ガラルの悪のジムリーダー (アタランテは一臨が至高)
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本編
VSマクワ


 ――君は、どのタイプが一番好きなのですか?

 

 ――ひこうだ。

 

 ――ふむ。それはまたどうして?

 

 ――自由だからだな、鳥ってヤツは。アンタの道具になってる俺と違って。

 

 ――おやおや、それはそれは……。では、あなたの担当するジムは決まりました。

 

 ――ひこうなのか?

 

 ――いえ、はがねです。

 

 ――……知ってたよ。俺は道具だもんな、一番都合の良いジムに決まってるさ。

 

 ――期待に沿えずすみませんね。それではカイ君、あなたには()()()()()()としての役目があるのを忘れずに。

 

 ――わかってるって。じゃあな、()()()()()()

 

 

 

◇◇◇

 

 ポケモンリーグ。

 世界に数多く存在するポケモントレーナーたちの頂を決定する大会。

 ガラルでは多くの産業に影響を及ぼし、経済の面から見ても非常に重要な催しである。

 

 今日もまた、選手たちの行く末を決める一戦がガラルの地で行われていた。

 

『さあさあさあさあ! 遂にガラルポケモンリーグは本日で今季の最終日を迎えます!

 ここ、ナックルスタジアムに火花を散らしながら並び立つ両雄はマクワ選手とカイ選手!』

『両選手とも若手の選手ですねえ』

『はい。両選手の今季の成績を並べてみましょう』

 

 マクワ 背番号 188 メジャークラス

 得意タイプ いわ

 試合数 89 46勝43敗0分 勝率0.517

 

 カイ 背番号 151 メジャークラス

 得意タイプ はがね

 試合数 82 54勝27敗1分 勝率0.659

 

『数字だけを見てみればカイ選手が優勢、といったところでしょうか』

『そうですね。マクワ選手はシーズン中盤のメロン選手との一戦以降、一気に勝率が落ちてしまいました。前年度の成績は非常に良かっただけに少々惜しい気もしますね』

『はい。マクワ選手は本試合で3体以上の手持ちを残しながら勝利を収めないと、マイナークラスに降格してしまいます』

『前期からジムリーダーに就任したサイトウ選手の台頭も逆風でしたねえ。いわタイプでかくとうタイプの相手をするのはやはり、厳しいものがあります』

 

 実況と解説の言葉通り、モニターにはまだ試合前だというのに焦った様子のマクワが映る。

 緊張した面持ちでボールを握る彼を、観客席に座るファンは不安げな表情で見つめていた。

 

 しかし試合を平常心で迎えるのもまたプロとしての技能の一つ。

 大きく息を吸うと、キリッとした表情で眼前の相手へボールを突きつける。

 

「カイさん。今日は勝たせてもらいます」

 

 対する男。彼の名はカイ。

 彼は数年前、ローズ委員長の推薦によりジムチャレンジに挑戦。そして初出場にして優勝を飾り、その実績を以ってはがねタイプのジムリーダーに就任した。

 当時、()()()()()()()()()彼の才能を見抜いたローズ委員長には多くの賞賛の声が上がったという。

 

 そんな彼も、マクワに合わせるようにボールを構えて挑発の言葉を返す。

 

「へぇ……やってみろよ」

 

 審判の合図と共に両者ボールを投げる。

 

「Guaaaaaa!!!!」

「Shaaaaaa!!!!」

 

 観客の歓声と共に現れたのはバンギラスとハガネール。

 互いに眼前の巨躯を目に据えると咆哮を上げて敵を威嚇する。

 

『さあ両者先鋒を繰り出しました! マクワ選手はバンギラス、カイ選手はハガネールを展開します』

『やはりどうしてもタイプ相性上カイ選手が有利ですが……おっと?』

 

「すみませんねカイさん……メジャー残留がかかっているので、余りスタイリッシュな試合は出来ません、が!」

「……!」

 

 マクワのダイマックスバンドが輝くと同時、手に握られたボールへとバンギラスの姿が吸い込まれていく。

 

 

 初手ダイマックス。

 基本的にダイマックスは相手より後に行うのが良い、とされている定石を完全に覆す一手。

 一昔前に流行った戦法ではあるが、盤面をいきなり荒れさせるこの戦い方は非常にリスキーとされ、使い手は少ない。

 

『おおおーっとォォ!! マクワ選手、いきなりのダイマックスです!!!』

『大差で試合に勝たなければいけないが故の初手ダイマックスでしょう。相手の戦術を崩壊させ、一気に勝利をもぎ取りに行くつもりだと思います』

 

 当然、虚を突かれたカイは茫然とその様子を見つめるだけであり――

 

「読めてるぜ、マクワァ!!」

 

 ――否。

 彼のダイマックスバンドも又その輝きを増し、呼応するかのように目の前の相手と同じ動作を取る。

 

『な、な、なんとォォォ!! カイ選手も初手ダイマックスを選択していた!! まさかの展開に会場は大盛り上がりだァァァ!!』

 

「なにッ――しかし、このまま叩き潰せば同じこと! バンギラス、『ダイアーク』!」

「無駄だ。ハガネール――『ダイウォール』」

 

 怪物の地を割る一撃も、鋼の城壁には一歩及ばず。

 マクワは自身の目論見が完全に読まれていたことに思わず顔を顰める。

 

『カイ選手のハガネール、バンギラスの一撃を完ッ全に受け止めましたァ!!』

『いやぁ、見事ですねえ。最初からあの指示を出来る勇気は流石カイ選手といったところです』

 

 一度技を防がれたバンギラスは、今度は至近距離での組み合いにかかる。

 対するハガネールも、やられてばかりでは無いとその硬度を活かして反撃する。

 

「そもそも、タイプ相性からして明らかに俺に有利な勝負なんだ。そこに勝ち方の縛りまでつくとなると、お前は危ない賭けに出ざるを得ない」

「……」

 

 鋼の大蛇と岩の怪物が組み合う中、告げられた言葉にマクワは押し黙る。

 

「あのバンギラス、『じゃくてんほけん』か『いのちのたま』か、もしかすると特殊型にでもしてあったのかもしれないが――とにかく、ダイマックス状態で存分に暴れられるようにしてあったんだろう?」

「……随分と、よく喋るんですね」

 

 冷や汗を流しながらもようやく返したマクワの一言に、カイは笑顔を深める。

 

 やがて、赤い閃光を周囲に放ちながらバンギラスとハガネールのダイマックスが解除された。

 カイの指示でハガネールが守り気味に戦っていた所為か、互いの傷は先ほどまでの激戦を繰り広げていた両者と思えない程に少ない。

 すぐに両トレーナーの指示で敵を組み伏せにかかる。

 

「ダイマックスという勝負をひっくり返す要素がこうして消えた以上、タイプ相性の不利を覆す目はほとんど存在しない。……お前も、もうわかってるんだろう?」

「…………」

 

 火を吹き地を揺らす怪獣と、圧倒的な堅牢さで対抗する巨蛇。

 やがてお互いに少なくない傷を負っていき、一匹目での戦いにおける勝者が決まろうとしていた。

 

「――バンギラスッ、『だいもんじ』だ! これで決めろ!!」

「――ハガネール。落ち着いて躱して、『ボディプレス』だ」

 

 互いにプロのトレーナー同士。この一撃で、一匹目の勝敗がどうなるか、ひいてはこの一戦の勝敗も決まると理解していた。

 

 技の交錯は一瞬。その一瞬で、勝負は決した。

 

「GUAAA……」

「SHAAAAAA!!!」

 

 倒れ伏すバンギラスと、その上で勝利の咆哮を上げるハガネール。

 誰の目から見ても、勝敗は明らかであった。

 

「――お前の負けだよ、マクワ」

「――ッ」

 

 

 

 この日、将来のチャンピオンとまで目されていたジムリーダー・マクワは、就任以来初のマイナークラス落ちを経験した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 シーズン最終戦を終え、額をぬぐいながら控え室までの廊下を歩く。

 すると、案外多く汗を掻いていたことに気付いた。

 

「終わってみれば結構大差で決着が付いたが……」

 

 マクワは強い。それはこっちの世界に来てからも知っていたことだったし、()()()()でも後半のジムリーダーであったことから理解していた。

 

 だから、()()()()()

 戦術が読まれたからなんだ。その程度、ジムリーダーなら何度だって経験している。実際、冷静になったマクワならばあそこから巻き返すことも不可能では無かっただろう。

 

 精神攻撃は基本中の基本だ。あのピンクババアなんかもっとエゲツない。

 彼も何かしら自分の心を落ち着ける術は持っていたはずである。

 

 しかし、事実として彼は冷静さを失い、敗北した。

 プロの世界は残酷だ。そこには結果しか残らない。

 

 自分でも卑怯だと思いながらも、勝利の味を噛み締めて歩く。

 このスタジアムから控え室までの廊下に抱く思いは複雑だ。ただ、今日は良い気分で歩けたというだけのこと。次はどんな思いを抱いて歩いているかわからない。

 

 

 やがて控え室にたどり着くと、そこには既に人影があった。……マネージャーだろうか?

 訝しみながらも扉を開けると、聞き慣れた声がかけられる。

 

「いやあ、素晴らしい試合でしたよカイ君」

「……ローズ委員長に、オリーヴ」

「呼び捨てにするなと何度言えば良いのですか、カイ」

 

 マクワとの一戦を終え、控え室に戻ってきた俺を迎えたのは直属の上司、ローズ委員長とその秘書のオリーヴであった。

 

「それで、何か用か? ジムリーダーとしての活動は()()()()()()こと以外好きにやっていいってはずだったが」

「はい、それで構いません。今回は特に指示があるわけではなく、単に報告をしに来たのです」

 

 ……報告? あの忙しいローズ委員長が直々に来るような報告だって?

 考えてみても全く思い浮かばない。ひとまず話を聞いてみることにする。

 

「報告って、一体なんだ?」

「ええ。予てより準備を進めていたメインプランですが――もうすぐ、本格的に始動させます」

「……!」

「具体的には来年度からでしょうか。ダンデ君の協力次第でもありますが、ジムチャレンジの終盤には最終段階まで移行出来ていると思われます」

 

 メインプラン。

 それはガラルのエネルギー問題を解決するための計画でありながら、ローズ委員長がラスボスたる所以。

 

 ――そして。俺がローズ委員長の道具という立場に甘んじている理由でもある。

 

「アナタにとっては嬉しい話でしょう。色々と聞きたいこともあると思います。だからこそ、私がここに来たのですよ」

 

 ローズ委員長は笑顔で俺の言葉を待つ。

 ……相変わらず、この人の表情は読めない。この計画で出る犠牲者たちのことをどう思っているのか、どのような思いでこの計画を立てたのか、俺には推し量ることは出来ない……が。

 

「いや、大丈夫だ」

「おや? てっきり沢山質問が来るものかと」

「大体は前から聞いてて把握してるしな。結局のところ、一番重要なのは……その計画が達成されたら、俺の()()()()()()()()()()()()が終わるってことだ。それで良いんだろ?」

 

 俺の言葉に、少し面喰った様子のローズ委員長。

 しかし、すぐに笑顔を取り戻して俺の問いに答える。

 

「ええ。このガラルの問題が解決された暁には、あなたを縛るものは何もありません。旅をするも良し。ジムリーダーを続けるも良し。私の持つ権限に誓って不自由の無い生活を保障しましょう」

「……それなら良い。それなら良いんだ」

 

 俺はもうすぐやって来る自由な生活を思い浮かべ、笑顔を浮かべようとした。

 

 

 ――あまり上手くは、笑えなかった。

 



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【イケメンデブ】ポケモンリーグ マクワVSカイ実況スレ☆1【マイナー降格か】

バトル後には掲示板回を挟んでいきます。


2:名無しの短パン小僧 ID:Z5eH8lkm+

wktk

 

3:名無しの短パン小僧 ID:4Q2zuKCYj

イケメンデブとかいう褒めてるのか貶してるのかわからない呼称

 

5:名無しの短パン小僧 ID:mXTH2/x3x

実際のところマクワは残留できそうなんか?

 

6:名無しの短パン小僧 ID:wap79gNvr

>>5

無理

どうやってもタイプ相性不利に3体残せる訳がない

 

7:名無しの短パン小僧 ID:9itNTfO6p

今季の成績も4戦やって3-1で負けとるしな

 

10:名無しの短パン小僧 ID:2macwa2QY

>>7

一戦勝っとるやん!行けるで!!

 

13:名無しの短パン小僧 ID:MhHr8V/CP

>>10

これはイケデブファンの鑑

 

 

 

 

 

41:名無しの短パン小僧 ID:blVdjHVm8

マクワ手震えとるやん

 

44:名無しの短パン小僧 ID:EyNrscISE

>>41

そら(不利相手に大差で勝てって言われたら)そう(なる)よ

 

45:名無しの短パン小僧 ID:0uR5RCyor

3体残すってどういう作戦立てるんやろ

それとも残留はもう諦めて普通に勝ちにいくんかな

 

47:名無しの短パン小僧 ID:Z6CQFBXu4

マクワが緊張しとるからカイがもう勝ち誇った顔しとるやん

 

49:名無しの短パン小僧 ID:4kNpyG8Qr

普通にカイが相性で完封する未来しか見えん

 

50:名無しの短パン小僧 ID:/JfHMZCjK

シーズン前半やったらマクワ応援しとったのに

 

52:名無しの短パン小僧 ID:t3x+KD0m2

>>50

戦犯メロン

 

54:名無しの短パン小僧 ID:DNgTZTxAL

>>52

おっぱいがあるからセーフ

 

56:名無しの短パン小僧 ID:LoZN8xo3i

セキタンザンでどうにかなるやろ()

 

58:名無しの短パン小僧 ID:mylZBC6De

デブ応援しとるから勝って欲しいわ

 

60:名無しの短パン小僧 ID:wk7Kb9lZF

>>58

ほんまに応援しとるんか…?

 

 

 

 

 

79:名無しの短パン小僧 ID:dcL0DtHAQ

ファッ!?

 

80:名無しの短パン小僧 ID:Gs/oLzcwp

初手ダイマ!?

 

82:名無しの短パン小僧 ID:eK1d4KN60

久々に見たな

 

86:名無しの短パン小僧 ID:qr4mTFENM

(アカン)

 

90:名無しの短パン小僧 ID:yV452S1Zb

先にダイマ切ったら負け定期

 

91:名無しの短パン小僧 ID:51E86IPBS

!!!???

 

92:名無しの短パン小僧 ID:h7zk7mbrK

初手ダイマ返し!?

 

97:名無しの短パン小僧 ID:v8RO+i4cT

!!!?!wwww!??www??!!ww!??wwwww

 

99:名無しの短パン小僧 ID:G4v4cUkJu

意味わかんなすぎて草

 

 

 

 

 

111:名無しの短パン小僧 ID:R5IEFezPZ

何で初手にダイウォール指示できるんや?

マクワがダイマしとらんかったらダイマの時間無駄になるやん

 

113:名無しの短パン小僧 ID:+83ipW5QM

>>111

カイはダイマに合わせてダイウォールは良くやる

 

114:名無しの短パン小僧 ID:5KrGjxBNX

>>111

読んだんやろ

 

116:名無しの短パン小僧 ID:LGYrcI4aS

これもう勝負決まってね?

 

117:名無しの短パン小僧 ID:rjjmksiyI

めっちゃ勝ちの目潰そうとしてるな

 

118:名無しの短パン小僧 ID:2macwa2QY

バンギラス行け!やれ!お前に勝負はかかっとる!

 

120:名無しの短パン小僧 ID:J/vjAu3fe

>>118

マクワファンの鑑

 

 

 

 

 

134:名無しの短パン小僧 ID:wPSNOy0So

カイめっちゃ喋るやん

 

136:名無しの短パン小僧 ID:J/C+ZNRMZ

こいつほんま口悪いな

 

137:名無しの短パン小僧 ID:97lHfR0Ji

精神攻撃は基本

 

140:名無しの短パン小僧 ID:ta4PCVSwL

>>136

「16歳の動体視力なら今の見切れたんじゃないんですかねえ!?」

 

142:名無しの短パン小僧 ID:jwJQQAbZQ

>>140

伝説の語録

 

143:名無しの短パン小僧 ID:EoJVT6qUH

>>140

ポプラに喧嘩を売った唯一の男

 

146:名無しの短パン小僧 ID:hI0pTu/5A

>>140

この後負けるのほんと好き

 

147:名無しの短パン小僧 ID:Q7+pk8YGe

実際少しでも相手の集中切らすのは大事やからな

ポプラなんかその最たるものやし、キバナとかも天候で気を散らしにいってる

 

150:名無しの短パン小僧 ID:s8IGuHlL+

???「勝ちたい! そう思った時に心の隙が生まれます」

 

152:名無しの短パン小僧 ID:clo4P7MKO

>>150

マイナークラスのジムリのネタ出しても誰もわからんで

 

154:名無しの短パン小僧 ID:OqguKGyos

>>152

わかってて草

 

156:名無しの短パン小僧 ID:TDz/ybKK4

>>152

マクワが降格したら交代するのこいつなんだよなあ

 

158:名無しの短パン小僧 ID:dv4IREK3v

>>150

期待の新人

 

 

 

 

 

422:名無しの短パン小僧 ID:qORFfJ4XF

 

423:名無しの短パン小僧 ID:ORMCY8NvO

4体目死んだ

 

426:名無しの短パン小僧 ID:48y0aD33O

【悲報】イケメンデブ、降格確定

 

429:名無しの短パン小僧 ID:2T4upRpEy

知 っ て た

 

430:名無しの短パン小僧 ID:uWHqmm0jl

相性不利だからね、しょうがないね

 

433:名無しの短パン小僧 ID:bGQCF6/Uz

これでサイトウちゃんが昇格やな!

サイトウファンのワイにとっては朗報や。よくやったでカイ

 

435:名無しの短パン小僧 ID:tIJQshieq

>>433

お前ファン名乗るならサイトウのリーグカード全部持ってるんだろうな?

 

437:名無しの短パン小僧 ID:Z1cOliUOb

>>435

まだ2枚しか出てない定期

 

438:名無しの短パン小僧 ID:PKVwSw+6v

>>437

余裕過ぎて草

 

440:名無しの短パン小僧 ID:seVhDgE9U

イケデブ前のシーズンは強かったのに

 

443:名無しの短パン小僧 ID:zXpD/CTU9

これでママと一緒のクラスだね^^

 

445:名無しの短パン小僧 ID:/1TXYUlf4

>>443

ぐう畜

 

447:名無しの短パン小僧 ID:b8j5K3Gd/

>>443

元凶定期

 

451:名無しの短パン小僧 ID:y354AslHN

明らかにメロンママとの一戦以降負けが増えてるんだよなあ

 

454:名無しの短パン小僧 ID:1mq7R4E/+

>>451

言うほどか?

 

51戦36勝15敗

勝率0.706

ママ戦

38戦10勝28敗

勝率0.263

 

455:名無しの短パン小僧 ID:fNcFARnYm

>>454

流石にひどすぎて草も生えない

 

456:名無しの短パン小僧 ID:DPhK5NfpM

>>454

元凶どころの話じゃない

 

458:名無しの短パン小僧 ID:xN0n6RiCz

>>454

打率かな?

 

459:名無しの短パン小僧 ID:+XWl2xKMZ

>>454

これはマイナー落ちも妥当な成績

 

460:名無しの短パン小僧 ID:XqbVdVl0S

いかんでしょ

 

 

 

 

 

822:名無しの短パン小僧 ID:uOoBBPGmm

なんでこいつ最後の一匹なのにダイマックスしないの?

 

825:名無しの短パン小僧 ID:9wdEwxBuf

>>822

マメパト頭定期

 

826:名無しの短パン小僧 ID:L+KdCaOCL

何で初手ダイマックスとかいうインパクトのでかいこと忘れるんや

 

829:名無しの短パン小僧 ID:DTRdwzZ85

元々大きいポケモンだったから勘違いしたんやろ()

 

830:名無しの短パン小僧 ID:qB/lKTTtN

マクワ絶望しとるがな

 

832:名無しの短パン小僧 ID:2macwa2QY

>>830

こっから4タテすれば勝てるで!

 

834:名無しの短パン小僧 ID:4FZvhe7Bi

>>832

だから絶望しとるんやろ

 

835:名無しの短パン小僧 ID:eer+dbFy/

>>832

このポジティブさ見習いたい

 

836:名無しの短パン小僧 ID:UITZKi0Zf

ラストに残されたドサイドンも困惑しとるやろなあ

 

837:名無しの短パン小僧 ID:R2ztfnwXo

え!? 鈍足ポケモンで四タテを!?

 

839:名無しの短パン小僧 ID:/gRU7SsX1

>>837

できらぁ!

 

843:名無しの短パン小僧 ID:XXb7tSn3s

>>839

やってみろ定期

 

 

 

 

 

911:名無しの短パン小僧 ID:5le0il9TQ

結局予想通りの展開やったな

 

913:名無しの短パン小僧 ID:si6IvFci2

(相手が)3体以上残して(相手が)勝利できたから…(震え声)

 

916:名無しの短パン小僧 ID:J57KsvJR4

マクワ前季ほんまに強かったのになあ

 

918:名無しの短パン小僧 ID:CLLO+3uIw

ダンデのリザ何回も倒しとったやろ

戦績もめっちゃ良かったし、将来のチャンピオンも全然過言じゃないで

 

920:名無しの短パン小僧 ID:otlJf8INq

>>918

過言やぞ

 

前季マクワ

97戦68勝29敗0分

勝率0.701

 

前季ダンデ

71戦71勝0敗0分

勝率1.000

 

923:名無しの短パン小僧 ID:VRT+WWJsQ

>>920

 

924:名無しの短パン小僧 ID:14lmXjS1i

>>920

そいつを比較に出すな

 

926:名無しの短パン小僧 ID:0uU2cWaSk

>>920

誰も超えられない定期

 

928:名無しの短パン小僧 ID:HiQm1h+ej

>>920

勝率1.000ほんと好き

 

930:名無しの短パン小僧 ID:Ro055DwVL

カイの今季まあまあやったな

 

932:名無しの短パン小僧 ID:JsMTZ/Pd/

>>930

可も無く不可も無くって感じやろ

序列も3番目維持やし

 

934:名無しの短パン小僧 ID:8ZSls9+tq

勝った後のカイ喜びが隠し切れてないのちょっと好き

 

936:名無しの短パン小僧 ID:ttapDdOBE

カイってクールキャラなん?

 

937:名無しの短パン小僧 ID:j3aSULGST

>>936

リーグカードにはそう書いてあるやで

 

939:名無しの短パン小僧 ID:DcRVcE2j9

>>937

その文章が載ってるリーグカードの写真キバナに勝った時でめっちゃ嬉しそうなのほんと草

 

942:名無しの短パン小僧 ID:R9nZx688q

>>939

クールキャラ(満面の笑み)

 

943:名無しの短パン小僧 ID:0n6J1DIPI

試合中に挑発するやつがクールキャラな訳ないんだよなあ

 

 



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withルリナ

今回は山なし日常回です


“ジムリーダー序列確定 キバナが又も1位”

 

 デカデカと書かれた新聞の見出しを眺めながらポケモンリーグの書類仕事を行う。

 記事を見てみると、今季のメジャークラスのジムリーダーの序列と、担当するジムが記されていた。

 

 1位 キバナ  ナックルスタジアム

 2位 ネズ   スパイクスタジアム

 3位 カイ   キルクススタジアム

 4位 カブ   エンジンスタジアム

 5位 ヤロー  ターフスタジアム

 6位 ポプラ  アラベスクスタジアム

 7位 ルリナ  バウスタジアム

 8位 サイトウ ラテラルスタジアム

 

「サイトウ以外は見慣れたメンバーだよなあ。……ん? でもこれってもしかすると……俺の所を除けばゲーム通りか」

 

 基本的にジムチャレンジの順番は序列順だが、難易度を考慮したりしてヤロー・ルリナ・カブの三人は最初に配置される。

 すると、ものの見事に原作通りの順番になるのである。

 

「確かにローズ委員長もメインプランを開始するって言ってたしなあ……。とすると、来るのか。()()()が」

 

 

 この世界には、「主人公」が存在する。

 

 遠く離れたカントー地方ではとある悪の組織がたった一人の少年によって壊滅させられ、ジョウトに落ち延びた残党もこれ又一人の少年によってその目論見を阻止された。

 

 ホウエンでは天変地異を鎮めた女の子がいると言うし、シンオウには時と空間の歪みを正した子供たちがいる。

 

 イッシュでは一人の少年が竜を目覚めさせポケモンリーグを救い、カロスでは世界の危機すら防いだ子らがいる。

 

 アローラの話は聞いていないが、大方国際警察が情報統制でもしているのだろう。ウルトラビーストのことを一般人に知られる訳にはいかない、という理屈だ。

 

「あー、気が重いな」

 

 果たして自分は主人公という存在を目の前にして、どのような思いを抱くのだろうか。

 普通に相対するのは構わない。実際、今挙げた内の何人かとは会ったことがある。

 

 問題なのは、俺が()()であることだ。

 ローズ委員長を倒し、ムゲンダイナを倒し、果てには無敵のチャンプまで下す将来のチャンピオン――マサル、あるいはユウリ。

 

 彼、あるいは彼女と戦って俺は勝てるのだろうか。

 少なくともザシアン・ザマゼンタはあちら側につくだろう。こちらも戦力は蓄えているとはいえ、主人公というのは勝利する存在だ。

 

「あー、でもなあ。やんなきゃいけねぇんだよなァ」

 

 嫌気のさしていた頭を切り替えるためにコツンと額を殴る。

 

 結局のところ、俺に選択肢はないのだ。

 勝たなければ、()()は訪れないのだから。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ――俺は今、不自由を感じていた。

 でも、俺がいつも恐れていた不自由はもっとシリアスなものであったはずだ。

 

「アナタの愛するポケモンのためにィ――マクロコスモス・ライフのポケフード、大好評発売中!!」

「……はい、OKでーす」

 

 監督らしき男からその言葉が出ると同時、被写体であった男――カイは一気に疲れた表情を見せる。

 

 先ほどまでカイは監督の怒涛のNG地獄に襲われていたのだ。一体何回撮り直しをしたのか。

 撮影が終わっただけで自由を感じるようになってしまっている。

 

「見たか、30秒間ぽっちのためだけにこんなにNGが出るんだぞオリーヴ」

「アナタのぎこちない演技が駄目なのです。一体今までで何本CMを撮ってきたのですか。それと、呼び捨てはやめなさい」

 

 現在、ジムリーダーとして一躍有名人となっていた俺は出演料のかからないタレントとして都合よくマクロコスモス社のCMに使われていた。

 

 当然、ローズ委員長に逆らえない俺が出演依頼を断れるはずも無く。

 結果としてかなりの頻度で新しくCMを作る度に呼ばれ、次第に監督たちもトップアスリート相手と思えない程好き勝手にNGを出すようになっていた。

 

 流石に俺もこの現状には不満を持ち、それとなくローズ委員長に愚痴を零したところ今回のオリーヴ派遣に至ったという話だ。

 しかし先ほどの発言からして、委員長のために働けることこそ幸福と信じているこのローズ馬鹿に見てもらっても何も変わらないだろうことがわかった。

 

「あー、うん。もういいや、帰るわ」

「そうですか。それでは私はもう少し彼らの作業を観察してから帰ります」

 

 ローズ委員長から与えられた仕事はどこまでも真面目に熟すオリーヴを後目に、スタジオを出る。

 

 きっとこれからも体よく使われ続けるのであろう。そう思うとまた疲れた気分になり、溜息を吐く。

 

 溜息は幸せを逃がすと言うが、抑えきれない苛立ちが募っていた。ローズ委員長と違って融通がきかないヤツだ、と頭の中でオリーヴの愚痴を言って鬱憤を晴らしながらTV局内を歩いていると、仕事帰りであろうルリナと出会う。

 

「あら、カイじゃない。撮影終わり?」

「そうだ。今日はポケフードのCMだな」

「へぇー。アナタ、マクロコスモスグループの企業でCMに出てないトコもうないんじゃない?」

 

 何となく、一緒に歩く雰囲気になる。

 ジムリーダー同士は結構仲が良い。流石に試合前後なんかは関わらないようにしているが、今のようなオフシーズンだったら試合のことは切り離して一緒に遊ぶこともある。

 

 俺が降格を決定づけたマクワだって今……は流石に厳しいかもしれないが、もう少ししたら一緒に汗を垂らしながらトレーニング、なんていうのも出来るだろう。

 

「今から時間空いてる? この前いい喫茶店を見つけたのよ」

 

 大き目の帽子とサングラス、いつもの変装用のそれを身に着けたルリナから茶の誘いを受ける。

 特に断る理由はない。俺もマスクと眼鏡を手に、頷いた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ルリナの案内に任せて道を歩いていくと、TV局から5分ほどで目的地に着いた。

 ルリナはもう顔馴染みになっているらしく、マスターと挨拶を交わしてから席に座る。

 

「エネココアを2つ。あと、スッパサダとアマサダもお願いできるかしら」

「はい、わかりました」

 

 注文も完全にお任せだ。ルリナのセンスを信じよう。

 

「勝手に頼んじゃったけど大丈夫? カイって甘党だったと思うから甘いものにしたけど」

「ああ、うん。よく覚えてんな」

「そりゃあ見た目にぴったしだもの、すぐ覚わるわよ」

 

 とするとスッパサダはルリナの、アマサダは俺のになるのか。

 

「それにしても、マラサダなんてこの辺で食べられるんだな」

 

 マラサダはゲームだとサンムーンで出てきた食品で、ドーナツみたいなお菓子である。確か現実世界にも同じものがあったはずだが、実際に味わったことはない。

 

「うん、この店の本店ってアローラにあるらしくて。メニューもあっちのものとほぼ一緒なんだってさ」

「へえ。……あ、お前が広告に出てるぞ」

 

 正直言って、アローラには余り良い思い出はない。咄嗟に目に入ってきた服の広告に話を逸らす。

 

「ああ、あれね。結構ケチつけられて余り良い仕事じゃなかったわ」

「ふーん。お前クラスに文句言うやつもいるんだな」

「そうそう。こっちは真剣にやってるのに仕事以外のところで色々言われたりすると流石に腹が立つわね」

 

 ルリナの愚痴を適当に流しながら、やってきたエネココアに口をつける。

 すると、思ったより熱くて舌が痛みを伝えてきた。

 

「熱っ」

「え、大丈夫? この熱さが無理なんてあなた相当の猫舌なのね」

 

 慌てて口からカップを離し、息を吹きかけて中身を冷ます。

 猫舌な人は舌の使い方が下手なだけらしいが、どれだけ経っても熱い物を口に入れられる気がしない。

 

「まあでも、はがねタイプのジムリーダーらしいっちゃらしいのかしら。ほのおが弱点だし」

「そんなところが似られても困る」

 

 一体どうすれば克服できるのだろうか。ほのおが弱点じゃないはがねタイプなんて、本当に少数しかいない。

 その少数に当てはまるポケモンを思い浮かべていると、ルリナも同じことを考えていたようでその内の一匹の名を挙げる。

 

「あ、そうだ。ねえねえ、この前使ってたエンペルトってどうやって手に入れたの? あの子ってかなり珍しいポケモンじゃない。前から育てたいって思ってたのよね」

 

 この前、というかエンペルトはかなりの頻度で使っている。

 というのも、みずタイプの使い手であるルリナが興味を持っていることからわかるように、エンペルトは「みず・はがね」という非常に珍しい、というか唯一のタイプの組み合わせをしており、他のポケモンでは代わりがきかないのだ。そのため、ジムリーダーとしての戦いのときにはかなりの確率でパーティーに入っている。

 

「確かにガラルにエンペルトはいないもんな」

「というか、シンオウにしかほぼ生息してないし、そのシンオウでも珍しいポケモンじゃない」

「いや、まあその、俺のポケモンはほぼ全員マクロコスモスに用意してもらってるから……」

「あー、博士とのコネがあるってワケね」

 

 俺の言葉に納得した様子を見せるルリナ。

 今の俺の手持ちは全てローズ委員長に用意してもらったものであり、このポケモンが欲しいと言えば簡単に手に入るのが現状だ。……はがねタイプという条件が付くが。

 

「それならさ、この前タマゴが産まれたらしいから一匹あげようか?」

「え、いいの!?」

 

 目を輝かせて詰め寄るルリナに、思わず身を引く。

 女というのはやはりペンギンが大好きなのだろうか。いや、俺もポッチャマは可愛いと思うが。

 

「ああ、うん。別にいいよ」

「本当!? え、一体何を要求してくるワケ……?」

 

 俺が快諾すると今度は逆に腕で体を隠しながら距離を取るルリナ。

 こいつぶっ飛ばしてやろうか。

 

「お前一体俺をなんだと思ってんの?」

「試合中に年増とか言って煽ってくるクソガキ……」

 

 ルリナの言葉に青筋を浮かべながらも、アマサダを食べて心を落ち着かせる。

 やはり甘味は良い。人を癒す力がある。

 

「別に何もいらねえよ。……いや、やっぱ貸しひとつってことにしとくか」

「あ、そっちの方が安心。カイが何も要求しないなんて偽物かと思った」

 

 本当に俺をなんだと思っているのだろうかコイツは。

 イライラを抑えるためにアマサダをほいほいと口に入れていると、あっという間になくなった。

 

「先にお会計だけしとこっか。ちょっと払ってくるね」

「んあ? ちょっと待てよ、俺の分はいくらだ? 今財布出すから」

「いいよ、このくらい私の奢りで」

「いや、ダメだろ。ちゃんと払うわ」

 

 俺の言葉に、不思議そうに首を傾げるルリナ。

 

「何そんな顔してんだ? 普通に払えるぞ」

「いやいや、カイに払わせる方がダメでしょ。それに私が誘ったんだし」

 

 何だこいつ。俺に喫茶店の注文代を払う程度の甲斐性もないとでも思ってんのか?

 

「いいか? 俺はマクロコスモスグループの役員だぞ。それに今季は俺の方がお前より順位が上なんだから、モデルのことを勘定に入れたって俺の方が年収は上だ。この程度軽く払えるわ」

「あ、ふーん。そういう事言うんだ。親戚のお年玉あげた子供みたいな感じ」

「あぁ!?」

 

 これは煽られてんのか?

 そっちがその気なら、こちらも――と、更に口を開こうとしたところで横槍が入る。

 

「あ、あの……もしかして、カイ君とルリナさんですか?」

「ち、違ったら申し訳ないんですけど……」

 

 色紙を持った10代の少女二人組。サインを求めに来たファンだと一発でわかるが、俺だけ「くん」付けなのはなんなんだ。

 

「あぁ、まあそうだけど……」

「えー!? すっごーーい! ジムリーダー同士でお茶してるとこ見れるとか私今人生で一番幸運な瞬間かもしんない!!」

「え、ヤバいヤバいヤバい、ヤバいって!! あの、すみません、もし良ければサインをくれないでしょうか!!」

「あ、はい……」

 

 ファンたちの勢いに呑まれて思わず頷く。

 一方ルリナは慣れた様子でペンを受け取り、既にサラサラとサインを書いていた。

 俺も慌てて自身のサインを書く。

 

「あーーーー!! 本当にありがとうございます! 家宝にします!」

「あ、うん……」

「え、この店って良く使ったりするんですか!? カイ君とルリナさんっていつもお茶したりするんですか!? この前の二人のバトルで……」

 

 サインを書いても止まらない二人の勢いに、俺はルリナを盾にして縮こまる。

 一方ルリナは特に動揺した様子もなく二人を落ち着かせて質問に答えたりしていた。

 

 なんと頼りになる人物か。先ほどまで口論をしていた自分が恥ずかしくなる。

 

 その後ルリナの言葉に相槌を打つだけの機械になった俺がいつの間にかルリナに奢られていた事実に気付くのは、家に帰った後だった。

 

 

 

『To:ルリナ

 内容:今日の代金、今度返す』

『From:ルリナ

 内容:子供に払わせる訳にはいかないでしょ』

 

 

 やっぱ舐めてんなコイツ。




主人公の外見はショタです。


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withサイトウ その1

 マイクの前、二人の少年少女が大きなモニターを見つめながら座っている。

 どうやらもうすぐ始まる何かを待っているようで、何も喋らずにじっと動かずのままだ。

 

 やがて、3、2……とカウントダウンが聞こえたのちに、灰色の髪の少女が口を開く。

 

「はい、どうも皆様こんにちは」

「ちわー」

「本日は『ジムリーダーの知識量を試せ!~レンタルバトル~』ということで、ジムリーダーのオニオン選手とメロン選手に番組の用意したレンタルポケモンを用いて戦って頂きます。

 実況・解説は今季からラテラルのジムリーダーに就任しました私サイトウと、同じくキルクスジムリーダーのカイさんで務めさせていただきます」

「サイトウお前、固くない? バラエティーなんだからもっと楽しくいこうぜ」

「すみません、これが素なものでして」

 

 ハッキリと返された言葉に思わず顔が引きつる。

 今日はバラエティー番組の企画に実況として呼ばれてきた。この番組はメジャークラスのジムリーダーだろうと構わず多額の予算を投じて呼びつけるため、かなりクオリティの高いバトルが見られると評判だ。

 今回も対戦者のオニオンとメロンは共に今こそマイナークラスにいるものの、ゲームのシールド版においてはメジャークラスだった実力者である。

 

「それでは選手の紹介ですが……」

「まあ皆知ってんだろ。メロンもオニオンも10位、11位とマイナークラスの中ではトップクラスだからな。いつメジャーに上がって来てもおかしくねえ」

「そうですね。私もお二人とは今季何度か対戦させて頂く機会がありましたが、やはり一筋縄では行かず手痛い敗北も経験しました」

「ま、俺は全勝したけどな」

「………」

 

 自慢げに俺の戦績を誇ると、サイトウから冷たい視線を喰らう。

 いや、メロンはそもそも相性的にガン有利だし、オニオンも相棒のゲンガーははがねに若干不利なんだ、当然だろう。

 

「………」

「い、いやまあ、そもそもの対戦数が少なかったっていうのもあるけどな。4戦くらいやったら1回は負けると思います、はい」

「なるほど。やはりカイさんも認める強者ということですね」

 

 段々と強くなっていく視線に耐えきれずに言葉を吐き出す。

 この世界の格闘家というのは人間一人程度軽く惨殺できる実力を持っている。

 だから俺の行動は何一つとしておかしくないのだ。

 

「それでは早速レンタルポケモンの選択に入ります」

「まずはオニオンからか」

 

 オニオンが待機している別室にレンタルポケモンの入ったモンスターボールが送られ、モニターにポケモンの名前ととくせいに習得しているわざ、そしてもちものが表示される。

 

 トドゼルガ とくせい:あついしぼう もちもの:カゴのみ

 ねむる ねごと

 ふぶき じわれ

 

 マッスグマ(ガラル外のすがた) とくせい:ものひろい もちもの:オボンのみ

 しんそく でんじは

 まもる にほんばれ

 

 オコリザル とくせい:やるき もちもの:たつじんのおび

 からてチョップ いわなだれ

 10まんボルト がむしゃら

 

 ムウマージ とくせい:ふゆう もちもの:たべのこし

 マジカルリーフ めいそう

 まもる かみなり

 

 モジャンボ とくせい:ようりょくそ もちもの:こだわりメガネ

 げんしのちから メガドレイン

 たたきつける いびき

 

 エアームド とくせい:がんじょう もちもの:おうじゃのしるし

 こうそくいどう はがねのつばさ

 ドリルくちばし フェイント

 

「用意された6匹のうち3匹を選ぶんですよね」

「そうだな。……って、オニオンのやつ一瞬でムウマージ選んだな!?」

「一秒たりとも悩みませんでしたね。流石に驚きです」

 

 モニターの画像が表示された瞬間にムウマージの入ったモンスターボールを掴み取るオニオン。

 なんちゃってはがね使いの俺と違い、ジムリーダーたちはこういうところがある。

 

「えーと……ジムリーダーたちの知識を試すために、あまりガラル本土では見られないポケモンたちを集めました、とのことです」

「あー、確かに見ねえポケモンばっかだ。ヨロイ島とかカンムリ雪原まで行けば話は別だけど。でもムウマージとかは相当遠くの地方に行かなきゃ会えないし、それでオニオンも使ってみたくなったのかもな。

 ちなみにサイトウだったらまずどいつを選ぶんだ?」

「オコリザルです」

「……お前オニオンに何も言えないよ」

 

 俺の質問に即答したサイトウに少し引きつつ、オニオンの悩む様子を眺める。

 

「しかしこの企画、結構面白いな。ガラルにいると本当に見かけないポケモンばっかだし、人が育てたポケモンを使う機会なんて全くないし、ちょっとやりたくなったわ」

「私もオコリザルを育てた経験は一応ありますが、わざわざ他地方まで出向いて捕まえにいきました」

「俺だとエアームド……は割とよく使うか」

 

 流石にムウマージの即決が異常だっただけで、残る2匹はかなりじっくりと悩んでいる。

 しかしこれは知識がない故の悩みではなく、むしろ逆だろう。ポケモンたちについて良く知っているからこそ、どの組み合わせがベストなのか悩んでいる訳だ。

 

「おや、決まったようですね。2匹目はエアームドで、3匹目は……えーと、なになに? 『3匹目は言わないでください』……秘密にしておきましょうか」

「カンペ見てるってこと隠そうともしないのは潔いと思うぜ」

 

 3匹のポケモンを選んだオニオンの部屋のカメラからモニターは切り替わり、今度はメロンが映る。

 

「今度はメロンだな。新人も新人のオニオンと比べてこっちは……メジャーだとポプラ位しか年上がいないんじゃないか? カブとどっちが上だっけ……」

「たぶん後でメロンさんに呼び出されますよ」

 

 サイトウの言葉と同時、モニター内のメロンがこちらを向いて底冷えのするような笑みを浮かべる。

 何でだ!? こっちの言葉は聞こえてないはずだろ!!

 

「大体年齢についての話はカイさんも嫌いじゃないですか。オニオンさんとどっちが年上なんです?」

「は? 喧嘩売ってんなら買うぞ」

 

 若干キレ気味の俺に対しやれやれと首を振るサイトウ。

 舐めてんのか? ダイパ世代の俺からしたらお前なんかガキ中のガキだぞ。

 

「それではメロンさんのレンタルポケモンはこちらです」

「お。じゃあ今度はメロンが一匹目に何選ぶか予想しようぜ」

「いいですよ。当たった方にジュース一本で」

「あ、賭けんの?」

「おや。すみません、失念していました。お小遣いは足りていますか?」

「は???」

 

 ハッサム とくせい:ライトメタル もちもの:メタルコート

 バレットパンチ れんぞくぎり

 すなあらし あまごい

 

 ポリゴン2 とくせい:トレース もちもの:シルクのスカーフ

 まるくなる サイケこうせん

 たいあたり でんきショック

 

 ママンボウ とくせい:いやしのこころ もちもの:しんぴのしずく

 まもる アクアリング

 アクアジェット ねがいごと

 

 アリアドス とくせい:むしのしらせ もちもの:どくバリ

 かげうち むしくい

 どくづき いとをはく

 

 エモンガ とくせい:せいでんき もちもの:きあいのタスキ

 ほっぺすりすり ボルトチェンジ

 こうそくいどう ソーラービーム

 

 ミミッキュ とくせい:ばけのかわ もちもの:フィラのみ

 かげうち じゃれつく

 トリックルーム まねっこ

 

「それじゃあせーので言うぞ。せーの、」

 

 

「「ミミッキュ」」

 

 

 俺たちの言葉のほぼ直後、特に悩んだ様子もなくメロンはミミッキュの入ったボールを手に取る。

 

「おい、賭けにならないじゃねえか」

「しょうがないですよ。かくとう使いからしたらミミッキュなんて対策必須どころの話じゃないですからね」

「最強とまで言うつもりはねえが利便性が有り過ぎるよなあ」

 

 ガブリアスの天下を破ったアローラの王、ミミッキュ。そのゲーム時代でのチート性はこの世界でも引き継がれている。

 大体一発攻撃をスカせるというのがどう考えてもおかしいのだ。あの小さな体でキョダイダイオウドウの体当たりを受け止められた時は思わず二度見した。

 

「まあ、対策さえしてしまえばどうとでもなるんですけどね」

「その対策がこのバトルだと出来ないからなあ」

 

 当然、すべてゲームの通りに行くはずもなくゲーム時代には無かったミミッキュ対策がこの世界には幾らでもある。

 この世界でもミミッキュ最強、となっていないのはそのためだ。

 

「てか何でミミッキュ入れてんだよ。普通にワイルドエリアにいるだろ」

「まあ生息していても出会うのは珍しいポケモンの一匹ですからね。見たことないって人もいっぱいいると思いますよ」

 

 そういうものか。サイトウの言に納得しつつ、またメロンが選ぶ様子を眺める。

 しかしメロンはオニオンと違って案外長考せずにすぐポケモンを選び、さっとチームを決めた。

 

「ベテランっぽさが出てんなー」

「2匹目はハッサム、3匹目は……また秘密ですね」

「そうしたら1時間の作戦タイムか。ポケモンたちと連携を取るための時間だが、効率的に指示を出すためにこの時間でどれだけハンドサインやら何やらを叩き込めるかはトレーナーの経験が出てくる。まあ、こういうのはメロンの得意分野だから問題ないとは思うけどな」

「そうなのですか? ポケモンと仲良くなるのが上手い、と?」

「……まあ、見てりゃわかる」

 

 カメラはまた別の場所に移り、メロンとポケモンたちの様子を映し出す。

 

「なあ、これオンエアはされないんだよな?」

「……? はい、作戦タイムは全てカットされる予定ですが」

「なら良いんだ」

 

 俺の言葉に不思議そうな表情をするサイトウだが、メロンが口を開いたことで視線をモニターへ戻す。

 

「よーし、アンタたちそこに並びなさい」

「Qu?」

 

 特別普段と変わった様子の無いメロンがポケモンたちを一列に並ばせた。

 ポケモンたちは今から一体何をするのかとワクワクしている。

 

「おい、ブタ共。いや、ブタ以下の【編集済み】共」

「「「!!??」」」

 

 メロンが唐突に地上波に流せない言葉で罵倒を始める。

 当然何も知らないサイトウやポケモンたちは困惑顔だ。

 

「聞こえなかったのかい? 【編集済み】と言ったんだ。いいかい? アンタたちは今のまんまだとトレーナーの指示すら聞けない【編集済み】で【編集済み】な【編集済み】野郎さ。それを今から1時間でまあ【編集済み】ぐらいにはしてやる。わかったら返事だ!!」

「「「!!??」」」

「返事だ!!! 返事と言ったら『イエスマム』か『はいマム』以外の言葉を吐くんじゃない【編集済み】共!!!」

 

 メロンの怒号がモニター先の俺たちの部屋まで響き渡る。

 俺は既にサイトウの後ろに避難していた。

 

「え……え? 今、メロンさん【編集済み】って……」

「……あそこの家のトレーニングに付き合ったら日常風景だ。相当なスパルタなんだよあの人。

 これでも他人のポケモンだから大分マイルドにしている方だ」

 

 余りの出来事にカタカタと体を震わせるサイトウ。

 全く同じ気持ちを抱いた俺たちは、きょうせいギプスを着けながらマラソンを始めたメロンからポケモンたちと仲を深めるために触れ合って遊ぶオニオンにモニターを切り替え、試合が始まるまで二人で癒されていた。




次回は試合から始まります。
次々回は掲示板回です。


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withサイトウ その2

「はい、もうメロンさんは元に戻りましたからね。大丈夫ですよ、実況を始めましょう」

「あ、うん……じゃなくて! 頭撫でんな!!」

 

 作戦タイムの間、時たま聞こえてくるメロンの怒号に怯えながらも、ようやく1時間が過ぎる。

 

「さあ1時間の作戦タイムがとうとう終了しました。この間カイさんにひたすら餌付けしていましたが、流石に飽きてきたので丁度良かったです。それでは遂に皆さんお待ちかね、バトル本番が始まります」

「視聴者は俺らと違ってCM分の時間しか待ってないけどな。……え、そのミアレガレットくれないの?」

「お姉ちゃんって呼んでくれたらあげますよ」

「調子乗んなよお前。金払うから寄越せ!」

 

 サイトウが右手に持つミアレガレットを何とか奪い取ろうと画策する。

 しかし超ガラル人の身体能力には勝てず、ひょいひょいと手を動かして遊ばれただけで終わるのであった。

 

「ルールの確認です。3対3のシングルバトル、勝ち抜き戦。ダイマックスはできません。手持ちに戦闘可能なポケモンがいなくなった時点で、敗北となります」

「このミアレガレットうまっ。ありがとな、サイトウ」

「お姉ちゃんがないですよ」

「1回で十分だろ!」

 

 ダラダラと適当なことを話していると、俺とサイトウの目の前に設置されているモニターにバトルコートの様子が映し出される。どこの町にでもある、ごく一般的なものだ。

 

「さあ両選手がバトルコートに入って参りました。向かって右、真っ白な衣服に身を包んだ女性が現序列10位、ジ・アイスのメロン選手です」

 

 メロンがゆったりとした足取りでバトルコートに姿を現す。テレビの企画とはいえ、そこそこ真面目にやるつもりのようで真剣な表情だ。

 

「対する左。仮面で顔を隠したゴーストタイプの使い手、現序列11位、サイレントボーイのオニオン選手です」

 

 一方オニオンは、少しおどおどとした様子で姿を現す。年上のメロンに怯えているのだろうか。

 俺と試合した時はどれだけ罵声を浴びせても寧ろ気楽そうにしていたのにおかしいな……?

 

「メっ、メロンさん、よろしくお願いします……」

「ああ、よろしくねえ。お遊びだけれど、本気で行くよ」

 

「いや、大人気な……」

「また睨まれますよ」

 

 慌ててサイトウの後ろに隠れると、二人は距離を取って試合開始の合図を待つ。

 番組が呼んだリーグスタッフの審判が二人の間に立ち、双方にルール確認を行う。

 

「……それでは、両者の合意も取れましたところで試合を開始したいと思います。

 ――試合、開始っ!」

 

「行きなさい、【編集――じゃなくて、ミミッキュ!」

「ム、ムウマージ、お願いします……」

 

「アイツ、やりやがった!」

「私たちは何も聞いていません――メロン選手の先鋒はミミッキュ、オニオン選手はムウマージを繰り出しました」

「スペックだけ見るとミミッキュにやや有利って感じだが、ゴーストタイプの扱いに関しちゃオニオンの方が断然上だ。そこをどうメロンが覆すかだな」

 

 お互いにトッププロのトレーナー。敵のポケモンを目に入れた瞬間、頭の中で指示を固める。

 

「ミミッキュ、プランβだよ!」

「ムウマージ、めいそうはしなくていいので守りながらじっくり攻めて下さい……」

 

 メロンの掛け声と共にキビキビとした動きで攻め始めるミミッキュ。これだけの動きを1時間で仕込めるのは流石メロンと言ったところか。

 対するムウマージは、ゴーストタイプさながらの動きで時折姿を消しつつ、攻撃を上手く躱し続ける。

 

「そこだよ、『かげうち』!」

「『まもる』です……」

 

「中々激しい動きをしていますね。現状、カイさんはどちらが有利と見ますか?」

「うーん。ミミッキュが段々と削れてきてるが、もちものがフィラのみだからな。食った瞬間に形勢は逆転するだろ。そこをオニオンがどう凌ぐか、ってとこだ」

 

「今です、『マジカルリーフ』」

「根性見せなあ! 『じゃれつく』!」

「!」

 

 やはりゴーストタイプの扱いはオニオンに一日の長があるか。的確な指示でミミッキュを削り続け、遂に技の直撃を食らわせる。

 しかし既に疲労困憊、といった様子であったミミッキュであったが隠し持っていたフィラのみを食べると共に体力を大幅に回復。技の直後で隙を見せたムウマージに大技を叩き込む。

 

「……っ! ムウマージ、下がって守りに集中。落ち着いて、まだ全然余裕はある……」

「させないよ! 『トリックルーム』!」

 

 ミミッキュが顔を上げて体を震わせると共に、空間が歪み始める。

 その歪んだ構造を理解できるのは、歪めた本人以外に存在しない。ムウマージは混乱した様子で辺りを見渡す。

 

「珍しい技が出ましたね。エスパージムの人がたまに使ってくるのを見ますが、対処には中々困ります。

 あ、そう言えばカイさんもこの前キバナさんとの試合で使ってましたよね」

「そうだな。素早く動くポケモンにとってはかなりの障害だが、俺の使うはがねタイプたちはあんまし動かねえ。だからそこまで困りもしないってことだ」

 

「大丈夫、歪みが戻るまで守り続ければ変わらない。『まもる』……」

「そんなに暢気で大丈夫かい? ちょっとゴースト同士じゃ分が悪いようだからねえ、逃げさせてもらうよ! 交代、ミミッキュ!」

 

 ムウマージが守りに入った瞬間、ミミッキュがボールの中に吸い込まれていく。

 手慣れた動きで取り出した2個目のボールから出てきたのは――

 

「出番だよ、ハッサム!」

 

「Giaaaaa!!」

 

 はさみポケモン、ハッサム。むし・はがねという優秀な組み合わせのタイプを持ち、かつての対戦環境においては最上位近くに君臨したこともある強力なポケモンである。

 

「ハッサム、ですか」

「俺も結構使うポケモンだが……余りトリックルームとはマッチしてないように思えるな。空間の歪みを全く気にしないという程動かないポケモンじゃねえし、どっちかと言えば素早く動いて敵の先手を取りに行く『バレットパンチ』を持ち味とするポケモンだ」

「なるほど。つまりメロンさんのトリックルームには別の意図があると?」

「うーん……どうなんだろ」

 

「ハッサム、位置取りは覚えてるかい? 行きな、『れんぞくぎり』!」

「Giiaa!!」

 

 背中の羽をはばたかせながらムウマージに襲い掛かるハッサム。

 

「あんな動きしてちゃ、すぐに歪みで引っ掛かるはずだ、が……?」

「……何と。かなりスムーズに歪みを躱して攻撃していますね」

 

 動きを妨害されるムウマージに対し、華麗に攻撃を仕掛け続けるハッサム。エスパータイプでもないのに、『トリックルーム』が見えている訳はない。何かしらの仕掛けがあるはずである。

 

「……そうか。メロンの奴、ほんとにすげえな」

「おや。ハッサムがあそこまで動ける仕組みがわかりましたか?」

「ああ。言ってみれば単純だ。アイツ、さっきの時間で()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」

 

 俺の言葉に、らしからぬ驚愕の表情を浮かべるサイトウ。

 恐らくだが、メロンはミミッキュの作り出す空間の歪みを1つのパターンに絞り、その中でポケモンたちに動く訓練をさせたのだろう。

 俺もトリックルームを使うパーティには似たようなことをさせているが、1時間でそれが出来るとは凄まじいの一言である。

 

「まあ見た感じ、歪みのパターンは結構単純っぽいが……どんだけスパルタやったんだアイツ」

「これは少々オニオン選手にとって不味い展開ですね」

 

 指示も上手く行かず、一方的に嬲られるムウマージをじっと見つめるオニオン。

 やがて、ムウマージが弱り切ったところでオニオンが口を開く。

 

「ムウマージ、僕の指示に従ってください……『 右 へ 』」

「!」

 

 オニオンが何かを呟くと、ムウマージはまるで操られているかのように動き始め、完璧にトリックルーム内を移動し始めた。

 

「これ、は……」

「オニオンお得意の霊能力だな。完璧に意思疎通してやがる。見ろ、すぐに逆転するぜ」

 

 先ほどからピクリとも動かないオニオンの代わりに、ムウマージは見事な動きでハッサムを翻弄する。

 完全に形勢逆転だ。オニオンにはもうトリックルームの構造が手に取るようにわかっているのだろう。既に、この空間はオニオンのものになっている。

 

「それにしても、トリックルームの構造を把握するのが早いな。流石はオニオンってとこか。中途半端に構造を単純にしたのが裏目に出た。完全にオニオン側に味方しちまってる」

「こういうのを見ると少しばかり能力者が羨ましくなりますね。何の力もないこの身を不甲斐なく感じます」

 

 何言ってんだコイツ。この前ネットに上がってたジャラランガとのタイマン動画見たぞ。

 

「……やっちまったね。すまない、お前たち! もう少しだけ頑張ってくれ!」

「Giaaa!!」

 

 声を上げて戦うハッサムだが、もはやトリックルームは足枷となっている。

 1時間で急造した力には粗が見え始め、やがて少なくない傷を負っていった。

 

 もう決着はそう遠くない。オニオンのムウマージは段々と力を溜めてその時を待っている。

 

「くっ……ハッサム、『バレットパンチ』!」

「『 か み な り 』」

 

 ハッサムが俊敏な動きでその拳を繰り出そうとした瞬間、透明な壁に阻まれる。もう既に、歪んだ空間を完全に支配していた姿はない。

 動揺によるミス。それは、訓練が完全に終わっていないポケモンにとってはありふれたものだ。

 

 直後、黒雲からの落雷がハッサムを襲う。

 

「――っ」

 

「ハッサム、瀕死状態に陥りました」

「……勝負、あったな」

 

 大体、片方にだけエキスパートタイプのポケモンを渡しているのがおかしい。

 そりゃあ、()()もなると言うものだ。

 

 

 その後メロンは最後まで健闘し、1対1にまでもつれこんだものの、数の有利を取られていた分発生した余裕の差で辛くも惜敗。

 レンタルポケモンによるエキシビションマッチは、オニオンの勝利で終わった。

 

 

 

「メロンさん、オニオンさん、お疲れ様でした」

「ど、どうも……」

「あらサイトウちゃん。そっちこそ実況お疲れ様。ところで相方のクソガキは? ちょっと悪口を言われた気がしてね」

「カイさんなら『悪寒がする……オカンだけに』とかクソつまんない台詞を残してどこかに行ってしまいました」

「あ、そうなんですか……。カイさんのリーグカード、スーパーレアが出たので自慢したかったんですけど……」

「……カイさんって、オニオンさんと仲良いですよね。やっぱし年齢差が……」

「子供は子供と遊ぶのが一番だからねえ」




次回は掲示板回です。


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実況◇金曜日のポケットな夜★1

1:名無しのエリートトレーナー ID:wTtC7Dowv

19時00分~20時30分

ゴーストポケモンによる恐怖のドッキリ!

エスパー能力者100人VSフーディン!

ジムリーダーたちによるレンタルバトル!

 

2:名無しのエリートトレーナー ID:UMLx9oB30

建て乙

 

10:名無しのエリートトレーナー ID:P0C0WpW1w

レンタルバトルって誰が戦うの

 

14:名無しのエリートトレーナー ID:5M3tjlr0T

>>10

オニオンとメロン

実況はカイとサイトウ

 

19:名無しのエリートトレーナー ID:uYktScATw

>>14

相変わらずクソ豪華で草

 

24:名無しのエリートトレーナー ID:wckYp8dEa

メジャー2人入れて4人とかいくらかかるんや

 

26:名無しのエリートトレーナー ID:jUXuTlkDB

>>24

6億

 

33:名無しのエリートトレーナー ID:pa3pHRPIz

>>26

それカイの年俸や

 

34:名無しのエリートトレーナー ID:kTOycUuIM

サイトウがバラエティー出るの珍しいな

 

36:名無しのエリートトレーナー ID:926TAnxw9

サイトウって子面白い?

 

39:名無しのエリートトレーナー ID:5o6KfqeTx

>>34>>36

メジャー上がったばっかやからな

これからどんどんメディア露出してくで

 

42:名無しのエリートトレーナー ID:ML2x1qlCE

楽しみや

 

 

 

 

 

 

 

 

722:名無しのエリートトレーナー ID:ZtoQDjt7l

次レンタルバトルか

 

729:名無しのエリートトレーナー ID:B5MMUetKg

メロンが勝つやろ

 

730:名無しのエリートトレーナー ID:wq1ckzj5u

年季の差がなあ

 

731:名無しのエリートトレーナー ID:f3amDIe/n

さっきの超能力者100人の誰よりもオニオンきゅんのが強いという事実

 

736:名無しのエリートトレーナー ID:0tAxE8mkB

>>731

あいつそんなヤバいの?

 

745:名無しのエリートトレーナー ID:F1yUnLwLt

>>736

お前能力者番付見たことないのか

 

747:名無しのエリートトレーナー ID:vIqqamsb5

>>736

エスパーってより霊能力に特化しとるけど世界で見ても上位やで

 

751:名無しのエリートトレーナー ID:c+KwSWVhj

そもそもあの年でジムリーダーになれる時点で化物やん

 

753:名無しのエリートトレーナー ID:Gw7OYkCw0

カイと同い年ってほんと?

 

756:名無しのエリートトレーナー ID:9AmMP8kVk

>>753

両方年齢不詳定期

 

 

 

 

 

 

822:名無しのエリートトレーナー ID:1wBE2DKWQ

始まった

 

825:名無しのエリートトレーナー ID:6saito02K

サイトウちゃんかわいい!!!

 

826:名無しのエリートトレーナー ID:idw3/Ua5H

この二人の組み合わせ初めて見る

 

828:名無しのエリートトレーナー ID:A/RPB5+73

>>826

試合中とかめっちゃ煽り合ってるけどな

 

832:名無しのエリートトレーナー ID:xjMomakDn

>>828

結局タイプ相性でカイがわからされるのほんと好き

 

833:名無しのエリートトレーナー ID:MTgpKp9XN

楽しくいこうぜ→すみません

!!ww??w!!!????www

 

837:名無しのエリートトレーナー ID:wkatqxs2P

カイ顔ひきつってて草

 

839:名無しのエリートトレーナー ID:+B4jot9Hf

まずはジャブやで

 

844:名無しのエリートトレーナー ID:qqq0Va5NG

>>839

ちょっと草

 

 

 

 

848:名無しのエリートトレーナー ID:+r84brjeC

合計5戦しかしてないのに全勝誇るカイかわいい

 

852:名無しのエリートトレーナー ID:RQUwnttl+

>>848

ふつう800連勝してから自慢するよね

 

854:名無しのエリートトレーナー ID:htT8dhHI7

>>852

ダンデのレス

 

857:名無しのエリートトレーナー ID:y8IR2vJ6C

>>852

ほんとチャンプ頭おかc

 

859:名無しのエリートトレーナー ID:Zm1TUQBNk

なんか言い訳してて草

 

861:名無しのエリートトレーナー ID:Pge4LRRmv

サイトウにかかれば子供一人くらい2秒で殺せるからね、しょうがないね

 

864:名無しのエリートトレーナー ID:uwE64dYjh

この前トレーニング動画投稿してたけど内容がポケモンとのスパーリングだった

 

865:名無しのエリートトレーナー ID:c4vNLkNX5

生身でダイマックスポケモン倒したってマジ?

 

866:名無しのエリートトレーナー ID:rX59Rj+43

>>865

バリア全部叩き割ったけど途中で逃げられたから倒してないぞ

 

870:名無しのエリートトレーナー ID:MSPCOJGkD

>>866

何言ってるのかわかんなくて草

 

873:名無しのエリートトレーナー ID:D8EcvpxQd

かくとうかはマジで頭おかしいな

 

 

 

 

 

 

881:名無しのエリートトレーナー ID:aKcI998dR

レンタルポケモンが表示されたと思ったらムウマージが選択されていた

 

884:名無しのエリートトレーナー ID:6wC/xSK3N

な…なにを言ってるのかわからねーと思うが(

 

885:名無しのエリートトレーナー ID:RBXOyuWud

でも実際自分の得意タイプ選ぶのは正しいやろ

 

888:名無しのエリートトレーナー ID:tiZ4tPARS

>>885

一致技なくても?

 

890:名無しのエリートトレーナー ID:RBXOyuWud

>>888

めいそう積めば不一致でも大丈夫やろ

むしろコンセプトがわかりやすい型しとるわ

 

894:名無しのエリートトレーナー ID:wz58EHtey

お前らだったらどのポケモンレンタルするんや?

 

896:名無しのエリートトレーナー ID:T3AUqieHL

自称ジムトレーナー来るぞ

 

897:名無しのエリートトレーナー ID:Rz6vEM8d7

>>894

トドゼルガ マッスグマ オコリザルやな

タイプバランス考えても丁度いいし、役割も受け、サポート、アタッカーでバラけてる。

そして何より上から3匹選んだだけや

 

903:名無しのエリートトレーナー ID:kZGvUtgOU

>>897

レス早いのによく考えてんなと思ったら理由しょうもなくて草

 

 

 

 

906:名無しのエリートトレーナー ID:DIux89cZM

言われてみたら確かにガラルの外のポケモンばっかなんか

 

910:名無しのエリートトレーナー ID:AynQJYk53

【悲報】ワイスクール中退、一匹も名前を知らない

 

913:名無しのエリートトレーナー ID:ksFVPqHRH

>>910

流石に草

 

916:名無しのエリートトレーナー ID:01Ugf09fb

>>910

言うてしゃーなしやろ

ワイもこのマッスグマ色違いやと思ったで

 

917:名無しのエリートトレーナー ID:tUKpT5SZF

>>916

ガラルが原種だからあながち間違いでもない

 

919:名無しのエリートトレーナー ID:rSPutf98e

ワイも半分わからんわ

 

923:名無しのエリートトレーナー ID:W6pXZTfz2

普段見かけないポケモンとか普通に忘れるもんな

 

 

 

 

928:名無しのエリートトレーナー ID:RBXOyuWud

やっぱみんな得意タイプ選ぶんやな

 

929:名無しのエリートトレーナー ID:C/tw71qPQ

カイは別にそんなはがねタイプ好きって感じ出しとらんけどな

 

931:名無しのエリートトレーナー ID:vURYpLd3Y

今日のドラゴンジムスレはここですか

 

933:名無しのエリートトレーナー ID:EbqMvHr/s

>>931

せめてジムチャレンジでは統一しろ

 

934:名無しのエリートトレーナー ID:6uH3asUla

>>931

砂パをドラゴンパと呼ぶな

 

935:名無しのエリートトレーナー ID:EcdmP9BCk

この前のダンデ戦でギガイアスをダイマさせた時は流石に笑った

 

936:名無しのエリートトレーナー ID:8/TrGf35I

>>935

得意タイプ以外のポケモン使えるのは純粋にすごいんやけどな

 

 

 

 

938:名無しのエリートトレーナー ID:TJ0/nlmR4

カンペは草

 

939:名無しのエリートトレーナー ID:zZgzZcg4B

ワイのIDちょっとだけすごない?

