変態だけど異世界で美少女になったので赤髪少女や巨乳エルフ、その他大勢とたわむれます。 (ナムヲ)
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プロローグ
1 いつの間にか黒髪紅眼の美少女になっていた!


頑張ってカキます!よろしくおねしゃす!


 目が覚めると、森の中にいた。

 

 ……んぁ……、口の中がじゃりじゃりする……。

 

 顔を横に向けて、うつ伏せのまま『ペッペッ』と砂利を吐き出した。

 

 そのままの姿勢なのは、何となく身体が怠かったから。

 少しの間そのままで、またもや何となく耳を澄ましてみる。

 

 すると『クエー』や『ピー』といった、鳥の鳴き声が聞こえてしまう。

 それと同時に、川のせせらぎの音がしている。

 

 ……どこだここ……。

 

 マイナスイオンたっぷりの、この環境。

 健康にはいいのだろうが、俺は家にいたはずだった。

 

 ……確か仕事帰りで……スーツのままで……、何してたんだっけか……。

 

 思い出せない俺は、まだ意識がハッキリとしていないと思う。

 

 頭を左右に振りながら、怠い身体にムチを入れ、ゆっくりと起き上がる。

 今は膝立ちの姿勢。

 そのまま、周囲を見渡してみる。

 

 「……完全に森だ、どこだ、ここ……」

 

 そう呟いてみるも、誰もいない。

 そして、自分の声に違和感を感じてしまう。

 

 「あー、あー、……声が矢鱈と高くないか?」

 

 ……もしかしたら、風邪を引いたかもしれない。

 

 喉を手で押さえて、足に力を入れて立ち上がると。

 紺色のスラックスと、縞々模様のパンツが、ちょっとだけずり落ちた。

 

 自身の身体に対して、明らかに大きすぎるスーツのサイズ。

 それに、違和感を覚えまくってしまう。

 

 慌ててそれを履き直そうとして、気が付いた。

 

 「……んん? 指が……細くて、白い!? どうなってんだ……」

 

 パンツとスラックスの端を握りながら、スーツの袖を捲る。

 

 白い肌と細い腕が見えてしまった。

 すっごいキメ細やかだった。

 明らかに、自分の腕や手ではないのだけど、それは思い通りに動いてしまう。 

 そのまま、顔と髪をペタペタと触ってみる。

 

 「髪は長いな……黒のセミロングか? 顔は……、肌がすっごいモチモチしてる……なんだこれ……」

 

 触れて見ても、なんだかよく分からない俺は、腕を組んで思い出してみる。 

 

 ……どうしてこうなっているんだ。確か俺は……。

 

 頭をフル回転させている俺は。

 少しずつ、ほんの少しずつだけ思い出して来た。

 

 「……そうだ!! 会社の帰りに、いつものように、熱湯にチンコを漬けて……」

 

 そう、トレーニングをしていたはず……。

 熱湯と氷水で、チンコを交互に漬けると言うトレーニング。

 所謂『チントレ』をしていたんだっけか。

 

 「それでどうなった? 氷水で冷やした瞬間だったか……、いや、まさかチンナーズ・ハイ!? それで、気絶しちゃった?」

 

 ランナーズ・ハイの亜種、チンナーズ・ハイ。

 名付けたのは俺で、何度か経験はあった。

 全ての身体の感覚がじわじわと、それでもって徐々にマヒしていく感覚。

 ちょっと気持ちよくて、ちょっと苦しい奴だった。

 

 「……だがおかしい、俺はそれ位じゃ、気絶何てしないはずだ……」

 

 自問自答するのだけど、その程度じゃ俺は気絶なんかしない。

 毎日やっていたトレーニングだったし、体調も悪くなかった。

 

 だが絶対じゃない、ちょっとだけ不安を覚えた俺は、さらに思い出してみる。

 

 「……確か『んーーーー、んーーーーっ!!』と言っていた後だ、その後、瞼の裏から光が溢れて……、やっぱチンナーズ・ハイじゃねぇか!!」

 

 完全に意識が覚醒した俺は、跳ねるように両足で立ち上がる。

 その拍子に、パンツとスラックスが落ちてしまう。

 慌てて下を向いた瞬間だった。

 

 ……そこには絶望が広がっている。

 あるべき物が無いと言う絶望が……。

 大事にしてきた長年の相棒が……。

 

 「チンコが……ないっ!!」

 

 下腹部には、自慢のギャランドゥが無い。

 その代わりに、白い肌のお腹が見える。

 

 プニプニした肌触り。

 もう完全に女性のそれだった。

 

 なんてことだ……なんてことだ……。

 

 「ああああああ!!」

 

 俺の叫びは森の中へと消えて行った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 スラックスは首に掛けて、プロデューサー巻きに。

 パンツはベルトで縛って、ずり落ちないようにしたままの恰好。

 そして、自身の事を思い返しながら、頭を抱えて森の中を歩く。

 

 「俺は……サイキョウ・ミソギ、30歳。 ……ここまでは合っているな」

 

 チンコが無くなってしまった俺は、自分が本当に自分なのか、分からなくなってしまった。

 だからこうして、自身の事を口にしながら歩いている。

 

 「社会人歴8年目……、よし、ここまでは大丈夫。出身は……、ジャペェーン!! ……日本だったわ」

 

 ……うん、何で英語が出たんだろうか、分からん。

 

 「それで、趣味は……チントレ? うん合ってる」

 

 独り言を呟く俺は不審者なのだろうと思うのだけど、それを咎める者はいない。

 そのまま森を歩いていくと。

 その途中、進んだ先の木々の隙間にはチンコが生えていた。

 

 「もしかして……俺の!?……違ったか……」

 

 飛びついて握り締めたが、チンコではなくキノコだった……。

 とうとうキノコまでチンコに見えてしまう俺は、精神がボロボロで幻覚まで見えてきた。

 

 「ちくしょう……ちくしょう……」

 

 キノコを引っこ抜いて投げ捨てつつ、立ち上がりまた歩く。

 裸足だからか、少し足が痛い。

 それを我慢して、森を抜けるとド田舎のようで、目の前には草原が広がる。

 

 「結構開けた所に出たな、てかここ何処だよ……チンコ落ちてないかな……」

 

 周囲を見渡してチンコを探すと、遠くに街道が見えた。

 そこを歩いていけば近くの家まで辿り付けるだろうと思う。

 だがおかしい、ここは日本だと思っていた俺は腕を組み考える。

 

