BORUTO 風が運ぶ鳥と砂 (shizuru_H)
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1話 木の葉にて

「そんなこと言ったってしょうがないじゃんかよ」

「だって、ずるい!パパと昔の木の葉に行ってたなんて!」

「僕も少し興味あったかな」

元気に第七班は言い争いを始めるが、これはいつもの光景だった。

晴れの続く毎日に、緩やかに吹く風。

今日も変わらない平穏な一日だった。

 

「はぁ~、子供の時の七代目もすごかったんだろうな~」

ほわぁ~ん

そんな擬音語が合いそうなほど、サラダは妄想にふけっていた。

恋する乙女。というよりは、星の王子様を見る目のようだった。

「確かに、子供の時の火影様ってどんな感じだったんだろうね」

ミツキも少し考え込む様子を見せるが、話を振られた当の本人は、

「いやいや、全然すごくないってばよ」

「えっ」

呆れ顔で答えるのだった。

「食生活いい加減だし、エロ仙人とかギャーギャー言いながら自来也様とアホなことやってるし…」

「そうなの?」

ミツキも興味深そうに聞いてくる

「あぁ、ほんとほんと」

「で、でも、忍術ならきっと!」

「忍術かぁ~、技の多彩性とかなら負けてる気がしないしなぁ~」

思い返しても技術だけなら負ける気はしない。

 

技術だけなら、だが…

あの時の木の葉の状況は、帰ってきた後に誰に聞いても詳しく答えてくれなかった。

それだけ思い出したくないのか、それとも知らないのか分からないが、

きっと今の自分達とは違う苦しみがあったのだろう。

そしてそれを乗り越えるど根性も。。。

 

ガーン

「そ、そんな~」

かっこいい火影であるナルトが好きなサラダならしょうがないか

「ま、俺たちも頑張ればあのくそ親父ぐらいにはなれそうってこったな」

にかっ、と笑って火影屋敷に歩いていくその頭上を一羽の鷹が飛んでいくのだった。

 

 

「来たかお前ら」

そういって出迎えたのは木の葉丸。

第七班の上忍で、三代目火影・猿飛ヒルゼンの孫である。

そして目の前には火影であるうずまきナルトと奈良シカマルがいる。

「それで今回はなんの任務なんだってばよ」

「こら、ボルト!」

木の葉丸が注意するが、それはいつものやり取りなのか、あまり気にしない。

どころか過去に行ってから、ナルトとの距離が近くなったように感じる。

まだ全然近づけてないんだけどな

「木の葉丸、良いってばよ。」

「今回の任務だが、砂隠れの里まで行ってもらう」

ゴホン

補佐のシカマルが続ける

「我愛羅から木ノ葉隠れの忍の派遣要請があってな」

「風影様から?」

「あぁ、先日砂を襲った一味がいて、その敵のアジトから木の葉の印がついた武器が見つかったらしい」

「なるほど、それで私たちがその武器を流した犯人の手掛かりを見つけてくるっていうことですね」

「まぁそういうことだ。捕まえるとかは考えなくていいので、砂と協力して情報収集に従事してくれ」

「くれぐれも捕まえようとか考えるんじゃないぞ、これ」

「分かってるってばよ!」

ボルトが自信満々に答えるが

「本当に大丈夫か、これ。今回は俺が同伴できないから、心配だ」

「え?木の葉丸先生、一緒に来ないんですか?」

サラダをはじめ第七班はその告白に驚いた。

「あぁ、先日の件で上忍は忙しくてな。今回は木の葉丸ではなく他の人が担当として着く」

「誰なんですか?」

「まぁ、後で分かる」

「出発は明朝だ、目的は砂を襲った賊の情報を協力して収集してくること」

「分かったてばよ」

「了解しました」

「了解」

 

 



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2話 道中にて

「いったい誰が来るんだろうね」

第七班は門前で担当が来るの待っていた。

「分からないってばよ、でも兄ちゃんが来れないってことは、上忍は皆無理なんじゃね」

「そうよね、上忍以上は皆忙しそうだから中忍の人かしら」

「分からないけど、待ってれば分かるだろ」

 

。。。

。。。。

。。。。。

 

カァーカァー

 

「どんだけ来ないだってばさ!!」

「本当に!もう1時間よ!!」

「まぁまぁ二人とも落ち着いて」

待ち合わせから早くも1時間、冷静でいられない二人をミツキが宥めていた

「落ち着いていられるかってばよ!!時間を守るのは忍者の基本じゃねぇのかよ!」

「まぁまぁ」

「本当よ!こうしてる間にも火影になるために修行しなくちゃいけないのに!!」

「まぁまぁ」

「一体誰なんだってばよ!中忍にしてもこんなに遅刻してくるなんて!!」

「まぁまぁ」

「全く、しゃんなろーよ!!」

「まぁまぁ」

「実はくそ親父に騙されたとかじゃないだろうな」

「「まぁまぁ」」

「本当は時間間違えた。。。とか」

「まぁま…」]

「「「!!!!?」」」

いつの間にか、ミツキの後ろに一人立っていた。

 

「いや~ごめんね」

ぽりぽりと頭をかきながら悪びれる様子もないのは

「カカシのおっちゃん!」

「6代目!?」

「うわ」

6代目火影、はたけカカシだった。

「どういうことだってばよ」

「あははは、いや~中忍含めて今忙しくってさ。空いてるの、引退したおれだけだったんだよね。ははは」

「いやそっちじゃなくて、遅れてきた方!!」

「そうですよ、6代目が遅れてくるなんて、何かあったんですか?」

「え?あぁ、そっち?」

空を見上げ。。

「いや~道に迷っちゃって」

「真顔で嘘つくなってばさ!!」

 

 