 

941:名無しのエリートトレーナー ID:ABCd98765

>>939

クソほどどうでもよくて草

 

942:名無しのエリートトレーナー ID:lNCGhrs1p

メロン顔怖っ

 

943:名無しのエリートトレーナー ID:nPyb12q1i

結局カブとどっちが年上なん

 

946:名無しのエリートトレーナー ID:vnjlURtot

>>943

確かメロンだったはず

わからん

 

949:名無しのエリートトレーナー ID:crdjI9o6P

メロンは若作りし過ぎでカブは老けすぎや

 

950:名無しのエリートトレーナー ID:COLYhsqOI

年齢で弄るのは好きだけど弄られるのは嫌いなカイ

 

951:名無しのエリートトレーナー ID:tad+oDNDr

ほんまにクソガキって感じやな

 

952:名無しのエリートトレーナー ID:aYZwZ4IYq

サイトウがお姉さんに見えるって相当やで

 

953:名無しのエリートトレーナー ID:O0AgCLX7b

沸点クソ低いのほんとすき

 

 

 

 

955:名無しのエリートトレーナー ID:MgiaPOmL4

サイトウの煽りキレッキレやな

 

959:名無しのエリートトレーナー ID:zAcm9hp2m

カイくんイライラで草

 

960:名無しのエリートトレーナー ID:JEVodBDyP

ワイらもメロンが何選ぶか予想しようや

 

961:名無しのエリートトレーナー ID:97GNf1T7e

ミミッキュ

 

962:名無しのエリートトレーナー ID:Xd8uobN15

ミミッキュ

 

963:名無しのエリートトレーナー ID:5AJTs7LCu

ミミッキュ

 

968:名無しのエリートトレーナー ID:XPCd5dtYK

ミミッキュ

 

972:名無しのエリートトレーナー ID:SmKhK34tt

流石に草

 

976:名無しのエリートトレーナー ID:is90v8Gb1

ドンピシャやん

ジムリーダーと同じ判断を下せたってことやで

誇っていいぞ

 

980:名無しのエリートトレーナー ID:qrF8s9K4h

この前野良バトルでミミッキュに全タテされておしっこ漏らした

今も思い出して漏れそう

 

982:名無しのエリートトレーナー ID:nmGbH6FKo

>>980

漏らすな

 

985:名無しのエリートトレーナー ID:qrF8s9K4h

>>982

もう遅いで^^

 

989:名無しのエリートトレーナー ID:v4dIeIyzY

>>985

 

991:名無しのエリートトレーナー ID:Fn+HHvEC5

>>985

何を勝ち誇っとるんや

 

992:名無しのエリートトレーナー ID:5s924BoMg

メロン一瞬で3匹選んだな

 

993:名無しのエリートトレーナー ID:mDy7Mt2pb

ベテランっぽさが出てるは草

 

996:名無しのエリートトレーナー ID:CfMzE7pv2

>>993

またわからされるんやろなあ

 

997:名無しのエリートトレーナー ID:cbAZUElDr

3匹目誰やろ

 

1000:名無しのエリートトレーナー ID:6saito02K

CMの間はサイトウちゃん見れなくて悲しい。。。

 

 

 




思ったより長くなったので2分割します


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実況◇金曜日のポケットな夜★2

後半です
試合開始直前のサイトウとの掛け合い辺りから


73:名無しのエリートトレーナー ID:wj3JiXQbr

完璧に手懐けられてて草

 

76:名無しのエリートトレーナー ID:9W0+RFGdG

これにはおねショタ警察もニッコリ

 

77:名無しのエリートトレーナー ID:kR/DeJgU0

ミアレガレットはガチで美味い

 

78:名無しのエリートトレーナー ID:RGWxc69AV

というかガラルにまともな食べ物がないやん

 

82:名無しのエリートトレーナー ID:FSM++uTGa

>>78

カレー

 

84:名無しのエリートトレーナー ID:M4u2j4Fg4

>>78

カレーは?

 

86:名無しのエリートトレーナー ID:U5w9rKpDD

カレーを誇るな

 

87:名無しのエリートトレーナー ID:YgM96j/i5

材料入れて混ぜるだけの料理を誇るガラル人

 

88:名無しのエリートトレーナー ID:GMa/772i0

そもそもカレーってガラルの料理じゃないしな

 

 

 

89:名無しのエリートトレーナー ID:iQXgjscQe

お姉ちゃん!

 

91:名無しのエリートトレーナー ID:7EYz/a2Ur

>>89

ハゲデブのお前が呼んでも何の需要もないぞ

 

92:名無しのエリートトレーナー ID:JNDFfQ6Zo

イケメンで超高収入で社会的地位も高いショタが言うから価値があるんだよなあ

 

93:名無しのエリートトレーナー ID:/2ubcfx+Z

カイきゅんってお菓子あげれば何でも言うこと聞いてくれるのでは?

 

95:名無しのエリートトレーナー ID:vGbVOccDx

>>93

ひらめいた

 

96:名無しのエリートトレーナー ID:lG1siCqDV

>>95

通報した

 

97:名無しのエリートトレーナー ID:5L5SIDRhN

ワイもサイトウちゃんに餌付けされたいわあ

 

99:名無しのエリートトレーナー ID:apQDLSkx1

かくとうタイプとタイマンで勝てたら審査なしでジムトレーナー試験合格にするって言ってたで

 

101:名無しのエリートトレーナー ID:ztuKgjxiH

>>99

出来るのお前だけ定期

 

104:名無しのエリートトレーナー ID:YnLFPuAQp

はがねジムはマクロコスモス社員に推薦枠あるらしいけどな

 

107:名無しのエリートトレーナー ID:/yVSdkoTU

>>104

そらジムリーダーが役員やからな

 

109:名無しのエリートトレーナー ID:uamFJwQEX

てか今のはがねジムのジムトレほとんど社員やろ

 

110:名無しのエリートトレーナー ID:FQ9guOa37

ジムトレになる奴らもバッジ4つ以上持っとるエリートばっかやしな

ワイらとは比べものにならんわ

 

113:名無しのエリートトレーナー ID:zksx5vHh4

ワイバッジ5個持っとるで

 

117:名無しのエリートトレーナー ID:eztgQhvBX

なんか来た

 

120:名無しのエリートトレーナー ID:BSyN9EaXX

>>113

お、やるんか?

ワイは30個持っとるで^^

 

122:名無しのエリートトレーナー ID:99zb9aJX8

>>120

流石に草

 

 

 

 

 

141:名無しのエリートトレーナー ID:QcAjhUBDd

どっちもやるやんけ

 

145:名無しのエリートトレーナー ID:vJOGreP0o

お互いに普段と比べて指示に手間取ってるな

この企画結構面白いわ

 

148:名無しのエリートトレーナー ID:aEJRxIPXM

今のマジカルリーフの一人時間差ヤバない?

 

152:名無しのエリートトレーナー ID:IlKKhcXMj

流石にゴーストタイプの使い方はオニオンが上手いわ

 

156:名無しのエリートトレーナー ID:Us2SMt+PY

ところでゴースト使いの最強って誰や?

 

159:名無しのエリートトレーナー ID:PUkMS5tGN

>>156

シキミかアセロラ辺り

ガラルにも四天王制度導入して、どうぞ

 

161:名無しのエリートトレーナー ID:Sn92o8ug+

>>156

最えちはフヨウちゃんやで

写真集全部持っとる

 

162:名無しのエリートトレーナー ID:0EoUtu2la

キクコやろ

 

163:名無しのエリートトレーナー ID:B1gdkZgO5

>>162

引退したの何年前の話やねん

 

165:名無しのエリートトレーナー ID:YVWJWDRY8

他地方の名前出されてもわからんわ

 

168:名無しのエリートトレーナー ID:O/lK6GujF

>>165

流石に四天王くらいはわかるやろ…

 

 

 

 

 

177:名無しのエリートトレーナー ID:bQSy0Wylh

トリルか

 

178:名無しのエリートトレーナー ID:zdbjpMuhP

流れがメロンに来てるな

 

179:名無しのエリートトレーナー ID:dx8Lrmo5I

トリルパって実際強いの?

 

181:名無しのエリートトレーナー ID:cW9rHogUV

>>179

一時期かなり流行った

構造を一方的に把握してるからゲームの展開を握りやすい

 

185:名無しのエリートトレーナー ID:/+nVhFaMv

最近ポプラがよう使っとるよな

 

188:名無しのエリートトレーナー ID:vVTyntbeZ

格上相手に勝ちやすい戦法だからな

ダンデとかめっちゃ使われてるんじゃないか?

 

191:名無しのエリートトレーナー ID:UTfzuRWaO

>>188

チャンプはどう対処しとるんや?

 

192:名無しのエリートトレーナー ID:DV3Iw6BcY

>>191

全部焼き払うんや

 

195:名無しのエリートトレーナー ID:qzItvnh00

>>192

 

 

 

 

222:名無しのエリートトレーナー ID:JKDchExZl

ハッサムつよ

 

223:名無しのエリートトレーナー ID:OJR6QiIe8

1時間でトリルの構造覚えさせるとか頭おかしいやろ

 

225:名無しのエリートトレーナー ID:txhD2mNvA

どれだけスパルタやったんやろなあ

 

227:名無しのエリートトレーナー ID:1y0iiQ2Kd

イケデブ「例え何億積まれてもまた母さんのトレーニングを受けたいとは思わない」

 

230:名無しのエリートトレーナー ID:lClCr773f

>>227

メロン家の闇

 

231:名無しのエリートトレーナー ID:WCB0565TF

そら将来のチャンピオンも産まれますわ

 

232:名無しのエリートトレーナー ID:geiIV4hm1

!?

 

233:名無しのエリートトレーナー ID:n7CJkerXI

オニオン本気出しとるやん

 

237:名無しのエリートトレーナー ID:9MyJ2WJCG

この状態のオニオンきゅん怖いから嫌い

 

240:名無しのエリートトレーナー ID:h367RAu1S

超能力者はこういうとこがズルいわ

 

244:名無しのエリートトレーナー ID:wr1Gv0k+2

>>240

ジムリーダーに一般人なんて存在するんですかね…

 

248:名無しのエリートトレーナー ID:3Nif4Nzpg

>>244

カブさんは常識人枠

 

250:名無しのエリートトレーナー ID:V20fmRZj9

闇堕ち時代(ボソッ

 

254:名無しのエリートトレーナー ID:qxvg/tf2X

>>250

あの時代のことを話してはいけない(戒め)

 

 

 

 

 

264:名無しのエリートトレーナー ID:bavp3PxM+

 

266:名無しのエリートトレーナー ID:+Apuj5j4S

ハッサム死んだ

 

268:名無しのエリートトレーナー ID:vqq+Rc3/g

オニオンだけ得意タイプありとかズルいやろ

 

272:名無しのエリートトレーナー ID:2Ddq2XWQK

>>268

企画者はオニオンの力を舐めてたんだろうな

経験の差を縮めるいい塩梅とか思ってたんじゃねえの?

 

276:名無しのエリートトレーナー ID:1UojiLKx+

サイトウもそうだけど就任してすぐなのに上位保ってる時点で化物なんだよなあ

 

279:名無しのエリートトレーナー ID:86DmL53oS

最近のジムチャレはサイトウ→オニオンと豊作すぎる

 

282:名無しのエリートトレーナー ID:KpTN4Arfd

ジムチャレ優勝者も年によって格の差がめっちゃあるわ

 

283:名無しのエリートトレーナー ID:lpRPful4K

10年前優勝者()

 

284:名無しのエリートトレーナー ID:gXMGho4Z7

>>283

何でジムチャレンジャーがチャンピオンに勝ってるんですかね…?

 

289:名無しのエリートトレーナー ID:22RcC14vw

あの年は他もヤバい定期

 

292:名無しのエリートトレーナー ID:C7mVdh893

>>289

あのえちえちさで博士はムリでしょ

 

293:名無しのエリートトレーナー ID:QFLjP8mWJ

>>292

おへそすき

 

295:名無しのエリートトレーナー ID:Ag2sDVfNk

血縁もあるかもしれんがあの若さで博士目前なのも頭おかc

 

296:名無しのエリートトレーナー ID:nVkxzLQXR

ルリナもあの年だしな

 

299:名無しのエリートトレーナー ID:nePnMYdDX

10年前のチャレンジャーがかわいそうになってきた

 

 

 

 

 

677:名無しのエリートトレーナー ID:ZimBBcP1e

泥仕合過ぎて草

 

681:名無しのエリートトレーナー ID:XxMEw4Byf

今北産業

 

685:名無しのエリートトレーナー ID:svvmAIqMK

ラス1同士

耐久&耐久

一撃必殺当たらない

 

686:名無しのエリートトレーナー ID:06dPxo2t8

メロンの耐久ママンボウ

オニオンの耐久トドゼルガ

いつじわれが当たるのか

 

688:名無しのエリートトレーナー ID:OYxguh1En

ほぼメロンに勝ち目ないな

 

692:名無しのエリートトレーナー ID:WfjIm0g6E

>>688

じわれ5回避けたら多分勝てるぞ

 

695:名無しのエリートトレーナー ID:IElJ1Lu7/

こんなん公式試合で見せられたら発狂する自信あるわ

 

699:名無しのエリートトレーナー ID:kPofrItGx

去年の冬くらいに一撃必殺めっちゃ流行ったよな

 

702:名無しのエリートトレーナー ID:nffvxvBxS

>>699

推しがつのドリル当てた時の脳汁ヤバかったわ

 

706:名無しのエリートトレーナー ID:9imxMSXEe

カイが流行りの最前線行ってたな

 

708:名無しのエリートトレーナー ID:1blT/SDLW

>>706

脳死で一撃必殺指示してるときの顔すき

 

709:名無しのエリートトレーナー ID:S9MicZniy

>>706

「当てて良いのは、当てられる覚悟がある奴だけだ」

 

710:名無しのエリートトレーナー ID:tS4N9bv9G

>>709

こんなこと言いつつ特性がんじょうでパーティ固めてたのほんと好き

 

711:名無しのエリートトレーナー ID:ME4frkVPo

あの頃はみんな頭おかしくなってたな

 

713:名無しのエリートトレーナー ID:yn/aqoKMO

>>711

メジャーほぼ全員勝率下がってマイナーの戦績上がったの草

 

715:名無しのエリートトレーナー ID:1blT/SDLW

カイとサイトウ試合に何も関係ない話始めとるやん

 

718:名無しのエリートトレーナー ID:S9MicZniy

俺もルリナたんに奢られたい

 

721:名無しのエリートトレーナー ID:3omy7wcU0

何でコイツは奢られたことにキレとるんや…?

 

724:名無しのエリートトレーナー ID:yM7d/PWmX

ジムリーダーって一緒にお茶行ったりするんやな

 

727:名無しのエリートトレーナー ID:tbaiBZpu6

キバナがこの前カイとオニオンと一緒に遊園地行ったって言ってたぞ

 

732:名無しのエリートトレーナー ID:UwHGJ1CAh

>>727

完全に引率やん

 

733:名無しのエリートトレーナー ID:wSNt0b6Bw

>>727

キバナのSNSに画像上がってる

 

736:名無しのエリートトレーナー ID:ZLPD419eP

メリーゴーランドに乗ってるカイとオニオンを外のベンチに座りながら写真撮っとるやつやろ

いいねしたで

 

740:名無しのエリートトレーナー ID:4xjRJ+nkF

>>736

 

742:名無しのエリートトレーナー ID:h3naH8eGB

>>736

親子かな?

 

746:名無しのエリートトレーナー ID:0z86Siamn

子供二人が疲れたからキバナ一人で観覧車乗ってる写真もあるで

 

749:名無しのエリートトレーナー ID:e9yUCHmUZ

>>746

観覧車から戻ってきたら二人が迷子になってた話やろ

この前ラジオで話してた

 

750:名無しのエリートトレーナー ID:SKIiNAoE5

>>749

 

751:名無しのエリートトレーナー ID:Dd556Ao5e

>>749

クッソ慌てたらしいな

変装とかもやめて必死に聞いてまわったって言ってたわ

 

754:名無しのエリートトレーナー ID:dtsrlIGKs

>>751

結局これ勝手に別のアトラクション楽しんでたのほんと面白い

 

757:名無しのエリートトレーナー ID:EpJeKlCzd

金は二人とも持ってるからな

不審者もオニオンいればぶっ倒せるし、別に問題ないのでは?

 

761:名無しのエリートトレーナー ID:ENm7WOqIW

>>757

カイって10回くらい誘拐未遂にあっとるで

 

764:名無しのエリートトレーナー ID:Fhy2l+0Mm

>>761

流石に草

 

766:名無しのエリートトレーナー ID:NhatQc3tE

お菓子あげたら着いてくるんやろなあ

 

769:名無しのエリートトレーナー ID:uorG4YtTi

 

770:名無しのエリートトレーナー ID:Cpv4WpOMo

じわれ当たった

 

772:名無しのエリートトレーナー ID:jcPgi1lQJ

それまでが長かったせいやろか

脳汁やばい

 

776:名無しのエリートトレーナー ID:sUux7kBub

オニオンの勝ちか

 

778:名無しのエリートトレーナー ID:Gu0tf0BvS

来季にでもメジャーに上がってくるかもしれんな

 

780:名無しのエリートトレーナー ID:kG6duhoXE

そもそも今季就任だったのに11位だった時点でおかしい

 

781:名無しのエリートトレーナー ID:XU96+DrXp

サイトウといいオニオンといい、世代交代の時期なんやろな

 

 

 



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withネズ

マリィの方言はフィーリングで書いています。


「すみませんねカイ、マリィのワガママに付き合ってもらっちまって……」

「別に構わねえよ。この前キリキザンの調整も手伝ってもらったしな」

 

 スパイクタウン。あくタイプのジムリーダー、ネズの故郷である少しばかり寂れた町。

 そこで俺は、ネズとその妹マリィと、彼らのファンであるエール団の団員たちとキャンプを開いていた。

 

「カイ、兄貴、扇ぐのに集中しい! 火が弱まっとーよ!」

「はい、すみませんマリィ」

「いいか? 材料出してるの全部俺だからな? お前指図出来る立場にないからな?」

「しぇからしか! その豪華なきのみたちを全く使いもせず腐らせようとしとったのは誰かね!」

 

 キャンプと言えばカレー。カレーと言えばキャンプ。ここガラルの地における法則に従い、俺たちもカレー作りに励んでいた。今は、起こした火を必死に扇いで強くしているところである。

 

「はあ~? マクロコスモスの技術力があれば半永久的な保存なんて余裕なんですけど。てかこのきのみたちにどんだけの価値があるのか本当にわかってんの?」

「本当に珍しいきのみをカイは簡単に持ってきますよね。財力もあると思いますが、どこか良い畑でも知ってるんですか?」

「いやいや、こういうきのみたちは自然で育まれた天然ものが一番よ。雪原の『あの木』に行けばいくらでも……」

「いくらでも採れるんならいくらでも貰うばい……カイ! もっと扇ぐ!」

 

 パタパタとうちわで火を扇ぎながらダラダラと話し続ける。腕を振り続けるのに疲れた体は思考を放棄しており、自分が何を言ったのかも覚えていられない。

 カレーの匂いにつられてやって来たマリィのモルペコを左手で撫でつつ、疲れ切った右手を酷使し続ける。

 

「大体さあ、おかしいだろ。何で客の俺がこんな酷使されてるワケ? 『久々にリザードン級のカレーが食べたい』とかいうしょうもないお願いのためにわざわざキルクスからやって来た俺に感謝はないの?」

「ありがと」

「全くの無表情で言われても感情が伝わって来ねえんだよなあ……!」

 

 後ろでエール団員たちが悶えているが、俺には何も感じ取れなかった。

 いつからマリィはこうなってしまったのだろう? 初めて出会い、カレーを作ってやった時は嬉しそうに感謝の言葉を述べながら3回くらい作るのを要求してきただけだったのに、2回目は指定された材料を持って来させられ、3回目以降にはもう最高級きのみを容赦なく使うようになってしまった。……あれ、最初から扱い悪くないか?

 

「すみません、妹は表情を作るのがヘタなんですよ。きっと内心ではバチュルくらいの感謝はしてるはずです」

「おかしくね? ねえそれおかしくね?」

 

 ネズに詰め寄っていると、ようやくマリィの納得する火の強さまで燃え上がった。

 疲れ切った俺はうちわを放り投げ、モルペコで遊び始める。お、頭に登ってきた。やはりポケモンはかわいい。非常に癒される。

 

「それじゃあ今度は混ぜないとですね」

「アニキ、混ぜるのはあたしに任せて欲しか。カイにあたしの料理の腕を見せたる」

 

 何だコイツ、この前の料理対決で負けたことをまだ気にしてるのか。あの時の審査員はネズ以外全員買収済みだったということにも気づかず、憐れなやつだ。ちなみに、ネズは勿論100点を出していた。10点満点のため無効だったが。

 ……いや、そんなことより料理の腕を見せたいなら最初っから最後まで自分でやれよ。

 

「~♪」

 

 俺の抗議をガン無視して、鼻歌を歌いながらカレーを混ぜ続けるマリィ。あんなことを言うだけあって、中々手慣れている。漂ってくる良い匂いに俺とモルペコのお腹がつい鳴ってしまった。

 

「オレの歌をハミングするマリィ、だと……!? この生涯に、もはや一片の悔いもなし……!」

 

 コイツうるせえな。

 隣で右手を掲げながら悟りの表情をしているネズを白い眼で眺めつつ、モルペコと一緒に完成を待つ。

 

「よーし、出来上がり! ほら、みんな待っとるけん早くよそいんしゃい」

 

 今回はエール団員たちの分も用意したので、かなり大量に作った。大き目の鍋から豪快に盛り付けられた皿がみんなの所へ配膳されていく。

 

「はい、それじゃあいただきます」

「「「いただきます」」」

 

 待っていましたとばかりに飛びつくモルペコを横目に、俺もゆっくり食べ始める。……うん、めっちゃ美味い。これは間違いなくリザードン級だろう。

 

「う、うめええええ!!」

「何だこれは! 高級な具材が舌の上で踊るのは勿論、ルーから感じるのは甘味、旨味、苦味、渋味、辛味、全てが絶妙に調整されたハァァァァモニィィィィ!!!」

「これほどの腕前……どこぞの名のあるシェフと見た!」

 

「ふふ、みんなが喜んでくれて嬉しか」

「何か全部自分でやったみたいな顔してるけど材料用意したの俺だからな?」

 

 顔面に喰らった裏拳に悶えつつ、手間暇かけて作ったカレーを食べていく。うん、やはり美味い。キャンプのカレーは食べる度に前の世界の記憶を思い出して懐かしくなる。キャンプファイアーとか今度やってみようか。ポケモンの襲撃がヤバそうだが。

 

「あ、そう言えばさ。マリィって今回のジムチャレンジに挑戦するんだったよな」

「うん。兄貴とのトレーニングも最近は厳しめにしてもらっとる。それでモルペコもこんなにお腹空いとるってわけ」

 

 マリィに口周りを拭かれながら不思議そうに首を傾げるモルペコ。トレーニング関係なしに元々このくらい食ってた気がするのは記憶違いなんだろう、うん。

 

「そうですね。オレばかりが相手になっていますし、カイにも少し相手をしてもらいましょうか?」

「やめとけ、やめとけ。もう少しで開催だって言うのにもしここで調子を崩したら困るぞ。

 それに、お前だけならまだしも俺まで世話焼いてたら変なやっかみも出てくるかもしれん」

「そうたい。それにそんなことせんでも、ジムチャレンジでどうせ戦うことになるばい」

 

 そう言うと、マリィは挑戦的な目つきで俺を見つめてくる。先ほどまで頬を膨らませていたモルペコも、ニヤリと笑ってこちらを睨みつける。

 

「へえ……。まあ、俺のところまで来れたら相手してやるよ」

「ブッ倒してやるけん、言い訳を考えときんしゃい」

 

 それはそれとして、おかわりだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

「~♪~♪♪~~」

 

 あの後、キャンプの後片付けをしたら唐突に始まったネズのゲリラライブを楽しみ、俺はスパイクタウンを去ることになった。

 今鼻歌で歌っているのも、その時の曲である。

 

「愛してーるのエールをあげーる♪」

 

 ネズは歌手としてもかなりの人気を誇っている。実際、その歌声は多くの人を魅了するものがあるのだろう。俺もあのライブではピョンピョン飛び跳ねて声援を送っていた。

 

 ……まあ、だから。少しばかり良い気分だったところを妨害されるのは、嫌なものなのだ。

 

「この辺でいいか? ……出てこいよ」

 

 人目の無いところへ向けてわざわざ歩いてきたんだ。さっさと出てきて欲しい。

 腰につけたボールを握り、いつでも出せるように構えておく。まだポケモンは出さない。人間というのは目に見える脅威が無ければ案外油断するものだ。敵の口は軽い方が良い。

 

「へェ。流石はジムリーダー様ってか? 一体いつから気づいてたのかねえ」

 

 姿を現したのは如何にもといった姿の男一人。他に視線は感じない。仲間はいないと見て良いだろう。

 敵の背後にはニューラとラフレシアが一匹ずつ。……まさか、それでジムリーダーである俺に勝てるつもりなのか? 単なるバカか、それとも何か秘策があるのか。

 

「お前ら、どこのモン? フレア団の残党か、この辺のマフィアか、ちょっと遠いけどプラズマ団とかもあるな。それともただの雇われ? もしかして――財団じゃあ、ねェだろうな」

「なァに、ただ天下のマクロコスモス様が今度やろうとしてることが雇い主にとって少し困るって話でさァ。お前も『裏』の人間らしいからな、手を出されるのも覚悟の上だろう、ガキ」

「……なんだ、ただの弱小企業の雇われか。別に聞きたい話も無いな――ハガネール、行け」

 

 無駄な問答だった。バックに何もついていないならば、何も気にする必要はない。たまたま黒いトコと繋がりのあった企業が最後に足掻いた、と言ったところだろう。腰のボールのスイッチを押し、出てきたハガネールにポケモンたちを叩き潰せと命令しようと――

 

 

「――あ、れ?」

 

 ボールに手をかけたまま動きを止める俺を見て、ニヤリと笑った男はこちらを指差して口を開く。

 

「ニューラ、やれ――『れいとうパンチ』」

 

 瞬間、腹に感じる衝撃。

 浮いた体はそのまま、背後の壁へと叩きつけられる。

 

「ガ、ハッ――」

「ハハハハハ! 無様だなァ、ジムリーダーさんよぉ! 頼りのポケモンが出てこない気分はどうだ? 怖いか? 寂しいか? ガキらしくママー、って泣いてもいいんだぜぇ!?」

 

 男の言葉を無視して、もう一度ハガネールを出そうとしてみても結果は変わらない。他のポケモンでもそれは同じだ。一体、何が――

 

「ポケモンが出てこないのが不思議かぁ? そりゃ()()()のお蔭だよ! カロスのフレア団とやらが開発してた装置でなァ、ボールの機能を阻害する電波を放つ! 俺みたいなただのチンピラがジムリーダークラスの奴とマトモにやり合って勝てるワケねえからな、小細工させてもらったぜ?」

「ボールの機能、を……?」

「ああそうだ。ヤツらはカロスのボール生産を裏から牛耳ってたみたいだから、一般に出回ってるボールの機能には詳しいんだろうよ」

 

 なるほど。コイツがやけにペラペラと何でも話す理由がわかった。この装置がある限り、コイツには勝利が約束されている。ポケモンに勝てる人間なんてのは、それこそかくとうかとか一部の超能力者だけだ。

 少なくとも、今の俺では確実にこのニューラとラフレシアを倒すことは不可能だろう。

 

「……マトモなボールは、確実にイカレちまうのか」

「ああそうだ。怖いか? 安心しろ。お前はかなり立場が高いらしいからな、人質として使わせてもらう。ラフレシアの『ねむりごな』でグッスリ眠ってるうちに全部終わってるさ。目が覚めたらお前の家だ」

 

 それはないだろう。ローズ委員長は俺が足手纏いになったならすぐに切り捨てるはずだ。

 

 そのため俺は自力でこの状況を切り抜ける必要があり、そしてその力を、()()()()()()()

 

「そうか。少し聞きたいことが出来たが、無理そうだな。何せ、久々の食事だ」

「……? 何を言って――」

 

 ジムリーダーとしてのボールから手を離す。

 マトモなボールがダメならば、()()()()()()()ボールに頼るしかないだろう。

 油断し切っている敵に、盤面を丸ごと崩す一手を加える。

 

 

「――出てこい、GLUTTONY

 

 

 

 

■■■■■■■■―――!!!!

 

 

 

 空気を震わせる咆哮。大地はその体躯を受け止めきれず、地響きが起こる。

 UB05:GLUTTONY(暴食)、又の名を――アクジキング。

 其は悪食の王。生命非生命、有機無機を問わず全てを喰らい尽くすブラックホールの化身。

 果たしてこのポケモンの後には何が残ると言うのか。ポケモンの中でも最大級の巨躯を持つ怪物が、二本の舌を震わせながら此処に現れる。

 

「――は? 何、で……ボールは、使えないはずじゃ……それに、そのポケモンは、一体何なんだ……? な、何なんだって言ってるんだよ!!!」

 

 男は震えながら後ずさる。しかし既に、悪食の王は獲物をその目に捉えていた。

 

「コイツのボール――ウルトラボールはマトモなモンとはかけ離れててよ。そもそも普通のポケモンを捕らえるためのじゃねえんだ。……こうなってみると、()()()()にも感謝すべきなのかもしんねえな。……いや、アイツらがいなきゃそもそも()()はなってないんだからやっぱいいか」

「な、何を、言って……」

 

 ……どうやら、既に男の戦意は失われたようだった。もっとも、戦意があったところで国際警察ですら退けたアクジキングをどうこう出来るとも思えないが。

 

「コイツを出したからには、『誘拐未遂』にすることも出来ねえ。恨むなら、あんな手段を取っちまった自分を恨むんだな」

 

 ドスン、ドスンと砂埃を上げながらアクジキングが男へと近づいていく。二匹のポケモンは我先にと逃げ去って行った。彼を守るものはもう、ない。

 

 

「あ。……あ、あ、ああああぁああああぁあぁあああぁああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイ、昨日は帰すのが結構遅くなっちまいましたが、大丈夫でしたか?」

「――ああ、何もなかったさ。何も、な」

 







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VSリラ

今回もシリアスが続きます。


「国際警察ぅ?」

『ええ。直接的に捜査協力を求めてきたわけではありませんが、少しばかりガラルで動きがありました。アナタを追ってきた可能性がある、とはローズ委員長からのお達しです』

 

 マクロコスモス幹部専用回線からかかってきたオリーヴの電話内容に、冷や汗を垂らす。

 

 国際警察。

 ゲーム内ではハンサムというキャラにスポットが当てられてきた組織で、その名の通り国内外問わず各地の悪の組織を打倒するために動いている超エリートたちの集まりだ。

 ゲーム本編で主人公が関わった事件だけでもシンオウ、イッシュ、カロス、アローラとさまざまな地方で数々の功績を残してきており、その優秀さは疑う余地もない。

 

 当然、俺たちのやってることがバレたら相当マズい相手である。……あるいは、彼らの情報収集能力があればもう既に気づいており計画阻止のため動いているのかもしれないが。

 

『ひとまず計画は水面下のものに留め、彼らの動向を伺うようです。アナタもジムリーダーとしての活動に専念するようにしてください。特に、ウルトラビーストの使用は控えろとのことです』

 

 ……あ。

 オリーヴの言葉に、ドンピシャで思い当たることがあった俺は先ほどと比べ物にならない量の冷や汗を流し始める。

 

 マズい。非常にマズい。ヤツらは()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 胸の動悸が早まり、動いてもないのに息が荒くなる。

 本当にタイミングが悪い。あと一日連絡が早ければ、あのように迂闊な行動は取らなかったというものを。

 

『……カイ? 一体どうし――』

 

「――カイ様! お電話中申し訳ございません、国際警察のリラと名乗るものが、ジムを訪ねてきております!」

 

 電話中だというのにも関わらず、執務室の扉を焦った様子で開け放ってきたジムトレーナーの言葉に一瞬、思考が止まる。

 

 ……悪いことというのは、重なるものだ。苛立ちのままに電話を切り、音を立てて奥歯を噛み締める。

 

「――通せ。お前らは客室に近づくな。……あと一応、本当に一応だが、アリバイ作りの準備もしておけ」

 

 

◇◇◇

 

 

「どうもこんにちは、リラと申します。……その、何というか、随分と和風のお部屋なんですね」

「俺の趣味だ。客室と言っても、ほぼ自室みたいになってるからな」

 

 特徴的な紫色の髪を持った女性――リラ。

 彼女はジムの客室に通されると、大抵の人間と同じ反応をした。

 ……まあ、ガラル――つまりは、イギリスに来て畳と炬燵を見たら誰だって驚くだろうが。

 

「気に入らなかったか? 一応、奥に洋風の部屋もあるが」

「いえ、私の出身はホウエンですから。むしろ昔を思い出して懐かしい気持ちです」

 

 嘘を吐け。アローラに来るより前の記憶は一切存在しないだろうに。

 かつての生活を頭では覚えていなくとも習慣として体は覚えているのか、自然に靴を脱ぎ畳に正座するリラに心の中で毒を吐く。

 

「へえ。俺もあっちの方には行く機会がよくあってな。ホウエンのどこ出身なんだ?」

「――。フ、フエンですね。温泉で有名な」

 

 苛立ちからか、俺の口は驚くほど簡単にリラへのダメージとなる質問を放っていた。

 ……尤も、彼女の事情を知らなければごく普通の世間話だ。彼女も自身の境遇を実感し落ち込むばかりで特に俺の言葉を訝しむ様子はない。

 

 リラ。

 ポケットモンスターエメラルド、つまりは第3世代にて登場したキャラクターであり、バトルフロンティアと呼ばれる施設の中でトップトレーナーとして名を馳せていた。

 その後、ゲームにて再登場したのはポケットモンスターサン・ムーン、第7世代。懐かしいキャラクターの登場にファンたちは歓喜したが、彼女は一つの問題を抱えていた。――それも記憶喪失という、非常に大きな問題を。

 

 アローラにて発見された彼女が持っていた記憶は僅かに四つ。

 「自身の名前」「ホウエン出身であること」「どこかの塔を守っていたこと」「腕の立つトレーナーであったこと」

 先ほどの俺の質問への答えは、ホウエン地方の都市でとっさに思い付いたのがフエンタウンであった、というのが実情だろう。記憶喪失であるという弱みを、調査対象である俺に見せたくないがための嘘だ。

 それでいて簡単に動揺を見せたのは、別にバレても致命的な弱みになることはない事情だからだろう。本当にこれからの話し合いで不利になるようなことならば、徹底的に隠し通すはずだ。つまり、俺の言葉はただ彼女を傷つけただけだった、ということになる。

 

 ……何をやっているんだ。

 

「あっそ。んじゃ、お茶淹れてくるからちょっと待ってろ」

「む。自分から聞いておいてその態度はなんですか。私も手伝います」

「いいから座ってろ。客は黙ってもてなされてりゃ良いんだから」

 

 そう言って、無理やり座布団の上に座らせてから自室に戻る。今の俺には、一人で頭を冷やす時間が必要だ。お茶を淹れる僅かな時間で、自分の取るべきスタンスを考える。

 

 まず、リラがここにやって来た理由だ。

 これについては、先日俺が繰り出したアクジキングで話が片付くだろう。ウルトラホールを開けているでもなし、感知など出来ないと高をくくっていたが……国際警察の情報収集能力を舐めるな、ということか。自分の迂闊さに歯噛みする。

 

 次に、リラがここにやって来た目的だ。

 無論、ウルトラビーストの保護を任務とする彼女らにとってはウルトラビーストの反応を検知したというだけで俺を訪ねて来る理由になり得るだろうが……問題なのは、ローズ委員長の計画に気づいているかどうかだ。

 

 ローズ委員長が立ち上げ、そして現在まで成長を続けてきたマクロコスモス・グループ。それは今でこそガラルにおいて誰もが知っている企業グループになってはいるが、その裏では相当にあくどいことを重ねてきている。

 敵対企業にスパイを送り込むなんてのは序の口、先日俺がやったように犯罪行為であろうと躊躇わずに行う勢いがあの人にはある。……というか、その勢いがあるからこそマクロコスモスはここまでの発展を遂げられたのだ。

 そういうわけで、国際警察が動く理由は十分にある。彼らの目的がマクロコスモスの計画阻止であったら正直お手上げだ。

 

 単にウルトラビーストについて聞きに来ただけならば良い。ゲームにおいてはここガラルの地にもウルトラホールが出現したのだ、幾らでも誤魔化しが利く。

 しかし、本腰を入れて俺の周りを洗われるのはダメだ。国際警察を敵に回すと、最悪の場合()()()()()がやってくることになる。

 

 まずは相手がどこまで知り得ているのかを見極めること。その先の対応はそれによって変わってくる。

 

 ひとまず自身のスタンスを落ち着けた俺は、ガラル特産の紅茶と共にリラの元へ戻った。

 彼女は相も変わらず真面目に正座を続けている。

 

「ほらよ、紅茶だ。砂糖も好きなだけどうぞ。あと足は崩してもらって構わないぜ」

「ありがとうございます」

 

 自分のカップにドバドバと砂糖を入れながら彼女を観察する。

 国際警察らしく表情を偽る術は持っているだろうが、何となく今はリラックスしているように感じる。少なくとも、悪党の拠点にやってきたと言うほど警戒している様子は見られない。

 ……となれば、計画についてはバレてないと見ていいのか……? いや、こちらを油断させるための演技かもしれない。まずは話を聞いてみなければ。

 

「それで、国際警察サマが何の用だ? 観光がてらジムの見学に来た、なんて言えるほど暇な組織じゃあないだろう」

「ええ、そうですね。私がここに来たのはそんな理由ではありません」

 

 紅茶を一口飲み、本題を切り出す。すると、目の前の彼女も真剣な顔つきになって佇まいを直した。

 

「ウルトラビースト、という存在を知っていますか?」

「……いいや?」

 

 いきなり来たか。なるべく自然な様子で言葉を返す。

 リラはこちらの嘘に気づいているのかいないのか、チラリとこちらの表情を確認した後話を再開する。

 

「ウルトラビーストというのは、異世界からやって来たと言われているポケモンで――いえ、ポケモンと言っていいのかすらまだわかってはいませんが、これまでは主にアローラ地方で存在が確認されてきました。

 彼らについては未だ謎が多く、一般人への情報公開は行われておりません。また、彼らの中には危険な性質を持つものも存在しており、我々国際警察は彼らの保護・捕獲を任務の一つとしています」

 

 顎をしゃくって話の続きを促す。こんなのはとっくの昔に知っていることだが、俺が今知ったはずの情報と既に知ってしまっている情報の整理をしなければいけない。聞き流すことはなく、話に集中する。

 

「そして、ここからが本題なのですが――ガラル地方でも、彼ら特有の反応が検知されました」

 

 眉を上げて驚いた表情を作る。

 ……少々わざとらしかっただろうか。いや、俺の外見と態度のギャップからして普通じゃないのはわかりきっているだろう。無理に演技する必要もないように思えてきた。

 

「しかし、その反応が検知された現場に赴いた時には既に彼らの姿はありませんでした。反応も微弱なものであったため我々は普段ならば検知器の誤作動を疑い、簡単な調査の後すぐに通常の任務へ戻るところですが」

「……ですが?」

「ここ、ガラルの地にはまた別の事情があったのです」

 

 続けて放たれたリラの言葉に少し嫌な予感を覚える。

 大丈夫なはずだ。アクジキングの食事は何一つとして証拠を残さない。

 

「そも、我々はガラルには別の目的で調査にやってきていました。本来ならば、ガラル地方にウルトラビーストが現れたところで我々にそれを感知する力はなかったのです。

 しかし、ウルトラビーストに関わる事件の調査のため、アローラを主な拠点とする我々が偶然この地にやってきていました。今回のウルトラビースト出現を検知できたのはその副産物です」

 

 先ほどと同じく、こちらの反応をチラリと伺ってから話を続けるリラ。

 大丈夫だ。まだ、表情は保てているはずだ。

 

「エーテル財団、という組織があります」

「――」

 

 一瞬、思考が止まる。

 遅れて湧き上がるのは、恐怖と不安と――怒り。

 

 必死に作り上げた表情はもうズタズタに崩れ去った。しかし、奴らの名前を出されてもそれを保てというのは俺にとって少し酷な話である。第一、その名が出たというのならば俺の境遇についても把握されてると見ていいだろう。最早手遅れというものだ。

 

「……話を続けます。彼らはポケモンの保護活動を主に目的とした組織ですが、その実かなり黒いことも裏ではやっていたようです。そして元代表の意向で特に力を入れていたのが、ウルトラビーストに関連する活動でした」

 

 もう表情を取り繕うこともなく、能面のような顔で話を聞き続ける。

 リラはそんな俺を見て少しばかり憐れむような表情をしたあと、話を再開した。

 

「しかし、つい最近のことですが、とある事件をきっかけに彼らの悪事は我々国際警察以外の手によって暴かれました。そして元代表は事件の影響で意識不明の状態に陥ったまま、彼女の息子が代表を受け継ぎ組織は理念通りのクリーンなものに変わったのです」

 

 薄々わかってはいたが、この世界のアローラはウルトラサン・ムーンではなくサン・ムーンの歴史を歩んだらしい。……俺からすれば、逆であった方がどれほど良かったことか。

 

「ただ、過去の負の遺産というのは清算しなければいけません。その事件の後に国際警察の取り調べが入り、過去の活動を調査したところ一つの非人道的な実験の記録が発見されました」

「非人道的、ね」

「……はい。これもウルトラビーストに関連することで、Fallと呼ばれる異世界からの来訪者――ウルトラビーストとは違ってこちらは人間ですが、そのFallである一人の少年が対象となったものでした」

 

 ……ああ、何となく彼女が俺を憐れむ理由がわかった。きっと、同じくFallである自分を俺に重ねているのだろう。あるいは自分が辿っていたかもしれない道だ、と。

 

 ふざけるな。反吐が出る。

 

 全くもってその通りだ。お前のような境遇であればどれほど良かったことか。妬ましい。羨ましい。そしてそれ以上に、最早道を戻れない自分に吐き気がする。

 

「……我々はその少年の行方を追いました。彼は数年前に財団の研究所から脱走していたのです。そして、我々は度重なる調査の末、遂に彼と思しき人物を発見しました。……それがカイ君、アナタです。今回のウルトラビーストの反応で、それは確信に変わりました」

 

 とうとう、ハッキリと俺の名前を出される。

 そして非常に残念なことに、彼らの調査はどこまでも正確だった。

 

「……それで? その少年を発見して、アンタらは何がしたいんだ? また実験か。あの地獄に連れ戻すって言うのか」

「まさか! 我々はエーテル財団とは違います。アナタを利用するなどといった考えは一切持っていません! 幸いアナタはこの地で大成しているようですし、身辺を調査して問題がないと判断されたら我々は手を引きます。無論、財団に賠償を求めるというのならば十分な額が払われるでしょう。アナタにはその権利があります」

 

 俺の言葉を、食い気味で否定するリラ。ここまで来れば、彼女がやって来た目的は完全に理解した。純粋に、エーテル財団の被害者としての俺に会いに来ただけである。そしてそれは、今のところは計画が破綻していないということであり、そして将来的に破綻する可能性を含んでいるということでもあった。

 

「……ハッ! 信じられないね。大体、国際警察だって黒いところがないわけじゃないだろう。アンタも、それはわかってるんじゃないのか?」

「それは……」

 

 そう。それが今現在も国際警察ではなくローズ委員長のところへ身を預けている理由である。

 あまり残酷なことを描写できないゲーム本編においてですら、Fallの性質を利用してリラを危険な任務に追いやっていたんだ。財団以上とは言わないが、非人道的な扱いを受けたところで驚かない。

 

 財団からの脱走後、ローズ委員長に拾われた俺は彼と契約した。俺がこの契約を守り続ける限り、彼もこの契約を守り続ける。彼の庇護下にある限りは、他の組織は手を出せない。

 

「……いえ、我々を信用できないというのならば構いません。アナタから保護を求めてくるようであればすぐさま引き取る予定でしたが、ただその予定が帳消しになっただけです。調査の結果、保護が必要ないと判断されれば我々はアナタに対して何もしないと誓いましょう」

 

 ……実の所を言えば、その調査がマズいのである。国際警察に保護される気は毛頭ないが、彼らの調査力は随一だ。最悪、メインプランについて勘付かれてしまうかもしれない。

 

 しかし残念なことに、その調査を回避する手立てが思い付かない。ここでリラを消したって同じことだ。むしろそうなったら本腰を入れて調査を始めてしまうだろう。

 

 難しい顔をして黙り込んでいると、敵意を抱いているとでも勘違いしたのかリラが神妙な様子で口を開く。

 

「……その、実を言えば私もFallなんです。国際警察も私のFallとしての力を利用していないと言えば嘘になりますが、気遣ってくれる部下もいればこちらの要望を飲む度量もあります。人権を無視されるようなことはありませんでした。決して、悪い組織じゃないんですよ」

 

 ……これだ。

 彼女は強い同情をこちらに抱いている。これを利用しない手立てはない。

 

「知っているさ、()()()()()()()()

「…………え? 今、何と……」

「タワータイクーン、フロンティアブレーンであったアナタがFallであることを俺は知っている。だからこそ、アナタを餌のように使う国際警察のことが信じられなかった」

「一体、何、を……。フロンティア、ブレーン……?」

 

 俺の言葉に、震えた手で頭を押さえるリラ。

 全く聞き覚えのない言葉が、決して忘れてはいけないものだったと体が叫んでいるのだ。

 

 言葉を重ね、思考を揺らす。

 

「今まで俺に仲間はいなかった。ウルトラビーストだけは唯一そう呼べる存在だったのかもしれないが、種族の差があっては慰めあうことも出来なかった。でも、アナタと会った今ならば違うと言える」

「――っ」

 

 リラの目を正面から見つめる。彼女の表情を隠す技術は、もはや機能していなかった。

 

「タワータイクーン! バトルフロンティアの一角、バトルタワーを統べる女王、リラ! アナタだけだ! アナタだけを、俺は信じられる!」

「え、あ、う――」

 

 彼女は失ったはずの記憶を掘り起こされて揺れている。今のリラの心に、国際警察としての責務は存在しない。そこに、唯一の仲間であるという意識を刷り込んでいく。

 俺に頼れるのは貴女だけだと、俺を助けられるのは自分しかいないと、拾い手を求める子犬のように縋る。

 

「頼む、嫌だ、またあの日々には戻りたくないんだ……。死んだ方がマシだと何度も思った。いっそ殺せと何度も叫んだ。腹を切り開かれ、ワケわかんない薬品を投与され、時には電流を流された。頭痛を感じない日は無かった。腹が空っぽになっても体は吐こうとし続けた。極限状態だ、なんて言って飯を与えられず、睡眠すら許されない時もあった。何度も気が狂い、その度に正気に戻された。あんな生活には戻りたくない――国際警察にバレたらまた後戻りだ」

「そんなこと、は――」

「いいや、信じられない! リラだって組織の全てを知っているわけじゃないだろう。裏で何をやっているかなんてわかるわけがない。エーテル財団だって、その職員のほとんどは善良な一般市民だった!」

「う……」

 

 更に同情を誘い、この少年は国際警察ではなく私だけを信用しているのだ、この少年が頼れるのは自分だけだ、という意識を強くする。国際警察ではもしかするとダメかもしれない、という猜疑心を植え付ける。

 

「お願いだ、俺のことを報告しないでくれ。俺のことを危険だと思うなら、ずっと監視していたって構わないから」

「いいえ、決してアナタのことを危険視しているわけじゃ――」

 

 リラの反応に上手くいっていることを確信する。後は、上手く落としどころを見つけるだけだ。

 

「頼む、リラ、アナタの知るホウエンのことは、俺だけが知っている。こちらに来てからきっとホウエンを訪ねたのだろう? でも、何もかもが違ったはずだ。俺もそうだ。何一つとして知っている世界はなかった」

「……本当に、昔の私のことがわかるのですか……?」

 

 思ったより記憶への執着が強い。恐らく、バトルタワーのことを思い出しかけているのが効いているのだろう。忘れてはいけないことだったと叫ぶ体に忘れてしまった心が追いつめられているのだ。

 

「勿論。俺とリラは、たった2人だけの仲間だ。俺の知る限りのホウエンの話をしよう。その代わり、リラは国際警察に俺のことを報告しないだけでいい」

「う……でも……」

 

 揺れている。国際警察の一員としての責務と、記憶への執着がせめぎ合っているのだろう。この状態までくれば、後は少し逃げ道を作ってやるだけで十分である。

 

「じゃあ、1年だ。1年待ってくれれば、俺も覚悟ができる。1年間俺を観察して、その後に報告するというならば国際警察にも面目が立つだろう?」

「1年後……それ、ならば……」

 

 1年後にはメインプランが成功するにせよ失敗するにせよ終わっている。

 1年越しとはいえ国際警察への義理も果たせるし、この少年も納得してくれる。リラにとっては最良の選択のように見えるだろう。突如湧いてきた記憶の欠片で錯乱している今は、垂らされた蜘蛛の糸に飛びつくしかないはずだ。

 

「そう、ですね。私とアナタは唯一の仲間ですから……アナタには私しか信じられる人がいないのですから……私が、助けてあげなくちゃ……」

 

 ブツブツと自身を納得させるように言葉を呟くリラの姿に勝利を確信する。

 

「ああ、ありがとうリラ! 流石はフロンティアブレーンだ!」

「はい、私はフロンティアブレーンですから、()()ホウエンの一員ですから唯一の仲間くらい助けますとも……よろしくお願いしますね、カイ」

 

 リラの黒く濁った瞳を見つめながら、しっかりとその手を握る。

 最良の結果と言っても過言ではない。最大の敵を打破し、むしろ味方に近い立場につけることが出来た。

 

 彼女には唯一の仲間が出来た。今の状態を見る限りこの仲間意識は相当強い。思ったよりかつてのホウエンへ執着していたのが予想外だったが、もう彼女が俺にとって不利益となることをすることはないだろう。

 

 ピンチを乗り越えたときというのは素晴らしく良い気分になるものだ。

 良い気分だから、きっと俺は今笑えているはずだろう。



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withダイゴ

 

「それではこれより、はがねタイプ愛好会第46回ミーティングを始める」

 

 男が発した意味の分からない言葉に、パチパチと拍手が返される。

 

 暗い部屋の中心に置かれた円卓。スポットライトが照らすそこには、俺を含めて5人の人間が存在していた。

 

 はがねタイプ愛好会――その名の通り、はがねタイプを愛してやまない人間たちの集まりだ。

 メンバーとなる方法ははがねタイプに対する強い愛を面接で示すか、招待されるかの2通りしかない。そのため、ごく一部の限られた存在しか加入することが出来ない秘密のクラブとなっている。

 

 また、メンバーには非常に有名な人物が多いため、会議中はみんな鋼の仮面――目元だけを隠す、2世代四天王のイツキがつけているようなものを被り、お互いを会員番号(コードネーム)で呼んでいる。

 もっとも、有名人の度合いがヤバ過ぎて全くもって意味をなしていないのが現状だが。

 

 俺ははがねタイプのジムリーダーに就任してから2年目に招待状が届いた。

 正直に言うと加入するつもりは全く無かったが、一度気まぐれで参加したところものすごい勢いではがねタイプの沼に引きずり込まれてしまった。結局はNOと言えない日本人の性が発揮され、今では皆勤賞を取るレベルで参加している。

 会員番号はNo.13。現在の会員の中では末席である。

 

「それではまず出欠確認からいこう。会員番号順にお願いできるかな」

「No.2の方は欠席されているので私から……会員No.3、出席しています。本日もよろしくお願いしますね」

 

 No.3と名乗った少女――ミカンだ。髪型と白ワンピで即座にわかる。本当に仮面が意味をなしていないのだが、大丈夫だろうか。

 彼女はジョウト地方のアサギシティのジムリーダーで、若手ながらジョウトジムリーダー最強の一角とされる非常に優秀な少女だ。得意タイプは、当然のことながらはがね。

 

「No.4、此処に」

 

 鎧に包まれた大柄の肉体に騎士然とした態度。どう見てもガンピだ。本当に正体を隠す気はあるのか?

 彼は影が薄いと評判のカロス四天王の一人である。本気で覚えてないって言う人もいるんじゃないだろうか。尤も、現実で出会ったならばインパクトがデカ過ぎて絶対に忘れられないが。

 

「No.7だ。今日は5人か、結構集まったな!」

 

 灰色の坊主頭が褐色の肌に映える中年の男性。元ガラルチャンピオン、ピオニーだ。不仲ではあるもののローズ委員長の弟でもある。……あの人と違い、随分と人間味のある人だが。

 

「あー。No.13、いまーす」

 

 末席である俺は最後から二番目に声を出す。俺も特に自分のことを隠す気はないので仮面以外の変装とかはしていない。そのため、ジムリーダーというトップトレーナーの一員である俺の正体は皆わかっているだろう。……まあ、ここにいる面子を考えると俺の肩書で威張れることは何一つとしてないのだが。いや、一応お互いがどういう存在かはみんな建前上は知らないはずなんだけど。

 

 そして最後に挨拶をし、同時に司会も務めるのは出席したメンバーの中で最も会員番号の若い者、即ち最古参の者と決まっている。

 

「これで全員だね。みんな忙しい中、出席してくれてありがとう」

 

 そりゃあ、()()()()()()()()退()して趣味に生きてるヤツよりは皆忙しいだろうな。

 

「No.1であるボクが、今日の司会を務めさせてもらう」

 

 元ホウエンチャンピオン。一番強くて凄い男、ダイゴ。伝説の存在である彼は、このはがねタイプ愛好会の創設者(No.1)でもある。

 

「それでは早速だが本日の議題を発表しようと思う」

 

 ダイゴは両手を顎の前で組み合わせ、参加者たちの顔を一瞥する。

 やがて、誰もがダイゴの次なる言葉に耳を傾けているとわかると右手の指をパチンと鳴らした。

 音と同時に彼の背後にモニターが出てくる辺り、誰かしらが裏方として働いているのだろう。こんな下らないことに付き合わされて、ご愁傷さまだ。

 

「……デデン! 今日の議題は、『はがねタイプの中で、どの色違いが最も美しいのか』だ!」

 

 毎回思うんだが物々しい雰囲気を出しといてしょうもない話を始めるのはなんなんだ。

 暗い部屋で円卓を囲む強者たち……と来たらなんかすごいことを始めそうだと思うだろ。もう、次は欠席しようかな。

 

 クソほどどうでもいい話を始めるダイゴを横目に、次回のミーティングをサボる言い訳を考え始める。……前回も同じこと考えていたな。前の議題は確か「鉱物を食べるはがねタイプに与えるエサはどの金属が最も良いのか」だったか。当然どうでもいいとしか思わず二度と出席しないと心に決めたのだが、ダイゴに「また次も、来てくれるかな?」と無邪気な笑顔で聞かれてしまい、その聞き方をされたら断れない日本人である俺は今回も出席することになってしまった。

 

「おや、No.3(ミカン)が早速手を挙げているね。意見を聞こうか」

「はい! やっぱりハガネールの色違いが一番美しいんじゃないでしょうか。あのキラキラとした黄金の輝きと言ったらもう……」

「む。貴殿、我には異論があるぞ。はがねタイプの色違いと言えばまずギルガルドを挙げるべきであろう。あの禍々しい漆黒の色には、人々を魅了するものがある」

「おいおいわかってねえな、やっぱりダイオウドウのあのチラリと顔を覗かせる黄色い模様が……」

「ふふ、思ったより白熱する議題だったようだ。まあ結局、メタグロスの色違いが一番格好良くて美しいんだけどね」

 

 ……コイツらただ単に自分の好きなポケモン挙げてるだけじゃないのか?

 余りに生産性のない議論に、口を挟もうとも思わない。……もっとも、このミーティングにおいて自分から発言しようと思ったことなんてほぼないのだが。

 

「やっぱりはがねタイプの魅力を最大限に引き出すためには光沢を重視するべきだと思うんです。だからあのキラーンとしたハガネールの色が一番良いんですよ」

No.3(ミカン)、貴殿は未だ純粋な少女の身。それ故、芸術というものに対し深い理解を得られておらぬ。光り輝くものは確かに大衆の目を引き付けるが、逆に総てを吸い込む黒の美しさを理解できる人間は少ない。パッと見の外見に囚われるのではなく、じっくりと長い時間眺めればどちらが良いのかは自ずから理解できよう」

No.4(ガンピ)、そいつはどうかな? 芸術には俺も詳しかねェが、気分が落ち込んじまう暗い色よりは明るい黄色とかの方が良いんじゃねえか?」

「けっきょく メタグロスが いちばん つよくて すごいんだよね」

 

 うーん、やっぱり自分の推しを色々理屈付けて1位にしようとしているとしか思えない。当然、これといった推しがいない俺は黙り込むことになる。

 ……というか、色厳選とかやってた人種じゃないしな。そもそも持っていた色違いの数が少ない。イベントとかではなくただの幸運によって初めて入手したのは確かホーホーだったか。ソウルシルバーで、ピカチュウをトキワの森で探していたら出てきた記憶がある。

 

 掘り起こされたかつての記憶に思わず昔を懐かしむ。色違いというのはポケモンにおけるレアものの代名詞だ。どんなポケモンであれ、出てきたら思わず歓喜に叫んでしまうものだろう。この世界においてもその価値観は変わらぬようで、今でも滅多に見かけることはない。

 

 一番気に入っていた色違いは何だったか。やはり、イベントなどによる配布で得た色違いよりも自力で捕まえたものの方が特別感は強い。まあ、昔の映画で色違いのポケモンが配られたときはソフトを両バージョンとも持って行ってそれぞれ別の色違いを1匹ずつもらい、当然の如く狂喜乱舞したのだが。

 

「――という訳で、ハガネールが1番なんですよ! No.13(カイ)さんもそう思いますよね?」

「え? あ、うん。俺もそう思う、うん」

「ほら! No.13(カイ)さんだって賛同してくれましたよ? やっぱりハガネールが一番格好いいんですよね!」

「むむ。No.13(カイ)、考え直すことを勧めよう。我が思うに最もはがねタイプの美しさを際立たせるのは……」

 

 マズい。かつて持っていた色違いのことを考えていて全く話を聞いていなかった。迂闊に同意しちゃいけない内容だった気がする。適当にはぐらかしておくべきだったか。

 

 俺はほとんど議論に参加しないとはいえ、曲がりなりにもジムリーダーである以上ポケモンに関する知識はかなり豊富な部類に入る。前回の「エサに適した金属」に関する議論の場でも、マクロコスモス社員の仕事内容の一環としてはがねポケモンの世話については把握していたため意見を求められればすぐに返すことは出来ていた。

 

 そういった事情もあり、この場に出席している限りは普通に議論の相手として認められてしまっているのだ。……今思えば、知識が全くない風に装ってとっととメンバーから除籍してもらったほうが良かったか……?

 

「メタグロスもかっちょいいけどダイオウドウだって負けてねえよなあ、No.1(ダイゴ)の旦那」

「けっきょく ボクが いちばん つよくて すごいんだよね」

「旦那……?」

 

 ダイゴはこれ大丈夫なのだろうか。3回に1回くらいの割合でダイゴは最終的にこうなってしまうのだが、今日は随分と早かった気がする。

 

 こいつ(No.1)がこの状態になるとマトモな司会進行が望めないので、大体の場合No.2かNo.3――つまり、今日の場合はミカンが代わって司会を務めることになるのだ。

 

「はい! じゃあ、このまま話し合ってても余りラチが明かなそうなので……いつものように、多数決で決めることにしましょう!」

 

 ミカンの提案に出席者たちは黙って頷く。

 というかどんな議題でも基本お互いに譲れない主張がぶつかり合うので、多数決で一旦の結論を出すというのはこのはがねタイプ愛好会において今までもよく使われてきた手法なのだ。

 

「お三方はそれぞれギルガルド、ダイオウドウ、メタグロスに一票ですよね? 私は勿論ハガネールに一票ですから……No.13(カイ)さん! どうぞ、今日の結論を決めちゃってください!」

「えっ」

 

 なんか俺に全責任が回ってきた。

 ミカンは何かを期待するような目でこちらを見つめてくるし、ガンピは当然わかっているだろうと言わんばかりに睨んでくる。ダイゴは相も変わらず虚空を見つめているが、ピオニーだけは好きに選んでいいぜ!という風に親指を立てていた。……ピオニーだけ圧倒的に大人だな。

 とにかく、ものすごい視線を感じる。

 

 ……ここであえて別のポケモンの名前を出したらどうなるのだろう。チラリとそんな発想が頭に浮かんだが、流石に怖いのでやめておく。特に、正気を失っているダイゴ辺りが何をしてくるかわからない。チャンピオンというのは人に向けてはかいこうせんを打たせるひこう使いがいるように、決して油断してはならない人種なのだ。

 

「うーん……」

 

 周りの視線を一身に浴びながら俺はじっくり10秒ほど考えて、今日の結論ともなる言葉を吐く。

 

「ハガネール、かな」

「なっ」

「本当ですか!? やったー! 流石です、No.13(カイ)さん! アナタならわかってくれるって私信じてました!」

「わっ、ちょっ、やめ、やめろ、離せ!」

 

 歓喜の余り飛びついてくるミカンから逃げようともがく。しかし、少年の体は余りに非力である。感情の波に飲まれた少女に全く逆らうことができないのであった。

 ミカンが満足し、離してもらったときには既にゼエゼエと息が荒れていた。

 

「一応、理由を聞いておくか! なんでハガネールにしたんだ?」

「あー、うーん。ほら、なんていうか、すっごいゴージャスじゃん」

「なるほど、ゴージャスか! ソイツは良い表現だな!」

 

 ピオニーが俺の言葉にガハハと笑う。何て良い大人なんだ。ポプラ辺りだと、俺がこんな適当な受け答えをした暁には「ちゃんと答えない悪ガキにはお仕置きだよ!」とか言って謎のデバフを加えてくる。

 

 まあ、ハガネールを選んだのは割と本心からなのだが。銀色の体躯が金色に変わったら、そりゃもう格好いいとしか言いようがないだろう。メガシンカしたときもイカしている。

 

「じゃあ、今日はこれでお開きですね。議事録に今日の結果を纏めておきましょう」

 

 ダイゴの背後にあるモニターに、「結論:ハガネールが一番格好いい!」という文字が表示される。……ずいぶんと、私情によって捻じ曲げられていると思うのは俺だけだろうか。

 

 そしてお開きになった議場には、自身の意見が通らず少しばかり不満そうにしているガンピをなだめるピオニーに、相変わらず口を開けば例の名言しか出てこないダイゴ、それに今日の結果に満足気なミカンが残る。

 なんだかんだで愛好会と言うだけあってお互いの趣味は共通しており、話の種はいくらでも出てくるのだ。お開きになったあとも皆ダラダラと好きな話をし始める。

 

 無論、俺は帰るのだが。

 しかし席を立ち、いざ扉へ向かおうとすると後ろから声をかけられる。

 

「あ、No.13(カイ)さん! 私色違いのハガネール、持ってるんです! ジョウトのアサギシティにいるんですが、良かったらポケリフレとかしていきませんか?」

「……あー、うん。また今度、機会があれば」

「本当ですか! じゃあ、いつにします? 私は来週なら都合がつきますけど……」

 

 めっちゃグイグイ来るな。

 そんなに賛成してくれたのが嬉しかったのだろうか? 確かにミカンクラスになると話が合う友人というのは中々いないと思うが。

 

 でも、俺じゃなくとも良いだろう。……他のヤツらが年上ばっかだからか? 子供同士仲良くしようとか思っているんだったらブチ切れるぞ。

 

 まあ、色違いのハガネールというのを直で目にしたい気持ちもなくはないが……あまり、ジョウトには行きたくないというのが本音だ。

 あそこの主人公は、()()()()()()()()()()()()()()()……この世界においても、最強と謳われているレッドに、だ。

 

 他の主人公だったらどうにかなると言うわけではないが、自分から敵になるかもしれない最強に近づくやつはいないだろう。

 風の噂で聞いた話だが、三犬を追っているらしい彼とはジョウトのどこでも出会う可能性がある。なるべくかの地に足を踏み入れたくはない。

 

「うん、まあ、ホント、予定が合えば……」

「わかりました! 楽しみにしておきますね!」

 

 しかし残念なことに、NOと言えない日本人の性がここでも発揮してしまい、ハッキリとは断れないのであった。

 

 




次回は実況スレじゃない掲示板回にしようと思います


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【悲報】ガラル最強ジムリーダーキバナさん、またもや炎上してしまうwww

今更ですが、掲示板回はサブタイがスレタイです。


1:名無しのかいパンやろう ID:Gtgx8QMvg

↓問題のツイート

 

キバナ@DRAGON

色違いのヒポポタスをゲットしたぜ!

俺様ってばもしかしてラッキー?

 

【画像】

 

2:名無しのかいパンやろう ID:OUtQtpFTj

こいついつも炎上してんな

 

3:名無しのかいパンやろう ID:hy0XER3EC

何も問題のないツイートで草

 

7:名無しのかいパンやろう ID:itfz4167T

どういう風に炎上しとるんや?

 

11:名無しのかいパンやろう ID:DQ8fkgH8w

>>7

「ドラゴンタイプゲットしろ」

「砂パ強化するな」

「顔がウザい」

この辺やな

 

15:名無しのかいパンやろう ID:1g8u7J5cf

>>7

「色違いじゃない子は色違いより劣るってことですか?」

「オシャボ使え」

「ラッキーじゃなくてヒポポタス」

「イケメン○ね」

とかもあるで

 

19:名無しのかいパンやろう ID:8lhRV/fLR

>>11>>15

言いがかりで草

 

21:名無しのかいパンやろう ID:3kQ0jYWgX

何でコイツらは素直に人の幸せを喜べないんや…?

 

22:名無しのかいパンやろう ID:ddTBlLaHP

2文目が余計やったな

的確にアンチをイラつかせとる

 

23:名無しのかいパンやろう ID:W3+/YdwK7

有名人は大変やな

 

26:名無しのかいパンやろう ID:BeQAPmlta

でもキバナはフォロワーの数しかダンデに勝てへんから何回炎上してもやめられんのやで

 

27:名無しのかいパンやろう ID:Cstt5FuNP

ファイナルトーナメントでも今年で10連敗達成したしな

 

30:名無しのかいパンやろう ID:Aw3/evpPe

>>27

誰も勝てへんのは皆わかっとるのにライバルとか言っとるからネタにされるんよな

 

33:名無しのかいパンやろう ID:tVwY3u9S9

>>27

リーグカードにもネタにされてるのかわいそう

 

34:名無しのかいパンやろう ID:2DGfNzFE1

公式非公式含め全敗するライバル()さん、今季で記念すべき公式戦40連敗を達成!

 

38:名無しのかいパンやろう ID:s2kbAAKAO

>>34

う~ん、これはライバル!w

 

44:名無しのかいパンやろう ID:RSFrjt4H9

よくネタにされるけど実力は間違いなくガラル最強なんだよなあ

 

48:名無しのかいパンやろう ID:GFfuuIY7I

今季キバナ

80戦65勝14敗1分

勝率0.8125

 

52:名無しのかいパンやろう ID:D9VIJjdX/

>>48

これは間違いなくガラル最強

 

55:名無しのかいパンやろう ID:GF2IQ8S4S

>>48

勝率8割あるのは流石やわ

 

59:名無しのかいパンやろう ID:CpJr6I9Mh

砂パがどうとか言っとるヤツらも天候パに勝てないだけやろ

 

63:名無しのかいパンやろう ID:xTpL8El93

>>59

ジムチャレンジでタイプ詐欺するのはイカンでしょ

 

65:名無しのかいパンやろう ID:5S+pqCaNU

>>59

カイも「流石に初手くらいドラゴンタイプ使え」って言っとるで

 

68:名無しのかいパンやろう ID:jzAlC5bQ3

>>65

お前そんなこと言っとるけどジムチャレで一撃必殺使ってたの忘れへんからな

 

69:名無しのかいパンやろう ID:kqmX7pFpe

>>68

アレで結構敗退したチャレンジャー多いの笑う

 

73:名無しのかいパンやろう ID:ZXwDWlFI1

カイはジムチャレで落とし穴に落ちたときの煽りが好き

 

77:名無しのかいパンやろう ID:4Gy6OQQIk

>>73

「え、そこで落ちる人初めて見たんですけど……w」

「その手に持ってるもの何かわかってます?」

「ざんねぇ~ん(笑)行き止まりでしたぁ~」

三大語録やで

 

79:名無しのかいパンやろう ID:Yy7iddTRR

>>77

「……チッ、一発クリアしやがった……」も追加で

 

82:名無しのかいパンやろう ID:vqUajcJ9q

前任の仕掛けそのまま流用しとるだけなのにあそこまでイキれるのはすごいわ

 

83:名無しのかいパンやろう ID:+VuTYhfTy

>>79

煽りフル無視して一発クリアしたサイトウやっぱすごe

 

86:名無しのかいパンやろう ID:TcYeIeLOu

>>83

流れるようにボコボコにしていったのほんと好き

 

88:名無しのかいパンやろう ID:hNkhc6R/Z

>>86

「相性不利にいきなり一体落とされてどんな気分? ねえ今どんな気分?」

「……ふーん、や、やるじゃん」

「えっ、ちょ、ま、そのダイマは聞いてな……」

「……おかしいだろおおおおお!!」

 

92:名無しのかいパンやろう ID:d/xZ1IwnD

>>88

即堕ち2コマを体現した存在

 

93:名無しのかいパンやろう ID:q4u/0VCzx

「相手に動揺は見せないことをオススメしますが」

「え、1体目は布石だったことに気づいてなかったんですか?」

「まだ確定じゃないんですがね。急所に当たってしまって、本当にすみません」

「……フッ。タイプ相性の差でしたね」

 

96:名無しのかいパンやろう ID:OSo4HON5Q

>>93

キレッキレの返しすき

 

98:名無しのかいパンやろう ID:iTAB0f+Of

今も同じようなやり取りしてるの笑う

 

102:名無しのかいパンやろう ID:uSBLh4u5Y

キバナも結構試合中うるさいよな

 

106:名無しのかいパンやろう ID:gHai3XHva

天候についてめっちゃ言及するのちょっと面白い

 

110:名無しのかいパンやろう ID:GidgjSD6J

>>106

メロンにダイアイスとダイロック交互に打たれた時の反応すき

 

111:名無しのかいパンやろう ID:6lQK9Xnah

>>110

「あられを降らせたって俺様のポケモンは止まらないぜ!」

「も、戻すのかよぉ!?」

「いや戻さないんかい!」

 

114:名無しのかいパンやろう ID:Y//AXprO5

>>111

反応が芸人のそれ

 

117:名無しのかいパンやろう ID:7V6s/ChKp

得意な天候の場ですら翻弄される最強さん……

 

119:名無しのかいパンやろう ID:kHUrF0zox

他地方ではチャンピオンとか言われとるけど実際どうなん?