 ……どこのド田舎だよ、もしかして……。

 

 脳味噌をフル回転させる。

 今の俺の姿とコンクリートで出来た道路などの人工物がない道。

 それらを総合して考えた結果。

 

 「……チンコ……?」

 

 ……やっぱりチンコだ、チンコしか頭に出てこない。

 身体がもうチンコを求めすぎている。

 

 そんな事をしていると、水色のプリプリしているゲル状の生き物が、こちらへと飛び跳ねてくるのが見えた。

 

 もう近くまで来ていて、速度を増して飛び掛かってくる。

 咄嗟に手を出して、それを反射的に掴んでしまう。

 

 ちょっと驚いてしまったが、別に痛くもなんともない。

 そのまま握ると、その感触は無くした大事なふぐりに近い感触だった。

 

 「プルプルしてて気持ちいいなぁ……ふぐりみたいだぁ……」

 

 両手で掴んだり握ったり引っ張ったりして遊んでみる。

 

 プニプニとしてモチモチした手の中で動く生き物。

 シワシワとモサモサがないのが残念だけど、ふぐりに似た感触は中々再現出来ている。

 

 俺は躊躇なくパンツの中へと突っ込んだ。

 そしてパンツの中でモミモミと揉みしだく、別に他意はない。

 

 「あぁ……良い……」

 

 揉めば揉むほど、心が段々と落ち着いていくのが分かる。

 だからだろう、自身が今までパニックになっていた事に気が付いた。

 パニック過ぎてチンコの事しか頭になかった。

 

 だがふと我に返る。

 

 ……これ汚くね?。

 

 さっきまで地面を飛び跳ねていた変なゲル状の生き物。

 土などは付いて居ないみたいだけど、雑菌とか付いてそうでバッチイとか思う。

 

 「……きったねぇーな!! バッチイ!!」

 

 それを地面へと叩き付けると『パンっ!』と言う音を発生させて粘液だけが残る。

 爆ぜる前は粘液が出ないみたいだ。

 べとべとにはなってはいないが、一応背広で手を拭いた。

 

 大事なスーツだが手が綺麗になるのだ。

 おばあちゃんも許してくれるだろうと思う。

 

 気を取り直してまた、パンツの中に手を突っ込み歩き出す。

 すると脳内で声が聞こえた。

 

 『レベルアップしました!ステータスを確認しますか?』

 

 明らかにボリュームを間違えた音量のデカさ。

 壮大なファンファーレと共に脳内で響く音にビックリして耳を塞ぎ目を瞑ってしまう。

 

 「な、なんだ?これボリューム壊れてる! ちょっと!! 音デカいよ!!」

 

 『ステータスを確認しますか?』

 

 一定の感覚で繰り返し聞いてくるその声。

 恐る恐る目を開けると目の前にゲームで言う所のステータスウィンドウが映っていた。

 

--------------------------------------

 ステータス確認 yes/no  ×

-------------------------------------- 

 

 ……驚きはなかった、チンコがなくなったんだ、これ位の事じゃ驚かない。

 チンコがなくなるのだから、ステータス位あってもおかしくはない。

 

 気にせずに、ステータスへと触れて見る。

 

 「これタッチ式? あ、タッチ式だな、便利なステータスだ……」

 

 独り言を呟きながら、片手をパンツの中に突っ込みもう片方の手で『yes』ボタンを押す。

 するとウィンドウが変わる。

 

------------------------------------------------------------------------

 サイキョウ・ミソギ Lv30              ×

 

 スキル

 ・変質操作

------------------------------------------------------------------------

 

 「レベルさん……じゅう……!? 高いの? これ? わっかんねぇなぁ……」

 

 ゲームなら冒険の中盤位だろう。

 鋼の剣とか卒業して属性武器とかに切り替わる位のレベルだ。

 

 『もしやチンコの長さ?』とか思ったがそんなに長くない。

 そしてスキルが少ない、それはたった一つだけ。

 『変質操作』と言うスキルは何なのだろうかと腕を組み無い頭で考える。

 

 ……駄目だ!! チンコが無くなってそれどころじゃない!!。

 

 そんな脳内チンコな俺は、このスキルがどういう物なのかを理解出来なかった。

 説明を見ても分からないのは単純に、チンコしか考えてないからだろうか。

 

 「…うーん、とりあえず靴無いから足痛いしスマホ無いし……、わかんね」

 

 いつもならスマホで調べるのだけど今は持っていない。

 スーツのポケットには何も入っていない。

 使い方も分からないのではスキルも無用の長物だった。

 

 パンツに手を入れてまたまた考える、だが答えは出ない。 

 

 「まぁ後でいいか」

 

 とりあえずウィンドウ右上にある『×』を押して閉じる。

 

 確認よりも先にここがどこなのかが知りたい俺は歩いていく。

 とりあえず家に帰ってチンコを探さなければならないのだ。

 



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第1章~異世界転移後~
2 初めてのスキル!!


 空は雲一つなく青く澄んでいる、それはいつでも変わらない空だった。

 その下には両手にゲル状の物体を握る少女の姿がある。

 先ほど捕まえたそれをブ二ブニとまるで愛おしそうに握る姿は幸せそうだ。

 

 ……だがそんな幸せな一時も、すぐに終わりを告げる。

 何故ならば、黒髪紅眼の少女に向かう不審者が、後ろから声を掛けたのだから……。

 

 

 

 「ゲヒィ!お嬢ちゃん一人かい?」

 

 振り返ると浮浪者と思わしき汚い皮鎧を着た金髪のヒゲ面のおっさんが声を掛けてきた。

 背中には槍を携えている。

 まるでファンタジーの世界のような恰好に少しだけ驚いてしまった。

 

 「……」

 

 無言で後ずさりしてしまう。

 何故ならその目がまるで獲物を狙うような厭らしい目付きをしていてとても不愉快に感じたからだ。

 

 「ゲヘヘ!こんな所でこんな上玉に出会えるとはなんて幸運なんだぁ!」

 

 「近づくんじゃねぇ!!息くせぇ!!」

 

 両手に持った玉の感触の物体を投げつける。

 それは狙った方向とは違う方へと吹き飛んで行って途中で爆ぜた。 

 