「それで今回の任務は六代目が担当してくれるんですか?」

「そうそう、だからよろしくね」

「全くそれなのに遅刻してくるなってばよ」

「あははは」

砂隠れへと向かう道中、4人はのんびりと歩いていた。

賊徒はすでに捕縛されており、メンバーも忍崩れとはいえ、五大国の忍の相手になるような者もおらず、

残された武器の流通の解析がメインとなるため、急ぐ必要はないらしい。

「せっかくだから六代目の話を聞かせてくださいよ」

サラダが思いついたようにカカシを見上げる。

危険が低いので、割とリラックスしているようだった。

「え?俺の?」

「はい、だって書物を読んだりママから話は聞くけど、実際に六代目から六代目のこと聞いてみたいです」

「サクラか~、いったい何を言っているのやら」

春野サクラとうちはサスケはカカシの元部下であり、サラダの両親だ。

当然昔の話を聞く機会もあるのだろう。

「確かに!うちのクソ親父の話とかも聞いてみたいってばさ」

「六代目と七代目の話か。うん、確かに興味あるね」

他の二人も同意する。

「う~ん、どうしようかな~」

初めの出会い、演習試験、波の国、中忍試験、そしてサスケの里抜け、大蛇丸のアジトでの再会、五影会談の後の戦闘、マダラとの戦い、カグヤとの戦い、そして今まで。。。

話を聞く限りどうやらサラダはサスケの里抜けは知らないようだ。

まぁそこまでの話なら。とカカシが考えていると、

「写輪眼を実際に使える人ってパパしかいないから。。。」

うちはサラダは列記としたうちは一族。その系統として写輪眼を開眼したことは、

ナルトから聞いていた。

「あぁなるほどね。確かに写輪眼の使い方は木の葉丸に聞いても無理だな」

「そうなんです。だから昔の話も聞きつつ、使い方も修行できればな~と思って」

「あ、サラダ、ずりーぞ、自分ばっかり!」

「へへ~ん、アンタだって過去に行ったんだからおあいこよ!」

「くそ~俺も早く白眼に開眼できればなぁ~」

「ふふん、あんたには無理でしょ」

言い争う二人だが、それを笑顔で見ていたミツキが気づく。

「ん?六代目どうかしたんですか?」

「ん、いや、なんでもないよ。」

どうやらしょうもないことを、考え込んでいたらしい。

「ただこんなご時世だからね、写輪眼なんて開眼しなくても良かったらな。って思っただけ」

「え、写輪眼ならあった方が良いに決まってるってばさ」

「そうですよ!」

言い争っていた二人が勢いよく反論する。

「火影になるためには、もっと使いこなさなくてはいけないと思ってます!」

カカシはしばし、少女の真摯な瞳を見やった。

強くなるためには必要。

そう言った少年、昔のサスケがサラダに被る。

復讐するためには力がいる

そういってこちらを睨みつけている過去の部下に向かって静かに問いかける。

「大切な人を失ってもか?」

「「「え?」」」

サラダだけでなくボルトとミツキもその言葉に意表を衝かれ、目を瞬かせる。

写輪眼は強力な武器になる。それは自分の経験からもよく分かっている。

しかしその眼を強くするためには悲しみ、苦しみ、怒りが必要であり、

それは同時に仲間との決別を意味している。

かつてのカカシもサスケも、オビトやイタチ、マダラでさえもその結果として写輪眼の力を強めていった。

かつてのサスケはその意味を理解していなかった。

否、目を背けていた。

そして大切な兄の真実を知り、理解した。

そして理解したからこそ、両目の写輪眼は万華鏡写輪眼へとなった。

ならそんな力など、目覚めない方が良い。

忍とは矛盾した考えだが、本気でそう思っていた。

 

にこっ

「ま、この話は終わりだ。そういえばボルトは過去の木の葉に行ってきたんだろ」

「お、おぅ」

「そこでは誰に会った?」

「えぇっと、会ったのはくそ親父と自来也様と、母ちゃんとかネジ叔父さんとか、シカマルさんとかサクラさんとか」

「え?ママにもあったの?」

「会ったってばよ。」

サクラとあったことまでは聞いてなかったのだろう。サラダが勢いよく反応する。

話題がサクラの話になったおかげで、少しだけ場が明るくなった。

「ど、どうだった?昔のママは」

恐る恐る聞くと、

「確かにサラダと親子だな~って思ってばさ」

にやにや

「どういうことよ!!」

「そういうところだってばさ!」

「…あぁ、確かに」

昔のもう一人の部下が被る。

ただしこちらは微笑ましい被り方だった。

「ちょっと六代目も、なんですか、あぁって!!」

「いや、確かに似てるな。なんて。あはは」

「ふふふ」

「ちょっとミツキも笑ってないでよ!」

「あ、でもカカシのおっちゃんの写輪眼姿は見て見たかったってばよ」

思い出したようにボルトが言うと

「確かに!六代目はパパに写輪眼の使い方を教えた師匠だったってママが言ってた。」

「はは、いやー、照れるな~」

「だ・か・ら!!私にも写輪眼の使い方を伝授してください!!」

グイッ

「はは、まいったな…」

「ずりーぞ、俺にも修行付けてくれってばさ!!」

「二人がやるなら僕もお願いします」

「駄目よ!私が教わるんだから!」

 

ギャーギャー

 

また口喧嘩し始める部下を見て、

『ほら大切なものを失わなくて、過去を切らなくて良かったろう?』

未だに睨みつけていた残像に問いかける。

『ふっ』

残像は消えていった。

 

ひゅるる~

一羽の鷹が優雅に4人の上を飛んで行った。

まだ砂隠れの道中のことである

 




話し方とかで、キャラのイメージが違う!とかあれば教えてください。


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3話 修行1

「とりあえずサラダは何の修行がしたいの?写輪眼って言っても色々あるでしょ」

「もちろん相手の攻撃を見切れる洞察力を鍛えたいです!」

カカシの問いに、待ってましたと言わんばかりで回答するサラダ。

「洞察力ねぇ、なんでまた?」

「ママが言ってたんです。医療忍者は絶対に死んではいけない。そのためには相手の攻撃を受けないことが大事だ。それには写輪眼はすごい適してるって」

「サクラがねぇ。。」

写輪眼を近くで見てきており、医療忍者のスペシャリストであるサクラの言葉だ。

風影奪還の時には、毒の怖さも知っている。

そして何より母と娘だ。まず第一に命を守れというメッセージだろう。

ならばサクラの先生として、それは

「分かった。とは言え、俺も写輪眼がなくなってから大分経つ。あまり期待はしてくれるなよ」

「やったー!よろしくお願いします、六代目!」

「カカシのおっちゃん、写輪眼無くなってもちゃんと説明できるのかってばさ」

にひひ

ボルトが笑いながら問いかける

「まぁ、大丈夫でしょ。オレは口が上手いからね」

 

ドサッ

木陰に荷物を降ろす。

「なぁ、そういえば写輪眼で敵の動きってどう見えるんだってばさ」

「え?なんかこう、未来が見える的な?」

いきなりのボルトの問いにサラダは

う~ん、なんて言ったらいいかな~

と頭を悩ませている。

「未来が見えるんだ、すごいね写輪眼って」

ミツキも加わるが

「ん~、未来って訳でもないのよね、相手が増えるって言うか。。」

「そんなんじゃ分かんねぇーってば!」

「そう言われても、そうなんだから仕方ないじゃない!」

ぎゃーぎゃー

遠くでそれを見ていたカカシには三人が昔の七班と被る。

ふふっ

さて久しぶりに師でもしますか。

 