 

120:名無しのかいパンやろう ID:J0Lmw2gQs

>>119

ファンが持ち上げてるだけ

さすがに無理

 

121:名無しのかいパンやろう ID:6w7XWBGz+

>>119

田舎なら多分いける

 

125:名無しのかいパンやろう ID:PongNQ0qI

てか田舎ならジムリ最強クラス全員がチャンプとれる

 

129:名無しのかいパンやろう ID:fBZVozPT8

中心地方チャンプ>>中心のトップジムリ&四天王≧田舎チャンプ≧中心ジムリ>>田舎ジムリ

くらいが俺のイメージ

 

133:名無しのかいパンやろう ID:SgAjx7kr1

他地方のトップジムリって具体的に誰や

  

138:名無しのかいパンやろう ID:MARKK+6/D

>>133

カントーのグリーンとかシンオウのデンジとか

グリーンは一回チャンピオンになってるからもっと上だろうけど

 

140:名無しのかいパンやろう ID:yT+AgtQn1

>>138

この辺はとっとと四天王行けって誰もが思っとるらしいな

 

141:名無しのかいパンやろう ID:JMSTPtzr8

田舎か中心かの区別はなんや

 

142:名無しのかいパンやろう ID:HdKj7M27H

>>141

ちゃんとしたリーグがあるかどうかやろ

だからアローラは田舎扱い

 

146:名無しのかいパンやろう ID:ankvqqlBS

アローラはポケモンリーグ置いたならジムもとっとと置けや

 

149:名無しのかいパンやろう ID:TQRWS+KS/

アローラのチャンプクソ強いらしいけどな

 

150:名無しのかいパンやろう ID:hq9uRlOnl

>>149

伝説持ちはやっぱズルいわ

 

153:名無しのかいパンやろう ID:xfWoE7zNg

>>150

伝説使わなくても勝ってる定期

 

154:名無しのかいパンやろう ID:KeX5YnHOh

伝説持ちの最強って誰や?

 

155:名無しのかいパンやろう ID:DmloSfwXU

>>154

伝説は次元違いすぎてわからん

公式戦によく出てくるのはアローラチャンプのミヅキ

 

159:名無しのかいパンやろう ID:24lrucbXE

ミヅキってまだ無敗?

 

163:名無しのかいパンやろう ID:RlJJlFNOn

>>159

当たり前やろ

ただでさえめっちゃ強いのに、チャンピオンクラスが相手だとソルガレオ出すねんぞ

 

166:名無しのかいパンやろう ID:+fMK3DT1p

エキシビションマッチでワタルがソルガレオ出されて絶望するgifすき

 

170:名無しのかいパンやろう ID:C9Q7AuNap

ワタルも強いんやけどなあ

 

172:名無しのかいパンやろう ID:HhCuqnMqU

相手が悪いわ

ソルガレオ抜きで考えても相棒がアシレーヌやしドラゴン使いからしたら不利

 

175:名無しのかいパンやろう ID:5LJMWHrnj

ミヅキ就任したのほんと最近やから公式戦も数戦しかしとらんけどな

 

176:名無しのかいパンやろう ID:p5ZxLKpoA

カロスのセレナちゃんは?

割と近い地方やし、勝手に親近感湧いとるわ

 

178:名無しのかいパンやろう ID:m3D74/j2y

>>176

カロスだとマジで英雄扱いらしいな

この前のリーグ戦での歓声ヤバかったで

 

179:名無しのかいパンやろう ID:0TiG9AEyp

ホンマに英雄やからな

あの子がおらんかったらワイらも死んどったで

 

180:名無しのかいパンやろう ID:3wa9o502K

なんでヒビキの名前が出てこないんや……

 

181:名無しのかいパンやろう ID:LxqCNY6hn

>>180

ジョウトだけじゃ飽き足りずカントーまで侵略してった猛者

 

183:名無しのかいパンやろう ID:vVvyL1j/Q

>>181

しかもジョウトとカントーはリーグ統一されとるから挑戦権関係ないという

 

187:名無しのかいパンやろう ID:vr8YEXkCb

バッジ8個より多く持つってそんなすごいん?

 

189:名無しのかいパンやろう ID:oQxB9vOHA

>>187

他地方でも8個バッジ持ってたら手加減しなくていいってリーグ規約にある

そんでヒビキは伝説使わずにグリーンに勝っとる

 

193:名無しのかいパンやろう ID:cZvUzTP8D

素の実力でチャンピオンクラスあるってことやからな

そらワタルも最も頼りになるトレーナーの一人に挙げますわ

 

196:名無しのかいパンやろう ID:DwL3JGe+f

そんな伝説使いもレッドには敵わないんだよなあ

 

199:名無しのかいパンやろう ID:nvU8lF7HX

>>196

ただの妄想定期

 

201:名無しのかいパンやろう ID:BmN+Fqwug

でも一回見てみたいわ

レッドVSヒビキとかレッドVSセレナとか

 

203:名無しのかいパンやろう ID:4mEiQwoo5

レッド最強説もグリーンが唱えとるだけやしな

案外あっさり負けるかもしれん

 

206:名無しのかいパンやろう ID:dXi00OgE1

>>203

アローラチャンプは「私より強かった」って言っとるけどな

 

210:名無しのかいパンやろう ID:5GsRw4/aE

>>206

あの二人って戦ったことあるん?

 

216:名無しのかいパンやろう ID:1p/AAY/bh

>>210

ミヅキが自身の知る最強のトレーナーとして挙げとるで

非公式で負けたんやと

 

217:名無しのかいパンやろう ID:85WG5ETMP

公式戦でやれ定期

 

220:名無しのかいパンやろう ID:IW45hSn1A

そんなん誰もが見たい試合やろ…

 

223:名無しのかいパンやろう ID:vHfFyPVQt

ダンデはその辺に勝てたりするんやろか

 

226:名無しのかいパンやろう ID:WSe8ljO+6

>>223

ミヅキならいけるんちゃうか?

アシレを何とかしたらリザでソルガレオ突破できるやろ

 

229:名無しのかいパンやろう ID:9W/gB1XqI

てかガラル人ならダンデの負ける姿を想像できんわな

 

232:名無しのかいパンやろう ID:QrZrkpG9o

もしダンデが負けるんやったらキバナに負けて欲しいわ

 

233:名無しのかいパンやろう ID:LxhKLpRvE

>>232

ちょっとわかる

 

235:名無しのかいパンやろう ID:bdomHo7gi

まあダンデの時みたいにジムチャレンジャーが打ち破ったりするかもしれへんけどな

昔だとマスタードも案外呆気なく戦績落ちてったし

 

239:名無しのかいパンやろう ID:G+60REaOI

なんだかんだ10年やもんな

交代しても全然おかしくないわ

 

244:名無しのかいパンやろう ID:XjavlogWA

結局スレタイと何も関係ない話しとるやん

 

 



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withキバナ


ダイパリメイクが来たので初投稿です。

今話には、一部他者視点が入ります。


「あー、うん、わかったから、次からは返信するからよ……。うん、うん、唯一の仲間だもんな。うん、だから今度からは気を付けるって。うん、じゃあな」

 

「ガールフレンドでも出来たのかい? 中々苦労してそうだね」

「――カブ」

 

 通話を切り、そしてかけられた声に顔を上げると、そこにはユニフォーム姿のカブが立っていた。

 

「ごめんね、盗み聞きする気はなかったんだ。そろそろ開会式が始まるから呼びに来たんだよ」

「ああ、大丈夫だ。ただちょっと既読無視にうるさいお仲間が出来たっていうだけの話でさ」

 

 あの時は他に選択肢が思いつかなかったとはいえ、思ったより面倒くさい付き合いが待っていたものだ。思わずため息を吐いてしまう。

 

 下手な行動を打って敵対関係になるのも下策だし、人間関係というのは中々に難しい。

 

「なぁ、ホウエンの女を上手くあしらう方法って知らねえ?」

「……君の将来が少し心配だよ」

 

 今度はカブがため息を吐く。

 年相応に古風な貞操観念を持っていたカブにお説教を喰らいつつ、俺たちは()()()()()()()()()()()へと向かうのであった。

 

 

◇◇◇

 

 

「お、やっと来たかカイ。もう選手入場始まるぜ」

「1位のお前はともかく、ネズとかサボってんだし俺いらなくないか?」

「その理論だと俺様一人で開会式やることになるんだが?」

 

 ジムリーダーたちの控え室。そこには今キバナとの話に挙がったネズを除き、メジャークラスのジムリーダー7人が入場の時を待っていた。

 

 ジムチャレンジ。

 ガラルにおいて最も大規模な行事と言っても過言じゃないそれは、多くのトレーナーにおける巣立ちの時であり、生涯をかけての挑戦でもある。

 

 ガラル中のトレーナーたちは各地のスクールや有力者に推薦状を貰い、ガラルを廻る旅に出る。

 チャレンジャーたちはあらゆる施設からサポートを受けながらジムバッジを集めることに邁進し、その中で実力の無い者は淘汰されていく。

 

 やがて、ジムチャレンジという過酷な試練を潜り抜けた極僅かなトレーナーたちはその頂を争うことになる。それがセミファイナルトーナメント。

 そしてそれを勝ち抜き最後に残った、たった一人の人物――即ち、ジムチャレンジ優勝者のみがファイナルトーナメント、チャンピオンへの挑戦権をかけた戦いへと歩を進めるのだ。

 

 このファイナルトーナメントの優勝者のみが現チャンピオンに代わり、新たなチャンピオンとなれる可能性を持つ。普段の公式戦の勝敗はジムリーダーの序列と違ってチャンピオンの交代に全く関係ない。言ってしまえば、たとえ公式戦で全敗していようともこの防衛戦にさえ勝っていればチャンピオンの座は守り続けられるのだ。

 

 かつての俺や、昨年だとオニオンなどはそれぞれの年のジムチャレンジを優勝して、このファイナルトーナメントへの参加権を得ていた。

 そして10年前にはセミファイナルトーナメントを勝ち上がったジムチャレンジャーがそのままファイナルトーナメントを勝ち上がり、当時のチャンピオンすらも打倒してその座を奪い取るという珍事が発生したのだ。

 

 その挑戦者の名こそがダンデ。

 10年間無敗であり続けた、ガラル最強の男。

 

 ――そして、今回のジムチャレンジでその任期を終える存在でもある。

 

「やあ皆! あと少しで開会式が始まるぞ、準備はいいか? 特にキバナ! お前は俺とのエキシビションマッチが待ってるからな、今のうちにウォーミングアップしておけ!」

 

 いつの間にやら控え室に入ってきたダンデの声に、誰もが注目する。

 スポンサーのロゴがこれでもかと敷き詰められたマントに代表される、王者のようなコスチューム。そしてそれに包まれる褐色の肌に青髪、見慣れた姿だ。

 

 ガラル中の誰もがこの男に憧れ、挑み、それで尚勝ち続けた伝説。

 ただ、ジムリーダーたちが皆挑戦的な視線を彼に向ける中俺は一人違う顔をしていただろう。

 

「ハッ! 上等だ、ダンデ! エキシビションとは言えどブッ倒してやるぜ!」

「よく言った、キバナ! それでは俺は自分の控え室に戻る! またすぐに会おう!」

 

 そう言うと、ダンデはあっという間に部屋を去って行った。流石にスタジアム内で迷うということはないと思うが、チャンピオンの控え室とは逆の方向に走り去っていったのが少しだけ気になる。

 

「……なァ、キバナ」

「ん?」

「もしも。もしもさあ、ダンデの時みたいにチャレンジャーが全部勝ち抜いてチャンピオン交代、なんてことが起きたらどうする?」

 

 思わず漏れてしまった俺の言葉に、キバナはパチクリと目を瞬かせる。

 まあ、それも当然だろう。そんなことが起きるなんて誰も考えちゃいない。キバナからすれば、今年のジムチャレンジも11度目のチャンピオンの座をかけた挑戦の場としか思っていないだろうから。何言ってんだオマエ、で返されるのがオチだ。

 

「なんだ、カイ。お前らしくねェなあ。いつもだったら、一人も俺のジムを通さないからそんなこと起こりようがねえ、とか言ってるだろ。……ま、俺様も同じだけどな。ダンデだけじゃなく、誰にも負けるつもりは無えよ」

 

 思っていたのと違った返答に今度は自分が閉口する。確かに、自分らしくなかった。

 

「……悪ィ、変なこと言った。もう調子戻ったわ」

「ふーん。ま、そんなら良いけど。しっかりチャレンジャーたちを振るい落として俺様の仕事を減らしてくれよ?」

 

 そうだ。たとえ相手が主人公であろうと、勝てば良いのだ。いや、勝つしかないのだ。

 

 そしてその場は、ジムチャレンジではない。

 

 

◇◇◇

 

 

 ジムチャレンジ開会式。

 遂に、この時がやってきたのだと全身で感じる。

 余りに多くの観客、歓声。周りのジムチャレンジャーたちは皆私のライバルだ。

 

 ――でも、そんな有象無象たちには興味がない。

 

 やがて、今のガラルの経済を全て握っていると言っても過言ではない偉人であり、かつこのジムチャレンジの総責任者であるローズ委員長の挨拶が始まる。

 

 ――でも、この人にも興味はない。

 

 目的は、私が()()()()()()()()()()()()()()はもうすぐ現れる。その事実に、抑えきれない興奮で思わず体が震えてしまう。腕でもう片方の腕を抑えて、何とか震えを止めようと画策する。

 そうこうしている内に、やっと委員長の挨拶も最後のまとめに入った。……そろそろだ。

 

「――それではジムリーダーのみなさん、姿をお見せください!」

 

 8人……かと思えば、7人のジムリーダーたちがスタジアムにその姿を現す。

 一人いないが、何も問題はない。今日は()を一目見るために来たのだから。

 

「ファイティング ファーマー! くさタイプの ヤロー!

 レイジング ウェイブ! みずポケモンの使い手 ルリナ!

 いつまでも燃える男! ほのおのベテラン……」

 

 一人一人ローズ委員長が紹介していくが、もはやその声は私の耳に入らない。既に私の視線は一人に釘付けされていた。

 

 一際小さい身長。キルクスは寒いからと改造され、今ではただのダボダボのパーカーになっているはがねジムのユニフォーム。興味無さ気にポケットに手を突っ込みながら、ローズ委員長の紹介を聞き流す姿。

 

 そのどれもが目に焼き付く。私の数年に渡る執着が、形を持って心を支配していく。

 

「――メタリックチャイルド! はがね使いの カイ!」

 

 湧き上がる歓声の中ふわあ、と欠伸をする少年。

 彼こそが、私――ユウリに、()()()()()をつけた存在。

 

 思わず口角が上がる。

 虎が龍を視界に捉えたときのように、孫悟空を見つけた牛魔王のように。生来の宿敵とでも言わんばかりの執着は、彼を見つけた私を笑顔にさせた。

 

 ――数年前。未だ、私が()()()()()()()()()()()時分。

 十にも満たぬ子供が持つにしては規格外の才能をスクールで見せていた私は、親の勧めによってヨロイじまの元チャンピオンが開いているという道場に通っていた。

 

 尤も、そこですら敗北することが出来なかった私は、随分と無味乾燥な日々を送る羽目になってしまったのだが。

 振り返ってみれば、道場主――マスタードさんには酷だったろうと思う。自らに教えを請うてきた少女は、既に余りにも完成されており――あるいは、元チャンピオンである自身すら敵わぬのではないかという存在だったのだから。

 

 事実、彼も私に敗北を経験させることは出来なかった。同じポケモンを用いての1VS1という、かなり特殊な条件下だったとはいえ、既に私の中で格付けは済んだ。この旅を終え、完成されたパーティを以てすれば彼の全力であろうと難なく叩き伏せられる自信がある。

 

 そう、自信だ。自信があるのだ、私には。ガラル中の誰も私には敵わないという自信が。

 ――――彼を除いて。

 

 今思えば、彼以外に敗北を求めるなんて何と昔の私は愚かだったのだろう。自惚れと言われるかもしれないが、私には無敵のチャンプであろうと捩じ伏せられる確信がある。彼だけなのだ、私に敗北を与えられるのは。

 

 ヨロイじまにおいて最後の希望であったマスタードさんを倒した私は――奥さんのミツバさんも意外と強かったが――トレーナーに敗北を求めることは諦め、ヨロイじまを良く散策するようになっていた。

 

 そんなある日、小高い丘でポケモンたちとキャンプを開いていた私は見たことのない鳥ポケモンがヨロイじまに飛んでくるのを見つけた。

 

 その炎を纏った黒い鳥ポケモンは並のトレーナーやポケモンならば見るだけで屈するほどの邪悪なオーラを放っており、私でも少し苦戦しそうだな、と感じさせるほどの存在であった。

 

 当然、強者に飢えていた私はそのポケモンと戦うことに決め、追いかける途中には既に頭の中でその鳥ポケモンを含めたパーティを組み始めていた。

 

 尤も、島を駆けずり回ってようやくそのポケモンに追いついた先で、そんな考えは全て彼方へと追いやられてしまったのだが。

 

 

「――なんだ、お前。財団か?」

 

 

 私はその時の言葉を一言一句違わず、その時の情景を草木の一本に至るまで細かく思い描ける。

 倒れ伏す黒鳥。そしてその傍に佇んでいたのは、4匹のポケモンと一人の人間。

 

 一匹目は私が来たことを意にも介さず辺りの木々を喰らう黒い怪物。

 二匹目はフヨフヨと浮かぶクラゲのような不思議な生命体。

 三匹目は体躯がコードのようになっており、頭部らしき部分がピカピカと光っている謎の存在。

 最後に、最も得体の知れなかった四匹目。それは黒ずんだ鎧のような外見をした生物であった。

 

 そして、何よりも私の目を引いたのは、その全てを従える彼――のちに、はがねジムリーダーに就任するカイという名の少年。彼の目には私も、あの黒鳥ですらも欠片も脅威として映っていなかったのだ。

 ――その目は、かつての私があらゆるトレーナーに対し向けていた目でもあった。

 

 私は惹かれた。その()()()()()()()()()()()()()()()()生物を従えた彼に、普段ならば見える「勝利への道筋」が一つも見えなかったのだ。

 

 それは彼が従えていた生物たちの特殊性に由来していたのかもしれないが、とにかく私はそこで初めての「勝利の確信を持てない勝負」を経験し、そして敗北を知った。

 

 私を打倒せしめた彼は、いつも私がしていたように敗者に対し何の興味も見せずに立ち去っていった。侮蔑の言葉をかけるでもなく、慰めの言葉をかけるでもなく、膝をつく相手を一瞥したのみ。

 

 悔しかった。「悔しい」という感情を初めて知った。「勝ちたい」と初めて思った。どうすれば勝利することが出来たのか、頭の中で何度もあの戦いを繰り返した。

 

 やがてその思いは彼への執着となって結実し、テレビ画面にて彼のジムリーダー就任を知った瞬間、私の人生は目的を持って動き出した。

 

 退屈そうに開会式の終了を待つ彼の目を見つめる。見慣れた顔だ。彼の対戦は何度だって見た。

 真っ白の髪に、整った顔立ち。フードは首の後ろにダランと垂れ下がり、お腹の前に付けられたポケットに両手は突っ込まれている。ユニフォームは相変わらずサイズが合っておらず、ダボダボだ。

 

 ふわあ、ともう一度彼は欠伸をする。これから始まるキバナ選手とチャンピオンの戦いにもあまり興味は湧かないのだろう。正直結果はほぼ見えているし、彼は2年前のインタビューにて人の対戦を見るのは好きじゃないと答えていたから。

 

 ああ、こうして見ると目鼻立ちが整っていること以外は随分と普通の少年だ。かつて私を叩きのめした姿とは一致しないように思える。事実、あの時の彼の実力と彼の今の戦績は明らかに釣り合っていない。

 

 恐らく何かしらの事情があるのだろう。あの時のポケモンたちについてはかなりの時間をかけて調べてみたものの、一つもそれらしい情報は手に入らなかった。彼が口にしていた「財団」というのも一体何を示しているのかわからない。

 少なくとも、今回のジムチャレンジにおいて彼が私とあのパーティで戦ってくれる可能性は低いだろう。

 

 ただ、あの時のように敗北は味わえないと理解しても、既に私の執着はこの数年間で手遅れなものとなっていた。

 

 

 彼に勝ちたい。

 その思いはやがて形を変えていく。

 

 彼に完勝したい。

 今の彼にならばそれが出来る。

 

 彼を叩きのめしたい。

 他のトレーナーとなんら変わらない。勝利への道筋を辿るだけでできることだ。

 

 彼を泣かせたい。

 私に負けたトレーナーの中には泣き出す者もいた。特に何か思うことは無かったが、彼であれば想像するだけで気持ちが高ぶってくる。

 

 彼を跪かせたい。

 彼に靴を舐めさせ、見上げる顔を踏みにじる。それは一体、どれだけの快楽を生み出すだろうか。

 

 彼を慰めたい。

 散々痛めつけられた後に優しくすれば、人というのは簡単に靡くものだ。彼もそうなって欲しい。

 

 彼に触れたい。彼を殴りたい。彼と歩きたい。彼に負けたい。彼を絶望させたい。彼を愛したい。彼に泣かされたい。彼を痛めつけたい。彼に優しくしたい。彼に跪きたい。彼に甘えたい。彼を侮辱したい。彼に教わりたい。彼と遊びたい。彼に教えたい。彼を押し倒したい。彼に完敗したい。彼に褒められたい。彼を叩き潰したい。彼に踏みつけられたい。彼に愛されたい。彼に、彼に、彼に――

 

 

 彼のことを思うだけで、余りに多くの感情が湧き上がる。

 かつての敗北という執着の理由は、もはや理由に過ぎなくなった。たとえ彼に勝とうが負けようが、もはやどちらでもいいと思えるようになってしまっている。

 

 彼の顔を見つめながらもう一度決意する。

 今のチャンピオンはあまり行使していないが、チャンピオンにはジムリーダーたちの招集権と、それに付随して大会を開催する権力がある。

 それは即ち、私がチャンピオンとなれば彼と何度だって戦える生活が待っているということだ。

 

 無論、彼の手によってこの計画が阻まれるのであれば構わない。しかし、他の誰にだって私は負けてやらない。私のジムバッジの個数は、5個で止まるか8個集まるかの二者択一でしかないのだ。

 

「……なあ、ユウリ。顔が怖いぞ?」

 

 思考と彼の顔を見つめるのに夢中になっていたのを、ホップの言葉で戻される。

 ホップに注意されるとは、相当にひどい顔をしていたようだ。

 

「でも、すごい楽しそうだったな。アニキに褒められたときの俺より嬉しそうだった。そんなにジムチャレンジが楽しみだったのか? ほら、もうすぐアニキの試合が始まるぞ。一番近くで見よう」

 

 ああ、そうだ。私は楽しみなのだ。どういう結果になるにせよ、私は彼ともう一度戦えるのが本当に嬉しいのだ。

 

 ……ただ。今の気分的には、ボコボコに負かした後、鼻水を垂らしながら泣いている彼を踏みにじりたいかなあ、なんて。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 ――その後、ガラル鉱山にて。

 

「おや。アナタは確か、背番号を151にしていましたね。もしかしてカイ選手のファンですか? フンッ、凡人は憐れですね。彼に近づける手段が同じ背番号を使うしかないなんて。エリートのボクはローズ委員長から推薦を貰っただけに留まらず、カイ選手にバトルの指導も受けているのですよ!

 …………え、なんで急にそんな怖くなるのですか? ちょ、ちょ、ちょっと落ち着きましょう。ほら、やはりジムチャレンジャー同士互いに協力し合うのが道理ですよ。あ、この人話聞いてないですね。大丈夫です、ポニータ怯えないで。『さいみんじゅつ』を当てれば僕らの勝――ポニータァァアア!!」

 

 




ユウリ(♀) せばんごう:151 じょうたい:さくらん

てもち

・ウーラオス(いちげきのかた)
・ラビフット

ジムチャレンジに ちょうせんしたての トレーナー。
しかし マスタードの どうじょうに かよっていたので
バトルの けいけんは ほうふだ。


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カイalone

「ジムチャレンジ開始から三日現在、くさジム突破者11名……か」

 

 モーモーミルクの瓶をクピクピと傾けつつ、ジムチャレンジに関する記事を読みこむ。

 三日で11名というのは特別多くもないし少なくもない、という数字だ。ヤローのジムの突破率は高めであるため、この後どんどんとその数字は増えていくと思われる。

 ただ、現時点でここに名を連ねるような行動が素早い人間たちが最後まで勝ち残っていくだろう、というのは否定できないが。

 

 読み進めていくとやがて、その11名たちのインタビュー記事に出会う。その中にはビートやマリィといった知り合いや、チャンピオンの弟であるホップといった名前もあり――ユウリという、あまり目にしたくない名前も名を連ねていた。

 

「……」

 

 逃げ出したい気持ちと戦いつつ、ユウリ――主人公のインタビュー記事を開く。

 情報というものは非常に重要だ。当然俺も独自の情報網を持っているが、ジャーナリストという職種のそれも侮れない。敵を知り己を知れば百戦危うからず。眼を見張って文字を読んでいく。

 

 

 ユウリ選手(以下ユ)のインタビュー

 

 

 ――ターフジム突破、おめでとうございます。

 

 ユ:ありがとうございます。

 

 ――背番号の由来は何かありますか?

 

 ユ:多分皆さんわかると思うんですけど、カイ選手のファンでして。同じ番号を使って少しでも近づけたらなあ、と。

 

 ――なるほど。カイ選手の女性人気は高いですからね。

 

 ユ:はい。当のカイ選手は、「ポケモンは151匹だから」とかよくわからない理由でつけたらしいんですけど。

 

 ――ラビフットという余り見かけないポケモンを使われていましたが、何か思い出のエピソードなどはありますか?

 

 ユ:あの子は旅立つときにチャンピオンにもらったポケモンで、まだまだ出会ったばかりなんです。少しずつ仲良くなれてきた実感はあるのでこの旅で絆を育めたらな、と思います。

 

 ――なるほど。チャンピオンとの関係はどのようなものですか?

 

 ユ:家がお隣さんで。当たり前ですけどお仕事が忙しいらしくって、この前初めて出会ったんですけどね。弟のホップ君とのバトルで、二人とも推薦を認めてもらいました。

 

 ――ヤロー選手とのバトルも危なげなく勝利されていましたが、バトルの経験はジムチャレンジ以前からありましたか?

 

 ユ:スクールに少しと、バトルの道場に1年ほど。道場はヨロイじまにあったので、家を離れて通っていました。あそこでかなりバトルの経験は積めたんじゃないかなと思います。

 

 ――同じくチャンピオンに推薦を受けたホップ選手と何か交流はありますか?

 

 ユ:スクールに通っていた頃はたまにバトルをしていました。私は生まれがガラルじゃなかったり、ヨロイじまに住んでいた時期もあって彼と接していた期間は長くはないのですが、お隣さんということもあって一緒に遊ぶこともありましたね。

 

 ――それでは最後に、今回のジムチャレンジに対する意気込みをお聞かせください!

 

 ユ:憧れのカイ選手がいるキルクスジムまでは絶対にたどり着きたいですね。そこを乗り越えたら、もちろん目指せ優勝です!

 

 

 インタビュー記事を読み終えると、グイと瓶を傾けてモーモーミルクを飲み干し、ダンと机に叩きつける。

 

「……何でヨロイ島(ダウンロードコンテンツ)クリア済みなんだよ」

 

 しかも俺のファンとか言ってるし。いや、背番号の時点で薄々察してはいたが。憧れの選手の背番号をつけるというのは結構メジャーな行動だ。ダンデのチャンピオン就任前後で確実に背番号1の割合は増加している。

 

 ヨロイじまのあの道場に通っていたのも確かだろう。ヤローとのバトルを見る限り、才能だけでなく指示に手慣れた様子から経験も感じられた。内容に関しては……ラビフットに進化してたけどまあいいとしよう。何かリベロっぽい動きしてたが。

 

 主人公と関わることを恐れ、彼女についての調査をして来なかったのが仇となったか。

 ()()()()()()()()()()()()、と考えればゾッとする。

 

「……いや、大丈夫だよな……? ハロンタウンには絶対に近づかないようにしてきたし、ヨロイじま……は結構行ったけど。

 でも、人にはなるべく会わないようにしたはずだぞ。ダクマとかウーラオス使いにも会ったことは……あったような気がしないでもないけど……」

 

 昔の記憶は結構あやふやなところがある。もしもこれで変な因縁をつけられてたらたまったもんじゃない。

 

「UBを堂々と使ってたのはジムリーダーになる前だったし、大丈夫だろ。うん。たまたまはがねタイプが好きだったとかそんな感じだ」

 

 独り言を呟いてて感じた嫌な予感に考えを放棄する。

 もし仮に戦ったことがあったとしても、()()()()()()()()を知りはしないだろうから。

 

 そう考えた俺はなるべくユウリのことを気にしないようにしながら仕事の支度をする。今日はラジオ番組の収録の予定が入っている。それが終わった後も、ジムチャレンジに向けてジムの準備を進めなければいけない。余計なことを考えてる暇はないのだ。ないったらないのだ。

 

「……やっぱもう一回ヤローとのバトル見返そ」

 

 押し寄せる不安に負けてもう一度ユウリのバトルを見始めた俺の姿に、ボールの中からどこか呆れた声が聞こえた。

 

 

◆◆◆

 

 

「どーも皆さんこんにちは。時刻は現在酉二つ、カイカイらじおの時間です。……ホントこの名前考えたやつ誰だよ」

 

 軽快な音楽と共にラジオの収録が始まる。

 場所は通いなれたラジオ放送局のスタジオ。勿論マクロコスモスグループの会社である。

 

「丁度ジムチャレンジが始まったばかりだからか、最近は皆大変そうだよな。俺自身もジムの準備が忙しいのなんの。ジムを爆破しようと思ったことは一度や二度じゃ済まないぜ」

 

 バトルに向けての調整や、ジムミッションの準備も面倒くさい。

 尤も俺はまだマシな方である。今回のサイトウなど、場所の関係でジムの引っ越しなんかがあると本当に悲惨だ。

 

「俺の所に最初のジムチャレンジャーがやって来るのは早くて1か月後くらいか。チャレンジャーたちがやって来てからは休む暇もないし、今の内に平和を満喫しておこうと思います。ジョウトのアサギシティに遊びに行く予定もできたし、1週間くらいはお休みだな」

 

 結局ミカンのゴリ押しに負け、ジョウトへ旅行に行く羽目になってしまった。メインプランの開始も近い今、ローズ委員長に余り良い顔はされなかったが、三犬の捕獲チャンスだということでどうか一つ許してくれないだろうか。

 

「ジョウトと言えばチョウジのいかりまんじゅうだよな。

 サイトウたちにお土産頼まれたから、カブとヤローのとこにだけ持ってくわ」

 

 俺はこの前のテレビ収録でサイトウが休憩室のお菓子を俺の分まで食べたことをまだ許してはいない。しかも俺以外の共演者の分には手をつけないという徹底ぶりだ。

 無論、宣戦布告と受け取った俺は数々の仕返しを仕掛けているのだが全て肉体のスペックで突破されているのである。

 

 オニオンのとこにも持って行こうかな、なんて考えながらサイトウの悔しがる顔を想像する。……ダメだ、無表情で関節極められる未来しか見えなかった。

 

 マクワにはいらないと言われた。ポケモンたちと一緒に自分も追い込むようで、他のジムリーダーたちの誘いも全て断っているらしい。恐らく次のシーズンの戦績は凄まじいことになっているだろう。久々にナックルシティのジムリーダーが変わるかもしれない。

 

 他のメンツはいらないだろ。マクワが受け取らなかったのならメロンも受け取らないというだろうし、後は全員くれてやる義理はない。ルリナにもこの前ポッチャマのタマゴを渡したことで借りは返したしな。

 

「カブはこういうの絶対お返しくれるので、フエンせんべいを楽しみにしつつ一曲目。ネズの『ライトなエール』、お楽しみください」

 

 曲が流れ始めたことを確認して、一息つく。

 ラジオのトークというのは相手がいない場合、中々に寂しいものがある。ふとした瞬間に自分を客観視して、何言ってんだコイツ、となる時があるのだ。

 その分次のお便りコーナーは気が楽だ。文章とはいえ、人とやり取りしている気分になる。

 

 チューチューと用意されたミックスオレを飲み、喉を潤わせておく。

 やがてネズの曲が楽しげなサビと共に終わり、次のコーナーがやって来た。

 

「『ライトなエール』、ネズが初期の活動時に出した曲でした。とても気軽な関係間でのエール、即ち曲名でもある『ライトなエール』を表した歌詞が聞いている人に勇気をくれますね。

 それでは次のコーナー、リスナーからのお便り返信に移りまーす」

 

 ジャカジャン、と短い音楽と共にコーナーが切り替わる。

 

「このコーナーは事前にリスナーの皆様から集めた相談、悩み事、最近の出来事、質問など様々なお便りに答えていくコーナーです」

 

 既に番組スタッフがお便りは厳選していてくれている。俺は適当に返すだけで送り主は喜ぶいいお仕事だ。

 

「それでは早速一通目。ペンネーム『クエン』さんからのお便りです。どんどん読み上げていくぞー」

 

 スタッフに手渡された紙を開き、書かれた文章を読んでいく。

 

『こんにちは』

「ちわー」

『僕は数年前までカロスに住んでいてガラルに来たのは割と最近という新参者なのですが、昔からポケモンバトルを見るのが好きで、こちらにもリーグがあると聞いて楽しみにしていました。

 しかし四天王制度がないと聞いて困惑。勿論こちらのリーグのレベルの高さは認めていますし、今ではすっかりチャンピオンのファンなのですが、カロスの人間からすれば今のリーグの形式には違和感を覚えます。ジムリーダーであるカイ君は四天王制についてどう思いますか?』

 

 文章を一通り読み、何と答えるか考える。意外と面白い質問だ。

 

「まあとにかく、君づけじゃなくてさんを付けろよクエン酸野郎。

 内容の方は四天王制について、か。うーん、とりあえずガラルのリーグ制度は昔からずっとこうだからローズ委員長が変えない限り変わんないとは思うが……。

 まあ、俺としては賛成だな。やっぱ四天王がいるのといないのとじゃチャンピオンの格も変わって来るし、ジムリーダーより一個上があるってのは競争も激しくなるだろうからな」

 

 このリスナーも言っているが、前作をプレイしてきた人間にとっても四天王制度には馴染みがある。逆にガラル人にとっては受け入れ辛いだろうが、まあどちらが良いという話でもない。ガラルリーグ本部に特別設置する気は無いだろう。精々がもし出来たら、という程度の妄想話だ。

 

「特別変える必要があるとも思わんけど。そうだな、もし今出来たら……ダンデ、キバナ辺りは確定だろうな。あ、チャンピオンは俺ね」

 

 おっと、意外と楽しそうだ。挑戦者は全員ダンデで止まるし、しばらく王座は安泰だな。

 

「それでは次のお便り行ってみましょー。

 ペンネーム『マクワのポスター巻くわ』さんからのお便りです」

 

 この毎回一人はやって来るクソつまんないダジャレペンネームはなんなんだろうか。俺のハイパーダジャレ見せてやろうか?

 

『こんにちは』

「ちわー」

『私には最近困っていることがあります。それは、好きなポケモンを聞かれたときに答えられないことです。出会ったばかりで話題もない人にとりあえず振る質問、好きなジムリーダー誰?と並んで1位の、好きなポケモン何?に私は答えられないのです。

 昔は知っているポケモンの数も少なく、その中で可愛いポケモンの名前を挙げていたりしたのですが、今では余りに多くの可愛いポケモンたちを知ってしまったことで彼らに優劣をつけることが出来なくなってしまいました。

 参考にしたいので、どうかカイ君の好きなポケモンを教えてくれないでしょうか』

 

 ふむ。確かに、好きなポケモンの話題はこの世界では最もメジャーと言っても過言ではないくらいによく振られる。

 

「とりあえずさんを付けろよダジャレ野郎。サンドの顔も三度まで、だぞ? ……フッ。

 それで好きなポケモンだったな。俺はピチューが一番好きだ。可愛いし。

 答え方もあんまし悩む必要なんてないんじゃねえの? 可愛いポケモン全員について語っていけば話が尽きることはないだろうよ」

 

 相手にドン引かれるか共感してくれて話が盛り上がるかの二択だがな。

 

「ま、一番を決めらんないっつーのも共感してくれる奴はいっぱいいるだろ。大丈夫だと思うぜ。

 それじゃー次のお便り。『はがね好き』さんからです」

 

 この前はがね好きとはうんざりする程話したからもう十分なんだけどな。

 

『こんにちは』

「ちわー」

『私はジムリーダーのプロフィールなんかを調べるのが好きなのですが、カイ君のそれは結構埋まってるところが少なくて困っています。どうか好きなポケモンと好きな食べ物だけでも教えてくれないでしょうか?』

 

 プロフィールか。経歴なんかは欠片も明かしていないから、確かに穴あきが多いかもしれない。

 

「とにもかくにもさんを付けろよはがねマニア野郎。

 好きなポケモンはバクフーン。食べ物は甘いものなら何でも好きだ。

 プロフィールの穴あきは……まあ、ミステリアスな人物ってことだな。あんまし詮索するもんじゃないぜ」

 

 少なくとも経歴の欄が埋まることは絶対にないと思われる。

 秘密のある男は魅力的、なんていう風にはならないだろうか?

 

「ネズとかあの辺は追っかけがすごいからめちゃくちゃ細かいプロフィール表が出来てるよな。休日のスケジュールが全部知られてたって聞いたときは流石に引いたわ」

 

 有名人にも有名税というものがある。得られる恩恵も大きいが、デメリットもなくはないのだ。

 あまり他人事とは言えないのが怖いところだが。

 

「んじゃ、次で最後だな。ペンネーム『U:Re』さんからのお便りです」

 

 お、この名前には見覚えがある。確か試合の度にファンレターを送ってくれる人で、差し入れとして俺の好みにドンピシャな高級菓子も付けてくれるのだ。

 

『こんにちは!』

「ちわー」

『私は今年のジムチャレンジに初参加するトレーナーなのですが、カイさんの大ファンでもあります! もしカイさんが応援してくれたなら、私は優勝だって出来る気がしています!

 どうか、私を勇気づけるような応援メッセージをくれないでしょうか?』

 

 さん付けなのは偉いな。また一つ『U:Re』さんの株が上がる。

 返事についてはお便りの書かれた紙を一旦机の上に置き、考え込む。随分とタイムリーな話題だ。しっかりと答えてあげよう。

 

 

「誰も俺のジムを通さねーから今年の優勝者はいねーよ!」

 

 

 

 その後、番組スタッフたちに「あれはない」と言われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……フヘッ」

「ちょっと、急にイヤホン付け始めたと思ったらニヤニヤ笑いだしてなんなのよ。ほら、ここのパスタ美味しいでしょ? おばあさまのオススメなんだから」

 







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◎×▽◇年度ジムチャレンジについて語るスレ Part15

11:名無しのひふきやろう ID:gl6Fc7sHo

【速報】美少女チャレンジャーユウリさん、バウタウン突破!

 

14:名無しのひふきやろう ID:4A/7/YQs/

めっちゃつよかった

 

15:名無しのひふきやろう ID:TeZjukJ4e

ラビフットを相棒にしてる感あったから苦戦するかと思ったけど

全然そんなことなかった

 

17:名無しのひふきやろう ID:vb5qPHr/n

ベィビィポケモンで挑戦したジムチャレンジャー、いるらしいッスよ…?

 

21:名無しのひふきやろう ID:3xSv9/OTT

マトモに戦えるはずがないエレズンでトサキント突破

タイプ相性不利のラビフットでサシカマス・ダイマックスカジリガメ突破

頭おかc

 

24:名無しのひふきやろう ID:cB6DfOqEf

ラビフットってほのお単やろ?

かくとう技の威力おかしくないか

 

26:名無しのひふきやろう ID:/SCrEeH18

>>24

多分かくれ特性の「リベロ」

技に合わせてタイプが変わるんや

 

27:名無しのひふきやろう ID:/2YLbOzHh

強過ぎて草

 

30:名無しのひふきやろう ID:G/iKigxNa

>>26

カブが一時期使ってたけど扱うのムズ過ぎて諦めた特性やな

 

33:名無しのひふきやろう ID:dAhWqckTS

勝手に得意タイプから変わってもらっても困るもんな

もうかの方がよっぽどカブにとっては便利やろ

 

34:名無しのひふきやろう ID:bSSiuckKo

どうしてジムリーダーが扱えなかったものをジムチャレンジャーが使いこなしてるんですか(恐怖)

 

37:名無しのひふきやろう ID:vt0XCDlit

ポケモン自身も相当鍛えてへんと混乱するで

その点ユウリのラビフットは大分頭おかしい部類にいる

 

41:名無しのひふきやろう ID:4Gnk9zkAx

>>37

あれは指示が上手すぎるだけや

ルリナの思考全部読んどった

 

43:名無しのひふきやろう ID:p8jyOqtrh

カジリガメが倒された時ルリナかなりポカンとしとったもんな

 

45:名無しのひふきやろう ID:3xN8TntT+

>>43

髪ワシャワシャすら出来ずに泣きそうになってて可哀想やった

不覚にも勃起したわ

 

46:名無しのひふきやろう ID:Y0KcFk97R

バッジ渡す時もマトモに喋れんぐらいだっただろ

まああんな才能目の前で見せつけられたら頭おかしなるわな

 

47:名無しのひふきやろう ID:Ui28nMJeD

エレズンに明らかなスペック差を読みで覆されて一乙

リベロの動きに完全にゲームの支配権取られて二乙

最後の頼みの綱であるダイマ勝負にも完全敗北して三乙

そら(ここまでやられたら)そう(泣きたくもなる)よ

 

48:名無しのひふきやろう ID:Y1WixQ3J3

ヤローの時はタイプ相性で納得できたけど今回のは流石にビビるわ

 

49:名無しのひふきやろう ID:vUNPpGFOg

>>48

ヤローもちょっと才能見抜いとった感じあったけどな

ファイナルトーナメントでお会いしたい言うてたで

 

50:名無しのひふきやろう ID:Fnrq57WDn

実際優勝候補やろ

まあ今年は期待株が結構多いけど

 

53:名無しのひふきやろう ID:SsqZwl9tF

>>50

ジムリーダー序列2位の兄に毎日バトルの稽古受けてる系ガール!

同じく3位に稽古受けてる系ローズ推薦ボーイ!

チャンピオンの弟とかいうエリート家系ボーイ!

チャンプ推薦ダークホースガール!

好きなのを選びな!

 

55:名無しのひふきやろう ID:x1xnzNO3t

>>53

頭おかc

 

57:名無しのひふきやろう ID:1lz4u8i+7

これは10年前と同じくらいの豊作年やろなあ

 

58:名無しのひふきやろう ID:zQXqnko+9

まあダンデには誰も勝てないんですけどね、初見さん

 

59:名無しのひふきやろう ID:SxB67Dj5T

>>58

キバナのレス

 

62:名無しのひふきやろう ID:A+X6xTDWH

チャンプの弟が兄を超えるとかいう胸アツ展開あるで

 

63:名無しのひふきやろう ID:ToY3fbWCP

>>62

兄より優れた弟など存在しねえ!!

 

64:名無しのひふきやろう ID:EJ8cJ1UOS

>>63

兄弟とか関係なく最強なんですがそれは…

 

68:名無しのひふきやろう ID:pNDple9ox

ネズとかジム継がせる気満々やからな

世代交代の波が来るで

 

69:名無しのひふきやろう ID:Vxwaofx+O

ダイマ解禁ネズとかチャンプ並やろ

今の内に推して古参面しとくわ

 

72:名無しのひふきやろう ID:Eerudan29

>>69

は?ワイはこども大会の時から追ってるんやが?

スパイクタウンでやった大会もエンジンまで行って出た大会も全部録画してあるんやが?

 

75:名無しのひふきやろう ID:AJd37jZij

>>72

キモ過ぎて草

 

79:名無しのひふきやろう ID:zwiGhYFTh

>>72

こういう奴らがいっぱいいそうなのが可哀想

 

82:名無しのひふきやろう ID:3Eeru77ts

マリィたん可愛すぎてワイもエール団に入ったで!

 

83:名無しのひふきやろう ID:Cgy1yrXwK

>>82

エール団て何や

 

87:名無しのひふきやろう ID:XNG+kmyKD

>>83

ネズとマリィのファンクラブみたいな団体

めっちゃ服装目立つからすぐわかるで

スパイクタウンとか行ったらゴロゴロおる

 

89:名無しのひふきやろう ID:C/Q8FbGTU

マリィも何も苦戦してなかったからな

セミファイナルまで行きそうな人材やわ

悪使いっぽいしサイトウ・ポプラ辺りが鬼門やで

 

91:名無しのひふきやろう ID:zsIndw82v

件のユウリはルリナがその鬼門扱いだったんだよなあ…

 

92:名無しのひふきやろう ID:uDWwBqszU

今インタビュー受けとるで

 

94:名無しのひふきやろう ID:Fsv4JDqVP

エレズン何で使ったのか聞くのはこの記者わかっとる

 

95:名無しのひふきやろう ID:Iso9vwKw6

皆まずそこが気になるもんな

 

101:名無しのひふきやろう ID:t4qqCeFnx

「預け屋でたまたま貰った」は草

 

102:名無しのひふきやろう ID:lp/2ueU1I

意味わかんないんだけど

 

106:名無しのひふきやろう ID:x9F95vqc8

「ほら、タイプ相性有利じゃないですか。ユウリだけに、なんちゃって」

??www??!!!wwwwww???????!!??www??wwwwwww

  

108:名無しのひふきやろう ID:eTvk/qjlo

タイプ有利でも覆せないものがあると思うのですがそれは

 

110:名無しのひふきやろう ID:BOfVvHFlP

確実にカイの影響受けとるなこれ

 

111:名無しのひふきやろう ID:E1bxH0MdU

>>110

ボールの投げ方とかカイと完全に一緒やからな

ファンの鑑ですわ

 

113:名無しのひふきやろう ID:LYw1S1zIM

>>111

ダイマックスの時の筋力足りない感じまで再現してるの草

 

117:名無しのひふきやろう ID:qmbuPVxiE

>>113

偶にその場に落とすのほんとすき

 

120:名無しのひふきやろう ID:mMPWtQpYL

>>117

格好つけて片手で持とうとするから…

 

122:名無しのひふきやろう ID:gJhNjIwKe

ビートもカイの影響見えるけどな

この前の催眠ドリルの時の顔とか脳死でふいうち打ってるカイと全く一緒やったで

 

126:名無しのひふきやろう ID:qjmVQSypl

>>122

駆け引きを全て捨てた選択すき

 

130:名無しのひふきやろう ID:HNZzVaGZw

>>126

「キリキザン! ふいうち!」

「キリキザン! ふいうち!」

「キリキザン! ふいうち!」

 

134:名無しのひふきやろう ID:mL8fCuXt9

>>130

これで勝ったのほんと草

 

136:名無しのひふきやろう ID:2E0QgOMMN

兄弟姉妹組もそれぞれリスペクトしてる感じあるよな

両方お兄ちゃん大好き感出してる

 

140:名無しのひふきやろう ID:r1TWjkQdr

チャンプ兄弟はそらそうなるわって感じやな

ダンデが兄貴だったら誰でも憧れるやろ

 

141:名無しのひふきやろう ID:cawmjiiME

ダンデのチャレンジャー時代とホップ雰囲気めっちゃ似とるで

 

144:名無しのひふきやろう ID:MNAoYwM/5

>>141

ほんまに10年前を思い出すわ

あの頃はそんなにリーグに興味無かったけどチャンプ交代戦は発狂しながら見てた

 

148:名無しのひふきやろう ID:lKQ2Shzyb

え?

もうあれが10年前?

 

152:名無しのひふきやろう ID:CqVB8R7WQ

>>148

やめろ

 

154:名無しのひふきやろう ID:k6i37oKHC

年とると時間があっという間に過ぎるってほんまやったなあ

 

155:名無しのひふきやろう ID:vsIj7I7f/

あんなガキがチャンプになった時はガラルも終わりかと思った

 

156:名無しのひふきやろう ID:7gZh/monK

>>155

なお

 

159:名無しのひふきやろう ID:dcLTuC1g5

毎年の防衛成功インタビューが成長記録みたいになってて草

 

161:名無しのひふきやろう ID:A1FUs36vT

キバナの成長記録になってるのも面白い

 

162:名無しのひふきやろう ID:tZ55iGa5z

ピオニーら辺の時代は入れ替わりも激しかったのになあ

 

165:名無しのひふきやろう ID:YWzuSO1lm

>>162

ガラル史上最短の就任期間記録保持者がおるからな

 

168:名無しのひふきやろう ID:t0LACKA96

>>165

カントーのグリーンさんには負けるで^^

 

169:名無しのひふきやろう ID:rSqdK6bNp

>>168

就任期間、1日弱!w

 

170:名無しのひふきやろう ID:E7rpzGO13

レッドが就任拒否したのがもっと惨めさに拍車かけてる

 

172:名無しのひふきやろう ID:dyxAWFF2O

>>170

「アイツに負けた俺がチャンピオンは名乗れねえ」とか言って戻りもしなかったもんな

 

176:名無しのひふきやろう ID:LXYYCnhuO

>>172

なお次代

 

180:名無しのひふきやろう ID:pkI3F5IgM

ワタル(数年)

グリーン(1日)

レッド(就任拒否)

ワタル(~現在)

 

ワタルの天下長すぎやろ

 

183:名無しのひふきやろう ID:nKCZO+9ug

赤松「もっと修行したいから就任拒否するぞ」

緑松「レッドがやらないなら俺もやらないぞ」

竜松「じゃあ俺がやるぞ」

 

186:名無しのひふきやろう ID:Vm+QILbIJ

>>183

誰も納得しない結論

 

187:名無しのひふきやろう ID:CqwanrUwS

>>186

それでも実力はあるのが何とも言えん感じ出しとる

 

188:名無しのひふきやろう ID:PrUEc83XG

ダンデも老いるまではチャンプ続けるんやろなあ

 

192:名無しのひふきやろう ID:jgTxY7VNq

>>188

とりあえずマスタードの無敗記録18年突破やな

 

195:名無しのひふきやろう ID:ET0TFgoi1

キバナには悪いがダンデの負ける未来が見えん

 

197:名無しのひふきやろう ID:PVO8NjSfR

>>195

サイキッカーぽいこと言い出してて草

 

200:名無しのひふきやろう ID:FLHLRSJMi

>>197

ビートもエスパー使いやしサイキッカーぽい雰囲気出しとるよな

 

201:名無しのひふきやろう ID:NQdxdeyxN

>>200

多分才能ある

小石60km/hで飛ばせる俺が保証する

 

202:名無しのひふきやろう ID:2VI16Sqam

>>201

ワイでも出来るわ

 

204:名無しのひふきやろう ID:smiIIqYK9

>>202

 

207:名無しのひふきやろう ID:2nkZn45Sm

>>202

 

208:名無しのひふきやろう ID:66h0l4zz8

カブ突破一人目は誰やろうなあ

 

210:名無しのひふきやろう ID:1gIlRZUWu

>>208

マリィちゃうか?

多分一番勢いあるで

 

214:名無しのひふきやろう ID:NxHSsa0Xk

ホップは苦戦しそう

というかこいつもユウリクラスだったらほんまにヤバいで

 

218:名無しのひふきやろう ID:J/aOUcJww

カブを一発突破できるやつは大体セミファイナルまで行くからなあ

 

221:名無しのひふきやろう ID:CO2Yc/om6

挑戦者数のグラフがカブのとこで90度くらいに折れ曲がるのすき

 

225:名無しのひふきやろう ID:GgSK/hmFM

>>221

ルリナまでは手加減しとる感じ強いけどカブからは大分はっちゃけるもんな

 

226:名無しのひふきやろう ID:z/iqkWYpC

キバナとか普段出来ないダブルバトルを割とガチパでめっちゃ楽しんどるやん

 

228:名無しのひふきやろう ID:VLnV8o1gP

ダイマ禁止のネズとか理不尽クイズのポプラとか後半は鬼門が多い

 

229:名無しのひふきやろう ID:IPGNAyzgA

>>228

ポプラって割と突破率高いけどな

落ち着いて状況判断できればクリアできるように調整されてる

 

231:名無しのひふきやろう ID:wXAMU46VW

カイの一撃必殺連打が一番ゴミやろ

 

234:名無しのひふきやろう ID:B99MjJhqR

>>231

全員一撃必殺持ちとかいうクソ仕様

なおダイマして無効にしようとしたらメタルバーストが待ってる模様

 

236:名無しのひふきやろう ID:4B+YsMDDu

「一撃必殺ってのはさあ、2回打ったらよお、当たる確率の方が高いんだぜ?」

「悔しかったらダイマックスすればいいんじゃないんですかあ~?」

 

237:名無しのひふきやろう ID:Ovbd2rm4n

>>236

ダイマをダイウォールで完封しておきながらこの言い草

 

240:名無しのひふきやろう ID:wmP8JLKHv

一撃必殺に焦らずダイマすべきタイミングを見極められる奴を選別する意図があるんだろうって

ダンデが言ってた

 

242:名無しのひふきやろう ID:p6QHb1tsj

>>240

絶対アイツそんなこと考えてないで

指示してる時の顔が物語ってる

 

245:名無しのひふきやろう ID:e8gxp3hYF

>>242

 

247:名無しのひふきやろうID:NZ2G81j+C

どれだけキバナ突破するんやろなあ

チャンプ交代は無いやろうけどジムリ交代が楽しみやわ

 

 




ユウリ(♀) じょうたい:さくらん

てもち

・ウーラオス(いちげきのかた)
・ラビフット
・エレズン

チャンプに すいせんされた きたいの チャレンジャー。
ファッションが すきで たくさん ふくを もっているぞ。
カイの ファン らしい。


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withヤロー

 

 

No.13(カイ)さんようこそ、アサギシティへ!」

「なあ、めっちゃ周りに変な目で見られるからこの仮面外していい?」

 

 

「この子が件のハガネールです! どうですか?」

「すげえええ!! カッケエエエ!! めっちゃ金色だああ!!!」

 

 

「ジョウトには色んな名所があるんですよ。どこから行きますか?」

「エンジュ! エンジュ行きたい!」

 

 

「あれ、ミカンちゃん? どうしたんだそんな恰好をして。イツキ君のコスプレかい?」

「マツバさん! 今の私はミカンじゃなくてNo.3、です! 間違えちゃダメなんですからね」

「よくよく考えたら三回くらい来たことあるんだよなエンジュ(京都)………飯食うしかすることがねえ」

 

 

「コガネはジョウトで一番の都会なんですよ! 人も多くて、建物も多くて……えっと、とにかくすごいんです!」

「オクタン焼き旨いなこれ。え、ジムの見学? あそこにはトラウマあるんで遠慮しときます」

 

 

ポケスロォォーン

 

「「フォーエバー!!」」

 

 

「はいはいはいはい! 合言葉は『ズキュントス』!」

「え……? ミカンさんに、カイさん、ですよね……? ガラル地方のジムリーダーの……。しかも合言葉違うし……」

「アオイさん、私たちはNo.3とNo.13です! お間違えのないよう! あ、それはそれとしてこの前の番組ではありがとうございました。これ、チョウジで買ってきたいかりまんじゅうです」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「そんなわけで、ジョウト旅行めっちゃ楽しかったわ」

「ほお~。僕もジムチャレンジが終わったら行ってみようかなあ」

 

 No.3(ミカン)に誘われたジョウト旅行から帰った次の日、お土産を渡しに俺はヤローの下を訪ねていた。

 初めのジムということもあり多くのチャレンジャーが挑戦するターフジムだが、挑戦者の波が去ったらしく少しばかり暇が出来ているようだ。

 今頃はエンジンジムが一番忙しい時期だろう。ターフの挑戦者は一日に数人で収まっているという。

 

「しかし今年のジムチャレンジは面白いことになりそうですなあ。チャンピオンの推薦者にネズさんの妹、委員長の秘蔵っ子も期待以上の強さでしたし……おっと、あの子は確かカイ君が鍛えてるんでしたか?」

「ん? ああ、ローズ委員長に頼まれてな」

「そうかあ……うーむ……」

 

 何か言いた気なヤローの様子に、菓子を食う手を一旦止める。

 もしかしなくてもビートについて一言言いたいのだろう。ジムチャレンジの時にでも何かやらかしたか。全く、クソガキとしか言いようがない。

 

「……アイツは過去に色々あってな。まあ大目に見てくれ。近いうちにポプラが何とかしてくれるっていう算段もついてるし」

「おっと、顔に出とりましたか。いやしかしなるほど、ポプラさんがおるなら安心じゃなあ。強さは十分でも少し前のめりなところがあって心配しとったんだわ」

 

 俺の言葉にホッとした様子を見せるヤロー。

 いや、ポプラが面倒を見るっていうのは原作知識由来の出来事だからその通りにならなくても全然不思議じゃないんだがな。

 

「ま、色々と事情があるんだよ。色々と、な」

「……ふうむ」

 

 初戦闘時から一貫してエスパータイプを使い続けるという超能力者を示唆する描写や、リーグカードにも明文化されている幼少期の複雑な事情。

 ゲームから読み取れるだけでもこれだけの情報がある。そこに加えて、()()()に来てから聞いたローズ委員長の話を組み合わせれば自然と推測は成り立ってくる。

 

 ローズ委員長からはビートをどうするつもりか、どういう境遇に置かれてきたか、という話は特に聞かされていない。ただバトルの技術を教える適任だったということで育成を任されただけだ。

 

 しかし、ローズ委員長の本質は()()()()()()()である。ビートを想う気持ちこそ本物であれ、手駒として扱おうとしているのもまた事実なんじゃないだろうか。

 

 ……まあ、俺にあの人の考えは読めないし、読む必要もない。

 所詮はただの契約相手だ。契約内容を履行してくれるのならば、俺には何の不満もない。

 お茶をグイと飲み干し、考えを放棄する。

 

「ああ、そういえばカイ君はもう知っとるでしょうが、今回のジムチャレンジの後どくジムとエスパージムのジムリーダーが変わるそうですな」

 

 ヤローの言葉に二人の人物が思い浮かぶ。

 恐らく彼が言っているのはクララとセイボリー、鎧の孤島にて登場するNPCたちのことだろう。リーグの経営も俺の仕事の管轄内であるために耳には入っていたが、初めて聞いた時は変な時系列の進み具合に首を傾げたものだ。今思えば、ユウリのイレギュラーな行動が全ての原因だと理解できる。

 

「なんでもどくジムの子はアイドルをやってるとかで、挨拶の時にCDを持ってきてくれましたわ。一度僕も聞いてみたところ、あんまし今の子の流行りはわからんなあ、という感じでしたがね」

 

 多分そのCDはヤローだけでなく、大抵の人間がイマイチだと感じるんだろう。合計で8枚しか売れてないという時点でお察しだ。

 しかし道場には熱狂的なファンのNPCもいたことだし、もしも将来メジャークラスに上がってくるようなことがあれば大人気アイドルという未来もあるのかもしれない。

 それより俺のとこにも挨拶来いよ。

 

「エスパージムの方はいつも通り、あの一族出身だそうです。でもあそこの家の子にしては中々苦労してきたんじゃないかなあ。どくジムの子もそうでしたが、良い面構えをしとった」

 

 セイボリーは……まあ、一族に関しては一度追放されたりと色々事情があるのだが、ジムリーダーに就任したということはゲーム通り克服できたのだろう。

 ユウリがどう関わっているのかは知らないが彼女は随分前にヨロイ島を離れたようだし、案外お互いに主人公の立ち位置を担ってライバル関係にあるのかもしれない。

 

「ふーん。バトルとかはしたの? エスパーの方はともかく、どくは相性不利だろ。抜かされるかもとか思ったり?」

「ふむう……バトルはまだしてはおらんし、手持ちのポケモンたちも見たわけじゃないが………」

 

 くさという弱点の多いタイプの使い手であるヤローの立場からすれば気になる話だろう。

 そう思っての質問だったが、彼は少しばかり考えた上で当然のように口を開いた。

 

「まだまだ若い。僕は負けんよ」

 

 

◇◇◇

 

 

「ロトム、あの動画」

 

 スマートフォンの中に住み着いたロトムに声をかけ、端末に保存してあるヤローとユウリの対戦動画を再生する。

 

『驚けよ、たまげろよ! ”ダイソウゲン”じゃ、ワタシラガ!』

『気にするようなダメージが入る攻撃じゃない――ラビフット、”ダイバーン”』

 

 ヤローは強い。本来相性不利であるはずのクララに、負けはないと豪語できる程度には。

 

『……お見事、完敗ですなあ。またファイナルトーナメントでお会いしましょう』

『はい、こちらこそありがとうございました!』

 

 少なくとも、タイプ相性一つで勝敗が決まるようなトレーナーではない。

 それは少しでもトレーナーとしての経験を積んだものならすぐにわかることだ。

 

「ロトム、次の動画」

 

『――いらっしゃい、ダンデ推薦のチャレンジャー。私のジムミッションをクリアするなんて中々やるじゃない』

『照れますね、えへへ。……でも、私の本気はここからですよ?』

 

 ルリナもまた才能ある一人だ。今はその若さやモデルという副業のこともあってメジャークラスの中では下位に甘んじているが、あの勢いがあれば近いうちにトップトレーナーの一人に登り詰められる。

 

『エレズン、そこ。”ほっぺすりすり”』

『――っ、トサキント!』

 

 当然、ベイビィポケモンなんぞにしてやられるトレーナーではない。

 彼女の前でそんな隙を見せたならばあっという間にその勢いで押し流されるだろう。

 

「次」

 

『――よくぞここまで来たね、チャレンジャー! このカブに君の努力の成果、見せておくれ!』

『ええ、もちろん。()()からいっぱい、努力しましたから』

 

 カブ。彼の強みの一つはベテランが故の経験だ。咄嗟の判断力では随一のものを誇る。

 また、若い時の勢いを維持しようと日々トレーニングに励む姿は同業者として尊敬に値するし、その実力はガラルでは文句なくトップクラスである。

 

『カブよ頭を燃やせ動かせ! 勝利への道筋を探すんだ!』

『――残念、あなたの勝ち筋はもうありませんよ』

 

 彼に勝つためには、当然その判断を上回らなければいけない。そしてそれが出来るのは、ごく一部のトップトレーナーだけだ。

 

「……ロトム、ありがと。もういいぜ」

 

 彼女とジムリーダーたちの対戦する様子を録画した動画を見終わり、端末の電源をロトムに落とさせる。

 そのまま自室のソファに寝っ転がると出てくるのは溜息。()()()()()()()()()()()を見て、少しナイーブな気分になっているのだ。

 

「ユウリ」

 

 先ほどの動画の中でジムリーダーたちと戦っていた少女の名前を呟く。

 彼女は強い。バトルの完成度だけで言うならば、ネズやキバナすら及ばない。ダンデでようやく、といったところか。

 少なくとも、ジムチャレンジにおいて俺が彼女に勝利を収めることは不可能だろう。

 

 バトルが上手いだけならばいい。それならば、俺は彼女を()()()()()()()()()()()()

 問題は、伝説のポケモンがユウリの下へいくことだ。そうなった場合、一気に話は変わってくる。

 

 この世界において、伝説のポケモンを捕獲できるというのは伝説のポケモンを捕獲できる資格があるということである。

 よくネット上ではレッドは伝説のポケモンを使えば~という議論が繰り広げられているが、それは全くお門違いなお話だ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そもそも所有する資格のない者の下へは下らない、それが伝説。

 

 ヒビキのホウオウ、セレナのゼルネアス、ミヅキのソルガレオ……この広い世界の中、極僅かな人間のみが所有する伝説ポケモンたち。それは、他とは隔絶した力を持つ。

 それ故に、当のポケモンが自ら所有者を選ぶのである。

 

 逆を言えば、それらのポケモンを保有していない中主人公勢に肩を並べているレッドが一番頭おかしいわけでもあるのだが。

 

 そのような例外を除き普通は伝説に勝つ方法など存在しない。

 なら、どうすればいいのか?

 

 ――目には目を。歯には歯を。伝説には、伝説を以て。

 

『……今月の〇×日、カンムリ雪原にて絶滅したと見られていた種のポケモンが発見され――』

『……中には危険な種も存在しており、今まで見かけなかったポケモンを見かけたらすぐに――』

『……この件については国際警察も調査を進めており、住民に被害が及ぶことが予想された場合は近隣地域ごと封鎖することも視野へ――』

『……マグノリア博士はこの異常事態に対して、このようなコメントを――』

 

 部屋のTVから流れるニュース。その内容は、ここ最近のカンムリ雪原での異常についてだ。

 今まで絶滅していたと思われていた化石ポケモンたちが思うままに闊歩し、時たま発生する()()()からは非常に危険な種が出現するという。

 

『……ポケモンリーグの総責任者であるローズ委員長はこの事態に対し、「原因は調査中です。しかし対策は打ってあります」と述べており、実際に一部地域ではリーグ委員が道を封鎖している様子も見受けられ――』

 

「はは、原因は調査中です、だってよ。もう捕獲済みなのに白々しいよなあ、()()()()()?」

 

 ボールの中、静かに眠る星の繭は俺の言葉には答えずただ羽化の時を待ち続ける。

 

 アローラにて羽化を遂げた伝説、その片割れ。それが何でこんなとこに来ているのかは知らない。()()()()()()()()()()()()()()

 

「あの人の人気はすげえなあ。居場所を伝えたら簡単に譲り受けてきちゃったよ。ホントにガラルじゃ敵なしだ」

 

 やはり見るべきは内ではなく外だ。ガラル内の話ならば、彼は本当にどうにでも出来る力を有している。

 

「うん、だから国際警察とのラインを作っとくのは正しいんだよ。もうそろそろリラと対面しておくのも……あ、メッセージ来た」

 

 触っていた端末にメッセージの通知が来る。噂をすれば何とやら、送り主はリラである。

 

「…………文面長そうだな。まあ、既読つけなきゃいっか。後で返せばいいだろ」

 

 動画を見たばかりで少し目が疲れている。30分ほど睡眠をとろうか。

 ソファの上で毛布を羽織る。ベッドに行ったら完全に寝てしまう。それはダメだ。

 

「アラームをセットして、と……起きたらまずメッセージ返すか」

 

 頭まで毛布を被り、目を閉じる。

 どうせ仮眠だ、休んだという実感さえあれば良い。そう思って悪い寝心地を我慢する。

 

 仕事も残っているが、そこまで溜まっているわけでもない。

 リラも30分くらいは言い訳をすれば許してくれる。

 

 俺はさいみんじゅつにかかったかのように、安心して眠りについた。

 

 

 

 

「……………さっきから通知うるせえな。電源切っとこ」

 

 




アラーム鳴ってないと思ったら自分で切っていたってこと、よくあると思います。


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VSフウ&ラン

投稿遅れてすみませんでした。
許して下さい!