 それを少しだけ眺めるおっさんはこちらへと振り向く。

 その両手はワキワキと俺の身体に触れようとしている。

 生理的に無理と言う言葉を初めて足りない頭で理解出来た瞬間だった。

 

 「ゲヘヘ!グエヘヘ!!」

 

 「……やるか……あれを」

 

 欲望を隠す事もしないその態度に危機感を覚えてしまった。

 こんな時こそあれの封印を解放する時ではないか?と考えた。

 

 この危機的状況。

 今しかない、今こそ使うべき時だろう。

 そう思うと華奢な身体は自然に構えてしまっている。

 

 腰を深く落とし込み左手を正面へ向けて腕を曲げる。

 右手は握り拳を作り腰へと回す。

 所謂空手の構えを身体で表現している。

 

 「これ以上近づいたらお見舞いするぞ? 必殺技を……」

 

 「ぐえぇぇぇへっへっえええ」

 

 目が血走りヨダレすら垂れ流しているオッサン。

 

 それを見て決心する。

 チントレと並行して色々習っていた内の一つ『通信空手・正拳突き』を試す良い機会だと。

 

 …イケるな? 俺。

 

 心の中でそう呟き精神を集中させて非力そうな右手にチカラを込めた。

 すると右腕辺りに違和感を覚えてしまう。

 

 それは熱いと言う感覚。

 まるでマグマの中に腕を突っ込んだような熱さだった、やった事はないけども。

 チントレをしていた時のチンコの状態を連想させる。

 

 不意に右腕が語り掛けて来るような錯覚を覚える。

 それは『コイツをどうしたい?』と言うような言葉。

 それは幻聴なのかもしれない。

 だが理解してしまった。

 

 ……ああこのチカラは俺のチンコなんだな。

 

 鍛え過ぎたチンコはこの能力に昇華したんだと。

 そう思うと右手の先がピンク光で溢れて来た。

 そして本当の意味で理解出来た、これがスキルを使うと言う事なのだと。

 

 途端に勇気が湧いてくる、オッサンの手はすぐそこだ。

 脳内でオッサンをどうしたいかなんて決まっている。

 『俺と同じになってしまえ』とそう思ってしまった。

 

 目を見開きピンク色に光る拳を前へと送る。

 その動作は緩慢だが確実にオッサンの腹部へと前進していく。

 そして叫ぶ、己の最強の一撃を。

 

 「必殺! 通信空手・正拳突きぃぃぃ!!」

 

 「……ぐえへへ? へ?」

 

 それ躱すことなく受けたオッサンは何事もなかった。

 撒き散らされるヨダレが不愉快だった。

 そして俺の華奢な肩へと手を伸ばし掴んで来る。

 

 「何もねぇじゃねぇか俺のチンコ!!」

 

 「ぎえぇぇぇぇへっへぇぇぇぇぇ!!」

 

 そう叫ぶ残念俺の表情は絶望を浮かべる。

 あの逞しいチンコはスキルへと昇華したのだと思っていたのだ。

 だが現実は甘くないようだった。

 

 汚らしいオッサンの顔が近づいてくる。

 大事なスーツを掴まれ引き寄せられるその瞬間。

 オッサンがピンク色に光り出した。

 

 「うお! 眩し!!」

 「んほおおぉぉぉ!」

 

 両手を大きく広げて叫び出すオッサン。

 俺の正拳突きが遅効性の毒となって今頃効いて来たみたいだ。

 

 目が眩むほどの光量に思わず手で目を隠してしまう。

 そしてまだまだ光量は増していく。

 

 「超眩しいんですけどー!!」

 

 思わずギャル口調が出てしまうほど、光るオッサンは動かない。

 だが徐々に、その光も弱くなっていく。

 

 ……まだ目が眩んで開かない。

 だが油断はしていない。

 

 まだまだ危機的状況は続いているのだと自分自身では理解している。

 だからこそ『通信空手・正拳突き』の構えを再度取る。

 

 「……もう一度だ」

 

 もう一度食らわせてやろうと考えていた。

 光が減衰していくにつれて目を少しずつ見開いていく。

 光るオッサンから汚らしいオッサンへとジョブチェンジしているだろうと思っていた。

 そして止めの正拳突きをお見舞いしてやろう画策していたのだ。

 

 目を見開き勢いを付けて拳を前に突き出した瞬間だった。

 

 「くら……え?」

 

 目の前の汚らしいオッサンが居なかった。

 代わりに金髪の汚らしい皮鎧を着た美女がそこに立っている。

 

 何故かは分からない。

 なんて呼んでいいか分からない。

 だが今の状態を呼ぶべきだろうと思ってしまう。

 

 「……お、おっさ……おねえさん?」

 

 興奮はしていない、何故なら俺にはチンコがないからだ。

 嘘だ、めっちゃ緊張している。

 

 「なんだ……こりゃ……」

 

 目の前の美女が、自身の様子に気が付いたようだ。

 

 モジャモジャの腕が、白く透き通るような腕へとなり、溢れるほどの胸は、汚らしい皮鎧を押しのけている。

 そして極めつけは、剥げ散らかした金髪の頭部が、サラサラのロングヘアーへと変化していた。

 

 「なんじゃこりゃぁぁぁぁ……」

 

 両手を広げて叫ぶオッサンを尻目に後ずさりする。

 だっていきなり目の前に美女が現れたのだ。

 怖かったのだ、童貞だから仕方ないと思う。

 

 「……じゃあな、おっさ……おえねさん、これからは真面目に暮らせよ?」

 

 冷や汗を掻きながら、そう小さく呟くと脱兎の如く逃げ出した。

 街道をそのまま駆け抜けて行く。

 後ろを少しだけ振り返ると、お姉さんは自分の胸を揉む姿が見えた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 息が上がらない、何故かは分からない。

 レベルのお陰だろうか、そう思ってしまうのはもう目の前に町があるからだ。

 

 そこは大きな町だった。

 

 馬車が行き交い、布の服を着た人達が沢山いる。

 そこで俺は気が付いてしまった、『ここ異世界じゃね?』と。

 

 門番は居ない、知らない人の背中を、見つめながら並んで入る。

 途中でチラチラと、こちらへと視線を送る男たちを目が合うのだが、どうでも良かった。

 

 片手をパンツに手を突っ込みながら、もう一方の手はゲル状の物体を握っている。

 やはりこれを握っている間は、心が落ち着いてくる……。

 これは俺の精神安定剤なのだと思ってしまった。

 

 ……異世界ならチンコくらい落ちてるだろ。

 

 チンコが無くなった今、目指す目的はチンコを生やすもしくは付ける事だ。

 魔法や剣のファンタジー世界なのだとしたら、チンコくらいあってもおかしくないだろう。

 

 便利なスキルも備わって、Lv30と言うステータスなのだ。

 大抵の事はどうにでもなるだろうと、楽観的に思ってしまう。

 

 まずはギルドでお仕事をしよう、そうすればお金が稼げる。

 そしてゆくゆくはチンコを手に入れて、ハーレムを目指すのだ、……童貞だけど。

 

 「よし! いくか! チンコ位どっかにあるだろ」

 

 心を高鳴らせて町の中に入る、俺の顔は満面の笑顔だった。



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3 赤髪の煽り少女!!

