルト戦術を実行する際にCHARMに装填していたあの弾の事である。

 

 

出雲「弾ならこれを使え」

 

 

出雲はノインヴェルト戦術用の特殊弾を取り出した。

 

 

梨璃「この弾は…ノインヴェルトの…!」

楓「どうして先生がそれを!?」

出雲「もしもの時に用意した物だ。1発で仕留めろ」

 

 

そう言い、出雲は梨璃にノインヴェルト戦術用の特殊弾を投げ渡す。

 

 

梨璃「おっと…!」

 

 

梨璃は弾を受け取った。

 

 

奈々「ノインヴェルト戦術は9人いれば十分な火力を出せるから…残った役割は、ヒュージへの妨害かな?残った触手の処理とレーザー封じ」

出雲「ああ。私と木葉で奴の気をそらす。ノインヴェルトの方は任せるぞ」

 

 

そう言って出雲と奈々はヒュージの方へ向かった。

 

梨璃はノインヴェルトの弾を見つめて、梅に弾を渡した。

 

 

梅「?」

梨璃「梅様!最初、お願い出来ませんか?私だといきなり失敗しちゃいそうで…」

梅「…あはは。人遣いが荒いぞ、ウチの後輩は。じゃあ梅の相手は…」

 

 

梅はノインヴェルトの弾を見つめてながら二水に目を向けた。

 

 

二水「ええ!?わ、私ですか!?」

梅「ほんじゃあ、ふーみんが撃って?」

 

 

梅はノインヴェルト戦術の特殊弾を指で弾き、二水のグングニルの装填口にスッポリ入れた。

 

 

二水「ぎゃああーっ!?何するんですかー!!何を撃つんですか!?まさかヒュージですか!?」

梅「梅をだよ。ほら撃て」

 

 

すでに距離を取り、スタンバイに入った梅。

 

 

二水「えええー!?気は確かですか梅様!私は人を撃つなんて出来ま…」

梅「はーやーくー!!」

二水「はあいーーっ!!!」

 

 

二水がシューティングモードに変形させたグングニルを構え、梅に向けて青いマギスフィアを発射した。

 

放たれたマギスフィアは、梅が自分のCHARM…タンキエムで受け止めた。

 

 

二水「マギスフィアが!」

梅「感じるぞ!これが二水のマギか!」

 

 

受け止めたマギスフィアは次第に青から黄色に変わっていった。

 

ノインヴェルトのマギスフィアは、各リリィのマギをCHARMを通して吸収する性質を持ち、人数が多ければそれだけ強力なマギスフィアになり、大火力を出せるが、その分扱えにくくなる上に、最悪の場合CHARMが破損する可能性もある。

 

メリットが大きいのと同時にデメリットも大きい。文字どおりの諸刃の剣である。

 

 

梅「じゃあ次は!」

 

 

次は雨嘉に目線を向けた。

 

 

雨嘉「ええっ!わ、私!?」

梅「わんわん、CHARM出せ!」

 

 

 

そのまま走り、雨嘉のアステリオンにタンキエムを当てる感じでマギスフィアを渡した。

 

 

雨嘉「梅様、近くありません!?」

梅「前に夢結と梨璃がやってたんだ。こうすればパスは外れないだろ!」

 

 

マギスフィアは黄色から緑色に変色すると梅は離れる。

 

 

雨嘉「こんなの教本にない!」

ミリアム「よし!今度はワシに寄越すのじゃ!」

 

 

今度はミリアムが飛び上がり、ミョルニールで雨嘉のアステリオンに付いたマギスフィアに接触した。

 

 

雨嘉「そんなにがっつかないで!!」

 

 

マギスフィアは緑色から紫色に変わり、ミリアムはマギスフィアをニョルニールにくっつけて、そのまま再び飛び上がる。

 

 

ミリアム「ちゃんと狙うんじゃぞ、鶴紗!!」

 

 

飛んだミリアムは鶴紗のティルフィングにニョルニールに付いたマギスフィアを渡し、離れた。

 

 

鶴紗「切っちゃったらごめん!」

 

 

受け取ったマギスフィアは紫色から赤色に変わった。

 

 

鶴紗「ほらよ!神琳!」

 

 

鶴紗は神琳に向かって突進し、マソレリックにティルフィングに付いたマギスフィア渡した。

 

 

神琳「もっと優しく扱えません!?」

 

 

マギスフィアは赤色からオレンジ色に変色わり、すぐに神琳はマソレリックに付いたマギスフィアを楓のジョワユーズに渡した。

 

 

神琳「気を付けて、思った以上に刺激的ですよ!」

楓「望む所ですわ!」

 

 

渡されたマギスフィアはオレンジ色から白色に変わった。

 

 

一方奈々と出雲は、残った触手の先端部を完全に破壊し、続けて脚部分も破壊していった。

 

そのほとんどが、ルナティックトランサーをまだ維持している奈々によるものである。

 

 

楓「ふふふっ…私の気持ち、受け止めて下さいな梨璃さん!!」

 

 

物凄い助走を付けて梨璃に向かって行く楓。

 

 

梨璃「み、皆のだよね!?」

奈々「楓ちゃん落ち着いて!梨璃ちゃんのグングニルはもう…!」

 

 

奈々の注意も空しく、梨璃は透かさずグングニルで楓のジョワユーズに付いたマギスフィアを受け止めるが、ひびの入ったグングニルでは耐えることも出来ず折れてしまい、マギスフィアは空の上に弾かれてしまう。

 

 

楓「私の愛が強過ぎましたわ!?」

奈々「言ってる場合かー!!!」

 

 

空に弾かれたマギスフィアは上空へ飛んだ夢結がブリューナクで受け止めた。

 

 

夢結「いえ、限界よ!無理も無いわ!」

 

 

マギスフィアを受け止めた夢結がそのままヒュージに向かうが、梨璃に手を差し伸べる。

 

 

夢結「梨璃!いらっしゃい!」

梨璃「お姉様!!」

 

 

梨璃も飛翔し、夢結の手を掴む。

 

 

奈々「先生!後は私と夢結さんと梨璃ちゃんが…!」

出雲「わかった。一旦後退する!」

 

 

出雲が撤退し、奈々がブルメリアをしまうと、カナベラルを両手で握り、同じく上空へ飛び上がる。

 

 

夢結「行くわよ、一緒に…!」

梨璃「はい!」

 

 

ブリューナグと折れたグングニルをマギスフィアに接触させると、マギスフィアは虹色に輝き出した。

 

 

夢結「私達なら…出来るわ!」

梨璃「はい!」

奈々「マギスフィアを体内にぶつけた後、私が誘爆させます!」

夢結「わかったわ!」

 

 

梨璃と夢結がマギスフィアをヒュージの体内に向かって急降下する。

 

 

二人「はああああああーーー!!!!」

 

 

マギスフィアは体内に撃ち込まれ、そこに奈々が急降下し、梨璃と夢結が離れた直後にカナベラルでマギスフィアをぶつけた。

 

 

マギスフィアにヒビが入り、奈々もその場から脱出した。

 

ヒビの入ったマギスフィアは内部で膨張するマギに耐えきれなくなり、ヒュージを飲み込むほどの大爆発を起こした。

 

その様子を見届けたアールヴヘイムのリリィ達。

 

別の所では、丁度ラージ級を倒したレギンレイヴのリリィ達が…

 

 

爆発が晴れると、ギガント級ヒュージの姿は、そこには無かった。

 

綺麗な空と真っ赤な夕陽…

 

その場には、ヒュージが消滅した際に散らばれた無数の小さなマギが漂っていた。

 

まるで、梨璃達の勝利を祝うかのように…

 

 

その梨璃達は疲れたのか、倒れたまま空を眺めていた。

 

特に夢結と梨璃の間には、互いの手を握っていた。

 

 

夢結「……梨璃……私は、あなたの事を信じるわ」

 

 

そう言って笑顔で梨璃を見つめる夢結。

 

 

梨璃「お姉様…」

 

 

梨璃も笑顔で夢結を見つめた。

 

 

そこへ、出雲がルナティックトランサーを解除した奈々を担いでやって来た。

 

 

出雲「よくやったぞお前達。初のギガント級にここまで頑張った」

梨璃「先生…!」

奈々「いやぁ、流石に今回は答えたなぁ」

 

 

ルナティックトランサーを長時間使った影響か、どうやら奈々は動けないらしい。

 

 

夢結「奈々、大丈夫なの!?」

出雲「心配いらん。筋肉痛みたいなもので動けなくなっただけだ。朝にアールヴヘイム予備軍との模擬戦、安藤の救出、そして今回のギガント級相手にルナティックトランサーの長期使用。流石に疲れて当然だろうが、特にルナティックトランサーの負担が答えたようだ」

奈々「流石に暴れすぎたかも…いたた…」

ミリアム「本当に暴れすぎじゃ」

楓「全ての触手を相手にしたのだから当然ですわ」

雨嘉「レーザーを全て弾いたのは驚いたけど…」

鶴紗「空を自由に動けるのも驚いたな」

梅「梅の縮地程じゃないけど、それでも早いぞ」

神琳「普通のリリィでもそんな芸道出来ませんわ」

夢結「とはいえ、ルナティックトランサーであれだけの動きをすれば体が持たないわよ」

奈々「返す言葉もありません…まあこれでルナティックトランサーが呪いではなく、守るための力だってことが分かりましたか?」

夢結「確かに…あの状態を維持できるのは認めるわ。でも…」

奈々「夢結さんなら私より使いこなせられますよ」

夢結「えっ?」

奈々「確かにルナティックトランサーを使えば、ヒュージに近い負のマギを体に宿してしまい、精神が不安定になりがちになります。ですがそれ以上に強い思いを持てば、ルナティックトランサーを完全に使いこなし、憎しみの感情に絶対に負けません。そして、夢結さんにはもうその強い思いを持っている筈です」

夢結「奈々…」

奈々「ルナティックトランサーを完全に使いこなしたリリィ…白井夢結に勝つことで、夢である最強のリリィへの道に大きく近付けると信じてるんです。その為にも夢結さん、早く使いこなして私の夢を叶える為の踏み台になってください」

 

 

笑顔で夢結を煽るような発言を言う奈々。

 

 

二水「奈々さん、ストレート過ぎますよ!?」

夢結「………ふふふっ」

 

 

夢結が少し笑う。

 

 

梨璃「お姉様?」

夢結「……最強のリリィね。けど、そう簡単に勝ちを貴女に譲らないわ。今まで私との模擬戦で一度も勝てなかった貴女に、私が負けるなんてあり得ないわよ」

奈々「私も2年前の頃とは違います。前の私と思ってかかると後悔しますよ?」

夢結「言ってくれるわね。いいわ。ルナティックトランサーを完全に使いこなしたら、貴女と勝負しましょう。その代わり、本気でいらっしゃい」

奈々「もちろんです。楽しみに待ってます」

二水「そういえば、奈々さんヒュージ相手にCHARMを2つ使って戦ってましたね?円環の御手では無さそうですが…」

奈々「あれね?その説明については明日にしてくれる?今日はゆっくり休みたいから」

楓「まあいいですわ。今日はゆっくり休みましょう」

 

 

話が済んだ所で、出雲が本題に移る。

 

 

出雲「さて…一柳よ、私の課題を見事こなし、ようやく9人揃ったようだな…」

梨璃「え?あ、はい!」

出雲「お前達はこれで、この百合ヶ丘の新たなレギオンとなった」

楓「それはつまり…」

出雲「お前達のレギオンは、学院の許可を得て、正式に登録されたぞ」

梨璃「ええ!?」

奈々「おおー!!」

二水「本当ですか!?」

 

 

なんと出雲は、梨璃達のチームがレギオンとして登録されたことを皆に伝えた。

 

 

梅「それで先生、レギオン名は何にしたんだ?」

出雲「落ち着け。お前達のレギオン名は白井が言う。もう考えているんだろ?」

夢結「お見通しですか…分かりました」

梨璃「お姉様の考えたレギオン名…なんだろ…」

 

 

楽しみで仕方がない梨璃。

 

そして夢結は考えたレギオン名を言う。

 

 

 

 

 

夢結「レギオン名は…………一柳隊よ」

 

梨璃「!一柳………!!?」

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「ええええええええーーーーーっ!!!!」

 

 

僅かな間が空き、梨璃は夢結が付けたレギオン名に驚愕した。

 

 

夢結「どう、いい名前でしょ?」

奈々「なるほど、しっくり来ますなぁ」

梨璃「待ってください!これじゃ私がリーダーみたいじゃないですか!?白井隊じゃないんですか!?」

奈々「語呂が悪い。呼びづらい」

夢結「奈々、さりげなく私をバカにしてない?」

楓「流石夢結様!素晴らしいレギオン名ですわ。私は一柳隊で構いませんわ!」

神琳「いい名前だと思いますわ」

雨嘉「うん!」

二水「私も一柳隊がいいと思います!」

ミリアム「ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス隊じゃ長すぎるからな」

奈々「何自分の隊みたいに言ってるのミリアムちゃん」

鶴紗「私も、一柳隊の一員になれて、うれしい」

夢結「梨璃…ここにいる皆は、貴女の元に集まったのよ。だからリーダーは、貴女以外いないわ」

梅「梅も、夢結と一緒のレギオンになれて嬉しいゾ」

梨璃「皆…!」

出雲「一柳がリーダーなら、副隊長は白井が勤めろ。まだリリィとして頼りない所があるが、シュッツエンゲルであるお前なら色々カバー出来るだろう」

夢結「そのつもりです。梨璃の足りない所は、私が補いますので任せてください」

出雲「そういうことだ。一柳もリーダーとして精進しろ」

梨璃「よかった…ですよね…」

出雲「ただし…!」

 

 

出雲が黒鉄を持って梨璃の顔に向けた。

 

 

出雲「私が見張ってる事を忘れるな。もしお前がまた弛んでいたらこいつでお前を突っつく。いいな?」

梨璃「は、はい!!」

梅「あはは…これなら大丈夫そうだな!」

 

 

皆で騒いでる中…奈々は夢結を見て安心していた。

 

 

奈々(昔の夢結さんに戻って良かったよ。美鈴さんもきっと喜んでるかな?)

 

 

こうして…百合ヶ丘に、新たなレギオンが誕生した。

 

 

そして、次の朝…

 

 

校門の前で、恐ろしい表情の夢結が奈々の前に立ちふさがっていた。

 

 

奈々「え…夢結さん…?」

夢結「貴女、昨日私が楽しみにしていたチョコレートケーキをよくも食べたわね…!!」

 

 

夢結は昨日、食堂で食べるはずだったチョコレートケーキを奈々に食べられた事に怒っていた。

 

 

奈々「た、確かに食べたのは悪かったと思ってます!でも仮にあったとしても、結構時間が経って食べれなくなるかと…」

夢結「言い訳むよおおおーーーう!!!」

 

 

夢結が奈々に対し、ルナティックトランサーを発動し、襲いかかった。

 

 

奈々「うぎゃああああーーーーー!!!??」

 

 

今日も、奈々の断末魔が学院中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

二水「次回は奈々さんのレアスキルが明らかになります!」

楓「ピーキー過ぎませんか!?」

 

 

 

 

NEXT 木葉奈々は狙われる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は奈々の活躍を混ぜた話に出来たと思います。
彼女のレアスキル、CHARMについては次の話で明らかにしますので、楽しみにしてくれたら嬉しいです。

出来るまで遅くなりますが、気長にお待ちください。

では!


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「7」木葉奈々は狙われる

今回はオリジナル回です。
何とか出来たと思ってます。
奈々のCHARM、レアスキルが明らかになります。
それではどうぞ。


今日、木葉奈々は今日の週間リリィ新聞を見た。

 

 

 

 

「大勝利、一柳隊!!」

 

百合ヶ丘に突如現れたレストアのギガント級ヒュージ。その性能はこれまで現れたヒュージの中で最強と言えるもので、百合ヶ丘最強のアールヴヘイムも苦戦を強いられました。

 

それもそのはず、このヒュージは2年前、甲州撤退戦で現れた個体で、初代アールヴヘイムも苦戦を強いられた相手だったのでした。

 

しかしそこへ活路を見いだしたのが、結成前の一柳隊と木葉奈々の存在でした!

 

初代アールヴヘイムに所属していた白井夢結様と、夢結様とシュッツエンゲルの契りを交わした期待のリリィ、一柳梨璃さんの活躍はMVP級の活躍でしたが…

 

夢結様をライバルとする凶星のリリィ、木葉奈々さんのルナティックトランサーからのCHARM二刀流の乱舞はアールヴヘイム、レギンレイヴからも驚く程でした!

 

彼女の活躍でヒュージの攻撃はほぼ完封され、最後は一柳隊、初のノインヴェルト戦術によって、ついにギガント級ヒュージは倒されました。

 

ですがこれは一柳隊だけの勝利ではありません。

 

今回のヒュージを倒したのは、他のレギオン…アールヴヘイムとレギンレイヴの協力があったからこその勝利です。

 

学院からも、正式なレギオンとして登録された期待のレギオン…一柳隊。

 

これからの活躍を期待してます!

 

それと、今回の戦いで大活躍した木葉奈々さん。

 

彼女のレアスキルは今だ解明されていません。

 

今後は彼女の秘密について調べていきたいと思っています!

 

 

 

と、書かれていた。

 

写真も、目立つように大きく載せていた。

 

 

奈々「うわあ…面倒な事になったかも…」

 

 

と、面倒くさくその場を後にした奈々。

 

 

 

そしてしばらくして奈々はレギオン専用の施設内のとある部屋の前にやって来た。

 

立て札には…一柳隊・控室と書かれていた。

 

 

奈々「ここかな?」

 

 

奈々はドアを開けた。

 

 

奈々「失礼しまーす」

「いらっしゃい」

 

 

声をかけてきたのは中央の大きなソファーで座っている夢結だった。

 

左側の隣には、梨璃と楓が座っており、雨嘉が座ってる席の横には神琳が座り、二水を除く残りのメンバーも小さなソファーに座ってる。

 

テーブルの上には、お菓子と紅茶の入ったティーポットとティーカップが置いてあった。

 

 

梨璃「ようこそ奈々ちゃん!」

楓「ここが梨璃さんがリーダーを勤める一柳隊の控室ですわ!」

奈々「中々いいね」

梅「まあ、他のレギオンの部屋とたいして変わらないけどな」

 

 

各レギオンの控室には、それぞれ最低限の家具が置かれており、要望があれば、学院の方で用意してくれるらしい。

 

奈々は周りを見てると、テーブルに置かれてるお菓子に目が入った。

 

 

奈々「食べてもいい?」

夢結「どうぞ」

奈々「ありがと!いただき!」

 

 

奈々はお菓子を一口とり、食べた。

 

 

奈々「おお…美味しいねこれ。レモンを加えてさっぱりした味が食べやすくていいね!」

神琳「分かるんですか?それ私が作ったんですのよ」

奈々「美味しいよ神琳ちゃん、味のバランスも中々だよ。いいセンス持ってるね」

 

 

神琳が作ったクッキーは好評だと、奈々は言う。

 

 

神琳「ありがとうございます」

 

 

奈々は続いて紅茶の入ったティーカップを手に取り、ゆっくり飲んだ。

 

 

奈々「うん。この紅茶も、このお菓子と相性抜群だよ。雨嘉ちゃんでしょ、この紅茶」

雨嘉「なんで分かったの?」

奈々「二人とも、いつも一緒にいるからかな?パートナーの事をよく知ってる証拠だよ」

雨嘉「私なんてまだ神琳の事をまだまだだし…」

奈々「それでもある程度は知ってるでしょ?部屋でもいつも一緒だったんだし」

雨嘉「……うん」

 

 

雨嘉を誉めた後、今度は鶴紗の方に目を向く。

 

 

奈々「鶴紗ちゃん、レギオンに入った感想は?」

鶴紗「それ、ここで言うことか?」

奈々「当然。で、感想は?」

鶴紗「………恥ずかしいからいい」

奈々「そういう事ね。ありがと」

鶴紗「どういう事だ?」

ミリアム「鶴紗をからかうのはよしたらどうじゃ?」

奈々「単に聞きたいだけなんだけどなぁ…」

鶴紗「おまえなぁ…」

 

 

そう話してる内に入り口のドアが開き、二水がタブレットを持ってやって来た。

 

 

二水「お待たせしました…あ、奈々さんもういらっしゃたんですか?」

奈々「まあね。所で…そのタブレット、学院から用意されたもの?」

二水「はい。実は今後のアップデートで、奈々さんに関するデータを取り直すと学院から言われまして、奈々さんにその協力をしてほしいのです」

梨璃「データ?」

夢結「きっとそれ、百由からの要望ね」

 

 

現在、百合ヶ丘女学院が保管している奈々に関するデータは、2年前の古いもので、今の奈々のスペックと結構食い違っている。

 

これは、奈々が甲州撤退戦の後…ブルーガードに転校したことで、奈々に関するデータを更新してなかったからである。

 

今回、百由が奈々のデータを更新する理由は、一柳隊結成直前に現れたギガント級ヒュージとの戦いで、無双の如く、圧倒的な強さを披露した奈々の戦いが学院のデータを大きく上回っており、全然噛み合わない事が分かり、再度データの編集を行う必要があったのだ。

 

 

奈々「ごもっともな理由だね…いいよ。すぐ終わるんだし」

ミリアム「ワシも手伝った方が良さそうじゃな。まあ奈々の強さが知りたいのも理由じゃがな」

梨璃「私達も見学していい?」

二水「勿論です!」

夢結「奈々のあの強さ…データではどんな結果が出るのかしら」

楓「私も気になりますわね」

 

 

と、皆も興味深々である。

 

二水の案内で、奈々は自身のデータの再編集に協力することになり、一柳隊も見学に参加することになった。

 

 

 

 

 

 

まず最初に訪れたのは、スキラー数値を調べるための大型スキャナーが置かれた部屋であった。

 

端末の操作は百由が担当。

 

側には、ミリアム、涼がアシスタントを勤めている。

 

奈々は白い服を着ており、大型スキャナーの中でうつ伏せになっていた。

 

別の部屋では、梨璃、夢結、楓、二水、雨嘉、神琳、鶴紗、梅がモニター越しで見ていた。

 

 

百由「さて、始めるわよ奈々さん」

奈々「百由さん、本当に調べるだけですよね?」

百由「当たり前よ。信用しなさいよ」

奈々「過去に百由さん、私の潜在能力を無理矢理引き出すためにくすぐりや電気ショックを私にしたことを忘れたんですか?」

百由「だ、大丈夫よ。今回はないから」

ミリアム「スキャナーを当てるだけじゃから心配せんでいい」

涼「これが奈々の2年前のデータか…」

 

 

涼はタブレットに入ってる2年前の木葉奈々のデータを見つけ、確認した。

 

 

涼「…………え!?」

ミリアム「どうしたのじゃ?」

涼「……スキラー数値が…29!?」

ミリアム「なんじゃと!!」

 

 

二人は2年前の奈々のデータに載ってるスキラー数値が低いことに驚いた。

 

リリィの性能は、スキラー数値に大きく左右され、レアスキルの習得条件にも関わる。

 

 

百由「ああそれ、最初の入学試験の時のデータね?」

涼「最初の入学試験?」

 

 

一方、梨璃達の方でも、奈々の過去の経歴について夢結から聞いていた。

 

 

梨璃「ええっ!?奈々ちゃん入学当時はリリィでは無かったんですか!?」

夢結「ええ。スキラー数値が低くて、学院が奈々を入学するか悩んでいた頃があったのよ。けどそんな奈々の面倒を見たのが当時、高等科だった出雲先生だった。先生は彼女をマディックとして仮入学をさせた後、奈々担当の教導官になって2週間の強化訓練を行ったわ。私と梅も彼女の訓練を見学したことがあったわ」

 

 

スキラー数値が50を越えることで、はじめてCHARMを扱うことができ、リリィと呼ばれるようになるが、逆にスキラー数値が25から49までの少女は、マディックと呼ばれる。

 

当然リリィではないため、ラーシ級のヒュージに決定打を与えることはできない。

 

 

二水「一部の校では、マディックをリリィに育てる制度があったそうです。スキラー数値は上げることが可能なので、マディックからリリィになるのも珍しくありません」

雨嘉「でも、CHARMが使えないんじゃヒュージを相手には…」

二水「それは大丈夫です。マディックにはCHARMが使えない代わりに通常の兵器をマギ戦使用に改造したアンチヒュージウェポンと呼ばれる武器を使って戦います。勿論CHARM程の性能はありませんが…」

梨璃「それでお姉様、奈々ちゃんはどうしたんですか?」

夢結「2週間の強化訓練後、2度の入学試験でスキラー数値が50に達して、奈々は晴れてリリィになり、百合ヶ丘に正式に入学出来たのよ」

神琳「マディックだった奈々さんを2週間でリリィに仕立てるなんて、先生って凄いですわね」

夢結「凄いと言うより、酷かったわ」

梨璃「え?」

夢結「先生は奈々に実戦での戦闘になれるために模擬ヒュージではなくミドル級ヒュージを一人で戦わせていたのよ」

梨璃「ミドル級!?」

楓「何考えてますのあの人は!?」

鶴紗「スパルタじゃないか…」

梅「だけど奈々は疑うことなくミドル級と戦ったよ。結局やられたけどな」

梨璃「えー……」

楓「神経おかしいんじゃありませんの!?」

 

 

出雲の知られざる過去に梨璃は少し青ざめた。

 

 

夢結「私も当時そう思ったわ。けど訓練から1週間後、奈々はミドル級を倒したのよ。そこから先生は、本格的に剣での戦いかたを奈々に教えたわ。彼女が近接攻撃を得意とするのはその影響なのよ」

梨璃「そうだったんですか」

 

 

一方、能力測定機では、奈々を計った後、モニターに奈々の身体能力、マギの保有値とスキラー数値が表示された。

 

 

百由「ふむふむ…身体能力は2年前から大きく上昇したわね。マギの保有…え!?」

ミリアム「百由様どうしたのじゃ?」

百由「……マギの保有値、平均以上…!!?」

ミリアム「なんじゃと!!」

涼「平均以上!?」

百由「これ…天葉の倍はあるわよ…!?」

 

 

現在、百合ヶ丘でマギの保有値が高いリリィはアールヴヘイム隊長の天野天葉と、ローエングリン主将の立原紗癒。

 

そして奈々はその二人の倍の保有値を持っているのだから驚きである。

 

 

百由「スキラー数値は…測定不能…!!?」

ミリアム「測定不能じゃと!?」

涼「壊れてる…わけないか…ちゃんと点検したんだし」

 

 

梨璃達の方でも奈々のデータに驚いた。

 

 

梨璃「そ、測定不能!?」

楓「あり得ませんわ!?」

二水「でも、機械は正常のようですよ!」

夢結「マギの保有値が天葉の倍ぐらいあるなら、ルナティックトランサーを長く使えるのにつじつまが会うわ」

 

 

前回、ギガント級ヒュージを相手に奈々はルナティックトランサーを発動してから撃破まで継続させていた。

 

当然マギの消費もかなりのもので、それだけ奈々のマギの保有値が高い事が分かる。

 

 

神琳「スキラー数値も倍ぐらいありますわね」

雨嘉「身体能力は平均を越えてる…」

鶴紗「こんなスペック…普通はいないぞ」

二水「100以上…これは流石に不味いんじゃないんでしょうか…!」

 

 

 

二水が言うように、スキラー数値が100を超えるのは危険であり、立原紗癒のスキラー数値…98もギリギリの範囲である。

 

 

 

 

しかし、これまでの奈々には何の症状もない。

 

 

百由の独断により、奈々のスキラー数値は95でデータに登録し、本当の数値に関しては保留にすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所換わって、今度は百由専用のラボに奈々や皆を呼んだ。

 

 

奈々「お次はどうするんですか?」

百由「貴女の持ってるCHARMとレアスキルの事を聞きたいの」

奈々「私のCHARMとレアスキル?」

百由「この前のヒュージとの戦いで貴女が披露したルナティックトランサーとCHARMの二刀流の事よ」

 

 

前に現れたギガント級ヒュージとの戦いは百由も見ていた為、奈々の戦いも確認済みである。

 

 

二水「それは私も知りたいです。ルナティックトランサーを使ってCHARMの二刀流…私の推測ではデュアルスキラーかと思うんですが…」

百由「奈々さんが披露したCHARMの二刀流…あれはレアスキルによるものでは無いわ」

二水「えっ?」

百由「理由はこの二本のCHARMよ」

 

 

そう言って百由は奈々から借りた二本のCHARM…カナベラルとブルメリアをテーブルに並べた。

 

 

百由「どうもこの二本は、片方を起動させると、それに連動してもう一本が任意で起動出来るように作られているのよ。まるでこの二本が1つのCHARMとして機能してるようにね」

梨璃「1つのCHARM!?」

二水「確かに、それなら円環の御手が無くても可能ですが、CHARM二本分のマギでは先程の威力は難しいと思いますが…」

 

 

と、二水の疑問に奈々は答えた。

 

 

奈々「実はこれ2本とも、起動に必要なマギの量がCHARMの1・2倍以上も必要なんだ」

ミリアム「1・2倍?なんか普通じゃな」

奈々「その代わり二刀流の時は3倍以上のマギを消費する事になる」

二水「さ、3倍!?」

梨璃「2・4倍じゃなくて!?」

奈々「威力を優先した結果、こうなったんだよ。威力は上がるけど、燃費がね。まあ私は保有値高いから」

夢結「マギの消費を押さえるとか出来ないの?」

奈々「そういう作りじゃないからね。これは…」

楓「二刀流で3倍とか、ピーキー過ぎますわよ!」

奈々「当時は私もそう思った」

百由「確かにそう言われると、円環の御手の方が燃費いいわね」

 

 

円環の御手が通常の1・5倍に対し、奈々が使った二刀流は更にその倍と、必要なマギの量が異常に上がっている。

 

威力はかなり上がるが、あきらかに効率が悪い。

 

 

奈々「まあ、詳しく説明しますよ。まずはこのカナベラル」

 

 

奈々は紅い剣のCHARM、カナベラルを持つ。

 

 

奈々「ご覧の通り、大きめの剣で攻撃に特化した武器で、第1世代のように変形機能は持っていないシンプルな作りになっています。使用してる素材も、マギが入っていなくても固いほどの強度の物を使用しています。攻撃力は高いですが、先程言った通り必要なマギの量が多くて、並のリリィでも結構扱いづらい武器です。あ、ちなみにこれ、ユニークCHARMですよ」

二水「ユニークって…これブルーガードで作ったんですか!?」

奈々「そうだよ」

楓「グランギニョルでも…そんな使いにくいCHARMは作りませんわ」

神琳「なるほど…確かにギガント級を圧倒したあの攻撃力は納得できますわ」

夢結「奈々の高いマギの保有値でないと扱えないCHARMって訳ね」

奈々「もうひとつは短剣のCHARM、ブルメリア」

 

 

奈々は青い短剣のCHARM…ブルメリアを皆に見せた。

 

 

奈々「こっちは見ての通りコンパクトな機体で、起動時にはマギの刃を発生させる特徴を持っています。カナベラル程の威力はないですが、結構強いですよ。このCHARMはマギの刃に触れた相手のマギを吸収することができる機能を備えていますから。その代わり起動時にはカナベラルと同じマギの量を必要とします」

雨嘉「マギを吸収!?」

梅「確かに便利なCHARMだけど、マギの消費が痛いな」

ミリアム「しかし、マギを吸収するというのは重要じゃな」

夢結「ええ。リリィやヒュージにとって、マギは戦闘力を左右する。消耗させれば当然、攻撃も防御も脆くなるから、その吸収能力はかなり重宝するわ」

楓「ですが、二刀流使うのに3倍のマギを使って戦うのはさすがに釣り合いませんわ。それではすぐにマギが無くなってしまいますわ」

奈々「そこで、二刀流で戦う際にはルナティックトランサーを使ってるんだ」

鶴紗「ルナティックトランサーを?」

 

 

ギガント級ヒュージとの戦いで奈々は、ルナティックトランサーを発動してから二刀流を使用していた。

 

 

百由「なるほどね。ルナティックトランサーはヒュージの周辺にある負のマギを体に宿す効果がある。奈々さんはその特性を使って必要なマギを確保してたわけね」

奈々「完全にギガント級限定の戦法ですけどね」

 

 

カナベラル、ブルメリアの二刀流使用とルナティックトランサーをまとう為の必要なマギは異常な量で、普通のリリィではすぐにガス欠になる。

 

だが、高いマギの保有値を持つ奈々と、ブルメリアの吸収能力、ルナティックトランサーで更に吸収したマギを加えれば、そのコストもかなり緩和する。

 

この戦法が使えるのは、ギガント級以上のヒュージ…マギを沢山保有する相手のみに限定される。

 

 

夢結「負のマギを体に宿すだけでも危険なのに、奈々は平気でいたわね」

梅「奈々の精神が強いってことだナ」

梨璃「奈々ちゃん凄いなあ…」

百由「ところで奈々さん、疑問はまだあるわよ」

 

 

百由が奈々に新たな質問を問う。

 

 

百由「貴女の持つレアスキル、ルナティックトランサーじゃないわよね?」

夢結「えっ?」

梨璃「えっ?」

 

 

百由から奈々への質問に梨璃と夢結は理解出来なかった。

 

他の皆も同様だが、百由と一緒だったミリアム、涼は別だった。

 

 

ミリアム「測定機では、レアスキルだけ確認出来なかったからの。結果も測定不能と出てるしな」

涼「多分、データにはないレアスキルだとは思うけど…」

夢結「でも、あの時奈々が使ったのはルナティックトランサーだったわ」

梨璃「私も見ました」

梅「梅達も御間違えるはずないゾ」

 

 

奈々は確かにギガント級との戦いでルナティックトランサーを使っていた。

 

しかし測定機ではルナティックトランサーと認識しなかった。

 

その疑問に、奈々は答えた。

 

 

奈々「……マスカレイド」

梨璃「え?」

奈々「ブルーガードで覚醒した私のレアスキルの名前」

夢結「マスカレイド?」

二水「聞いたことがないレアスキルです」

神琳「効果は何ですの?」

奈々「簡単に言えば、ブーステットリリィが持つブーステットスキル…エンハンスメントとアルケミートレースもどきが使えるレアスキルだよ。ちなみに私はブーステットリリィじゃないよ」

ミリアム「な、なんじゃそれは!?」

鶴紗「ブーステットリリィと同じスキルが使えるレアスキルなのか!?」

奈々「うん」

二水「なるほど、エンハンスメントはサブスキルを一時的にレアスキル化させる効果を持つ…それならサブスキルの狂乱の闇をルナティックトランサーに出来るのも納得がいきます!」

楓「それってつまり、複数のレアスキルが使えるって事じゃないですか!」

奈々「ブルーガードにいたときは、縮地とヘリオスフィア、鷹の目も使ってたかな?」

雨嘉「そんなに!?」

涼「サブスキルの項目には、インビシブルワン、聖域転換、千里眼も入っていたね」

夢結「奈々の単独戦闘に合ったスキル構成ね」

鶴紗「それで、アルケミートレースもどきというのは?」

奈々「本来アルケミートレースは自身の血液を媒介にして擬似CHARMを作る効果だけど、こっちはマギを固体化させて作るようになっています」

二水「マギを固体化?」

奈々「要するに、ビームの剣みたいな物が作れるって訳」

百由「試しにこれでやってみてくれる?」

 

 

百由はマギクリスタルのコアを奈々に渡す。

 

 

奈々「いいですよ。百間は一見にしかずですから」

 

 

そう言って、奈々はレアスキル…マスカレイドをの能力の一部を発動させ、渡されたマギクリスタルのコアに半透明の刃を作り出した。

 

 

梨璃「あっ!」

二水「ちゃんとCHARMになってます!」

涼「まるでビームソードみたいだね」

奈々「ワイヤーや投擲用の武器も作れますが、マギを多く消費しますから、万が一の手段として使わないようにしてるんです。これがアルケミートレースもどきと呼んでる理由です」

 

 

燃費が悪いけど、CHARMを手離してしまった時の保健としては使える能力のようだ。

 

 

百由「話をまとめると、奈々さんは扱いにくい二本のCHARMを高いポテンシャルを持ったレアスキルで、あらゆる状況に対応できる前線に立つアタッカーリリィって訳ね」

梨璃「なんか奈々ちゃんって、最強のリリィって名乗ってそう」

奈々「これでもまだまだだよ。私には夢結さんに勝つって目標があるからね。そして先生に勝って、私は初めて最強のリリィを名乗れるからね」

夢結「そう簡単に勝ちは譲らないわよ。奈々」

 

 

夢結も余裕な笑みで奈々に言う。

 

 

梨璃「やっぱり二人とも凄いなあ…私も頑張らないと…」

楓「それなら私が教えて差し上げますわ!手取り足取り…」

 

 

と言って楓は梨璃に抱きつき、右手をそのままお尻の方へ伸ばすが…

 

奈々に手首を捕まれ、梨璃へのヒップタッチは阻止された。

 

 

奈々「そこのリリィさん、痴漢は犯罪ですよ」

楓「くっ、貴女もスキンシップを邪魔するのですか?」

奈々「何がスキンシップなの?」

百由「随分と仲がよくなったのね」

奈々「そういうことです。ですが…おかしいですね」

 

 

奈々はまだ疑問な表情をしていた。

 

 

楓「何かありますの?」

奈々「マスカレイドに関する情報はブルーガードから全世界に公開してるはずなんですが…」

百由「え?」

 

 

二水はタブレットを操作し、百合ヶ丘のデータベースを確認した。

 

 

二水「あっ!レアスキルのデータが更新されています。えっと…ありました!マスカレイドの名前が載ってます!」

 

 

奈々の言う通り、マスカレイドの名前がデータベースに載っていた。

ミリアム「百由様…この機械のデータ更新がまだ…」

 

 

呆れた視線を百由に向けるミリアムと涼。

 

 

百由「………さて、必要な情報は揃ったし、これからデータをまとめた後、理事長に報告するから失礼するわね。お疲れ様」

奈々「え?…こ、こちらこそお疲れ様です」

 

 

百由は気まずくなったのか、この場から去っていった。

 

 

ミリアム「……逃げたな」

涼「だね」

梨璃「奈々ちゃん、放課後暇かな?」

奈々「他に予定ないけど何か?」

梨璃「私と模擬戦してほしいの」

 

 

梨璃が奈々に模擬戦を誘ってきた。

 

 

奈々「私と?」

梨璃「私、まだまだだけど…奈々ちゃんに私の実力がどこまでやれるかやってみたいの」

 

 

梨璃は奈々との戦いで学べるものがあるかもしれないと思い、模擬戦を申してきたのだろう。

 

 

奈々「いいよ。全力でね?」

梨璃「うん。よろしくお願いね」

楓「くっ、まさかここにお邪魔虫がいたなんて…!」

奈々「お邪魔虫って私かい」

夢結「奈々、もし梨璃に大きな怪我をさせたら…わかってるわね?」

奈々「うおっ!分かってますって!」

 

 

奈々はこの後、梨璃との模擬戦を行った。

 

結果は奈々の圧勝だった。

 

梨璃も夢結から教わった戦い方を生かして奈々に挑んだものの、圧倒的な力の差で敗れた。

 

こうして今日の一日は終わった。

 

 

 

 

 

そして次の日…

 

奈々は掲示板を見ると、新たなリリィ新聞が貼ってあった。

 

近くには多くの生徒で溢れていた。

 

奈々はリリィ新聞を見ると、眉間にシワを寄せていた。

 

 

その内容とは…

 

 

 

 

 

 

「ピーキーガール、木葉奈々!!」

 

 

昨日の記事で紹介した木葉奈々さんはギガント級ヒュージを圧倒させる活躍を見せました。

 

そんな彼女には、尖った性能を持った二本のCHARMがあったのです!

 

高火力を持つ紅き剣のカナベラルと、相手のマギを吸収する蒼き短剣のブルメリア。

 

共に異常なマギの消費を掛け持つこの二本のCHARMですが、彼女は持ち前のレアスキル、マスカレイドの能力でそれらをカバーしました。

 

戦闘技術もそうですが、甲州での戦い…ブルーガードでの強化活動…度重なるヒュージとの戦い…これらの経験も彼女の強さに貢献し、木葉奈々さんの独自の戦闘スタイルを作りあげたんです。

 

そして…マスカレイド。

 

これはエンハンスメントとアルケミートレースのスキルが使えるセットのレアスキルで、まだ全世界で奈々さんしか持っていません。

 

そんな彼女の目標は…孤高のリリィと呼ばれた一柳隊の副隊長、白井夢結様に勝つことらしいです。

 

いつか来る木葉奈々さんと白井夢結様の夢の対決に私も期待しています!

 

 

 

 

 

いつの間にか、この場にいる全ての生徒が奈々を見ていた。

 

 

奈々「ふ……ふ、二水ちゃーーーん何載せてんのーーー!!!!!!!」

 

 

余計なことをされ、奈々は二水に対する怒りをあらわに叫んだ。

 

 

「あーっ!見つけましたわ!」

奈々「え!?」

 

 

奈々は声が聞こえた方へ顔を向けると、そこには桃色の長い髪の子…遠藤亜羅椰がいた。

 

 

奈々「うわ、めんどくさいのが来た!」

亜羅椰「めんどくさいって何ですの!?とにかく、私と勝負しなさい!」

奈々「何で!?前に模擬戦やったじゃん」

亜羅椰「あんなの勝負とは言いませんわ!」

 

 

遅れて壱、樟美、天葉、依奈もやって来た。

 

 

壱「亜羅椰、また厄介事を…」

樟美「亜羅椰ちゃんたら…」

依奈「奈々さん、貴女何をやったの?」

奈々「人をトラブルメーカーみたいに言わないでくださいよ!ただ前に亜羅椰ちゃんから申し込まれた勝負の時に縮地を使ってボディスラムで倒しただけですよ」

天葉「CHARM使ってないの?」

亜羅椰「とにかく、私と勝負しなさい!今度こそあんたを倒して…」

 

 

亜羅椰が話してる間にいつの間にか奈々はいなくなってた。

 

 

亜羅椰「って、いない!?」

天葉「逃げたね」

衣奈「あれがマスカレイド?」

壱「縮地じゃなくて?」

天葉「マスカレイドでインビシブルワンをレアスキル化させたのよ。新聞の内容通り、ほんとに何でもありのレアスキルだね」

 

 

天葉は奈々の強さを評価していた。

 

 

 

 

一方…亜羅椰から逃げ切った奈々は庭にやって来た。

 

後ろを振り向き、亜羅椰が追ってきてないか確認すると、前に振り向き、ホッとした。

 

 

奈々「ふう…上手く逃げ切れたかな…?」

「奈々ちゃん?」

「奈々?」

 

 

目の前にいる梨璃と夢結に声をかけられた。

 

 

奈々「梨璃ちゃん、夢結さん。二人でお散歩ですか?」

夢結「ええ。訓練の後の休憩だけどね」

梨璃「奈々ちゃんはどうしてここに?なんか汗かいてるけど…」

奈々「二水ちゃんが今日出したリリィ新聞のせいで面倒な子に追われてね…」

夢結「予想はしてたけど…面倒な子?」

梨璃「誰なの?」

奈々「実は李組の…」

「お待ちなさい!!」

奈々「!?」

 

 

遠くから逃げ切ったはずの亜羅椰が追っかけてきた。

 

 

奈々「うわ!しつこい!」

 

 

奈々は再び亜羅椰から逃げた。

 

亜羅椰も奈々の後を追っていく。

 

 

亜羅椰「あんた、あの時全力を出してませんでしたわね!」

奈々「別に全力をような勝負じゃないでしょ?」

亜羅椰「何言ってますの!?勝負と言ったら全力の勝負に決まってるでしょ!」

奈々「そんなの亜羅椰ちゃん最初に言ってなかったし」

亜羅椰「言わなくても普通はそうでしょ!」

奈々「知らんがな」

 

 

逃げる奈々はついに訓練場まで来た。

 

結構広いこの場所なら自由に動けるだろうが…

 

この時奈々は1つの誤算を知った。

 

 

亜羅椰「てりゃああああーー!!」

 

 

なんと、亜羅椰が背中に背負っていた愛用のアステリオンを起動させ、ブレイドモードにして奈々に襲いかかってきた。

 

奈々は早く反応し、亜羅椰のアステリオンによる降り下ろしをバックステップで回避した。

 

 

奈々「今のマジの攻撃したよね!?」

亜羅椰「もう一度言いますわ。私と勝負しなさい!」

 

 

亜羅椰は完全にやる気の用である。

 

しかも、会場には数十人程の生徒が集まり、二人を注目していた。

 

今回のリリィ新聞の内容が広まり、奈々の戦いを見たいと言う生徒が増えてきたのだ。

 

更には一柳隊の面々もやって来た。

 

こうなってしまったら、奈々にこの場を避ける術はない。

 

奈々は亜羅椰の方を見ると、真剣な表情をしていた。

 

 

亜羅椰「私にも、プライドがありますの。今度は全力で行きますわ。木葉奈々!貴女も全力で来なさい!」

 

 

彼女の言うことも一理あると感じた奈々は、腰に付けたカナベラルを抜く。

 

 

亜羅椰「やる気になりましたわね」

奈々「亜羅椰ちゃんの言う通りだよ。先程の勝負は勝負するものとして失礼だった。ただ私は自分の話題で周りに色々言われるのが嫌だった…でも、それが君のプライドを傷つけた。本当にごめん。だから……」

 

 

奈々はカナベラルを起動させた。

 

 

奈々「今度は君の要望通り、全力で行く。最初に言っておくけど…CHARM壊れたらごめんね!」

亜羅椰「何を言ってるのか知らないけど、掛かってきなさい!」

奈々「それじゃ遠慮なく!」

 

 

奈々はマスカレイドの能力で縮地を発動させ、即座に亜羅椰の至近距離に着く。

 

 

亜羅椰「早い!?」

 

 

そのまま奈々はカナベラルを降り下ろす。

 

亜羅椰も即座にアステリオンを構えて降り下ろされるカナベラルを受け止める。

 

 

 

 

 

 

 

が、亜羅椰のアステリオンがブレードごと真っ二つに叩き割れてしまった。

 

咄嗟に奈々はアステリオンを割った直後、カナベラルを止めた。

 

 

亜羅椰「…………………え!?」

奈々「………まあこうなるよね…」

 

 

その光景を見た観客の皆はしばらく静寂が続いた。

 

一柳隊…アールヴヘイムも言葉を失う位に…

 

まさにそれは、圧倒的な力の差を見せつけられた瞬間であった。

 

それもそのはず…奈々のカナベラルは常に高い威力で固定されるため、模擬戦に使っていいCHARMではない。

 

コストの低いグングニル、アステリオンといった量産機では、いくらマギを込めても、カナベラルの圧倒的な威力に負けてしまうからだ。

 

楓曰く、ピーキー過ぎるCHARMである。

 

これに対抗できるCHARMといえば、ブリューナグ、ダインスレイフ、グラム、ティルフィング等の高コストの物ぐらいである。

 

ちなみに、梨璃と模擬戦したときは同じグングニルで戦ったとのこと。

 

 

 

 

 

この模擬戦の後、奈々は学院から模擬戦でのカナベラルの使用を禁じられたという…

 

奈々自身は特に問題は無いと言うが、亜羅椰の方は、いつか新しいCHARMでリベンジすると言い、それまで勝負はお預けとなった。

 

この原因を作った二水はこの後、奈々から間接技を受けたのだった…

 

 

 

 

 

 

奈々と亜羅椰との模擬戦から数日経ち…

 

奈々は一柳隊の控え室で一柳隊の面々と一緒にお菓子を食べていた。

 

 

ミリアム「まさかあれほどの威力だったとはのう…」

 

 

あの模擬戦を見たミリアムはその後、自分のニョルニールを更に強化するための改造を度々していたらしい。

 

 

雨嘉「私が奈々と戦ったらCHARM折れてたかも」

二水「私と梨璃さんも同じグングニルですし」

梨璃「あの時の模擬戦は奈々ちゃんも私と同じCHARMだったからね」

神琳「凄いCHARMですわね。奈々さんの」

奈々「私もまさか本当に折れるとは思わなかったから」

楓「CHARMだけでなく、貴女もピーキーですわね」

鶴紗「エンハンスメントとアルケミートレース…どっちも使用に必要なマギが多い…2つの能力をあわせ持ったマスカレイドなら尚更ね」

 

 

奈々のレアスキル、マスカレイドは他のレアスキルよりマギの消費が高い為、奈々程のマギの保有値が無いと続けて使用するのは難しい。

 

夢結が使うルナティックトランサーと奈々が使うマスカレイドからのルナティックトランサー…

 

当然マギの消費量は奈々の方が多いのだ。

 

 

夢結「縮地と鷹の目…これらはマギの消費こそ少ないけど、マスカレイドからの発動を考えると、効率が悪いわね」

奈々「私の今のマギの回復量ならそれくらいは大丈夫ですよ」

梅「梅の専売特許が取られないよう、頑張らないとだナ」

 

 

と、話してる内に扉が開き、出雲が入ってきた。

 

 

出雲「全員揃ってるな」

梨璃「出雲先生!」

楓「先生が来るなんて珍しいですわね」

二水「何か訓練の報告でしょうか?」

出雲「いや、今回私がここに来たのは訓練の話ではない」

奈々「訓練じゃないとすると…もしや…」

出雲「木葉はもうわかったようだな」

夢結「先生…今回はまさか…」

出雲「ああ…」

 

 

 

 

 

 

 

出雲「これより一柳隊…木葉奈々は、下北沢へ遠征に向かう」

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

二水「次回は一柳隊が他校のリリィ達と協同します!」

奈々「このギガント級…いつもと違う…!?」

 

 

 

NEXT 一柳隊は強敵と出会う

 

 

 

 




次の更新も亀更新になるかも知れませんが、
こんな小説でも、最後まで作りたいと思ってます。

次回の話はいよいよ、他校のリリィ達が登場します。
舞台版アサルトリリィを見た人ならわかる内容です。
お楽しみ!!


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「8」一柳隊は強敵と出会う

大変遅くなりました!
今回少しのアレンジを加えて、合計36000文字になりました。
本作二話分のボリュームです。
気に入るかどうかわかりませんが…
どうぞ第8話、御覧下さい!


一柳隊、木葉奈々、そして神楽月涼は今、大型ヘリに乗って東京の下北沢へ向かっていた。

 

ヘリ内では、出雲から今回の下北沢で起きてる事態について説明を受けていた。

 

 

奈々「東京下北沢にケイブが!?」

出雲「そうだ。今現在スモール級、ミドル級のヒュージが多数出現して、街を暴れまわってる。ギガント級の姿はまだ確認されていないとのことだ」

梨璃「ケイブ…ヒュージが通るワームホールの事ですね」

出雲「その通りだ。ケイブがあれば、ヒュージは次々と現れる。ケイブを破壊できるのはCHARMを持つリリィのみだ」

夢結「現在その場にいるリリィは?」

出雲「私立ルドビコ女学院の4人だ。しかし数に押されて対処しきれなくなってきてる。援軍として、エレンスゲ女学園から一人、神庭女子藝術高校から一人、御台場女学校から4人が現場に向かっている」

梅「梅達を加えて主力は22人か…」

出雲「悪いが今回私は別のエリアで戦っている別部隊のリリィ達と合流する為、別行動になる。私の助けはないと思え。主力は私を除く21人だ」

奈々「別のエリア、一体どこへ?」

出雲「別のリリィ達が向かっているケイブの破壊だ。こっちの方はリリィの数が少なく、ヒュージに押されている…ここは私が片付けておくから心配するな」

二水「一人で大丈夫何ですか!?」

出雲「心配はいらん。お前達は自分の役目を成せばいい」

楓「しかし、今回の遠征では私達のレギオン、一柳隊が選ばれたようですが…」

ミリアム「ふむ、百合ヶ丘にはアールヴヘイムやレギンレイヴといった強豪レギオンがいるはずじゃが、何故結成したばかりの一柳隊なのじゃ?」

出雲「アールヴヘイムは前回のヒュージ戦でほとんどのCHARMを半壊している。復帰にはまだ時間がかかる。レギンレイヴはアールヴヘイムの代わりに学院の防衛に専念している。残り二組の遠征レギオンも別の遠征で留守にしている。今回一柳隊が抜擢されたのは、実戦経験を積む事と、遠征での他のリリィとの連携になれてもらう為だ。そして何より、お前達はギガント級を倒している」

鶴紗「そういえば確かに…」

奈々「確か…遠征に行けるレギオンは、ギガント級を一体倒していればの話だったね」

 

 

百合ヶ丘女学院では、ギガント級ヒュージを倒した成果によってレギオンに聖白百合勲章と呼ばれる勲章が受章され、これを持つレギオンは守備範囲外での遠征が可能になる。

 

一柳隊は、ギガント級をノインヴェルト戦術と奈々の連携で倒した功績を残し、学院から聖白百合勲章を受章され、遠征レギオンとして登録されたのだ。

 

 

神琳「確かに、遠征での戦いはリリィ同士の連携が重要になりますわね」

雨嘉「私達で大丈夫かな…ううん、やらないと…!」

出雲「その行きだ王。今のお前達なら戦闘技術、経験、どちらも今回の遠征でもやれるはずだ。お互いの能力を行かして戦え。いいな?」

「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」

 

 

出雲の話に全員がいい返事をした。

 

 

楓「それで、何故涼さんも一緒にいるんですの?」

涼「今回の下北沢に出没したヒュージ…百合ヶ丘のデータベースにはない別の個体の可能性があるんだ。僕が百由様にそのヒュージの調査を頼まれて特別に遠征を許可されたんだ」

 

 

ギガント級を倒していないリリィ…涼の場合は学院からの依頼で外部での遠征が許可される事がある。

 

奈々に関しては、ブルーガードで取得したライセンスのお陰で、特別に遠征が許可されている。

 

 

奈々「別の個体…」

ミリアム「百由様が気になる別の個体か…」

涼「ノインヴェルト戦術を行う以上、小型ヒュージ達が妨害してくるだろうし、そこは僕と奈々に任せてくれ。僕のレアスキルはこういうのに役立つ」

楓「分かってますわ。訓練の時、助けてくれましたし」

出雲「ともあれ、実際会えば分かることだ。それと一柳、これを受け取れ」

 

 

梨璃は出雲からコンパクトな小さなケースを渡された。

 

 

梨璃「これは?」

出雲「ノインヴェルト戦術用の弾が入ったケースだ。担当となったレギオンのリーダーに必ず1つ支給されるようになっている」

鶴紗「これを渡すということはまさか…」

奈々「ギガント級が現れる可能性もある」

 

 

奈々は出雲が梨璃にノインヴェルト戦術用の弾を渡した理由が分かっていた。

 

 

出雲「その通りだ。現場にはスモール級、ミドル級のみだが、映像の状況を見たところビルといった高い建物がほとんど半壊している。ギガント級でなければ出来ない芸道だ」

「出雲先生、そろそろ現場の東京下北沢に到着します」

 

 

ヘリのパイロットが出雲にもうすぐ現場にたどり着くことを伝える。

 

前を見ると、東京下北沢の街並みが見えてきた。

 

しかしヒュージの出現で街はボロボロに果てていた。

 

 

出雲「サーチャーで敵の数は確認できたか?」

「既に分析完了です。スモール級は19体、ミドル級が15体、新たにラージ級が1体確認されました。別の場所ではスモール級が残り2体とミドル級が5体と、今も減っています。更に別の場所はスモール級4体、ミドル級が3体です」

奈々「他のリリィ達は既に合流してるみたいですね」

夢結「梨璃、ここからは今までの防衛戦とは違うわ。気を引き締めて行くわよ」

梨璃「はい。お姉様!」

出雲「今回の任務だ。まず一柳隊は、他のリリィ達と合流、連携を取りながら街全体に徘徊するヒュージを撃退しつつ、後から現れるギガント級の撃破だ」

鶴紗「要するに、仲間と協力して戦えばいいんでしょ?」

梅「梅と夢結も遠征での経験があるからナ。任せてくれ」

二水「ききき、緊張してきました…一体どんなリリィなんでしょう…!」

奈々「落ち着け」

出雲「今回はいつもの防衛とは訳が違うから覚悟してかかれ。神楽月は一柳隊の指揮下に入ってサポートしろ。木葉は…」

奈々「一足先に他のリリィ達と合流します!」

 

 

もう出撃する気漫々の奈々であった。

 

しかし出雲は止めることもなく…

 

 

出雲「………無茶はするなよ」

奈々「了解!!」

 

 

出雲から許可を貰い…奈々は先にヘリから飛び降り、マギの力で飛翔して下北沢の中央へ飛んでいった。

 

 

夢結「奈々!?」

楓「あの子また勝手に!?」

梅「あはは、まあ奈々なら大丈夫じゃないか?」

夢結「いくらマギの保有値が高くても、持ってるCHARMの消費量が高いんじゃ、いつマギが切れてもおかしくないわ」

鶴紗「性能がピーキーだからな。押さえるのは不可能に近い」

ミリアム「アイツぐらいじゃからな。あんなCHARMを扱えるのは…」

出雲「それぐらいはアイツが一番知っているから心配はいらんだろう」

神琳「私達もすぐに合流した方がいいですわね」

雨嘉「うん」

「着陸地点まで後20秒!」

 

 

まだ倒壊していないビルのヘリポートが見えてきた。

 

 

楓「一柳隊の初遠征ですわね」

 

 

一同、CHARMを起動状態にする。

 

 

出雲「この際だ。一柳、出撃する時に号令をかけろ」

梨璃「わ、私がですか!?」

出雲「一柳隊の隊長なんだからそれぐらいはやれ」

夢結「梨璃、貴女のレギオンなのだから胸を張って言いなさい」

楓「梨璃さんの号令なら何でもいいですわ」

雨嘉「私も、梨璃の号令が聞きたい」

二水「梨璃さん、お願いします」

鶴紗「頼む」

梨璃「………はい」

 

 

ヘリはヘリポートにたどり着き、ドアが開くと梨璃率いる一柳隊と涼が外に出た。

 

そして梨璃は号令をかける。

 

 

 

 

 

 

梨璃「一柳隊…出撃!!」

「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

 

 

一柳隊と涼は作戦を開始し、行動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、単独で移動中の奈々は、小型ヒュージの群れに遭遇するが…

 

 

奈々「引き倒す…もとい、斬り倒されたいかー!!」

 

 

奈々はカナベラルを降り下ろした時に放った斬撃をヒュージの群れにぶつけ、倒しつつ前進していた。

 

ちなみに今は商店街を通り、他のリリィ達の反応がある場所へ移動している。

 

 

奈々「ブルーガードにいた頃の時に遭遇した群れ程じゃないけど、個体ごとの強さはそれ以上かな…」

 

 

この時点で奈々は移動中にスモール級8体、ミドル級6体を倒していたが、ヒュージ自体は見たことのない新しい個体で、ワンランク上の強さを持っていた。

 

しかし奈々もまた普通のリリィとは飛び抜けた強さを持ち、例えワンランク上のヒュージが相手でも、奈々のマギを乗せたカナベラルを喰らえば一撃である。

 

 

奈々「ん?」

 

 

突然奈々は先の下北沢駅前で人影を見つけた。

 

その人影の数は合計10人もいた。

 

近づく度にその姿がハッキリと見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「今回のケイブ…ルドビコ女学院だけでは手が回らないそうですわね」

 

 

青紫の制服をまとい、蝶の髪飾りを着けた焦げ茶色の長髪の少女が上から目線の言い方で話す。

 

 

 

御台場女学校 2年生 ロネスネス 隊長 船田純(ふなだ きいと)

 

CHARMは、ダインスレイフ。

 

夢結が使っていた物と違い、色が銀色となっている。

 

 

 

 

「ええ。以上な数で、私達では押しきれなくて…」

 

 

焦げ茶色の制服をまとい、ピンクのリボンでポニーテールにした黒髪の少女が話す。

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 2年生 福山・ジャンヌ・幸恵(ふくやま・じゃんぬ・さちえ)

 

使用CHARMはフィエルボワ。

 

ヨートゥンシュベルトに似た形状で、性能はそれ以上である。

 

 

 

純「私達がギガント級を見つけますわ。あなた達はスモール級、ミドル級の相手をしてくれればいいですわ」

「純!」

 

 

和風の白い服をまとい、花の髪飾りを着けた白のロングの少女が純をしつける。

 

 

御台場女学校 2年生 船田初(ふなだ うい)

 

使用CHARMはグングニル・カービン。

 

 

 

 

初「ごめんなさい、純も悪気があって言ってるわけじゃないから」

「いえいえ、気にしてませんから」

 

 

幸恵と同じ制服をまとい、ウグイス色の三つ編みのツインテールの少女が気にしてないと言う。

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 1年生 岸本・ルチア・来夢(きしもと・るちあ・らいむ)

 

使用CHARMは、アステリオン。

 

 

 

 

 

「噂通りの自信家ですね…」

 

 

同じ私立ルドビコ女学校の制服をまとった、暗めの金髪で左右に三つ編みをしたメガネの少女が小言を言う。

 

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 2年生 松永・ブリジッタ・佳世(まつなが・ぶりじった・かよ)

 

使用CHARMはダインスレイフ・カービン。

 

グングニル・カービンと同様、変形構造を省いた真島百由が手掛けた量産機である。

 

 

 

 

 

「だが、少しでも戦力は欲しいしな」

 

 

御台場女学校の制服に栗色のジャケットを羽織った茶色のショートカットの子が喋る。

 

首にはヘッドホンをかけていた。

 

 

御台場女学校 2年 ヘオロットセインツ 副隊長

川村楪(かわむら ゆずりは)

 

使用CHARMはダインスレイフ・カービン

 

 

 

 

 

「ラージ級もいましたし、こちらも数は揃えたい所ですわね」

 

 

藍色の制服をまとい、黒いロングの後ろに黄色のリボンを着けた少女が楪に合わせて話す。

 

 

 

 

御台場女学校 2年 ヘオロットセインツ 月岡椛(つきおか もみじ)

 

使用CHARMはグングニル・カービン。

 

 

 

 

「そう言えば、今回の遠征には、百合ヶ丘女学院のリリィ達も来るとの情報がありました」

 

 

首に赤いリボン、白の制服に藍色のスカートをまとい、髪止めを着けた藍色のショートカットの少女が話す。

 

 

 

 

エレンスゲ女学院 1年 ヘルヴォル 隊長 相沢一葉(あいざわ かずは)

 

使用CHARMはグングニル・カービン。

 

 

 

 

「百合ヶ丘と言ったら…あの孤高のリリィ、白井夢結さんがいるあの…!」

 

 

赤い制服をまとい、薄紫のロングの左右にリボンを結んだ少女が白井夢結の事を明かす。

 

 

 

 

 

神庭女子藝術高校 2年 グラン・エプレ 今叶星(こん かなほ)

 

使用CHARMはダインスレイフ・カービン。

 

 

 

初「その情報なら、私達も聞いたわ」

楪「夢結にも会えるといいな」

純「会えたとしても一緒に戦える?」

 

 

純が夢結の事に疑問を感じた。

 

 

楪「夢結がそうなったのは…2年前の甲州撤退戦で、自分のシュッツエンゲルを亡くしてるんだ。その時ルナティックトランサーを使った事から夢結に疑いがかけられたんだ」

 

 

夢結のシュッツエンゲル…川添美鈴は2年前、甲州撤退戦で帰らぬ人となっていた。

 

 

初「2年前…甲州撤退戦ですわね」

幸恵「ええ。実際、シュッツエンゲルの遺体の傷には、夢結のCHARMで付けた傷跡があったと言われてるわ。でも、連れのリリィが説得したお陰で疑いは晴れたけど…夢結自身、記憶が曖昧な状態で、それ以来自分自身を責め続けていたみたい」

楪「それから夢結は、ルナティックトランサーを封印する事になったんだ」

 

 

幸恵、楪は、夢結と一緒に戦った頃があり、夢結に関する情報も、少しは知っていた。

 

 

佳世「私も同じルナティックトランサー使いだからわかります。ルナティックトランサーはバーサーク状態で戦う際、その時の記憶が曖昧になるので、恐らく…夢結様はシュッツエンゲルの死の状況をよく覚えていないことが…耐えられないから…」

来夢「それって、夢結様はルナティックトランサー無しで今まで戦っていたって事ですか?」

 

 

だとすると、夢結は他のリリィよりも大きなアドバンテージを背負ってヒュージと戦っていた事になる。

 

レアスキル無しでギガント級以上の敵と戦う以上、苦戦を強いられる事は間違いないだろう。

 

 

純「要するに、ルナティックトランサー扱いきれてないって事でしょ?それでシュッツエンゲルを亡くした」

佳世「そ、それは…」

純「私と姉様も、ルナティックトランサー使いですけど上手くやっていますわ」

 

 

強気で言い張る純。

 

 

佳世「そ、そうですが…」

純「それにここは東京よ。百合ヶ丘のリリィなんてどうでもいい…私達二人でギガント級を見つけて解決すべきですわ!」

「慢心は重大な危機を招きますよ。純さん」

 

 

他校のリリィ達の話に奈々が入ってきた。

 

 

純「こ、木葉奈々!?」

奈々「百合ヶ丘のリリィなんてどうでもいいと、随分と酷い言い様ですね」

幸恵「奈々さん!」

 

 

奈々が目の前に現れて、幸恵、楪、椛、一葉、叶星が奈々の元に集まった。

 

 

幸恵「久しぶりね奈々さん」

椛「また会えましたね。奈々さん」

楪「お前もこの遠征に来たのか!」

奈々「はい。こちらこそ久しぶりです」

一葉「奈々さん、こないだの遠征は助かりました」

奈々「いいっていいって」

叶星「こちらの方も、本当にありがとね」

奈々「困ったときはお互い様ですよ」

 

 

話してる内に幸恵は奈々の服装に気付く。

 

 

幸恵「その服…百合ヶ丘女学院に入ったの?」

奈々「入学当時は百合ヶ丘に入ってましたから」

来夢「幸恵お姉様、この方は?」

 

 

来夢が幸恵に初対面の奈々について聞いた。

 

 

幸恵「来夢は初対面だったわね。この子は木葉奈々。1年前にルドビコ女学院に協力してくれたリリィよ。奈々さん、この子が私のシュベスターの岸本・ルチア・来夢よ」

 

 

 

 

 

シュベスター……

 

私立ルドビコ女学院では、シュッツエンゲル制度に似たシュベスター制度が存在しており、上級生から契りを交わした下級生はシュベスターと呼ばれるようになる。

 

彼女…福山・ジャンヌ・幸恵は2年前、来夢の姉、岸本・マリア・未来のシュベスターとして一緒に戦っていたのだが、その未来が幕張奪還戦の準備中に亡くなられた。

 

その2年後…幸恵の元に、未来の意志を継ぐ妹の来夢が入学してきて、彼女をシュベスターとして迎えた。

 

来夢が持ってるアステリオンは、姉の未来が使っていた先行量産型で、色もラベンダー色となっている。

 

 

奈々「木葉奈々だよ。確か来夢ちゃんだったっけ?お互い1年生だし、よろしくね」

来夢「はい。岸本・ルチア・来夢です。こちらこそよろしくね、奈々ちゃん」

佳世「2年の松永・ブリジッタ・佳世と言います!」

奈々「こちらこそよろしくお願いします」

 

 

奈々は二人を見て思った。

 

 

奈々(来夢ちゃんは梨璃ちゃんのように優しい子だな…対して佳世さんは何か、二水ちゃんと同じものを感じるな…って…岸本?)

「木葉奈々!」

 

 

今度は純がやって来た。

 

付いていくかのように初も来た。

 

 

純「百合ヶ丘からは貴女だけですの?」

奈々「ううん、レギオンと+1名も来てますよ」

初「来てますよって、一緒じゃないの?」

奈々「皆と合流するために単独で来たんですよ。後、純さん」

 

 

奈々は真剣な顔で純を見つめた。

 

 

奈々「百合ヶ丘のリリィを甘く見ないでくれます?貴女が思ってるほど百合ヶ丘のリリィは弱くありませんよ」

純「盗み聞きとは趣味の悪いことしますわね」

奈々「こっちに響く程声が大きかったので」

純「誰の声が大きいですって?」

奈々「まだ純さんだとは言っていませんよ?」

 

 

真剣な顔から遊び半分の表情に変える奈々。

 

 

純「ぬぬぬ………!」

初「純、落ち着いて…」

 

 

何も言えないのか、悔しがる純を落ち着かせる初。

 

 

楪「奈々、一緒に同行しているレギオンって、アールヴヘイムなのか?」

奈々「いえいえ、別のレギオンですよ。特にそのレギオンのなかには…」

「貴女が木葉奈々さんですね?」

 

 

誰かが奈々に話しかけてきた。

 

奈々は声がした方に顔を向けると、来夢と同じ制服を着た桃色のロングの少女がそこにいた。

 

長い髪は、後ろの左右にゴムで留め、2つに分けている。

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 1年生 戸田・エウラリア・琴陽(とだ・えうらりあ・ことひ)

 

使用CHARMは、グングニル・カービン。

 

 

奈々「君は?」

琴陽「私、戸田・エウラリア・琴陽と言います。ブルーガードの木葉奈々さんですよね?」

奈々「そうだけど、今は百合ヶ丘のリリィとして…」

琴陽「是非とも1つ…お手合わせお願いします」

 

 

琴陽がグングニル・カービンを構えた。

 

 

奈々「はあ!?何を言って…!」

琴陽「行きます!」

 

 

奈々の話を聞かすに琴陽はそのまま奈々に襲いかかる。

 

 

しかし奈々は落ち着いて、咄嗟に琴陽を両手で掴み、そのままショルダースルーで反対に投げ飛ばした。

 

 

琴陽「ええっ!?」

 

 

投げ飛ばされた琴陽は地面に転がり落ちた。

 

 

一葉「………ショルダースルー…」

 

 

一同は奈々の突如の対応に思考が止まった。

 

 

奈々「今こんな状況なのに手合わせとか、頭おかしいじゃないのあんた!?」

幸恵「だ、大丈夫だった?奈々さん」

奈々「怪我はしてませんから大丈夫です。それより、あの子はなんですか?」

幸恵「琴陽さんは悪い子じゃないんだけど、初めてのリリィに手合わせをする変わった所があるの」

叶星「私と一葉さんも、琴陽さんの手合わせに巻き込まれたわ」

 

 

奈々の中で、琴陽はかなりの問題児だと言う認識が定着した。

 

 

奈々「それ、迷惑以外の何者でもありませんよ」

琴陽「奈々さん、なんでCHARMを使わないんですか!?」

 

 

ショルダースルーで飛ばした琴陽が戻って来た。

 

 

奈々「さっきの話聞いてた?こんな状況で手合わせする暇はないから!」

琴陽「CHARMで戦わないと手合わせになりませんよ!」

奈々「話聞く気ねぇだろオマエェ!!!」

「仲間と合流して何やってるのよ?」

 

 

遅れて一柳隊も到着した。

 

 

奈々「夢結さん!」

楪「夢結?」

幸恵「夢結さん!」

 

 

楪と幸恵、奈々が夢結の元へやって来た。

 

 

夢結「楪!」

梅「幸恵!」

楪「夢結達も遠征に来たんだな」

幸恵「久しぶり。会えると思ったわ。それに…」

 

 

幸恵と楪は、夢結の側にいる皆を見て気付く。

 

 

楪「これが夢結の新しいレギオンか…!」

夢結「ええ。名前は一柳隊。そしてこの子が私のシルトにして、このレギオンを作った隊長よ」

 

 

そう言って梨璃を紹介する夢結。

 

 

楪「ゆ、夢結がシルトを…!?」

梨璃「一柳梨璃です。よろしくお願いします!」

幸恵「福山・ジャンヌ・幸恵よ。よろしくね」

楪「川村楪だ。よろしくな」

椛「月岡椛です。よろしく」

 

 

他のリリィ達も紹介を終え、幸恵は再び一柳隊の皆を見て夢結に視線を戻す幸恵。

 

 

幸恵「自分達のレギオン…夢結はもう、一人じゃないのね」

純「でもその隊長さん、素人じゃなくて?」

梨璃「私!?」

純「それに、いくら百合ヶ丘の即席の素人レギオンにギガント級の相手は勤まるのかしら?」

初「純…!」

楓「即席の素人レギオンですって!!?」

奈々「純さん、わかっていないのに皆を甘く見ないで貰いますか?」

純「なんですの?」

 

 

奈々に言われてムッと来る純。

 

 

奈々「百合ヶ丘では、遠征に行けるようになるレギオンはギガント級を1度撃破している事が条件です。ここにいるリリィ達は、ギガント級を倒せる程の力を持ってる強者達って事ですよ」

純「それがどうかしましたの?強者達と言っても、即席のレギオンあることに変わりありませんわ」

奈々「だから分かっていないんですよ。純さん」

純「分かってないって何が?」

奈々「例えるなら、一柳隊は只の即席レギオンではなく、高級ホテルの専属シェフが作った一流即席レギオンって事ですよ!」

 

 

奈々の発言に一同コケる。

 

 

夢結「奈々…貴女ね…」

純「結局即席レギオンじゃないの!!」

楓「奈々さん貴女もですか!!」

奈々「けなした事は言ってないんだけど…」

 

 

奈々は本当に悪気が無いらしい。

 

 

梅「そこが奈々らしいけどな…」

初「本当に面白い子ね、奈々さんは」

夢結「私も結構巻き込まれて…!?」

 

 

突如夢結は殺気を感じた。

 

 

 

 

 

何と琴陽が物凄い殺気で夢結に向かってCHARMを降り下ろしてきたのだ。

 

 

幸恵「琴陽さん!?」

来夢「琴陽さん!?」

 

 

 

 

 

しかし奈々が二人の横に入り、琴陽のグングニル・カービンを白羽取りで受け止めた。

 

 

 

夢結「奈々!?」

琴陽「!?」

 

 

突然の事態に驚愕する奈々、琴陽以外のリリィ達。

 

 

梨璃「お姉様!?」

奈々「おい、なんの真似だ…また手合わせなのか?」

 

 

奈々も鋭い視線で琴陽を見るが、応じない。

 

奈々はそのまま琴陽のグングニル・カービンを両手で押し返し、転倒させた。

 

 

琴陽「………これは…手合わせじゃない…私は…この人を探すためにリリィになったの」

奈々「夢結さんを?」

琴陽「そう…2年前、私と親友を置き去りにして、見殺しにした白井夢結を…!!」

夢結「!?」

奈々「2年前…まさか…!」

琴陽「貴女はギガント級を相手に戦っていた…貴女なら助けてくれると思った…それなのに…!!」

 

 

琴陽は再び夢結に向かって襲いかかる。

 

 

梨璃「お姉様!!」

 

 

早い反応で梨璃がグングニルで琴陽のグングニル・カービンを受け止めた。

 

 

梨璃「こんなことしてる場合じゃ…!」

琴陽「邪魔よ!!」

 

 

力ずくで梨璃を弾き返し、そのまま夢結に襲いかかるが…

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々が琴陽のグングニル・カービンを蹴りで弾き飛ばし、右手で琴陽の胸倉を掴み上げた。

 

 

夢結「奈々!?」

幸恵「奈々さん!?」

琴陽「…どうして………どうして私の邪魔を…!!」

 

 

琴陽の疑問に奈々は静かな声で喋る。

 

 

奈々「君の親友の格好…赤いパーカーを着てたよね?」

琴陽「どうしてそれを…!?」

奈々「私も2年前に山梨県でヒュージと戦っていた。その時に逃げた市民がヒュージに襲われているのを見て、助けたんだ。その後逃げ道を確保して逃がしたんだ」

琴陽「!?じゃあ親友が助けてくれたリリィって…!」

奈々「けど、死んでしまったのなら…それは私のせいだ…夢結さんは関係ない。ギガント級を相手にしてたからね…」

 

 

そう言って、奈々は琴陽の胸倉を離した。

 

 

奈々「私は弱かった…だから君の親友を見殺しにしてしまった。リリィと呼ぶには…まだ未熟過ぎた」

琴陽「………」

奈々「君の親友を失った気持ちは分からなくはない…私もリリィになる前の3年前は、友達をヒュージに奪われた事があった。僅かだけど、リリィを恨む事もあった…」

琴陽「だったら…!」

奈々「でも恨めなかった」

琴陽「えっ!?」

 

 

奈々は真剣な目で琴陽を見つめた。

 

 

奈々「その時の私の周囲には……無数のリリィ達の死体が転がっていたから」

琴陽「!?」

 

 

奈々が語った事実…それはヒュージとの戦いで散っていったリリィ達の姿の事であった。

 

 

梅「………鎌倉防衛戦…だな」

幸恵「鎌倉葉桜学園周辺で起きた過去最大級の被害を受けた戦いね」

夢結「現れたアルトラ級ヒュージに対抗するために、鎌倉に存在する全てのガーデンから抜擢されたリリィ達が立ち向かったものの、殆どのリリィが命を落としたわ」

梨璃「命を…落とした…!?」

二水「初耳です!!」

 

 

梅、夢結に合わせて、奈々は話を続けた。

 

 

 

奈々「私は3年前、アルトラ級に目をつけられて友達と一緒に逃げていた。途中小型ヒュージに追われていた事もあった。友達はリリィが助けてくれると願っていた中、当時の私はリリィに興味がなく、ただ逃げることしか考えてなかった…逃げても逃げても振りきることが出来ず…遂には退路を断たれてしまった。瓦礫に隠れて身を隠す所、友達の一人が外に出てリリィに助けを求めた。けど、それが原因で小型ヒュージ達に見つかり、私を除く友達の皆は小型ヒュージ達に殺されていった。それでも皆はリリィに助けを求めた。でもリリィは現れず、生き残った私は、他の瓦礫を通りながらヒュージから逃げていった…」

琴陽「……」

奈々「逃げた私は…何故リリィが来なかったのか疑問を感じた。別の小型ヒュージ達を相手にしたのか、怖くて戦わなかったのか…その答えがわかった頃には、疑った自分が情けなくなった」

 

 

そう言って奈々は左手を握り締める。

 

奈々が言うその答えとは、ヒュージでの戦いで力尽きたリリィ達の事であった。

 

 

奈々「リリィも元は普通の少女。私達と何一つ変わらないと…悪いのはリリィではなくヒュージだって…」

琴陽「…」

 

 

奈々の言ってることは筋が通っている。

 

わかってはいるけど、琴陽には関係がなかった。

 

 

奈々「戦いが終結した頃には、私の頭の中はそういう認識を取るようになった。そして私の意思は固まりつつあった。もう誰も失いたくない思いを背負って、1年後、百合ヶ丘女学院に入った。強くなって皆を守るって…私のような悲劇には会わせないって…けど、甲州撤退戦でその力不足を痛感した」

琴陽「!」

 

 

奈々は、琴陽の親友を死なせてしまった事を自分の力不足だと告げた。

 

 

奈々「私は…君の親友を守れなかった…いや、死なせてしまった…ごめんなさい…」

 

 

奈々は琴陽に頭を下げて謝った。

 

しかし琴陽の怒りは静まることはなかった。

 

 

琴陽「謝っても…あの子は戻ってこない…!」

奈々「……分かってる」

琴陽「忘れたくても忘れられない…!あの時の笑顔も、叫び声も、何もかも…!!」

奈々「分かってる。だから…」

 

 

奈々は構えず、無防備の姿勢になった。

 

奈々「私に攻撃していい」

夢結「奈々!?」

梨璃「奈々ちゃん!」

奈々「皆は手出ししないで!」

琴陽「何を考えてるの!?白井夢結を庇うつもりなの?」

奈々「勘違いしないで。これは私が招いたこと…ただ夢結さんが巻き込まれただけの事だよ。君が復讐する相手は…この私なんだよ」

琴陽「…くっ!」

 

 

奈々の真剣な表情は乱れることなく、琴陽を見つめていた。

 

琴陽に攻撃されても構わない気である。

 

対し、琴陽はCHARMを拾ったが、奈々に向けることが出来ずに立ち止まっていた。

 

親友を死なせてしまったとはいえ、それ以前に彼女は親友を逃がしてくれたのは事実。

 

そんな彼女を恩人として見るか、敵(かたき)として見るか、琴陽は迷っていた。

 

 

 

 

 

そこへ、椛が琴陽の元へやって来て、右手を押さえた。

 

 

琴陽「!?」

椛「リリィとして…もっと経験をなさいませ。それから2年前の事を思い返したら…違う答えが、見つかるかも知れませんわ」

佳世「とにかく今は…ヒュージを…」

 

 

佳世も説得に入り、琴陽は頭を冷やし、右手に持ったグングニル・カービンを納めた。

 

 

琴陽「…………わかりました…」

 

 

そして琴陽は夢結の方に近付き…

 

 

琴陽「………申し訳ありませんでした」

 

 

琴陽は夢結に頭を下げて謝り、この場を静めた。

 

 

そして幸恵は奈々にある注意をした。

 

 

奈々「幸恵さん?」

幸恵「貴女はもっと自分を大事にして。仲間を心配させない事も、リリィの役目ですよ」

奈々「すいません…」

幸恵「確かに戦いで多くの命が失われた…でも、貴女のお陰で助かった命もある。それは覚えておいて。貴女はリリィとして役目を果たしてる」

奈々「ありがとうございます。幸恵さん」

 

 

幸恵の言葉で気が楽になった奈々。

 

 

純「そこのちびっ子隊長?」

梨璃「私!?」

純「さっきの貴女…中々いい動きしてましたわよ」

梨璃「あ、ありがとうございます」

純「話を戻しますけど、奈々、何か策があるのかしら?」

 

 

純に言われ、奈々はギガント級を倒す策を改めて皆に伝える。

 

 

奈々「ギガント級の相手ですが…一柳隊が適任だと思います」

 

 

奈々は、ギガント級の相手を一柳隊に任せようと説明する。

 

 

純「その理由はなんですの?」

奈々「百合ヶ丘はノインヴェルト戦術の基礎理論の殆どを編み出した名門校です。その為百合ヶ丘のレギオンは対ギガント級としての噂が他ガーデンでも広まっています。ここにいる一柳隊は結成してからそんなに経ってませんが、すご腕の教導官の指導で叩き上げられた強者揃いのレギオンなんです。ノインヴェルトもきっちりこなせますよ?精衛リリィの貴女達でも、他校のリリィ達との連携は簡単では無いでしょ?」

純「言ってくれますわね……やれますの?」

奈々「やれますよ。一柳隊なら」

楓「大きく言いましたわね」

 

 

プレッシャーが掛かる発言だが、一柳隊なら出来ると自信を持って言った奈々。

 

 

初「純、奈々さんの言う通りだわ。ここは確実に倒すために百合ヶ丘のレギオンに任せましょう。ノインヴェルト戦術は、レギオンで行った方がいいわ」

純「………姉様がそうおっしゃるなら…」

椛「決まりましたわね。なら私達は小型ヒュージを請け負います。一柳隊の皆さんはノインヴェルトでギガント級を相手にする。確実に行くならこれが最善の方法ですわ」

楪「ああ。それで行こう!」

幸恵「私も、椛の意見に賛成だわ」

来夢「私も賛成です!」

初「純もいいわね?」

純「…………わかりましたわ」

夢結「梨璃もそれでいいわね?」

梨璃「はい!」

 

 

 

と、話してる内に奈々は気配を感じ取った。

 

 

奈々「この大きなマギの気配は…!」

 

 

そして地響きが起き、遠くから蝙蝠に似た翼を生やした巨大な1つ目の生物が顔を出し始めた。

 

大きさからして、ギガント級で間違いない。

 

その姿はまるで、1つ目の悪魔…アーリマンを連想させる。

 

 

梅「あれは…!」

ミリアム「ギガント級じゃ!」

神琳「み、見て!」

 

 

神琳がギガント級に指を指した。

 

何と、ギガント級の後ろから蝙蝠に似た小型ヒュージが沢山現れた。

 

 

二水「次々とヒュージが!?」

雨嘉「産み出してる…!?」

奈々「あれはギガント級の後ろにケイブがある…!?」

佳世「わかるんですか…?」

奈々「いえ、ただ気配がギガント級の近くから感じたんで」

ミリアム「ギガント級がまるで小型ヒュージを産み出してるように見えるのう…」

椛「それにしても…」

鶴紗「あんなギガント級…見たこともない」

夢結「私も、始めてみたわ」

 

 

ここにいる全員が見たギガント級は、今まで出会ったモノとは異なる初見の相手だった。

 

 

涼「データにはない新種のヒュージか…」

二水「小型ヒュージを先に片付けた方がいいのでしょうか…」

奈々「それは難しいね。あの小型ヒュージはギガント級が生み出したモノだし、放置してたら数を増やされてジリ貧になる」

 

 

現在の敵ヒュージは、ギガント級1体とスモール級25体、ミドル級15体と、かなりの数である。

 

ここは小型ヒュージの破壊よりもギガント級を倒した方がいいだろう。

 

とはいえ、小型ヒュージも放置しておくと、ギガント級の撃破の邪魔になりかねない。

 

 

そう考えてるうちに、小型ヒュージ達が戦闘体制に入った。

 

 

一葉「皆さん、小型ヒュージが来ます…!」

幸恵「手初通り、あのギガント級は任せますわ。私達は取り巻きの小型ヒュージの殲滅!」

奈々「ギガント級の攻撃は私が誘導するよ」

涼「援護するよ。一柳隊」

初「行ってください」

 

 

各自、CHARMを構えた。

 

 

楪「ここからはガーデンなんか関係ない。私達は同じリリィ。手を取り合い、戦う仲間だ!」

梨璃「よろしくお願いします!」

梅「いこう!」

奈々「先に失礼します!」

 

 

一柳隊はギガント級の処理。奈々はギガント級の攻撃を誘導。涼はギガント級周辺の小型ヒュージの殲滅。残ったメンバーは周りの小型ヒュージの処理を担当することになった。

 

 

夢結「皆、パス回しの方は行けるわね?」

二水「はい!出雲先生の指導でなんとか…」

ミリアム「わしらは問題ないぞ!」

夢結「最初は梨璃が撃って、フィニッシュは雨嘉さんにお願いするわ」

雨嘉「私!?」

神琳「相手は空を飛ぶ上に早いヒュージですわ。天の秤目を持つ雨嘉さんなら適任ですわね」

雨嘉「うん、分かった!」

 

 

一方、ギガント級の近くに来た奈々と涼。

 

 

奈々「涼ちゃん、一柳隊のアシスト始めるよ!」

涼「ああ、やろう!」

 

 

奈々はカナベラル、涼は白銀を構えて、互いの役割りをこなし始めた。

 

 

梨璃は自分のグングニルの装填口に出雲から貰ったノインヴェルト戦術の弾を装填し、特殊なマギスフィアを作り出した。

 

ノインヴェルト戦術の弾から生成されるマギスフィアは、触れた物のマギをすいとる性質を持っており、すいとればすいとるほどそのマギスフィアは強力な物になり、ギガント級を一撃で倒せる程の威力とかす。

 

ただし、マギスフィアにマギを吸収されることはリリィ自身の戦闘力の低下につながり、マギスフィアを受け止めるCHARMにも負荷がかかるため、濃度の高いマギスフィアを何発も受け止めれば、壊れてしまうだろう。

 

二水曰く、諸刃の刃である。

 

そのためノインヴェルト戦術は実質一回切りとなる。

 

 

涼「さて、百由様に頼まれた件…済ませておくか」

 

 

涼はポケットから懐中時計を取り出した。

 

 

これはシエルリント女学薗の学校の説明会に参加し、記念品として貰った物を、カメラ付きドローンに改造した自作品である。

 

これで、百由に頼まれたギガント級のデータを収集するようだ。

 

涼はドローンを飛ばし、自動運転で遠距離からギガント級の周囲を回り始めた。

 

 

 

涼「これでよし。後は小型ヒュージ達の殲滅だね」

 

 

涼は白銀を起動させ、小型ヒュージの処理を始めた。

 

 

夢結「梨璃、まずは神琳さんに!」

梨璃「はい!」

 

 

梨璃は神琳にグングニルを向けて、マギスフィアを放った。

 

そのマギスフィアを神琳はマソレリックで受け止めて、レアスキルを発動した。

 

 

二水「あれは、テスタメント!」

 

 

 

 

 

レアスキル テスタメント

 

殆どのサブスキル、レアスキルの有効範囲を広げる領域拡大化スキル。

 

主な例だと、鷹の目、天の秤目の距離を伸ばしたり、ヘリオスフィアやレジスタの効果範囲を大きくしたりとかがある。

 

しかし消耗が大きく、使用後はマギによる防御力が落ちるため、仲間の援護は必須となる。

 

 

 

テスタメントを使った後、受け止めたマギスフィアにマギを吸収させる神琳。

 

そして次にパスするリリィに視点を変える。

 

 

ギガント級の攻撃を奈々が誘導、小型ヒュージ達を涼が片付けてるので、一柳隊は攻撃が流れてくる心配が無いため、ノインヴェルトに集中することが出来る。

 

 

神琳「ミーさん、頼みます!」

 

 

神琳はマソレリックで受け止めたマギスフィアをミリアムに向けて飛ばした。

 

 

ミリアム「また変なあだ名をつけおって…グロッピだけでも十分じゃろうに…」

 

 

ミリアムは飛んできたマギスフィアをニョルニールで受け止めた。

 

ミリアムのマギがマギスフィアに蓄積されていく。

 

 

ミリアム「お次は二水、行くぞ!!」

 

 

ミリアムはニョルニールに付いたマギスフィアを二水に向けて飛ばした。

 

すこし慌てるものの、二水はグングニルでマギスフィアを受け止めた。

 

更に二水は、レアスキル・鷹の目を発動し、周囲の状況を把握した。

 

 

二水「涼さん、7時、8時の方向に小型ヒュージが来ます!」

涼「分かった!」

 

 

二水の鷹の目による状況報告で涼は白銀で接近してくる小型ヒュージ達を迎撃していく。

 

 

涼「一柳隊には、指一本触れさせないよ」

二水「梅様!」

 

 

マギスフィアにマギを蓄積させたところで、二水は梅にマギスフィアをパスした。

 

飛んでくるマギスフィアを梅はタンキエムで受け止めた。

 

 

梅「受け止めたぞ!」

 

 

梅はギガント級に接近し、すれ違い様に通りすぎていく。

 

ギガント級に接近する理由は、マギスフィアに蓄積するマギの純度を高める為である。

 

 

ノインヴェルト戦術をやる際、ヒュージの近くで行う事で、ヒュージの近くに分泌するマギを奪える為、より強いマギスフィアが作れるのだ。

 

 

梅「夢結!」

 

 

梅は夢結に向けてタンキエムに付いたマギスフィアを飛ばした。

 

夢結は手慣れた動きでマギスフィアをブリューナグで受け止めた。

 

 

しかしここでギガント級が夢結に目をつけてきた。

 

ところが、奈々のカナベラルの飛ばした斬撃がギガント級に直撃した。

 

 

夢結「いいタイミングよ。奈々」

奈々「当然!」

 

 

標的を夢結から外すため、後ろからの攻撃を試みる奈々。

 

ギガント級は奈々に標的を戻し、奈々を追いかける。

 

 

夢結「今のうちに…鶴紗さん!」

 

 

夢結は鶴紗にマギスフィアをパスした。

 

 

鶴紗「受け取った…!」

 

 

鶴紗は念をいれるためにレアスキル・ファンタズムを発動した。

 

ファンタズムの力で未来を予知する鶴紗。

 

 

 

 

 

 

鶴紗「?………純様がこっちに来る!?」

奈々「何!?」

 

 

奈々は周りを見渡すと、鶴紗の余地通り、純がこっちの場にヒュージを連れてやって来た。

 

なんと、ルナティックトランサーを発動しながら戦っていた。

 

 

奈々「な、なにやってんのあのお嬢様は!!?」

 

 

純はそのままギガント級に向かってやって来る勢いである。

 

このままだと一柳隊の邪魔になりかねない。

 

 

夢結「奈々、ギガント級は私と梅が引き受けるから純さんをお願い!」

奈々「任せるって、マギは大丈夫なんですか!?」

梅「奈々は心配しすぎだゾ。ノインヴェルトを一回ぐらいで戦えなくなるほど梅達は弱くないぞ。ここは先輩に任せとけよナ」

 

 

一柳隊全員のマギの保有値は、出雲の訓練により増加しており、ノインヴェルト戦術使用後でも普通に戦えるようになっていた。

 

特に、長くリリィとして戦ってる夢結と梅なら問題は無いだろう。

 

 

奈々「すみません、待っててくださいね!」

 

 

夢結と梅にギガント級を任せ、奈々は純を止めに向かった。

 

 

 

 

 

 

一方初は勝手な行動でヒュージ達を倒し、ギガント級に向かう純を追いかけていた。

 

 

初「純、それ以上行くと百合ヶ丘の人達にぶつかりますわよ!」

純「だから何ですの!」

 

 

ルナティックトランサーの影響なのか、初の言うことを聞かない純。

 

丁度到着した奈々は、近くにいた幸恵と来夢に事情を聞く。

 

 

奈々「来夢ちゃん、幸恵さん、一体何があったの!?」

来夢「実は突然、特型ヒュージが現れて…その相手をしてたの」

奈々「特型!?通常のヒュージより強くて、ノインヴェルト戦術で倒した前例しかないあの…!」

幸恵「その認識でいいと思うわ」

来夢「今私達は特型ヒュージに対してノインヴェルト戦術を行ってる最中だったんだけど…」

 

 

奈々はその純の姿に目を向けて、呆れていた。

 

 

幸恵「見ての通りよ」

奈々「なるほど。というか純さん、夢結さんを罵倒しといて自分も全然制御出来てないじゃん。仕方ない人だな…止めてくる」

 

 

そう言って奈々は純の元へ向かう。

 

 

初「奈々さん危険よ!下がりなさい!」

奈々「大丈夫です。ここは任せてください!」

 

 

そう言って奈々は純の元へ来て、周囲の小型ヒュージを蹴散らしていた。

 

 

純「邪魔をしに来ましたの?」

奈々「それはこっちのセリフですよ!何マギスフィアを持ってギガント級に近づこうとしてるんですか!?」

 

 

純が持つダインスレイフには、マギスフィアが付いていた。

 

ノインヴェルト戦術の最中なのはよくわかるが、通常より多く貯まっていた。

 

その理由を純は答えた。

 

 

純「マギ純度を高める為ですわ!」

奈々「高めるなら何故ギガント級を追いかけるの!?そこらの小型ヒュージでも十分でしょ!」

純「分かりませんの?ギガント級の近くで戦えばマギの純度がより高くなるわ」

奈々「あのね、そのマギスフィア必要以上にマギを込めすぎてるよ!そっちにはノインヴェルト初心者がいるんだぞ!」

 

 

奈々の言う通り、純が持ってるマギスフィアはマギ純度が高くなって、すでに9人分のマギが溜まっていた。

 

 

純「私に指図しないで!弱い者に合わせたらこっちが弱くなりますわ!」

 

 

完全に言うことを聞かない純。

 

ルナティックトランサーのせいで感情が攻撃的になっている。

 

元からプライドの高い純の性格なら更に達が悪い。

 

 

奈々「完全に負のマギの影響だなこれ…」

純「そこの貴女!」

 

 

純が呼んだのは、遠くにいる琴陽であった。

 

 

琴陽「わ、私!?」

 

 

純は琴陽にマギスフィアをパスするつもりらしい。

 

 

純「受け取りなさい!」

初「純!!」

 

 

初の言うこと聞かず、純は琴陽に向かってダインスレイフに付いたマギスフィアを飛ばしたが、その速度はかなり早い。

 

しかも琴陽は対応が遅れていた。

 

これではキャッチどころか怪我をする可能性も…

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、奈々がレアスキル…マスカレイドでインビシブルワンを縮地に派生させ発動し、琴陽の前に立ち、マギスフィアをカナベラルで受け止め、一旦上にすこし飛ばした。

 

 

琴陽「な、奈々さん!?」

 

 

更に小型ヒュージが奈々と琴陽に光弾を発射してきたが、もう一本のCHARM、ブルメリアを抜き、弾き返し、カナベラルの斬撃を飛ばして小型ヒュージ達を片付けた。

 

 

椛「CHARMの二刀流!?円環の御手!?」

幸恵「いえ、レアスキルじゃないわあれは」

楪「トリグラフの特徴に似てるな、あのCHARM」

 

 

後から駆けつけた椛と楪、ルドビコ女学院のメンバー。

 

 

椛「奈々さん、マギスフィアをこちらに!」

奈々「結構純度が高いですよ。気を付けてください。行きます!」

 

 

奈々は椛に落ちてきたマギスフィアをカナベラルで打って飛ばした。

 

椛は飛んできたマギスフィアをグングニル・カービンでキャッチした。

 

ここで、佳世が奈々の元へやって来た。

 

 

佳世「奈々さん、ここは大丈夫ですからギガント級の方を!」

奈々「わかりました!」

 

 

この場を任せ、奈々はギガント級の方へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方鶴紗は楓にマギスフィアをパスしていた。

 

 

着々とマギを溜めてノインヴェルト戦術を進めていく一柳隊。

 

 

 

奈々がいない間、ギガント級の誘導は夢結、梅が担当している。

 

一緒に組んで戦ってた機会が多かった二人のコンビネーションは一級品と呼べるものであった。

 

 

 

楓「雨嘉さん、お願いしますわ!」

 

 

楓は遂にフィニッシュ担当の雨嘉にマギスフィアをパスした。

 

 

雨嘉「これで…!」

 

 

アステリオンにマギスフィアを取り込み、シューティングモードに変形させて、レアスキル・天の秤目を発動させ、空中を飛び回るギガント級ヒュージに狙いを定めた。

 

 

雨嘉「決める!」

 

 

雨嘉は9人分のマギが込められたマギスフィアをギガント級に向けて発射した。

 

必要な火力は十分込められている。

 

狙いは確実にとらえている。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、ギガント級に直撃する瞬間、何かの障壁が雨嘉の放ったマギスフィアを受け止めた。

 

 

夢結「!?」

梨璃「受け止めた!?」

二水「あれは…!」

 

 

マギスフィアを受け止めたギガント級に驚く一柳隊。

 

 

涼「ん?」

 

 

そんな中、涼は障壁の変化に気付いた。

 

なんとマギスフィアはその障壁を割り、ギガント級に直撃し、爆発した。

 

 

ミリアム「やったか!?」

楓「やったかはフラグですわよ!」

 

 

爆発が晴れると、ギガント級はまだいた。

 

 

鶴紗「生きてる!?」

神琳「でも、ダメージは受けてますわ」

 

 

神琳の言う通り、ギガント級の体にはマギスフィアで付いた傷が大きく残っていた。

 

先程の障壁によってノインヴェルト戦術の威力が殆ど乖離してしまったのだろう。

 

お互いマギを消耗しているが、まだ一柳隊の方が有利である。

 

 

 

 

 

ところが、ギガント級は突然後ろを振り向き、遠くへ逃げていった。

 

 

梅「何!?」

ミリアム「ギガント級が逃げた!?」

梨璃「何、どう言うこと!?」

 

 

そして合流した奈々。

 

 

奈々「ねえ、ギガント級からマギの放出を感じたんだけど、ノインヴェルト戦術はどうなったの?」

梅「奈々!」

夢結「命中はしたんだけど、何かの障壁に阻まれたのよ」

奈々「障壁?」

楓「ノインヴェルト戦術は決まっていましたけど、障壁のせいで威力が落ちて撃破にはいかなかったですわ」

奈々「まるで前のギガント級…ドンノロッシェンの時と似ている…!」

 

 

 

 

 

ドンノロッシェン…

 

2年前…甲州撤退戦で現れたギガント級ヒュージの名前で、ダインスレイフを取り込んだ時はマギの障壁を貼ってアールヴヘイムのノインヴェルト戦術戦術を受け止めた事があった。

 

今回のギガント級は、その時のヒュージに状況が似ていた。

 

 

 

 

 

遅れて、残りのメンバーがやって来た。

 

ここに来たということは、特型ヒュージは片付けてきたのだろう。

 

今の状況を知った純はというと…

 

 

純「これはどう言うことですの!?ギガント級を逃がすなんて!」

奈々「純さん!」

純「やっぱり百合ヶ丘に任せるべきではありませんでしたわ!」

初「純!」

 

 

純の発言にイラっとした奈々。

 

 

奈々「純さん……今の状況を見てその答えはないでしょ?」

純「何ですの!?」

奈々「ノインヴェルトは決まっていました。マギも条件をクリアしてます」

純「結果の問題ですわ」

奈々「失敗以外に考えられないんですか貴女は!ここにいる全リリィは一柳隊の戦い方を御見ていたんだぞ!」

純「じゃあどうして!」

 

 

奈々は純にブルメリアを当てた。

 

 

純「!?」

 

 

すると、ルナティックトランサーで溜め込んでいた負のマギが浄化されていった。

 

 

来夢「これは…!」

夢結「マギが浄化された…!?」

奈々「このブルメリアには、マギを浄化する効果を持っているんです」

 

 

奈々の扱うブルメリアには、マギの吸収の他に浄化の機能も備わっている。

 

ルナティックトランサーを使う際には頼りになる効果である。

 

 

奈々「落ち着きましたか?」

 

 

マギが浄化され、落ち着いた純。

 

 