「返事遅れてごめん、ところで今度会いたいんだけど……っと」

 

 画面を見ることすらなくメッセージを打ち込みながら、朝の支度を済ませていく。

 ジムリーダーに就任してからというもの、ゆっくりと朝食をとれる日は週に一度程しかない。カブやサイトウ辺りが聞いたら激怒しそうではあるが、今日もゼリー一つで家を出る。

 

「おはようございますカイさん、本日の予定は8:00から……」

「ああ。車の中で聞くからとりあえず出しちゃって」

 

 30秒ほどで返ってきた長文の返信に更に返信しつつ、マネージャーの言葉を遮って玄関前に待機していた迎えの車に乗り込む。この運転手付きの車はマクロコスモス役員専用送迎車だ。何ともまあ、昔を振り返れば随分と偉い身分になったものである。

 

「それではカイさん、改めて本日のご予定を。まずは8:00からホウエンのTV局とのロケ、それが終了し次第マクロコスモス本社にて……」

 

 隣に座るマネージャーから一日の予定を聞く。随分と今日は忙しいらしい。ジムリーダーとしての仕事しか入ってない日は休む暇もあるが、マクロコスモス役員としての仕事が入るとそうもいかない。聞くだけで嫌になってくる緻密なスケジュールに気分が沈む。

 

 俺の諸々の能力を考えるとこの立場が一番都合が良いのはわかるが、思ったより働かされている気がするのは気のせいだろうか。労働時間だけを見れば()の仕事よりも表の仕事の方がよっぽどキツい。契約外の労働じゃないのかと思った時もあるけど、まあ、昔に比べればそう大したことはない。眠気覚ましに飴玉を舐めつつ、目的地への到着を待つ。

 

「そういえば、今日のロケでホウエンからやってくるジムリーダーはサイキッカーらしいですね。カイさんは超能力についてどう思ってます? 羨ましいなあ、とかカイさんでも思ったりするんですかね」

 

 窓の景色をぼうっと眺めていると、退屈していると思ったのかマネージャーが話しかけてくる。

 超能力。確かにあったら便利そうだとは思うが……。

 

「――別に。目覚めさせられる過程を見たら、羨ましいなんて思わなくなったよ」

「え?」

 

 嫌な記憶を思い出した。これ以上話を続ける気はないとまた窓の外を眺めれば、その意図は伝わったようでマネージャーの話は途絶える。

 

 ――超能力者、か。

 流れる景色を見つめながら、今日ガラルにやって来るジムリーダーについて考える。()()は俺の横で目覚めさせられていた子たちと違い、天然のそれだ。それも、世界の十指に入る超一流の。

 

 ただ生まれ持った才能だけで頂上へ辿り着いた彼らと、苦痛を代償にするも頂上へは辿り着けなかったどころか未来を失っていった彼ら。

 何とも皮肉な話だ。それも、どちらとも自らなりたいと願った訳じゃないのだからより一層に。

 

「……まっがーれ」

 

 何となく、戯れに指を振って思い出した、かつて流行った言葉を呟く。

 当然何も起こらない。しかし、もし何か起こっていたらどうしたんだろう。喜ぶだろうか。しかし超能力者としてのしがらみに囚われたセイボリーや、一時期能力の制御に失敗して行動を制限されていたカトレアのことなどを考えれば、超能力もそう良いものではないように思えてくる。

 

「まっがーれ」

 

 もう一度呟いてみる。

 やはり何も起こらない。でも、あの日々の中で俺も使()()()ようにされていた、なんて言われてもそう不思議ではないのだが。

 

 ……笑えない話だ。

 窓の外を眺めるのもやめ、手持無沙汰になった俺は心地よい微睡みに身を任せて僅かばかりの睡眠をとることにした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「どうも」

「こんにちは!」

「ホウエン地方」

「トクサネシティの」

「ジムリーダー、フウと」

「ランです」

「「よろしくお願いします!」」

 

 まるで一人の人間が話しているかのように紡がれる二人の言葉に、少しばかり圧倒される。

 フウとラン。ホウエン地方において唯一認められている二人一組のジムリーダーで、双子のサイキッカー姉弟でもある。

 

 性差もあり意外と見分けるのは簡単だと思うが、彼らの両親でさえ二人を間違うらしい。

 少し髪の長い女の子がランで、もう片方が弟のフウ。両者とも青色のチャイナ服を着こんでいる。

 

「今日はガラル地方のキルクスジムリーダー」

「はがね使いのカイ選手を訪ねてやって来たヨ!」

「一体どんな人なのか」

「とても楽しみだね」

「「早速行ってみよう!」」

 

「はい、OKでーす」

 

 番組スタッフの声でカメラが止まる。フウとラン、どちらも年少とはいえジムリーダー。カメラ慣れはしているようだ。

 

「それじゃあカイさんは……スタジアムの中央で、ボスゴドラと一緒に待機してもらっていいですか」

 

 どうやら撮影はスタジアムで行うようだ。ボスゴドラを指定してきたのはホウエンに分布するはがねタイプで見栄えするポケモンだからだろう。スタッフの言葉に素直に頷き、スタジアムに向かう。

 

 しかしスタジアムの中でもジムミッションに用いるアリーナは放送できない。普段試合などで用いるアリーナを開放して、撮影器具などを受け入れる。

 

 ロケというのは準備時間などを含めると、実際に放送される時間の何倍もの時間がかかるものだ。今日は帰るのが相当遅くなるかもしれないな、と睡眠時間の短縮を覚悟しつつ撮影準備の様子を眺める。

 

 すると、同じように暇を持て余していたのかフウとランがとことことこちらに寄ってきた。

 

「カイさんカイさん、お暇でしたら」

「一緒にお喋りしませんか?」

「わぁ、こちらこそ話をしてみたかっただなんて」

「とっても嬉しいヨ!」

 

 何も言わない内に、口に出そうと思っていた言葉を先んじて言われる。読心能力者の特徴の一つだ。人によっては話さずとも伝わるため便利、と言う者もいるが俺は不快としか感じない。相手がその気になれば、俺の深層心理まで全て洗いざらい読み取られるのだ。隠し事のある身からすれば恐怖の対象である。

 

 尤も、隠し事を暴けるレベルの精神干渉能力を持つ存在は世界に十人といないだろうが。

 ちなみに、目の前の姉弟はその十人の内の二人だったりする。

 

「ポケモンコンテストはガラルには無いって聞いたけど」

「本当?」

「へー、ほんとに無いんだ!」

「カイさんはコンテストを見たことあるの?」

「わぁ、ルチアちゃんのを!」

「やっぱりルチアちゃん、海外でも人気なんだ!」

「ぼくもファンなんです」

「あたしもファンなんです」

 

 黙りこんでる俺に二人が話し掛け続ける姿は第三者の目には随分おかしく映ることだろう。しかしこれが能力者の日常風景だ。間違っても悪感情を表層心理に出さないよう気をつける。

 

 ちなみにルチアのコンテスト映像を見たことがあるのは、それがメガシンカについて調べたときに最も簡単に見つかった動画だからである。

 ポケモンの姿をアピールする関係上、何ならカロスリーグの映像よりもメガシンカの様子を観察しやすい。ルチアのチルル(チルタリス)がメガシンカする姿は今でも脳裏に焼きついている。

 

「ところでカイさんは」

「はがねタイプのジムリーダーなんだよね!」

「ホウエンに伝わる、はがねタイプの伝説ポケモンについて」

「何か知っていたりしませんか?」

「――わぁ、知ってるんだ!」

 

 ……これだから、能力者との会話は嫌なのだ。

 思わず思い浮かんだ一匹のポケモンの名前に歯噛みする。

 

「実はトクサネの恩人……」

「というか、ホウエンの恩人……」

「というかというか、世界の恩人が今、そのポケモンを探してるらしいんだヨ!」

「何でも同種の存在が3匹いることは突き止めて」

「その内の一匹がはがねタイプなんだって」

「でもトクサネにいるはがねタイプのエキスパートは」

「必要な時に役に立ちませんので」

「カイさんに聞いてみようかな、と思ったところ」

「ビンゴ! 流石です!」

 

 キラキラとした目で俺に迫ってくる姉弟。世界の恩人というのは第3世代主人公――ハルカのことだろう。レジ系はジンダイのイメージがあるが、恐らくオメガでルビーなこの世界では野生なのも当然か。

 

 しかし自分の迂闊さには一旦後悔したものの、ホウエン主人公と繋がりを作れるのは思ったより大きいメリットに感じられる。

 これは変に隠し立てせず素直に情報提供するべきだろう。頭の中で伝えて良い情報、悪い情報を取捨選択して口を開く。

 

 意識を研ぎ澄まし、表層意識から情報を消していく。

 自分の殻に閉じ篭もる姿をイメージする。昔叩き込まれた、対読心能力者の心構えだ。

 

「んー、多分そいつは『レジスチル』ってポケモンだな。古代の巨人ポケモンとの関係性が……」

 

 ひとまず当たり障りのない情報を小出しにして反応を見る。

 しかしフンフンと頷いているのを見る辺り、こんな話で有り難がるような情報の無さらしい。流石は伝説といったところだろうか。

 

「それじゃあ準備出来ましたので、カイさんにフウさんランさん、お願いしまーす」

 

「あ、撮影始まっちゃいますね」

「また後で聞きにきます!」

 

 この世界の文献にも載ってそうな話を終え、少し踏み込んだ話をしようかと思ったところで撮影準備が終えたことを知らせる声が聞こえる。 

 丁度良い。能力者の相手は疲れるし、ゆっくり話すべき情報を整理したかったところだ。話は後回しにして、撮影場所に向かった。

 

 

◇◇◇

 

 

 

「読めなくなったね」

「読めなくなったね」

「ダイゴさんと一緒」

「ミクリさんと一緒」

「何かを知ってる」

「何かを隠してる」

「ちょっと暴いてみようか」

「ちょっと読んでみようか」

 

 

 

◇◇◇

 

 

「――はい、OKでーす!」

 

 番組スタッフのよく通る声が撮影の終了を告げる。

 時計を見れば正午はとうの昔に過ぎていた。フウとランとの話はまた今度にさせてもらおう。急いで本社に向かう準備を始め、電話を一本入れようと人のいない場所へ移動する。

 

「カイさん!」

「カイさん!」

 

 するとまたサイキッカー姉弟がとことことやって来た。

 レジスチルの話を聞きにきたんだろう。しかし、余り今日は時間がないのだ。大人しく帰ってもらうことにする。

 

「ああ、悪いけど話はまた今度でも……」

 

「大丈夫だヨ」

()()()()()()()()()()()

 

「は? 何言って――――!!」

 

 瞬間、小さな頭痛と共に自分の何かがこじ開けられたような感覚を感じる。

 ()()()()。ただそうとしか言いようが無い。

 

「お前、ら……一体、何、を……」

 

「へー、レジスチルってこんな姿なんだ」

「へー、レジアイスってこんな姿なんだ」

 

 苦痛は感じない。しかしこの不快さはとても言い表せるものじゃない。

 脳内に電極を突っ込まれたかのような異物感。自分が自分だけじゃなくなっている。「俺」の輪郭が今、あやふやになっている。

 

 自分の意識を保つのに必死な俺の前で、この姉弟はふむふむと俺の頭を覗いて頷いている。

 

「レジロックに……レジドラゴ?」

「レジエレキっていうのも、聞いたことなかったね」

 

「おい、お前ら……今すぐ、やめ、ろ………」

 

 俺の言葉を全く無視して記憶を弄る二人。今はレジ系の情報を探しているようだが、メインプランや()についてでも暴かれてみろ。最悪の場合、プランの終了までガラルに()()()()()ことになるぞ。

 

「うん? まだ隠そうとしてる情報があるみたいだヨ!」

「やっぱり怪しい! 何かしようとしてるんだ!」

 

 何だコイツらは。やっぱり、だと? まさかとは思うが、何となく怪しいって思っただけでこの行動に出たのか?

 失敗した。対応を間違えた。ガキの迂闊さをもっと思慮に入れておくべきだった。

 

「うーん、中々開かないなあ」

「うーん、ちょっと力を強めてみようか」

 

「――ぁ、ガッ」

 

 走る激痛。人を人とも思っていないかのような態度に、「かつての記憶」を思い出す。

 その幼さと、周りにはその能力を利用するために媚びへつらう大人たちばかり、という特殊な環境で育ったが故か彼らは余りに無垢が過ぎる。

 

 その無垢が故に、人の気持ちを読めるのにも関わらず人の気持ちを理解できないのだ。

 だからこそ、俺の最も忌避する記憶を何も躊躇わずに見ることが出来たのだろう。

 

「あれ、何これ」

「昔の記憶?」

「開いてみよう!」

「調べてみよう!」

 

 彼らの言葉と共に、俺が財団に囚われていた頃の記憶が脳内を埋め尽くす。

 

 怖気。憤怒。幻痛。吐気。

 様々な感情が噴き出し、一瞬視界が真っ白になる。

 

 そして。視界が元に戻ってきたとき、既に俺を苦しめていた異物感は消え去っていた。

 

「――あ、れ?」

 

 完全に戻ってきた自分の体の感覚に思わず拍子抜けする。

 到底まだまだ解放されそうな状況ではなかったはずだが、一体どうしたのだろう。

 

 困惑と共に顔を上げて目の前を見ると、そこにはわなわなと震えた二人が地べたにへたり込んでいた。

 

「お前ら、何やって――」

 

「ひっ!」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………!」

 

 口を開いた途端にビクリと体を震わせるフウに、謝罪の言葉を繰り返すラン。

 一体どうしたことか。俺はただかつての記憶に飲まれていただけだというのに。

 

「……あー、あれか。読心は強い共感性を伴うとかなんとかっていう。どっかで読んだ気がするわ」

 

 つまりは、この姉弟は俺のかつての拷問を追体験してしまったという話だ。そりゃあ、怯えもするというものである。俺の脳内を埋めていったのは、かつての地獄の中でも特別辛かった記憶。俺だって発狂なんてのは一度や二度じゃ済まなかった。

 

「ごめ、ごめんなさい、ごめんなさい、許して、何でもするから、この痛いの、やめて……」

「嫌だ、もう、嫌だ……」

 

 どうやら相当強くトラウマが刻まれてしまったらしい。姉のランの方に至っては、未だに幻覚に苛まれているようである。

 

「…………何でもする、か」

 

 ピンチはチャンス、とはよく言ったものだ。最悪の状況から一転、振って湧いた幸運に感謝する。

 

 一歩近づくだけでビクリ、と震える弟を無視してランの頭を掴み、話しかける。

 

「色々とやってもらいたいことはあるが……まずは、裏切らないように色々と躾けねえとな」

 

 怯えて目を伏せるランの様子から、意外と簡単に終わりそうだと判断する。

 

 超能力者の協力者が手に入るのは非常に嬉しい。丁度、エスパータイプの伝説には対応しあぐねていたところである。ハルカとのコネなんかよりも、ずっと良いものが得られた。

 

 今日の予定は、変更だ。

 

 



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withポプラ

「カイ選手! ビート選手の失格について何かコメントを!」

「幼少期の事情に原因があるとの意見もありますが!」

「彼を育てたトレーナーとして責任を感じてはいらっしゃるのでしょうか!」

 

 つい先日のビートがやらかした事件のせいで、随分とマスコミに纏わり付かれるようになった。

 ローズ委員長からの指示が無い以上、俺から何も話せることは無い。ノーコメントを貫き通す。

 

 ラテラルタウンの遺跡。

 かつてそこには芸術的な古代絵が描かれていたが、その内部に大量のねがいぼしが埋められていることを発見したビートがローズ委員長にねがいぼしを捧げるために遺跡を破壊する。

 その結果ねがいぼしを掘り出すことには成功するものの、内心はどうあれ責任ある立場にいるローズ委員長はビートにジムチャレンジ失格を言い渡す。

 

 当然ビートはガラル中から非難されることとなり、こうして師である俺のところにまでマスコミが押しかけることになったのである。

 

 一方破壊された遺跡の内部には今まで発見されていなかった銅像が見つかり、学会では相当な盛り上がりを見せているという。

 そういった面で、結果論ではあるものの少しだけビートを許す風潮も生まれている。

 

 あるいは、それもローズ委員長の思惑なのかもしれないが。ゲーム本編での乱入に対する意見。あれは失格者に対するものとしては少しばかり優しすぎないだろうか。

 俺が思うに、ローズ委員長の温情とでも言うべきものが関わっていたとしても何もおかしくは無い。

 

 彼は狂人ではあるが、善人でもある。ガラルの未来に対しては、この世界の誰よりも真摯に向き合っている。

 そんな未来を生きる若者の一人を救うなんて、あの人にとっては容易いことだろう。

 

 もう長い付き合いになるが、未だに真意を掴めないローズ委員長の心の内を推測する。

 とは言っても、ただの契約相手である俺からすればどうでもいい話なのだが。マスコミを振り切って仕事場であるキルクスジムに入る。

 

「ジムリーダー・カイ。ボクの生涯をかけたお願いがあります」

「……何でここにいんのお前」

 

 

◇◇◇

 

 

「懐かしいですね。このジムにはよくトレーニングにやって来ていました。つい先日、ジムチャレンジが始まる前のことですが、随分と昔のことのように思えます」

 

 ひとまず出した紅茶を優雅に飲みながらペチャクチャと喋るビート。前から思っていたが、コイツの図太さはかなりのものである。

 

「で? わざわざこのクソ忙しい時期に俺のとこまで来て、一体何の用だ」

「……そうですね。ジムの準備もあるでしょうし単刀直入に言わせてもらいましょうか。

 カイ選手、アナタの立場を見込んでお願いがあります。ボクをもう一度ジムチャレンジに参加させて下さい」

 

 口に出されたビートの言葉を、特段驚きもせず受け止める。

 やっぱそれか。本来なら本部の設置されているナックルシティへ嘆願に向かっているはずだが、より強い繋がりがあるというのならばこちらへ来るのも不思議ではない。

 

 まあしかし、結論は同じだ。俺はこのジムチャレンジが終わった暁にはメインプランの成否に関わらずビートの面倒を見られる状態にないだろうし、見る気もない。

 

 本来の歴史とのズレが俺の存在によるものだとしたら、それを直すのも俺だろう。

 決めた。アラベスク送りである。

 

「……カイさん? 何だか今、ものすごく嫌な予感がしたのですが」

「ああ、安心しろよ。お前の願いは叶うから」

「ほ、本当ですか!?」

 

 俺の言葉に嬉しそうな顔で立ち上がるビート。

 あれ? でもあの後はジムチャレンジすっ飛ばしてジムリーダーになってるからジムチャレンジへの再参加という願いは叶ってない気がするが……まあどうでもいいか。

 ファイナルトーナメントには参加出来てるし、実質叶ったようなもんだろ。

 

「ああでも、一個だけ確認しとくか。たとえ自分の、えーと、アイデンティティ? が失われるというか、ピンク色に染められても後悔しねえか?」

「……? 何を言っているかわかりませんが、ローズ委員長のためならばボクはどうなっても構いません!」

 

 言ったな。言質はとったぞコイツ。

 付いて来い、という仕草をしてジムを出る。向かう先はアラベスクタウン、妖精の町である。

 

 

◇◇◇

 

 

 結論から言って、ビートは原作通りにポプラの後継者に選ばれた。

 ピンクピンクと叫びながら行われたオーディションとやらには恐怖の念しか浮かばなかったが、やはりフェアリー使いとしての素質はあるのだろう。すぐに認めたようである。

 

 勿論、用事を果たした俺はビートを押し付けて帰る気満々だったのであるが、どうしてか妖怪ピンクババアに俺の行動を察知されてお茶会に参加させられることになったのである。

 

「いやあ、この忙しい時期に連絡も入れないでやって来た時は何事かと思ったけれど、あんなにピンクに相応しい子を連れてきてくれるとはねえ。これでようやくアタシも安心して身を引けるってもんだよ」

「はっ。後5年は現役でいけそうだけどな」

「なんだい、バトルは上手いけれど目の方はまだまだ年相応だねえ。後10年はやれるよ」

 

 砂糖をティースプーンで溶かしながら、ポプラと会話を続ける。

 しかし俺はともかく、コイツのいるアラベスクジムは今ジムチャレンジの最前線のはずだがお茶会なんてしている暇はあるのだろうか。

 

「おや。自分から用事を吹っかけてきたのにこっちの心配かい? 安心しなよ、今日のジム営業は終了したさ」

「あ、そうなの?」

「アラベスクに到着した子はみーんなあっという間にクリアしていったからねえ。さっきクリアした子で今日は最後だよ」

 

 確かに、最上位組とそれ以下では結構差がある。そもそもクリアが出来る出来ないの差もあるが、進行速度の方も相当に違いが出てくるのだ。

 

「何て言ったかね、あのチャンピオンが推薦した……」

「ユウリか?」

「そうそう、あの子だよ、つい先ほどクリアしていったのは。アタシの出した問題は全部不正解だったけれど、多少の逆境なんてものともしない強さがあったね」

 

 思わぬところで得られた主人公の情報に口角が上がる。ベテランというだけあって、ポプラの目は確かだ。俺の見抜けないものを見抜いているかもしれない。ユウリの話を促してみる。

 

「もっと詳しく教えてくれよ。バトルはどんな感じに展開してったんだ?」

「そうだねえ、あの子が使ったのはストリンダーとエースバーンだけだったけれど、ポケモンの強さもさることながらあの子の指示も上手かった。完成されてるよあれは。アタシなんかよりずっと強い」

 

 相変わらず持っているはずの最後の一匹についての情報は無し、か。鎧の孤島をクリア済みであると考えれば、ウーラオスという可能性は高いがどちらの型かも判別がつかない。

 

 彼女が今所持しているポケモンは4匹。

 

 旅の始まりにチャンプから譲り受け、そして旅の間にみるみる成長していきとうとう最終進化を遂げたエースバーン。

 

 バウジムなどでベィビィポケモンであるはずの進化前から活躍を見せ、ユウリの才能をガラル中に知らしめた原因でもあるストリンダー。

 

 ラテラルにおいて、その火力を以ってただ一匹のみでサイトウを撃破せしめた新種の化石ポケモン、ウオノラゴン。

 

 そして最後の一匹。旅の始まりから所持しているにも関わらずただの一度として公式戦で用いられていない、謎のモンスターボール。

 噂では何よりも信頼する切り札と呼ばれ、その一匹を見るのを誰もが心待ちにしている。

 

 彼女のパーティの内、ジムチャレンジで使われるのは大抵の試合で一匹か二匹。

 それは今のところ誰も彼女の全力を引き出せていないということであり、彼女がジムリーダーなどという器では測りきれないことを示している。

 

「あの子は強いよ。才能だけならダンデでも戦えるけれど、あの子の強さはそういう強さじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。今のチャンプはその強さを持っていない。初めての負けを経験するかもしれないね」

 

 ポプラのその評に違和感を抱く。いや、言っていることはわかる。いわゆる努力型か天才型かの話だろう。

 ダンデの初年度の防衛戦なんかがわかりやすい。あれはキバナとダンデという、その世代のトップの天才たち同士の、剥き出しの才能の戦いだ。

 

 一方、カブやポプラといったベテランたち同士では、年月を感じさせる技巧を凝らした工夫の多い戦いが見られる。

 それは数多くの負けと勝利に支えられた力であり、決して勝ち続けるだけじゃ手に入らない強さであろう。

 

 しかしユウリがその強さを持っているというのは違和感を感じる。

 何せ、ポプラの言う通り才能だけでもダンデ級というバケモノ具合だ。彼女を負かすことが出来る存在なんて、それこそ他の主人公たちぐらいである。

 

 彼ら彼女らが一人の人間を鍛えているなんて話は聞いたことがない。

 あるいは、相当に大きな敗北を経験し、その一戦を頭の中で何度も繰り返しているとでも?

 

 とにかく、彼女の実力は才能の賜物としか思っていなかった俺にとってその評は随分と衝撃だった。

 

「あの子、というか上位組が次に行くのはアンタのとこだろう? アタシの心配なんかより、自分のジムの準備した方が良いんじゃないのかい」

「そうしようと思ったら、どこぞの誰かさんが引き留めてきたんだけどな」

「相変わらず口が減らないねえ」

 

 まあ、ジムチャレンジにおいてジムリーダーというのはチャレンジャーに対して優位的な立場にいる。多少の期間ジムを閉めていたところで、誰も問題にはしない。

 ゲームにおいてスパイクタウンのシャッターが問題になったのは、ネズがやったことではなく何の権力も持たない一般人がやったことだからだ。

 

 ただの一ファンが他の選手に対して邪魔をするのは単なる妨害行為だが、ジムリーダーがジムを開けるかどうかは本人の自己判断である。アスリートである以上、スケジュールやコンディションなども気にしなければいけない。

 尤も、あまりにジムを開かなかったらリーグ本部からの命令が入るのだが。

 

「それなら今日はもうお茶会は終わろうかい。アタシもあの坊や(ビート)を早いとこピンクに染めなきゃいけないしね」

「……まあ、アイツのことは任せたさ。バトルの腕については保証する。フェアリージムもしばらくは安泰だろうよ」

 

 ピンクに染めるとかいう不穏な言葉に少しだけ後悔するものの、決してビートにとっても悪い結果にはならないだろうと考える。

 それよりかは自分の心配だ。いつまでも人の面倒ばかり見てはいられない。

 

「そうそう。ここの妖精たちはアンタのことを随分気に入ってるからね、ちょいと歩いていってくれよ」

「ん」

 

 最後にもはや砂糖水となった紅茶をグビリと飲み干し、席を立つ。

 あんまし美味いモンじゃなかった。次からはジュースを出してもらうことにしよう。

 

 

◇◇◇

 

 

 アラベスクジムのジムトレーナーであるマダムたちから渡された大量の菓子を食べながら、アラベスクタウンをフラフラと歩き回る。

 かと言って何かやることがある訳でもない。ポプラの言う通り、ほんとにちょっと歩いているだけだ。住民がいれば挨拶をし、じゃれついてくるポケモンたちの相手を適当にする。

 

 この町は本当に不思議なところだ。田舎というよりかは、未開の地。妖精たちの楽園である。

 人の手の行き届いていない森の中の集落のような家々は、ポケモンと人間の共生というテーマに対する一つの回答だろう。

 

 まあしかし、文明の利器に慣れてしまった現代の人々の多くにとっては住みにくい地である。この町に住んでいるのは芸術家といった職業など強い感受性を持つ者が大半を占める。

 

 また、幼い子供もこの地を好む傾向があるという。幼少期をアラベスクで育った芸術家には大成するものが多いとか。子供の持つその高い感受性が存分に活かされる地なのであろう。

 

 逆に、妖精の方からしてみても子供を好む傾向があるらしい。ポプラからその話を俺が妖精に好かれている、という話と同時に聞いた時には随分と複雑な気持ちになったものだが。

 

 そんな俺の心情はさておき、町も一周したかと言うところで前方に小さな人影を見つける。

 

「あ」

「……………えへぇっ!? カ、カ、カカカ、カイさん!?」

 

 ユウリ(主人公)だ。あちらの方も俺を見つけて随分驚いているようである。

 一体なぜここに、と一瞬考えたが先ほどポプラのジムチャレンジが終わったと聞いたばかりだった。まだこの町にいるのも当然だろう。

 

「お前、ジムチャレンジャーのユウリだよな? チャンプに推薦された」

ぁ、はい

「今からアラベスクを出るとこ? 次は……ああ、キルクス(俺のとこ)か。もう来んの?」

ぁ、いや、その

「それともまだしばらくこの辺にいたり?」

ぁ、そうです

 

 これは良い機会だと思い、ユウリに話しかけてみることにした。もしかしたら残りの手持ちなど良い情報が手に入るかもしれない。

 

「他のヤツらも言ってたかもしんないけど、お前は結構注目されてるからな。楽しみにしてるぜ」

ぁ、いや、私なんて全然……

「ん? 悪い、よく聞こえねえ」

ぁ、ごめんなさい、何でもないです………

 

 ……何か思ってたのと違うな。動画とかを見たり他のジムリーダーから聞いた話じゃ、もっとハキハキと喋っていたような気がするんだが。今目の前にいる彼女は目も合わせようとせず、声もボソボソとして聞き取りにくい。

 

 まるで俺と話すのを拒絶しているみたいだ。……まさか、プランについて見抜いてたりするのか? もしかするとこれ以上探るのは危険かもしれない。

 

 予定変更、早々に話を切り上げることにする。情報を探るのはまた自分のホーム(ジム)でやればいい。どうせすぐに会うことになるのだ。

 

「ふーん。んじゃまあ、頑張れよ。俺のトコも明日からは挑戦者がやって来るだろうしな、準備のために俺はもう帰るぜ」

ぁ、そ、その

「ん?」

「ぁ、ゎ、わたし、ファンなんです!」

 

 急な大声に、思わず黙り込んでしまう。

 何だコイツ。どっからそんな話題が飛び出してきた。

 

「は?」

ぁ、ごめんなさい、すいません、いやホント急に何言ってるんでしょうね私本当に昔っから空気が読めない奴でごめんなさい死んで詫びます……

 

 今度は先ほどまでの口数が嘘かのようにブツブツと呟きだす。

 本当になんなんだコイツ。情緒不安定か?

 

「ファンってなんだ? サインでも欲しいのか?」

「……!! ぁ、はい、そうです!」

「それじゃあ、ウチのジム突破したらくれてやるよ」

 

 そう言って少し挑発してやると、「そんなことでいいのか」とでも言いたげな表情をする。

 どうやら相当バトルに関しては自信があるようだ。上等である。制限された手持ちとはいえ、叩きのめしてくれよう。

 

「何だ、そんなの簡単だってか? 意外と度胸あるのな、お前」

ぁ、いや、そんなことは…………負けても、それはそれで嬉しいですし

 

 俺の言葉にも未だに自信を崩さない。流石は主人公といったところだろうか。

 敗色濃厚とはいえ、俺も覆してやろうという気が湧いてくる。

 

「必ず俺のトコまでやって来いよ。ジムミッションクリア出来ずにリタイア、とか許さねえからな」

「ぁ、はい!」

 

 発破をかけるだけかけてアラベスクを去る。

 本チャンの勝負は別として、ジム戦に関しても今の俺はかなりやる気になっている。キルクスに戻ったら研究を再開しよう。

 

 ……しかし、今更ながら敵に塩を送っただけのような気がしてきた。本当に大丈夫だろうか?

 ジムミッションの内容をユウリだけ厳しくしようか、なんて考えつつキルクスへの帰路につくのであった。




ユウリ(♀) じょうたい:なんだか しあわせそう!

てもち

・ウーラオス(いちげきのかた)
・エースバーン
・ストリンダー
・ウオノラゴン

めちゃくちゃ つよい チャレンジャー。
サイトウとの たたかいは すさまじかったぞ。
カイの だいファンで あいが おもい。
しかし ほんにんを めのまえにすると コミュしょう さくれつだ!



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【優勝候補】美少女チャレンジャーユウリさん、ヤバい【強すぎ】

1:名無しのドラゴンつかい ID:MuK4Ywe9N

ユウリ伝説

・初めてダンデが推薦権を行使した

・しかも血縁のある弟と違い、完全に赤の他人

・ベイビィポケモンでルリナの一匹目突破

・カブの扱えなかった特性を使いこなす

・サイトウ戦を一匹で突破(ダイマックス不使用)

・切り札はまだ隠し持っている

・全問不正解のデバフの中ポプラを突破←New!

 

2:名無しのドラゴンつかい ID:DxPK0N2dC

やば杉

 

3:名無しのドラゴンつかい ID:gn1PGqBmd

自信満々にクイズ間違えてくのちょっと笑ったわ

 

4:名無しのドラゴンつかい ID:/vPQxtKZL

コピペかと思ったらコピペじゃなかった

 

7:名無しのドラゴンつかい ID:Sd7U6ek0w

全盛期のダンデ伝説

・1試合2勝利は当たり前、1試合5勝利も

・初ターン3タテを頻発

・ダンデにとってのキョダイゴクエンはひのこの打ちそこない

・初ターン勝利も日常茶飯事

・手持ち数100匹差、ポケモン全員負傷の状況からトレーナー1人で逆転

・1度の投球でボールが3個に見える

・みねうちで一撃必殺

・コートに立つだけで対戦相手が泣いて謝った、心臓発作を起こすトレーナーも

・ワンパンでも納得いかなければげんきのかけら与えて帰ってきた

・あまりに勝ちすぎるから伝説ポケモンでも一般扱い

・その伝説もワンパン

・一睨みしただけでポケモンがボールの中へ帰っていく

・試合の無い日でも1勝利

・100連勝記念花束も迷子の中受け取った

・ポケモン使わずに素手で戦ってたことも

・自分のポケモンのわざを自分で受け止めて跳ね返す

・ダイウォールで一匹突破なんてザラ、2タテすることも

・試合で勝利してからのインタビューのほうが長かった

・コート外から3タテ

・わざをくらったカビゴンと、それを受け止めようとしたカイリキー、バンギラス、トレーナーともども4タテした

・観客のスパイク人のヤジに流暢なスパイク弁で反論しながら3タテ

・バシッとリザードンポーズしただけで5匹くらい倒した

・投球でハリケーンが起きたことは有名

・シュートシティからターフジムのポケモンも処理

・特性がんじょうも楽々ワンパン

・あまりに勝つので最初からトロフィーを受け取っていた時期も

・新しいリーグカードを印刷したらすでにサインがしてあった

・1匹倒されたように見えたが、実は残像で本体はすでに6タテしていたことも

・相手トレーナーの投球と同時にわざを放ち、150km/hのボールを追い抜き6タテ成功

・◎×■○年イッシュ10大事件 第1位「ダンデが迷わなかった」

・ポケモンパンで80連続リザードンを出したこともある

・コート内から迷子になれるのはダンデくらい

・ダンデの迷子にまだ気づいていないリーグ委員も多い

・ダンデはファンから貰ったカジッチュをワンパンして万有引力発見したのは有名

・名トレーナーはポケモンの動きが止まって見えるというがダンデはむしろ体内の細胞分裂すら見えた

・ハンデとして目を瞑ってコートに入るルールも導入されたが全然ハンデにならなかった

・自分の投げたボールに乗って観客席まで行くというファンサービス

 

10:名無しのドラゴンつかい ID:l6ZKqyMkg

このコピペだいすき

 

13:名無しのドラゴンつかい ID:4YJ8xhfmc

今も全盛期定期

 

14:名無しのドラゴンつかい ID:N6zOrzUyJ

>>13

就任してからずっと勝率1.00なのにどうやって全盛期決めるんですかね

 

15:名無しのドラゴンつかい ID:xeKIBPpvw

ユウリなんでこんな強いん?

 

16:名無しのドラゴンつかい ID:U7qohjICH

>>15

一時期スクールに通ってたみたいやけど、その頃からズバ抜けてたらしいで

 

19:名無しのドラゴンつかい ID:JcrxCjwLv

やっぱチャンプの推薦は伊達じゃないわ

 

20:名無しのドラゴンつかい ID:i2qRnMMU0

>>19

弟もなんだかんだヤバいしな

ユウリとかマリィとかに隠れとるけど、普通にクソ強いで

 

23:名無しのドラゴンつかい ID:VGSt/evhN

サイトウ戦エゲツなかったな

なんやあのポケモン

 

26:名無しのドラゴンつかい ID:KpXkDmmog

>>23

最近復元されたかせきポケモンの一匹や

まだあんまり情報が出とらん

 

27:名無しのドラゴンつかい ID:oBrMJWJOh

>>26

つまりそれを完璧に使いこなしてるユウリがヤバいってことでは

 

30:名無しのドラゴンつかい ID:CMzroY1C7

「エラがみ!」とか言うてボコボコにしとったもんな

なんやねんあの火力

 

32:名無しのドラゴンつかい ID:BLSG5zSfw

「当たったら終わり」みたいな顔してるネギガナイトが面白かったわ

 

35:名無しのドラゴンつかい ID:YjaBryha0

サイトウもめちゃくちゃ眉間に皺寄っとったしな

ゴリ押しの極致やわ

 

37:名無しのドラゴンつかい ID:8ZSnSWSj9

>>35

そのゴリ押しに技術が伴ってるからヤバいのでは…?

 

38:名無しのドラゴンつかい ID:H1o+kkbRK

あと一匹は何や

はよ明かせ

 

40:名無しのドラゴンつかい ID:6VaNBj/6h

>>38

リザードン説推していきたい

 

43:名無しのドラゴンつかい ID:UVG/Jre/O

>>40

チャンプ戦でのリザVSリザは絶対盛り上がるわ

 

46:名無しのドラゴンつかい ID:LD/JUaase

一回カブがやったけどめちゃくちゃ熱かったもんな

マジで名勝負だったと思う

 

48:名無しのドラゴンつかい ID:FrCuJ6xmU

カントーの友達に「リザと言ったらグリーンだろ」みたいなこと言われてめっちゃカルチャーショック感じた

 

50:名無しのドラゴンつかい ID:jmhAvXqFF

>>48

グリーンと言ったらピジョットでは…?

 

53:名無しのドラゴンつかい ID:qR6MYLOqC

>>50

リザードンやろ

リザと言ったらグリーンかは知らんが、グリーンと言ったらリザードン

 

54:名無しのドラゴンつかい ID:AJLaSU/IV

なんか割れてて草

 

55:名無しのドラゴンつかい ID:tOyk/uFJr

ドサイドン「じめんジムの継承者やぞ」

 

56:名無しのドラゴンつかい ID:V9R2hOQ9V

>>55

トキワは色々あったから…

 

57:名無しのドラゴンつかい ID:Z8meBkerU

アイツコロコロパーティ変わるからな

チャンプとしてやった一戦のパーティの印象が強い

 

59:名無しのドラゴンつかい ID:updaWxlMH

結局ユウリは優勝しそうなんか?

 

60:名無しのドラゴンつかい ID:JXnCTFl98

>>59

マリィがどうかってとこ

ビートが抜けたおかげでこの2人での争いになった

 

63:名無しのドラゴンつかい ID:0HKNPGhkk

ホップは自分でユウリに負けたって言ってるしな

ちょっと格落ち感があるわ

 

65:名無しのドラゴンつかい ID:OtzFKt7dR

ネズの妹でダイマ解禁済み

英才教育を受け続け、こども大会でも優勝経験多数

こんなん弱いわけないやろ…

 

68:名無しのドラゴンつかい ID:z7jHMcvn4

マリィもサイトウとポプラ一発突破やしな

いつもだったら余裕で優勝やわ

 

69:名無しのドラゴンつかい ID:3H+E/SMdM

今年のレベル高杉内

 

70:名無しのドラゴンつかい ID:cSyVjg1iq

今更かよ

 

72:名無しのドラゴンつかい ID:8R5wG2FBz

キルクスのジムミッションが何か気になるわ

はよ誰か挑戦せえや

 

74:名無しのドラゴンつかい ID:QBgUOPNQ3

>>72

多分明日から挑戦始まるで

カイがジム空けてなければ

 

77:名無しのドラゴンつかい ID:uvx139awC

>>74

不安にさせるのやめろ

 

80:名無しのドラゴンつかい ID:rxskvy+wS

今年は新しいミッション用意したとか言っとったしな

ちょっと楽しみや

 

82:名無しのドラゴンつかい ID:I4dG4H13p

ジムミッションはなるべく挑戦者の相手をしたくないっていう怠け心と

作ってる内に興が乗ったんだなっていう遊び心が見えてちょっと面白い

 

83:名無しのドラゴンつかい ID:YYrloIoJi

一つ目のジムミッションすら突破できなかったワイからすると

厳しいジムミッションでチャレンジャーが落とされてくのはホンマに見てて気持ちいい

 

85:名無しのドラゴンつかい ID:MDR26uZYL

>>83

かなc

 

86:名無しのドラゴンつかい ID:OsbfetkjI

エンジンのジムミッションはユウリが面白かった

 

88:名無しのドラゴンつかい ID:9cNSwq045

>>86

迷うことなくジムトレーナーのポケモンから排除してたな

ボールから出た瞬間に飛び膝蹴り喰らわしてるのホンマ草やった

 

90:名無しのドラゴンつかい ID:WQSdZCUhl

トレーナーが絶句してるのを見て不思議そうに首傾げるのほんと好き

 

92:名無しのドラゴンつかい ID:ZgNcS1kLA

>>90

マジで相手の気持ち理解してなさそうなのぐう畜の素質ある

 

94:名無しのドラゴンつかい ID:diPdCJSQP

アラベスクのジムチャレでも人の名前とか一瞬で忘れてるのは本気で興味ないんだと思う

 

96:名無しのドラゴンつかい ID:99ahcVVha

性格面を考えるとホップの圧勝では…?

 

99:名無しのドラゴンつかい ID:nt2sCO2oJ

>>96

ぐう聖

 

100:名無しのドラゴンつかい ID:SLOmaMk2W

あの裏表のない笑顔は見てて気持ち良くなる

 

101:名無しのドラゴンつかい ID:M2cipEPo/

まあ強くても性根腐ってるやつなんていくらでもいるからな

それに比べたらジムバッジ一つも持ってなくてもちゃんとしとる奴の方が立派やで

 

103:名無しのドラゴンつかい ID:7f7Utrp8C

あくタイプ使いは性格悪いという風潮、一理ない

 

105:名無しのドラゴンつかい ID:oUEL9rvMC

>>103

聖人カリンがおるからな

 

107:名無しのドラゴンつかい ID:ts0bRR9lL

>>105

四天王就任のときのエピソードすき

 

108:名無しのドラゴンつかい ID:O2bVdDSCI

>>107

なんやそれ

 

110:名無しのドラゴンつかい ID:BYsJp5iTk

>>108

5戦して先に3勝した方が就任するんやけど、道に迷ってるおばあちゃん助けてたり野生のポケモンに襲われてる人を救助してたりで初めの2日間とも不戦敗になったんや

その行動を馬鹿にした対戦相手に6タテ三回して勝ったっていう話

 

111:名無しのドラゴンつかい ID:rqy839fah

>>110

強すぎて草

 

113:名無しのドラゴンつかい ID:cu4JLVwrD

カリンが聖人という風潮、一理ある

 

115:名無しのドラゴンつかい ID:y+xrSW4VK

あく使い最強やろ?

強くて性格良いとか無敵やん

 

118:名無しのドラゴンつかい ID:A2E9NH69c

>>115

あくの最強候補は他にもおるで

カリンが強いのは間違いないけど

 

121:名無しのドラゴンつかい ID:Ie2f56nyI

尊敬するトレーナーでよく名前挙がるし面倒見も良いんやろなあ

 

124:名無しのドラゴンつかい ID:mrWeg9D0a

セキエイリーグだと最強の一角やろ

四天王の序列1位長いこと譲っとらんし

 

126:名無しのドラゴンつかい ID:0w+HPtyvg

>>124

シバには流石に勝率低いけど、ワタルにもたまーに勝っとるしホンマ強いで

 

127:名無しのドラゴンつかい ID:ecThkdyqn

やっぱガラルは四天王制度導入するべきだわ

他地方の四天王の話聞いてるとほんとそう思う

 

130:名無しのドラゴンつかい ID:npT5CYNDY

>>127

黙れ

今でも十分トップたちは他地方の四天王に通用するやろが

 

133:名無しのドラゴンつかい ID:WV+LtP3TC

>>130

急に喧嘩腰で草

あとキバナはともかく他が四天王は厳しいのでは…?

 

136:名無しのドラゴンつかい ID:6Jvj94bBS

ネズとかは行けるやろ

あと前のマクワも通用する勢いあった

 

138:名無しのドラゴンつかい ID:tzB8mhQ3z

ネズは周りもダイマックス使わなくなるって考えたらいけそう

カイより順位上かどうかがラインみたいなとこある

 

140:名無しのドラゴンつかい ID:12nHxglaI

確かにカイでもギリ通用しなさそうって言うのはわかる

やっぱ四天王の壁は高いねんな

 

143:名無しのドラゴンつかい ID:+6Sl+lw/r

ガラルだと毎年1人くらいはジム8個突破してるけど、他地方だともっと厳しいんやろ?

ユウリとかが挑戦しに行ったらどんくらいまで行けるんやろか

 

146:名無しのドラゴンつかい ID:6TX4HaLwE

>>143

マジでまだ底見せてない感じあるからな

普通に他地方でも通用するんちゃうか?

 

148:名無しのドラゴンつかい ID:wAHt1B3Zt

他地方だと

ジム→チャンピオンロード→四天王

まで乗り越えてようやくチャンプに挑めるからな

ジム→セミファイナル→ファイナル

のガラルとどっちが厳しいんやろ

 

151:名無しのドラゴンつかい ID:v/e3JI1gM

>>148

結局どっちもチャンピオンロードかセミファイナルで挑戦者同士で潰し合ってるからな

何だかんだ同じくらいだと思う

 

152:名無しのドラゴンつかい ID:hB3YEJWMv

普通にユウリ強いからな

全然チャンピオンロード突破出来るやろ

ダンデにも勝てるんちゃうか?

 

155:名無しのドラゴンつかい ID:ufnMVVGdt

>>152

流石にそれはないで

 

156:名無しのドラゴンつかい ID:llBxgJ7rw

>>152

無理難題過ぎて草

 

158:名無しのドラゴンつかい ID:vkjVEJIz2

>>152

どう考えてもそれだけはないんだよなあ

 

160:名無しのドラゴンつかい ID:hFkVhisnw

>>152

ダンデが負けたら全裸でシュートシティ一周するわ

 

161:名無しのドラゴンつかい ID:hB3YEJWM

そこまで言わんくってもええやろ。。。

 

 

 




日間ランキングに乗るとやはりモチベが上がりますね。
評価・感想・ここすき等々してくれる読者の皆様には感謝しかありません。


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VSユウリ その1


※今回の話には、ポケモンの対戦知識がないとわからない要素が多数含まれています。
 その場合、何となく読み飛ばして頂いても話はわかるはずです。


「……いやあ、流石にマリィは強かったな。完敗だ」

 

 先日行われたジム戦を振り返り、一人つぶやく。

 幼い頃から英才教育を受け続けてきたマリィのトレーナーの腕は、現時点でもメジャーで通用するほどのものだ。そりゃネズも兄馬鹿になるってものだろう。「自分より才能がある」なんて抜かしているが、あながち過言でもないほどの強さだ。

 

「特に俺の指示にミスはなかったはず……となると、やっぱ手持ちの制限が厳しいか」

 

 俺たちジムリーダーは旅に出たばかりのチャレンジャーたちのことを考慮し、ジム戦ではあまり鍛えきっていない手持ちを使う――要するに、手加減をしている。

 しかしマリィの手持ちはネズのトレーニングにもついていけるような精鋭たちだ。特にモルペコなんかは、今からリーグ戦に出たってやっていけるだろう。そんな彼らの相手を手加減したままするというのは、少々難しいというところだ。

 

 まあ、俺からすれば将来のジムリーダーということはわかっているし、その強さに何の疑問もない。昔からの付き合いもある分、むしろ成長を喜ぶ気持ちだ。

 

「失礼します、カイさん。今日の挑戦予約者一覧です」

「ん」

 

 コンコン、とノックの後にジムトレーナーが扉を開ける。

 どうやら今日も挑戦者は現れるようだ。6番目のジムということもあり、挑戦者の数自体は少ないのだがその分一人一人が強い。毎日のハードなバトルスケジュールには辟易するものである。よくヤローは1番目のジムをやれるな。

 

「えーと、今日の挑戦者は…………っと、遂に来たか」

 

 ジムトレーナーから受け取った名簿を眺めれば、そこには最近よく見る一つの名前。

 

「ユウリ……待ってたぜ」

 

 主人公(最強)が、やって来る。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 キルクスジム。

 ジムミッションの控え室の中、ようやくこの日が来たんだなあと実感する。

 

 現序列3位、キルクスジムリーダー・カイ。

 彼との邂逅は思ったより早くに叶ったが、バトルの方は今日でようやくである。

 

 彼に敗北したあの日から、ずっと今日という日を待ち続けた。

 ……彼はあの時のことを覚えていない様子であったが、まあ私が弱かったせいだ。仕方がないことである。むしろ何かそれも興奮する。

 

 彼は私に勝ってくれるだろうか。それとも他の人と一緒で、私の勝利は揺るがないんだろうか。

 そんなことを考えていると、「勝ちたい」と思っている自分と「負けたい」と思ってる自分が同居していることに気付く。

 

 まあそれは要するに、これからのバトルがどんな結果になっても良いということだ。なんて幸せなんだろう。

 

 とはいえ、私もポケモントレーナーの端くれ。勝負に全力を尽くすのは相手への礼儀でもあり、自分にとっても大切なことだと知っている。どちらかと言えば勝ちたいというのも本音だ。

 

 ポケモンたちのコンディションを確認した後、自分の服装をチェックする。

 ……どこかおかしいところはないだろうか。新品の服ではあるけれど、タグとかが付きっ放しなんてことは? 手鏡を持ってかれこれ30分くらい立ち尽くす。

 

 見た目の方に関しては1週間前から考えてきたファッションだ、最高にキマッている。かわいいの一言しかない。彼の好きそうな見た目に最大限寄らせた、男受けの極致であると自負している。……結局バトルの時には、ユニフォームに着替えなければいけないのだが。

 

 アラベスクでの彼との出会いは本当に不意打ちだった。常にファッションには気を使っていたからひどい服装では無かったけれど、彼と出会うことを知っていたならばもっと気合いの入れたものにしていただろう。

 

「てか、ホントにあれは無かった。心構えが必要なのに、急に来られても困るよ……」

 

 思わず自身の醜態を思い出して赤面する。

 本当になんなんだアレは。キョドり過ぎてたし、目も合わせられず常に顔は下を向いていた。声も全然出なかったし、マトモに喋れなかった割には余計なことまで口走ってた。死にたい。というか「えへぇっ!?」ってなんだよほんとに死ねよ。恥ずかしい通り越して泣きそうだわ。本当に今すぐ爆発して死にたい。

 

「いや、うん、今日はきちんとシミュレーションしてきたし、大丈夫なはず」

 

 昨日の晩はありとあらゆる状況を想定し、完璧な会話デッキを揃えてきた。たとえ3時間くらい二人きりになったとしても話し続けられる自信がある。

 

「復習しよう。まずは天気から行って、その次に好きなポケモンの話題……相手の意見は絶対に否定せず、とにかく褒めちぎって同調する……」

 

 普段は全く人とのコミュニケーションに苦労していない私だったが、アラベスクの醜態から一気に不安が湧き出してきた。そうして本屋で見つけた「初対面からでも親友に!~アホでもわかるコミュニケーション学~」の内容を全暗記するに至ったのである。

 

 全540pを読破した私に隙はない。遂にバトルだけでなく、コミュニケーションまで究めてしまったか。

 マクロコスモス出版の加護を受けた私は、自信をその身に満ち溢れさせながらとうとうジムミッションに向かう覚悟を決める。

 

「行くよ、みんな」

 

 控え室から一歩踏み出し、いざミッションの場へ。

 最早私に、敵は無い――!

 

 

『ようこそチャレンジャー。ジムリーダーのカイだ』

「ゎひゃいっ!?」

 

 変な声出た。死にたい。

 

『お、おい大丈夫か? 放送始めただけで転んだ奴なんて初めて見たぞ』

ぁ、はい大丈夫です気にしないでください神様が私が立って歩くなんておこがましいって言ってるんです……

『お、おう……お前がそう言うんならいいけどよ』

 

 くそう。私に話しかけてくれるっていうだけで耳が幸せになっているのに、醜態を晒しているという現状を考えれば素直に喜べない。

 

『それじゃあジムミッションの説明をする。先に挑戦してきた奴らの放送とかを見てたら知ってるかもしれんが、説明は義務だ。聞いてくれ』

ぁ、はい

 

 勿論知っている。彼の行った公式試合は全て録画し、保存済みだ。当然今年のジムチャレンジの映像も10周はした。

 

『今年のキルクスジムミッションは――スクール御用達、”詰めポケモンバトル”だ!』

「ゎ、わー」

 

 周りのジムトレーナーさんたちが皆拍手してるので、私もそれに乗っかって拍手しておく。

 「詰めポケモンバトル」、懐かしい単語だ。スクールに通っていた時代によく解いていた。

 

『これはポケモンたちの行動の一つ一つにかかる時間を”ターン”として捉え、理論的にポケモンたちのバトルを組み立てていく問題だ。

 よく学校受験なんかで問われるが、そう難しい問題は出さない。わからなかったらヒントも与えるし、気楽に挑んでくれ』

 

 ポケモンの特性やタイプ等々に関する知識、複雑な盤面を把握する理解力、勝利への道筋を見つける直感力。様々なトレーナーとしての資質が測れるということで、多くの学校はこの問題を受験者に課している。

 

 しかしこれも普段のバトルと一緒で、すぐに回答が浮かぶためスクール時代も苦戦したことはなかった。挑戦者ごとに問題を変えているようだが、特に悩むことはないだろう。

 

『それじゃあ百聞は一見に如かず、だな。まずは例題だ』

 

 彼の言葉と共に、目の前のモニターに文字が表示された。

 ジムトレーナーさんたちから紙とペンを受け取り、問題を眺める。

 


【クリア条件】

・シングルバトルに勝利(敵味方同時全滅は引き分けとする)

 

【相手ポケモン】

・コジョンド

 とくせい:せいしんりょく

 もちもの:なし

 わざ:インファイト

 

【手持ちポケモン】

・ココドラ

 とくせい:がんじょう

 もちもの:なし

 わざ:たいあたり・すなあらし・がむしゃら

 

・バンギラス

 とくせい:すなおこし

 もちもの:なし

 わざ:じしん

 

【状況】

・コジョンドとココドラが対面している

・全てのポケモンのHPは満タン、能力変化もなし

・ダイマックスは使用不可

 

【備考】

・バトル場は理想状態(急所ランクが1以下のとき、原則わざは急所に当たらない。また、ダメージは常に最大の値を取る。50%以上の確率で起こる事象は必ず起き、50%未満の確率でしか起こらない事象は必ず起こらない)とする

 

・ダメージ計算(最大HP比のダメージ)

 コジョンド(インファイト)→バンギラス:148.0% 確定1発

 コジョンド(インファイト)→ココドラ:77933.3% 確定1発

 バンギラス(じしん)→コジョンド:113.5% 確定1発

 ココドラ(たいあたり)→コジョンド:1.4% 確定71発

 

・すばやさは高い順にコジョンド、バンギラス、ココドラである


 

 

 ココドラ問題か。定番の一つである。特に悩むこともなく、回答を紙に書いて提出する。

 

「はい、ユウリ選手の回答は……『1ターン目:バンギラスに交代、2ターン目:がむしゃら』……正解です!」

 

 パンパカパーン、という気の抜けた音と共に正解を告げられる。

 この問題はそう難しくはない。バンギラスが縛られているため、交代して天候を「すなあらし」にするだけして倒れてもらい、残ったココドラはインファイトを「がんじょう」で耐えつつ「がむしゃら」で相手の体力を削れば、相手のコジョンドはすなあらしに襲われて勝手に倒れるという話だ。別解としてはがむしゃらと交代の順を逆にしても構わない。

 

『流石だな、例題とはいえここまで早く解いたのはお前が初めてだぞ』

ぁ、ありがとうございます

 

 自分にとっては何でもないことだが、彼に褒められるとめちゃくちゃ嬉しい。

 思わず笑みを溢しつつ、次の問題を待つ。

 

『それじゃあ本番だ。さあ解いてみろ!』

 

 


【クリア条件】

・ダブルバトルに勝利(相手がどのような行動をしたとしても勝利できる手筋を答えよ)

 

【相手ポケモン】

・カポエラー

 とくせい:ふくつのこころ

 もちもの:こだわりスカーフ

 わざ:ファストガード・ワイドガード

 

・レパルダス

 とくせい:かるわざ

 もちもの:きあいのタスキ

 わざ:あくのはどう・わるだくみ

 

 

【手持ちポケモン】

・ライチュウ(アローラのすがた)

 とくせい:サーフテール

 もちもの:なし

 わざ:ねこだまし・わるだくみ・きあいだま・ほうでん

 

・エモンガ

 とくせい:でんきエンジン

 もちもの:いのちのたま

 わざ:エレキフィールド・こうそくいどう・ほっぺすりすり・とんぼがえり

 

【状況】

・ダブルバトルで、お互いの手持ちが2匹ずつ対面している

・全てのポケモンはHP満タン

・相手ポケモンのレパルダスは既に一度わるだくみを使用しており、とくこうが2段階上昇している。その他のポケモンの能力変化はなし

・ライチュウのねこだましは使用可能

・ダイマックスは使用不可

 

【備考】

・バトル場は理想状態とする

 

・ダメージ計算(最大HP比のダメージ)

 レパルダス(とくこう↑↑あくのはどう)→エモンガ:142.7% 確定1発

 レパルダス(とくこう↑↑あくのはどう)→ライチュウ:220.8% 確定1発

 ライチュウ(ほうでん)→レパルダス:60.0% 確定2発

 ライチュウ(ほうでん)→カポエラー:36.5% 確定3発

 ライチュウ(きあいだま)→レパルダス:160.0% 確定1発

 ライチュウ(きあいだま)→カポエラー:48.4% 確定3発

 ライチュウ(ねこだまし)→レパルダス:17.9% 確定6発

 ライチュウ(ねこだまし)→カポエラー:12.7% 確定9発

 エモンガ(とんぼがえり)→レパルダス:105.7% 確定1発

 エモンガ(とんぼがえり)→カポエラー:18.3% 確定6発

 エモンガ(ほっぺすりすり)→レパルダス:22.9% 確定5発

 エモンガ(ほっぺすりすり)→カポエラー:16.7% 確定6発

 

・すばやさは高い順にエモンガ(すばやさ↑↑↑)、ライチュウ(サーフテール)、レパルダス(かるわざ)、エモンガ(すばやさ↑↑)、エモンガ(すばやさ↑)、カポエラー(スカーフ)、ライチュウ、レパルダス、エモンガである


 

ぁ、はい。解けました

『早いな!?』

 

 




 詰めポケモンバトルは自作問題なので、そんなにクオリティの高いモンじゃないです。
 手持ちのポケモンは正解を紛れさせるために不必要なわざも習得しています。
 問題に不備があれば、教えていただけると嬉しいです。
 結構問題制作に疲れたので、多分もう詰めバトルはやりません。
 解いてくださった方は、解答お待ちしています。


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VSユウリ その2

 前回の詰めバトルを解いてくださり、感想欄にて見事正解した方たちの発表です。
 ハイパーみそしるさん、ツクシさん、ウサギさん、モノッチさん、信州そばさん、おきなさん、ななしさん、河童の奴隷さん、友達さん、笛吹きの人さん、正解おめでとうございます!

 拙い問題でしたが時間を使っていただき、ありがとうございました。

 本編はユウリ視点から始まります。


「はい、ユウリ選手の解答は……『1ターン目:ライチュウがほうでん、エモンガがレパルダスにほっぺすりすり、2ターン目:ライチュウが残っていた場合レパルダスにきあいだま、またはエモンガが残っていた場合レパルダスにとんぼがえり、3ターン目以降:攻撃技を持たないカポエラーを何らかの形で打倒』………正解です!」

 

 またもやパンパカパンパンパーン、と気の抜けた音と共に正解を告げられる。

 今回の問題はダブルバトルにおける行動順についてきちんと把握できるかどうか、という所が焦点だろう。

 

 まず考えるべきはライチュウだ。防御しか出来ないスカーフカポエラーを除きすばやさが一番高いため、このポケモンの行動が盤面を左右することになる。

 タスキを削りつつ行動を封じられるという点から、ねこだましをつい打ちたくなってしまうがカポエラーのファストガード*1の存在によりそれは完全に無駄打ちになってしまう。

 また、きあいだまでレパルダスを削ることを優先してしまえば、かるわざ*2によってすばやさ関係が逆転され、上から2発目のあくのはどうを打たれておしまいだ。

 

 勿論わるだくみを積む余裕なんてない。となると残るは、「ほうでん」だ。

 ワイドガード*3の存在から無駄打ちのように思えるが、それは引っ掛けである。見るべきは相方のエモンガのとくせい「でんきエンジン」だ。

 

 「でんきエンジン」はかなり珍しい特性で、他に持っているポケモンにはエレキブルなどが該当する。

 その効果は「でんきタイプの技を受けたとき、ダメージを無効化してすばやさを一段階あげる」というもので、中々に有用な特性だ。

 

 そして重要なのが、「すばやさを一段階あげる」という効果である。

 ライチュウのほうでんによってエモンガのすばやさが引き上げられると、行動順が一気にひっくり返る。

 本来なら何かをする前にレパルダスのあくのはどうで落とされていたエモンガが、一度の行動を保証されるのだ。

 

 よって、敵にはワイドガードで防がれたとしてもほうでんは行動順をひっくり返すという面で大きな意味を持つ。

 しかしこの時、行動を許されたからといってとんぼがえりでレパルダスを仕留めにいってはいけない。タスキで耐えられた挙句、かるわざの発動によってまたもやすばやさ関係が逆転されてしまう。ほっぺすりすりでしっかりタスキを潰すという詰めを誤らなければ、勝利は確定するだろう。

 

『流石だな! 問題は違うが、今までのチャレンジャーと比べても断トツで早いぞ!』

ぇへへ……ぁ、ありがとうございます

 

 彼に褒められるとつい口がだらしなくにやけてしまう。

 いけないいけない、折角今日は色々とキメてきたのだ。緩んだ口元を引き締め直す。

 

『このジムチャレンジはポケモンバトルを理論的にどこまで突き詰められるか、という素質を試した。その点じゃあ、お前は十分だ。素晴らしい!』

ぇへ、えへ、えへへへへ

 

 めちゃくちゃ褒めてくれる。ヤバい。すごい。ニヤつきを止められない。なんだ、デレ期か? 耳が幸せすぎるぞ。

 

 気持ち悪い声を出しながらデレデレしていると、ジムトレーナーさんが私に二つのモンスターボールを渡してくる。中に入っているのはアローラの姿のライチュウに、エモンガ。先ほどの問題で登場したポケモンたちだ。

 私にその2匹を渡したジムトレーナーさんが無言のままスタスタと歩いて行った先には、バトルコートが床に描かれていた。

 

『――じゃあ、今からそれは机上の空論でしかないってことを教えてやるよ。第2のジムミッション、実践編だ!』

 

 ジムトレーナーさんが繰り出すのはカポエラーにレパルダス。レパルダスの方は既に「わるだくみ」を積み始めている。

 

 ……こうなるというのは先に挑戦してきた人たちの映像を見ていたから知っていた。学校関係者とか色んなところに喧嘩売ってるな、とか色々と言いたいことはあるが、とりあえず一つだけ言わせて欲しい。

 

「はがねタイプ、関係ないじゃん」

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……はは、やっば」

 

 モニターに映し出されるアリーナの様子を見て、思わず乾いた笑いがこぼれる。

 先ほどの問題と同じ状況を作り出した上での戦闘、その結果は無傷で佇むアローラライチュウとエモンガが示していた。

 

 自分で言ったことではあるが、ターンなんて概念が全く信用に足るものじゃないってことをまじまじと見せつけてくれる。ゲームと現実は違う。命中率100の技も躱され、別に「ひっかく」を覚えていなくても爪があれば引っ掻くことは出来る。

 先の問題のようなバトル理論は、本当に理論でしかない。リーグトレーナーたちに話を聞いても、参考にしたという意見はあれども本気で戦略の骨格にしているやつは見たことがない。……尤も、タマムシのエリカのようにその机上の空論であったはずのバトル理論でジムリーダーの位までのし上がった天才もいるのだが。

 

『もうジムミッションは終了ですか?』

 

 息を切らして茫然とするジムトレーナーに追い打つかのような言葉。

 ポプラの言が真実であれば敗者の気持ちがわからないでもあるまいし、ひどいやつだ。

 

 今のはがねジムのジムトレーナーたちは一部のメインプランに関わっている人員を除き、その大部分はマクロコスモス社員の中から選ばれた強者たちである。彼らは前世でいうスポーツの実績で就職した人たち、企業所属のスポーツチームの選手のようなものに該当する。

 当然ジムリーダーたちのようなトッププロには劣れど、バトルの腕にはかなりの自負を持っていたことだろう。それが見るからに小さな子供に叩き潰されれば、自信も失うというものである。

 

「おい、誰か今の相手したヤツを慰めとけ。ありゃ例外中の例外だ、ジムリーダーだって敵わねえよ」

 

 その場で一緒にモニターを眺めていた奴らのことも含め、声をかけておく。

 先ほども言ったが彼らは強い。ユウリと自身の距離がどれほどかはわからずとも、かけ離れていることは理解してしまっただろう。

 

 何も一番を見て自信を失うことはない。この場にいるのは既に十分高いところまで登り詰めてきた者たちである。彼らの力で何が不足しているものか。

 

「じゃあまあ、行きますかっと」

 

 ぐいと伸びを一つ。

 試合前に行うべきことは単純、リラックスである。勝ちたいという気持ちが強すぎても、弱すぎてもいけない。勿論弱気になるのは論外だ。勝てる試合も勝てなくなってしまう。

 

 ただ、今回に限っては「敗北」の二文字がいつまで経っても頭を離れなかった。

 

 

◇◇◇

 

 

「ようこそチャレンジャー。先ほどはお見事、素晴らしい試合だった」

ぁ、はい。ありがとうございます

 

 モニター越しに喋っていた時よりも更にオドオドとした様子のユウリ。

 一体どうしたことか。弱点があるというのなら、是非とも教えて欲しいところだが。

 

「それにしても、随分と観客が多いな。やっぱお前、かなり注目されてんぜ?」

ぁ、ぃぇ、全然そんな大した人間じゃないんです……

 

 快進撃の結果か、他のチャレンジャーたちと比べても数倍の観客たちが歓声を上げている。

 これほどの人数を集めるのは他にマリィくらいだろう。将来のチャンピオンは既に大人気のようだ。

 あのスポンサーのロゴだらけのマントを着た将来のユウリの姿を頭の中で思い描く。

 

「…………」

ぁ、沈黙はマズいって。なんか、なんか話さなきゃ……

 

 気づけば、ボーッと10秒くらい観客席を眺めていた。

 ダメだな、あまり集中できてないようだ。こういう時はこれ以上悪くならない内に勝負を始めるに限る。

 

ぁ、きょ、今日の天気って……

「じゃあまあ、これ以上観客を待たせるのもなんだし、そろそろ始めるか」

ぁ、はい

 

 何か言いかけた様子のユウリであったが、簡単に止めた辺りそう大した話でもないだろう。

 話を半ば無理矢理に断ち切ってしまったものの、すぐに忘れてコートの端へ向かった。

 

 審判を横目に見て、試合開始の合図を待つ。

 戦法は何度も考えた。並の相手ならばジムリーダーに対策なんてされたらボコボコにされて終わりだ。

 

 しかし、並じゃないのが目の前の主人公(最強)である。常に臨機応変、頭を柔らかくしておかなければいけない。

 呼吸を整え、試合開始と同時にボールを投げる。

 

「――いけ、ドータクン!」

「――出番だよ、エースバーン」

 

 やはりか。思っていた通りのポケモンに、安堵と苦々しさを感じる。

 しかし、相性の悪い相手だからこそ、対策をした価値があるというものだ。

 

「そのまま手加減ナシ、『かえんボール』」

「――『トリックルーム』」

 

 普段ジムチャレンジでは絶対に使わないような技に、観客席から驚きの声が上がる。

 「たいねつ」の力によってエースバーンの豪火球を耐え切ったドータクンは、その身を震わせて空間を歪ませた。

 突然の環境の変化に、小刻みにステップを踏んでいたエースバーンの動きが止まる。対してユウリの表情は、全くの変化を見せない。

 

「能力者でもあるまいし、その素早さを維持したまま動けるワケがねぇよなあ!