ちょっとだけ書き直します。


 ギルド内のクエスト板、そこの前には人込みで溢れていた。

 仲間を募集する者、仲間たちと談笑しながらしている者等様々だ。

 

 そこから少し離れた椅子に座る赤い髪をポニーテールにした少女が一人、頭を抱えて『グヌヌ』と唸っていた。

 

 「またやってしまった……」

 

 先ほど土下座をされて解雇通告を受けてしまった。

 もう10パーティーほどから受けたその通告。

 それは彼女の口撃による物だった。

 

 「また言っちゃった…」

 

 頭を抱えて思い返すと浮かぶ光景。

 仲間へ掛ける言葉は大抵が『下手くそ』『気持ち悪い』等の煽り。

 戦闘中ならまだしも雑談中ですら煽る彼女の口は悪すぎた。

 所謂デレがない唯のツン、需要がないのは当然だ。

 

 「だ、だけど別にアタシは悪くない!」

 

 ポジティブ過ぎる脳内、そうなるのには理由があった。

 可愛らしい容姿、スタイルも良い、あんまり胸はないけども。

 そして一番の理由が魔術師として腕が良いのだ。

 

 まだ15歳と言う若い年齢。

 だがLvは10とその歳の割に高い。

 その基準としては初級者を卒業して中級者の入り口へ立っていると言っても過言ではない。

 

 「アタシが優秀過ぎるだけなんだから!」

 

 独り言を呟くが誰も聞いていない、聞く耳も持たない。

 何故なら噂になっているからだ。

 『顔も腕は良いが性格が悪い魔術師』と。

 

 先ほどの解雇通告を与えた元仲間達はこの町に来たばかりの新参者達だった。

 自身の事を全く知らず、猫を被り取り入ったのだ。

 

 思い返すは草原でのスライム討伐。

 騙すつもり等は無かったのだけど自然と口にしてしまう。

 『弱っ!』『ねぇねぇ剣が当たってないんですけどぉ』『剣士辞めたらぁ?』と言う罵倒。

 膝から崩れ落ちる少年剣士、それを慰めようとする弓使いの少女。

 そこで追い打ちするアタシ。

 

 『矢がぁぁぁ当たってぇぇぇないんですけどぉぉぉ???プフゥー!!』

 

 ドヤ顔で見下ろしているアタシに悪気はない。

 頼りない仲間を叱咤激励しているつもりだった。

 だが現実は非情。

 受ける相手はたまった物ではない。

 

 二人共泣いてしまった、そこで気が付く。

 『またやってしまった』と。

 その後はいつも通りの展開だった。

 泣きながら土下座されて『お願いします、僕達はあなたとやっていけません』と言う解雇通告。

 

 こうしてまたぼっちになるアタシは椅子に座り頭を抱え込んでいる。

 ここではもう噂が広まりすぎて組んでくれる人は居ない。

 一人でクエストを受けるのは寂しすぎる。

 

 もうすでにLvは10なのだ、本来そのLv帯なら誰かと組んでいるのは当然だった。

 だから焦ってしまう、だけど口が悪く仲間が出来ないと言う悪循環。 

 『うーん…うーん…』と唸るアタシ、次は何があっても我慢しようと考えた。

 

 その時だ、ギルドの扉が開いたのは。

 自然と視線をそちらへ向けてしまう。

 中へと入って来るのは彼女と同じ歳ほどの少女。

 セミロングの黒髪を靡かせ、その目は紅くその顔立ちはとんでもなく美人だった。

 

 だが恰好がおかしい。

 全くサイズが合っていない燕尾服のような紺色の上着と白いシャツ。

 下は縞々柄の薄い短パンのような物を履き、腰は上着と同じ色の腰巻をパレオの様に巻いている。

 変な恰好だなと思ってしまった。

 

 その黒髪の少女は何かを握りながら迷う事なくギルドの受付嬢へと向かっていく。

 私は何故かその子が気になってしまった。

 

 「武器も何も持って居ない…もしかして初心者かしら…ならこれはチャンス?」

 

 一人なら仲間が必要なはず、ソロで活動するのは果てしなく困難だ。

 初心者なら猶更だ、アタシが優しくしてあげれば仲間になってくれるはず。

 

 そう思い椅子から立ち上がって彼女の後を追う。

 その姿はまるでカモを狙う獲物のような様相であった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「はい、では登録料100Gでございます、ギルドカードがないとクエストが受けられませんのでご了承ください」

 

 「……」

 

 冷や汗が垂れてしまった。

 満面の笑顔でそう言われたのだけど金はない。

 あるのは右手に握る˝ふぐり˝と名付けた青色のゲル物体だけだった。

 道中で色違いがいたのだ物珍しく思い捕まえた。

 

 「お金ありません!!」

 

 堂々と少し膨らむ胸を張る。

 自慢じゃないが俺は何も持っていない。

 財布などはいつもリュックの中に入れているのだ。

 

 目の前に佇む受付のお姉さん。

 満面の笑顔から見下すような表情へと変わった。

 

 「どうぞ、お帰りくださって結構です、お出口は、……あちらですよ?」

 「……」

 

 お姉さんの視線は冷めたまま。

 その指は今、俺が入って来た入り口へと差している。

 

 無言の俺は、思わず右手のふぐりを握り締めてしまう。

 『ブニュ』と言う音がしたが幸いにも潰れていない。

 

 高速でブニブニと握ると、冷めた目で見られて、冷えた心が安定してくる。

 ……これは良い物だ。

 