純「……ギガント級は何をやりましたの?」

奈々「……バリアを貼ってノインヴェルトの威力を削った」

幸恵「バリア?」

奈々「破ることは出来たけど、威力が落ちて、決定打には至らなかった」

楪「でも何故逃げたんだ?」

一葉「確かに、いくらヒュージとはいえ、逃げる行動をとった前例がありませんでした」

叶星「知性を持ったヒュージかしら…」

夢結「手強い相手になるわね…」

 

 

未知のギガント級の強さを実感するリリィ達だが、奈々がここで話題を変えた。

 

 

奈々「それよりも…私は他に純さんに言いたいことがあります」

純「言いたい事?何です…!?」

 

 

純は突然奈々に胸蔵を捕まれた。

 

その行動に全員は驚きを隠せなかった。

 

奈々の表情は、純が怯むほどの怒りに満ちていた。

 

 

奈々「あんた、ルナティックトランサー全然コントロール出来てない上に、その勝手な行動でチームワークが乱れ、下手したら仲間を傷つけるところだったんだぞ!わかってるのか!?」

純「だ、だから何ですの…!?」

奈々「仲間の事も視野に入れるのもまたリリィの戦いだ!弱い強いとかもっての他だ!」

純「私が悪いと言うの!?」

奈々「当たり前だ!変わってないよあんた…あの頃から全く!特にノインヴェルトであんなパスの仕方はないだろ!もし琴陽ちゃんが怪我をして必要なマギが減ったらどうするつもりだったんだ!?」

純「これだけのメンバーが揃っていれば一人欠けていても…!?」

 

 

その発言を聞いた奈々は、純を地面に叩きつけた。

 

地面にぶつけられて痛む純は奈々の表情を見て言葉を失ってしまう。

 

 

一同「!!!??」

 

 

奈々の行動に皆も言葉を無くす。

 

奈々の表情は無表情ながら、物凄い怒りを感じていた。

 

まるで、ルナティックトランサーを発動した時の狂気のように…

 

 

 

 

 

奈々「………謝れよ」

 

純「?」

 

奈々「ここにいる皆に謝れよ!!あんたが迷惑をかけた皆に!!」

 

 

夢結「奈々、もうその辺に…」

 

 

奈々「謝れよ!!!」

 

 

梨璃「奈々ちゃんもうやめて!」

 

 

奈々「謝れ!!!!!」

 

 

幸恵「もうやめなさい!!」

 

 

 

奈々「謝れって言ってるだろ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然奈々は、初にビンタで頬を叩かれた。

 

 

奈々「!?」

 

 

初のビンタに、我に返った奈々。

 

 

初「私達は気にしてないわ。離してあげて」

 

 

初に頼まれて、奈々は純の胸蔵を離した。

 

 

純「………」

 

 

純は謝ることもなく、その場を離れる。

 

 

 

 

 

 

初は純の代わりに皆に謝った。

 

 

初「ごめんなさい」

奈々「いいですよ。私も暑くなりすぎましたから…すいませんでした」

梅「一触即発だったゾ」

夢結「本当に、あそこまで怒るなんて貴女らしくないわよ」

 

 

皆、奈々の事を心配していた。

 

 

奈々「もっともです…」

 

 

暑くなりすぎた事を反省する奈々。

 

 

初「純も、悪気はないの。許してあげて?」

奈々「わかってます。今の純さんを見れば分かりますから」

「楓ーー!!」

奈々「!?」

 

 

遠くから楓を呼ぶ声が響き、百合ヶ丘とは違う普通の黒い制服をまとった青のポニーテールの少女がやって来た。

 

 

 

 

相模女子高等学館 1年生 石川葵(いしかわ あおい)

 

 

使用CHARMは2本の武器をくっ付けた第三世代のトリグラフ。

 

円環の御手が無くても二本で戦えるよう開発された機体である。

 

 

 

楓「葵!?」

奈々「あの制服は…相模女子高等学館の…!」

 

 

楓が葵と呼ぶ子の元へ来た。

 

 

葵「やっぱり、ギガント級を相手にしてるレギオンって、楓のレギオンだったのね」

楓「どうしてここに?」

葵「百合ヶ丘の遠征メンバーに楓の名前が入ってたから」

楓「会いに来てくれたの?」

葵「また一緒に戦うって、約束したでしょ?」

楓「葵ー!」

 

 

喜んで葵を抱く楓。

 

 

奈々「楓ちゃん、この子と知り合いなの?」

楓「知り合いではなく、戦友ですわ!」

葵「相模女子高等学館の石川葵よ。よろしく」

奈々「石川?てことは君、精衛(せいえい)さんの!」

葵「娘よ。貴女お父様を知ってるの?」

奈々「今年の雪解け、ブルーガード時代に一度話をしたことがあってね」

神琳「親友とは、中等部から一緒でしたの?」

葵「うん。聖メルクリウスインターナショナルスクールで楓と一緒だったの」

梨璃「聖メルクリウスインターナショナルスクール?」

夢結「横須賀の最重要ガーデンと呼ばれた所よ。百合ヶ丘と並ぶほどのね」

奈々「あの時の精衛さん、能力を伸ばすために娘の希望した百合ヶ丘とは別のガーデンに通わせる事を後悔してたみたいだけと、その様子だと心配は無さそうだね」

楓「私と葵は中等部時代から一緒にヒュージと戦ってましたのよ。今は…」

 

 

二水 佳世「蒼き皇女(ひめみこ)の葵さん!!ですよね!」

 

 

二水と佳世が割り込んできた。

 

 

奈々「おわっ!?息があってる!」

楓「何だか有名人見たいね」

葵「色んなガーデンにお世話になったからね」

ミリアム「心強い仲間が来てくれたのう」

奈々「精衛さんにいい土産話が出来そうかも」

幸恵「久しぶりね」

 

 

幸恵も葵の元へやって来た。

 

 

葵「幸恵様!ルドビコの時はお世話になりました」

幸恵「何だか、たくましくなったんじゃない?」

葵「今日は成長した所を見せたいと思ってます。それよりも…」

奈々「?」

葵「先程…ギガント級、飛んでいかなかった?」

奈々「うん。逃げていったよ」

葵「え?」

 

 

僅かに静寂な間が空いた。

 

 

 

そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵「えええーーーっ!!?」

 

 

以外な事実に葵が絶叫した。

 

 

葵「ギガント級が逃げたぁ!?」

奈々「逃げた方角からして、ヒュージネストの方だと思うよ」

葵「事情を説明してもらえる?」

奈々「うん。実は…」

 

 

奈々は葵に事情を説明した。

 

 

葵「ギガント級がバリアを貼ったせいで倒しきれなかった!?」

奈々「そ、バリアを破ることは出来たけど、ノインヴェルトの威力が殆ど落ちてね…ダメージを受けたとたん、逃げていったのよ」

夢結「逃げるギガント級は、始めてみたわ」

梅「だナ、ダメージを受けたからか、これ以上は危険だと判断して逃げたんだろうナ」

涼「判断の出来るヒュージか…」

椛「手強いですわね…」

楪「まだこの周辺には小型ヒュージがいる」

 

 

一柳隊以外のリリィ達が殆ど殲滅したものの、まだ小型ヒュージは残っている。

 

 

幸恵「逃げたギガント級も…また戻ってくるわ」

夢結「小型ヒュージは対処できるけど、問題はギガント級の貼ったバリアの正体よ」

楓「ノインヴェルトは確実に決まっていましたわね。それを受け止める程のバリアなんて始めてみましたわ」

奈々「何か特徴があるはずなんだけど…」

夢結「特徴ね…そういえば、当たった直後に金属音のような高い音が響いたわ」

二水「金属音………まさか…!」

 

 

二水が何かに気付いた。

 

 

梨璃「二水ちゃん、何か分かったの?」

二水「いや、あくまでも例えですけど…」

楪「例えでも構わない。教えてくれ」

 

 

 

楪に押される形で、二水は答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二水「バリアの正体は、マギリフレクターでは無いでしょうか!」

奈々「!?」

佳世「なるほど」

涼「ああ。間違いないよ」

雨嘉「私が放ったマギスフィアが受け止められたのも分かるよ」

神琳「だとしたら、金属音も納得がいきますわね」

梨璃「マギリフレクターって?」

夢結「マギを使った攻撃を、マギのバリアで防ぐスキルよ」

鶴紗「一部のブーステッドリリィも、ブーステッドスキルとして使われてるよ」

奈々「マギスフィアを防ぐ程の防御力を持っているからね」

梨璃「そんなことが出来るの!?」

夢結「知能を持ったヒュージなら可能だわ」

 

 

知能を持っているなら、マギスフィアを危険と感じ、マギリフレクターを張ったのも頷ける。

 

 

楪「やるじゃん1年生リリィ!」

 

 

楪は二水の方を持つ。

 

 

奈々「楪さん、その子は二川二水ちゃんですよ」

楪「悪い、二水やるな!」

二水「ゆ、楪様が私の名前を…ぶふぉ!!!」

 

 

興奮して鼻血を吹き出し、撒き散らした。

 

 

楪「うおおっ!!?」

涼「はい、ティッシュ」

二水「ふ、ふみまへん……」

奈々「二水ちゃん、現場に血を撒き散らさないでね」

夢結「なに考えてるのよ……」

 

 

涼からポケットティッシュを渡され、鼻血を拭く二水。

 

楪は二水の鼻血を避けた為被害はなかった。

 

 

奈々「でもこれで活路が見えてきた」

一葉「見えたって、相手はノインヴェルトを受け止める程のバリアを貼るギガント級ですよ。それ以上の攻撃なんて…」

奈々「大丈夫。マギリフレクターは1度発動すると、一定時間使えなくなる。一撃目でマギリフレクターを使わせた後に2撃目を仕掛ければダメージが通るはずだよ」

葵「そうか…今の私達は22人…!」

鶴紗「ノインヴェルト戦術を二隊で行えば…!」

神琳「一撃目は防げても」

梅「2撃目にマギリフレクターが間に合わずに…」

楪「倒せるわけだ!」

雨嘉「それなら勝てる!」

 

 

活路が見えてきたリリィ達。

 

 

奈々「でも、もうひとつ問題があるよ」

梨璃「えっ?」

楓「他に何か問題でも?」

奈々「マギスフィアでダメージを受けたギガント級を見たところ、かなりの耐久力があるとみたよ。普通のノインヴェルトでも一撃で倒すのは難しいと思う」

叶星「じゃあどうするの?」

奈々「トドメ役となる一柳隊のフィニッシュ担当を、夢結さんに任せたいと思ってる」

夢結「私?理由を教えて?」

奈々「ルナティックトランサーによる強化です」

 

 

 

奈々が出した提案…それはルナティックトランサーを使ったノインヴェルト戦術のフィニッシュショットである。

 

 

幸恵「ルナティックトランサーを?」

奈々「ルナティックトランサーには、ヒュージの近くの負のマギを体に宿す特製を持っています。これを利用してマギスフィアを更に強化させる。そうすれば、あのギガント級を一撃で倒せる威力になるはずです」

初「ルナティックトランサーはわかるけど…何故夢結なのかしら?」

奈々「夢結さんのルナティックトランサーはこの中でも高い効果を持っています。その分マギを吸収する量も多いため、この戦法に最適なんです」

夢結「でも私は…」

 

 

夢結が使うルナティックトランサーは、これまでコントロール出来ずに大切な人を失い、仲間まで迷惑をかけた例があった。

 

その事に夢結は、ルナティックトランサーの使用を躊躇っていた。

 

 

奈々「夢結さんしか出来ないんです。私では持ってるCHARMがピーキーなので、下手したらマギスフィアを壊しかねませんし…特に私のマスカレイドはレアスキル化にもマギを使いますから効率が悪いです」

 

 

先程奈々は、純が放ったマギスフィアをカナベラルで受け止めた直後上に飛ばしたので、マギスフィアは壊れずにすんだ。

 

もしマギスフィアが長くカナベラルに触れていたら、マギスフィアは壊れていただろう。

 

カナベラルは常に高出力で起動してる為、マギスフィアを壊しかねないのだ。

 

 

涼「…………それしか方法はないようだね」

二水「でも、あのギガント級は素早くて雨嘉さんの天の秤目がないと難しいですし、何よりノインヴェルトの弾はもう…」

幸恵「私も、今回は一つしか持ってこなかったわ」

 

 

他の東京地区のリリィ達もノインヴェルト戦術の弾は持っていない。

 

 

ミリアム「これではお手上げか…」

涼「弾ならあるよ」

 

 

涼はポケットからノインヴェルトの弾を2つ取り出した。

 

 

梨璃「ノインヴェルトの弾!?」

神琳「何で2本も!?」

涼「百由様から貰ったんだ。万が一の事を想定してね」

 

 

涼はノインヴェルト戦術の弾を梨璃、幸恵に渡した。

 

 

幸恵「ありがとう。これなら二隊でのノインヴェルト戦術が出来るわね」

奈々「私は二組がノインヴェルト戦術が完了次第、空飛ぶギガント級を地面に落として動きを止めるよ。動かない的にしてあげるよ」

楓「またギガント級を相手にするのですわね?」

奈々「相手の攻撃を自身に誘うのが囮役の特権だからね」

涼「僕も、周囲の小型ヒュージを片付けておくよ。皆には指一本触れさせない」

ミリアム「だがお互い、ノインヴェルト戦術を一度使っておる。マギは休めば回復するが、CHARMの消耗はそのままじゃ。次使えば壊れるかもしれん」

 

 

ミリアムの言うように、ノインヴェルト戦術が行えるのは後一回切り。

 

弾があっても、CHARMが壊れてしまっては意味がない。

 

これがしくじれば、次はもうない。

 

 

幸恵「次しくじれば、もうギガント級を倒す術は無くなる」

純「失敗は許されませんわ」

夢結「ええ。必ず仕留める…!」

涼「それなら、戦闘区域外に防衛軍の拠点がある。ギガント級が戻ってくるまでの間、そこで休んでマギを回復してくれ」

初「そうね。ついでに各自のレアスキルも把握した方がいいわ」

奈々「私は残っている小型ヒュージを片付けてきます。倒しきれなくなる程増えてからじゃ遅いんで、それにまだマギは有り余ってますからね。やれることはやっておきますよ」

涼「なら僕も残ろう。こっちもマギが残ってる。多い方が早く片付くだろうし」

幸恵「それなら、佳世さんを連れていって。この子も殲滅力なら負けないわ」

奈々「構いませんが…佳世さん…殲滅力……あ」

 

 

奈々が何かを察した。

 

 

夢結「じゃあ私達は一旦下がるわ。無理はしないで」

奈々「任せてください!」

梨璃「奈々ちゃん、気を付けて」

 

 

奈々、涼、佳世を残し、一柳隊を含む18人は戦闘区域から一旦離脱した。

 

涼は端末を使って、ドローンから送られた情報を調べていた。

 

 

涼「現在この戦闘区域内にいるヒュージは、スモール級が40体、ミドル級が20体だよ」

 

 

涼が残りのヒュージを二人に教えてる内に、残った3人の周囲には次第に小型ヒュージが集まってきた。

 

 

涼「早速来たね」

奈々「ギガント級に備えてここの小型ヒュージは片付けておかないとね。やりますか、佳世さ…」

佳世「やるぞお前らー!!」

奈々「ぬおっ!!?」

 

 

突如乱暴な性格に変貌した佳世に驚く奈々。

 

いつの間にか佳世はメガネを外していた。

 

 

涼「凄い変貌ぶりだね…」

奈々「この手のキャラ…佳世さんルナティックトランサー持ちだったか…ギャップありすぎ」

佳世「無駄話してる暇があったら戦え!!」

奈々「は、はい!!」

 

 

そう言って、佳世はヒュージの群れに突撃しながら、右手に持ったダインスレイフ・カービンを振るいながら、小型ヒュージを次々と倒していった。

 

それに続く奈々と涼も…

 

 

奈々「恐、まさに鬼神だね…」

涼「僕達もうかうかしてられないね」

奈々「確かに!」

 

 

奈々は佳世の前に進み、カナベラルを片手でヒュージ達をなぎ倒していく。

 

遅れる涼も、左右に漏れたヒュージ達を白銀で倒していく。

 

 

佳世「やるじゃねえか」

奈々「多対1の戦闘にはなれてますからね」

涼「僕も、殲滅力なら誰にも負けません」

 

 

そう言って涼は何かを語りだした。

 

 

涼「あれはそう…百合ヶ丘に現れたギガント級とは別に現れた小型ヒュージの群れ。他の皆の邪魔にならないよう僕は単独で向かい、白銀の餌食にした…考えたら、あの時の僕の戦い方はとても芸術的…」

奈々「涼ちゃん、いつもの妄想はいいから」

涼「これは妄想じゃない!僕の心の物語だ!」

奈々「知らんがな」( ̄― ̄)

 

 

と、喋りながら小型ヒュージを減らしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして15分後…

 

奈々達の頑張りで、スモール級は残り25体、ミドル級は残り12体まで減っていった。

 

しかし、ここからがキツいところである。

 

奈々は長期戦になれてる為、息切れは無いが、

 

問題は二人。

 

涼は体力が高い訳ではない上に、実践経験が少ない。

 

アーセナルとしての活動が多く、トレーニングも基礎程度の事しかしていない。

 

 

佳世は体力が平均だが、自身のレアスキル、ルナティックトランサーを使って戦っていた為、体力とマギを消耗している。

 

二人にこれ以上の戦闘は不味いと判断し、奈々は二人に撤退するよう声をかけるが…

 

 

「遅れてすみません!」

奈々「!?」

 

 

女の子の声がこちらに響いてきた。

 

 

すると響いた方から、ルドビコ女学院の制服をまとった灰色のボブカットの少女が複数のリリィを連れてやって来た。

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 1年生 長谷川・ガブリエラ・つぐみ(はせがわ・がぶりえら・つぐみ)

 

 

使用CHARMはグングニル・カービン。

 

 

 

連れのリリィ達は、グングニル・カービン、ダインスレイフ・カービン等の派生量産機を持っていた。

 

 

 

 

佳世「つぐみ!」

つぐみ「佳世お姉様、加勢に来ました!」

 

 

つぐみは佳世の元に着き、佳世に触れると、佳世から負のマギが浄化された。

 

 

奈々「これは…!」

涼「ブレイブか…!」

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル ブレイブ

 

ルナティックトランサーと対になると言われるレアスキルで、触れた相手に精神の安定をもたらし、対象者が持つポテンシャルの上限を一定時間開放させる。

 

また、自身の攻撃力を上げる効果を持つが、最大三回が限界となっている。

 

 

彼女、長谷川・ガブリエラ・つぐみは佳世のシュベスターであり、ルナティックトランサー持ちの佳世を支えるパートナーでもある。

 

 

 

 

 

奈々「つぐみちゃんだっけ?まさか君は佳世さんの…」

つぐみ「はい。シュベスターです」

涼「いいところに来てくれた。早速だけど残りのリリィにスモール級の方を任せるよう頼めるかな?」

つぐみ「わかりました!行きましょうお姉様!」

佳世「ええ!」

 

 

佳世はつぐみと連携を取りながらミドル級を片付けていく。

 

 

涼「一人で戦う時よりキレが上がってる!僕達も負けてられない!」

奈々「だね!」

 

 

涼、奈々も佳世、つぐみの連携に負けないかのように、二人で連携を取りながらミドル級を片付けていく。

 

残りのリリィ達も、スモール級を倒していく。

 

 

 

そして、30分後…全てのスモール級、ミドル級は奈々達の手により全て片付いた。

 

奈々達は今、ビルの屋上で休憩を取っていた。

 

佳世、涼は体力の限界なのか、大の字になって倒れていた。

 

つぐみや他のリリィ達はそこまで疲れていない上に、マギに余裕がある。

 

奈々は…言うまでもない。

 

 

涼「流石に…疲れた…」

佳世「今までの戦いよりも…結構…動きました…」

奈々「これ以上の戦闘は無理があるか…」

つぐみ「私達も、戦闘区域内から出ようか」

奈々「いや、私は残った方がいいかも」

つぐみ「え?」

 

 

奈々はとある方向に指を指した。

 

指した先の方向につぐみは見ると……

 

 

 

 

 

つぐみ「!?」

 

 

つぐみは驚愕した。

 

なんと一柳隊が戦ったギガント級が戻ってきたのだ。

 

ギガント級自身の体の傷は綺麗に無くなっていた。

 

ヒュージネストで治したのだろうか…

 

とはいえ、戦闘区域に入るまで後5分程だと奈々は推測した。

 

 

奈々「時間がない、つぐみちゃん、連れと一緒に佳世さんと涼ちゃんを連れて避難してくれる?」

つぐみ「そんな!一人でなんて無茶よ!」

奈々「アイツの攻撃は結構厄介だから、仲間を守っていられる余裕はない。連れのリリィ達でもあのギガント級の攻撃をかわすのは難しい。手遅れになる前に急いで!」

つぐみ「でも、一人でギガント級と戦うのは…!」

奈々「倒す役は…もうこっちに来ている!」

つぐみ「えっ!?」

 

 

 

遠くから一柳隊と東京地区…総勢18人のリリィ達が戻ってきた。

 

ギガント級が来たことに気付き、行動し始めたようだ。

 

 

奈々「私は皆と合流する。つぐみちゃん早く!」

つぐみ「わかりました!気を付けて!」

 

 

つぐみ達、佳世、涼を残し、奈々は一柳隊達の元へ向かう。

 

 

 

 

 

奈々「体長は万全のようですね」

夢結「ええ。マギもノインヴェルト戦術を行うには十分よ。貴女もまだやれるようね」

奈々「つぐみちゃん率いるルドビコのリリィ達が加勢に来てくれました。力をかなり消耗してるので今前戦から下がらせてるところです」

幸恵「佳世さんとつぐみさんは?」

奈々「マギも体力も限界だったのでこれ以上の戦闘は無理のようです。その代わり取り巻きの小型ヒュージは全て片付きました。ところで琴陽ちゃんは?」

 

 

ルドビコ側の方を見ると、琴陽の姿がない。

 

 

来夢「琴陽さんは経験が足りないので下がらせました」

奈々「そうなんだ…」

楓「涼さん頑張りすぎですわね。でもお陰でやり易くなりましたわ」

楪「その頑張りに答えなきゃな!」

梅「だな!」

梨璃「奈々ちゃんは無理しない程度に引き続きギガント級の注意を引いて。私達がノインヴェルト戦術で倒すから」

奈々「隊長っぽくなってきたじゃん。了解!」

 

 

奈々は囮になってギガント級の方へ向かった。

 

 

そして梨璃は皆に指示を出す。

 

 

 

梨璃「みなさん、これより二隊での同時ノインヴェルト戦術…開始します!」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」

 

 

 

各自二組に散開し、ノインヴェルト戦術を仕掛けた。

 

 

夢結「最初は梨璃、貴女から行くわ!」

梨璃「はい!」

 

 

夢結はブリューナグにノインヴェルト戦術の弾を装填し、梨璃に向けてマギスフィアを発射した。

 

対し梨璃は飛んできたマギスフィアをグングニルで受け止めた。

 

 

 

一柳隊、東京地区のリリィ達にとってこれがこの戦場での2度目のノインヴェルト戦術になる。

 

しかし問題はCHARMである。

 

質のいい素材や部品を使ってるブリューナグやティルフィング等は大丈夫だが、グングニルやアステリオン等の量産機だと、マギスフィアの濃度次第で壊れてしまう可能性がある。

 

そこで一柳隊は、低コストのCHARMを扱う梨璃、二水、雨嘉を最初にすることで、濃度の少ないマギスフィアをキャッチした時に掛かるCHARMの負荷を減らす事でノインヴェルト戦術を行う方法を考えた。

 

 

東京地区のリリィ達の持つグングニル・カービン、ダインスレイフ・カービンは、強度を上げた改造を施されており、ノインヴェルト戦術での二回以上の使用にも普通に耐えられる。

 

 

椛「楪!行くよ!」

 

 

椛も、グングニル・カービンにノインヴェルトの弾を装填し、楪に向けてマギスフィアを放った。

 

 

現在この場にいる敵はギガント級の1体だけ。

 

そしてその相手を奈々が引き受けている。

 

 

そのためリリィ達は、ノインヴェルト戦術に集中出来る。

 

 

楪「やるぞ!」

 

 

楪はレアスキル・テスタメントを発動し、東京地区のリリィ達のスキル効果の範囲を広げた。

 

 

楪「純!」

 

 

楪はマギスフィアを純にパスした。

 

 

梨璃「二水ちゃん!」

 

 

梨璃は二水にマギスフィアを渡した。

 

 

 

純はダインスレイフでキャッチし、二水はグングニルでキャッチした。

 

 

純「姉様!」

二水「雨嘉さん!」

 

 

純はマギスフィアを初に、二水はマギスフィアを雨嘉にパスした。

 

 

と、そこへ……

 

 

奈々「ごめん、小型ヒュージがそっちに来る!」

 

 

 

奈々の警告を聞き、雨嘉と初は身構える。

 

すると二人の目の前に小型ヒュージがやって来た。

 

ギガント級がノインヴェルトに気付き、再び小型ヒュージを出して来たのだ。

 

奈々はギガント級を相手にしないといけないため、小型ヒュージまで手が回らず、奈々の包囲網を抜けてしまう。

 

 

しかし二人には触れさせないと、ノインヴェルトのパスを終えた純、楪、二水が迎え撃ってきた。

 

 

純「お姉様に気安く触れないで頂きます?」

楪「邪魔はさせないぞ!」

二水「私だってリリィですから!」

 

 

純がルナティックトランサーを使って、前方の群れに向かって飛び出し、次々とヒュージをダインスレイフで斬り倒していった。

 

 

純「先程のようには行きませんわよ!」

 

 

純も、一柳隊の邪魔をしてしまった事については内心反省してるようだ。

 

左右に漏れたヒュージは、楪、二水がシューティングモードに変えたCHARMの射撃で確実に倒していく。

 

二水を含むノインヴェルト戦術を二回行っているリリィ達は、CHARMの強度がかなり消耗している。

 

低コストの部品しか使ってないグングニルでは、数回敵を切れば壊れてしまうだろう。

 

しかしシューティングモードならCHARMに掛かる負荷が少ない為、戦う事はは可能である。

 

 

楪「やるな!1年…じゃなくて二水」

二水「私も、一柳隊のリリィですから!」

 

 

一方、雨嘉はマギスフィアを神琳に、初は椛にマギスフィアをパスした。

 

 

奈々「くっ、小型ヒュージを出しすぎだって!」

 

 

ギガント級はノインヴェルトを警戒し、奈々の相手をしながら小型ヒュージを更に拡散してきた。

 

数が増えたら、今処理を行っている純、二水、楪だけでは辛い。

 

しかし、パスを済ませた雨嘉と初が参加し、小型ヒュージの処理を行った。

 

雨嘉は遠くからシューティングモードに変形させたアステリオンでミドル級を撃ち倒していく。

 

 

二水「雨嘉さん!」

雨嘉「二人はスモール級の方を!」

楪「オーケイ!」

 

 

初は純と合流した。

 

 

純「姉様!」

初「やりましょう純」

純「ええ。私達、ロネスネスの船田姉妹の力を…!」

 

 

初もルナティックトランサーを発動し、純と一緒に新たにやって来た小型ヒュージ達を倒していく。

 

 

一方神琳、椛はマギスフィアに自らのマギを与えて行く。

 

 

神琳「椛さん、私がテスタメントを使いますわ!」

椛「そして私がレジスタを!」

 

 

神琳がテスタメントを発動し、続けて椛が発動したレジスタの効果範囲を広げた。

 

 

 

 

 

これがレジスタのもうひとつの効果。

 

仲間の攻撃力を強化するだけでなく、ノインヴェルト戦術の成功率を大きく上げる効果を持っているのだ。

 

レギオンを作る際、これを持つリリィは一人入れたいぐらい重要なレアスキルである。

 

 

神琳「梅様!」

椛「来夢さん!」

 

 

神琳はマソレリックにくっついたマギスフィアを梅に飛ばし、椛はグングニル・カービンに付いたマギスフィアを来夢に向けて飛ばした。

 

その後、神琳と椛は二水達に協力し、小型ヒュージを処理していった。

 

飛んできた二つのマギスフィアは、梅のタンキエム、来夢のアステリオンでキャッチした。

 

 

来夢「私は前に進む…そして、力を出し切る!」

 

 

来夢がレアスキルを発動した。

 

すると、周囲のマギが変化し、皆のマギが膨れ上がったのを感じた。

 

 

梅「これは…!」

雨嘉「マギが回復していく…!」

一葉「あれがレア中のレアスキル…」

叶星「カリスマ…!」

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル カリスマ

 

邪悪なマギに大して耐性が付き、周囲のマギを浄化して自身に蓄え、入りきれなかった分を味方に分け与えてマギの回復、攻撃力の向上を同時に行える強力なレアスキル。

 

現在百合ヶ丘でカリスマを所有するリリィは四人のみと、このスキルに覚醒するリリィが少ない事から希少価値が高い。

 

 

 

梅「楓!」

来夢「叶星様!」

 

 

梅は楓に、来夢は叶星にマギスフィアをパスした。

 

 

一方、奈々はギガント級の攻撃を大きく避けている。

 

それもその筈、ギガント級は再び無数のレーザーをばらまいてきたのだ。

 

ヘリオスフィアでは防ぎきれないと考え、縮地でかわしていった。

 

避けきれないレーザーはカナベラルで弾く。

 

そこへ梅が縮地を使って奈々の元へ参加し、レーザーをタンキエムで弾いていく。

 

 

奈々「梅さん!?」

梅「梅の専売特許を取らせないゾ」

奈々「別に取ろうとした訳じゃ…」

梅「二人でやるぞ。梅の動きに付いてこれるか?」

奈々「望むところです!」

 

 

奈々、梅の二人でギガント級を相手にした。

 

 

一方マギスフィアを受け止めた楓と叶星。

 

 

叶星「楓さん、レジスタの発動をもう少し待ってもらえる?」

楓「なるほど。読めましたわ。それで行きましょう!」

叶星「一葉、行くわよ!」

 

 

叶星はマギスフィアを一葉にパスした。

 

 

一葉「やりましょう。叶星様、楓さん!」

叶星「レジスタ使いが3人も揃うなんて、珍しいでしょ?」

楓「ですわね!」

 

 

一葉はレジスタを発動し、楓、叶星も合わせて発射した。

 

 

三人分のレジスタの効果がリリィ達に掛かる。

 

全リリィ達の攻撃がエンジンが掛かったかのように激しくなり、小型ヒュージ達を早く処理していく。

 

 

楓「さて、出番ですわよ。ちびっ子2号!」

 

 

楓がマギスフィアをパスした相手は、ミリアムだった。

 

 

ミリアム「誰がちびっ子2号じゃ!だがレジスタ三人分の効果を掛けてくれたお陰でわしのレアスキルも更に発揮できる!」

奈々「ミリアムちゃん!そっちに小型ヒュージが来るよ!」

 

 

奈々の声を聞き、ミリアムはニョルニールを構えた。

 

前方にやって来た小型ヒュージの数は雨嘉と初を襲いに来た時より数が多かった。

 

 

ミリアム「ゾロゾロ来るよのう…だがわしには関係の無いことじゃ!」

幸恵「そうね。ここで取り巻きを減らしておけばそれで済むのだから!」

 

 

いつの間にか幸恵が一葉から渡されたマギスフィアをフィエルポワで受け取り、ミリアムの元に現れた。

 

幸恵は両手には、右手にフィエルポワ、左にシャルルマーニュが握られていた。

 

 

 

そして二人は背中合わせになり、ミリアムはフェイズトランセンデンス…幸恵は円環の御手を発動した。

 

 

幸恵の二つのCHARMより繰り出すマギの斬撃と、ミリアムのニョルニールから放たれるビームが、襲いかかる小型ヒュージ達をまとめて処理していく。

 

 

奈々「うわぁ、凄い殲滅力」

二水「は、鼻血が…!!」

奈々「なっ!?」

 

 

いつの間にか奈々の近くに二水と佳世が現れた。

 

 

佳世「フェイズトランセンデンスと円環の御手のコンビネーションなんて、攻撃力凄すぎ……!」

 

 

二水 佳世「ぶっほおあっ!!!」

 

 

二水と佳世が鼻血を撒き散らし、運悪く奈々の両目に掛かってしまった。

 

 

 

奈々「ぎゃあああああ!!?目がー!目がァーー!!!?」

 

 

倒れて転がりながらもがき苦しむ奈々。

 

 

夢結「奈々も何やってるのよ…」

 

 

遠くで見ていた夢結は奈々の姿を見て呆れていた。

 

 

涼「ほら、このハンカチで吹いて」

奈々「あ、ありがとう…って、涼ちゃん?」

 

 

奈々は涼から借りたハンカチで顔に掛かった鼻血を拭き取る。

 

そこで奈々は涼と佳世がここにいる事に気付く。

 

 

奈々「涼ちゃん、調子は大丈夫なの?」

涼「ああ。来夢のカリスマのお陰でマギも回復した。佳世様も回復して一緒だ。僕達も戦おう」

つぐみ「私も手伝います!」

 

 

 

既に佳世はルナティックトランサーを発動していた。

 

 

佳世「よっしゃーやってやんよ!!」

 

 

ルナティックトランサーを発動した佳世はそのまま単独で飛び出し、小型ヒュージ達を倒していく。

 

涼、つぐみも、佳世をフォローしに向かう。

 

 

ミリアム「後は……任せるぞ、鶴紗!」

 

 

ミリアムは最後の力を振り絞って、マギスフィアを鶴紗にパスした。

 

そしてそのまま倒れるが、楓、二水に支えられる。

 

 

楓「また無茶をして…私は早く梨璃さんの援護に行きたいのですけど?」

ミリアム「すまぬ…」

二水「鶴紗さん、後はお願いします!」

鶴紗「わかった」

 

 

鶴紗のティルフィングで受け止めたマギスフィアは既に7人分のマギが蓄えられていた。

 

そこに鶴紗のマギが加えていくと、ついにフィニッシュを決めるリリィに渡す時が来た。

 

 

鶴紗「夢結様!」

 

 

鶴紗はマギスフィアを、十字路の方で待機しているフィニッシュ担当の夢結にパスした。

 

 

夢結「!」

 

 

鶴紗からパスされたマギスフィアを、夢結はブリューナグで受け止めて、そのまま取り込んだ。

 

 

 

ちなみに、十字路の反対側には、幸恵からマギスフィアを渡された葵の姿があった。

 

葵はトリグラフを分離させ、共にシューティングモードに変形させて構えた。

 

もう片方のノインヴェルト戦術のフィニッシュは、葵が担当するようだ。

 

一方ギガント級が生み出した小型ヒュージ達は他のリリィ達によって全て片付いた。

 

これで敵はギガント級一体のみとなった。

 

 

 

幸恵「奈々さん、ノインヴェルトの準備は出来ましたわ。ギガント級を十字路の中央へ!」

奈々「はい!」

 

 

奈々はルナティックトランサーを発動し、背中に着けたブルメリアを抜いた。

 

髪の色が赤茶色から白に変わり、早い動きでギガント級の頭上に移動した。

 

 

奈々「おっちろぉー!!」

 

 

奈々がギガント級の頭上にカナベラルの渾身の降り下ろしを食らわせる。

 

 

 

 

 

ところが、その間にラージ級が割り込み、奈々に向けてビームを発射した。

 

しかし奈々は怯まず、ブルメリアでビームを防ぎ、カナベラルでラージ級を叩き倒す。

 

そこにギガント級が上昇し、奈々を押し上げる。

 

 

奈々「ぐうっ!?」

夢結「奈々!?」

 

 

奈々を心配する夢結。今すぐ援護に行きたいが、今の夢結はノインヴェルト戦術のフィニッシュを担当している。

 

飛び出すわけには行かないが、ギガント級は空にいるため攻撃が届かず、援護にも行けない。

 

しかしそこへ、奈々の大声が響いてきた。

 

 

奈々「夢結さーん!!私は大丈夫でーす!!」

 

 

 

迷う夢結に、奈々が夢結に自分が大丈夫だと大声で伝える。

 

夢結はブリューナグを構えて、ルナティックトランサーを発動しようとするが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結は躊躇っていた。

 

 

 

 

 

過去に何度もルナティックトランサーをコントロール出来ずに暴走し…

 

 

 

 

 

 

 

味方にまでその刃を向けてしまい…

 

 

 

 

 

 

 

そして遂には………かつてのシュッツエンゲルを失ってしまう…

 

 

 

 

 

 

今度発動して、この刃を仲間にかけてしまったら………

 

 

 

 

 

それを思うと、夢結はルナティックトランサーを使うことを怖れた。

 

 

 

 

 

しかし、ここでやらなければギガント級を倒せない。

 

ルナティックトランサーの力で更にマギを混めないと、ギガント級を倒せるほどの火力にならないからだ。

 

皆が頑張ってくれなければ二組による同時ノインヴェルト戦術は完成しなかっただろう。

 

裏切るわけには行かない。

 

皆の為にも、ここは決めなきゃいけないと。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、夢結には踏み出す為の勇気が足りなかった。

 

 

 

 

 

ルナティックトランサーをコントロール出来なかった時の後と、失敗は出来ない同時ノインヴェルト戦術。

 

 

 

 

 

 

迷いが……プレッシャーが………

 

 

 

 

 

夢結を追い詰めていく………

 

 

 

 

 

 

 

ところがそこへ、梨璃が夢結の元へやって来た。

 

 

梨璃「お姉様、貴女はもう一人ではありません!私がいます!一柳隊の皆がいます!」

夢結「梨璃!?」

梨璃「例えコントロール出来なくても構いません!私が全力で止めます!だからお姉様は自分の戦いをしてください!」

 

 

そして梨璃は夢結の左手を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「ルナティックトランサー……発動してください!!」

夢結「!」

 

 

梨璃の言葉に夢結は心が動かされる。

 

あの時に言った言葉…

 

梨璃の事を信じると…

 

それを裏切るわけには行かない。

 

 

 

 

 

この子の…

 

 

 

 

 

梨璃のシュッツエンゲルとして…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結は遂に決心する。

 

 

 

夢結「やるわ!」

 

 

 

夢結は梨璃の言葉を信じて、ルナティックトランサーを発動した。

 

夢結の周りに禍々しきオーラがまと割り付き、負の感情が押し寄せてくる。

 

 

このままではまた、感情をコントロール出来なくなり、暴走してしまう…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時…夢結の中にある言葉が浮かんできた…

 

 

 

………………………………………………………

 

 

奈々「確かにルナティックトランサーを使えば、ヒュージに近い負のマギを体に宿してしまい、精神が不安定になりがちになります。ですがそれ以上に強い思いを持てば、ルナティックトランサーを完全に使いこなし、憎しみの感情に絶対に負けません。そして、夢結さんにはもうその強い思いを持っている筈です」

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

 

奈々が言ってたあの言葉を思いだし、夢結は集中した。

 

 

夢結「……」

 

 

 

相手を倒すのではなく…守りたい者達の為にと…

 

 

夢結は強く願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると…!

 

 

 

 

夢結「…………制御……出来てる…!?」

 

 

なんと、夢結はルナティックトランサーを発動してるにも関わらず、戦闘的な荒い感情が現れなくなった。

 

髪の色は白くなってるのに、落ち着いていた。

 

取り込んだ負のマギに耐えられているのだ。

 

 

これは正に、ルナティックトランサーをコントロール出来てる証拠である。

 

 

夢結は、奈々のあの時の言ってた意味を理解した。

 

 

 

夢結「これなら………行ける!」

 

 

夢結は取り込んだマギをブリューナグに注いでいく。

 

更にギガント級を含むヒュージ達からマギを吸収し、これもブリューナグに注いでいく。

 

 

そして、梨璃も…

 

 

梨璃「私も手伝います!お姉様と皆を守るために…!!」

 

 

梨璃の体から、優しい光が広がっていく。

 

それは、離れたところにいるリリィ達にも感じた。

 

 

楓「これは…!」

二水「マギが回復していく…!」

幸恵「まさか…!?」

来夢「梨璃ちゃんのレアスキルは……!」

涼「それだけじゃない…夢結様のルナティックトランサーの力が更に強まってる!」

 

 

全てのリリィのマギが回復し、更にルナティックトランサーの効果も上がっていた。

 

 

 

「うおおおおああああーーーー!!!!」

 

 

奈々の叫び声が響いた。

 

 

なんと上空からギガント級が落下してきた。

 

 

雨嘉「ギガント級が落ちてきた!?」

二水「いえ、奈々さんが上から押してるんです!って、な、奈々さんから更に凄い量のマギを放出しています!」

 

 

二水は鷹の目を発動して、上空から落下してくるギガント級と奈々の姿を捉えた。

 

 

神琳「ええっ!?」

楪「フェイズトランセンデンスか!?」

鶴紗「いや、奈々はフェイズトランセンデンスの

サブスキルを持って無かったはず…!」

一葉「じゃあ一体…」

ミリアム「恐らく、あれは奈々が持つCHARM、カナベラルとブルメリアの機能の一つじゃろう」

 

 

ミリアムが動けるようになり、皆に奈々が大量にマギを放出してる理由について話す。

 

 

叶星「あの二本が?」

ミリアム「うむ。あの二本は合体が出来るCHARMなのじゃ」

楓「CHARMが合体!?」

梅「ただてさえ凄いのに更に凄くなるのか?」

ミリアム「性能は察しの通りじゃ。あの状況を見たら予想は付く」

二水「ああっ!」

 

 

鷹の目で見たギガント級の突然の行動に二水は驚く。

 

 

ミリアム「うおっ、どうしたんじゃ?」

二水「ぎ、ギガント級がマギリフレクターを発動しています!」

純「なんですって!?」

 

 

二水はギガント級が奈々の攻撃に対し、マギリフレクターを貼った事に驚く。

 

それを聞いた皆も同様に驚く。

 

 

初「まさか、ギガント級が奈々さんの今の攻撃を危険視したから…?」

涼「ノインヴェルト戦術に近い火力を、奈々は持っていたというのか…!?」

 

 

だとすれば…奈々は一人で普通のギガント級を倒せるほどの力を持っている事になる。

 

 

初「でも、これで倒しやすくなったわ」

幸恵「後はあの3人に任せましょう」

 

 

 

 

 

 

一方十字路の左右で待機している葵と夢結、梨璃のペア。

 

 

葵はレアスキル…ファンタズムを発動し、ギガント級の落下地点を予測した。

 

 

葵「夢結様、中央に落ちます。私が発射した後にお願いします!」

夢結「わかったわ!」

 

 

 

二組、発射体制に入った。

 

 

 

 

そしてギガント級は、葵の読み通り…十字路の中央に落ちた。

 

 

葵「行きます!」

 

 

葵はトリグラフに込めたマギスフィアを使って二本の大きめのビームをギガント級に向けて発射した。

 

奈々相手にマギリフレクターを使ったギガント級には防ぐ術がなく、直撃を受けた。

 

 

ギガント級のマギが大きく削られていく…

 

完全に倒すには至らないが、これで十分である。

 

 

そして…!

 

 

梨璃「これで…!」

夢結「終わりよ!」

 

 

梨璃と夢結が支えるブリューナグから、マギスフィアのエネルギーを取り込んだ高粒子砲のビームが発射された。

 

そのビームはとても大きく、ギガント級を包んでいき、そのまま空の彼方へ飛んでいき……

 

 

 

 

 

 

 

 

大爆発を起こしたのであった。

 

 

爆発による強風がリリィ全員に降り掛かる。

 

 

爆発が晴れると、そこにギガント級の姿はなかった。

 

マギの気配も、完全に消えた。

 

 

 

 

リリィ達の勝利である!

 

 

 

梨璃「やりました!お姉様!」

 

 

梨璃は夢結を抱いた。

 

既に夢結はルナティックトランサーを解除しており、髪の色も元の黒に戻っていた。

 

 

夢結「私がルナティックトランサーをコントロール出来たのは貴女のお陰よ」

 

 

そう言って夢結は梨璃を抱く。

 

 

梨璃「お、お姉様!?」

夢結「ありがとう……梨璃」

 

 

夢結に抱かれて顔を赤くする梨璃。

 

 

その様子を見ていた他のリリィ達…

 

 

純「ルナティックトランサー…完全に使いこなせてる…いいパートナーが見つかったみたいですわね」

涼「当然ですよ。あの二人の…シュッツエンゲルの絆は、誰よりも強いですから」

初「私達も、負けてられないわね」

楪「夢結はもう大丈夫みたいだな」

椛「そうですわね」

純「それよりも…奈々のあの一撃…」

初「ノインヴェルト戦術並の威力を持っていたわね」

純「会うたびに驚かせてくれますわね。私達も負けてられませんわ」

初「そうね」

楪「だな」

椛「ええ」

 

 

 

一葉、叶星の二人は…

 

 

 

一葉「今回の戦いで、色々と学ぶことが出来ました」

叶星「私もよ。ガーデンにいるレギオンの皆に言う土産話が出来たわ」

一葉「はい。今回の経験を生かし、また頑張って行きましょう」

叶星「ええ!」

 

 

 

ルドビコ女学院の来夢と幸恵は…

 

 

 

来夢「梨璃ちゃんのレアスキル…カリスマだったんだね」

幸恵「あの子、来夢に似ていたけど、レアスキルまで似るのは驚きだわ」

来夢「後で…梨璃ちゃんにいっぱい話をしたい」

幸恵「きっと仲良くなれるわ」

 

 

 

一方、楓は葵と互いの強さを認めていた。

 

 

 

楓「葵、あの時より更に磨きがかかってましたわ」

葵「楓も強くなったよ。中等部から一気に」

楓「これからも、お互い強くなりましょう」

葵「ええ。リリィとして!」

 

 

 

 

そして、十字路の中央で大の字になって倒れた奈々の元に、一柳隊のメンバーと一部の東京地区のリリィ二人がやって来た。

 

 

 

梅「大丈夫か奈々?」

奈々「全然…カナリアの反動が大きかったので…しばらくすれば動けるようになりますから」

二水「カナリア?」

ミリアム「そこに転がってるCHARMじゃな」

 

 

ミリアムが見た地面には、ブルメリアをくっ付けたカナベラルがあった。

 

カナベラルの部分は刀身のパーツが伸びていた。

 

 

鶴紗「本当にCHARMが合体してる」

ミリアム「後で説明してもらえるかの」

奈々「それでお願い」

佳世「それより、奈々さんもルナティックトランサーをコントロール出来て…」

奈々「はい…」

つぐみ「ブルーガードにいたって聞いたけど、それでもあのギガント級を押しきるなんて…」

梅「2年前に戦ったギガント級が百合ヶ丘に

現れたときなんか、ルナティックトランサー発動して一人で圧倒してたからな」

雨嘉「他のルナティックトランサー使いでもあれだけの芸道は出来ない」

佳世「そこまで…!」

 

 

凄すぎて言葉を失う佳世とつぐみ。

 

 

神琳「あれ?」

ミリアム「どうしたのじゃ?」

神琳「このCHARM、刃のところが割れていますわね」

奈々「え!?」

 

 

動けるようになったのか、奈々は起き上がり、自分のCHARMを拾う。

 

よく見ると、確かにカナベラルの刃の部分が少し割れていた。

 

 

奈々「ああやっぱりルナティックトランサーでの使用は無理があった…」

雨嘉「百由様に頼んで見たら?」

奈々「これ、普通の素材使ってる訳じゃないから難しいかな…後でブルーガードに連絡してみるか」

つぐみ「ブルーガードにもアーセナルがいるの?」

奈々「このCHARMを作った子がいるからね」

梅「しばらく使えるCHARMはそのブルメリアだけになるな…」

奈々「いや、ブルメリアも修理に出しますから実質、代わりのCHARMが必要になります」

二水「代わりのCHARMですか?」

ミリアム「グングニルじゃ駄目なのかのう?」

奈々「あれは梨璃ちゃんの模擬戦しか使わないし、実戦で使うのは無理かな?」

神琳「百合ヶ丘にはまだCHARMがありますから色々試してはどうでしょう」

奈々「そうだね…考えてみるよ」

 

 

 

そう言った後、奈々は周りを見渡す。

 

 

 

鶴紗「どうした?」

奈々「いや、琴陽ちゃんの姿が見当たらない…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸田・エウラリア・琴陽は、人目の付かないところで、誰かと通信をしていた。

 

 

 

 

琴陽「はい……東京地区での実験は成功しました。小型ヒュージの拡散は、リリィに有効な手段だという結果が出ました。しかしリリィ達は2隊同時ノインヴェルト戦術でマギリフレクターを破って倒しました。まさかあのギガント級が駆逐されるとは思いもしませんでした。今後も、今まで通りには行かないと思われます…どうしましょう…」

 

 

 

 

 

琴陽は通信を続けた。

 

 

 

 

 

琴陽「では、予定通り計画を実行に移すのですね?…はい…大丈夫です……各リリィ達のデータは十分手に入れました。白井夢結の戦闘データもです。ただ……まだ木葉奈々のデータが足りないんです……え?……はい……いいのですか?………はい……分かりました………」

 

 

 

 

彼女…戸田・エウラリア・琴陽の秘密については………

 

まだ誰も知らない……

 

 

 

 

 

 

 

数時間後……一柳隊と涼、奈々は、東京地区のリリィ達と別れを告げ、合流した出雲と共に大型ヘリで百合ヶ丘に帰るところだった。

 

 

 

皆は今回の遠征で疲れて、ぐっすり眠っていた。

 

ただ、奈々だけは起きていた。

 

 

 

出雲「CHARMの破損は予想していたが、まさかお前のCHARMが破損するとはな」

奈々「無理しました」

出雲「今回のギガント級は一筋縄ではいかなかったようだしな…仕方がない。ブルーガードへは私が連絡しておく。お前も体を休んでおけ」

奈々「私はもう少し外を見てます。今は寝る気分じゃないので」

出雲「そうか…好きにしろ」

 

 

出雲はこれ以上言うことなく、操縦室の方へ向かった。

 

 

奈々は、窓の外を眺めていた。

 

 

遠く離れていても見える下北沢の街並みは、ヒュージ達によってほとんど崩壊していたが、その形は…かつての姿をまだ残していた。

 

 

今回の遠征で奈々は、いろんな体験をした。

 

 

 

 

 

見たことのないギガント級ヒュージとの戦い…

 

 

2年前に助けた少女の連れ合いの琴陽の出会い…

 

 

そして、梨璃のレアスキル、カリスマの覚醒…

 

 

頭の痛くなる体験だったので奈々は今日、それを考えないでおこうとした。

 

 

 

 

奈々「…………」

 

 

代わりにボロボロになった街を見た奈々は誓った。

 

 

 

この世界から…ヒュージを無くすために…

 

 

 

この世界を平和にしようと…

 

 

 

 

改めて決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

二水「次回は転入生のリリィが登場します!」

 

??「荒っぽいことしてくれたね。奈々」

 

 

 

 

next 木葉奈々の模擬戦ラッシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

今回の新CHARM説明

 

 

カナベラル

 

奈々のメインCHARMで、大剣の形をしている。

コストの低いCHARMを真っ二つにしてしまうほど、攻撃力がずば抜けるほど高いが、消費するマギの量もかなり多い。

マギの量を押さえることも出来ないピーキー仕様となっている。

また、ブルメリアとの同調により、二本の使用が可能となるが、その分マギの量も多くなる。

 

奈々のようなマギの保有値が多いリリィでないと長時間の使用は難しい。

 

 

 

ブルメリア

 

奈々のサブCHARM。

単体の威力は低いのに対し、消費するマギの量は普通。

その反面敵のマギを吸収、マギの浄化が出来る機能を兼ね備えている。

短剣のCHARMだが、マギの刃を伸ばして、剣に代用することが出来るが、メインとして使うにはおすすめしない。

 

 

 

合体剣カナリア

 

 

カナベラルの鍔にブルメリアをくっ付けて合体させた武器。

通常より大きめのマギの刃が生成され、一般のギガント級を倒せる程の大火力を持っている。

その代わり、体に掛かる負担と、消費するマギの量が異常に高く、マギの保有値が高い奈々でさえも、30秒が限界である。

 

現状使っている素材でも、一度使っただけで破損するほどの負荷がCHARMに掛かる。

 

 

 

 




流石に沢山の登場人物を話に入れるのは苦労しました。
次の話からは今回ほどの話ではないですが、
気長に待っててくれたら嬉しいです。
それでは、次回をお楽しみに!


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Brilliant lily
「9」木葉奈々の模擬戦ラッシュ


本当に申し訳ありません!
最近、モチベーションが落ちてて、
投稿に2ヶ月かけてしまいました。
文章の方も気がついたら27000以上も
ありました。
その分良いものに出来たと思います。

後、遂に彼女が出てきます!

ちなみに新章に入った為、主人公を含むキャラクターの紹介をアニメ版のようにもう一度書きました。

それではどうぞ!


「ふわあああーーっ……」

 

 

赤茶色のショートの少女がベッドから起き上がった。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 木葉奈々(このは なな)

 

 

 

 

 

少女…木葉奈々は、自分の部屋のベッドから起き上がり、カーテンを開けた。

 

外の景色は、戦争でもあったかのようにボロボロになった街並みと広大な海が奈々の目に映った。

 

 

 

 

 

今から50年前……

 

 

世界は、突如現れた謎の生物によって最大の危機に達していた。

 

 

その生物の名は「ヒュージ」。

 

 

ヒュージによって、世界中の街、国等が次々と壊滅に落ちていった。

 

対抗しようにも、ヒュージには現在の近代兵器でも効果が薄く、大きさや種類によっては通用しない。

 

あらゆる攻撃手段が封じられ、人類は破滅の危機を迎えようとしていた。

 

しかし人類は諦めずに、ヒュージに対抗できる武器を作ることが出来た。

 

 

 

それが、「CHARM(チャーム)」と呼ばれる、対ヒュージ用決戦兵器である。

 

 

そして…それを使える人間は…

 

マギと呼ばれる力を持つ少女…

 

 

 

 

その名を人達は…「リリィ」と呼んだ。

 

 

 

政府はヒュージに対抗できるリリィを育成するために、「ガーデン」と呼ばれる機関を世界各地に作り上げた。

 

リリィの出現により、ヒュージの脅威は静まりつつあり、今もヒュージとリリィの戦いは続いていた。

 

 

 

奈々が今いるこの場所もガーデンである。

 

 

私立百合ヶ丘女学院。

 

 

鎌倉地区で立てられた名門ガーデンである。

 

 

そして彼女はこのガーデンに通うリリィの一人。

 

 

パジャマを脱ぎ、黒一面に青と白のラインが付いた制服に着替え、夜の内に必要なものを入れた鞄を右手に持って部屋を後にした。

 

 

 

 

 

奈々は百合ヶ丘女学院の校門を通った。

 

周りには、奈々のとは違う黒い制服を着た生徒達が沢山歩いていた。

 

それもそのはず…奈々の着ている制服は百合ヶ丘女学院本来の制服ではない。

 

前の下北沢の遠征での活躍が評価され、学園側から専用の制服を用意してくれた物なのだ。

 

しかし…

 

 

奈々「流石に目立つか…これは」

 

 

奈々の着ている制服が他の生徒の制服と異なるせいか、皆に見られまくっているのだ。

 

更に奈々の活躍は、他の生徒達の耳に入り、今も噂が絶えなかった。

 

 

奈々の活躍に関する内容はとある新聞にも載っていた。

 

 

奈々はみんなが集まっている校内の掲示板に付いた新聞を見た。

 

 

 

 

 

週刊リリィ新聞。

 

出版者は二川二水と載ってあった。

 

 

内容も…

 

 

「一柳隊、下北沢で大活躍!」。

 

「流星のヴァルキリー、木葉奈々!」。

 

「2体同時ノインヴェルト戦術で勝利!」

 

などてある。

 

 

特に奈々に関係する内容。

 

これはギガント級を相手にする奈々が使用した二本のCHARMも掲載されていた。

 

 

 

奈々「流星のヴァルキリー…凄い二つ名が付いたな…でもなんかかっこいい」

 

 

 

奈々もこの二つ名が気に入った様子。

 

そして一番の見所が…その二本を合体させた武器。

 

 

 

 

合体剣「カナリア」である。

 

 

 

威力は非常に高く、ラージ級のヒュージなら一撃で倒せる程強力な物なのだ。

 

その反面、一般のリリィのマギが空になる程の消費量と、体に掛かる負担をあわせ持つ。

 

ノインヴェルト戦術同様、諸刃の刃でもあり、そこらのリリィでは扱えない代物となっている。

 

ある人曰く、ピーキーである。

 

 

この内容を見て、殆どの生徒は、CHARMが強いのではなく、奈々自身が強いという印象が定着された。

 

流石にそんなピーキーなCHARMを使いたいリリィなんていないのだから。

 

 

奈々(時には役に立つね。この新聞)

 

 

今回の新聞が来る前は、意見が別れるほどの噂で、学院中に拡がっていた。

 

 

奈々の強さを評価したり…

 

CHARMがすごいからと奈々を批判したりと…

 

それらが、今回の新聞で終焉した…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思いきや……!

 

 

 

 

「奈々さん、もしよかったら私達のレギオンに入ってくださる?」

奈々「遠慮します」

 

 

焦げ茶色の長い髪をゴムで結んでる3年生の少女が奈々を勧誘してきた。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 3年生 ブリュンヒルデライン主将 出江史房(いずえ しのぶ)

 

 

 

 

 

 

「あなたの力なら私達のレギオンで発揮できる筈よ!」

奈々「それは私が決めるよ」

 

 

今度は明るく黄色いロングの少女が奈々を誘ってきた。

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 ローエングリン主将 立原紗癒(たちはら さゆ)

 

 

 

 

 

「貴女でよければ、何時でも私達のレギオンに入っても…」

奈々「汐里(しおり)ちゃんに言いつけますよ」

「じょ、冗談よ」

 

 

青髪の2年生少女が奈々をレギオンに誘おうとするが、奈々は相手の弱みを握って対処する。

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 レギンレイヴ 谷口聖(たにぐち ひじり)

 

 

百合ヶ丘の恋人と呼ばれていたりする。

 

 

奈々が適当にあしらってると、廊下から他のレギオンのリリィがやって来た。

 

奈々を勧誘する為に来たのだろう。

 

 

 

 

 

奈々「鬱陶しいな…」

 

 

 

奈々は高速移動でその場を去った。

 

 

 

各リリィには、「サブスキル」「レアスキル」と呼ばれる特殊な力を持っており、特にレアスキルはヒュージとの戦いでは非常に重要となる。

 

 

 

高速移動が可能な縮地。

 

マギのバリアを張るヘリオスフィア。

 

全体の攻撃力を上げるレジスタ。

 

 

 

特に奈々がさっき使ったレアスキルはマスカレイド。

 

 

所有するサブスキルを一時的にレアスキル化させる強力な能力である。

 

奈々が所有するサブスキルも5つと多く、マスカレイドの使用する幅も多い。

 

このスキルに関しては一部のガーデンで暴露され、今や奈々は有名になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勧誘から逃げてきた奈々は、椿組と書かれた札の教室に入った。

 

 

「おはよう奈々ちゃん」

奈々「おはよう」

 

 

桃色の髪の少女が奈々に声を掛けてきた。

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 隊長 一柳梨璃(ひとつやなぎ りり)

 

 

 

 

 

「すっかり有名人ですわね、奈々さん」

奈々「好きでこうなった訳じゃないよ」

 

 

 

栗色のウェーブのかかったロングの少女が奈々に声を掛けた。

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 楓・J・ヌーベル(かえで・じょあん・ぬーべる)

 

 

 

「すみません、最近奈々さんに関する内容か好評だったのですが、ここまで広がるとは思わなかったので…」

奈々「あのね…」

 

 

小柄の茶色のショートヘヤーの少女が謝る。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 二川二水(ふたがわ ふみ)

 

 

 

 

「今も奈々を勧誘する人がいるからね」

奈々「返って鬱陶しいよ」

 

 

左片方が長いもみあげとシュシュを付けた後ろ髪を前に下ろした黒髪の静かな少女が奈々に話す。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 王雨嘉(わん ゆーじあ)

 

 

 

 

「その内なれると思いますが…」

奈々「だといいけど…」

 

 

ライトブラウンのロングヘヤーの少女も奈々に話す。

 

ちなみに左目が赤茶色で、右目は髪と同じ茶色のオッドアイになっており、後ろ髪の一部は黒のリボンで結んでテールにしている。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 郭神琳(くぉ しぇんりん)

 

 

 

 

「それで、今日はどうするんだ?」

奈々「そうだね…全然考えてないな…」

 

 

金髪のポニーテールのクールな少女が奈々に今日は何をするか聞いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 安藤鶴紗(あんどう たづさ)

 

 

 

 

奈々「……なんか梨璃ちゃん、良いことあった?顔に出てるけど」

梨璃「えっ?分かる?」

 

 

奈々は梨璃の表情が笑顔になってたのが分かった。

 

 

奈々「転入生でしょ?あの子の」

梨璃「うん!」

楓「私は梨璃さんとの触れ合いの機会が減っていくのがショックですわ」

奈々「スキンシップと見せかけて梨璃ちゃんのお尻を触る機会が?」

楓「誤解を招く言い分はやめてくださらない!?」

二水「みなさん、先生が来ました」

 

 

二水から先生が来たことを聞き、皆は席に座った。

 

 

 

そしてドアが開き、教師を思わせる黒いスーツを着た黒のショートヘアーの女性が入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 椿組 教師 如月出雲(きさらぎ いずも)

 

 

 

 

出雲「ホームルームを始めるぞ」

 

 

そう言って出雲は教台の後ろに立つ。

 

 

出雲「さて今日は、唐突だがこの椿組に転入する生徒を連れてきた。癖のある子だが、仲良くやってほしい。では入れ」

 

 

出雲の声を聞き、ドアから転入生が入ってきた。

 

 

入ってきた子は、2つに分けた髪を三つ編みを前に下ろした薄紫の髪の少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 一柳結梨(ひとつやなぎ ゆり)

 

 

 

結梨「一柳結梨です。今日からこの椿組に転入する事になりました。よ…よろしくお願いします」

 

 

ちょっと切れの悪いしゃべり方で自己紹介する結梨。

 

それでも生徒達は、拍手して結梨を歓迎した。

 

 

 

 

彼女…一柳結梨は最初、鎌倉の浜辺で眠っていた。

 

 

海岸に流れ着いた、マギを失い崩壊したヒュージだった物体の近くで、梨璃が発見した繭の中に眠っていた彼女は、梨璃の持つマギに反応して目覚めた。

 

 

そんな彼女を治療室で看病をしたところ、梨璃が付けてたリングが反応し、彼女がリリィである事が分かった。

 

更に真島百由の検査の結果…スキラー数値は50と出た。

 

これは一柳梨璃が入学した時の数値と一緒の物だった。

 

彼女は何も覚えていない所、記憶喪失だと推測するが…

 

奈々と出雲は違っていた…

 

 

二人は、彼女のいくつかの謎を抱えた。

 

 

一つ目は、彼女は記憶喪失ではなく、始めから記憶がない事。

 

救出した時は喋ることが出来なかった。

 

梨璃が彼女を世話する際、本等を読ませてた事なのか、彼女も少しずつ喋れるようになっていた。

 

恐らく、これは彼女が梨璃の本の内容を覚えた影響だという推測である。

 

 

 

二つ目は、マギの波長が梨璃と同じである事。

 

マギの波長はリリィ毎に異なるが、波長が同じという前例は今まで無かった。

 

奈々は繭を見つけた時、中にいる少女からマギを感じなかったが、梨璃が繭にグングニルを触れさせた瞬間、彼女自身から梨璃と同じマギがあふれでてきたのだ。

 

恐らく、梨璃のマギを受けた影響で同じ波長になったのだろうか…

 

 

現時点で二人が考え付いた答えが、彼女は普通の人間では無い事。

 

優秀な記憶能力と同じ波長。

 

それが何なのかはまだ分からないが、現時点で彼女に危険はない事だけは分かっていた。

 

梨璃になついていた彼女は退院後、一柳隊のリリィとして登録され、一柳結梨という名も梨璃が付けた。

 

そして現在に至る。

 

 

出雲「退院したばかりの彼女は遅れぎみだ。知らない所をクラス同士で教えてやれ」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

 

クラス全員がいい返事をした。

 

 

そんな中、奈々は結梨を見てある心配をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結梨を作った者がどう行動するかである。

 

 

恐らく結梨を作ったのはGEHENA(ゲヘナ)という名の組織だろう。

 

あの組織は、リリィに薬を投与して足りない能力を強化する非人道的な人体実験で生み出した強化人間…ブーステットリリィを生み出している。

 

その過程には、実験の為なら孤立した他のリリィに人工ヒュージを襲わせて、瀕死に負わせたのち、捕獲するという裏工作があった。

 

前の下北沢の遠征でも、GEHENAはそこにいたリリィ達のデータを収集してる。

 

組織の技術力と集めたリリィ達のデータがあれば、結梨のような人間を作るのは可能だろう。

 

その結梨がGEHENAの作ったものなら、手放すはずが無い。

 

あらゆる手段を使って結梨を取り返す事だろう。

 

 

しかし学院も黙ってはいない。

 

ここ、私立百合ヶ丘女学院は、反GEHENA主義のガーデンでもあり、GEHENA関連のCHARMや、GEHENAがリリィに接触することを、学院側では禁じている。

 

また、百合ヶ丘の特務レギオン…ロスヴァイゼにはブーステットリリィの救出等を担当させている。

 

ちなみに同じ反GEHENA派の御台場女学校や聖メルクリウスとは友好関係にあり、逆に親GEHENA主義のシエルリント女学薗とは仲が悪い。

 

しかし中等部時代に通っていた神楽月涼はGEHENA関連の事に触れていない。

 

彼女の作るCHARMにはシエルリントの技術を取り入れるのではなく、参考程度にして自身の技術で作った物となっている。

 

学院側も、彼女の作ったCHARMを高く評価している。

 

それだけこの学院はGEHENAに対する警戒を常に強めているのだ。

 

少し前に、政府が学院に結梨の引き渡しを要求してきたが、上手く追い払った。

 

これもGEHENAが仕組んだ事だと、出雲と奈々は推測した。

 

今後GEHENAがどう動くかによっては、奈々と出雲も仕掛ける気であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が過ぎ…午後のホームルームが終わると、奈々、梨璃、二水、楓、雨嘉、神琳、鶴紗、結梨は一柳隊の控室へ向かっていった。

 

今日は結梨を一柳隊の控室に招待するそうだ。

 

 

奈々「後1週間で戦技競技会か…」

梨璃「戦技競技会?」

奈々「梨璃ちゃん達は初めてだったね。戦技競技会って言うのは百合ヶ丘で毎年行われる、リリィとしての能力を競い合うイベントなんだ。私は2年間、ブルーガードにいたから中等部の頃は参加してないんだ」

 

 

奈々にとって、戦技競技会は高等部として初参加となる。

 

 

神琳「高等部なのは私も初めてね。だけど、きっと楽しめると思うわ」

梨璃「へぇ〜。運動会みたいなものかな?」

奈々「そういう認識でいいよ」

雨嘉「百合ヶ丘の競技会って、何をするの?」

神琳「表向きは、日頃の切磋琢磨の成果を披露する場。と言う事ですけどね」

二水「戦技競技会では、クラス部門、レギオン部門、個人部門等の成績を競い合って、最後に選ばれる最優秀リリィには、素敵なご褒美があるそうですよ?」

梨璃「ご褒美!?」

 

 

ご褒美に反応する梨璃。

 

 

二水「今年は、工廠科全面協力の元、CHARMに高級オプション付け放題だそうです!」

奈々「高級オプションか…太っ腹だな」

楓「それは残念。私のジョワユーズに足せる物などございませんわ〜」

奈々「そりゃあグランギニョル製は高級仕様だからね」

「ワシ等工廠科を甘く見るでないぞ!」

 

 

後ろから声がした。

 

振り向くと、学園の上着の代わりにケーブを着た灰色のツインテールの少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス(みりあむ・ひるでがるど・ふぉん・ぐろぴうす)

 

 

 

 

 

奈々「お、ミリアムちゃんいつの間に!」

ミリアム「工厰科にかかればどんな魔改造もお手の物じゃ!」

奈々「ということは、強度の強化も!」

ミリアム「もちろん、ご希望通りのCHARMに仕立ててやるぞ!」

 

 

見えを張るミリアム。

 

 

 

ミリアム「と、言ったものの、奈々のはすまんが、ちょっと難しいのう」

奈々「そうか…まあ私のは特殊だからね。気にしないでいいよ」

「へぇ〜。いい事聞いちゃった。電磁式シンクロナイザーとかヘンダットサイトとか予約しとこ〜っと」

 

 

と、そこへ緑髪のロングの少女がミリアムの話を聞き、やって来た。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 アールヴヘイム 田中壱(たなか いち)

 

 

 

 

「ん?壱も狙ってるの?奇遇だわね」

 

 

小悪魔っぽい桃色のロングの少女もやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 アールヴヘイム 遠藤亜羅椰(えんどう あらや)

 

 

 

 

 

「ダメだよ。最優秀リリィは天葉様の物だよ」

 

 

 

灰色の長い髪の少女もついでにやって来た。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 アールヴヘイム 江川樟美(えがわ くすみ)

 

 

 

奈々「いっちゃん、亜羅椰ちゃん、樟美ちゃんも!」

鶴紗「出たなアールヴヘイム」

壱「奈々、今回は私達も新しいCHARMで勝負するわ!」

 

 

と、3人は新しいCHARMを奈々達に見せた。

 

 

 

 

壱「このCHARMの名はアロンダイト。ルナティックトランサーや狂乱の闇向けの武器よ!」

 

 

 

壱のアロンダイトは2本の細い刃が付いたシャープな形状の武器になっている。

 

 

 

亜羅椰「私のはマルミアドワーズ。私のレアスキル、フェイズトランセンデンスを支援する機体よ!」

 

 

 

亜羅椰のマルミアドワーズはダインスレイフのような大剣の形状をしている。

 

 

 

樟美「そしてこの子は白雪。涼ちゃんが私に合わせて作ったCHARMよ」

 

 

 

楠美の白雪は、涼が作った物にしては珍しい白と水色の太刀に刃の付いた拳銃がくっついたCHARMとなっていた。

 

 

3人が見せたCHARMに皆は驚く。

 

 

 

奈々「おお、新CHARMじゃん!って、涼ちゃんが作ったのそれ?」

楠美「レーヴァテインとイペタムを使いたかったけど、調整中で使えないから…」

壱「涼からテスト機を貰ったのよ」

亜羅椰「このまま黙っている私じゃないわ。今度の競技会で模擬戦の借りを返してあげるわ!」

樟美「だから…最優秀リリィは天葉お姉様が頂くんだから」

奈々「樟美ちゃん自身は最優秀を取る気ない?って言うか、私の事アウト・オブ・眼中ですかい?」

樟美「いいの。その為にも、奈々ちゃんに最優秀リリィの座は渡さない…!」

 

 

楠美の表情には、やる気が出ていた。

 

 

 

奈々「別の意味でヤル気出してる!?」

ミリアム「もう勝ったつもりか?前にお主等のやり損なったヒュージをワシ等と奈々が仕留めた事があったがの。初の遠征でも強敵とやりあったがの」

樟美「アールヴヘイムも、このあと遠征に向かったの忘れたの?」

 

 

実は一柳隊が帰還してから3日後、アールヴヘイムも遠征でギガント級を2体倒していたのだ。

 

 

奈々「まあ私達が帰ってくる途中でCHARM直ってたし。次の日、入れ替わりで出動したからね」

壱「そういうことよ。実戦の借りは実戦で返すわよ」

亜羅椰「まぁ、そこ等辺のちんちくりんには負けるつもりはないけど?」

ミリアム「何じゃと!?」

 

 

ちんちくりんという言葉にカチンと来たミリアム。

 

 

 

壱「まぁ、精々頑張って〜」

亜羅椰「顔を洗って待っていなさいよ!」

樟美「競技会、楽しみに待ってます」

 

 

 

そう言ってアールヴヘイムの3人は去っていった。

 

 

 

ミリアム「ぐぬぬぬぬぬ…!!」

奈々「こりゃあ早いところ、丁度いいCHARMを見つけないといけないかな…」

梨璃「奈々ちゃん、まだCHARMは直らないの?」

奈々「うん。メテオメタルが来ないことには直しようがないってね」

結梨「メテオメタル?」

 

 

奈々が使っていたCHARM…カナベラルとブルメリアは、ブレード部分が破損していた。

 

ノインヴェルト戦術に何度も耐えられる程の強度を持つ金属…メタルスキンは、ブルーガードのリリィが持つCHARMに使われる強力な素材だが、マギの放出量が増加する合体剣カナリアの使用時に奈々はスペック以上のマギを放出してしまい、耐えきれなかったのだ。

 

今後フルパワーに耐えられるようにするためはそれ以上の強度を持った金属が必要になる。

 

そこで奈々が思い付いたのが、メテオメタルと呼ばれる、メタルスキン以上の強度を持つ金属である。

  

だがそれは普通の金属とは全く異なり、その名の通り、隕石の中に含まれる特殊な金属で、ごく少数しか手に入らない。

 

少し前にとある一人の科学者は、この金属を隕石に含まれる別の物質と他の金属を合成することでほぼ同じ物を再現した。

 

そしてその科学者は、アーセナルの一人にその製法を教え、この世から去っていった。

 

 

今やメテオメタルの入手は困難となり、どこの専門業者にも出回っていない代物となっていた。

 

メテオメタルの製法を知ってるアーセナルの行方も、今では誰も知らない。

 

 

現在カナベラルとブルメリアは修理の目処が立っておらず、今も工廠科の方で保管されている。

 

遠征で頻繁に参加する奈々にとっては、代わりのCHARMが必要になってくる。

 

 

これがもう一つの問題、奈々の代わりのCHARMの件である。

 

 

実は今のところ、どれも奈々に合うCHARMが無いのだ。

 

奈々のマギの高さとリリィとしての高い能力も、並のCHARMでは限界があり、その全力を発揮出来ないのだ。

 

使いやすさと低コストのグングニル、アステリオンでは奈々が全力で込める大量のマギに耐えられず、壊れてしまう。

 

逆に高コストのブリューナグ、ダインスレイフ、ティルフィングだと数分程度なら耐えられるものの、学院で全てのCHARMに標準装備されているクリスタルコアではマギの貯蔵量が不十分で、全力を出せない為使い勝手が悪い。

 

ユグドラシル社、ヒヒイロカネ社、ケルティックデール社以外のCHARMも検証したが、今一つで、奈々に合うものは見つからなかった。

 

更なる案として、楓がグランギニョル製のCHARMを希望するが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

却下された。

 

 

 

 

 

楓「何故グランギニョル製のCHARMにしなかったのですか?よりにもよって涼さんのCHARMを使うなんて…」

奈々「グランギニョル製は性能がいいんだけど、強度重視な物が無いんだよ。それにこの中で頑丈で使いやすいCHARMと言ったらこれしか無かったの」

 

 

グランギニョル製のCHARMはデザインと高性能かつ高価格な物がメインな為、強度を重視したCHARMが無いのだ。

 

現在奈々が遠征に使ってるのは、涼の作った量産機の虎鉄である。

 

飛び道具こそないが、サイズが小さく、グングニルを凌ぐ攻撃性能と、ブリューナグ並の高い強度を持っている。

 

しかし量産機な為、虎鉄に搭載されているクリスタルコアの保有量はアステリオンと同じである。

 

流石に奈々の高い放出量のマギを込めることは難しく、十分な威力が出せない。

 

他の量産機よりは良いが、奈々にとってはまだ物足りない。

 

 

 

ここでミリアムはあることを思い出した。

 

 

ミリアム「そう言えば奈々、百由様に工厰科に来るよう呼ばれておるぞ」

奈々「工廠科に?」

楓「また何かしでかしたのでは?」

奈々「失敬な。とりあえず行ってみるか。皆、また後で」

梨璃「うん」

 

 

 

 

 

 

梨璃達と別れ、奈々はエレベーターで地下に行き、工厰科の部屋のドアの前まで来た。

 

 

 

 

奈々「百由さん、来ました。入りますね」

 

 

 

そう言って奈々は工厰科の部屋の中へと入った。

 

 

 

「あら、待ってたわ」

 

 

 

髪飾りを着け、眼鏡をかけた青髪の少女が奈々を待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 真島百由(ましま もゆ)

 

 

 

そしてもう一人…

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たよ。木葉さん」

 

 

茶色のセミロングの少女奈々に声をかけた。

 

 

 

奈々はその子に覚えがあった。

 

 

 

 

奈々「あ、綾瀬(あやせ)ちゃん!?」

綾瀬「やあ、久しぶり。今日からこのガーデンに入学してきたよ」

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 塔ノ木綾瀬(とうのき あやせ)

 

 

 

百由「まさか奈々さんの知り合いだったなんて驚いたわ」

綾瀬「同じブルーガード所属ですからね」

奈々「でもどうして綾瀬ちゃんが百合ヶ丘に?ブルーガードの方は大丈夫なの?」

綾瀬「代役のタンクがようやく実践で使えるようになったし、新しく入ったアーセナルも中々優秀だしね。私が抜けた穴はしっかり埋まってるよ。それに百合ヶ丘女学院は私も興味あるし。奈々がいると退屈しないからね」

奈々「引っ掛かるいい方だけど…まぁいいや。ところで綾瀬ちゃん、ここに来たのはそれだけじゃないでしょ?」

綾瀬「察しがいいね。もしもの時に作った奈々用に調整したCHARMを持ってきたんだ」

 

 

 

 

 

と言って綾瀬は大きなトランクを奈々の前のテーブルに置き、中を開けた。

 

 

 

 

 

 

中には、マギクリスタルが埋め込まれた白い片刃の剣が二本入っていた。

 

鍔の部分は、白い羽を彩った飾りが施されている。

 

 

 

奈々「おっ、私好みの剣!」

百由「綾瀬さんが作ったの?かなりの完成度ね…これは…」

 

 

百由は綾瀬の作ったCHARMを大きく評価していた。

 

 

綾瀬「ユニークCHARM、ツインフェザー…フラガラッハ、トリグラフの特徴を積み込んでるからね。当然だけど、円環の御手が無くても二本で使えるよこれは。後、メタルスキン製だから頑丈に出来てから奈々の戦い方にほぼ対応出来るよ」

 

 

綾瀬はツインフェザーを奈々に渡した。

 

 

奈々「ほぼって?」

綾瀬「カナベラルよりシンプルに作ってる事だよ。その為威力不足が目立つけどね。まあブリューナグ、ティルフィングに毛が生えた程度の性能だけどね」

百由「そのCHARM、飛び道具は付いてるの?」

綾瀬「付いてませんよ。奈々に飛び道具は必要ありませんし…でしょ?奈々」

 

 

ツインフェザーの総合的な強さは、虎鉄を凌駕している。

 

マギクリスタルの保有値、威力もカナベラルのピーキースペックから脱却した性能に収まってる。

 

この武器でグングニル等の量産機を相手にしても、壊す心配はない。

 

奈々には納得のいく性能であった。

 

 

 

奈々「うん、これで十分だよ。しばらくの間はこれで行けるよ」

 

 

奈々はツインフェザーに自信のマギを流し込ませ、契約を終わらせた。

 

 

百由「変形は?」

綾瀬「奈々のマギは特殊で、他のCHARMだと消耗が早く、変形に使ってる部品が破損してしまう事があるんです。だから奈々に使うCHARMには、マギに耐えられるようシンプルかつ強度を重視してるんです。変形構造を省いてるのもその理由ですから」

百由「なるほどね。機能性より武器としての性能を重視したCHARMか。まるで第一世代のCHARMね」

奈々「ブルーガードにいた他のリリィ達のCHARMは、元の第2・第3世代のCHARMを改造したものを使ってますが、こちらも変形機能はオミットされてるんです」

綾瀬「あと奈々、ちなみにそのCHARMは今後、君専用のユニークCHARMを作るために必要な戦闘データを収集する小型コンピュータが内蔵されているから。君の頑張り次第ではカナベラル、ブルメリアを凌ぐCHARMが出来ると思うよ」

百由「あのピーキーなCHARMよりもすごい物を?」

綾瀬「実は前から作りたかった物がありましてね。イメージはある程度固まっているんですよ」

 

 

綾瀬が作る奈々専用の新CHARMに期待が膨らむ奈々。

 

 

 

奈々「いつも通りデータ収集は任せてよ。綾瀬ちゃんにはいつも助かってるしね。それでカナベラルとブルメリアの方はどう?」

綾瀬「メテオメタルの方は材料が来ないとどうしようもないね」

 

 

綾瀬はアーセナルの中で、メテオメタルの製法を知っている一人である。

 

 

百由「所で、修理はどのくらいかかるの?」

綾瀬「材料の合成、各部品の製作に約2週間ですね」

百由「そんなに?」

綾瀬「メテオメタルは手間がかかる素材なのでかなりの時間がかかります」

奈々「まあそれなら仕方ないか。綾瀬ちゃんありがとう」

 

 

奈々は綾瀬にお礼を言った後、ツインフェザー専用のホルダー付きベルトを貰い、それを腰に巻き、ツインフェザーをホルダーに納めた。

 

 

 

綾瀬「うん、中々似合ってるよ」

奈々「これはこれでいいかも。さて、そろそろ戻らないと…」

 

 

そして奈々は工厰科から出ようとするが…

 

 

 

百由「待って奈々さん、そのCHARMを試したいなら、後で訓練場に来てもらえる?」

 

 

百由が奈々を止め、後で訓練場に来るよう頼む。

 

 

奈々「何かやるんですか?」

百由「私もそのCHARMの性能を見てみたいからね。丁度いい模擬ヒュージを用意しておくわ」

奈々「それなら、一柳隊の皆も誘っていいですか?」

百由「いいわよ。ギャラリーは多い方が盛り上がるしね」

奈々「わかりました。ではまた後で…」

 

 

奈々は工厰科から出た。

 

そして、入れ違いにボーイッシュな青のショートヘアーの少女がやって来た。

 

制服は下半身だけ、膝が隠れる程度の長さのズボンをはいている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 神楽月涼(かぐらづき りょう)

 

 

 

 

涼「やあ綾瀬、早速工厰科に来たか」

綾瀬「ここの設備は充実してるから早く来たよ」

百由「涼さん、前の遠征で収集したデータをまとめておいたから、理事長に渡してもらえるかな?」

 

 

そう言って百由は涼に何十枚程の紙を渡す。

 

前に遠征に行った東京下北沢で起きたヒュージとの戦いをまとめた資料である。

 

 

涼「百由さんが直接行かなくていいんですか?」

百由「別の用事が出来ちゃったのよ。だから代わりにお願い」

涼「別に構いませんが…用事とは?」

百由「この子の作った新しいCHARMよ」

 

 

百由は綾瀬の方に指を指す。

 

 

涼「…………ああ、なるほど」

 

 

涼は気付き、納得した。

 

 

綾瀬「涼、君の作ったCHARM見せてもらったよ。一般の素材で作ってこれだけの強度を出せるなんて、すごいね」

涼「僕も、君の個性的なCHARMにはびっくりしたよ」

百由「これは私もうかうかしてられないわね…」

 

 

実は綾瀬は、入学のついでに自作した量産型CHARMを持ってきていたのだ。

 

お披露目は1週間後の戦技競技会で行うのだが、先に涼は綾瀬のCHARMを見ていたのだ。

 

百由とミリアムも、当然見ている。

 

 

綾瀬「百由様のグングニル・カービンとダインスレイフ・カービンも結構な出来だと思いますけど?」

百由「あれは元々ルドビコ女学院からの要望で作ったCHARMなんだけど…そう言われると嬉しいわね」

涼「あのサイズで機能をコンパクトにまとめられるのは僕でも難しいですよ」

綾瀬「今後、参考にしてもらいますよ」

百由「こちらこそね」

 

 

アーセナルとして仲がよくなった3人だった。

 

 

 

 

 

 

 

一方奈々は、一柳隊の皆に新CHARMの性能テストをやることを伝え、1時間後…一足先に訓練場にやって来た。

 

 

既に訓練場のあちこちには、、ミドル級に相当する8体の模擬ヒュージが配置されていた。

 

 

奈々「流石百由さん、用意がはやいはやい…」

 

 

 

更に観客席に生徒達が続々と集まってきた。

 

 

奈々「………予想はしてたけど…多くなりそう」

 

 

先程百由が全生徒に放送で訓練場に来るよう伝えたようだ。

 

 

その中には、一柳隊一同の姿も…

 

 

 

 

 

「奈々の新CHARMの披露って百由が言ってたけど…」

 

 

青みがかかった黒のロングの少女が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 一柳隊 白井夢結(しらい ゆゆ)

 

 

「何でもそれ、転入してきた奈々の友達が作ったCHARMらしいゾ」

 

 

 

ライトグリーンのショートの少女が夢結に詳しく言う。

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 一柳隊 吉村・Thi・梅(よしむら てぃ まい)

 

 

 

二水「手に入れた情報によりますと、塔ノ木綾瀬さんは奈々さんが使っていたカナベラルとブルメリアを作ったすご腕のアーセナルと言われています」

ミリアム「あやつのCHARMも、かなりの代物だったな。防御に適したCHARMと言っておきながら攻撃も充実しとる」

 

 

綾瀬のCHARMは大盾の機体、イージス。

 

殆どのCHARMが武器なのに対し、こちらは防御系のCHARMである、綾瀬が作った機体である。

 

自身のマギを防御に変換し、強力なバリアを張ることで、殆どのヒュージが放つビーム等の熱系の攻撃を受け止められる事が出来る。

 

また、イージスの形状は先端が鋭く尖っており、接近するヒュージを突いて攻撃する事が出来る他、ブリューナグと同じバスターキャノンがイージスの中心部に内蔵されており、攻撃面も中々優秀である。

 

 

 

梨璃「綾瀬さんって、ブルーガードのリリィ達にもCHARMを作っていたんですか?」

ミリアム「そのようじゃ。他社からのCHARMを改造したり、ユニークCHARMを作ったりと、ブルーガードのCHARMは彼女が引き受けていたらしいからの」

結梨「……すごいの?」

神琳「そう言えば、ブルーガードにはグランギニョルが用意した実験機、ラビアンローズを出していましたね」

雨嘉「ラビアンローズ?」

二水「楓さんのジョワユーズの姉妹機として開発された事があったという噂があったCHARMです。外見はほぼ一緒ですが、内部に高粒子砲を内蔵された攻撃に特化した機体です」

楓「ですがブルーガードからの要望で、完成したラビアンローズは作り直すことになりましたわ…」

 

 

ラビアンローズの話で楓は不機嫌になった。

 

 

楓「折角作った完成度の高いCHARMなのに何故、変形機能を無くして強度を重視したスペックにするよう頼むなんて、ブルーガードの考えはわかりませんわ…」

ミリアム「長期の戦闘を想定して、ブルーガードのCHARMはどれも強度を重視して作ってるようじゃ」

梅「お、アールヴヘイムの皆も来たゾ」

 

 

 

梅がアールヴヘイムのリリィ達が観客席に向かう姿を確認し、皆に言った。

 

 

そんな中、金髪のショートの少女がこっちに来た。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 アールヴヘイム

主将 天野天葉(あまの そらは)

 

 

天葉「ねぇ、衣奈見なかった?」

夢結「いいえ、見なかったわ。何かあったの?」

天葉「午後から用事があるって言って会ってないのよ。後、弥宙、月詩、辰姫もいないのよ。何処に言ったんだろう?」

二水「そう言えば、午後のホームルームの後、汐里さんも何処かへ行きました」

ミリアム「まさか…」

 

 

ミリアムは午後にいなくなった5人が何処に行ったのか見当がついた。

 

 

鶴紗「知ってるのか?」

ミリアム「恐らくそれは百由様の…」

 

 

ミリアムがその続きを言おうとした瞬間、ブザーの音が訓練場全体に響いた。

 

 

夢結「始まったわね」

 

 

訓練場のステージ内で準備運動をしている奈々もブザーに気付き、腰に着けてるツインフェザーをホルダーから抜き取って構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レディース・アーンド・ジェントルマン!これより、木葉奈々の新CHARMによるエキシビションイベントを開催したいと思います!実況は私、百合ヶ丘1年の高野亜理奈(たかの ありな)がお送りしますよー!」

 

 

スピーカーからハイテンションに喋る少女の声が響いた。

 

 

奈々「亜理奈ちゃん…相変わらずのハイテンション…」

 

 

奈々は亜理奈と名乗った少女の声を聞いて飽きれ顔になっていた。

 

 

亜理奈「さて、彼女の周囲に配置された模擬ヒュージ。こちらは今回の為に百由様が用意した新型!三日月をモチーフにした姿で、サイズはミドル級!強さは折り紙付きです!しかし!流星のヴァルキリー、木葉奈々も今回は違います!彼女が腰に着けてるのは、出来上がったばかりの新CHARMなのです!果たしてその性能は?そして木葉奈々はこのミドル級達を倒すことが出来るのか!?刮目してください!」

奈々「もう新CHARMの情報を入手してるなんて…」

亜理奈「さて、私も喋りすぎたのでそろそろ始めたいと思います。模擬ヒュージ達が動いた瞬間、開始の合図をします!」

 

 

いよいよ始まる事を亜理奈は皆に伝え、奈々は周囲を確認しながら気を引き締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、模擬ヒュージ達が一斉に動きだし、宙へ浮かんだ。

 

 

そして全ての模擬ヒュージ達が浮かぶと、同時に試合開始のブザーが鳴った。

 

 

奈々「やるか、ツインフェザー!」

 

 

奈々はまず前に走り、前の模擬ヒュージを右手のCHARMで切り落とした。

 

 

奈々「確かに威力はカナベラルより劣るものの、結構強いじゃん!」

 

 

第一世代を連想させ、シンプルに作られたこのツインフェザーは、奈々のマギに適合しており、カナベラル程ではないが、高い威力を出せる。

 

 

ミリアム「あのCHARMも二刀流が出来るのか」

夢結「二本もあるところ、そうなるわね」

 

 

 

 

奈々は次に左右の模擬ヒュージを狙うが、ここは右の敵に突っ込み、右手のツインフェザーで切り落とした。

 

 

そして反対側の模擬ヒュージに向けて、左手に持ったツインフェザーを投てきした。

 

投げられたツインフェザーは反対側の模擬ヒュージの体を貫き、爆発した。

 

 

そこから奈々は反時計回りに走り、右手のツインフェザーで切って、切って、斬りまくり、次々と模擬ヒュージを4体も倒す。

 

最後の1体の模擬ヒュージが奈々に襲いかかるが、その後ろから先程投げたツインフェザーが模擬ヒュージの体を貫き、奈々の左手に戻ってきた。

 

 

梨璃「投げたCHARMが戻ってきた!?」

ミリアム「フラガラッハの機能、遠隔操作を取り入れるようじゃの」

夢結「それに二刀流で戦ってるところ、トリグラフの特性も兼ねているわ」

神琳「奈々さんの戦いにマッチしてますわね」

楓「奈々さんにはお似合いのCHARMですわね」 鶴紗「嫉妬してるのか?」

楓「別に…」

 

 

最後の1体が爆発し、試合終了のブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

亜理奈「お見事!積み重ねてきた経験で染み付いた戦いと新CHARMの性能…模擬ヒュージ達をあっさりと倒していきました!」

??「ああ…私が1週間掛けて作ったメカクレシエンテが~…」

 

 

百由の声がスピーカー越しに聞こえた。

 

 

奈々「百由さん…ほんとにあの人は…」

 

 

何をやってたんだと思うぐらいの百由の行動に呆れる奈々。

 

 

亜理奈「さて、流石に模擬ヒュージが相手では彼女の相手は務まらないでしょう。お次はこの方達が挑戦を申してきました。どうぞ!」

 

 

亜理奈が喋った後、奥の扉が開き、黒いローブをまとった者が3人か現れた。

 

 

奈々「?」

 

 

奈々の前に立つと、3人はローブを脱いだ。

 

 

 

奈々「な!?」

天葉「に!?」

 

 

天葉が奈々に似たリアクションを取った。

 

 

それもそのはず、ローブを脱いだその3人は…

 

 

アールヴヘイム所属のリリィだったのだから。

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 アールヴヘイム 高須賀月詩(たかすが つくし)

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 アールヴヘイム 金箱弥宙(かなばこ みそら)

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 アールヴヘイム 森辰姫(もり たつき)

 

 

 

弥宙「奈々さん、私達と勝負よ!」

 

 

灰色の長い髪を2つに分けた少女、弥宙がアステリオンをアックスモードにして右手に持っている。

 

 

 

月詩「本当は一対一で勝負したかったのですが、百由様から3人で戦うよう言われましたのよ」

 

 

 

焦げ茶色のロングの少女、月詩が右手にグングニル。左手に虎鉄を持って構えた。

 

 

 

月詩のレアスキルは円環の御手。

 

普通、リリィはCHARMを1つしか使えないが、このレアスキルは、CHARMを2本で扱えるようになり、CHARMの二刀流が可能となる。

 

ただし片方のCHARMの威力が落ちるため、二刀流での総合的な威力は実質1・5倍となる。

 

 

 

 

辰姫「もし負けても恨まないで下さいね!」

 

 

 

長い髪を髪止めして、左右を黒いリボンで止めた水色の髪の少女がティルフィングを構える。

 

 

 

奈々「………噛ませ犬臭が半端ないな」

 

 

 

一方観客席のアールヴヘイム組は…

 

 

亜羅椰「ちょっと、奈々を倒すのは私よ!」

天葉「しょうのない子達ね…」

壱「予想が見えてきたかも…」

楠美「私も…」

 

 

そして一柳隊組も…

 

 

梨璃「3対1!?」

結梨「大丈夫?」

楓「大したことありませんわね」

夢結「ええ。奈々の戦闘スキルは結構叩き上げられている」

鶴紗「辰姫さんはブーステットリリィだけど、奈々はそのスペックを越えているからな」

 

 

 

亜理奈「さあ、3対1の戦いに奈々さんはどうやり過ごすのか?試合開始です!」

 

 

 

そして試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

 

 

弥宙「いざ!」

 

 

弥宙が最初に奈々に攻撃しようとするが、奈々はツインフェザーの刃を逆に持ち換え、弥宙を後ろへ払い飛ばした。

 

 

 

月詩「尋常に!」

 

 

 

次に月詩が来るが、既に刃を反対に持ち換えたもう片方のツインフェザーで弥宙と同じように後ろへ払い飛ばす。

 

 

辰姫「勝負!」

 

 

最後に向かってきた辰姫には、二本のツインフェザーを交差させ、そのまま真後ろの観客席まで飛ばした。

 

飛ばされた3人は、目を回して倒れていた。

 

 

開始5秒程で、試合終了のブザーが鳴った。

 

 

 

奈々「フラグ回収お疲れ様」

亜理奈「………面白味もなく、終わりました。レアスキルも使う必要がないぐらいに…流石にこのままではしまらないでしょう…」

奈々「まあ、そうだね」

亜理奈「ですが安心してください!これは悪魔で前座!次の挑戦者を紹介します!百合ヶ丘で一位二位を争うレギオン、レギンレイヴの副隊長の登場です!」

奈々「副隊長……って、まさか…!?」

 

 

 

奈々は先が読めた。

 

レギオン…レギンレイヴの副隊長…

 

奈々、梨璃達がいるクラス…椿組にいるあの子…

 

 

次に来る挑戦者はその子だと…!