「くそー、もっとサスケさんの写輪眼見とくんだったてばさ!」

まだボルトはイメージできていないらしい

「あぁ~、分かった分かった。ボルトちょっとこっち来い」

「ん?なんだってばさ」

ちょいちょいと手招きするカカシの前にボルトが立つ

約三歩の距離

拳を振り上げる

 

「当てないから、動くなよ」

「? 分かった」

ザッ

ピタッ

ボルトの胸の前で拳が止まる

 

「さて、どう見えた?」

「え?普通にパンチが来ただけだってばさ」

「その通り、でもこれをゆっくりやると。。。」

元の位置に戻って

 1歩、拳を振り上げる

 2歩、腰を切りながら拳を加速させる

 3歩、拳が胸に当たる

 

「こうなる、ボルトならどこでパンチが来たってわかる?」

「そりゃ、1歩目で気づくってばさ」

「じゃあ、そのパンチがどこを狙ってるか正確にわかるのは?」

「え?大体2歩目から3歩目ぐらいの殴りかかってくる途中でわかるってばさ」

当たり前だろ

と言わんばかりのボルト

「あぁ、普通はそうだ。だけど写輪眼だと1歩目の拳に力が入った段階で、2歩、3歩目までの動作が同時に見える」

「本当かよ、すげーな写輪眼」

「普通は戦闘の流れの中で自分の隙や、相手の得意な攻撃から攻撃方法や場所がわかるが、それに加えて写輪眼は筋肉やチャクラの動きから、より正確に何をしようとしてるのかが分かる」

「へぇ~、ヤベーな。サラダにもこうやって見えてんのか。。」

「え?私はそこまで見えてない…」

「え?そうなの?」

「まぁそうだろうね」

サラダの眼を見てカカシが言う。

「なんでわかったんですか?サラダがそこまで見えていないって」

不思議そうにミツキが尋ねる

「ん、あぁサスケの時も同じだったからね」

「え?パパと?」

「サスケさんと?」

サスケという言葉に二人が反応する

「そ、まぁ一時オレがあいつに写輪眼の使い方教えてた時があってね」

「へぇ~、そうだったんですか、でもそれでどうして私がそこまで見えていないってわかるんですか?」

「サラダ、写輪眼になってみろ」

「? はい」

スゥー

サラダの瞳が赤く、そして巴模様が現れる。

「ボルト、サラダの眼を見てみろ」

「分かったてばさ」

じっ

「何かわからないか?」

「な、なによ。。」

「改めて見ると、なんかサスケさんのとは違うってばさ」

「巴の数、じゃないかな?」

ミツキの言葉で、

「あぁ、それだ!確かサスケさんのは3つだった!」

「確かにサラダのは3つじゃないね、どうしてだろう」

「そんなこと私に言われても。。。どういうことなんですか、六代目」

「まだ成長途中ってことだよ」

言い方を変えれば、悲しまずに生きてこられた証だな。

そうは言っても、サラダからすれば『弱い』と言われているのと同義だろう

「え?じゃあどうやったら、3つになれるんですか?」

「修行♪」

「そんな~」

「よかった~、そんなすぐにサラダに強くなられちゃ困るってばさ」

「でも逆に言えばまだまだ強くなれるってことでしょ、サラダ」

「ん、ありがと、ミツキ」

「よっしゃ、オレも負けてらんないってばさ、俺にもなんか修行つけてくれってばさ、カカシのおっちゃん」

「じゃあ僕も」

それで良い。写輪眼が強くなるってことはそれだけ痛みを覚えるってことだ。

あんな痛み、俺らだけで良い。

そのうえで修行して、今の写輪眼のままで全てを守れるならそれで良い。

だから、そのための手助けをしようか。

 

「よし、それじゃあ始めるぞ」

 




何かコメントもらえるとすごくうれしいです。
遅いですが、進めていきますので、よろしくお願いします。


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4話 修行2

「内容は以前卒業試験の時に行った鈴取りだ」

「え~、またあれかよ~」

「ただし今回はサラダはこっち側だ」

「え?私が?」

「そ、サラダはオレのガード兼攻撃役」

「どういうことだってばさ」

「まぁ、待て。説明してやるから。。そういうところはナルトと親子だな」

「ふんっ!良いからルールを説明するってばさ!!」

「ふふっ」

 

カカシから提示されたルールは以下の通り

 ・制限時間は日暮れまでの約30分

 ・ボルト&ミツキ側はカカシから鈴を奪えば勝ち、逆に奪えなければ負け

 ・カカシからは攻撃はしない

 ・他は自由に攻撃してよい。。。が、

 

「「「。。。が?」」」

「野営地&テント&飯を破壊した者には罰を与える!」

ぬっ

カカシがボルトに顔を近づけて宣言する。

「へ、分かったよ。要はサラダを潜り抜けてカカシのおっちゃんをぶっ飛ばせばいいんだな」

「ま、そういうこと。無理だと思うけどね」

「今度はこの前のようにはいかないってばさ、ミツキ!」

「どうしたの?」

「ちょっと作戦会議だ!」

そう言って二人で木陰まで歩いていく。

ごにょごにょ

ボルトとミツキが相談しているのを見ながら、サラダがカカシに問う。

「なんで今回私は六代目側なんですか?」

「ん?やってみればわかるよ」

六代目が言うなら。。。

そう言いながらも、腑には落ちていないようだ。

「六代目、私たちの布陣はどうしますか?」

「ん?サラダが前、オレが後。それ以外は特に決めないよ」

「え?それだけですか?」

「そ、それだけ。まずはサラダの技量を見るのが目的だからね」

ニッコリ

「そっちも作戦準備終わったか~?」

そう言って近寄ってくるボルトも笑顔。

何か秘策があるのだろう。

「あぁ、大丈夫だ。では始めるぞ」

「おう!」

「はい!」

。。。

 

 

「影分身の術、からの~手裏剣影分身!」

ビュンビュン

手裏剣の数が影分身の数倍になる。

「ふんっ!」

キンッ、キンッ

写輪眼になったサラダがクナイで手裏剣を打ち落としていく。

「こんなもん?数だけ多くたって無駄だよ」

「まだまだ!手裏剣影分身からの、うちは流手裏剣術」

「潜影蛇手」

「あ、ずるい!」

手裏剣が弧を描くようにカカシを狙う。

直線でない分、手裏剣の間に距離があり弾くのに手間がかかってしまう。

そして手裏剣の間を縫うように無数の蛇が、不規則に曲がりながらサラダを、そしてその後ろのカカシを狙う

「ほう」

キン!キン!