 俺は諦めない、今から俺は冒険者になるのだ。

 冒険者になって金持ちになりチンコを手に入れハーレムを作ると言う夢がある。

 それを思うとやる気に満ち溢れて来る。

 代わりにふぐりを金の代わりにしてみようと思う。

 何故なら良い物だからだ。

 

 「これでいいですか!」

 

 ……心苦しいが俺に取ってはこれしかない。

 

 物々交換出来る事を期待して右手に握るふぐりをカウンターへと置いてみる。

 

 可愛らしい受付嬢の顔は見下しから軽蔑の表情へと変わった。

 それはまるで『お金の概念を知らないのか?』とでも言う表情だ。

 

 「……」

 「……」

 

 数十秒経ってもお互い無言のままだった。

 

 …ふぐりでは駄目か。

 

 ふぐりだけでは取り付く島さえないように思える。

 その長くもあり短くもある無言に耐えきれなくなってしまった。

 

 カウンターに置いたふぐりを再度右手で握り締めた。

 それは水色の奴とは違いコリコリした弾力でナタデココのような感触。

 やはりこれは良い物だ。

 

 受付を背にして歩き出す。

 お金が必要なのは誤算だったが次の作戦はもう頭の中に浮かんでいた。

 

 人の善意を期待しよう作戦だ。

 

 足りない知恵を無理やり絞り出したのがこの作戦だ。

 100Gがどの位の金額なのかは分からない。

 

 だけど登録料程度の金額だ。

 誰かに頼めば快く払ってくれるだろうと思っていた。

 

 ……最悪ふぐりと引き換えにお金を貰おう。

 

 そう思っていると横から声を掛けられた。

 

 「ねぇアンタお金ないの?」

 

 声の主へと振り向くとそこにはポニーテールの赤い髪と翡翠色の目をした少女がいる。

 いかにも『魔術師です』と言うような木製の杖を持ち赤色のローブを羽織る少女の顔は可愛い。

 

 「ああ、ふぐりならあるんだけど」

 

 可愛いのだけどそれ以上の美人で可愛いTS巨乳オッサンを目近で見てしまった。

 それと比べると動揺するほどではない容姿だ。

 

 俺は右手に握り締めるふぐりを見せる。

 

 「なんでブルースライムなんか持ってるのよ……」

 

 「ブルースライム? ふぐりの事?」

 

 「ユニークモンスターよ、スライムの亜種よ、アンタそんな事も知らないのぉぉぉぉ?」

 

 口に手を持って来て『プフゥー』と笑いナチュラルに煽る赤髪の少女は的確に俺の精神を削って来る。

 だが30歳の大人、それ位で凹むほどの軟弱な精神は持ち合わせていない。

 驚いてしまうのだけど高速でふぐりをブニブニと握ると心が落ち着いてくる。

 とりあえず差し出せる物がふぐりしかない。

 

 とりあえずふぐりを差し出し様子を見る。

 

 「ふぐり…いる?」

 「いらないわよ!しょぉぉぉぉがないわねぇぇぇぇ!アタシが出してあげるわ!」

 「…マジで?」

 「だからアタシと組みなさい?お金出してあげるのよ?それ位当然でしょう?」

 

 最高の提案だった、ふぐりが要らないと言っている。

 俺にとってふぐりは宝だ。

 これを差し出す行為はこの背広を差し出すと言う事と同じなのだ。

 

 「よろしく頼むよ、俺はミソギだ」

 「アタシはフレイよ、よろしくね!」

 

 はにかんだ笑顔を俺へと向けるフレイと名乗る少女。

 

 ……これは最高の滑り出しかもしれない、もしかして……チンコを見つけるのも、早いのではなかろうか。

 

 「それじゃ、行きましょう?」

 

 そう言われて、後ろへとついて行く俺だった。

 



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4 何故俺がバニーガールに……

 仲間を手に入れた俺はフレイに連れられて女物の服屋の一角へと来ている。

 そこに並ぶのは様々なファンタジー世界の洋服。

 バニースーツからメイド服、果ては何故かチャイナドレスや犬の着ぐるみまで売っている。

 

 俺は思い返している。

 

 本来ならすでにスライム討伐へと向かっているのだが何故こんな所に来ているのか。

 それは自分の恰好にあった。

 ここまでの道中、行き交う通行人から二人は奇異の視線を向けられていた。

 やはりこの恰好は予想以上に注目を引くようだ。

 だが自身はあまり気にしていない、頭の中は常にチンコの事で埋め尽くされている。

 

 そして突然発狂しだすフレイ。

 

 『もう無理!ちょっと来なさい!』

 

 プリプリと怒り出す姿は可愛い。

 『女性特有のあの日かな?』と呑気に構えていたのだけど、どうやら様子が違うみたいだ。

 

 『クエスト行く前にアンタの服を買いに行くわよ!』

 

 と鶴の一声で半ば無理やり連れてこられている。

 その時に手を握られてドキドキした俺は一瞬でチンコの事が脳内から消えた。

 童貞故にウブだったのだ仕方ない。

 高速で右手のふぐりを揉みしだいて精神を安定させていた。

 

 そして現在は商品棚の前。

 値札が付いているのだけど文字が分からない。

 分かるのは数字位なもの。

 

 「……」

 

 無言で何も手に取る事なく眺める俺はある物へと視線を集中させていた。

 それは一際目を引いていたビキニアーマーだった。

 胸の大事な部分と股間の一部しか隠せていないただの際どい水着。

 だがゲームではお馴染みの装備品だ。

 

 …痴女専用装備なのか。

 

 興味があるがそんな感想しか出てこない。

 あれを着て外を歩くと言う行為はただの変態プレイの何者でもない。

 見る分には眼福なのだろうが付けている人からすると拷問なのでは?と思ってしまう。

 

 それをボッーと眺めていると隣からフレイが話しかけて来る。

 

 「ちょっとミソギ!何見てるの?……あれが欲しいの?」

 「……え? いやいらないけど……」

 「あれに目を付けるのは流石ね! あれはビキニアーマーって言って結構守備力が高いのよ!」

 「あ、うんうん」

 「でね! 面積は薄いんだけど魔法的な効果がー………etc」

 「へぇー」

 「それでね?魔法的な…………etc」

 「すごいね」

 

 自分より小さな胸を張りながらそう伝えて来るフレイ。

 彼女は翡翠色の瞳をキラキラと輝かせて自身の知識をひけらかすように自慢する姿は微笑ましいと感じてしまう。

 