 

 

そして扉からその挑戦者は現れた。

 

 

 

現れたのは、2つに別れた髪を三つ編みにした栗色の髪の少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 レギンレイヴ 副隊長 六角汐里(ろっかく しおり)

 

 

 

奈々「し、汐里ちゃん!?」

汐里「こんな形で貴女と勝負することになりましたが…」

 

 

 

汐里は右手にティルフィング…左手に左右上部に刃が付いたメイス、シャルルマーニュを持って構えた。

 

 

 

 

汐里「改めて、貴女と勝負します。奈々さん!」

 

 

 

汐里はやる気であった。

 

 

彼女、六角汐里は家族と一緒の時にヒュージの群れに襲われ、大怪我を覆ってしまった過去があった。

 

汐里と一緒にいた家族も、帰らぬ人となってしまった。

 

汐里自身は、戦闘で負った傷とその後の復帰に向けたリハビリ中の事故で負った傷により、利き腕の感覚が失われてしまい、これからリリィとして戦う彼女自身には絶望的な状態だった。

 

しかし、友人から百合ヶ丘への復学を勧められ、リリィとして戦えるレベルまで回復した。

 

更には同じ円環の御手の使い手であるルドビコ女学院の福山・ジャンヌ・幸恵から戦い方を教わり、レギンレイヴの副将になるまでの実力と強さを身に付けた。

 

今や彼女の強さは、夢結と互角に渡り合えるほどである。

 

奈々にとって相応しい相手だろう。

 

 

 

奈々「ふふっ…いいよ。私も、汐里ちゃんと戦いたかったからね!」

 

 

奈々は汐里の勝負の申し出を呑み、2本のツインフェザーを構えた。

 

 

 

二水「こ、これは誰もが思っていた二刀流同士の夢の戦い…うぎょ!!?」

 

 

興奮して鼻血を出してしまう二水。

 

 

梨璃「うわっ!?」

楓「ちょ、ちびっ子1号ここで鼻血を撒き散らさないでくださる!?」

 

 

二水の鼻血に少し敏感な楓。

 

 

 

亜理奈「これはいい勝負が出来そうですよ!お互いトップクラスのリリィで、期待は十分です!それでは、木葉奈々対六角汐里の試合…開始です!」

 

 

 

亜理奈の合図で開始のブザーが鳴った。

 

 

 

両者、前進して互いのCHARMをぶつけて鍔迫り合いに入る。

 

そこから連撃を仕掛ける両者。

 

 

 

 

六角汐里の戦い方は当時、CHARMの扱いが荒っぽかったが、幸恵のアドバイスによって攻守のバランスが取れた戦い方に代わった。

 

右手のティルフィングで相手に攻撃しながら、左手のシャルルマーニュで連撃を仕掛ける。

 

これが今の六角汐里の基本の戦い方となっている。

 

 

 

汐里の二本のCHARMから繰り出す連続攻撃を、奈々は後退することもなく、一撃一撃を弾き返していく。

 

 

結梨「ほお……」

梅「すごい勢いだな」

夢結「ええ。汐里さんは攻守のバランスが取れた戦いを得意とするのに対し、奈々は攻めに特化した戦い方をするわ」

雨嘉「ドンノロッシェンの攻撃を殆ど弾き返した事もあった」

 

 

ドンノロッシェンは一柳隊結成直前に戦ったギガント級ヒュージで、攻撃手段は無数の触手とレーザーと、殲滅力がそこそこ高い敵である。

 

奈々は、そのドンノロッシェンの触手の連続攻撃を全て弾き返した事もある為、攻めと手数には結構強い。

 

 

二水「そして奈々さんは他のリリィよりマギの保有値が高く、戦闘可能な時間が長いです!」

神琳「更には、エンハンスメントの効果を持つレアスキル…マスカレイド」

雨嘉「実質、複数のレアスキルが使えるパフォーマンスの高いスキル…!」

鶴紗「スペック、テクニック、スキル構成、どれも奈々の強さに貢献している」

楓「最近では、最強の一角と呼ばれていますからね」

梨璃「じゃあこの勝負は…!」

ミリアム「うむ。スペックだけなら汐里が不利になるな」

夢結「けど経験は汐里さんの方が長いわ。汐里さんが奈々の攻撃を防ぎきれるかが勝負ね」

梅「だナ」

 

 

と、二人の戦いを予想する一柳隊の皆。

 

 

 

一方奈々と汐里は再び鍔迫り合いに入る。

 

 

奈々「また磨きが掛かったね汐里ちゃん!」

汐里「奈々さんも、それ以上に強くなってますよ!」

 

 

 

汐里は中等部時代、奈々と違うクラスだったが、訓練や特訓の際に時々出会っては、一緒にやったり、時には模擬戦で戦ったりと、一緒にいる機会があった。

 

結果は、汐里の全勝であった。

 

入ったばかりで経験の足りないこの頃の奈々では当然である。

 

 

だが今は違う…この2年間、奈々は多くの経験を積み、驚異的に強くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度こそ勝つと、奈々は決めたのだ。

 

 

奈々はツインフェザーで鍔迫り合いの状態から弾き返し、そのまま攻めていき、汐里を追い詰めていく。

 

右、左、右、左と、交互にツインフェザーを振るう奈々の連撃に汐里はティルフィングで全て受け止めていくが、隙がなく、攻撃のチャンスがなかなか来ない。

 

 

 

汐里「私が追い詰められている…!?」

奈々「汐里ちゃんが思ってる以上に私も強くなったってことよ!」

 

 

奈々のツインフェザーによる強烈な一撃がティルフィングに当たり、汐里はそのまま後ろに押されてしまう。

 

ティルフィングに入った衝撃が汐里の右手に伝わり、感覚を痺れさせる。

 

すぐに汐里は奈々から距離を取るために後退するが、逃がさないと思わせるよう、奈々は後退する汐里に近付く。

 

 

奈々「貰った!」

汐里「やらせない!」

 

 

向かってくる奈々に、汐里は咄嗟にティルフィングの砲塔部分を分離させ、その砲塔部分を奈々に目掛けて蹴り飛ばした。

 

 

奈々「な!?」

 

 

汐里の意外な行動に驚く奈々だが、これを左手のツインフェザーの横凪ぎで弾き返す。

 

しかしそこへ汐里が割り込み、再び鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

よく見ると、汐里の右手に持つティルフィングは、刀身部分だけが残った形態になっており、先程より右手の降るスピードが早くなっていた。

 

 

奈々「そんな戦法をしてくるなんてね…」

汐里「普通に攻めるだけじゃ勝てませんからね」

 

 

 

六角汐里が使っているティルフィングは、CHARMメーカー…ユグドラシルが彼女の為に作ったオリジナルCHARMであり、彼女の荒っぽい戦い方に合わせて頑丈かつ多機能を取り入れ、設計した機体である。

 

かつて利き腕の感覚を失った汐里だが、今ではティルフィングのような大型CHARMを扱えるレベルまで回復している。

 

現在汐里のティルフィングは、砲塔部分を分離させたショートブレイトモードになり、軽く使いやすくなっている。

 

汐里はこのティルフィングの砲身部分を分離させ、相手に飛ばし、そこから近接戦で畳み掛ける。

 

これは、夢結との模擬戦で使った戦法と同じである。

 

一方奈々も負けてない。

 

入学当時、奈々は平均以下の強さだったが、約2年間のブルーガードでの訓練と実戦で身体能力が向上し、大型CHARMを軽々と持てるようになっていた。

 

 

スペックの差では、奈々の方が上である。

 

対してテクニックの方は汐里が上。

 

 

しかし、次第に奈々の方の動きが早くなってきた。

 

奈々が汐里の動きを読み始めたのだ。

 

 

そして……

 

 

 

奈々「隙あり!」

 

 

奈々が隙を狙って全力の切り払いで、汐里のティルフィングを弾き返した。

 

 

 

汐里「!?」

 

 

汐里はすぐに遠くへ落ちたティルフィングを拾うとするが、汐里の目の前にもう一本のツインフェザーが向けられた。

 

 

チェックメイトである。

 

 

 

奈々「勝負ありだよ」

汐里「…………………はい。完敗です」

 

 

負けを認め、汐里は奈々と握手した。

 

 

同時に、試合終了のブザーも鳴った。

 

 

 

亜理奈「やりました木葉奈々さん!強敵相手に中々の戦いを披露しました!六角汐里さんも見事な戦いでした!試合の方は早く終わってしまいましが、個人的にはもう少し長引かせてほしかったですが、無い物ねだりしても仕方ありません。観客の皆様、この二人に盛大な拍手を!」

 

 

亜理奈の実況を聞き、観客の皆は拍手した。

 

 

そして汐里は一旦入ってきたドアへと戻っていき…再び奈々の方へ振り向く。

 

 

汐里「奈々さん、機会があったら次は負けませんよ」

奈々「私もだよ。汐里ちゃん」

 

 

再戦を期待し、汐里は訓練場を去った。

 

 

一方、観客席にいる一柳隊組は…

 

 

結梨「ほぉー………」

夢結「あの汐里さんに勝つなんてね…」

梨璃「奈々ちゃんすごい…!」

楓「マギの保有値はそうですが、汐里さんの攻撃を全て受け止めるなんて、普通じゃ無理ですわ」

梅「それに今回奈々はまだ1度もレアスキルを使っていない。恐らく汐里とは同じ条件で勝負したかったんだろうナ」

神琳「円環の御手はCHARMの二刀流を

可能にするだけのレアスキル。似た能力を持つCHARMで戦う奈々さんに取っては対等の条件で戦いたかったのでしょうね…」

夢結「あの子は、一対一の時は正々堂々と戦うって前から言っていたからね」

二水「これはいいスクープになりそうです!メモしておかないと…」

 

 

メモ帳を取り出してシャーペンで今回の一面を書き始める二水。

 

 

雨嘉「そういえばこれ…新CHARMの披露のはずじゃ…」

ミリアム「百由様の事だから、まだ何かあるかもな」

神琳「奈々さんはこれまでの3連戦で余りマギを消耗しておりませんね…」

 

 

 

最初の模擬ヒュージ戦はならし程度の戦闘。アールヴヘイムの3人組は僅か3秒で場外送り。まともにマギを使ったのは汐里との勝負位だが、恐らく奈々のマギはまだ8割程残っているだろう。

 

 

 

夢結「ここからが本番ってところね」

 

 

 

と、夢結は次に何か来ることを予想していた。

 

 

 

亜理奈「さあ、このメインイベントも次が最後の勝負になります。最後の相手は、こちらもレアスキル…円環の御手の使い手!しかも世界初、このレアスキルを最初に覚醒したリリィ!」

奈々「世界初?」

亜理奈「更にトップレギオン、アールヴヘイムの司令塔を務めてるブランセスの名を持つ者…その名は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「番匠谷依奈様だああーー!!」

 

 

 

 

奈々「な、何と!?」

 

 

 

奈々が依奈の名を聞き驚く中、目の前のドアが開き、薄紫のロングの少女が現れた。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 アールヴヘイム 番匠谷依奈(ばんしょうや えな)

 

 

 

彼女には、右手にグラム…左手にアステリオンを持っていた。

 

 

 

天葉「衣奈ったらあっちにいたのか…」

亜羅椰「衣奈様も奈々と戦いたかったのですわね」

壱「グラムを持ってきたってことは…」

楠美「奈々ちゃんをそれだけ強敵だと認識してるからだね」

 

 

 

ユニークCHARMと呼ばれたグラムは世界で数台しかなく、扱いと運用が難しいが、それに合った性能を持っている。

 

今回は、百由の差し金で特別に許可されたようである。

 

奈々が新CHARMを持ってる以上は、生半端なCHARMでは役不足だと感じたのだろう。

 

 

 

 

楠美「アールヴヘイムのブランセスがついに奈々ちゃんと対決するんだね」

天葉「あの子も戦いたがってたからね。いい勝負が見れそうかな?」

 

 

 

 

アールヴヘイムの皆が喋る中、奈々と衣奈の方では…

 

 

 

衣奈「奈々さん、お手合わせ出来るかしら?」

奈々「え、衣奈さん!手合わせの理由がわからないんですが…」

 

 

奈々には、衣奈に関わることは何一つしていない。

 

しかし衣奈にはあるのだ。

 

 

 

 

衣奈「私はね、奈々さんが羨ましかったのよ。2年前の甲州撤退戦で貴女は、初の遠征でありながら、30体以上のスモール級、ミドル級を倒した功績を残した」

奈々「………でも犠牲者を出してしまった」

 

 

甲州撤退戦に参加した奈々は民間人の保護、リリィ達の被害を無くすために誰よりも前に立ち、ヒュージ達を倒していった。

 

30体撃破したという功績は、学院中で一時的に噂となっていた。

 

しかしその裏で犠牲者を出してしまった。

 

 

安全な所へ逃がしたはずの民間人が殺され、更には二つ上の先輩まで命を落としてしまった事。

 

負傷者はリリィのみ約20人、死者は僅か二人だったが、奈々にとっては、悔やむほどの苦い過去であった。

 

 

 

衣奈「あれは貴女一人のせいじゃないわ。私達の力不足よ。もし貴女がいなかったら、被害は更に大きくなっていたわ」

奈々「だとしても…!」

衣奈「それ以上先を言ったら、参加したリリィ達に対する侮辱になるわよ」

奈々「…!」

 

 

流石に奈々はこれ以上言わなかった。

 

 

衣奈「それに私は、実は一度貴女と戦ってみたかったのよ」

奈々「私と?」

衣奈「今や貴女は夢結と並ぶほどの実力を持っている。さらに貴女は他のリリィには出来ない事をやってのけているわ。まさに最強のリリィになりそうでね」

奈々「なりそうではなくて、これからなるんですよ」

衣奈「言ってくれるわね」

 

 

衣奈の発言に奈々は強気で言い返す。

 

 

衣奈「でもそうでないとね。でなきゃ倒しがいがないもの!」

 

 

奈々を挑発して、衣奈は二本のCHARMを構える。

 

 

 

奈々「衣奈さんも言ってくれますね…望むところです!」

 

 

奈々は衣奈の挑発に自ら乗り、ツインフェザーを再び構えた。

 

 

亜理奈「さあ、このメインイベント最大の盛り上がりになりそうです!この模擬戦はいい勝負が期待されます。お互いトップクラスのリリィ!果たして勝利の女神が微笑むのは誰なのか!?では最終戦…開始です!」

 

 

開始のブザーが鳴ると、奈々より早く衣奈が突撃してきた。

 

 

奈々「!?」

衣奈「先手は頂くよ…!」

 

 

衣奈は奈々の攻撃が来る前に速攻で仕掛ける戦法で挑んだ。

 

 

彼女、番匠谷依奈の戦闘スタイルは攻撃に特化している。

 

かつて六角汐里は衣奈と同じ攻撃特化の戦法をしたかったのだが、前のように重いCHARMが持てなくなった為、断念した。

 

 

同じ攻撃特化の衣奈と奈々。

 

勝負を決めるのは、互いのテクニックである。

 

 

 

 

 

 

至近距離に入ると同時に衣奈はグラムを降り下ろすが…

 

 

 

 

 

 

 

奈々は右手のツインフェザーで衣奈のグラムをあえて受けて、そのまま後ろに流し、のけ反らせた。

 

 

 

衣奈「えっ!?」

奈々「油断大敵ですよ!」

 

 

 

それを見た観客の方でも…

 

 

梨璃「あれは…!」

鶴紗「夢結様が使っていた戦法…!」

二水「ですが、型や動作が少し違います!」

夢結「奈々が私の型を自分流に変えたのよ。まさかこんな形で再現するなんてね」

梅「2年前は夢結の型を覚えようと何度もやってたけど、結局出来なかったからな」

楓「夢結様のが両手なのに対し、奈々さんは片手。とんだ馬鹿力ですわね…」

夢結「しかも奈々は二刀流。カウンターの出が早いわ」

雨嘉「じゃあこの勝負は奈々が有利?」

神琳「いえ、相手はトップクラスのリリィ。簡単には行かないと思いますわ」

 

 

後ろに流された衣奈の後ろを取った奈々はすぐに左手のツインフェザーで攻撃するが…

 

 

衣奈「まだまだ!!」

 

 

咄嗟に衣奈は体を捻らせ、左手のアステリオンで奈々のツインフェザーを受け止める。

 

 

奈々(あの状態から…!?)

 

 

そして奈々から距離を取るようにバックステップで後退した。

 

 

 

奈々「カウンターに素早く反応するなんて、流石ですよ」

衣奈「貴女もよ。変わってるけど、夢結の型を使うなんて驚いたわ」

奈々「それはどうも。ですが驚くのはまだまだこれからですよ!」

 

 

 

奈々は再びツインフェザーを構える。

 

 

 

衣奈「なら、逆に驚かせてあげるわ!」

 

 

 

衣奈も二本のCHARMを構える。

 

 

 

そして今度は同時に突進し、二本のCHARMによる鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

しかし、腕力は奈々の方が上で、衣奈は少しずつ後ろに押されつつあった。

 

 

 

衣奈(やっぱり力業じゃ私に分が悪い…ならここは、手数で攻める!)

奈々(力はこっちが上…となれば衣奈さんは必ずスピードと手数で攻めるはず…ならここはパワーで押しきるか?)

 

 

お互い、相手の先を読みながら戦う。

 

衣奈は鍔迫り合いの状態から後ろに後退し、今度は体を回しながら二本のCHARMを振り回して奈々に攻撃した。

 

 

奈々(そう来たか…!)

 

 

 

奈々は両手のツインフェザーをクロスさせ、回転する衣奈の連続攻撃を受け止めていく。

 

流石に攻撃の手を止めず、衣奈の猛攻を防御するしかない奈々。

 

 

 

 

 

 

 

しかし隙を見つけ、奈々は足払いで攻撃中の衣奈の足を払った。

 

 

衣奈「!?」

 

 

足払いでバランスを崩した衣奈。

 

そこに二本のツインフェザーで凪ぎ払おうとする奈々。

 

 

 

 

だが衣奈は跳びながら体を回転させ、ツインフェザーの切り払いを避けた。

 

しかし、奈々は逃がさないと、衣奈との距離を縮めて向かってきた。

 

 

衣奈はすぐに体勢を立て直し、CHARM同士の叩きあいに持ち込んだ。

 

 

叩いては弾かれ、また叩いては弾かれ…と、お互い一歩も引かない。

 

 

 

観客席のアールヴヘイムのリリィ達も…

 

 

 

壱「凄い…」

亜羅椰「あの衣奈様と互角に渡り合うなんて…」

楠美「でも天葉姉様だったら…」

天葉「いや、あの勢いは私では難しいかな?奈々の戦い方はこの百合ヶ丘にいるリリィでも真似出来るものじゃない…出雲先生を除いてね」

 

 

奈々の戦い方を改めて知ったアールヴヘイムの皆であった。

 

 

 

 

 

 

 

勝負開始から30分…奈々と衣奈のCHARM同士の叩き合いはまだ続いていた。

 

しかし変化はあった。

 

 

衣奈に疲れの表情が出てきた。

 

 

奈々との勝負で衣奈は普段以上に集中しながら戦っていたのだ。

 

例え30分でも、必要以上の集中力を使うとなると、普段以上の疲れが出てくる。

 

疲労の衣奈自身に、動きも鈍り始めた。

 

マギも、かなり消耗していた。

 

 

 

 

対して奈々は、まだ体力に余裕があった。

 

模擬ヒュージ、アールヴヘイムの月詞、弥宙、辰姫、レギンレイヴの六角汐里と戦った後でも、ピンピンしている。

 

ギガント級ヒュージとのガチンコ勝負から遠征での大量の小型ヒュージの駆除までこなす彼女の体力は、ずば抜けていたのだ。

 

マギが消耗してるにも関わらず、まだ一般以上の量を残してる。

 

 

 

このまま戦いが長引けば、先に衣奈の体力が尽きて不利になる。

 

衣奈に残された戦法はただひとつ…

 

相手の攻撃をかわし、残ったマギを全てCHARMに加えて強力な一撃を相手にぶつける。

 

 

即ち、短期決戦である。

 

 

 

衣奈「奈々さん、次で決着を付けましょう」

奈々「そうですね。このままだとらちがあかないですしね」

 

 

攻撃を止め、距離をとる奈々。

 

 

 

 

次がラスト。

 

これをしくじれば、負けは確定だろう。

 

それでも衣奈は、これにかけるしか他に選択肢が無かった。

 

 

 

 

 

両者、CHARMを再び構えた。

 

 

 

 

 

 

亜理奈「両者静かになったら、どうやら次で決めるようです…この一撃で、勝者が決まります!」

 

 

 

 

観客の皆も、静かに二人の勝負を見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衣奈「勝負!」

奈々「勝負!」

 

 

 

二人が同時に突進した。

 

 

楓「同時に動きましたわ!」

雨嘉「でも、奈々のあの構えじゃ…」

 

 

 

雨嘉は奈々の構えに気付いた。

 

 

奈々が二本のCHARMを前に向けてないのに対し、衣奈は左手のアステリオンを前に向けていた。

 

 

どうやら奈々の攻撃をアステリオンで受け流し、グラムでカウンターを狙う気である。

 

ちなみに衣奈は自身のサブスキル、軍神の加護でグラムの威力を高めている。

 

また軍神の加護は、楓が持つレアスキル、レジスタのサブスキルでもある。

 

性能こそ劣るが、奈々に大きな一撃を与えられるには十分だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、奈々はそれすら読んでいた。

 

そしてCHARMを後ろに向けたのも理由があっての事である。

 

 

 

 

奈々は体を捻って、二本のCHARMを持った両手を伸ばしながら一気に回転し、衣奈に突進してきた。

 

 

 

衣奈「!!?」

 

 

予想外の攻撃に驚く衣奈。

 

 

先程衣奈は回転しながらの連続攻撃を奈々に仕掛けたのに対し、奈々は軸をずらさず、体を前に倒しながら衣奈以上の速さで駒のように回転しながら突進してきたのだ。

 

しかもその速さは、奈々のサブスキル、インビシブルワンの効果で強化されたものである。

 

こうなると、射程の問題で足を狙えない上に隙も殆どない。

 

それどころか、相手の攻撃をまともに受けてしまう。

 

 

 

やむを得ず、衣奈は攻撃を止め、グラムとアステリオンをクロスさせ、防御の体勢に入ったまま奈々の突進を真っ向から受け止めた。

 

しかし大きく押されて始めた。

 

 

 

インビシブルワンの効果で奈々の回転による攻撃は両手のCHARMで、1秒に約8回も振っている。

 

これでは隙の狙いようがない。

 

 

 

徐々に両手が衝撃で痺れていき、押されていき、力が入らなくなっていき、ついに衣奈のグラム、アステリオンが弾かれしまい、地面に落ちてしまう。

 

 

衣奈「!?」

 

 

衣奈は弾かれたCHARMを見たあと、再び奈々の方へ向く。

 

既に奈々は攻撃を止め、構えを解いていた。

 

 

 

奈々「私の勝ちですよ。衣奈さん」

衣奈「……そのようね。見事な戦いだったわ」

 

 

 

衣奈は敗けを認めた。

 

勝負がつき、終了のブザーが鳴った。

 

 

 

亜理奈「す、凄い!素晴らしい戦いでした!!トップクラスのリリィ同士。長い戦いの末、勝利を手にしたのは木葉奈々さんだぁー!!」

 

 

 

亜理奈の解説と共に観客の皆は大拍手した。

 

 

 

亜理奈「最後に惜しくも負けてしまった衣奈様も見事な戦いでした!」

 

 

アールヴヘイム組のリリィ達は…

 

 

 

天葉「あの衣奈に勝つなんてね…」

壱「亜羅椰、楠美、終わったら特訓よ!」

楠美「いっちゃん、なんかやる気入った?」

壱「このままじゃ奈々さんに勝てないのは見てわかるわ。競技会で衣奈様の敵を取るわよ!」

亜羅椰「ええ。このまま黙ってはいられませんわ!絶体強くなってあの奈々を負かせるまでは!」

天葉「私も、奈々と戦ってみたくなったよ。特訓に付き合っていいかな?」

壱「構いません!寧ろ助かります!」

楠美「私も強くなる…奈々ちゃんには絶体に負けない…!」

 

 

今回の模擬戦を見てアールヴヘイム達も新たな目標が出来たようだ。

 

 

 

一柳隊の一同は…

 

 

 

鶴紗「アールヴヘイムの衣奈様に勝つなんて…」

二水「いいネタが取れました!次のリリィ新聞はこれで決まりです!」

梅「こりゃあ夢結もうかうかしてられないんじゃないのか?」

夢結「問題ないわ。梨璃、後で私達も訓練よ」

梨璃「いいですが、もしかしてお姉様もですか?」

夢結「何が?」

梨璃「奈々ちゃんと戦いたいのではと…」

夢結「………よくわかったわね」

梨璃「お姉様が奈々ちゃんをよく見てましたから」

梅「やっぱり夢結も動揺してるナ」

夢結「…………ええ」

楓「私も梨璃さんの訓練に付き合いますわ!」

ミリアム「それなら一柳隊全員での訓練を行ったらどうじゃ?」

神琳「それはいいですわね」

雨嘉「でもどうするの?訓練場はしばらく使用できないし…」

夢結「それなら心配ないわ。外でちょうどいい訓練場所があるからそこでやるわ」

結梨「私も訓練に参加していい?」

梨璃「結梨ちゃんまだ危ないから今回は見学で我慢してね?」

結梨「むぅー」

 

 

そして奈々と衣奈の方は…

 

 

 

衣奈「最高にいい勝負だったわ」

奈々「私もですよ。対人戦でここまで手応えがあったのはブルーガード以来です」

衣奈「また強くなって貴女にリベンジするわ。よろしくね。奈々さん」

奈々「こちらも機会があったらよろしくお願いします」

 

 

お互い笑顔で握手をする奈々と衣奈。

 

 

こうして、新CHARMのテストだったはずの奈々の模擬戦は終わ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「…………おや?待ってください。何とここで、奈々さんに勝負する新たな挑戦者が現れました」

奈々「え?」

亜理奈「サングリーズル、ローエングリン、エイルまでもが奈々さんの勝負に参加して来ました!」

 

 

他のレギオンのリリィからも奈々と戦いたいと申してきたのだ。

 

 

奈々「いやいやいやいやいや、まてまてまてまてまて!少し休憩させてよ!」

 

 

 

さすがの奈々もこれ以上の連戦は休憩を挟まないといけないようである。

 

 

 

そしてこの日は、奈々の模擬戦ラッシュとなり、後五時間も続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、奈々の模擬戦が続いてる中、理事長室では代理の男が涼の提出した資料を確認していた。

 

外は夕方の空となり、夕日の光が部屋を明るくしていた。

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 理事長代理 高松咬月(たかまつ こうげつ)

 

 

 

咬月「合体剣カナリア…ギガント級に大きなダメージを与えられるCHARM…その反面、CHARMに掛かる負担も大きく、並の素材では持たないという訳か…」

 

 

合体剣カナリア…奈々が扱うCHARM…カナベラルとブルメリアを合体させた武器で、使い方次第ではギガント級を倒すことも可能だが、CHARMに掛かる負担も大きく、折れてしまう。

 

またマギの使用量が異常すぎる程高く、奈々でも約30秒しか可動出来ない。

 

 

隣には、百由が立っていた。

 

 

 

百由「はい。今後彼女の為にも、あのCHARMは直しておいた方がいいと思います。彼女も承諾してます」

咬月「うむ。政府を通して材料を手配しておく」

史房「しかし、わざわざそのCHARMを使わなくても、新しいCHARMを作ればよろしいのでは?」

 

 

咬月の隣に立つ史房が話に参加する。

 

 

 

そう言われて、百由はタブレットを操作して後ろに用意したスクリーンにカナベラル、ブルメリア、ツインフェザーの内部構造の図を表示させた。

 

 

 

百由「残念ながら、この百合ヶ丘で彼女専用のCHARMを作れるのは綾瀬さん一人です。綾瀬さんの作ったカナベラル、ブルメリア、ツインフェザーは他のCHARMとは異なる構造で作られてるのがわかりました。マギの貯蔵量が多いクリスタルコアを使用してるのはそうですが、それ以外の各パーツや部品は全て大きめの物を使用しており、メタルスキン製で出来てます。これらは彼女の高いマギに耐えられるよう計算されたものだと考えられます。逆にこれら以外のCHARMでは彼女の高すぎるマギに耐えられず、数秒で破損します。特に変形機能を持ったCHARMなら尚更です。ブリューナグ、ティルフィングでも精々2、3分が限界でしょう」

 

 

グングニル、アステリオン、ブリューナグ、ティルフィングの図面を表示させて、新たに表示された可愛い奈々のアイコン画像が二本のCHARMに重なると、破損までの残り時間が表示された。

 

グングニルは僅か1分で、アステリオンは2分。

 

ブリューナグは3分に対し、ティルフィングは3分半となっている。

 

 

百由「現存のCHARMを持たせるより、彼女に合ったCHARMを持たせた方が自身の戦力向上に繋がります」

史房「しかし、何故彼女のCHARMの修理を急がせる必要が?」

 

 

史房の疑問に答えるかのように、百由はタブレットをまた操作して、スクリーンの画面を変えた。

 

映し出されたのは、下北沢の遠征でリリィ達が戦った大きな蝙蝠の翼と足が生えたアーリマンに似たギガント級ヒュージであった。

 

 

 

百由「下北沢にて現れたギガント級ヒュージ…通称アーリマンの形状は今まで出会ったラージ級、ギガント級とは異なり、ゲームやファンダジー等に出てくるモンスターに近い姿となっております」

 

 

スクリーンの方では、アーリマンの横に新たに他のギガント級ヒュージの画像が現れた。

 

 

 

百由「そしてこちらは海で活動を行っているブルーガードが出会った蜂の人工ヒュージです。メカメカしい所はありますが、生物の形をほぼ再現しています」

史房「そのヒュージと、下北沢で現れたギガント級となんの関係があるの?」

咬月「…………サンスベリア」

史房「!?」

 

 

咬月の口から出たサンスベリアという言葉に、史房は驚く。

 

 

 

 

百由「はい。10年前に現れたヒュージを神と称える集団で、百合ヶ丘でも一度戦ってる敵の組織名です。他に多くのガーデンがこの組織の被害を受けたという報告もあり、ヒュージ以上に達の悪い相手だと言われています」

史房「サンスベリアは5年前に壊滅したと政府から報告を受けたけど…」

百由「確証があります。こちらをご覧ください」

 

 

続けてタブレットを操作する百由。

 

 

今度はブルーガードが戦った人工ヒュージの画像を拡大表示させた。

 

 

百由「ブルーガードが戦った人工ヒュージの画像です。こちらのエンブレムを見てください」

史房「!?」

 

 

拡大した蜂の人工ヒュージの尻尾をよく見ると、サンスベリアの花を象ったエンブレムがペイントされていた。

 

 

史房「これは…!」

百由「はい。私達が百合ヶ丘が戦ったサンスベリアの模擬ヒュージにプリントされていたエンブレムを同じものです」

咬月「……」

 

 

更にタブレットを操作する百由。

 

 

 

百由「ブルーガード所属の綾瀬さんから聞いた情報によるところ、サンスベリアの模擬ヒュージはどの個体も耐久力が高く、特にギガント級に匹敵する個体はマギリフレクターが標準されている事がわかりました。このアーリマンもマギリフレクターを持っており、それなしでもノインヴェルトに耐えられる程の高い耐久力を持っていました。綾瀬さんから聞いた情報とほぼ一致しています」

 

 

アーリマンを倒せたのは、奈々のカナリアによる一撃でマギリフレクターを剥がされ、そこに二組のノインヴェルト戦術の直撃によるものだった。

 

それだけでも、アーリマンの耐久力が高いのがわかる。

 

もし奈々がカナリアを持っていなかったら、アーリマンを倒すのは難しかっただろう。

 

 

史房「サンスベリアは…活動が出来るほどに回復したって事…?」

咬月「その答えは…すぐにわかるだろう」

 

 

 

そう話してる内に理事長室のドアが開いた。

 

入ってきたのは出雲だった。

 

 

 

 

出雲「失礼します」

史房「出雲先生?何か情報ですか?」

出雲「ああ。政府を調査してた所、とんでもない情報が見つかった」

咬月「どうだったのだ?」

出雲「予想通りです。政府に紛れ込んだゲヘナのスパイから、GEHENAはサンスベリアから支援を受けてることがわかりました」

史房「!?」

出雲「更なる話で、サンスベリアは2ヶ月前に活動を再開してたようです」

咬月「やはりそうか……」

史房「やはりとは?」

咬月「今までこの5年間、サンスベリアが活動しなかったのは、力を蓄えている為の準備だったという事だ」

史房「?」

出雲「5年前…私が中等部の頃に、突如サンスベリアが襲撃してきた百合ヶ丘防衛戦は覚えているか?」

史房「はい。百合ヶ丘を襲ってきた無数の模擬ヒュージを迎え撃った戦いで、出雲先生が敵の主戦力を叩いて、サンスベリアは壊滅に追い込んだと…まさか…!」

出雲「ああ。私達が戦ったサンスベリアの集団はその一部しかなかった。奴等はこの5年間の間、力を蓄えるために身を隠していた訳だ。今やサンスベリアは大きな組織と化していた」

 

 

過去に戦った敵が力を付けてきたとなると、一筋縄では行かないだろう。

 

 

 

史房「…花言葉で永久…または不滅…その名の通り、何度もやられてはその度に復活する…確かに達が悪いですね」

出雲「更に聞いた情報だと、サンスベリアは新たに耐久力の高い人工ヒュージの開発をしていると聞いた」

史房「じゃああの下北沢に現れたギガント級は…!」

 

 

出雲の話通りになると、アーリマンはサンスベリアの技術が盛り込まれていたという事になる。

 

 

 

百由「ここ最近、サンスベリアの活動も活発し始めています。いずれここにも来る筈です。今度は人工ヒュージを連れて…」

史房「その為のカナリアが必要だと…」

咬月「打てる杭は売っておいた方がいいという訳か…」

 

 

復活したサンスベリアは、5年前に現れた時とは比べ物にならないと思った咬月は…

 

 

咬月「真島君、メテオメタルを作るための材料を手配しよう。出江君、明日全ガーデンに伝えてくれ」

 

 

百由、史房、出雲は気を引き締める。

 

 

 

 

 

 

 

咬月「後日…対サンスベリア緊急会議を行う」

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

 

二水「次回はついに競技会の開幕です!」

奈々「私の強さを見せてやる!」

 

 

 

 

next 百合ヶ丘女学院の戦技競技会!

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からは、
アニメの8話をベースに作っていこうと
考えてます。
ちょっと長いですが、面白く作る予定です。

それではまた!


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「10」百合ヶ丘女学院の戦技競技会!

ちょっと長くなる筈が、また三万文字と結構長くなってしまいました。
中々いいアイディアが浮かばず、遅くなりましたが、納得できる話になりました。

今回は、8話に出たあの子が再登場します。
どんな風になるかはお楽しみ(笑)。

今回はアニメ8話の後半部分がメインです。

入れたかったネタを入れることが出来ました。

どうぞ!


百合ヶ丘女学院から少し離れた所の森の中……

 

そこには、百合ヶ丘の制服とは異なる制服を着たピンク色の髪の少女が歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 1年生 戸田・エウラリア・琴陽(とだ・えうらりあ・ことひ)

 

 

 

 

琴陽「まさか私が相手の陣地に来るなんてね…」

 

 

琴陽がここに来た目的…

 

それは木葉奈々に関する戦闘データの収集である。

 

琴陽はGEHENAに協力する者の一人にして、強化されたブーステットリリィだった。

 

今回下北沢で発生した大量のヒュージは、GEHENAが起こした事で

参加したリリィ達のデータを収集するための実験だった。

 

 

その中でも、遠征で現れた奈々は無数の小型ヒュージやギガント級を圧倒する程の活躍を見せていた。

 

 

しかし下北沢の遠征で収集した木葉奈々の戦闘データでは足らず…

 

今回、彼女は百合ヶ丘女学院で年に一度のイベント…戦技競技会に参加し、データ再収集する狙いである。

 

 

ちなみにルドビコ女学院の方では、里帰りするとという嘘の理由を書いて休暇届けを出している。

 

 

琴陽「今回の戦技競技会…木葉奈々は必ず参加するはず…必ずデータを取らないと…!」

 

 

 

彼女の目には、復讐心は無くなっており、白井夢結への憎しみは薄れていた。

 

奈々は原因が自分だと主張するが、助けてくれた相手を憎むことは出来なかった。

 

 

元々彼女がGEHENAに加担するのは白井夢結への復讐の為だったが、今はそれがない。

 

今も彼女がGEHENAに協力するのは別の理由があるが、それについてはまだ触れるべきでない。

 

なにがともあれ、琴陽は木葉奈々の戦闘データを取るために百合ヶ丘の敷地内に身を潜めているのだ。

 

 

 

琴陽は録画機能を備えた特殊な双眼鏡を取り出し、遠くから見える百合ヶ丘女学院のグラウンドを除き混む。

 

 

 

琴陽「そろそろ始まる頃だけど………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、百合ヶ丘のグラウンドでは多くの生徒達が集まっていた。

 

今日は百合ヶ丘女学院の年に一度のイベント…戦技競技会の日である。

 

本来は秋の季節に行う筈だったのだか、急遽春の季節に行うようになったのだ。

 

 

雰囲気はまさにリリィ達の運動会である。

 

 

 

クラス部門…レギオン部門…個人部門等々、これらの最優秀リリィには工廠科から様々なCHARMのカスタマイズに応じてくれるのだ。

 

 

 

内容は前半の運動の部と、明日の文化の部に分けられる。

 

 

 

今回はその運動の部の日である。

 

 

 

 

 

テントの下では理事長の咬月と出雲、史房を含む3人のリリィがいた。

 

 

 

 

 

一人は灰色のミドルヘアーの少女。

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 エイル 隊長 生徒会 秦 祀(はた まつり)

 

 

 

もう一人は後ろ髪を三つ編みにした山吹色の少女で、前髪の右に髪留めを付けていた。

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 シュバルツグレイル 内田 眞悠理(うちだ まゆり)

 

 

 

 

咬月「さあて、本日の客人は?」

祀「15人が敷地に侵入しています。また、ドローンが3機程」

咬月「素性は?」

史房「偽装していますが、大半は国内外の政府系組織です。中にはCHARMメーカー、反政府組織や、自然保護団体と思われる者も。まだ分析中ですが、興味の対象は一柳結梨で間違いないようです。ただ、サンスベリアの存在は確認されていません」

出雲「神楽月と塔ノ木が用意した防衛ドローンをいくつか迎撃区域の周辺に設置しておいたから、奴等も迂闊には行動できないだろう」

祀「じ、準備が早いですね」

眞悠理「此方は何を探ります?」

咬月「情報のルートを徹底的に。通信の量とその行き先じゃ」

出雲「そこは塔ノ木に任せておこう」

眞悠理「挑発行為があった場合は?」

咬月「デバガメが分を超えた場合の対処は諸君らと出雲君に頼もう」

出雲「わかった」

史房「はい。結梨さんには指一本触れさせません」

 

 

と答える史房だが話を終えると、心の中でこう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

史房「・・・デバガメって何?」

出雲「覗き魔の常習犯という意味だ」

史房「なっ!!?」

 

 

 

どうして考えてることがわかったの!?と言いそうな感じで驚く史房。

 

 

 

出雲「または変態という意味もある。もし見つけたら容赦なく畳み掛けろ。変態は一人残らず始末しろ」

史房「透かした顔で物騒な事言わないでください!!」

出雲「そろそろ開会式が始まるぞ」

 

 

出雲の話術に翻弄される史房。

 

 

 

祀(出雲先生…実は天然?)

眞悠理(黙っていた方が無難ね……)

 

 

 

 

 

 

 

 

グラウンドでは、開会式が始まり、中央の台に立った木葉奈々が、開会の言葉をみんなの前で告げる。

 

 

 

奈々「ごほん…我々百合ヶ丘女学院のリリィは、この競技会で自分達の力を出しきり、正々堂々と勝負することをここに誓います!この学院で体験して学んで得た経験と知識を、今日ここで披露すること、力を出しきって競いあってください!そして、楽しみましょう…この年に一度の祭を!」

 

 

奈々の言葉で全生徒は一斉に拍手した。

 

 

拍手が収まると、奈々は再び口を開く。

 

 

 

奈々「さて、堅苦しいのはこのくらいにして…」

 

 

 

 

奈々はいつもの調子でマイクをスタンドから外し、夢結に指差してこう告げた。

 

 

 

奈々「夢結さん!この競技会で最強のリリィが誰なのか決めようじゃないですか!そして、勝つのは私だ!!」

 

 

夢結を挑発するかのように挑戦を叩きつける勢いで告げる奈々。

 

 

少し驚いた夢結も少し笑い、奈々に言い返す。

 

 

 

 

夢結「そう簡単に勝ちは譲らせないわよ。私は貴女に負けるとは思っていないから」

 

 

と、挑発し返す夢結。

 

 

 

奈々「ふふっ、楽しみに待ってます!」

 

 

 

そう言って奈々は台から下りる。

 

 

 

 

 

 

 

その後、奈々は眞悠理、史房に怒られたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、戦技競技会は始まった。

 

 

 

 

 

咬月達とは別のテントでは、緑のツインテールの少女がマイクで最初の競技を宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 高野亜理奈(たかの ありな)

 

 

 

亜理奈「ここからの実況はこの私、高野亜理奈が仕切りますよー!!」

 

 

と、ハイテンションで喋る亜理奈。

 

 

 

亜理奈「最初の競技は、クラス対抗戦!二人一組で普通のジャンプでは取れない程の上に高い所に設置したクッションを早く取るスピード勝負です!椅子取りゲームみたいな感じて受け取って構いません。二人で協力して、どうやって早く取るかが重要です。ちなみに他のチームの妨害は反則です。また公平に行うため、サブスキル、レアスキルは禁止にします。個人のスペックで切り抜けてください!」

 

 

と、説明が終わり、まずは1年生の競技から始まるようだ。

 

椿組…主に一柳隊+奈々の方は…

 

 

 

楓「ウフフ…夢結様とお邪魔虫が入らないここならば、無防備な梨璃さんは私の思うがままにですわー!」

奈々「お邪魔虫って私かい」

 

 

自然にツッコミをする奈々。

 

 

楓「他に誰がいますの?さあ梨璃さん、一緒に…」

 

 

と、言いながら梨璃だと思う手を掴むが、掴んだ手は、結梨の手だった。

 

 

結梨「ん?」

楓「え?何故結梨さんがここに?」

結梨「私も椿組だから」

楓「何ですって!?」

奈々「結梨ちゃん編入されてもう1週間は経ってるの忘れたの?」

楓「お邪魔虫2号…」

 

 

テンションが下がってがっかりしそうな楓。

 

 

 

 

神琳「出雲先生の話を聞いてないんですか?」

楓「生憎都合の悪い事は記憶に残さないタチなので」

 

 

すぐに笑顔で答える楓。

 

 

 

鶴紗「ポンコツか」

奈々「ダメだこりゃ」

 

 

そんなこんなで、各組の準備が整った。

 

 

 

 

椿組、最初の相手クラスは櫻組のようだ。

 

 

椿組からは一柳梨璃と、成り立てリリィの一柳結梨が出た。

 

対し、櫻組からは犬耳のような形のピンク色のロングヘヤーの少女と、紫のツインテールの少女が参加してきた。

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 ローエングリン 倉又 雪陽(くらまた ゆきよ)

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 ローエングリン 妹島 広夢 (せじま ひろむ)

 

 

 

中央には、結構長い棒が立てられ、真上にはクッションが被さっていた。

 

 

 

亜理奈「勝負は三回。先に二勝取ったクラスの勝利とします!それではクラス対抗戦、開始!」

 

 

 

開始のドラが鳴り、グラウンド中に響き渡った。

 

 

 

梨璃「昨日練習した通り!いい?」

結梨「うん!」

 

 

 

梨璃は愛用のグングニルで地面に円を描く。

 

すると描いた円が光り、準備が出来たところで梨璃が離れて、結梨がその円の中に飛び込むと、マギの力で高く飛んだ。

 

そしてそのまま上空に浮かぶクッションを掴もうとするが…

 

 

 

結梨「ああっ!?」

広夢「頂き!!」

 

 

 

先に広夢の方が早く、クッションを取られてしまう

 

そして華麗に着地した。

 

 

 

広夢「初めまして。初心者にしてはセンス良いのね」

 

 

クッションを回しながら余裕を見せ、アピールをしている広夢。

 

 

 

結梨「むぅ……」

 

 

 

悔しがる結梨に抱きつく梨璃。

 

 

 

梨璃「やったね結梨ちゃん!」

結梨「出来なかったー!」

梨璃「そんな事ないよ。凄い凄い!」

 

 

 

と、悔しい結梨を梨璃が励ます。

 

と、その姿を見て悔しがる楓。

 

 

 

楓「ムキーですわ!」

奈々「仕方ないよ。今の梨璃ちゃん、まるで結梨ちゃんのお姉ちゃんになってるし、邪魔する訳に行かないよ」

鶴紗「楓、次は私とやるぞ」

楓「梨璃さんじゃないのは残念ですが…」

 

 

 

残念そうにテンションが下がってる楓。

 

 

 

奈々「だったら梨璃ちゃんにかっこいい所を見せればいいんじゃない?」

楓「さあ鶴紗さん、全力で行きますわよ!」

 

 

すぐに張りきりだす楓。

 

 

 

鶴紗「単純だな…」

神琳「奈々さん、楓さんの扱い上手いですね」

奈々「言われても嬉しくないなぁ。それ」

 

 

 

2本目は、鶴紗のサポートによる楓のハイジャンプでクッションを掴み、一勝勝ち取り、これで一対一。

 

次の勝負で勝てば準決勝に進める。

 

 

 

 

 

奈々「次は私か…誰にしよう…」

「奈々さん、一緒に組みませんか?」

 

 

同じ椿組の汐里が奈々を誘いにやって来た。

 

 

奈々「汐里ちゃん、私を誘いに?」

汐里「私もペアを探してたんですけど、あぶれちゃって…」

奈々「いいよ。よろしくね」

 

 

奈々は汐里とペアを組む事にした。

 

 

 

汐里「はい。こちらこそ」

 

 

 

 

そして三本目……相手はローエングリン主将の立原紗癒と森辰姫であった。

 

 

 

辰姫「あの時は油断したけど、今度は負けないわ!」

奈々「私もだよ!」

紗癒「私達が勝ったらローエングリンに…」

奈々「入りません」

汐里「奈々さん大変ですね…」

 

 

気合十分の四人。

 

そして亜理奈が開始の合図を言う。

 

 

 

亜理奈「果たして、準決勝に進出するのはどのクラスか!それでは競技開始!」

 

 

開始のドラが鳴った。

 

 

同時に奈々は汐里の手を持つ。

 

 

汐里「?」

奈々「汐里ちゃんいっけぇー!!」

汐里「えええーっ!!?」

 

 

奈々は汐里を上空のクッションに向けてフルスイングで投げ飛ばした。

 

 

辰姫「な!?」

鶴紗「え!?」

梨璃「ええーっ!?」

二水「汐里さんをフルスイングしましたよ!」

楓「何をやっていますのあの問題児!!?」

雨嘉「大丈夫…見て」

 

 

一柳隊一同、雨嘉の指差したクッションがある方を見た。

 

何と、辰姫より早くクッションを飛ばされた汐里が取っていた。

 

 

 

辰姫「早!?」

紗癒「まさか投げ飛ばすなんて…」

神琳「マギで筋力を一時的に強化して、そのまま汐里さんを飛ばす。確かにその方が早いですわね」

二水「奈々さんらしいと言えば、奈々さんらしいですね」

 

 

クッションを手に入れた汐里が奈々の下へ着地した。

 

 

 

汐里「ちょっと驚きましたけど、中々の投げっプリでしたね」

奈々「まだまだこの程度だよ……………!?」

 

 

 

 

奈々開始突然何かの気配を感じ、汐里が持ってるクッションを取ると高くジャンプし、グラウンドから離れた森の方へ…

 

 

 

 

 

 

 

奈々「くせ者ーー!!!」

 

 

 

マギを込めたクッションを投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

すると、森の方から爆音と土煙が起きた。

 

 

汐里「どうしたの奈々さん!?」

奈々「………森の方からマギの気配を感じて、スパイだと思って投げたけど…気のせいかな…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、森の方ではクッションの爆発で延びてしまってる琴陽の姿があった。

 

 

 

 

琴陽「……な………なんて…感知能力……ガクッ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

戻って椿組はこのあとの準決勝でも、順調に勝ち進んだ。

 

 

 

続いての相手は、シードを獲得したミリアムのクラスである檜組であった。

 

 

百合ヶ丘女学院では、クラスが全部で9つ存在し、その中でも檜組、杉組の2つはアーセナル専門の工廠科となっている。

 

ちなみにリリィとしての平均身体能力は他のクラスより低く、1年生で強いアーセナルはごく僅かである。

 

結果は椿組のストレート勝ちだった。

 

アーセナルの中でもリリィ並の身体能力を持つ綾瀬でも、相手が奈々では分が悪かったらしい。

 

 

 

 

何はともあれ、椿組は決勝に進出した。

 

 

 

 

 

 

そして決勝の相手は李組。

 

1回戦はアリツィア・リベスキンドと片山珠花が相手だったが、壱、楠美の活躍で一勝。

 

2回戦は小野木瑳都。鶴紗と対決したブーステットリリィ同士の勝負は李組に軍配が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

そして3回戦。ラシェル・ド・ムホーと遠藤亜羅椰に対し、楓と奈々が参加した。

 

 

両者はそのまま睨み合う。

 

 

亜羅椰「勝たせてもらうわよ。この勝負」

奈々「それはどうかな?」

 

 

外野の方では…

 

 

 

梨璃「楓さん、奈々ちゃん、頑張ってー!」

 

 

 

梨璃の応援を聞いた楓は好調になった。

 

 

楓「奈々さん、梨璃さんに勝利を与えますわよ!」

奈々「当然!」

 

 

 

準備が整った所で亜理奈が口を開く。

 

 

 

亜理奈「決勝ということで、今回はクッションの位置をいつもの2倍の高さに配置しました!」

 

 

既にクッションは更に高いところに配置されていた。

 

 

楓「私のジャンプ力では難しいですわね…」

奈々「問題ないよ。考えがある」

楓「?」

 

 

奈々はこっそりと楓に案を伝える。

 

 

 

亜理奈「さて、そろそろ始めましょう。優勝は果たしてどのクラスなのか…!決勝戦、開始!!」

 

 

開始のドラが……(以下略)

 

 

 

李組は、ラシェルが作った二重の魔法陣で亜羅椰が飛びあがり、更に高い所にあるクッションを取ろうとした。

 

 

亜羅椰「ふふっ、この勝負もらった…」

奈々「うおおおおーーーっ!!」

 

 

一方奈々はマギを使って、クッションまでとどく程の高い壁を作り、楓を背負ったまま壁走りで登っていった。

 

 

亜羅椰「ちょ、そんなのありなの!?」

奈々「スキルは使ってないよ」

 

 

 

肩車で楓を背負ったままマギの壁を登っていく奈々の勢いは衰えることなく亜羅椰を抜き、加速していく。

 

 

そしてクッションが見えてきた所で…

 

 

楓「お願いしますわ!」

奈々「いっけぇー、ラストスパートー!!」

 

 

奈々はクッションに向けて楓を投げ飛ばした。

 

 

物凄い早さで亜羅椰との距離を縮めていく。

 

 

そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「この勝負…貰いましたわ!!」

 

 

楓はクッションを掴みとった。

 

 

亜理奈がレアスキル…天の秤目を使って、上空にいる楓がクッションを取ったところを確認すると…

 

 

 

 

 

亜理奈「お見事!クラス対抗戦を制したのは、椿組だぁー!!!」

 

 

 

椿組の勝利を宣言すると、椿組の皆は外野の生徒達から歓声を浴びた。

 

 

 

奈々「ナイスジャンプだったよ楓ちゃん」

楓「当然ですわ」

 

 

互いの手をタッチする二人。

 

そこへ、梨璃達がやって来た。

 

 

 

梨璃「やったね奈々ちゃん、楓さん!」

 

 

と言って梨璃は楓に抱きつく。

 

 

 

楓「ま!?」

 

 

突然の思考が停止し、楓は幸せな表情で倒れてしまう。

 

 

梨璃「か、楓さん!?」

神琳「刺激が強すぎましたのでしょうか……」

奈々「幸せな表情をしてるから、このままにしようか」

神琳「そうですね」

 

 

 

と、笑顔で気絶して倒れている楓を見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このあと、2年生のクラス対抗戦が開始され、夢結、梅がいる櫻組は、圧倒的な実力で決勝まで上がり、藤組との決勝戦では、天葉といい勝負を繰り広げ、勝利を勝ち取った。

 

 

 

 

 

 

 

3年生の競技はクラス対抗戦ではなく、一対一によるガチンコ勝負だった。

 

 

中でも注目なのが天葉のシュッツエンゲルである槇若菜(まき わかな)。

 

華麗なCHARM捌きで、ライバル達を倒していくその姿は、皆から注目の的になっていた。

 

 

若菜のシルトが天葉で、そしてその天葉のシルトが楠美。

 

このように三姉妹で揃った状態はノルンと呼ばれる。

 

その為、若菜にとって楠美は若菜のノルンである。

 

 

 

 

今回の3年生の部は若菜が優勝し、最優秀リリィに選ばれた。

 

 

 

 

 

そして会場に次の競技の説明が亜理奈から話される……

 

 

亜理奈「さて、お次は全学年が参加できるエキジビションです!!自身の能力…レアスキルを駆使して戦い、時間を競って貰います!今回は的を用意する筈だったんですが、代わりにARを使ったホログラフのヒュージを用意しました!」

 

 

亜理奈がそう言うと、グラウンドに2体のヒュージが現れた。

 

サイズも異なり、ドローン型のスモール級、昆虫型のミドル級のヒュージがいた。

 

 

亜理奈「各参加者はこれらを倒してもらいます!50匹のスモール級。20体のミドル級。合計70体の敵を倒した時のタイムで決めます!より短い時間で敵を全て倒した者が最優秀リリィに選ばれます!尚、同タイムだった場合は皆様の多数決で決めさせて貰います!」

 

 

説明が終わり、グラウンドに50体のスモール級、20体のミドル級が現れた。

 

前衛にスモール級20体…中衛にミドル級20体…残りの30体のスモール級が、挑戦者の位置を囲むように、配置されたようだ。

 

 

 

 

亜理奈「それでは最初の挑戦者です! 1週間前に奈々さんと互角の戦いを見せてくれたレギンレイヴの副将、六角汐里さん!」

 

 

グラウンドの中央に汐里が右手にティルフィング、左手にシャルルマーニュを持って配置に着いた。

 

 

亜理奈「それでは行きましょう!5カウント後、開始のブザーを鳴らした時点で競技開始です!」

 

 

 

カウントのブザーが鳴り響く…

 

 

 

 

5……………

 

 

 

 

4……………汐里は構えた。

 

 

 

 

3……………

 

 

 

汐里「六角汐里…参ります!」

 

 

 

2……………

 

 

 

 

1……………

 

 

 

開始のブザーが鳴ると同時に汐里はマギの力で高く飛びあがる。

 

 

 

汐里「たああああーっ!!」

 

 

 

そしてティルフィングをランチャーモードに変形させた後、肩に乗せ、回りながら周囲のスモール級をティルフィングのレーザーバルカンで倒していく。

 

その後襲いかかってくるミドル級達を、汐里はティルフィングをブレイドモードに変形させ、2本のCHARMを交互に流れるような連続攻撃でミドル級を次々と倒していく。

 

続いて後衛のスモール級達が襲いかかるが、これは再びティルフィングのレーザーバルカンで一掃する。

 

そして残ったスモール級を倒すと、終了のブザーが鳴った。

 

 

 

 

亜理奈「ただいまのタイムは…32秒です!シミュレートの時に私は1分丁度でクリアしましたが、やはり円環の御手は強い!そしてそれを使いこなす彼女もすごい!」

 

 

 

汐里は中央に着地し、構えを解いた。

 

 

 

 

汐里「ふう、やりました!」

奈々「凄いな汐里ちゃん」

 

 

奈々も汐里の戦いを見て納得している。

 

 

 

数秒休んだ後、汐里はグラウンドから出た。

 

 

 

亜理奈「さてお次は、アールヴヘイム隊長のシルトにして史上最年少でファンタズムに覚醒した神の子、江川楠美さんだぁー!!」

 

 

 

今度は楠美が中央に着いた。

 

 

右手に持ったCHARMは、1週間前に奈々達の前で見せた白雪である。

 

 

涼が楠美の為に作ったCHARM…

 

果たしてその性能とは…

 

 

亜理奈「それではカウント行きます!」

 

 

 

5…

 

 

 

4……

 

 

 

楠美「……………江川楠美…行くよ…!」

 

 

 

3………

 

 

 

2………………

 

 

 

1…………………

 

 

 

 

開始のブザーが鳴った。

 

 

楠美は早速レアスキル…ファンタズムを使い、最適な未来を見つける。

 

レアスキルの使用後の5秒後、楠美は予めマギを溜め込んでいた白雪の拳銃のグリップを掴み、目標目掛けて直線的なマギのレーザーを発射した。

 

 

二水「あれは…!」

奈々「拳銃パーツの銃口からマギのレーザーが…!」

 

 

レーザーはスモール級を巻き込み、ファンタズムで導きだしたやり方でスモール級を残さず倒していった。

 

 

その後、襲いかかってくるミドル級は白雪の柄に持ち替え、複数に斬り倒していく。

 

 

白雪の切れ味は黒鉄、白銀に負けないほどの威力だった。

 

 

残ったスモール級も楠美目掛けて動くが、これも斬り倒していく。

 

 

 

そして全てを倒すと、終了のブザーが鳴った。

 

 

亜理奈「そこまで!かかったタイムは…38秒です!汐里さんの記録には届かなかったですが、それでもベストタイムを叩きました!」

楠美「うう…残念…」

 

 

いい記録だったが、楠美は納得の行かない結果だった。

 

 

二人の競技を見た奈々はここであることに気付く…

 

 

奈々(…………これは引っ掛かる訳だね)

 

 

 

 

 

 

 

その後も、沢山のリリィが挑戦した。

 

 

 

 

 

 

エイル所属の1年、内藤羽那乃(ないとう はなの)。

 

汐里以上の戦闘能力を持つリリィ。

 

競技開始にルナティックトランサーを使って短期決戦を狙ったが、敵が散り散りにバラけてしまった事で時間が掛かりすぎ、タイムは54秒。

 

 

 

 

続いては制御不可のリリィと呼ばれた2年生、近藤貞花(こんどう あさか) 。

 

スモール級とミドル級の陣形と独特の動きに盆労され、結果1分2秒という記録を出してしまった。

 

 

 

 

 

お次はオランダから来たレギンレイヴ所属の1年生、ディアナ・コールハース。

 

ブーステッドリリィにして、楓と同じレアスキル…レジスタの使い手だが、今回のルールでは相性が悪く、ブリューナグで戦うも結果は57秒となった。

 

 

 

サングリーズル所属で聖学の剣聖と呼ばれる2年生の今川誉(いまがわ ほまれ)。

 

円環の御手を持つ彼女は、囮作戦、拠点死守、時間制限のある任務をこなしたリリィで、今回のエキジビションと相性がいい。

 

使用CHARMはグングニル二本。

 

グングニルのレーザーマシンガンでスモール級を一掃し、ミドル級をブレイドモードで片付ける。

 

タイムは30秒ジャストと、汐里の記録を抜いた。

 

 

 

レギンレイヴ所属の3年生、田村那岐。

 

武器はアステリオン。

 

彼女はレアスキル…ゼノンパラドキサを使い、圧倒的な早さで全ての敵を倒し、28秒という記録を叩き出した。

 

 

 

そしてエキジビションに参加した田中壱も、負けていなかった。

 

敵味方の行動ベクトルを把握できるレアスキル…この世の理のS級を所持する彼女の戦いは中々のもので、今回高出力砲をオミットしたユニークCHARM…アロンダイトの効果で安定させた狂乱の闇も彼女の戦いにに大きく貢献した。

 

 

 

 

タイムは25秒という凄い記録を叩きだし、またしても最高記録を更新した。

 

 

 

 

 

 

遠藤亜羅椰はマルミアドワーズのマギの自動回復機能を使ってフェイズトランセンデンスを発動させ、短期決戦に出た。

 

 

スモール級、ミドル級をまとめて倒し、倒しきれなかった残りの敵を片付けていく。

 

 

亜羅椰のフェイズトランセンデンスはS級。

 

その為、マギの低下といったデメリットがなく、使用後でも問題なく戦闘を続行出来るのだ。

 

 

タイムは24秒と壱より1秒早かった。

 

 

 

 

梅もエキジビションに参加し、自慢の縮地を披露。

 

瞬間移動しながらタンキエムの射撃で打ち落としていく。

 

時間を競う競技は得意な方な為か、タイムは亜羅椰と同じ24秒だった。

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「それでは次で最後の挑戦者です!模擬戦で衣奈様を圧倒した流星のヴァルキリー、木葉奈々さんです!!」

 

 

最後に、奈々がエキジビションに挑戦するため、中央に行く。

 

 

 

神琳「奈々さんのツインフェザーは第三世代CHARMの中でも攻撃に特化した武器」

二水「そして奈々さんのレアスキルはエンハンスメント同様、サブスキルを一時的にレアスキル化させるマスカレイド!」

楓「奈々さんはどんな戦いを見せてくれるのでしょうか…」

 

 

 

楓は気絶から復活していた。

 

 

 

神琳「問題は、奈々さんは射撃が苦手な事ですね」

二水「グングニルのシューティングモードですら扱えないと夢結様から聞きました…」

楓「純粋な近接特化ですわね」

鶴紗「二刀流なら円環の御手使いと同じ戦いをするんじゃないか?」

雨嘉「インビシブルワンを縮地にして高速戦闘を仕掛けるって手もある」

梨璃「どうするのだろう奈々ちゃん…」

 

 

 

と、一柳隊の1年生組は奈々の戦いを予想する。

 

 

 

亜理奈「現在トップは24秒の遠藤亜羅椰さんと吉村・thi・梅様。彼女が最優秀リリィに選ばれるには23秒以内に全て倒さなくてはいけません。果たして、彼女はこの記録を突破出来るのか!?それでは競技開始!!」

 

 

 

開始のブザーが鳴り、奈々の挑戦が始まった。

 

 

 

奈々「はっ!」

 

 

奈々は飛び上がった。

 

 

 

梨璃「跳んだ!?」

二水「でも、奈々さんは飛び道具が…」

雨嘉「あれ?あれは…!」

 

 

 

雨嘉が何かに気付いた。

 

 

何と、奈々は2本のツインフェザーを左右に投げたのだ。

 

しかも投げたツインフェザーの柄には、光の帯が付いており、それぞれ奈々の左右の手に繋がっていたのだ。

 

そしてツインフェザーがスモール級をすり抜け、左右のミドル級を倒した。

 

 

 

梨璃「ええっ!?」

楓「マギの帯ですって!?」

二水「スモール級ではなくミドル級を先から!?」

 

 

ミドル級を先に倒した奈々はそこから…

 

 

奈々「そうらぁ!!」

 

 

奈々は体を勢いよく回りながら、帯をゴムのような伸縮するものに変え、繋がっているツインフェザーを水風船ヨーヨーみたいに残りのミドル級達に目掛けて飛ばしまくった。

 

 

すると、スモール級の後ろにいるミドル級が次々とツインフェザーに突き刺されていき、20体のミドル級をまとめて倒していった。

 

更に奈々はその状態から両手の帯を持ったまま振り回した。

 

それはまるで、巨大なカミソリのように鋭く、残った前衛と後衛のスモール級達をもまとめて斬り倒していった。

 

 

 

あっという間に全ての敵は倒され、終了のブザーが鳴った。

 

 

 

亜理奈「早くも敵を全滅させました!そんな奈々さんのタイムは…じ、じ、14秒!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ええええええーーーーっ!!!??」」」

 

 

 

 

奈々が叩き出した驚異的な記録に観客達は絶叫した。

 

 

 

楓「14秒!?」

壱「嘘でしょ!?」

楠美「信じられないわ…」

二水「間違ってはいません!タイムを測定してる亜理奈さんはきっちりやる人ですから」

 

 

一方、亜理奈は奈々に質問をしようとする。

 

 

 

亜理奈「奈々さん、どうやってこの記録を出したんですか?」

奈々「うん、実は観戦中に気付いたの。スモール級とミドル級の性能と行動順を」

亜理奈「性能と行動順?」

奈々「スモール級は素早くて一斉に動くけど、ミドル級はスモール級程のスピードがない上に、一体ずつ順番に動いていた。この場合、普通に前の敵から片付けてたらタイムロスに繋がるからね。だからあえて私はミドル級からまとめて片付けたって訳。いっちゃんは見抜いてたみたいだけどね」

亜理奈「しかしさっきのミドル級を倒したあれ…まるでヨーヨーのように使ってましたけど、あれはなんですか?」

奈々「あれ?あれはマスカレイドのもうひとつの能力…アルケミートレースもどきでゴムのような帯を作ったヤツだよ」

亜理奈「そうだったのですか…マスカレイドの効果はわかってはいましたが…そこまでとは…ありがとうございます。という事で、エキジビションの最優秀リリィは木葉奈々さんに決まりました!!トリッキーな戦いを見せてくれた奈々さんに、盛大な拍手を!」

 

 

 

奈々に観客達の拍手が送られた。

 

 

 

奈々「こういうのも、悪くないね」

 

 

 

参加したアールヴヘイム側の者は…

 

 

 

楠美「悔しい……」

亜羅椰「あんな倒しかたなんて誰も思い付かないわ…」

壱「この世の理でスモール級とミドル級の動きはわかったけど、あれは予想外だったわ」

楠美「……このあとの競技は?」

壱「ううん、午前の部は工廠科によるCHARMのデモンストレーションみたいね」

亜羅椰「勝負は午後にお預けって訳ね…」

 

 

午後の勝負を期待しつつ、三人の敵意は奈々に向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「さてお次は工廠科が作った新CHARMのデモンストレーションです!今回は4人のアーセナルとリリィが参加しています。どんなCHARMが出てくるのか、またそのCHARMがどのような物なのか…大期待です!それでは参りましょう!ミュージック……スタート!!」

 

 

 

グラウンドのあちこちに配置されたスピーカーからサイバーなバンドの曲が流れた。

 

 

 

イントロの途中で、白のヘアバンドと真ん中をゴムで止めた緑髪のロングの少女が新CHARMを持ってやって来た。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 長谷部冬佳(はせべ とうか)

 

 

 

亜理奈「最初の方は、戦闘系のサブスキルを7つ取得したアーセナルの長谷部冬佳様。使うのは、第4世代精神連結式起動実証機ヴァンピールです。名前と形状から吸血鬼をイメージしたCHARMで、黒と赤がメインカラーとなってます!ちなみにこの形態はポールアクスモードと言います」

 

 

斧…というよりは大剣の形をしたCHARMだが…柄と刃の所にグリップパーツが付いていた。

 

 

 

目の前には、ホログラフで呼び出された複数のスモール級がいた。

 

 

 

曲がボーカルの入ったAメロに入ったところで、冬佳は2本のグリップパーツを持ち構え、斜め上にヴァンピールを向けると、左右の刃が横に開き、連結してるシールドパーツと一緒に射出された。

 

射出されたそのパーツは、コウモリをイメージした形状をしていた。

 

それを冬佳はヴァンピールをスモール級の方へ向けて遠隔操作すると、コウモリのパーツは電撃を放ち、狙った複数のスモール級を倒していった。

 

 

 

亜理奈「飛ばされたパーツはザッパーカイトと呼び、この状態ではシリングモードと呼びます!」

 

 

 

曲はラップの入ったBメロに突入し、ザッパーカイトをヴァンピールに戻した冬佳は退場する。

 

 

そして入れ替わりで登場したのが、両腕にガントレット型のCHARMを着けた金髪の少女である。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 ルイセ・インゲルス

 

 

亜理奈「お次は冬佳様のシルト、ルイセ・インゲルスさん!使うCHARMは第三世代格闘専用型ヤーレングレイブルの試作機です!オリジナルとは形状が異なりますが、特徴はほぼ一緒です!見た限り格闘特化のCHARMですが、ちゃんと飛び道具もあります!」

 

 

 

 

ルイセの目の前には、3体のミドル級が配置されていた。

 

 

 

Cメロに入り、ルイセは右腕のヤーレングレイブルを変形させると、4本の指のパーツがくっつき、4つの大口に変わり、そのままミドル級に向けて無数の弾丸を発射した。

 

 

発射されたのは実弾。

 

そのままミドル級の装甲にめり込み、爆発した。

 

 

爆風が起き、梨璃達の方まで及んだ。

 

 

 

梨璃「凄い…!」

結梨「ほぉー…」

奈々「凄い威力…」

 

 

 

爆風が晴れると、ルイセはヤーレングレイブルをもとに戻す。

 

 

 

亜理奈「先程の形態はヤーレングレイブルのガンモード。実弾だけでなくビームも出せます!」

 

 

全員が歌うサビの後半に入り、説明する亜理奈。

 

 

ルイセはそのまま退場し、今度は青のショートヘヤーの子、涼が新しい刀のCHARMを持ってきた。

 

 

 

 

亜理奈「次の方は、和風武器のCHARMを扱うアーセナル、神楽月涼さん!持ってきたCHARMは、量産機虎鉄の発展機、玉鋼(たまはがね)だぁ!!」

奈々「今度は涼ちゃんか」

 

 

涼が持ってる刀のCHARMは、虎鉄よりも刃が長く、横幅も少し長くなっていた。

 

柄の先端には接続具が取り付けられていた。

 

 

 

亜理奈「手元の資料によると、玉鋼は虎鉄よりも強度、威力が上となっております」

楓「それだけですの?とんだ期待はずれですわね」

亜理奈「しかしこの玉鋼は、これだけではありません!」

楓「?」

 

 

 

曲が2番のAメロに入り、涼はまず、現れたスモール級9体の内、3体を玉鋼で一体ずつ倒していく。

 

刀自体は虎鉄より一回り大きくなっているが、使いやすさは変わっていない。

 

 

 

 

 

 

涼はここで、背中に着けた長い棒のパーツを抜き、玉鋼の柄の接続具にくっ付け、持ち変えた。

 

 

 

 

 

楓「これは…!」

梨璃「薙刀になった!?」

二水「あれはアタッチメントを戦況に合わせて付け替えるCHARMだったんですね!」

神琳「強度を重視する為に変形機能をオミットした武器にはいい機能かもしれませんね」

 

 

 

グンクニルやアステリオンと違って複数のけいたいを持たない涼の作った刀のCHARMにとって、このアタッチメントパーツは大きな味方である。

 

 

亜理奈「この玉鋼は、本体をコアとして、様々なアタッチメントを付けることでどんな戦況にも対応できる優れものになっております!」

 

 

曲も2番のCメロに突入し、涼は薙刀になった玉鋼を奮い、襲ってくるスモール級を凪ぎ払って倒していく。

 

 

敵の残りが後3体になったところで、涼は玉鋼に装着したグリップパーツを外し、砲身トリガー付きグリップの着いた鞘のアタッチメントを装着させた。

 

 

 

雨嘉「今度は銃に!?」

奈々「遠距離にも対応出来るの?あれって」

 

 

涼はトリガー部分に持ち変えて、残りのスモール級に目掛けて3発の光弾を発射した。

 

単発だが、一発の威力は高めである。

 

 

 

光弾はそれぞれのスモール級に1発ずつ直撃し、倒していった。

 

 

亜理奈「薙刀の形態はその名の通りナギナタモード。銃の形態はタネガシマモードと名付けています。一部のリリィが物足りないというリクエストに応えた涼さんが作った渾身の万能のCHARMとなっています!」

 

 

 

ここで涼は退散。最後に現れたのは、茶色のセミロングの少女…綾瀬である。

 

右手には、グンクニルを大型化したCHARMを持っていた。

 

構造はブリューナグではなく、完全にグンクニルの物に似ていた。

 

 

 

 

亜理奈「最後に登場したのが、1週間前に入学したアーセナル…塔ノ木綾瀬さんだぁ!披露するCHARMはグンクニルの改造実験機…グングニル・ネクスビリティーです!」

梨璃「ネクスビリティー?」

結梨「?」

 

 

聞きなれない言葉にハテナを浮かべる二人。

 

 

奈々「次の可能性って意味だと思うよ」

亜理奈「元はmk.2の仮の名前で作った改造機があったんですが、今回は更に改良したCHARMになってます。ちなみにネクスビリティーとは、次の可能性という意味で、ネクストとポシビリティーを掛け合わせた言葉となっております!」

 

 

 

曲もいよいよ盛り上がりの3番のCメロに突入した。

 

現れた複数のスモール級を前に、綾瀬はグングニル・ネクスビリティーをブレイドモードに変形させた。

 

 

綾瀬の持つグングニル・ネクスビリティーはオリジナルのグングニルと比べてブレード部分がダインスレイフのような大きめの刃に変わっており、ブレードと連結してるパーツと、シューティングモードで使う砲身は大型化して2本に増え、色々変わっていた。

 

 

綾瀬はグングニル・ネクスビリティーを片手で構え、走りだし、目の前のスモール級を斬り倒していき、半分程まで減らした。

 

 

 

亜理奈「このグングニル・ネクスビリティーは、近接戦での攻撃力向上の他、シューティングモードで2つの武器…レーザーバルカンと高出力砲を兼ね備えております!」

 

 

 

3番のサビに入り、半分残ったスモール級は一旦襲いかかるのを止め、綾瀬を囲むように包囲した。

 

 

綾瀬は残ったスモール級に対して、グングニル・ネクスビリティーを元のシューティングモードに変形させ、回りながらレーザーバルカンを発射した。

 

 

レーザーバルカンは周囲のスモール級にほぼ命中し、まとめて倒していった。

 

すると、目の前にミドル級と取り巻きのスモール級が何体か現れた。

 

すると綾瀬は再びグングニル・ネクスビリティーを構え、今度は高出力砲を発射した。

 

 

それはまるでティルフィングに似たビーム砲のようであった。

 

 

ビームはミドル級を貫き、後ろにいる残りのスモール級を巻き込んで倒していった。

 

 

 

亜理奈「CHARMのスペックもグングニルから上がっており、武器の豊富さも中々となっています!しかしそれではコスト面が高くなり、ブリューナグ並に運用が難しくなるのではと思う人もいますが、グングニルをベースにしてるためこれまで通り普通に運用出来ます。グングニルを使うリリィにとっては使いやすいと思います!」

 

 

先程退場した冬佳、ルイセ、涼が戻ってきて、綾瀬の元に集まって来た。

 

 

最後は全員かっこよくCHARMを構えた所で、曲は丁度終了した。

 

 

 

外野から大拍手の音が聞こえた。

 

 

 

 

亜理奈「新CHARMのデモンストレーション…もとい、パフォーマンスをありがとうございます!どのCHARMもとても凄かったです!」

 

 

と、亜理奈が解説してる最中、生徒の一人が資料を持って亜理奈の元に来た。

 

 

 

 

 

 

亜理奈は資料の内容を確認する。

 

 

 

亜理奈「ここで朗報です。今回披露した玉鋼とグングニル・ネクスビリティーは、明日から工廠科でいくつか量産した物を何本か用意するそうです。使いたい人は是非来て見てください!」

 

 

 

と、新CHARMの入荷について説明した亜理奈。

 

 

 

 

 

 

亜理奈「時間もそろそろお昼時になったため、ここらで昼休憩に入りたいと思います。午後からは午後の部として、最初の競技である混成レギオンによる的場倒しを始めたいと思います。それではこれで午前の部を終了します!以上!!」

 

 

 

 

午前の部が終わり、各生徒は食事の為、一旦バラバラになる。

 

 

 

 

 

梨璃達は、夢結、梅と合流し、一柳隊の面子でお弁当を食べていた。

 

亜羅椰、壱、楠美は天葉、衣奈と一緒にお弁当を食べながら午後の競技での話を行っていた。

 

理事長の咬月は間身近にいる出雲、史房、祀、眞悠理と一緒に持参した弁当を食べていた。

 

 

 

 

そんな中、奈々は亜理奈のいる場所へやって来た。

 

 

奈々「亜理奈ちゃんご苦労様。これ差し入れ」

 

 

奈々は亜理奈にアイスレモンティーの入ったティーポットを渡した。

 

 

 

亜理奈「おお、ありがとうございます!」

 

 

 

亜理奈は奈々から貰ったティーポットを用意した2つのティーカップに約3分の2程注ぎ、一つを奈々に渡した。

 

 

 

二人はアイスレモンティーを飲んで、話をした。

 

 

亜理奈「そういえば奈々さん、クラス対抗戦で貴女がくせ者!って言ってクッションを森の方へ飛ばしたそうですね。あの後ドローンで確認した所、人の足跡と残留したマギが確認されました。逃げられましたが、恐らくリリィで間違いないでしょう」

 

 

 

亜理奈は競技中でもドローンを使って校外から不審者がいないか偵察していたのだ。

 

 

 

奈々「GEHENAに所属するリリィかな…」

亜理奈「分かりません。ただ、狙いは結梨さんとは限りません…下北沢で戦った奈々さんのデータを取るために来た可能性もあると考えられます。時間を空けてまた来ると思いますので…なるべく注意してください」

 

 

そう言ってアイスレモンティーを飲む亜理奈。

 

 

 

奈々「カナベラルとブルメリアは工廠科に預けてるし、また来るとすれば気配で見つけてとっちめてやるまでよ」

亜理奈「頼もしいですね奈々さんは…でも一応フルパワーは出さない方がいいですよ」

奈々「有り得るね…うん、覚えておくよ」

 

 

 

亜理奈の忠告を受け止め、アイスレモンティーを飲む奈々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、学院から離れた森の入り口では、琴陽があんパンを食べながらペットボトルの冷たい緑茶を飲んでいた。

 

 

 

 

琴陽「引き返したものの、このままでは終わらない…必ずや、木葉奈々のデータを取る…!」

 

 

 

食べ終わったら再び敷地内に侵入する気であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして休憩時間が過ぎ…競技会、午後の部が始まった。

 

 

 

亜理奈「食事は済みましたか?CHARMの点検は大丈夫ですか?これより午後の部を始めたいと思います!準備はよろしいですか?」

 

 

 

亜理奈の問いに参加者達は掛け声で答えた。

 

 

 

亜理奈「はい!いい返事をありがとうございます!それでは午後の部、最初の競技を始めたいと思います!最初は、混合レギオンによる的場倒しです!」

 

 

 

準備班がそれぞれ、桃、赤、緑、黄、青、紫の旗が付いた長さ約8メートルの太い棒を持ってきた。

 

棒の天辺には木の板の的が差し込まれていた。

 

 

 

亜理奈「この競技は、各レギオンから選抜されたメンバーが参加するルールとなっており、参加者リリィは他のレギオンメンバーと一緒に5人でチームを組んでもらいます!6組のチームは的を守りながら他チームの的を攻めていきます!自分のチームの的を破壊されるか、的の付いた棒を倒されたらそのチームは脱落です!最後まで残ったチームのリリィ達が最優秀リリィになります!」

 

 

 

と、亜理奈が競技の説明をする。

 

 

 

結梨「よし、頑張るぞ!」

 

 

 

と言って気合いを入れる結梨だったが…

 

 

 

梨璃「あ、私達は見学ね」

結梨「何で?」

奈々「今回の競技は梨璃ちゃんと結梨ちゃん、選ばれてなかったからね」

 

 

奈々が結梨に今回は選抜されてないことを伝える。

 

と、そこへ梅がやって来た。

 

 

 

梅「結梨、梅と代わるか?」

結梨「え?」

梅「習うより慣れろって言うだろ?」

 

 

結梨を誘う梅だったが、梨璃に止められた。

 

 

梨璃「そんなのダメですよ!結梨ちゃんはまだCHARMに慣れてないですし、怪我したらどうするんですか!」

梅「へいへい…」

 

 

 

仕方なさそうに梅は去っていく。

 

 

 

 

結梨「むー」

奈々「そうふてくさらないで、前に出て戦うだけが経験じゃない。観戦するのも立派な経験だよ」

結梨「そうなの?」

奈々「ま、梨璃ちゃんと一緒に私と夢結さんの活躍を見てなさいって」

 

 

と言って、奈々はグラウンドへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「さて、チームのメンバーを紹介しましょう!」

 

 

各チームが担当する旗の元へやって来た。

 

 

 

亜理奈「まず1組目、緑チーム!吉村・Thi・梅様と谷口聖様。森辰姫さんと倉又雪陽さん、黒川・ナディ・絆奈さん!未来予知のレアスキル…ファンタズム使いが3人という異例のチーム!どんな戦いを見せてくれるのか!」

 

 

梅「梅は早いゾ!」

辰姫(夢結様と戦える…!)

 

 

 

 

亜理奈「2組目・紫チームは白井夢結様と田中壱さん。清家知世さんと北河原伊紀さん、そして今川誉様。時間を止める珍しいレアスキル…Zは強力ですが、中でも注目なのが百合ヶ丘でもトップクラスの白井夢結様!彼女がどんな戦いを見せてくれるのか楽しみです!」

 

 

夢結「かかってきなさい」

壱(本当は夢結様と勝負したかったけど…今は奈々を倒すのが先だわ)

 

 

亜理奈「3組目・赤チームは楓・J・ヌーベルさんと金箱弥宙さん、竹腰千華様と高須賀月詩さん、石上碧乙様の5名!レジスタ使い二人もいて、攻撃力はトップクラス!更に一柳隊の司令塔である楓さん!彼女の戦術はこの競技をどう導いていくのか!?」

 

 

楓「梨璃さんに勝利を差し上げますわ!」

弥宙(夢結様と戦える…!)

月詩(夢結様と戦える…!)

 

 

亜理奈「続く4組目・桃チームは遠藤亜羅椰さんと伊東閑さん、郭神琳さんと村上常磐様、山梨日羽梨様の5人です!こちらもレジスタ使いが二人!特に亜羅椰さんはレアスキル…フェイズトランセンデンスのS級!これは強敵ですよ!」

 

 

亜羅椰「食っちゃうわよ」

神琳「お手柔らかに」

 

 

亜理奈「そして5組目・黄色チームはミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウスさんと遠野㮈輝様と木古都々里様、ロザリンデ・フリーデグンデ・v・オットー様、田村那岐様です!フェイズトランセンデンス二人にゼノンパラドキサと円環の御手!かなり攻撃に特化した構成になっております。今回のダークホースをなるか!?」

 

 

壱「……ん?フフ」

 

 

壱が相手チームのミリアムに気付いた。

 

 

 

ミリアム「ん?壱も出るのか」

壱「ふん、ふん、ふんふん!」

 

 

 

と、壱はジェスチャーで1,5秒の間に左ジャブを2回、あっかんべーを2回行った。

 

 

 

ミリアム「なっ!?ちびっ子には負けんじゃと…にゃろめー!!」

 

 

 

ミリアムは壱に敵対心を強くした。

 

 

 

亜理奈「そして今回の特別枠、青チームは、木葉奈々さんと王雨嘉さん、江川楠美さんと天樹天葉様。槇若菜様の5名!なんと、アールヴヘイムのノルン三姉妹がここに終結しました!そしてこの競技で有効な天の秤目を持つ王雨嘉さんと、夢結様と並ぶほどの最強枠…木葉奈々さん!他のチームにとってこれは手強いぞー!!」

奈々「あの~亜理奈ちゃん!今更だけど、私レギオンに入ってないんだけど何で抜擢されたの?」

亜理奈「実は皆様の推薦で特別に参加させていただきました!」

「皆、奈々さんと戦いたいのよ。今回は味方だからよろしくね?」

 

 

紫色のロングのおしとやかで優しい少女が奈々に握手しに来た。

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 3年生 アールヴヘイム 槇若菜(まき わかな)

 

 

 

奈々「ああ、こちらこそよろしくお願いします」

 

 

奈々も頭を下げ、若菜と握手した。

 

 

 

天葉「今回は同じチームだからね。よろしく頼むよ奈々」

楠美「絶対に最優秀リリィの座を手に入れよう!」

奈々「もちろん!実は作戦も考えていたんだ。単純な策だけど」

雨嘉「聞かせてくれる?」

 

 

 

と、奈々は皆に作戦を伝えた。

 

 

 

 

 

 

そして開始の時間がやって来た。

 

 

 

亜理奈「それでは各自準備が整った所で始めたいと思います!的場倒し…競技開始!!」

 

 

 

開始のドラが鳴った。

 

 

 

 

夢結「まずは赤チームの的を先に…っ!!」

 

 

 

赤チームの的を倒しに単独で向かう夢結の目の前から3人のリリィが襲いかかってきた。

 

 

 

弥宙「私とお手合わせお願いします!夢結様!」

月詩「こんな時でもないと構って貰えませんから!」

辰姫「倒しちゃったらごめんなさいです!!」

 

 

アールヴヘイムのメンバー、弥宙、月詩、辰姫の3人が試合関係なしに夢結と戦いたい為にやって来た。

 

 

 

楓「お二人方!何勝手に動いてますの!?」

亜羅椰「ちょっと!!抜け駆けしないでよ!」

梅「困った奴等だナ……」

 

 

 

夢結はブリューナクを構えた。

 

 

 

外野でも……

 

 

依奈「コラ!夢結は敬遠しなさいって言ったでしょ!」

 

 

衣奈が3人を注意しに呼び掛けるが、聞こえていない。

 

 

青チームでも……

 

 

 

雨嘉「あの3人って奈々が戦った…」

奈々「負けフラグがたったなあれ…」

若菜「あらあら~」

天葉「しょうのない子達ねぇ」

樟美「いいなぁ〜」

奈々「さて、そろそろ私も動くとするか…」

 

 

 

と言って奈々は行動を開始する。

 

 

 

 

一方接近してくる3人に対し、夢結はブリューナグを構えた。

 

再び外野の梨璃達は……

 

 

 

梨璃「お姉様!!」

結梨「あ〜」

 

 

 

 

ついに3人は夢結をに攻撃を仕掛ける。

 

 

 

「「「いざ!!」」」

 

 

 

 

しかし、夢結のブリューナグの凪ぎ払いにより後ろにまとめて飛ばされた。

 

 

 

「「「きゃああああーーーー!!!??」」」

 

 

 

飛ばされた弥宙、月詩、辰姫は地面にバタバタと倒れた。

 

 

 

夢結「もっと本気でいらっしゃい」

「前座はここまでですよ、夢結さん」

 

 

 

今度は奈々が夢結の前に現れた。

 

 

 

奈々「夢結さんを倒すのは…この私だ!」

 

 

 

挑発する奈々に対し、夢結は…

 

 

 

夢結「言ったはずよ。勝ちは譲らないって」

 

 

 

そう言って夢結は手首を使いながらブリューナグを回した後、再び構えた。

 

 

 

夢結「掛かってきなさい」

 

 

 

それを見た奈々は……

 

 

 

 

奈々「ほうほう…それ、パフォーマンスのつもりですか?」

夢結「?」

 

 

 

奈々が言った言葉を理解出来ない夢結。

 

 

 

 

奈々「はっ!!」

 

 

すると奈々は腰のホルダーに納めていたツインフェザーの片方を右手で抜き、それを指で器用に回し始めた。

 

奈々が行ったのはCHARMによるパフォーマンスであった。

 

更にツインフェザーを回したまま、半時計回りに丸を描くように腕ごと動かした。

 

そのパフォーマンスはまさに、剣の達人を思わせる芸であった。

 

最後にツインフェザーを身構えるポーズを決めた。

 

 

 

外野から、「おおーっ!」の声が聞こえた。

 

 

流石の奈々もどや顔状態である。

 

 

 

これを見た夢結も…

 

 

夢結「ふっ…!」

 

 

 

夢結はブリューナグを右手で器用に回したまま、右、左と腕を動かし、最後に再び構えた。

 

 

 

これも中々いいパフォーマンスで、外野から「おおーっ!!」のひと声を浴びた。

 

 

梨璃「お姉様すごーい!」

二水「いやこれ…そういう競技じゃ無いような」

結梨「ほー」

 

 

 

奈々をチラッと見てどや顔する夢結。

 

 

 

奈々もこれを見て負けてられるかと、今度はもう片方のツインフェザーを抜き、先程やったパフォーマンスを両手で披露した。

 

 

難易度は上がってるが、奈々にとっては造作もない。

 

最後に2本のツインフェザーを真上に投げて、落下するそれらを手でキャッチした。

 

 

先程より大きな拍手が掛けられた。

 

 

 

 

夢結もまた終わらない。

 

 

 

夢結は右手のブリューナグを回しながら後ろに持っていき、そのまま左手に持ち替えて前に持っていき、再び右手に持ち替え、その繰り返しのパフォーマンスを見せた。

 

そして数回後、右手を上げたままブリューナグを回して、背中に納めた。

 

こちらも大きな拍手を浴びた。

 

 

 

奈々「やりますね」

夢結「貴女もよ」

 

 

 

互いを認めあう二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「あの~御二人方そろそろパフォーマンスはそのくらいに…」

奈々「お」

夢結「あ」

 

 

 

このままだと試合が続かないと思った亜理奈は二人に呼び掛け、二人はハッと気付いた。

 

 

 

 

奈々「準備運動はこのくらいにして…」

 

 

 

奈々は2本のツインフェザーを構え…

 

 

 

夢結「そろそろ始めましょうか…!」

 

 

 

夢結は再びブリューナグを構え直す。

 

 

 

そして……

 

 

 

二人「勝負!」

 

 

 

奈々と夢結…同時に突進し、CHARMを降り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木の板が消し飛んだような音が響き渡った。

 

 

 

「紫チーム、旗をロストした為脱落です!グラウンドから退場してください!」

 

 

監視班の生徒から緑チームが脱落したことを皆に伝えた。

 

 

奈々は緑チームの方を見ると、近くにミリアムと壱がいた。

 

 

 

奈々「あ」

夢結「あ」

壱「えっ!?」

ミリアム「へへっ、避けてくれてありがとうなのじゃ」

 

 

 

実はパフォーマンスの最中にミリアムが単独で紫チームの的を狙いにやって来たのだ。

 

それを止めるために壱が応戦するが、ミリアムはレアスキル…フェイズトランセンデンスを発動し、大きめのビームを発射。

 

 

壱はこれを避けるものの、ミリアムが狙ったのは緑チームの的だった。

 

 

フェイズトランセンデンスのビームで的は柱の一部ごと破壊され、緑チームは脱落となったのだ。

 

当然、緑チームの夢結も退場である。

 

 

今だ唖然とする二人。

 

 

 

 

 

 

奈々「……………勝負はまたの機会ですね」

夢結「……………そうなるわね」

 

 

 

 

夢結は奈々と戦うことなくグラウンドから退場していった。

 

ポツンと一人残った奈々は心の中で思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(空気読めーー!!!!!!!!!!!)

 

 

 

それは、ミリアムに対する心の叫びだった。

 

そのミリアムも、フェイズトランセンデンスの効果が切れ、倒れてしまい、救護班に運ばれていった。

 

 

奈々「仕方ない…まずは厄介な黄色チームを倒すか…」

 

 

黄色チームは攻撃特化のメンバーで構成されており、ミリアムが抜けても攻撃面ではまだ黄色チームが上である。

 

フェイズトランセンデンス使いはこのチームに後一人おり、特に同時に攻撃出来るゼノンパラドキサはこの競技では厄介なレアスキルな為、早い内に処理した方がいい。

 

 

 

早速黄色チームの元へ向かう奈々。

 

 

 

 

しかしそこへ誰かが奈々を狙って突っ込んできたのだ。

 

 

 

ジョワユーズを持った楓であった。

 

 

奈々はすぐに横に避けた。

 

避けられた楓は一回転して地面に着地し、奈々の方を振り向いた。

 

 

そして奈々を囲むように、反対には赤のポニーテールの少女、竹腰千華と薄紫のロングの少女、石上碧乙の姿があった。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 ロスヴァイゼ 副将 石上 碧乙(いしがみ みお)

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 ローエングリン 竹腰千華(たけごし ちはな)

 

 

 

CHARMは碧乙がアステリオン、千華が鶴紗と同じ型のティルフィングである。

 

 

 

楓「お次は貴女が脱落する番ですわ」

奈々「レジスタとファンタズムか…悪いけど脱落する気は毛頭ないよ!」

 

 

 

左右に気を配りながらツインフェザーを構える奈々だが…

 

 

 

 

今度は亜羅椰と白のヘアバンドを付けた藍色の髪の少女がやって来た。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 シュバルツグレイル 隊長 伊東閑(いとう しず)

 

 

彼女は梨璃のルームメイトで、良き相談相手でもある。

 

武器は梨璃と同じくグングニルである。

 

 

 

亜羅椰「奈々を倒すのは私よ!」

閑「夢結様が脱落した今、ここは青チームの戦力を減らせるチャンスです!」

奈々「敵が5人か……」

「「「いや、8人よ!!」」」

 

 

 

先程夢結に返り討ちにされた弥宙、月詩、辰姫が今度は奈々を狙いにやって来た。

 

 

 

奈々「懲りないなあ、3人とも」

弥宙「何とでも言いなさい!」

月詩「私達だってあれから1週間特訓を重ねてきたのだから!」

辰姫「今までの私達だと思わないで下さいな!」

奈々「赤チームが勢揃いか…相手するのは構わないけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「弥宙ちゃん、月詩ちゃん、ここにいて大丈夫なの?」

弥宙「え?」

月詩「は?」

楓「御二人とも早く拠点に戻って…!」

 

 

 

楓は慌てて二人を拠点に戻るよう呼び掛けるが、もう遅かった。

 

 

赤チームの拠点から、的が破壊された音が聞こえた。

 

青チームの拠点にいる雨嘉が天の秤目を使って、アステリオンのシューティングモードで赤チームの的を撃ち抜いたのだ。

 

 

 

 

 

「赤チーム、的ロスト!脱落です!」

弥宙「な!?」

月詩「に!?」

楓「や、やられましたわ…!」

奈々「ふふっ…作戦通り」

 

 

 

奈々の行った作戦…

 

 

それは奈々自身が囮になって、相手の注意を引いてる間に雨嘉が遠距離射撃で手薄になった相手チームの的を狙うという戦法。

 

囮になる以上、多対一の状況になるのは避けられない。

 

しかし単独で多数の敵と戦う機会が多い奈々にとってはいつもの事である。

 

 

桃チームには、同じく天の秤目を持つ村上常磐がおり、突撃槍に似たユニークCHARM…マルテの射撃で青チームの的を狙うことは出来たが、天葉の放ったマギのバリアに阻まれてしまう。

 

 

天葉のヘリオスフィアはS級と防御性能が強力で、射撃程度の攻撃は簡単に防げる事が出来る。

 

 

的の破壊は雨嘉の射撃で、的の守りは天葉のヘリオスフィアで補い、敵の行動は楠美のファンタズムで読み、向かってくる敵は若菜が処理すると、それぞれの役割を生かした死角なしの作戦であった。

 

赤チームは見事この作戦の罠にかかってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

楓「貴女達が勝手な行動を取るから……!」

弥宙「う……」

月詩「ごめんなさい…」

 

 

 

赤チームは退場した。

 

 

 

奈々「これで私が有利になったね」

亜羅椰「まだ負けた訳じゃないわ!あの時の借りをここで返して上げるわ!」

 

 

 

マルミアドワーズを構える亜羅椰。

 

しかし閑が止めにはいる。

 

 

 

閑「待って亜羅椰さん、ここは引いて守りに固めましょう。ここで奈々さんと戦ってたら他のチームが手薄になった私達の的を狙いにやって来るわ」

 

 

 

閑の言うとおり、今は守りに固めないと雨嘉の射撃の餌食にされる。

 

 

亜理奈「現在桃チームの拠点は、黄色チームの那岐様に苦戦中です!ゼノンパラドキサの多段攻撃に桃チームの神琳さんと常磐様、日羽梨様は防御で手一杯のようです!このまま誰かが攻めてきたら、的が破壊されるのも時間の問題だぁ!」

 

 

亜理奈の解説通り…桃チームの拠点には、残りのメンバーが守っているが、他のチームの集中攻撃を受ければ長くは持たないだろう。

 

 

 

亜羅椰「くっ……仕方ない…一旦戻るわ。勝負はお預けよ!」

 

 

 

悔やみながら亜羅椰は閑と一緒に拠点へと撤退した。

 

 

 

奈々「逃がすと思ってるの?」

 

 

 

奈々は逃げる亜羅椰達を追いかけようとするが…

 

 

何者かがその間に入り込んだ。

 

 

梅だった。

 

 

 

梅「今度は梅が相手だゾ」

奈々「梅さんか…」

梅「それとも梅が相手じゃ物足りないか?」

奈々「いえ、十分ですよ」

 

 

 

亜羅椰と静は完全に逃げ切ったようだ。

 

奈々は標的を梅に変え、2本のツインフェザーを構える。

 

同じく梅もタンキエフを構える。

 

 

 

梅「梅の速さに付いてこれるか?」

奈々「乗りますよ。その挑発!」

 

 

 

梅が縮地を発動し、姿が消えるほど早く移動した。

 

 

 

奈々「縮地ですか…それぐらいなら私も…!」

 

 

 

奈々はマスカレイドを発動し、サブスキルのインビシブルワンを縮地に昇華させ、同じく姿を消した。

 

CHARM同士の鍔迫り合いの時だけ数秒、姿が現れ、あちこち移動しながら戦っていた。

 

 

 

亜理奈「おおっ!?どうやらこちらで奈々さんと梅様のスピード勝負が行われてます!肉眼では追うことが出来ませんが、CHARM同士の金属音を聞くと、凄い戦いをしてるのがわかります!」

 

 

 

ちなみに残った辰姫はというと…

 

 

 

辰姫「もしかして…私……ハブられている?」

梅「辰姫、お前は青チームの拠点を頼む!」

辰姫「は、はい!」

 

 

 

辰姫はその場から離れ、青チームの拠点へ向かった。

 

 

 

奈々「辰姫ちゃんは拠点へ向かったか…問題ないね」

梅「随分余裕だな」

奈々「こっちには最強の三姉妹がいますからね!」

 

 

 

一方、梨璃達の方は…

 

 

 

結梨「……」

梨璃「み、見えない…!」

二水「奈々さん、あの梅様と互角に張り合ってる…!?」

「いえ、梅は加減してるわ」

 

 

 

退場した夢結が梨璃達の元へやって来た。

 

 

 

梨璃「お姉様!」

二水「加減…ですか?」

夢結「奈々のマスカレイドはサブスキルをレアスキルに一時的に昇華させるけど、性能はB級止まり。対して梅の縮地はS級。彼女より早いリリィはこの百合ヶ丘にはいないわ」

梨璃「じゃあこの勝負は…」

二水「奈々さんが不利!?」

「そうとは限らないよ」

 

 

今度は綾瀬がやって来た。

 

 

 

梨璃「綾瀬さん!」

二水「限らないとはどういう事ですか?」

綾瀬「確かに奈々のマスカレイドで昇華したレアスキルは他の人のレアスキルと比べて性能が劣る。でもそれは奈々が一番知っているし、何も考えずに突っ込むほど彼女の戦いは単純じゃないってことだよ」

「そういうものでしょうか…」

 

 

 

楓も戻ってきた。

 

 

 

梨璃「楓さんもお疲れ様」

綾瀬「楓だっけ?奈々の作戦に見事ハマっちゃったね」

楓「ほんとに…楠美さんのファンタズムで予測した雨嘉さんの射撃を警戒しなかったのは私のミスでしたわ」

 

 

 

二水は鷹の目を使い、現在の状況を確認した。

 

 

 

二水「……青チームはノルンの3人が守備に回ってます。ミリアムさんの抜けた黄色チームは現在、那岐様が単独で桃チームの拠点を狙って、亜羅椰さんと静さんが今加勢に向かってます。梅様が奈々さんと戦闘中の中、残りの緑チームの方は雨嘉さんの射撃を警戒しつつ、拠点で防御に徹してます。あ、辰姫さんが青チームの拠点に向かってます!」

夢結「大丈夫でしょうね。あっちには若菜様と天葉、楠美さんの3人がいるわ。辰姫さんの実力では突破は不可能よ」

楓「残った雨嘉さんはいつでも的を狙える状態。これでは下手に動けないですわね…」

綾瀬「奈々が敗れなければ勝機はあるかもしれないけど…どう出るかな?」

 

 

 

そして10分後…梅が本気を出してきた。

 

 

 

梅「そろそろ本気で飛ばすゾ!」

奈々「来るか…!」

 

 

ここで、梅のスピードが上がった。

 

 

 

夢結「……梅がスピードを上げたわ」

 

 

 

梅はここで押さえていた縮地の性能を上げ、スピードによる連続攻撃で一気に決めるつもりである。

 

 

しかし、2本のツインフェザーで全て受け止められてしまう。

 

 

梅「おっ?」

奈々「少し見えてきましたよ…!」

 

 

梨璃達の方でも…

 

 

 

二水「奈々さん、梅様の攻撃を全て受け止めてます!」

夢結「…………まさか…!」

楓「そういう事ですわね…」

梨璃「何か分かったんですか?」

綾瀬「確かにスピードでは梅様が上だけど、反応速度は奈々が上。二刀流なら更に手数が向上する」

 

 

二人の戦いを見ると、梅はスピードに優れているが、手数が普通である。

 

対して奈々はスピードこそ劣るが、反応速度の高さと手数でカバーしている。

 

 

 

夢結「確かに、これまでの奈々の戦いを考えると…無数の攻撃を一瞬で防いでいたわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして梅との勝負から20分後……変化が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

二水「あっ、梅様の動きが鈍りました!」

 

 

 

 

二水の言うとおり、梅の動きが元に戻っていく…

 

 

梅「やば、マギが…!」

 

 

 

発動から20分も維持したことでマギが急速に消耗し、縮地が維持できなくなったのだ。

 

 

 

奈々「貰った!!」

 

 

 

それを逃さないと、奈々がサブスキルの聖域転換を使って梅に体当たりした。

 

 

 

梅「!?」

 

 

 

油断して反応出来なかった梅は奈々の体当たりで飛ばされて、桃チームの拠点まで落ちていった。

 

 

 

二水「梅様を桃チームの拠点に飛ばした!?」

綾瀬「なるほど。乱戦状態のエリアに飛ばせば、攻撃に巻き込まれて復帰が難しくなる。マギを消耗した状態なら尚更だね」

二水「聖域転換を攻撃に使うなんて普通は考えませんよ!」

夢結「そして奈々が次にやる行動は…」

 

 

 

そして奈々はそのまま緑チームの拠点へ向かった。

 

 

 

楓「緑チームの的を狙いに行きますわね」

二水「ですが緑チームには谷口聖様と倉又雪陽さん、黒川・ナディ・絆奈さん。3人ともファンタズムの使い手ですよ!」

綾瀬「確かにファンタズムが3人となれば、攻略は難しい。先読みは重要だと教導官から教わってるぐらいにね。けど奈々にはその戦法は通用しない」

 

 

 

真っ直ぐ的を狙いに来る奈々に対し、聖、雪陽、絆奈はファンタズムで見た未来を参考にして奈々に向かっていくが…

 

 

 

 

 

奈々の周囲に張ったバリアに弾き返され、止めることが出来なかった。

 

 

奈々は事前にマスカレイドでヘリオスフィアを発動していたのだ。

 

 

これらもファンタズムで予測していたのだが、勝てる未来が一つも無かったのだ。

 

それだけ力の差があり、3人の今の力では奈々のヘリオスフィアを破るのは不可能であった。

 

 

 

 

 

 

そして奈々はそのまま緑チームの的をツインフェザーで破壊した。

 

 

 

 

「緑チーム、的ロスト!脱落です!」

奈々「私は止められないよ!」

 

 

 

どうにか乱戦状態から抜け出せた梅は……

 

 

 

梅「あ~、駄目だったか…まあいいや」

 

 

青チームに向かった辰姫も…

 

 

辰姫「結局活躍出来なかった……」

 

 

 

 

緑チームはここで退場となった。

 

 

 

梨璃「残り3チーム…!」

楓「桃チームと黄色チームの方は…!」

二水「………どうやら常磐様が黄色チームの的を破壊したようです!」

 

 

 

鷹の目で状況を確認した二水が皆に伝える。

 

 

 

 

「黄色チーム、的ロストです!退場してください!」

 

 

 

 

那岐の猛攻に押されがちな桃チームだったが、亜羅椰、閑の加勢により形勢は逆転。

 

4対1では流石にゼノンパラドキサを持つ那岐でも不利だと考えたロザリンデは那岐を後退させることにしたが、的の守備が薄れたその隙を神琳は見逃さず、常磐の遠距離射撃で的を破壊したのだ。

 

 

 

 

神琳は一柳隊の第2の司令塔であり、隊を分断してる時も彼女が指揮する事もある。

 

桃チームにとっては便りになる味方である。

 

 

 

夢結「これで残すは青チームと桃チームの二組ね」

楓「………桃チームの拠点で亜羅椰さんがマギを溜め込んでいますわね」

 

 

 

楓の言うとおり、桃チームの拠点では、亜羅椰がユニークCHARM…マルミアドワーズを青チームの的の方向に構え、マギを溜め込んでいた。

 

 

 

亜羅椰「差しで勝負したかったけど、ここでフィニッシュを決めさせてもらうわ!」

 

 

その様子を、鷹の目で確認した二水。

 

 

 

 

 

二水「亜羅椰さんはフェイズトランセンデンスを放つようです!」

綾瀬「狙いは青チームの的だね。ここで決めるみたい」

二水「フェイズトランセンデンスが来る以上、勝負はもう…」

綾瀬「普通のリリィなら…ね…」

夢結「普通の?……」

梨璃「え?どういう事?」

綾瀬「そのままの意味だよ。奈々はこれが来ることは予想済みだからね」

 

 

 

 

 

一方、青チームの的に向かって放たれた亜羅椰のフェイズトランセンデンスのビームに向かって、奈々が縮地でビームの斜線上に回り込んだ。

 

 

 

亜羅椰(何をする気…?)

 

 

 

 

そして奈々は向かって来るビームを前に、2本のツインフェザーを交差したまま身構えた。

 

 

 

二水「まさか、フェイズトランセンデンスを受け止めに!?無茶ですよ!」

綾瀬「ううん、奈々は狙ってるね」

楓「狙ってる?受け流したら的に当たるのではなくて?」

夢結「いや、奈々が狙ってるのは…!」

 

 

 

夢結は奈々が何をするのか理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイズトランセンデンスのビームが身構えた奈々のツインフェザーの刃に直撃した。

 

 

 

亜羅椰(受け止めた…!?)

 

 

 

そして奈々は踏ん張りつつ、そのままビームの軌道を左へずらした。

 

 

 

 

亜羅椰(そんな…ずらした!!?)