クナイではじきながらも

「よし、ミツキ行くぞ!風遁・烈風掌」

「うん!雷遁・蛇雷」

第一波を凌ぐより早く次の術が聞こえる。

ぐしゃ

二人の攻撃が、サラダはなく手前の地面にあたる。

風遁と雷遁が被弾した地面は爆発し、サラダとカカシに向かって勢いよく土砂を飛ばす。

同時に土煙が舞い、ボルトたちの居場所を隠す。

目くらまし&礫攻撃に、一瞬サラダの視界が0になる。

「雷遁・蛇雷」

そこを縫うように雷がサラダの脇を通ってカカシに襲い掛かる

よけながらもサラダはカカシと攻撃の間に常に入るように立ち回り攻撃を弾いていく。

写輪眼を使い自分とカカシにあたる攻撃だけを弾き続ける。

弾かなかった攻撃はすべてカカシの横を通って行った。

きんっ

「いくらやっても、無駄よ!」

「へへっ、そいつはどうかな」

「え?」

土煙の間から一瞬ボルトの不敵な笑みが見える。

ぼんっ

にょき

雷に化けていたミツキの蛇がカカシの鈴を襲う。

「おぉ、これはなかなか」

すかっ

口ではそう言いながらも簡単によけるカカシ。

「ちょっとそんなの有り!?」

サラダも何本かの雷を切るが、それでも数本が抜けていく。

そして、

ぼんっぼんっ

何本かの雷が蛇へと変わりカカシを囲う。

そしてその一瞬後、カカシへと襲い掛かる。

「惜しい惜しい」

そう言いながらも全ての蛇の襲撃を紙一重で避けながら逃げる。

ぼんっ

「いっただき!」

一際大きい煙と音と共に、蛇に変化していたボルトがカカシへと飛び掛かる。。。が、

「やっぱり親子だね~」

スカッ

事前に予測していたかの如く、ボルトの手は空を切る。

ずしゃああ

突っ込んだ勢いそのままに、ボルトは顔面から地面へ突っ込んでいく。

「くそぉ!まだまだだってばさ!」

振り向き様に手裏剣を投げようとするボルトだったが、

「残念だけど、ダメみたいだよ」

そう言いながらミツキが歩み寄ってくる

「どういうことだってばさ」

「僕たちまんまと6代目に誘導されちゃったみたい」

そう言って指さした先は、ボルトが突っ込んだ先。

自分たちの野営地だった。

「またこんな終わり方かよ!!」

 

 

「ボルト、ミツキ、最後の波状攻撃はなかなか良かったぞ」

「まさかミツキの蛇を雷に変化させるなんてね」

サラダが悔しそうに言う。

「うん、ボルトが言ったんだ。ちょっと自信なかったけどできてよかったよ」

「その変化を隠すための烈風賞の目くらましだったなんて」

「しかもその蛇でさえ、ボルトが変化するための目くらまし」

「くそ~、そこまでやったのに取れないなんて!」

ただし当のボルトはうまく以下なったことが悔しいようだ。

「いやいや、いい線行ってたよ?相手が俺じゃなければね」

「六代目は最後のボルトの変化の術、分かってたんですか?」

「分かってたわけじゃないけど、何となくね」

だってナルトがよくやってた方法だもの。

口には出さなかったが、笑みはこぼれる。

やっぱり親子だな。と。

「くそ~、サラダの写輪眼は突破できたのに!」

「うん、そこは素直に反省してる」

写輪眼なのに変化の術に気づけなかった。その事実がサラダを落ち込ませる。

「目くらましされた時も、土煙の動きとかは見えてたんだ。だから六代目に届かない攻撃とかはわざとスルーしてたんだけど」

術の変化には気づかなかった。。。

「ま、そういうことだサラダ、まだまだ写輪眼を視界の延長としてでしか扱えていないってことだよ」

「はい、、」

「全体や流れを視れるようになれば、雷のいくつかがおかしいことにも気づけたし。ボルトの変化にも気づけただろう」

「はい…」

ずんっと落ち込むサラダ。

こちらも親譲りだね。

内心でサクラを思い出して微笑むカカシ。

「まぁ、そんな落ち込む程じゃないよ」

ニコッ

「昔のナルトやサスケもそれぐらいだったからね」

」え?サスケさんでもそんな時あったのかよ!?」

ボルトが不思議そうに問う。

どうやらこの弟子の中で師匠は昔から凄い人になっているようだ。

「サスケだって昔は弱かったぞ?それこそ、俺が修行つけてた時もあるし、なんなら写輪眼の使い方も教えてた」

「へぇー、七代目やパパも…」

少しは自信を取り戻したらしい

まぁ今の二人しか知らないと、昔からの天才と勘違いしてしまうのも分からなくもないが。

ただ…

「あぁナルトもサスケも昔は弱かったよ。お前らぐらいの頃から強くて聡い忍なんて、そうそういない。俺もダメだったしね」

なぁオビト、リン

心の中で自虐が入る。

『そうだな』

『そうだね』

二人が笑っている姿が見えた気がする。

「そうそういないってことは、誰かいたのかよ?」

言い方に含みを感じたのだろう、ボルトが聞いてくる。

「ん?あぁ歴代の忍の中にはそういう忍もいたよ」

「六代目が知っている人ではいないんですか?」

「知っている忍でか。。」

脳内にはかつての部下が思い浮かぶ。

幼少の頃より聡く、一族に縛られず里のために犠牲になった男。

彼の眼は、弟の眼としてこの平和を見て喜んでいるのだろうか。

「少なくとあんたではないわね」

「なんだと、サラダ!お前だって大した事ねぇじゃねぇか!」

「なんですって!」

「まぁまぁ二人とも」

いや、きっと喜んでいるだろう。

昔見た不器用な笑顔のまま。きっとこの平和を。

 

