昭和20年の日本に転生した艦娘 (こぶこぶ帝国)
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プロローグ
正直、軍事やら法律やら何やらはよく分かってないので、その辺りはガバると思いますが温かい目で見守ってあげてください。
今回はプロローグなので、世界情勢のお話となりますが、是非最後までご覧ください。
それまで人と人との間でしか世界を巻き込む戦争は起きなかった。領土や労働力、天然資源を求めて、国家や民族が争い続けた。人の歴史において人々が、争いを絶やすことは無い、と言っても過言ではない。そしてこれからも人同士の争いが絶えることはない、誰もがそう考えていた。
海の底から侵略者がやって来るまでは。
2XXX年、日本近海を航行していた日本船籍の船舶が消息不明となった。消息不明となる寸前、船舶からはこのような通信が入っていた。
「大きな深海生物らしきものがこちらに向かっている」
この報告を受けて、海上保安庁が出動した。まもなく、船舶は発見されたものの、その光景を見て救助隊員たちは悟った―――乗組員は助からない、と。船舶は黒煙を上げて、沈没しかかっていた。そしてなにより、謎の深海生物たちが『何か』を食べていた。その『何か』は言うまでもないだろう。
その一報は日本政府にも伝えられたが、正直なところ半信半疑であった。あまりに荒唐無稽な話であり、時の総理は一笑した。
しかし、船舶が謎の深海生物に襲われた、という報告が東太平洋各地にもたらされた。たった1ヶ月で50隻もの船舶が消息不明になったことにより、ようやく深刻な事態だと受け止められた。
謎の深海生物が確認されてから4ヶ月、横須賀に『幽霊船』が現れた。船体は見るも無残な姿になっており、飛行甲板は怪我人で溢れていた。幽霊船の正体は米軍の空母であった。自国の軍艦、しかも空母がこのような被害に遭ったことに衝撃を受けた米国はいよいよ、深海生物の駆除を軍と同盟国に要請した。しかし深海生物は主砲や機銃、挙句の果てにはミサイル攻撃すら凌ぎ、対照的にタンカーですら沈めてしまう深海生物の攻撃を受けたフリゲート艦やミサイル駆逐艦はあっけなく撃沈された。核を撃ち込めばさすがに効いたが、その海域の汚染が急激に進行し、人に似ていて、より強い深海生物が現れるようになったことから、核の使用は全面的に禁止された。謎の深海生物はいつからか『深海棲艦』と呼称されるようになり、『神が世界を滅ぼしにきた』『宇宙人の地球侵略だ』だと噂されるようになった。
深海棲艦の出現から6年、人類は海を失った。
海に触れようものなら深海棲艦に襲われ、飛行機を海域へ飛ばそうものなら撃ち落とされた。
既に海域の汚染は東太平洋のみならず、三大洋はおろか『海』と呼ばれる地域すべてに深海棲艦が現れるようになった。太平洋の島々は既に無人の荒野と化しており、その光景が明日か1ヶ月後か、はたまた1年後の大陸の光景になってしまうのか、誰も考えたくはなかった。
深海棲艦が現れてから10年、既に地中が人類の居場所になりつつあった。国家は崩壊し、人類が新たな支配者に滅ぼされるのも時間の問題であった。そんな中、かろうじて国家体制を維持していた日本で、造船所の跡地で謎の小人が目撃されるようになった。その小人たちは人々に何度もこう呼びかけていた。「資材さえあれば人類は海を取り戻すことができる――。」この話を耳にした国のトップは藁にもすがる思いで数少ない資材の給付を命じた。
この処置からわずか20分、小人たちは若い少女を連れてトップの元へ戻ってきた。どうみても資材を使った痕跡がない。「貴重な資材をよくも――。」トップが小人に怒鳴りつけようとしたその時、少女はこう言った。
「ワシントン条約制限下で設計された、世界中を驚愕させたクラスを超えた特型駆逐艦の1番艦、吹雪です。
私たちは、後の艦隊型駆逐艦のベースとなりました。
はいっ、頑張ります!」
ちなみにフブキチャンはこれから登場するかは分かりません
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日本国から大日本帝国へ
異変
謎の小人―。通称『妖精』が生み出した『艦娘』は、人類がようやく手にした深海棲艦への反撃の手立てであった。
自身を第2次世界大戦時の軍艦だと名乗る少女は世界各国でも見られるようになり、人類側はいよいよ反撃に出た。
『艦娘』誕生から十数年、今や深海棲艦の活動海域は、僅かな海域だけとなっており、深海棲艦の恐怖から解放された人類は、『戦後』の準備を始めた。
一方、世界最大級の艦娘保有国である日本で、全国の鎮守府や泊地で艦娘が失踪する事態が相次いだ。いくら周辺海域を探索しても、ついに見つけることは叶わず、失踪した艦娘たちは『轟沈』したものと判断された。また、世界各国でも同じ事例が報告されていた。
例にも漏れず、佐世保鎮守府でも駆逐艦『時雨』も轟沈した。
そんな騒ぎも数ヶ月後には深海棲艦に勝利し、十数年間にも及んだ大戦にピリオドを打ったことで、人々の記憶から、次第に忘れ去られていった。
しかし、『轟沈』した艦娘の戦争はまだ少し続いていた。
───
いつものように出撃を終えて、いつものように入渠して、いつものように布団に入る。昨日は僕にとって、何物でもない日だった。そして、また何物でもない日が始まるはずなのに、今日は何かがおかしい。布団に入っていたはずが、固いところに寝そべっているような感じがする。それに、今は夏なのにかなり肌寒い、この疑問を解決するため、ゆっくり目を開けてみた。すると―――本当に外にいた。
「え、どうしてこんな場所に...」
驚きのあまり声が出てしまった。辺りを見渡しても、鎮守府の姿はない。そもそも海が見えない。あるのは自身を囲む木々の姿だけであった。
「どうして僕は森の中に...?」
自分が抱えている疑問を口に出しても、誰かが応えることはなかった。仕方がないので、とりあえず森を抜けるために、歩くことにした。日は既に西に傾き始めていた。
───
しばらく歩いてみると、森を抜けて田園に出た。そこで育てられているのは稲ではなく、麦であった。しかし、今は夏だ。二毛作を行う地域ならば、夏は稲、冬は麦というのがセオリーだ。そんな疑問を抱えながら田園も抜けると、どこか懐かしい雰囲気の建物がちらほらと見え始めた。まるで『艦』であったときに見たような――。そんなことを考えていると、ようやく市街地が見えてきた。しかし、そこは明らかに佐世保とは無関係の街だということが分かった。既に空は暗くなっているのに、明かりが全く無いのだ。人類が反撃に出てから十数年、佐世保の街は軍都として『戦前』よりも大きく栄えており、九州で最も美しい夜景が見られる地域となっているのにも関わらずだ。自分はどうやらゴーストタウンに迷い込んでしまったらしい、これを確信すると疲れが急に押し寄せてきた。
これから補給はどうしようかな――。そんなことを考えながら寝転がっているうちに、僕は意識を手放していた。
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