 

 

 

フェイズトランセンデンスのビームが狙いから逸れた事で、青チームの的に被害は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方琴陽はドローンの警備を掻い潜って、観察できる所までたどり着いた。

 

 

 

琴陽「今度こそ、木葉奈々のデータを収集し…ん?」

 

 

 

何か嫌な気配を感じた。

 

 

なんと、目の前からマギの光がやって来た。

 

 

 

 

琴陽「アアアアーーーーーーーーーー!!!!???」

 

 

 

 

 

琴陽はマギの光に包まれた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってグラウンドでは…

 

 

 

 

楓「軌道をずらした!?」

夢結「奈々の事だからそう考えると思ったわ」

二水「確かに軌道が逸れれば、的に当たることはありませんけど、そんな芸当を普通は…!」

綾瀬「普通のリリィなら、まずやらないね。フェイズトランセンデンスの純粋な威力はレアスキルの中でもトップクラスだ。ミドル級なら一撃で沈む。そんな攻撃を受け止める何て事は普通考えない。けど奈々は違う。仲間がピンチの時は自身の危険を省みず、必死で守ろうとする子だからね」

 

 

 

フェイズトランセンデンスのビームを反らしたものの、まだ奈々は余力に余裕があった。

 

 

 

 

 

 

夢結「これで、勝負は青チームの方に傾いてきたわね」

梨璃「……そう言えば、拠点の方…雨嘉さんと奈々ちゃんしかいない…?」

 

 

 

二水は鷹の目で状況をもう一度確認してみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

二水「桃チームに向かってくリリィ達がいます!ノルンの3人です!」

 

 

鷹の目で調べた所、桃チームの拠点へは若菜、天葉、楠美の3人が向かっていた。

 

ちなみに若菜が今持ってるCHARMはアステリオンである。

 

 

 

若菜「それじゃあ参りましょうか」

天葉「はい、若菜お姉様!」

楠美「私達、アールヴヘイムのノルンの華麗なる戦いを見せましょう!」

 

 

 

向かって来るノルンの3人に対し、桃チームの拠点では…

 

 

 

亜羅椰「くっ、フェイズトランセンデンスを弾かれた挙げ句、ノルンの3人が来るなんて…!」

 

 

 

亜羅椰にとってノルンの3人が来ることより、フェイズトランセンデンスを防がれた事の方がショック大きかった。

 

 

 

神琳「状況は厳しいですね。閑さん、後の指揮をお願いいたします。雨嘉さんの射撃は私が防ぎますわ」

閑「ええ。亜羅椰さん、もう一踏ん張りですわ」

亜羅椰「分かっていますわ…!」

 

 

 

神琳が的の防衛を務め、常磐を除く残りのメンバーはノルンの3人を迎え撃つ事にした。

 

 

拠点にいる雨嘉は、アステリオンのシューティングモードの遠距離射撃で桃チームの的を狙い射つ。

 

しかし桃チームの拠点では、神琳がマソレリックで弾き飛ばしている。

 

 

 

雨嘉(相手は神琳か…!)

神琳(こんな形で雨嘉さんと勝負出来るのは…とてもうれしいですわね)

 

 

 

雨嘉と勝負出来ることに喜んでる神琳。

 

そして一柳隊に入って自身を身に付けた雨嘉も、笑っていた。

 

 

雨嘉、神琳の勝負も、かなりの名勝負になっていた。

 

 

 

 

 

夢結「神琳さんは雨嘉さんの射撃の阻止。常磐さんは青チームの的への射撃。遠藤さんはマギを消耗して万全ではない。今桃チームがまともに応戦出来るリリィは日羽梨さんと閑さんの二人のみ。どちらもレアスキルはレジスタ。攻めて来る3人には相性が悪いわ」

二水「おかしいですね。それなら奈々さんが守備に回った意味が分かりません」

楓「いえ、まだ桃チームには常磐様の射撃が残っていますわ。奈々さんが天葉様達と交替したのはヘリオスフィアを維持するほどのマギが残ってない事を踏まえての行動だと思いますわ」

綾瀬「でも彼女の作戦はこれだけじゃないよ」

楓「まだ何かあると言うのですの?」

綾瀬「これは奈々がもっとも得意とする手だよ。よく見ておいて」

 

 

梨璃達は最後の最後まで両チームの戦いを見届けた。

 

 

 

 

亜理奈「さあ、この競技もいよいよクライマックス!この攻防戦を制するのは青チームか!?それとも桃チームか……と、青チームの一人が桃チームの拠点へ向けて走ってきた!!」

神琳「えっ!?」

亜羅椰「嘘でしょ!?」

閑「まさか…!」

 

 

 

 

 

 

 

向かってきたのは…奈々だった。

 

楠美が亜羅椰を相手に、天葉が閑を相手に、若菜が日羽梨を相手にしてる最中…奈々が真っ直ぐ桃チームに向かってきたのだ。

 

 

 

奈々を優先的に止めたいが、3人はノルンの3人を相手にしてるためそれどころではない。

 

常磐は守備のいなくなった青チームの的を狙うが、射線上にいる奈々が接近しながら弾を弾き返していく。

 

 

 

閑「不味い、通してはダメ!」

奈々「もう遅いよ!」

 

 

 

奈々は的から一定の距離に入ると、ツインフェザーの片方を的に目掛けて投擲した。

 

 

 

亜羅椰「させないわ!」

 

 

 

亜羅椰が駆けつけ、ツインフェザーを自分のCHARMで弾き倒した。

 

 

 

 

 

 

しかし、もう一本のツインフェザーが亜羅椰の横を通っていった。

 

 

 

亜羅椰「しまった!?」

神琳「やらせない!!」

 

 

 

雨嘉の射撃を防いでいた神琳が割りこみ、マソレリックでもう一本のツインフェザーを弾いた。

 

 

梨璃「両方防がれた!」

二水「不味いです。これでは常磐様の攻撃を防げません!」

 

 

 

これにより奈々は丸腰になり、常磐の攻撃を防ぐ術は無くなった。

 

青チームの的を狙うなら今である。

 

 

 

 

 

 

その時、夢結は気付いた。

 

 

 

夢結「違う……本当の本命は……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

神琳「間に合いましたわね…!」

閑「常磐様、今がチャンス…!?」

 

 

 

このチャンスを逃さないと思った矢の先…マギの粒子ビームが、桃チームの的を撃ち抜いた。

 

やったのは、グラムのバスターキャノンを撃った天葉であった。

 

 

 

天葉「残念、本命は私なんだよね」

奈々「私が的を狙うと思った事で、他への警戒を緩めたのが敗因だよ」

 

 

 

実は奈々は、亜羅椰のフェイズトランセンデンスを防いだ後、天葉達に作戦を伝えていたのだ。

 

最初に本命の天葉を含めたメンバーで突撃させる事で標的をそっちに向けさせ、後に囮となる奈々自身が前に出て、相手の標的を奈々に向けさせる。

 

相手は本命が現れたと油断したと思い、慌てて標的を替える。

 

その隙に、本命が目標の的を狙う。

 

 

囮役だからこそ出来る二段構えの作戦であった。

 

 

 

 

そして、試合終了のブザーがなった。

 

 

 

亜理奈「ここで試合終了!この競技を制したのは青チームだぁ!!」

 

 

 

勝利の宣言と共に、外野から青チームへ大歓声を浴びた。

 

 

亜理奈「そして、青チームに所属する木葉奈々さん、王雨嘉さん、江川楠美さん、天樹天葉様。槇若菜様はチームプレイでの最優秀リリィに選ばれました!おめでとうございます!」

 

 

 

と語った後、青チームは外野から大拍手を浴びた。

 

 

 

楠美「天葉お姉様、最優秀リリィですよ!」

天葉「そうだね。でもほとんど奈々がやってたような…」

若菜「いいじゃないかしら、選ばれたのだから」

 

 

奈々と雨嘉の方も…

 

 

 

奈々「雨嘉ちゃんナイスシューティング!」

雨嘉「奈々もいい戦いだったよ」

 

 

 

一方、負けた桃チームの1年生達は…

 

 

 

神琳「やられましたわ…まさか二段構えの戦法だったなんて…」

閑「常磐様の射撃を防ぎながら前進されたら、危険視しますね」

亜羅椰「それよりも、フェイズトランセンデンスを防がれたのが今でも信じられないわ…」

神琳「前の遠征でギガント級を地面に落とした事もありましたから」

亜羅椰「くっ、強くなっていつか勝ってみせるわ!」

 

 

 

と、リベンジを願う亜羅椰であった。

 

 

 

 

夢結「あんな戦法を奈々がやるなんてね…」

綾瀬「ブルーガードにいた頃は、奈々のこの戦法に助けられてますからね」

夢結「今回は戦えなかったけど、いつか一対一で勝負したいわね」

綾瀬「パフォーマンスの方はいい勝負してたと思いますが?」

夢結「………それは言わないでおいて」

 

 

 

夢結も、奈々との勝負を期待していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃…森の中へ再びやって来た琴陽はまた倒れていた。

 

 

幸い、ドローンには見つかっていない。

 

 

 

琴陽「なんでマギのビームがこっちに……!」

 

 

 

 

この時琴陽は再び奈々のデータを集めようと、森の中を進んでいた。

 

その時に飛んできたマギのビームに巻き込まれ、倒れていたのだ。

 

 

 

琴陽「このまま引き返す訳にはいかない…何としてでも、データを手にいれる…!」

 

 

 

 

琴陽の決意は揺るがず、立ちあがり、森の中を駆け抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「ねぇ奈々ちゃん、結梨ちゃん見なかった?」

奈々「いや、見てないよ。二水ちゃんは?」

二水「いえ、的場倒しの時は一緒にいましたが…」

 

 

次の準備までの休憩時間…奈々達は的場倒しが終わった頃に突然いなくなった結梨を校舎裏で探していた。

 

 

 

 

夢結「そう言えば、梅も見てないわね」

雨嘉「探した方がいいかな…?」

楓「次の競技が始まるまで時間がありませんわ」

 

 

時計を見ると、次の競技の時間が迫っている。

 

 

奈々「……仕方ない…私達だけでも戻ろう」

梨璃「でも…」

奈々「結梨ちゃんもこの校庭をある程度知ってるから迷う心配はないだろうし」

 

 

一柳隊+αはグラウンドへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「ではここで、午後のエキシビジョンを始めたいと思います!」

 

 

 

亜理奈がそう言った後、グラウンドの中央に見たことのあるヒュージが現れた。

 

刃を足がわりにした、

四足歩行のヒュージである。

 

 

 

梨璃「あの事ヒュージは…!」

夢結「百由が逃がしてしまったヒュージのようね」

楓「確か、ルンペルシュツルツヒュンペルでしたわね」

亜理奈「このヒュージは、かつて百由様が捕獲しておいた物を似せて作ったロボットです。一応ヒュージロイドと呼んでおきましょう。今回は特別対戦として、このヒュージロイドと一対一で戦ってもらいます」

二水「このエキシビジョンは確かミリアムさんが参加する試合でしたけど…」

奈々「肝心のミリアムちゃんはダウンしてるし…」

鶴紗「どうするんだ?」

 

 

 

的場倒しの時にミリアムはフェイズトランセンデンスの使用でマギを使い果たし、今は一柳隊の部屋で休ませている。

 

 

 

亜理奈「本来はミリアムさんが戦う筈だったんですが、不在のため、代役を参加させました!」

奈々「代役?」

亜理奈「もうスタンバってグラウンドに移動しております!」

 

 

奈々達はグラウンドの周りを見ると、薄むらさきの髪の女の子が中央に向かって歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グングニルを右手に持った結梨であった。

 

 

ちなみにこのグングニルは工廠科が丹精込めて全ての部品を1から組み直した新品同様の物で、結梨は昨日このCHARMの契約を終えていた。

 

一部のパーツは色が赤になっている。

 

 

 

 

亜理奈「紹介します。一週間前に椿組に入った新人リリィの一柳結梨さんです!!」

結梨「ほー……」

 

 

 

結梨は目の前のヒュージロイドを見つめる。

 

 

 

梨璃「ちょっ!!亜理奈さんこれどう言う事ですか!?」

 

 

 

梨璃が亜理奈に抗議してきた。

 

 

 

亜理奈「見ての通り、午後のエキシビジョンマッチですが何か?」

梨璃「そうじゃなくて!どうして結梨ちゃんが出てるんですか!?」

二水「誰が参加させたんですか?」

梅「あぁ、梅がミリリンの代わりに登録し直したぞ」

梨璃「そんな!?」

奈々「何やってるんですか梅さんはー!!」

 

 

 

 

奈々が梅を揺さぶる。

 

 

 

 

梅「落ち着けって……相手は百由の作った何かだろ?大丈夫じゃないか?」

楓「百由様だから心配なのでは?」

奈々「あの人は何かやらかしそうだからあてにならない。とにかく、結梨ちゃんを連れ戻す!」

 

 

 

と言ってグラウンドに入ろうとするが、鉄の檻が現れ、結梨とヒュージロイドの周囲を囲んでしまった。

 

 

 

 

奈々「な、なんじゃこりゃー!!?」

梨璃「あわわわわ………」

百由「あらら…間に合わなかったか」

 

 

 

百由とミリアムが駆けつけてきた。

 

ミリアムのマギはまだ完全ではないが、動ける程度まで回復していた。

 

 

 

梨璃「百由様、どうにかして下さい!!」

百由「いやぁ〜この檻、勝負が付くまで開かないのよぉ」

梨璃「ええーっ!?」

綾瀬「ヒュージロイドの方は機能を停止出来ないんですか?」

百由「無理よ。一度動いたらエネルギーが無くなるまで動き続けるわ」

奈々「何余計なことしてるんですか!?戦闘未経験のリリィがいるんですよ!」

 

 

 

と、百由の胸倉を掴む奈々。

 

 

 

鶴紗「落ち着けって」

梅「そうだぞ。要は結梨が勝てば良いんだろ?」

奈々「梅さんも原因の一人ですからね!!」

雨嘉「エキシビジョンだから、当然リリィが勝つように設定して……」

 

 

 

この時雨嘉の脳裏に嫌な予感が浮かんだ。

 

 

 

雨嘉「ありますよね!?」

百由「いいえ、その逆よ!ゴリゴリにチューニングして、グロッピもイチコロのはずだったのに……結梨ちゃんが危ないわ!!」

奈々「ほんとに余計なことしまくってますね貴女は…!!」

ミリアム「百由様、ワシをどうする気だったんじゃ!?って慌てるの遅いわ!」

百由「名付けて、メカルンペルシュツルツヒュンペル君よ!」

奈々「誰が名前を言えと言ったんだーこのアホがぁー!!」

 

 

怒り任せに百由を投げ飛ばす奈々。

 

 

 

梨璃「初心者が無茶するのは、私の役目じゃなかったんですかーー!?」

神琳「時代が変わったんでしょう」

二水「はい。百合ヶ丘のゴシップは今はすっかり謎の美少女・結梨ちゃんに通って変わられましたから!」

梨璃「二水ちゃんまで!?」

 

 

 

奈々はツインフェザーを抜き、檻を叩き壊そうとした。

 

しかし檻には傷が少し付く程度だった。

 

その強度に、奈々は覚えがあった。

 

 

 

奈々「これ、ヘビースチルで出来てる!?」

神琳「ヘビースチル?」

綾瀬「ブルーガードの拠点…クジラ船に使われている金属で、ヒュージの攻撃にも耐えられる強度を持っているんだ」

百由「ふふっ、実はこの檻を作るためにヘビースチルを作ってる工場に協力してもらったのよ」

奈々「余計なことに金使わないでくださいよ!」

 

 

 

このままでは結梨がヒュージロイドに襲われるのも時間の問題である。

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、結梨が梨璃の方に振り向き、笑顔で呼び掛けた。

 

 

 

結梨「梨璃ー!私やるよ!」

 

 

 

そう言って右手のグングニルを掲げる。

 

 

 

梨璃「結梨ちゃん……」

奈々「戦うの?あのヒュージロイドと…」

結梨「うん。私もリリィになりたいの!リリィになって、皆の事をよく知りたいの!だから見てて!!」

 

 

 

結梨のその言葉に迷いはなかった。

 

奈々はそれに答えるかのように協力しようとした。

 

 

 

 

 

奈々「わかった。私がセコンドに入るから、結梨ちゃんは目の前の相手に集中して」

梨璃「奈々ちゃん…」

 

 

 

奈々が結梨に協力してる姿を見て少々戸惑ってる梨璃に、夢結がやって来た。

 

 

 

夢結「信じなさい、梨璃。あの子はちゃんと見ているわ。あなたもちゃんとご覧なさい」

 

 

 

そして結梨はグングニルを構えた。

 

しかもその構え方は覚えがあった。

 

 

 

雨嘉「あれは…!」

鶴紗「夢結様の型…!」

奈々(的場倒しの時に夢結さんがやってた構えと一緒だ…!結梨ちゃんがそれを物にしたというの…!?)

 

 

 

 

一回しか見てないのに、この上達ぶりはちょっとおかしい。

 

彼女がヒュージ細胞を使った人工リリィだからの特徴なのか……

 

 

 

とはいえ、結梨の戦いを全ての生徒が見ていた。

 

 

考えてもしょうがないと思った奈々は、結梨にアドバイスを与える。

 

 

 

 

 

奈々「まずはすぐに攻めず、相手の出方を見て、防御に徹して。隙が出来たら大きな一撃を決めて!」

結梨「うん!」

 

 

 

奈々のアドバイスを受ける結梨。

 

 

 

すると、ヒュージロイドが先に動きだし、回転しながら足で攻撃してきた。

 

咄嗟に結梨はグングニルで受け止めるが、ヒュージロイドはそこから右足、左足の順に攻撃する。

 

結梨は一撃目をグングニルで防ぎ、二撃目を後退しながらかわす。

 

 

 

ここでアドバイスを与えたい所だが…

 

 

 

那岐「押された時は前に出なさい!」

結梨「!」

 

 

 

外野にいる那岐からのアドバイスを聞き入れ、結梨はそのまま前進し、ヒュージロイドの攻撃をグングニルで弾いた。

 

 

 

ロザリンデ「そう!相手のペースは崩す為にあるのよ」

 

 

 

那岐の隣にいるロザリンデが続けてアドバイスする。

 

 

 

眞悠里「止まらず動いて!相手に隙を作らせれば勝機がある!」

 

 

 

今度は眞悠里からのアドバイスで、結梨は攻め続けにグングニルでヒュージロイドに傷を付けるも、まだ決定打に至らない。

 

それでも結梨は止まることなく、回り込んではまた攻める。

 

ヒュージロイドの攻撃を全て弾き、かわしながら結梨はヒュージロイドを追い込んでいく。

 

 

 

「「「おおーー!!!」」」

 

 

 

 

外野の生徒達が次第に結梨を応援し始めた。

 

 

 

奈々「皆………」

 

 

 

驚く奈々だが、すぐに切り替えてヒュージロイドの方を見る。

 

すると、ヒュージロイドが大振りの構えをした。

 

 

 

 

 

奈々「結梨ちゃん、敢えて受けて、流して、斬れ!」

結梨「!」

 

 

 

奈々の指示で結梨はヒュージロイドの右足を受け、そのまま後ろに流して、グングニルで横に凪ぎ払い、横半分に分けた。

 

 

 

結梨「はああああ!!」

 

 

 

そして体を回しながら縦に両断し、4つに分けた所でヒュージロイドは爆発した。

 

 

 

 

奈々「よし!!」

史房「やったー!っと、失礼」

咬月「……」

出雲「……」

 

 

 

結梨の以上な上達に真剣な表情の咬月と出雲。

 

 

 

亜理奈「なんと、結梨さんあのヒュージロイドを倒しました!皆のアドバイスを受けつつも、勝利を勝ち取りました!」

 

 

 

勝利した結梨の姿に一柳隊も驚く。

 

 

 

結梨「梨璃!皆!見てた!?私、出来たよーー!!」

 

 

勝利に喜ぶ結梨。

 

 

 

ヒュージロイドがやられたことで、囲んでいた檻が全て引っ込んだ。

 

 

 

すると、真っ先に梨璃が泣きながら結梨に抱きついた。

 

 

 

梨璃「うわああん!結梨ちゃん偉いようーー!」

結梨「うんうん、泣くな梨璃」

奈々「お見事結梨ちゃん!」

結梨「………うん!」

 

 

 

奈々と結梨はお互いの右手でタッチした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方百由はというと…………

 

 

 

 

 

百由「ああ……メカルンペルシュツルツヒュンペル君がぁ……」

ミリアム「もうええじゃろう…」

 

 

 

 

鉄屑と化したヒュージロイドを前に落胆していた。

 

 

 

 

 

 

 

そして全ての競技を終え、競技会の一日目は終了したのだった。

 

 

 

 

そして明日は後半の文化の部であるため、皆、楽しみが止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方…琴陽は競技会が終わった後、ドローンの警備内から離れて安全な場所で持ってきたノートパソコンを開き、GEHENA宛に収集したデータを送っていた。

 

 

 

 

 

琴陽(彼女…一柳結梨は、間違いなく貨物船に積んであった人工リリィに間違いない…木葉奈々に関するデータは今回も不十分だったけど、人工リリィの存在はGEHENAにとって重要な筈。ひとまずはこれだけにしておこう)

「災難だったわね、琴陽さん」

 

 

 

 

琴陽の隣に、ライトブルーのロングの少女が現れた。

 

 

 

 

 

 

シエルリント女学院 2年生 柊地由良(ひいらぎ ちゆら)

 

 

 

琴陽「貴女は新人の地由良様…今回は貴女に出動要請が出ていませんよ」

地由良「ちょっと興味があって、事情で来たの」

琴陽「事情?いったい何を…」

地由良「秘密♪」

 

 

 

地由良が何を考えてるのか…琴陽はわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

二水「次回は競技会後半の部です!」

???「可愛い女の子達の姿をこの手で…!」

 

 

 

next コスプレにお笑いに変態狩り!

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

 

新CHARM紹介

 

 

ツインフェザー

 

修理中のカナベラル、ブルメリアの代わりに用意された奈々の第2CHARM武器。

 

素材はメタルスキン。変形機能はなし。その代わり第三世代にある機能…トリグラフとフラガラッパの機能を取り入れており、カナベラル、ブルメリアの次に強い攻撃性能を持っている。

 

製作者は塔ノ木綾瀬である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のネタ…わかりましたか?

元ネタの名前は伏せておきますが、ヒントだけでも教えます。



1つ目はブーケのオープニングを歌ってるバンドの歌。

2つ目は実写版の亀忍者のヌンチャクのパフォーマンスです。

皆さんは見つけられましたか?




次回の話は戦技競技会のコスプレ部門を含む内容になります。
次回予告に出た???の人がどんな活躍をするのでしょう。
それでは次回をお楽しみください!

多分、1ヶ月以上になるかも……


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「11」コスプレにお笑いに変態狩り!

お待たせしました。

今回は約半分程度の文章量ですので短いかもしれません。

アサルトリリィの時系列を確認したら、ブーケとラスバレのイベントの時系列が食い違ってました。

しかし問題はありません。この小説の時系列はブーケより早いです。

気が向けばこの小説の時系列をまとめようと思っています。

今回はほぼオリジナル回です!



それでは11話どうぞ!

7.14 レアスキル名を修正しました。



戦技競技会…二日目…………

 

今日は文化関連の種目がメインの日である。

 

 

 

 

そんな中、理事長室では出雲が咬月、史房に話をした。

 

 

 

 

咬月「国連を調査すると?」

出雲「はい。前に連絡してきた安全保障審査委員会の長官と副長官ですが、何か隠してることはごそんじでしょう」

咬月「……うむ」

出雲「あの二人は恐らく、彼女…一柳結梨を狙っている」

咬月「その理由を述べたまえ」

出雲「彼女が発見されたのは、海岸にあった大きな繭です。そして第一発見者である一柳梨璃のCHARMに込められたマギに共鳴し、彼女は目を覚ました。彼女のスキラー数値が一柳と同じなのはその影響だと推測されます」

咬月「……」

出雲「そして昨日、一柳結梨のエキシビション…彼女は初戦闘でありながら白井の動きを完璧に真似てヒュージロイドを倒した…普通のリリィでは出来ない芸当です。まるで最初から…」

咬月「…戦うリリィとして生まれたと……」

出雲「はい。そしてあの長官が一柳結梨を引き渡すように言ってきたのは、その力を研究する為でしょう」

咬月「何故そう言える?」

出雲「…一柳結梨を生み出したのは、GEHENAという事です」

咬月「……成る程…非人道的な実験を行うあの組織ならあり得る」

出雲「そしてあの二人も、GEHENAと協同してる可能性があると考えられます」

咬月「……それは私も考えた」

史房「その審査委員会がGEHENAと協力してるという証拠を掴むために、先生が向かうと言うのですね?」

出雲「ああ。彼らも何かを仕掛けてくる筈です。その前に早く証拠を手に入れなければいけない」

咬月「宛はあるのか?」

出雲「一柳結梨を生み出したのなら、その実験をまとめた資料やデータが残ってあるでしょう。関わった人の名前も乗っている筈です。それなら証拠になります…それに…」

咬月「それに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出雲「一柳結梨はリリィであり、私の生徒です。渡すわけにはいきません」

 

 

 

 

彼女自信は、結梨を大切に思っていた。

 

当然、ここにいる咬月と史房も同意見である。

 

 

 

咬月「うむ、その通りだ」

史房「しかし、証拠を手に入れる為とはいえ、一人で向かわれるのは危険です。国連のセキュリティはかなり厳重になっていると…」

出雲「その点なら心配いらない。今回は信頼できる仲間と話をつけている」

史房「仲間?」

咬月「その仲間というのは…」

出雲「はい。対GEHENAに属す者達です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一柳隊の控室では…開会までの間に準備をしていた。

 

 

 

 

神琳「まずは雨嘉さん、これとこれ」

 

 

 

神琳が取り出したのは、ハンガーに掛けた巫女服とメイドエプロンであった。

 

 

雨嘉「え?」

神琳「この日の為に用意したんです」

奈々「神琳ちゃん、雨嘉ちゃんをコスプレ部門に出させる気なの?」

神琳「そうですが何か?」

奈々「マジか」

 

 

 

表情からは想像できないが、神琳のやる気は伝わってきてるようだ。

 

 

 

ミリアム「こんなのもあるぞ。ひひひひ…」

 

 

 

更にミリアムが白い猫の尻尾のパーツを持ってきた。

 

雨嘉に付ける気である。

 

 

 

鶴紗「にゃああ…ネコミミは外せない!」

 

 

 

笑顔でネコミミ付きカチューシャを雨嘉に付けようとする鶴紗。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔の表情が何より「ヤバい」。

 

 

 

 

奈々「ミリアムちゃん、鶴紗ちゃんもかい」

雨嘉「ああ…嫌…止めて…奈々、助けて…」

奈々「ごめん。この3人を止めるのは流石に無理」

雨嘉「ええっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨嘉は3人によって着替えさせられた。

 

 

 

 

 

結梨「ほぉー…」

二水「神琳さんは雨嘉さんをコスプレ部門に入れるそうですね」

奈々「神琳ちゃん、本気モード入ってるっぽい」

楓「雨嘉さんを?ちょっと地味じゃありません?」

二水「まだ何にも染まってない方がいいそうです」

楓「そう言うものですか」

梅「お前本当梨璃にしか興味ないんだな」

楓「それはそうですわぁ〜!」

 

 

 

 

 

と、雨嘉の方を振り向いた瞬間…

 

 

 

 

楓「はっ!!!??」

 

 

 

楓が驚愕の表情で驚く。

 

 

 

それもその筈………そこには、巫女服にメイドエプロンを纏い、赤い靴、ネコミミカチューシャと白猫の尻尾を付けた雨嘉の姿があった。

 

右手にはお払い棒を持っていた。

 

 

 

神琳「やりましたわぁ」

ミリアム「やりきったのう」

鶴紗「やったぁ…!」

梨璃「雨嘉さん可愛い…」

二水「これはこれは…」

楓「この梨璃さんに勝るとも劣らない可憐さは…!」

奈々「動揺してるなこれ」

雨嘉「えっと…」

 

 

思考が追い付いていない雨嘉。

 

 

 

梅「おぉ、わんわん可愛いなぁ!」

雨嘉「え…?」

奈々「それで、神琳ちゃんはどうするの?」

神琳「?」

奈々「今回のコスプレ部門は、二人一組での参加みたいだけど…」

 

 

 

二日目のプログラムには、コスプレ部門の参加条件には二人一組でと載っていた。

 

 

 

神琳「当然私も雨嘉さんと一緒に出ますわ」

奈々「服はあるの?」

神琳「抜かりはありませんわ」

 

 

 

この神琳…本気である。

 

 

 

奈々「左様ですか。所で夢結さんと梨璃ちゃんはどうするの?」

梨璃「私はまだ決まってないかな?」

夢結「私は文化の部には参加しないわ」

奈々「勿体ないなあ。いい線いってるのに…」

神琳「お二人もコスプレ部門に出てみたらいいですのに…」

梨璃「ええ!?」

夢結「ちょっと神琳さん!?」

奈々「いいね。そうしよう!」

夢結「奈々!?」

神琳「しかし問題は、二人に着せる服がありませんわ」

奈々「それなら心配いらないよ。もう用意してあるから」

 

 

 

そう言って奈々は大きめのケースを取り出し、開いて中の物を出した。

 

 

 

梨璃「あっ!」

夢結「それって…!」

 

 

 

奈々が取り出したのは、ライトロックなバンド衣装と青薔薇を意識したカッコいいバンド衣装の2着であった。

 

 

 

奈々「知り合いの子から借りてもらったんだ。後これ」

 

 

 

次に取り出したのはエレキギターとマイクであった。

 

 

 

二水「その衣装って…!」

奈々「知り合いの子から借りてきたんだ。二人にはこれを着てコスプレ部門に出てもらうよ」

梨璃「ええっ!?ちょっと待って!私ギターなんて使ったことが…」

奈々「ただ持ってるだけでいいよ。パフォーマンスはほとんど必要ないからね」

夢結「あのね奈々、締め切りまでもう時間が無いのよ」

奈々「あ、それなら私が代わりにエントリーしときました!」

 

 

 

なんと、奈々は今日控え室に向かう前にコスプレ部門への参加の紙に、梨璃と夢結の名前を書いて出していたのだ。

 

 

 

梨璃「えええーっ!!?」

楓「奈々さん、梨璃さんを困らせるのはやめてもらえません!?」

奈々「楓ちゃんは梨璃ちゃんのコスプレ姿を見たくないの?」

楓「う……見たい…ですわ…!」

 

 

 

楓は誘惑に負けた。

 

 

 

雨嘉「本当に扱いがうまいね…」

夢結「まさか奈々、初めから私と梨璃をコスプレ部門に出させるつもりだったの!?」

奈々「何言ってるんですか。これは夢結さんの為でもあるんですよ」

夢結「私のため?」

奈々「ルナティックトランサーをコントロールするには精神を安定させる事が重要です。今回のコスプレ部門では、いかに気持ちを最後まで上がらせないようにするのに最適な場です。コスプレ部門に出ることはつまり、夢結さん自身の強化に繋がるんですよ!」

 

 

 

と、理由を述べる奈々。

 

 

 

梨璃「そうだったの!?」

 

 

 

奈々の言葉を信じてしまう梨璃。

 

 

 

鶴紗「違うと思う」

夢結「本当の所はどうなの?」

奈々「個人としてはそういう梨璃ちゃんと夢結さんが見たいだけですよ。それに、梨璃ちゃんにいいところ見せるチャンスですよ!」

 

 

 

と、夢結を誘導する奈々。

 

 

 

夢結「なんか丸め込んだ感じがするけど…いいわ。参加する以上、梨璃と一緒に出るわ」

梨璃「お、お姉様と一緒に参加…!」

結梨「見てみたい」

 

 

 

結梨も梨璃のコスプレ姿に興味が出た。

 

 

 

梨璃「ゆ、結梨ちゃん!?」

神琳「ということは、私たちとはライバルになりますわね」

夢結「やるからには本気で行くわ」

梨璃「わ、私も、頑張ります!」

 

 

 

梨璃、夢結もやる気が出てきた。

 

 

 

二水「ところで、奈々さんは出ないんですか?」

奈々「私はお笑い部門に登録したよ」

雨嘉「お笑い?」

二水「今回の競技では、新たに追加された部門として出ています」

楓「それを奈々さんが出ると言いますの?」

奈々「うん。衣装も用意したし、ネタの練習も完璧!」

神琳「それはそれで楽しみですね」

鶴紗「実際つまんなかったりして…」

奈々「失敬な」

梅「にゃははは…どんなネタが来るか楽しみだゾ」

 

 

互いに盛り上がる中…二水はスマホの時計を確認した。

 

 

 

 

二水「皆さん、もうすぐ開会の時間です。行きましょう」

奈々「ん…ねぇ、ミリアムちゃんの姿が見えないんだけど…」

 

 

いつの間にかミリアムがいなくなっていた。

 

 

 

梨璃「先に向かったのかな…?」

楓「ここで待ってても仕方ありませんわ。早く行きましょう」

奈々「そうだね」

 

 

 

 

一同はグラウンドへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、離れ森の中では琴陽とは別の魔の手がやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

シエルリント女学薗の制服を着たライトブルーの子…柊地由良である。

 

 

 

手には、高級感溢れるカメラを持っていた。

 

 

 

彼女が森の中を駆け抜けるものの、徘徊しているドローンは何の反応も無かった。

 

 

 

地由良「流石のドローンも…私のレアスキルの前では確認出来ないようね…」

 

 

 

 

 

 

レアスキル インビシブルコート

 

 

自身の姿とマギの気配を消すことの出来るステルス能力の高いスキルで、奇襲攻撃には最適。

 

しかしマギの消費が高く、一般のリリィのマギの保有値では1分で使いきってしまう。

 

ところがこれがS級になると話は別。

 

S級はインビシブルコートのマギの消費が半分程になるため、結構便利になる。

 

また固有能力として、一時的に周囲の意識をシャットアウトさせ、無意識状態にさせるハートレスというスキルが使える。

 

半径3メートル内にいる並のリリィなら2~3秒で無力化する強力な能力である。

 

 

尚、このレアスキルは現在の所、地由良しか持っておらず、世界ではインビシブルコートの名前すら出ていない。

 

 

 

 

 

 

地由良「フッフッフッ…今日は百合ヶ丘でリリィ達のコスプレ姿を拝める日。百合ヶ丘のスケジュールは既に把握している…こんな美味しい日を逃す道理はない…!」

 

 

 

と、カメラを構えつつ、百合ヶ丘グラウンドが見える所までやって来た。

 

 

 

 

地由良「さあ、どんな可愛い子が出てくるかな…」

 

 

 

地由良は百合ヶ丘の競技会のパンフレットを握りしめた。

 

 

 

 

地由良「一番のターゲットはもちろん、椿組の王雨嘉ちゃん…!はたしてどんな格好なんだろ~楽しみだわ。ぐふふふっ…!」

 

 

 

ヤバイ笑いでにやける地由良であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方百合ヶ丘では昨日同様、各生徒達がグラウンドに集まった。

 

 

今回は巨大な舞台ステージが用意されていた。

 

 

 

今回は昨日と異なり、学年問わず誰でも参加できる種目がメインになっている。

 

 

 

そしてお馴染みのテント下で亜理奈が司会を担当する。

 

 

 

 

亜理奈「さて皆さま。今日は戦技競技会の後半…文化の部を始めたいと思います!中でも注目なのが、コスプレ部門、お笑い部門の2つ!この2つは多くの生徒が参加しております!ライバルが多いため盛り上がること間違いありません!お互い全力を尽くして、昨日以上に、今回のイベントを盛り上げましょう!」

 

 

 

亜理奈の挨拶を終えたことで、歓声がグラウンド中に広がる。

 

 

 

亜理奈「それでは最初の部門…コスプレ部門を始めたいと思います!」

 

 

 

すると、ステージの上から看板が降りてきた。

 

 

看板には、「best・cospreyer・of・liiy」とお洒落にペイントされている。

 

 

 

亜理奈「ルールは簡単!二人一組のコスプレ姿でステージ上に立ち、独自のアピールをしてもらいます!テーマは問いません。全ての組が終了した時点で投票の受付を行い、より多くの票を獲得した組がコスプレ部門の最優秀リリィに選ばれます!ちなみに投票は観客一人に付き1票までとします」

奈々「フムフム…」

 

 

 

今、観客の数は100人以上。

 

投票で決めるなら十分な人数である。

 

 

 

 

亜理奈「それでは早速呼びましょう!エントリーナンバー1番、アールヴヘイムより遠藤亜羅椰さんと、江川楠美さんです!どうぞ!」

奈々「トップバッターはあの二人か…」

 

 

 

一組目がカーテンコールから現れた。

 

 

現れたのは可愛い格好をした亜羅椰と楠美だった。

 

 

奈々「あ、あれってまさか…」

二水「変身魔法少女チャーミーリリィとCHARMの妖精チャーミィーをイメージした衣装です!」

奈々「チャーミィーはわかるけど、二水ちゃんも見てたんだね。あのアニメ」

 

 

 

 

変身魔法少女チャーミーリリィ

 

 

現在放映中の魔法少女アニメで、リリィやヒュージ関連する部分がネタとして使われている。

 

一部の生徒もよく見るらしく、奈々も見ている。

 

ちなみに二作目である。

 

 

 

 

今回亜羅椰が着ている服は変身魔法少女チャーミーリリィの主役の魔法少女服である。

 

 

 

 

亜羅椰「夢と希望を貴女に!」

楠美「み、皆…ちゃんと勉強しようね!」

 

 

 

と、アピールする亜羅椰と楠美に観客からの歓声を浴びる。

 

 

 

 

奈々(楠美ちゃんはいいとして、亜羅椰ちゃんは肉食系とのギャップが……)

 

 

 

 

普段の亜羅椰のイメージとは異なる姿を見る奈々は違和感を覚えてしまう。

 

 

 

 

亜理奈「では続いて、エントリーナンバー2番!ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウスさんと神楽月涼さんです!どうぞ!」

奈々「ん、ミリアムちゃん?」

 

 

 

次の組がカーテンコールから現れた。

 

 

 

現れたミリアムはなんと、亜羅椰と同じチャーミーリリィの主役の衣装を着ていた。

 

後から現れた涼は、チャーミーリリィに出てきた怪人の衣装を着ていた。

 

 

 

二水「ミリアムさんもチャーミーリリィの衣装で来ました!」

奈々「亜羅椰ちゃんと衣装が被っちゃったなあれ」

 

 

 

ミリアムの衣装を見た亜羅椰が突然ミリアムに近づく。

 

 

 

亜羅椰「ちょっと!私のマネしないでよ!」

ミリアム「何!?そっちこそわしのマネをするでないぞ!」

亜羅椰「食うわよ?」

ミリアム「なんじゃとー!?」

 

 

 

衣装が被ったことで口ケンカになったようだ。

 

ここで暴れたら、競技どころではないだろう。

 

 

 

 

 

 

しかし、二人のケンカを止めるために奈々は、二本のツインフェザーをミリアムと亜羅椰の足下に投げ刺した。

 

 

 

ミリアム「!?」

亜羅椰「!?」

奈々「これ以上ケンカをするなら…彼氏を庇いに敵の攻撃を受ける主役を演じてくれるかな?」

 

 

 

止めにはいる奈々。

 

奈々はこうなることを予想して、CHARMを持っていたのだ。

 

 

 

ミリアム「う、うむ、すまんかった…」

亜羅椰「じょ、冗談よ冗談!」

 

 

 

流石に反省した二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、地由良の方はというと……

 

 

 

地由良「うーん、チャーミーリリィのコスプレか…あの灰色のツインテールの子…魔法少女っぽくって可愛いわね……」

 

 

と言いながら地由良は遠くでミリアム達の姿をカメラで撮っていく。

 

地由良の使ってるカメラは高画質のデジタルカメラであり、最大2キロメートル内にいる者も綺麗に写せるのだ。

 

当然内部のメモリーは大容量の物に代えており、最高の画質を最大二万枚写すことができる他、ビデオモードなら同じく高画質で24時間録画が可能である。

 

 

 

地由良「おお!今度はナース姿の子か…中々…!」

 

 

 

 

コスプレ部門の参加者が出てくる度に地由良はカメラのシャッターをポチポチと押していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、グラウンドの方では…

 

 

 

 

 

奈々「?」

二水「どうしました?」

奈々「なんか邪な視線を感じる…」

楓「気のせいじゃなくて?」

奈々「うーん………」

鶴紗「今のとこ、森の方からは何の報告もないぞ」

梅「ドローンが沢山配置されてるんだし、大丈夫じゃないか?」

奈々「だといいですけど…」

 

 

 

そんなこんなで、次は梨璃と夢結のペアの番である。

 

 

 

 

亜理奈「さて、お次はお待ちかねの二人です!エントリーナンバー15番!シュッツエンゲルの契りを交わした話題の二人!一柳梨璃さんと白井夢結様の二人です!」

奈々「ついに来たか……」

亜理奈「それではどうぞ!」

 

 

 

カーテンコールが開き、現れたのはエレキギターを背負ったポップなバンド衣装の梨璃と、マイクを持った青薔薇を意識したバンド衣装の夢結だった。

 

それを見た観客達は奇声が混じるほどの喜びぶりを見せた。

 

 

 

奈々「おおっ!予想通りの反応だ」

梅「夢結、結構似合ってるナ!」

楓「夢結様様も似合っていますが、梨璃さんとても似合っていますわ!!」

 

 

 

楓はバンド衣装の梨璃の姿の虜になったようだ。

 

 

 

 

と、ここで二人のアピールタイムが入り、梨璃はエレキギターを鳴らし、夢結はマイクを口元に近付ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「みんな、競技会をキラキラドキドキなイベントにしちゃおう!!」

夢結「あなた達…リリィに全てを賭ける覚悟はある?」

 

 

 

 

二人の名言アピールで観客達は更にヒートアップ。

 

梨璃の人気もそうだが、ただでさえ人気ある夢結の相乗効果で、熱い歓声は更に勢いを増した。

 

 

 

そして…楓が倒れて失神した。

 

 

 

梅「うお!?どうした!」

奈々「おお、まず一人落ちたか」

二水「本当にすごい人気ですね!お二人もコスプレ似合っています!」

 

 

 

 

 

スデージ裏の準備室にいる雨嘉と神琳は二人の様子をモニターで見ていた。

 

 

 

 

 

雨嘉「二人とも凄いな…」

神琳「雨嘉さんなら大丈夫ですわ。先程教えた通りにやればいいだけですから」

雨嘉「う…うん…!」

 

 

 

 

梨璃と夢結の姿を見てやる気が増す二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして地由良の方は……

 

 

 

 

地由良「おおーっ!?これはあの有名なバンドグループの衣装じゃないの!まさかここで見られるとは…しかも着てる子もカワイカッコイイー!来てる…今まさに…運命は私の方へ傾いてきたー!!激写!激写!!激しゃーー!!!」

 

 

 

大興奮しながら地由良はカメラで梨璃と夢結のコスプレ姿を何度も撮っていく。

 

 

 

それはまさに…着替え中の女性の姿を盗撮する変態不審者その者だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「ぬう……………」

鶴紗「どうした?」

奈々「やっぱり視線を感じる…禍々しい感じの」

二水「一応、鷹の目で周辺を探ってみますね」

奈々「それなら学園外から探ってみて。学園内は私がマスカレイドで探ってみる」

二水「わかりました」

 

 

 

そう言って二水は鷹の目を発動し、学園全体を探ってみた。

 

 

 

 

梅「視線を感じるって事は、相手はまだいるのか?」

奈々「多分別の人だと思います。気配が違うんで…」

鶴紗「私もファンタズムを使ってみるよ」

奈々「うん。お願い」

 

 

 

鶴紗はファンタズムを使い、奈々はマスカレイドで鷹の目を発動した。

 

 

 

 

 

 

しかし数分経っても、学園内、学園外の周囲を探るも、怪しいそうな人は見当たらない。

 

ファンタズムでも、その犯人が動く未来が無い。

 

 

 

 

その間にコスプレ大会の方では順調に進んでいく…

 

 

 

 

奈々「こっちにはいない…二水ちゃん達は?」

二水「駄目です。索敵範囲を広げてみましたが、いませんでした」

鶴紗「相手はこっちに近付く気は無いみたいだ」

楓「気のせいではありませんの?」

奈々「う~ん、視線は感じるんだけどな…」

梅「まあ仕方ないな。次はいよいよわんわんの番だからな」

 

 

 

 

開場の方では、遂に雨嘉と神琳の出番がやって来た。

 

 

 

 

亜理奈「さあ、次は一柳隊からのダークホースの登場です!エントリーナンバー28番、王雨嘉さんと郭神琳さんのお二人です!どうぞ!」

 

 

 

 

カーテンコールが開き、現れたのはネコミミカチューシャと猫の尻尾、巫女服にエプロンを着た雨嘉と、自身の髪の色に合わせたメイド服の神琳だった。

 

 

それを見た観客達は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「きゃあああああああああーーーー!!!!」」」」」」

 

 

 

 

喜びと絶叫の歓声を吐く。

 

例えるなら、ジェットコースターに乗ってる時の絶叫の声ぐらいのものである。

 

 

 

雨嘉の大人しさ、純粋さと神琳、ミリアム、鶴紗がコーデした衣装が効果てきめんだったようだ。

 

 

 

 

 

奈々「うわあ…梨璃ちゃんと夢結さんの時より凄い人気…!」

 

 

 

 

 

一方雨嘉と神琳は…

 

 

 

 

雨嘉「あわわ……」

神琳「雨嘉さん、まずはアピールからですわ」

雨嘉「う、うん…!」

 

 

 

 

神琳に言われ、雨嘉はスデージの中央に達ち、あるポーズを取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨嘉「にゃああああーー!」

 

 

 

雨嘉が猫のポーズと猫の泣き声のマネをすると、観客達の歓声は更に大きくなった。

 

 

そしてこの子も…

 

 

 

鶴紗「ニャアニャニャアアアーー!!!??」

奈々「うおおっ!!?ヤバイ顔!」

 

 

 

鶴紗がとんでもない程の笑顔で興奮し、食い付く勢いでコスプレ姿の雨嘉をガン見する。

 

 

 

奈々「凄い食いつきぶりだな…」

二水「これはもう優勝でしょうか…」

 

 

 

と、大きな盛り上がりを見せるコスプレ大会。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで奈々は近くにあるモニュメントの金属に何かの光が見えた。

 

 

 

奈々「?」

 

 

 

その光は一瞬だけ何度も光っていた。

 

奈々はその光が映った反対の方向を見た。

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くの森からその光が見えた。

 

 

 

奈々「!」

 

 

 

 

奈々はすぐにマスカレイドで縮地を発動させ、光った森の方へ向かった。

 

 

 

 

二水「あ、奈々さん!?」

梅「奈々、森の方へ向かったゾ」

 

 

 

 

 

 

 

一方、森の方では…

 

 

雨嘉と神琳の番が来て、雨嘉のネコミミ巫女メイド姿を何度も撮っていった。

 

しかも梨璃、夢結の時よりも勢いは凄かった。

 

 

 

 

地由良「雨嘉ちゃん来たーーーーっ!染まってなさそうな素体にネコミミと尻尾!巫女服にエプロンを着せるとは…!最高じゃない!例えるならそう、雨嘉ちゃんは正にダイヤの原石!これはもう見つけたようなもの!ぐふふふっ、ぐふふふふふふっ!愛しの雨嘉ちゃん…これはもう永久保存版に決定ね!!」

 

 

 

と言って、地由良のシャッターを押す間隔が短くなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

「まさか盗撮するリリィがいるなんてね…」

地由良「お?」

 

 

 

突然声が聞こえた。

 

そして同時に手に持っていたカメラを盗られた。

 

 

 

地由良「!?」

 

 

 

地由良は後ろを見ると、右手にカメラを持った奈々の姿があった。

 

もう片方の手にはツインフェザーが握られていた。

 

 

 

 

奈々「あんたの狙いはなんだ!情報収集にしては違うみたいだけど…」

地由良「何故分かったの?私のインビシブルコートはマギの気配も姿も消せるレアスキルのはず…!」

奈々「カメラのフラッシュだよ。流石にそれは消せないでしょ?」

地由良「くっ、迂闊だった…!」

 

 

 

地由良はカメラで取るときに必ずフラッシュを使う癖があり、それが奈々が気付く原因となった。

 

 

 

 

 

 

 

しかし…それは地由良の想定内でもあった。

 

 

 

 

地由良「でも、私は捕まらないけどね」

 

 

 

 

そう言うと、突然地由良の姿が消えた。

 

 

 

奈々「消えた!?」

 

 

 

 

奈々はすぐに辺りを見回すが、いつの間にか持っていたカメラが無くなっていた。

 

 

 

奈々「カメラがない!?」

地由良「これは返してもらうわよ。じゃあね!」

 

 

そう言い残し、地由良は見えないまま去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし森の周辺にある草木等のしなりの音等で聞こえた。

 

 

奈々はそれを逃さなかった。

 

 

 

 

奈々「逃がすと思ってるの?」

 

 

 

奈々は音のする方へ向かっていった。

 

 

 

 

すると……

 

 

 

 

地由良「な、何故分かるの!?マギの気配は消えてるのに…!」

奈々「音さえ出してれば解るものだよ」

地由良「音で!?」

 

 

 

地由良のレアスキル…インビシブルコートは自身の姿を消しつつ、マギの気配も消せる効果を持つが、音までは消すことができない。

 

また深い森の中な為動き辛く、下手に動くと通過した場の落ち葉が飛んでいく為、相手に居場所を教えてしまう。

 

 

 

 

地由良「くっ、ここで捕まるわけにはいかない!」

 

 

 

 

地由良は分かれ道を見つけると、右に曲がっていく。

 

 

これは奈々にばれて、奈々も右に曲がっていった。

 

 

 

地由良「ふが!?」

奈々「お?」

 

 

 

突然地由良が小さな悲鳴を吐いた。

 

なんと、曲がった先は無数の茂みに覆われた場所で地由良が弦に捕まっており、真下にはカメラが落ちていた。

 

インビシブルコートは解かれており、姿も奈々から見えている。

 

 

 

地由良「私としたことが、前を見てなかった…」

奈々「まぬけで良かった」

 

 

 

奈々は、カメラを素早く拾った。

 

 

 

奈々「さて、カメラの中身は…」

地由良「ちょ、私のシークレットファイル!?」

奈々「知らん」

 

 

 

地由良の呼び掛けを無視して奈々はカメラを操作し、記録された画像を確認してみた。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「……………え?」

 

 

 

 

カメラに記録された画像は全てコスプレ姿の子だけだった。

 

その殆どが雨嘉ので納められていた。

 

結梨の写真は何一つ無かったが、これは酷い。

 

 

 

 

 

奈々「これはいったいなんなの?何が目的なの?あんた、GEHENAの手の者じゃないの?」

 

 

 

奈々がGEHENAの名前を言うと、地由良は……

 

 

 

地由良「GEHENAの手の者か…まあ間違ってはいないわ。私はヒュージに襲われて瀕死のところをGEHENAの関係者に助けられて強化リリィ…ブーステットリリィにされた。一応協力はしているわ。と言っても買い出し位しかやってないけどね」

奈々「何それ…ていうかデータ収集に来たんじゃないの?」

地由良「そんなもの、他の者がやってるわよ。私は知らないし、関係ないもの。個人的にここで写真を取りに来たのよ!」

奈々「他の者?それで、貴女はどうしてコスプレ写真を撮りに?」

地由良「フッフッフッ…愚問ね。特別にお教えしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地由良「日本中の可愛いリリィ達のコスプレ姿の子をに納めたアルバムを作るためよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「………………………は?」

 

 

 

どうでもいい野望だった。

 

 

 

地由良「何よその反応は?」

奈々「いや、何か下らない目的だなって」

地由良「何が下らないのよ!ナース服、チャイナドレス、バニーガール!更には巫女に魔法少女、メイドまで彩りみどり!こんな魅力、他では味わえないものよ!」

奈々「知らんがな( ̄ー ̄)」

 

 

 

めんどくさい相手だと奈々は思った。

 

 

 

地由良「とにかく、そのカメラを返しなさい!」

奈々「選択…削除っと」

 

 

 

と、奈々はカメラを操作し、中のデータの一部を削除した。

 

 

 

地由良「ちょ、何けしてるの!?」

奈々「ふざけるな!ファイルの中に如何わしいものを削除しただけよ!」

 

 

 

奈々はコスプレ画像に含まれるスカートの中が見えてるものだけを削除したのだ。

 

 

 

地由良「いいじゃないか!パンチラ写真の1枚や2枚!」

奈々「駄目に決まってるでしょうが!特に殆どネコミミ巫女のじゃないか!」

地由良「そこがいいのよ!何も染まってない子の方がそそるものなのよ!」

奈々「そそるって、変態じゃないか!」

地由良「変態の何が悪いの?私は望むものの為に動いてるのよ!」

奈々「やってることが禍々しいわ!!」

 

 

 

 

この子は本当に個人趣味で来たらしい。

 

 

しかし、性格が他人が引くほどに酷い。

 

 

特に雨嘉への執着心がしつこいほど大きい。

 

 

GEHENAの手の者なら、捕らえるのが得策である。

 

彼女なら何か情報を持っているはずだが、この出歯亀を放っておくと色々と面倒なことになりかねない。

 

 

そう。主に雨嘉の身が危ないのだ。

 

 

 

 

奈々「とにかく、あんたを連行するよ。GEHENAの手の者なら野放しにはできない」

地由良「そうなるわね…でも私も手ぶらで来てるわけじゃないのよ」

奈々「!?」

 

 

 

 

地由良がそう言うと、何処からか大きめの光の輪が奈々に目掛けて飛んできた。

 

 

奈々「な!?」

 

 

 

奈々は後ろへ跳び、光の輪をかわした。

 

 

 

かわした光の輪は、いつの間にか弦から脱出した地由良の右手に戻った。

 

 

光が消えると、地由良の右手にはグリップの付いたリングに4枚の両刃が上下左右に付いた武器が握られていた。

 

リングの恥っ子にはマギクリスタルが付いていた。

 

見たところ固定されたコアのようだ。

 

 

 

 

奈々「CHARM!?」

地由良「そう。第三世代CHARM…フォースバイト!奇襲戦を想定して作られたGEHENA製のCHARMよ」

 

 

 

地由良の右手に持つフォースバイトの上下左右の刃はスライドして、上下2枚の両刃に変形した。

 

 

奈々は地由良のCHARMの変形を警戒し、2本のツインフェザーを抜いて構える。

 

 

 

 

 

地由良「戦うつもりは無かったけど、簡単に逃がしてはくれなさそうね」

奈々「当たり前だ!」

地由良「そう…だったら見せてあげるわ。私の戦いを…お得意の奇襲戦をね…!」

 

 

 

 

そう言って地由良は奈々に向かって走ってきた。

 

 

 

奈々(来るか…!)

 

 

 

相手の攻撃に備える奈々だったが、突然地由良が消えた。

 

 

 

奈々「また消えた…っ!」

 

 

 

奈々はそのまま後ろに回って何もないところに切りかかった。

 

すると何もないところで何かに当たり、金属音が響いた。

 

更に地由良が姿を現し、フォースバイトで受け止めていた。

 

 

 

 

地由良「後ろから来るってわかってたの?」

奈々「その手の奇襲は大体の者は後ろから攻めるからね。予想通りだよ!」

 

 

 

そのまま奈々はもう一本のツインフェザーで斬りかかるが、地由良はバックステップでかわす。

 

しかし奈々はそこから2本のツインフェザーによる連続攻撃で攻めていく。

 

避ける余裕がないため地由良はフォースバイトで次々と受け止めていく。

 

 

 

地由良「やるわね。けど二度目はどうかしら?」

 

 

 

再び姿を消す地由良。

 

 

 

地由良「流石の貴女でも、次の攻撃は防げないでしょ?」

 

 

 

と言って、地由良は次に左から攻撃しようとした。

 

 

 

奈々「!」

 

 

 

しかし、これも奈々のツインフェザーで受け止められてしまう。

 

 

 

地由良(防がれた!?)

 

 

 

 

 

偶然なのかと思い、今度は右に回り込んで攻撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしこれも奈々に受け止められてしまう。

 

 

 

地由良(また防がれた!?)

 

 

 

まぐれはこれ以上続かないと思いながら、今度は正面から仕掛けるが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり奈々のツインフェザーで受け止められてしまう。

 

 

 

地由良「どうして私の位置が分かるの!?」

 

 

 

地由良は奈々から距離を取り、インビシブルコートを解除し、姿を表す。

 

 

 

 

奈々「当たり一面を見ればわかるよ」

地由良「当たり一面……!?」

 

 

 

地由良は周囲を確認すると、無数の枯れ枝と落ち葉がたくさん積もっていた事に気付いた。

 

 

 

奈々「実はこの辺りは地面が殆ど埋るほど、枯れ葉がたくさんあってね、枯れ葉や枯れ木がへこんだところを私は見逃さなかったのよ。更にこの森は日の光が殆ど入らない程深い。跳んでいくには動きづらいこの場所じゃそのレアスキルが発揮できないでしょ?それに…」

地由良「それに…?」

奈々「そのレアスキル…消費の激しい奴だから、後5秒位しか使えないでしょ?」

地由良「!?」

 

 

 

奈々の予想に地由良は驚く。

 

 

奈々の言う通り、地由良のレアスキル…インビシブルコートの使用時に消費するマギの量は多く、長時間の運用は出来ない。

 

また、地由良自身のマギも残り少なく、インビシブルコートに全て使っても、約5秒が限界である。

 

逃げても、相手は追いかけてくるので戦闘は回避できない。

 

戦っても身体能力、戦闘技術は相手が上。

 

マギが万全の状態でも勝つのは難しいと、さっきの戦いで分かった。

 

 

その時、いつの間にか地由良の目の前にツインフェザーの刃先が向けられていた。

 

 

地由良「!?」

奈々「抵抗しない方が身のためだよ」

 

 

 

 

地由良は悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは積んだと……………

 

 

 

地由良(………万事休すか…)

 

 

 

地由良が諦めかけたその時………

 

 

 

 

奈々「?」

 

 

 

突如何処からか奈々の近くに手榴弾が投げられ、そこから広範囲のスモークが吹き出した。

 

 

 

奈々「!?」

 

 

 

スモークのせいで視界が見えなくなり、下手に動けなかった。

 

すぐに奈々はツインフェザーでスモークを振り払うが……

 

 

 

 

そこに地由良の姿は無かった。

 

 

 

奈々「いない…もう一人いたのか…」

 

 

 

周りを見張らしても地由良は完全に逃げ切っており、追跡は不可能である。

 

カメラもいつの間にか無くなっている。

 

スモークを撒いた後、僅かな時間で地由良を救い、撤退したのだろう。

 

多分相手が使ったのはレアスキル…縮地。

 

恐らく地由良を助けた後に縮地で脱出したのが予想出来る。

 

今回の件…接触したGEHENAのリリィに関しては、報告した方がいいだろう。

 

 

 

 

奈々「これは後で理事長に報告しないといけないな…」

 

 

 

そう思いつつ奈々は学園へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げた地由良は、縮地を使った黒いローブを羽織った人に担がれ、安全な場所に逃げきった後、その場に下ろした。

 

 

 

地由良「君が助けてくれるなんてね…海里ちゃん」

 

 

 

地由良がそう言うと、海里と呼ばれた黒いローブを羽織った者はそのローブを脱ぎ捨てる。

 

その姿は青いドレスを着た水色のミドルヘヤーの少女だった。

 

 

 

サンスベリア 浜方海里(はまかた かいり)

 

 

海里「………大丈夫?」

地由良「ええ。お陰さまでね…どうしてここに?」

海里「本部から連絡があった…今すぐ戻れって…」

地由良「戻る……あれはもう完成したの?」

海里「………わからない」

地由良「そう……まあいいわ。もうここに用はないし…いい相手と出会えたからね」

 

 

 

と言って.地由良は海里と共に帰還していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、学園の方では…

 

 

 

 

雨嘉「あわわわわ………!」

神琳「やりましたわね」

 

 

 

表彰台に上がった雨嘉と神琳に観客達が歓声と盛大な拍手を上げていた。

 

 

 

 

亜理奈「優勝は雨嘉さん&神琳さんペアです!!そしてコスプレ部門最優秀リリィに選ばれました!おめでとうございます!!」

 

 

 

投票の結果…観客の半数を雨嘉&神琳ペアが納めて一位を掴み取った。

 

 

二位は観客の3割を占めた梨璃&夢結ペアである。

 

 

そして三位は全体の1割を掴んだ衣奈&天葉ペアだった。

 

 

着てる服はクール&ビューティーなDJアイドルの衣装だったようで、これも人気があった。

 

 

 

鶴紗「奈々は何処に行ったんだ?」

二水「さあ…」

 

 

 

 

みんなが奈々が何処かへいなくなった事を考えていたら、その奈々が戻ってきた。

 

 

 

 

奈々「ごめん、遅くなった」

楓「本当に遅いですわよ。何をしてましたの?」

奈々「変態狩り」

楓「はあ?」

二水「昨日奈々さんが曲者と言った相手でしょうか?」

奈々「いや、別の相手だった。シエルリント女学薗の制服を着ていたけど、結局逃げられてしまった」

鶴紗「GEHENAの!?」

二水「シエルリントと言えばGEHENAガーデンの総本山と言われていますが、目立った真似らしてないはずです」

楓「しかし、変態とはどう言うことですの?」

奈々「その名の通り、コスプレ達の写真を取りまくってた。特に雨嘉ちゃんのが多かった」

二水「それで、どうするんですか?」

奈々「後で理事長に報告しようと思ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神琳「さあ雨嘉さん、最後に例のを…」

雨嘉「にゃあ~」

 

 

 

雨嘉は猫のポーズ、神琳は投げキッスのポーズを取った。

 

 

 

鶴紗「にゃあ!!?」

 

 

 

猫のポーズをする雨嘉に食い付く鶴紗。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の競技会も、中々盛り上がっていた。

 

 

 

 

歌部門では、コスプレ部門と同等の人数が参加し、それぞれ高いレベルの歌を披露。

 

 

中でもインパクトがあったのは、楓、二水、ミリアムの披露する歌である。

 

 

歌こそ良かったものの、優勝には届かなかった。

 

 

優勝したのは以外にも、結梨だった。

 

彼女の歌声は、透き通るほどの綺麗なもので、観客達の心を掴むほどで、大好評であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の部門は……

 

 

 

 

亜理奈「さあお次は新たに導入された部門…お笑い部門です!」

 

 

 

いつの間にか亜理奈の服装は着物を着ていた。

 

そして舞台上は三枚重ねた座布団がいくつか用意されていた。

 

 

 

二水「あれは大喜利でしょうか…」

楓「百合ヶ丘に相応しくないようなセットですわね」

神琳「大喜利は見るの初めてですわ」

雨嘉「うん。楽しみ」

鶴紗「私は興味ない…」

夢結「この部門では奈々が出るのだったわね」

梅「あはははは…梅は楽しみだゾ」

結梨「みんなは出ないの?」

梨璃「私達は無理かな…」

ミリアム「綾瀬もこの部門に参加するようじゃ。どれ程のものかお手並み拝見じゃな」

 

 

 

と、一柳隊の一同が話し合っていた。

 

 

 

亜理奈「これより参加者には、大喜利をやってもらいます!私がお題を出しますので、挙手制で指名された参加者は機知を利かせた答えを返す。私の判定の元、答えが良かったり、面白かった場合は座布団を与えます!逆に面白くない答えは座布団を頂きます。答えの出来次第では上げる枚数、取る枚数が変わりますので覚えておいてください。ただし座布団が無くなった参加者は脱落となります。座布団の合計が10枚を越えた人が優勝となり、お笑い部門の最優秀リリィに選ばれます!」

 

 

 

説明を終え、礼をする亜理奈。

 

 

 

亜理奈「それでは、参加者の御登場です!どうぞ!」

 

 

 

 

亜理奈の合図で参加者達が舞台裏から現れた。

 

 

 

出てきた参加者が制服で登場したのに対し、奈々は上下ピンク色のスーツを着てやって来た。

 

更には円形の黒メガネをかけていた。

 

 

 

楓「あの格好は…!」

神琳「本格的のようですね」

二水「これはもう期待大です!」

 

 

 

ミリアムが言ったように、綾瀬も参加者の中に紛れ込んでいた。

 

 

 

更にはこんな参加者も…

 

 

 

 

 

 

 

紫色のロングのおしとやかで優しい少女もそこにいた。

 

アールヴヘイムの天葉のシュッツエンゲル…若菜であった。

 

 

 

天葉「わ、若菜姉様!?」

楠美「若菜姉様もこの部門に!?」

衣奈「以外ね……」

 

 

 

 

役者が揃い、参加者は座布団の上に座り。亜理奈も席に座った。

 

 

 

亜理奈「さて、早速最初のお題を出します。お題はスーパーで出す新しい食品の名前です。それでは最初に奈々さん!」

奈々「はいよ」

 

 

 

奈々がなまったいい方で返事をして立ち上がる。

 

 

 

 

亜理奈「貴女が出した新食品は何ですか?」

 

奈々「楓の木をイメージしたカップラーメンです」

 

亜理奈「その食品のタイトルは?」

 

 

奈々「楓・ジョアン・ヌードル(ヌーベル)」

楓「ぶふぁー!!?」

 

 

 

と、どや顔で喋る奈々に楓が吹いてしまう。

 

 

 

鶴紗「だ…ダジャレ…」

梅「ハハハハハ…奈々、いいセンス持ってるナ」

 

 

 

奈々の出した答えで観客達は笑った。

 

そして亜理奈も笑った。

 

 

 

 

亜理奈「な、なるほど…効きました。奈々さん座布団1枚やってください」

奈々「よし」

 

 

 

座布団を持った座布団係の生徒がやって来て、奈々が座った座布団の上に更に座布団を1枚乗せた。

 

奈々は4枚重なった座布団に再び座った。

 

 

 

亜理奈「では次に…若菜様」

若菜「は~い」

 

 

 

次は若菜が立ち上がる。

 

 

 

亜理奈「貴女が出した新食品は何ですか?」

 

若菜「独自に栽培した若々しい菜の花です」

 

亜理奈「その食品のタイトルは?」

 

 

若菜「若菜の花(わか・なのはな)」

 

 

 

若菜の答えにみんなは「ほうー」と反応した。

 

 

 

 

亜理奈「なるほど…考えたつもりですが、もうちょっと捻りが欲しかったですね」

若菜「あらあら~」

 

 

 

反応はいまいちだったため若菜は座布団を貰えなかった。

 

若菜は座布団に座る。

 

 

 

 

亜理奈「それでは次は…綾瀬さん」

綾瀬「はい」

 

 

 

綾瀬が立つ。

 

 

 

ミリアム「ついに綾瀬の出番か…」

 

 

 

 

 

亜理奈「貴女が出した新食品は何ですか?」

 

綾瀬「レンヂでチンして食べれる本格中華料理食品です」

 

亜理奈「その食品のタイトルは?」

 

 

綾瀬「結梨んちー(ゆーりんちー)」

結梨「?」

 

 

 

綾瀬の返した答えで観客達は奈々の時より更に笑っていた。

 

 

 

亜理奈「な、なるほど…ゆ、油淋鶏(ゆーりんちー)と結梨ちゃんを掛けてですか…見事です。2枚どうぞ!」

綾瀬「にっ!」

 

 

やったと思い、にやっとした綾瀬。

 

 

2枚持ってきた座布団係が綾瀬の座っていた座布団の上に2枚重ねる。

 

 

 

奈々(やる……!)

綾瀬(私もまだ腕が鈍ってないね。腕は使ってないけど…)

 

 

 

 

その後も大喜利は続いていた。

 

 

 

亜理奈「最近誰か気になりましたか?」

 

奈々「二水ちゃんが夜遅く週刊リリィ新聞を作っていたのを見たんですよ」

 

亜理奈「どのような様子でしたか?」

 

 

奈々「まるで不眠不休(ふみ・んふきゅう)でしたね。二水ちゃんだけに」

二水「ブッ…!?」

梨璃「二水ちゃん!?」

 

 

 

今度は二水が吹き出した。

 

 

 

鶴紗「またダジャレ…」

神琳「中々新鮮でしたわね」

雨嘉「私は缶コーヒーで王ジョージアって言われた…」

楓「別の意味で酷いですわね」

 

 

 

最初のお題で奈々が雨嘉をネタにした答えを言ったが、雨嘉自身はそこまで気にしてはなかった。

 

 

 

亜理奈「最近誰か気になりましたか?」

 

若菜「楠美が友達と話してる時に笑ってたのよ」

 

亜理奈「どのような様子でしたか?」

 

 

若菜「クスクス笑ってたわ」

楠美「わ、若菜姉様…」

 

 

 

若菜の返した答えに楠美はぽかーん状態になり、観客達の反応はいまいちだった。

 

 

 

亜理奈「う~ん、ほのぼのした答えですがね…座布団1枚持っていってください」

若菜「あら、やっちゃったわ…」

天葉「本当に興味本意で参加したんだね…若菜姉様」

 

 

 

座布団係がやって来て、若菜の座布団を1枚取って去っていった。

 

 

 

亜理奈「最近誰か気になりましたか?」

 

綾瀬「ミリアムがフェイズトランセンデンスの練習をしていました」

 

亜理奈「どのような様子でしたか?」

 

 

綾瀬「反動で倒れてぐろっぴー(グロッキー)」

ミリアム「ぶふっ!!?」

 

 

 

ミリアムが吹き出した。

 

観客は盛大に大笑いしていた。

 

亜理奈も結構笑っていた。

 

 

 

亜理奈「ふふっ…ミリアムさんが倒れてぐろっぴーですか…ふふっ、流石。座布団2枚あげてください!」

 

 

 

新たに座布団が重ねられ、綾瀬の座布団はこれで7枚となった。

 

 

 

奈々(綾瀬ちゃん……出来る…!)

 

 

 

 

 

そして大喜利は後半戦に突入する。

 

 

殆どの参加者がいい答えを出せず、退場していって、残りは3人となった。

 

奈々は8枚。

 

綾瀬も8枚。

 

若菜は何と残り1枚。

 

ここまでギリギリ生き残っている彼女だが、次に座布団を持っていかれたら、若菜は脱落となる。

 

 

 

 

亜理奈「もっとも活躍するリリィと言えば?」

 

若菜「天樹天葉よ」

 

亜理奈「二つ名を付けるとしたら?」

 

 

若菜「天天(てんてん)」

天葉「ブッ…!」

 

 

 

天葉が吹き出し笑いをした。

 

そして観客達も笑った。

 

 

 

 

亜理奈「これはいい答えが来ましたね。座布団1枚です!」

若菜「やったわ!」

 

 

 

喜ぶ若菜。

 

座布団が残り1枚だったのでこれは彼女もうれしい。

 

若菜の座布団はこれで2枚となった。

 

 

が、他の選手達と比べたら普通であり、奈々と綾瀬の座布団はお互い8枚になっており、全く勝負にならない。

 

 

そして次は綾瀬の番。

 

 

 

 

亜理奈「もっとも活躍するリリィと言えば?」

 

綾瀬「レギンレイヴの田村那岐様だね」

 

亜理奈「二つ名を付けるとしたら?」

 

 

綾瀬「田村うなぎ(う那岐)」

那岐「ぶふっ!?」

 

 

 

遠くで、那岐の吹き出す声が聞こえた。

 

 

観客達は大笑いした。

 

 

 

亜理奈「面白いですけど、ここまで来るとキレが悪いですね。1枚あげてください」

綾瀬「1枚か…」

 

 

 

綾瀬の座布団はこれで9枚。

 

次を決めれば座布団が10枚になり、彼女が優勝する。

 

 

 

亜理奈「それでは奈々さん!」

奈々「合点だ!」

 

 

奈々が立ち上がる。

 

現在、奈々の座布団は8枚。

 

ここで2枚獲得しないと、次に綾瀬が確実に1枚手に入れてしまう。

 

これが優勝する為のラストチャンスである。

 

 

 

 

亜理奈「もっとも活躍するリリィと言えば?」

 

奈々「一柳隊の白井夢結さんでございます」

夢結「私?」

 

亜理奈「二つ名を付けるとしたら?」

 

 

 

亜理奈に言われた奈々は、ルナティックトランサーで髪を白くした夢結の姿の絵を出してこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「白髪夢結(しらがゆゆ)」

 

夢結「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!???」

梨璃「お、お姉様!!?」

 

 

 

 

 

夢結がこれまで以上に飲んでいた紅茶を吹き出した。

 

 

 

二水「し、白髪夢結…」

ミリアム「これは…」

楓「な、何と言うか……」

鶴紗「これまで以上に酷い答えだぞ」

梅「ハハハハハハハハハ……!!!!」

 

 

 

梅は大笑いし、雨嘉、神琳も耐えながら笑っていた。

 

 

観客達の方は、奈々の答えで完全に大爆笑していた。

 

 

 

 

 

亜理奈「こ…これは、クックッ…流石に、お腹がよじれそうです…お見事!ふふっ、奈々さんに…座布団3枚!」

奈々「やったぁ!!」

 

 

ガッツポーズをする奈々。

 

これにより、奈々の座布団が合計11枚になった。

 

 

つまり、奈々の優勝が決まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、同時に最悪の事態が奈々を襲った。

 

 

 

「奈々………」

奈々「!?」

 

 

奈々の体に寒気が走った。

 

 

 

周りを見渡すと…………

 

 

 

 

 

夢結がルナティックトランサーを発動し、目を紅く光らせ、髪を白くしていた。

 

更に右手にはブリューナグをブレイドモードの状態で持っていた。

 

お怒りの表情のその目線は、奈々に向けていた。

 

 

 

 

 

奈々「うおっ!?白髪夢結さん!」

夢結「誰が白髪夢結よ!!」

奈々「!!?」

 

 

 

夢結の気迫に奈々が恐怖する。

 

 

 

夢結「今日という今日は許さないわ…奈々!!」

 

 

 

夢結が奈々に襲いかかってきた。

 

 

 

奈々「やば!!」

 

 

 

危機感を感じた奈々はすぐに舞台から下りて一目散へ逃げていった。

 

 

 

夢結「逃がさない!!」

 

 

 

逃げる奈々を夢結が追いかける。

 

 

 

奈々「怖いイメージが無くなる分いいんじゃないですか!?」

夢結「あんな名前、逆に笑い者にされて嫌よ!!!」

 

 

 

奈々は校舎裏に逃げ込む。

 

夢結も奈々を追いかける為に校舎裏に入る。

 

 

 

すると、校舎裏の方で爆発音が聞こえた。

 

 

 

 

これを目の当たりにした観客達含むみんなは言葉が出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「………………と、ということで、座布団が10枚以上になった木葉奈々さんが優勝となり、お笑い部門最優秀リリィの称号が授与されます!!」

奈々「今喜ぶ余裕無いって!!」

夢結「待ちなさい!!!!」

 

 

 

亜理奈が閉めに入る中、奈々はまだ夢結から逃げ続けている。

 

 

 

 

雨嘉「二人、止めた方がいいかな…」

梅「いつもの事だから心配ないゾ」

神琳「ですね」

 

 

 

 

 

 

という事態もあり、戦技競技会はこれみて終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日……………

 

 

 

掲示板に、今回の週刊リリィ新聞が貼られていた。

 

 

 

内容は、競技会で最優秀リリィに選ばれた生徒達を中心に載っていた。

 

 

クラス対抗戦では…

 

1年の椿組…

 

2年の櫻組…

 

3年の槇若菜…

 

 

 

タイムアタックでは六角汐里、遠藤亜羅椰、木葉奈々の活躍する姿が載せられていた。

 

 

 

午後の的場倒しでは、槇若菜、天樹天葉、江川楠美のノルン三姉妹が…

 

エキシビションではリリィとしての初戦闘の一柳結梨の姿が…

 

 

コスプレ部門では、猫のポーズを取った雨嘉が大きく載せられており…

 

歌部門では再び結梨が載せられ…

 

 

最後のお笑い部門は、奈々の画像も大きめに載せられていた。

 

 

そして画像の上から、ある言葉が載せられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白髪夢結(しらがゆゆ)と……

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、奈々は夢結に会わないよう廊下を歩いていた。

 

 

 

奈々「危ない危ない…二水ちゃんのせいであの名が広がってしまった…」

 

 

 

奈々が言うあの名…白髪夢結の事である。

 

その名が張本人の二水が作ったリリィ新聞に載せられたことによって広がってしまったのだ。

 

今ごろ夢結は二水を狙っているだろう。

 

その内奈々にその矢先が向けられるのも時間の問題である。

 

 

 

 

奈々「早く逃げないと……ん?」

 

 

 

隣の理事長室から話し声が聞こえた。

 

気になったので奈々は理事長室のドアに耳を当ててみた。

 

 

 

百由「解析科から、結梨ちゃんのDNAの解析結果が届きました」

咬月「……うむ」

 

 

 

百由「彼女のDNAは…平均的な女性である事は確かです。が、何処か不自然で、何と言うか…平均的過ぎるんです。普通の人間は何処かしら偏っているのが当たり前なのに…」

咬月「要点を頼む」

 

 

 

百由は語った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百由「彼女はヒュージに由来する個体。と言うのが私の結論です」

奈々(見破った!?)

 

 

 

 

 

今まで結梨の正体を見抜いていたのは奈々と出雲の二人だけ。

 

黙っていたのは、GEHENAにその情報が漏れないようにするためだった。

 

しかし百合ヶ丘の解析科によって、その正体を見抜いてしまったようだ。

 

 

 

 

咬月「人化したヒュージと言う訳か…」

百由「…驚かれません?」

 

 

 

落ち着いた様子の咬月を見て問う百由。

 

その答えに咬月は答えた。

 

 

 

咬月「残念だが先手を打たれた…」

奈々「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咬月「研究機関GEHENAと、CHARMメーカー・グランギニョルが共同研究していた実験体の紛失を、国連に届け出た」

奈々「!?」

 

 

 

 

よりにもよって、GEHENAが国連に実験体の捕獲の件を依頼してきたのだ。

 

 

 

 

咬月「連中…彼等が言うには、彼女はヒュージから作り出した幹細胞を元に生み出された…人造リリィだそうだ」

百由「その表現、胸糞悪いです…」

咬月「可能なのか?」

百由「ヒュージのDNAは、多層源の無聴力を起こしていて、これまで地球上に現れた全てのDNA情報を備えていると言われています。その中には勿論、人の物もあって、箱舟に例える学者も居る程です。あぁ…まぁ…どうやったかは知りませんけど、行為としては可能です」

咬月「倫理を無視した完全な違法行為だ。しかも連中は、己共の不始末を晒してまで彼女の変換を我々に要求して来よった」

史房「…どうします?」

咬月「彼女が人でないとなると…学院は彼女を守る根拠を失う事になる」

百由「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々は理事長室のドアから離れた。

 

 

 

奈々(不味い……このままでは結梨ちゃんはGEHENAに引き渡されてしまう…それどころか、この学園も危ない…!!)

 

 

特に厄介なのが結梨を生み出したGEHENAに加担したCHARMメーカー・グランギニョル。

 

 

そしてその総帥は、今百合ヶ丘にいる楓・J・ヌーベルの父親でもある。

 

 

 

流石に彼女…楓が裏切ることは無いかもしれないが、グランギニョル総帥が彼女に命を下したら……

 

 

 

 

 

 

奈々(…………………GEHENA…あんたの思い通りには行かないぞ…!)

 

 

 

 

結梨と百合ヶ丘女学院を救うため、奈々は早速行動に移った。

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

 

 

二水「大変です!奈々さんが他校のレギオンと戦ってます!!」

夢結「そのレギオンってまさか…!」

 

 

 

next 木葉奈々の孤独な戦い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

登場人物紹介

 

 

高野亜理奈(たかの ありな)

 

放送部を担当する生徒で、藤組の1年生。

 

普段は落ち着いた様子で冷静なところがあるが、実況を演じる際にはハイテンションになる。

 

第三世代CHARM…トリグラフのカスタマイズ機を扱い、中距離戦闘を得意する。

 

雨嘉程ではないが、レアスキル…天の秤目を扱い、遠距離射撃もこなせる。

 

イメージ声優は藤村歩。性格を例えるなら東方アールグレイラジオの射命丸文見たいな感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

塔ノ木綾瀬(とうのき あやせ)

 

 

クジラ船で生まれたブルーガード所属の一級アーセナル。

 

彼女の作るCHARMはとても強力で、他社のCHARMは長期戦を意識し、全て強度重視にカスタマイズされている。

 

普段はのんびりした性格だが、戦闘になると冷静に対処しながら戦う。

 

彼女の専用CHARMはカイトシールドに似たイージス。

 

トップクラスの防御能力を持ち、ギガント級の攻撃にも耐えられる。

 

 

イメージ声優は五十嵐 裕美。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は同会社のリズムゲームネタを入れてみました。

また、大喜利ネタは自分なりに再現出来たと思ってます。

そして…白髪夢結(しらがゆゆ)(笑)。皆はどうでしたか?

次の話も完成まで長くなりますが、待っててくれるなら嬉しいです。

それでは次回を楽しみに!


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「12」木葉奈々の孤独な戦い

話の内容が纏まらず、最後の投稿から約2ヶ月かかってしまいました!
見てくれてたユーザー達にはすまないと思っています。

気が付けば、観覧数が5000を越えていました。
こんな作品を見てくれてありがとうございます!

今回の話は、ブーケ第9話を元に色々自分なりにアレンジしました。

それではどうぞ!



1.8 一部のキャラの文章を修正しました。



競技会で、奈々が遭遇したシエルリント女学薗の制服を着た謎のリリィ。

 

彼女はGEHENAの協力者だと告げていたが、彼女が行ったのはただの盗撮であった。

 

亜理奈にそのリリィの画像を見せると、彼女の名は柊地由良。シエルリント女学薗の2年生である事が分かった。

 

彼女から情報を聴き出せば、今後のGEHENAの行動を制限出来るだろう。

 

 

 

 

ところが彼女はその昨日の日に転校しており、転入先はイルマ女子美術高校と聞かされているが、転入先のガーデンからは、彼女が来るという話は無いと言う。

 

しばらくの間、身を潜む為の隠ぺい工作である。

 

今後、学園側としては彼女、柊地由良を警戒対象に入れる事となった。

 

 

 

 

 

 

そして学園には、もう1つの問題があった。

 

 

一柳結梨が、GEHENAに狙われている事である。

 

その理由は、彼女が普通の人間では無いこと。

 

エキシビションでの戦いの以上な上達ぶりは、人間の領域を越えていた。

 

そんなGEHENAは彼女を回収するために政府を味方に付けてきたのだ。

 

 

敵に回せば、学園が危ない。

 

危機は次第に迫りつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

競技会から2日目が過ぎ…午後4時、百合ヶ丘女学院の校舎の屋上にて……

 

 

 

梨璃「……!」

 

 

 

梨璃は髪切りハサミを持って、結梨の散髪に挑戦していた。

 

真剣な表情で結梨の髪を切ろうとするが、手が震えていた。

 

 

 

梨璃「う…動かないでね?結梨ちゃん!動いちゃダメだからね…!」

結梨「それ…フリなの?」

梨璃「フリじゃないよ!って、その言葉どこで覚えたの?」

結梨「奈々が見せたDVDで裸の人が熱湯風呂に入る所でそう教えてくれた」

梨璃「ぶっ!!?」

 

 

 

梨璃が吹いた。

 

 

 

梨璃「な、奈々ちゃん何を見せてるのーーー!!!!!!」

 

 

 

 

梨璃の奈々に対する怒りの叫びが響いた。

 

 

 

結梨「梨璃、落ち着け」

梨璃「はあ…はあ…うん、落ち着いた」

 

 

改めて結梨の前髪を切ろうとする梨璃。

 

 

結梨「切るんでしょ?難しくないよ」

梨璃「だ…だって、前髪だよ~?」

結梨「ちゃちゃっと済ませて朝練するんでしょ?ウフフ。くすぐったーい」

梨璃「ううーーー……」

 

 

 

と、幸せな二人の前に…奈々が現れた。

 

 

 

奈々「やあ、二人とも」

梨璃「あ、奈々ちゃん」

結梨「何しに来たの?」

奈々「実は、二人に用があるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、理事長室では………

 

 

 

 

 

高松「ヒュージ研究の国際機関GEHENAと、フランスに拠点を置くCHARMメーカー・グランギニョルは、捕獲したヒュージの体組織から幹細胞を作り出した。ヒュージのDNAには、過去この地球上に発生した凡ゆる生物のDNAが増幅して保存されていると言われている。彼等は人造リリィを作る為、その中から人の遺伝子を発現させようと試みた。今我々が保護しているのが、連中の言う実験体と言う訳だ。彼女はリリィでないとなれば、学院は彼女を匿う根拠を失うと言う事になる」

 

 

もし、彼女…一柳結梨がリリィではなく、ヒュージと断定されれば、彼女を匿い続ければ…百合ヶ丘女学院にもその責任を負わねばならない。

 

 

 

下手すれば…ここに暮らすリリィ達の居場所を失うことになる。

 

そしてここに住むブーステッドリリィ達も再びGEHENAの毒牙に会うだろう。

 

 

 

 

史房「我々に選択肢はないと言う訳ですね?出雲先生には申し訳ありませんが…」

 

 

 

もはや、結梨を手渡すしか、道は無かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そこへ…誰かが入ってきた。

 

 

 

眞悠理「大変です!理事長」

咬月「どうした?」

眞悠理「奈々さんが、朝早く長期の外出届を出して、梨璃さんと結梨さんを連れていきました!」

 

 

持ってきた3枚の外出届には、それぞれ奈々、梨璃、結梨の名前と、二泊三日の期間が書かれていた。

 

 

 

 

史房「な!?」

 

 

 

実は朝、奈々は散髪中の梨璃と結梨を誘って、外へ連れ出してしまったのだ。

 

 

 

 

咬月「……彼女の方から先手を打ってきたようだ…本当に機転の回る子だ」

史房「でも、何故…!」

咬月「昨日の話…彼女は扉越しに聞いていたそうだ」

 

 

 

奈々が盗み聴きをしてたことは咬月も知っていた。

 

 

 

眞悠理「すぐに呼び戻してきます!」

咬月「無駄だ。追いかけても彼女には追い付けない。携帯の電源も切っている」

 

 

縮地と鷹の目等、様々なレアスキルが使える奈々のマスカレイドは他のリリィでは出来ない隠密行動を可能に出来る。

 

縮地で逃げ切り、鷹の目で最短ルートを進む。

 

逃げ切るには最も有効なやり方である。

 

 

 

 

史房「どうしますか…現在GEHENAとグランギニョルが引き渡しを要求していますが…」

咬月「好都合だ。彼女のお陰で言い訳と時間が出来た。史房君、大至急百由君に伝えておいてくれ。結梨君が人間である証拠を用意してほしいと」

史房「はい。結梨さんと梨璃さんを連れていった奈々さんはどういたしましょうか?」

咬月「しばらく様子を見て、もし政府が動き出した時は争出動させる。それまで結梨君の事は彼女に任せよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

代わって奈々は梨璃と結梨を連れて、廃虚となった街に唯一無事だった映画館に着いた。

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん、ここって映画館?」

結梨「映画館?」

奈々「大きな画面で映像を見る場所…っていいかな…」

 

 

 

奈々が梨璃と結梨をここに連れてきた本当の理由は、二人の身を安全に確保する為である。

 

 

理事長室からこっそり聞いた話だと、結梨が見付かる直前、GEHENAの実験船がヒュージネストに異常接近していた事が確認された。

 

実験船は、ネストから発せられるマギを利用しようとしたものの…現れたヒュージの襲撃で沈んだ。

 

殆どの実験体は発現する事なく失われたが、1つだけは行方不明となっていた。

 

それが結梨であった。

 

現在、政府は結梨をヒュージと断定している。

 

引き渡せば、道具として扱われるだろう。

 

 

 

 

 

しかし、奈々はそれを許さない。

 

 

仲間のためなら、自分に何があっても構わない。

 

それが奈々のリリィとしての信念でもある。

 

学園には二泊三日の外出届を出している。

 

これなら政府にも言い訳が付けれるだろう。

 

とはいえ、相手はGEHENAとつるんでいる。

 

強行な手段で結梨を捕獲しようとするだろう。

 

その為なら防衛軍を出動させ、もしかしたら他校のガーデンにも要請を掛け、結梨捕獲の為に使ってくるだろう……

 

百合ヶ丘の方も今頃結梨の人間である証拠を準備してる頃だろう。

 

3日間もあれば、十分な証拠が揃い、結梨の捕獲も取り消すだろう。

 

そのためにもまずは梨璃と結梨の居場所を知らせないように身を隠させる必要があるのだ。

 

しかし梨璃と結梨に3日間も身を隠すのは精神的にも辛い。

 

そこで奈々は、沢山の映像が見れる映画館を隠れ所に選んだのだ。

 

 

 

 

ちなみに映画館に連れてきた理由はもうひとつある。

 

複数の映画を二人に見させることで、現在の状況を悟られないようにするためである。

 

廃虚と化した街周辺の電気はもう通っていないが、この映画館には自家発電出来る装置がある他、スタッフが避難の際に持っていかずに置いていったフィルムがいくつか置いてあるのだ。

 

中にはアニメのものまで含まれており、3日間の間、梨璃と結梨に見せるには十分である。

 

万が一の為に、二人にはCHARMを持参していてる。

 

 

 

 

 

 

梨璃「本当にここで泊まるの?お姉様を連れてきた方が…」

奈々「夢結さんは今回忙しいって言ってたし、他のみんなも用事があるって」

結梨「ほー」

 

 

 

 

 

もちろんこれは嘘であり、みんなには一切言っていない。

 

大人数だと、その分怪しまれる確率が上がってしまう。

 

特に一柳隊のメンバーは全員感覚がいい。

 

連れていかなかったのは正解だろう。

 

 

 

 

 

 

 

しかし油断は出来ない。

 

 

 

 

 

その理由は結梨である。

 

 

結梨は対象となる相手の近くで匂いを嗅ぐことで相手の悲しい、うれしいといった心理状態が分かる能力を持っているのだ。

 

競技会前に結梨はみんなの心理状態を匂いでわかっていた事を奈々は知っている。

 

出来るだけ気持ちを落ち着かせ、結梨から少し距離を取るようにして、こちらの心理を悟られないようにしなければならない。

 

 

 

こちらの考えがバレてしまうからだ。

 

その為結梨に注意しながら映画館で生活するのも重要になる。

 

 

 

 

 

ちなみにこの映画館には宿泊できるスペースがあり、泊まることも出来る。

 

 

 

建物の中は綺麗に整えられて、スタッフがいてもおかしくない程の状態だった。

 

 

 

 

梨璃「綺麗…」

奈々「結構酷かったから、片付けるのが大変だったよ」

 

 

 

 

 

昨日奈々がここを訪れた時、建物中は目茶苦茶になっており、綺麗に片付ける必要があった。

 

とはいえ、一人で映画館全体を片付けるのは実質無理な話。

 

 

 

 

 

 

しかし彼女はリリィ。

 

レアスキル…マスカレイドでインビシブルワンを派生させた縮地を使って、僅か1日で映画館内の殆どを綺麗にしたのだ。

 

 

 

奈々「付いてきて」

 

 

 

 

奈々は梨璃と結梨を巨大スクリーンのあるホールまで連れて行くと、奈々は一人で映写室に行き、映写機にフィルムをセットし、プロジェクターの電源を付けた。

 

すると、席に座った梨璃と結梨の目の前のスクリーンに映像が映し出された。

 

 

 

 

 

梨璃「うわあ……!」

結梨「ほー……」

 

 

 

 

 

二人は映画に釘付けになっていた。

 

奈々はその間に残りの映写機に次に見る為のフィルムを取り付けていく。

 

フィルムは1つで最大二時間の物もある。

 

この映写機は、片方の映写機のフィルムが終了すると自動的に次の映写機に切り替わるように出来ており、合計5台で最大10時間の映像を見る事が出来るのだ。

 

気を反らす時間としては十分である。

 

 

 

 

準備を終えたところで、奈々は次に映画館の全ての窓にカーテンを掛ける。

 

フライドポテト、ドリンク、その他のお菓子も店舗に用意。

 

これらは全て奈々の出費。

 

奈々がブルーガード時代に溜め込んだ給料を使って買ったものである。

 

 

 

 

 

 

 

更に寝室の掃除、片付け、シートの用意。

 

館内にアナウンスをずっと流し続けた。

 

 

発電機で使える電力はこれだけで十分である。

 

 

 

 

 

次に窓際のカーテンは全て閉める。

 

万が一、梨璃と結梨がトイレに行くときを想定して、外の様子を見せない為である。

 

ちなみに水道はまだ通っていたので助かっている。

 

トイレの方には窓が無いので奈々としては助かる。

 

 

 

 

 

そしておまけに、映画館全体に外の衝撃と音、外部からの察知を遮断するバリア装置を用意。

 

これは読書の為に綾瀬から貰った物を奈々自身が改造したものである。

 

綾瀬から基礎的なつくり方を教わってるので、映画館全体に掛けられる程の範囲の改良なら簡単にできる。

 

 

 

 

念のために、映画館の周りを瓦礫等でカーテンを開けたときの外の様子を見えなくする工夫を施した。

 

入り口内は新たにカーテンを増築し、入り口の外を見えなくさせる。

 

 

 

 

 

 

そして最後に、入り口を瓦礫で埋め尽くしておく。

 

これなら誰が見ても映画館に人がいるとは考えないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

これで準備は整った。

 

 

 

奈々は映画館から離れて、周囲を確認する。

 

梨璃と結梨には、映写室にいるけど絶対に入らないでと念を押したので問題ない。

 

携帯は場所が探知されるため電源を切っている。

 

当然、梨璃と結梨は現在携帯を持たせていない。

 

 

 

 

 

奈々は映画館から離れた場所へ向かう。

 

 

 

奈々が外に出た理由は、周囲の偵察である。

 

 

まだガーデンから出て数時間しか経ってないが、政府がすぐにガーデンに要請することもありえるのだ。

 

 

まだ政府は、こっちが何処へいるのかを知らないが、ここに来る可能性も無くはない。

 

 

 

 

奈々はマスカレイドからの鷹の目を使って周囲の状況を確認した。

 

 

 

二水のと比べて索敵範囲は劣るが、それでも周囲の確認は十分見れる。

 

念のために自信も隠れている。

 

 

 

レアスキル…鷹の目は高いところから真下に見える範囲しか見れない。

 

ヒュージぐらいのサイズは多少の障害物でも隠れないが、人間のサイズなら障害物に隠れたり、建物の中に入るなどすればこのスキルは役に立たない。

 

 

周りには、防衛軍やリリィらしい姿はいない。

 

今のとこは安全だが、油断は出来ない。

 

しかし奈々の実力なら防衛軍だろうがリリィだろうが問題なく追い払うことが可能だろうが…

 

 

 

 

奈々「さすがに他のリリィとの戦闘は避けたいなぁ」

 

 

 

 

 

正直な話…戦闘は避けたい奈々である。

 

 

ヒュージと心通わす相手と見なす事は、人類にとっての禁忌でもある。

 

ヒュージと同じマギを操るリリィもまた、1つ間違えばヒュージと同じ脅威になると捉え兼ねないのだ。

 

下手したら、人とリリィが争う事態は絶対に避けられない。

 

 

 

 

 

 

と、考えながら奈々は周囲を警戒しながら身を隠していた。

 

 

 

後は学園側に任せるしかない。

 

結梨が人間である証拠をつかんで政府を説得するまで、奈々は耐えることぐらい…

 

ここはじっとしていくしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

とはいえ、流石に梨璃と結梨を心配させるわけにはいかないので、7時ぐらいで映画館に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲の警戒から数時間後…辺りはすっかり暗くなり、時計は7時を過ぎていた。

 

今回の警戒で、軍隊、リリィ等の姿は確認出来なかった。

 

奈々は今日の警戒を終え、映画館に戻り、梨璃と結梨の元へ行った。

 

瓦礫は少しどかして中に入り、再び瓦礫で入り口を塞いだ。

 

 

 

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん、何してたの?」

奈々「ちょっと使えるものを探してた」

梨璃「私も手伝った方がいいのかな?」

奈々「いいっていいって。さあ、食事にしようか」

 

 

 

 

 

 

梨璃と結梨の元へ戻った奈々は、封鎖されている倉庫をあさっていたと告げた。

 

これは嘘ではなく、監視の合間に映画館に戻り、本当に倉庫を一時間程あさってたのだ。

 

 

 

 

更に、奈々は事前に喫茶店として使われていた場所を綺麗にして、夜に戻ってからはおかずを沢山作り、ビュッフェが楽しめるよう並べておいた。

 

 

 

 

梨璃「すごい…」

結梨「沢山ある…」

 

 

 

 

スクランブルエッグに肉野菜炒め、カレーにバターコーン、唐揚げにコロッケ、コンソメスープにグリーンサラダと、全てを銀食器に盛り付けていた。

 

 

飲み物はオレンジジュースとアイスティー、いつもの紅茶も設置。

 

この映画館内にある喫茶店の厨房は少し広かった為、奈々は一度に多くの料理を早くこさえられる事が出来たのだ。

 

 

 

後からやって来た梨璃と結梨はこのビュッフェ方式に並べられた料理を見て大好評。

 

 

 

 

奈々「それじゃあ好きな料理を乗せていいよ!」

 

 

 

 

早速プレートをトレイに乗せて、おかずを選ぶ二人。

 

奈々も一段落したところで食事にありつける。

 

3人揃って円形のテーブルを囲み、夕食を楽しんだ。

 

このあと梨璃と結梨を寝室に行かせて寝かせた後、片付けは奈々一人で行った。

 

寝室は窓があったが、奈々が事前に瓦礫等で外の様子を見せないようにしたので問題ない。

 

 

片付けを済ませた奈々は、毛布を持ってロビーのソファーで寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日の朝…

 

 

奈々は朝食の準備として店で買っておいたパンとバター、ジャムやサラダ、昨日のコンソメスープとシチュー等をテーブルに並べ、準備が出来た所で梨璃と結梨を起こし、食事を取った。

 

 

 

 

結梨「今日は何の映画を見せてくれるの?」

奈々「今回はコメディ系だよ」

 

 

 

 

そう言って二人をホールへ送る奈々。

 

そして映写機にフィルムをセットして、動かした。

 

 

二人が映画に夢中になったところで、奈々は外へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「………………これは予想外…」

 

 

 

 

 

 

 

 

鷹の目で周囲を探索したところ、リリィらしき少女がこの廃虚辺りに現れたのだ。

 

 

しかも10人。

 

 

その内5人は青いスカートに白の学ランを着たエレンスゲ女学園の制服を着ていて、残りの5人は赤一色の神庭女子藝術高校の制服を着ていた。

 

 

 

更にそのリリィの中には覚えのある者もいた。

 

藍色のショートカットの少女と、銀髪のロングの少女である。

 

 

 

 

奈々「よりにもよって一葉ちゃんと叶星さんか…ということはあの二組はやはり…」

 

 

 

 

奈々は下北沢で一緒に戦った相澤一葉、今叶星が仲間を連れてやって来た事に気付いた。

 

二人が連れている仲間のリリィはレギオンのメンバーである。

 

そして、あの二組はエレンスゲ女学園のトップレギオン…ヘルヴォルと神庭女子藝術高校のトップレギオン…グラン・エプレ。

 

 

 

どうやら政府は、東京支部のガーデンまで要請してきたようだ。

 

裏で操っているGEHENAも、早めに結梨を捕獲したいらしい。

 

 

 

奈々「流石にここに留まるのはまずいか…場所を変えるか…!」

 

 

 

二組のレギオンを映画館付近に近付かせると気配で梨璃と結梨がいることがバレる。

 

奈々はすぐに二組のレギオンの近くまで向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

代わって、ヘルヴォル、グラン・エプレの方は…

 

 

 

 

一葉「上からの話によると、奈々さんはヒュージと思われる少女を連れて休暇に行ったと言いましたね」

 

 

 

藍色のショートカットの少女、一葉はヘルヴォルのメンバーを連れて百合ヶ丘付近の廃虚にやって来た。

 

 

 

エレンスゲ女学園 1年生 ヘルヴォル リーダー 相澤一葉(あいざわ かずは)

 

CHARMは下北沢で使っていたグングニル・カービンに代わって、シアンカラーの大きな方刃の武器、プルトガングを持ってきた。

 

新品同様の無改造機である。

 

 

 

 

「そのヒュージと決められた子を捕獲して政府にあけ渡すのが今回の任務なんだよね?」

 

 

 

 

気楽に構えた飴色のウェーブがかかったポニーテールの少女が一葉に続いて喋る。

 

 

 

エレンスゲ女学園 2年生 ヘルヴォル 飯島恋花(いいじま れんか)

 

CHARMは2つの刃が付いた攻撃特化のブルンツヴィーク。

 

 

 

そのCHARMを見た奈々は気を引き締めた。

 

 

 

 

奈々「よりによってあのCHARMか…茜さんと模擬戦した時はてこずった事もあったなぁ…」

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

「クシュン!」

 

 

 

奈々達の捜索に向かったアールヴヘイムの中で、肩の下まで伸びた後髪を左右に分けて髪留めをして前に出しだ、藍色のミドルカットの少女がくしゃみをした。

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 アールヴヘイム サブリーダー 渡邉茜(わたなべ あかね)

 

 

 

月詩「あかねえ、風邪なの?」

茜「出撃前のチェックは問題なかったのだけど…」

 

 

 

 

と、茜は呟いてた。

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

 

で、再び視点を奈々に戻す。

 

 

 

 

 

「今回の任務…良いものではありませんね」

 

 

 

お姉さんな感じの濃いめのブラウンのロングの少女が更に続けて話す。

 

 

 

 

エレンスゲ女学園 2年生 ヘルヴォル 芹沢千香瑠(せりざわ ちかる)

 

 

CHARMは珍しい槍型の武器…ゲイボルグである。

 

ちなみにこれは先行量産機だが、高性能である。

 

 

 

 

「私は…出来れば奈々と戦いたくない…」

 

 

 

クールな印象の赤のボブカットの少女が言う。

 

 

 

 

エレンスゲ女学園 2年生 ヘルヴォル 初鹿野瑤(はつかの よう)

 

 

CHARMは巨大な両刃の剣の武器…クリューサーオールである。

 

これも先行量産機なのだが、高級仕様になっており、扱いやすさと多彩な攻撃が可能となっている。

 

 

 

 

「らんも…奈々とは戦いたくない…」

 

 

 

 

見た目と雰囲気が幼い灰色のミドル髪の少女が最後に言う。

 

体格が幼く、着ている制服は彼女には大きすぎて、制服の袖が垂れ落ちている。

 

 

 

 

エレンスゲ女学園 1年生 ヘルヴォル 佐々木藍(ささき らん)

 

CHARMは自身より大きな斧の武器…モンドラゴン。

 

攻撃特化し過ぎたピーキー仕様で、盾として使える程頑丈。

 

 

 

叶星「私もよ。今回の任務は学園側も納得がいかないと言ってたわ」

 

 

 

銀髪のロングの少女…叶星がヘルヴォルの会話に入る。

 

 

 

 

神庭女子藝術高校 2年生 グラン・エプレ 隊長 今叶星(こん かなほ)

 

CHARMは下北沢で使っていたダインスレイフ・カービンに代わって、大型のサーベルを思わせる武器…クラウ・ソラス。

 

これは先行量産機である。

 

 

 

 

「でも、今政府は東京地区の全てのガーデンに要請をかけてるって言っていたわ」

 

 

 

 

ミステリアスなイメージを持つ金髪の少女が叶星に続いて喋る。

 

 

 

 

神庭女子藝術高校 2年生 グラン・エプレ 宮川高嶺(みやかわ たかね)

 

CHARMは巨大な両刃の武器…リサナウト。

 

パワータイプのリリィ専用のCHARMで、一撃必殺を想定して作られた物で、先行量産機でありながら性能は高い。

 

 

 

 

「でも、もし…奈々さんと戦うことになったらどうしましょう…」

 

 

 

少々おろおろしてるうぐいす色のロングの少女が言う。

 

 

 

 

 

神庭女子藝術高校 1年生 グラン・エプレ 土岐紅巴(とき くれは)

 

 

CHARMは独特な形状の刃を持つ武器…シュガール。

 

テスタメントの弱点である防御能力の定価をカバーするための機能を詰め込んだ物で、強度もいい。

 

 

 

 

「かといって、引くなんて出来ないわ」

 

 

 

 

ツインテールのピンク色の髪の少女が強気な口調で紅巴に言う。

 

 

 

 

 

神庭女子藝術高校 1年生 グラン・エプレ サブリーダー 定盛姫歌(さだもり ひめか)

 

CHARMは大剣の武器…デュランダル。

 

超高速変形構造とスタミナを回復する力場を発生させる高級CHARMである。

 

ユニークCHARMが量産化された物だが、高性能である。

 

 

 

 

「考えてもしょうがないよ。とりあえず探そ?」

 

 

無邪気で好奇心溢れる、薄紫色のお団子ヘヤーのロングの少女が言う。

 

 

 

 

神庭女子藝術高校 1年生 グラン・エプレ 丹羽灯莉(たんば あかり)

 

 

CHARMは射撃に優れたランス型の武器…マルテ。

 

金箱弥宙の持ってるCHARMと同じ量産化された物である。

 

 

 

 

叶星「その通りね。他のリリィ達と戦闘になるのは避けないと…」

高嶺「遠くには行ってはいないだから恐らくこの廃虚の何処かにいるはずよ」

一葉「では手分けして探しましょう。グラン・エプレは西の方を、私達ヘルヴォルは東を探索します」

叶星「わかったわ一葉。みんな行きましょう」

 

 

 

 

ヘルヴォルとグラン・エプレは二手に別れて探索を開始した。

 

 

 

 

その様子を目の当たりにした奈々は…

 

 

 

 

奈々(不味い…散開して探索されたら対処が難しくなる…!)