一通り訓練も終わり、ゆっくりした時間が流れる。

思い思いに今日の訓練の復讐をしているようだ。

「そういえば昔オヤジに聞いたんだけど、サスケさんの使う千鳥って、写輪眼なしだと使えないんだろ?」

思い出したように言うボルト。

カカシは読んでいた本から顔を上げて

「いや、使える使えないで言えば修行すれば皆会得できるはずだ。雷の性質変化は持っているようだしな」

「え?じゃあ俺達も使えるの?」

「え?そうなんですか?」

自分の作業を止めて、ボルトとサラダが興味津々に聞く。

ミツキも自分の右手を握ったり開いたりしてるので、気にはなっているのだろう。

「まぁ使う分には使えるぞ」

ただし

そう前書きをしてから

「あれは写輪眼があって初めて完成する技って言うだけなんだ。だから現状サラダしか完成させられない」

「え~どういうことだってばさ」

期待した分落胆が大きいようだ。

「術は使えるけど、実戦で使うにはリスクが大きいんだよ。まぁ口で言うより見た方が早いか」

少し離れてろ

そう言って距離を取ったカカシは、印を結んでいく。

かつての友が完成させてくれ、そして再開と別れと共に使えなくなった術。

「雷切!」

バチバチ

「おぉ!」

「見てろ」

手近にあった岩に向けてカカシが走る。

「速っ」

それに合わせて

チッチッチッ

と音が聞こえたかと思うと、

ドガッ

その右手が岩に吸い込まれると同時に、岩は砕け散っていた。

「すげぇってばさ」

他の二人も同じ感想のようだ。

「まぁ今見てもらった通り、写輪眼がなくても出来るは出来るんだよ。でも」

「相手の攻撃が見切れないってことですね」

ミツキが冷静に分析して返す。

「そう。自分の攻撃に特化しすぎていて、相手のカウンターを避けれない可能性が高い」

その結果が眼の傷だしね。口には出さないが。。

「そんなわけで、この術には写輪眼が必要って訳」

「なるほど、そうだったんですね」

関心しているサラダとミツキの隣で、ボルトが眼を輝かせている。

「すげぇってばさ!カカシのおっちゃんも千鳥使えたのかよ」

「まぁね、もともとあれはオレが作った術だし」

「え?そうのかよ?サスケさんしか使ってないからサスケさんの術なのかと思ってたってばさ」

「確かに、私もパパの術なのかと思ってた」

「まぁ確かに最近は使ってなかったけど、、、ショック」

ガーンとショックを受けるかのようにうなだれる六代目火影。

たまには使おうかな。

そんなことを思うカカシ達の頭上をカラスが飛んで行った。

カーカー

まだ風の国は遠かった。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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5話 砂との結び

「やっと着いたってばさ~」

ボルトの言葉に心無しかほかのメンバーも顔を綻ばせる。

 

道中毎日鈴取りをしながらも、予定通り風の国に入れたボルト達は、

風影である我愛羅との面会待ちで、応接室に通されていた。

「でも何でいきなり風影様がお会いになるんだろうね」

サラダの疑問の通り、一行はまず我愛羅と会うことになっていた。

いくら親睦があるとは言え、ただの任務でいきなり里の長と会うことなどほとんどない。

「嫌な予感がするな。。」

カカシはよく当たる勘を覚え、そうつぶやいたのだった。

 

ガチャ

一刻程過ぎた頃、我愛羅とカンクロウが部屋に入ってきた

カンクロウの手には袋がある。

「ボルト、サラダ、ミツキ、久しいな。」

我愛羅が挨拶をする。

「「「はい!」」」

「それにカカシも、まさかお前が来てくれるとは思わなかったが」

カカシと握手をしながら、そう伝える。

「まぁね、丁度暇してたし。それに、、」

カカシの目が袋を見つめる。

「なんとなく、きな臭いのを感じたからね」

「あぁ、そうだな。さっそくで申し訳ないがこれをみてくれ」

すっ

古い刀が数本テーブルに置かれる。

「古いクナイ?刀?」

「これが何か関係するんですか?」

サラダもよく分からないといった表情で聞く

「これは、木の葉の武器だが、相当古いな」

「え?そうなんですか?」

「まぁこれは分からないだろうね、しかも」

「しかも?」

「うちは一族が好んで使っていた武器だ」

「え?そうなんですか?」

「あぁ、もともとは猫バァ様のところで扱っていたが、うちは一族が減ったので取り扱わなくなったようだ」

「そのようじゃん、でもこっちも見てほしいんだ」

がちゃがちゃ

「こっちも刀かよ」

「これは雲隠れの武器っぽいね。」

刀の柄の部分に雲隠れの印がある刀を掴んでサラダが答える。

「あぁ、その通りだ。雷影に聞いたところ。。。」

そう言って言葉を切る我愛羅。

「金閣銀閣が好んで使っていた武器だ」

「金閣、銀閣?」

聞いた事のない名前に、ボルト達は首を傾げる。

「私知ってます。昔二代目火影と二代目雷影を倒した大罪人だって」

サラダが答える。

「二代目!?そしたらすげぇ昔じゃねぇか。本当にその金閣銀閣の武器なのかよ」

「あぁそうらしいじゃん、うちの古株たちもそう言ってたじゃん」

カンクロウが肯定する。

「でもこれ全部使い物にならなぜ、刃の部分なんかボロボロのもあるし」

「そうね、いくらいい武器でもこれだけ状態が悪くちゃ」

ボルトとサラダが疑問を投げかける。

「それについては現在調査中じゃん」

「あぁ、しかもことはそれだけじゃない。先日それを発見した場所には昔の大蛇丸の施設と似たものがあった」

我愛羅が表情を若干歪ませながら答える。

「人体実験?」

「いやそれはわからない。」

わからない?どういうことですか?

大蛇丸と言う言葉に反応し、ミツキが質問する。

「俺たち砂の忍が行った時には、施設がボロボロだったじゃん」

「誰かに攻撃されたのかよ?」

「そう言う訳でもないみたいじゃん、外からと言うよりは自爆みたいな感じだった」

 

カンクロウたち曰く、ボルト達が里を出た同日カンクロウは部下を率いて里外の丘の元にいた。

その丘には昔の軍事施設があった場所だが、今は廃棄されていたはずだった。

だがそこで不振な人物を見かける報告が何件か出たため、砂を襲った集団のアジトになっている可能性もあり捜査しに来たのだった。

しかしそこで見たのは、何度も爆発したかのような施設の跡に砂を襲った賊と思わしき複数人の遺体だった。

 

「でもそれだけじゃないんですよね?」

「あぁ、それで終われば賊の自滅で事件解決だったんだが」

カンクロウが苦虫を潰したような表情で

「一人逃げて行ったじゃん」

 