 ――吹っ飛ばせドータクン、『だいばくはつ』!!」

 

 体内にて収束するエネルギーは、輝かしい光となって体外に溢れ出る。

 それに付随して莫大な熱量がバトルコートをも焦がし始めた。

 

 「だいばくはつ」

 それはポケモンにおいて最大の威力を誇るわざであり、その力はわざを使用したポケモンすらも焼き焦がす。

 

 通常のわざが威力100を超え始めると命中率の低下やステータスの低下などのデメリットを伴うのに対し、その威力は脅威の250。当然それに伴うデメリットも最大級であり、その技を使用したポケモンは漏れなく瀕死に至る。

 

 瞬間的に高まった熱量は先ほどのかえんボールの比ではない。

 その集まったエネルギーは、解放されればエースバーン程度の耐久力ならば簡単に貫き、一撃でその身を持っていくことを予想された。

 

 光が余りの熱に真白く染まっていく。エネルギーの解放、すなわち爆発の直前、臨界点。

 歪んだ空間に戸惑うエースバーンに、最早それを止める手立てはない。チェックメイトだ。

 

 

 そんな風に考えていた俺の作戦は、いとも容易く覆された。

 

 

「Cooooo………」

 

 

 バトルコートに倒れ伏していたのは、ドータクンただ一匹のみ。

 「だいばくはつ」は、発動しなかった。

 

「『ふいうち』か……。タマゴわざだし、てっきり使えないと思ってたんだがな」

 

 爆発の直前、僅かに硬直したその隙を突いての鋭い一撃。後の先とでも言うべきそれは、トリックルーム下で逆転したすばやさ関係をまた更に覆した。

 

 瀕死となったドータクンをボールの中に戻しつつ、狂った作戦を頭の中で修正する。

 先の動き、使ったわざが「ふいうち」にしても見事なものだった。恐らく特性は「リベロ」で確定。ますますエースバーンが厄介になるのと同時に、ユウリの才能に改めて恐怖する。

 「ふいうち」というのは非常に強力なわざだが、同時にトレーナーの力量が問われるわざでもある。少なくとも、ガラルのジムリーダーで完璧に使いこなしていると言えるのはネズだけだろう。

 

「えへへ。『あの子』が得意なわざでもありますから、かなり練習してあるんです」

 

 先ほどとは違って滑らかに動くユウリの口。俺とのバトルに高揚でもしているのか。

 その熱が冷めない内に、俺も次のポケモンを繰り出す。

 

「ハガネール、行け。『ジャイロボール』」

「私たちに負けはないよ、エースバーン――『とびひざげり』」

 

 見える勝ち筋は、既に相当細いものとなっていた。

 

*1
防御技のひとつ。味方全体を先制技から守る

*2
特性のひとつ。もちものを消費するとすばやさが二倍になる

*3
防御技のひとつ。味方全体を範囲攻撃技から守る




次回は実況スレです。


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【ジムチャレ優勝候補】ユウリVSカイ実況スレ【勝確】

51:名無しのミニスカート ID:PfxfRYDlE

ユウリ来た!

 

55:名無しのミニスカート ID:Ic+5lACcD

優勝候補キタ―――(゚∀゚)――――!!

 

59:名無しのミニスカート ID:hDWrpXBgn

相変わらずかわいい

 

61:名無しのミニスカート ID:dmQXfRe0e

足ぺろぺろしたい

 

63:名無しのミニスカート ID:CKGmt0AIi

>>61

 

68:名無しのミニスカート ID:3NoLuiWHI

犯罪者予備軍湧きすぎ

 

 

 

 

69:名無しのミニスカート ID:xBkf3RS42

いきなり転んだんだが大丈夫か

 

72:名無しのミニスカート ID:LoliedQA/b

今何色だった!?

 

74:名無しのミニスカート ID:XQFKWG64p

痛そう

 

77:名無しのミニスカート ID:LoliedQA/b

ねえ何色!?

 

79:名無しのミニスカート ID:PCJBdZ4pr

俺もちょっとびっくりした

 

80:名無しのミニスカート ID:LoliedQA/b

何色だったの!!!!!!!!!!

 

82:名無しのミニスカート ID:y1euUHOIB

>>80

パンツ気にしすぎで草

 

85:名無しのミニスカート ID:o+jeJJshS

ロリコン多くね?

 

89:名無しのミニスカート ID:O+a2Z3K40

もう既に変なファンを抱えているのか…

 

 

 

 

90:名無しのミニスカート ID:rVxYT0FIf

オドオドし過ぎで草

 

91:名無しのミニスカート ID:aBXLmhkyc

こいつこんな陰キャだったか?

 

94:名無しのミニスカート ID:OUULxY1aM

カイのファンだからって態度違い過ぎやろ

 

95:名無しのミニスカート ID:c1tJ2IyiR

カイの対応はいつも通りなのがまた面白い

 

97:名無しのミニスカート ID:dcqh7sUHJ

これが5人のジムリーダーを笑顔で叩き潰してきたチャレンジャーですか()

 

100:名無しのミニスカート ID:hagehage1

腹立つなあ

もっとハキハキ喋れや

 

104:名無しのミニスカート ID:mjuFPW0gW

>>100

鏡見ろハゲ

 

107:名無しのミニスカート ID:hagehage1

>>104

は????????????

ワイはハゲてないし陰キャでもないしハゲてもないしましてやハゲてもないが

 

110:名無しのミニスカート ID:MYXC66bQ4

>>110

効いてて草

 

 

 

 

 

 

126:名無しのミニスカート ID:9ke95y3TW

詰めバトルとかもう二度と解きたくないんやが

 

130:名無しのミニスカート ID:PsW0T/BrR

受験で嫌というほどやったンゴねえ。。。

 

133:名無しのミニスカート ID:Sm9sCPDae

控え有りのトリプルバトル、ダイマックス使用可、場は理想状態でない

 

135:名無しのミニスカート ID:s9Ut78siE

>>133

難易度地獄で草

 

137:名無しのミニスカート ID:GkF/eIYXR

>>133

国公立二次でもやらんわそんなん

 

139:名無しのミニスカート ID:oQe3O6Yqh

ターンとか本当はないからなあ

結局バトルの役に立たんって知ってからは勉強しんくなったわ

 

142:名無しのミニスカート ID:DPHH85l4K

>>139

あくまで基礎として学んでるんだよ

実際実力者の多くは詰めバトルも解くの早い

 

145:名無しのミニスカート ID:trIRVAWOZ

今までの挑戦者もスイスイ解いてったからな

詰めバトル不要論が間違ってることが証明されてしまったわ

 

149:名無しのミニスカート ID:rPx1qO3Ga

>>145

出題しとるカイ本人はこんなもんいらんって言っとるけどな

 

150:名無しのミニスカート ID:+nwAnxERr

>>149

じゃあなんで出してんだよ

 

 

 

 

 

 

151:名無しのミニスカート ID:q1s2XYDoU

ココドラ見ただけでがむしゃら浮かぶようになったのも受験のせいやわ

 

153:名無しのミニスカート ID:Lctb6leg1

実際には成立するわけない戦術なのに何でこんな有名なんだろうな

 

157:名無しのミニスカート ID:BPwlgl2Yh

>>153

成立するわけないからやろ

一発耐えたところでもう一回殴ればいいだけなのに最強の戦術の一つとして扱われてるし

詰めバトル不要論者がよく持ち出す例や

 

159:名無しのミニスカート ID:GxpUuBpbD

解くのはやっ

 

162:名無しのミニスカート ID:+sInGsbUf

>>159

これは定番問題やろ

 

165:名無しのミニスカート ID:9M9eg5wyn

この辺の問題は見るだけで答えられるようになってしまったなあ

 

167:名無しのミニスカート ID:MkMmkpKuR

ユウリはスクールの成績もめっちゃ良かったらしいな

 

170:名無しのミニスカート ID:EeMHHWDo7

>>167

もう何でもありやん

 

 

 

 

177:名無しのミニスカート ID:zElRmaduS

2問目か

 

181:名無しのミニスカート ID:Vj2HNuHaP

!?

 

183:名無しのミニスカート ID:X2chldB3U

解けた???????

 

186:名無しのミニスカート ID:/s20ifqSX

なんやコイツ

 

188:名無しのミニスカート ID:5zKS4BuhD

解けrわけないやrとこんなsぐに

 

194:名無しのミニスカート ID:HgDkAQKgK

>>188

動揺しsぎtt草

 

195:名無しのミニスカート ID:nkw1t3njq

ライチュウが10まんボルトでいいやん

 

198:名無しのミニスカート ID:q4XtEcIr6

>>195

問題文嫁

 

199:名無しのミニスカート ID:TbAvGMLn4

>>195

これがスレ民クオリティ

 

202:名無しのミニスカート ID:qozHkYimi

ヒントも出ない内に解かれても置いてけぼりだわ

アローラライチュウのタイプも知らんワイには無理

 

204:名無しのミニスカート ID:Szv22CS1O

そう考えると知識と思考力両方試せるんか

詰めバトル不要論者だったけど考え変ったわ

 

206:名無しのミニスカート ID:r4MqeMtYn

マリィも1個ヒントもらったけど知識系だったな

解くだけならすぐに解いてた

 

209:名無しのミニスカート ID:UD0DHFgMv

>>206

誰が「すなあつめ」とかいう技を知っとんねん

 

211:名無しのミニスカート ID:3dSF2/OwP

まずシロデスナの存在も知らんかったワイには遠い話や

 

214:名無しのミニスカート ID:hwnORN3jM

>>211

人生やり直せ

 

215:名無しのミニスカート ID:gGeTP9uHe

>>214

辛辣で草

 

 

 

 

 

 

218:名無しのミニスカート ID:gB88vIa+x

しかも正解しとるんか

 

221:名無しのミニスカート ID:HCaOAA8p4

気持ち悪い声出してて草

 

222:名無しのミニスカート ID:DP95AA1YU

メスの顔しとるやん

 

226:名無しのミニスカート ID:2oLZZgncI

これは推しに褒められた限界オタクですわあ

 

229:名無しのミニスカート ID:QW30M7HDe

顎撫でてる時のウチのクスネとおんなじ顔しとるわ

 

232:名無しのミニスカート ID:kOznH1q4t

>>229

ワイもユウリちゃんに股間撫でられたらおんなじ顔するで!

 

235:名無しのミニスカート ID:VLfwoBV2e

>>232

通報した

 

 

 

 

239:名無しのミニスカート ID:IGM8r75BT

こいつこんなこと言ってええんか?

 

242:名無しのミニスカート ID:xNqWQa/H3

ジムリーダーに意味ないって言われちゃったら学校側の立つ瀬ないやん。。。。

 

246:名無しのミニスカート ID:fqMsDPsO+

>>242

カイは色んなところで詰めバトルについて発言しとるけど結構肯定派やで

ただそのまま実戦でも成り立つとか過信しすぎるのはよくないって話や

 

250:名無しのミニスカート ID:39D3gFvOE

>>246

カントーのエリカとかめっちゃすごいすごい言って紹介しとるしな

あれはマジの天才やけど

 

251:名無しのミニスカート ID:J9+b7W6XO

最年少で就任したタマムシ大学名誉教授ってマ?

 

252:名無しのミニスカート ID:oy2plmmnP

エリカはガチのマジでバトル理論の天才

アイツの講義聞くためだけに世界からタマムシに来てるやつとかいっぱいいる

 

256:名無しのミニスカート ID:fS1MDNJE0

普通にくさ使い最強やろ

 

257:名無しのミニスカート ID:ADiPtulB6

>>256

くさはあんま最強議論が盛り上がらないタイプの1つやな

 

 

 

 

 

261:名無しのミニスカート ID:2Vuy0SM9Z

冷静なツッコミで草

 

262:名無しのミニスカート ID:2qJjgb3xQ

キバナ聞いてるか?

 

263:名無しのミニスカート ID:hwNzvdOfG

ほんまにはがねタイプ関係なくて草

 

264:名無しのミニスカート ID:WAjtNMVfl

カイはほんとタイプにこだわり見せてないよな

キバナは竜好きみたいなとこあるけど

 

265:名無しのミニスカート ID:a/BHWDrWa

>>264

好きなポケモン聞くたびに変わるのすき

 

267:名無しのミニスカート ID:Kb7svwIdf

「一番好きなポケモンは?」

「レントラーです」

「1番好きなわざは?」

「ボルテッカーですね。ピチューが一番好きなポケモンなので」

「え?」

「え?」

 

271:名無しのミニスカート ID:A4f2QVWip

>>267

お互いに困惑してるのすこ

 

272:名無しのミニスカート ID:IzaxBQanC

>>267

インタビュアーがマジで戸惑ってるのほんと草

 

276:名無しのミニスカート ID:ovnAmv5Tz

>>267

でんきタイプのジムリーダーかな?

 

279:名無しのミニスカート ID:35g/UOXkO

>>267

伝説のインタビュー

 

 

 

 

 

399:名無しのミニスカート ID:BJ+X7Nq+8

ボコボコで草

 

404:名無しのミニスカート ID:AflZ7SxIX

ジムトレーナー絶望した表情してるやん

 

408:名無しのミニスカート ID:8fKgNlKid

何で渡されたばっかのポケモンをここまで上手く扱えるんや…?

 

411:名無しのミニスカート ID:IUO8nTJGQ

ユウリもタイプにこだわりとかないよな

マリィはあく以外のポケモンは使い辛そうにしてた

 

415:名無しのミニスカート ID:qvhXzkx1T

サインとか仕込んでなかったり得意じゃないポケモンでも戦えるのか試しとるんやろ

努力じゃなくて才能を見ようとしてる

カイは結構考えとるわ

 

417:名無しのミニスカート ID:TCLh8LE7P

結局解答と全く違う動きしとったやん

 

420:名無しのミニスカート ID:wRqWMoy+X

>>417

似てるとこはあったやろでんきエンジンの発動とか

カイが言いたいのは参考にしつつ、頼りすぎるなってことや

 

424:名無しのミニスカート ID:j5DZW1uPa

>>420

はえー

なるほどそういうことか

 

428:名無しのミニスカート ID:aelDMgOVG

>>424

何もわかってなさそうで草

 

 

 

 

722:名無しのミニスカート ID:d15GJ90GP

バトル始まるで!

 

724:名無しのミニスカート ID:IsB1QNGez

コミュ障炸裂してて草

 

726:名無しのミニスカート ID:7SDhZ98Fx

自分を見てるみたいで恥ずかしくなってくるわ

 

728:名無しのミニスカート ID:6pq4EQZLu

>>726

お前みたいなハゲと違ってユウリは美少女やで

 

732:名無しのミニスカート ID:w/CXVYBmH

観客多杉

 

734:名無しのミニスカート ID:Dz9ZDVyFj

>>732

観客席から書き込み中や

 

738:名無しのミニスカート ID:w1ikK43ic

>>734

ちゃんと試合見ろ

 

739:名無しのミニスカート ID:SK10zg+/4

何黙ってんのこいつ

 

741:名無しのミニスカート ID:PcHS1x65j

めっちゃ眠そうな顔しとるな

 

742:名無しのミニスカート ID:7OSP9dHq4

一瞬話しかけたの封殺されてて草

 

744:名無しのミニスカート ID:vA7g2XM6Y

こういうことがあるから陰キャは喋るのをやめてくんや

 

747:名無しのミニスカート ID:q4rtqEm3j

>>744

今話しかけたら迷惑かな、みたいな杞憂もあるんやで

 

751:名無しのミニスカート ID:TPkLX1Kn0

お前らと違ってカイ以外とは普通に喋ってるけどな

 

 

 

 

 

753:名無しのミニスカート ID:rG/xSvVZG

トリル!?

 

754:名無しのミニスカート ID:m9SBRCfSZ

まじか

 

759:名無しのミニスカート ID:Au6yZVlwb

カイって結構トリル好きよな

はがねと相性良いからなんだろうけど

 

763:名無しのミニスカート ID:JaSZVLtyx

トリルが発動してる間は存分に暴れて

切れたらルカリオとかジュラルドンとか速いポケモン、みたいのが多いイメージ

 

765:名無しのミニスカート ID:/7KN/i/rz

>>763

基本戦術通りよな

カイって結構お手本みたいな動きしてることが多い

 

769:名無しのミニスカート ID:kwY6cS0bs

はがねはタイプ自体が強いタイプだから

あんまし奇抜な動きをする必要はない、みたいなこと言ってたで

 

777:名無しのミニスカート ID:RAXsDrpYf

爆発!?

 

781:名無しのミニスカート ID:HVNQiXxoK

トリルの度に爆発させられるドータクンくんかわいそう

 

782:名無しのミニスカート ID:I0cXG2wyZ

トリル張って1:1交換は十分過ぎる仕事だから…

 

783:名無しのミニスカート ID:5cBlaxhLN

しっかり処理されてるの草

 

786:名無しのミニスカート ID:wR1GTRABa

今何が起きたんや

 

788:名無しのミニスカート ID:xhXQx9MsU

ふいうちってマジか

完璧過ぎるタイミングだったやんけ

 

792:名無しのミニスカート ID:q/Ktuihx0

あく使いかな?

 

793:名無しのミニスカート ID:84E8dqI/T

上手過ぎやろ

 

 

 

 

122:名無しのミニスカート ID:+eaGsWaWI

【悲報】誰もユウリを止められない

 

123:名無しのミニスカート ID:PDJg4nLGK

何やったんあのエースバーン

ダイマックスしたとき姿変わってたやん

 

126:名無しのミニスカート ID:UjruviDx8

>>123

今調べた、キョダイマックスや

特性貫通するキョダイカキュウみたいなわざを使える

 

130:名無しのミニスカート ID:mE8K3UJVq

何でがんじょうなのに「まもる」したんかと思ったらそういうことか

カイって結構知識量豊富よな

 

132:名無しのミニスカート ID:b8p7vyHHW

>>130

何かのクイズ番組で技とか特性とかバトル関連のことは無双してたわ

詰めバトルも得意らしいし、割とインテリなんやな

 

136:名無しのミニスカート ID:V1nkjKH6b

ジムリやとキバナとかもかなりインテリよな

1位はやっぱ伊達じゃないわ

 

140:名無しのミニスカート ID:bWv34oiBU

>>136

高身長イケメンでバトルも強くて頭も良い

最強かな?

 

144:名無しのミニスカート ID:ERW094bOR

>>140

でも炎上するから…

 

147:名無しのミニスカート ID:cqfPjA7rq

キバナはもう自分から燃やしてるやろ

 

151:名無しのミニスカート ID:/gIAKcm1R

>>147

この前「おはよう」のツイートで炎上したのほんま草やった

 

154:名無しのミニスカート ID:D+847FV35

>>151

もう何でもありやん…

 

157:名無しのミニスカート ID:t2lkRtrXz

結局優勝はユウリなんか?

友達と1万賭けてるから勝ってもらわな困るで

 

161:名無しのミニスカート ID:t6HRRTqlk

なんだかんだマリィも余裕で通過してるしまだわからんやろ

ホップもおるし、今年は強すぎや

 

163:名無しのミニスカート ID:kK9HijXou

来年からのジムリカオスすぎじゃないか?

マリィの就任はほぼ確定、どく・エスパーも交代

サイトウとかメジャーに上がったばっかやけどすぐ落ちそうやわ

 

166:名無しのミニスカート ID:G6QrxU0rX

>>163

そもそもマクワがおるやろ

今年こそはやってくれると信じとる

 

170:名無しのミニスカート ID:MQyg589JZ

次の入れ替わりは激しそうやなあ

ジムチャレが終わったらすぐシーズン開始やし、この時期はほんま色々楽しみ

 

171:名無しのミニスカート ID:GprFlSpWN

オニオンも期待株やしな

能力者っていうだけでジムチャレ時代から推してた

 

173:名無しのミニスカート ID:+GlsmzIOb

メロンとか元メジャー組もおるし来季はほんま荒れそう

 

175:名無しのミニスカート ID:sqbpScLTF

自分の推しはメジャーに残留して欲しいわ

 

176:名無しのミニスカート ID:iYnyzADV1

>>175

マイナー落ちして荒れてたカブさんが好きってやつもおるんやで

 

178:名無しのミニスカート ID:/nvj5PBu0

>>176

ちょっとわかる

 

182:名無しのミニスカート ID:oraC2PV04

あの刺々しい雰囲気は確かにちょっと格好良かったわ

 

185:名無しのミニスカート ID:CXseXKAYm

>>182

今からしたら想像できんなあ

 

186:名無しのミニスカート ID:3PggFEBCA

基本ニコニコしとるからな

ユウリに負けたときもむっちゃ爽やかだった

 

187:名無しのミニスカート ID:xjpvfnO8x

あそこまでボコボコにされてよく心折れんよな

 

191:名無しのミニスカート ID:MgTRzQDBT

>>187

むしろ後継者候補やろ

エースバーンが切り札っぽいしほのお使いの才能はあるで

 

195:名無しのミニスカート ID:8197G1G6M

>>191

あれは一つのタイプに収まる器じゃないわ

ジムリになるとしてもグリーンみたいな感じ

 

199:名無しのミニスカート ID:lCpcBLtgi

カイもタイプにこだわりないし実ははがね以外使えたりするんかな

 

202:名無しのミニスカート ID:egjA9Z2y/

>>199

意外と全然関係ないとこに適正あったりしてな

 

 




ユウリ(♀) じょうたい:とっても しあわせそう!

てもち

・ウーラオス(いちげきのかた)
・エースバーン
・ストリンダー
・ウオノラゴン

ことしの ジムチャレンジ ゆうしょうこうほ。
たびのとちゅうで けっこう よりみち してるみたい。
ファッションの りゅうこうには びんかん。
さいきん だれかのサインを ながめて にやにや している。


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withリラ

「お久しぶりです、カイ」

「おう。よく来たな、リラ」

 

 ジムチャレンジという忙しい時期ではあるが、俺が担当するのは6番目のキルクスジム。挑戦者も数えられるほどとなり、合間を縫って人と会うくらいのことは出来た。そのわずかな時間で一番会っておくべき人物を考えた結果、リラを呼び出すこととなったのである。

 

「ほらよ。紅茶で良いか?」

「はい、ありがとうございます」

 

 相変わらずピシッとスーツを着こなしているリラを正面に見据え、十日ほど前にオリーヴから聞いた言葉を思い出す。

 

『いいですか。現在国際警察は雪原での調査に大きく介入してきています。我々が暗に帰れ、と伝えても尚、です。これが単にウルトラビーストに拘っているだけならば良いのですが、メインプランに勘づかれているならば話は別です。ことによっては、彼らと剣を交えることも覚悟しなければいけません』

 

 あれはリラと繋がりのある俺に探れ、と言っているのだろう。今現在敵対されていない以上、変に刺激したくはなかったのだが仕方がない。俺はしぶしぶ連絡を取り、こうして彼女と再会することとなった。

 

 大体、彼らは国際警察を舐めているところがある。

 そりゃあ、ガラルにおいてはいくら国際警察と言えどもマクロコスモスの権力には黙るしかない。幾つかの大したこともない不正の証拠を掴まれたところで揉み消すのは簡単だろう。

 

 しかし、メインプランほどの規模ともなれば話は別である。彼らは無辜の人々にまで危害が及ぶ可能性が存在する場合、途端にその力を増大させる。その時の彼らには、天下のマクロコスモスとて敵うものか。

 

 そんな風にオリーヴへの愚痴を脳内で垂れ流していると、砂糖を溶かすためにスプーンでかき混ぜられている紅茶のカップを凝視するリラに気づく。

 

「なんだ、俺の紅茶がどうかしたか?」

「あ、いえ、その……前も思ったのですが。ストレート、飲めないんですか?」

 

 唐突に告げられたその言葉に、思わずティースプーンを動かす手が止まる。

 きょとんと首を傾げるリラの目には、何ら侮蔑の意は込められていなかった。そしてそれだけに、先の質問は俺の神経を逆撫でする。

 

 これはどうしたものだろう。無論、飲めないと素直に答えるのは俺のプライドが許さない。

 

「……………いや。飲める、が?」

 

 何とか絞り出したその返答は、間を空けた割には拙いものだった。

 

「嘘ですよね。カイには嘘吐くときに頭を掻く癖がありますから。国際警察の洞察力、舐めないでください」

 

 むっとした顔で詰め寄るリラ。しょうもないこととはいえ俺に嘘を吐かれたのが気に入らなかったのか、何が何でも俺にうんと言わせたいようだ。

 見た目は完璧に着こなされたスーツもあって大人に見えるが、中身は案外子供らしいところがある。それも記憶喪失の影響なのかもしれないが、少なくともその特徴は今の俺にとってマイナスの働きを及ぼしていた。

 

「いや、飲める。お前、俺の言うことが信じられないのか?」

「え? ……あ、いや、そういう、ことじゃ………」

 

 やや語気を強めて放った俺の言葉で、途端にリラはしどろもどろになる。

 別に飲めないからってどうということはないと頭では理解しているが、一旦飲めると言った以上今さらその言葉を撤回する気はない。こちらこそ、リラに俺が飲めるということを認めてもらおう。

 

「いいか? 俺はどちらかと言えば砂糖が入っている方が好きなだけで、決してストレートティーが飲めないというわけじゃない。そこのところ勘違いするなよ?」

「え、えぇ……」

 

 少しばかり呆れた様子で追及を諦めたリラに、俺は勝利を確信して紅茶をかき混ぜる作業を再開する。

 何もストレートティーが嫌いなわけじゃない。ただ少しばかり口に合わなかったというだけの話だ。

 

「……と、ところで、話とは一体なんでしょう。毎晩の電話では出来ない話でも?」

「んー、まあそれもあるし、お前の顔も見たかったからな」

「そ、そうですか!」

 

 俺の言葉ににへら、と表情を崩すリラ。

 先ほどは話が逸れたが、どうにか機嫌をとって国際警察の事情について聞きださなければいけない。いつも以上に言葉には気を付ける。

 

「最近、そっちの方はどうだ? 忙しかったりするのかよ」

「ええ、そうですね。近頃だとつい5日前にイッシュに行ってきましたが……特に多いのはやはり、ガラルでの任務でしょうか。カイも知っているとは思いますが、雪原での異常事態に多くの人員が割かれています」

 

 いきなり求めていた情報に触れられたことに、内心で動揺する。

 最初は適当な話題から回り道をしていこうと思ったが、そんな必要はもうなくなった。相手から振ってきた話題だ。存分に乗っかることとしよう。

 

「ああ、随分と調査に力を入れてるらしいな。カンムリ雪原の人口は少ないし、ウチ(マクロコスモス)だけでも被害は抑えられると思うが?」

「ええ。我々のスタンスとして、現地の人々で解決が可能ならば手出しは無用、というものがありますが……彼の地では、中々そうも言っていられない事情が発生したのです」

 

 特に隠すこともなくすらすらと話を続けるリラ。機密事項にはあたらないと判断したのか、それとも俺が相手だからとそもそも隠す気がないのか。

 いずれにせよ、情報を探ろうと思っている相手の口が軽いのはありがたい。

 喉が乾かない程度に紅茶を嗜みつつ、話の続きを促す。

 

「その事情ってのは? 大抵のことならウチのボスは片手間で何とかできるぜ」

「あなた方が把握しているかは存じませんが……ウルトラホール、またそれに伴って複数種のウルトラビーストの出現が確認されています」

 

 ふむ、と頷きを返す。

 国際警察からすればウルトラビーストに関する情報は秘匿すべきものであるはずだが、俺の事情を加味すれば隠し通せることではないという判断か。

 尤も、エーテル財団と繋がりのあったマクロコスモスには俺が提供するまでもなくウルトラビーストの情報が存在していたのだが。

 

「俺がいるんだぜ、そりゃ把握してるさ。それを考慮してもなお、アンタらがあそこまで出張ってくる理由には弱いと思ってるんだ」

「我々としてはウルトラビーストの危険性はどれだけ高く見積もっても足りないというのが共通認識であって欲しいところですが……確かに、ウルトラビーストの事情を除いても我々には調査を続行する要因があります」

 

 言うべきか言わまいか迷ったのか、少しの間を空けて告げられた言葉にピクリと眉が動く。

 どうにも嫌な予感がする。最悪ではないが、良い状況でも決してない。そんな予感だ。

 

「その、何と言いますか。所属しているどころか、幹部という地位にいるアナタに言うべきことではないのでしょうが……唯一の『仲間』として伝えます。

 我々国際警察は、マクロコスモスという組織を……その、有り体に言えば、『きな臭い』……と、判断しています」

 

 数度の逡巡ののち、ようやく伝えられたその事実に軽く眩暈を覚える。

 まずい、普通に疑われている。

 リラは有り体に言うと言ったものの、彼女の性格から考えれば実際は限りなくクロに近いグレーと見てる、といったところが実情だろう。

 

 問題はどこまで核心を突かれているかだ。

 雪原の異常事態の犯人として見られているだけならば、そう大したことではない。そもそもその推測は間違っているし、いざとなればコスモウムを差し出して終わる話だ。スペアプランの実行が困難になるだけで、メインプランには大きな影響は出ない。

 

「そのきな臭いってのは、具体的にどういうことだ?」

「え、あ……ええ、と、近々何か事を起こしそうだ、という……」

 

 尻すぼみになっていくリラの声。

 恐らくは、流石にこれ以上言ってしまうのはダメだと判断しているのだろう。その境界線を「仲間」という認識で無理やり乗り越えているのだ。いつ話を切り上げられてもおかしくないな、と内心舌打ちしながらより一層口に出す言葉を吟味する。

 

 しかし、今伝えられた事実はかなり核心に迫られている。

 どう考えても彼らが言っているきな臭い、というのはメインプランのことだろう。思ったより大分追い詰められているその状況に、背中を冷や汗が伝う。

 

「その、私個人としては現地の事情もありますし、ウルトラビースト以外のことには余り関与すべきではない、というのが本音なのですが……一部の捜査官がどうにも確信を持って調査を進めているようでして。何か物証があるわけでもありませんし、国際警察全体としても余り深く踏み込んだ調査には乗り気でない、というのが総意です」

 

 軽く絶望しかけていたところでリラに告げられた言葉に、一筋の光明を見つける。

 中々優秀な捜査官がいるようだが、確たる証拠がなければ大きく組織は動かせない。これならば決行の日までボロを出さずにいたらメインプランは始動する。

 まだ終わってはいない。落ち着け、と自分自身に言い聞かせながら紅茶に口をつける。

 

「特に、私人としてはアナタという存在もありますし……。とにかく、今のところ組織を挙げて本格的に調査に乗り出す予定はありません」

「そ、そうか」

 

 内心でガッツポーズしながらも、なるべく心を落ち着けて会話を続ける。

 状況は決して良くないが、最悪でもない。これからマクロコスモスがどう身を振るべきか頭を振り絞って考える。

 

「ところで、その、一つ気になったのですが。仮に何かマクロコスモスが事を起こすとして……その際、アナタ自身は無事なのでしょうか?」

「ん? ……ああ、そりゃそうだろ」

 

 質問の意図がよく読めず、がしがしと頭を掻きながらぞんざいに答える。

 しかし、この言い振りからしてマクロコスモスが何かをやらかすのはほぼ確信しているが、あくまで現地の事情だと放置するつもり、といったところか。

 それはこちらにとっては随分都合が良い。目を瞑ってくれると言うのならば、好きにやらせてもらおう。

 

「……まあ、とにかく我々の最優先事項は雪原に発生したウルトラビーストの保護・駆除、ひいては現在起きている異常事態の原因究明・解決です。

 そこに関しては、我々も退くわけにはいきません。調査協力を求めます」

「あー、うん。ローズ委員長には伝えとくわ」

 

 最終的な妥協ラインとしてはその辺だろうか。

 将来起きるかもしれない事件について見逃す代わりに、自分たちの捜査に協力しろと。

 

 どちらの立場からしてみても最優先目標は達成されるし、悪くない落としどころだ。きっとローズ委員長も首を縦に振るだろう。

 

「あ、ところでさ。ちょっとアローラの伝説について教えて欲しいことがあるんだけど……」

「ええ、構いませんよ。私が知る範囲のことであれば、いくらでも」

 

 ひとまずはリラを呼び出した目的は達成された。

 大きな心労が解消されたことを実感し、後はとりとめもない雑談に興じつつこれからどう動くべきかを頭の中で考えるのであった。



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withダンデ

大変遅れてすいませんでした!
ゆるして


「…………ですから! もうすぐファイナルトーナメントもありますし、少しくらい予定を延期したって構わないでしょう!?」

「いやあ、ダメだね。もっとも、キミがやってくれないというのならば『彼』に頼ることになってしまうかもしれないが……」

「――っ!」

 

 コツコツ、と音を立てながらマクロコスモス本社の廊下を歩いていれば、最近はもう聞き飽きた言い争いの様子が聞こえる。

 片方はこの会社のトップオブトップ、ローズ委員長。もう片方は就任以来未だ無敗のガラルチャンプ、ダンデだ。

 

 話の内容は恐らくメインプランに関することだろう。

 ファイナルトーナメントの開催も近く、協力を渋るダンデをローズ委員長が説得している形だ。

 部屋にも入らず廊下で立ったまま討論を続けている辺り、お互いに相当熱を上げているらしい。巻き込まれないように道を迂回して通るルートを考える。

 

「ローズ様、そろそろ会議のご予定が……」

「ああ、もうそんな時間ですか。それではこの件についてはまた今度話し合いましょう、ダンデくん」

「……ええ。すみません、声を荒げてしまって。少し熱くなっていました」

「いえ、こちらこそ。それではまた」

 

 頭の中で無駄に広い本社の地図を広げていると、いつの間にか二人の話は終わったようでローズとオリーヴ、それから少し遅れてダンデがやって来た。

 

「おや、カイくんこんにちは。まだジムチャレンジの期間も残っているでしょう。これからも頑張ってくださいね」

 

 何事も無かったかのように一声かけて去っていくローズ委員長。

 それに対し、後からやって来たチャンピオン・ダンデは難しい顔をして俺の前で立ち尽くした。

 

「…………」

「どうしたよ、ダンデ」

「いや、その……何でもない」

 

 彼らしくなく、ひどく悩んだ表情で黙り込んでいる。

 普段なら話の一つも聞いてやるところだが、あいにく今は忙しい。どけよと暗に伝えれば、ようやく彼は歩き出した。

 

「…………やっぱり、すまないカイ! 少し時間はあるだろうか!」

「ああ?」

 

 やっと行ったかと思ってこちらも歩き出すと、後ろからダンデの声が聞こえる。どうも俺に用事があるらしい。

 

「いや、忙しいけど」

「少しだけでいい。聞きたいことがあるんだ」

 

 時計を見れば、短針は数字の11を指している。少しばかり頭の中で今日のスケジュールを整理したあと、全く譲る気のなさそうなダンデの顔を見て溜息を吐く。

 

「……飯の間だけな」

「そうか! ありがとう!」

 

 今からやろうと思っていたことは特段緊急性のあることじゃない。結局折れた俺は、少し早めの昼食をとることにした。

 

 

◆◆◆

 

 ダンデが社員ではないためマクロコスモスの社員食堂はスルーし、外に出て少し歩くと見つかったレストランに入る。

 お互いこの辺りの街並みには詳しくなく、当然常連の店などないのだが、俺たち二人が入店した途端に辺りは騒めき出した。

 

 まあ、それも当然だろう。現在ガラルで一番強い男と、自分で言うのもなんだが暫定4番目に強い奴が目の前に現れたのだから。

 しかしダンデがしー、と少し笑いながら口元に人差し指を当てれば、その喧騒はすぐに静まる。流石のカリスマと言ったところか。

 

 嫌いなわけじゃないが面倒なファンサービスをしなくていいことに少しホッとしつつ席に座る。ダンデも同じ考えなのか、余り人目につかないような席を選んでいた。

 

 メニューを開き、適当に目についたものたちを吟味する。早めの昼食ということもあって、あまり腹は減っていない。なるべく軽めのものを頼むことにしよう。

 

「決めたか?」

「ああ、俺はもう大丈夫だ」

 

 店員を呼び、注文を行う。

 思えばダンデと食事を共にするのはこれが初めてだ。一体どんな料理が好みなんだろうか。少し興味を持ってダンデの注文を聞いてみる。

 

「じゃあまず、このパスタとピザを。ピザのサイズはLで。あと……」

 

 いきなり重そうな注文をするダンデに、思わず顔がひきつる。

 しかもまだ続くというのだから驚きだ。昼食のボリュームじゃないだろう。

 

「――それから、辛口カレー大盛りにシチュー、ついでにサラダもつけて……」

「……お前、よくそんなに食えんのな」

 

 馬鹿みたいに注文しまくるダンデを見て、軽く恐怖を抱く。

 以前どこかでミカンの大食いの様子を見た記憶があるが、それに次ぐ勢いだ。

 確かヤローも結構食べる方だった気がする。強い奴は大食いという傾向でもあるのだろうか。今度キバナも飯に誘ってみよう。

 

「…………」

「…………」

 

 長い注文を終えれば、少しばかりの沈黙が訪れる。

 話を切り出すタイミングを窺っているようだ。俺からすれば、さっさとして欲しいものだが。

 

「………その、カイ。ローズ委員長の計画について、なんだが」

 

 苦々しそうに話し始めるダンデ。

 やはり、というかそれしか心当たりは無かったのだが、メインプランのことである。

 

「何だよ。言っとくけど、俺は計画に関する権限はそんなに持ってないぜ。幹部とは言うものの、あの会社は実質ローズ委員長のワンマンだからな」

「ああいや、計画をやめろとか、そういう話をするつもりはないんだ。確かに俺はどちらかと言えば反対の立場だが、その話は委員長に直接しに行くよ。今日はそれより、カイ……君について聞きたいことがあるんだ」

 

 真剣な表情で話をするダンデ。一体何を俺に聞きたいのだろうか。

 

「聞きたいことってなんだ?」

「ああ、その……俺も全てを把握している訳じゃないんだが、ローズ委員長の話を聞く限りだと、その、なんだ……あの計画が、君にとって余り良くないもののように思えるんだ」

 

 言葉を選ぶように、途切れ途切れになりながらも口を開くダンデ。

 そしてその内容は、意外なことにこちらを気遣うようなものだった。

 

「こういうことを言うと君は怒るかもしれないが、俺はガラルに生きる一人の大人として、そして何よりチャンピオンとして、君に限らずガラルの人々を守る義務があると思っている。

 仮に弱みや何かが握られていたりだとか、様々な事情があるならば――」

 

「失礼します。ご注文の料理、お待たせいたしました」

 

 ダンデの言葉は料理を持ってやって来たウェイトレスに遮られる。

 そしてそれを切っ掛けに、俺も口を開くことにした。

 

「まあ、食えよダンデ。予定変更だ、飯後も話に付き合ってやる」

 

 

◆◆◆

 

 

 バトルコート。

 この世界においては、()のコンビニと同じくらいの間隔で分布しているお手軽な娯楽施設だ。屋外の床にコートだけ描かれた小規模なものから、ドーム一つ丸ごと試合場にした大規模なものまで多くのものが存在する。運営元も公共団体から個人経営まで様々だ。

 

 そんなよくある場所の一つ、小規模ながら充実した施設が売りの顔馴染みの店へダンデを連れて入り込む。

 

「良い店だ。でんきとエスパーへの対策が両立しているコートは中々ない」

「会社から近いし、特にプライバシー周りがちゃんとしてるからな。結構お気に入りなんだよ」

 

 余り人前でするような話でもないと思い、ここに連れてきた。

 ここのコートに観客席は存在せず、どちらかと言えば試合用のコートと言うよりかはトレーニング用のコートである。声が聞こえるような範囲には俺とダンデしか存在しない。

 

「…………なァ、ダンデ。俺が弱みを握られてるとか言ったよな」

「ああ。もしそうならば、という話だったが」

 

 コートの中央、二人しか存在しない空間で先ほどの話を掘り返す。

 何となく相手の言いたいことはわかった。イメージ戦略の一環とかで今も着ているマントが風でなびくのを眺めつつ、それへの回答を考える。

 

「まあ、あながち間違ってねえんだな、それ。弱みっつーか、なんつーか、契約を履行するまではどうしようもできないっていうか、自分で自分を縛ってるっていうか……」

 

 自分の状況を冷静に把握してみると、俺が今取っている行動はかなり間違っているように思える。ただ、それ以外の選択肢を自分で勝手に消してるだけで。

 

「うん、まあ、俺も出来ることなら計画のことなんか忘れて暢気にジムリーダーやってたいんだ。や、ジムリーダーも辞めていいってなったら辞めるかもな。旅に行ってみてえ。ポケモンと一緒に旅に出るのは、誰もが一度は夢に見ることなんだ」

 

 俺の言葉にダンデは怪訝そうな表情を浮かべるも、話を最後まで聞くつもりのようで口を挟まずに黙っている。ただの身の上話だし、そんなに真剣に聞かなくてもいいんだけどな。

 

「ただまあ、どうしても恐怖っていうのが拭えないんだ。いつ昔に戻ってもおかしくねえ、いつあの時間が再来してもおかしくないんじゃないか、って」

 

 少しばかり昔を思い出して身震いする。

 もしも眠り続けているという()()()を見たとして、今の俺はどう思うんだろうか。想像の上では到底恐怖を克服できそうにはない。

 

「逃げ出して、本当に遠くへ来て、それでもう力尽きてたあの時。あの時に、ローズ委員長と契約を交わした。プランが成功し、ガラルに栄光のある限り俺の自由は保障される。俺はあの恐怖から解放される」

 

 頭の中の回想は進んでいく。

 かつての面影は今とそう大差はないが、皺の一本二本は増えただろうか。思えば彼とも中々の付き合いである。

 

「恩義もあるのかもしんねえな。あの頃は色々と世話になった。世界のどこにも存在しない人間だった俺に戸籍とか今の地位があるのもあの人のおかげだ。他の庇護下に入ることも考えたが、契約と財団で植えつけられた猜疑心がそれを阻んだ。この猜疑心っていうのが厄介でさ。国際警察とか、普通なら無条件で信頼できるようなとこも怪しく見えちまうんだ。委員長との出会いも、あの時じゃなかったら結果も全然違ってたかもしれない」

 

 ダラダラとした俺の独白に、要領を得ないといった様子のダンデ。

 まあでも、聞かせておいてなんだが俺はスッキリした。やはり心情を言葉にして吐き出すというのは大切な作業である。

 

「……つまり、その、なんだ。俺では頼りにならない……ということか?」

 

 苦々しい顔で結論を導き出すダンデ。しかし、その結論は些か早急である。それを確かめるためにここへ呼んだのだから。

 

「んー、バトルしようぜ」

「え?」

「や、目と目が合ったらバトルだろ」

 

 唐突な俺の発言に目を丸くするダンデ。今日は珍しい姿がよく見れるものだ。

 

「この世界はさ、ポケモンバトルで大概何とかなるんだよ。いや、何とかなんないことも多いけど」

「あ、ああ」

「だからさ、バトル。1VS1。お前が勝ったら……まあ、そん時は色々考え直してみるわ」

「……!」

 

 今度は俺の言葉で途端に真剣な目つきになり、マントを脱ぎ捨てる。戦闘時スタイルだ。こうなった時のダンデは怖い。まるで勝てる気がしなくなる。

 そしてだからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんでかなあ。国際警察とかにはこんなこと言う気になんなかったのに。やっぱチャンピオンはオーラが違えのかな。もしかしたら権力とかじゃなしに俺を守るだけの力があるのかも、って思わされちまうのかな」

 

 青く輝くボールを構えつつ、コートの反対の端に立つ。

 今日はやけに独り言を口にしてしまう気がする。それも、他人にはあまり意味が通じないタイプの。

 

「…………」

「…………」

 

 両者試合開始のラインに立てば、自ずと相手と呼吸を合わせ始める。

 審判はいない。合図もない。それでも、ボールを振りかぶるのは同時だった。

 

 

「――リザードン! 君に決めた!」

 

「――捻じ伏せろ、PARASITE

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「――まあ、逆にあんだけの不利対面でよくあそこまで善戦したよ。流石はチャンプってとこか。オリーヴもそう思わねえ? 10年無敗はやっぱ伊達じゃねえわ」

「……それで? 相手がチャンプといえど、このメインプランを目前とした忙しさの中たかが私闘の結果にそこまでの興味はないのですが」

「うん、や、まあ、要するにさ、ローズ委員長に伝えといて欲しいわけよ。脅威なのはやっぱり一人だけでした、って」

「……そうですか。それは中々、良い報せに聞こえますね。契約の期間は後僅かです。チャンプも駄目だった以上、今更我々を裏切る気もないでしょう。これからもより一層の励みを期待していますよ」

「ん、おっけ。……でもさぁ。やっぱ改めて考えると辛いよな。当然だけど、俺を守れるのは俺より強い奴だけ、ってのは」

「知りませんよ。でも、少なくともローズ委員長はアナタよりずっと大きい存在です」

「あー、うん。知ってるわ」

 







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セミファイナルトーナメントについて語るスレ

ユウリ側の描写をしていないためわかりにくいですが、時系列的にはセミファイナルまで進んでいます。


1:名無しのベテラントレーナー ID:5RM8w9MSB

すごかった

 

4:名無しのベテラントレーナー ID:oLnw4TvWJ

結局ユウリが優勝か

 

8:名無しのベテラントレーナー ID:NUtgVIIcH

なに負けとんねんマリィ

こっちは友達と一万賭けとったねんぞ!!!!!!!

 

11:名無しのベテラントレーナー ID:0m0fXbI/p

マリィもホップも強かったけどな

ユウリがヤバ杉

 

15:名無しのベテラントレーナー ID:jzGABtxpp

キバナもネズも余裕で倒してたしマジでファイナル優勝もあるんじゃね?

 

16:名無しのベテラントレーナー ID:ZTRbYRHbx

10年くらいキバナが挑戦権獲得し続けてたからなあ

いい加減に別の奴が勝ってもおかしくないわ

 

17:名無しのベテラントレーナー ID:D7bccT0jI

負けたやつにも目ぇ向けよーや

マリィの敗北インタビューマジで興奮する

 

20:名無しのベテラントレーナー ID:qZUX4KP9c

>>17

「……兄と………ファイナルトーナメント、で、戦いたかったです……」

「………カイ、選手とも……セミファイナル、を、勝ちあがったら、本気で、戦うって、約束、を……しとった、のに……」

「……応援、してくださった、皆さんに……合わせる顔、が……」

「……あそこで、ああしたら、とか………後悔の、たくさん残るような、恥ずかしい、試合を、してしまって……ポケモンたちにも、申し訳、なくって……」

 

23:名無しのベテラントレーナー ID:R9h7YBLuD

>>20

方言必死に抑えて敬語にしてるのほんとすき

 

26:名無しのベテラントレーナー ID:n/dDG+DRm

>>20

かわいそうなのはぬける

 

29:名無しのベテラントレーナー ID:SUGkPLn+h

>>20

勝ちを確信して油断した後からの大逆転やもんなあ

そら(自分のプレミを後悔して)そう(涙も出る)よ

 

33:名無しのベテラントレーナー ID:SM4wNu++1

かなり惜しかった

3体使わせたのジムリにはおらんかったやろ

 

37:名無しのベテラントレーナー ID:lq922NBwt

>>33

ホップとマリィだけやな

相変わらず4匹目は何かわからんけど

 

39:名無しのベテラントレーナー ID:zDqFoXeRQ

>>33

それって3対5で負けたってことでは…?

 

40:名無しのベテラントレーナー ID:4xvlb2cDg

>>39

惜しかった()

 

44:名無しのベテラントレーナー ID:KRZUIEDZd

マジでダンデ超えとらんか?

チャンプも流石に2体差でネズに勝てへんやろ

 

45:名無しのベテラントレーナー ID:8AmT607ex

>>44

勝ったことあるんだよなあ

 

46:名無しのベテラントレーナー ID:mc28wmp4u

>>44

ダンデの6タテってそんなに珍しいことちゃうで

 

50:名無しのベテラントレーナー ID:l7MStBLtq

前季だと最後の一匹まで追い詰めたのマクワとキバナくらいやろ

初手リザからの6タテをまず止められんと話にならん

 

51:名無しのベテラントレーナー ID:zFCUAhreu

リザ安定して処理できるのはほんとにマクワくらい

ルリナのカジリガメとかもダイソウゲンでワンパンされてたし

 

53:名無しのベテラントレーナー ID:WEtrrWSvb

ユウリがヤバいのはエースを隠し続けてるところや

ダンデでもリザ無しで大差を覆すのは無理

 

54:名無しのベテラントレーナー ID:m6nOs/CFE

はよ四体目見たいわあ

本人は何か言及してたりするんか?

 

56:名無しのベテラントレーナー ID:IUp1JRxDF

>>54

相棒って言ってる

つまりエース

 

57:名無しのベテラントレーナー ID:TtVLxPoTT

なんで相棒を使わへんのや

頭おかしいんとちゃうか?

 

59:名無しのベテラントレーナー ID:CW9B/qPKj

>>57

辛辣で草

 

61:名無しのベテラントレーナー ID:+tD+kzpRH

大逆転の様子見て「うわぁ」みたいな表情してるカイすこ

 

65:名無しのベテラントレーナー ID:9dhJrTqnE

>>61

そもそも何で会場におるんや

 

69:名無しのベテラントレーナー ID:W6VPUp2fh

>>65

リーグ委員やからな

セミファイナルのときは毎年運営側におるで

 

72:名無しのベテラントレーナー ID:m3ReDv3QV

逆転したのに全く浮かれず無表情で負け筋潰してくの怖すぎやろ

マリィファンじゃないけどあれは同情する

 

73:名無しのベテラントレーナー ID:alLMt1VHq

ボコボコにした後満面の笑みで握手を求める姿には流石のスレ民もぐう畜認定

 

74:名無しのベテラントレーナー ID:cnJWQ4HmC

「アニキを超えて、俺はチャンピオンになるんだ!」

「ダンデさんに勝てても、私に勝てなきゃ意味ないよね」

 

78:名無しのベテラントレーナー ID:zGetKt1E/

>>74

これはひどい

 

80:名無しのベテラントレーナー ID:aekxodJKX

>>74

「確かに…」みたいな表情するホップすき

 

83:名無しのベテラントレーナー ID:A+T+Q8TMa

>>74

正論で草

 

87:名無しのベテラントレーナー ID:OK3x1qtwr

キバナ瞬殺したからホップには期待しとったんやけどなあ

ゴリランダーへの交代にエースバーン合わせられた時は絶望したわ

 

90:名無しのベテラントレーナー ID:lcWAmRHhe

普通にバトル上手過ぎないか

ほんまにダンデ超えあるやろ

 

92:名無しのベテラントレーナー ID:67V09Ozsq

>>90

最近その意見多いよな

流石に無理やろって思うねんけど

 

93:名無しのベテラントレーナー ID:2pLE0cmdm

>>92

ダンデ最近トレーニングめっちゃやってるらしいで

ユウリの試合見て危機感覚えたんじゃないかって噂や

 

95:名無しのベテラントレーナー ID:ZDU1lQQOt

>>93

ちょっと前からインタビュアーが雑にあしらわれるようになっとる

「今のままじゃ足りない」とか言われて終わりや

 

97:名無しのベテラントレーナー ID:CudlUm8uA

明らかにユウリのこと意識しとるやん

これは新チャンプ誕生あるか?

 

101:名無しのベテラントレーナー ID:NUtgVIIcH

流石にない

ダンデには友達と3万賭けたんや

 

103:名無しのベテラントレーナー ID:txG1Dj9oL

まずファイナルトーナメントがあるけどな

本気ジムリとどこまでやれるかどうかや

 

104:名無しのベテラントレーナー ID:WA8Lmgx6E

カブさん頑張って欲しい

ファンなんや

 

108:名無しのベテラントレーナー ID:B4bhzgALt

ファイナルは組み合わせも大きいからなあ

キバナも連覇しとるけどメロンと当たってたら終わってた

 

110:名無しのベテラントレーナー ID:g5vwpVfyg

>>108

有名やけど普段勝率低いポプラとかには当たって勝っとるんやで

キバナはファイナルにかける情熱が一個違うわ

 

113:名無しのベテラントレーナー ID:kw1cbw1ou

カブさんは誰でもそこそこの勝率あるから大丈夫やろ

全敗に近いのマクワくらい

 

116:名無しのベテラントレーナー ID:XlNgx3s3W

ほのおっていうタイプが完全不利を取るのがみずといわだけやしな

ルリナはそんなに強くないし

 

119:名無しのベテラントレーナー ID:ffOVYcova

ルリナも中々順位上がらんし頑張って欲しいんやけどなあ

推しが負けるとやっぱイライラするんや

 

120:名無しのベテラントレーナー ID:6Dza+DcF1

>>119

言うてメジャー7位だけどな

 

122:名無しのベテラントレーナー ID:1G7wnukvy

ルリナは雨パが決まって大勝ちするとほんま気持ちいい

接戦もいいけどボコボコに勝つのはほんと脳汁出る

 

125:名無しのベテラントレーナー ID:bCbuV4NqP

大勝ちした時の手持ち数差でメジャーにいるだけの点数稼いでるよな

勝率はそんな高くない

 

129:名無しのベテラントレーナー ID:bUSJ2CKiu

>>125

攻撃的なタイプはそういうとこある

 

130:名無しのベテラントレーナー ID:2tMTRvzUf

サイトウは来季ファイナルに参加できんやろうから今回勝ちあがって欲しい

 

131:名無しのベテラントレーナー ID:kmhMW0osO

>>130

既にメジャー残留諦めてて草

 

132:名無しのベテラントレーナー ID:+Dm17lvSA

>>131

マクワが上がってくることを考えるとどうしてもなあ

 

136:名無しのベテラントレーナー ID:NOC3E82Gv

チャレンジャーと当たったときのヤローすこ

 

137:名無しのベテラントレーナー ID:tNEiAlmEi

>>136

隠してた本気を出す感じほんまかっこええ

最初のジムリが再び立ち向かってくるのたまらん

 

141:名無しのベテラントレーナー ID:bUKEqXfJ4

ポプラも最近はファイナル全然勝ちあがらんくなったよな

 

142:名無しのベテラントレーナー ID:vkDpNGNn8

>>141

6年前にファイナルの決勝でキバナに負けてからずっと1回戦敗退やな

順位も6~8位ばっかやし流石に年なんやろ

 

145:名無しのベテラントレーナー ID:MSY3dznk1

>>142

その割には中々引退する気がしいひんよな

大御所の貫録があるわ

 

149:名無しのベテラントレーナー ID:If1GVt1fc

ポプラはマスタードのチャンピオン就任戦がほんとにすき

何回も見返してしまう

 

150:名無しのベテラントレーナー ID:0JD1ftOEa

>>149

実力が明らかに衰えてるのがはっきりわかって悲しくなる

 

153:名無しのベテラントレーナー ID:QKJA71wVL

>>149

逆転に次ぐ逆転で最後はエースの同時ダイマやからな

台本あんのかってくらい盛り上がる試合

 

154:名無しのベテラントレーナー ID:/Hi0FX7Tb

毎年チャレンジャーは1回戦負けが普通やけどユウリには期待してまう

 

158:名無しのベテラントレーナー ID:g5sp0fmIn

チャレンジャーがチャンピオンに挑戦するとか普通はないんですけどね()

 

162:名無しのベテラントレーナー ID:xhSjjCaEm

>>158

今の子供たちはチャレンジャーから直通でなったチャンピオンしか知らないんですが

 

165:名無しのベテラントレーナー ID:31Op+sPY+

マジで世代によって認識の差がヤバいと思う

チャンピオンは無敗が普通とか思うようになってんねやろ?

 

169:名無しのベテラントレーナー ID:vuepAedYn

ダンデの前の入れ替わりが激しかった時代すき

 

170:名無しのベテラントレーナー ID:7PyKdPo5j

>>169

推しがチャンプになる夢を見れたしなあ

今だとジムリ1位すら目指せんわ

 

174:名無しのベテラントレーナー ID:Jv6ululE8

なんだかんだキバナは1位を譲らないという風潮、一理ある

 

176:名無しのベテラントレーナー ID:jXDNppEh4

>>174

チャレンジャー時代にドラゴン手懐けてる時点で才能の塊

 

180:名無しのベテラントレーナー ID:qxpvlKTNr

ドラゴンタイプ一回は使ってみたい

 

182:名無しのベテラントレーナー ID:5v3P9Jma8

>>180

各地方のドラゴンジムはいつでもジムトレ募集しとるで

審査くっそ厳しいらしいけど

 

186:名無しのベテラントレーナー ID:2YCrAHLfV

>>182

ドラゴンつかいはめちゃくちゃ希少やからなあ

ジョウトのフスベとかは町ぐるみで育成してる

 

189:名無しのベテラントレーナー ID:Yy2pYPh1E

>>186

クソダサマント割とすき

 

190:名無しのベテラントレーナー ID:y1/VUzLvp

ドラゴンは一匹育てるのもキツいからな

ワタルとか最早ひこう使いな時があるの草

 

191:名無しのベテラントレーナー ID:dra+qo8HW

>>190

やっぱり素人はそう思うかぁ。

 

193:名無しのベテラントレーナー ID:dradrazZV

>>190

やっぱり素人はそう思うかぁ。

 

195:名無しのベテラントレーナー ID:DRAGOO8Ed

>>190

やっぱり素人はそう思うかぁ。

 

197:名無しのベテラントレーナー ID:AgNOfPGb7

>>191>>193>>195

誰やコイツら

 

201:名無しのベテラントレーナー ID:XZespheX/

ファイナルトーナメントはちゃんと開催できるんか?

最近ダイマポケモンの暴走とか起きとるやろ

 

202:名無しのベテラントレーナー ID:D3Tr5vq7N

>>201

パワースポットが危ないらしいしなあ

もしシュートシティで起きたら延期やで

 

206:名無しのベテラントレーナー ID:LCptyxbU2

>>202

有休とって見に行くからほんまやめて欲しい

 

207:名無しのベテラントレーナー ID:Qk4f+bRa4

あの事件はマクロコスモス社の陰謀や

ガラル粒子に関する事業は全部あの会社が握っとるし全く被害が出てないのもむしろ管理された実験ってことを証明しとる

マクロコスモスはブラックナイトっていう神話の災害を引き起こすために今までずっと行動し続けてきたんや

あの会社は立ち上げてすぐにガラル粒子の事業を独占した

ブラックナイトが起きたらガラル中のポケモンが暴走してダイマックスしたまま暴れまわる

ビートがラテラルの壁画を破壊したのは何も知らない俺らに対する警告や

出てきた銅像はかつてブラックナイトを打ち破った英雄の像で今ガラルの学会を沸かせてる

マクロコスモスの内部で計画を知ったビートは唯一の対抗策を皆に示したんや

当然ローズは裏切り者のビートを処分した

その計画実行の日は、そう。チャンピオン戦や

ガラル中の目が試合に向いている間にブラックナイトは起こされる

終わりの日は近いで。

 

210:名無しのベテラントレーナー ID:0vN9gjHJ5

>>207

どこにでも湧く陰謀論だいすき

 

212:名無しのベテラントレーナー ID:zPtjLQvjK

>>207

どんな時も黒幕にさせられるマクロコスモスかわいそう

 

216:名無しのベテラントレーナー ID:HyhQbVnKk

>>207

「終わりの日は近いで。」

ここすき

 

220:名無しのベテラントレーナー ID:O/o1SQl9z

>>207

こんなこと言ってるやつもマクロコスモス製品に頼ってるという事実

 

224:名無しのベテラントレーナー ID:GYyc1ize+

>>207

チャンピオン戦見てたらこんなレス記憶にも残らんやろうな

 

 




ユウリ(♀) じょうたい:わくわく している!

てもち

・ウーラオス(いちげきのかた)
・エースバーン
・ストリンダー
・ウオノラゴン

セミファイナルを かちぬいた チャレンジャー。
いちぶで チャンプより つよいのではと うわさされている。
あいての ゆだんを さそう こうどな バトルも とくいだ。
かくしている 4匹目は めちゃ つよいらしい。


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withオリーヴ

「――だからだね。ガラル粒子の枯渇は絶対に解決しなくちゃいけない問題なんだよ。それも今、すぐにでも!」

「1000年先の問題を? 誰もが楽しみにしていて、数多の企業が関わっている明日のファイナルトーナメントを潰してまで? ふざけている! ローズ委員長。常々思っていましたが、アナタは言葉が足りないところがあります! きっと俺にはまだ理解できていない事情があるのでしょう。それを話していただかなくちゃ納得できない!」

 

 ローズタワーのてっぺん。シュートシティを一望できるほどの高さを誇るそこで空を眺めながら黄昏ていると、先ほどから段々とヒートアップしてきたローズ委員長とダンデの口論が聞こえてくる。

 

 聞き飽きた口論の内容は「いつブラックナイトを起こすか」だ。

 ブラックナイトとはガラルに伝わる神話の現象で、具体的にはムゲンダイナと呼ばれる一匹のポケモンが引き起こす災害だ。マクロコスモス、というかローズ委員長はムゲンダイナを目覚めさせ、これを人為的に引き起こすことでガラルのエネルギー問題を解決しようとしている。

 その目覚めたムゲンダイナは無敵のチャンプであるダンデが捕獲する、という筋書きだ。

 

 何分神話の伝承なのでブラックナイトを止められなかった場合実際にどうなるかはやってみなければわからないというのが実情だが、ムゲンダイナの制御に成功すれば確かにエネルギー事情は解決する。かの竜は文字通り無限大のエネルギーを内包する伝説のポケモンなのだから。

 

 尤も、結果を知っている俺からすれば滑稽な話だ。

 ムゲンダイナはマクロコスモスの想定を遥かに超えて危険なポケモンであり、不完全な状態でですら溢れ出るエネルギーはガラル中のポケモンを暴走させる力を有している。

 頼みのチャンプは伝説の力に為す術もなく倒れ伏し、主人公がいなければ世界の空は黒く染まってしまうだろう。

 

 あくまで明日の実行に拘るローズ委員長と、それを拒否するダンデの不毛な討論は続く。

 ローズ委員長が明日に拘る本当の理由を明かさない以上、ダンデが頷く道理はないだろう。そしてそれゆえに、ダンデの承諾を得ずに無理やりブラックナイトを引き起こす未来は目に見えている。

 

「カイ。件のチャレンジャーたちがやって来ました。足止めを行いますよ」

「はいはい。どんだけ話し合ったって意味ねえと思うけどな」

 

 いつの間にか後ろにいたオリーヴの声に振り向く。

 彼女の言うとおり、ダンデの身に起きている異常を感じ取ったホップとユウリが現在このローズタワーに侵入してきている。妨害をするマクロコスモス社員なんてあの二人は歯牙にもかけないだろう。

 

 地上300メートル、マクロコスモスの繁栄を象徴する塔の頂上へ向けて上がってくるエレベーターを見つめながら、全く終わりそうにない討論の声を聞いて溜息を一つ吐いた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「あ! いたぞ、オリーヴさん……に、カイさん? まあいいや、アニキを返してもらうぜ!」

「え゛っ。……ちょっと待って何それ聞いてないってばホントに。え、私今服とか大丈夫? 髪ハネてたりとかしないよね?

 

 エレベーターから出てきたのは案の定全く消耗した様子を見せないホップにユウリ。

 まあ、いくらオリーヴ直属とはいえ一般社員にセミファイナル出場者二人、片方は優勝すらしているほどの実力者たちの相手をさせるのは些か酷というものだろう。

 

 オリーヴに駆り出されたスタッフたちに内心同情しつつ、改めて二人の様子を眺める。

 

 ユウリは急にあちこちの服の皺を伸ばし始め、ホップはそれを横目で不思議そうに見つめている。両者ともに悲愴感は見られない。ユウリは自身の絶対的な実力から、ホップはそれに対する信頼からダンデを取り戻せないことなんて考えもしていないのだろう。

 

 一方オリーヴは自身の妨害を尽く突破されたことで僅かに体が震えている。これはマジギレオリーヴ5秒前だ。今は同僚がいるため辛うじて表面を繕っている、といったところだろうか。

 

 自分自身でローズタワーに入れるようにした癖によくわからないやつだ。

 キレたときの被害は俺にも及ぶ。ねがいぼしの収集が終わったと聞いて機嫌が良かったというのに、全てパァだ。本当にやめて欲しい。

 

 そんなことを考えていればやがて、体の震えを抑えながらオリーヴが二人の前に立つ。

 手の指は既にボールのボタンにかかっている。どうやら長々と話をする気はないようだ。俺も彼女に続く。

 

 そして俺たちのその雰囲気を感じ取ったのか、ユウリとホップの二人も真面目な顔をして相対する。

 ……良い目だ。自身の勝利を疑わず、それでいて油断もしていない。

 

「まあ、言わずともわかっているでしょうが……ここを通りたくば、私たちを倒していきなさい」

「ん。まー、そゆこと。俺は別に通してもいいと思うけど、仕事だからな」

 

 ローズ委員長の話を邪魔させないために、ボールを構えるオリーヴと俺。

 それに対し、ユウリは何故かあたふたとしながら、ホップはニヤリと笑って一匹目のポケモンを繰り出す。

 即席コンビでのダブルバトル。あちらはもうこれまでの連戦で慣れたものだろう。

 

「――いって、ウオノラゴン!」

「――いくぞ、バイウールー!」

 

「いきますよ、カイ。足は引っ張らないでください」

「へーへー。ダイマは好きなタイミングでやってくれよ、っと」

 

 俺たちも同時にボールを投げ、ポケモンを繰り出す。

 別に勝つ気も無ければ勝てる気もしない。奇妙な心持ちでの一戦が始まるのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「マジ!? キレそうだわ、オリーヴたちが負けそうだなんて!!