 

 

 

カモフラージュしてるとはいえ、建物自体は大きく目立つ。

 

更に人数が多いと尚更不味い。

 

もし建物を発見すれば中を探索する事は逃れられない。

 

奈々は事前に作った手の平サイズのドローンをリュックから取りだし、スイッチを入れる。

 

 

 

 

 

このドローンには、予め奈々自身のマギを込めたカプセルが内蔵されており、ヒュージ戦での囮に使えるように取っておいた物である。

 

小型かつ高性能のモーターとリチウムバッテリーを搭載し、最大2時間の飛行が可能。

 

今回奈々は、リリィ達の散開を封じるために使うことにした。

 

 

 

 

 

 

奈々はドローンを飛ばすと、ヘルヴォル、グラン・エプレから離れた所に飛んでいった。

 

 

すると、ヘルヴォルとグラン・エプレのリリィ達が気付いた。

 

 

 

 

一葉「!?遠くからマギの気配が…!」

叶星「こっちから気配を感じたわ!」

千香瑠「この気配…森の方へ向かっているわ」

恋花「すぐに追いかけるよ!」

高嶺「もしかしたら梨璃さんもそこに…!」

 

 

 

 

ヘルヴォルとグラン・エプレは奈々の思惑通り、マギの気配を追うように街の外へと走っていった。

 

当然そのマギの気配があるドローンは街の外の森へと進んでいった。

 

 

 

 

 

因みにバッテリーが残り4分の1まで減ると、カプセル内のマギが消えるようになっている。

 

ドローンが森の奥まで進めば、丁度いいタイミングでバッテリーが大きく消耗し、気配を消せる。

 

そうなれば追ってきたリリィ達は見失ったターゲットが別の場所へ逃げていったと思い、この場を離れるだろう。

 

尚、ドローンは迷彩塗装透明のプラスチックを使用しており、他の地形に溶け込みやすく、スピードもけっこう早く、リリィ達に追い付かれる心配はない。

 

また、ドローンには内蔵されたミニコンによって制御され、常に障害物の多いエリアを通ることで相手の視界から隠れやすい。

 

 

 

 

 

何はともあれ、ヘルヴォルとグラン・エプレはこの街から離れていくだろう。

 

特にあの2つのレギオンだけは戦闘を避けたい。

 

 

 

奈々「ふう…とりあえずは安心かな…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が安心ですの?」

奈々「!?」

 

 

 

安心したのも束の間、聞き覚えのある少女の声が奈々の耳に響いた。

 

悪い予感を感じ、後ろを振り向くと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには青い服をまとい、蝶の髪飾りを付けた赤みのかかった紫のロングの少女がいた。

 

腰には、グングニルに似たCHARMを付けていた。

 

 

 

 

 

御台場女学校 2年生 ロネスネス 船田純(ふなだ きいと)

 

 

 

 

奈々「げっ!!純さん!?」

純「げっ!とはなんですのげっ!とは!?それと私は黒ひげの武将じゃありませんわ!」

 

 

 

 

 

後から二人のリリィもやって来た。

 

 

 

一人は赤のスカートに白と青の和風の戦闘服を着た銀髪の少女。

 

露出が若干増えてるのは置いといて…奈々の知ってる人である。

 

 

 

 

御台場女学校 2年生 ロネスネス 船田初(ふなだ うい)

 

CHARMはグングニル・カービンから大剣型のネイリングに変えていた。

 

ユニークCHARMにして、B型兵器である。

 

 

 

 

もう一人は、純に似た服を着たマゼンタカラーのロングの少女。

 

奈々の知らない人である。

 

 

 

 

御台場女学校 1年生 ロネスネス 司馬燈(しば ともしび)

 

CHARMはヴィンセツ・リーリエ。

 

その形状は競技会で披露された実験機…ヴァンピールに似ていた。

 

 

 

奈々「初さん!と…後一人誰?」

燈「燈と申しますわ!貴女と同じ1年生ですのよ。純お姉様のいるところには全てわたくしがいますので!お見知り置きを!」

奈々「お、おお…よろしく…」

 

 

 

燈の姿に奈々は引き気味になっていた。

 

何か、マゾっ気のような何かを感じていたのだ。

 

奈々はこういう人は苦手のようだ。

 

 

 

しかし奈々は、彼女が純をお姉様と呼んでいる事に疑問を持った。

 

 

 

奈々「あの、初さん。御台場女学校って姉妹の契りを交わす制度ありました?」

 

 

 

 

御台場女学校には「血誓」と呼ばれる制度がある事を奈々は知っていた。

 

シュッツエンゲル制度と似ているが、こっちは家族としての契りを結ぶ形になっている。

 

 

 

初「ありませんわ。ただ彼女がそう言ってるだけですわ。気にしなくていいですわ」

奈々「左様ですか」

純「それよりも、どうしてこんな廃虚にいますの?」

 

 

 

純の鋭い質問に奈々は心の中でギクッ、と感じた。

 

 

 

純「その反応は図星みたいですわね。今回ヒュージと呼ばれたリリィをかくまわせた犯人が」

 

 

 

 

 

こちらの行動がバレてる…!

 

 

隠し通したいところだが、相手はあのロネスネスの船田純。

 

嘘をつけても確実にバレるのは目に見えている。

 

何より、相手はCHARMを手に取り、戦闘体制に入ろうとしていた。

 

 

 

 

 

戦う以外の選択はない。

 

相手が3人なら分散することは無いだろうと思い、奈々は背中に付けていた2本のツインフェザーを抜いた。

 

 

 

 

奈々「……だとしたら、どうします?」

初「奈々さん!?」

純「もちろん、力づくでも聞かせてもらいますわ」

 

 

 

純は奈々が戦闘体制に入ろうとした所を見たと同時にCHARMの柄を持った。

 

 

 

 

奈々「そう簡単にやれると思わないでください!」

燈「あら~貴女一人で私達3人を相手にしますの~?」

純「いえ、ここはわたくし一人で相手にしますわ。姉様と燈は見届けてもらいますわ」

奈々「?」

 

 

 

一対一で戦うと言った純の言葉に奈々は疑問を感じた。

 

 

彼女達の目的はヒュージ扱いにされた結梨の捕獲のはず…

 

そして恐らく、誘拐犯にされた奈々とは複数で戦うように言われてるだろう。

 

それだけ奈々の強さは政府からも恐れられているのだ。

 

なのに純は奈々と一対一で戦おうとしてくる。

 

そして残った二人にはこちらの戦いを見届けてもらうと…

 

一体何を考えてるのか……

 

 

 

 

 

今考えても答えは出ないため、まずは目の前の状況を片付けなければならない。

 

 

 

 

そう……船田純を相手にすることである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両者が突進し、互いのCHARMをぶつけ合う。

 

純は柄を引き抜き、奈々のツインフェザーと鍔迫り合いに入る。

 

 

CHARMから抜かれたのは、日本刀に似た武器であった。

 

奈々はそのCHARMに覚えがあった。

 

 

 

奈々「第三世代CHARM…フルンティングですか。その所有者が純さんとは驚きましたよ」

 

 

 

鍔迫り合いから引き、CHARM同士の叩き合いに入り、再び鍔迫り合いに入る。

 

 

 

純「貴女こそ、今回は違うCHARMのようですわね。カナベラルとブルメリアでしたっけ?あのCHARMはどうしましたの?」

 

 

 

再び弾き返し、お互い距離を取る。

 

 

 

奈々「まだ修理中でしてね。でも貴女と戦うなら、このCHARMで十分ですけどね!」

 

 

 

奈々がツインフェザーの連撃を仕掛け、純は的確にフルンティングの刀で受け止めていく。

 

 

 

純「舐められたものですわね…」

奈々「別に舐めてませんよ。純さんの実力は私も知ってますからね」

 

 

 

そう言って奈々は攻撃の速度を上げてきた。

 

 

 

純「まあいいですわ」

 

 

 

純は隙を見て、刀による横凪ぎで奈々のCHARMを弾き返し、そのまま連撃を仕掛けるが、奈々はすぐに体制を整え、左手のツインフェザーで受け止める。

 

 

 

 

純「ロネスネス設立から間もない日、突然現れたヒュージの群れに、ブルーガードだった貴女が応援に駆けつけ、一人で群れの3分の2を殲滅させた」

 

 

 

奈々は左手のツインフェザーで受け止めている純の刀を左へ流し、右手のツインフェザーで切りかかるが、咄嗟に純はバックステップを決めて回避する。

 

 

 

純「その後の模擬戦ではヘオロットセインツの椛、楪を負かし、わたくしも貴女に敗れた」

 

 

 

再び距離を縮め、袈裟斬りを仕掛ける純。

 

奈々も攻撃して、相手の威力を相殺する戦法に入る。

 

 

 

 

奈々「結構接戦だったけどなぁ」

純「それはどうでもいいことですわ。わたくしは今度こそ勝つ…木葉奈々、貴女に!」

 

 

 

 

3度目の鍔迫り合いに入る二人。

 

 

 

 

奈々「なるほど…でも私も早々勝ちを譲る気はありませんからね!」

 

 

 

再び弾き返し、両者距離を取る。

 

 

 

 

純「そのへらず口…言えなくしてあげますわよ!」

 

 

 

ここで純がルナティックトランサーを発動した。

 

純の周りにマギが集まる。

 

 

 

 

奈々「ルナティックトランサーですか…なら私はこれだ!」

 

 

 

 

奈々はレアスキル…マスカレイドを経由し、縮地を発動した。

 

 

 

燈「縮地!?」

初「ルナティックトランサーじゃないの!?」

純「縮地でルナティックトランサーに勝てますの?」

奈々「一対一ならこっちの方が優秀ですから。特に二刀流なら」

 

 

 

二刀流である分、攻撃の手数は多い。

 

そこに縮地等のスピード系のスキルが加わると、更に手数が増える。

 

奈々の身体能力なら、相手がルナティックトランサーを使って襲い掛かってきても互角に戦える為、手数で圧倒する戦法として、縮地を選んだ。

 

 

縮地ならルナティックトランサーよりマギの消費が少ないので、長期戦に持ち込めば相手のマギ切れを狙えるのだ。

 

マスカレイドの特性上、派生させたレアスキルの性能は低いが、奈々のマギの量ならその不足分を埋められる。

 

 

 

 

純「そう上手く行きますかしらね!」

 

 

 

ルナティックトランサーを発動した純が突進してきた。

 

奈々も正面から向かっていく。

 

 

 

そして至近距離に入ると、そのまま姿を消す。

 

 

 

純「!?」

 

 

 

 

純が奈々が突然消えた事に驚く直後に、奈々が純の背後に現れ、ツインフェザーを降り下ろすが…

 

 

 

すぐに純は体を右に捻らせながら、刀でツインフェザーを受け止めた。

 

 

 

 

奈々「!」

純「消えた途端、後ろに回るのは予想できますわよ」

奈々「確かに」

 

 

 

すぐに弾き返し、今度は再び互いのCHARMによる乱舞に入る。

 

そこから奈々は縮地のスピードを生かした突進攻撃で圧倒させるが、純はそれを刀で全て防いでいく。

 

 

 

隙が出るまでこのまま押しきる奈々だが、純が奈々の隙を見つけ、速度を重視した横凪ぎを食らわせる。

 

 

 

しかし奈々は左手のツインフェザーで刀を受け止め、右手のツインフェザーで追撃にかかる。

 

 

純もそれに反応し、後ろに跳んでかわした。

 

 

 

純「中々やりますわね。下北沢の時より動きが良くなってますし」

奈々「純さんこそ、ルナティックトランサーをコントロール出来てる上に、その刀捌き…前より動きが見違えてますよ」

純「誉めても何もあげませんわよ」

奈々「結構ですよ」

純「さて、そろそろ決めましょうか…!」

 

 

 

CHARMを構える。

 

対して奈々もCHARMを構えた,

 

 

 

奈々「いいっすよ。こっちもそう考えてたところですから!」

 

 

 

そしてお互い正面から向かっていく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、奈々の足下に何かが着弾した。

 

 

 

 

奈々「!?」

 

 

 

 

奈々は足を止め、純も何かに気付き、足を止めた。

 

 

 

弾が飛んできた方を見ると、建物の上にヘルヴォルとグラン・エプレのリリィ達がいた。

 

 

先程飛んできた弾は一葉のCHARMからだったようだ。

 

 

 

 

一葉「こんなオモチャですっかり騙されましたよ」

 

 

 

一葉の左手には、奈々が飛ばしたドローンがあった。

 

 

 

奈々「バレるの早!?」

灯莉「なんか、追いかけてる奈々の色が薄く見えて変だったんだよね」

恋花「灯莉のお陰でその正体がドローンだって気付けたって訳」

奈々「な!?」

 

 

 

 

奈々は大きな誤算をした。

 

 

灯莉は相手のマギの色が見える特殊な能力の持ち主であり、遠くにいる者が誰なのかをマギの色で確認できるのだ。

 

ドローンに積んであった奈々のカプセルに入ってるマギは量が少なく、灯莉はそれが薄い色だと感じとり、ヘルヴォルとグラン・エプレのリリィ達はそれがドローンだと見破ったのだ。

 

 

奈々は感性のいい灯莉の行動を警戒してなかった。

 

更に奈々は前に灯莉と会っているため、灯莉自身は奈々のマギを覚えている。

 

ドローンに入ってるマギに違和感を覚えるのは明白であった。

 

 

 

 

とはいえ、状況は悪くなった。

 

 

 

 

 

叶星「奈々さん…貴女がここにいるということは、梨璃さん達はこの辺りにいるのね?」

奈々「!?」

 

 

 

完全にバレた…!

 

 

ヘルヴォルとグラン・エプレが戻ってきたってことは、奈々がこの場にいる理由に気付いている事である。

 

 

ドローンを飛ばしたのが裏目に出てしまったようだ。

 

 

 

 

高嶺「相手は一人…どうする?」

一葉「わざわざ全員で掛かる必要はありません。数人はこの辺りの探索をお願いします」

 

 

 

 

ここで数人逃がせばいくら奈々でも対処が出来ない。

 

奈々は覚悟を決めて、左手のツインフェザーをヘルヴォル、グラン・エプレの方へ向ける。

 

 

 

奈々「知られた以上は簡単には逃がさないよ…全員まとめて相手にしてあげるよ。掛かってこい!」

 

 

 

 

ここでこの二組を逃せば梨璃と結梨を見つけられる為、ここはヘルヴォル、グラン・エプレをまとめて全員を相手にしなければならない。

 

しかし、下手に戦うとこちらの陽動がバレて一部のリリィが探索に向かってしまう。

 

更に相手は合計13人。

 

いくら奈々が人並み以上に強くでも、相手はトップレギオンに選ばれたリリィ。

 

まとめて相手にするのは難しく、長引けば数の暴力に押されてしまい、こちらが力尽きるだろう。

 

 

 

 

まさに最悪の状況であるが、奈々は引く気はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とそこへ純が…

 

 

 

 

純「わたくしを差し置いて何言ってますの?貴女達も私と奈々の手合わせを見ておくといいですわ。もちろん、手出しは無用ですわ」

奈々「ええ!?」

 

 

 

突然純がみんなに一対一で戦う所を見るよう声を掛けてきた。

 

 

 

初(まさか純…!)

燈(なるほど…)

一葉「純様、そんな余裕は…!」

純「一人のリリィ相手に袋叩きなんて、プライドが許しませんわ」

高嶺「ならせめて、居場所だけでも聞いた方が…」

純「そんなの倒してからでも遅くありませんわ」

姫歌「いや、それじゃあ遅いんですけど!」

純「いいから黙って見てなさい!」

一葉「ですが…」

叶星「聞く耳無いみたい」

藍「ねえ瑤、本当に奈々と戦わなきゃいけないの?」

瑤「分からない……」

紅巴「私、戦いたくありません…!」

灯莉「ボクもだよ。奈々からは明るい色しかないし…」

千香瑠「ごめんなさい…私もです」

一葉「千香瑠様!?」

恋花「一葉どうする?これじゃあ捕獲どころじゃないよ」

 

 

 

 

ヘルヴォル、グラン・エプレの殆どのリリィ達も奈々と戦う事をためらっている。

 

 

 

 

二人の戦いを邪魔するものはこれでいない。

 

初と燈も、二人の戦いを見届けるようだ。

 

 

 

 

 

純「さて、仕切り直しと行きましょうか?」

奈々「お望みなら、望むところです!」

 

 

 

再びCHARMを構える二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでよ!」

 

 

 

突然目の前に、焦げ茶色の制服をまとい、ピンクのリボンでポニーテールにした黒髪の少女が現れ、二人の戦いを止めた。

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 2年生 アイアンサイド 福山・ジャンヌ・幸恵(ふくやま・じゃんぬ・さちえ)

 

 

 

 

奈々「幸恵さん!?」

一葉「幸恵様!?」

純「何のようですの?」

幸恵「戦いはここまでよ」

奈々「え?」

 

 

 

幸恵は、二人の戦いを止めに来たらしい。

 

しかし奈々はその理由が分からない。

 

 

 

奈々「それってどういう……」

「私たちにも内緒で梨璃達を連れていくなんて、なに考えてるのかしら、奈々」

奈々「!」

 

 

 

なんと後から夢結達一柳隊がやって来た。

 

そして、ウグイス色の三つ編みのツインテールの少女が、映画館にいた梨璃と結梨を連れてきた。

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 1年生 アイアンサイド 岸本・ルチア・来夢(きしもと・るちあ・らいむ)

 

 

 

 

奈々「夢結さん!って、梨璃ちゃんに結梨ちゃん!?」

幸恵「貴女が去ってから調査したら、若干音が漏れてた建物があったから、もしかしたらっと思ってね」

奈々「う………」

 

 

 

 

外の状況が分からないようにロビー内の放送の音量を大きくしたのが逆効果だったようだ。

 

どうやら幸恵達は、奈々が純と戦ってる間に二人を保護したらしい。

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん、詳しい話は幸恵様から聞いたよ」

楓「全く、お邪魔虫が犯人だったとは、とんだ泥棒猫ですわね」

奈々「仕方ないでしょ?結梨ちゃんだけ連れてってたら梨璃ちゃんが追いかけてきそうだったから…」

雨嘉「どうして私達に相談しなかったの?」

奈々「みんなを危険な目に会わせたくなかったんだよ」

梅「それで梅達に内緒で梨璃と結梨を連れていったのか?」

神琳「外出届で政府を欺こうとしたみたいですけど…」

鶴紗「逆効果だったな」

二水「そのせいで奈々さん、政府から逮捕状が出ていたんですよ!」

奈々「やはりか…」

幸恵「でも、もう心配は入らないわ」

奈々「え?」

夢結「理事長代行と百由が、政府を説得してくれたわ。後、出雲先生は政府の中に紛れたGEHENAの関係者達を捕らえたって報告が来たわ。結梨は人間で、リリィと認められた。もう大丈夫よ」

奈々「出雲先生……あの人も間に合ったみたいですね」

梅「奈々の逮捕状も撤回されたからナ」

結梨「奈々…ごめん…私のせいで…」

奈々「悪いのはGEHENA。結梨ちゃんは悪くないから」

ミリアム「それにしても、映画を見させて注意を引くとは考えたのう」

奈々「二泊あれば十分な証拠が出来ると思って、それに最適な場所がここだった訳ですよ」

来夢「中、とても廃墟とは思えないほど綺麗に片付けられてたよ。奈々ちゃんがやったの?」

奈々「縮地を使ってね」

梅「梅より器用な使い方するなぁ…」

幸恵「フィルムもまだ沢山あったし、売店もある程度揃っていたわ」

初「何でもありですわね…」

純「上手く言ったのでしたら、戦う必要はありませんわね」

 

 

 

 

そう言って純は刀をCHARMに納めた。

 

それを見た奈々は先程の純の行動に気が付く。

 

 

 

 

奈々「純さん、まさかみんなを引き止めたのは…」

純「その子が人を襲うなんて考えられませんし、負のマギも感じられませんですもの。貴女もそうでしょ?」

奈々「……もちろん!」

純「勝負はまた今度にしますわ。今度はわたくしが貴女を負かしますわ」

奈々「それはこっちの台詞ですよ!」

 

 

 

と、二人は握手した。

 

 

 

そこへ、ヘルヴォルとグラン・エプレのリリィ達もやって来た。

 

 

 

一葉「私達の方からも報告がありました。人型ヒュージの件は誤報だったと」

叶星「今更ですけど、本当にごめんなさい」

結梨「私は気にしてないよ」

奈々「終わりよければ全てよし。ですよ」

燈「貴女達もカリスマ持ちですのね?わたくしは燈と申しますわ。同じレアスキル持ち同志、仲良くいたしましょう」

梨璃「は、はい…!」

来夢「よ、よろしくお願いします…!」

 

 

 

攻めの姿勢で挨拶する燈にビビる二人。

 

 

一葉率いるヘルヴォルを見て純は声をかけた。

 

 

 

 

純「それが今回の新しいヘルヴォルですわね?」

一葉「はい。過去のヘルヴォルと違い、信頼できる仲間達で構成しました」

奈々「前のヘルヴォルは酷かったけど、一葉ちゃんの作ったヘルヴォルは安心できるよ」

 

 

 

 

ヘルヴォルはエレンスゲ女学園のトップレギオンで、序列1位のリリィはこのレギオンの隊長として任命される。

 

 

前のヘルヴォルは、能力はトップクラスなのに対し結束力が無く、チームワークは最悪であった。

 

その為、殆どのリリィ達がその被害にあってしまい、ヘルヴォルの印象は最悪なものとなってしまった。

 

 

しかし、そんなヘルヴォルを変えるために動いた序列1位の相沢一葉は、スペックより結束力を重視した構成として、信頼できる者を指名した。

 

それからヘルヴォルの印象は少しずつ変わっていった。

 

一葉の仲間を見捨てないという正義の意思により、新生ヘルヴォルによる被害は無くなっていった。

 

 

ガーデン側も最初はスペックを無視した構成に不満を持ったが、今のヘルヴォルの活躍を見て以来、口を出せなくなっていた。

 

 

そして、一葉がヘルヴォルのメンバーに指名したのが、この四人である。

 

 

 

 

千香瑠「初対面の方もいるので改めて紹介します。芹沢千香瑠。御台場迎撃戦では梅さん達と一緒に戦いました」

梅「久しぶりだナ、千香瑠!」

瑤「初鹿野瑤…よろしく」

藍「佐々木藍…よろしく~」

 

 

 

と、CHARMを抱きながら礼をする藍。

 

 

 

雨嘉「かわいい……」

恋花「ヘルヴォル影のリーダー、飯島恋花よ。よろしく!」

梨璃「か、影のリーダー!?」

 

 

 

恋花の悪ノリの冗談で梨璃を困惑させる。

 

 

 

奈々「梨璃ちゃん、今のは冗談だから」

一葉「恋花様、嘘は止めてください!」

恋花「ノリが悪いなぁ」

奈々「恋花さん、調子に乗ってると夢結さんの怒りを買いますよ?別の意味で」

恋花「う…」

夢結「奈々は私を何だと思ってるのよ」

奈々「梨璃ちゃんのシュッツエンゲルでしょ?」

夢結「そうだけどもうちょっと言い方が…」

奈々「ない」

鶴紗「きっぱり言ったな」

楓「ホントに抜け目のないリリィですこと」

叶星「ふふっ、じゃあ次は私達のレギオンも紹介するね」

 

 

 

 

 

グラン・エプレは神庭女子藝術高校が誇るトップレギオンで、御台場女学校から転入してきた今叶星が隊長を勤めている。

 

規則が緩めで、出撃選択制を採用している神庭女子藝術高校では最低限の訓練しか受けていないが、リリィ単体のスペックが高く、レギオンでも優秀な戦闘能力と連携力を持っている。

 

ちなみにグラン・エプレは仲のいいレギオンとガーデン内では有名になっている。

 

 

 

 

そんなグラン・エプレのメンバーがこちらである。

 

 

 

高嶺「宮川高嶺よ。よろしく」

紅巴「と、土岐紅巴です。よ、よろしくお願いします…!」

 

 

おどおどした様子で挨拶する紅巴。

 

 

 

灯莉「ボクは丹羽灯莉だよ。みんなよろしくね!」

姫歌「定盛姫歌。グラン・エプレのサブリーダーで、世界で一番可愛いアイドルリリィよ。よろしく」

梨璃「アイドルリリィ?」

奈々「リリィの中のアイドルって事みたい………ん?」

 

 

 

奈々はふと、後ろ姿の幸恵を見て何かに気付いた。

 

 

 

 

奈々「幸恵さん、そのジャケットのエンブレムって…」

幸恵「ん?ああこれの事?」

 

 

 

幸恵は後ろを向き、ジャケットのエンブレムをみんなに見せた。

 

 

そのエンブレムはモノクロの薔薇の絵がプリントされていた。

 

 

 

奈々「幸恵さん、新しくレギオンを作ったんですか?」

幸恵「そうよ。名前はアイアンサイドよ。メンバーは8人しかいないけどね」

初「アイアンサイド…際立った強さや勇敢さを持つ者という意味ですわね」

幸恵「そういう意味で、私が設立したレギオンよ」

二水「幸恵様は確か、テンプルレギオンに所属してましたよね?」

紅巴「テンプルレギオンはルドビコの最強レギオンって言われてましたが、どうして別のレギオンを?」

幸恵「話すと長くなるかもしれないけど…」

「そこにいましたか…」

 

 

 

 

奈々達の元へ、史房がやって来た。

 

 

 

 

奈々「史房さん!」

史房「そこにいましたか。梨璃さんと結梨さん、一柳隊と他のガーデンのレギオンもご一緒のようですね」

夢結「史房様、奈々の事は…?」

史房「わかっています。奈々さんが今回二人を連れていったのも。しかし政府は貴女に何らかの処分を受けるようにと申してきました」

梨璃「ええっ!?」

雨嘉「GEHENAの人達は捕まったのに?」

史房「政府の中には、GEHENAに関係なく奈々さんの事を不満に思う者もいるんです。今回の件に対しても、政府は奈々さんへの処罰を求めています」

純「自らの過ちを認めず、他者の罪を尊重する…汚い政府のやることですわね」

梨璃「そんな…」

奈々「まあしょうがないね。今回の行動はこうなることも覚悟していたし…」

史房「それなら、早速報告に…?」

 

 

 

突然、史房の携帯電話から着信音が聞こえた。

 

史房は電話を取った。

 

 

 

 

史房「はい。史房です……えっ!?」

夢結「どうしたのですか?」

史房「…………大海原にヒュージネストが出現しました…!」

「「「「「「「!!?」」」」」」」

 

 

 

 

史房の報告を聞いて、藍以外のリリィ達は驚愕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

史房の報告を聞き、現場に着いたリリィ達。

 

着いた場所は鎌倉の海付近である。

 

 

 

海の向こうには、天まで届く程の大きな渦が現れ…

 

 

 

 

その遠く離れた場所には、ギガント級を凌ぐ大きさのテントに似たヒュージがいた。

 

 

 

 

更にそのヒュージの前方の先は、大きくえぐられたかのような跡が残っていた。

 

まるで、大地が裂けられたかのように…

 

これは、そのヒュージが放ったマギの収束砲によるもので、リリィ達は、その威力を目の当たりにしていた。

 

 

 

梅「何だあのヒュージ…!?」

奈々「キノコのボイル焼きか!?」

夢結「こんなときにくだらないギャグを言わないで!」

藍「美味しそう…」

千香瑠「藍ちゃん、食べられないからね」

初「そういう問題かしら……」

純「大きさからして、ギガント級のようですわね…」

恋花「しかもあのヒュージが放った攻撃…」

一葉「はい…山を一瞬で焼き尽くすなんて…」

神琳「あれはマギを直接攻撃に使っている…」

叶星「それもかなりの量を使ってるわ」

高嶺「あの威力なら、納得するわ」

紅巴「あわわわわ……」

雨嘉「でも、そんな事したら、あっと言う間にマギが無くなっちゃうのに…」

初「いいえ、相手はあのギガント級…何も考えずにあんな高出力を撃つとは思えないわ」

幸恵「あれだけのマギを…どうやって…」

 

 

 

一方、結梨は始めてのヒュージを見る。

 

 

 

結梨「あれがヒュージ?」

梨璃「うん…だと思うんだけど…何か…」

 

 

 

 

梨璃は海の向こうにいるヒュージに何か違和感を感じた。

 

 

 

夢結「ヒュージは、マギに操られる事があっても、自らマギを操る事はないはずよ?どうして…」

奈々「ダインスレイフが刺さったヒュージの件もありますし、このヒュージも何かからくりがあるはずですよ」

結梨「あのヒュージやっつける?」

奈々「当然!放っておくと、大規模な被害は免れない…なりより、市民達のいる居住区まで届く距離の攻撃をしてくるヒュージを放っておけない」

 

 

 

そう言って、奈々の体が宙に浮く。

 

奈々がルナティックトランサーの一部分を発動し、重力無視の状態になったのだ。

 

 

 

 

夢結「奈々!?」

奈々「相手は水上。まともに戦えるのは空が飛べる私だけです」

初「待って奈々さん!貴女は純との戦闘でマギを消耗してるのよ!」

奈々「今回は状況が違う。次にあの砲撃が放たれたら今度は百合ヶ丘の方に被害が出る!ここは短期決戦を仕掛ける!」

 

 

 

 

奈々は重力無視のまま縮地を使ってヒュージの方へ飛んでいった。

 

 

 

 

雨嘉「飛んでいった…」

燈「器用な方ですこと」

梨璃「私達も早く百合ヶ丘へ…」

結梨「私も行く!」

 

 

 

 

そう言って結梨が巨大ヒュージに向かって走り出した。

 

しかも海上を、すごいスピードで走りながら。

 

 

 

梨璃「あ!!」

千香瑠「あのスピードは…!」

梅「あれ縮地だ!梅のレアスキル!」

 

 

 

梅が言った通り、結梨の驚異的なスピードは縮地によるものだった。

 

 

 

姫歌「な、なんなのあれ!?」

二水「結梨ちゃん、海の上を走っています!」

梅「見りゃ分かるけど、梅だってそんな事した事ないぞ!」

 

 

 

いくら縮地とはいえ、海上を長くは走れない。

 

しかし結梨の移動は、重力を無視するほどの以上な加速を出している。

 

海を走るには十分な加速である。

 

 

 

ミリアム「フェイストランセンデンス…ワシの技を組み合わせたのじゃ!」

恋花「私も使えるけどね」

一葉「そうか…縮地の効果をフェイズトランセンデンスで強化したのか!」

神琳「それってデュアルスキラー?それともエンハンスメント?」

 

 

 

エンハンスメントはサブスキルを一時的にレアスキル化させるブーステットリリィ専用のスキル。

 

元のサブスキル…Awakening(アウェイキング)とインビシブルワンをレアスキル化させれば可能である。

 

 

 

デュアルスキラーはレアスキルを2つ所有するリリィの珍しい能力の名称である。

 

レアスキル単体でも強いが、他のレアスキルと組み合わせると非常に強力な力を発揮する。

 

カリスマの力でルナティックトランサーの効果を高めるのが良い例である。

 

 

 

 

さっき結梨が驚異的な加速を起こしたのはフェイストランセンデンスからの縮地によるものだとミリアムが告げていた。

 

 

 

しかし純は、それとは違う答えを出した。

 

 

 

純「いえ、あれは恐らくマスカレイドですわ。先程奈々と同じマギの流れ方を感じましたわ」

幸恵「マスカレイド!?」

来夢「それって奈々ちゃんのレアスキル…!」

楓「確かマスカレイドはエンハンスメントとアルケミートレースもどきの機能を持っていましたわね」

初「それとこれは奈々さんから聞いた話だけど、S級になると派生したレアスキルを2つ同時に使えるようになるみたいですわ」

二水「2つ同時!?」

鶴紗「それって、デュアルスキラー以上の性能を持ってるってこと!?」

純「奈々自身のマスカレイドはA級でしたわ。これまで彼女がレアスキルを2つ同時に使った所は無かったですし」

夢結「でも、何故奈々のレアスキルを…!?」

ミリアム「わからんが、あの様子だとすぐにマギを使い果たして終わりじゃが…」

梨璃「っ!!」

 

 

 

 

放っておけないのか、梨璃がヒュージに向かっていった結梨を追いかけに海の上を跳んでいった。

 

 

 

 

夢結「梨璃!!」

来夢「梨璃ちゃん待って!」

楓「走ったって追い付けませんわ!!」

 

 

 

 

楓の言う通り、結梨はフェイズトランセンデンスからの縮地でロケット並の速さで向かってるのに対し、梨璃は必死で海の上をジャンプしながら結梨を追いかけるが、速さが足りず、その距離は遠退いていく一方。

 

 

 

 

梨璃「まだ無理だよ!本当の戦いなんて!!」

 

 

 

 

それでも結梨を追いかける梨璃だが、呼び掛けが届かず、ただ離されていくだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

代わって奈々は海の上のヒュージ目掛けて移動していた。

 

 

 

 

奈々「間に合うか……え!?」

 

 

 

マギを感知し後ろを見ると、海の上を走る結梨が奈々に追い付いてきた。

 

 

 

 

奈々「ちょ!?結梨ちゃん早!じゃなくて、危ないって!」

結梨「私も戦うよ!奈々!」

奈々「このヒュージは並のリリィでもヤバイんだってば!」

結梨「そのヒュージ…繋がってるよ!」

奈々「繋がってる?」

 

 

 

 

結梨の言葉に何か引っ掛かる奈々だが…

 

 

 

海の上のヒュージがマギを集め始めた。

 

 

 

奈々「マギをすぐチャージした!?早すぎる…!?」

 

 

 

奈々はこの時、結梨の「繋がってる」という意味に引っ掛かり、ヒュージネストの方を見た。

 

 

 

 

奈々「………まさか…!」

 

 

 

 

ようやく海の上のヒュージが放ったマギの収束砲の秘密が分かった奈々。

 

 

 

 

 

 

浜辺の方では…二水が鷹の目で周囲の状況を皆に知らせていた。

 

 

 

 

二水「何か変です。ヒュージのマギとネストのマギが呼び合って…まるでネストのマギを吸い取っているみたいな…!」

 

 

 

 

二水も海の上のヒュージの無尽蔵なマギの秘密に気付く。

 

 

 

 

瑤「ネストから!?」

神琳「ネストからマギを供給されているのだとしたら、無尽蔵にマギを使えると言う事だけど…まさか…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方奈々と合流した結梨は…

 

 

 

奈々「攻撃が来る!結梨ちゃん、私の後ろに!」

結梨「うん!」

 

 

 

 

奈々の指示で後ろに回る結梨。

 

 

すると、海の上のヒュージが無数のマギの弾幕をばら蒔いてきた。

 

 

 

 

奈々は腰の2本のツインフェザーを抜き、高速で向かってくる弾幕を次々と弾き返しながら前進していく。

 

しかし、ここで奈々がこちらに向かってくるマギの気配を感じ取った。

 

後ろを見ると、結梨を追いかけに来た梨璃の姿が遠くから見えた。

 

 

 

 

奈々「梨璃ちゃん!?」

 

 

 

 

ところが、集中力を変えてしまったのか、弾幕のいくつかが奈々の横を通りすぎてしまった。

 

 

 

 

奈々「しまった…梨璃ちゃん避けて!!」

 

 

 

 

大声で遠くの梨璃に呼び掛けるがもはや遅し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弾幕の1つが梨璃の前頭部に当たり、花弁の髪飾りを掠めるが、気を失ったのか、バランスを崩してしまい、墜落した。

 

 

 

 

奈々「!!………くっそおーっ!!ヒュージー!!!」

 

 

 

 

怒りで奈々はルナティックトランサーを発動し、弾幕の勢いが収まった所で単独で飛び出し、ヒュージが作り出した8つのリングの1つをツインフェザーで破壊する。

 

 

結梨も、フェイズトランセンデンスの影響でブースト状態のまま飛び、グングニルでリングを破壊する。

 

 

 

 

結梨「やあああー!!」

 

 

 

 

同時にグングニルのマギクリスタルコアが普段以上のマギを集めていた。

 

 

 

 

奈々「結梨ちゃん!?」

結梨「私だって戦える!だって百合ヶ丘のリリィだもん!!」

奈々「………速攻で片付けよう!!」

結梨「うん!!」

 

 

 

 

ヒュージは再び奈々と結梨に目掛けて弾幕をばらまくが、奈々が空中、結梨が海上と、標的がバラけているため弾幕が薄くなり、回避が容易になっている。

 

 

更には奈々のルナティックトランサーによる重力無視の高速移動と結梨のフェイズトランセンデンスからの縮地の高速移動でなかなか当たらず、次々とリングが破壊されていく。

 

 

 

 

 

奈々「きえろおおおーーー!!!」

結梨「やあああああーー!!!」

 

 

 

 

 

そして奈々はヒュージのコアらしき部分目掛けて2本のツインフェザーを前に向けたまま超加速し、結梨はグングニルで巨大なマギの刃を作り出し、そのままヒュージに降り下ろした。

 

 

奈々はヒュージを貫いていき、巨大なマギの刃はヒュージを飲み込むかのように消し飛ばしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしここで、結梨のグングニルのマギクリスタルコアが限界を超えてしまったのか、砕け散ってしまい、奈々のマギも僅かとなった。

 

 

 

 

そしてやられたヒュージのマギが暴走し周囲を包み込みだす

 

これに巻き込まれてしまえば無事ではすまない。

 

生還の望みはない。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「爆発する…!!結梨ちゃん!」

 

 

 

奈々は結梨を見つけ、手を伸ばした。

 

 

そして結梨も奈々に気付き、奈々の手を握って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結梨「みんなをお願い」

奈々「え?」

 

 

 

 

 

 

結梨は奈々を遠くへ投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

奈々「結梨ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

投げ飛ばされた奈々はルナティックトランサーの効果が切れ、動けなくなり、遠退いていく結梨を見ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

そして残った結梨は、フェイズトランセンデンスの効果が切れ、マギ低下状態になり、宙に浮いたまま動けなかった。

 

それでもやりきったような感じで安心した結梨。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結梨(梨璃…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結梨(私、出来たよ………………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、駆けつけた幸恵と来夢は、救助した梨璃を担ぎ、ヒュージがいた場所が大爆発したのを目撃した。

 

 

 

 

 

来夢「やったの……?」

幸恵「そのようね………」

来夢「奈々ちゃんと結梨ちゃんは…!」

幸恵「わからない…でも行かないと…来夢は梨璃さんをボートへ連れてって」

来夢「はい」

 

 

 

来夢を残し、幸恵は爆発した場所へ向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸恵「!」

 

 

 

 

 

 

 

幸恵が見つけたのは、海の上で浮いたままボロボロになり、気を失ってしまった奈々の姿だった。

 

 

少し遠くには、2本のツインフェザーが浮いていた。

 

 

 

 

 

幸恵「奈々さん…!」

 

 

 

 

 

幸恵は見つけた奈々とCHARMを拾い、後からボートで来たヘルヴォルのメンバーとすれ違いつつ、ボートへ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々を救助後、今度はヘルヴォルが爆発した場所へやって来たが、そこに結梨の姿はなく…

 

 

 

あったのはコアが砕け散った結梨のグングニルだけだった。

 

 

 

 

 

 

その後も探索したが、結梨は発見されず…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一柳結梨の死亡が決定されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方…夕陽が沈む頃、遠くの浜辺では爆発した方角を眺めていた黒いドレスをまとった紫色長い髪の少女がいた。

 

 

その表情はまるで悲しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さようなら…………オリジナル………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

 

梨璃「もう…誰も失いたくないから…!」

 

 

 

 

 

next リリィ達は戦う

 

 

 

 

 

 

 

 




第12話でした。

結梨ちゃんが原作通り、ヒュージの爆発に巻き込まれましたが、この話では今回奈々のレアスキル…マスカレイドを習得してました。

これがこの後の話のキーを握ります。

さてこの作品ですが、次の話から新章に入ります。

タイトルは「The lost bloom」。

このタイトルの意味が何を表しているのか、それらを考えづつ、期待してください。

時間かかるかも知れませんが、自分なりにいい話にしたいと思っています。

それでは!


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The lost bloom
「13」リリィ達は戦う


どうにか今年中には間に合いました!
今回から新章です。
流れはアニメの11話後半から12話前半の範囲になっています。
後、この章に限り前章の自己紹介を引き継ぎます。
それではどうぞ!


1.7 一部のキャラの文章を修正しました。


 

 

 

「えっと…君が百合ヶ丘からやって来た子なの?」

 

 

 

青色のミニスカ海軍服を着た青い髪のロングの少女が迎えてきた。

 

 

 

 

「はい。今日からブルーガードに研修にやって来ました。木葉奈々です!」

 

 

 

 

同じく青色のミニスカ海軍服を着た赤茶色のショートヘヤーの少女、奈々が敬意を表して挨拶した。

 

 

 

 

「そんなに固くなくていいよ。私と同い年だし、だよねお姉ちゃん」

 

 

 

 

赤い髪のツインテールの少女が気を使う。

 

 

 

 

「そういうことよ。私は桜田加奈(さくらだ かな)。ブルーガード第4部隊の隊長で中三よ」

「妹の桜田理亜(さくらだ りあ)だよ。よろしくね。奈々ちゃん」

 

 

 

 

と、理亜が奈々の方へ手を差し伸べる。

 

 

 

 

奈々「うん。こちらこそよろしく。加奈さん、理亜ちゃん」

 

 

 

と、右手で加奈の左手…左手で理亜の右手を握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「はぁ…はぁ…また負けたぁー」

 

 

 

 

青と白のラインの壁模様の訓練ホール。

 

そこで奈々は練習用のCHARM…ヨートゥンシュベルトを使って加奈と模擬戦を行ったが…連戦連敗だった。

 

ちなみに奈々は青一色のミニスカ海軍服を着ている。

 

 

 

 

 

加奈「筋は通っているわ。けど私相手じゃまだ届かないよ」

奈々「言ってくれますよ加奈さん……」

 

 

 

 

と、話してる内に理亜がジュースの入った紙コップ3個を円形のトレイに乗せてやって来た。

 

 

 

理亜「お疲れ様。はいお姉ちゃん。そして奈々ちゃんも」

加奈「ありがとう」

奈々「悪いね。ありがとう」

 

 

 

トレイからジュースを貰う二人。

 

そして理亜も空いてる右手で残ったジュースを取って飲む。

 

 

 

 

理亜「お姉ちゃん、奈々ちゃんの調子はどう?」

加奈「うん、みるみる上達してるよ。マギの保有値もどんどん上がってる。驚いたよ」

奈々「そんなに驚くものなんですか?」

加奈「マギの保有値はロールプレイングで言うMPの最大値みたいなものなのよ。ヒュージとの戦いでは常にマギを消費する。長く戦うにはマギの保有値が重要になってくるわ」

奈々「つまり、私は今マギの保有値が多いと?」

加奈「最初の頃はマギの保有値が平均の半分ぐらいしか無かったけど、今は平均並に上がってるわ」

奈々「おお!」

理亜「後、咲樹さんから次のヒュージ討伐任務に奈々ちゃんを入れるって言ってたよ」

奈々「マジで!?」

加奈「咲樹さんも奈々ちゃんの実力を認めているしね。こないだのヒュージの襲撃なんか、攻撃を全て弾いてみんなを守ってくれてたし」

奈々「放っておけなかったので、つい体が動いて…」

加奈「ふふっ、任務でも期待してるよ」

奈々「任せてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な………奈々…………奈々!」

奈々「あ………!」

 

 

 

 

奈々は気が付いた。

 

奈々の視界には雲に覆われた空が見えた。

 

動きたいが、身体中から痛みが走り、とても動けない。

 

体はボロボロで、海軍服もあちこちが切れていた。

 

 

 

頭だけ動かし、身の回りを見ると、自分が使ってたCHARMがそこにあったが、破損していて機能はしていない。

 

 

 

側には、同じく服もボロボロの綾瀬の姿があった。

 

 

 

綾瀬「気が付いたね。君の方がダメージ酷かったから応急措置をしておいたよ」

奈々「…綾瀬…ちゃん…第4部隊のみんなは…?」

綾瀬「………」

 

 

 

 

奈々の質問に綾瀬は険しい表情で、奈々に告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾瀬「…………君が所属してた第4部隊は…壊滅したよ」

奈々「……!!?」

綾瀬「君の頑張りで取り巻きのヒュージが全滅し、優勢になってた矢先…突然現れた謎のギガント級の奇襲にあったと連絡があった。救助に駆けつけた頃にはギガント級が去った後だった。その場に生き残ったのは僅か3人…君と加奈さん、理亜だけだった」

奈々「加奈さんは…理亜ちゃんは…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

綾瀬はゆっくりと口を開く…

 

 

 

 

綾瀬「……………君以上に酷く、意識が…戻らないんだ…!」

奈々「………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傷を癒し、普通に歩けるほど回復した奈々は加奈、理亜がいる病室へやって来た。

 

 

 

 

そこには白いベッドが2つあり、それぞれ加奈と理亜が呼吸器やチューブ等で繋がれたまま眠っていた。

 

機械に表示された心拍数は安定しているが、二人は目を覚まさない。

 

他の部隊が駆けつけた頃には、第4部隊は3人しか残っておらず、加奈と理亜だけは意識不明の重体を負っていた。

 

 

 

 

いつ目を覚ますかわからない程の眠りについた二人を見つめる奈々は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「………加奈さん……理亜ちゃん……ごめんなさい………私が……もっと強かったら………みんなを守れるぐらいの強さがあったら………結局………私は……守れなかった…………私は………まだ弱かった………まだ……未熟だった………ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……!」

 

 

 

 

 

と、何度も謝罪の言葉を言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

奈々は目を覚ました。

 

 

 

 

彼女が起きた場所は、百合ヶ丘女学院の地下の謹部屋であった。

 

明りはなく、あるのは座れる場所とベッドのみ。

 

服は病人が着ている白い服に着替えられていた。

 

 

 

 

 

奈々「…またあの頃の夢か………私……相当参ってるな…」

 

 

 

 

海上に現れた大型ヒュージの戦いの後、各リリィ達が結梨が生存してるか捜索にあたったが、結局結梨の姿は無かった。

 

やがて政府からは結梨の死亡が決定され、次の日には結梨の葬式が行われた。

 

しかし彼女、木葉奈々は学園から1週間の謹慎処分を受けて、葬式に出れなかった。

 

 

仮に行けるとしても、彼女に葬式に行く勇気は無い。

 

行くのが怖かったのだ。

 

行ってしまえば、結梨の死を認めてしまうからだ。

 

それを彼女は恐れていた。

 

 

 

 

 

 

 

今や、彼女の中には罪悪感が溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「…………また………守れなかった…!」

 

 

 

 

奈々は、結梨を救えなかった事を後悔していた。

 

 

 

 

ただ後悔してもなにも変わらない…

 

 

 

その事は自身も分かっている筈なのに…

 

 

 

罪悪感が、巨大な重りのように彼女に掛けていく。

 

 

 

そして、ただ時間が過ぎていく…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 

 

 

 

ドアが開き、史房が現れた。

 

 

 

史房「相当参ってますね」

奈々「史房さん、謹慎解除までは後4日ありますよ?」

史房「そうじゃないわ。今日は貴女にこれを渡しに来たのよ」

 

 

 

 

そう言って史房が用意したのはタブレット端末だった。

 

 

 

 

奈々「ビデオレター……ですか?」

史房「それについては後で貴女が確かめて」

 

 

 

史房からタブレットを受けとると、史房はその場から去っていく……

 

 

そして入り口の手前で止まり、振り向かないまま奈々に告げた。

 

 

 

 

 

 

 

史房「………………ありがとう」

奈々「えっ?」

史房「貴女と結梨さんのお陰でこの百合ヶ丘は守られました。被害も、最小限に留めることが出来ました」

奈々「…………でも私は…結梨ちゃんを…」

史房「わかってます。私も同じです……いえ、みんな同じ気持ちです」

奈々「え?」

史房「私も悔しかったんです…もし奈々さん程の強さがあったら、あのヒュージに立ち向かえたかもしれないと…私達を守るために一人で向かっていく貴女を見ることしか出来なかった自分が悔しいと」

 

 

 

 

そう言われて、奈々は史房の方を見つめた。

 

 

 

史房「貴女には…まだ守るものがあります。それを忘れないで…」

 

 

 

そう言って史房は部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「史房さん………」

 

 

 

 

 

史房の励ましを受けて、奈々は少し元気を取り戻した。

 

 

 

そして、渡されたタブレットに目を向き、電源を入れると………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い髪の少女と青い髪の少女が

 

 

 

 

悶えながらテーブルに寄っ掛かるように倒れていた。

 

 

 

 

奈々「え!?」

 

 

 

 

テーブルの周りにはスープやサラダ、パスタが置かれていたが、どれも危ない香りが漂っていた。

 

スープは緑色で、何故かピチャッという音がたまに聞こえた。

 

サラダは萎びてて、新鮮さが微塵も感じられない。

 

パスタは麺もソースも紫色で、見てるだけで目がいたくなる。

 

 

 

 

 

「うう……」

「助けて………」

 

奈々「え、加奈さん、理亜ちゃん!!?」

 

 

 

 

奈々にとってはとんでもない再開となり、感動とは程遠かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後……………

 

 

 

奈々「加奈さん……理亜ちゃん……目を覚まして本当に良かったです!」

加奈「目が覚めたのは奈々ちゃんが百合ヶ丘に向かってから1週間頃だったからね」

 

 

 

 

 

ブルーガード 第4部隊 隊長 桜田加奈(さくらだ かな)

 

 

 

 

 

理亜「そこから復帰に向けてのリハビリに励んでいたんだ」

 

 

 

 

 

ブルーガード 第4部隊 副隊長 桜田理亜(さくらだ りあ)

 

 

 

 

奈々「いや、あれはリハビリってレベルで納まるものじゃ……」

 

 

 

 

奈々自身も大ケガからの回復…その後の復帰として、リハビリを受けたのだが、過酷なものだった為、完全復帰に時間がかかった。

 

 

 

 

 

加奈「奈々ちゃんの百合ヶ丘での活躍はこっちにも伝わってるわ。大活躍だったわね!」

奈々「え、ええ…まあ…」

理亜「ん、奈々ちゃん?」

加奈「羽切悪いわね…」

奈々「………最後、しくじってしまって…」

加奈「………鎌倉の海付近で現れた大型ヒュージの件ね」

奈々「皆を守るために戦ったけど…仲間を一人失ってしまった…」

理亜「奈々ちゃん、それは…」

加奈「その代わり、君は百合ヶ丘を救った。それは確かよ。第4部隊にいた頃、君は頑張って一人で取り巻きのヒュージ達を倒してくれた。こちらの戦況も良くなった。これは間違ってないもの。私と理亜がここにいるのは君のお陰なのよ」

奈々「加奈さん…」

加奈「だから奈々ちゃん。君はまだ残ってる大切なものを守ればいいのよ。それが失った者への償いになると思う。きっと第4部隊の皆はそう望んでるよ」

理亜「私達も応援してるから。元気出して」

 

 

 

 

加奈と理亜の励ましで奈々は更に元気が出た。

 

 

 

 

奈々「ありがとうございます。加奈さん、理亜ちゃん。元気が出ました」

加奈「そう?それじゃあ更なる元気付けに私の心暖まるダジャレを………」

 

 

 

 

加奈が喋ってる途中で奈々はタブレットの電源を落とした。

 

 

 

 

 

奈々「充分です」

 

 

 

 

 

加奈のダジャレは、背筋が冷えるほど寒い。

 

奈々はそれを過去に一度実感していた。

 

 

 

 

 

 

と、思ってる内に、ドア越しから誰かの声が聞こえた。

 

 

 

 

「奈々ちゃん、いる?」

奈々「?梨璃ちゃん?」

 

 

 

奈々はドア越しから梨璃の声を聞くと、ドアの近くまで来き、梨璃がいることを確認した。

 

 

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん…ごめんね…私のせいでこんなところに…」

奈々「そんなの気にしてないよ。梨璃ちゃんはどうしてここに?」

 

 

 

 

奈々の質問に梨璃は黙り混む。

 

 

 

扉越しで梨璃の姿は見えないが、気持ちは伝わっている。

 

 

 

 

 

 

 

無理もない…

 

 

結梨という大切な家族を失ったのだから…

 

 

 

 

 

しかも奈々自身が結梨と一緒にいるにも関わらず、守れなかったのだから……

 

 

 

 

 

例えそれで梨璃から嫌われても仕方がないと、奈々は覚悟していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし彼女は意外な言葉を言った。

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「ありがとう」

 

 

 

奈々「え?」

 

 

 

 

梨璃のお礼の言葉に困惑する奈々。

 

 

 

 

 

梨璃「私と結梨ちゃんを映画館に連れてったのって、政府から守るためだったんだね」

奈々「……」

梨璃「結梨ちゃんを守ってくれて、ありがとう」

奈々「…………でも私は、結梨ちゃんを救えなかった…」

梨璃「それでも奈々ちゃんは最後まで結梨ちゃんを助けようした。それは私も知ってるよ」

 

 

 

 

そう話した梨璃は、次に自身のこれからを奈々に話した。

 

 

 

 

梨璃「私、強くなるよ。もう誰にも結梨ちゃんみたいな事になって欲しくない。仲間が居なくなって、悲しい思いをするリリィも居て欲しくないから…!」

奈々「…!」

 

 

 

梨璃のその決意の言葉は、リリィとしての使命感を感じさせた。

 

 

 

 

 

 

奈々(同じだ……あの時の私と……)

 

 

 

奈々はブルーガード時代に仲間を失い、その後、これ以上犠牲を生ませないという決意を誓ったあの頃の自分が、今の梨璃と重なるように見えた。

 

 

 

奈々(ははは…こんな梨璃ちゃんを知ったら、流石の私も何もせずにはいかないね…!)

 

 

 

 

奈々は決意を改めた。

 

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん?」

奈々「私ももう一度守るよ。この百合ヶ丘の皆をね。梨璃ちゃんがやる気になったのに私が落ち込んでるわけにはいかないからね」

梨璃「奈々ちゃん…」

 

 

 

梨璃も今の奈々の声で安心した様子。

 

 

 

 

奈々「お互い強くなろう!」

梨璃「うん!…あ、そうだった!」

 

 

 

梨璃が何かを思い出した。

 

 

 

奈々「どうしたの?」

梨璃「奈々ちゃん、この前は断られたけど、改めて言うね」

 

 

 

 

そして梨璃は奈々にあることを言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん…私達のレギオンに入ってくれる?」

 

 

 

梨璃が奈々を一柳隊に入ってくれるよう頼んで勧誘きたのだ。

 

 

奈々もこれには驚いた。

 

 

 

 

奈々の答えは……

 

 

 

 

 

 

奈々「謹慎が解けたら考えておくよ」

梨璃「わかった。待ってるからね!」

 

 

 

そう言って梨璃は去っていった。

 

 

 

 

そして奈々はこれからのためにも準備を始める。

 

 

 

奈々「さて、謹慎解除まで後4日…頑張りますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして謹慎中の奈々は残り4日間の間、基礎体力を付けるために腕立て伏せや腹筋運動、等の基礎トレーニングを行い続けた。

 

部屋で出来る事といえばこれぐらいしかない。

 

とはいえ、基礎体力を上げることはリリィとしての長期戦闘に大きく貢献する為、やる価値はある。

 

これはブルーガード時代で習った知識である。

 

時々、部屋に入っていく史房や梨璃達一柳隊も、トレーニングをする奈々に少し驚く。

 

 

奈々がトレーニングしている事は百合ヶ丘中に広がり、それが火種になったのか、各リリィ…レギオンも訓練に精を尽くすようになった。

 

百合ヶ丘中に広がった結梨の死は、全リリィに大きな決意を作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして謹慎最終日………

 

 

奈々の謹慎解除まで後三時間となった。

 

 

奈々は自身が着ていた青のラインが入った特別使用の制服に着替えた。

 

 

 

 

奈々「一柳隊の入隊はどうするかな…私の場合、基本単独だしな…ノインヴェルトも私のマギが強すぎてマギスフィア壊れるから参加はできないし…出来ることといえば…ヘリオスフィアで皆の防御力を底上げするぐらいか…うーん」

 

 

 

奈々は、主に一対一での戦いを得意とする。

 

ラージ級以上のヒュージを相手にするときにその有り余る力を発揮する。

 

 

唯一の弱点といえば、使えるCHARMが限られているぐらいである。

 

奈々のマギは他のリリィより濃く、一般のCHARMでは耐えきれず、壊れてしまうからだ。

 

コストの高い部品を使ったブリューナグやティルフィングならある程度は耐えられるが、基本奈々が使えるのは強度に優れているメタルスキンが使われているCHARM…カナベラル&ブルメリアとツインフェザーの2つのみとなっている。

 

 

 

 

もう1つは、奈々の能力がノインヴェルト戦術に向いていない事である。

 

ノインヴェルト戦術は生成したマギスフィアをパス回しをしながら威力を高め、最後の一人がヒュージに向かって放つ必殺攻撃である。

 

威力が高く、ギガント級以上の相手には必要不可欠な方法だが、奈々のマギとは相性が悪い。

 

奈々のマギをマギスフィアに流し込むとマギスフィアの膜が耐えきれず、壊れてしまうからだ。

 

例えるなら、水が入った風船に熱湯を入れると膨張して割れるといったところ。

 

リリィのマギが水で、奈々のマギが熱湯である。

 

その為マギスフィアに触れている時間も限られている。

 

 

 

 

奈々はリリィとしての能力が高い代わりに、連携に組みづらい難点がある事。

 

奈々にとって、レギオンとのコンビネーションは大きな仮題となる。

 

 

 

 

と、考えてる所…突然ドアが開いた。

 

現れたのはアステリオンを背負った史房だった。

 

右手には大きなケースを持っていた。

 

 

 

 

奈々「史房さん?謹慎解除までまだ三時間ありますよ。どうしたんですか?」

史房「緊急事態です。理事長代理から各生徒に避難命令が下されました」

奈々「避難?ヒュージの襲撃とは違うんですか?」

史房「分かりません。それと、理事長代理により、奈々さんの謹慎は今回特別に解除します」

奈々「いいの?」

史房「今回は事態が事態なので仕方ありません。それとこちらを…」

 

 

 

 

史房は大きなケースを奈々に渡した。

 

受け取った奈々は、ケースを開けてみた。

 

 

 

 

奈々「!?」

 

 

 

 

ケースの中身は、修理が完了したカナベラルとブルメリアが入っていた。

 

見た奈々は驚いた。

 

 

 

 

奈々「史房さんこれって…!」

史房「ええ、貴女のCHARMよ。綾瀬さんから貴女に渡すよう頼まれてね。メテオメタルで出来ているから壊れる心配は無いわ。後、貴女のマギでもノインヴェルト戦術にも対応できる機能も備わってるわ」

奈々「ホントに!?」

 

 

 

 

もしそうなら、奈々もノインヴェルト戦術に参加できるという事である。

 

奈々にとってはうれしい機能である。

 

 

 

 

史房「生徒達は現在、避難区域に移動中です。奈々も早く…」

奈々「………詳しく教えてもらいますか?」

 

 

 

 

と、史房は奈々と一緒に避難を始める。

 

同時に史房から避難命令を出した理由を聞いた。

 

 

 

 

 

奈々「ヒュージネストから3つの物体が飛んできた!?」

史房「ええ。しかもその軌道は地球を一周して、この百合ヶ丘女学院の近くに落ちるそうよ」

奈々「ヒュージネスト…海上のヒュージにマギを大量に消費したばかりなのに、負荷も大きいにも関わらずまだ仕掛けるか」

 

 

 

 

そう話してる内に二人はもうすぐ生徒達と合流する。

 

 

 

 

その時、突然大爆発が起きた。

 

 

 

史房「今の爆音は…!」

奈々「百合ヶ丘の方だ…この気配は…ヒュージ…?」

 

 

 

奈々は爆音の正体がヒュージだと分かった。

 

さらに………

 

 

 

 

 

史房「…あれは…………!?」

 

 

 

 

落下地点から3つの黒い球体が空へと浮かび、それぞれが黒い帯のようなエネルギーに継がれていき、それらは黒い円形の空間を作り、大きく拡大し始めた。

 

その空間は百合ヶ丘だけでなく、離れた廃虚まで拡がっていった。

 

 

 

 

 

空は、紫色の風景へと変わっていった。

 

 

 

 

奈々「これは結界か…!」

史房「…………えっ!?」

奈々「どうしました?」

史房「CHARMが…機能しない…!」

奈々「!?」

史房「マギも…出せない…!」

奈々「………あの結界のせいか…!」

 

 

 

 

百合ヶ丘全域を覆った黒い結界は、マギの流れを止める効果があったようだ。

 

CHARMは動かない…マギによる身体強化も出来ない。

 

これでは今のリリィは普通の少女と変わらない。

 

あれがヒュージだとしても、こちらにはもう戦う術がない。

 

 

 

 

奈々もカナベラルにマギを入れてみるが、なにも起こらない。

 

 

 

 

奈々「なら…!」

 

 

 

 

 

奈々は再びカナベラルにマギを入れてみた。

 

 

 

 

 

 

すると、カナベラルが起動した。

 

 

 

 

史房「CHARMが…どうして…!?」

奈々「マギの質を変えてみたんですよ。チャンネルの周波数を変えるように。基本中の基本ですよ。レアスキルは封じられたままですけどね」

史房「いや、そんな芸道、他のリリィには出来ません!」

奈々「ブルーガードで覚えた基礎なんですけどね…」

史房「………ブルーガードが最強のリリィ部隊だという事がよく分かりました」

 

 

 

 

奈々のずば抜けた強さに関しては触れないでおこうと思った史房だった。

 

 

 

 

奈々「とにかく、戦えるのは私だけのようですし、このまま黒い物体の元へ向かいます。皆には史房さんから伝えてくださいね」

史房「待って!マギが使えるからって、一人で行くのは危険よ!」

奈々「あれを放っておく方がよっぽど危険ですよ。あれがヒュージなら…何か仕掛けてくる前にこちらから仕掛ける。それしか手はありません」

史房「でも!」

奈々「行ってきます!」

 

 

 

 

そう言って奈々は史房を置いて黒い物体の元へ跳んでいった。

 

 

 

 

史房「奈々さん!」

 

 

 

 

呼び止めるにも声は届かず、史房はただ見届けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方奈々は、目の前に見える黒い物体を発見した。

 

 

 

3つの黒い物体の下には大きなクレーターが出来上がっており、それぞれが黒い帯のようなエネルギーで繋がって、その頭上には巨体な黒のエネルギー体が生成され、その中から巨大な赤いヒュージを生み出した。

 

大きさからして、ギガント級を思わせるサイズである。

 

体から下の部分は西洋の騎士が使うランスのような形をしており、頭部分は海上に現れたヒュージの頭に似ていた。

 

頭上には4つの三日月型のエネルギー体が天使の輪を思わせる配置に並び、浮いていた。

 

本体の身体には3枚の巨大なブレードの翼がくっついていた。

 

 

 

3つの黒い物体はヒュージにマギを全て吸われ、動かなくなっていた。

 

そして巨体な黒のエネルギー体は消えてなくなり、ギガント級のヒュージが姿を現した。

 

 

 

奈々「あれが結界を作った犯人か…見た限りギガント級か…!」

 

 

 

 

奈々はその赤いヒュージに向かって前進する。

 

 

 

と、ここで奈々はヒュージに近づくに連れて、何かの感情が流れてるのを感じ取った。

 

 

 

 

 

奈々「この狂気に満ちた何か…ルナティックトランサーのものに似てる…」

 

 

 

 

仮に結界を破っても、この狂気に触れたら普通のリリィは敵味方区別なく暴れてしまうだろう。

 

 

戦えるのは自分だけだと再確認した奈々。

 

 

そして、右手に持ったカナベラルを強く握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「さて、1週間ぶりの戦闘なんだ。私のリハビリに付き合ってもらうよ!」

 

 

 

奈々はヒュージを前に戦闘体制に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も戦うよ!」

奈々「!?」

 

 

 

 

遠くから声が聞こえ、梨璃がグングニルを持って奈々の元へ跳んできた。

 

花の髪飾りは新品の物に取り替えていた。

 

 

 

 

奈々「り、梨璃ちゃん、戦えるの!?というか、何ともないの!?」

梨璃「うん。このヒュージから凄い敵意と憎しみを感じるの」

奈々「やっぱりか…私も同じ答えだよ。あと、それ新しい髪飾り?」

梨璃「うん。楓さんが作ってくれたの」

奈々「あの子も中々器用だな…」

 

 

 

 

 

彼女…梨璃のグングニルは起動している。

 

CHARMが起動してる所を見ると、マギは問題なく使えるようである。

 

レアスキル…カリスマのお陰なのか…

 

それなら他のカリスマ持ちのリリィがこっちに来ている筈である。

 

いないということは、この結界でカリスマも使えなくなってるという事である。

 

しかし何故同じカリスマ持ちの梨璃だけは何ともないのか…

 

 

 

考えてもしょうがないので、今は目の前のヒュージを倒すことに集中する事にした。

 

 

と、ここで梨璃が奈々のCHARMに気が付く。

 

 

 

 

 

梨璃「CHARM、もう直ったの?」

奈々「ようやくね。でもこの結界の中だと威力がね。マギインテンシティも意味をなさないし」

 

 

 

 

マギインテンシティはマギの強度の事をいい、これが高いとノインヴェルト戦術の時に作るマギスフィアが更に強くなるのだ。

 

ヒュージのサイズが大きければその分浴びるマギも多くなる。

 

奈々のCHARM…カナベラルとブルメリアは、他のCHARMよりマギの消費が多く、その分威力も高い。

 

マギインテンシティが高い時にそのCHARMは効果を発揮する。

 

 

しかし、ヒュージが放った結界のせいでマギが拾えなくなり、カナベラルは本来の性能を発揮できないでいた。

 

更にはレアスキル、サブスキルが封じられてる。

 

リリィにとってレアスキルとサブスキルはヒュージの戦いに大きく影響する為、これが封じられることはまさに致命的である。

 

 

なのでこのままではヒュージを倒せない。

 

まずはこの結界を何とかしなければならない。

 

 

 

 

しかしヒュージはまだこちらに気付いていない。

 

 

相手が向いてる先は百合ヶ丘女学院の方である。

 

 

 

そうはさせないと、梨璃はグングニルのシューティングモードで弾を放つも、弾き返されてしまう。

 

 

 

 

奈々「射撃じゃ効果が薄いか…」

 

 

 

 

それだけ相手の防御力が高いのがよく分かった奈々。

 

 

 

 

梨璃「ちょっと!…じゃなくて、コラー

!!そこのヒュージ!あなたの相手は私達よ!他の誰にも手出しはさせないんだから!」

奈々「それとも、あんたじゃ私達に勝てないの?」

 

 

 

 

と、ヒュージを挑発する二人。

 

 

すると、ヒュージがマギの弾幕を放ってきた。

 

 

 

奈々「散開!」

梨璃「!」

 

 

 

梨璃と奈々は左右に別れて飛び、弾幕をかわした。

 

 

 

梨璃「今は出来るだけ時間を稼がないと!」

奈々「確かに、現場このまま攻撃しても無駄にマギを消耗する。とりあえずアイツのマギを消耗させる!」

 

 

 

 

マギは高ければその分攻撃力や防御力に影響する。

 

 

マギが減っていけば攻撃力と防御力が落ちるため、このタイミングがヒュージを倒すチャンスでもある。

 

 

その為には、このヒュージの攻撃を長時間耐えなければならない。

 

ヒュージの弾幕をかわし続ける二人。

 

 

 

 

しかしヒュージの攻撃は弾幕だけではなかった。

 

 

なんと、左右に浮遊する翼を飛ばしてきたのだ。

 

 

 

奈々「そうきたか…!」

 

 

 

この手の攻撃は想定済みで、奈々は大きくかわす。

 

 

梨璃も向かってくる翼に対応し、大きく避けた。

 

 

 

二人は問題なく敵の攻撃を回避しているが、次第にヒュージは前進し始め、百合ヶ丘に向かっていた。

 

 

 

 

奈々「くっ、私達は眼中にないのか!」

 

 

 

少し不味くなってきた…

 

先程の翼をもし百合ヶ丘に飛ばしてきたら今度は避けるわけには行かない。

 

とはいえ、今の奈々があの翼を受け止め続けたらこちらのマギが大きく消耗してしまう。

 

しかし、奈々にそんな選択をする余裕は納った。

 

 

 

 

奈々は真っ先に駆け付け、百合ヶ丘の前に立った。

 

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん!?」

奈々「百合ヶ丘には、何一つ触れさせはしない!」

 

 

 

そう告げる奈々を前に、ヒュージは再び無数の弾幕をばら蒔いてきた。

 

 

 

対し、奈々はカナベラルに加え、左手で腰につけたブルメリアを抜き、弾幕を次々と弾き返していった。

 

校舎には被害は無いものの、二刀流となればその分マギの消費が早まるか、そんなことを考えてる余裕はない。

 

 

ところがヒュージは弾幕を撃ちながら、翼の1つを奈々に向けて射出した。

 

 

 

奈々「な!?」

 

 

 

レアスキルを封じられてる今の奈々は弾幕を防ぐだけで手一杯で、ブレードを受け止める程の余裕がない。

 

止めないと、校舎が破壊される。

 

 

 

 

しかしそこへ梨璃が割り込んできた。

 

 

 

 

梨璃「学園はやらせない!」

奈々「駄目だ!逃げて!」

 

 

 

 

射出された翼が梨璃に迫ってきた。

 

 

 

 

 

すると、奈々が弾き返していた弾幕が止んだ。

 

すぐに梨璃の前に周り、その巨大な翼を奈々はブルメリアをしまい、カナベラルを両手で持ったまま受け止め、横に弾き飛ばした。

 

 

 

 

 

しかしそこへ、もう片方の翼が飛んできた。

 

 

 

奈々「やば!?」

 

 

 

奈々は回避したいが、動作が間に合わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「情けないわよ。奈々」

奈々「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、声と共に現れたのは、巨大な剣を持った白い髪の少女…夢結だった。

 

夢結は巨大な翼を大剣のCHARMで弾き返していた。

 

 

 

 

奈々「ゆ、夢結さん!?」

梨璃「お姉様!」

 

 

 

 

夢結は奈々と梨璃の方を向いた。

 

髪は白く、瞳の色は赤く光っているが、表情は普段の夢結と同じであった。

 

 

 

 

夢結「梨璃、無茶はしないでって前に言ったはずよ。それと奈々、私のライバルはこの程度で苦戦するの?」

奈々「言ってくれますね…というか、ルナティックトランサー問題なく使えるんですか?マギも溢れてるようですが…」

 

 

 

本来、結界のせいでマギは使えないはずなのに、夢結の体にはマギが溢れていた。

 

 

 

夢結「この子のお陰よ」

 

 

 

 

夢結は持ってた剣を二人に見せた。

 

 

 

 

奈々「それは…!」

梨璃「ダインスレイフ!」

 

 

 

 

夢結が持ってたCHARMは、前に戦ったヒュージ…ドンノロッシェンの体内に刺さっていた、2年前に行方不明になった夢結のダインスレイフだった。

 

回収後…工廠科に預けられたのを夢結が持ち出してきたようだ。

 

ボロボロだった機体は修理され、新品同様になっていた。

 

 

夢結がマギ、レアスキルを使えるのは、今持ってるダインスレイフのお陰であることは間違いないだろう。

 

しかしダインスレイフには元々そんな機能は持っていない。

 

恐らく、ドンノロッシェンの体内に刺さっていたときにこの結界に対する耐性が付加されたのだろうか…

 

 

 

 

と、考えてる余裕はない。

 

 

 

夢結「梨璃、後ろは任せたわ。奈々、やれるわね?」

梨璃「はい、お姉様!」

奈々「誰に言ってるんですか?当然ですよ!」

夢結「ふふ、行くわよ!」

 

 

 

 

夢結と奈々が前進し、その後ろを梨璃が追うようにヒュージに向かっていく。

 

 

 

対し、ヒュージは再び翼を夢結達に向けて飛ばすが、夢結のダインスレイフに再び弾き返される。

 

もうひとつの翼も飛ばすが、こっちは奈々がカナベラルで弾き返していた。

 

 

次にヒュージは弾幕をばら蒔いてきた。

 

これも問題なく夢結と奈々が全て弾き返していった。

 

 

 

 

奈々「弾幕がまだ激しい…」

夢結「これじゃ先に私達のマギが尽きるわね…早く突破口を見つけないと…」

 

 

 

そういってる内に後ろから飛ばした翼が戻ってきて、梨璃に狙いを定めた。

 

 

 

梨璃「!?」

夢結「梨璃!」

奈々「夢結さんここは任せてください!梨璃ちゃんを!」

夢結「ええ。お願い!」

 

 

 

弾幕を奈々に任せ、梨璃の方へ向かう夢結。

 

 

 

 

夢結「梨璃!避けて!」

梨璃「はい!」

 

 

 

夢結の呼び掛けで梨璃は横に離れ、夢結は向かってきた翼を弾き返すも、今度は夢結が弾き飛ばされる。

 

 

すると、ヒュージは夢結に狙いを定め、マギのビームを放とうとした。

 

 

 

奈々「まずい!!」

 

 

 

 

奈々は弾幕を防ぐだけで手一杯。援護には迎えない。

 

 

 

 

夢結(避けられない…!?)

梨璃「お姉様ー!!」

 

 

 

 

必死で夢結の元へ向かう梨璃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃(もう誰にも結梨ちゃんみたいな事になってほしくない…もう誰にも悲しませたくない…!!)

 

 

 

 

 

突然梨璃にとてつもないマギの光が放たれた。

 

光はヒュージの溜めたマギを浄化し、結界をも中和していった。

 

そして空は日の光に照らされた。

 

 

 

 

 

夢結「結界が晴れた……これは…!?」

奈々「カリスマのレベルじゃない……この力は…!」

夢結「梨璃!」

 

 

 

 

夢結と奈々は梨璃の元へ駆け付けた。

 

 

 

 

梨璃「お姉様、怪我はありませんでしたか?」

夢結「ええ。貴女のお陰……って梨璃、その髪の色!」

梨璃「色?」

奈々「マイ手鏡」

 

 

 

 

奈々は金属製の手鏡を梨璃の方に向けた。

 

 

 

 

梨璃「…………ええーっ!!!??」

 

 

 

 

 

梨璃は驚愕した。

 

 

それもそのはず。

 

 

 

 

 

なんと、梨璃の髪の色が薄紫色に変化していたのだ。

 

 

 

 

梨璃「色が変わってる……!」

夢結「神宿り…いや、それじゃあマギの色が違う…」

奈々「ラプラス……!」

夢結「え?」

 

 

 

奈々が聞き慣れない名前を二人の前で出した。

 

 

 

奈々「カリスマの上位スキル…それがラプラス」

夢結「上位スキル!?」

梨璃「奈々ちゃん、カリスマはレアスキルじゃなかったの?」

奈々「まだ解明はされてないけど、カリスマはサブスキルだったんだよ」

夢結「初耳よ奈々、何故貴女がそのレアスキルを知ってるの?」

奈々「ブルーガードにいた時にラプラスに関する資料があって、かつて一人のリリィがラプラスを使って仲間と共にアルトラ級を倒したという記録が残っていたんです」

夢結「アルトラ級を?」

梨璃「じゃあ私のレアスキルって…!」

奈々「ラプラスの可能性が高いよ。その輝きはカリスマの比じゃないもの」

 

 

 

 

そう言って奈々は晴れた空を見る奈々。

 

 

 

 

夢結「結界が晴れたのは、ラプラスの力によるものなのね」

奈々「そういうことです。結界もかなり弱まったし、これなら私もレアスキルが使える。今ならヒュージの力も少し弱まってる筈です」

夢結「そう言うけど、ラプラスがあるからって私達だけで勝負になるの?」

奈々「結界が弱まっても、近付けば普通のリリィが暴走する効果が残ってますからね。大丈夫ですよ。こっちには梨璃ちゃんのラプラス…カナベラルとブルメリア、それにダインスレイフもあります。それに一柳隊も流石に黙ってないでしょ」

梨璃「うん。みんなも今ごろやっつける方法を考えてる筈」

奈々「それ、もうやってるみたい」

梨璃「?」

 

 

 

 

 

すると、何かが発射された音が周りに響いた。

 

銃声の音である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BGM 君の手を離さない~BOUQUET ver.~

 

 

 

 

なんと、遠くからマギスフィアが飛んできた。

 

 

 

 

梨璃 夢結「マギスフィア!」

奈々「あれは雨嘉ちゃんが撃ったのか?それにあんな遠くから…梨璃ちゃん、ノインヴェルトの弾を誰かに渡したとか?」

梨璃「うん、万が一の為に楓さんに渡しておいたの」

 

 

 

 

梨璃はヒュージと出会う前に、ノインヴェルトの弾を楓に渡したらしい。

 

今ノインヴェルトを行っているのは梨璃、夢結を除く一柳隊のようだ。

 

 

 

 

梨璃(みんな…気付いてくれたんだ…!)

夢結「軍隊連鎖超距離射撃(レイドチェイン・オーバーレンジ・ブースト)…あれを行ってるの!?」

奈々「確か接近が不可能なヒュージに対抗する戦術だったような…」

 

 

 

 

と考えている内にマギスフィアはヒュージの横を通りすぎていき、反対の森に向かい、再び跳ね返った。

 

 

 

二水「はわわわわ!すみませーーん!お願いしますーー!!」

 

 

 

 

遠くから二水の声が響いた。

 

 

 

 

奈々「さっきパスしたのは二水ちゃん!?」

 

 

 

 

そして跳ね返ったマギスフィアの先は…

 

 

 

 

楓「いいえ、良いパスですわよ!」

 

 

 

 

 

反対側から飛んで現れた楓がジョワユーズでマギスフィアをパスして打ち返した。

 

この様子を見た3人は…

 

 

 

 

 

奈々「活路が見えてきましたね!」

夢結「今のうちにヒュージの気を逸らすわよ!」

梨璃「はい!」

 

 

 

 

夢結のルナティックトランサーは継続しており、梨璃のラプラスの力で安定かつ強化されている。

 

奈々はマスカレイドを使い、ヘリオスフィアを発動した。

 

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん?」

奈々「梨璃ちゃんのお陰でヘリオスフィアの効果も上がってるからね。今ならヒュージの弾幕を防げる!」

夢結「頼もしいわね…行くわよ!」

 

 

 

奈々達が飛び出し、ヒュージに向かっていく。

 

ヒュージも向かっていく3人に対し、弾幕をばら蒔くが、奈々の強化されたヘリオスフィアによって弾かれてしまう。

 

夢結と梨璃はお互いのCHARMをシューティングモードに変形させ、射撃でヒュージのマギを少しでも削らせていく。

 

奈々はヒュージの身体の上に着地し、直接頭部の宝石部分をカナベラルで攻撃し、何度も傷を付けていく。

 

 

結界が弱まり、マギインテンシティの高さで威力が底上げされたカナベラルの一撃でも、痛手には程遠い。

 

それだけヒュージのマギが多いのだ。

 

 

 

 

 

しかしヒュージのマギは次第に削られている。

 

そしてヒュージの狙いは奈々達に向けられている。

 

その間に一柳隊はノインヴェルトを着実に進めていく。

 

 

 

 

 

梅「何かいつもより調子良いな〜!」

 

 

 

飛翔した梅がタンキエムでマギスフィアを受け止め、ミリアムに飛ばした。

 

 

 

 

ミリアム「ワシは絶好調じゃ!」

 

 

 

 

今度は高く跳んだミリアムがニョルニールで受け止め、次のパス相手である鶴紗に飛ばした。

 

 

 

 

鶴紗「いつもより体が軽い…!」

 

 

 

 

同じく跳んだ鶴紗がティルフィングで受け止め、神琳に向けて飛ばした。

 

 

 

 

神琳「夢結様、梨璃さん!」

 

 

 

 

神琳がマソレリックでマギスフィア受け止め、奈々達の方へパスした。

 

マギスフィアを確認すると、夢結は一旦ルナティックトランサーを解除する。

 

 

 

 

梨璃「マギスフィアが来ました!」

夢結「分かってるわ!梨璃、私がパスするから、フィニッシュは貴女が!」

奈々「ん?ヒュージが…!」

 

 

 

 

 

奈々がヒュージの動きに気付いた。

 

 

なんと、ヒュージにくっついている三枚の翼が分離し、合計9枚の翼になり、その1つが飛んでくるマギスフィアを受け流すように取る。

 

 

 

 

夢結「嘘!?」

神琳「何ですって!?」

 

 

 

 

そのマギスフィアは円状に並んだ9枚の翼に流れていくかのようにヒュージの周りを回っていった。

 

そしてマギスフィアも、ヒュージのマギを吸収したせいなのか、黒く染まっていく。

 

 

 

 

楓「マギスフィアが横取りされた…!?」

 

 

 

 

 

一方奈々達の方も………

 

 

 

 

奈々「ノインヴェルトのマネとは小癪な事をするなぁ、あのヒュージ…!」

夢結「失敗だわ!」

奈々「いや、好都合!この際ヒュージのマギも利用しましょう。二人は下がって……」

梨璃「私行きます!」

 

 

 

 

奈々の話を聞かずに梨璃は取られたマギスフィアを取り返しにヒュージの翼に向かう。

 

それを見た夢結も梨璃を追っていく。

 

 

 

 

奈々「って、二人とも無視!?」

 

 

 

奈々は先行した二人を追う。

 

 

 

 

夢結「梨璃!たまには私の言う事を聞いたらどうなの!?あなたは!」

梨璃「た、たまには!?」

 

 

 

 

シューティングモードによる範囲攻撃でヒュージを妨害する二人。

 

 

 

 

夢結「シュッツエンゲルなのよ、私は!なのに梨璃は私の言う事を何時も聞かなくて!」

梨璃「ええっ!?お姉様は私の事をそんな風に思ってたんですか!?」

 

 

 

 

今まで言えなかった愚痴を梨璃に暴露する夢結。

 

そう言いながらいい連携を取る。

 

 

 

 

夢結「そうでしょ!?あなたは何時も気が付けば置いてけ堀にして!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結「自分より、他人の事に一生懸命で…!」

 

 

 

と、笑顔で言う夢結。

 

そんな梨璃だからこそ夢結は梨璃とシュッツエンゲルの契りを結んだのかも知れない。

 

 

 

 

奈々「昔の夢結さんに戻ってきましたね…!」

 

 

 

 

と、感心する奈々は縮地を使って真っ先にマギスフィアをカナベラルでキャッチした。

 

 

 

 

奈々「よし!」

夢結「駄目よ!マギを吸いすぎている。チャームが侵食する…!」

奈々「そんなことはわかってますよ!」

 

 

 

 

 

そう言って奈々は腰に着けたブルメリアを抜き、マギスフィアに当てた。

 

 

すると、黒く染まってたマギスフィアが綺麗な色に浄化された。

 

梨璃のラプラス…奈々のブルメリアの浄化機能とヘリオスフィアの浄化効果を駆使すれば、

マギスフィアの浄化は可能である。

 

 

 

 

梨璃「マギスフィアが…!」

奈々「この程度のなら大したこと…って!?」

 

 

 

と、話してる内に3枚の翼が奈々に襲いかかった。

 

体をひねくらせて避けるものの、マギスフィアを遠くへ弾いてしまう。

 

 

 

奈々「ヤバ!急いで回収…!」

「マギスフィアはこちらに任せて。ヒュージを頼む」

 

 

 

 

遠くから綾瀬の声が大きく聞こえてきた

 

 

 

 

 

奈々「綾瀬ちゃん!?」

 

 

 

 

一方遠くの場所では、綾瀬がイージスをもって他のリリィ達に指示を出していた。

 

 

 

綾瀬「各自、二人同時にパスして!10回パスしたら3人!更に10回パスしたら4人と、人数を増やしながらパスしてくれ!」

天葉「了解!行くよ、樟美!」

樟美「はい、天葉お姉様!」

 

 

 

 

こぼしたマギスフィアを最初に駆けつけたのは天葉と樟美である。

 

グラムと白雪でマギスフィアを受け止め、気合いを入れて次の者達へパスする。

 

 

 

 

依奈「壱!亜羅椰!」

亜里奈「かなりのマギが溜まっていますよ。気を付けて!」

 

 

 

次は衣奈と亜里奈が小剣のミミング、アステリオンでマギスフィアを受け止め、壱、亜羅椰の方へパスした。

 

 

 

 

壱「望む所!」

亜羅椰「後は頼むわよ!」

 

 

 

アロンダイト、マルミアドワーズでマギスフィアを受け止める壱と亜羅椰。

 

 

 

壱 亜羅椰「皆!!」

 

 

 

 

次のリリィ達へパスする二人。

 

 

 

 

 

次第に他のリリィ達も現れては、マギスフィアをパスしていく。

 

 

アールヴヘイムだけでなく、レギンレイヴ…エイル…サングリーズル…ローエングリン等、百合ヶ丘の全レギオン、全リリィが参加してきた。

 

 

 

梨璃「マギスフィアが…まだ…!」

夢結「皆が繋いでくれているんだわ!」

 

 

 

この状況を逃さないかのように、ヒュージが9枚の翼を他のリリィ達へ飛ばしてきた。

 

 

 

奈々「邪魔するなぁー!!」

 

 

 

奈々はルナティックトランサーを発動し、補助としてインビシブルワンも発動。

 

身体強化と高速化による高速攻撃で、翼を次々と叩き割っていく。

 

 

ノインヴェルトをヒュージが行ったことで、防御力は激減し、カナベラルで壊せるほど脆くなっていたのだ。

 

 

 

 

 

閑「行っけーーー!!!」

 

 

 

エイルのリリィ達が…

 

 

 

汐里「ヤァッ!!」

 

 

 

レギンレイヴのリリィ達が…

 

 

 

 

史房「仕方無いわね!!」

 

 

 

 

3人の生徒会長のリリィも…

 

 

 

 

百由「あははははは!!」

涼「はっ!!」

 

 

 

 

アーセナル達も…

 

 

 

 

広夢「それ!!」

 

 

 

 

ローエングリンのリリィ達も…

 

 

 

 

那岐「いくよ、ロザ!」

ロザリンデ「ええ!」

 

 

 

ロザリンデと那岐が…

 

 

 

 

茜「合わせて!!」

月詩「うん、あかねえ!」

弥宙「奈々だけにいいかっこはさせない!」

辰姫「私達アールヴヘイムをなめないで!」

 

 

 

 

残りのアールヴヘイムメンバーが…

 

 

すべてのリリィ達がマギスフィアを次々とパスしていく。

 

 

 

 

そして同時に、CHARMも壊れていく…

 

 

 

そしてマギスフィアは綾瀬の方に向かい、綾瀬はイージスでマギスフィアを受け止めた。

 

防御に特化したイージスなら今のマギスフィアを問題なく受け止められる。

 

 

 

 

 

綾瀬「梨璃、夢結様、受け取って!」

 

 

 

綾瀬は梨璃達に向けてマギスフィアをパスした。

 

 

 

 

奈々「夢結さん、マギスフィアが来ました!」

夢結「こっちも確認したわ」

 

 

 

 

ダインスレイフを梨璃と一緒に構え、フィニッシュの体制に入る夢結。

 

 

 

 

しかし、そこへヒュージの翼が再びマギスフィアを狙いに来た。

 

 

 

 

奈々「全部壊したのに再生はやっ!やらせるか!!」

 

 

 

 

すぐに奈々はマギスフィアを狙うヒュージの9つの翼に向かい、カナベラルとブルメリアによる連撃で壊していくが、最後の翼がマギスフィアに触れた直後に破壊したことで、マギスフィアはまた遠くへ弾いてしまう。

 

 

 

 

奈々「しまった!」

楓「ここはわたくし達にお任せあれ!」

 

 

 

 

マギスフィアの着地地点に一柳隊の7人が駆けつける。

 

 

鶴紗「私達も!」

梅「もう一度!」

神琳「CHARMを限界まで!」

雨嘉「全ての力を!」

楓「夢結様と梨璃さんに!」

二水「繋げます!!」

ミリアム「頼むぞ!ワシの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョワユーズ!!」

「グングニル!!」

「ニョルニール!!」

「アステリオン!!」

「マソレリック!!」

「ティルフィング!!」

「タンキエム!!」

 

 

 

7人のCHARMがマギスフィアをキャッチし、そのまま力一杯、空にいる奈々の方へ飛ばした。

 

 

 

しかし、限界が来たのか、7人のCHARMが破損してしまった。

 

 

 

奈々「皆のCHARMが…!?」

楓「奈々さん!失敗したら承知しませんわよ!」

奈々「うん!この時を逃さない!」

 

 

 

マギスフィアの元へ向かう奈々。

 

 

しかしここで再び再生したヒュージの翼が立ちはだかる。

 

 

 

 

奈々「ほんとに再生早いな!!」

 

 

 

 

しかし、突然その翼が一刀両断され、爆散した。

 

なんと、そこには黒鉄を持ったスーツ姿の女性…如月出雲の姿があった。

 

 

 

 

 

奈々「先生!」

出雲「話は後だ。マギスフィアを取れ!」

奈々「はい!」

 

 

 

 

奈々は空に浮いたマギスフィアをキャッチした。

 

いや、正確にはカナベラルから発するマギのネットでマギスフィアをキャッチしたのだ。

 

 

 

そして最後にパスするのは……

 

 

 

 

 

奈々「夢結さん!梨璃ちゃん!行きますよ!!」

夢結「ええ!」

梨璃「お願い!」

 

 

 

 

奈々は夢結と梨璃の方へキャッチしたマギスフィアを発射した。

 

 

そして奈々はカナベラルとブルメリアを合体させ、合体剣カナリアにした。

 

 

 

 

 

奈々「解き放て!カナリア!!」

梨璃 夢結「はあああああー!!!」

 

 

 

そして夢結と梨璃も飛び、飛んでくる百合ヶ丘全リリィのマギがこもったマギスフィアをダインスレイフに取り込ませ、虹色の光を放ったままヒュージに向かって突進する。

 

 

ヒュージも危機を感じたのか、再び再生した無数の翼を夢結と梨璃に飛ばしていく。

 

 

 

 

奈々「最後まで往生際が悪いよ!!」

 

 

 

 

カナリアを構えた奈々は加速し、再び再生した無数の翼を意図も簡単に破壊していく。

 

 

 

 

奈々「いい加減に消えろぉ!!!」

 

 

 

 

 

そしてそのままヒュージに向かって、強烈な横一閃を決め、ヒュージの上と下を分ける。

 

更に夢結と梨璃のダインスレイフによる一刀両断によってヒュージは更に左右に別れた。

 

 

 

 

 

 

ヒュージは絶命し、大爆発を起こした。

 

 

その爆発の規模は大きく、近くの岩や土等かえぐり飛ばされていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆風で近くの湖に飛ばされた梨璃、夢結、奈々は消滅したヒュージのいた場所を見届けた。

 

梨璃の髪の色は元の桃色に戻っていた。

 

 

 

 

夢結「やったわね…梨璃」

梨璃「はい。お姉様」

奈々「久しぶりに疲れた…」

 

 

 

奈々は湖の上で大の字になったまま動けないでいた。

 

 

 

 

夢結「奈々は相変わらず無茶をするわね」

奈々「今回はまだましな方ですよ。それに、カナリアの調子は良かったですし」

 

 

 

同じくこちらに流れたカナリアを見る奈々。

 

 

損傷はなく、刃溢れもなかった。

 

 

 

 

 

夢結「今回は壊れなかったみたいね」

奈々「メテオメタルで出来てますからね。今回のは」

梨璃「そのメテオメタル、私達のCHARMにも使えないかな?」

奈々「オススメしないよ」

夢結「?」

奈々「メテオメタルとメタルスキンは元々、キャバリアや戦艦のフレームに使われる金属で、CHARMに使っていい物じゃない。強度は優れてるけど、その分重い。同じ質量でグングニルを作ったら、多分持てないと思う。マギを込めても、一般のリリィじゃただ振り回すぐらいしか出来ないよ」

夢結「そんなものを貴女は今まで使ってきたのね…」

「「木葉、一柳、白井、応答しろ」」

 

 

 

出雲の声が聞こえてきた。

 

 

奈々の内ポケットに入ってる携帯からである。

 

奈々が戦闘を行う際には、携帯に入ってる無線アプリを常に起動しているのだ。

 

 

 

奈々「こちら木葉。遠くへ飛ばされましたが、夢結さん、梨璃ちゃん、共に無事です」

出雲「「わかった。ヘリを向かわせておく。お前達はその場で待っていろ」」

奈々「了解」

 

 

 

と、通信が切れた。

 

 

 

戦いが終わったことで、力を抜く奈々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「…………………夢結さん、梨璃ちゃん、私は流木じゃないんだけど…」

 

 

 

いつの間にか、奈々の体に夢結と梨璃が乗っかっていた。

 

 

 

梨璃「ごめんね奈々ちゃん。流石に疲れたから」

夢結「まさか、私と梨璃をこのまま溺れさせるつもり?」

奈々「分かりましたよ。どうぞ好きなように」

 

 

 

 

 

ヘリが到着するまでの約30分間…奈々は夢結と梨璃の浮き袋になっていた。

 

 

 

 

 

 

その後…大型ヒュージの爆発によって天然の温泉が吹き出し、急遽の突貫工事で露天風呂が完成した。

 

 

梨璃は工廠科の方でレアスキルの再確認が行われた後に夢結と一緒に露天風呂へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方奈々は露天風呂には行かず、工廠科の方へ向かった。

 

 

 

工廠科の工房へ入ると、涼と綾瀬が破損したCHARMの修理をやっていた。

 

先程戦ったヒュージ…オートケプヒンを倒した時の代償は大きく、奈々、夢結、梨璃、綾瀬、涼、出雲を除く全てのリリィのCHARMが破損し、戦える戦力は限られてしまった。

 

 

夢結が持ってたブリューナグは梨璃が壊してしまった模様。

 

 

 

今ヒュージが来たら、残った5人で対処するしかない。

 

 

 

奈々「今のとこ順調?」

綾瀬「うん。一柳隊のCHARMを先に直してるところだよ」

 

 

 

 

今、綾瀬と涼が優先して直してるのは一柳隊のCHARMである。

 

こちらは損傷が軽く、真っ先に修理が終えるようだ。

 

 

 

 

涼「あの楓がジョワユーズの修理を僕に任せるなんて思わなかったけど、任された以上は責任もって直さないとね」

奈々「認めてるんだろうね。涼ちゃんの腕を」

綾瀬「奈々、君がここに来たのは他に理由があるんだよね?」

奈々「察しがいいね」

 

 

 

 

奈々は本題に移る。

 

 

 

 

奈々「梨璃ちゃんのレアスキル鑑定はどうなったの?」

綾瀬「…………ラプラスに関する反応は無かったよ。マギも平均値のまま。カリスマは本来以上の効果を出せるみたい」

奈々「そうか…」

 

 

 

 

 

ではオートケブヒンとの戦いで放ったあの力は何だったのだろうか…

 

ラプラスに関する謎が増えたと、奈々は思った。

 

 

 

 

 

 

と、ここで奈々が隣に立て掛けたダインスレイフを見つける。

 

 

 

奈々「ダインスレイフはもう終わったの?」

綾瀬「その必要はないよ。ほとんど損傷なしだったからね。それにこの年に現れた特殊なヒュージはこれの影響があったからね」

 

 

 

 

 

 

 

2年前…甲州撤退戦で、命を落とす前の美鈴は最後にこのダインスレイフを持っていた。

 

美鈴が命を落としてからそのダインスレイフはヒュージの体内に取り込まれたのち、ヒュージネストに運ばれ、様々な影響を及ぼした。

 

 

 

 

CHARMの力を使うドンノロッシェン。

 

 

 

ヒュージネストからマギを供給し、強力なビームを放ったハレボレボッツ。

 

 

 

 

そして擬似的なノインヴェルトを再現したオートケプヒン。

 

 

 

 

 

これらはダインスレイフから手にいれた力なのかもしれない。

 

 

 

 

しかしまだひとつ、謎があった。

 

 

それは、オートケプヒンが何故百合ヶ丘を狙いに向かったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「…………もしかして…!」

綾瀬「私も同じ答えだと思ったよ。後で理事長代理に聞いてみたら?」

奈々「そうしてみるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜…梨璃と夢結がとある重要な話の後、理事長室から帰っていった後に奈々が入ってきた。

 

 

 

 

 

奈々「失礼します理事長代理。話があります」

「話?」

 

 

 

灰色のロングの少女もそこにいた。

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 エイル 隊長 秦祀(はた まつり)

 

 

 

 

咬月「木葉君か…話とは?」

眞悠理「その顔だと、かなり重要な話みたいですね」

奈々「今回のヒュージについてですが、敵は百合ヶ丘を狙いにやって来ました。まるで…何かに引き寄せられているように…」

史房「何かに?」

咬月「本題を聞こうか」

 

 

 

 

 

咬月の質問に奈々は本題を答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「ありますね?マギリアクターがここに」

 

 

 

 

 

マギリアクターという単語に生徒会と皎月は驚く。

 

 

 

 

 

 

 

咬月「………その答えにたどり着くまでの理由を聞かせてもらおう」

奈々「はい。まずはマギリアクターについてですが、あれはヒュージを素材に扱う研究機関…マテリアルが作った永久機関装置です。その名の通り、マギを生み出す動力で、リリィ以外の者でもマギを扱う事ができます。小型のキャバリアならリリィでなくても動かすことができます。そしてこのマギリアクターには…ヒュージの核が使われています。といっても、全ての核が対応してるわけではありません。マギリアクターに使う核は、ギガント級の物でないと出力が足りないと、情報にありました。そんな便利なマギリアクターですが、実は危険すぎる余り、封印した型が存在します」

史房「封印した型?」

奈々「それが、ヴァーテクス。アルトラ級ヒュージの核を使った試作型マギリアクターです」

眞悠理「アルトラ級!?」

史房「何故危険と?」

奈々「アルトラ級ヒュージの核を使ったマギリアクターは他のマギリアクターよりも高出力で、それひとつで大型のキャバリアを動かせるほどの力を持っています。しかしアルトラ級の核は手に入れる事自体が難しく、三機しか作られていません。その中でもヴァーテクスは三機の中でも強力で、それ1つで戦艦を動かせるほどの力を持っています。ですが制御ができず、他のマギと干渉して暴走の危険性があることから失敗作として研究所の地下へ強固に封印されました。しかしある日、謎の集団がマテリアル社の研究所を攻撃しました。研究員、研究所のスタッフ達は皆殺され、ほとんどのマギリアクター…そして地下に封印されていたヴァーテクスも奪われました」

祀「酷い……」

奈々「ヴァーテクスに限らず、残りの二機もマギに干渉して起動する事がありますが、ヴァーテクスと違って反応するだけで安定性もいいです。襲われる前のマテリアルはこの2つの強力なマギリアクターを信用できる2つのガーデンに渡しました。その1つはブルーガードの拠点艦、クジラ船です。そしてそのもう1つが…」

咬月「百合ヶ丘という訳か…」

史房「それで百合ヶ丘にマギリアクターがあるその理由は?」

奈々「先程マギリアクターには他のマギに反応すると言いました。そして今回現れたヒュージは百合ヶ丘に向かって進みました。恐らく百合ヶ丘内に仲間がいると思っての行動だと。恐らくヒュージの高すぎるマギに反応し、稼動し始めたことでヒュージはそれに気づいたのかも知れません。リアクターにはヒュージの核を使ってますから」

 

 

 

 

奈々の話を聞き、咬月は…

 

 

 

 

 

咬月「うむ…君の予想通りだ。この百合ヶ丘の地下には、マテリアル社から受け取ったマギリアクター…フローラルハートが保管されている。あのヒュージのマギによって稼動し始めた以外は今も眠ったままだ」

奈々「そうでしたか…だとしたら、まずいですね」

祀「まずい?」

奈々「マテリアル社の研究所を襲撃した謎の集団…もうご存じの筈です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咬月「…………サンスベリア」

眞悠理「サンスベリア!?」

 

 

 

 

そう。マテリアル社を襲撃した集団はサンスベリアだったのだ。

 

 

 

 

奈々「ブルーガードにいた頃の私は、サンスベリアの活動目的の一部を聞かされています。その彼らの目的の1つが、アルトラ級ヒュージの核を使ったマギリアクターを手に入れる事です。前にクジラ船を襲ったこともありましたが、追い払うことが出来ました」

祀「相手はマギリアクターで何をするつもりなの…?」

奈々「わかりません…ただサンスベリアが人工ヒュージを所持してるとすれば、ヴァーテクスとの関係が大きいことは間違いありません」

咬月「それは私も同じ事を考えた」

奈々「稼動したマギリアクターの反応は強く広範囲にも及びます。超高性能マギレーダーを搭載したサンスベリアの戦艦なら探知されます。そして今頃サンスベリアにも伝わってる筈です。もう少ししたら、この百合ヶ丘を襲いにやって来ると思います」

祀「明日にはアルトラ級ヒュージの討伐に夢結さんと梨璃さんが向かうこの時に限って…」

史房「CHARMはまだ全て使えない。もし来られたら…」

眞悠理「間違いなく、壊滅しますね…百合ヶ丘が…」

咬月「………」

奈々「壊滅なんてさせません…」

 

 

 

 

 

奈々の言葉に咬月以外の者が驚く。

 

 

 

 

 

奈々「もう犠牲は生ませません………そのために私はここに戻ってきたんです…!」

 

 

 

 

奈々の顔には決意に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、百合ヶ丘から遠く離れた海の向こうでは移動する基地が待機していた。

 

 

その内部では、鎌倉周辺の地図が表示されたスクリーンテーブルを見るように複数の人間が囲んでいた。

 

サンスベリアの隊員達である。

 

 

 

「先程、マギリアクターの反応がレーダーに察知されました。ここです」

 

 

 

隊員の一人が鎌倉周辺の地図のとある場所に指を指す。

 

 

 

 

「百合ヶ丘女学院…先程大型ヒュージが現れて戦闘が起きた場所か」

「マギリアクターの反応はここで発見しました」

「百合ヶ丘は確かガーデンの中でも名門校でしたね」

「そこにあることは分かったが、問題はどうやって攻略するかだ。その百合ヶ丘は優秀なリリィが揃っている。一筋縄ではいかんだろうな」

「その心配は無い」

 

 

 

 

その場に、体がサイボーグのゴツい男性が入ってきた。

 

その姿は巨大な黒き鎧を来た男であり、身長は3メートル以上ある。

 

 

 

 

「ボルドー司令!」

ボルドー「百合ヶ丘は大型ヒュージとの戦闘でCHARMのほとんどを失ってるとの情報があった。そして今回その戦いに参加したリリィも明日任務の為に出るそうだ」

「それじゃあ今百合ヶ丘はハリボテ状態と?」

「しかしこの移動基地ではここから百合ヶ丘までは約2日かかりますが…」

ボルドー「CHARMの修理もすぐには終わらない。2日ほどかかっても問題はない。つくまでの間にヒュージの準備を済ませろ」

「わかりました。ただちに百合ヶ丘に向けて移動を開始いたします」

ボルドー「うむ。ギガント級の用意もな」

 

 

 

 

会議が終わり、隊員達は持ち場に戻っていった。

 

 

 

 

 

そして残ったボルドーと、突然現れた紫色長い髪の少女。

 

 

 

ボルドー「今、戻ってきたのか?」

「うん…疲れたからね。これから任務?」

ボルドー「ああ。百合ヶ丘に向けてこの基地を動かす。2日後、百合ヶ丘にあるマギリアクターを手に入れる。帰ってきたばかりですまないが、君にも出てもらう」

「いいよ。退屈してたところだし。CHARMの用意もお願い」

ボルドー「わかった。特注の物を用意しよう。期待しているぞ。双葉真里(ふたば まり)」

 

 

 

 

 

 

 

 

サンスベリア ラピュセル 双葉真里(ふたば まり)

 

 

 

 

 

真里「うん…任せて」

 

 

 

 

表情が余り変わってないが、真里は微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

 

一柳隊「次回!Sacred world!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついにオリジナルの敵の大将が現れました。

そして次回の話はオリジナル回です!
下北沢遠征の時よりもバトルシーンをふんだんに入れたいと思ってます。
そして次回のサブタイトルの名前ですが、あるシーンを次回の話に入れようと考えています。
どんな展開になるのか予想しながら次回の話を待っててくれたら嬉しいです。いつ投稿できるか分かりませんが、納得のいく話にしたいと思ってます。

それでは次回をお楽しみ!