カンクロウたちも現場を見た当初何かの事故で賊のアジトが爆発し、それに巻き込まれたのだと思った。

しかし調査を開始すると、爆発に巻き込まれず無事だった施設内では複数の戦闘痕が見受けられたらしい。

また爆発して全損していたように見えたのは、施設の前面だけで、いくつかは無事な部屋もあった。

ただし無事だった部屋も普通の部屋ではなく、試験管と培養液が鎮座する研究室が大半だったそうだ。

 

「元は砂の施設だったけど、あそこでは兵器や忍術の開発は行っていても、人体実験のようなことは行っていなかったじゃん」

「じゃあ誰かが運び込んだってことかよ」

「あぁ、それが賊なのか、あるいは。。。」

 

丘の入り口から進んだ奥の部屋が研究室だった。

カンクロウたちはいくつもの試験管の中を見ていった。

そのほとんどは緑色の液体だけだったらしい。

しかし、一際大きい試験管の中には白い生き物のようなものが残っていたらしい。

 

「生き物のようなもの?」

ミツキが反応する。

「あぁ、その中身がこれだ」

写真を何枚か机の上に広げる。

それは真っ白な人の腕のように見えた。

しかし、明らかに肉がなく薄っぺらく、どうやら皮だけのようだった

「何これ気持ち悪い。」

あれ?何か見たことあるような…

「これは、白ゼツ?」

カカシの目つきが鋭くなる。

「白ゼツってあの!?」

一度対峙したことのあるボルト達も反応する。

思いだしたくもない強さの化け物。

前大戦はあんなのと戦っていたと知り、素直に感心したものだった。

そんなものを再生しようとしている時点でろくなものではないだろう。

もしくは、、、

「またこの前みたいに、昔の施設の残りとかはねぇのかよ」

どちらも嫌だが、復活させようとしている訳ではなく、たまたま残っていただけの方が気が楽である。

「残念だがそれはない。調査結果としてあの施設は、最近転居されたものと判明した」

我愛羅が頭を振る。

「でもそれなら誰が。。」

「誰かは分からない。だが、、」

 

轟音が鳴り響いた。

カンクロウたちが部屋を調べていた時だった。

とっさに身をかがめるが、音は鳴りやまない。

どうやら攻撃されているらしい。

だがカンクロウ達に直接ではなく、施設を破壊しようとしているらしく、その証拠に施設の壁や天井にどんどんと亀裂が走っていった。

ぴき、ぴき、

部屋全体から嫌な音がする。

「やばいじゃん!とりあえず一旦外へおくぞ!」

音はどんどん大きくなる。

「俺が先導する。合図と共にはしれ!サンショウウオ!」

背中の巻物から自身の傀儡を召喚し、一番前へ。

これで敵の攻撃が何であれ、外に出るぐらいの短い時間は守れるはずだ。

最悪他の傀儡を囮にしてでも、皆を外へ。

決意を固め

「いくぞ!」

走ったのだった。

 

ごくっ

「そ、それで?無事ってことは大丈夫だったんですよね?」

「あぁ、それが、、、何もなかった」

「は?」

やってられないとばかりに腰に手を当てて、首をふるカンクロウ

「部屋を出た瞬間攻撃が止んでそのまま外まで一直線だったじゃん」

まぁ崩壊に巻き込まれなかったのは良かったが。

そう付け加えた。

「そして外に出たときに何かを見たんだね」

カカシが問う

「あぁ、少し離れたところからだったが明らかに人だった」

「顔は!?」

「さすがに顔までは分からなかったが、背中に何かを背負っているようだった」

まるで昔の俺のようじゃん。。。

「え?」

ボルト達には分からないが、確かに昔のカンクロウは傀儡を背負って行動していた。

時には傀儡と自身を入れ替えて敵を欺いたりもしていた。

あの時はまさか敵国の忍とこうも仲良くなるとは思っていなかったが。

 

「ええっと、つまりどういう状況なんです?」

サラダが恥ずかしそうに質問する。

「あぁ、俺もよくわからなくなってきたぜ」

こちらは気にもせず。

「つまりだ。元々俺たちに来ていた依頼は、賊が死んだことで終了」

カカシが場を纏めるように話し出す。

「しかし、新たな不審人物が登場。聞いている限り味方ってこともないだろうしね」

「あぁ」

我愛羅が渋い顔で肯定する。

「少し任務に変更はあるが、木の葉の武器がかかわってることに変わりはない。」

「そうですね」

「ま、それなら俺たちの任務は基本変わりなしってことで、砂と協力して解決にあたるってことだろうね」

「あぁ、すまないなカカシ」

「気にしない気にしない。ところでナルトには?」

「連絡はしておいた。時期に返答が届くだろう」

「分かった。しかし。。」

 

白ゼツ、うちはの武器、金閣銀閣の武器、そして人体実験施設

死んだ複数人の賊

もしそれが爆発による死ではなく、何かの結果として処理されたのだとしたら

「嫌な予感しかしないね」

「どういうことだってばさ」

我愛羅やカンクロウも目を伏せる。

気付いているようだ。

もしかしたら、盗難にあった武器は武器が目的ではなく、

そこについていた血。DNA情報が目的だった可能性に。

いくら優秀な忍とは言え、ケガを負わないこと忍は稀だ。

しかし忍である以上、ある程度のケガならば戦うだろう。

自身の血で濡れた手で、武具を握って。

だから、武器が使えるかどうかなど関係ないのかもしれない。

「穢土転生の術」

「えど?」

「死者をよみがえらせる術だ、」

 