 やってしまいなさいダストダス、『キョダイシュウキ』!!」

 

「――無駄。エースバーン、『ダイサイコ』」

 

 

 ローズ委員長の元へ向かう二人を足止めするために挑んだダブルバトル。

 その結果は当然とでも言うべきか、ユウリとホップの圧勝に終わろうとしていた。

 

「ルカリオ、巻き込まれんなよ。『あくのはどう』」

「させないぞ! ゴリランダー、『ドラムアタック』!!」

 

 ユウリのポケモンが暴れ回るのは勿論のこと、ホップも十分な実力者だ。二人の連携にじわじわと追い詰められていったオリーヴはダストダスのキョダイマックスに踏み切るも、同時にキョダイマックスを行ったユウリのエースバーンに力負けしてしまっている。

 相方である俺とホップの対面も余り良い状況とは言えず、既に敗北は決定したも同然だろう。表面上でだけ戦闘をするポーズを取る。

 

「そこだ、逃がすな! 『10まんばりき』!!」

「トドメ。もう一回、『ダイサイコ』」

 

 しかし相手はそんな俺たちに手を緩めるはずもなく、最後の一撃と言わんばかりに放たれた大技はこちらのポケモンたちを飲み込んで瀕死に追いやった。

 

「――っ。お疲れ様です、ダストダス」

「――ルカリオ、戻ってこい」

 

 結果は惨敗。俺は当然のことと受け止めるも、オリーヴは二人を所詮子供と思っていたようでショックを受けている様子だ。負けるとは理解していたが、ここまで手も足も出ないとは思っていなかった、という感じか。

 

「……流石はセミファイナル優勝者と準優勝者、といったところですか。少々実力を見縊っていたようです」

「お見事。一応このパーティはファイナルトーナメント用なんだが、余裕で負けちまったな」

 

 負けたというのにそこまで気にしていない様子の俺たちを見て不思議そうな顔をするユウリとホップ。

 まあ、こちらとしてはねがいぼしの収集が終わっている以上、役目はローズ委員長がダンデを説得するための足止めにすぎない。それすらも無駄話になりそうな雰囲気を見せている以上、このバトルの勝敗は正直どうでもいいってことだ。

 

「もう好きになさい。敗者である我々に出来ることはありません」

「行ってこいよ。ダンデはすぐそこだ」

 

 道を空ければ彼らは腑に落ちないといった表情をしながらもダンデを走って迎えにゆく。遠目で見送ったあと振り向けば、オリーヴはいつの間にやらタワー頂上を後にしていた。

 

 

「…………とうとう明日、か」

 

 もう一度独りになり、手持無沙汰になった俺はまた空を眺めて黄昏る。

 

 長かった。ローズ委員長と出会ったあの日から、もう随分と経つ。ジムリーダーとしてのキャリアも一端のものとなり、町を歩けば騒ぎになるような身分にもなった。

 

「……楽しかったなァ」

 

 思い返せば蘇る数々の思い出。

 一つ一つ、ゆっくりとなぞっていく。

 

 ヤローには昔からよく世話になった。収穫の度に送ってくる大量の野菜は正直食べ切れる量に減らして欲しかったが、味は良かった。経験も豊富だし、アイツならこれからもメジャーでやっていけるだろう。彼の実力はジムチャレンジを通過してきた誰もが認めている。

 

 ルリナとはよく遊びに行った。愚痴を聞いたり逆に聞いてもらったりしていたが、お互いの心の内を吐き出せるよき関係であったと思う。ジムリーダーとしての戦績はまだ余り奮っていないが、それも経験不足によるところが大きい。段々とベテランになっていくにつれ勝率も上がってくるように思える。

 

 カブはとにかく優しくしてくれた。ガラルのジムリーダーの中では最もアスリートらしく、トレーニングや体調管理の面ではよくアドバイスしてくれたものだ。彼はポプラが引退すれば現メジャーの中では最年長である。経験もあり、その人格からみんなにも認められている。これからもチャレンジャーたちの壁となって引退するまで熱いバトルを見せてくれるだろう。

 

 サイトウとは彼女がジムチャレンジに参加して以来の付き合いだ。試合がある度に何のかんのと煽りあってきたが、その後は大概スイーツ巡りなんかをする辺り総括して「仲良し」と言っていいと思う。彼女は就任してからが短く、年若いこともあって不安も多いだろうが、どうか勝ち続けてその信念を貫いて欲しい。

 

 オニオンとは顔を合わせる度に何かしら絡んでいた。ジムリーダーの中で最も絡みやすいのは誰か、と問われれば彼の名前を挙げるだろう。また、現ジムリーダーの中では最も新人である彼だが、その超常性が故か不安なんかは特に感じていなかったように思える。能力というのは決して他では覆せない確かなアドバンテージだ。直に頭角を現してくるだろう。

 

 ポプラには新人の頃いらない所まで世話を焼かれ続けた。全人口からしてみても最年長の方の枠組みに分類される彼女だ。今のジムリーダーの誰もが世話を焼かれてきたことだろう。昔はチャンピオンの座にすらまで手をかけた強者だが、年には勝てず最近は戦績も落ちてきた。しかし、まだまだメジャーで通用するほどの余力を残したままの引退である。きっと多くの人が彼女の存在を惜しむだろう。

 

 マクワは頼れるトレーニング仲間であった。家の教育か、トレーニングについては人一倍詳しかった彼にはよく育成についての話を聞いていた。タイプ相性的に目の上のたんこぶである俺に対し何の躊躇いも見せず協力を引き受ける辺り、顔だけじゃなく心までイケメンである。後は体をどうにかすれば完璧だ。実力の方は言うまでもなく保障されている。メロンとの関係などメンタル面をどうにかすれば、本当に将来のチャンピオンも夢じゃないだろう。

 

 メロンにもよく世話になった。性格か、お節介焼きであった彼女にはよく悩み相談とかをさせられたものだ。内面観察が得意なメロンのことである、もしかすれば俺の事情についても薄々察していたのかもしれない。逆に、マクワのことについて相談を受けることもあった。いわゆるオカンらしく人間関係の構築が得意な彼女であったが、唯一息子の情緒だけは読めないらしい。男のジムリーダー全員に話を聞いて回っていた。今後の活動については彼女次第なところもある。経歴で言えば引退しても全然おかしくない年齢だ。実力としてはまだまだやれると思うが、そこはメロンが決めることであって外野が口を出すところじゃない。

 

 ネズとはマリィのこともあってか、顔を合わせることが多かった。スパイクタウンの事情で彼が取っていたノーダイマックス戦法については色々と意見を求められた記憶がある。本人の努力もあり、今ではダイマックスを封じても尚ガラルでトップクラスの実力を持つ彼であるが、マリィの進出もあってジムリーダーを引退するという。本業はむしろ歌手の方と言うのは本人の談だが、そちらにおいても彼はかなりの地位を確立している。きっと上手くやっていけることだろう。

 

 キバナとはやはりバトルに関する話をすることが多かったと思う。互いに知識が豊富であり、ジムチャレンジ用のパーティを作るときには彼の意見も参考にした。実力は見れば分かる通り1位を保ち続けている。ダンデに勝つその日まで、彼が1位の座を譲ることはないだろう。

 

「……本当に、楽しかったなァ」

 

 一つ一つの思い出をなぞる度に、その時々の感情が呼び起される。

 星空を眺めながら心の裡をそのまま口に出せば、頬を流れる水滴に気が付いた。

 

 

「――カイ」

 

 

 慌てて頬を拭って振り向けば、そこには無敵のチャンプであるダンデが立っていた。後ろには不安げなユウリとホップも立っている。

 

「カイ。俺は、もう――二度とあんな無様は見せない。チャンピオンタイムはまだ終わっていない……それだけを伝えたかった」

 

 声を発そうとする俺を抑えてダンデは話し出す。その内容は、ともすれば負け犬の遠吠えのようにも聞こえたが――彼の全身に漲らせたオーラは、その言葉を真実であると思わせるに足るものであった。

 

 それならば俺の返す言葉はもうない。ローズタワーの最上階、300mの上空からの落下を防ぐためのドーム状のガラスの方へ歩いていけば、やがて先ほどの戦闘で生じた穴にたどり着く。

 

「そうか。じゃあ、楽しみにしてるぜ」

 

 そう言って後ろに体重をかければ、あっという間に小さな俺の体は宙に放られた。

 

 驚きに目を見張る三人の顔を視界に入れたあと、瞬時に風景が切り替わる。「テレポート」だ。俺の体重など意にも介せず飛ぶ薄紫の翼を見て、きちんと指示が成功したことに安堵する。

 

 俺を乗せるその体躯にしがみ付き、顔を見上げてみれば美しいガラルの夜景が目に入る。しかしそれも段々と、目に溜まっていく涙でぼやけていった。

 

「あぁ……ありがとよ、フリーザー。やっぱあそこにいたままだったら、泣いてることがバレちまってたわ」

 

 その言葉に小さく一鳴きを返した伝説の妖鳥は、もう2度と見れなくなるかもしれない夜景を俺の目に焼き付かせるかのように、ガラルの空を飛び回るのであった。

 




諸事情あり、2週間ほど更新が止まります。申し訳ありません。


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In those days


今回は過去話です。


 アローラポケモンリーグ。

 僅か数か月前に設立された新進気鋭の地方リーグであり、初代チャンピオンである少女・ミヅキは未だ公式戦無敗を貫いている。

 そんな現在ホットなリーグには今日も挑戦者が一人、四天王たちを打ち破って玉座の間に辿り着き、そして無敵のチャンピオンに敗北を喫していた。

 

「――お疲れ、グラジオ。今日は結構ヒヤッとさせられたよ」

「……何を言うミヅキ。中盤、ミミッキュの処理に失敗してからは薄い勝ち筋を一つ一つ潰されていくだけだった。結局ソルガレオも引きずり出せず。こんな調子では四天王たちの本気を見せてもらうことも出来るかどうか」

 

 チャレンジャーの名はグラジオ。かつてスカル団の用心棒をしていた少年であり、現エーテル財団代表代理でもある。

 彼は既にアローラリーグの常連になっており、対チャンピオン用の本気パーティではなく対挑戦者用のパーティを用いる四天王には苦戦もせず快勝できるほどの実力を有していた。

 

 しかし、この小さなかわいらしいチャンピオンには遠く及ばない。彼は追い詰められたというミヅキの言が表面上だけの世辞だと理解していた。無様な自身の負け姿にフッと自嘲する。

 

「そんなことないってば。ほしぐもちゃんなんてこの前ワタルさんとやった時以来ずっとバトルに出てないもん。そんなに自分のこと卑下してたら、またリーリエに色々言われるよ?」

「フッ……慰めはいらない。俺たちは馴れ合うような仲じゃあないんだ」

 

 左手を額に当て背中を仰け反らし、まさに中学二年生くらいの子供が好きそうなポーズを取りながら会話をするグラジオ。いつものことか、と呆れながらも相手をしていたミヅキだったが、今日はどこか表情が暗いことに気が付く。

 

「あれ? なんだか元気ないね。どうしたの?」

 

 さてはミミッキュでパーティが半壊したのを未だ気にしているのだろうか。ちょっとやり過ぎたかな、と思いつつ前回ジャラランガで6タテした時の反応を思い返して原因は別か、と考え直す。

 

「ん……ああ、いや…………何でもないんだ。ちょっと、な」

 

 返ってきたのはいかにも何かありますといった反応。歯切れの悪い言葉にミヅキの好奇心が湧き上がる。

 

「え、何それ。絶対なんかあるじゃん」

「いや……お前は知らない方が良い。これは俺たちだけの問題だ」

 

 いつものよくわからない言い回しでお茶を濁そうとするグラジオに、ますます好奇心が煽られる。しかしどうにかして聞き出そうとその辺にあった新聞で叩いてみたりくすぐってみたりあの手この手を試みるも、中々口を割らない。

 

 ひぃひぃとお互いに息を切らせる中、ミヅキは一つの名案を思い付く。グラジオが話さないのならば、リーリエに聞いてみればいいじゃない、と。「俺たち」なんて言っている辺り彼女も事情を知っているかもしれない。

 

 ミヅキは知りたがっていたグラジオの悩みなんぞ一瞬で忘れてカントーにいる大天使リーリエルに電話をかける口実が出来たことに密かにほくそ笑む。持っていた新聞紙などポイだ。尤も、何の口実が無くとも毎晩ビデオ通話を繋げているのだが。

 

「………いや、エーテル財団を止めたお前には聞く権利があるかもしれないな」

「え?」

 

 にやにやと頭の中でイマジナリーリエと会話していれば、今度はグラジオの方が意見を翻す。顔を上げてみれば、かなり真剣な表情をしていた彼が目に入り慌てて姿勢を正す。

 彼の家はなんだかんだと事情が重い。これからの話も、笑って流せる話じゃなかったりするのだろう。そして予想通り、彼女は相当に重い話を聞かされることになる。

 

「これは懺悔だ。これは告白だ。無力だった俺の、ただ見過ごすしか出来なかった俺の、最も大きく、そして後悔している罪の一つだ」

 

 彼の顔はいつもよりずっと険しい顔をしていた。昔を思い出したのか、瀕死となったシルヴァディが入ったボールを指で撫でている。

 

「今日みたいな寒い日は、いつもあの日のことを思い出す。()との出会いは、もうずっと昔だ――」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 母――ルザミーネが為した所業については、お前もよく知っているだろう。俺もいちいち語りたいとは思わない。

 彼女の変貌は、全て父の失踪に端を発するのだが……今更そんなことはどうでもいい。原因があろうとなかろうと奴が悪事を為した悪人であることには変わりない。言いたいのは、俺が母の所業に気づくずっと前からあの狂行は始まっていたということだ。

 

 ルザミーネはウルトラビースト、特にウルトラホールに関することに異常な狂執を見せていた。俺のシルヴァディも、お前のソルガレオやかつてのウツロイドなんかに対する彼女の執着の結果であったが……Fall、つまりウルトラホールからの来訪者なんて存在を手に入れたらどうするか、なんてのは想像に難くない。

 

 そして、奴にとっては非常に幸運なことに、()にとっては本当に不幸なことに、ある日エーテルパラダイス内に一つのウルトラホールが発生した。

 

 

「――いっっった! なんだこれ! どこだよここ! ……って、リーリエ?」

「……ひ、ひ、人が空から降ってきましたー!!」

 

 

 そのウルトラホールから現れたのは一人の少年。即ち、Fall(来訪者)だ。第一発見者はリーリエ。

 その事件は当然大騒ぎとなり、身寄りのない彼はルザミーネの指示によりエーテル財団に保護され、エーテルパラダイス内で生活することになった。

 

 

「リーリエ! 見ろよ、『ゆきふらし』のロコンの群れだ!」

「寒いですっ! 寒すぎますっ!」

 

「えーっと……確かジャラコ系列はこの辺に分布してなかったか?」

「フッ……強者は人里離れた地に集まる、か」

 

「すげぇ! アローラナッシーってマジでこんななんだな!」

「四つも頭があるんですね……。喧嘩したりしないんでしょうか?」

 

「グラジオ、メガボーマンダって別名『血に濡れた三日月』って言うんだぜ」

「……!」

 

 

 現れた彼はポケモンを一匹も所持していないにも関わらず、ポケモンに関する知識は異常なほどに豊富であった。また一部の記憶の消失や肉体の変化もあったせいか知的探究心も人一倍あり、エーテルパラダイスのデータベースには彼の閲覧記録がそこら中に点在していたほどだ。

 その知識はポケモンの保護を目的としていたエーテル財団には非常に好意的に受け入れられ、特にリーリエとはポケリフレなんかをしてよく遊んでいたような記憶がある。

 

 ……今思えば、この時ルザミーネは彼をどう扱うかについて考えていたのだろう。奇跡的に手に入った唯一のFallだ、下手に弄って壊れてしまってはたまらない……なんてのはふざけた思考回路だが、おおよそそんなところだと思う。彼からすれば最後の自由だった訳だ。

 

 

「――なぁグラジオ。俺、今はお前らの世話になってるけど……いつかはポケモンと一緒に旅をしてみたいんだ。色んな地方をまわって、色んなポケモンを捕まえて、たくさんバトルして、たくさんの思い出を作るんだ。絶対に楽しいぜ!

 ……そんでさ、グラジオ。もし良かったら、その旅はリーリエと、お前と――」

 

 

 彼との最後の会話を思い出す度に、俺は自分を殴りたくなる。

 初めは観察対象としてエーテルパラダイス内を自由に生活していた彼であったが、ある日からすっぱりと彼の姿を俺は見なくなった。そしてその日が、彼の地獄の始まりだったのだ。

 

 財団の研究データを見る限り、彼にはある一つの特殊体質が見られたらしい。それが、「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」を可能とする体質であった。

 

 この際能力の内容はどうでもいい。結果として、ルザミーネはこの力を欲した。それも当然だろう。仮にこの力を自由に使えたとしたら、コスモッグの進化などとうの昔に終えていたのだから。

 

 しかしこの力には一つの問題があった。それは能力を使用すればするほど、触媒となる彼の肉体に悪影響が出るということだった。それも、数度で命に関わるほどの。

 ルザミーネはこれを問題視した。しかしそれは人道上の配慮からではなく、1度や2度の能力行使で死んでもらっては困るという、極めて利己的な考えからだった。

 

 結果、ルザミーネは彼の肉体改造に踏み切った。

 それが、「プランχ(カイ)

 数年前に凍結済みの計画だ。

 

 その内容については俺も触れたくないようなものであった。聞きたいというのならば話すが……そうか。なら次の話に行こう。

 

 そのプランχは初め、極めて順調に進んでいったという。途中で本来の予定に無かった後天的な超能力開発まで視野に入れられたほどだ。尤もそれは元々の能力との両立が不可能だったらしく、結局計画は頓挫したそうだが。

 

 しかし、プランが順調に進むということと彼の苦痛が少ないということはイコールで結ばれなかった。かつてのデータベースを見ると、おおよそ人の所業とは思えないような実験結果が記載されている。

 初めてデータを閲覧した時は、思わずモニターを叩き割ってしまった。……? ああ、今も拳を握ってしまっていたか。すまない、まだ割り切れていないようだ。

 

 

 そしてプランχも最終段階に入り、彼が姿を消してから1年ほど経ったある冬の日。

 エーテルパラダイスにおける十のウルトラホールの発生、それに伴う実験体χの脱走、とデータベースには記録されている。

 

 後から話を聞いてみれば、元々アローラに生息していたウルトラビーストが彼に接触し、彼の能力を以てウルトラホールが開かれたという。

 当時の何も知らなかった俺は一体何が起きたのかもわからず、リーリエを連れて行くために避難誘導の放送に逆らって動いていた。

 

 そしてパニックになった職員たちを掻い潜り、俺は何とかリーリエと合流した。しかし、突然のことで冷静に動けていなかったのだろう。俺たちがとった道筋は避難経路からかなり逸れたものであった。

 

 そうして俺たちだけ逃げ遅れていると、何の偶然かちょうど地下施設を脱走した彼との再会を果たした。

 

 

「グラ……ジオ……? ……リー、リエ?」

 

 

 あの時の彼の表情は今でも鮮明に思い出せる。

 かつて一緒に遊びまわった時の元気な様子は影もなく、綺麗だった黒髪は色素が抜け落ちて真っ白になっていた。

 

 何も知らなかった、無力だった俺は彼に何も言葉をかけることができなかった。

 十一の異形――ウルトラビーストを連れた、変わり果てた彼の姿にただただ怯えてしまっていた。彼の言葉に、何も答えることが出来なかった。

 

 あの時――いや、もっと前にルザミーネを止める力を俺が持っていれば。

 あんなにも、悲しそうな表情を彼にさせることはなかっただろう。

 

 彼は俺たちには何も手を出さず、ただ悲しそうな顔をしたままその異形たちを引き連れ去って行った。

 その日のエーテル財団の被害はいくつかの紛失したウルトラボールと破壊された地下施設のみであり、人的被害はゼロに等しかったという。

 

 あれ以来、ルザミーネの狂気は一段と進んだ。順調に進んでいたプランが全て水の泡となったのだ、他で取り返そうとするのも当然だろう。

 

 俺とリーリエにより狂気を押し付けてくるようになり、遂には俺もエーテル財団の真実に気が付いた。

 そうして年月が経った後、俺はヌルを連れて逃げ出し、リーリエもコスモッグを連れて逃げ出した。

 

 …………それが、全てだ。

 

 

◆◆◆

 

 

「………その、なんというか」

「ああいや、特に何か感想を求めている訳じゃない。最初にも言った通り、ただの懺悔だ。お前には付き合ってもらう形になってしまったな、すまない」

 

 語り終わり、何か言おうとしたミヅキを遮ってグラジオは立ち上がる。

 しかし懺悔とは言うものの、彼の拳は話しているときからずっと握られたままであり、全く心労が軽くなった様子を見せない。ミヅキはなおも言葉をかけようとするが、中々言うべき言葉が見当たらなかった。

 

「いや、でも……」

「………そうだな。じゃあ、一つだけ頼んでもいいか」

 

 引き下がるミヅキに折れたような形でグラジオが一つの頼みごとをする。当然、ミヅキは頷いた。

 

「彼の名前を覚えていてくれないか。彼の名前は、カイ。ウルトラホールの影響か、名前を失っていた彼にかつてルザミーネが付けた名前だ。今思えば、χ(カイ)というコードネームが先に付いていたのだろうが」

 

 どこかで聞いた名前だな、と思いつつ口の中で反復する。彼はこの名のことをどう思っているのだろうか。

 

「もしかしたら、有名になってたりするのかもな。カイは本当にすごい奴だった。俺は時事に疎いところがあるし、案外どこかで活躍してたりするのかもしれない。もしそうなんだとしたら、今すぐ当時のことを謝りに行くんだが。……フッ。笑え、希望的観測だ」

 

 そう最後に言い残して、グラジオはリーグを後にした。

 

 一人きりになった玉座の間でミヅキはふう、と息を吐く。

 

 今日は朝から重い話を聞いてしまった。アセロラの元にでも遊びに行こうと気分を新たにし、落ちていた新聞を捨てて出かける支度をする。

 そのカイとやらの少年の話にはひどく共感するし、何とかしてあげたいとは思うがぶっちゃけ私にはどうしようもなさそうな感じだ。そういうのはリラさんとか国際警察の仕事だろう。

 

 アセロラと今日は何の話をしようかな、と考えていると、先の新聞を捨てる時に目に入った今日開催されるというガラルリーグの話が思い浮かぶ。

 何でも聞いた話では随分と幼い女の子がチャンピオンに挑むかもしれないらしい。もしその子がチャンピオンになったら私と一緒だな、なんて思いつつ服を着替えるのであった。

 




 累計ランキングにとうとうこの作品も載ることが出来ました。本当にありがとうございます。
 これは余談なのですが、累計入りする点数のハードルが昔と比べて高くなっていますね。私の別作品が累計入りしたときは総合評価13000点くらいで載った記憶がありますが、今見ると境界線の300位でも16000点ほどです。
 これがハーメルンのアクティブユーザーが増えたことによるものならば、非常に喜ばしいことですね。

 また、これも非常に嬉しいことなのですが、問屋様から挿絵を頂きました!
 素晴らしい絵を描いて頂き、本当にありがとうございます!


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withローズ

今話は主人公の登場シーンも少なく、原作イベントを進めるだけになってしまっています。
早く最終決戦を描きたい…。

ファイナルトーナメント決勝、ユウリVSキバナから始まります。


 スタジアムの熱気。それは、試合がクライマックスを迎えることで更なる高まりを見せていた。

 自然、その中心にいる選手たちの口角も上がってくる。ファイナルトーナメント決勝まで勝ち抜いてきたチャレンジャー・ユウリに相対するジムリーダー・キバナは、今まさに己の相棒たるキョダイマックスジュラルドンに全てを懸け乾坤一擲の大勝負に出ようとしていた。

 

「――ハハッ、流石だぜユウリ! まさかこのキバナ様をここまで追い詰めるとはなァ! だが、まだまだここから――」

 

 

「”追い詰めた”? 何を言っているんですか、キバナさん。既に勝負は終わっていますよ」

 

 

「――な、に?」

 

 ユウリの言葉と同時、赤い閃光が放たれながらジュラルドンのキョダイマックスが解除される。

 キバナのジュラルドンは、とうの昔に限界を迎えていた。その限界突破の源であった彼らの絆と意地の力が、先の一撃でとうとう切れてしまったのである。

 

 倒れ伏す鋼竜。それをただ茫然と見つめるキバナの姿は、彼のファンからすれば涙を誘いすらするものであった。

 

『なんと! なんとなんとなんとォォォーッ! ユウリ選手のエースバーンの一撃が、キバナ選手のジュラルドンにクリイィィーンヒットォォォ! ジュラルドン立ち上がれない! 審判の声が響き渡る! 優勝ッ! ユウリ選手、優勝です! 未だ幼きチャレンジャーが成し遂げた偉業に、会場は沸き上がっております!

 ビート選手の乱入、カイ選手の不在など波乱の中始まったこのファイナルトーナメントですが、まさかまさかの結果です! 最強のジムリーダーキバナが敗れ! 勝ち上がったのは! 期待の新星チャレンジャー・ユウリッ! 会場はッ! 会場は歓声に包まれております! この選手ならば! このかつてのチャンプを思わせるような勝ちっぷりを示した少女ならば! 無敵のチャンプ! 十年間無敗の男ダンデに! 勝てるのではないかと! その溢れんばかりの期待で! 叫ばずにはいられないのです!

 強すぎるのです! 強すぎるのですッ! 誰もが期待しております! 誰もが魅了されております! その余りの強さに! その余りの底知れなさに! 心奪われずにはいられません! ガラル最強を決める戦いは! もうすぐそこまで迫っております!!!』

 

「戻っておいで、エースバーン」

 

 鼓膜が破けるかと思うくらいにうるさい歓声の中、勝利の雄叫びを上げているエースバーンのダイマックスを解除してボールに戻す。

 ファイナルトーナメント優勝で()()なのだから、チャンピオンに勝った時は一体どうなるのだろうか。耳栓の購入を考えておく。

 

 スタジアムの熱狂も未だ冷めず、項垂れるキバナさんと握手をして観客席に一度手を振ったらすぐに控室に向かって歩き出す。この後はチャンピオンマッチなのだ。コンディションを整えなければいけない。

 

 回復のためポケモンたちをリーグ委員に預け、椅子に座って一人になればようやく落ち着ける時間がやって来た。

 目を閉じ、体を休ませていれば思い浮かぶのは、昨日のローズタワーでの出来事である。

 

 

 ――そうか。じゃあ、楽しみにしてるぜ

 

 

 300mの上空から身を投げる彼の姿を思い出す度に全身が震え上がる。

 最も近くにいたダンデさん曰く落ちる途中で姿が消えたと言うから、「テレポート」か何かで移動したのだろう。しかしファイナルトーナメントの開会式に姿を現さなかった時はもしかするのではと気が気でなかった。

 ローズ委員長の言では体調などに問題はないらしいが、それならば何故休んだのだろう? 対戦表では彼の1回戦の相手はサイトウ選手であり、タイプ相性的に敗色濃厚なのは認めるがだからといって棄権するような人物じゃないことはわかっている。

 

「……やっぱり、最近起こってる事件と何か関係あるのかな」

 

 パワースポットで頻発するダイマックスポケモンの暴走に、昨夜のローズタワーでのダンデさんとローズ委員長の会話。マクロコスモスという会社のことを怪しんでしまうのも致し方ないだろう。

 

「…………うーん、わっかんない!」

 

 普段からバトル以外で考え事をしない頭はあっという間に限界を迎える。今はチャンピオン戦に備えるべきだろう。難しいことを考えるのはそれからだ。チャンピオンになりさえすれば、ジムリーダーは立場として私の下につく。そうなってしまえばこちらのものだ。色々複雑な事情が絡んでいても、どうにでもなるだろう。

 

 考えを放棄した私は脳内でチャンピオン・ダンデとの戦いをイメージする。

 彼は流石に他の人たちと同じようにはいかない。きっと恐らく、「四匹目」まで使わされることになるだろう。

 

 それにしても、この旅でパーティが6匹埋まらなかったのは少し想定外だった。何というか、いまいち「当てはまる」ポケモンが見つからないのである。5、6匹目のポジションには()()()()()()()()()()、とでも言うような感覚があるのだ。

 

「まあ、とりあえずクッション役としてそれなりに鍛えた子たちを用意してるけど……多分、使わないだろうなあ」

 

 というか、使えない、という方が正しいか。

 チャンピオンの前に生半可なポケモンを出してしまえば、そこから彼の無双劇の準備が始まってしまう。相手のポケモンの能力上昇の切っ掛けを作ってしまうようなポケモンのことを起点、なんて言ったりするがその起点になってしまう可能性が非常に高い。いない方がマシ、というのは幾らなんでも言い過ぎだが、4匹だけで戦った方が勝利への道筋がより太く見える。

 

「……うん、そうだね。あの子を使いさえすれば……『終わり方』も見えた。懸念要素も、トレーナーの方の精神面に何か変化があったっぽいことぐらいだけど……()()()()()()()()()()()()

 

 近年は根性論を否定する風潮が強いが、気持ちというのは勝負において間違いなく重要なファクターである。従って、そこに変化が起きたのならば実力の方にも変化が出てしかるべきと言えよう。先の言葉は何処か覚悟を決めた様子を見せるチャンピオンに抱く感想としては不適切かもしれない。

 

 だが、()()()()()()()。私は負けない。私は「彼」以外の誰にも負けられない。

 「彼」を叩き潰すのは私だし、「彼」に叩き潰されるのも私だ。「彼」の座らない王座ならば、私が貰っても構わないだろう。

 

 現チャンピオンが就任してからのこの10年をダンデ時代と呼ぶ人もいるが、時代というのは進んでいくものだ。そろそろ、その「彼」を好き勝手できる地位を譲ってもらう。

 

「ユウリ選手! ポケモンの回復が完了しました。準備が出来次第、試合を開始しようと思いますが……」

「はい、構いません。最後にポケモンたちと作戦のすり合わせをしたらすぐに向かいます」

 

 何はともあれ、その時はやって来た。

 「彼」に手が届くまで、ほんの僅かである。チャンピオン・ダンデは私の障害になり得ない。

 

「じゃあ、みんな……いくよ」

 

 王座は既に、私の手にある。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 他より遥かに数の多いシュートスタジアムの観客席。

 しかし容易に埋まったそれからの声で、コートは一時も静まりを見せない。

 

 そんなコートの中心、ただ静かに一人佇むはチャンピオン・ダンデ。

 対しゲートを潜り抜け、登場と同時により一層観客を沸かせるはチャレンジャー・ユウリ。

 

 今も昔も、王者が挑戦者を迎え撃つという構図は変わらない。

 唯一、この場において不可解な点があるとすれば――それは、挑戦者の顔に恐怖の色が全く見られないことであった。

 

「――ようこそ、チャレンジャー。この場にキバナ以外を前にして立つのは随分と久々だ。推薦状を渡したときから既にもしやと思ってはいたが、本当にここまでやって来てくれるとはな。俺も、ポケモンたちも、これからの戦いを楽しみにして全身が震えている!」

 

「――そうですか。それはそれは……きっと、途中から恐怖の震えに変わってますよ」

 

 ユウリの挑発にも、白い歯を見せ笑って返すダンデ。

 ガンマンのように背を向かい合わせ、それぞれの定位置へ着く。

 

 一瞬訪れる静寂。

 先ほどまで会場外にすら届くほどの音量を出していた観客たちですら、その一瞬に飲み込まれる。

 

 しかしその静寂は嵐の前の静けさ。王者と挑戦者は、今か今かと背合わせの敵に襲い掛かる瞬間を待つ。

 

 そして審判の合図で振り返り、いざ互いの喉を食い破らんとしたその時。

 一つの声が、シュートスタジアムを支配した。

 

 

 

ハロー! ダンデくんにユウリくん!

 

 ガラルの未来を守るため ブラックナイトをはじめちゃうよ!

 

 ただブラックナイトのエネルギーが溢れ出して危ないんだよね……!

 

 ダンデくんが話を聞いていたら こんなことにはならなかったのにね!

 

 

 

 同時、コートの中心を貫きながら顕現する光の柱。

 見慣れた色のそれはダイマックスの源、ガラル粒子の暴走だと知識を持つものに気付かせるが、彼らは更にモニターに映る映像を見て愕然とすることとなる。

 

 ローズ委員長の映るモニター。その映像が切り替われば、ガラル各地のパワースポット全てで同現象が起きている様子を映し出していた。

 

「な……!」

 

 絶句する観客。その間もモニターは各地の異常を映し続け、遂にはナックルシティを黒い渦が覆い始めた。

 そんな中、ダンデとユウリはいち早く状況を理解して動き出す。

 

「ユウリくん! すまない、戦いはまた今度になりそうだ!」

「はい、わかってます。私も今すぐナックルシティに向かって――」

「いや、大丈夫だ。ローズ委員長の暴走の責は恐らく俺にある……。君はここで待っていてくれ! 危険かもしれないから、なるべくパワースポットからは距離を取るんだ!」

 

 助けを申し出るユウリを拒み、一人ナックルシティへ向かうダンデ。そこには、チャンピオンとしての、そして何よりガラルを生きる大人としての責任感があった。

 

「ユウリ! 今の、一体なんだったんだ……? 俺もう訳がわかんないぞ!

 とにかく、アニキの助けに行かなくっちゃだ! ローズ委員長が言ってたブラックナイトって、どっかで聞いたことがあったよな。確かソニアが……」

「……! それ、それだよ! きっと、『まどろみの森』に何かがある!」

 

 直観的にこのままでは不味いことを悟っていたユウリは、突然の事態に応援席から駆け寄ってきたホップの言葉で「正解」を手繰り寄せる。それは彼女の資質であり、彼女を勝利に導いてきた力であった。

 

 そして彼らは、向かった先で二つの伝説の証を手に入れることとなる。

 それはガラルを襲う黒夜に対する、確かな希望であった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「――今頃、まどろみの森を出たくらいかなあ」

「……? なんのことでしょうか、カイくん。今は少々興奮していまして、あまり頭が回っていないのですよ」

 

 俺の言葉に反応したローズ委員長に、何でもないと手を振って返す。

 現在俺がいるのはナックルシティのエネルギープラント。ブラックナイト、即ちムゲンダイナは既に目覚め、ダンデがその身を尽くして制御を試みている。

 

 これまた隣でダンデの勝利を心待ちにしているローズ委員長は、温め続けていた計画の実行で少々気分が高揚しているようだ。

 結果も知らずに、呑気なことである。

 

「それにしても、本当に皮肉に思いませんか?」

「……何をだ?」

「ブラックナイト――いえ、ムゲンダイナのことです。彼は一体どこから来て、そしてこの地で眠るに至ったのか。神話の伝承では間違いなく彼の竜は外来の種であり、二匹の英雄に撃退されたと伝えられています。しかし、今では彼を源とするガラル粒子はガラル地方中に満ちており、二匹の英雄の伝承は捻じ曲げられ人々に忘れ去られている。

 ――これではまるで、ムゲンダイナの方がガラルの王ではありませんか」

 

 珍しくもローズ委員長にしてはわかりやすく、そして意味のない話だ。

 適当に気のない返事をするも、彼の話は続いていた。

 

「そしてこれからはそれが真実となっていくでしょう。ダンデくんの制御下に置かれたムゲンダイナの生体エネルギー、まさしく無限大であるそのエネルギーによってガラルは更なる発展を遂げます! 輝きの尽きぬ町々! いつ何時ガラルのどこに目を向けても、眠らないそれが見えることでしょう!」

 

 演説のように腕を振り上げて語るローズ委員長。その目には、確かにガラルに対する愛と狂気が共存していた。

 

「――ですから。その計画を邪魔しようとするキミには、少々ご退場願いたいのですよ」

 

 突如語気を変えるローズ委員長。

 その視線の先には、息を切らしながらも走って来たホップが佇んでいた。

 

「俺には、ローズさんの言ってることがイマイチわかんないけど……オリーヴさんに、頼まれたんだ! ローズさんも助けて、アニキも助ける! そこを、通させてもらうぜ!」

 

 モンスターボールを構え、ローズ委員長に対し啖呵を切るホップ。

 それに対しローズ委員長は、ひどく気味の悪い笑みを浮かべながらボールを手に取る。

 

「ポケモン勝負は久しぶりなんですがね……ま、相手してあげましょう」

 

 その言葉を切っ掛けに、二人は互いに鍛え上げられたポケモンたちを繰り出す。

 そんな彼らのやり取りを俺は、ひどくつまらなそうに眺めていたことだろう。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「それ、どかーんと一発! ダイオウドウ、『キョダイコウジン』です」

「――ッ! ゴリランダー!」

 

「…………勝負あり、だな」

 

 ローズ委員長の有名な経歴の一つに、かつてのジムチャレンジにおける準優勝者というものがある。

 無論、実力もそれに見合うものを持つ。加えて積み重ねてきた年月の差もあれば、同じ準優勝者同士であれど片方に軍配が上がるのも当然の摂理であった。

 

「ホップ! やっと追いついた……って、ローズさんにカイさん!? しかもバトルしてるし……いやほんとにどういう状況?」

 

 決着のついた戦場に遅れて現れたかと思えばすぐに顔を引っ込めてボソボソと何かを呟くユウリ。相変わらずどうかしている。

 

「おい、何やってんだ? 用があったんだろ」

「わ、ひゃ、ひゃいっ!」

 

 俺が声をかけると、彼女は奇声を上げながら慌てた様子で飛び出してくる。

 相変わらず俺の前に立つときはどこか顔が赤い。彼女らしくないが、緊張でもしているのだろうか。

 

「すまねえ、ユウリ……! 負けちまった俺の代わりに、ローズさんを止めてくれ!」

「え? あ、うん、任せて!……ローズさんってトレーナーだったんだ……知らなかった……

 

 何事かを呟きながら、ポケモンを繰り出すユウリ。作戦でも吹き込んだのだろうか。ローズ委員長も、やれやれといった様子でもう一度前に出る。

 

「連戦ですか……この年では少々厳しいものがありますね。

 ですが、これもガラルのため。わかってくれないというのならば、こちらも実力を以てお答えしましょう」

 

 再度ボールを構え、お得意のはがねタイプを繰り出すローズ委員長。

 それに対しユウリは一瞬目を細めながらも、淡々と自身のポケモンに指示を下すのであった。

 

「おい、ホップ。お前は……ダンデの元に行くんだよな」

「……? ああ、そうだぞ! アニキを助けに行くんだ!」

 

 一方、その戦いを眺めるだけの俺は同じく眺めているホップに今後の行動について確認をする。

 そして返ってきた回答に、俺は息を一つ吐いて口を開く。

 

「それじゃあ……アイツに伝えといてくれ。『たとえ俺がどうなっても、お前のせいじゃない』ってな」

 

 俺の言葉に不思議そうな表情を浮かべながらも頷いたホップを確認すると、ローズ委員長とユウリのバトルを後目にエネルギープラントを去る。

 あの二人のバトルは既に大勢が決していた。ホップとの戦いで消耗していたローズ委員長では、ユウリの2匹目すら引きずり出せずに負けるだろう。直に決着はつく。それならば、そろそろ俺も準備を始めなければいけないというものだ。

 

 終わりの時は、近づいている。







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VSムゲンダイナ

ユウリ視点から始まります。


 

 ローズ委員長を打ち破り、ホップと共にダンデさんの元へ向かったその先。

 そこでは既に、伝説と最強の戦いは佳境を迎えていた。

 

「リザードンッ! 決めろ、炎の究極技! 『ブラストバーン』だッ!」

BaGuaaaaaa!!!!

 

 立ち昇る爆炎。それはムゲンダイナと呼ばれていた竜を焼き焦がし、果てには建物の一部を融解させる程の熱量を誇っていた。

 

「アニキッ!」

「おお、ホップにユウリくん! 二人とも安心してくれ。相手がガラル粒子の源だからか、ダイマックス出来ずに手こずってはいるものの俺は負けない! チャンピオンタイムもクライマックスだぜ! ムゲンダイナ、捕獲する!」

 

 リザードン以外のポケモンが負わせた傷もあるのだろう、火傷以外にも大小様々な傷を作ったムゲンダイナは確かに弱っているように見えた。ボールを投げたダンデの判断は、誰の目から見ても正しいように思える。

 

 

 ――しかし。ユウリは直感でこの状況が不味いことを悟った。

 

 

 すぐにボールに手をかけポケモンを繰り出そうとするも、バトルの形勢判断に優れたユウリの目と頭脳は既に間に合わないと一瞬で判断を下す。

 そしてすぐに、ダンデも同じ判断に至る。

 

 二人の前に躍り出るダンデとリザードン。

 ボールの中に一度納まったかのように見えたムゲンダイナは、その無限大のエネルギーの解放と共に姿を再度現した。

 

 

 

Aa――AAAAaaaaaaaa!!!!!!!!

 

 

 

 解放されたエネルギーの余波を直に喰らうダンデとリザードン。

 最強であるはずのコンビは、伝説という暴威の一撃、僅か一撃で膝をついた。

 

「グ、クッ……!」

「Guaaa…………」

 

 ――庇われた。私たちの存在が、無敵のチャンプの邪魔をした。

 何が起こったのか理解できないといった顔をしているホップとは対照的に、ユウリは正しく自分の現状を把握していた。

 

「――ッ、ク、ソ……! まだ、ここで、倒れる訳には……! 彼に、誓ったんだ……!」

「……Ba…ba…Guaa…aaaa……」

 

 倒れ伏すチャンプたちに対し、段々と眠らせていた力を解放させつつあるムゲンダイナ。

 その光景はまさしく、侵略者に対するガラルの敗北を意味していた。

 

「――エースバーン」

Aa……Aaaa?

 

 ムゲンダイナは思考する。

 目覚めてすぐにやって来た変な人間はちょこまかと鬱陶しかったものの排除した。後は自らの力でこの地を覆い、再度やって来るであろうあの二匹の犬めを今度こそ叩き潰してやる、と南――まどろみの森に体を向ければ、またもや一匹の人間が現れたではないか。

 何だ、立つにしても我が前に立つのは不敬と言わざるを得ない。いち早く服従の意を告げにきたのだろうか。ならば、疾く頭を垂れよ。

 と、礼儀知らずの人間に重圧を以てひれ伏せさせることにした、その時。

 

「『しねんのずつき』」

――!!

 

 ユウリの指示と同時、エースバーンの変幻自在の動きがムゲンダイナに直撃を与える。

 慌てて熱エネルギーを生み出し、火を吹いて追い払った時には既に5撃のクリーンヒットを喰らっていた。

 

「AAAaaaa――!!」

 

 今度は兎風情めが我が覇道の邪魔をするか!

 怒りに震えるムゲンダイナは体内に蓄積されたガラル粒子を活性化させ、後に「ダイマックスほう」と呼ばれる技を繰り出す。

 

 精製される純粋なエネルギー。膨大なそれは光という形態を介して漏れ出し、ビームという形を以て放出される。

 

 ガラル粒子を源とするエネルギーから成るそれはダイマックスポケモンに対する非常に大きな特攻性を持つが、それを除いてもただのポケモンには十分を超えて過剰過ぎる一撃であった。

 

アイアンヘッド

――!!!!

 

 しかし、これまたユウリの一言があればエースバーンはそのビームの直撃を喰らいながらもムゲンダイナの体躯に一撃を入れる。

 目覚めた矢先から現在のガラルにおける最強を立て続けに相手したムゲンダイナは、弱者であるはずの人間に良い様にされているという事態に混乱の極みに置かれていた。

 

「Aa――AAaaaa――AAAAAAAaaaaaa!!!!!!!!」

 

 何だ、この生き物共は。自身より明らかに矮小な存在である筈なのに、どうして今の一撃を喰らって生きていられる――!

 

 混乱の中にありながらも、本能的に現在の敵には火焔の一撃が有効であると判断したムゲンダイナは体内の機関の稼働率を上げ即座に莫大な熱エネルギーを生成する。

 

 回避は最早間に合わなかろう。一撃を入れ、してやったりなどといった顔をしているこの兎めは体勢が崩れている。少しばかり本腰を入れて生み出してやったこの炎の一撃で焼き尽くせば、ようやくこの生き物も終了だ。

 

 エースバーンの目前に迫った灼熱の炎は至近距離であるが故に、躱すことも能わず――

 

 

――『ふいうち』

 

 

 その身を焼き焦がさんとした瞬間、敵の姿が掻き消える。

 同時、背面に喰らう神速の七連撃。

 

A――Aa――AAAAAAAAaaa――!!!!!!

 

 一体何度虚仮にしてくれるというのか。最早形振り構わぬといった様子で辺り一面を火の海と化すムゲンダイナに、エースバーンは一度距離を取る。そして、今度は後ろに立つ人間風情が口を開いた。

 

 

「――あぁ。君、良いね。中々賢そうなところが気に入ったよ。5匹目が埋まった」

――――a?

 

 今、この人間は何と言った?

 まさか、まさかではあるが――この我の、上に立つとでも?

 

 

「AaaaaAAAAaaaaaaaaAAAAAAAaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」

 

 

 最早我慢ならぬ。これまで行っていた手加減など捨て、至近距離にて確実に仕留める。

 エネルギーを敢えて不純な形で精製することにより、あらゆる生命にとって有害と化したその一撃を眼前の兎に浴びせようと襲いかかる。

 それは見るものが見れば「クロスポイズン」と呼ぶ技。さりとて珍しい技ではあらねど、使い手が伝説であれば全く話は異なる。先ほどまでの数倍のスピードで動いたムゲンダイナの一撃を、エースバーンは為す術もなく喰らってしまい――

 

 

『カウンター』

 

 

 ――その威力の全てを、倍にして跳ね返した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ようやくマトモな一撃が入ったな、とユウリはエースバーンの「カウンター」を喰らって悶え苦しむムゲンダイナを見つめて思う。

 やはり伝説は伝説。どれだけ綺麗に弱点攻撃のクリーンヒットを打ち込もうが、まるで効いている様子を見せなかった。ダンデさんとのバトルで消耗してすらこれなのだから、一人で戦っていたらジリ貧だったかもしれない。

 

 しかし、やはり有効打は敵の力を利用した一撃。伝説を倒すには伝説をぶつけるしかないというのは有名な話だが、ユウリの視点からしてもマトモにムゲンダイナとぶつかり合えそうなのは隠し続けていた四匹目くらいなものであった。エースバーンなどといった一般ポケモンで戦うには、先のようにムゲンダイナの力を逆に返すしかあるまい。

 

A――A――aa――

 

 自身の目に見える中々に細い「勝ち筋」を辿っていると、急にムゲンダイナがエースバーンから距離を取り始めた。こちらの射程圏外からビームを撃ち続ける気だろうか。一応遠距離攻撃として「かえんボール」などがあるが、離れ過ぎるとそれも届かないし、そもそも接近戦を得意とするエースバーンには少々不味い展開だ。そう考え距離を詰める指示を出そうとしたが、すぐに自身の推測が間違っていることに気付く。

 

 

「――aaa――――AAAAAAA!!!!!」

 

 

 体内の機関から膨大なエネルギーを放出したムゲンダイナは、まるでロケットのように天高く舞い上がる。

 その姿はすぐに流星の如く光り輝くのみとなり、見失ったかと思えば突如空に(あな)が出来た。

 

 黒い空に生まれた大穴は黒より暗く、それでいて光り輝く矛盾した存在であった。

 その孔よりこちらの世界を覗くはムゲンダイナ――その、ムゲンダイマックス個体とでも言うべきものである。

 

 彼が有するは無限大のエネルギー。それも、先と違って出力上限を取り払われたまさしく(ムゲンダイ)を象徴する存在。

 余りに膨大なエネルギーは、重力エネルギーという形で溢れ出るごく一部のそれだけで、地球の万有引力を優に狂わせる力を誇っていた。

 

 敵の姿は巨大に過ぎる。

 一本の触腕の形をとって顕現しているムゲンダイナは、余りに他と隔絶した存在であった。

 

「ユウリ! なんなんだよあれ……デカ過ぎるぞ! 俺も一緒にやる!」

 

 そう言ってゴリランダーを繰り出すホップであったが、ユウリは首を横に振る。

 ()()は、ダメだ。勝てる相手じゃない。今すぐ他地方に要請を送り、伝説の使い手を連れて来ないと手遅れになる。きっとガラルは滅ぶことになるが、まだ世界は救える――ホップに助けを呼びに行かせ、自身は命を捨てる覚悟を決めたその時。ふと、ユウリの頭脳は「正解」を導き出す。

 

「違う――かつてのガラルは、あのブラックナイトを打ち破った。伝説以外では勝ち目のないあの竜を、『二匹の英雄』が、二匹の伝説が打ち破った――!」

「そうか、この盾と剣! きっと、まどろみの森で出会ったあのポケモンが!」

 

 二人はまどろみの森で手に入れた「くちたけん」と「くちたたて」を構える。

 そしてその動作はまさに、二匹の英雄を呼び覚ますのに必要な儀式の全てであった。

 

 

 瞬間、輝く赤と青の光。

 ガラルの南端――まどろみの森に眠っていた二匹の王が、この地を襲う脅威を打ち破るために光の速度で飛来して来た。

 

 

「AAAAaaaaaa――!!!!!」

 

「URuOoooooo――!!!!!」

 

「URuWowoooo――!!!!!」

 

 

 ムゲンダイナはかつて自らを封じた仇敵への怒りを。

 ザシアンとザマゼンタは自らの統治するガラルへ侵略してきた狼藉者への怒りを。

 

 それぞれがそれぞれの感情を込め、世界を震わせる声を上げる。

 

 三者三様ながら、全て伝説。

 存在するだけで発生する力場は、並のポケモンでは見るだけで平伏するほどのものであった。

 

 やがてその重圧に圧倒されるのみであったユウリとホップの手から「くちたけん」と「くちたたて」が浮き上がる。それらは互いに合わさって蒼紅の光を発し、二匹の王に真なる姿をもたらした。

 

 蒼き光を纏ったザシアンは「剣の王」に。

 紅き光を纏ったザマゼンタは「盾の王」に。

 

 ムゲンダイナの発生させていた力場は最早霧散した。

 ここには、ただ同格の存在が三者存在するのみ。

 

 

 ――なれば。世界を滅ぼさんとする外敵に、世界を守らんとする英雄が負ける道理はない!

 

 

「エースバーンッ!」

「ゴリランダーッ!」

 

 ムゲンダイナの重圧から解放された二人も、己の相棒たるポケモンを出してザシアンとザマゼンタに並び立つ。

 ここに在る英雄の数は四。対し敵の数は一。ユウリの能力(ちから)は既に、ムゲンダイナに対する勝ち筋を導き出していた。

 

「AA――AA――Aaaaaaa!!!!」

「URuWoooo――!!!!」

 

 ムゲンダイナの放出するエネルギーは、英雄たちに襲い来る直前でザマゼンタの護りに阻まれる。

 

「URuOoooo――!!!!」

 

 それに対しこちら側はザシアンがその剣を以てムゲンダイナに一撃を加える。

 それはガラル粒子に対する特効性を持つ一撃であり、竜の触腕は目に見えてダメージを負っていった。

 

「AAAAAaaaaaa!!!!」

 

 すると今度は、護りに阻まれた一撃より強力な一撃を放ってくるのが道理というものであろう。

 これまた後に、「ムゲンダイビーム」と呼ばれるムゲンダイナ最強の一撃が数瞬の溜めを以て放たれた。

 

「ホップ、合わせて!」

「お、おう! 行くぞ、ゴリランダー!」

 

 なれば、先よりも強い守りを展開すれば良いだけのこと。

 ユウリのエースバーンとホップのゴリランダーはその種族特有の力を放って威力の減衰を試みる。

 

「Faineeeee!!!」

「Graaaaaa!!!」

 

 二匹より放たれるは世界でも極僅かな伝承者たちに受け継がれる、「ほのおのちかい」と「くさのちかい」と呼ばれる技。

 知識として持っていたのはこの場ではユウリのみであったが、二匹のポケモンは伝説のポケモンとの対面という極限状態に置かれたことで最善の一撃を本能で編み出した。

 

 その技は、世にも珍しき「合体技」の一つ。

 炎の誓いと草の誓いが合わさった時、燃料を得た炎は舞い上がって火の海を作り出す。

 

「URuWoooooooo――!!!!」

 

 二匹の合体技で減衰されたムゲンダイナの最強の一撃は、盾の王によって防がれた。

 対し、ムゲンダイナは「ムゲンダイビーム」の反動によって一時硬直する。

 

「URuOoooooo――!!!!!」

「URuWowoooo――!!!!!」

 

 その隙を逃す二匹ではない。

 「きょじゅうざん」と「きょじゅうだん」と呼ばれる二匹の最強の一撃が、無限を司る竜に襲い掛かる!

 

 

「「いっけええぇえええ!!」」

 

「AA――AA――AAaaaaaaaaaaa――!!!!!!!」

 

 

 

 

 二筋の光が、ガラルの黒雲を貫いた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「――よし、捕獲完了っと」

 

 ムゲンダイナの打倒に成功し、ボールを投げれば拍子抜けするほどに簡単に捕まった。

 それほどあの一撃は堪えたのだろう。これからこの子を鍛えていくのが楽しみである。

 

 ホップはムゲンダイナの一撃を喰らったダンデさんの様子を看ているようだ。幸い命に別状はなく、意識もはっきりしているようだが本当に申し訳ないことをした。最終的にガラルを救ったのでノーカンにはしてくれないだろうか。

 

 それにしても、二匹の英雄は本当に強かった。出来ればパーティに入って欲しい。今もその佇まいはまさしく王者のもの。戦いが終わった後も未だに警戒を緩めず――緩めず? 一体、何に警戒をして――――

 

「あ、そうだアニキ! 今言うことじゃないかもしれないけど、カイさんから伝言だ!

 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』……だってさ! 一体何のことだろうな?」

「な……」

 

「――いやあ、お見事。流石は最強のチャレンジャーですね。ムゲンダイナがダンデくんを倒してしまった時は、本当に肝が冷えました。心から感謝します」

 

 ホップが「彼」からの不穏な伝言を伝えると同時、現れたのは全ての元凶たるローズ委員長。

 二匹の英雄は、彼が現れてからますます警戒を募らせている。

 

「……ローズ、委員長……。ムゲンダイナはユウリくんが捕獲しました。もう、その計画とやらは……」

「ああ、いいのですよ。無理に喋らないでくださいダンデくん。私の為すべきことは知っていますから。きちんと全てが終わった後はこの身を司法に委ねますとも」

 

 痛む体を起こし、息も絶え絶えになりながら話すダンデさんを気遣うようなローズ委員長。

 彼が自首するというのならば、全てが解決するのに――どうして、こんなに私の直感は警鐘を鳴らしている?

 

「ところで…………どうしてムゲンダイナは捕獲されたのに、まだ空の孔は閉じていないんだと思います?

 

 彼の言葉にバッと首を上げれば、空は未だ黒渦に覆われたまま、黒く光る孔がその存在を主張していた。

 

「ローズ委員長……! アナタ、一体何を……!」

「いえ、簡単なことですよダンデくん。メインプランを用意するなら、それが失敗した時のための()()()()()()も用意しておくべきでしょう?

 『彼』とはそういった契約を結んでいました。メインプランが成功すれば良し。万が一失敗した場合は――スペアプランの中核となってもらう、というね」

 

 その言葉と同時、黒い空に満月が浮かぶ。

 有り得ない。あんなにも分厚い黒渦が、どうしてその部分だけ払われているというのか。

 

 そして、その月明かりの下――ムゲンダイナが生み出した大穴の手前に、「彼」はいた。

 

「――カイ!? 一体何を……」

「まあ、そりゃ勝つよなあ。主人公に、そのライバルに、伝説二匹。むしろムゲンダイナの方に同情するってもんだ」

 

 「彼」は、かつて見た異形の一匹――黒い鎧の外見をした生物にまたがって、宙に浮いている。

 その手には、一匹のポケモンらしき存在が青い繭の様な形をとって眠っていた。

 

「――だからさ。スペアプランだよ、スペアプラン。ここにはムゲンダイナが残した無限大のエネルギーがある。そのエネルギーを自由に扱えるのはムゲンダイナのみだが……当の本人は現在打倒されたばかり。即ち、このエネルギーの支配権は誰も有していない。ただそこに()()()()のエネルギーだ」

 

 彼がその手に持つ存在を空中に放れば、ぽわと淡く光って浮かんだまま静止する。

 

「ならさあ、そのエネルギーを媒介する存在がいれば――逆に、このガラル粒子の持つエネルギーたちはその存在の支配下に置かれることになるわけだ」

 

 ズズ…と音がしたかと思えば、周囲のガラル粒子が「彼」の周りへ集まっていく。既に、彼の肉体はガラル粒子の色――即ち、赤色に光り始めていた。

 

「そして幸いなことにさあ、そういう存在がここにはいちゃったワケよ。そしてついでに、無限のエネルギーを注がれても耐えられるだけのポケモンも」

 

 宙に浮かぶ繭のポケモンも、赤い光を放ち始める。

 羽化。どうしてか私の脳内では、その言葉が思い出された。

 

「このエネルギーはこの孔が空いている限り湧いてくる――というか、元々の量が無限なんだから、そりゃそうだわなって感じだよな」

 

 段々と、段々とその赤い光は強くなっていく。

 それと同時に、二匹の英雄――ザシアンとザマゼンタが唸りを上げ始めた。

 

「そして伝説の力を以てすれば、この孔を維持することは十分に可能だ。後は、エネルギー供給の道筋を作ってやればガラルの未来は保障されると来た。その道筋がたった一人の人間を捧げるだけで作られるんだったら――まあ、捧げる選択をするやつもいるんじゃねえの」

 

 段々と、花が開くように、蝶が蛹から目覚めるように、赤い光に包まれた繭はその姿を変えていく。月の明かりを一身に受け、ガラル粒子から得た無限大のエネルギーを吸収したそのポケモンは先の伝説たちに全く劣らぬ重圧を放ちながら姿の変貌を遂げていく。

 

「俺の契約は、その人柱となること――即ち、この問題が別の形で解決される、千年、万年先の未来までエネルギーを供給する道筋となること。その対価に、俺は一時の平穏を手に入れた」

 

 繭から放出される光はどんどんと弱くなっていく。

 それは変態が不完全に終わったことを意味するのではなく、漏れ出す無駄なエネルギーが無くなってきていることを意味していた。

 

「その契約でローズ委員長は、千年の不自由と引き換えに千年先の自由を保障した。気の遠くなるほど長え話だが――まあ、あの頃よりかはマシさ」

 

 やがて、赤い光は完全に止まる。そして数瞬の沈黙が訪れた。

 

 

「――目覚めろ、ルナアーラ」

 

 

「――Mahinapeeeeeee‘a!!!!!!」

 

 

 とうとう繭は完全な羽化を遂げる。

 現れしは、アローラが伝説の一角。月を誘いし獣、UB番外(Extra)――ルナアーラ。

 

 

「URuWowoo――!!!!」

「URuOooooo――!!!!」

 

 

 新たな伝説の出現に、二匹の王は雄叫びを上げて威嚇する。

 それを、カイは薄く笑いながら眺めていた。

 

「まあ、お前ら二匹からしたらガラル粒子による支配なんて認められねえだろうが――他の奴は、止める理由なんてねえんじゃねえの? 何せ、俺が勝手にやったことでガラルの未来が保障されるんだからな」

 

 その言葉に、ローズ委員長だけはうんうんと頷いている。殴り飛ばしてやろうか、このジジイ。

 

「――何を言う、カイ……! 言ったはずだぞ、俺は、チャンピオン・ダンデは、君に約束を誓った男は、たとえ君が嫌がろうとも、君を………守る!!!」

「そうだぞ、カイさん! 今言ったことって、カイさんを犠牲にして他が助かるってことだろ!? そんなの、認められるもんか!」

そ、そうです! そんなの嫌です!

 

 重傷の体を無理矢理立ち上がらせて叫ぶダンデさんに、私とホップも続いて声を上げる。

 …………全然声出なかった、死にたい。

 

「……ふーん、あっそ。じゃ、止めてみろよ」

 

 そんな私たちの言葉に、表情を消しながらも「彼」が返したのは十のボールの投球。

 何だろうか、あのボールは。見たことがない種類だ。

 

 しかし出てきたポケモンたちは、かつての私の記憶にあった異形たちであった。

 

 

「Jerruuuuuppuu!!!!」

 

UB:01 PARASITE

 

 

 ウツロイドとも呼ばれる海月(クラゲ)の異形――その身が持つ毒は、生命体に寄生し意のままに操る神経毒である。

 その触腕を震わせながら、新たな餌が来たと言わんばかりに宙を飛び回る。

 

 

「BaBaBAaaaRuQuuuuu!!!!」

 

UB:S02 EXPANSION

 

 

 マッシブーンとも呼ばれる半人半蟲の異形――その肉体は全てを破壊し、ダイヤモンドより硬い口で他の生物の体液を吸い上げるという。

 圧倒的な肉体美を見せつけながら、ダンデたちをいざ粉砕せんとガラルの地に降り立った。

 

 

「Cabriiiiin!!!!」

 

UB:M02 BEAUTY

 

 

 フェローチェとも呼ばれるこれまた半人半蟲の異形――その最高時速は現在確認されている全ての生物よりも速く、そしてその肉体が生み出す破壊力は他の追随を許さない。

 他を瞬く間に魅了する美を持つ彼女は、汚らわしき外敵を排除するために動き出した。

 

 

「DenShoooooooock!!!!」

 

UB:03 LIGHTNING

 

 

 デンジュモクとも呼ばれる電飾の形を取った異形――大地から電力を吸い上げ、莫大な電圧で放電する電気の怪物。

 バチバチと空気すら通すほどの電圧を走らせながら、ダンデたちの前に立ちふさがる。

 

 

「YAAaaaaaa!!!!」

 

UB:S04 SLASH

 

 

 カミツルギとも呼ばれる刃の異形――あらゆるものを斬り裂く、まさしく神の御剣。

 空気を裂く音を響かせながら、獲物を定めて宙を滑空し襲い掛かる。

 

 

「KaGaGaGaaYoFufuuuuu!!!!」

 

UB:M04 BLASTER

 

 

 テッカグヤとも呼ばれる鋼の異形――その巨体・巨重を打ち上げるためのエネルギーを、大地の養分を根こそぎ吸い取ることで得ている怪物。

 ガスを噴出し轟音を立てながら着陸すれば、その振動は軽い地震すら連想させるものであった。

 

 

「DOKAGUIIIII!!!!」

 

UB:05 GLUTTONY

 

 

 アクジキングとも呼ばれるブラックホールの異形――有機無機問わず全てを喰らい、果てには海山すら喰らい尽くす暴食の化身。

 手頃な餌を見つけた彼は、その巨体をのしのしと揺らしつつ終わりの無い食事を開始する。

 

 

「AaaYooOOOoooo!!!!」

 

UB:06 STINGER

 

 

 アーゴヨンとも呼ばれる蜂の異形――竜の因子を得た女王蜂は力の波動を射出する力を有し、毒液の射程距離はおおよそ1万メートルに及ぶという。

 翼をはためかせながら狙いをつければ、既に獲物は捕らえたも同然であった。

 

 

「QuiQuuuui!!!!」

 

UB:S07 BURST

 

 

 ズガドーンとも呼ばれる花火の異形――頭部の爆発によって怯えた生物の生気を吸い取る霊。

 楽しげな踊りを踊りながら近づいてくる裏には、空恐ろしい習性が隠れている。

 

 

「GaGAGAGAGa!!!!」

 

UB:M07 LAY

 

 

 ツンデツンデとも呼ばれる石塊の異形――複数の生命で構成されたそれは、非常に堅牢な防御力を誇る。

 現れたその場から動かず、それでいてその先には通さないという意志の主張か、十数の目玉がダンデたちを見張る。

 

 

「――ッ! リザードン!」

「バイウールー!」

「ストリンダーッ!」

「URuWowowoo――!!!!」

「URuOooooooo――!!!!」

 

 襲い来る新手に、咄嗟に対応する私たち。

 しかしムゲンダイナとの戦いで消耗していた私たちにこの十の異形は余りにも数が多く、それでいて一匹一匹が強すぎた。

 

 そんな苦戦する私たちを見て、「彼」は薄く笑って口を開く。

 

「――なァ、止めれるもんなら止めてみろよ」

 

 




 


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VSガラル その1

カイ視点から始まります。


 この世界に来る以前――俺がゲームとして「ポケモン」を捉えていたとき、広く普及していたとあるポケモンの区分の仕方があった。

 

 禁止伝説――その名の通り、強過ぎるが故に対戦では出場を禁じられていた伝説のポケモン。

 準伝説――禁止伝説には劣るものの、強力な力を持つ伝説ポケモン。

 幻――映画等で配布される、通常では手に入らない特別なポケモン。

 そして残るを一般ポケモン、という風な区分の仕方だ。

 

 先に挙げた三者の区分に入るポケモンたちは一般ポケモンとは基本的に比べものにならない力を有しており、一体でも手に入れることが出来れば一地方のバッジ制覇など恐らく容易いことだろう。

 

 伝説は伝説によってのみしか倒されない、というこの世界でよく聞く理論は全く間違いではない。その絶対の法則を覆すには、トレーナーの類稀なる資質・鍛え上げられたポケモン・天運・十全な事前準備エトセトラ…といった数々の要素が必要になる。

 

 

 とまあ、色々と述べたが結局のところ何が言いたいかというと。

 ――俺の繰り出した十のウルトラビーストたちは全てこの「準伝説」の区分に入る伝説のポケモンであり、一般ポケモンとは覆しようのない力の差があるということだ。

 

 

「――ク、ソ……!」

「案外、呆気なかったな」

 

 まず最初に脱落したのはダンデか。ムゲンダイナの一撃を喰らい手負いであるとはいえ、少しばかり意外だった。

 ネクロズマの上に乗ったままふよふよと移動し、ウツロイドに屈したダンデの前に降り立つ。

 ザシアンとザマゼンタが殺意を込めた視線をこちらに送ってくるも、合計五体のウルトラビーストに囲まれてはダンデの救援に向かう余裕は無いようだ。

 

「アニキ!」

「ダンデさん!」

 

 ユウリとホップの二人もダンデの状況が不味いと感じたのか、こちらへ向かおうとするがそれぞれが相手する二体のウルトラビーストに背を向けるだけの余裕はない。

 ユウリのストリンダーは今まさにテッカグヤに養分を根こそぎ奪われて倒れ伏せ、ホップのバイウールーもマッシブーンの一撃をモロに喰らって既に瀕死に至っていた。

 

 誰も誰かの助けに向かう余裕がないどころか、自身の相対するウルトラビーストの相手すらままならない。いわゆるチェックメイト、詰みってやつだ。

 

「まあ、安心して寝てろよ。誰に迷惑をかけるって話じゃあない。ローズ委員長に誰かを傷つける意思はなかったんだ。お前が負けたのだって、伝説を相手にして手負いだったんじゃあ、誰も責めやしないさ」

「何を……言う……! 俺のことはどうでもいい……! 君だ……君は、嫌じゃ……ないのか!」

 

 ダンデの絞り出すかのような言葉に、俺はウツロイドへの指示で答えを返す。

 もう既に、引き戻せる時は過ぎた。少しばかり、眠っていてもらおう。

 

「やれ、ウツロイド」

「カイ! 君はまだ、戻ってこれる――!」

 

 最後の力を振り絞って叫ぶダンデの声を聞き流しながら、ウツロイドがトドメをさす様子を眺める。彼を助けるべき存在は皆自身の相手で手一杯であり、その一撃は何の障害もないままに頭部へ吸い込まれ――

 

 

「――全く、世話の焼ける弟子よのう」

 

 

 しかして、ガラルの伝説は現れた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「――し、師匠!?」

「やあユウリちん、久しぶりー」

 

 ダンデさんがクラゲっぽい敵に敗れ、トドメをさされそうになったその時。

 コジョンドと共に現れ、窮地を救ったのは私のかつての師匠、マスタードさんであった。

 

「ユウリちんとダンデちんがチャンピオンマッチで闘うっていうもんだから、ミツバちんが張り切っちゃってねー。門下生勢揃いで観戦に来てたのよん。それがこんなことになってるもんだから慌ててここまでやって来たってワケ」

「アタシもいるよォ!」

「このワタクシも当・然! オフ・コース・アイ・アム!」

「クララさんにセイボリーさんまで!」

 

 師匠のその言葉通り、一歩遅れてミツバさんとかつての同門の皆さんが走ってやって来る。これは、相当にありがたい増援だ……! 特にマスタードさんとミツバさんはメジャー級の実力を有している。師匠なんか今からでもダンデさんと良い勝負を出来るだろう。

 

「皆さん、助けに来ていただいてありがとうございます! しかし敵は強大です、決して一人では挑まずに……」

「おっと、まだ慌てちゃダメだよユウリちゃん。まだまだこんなもんじゃないんだから」

「へ?」

 

 私を遮ったミツバさんの言葉に、思わず変な声が出てしまう。

 そしてその言葉の意味を理解すると同時に、遠くからたくさんの声が近づいてくるのが聞こえてきた。

 

 

「ちょっとヤローくん! もっと速く走んないと!」

「こ、これが限界なんだな~!」

「僕は先に向かっているよ! 後から付いて来てくれ、ヤローくん、ルリナくん!」

「あ、カブさん待ってぇ~!」

 

「オニオンさん、息が切れていますが大丈夫ですか? 辛いならば道だけ教えて先に行きますが……」

「ぁ……大丈夫、です、サイトウさん…………『その子』が、案内してくれてるので……」

「…………え?」

「こっちだよ、オニオンくん、サイトウちゃん!」

 

「ちょっとお前さん、もうちょっと揺れないようには走れないのかい?」

「このババア……! 人に自分を背負わせておいて、よくそんなことが言えましたね……!」

「こら、何がババアだいビート! レディは労わるもんだよ!」

「痛いッ! 痛い痛い痛いッ! わかりましたッ、すみませんってば!」

 

「……ねェ、マクワ……」

「……フン。話は後にしてください。この場でボクが組むべきは、一番互いをよく知っているアナタでしょう。さっさとあの少年を救いますよ」

「……! そう、だね……! よォーし、覚悟しときなさいカイ坊! 今のあたしゃ、けっこう強いよォ!」

 

「アニキ! あたしたちのコンビネーション、見せつけるよ!」

「えぇ、わかってますよマリィ……! 今夜は特別ナンバーです!」

 

「――ダンデ! なァーにをぶっ倒れていやがる!

 ……だが! 今日ばかりは許してやろう! 何せこのキバナさま率いるジムリーダーズが助けに来て勝てない相手なんて、いねェんだからな!!」

 

 

「――ッ! キバ、ナ……! それに、皆……!」

 

 キバナさんを筆頭に、結集するジムリーダーたち。

 彼らは皆、誰もがガラルを想うが故にやって来た実力者たちであった。

 

「ユウリくん! 避難のことは安心してくれ。この場にいない他のジムリーダーたちが担当してくれている。少々押し付けるような形にはなってしまったが、こちらが危機とみて皆でやって来たのだ!」

「はい! カブさん、すっっごくありがたいです!」

 

 これならば、勝てる――「彼」を、救える! メジャーのジムリーダーたちと言うのは伊達ではない。戦力差は、最早逆転した!