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「14」Sacred world 前編

長らく待たせてしまって申し訳ありませんでした。
話の制作が予想以上に遅れて、完成にはまだ届かない状況です。
オリジナルの話を作るのは結構大変です。
流石にこれ以上待たせるわけにはいかないので、
三部構成にしました。
本当にお待たせしました。
それではどうぞ!



オートケプヒン討伐後の次の日…

 

 

 

ヘリポートにある輸送ヘリのプロペラが回転し始め、宙へと浮くとそのまま空へと上がり、海の向こうのヒュージネストへ向けて移動し始めた。

 

 

そしてそれを見届ける一柳隊の7人と奈々。

 

そこに梨璃と夢結はいない。

 

 

 

 

 

今回の任務は百合ヶ丘女学院の管轄する7号由比ヶ浜ネストに潜むアルトラ級ヒュージ…リープウントライトタイレンの討伐である。

 

 

最近鎌倉に上陸したヒュージはそのアルトラ級からマギを大量に取っていた事が分かり、その大きな負荷によってネストの機能は停止していた。

 

これは絶好のチャンスということで、学園はその任を梨璃に任せたのだ。

 

 

作戦はアルトラ級を自滅させるためのバグの術式を施したCHARMをアルトラ級の体内に押し込むだけ。

 

使用するCHARMは夢結が使っていたダインスレイフである。

 

他のダインスレイフよりも丈夫で、昨日のヒュージ戦で全リリィのマギを込めたマギスフィアを取り込んだこのCHARMなら適任である。

 

しかしバグの術式を施したCHARMはとても危険で、普通のリリィでは自身がバグに汚染されてしまう。

 

そこで適任されたのが梨璃であり、彼女はカリスマの能力が平均以上の力を持っていること。

 

その証拠として、本来9人までしか出来ないノインヴェルトを全生徒で繋げられた。

 

これは梨璃がカリスマ以上の力を出した影響だと百由は言っていた。

 

しかし奈々は、梨璃がラプラスを発動させたものだと考えるが、決定的な証拠がない。

 

 

 

レアスキル検査には引っ掛からない。

 

 

変色した梨璃の髪の色も神宿りと変わらない。

 

 

 

カリスマとラプラス…

 

 

どちらもまだ解明されていない謎の多いスキルである。

 

 

 

どちらにせよ、バグの術式を施したダインスレイフを扱えるのは梨璃だけである。

 

 

そして夢結も梨璃の意思を尊重し、同行に入った。

 

シュッツエンゲルである美鈴を失い、一人で戦ってきた彼女も、今は守るべき者が出来た。

 

それは夢結にとって大きな成長と言えるだろう。

 

 

そして2人は出雲の操縦する輸送ヘリで7号由比ヶ浜ネストへ向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輸送ヘリを見届けた一柳隊の7人と奈々。

 

 

 

楓「奈々さん、本当に一人でヒュージの群れと戦いますの?」

奈々「皆のCHARMが修理中だし、今立ち向かえるのは私一人だからね」

 

 

 

 

サンスベリアが襲来してくる事は全生徒にも伝わっており、アーセナル組は現在CHARMの修理に専念していた。

 

数人のリリィ達もアーセナル組の手伝いに入っていた。

 

他のガーデンに要請をしたものの、こちらもこちらで現れたヒュージと交戦していた。

 

これは鎌倉方面、東京地区に潜むサンスベリアの別部隊がヒュージを使って百合ヶ丘以外のガーデンを妨害してるからである。

 

これでは救援に駆けつけるのは無理に等しい。

 

絶望的な状況だが、他のガーデンからの遠征がこない以上、奈々一人でやるしかないのだ。

 

 

 

 

二水「CHARMが無いとリリィは無力ですね…」

鶴紗「戦えないのは…ほんとに辛いな…」

雨嘉「うん……」

 

 

 

 

CHARMが無ければ戦えない。

 

リリィが戦場でCHARMを失うことは、死に直結する事でもあるのだ。

 

 

 

 

梅「そうだ奈々、ツインフェザーだったか?あのCHARM、梅にも使えるか?」

奈々「オススメできませんよ?ツインフェザーも結構マギを食いますから。梅さんが仮に使えたとしても、メタルスキン製のCHARMは基本重いですよ」

 

 

 

奈々が使っていたツインフェザーはカナベラル程ではないが、マギの消費が高い上に頑丈で重いメタルスキンを使っているので、普通のリリィでは扱えない。

 

カナベラル、ブルメリアに使ってるメテオメタルだと更に重いのだ。

 

 

 

 

楓「やはり今の私達では力になれませんわね」

神琳「いえ、私達にはレアスキルがありますもの」

 

 

 

 

CHARMが使えなくても、レアスキルは問題なく使える。

 

レアスキルは補助がメイン。

 

サポートなら戦えなくても仲間を助けることは出来る。

 

 

 

 

二水「私の鷹の目と雨嘉さんの天の秤目なら敵の増援と戦況に対処出来ますね」

楓「それなら攻撃力を上げる私のレジスタも役にたちますわ」

神琳「足りない距離は私のテスタメントで拡張させますわ」

ミリアム「一度切りじゃがワシのフェイズトランセンデンスなら他者にマギを与えることは可能じゃ!」

鶴紗「戦況が怪しくなってきたらファンタズムで教える」

梅「危なくなったら梅の縮地で撤退すればいいしな!」

奈々「ちょっとちょっと! 何話を進めてるの!?って言うか、CHARM無しで戦場に出るのは危険だって!」

神琳「私達はバックアップに回りますから大丈夫ですわ」

奈々「それでも危険なことに代わりないって!」

楓「私達はリリィ。ヒュージに立ち向かえる少女ですわ」

二水「戦いには出れませんが、サポートぐらいなら出来ます!」

梅「それに奈々、一柳隊に入る予定なんだろ?梨璃から聞いたぞゾ」

楓「梨璃さんの為にも、貴女がやられることは許されませんのよ」

雨嘉「奈々は一緒に戦ってくれた仲間だもの」

ミリアム「だからワシらの力も頼りにせい」

 

 

 

 

一柳隊の7人は奈々に協力する気満々である。

 

 

 

 

奈々「みんな……」

「私達も忘れないでよね」

 

 

 

 

アールヴヘイムの面子5人がやって来た。

 

 

 

 

 

奈々「天葉さん、アールヴヘイムのみんなも…!」

天葉「君のへリオスフィアじゃ不十分でしょ?」

 

 

 

天葉のへリオスフィアは百合ヶ丘の中でも高い性能を持っており、アールヴヘイム全体の生存力に大きく貢献している。

 

 

 

 

樟美「ファンタズム使いもたくさんいた方がいいでしょ?」

 

 

 

樟美は世界で最初のファンタズム使いで、スキルの性能もトップクラスである。

 

 

 

 

亜羅椰「補充要員は多い方がいいし」

 

 

 

亜羅椰はフェイズトランセンデンスのS級を持っており、性能面ではミリアムを凌ぐ。

 

 

 

 

衣奈「戦えるのは貴女だけしかいない以上、私達は精一杯の事をするわ」

壱「みんなの思いを背負ってるからね。協力するよ」

天葉「他のみんなも、奈々に協力するって言ってたよ」

 

 

 

 

全レギオン、全生徒も奈々に協力する体制である。

 

 

 

奈々「ありがとうございます!」

 

 

 

 

皆から勇気を貰ったか、笑顔でお礼を言う奈々。

 

 

 

ミリアム「さて、ワシはそろそろCHARMの修理に戻るとするかの。1秒でも早くCHARMを直さんとな」

神琳「私達はサンスベリアが来るまでの間、戦略を立てましょうか」

二水「ですね。学園側も今、各ガーデンに要請を掛けています」

奈々「私も話にのせ…」

鶴紗「奈々は休んでろ」

楓「百合ヶ丘全生徒の命を背負ってるのですよ。体調管理はしておかないとですわ」

雨嘉「こっちは私達で考えるから奈々はいま、自身の体を休ませておいた方がいいよ」

奈々「そうは言ってもねぇ…」

梅「奈々、少しの間梅に付き合って貰うゾ!」

奈々「え!?」

 

 

 

 

と、梅が奈々の右腕を掴み、縮地を発動させ、遠くへ言ってしまった。

 

 

 

 

二水「あ、梅様が奈々さんを連れていきましたよ!」

楓「丁度いいですわ。こちらはこちらで作戦を立てておきましょう」

ミリアム「そうじゃな。奈々の事は梅様に任せておいて大丈夫じゃからな」

天葉「梅も奈々とは競い会う仲だからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、縮地を発動した梅は奈々を連れて何処かへ向かっていた。

 

 

 

 

奈々「梅さん、私を連れて何処に?」

梅「思い出の場所だゾ!」

奈々「思い出?」

梅「着いたゾ!」

 

 

 

 

 

着いた場所は、結梨と共に戦った浜辺…由比ヶ浜であった。

 

 

 

 

奈々「ここは…」

梅「奈々、お前が2年前にここで最初の模擬戦をやったのを覚えているか?」

奈々「は、はい。初代アールヴヘイムとの合同演習の時でしたね。夢結さんと最初の勝負をした馴染みのある場所でしたし」

梅「結局やられちゃったからな。奈々」

奈々「その頃から夢結さんをライバルと見るようになったんですよね、私が」

梅「そうだったな…けど梅がお前をここに連れてきたのはそれを思い出させる為じゃないゾ」

奈々「?」

梅「休憩中、お前は一人で何処かへ行って、町に向かう新たなヒュージ達を見つけて、一人で全て倒そうとしたよな」

奈々「まだ覚えていたんですか…」

梅「当たり前だろ?それにあの戦いでお前は大ケガを被って、皆に心配かけたんだぞ」

奈々「あの時は申し訳無いと思ってます」

梅「まあお陰で町に被害はなかったがナ」

奈々「それで、ここに連れてきたのはそれを話すためですか?」

 

 

 

と、奈々の質問に梅は答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梅「奈々……前より無茶してないか?」

奈々「えっ?」

梅「最初の頃は心配するほど無茶してたけど、ブルーガードから戻ってきてからはそれ以上に無茶してた」

奈々「…」

 

 

 

 

図星を突かれ、言葉も出ない奈々。

 

 

 

 

梅「9人揃っての初のギガント級との戦い…下北沢での大量発生したヒュージとの戦闘。アールヴヘイムとの共同。結梨と一緒に戦った時。そして百合ヶ丘に現れたギガント級。戦闘が終わった時お前はバタリと倒れていた。やり過ぎとは行かないけど、色々と無理してるゾ」

 

 

 

 

奈々の無理した戦いを梅にはバレバレだったようだ。

 

 

 

 

梅「奈々…ひょっとして、恐れているのか?」

奈々「……………梅さんにはごまかせられませんね」

梅「梅は中学時代、お前も見てたからナ」

 

 

 

 

観念したところで奈々は明かす。

 

 

 

 

 

 

奈々「私がリリィになろうとした理由はもう誰にも死なせたくないというのはご存じですね?」

梅「ああ。夢結から聞いたからな。お前はより多くのリリィ達の死を目の当たりにしたからな…だから梅にはわかる。鎌倉防衛戦…甲州撤退戦…御台場迎撃戦…多くのリリィ達が、ヒュージによってやられていった…生き残ったリリィ達も奈々や夢結、他の皆と同じように、自身の力不足を悔やんでいたのかもしれない」

奈々「…はい…今度は負けることが許されない…私が負けることは、百合ヶ丘の皆の命が危ないと…下手したら、誰かの命が失われてしまうと。恐れているんです…今の自分に皆を守れるか…」

 

 

 

 

今の奈々には大きなプレッシャーが重くのし掛かっていた。

 

 

 

 

 

梅「梅達はお前が失うのが怖いぞ」

奈々「えっ?」

梅「CHARMが使えなくて、一緒に戦うことも、守ることも出来ない…もしCHARMの修理が間に合わなくて、奈々がやられちゃったら。そう思うと怖くなるんだ」

奈々「梅さん…」

 

 

 

 

そして梅は両手を奈々の両肩に載せる。

 

 

 

 

 

梅「約束してくれ。必ず生き残ると…!」

 

 

 

 

梅の表情は真剣だった。

 

 

大切な後輩に死んでほしくないという思いが、梅の表情から伝わってきた。

 

 

 

 

これに対し、奈々の返答は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々は両手で梅の両手を退かした。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「…………前に言ったはずですよ。私は守れない約束は守らないと」

梅「奈々…!」

 

 

 

そう言って奈々は後ろを振り向き、少し歩くと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「ですが……死ぬつもりは、ありませんから。この意志は今も変わらない」

 

 

 

 

その返答に、梅は安心した顔で……

 

 

 

 

 

梅「そうだナ!奈々らしくていいナ!」

奈々「ふふっ……」

 

 

 

 

笑う二人…………

 

 

 

 

 

 

と、その時強い風が吹き荒れた。

 

 

 

 

梅「これは…!」

 

 

 

海の向こうを見ると、無数の黒い影が見えてきた。

 

 

 

 

奈々「どうやらサンスベリアがヒュージの大群を先行させてきたようです…こちらの準備が終わる前に仕掛けてきたか…!」

梅「急いで戻るぞ!梅に捕まれ!」

奈々「了解」

 

 

 

 

奈々は梅を抱き、梅は縮地を使って百合ヶ丘へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院の校門前に着いた二人の前に待っていたのは、一柳隊とアールヴヘイムのメンバーと史房、咬月であった。

 

アーセナルの者達はここにはいないようだ。

 

 

 

 

奈々「みんな!ヒュージがやって来た!」

二水「こちらも神琳さんのテスタメントのお陰で確認出来ました!見慣れないスモール級が200体、ラージ級が25体います。ギガント級は1体!下北沢で戦ったアーリマンです!」

奈々「予想通りの編成で来たか。しかもアイツか…!」

 

 

 

 

アーリマンは下北沢で一柳隊、テンプルレギオン、ロネスネス、その他のリリィ達が苦戦を強いられていたギガント級で、マギスフィアを1度だけ弾き返すマギリフレクターを持っている。

 

そのギガント級が再びやって来たのだ。

 

アーリマンを倒すのも一苦労で、マギリフレクターを剥がしても、そのタフさで、マギスフィア1発では倒しきれない程の耐久力を持っている。

 

 

 

楓「よりにもよってあのギガント級とは…」

鶴紗「多くのリリィでやっと倒せたけど…」

梅「今回は奈々一人だからな…」

神琳「敵は下北沢の時より多い数で来ています」

奈々「ラージ級は問題ないし、ギガント級は地道にダメージを与え続ければなんとかなるよ。塵も積もれば山となるってね。ただスモール級は数で来ると厄介だからなぁ」

 

 

 

 

そう…こちらは奈々一人。

 

みんなはCHARMが修理中のため戦えない。

 

一人でヒュージの群れに挑まなきゃいけない。

 

対ギガント級に備え、マギの温存と合体剣カナリアを使うタイミングが重要になってくる。

 

その合体剣はというと…

 

 

 

 

綾瀬「先にメンテを終わらせておいたよ」

 

 

 

 

綾瀬から渡されたのは、メンテを終わらせたカナベラルとブルメリア、2本のツインフェザーと無線機だった。

 

メインをカナベラルとブルメリア。

 

綾瀬は投擲用として、ツインフェザーも用意したようだ。

 

ツインフェザーはマギの消費が押さえられている為、取り巻きを倒すのに向いている。

 

うまく使えば、マギを温存したままスモール級を殲滅出来るだろう。

 

 

 

奈々は4本のCHARMと無線機を受け取ると、それらを腰に身に付け、無線機は胸元のポケットに付ける。

 

 

 

 

奈々「綾瀬ちゃん、ありがとう」

綾瀬「私は私の仕事をやっただけだから」

 

 

 

更に…………

 

 

 

 

 

 

楓「レジスタをかけておきますわよ」

天葉「へリオスフィアもかけておくよ」

 

 

 

 

奈々に楓はレジスタで攻撃力を、天葉はへリオスフィアで防御力を強化した。

 

 

 

これで準備は整った。

 

 

 

 

奈々「ありがとうございます!」

神琳「スモール級とラージ級は始めてみる個体なので、まずは廃虚を戦闘区域にして戦い、敵の行動に気を付けてください」

奈々「わかった」

咬月「木葉君…」

奈々「はい」

咬月「………必ず生きて帰ってきてくれ」

奈々「……前に言いましたよ。死ぬつもりはないと」

咬月「…………そうだな……頼んだぞ…!」

奈々「はい!」

史房「木葉さん、百合ヶ丘を守って…!」

奈々「任せてください!」

梅「それじゃあ梅が戦闘区域まで連れてってやるゾ。しっかり捕まるんだゾ!」

奈々「はい。お願いします!」

 

 

 

 

奈々は梅の背中に捕まり、梅は再び縮地を発動させ、戦闘区域へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後…奈々と梅は、戦闘区域である廃虚の街へとやって来た。

 

すでにヒュージの群れの一部は上陸し始めたようだ。

 

 

ちょっと大きめの無機物な鳥だが、スモール級であることは間違いない。

 

その数は10体である。

 

 

 

 

そして…奴等の狙いは百合ヶ丘の地下に保管されてるマギリアクターだろう。

 

 

 

 

 

 

奈々「梅さん、この辺りでいいです。早く撤退を」

梅「わかってるって。それじゃあ頼むぞ!」

奈々「はい!」

 

 

 

奈々を残し、梅は撤退した。

 

 

 

そして奈々は2本のツインフェザーを抜く。

 

 

 

 

 

奈々「百合ヶ丘には、一体も通させはしないよ!」

 

 

 

 

ツインフェザーを構え、奈々は道路の上をを走りながらヒュージの群れに向かって突っ込んでいった。

 

鳥のスモール級達は、奈々に気付くとマギの光弾を撃ち出してきた。

 

 

しかし奈々にはへリオスフィアの効果により、マギの防御膜の強度が上がってるため、全て弾かれる。

 

 

 

 

奈々「時間はかけられないし、速攻で片付けさせてもらうよ!」

 

 

 

 

すれ違い様に右手のツインフェザーで中央に並ぶ鳥のスモール級の1体を斬り倒し、そのまま後ろの9体のスモール級にマギの斬撃を連続で放って次々と倒していった。

 

 

 

最初のスモール級達を全滅させたところで、無線機から二水の声が…

 

 

 

 

二水「「増援確認しました!スモール級30体、ラージ級3体です!スモール級は青い個体の他に赤い個体も確認しました。気を付けてください!」」

奈々「了解。ここでラージ級か…それに赤い個体…!」

 

 

 

 

海の向こうから複数のスモール級と三体のスモール級を大きくした巨鳥のラージ級が見えて来た。

 

 

スモール級の群れはラージ級を置いていって、スピードを上げてやって来た。

 

 

 

 

奈々「今度は多いな…引き続きツインフェザーで…」

 

 

 

 

ツインフェザーで戦う奈々だったが、突然横から無数の弾が飛んできて、スモール級達を撃ち落としていく。

 

 

 

 

奈々「今の攻撃は…!」

 

 

 

奈々は弾が飛んできた方を見ると、数体の戦車が待機していた。

 

自衛隊である。

 

 

 

 

「「百合ヶ丘のリリィ!政府の命により援護にやって来ました!」」

奈々「政府から?」

「「スモール級の相手は任せてください!貴女はラージ級を!」」

 

 

 

 

 

スモール級の相手を軍隊が引き受けるようだ。

 

リリィでない者でもミドル級までなら倒すことは可能なので、ここでの援護はうれしい事である。

 

 

 

 

 

奈々「ありがとう!任せるよ!」

 

 

 

 

奈々はカナベラルに持ち変えてラージ級のもとへ向かう。

 

 

 

「各隊、敵の標的をこちらに向けつつ、スモール級を撃破せよ!」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 

 

 

奈々を狙いに定めたスモール級達は戦車隊の砲撃によって次々と倒していく。

 

そして、空から数機の戦闘機が現れ、機銃でスモール級を撃墜し、数を減らしていく。

 

 

スモール級の標的は自衛隊に向けられた。

 

 

 

これで奈々もラージ級の撃破に専念できる。

 

 

 

奈々「増援が来たら厄介だし、一撃で決めるか!」

 

 

 

 

奈々はカナベラルの出力を上げた。

 

必要なマギの量が増えたが、その分威力は上がる。

 

 

奈々はそのままラージ級の1体に向かって近付き、カナベラルで切り裂いた。

 

 

すると、切られたラージ級の1体が半分に切り裂かれた。

 

 

 

正に一刀両断。威力が上がってる証拠である。

 

 

 

 

1体のラージ級が爆散し、奈々はそのまま2体目のラージ級に向けて飛翔し、今度は横一閃でラージ級の上下を分けた。

 

 

 

残ったラージ級は奈々に向けて弾幕を展開するが、へリオスフィアの効果がかかった奈々の体に傷を付けることは出来なかった。

 

それどころか、奈々はブルメリアでラージ級の放ったマギの弾幕を吸収したのだ。

 

これはブルメリアの修理に綾瀬が新たに加えた

機能で、負担の大きいルナティックトランサーを使わなくてもマギの回復を容易にすることができるのだ。

 

またブルメリアにはマギを浄化する能力を持つ為、負のマギを瞬時に浄化できるのだ。

 

これにより奈々のマギの回復力はより高くなったのだ。

 

光弾を吸収したので弱ではあるが、マギの回復はこの状況で必要不可欠。

 

いかにマギの温存が重要になる。

 

 

 

 

そして奈々は3体目のラージ級を斬り倒す。

 

 

 

これで最初の三体のラージ級は撃破したが、まだ増援のラージ級は22体残ってる。

 

自衛隊が引き受けているスモール級はまだ数体残ってる。

 

すぐに援護に駆けつけたいが、ここで通信が……

 

 

 

 

 

 

二水「「奈々さん!次の増援です!スモール級60体とラージ級7体!赤い個体も数体確認!」」

奈々「早!」

 

 

 

 

海の向こうを見ると、60体のスモール級と横に並んだ7体のラージ級がもうすぐ上陸し始める。

 

しかも、ラージ級達が左右に散開した。

 

 

 

 

奈々「ここでバラけるか…そうは行かない!」

 

 

 

敵は常に百合ヶ丘に向けて前進している。

 

左右に散開されると片方は囮になり、もう片方はそのまま百合ヶ丘に一直線と、侵入を許してしまう。

 

スモール級は自衛隊が何とかしてくれるが、ラージ級は現状奈々しか倒せない。

 

迅速にラージ級達を片付けなければいけないのだ。

 

 

 

 

奈々はマスカレイドの発動で縮地を使い、片方のラージ級4体を片付けに向かう。

 

 

ところが、スモール級の群れがラージ級を倒しに向かう奈々の方へ移動し始めたのだ。

 

そして奈々に向けて弾幕を展開した。

 

 

 

 

奈々「!?」

 

 

 

 

奈々は弾幕をまともに受けるが、やはり弾かれる。

 

 

奈々はスモール級を無視して、ラージ級の1体を倒し、更にもう1体倒す。

 

 

そこへ数体のスモール級が奈々に向かって突進し、ぶつかってきた。

 

 

 

 

奈々「くっ、邪魔!」

 

 

 

 

カナベラルで襲ってくるスモール級を次々と倒していくが、その隙に2体のラージ級は奈々を気にせず、そのまま百合ヶ丘に向けて最前進した。

 

 

 

 

 

奈々「行かせるかー!!」

 

 

 

 

再び縮地でラージ級の元へ向かう奈々。

 

しかしスモール級が奈々の前を遮り、進路を塞いでいった。

 

 

 

 

奈々「くっ!」

 

 

 

 

奈々は止まることなくスモール級達の隙間を通っていこうとするが…

 

 

 

 

 

 

紛れ込んでいた赤のスモール級が光のワイヤーを発射し、奈々を拘束した。

 

 

 

 

奈々「何!?」

 

 

 

 

引きちぎろうとするが、他の赤のスモール級達が同じくワイヤーを放ち、奈々を動けなくした。

 

 

 

 

奈々「ワイヤー!?」

 

 

 

 

急いでワイヤーを引きちぎろうとするが、簡単に引きちぎれない。

 

 

それどころか、残りのラージ級5体が百合ヶ丘に向かっている。

 

 

百合ヶ丘にいるリリィ達はまだ戦えない。

 

今襲われたら百合ヶ丘は壊滅され、おしまいである。

 

 

奈々を拘束してるワイヤーを引きちぎるにはルナティックトランサーによる力ずくで行くしかないが、それはマギを多く消費してしまうため得策ではない。

 

 

 

 

奈々「ギガント級に取っておきたかったけど…!」

 

 

 

 

もはや手段を選んでられない奈々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、通信機から二水の声が聞こえた。

 

 

 

二水「「奈々さん、援軍が来ました!」」

奈々「え!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒュージ……見つけた…!」

 

 

 

 

突然、遠くから斧のCHARMが飛んできて、スモール級のほとんどを倒していった。

 

 

飛んできたのは藍が使ってるモンドラゴンだった。

 

 

ワイヤーを放ったスモール級がほとんどやられた為、拘束しているワイヤーがいくつか消え、すぐに奈々はワイヤーを引きちぎった。

 

 

 

 

奈々「今のCHARMはまさか…!」

 

 

 

 

飛んでったCHARMの方を見ると、そこには…ブカブカの制服を着た幼い灰色のミドル髪の少女がスモール級と戦っていた。

 

 

 

 

 

 

挿入歌 「Fringed iris」

 

 

 

 

奈々「藍ちゃん!?」

藍「あ、なな~久しぶり~」

 

 

 

 

奈々に気付き、左手を降る藍。

 

 

 

 

奈々「久しぶりって、まだ1週間しか経ってないし、って藍ちゃんがここに来てるってことは…!」

藍「うん。一葉達も一緒だよ」

奈々「二水ちゃんが言ってた援軍って…ヘルヴォル?…って早くラージ級を!」

 

 

 

 

早く百合ヶ丘に向かったラージ級達を追いかけようとする奈々。

 

と、そのラージ級達の方角で爆発が起きた。

 

 

 

奈々「爆発?まさか…ラージ級がやられた?」

 

 

 

ラージ級がやられた爆発である事を確信した奈々。

 

同時に遠くから声が聞こえた。

 

 

 

 

「こちら相澤一葉、ラージ級2体を撃破!」

奈々「この声、一葉ちゃんか!?」

 

 

 

どうやらヘルヴォルの残りのメンバー達が、百合ヶ丘に向かう2体のラージ級を仕留めたようだ。

 

 

そして残るラージ級は固まって動いている3体のみ。

 

今なら縮地を使って追い付ける。

 

 

 

 

奈々「藍ちゃん、この場は任せていい?私はラージ級を追う」

藍「いいよ。ここのヒュージはらんが倒すよ」

奈々「うん。お願い!」

 

 

 

 

スモール級の相手を藍に任せ、奈々は縮地で道路を走り抜け、百合ヶ丘に向かっている3体のラージ級を追いかけた。

 

 

 

スモール級達は奈々を追おうとするが、ルナティックトランサーを発動させた藍に妨害される。

 

 

 

藍「奈々をいじめたヒュージはらんが倒す!」

 

 

 

 

と、怒った表情で藍はモンドラゴンを振り回し、次々とスモール級を片付けていく。

 

 

 

 

 

彼女…佐々木藍は胎児の時にヒュージ細胞を埋め込まれて生まれた純粋なブーステットリリィである。

 

細胞を埋め込まれたことでヒュージが彼女を仲間だと認識されるようになり、その影響でヒュージから攻撃を受けなくなったが、その反面ヒュージを引き寄せてしまう。

 

しかし、そんな藍を一葉は受け入れたのだ。

 

それは彼女がブーステットだからではなく、一人の人間として受け入れたからである。

 

まだまだ幼い所はあるが、一葉の新しいヘルヴォルなら、彼女もいい方向へ成長していくだろう。

 

そして彼女も戦う思いがある。

 

仲間と一緒にいたいという思いが…

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、縮地を使って走る奈々は3体のラージ級に追いついた。

 

 

 

 

奈々「逃がさないよ!」

 

 

 

 

奈々はカナベラルを前に差し、そのままラージ級の1体に向かって飛んで突っ込み、体を貫いた。

 

 

貫かれたラージ級の1体は爆散した。

 

 

 

 

奈々「まだまだ!」

 

 

 

 

体を止めず、このまま2体目を狙いに行く奈々。

 

しかしラージ級は奈々の接近に早く気付き、弾幕を展開するが……

 

 

 

 

「ヘルヴォル、なめんなー!!」

 

 

 

 

少し遠くからラージ級に向けて太めのマギのビームが放たれた。

 

放ったのは、2階建ての家の屋根の上に立つ恋花の発動したフェイズトランセンデンスによるマギのビームであった。

 

 

 

 

 

 

 

彼女…飯島恋花は、中等部時代に初鹿野瑤と一緒に前のヘルヴォルで戦っていた。

 

しかし、とある戦場で不利な状況下の中、旧ヘルヴォルの隊長は同じく参加していたマディック達を盾にしながら撤退することを指示した。

 

しかしこれに恋花は反発し撤退を止めようとするが、悪いタイミングでヒュージの襲撃を受け、結果…マディック、隊長を含むほとんどのメンバーか命を落とした。

 

この事から恋花はヘルヴォルと関わらないようにしていたが、一葉の要請により、再びヘルヴォルに入ることになった。

 

縛られるだけの戦いは辞め、仲間のために全力でたたかう。

 

それが恋花の今の戦いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

恋花の放ったビームは1体かすれたが、もう1体は直撃し、半壊した。

 

 

 

そこへ3人のリリィがやって来た。

 

 

 

一葉と瑤、千香瑠の3人である。

 

 

 

 

 

初鹿野瑤は恋花の親友で、旧ヘルヴォルで戦っていたリリィでもある。

 

中等部時代に恋花同様、旧ヘルヴォル壊滅の事件を体験している。

 

一度はヘルヴォルを抜けた彼女だったが、一葉の作った新たなヘルヴォルに再び入ることになった。

 

 

普段はあんまり表情に出さないが、一葉やみんなの為に生きる。誰も失わせないという仲間に対する思いが彼女の中にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一葉「同時攻撃行きます!」

瑤「わかった!」

千香瑠「せーの…!」

 

 

 

 

3人の強力な一撃が半壊したラージ級に入り、爆散した。

 

 

 

 

千香瑠「ラージ級撃破!後一体です!」

 

 

 

 

彼女…芹沢千香瑠は過去に一緒に戦った親友を失い、以降親しい人が重傷等の大きなショックを受けるとパニックを起こしてしまい、精神的に思うように戦えなくなっていた。

 

しかし、そんな自分を支えてきた仲間の思いに応える為に、彼女は勇気を出して、CHARMを持って、前を向いて戦う。

 

 

 

 

 

 

 

怯んだ残りのラージ級は標的を一葉達に向けようとするが…

 

 

 

 

奈々「遅い!」

 

 

 

 

油断したのか、奈々のカナベラルによる横一閃によって切断され、爆破した。

 

そして奈々は一葉達のいる建物の上に降りた。

 

 

 

 

奈々「来てくれて助かったよ一葉ちゃん」

一葉「奈々さんもご無事で…って言うまでもありませんね」

奈々「私がラージ級ごときにやられるわけないでしょ?皆さんもありがとうございます」

瑤「一人でガーデンを守ってるって聞いたから」

千香瑠「エレンスゲは私達しか来てないけど、ヘルヴォル、防衛に参加するわ」

奈々「助かります。倒すだけなら大丈夫なんですけど拠点防衛ですからね。私ひとりじゃ数の暴力で守りきれませんからね」

 

 

 

 

後から恋花、藍がやって来た。

 

 

 

 

藍「わるいヒュージ…みんなやっつけた!」

瑤「ご苦労様、藍」

 

 

 

瑤はレアスキル…ブレイブを発動し、藍を落ち着かせる。

 

 

 

 

恋花「私達を差し置いて何勝手に話を進めてるの?」

一葉「すみません。とにかくヘルヴォル、これよりガーデンの防衛に参加します」

 

 

 

 

 

そして彼女…相澤一葉はエレンスゲの良心的存在。

 

過去にエレンスゲのマディック達に助けられ、エレンスゲに入学した彼女は、努力を駆使して序列一位を獲得する。

 

ヘルヴォルの隊長となった彼女は、序列一位の権限を使って、信頼できる仲間…千香瑠、恋花、瑤を推薦し、後に藍を加えた。

 

エレンスゲ女学園の犠牲を顧みない戦い方を変えようという信念の下に、一葉は新たなヘルヴォルの隊長として、エレンスゲを変えるため、信頼できる仲間達と共に今も戦っている。

 

 

そう……めぐるめくこの命を焼いてでも…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「うん。よろしく頼む」

二水「「奈々さん!次の増援です!スモール級100体とラージ級5体!各ラージ級に10体の赤いスモール級が固まってやって来ます!残りのスモール級は奥からついてきてます!陸地に入るまで後1分!」」

 

 

 

 

通信の二水から次の増援の知らせがきた。

 

 

 

 

 

恋花「ひゃ、100体!?」

二水「「自衛隊の方も、スモール級を全て撃破したとのことです!」」

 

 

 

 

海の向こうから、すごい数のスモール級がやって来た。

 

 

 

 

奈々「スモール級はこれで全部か…厄介な編成できたな…」

瑤「ラージ級は対処が難しくないけど…」

千香瑠「スモール級は100体となると取りこぼしの可能性もありますね」

藍「ヒュージ…たおすだけじゃだめなの?」

奈々「倒すのはいいけど、問題は赤いスモール級固有の能力のワイヤーだよ。束縛されたら動けなくなって倒すどころじゃないし、奥のスモール級の処理に行けなくなる」

 

 

 

 

 

ラージ級に10体の赤いスモール級の編成が5グループ。

 

撃破に向かえば10体の赤いスモール級がこちらの動きを拘束するだろう。そうなるとラージ級の撃破が難しくなる。

 

分散して各個撃破で攻めれば拘束の危険性が高くなる。

 

拘束を警戒し複数で攻めれば、押さえてない他のラージ級の侵入を許してしまう。

 

何より、敵の最後尾には50体のスモール級がいる。

 

後方にいる自衛隊も数はいるものの、スモール級は倒せても、ラージ級が相手では対処できない。

 

それどころか、今出てる戦車と戦闘機では最後尾のスモール級全て倒しきない。

 

簡単に突破されるだろう。

 

 

 

 

 

恋花「あちゃー、フェイズトランセンデンス温存すれば良かったかな…?」

奈々「仕方ないですよ。あの状況で使わなきゃラージ級の侵入を許してましたから」

 

 

 

 

敵の数が多いのもそうだが、今問題なのは人数が足りないことである。

 

ヘルヴォルが来てくれたのはいいが、それでも6人。

 

スモール級のワイヤー攻撃を防ぐには二人以上が条件だが、まだ人数が足りない。

 

恋花のフェイズトランセンデンスも、マギが少ないと意味はない。

 

ミリアム等の補充用もギガント級用に残さなきゃいけない。

 

一か八か二人一組でスモール級とラージ級の5編成の内3編成を叩いてから単機で残りの2編成を倒しに行くか…

 

ヘルヴォル5人に5編成の撃破を担当させ、自身は援護に入るか…

 

どちらも最後尾のスモール級達の侵入を許してしまう。

 

奈々もギガント級を倒すためのマギを温存するため、全力を出せない。

 

状況はまだ一転する程には至らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしそこへ二水の通信が…

 

 

 

 

二水「「奈々さん、また援軍です!」」

奈々「援軍ってことは…次は…!」

 

 

 

 

奈々は次に来る援軍が誰なのか読めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くから赤い制服を着た5人のリリィがやって来た。

 

 

神庭女子藝術高校のグラン・エプレである。

 

 

 

 

 

 

挿入歌 「Multicolored Flowers」

 

 

 

 

叶星「遅くなりました!神庭女子藝術高校よりグラン・エプレ、ただ今参りました!」

 

 

 

 

銀髪ロングの少女…叶星の声を聞いた奈々とヘルヴォルの皆は…

 

 

 

 

 

一葉「グラン・エプレ!」

千香瑠「叶星さん達も来たのね!」

恋花「これなら何とかなるね!」

藍「おおー!」

瑤「でもこの様子だとグラン・エプレより先にヒュージ達の方がこっちに来るよ」

奈々「私が連れてくる!」

 

 

 

 

奈々は縮地を使用し、グラン・エプレの方へ向かう。

 

 

 

 

そして移動中のグラン・エプレにたどり着いた。

 

 

 

叶星「な、奈々さん!」

奈々「話は後!皆早く私に捕まって!」

「え?ええ…」

 

 

 

 

少し困惑しながらも、金髪の少女…高嶺が奈々に捕まる。

 

 

 

 

叶星「皆、奈々さんに捕まって!」

 

 

 

 

叶星も奈々に捕まる。

 

 

 

 

「は、はい!」

「定盛、早く」

「分かってるわよ!」

 

 

 

 

うぐいす色のロングの少女…紅巴と、薄紫色のお団子ヘヤーのロングの少女…灯莉、ツインテールのピンク色の髪の少女…姫歌も急いで奈々に捕まった。

 

 

 

 

奈々「行きますよ!」

 

 

 

 

グラン・エプレ全員が奈々に捕まったのを確認すると、縮地で移動し、ヘルヴォルの下へ向かった。

 

 

 

 

奈々「到着!」

恋花「戻るのも早!」

叶星「す、すごい速さだったね…」

一葉「だ、大丈夫ですか!?」

高嶺「え…ええ…」

 

 

 

 

 

叶星以外の四人は少しぐったりしている。

 

 

 

 

 

姫歌「奈々、スピードぐらい落としなさいよ」」

奈々「緊急事態だから許して」

灯莉「ジェットコースターみたいで僕は良かったけど?」

瑤「ねえ、大丈夫?」

紅巴「うう~…」

千香瑠「早速で悪いですが、5体のラージ級がスモール級を率いて5編成でやって来ます最後尾には50体のスモール級も着いてきます。そこで二人一組でスモール級、ラージ級を各個撃破してほしいんです」

叶星「なるほどね。分かったわ」

奈々「編成は瑤さんと藍ちゃん、恋花さんと千香瑠さん、私と高嶺さん、姫歌ちゃんと灯莉ちゃん、残りの一葉ちゃん、叶星さんはレジスタを発動させて紅巴ちゃんのテスタメントで拡大。その後紅巴ちゃん以外の二人一組でスモール級を飛び道具で片付けてからラージ級を撃破。強化された射撃ならスモール級を倒せるよ」

一葉「レジスタの重ねかけによる射撃ですね」

恋花「ラージ級は他のと比べて固くなかったから、二人で倒せるはずだよ」

紅巴「残りのスモール級はどうするのですか?」

奈々「アイツらは高嶺さんのゼノンパラドキサが有効だからね。なるべく高嶺さんのマギを温存する」

高嶺「分かったわ」

灯莉「でもそれって、実質奈々一人で戦うってことだよね?」

瑤「大丈夫なの?藍と同じ近接特化の貴女一人で」

藍「またつかまらない…?」

 

 

 

 

瑤にそう言われると、奈々はカナベラルをしまい、マギの帯を付けたツインフェザーを見せる。

 

 

 

姫歌「………器用なことをするわね。アンタも」

奈々「次はしくじらない」

叶星「決まりね!」

二水「「ヒュージ、戦闘区域内に入ります!」」

 

 

 

 

遂にヒュージ達が陸地に入ってきたことを二水が知らせる。

 

 

 

 

奈々「各自散開!各ヒュージ編隊の各個撃破!」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 

 

 

奈々、ヘルヴォル、グラン・エプレの混合部隊が5組に分かれ、各ヒュージ編隊に向かっていく。

 

 

 

 

 

 

まずは奈々と高嶺ペア。

 

 

 

 

高嶺「本当に一人で行くの?」

奈々「この後の増援を考えると、高嶺さんのマギは温存しておく必要がありますからね」

 

 

 

 

 

 

 

彼女…宮川高嶺は、数年前の戦いで致命的な傷を負った経験を持つ。

 

それ以来、彼女のマギの受容量が大きく損なわれる後遺症を抱える事になる。

 

早い話が、マギの回復量が減ってしまったのである。

 

この事は幼馴染の叶星と奈々しか明かしておらず、グラン・エプレ1年生の3人には内緒にしている。

 

それでも彼女は戦う。

 

こんな自分を理解し、受け入れてくれた幼馴染の為に…

 

彼女はグラン・エプレのリリィとして、仲間と共に今も戦い続けている。

 

 

 

 

 

奈々「それに、受容量が低下したぐらいで、戦力面の低下には繋がりませんよ。更に高嶺さんの持ってるリサナウトにはあれがついてますからね」

 

 

 

 

奈々の言うアレとは、マギアブゾーバーというCHARM専用パーツの事であり、受容量を強化する効果を持つ。

 

マギの受容量が低下した高嶺には相性がよく、長期戦闘による弱点もカバーされている。

 

実は後遺症を知った奈々が百由に頼んで作って貰った物である。

 

現在はリサナウトに組み込まれており、グラン・エプレの1年生組はこれを知らない。

 

 

 

 

 

 

 

高嶺「分かったわ。その代わり危なくなったら助けるわよ」

奈々「構いませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫歌と灯莉のペアは…

 

 

 

 

 

灯莉「百合ヶ丘のリリィ…本当に奈々しかいないんだね」

姫歌「百合ヶ丘のCHARMが全て修理中って報告に出てたでしょ?」

灯莉「でもそれなら奈々だけCHARMを持ってるのはおかしくない?」

姫歌「あの子のCHARMはCHARMに使っていいものじゃない素材を使ってるからね。結構重い代物らしいわ」

灯莉「まるでゴリラだね」

姫歌「ゴリラは失礼でしょ…って、確かに言われたらそれっぽい…じゃなくて!くれぐれも奈々の前ではそれは言わないで!いい?」

灯莉「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

彼女…定盛姫歌は、アイドルリリィを目指す少女である。

 

リリィとしての判断力が高く、戦闘中の行動や作戦立案が得意で、グラン・エプレのサブリーダーに任命された。

 

レギオンとしての初戦闘はうまくいかなかったが、次第に互いを知り、やがて頼れる司令塔として成長していった。

 

叶星いわく、彼女はサブリーダーではあり、グラン・エプレの未来のリーダーでもあるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

もう一人の彼女…丹羽灯莉は、好きなことを好きなときに好きなだけ行うマイペースな子である。

 

時々空気を読まない行動を取ったり、親友の姫歌とケンカした事もあったりする。

 

そんな彼女も、実は「マギの色」が見える異能持ちで、各リリィのマギの質や様々な動物の感情も色で判断することができる。

 

グラン・エプレの一員になっても彼女のお気楽は変わらないが彼女もリリィ。

 

助け合いながらヒュージを倒す彼女のリリィとしての戦いに、揺らぐことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一葉、叶星、紅巴のグループは…

 

 

 

 

 

紅巴「やらなくちゃ…やらなくちゃ…!」

叶星「テスタメントをかけるだけだから難しく考えないで」

 

 

 

 

緊張気味の紅巴に叶星が落ち着かせる。

 

 

 

 

 

 

彼女…土岐紅巴、最初はリリィの素質が無く、中等部時代、御台場女学校でアーセナルの勉強をしていた。

 

そんな中、神庭女子に先輩の今叶星、宮川高嶺が転校するという情報を掴んだ彼女は憧れの先輩達を追うため、リリィとしての技術を努力して身に付け、神庭女子にリリィとして入学を果たし、その後グラン・エプレの一員になる。

 

普段は目立つことを好まず、ひっそりと人影に隠れて行動する事が多いが、戦場となると、多少怯えるものの、仲間達と一緒に勇気を出して戦う一面もある。

 

彼女もリリィ。努力して学んだ技術、身に付けた勇気は決して無駄ではないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

紅巴「すう…はあ…すう…はあ…はい。私のテスタメントでレジスタの効果を皆に届けます!」

叶星「うん。頼りにしてるわ」

一葉「グラン・エプレ…とてもいいレギオンですね」

叶星「皆が心強いリリィだからね。私なんてまだまだだもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女…今叶星。

 

元々は臆病な性格の子だったが、リリィとしての力を持ってる以上、それを正しい事に使わなければいけないと、責任感の強さもあわせ持つ。

 

 

転校してからはすぐにグラン・エプレのリーダーに任命され、高嶺、紅巴、姫歌、灯莉の四人が加わり、レギオンでのあらゆる任務をこなしていった。

 

今、この戦いで恐れているものの、それを支える仲間がいる。

 

だからこそ、そんな自分を変えたい。

 

命を燃やして、驚異に屈しない勇敢な自分に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ目の前にヒュージが接近してきた。

 

 

 

 

 

一葉「叶星様、いきましょう!」

叶星「ええ!一葉!」

 

 

 

二人がレジスタを発動した。

 

 

 

 

紅巴「テスタメント、行きます!」

 

 

 

 

紅巴がテスタメントでレジスタの効果範囲を拡大させ、今いるリリィ全員にレジスタの効果が付加された。

 

 

 

 

奈々「突撃ぃー!!って私と藍ちゃんだけだけどね」

 

 

 

 

奈々と藍が前進し、他のみんなは遠距離からの攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

千香瑠「一匹も漏らさず倒しましょう」

恋花「もちろん!」

 

 

 

シューティングモードに変形させたゲイボルグとブルンツヴィークで撃ちまくる千香瑠と恋花。

 

接近してくるスモール級を一体づつ倒していく。

 

 

 

瑤「藍、端っこから倒していって!」

藍「わかった!」

 

 

 

 

瑤のアドバイスで、藍はモンドラゴン右端にいるスモール級から攻撃していき、瑤はクリューサーオールのシューティングモードでワイヤーを放ってくるスモール級を優先的に倒していく。

 

 

 

 

 

姫歌「姫歌の魅力に見とれなさい!」

灯莉「いっけー!」

 

 

 

デュランダル、マルテをシューティングモードに変形させ、撃ちまくる姫歌と灯莉。

 

 

 

 

 

一葉「撃ちます!」

叶星「行くよ!」

紅巴「はい!」

 

 

 

 

3人はプルトガング、クラウ・ソラス、シュガールの射撃でスモール級を確実に仕留めていく。

 

 

 

 

奈々「これならどうかな!」

 

 

 

奈々は光の帯を付けた2本のツインフェザーを振り回し、スモール級をまとめて倒していく。

 

 

 

 

それを見ていたみんなは…

 

 

 

 

高嶺「あれがアルケミートレースもどきね…」

叶星「しかも、あんな使いかたをするなんて…」

灯莉「まるでハンマー投げみたい」

姫歌「よく思い付くわね。あんな攻撃」

千香瑠「そこは奈々さんなりの考えということで」

 

 

 

 

前衛にいる取り巻きのスモール級達が倒されたことで、ラージ級達は一旦止め、弾幕の発射を行うが…

 

 

 

 

奈々「甘い!」

 

 

 

 

 

奈々がゴムのように伸びる光の帯に繋がれたツインフェザーを飛ばし、最初の左右の端っこのラージ級に攻撃し、反動で戻ってきたそれを今度は隣の2体のラージ級に攻撃。

 

また戻っては、今度は中央のラージ級を攻撃。

 

 

攻撃を受けたことで仰け反ったのか、ラージ級達は動かなかった。

 

 

 

 

一葉「皆さん、ラージ級の動きが止まりました。今です!」

千香瑠「一斉攻撃!」

叶星「これで…!」

瑤「決める!」

藍「ヒュージ、たおす…!」

恋花「いっけぇー!」

灯莉「とっつげきー!」

姫歌「消えなさい!」

奈々「はあああ!!」

 

 

 

その隙を逃さないかのように、一葉の指示によって各リリィは大きな一撃を動きを止めた5体のラージ級に向かって飛び込み、CHARMの近接戦で各ラージ級を一撃で倒していった。

 

 

そして後は後方からやって来る50体のスモール級。

 

当然、その対策も出来ている。

 

 

 

 

奈々「高嶺さん、一緒にお願いします!」

高嶺「ええ、行くわよ!」

 

 

 

 

高嶺がレアスキル…ゼノンパラドキサを発動。

 

高速で、複数のスモール級をリサナウトでまとめて同時攻撃する高嶺。

 

この世の理と縮地のサブスキルをあわせ持つ殲滅力の高いこのスキルは、一度に多くのヒュージが現れた時に重宝する。

 

 

 

そして奈々も引き続き帯に繋がれたツインフェザーを回しながら多くのスモール級を斬り倒していく。

 

 

 

奈々、高嶺の活躍で50体のスモール級は全て片付いた。

 

 

 

 

高嶺「なんとか片付けたわね」

奈々「いえ、まだスモール級を全て倒しただけです。本命はこの次…!」

 

 

 

そしてその奈々の予想は的中し、二水からの通信が来た。

 

 

 

 

 

二水「「ヒュージ接近、ラージ級10体とギガント級です!!到達まで後3分!遅れてギガント級は更に1分後に来ます!」」

奈々「遂に来たか…!」

 

 

 

 

残りの勢力であるラージ級達とギガント級がこっちに向かっているのを二水が知らせてきた。

 

恐らくこれが最後の増援だろう。

 

 

スモール級を全て倒した今、自衛隊は的になってしまうため、二水は連絡で下がらせたようだ。

 

 

人数は増えたが現状はまだ変わらず、ラージ級が倍の数で来ている。

 

スピードがあるので、モタモタしてると通りすぎていってしまうため、早めに倒さないといけないが、ギガント級が控えてる以上、これ以上のマギの消費は控えたい。

 

 

と、そこで二水は奈々にある作戦を伝える。

 

 

 

 

二水「「奈々さん、そちらにフェイズトランセンデンス使いがいますよね?」」

奈々「え?ああ、いるけど?」

二水「「今から梅様にミリアムさんと神琳さんを奈々さん達のいる場所に

行かせます!」

奈々「ああ、なるほど。お願いね!」

 

 

 

 

二水はミリアムと神琳を連れて来ると奈々に伝え、通信を切った。

 

奈々も二水の説明の意味がわかった。

 

 

 

 

奈々「恋花さん、今からサポーターが来るので、その人からマギの補充を受けてもらってください。フェイズトランセンデンスがまた必要になると思いますから」

瑤「フェイズトランセンデンスを?」

恋花「待って、私のじゃラージ級1体倒せるか難しいよ」

奈々「そこは今から来るリリィから聞いてください。お、来た」

 

 

 

 

と、奈々がそう言うと、神琳、ミリアムを背負った梅が縮地を使って到着した。

 

 

 

 

 

梅「全く、人使いが荒い…といいたいが、今の梅達はこれくらいしか出来ないからナ」

ミリアム「恋花様、ワシのマギを今から渡すから待っててくれ」

恋花「奈々じゃなくて私?」

ミリアム「今回はフェイズトランセンデンスが重要になるからのう」

恋花「ふーん、それなら、ガソリンハイオクでお願いね」

ミリアム「ワシはガソリンスタンドではないぞ」

神琳「バックアップに来ましたわ」

奈々「うん。とりあえず作戦の説明お願い」

神琳「任せてください」

 

 

 

 

と、神琳はみんなに作戦を教える。

 

 

 

神琳「現状今のままでは全てを倒しきる前に何体かが通りすぎてしまいます。そこでまずはヒュージではなく、海を狙います」

藍「うみ?」

一葉「そうか!津波を起こして敵を妨害するのか!」

千香瑠「津波で身動きが取れなくなってる内にラージ級を確実に撃破する…この人数じゃそれしか手はないですね」

瑤「スモール級、ラージ級は来る際に低空飛行で向かってきた。なら津波が届く」

姫歌「でもフェイズトランセンデンスじゃ範囲が足りないわよ」

神琳「そこでテスタメントの出番です。フェイズトランセンデンスにテスタメントの効果で攻撃範囲を拡大させればラージ級全てを巻き込むほどの津波を起こせます」

奈々「なるほどね。津波で動きを鈍らせるか」

神琳「気休め程度ですが、動きを止めるには十分だと思います」

紅巴「テスタメントなら私がもう一度…」

奈々「紅巴ちゃんは大事な主力だからこれ以上の使用は控えないといけないよ。ここは神琳ちゃんに任せよう」

神琳「はい。任せてください」

 

 

 

 

 

と、話してる内に恋花のマギの補充が終わった。

 

ミリアムはフェイズトランセンデンスの使用後で倒れている。

 

 

 

 

奈々「梅さん、恋花さんがフェイズトランセンデンスを放ったらすぐに二人を連れて下がっててくださいね」

梅「わかったゾ」

叶星「それで、ギガント級の対処はどうするの?」

奈々「そのギガント級ですが、アーリマンです」

叶星「アーリマン!?」

一葉「マギリフレクターと高い耐久力を持ってるあのアーリマンですか!?となると生半端な火力では倒せません」

奈々「それなら大丈夫。アーリマンはノインヴェルトと私のカナリアで対処します。ノインヴェルトでマギリフレクターを発動させ、カナリアの一撃で仕留める。この方法が有効だと思います」

高嶺「他に考えてる余裕はないし、それでいきましょう」

千香瑠「万が一に備え、ヘリオスフィアをかけておきますね」

 

 

 

 

 

千香瑠はヘリオスフィアを発動し、その場にいるリリィ全員のバリアを強化した。

 

 

 

 

奈々「私が中央、ヘルヴォルは右、グラン・エプレは左を!」

叶星「わかったわ!」

神琳「鷹の目でタイミングをお願いします。チャンスは一度きりです」

奈々「わかった!」

 

 

 

 

奈々はマスカレイドで鷹の目を使い、接近してくるラージ級達の位置を把握しながらタイミングを計る。

 

 

 

 

一葉「恋花様、お願いします!」

恋花「はいはーい。ほんじゃ行くよー!」

 

 

 

 

恋花がフェイズトランセンデンスを発動した。

 

 

 

 

神琳「テスタメント、行きます!」

 

 

 

 

 

神琳が恋花にテスタメントの効果を付加させる。

 

 

そしてテスタメントの効果を付与された恋花はブルンツヴィークを構え、狙いをヒュージではなくその下の海の方に向けた。

 

タイミングは奈々が担当している。

 

 

津波をはなるべくヒュージの近くで起こした方が効果的である。

 

逆に少しでもタイミングがずれた場合、津波とヒュージとの距離によっては回避してしまうからである。

 

 

 

失敗は出来ない…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「撃ってください!」

恋花「行くよー!本日2度目のフェイズトランセンデンス!!」

 

 

 

 

奈々の合図で、恋花はブルンツヴィークから複数の太めのマギのビームを扇状に発射した。

 

それはラージ級達の近くの海に当たり、爆発し、津波を起こした。

 

そして、その津波は近くにいたラージ級達を飲み込み、動きを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「今ですよ!全員攻撃開始!」

 

 

 

 

フェイズトランセンデンスの使用でバテてる恋花を除いて、奈々とヘルヴォル、グラン・エプレの合計10人が左右の敵と中央の敵のラージ級に向かって攻撃し始めた。

 

 

ちなみに全員にかかっているレジスタの効果はまだ継続中で、奈々は楓の分がまだ継続している。

 

その為か、奈々はラージ級を一撃で倒せる程の威力を持っている。

 

 

左右に散開したリリィ達も、各四人ならラージ級1体を倒すには十分な戦力である。

 

 

梅は神琳と倒れたミリアムを担いで再び戦闘区域から離脱した。

 

 

 

 

これならギガント級が来る前にラージ級達を片付けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二水「「たたた、大変です!!ギガント級がもう1体こっちにやって来ます!!しかもも突然現れたようで!」」

奈々「ギガント級!?」

 

 

 

 

二水から新たなギガント級の出現の知らせを聞いて驚く奈々。

 

 

すると、突然奈々の真上にアーリマンと瓜二つの緑色の巨大なヒュージが現れた。

 

 

 

 

 

奈々「ぎ、ギガント級!?いつの間に…!?」

 

 

 

 

奈々は鷹の目で周りの状況を見ている。

 

しかしこの緑色のギガント級の姿は確認されなかった。

 

なのにそのギガント級が突然頭上に現れたのだ。

 

 

 

とはいえ、ギガント級と似ればそれだけ巨体になり、動きも鈍い筈である。

 

しかしそれではこのギガント級が突然現れた理由にならない。

 

1つ考えられるとすれば…

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「ケイブを使って移動した…!?」

 

 

 

 

ケイブはヒュージ専用のワームホール…唯一の長距離移動手段である。

 

巨体かつ動きもそこまで早くないギガント級が早く移動出来るとすれば、この方法しか思い付かないのだ。

 

 

と、考えてる内に緑色のギガント級は奈々達の横を通りすぎていってしまう。

 

 

 

 

奈々「まずい!」

 

 

 

 

急いで後を追う奈々だが、ここで奈々の方に無数のレーザーが降りかかってきた。

 

 

奈々はすぐに避けたがなんと、ギガント級のアーリマンがすぐこっちにやって来たのだ。

 

 

 

灯莉「もう1体出てきたよ!」

一葉「まだ来るまで時間はあったはず…!」

千香瑠「どうやらこのケイブがアーリマンの近くで繋がってしまったみたい…!」

奈々「くっ、タイミングが悪すぎる…!」

叶星「このままじゃあのギガント級が百合ヶ丘に…!」

 

 

 

 

新たなギガント級の元へ向かいたいところだが、ラージ級はまだ6体残っており、そこにはアーリマンがいる。

 

どちらかを放っておくと、百合ヶ丘の方へ行きかねない。

 

 

それどころか、現在の人数とマギの量では2体のギガント級を倒しきれないのだ。

 

特にアーリマンはマギリフレクターを持っているためノインヴェルトとカナリアの連携は必須。

 

そうなればマギが涸渇するのは確実。

 

突然現れた緑色のアーリマンがもしマギリフレクターを持っていたら、倒すことは難しくなる。

 

百合ヶ丘の崩壊は免れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二水「「あ、奈々さん!頼もしい仲間が緑色のギガント級に向けて移動してます!!」」

奈々「えっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイアンサイドは、これより緑色のギガント級の撃破を開始する!」

 

 

 

 

 

挿入歌 「リリィデイズ」

 

 

 

 

 

緑色のギガント級に立ち向かったのは、私立ルドビコ女学院のリリィの3人だった。

 

いや、ルドビコ非公認のレギオン…アイアンサイドだった。

 

 

 

 

 

「一番槍は俺が行くぜ!!」

 

 

 

 

男勝りな赤茶色のボブカットの少女がダインスレイフ・カービンを持って緑色のギガント級に切りかかる。

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 1年生 アイアンサイド 天宮・ソフィア・聖恋(あまみや・そふぃあ・せれん)

 

 

 

 

 

「聖恋、相手は亜種のアーリマンよ。油断しないで」

 

 

 

 

片刃の赤いCHARM…エゼルリングを持った、髪をリボンでまとめた黒髪のミドルの少女が聖恋に注意しながら付いていき、シューティングモードでギガント級を撃ちまくる。

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 2年生 アイアンサイド 黒木・フランシスカ・百合亜(くろき・ふらんしすか・ゆりあ)

 

 

 

 

 

「今日のあたし達はひと味違うぞぉー!!」

 

 

 

 

暗めの金髪で左右に三つ編みをした少女が一葉と同じブルトガングを持って緑色のギガント級に飛び込み、斬りかかった。

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院 2年生 アイアンサイド 松永・ブリジッタ・佳世(まつなが・ぶりじった・かよ)

 

 

 

 

3人の交戦により、緑色のギガント級の方はなんとか足止めされたようだ。

 

しかし加勢に来たのはアイアンサイドだけでなかった。

 

 

 

 

 

「さて、行きましょう純」

「ええ。ロネスネス、ノインヴェルト戦術を仕掛けますわ」

 

 

 

 

赤のスカートに白と青の和風の戦闘服を着た銀髪のロングの少女と青い服をまとい、蝶の髪飾りを付けた赤みのかかった紫のロングの少女も現れた。

 

船田姉妹の二人、初と純である。

 

 

 

 

「さあ、ファーストショット頼みましたわよ」

「わかってるって。崩壊の危機にある百合ヶ丘を放ってはおけないもの!」

 

 

 

そして隣には純に似た服を着たマゼンタカラーのロングの少女、燈の姿と、初に似た服を着た灰色のツインテールの少女がいた。

 

 

 

 

 

御台場女学校 2年生 ロネスネス 藤田槿(ふじた あさがお)

 

 

 

そして、いつの間にか聖恋、百合亜、佳世を除くロネスネス9人のリリィ達が緑色のギガント級を囲んでノインヴェルト戦術を始めていた。

 

 

 

 

 

 

奈々「ルドビコ女学院のアイアンサイド…御台場のロネスネスまで!」

「よそ見は禁物よ。奈々さん」

 

 

 

 

と、いつの間にかラージ級が2体倒されている。

 

そこにいたのはアイアンサイドの幸恵と来夢であった。

 

 

 

 

来夢「助けに来たよ。奈々ちゃん」

奈々「幸恵さんに来夢ちゃん!ルドビコの方はもういいんですか?」

幸恵「テンプルレギオンが守備に回ってるから心配いらないわ」

来夢「今マギを回復するね!」

 

 

 

 

と、来夢がカリスマを発動した。

 

周囲の浮遊するマギが浄化され、それらが奈々の中に宿っていく。

 

奈々のラージ級で消耗していた分はこれで元通りになった。

 

 

 

 

奈々「ありがとう来夢ちゃん。今ならアーリマンを一人で倒せるかも」

幸恵「流石にそこまでは…」

 

 

 

 

と、話してる内にヘルヴォル、グラン・エプレのメンバーもやって来た。

 

 

便りになる二人を連れて…

 

 

一人は御台場女学校の制服に栗色のジャケットを羽織い、首にヘッドホンを付けた茶色のショートカットの子。

 

武器はグングニル。

 

もう一人は御台場女学校の制服をまとい、黒いロングの後ろに黄色のリボンを着けた少女。

 

武器は布都御魂。

 

近距離遠距離関係なくノインヴェルト戦術をこなせるCHARMである。

 

 

 

 

 

御台場女学校 2年 ヘオロットセインツ 副隊長

川村楪(かわむら ゆずりは)

 

 

御台場女学校 2年 ヘオロットセインツ 月岡椛(つきおか もみじ)

 

 

 

 

更に遅れて、紅巴、恋花も合流した。

 

来夢のカリスマが二人の方まで届き、マギも回復したようである。

 

 

 

紅巴「あれはルドビコ女学院と御台場女学校のリリィ!」

恋花「どんどん仲間が増えていくねー」

奈々「楪さんに椛さん!ヘオロットセインツも一緒なんですか!?」

楪「いや、途中ヒュージの群れにあってな。私と椛だけ先に行くよう頼まれたんだ」

一葉「楪様と椛様のお陰でラージ級は全て片付けました」

叶星「ノインヴェルトを行う分のマギは十分残ってるわ」

椛「私達も協力致しますわ」

奈々「こちらこそお願いします!」

 

 

 

 

と、話してる内にアーリマンが弾幕の雨を降らしてきた。

 

 

皆は三方向に散開し、攻撃をかわした。

 

右にヘルヴォルと来夢と幸恵。

 

左にグラン・エプレと楪と椛。

 

中央は奈々一人である。

 

 

 

 

 

椛「それにしても、またこのギガント級ですわね」

楪「こいつとは二度と会いたくなかったけどな」

奈々「問題ありません。ここで仕掛けます!マギインテンシティも高いですし、椛さんのレジスタ掛けでダブルノインヴェルトをお願いします!」

 

 

 

奈々が2隊によるノインヴェルト戦術を行うよう皆に言ってきた。

 

 

 

 

恋花「2つって、まさか7人でノインヴェルト戦術をやるの!?」

瑤「流石に7人じゃ威力が…」

千香瑠「可能よ。高いマギインテンシティにレジスタを更に重ねかけすれば7人でも9人分の火力を出せるわ」

 

 

 

現在みんなが掛かってるレジスタは、ヘルヴォル、グラン・エプレが2回…奈々が3回分重ねかけされている。

 

ここで更に椛のレジスタが入れば7人でも8人分の火力になる。

 

マギインテンシティの高いこの場なら通常のノインヴェルト戦術の火力に達するだろう。

 

 

 

一葉「しかしそれを行うにはギガント級の近くでやる必要が…」

紅巴「私、出来る自身は…」

奈々「大丈夫。攻撃は全て私が引き付ける。みんなに手出しはさせない」

姫歌「貴女は大丈夫なの?」

奈々「前に戦ったことがあるからね。特徴は熟知している」

幸恵「確かにこの場は、奈々さんに任せた方がよさそうね」

楪「それしか手は無いみたいだし、やるしかないな」

来夢「奈々ちゃん、無理はしないでね」

高嶺「早速やりましょう」

灯莉「やろうやろう!」

幸恵「ノインヴェルト戦術、開始!」

 

 

 

 

 

幸恵の言葉に皆は頷き、一葉、叶星がノインヴェルト戦術の弾を自信のCHARMの装填口に入れ、マギスフィアを生成した。

 

一葉は藍に向けて撃ちだし、叶星は高嶺に向けて撃った。

 

その放たれたマギスフィアを藍と高嶺はCHARMでキャッチした。

 

マギスフィアに自身のマギを込め、そのまま瑤、姫歌に向けて投げ飛ばした。

 

 

 

 

姫歌「次は紅巴ね。受けとりなさい!」

瑤「恋花!」

 

 

 

 

マギを込め、次は紅巴、恋花にマギスフィアをパスした。

 

 

 

一方奈々も空中移動しつつ、アーリマンのレーザーをかわしながら攻撃を誘導している。

 

レーザーを撃ち続ければその分マギも減っていき、アーリマン自信の防御力の低下にも繋がる。

 

また、撃ったレーザーの射線上にも僅かにマギが残留するため、ノインヴェルトの足しになる。

 

これは奈々が謹慎中に考えた新しい囮戦法である。

 

 

 

ノインヴェルト戦術側も、灯莉は椛に、千香瑠は幸恵にマギスフィアをパスした。

 

 

 

 

 

彼女…月岡椛は、過去に親から妹より劣る姉と言われて自信を無くしていた頃があった。

 

しかし御台場迎撃戦で沢山の仲間と共に勝ち上がった事でその自信を取り戻す。

 

自身のリリィとしての力も、誰かを守れるということを再確認した彼女は、親友と一緒に戦場を勝利へと導くだろう。

 

 

 

 

 

 

椛「ユズ!」

幸恵「来夢!」

 

 

 

 

最後の相手…楪と来夢に二人はマギスフィアをパスした。

 

マギスフィアを受け止めた楪と来夢はそれをCHARMに取り込み、シューティングモードに変形させた。

 

 

 

 

幸恵「準備が出来たわ。奈々さん!」

奈々「待ってました!」

 

 

 

 

奈々は空高く飛翔し、ルナティックトランサーを発動した。

 

奈々の髪が白くなっていき、瞳の色も紅く光っていく。

 

 

 

楪「時間差で放つぞ。いいか?」

来夢「はい!」

 

 

 

 

楪、来夢はグングニル、アステリオンで狙いをアーリマンに定める。

 

 

 

 

 

 

彼女…川村楪は、リリィとしての高い力とリーダーに相応しい性格の持ち主で、当時、御台場女学校で持っていないレアスキル…ファンタズムの覚醒を皆から期待されていたリリィだった。

 

しかし御台場迎撃戦で覚醒したレアスキルはテスタメントと期待外れだったが、それでもめげることなく、仲間リリィからの手ほどきで回避系テスタメントを確立。

 

更に高速パスをもこなし、勝利に大きく貢献したのだった。

 

竹腰千華の推薦により百合ヶ丘女学院次期獲得候補リストに載るが、彼女はこれを辞退。

 

御台場のリリィとして残ることになった。

 

ヘオロットセインツの副隊長として、彼女は親友と仲間と一緒に戦場を駆け巡るだろう。

 

 

 

 

 

 

今、アーリマンは奈々に攻撃しようと、奈々のいる上空を向き、レーザーを放とうとしていた。

 

狙うなら今である。

 

 

 

 

 

楪「そこだー!!」

来夢「いけー!!」

 

 

 

 

二人のマギスフィアが時間差で発射された。

 

 

楪が放ったマギスフィアはアーリマンに直撃するが、ギリギリの所でマギリフレクターが張られ、マギスフィアを受け止められてしまう。

 

しかしそれは想定内。

 

遅らせて発射した来夢のマギスフィアがリフレクターの張られていない部分に直撃し、アーリマンはバランスを崩しながらダメージを受けた。

 

そして仕上げの一撃も…

 

 

 

 

 

奈々「仕上げ、だあー!!」

 

 

 

 

上空にいた奈々が2本のCHARMをカナリアに合体させ、そのままアーリマンの真上目掛けて急降下し始めた。

 

 

 

 

 

奈々「うおおおおおおーーー!!」

 

 

 

 

 

 

奈々のカナリアがアーリマンを真上から一刀両断で切り裂いていく。

 

マギリフレクターは既に楪の放ったマギスフィアに使ってる為、再使用に時間がかかる。

 

 

眞下まで切り落とされ、アーリマンは粒子となって消えていった。

 

 

そして奈々はアーリマンがいた場所の真下に着地し、ルナティックトランサーを解き、アーリマンがいた方を見続けた。

 

 

 

 

 

そんな奈々の姿を見た皆は…

 

 

 

 

 

高嶺「あれが叶星の言ってた合体剣カナリア…!」

灯莉「ヒュージを真っ二つにしちゃったよ!?」

紅巴「ノインヴェルトのダメージがあるとはいえ、ギガント級叩き斬るなんて…」

灯莉「まるで何かの歌にある孤高の勇者みたいだね」

 

 

 

 

灯莉の言うように、皆が戦えない状況の中、一人で勇敢にヒュージに立ち向かうその姿はまさに孤高の勇者と言えよう。

 

と、驚いてる皆だが、ここで通信が入った。

 

 

 

 

二水「「こちら二水。ヒュージの全滅を確認。増援はいません。戦闘終了です!奈々さん、お疲れ様です!」」

奈々「二水ちゃんも皆もお疲れ」

 

 

 

 

通信で二水と話してる奈々を見て皆は…

 

 

 

幸恵「敵はもう打ち止めのようね」

来夢「良かった…」

姫歌「驚いたわ。実際に見ると、ホントにすごい…」

千香瑠「あれが合体剣カナリア…あれだけの威力…マギもかなりの量のはず…!」

瑤「CHARMもそうだけど、ルナティックトランサーの効果もあるから普通ならマギが涸渇するレベルだけど…」

恋花「あの子のマギ、どんだけあるの?」

藍「すごーい…」

幸恵「改めて見ると、とんでもない一撃ね」

来夢「どうやって強くなったんだろう…」

一葉「後でどんな特訓をしてるのか聞いてみよう」

叶星「一葉、落ち着いて…」

椛「彼女のマギの保有値が高いのは驚きましたけど…」

楪「あの合体CHARMがぶっ壊れ性能なのも改めてビックリしたな」

 

 

 

 

皆、奈々とカナリアに関する感想を述べていた。

 

 

 

そして、緑色のギガント級を倒したロネスネスの9人とアイアンサイドの佳世、聖恋、百合亜がこちらに合流してきた。

 

 

 

 

 

奈々「ロネスネスの皆さんも協力に来てくれてありがとうございます。アイアンサイド、ヘオロットセインツの二人も」

純「たいしたことありませんわ。リリィとして当然の事をしたまでですわ」

燈「そう言うことですわ!」

初「サンスベリアはリリィ共通の敵…私達ロネスネスとヘオロットセインツも百合ヶ丘の防衛に参加致しますわ」

楪「しばらく厄介になるけど、よろしくな」

奈々「厄介なんてとんでもない。歓迎しますよ」

 

 

 

奈々は純、楪と握手した。

 

 

 

 

奈々「アイアンサイドの方々もありがとうございます」

佳世「下北遠征で一緒に戦った仲間ですから…」

百合亜「貴女が幸恵の言ってた木葉奈々さんね。私は黒木・フランシスカ・百合亜よ」

聖恋「俺は天宮・ソフィア・聖恋。百合亜お姉様のシュベスターだ。よろしくな!」

奈々「こちらこそ!」

 

 

 

 

奈々は百合亜、聖恋と握手した。

 

 

 

 

 

奈々(なんか聖恋ちゃんの声……神琳ちゃんにちょっと似てるような…)

 

 

 

 

と、心の中で呟く奈々である。

 

 

 

 

二水「「奈々さんお疲れ様でした。次の襲撃に備えるために一旦帰還してくれますか?」」

奈々「了解。木葉奈々、これより他のレギオンと一緒に百合ヶ丘に…あ」

 

 

 

 

奈々はあることに気が付いた。

 

 

 

 

二水「「どうしました?」」

奈々「エレンスゲって、GEHENA主義だったよね?」

二水「「そうですが……あ!」」

 

 

 

 

 

二水も気が付く。

 

 

それは、ヘルヴォルは百合ヶ丘に入れない事である。

 

ヘルヴォルが所属するエレンスゲ女学園はGEHENA主義のガーデンで、反GEHENA派の百合ヶ丘からは嫌われている。

 

更に先代ヘルヴォルのやらかした行為によって、百合ヶ丘のヘルヴォルに対する印象は最悪なものになっていた。

 

このままヘルヴォルを百合ヶ丘に入れると両校の間で問題を起こしかねない。

 

 

 

 

 

一葉「大丈夫です!私達は近くのホテルに泊まりますから」

奈々「却下」

一葉「ええっ!?」

奈々「勿体ない」

純「貧乏症ですわね」

奈々「悪かったですね」

楪「とはいえ、これだけの人数、百合ヶ丘に入れるのか?」

奈々「それなんですよね」

 

 

 

 

もうひとつの問題はこちらが27人という大人数である。

 

後から来るリリィを含めると合計38人になる。

 

流石に今百合ヶ丘にそこまでの寝所を確保するスペースは無い。

 

奈々は悩んだ。

 

どこか良い場所は無いのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、奈々は覚えのある場所を思い出す。

 

 

 

 

 

奈々「まだあれがあった…!」

二水「「?どうしました奈々さん」」

奈々「二水ちゃん、大至急毛布を50枚程用意してくれる?私達の拠点を変えるよ」

二水「「ええっ!?変えるって、何処にですか?」」

奈々「わかってるでしょ?とっておきの場所が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後……

 

奈々は遠征に来てくれたレギオン達を廃墟になった街のある場所へ連れてきた。

 

 

 

 

 

 

幸恵「なるほどね。ここなら拠点として十分機能するわね」

 

 

 

 

着いた場所は、8日前に梨璃と結梨を連れてった映画館だった。

 

 

 

佳世「ここだけまだ機能してるんですか!?」

奈々「水はまだ流れてるし、発電機もあるから電気の心配も無いよ」

聖恋「結構大きいんだな…」

百合亜「これだけ大きければ、私達全員休められるわね」

来夢「レギオンが休めるスペースがある空き部屋が沢山あったので、大丈夫だと思います」

一葉「1週間も使ってないみたいだけど…」

奈々「まあ中を見て決めるよ」

 

 

 

 

奈々達は映画館の中へ入っていった。

 

 

 

 

純「………随分と埃がたまってますわね」

初「仕方ないわ。誰一人使ってないのだから」

燈「純お姉様と一緒なら汚いところでも平気ですわ」

奈々「汚いところだけでも拒絶しようよ…」

燈「何を言ってますの!?純お姉様のいるところなら例え火の中水の中埃の中!」

奈々「わかった!もういいから…!」

 

 

 

 

 

燈と話すのは控えることにした奈々。

 

 

ブレーカーがオフになってるのか、館内の照明消えており、周りは1週間前、梨璃と結梨が出ていってから片付けずにそのままだったことで、埃が溜まっていた。

 

売店の方は布が被さっており、食べ物に埃が被ってなかった。

 

 

 

 

恋花「布被ってるね。売店かな?ここは」

奈々「梨璃ちゃんが被せておいたのかな…」

灯莉「中は?何?何入ってるの?」

姫歌「灯莉、落ち着きなさいよ」

奈々「食べれるのはポップコーンと飴ぐらいかな。他は駄目になってると思うよ」

藍「チョコレートは?」

奈々「アルミホイルで巻いて密封して冷蔵庫に入れておいたけど、後で調べるよ」

 

 

 

 

こっちは1週間も放置してる為、腐って食べれなくなってる物もあるが、袋詰めしてあるポップコーンや飴、開けてないジュース等は普通に食べれるようだ。

 

掃除をすれば問題無さそうである。

 

 

 

 

奈々「さて、片付けますか」

来夢「えっ!?戦ったばかりなのにまだ動くの?」

叶星「私達も手伝うよ?」

奈々「戦ったのは皆も一緒です。それに遠征に来てくれたリリィにやらせるなんてバチが当たりますよ。大丈夫ですよ。縮地で早く片付けて…」

 

「梅の専売特許は渡さないゾ」

奈々「!?」

 

 

 

 

奈々一人で館内を片付けようとした所に声が響き、やって来たのは一柳隊のメンバーだった。

 

ミリアムはフェイズトランセンデンスから回復した後、アーセナルの仕事でCHARMの修理に戻っているためここには来ていない。

 

 

 

 

 

奈々「みんな!」

二水「掃除なら私達がやっておきますので」

雨嘉「奈々は次の戦いに備えてゆっくり休んでて」

奈々「えっ?で、でも…」

楓「貴女は今百合ヶ丘に残された戦力ですのよ。後の事はワタクシ達にお任せなさいな」

鶴紗「そういうことだ」

神琳「見張りは自衛隊の皆様引き受けてくださったので心配は要りませんわ」

梅「少し待ってろナ。寝所を用意するからナ」

 

 

 

 

と言って梅は一足先にその場を離れた。

 

 

 

 

二水「後、唯一被害がなかった城ヶ島工科女子高等学校からアーセナルが数十人来てくれて、CHARMの修理も明日の昼頃に完了するみたいです!」

奈々「城ヶ島って、アーセナル専門のガーデンだったよね?」

二水「はい!CHARMメイカーズの共同出資で建てられた工厰科だけのガーデンで、戦うアーセナルの育成も行ってい……」

楓「今は労働者達を休ませるのが先でしょちびっ子1号」

二水「す、すみません…って、引っ張らないでくださーい!」

 

 

 

 

楓が二水の熱弁を止め、二水の胸元を掴んだまま掃除を始めるためにその場を離れた。

 

 

 

 

 

純「相変わらず騒がしい方々ですわね」

奈々「でも悪くないですよ。あの仲間達は」

一葉「そうですね」

 

 

 

 

という流れがあり、映画館は一柳隊の6人と後から来たリリィ達により、拠点へと生まれかわり、奈々達は今晩この拠点で休息を取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、百合ヶ丘に向けて移動してるサンスベリアの移動基地は………

 

 

 

 

ボルドー「専攻したヒュージ部隊が全滅か……」

「はい。鎌倉方面、東京地区の各ガーデンにギガント級を含んだヒュージ編隊を送り出しましたが、5組のレギオンが百合ヶ丘に到着してしまったようです」

ボルドー「明日出すヒュージの調整は?」

「量産型のAM-03が18体、飛行形ラージ級が60体、球体形スモール級600体、全て1927に終えました。明日には解放出来ます」

ボルドー「新型CHARMの方は?」

「人数分完成し、ラピュセル隊が最終調整を行っております」

ボルドー「うむ、では明日には予定通りヒュドラ作戦を実行に移す」

「はっ!」

 

 

 

 

そう言ってボルドーはブリッジを離れた。

 

 

 

 

 

ボルドー(やはり侮れんな、木葉奈々…この私を倒しただけの事はある。ふふふふ…明日が楽しみだ)

 

 

 

 

と、明日の戦いを期待するボルドーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中編へ続く…………

 

 

 

 

 




続きは今制作中です。
1ヶ月掛かるかもしれませんが、出来るだけいい作品にしたいと思ってます。


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「15」Sacred world 中編

本当にごめんなさい!
ここ最近デート・ア・ライブにハマってしまい、更にはモチベーションの低下もあり、投稿が遅れてしまいました。
それでもどうにか中編を完成させました。
これで後は後編のエピローグのみです。
今回はかなり盛り上げる内容にしました。

それではご覧ください!(高山みなみボイス)


 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘を襲いにやって来たヒュージを撃退した次の日………

 

一柳隊、アールヴヘイム、ヘルヴォル、グラン・エプレ、アイアンサイド、ロネスネス、ヘオロットセインツの一同は拠点である映画館の中央ホール中で緊急会議を行っていた。

 

 

サンスベリアが百合ヶ丘を襲いにやって来た情報は他のガーデンにも伝わり、防衛中にも関わらず、各ガーデンガーデンから一組のレギオンを派遣してくれたのだ。

 

 

 

 

 

相模女子高等学館からは相模女子生徒会特選隊。

 

 

 

 

イルマ女子美術高校からイルミンシャイネス。

 

 

 

 

聖橋大学附属女子高等学校から雪花団と、

 

主力のレギオンが拠点に集まっていた。

 

 

 

 

一葉「こちらが昨日百合ヶ丘を襲ったヒュージのデータです」

 

 

 

各リリィ達が周りの椅子に座って、一葉の説明を受けていた。

 

一葉の隣にある巨大スクリーンには、昨日襲ってきたヒュージ達の画像と細かな情報等が映し出されていた。

 

 

ただ、大きめの画像に写ったアーリマンに似た緑色のギガント級には細かなデータが載った情報がなかった。

 

 

 

 

一葉「純様、このギガント級を戦ってどうでしたか?」

純「そうね…アーリマンと比べて並の強さでしたわね。攻撃もそこまで激しくありませんでしたし」

初「マギリフレクターを持っていませんでしたわね」

槿「耐久力も、ノインヴェルト戦術1発で倒せるレベルでしたね」

 

 

 

 

二本の角に似せたアクセサリーを付けた銀色のツインテールの少女、槿が言う。

 

 

 

 

 

奈々「これがサンスベリアが送り出してきた敵なら、次は20体ぐらい来ると思う」

「「「「「「「20体!!?」」」」」」」

 

 

 

 

奈々のとんでもない予想に皆は驚く。

 

 

 

 

 

壱「ちょ、冗談はやめてよ奈々!」

奈々「これが冗談だと思う?」

亜羅椰「こういうときの奈々は冗談なんて言わないから逆に怖いわね」

天葉「それで、そのギガント級が20体以上というのは?」

 

 

 

 

天葉の疑問に奈々は答えた。

 

 

 

 

奈々「………恐らく…量産型だと思います」

 

「「「「「「「「「「「!!!??」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

奈々の答えに一同は再び驚く。

 

 

その中で、初は奈々の答えの理由が理解できた。

 

 

 

 

初「確かに、それなら能力も劣っているのも頷けるわね」

 

 

 

 

初はその緑色のギガント級と戦っているので、敵の強さを覚えているのだ。

 

何故アーリマンより弱く、マギリフレクターを持っていないのか…

 

考えられるとしたら、量産型しか浮かばなかったのだ。

 

 

 

 

「でも、ギガント級を量産するなんてどうやって…」

 

 

 

 

 

黒い制服をまとった青のポニーテールの少女が疑問を言う。

 

 

 

 

相模女子高等学館 1年生 相模女子生徒会特選隊 石川葵(いしかわ あおい)

 

 

 

 

茜「確かに、ギガント級のサイズはとても量産できるものじゃありませんし…」

奈々「それが可能なんですよ」

月詩「どういうこと?」

奈々「サンスベリアはギガント級を効率よく量産するために、擬似的に作ったヒュージネストを使ってるの」

 

 

 

 

奈々の答えに一同またも驚く。

 

 

 

 

葵「ヒュージネストを!!?」

雨嘉「そんなことが出来るの!?」

奈々「サンスベリアにはアルトラ級のコアが入った強力なマギリアクターを持っている。彼らの技術をもってすれば、マギリアクターを使った擬似的なヒュージネストを作る事も可能なの」

純「貴女の話を聞くと、毎度驚かされますわね」

来夢「実はそれだけじゃないんです」

燈「まだ何かありますの?」

幸恵「サンスベリアはGEHENA以上の大きな組織と言われて。話では移動基地を複数所有してる情報を聞いたことあるわ」

佳世「確か、ギガント級並の大きなものを20体以上も運べる程の大きな要塞だったと聞きます!」

紅巴「20体!!?」

奈々「リアクターを奪いにやって来る以上、敵は移動基地でこちらに向かってるはずです。かなりの戦力を投入して」

百合亜「となると、奈々の言う通り20体ぐらいのギガント級との戦闘は免れないわね」

幸恵「スモール級とラージ級も、昨日の時より比べ物にならない程の数で来るはずたわ」

藍「ヒュージ、たくさん倒せるの?」

葵「なんで藍ちゃん喜んでるの?」

純「気楽な子ですこと…」

 

 

 

 

大量のギガント級が来ることはわかったものの、現状こちらが有利になる訳じゃない。

 

仲間が来てくれたとはいえ、10組のレギオンと奈々一人。

 

防衛側も必要な為、戦えるメンバーは限られる。

 

厳しい状況にかわりないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋花「でもさ、次の敵襲に耐えきえればCHARMの修理も終わるし、こっちの数が増えれば一気に切り崩せるじゃない?」

奈々「次に耐えきれれば…の話ですけどね」

 

 

 

 

恋花の話に奈々が真顔で返答する。

 

 

 

 

恋花「え?」

百合亜「何か問題があるの?」

奈々「軍を率いるほとんどの指揮官は余程な事がない限り全戦力を投入することはありません。下手すればこちらの全戦力が丸見えになり、相手の士気を上げてしまいます」

初「本来ならそうですね」

奈々「では、相手の全戦力を知った軍隊がそれ以上の圧倒する数の戦力で来られたらどうなります?」

一葉「…………!?」

叶星「まさか……!」

神琳「敵の士気はかなり落ちて、戦意を失いますね」

奈々「それが世界一の戦力を持つサンスベリアの得意戦法。本格的に攻めるときは余力を残さず、全戦力を投入し、圧倒的な物量で壊滅に追い込む。かつて12校のガーデンがサンスベリアによって壊滅した事があります」

「「「「「「「!!?」」」」」」」

 

 

 

 

とんでもない事実にほとんどの皆は驚く。

 

 

 

 

 

搖「そこまで!?」

鶴紗「本当なのか?」

奈々「これもブルーガード時代に体験した敵の考えを逆手に取ったサンスベリアの得意な戦術だよ。去年、クジラ船のマギリアクターを奪いにやって来た群れを2つの部隊で対処したけど、その次の日にはそれの5倍以上の数で攻めてきた。お陰でこっちも壊滅に追い込まれる事態だったよ。でも上手く立て直して勝利を納めたから負傷者はゼロ」

椛「凄いですね」

奈々「みんなの協力があったからですよ。私一人じゃ成し遂げられませんでしたから」

高嶺「それで、奈々はその時に多数のギガント級と戦った事があるの?」

奈々「はい。この時はギガント級を3体倒しましたし」

梅「すげえ功績残してんなぁ」

楓「無茶苦茶ですわね」

奈々「皆にも言われた」

姫歌「それを聞くと、あんたのあの強さも納得がいくわね」

雨嘉「でも問題はサンスベリアの方…」

千香瑠「相手が油断した所で、圧倒的な戦力で一気に畳み掛ける…」

初「確かに物量の高さて攻めていくのは利に叶ってますわね」

幸恵「しかも相手は陣形を組んできている。これは油断ならないわ」

奈々「次はきっと昨日の5倍以上の戦力で出してくるから覚悟した方がいいと思います」

 

 

 

 

サンスベリアが昨日より沢山来ることを予言し

、皆は頭に入れておいた。

 

 

 

 

楪「なら。準備は万全にしないとな」

楓「非戦闘組は支援スキルで戦闘組の強化。それを神琳さんと茜様のテスタメントで拡大」

神琳「強化スキル持ちの戦闘組は敵の出方によってヘリオスフィア、レジスタ、カリスマを温存してください。敵がどんな編成で来るかわからない以上、まずは慎重に行った方がいいと思います」

槿「私も賛成ね」

奈々「カリスマと言ったら、梨璃ちゃんと夢結さんから連絡は?」

二水「それが、発信源不明の妨害電波が鎌倉周辺に発生して、通信が出来なくなってるんです」

 

 

 

妨害電波が発生してるせいで梨璃と夢結の無事が確認出来なくなってる。

 

外部からのガーデンにも連絡出来ない為、これ以上の仲間の増援は難しいだろう。

 

 

 

 

 

梅「二人の事は出雲先生に任せて、今はこっちが先だゾ」

楓「心配ですけど、今は先生を信じるしかありませんわね」

灯莉「それで、作戦はどうするの?」

楓「そうですね…敵がどんな出方で来るのかわからない以上、下手に動くわけには…」

奈々「作戦ならあるよ!」

 

 

 

 

突然奈々が作戦を提案してきた。

 

 

 

 

来夢「奈々ちゃん?」

楓「何か策はあるんですの?」

神琳「どんな作戦なのか聞かせてくださいますか?」

 

 

 

 

神琳の質問に奈々は答えた。

 

 

 

 

奈々「敵の所有するマギリアクターを壊すの」

神琳「マギリアクターを?」

純「奈々、ギガント級が来るのですのよ。リアクターを破壊するなんてあと回しじゃなくて?」

奈々「理由ならありますよ?」

幸恵「なにかしら?」

奈々「何故サンスベリアがヒュージを上手く扱い、陣形を組ませているかわかる?」

一葉「ヒュージを扱える?」

叶星「確かに、今回のヒュージが陣形を組んだのは初めて見たわ。普通はそんなことあり得ないのに」

 

 

 

 

今回現れたヒュージ達はフォーメーションを組んでいた。

 

普通のヒュージなら絶対に考えない。

 

例え知能を持ったヒュージでもそこまでやることはない。

 

みんなが考える中…楠美はある答えにたどり着く。

 

 

 

 

楠美「もしかして、そのヒュージはマギリアクターで」

奈々「そう、制御してるわけ」

壱「そんなことが可能なの?」

奈々「人工的に作られたヒュージなら問題なく制御出来るけど、ヒュージネストで生み出したヒュージの場合はそうはいかない」

聖恋「そこでマギリアクターって訳か…」

奈々「そう。さっき言ったけど強力なマギリアクターにはアルトラ級のコアが使われている。そこから発する波動を電波信号に変換してヒュージに伝えればヒュージネストから生まれたヒュージを操作する事が可能なのよ。だからフォーメーションも容易に出来るの」

梅「じゃあそのリアクターを壊せば…!」

奈々「ヒュージ達の統計も崩れ始め、時間を稼げると思いますよ」

楓「それで、誰が壊しに行きますの?」

奈々「わかってるでしょ?私だって」

亜羅椰「あのね…」

衣奈「一理あるわ。この役はなるべく敵との接触を避け、目標を早めに倒せる者でないといけないわ」

神琳「はい。戦闘要員に縮地を持ってるリリィは今いない。あらゆる状況にも対応できるレアスキル…マスカレイドを持っている奈々さんには適任ですね」

楓「それなら、百合ヶ丘を守るレギオンは…」

「私達が引き受けるよ」

 

 

 

 

声と共に現れたのは、専用のCHARMを持った綾瀬と涼と百由だった。

 

百由のCHARMはアステリオンである。

 

 

 

 

奈々「綾瀬ちゃん!涼ちゃんに百由さんも!」

綾瀬「私と涼のCHARMは損傷が少なかったから修理を終えている。百由様のは隠し持っていた一つらしいよ」

涼「百由様が百合ヶ丘のマギリアクターを使ったバリア装置をやっと完成させたんだ」

奈々「バリア装置!?」

百由「一昨日現れたギガント級との戦いの後、密かに作っておいたのよ。ギガント級の攻撃なら問題なく受け止められるわ」

綾瀬「その代わり、私が制御する必要があるけどね」

 

 

 

綾瀬のイージスには大きめの青いリングのパーツがくっついていた。

 

 

 

 

奈々「イージスにつけてるパーツ…それで制御するの?」

綾瀬「本来は学園側で制御する予定だったんだけど、間に合わせでこうなったんだ」

涼「僕たちが百合ヶ丘を防衛する。だからリリィ全員は前線に出てくれ」

百由「梅、君も学園に戻ってきて。CHARMが直り次第、ぐろっぴを連れて縮地のワームホールを通って一柳隊と合流よ」

梅「百由も人使いが荒いナ、ま、今はそうするしかないしナ」

 

 

 

 

と、話してるうちに警報が鳴った。

 

そわそわするような緊急性のある音である。

 

 

 

 

奈々「来たか…サンスベリア…!」

 

 

 

 

 

いまの警報は、サンスベリアのヒュージ達がもうすぐ戦闘区域内に侵入する合図である。

 

 

 

 

百由「梅、お願いね」

梅「わかったゾ」

 

 

 

 

梅は百由を連れて百合ヶ丘に向かうため、先に外へ出た。

 

 

 

 

二水「CHARMが来るまでの間、私達はここで皆様のサポートをします」

雨嘉「鷹の目で周囲の確認…私の天の秤目で敵の移動基地の位置を教えるよ」

純「なら私達は、左右からやって来るヒュージ達を殲滅させればいいのですね」

楪「ならロネスネスとヘオロットセインツの出番だな」

幸恵「奈々さんを守りながら移動基地まで送り届けるのはアイアンサイドが引き受けますわ」

一葉「残りのレギオンはこの拠点を中心に、百合ヶ丘に向かうヒュージ達を迎え撃ちます!」

叶星「奈々さん、後は任せるわ」

奈々「承知です!」

 

 

 

 

 

奈々は両手にカナベラル、ブルメリアを持ち、腰に2本のツインフェザーを背負った。

 

 

他のみんなもメンテナンスを済ませたCHARMを持っていつでも戦える状態である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「リリィ連合軍、出撃だ!!」

「「「「「「「「「「おおおおおーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

リリィ達は戦いの場へ向かうため、外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、奈々の携帯から着信音が鳴った。

 

 

有名バンドによる焼鳥の歌である。

 

 

 

 

 