「誰か犯人に、心当たりはねぇのかよ?」

「1人…いる」

「そうなんですか?」

てっきり何も情報がないんだと思ってた…

サラダが声に出さずつぶやく。

「誰なんです?」

「ケラクと言うなの、砂の元忍だ」

カカシの問いに答える我愛羅は複雑な表情だ。

「元ってどういうことだってばよ?」

「元々活躍していたのは前対戦の少し前、砂の暗部としてだ。

ただあの対戦の折、最後の十尾との戦いで負傷し、その後忍を辞めたのだ。」

「なぜその人だと?」

忍び自体常に危険と隣り合わせだ。それが暗部となればなおさら。

むしろよく生き残ったものだとさえ思う。

「ケラクは元々実戦よりも情報収集や解析と言った裏方の仕事が得意な忍だったのだが、一人での潜入や調査も出来ることから暗部に抜擢されたのだが」

「が?」

「アイツが収集していた情報こそが穢土転生であり、大蛇丸についてだったのだ。」

「暗部か、なるほど。」

なるほど、砂が苦い顔をしていたのはそういうことだったのね。

カカシは内心では理解しつつ続きを促す。

互いの暗部の情報は、今でこそある程度情報交換しているが、以前は皆無だった。

その中で探っていた内容が内容だけにあまり他里に伝えたくなかったんだろう。

火影だったカカシにはその気持ちがよく分かった。

「で、でもなんで砂が大蛇丸を探ってんだよ?木の葉に任せれば良かったじゃねぇか」

「確かに。その頃はもう同盟を結んでいたんですよね」

その質問の温度差に気づかぬまま、ボルト達は聞く。

「あの頃はまだ木の葉を信用していない砂の忍も多かったじゃん。そして大蛇丸が死んだと言う噂が流れた時にその研究結果を集めようとした上役もいたんだよ」

「あの頃は俺も風影となって日が浅い。まだ全ての人と繋がれた訳ではない。」

今の大国の関係しか知らない若い世代はあまり納得がいかないらしいが、あの時代を生きた忍達は痛い程共感出来た。

「って言うか大蛇丸ってミツキの父親?だろ。それに伝説の三忍なんだから早々噂信じないと思うんだけど?」

「そうですよね?私もあったことありますけど、えっと、その、簡単には死ななそうと言うか…」

以前会った大蛇丸は見た目若く。本当の不老不死のようだった。そんな忍びが死ぬなど。。

「そうだな。だけど信じるに足る根拠もあったじゃん」

「根拠?」

「殺した相手がうちはサスケだと同時に噂されたからな」

「パパ!?」

「サスケさんかよ!なるほどそれなら納得だってばさ!」

「え、でもいくらパパでも。子供のころでしょ?それなのに三忍を倒すなんて」

サスケの実力は知っているが、それ以上に不気味な何かを大蛇丸は放っているように見えた。

「まぁ、実際は倒せていなかったわけだが」

「本当に倒してたら僕はここにいないですしね」

ミツキが笑う。

「お前そういうこと笑顔でいうなよな」

「まぁ、そういうこと。でもそれを他里に信じさせるぐらいサスケは強かった。色々とね」

カカシが声のトーンを落として伝える。

「あぁ、実際サスケは強かった。それは俺もよく知っている。」

我愛羅も懐かしそうにただ少し複雑そうにつぶやく。

「今はサスケよりこっちじゃん。」

「あぁその通りだ。だが穢土転生を行うには生贄が必要なはずだ、やつにはそんな生贄は得られえないだろう」

「そうなのか?」

「奴自身の戦闘能力はそんなに高くはない」

「近くの村には警備を出している」

「白ゼツを培養できるほどの設備もないはずだ」

「だとすると何が狙いだ?」

 

「わからない、ただ今度もやっかいなことになる前に何とかしなくてはならない。それは同じだ」

 

 

 

 

 

 

びゅ~

乾いた風が、サラダの頬をなでる。

夏の夜とはいえ砂の夜は木の葉より寒い。

その中で、月を見上げながらサラダは考えていた。

 

パパは強い。そして噂でしか知らない昔のうちはも強かったのだろう。でも今は。私は。。。

 

「サラダと言ったな。こんなところでどうした?」

びくっ

「風影様!?」

突然かけられた声に、体が浮き上がってしまう。

「あぁ、すまない、驚かせてしまったか?」

「いいえ、そんなことはないです」

「夜風に当たりにきたのか?」

「あ、はい」

その横顔に、何かを感じ取ったのだろう。

「隣、いいか?」

「え?あ、はい」

「何か悩んでいるのか?」

隣に並んで、砂がくれの里の様子を見る。

驚いた顔で我愛羅をみるサラダに、

「これでも一応風影だ。悩んでいるかどうかぐらいはわかる」

「いえ、その」

「同じ里の者には話しにくいことでも、別の里の俺になら話せる悩みもあるだろう」

ゆっくりサラダを見ながら微笑む我愛羅。

なんとなくその顔がナルトと被る。

「まぁ、無理にとは言わないが」

「そんなことないです!是非聞いてください」

 

それからサラダは自身の悩みについて打ち明けた。

自分の実力、襲ってくる敵の力量との差、

周りと比較してもそこそこ強い自信はある。

そう自負するぐらいには努力してきたつもりだし、実際結果も出してきた。

そして「うちは」としての力、写輪眼。これだけでも他の忍より大きなアドバンテージだ。

だけど、どんどん強くなっていくボルトを見た時、7代目やパパの実力を垣間見た時、ふとそう思ってしまうのだ。

「もっと私に力があればって」

「ふむ、それは誰かを守りたいからか?」

「え?いや、そんなことは、、、もちろんあります。皆を仲間を守りたい。。。」

オオツキが攻めてきた時私は守られるしか出来なかった。

他の時もそう。

大事な時はいつも守られてばかり

「そうか、なら大丈夫だ」

「え?」

いきなりの肯定に、面食らいつつも我愛羅の方を見ると、風影は月を眺めていた。

「人は誰かを守りたいと思ったとき、本当に力が出せるようになるものだ」

そして月を見ながら呟く我愛羅の横顔は何かを懐かしんでいるようだった。

「ナルトが俺にそう教えてくれた」

「七代目が、、」

「あぁ、そしてサスケもな」

「え?パパも?」

意外な名前が出てきたことに驚くサラダに

「あぁ、あいつも中々に情の厚い男だ。そうは見えないかもしれないがな」

と笑いながら言う。

「へぇ~、意外です。あ、でも何となくは分かるかも」

「そうか」

良い関係を気付けているのだろう。

その笑顔には確かな信頼が見えた。

 

「いい時代になったものだ。まさかこうやって、ナルトやサスケの子達と話が出来ようとは」

「あの宜しければ風影様たちの昔の話を聞いてもいいですか?」

「俺たちの?」

「はい、ボルトが先日昔の木の葉に行ったって聞いて。私も昔の木の葉のこと知りたいのに」

悩みを打ち明けて、この人はナルト同様信頼出来る人だ。

そう思ったサラダは、先日の不満を口にしてみた。

「あぁサスケたちが過去に行った話か、」

「はい、私その頃のパパやママに興味があるんです。その頃のことを知れば、強くなるヒントがあるかもしれない」

昔か、、

『化物』

外に出ればたとえ砂の中にいてもそういう目で見られ、常に孤独と怒りの中にいた。

そうでないと心が壊れてしまいそうで、乗っ取られてしまいそうで。

「あの頃は戦時中ではないとはいえ、今とは違い不安定な時代だ。あまり聞きたくない話もあるかもしれない」

「それでも知りたいんです!」

真っすぐな瞳だ。ナルトのような。そしてサスケのような。

そしてある意味自分のような。

しかし、この子は道を踏み外すことはない。

何となくそう思えた。

ならば、痛みを伴う話でも伝えるのが、次世代へ繋ぐ自分の役目だろう。

「分かった。しかし、ちょうど見回りに行く時間だ。良ければ一緒に来るか?」

「はい!」

「では道中でその話をしよう」

 