 途中から俺は右から左へ聞き流し『うんうん』『そうなんだ』『へぇー』『すごいね』と聞き流している。

 これは社会に出てからよく使う言葉だ。

 対して興味がない事でも頷いて聞くフリをするだけで相手の気分が良くなる処世術。

 

 「けどちょっと高いのよねー、あれはまた今度買って上げるわ!」

 

 不意打ちの様に俺へと真顔で言うフレイ。

 俺の額から冷や汗が垂れているのが分かる。

 

 ……嘘だろ? コイツは俺にあれを着させるつもりなのか?。

 

 もう一度ビキニアーマーへと視線を向ける。

 やはり変態プレイ専用の痴女装備だと再認識する。

 

 それを付ける自身の姿を想像してしまった。

 そこには『チンコチンコ』と呟きながら右手でふぐりを揉みしだき変態装備で徘徊する痴女の姿が脳裏に浮かぶ。

 

 ……ヤバイな、ちょっとやばすぎるな。

 

 なんと言う歩く猥褻物なのだろう。

 この世界に警察と言う公的機関があるのならすぐさま駆けつけて来るだろう事は想像に難くない。

 そして怒られるのだ『そういうプレイは家の中でしなさい』と。

 

 見る分には申し分ないのだがまだ変態になるつもりは到底ない。

 性癖はノーマルだ、その道へと至るのはまだ早い。

 

 「い、いや、普通ので良いから……普通ので……」

 「あらそう? それよりも、これとかどうかしら……すっごく似合うと思うのだけど」

 

 動揺する俺にフレイが笑顔で手渡して来たのは黒色のバニースーツ。

 尻尾まで再現されたバニースーツ、ついでとばかりにウサミミカチューシャも渡された。

 俺の時間が一瞬止まるのを感じる。

 ポケットの中のふぐりを自身の意識とは関係なく『ブニブニ』と右手で揉みしだいてしまっている。

 

 「………」

 「それ結構安いのよ?良いセンスしてるでしょ? それに値段の割に防御力が高いのよ? それ!」

 「………」

 

 無言でさらに加速する右手の挙動。

 『ブニブニ』から『ブニョンブニョン』と音が変化しているのを耳で確認できる。

 俺はそれを意識的に止める事が出来ないでいる。

 

 フレイは俺に変態の恰好をさせて笑いたいのだろうか。

 それとも本当に善意で選んでくれているのだろうか。

 どちらかなのかは理解出来ない。

 

 「い、いや、その普通のを……」

 「なによ、折角買ってあげるのよ? ほら、あっちに行きましょう!」

 「……あ、いえ……ホントにいらない……」

 「はい、どうぞ、ほら試着しに行きましょう?」

 

 バニースーツを手渡された。

 それを受け取る俺の心境は重い……。

 左手にあるバニースーツを眺めつつ、俺は一つの仮説を立ててしまう。

 

 もしかしてこの世界は『変態と頭がおかしい人』しか居ないのではなかろうかと。

 それならばバニースーツだろうがメイド服だろうが冒険者と言う職業ならば着ていても恥ずかしくはないのではないか?と考えた。

 異世界ファンタジーなのだ、それ位当たり前の事なのだろうと思ってしまう。

 

 バニースーツを手に取り再度眺める。

 『ビキニアーマーよりはマシだ』そう思わないとそろそろ右手の中のふぐりが潰れてしまう。

 

 「……うん……うん、それでいいよもう……」

 「そうでしょ? なら早く行きましょう!」

 

 半分諦めた俺はフレイに手を握られて試着室へと連行される。

 ギリギリ2人が入れるその場所へ押し込まれるとカーテンを閉められた。

 

 中には大きな鏡があった。

 頭からつま先まで映る大きな姿見、そこで初めて自分の顔を認識する。

 

 ……すんげぇ美人だなー。

 

 陳腐な感想しか出てこないのは一重に語彙力がないからだった。

 俺の年齢の半分だろうか。

 年が若くまつ毛が上下に長く生えそろい、凛々しい紅い瞳は鏡を通して俺を見つめ返している。

 髪はセミロングのサラサラで、まるでアニメかゲームから出てきたような顔立ちだった。

 

 毎日見ていた自分の顔とは全くの別人がそこに立っている。

 そこで初めて実感してしまった、『俺、女の人になってるぅー』と。

 だが精神は俺のままだ、チンコがないだけで俺なのだ。

 

 そう思いながら、服を脱いで視線を下に向けてみる。

 

 ……マジでチンコないじゃん。

 

 ツルツルの白い透き通った肌が見えている。

 そこには日々鍛錬を重ねた相棒の存在はそこにない。

 いつも一緒にトレーニングをし、毎晩語り掛け涙を流した間柄。

 だからチンコが付いて居ないこの身体にはあまり興味が湧かないのは一重にチンコの有無なのだろう。

 チンコがないとダメな身体だった。

 

 無理やり羞恥心を押さえつけて、バニースーツをパンツの上から履いてみる。

 サイズはピッタリでパンツがはみ出て不格好だが気にしていない。

 寧ろちょっとだけ羞恥心が薄まるのを感じている。

 これなら良いんじゃないか?と思ってしまった。

 

 「サイズ大丈夫だったぞー」

 

 カーテンを開けてフレイへと見せびらかす。

 目の前にはフレイが腕を組みながら俺の事を待っていた。

 こちらの恰好を見て何か思うような事があるようだ。

 

 「パンツ脱ぎなさい?あとウサミミつけなさい」

 「……え? ノーパン? マジ? ノーパン? ウサミミやっぱりいるの?」

 「当たり前でしょ! それあってのバニースーツよ!」

 「マジかよ……嘘だろ……そんな……酷い……」

 

 俺の顔は絶望で歪んでいる事だろう、心の中も絶望でいっぱいだ。

 ノーパンでこれを着るのは流石に抵抗がある。

 フレイはノーパンバニーで外をうろつけと言って来ているのだ。

 なんとかしてそれは避けたい所存である。

 でないと新しい性癖に目覚めてしまう可能性ががが……。

 

 「いや、このままで……」

 「駄目よ! 早く着直しなさい! アタシがお金を出してあげるんだから!」

 「……」

 

 何も言い返せない俺はがっくりと首を落として試着室のカーテンを閉める。

 心の中ではここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。

 

 不意に外からカーテン越しに声を掛けられる。

 

 「あ、パンスト忘れてたわ! ちょっと待ってなさい」

 

 それを聞いた瞬間この世界は俺にとって残酷過ぎると思った。

 



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5 超レベルアップ!?