奈々「電話だ…ブルーガードから?」

一葉「全く…先に出てますから」

奈々「ごめん。すぐに終わるから」

 

 

 

 

 

と、奈々は皆と離れ、電話をかけた。

 

 

 

 

奈々「もしもし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「そ…そんなまさか…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電話を済ませ、奈々は皆と合流した。

 

 

 

 

奈々「皆ごめん!敵は?」

幸恵「ええ。来たわ」

 

 

 

 

奈々は海の向こうを見た。

 

 

 

 

 

奈々「………………」

灯莉「ホントにイッパイ来たー!」

 

 

 

 

 

海の向こうには、10体以上のギガント級が横並びにこちらへ向かっていた。

 

姿は昨日戦った緑色のアーリマン…通称イビルアイのようである。

 

 

 

 

槿「昨日戦ったギガント級があんなに…」

千香瑠「量産型というのは間違いありませんね」

 

 

 

 

ヒュージ達を肉眼で確認したと同時に、通信端末から二水の声が聞こえてきた。

 

音量はみんなが聞こえる大きさまで上げてある。

 

 

 

 

二水「「皆さん!敵の戦力は、ギガント級18体。その後ろからスモール級が600体。ラージ級が80体。全て昨日と同じ個体です!陣形はギガント級6体づつの3編成でやって来ます。中央の編成の後ろからは数体のラージ級が1列に並んでやって来ます!更に後ろから移動基地らしき船が待機中!」」

恋花「18体も!?」

椛「更にラージ級もかなりの数ですね」

佳世「自衛隊の皆さんが入るとはいえ、スモール級の数が600体なのは厳しいですね…」

 

 

 

 

 

拠点と百合ヶ丘の間にいる自衛隊は今回、昨日より多くの戦車、戦闘機を用意したが、スモール級の群れと戦うのは無茶である。

 

戦況が不利なのは変わらない…

 

 

 

 

 

けどやるしかないのだ。

 

ここで百合ヶ丘が壊滅すればリアクターを奪われ、更に敵の戦力が大幅に上がる。

 

そうなれば誰もサンスベリアを止めることは出来なくなる。

 

 

 

リリィ達の最大の山場と言えよう。

 

 

 

 

 

高嶺「まずは奈々を敵の基地まで送り届けるのが最優先ね」

百合亜「前1列でやって来るラージ級は出来るだけ処理するわよ」

楪「それぞれの役割を果たしながら、全員生き残ろう!」

純「当然ですわ。この戦いに負けは許されませんもの」

燈「純お姉様が言うんですもの!負けることなんてあり得ませんもの!」

初「ロネスネスとヘオロットセインツは左右のギガント級達を引き受けますわ」

一葉「私達は守りに入り、こちらに来るヒュージ達を迎え撃ちます!」

叶星「一歩たりともヒュージ達を通させたりはしないわ!」

奈々「浜辺に着いたら私が縮地で海を渡って敵基地に向かい、斜線上のラージ級を出来るだけ倒します。その後アイアンサイドはスモール級、漏らしたラージ級の処理に迎え撃って下さい」

聖恋「ラージ級をも相手にするのか!?」

初「心配は要りませんわ。彼女の攻撃力ならラージ級を一撃で倒せますもの」

百合亜「そろそろ行動を始めましょう。敵も戦闘区域内に入るわ」

来夢「はい。行きましょう!」

 

 

 

 

そして幸恵が行動開始の合図を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸恵「作戦、開始!!」

 

 

 

 

 

 

幸恵の号令で、各レギオンはバラバラに散らばり、それぞれの役割に付いた。

 

 

 

 

 

幸恵「各員、奈々さんを守りつつ浜辺まで向かうわよ!」

 

 

 

幸恵率いるアイアンサイドが奈々を浜辺まで連れていく。

 

 

 

 

 

 

彼女…福山・ジャンヌ・幸恵は、私立ルドビコ女学院の実力派リリィである。

 

来夢の姉である岸本・マリア・未来のシュベスターである彼女は、未来が亡き今でもルドビコ女学院を支えながら戦ってきた。

 

そんなある日…妹の来夢が姉の意思を継ぐためにルドビコ女学院に入学してきた。

 

後に彼女は来夢とシュベスターの契りを交わし、ルドビコをGEHENAの手から守るために結成したアイアンサイドで仲間と共に戦い続けている。

 

そして今は、百合ヶ丘を守るためにその力を振るう。

 

 

 

 

聖恋「奈々には指一本触れさせねぇ!」

 

 

 

 

グングニル・カービンを構えた聖恋が迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

彼女…天宮・ソフィア・聖恋は、幼馴染の来夢、未来と一緒に本当の姉妹のように暮らしていた。

 

ところが、迎撃戦に突如起きた未来が死んだ事実を受け止めるものの、家族を失った思いは彼女の心に重くのし掛かった。

 

しかし、未来から託された、「来夢をお願いね」という言葉を守るために彼女は来夢と一緒にルドビコ女学院に入学した。

 

それは、来夢を守れる未来のような強いリリィになるという意志の現れでもある。

 

 

 

 

 

前方から向かってくるギガント級…イビルアイの一体がアイアンサイドに向けて攻撃を仕掛けるが、百合亜がエゼルリングで弾き返していく。

 

 

 

 

 

百合亜「貴方の相手は奈々さんではなくて、私達よ」

 

 

 

 

と、ヒュージを牽制する百合亜。

 

 

 

 

 

 

彼女…黒木・フランシスカ・百合亜は、才能のある強化人間(ブーステッドリリィ)であった。

 

しかし強化リリィになる前は、身体が弱く、大人しい性格であった。

 

その反面、御台場迎撃戦でその力を発揮できていなかった。

 

そしてある日…ヒュージによる襲撃で大ケガを負い、その後GEHENAによって強化リリィになった。

 

そんな体験をした彼女も今はアイアンサイドの一員となり、聖恋とはシュベスターの契りを結ぶ。

 

 

辛い過去があったが今は違う。

 

彼女の新しい物語はまだ始まったばかりなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

佳世「オラオラオラー!!邪魔なんだよー!!」

 

 

 

 

佳世がダインスレイフ・カービンで百合亜と同様敵の攻撃を弾き返していく。

 

 

 

 

彼女…松永・ブリジッタ・佳世は漫画オタクにして、リリィオタクな少女。

 

普段はおどおどと話す内気な性格だが、好きなことを話すときはテンションが高く、CHARMを持ったときは人が変わったように豹変する。

 

テンプルレギオンに選抜された彼女は、狂気のレアスキル…ルナティックトランサーを習得した事が評価に一枚買っている。

 

そしてそれを克服したのはシュベスターのつぐみの力もあった。

 

今、彼女はアイアンサイドの一員として、仲間と共に戦場を駆けている。

 

 

 

 

 

つぐみ「この戦い…絶対に負けない…!」

 

 

 

 

つぐみも同じく攻撃を弾き返していく。

 

 

 

 

彼女…長谷川・ガブリエラ・つぐみは、友達思いの努力家だが、苦労人でもある。

 

テンプルレギオンに選抜されるまでの間にリリィとしてのポジションを色々試してきた。

 

その努力と経験が、彼女を万能型リリィへと叩き上げられた。

 

そして現在、アイアンサイドのリリィとして、佳世を支えるシュベスターとして、彼女は仲間と共に戦いに立っている。

 

 

 

 

 

 

他のリリィ達も負けていない。

 

李・クリスティーナ・思思がレアスキル…ユーバーザインで敵の標的をずらさせ、こちらの被害を減らしていく。

 

 

 

 

 

佐伯・ジュリア・花蓮も本来なら前に出たい所だが、奈々の護衛の為に今は防御に専念している。

 

 

 

 

瀬戸・ベロニカ・いちかは、元テンプルレギオンの副隊長を務めてただけあって、その実力は本物で、防御も問題なくこなす。

 

 

 

 

そして………

 

 

 

 

来夢「守られてばかりじゃない…今度は私がみんなを守るんだ!だから私は…この力で皆を助ける!」

 

 

 

 

来夢がカリスマを発動し、周囲のマギを浄化し、みんなのマギを回復させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女…岸本・ルチア・来夢は、戦死してしまった姉の未来の遺志を継ぐ為に、未来が通っていたガーデン、私立ルドビコ女学院へと入学した。

 

 

後に姉のシュベスターだった福山・ジャンヌ・幸恵とシュベスターの契りを交わす。

 

入学試験では訓練用のヒュージモデル相手に恐怖からか立ちすくむも、スキラー数値を始め様々な可能性を秘めていたため合格を果たし、早い段階でルドビコ女学院のトップと言えるテンプルレギオンに選抜される。

 

そんな彼女だが、実は胎児の時にヒュージ細胞を埋め込まれた生まれながらの強化リリィという別の一面もある。

 

ヒュージ細胞を持った彼女はヒュージが仲間だと認識されるため、ヒュージを引き寄せるが攻撃を受けない。

辛い運命を背負いながらも、彼女は仲間達と強い意思…そして姉の形見であるアステリオンを持って、幸恵と共に前を進んでいく。

 

それが、来夢の今の戦いなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

一方、ロネスネスの船田姉妹…純と初は左側からやって来るイビルアイ達の群れへと向かっていた。

 

 

 

 

純「ギガント級が6体…上等ですわね」

初「純、今は倒すのではなく、時間を稼ぐのが先よ」

純「わかってますわ。今の戦力で勝てるとは思っていませんもの」

槿「珍しく慎重ですね」

純「ノインヴェルト戦術でギガント級の一体を倒しても、そのあとのギガント級達に何も出来なかったら意味ありませんわ」

燈「私は純お姉様の命令ならなんでも賛成致しますわよ!」

純「燈、カリスマの使用は押さえて」

燈「了解しましたわ!」

 

 

 

 

 

 

 

彼女達…船田純と船田初は辛い運命を背負っていた。

 

 

 

幼少時代、ヒュージを引き寄せてしまう体質のせいで居場所を失い、人間不信に堕ち…

 

 

 

小等部では、ヒュージの奇襲によって大ケガを負い…

 

 

 

 

中等部では、生徒会長の座に着くも、他の生徒と上手くいかず…

 

 

 

高等部では、ロネスネスのメンバー集めに苦戦していたが…

 

迎えてくれた学友達や、誤解が解けて仲直りした長沢雪、

 

 

沢山の仲間に支えられ、彼女二人は、仲間の大切さを改め、ロネスネスの結成に繋げた。

 

二人のその強さは天才的と言えるものだが、それ以上の力を戦場で出せるのは、支えてきた仲間の存在もあるからである。

 

今や、輝ける者…達高貴なるリリィとして、彼女達は戦うのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ヘオロットセインツもロネスネス同様、右側のギガント級達を足止めしている。

 

 

 

 

楪「今までやったことのない大勝負だからな」

椛「ええ。必ず成功させましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二組が左右のギガント級達を足止めしている間に、イビルアイの弾幕を防ぎつつ前進するアイアンサイドはイビルアイ達の間を通り抜けた。

 

 

 

 

 

来夢「抜けた!」

幸恵「このまま海岸まで向かうわ!」

百合亜「待って、後ろ!」

佳世「!?」

 

 

 

 

通りすぎたイビルアイの一体がアイアンサイドを追っかけてきたのだ。

 

 

 

 

 

聖恋「なんでギガント級がこっちに!?」

奈々「サンスベリアめ…私を警戒して一体だけ別の行動を取らせてたか」

 

 

 

 

 

 

サンスベリアは奈々の強さを危険視してたのか、イビルアイの一体を奈々に向けるよう指示してたようである。

 

 

 

 

 

 

幸恵「このままあいつを相手にしてたら、

ラージ級達がこっちにやって来て同時に戦わなきゃいけなくなる…!」

 

 

 

 

ギガント級であるイビルアイ1体でも大変なのに、ここでラージ級数10体が来たらこちらが押され負けする為、奈々を守るどころではない。

 

引き離すことは出来ても、向かってくるラージ級に足を止められては乱戦に入るため、逃げ切るのは得策ではない。

 

 

 

 

奈々「仕方ない…皆は一旦後退して体制を建て直して!このギガント級は私が引き付ける!」

来夢「ええっ!?」

幸恵「待って!もしかしたら向かってきているラージ級は奈々さんを狙って…!」

佳世「それじゃあギガント級だけじゃなく、ラージ級まで引き付けるのか!?いくらマギが多くたって無茶だろ!」

奈々「だからと言って誰一人失ったら意味無いですよ!それに他に突破口は…」

「突破口は作るものですわ!」

奈々「!?」

 

 

 

 

 

突然ギガント級が後ろからの爆発で仰け反る。

 

 

 

 

幸恵「援護攻撃!?」

奈々「まさか…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挿入歌「つながり」

 

 

 

 

 

遠くから、一柳隊の7人がやって来た。

 

 

 

楓「ええ、そのまさかですわ!」

梅「待たせたな奈々!」

神琳「一柳隊、全線復帰ですわ」

 

 

 

 

 

右手には、修理が完了したCHARMが握られていた。

 

 

グングニル、アステリオン、ティルフィング、ジョワユーズ、マソレリック、タンキエム、ニョルニール、全て新品のように見違えていた。

 

更に神琳のマソレリックには重機関銃のような砲身が付き、雨嘉のアステリオンには、元の砲身を包むようにマガジンの付いた砲身が取り付けられていた。

 

そして二水のグングニルはネクスビリティーに変わっていた。

 

 

 

 

 

奈々「皆…!」

聖恋「お前達が来たってことは…!」

ミリアム「見ての通り、CHARMは直っておる。ワシらも戦うぞ!」

鶴紗「アールヴヘイム、レギンレイヴも出撃した」

来夢「他のレギオンも!?」

雨嘉「うん。僅か数分もすれば出撃出来るみたい」

百合亜「これは心強くなったわね」

奈々「はい。とても頼りになる仲間です」

二水「幸恵さん、奈々さんの護衛は私達が引き継ぎます!」

幸恵「助かるわ。これで私達もギガント級に集中出来る」

梅「他のレギオンの連絡は亜里奈達がやってくれてるから大丈夫だゾ」

幸恵「わかったわ。皆、これよりアイアンサイドはギガント級の撃破に移ります!」

佳世「待ってたぞ!!」

聖恋「アイアンサイドの力を…」

つぐみ「見せつけよう!」

百合亜「一柳隊…頼んだわ」

来夢「奈々ちゃん、気を付けてね!」

奈々「来夢ちゃんもね!」

 

 

 

 

奈々はアイアンサイドから一柳隊の方へ移った。

 

 

アイアンサイドはギガント級を相手に、一柳隊は奈々を海岸までの護衛を引き継いだ。

 

 

 

 

楓「さて奈々さん、号令をお願いしますわ」

奈々「え?私はまだ入隊してないよ?」

楓「何言ってますの?もう貴女は一柳隊の一員ですのよ」

ミリアム「梨璃が入団書にお前の名前を書いておったからな」

奈々「それ大丈夫なの?」

鶴紗「別にいいだろ?私達は仲間なんだから」

奈々「でも隊長、副隊長を差し置いて新人の私が号令なんていいのかな…」

楓「梨璃さん特権で特別に許可いたしますわよ。今は貴女がリーダーですもの」

神琳「今、貴女は百合ヶ丘の…いや、リリィ達の希望ですから」

雨嘉「だから号令は奈々にお願い」

梅「期待してるからナ」

二水「いい一言お願いします!」

奈々「………………わかった」

 

 

 

 

 

 

皆からのお願いを聞き、奈々は号令を言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「一柳隊…進軍開始!!!」

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

 

 

 

 

一柳隊が動き始め、海岸へ移動を始めた。

 

 

 

 

 

一方、出撃したアールヴヘイム、レギンレイヴは…

 

 

 

 

天葉「行こう。百合ヶ丘最強のレギオン…アールヴヘイムの力をサンスベリアに思い知らせるんだ!」

 

 

 

右手にグラムを持った天葉が仲間を連れてギガント級の討伐に向かう。

 

 

 

 

衣奈「張り切ってるわね。天葉」

楠美「いつもより輝いて見えます」

壱「私達も負けてられないね」

亜羅椰「奈々ばっかりにいい格好はさせないわ!」

辰姫「そうね」

弥宙「やるわよ!」

月詩「行こうあか姉!」

茜「ええ。この戦いを終わらせるために!」

 

 

 

 

 

天葉がグラムにノインヴェルトの弾を装填し、アールヴヘイムによるノインヴェルト戦術を行った。

 

 

イビルアイの近くで攪乱させながらパス回しを行っていく。

 

 

ギガント級ぐらいのヒュージなら、近くでパス回しをすることで、通常よりマギを多く吸収し、橋梁なマギスフィアに育つ。

 

アールヴヘイムのもっとも得意な戦法である。

 

 

 

そしてマギスフィアを衣奈が受け止めると、そのまま上空へ跳んだ茜に向けて……

 

 

 

 

 

 

衣奈「茜ー!!!」

 

 

 

 

衣奈がマギスフィアを飛ばした。

 

それを茜はキャッチし、そのままイビルアイの頭上に向けて…

 

 

 

 

 

茜「これで!!」

 

 

 

 

マギスフィアを撃ち飛ばし。イビルアイの一体を撃ち抜き倒した。

 

 

 

 

 

 

汐里「決めます!」

 

 

 

 

 

レギンレイヴも、フィニッシュショット担当の六角汐里がティルフィングで撃ち叩き、もう一体のイビルアイを倒す。

 

 

 

 

 

そして百合ヶ丘から新たにエイル、ローエングリンが出撃した。

 

レギオンの数が増えていき、圧倒的な戦況は、少しづつひっくり返されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、奈々を加えた一柳隊は、前方からやって来たラージ級の群れと遭遇した。

 

 

その数は14体。

 

 

ラージ級達の標的は、一柳隊に向けられていた。

 

 

 

 

 

奈々「数が多い…ここは私が…!」

 

 

 

カナベラルに力を込める奈々。しかし…

 

 

 

神琳「ここは私達に任せてください」

 

 

 

神琳が奈々を止める。

 

 

 

 

奈々「えっ!?」

鶴紗「あれぐらいのラージ級、奈々の力が無くても私達で行ける」

楓「この先何が起こるかわかりませんもの。なるべく奈々さんはマギを温存してください」

ミリアム「フェイズトランセンデンスも下手に使えんからの。本気は出すがな」

梅「奈々、ここは梅達の出番だゾ!」

雨嘉「奈々に助けてばかりだったからね。今度は私達が奈々を助ける番だよ」

二水「私も今回は前衛で戦います!」

奈々「皆…」

楓「私達…あの1週間何もしなかった訳ではありませんわ。それをここで証明してあげますわ!」

 

 

 

 

 

全員戦う気漫々である。

 

 

今回の優先目的は、敵の移動基地内にあるマギリアクターの破壊。

 

しかしマギリアクターを破壊するのはノインヴェルト戦術並の火力が無いと壊せない程の頑丈さを持っている。

 

そこで、爆発的な火力を持ったカナリアを扱え、独戦闘能力の優れた奈々が担当されたのである。

 

ここで戦ってマギリアクターを壊すのに必要なマギを消耗してしまっては意味がない。

 

 

 

 

そして一柳隊は、結梨が初めてヒュージと戦った次の日から猛特訓をしていたのだ。

 

今ここで、オートケプビン戦で見せれなかった特訓の成果を見せるときなのだ。

 

 

 

 

 

奈々「……………わかった。皆の特訓の成果を見せてもらうよ!」

梅「そうこなくちゃナ!」

楓「各員、私のレジスタで強化したのち、ラージ級2体撃破ですわ!」

鶴紗「ハードル高いな…」

ミリアム「だが、それぐらいお手の物じゃ!」

神琳「そうですわね」

二水「私も」

雨嘉「行こう!」

 

 

 

 

 

奈々を残し、一柳隊の7人が前に立ち、ラージ級達を相手にした。

 

同時に楓がレジスタを発動。

 

仲間の攻撃力を上げた。

 

 

 

 

 

楓「さあ、舞いなさい!ジョワユーズ!」

 

 

 

 

 

先行した楓が向かってくるラージ級の1体に対し、体をひねながらのジョワユーズによる横凪ぎを仕掛けた。

 

すると、ラージ級が怯み、体に大きな傷が出来た。

 

そこから楓は更に体ごと回転し、怯んだラージ級を貫き、一体撃破する。

 

これに対し楓は…

 

 

 

 

 

楓「切れ味が前より増してる…少々悔しいですが、涼さんの技術はかなりのものですわね。ここまで強くなるなんて…グランギニョルも負けてられませんわ!」

 

 

 

 

と、涼にライバル心を燃やしつつも、同時に感謝もしてる楓。

 

楓のジョワユーズは涼に頼んで直した物で、ブレイドモードの威力、CHARM全体の強度が大きく向上されている。

 

 

レジスタで強化してるとはいえ、涼の技術、楓のマギも相まって、防御の薄いラージ級を簡単に倒してしまうのは驚いたようだ。

 

 

 

 

ミリアム「涼の奴、とんでもない代物に仕上げてくれたようじゃな!ワシのニョルニールも見違えておるぞ!」

 

 

 

 

ミリアムのニョルニールによる渾身の降り下ろしで、ラージ級を真っ二つに切り裂いた。

 

涼が手懸けたCHARMはジョワユーズのみならず、一柳隊のCHARMも担当していた。

 

 

 

 

 

神琳「雨嘉さん、一緒に行きましょうか」

雨嘉「うん、行こう!神琳!」

神琳「綾瀬さんが取り付けたイージスの武装…使わせてもらいますわ!」

 

 

 

 

神琳は大きめのガトリング砲が取り付けられたマソレリックをラージ級の一体に向けて、無数の弾を発射した。

 

元々重機関銃はヘリ等に付いている物で、人間が持てるような武器ではない。

 

しかし彼女はリリィ。

 

マギを込めてしまえば大概のCHARMは軽くなり、自身の一部みたいに扱える。

 

そしてその発射された無数の弾はラージ級に命中し、いくつかの爆発を起こしラージ級を大きく怯ませた。

 

 

 

 

 

マソレリックに取り付けたイージスのガトリング砲は火力と殲滅力に長けており、タンクを担当する綾瀬はこのイージスの武装のお陰で元々強い防御能力を更に向上させていた。

 

 

 

 

 

そして雨嘉は…ノインヴェルト戦術の弾とは違う弾が入ったカートリッジをアステリオンに付いた追加パーツのマガジンに差し込み、怯んだラージ級にアステリオンを向け、トリガーを持った。

 

 

 

 

 

 

雨嘉「これなら……!」

 

 

 

 

 

雨嘉のアステリオンから鋭いマギの光弾が発射され、そのままラージ級の体を貫き、爆散した。

 

 

 

 

 

 

雨嘉「すごい……」

神琳「綾瀬さんの技術力、侮れませんね」

 

 

 

 

 

使った本人はラージ級を簡単に倒した事よりも、綾瀬のアーセナルとしての技量に驚いていた。

 

 

 

 

 

梅「二水、前線は梅達に任せてもいいんだゾ?」

二水「いえ、皆が頑張ってるのに私だけ立ち止まる訳にはいきません!」

 

 

 

 

二水は今回やる気である。

 

 

 

 

 

鶴紗「わかった。3人で行くぞ」

二水「はい!」

梅「二人とも、梅に付いてこいよ!」

 

 

 

 

梅が先行し、その後ろを二水と鶴紗が付いていく。

 

 

 

狙うは2体のラージ級。

 

 

 

梅がタンキエムで斬りかかり、そこへ二水と鶴紗のネクスビリティー、ティルフィングの斬撃で畳み掛けると、ラージ級が力尽き、地面へ堕ちていった。

 

 

 

 

梅「これはすごい威力だな…ホントにラージ級を相手にしてるのか疑うぐらいだ」

二水「情報では、このラージ級はマギによる防御力が小さいと出ていますが、それでも私達だけで簡単に倒せてしまうのは驚きました」

鶴紗「だけどこれならラージ級を私達だけで片付けられる…!」

梅「一気に倒すゾ!」

 

 

 

 

 

3人は再び前進し、ラージ級を一体ずつ確実に倒していく。

 

 

 

同じく先行する楓とミリアム。

 

そしてその後ろを付いていく雨嘉と神琳。

 

 

ラージ級の群れは残り4体になり、一柳隊の7人のマギはまだ余裕に残っていた。

 

 

 

 

その光景を奈々は…

 

 

 

 

 

奈々「驚いた…皆結構強くなってる」

梅「いつかは奈々とリベンジしたいからナ」

楓「次は一対一で勝負ですわよ」

奈々「私も負けるつもりは無いけどね」

 

 

 

 

 

頼れる仲間として、そして同時にライバルとして、一柳隊は奈々抜きで14体のラージ級を撃退した。

 

 

 

 

 

奈々「すごい…私抜きでラージ級を撃退した…!」

二水「安心するのはまだ早いです!1分後にスモール級600体が海岸に到着します!」

 

 

 

 

二水が鷹の目で、周囲の状況を確認し、スモール級の群れが来ることを皆に知らせる。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「スモール級がそろそろ来るか…」

神琳「奈々さん、ここからは私達が食い止めます。一足先にリアクターの破壊を」

奈々「スモール級600体を相手に?」

鶴紗「スモール級ぐらい、私達でやれる」

雨嘉「だから後は任せて」

 

 

 

 

スモール級とはいえ、数は600体。

 

長引けば数で不利になるのは明白。

 

しかしここに残っていたら、ギガント級と戦ってるリリィ達のマギが消耗していき、次第に劣勢になっていく。

 

速やかにマギリアクターを破壊しなければならない。

 

 

 

 

奈々「わかった。もし危なくなったら後退してね!」

楓「言われるまでもありませんわ!」

奈々「…………行ってくる!」

 

 

 

 

 

一柳隊にこの場を任せ、奈々は縮地を使って海岸を渡り、海を走っていった。

 

 

 

 

 

楓「皆さん、わかっていますわよね?」

鶴紗「ああ、スモール級を全て倒す」

神琳「厳しい状況ですけど…」

雨嘉「今の私達なら、やれる!」

ミリアム「ワシのフェイズトランセンデンスが付いている。なんとしても百合ヶ丘を守るぞ!」

梅「だな!夢結の分まで張り切っていくぞ!」

二水「私も梨璃さんの分までがんばります!」

 

 

 

 

 

スモール級の群れはすぐに海岸を渡り、こちらに向かってきている。

 

 

 

 

 

梅「よし、それじゃあ行くゾ!」

 

 

 

 

梅の返事に合わせ、一柳隊はスモール級の群れに飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、海を走る奈々は、目の前に見える移動基地を発見した。

 

 

 

 

奈々「あれか…!」

 

 

 

 

その外見は、軽空母の上に石油工場のような建造物がいくつか立てられ、中央にはタワーらしき建物が見え、工場の周囲を無数の主砲、副砲、機銃等が四方八方に用意された動く要塞である。

 

恐らく、魚雷やミサイルも備わってるだろう。

 

陸海空…何処から攻めても隙のない装備の数である。

 

 

しかし、相手がリリィなら話は別。

 

 

 

主砲、機銃、副砲、ミサイルが発射され、弾幕を形成するが、奈々は縮地で前進しつつ攻撃を避けていく。

 

 

 

 

 

 

 

そして奈々は移動基地の上に乗り込んだ。

 

 

 

ここまで奈々の持ってるマギは8割近く残ってる。

 

マギリアクターを壊すには十分な量である。

 

 

 

 

入り口の先は自動車が通れる程の広さの道が続いており、左右は無数のパイプラインがあちこちにあった。

 

 

奈々は先へ進み、マギリアクターがある場所へ向かった。

 

先へ進みながらマギリアクターの反応を探す。

 

 

 

 

 

しかしここで奈々は違和感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

マギリアクターの反応がこちらに近づいてきてるのだ。

 

 

奈々は足を止めるが、それでもこちらに近づいてきてる。

 

 

 

稼働中のマギリアクターを運ぶのはとても危険な為、普通に運ぶのは不可能。

 

 

 

考えられるとすれば、マギリアクターを搭載したキャバリエがここにあるということ。

 

 

そう考えていると、マギリアクターの反応が真上に移動した。

 

 

 

 

 

奈々「私を出迎えてる…?上等!」

 

 

 

 

奈々は壁蹴って屋上へ向かった。

 

 

 

 

 

 

周りの景色は見渡す限りの海。

 

 

 

空はもうすぐ夕方に変わる頃の真っ赤な色になっている。

 

 

 

 

 

そして、奈々の視界には……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約3メートル以上もする機械の鎧が立っていた。

 

 

 

 

 

 

奈々「!?」

 

 

 

 

 

 

驚く奈々だが、それ以上に驚いたのは…

 

 

マギリアクターの反応が機械の鎧から来ていることである。

 

 

 

 

奈々「キャバリエじゃない…!?」

 

 

 

 

あの機械の鎧がマギリアクターを搭載してるとはいえ、キャバリエにしてはサイズが小さく、人型に近いシャープな外見をしている。

 

 

そこで奈々が他に考えられるとすれば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな…1年半ぶりと言ったところか」

奈々「!?」

 

 

 

 

機械の鎧が喋った。

 

 

その声は、中年の男性でダンディーぽさを感じさせる。

 

例えるなら、アゴが2つに割れて頭がツルツルの隊長の人物の声に近い。

 

 

奈々はその声に覚えがあった。

 

 

 

 

奈々「やはりあんたか…ボルドー・ブランチ…!」

 

 

 

 

その名を奈々が言うと、機械の鎧の頭部のフルフェイスが外れ、中年の男性の顔が現れた。

 

 

 

 

 

サンスベリア 第一部隊司令官 ボルドー・ブランチ

 

 

 

 

 

ボルドー「私の事をまだ覚えているとは、光栄だよ」

奈々「私は全然嬉しくないけどね。まさかサイボーグになって蘇るなんてね。そしてあんたから涌き出てくるそのマギ」

ボルドー「その通り。サイボーグになった私の体にはマギリアクター…ヴァーテクスが内蔵されている。マギボーグとなった私は今、リリィを超える存在となったのだ」

奈々「神になったつもり?笑える冗談だね」

ボルドー「ふぁふぁふぁふぁ…せっかく来たんだ。特別に良いものを見せてやろう」

奈々「良いもの?」

 

 

 

 

そう言うとボルドーは浮遊する立体スクリーンを呼びだし、他のレギオンがイビルアイと戦ってる映像を映した。

 

 

 

 

 

奈々「これは…!」

ボルドー「お前達がイビルアイと言っていたあのギガント級…よく見るんだな」

奈々「?」

 

 

 

 

奈々は映像に映るイビルアイを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方他のレギオン達は、残ったギガント級を倒そうとするが、ここで異変は起きた。

 

 

 

何と、イビルアイの体の色が銀色に変色し始めたのだ。

 

 

 

 

史房「これは…!?」

 

 

 

 

 

もう一方でも、変異したイビルアイにノインヴェルト戦術を仕掛けたが、跳ね返されてしまう。

 

 

 

 

 

静「弾かれた!?」

 

 

 

 

 

 

 

ロネスネス、ヘオロットセインツでも…

 

互いに変異したイビルアイの弾幕を必死にかわしていた。

 

 

 

 

 

初「攻撃が激しくなった…!?」

楪「いつの間にか色まで変わってる…パワーアップか?」

椛「他の方ではマギスフィアを跳ね返されたようですわ」

純「マギリフレクターに違いありませんわね」

燈「サンスベリアも小癪な真似をしますわね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

純「まさかアーリマンを再び戦うことになるなんてね…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その戦況を映像で目の当たりにした奈々は驚きを隠せなかった…

 

 

あのイビルアイがアーリマンに変わるのは、普通のリリィなら驚かない方がおかしい。

 

 

そんな中、奈々はイビルアイがアーリマンに変わった理由を知る。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「進化…!」

 

 

 

 

イビルアイがアーリマンに変わった原因は進化だと奈々は例えた。

 

 

 

 

ボルドー「その通り。今回用意したギガント級には六体だけ進化できる個体を入れておいたのだ。そしてそのスペックは下北沢で出したギガント級を更に強化されている」

奈々「まさか、昨日送り込んできたあのギガント級は…!」

ボルドー「察しがいい。あれは突然進化した個体だよ」

 

 

 

 

 

奈々はボルドーの話に確信が持てた。

 

だとすれば、あのアーリマンはダブルノインヴェルト戦術では倒しきれない。

 

マギリフレクターを剥がしても、その進化したアーリマンの耐久力ならノインヴェルト一

発でも耐えられる。

 

そのアーリマンの強化型ならその耐久力は更に強固なものとなっているだろう。

 

百合ヶ丘に所属するリリィ全員と今いる他ガーデンから駆けつけたリリィ達を入れても、人数がまだ足りない。

 

 

長引けば、敗北は免れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々はボルドーに向けてカナベラル、ブルメリアを構えた。

 

 

 

 

 

ボルドー「助けには行かないのか?」

奈々「本来なら行きたいところだけど…今は皆を信じて自分の役目を果たすだけだよ」

 

 

 

 

 

ここで仲間を助けるために引き返せば、ここまで連れてきた仲間の頑張りを無駄にしてしまう。

 

ここはギガント級を止めるために真っ先にマギリアクターを破壊しなければならない。

 

 

目の前にいる敵…マギリアクターを取り込んだボルドーを倒す。

 

 

 

それが奈々の今やるべき事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

ボルドー「賢い判断だ。やはりお前は機転がよく回る。しかし…誤算があったようだな」

奈々「誤算?」

 

 

 

 

次の瞬間、周囲に灰色のスーツを纏った10人の少女達が現れた。

 

一人一人は同じミドルカットの髪型、梨璃と同じ体格だが、髪の色がそれぞれ桃、紫、茶色、赤、青、緑、水色、黄色、黒、銀色と分けられている。

 

そして右手にはCHARMが握られていた。

 

形状はグングニルに似ているが、変形構造はシンプルなものになっている。

 

 

 

 

 

 

奈々「こ、この子達はいったい…!?」

「私達を見て驚いているようね。木葉奈々」

奈々「!?」

 

 

 

 

銀色の少女が奈々に向かって喋った。

 

 

 

 

 

「始めまして…私は双葉真里。サンスベリアのレギオン、ラピュセルのリーダー」

奈々「サンスベリアのレギオン!?」

真里「私は百合ヶ丘のリリィ、一柳結梨のデータを参考に生み出された人工リリィ。そのデータの中には貴女も含まれている」

奈々「結梨ちゃんの!?」

真里「そして私のレアスキルはマスカレイド…これがどういう事かわかる?」

奈々「知らないね。1つ分かったことは、まとめてあんた達を倒せばいいだけのこと」

真里「強がっても無駄。お前の目的はマギリアクターの破壊。そのためには私達を相手にしなきゃいけない。けどここで私達を相手にすればマギを消耗し、リアクターの破壊は不可能となる」

奈々「くっ…」

 

 

 

 

 

出鼻をくじかれた奈々。

 

 

真里の言う通りここで真里達と戦えばリアクターを壊すだけのマギが無くなってしまう。

 

しかしここで戦いを長引いてはヒュージと戦ってるリリィ達のマギが消耗して、相手の進撃に押されていくだろう。

 

百合ヶ丘に張ってあるバリアも万能ではない。

 

アーリマン一体の攻撃ぐらいならいいが、大勢でこられたらやがて壊れていくだろう。

 

奈々に猶予は残されていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思った矢先…

 

 

 

 

 

「奈々ーーーー!」

奈々「!?」

 

 

 

 

 

聞き覚えのある少女の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

知っているマギの波長を感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして海の向こうから何かが走ってきたのを目で捉えた。

 

 

 

 

 

 

そう……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挿入歌 「君の手を離さない」

 

 

 

 

海の上を猛スピードで走る薄むらさきの少女…一柳結梨の姿であった。

 

 

右手には、長めの片刃が付いた剣のCHARMを握っていた。

 

 

 

 

そしてその後ろからは、結梨を追うように大型ボートがやって来た。

 

ヒュージ討伐に向かうためのミニシップである。

 

 

 

 

奈々「4番隊のミニシップ…ブルーガード!?」

ボルドー「ブルーガードだと?」

真里「一柳結梨…まさか!」

 

 

 

 

 

 

そう言っている真里だが、縮地で走ってきた結梨が移動基地の屋上へ飛びあがり、真里に向かって片刃剣のCHARMを降り下ろす。

 

すぐに真里はグングニル似のCHARMで受け止める。

 

そのまま結梨は跳びはね、奈々の側に着地する。

 

 

 

 

 

結梨の服装は青一色で統一されたドレスタイプの防護服姿となっている。

 

 

 

 

結梨「奈々、ただいま!」

奈々「おかえり。結梨ちゃん!」

真里「あり得ない…お前は1週間前、ハレボレボッツの爆発に巻き込まれた筈。何故生きているの?」

奈々「結梨ちゃんはブルーガードに保護されていたの。そして…」

結梨「これのお陰だよ」

 

 

 

 

 

結梨がポケットから取り出したのは、ひし形状の道具である。

 

 

 

 

真里「それはワッペンか?」

奈々「綾瀬ちゃんお手製のマギリフレクター発生装置だよ」

結梨「綾瀬が御守りに持っていてって私にくれたの」

ボルドー「なるほどな」

真里「マギリフレクター…まさかそれであの爆発から逃れられたの?」

奈々「そう…それにあの爆発で見つからなかったのは発動したマギリフレクターの反動で遠くへ飛ばされたからだよ…!」

真里「だとしても、いくらマギリフレクターとはいえ、あのハレボレボッツの爆発に耐えられるとは思えない…」

奈々「それが出来るの。マスカレイドはS級になると、レアスキルを2つ同時に発動出来る他、マギの保有値が2倍になる特性を持っているの。これによってマギリフレクターの効果が大きく上がったワケ」

真里「2倍…!?」

「初耳だったわ」

 

 

 

 

遅れてやって来たのは、夢結と梨璃だった。

 

 

 

手には、新しいグングニルとブリューナグを握っていた。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「夢結さん、梨璃ちゃん!」

夢結「遅くなったわね」

梨璃「アルトラ級にダインスレイフを刺した後、流されそうな所でブルーガードの人達に助けられたの」

奈々「なるほど。海の守り手の名は伊達じゃないね」

 

 

 

 

と、話してる内に3人が新たに奈々の元へ降りてきた。

 

 

 

二人は青のロングの少女加奈と、赤髪のツインテールの少女理亜。

 

共にアステリオンを持っていた。

 

最後の一人は黒鉄を持ったスーツを纏った女性…出雲であった。

 

 

 

 

奈々「加奈さん、理亜ちゃん!先生!」

加奈「お待たせ奈々ちゃん」

理亜「二年ぶりだね」

奈々「うん、久しぶり!」

出雲「再会の話は後にしろ。今はこいつらを片付けるのが先だ」

奈々「そうでした!」

 

 

 

 

出雲の指示で奈々6人はCHARMを構えた。

 

 

 

 

ボルドー「この基地の包囲網を容易く突破するとはな」

出雲「私の知り合いに気配を飛ばせる者がいたんでな。一緒に連れてきたのだ」

真里「ユーバーザイン…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル ユーバーザイン

 

自らの気配を隠したり、飛ばせる事か出来る視覚に特化したレアスキル。

 

敵味方関係なく気配を消せる他、気配や存在をものに移せる。

 

ヒュージ戦では撹乱に使える上に、味方への攻撃を反らしてくれる。

 

ノインヴェルト戦術でもかなり重宝する。

 

 

 

 

 

奈々「夢結さん、梨璃ちゃん、先生!今一柳隊の皆が海岸でスモール級、ラージ級の群れと戦ってます!後アーリマンが6体います!急いで合流を!」

出雲「その事なら塔ノ木から聞いた。今ごろブルーガードの各部隊がアーリマン討伐に向かっている筈だ」

 

 

 

 

出雲の話から、すでにブルーガードの部隊が向かっている事を聞かされた。

 

 

 

 

 

 

夢結「密かに開発したマギリフレクターを破る特殊なノインヴェルト戦術の弾を使用するそうよ」

奈々「おおー」

理亜「百合ヶ丘の方は心配いらないよ」

加奈「私達も戦うよ。リハビリがてらにね」

梨璃「私達も一緒に…」

出雲「一柳、白井、お前達は姉上と一緒に一柳隊と合流しろ」

夢結「いいのですか?」

出雲「万が一に備えてノインヴェルトを温存する必要がある。ここは私達に任せて行け」

梨璃「でも…」

結梨「梨璃、行って」

梨璃「結梨ちゃん?」

結梨「迷う暇があったら動く!咲樹からの名言だよ。私だって、一柳隊のリリィだよ」

梨璃「結梨ちゃん……」

加奈「梨璃ちゃん、ここは私達に任せて。君は夢結ちゃんと一緒に仲間の元へ向かって」

理亜「梨璃ちゃん達にはやるべき事があるでしょ?」

 

 

 

 

結梨、加奈、理亜は梨璃達に一柳隊の元へ向かってほしいと頼んでいる。

 

 

 

 

そこへ夢結も梨璃に話す。

 

 

 

 

夢結「大丈夫よ梨璃。結梨と奈々、この人達を信じて私達は私達の戦いをしましょう」

梨璃「お姉さま……」

出雲「グズグズしてる暇はない。行け!」

梨璃「は、はい!お姉さま」

夢結「ええ。梨璃」

 

 

 

 

 

梨璃と夢結は移動基地から出るようにその場を離れた。

 

 

 

 

 

真里「まだ勝負は決まっていない。木葉奈々を止めればこちらに勝機はある」

加奈「させないのが私達よ」

理亜「奈々ちゃんには手を出させない!」

奈々「加奈さん、理亜ちゃん、これ返しますね!」

 

 

 

 

そう言って奈々はカナベラルとブルメリアを二人に向けて放り投げた。

 

 

二人はアステリオンを腰にしまい、加奈はカナベラルを、理亜はブルメリアをキャッチした。

 

 

 

 

加奈「私達の愛機、戻ってきたわね」

奈々「綾瀬ちゃんが更にパワーアップさせてますからね」

理亜「ブルメリア、刀身が長くなってる」

出雲「あの重いCHARMをお前達も持てるのか」

奈々「二人はブーステットリリィで、腕力人並み以上にあるんですよ。それとあの2つのCHARMは元々二人が使ってた物で、二人が前線に出れるまでの間、私が使っていたんです」

出雲「なるほどな。他にも聞きたいことがあるが、まずはこいつらを片付けるのが先だな」

奈々「ですね」

 

 

 

 

 

カナベラルとブルメリアを二人に渡した奈々は予備の武器であるツインフェザーに持ち換え、奈々、結梨、加奈、理亜、出雲の5人はラピュセル隊に向かっていった。

 

 

 

 

真里「返り討ちにするわ」

 

 

 

 

真里率いるラピュセル隊も奈々達を迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方移動基地から遠く離れた場所では、一隻の船が待機しており、黒いドレスを着た黒髪のロングの女性が移動基地の様子を見ていた。

 

 

そこへ、ルドビコ女学園の制服を着た桃色の髪の子がやって来た。

 

 

 

 

琴陽「御前様、白井夢結は海岸の方へ向かわれましたが、何故木葉奈々を?」

 

 

 

 

膝をつけ、御前と呼ぶ彼女に問う琴陽。

 

 

それに対し御前と呼ばれた彼女は…

 

 

 

 

 

 

御前「彼女もまた…更なる高みに足を踏み入れつつある」

琴陽「マスカレイドを持っているからですか?」

 

 

 

 

その質問に御前は琴陽の方へ振り向き、答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御前「彼女が………純粋種だからよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻って移動基地の屋上では、奈々達がラピュセル隊の人工リリィ達と激しい戦闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

結梨はグングニルに似た剣のCHARMを巧みに使いこなし、3人の人工リリィ達を相手に苦戦せず互角に戦っていた。

 

その身のこなしは更に磨きがかかり、3人の連続攻撃を正確に受け止め、流しつつ反撃に対応していた。

 

 

出雲は二人の人工リリィに攻撃する暇を与えず、とことん攻めていく。

 

 

 

加奈、理亜の二人は四人の人工リリィの連携を崩すように、マギの刃を同時に飛ばして攻撃していく。

 

息の合った二人の攻撃は隙がなく、相手も攻撃のチャンスが取れずにいた。

 

 

 

 

 

そして奈々は真里を相手にしている。

 

 

最初は互角の勝負をしていたが、次第に押され始めてる。

 

 

 

 

 

真里「どうして…同じマスカレイドなのに、何故私が押されている…?」

奈々「まだわからないの?リリィなら感じ取れる筈だよ。私のマギを」

 

 

 

 

真里は奈々のマギを感じ取った。

 

するとそれに気づき、信じられない物を見たような表情になった。

 

 

 

 

真里「まさか、貴女も…!」

奈々「その通り。私のマスカレイド、S級に覚醒したの。大量のヒュージと戦ってる内にね」

 

 

 

 

 

奈々のマスカレイドがS級になったことで奈々のマギの保有値は倍になっていた。

 

同時に奈々の宿るマギの量もぐんぐんと膨れ上がっていた。

 

 

 

 

真里「だけど、ヒュージがいないこの場所でどうやって…!?もしかして…!」

奈々「そう。ボルドーのマギリアクターから漏れるマギを使わせてもらったのよ」

 

 

 

 

奈々のツインフェザーによる凪ぎ払いで真里を後ろへ飛ばした。

 

 

 

 

 

真里「……さっきより力が上がってる…!」

奈々「もう君じゃ勝負にならないよ。このまま戦っても勝てないことはわかってる筈」

真里「そんなこと言われなくても………!?」

 

 

 

 

 

と、話してる内に奈々の目の前に緑髪の人工リリィが現れ、奈々に片刃剣のCHARMで斬りかかる。

 

 

 

 

奈々(縮地…!いつの間に割り込んできた!)

 

 

 

 

しかし横から結梨が現れ、緑髪の人工リリィを凪ぎ飛ばした。

 

 

 

 

奈々「!?」

真里「一柳結梨…!?」

 

 

 

 

考える間も無く、真里は結梨にうち飛ばされ、奈々から遠く離れていく。

 

 

 

 

 

奈々「結梨ちゃん!?」

結梨「奈々、あの子は結梨に任せて、ボルドーを倒して!」

奈々「結梨ちゃん……」

結梨「…………絶対に勝って」

奈々「…………………うん!」

 

 

 

 

奈々を残し、結梨は飛ばした真里を追っていった。

 

 

 

そして奈々は再びボルドーの前に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ボルドー「マギが更に高まったか…これはいい勝負が出来そうだな」

奈々「これで邪魔する者はいない…今度こそお前との決着を付ける!」

 

 

 

 

ツインフェザーを構える奈々。

 

 

 

 

 

ボルドー「決着か、私の能力は今やリリィを越えている事を忘れたか?例えお前のマギが増えたとしても、私のマギの方が上だ。勝つ見込みは薄い。それでも私に勝とう言うのか?」

 

 

 

 

その言葉に奈々は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挿入歌「Sacred world」

 

 

 

 

 

奈々「勝てるのかじゃない…勝つんだ!」

 

 

 

 

 

そう言った奈々の表情からは決意と覚悟が感じられた。

 

 

その表情を見たボルドーは………

 

 

 

 

ボルドー「ふぁふぁふぁ…いいだろう。そのお前の覚悟…この身体の圧倒的な力で、砕いてくれようぞ…!」

 

 

 

 

ボルドーの両腕から赤い光の剣が伸び、構えた。

 

 

 

 

 

 

 

両者睨み合う…

 

 

 

この戦いは、百合ヶ丘の…いや、

 

 

 

人類の命運を賭けた戦いなのだから。

 

 

 

 

 

 

奈々「行くぞ!!」

 

 

 

 

奈々が先に仕掛けた。

 

 

 

対しボルドーはその場から動かず、向かって来る奈々が降り下ろした奈右手のツインフェザーをビームの剣で受け止める。

 

そのまま押しきろうとするが、体格の大きいボルドーを少しづつ押していく。

 

それを許さんと、左手のビームの剣で奈々に攻撃するボルドー。

 

だが奈々はすぐに空いている左手のツインフェザーで受け止めた。

 

 

 

このままではキリがないので、奈々はビームの剣を弾き返し、再びボルドーに切り付ける。

 

弾かれ、また弾かれ、そこから二人の剣と剣のぶつかり合いが始まった。

 

 

 

 

と、そこへボルドーに通信が入る。

 

 

 

 

 

 

「戦況報告…鎌倉周辺に滞在するギガント級が全滅致しました」

ボルドー「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方鎌倉付近の廃虚となった町では、最後のアーリマンが消滅し、アールヴヘイム、ロネスネス、ヘオロットセインツのリリィ達が立っていた。

 

ブルーガードの放ったマギリフレクターを無効化する弾を受けたことでアーリマンの耐久力はかなり落ち、倒しやすくなっていたのだ。

 

 

 

楪「これで全部だな」

純「手応えがありませんでしたわね」

亜羅椰「ふふっ」

天葉「後は一柳隊の方……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方スモール級、ラージ級の群れを片付けてる途中の一柳隊は…海の方からこちらに向かうボートを見つけ、そこから2つの影が跳ぶのを目にした。

 

梨璃と夢結であった。

 

 

 

 

楓「梨璃さん!」

梅「夢結!」

 

 

 

 

夢結と梨璃は一柳隊の元へ着地した。

 

 

 

 

 

ミリアム「待ってたぞ!」

雨嘉「お帰り!」

鶴紗「再開は後、今は…」

 

 

 

 

鶴紗が振り向き、皆も振り向くと…凸凹になってる地形の所からスモール級、ラージ級がこちらに向かってきている。

 

 

 

 

神琳「このヒュージ達が先ですわね」

二水「梨璃さん、号令を!」

夢結「行くわよ、梨璃」

梨璃「はい!」

 

 

 

 

 

そして梨璃は号令を言う。

 

 

 

 

 

梨璃「一柳隊…攻撃開始!!」

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」

 

 

 

 

一柳隊がヒュージの群れに向かって突撃する。

 

 

 

一番槍に梨璃が斬りつけ、そこから夢結が真上から斬りおろし、続けて切り込む二水を狙いに襲うヒュージを楓が切り払い、雨嘉と神琳が同時に射撃して確実に倒していき、梅が縮地で撹乱しつつ切り裂いていき、鶴紗は変形させたティルフィングの高粒子砲で仕留め、ミリアムは空中でヒュージを叩き落とす。

 

一柳隊の連携はアールヴヘイム程ではないが、悪くない出来で、ヒュージの群れをどんどん減らしていく。

 

 

 

 

 

代わって移動基地の方では、奈々がツインフェザーで流れるような連撃でボルドーを後退させていく。

 

 

 

 

 

奈々「これでどうだ!」

ボルドー「甘いな」

 

 

 

 

奈々が大きな一撃を仕掛ける直前に、ボルドーはビームの剣の出力を上げて斬りかかった。

 

奈々はツインフェザーで受け止めたが、片方のツインフェザーが折れてしまった。

 

 

 

奈々「!?」

ボルドー「メタルスキンの武器ではこの剣を受け止められんぞ」

奈々「くっ!」

 

 

 

 

奈々はすぐに後ろへ後退し、ボルドーの2度目の斬撃をかわす。

 

攻めたい所だが、ツインフェザー一本では対処が難しい。

 

 

 

 

「「奈々ちゃん!!」」

 

 

 

奈々の元へ、カナベラルとブルメリアが飛んできた。

 

 

 

 

奈々「!?」

加奈「奈々ちゃん!」

理亜「それを使って!」

奈々「………………お借りします!」

 

 

 

 

一本のツインフェザーをしまい、カナベラルとブルメリアに持ち換え、再びボルドーに突撃した。

 

 

 

 

ボルドー「むっ!」

 

 

 

 

ボルドーがすぐに攻撃をするが、奈々の方が早く斬りかかる。

 

斬りかかった後そのままボルドーを押しきり、海へ落とした。

 

 

 

 

結梨「奈々!」

真里「よそ見をしてる場合?」

 

 

 

 

奈々を心配する結梨だが、真里がいるのでそれどころじゃない。

 

ところが真里が突然飛ばされ、出雲がやって来た。

 

 

 

 

出雲「一柳結梨!お前は木葉の元へ向かえ!」

結梨「だけどまだ敵が…!」

出雲「既に数人片付けた。後は任せろ」

結梨「お願い!」

 

 

 

 

 

真里を出雲に任せ、結梨は奈々の後を追う。

 

 

 

 

 

 

一方奈々とボルドーは水上を移動しながら移動基地を離れ、剣と剣のぶつかり合いに入っていた。

 

カナベラルとブルメリアは共にメテオメタルで出来てる為、破損の心配はない。

 

その為、ボルドーの高出力のビームソードを問題なく受け止めている。

 

とはいえ、奈々はボルドーにいまだ大きな痛手を与えていない。

 

 

 

 

 

と、ここでまた戦況報告が…………

 

 

 

 

 

 

「「戦況報告!鎌倉付近のヒュージが全て全滅しました!しかし殆どのリリィの戦力はかなり消耗しており、ノインヴェルトは使いきった後のようです」」

ボルドー「うむ…ご苦労だった。すぐに全隊員に脱出するよう伝えろ」

「「司令はどうするのですか?」」

ボルドー「このまま百合ヶ丘へ奇襲する。私の最後の戦場になるだろう」

「「…………本当にお世話になりました」」

ボルドー「こちらこそ、迷惑をかけた」

「「…………最後の通信を終えます」」

 

 

 

 

 

そして通信が切れた。

 

 

 

 

 

ボルドー「奈々よ、お前との勝負はここまでだ。私はこれより百合ヶ丘へ向かい、マギリアクターを手に入れる」

奈々「何!?」

 

 

 

 

そう言ってボルドーは奈々から距離を取る。

 

 

 

 

ボルドー「ヒュージ達は全滅したが、今の百合ヶ丘にいるリリィ達はもう戦えないほどの力を浪費している。私を止めることは不可能になったこの好機を逃しはせん。さらばだ」

 

 

 

 

ボルドーはそのまま百合ヶ丘へ向けて海を移動した。

 

 

 

 

 

奈々「な、させるかー!!」

 

 

 

 

 

奈々も縮地を使ってボルドーを追いかける。

 

 

 

 

 

そして前に回り込み、正面からボルドーに向かってぶつかっていった。

 

それに気づいたボルドーもビームソードで鍔迫り合いに入る。

 

 

 

 

 

ボルドー「その身でこの剣を受け止めるか?力で勝てると思ってるのか?」

奈々「さっき言ったよ。勝てるかじゃない…勝つんだって!」

 

 

 

 

そう言って奈々はボルドーと鍔迫り合いのまま押し止めようとするが、スピードが中々落ちない。

 

 

 

 

奈々(ああ言ったものの、私一人じゃこの巨体は難しい……)

「私もいるよ!」

 

 

 

 

 

遠くから結梨が縮地を使って追いかけてきて、奈々と一緒にボルドーを押さえた。

 

 

 

 

奈々「結梨ちゃん!」

結梨「百合ヶ丘は、壊させない!」

ボルドー「お前も立ち塞がるか、人工リリィ」

結梨「私は、人工リリィなんて名前じゃない!私は結梨!百合ヶ丘の一柳結梨!」

ボルドー「いいだろう。だがどこまで耐えられるかな?」

奈々「耐えて見せるさ!」

 

 

 

 

二人は必死でボルドーを押し止めようとする。

 

スピードは落ちたが、止まるには至らない。

 

それでも二人はまだ止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、海岸でヒュージを全滅させた一柳隊達。

 

二水は鷹の目を使って、ボルドーを止めてる奈々、結梨の姿を捉えた。

 

 

 

 

二水「奈々さん、結梨ちゃんと一緒にキャバリエらしき物を止めていますが、押されています!」

ミリアム「なんじゃと!?」

夢結「あれは司令官よ。恐らくマギリアクターの力で強化されて二人分のパワーを上回ってるのよ」

楓「あのままじゃ陸地に…」

雨嘉「私達も何か出来ることがあれば…!」

鶴紗「だけどどうやって…」

梨璃「ノインヴェルト戦術で…」

夢結「いえ、あの装甲は恐らくメタルスキン製。ノインヴェルト1発だけじゃ威力が足りないわ」

神琳「もう少し手数が欲しいですが…ほとんどのレギオンがノインヴェルト戦術を行っています」

二水「現在、まだノインヴェルト戦術を使ってないレギオンは…」

「みなさーん!!」

 

 

 

 

 

声と共にヘルヴォル、グラン・エプレ、ロネスネス、アイアンサイドが駆けつけてくれた。

 

 

 

 

一葉「一柳隊、大丈夫ですか!」

叶星「加勢に来たわ!」

来夢「梨璃ちゃんと夢結様。来てくださったのですね!」

純「役者が揃いましたわね」

梨璃「皆さん!ノインヴェルト戦術、もう一回撃てますでしょうか?」

純「説明してくれるかしら?」

夢結「今奈々はキャバリエ級の敵と戦っています。ノインヴェルト戦術単体だけでは効果がありません。出来るだけ多くのノインヴェルト戦術が必要になります」

高嶺「なるほど。5隊同時にノインヴェルト戦術をするのね」

一葉「任せてください!私達ヘルヴォルはまだノインヴェルト戦術をまだ行ってませんので」

叶星「グラン・エプレもいつでもOKよ」

幸恵「アイアンサイドは一度使ったけど、大丈夫よ」

初「こっちも行けますわ」

夢結「なら、これを使って」

 

 

 

 

 

夢結はノインヴェルト戦術の弾を一葉、叶星、幸恵、純に渡した。

 

そして夢結も1つの弾を取り出す。

 

 

 

 

 

一葉「やりましょう!」

叶星「ええ!」

幸恵「5隊同時ノインヴェルト戦術!」

純「かならず成功させますわよ!」

梨璃「皆さん、お願いします!」

 

 

 

 

 

そして5隊のレギオンはノインヴェルト戦術を行った。

 

 

それぞれがマギスフィアをパスしていきながら、マギを込めつつマギスフィアを強くしていく。

 

 

 

 

 

 

 

一方奈々と結梨はボルドーに押されつつ、もうすぐ浜辺についてしまう。

 

 

 

と、そこへ…

 

 

 

 

 

「奈々ちゃん、結梨ちゃん!!」

奈々「!?」

結梨「梨璃?」

 

 

 

 

 

遠くから梨璃の大声が聞こえた。

 

後ろを振り向くと、梨璃、一葉、叶星、来夢、純の5人が空中で十分にマギを溜め込んだマギスフィアを持ったCHARMを構えていた。

 

 

 

 

 

梨璃「離れて!!」

ボルドー「何?」

 

 

 

 

 

奈々と結梨は梨璃達のやることに気付き、左右に飛んだ。

 

 

 

 

 

梨璃「いっけえぇぇぇーー!!」

 

 

 

 

 

梨璃を含むレギオン代表リリィ達がマギスフィアをボルドーに向けて、一斉に放った。

 

 

 

発射された5つのマギスフィアはボルドーに全て直撃し、大爆発を起こした。

 

 

 

梨璃「やった……?」

夢結「わからない…」

純「マギスフィアを5発も受けてそう耐えられる筈が…」

 

 

 

 

しかし、その予想は裏切り、爆発が晴れると体のあちこちが損傷したボルドーが姿を現した。

 

 

 

 

梨璃「え!?」

一葉「そんな!?」

叶星「ノインヴェルト戦術、全て直撃した筈なのに…!?」

純「化け物ですわね…」

来夢「ノインヴェルト戦術が効かなかった以上…私達にはもう…!」

 

 

 

 

ノインヴェルト戦術に耐えられる相手はごくわずか。

 

5隊同時によるノインヴェルト戦術ならほぼ全てのヒュージを倒すことが出来る。

 

これらが破られれば、リリィ達の敗北は確実な物となる。

 

 

 

 

 

 

ボルドー「万策尽きたか…よくやったと言っておこう」

「それはまだ早いよ!」

 

 

 

 

 

煙に紛れて現れた奈々がボルドーの後ろへ飛び移り、しがみついた。

 

 

 

 

 

ボルドー「いつの間に!?」

奈々「これを…待っていたんだ!」

 

 

 

 

ボルドーは後ろにしがみついてる奈々を振り落とそうとするが、必死にもがく奈々は踏ん張る。

 

その隙に奈々は腰に付けた破損していないもう一本のツインフェザーを右手に持ち、ボルドーの背中を刺し、装甲板の一部を剥ぎ取ると、ツインフェザーを手放した右手でボルドーの背中の内部に突っ込ませ、左手も内部に突っ込ませた。

 

 

 

 

 

奈々「ぬうううう………!!」

ボルドー「お前、まさか…!?」

 

 

 

 

ボルドーは奈々が何を取るかわかった。

 

 

 

奈々はそれを引っ張ろうとした。

 

 

すると、ボルドーの背中から何やら複数のチューブで繋がれた球体が見えてきた。

 

 

 

 

 

奈々「ぬあああああ………!!!!」

 

 

 

 

奈々が球体の何かを茂地ながらチューブを必死に引き千切ろうとする。

 

次第にチューブが次々と引き千切られ、残すは大きめのチューブのみ。

 

 

 

 

 

 

奈々「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

渾身の叫びと全力の引っ張りで、最後のチューブが遂に引き千切られ、奈々は何かの球体を両手に持ったまま地面に放り出された。

 

 

 

 

 

 

幸恵「!!?」

初「あれは…!」

一葉「まさか…!」

叶星「もしかして…!」

夢結「マギリアクター…!!」

梨璃「あれが……!」

 

 

 

 

奈々がボルドーの背中から引っ張り出したのは、マギリアクター…ヴァーテクスであった。

 

マギリアクターを宿したボルドーを相手に、普通に戦っては勝ち目はないとわかった奈々は、一か八か隙を狙ってマギリアクターを引き抜こうと考えていたのだ。

 

そこへ駆けつけてくれた5隊のレギオンが放ったノインヴェルト戦術によって突破口が開き、奈々は実行に移したのだ。

 

 

 

 

 

 

ボルドー「狙いはこれだったという事か…………」

 

 

 

 

マギリアクターを失って、出力が大幅に落ちたボルドーの身体はマギによる強度が無くなった。

 

予備動力で動くことは出来るが、防御力の殆どを失った今、ノインヴェルト戦術級の火力を撃ち込めば倒す事が出来る。

 

 

 

 

しかし今、そのボルドーに対抗できる者はいない。

 

周囲のリリィ達はノインヴェルト戦術でマギを使いきり、CHARMも破損しててもう限界。

 

これ以上の戦闘は不可能。

 

奈々は高温のマギリアクターを素手で掴んでいた為、両手に火傷を負っている。

 

まだマギが残ってる結梨でも、持ってるCHARMではメタルスキン製の身体のボルドーに傷を付けることが出来ない。

 

 

 

 

完全に詰んだ…………

 

 

 

 

勝利の道は、完全に閉ざされた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………かに思えた。

 

 

 

 

 

何と奈々が、事前に持っていたマギクリスタルコアを取り出し、右手に巨大なマギの剣を生成していたのだ。

 

ちなみに奈々の右手はマギの剣に触れていない。

 

 

 

 

ボルドー「そ、そのマギの量はまさか…!!」

奈々「マギリアクターの大量のマギ…こっちも利用させてもらうよ!」

 

 

 

 

 

奈々はマギリアクターの莫大なマギのエネルギーで生成したマギの剣をボルドーに目掛けて飛ばした。

 

そのスピードはまるで弾丸のように早く、ボルドーのメタルスキン製の身体を突きだす。

 

 

 

 

 

 

ボルドー「うごっ!!?」

 

 

 

 

 

飛ばしたマギの剣の勢いはそのままボルドーごと海の向こうへと飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボルドー「……………………見事だ……木葉奈々…やはりお前は……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満足した表情をしたボルドーは、臨界点に達したマギの剣の爆発に巻き込まれ、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨嘉「やったの…?」

二水「………はい。爆発に巻き込まれて破片も残っておりません。残存するマギもありません」

 

 

 

鷹の目で周囲を確認した所… ボルドーの残ったマギの反応も消えたようである。

 

 

 

 

聖恋「と…いう事は…!」

二水「はい!サンスベリア率いるヒュージは全滅。移動基地は制圧。私達、リリィ達の勝利です!」

 

 

 

 

二水から勝利の報告を聞くと、周囲にいた全てのリリィ達は今までにない大きな喜びを上げた。

 

学園の方でも勝利の報告を聞き、大騒ぎである。

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん!!」

夢結「奈々!」

 

 

 

 

 

梨璃と夢結、結梨と一柳隊の皆が倒れた奈々の元へやって来た。

 

 

 

 

奈々「ははは…流石に…無茶しちゃった」

楓「貴女はいつも無茶するでしょ」

夢結「笑い事じゃないわよ。両手に火傷なんて信じられないわ」

ミリアム「マギリアクターを引き抜くなんてな。とんでもないことを考えよる」

奈々「メタルスキンに加え、マギに強化された防御力…普通に戦ってちゃ倒せないからね」

神琳「それでマギリアクターを引き抜く戦法でいきましたのね」

梅「奈々らしいナ」

梨璃「両手、大丈夫?」

奈々「ヒリヒリするけど、一応動かせるよ」

鶴紗「何が動かせるだ。ボロボロじゃないか」

 

 

 

 

鶴紗の言う通り、奈々の両手はボロボロかつ黒焦げになっており、グーとパーを交互にやってる所…痛みを我慢してるように見えた。

 

 

 

 

 

二水「今救護班を手配します!」

雨嘉「しばらくは安静にしてて」

結梨「動いちゃダメだよ」

奈々「はいはい……」

 

 

 

 

 

後からヘルヴォル、グラン・エプレ、アイアンサイド、ロネスネスの皆もやって来た。

 

 

 

 

一葉「奈々さん!大丈夫ですか!?」

恋花「うわっ、すごい火傷…」

搖「また無茶をしたの?」

藍「大丈夫?」

千香瑠「応急処置だけでもしておきますね」

 

 

 

 

事前に持っていた包帯を取り出し、奈々の両手を巻く千香瑠。

 

 

 

 

 

叶星「それにしても、マギリアクターを引き抜くのは驚いたわ」

高嶺「かわりに代償は大きかったみたいね」

紅巴「ひ、酷い火傷…!」

姫歌「何考えてるのよ奈々!」

灯莉「触ってもいい?」

奈々「やめて」

幸恵「とはいえ、よくやったわね」

来夢「最後にあんな巨大なマギの剣を作るなんて…」

奈々「マギリアクターから放出されるマギを利用しないと出来なかった事だからね」

純「最後まで飽きませんわね、奈々も」

初「とりあえず、これで戦いは終わりましたわね」

 

 

 

 

 

と、先程の疲れが無かったかのように話で盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし奈々はここで表情を変えた。

 

 

 

 

 

奈々「……………………………まだ終わってないよ」

夢結「えっ?」

二水「た、たたたたたた大変ですー!!マギリアクターが!!」

梨璃「え!!?」

 

 

 

 

異変に気付いた二水が皆を呼んだ。

 

そして二水の指差す方を見ると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マギリアクターが紅く光始め、僅かな振動や音を起こしていた。

 

異常な熱を出してるのか、煙が沸いていた。

 

 

 

 

恋花「な、なにこれ!?」

灯莉「マギの色…なんか色々まざりあってヤバイ感じがするよ!」

ミリアム「これは…暴走しておるのか…!?」

奈々「うん、間違いない。ボルドーのボディから無理矢理引き離したから制御が効かなくなってるんだ。このままだと爆発する!」

佳世「ど、どどど、どうしましょう!?」

姫歌「早く皆を避難させないと…」

奈々「ダメ!このマギリアクターに溜まってるマギの量は並みの量じゃない。爆発の範囲は核兵器並みにある。下手するとこの鎌倉の全域が吹っ飛ぶ!」

雨嘉「ええっ!?」

梅「じゃあもう梅達は逃げられないって事なのか!?」

百合亜「そうなるわね」

奈々「いや、まだ手はある……!」

 

 

 

 

 

そう言って奈々は身体を起こし、立ち上がる。

 

 

 

 

鶴紗「何をする気なんだ?」

奈々「マギリアクターを出来るだけ遠くへ飛ばしてカナリアで破壊する」

 

 

 

 

と、奈々は焼けた両手で持ったカナベラルとブルメリアを合体させ、合体剣カナリアにした。

 

 

 

 

搖「破壊って、そうしたら爆発して…」

奈々「こっちの大量のマギをぶつけて対消滅を起こす。これで爆発の被害を小さくする」

紅巴「それでも、奈々さんが爆発に…」

千香瑠「無事では済みませんよ!」

奈々「もとより覚悟の上です!」

 

 

 

 

奈々は更にルナティックトランサーを使用し、自身の髪を白くする。

 

 

 

 

楓「貴女…まさか…!」

藍「ダメ!藍も手伝う!」

奈々「それこそダメだよ!皆はマギを使い果たしている。出来るのは私一人なんだ」

結梨「それなら結梨が!」

奈々「気持ちはうれしいけど、結梨ちゃんはカナリアを使えないでしょ?」

高嶺「他に方法は…」

奈々「ない!」

初「でも!!」

純「認めませんわ。ここで散るなんて!」

来夢「考え直して!」

奈々「もう時間はない!」

一葉「そんな!?」

叶星「早まっちゃダメよ!」

奈々「ここで私がやらなかったせいで皆が死んじゃったら私自身が許せなくなる!」

 

 

 

 

 

奈々はマギリアクターに向かって歩きだす。

 

 

 

 

夢結「奈々!」

梨璃「奈々ちゃん!」

 

 

 

 

 

夢結と梨璃が奈々を捕まえる。

 

 

 

 

 

奈々「…………………梨璃ちゃん…一柳隊に入る約束、守れなくてごめん。夢結さん…もう一度貴女と一戦交えたかったです」

夢結「奈々!」

 

 

 

奈々は後ろを振り向かず、皆に今の気持ちを伝えた。

 

 

 

 

奈々「叶星さん、貴女の勇気は本物です。高嶺さん、貴女はまだ強くなれます。紅巴ちゃん、君は弱くはないよ。灯莉ちゃん、君のポジティブな所、嫌いじゃないよ。姫歌ちゃん、君はリリィ界のプリンセスだよ。一葉ちゃん、君達のヘルヴォルはエレンスゲ最高のレギオンだよ。恋花さん、いつまでもその明るさを忘れずに。千香瑠さん、心を強く持って。親友さんもそれを望んでいる筈です。搖さん、貴女は一人じゃありません。藍ちゃん、色々学んで守れる強さを手に入れてね。幸恵さん、貴女もまた、夢結さんと同じくいいライバルでした。来夢ちゃん、君は未来さんの意志をしっかり継いでいるよ。純さん、貴女もいいライバルでした。初さんも中々強かったですよ。ミリアムちゃん、レアスキル、もっと使いこなした方がいいよ。鶴紗ちゃん、君は人間だよ。雨嘉ちゃん、君の射撃は百合ヶ丘一だよ。神琳ちゃん、君のサポートにはいつも助かってる。梅さん、一緒に戦えて光栄でした。楓ちゃん、君とジョワユーズは本当に強かったよ。結梨ちゃん、君はこのせかいに生きていていいんだよ。梨璃ちゃん、夢結さん、これからも二人で強く生きて、幸せに、未来を歩いて!」

梨璃「奈々ちゃん…」

夢結「奈々…」

奈々「………偉大なシュッツエンゲルの二人…一柳梨璃と白井夢結の未来に…幸あれ」

 

 

 

 

 

そう言った後、奈々は梨璃と夢結を振り飛ばし、そのままマギリアクターに近付き、まずチューブを持ってマギリアクターを振り回し……

 

 

 

 

 

 

奈々「うおおおおおおーーーっ!!!」

 

 

 

 

渾身の気合でマギリアクターを海の空へ向けて投げ飛ばした。

 

そしてカナリアを握りしめ、今度は縮地を発動し、飛ばしたマギリアクターを追いかけに飛翔した。

 

 

 

 

 

夢結「奈々!!」

梨璃「奈々ちゃん!」

 

 

 

 

 

夢結と梨璃が呼び掛けるが、声は届かない。

 

代わりに奈々の声が大きく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「この鎌倉にやって来た全てのリリィ達よ!刮目せよ!これが私…木葉奈々のリリィとしての生き様だぁ!!!」

 

 

 

 

渾身のカナリアの振り下ろしで、マギリアクターは真っ二つになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

半分に割れたマギリアクターはマギのエネルギーを抑えるための器を失い、大規模の爆発を起こした。

 

奈々を包み込むように…

 

その爆風はかなり大きく、浅瀬にいるリリィ達をも吹き飛ばしていく。

 

海は穴が開き、木は折れ、岩はえぐられていった。

 

 

 

 

 

 

夢結「奈々ぁーーーーーー!!!!!!!」

 

 

 

 

夢結の声も、爆風の音にかき消され、届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、サンスベリアとの戦いはリリィ達の勝利で幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ一人の犠牲と共に…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半へ続く………

 

 

 

 




オリジナル回で一柳結梨復活させました!
この作品を書き終えた後はしばらく更新はしないと思います。
リアルでの忙しさとモチベーション、何より他作品に浮気してしまい。次の小説はその作品にしようと考えてますが、
一応こっちの方は、舞台版アサルトリリィの2作目をアレンジした話を予定として入れようと思っております。いつになるかは分かりませんが…
遂にこの作品も残すところはエピローグのみとなりました。
少し短くなると思いますが、最後まで期待しててください。



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「end」Sacred world 後編

やっと最後までやりました。
どんな結末にするか考えつつも、
ここまで長くなってしまいました。
このあとの話ですが…未定です。
もしかしたら知らない間に投稿されるかもしれません。
とはいえ、本編をどうにか終わらせることができました。
まだ謎が残ってますが、その辺りはまた書こうと思ってます。
それでは最終話どうぞ!


 

 

 

 

梨璃「………………………奈々ちゃん…」

 

 

 

 

 

彼女、一柳梨璃は今、集中治療室のベッドの隣にいる。

 

 

 

 

そしてそのベッドの上には、木葉奈々が眠っていた。

 

 

 

 

サンスベリアとの戦いでマギリアクターを破壊した奈々は、暴走したマギの爆発に巻き込まれたものの、出雲達によって奇跡的に救助された。

 

 

しかし爆発に巻き込まれた奈々の身体はかなり酷く、意識は無かった。

 

すぐに集中治療室に運ばれたが、今でも意識は戻らず、眠ったままだった。

 

 

 

 

 

 

更に医師から悪い知らせを一柳隊一同は聞かされた。

 

 

 

奈々自身にマギが宿っていなかったのだ。

 

 

 

リリィが死んだら体内のマギは器を失い、周囲に拡散する。

 

しかし奈々は眠っているだけなのに体内にあるはずのマギを失っているのだ。

 

 

マギリアクターの爆発に巻き込まれたせいなのかは不明だが、彼女の意識がない事を考えると、かなり深刻である。

 

 

 

過去に意識の無い人間は目覚めることなく、植物人間として生涯を終える前歴があり、奈々も例外ではない。

 

持てる手段…あらゆる手を尽くし、身体は完全に治ったが、意識の回復までには至らなかった。

 

 

 

 

 

梨璃は今日もたくさんの花を持って、奈々の見舞いに来ていた。

 

花瓶に花を刺して、水を注ぎ、綺麗に飾る。

 

 

そして隣の椅子に座って、奈々を見つめていた。

 

 

 

 

 

梨璃「奈々ちゃん………」

 

 

 

 

 

心配しそうな顔をしながら奈々を見る梨璃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこへ、部屋のドアが開き、夢結が食事の入ったトレイを持ってきて入ってきた。

 

 

 

 

 

梨璃「お姉様…」

夢結「梨璃、ここ最近まともな食事を取ってないでしょ?貴女のも持ってきたわ」

 

 

 

 

 

と、夢結は梨璃の食事を隣のテーブルに置いた。

 

 

 

 

梨璃「心配かけてごめんなさい、お姉様」

夢結「貴女のシュッツエンゲルだもの。奈々の事は心配だけど、貴女にもしもの事があったら、私が…いや、皆が悲しむわ」

梨璃「……はい」

 

 

 

 

 

夢結は未だ目覚めていない奈々の顔を見る。

 

 

 

 

 

夢結「あの子は…そう簡単に死なない。これまで危険な戦いを身に委ねていたけど、最後には生きて戻ってきた。今回も…きっと私達の元へ帰ってくる。だから、私達は帰ってくるこの子を待っていなきゃいけない…その時は…笑顔で迎えよう?」

梨璃「…………………はい」

 

 

 

 

 

夢結に元気付けられて、梨璃は決意した。

 

彼女が目を覚ます事を信じて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も日が過ぎていくが…奈々は目を覚まさず、サンスベリアとの戦い後から遂に10日が経過した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「そんな……!」

夢結「もう少し治療を続けてもらえませんか?」

「…………残念ながら…これ以上の回復は見込めません」

 

 

 

 

奈々担当の医者が、残酷な事実を一柳隊、百由、綾瀬、出雲、そして結梨に伝えた。

 

 

 

 

 

意識を失ってから日が経つごとに、彼女の各臓器が弱まっていたのだ。

 

医療機器で鮮度と機能は維持しているが、それでも限界があり、止まることなく徐々に衰退し始めているのだ。

 

このまま目覚めなければ、やがて心臓の機能が停止してしまい、死んでしまう。

 

 

もって後3日である…

 

 

 

 

 

「マギが宿っていれば話は別なのですが…無い以上は…」

百由「マギを与えたくても、彼女の体には他のマギを受け付けない…リリィからの回復は無理よ」

綾瀬「………」

鶴紗「……………くっ」

楓「あんまりですわ…彼女のお陰で百合ヶ丘は救われましたのに…その代償が…!」

二水「なんとかならないんですか!」

雨嘉「他に…何か方法は…!」

「……………」

 

 

 

 

医者は喋らない…それはもう救う手立てがないという事を皆に伝えているのだ。

 

 

 

 

 

梅「……奈々…確かに約束はしなかった…けど、出来れば約束してほしかった…!」

夢結「梅……」

ミリアム「……………」

神琳「……………」

結梨「奈々!」

 

 

 

 

 

結梨は奈々を起こそうとするが、出雲に押さえられる。

 

 

 

 

 

出雲「やめておけ。余計悪化したらどうするんだ」

結梨「でも……でも…!」

 

 

 

 

結梨は泣き崩れる。

 

出雲は覚った。

 

もう助からないと……

 

他の皆も、奈々の死を受け入れるしかないと……

 

 

諦めていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この子は違っていた。

 

 

 

 

 

梨璃「………奈々ちゃん……約束………したよね……?一柳隊に……入るって……」

 

 

 

 

悲しみに満ちた梨璃の目には、涙が溢れていた。

 

 

 

 

彼女は願っていた……

 

 

 

奇跡を……

 

 

 

奈々が目を覚ましてくれるという………

 

 

 

ほんの僅かな奇跡を……

 

 

 

 

しかし、そんな都合のいい奇跡は早々起きない…

 

 

 

 

世の中は常に残酷で……

 

 

 

 

辛い世界なのだ。

 

 

 

 

 

その事実を実感するのは、この状況を体験した者位である。

 

 

 

 

 

 

 

その梨璃の肩を持つ夢結も、わずかながら涙を流す。

 

 

皆も、涙を堪えながら、この場を見届けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、突然異変は起きた。

 

 

 

 

出雲「?」

 

 

 

 

出雲がマギの気配を感じ取ったのだ。

 

 

 

 

 

出雲「木葉のマギ……」

梨璃「!?」

夢結「奈々!?」

 

 

 

 

 

 

出雲の言葉に梨璃と夢結が反応した。

 

 

 

 

 

 

出雲「ああ。遠くから感じる…それもすごいスピードでこっちに来るぞ………窓を開けておけ」

二水「は、はい!」

 

 

 

 

 

出雲の指示で二水は窓を全開に開けた。

 

 

そこで二水が何かに気付き、鷹の目を使った。

 

 

 

 

すると、空の彼方から水色の光がこちらへと向かってきたのだ。

 

 

 

 

 

二水「な、なんか水色の光がこっちにきます!」

夢結「水色の光?」

神琳「こっちにってことは、奈々さんの方!?」

出雲「みんな、そこを離れろ」

楓「離れろですって!?」

鶴紗「それじゃ奈々に当たって…」

出雲「いいから離れろ!」

二水「は、はい!」

 

 

 

 

二水は窓から離れると、水色の光はそのまま窓から入っていき、眠っている奈々の方へぶつかっていった。

 

そして小規模な爆発を起こした。

 

 

 

爆風で花瓶は割れ、家具や機材等は倒れ、部屋は滅茶苦茶に散らかってしまった。

 

その場にいた皆はなんとか飛ばされずに踏ん張った。

 

 

 

 

 

ミリアム「ゲホッ、ゲホッ…凄い煙じゃ…」

梅「奈々は大丈夫なのか!?」

夢結「奈々!」

梨璃「奈々ちゃん!」

結梨「奈々!」

 

 

 

 

 

夢結と梨璃、結梨は奈々の無事を確かめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう……………ここは……………」

夢結「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

煙が晴れると、そこには起き上がった奈々の姿があった。

 

 

 

 

奈々「ここは…百合ヶ丘かな…?」

夢結「!」

 

 

 

 

先程意識が無かったはずの奈々が目を覚ましていたのだ。

 

まだヨロヨロとしているが、意識の方はハッキリとしているようだ。

 

 

 

 

奈々「元の体に…戻ったのは…いいけど…体がガタガタだなぁ…」

梨璃「奈々ちゃん!!」

結梨「奈々ーー!!」

 

 

 

 

梨璃と結梨は奈々に抱きついた。

 

 

 

 

 

奈々「り、梨璃ちゃん結梨ちゃん!?」

梨璃「奈々ちゃん…奈々ちゃん…!良かった…目が覚めて…!」

奈々「あ、あの…締めるのは………」

夢結「奈々、貴女が倒れてからみんなで貴女を………」

奈々「だ、だから…」

結梨「奈々ー!!」

奈々「し、締めるのは…やめ……て……!」

 

 

 

 

カクッと、奈々は再び気を失った。

 

 

 

 

 

夢結「あ…………」

梨璃「ご………ごめんなさーーーい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び意識を取り戻した奈々は、皆からこの10日間の間に何かあったのかを聞いた。

 

 

 

奈々がマギリアクターを破壊した直後、その爆発で海岸は半分吹き飛んだが、街や学園の方は無事だったこと。

 

一柳隊、ヘルヴォル、グラン・エプレ、アイアンサイド、ロネスネスは爆風で飛ばされたが、無事である。

 

他のリリィ達は爆風に巻き込まれてない為問題なし。

 

移動基地にいる出雲、ブルーガードの皆は爆風の範囲外にいたため無事。

 

 

 

 

 

唯一被害を受けたのは、酷い重傷を負った奈々だけであった。

 

 

 

その後一柳隊は10日に渡って奈々の介護をしてたという。

 

百合ヶ丘に駆けつけた他ガーデンのレギオン、リリィ達はガーデンの防衛に入るために一旦ガーデンへ戻っていった。

 

百合ヶ丘でも、他のレギオンが周囲の警備に取りかかっていた。

 

サンスベリアの方も、指揮官を失ったせいなのか動きを見せていない。

 

そのためブルーガードは映画館の拠点で待機し、加奈と理亜は一足早く奈々が目覚めた事を聞き、駆けつけてきたのだ。

 

目覚めた奈々に抱き付き、改めて感動の再会をした。

 

 

10日が経った今でも、鎌倉は平和だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「そうだったのか…ありがとう。私のためにごめん」

夢結「本当よ。梨璃や皆に心配かけて…」

梨璃「お姉様、私は大丈夫です。奈々ちゃんが無事でしたから」

夢結「そうじゃないのよ。奈々、かなり無茶してたわね…身体検査で貴女の身体、危険域に達してたわ」

奈々「マジで!?」

楓「気付いてなかったのね……」

加奈「そこが奈々ちゃんだからね…」

理亜「百由様、奈々ちゃんが危険域って言うのは…」

百由「リリィは自らの体をマギで強化することで超人に近い能力を得ることができるけど、奈々の場合、今回の戦いでそれ以上に体の負担が大きくなったのだと思うわ。普通のリリィなら体が壊れてリリィとして戦えなくなる……いや、もう長くは生きられない」

梨璃「!?」

雨嘉「じゃあ奈々はもう戦えなくな…」

百由「その心配は入らないわ。彼女は特別なのよ…一時的にマギを失い、身体が衰弱してたのにも関わらず、まだ機能はしていたわ。しかもマギが戻った瞬間、すざましいスピードで回復してるのよ…」

 

 

 

 

百由は夢結に11日間までの奈々のダメージによるデータを記録した資料を見せた。

 

 

 

 

夢結「わずか一日でダメージが半分以上回復してる…!?」

鶴紗「それって、私の回復スピードを上回ってるって事!?」

楓「強化リリィ以上の回復力を奈々さんが持っていたと言うですの!?」

二水「奈々さんは普通の人間なのにどうして…」

綾瀬「普通の人間…というよりは、少し違うね」

梅「違う?」

百由「綾瀬さんと涼さんと一緒に色々と情報を集めた結果…彼女の身体は純粋種と呼ばれる個体なのよ」

夢結「純粋種?」

雨嘉「聞いたことがない…」

出雲「私は知っている。20年前に現れたリリィ、その人が純粋種だ」

夢結「何故先生がそれを?」

百由「先生、その人に助けられた事があったのよ」

出雲「そう。そしてそのリリィの名は、木葉・フローラ・鈴(このは・フローラ・すず)」

「「「「「「「「「「「「フローラ!!?」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

一柳隊一同がフローラという単語に驚く。

 

 

 

 

 

鶴紗「待って、木葉ってことは…!」

奈々「私のお母さん」

梨璃「ええっ!?」

奈々「というか、フローラって何?何でお母さんの名前に?」

二水「フローラって、かつて大きな脅威から百合ヶ丘を救ったリリィに与えられる洗礼名です!といっても一人だけですけど」

ミリアム「その名を持っていたリリィが奈々の母なのか!?」

奈々「リリィ時代は凄い功績を残してたんだ。お母さんって」

雨嘉「聞いていないの?」

奈々「一人立ちするまでの間、リリィには興味無かったからね。母さんのリリィに関する事も全くね」

夢結「でも何故奈々が純粋種?」

百由「純粋種の特徴は、普通のリリィ以上にマギの保有値とスキラー数値が高いことと、強化リリィ以上の回復力を持っている事。そしてマスカレイドのS級を所持してることよ」

梨璃「奈々ちゃんのお母さんがそうだったんですか?」

出雲「ああ」

百由「そして今回サンスベリアとの戦いで奈々さんのマスカレイドはS級に覚醒したわ。そして奈々さんのダメージの方も、明日には完治するみたい」

ミリアム「なんじゃと!?」

神琳「酷い重傷と身体の衰弱があったのに!?」

鶴紗「奈々が純粋種として覚醒したことで回復力が高まったと?」

百由「そう。これまでの奈々さんに関するデータを調べても確信には至らなかったけど、このデータの回復値を見た瞬間、彼女が純粋種だと分かったわ」

梅「奈々、今まで自分が純粋種だって知らなかったのか?」

奈々「全然」

楓「………………ええっ!!?」

二水「どうしたんですか楓さん?」

楓「レアスキルがまた不明に変わってますわ!どういう事ですの!?」

 

 

 

 

 

奈々の新規データが載った資料を見た楓がビックリする。

 

なんと奈々のデータのレアスキルの項目が不明になっていたのだ。

 

 

 

 

 

夢結「百由、まさかまだ更新してなかったとか?」

百由「したわよ!ただ、別のレアスキルが確認されただけで、更新はしてるわよ!」

神琳「不明って事は、マスカレイドでは無いと?」

百由「そういうことになるわね。それとここを見て」

 

 

 

百由は資料にあるサブスキルの項目に指を指した。

 

 

 

 

 

雨嘉「サブスキルまで変わってる…カリスマだけ…?」

梨璃「カリスマ!?」

 

 

 

 

 

更に、奈々のサブスキルがカリスマのみになっていた。

 

代わりに他のサブスキルは無くなってしまったようである。

 

 

 

 

 

夢結「どういう事なの?」

百由「こればかりは私にもわからないわよ。リリィのスキルが上位互換の物になるのならまだしも、別系統のものに変わるなんて、前例が無いもの」

 

 

 

 

 

例えるなら、テスタメントがルナティックトランサーに変わるといった感じである。

 

 

 

 

 

ミリアム「奈々、お主はこれに覚えは…」

 

 

 

 

 

ミリアムが奈々に聞こうとした瞬間…

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、奈々の両手には、右手に炎…左手に冷気を発していたのだ。

 

皆は夢でも見てるのかとこの光景を疑いつつ、奈々の姿を見て驚いていた。

 

 

 

 

 

 

しかし、奈々自身は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「な、なな…ななな……な・ん・じゃ・こ・りゃああああああーーーーー!!!!!???」

 

 

 

 

 

奈々の叫びが、百合ヶ丘中に伝わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、奈々の検査は続き、結果…彼女のレアスキル、マスカレイドは別のレアスキル…奈々命名…スピリットエフェクターに書き換えられたことが明らかになった。

 

しかし、何故変化したかは不明のままである。

 

 

サブスキルもカリスマのみとなり、 前に持ってた全てのサブスキルはマスカレイド同様失われてしまったようで、再習得は不可能となった。

 

貴重なスキルだが、サポートよりの効果な為、アタッカーである奈々にはリリィとして致命傷である。

 

 

 

 

 

しかし奈々はこれでも近接戦のエキスパート。

 

カリスマを自身の強化に活かせないか、奈々は休養中の間に考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…奈々が目覚めてから3日後…

 

 

体調もよくなり、完全回復した奈々は、史房に理事長室に来るよう言われ、奈々は結梨、一柳隊の皆と一緒に理事長室へ入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには史房と祀、眞悠理、そして理事長代理の咬月が奈々を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「失礼します」

咬月「ふむ、君をここに呼んだのは今回の戦いについてだ」

奈々「?」

咬月「木葉奈々君…君がサンスベリアの主力艦隊を叩いたことで百合ヶ丘…いや、この国は救われた。ありがとう」

奈々「そんな!私一人の力だけではありません!ここにいる皆、他ガーデンのリリィ達、自衛隊の皆が頑張ってくれたお陰です」

咬月「それでも、君は頑張ってくれた。一人で百合ヶ丘を守ろうとした。それは称賛に値する」

奈々「も、勿体無い御言葉です!」

咬月「そこでだ。君に渡したいものがある」

 

 

 

 

 

そう言った後、百由がある箱を持って奈々の元へ歩いた。

 

 

 

 

 

奈々「?」

 

 

 

 

 

 

百由は奈々の近くまで歩くと、持っていた箱を開ける。

 

 

 

中には、水晶の花を彩った勲章が入っていた。

 

 

 

 

 

奈々「これは?」

咬月「百合ヶ丘で勇敢なリリィに与えられるフローラ勲章だ。今回の戦いで君にはこれを受けとるに値する者と判断した」

二水「ふ、フローラ勲章!?」

楓「静かになさい、ちびっ子」

奈々「何故私なんですか?他の皆も私以上に頑張ったはず…」

夢結「何言ってるの?生徒全員、貴女が一番頑張ったって言ってたわよ」

梨璃「奈々ちゃんのお陰で百合ヶ丘は救われたって噂になってるよ」

奈々(………二水ちゃんか………)

 

 

 

 

命を賭けて百合ヶ丘を救った君の活躍

二水の手掛けた週刊リリィ新聞で百合ヶ丘は奈々の活躍で大評判である。

 

 

 

 

 

咬月「君の活躍は世界中に知れ渡り、その影響力は大きいだろう。今後の活動では他のガーデンの余力も不可欠だ。きっと力になってくれるはずだ。是非役立ってほしい」

奈々「ですが、私はスキルが総取っ替えされまして、今までのような活躍は難しいので…」

 

 

 

 

 

奈々のスキルはスピリットエフェクターとカリスマのみとなってしまった為、前のような戦い方は出来なくなっている。

 

カリスマは兎も角、スピリットエフェクターはまだ奈々自身もその能力を把握しきれてない。

 

 

 

 

 

 

そこへ出雲が口入る。

 

 

 

 

 

 

出雲「お前らしくもないな。例え自身の力が弱くても、お前は屈することなく戦ってきた。無茶は相変わらずだがな」

奈々「先生…」

出雲「いつも通りにやればいい。お前の母もそうだった。皆と変わらない…普通の人だった。その本質がフローラの名を持ったリリィなのかもな」

奈々「………………」

 

 

 

 

 

 

出雲の励ましに、奈々は咬月に質問した。

 

 

 

 

 

 

 

奈々「あの…理事長先生」

咬月「何かね?」

奈々「これを受け取ったら、私の名前も変わるんですか?」

 

 

 

 

 

奈々の意外な質問に咬月は少し笑う。

 

 

 

 

 

奈々「な、先生…!?」

咬月「いやすまん、意外な質問だったものでな…確かに、フローラ勲章を受け取ったリリィは、フローラの洗礼名を受けることになる。君の場合なら…木葉・フローラ・奈々になるな」

奈々「入れなきゃ駄目なんですか?」

咬月「勿論だ」

奈々「ならせめて別の名前でお願いしていいですか?」

咬月「別の名前…と?」

奈々「正直な話、フローラの名前って、私の性に合わないんです。だから意味が似てる名前にしてほしいんです」

 

 

 

 

 

奈々に別の名前の案を頼まれる咬月。

 

 

 

 

咬月「………成る程な…それで、君は何か候補はあるか?」

 

 

 

 

 

咬月の質問に奈々は答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「ブルーム…でお願いします」

咬月「ブルーム…」

祀「確か、花言葉で…輝きでしたね」

咬月「うむ。その名前でいいのなら、このフローラ勲章を受けとるといい」

奈々「はい」

 

 

 

 

 

 

奈々は百由からフローラ勲章を受け取り、上着の胸元に付けた。

 

 

 

 

 

 

咬月「これで君はブルームの洗礼名を与えられた。よって今日から君は木葉・ブルーム・奈々だ。おめでとう」

 

 

 

 

 

咬月の誉めの言葉と共に、この場にいる全員が奈々に拍手した。

 

 

 

 

百由「おめでとう奈々さん」

史房「おめでとう」

眞悠理「おめでとう」

祀「おめでとう」

楓「今回は誉めて差し上げますわ」

梅「やったな、奈々」

雨嘉「おめでとう、奈々」

ミリアム「おめでとう!」

神琳「おめでとうございます」

二水「おめでとうございます!」

鶴紗「おめでとう」

梨璃「おめでとう奈々ちゃん!」

結梨「おめでとう!」

夢結「おめでとう」

 

 

 

 

 

 

一柳隊の皆と結梨が奈々を祝ってくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木葉奈々………いや……

 

 

 

 

 

木葉・ブルーム・奈々…

 

 

 

 

 

切っ掛けは、突然のヒュージの襲撃だった。

 

 

 

 

 

ただ逃げ隠れる事しか出来なかった当時の自分は、人々が次々とやられていく姿を何度も目撃する。

 

 

 

 

これを期に、彼女はリリィになることを決意する。

 

 

 

 

そこで出会ったのは、白井夢結とそのシュッツエンゲルの川添美鈴、夢結の親友の吉村・T・梅、学生だった頃の如月出雲であった。

 

 

彼女はその者達と共に自らを鍛え上げ、時にはヒュージと戦った。

 

 

 

 

 

しかし、山梨で起きた悲劇…甲州撤退戦。

 

 

今まで体験したことのないヒュージの大群によって、人達は襲われ、出動したリリィ達にも大きな被害を受けた…

 

そして…その場で最高の仲間にして…先輩の美鈴を失ってしまう。

 

夢結は変わってしまい…彼女は力の無さを痛感する。

 

 

 

 

 

 

 

その数日後…彼女は出雲の奨めで、ブルーガードに転属することになった。

 

そこで桜田加奈、桜田理亜をはじめとした仲間達と絆を深めつつ、海でのヒュージ討伐をしながら鍛練に励んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、悲劇は二度起きた…

 

 

 

 

 

彼女が所属する第4部隊は、GEHENAと協力関係を持つ組織サンスベリアの罠に掛かり、送り込まれたヒュージの群れに襲われる。

 

奈々は頑張って群れの大半を片付けるも、力尽きる。

 

 

 

 

 

結果…第4部隊は全滅。

 

 

所属するリリィ達は帰らぬ人となり、奈々は重症を被うも奇跡的に助かり、桜田姉妹は意識不明に陥ってしまう。

 

 

悲しみにふける彼女だが、姉妹の分まで戦いたいという決意により、レアスキル…マスカレイドを習得する。

 

 

 

その後、彼女の力は経験を通して瞬く間に付き、遂にはトップクラスの実力を得た。

 

 

これにより、彼女は第1部隊に転属し、サンスベリアの一部部隊を全滅させ、東京の遠征でもルドビコ女学院と御台場女学校を助けた功績を残す。

 

 

 

 

 

 

そして2年後の4月…彼女はブルーガードの皆に別れを告げ、百合ヶ丘に戻ってきた。

 

 

 

そこでは、久しぶりに再開した夢結と、新たに入学してきた少女の一人、一柳梨璃と出会う。

 

 

 

梨璃は教師となった出雲の課題をこなし、一柳隊を結成する。

 

その後、遠征で大きな功績を残し、一柳隊の活躍は徐々に百合ヶ丘中に広がっていった。

 

それは同時に奈々の協力もあった。

 

 

 

 

 

 

 

日が過ぎ、彼女達は海岸で謎の少女を保護し、一柳結梨と名付けられた彼女は、競技会では初めてなのにリリィとしての力を発揮し、プロ級の戦いを見せた。

 

 

 

しかしその子は、GEHENAとグランギニョルが共同開発して生み出した人工リリィであった。

 

 

彼女は政府からヒュージと認識され、狙われる立場になった結梨と梨璃を連れて身を潜める事にしたが、かつての仲間のレギオン達にも狙われることになった。

 

 

だが、出雲、百由のお陰で、結梨の疑いが晴れ、事態は終結したかに思ったその後、海の向こうでギガント級が出現。

 

 

唯一水上で戦える彼女と結梨はギガント級を撃破するが、そのギガント級が溜め込んだマギが爆発し、結梨は爆発に巻き込まれて消息を断つ。

 

 

 

謹慎を受け、結梨を失ってしまった後悔によって落ち込んだ彼女は、その後史房や梨璃、目を覚ました桜田姉妹の励ましにより再び立ち上がり、百合ヶ丘付近に飛来してきたギガント級ヒュージを梨璃と一緒に応戦。

 

夢結の復帰と、梨璃のラプラス発動。そして全生徒による大人数ノインヴェルト戦術によってギガント級を撃破した。

 

 

 

 

 

 

 

そして遂に訪れた…サンスベリアとの決戦。

 

 

 

 

 

CHARMを失い、戦えなくなった百合ヶ丘の生徒全員の中で、唯一戦える彼女は1人で百合ヶ丘を死守し、自衛隊の皆と、危機に駆けつけた他ガーデンのレギオンによってサンスベリアの進行は阻止され、百合ヶ丘のリリィ達もCHARMが直り、前線に復帰し、彼女はサンスベリアの移動基地で、かつて倒したはずのボルドーと遭遇する。

 

 

しかしその最終決戦に、消息を断った結梨が参戦し、アルトラ級を討伐に向かった梨璃と夢結、出雲、可奈と理亜も参戦し、ブルーガードも駆けつけてくれた。

 

 

皆の協力により、遂にサンスベリアを全滅させることに成功し、勝利を収めた。

 

 

ところが、ボルドーから抜き取ったマギリアクターが暴走をし始め、最大の危機に落ちるが、彼女は命を懸けた行動で、マギリアクターを破壊したものの、その時の大爆発により致命傷を受けて長い間眠りにつく…………

 

 

 

 

 

その10日後…彼女は奇跡的に目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いには常に死と隣り合わせ。

 

 

いつ、誰が、何処の戦場で、目の前から居なくなっていくのか…

 

 

 

それは誰にも分からない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし…

 

 

 

 

 

この世界に生きて戦う少女…リリィ。

 

 

 

彼女達は、死ぬために戦ってる訳じゃない。

 

 

 

 

 

 

明日を見るために戦ってるのだ。

 

 

 

 

例え一人が弱くても、皆と助け合い、力を合わせれば、どんな戦場でも乗り越えられる。

 

そして、いつか明るい未来が訪れることを信じて…

 

 

 

 

 

 

 

これが彼女…奈々の体験したリリィとしての経験であった。

 

 

 

 

そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「ありがとう………皆…!」

 

 

 

 

 

 

 

彼女は木葉・ブルーム・奈々として、新しいスタートを切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日…………

 

全てのガーデンに奈々の活躍が広まっていた。

 

 

 

 

 

私立ルドビコ女学院では……

 

 

 

 

 

 

 

来夢「奈々ちゃん、無事で良かった…!」

聖恋「ホントにすごいよ。アイツは…」

百合亜「あの重症から目覚めるなんて、驚いたわ」

佳世「それよりも、フローラ勲章を受け取ったのが一番驚きました!」

聖恋「木葉・ブルーム・奈々…ん?…洗礼名、フローラじゃないのか?」

幸恵「きっと彼女のことだから、変えてもらったのでしょうね」

百合亜「確かに、あの子フローラって感じじゃないわね」

来夢「でも、ブルームって奈々ちゃんにピッタリかも」

幸恵「ふふっ、そうね」

 

 

 

 