さらさら

砂が二人の前に集まり、絨毯を形成し、

ふわっ

砂の塊が宙を浮く。

「乗れ」

「え?は、はい」

歩いて回ると思っていたサラダは驚いたが、慌てて手を差し出す我愛羅に捕まり、砂の絨毯に乗った。

 

 

 

風影として里を回るとき、時折過去を思い出す。

そして過去と向き合うのは未だに、恐怖を感じる時がある。

ナルトに会ったあの頃から考えたらありえないことだが、今は恐怖を感じる。

あの時、木の葉に行かなければ

あの時、サスケと戦わなければ。

あの時、ナルトに教えられなければ。

きっと今の自分はいないだろう。

一尾を抜かれ死んでいたか、それとも兵器のまま恐れられ憎みに囚われながら生きていたか。

月夜に砂の絨毯での見回り。いつもは静かに民の暮らしを見て、平和であることに感謝する。

そして今生きていることに、生かしてくれているものに感謝する。

そんな時間。

しかし今日は昔話に身を投じよう。

 

 

「木の葉崩しは知っているか?」

「はい、あの、砂隠れが木の葉に奇襲をかけてきたって」

びくっ

いきなりその話から始まると思っていなかったサラダは、そのワードに身を固くしてしまう。

木の葉崩し

ある意味それは、木の葉と砂の間では禁忌に近い話題だった。

「あぁ、そう固くならずとも好い」

サラダが緊張したのを感じ取ったのだろう。我愛羅が優しく諭す

「俺が昔の木の葉で伝えられることは、あまり多くはない。別の里なのでな」

「はい」

「それでも始まりは木の葉崩しからだ。ならばそれを語らねばなるまい」

「。。」

「安心しろ、国同士の話をする気はない、今は風影ではなく、ナルトやサスケと同世代の忍として話をするだけだ」

「分かりました」

風影ではなく、一人の忍として話をするということ。

それがどういう意味かきっとこの少女はわからないだろう。だがそれでよいのだ。

 

中忍試験の時だ。

まだ俺が一尾に憑りつかれて、不安定だったころ。

里からの命令で木の葉崩しのために、木の葉の里に行った。

様々な忍に会った。

そして思った。ここは壊そうと。

「え?」

いきなりの物騒なワードにサラダが反応する。

「あの時の俺にはそう思えた。特に、特にリーとガイを見て」

試験の時、リーにとどめを刺そうとする俺を、ガイは止めに入った。

そしてまだ戦おうとするリーを見て涙を流した。

それがとても苛々した。

壊してしまえ。両方壊してしまえ。頭の中でそう聞こえるようだった。

ここには自分を苛立たせるモノが多い。

その時はそのいら立ちが何なのかわかっていなかった。

決勝戦で、ナルトとネジが戦った時、初めてナルトをきちんと意識した。

同じ何かを持つ者がいると。

「九尾?」

「そうだ、俺以外の尾獣を宿す者をはじめてみた」

そして勝利したナルトを周りの忍は認めていた。

その言葉を聞いてやっぱり苛々した。

なんであいつはあんなに明るいのかと。

なんで俺とは違うのかと

そしてその苛々を考えていたら自分の番になった。

「そこでの相手がサスケだった」

「パパと戦ったんですか!?」

「あぁ、強かった」

砂のガードが追い付かぬほどの攻撃を繰り出してきたサスケ。

そして千鳥。

カカシ直伝のあの技。

ある意味あの技が木の葉崩しの開幕の狼煙となったとも言えるだろう。

あの技は絶対防御であるはずの砂のガードを破ってきた。

結果、おれは暴走し、それに起因して木の葉崩しが始まった

「パパが引き金になったの?」

「それは違う」

不安そうな少女に全力で否定する。

あれはたまたまだ。本当はもっと遅く、周りの気が緩んだタイミングを狙っていたのだろう。

それを問答無用で引きずりだした。

それほど強力な技だった。

「サスケが引き金ではあったが、あそこで引き金を引かなければもっと最悪のタイミングでもっと大勢が不幸になっただろう」

サスケのおかげで助かった。そういう我愛羅の顔は、とても穏やかだった。

「その後、木の葉崩しの最中に、俺を追ってきたサスケ、サクラ、ナルトと戦った」

「第七班」

「そうだ、サスケはそこで仲間を助けるため、その思いで自力以上の力で食らいついてきた」

「サクラは傷ついたサスケをその身を挺して守った。尾獣の強大な攻撃から」

「ナルトは二人を守るため、同じ尾獣の力を使ってまで俺を倒した」

「九尾…私も何度も守って貰ったことがあります!」

うちはシンに襲われた時、里を壊滅させられそうになった時、助けてくれたのはナルトと九尾の力だった。

 

 

「最後は七代目が勝ったんですか?」

キラキラとした目でこちらを見るサラダ

「最後は頭突きで起こされたがな」

「頭突き!?」

「あぁ、泥臭い最後だった。だがそれで良かった」

我愛羅は懐かしそうに自身の頭を撫でた。

「そうまでしてでも守りたいと言ったナルトの本音が良く伝わってきた。」

力を使い切って這いつくばってでも俺を倒して、仲間を守ろうとしたナルト。

「あいつがそこまでして守りたいといった仲間が何なのか。それを知りたいと思った。」

その結果がきっと今なのだろう。

「そのおかげで俺も仲間を作りたい。絆を大切にしたいと思った」

「わぁ」

「そして今の砂の仲間と同じぐらい、ナルトやサスケも大事な友だ。そしてあいつらがいるから、

安心も出来るし、もっと強くなろうとも思える。困っているときに助けられるようにな」

「はい!」

 

その後も色々話した。

その中で我愛羅に対する信頼が上がっているのが分かる。

「サラダよ。焦る気持ちも分かるが、仲間を思うお前ならきっと強くなれるだろう。それこそ昔の俺たち以上にな」

「はい!ありがとうございました!!」

サスケ、ナルトに続いて尊敬できる人が増えた夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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