 太陽は頂点を差して絶好のお天気日和。

 ここはスライムがプルプルと跳ねまわる草原。

 赤髪のローブを着た少女と、黒髪のバニーガール姿の少女がそこにいた。

 

 片方は元気一杯に木製の杖を振り回し炎の魔術を放つ。

 もう片方はドス黒いオーラを纏い、買って貰った木剣を八つ当たり気味に振り回している。

 

 スライムはお構いなく、前衛のバニーガールへと体当たりを慣行する。

 バニーガールの少女は左手でそれを掴み地面へと叩きつけている。

 

 黒髪少女の心は荒れていた。

 服屋からここまでの道のりに、羞恥心が限界へと達していた。

 それはまるで拷問なような距離。

 その道中は顔面は真っ赤に染まり、肩をブルブルと震わせて、右手は痙攣したように何かを揉みまくっていた。

 ぴちぴちサイズのノーパンパンストバニーガール姿で、ここまで歩いて来たのだ。

 

 「お家帰りたい……けどチンコない……」

 

 そう呟く俺は、変態的な思考はチンコ以外に持っては居ない。

 比較的性癖がノーマルな男の精神を持つ俺は、ノーパンパンストバニーガールと言う恰好に少しだけ慣れて来てしまっていた。

 

 歪む性癖、だけど心の中で芽生える快感に男としての矜持がそれが許さない。

 なのにこれを着ないとフレイの発狂が発動してしまうジレンマ。

 荒んでいく精神はもう臨界点が近い。

 発狂するまでのカウントダウンはもう始まっている。

 

 いつも右手にあった精神安定物である物体は、腰に付けたポーチの中だった。

 今は木剣を握り締めている為、無言で振り回す事でしかこの鬱憤を晴らすことは出来なかった。

 

 バニーガール姿の少女が木剣でベチベチと最後のスライムを叩いていると『パチン』と音を立てて爆ぜる。

 

 もう周囲にスライムの姿はない。

 これで最後の様だった。

 

 「スライムがいなくなっちゃったわねー」

 「……」

 「魔物を倒すとギルドカードに表示されるのよ!ほら」

 

 笑顔で駆け寄りながらギルドカードを差し出してくるフレイ。

 それを俺へと見せるように差し出してくる。

 そこには『スライム討伐数9/10』と書かれていた。

 

 「……おぉ、すごいなこれ」

 

 討伐した数がフレイの魔法のようなギルドカードに書かれている。

 それを眺めていると、ちょっとだけ気持ちを持ち直してしまう。

 それは男なら一度は夢見た、ファンタジー世界に来た事による不思議な光景だからだろう。

 

 木剣を腰に差し直し、自身のカードをポーチから取り出す。

 そこにはフレイと同じように『スライム討伐数9/10』と書かれていた。

 

 「おぉ!こっちにも書いてある!」

 「当たり前じゃないの………まさかぁぁぁぁ?? そんな事も知らなかったのぉぉぉぉ??? プフゥー!」

 

 口に手を当ててナチュラルに煽るフレイ。

 すぐさま俺は左手をポーチへ突っ込みふぐりを握り締めた。

 それを痙攣するような速度で揉みしだくと荒れた心が修復されていく。

 

 もうそろそろふぐりの耐久が心配になって来た。

 壊れたらまた新しいふぐりを探さなくてはいけない。

 

 無言でそれを行う俺を見てフレイは『何をしてるの?』と首を傾げて聞いてくる。

 フレイの煽りに心が荒んできて来ているんだよとは口が裂けても言えない。

 

 「……別になにも……もっ!?」

 

 その瞬間突然稲妻のような物が俺の中へと駆け巡る。

 それはある種の閃き、またの名を天啓と呼ぶ。

 

 普通の精神を持つ者ならばそれをやるべきではない。

 だが衝動が抑えきれなかった。

 それほど俺の心は荒み切ってしまっていたのだ。

 

 思い立ったが吉日と言う言葉に習う。

 俺はフレイへと満面の笑顔を作りお願いしてみる事にした。

 

 「……なぁフレイ、こっち来て欲しいんだけども……」

 「何? 何? どうしたの? まさかスライム相手にケガでも……プフゥー!!」

 

 精神をガリガリ削られているけど、これから持ち直す為に我慢する。

 

 「……ちょっと手を出してくれないか? 片手で良いからさ!」

 「いいわよ……はい、どうぞ!」

 

 俺はポーチから桃ほどのサイズのふぐりを取り出す。

 何やら訳も分からずフレイはこちらへと手を出している。

 

 その手へとふぐりを両手でギュっと握り締めさせた。

 フレイは警戒することなくふぐりを握っている。

 

 「それで、このブルースライムが何? アンタの宝物なんじゃないの」

 「それ、ふぐりって言うんだ、プニプニしてて可愛いだろ?」

 「へぇーふぐりねぇ、まぁ確かに可愛いわね!」

 「イヒヒッ!」

 

 その時俺の脊髄がゾクッっとしたのを感じた。

 

 年端も行かない可憐で無知な少女が『アンタのふぐり可愛いわねぇー』と言っている。

 そしてか細い綺麗な指で引っ張り揉みしだき手の上で転がす。

 その微笑ましい光景に俺の心は劣情を抱いてしまう。

 

 「良いふぐりだろ?」

 「そうね! このふぐり、プニプニで良い感触してるわねー!!」

 

 また背筋がゾクリとするのだが表には出さない。

 

 女の子になってチンコを無くし、暴漢を返り討ちにしてバニーガールの恰好で、町を練り歩いてきたのだ。

 これ位の役得があってもいいのではないか。

 そう思うと途端に笑顔になっていく自分がいる。

 また新しい性癖を開拓してしまった。

 

 「どうしたの?」

 「いやぁ、微笑ましいなぁって……」

 「そう?そろそろふぐり返すわ……はい!」

 「フヒィ!!」

 

 満面の笑顔でそう伝えるとふぐりを手渡される。

 無知な子にイケない事を教える教師の気持ちが理解出来た。

 下手に回数をこなしてしまうと癖になりそうだった。

 