アイアンサイドは奈々の話題で盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ルドビコの校門前では、見覚えのある少女がルドビコの制服を来てやって来た。

 

 

 

 

 

 

「私は知りたい…木葉・ブルーム・奈々の持つ本当の強さを…そして、今度こそ勝つ…!」

 

 

 

 

 

 

双葉真里は、本当の力を知りたいのならガーデンで学び、リリィとして強くなれと、ボルドーからの遺言でやって来た。

 

 

彼女はあの百合ヶ丘の戦いの後サンスベリアを抜け、今後は自分の意思で戦うことを誓ったのだ。

 

 

 

 

真里「待ってて…奈々…!」

 

 

 

 

 

 

 

エレンスゲ女学園では…

 

 

 

 

 

恋花「一葉!奈々がフローラ勲章を授与された話聞いた?」

一葉「はい。エレンスゲは彼女の話題でイッパイです」

搖「あの状態から回復するなんて奇跡としか思えないよ」

千香瑠「でも、本当に良かった…」

藍「らんも、奈々が無事で良かった」

一葉「私達もうかうかしてられません!トレーニングの続きと行きましょう!」

恋花「え!?まだ休んだばかりなんだけど?」

一葉「ヘルヴォルのリリィがそんなことでどうするんですか!奈々さんに負けないようヘルヴォルも更に磨きをかけないといけません!」

搖「また一葉のスイッチが入ったね」

恋花「何でそんなに落ち着いてるの!?」

 

 

 

 

一葉のやる気に恋花は勘弁の様子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神庭女子藝術高校では……

 

 

 

 

 

 

灯莉「おお!奈々、定盛より人気あるー!」

姫歌「私の事はひめひめって言ってるでしょ!くっ、でも確かにこの人気…悔しいけど認めざるおえないわ」

紅巴「でも、奈々さんが無事で良かった…」

高嶺「そうね。私達にとって、彼女は英雄と呼ぶべきかしら」

叶星「あの子の勇気…私も見習いたいわ」

高嶺「出来るわ。貴女なら」

 

 

 

 

 

奈々を見習おうと、心に思う叶星であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御台場女学校では…………

 

 

 

 

 

純「木葉・ブルーム・奈々…ね。大出世したわねあの子」

初「確かにあの子は私達を助けに来た時から輝いてたわね」

燈「でも!純お姉様には敵わないですものね」

純「当然よ。負かす相手が大きければ、それだけ勝負のしがいがあるもの。必ず勝ってみせるわ。あの子に」

楪「お前も相変わらずだな」

椛「さっきまで奈々さんの事を心配してましたのに」

純「うるさい!私はあの子があの程度でやられるリリィではないと思っていただけですわ!」

楪「素直じゃないな………」

 

 

 

 

 

と、ワイワイガヤガヤと盛り上がっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

とある街の高層ビルの屋上では、黒いドレスを纏った女性が空を見ていた……

 

その女は、琴陽から御前と呼ばれた女性であった。

 

 

 

 

琴陽「木葉奈々はフローラ勲章を手にいれたみたいです」

御前「そう…一度は枯れた花がまた咲き始めた……木葉・ブルーム・奈々…未知の力を手にした彼女はやがて私達の前に立ち塞がる最大の難問となる。楽しみだわ…貴女を打ち倒し、手に入れるわ。全てを…そして、白井夢結を…」

琴陽(奈々…貴女には生きていてほしい……親友の分まで…)

 

 

 

もう琴陽の中には、復讐心は無かった。

 

奈々と出会った事で、彼女は変わったのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別のとある丘では……

 

 

 

 

 

地由良「ボルドー司令がやられたみたいだね」

海里「木葉・ブルーム・奈々だったね。その子の名前」

地由良「サンスベリア内には司令の事をよく思わない人間もいたわね。司令がやられた事でその者が行動を起こすかもしれないし」

海里「そうね。司令はこの事を予測していたのかもしれない」

地由良「あの百合ヶ丘の戦いも、リリィ達があいつらに太刀打ちできるかを試すためのテストだったなんて誰も気付かないだろうね」

海里「私達も、そろそろ行動を始めましょう」

地由良「ええ。行こうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、鎌倉の浜辺では、ブルーガード四番隊のボートが待機しており、その場には遠征の為に用意した新しい服を着た一柳隊の皆と奈々、百合ヶ丘の制服を着た加奈と理亜がおり、出雲とブルーガードの制服を着た結梨の見送りにいた。

 

結梨の近くには青の制服を着たブルーガードの面子がいた。

 

 

 

夢結に似たお姉さんキャラな黒髪のポニーテールの少女と、押しとやかな青髪のロングヘヤーの少女、優等生っぽい赤髪のツインテールの少女の3人である。

 

 

 

 

 

 

 

ブルーガード 一番隊 リーダー 榛名咲樹(はるな さき)

 

 

ブルーガード 一番隊 ロングシューター 森坂穂香(もりさか ほのか)

 

 

ブルーガード 一番隊 オールラウンダー 渡部奈緒子(わたべ なおこ)

 

 

 

 

 

 

そして海の向こうでは、ブルーガードの移動拠点…クジラ船が留まっていた。

 

 

 

 

 

ちなみに一柳隊が着てる服は今までの殆ど黒の制服とは異なるアラウンドザウィローという名前の強化服で、奈々が着ているのは、ミリアムや神琳に似た制服をベースに金色のラインが入ったデザインの強化服。

 

しかもリリィバトルクロス並の防御能力を兼ね備えた特注品で、名前はレイディアントブルー。

 

一柳隊に正式に入った奈々にブルーガードが用意した物である。

 

胸にはフローラ勲章が付いていた。

 

 

 

 

 

最後に桜田姉妹は、奈々が気が付いた次の日に梨璃のクラス、夢結のクラスに転入したため、現在制服を着ている。

 

奈々の通っていた百合ヶ丘に興味を持ち始め、入学を希望したらしい。

 

 

学園側もこれを承諾したとの事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「もう行くんですか?」

出雲「ああ。依頼者からとあるガーデンのリリィの教育を頼まれてな、すぐ行くことになった」

雨嘉「まだ教えてほしい事があったのですが…」

出雲「こちらとしては惜しいがな。今後は姉が椿組の教師…お前達の教導官を務める」

夢結「姉って、八雲さんの事ですか?」

出雲「リリィとしての力は無いが、教える力は私以上だ。今後は姉に頼れ」

梨璃「結梨ちゃんも行くの?」

結梨「うん」

咲樹「ブルーガードには三ヶ月に一度、ライセンスを取る為の試験が行われている。結梨にはその試験で国家政府より身分の高いゴールドライセンスを取ってもらう予定だ」

二水「確かに、ゴールドライセンスなら国家政府から狙われる心配は無くなりますね」

 

 

 

 

ゴールドライセンスは、世界政府より認められた者に与えられるライセンスで、これを手にした者は国家政府より上位の権力を手に入れることができる。

 

これにより、国家政府はゴールドライセンス所持者に対し強制が出来なくなる。

 

それどころか、無理に強制した国家政府の者は世界政府より罰せられる。

 

 

GEHENAは結梨の捕獲を諦めていない事もある為、結梨がこのライセンスを取ればGEHENAも簡単に手出しは出来なくなるだろう。

 

 

 

結梨「何時になるかは分からないけど、絶対に取るから」

奈々「凄いなあ、私にはそんな話無かったから」

咲樹「お前には必要ないだろ?」

奈々「確かに」

梅「奈々もライセンス持っていたんだよナ」

奈々「はい。ランク下のシルバーライセンスですけど、結梨ちゃん、梨璃ちゃんの誘拐の件で剥奪されましたから」

楓「梨璃さんを拐ったのですもの、自業自得ですわ」

穂香「誘拐!?」

奈緒子「奈々、百合ヶ丘で誘拐とか、何やらかしてるのよ」

梨璃「いろいろとね。結果結梨ちゃん救えたんだし、後悔はしてないよ。それにライセンスが無くてもフローラ勲章が代わりになってくれるし」

 

 

 

 

 

 

フローラ勲章はシルバーライセンスと同様の権力を持っている為、仮にシルバーライセンスが無くてもフローラ勲章があればそれで代用出来る。

 

 

 

 

 

楓「貴女が奈緒子さんでしたね。ラビアンローズの所持者」

奈緒子「貴女がグランギニョル社の令嬢ですね!尊敬してます!」

 

 

 

 

 

目の色をかえ、楓の両手を握る奈緒子。

 

 

 

 

 

楓「な、何ですの!?」

奈々「奈緒子ちゃん、楓ちゃんのファンなのよ。使うCHARMもグランギニョル製のがいいとこだわりがあるぐらい」

奈緒子「奈々、余計なこと言わなくていいから!」

 

 

 

 

 

奈緒子の持つCHARM…ラビアンローズはグランギニョル製の物で、今も愛用している。

 

 

 

 

二水「ブルーガードの戦闘は、長期戦になることが多く、使用しているCHARMは強度を重視する為に変形機能を取り外し、全てメタルスキンに替えていると聞きました」

雨嘉「君のCHARMもメタルスキンだったね。重くないの?」

穂香「最初はちょっと重くて使いにくかったけど、筋力が付いて、CHARMにマギが馴染んでからは、軽くなって扱いやすくなったかな?」

ミリアム「奈々が特別じゃなくてブルーガードが特別じゃったか…」

穂香「うん…よく言われた」

楓「本来は、カスタマイズの必要の無いグランギニョル製のCHARMをあれこれ改造されるのは気に入りませんが、グランギニョル製を愛する貴女に特別に許して差し上げますわ。その代わり」

奈緒子「その代わり?」

楓「今度貴女に合わせたCHARMをグランギニョルで提供しますわ。もちろんメタルスキン製で」

奈緒子「いいんですか!?後で私が戦った記録をそちらに渡しますので」

奈々「奈緒子ちゃん、目が輝いてますな」

綾瀬「穂香、新人のアーセナルの調子はどう?」

穂香「うん。いい仕事してるよ。綾瀬ちゃんが開けた穴をしっかり埋めてるよ」

綾瀬「そうか。心配だったけどその必要は無かったね」

穂香「当分は百合ヶ丘にいるの?」

綾瀬「奈々がフローラ勲章を手にいれた以上、サンスベリアも何か動きを見せるはずだからね。しばらくはここに留まるよ」

咲樹「それが賢明だろう。マギリアクターが狙われる以上、お前の力は百合ヶ丘にとって必要だからな。頼んだぞ」

綾瀬「了解」

 

 

 

 

ブルーガードもサンスベリアの今後の行動を警戒しつつ、マギリアクターの防衛の為に綾瀬、加奈、理亜を残すようである。

 

 

 

 

 

結梨「奈々!」

奈々「ん?何結梨ちゃん」

結梨「もし結梨が百合ヶ丘に戻ってきたら、勝負しよう?」

奈々「え!?」

結梨「結梨も最強のリリィになってみんなを守りたい!だからまずは奈々に勝てるように強くなるの!」

奈々「ふふふっ、いいよ戻ってきたら勝負だ!私もその時はもっと強くなってるけどね」

結梨「負けないよ!」

奈々「こっちもだよ!」

 

 

 

 

 

と、二人は再開を期待しつつ握手した。

 

 

 

 

 

神琳「先生、この2ヶ月間教えてくださってありがとうございます」

雨嘉「先生のお陰で、私は自身が持てました」

鶴紗「……………ありがとうございます」

二水「先生に教わった事、必ず生かしてみます!」

ミリアム「中々いい経験じゃった」

梅「でも少し寂しいけどナ」

楓「先生…前に梨璃さんと模擬戦した時に、貴女に言ってしまった暴言…申し訳ありませんでした」

出雲「一柳にスパルタな事をしたことか?」

楓「い、いえ、そういうことでは…!」

出雲「気にするな。あれは私の自業自得だ。当時はスパルタにやってたから起きてしまっただけの事。それにお前達との訓練や遠征で色々なことを学んだ。今後はそれを生かそうと思っている」

楓「出来ますわよ。先生なら、応援してますわ」

出雲「………ありがとう」

奈々「出雲先生、私は最強のリリィになる夢を諦めていません。次に会うときまで更に一回り強くなってきますよ」

出雲「はっはっはっ…木葉がそう言うと本当に実現しそうだな。期待しているぞ」

梨璃「出雲先生、本当にありがとうございます!」

出雲「一柳…お前は入学当時から大きく成長した。白井とシュッツエンゲルの契りを結び、新たなレギオンの隊長となり、強大なギガント級を相手に怯むことなく倒し、一流のリリィへと精神的に強くなった。戦術面はまだまだだが、これから先…お前達は更なる体験でより成長していくだろう…これまで学んだ事を生かし、守ろうとするものを守っていけ。いいな?」

「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

一柳隊のみんなに出雲がこれまでの教えを生かして戦えと、伝えた。

 

 

 

 

そこへ、夢結が出雲の前に立った。

 

 

 

 

 

夢結「先生……いや、出雲先輩」

出雲「?」

夢結「……長い間私や梅、美鈴お姉様と奈々を見ててくれて…本当に、ありがとうございました!」

 

 

 

 

 

夢結が出雲に精一杯の感謝の言葉と礼をした。

 

 

 

 

出雲「……今度は道を踏み外すなよ。夢結」

夢結「!」

 

 

 

 

 

 

出雲が始めて夢結の事を名字ではなく名前で呼んだことに驚く夢結。

 

それは、夢結が出雲に認められた証でもあった。

 

その言葉に夢結は…

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結「…………はい!」

 

 

 

 

 

夢結は笑顔で返事した。

 

 

 

 

 

 

咲樹「結梨、時間だ」

結梨「うん」

梨璃「もう行くの?」

咲樹「時間が惜しいからな」

結梨「大丈夫だよ、梨璃。どんなに離れていても思いは一緒だから」

梨璃「結梨ちゃん……うん。必ず帰ってきてね!」

結梨「うん!」

 

 

 

 

 

再び百合ヶ丘に戻ってくる事を期待しつつ、梨璃と結梨が握手する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ここで警報が海岸へと響いてきた。

 

 

 

 

 

「「警告…警告…ケイブ発生…ケイブ発生…鎌倉周辺にラージ級とミドル級が出現…現場のレギオン…リリィ達は…至急迎撃に向かってください…繰り返す…鎌倉周辺に……」」

加奈「ヒュージが現れたみたいね」

理亜「タイミングが悪すぎるよ…」

ミリアム「ヒュージは空気を読まんからのう」

梅「いいじゃないか?お別れ前の共同戦線ってことでサ」

鶴紗「確かに…」

雨嘉「早く行こう!」

神琳「ですね。放ってはおけませんし」

楓「それが私達、リリィですから」

咲樹「私も行こう。奈々が殆どのスキルを失っている以上、全力は出せないだろう」

奈々「甘く見ちゃ困りますよ?」

穂香「私も一緒に戦うよ!」

奈緒子「奈々がまた無茶をしたら困るしね」

奈々「ううっ!?」

 

 

 

 

 

 

図星を付かれた奈々。

 

 

 

 

綾瀬「私はこの場で待機して。状況を知らせらせるよ」

出雲「私も、もう一暴れしよう!」

 

 

 

 

 

 

と、全員がCHARMを取り出し、近接時の形態へ変形させた。

 

 

加奈はカナベラル。

 

理亜はブルメリアを持ち、

 

奈々は綾瀬から予め手渡された新しいツインフェザーを構えた。

 

 

 

 

 

夢結「さあ梨璃、号令を…」

梨璃「はい!」

 

 

 

 

 

 

そして梨璃は号令を言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「一柳隊…出撃!!」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」

奈々「さあ刮目せよ、ヒュージ達!一柳隊と、私…木葉・ブルーム・奈々の進撃だぁーーー!!!」

 

 

 

 

 

一柳隊、出雲、桜田姉妹、咲樹、穂香、奈緒子のみんながヒュージが現れた現場へと飛び進んでいく…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木葉奈々……………

 

 

 

 

 

 

 

 

いや……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは木葉・ブルーム・奈々……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女と、リリィ達が体験した物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一柳隊+α「せーの…………ごきげんよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて、MIX BLOOM、完結です。
と言ってもまだ謎な所が残っていますし、舞台版の方もまだ最初の所しか書いていません。
今後の更新は未定になりますが、いつか書こうと思っています。
番外編のふるーつはある程度アレンジするため、長くなると思います。
こんな作品、良かったら高評価お願いします。
それでは最後に…ここまで見ていただいて、本当にありがとうございました!


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おまけ
オリジナルキャラクター紹介(ネタバレ注意)


遅れましたが、ようやくキャラクター紹介が出来ました!

話のネタバレを含みますが、それでもよかったらどうぞ。



 

 

 

キャラクター紹介(ネタバレ注意!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木葉奈々(このは なな)

木葉・ブルーム・奈々

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 椿組

 

 

 

使用CHARM

 

 

百合ヶ丘中二時代 グングニル(シューティングモードはオミットされている)

ブルーガード入隊時 アステリオン(ブレイドモード限定、メタルスキン製)

加奈、理亜、治療中時 カナベラル&ブルメリア(正式な契約をしておらず、消費マギが増加+レールガンは外されている)

百合ヶ丘女学院 遠征から帰ったあと…ツインフェザー

オートケプヒン戦以降 ツインフェザー&カナベラル&ブルメリア(メテオメタル製に改修)

フローラ勲章授与後 ツインフェザー攻撃強化型

 

 

 

 

 

 

 

 

CHARM説明

 

 

 

カナベラル

 

ティルフィングに近いサイズの両刃の剣。

 

 

 

変形機能は無し。

 

マギを消費して、ビームの刃を発生させることで大概のヒュージのマギの防御力を無効化する。

 

素材はメタルスキン。長期間の戦いで使っても刃こぼれが無い位頑丈な強度を持つが、その分重く、マギを入れても一般のリリィでは持つことすら難しい。

 

ブルーガードのリリィ達は、メタルスキン製のCHARMを常に扱う為、筋力面ではダンベルを持ち上げられるレベルまであり、多分全ガーデン中トップだろう。

 

高い攻撃力を持っているが、使用時のマギ消費が他のCHARMの1,2倍という高コスト。

 

しかし契約者の桜田加奈が使う場合、消費マギが8割で済む。

 

メテオメタル製に改修後は、攻撃力が上がり、大きかった形状も若干小さくなり、持ち運びしやすくなった。

 

名前は桜田加奈の名前から取って付けられた。

 

また、出来上がった段階のカラーリングは赤だったが、サンスベリアと決戦後、白と青のカラーリングに改装された。

 

 

 

 

 

 

ブルメリア

 

カナベラルと対をなす短剣のCHARM。

 

形状はコンパクトで、他のCHARMより小さい。

 

メタルスキン製だが、他のメタルスキン製CHARMの中では一番軽い方…だがそれでも重い。

 

武器として扱うにはマギの刃を展開させる。

 

変形機能は無く、攻撃力は一般のCHARMと同じ位だが、このCHARMに触れた相手のマギを吸収し、自身に加えられる能力を持ち、更には浄化までこなす。

 

またカナベラルと連動して、円環の御手無しで両方使うことが可能。百由曰く、元々一つのCHARMとして作られたものでもある。

 

これもカナベラルと連動する事で互いの性能が強化される。

 

これにより総合したマギの消費量は一般のCHARMの3倍になるため、ルナティックトランサーと一緒に使わないと、すぐにマギが枯渇する。

 

この機能は、綾瀬が奈々が扱うことを想定して組み込んだ物である。

 

ブルメリアは本来、遠距離が可能なレールガンタイプのアタッチメントが取り付けられていたが、奈々が使用する際に外された。

 

メテオメタルに改修された後は、刀身が長刃に代わり、特殊なフィールドを形成させ、マギを多く吸収出来るようになった。

 

このCHARMの名前は、使用者の桜田理亜の名前から取って付けられた。

 

ロールアウト時は青のカラーリングだったが、サンスベリアとの決戦後、白と赤のカラーリングに改装された。

 

 

 

 

 

 

 

合体剣カナリア

 

カナベラルとブルメリアを左右に連結させた必殺形態。

 

連結時には大きめのマギの刃が生成され、大剣の形を構成する。

 

マギの消費が通常の6倍にまで跳ね上がり、一般のリリィでは10秒も持たずに使い果たしてしまう。

 

しかしその分攻撃力がかなり高く、ノインヴェルト戦術と同等と言える火力を持ち、大概のギガント級はこれで倒せてしまう。

 

マギリフレクターも意味をなさず、このCHARMの攻撃の前では防御は無意味である。

 

奈々が下北沢にて現れたアーリマン相手に使ったが、耐えきれずにヒビが入ってしまった事から、後から転入してきた綾瀬によって、より頑丈なメテオメタル製に改修され、それ以降はカナリアを使用しても壊れてはいない。

 

 

 

 

 

ツインフェザー

 

 

 

壊れたカナベラルとブルメリアの代わりに綾瀬が作った二振りの曲刀CHARMで、今後の奈々専用のCHARMの開発に必要なデータ収集機能を兼ね備えてる。

 

メタルスキン製で、飛び道具無し、変形機能も無し。ノインヴェルト戦術に対応してない弱点を持純粋な近接用CHARMである。

 

攻撃力はカナベラルより劣るが、それでも高い攻撃力を持っており、ブルメリアの次に軽い。

 

しかし普通のリリィにはまだ重い。

 

円環の御手が無くてもトリグラフのように二本で扱え、フラガラッハのように投げたCHARMが手元に戻ってくる等と、第三世代の機能も兼ね備えている。

 

奈々はメイン武器として使用する他、投てきにも使っている。

 

ボルドーの高出力のビームソードによって一本を割られてしまったが、綾瀬と涼の共同改修により、強度と攻撃力が強化。奈々がレギオンにはいけノインヴェルト戦術にも対応出来るようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル

 

マスカレイド(習得時、A級…ラピュセル戦でS級に覚醒する)

 

ブーステッドスキルの一つ、エンハンスメントとアルケミートレースに似た力を行使できる複合スキル。

 

エンハンスメントのようにサブスキルをレアスキル化させることが出来るが、その場合オリジナルの8割程度しか発揮できない。

 

しかしS級に覚醒すると、100%の力を出すことができ、2つのレアスキル化が可能。更に習得者のマギの保有値が倍になる。

 

マスカレイドに含まれているアルケミートレースの能力は、自身の血を使って武器に変える代わりに、マギを帯や剣等に生成できる力になっており、奈々はこれをアルケミートレースもどきと呼んでいる。

 

 

 

 

 

 

マスカレイドの代わりに手に入ったレアスキル

 

 

スピリットエフェクター

 

 

効果は不明。

 

現時点では、炎や氷を出せる所しか確認されておらず、奈々自身もこのレアスキルを完全に把握はしていない。

 

実はマギの消費なしで空が飛べるようになった事を後から知った。

 

 

 

 

 

 

サブスキル前期

 

インビシブルワン

聖域転換

千里眼

狂乱の闇

whole order

 

 

サブスキル後期

 

カリスマ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調子者にして、ツッコミ系の主人公。

 

戦いでは真面目な一面もあり、仲間思い。

 

たまに先輩の白井夢結を辛かったりする。

 

上級生に様付けではなくさん付けで呼ぶのは奈々曰く、自分の柄ではないとのこと。

 

しかし挨拶のごきげんようはちゃんと言っている。

 

鎌倉防衛戦の悲劇を目の当たりにして以来、誰よりも命の大切さを知り、誰一人死なせないという信念を持っている。

 

リリィとしての能力は格上で、マギの保有値は平均の倍と多く、現時点で高い天葉を上回る。

 

スキラー数値も100以上と、破格の性能を持っていたが、これが原因で一般のCHARMでは奈々のマギに耐えきれず、壊れてしまう。

 

そのため奈々の使うCHARMは強度の高いメタルスキン製を使用している。

 

甲州撤退戦までは強度重視にカスタマイズしたアステリオンを使用していたが、それでも約10分くらいが限界である。

 

 

戦闘技術も出雲の叩き上げによって身に付いた近接戦闘を得意とする。

 

ルナティックトランサーを応用した空中移動や、聖域転換を使った突進による相手の吹き飛ばし、千里眼を使った近接戦闘等と、並外れた戦術を考える。

 

唯一の弱点は銃形態での飛び道具による戦法が苦手で、グングニルのシューティングモードを扱えなかった。

 

 

夢は世界最強のリリィになることで、夢結とはライバルな関係でもある。

 

また、夢結以外にもたくさんのライバルを作るほど、強さに関しての人気がある。

 

絵を描くのは得意だが、独特のセンスを持っており、上手いけど似てない作品だったり、時々カオスな物が出来上がったりと、皆からそう評価されている。

 

 

 

 

鎌倉で生まれてからは、リリィに興味を持っていなかったが、鎌倉防衛戦で襲いかかってきたヒュージに巻き込まれ、友達を失った頃から、リリィになる決意をした。

 

入学前は、スキラー数値が低い事から出雲のスパルタ特訓を受けた経験を持ち、その結果スキラー数値が50%以上まで上昇し、リリィとして補欠入学を果した。

 

先輩時代の出雲を師とし、様々な特訓をこなして力を付けてきたが、レアスキル、サブスキルは習得できずにいた。

 

甲州撤退戦の後から、ブルーガードでの訓練を進められ、クジラ船で約2年間も暮らしつつ、リリィとしての力を開花させ、始めてのサブスキルも習得した。

 

万が一の事を考え、アーセナルとしての技能を持っている。

 

そして、第4部隊の全滅…桜田姉妹の戦線離脱以降…奈々は度重なる経験を得て、マスカレイドというレアスキルを開化させ、サブスキルも多数習得。

更には二人から借りたカナベラル、ブルメリアを扱って、多くのラージ級を一人で片付けた。

 

急成長した彼女はブルーガードの中でもトップクラスの強さまで登りかけ、エースアタッカーという役割まで手にいれた。

 

その頃から、彼女は色々なガーデンに援軍として現れては、ヒュージの脅威から何度も救っている。

 

 

 

一葉、叶星、幸恵、初、楪、椛とは知り合っており、純とは、模擬戦で負かしており、それ以降純からライバル視されている。

 

そして2年後の4月、百合ヶ丘に戻ってきてからは、どのレギオンにも入隊せず、一柳隊の手助けをしてきた。

 

ドンノロッシェン戦では無数のレーザーをルナティックトランサー+カナベラルとブルメリアの二刀流で全て弾き飛ばし、

 

アーリマン戦では合体剣カナリアでマギリフレクターを破壊するという芸当をこなし、

 

ハレボレボッツ戦は結梨と一緒に水上で止まることないコンビネーション攻撃を見せた。

 

しかし政府の命に背き、結梨を連れていったことで、1週間の謹慎及び、ブルーガード時代に取得していたシルバーライセンスも剥奪されてしまう。

 

オートケプヒン戦は梨璃、夢結と一緒に互角の戦いを見せ、

 

最後にサンスベリアとの戦いでは一人という最悪の状況でありながらも、屈することなくヒュージに立ち向かい、後から駆けつけた仲間の力を借りつつ、S級に覚醒したマスカレイドの力でボルドーに立ち向かい、大勝利に納め、マギリアクターを破壊した。

 

これらの功績により、学園側からフローラ勲章を受け取り、ブルームの洗礼名を与えられる。

 

しかし、度重なる戦闘で無理をしたせいか、リリィとして続行不能な程のダメージを身体に溜め込んでしまっていた。

 

だが、マスカレイドを持ってる事から奈々が純粋種であることが発覚し、奈々が貯めたダメージは純粋種に覚醒したことで発生した高い回復力のお陰で僅か一日で治ってしまった。

 

 

 

因みに家族は父と母、妹がおり、妹もリリィとして戦っているらしい…

 

そして母の名は木葉・フローラ・鈴。

 

奈々同様純粋種。かつては世界一のリリィと呼ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

如月出雲(きさらぎ いずも)

 

奈々入学時…高校1年生

梨璃入学時…椿組教師に就任、一柳隊教導官

 

 

 

使用CHARM

 

 

 

中3入学時…ヨートゥンシュベルト

高校1年生から…ヨートゥンシュベルト(改良型)

教師に就職後…グングニル・カービン

鶴紗を除く一柳隊結成前のメンバーでの教導演習…黒鉄(くろがね)

 

 

 

 

 

 

黒鉄(くろがね)

 

合同訓練の際に涼から貰った黒をベースにした刀のCHARM。

 

虎鉄をベースに柄と刃が一回り長くなっている。

 

マギの消費を最小限に留めても高い攻撃力、強度を持っている為、長期戦にも対応できる。

 

強度、切れ味が上がっており、腕のいいリリィならラージ級でも対等に渡り合える。

 

おまけとして、鍔の部分に牽制用の機銃が取り付けられている。

 

小型なので邪魔にならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル

 

ヘリオスフィア

 

 

 

サブスキル

 

 

聖域転換

魔眼

whole order

 

 

 

 

 

奈々、夢結、梅、美鈴の先輩的存在で、奈々を入学可能なレベルまでに仕立てあげた教師、教導官である。

 

マギの保有値は十分に高く、リリィとしての技術、経験は豊富で、戦闘能力も飛び抜けており、近接戦闘が得意。

 

ガンシップのライセンスを取得してるため、遠征の際にはレギオンを現地へ運ぶよう、自ら操縦している。

 

幼い頃に奈々の母である鈴に助けられた経験があり、そこからリリィになるきっかけが出来ていた。

 

 

 

中3から入学し、高1の中間辺りから、その才能を開化させ、現地点で最強のリリィとして一時的に有名になっていた。

 

毎朝木刀で素振りをしており、奈々がそれを見習った例がある。

 

高2の時にレギオンを作り、奈々を含む仲間と共にヒュージの討伐に向かったのだが、大量のミドル級を前にして怖じ気づき、逃げ出す者が続出。

 

遂には出雲以外のリリィ全員が戦いを恐れ、学院を出ていった。

 

しかしその戦いに唯一残った奈々は、負傷して戦線離脱はしたものの、多くのミドル級を倒していた。

 

 

 

 

しかしリリィを多く失ったこの結果、学院側は出雲に責任を取らせる形として、卒業までの間、他のレギオンにくむこととレギオン作ることを禁じる罰を負う事になった。

 

これが原因で、甲州撤退戦の時には参加出来なかった。

 

 

 

しかし、美鈴の戦死、奈々の転校以降…孤立した夢結と梅の戦いに参加するようになり、学院側も了承している。

 

 

 

その後も、出雲は美鈴を失い、一人で戦う夢結の事が心配になり、教師として自分の意志で百合ヶ丘に残ることになった。

 

 

 

 

夢結にシュッツエンゲルの契りを結びたい一柳梨璃に団体による訓練と、一対一の模擬戦という形で手解きをしたが、一方的な攻撃で、楓に止められる。

 

しかし梨璃の諦めない意志にかつて手解きをした奈々の事を思い出す。

 

模擬戦7日目でより、梨璃に一本取られる。

 

 

 

一柳隊結成後は教導官として、一柳隊の強化に力を注ぐ形で独自に立てた訓練プランをやらせた。

 

涼から貰ったCHARM…黒鉄は大変お気に入りのようである。

 

下北沢での遠征では、一柳隊とは別行動でルドビコ女学院のリリィ達を助けていた。

 

結梨がヒュージの疑いを受けてる期間は政府に向かい、裏で操ってるGEHENAを捕まえ、結梨の人間である証拠を仲間と共に集めていた。

 

 

その後百合ヶ丘に戻る際、オートケプヒンと戦闘中の奈々、梨璃、夢結と合流し、共に戦った。

 

アルトラ級ヒュージの討伐には夢結と梨璃をガンシップで送り、その後ブルーガードと共にサンスベリアの決戦に参加した。

 

 

 

 

奈々がリリィとして一回り強くなった…夢結が吹っ切れた…梨璃が一人前のリリィになった事を確信した彼女はその後、次のリリィを育成するために百合ヶ丘を出る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神楽月涼(かぐらづき りょう)

 

 

使用CHARM

 

中学時代前半…ヨートゥンシュベルト

中学時代後半…虎鉄

百合ヶ丘女学院、初訓練時…白銀

 

 

 

 

 

 

所有レアスキル

 

ゼノンパラドキサ

 

 

 

 

サブスキル

 

インビシブルワン

whole order

 

 

 

 

アーセナルの技術を磨くために百合ヶ丘に入学したボーイッシュな少女。

 

時々妄想を述べたりする癖もある。

 

グランギニョル以上のCHARMを作るのが目標で、その事で楓とはライバル的関係である。

 

模擬対決では他のリリィを然程変わらない実力を持っている。

 

彼女の作るCHARMは刀や薙刀等、東洋の武器がメインで、強度と切れ味が優秀。

 

量産機である虎鉄を始め、楠美に渡した白雪、虎鉄の強化版である打鋼等は百合ヶ丘でも一位二位を争うほどの人気を持っている。

 

サンスベリアとの決戦では、一柳隊のCHARMを優先して修理を行った。

 

その為梨璃、夢結以外のメンバーのCHARMは一回り強化され、弱い方のラージ級を一撃で倒せてしまう。

 

決戦後…彼女は百由、綾瀬と一緒に梨璃、夢結のCHARMを新しく作る予定である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

塔ノ木綾瀬(とうのき あやせ)

 

 

 

使用CHARM

 

初期…グングニル

ブルーガード第1舞台のタンクに一任後…イージス

 

 

 

 

イージス

 

アーセナルとしての技術を身に付けた綾瀬が自ら作り上げた大盾のCHARM。

 

メタルスキン製で、マギを混めればノインヴェルト戦術のマギスフィアを真っ向から受け止める事も出来る程の高い防御力を持っている。

 

大人数によるノインヴェルト戦術の際に壊れなかったCHARMの1つ。

 

先端が尖っており、そのまま相手に刺して攻撃出来る他、バスターキャノンやガトリングが内蔵されており、攻撃面でも優秀である。

 

因みに神琳のマソレリックと同じ接続具を使ってるため、ガトリングやバスターキャノンをマソレリックに取り付けて使うことができる。

 

 

 

レアスキル

 

ヘリオスフィア

 

 

 

サブスキル

 

聖域転換

whole order

 

 

 

 

ブルーガード第1部隊のタンク担当で、クジラ船で生まれ育ったのんびり系低血圧少女。

 

趣味は物作りで、常に真剣に取りかかる。

 

中等部に入ってからリリィとしての経験、アーセナルとしての知識を学び、その才能を開化させた。

 

それ以来、ブルーガードの第1部隊、及びブルーガードの全CHARMの修理、強化に適任された。

 

彼女が生み出した金属…メタルスキンはとても頑丈で、クジラ船の装甲に使われ、ブルーガードの全リリィのCHARMにも採用されている。

 

更には複数の金属を合成させた特殊金属のメテオメタルを作り出す事に成功する。

 

転属してきた奈々とは良き仲で、自ら作り上げたカナベラル、ブルメリアを託す等、奈々を信頼している。

 

結梨の発見から数日後…百合ヶ丘に転入し、奈々のCHARMの管理を担当することになり、競技会では強化改造機のグングニル・ネクスビリティーを数機用意する。

 

同じアーセナル仲間の涼、百由、ミリアムとは技術を競いあってる。

 

カナベラル、ブルメリアをメテオメタル製に改修したのも彼女。

 

サンスベリアとの決戦後…引き続き百合ヶ丘に残ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高野亜理奈(たかの ありな)

 

 

 

使用CHARM

 

アステリオン(S型装備…刀身等のパーツをシャープな物に替えた仕様)

 

 

 

レアスキル

 

天の秤目

 

 

サブスキル

 

インビシブルワン

魔眼

 

 

 

百合ヶ丘女学院所属で、百合ヶ丘の放送、イベント等の進行役を担当している。

 

しかし裏では独自に様々な情報を周囲から収集する側面もある。

 

二水の週刊リリィ新聞にも協力している。

 

 

 

戦闘面ではヒット&アウェイを得意としており、一対一との戦闘では真価を発揮する。

 

また雨嘉程ではないが、天の秤目による遠距離射撃もこなす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊地由良(ひいらぎ ちゆら)

 

 

 

 

使用CHARM

 

 

フォースバイト

 

リング上の上下左右に両刃のブレードが付いたGEHENA製の機体。

 

近接戦闘に使用する他、ブーメランのように投げることもできる。

 

熟練のリリィなら変幻自在に動かし、操ることができる。

 

その代わりビームやマシンガンといった武装は積まれていない為、距離を取られると何もできない。

 

 

 

 

レアスキル

 

 

インビシブルコート

 

 

自身の姿とマギの気配を消すことの出来るステルス能力の高いスキルで、奇襲攻撃に特化している。

 

似たようなレアスキル…ユーバーザインとの違いは、気配を飛ばせることと、自身を透明化させることぐらい。

 

だが気配を飛ばせない点、ノインヴェルト戦術には不向きである。

 

さらにマギの消費が高く、一般のリリィのマギの保有値では1分で使いきってしまう。

 

ところがS級の場合、インビシブルコート使用時のマギの消費が半分程になるため、ある程度ましになる。

 

固有能力はハートレス。

 

一時的に周囲の意識をシャットアウトさせ、無意識状態にさせる。

 

その効果範囲は半径3メートル内にいる者全員。

 

ある程度の耐性が無いと避けられない強力な能力だが、こちらもマギの消費が高く、普通のリリィのマギでは精々一回きりが限度といえる。

 

 

 

 

サブスキル

 

ステルス

魔眼

 

 

 

 

 

 

 

シエルリント学園に所属する2年生。

 

GEHENAに改造された強化リリィで、情報収集を担当…と思いきや、実はサンスベリアの仲間の一人で、GEHENAに関する情報等を密かに送っていた工作員でもあった。

 

趣味は女の子の写真集め。

 

可愛い女の子が大好きで、デジタルカメラに写真を沢山納めている。

 

中にはスカートの中や露出した胸が見えてる写真が含まれてる等、あられもない姿まで盗撮されてる。

 

奈々曰く、変態。

 

戦闘面ではフォースバイトとインビシブルコートによるトリッキーな戦法を得意としており、姿を消しながら相手の死角を狙ってく一撃離脱を常に仕掛ける。

 

リリィとしての技量は高く、鶴紗が相手なら互角以上の戦いが出来る程強い。

 

競技会のコスプレ部門に出てる出場者達を遠くの森の中から盗撮してる中、奈々に見つかり、そのまま戦いになるも苦戦し、海里の投げた手榴弾で上手く退却した。

 

その後、シエルリントに退学届を出し、姿を眩ませたが、ボルドーがやられた事を知った彼女達はサンスベリアを出ていき、今後のサンスベリアの動きを見つつ、サンスベリア、GEHENAの敵対組織として活動を進めることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浜方海里(はまかた かいり)

 

 

 

使用CHARM

 

ティルフィング

 

 

 

 

 

レアスキル

 

縮地

 

 

 

サブスキル

 

whole order

インビシブルワン

 

 

 

 

 

 

 

 

地由良のパートナーで、趣味による暴走を止めるストッパーでもある。

 

 

 

普段はインテリかつおとなしい子だが、戦いでは鬼神のごとく、戦う。

 

戦闘スタイルは常に前に立ち、近接戦闘を仕掛ける。

 

基本はwhole orderを使って戦うが、縮地は緊急回避の時にしか使わない。

 

 

 

地由良が百合ヶ丘に向かうことを知り、追って奈々との戦闘中に縮地を使って離脱した。

 

その後、百合ヶ丘とサンスベリアとの決戦には参加せず、サンスベリアを抜け、地由良と共に別組織を立ち上げる事になる。

 

余談として、彼女は城ヶ島工科女子高等学校に通っていたが、百合ヶ丘の競技会が始まる1日前に転校届けを出して出ていったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双葉真里(ふたば まり)

 

 

 

使用CHARM

 

 

シルバーウィンド

 

サンスベリアで開発された、サンスベリア所属レギオン…ラピュセルの標準CHARMであり、第三世代CHARMに匹敵する性能を持っている。

 

メタルスキンを発展させた新素材…シルバースキンを使用しており、メタルスキンより軽く丈夫なのに対し、攻撃面は劣ってしまうが、一般のリリィでも扱うことが可能。

 

シルバーウィンドには変形機能こそ無いが、3つのタイプが用意されている。

 

長めのブレードとマシンガンが搭載された汎用のS型。

 

ランスに高粒子砲を内蔵した遠距離砲撃のR型。

 

並のCHARMでは壊れてしまう程の威力を持った斧型のブレードが取り付けられたA型等が存在する。

 

真里が使用しているのはS型。

 

 

 

 

 

 

レアスキル

 

マスカレイド(A級)

 

 

 

サブスキル

 

インビシブルワン

狂乱の闇

聖域転換

軍神の加護

whole order

 

 

 

 

サンスベリアで生み出された人工リリィで、一柳結梨のデータを参考に作り上げられた。

 

木葉奈々のデータも一部取り入れられている。

 

サンスベリアのレギオン…ラピュセルのリーダーで、基本スペックは極めて高い。

 

実践経験はないが、技術や知識は優秀。

 

主に近接戦闘が得意で、奈々と違って射撃もこなす。

 

性格はほとんど無表情だが、奈々の事に関しては、悔しがる一面もある。

 

 

 

 

 

 

 

人工リリィとして生まれた彼女は、木葉奈々を倒すために高度なトレーニングをこなし、下北沢での戦い、百合ヶ丘での競技会で得たデータを元に、2度の調整を施された。

 

そしてサンスベリアとの決戦に、ラピュセルのリリィ達を引き連れて奈々の前に現れる。

 

しかし、奈々のマスカレイドがS型に変化したことで押されてしまい、更には結梨、出雲にも押され、敗北するという結果に終わってしまう。

 

ボルドーがやられた後、サンスベリアを抜け、リリィの事を知り、奈々に勝つためにルドビコ女学院に転入する事になり、双葉・アルテミー・真里となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜田加奈(さくらだ かな)

 

 

使用CHARM

 

リリィの初装備…アステリオン(メタルスキン製)

綾瀬のCHARMテスト時…カナベラル(初期)

前線復帰後…アステリオン

サンスベリアとの決戦後…カナベラル(メテオメタル製+レーザーマシンガン追加+カラーリングを白と青に変更)

 

 

 

 

レアスキル

 

 

フェイズトランセンデンス

 

 

 

サブスキル

 

 

軍神の加護

千里眼

聖域転換

 

 

 

 

 

クジラ船で生まれ育ったブルーガード第4部隊の隊長を勤めている。

 

奈々担当の先輩で、理亜とは血の繋がった姉妹である。

 

明るく頼れるお姉さんみたいな性格で、皆とは仲がいい。

 

青く長い髪が特長で、夢結と並ぶほどの美女だが、たまにダジャレを言う残念な一面もある。

 

奈々と綾瀬がダジャレを言うようになったのは彼女の影響によるもの。

 

 

 

 

戦闘では理亜と一緒に前線へ立ち、多くのヒュージを蹴散らしている。

 

二人一組のコンビネーションは奈々も納得する程の良さ。

 

 

 

奈々と出会う前の1年前、東京湾の近くに滞在したクジラ船に、サンスベリアの放ったヒュージが襲撃し、たまたま東京に出ていた加奈と理亜はその時のヒュージによって致命的な重傷を負ってしまうが、元GEHENAの研究員によってブーステッドリリィとして復活を果たし、リリィとして戦う事をえらぶ。

 

その後、綾瀬の作ったCHARM…カナベラルを手渡され、以降は彼女の専用機になる。

 

ブルーガードのエースアタッカーの一人である。

 

入隊したての奈々に近接戦闘の極意を教えたのも彼女。

 

しかし、サンスベリアの仕掛けたヒュージの群れにより第4部隊は壊滅し、仲間は戦死。奈々は重傷。加奈は理亜と共に意識不明の重体を負ってしまう。

 

約2年後、意識が回復し、結梨を失い落ち込んでいた奈々を励ました。

 

その後リハビリを行い、サンスベリアの移動基地で奈々と合流する。

 

加奈、理亜の転入と同時に、奈々が使ってたカナベラルは加奈の元へ返却された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜田理亜(さくらだ りあ)

 

 

 

使用CHARM

 

 

初リリィ装備…アステリオン(メタルスキン製)

綾瀬のCHARMテスト時…ブルメリア(初期)

前線復帰後…アステリオン

サンスベリアとの決戦後…ブルメリア(メテオメタル製+新型レールガン搭載+カラーリングを白と赤に変更)

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

マギヒーリング

 

自身のマギを周囲に散開させ、その場にいる複数のリリィ達の傷やダメージを治す貴重な回復系スキル。

 

カリスマと違ってマギの浄化が出来ない上に、マギを大量に消費するため、連続で使用出来るのは一般のリリィでも2回。理亜の場合は3回まで使用できる。

 

使用後はテスタメントのようにマギによる防御力が落ちる為、仲間の援護は必須である。

 

サブスキルとして、対象となるリリィのダメージを治すリカバリーがある。

 

 

 

現在このレアスキルを習得しているリリィは理亜を含み、僅か5人のみとなっている。

 

 

 

 

 

サブスキル

 

 

リカバリー

カリスマ

インビシブルワン

whole order

 

 

 

 

 

 

クジラ船で生まれ育ったブルーガード第4部隊の副隊長。

 

加奈の妹で、唯一無二のパートナーでもある。

 

おしとやかで優しい性格をしており、芯の強い子で、皆からはアイドル的存在。

 

しかしそんな表向きとは裏腹に、実はゲテモノ料理が大好きで、カキ、タコやイカの踊り食い、ウツボの蒲焼きといった料理をよく食べる。

 

 

加奈と同様、ブーステッドリリィとして復活を果たし、姉と共にヒュージと戦う決意をする。

 

戦闘スタイルは、近接戦闘を得意とする加奈とは反対に中距離を得意とし、加奈の支援を担当している。

 

近距離戦闘も当然こなせる。

 

綾瀬から貰ったブルメリアは当時、レールガンタイプのアタッチメントが取り付けられており、理亜はそれをメインに戦っていた。

 

奈々のブルーガードでの最初の友達になり、穂香、綾瀬とはとても仲がいい。

 

後に加奈同様、サンスベリアの放ったヒュージの群れにやられ、意識不明の重体となるが、サンスベリアとの決戦で復活し、戦いに参戦する。

 

サンスベリアとの決戦後…ブルメリアが戻り、加奈と一緒に百合ヶ丘へ転入する事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

榛名咲樹(はるな さき)

 

 

 

 

使用CHARM

 

 

リリィの初装備…ダインスレイフ

隊長に任命後…カリバーン

 

 

 

 

 

カリバーン

 

ダインスレイフを更に大型化した大剣の機体。

 

刃の形状はおよそ2メートル以上、重さは更に増えて、普通のリリィが持てるものではない。

 

綾瀬がダインスレイフ、カナベラルのデータを参考に、筋力のある咲樹に合わせて作ったユニークCHARMの1つでもある。

 

その攻撃性能はマギが込められてなくても純粋に高く、マギを込めると低級のラージ級を両断出来るほどである。

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

レジスタ

 

 

 

 

 

サブスキル

 

 

軍神の加護

聖域転換

 

 

 

 

 

 

 

クジラ船で生まれ育ったリリィで、ブルーガード第1部隊の隊長を担当している。

 

常に砕けた感じの性格をしているが、コミュニケーションはしっかりとれている。

 

趣味はトレーニング。毎朝木刀を素振りする姿は珍しくない程皆が見てたりする。

 

機械を触る事もあるが、実は機械オンチ。

 

作ったボートのエンジンが途中で止まったり、試しに作ったCHARMが爆発したりと、機械関連は特によくない。

 

その為、副隊長の海道寺麻耶(かいどうじ まや)に止められている。

 

 

 

彼女の父は海軍の一部隊を勤める司令官の一人だったが、サンスベリアの奇襲により戦死している。

 

それを知った彼女はそれを受け止め、リリィになる決意をする。

 

 

戦闘スタイルは前衛だが、アタッカーのように前進せず、同じアタッカーの仲間と連携を取りながら倒していく慎重型である。

 

スキルの構成にあった攻撃と守備を常に使い分けている。

 

その実力は奈々の次に強い。

 

指揮能力も高く、的確な戦術で味方を勝利へ導いていく。

 

 

 

壊滅した第4部隊で生き残った奈々と綾瀬を第1部隊に誘ったのも彼女で、事件前に加奈からお願いを受けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森坂穂香(もりさか ほのか)

 

 

使用CHARM

 

リリィ初装備…アステリオン

第1部隊転属後…ドラゴンランス

 

 

 

 

 

ドラゴンランス

 

 

綾瀬が作った追加パーツを取り付けたアステリオンの強化機で、正式名はアステリオン・ドラゴンランスである。

 

取り付けられた左右に特殊な2枚の刃には長距離の高粒子砲を兼ね備えており、火力に優れている。

 

遠くにいる敵には竜の炎を、向かってくる敵には竜の牙を、敵を凪ぎ払うには竜の爪を、と、綾瀬のコンセプトが生かされている。

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

天の秤目

 

 

 

サブスキル

 

 

魔眼

千里眼

 

 

 

 

雨嘉に似たおしとやかな感じの性格の少女で、お菓子作りが趣味。

 

同い年の理亜とは幼馴染みで、一緒に料理をしたりすることもある。

 

 

 

先輩リリィ達の戦いを見て、自身もリリィになる決意をし、射撃の才能を開花させ、咲樹から第1部隊に誘われる。

 

 

その辺りから彼女の射撃は更に磨きがかかり、ブルーガード一のロングシューターへと成長した。

 

射撃、威力は総合的に雨嘉より劣るが、ドラゴンランスのお陰で威力はこちらに分がある。

 

 

サンスベリアとの決戦では百合ヶ丘への加勢に駆けつけ、対マギリフレクター用の特殊弾でノインヴェルト戦術を仕掛け、2体の進化体アーリマンを倒した。

 

 

その後も、奈々とはたまに連絡を取り、最近では雨嘉と射撃に関する話も度々する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡部奈緒子(わたべ なおこ)

 

 

 

使用CHARM

 

リリィ初装備…グングニル

第1部隊に入隊後…ラビアンローズ

 

 

 

 

 

ラビアンローズ

 

 

グランギニョル社がジョワユーズと同時に開発された亜種のCHARMである。

 

形状はジョワユーズと似ているが、内蔵してるのは粒子砲な為、ジョワユーズより攻撃に特化している。

 

ブルーガードからの依頼で急遽用意されたのだが、強度の問題で綾瀬の手により変形機能をオミットしたメタルスキン製の物にカスタマイズされた。

 

形状は少し変わったが、武装はそのままである。

 

後にテスタメント使用後に備え、マギ貯蔵タンクを取り付け、マギリフレクター装置を新たに加えた。

 

 

これを知った楓はご不満だったが、奈緒子のグランギニョル製に対する愛により不問となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

テスタメント

 

 

 

サブスキル

 

 

約束の領域

インビシブルワン

whole order

 

 

 

クジラ船で生まれ育ったブルーガード第1部隊のオールラウンダー。

 

優等生のような素振りをしているが、時々慌ててしまう一面もある少女で、入隊した奈々とはたまに競い合う仲でもある。

 

グランギニョル製のCHARMを手にしてからグランギニョル製のCHARMが好きになり、今も専用機のラビアンローズを大事に扱っている。

 

戦闘では近距離、遠距離、どちらもこなし、テスタメントによる支援もこなせる。

 

特に彼女のテスタメントは特殊で、サブスキルにも効果が及ぶ。

 

そのスキル構成も相性がよく、ゼノンパラドキサのような戦法もある程度再現できたりと、戦いのセンスは中々。

 

 

 

リリィになりたての頃は強がるなど余裕な素振りを見せていたが、第4部隊の壊滅という事実を知った後、彼女はこれまでの余裕で強がる自分を捨て、真剣に戦う意志を固める。

 

生き残った奈々には時々気を使うなど、親友としての役を固めていく。

 

 

サンスベリアとの決戦後…楓がグランギニョルから奈緒子専用のCHARMを作ることを約束される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉木真子(くらき まこ)

 

 

 

使用CHARM

 

 

リリィ初装備…ブリューナグ(メタルスキン製)

第1部隊に入隊後…ボルカノン

 

 

 

 

ボルカノン

 

 

ティルフィングの特徴である高粒子砲を外し、三本の大型カートリッチを取り付けた攻撃特化型のCHARM。

 

フェイズトランセンデンスを使う際、カートリッチ内のエネルギーを一本消費することで、通常の2倍の火力を持った砲撃を放つことが出来る。

 

またフェイズトランセンデンスを使わなくても、カートリッチを消費することでブレイド部分に圧縮したマギを宿し、瞬間的に高い火力を出すことができる。

 

かなりテクニカルなCHARMだが、タイミングよく当てればカナベラルに近い威力を叩き出すことが出来るが、3回という制限上、無闇に乱発は出来ない。

 

ちなみにメタルスキン製でありながら、ショートブレイドの取り外しは可能である。

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

フェイズトランセンデンス

 

 

 

 

サブスキル

 

 

awakening

千里眼

 

 

 

 

 

クジラ船で生まれ育ったブルーガード第1部隊の一人。

 

普段は落ち着いて読書をしてるが、訓練、戦闘の時は時々熱い一面もある。

 

 

 

リリィになる前からレアスキルに目覚め、無意識に発動してしまった事件があり、それ依頼リリィになることを拒んでいたが、ヒュージの襲撃でピンチになってるブルーガードのリリィの一人を助けるために発動し、ラージ級を仰け反らせ、近くのリリィを救った。

 

その後、改めてリリィになる決意をし、訓練には真剣に取り組み、その結果…援護もこなせるインターセプターになるまで成長した。

 

 

ボルカノンの火力とフェイズトランセンデンスの組み合わせで放たれるその赤い砲撃の殲滅力は、殆どのスモール級、ミドル級を消し炭にする。

 

その光景は近付くものを焼き尽くす竜の炎を感じさせ、後に火竜と呼ばれるようになる。

 

穂香とは同じシューター仲間として、互いの技術を話し合う仲でもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠ノ井黒江(しのの くろえ)

 

 

 

使用CHARM

 

 

リリィ初装備…グングニル(メタルスキン製)

第1部隊に入隊後…グングニルMK.2(プロトタイプによる仮の名)

百合ヶ丘戦技競技会後…グングニル・ネクスビリティー(綾瀬から送られたデータを元に作った物)

 

 

 

 

 

 

グングニルMk.2→グングニル・ネクスビリティー

 

 

綾瀬が作ったグングニルの後継機モデルのプロトタイプ。

 

ブレード部分をアステリオンと同じ物に変え、レーザーマシンガンを倍の2門に増やした攻撃特化のCHARMとなっているが、このデータを見たユグドラシル社は、なにか物足りないと言われ、グングニルの後継機プランから外された。

 

しかしユグドラシル社のCHARM製作者の感想では、別の可能性があるという答えを受け、百合ヶ丘でグングニル・ネクスビリティー(もう1つの可能性を掛け合わせた意味。)として新たに完成させた。

 

後期のネクスビリティーは変形機能をそのままにし、大型化したブレードに加え、レーザーマシンガンと粒子砲を搭載した純粋な上位互換となっている。

 

フェザーメタルを使用しており、普通のリリィでも軽々と持てる。

 

また、黒江のはブルーガード仕様として、メタルスキン製に変形機能のオミットとなっている。

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

 

縮地

 

 

 

サブスキル

 

 

インビシブルワン

軍神の加護

 

 

 

 

クジラ船で生まれ育ったブルーガード第1部隊の一人で、フロントアタッカーを担当。

 

ローテンションかつ音楽プレイヤーとヘッドホンをいつも持ち歩いては、音楽を聞いているが、訓練、戦闘の時は外している。

 

お気に入りの曲はガールズバンド系。

 

戦いではレアスキルを活かした高速戦闘を得意とし、スモール級の群れを殲滅させることは容易い。

 

同じレアスキルを持つ梅と比べると、性能の差で負けてるが、CHARMを使った攻撃はこっちの方が威力が大きい。

 

真子に付き合う形でリリィとなり、第1部隊に入隊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海道寺麻耶(かいどうじ まや)

 

 

 

使用CHARM

 

 

リリィ初装備…アステリオン(メタルスキン製)

第1部隊副隊長に就任後…アルテミス

 

 

 

 

アルテミス

 

 

綾瀬の監修の元、麻耶自身が作り上げた弓型のCHARM。

 

ベースが弓な為、連射力が乏しいが、マギ増幅器とマギジェネレータを搭載したことで、ティルフィングの高粒子砲に近い威力を再現。

 

近接時には弓の上下に付いたハンマーで攻撃するが、おまけ程度の威力しかない。

 

総合的にアステリオンより劣るこのCHARMの本領は、セットで用意された三種類の矢である。

 

これらは特殊な金属を使った特製の矢で、マギを混めた後、アルテミスで放つことでそれぞれの効果を発揮する。

 

弱い方のラージ級を倒せる位の威力特化の矢。

 

着弾点にマギの爆風を起こし、まわりを巻き込む殲滅特化の矢。

 

そして着弾点にマギの光を撒き散らし、周囲にいるリリィ達のマギを回復させる回復支援の矢等があり、状況によって使い分ける事がこのCHARMの真価を発揮する。

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

鷹の目

 

 

 

 

サブスキル

 

 

 

千里眼

聖域展開

 

 

 

 

 

 

 

 

クジラ船で生まれ育ったブルーガード第1部隊の副隊長を勤めている。

 

性格はおしとやかで、皆には優しい。

 

咲樹とは幼馴染で、小さい時から何か問題になる事を注意をしている。

 

彼女の入れる紅茶は皆から好評だと言われ、安いハーブでも美味しくなる程である。

 

桜田姉妹と奈々も仲がよい。

 

 

 

リリィとしての能力は、第1部隊の中では最低クラスで、単独で戦うのは望ましくない。

 

しかし綾瀬監修の元で作り上げたCHARM…アルテミスと鷹の目のお陰で、能力以上の活躍を見せる。

 

また、彼女は第1部隊の司令塔と呼ばれており、戦術・戦略に長けている。

 

 

 

 

リリィになった当時は、能力面で皆に置いてきぼりにされがちだったが、彼女の指揮能力のお陰で、不利だった戦況をひっくり返し勝利することができ、後に第1部隊の副隊長に任命される。

 

 

奈々の訓練は彼女が担当してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野崎周子(のざき しゅうこ)

 

 

 

 

 

 

使用CHARM

 

 

リリィ初装備…ブリューナグ(メタルスキン製)

第1部隊に入隊後…アイゼンタイタン

 

 

 

 

 

 

アイゼンタイタン

 

 

周子が綾瀬に頼み、一から作り上げた戦斧型のCHARM。

 

その長さは2メートル30センチ、刃の大きさは75センチと、かなりの物で、重さはカナベラルと同等。

 

綾瀬曰く、物量による威力の向上を目的に作ったという。

 

基本威力はカリバーンと同等だが、マギを混めることで衝撃波を放つことが出来る為、殲滅力も優れている。

 

メタルスキン製の中ではかなり丈夫な部類に入る。

 

またこのCHARMは、柄の所に小さめのグリップが付いており、エクステンションで巨大化した際に丁度いい大きさで持てれるように細工されている。

 

 

唯一の難点は、飛び道具が無いことであるが、衝撃波を放てるなら必要ないと、あえて付けてないだけなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

エクステンション

 

 

 

使用しているCHARM等の武器を一時的に巨大化させる特殊なレアスキル。

 

といっても巨大化した物の9割が固体化したマギな為、使用には大量のマギを使う。

 

物量による攻撃に特化したスキルで、大きめのラージ級でも簡単に倒しやすい。

 

 

しかしこのレアスキルは世間からはずれスキルと呼ばれている。

 

その理由は、巨大化したCHARMを持てない事。

 

巨大化したことで、片手では納められないほどグリップが大きくなって持てなくなる事である。

 

手放してしまうとマギの供給が途切れ、レアスキルが維持できなくなる為、これはリリィとしては致命的であり、このレアスキルは使えないとリリィ達の間では有名になっている。

 

その為このスキルに覚醒してしまったリリィは戦力外と思われ、レギオンへの加入も断られたり、中にはガーデンを抜ける者も…と、不遇を受けている。

 

 

 

しかし後に周子がエクステンションを発動し、専用のCHARMを使って大活躍している事が知りわたり、現在ではエクステンション持ちのリリィの為に各ガーデンが専用のCHARMをメーカーに発注している。

 

 

派生するサブスキルは、金剛力。

 

腕力をマギで更に強化できるスキルである。

 

 

 

 

サブスキル

 

 

軍神の加護

金剛力

 

 

 

 

 

 

 

クジラ船で生まれ育ったブルーガード第1部隊の一人。

 

趣味は料理で、暇なときにはいつも料理をして皆に食べさせている。

 

クジラ船の外の食料調達は彼女が勤めており、料理長からも太鼓判を押されるほどに技術面が高い。

 

 

 

戦闘でも中々よく、パワータイプらしい戦い方を得意とする。

 

特にエクステンションを使った殲滅特化の攻撃は咲樹からも大きく評価されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪野未菜(ゆきの みな)

 

 

 

使用CHARM

 

 

リリィ初装備…グングニル(メタルスキン製)

第1部隊に入隊後…グングニルMk.2

 

 

 

 

 

レアスキル

 

 

未覚醒

 

 

 

サブスキル

 

 

カリスマ

 

 

 

ブルーガード第1部隊の一人だが、唯一奈々を除く外の人間。

 

東京都で生まれ、ヒュージの手から人々を守るリリィの存在に憧れ、自身もリリィとして中学二年の頃にガーデンへ入学するも、リリィ適正が無かったという残酷な現実を受け、ガーデンへの入学は叶わなかった。

 

彼女はリリィになる夢を諦め、今まで通りの学校生活をおくることになる。

 

 

 

それから1年後のある日、外食中にヒュージの群れに襲われるも、ブルーガード第1部隊によって助けられる。

 

それから彼女はリリィになる決意を再び決め、咲樹の訓練を必死にこなした結果、リリィ適正が現れた事によってリリィになることが出来た。

 

 

その頑張りに好かれ、ブルーガード第1部隊に入隊することになった。

 

 

第1部隊の中では戦闘能力が低く、まだ荒削りな所も目立つ。

 

しかし、唯一サブスキルのカリスマを覚えており、今後どんな風に化けるか将来が期待されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボルドー・ブランチ

 

 

基本装備

 

 

マギボーグ試作型1号機

 

 

サンスベリアが力尽きたボルドーをサイボーグにするために用意した機械の体で、アルトラ級ヒュージのコアを使ったマギリアクター…ヴァーテクスが内蔵されており、その基本性能は沢山のリリィが束になっても太刀打ちできない位強い。

 

武器は高出力マギビームソード2本と試作型大口マギガトリング砲の二つのみ。

 

マギビームソードはかなりの高火力で、最大出力で行けばメタルスキン製のCHARMを叩き割る事も可能。

 

試作型大口マギガトリング砲は高粒子砲クラスの火力を持つ弾を10秒に300発撃ち出す上に、広範囲にばら蒔くため、避けるのも難しい。

 

しかし撃ち続けられるのは最大10秒までで、充填には20秒掛かるため乱用は出来ない。

 

マギボーグの各装甲にはメタルスキンが使われており、そこにマギによる防御膜が加がることで驚異的な防御力になり、メテオメタル製のCHARMでないと傷を付けられない。

 

更に高機動スラスターを背中、両肩、両足に内蔵されており、インビシブルワンに近い速度で飛行出来るが、リアクターの出力の殆どが機動力に使うため、ビームソード以外の武装が使えなくなる弱点もある。

 

更に搭載されているヴァーテクス自体は不安定で、それをボルドー自身が押さえており、もしマギボーグからマギリアクターが取り外されると、コントロール制御が乱れ、暴走し、最後に核爆発に匹敵する程の大爆発をおこしてしまう。

 

 

 

 

 

サンスベリア第1基地の司令官で、1年前にブルーガード第4部隊を壊滅に追い込んだ者。

 

戦術に長けており、サンスベリアの中でトップクラス。

 

かつてその戦術によって多くのガーデンを壊滅させた恐ろしい存在だったが、リリィや人達等の死者を出していない。

 

更には、その事に付いては他の司令官に伝えていない。

 

彼はクジラ船の動力炉でもあるマギリアクターを奪うために再び奈々達ブルーガードに襲いかかるが、マスカレイドが覚醒した奈々とブルーガードの3部隊によって破れ、命を落としたかに思えたが…

 

 

 

マギボーグの体を移植し、復活を遂げる。

 

 

 

 

その後、戦力を溜め込み、百合ヶ丘のリリィ達のCHARMが使えなくなったタイミングを狙い、今度は百合ヶ丘の所有するマギリアクターを手に入れに全戦力を投入し進軍してきたが、他のガーデンから来たリリィ達とブルーガードの協力、そして奈々の捨て身の行動により最後を遂げた。

 

 

 

そんな彼も実は、ヒュージに対抗するための準備を密かに行っていた。

 

更にはGEHENAから人造リリィの設計を手に入れ、双葉真里を含む人造リリィを作り出し、独自のレギオン…ラピュセルを結成させた。

 

サンスベリアの各基地の司令官達の中には、彼の事をよく思わず、私利私欲の為に動く者もおり、無差別な破壊活動を行う事も厭わない者もいる。

 

 

 

彼はこれらの阻止力になるものを手に入れるためにヒュージを量産、更にマギリアクターを集めていた。

 

ヴァーテクス搭載のマギボーグを作ったのもそれが理由。

 

しかし百合ヶ丘との決戦で、リリィ達の強さがこちらの戦力をはるかに越える事を悟った彼は、戦況が不利になることを踏まえ、事前に部下達に撤退させるよう指示した。

 

更にこれまで所有していた情報やヒュージは処分している。

 

その部下達はボルドーが戦死した後、他のガーデンと協力し、サンスベリアと敵対する事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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リリィ達の日常?

アサルトリリィふるーつを見て、こういうのも書いてみようかなと思いつつ、書いてみました。
色々とオリジナルかつアレンジもされてますが、良ければご覧ください。
おまけですが、今回はそこまで長くないと思います。

あと、今作品が完結と出ているため、今後話を出すかどうかは未定です。
リアルが忙しくてネタが出てこないので………


 

 

 

 

 

 

 

「ふう…今日のトレーニング終わりと…」

 

 

 

 

元気な赤茶色のショートヘアーの少女が廊下を歩いていた。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 ブルーム 木葉・ブルーム・奈々(このは・ブルーム・なな)

 

 

 

 

彼女はかつて、弱いリリィだった。

 

そんな彼女が様々な経験を得て強くなり、最強リリィの一角まで成長した。

 

 

 

 

更には、百合ヶ丘を救った功績として、学園からフローラ勲章を貰い、今となっては百合ヶ丘だけでなく、世界のガーデンから有名になっている。

 

今日、彼女は所属しているレギオン…一柳隊の部屋へ向かっていた。

 

 

 

 

そして一柳隊の控え室の扉前までやって来て、奈々はドアノブを回して開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「皆お待たせ…って、どうしたの?」

 

 

 

 

部屋の中は8人の少女達が何やら困ってる様子であった。

 

 

 

 

「指輪………無くしちゃった……」

 

 

 

桃色の髪の女の子がしょぼくれていた。

 

何故か四葉のクローバーを彩った髪飾りを付けたおさげも下がっていた。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 隊長 一柳梨璃(ひとつやなぎ りり)

 

 

 

 

奈々「指輪って、リリィが必ず付けてるあの指輪?」

「はい。昨日は付けてたんですけど…」

 

 

 

 

小柄な茶色のショートヘアーの少女が奈々に説明する。

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 二川二水(ふたがわ ふみ)

 

 

 

 

 

「これは一大事ですわよ!一刻も早く梨璃さんの指輪を見つけなくては行けませんわ!」

奈々「楓ちゃん落ち着いて」

 

 

 

 

 

令嬢と思わせる焦げ茶色のロングウェーブの少女が梨璃の指輪を探すために張り切っている。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 楓・J・ヌーベル(かえで・ジョアン・ヌーベル)

 

 

 

 

「さっきまで梨璃に嵩張るような指輪を渡してたくせに…」

 

 

 

 

金髪のポニーテールの少女が楓にツッコむ。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 安藤 鶴紗(あんどう たづさ)

 

 

 

 

「あの指輪はリリィにとって大事なヤツじゃからのう。早めに探さねばならん」

 

 

 

 

 

二水と同じく小柄で、灰色の長いツインテールの少女が指輪を早く見つける事を提案する。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス(みりあむ・ひるでがるど・ふぉん・ぐろぴうす)

 

 

 

 

 

ミリアムの言うように、リリィが付けている指輪はCHARMとの契約やマギを流すことに使われる重要なアイテムである。

 

 

 

 

 

「そんな訳で梅達はこれから探そうと思ったんだ」

 

 

 

 

小さなツインテールの緑色のショートの少女がこれからやることを奈々に言う。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 一柳隊 吉村・Thi・梅(よしむら てぃ まい)

 

 

 

 

 

「奈々も一緒に探してくれる?」

奈々「いいけど、私心当たりがあるかも」

 

 

 

 

左片方が長いもみあげとシュシュを付けた後ろ髪を前に下ろした黒髪の静かな少女が奈々を誘うが、奈々は心当たりがあるという。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 王雨嘉(わん ゆーじあ)

 

 

 

 

 

「奈々さん知っているんですか?」

 

 

 

 

 

左目が赤茶色で、右目は髪と同じ茶色のオッドアイのライトブラウンのロングヘヤーの少女か奈々に聞く。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 一柳隊 郭神琳(くぉ しぇんりん)

 

 

 

 

 

 

奈々「知ってるも何も、もう見つかったようなものだし」

楓「どういう事ですの?」

「遅くなったわ」

 

 

 

 

 

青みがかかった黒のロングの少女が部屋に入ってきた。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 一柳隊 副隊長 白井夢結(しらい ゆゆ)

 

 

 

 

 

 

奈々「あ、夢結さん。忘れ物を届けに来たんですよね?」

梨璃「え?」

夢結「鋭いわね奈々。梨璃、忘れ物よ」

 

 

 

 

夢結が取り出したのは、梨璃が無くした指輪であった。

 

 

 

 

 

梨璃「えーーーー!?」

奈々「ほらね」

夢結「何を驚くの?あなた昨夜私の部屋に置き忘れてたでしょ?」

神琳「よくわかりましたね」

奈々「梨璃ちゃんが夢結さんの部屋に入っていったのたまたま見かけたからね」

楓「どんなシチュエーションで指輪を外しますの…?」

ミリアム「確かにじゃな…」

奈々「え?訓練で荒れた手にクリーム塗るために一旦指輪を外したんじゃ?」

楓「貴女は本当に夢がありませんわね!」

奈々「何で私、怒られてるの?」

ミリアム「空気を読まんヤツじゃの…」

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、リリィ達の変わった日常生活がはじまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレンスゲ女学圜では…

 

 

 

 

 

 

(私の名は伊倉玉里(いくは てまり)、1年生。エレンスゲ女学園に入学し、ヘルヴォルに特別入隊したリリィである)

 

 

 

 

自室でチェアに座り、紫のショートカットの少女がデスクの上にあるノートパソコンでファイルを表示させていた。

 

 

 

 

 

玉里(2年前、GEHENAで強化リリィになっただったが、スキラー数値が極端に下がってマディックになってしまった私はシエルリント学園のマディック部隊に入っていた。そんな中、突如ヒュージの群れが襲いかかってきた。リリィでもない私達では勝ち目はなく、ただ殺られるのを待つだけだった…………そんな中、とあるリリィが私達を助けてくれた)

 

 

 

 

 

回想しながらも、玉里はキーボードを打ち続ける。

 

 

 

 

 

 

玉里(その人に他の仲間は何故マディックの私達を助けたのかと尋ねた。そしてその人はこう言った)

 

 

 

 

「助けるのにリリィもマディックも関係ない。戦場で戦う以上、同じ仲間だから」

 

 

 

 

玉里「救ってくれたリリィのこの言葉を聞き、私は変わった。私は鍛練を重ねていき、エレンスゲ女学圜でリリィとして転入を果たした。そして長官から担当のレギオン…ヘルヴォルへの編入を申してきた。レギオンなら色々と学べる。もちろん入隊を受けた)

 

 

 

 

 

まだキーボードを打ち続ける玉里。

 

 

 

 

 

玉里(小動物のような藍ちゃんに母性本能丸出しの千香瑠様。可愛いもの好きの瑶様にお笑い担当の恋花様。そして…)

 

 

 

 

 

玉里は突然フォルダを開き、動画ファイルにカーソルを合わせ、マウスをクリックした。

 

 

 

 

 

 

「よ~い~こ~だら~ん、た~の~し~い~よ~♪」

 

 

 

 

と、動画内の一葉が拗ねて部屋にこもっちゃった藍を呼び戻すために、瑶の発案で創作ダンスを踊っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「さんきゅー、ベイベー!!」

 

玉里「ヘルヴォルのツッコミ担当…相沢一葉ちゃん…」

 

 

 

 

と、笑みをこぼしながら動画を踊っていた。

 

 

 

 

 

 

 

彼女…伊倉玉里は後に遠征で助けてくれたリリィと出会うことになるが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに玉里が見ていた動画ファイルは一葉達にバレて、その後消去された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神庭女子藝術高校では…

 

 

 

 

 

 

 

「2年、巫風子(かんなぎ ふうこ)!本日よりグラン・エプレに入隊させていただきます!」

 

 

 

 

 

神庭女子藝術高校の制服を着た紫色の髪のショートカットの少女…巫風子が自室で土下座をしていた。

 

実は風子が明日に入るレギオン…グラン・エプレのリリィ達への最初の挨拶の練習であった。

 

 

 

 

 

 

風子「……………今一だな。やはり堅苦しいのは不味いか」

 

 

 

 

 

 

担当する教導官がグラン・エプレに新たなメンバーを入れて戦力を強化する形で、彼女が選ばれた。

 

グラン・エプレのリリィ達との印象はよく、リリィとしての能力とスキル構成もグラン・エプレの戦闘スタイルと相性がいいため、昨日で彼女の採用が決まった。

 

 

巫風子の正式な入隊は明日になるため、彼女はその時の挨拶を練習していたのだ。

 

 

 

 

 

風子「もうちょっと軽く…いや、それだと心がこもってないしな…」

 

 

 

 

 

しかし、納得の行く挨拶がまだ決まらないみたいである。

 

 

 

 

 

 

風子「よう!お邪魔するよ!………って、これは軽すぎるな………」

 

 

 

 

 

 

 

風子の納得の行く挨拶が決まるのは時間が掛かりそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻って、百合ヶ丘では…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、新レギオン…カナリアの結成を祝して………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「かんぱーーーい!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

新しく出来たレギオンの控え室で制服を着た5人の少女は、レギオンの結成記念パーティーを始めていた。

 

 

 

 

 

 

パーティーの始まりを仕切ったのは青いロングヘヤーの少女。

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 カナリア 隊長 桜田加奈(さくらだ かな)

 

 

 

 

 

 

 

「はやくも条件の5人揃ったね。お姉ちゃん」

加奈「ええ。奈々ちゃんが私達のレギオンに入るメンバーを連れてくるなんて、驚いたわ」

 

 

 

 

 

 

加奈の隣には、加奈をお姉ちゃんと呼ぶ赤いツインテールの少女。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 カナリア 副隊長 桜田理亜(さくらだ りあ)

 

 

 

 

 

 

「私もそろそろレギオンに入ろうと思ってた所なので丁度良かったです。それに元ブルーガードのエリートが一緒にいるなんて光栄です」

 

 

 

 

 

緑色のポニーテールの少女がレモンティーの入ったグラスを持つ。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 カナリア 高野亜理奈(たかの ありな)

 

 

 

 

 

因みに髪型は本来ツインテールだったが、理亜と被るため、彼女自身が変えたようである。

 

 

 

 

 

 

「亜理奈さんや奈々さんが奨めたレギオンだけあって、いいチームになりそうね」

 

 

 

 

 

オレンジ色のミドルカットの少女がグラスに入ったレモンティーを飲みながら話す。

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 2年生 カナリア 園宮愛美(そのみや まなみ)

 

 

 

 

 

 

「愛美様は、前は御台場女学校で有名なリリィでしたね。どうして百合ヶ丘に?」

 

 

 

 

 

 

茶色のセミロングの少女が愛美に質問する。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 1年生 カナリア 塔ノ木綾瀬(とうのき あやせ)

 

 

 

 

 

愛美「一番の理由は奈々さんね。百合ヶ丘防衛戦で大きく貢献したリリィだったし、あのヒュージの大群に屈せずに立ち向かうその意志の強さに興味を持ってね…身近で見て、彼女の戦い方を学びたいのが本命かな?」

 

 

 

 

 

 

愛美にとって、奈々に対する評価は大きいようだ。

 

 

 

 

 

加奈「わかる。私も当時はまだ駆け出しだった頃の奈々ちゃんの頑張りに少し憧れたわ」

綾瀬「背負ってるものは私達と変わらないけど、奈々の場合は命の大切さを私達以上に意識していますからね」

亜理奈「それが奈々さんの強さに大きく貢献してる訳ですね」

愛美「奈々さんの人気は御台場女学校でも噂になってるしね」

理亜「奈々ちゃんもやり過ぎたと言ってちょっと後悔したみたい」

 

 

 

 

と、話ながら理亜はせんべいのように薄く焼かれたイカを醤油に付けて食べていた。

 

それを見た亜理奈はゾッとした。

 

 

 

 

 

亜理奈「り、理亜さんそれってイカせんべいですよね?」

理亜「うん。通販で直送した物を私が潰して作ったの」

加奈「クジラ船で育った私達は魚介類をよく調理してたからね」

亜理奈「イカせんべいもですか!?よく潰せましたね…」

 

加奈「どう?イカしてるでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加奈のダジャレで回りの空気が凍る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜理奈「奈々さんがダジャレを言う理由がわかりました……」

愛美「確かに…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

代わって、一柳隊は理事長室に呼ばれ、ある任務の説明を聞いていた。

 

 

 

 

 

奈々「無害のヒュージが迷子に?」

 

 

 

 

 

説明をしているのは、理事長の机の椅子に座っている高年齢の男性であった。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 理事長代理 高松咬月(たかまつ こうげつ)

 

 

 

 

咬月「うむ。無害のヒュージを保護するヒュージファームから連絡があって、輸送中のトラックが突然襲われ、中にいたヒュージの1体が逃げてしまったそうだ」

 

 

 

 

 

 

隣には、後ろ髪を止めたダークブラウン色の髪の少女。

 

 

 

 

 

 

百合ヶ丘女学院 3年生 ブリュンヒルデライン 主将 出江史房(いずえ しのぶ)

 

 

 

 

 

史房「現在は廃虚でうろついています」

神琳「他のガーデンからの協力は無かったんですか?」

咬月「断られたそうだ。無害とはいえ、ヒュージを助けるのは気が引けるとな」

楓「まあそうなりますわね」

夢結「それで、今度は百合ヶ丘にと?」

咬月「今回は戦闘ではなく捕獲が目的になる。頼めるか?」

梨璃「はい。任せてください!」

楓「逃げたヒュージの特徴は?」

史房「オルビオ種…百由さんが前に捕らえてたルンペルシュツルツヒュンペルと呼ばれたヒュージに似た個体です」

ミリアム「ミドル級の中で弱い部類じゃな」

史房「しかしそのヒュージはとても臆病で、リリィ…特にCHARMを見ると逃げてしまいます」

梅「マジか…」

咬月「できる限り無傷での捕獲を頼みたい。方法は君達に任せよう」

 

 

 

 

 

 

と言うことで理事長室を後にした一柳隊はヒュージ捕獲の任務を頼まれた。

 

 

 

 

 

鶴紗「それで、どうやって捕まえるんだ?」

雨嘉「CHARMを見たら逃げ出してしまうから、普通に捕らえるのは無理かも」

神琳「レアスキルの発動にも敏感ですから、ユーバーザインも駄目でしょうね」

 

奈々「他に方法がないか…」

夢結「せめて何かで相手の気をそらせばいいけど…」

 

 

 

 

 

 

 

と、夢結の言葉を聞いた梨璃は…何かを閃いた。

 

 

 

 

 

梨璃「お姉様!良い事思い付きました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨璃は二水を連れて何処かへ向かい、残った皆は控え室で待っていた。

 

 

そこで夢結と奈々は梨璃から渡された作戦の書かれたメモを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

夢結「着ぐるみになりすましてヒュージに接近!?」

奈々「相手の気が緩んだタイミングで一気に捕獲……だと!?」

夢結「これ本気なの…!?」

 

「はい!本気です!!」

 

 

 

 

 

 

梨璃の声が響き、扉が開いた。

 

 

入ってきたのは、ヒュージ…可愛らしいオルビオの着ぐるみを身に付けた梨璃の姿だった。

 

 

 

 

 

奈々「き、着ぐるみ!?」

梨璃「二水ちゃんと一生懸命考えました!その名も、「私ヒュージだよぉ〜囮作戦〜」!」

 

 

 

 

 

 

と、明るく作戦名を言う梨璃。

 

気のせいか、梨璃の髪飾りが回転してるように奈々と夢結は見えた。

 

 

 

 

夢結「………」

奈々(……………不安だ……)

 

 

 

 

 

二人は不安に感じた。

 

その他の皆はというと………

 

 

 

 

 

梅「よく思い付いたなぁ」

梨璃「えへへ〜」

楓「梨璃さ〜ん!神妙ですけど愛らしいですわぁ」

神琳「写真撮りません?」

雨嘉「ゆるキャラ…?」

 

 

 

 

 

着ぐるみを着た梨璃の元に集まり、ワイワイガヤガヤ喋っていた。

 

 

 

 

ミリアム「興味津々のようじゃのう」

鶴紗「良いのか?夢結様」

夢結「私は別に…リーダーが決めた事ですもの」

奈々「もうこれ止められないね…」

 

 

 

 

 

奈々も諦めモードに入った。

 

 

 

 

梨璃「二水ちゃん自信持とう!皆褒めてくれるし、お姉様も太鼓判です!」

二水「はい!ですよね!」

夢結「私は認めてないけど…」

 

 

 

 

 

と、その時…鐘の音が鳴り響いた。

 

 

 

 

「「鎌倉周辺でミドル級ヒュージが出現。代表レギオンはすぐに現場に向かってください」」

奈々「来たか…!」

梨璃「早速一柳隊、出撃です!」

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

 

 

 

 

皆が現場に向かうため、控え室を後にする中…

 

 

 

 

 

 

 

 

置いてかれた、着ぐるみを着た梨璃は必死で動いていた。

 

テクテクと早く動こうとしてるが、遅い。

 

 

 

 

 

その場にいた奈々はその光景を見て………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々(…………………………やっぱり不安だ)

 

 

 

 

 

梨璃の作戦に再び不安を感じた奈々である。

 

 

結局奈々は梨璃を持ち上げて皆のもとへいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルドビコ女学院………

 

 

ここでは、とあるリリィの入学試験の真っ最中。

 

 

 

そのリリィはというと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミドル級クラスに相当する模擬ヒュージを、銀色の髪の少女は試験用に用意されたアステリオンで難なく倒していた。

 

 

 

 

 

ルドビコ女学院 1年生 双葉真里(ふたば まり)

 

 

 

 

 

真里(トレーニングと比べたら、試験はまだ軽い方……)

 

 

 

 

 

 

彼女…双葉真里は、サンスベリアで初めて奈々と戦ったものの、一歩及ばずだった。

 

 

彼女の司令官…ボルドーの死後、彼女は彼からその後の処遇を伝えていた。

 

 

それは、ルドビコ女学院に入り、リリィとしての心構えを身に付けつつ、他のリリィとコミュニケーションを取れという事である。

 

真里は何の意味があるのかわからなかったが、奈々も他のリリィ達とふれ合ってる事を考え、自分も他のリリィとのコミュニケーションを取ろうと考えた。

 

 

 

そしてもうひとつの目的は、ルドビコ女学院で陰を潜むGEHENAの行動を警戒すること。

 

 

 

実はサンスベリアと百合ヶ丘の戦いで、ひっそり参入したGEHENAの者が戦っているリリィ達とヒュージのデータの収集を取っていた事を知り、何らかの行動を取ってきたら阻止するという事である。

 

 

 

 

 

 

模擬試験が終わり、教導官の一人が真里の元へやって来た。

 

 

 

 

 

「おめでとう、合格よ。最後の手続きが終わり次第、明日から来てもらうわ」

真里「はい」

 

 

 

 

 

真里は試験用のアステリオンを教導官に手渡す。

 

 

 

 

 

「そして私立ルドビコ女学院に入る君には洗礼名が与えられる。今日の夜、貴女が住む部屋の扉前に貴女の洗礼名を含めた名前が書かれた貼り紙を張っておく。明日からはその名で名乗っておくように」

真里「はい」

「ではこれで試験を終了する。手続きの後、ゆっくり休んでくれ。お疲れさま」

真里「はい。失礼します」

 

 

 

 

 

入学の手続きをしに試験会場を出る真里…

 

 

 

 

 

 

 

真里(木葉・ブルーム・奈々…私は必ず強くなって、貴女を超える…!)

 

 

 

 

 

 

 

打倒奈々を目標としつつ、彼女は、双葉・アルテミー・真里となり、ルドビコ女学院のリリィとしての生活を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は代わって廃虚となった町。

 

 

ミドル級が入るほどの伸縮自在の捕獲用リングを持ってやって来た一柳隊は目的のヒュージを二水の鷹の目…雨嘉の天の秤目で周囲を探していた。

 

 

視覚系のレアスキルなら目標のヒュージに気付かれる心配はない。

 

 

 

 

奈々は双眼鏡で辺りを探していた。

 

前のレアスキル、サブスキルを失っており、視覚系スキルが使えなくなった奈々は代わりの物として双眼鏡を使っていた。

 

因みに捕獲用のリングも所持している。

 

 

 

CHARMは一応夢結、梅、鶴紗のみが持っており、万が一に他のヒュージが来ることを想定して備えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると、鷹の目を使っている二水がターゲットのヒュージを見つける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「いた…!」

二水「梨璃さん、目的のヒュージ発見です!作戦開始です!」

梨璃「ラジャー!!」

 

 

 

 

 

作戦開始!梨璃がひゅーじ!と言いながらてちてちてちとヒュージに向かって歩くが…

 

 

やはり遅い。

 

 

 

 

 

 

奈々「ヒュージは歩くときにひゅーじ!って言わないよ?」

 

 

 

 

テトテトテトテトと着ぐるみを着た梨璃は必死に早く走ろうとするが、それでも遅い。

 

 

 

 

 

 

奈々「あのさ二水ちゃん…これ本当に大丈夫なの?」

二水「はい!梨璃さんとっても可愛いと思います!」

奈々「そんなことは言ってないっつーの」

 

 

 

 

 

ますます不安になった奈々。

 

仕方ないので、奈々が梨璃を担ぎ、ヒュージのそばまで持っていく。

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「ごめんね奈々ちゃん」

奈々「いいって。ここまで来たら挑戦あるのみだよ」

 

 

 

 

 

 

そう言って奈々は梨璃を乗せたまま、目標のヒュージの元へと来た。

 

 

その姿はオルビオ種より丸みかかった形に、両足は両手のように丸っぽくなっている。

 

外見からして、危険な生物というイメージがないヒュージであった。

 

 

ヒュージと言うより、ぴゅーじと呼ぶべきか…

 

 

 

 

 

 

奈々は目標のヒュージの視界に入らないよう、後ろに回り、梨璃を降ろすとそのまま離れる。

 

他の皆も目標のヒュージに気づかれないよう一定の距離で瓦礫の裏に隠れた。

 

 

 

 

すると、目標のヒュージは後ろに何かを気付き回ると、ぴゅーと鳴きながら着ぐるみを着た梨璃を目にした。

 

 

 

 

 

 

梨璃(こちらを見た…!)

 

 

 

 

 

 

ヒュージは着ぐるみの梨璃をそのまま見つめていた。

 

 

それに対し梨璃は…

 

 

 

 

 

梨璃「止まってる……皆さん、今です!」

 

 

 

 

捕らえるチャンスだと、梨璃は皆に捕まえる合図を言うが…

 

その目標のヒュージが両腕を伸ばして梨璃を左右に掴んだのだ。

 

 

 

 

 

奈々「な!?」

夢結「え!?」

梨璃「あーーーーーー!!!??」

 

 

 

 

 

予想外の出来事に驚く二人と、梨璃。

 

なんと目標のヒュージは梨璃を掴んだままその場を去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

二水「あわわわ!連れさらわれちゃいましたー!!」

ミリアム「待てー!!そいつはお主の子じゃないぞーーーー!!」

奈々「待て待て待て待て待て待て~~!!!!」

 

 

 

 

 

梨璃がさらわれ、奈々が捕獲用リングを持って跳びだし、梨璃をさらったヒュージを追いかける。

 

 

 

サンスベリアとの戦いの後、前に持っていたレアスキルとサブスキルは失われており、スピード系のインビシブルワンも失っている。

 

実質、奈々は弱体化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………と、思いきや、奈々はレアスキル、サブスキルを使わなくてもマギを使った身体強化が出来るようになった為、サブスキルと同等の結果プラマイゼロである。

 

更に新レアスキル…スピリットエフェクターの効果で自由に空を飛べるようになった。

 

サブスキルも、新たに習得したカリスマを使ったマギの浄化を使ってヒュージの防御力を低下させつつ、一気に攻め混む。

 

本来、サポート寄りのカリスマを攻撃に使うのは他のカリスマ持ちでも考えがつかない。

 

奈々の戦いの経験が活かされてる証拠である。

 

 

 

 

 

そんな奈々はヒュージに気付かれないよう瓦礫の隙間を通りながら走っていた。

 

 

 

 

 

奈々「ふっ、ほっ、はっ、よっ、とっ、と!」

 

 

 

 

 

奈々は走りながら瓦礫の隙間を奈々はマッスルポーズを取りつつポージングしながらかわしていった。

 

その光景を例えるなら、プロテインを持って逃げる犯人を追うマッチョな人の追跡劇を見てるようである。

 

 

 

 

 

そして瓦礫の隙間を通り抜け、梨璃をさらったヒュージの真下まで追い付いた。

 

 

 

 

 

 

奈々「よし、これなら…………えっ!?」

 

 

 

 

 

梨璃を助けるチャンス!と思ったところで、目標のヒュージとは別の系統のヒュージが複数やって来た。

 

オルビオより尖ったフォルムで、カマソッソ種と呼ばれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「ちょ!?このタイミングで来ないでよ!」

 

 

 

 

 

いくら奈々でもCHARMが無ければ戦うのは無謀。

 

 

 

 

 

夢結「ルナティックトランサー!!」

 

 

 

 

 

ルナティックトランサーを使い、空を飛ぶ白い髪と赤い瞳の夢結がブリューナグを持ってやって来た。

 

かつてルナティックトランサーで飛翔していた奈々に対抗意識を持ち、自身も飛べるようになるまで特訓していたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「おお夢結さんいいところに!現れたヒュージ達を…」

夢結「梨璃ー!!!」

 

 

 

 

 

しかし夢結は奈々の言葉を聞かずに梨璃を捕まえてるヒュージの方へ向かっていった。

 

 

 

 

 

奈々「ちょ、そっちじゃない!!おい白髪!!」

梅「こっちは梅達に任せろよな」

鶴紗「早く梨璃を!」

 

 

 

 

 

梅、鶴紗が駆け付け、現れたヒュージ達を片付けていく。

 

 

 

 

 

奈々「梅さん、鶴紗ちゃん!わかった。ありがとう!」

 

 

 

 

梅、鶴紗にその場を任せ、奈々は再び目標のヒュージを追う為に障害物を通っていく。

 

同じく目標のヒュージを追いかけている夢結は宛にできない。

 

下手したら目標のヒュージを倒しかねないので、奈々が夢結より早く目標のヒュージの元へ向かう必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし今度は空から刃の翼を持つ無数のスモール級ヒュージがやって来た。

 

ブル種と呼ばれた攻撃に特化したヒュージである。

 

 

 

 

 

しかもその狙いは着ぐるみを着た梨璃である。

 

 

そして更には梨璃を助けに向かうルナティックトランサー状態の夢結と、カオスな光景を目の当たりにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで奈々はあることに気付いた。

 

 

 

 

ヒュージ達の目線は着ぐるみを着た梨璃に向けていることを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「もしかしてこれ…ヒュージを誘き出してる…!!?」

 

 

 

 

 

もしそうだとしたら、このまま放っておけば着ぐるみを着た梨璃に会いに大量のヒュージが押し寄せて来て、梨璃自身が危ない。

 

 

助けたいが、CHARMが無ければ助けにいけない。

 

仮にあったとしても、それでは目標のヒュージが怖がってしまう為、捕獲は難しくなる。

 

 

梅と鶴紗はまだ最初に現れたヒュージを片付けている。

 

他のメンバーはCHARMを持っていないため前線に出れない。

 

 

 

まさに最悪の展開である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けが必要みたいね。奈々ちゃん」

奈々「!?」

 

 

 

 

 

声と共に駆け付けてきたのは、制服の上に青いジャケットを身に付けたリリィ達…

 

 

 

加奈、理亜が仕切るレギオン…カナリアが駆け付けて来た。

 

 

 

 

 

 

奈々「加奈さん、ついに新レギオン結成したのか…」

 

 

 

 

 

加奈は白と青のカラーリングに塗り直した片刃の剣のCHARM…カナベラル。

 

理亜は白と赤に塗り直した短剣のCHARM…ブルメリア。

 

綾瀬は大盾のCHARM…イージス。

 

亜理奈はアステリオン・typeS。

 

愛美はトリグラフの強化機と、それぞれ手に持っていた。

 

 

 

 

 

奈々「加奈さん理亜ちゃん!皆も!」

加奈「話は史房様から聞いたわ。周囲のヒュージは私達カナリアに任せて!」

理亜「奈々ちゃんはヒュージの捕獲を!」

奈々「わかった!ありがとう!」

 

 

 

 

 

飛行するスモール級達をカナリアに任せ、奈々は走りだし、梨璃をさらったヒュージに再び追跡する。

 

 

 

 

 

奈々「今だ!」

 

 

 

 

 

目標のヒュージに追い付き、奈々は捕獲用リングを目標のヒュージにぶつけると、リングの真ん中から光の帯が伸び、目標のヒュージを巻き付いた。

 

巻き付かれた目標のヒュージは動けなくなり、そのまま落下するが、奈々によってキャッチされる。

 

 

 

 

 

奈々「よし!」

梨璃「はあ、助かった…」

 

 

 

 

 

捕まっていた梨璃を救出し、目標のヒュージの捕獲は完了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捕獲したヒュージは一柳隊の皆でトラックに運ばれ、奈々は疲れ、夢結は息切れしていた。

 

 

 

 

 

奈々「…ヒュージ捕獲の筈が、こんな事態になるなんて…予想外だった…」

夢結「全く…!あなたって子は…!!」

 

 

 

 

 

と、ボロボロの梨璃に言う夢結。

 

 

 

 

 

梨璃「ごめんなさーい!でも失敗は成功のもとと言いますし、今後はこれを活かして…!!」

奈々「気持ちはわかるけど、着ぐるみを着けたままじゃ危ないっしょ!CHARMも持てないし」

梨璃「うっ!」

 

 

 

 

 

奈々から着ぐるみを使った作戦は逆効果だということを告げられた梨璃。

 

 

 

 

 

夢結「そんな忌まわしい物を、一刻も早くお脱ぎなさい!また誘拐でもされたらたまったものではないわ!!」

 

 

 

 

 

と、夢結は無理矢理ヒュージの着ぐるみを脱がそうとする。

 

 

 

 

 

梨璃「だ、ダーメです!!!」

奈々「ああもう!!夢結さん落ち着いて!!」

 

 

 

 

 

奈々が着ぐるみを脱がそうとする夢結を剥がす。

 

 

 

 

 

夢結「何!!?」

奈々「梨璃ちゃん、多分着ぐるみの下、裸ですよ」

夢結「え?」

 

 

 

 

 

夢結は頭に煙が出るみたいにかあーーっと顔を赤くしていた。

 

 

 

 

 

 

奈々「やれやれ…梨璃ちゃんは梅さんに送ってもらうしかないね」

夢結「と、とにかくヒュージの着ぐるみは危険よ!学園に戻ったら早急に処分なさい!」

梨璃「は………………はい………………」

 

 

 

 

 

しょぼんとガッカリする梨璃を見て、奈々は……

 

 

 

 

 

奈々(とはいえ…この出来のいい身ぐるみ…捨てるのは勿体ないな……何かいい方法はないか………)

 

 

 

 

 

と、梨璃の着てる着ぐるみに別の使い方が無いか考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奈々「…………………………あ」

 

 

 

 

 

奈々が何か思い付いた様子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝…………

 

 

夢結は梨璃と一緒に百合ヶ丘の校舎の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

梨璃「お姉様、昨日の音楽番組はどうでしたか?」

夢結「とても良かったわ。まさか競技会で着たあのコスプレの元があのバンドグループだったなんてね」

梨璃「奈々ちゃんは近未来っぽいバンドが好きみたいですよ」

夢結「確かに、あのバンドも結構レベルが高かったわね」

梨璃「わたしもあの歌に吸い込まれるようにハマりました」

夢結「ふふっ…ところで梨璃」

梨璃「はい、何でしょう」

夢結「昨日貴女が着ていたあの着ぐるみ…もう捨てたかしら?」

梨璃「それなんですけど実は…」

 

 

 

 

 

 

梨璃がそれを話す所、二人の前に何かの着ぐるみが現れた。

 

 

 

 

 

 

「ごきげんよう、お二人方」

梨璃「え?ご、ごきげんよう…」

夢結「ご、ごきげんよう……」

 

 

 

 

 

二人が見たそれは、顔のディスプレイが付いた着ぐるみの何かだったが、どことなく梨璃の着ていた着ぐるみに似ていた。

 

色は白のベースに桃色の玉の模様だが、形はヒュージの着ぐるみをベースに作り替えられてる用である。

 

 

 

 

 

夢結「…………………え?」

梨璃「…………私も………びっくり」

「おっ、早速起動してるね」

 

 

 

 

 

奈々がやって来た。

 

 

 

 

 

夢結「奈々?」

梨璃「あれ、私の着ぐるみだよね?」

奈々「そう。中々出来てるでしょ?」

夢結「奈々、あれは梨璃に捨てるように言ってたはずだけど、どういうことなの?」

奈々「ああ、あれですか?実はあの着ぐるみ出来が良くて捨てるのは勿体ないと思って私が引き取って、百由さんにサポート型のヒュージロイドに作り替えて貰ったんですよ。よく出来てるでしょ?」

夢結「ヒュージロイド!?」

奈々「因みにあの子の名前はモモッチ。一柳隊のサポートを担当するヒュージロイドです」

夢結「聞いてないわよ!」

奈々「そりゃ言ってませんから。後で皆にびっくりさせるつもりでしたから」

 

 

 

 

 

意外な事実を知って呆然とする夢結。

 

一柳隊の皆もやって来て、モモッチを見たとたん、集まった。

 

 

 

 

 

梅「これ梨璃が着てた着ぐるみだよな…」

楓「梨璃さんカラーとは、こちらも愛らしいですわ」

神琳「記念写真撮っていいですか?」

雨嘉「ゆ、ゆるキャラ?」

鶴紗「このやり取り…昨日見たな」

 

 

 

 

この状況…今更着ぐるみを処分しろとは言えない。

 

 

 

 

夢結「またヒュージにさらわれたりしない?」

奈々「二水ちゃんに作り替えてもらいましたから大丈夫だと思います」

 

 

 

 

モモッチのサイズは本来の着ぐるみより6割ほどサイズダウンされている。

 

しかも何かの推進装置を積んでいるのか、少し浮いていた。

 

 

 

 

 

夢結「………それならいいわ」

梨璃「その二水ちゃんは?」

奈々「実は不眠不休で着ぐるみの作り直しをしてて、今日は休み。無理しないでって言ったんだけどね」

梨璃「それで、このヒュージロイド…モモッチって、どんな事が出来るの?」

奈々「部屋のお掃除が出来る」

夢結「普通ね…」

奈々「それと、マギの回復するフィールドを形成したり、CHARMの応急措置が出来ます」

ミリアム「それだけじゃないぞ。こいつにはノインヴェルト戦術をサポートする機能まで備わっておるんじゃ」

梨璃「ええっ!!?」

夢結「結構高性能じゃない!」

 

 

 

 

 

ミリアムが割り込み、奈々の話を次いで話す。

 

夢結が驚くほどの高性能だった。

 

 

 

 

 

奈々「元々百合ヶ丘のマスコットキャラクターにするはずだったんですが、百由さんに変なスイッチが入って、こうなったんです」

梨璃「す…すごい…」

奈々「因みに二水ちゃん、ヒュージの着ぐるみを沢山作ってたので、これを機に他のヒュージロイドも作って他のレギオンに配備する予定のようですよ」

夢結「二水さんもそうだけど…百由ったら……」

モモッチ「夢結、梨璃、奈々、ミリアム、チャイムまで後1分。急がないと」

 

 

 

 

モモッチが時間がないことを4人に伝える。

 

残りの5人はもう校内へ入ったようだ。

 

 

 

 

奈々「おっと!急がないと。ありがとモモッチ」

梨璃「あっ待って!」

夢結「やれやれね」

ミリアム「モモッチ、お主は控え室で待っててくれ」

モモッチ「イエス」

 

 

 

 

 

残った4人はそれぞれの教室へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

と、こうしてリリィ達の1日がまた始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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