思ってたんと違う (ロクロ)
しおりを挟む
多分、プロローグになる話
徹夜で南下するのはやめよう
気がつけば、真っ白な部屋に居た。二日酔いで痛む頭を振りながら起き上がる。
「昨日はしこたまのんだからなぁ。どっかのホテルにでも入ったんかね。」
扉を開けると目の前に長蛇の列があった。どうやらここはホテルではないらしい。
「なんや良うわからんけど、とりあえず並ぼか。」
周りの人は楽しそうにしている。この先にはよっぽどいいものがあるのだろう。楽しみにしながら一歩、また一歩と歩いていく。右側にはずっと巨大な天使の像がある。壮大さに思わず見とれてしまう。
「って、これぐるぐる回ってるだけやん。この景色さっきも見たわ。ぐるぐる回って何が楽しいねん。」
列から抜け出し、近くの扉を適当に開く。そこは役所みたいだった。
「転生希望者の方ですね。この整理券の番号を呼ばれるまで、この用紙の空欄を埋めていてください。」
「そうか。あんちゃん、おおきに。」
「番号は5674です。コ・ロ・ナ・死で覚えやすいですね。」
「あほか。不謹慎やわ。何言うとんねん。まったくもう。」
適当に開いてる席を探しながら放送に耳を傾ける。今は5400番台なので自分の番はだいぶ先だ。
「多分死んだんか。それにしても転生っちゅう事は、アニメとかでやってたやつかいな。それやったら、トラックにでも轢かれたんかいな。そりゃぁトラックの運ちゃんに悪いことしたなぁ。せや、転生やったらチートとか使えるんやろ。何にするかねぇ。」
用紙の空欄を埋めながら何がいいかを考える。
「って長いなぁっ!おい。よう見たら千項目もあるやんけ。どう考えても好きな食べ物とかいらんやろ。あ、でも記入必須って書いてあるわ。名前は書かんでもええのに。なんなんやろ。」
まあ、呼ばれるまで時間があるし、丁度いい暇つぶしになるやろ。ちゃーんとやるかぁ。
そして夜になり、朝が来て、また日が暮れて―――
「待つんもむちゃくちゃ長いなぁ!何日経っとんねん。普通、一日で処理しきれる数の整理券しか配らんやろ。」
それからも待ち続け―――
「5674番の方。十七番窓口までどうぞ。」
「お、やっと呼ばれたわ。長かったな~。」
十七番窓口に向かうと、そこは個室だった。窓口とは一体何だったのか。
中に入るとたしかに透明な板で仕切られてはいた。でも、多分コロナ対策でしかない。めちゃくちゃ薄っぺらいし。
「まず初めに質問等はありますか?」
そこには背中から翼を生やした可愛らしい女性が座っていた、ただ、目の下の隈が気になるが。
「あ、そうだ。死因ってわかります。人に迷惑かけてないかなって。」
気になっては居たので聞くだけ聞いてみる。できれば人に迷惑を掛けてないといいが。
「できますよ。調べますね。」
「ありがとうございます。」
「
そして、面倒くさそうにしながら調べ始めた。
「口悪っ。舌打ちまでしてるし。あの、聞こえてるんですけど。」
「何がですか?」
「いや、だから舌打ち……。」
「気にしないでください。」
「それ俺。俺が言う側の立場やから。」
彼女は興味なさそうに調べていた。しかし、ここまで態度が悪いとは思わなかった。
「死因、わかりましたよ。」
「あ、何でした。」
「寝ゲロです。」
「え、なんて?」
「寝ゲロで窒息死ですね。」
そう、半笑いになりながら伝えてきた。ムカつくなぁ。
「なんや、その死に方。ゲロまみれで死んでるやん。絶対みんなに笑われとるわ。」
「質問は以上でよろしいですね。」
「サラッと流したなぁ。それにもう質問聞く気なさそうやし。まあ、いいけど。」
「では、転生先のご希望はございますか?」
「異世界でお願いします。チートはなんにしようかな~。」
「は?何言ってるんですか。転生先は昆虫、魚類、両生類、爬虫類から選んでくださう。おすすめはゴキブリですね。」
提示された転生先が酷すぎる。
「どれも嫌やし、ゴキブリなんかもっと嫌やん。誰が好き好んで嫌われ者になるねん。それに哺乳類すらないやんか。もっと、他にないの?」
「それほど人気はないですが、哺乳類だとネズミが唯一成れますね。あと、鳥類でカラスも居ますよ。」
「どれも酷いやつしかないやんか。なんでそればっかおすすめするねん。」
「あなたが書いたアンケートの傾向を元におすすめされたものですので。」
あれにはそんな意味があったのか。。ふざけて適当に埋めずに、ちゃんと真面目にやっときゃよかった。とにかくどうにか譲歩を引きずり出さねば……、そうだ。態度を攻めればちょっと良くなるかもしれん。
「さっきからちょっと、態度悪ないですか。」
そう言うと、机に足を載せ、ガンを飛ばしてきた。
「あ゛あっ。自分何様のつもりやねん。こっちは一生懸命徳を積み上げて、ようやく天使に成れたと思ったら、毎日毎日似たようなことを言うオタクの相手させられとんねん。ちゃんとパンフレットぐらい読めや。部屋に負いてあるだろうが。」
おかんよりも圧倒的に怖すぎる。どうやら彼女は西の出身らしい。そこには親近感が湧くが……。
素直に謝っとこう。
「なんかすいません。ほんますいません。」
「まあ、あんたに言ってもしゃーないからいいけど。異世界とか体験したいんやったら、でっかい天使の像のとこ行き。」
「はお、わかりました。ありがとうございます。」
あそこはそういう目的だったんだ。とりあえず、部屋に戻ってちゃんとパンフレットを読もう。
記憶を頼りに部屋まで戻る。天使の像のおかげで迷わずに住んだ。
部屋につくと、分厚いパンフレットがちゃんと鎮座していた、
パンフレットの天使の像関連のページを開いた。
「なになに……、あなたの思い通りの世界に行けます、か。そりゃええな。楽しみやわ。んん?プレイ中は天使像の周りで回っています……あれ、プレイ中の人たちやったんか。通りで楽しそうなわけやわ。」
早速、自分もプレイしに行こう。世界観はどうしようか。中世ぐらいで、めちゃくちゃ魔法が使えて、俺は強くてモテモテの世界にしよう。
そういう設定をして、それを起動する。
だんだんと視界が白く染まり、気がつけば、道の真ん中に立っていた。
「お、行けた行けた。しっかし、りあるやなぁ。こんな小さい虫までいるんか。……うん、魔法も使える。これでハーレムライフを……あれ?」
ふと体に違和感を感じ、触って確かめてみる。
「これ、女やないかい!!」
次回更新は次徹夜したときやる気があれば
目次 感想へのリンク しおりを挟む