 増援を加えた私たちは、再度「彼」と異形たちに向かい直す。私の目に映る「彼」の顔は、少しばかり苛立っているように見えた。

 

「――ったくよォ、どいつもこいつも…………邪魔を、すんなよォォオオオ!!

 

 「彼」の声と共に、再度襲いくる十の異形たち。

 しかし最早、こちらにとって彼らは脅威ではなくなっていた。

 

「やるんだな、アップリュー!」

「全て流してしまいなさい、カジリガメ!」

「全力で行くよ、マルヤクデ!」

「行きましょう、カイリキー!」

「……お願い……ゲンガー……」

「お行き、マホイップ」

あんな所(アラベスク)にブチ込んでくれたお礼をしますよ、ブリムオン!」

「決めましょう、セキタンザン」

「さぁやろうかい、ラプラス!」

「やってしまいんしゃい、オーロンゲ!」

「ライブの時間ですよ、ストリンダー!」

「荒れ狂え、ジュラルドン!」

「行っくよー、ヤドラン!」

「レッツ・ラ・ゴーです、ヤドラン!」

「帰ったらご褒美だよ、カメックス!」

「ゆくぞ、ウーラオス!」

 

 ジムリーダーたち、それにマスター道場の皆が繰り出したポケモンが「彼」の異形たちとぶつかり合う。そしてその戦いは決して劣勢どころか、むしろ流れはこちらにあった。

 

「URuOoooooOo!!!」

「URuWoWoooo!!!」

 

「……よし、ホップ……俺たちも、続くぞ……!」

「アニキ、無理すんなよ! ザマゼンタとザシアンに着いて行こう!」

 

 ダンデさんももう一度立ち上がり、今度はこちらが攻める側である。

 異形たちは既に複数で囲む側から、囲まれる側へ立場を転じた。だからといってその凶悪さが変わるわけではないが、決して相手できないほどの強さではない!

 

「よし、ウオノラゴン! 私たちもやるよ!」

 

 私もポケモンを繰り出し、「彼」の元へ向かおうと異形に立ち向かう。

 既に「彼」の異形たちはジムリーダーたちの奮闘によって押され始めている。

 

 勝てる。私はこれまでのバトルの経験則から、勝利の確信を直感的に得た。

 

 ――しかし。唯一の不安は、未だ私の目が「勝ち筋」を捉えていないことであった。

 

 

「チッ……やれ、ルナアーラ」

 

「………Mahinapee‘aaaaaaaa!!!!!」

 

 

「ッ、なん、だ……? カイのやつの体が、輝いて…?」

「――キバナさん! 危ないッ!」

 

 オニオンさんがキバナさんの体に飛びついた瞬間、先ほどまでキバナさんの頭部があった空間を蜂の異形が放った毒液が通過する。

 

「なッ……! さっきまでと動きが、全然違えぞ……!」

「ノット・スピード・オンリィ! パゥワーも増大していますね!」

 

 ルナアーラと呼ばれた異形が体躯を輝かせると、共鳴するかのように「彼」の体も輝き出す。

 そしてその瞬間、異形たちの力が増幅した――先ほど言っていた、エネルギーの供給というやつだろうか?

 

「『ビーストオーラ』……っつっても、お前らは知らねえだろうけどな」

 

 これは……少しばかり不味い、か?

 冷静に状況判断をすれば、少しばかり形勢が悪くなったのが見て取れる。しかし致命的というには未だ早く、ここから巻き返しもまだ図れる範囲であり――

 

 

「――出し惜しみしてらんねえか。行け、サンダー・ファイヤー・フリーザー」

 

 

QuAAAAAAA!!!

 

 

 現れたるは三匹の伝説。

 かつて目にした黒炎を纏う悪鳥を始め、その脚力を以て雷の如くに距離を詰めてきた怪鳥、そして周囲の物体をまるで氷のように軽々と砕いていくほどのサイコパワーを見せつける妖鳥。

 

 一挙に追加された余りの大きな戦力に、戦場は一瞬で混沌の様相を見せる。

 

「チィ……! 冗談じゃありやがりませんね。ただでさえ厄介になった異形共がいるのに、それに加えて恐らく伝説並みの追加戦力ですか……!」

「アニキ! ひこうタイプの相手をするには対空力が必要じゃなかか!? アタシたちじゃちょっと厳しかよ!」

 

 なるほど対空力、とマリィの言葉に納得するものの、この場にひこうタイプの使い手は――

 

 

「――俺が! いる! リザードンッッッ!!!」

「BaGuAAAAAaaaaaaaa!!!!」

 

 

 大声の宣誓と共に空へ飛びだしていったのはダンデさんとその相棒、リザードン。

 恐らく「げんきのかたまり」か何かで瀕死のリザードンを回復させたのだろうが、トレーナーの方は未だ重症。本来ならばすぐに病院送りにしなければいけないのだ。相当な無茶としか言いようがない。

 

「ああ、もうっ! 俺たちも行くぞ、アーマーガア!」

 

 彼を追うようにしてホップも宙へ飛び出し、フリーザーとファイヤーと呼ばれた伝説たちを相手取る。

 ダンデさんのことは心配だが、今は任せるしかない。私は残る一匹、唯一空を飛ばないサンダーと呼ばれた伝説の前に立つ。

 

「Quaaaaa……」

 

 サンダーが私とウオノラゴンをその目に捉えれば、ビキビキッという擬音が聞こえてきそうなほどに脚の筋肉が盛り上がる。恐らくは敵の必殺技。この怪鳥は、脚力こそが自慢であり、それだけで他の一般ポケモンを蹴散らせるだけの怪物。

 

 ――来る。

 限界まで意識を集中させた私の眼は、敵の飛び出るタイミングを見極めてウオノラゴンに指示を出す。

 

「AAAAaaa!!!!」

 

 カイが見れば、「らいめいげり」と看破するサンダーの妙技。

 敵の防御を貫き、限界まで溜めた脚力から放たれるその一撃はあらゆる障害を粉砕する。

 

 当然一般ポケモンに耐えられるような技ではなく、ウオノラゴンは躱すことも出来ずにただその口を開け平伏して――

 

 

「――『エラがみ』」

 

 

 古代の王者の牙が、その翼を噛み千切る。

 

「Qu……AAaaaaaAAAAAAaaaaa!!!???」

 

「――手を緩めるな。もう一度、『エラがみ』」

 

 再度襲い来る古代の牙。サンダーが慌ててその脚力を以て後ろに跳び去れば、その顎は空を裂いて空振りする。

 

 二度目の「エラがみ」を躱したサンダーはまるで信じられないものを見たかのように、ウオノラゴンから距離を取ってこちらを観察していた。

 

 ――何だ、今のは。私の一撃が見切られたとでも言うのか? 有り得ない。そんな筈はない。この一撃はあの小憎たらしい黒めにも、ヤケにムカつく紫めにも通用した技だぞ。

 そんな絶対の自信を誇るこの技が、見切られるなど――在る筈が、ないのに。

 

「もう、格付けは済んだかな。後は適当に遊んでるだけでいいよ、ウオノラゴン」

 

 ――だというのに、この人間の小娘めは。闘いの最中に敵に背を向けるなど、一体どこまでこの私を侮辱してくれる――!

 

 再度脚の筋肉に走る雷模様。雷鳴の如き神速で放たれた飛び蹴りは、今度こそウオノラゴンの急所を捉え――

 

 

「――『エラがみ』」

 

 

 全てを把握していたかのように振り向いたユウリの一声によって、その身を地に沈めたのであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「――は? サンダーが、もう負けた?」

 

 上空に浮かぶネクロズマの上から戦場を見下ろしていると、ユウリの一撃で沈んだサンダーが目に入る。

 

「いやいやいやいや……伝説は伝説以外で倒せないっつー法則はどこ行ったよ。ウオノラゴンも普通のポケモンじゃないとはいえ、明らかにおかしいだろ」

 

 そして今度はダンデ・ホップと空中戦を繰り広げるファイヤー・フリーザーの方に目を向けてみれば、地上から放たれるユウリのエースバーンの「かえんボール」に翻弄され、思うように攻め切れていない二匹の様子が見える。

 

「――チッ。UB以外に力を送んのはキツいっていうのに……ルナアーラ」

「……Mahinapee‘aaa………」

「ルナアーラ!!」

 

 一度目の俺の指示に首を振って答えたルナアーラに、再度語気を強めながら指示をしてエネルギーの供給を開始する。

 送り先はガラル三鳥。俺の力の管轄を超えた能力行使に、脳にメスを入れたかのような激痛が走る。

 

「――っつ、あ……!!」

「pe……pe‘aaa!!!」

「んだよ、大丈夫、だって、鼻血、くらい…………チッ、止まんねえな……」

 

 止めどなく流れる鼻血を圧迫して無理やり止血し、滞っていたエネルギー供給を再開する。

 ウルトラビースト以外には本来繋がらないパスをルナアーラの力でこじ開けて結んでいるのだ、激痛に苛まれながらも三鳥の体が赤く輝き始める。

 

「オラ、持ってけよ、ほら……」

 

QuAAAAAAA!!!

 

「――なっ、急にサイコパワーの出力が上がって……!」

「アニキ、これ、不味い、ぞ……!」

「さっき倒したはずのサンダーまで……!」

 

 エネルギーの供給を受けたファイヤー・サンダー・フリーザーは傷も回復し、その伝説としての威容を遺憾なく発揮する。

 そも彼らは雪原における生態系ピラミッドの頂点、三すくみの王者たちである。敵を圧倒する姿の方が自然に見えるのも納得だろう。

 

 

 ビーストオーラを纏ったウルトラビーストに苦戦するジムリーダーとマスタードたち。

 エネルギーを受け取り強化されたガラル三鳥に圧倒されるユウリたち。

 勝負は時間の問題のように感じたが、トドメと言わんばかりに最後の一手を打つことを決める。

 

「――――」

「あ? どうしたよ、ネクロズマ。……安心しろって。お前らを置いてはいかねえから」

 

 カチ、カチと心配するように光を点滅させるネクロズマの頭部を、震える手でなるべく優しく撫でる。

 やがて諦めたかのようにネクロズマの光が消えたことを確認すると、自身の能力(ちから)の増幅を体内でイメージし始める。

 

 思い返すのはかつての楽園(地獄)での記憶。

 能力使用に最適化された俺の肉体は、生命維持機能よりも能力の発動を優先させる。

 

「pee‘aaa……」

「ああ、お前は、その孔を、維持してれば、いいから…………う、ぷ」

 

 吐き気を覚えると同時、口内に広がる鉄の匂い。胃液かと思えば、血液だったか。一体どこの血管が破裂したのやら。血が足りなくなってはたまらないと、嫌悪感に耐えつつ口内の血液を飲み干す。

 

「……じゃあ、まあ、これで、終わり、だろ……絶望しちまえ、『ダイマックス』

 

 

「Jerruuuuuppuu!!!!」

「BaBaBAaaaRuQuuuuu!!!!」

「Cabriiiiin!!!!」

「DenShoooooooock!!!!」

「YAAaaaaaa!!!!」

「KaGaGaGaaYoFufuuuuu!!!!」

「DOKAGUIIIII!!!!」

「AaaYooOOOoooo!!!!」

「QuiQuuuui!!!!」

「GaGAGAGAGa!!!!」

QuAAAAAAA!!!

 

 

 人柱たる存在が紅の光に包まれると同時、十のウルトラビーストと三の伝説がその身を爆発的に膨張させ――ダイマックス、と呼ばれる現象が十三の怪物たちに巻き起こった。

 

 ウツロイドはその触手の一振りで建造物を倒壊させ、

 マッシブーンはただの正拳で数多のポケモンを貫き、

 フェローチェはその絶対的速度に莫大な質量が伴って、

 デンジュモクの放つ電圧は先の数倍を軽く凌駕し、

 カミツルギは移動するのみで広範囲に致命の攻撃を与え、

 テッカグヤの行動全てが大規模破壊を引き起こし、

 アクジキングの絶望的食事はそのままその規模を拡大し、

 アーゴヨンが放った毒液は街中を汚染し始め、

 ズガドーンの広がる影は人々の生気を吸い尽くし、

 ツンデツンデの巨体は最早見上げるのも難しく、

 サンダーの一歩で街は優に踏み抜かれ、

 ファイヤーの邪悪なオーラは留まることを知らず、

 フリーザーが目を光らせればビル一つが宙を舞い、

 

 ――ナックルシティは、十三のダイマックスによって地獄と化した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「な……嘘でしょう、これ……。カブさん! 町の住人の避難は終わってるのですか!?」

「ああ、そこに関しては安心してくれビート君! 既にナックルシティ近隣の町までも避難は終了している! 不安になるべきは……僕らがコイツに、勝てるかどうかだよ……!」

 

 先まででも既に苦戦していた全ての異形がダイマックスするという絶望的事態。

 表面上では抗う姿勢を見せてはいれど、鍛え上げられた戦闘勘は敗北以外の未来を示すことはなかった。誰もが先のムゲンダイナすら超える脅威に絶望し、誰もがその足を止めてしまっていた。

 

「そん、な……これは、私達でどうにかなる範囲を超えています……!」

「……サイトウや、あんた方は若い。ここは老い先短いアタシに任せて……」

 

 

「――ち、がう……! 今、見るべきはそこじゃない……! カイさんが、苦しんでいる……!」

 

 そんな絶望の最中、ユウリのみがカイを見ていた。だからユウリだけが、彼の苦しみに気付くことができた。

 彼女は、絶対に勝てない相手というものを既に知っている。彼女は、絶望することにはもう飽き飽きしていた!

 

「URuOoooooOo!!!」

「URuWoWoooo!!!」

「ザシアン、ザマゼンタ、力を貸して!」

 

 この場において唯一(唯二)敵のダイマックスを問題としない二匹の伝説と共に、ユウリは果敢に十三の絶望へ挑んでいく。

 そしてそれは、確かに希望の光(主人公)の姿であった。

 

「――ああ、もうッ! 姉弟子が行ったんなら、妹弟子のアタシも行かなくちゃいけねえだろうがッ!」

「よく言ったよ、クララちゃん! 同じ釜の飯を食べた家族が覚悟決めたんだ、アタシたちも続かなくっちゃあねえ!」

 

 彼女の姿を見て一人、また一人と絶望に膝をついていた者が立ち上がる。

 希望の光に、前を向き始める。

 

「――フッ。元から諦めていたつもりはないんですがね」

「そりゃこっちのセリフだよ、マクワ! とっととコイツらを叩き潰して、あの生意気なガキんちょに説教してやろうじゃないか! 誰もアンタを犠牲にして手に入れた幸福なんか、嬉しかないってね!」

 

 敵は確かに絶望的な程に強大。ユウリの目には勝ち筋が浮かばず、敗北が確定している投げるべき戦い。

 しかしこの場においては誰も逃げ出す者など存在せず、抗う限りは可能性があると皆が信じていた。

 

「あ、ぁ、何で、だよ……何で、諦め、ねえんだよォッ!!」

 

 そんな彼らの姿に、最早涙か血かもわからないままに目元を濡らしつつカイが叫ぶ。

 その声に呼応するかのように、彼の忠実な下僕は主人を害する敵を飲み込まんと動き出した。

 

「DOKAGUIIIII!!!!」

 

「――ッ、あ、マ、ズ………」

「――待てッ、それはやり過ぎ――」

 

 悪食の王は手加減など覚えない。ダイマックスとビーストオーラの強化を得た彼は、いとも容易くユウリをその腹に入れんとする。

 誰も対応できなかった。いや、その能力を以てオニオンだけは反応できたが、先のキバナと違いユウリが先行してしまっていたため、助けることが出来なかった。

 

 ザシアンとザマゼンタもそれぞれの敵へ襲い掛かったばかり、余りに一瞬の出来事には対応できない。

 そして何より、アクジキングという一匹の異形は強過ぎた。無限の質量を飲み込むその口はちっぽけな人間の幼子一人飲み込むには十分であり、ユウリは食われる寸前に愛する人の顔を思い返して――

 

 

 

「――国際警察、ウルトラビースト対策本部所属リラ、現着しました。これより、作戦の開始を宣言します」

 

 

 もう一つの希望に、絶望の一手は阻まれた。

 

 




ぽけもんのきもち

・ネクロズマ:ご主人が心配(他の人間はどうでもいい)
・ルナアーラ:ご主人が辛そう(他の人間はどうでもいい)
・ウツロイド:最近私ご主人に頼られてる?(他の人間:寄生先)
・マッシブーン:ご主人を鍛えたい(他の人間:観客)
・フェローチェ:ご主人の周りを綺麗にしたい(他の人間:排除すべき汚れ)
・デンジュモク:久々の出番。褒めて欲しいから頑張る(他の人間はどうでもいい)
・カミツルギ:とりあえず色々斬って褒めてもらう(他の人間:立ち合いの相手)
・テッカグヤ:ネクロズマに乗り物役を取られてキレ気味(他の人間はどうでもいい)
・アクジキング:おなかすいた(他の人間:餌。いっぱいちゅき カイ:ご主人。餌くれ)
・アーゴヨン:ご主人のためならどこまでも!(他の人間は指示が無ければ仲良くする)
・ズガドーン:頭爆発させるとなんかご主人大爆笑するのほんと草(他の人間:生気の原料)
・ツンデツンデ:ご主人を守らなきゃ!(他の人間:怖い)

・サンダー:何あの女こわい
・ファイヤー:サンダーが何か人間如きにビビってて草
・フリーザー:サンダーが何か人間如きにビビってて草


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VSガラル その2

「国際警察、ウルトラビースト対策本部所属リラ、現着しました。これより作戦の開始を宣言します」

 

 雷光の速度で駆け抜けるポケモンの上に跨り、アクジキングの餌食となるところだったユウリを間一髪で救ったのは――世界を股にかける正義の組織、国際警察の一員であるリラであった。

 

「国際警察……!? それに、そのポケモンは……ライコウ、か……!」

 

 ナックルシティの宝物庫の番人でもあり、この中でもとりわけ伝説のポケモンについての知識に詳しかったキバナは一瞬でリラの跨るポケモンの名を看破する。

 

 ライコウ。

 ジョウトのエンジュにおける伝承に登場するポケモンであり、雷を司る伝説の一角でもある。

 その力は当然疑うべくもなく、頼れる仲間の登場にキバナたちは沸き上がった。

 

 ライコウの発する稲妻がバリアのような囲いを作り出し、その空間の中でリラは口を開く。

 

「ええ。以前から国際警察はマクロコスモス内部に探りを入れていましたが、この事態を未然に防げなかったのは我々の――ひいては、私の不覚です。そして更にここまで被害を出してしまったのも、非難されて当然だと考えています。代わりと言ってはなんですが……頼れる仲間を、連れてきました」

 

 バチ、と音を立てながら雷電が走り道が開けると同時、土埃と轟音を立てながら三匹のポケモンと一人の人間がやって来る。

 その彼らからはこの緊迫した状況には余り似つかわしくなく、呑気に話を続ける声が聞こえてきた。

 

「あの竜めは倒されたのだろう。ならば何故ヨらが行く必要があるのだ?」

「だーかーら! 何回言わせんだ! それとは別にド・ヤバい状況になってんだよ!」

「BASHIROooth!!!」

「BACROooooth!!!」

 

「な……何だァ、あのポケモンたち?」

「いや、それより……ピオニー君じゃないか! なるほど、頼れる仲間とは彼のことか!」

 

 キバナは自身の豊富な知識を参照しても全く該当する対象がいない三匹のポケモンに、カブはかつての同僚に、それぞれ疑念と歓喜の念を抱く。

 

 他のジムリーダーたちもかつてのはがねジムリーダーであり、一時はチャンピオンの位にまで成り上がったピオニーの登場に喜びを見せる。

 

 その一方共にやって来たポケモンたちへの反応は、誰も彼らを知る者がいないからかひどく淡泊なものであった。

 

「ム……誰もヨらに反応せんではないか――」

 

「――LIGHTNING(デンジュモク)!! ()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

「DenShoooooooock!!!!」

 

 だが、逆に敵対しているはずのカイのみがその三匹のポケモンの登場に対し目に見えて焦り始める。最強のチャンピオンマスタードの登場時も、ジムリーダーたちが結集した時もここまでの反応は示さなかったにも関わらず、だ。

 

 カイの指示を受けたデンジュモクはライコウの電磁バリアに取り付き、電力の吸収を開始する。

 それに対しライコウが牙を以て反撃をすれば、一時の停戦状態は破られ先の死闘が再開した。

 

「な……一体、そのポケモンは何なんですか!? あのカイさんがここまでの反応を見せるなんて尋常じゃないですよ!」

 

 新たな戦力を加えつつも、未だ苦しい戦況の中ビートはリラに疑問を叫ぶ。彼にとって師匠であるカイがここまで警戒するポケモンの存在など有り得なかったのだ。

 その疑問も当然か、とリラはライコウに指示を出しつつ声を返す。

 

「はい、彼は――」

「よくぞ聞いた! ヨは豊穣の王! 誇り高き冠の被り手! その名もバドレックス、である!」

 

 リラの声を遮り、戦場の最前線へ躍り出るバドレックス。

 一体何をバカなことを、とジムリーダーたちは目を覆う。

 彼らの予想通り、良い餌が来たと言わんばかりにアクジキングが彼に襲い掛かった。

 

「ゆくぞブリザポス、レイスポス! どうもあの幼子を倒せば話は全て解決しそうな感じではあるまいか!」

「BASHIROooth!!!」

「BACROooooth!!!」

 

 彼が両の手に二本の手綱を持てば、青の光に三匹のポケモンは包まれその身を巨大化させる。

 それを苦々しい表情でカイが見つめる中、アクジキングはその口を大きく開いて――

 

 

「ヨらの三位一体の最強形態――名付けて、バドレックス:チャリオッツバージョン、である!」

 

 

 氷霊の双馬を従えたバドレックスの一撃に、その巨体は地に沈んだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「おいおいおいおい……なんだよそれ、なんだよそれッ!」

 

 ゲームにすら登場しなかったバドレックスのフォルムチェンジに、思わず声を荒げてしまう。

 バドレックスのモデルはケルトの王であり、彼らの権威を象徴する二頭立ての戦車(チャリオッツ)の存在も示唆されてはいたが……だからといって、やっていいことと悪いことがあるだろう!

 

「何だァ!? 冠の王サマ、ド・強いじゃねえか!?」

「フフフ、もっと崇めるがよい、讃えるがよい! オヌシらにも力を分け与えてやろう!」

 

 その言葉と共にバドレックスから蒼の光が溢れ出れば、ジムリーダーたちのポケモンがみるみる回復されていく。

 クソが、本当にここに来て相手するようなポケモンじゃない……! 伝説三匹の融合体の、余りの強さに軽く眩暈を覚える。

 

「アクジキング、起きろ! ダイマックス権はこっちが握ってんだ、まだ押し切れるはず――!」

 

 一先ずアクジキングにエネルギーを送り、バドレックスに喰らった一撃の傷を回復させる。まだだ、まだこちらが有利だ。まだ、戦力は逆転されてない!

 

 

「ム? そうか、この巨大化の力……他のポケモンにも渡せばよいのだな!」

 

「――は?」

 

 

 同時、バドレックスから他のポケモンたちへ流れ出る蒼光。ザシアンとザマゼンタ以外に受け取られたそれは、ムゲンダイナを源とするガラル粒子が発生させる現象と全く同一のもの――即ち、ダイマックス現象を引き起こした。

 

「す、すごい大自然の力を感じるんだな! よーしアップリュー、キョダイサンゲキ』!

「ええ、丸ごと押し流しちゃいましょう! カジリガメ、キョダイガンジン』!

「うん、これはすごい……! いくよマルヤクデ、キョダイヒャッカ』!

「もうッ! 全部! 壊しましょう! カイリキー、キョダイシンゲキ』!

「………やっちゃえ…………! ゲンガー、キョダイゲンエイ』……!

「少しばかり、ピンクというのを教えてやろうかね! マホイップ、キョダイダンエン』!

「喰らいなさい、我々の全力というものを! セキタンザン、キョダイフンセキ』!

「喰らうんだよ、アタシらの全力って奴を! ラプラス、キョダイセンリツ』!

「こんな状況では拘りとか言ってられませんね……。ストリンダー、キョダイカンデン』!

「まとめてぶっ飛ばしちまえ! ジュラルドン、キョダイゲンスイ』!

「ジュワッ! となっちまえよォ! ヤドラン、ダイアシッド』!

「メキョッ! となってしまえばよいのです! ヤドラン、ダイサイコ』!

「さぁていっちょやっちゃうよ! カメックス、キョダイホウゲキ』!

「喰らえェい、我らが秘奥! ウーラオス、キョダイレンゲキ』!

「受けてみなさい、大いなるピンクを! ブリムオン、キョダイテンバツ』!

「気持ちよくおねんねさせちゃうよ! オーロンゲ、『キョダイスイマ』!

「これが俺たちの力だぞ! ゴリランダー、キョダイコランダ』!

「こりゃあド・スゲェな! ダイオウドウ、キョダイコウジン』!

「最後、の……力、を……! リザードン、キョダイゴクエン』!

「2°右に修正……1°下……そこ! エースバーン、キョダイカキュウ』!

 

 

 怒涛の大技の連発に、いとも呆気なくこちらの優位性は崩れていく。

 戦力差は、とうの昔にひっくり返っていた。

 

「クソ、が……! 冗談じゃねえぞ……!」

 

 そして余りの出来事に呆けていた俺の隙を突き、リラが雷光の速度で距離を詰めてくる。

 しかし彼女の伸ばした手は、あと一歩の所でルナアーラに阻まれた。

 

「Mahinapee‘aaaaaaaa!!!!!」

「……! 邪魔を、しないでください!」

 

 バチリ、とライコウが音を走らせて電撃を浴びせるも、効いた様子を見せないルナアーラの反撃を見て距離を取る。

 禁止伝説と準伝説の差か。ルナアーラの優勢に少しだけ安堵の念を覚えた。

 

「あァッ、そうだよ、リラ! 手は出さないって話だったのに、何で今更お前が――!」

「……ああ、その話ですか。簡単なことですよ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺のぶつけた怒りへ、目の光を消して答えるリラに一瞬身震いする。

 何だ、リラは「どの嘘」のことを言っている――?

 

()()()()。全部の嘘です」

「――っ」

「アナタがホウエン出身ということも、ウルトラビーストと意思の疎通が出来ないということも、マクロコスモスの計画はアナタに危害を加えないということも――全部、嘘だと知っていました」

 

 淡々と自身の嘘を暴いていくリラの顔は恐ろしいほどに無表情で、それは俺に恐怖の念を抱かせるには十分に過ぎるものであった。

 

「でも、それで良かったんです。アナタと私は同じ境遇ということだけは真実だと知っていましたから。嘘まみれの関係でも、そこに身を委ねるのが心地良い内はそれで良かったんです」

「なら、なん、で――」

「だって、アナタが危険な目に遭うなんて許せませんから」

 

 ゾクリ、と背筋に冷たいものが走る感覚。

 違う。俺はコイツと今まで会話してきたつもりだったが、全く違う。最初の一手目を、間違えていた。

 

「アナタが幸せになる道は、その孔に千年閉じ込められることなんかじゃありません。私が、別の道を作ってあげます。そのためにかなりの時間を要しました。バドレックスの力の復活、ブリザポス・レイスポスの捜索――ここまで遅れてしまったのは、偏にそれらに手間取ったせいです」

 

 不味い。リラに対する警戒レベルを一段引き上げる。コイツは、今すぐ排除しなければ俺が喰われる――!

 

「ああ、カイ! 唯一の私の仲間! 大人しく眠っていてください、すぐに救い出してあげますから――ライコウ、ダイマックス!

 

 青い光を纏い、その身を巨大化させるライコウ。

 伝説の力を有するそのポケモンは、バドレックスからの支援を受け更なる強化がなされる。

 

「そこの邪魔者を、潰して! 『ダイサンダー』!!

 

 頭上に集まる黒雲。

 莫大な電力を保有したそれは辺り一帯に電力場を形成するほどのものであり、その一撃はルナアーラにも通用することが予想された。

 

 光り輝く天の雷。それはまさに今敵の真上から落とされようとし――

 

「――カ、ハッ」

 

 同時、口内に広がる鉄の味。今度は飲み込むことすら出来ない量の血が溢れ出、その顔と手を濡らす。

 

「!! 止まって、ライコウ――」

 

 

「――は。演技じゃねえ動きは流石に、見抜けねえみたいだな」

 

 

 ルナアーラとネクロズマの一撃が、動きを止めたリラとライコウに突き刺さる。

 驚きの表情を浮かべながら彼女は、偶然の一手によっていとも呆気なくその意識を闇に落とした。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 バドレックスというポケモンの援護によりダイマックスの力を得た私達は、一挙に戦況を優勢なものとしていた。また援護する彼自身の強さも凄まじく、伝説であるザシアン・ザマゼンタに全く劣らぬどころか超えうる力を見せつけている。考えるまでもなく彼も伝説のポケモンの一角であろう。頼もしすぎる味方を国際警察は連れてきてくれたものだ。

 

 そんな中、戦場の中心から少し距離の離れた街の一角で、ライコウがダイマックスする様子が見える。恐らくはリラさんとカイさんの戦闘が開始したか。早まったことをしてくれたものだ、と思う。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。他の人間にも私と同じ感覚を共有して欲しいと思ったのは何回目だろうか。一目見ればわかるだろう、というのが通用しないのはスクールに通っていた時期に十分学んだ。

 ――尤も、「彼」の苦しむ様子を見て冷静さを失い、危機に陥ってしまった私が言えることではないのだけれど。

 

 キョダイマックスをしたエースバーンに指示を出し、先の恩返しではないがリラさんの援護へ向かうことにする。

 バドレックスの参戦前までと違い圧倒的な破壊力の乗ったリベロの変幻自在の動きはそう簡単には止まらず、いくら強大な敵と言えども完全に私達の行き先を封じるのは不可能であった。

 

 道程は順調。彼らの元に辿りついてからの行動も頭の中では組みあがっている。リラさんを連れ、その場を離脱。ウルトラビーストとやらを先に処理してから、全員であの二匹にかかれば良い。そも、ライコウも伝説の一角。そう簡単にはやられないだろう――と、多少楽観していたその時。一つの声が、戦場に響いた。

 

「このままじゃ負けだよなァ。このままじゃダメだよなァ。……どうにか、しないとなァ!

 ――ネクロズマ、()()()()

 

 私の直感が警鐘を鳴らす。

 あれは、不味い。

 

 ネクロズマと呼ばれた黒の異形がその身を分解させ、ルナアーラと呼ばれた月の異形に纏わりつく。それは一見鎧の装着のようにも見えたが、ユウリの目は「寄生」という本質を見抜いていた。

 

 

「――Mahinapee‘aaaaaaaa!!!!!

 

 

 それはある地において、「暁の翼」と呼ばれる形態。

 光を求めたネクロズマが、ルナアーラを取り込み延々と光エネルギーを吸収し続けるための合体。

 

 ネクロズマの「プリズムアーマー」で身を覆われているが故に防御力は絶対であり、強制的にルナアーラの力を引き出し続けるが故に攻撃力は圧倒的。

 伝説と伝説の融合体であるそのポケモンは考えるまでもなく強大に過ぎ、ただ一匹のみで戦況を左右する力を有していた。

 

「ネクロズマ、ダイマックス。そして――『フォトンゲイザー』

「――っ! エースバーン、『ダイウォール』!」

 

 「彼」とネクロズマと呼ばれたポケモンが赤い光に包まれると同時、この日何度も目撃したポケモンの巨大化――ダイマックス現象が起きる。

 しかし紅の閃光が晴れた後も放つ光は止まらず、莫大な光量が前方のポケモンを飲み込み始める。

 

「URUWooWoooo!!!」

 

 エースバーンの展開した守りすら軽々と貫くその光に、ザマゼンタが叫びを上げて間に割り込む。最強の盾に阻まれることでようやく止まったその一撃は、伝説の威光を知らしめるには十分であった。

 

 

「――これで終わりだとでも、思ってんの? ネクロズマ、シャドーレイ

「!!」

「URU……Woooo!!!」

 

 

 月光の一撃が再度前方へ放たれる。本来ならばルナアーラの有するエネルギーを限界まで引き摺り出して放つ大技は、ムゲンダイナの残したガラル粒子から抽出される無限大のエネルギーの供給によって、ユウリたちにとっては絶望的にも連発を可能としていた。

 

「URUWoooo!!!」

 

 その絶対的な攻勢を、何とかザマゼンタが受け止め続ける。

 しかし今はザマゼンタの堅牢な防御力故、戦況は保たれているが直に限界が来ることは想像に難くない。ユウリは次なる一手を打とうとして――

 

 

「――そいつ、邪魔だな。『プリズムレーザー』

 

 

 瞬時の溜めの後、放たれる光線。

 その一撃は無敵の護りなど塵屑のように吹き飛ばし、最強の盾は地に伏せた。

 

 

「――ムムッ! どう考えてもそちらの方が不味いではないか! こちらの異形共に手間取っている内に英雄の片割れを失うとは――ヨ、不覚である!

 ゆくぞブリザポス、レイスポス! チャリオッツバージョンの力を見せつけるのだ!」

 

 ネクロズマの参戦を危機と見たか、ジムリーダーたちと共にウルトラビーストを相手していたバドレックスがユウリの元へ駆け寄る。

 同時に放つは「ブリザードランス」と「アストラルビット」、人馬一体の最強の二撃。

 

 しかしカイはその恐ろしいまでに強大な攻撃を目の前にしても、ただ不敵に笑うのみであった。

 

「そうだよなあ、無限のエネルギーがこっちにゃあるんだ。負けるはずがねえんだよ」

 

 氷と霊の合体技は、間違いなく敵を致命に至らせる威力を内包しており――更なる輝きを身に纏ったネクロズマに、その剛腕を以て受け止められた。

 

「――なッ! ヨの必殺技が、受け止め、られ……!?」

「Zパワーは無くても、無限大のエネルギーがあれば代用できる。Zクリスタルが無くても、エネルギーを媒介する存在があれば代用できる」

 

 ネクロズマが纏う更なる輝き。それは、今は気を失っているリラが見れば一目で「Zパワー」と看破したことだろう。

 それだけ強力な力であり、そして本来なら有り得ないはずの力であった。

 

 そう。本来ならば、アローラの試練を受けていないカイが扱えるエネルギーではない。それを無理に使った代償は、カイの口元を流れる赤い液体が物語っていた。

 

「……躱すなよ、これは俺もキツイんだ……まあ、躱したくても躱せねえだろうがな。

 ――ネクロズマ、ムーンライトブラスター

 

 開かれる異次元の孔。全てを吸い込まんとするそれに、バドレックスは自ら飛び込むことで他を庇う。

 しかしそれはカイの望まんとする所。この冠の王さえ打倒すれば、後に残るはダイマックスの力を失った一般ポケモンのみとほくそ笑む。

 

「来い! この二頭と共にあれば、ヨは無敵だということを教えてやろう!」

「あ、そ。――やれ、ネクロズマ」

 

 この異空間の主はネクロズマ一匹のみ。彼が放つ六つに分かたれた極光は、ただそこに在るだけで周囲を焼け焦がす程の熱量を誇る。

 その光線が一つに収束すると共に、ネクロズマの全力の一撃がバドレックスへ向け襲い掛かった。

 

 

「――ム、ム……これは少々、厳しい、で、あるか……」

「チ……仕留めきれなかったか」

 

 

 Zパワーが霧散し、ウルトラホールが消滅するとバドレックスとネクロズマは元の空間へ舞い戻る。

 しかしネクロズマのZ技を受けたバドレックスは先と違い、見て分かるほどに消耗していた。

 

 伝説の援護を受け、戦局は好転したかのように見えたがその実、無限のエネルギーを有する敵はカイの身体が持つ限りは不死身。何度倒しても傷は癒え、一方こちらもバドレックスの豊穣の力があるとはいえそれにも限度がある。

 

 ジリ貧。その言葉が、ユウリの脳内をよぎる。今の所優勢ではあるが、勝利には届かない。対し敵は尽きぬエネルギーによって一歩ずつ着実にこちらを追い詰めている。

 

 そして更に、状況は悪化していく。

 

「やれやれカイ君、そんなに無理をして死んでしまっては元も子もありませんよ。どれ、少し加勢してあげましょうかね……ダイオウドウ、キョダイマックスです」

 

 後ろにどこか暗い表情をしたオリーヴさんを引き連れつつ登場するローズ委員長。ここに来ての敵の加勢は、ユウリを以てしても表情をしかめさせるに足るものであった。

 ネクロズマを放置するのは危険ながらも、他に選択肢はない。もう一度叩き潰してやる、とエースバーンに指示を出そうとし――

 

「――オメェの相手は、このオレだ」

 

 かつてのチャンプが、狙っていた敵の登場に歯を剥いて飛んでくる。

 

「ピ、ピオニー、さん……?」

「すまねえな嬢ちゃん、コイツの相手は俺にやらせてくれ。ちょっと因縁が……それも、結構なモンがあるんだ。

 ――場所を変えようぜ、ローズ」

 

 突如現れたピオニーさんに、ローズ委員長は怪訝な顔を返す。

 因縁というのは……聞いたことがある、確か二人は兄弟だったとか。

 

「急に現れて何を言うかと思えば……敵の言に従うわけがないでしょう。相変わらず、バトルと違って頭の方は――」

「うるせえな。俺が場所を変えろ、っつってんだよ」

 

 同時、鳴り響く爆音。

 ローズ委員長のキョダイダイオウドウが音を立てて吹き飛ばされたかと思えば、それを成したのもまた、キョダイダイオウドウであった。

 

「――はあ。仕方がありませんね、久々にお灸を据えてあげましょう。オリーヴくん、行きましょうか。なに、すぐに終わりますよ」

「ぬかせ。俺はずっっっっとテメェをぶっ飛ばしたくてたまらなかったんだよ!」

 

 牙を剥いて笑うピオニーさん。吹き飛んだダイオウドウを追うようにして、彼らは戦場を変えていく。

 しかし私は、最早彼らを見ていなかった。私が見ていたのは――

 

「――家族、か」

 

 二人を見て、どこか懐かしむように、どこか悲しむように笑う「彼」の姿であった。

 

「エースバーン、戻って」

 

 モンスターボールに赤い光と共に戻っていくエースバーン。

 私達の唯一の戦力とも言える、ポケモンを自ら戻したことに「彼」はひどく驚いているようだった。

 

「何やってんだ、お前。もしかして……降参、か?」

 

 そう聞く「彼」は、先までの勝利を望んでいた姿とは対照的にひどく悲しそうで。

 人の心情を見抜くのが苦手な私でも、「彼」の本音はとうの昔に見えていた。

 

「……私、正直さっきまではちょっと迷ってたんです。カイさんが血を吐いた時は、今すぐ助けなきゃって思ってたけど……もしかしたら私の知らない事情があるのかな、って。もしかしたら、千年眠ってた方が嬉しいのかな、って」

 

 腰から一つのボールを取り出す。

 それは今までひたすらに隠し続けていた一匹であり、それと同時に私の最強の一匹でもあった。

 

「――でも。カイさんが今懐かしんでた『家族』は……多分、千年先にはいないと思うんです。もしかしたら今もいないのかもしれないけれど……それなら、新しい家族を作ればいい。でも千年先でそれが出来るかって考えたら、ちょっと微妙かな、って」

 

 カチリ、とボールのスイッチを押す。

 このポケモンを出すということは、私の「本気」を見せることだ。かつて私を負かした「彼」に、リベンジの時がやってきたのだ。

 

「私は、あなたの『幸せ』を――尊重します。でも、きっと、千年先の未来にはあなたの『幸せ』は存在していない! 宣言します! 私はあなたを、止めます!

 ――行って、ウーラオス!!

 

 

「BEAaaaaaaa!!!!!」

 

 

 現れるは、「剣」「盾」「冠」に続く第四の伝説――「鎧」のウーラオス。

 ガラルの王の一人が、この地の危機にその拳を掲げ立ち上がる。

 

「――ハ、ハ! 来いよ、ユウリ! 俺も全力で相手してやる!

 目覚めろよ、ウルトラネクロズマ!!

 

 対しカイも己の最終兵器を繰り出す。「ウルトラバースト」と呼ばれる現象は無限大のエネルギーを以て再現され、ネクロズマを黄金の輝きで包み込む。

 その姿はまさに光神。先までの絶対的な力すらもが霞む力を放出する。

 

「キョダイマックス、ウーラオス!! 全部ぜんぶぜんぶ、貫いて!!」

「真っ向勝負だ、ウルトラネクロズマ!! 正面から叩き潰してやれ!!」

 

「BEeeAAaaaaaaa!!!!!」

QuAAaaaaaaaaa!!!!!

 

 「暗黒強打」と呼ばれるウーラオスの最強の正拳をウルトラネクロズマは絶対の膂力を以て受け止め、一撃を返す。

 二匹はまさにこの場における最強であり、その決戦は神話の戦いに等しかった。

 

「ハ、ハハハ! そうだよなあ、そうだよなあ! 『主人公』は、やっぱ強いよなァ!

 でもよォ、ネクロズマ! お前が負けるはずが……ねえんだよな!!」

 

――QuAAaaaaa!!!

 

 カイの言葉に、呼応するかのようにウルトラネクロズマの輝きが増す。無限大のエネルギーをまさしく無限に吸収した伝説のポケモンは、最強と言う他ない強さを誇っていた。

 

「カイさんは覚えてないでしょうし、こんな姿じゃありませんでしたけど……私たち、この子と一回戦ったことあるんですよ? 

 一体何度頭の中であの戦いを繰り返したと! 思ってるんですか! ――ウーラオス!!!

 

「――BEAAAaaaAAaa!!!」

 

 しかして相対するは努力する怪物。

 ユウリの指示と共に、ウーラオスの動きは即座に最適化されていく。

 

 彼らの強さの本質とは、その才能によるものではない。いや、それが凄まじいものであることは否定しないが……彼らの心の奥底、勝負における原体験とは、いつまで経ってもかつての鎧の孤島での一戦なのである。

 

 その勝負はユウリの頭の中で何度も繰り返され、やがて彼女の能力(ちから)が指し示す最適解を超えた「答え」を導き出し、彼我のポケモンの圧倒的スペック差を埋めるに至った。

 

「BeeeAAaaaaaaa!!!!!」

QuAAAaaaaaaaa!!!!!

 

 ぶつかり合う拳と拳。体躯と体躯。共にダイマックスの力を得ている伝説ポケモン同士。お互いの破壊力は凄まじく――戦いの終わりもまた、近づいていた。

 

「これは負けられねえ戦いだ――最強の一撃を撃つしかねえ! 行くぞ、ネクロズマ!」

 

 カイが叫ぶと同時、またもや赤の閃光に二者は覆われる。

 これより放たれるは最強の一撃であり、そして戦いの決着をつけるものだとユウリは確信する。

 

 ユウリも対抗するかのように、自身の意識を限界まで研ぎ澄ます。

 彼女たちもまた、最強の一撃を放とうとしていた。

 

喰らえ、俺たちのゼンリョクの一撃! 『天焦がす滅亡の光』!!!!

 

 放たれるは光の極致。

 天すら焦がす灼熱はナックルシティの空を覆う黒渦すらをも吹き飛ばし、世界を滅する力を見せつけるように輝いていた。

 

 対し、ウーラオスが取るは八極が構え。

 打つは一撃のみでよいと、その目をピクリとも動かさず最高の主人の指示を待つ。

 

――今! ウーラオス、『キョダイイチゲキ』!!!!

 

 神の光に対抗するは暗黒の一撃。

 格闘の極意を得たウーラオスの技は、概念すらをも貫く必殺の拳である。伝承において「邪気を払いし神の使い」とも称される彼は、いざ敵を打ち抜かんと怯むことなく敵の攻撃へ拳を合わせる。

 

 

 ――ところで、古代アイルランドにおける最上の王の呼び名を知っているだろうか。

 アルド・リー、和訳では上王(ハイ・キング)とも呼ばれるその原意は「熊の王」というものである。

 また円卓の騎士を統べるアーサー王の名もこの語源に連なるとされており、「熊」というものが古代イギリスにおいて重要視されていたことは推測に難くない。

 

 それは即ち「鎧」の王たるウーラオスが「剣」「盾」「冠」の王たるザシアン・ザマゼンタ・バドレックスに勝ることを意味しており――外敵に対して真に立ち向かうべきは、最上位の王たる彼であることを意味していた。

 

「――BeeAAAAAaaaaaaa!!!!!」

 

「んな、バカ、な――嘘だろ!? ネクロズマが負けるはずねえんだ! ネクロズマは最強なのに、なん、で……!!」

 

 ウーラオスの必殺の拳は段々と滅亡の光を押し返していく。

 最強のポケモンは、ガラルの最上の王に力負けしていた。

 

「――カイさんって、ポケモンに愛されてるんですね」

「……は?」

「だって……どの子も、カイさんが勝ちたがってないのに勝ちたいなんて、思ってないようですから」

 

 ユウリの言葉に、目を丸くするカイ。

 そして数秒の沈黙の後、彼女の言葉を理解すると同時に一筋の涙が彼の頬を伝った。

 

「――ああ、そっか……俺、止まりたかったんだな…………」

 

 ダラリと垂れ下がる腕。それと同時に、ネクロズマの放つ極光も陰りを見せる。

 しかし、カイとネクロズマの顔には――確かに、笑みが浮かんでいた。

 

「いっけえええええ!!」

「BEAaaaaaaa!!!」

 

 王の拳は天を貫き、黒夜も遂には晴れる。

 

 全てが終わった後、ガラルの空にはただ、欠けることのない満月が一つ浮かんでいた。

 




バドレックスやウーラオスに関する考察は、以下のサイト様を参考にさせていただきました。
http://semiotics.blog.jp/archives/25264204.html

次回はエピローグです。


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epilogue

ユウリ視点のエピローグ。短めです。


「ユウリ選手! チャンピオン就任以来初の公式戦を終えたご感想を――」

「チャンピオン! ローズ委員長の判決に関して何かコメントがあれば――」

 

 ()()()()から約半月。数日の間隔を空けて行われたチャンピオンマッチで勝利した私は、未だ慣れないチャンピオンとしての業務に追われていた。

 今受けている試合後のインタビューですら精神的にかなり疲れる。答えられる質問には回答し、答えられない質問にはノーコメントを貫く。言ってしまえば単純なことだが、これが中々難しい。ダンデさんは本当にすごかったんだなあ、と今更ながらに尊敬の念を抱いたものだ。

 

 適当なところで話を切り上げ、スタジアムを後にする。

 チャンピオン専用の送迎アーマーガアタクシーに乗り込めば、向かう先はここ最近いつも同じ。運転手も手慣れたもので、私が何も言わない内にアーマーガアは空を飛び始めた。

 

 十分弱くらいか、流れる空の景色を眺めていれば到着するのはとある病院の屋上。運転手を置いて、一人中に入っていく。

 

 見慣れた通路を歩いていると、いつもよりも忙しなさが増していることに気付く。緊急事態でも発生しているのかと言うほどに何人もの人間が廊下を走っているのだ。道中のトイレから出てきた病院スタッフに話を聞けば、この病院から一人患者が脱走したらしい。

 

 嫌な予感を感じつつ道を急げば、辿り着くのは地下に設置されたVIP用の個室(ルーム)。首にかけたカードを認証機械にかざし、扉を開けて個室に飛び込む。

 

 しかし思った通りそこに患者の姿はなく、代わりに一枚のリーグカードが置かれているのみであった。

 

 そのリーグカードを手に取ってみれば、随分と昔に作られたものであることがわかる。

 裏返すとそこに書かれているのは印刷された数行の文章と、その下に殴り書きされた数字の羅列。ユウリはすぐにそれを電話番号と見抜いた。

 

 そのリーグカードを眺めて呆けていれば、ポケットに入れてある携帯が震える。電源を切るのを忘れていたかと反省しつつ、この病室に限っては使用に問題なしとされていたことを思い出し通話に出る。

 

「――やぁユウリくん、ダンデだ」

 

 電話口の相手はかつてのチャンピオン、ダンデ。現在はローズ委員長の後を継ぎバトルタワーという施設の運営を行っていたはずだ。一体何の用だろうか、と首を捻って言葉を待つ。

 

 話を聞いてみれば、何も聞かずに一週間後シュートスタジアムへ来てくれと言うではないか。予定を確認すると丁度その日は予定が空いており――元チャンプの依頼とあれば、他の予定よりも優先されたであろうが――快諾の意を告げる。

 

 電話を切り、再度リーグカードに記された電話番号を眺める。恐らくこれは偶然の出来事ではないのだろう、一週間後がやけに楽しみになった。

 

 

 そして多忙の中にあっては一週間など優に過ぎ、約束の日がやってくる。

 ここ最近はやけに色々な出来事があった。ナックルシティの復興は謎のエスパーポケモンを連れた謎の人物の手助けもあって急速に進み、戦場の中心となった街は最早元の賑わいを既に取り戻している。あの町では少し前もザシアンとザマゼンタを巡って一悶着あったのだ、呪われているとしか思えない。ザシアンの眠るボールを撫でつつ、これから先は何事もないように祈っておく。

 

 そして約束通りシュートスタジアムに向かえば、既にそこにはメジャークラスのジムリーダー8人とダンデさん、ホップ、それに引退したはずのネズさんや、果てにポプラさんといった人物までが勢揃いで私を待っていた。

 

「よく来たなユウリ――それではここに、ガラルスタートーナメントの開催を宣言する!」

 

 私の登場と共に、私には出せない大声を張り観客を沸かせるダンデさん。やはりエンターテイナーとしては、彼の方に一日の長がある。私ではバトル以外でここまでの盛り上がりを作ることは出来ない。

 

 そして彼が言うには、ガラルにおける最強のトレーナーたちがタッグを組み、頂点のコンビを決める大会を定期的に開催するとのことである。

 何ともまあ、中々に売れそうな興行だ。シングルバトルでは「彼」以外に全く負ける気のしない私だが、マルチバトルとあってはその牙城も崩されるかもしれない。結構楽しそうだな、と思いつつふとあのリーグカードのことを思い出す。

 

 ――もしかして、「彼」はこのことを知っていたのだろうか。

 

 まさか、とは思う。でももしかしたら、とも思う。

 ……いや、きっと、これは必然の結果だったのだろう。未来が読めるなんて話は、意外と珍しくないのだから。

 

 ダンデさんの大会の話を聞いて何となく「彼」の意図が読めてきた私は、2回目以降の大会の開催を今からでも心待ちにしつつ、とりあえず第一回を制覇しようかとパートナーを探すのであった。

 

 




カイ 背番号:151

ローズ委員長に 推薦された 期待のチャレンジャー。
彼のはがねタイプのポケモンは 非常によく 鍛えられている。
好きなポケモンを聞く度に 答えが変わるのを 不思議に思った
インタビュアーが尋ねると 「全員好きだから」 と答える。
将来の夢は 世界を旅すること。 それと出来れば
昔の友達に もう一度会いたい とのこと。
ローズ委員長のことは 恩人であると 語る。
最後に 強さの秘訣を聞けば 彼は
真顔で 「愛」と 答えた。


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設定資料集

前話にエピローグを同時に投稿しています。

こちらは本編に関係ないので、読まなくても大丈夫です。

感想で明かしたのも明かしてないのも含め裏設定的なのも載せてます。
あとがきに番外編についてのアンケートがあります。


 

・カイ

 本作主人公。闇堕ち白髪ショタ。

 名前の由来は昔筆者が買った中古のソウルシルバーのユーザーネームから。今でもこのユーザーネームはたまに使う。

 

 アローラでのお話はグラジオが語ったことがほぼ全て。グラジオとリーリエとの友情度をMAX以上にまで高めたが、あっちのラスボスであるルザミーネにより地獄へ落とされた。実は作品のあらすじにある「ラスボス」とはルザミーネの方だったりする。

 グラジオ・リーリエに対する好感度は今でも上限値を軽く天元突破しており、二人に対してはゲロ甘チョロQ。最終決戦の間とかでも二人がガラルにやって来ればその時点で強制ハッピーエンド、仲良く三人旅を始めている。本編終了RTAをするなら一話の時点で二人に会わせるのが一番早いと思います。

 

 本編で上手く説明できなかった彼の行動理念は、以下の感じ。

 

 アローラで根本的に人間不信というか、悪に対して過剰に恐れるようになる(悪の組織を相手に勝てる存在の庇護を常に求めるようになる)

 ↓

 ガラルに流れ着き、ローズに救って貰って少しローズを信頼する

 ↓

 ローズと契約。以後この契約が行動の中心に

 ↓

 根本的な人間不信は治っていないため、国際警察とかも基本信用せず契約のみを信じる(ダンデは力の証明に失敗)

 

 という感じです。

 ローズとの契約に固執し、国際警察を頼らなかったのはこの辺の心情が関わっています。

 

 最終決戦の後は体がボロボロだったので半月くらい意識を失っていたが、目を覚ますと同時にウルトラホールに隠れていたUBたちを呼んで脱走。ナックルシティの復興をポケモンの力で終わらせると、どこかへ姿を消した。

 

 ゲーム的に言うなら病室で手に入るのは彼のレアリーグカード。

 ガラルスタートーナメントのキャラを全解放すると、枠が一つ増える。それを選択すればやってくるのはUBを従えた謎の人物であり、彼は主人公が選択した時のみトーナメントへ参加する。即ち敵として出てくることは有り得ない。

 彼は深い感謝の念を主人公へ抱いているようだが、その正体は一体何なのだろうか()

 

 

 トーナメント時セリフ

 1回戦前

「……久々だな。

 ……その 俺 負けねェから」

 

 2回戦前

「やったな!

 ……あ いや

 お前がいたら 負けるはずねえんだけどよ」

 

 決勝前

「ヨユー だな!

 お前 優勝するつもりだろ?

 ……俺も そうだ!」

 

 優勝時

「まあ 当たり前だよな

 お前 強いもん

 …………また 呼びたきゃ 呼べよ」

 

 キャラとの掛け合い(対応キャラが多いためか、対戦相手が二人とも特別会話有の場合ランダムでどちらかが相手に選ばれる。三人会話は存在しない)

 

 VSマリィ時

「あんた どこに 行っとったかと 思えば……

 まあ よか! 約束 ここで 果たすよ!」

「……うん ありがとよ

 礼に 本気で やってやる」

 

 VSダンデ時

「カイ! 昔のことは忘れ 今一度 本気で 戦おう!」

「バカッ 名前 言ってんじゃねーよ!」

 

 VSビート時

「……今でも アラベスクへ 送った 恨み

 忘れて ませんからね」

「お前 自分で良いって 言ったじゃん」

 

 VSヤロー時

「この前 良い野菜が 採れたんじゃ

 また 家に 来んか?」

「……

 ……

 ……いいの?」

「おお もちろん!」

 

 VSルリナ時

「アナタが いないと ライバルが減って

 少し 退屈だわ 戻ってきなさいよ」

「お前それ キバナに勝ってから 言えよ」

 

 VSカブ時

「言葉はいらない さあやろうか!」

「……ありがとよ ぶっ飛ばす!」

 

 VSサイトウ時

「この前 良いスイーツ屋さんを 見つけたんです

 今度 行きませんか?」

「やだ」

「…………全部 壊します」

 

 VSオニオン時

「オニオン! この前 良いスイーツ屋 見つけたんだ

 今度 行こうぜ!」

「……はい…………!」

 

 VSポプラ時

「なんか 言うこと あるかい」

「……ごめんなさい」

「……バカだねえ」

 

 VSマクワ時

「かつては 負け越して いましたが

 いい加減に 勝たせて もらいましょう」

「安心しろよ お前は つえーよ

 俺より 隣の コイツに 勝て!」

 

 VSメロン時

「まったく 説教する間もなく どっか行っちゃって」

「……ごめんなさい」

「……なんだい 調子 狂うねえ」

 

 VSネズ

「別に 事情は 問いませんよ

 でも 後でマリィの所に 顔を出しといてください」

「……ありがとよ」

 

 VSキバナ

「なんか ゴチャゴチャ 喋るのも

 俺ら らしくねーよな」

「……じゃあ 一言だけ

 ……ごめんなさい」

「なんだそりゃ もっと お前らしくねーぜ

 いいから バトルで語れよ!」

 

 トーナメント時手持ち

 一匹目:ランダムでUBの内から一匹

 二匹目:ランダムでガラル三鳥の内から一匹

 三匹目:月食ネクロズマ

 

 

・ユウリ

 原作主人公。なんか書いてる内にヤンデレになったかと思えばただの限界オタクだった。

 能力(チート)として「正解を導き出す能力」を持っているが、それは主人公補正の一環。そのため、相手も主人公とかでなければいわゆる「負けイベ」でもない限り絶対に勝利する。

 当然生涯において黒星は未だ一つ。それだけに、その一戦はユウリの心にいつまでも残り続ける。

 

 最終手持ち

・エースバーン

・ストリンダー

・ウオノラゴン

・ウーラオス

・ムゲンダイナ

・ザシアン

 

 禁伝2体、準伝1体というガチ厨パを組んでいるのでガチキチ揃いの主人公勢の中でも上位の強さを誇る。

 彼女の圧倒的才能からスクールでドン引かれ、マスター道場に行ってもまたドン引かれ……みたいな過去話も少し書いてみたいと思っている。

 

 

・ローズ

 全ての元凶。

 カイと結んだ契約内容は本編で書いた通りだが、「千年先までエネルギー供給路となる」とカイが言ったのはあくまでローズの「千年先の未来」という言葉になぞらえた例えであり、実際の期間は「代替手段が成立するまで」なので伸びる可能性も短くなる可能性もある。

 彼の本質は何度も書いたように「善人であり狂人」。カイを犠牲にすることに関してはひどく心を痛めたが、大のために小を切り捨てられるタイプなのでその痛みも受け入れられる。

 ピオニーとのバトルは敗北する直前にオリーヴの妨害で流れた。バトルの最中に本音を言い合った結果か、ほんの少しだけ二人の関係は改善したらしい。

 

 

・ルザミーネ

 全ての元凶の元凶。

 ゲーム本編の描写だけでも相当のクズ。仮にクズ度ランキングを作るとしたらゲーチスのちょっと下にくるくらいにはクズ。

 しかしUSUMではかなりキャラが変わり、一挙に味方側になった。 

 カイは当然の如く調教済であり、今でも命令すれば何でも言うことを聞かせられる。

 現在は意識不明のままカントーで療養中。

 USUM編をやることになったらまず彼女との絡みを書きたい。

 

 

・フウ&ラン

 書いている内に何故かクソガキになってしまった双子。

 ゲーム本編でもそれに類する描写はあったとはいえ、作者も書き上げた後は「ん?」ってなった。

 カイに躾()をされた後はコスモウムとのコミュの手助けをさせられた後、普通にホウエンに帰らされた。

 カイは自分を年下に見ない人物(つまり子供)が好きなため、出会いが違っていれば何事もなく仲良しになれてたりする。

 能力は結構チート。トレーナー本体の方が強いタイプ。

 

 

・グラジオ

 カイが最終決戦で思い返していた「家族」の一人。ちなみにその「家族」にルザミーネが入っている辺り闇が深い。

 エーテルパラダイスにてカイとの親密度を限界突破して稼ぎ続けたため、二人ともお互いにはゲロ甘チョロQ。

 彼がガラルにやってきてカイと出会った場合、それがどんな状況・タイミングでもハッピーエンドに突入。全てのフラグを無視して強制的にガラルでの物語は終了する。

 ちなみに本編時空ではすれ違いの結果今でもカイの状況をしらないので自罰的な意味も込めてバトルの腕を鍛え続けている。でもミヅキには勝てない。

 

 

・リーリエ

 カイが最終決戦で思い返していた「家族」の一人。

 エーテルパラダイスにてカイとの親密度を限界突破して稼ぎ続けたため、二人ともお互いにはゲロ甘チョロQ。委員長気質であるはずなのに、カイだけは何をやっても許すようになっている。勿論カイはそれに甘えるため、二人を合わせると立派なダメンズ製造機とダメンズが出来上がる。

 彼女がガラルにやってきてカイと出会った場合、それがどんな状況・タイミングでもハッピーエンドに突入。全てのフラグを無視して強制的にガラルでの物語は終了する。

 ちなみに本編時空ではすれ違いの結果今でもカイの状況をしらないので夜は常に彼のことを思い返し枕を濡らしている。たぶん日記の半分くらいカイのことで埋まってる。

 

 

・リラ

 監禁系ヤンデレに進化した依存系ヤンデレ。

 カイの脱走後絶望の淵に立たされたが、たまーに思い出したかのようにカイが連絡を取ってくるためその度に小躍りして嬉しそうな声色で返答している。

 ライコウを扱えていることからわかるように、トレーナーの腕は準チャンピオンクラスほどのものを誇る。国際警察内で出世するのもある意味当然。

 カイと同じくFallの一人であるが、出身はRSE時空のホウエン。現在の世界のホウエン地方はORAS時空。違いを明確に知ってしまうのが、また自分が本当に全てを忘れてしまっていると自覚してしまうかもしれないのが怖いためホウエンには一度行ったきり。でもカイに誘われたら多分普通について行く。

 

 

・バドレックス

 チャリオッツ(戦車)バージョンとかいうオリフォルムを習得したチート中のチート。禁伝1体と準伝2体の融合体はシンオウ勢ともタイマン出来るほどの力を誇る。

 能力は味方全員のダイマックス化とオートリジェネ。どう考えても最終決戦のMVP。

 リラとピオニーの協力により、雪原での信仰は取り戻した。また最終決戦での活躍が本土にも伝わっているため、かなり上機嫌。再度信仰が失われるまでは、ガラルに危機は訪れないと思われる。

 

 

・UBたち

 実はカイと普通に意思疎通が出来たりする。

 エーテルパラダイスにて助けを求めるカイの声にネクロズマが答え、カイの能力によってエネルギーを供給されたネクロズマがウルトラホールを開き、他のUBたちと出会った。

 カイとは長い付き合いなのでかなり仲良し。キャンプでカレーとか作ったりする。カイがアクジキングに自分の分もあげてニコニコしながら食べる様子を眺め、それを見たフェローチェ辺りがカイに半分あげ、それもカイはアクジキングにあげてニコニコしながら眺めている。アクジキングが一番ニコニコしている。

 

 

・ガラル三鳥

 雪原で生態系の頂点に君臨していたら、なんかネクロズマに叩き潰されてた。

 基本的に三匹の仲は険悪。常に煽り合ってる。

 本編にてサンダーがユウリに敗北していたが、準伝の力は本来ならば古代の王者とはいえウオノラゴン如きに負けるものではない。そのためファイヤーとフリーザーはめちゃくちゃサンダーを煽ってたりする。

 実力はサンダー→ファイヤー→フリーザー→サンダー…と三すくみの関係になっているため実はファイヤーは現在相当危険な状況にいる。




 これで本編は完結です。ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
 面白かったと思っていただけましたら、評価・感想をくださると本当に励みになります。
 これからもちまちまと番外編を投稿していくつもりなので、読んで頂ければ嬉しいです。

 本当にありがとうございました。


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番外編
after that


リーリエ&グラジオ√が思ったより難産だったので、先に書きあがったものを。


 ――ヤロー選手、()()事件について何かコメントを!

 

「すみませんねえ、言えることは何も……あ、ところで良いきのみが採れたんですよ。ほら、食べていってください」

 

 ――あ、あの、それよりコメントを……。

 

「こっちのモモンのみなんか良い熟れ方をしとる。どうです、生でいってください」

 

 ――ど、どうも……。

 

 

 

 

 

 

 ――ルリナ選手、本日は5体を残しての快勝! 今のお気持ちをお聞かせください!

 

「そうですね、とても良い試合運びが出来たと思います」

 

 ――相手選手ははがねタイプの新任ジムリーダーでしたが、印象はいかがですか?

 

「前任がメジャー上位の常連だったということもあり、厳しい意見もあるでしょうがめげずに頑張って欲しいですね」

 

 ――前任の彼について……。

 

「ノーコメントで」

 

 

 

 

 

 

 ――カブ選手、本日はバクーダという珍しいポケモンを使っていましたが何か作戦が?

 

「うん、あの子はホウエンから取り寄せたポケモンでね。元々はとある選手に対する対策用に育てていたんだけど……今は専らマクワくんのポケモンの動きを覚えさせているよ」

 

 ――とある選手、とは?

 

「………………ところで、バクーダはとっても強いポケモンだ。ひざしがつよい時の爆発力なんかは中々他じゃ出せなくって……」

 

 ――カブさんって、話を誤魔化すのヘタですね。

 

「…………なんのことだい?」

 

 

 

 

 

 

「ふむ、これは……店長さんのおっしゃる通りクリームが非常に濃厚ですね。はい、もぐ。中々、もぐ。隠れた名店を、もぐ。発見してしまいました、もぐ」

 

 ――サイトウさん、食べるよりコメントを……。

 

「……あ、すみません。これは恥ずかしいところをお見せしました。……そうですね、今度は()()()()を連れて一緒に来ようと思います」

 

 

 

 

 

 

 ――オニオンさんが羨ましいと思った超能力だとか、逆にいらないと思った超能力ってありますか?

 

「…………はい……。特殊な力というのは、必ずしもメリットだけをもたらすものではありませんから……」

 

 ――なるほど。具体的に言えば……。

 

「……彼はきっと、その能力が無かった方が幸せだったんじゃないかと思います…………」

 

 ――……はあ。

 

 

 

 

 

 

 ――ビート選手、ジムリーダーに就任して以来4戦3勝と良いスタートですが、ズバリ強さの秘訣は!

 

「師曰く、どうも僕には精神面で欠けているものがあったらしいのです。それがジムチャレンジをあのような形でしたが一応は終え、一皮剥けたことにより解消できたのではないでしょうかね」

 

 ――なるほど! 師、というのは……。

 

「カイ元ジムリーダーのことです」

 

 ――え、えーと、彼は……。

 

「いいですか、カイさん! アナタのことですから多分この試合も見ていたのでしょう! アナタの弟子はアラベスクで立派にやっていますよ! いつか恩返しできる位には経験も積んで実力もつけますので、首を洗って待っていてくださいね!」

 

 

 

 

 

 

 ――ポプラ元ジムリーダー、引退後の生活にはもう慣れましたでしょうか。

 

「元々いつでも辞められるように準備だけはしていたからねえ、そう生活に大差はないさ。ただメジャーの座にしがみつける限界も近かったし、今回のジムチャレンジでビートを見つけられたのは本当に幸運だったよ」

 

 ――後継者であるビート選手は、現在かなりの好成績を残していますが……やはり、ポプラさんの影響が強いのでしょうか。

 

「いいや、そんなことはないよ。あの子は元から強かったね。才能もピカイチだし、それを育てた奴の腕も良かった。強くなるべくしてなった、典型的なエリートタイプだよ。あたしがやったことなんて、ちょっとピンクを教えてやったくらいのもんさ」

 

 ――まだまだ余力を残しての引退と言われていますが、これからアラベスクジムなどのバトル業に携わる予定はございますか?

 

「そうさねえ。ビートがまだまだ半人前だったならそういう道もあったかもしれないけど……半人前は半人前なりに、きちんとやれてるようだから。ま、ババアはとっとと身を引くに限るよ」

 

 

 

 

 

 

 ――マクワ選手の今季の戦績は5戦5勝、連勝が続いております! 現在ジムリーダー暫定1位の座についていますが、マイナー降格となってしまった前シーズンと何か変化はあったのでしょうか?

 

「そうですね。前季は少々トラブルがあり、シーズン後半は中々自分の思うような試合が出来ませんでしたが……今季はもう、あのようなことはないと言っておきましょう」

 

 ――なるほど。前季まで一切用いてこなかったアマルルガを起用し始めたのも、何か心境の変化が?

 

「はい。ボクもようやく、大人になれたということなんじゃないでしょうか。その成長の証として、()にもリベンジしたいのですけれどね」

 

 

 

 

 

 

 ――メロン選手、近頃は後進の育成に力を入れているとの噂ですが……。

 

「そうさねえ。こおりジムはずっとあの子が継ぐもんだと思ってきたけれど……子供の成長ってのは早いもんだよ、本当に。アタシもいい加減、子離れしなきゃってことさ」

 

 ――引退について、具体的な時期は考えていますか?

 

「今年は知り合いが何人も消えてったし、世代交代の波ってやつだろうね。アタシも乗り遅れないようにしなきゃいけないな、とは思っているよ。……ま、一人は別問題で消えたにしてもね」

 

 

 

 

 

 

 ――マリィ選手はあくジムリーダーの前任であるネズ選手と違ってダイマックスの使用に躊躇いがありませんが、その辺りについてはどのようにご考えでしょうか?

 

「別に、わたしにダイマックスについての拘りはなかです。それよりも、勝負に勝つ方が重要だと私は思ってます」

 

 ――なんか、固くないですか? 緊張してます?

 

「……兄にも、()()()にもインタビューの受け方は教わりませんでした。……緊張、してます」

 

 

 

 

 

 

 ――ネズさん、ジムリーダーを引退してから初めての新曲ですが、この歌に込められた思いというのは?

 

「そうですね、まあ……離れ離れになった友人への、ちょっとしたエールってとこですかね」

 

 ――なるほど! 確かにそのような印象はありました。サビの『お前へ………

 

 

 

 

 

 

 ――キバナ選手、近頃の不調の原因は……。

 

「ん……すまねえな、メンタルコントロールが上手くいってねえんだ。ポケモンたちのコンディションは悪くねえ、すぐに調子を取り戻してマクワを引き摺り下ろすぜ」

 

 ――精神面でというのは、前チャンピオンの敗北が? それとも()()……。

 

「うーん、まあ、そうだな。そんな感じだ。これ以上俺サマから言うことはないぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「――ガラル、スタートーナメント?」

「そうですマスタード師匠! 師匠のことですから、勿論興味はあるでしょう? この広いガラルの地から最強の選手たちを集め、それぞれがタッグを組む! 組み合わせ次第ではファン待望のドリームマッチが成立し放題です!」

 

 ヨロイ島。ガラルの外れに浮かぶ小さな孤島にて、褐色の男と白い髭を生やした老人が向かい合っていた。

 相当に激しい戦闘でも行ったのだろう、バトルコートが描かれている二人の周りには炎で焼け焦げた跡や砕かれた岩石が飛び散っている。

 

 豪奢なスーツを着、熱弁を振るう男がダンデ。対し興味深そうに話に頷く老人はマスタード。

 互いに元ガラルチャンピオン、一般人からすれば天上の存在である。かつて師弟の関係にあった二人が久々に、などと言って始めた一戦はファンが聞けばまさに垂涎ものだろう。事実、彼らの激戦に匹敵するような戦いは近年のガラルリーグではチャンピオンマッチに向けコンディションを完璧に整えたキバナとダンデのそれくらいだ。

 数少ない自分を負かせることの出来るかもしれない相手――ユウリはそれを飛び越えてしまったが――との久々の闘いにダンデは心躍りながらも、途中でバトルを切り上げ本来の用件をマスタードに伝える。

 

 ガラルスタートーナメント。

 ダンデ考案のそれは、一言で言ってしまえばガラルの実力者たちによるタッグバトルの大会である。

 ローズの失脚後、彼の就いていたリーグ委員長という地位を継いだダンデは新チャンプの誕生に熱狂しているガラルを更に盛り上げるため、各地の実力者たちを集めた大会を開こうとしているのだ。

 無論、目の前のマスタードもその内の一人。かつての無敵のチャンピオンが参加してくれれば百人力だ、とこのヨロイ島に舞い戻ってきた訳である。

 

 そして師であるマスタードに話をしてみれば予想通り、彼の眼は新たな強敵たちとの出会いに燃え始めていた。

 

「ほう……中々に、心惹かれる催しよな」

「はい。この後の予定では、ジムリーダーたちや師匠以外の元チャンプ、果てには王族たちなど沢山のガラルの実力者たちに声を掛けます。新チャンプにはちょっとしたサプライズで、要件を伝えずに呼び出すつもりですけどね。

 ……それと、一人だけ連絡の取れない強者がいるのですが――そっちの方は、俺が動かなくても案外何とかなりそうな気がしています」

 

 ふむ。お主がそう言うのであればそうなのであろうな。

 楽観的だがどこか信頼できる言葉を吐くのが目の前の男、ダンデである。マスタードはそのようにかつての弟子のことを内心評価していた。

 

 さて一方、ガラルスタートーナメントと称す催しの方であるが――先の言葉に偽りはなく、まっこと興味深い。

 ともすれば、かつて鎬を削った()()()ともまた戦う機会があるどころか肩を並べることもあるだろう。それは何とも、面白そうの一言に尽きる。

 

 昔よりこういった場では直感で答えを返すと決めていた。

 向こうもこちらの返答を察しているのだろう、不敵な笑みで招待状とやらを手に取っている。

 

「相分かった。そのスタートーナメントとやら、楽しみにしておこう」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ブラックナイト事変。

 僅か十数日ほど前に起こったばかりの事件、その呼称の一つである。

 

 ナックルシティを襲った未曾有の大災害は、その第一の危機においては旧チャンプ・ダンデとその弟ホップ、そして新チャンプのユウリたち三人のトレーナーと二匹の伝説のポケモンによって鎮められた。

 

 この時点で既に各地のパワースポット周囲における影響は甚大であり、暴走したダイマックスポケモンによる被害も数件見受けられたという。

 もっともその多くは鍛え上げられたジムトレーナーたちやマクロコスモス社員たちによって鎮圧され、軽傷者は数人出るも死者は零に抑えられたのだが。

 

 問題は、その事件における第二の危機――はがねジムリーダー(マクロコスモス幹部)、カイを人柱としたエネルギー供給路の作成計画の実行であった。

 

 謎のポケモン(UB)と伝説のポケモンは無限大のエネルギーの供給を受け、ナックルシティの機能のおよそ7割を停止させた。

 ガラル地方の中心たるこの都市においてその数字は余りに大きく、避難が完了しており人的被害は無かったとはいえ無視することは出来なかった。

 

 問題であったのは、この計画の実行者であるカイが計画の被害者でもあったこと。

 そしてこの計画の首謀者であったローズ元リーグ委員長の大衆人気が、事件を乗り越えてなお凄まじかったことである。

 

 世論はマスコミの情報によっていとも簡単に覆る。しかしそのマスコミもマクロコスモスが握っていては、事件の責が誰にあるかなど彼らの一存で簡単に決まってしまうだろう。マクロコスモスの傀儡となった経験もあるガラルの警察の誰もがそう考えた。

 

 しかし、黒幕であったローズの取った行動は少し予想外である、と言わざるを得ないものであった。

 

 ローズ元リーグ委員長、自首。

 ガラルの各メディアたちはそのニュースを困惑しながらも報道した。

 彼の権力があれば、あれほどの大事件であっても責任逃れをすることは不可能でない。国際警察が首を突っ込んでくれば話は別であろうが、どうやら彼らはこの事件への対応について少し揉めているらしい。

 

 彼は事件の全ての責は自身にあるとし、カイのことを全面的に擁護した。

 ナックルシティ復興の費用も支払われてしまっては、彼の自首を受け入れないわけにはいかない。捜査、逮捕……と驚くべきほど短時間でそれらは行われた。

 

 裁判はスムーズに進むことが予見された。ローズ元委員長は自身の罪を認めており、証拠も多数揃っている。ただ世論や彼の動機、また人的被害が零に近いことなどを考慮すれば減刑もあって然るべきである。無罪ではないがそれほど重い罰が与えられることもない、そんなところが落とし所だろう。多くの法律家たちがそう語った。

 

 もう一つ語るべき点があるとすれば、カイのことだろう。

 彼はナックルシティを破壊し尽した計画の実行者でもあり、ガラルのエネルギー事情を解決するための犠牲にさせられかけた被害者でもある。

 実年齢は僅か■歳、また過去に虐待を受けた経験があり――実際はもっと悍ましいものであったが――精神的に非常に不安定な状態であったことも認められていれば、彼を罪に問おうとする者は極少数であった。

 

 計画の所為か、事件の日から意識不明の状態が続く彼の保護は新チャンプがその役目を買って出、とある病院の地下室に安置された。

 

 カイに対する世論の多くは同情的なものだ。あるいは、それもローズ委員長の置き土産なのかもしれないが――大人たちの傲慢の犠牲となった幼き少年に事件の責を追及しようとするのは、あまりに人の心がないのではないかと非難された。

 

 しかしその事情がややこしくなったのは、事件からおよそ半月後。彼が意識を取り戻し、そして病院を脱走した日だ。

 

 彼の身体は未だ快復したとは言い辛く、半月の眠っていた期間を考えれば歩くこともままならないだろう。能力の副作用という奴か、身体の各部は見るも無残な姿になっており――また、()()()()()()()()()()()に治療を担当した医者は頭を抱えていたのだから。

 

 エーテル財団の施した改造は現代医療による治癒を阻み――また、その改造によって得た力は自ら身体を「修復」し始めた。

 

 それは見る者全ての表情を歪ませた。到底それは自然界にあっていい現象ではなく、意識の無い中であっても苦痛に悶える少年の姿を見て喜ぶ者は、一般的倫理を兼ね備えた人間の中には存在しなかったのだ。

 

 やがて最低限生命の維持に必要な機能を取り戻すと身体は「修復」を終え、そしてそれからしばらくの時を置いて彼の意識の回復、そしてそれに伴う脱走は起こった。

 

 多くの人間は叫んだ。今すぐ彼を連れ戻し、保護をすべきだ。彼は自身の状況を把握できていない。そのトラウマから、周囲に恐怖を覚え逃げ出したのだろう、と。

 

 そしてそれはあながち間違いでもない。確かに彼を突き動かしたのは恐怖の念である。ただ、その感情の向き先を自分でも見失っているだけで。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 謎のトレーナーとポケモンによりナックルシティの復興は終わり、いよいよ事件の爪痕は消え去ったガラル。しかし未だ民衆たちの心には強く記憶が刻まれていた。

 信頼していたリーグ委員長の裏切りとも呼べる計画、メジャージムリーダー一人の失踪、変化していくジムリーダーたち、無敵のチャンプの敗北、新チャンプの就任……余りに多くの出来事は、大衆の心に無意識の内に「不安」の念を植え付けた。

 

 だからこそ、新たな時代の到来を告げる必要があった。新たな時代は明るいものだと宣言する必要があった。そしてそれを行うには、大衆の圧倒的な人気が必須であった。

 

 それらを要因の一つとして、元・無敵のチャンピオン――ダンデは、「ガラルスタートーナメント」の開催に踏み切ったのである。

 

 そして同時に、なんだかんだと言って身内には甘い一人の元ジムリーダーが帰郷する言い訳を作るのにも、それは一役買っていた。

 

 




グラジオ&リーリエ√は出来上がり次第投稿します。
次話はこれの続きか掲示板辺りでしょうか。


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【最新版】現役ジムリーダー最強ランキングつくったったwwww


ゆるしてください(初手謝罪)


久しぶりの掲示板回です。
一応、サブタイがスレタイです。


 

1:名無しのこわいおねえさん ID:Rd0x/kJjQ

SS キバナ

S グリーン デンジ 

A ネズ センリ ミカン エリカ イブキ

以下省略

 

2:名無しのこわいおねえさん ID:v/EULm+ig

は?

全員分書けよ

 

4:名無しのこわいおねえさん ID:9gOu92uLv

シャガがいないやり直し

 

6:名無しのこわいおねえさん ID:29VD3vrAr

キバナがグリーンより上の時点でリーグ公式戦見てないことまるわかり

 

7:名無しのこわいおねえさん ID:Cs25LQqMY

キバナ信者が建てたスレ

 

8:名無しのこわいおねえさん ID:bpK67HM7A

カロス差別か?

 

10:名無しのこわいおねえさん ID:ImrwBKpG4

二度とスレ建てるな

 

13:名無しのこわいおねえさん ID:q8Em0zAKR

>>2>>4>>6>>8>>10

非難轟々で草

 

14:名無しのこわいおねえさん ID:el9VMxPor

ここまで一つもランキングに対して肯定的な意見を目にしていない

 

15:名無しのこわいおねえさん ID:jUscXP0in

参考

ガラル最強ランキング(昨年度版)

 

SS ユウリ ダンデ

S  ポプラ(全盛) キバナ ネズ 

A  マクワ カブ

B+ ヤロー ルリナ ビート メロン

B  マリィ サイトウ ポプラ オニオン 

C  マイナージムリーダー(一部除く)

謎  カイ ホップ クララ セイボリー

 

16:名無しのこわいおねえさん ID:atCNtdxjO

謎は草

どういう基準だよ

 

19:名無しのこわいおねえさん ID:wqWzDbUX8

クララとセイボリーはランキング制作当時まだリーグ公式戦出てない

ホップは伝説を捕獲したとかいって最強議論スレを阿鼻叫喚の地獄にした

カイは知っての通り

 

20:名無しのこわいおねえさん ID:yyiweFL3V

結局今カイは何してるんや?

 

23:名無しのこわいおねえさん ID:e+z4Dh5AN

>>20

もしかして:ガラルスタートーナメント

 

26:名無しのこわいおねえさん ID:NHViSYl0z

謎の仮面エックスさんは一体どこのはがねジムリーダーなんやろなあ

 

27:名無しのこわいおねえさん ID:drXJ4woSr

ダンデとか名前言っちゃってんの笑う

  

30:名無しのこわいおねえさん ID:me4J+oy/a

「名前を言ってはいけないあの人」みたいになってんのマジで面白い

 

32:名無しのこわいおねえさん ID:ubYUFnQQq

チャンプが毎回大会に呼んでるらしいぞ

 

35:名無しのこわいおねえさん ID:Y6RwpYecU

【朗報】新チャンピオンユウリさん、推しとのマルチバトルで満面の笑み

 

38:名無しのこわいおねえさん ID:gZjvEZNzd

スタートーナメントほんとすこ

マスタードとポプラのタッグが見れるとは思ってなかった

 

40:名無しのこわいおねえさん ID:PkNwjHUUO

ホップ&ダンデとかマリィ&ネズとかのコンビ好き

互いに信頼し合ってる感がヤバい

 

42:名無しのこわいおねえさん ID:ls+sQb1Gs

引退したトレーナーの戦いが見れるのは嬉しい

ダンデ企画担当もいけるやん!

 

43:名無しのこわいおねえさん ID:K4KtlsQV9

毎回チャンプが荒らして終わるんだよなあ

結果が分かってる大会ほどつまらないものはない

 

46:名無しのこわいおねえさん ID:QaXcLtu++

>>43

第1回優勝者 ユウリ&マリィ

第2回優勝者 ユウリ&ホップ

第3回優勝者 ユウリ&謎の仮面エックス

 

優勝者6人中3人しか占めてないからセーフ

 

48:名無しのこわいおねえさん ID:x4hcmoH0y

>>46

3分の3やろがい!

 

49:名無しのこわいおねえさん ID:2XgI5oyNL

マルチの癖に敵2匹とも蹴散らしてくの意味わからん

 

50:名無しのこわいおねえさん ID:cJ2B6iHZA

「ストリンダー、ばくおんぱ!」

「は?」

 

53:名無しのこわいおねえさん ID:Cg9y7Uq7Q

>>50

伝説の3体同時撃墜

 

56:名無しのこわいおねえさん ID:7T2qGTvV0

>>50

勝負となったら推しにも容赦しないチャンプすこ

 

57:名無しのこわいおねえさん ID:KHw/A5k6I

>>50

カイのオレンジ色の鳥ポケモンかわいそうやった

 

60:名無しのこわいおねえさん ID:JVnUq1JQ8

第1回の決勝が一番白熱してた

ユウリ倒せそうだったのあの時のダンデ&ホップくらいやろ

 

61:名無しのこわいおねえさん ID:XYLW3GMqv

>>60

ザマゼンタとキョダイリザードンが並び立った時の圧倒的な存在感

 

64:名無しのこわいおねえさん ID:H7hyC5a2C

>>61

なお

 

65:名無しのこわいおねえさん ID:8bDe3zvV1

ユウリ強すぎ

ダンデの初年度とかもこんな気持ちだったわ

 

67:名無しのこわいおねえさん ID:2U2sT9qLA

明確に勝敗ついてるユウリとダンデが同じランクにいるのおかしくないか

 

70:名無しのこわいおねえさん ID:BZhbf90MX

>>67

まだ1試合しかしてないだろ

 

73:名無しのこわいおねえさん ID:hXWnLIGZ6

ダンデ最強論者もまだいるしな

 

74:名無しのこわいおねえさん ID:pRT0tBrXB

>>73

実際大事なのは長年やって結果を残せるかだろ

ユウリも調子落として無敗記録続かなかったら結局評価はダンデ以下

 

77:名無しのこわいおねえさん ID:c5i64hCXK

他地方との交流戦の結果も大事だしな

ダンデ時代はダンデの敗北を避けるためか全然やってなかったけど

 

79:名無しのこわいおねえさん ID:ILAGvZDYH

>>77

勝てそうな地方とだけ試合組むリーグ委員の鑑

 

82:名無しのこわいおねえさん ID:gilUSjaBL

>>77

ジムリーダー交流戦はカントーとかともやってたから(震え声)

 

85:名無しのこわいおねえさん ID:kM2WzU4yM

無敗記録保持してる奴はあんまり交流戦参加させてもらえないよな

シンオウのデンジとかも前まで一切出てなかったし

 

87:名無しのこわいおねえさん ID:2tQoRd/Ld

>>85

結局交流戦に出ても負けないのが流石だわ

シンオウの1勝は確定してる

 

90:名無しのこわいおねえさん ID:GT8+lmjaV

中心地方同士の交流戦、名勝負しかない説

 

92:名無しのこわいおねえさん ID:bk+Mj/SD3

>>90

カントーとジョウトは毎年やってるくせに毎回展開が熱すぎる

 

95:名無しのこわいおねえさん ID:0UJ9xe19G

交流戦は地方のメンツがかかってるからな

人によっては地方リーグの試合より準備するし

 

98:名無しのこわいおねえさん ID:xqL8rM96z

有利なはずのタイプに負けたりしたらめちゃくちゃ叩かれるもんなあ

 

99:名無しのこわいおねえさん ID:LQF46xCyh

同じタイプの使い手同士の戦いとかマジで熱い

タイプ別最強議論とかが盛り上がるのもわかる

 

100:名無しのこわいおねえさん ID:5Z1/8oXnZ

同タイプバトルは見応えがすごい

かくとうとかひこうとかめっちゃ迫力ある

 

103:名無しのこわいおねえさん ID:lRDXYyQOY

ドラゴンVSドラゴンがいっちゃん好き

セキエイリーグのワタル対イブキ何回も見返してる

 

104:名無しのこわいおねえさん ID:Bg5noNZBi

結局>>1のランキングはどこを修正すればいいんや?

 

107:名無しのこわいおねえさん ID:gzjhH7fR7

>>104

少なくともキバナがトップではない

 

109:名無しのこわいおねえさん ID:TCrIz1BOF

今季キバナ荒れとるらしいな

 

111:名無しのこわいおねえさん ID:tt9FpDbZq

>>109

マクワと割と競ってるで

ようやくこの間1位取り戻した

 

114:名無しのこわいおねえさん ID:SjdKIavTD

今季ガラル暫定ランキング

 

1位 キバナ 勝率0.733

2位 マクワ 勝率0.714

3位 ビート 勝率0.692

4位 ルリナ 勝率0.667

5位 ヤロー 勝率0.667

6位 カブ  勝率0.615

7位 マリィ 勝率0.538

8位 メロン 勝率0.538

 

117:名無しのこわいおねえさん ID:/ilG6jG7Y

>>114

案の定サイトウ落ちてて笑う

 

120:名無しのこわいおねえさん ID:01RqjllDw

ルリナ調子ええやん

 

121:名無しのこわいおねえさん ID:S5tgPDkOX

>>120

調子ええ時はええんや

この前もマクワに5-0で勝ったし

 

124:名無しのこわいおねえさん ID:JwiIB3M6f

>>121

ガチで気持ちいい雨パのゴリ押しやった

 

126:名無しのこわいおねえさん ID:RvP2Msl4b

序盤のランキングはあんま信用ならんけどな

相性良い(悪い)やつとばっか試合組まれてる時とかあるし

 

128:名無しのこわいおねえさん ID:K9Lv9ArGk

マクワ5連勝した途端キバナとかルリナとかと組まされて可哀想やった

でもメロンママには勝ったし今季こそ将来のチャンピオンやで!

 

129:名無しのこわいおねえさん ID:SC1E/a0b+

>>128

今季ユウリ

8戦8勝0敗0分

勝率1.000

 

130:名無しのこわいおねえさん ID:WX+TAnINF

ま、まだ8戦しかしてないから…(震え声)

 

131:名無しのこわいおねえさん ID:3UNy9xkmL

未だリーグ公式戦でダンデ以外に手持ち4体以上使っていないという事実

 

134:名無しのこわいおねえさん ID:Ub4cyR7zT

>>131

なお使っていない3体は伝説の模様

 

136:名無しのこわいおねえさん ID:sdLwaSaAm

>>134

どうすればええんや。。。

 

138:名無しのこわいおねえさん ID:lvg9qb4iK

カイならユウリ倒せるんか?

 

140:名無しのこわいおねえさん ID:ywrco4VM2

>>138

ユウリの伝説3体持ちはやっぱ異常みたいやで

伝説使いの序列は意味不明なことになってる

詳しくはそっちのスレで

 

141:名無しのこわいおねえさん ID:wseMP6OAz

>>140

カイはもっと意味わからんけどな

 

143:名無しのこわいおねえさん ID:28rOmNaqB

今のはがねジムってどうなってんの

 

144:名無しのこわいおねえさん ID:28rOmNaqB

>>143

順当にジムトレのトップが継いだ

実力は良くも悪くもマイナージムリーダー並み

 

145:名無しのこわいおねえさん ID:+xe51Wxi4

カイってはがね最強にはなれたんか?

 

146:名無しのこわいおねえさん ID:pqJfF2kep

>>145

はがね使い扱いなんかあれ

 

148:名無しのこわいおねえさん ID:bTA9czLjQ

>>145

はがねは昔からダイゴ一強や

 

149:名無しのこわいおねえさん ID:EcejDX5N6

毎回思うけど

ホウエンとかメガシンカの普及してる地方と他地方のトレーナー比べるのおかしくないか

 

150:名無しのこわいおねえさん ID:ii7On1Fgj

>>149

最強議論スレでは基本的にその辺り平等

ダイマ×

Zわざ×

メガシンカ×

まあメガシンカはそもそも使える奴がほとんどおらんけどな

 

153:名無しのこわいおねえさん ID:7OnmyvgVk

ダイマありならガラル勢が断トツやろ

 

154:名無しのこわいおねえさん ID:YU5r2Bm59

メガシンカありならカロスとホウエン強すぎやろ

 

157:名無しのこわいおねえさん ID:Fu+yXXWNu

>>153

>>154

 

160:名無しのこわいおねえさん ID:abZ97iP6Y

アローラ勢はやっぱ弱いの?

 

163:名無しのこわいおねえさん ID:DRw+vvd6N

>>160

ちゃんとしたリーグが出来てないのが痛い

四天王でも強いのは一部

 

165:名無しのこわいおねえさん ID:0KGJspgNn

>>160

チャンピオンは断トツで強い

 

168:名無しのこわいおねえさん ID:D39OBw/Ux

アローラとガラルで交流戦やらんかなあ

伝説使い同士の戦いが見たい

 

170:名無しのこわいおねえさん ID://Ylmstpk

>>168

アセロラ対オニオンとか見てみたいわ

順当にアセロラが勝ちそうだけど

 

172:名無しのこわいおねえさん ID:xjzFsWq1I

カヒリちゃんすこ

あの子のためにゴルフ見てる

 

174:名無しのこわいおねえさん ID:94LtTYUF6

>>172

アローラ四天王最えちはライチさんなんだが?

 

176:名無しのこわいおねえさん ID:absn80Q0n

>>174

おばさんじゃん

 

179:名無しのこわいおねえさん ID:94LtTYUF6

>>176

…すぞ

 

181:名無しのこわいおねえさん ID:ayBGjiAAR

ライチさんのえっちさについては

100点で俺ら一致するからな

 

ライチだけに

 

182:名無しのこわいおねえさん ID:zH438t0J/

>>181

は?

 

183:名無しのこわいおねえさん ID:shFdgcqcc

>>181

は?

 

199:名無しのこわいおねえさん ID:FuuktjIp9

>>181

は?

 

211:名無しのこわいおねえさん ID:6H5x8ajX2

>>181

は?

 

213:名無しのこわいおねえさん ID:z7VYaytmK

>>181

は?

 

214:名無しのこわいおねえさん ID:ASayjplA0

辛辣で草

 

 




恐らく次回はイッシュ編。


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inイッシュ その1


とりあえず一話分書き終わったBW(BW2)編。
未プレイでもわかるようにしていきます。

他の番外編は書き終わり次第、その都度投稿します。


 

「あぁ、もう私はエンブオーと2人で生きていくしかないのね……。

 でもどうしようもないの。わかって、エンブオー。最早この世界には、あなたと私しか残っていないのだから……」

 

 嘆く女。

 寄り添うポケモン。

 

 ゾンビの大群によって荒廃した世界の中、生き残りの一人と一匹はただお互いのみを想って夜の砂浜に立つ。

 

 響く波の音。

 闇夜を照らす月光。

 

「あと少し……あと、少しだけ……このままで、いさせて…………」

 

 先行きは暗くとも、ただこの瞬間だけは。

 この世界が変わった3日間で失った多くのものが、焼き付いた網膜から離れてくれるまでは。

 

 何もかもを忘れて、自然の音と光景に浸っていたかった。

 女はそう願い、ポケモンは主人の望みを受け入れた。

 

「……っ」

 

 嗅ぎ慣れない潮の匂いが、鼻の奥をツンと刺す。

 きっかけを与えてしまえば、後は簡単だった。

 

「うぅ、ひっく……ううぅ……!」

 

 涙は流さない、そう決めていた。

 だって隣の相棒は、主人の涙に弱いのだから。

 

 幼少期には、よく「うそなき」でポカブにお願いを聞いてもらっていた。

 思春期で、本当の涙が堪え切れずについ零れてしまったとき、チャオブーは泣きながら助けを探しに行ってくれた。

 

 そして今、隣のエンブオーはそっと私の肩を抱いていた。

 自分だって泣きそうな顔なのに、一匹での留守番もできない「さみしがり」なのに、彼は私の涙を止めようと精一杯頑張っている。

 

 そんな彼の姿を見ていれば、不思議と涙は引っ込んでいた。

 今までずっと一緒だった相棒と共になら、この世界だって何とかなりそうな気がしてきた。

 

「……ねえ、エンブオー。こんな世界になっちゃったけど、わたし夢があるの」

 

「この世界を端から端まで、あなたと一緒に旅をするっていう、素敵な夢が――――」

 

 


 

「はーい、カットォー! お疲れ、今回もすっごく良かったよ!

 特に中盤のあのアドリブ! 思わず脚本まで変えちゃった!」

「えへへ、ありがとうございますー! エンブオーちゃんが思ったより張り切ってて、これは合わせるしかない!って感じだったんです」

「Buo!」

 

 ゾンビ映画「Z・ワールド」の全シーンの撮影が無事終了し、迫真の演技を行った主演女優を皆が讃える。

 特に監督と件の女優の付き合いは長いようで、女優のアドリブと、それに対して「やはり来たか」と言わんばかりに対応した監督の腕にスタッフたちは興奮冷めやらぬ様子だ。

 

 他の俳優・女優・撮影に参加したポケモンたちも口々に労いの言葉を掛け合い、誰もが撮影の終了を喜ぶ。

 

 

 ――そんな楽し気な彼らの様子を、私は一人さみしくスタジオの隅から眺めていた。

 

「い~な~。ああやって私もチヤホヤされたいな~」

 

 私の名前はメイ。

 女優を目指し、地元のヒオウギシティから単身ポケウッドにやって来たうら若い女の子!

 

 ……しかし芸能界は私の想像していたような甘い世界ではなく、現在絶賛終わりの見えない下積み生活中。

 

 単身ポケウッドにやってきてから早一年。どれだけ経っても貰える役はエキストラばかりだ。今回の撮影だって、私が演じたのは序盤でゾンビに襲われてセリフもなくあっさり死ぬだけの端役。

 昔夢見たキラキラの生活とはかけ離れた現状に、思わずため息がこぼれる。

 

「はぁ~……顔を覚えてもらおうと撮影お疲れさまでした、って挨拶に行ったら『何で君まだいるの?』って顔されるし。相変わらず貰える役はエキストラばっかりだし。

 女優目指して小っちゃい頃から頑張ってきたけど、もう流石に心折れそうだよ~! 演技力は主演の人とだって大差ないと思うのに……何が悪いって言うんだろ」

 

 幼少期からの特訓により、かなりのものと自負するにまで育った演技力。

 派手な技も朝飯前、外見のコンディションだって完璧なポケモンたち。

 

 その辺りは十分だと思うのになあ。

 人を映画の世界に引き摺り込む、演技の才とでも言うべきものが足りないのだろうか。

 努力量は大抵のライバルに負けていない自信がある。となれば、言い訳がましくなってしまうため言いたくはないが、原因は才能と見るべきだろう。

 

『何という才能だ……! この子ならばジムリーダーごとき、いやポケモンリーグだって相手になるかどうか……!』

 

 才能、という言葉にふと昔の記憶を思い出す。

 あまり好きじゃない思い出だ。やりたい事と得意な事が異なっているという事象はありふれたことではある。しかし、喉から手が出る程欲しがった才能がやる気のない人間に宿っているなど、周りの人間からすれば悪夢でしかないだろう。

 

 「才能」とは、とても残酷な言葉だと思う。

 逆に「努力」は、結構好きな言葉の一つだ。

 

 しかしその残酷さに心を折られる人間は毎日たくさん世界中に発生している訳で、私もあまりの成果の出なさにとうとう彼らの仲間入りを果たそうとしていた。

 

「せめてファンの一人でもいたらやる気出てくるんだけど……っと。なに、今の音」

 

 そうやってぶつぶつと一人で文句を呟いていれば、スタジオの外から爆発音的なものが聞こえてきた。

 そう大きなものではなかったが、意外と近い所からの音だ。

 

 世界各地から様々な種類のポケモンが集まってくるポケウッドでは爆発音程度珍しくもないが、たまに不慮の事故が発生している時がある。

 ちょうどスタジオに居座る理由も無くなったところだ。帰り道ついでに確認しておこう。

 

 そう思って外に出てみれば、割とすぐに犯人らしい人物は見つかった。

 道の真ん中、ポツンと一人で佇んでいる白髪の少年。

 他に人やポケモンは見当たらないのだから、恐らくは彼が先ほどの音の原因だろう。

 爆発痕なんかが残っていればもうドンピシャなのだが、しかし周囲は驚くほどに綺麗なままであった。

 

 困惑した様子で立ち尽くす彼は、何事かをブツブツと呟いている。

 状況が気になった私は、少しだけ立ち聞きをしてみることにした。

 

「どこだ、ここ? えーと、P・O・K・E・W・O・O・D……ああ、ポケウッドか。

 ……ポケウッド!? 何でだよ! 俺はミカンのところにでも転がり込もうと思ってジョウトに逃げてきたはずだぞ!」

 

 何やら困った様子で喚いているのだが、一体どうしたのだろうか。言っていることがよくわからない。

 

 この付近で喚いている人たちの事情と言えば、映画の出演を断られたとか、期待していた役が貰えなかったとか? 勝手に彼の境遇を想像して、少し親近感が湧いてくる。

 そうなると先の爆発音は彼の八つ当たりだった可能性まで出てくるが、一応話を聞いてみようと近寄って声をかけることにした。

 

「すみません。さっきの音って……」

「何だよ、俺だって今何が起きてるのか――――え、メイ?」

 

 一瞬、体が硬直する。

 しかしそれも当然だろう。全く見覚えのない人物に自分の名前を言い当てられたのだから。

 

「な、なんで私の名前知ってるんですか……!?」

「え!? あ、いや、その、えーと、ほら。あれだよ、あれ。

 …………そう! お前女優やってるだろ? 実はファンなんだ!」

「ええっ!?」

 

 想像もしていなかった言葉に、ドキリと心臓が跳ねる。

 心が折れかけて、ファンが欲しいと思った瞬間に望み通りファンが現れるなんて、運命かなにかなのでは?

 

 しかし余りにも都合が良すぎる展開に、思わず疑念が先走ってしまう。

 セリフを貰った回数すら数えるほどしかないのにファンになってくれる人物なんて、一体どれほどの数がいるのだろうか。

 

「ほ、本当ですか? 私まだ、エキストラでしか映画に出てないのに……」

「い、いや本当だって! ほら、えーと、サイン頂戴! サイン!」

 

 何故か焦った様子で頭を掻きながら、何かを誤魔化すようにサインを求めてくる私のファン。

 その余りの不自然さからファンというのは嘘かと一瞬思ったが、好きな女優が目の前に現れたらこれくらいは緊張するものか。

 納得した私は自分でもわかるくらいめちゃくちゃニヤけて、密かに練習していたサインをさらさらと差し出された手帳に描いて返す。

 

「お名前は……カイさん、ですね。はいどうぞ!」

「ど、どうも! ……うわー。『May』って、ガチでメイじゃん。何がどうなってんの? BW2主人公と同名の無名女優とかだったりしないかな……

 

 推しの女優のサインを貰えた嬉しさからか、ブツブツと何事かを呟く私のファン。

 ”私”のファン。ここ重要。

 まあ、カイさんは記念すべき一人目のファンなのだ。多少の奇行くらいは許容する腹積もりはこちらにもある。何の憂いもなく私のことを推して頂きたい。

 

「今なら大サービスで握手もしてあげますけど?」

「わ、わー。嬉しいなあ」

 

 ふんす、と少し調子に乗って右手を差し出してみればカイさんは大喜びの様子で応じてきた。

 自分の行動一つで喜ぶ存在がいるという事象に、かつてない程の幸福感を感じる。

 

「更に写真撮影まで許可しちゃいますけど?」

「や、やったあ」

 

 ふんすふんす、と憧れだったファンサービスを存分に行う。

 これは俗に言う「神対応」という奴では? 心の中で自画自賛が止まらない。

 

「じゃ、じゃあロトム、写真撮ってくれ」

 

 そんな風に自分に酔っていれば、彼が一言呟くと同時に携帯がバチバチと帯電しながら浮かび上がってきて、パシャリと自動で写真を撮るものだから驚きである。

 

「ええ、なんですかこれ。すごいですね、ポケモンがスマホの中に入ってるんですか?」

「え? スマホロトムって、知らないか?」

「えっ」

 

 聞いたことのない言葉に思わず閉口する。

 もしかして私、時代に乗り遅れている? 演技に人生を捧げてきた弊害がこんなところに表れてたりする?

 

「え、えーと、あれですよね。スマホがロトムだからスマホロトムなんですよね」

 

 マズい。こんなことでファンを幻滅させるわけにはいかない。

 初めてのファンが出来てから早くも5分で訪れたファン消滅の危機に、冷や汗を流しながら対処する。

 

「お、おう。まあそうだな。……スマホロトムって、イッシュには普及してないのか? でもアローラにはロトム図鑑があるよな……

 

 何か知らんが合ってたらしい。

 自分でも何言ってるのかよくわからなかっただけに、かなりホッとした。

 

 ロトムって何だろう。ポケモンの名前かな?

 スクールを中退してポケウッドにやってきた身であるため、普段見かけないポケモンの名前なんて知りもしないのだ。

 改めて考えれば、大抵の人はスクールを卒業している中自分だけこうというのは少しマズい状況かもしれない。

 低学歴をマイナスポイントと捉えるかどうかは人次第だが、少なくとも誇ることではないだろう。

 

 自分の良くないところがまた一つ自覚できた。やはりファンがいるのといないのとでは女優としての成長にも関わってくるらしい。

 

にしてもスマホロトムが普及していないっていうのは……いや、まさか……。

 なあ、今のイッシュチャンピオンって誰かわかるか?」

「へ?」

 

 やけに考えこんでいると思えば、急に変な質問をされる。タイムマシンにでも乗ってきたんじゃないかって質問だ。

 

 チャンピオンと言えば、どう考えてもあのチャンピオンだろう。

 ポケモンリーグの頂点、全トレーナーの憧れだ。

 

 確かつい最近交代したと聞いたが、どうにも私は映画関係以外に興味が無さすぎるみたいで、あまり記憶に残っていない。

 

 あれ、チャンピオンの名前が言えないのは普通にヤバくないか。

 これだからスクール中退は、とか言われても何も反論できないぞ。

 

「えーっと、あれですよね。この前新しく就任した、えーと、あの人」

「……アイリスか?」

「そう! そうそう、その人です。つい最近アデクさんから変わりましたよね。今月のことじゃないですか?」

 

 そうだ、アイリスさんだ。ようやく思い出した。

 頭の片隅にあった記憶が引っ張り出され、ずいぶんとスッキリした心持ちになる。

 尤も、顔までは思い出せないのだが。

 

「嘘だろ……」

 

 一方、彼は頭を抱えていた。

 私の常識知らず加減に呆れているのだろうか。

 確かに今のは自分でもちょっと引いた。

 

 このままではただただ私のバカを披露しているだけになってしまう。

 どうにかして話題を逸らさなければ。

 

「と、ところでカイさんはどこにお住まいなんですか? ポケウッドには旅行で?」

「ん? あー、家はアローラにあるけど――」

 

 そこまで言葉を繋げたところで彼の口の動きが止まる。

 それと同時に、帰り道を見失った迷子みたいに、何か不味いことに気付いたような焦った表情が浮かび始めた。

 

「ちょーっと、この後行く先は決まってないな……」

 

 何か不味い話題に触れてしまったのだろうか。

 慌てて話題の転換を試みる。

 

「じゃ、じゃあ私の女優としてのスキルアップには、何が必要だと思いますか?」

「へ?」

 

 先ほども悩んでいたことだが、私は今自分の限界にぶつかっている。それも何の成果も出せないまま。

 しかし先のカイさんとの会話の中でもいくつか自分の欠点は自覚でき、ファンという自分を注視する存在がいればこそ成長できる要素もあるのだと気づいた。

 

 ファンというのは、私のことを客観視してくれる有難い存在である。

 そんな存在である彼からならば、私の能力向上に有効な策をきっと編み出してくれる、そう思っての質問であった。

 

 そしてその、割と切実な思いも籠った質問に対する答えは、案外すんなりと返ってくる。

 

「ポケウッドの女優として成功するには何が必要か? バトルの腕じゃねえの」

 

 特に大して考え込まず、さらりと返されたような答えであったが、その言葉には確かに納得させられるものがあった。

 

『女優? ……いやいや、何を言っているんだ。こんなにも実力があるのに――』

 

 確かに私は過去のある経験から、バトルに対し少し距離を取っていた側面がある。

 それが女優としての成長の壁になっていると言うのならば、過去の嫌な記憶なんて忘れてバトルの腕を磨くべきなのかもしれない。

 映画においてポケモンバトルのシーンは最高に盛り上がる見せ場と言っても良いし、超有名女優であるカロスのカルネさんのバトルの強さなんかも考えれば、彼の意見は十分に一理あると思えた。

 

「具体的に、どうやったらバトルで強くなれますか?」

 

 かつてはスクールで名を馳せていた私だが、バトルから離れてかなり久しい。同級生だった彼らにはとうの昔に追い越されていることであろう。

 またスクールに入り直すべきだろうか。地元の校舎には当時の先生がいて気まずいので通いたくないのだが。

 

「一番メジャーなのはジムバッジ集めだろ。一地方を隅々まで巡りながら野生のポケモン・野良トレーナーたちと競い合って腕を磨いていく……うん、旅は良いモンだ」

 

 どこかしみじみとした様子で語る彼。

 確かに風の噂では、当時の町に住んでいた同年代の子たちの大半は旅に出てジムを巡っているという。途中で挫折したり、まだ挑戦し続けていたりと期間の長さは人それぞれであるそうだが。

 

「旅、かあ」

 

 武者修行、というやつだろうか。

 ポケウッドから離れることに少しばかりの抵抗感はあるが、短期間のものならば良いかもしれない。この苦境を脱するために、心機一転新しいことを行う必要もあるだろう。

 旅の具体的な期間は決められないが、ジムバッジを手に入れたら終わりにでもしようか。1つでもバッジを持っていたら一人前だってよく言うし。

 

 しかし、いざ旅に出ようと決めたところである人の顔が思い浮かんだ。

 かつての英雄の一人。唯一私の夢を応援してくれた人。

 

『そっか、メイちゃんは街を出てポケウッドに行くんだね。すごいなあ。私なんて、旅に出た理由も友達と同じことをしたかったっていうだけなのに。頑張って夢を叶えてね。応援するよお!

 ……それでね、2歳上の先輩として一つアドバイスなんだけど。もし何かあって、他のみんなみたいに旅をしたいって思う時が来たのなら、一緒に旅をする仲間を探してみて欲しいんだあ。

 ライバルみたいな、友達みたいな……そんな関係になれたなら、きっとその人はメイちゃんを助けてくれるし、メイちゃんをすごく成長させてくれると思う。

 私だって、()()()()がいたからこそ、今の私があると思うんだ』

 

 あの人の柔らかな笑顔を思い出し、腰元のモンスターボールを優しく撫でる。

 「メイちゃんを守ってくれるようにお願いしておいたよお」と渡された一匹のポケモン。「ゆうかん」なこの子は、旅という言葉を聞いてボールの中で少し喜んでいるように見えた。

 

 受け取った時は、私はそんなに危なっかしく見えるのかと思ったものだが、今考えればあの人は研究業に専念するせいでこの子の望む生活を提供してあげられない、という思いから私に託したのかもしれない。こんな風に、私が旅に出るところまで予想して。

 

 でも、それにしたって自分のポケモンを渡すというのは、うぬぼれでなければ確かな信頼の証だ。

 どうせなら私はそれに応えたい。あの人のポケモンに見合う私になれるように、助言には従っておきたかった。

 

「……カイさんって、さっき行く宛がないって言ってましたよね」

「ん? おう」

「カイさんって、私のファンですよね」

「お、おう」

 

 初めて会った人だが、見た目からして危険ではないだろう。いざとなれば力で抑え込める。

 それに旅は道連れ、とか袖振り合うもなんちゃら、とか映画のキャラが言っていたし、これも何かの縁ではないだろうか。

 

「その……もし良かったら、一緒に旅に出ませんか?」

 

 そんな軽い気持ちで提案する。

 私たち子供にとって旅とはそんなものだ。大概が幼い時分より一人、あるいは複数人で世界を回る。

 大人たちもみんな昔に旅を経験してきている。そして結構な人が口を揃えて言うのだ。

 旅は良いものだ、と。

 

「――」

 

 そして目の前の彼は、そんな私の言葉にどこか感じ入った様相を見せる。

 なんとなく。本当になんとなく、彼にとって「旅」とは大切なものなんだと感じられた。

 

 やがて彼はこちらの目を見つめながら、ゆっくりと口を開く。

 

「もしも、仮に。ポケモンの解放だとか、保護だとか、変なことを言ってくる奴らが俺たちを襲ってきたとして――その時お前は、どうする?」

 

 その問いには、簡単に答えを返してはいけない気がした。

 

 この人は何かを、すごく怖がっている。すごく不安な気持ちでいる。

 演技の業界に長くいたおかげだろうか。その質問には、そんな心情が込められているとわかった。

 

「大丈夫ですよ。安心してください。

 ――私が、守りますから!」

 

 だから、自信満々に言い切った。

 強い言葉で相手の不安を包み込む。

 私のファン第1号で、これから旅をする予定の仲間なのだ。それくらいのメンタルケアはしてあげようではないか。

 

「これでも私、ポケモンバトルの才能があるってスクールの先生に褒められたことがあるんですよ?

 先輩から貰ったポケモンもいるし、悪いやつらは皆やっつけてあげます」

 

 ふんす、といかにも自信のあるように告げる。

 だとしても、こんな弱そうな小娘の言葉なんて気休めにしかならないだろう。

 実際そんなに強くないと思う。

 

 でも目の前の彼の眼には、確かに私に対する信頼が垣間見えた。

 

「……じゃあ、『契約』だ。俺はお前のジムバッジを集める旅に同行して手助けをし、その間お前は俺を守る。ギブアンドテイク、裏切りはなしだ」

「当たり前じゃないですか! 私はファンのことを裏切ったことはありませんよ!」

 

 まあ、今までファンがいたことはなかったんですが。

 そんな冗談のつもりでの発言だったけど、彼は真面目に受け取ったようですごく真剣な表情をしていた。

 

「そっか。それなら信頼できるな。よろしく、メイ」

「はい。よろしくお願いしますね、カイさん」

 

 旅の始まりを告げる握手。

 それは何だか映画のワンシーンのようで、少しばかり胸が高鳴るのを私は感じていたのです。

 

 




~人物紹介~

カイ
白髪ショタ。
多分次からはこいつ視点で話が進んでいく。

本編終了後ミカンに匿ってもらおうとジョウトに向かったらご都合主義でセレビィにBW2時空に飛ばされた。

旅の提案をされた時は結構いろんなことを考えてる。
結局は最強の主人公に身を預けるのが最も安牌と考え承諾。
当然主人公の旅がそんな平穏に進むわけがない。

あわよくば、とビクティニの捕獲を計画している。


メイ
BW2♀主人公。ポケモンの女トレーナーの中ではトップクラスに人気が高い。
とある事件から一時期は男の娘として騒がれていた。

本作においては女優を目指す夢見る少女。
しかしトレーナーとしての才能の方が女優としての才より数万倍優れている。

ポケモンバトルで負けたことはないらしい。

スクール中退。現実世界で言うなら義務教育を終えていない。
そのため色々と常識に疎いところがある。

てもち

・ダイケンキ
・ケルディオ



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inイッシュ その2

LEGENDSのカイちゃん人気ですね。
ヒスイ編も書きたくなってしまう罠。






 こいつは悪い女だ。

 無邪気に喜ぶ少女の姿を見て、純粋にそう思った。

 

 隣を見れば、うへぇと化物を見る目で彼女を見つめているジムトレーナーの姿がある。

 俺も同じ顔をしているだろう。それほどまでに、先ほどの惨劇はひどかった。

 

 茫然とするジムリーダー。

 倒れ伏すポケモン。

 

 ふふんと偉そうに胸を張る女。

 無言で佇むポケモン。

 

 つい先ほどタチワキジムに挑戦した少女――メイの初めてのジム戦は、反撃の糸口すら掴ませない、才能の暴力による圧倒的な蹂躙という形で終了した。

 

 


 

「――タチワキジム?」

「はい! ポケウッドから一番近い町はそこですから、早速挑戦しに行きましょう! 私もポケウッドに来てからはよく訪ねていた町です」

 

 なんやかんやあって――すごくなんやかんやあって、目の前の少女との二人旅をすることになった。

 

 彼女の名前はメイ。どう考えてもBW2主人公だ。

 他の例に漏れず圧倒的なバトルの才を有していると思うが、なんでも夢はポケウッドに名を轟かせる大女優だという。

 リーグに所属し、喉から手が出るほどに才能に飢え、一戦一戦に命を懸けているやつらが聞けば卒倒しそうな状況である。

 

 とはいえ、他人の人生に口を出すものじゃない。俺は俺の目的のために、彼女の武者修行とやらに付いて行くことにした。

 そして当然というかなんというか、特に何の議論もなく、一番近いジムのある町であるタチワキシティに最初の目的地が決まる。

 

 タチワキのジムリーダーと言えば思いつくのはホミカだ。

 アイリスがチャンピオンになって日が浅いということは、恐らく現在も彼女がジムリーダーを務めているのだろう。

 

 彼女の得意タイプはどくで、バンドを組んでいることでも有名である。

 「D・O・G・A・R・S ドガース!」のBGMなんかははっきりと頭に残っている。

 

 音楽業界には大して詳しくもないが、ジムリーダーとしての立場も追い風となったのか彼女の名はガラルにまで届いていた。

 ネズなんかは方向性も似ているということで、色々と参考にしているらしい。意外と偉大な存在なのかもしれない。

 

「実はですね、ジムリーダーのホミカさんのパパさんもポケウッドに憧れてる仲間でして、結構仲良しだったりするんですよ。ホミカさんは俳優活動にイマイチ賛成してないみたいで、そんなに仲良くはないんですけど……」

 

 メイの話を聞き、そんな事情もあったなと思い出す。

 ホミカの父親は船乗りなのだが、俳優に憧れており今でも夢に挑戦し続けている。

 

 その姿勢は非常に立派なものだと思うのだが、自身の責務・立場を顧みない振る舞いに、娘のホミカは嫌気がさしているようだ。

 まあ、家族の話に首を突っ込むこともないだろう。気にすることはない。

 

「じゃあ、行くか。道案内は任せていいんだろ?」

「はい! タチワキのことならバッチリです!」

 

 


 

「あー、なんか……ここって、マジでイッシュなんだな」

「?」

 

 見慣れぬ町並み、人種、風景。

 ガラルのそれに慣れてしまっていた俺には、目の前に広がる光景がひどく新鮮なものに見えていた。

 

 港町であり、たくさんの工場が隣接するタチワキシティには、ガラルの大都会であるナックルシティやシュートシティに匹敵する活気が満ちている。

 一方で「人種のるつぼ」と評されるように、ガラルと違って様々な人種の人々がそこかしこを行き通う。

 

「やっぱりアローラとイッシュって違うものなんですか? 私、イッシュから出たことがなくって」

「全然ちげーな。俺は今すげえ『イッシュに来た』ってことを実感してるぜ」

 

 アローラは観光地だからまた話は別だが、イッシュという土地は他の地方からしたら文化も町並みも何もかも違う。

 ユナイテッドステイツという形をこの世界でも維持しているのならば、イッシュという一地方の中でも更に様々な文化が混在しているのだろう。

 

 異文化交流は旅の醍醐味だ。

 今更ながら自分が旅をしているということを実感し、心の奥底からワクワクとした感情が湧きあがってくる。

 

「じゃあ、少し観光でもしていきましょうか? タチワキと言えばホミカさんのライブ、みたいなところがあるので結局行き先は同じかもですけど」

「おお、そりゃ嬉しいけど大丈夫なのかよ」

「何がですか?」

「何って、評判になるくらい人気なんだろ? チケットとか、前もって買っとかなきゃいけないんじゃねえの」

 

 そうやって俺が純粋な疑問を口に出すと、メイはこれまた無駄にデカい胸を張ってムカつくドヤ顔を浮かべる。

 

「ふふん、安心してください。ホミカさんのパパさんと仲良しである私は、なんと顔パスで入場できるのです!」

 

 それはすごい。

 素直にそう思った。やはりコネクションというのは大事である。

 

「じゃあ、そこ行くか」

「はい! ホミカさんのライブはすごいですよ! いっつも満員で、めちゃめちゃテンション上がるんです!」

 

 それ、曲名すらも知らない俺がいたら浮いたりしないだろうか。

 ネズがゲリラライブを始めたときなんかは少し距離を取って関係者面で腕組みしていたものの、今回はそれも出来そうにない。

 まあ、適当に周りに合わせとけばなんとかなると思うが。

 

 


 

「あれ、久しぶりメイちゃん。今日はどうしたの?」

「はい! 今日ってライブの日ですよね。お友達を連れて見に来たんです!」

 

 元気そうにライブハウス兼ポケモンジムの受付に話しかけるメイ。

 顔見知りというのは本当のようで、受付の女にも名前を覚えられているようだが、ライブを見に来たと伝えればどうしてか苦い顔を返される。

 

「あー……ライブね、今日はないよ。何でもジムの仕事ほっぽり過ぎてリーグから怒られたんだって」

「ええっ!」

 

 ごめんね、と少し申し訳なさそうにに対応する受付の女。

 その言葉を受けてメイは見るからに落ち込んでいた。

 

 顔パスで入場できるなどと散々自慢した挙句のこれだから、少し気まずい感情を覚えているのだろう。あるいは、俺の期待を裏切ってしまったなどという罪悪感もあるのかもしれない。

 

「……じゃあ、残念ですけどジム戦だけ挑戦して帰ります」

 

 ライブを見れなかったのは残念だが、そもそも本来の目的はジムバトルである。

 落ち込んではいてもそのことをメイは忘れていないようで、渋々といった感じでジム挑戦の申し込みをする。

 

 しかし受付の女はその申し出に対してもまた苦い顔をしていた。

 

「今はやめといた方が良いよ。ホミカさん、音楽活動に制限かけられたことにかなりイラついてんの。音楽っていうのはもっと自由なんだー、って。根っこでは真面目だから命令には逆らわないんだけどね。

 でもリーグへの反発心もあるのかな、初心者相手にだってまるで負けてやる気配ナシ。手加減した手持ちとはいえ結構本気で挑戦者ボコボコにしてるし、しばらくはバッジ渡す気ないんじゃない? そんなことしても意味ないと思うんだけど、まだ若いから」

 

 なんだそりゃ、と一瞬呆れた感情を抱く。まるでガキだ。いや実際ガキなんだろうが。

 しかしガラルとの文化の違いを考えれば、ホミカの言動にも多少は理解を示せる。

 

 ガラルにおけるジムチャレンジというものは一種の興業と化しており、チャレンジの期間中のジムリーダーは挑戦者を迎え撃つアスリートとしてジム営業に専念するのが普通だ。

 ガラルにおいてはモデルを兼任しているルリナの方が少数派なのだ。マクロコスモス社員との兼業である俺も、基本的にはジムリーダーとしての活動を優先させている。だからこそネズはシンガーソングライターとしての活動に専念するためにジムリーダーを引退したのだろうし。

 

 しかし他地方においてはジムリーダーは副業を持っていることが多く、ジムを空けることなんて日常茶飯事である。

 かつてのカントー・トキワではジムリーダー不在の状況が常態化していたり、シンオウのデンジなんかはそもそもジム戦をする気がなかったりと、他地方ではジムリーダーがかなり勝手気ままに振る舞っている。

 ホミカはミュージシャンとしての活動をジム営業より優先したことに何ら問題意識など抱いていないだろう。だからこそイッシュリーグの措置に苛立っているのだ。

 

 しかし今回の対応に限らず、カントーやジョウトのリーグに比べればイッシュのリーグは随分と真面目なように見える。

 ゲーム本編においてだってイッシュのジムリーダーたちは比較的ジムを空けない傾向があったし、プラズマ団への対処も積極的に行っていた。

 ホミカに対する措置も、イッシュリーグならではのものだろう。

 

 と、まあ色々と考えたわけだが、正直な所ホミカの行動は単なるガキの癇癪である。

 一応数年間ジムリーダーをやった立場から言えば、リーグの対応に不満があってもそれを挑戦者にぶつけるべきではない。特にイッシュでは、挑戦の順番が明確に定められているガラルと違って初心者トレーナーを教え導く役割もジムリーダーが担っているのだから。

 

「ま、だからさ。挑戦したいって言うんなら来週とかにしときなよ。その頃には流石に観念して折れてるだろうから」

 

 受付の女に諭され、メイも挑戦する気が段々と薄れてきたようである。

 元々彼女は強くなることが目的で旅に出たのであって、ジムバッジを集めることが目的じゃない。あくまでそれは手段なのだ。

 

 ライブを見れなかったことも相まって、メイはすっかり気勢を削がれてしまったようである。

 今日はやめておきましょう、なんて気持ちが表情から伝わってくる。

 

「ごめんね、珍しくメイちゃんがバトルに興味持ってくれたのに。連れの少年も悪かったね」

「そうですね、今日はもう帰ろ――」

 

「なに、次の挑戦者はアンタ?」

 

 額を見せるように纏められた白髪。不機嫌そうに吊り上がった瞳。

 噂をすればなんとやら、だ。

 毒タイプエキスパート兼若き天才ミュージシャン、タチワキジムリーダー・ホミカが俺たちの前に現れた。

 

「ど、どうもホミカさん。お久しぶりですね!」

「……女優狂いのアンタがジムに来るなんて、一体どういう風の吹き回し? それとも、ライブをやってないって知らずに来たとかいうオチなわけ?」

 

 うっ、と図星を突かれて唸るメイ。

 にしても、言葉の刺々しさから見る限り機嫌が悪いというのは真実なようである。それとも純粋にメイとホミカの仲が悪いのか。

 

「い、いやいや! 私は女優としてのスキルアップのためにジムに挑戦に来たんですよ! ……今日は帰るつもりだったんですけど

「ふーん。じゃ、相手したげる。ジムトレーナーとはやんなくていーよ。ジムバッジは持ってないよね?」

「は、はい」

 

 そう言うと、ホミカはジムの奥にまた戻る。どうやら手持ちの入れ替えをしてくるようだ。恐らくバッジ0個持ち用の手持ちを連れてくるのだろう。

 戻る前にチラリと俺の方に一瞥をくれていたが、もしかして挑戦者カウントされてたりするだろうか。やめて欲しい。

 

「……ホントにやるの? 今日なんて7つ持ちのベテランを、見てるこっちが可哀想なくらいボッコボコにしてたんだよ。メイちゃんだって手加減してもらえないって」

「う、うーん。まあ、負けは負けで経験ですし……それに! 私には尊敬してる人から貰ったポケモンがいますから!」

 

 そう言ってメイが繰り出したのはダイケンキ。

 リーグレベルとまでは言わないがしっかりと鍛え上げられており、優れたトレーナーが「おや」であったことが見てとれる。

 

 ……いや、意味わからん。なんでバッジ1個目の挑戦で既に御三家最終進化を持ってるんだよ。

 大体人から貰ったポケモンでそのレベルなら言うこと聞かないだろ。

 

「へえ、いいポケモンじゃん」

 

 その声に振り向けば、いつの間にやら新たなボールを手に戻ってきていたホミカの姿。

 腰にはモンスターボールが2つ並んでおり、少し離れて一つだけスーパーボールが存在していた。

 

「行くよ、こっちがバトルコート」

「は、はい!」

 

 スタスタと歩くホミカに、慌てて付いて行くメイ。

 受付の女も後ろを歩いて行く。腰のボールを見るに、どうやら彼女はジムトレーナーでもあるらしい。バトルの観戦に行くのだろう。

 バトルの観戦は好きじゃないが、トレーナーとしてホミカの実力が気になっていた俺も彼らの後を付いて行く。

 

「……ねえ、くさいとか言って騒がないでよ。バトルの邪魔になるから」

 

 ふと振り返り、今更な忠告をするホミカ。

 ……もしかしてこれ、俺に言っているのだろうか。

 

「はあ!? お前俺のことガキだとでも思ってんのか!?」

「これだからガキは……。ねえ、子守は任せたよ」

 

 コイツ、自分だってガキの癖に……!

 さっきの一瞥の意味は「騒ぐなよガキ」とでも言いたかったのだろう。冗談じゃない。イッシュの実力を見てやろうと思っていたが、もういい。主人公(メイ)にボッコボコにされてしまえ。

 ……まあ、メイの力がどれほどかなんて全く知らんが。多分強いだろう。

 

 

 

 


 

 

 

 

 リーグトレーナーとして長年最前線に身を置いていると、「才能」というものについて段々と理解が及んでくる。

 

 例えばガラルでは、カブよりキバナの方がバトルの才能を持っていると主張しても反論は少ない。

 例えばアローラでは、チャンピオンより自身の方がバトルの才能を持っていると主張する奴はいないだろう。

 

 そして、今目の前でバッジを求めて戦っている初心者トレーナーを見て、「彼女は才能を持っていない」と断言する奴の目は節穴だ。

 

「これでいいんですよね? バトルとか久々なんですけど……」

 

 ホミカの1・2匹目を一瞬の内に突破し、悠然と佇むダイケンキ。

 ジムトレーナーは「ありえない」とでも言わんばかりに口を開き、ホミカは想定外の事態に冷や汗を垂らす。

 

 一方、当のメイは「わたし、なんかやっちゃいましたか?」といった表情で辺りをキョロキョロと見渡している。

 なんだお前、チート主人公か? チート主人公だったわ。

 

「――っ! 行って、ダストダス!」

 

 フシデ・ドガースの2匹を無傷で突破されたホミカは、悔しげな表情を浮かべながら腰のスーパーボールを放り投げる。

 

「なっ……! あのダストダス、7つ持ち用の子じゃんか! いくらあのダイケンキが強いからって、そんなの……」

 

「『アクアジェット』」

 

 バッジを1つも有していない未熟なトレーナーの前に、最終進化系まで鍛え上げられた強力なポケモンが立ち塞がる。

 

 本来ならば余りに絶望的な状況。

 しかしメイ(主人公)は敵の力量を一瞬の内に推し量り、自身のポケモンへと最適な指示を飛ばす。

 

 水流と共に素早く突進したダイケンキはダストダスに全身で衝撃を与え、確かなダメージを与える。

 しかしダストダスは今までのポケモンと違い、バッジを7つ有したトレーナーに対して繰り出されるはずであったポケモン。不意を突かれたとはいえ、衝撃を地面に逃がしてダイケンキの一撃を受け止める。

 

「好都合ッ、そのまま『のしかかり』!」

「『まもる』」

 

 鈍重な体を活かしたダストダスの攻撃を、ガッシリと全身で受け止めるダイケンキ。

 マズい、とホミカが冷や汗を垂らした時には既に、ダイケンキの構えはダストダスの急所を狙っていた。

 

「ダストダスッ、離れ――」

『きりさく』

 

 一閃。

 至近距離からのそれは不可避の一撃となってダストダスに命中する。

 

 身を捩って急所だけは避けたものの、その攻撃は小さくないダメージとなってダストダスの身に傷を残す。

 そして更に、才能あるトレーナーの攻めの手は止まらない。

 

「『アクアジェット』!」

「もう一回受け止めて!」

 

 再度繰り返される光景。

 しかしながら、一方的にダストダスにダメージが蓄積されていく。

 

「落ち着いて『どくガス』――」

「『ダイビング』」

 

 当然、そのような展開を許すホミカではない。躱し辛く、それでいて確実にダメージを与えられる「どくガス」を散布してダイケンキの動きを阻害しようと企む。

 しかしメイの指示は更に上を行く。「どくガス」を放とうとした一瞬のスキを突き、トプンという水音と共にダイケンキは身を隠す。

 

 「ダイビング」によってどくガスの散布された空間から逃れたのだ。

 そんな技まで、とホミカは目を見開いて驚きを現す。

 

 ところで水中に潜るわざである「ダイビング」が陸上においても用いることが出来るのは一体どうしてなのだろうか。

 気になって調べたことがあるが、どうも小難しい理屈が並べられてよくわからなかった。携帯獣学なんて学問は専門家たちに任せるに限る。

 尤も、一応陸上で用いる方が水中での使用より制限はかかるとのことだ。理屈は知らんが。

 

「『どくガス』を続けて!」

 

 それに対しホミカはバトルコートを注視しながら「どくガス」の指示をする。

 今の内にフィールドをダストダスの支配下にしてしまおうという算段か。メイや俺は渡されていたガスマスクを装着し、悪くなっていく視界に目を細める。先に述べた通り、陸上での「ダイビング」には制限がかかる。直にこのどくガスに満ちた空間へ姿を現さなくてはならなくなるだろう。

 

 更に言えば、どくガスの濃度が時間と共に高まっていくこの状況下では長期戦になるほどダイケンキに不利である。ダイビングの時間制限を除いても、どくガスが散布しきる前に姿を現してすぐに決着をつけなければならないが――

 

「そこっ! ダストダス、『ヘドロばくだん』!」

 

 焦って身を現してしまえば、優れたトレーナーの観察眼により姿を捉えられ、強烈な一撃の直撃を喰らってしまう。

 ダストダスの渾身の技が放たれ、轟音と共に「ヘドロばくだん」がダイケンキを襲った。

 

「決まったッ!」

 

 隣の受付兼ジムトレーナーが思わずといった感じで立ち上がって声を挙げる。

 なんやかんやと言っていたが、結局のところ応援しているのはホミカなのだろう。誰だって自分のところのリーダーが負けるのは見たくないものだ。

 

 しかし一方で、ホミカの顔は一瞬のうちに歪む。

 「ヘドロばくだん」の直撃を喰らったダイケンキの姿が、まるで幻かのように霧散したのだ。

 

「『アクアジェット』」

 

 爆発の衝撃に遅れて地中から飛び出してきたダイケンキ。

 「みがわり」に気を取られていたダストダスは咄嗟の攻撃に対応できず、直撃を喰らってしまう。

 

「っ! ダストダス、抑え込んで!」

 

 ホミカは歯ぎしりと共に苦い表情を浮かべる。

 メイの作戦に上手くハメられてしまったことを悔いているのだろう。

 

 先の「みがわり」は見事だった。ダイビングの最中、トントンと靴音を鳴らしていたのが合図だったと思われる。正直な所、これでバトルを始めたばかりというのはとてもじゃないが信じられない。スクールは一体どうしてこんな才能の塊を放っておいたのか。

 

 最早ホミカは悠長にはしていられない。

 ダストダスには少なくないダメージが蓄積している。「どくガス」に侵されたダイケンキを、ここで逃がさずに仕留めなければ。

 

 ダストダスの強みはその流動性のある巨体だ。

 先と違い、攻撃ではなく抑え込むことに意識をやれば、その重量をもって毒で弱ったダイケンキを封じ込め、じわじわと嬲ることも可能である。

 

 そう、ダストダスの100kgを超える重量を吹き飛ばすほどの力がダイケンキに無ければ――

 

 

『メガホーン』

 

 

 ズン、と轟音と共に地面が揺れる。

 投げ飛ばされたダストダスが床に落ちた衝撃であった。

 

 「メガホーン」

 それは莫大な威力を持つむしタイプのわざであり、その優れた威力の分命中率が低く、また溜めも必要になる、少々使い勝手の悪いわざである。

 そしてそれは裏を返せば、体が密着し盤面が膠着した先の状況下において、まさに最適解とでも言うべきわざであった。

 

 ダストダスは立ち上がらない。

 一方ダイケンキは一度も直撃を喰らわず、ほぼ無傷の姿。

 誰の目から見ても、勝敗は明らかであった。

 

「……あ、れ? 私もしかして、勝っちゃいました!? やった、やったー! 見ててくれましたか、カイさん! 私勝ちましたよ!」

 

 こいつは、悪い女だ。

 無邪気に喜ぶ少女の姿を見て、純粋にそう思った。

 

 何から何まで奴の掌の上。

 茫然としているホミカは今頃、どこからが計算だったのか、なんて絶望しながら考えているだろう。

 「最初から」というどうしようもない答えから目を逸らして。

 

 長年リーグトレーナーとしてバトルをやっていると、段々と「才能」というものについて理解が及んでくる。

 そしてようやく、常人では影も踏めない「バトルの神に愛された存在」がいるということを実感できるようになるのだ。

 

 多分、これからしばらくホミカはこの不条理に頭を悩ませるだろう。

 ガラルではダンデが既にその不条理を体現していたため、ユウリのジムチャレンジで心折られたジムリーダーはいなかった。

 

 イッシュではどうだろうか。

 これからしばらく続くことになるであろうバッジ集めの旅に、今更ながら不安が湧いてきた。

 




・メイ
 最強系主人公。
 ダイケンキは博士を目指す女性から受け取ったらしい。

 バトルにおいては作戦の立案・修正、敵を誘導する能力が非常に高く、今までで計算通りに行かなかったバトルはない。

 バトルの知識はないため、詰めバトルは苦手。
 本番になったら本能が勝手に正解を選択するタイプ。

・ホミカ
 かわいい。
 初心者が相手なのに大人げなくバッジ7個持ちのトレーナー相手に出すポケモンを繰り出したら一度も攻撃を当てられずに負けた。

 ちなみにダストダスを倒せずともいい感じのところまで行ってたら普通にバッジを渡す気だった。
 人のポケモンでブイブイ言わせてるだけの奴には今回みたいな感じで同格のポケモンを繰り出し、ボコボコにする(された)。

・カイ
 空気。観客に徹していた。



 カイの過去編(メジャー1年目)とかって需要ありますかね。
 某ssに触発されて、リーグ戦をもっと書いてみたくなりました。他地方での遠征・交流戦の話とか面白そう。


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