 フレイも満足したらしい。

 もう少しだけその光景を見ていたいが仕方ない。

 ポーチへとふぐりを仕舞直すと深呼吸する。

 勿論、精神は回復した。

 

 「あとスライム1匹でしょ? さっさと終わらせましょ?」

 「ああ!! ラスト1匹頑張るか!!」

 

 意気揚々とスライムを探すバニーガールの少女は元気一杯で歩いて行く。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 あと1匹、だが探すと途端に見つからないそれは物欲センサーに近い物を感じる。

 探せど探せど見つからないスライムに二人共飽きて来ていた。

 ただ黙って歩くのも忍びない赤髪の少女はバニーガール姿の少女へと話しかける。 

 

 「ねぇ、ミソギはどこ出身なの?」

 「え?」

 

 不意にそう聞かれた。

 出身地はすぐに答えられるのだけどこの世界にはない場所だ。

 それに本当の事を答えてしまうと『聞いたことない!どんなド田舎ぁぁぁぁ?プフゥー』とか言って煽られるのは目に見えている。

 

 「えーと、そうだなー……遠い所……うーん……」

 「うん、うん、どこなの?」

 

 振り返ると後ろに手を組み聞いてくるフレイの機嫌は良さそうだ。

 腕を組みながら必死に足りない頭を悩ませる。

 

 この世界に来てまだ1日も経っていない現状、この世界の地理が全く分からない。

 それならば先人の知恵に習って東の方とか言ってみるのはどうだろうかと考えた。

 ゲームやアニメで見た知識だ、それで行こうと思う。

 

 「……東の方の大陸だな! なんか和風な所!」

 「へぇーなら円大陸ね! ここはドル王国だからここから真東に円大陸があるのよ!物知りでしょー?」

 「うんうん物知りダナーーフレイは凄いナー」

 

 棒読みで褒めるとフレイは嬉しそうに口に手を当て微笑んでいる。

 年相応のその態度にいつもそうしてれば良いのにと思ってしまう。

 

 そんな会話をしているとフレイが突然指を差す。

 

 「あっ! スライムが居たわ! あれで最後ね」

 

 刺された指の先にはゲル状の物体であるスライムがポヨンと跳ねてこちらへと向かって来ていた。

 

 スライムは弱い、俺の白い細腕でも簡単に捕まえられるほどだ。

 動きも速くなく体当たりを食らっても痛くない。

 さしずめ草原のおやつと言った所だろう。

 

 腰の木剣を抜くまでもなく素手で捕まえて投げつけると爆ぜて消える。

 だけど何となく恰好を付ける為に木剣を抜いて構えてみる。

 

 外見はバニーガールの痴女なのだか精神はやっぱり男の子なのだ。

 恰好付けてスライムを討伐して決めポーズをしてみたい。

 

 「今回は俺がやるよ、ちょっと見ててくれ」

 「分かったわ、頑張ってねー」

 

 フレイは手を振りながら応援してくれている。

 今回は心が落ち着いている。

 通信剣道で教わった奥義を試すには絶好の相手だ。

 木剣を両手で上段に構える、スライムはもう目の前だ。

 

 「……奥義!」

 

 スライムが飛び掛かってくる。

 

 「通信剣道! から! たけ! わりぃぃぃ!」

 

 大きな声で必殺技を叫びながら木剣をスライム目掛けて振り下ろす。

 

 ……いっけぇぇぇぇ!!

 

 『ブンッ!』と言う音と共に空を斬る。

 スライムには当たらず地面を抉る。

 標的は俺の頭部に当たり『べちょん』と爆ぜる。

 

 「…………」

 

 実際は数秒ほどの事なのだけどそれは数十秒に引き伸ばされたような感覚に陥る。

 非情に気まずい空気が流れている。

 この後はどうなるかなんて嫌でも分かる。

 

 突然後ろから『ブ、ブフゥー』と言う声が聞こえて来る。

 

 ……やっぱりな! やっぱりな! だろうと思ったよ!!。

 

 顔を真っ赤にしつつ後ろを振り返るとフレイが口に手を抑えているのが見える。

 必死に堪えているのだろう事は分かる。

 だがその決壊は近い、何故ならフレイの身体が思いっきり震えているからだ。

 

 「プ、プフゥー!! から! たけ ! わりぃぃぃ! からのスカッ! プフゥー!!」

 「あああああ!! やめろぉぉぉぉ」

 「から! たけ! わりぃぃぃ! ブンッ、スカッ、べちょん! プフゥー!!!」

 

 杖を両手に持って俺の真似をしている。

 その姿を見ていると膝から崩れ落ちて顔を両手で塞ぐ。

 

 「やめてくれぇぇぇ……」

 

 悲痛な声で叫ぶが再度同じように真似をするフレイ。

 もう俺の精神ポイントは0だった。

 

 その時脳内に大音量のファンファーレが響き渡る。

 

 ---------------------------------------------------------------

 レベルアップしました!確認しますか? yes/no     × 

 --------------------------------------------------------------- 

 

 「な、何事!?」

 真っ赤な顔を上げて耳を塞ぐ。

 フレイは気が付いてないようで未だに唐竹割の真似をしている。

 この音は俺にしか聞こえていないみたいだ。

 

 気を紛らわしたい俺はとりあえずyesをタッチする。

 現れたステータスウィンドウへと視線を送る。

 

 --------------------------------------------

 サイキョウ・ミソギ Lv100    ×

 

 スキル

 ・変質操作

 --------------------------------------------

 

 「……え? え? 何だこれ……」

 

 そこに映るのはLv100と言う数字。

 ただのスライムを10匹ほど倒しただけでLv100。

 

 「なんだこれ……なんだこれ……」

 

 呆然自失でそれを眺める。

 目を閉じてもう一度眺めて見るもLvは100のままだった。

 フレイは俺の様子がおかしい事に気が付くと声を掛けて来る。

 

 「何? どうしたの?」

 「あ、いやなんかレベルがおかしいんだよ」

 「レベル?そういえばアンタレベル30とか言ってなかった?」

 

 フレイにはここに来る前にLv30だと伝えている。

 その時は『嘘だー』と言われた。

 証拠のステータスを見せるもフレイには見えないらしい。

 『別に嘘なんて付かなくてもいいのにー』と笑顔で言ってくれたのだが真実だ。

 

 ステータスにプルプルと指を差してフレイへと視線を送る。

 

 「いや、なんかレベル100に…」

 「アタシ、アンタのステータス見えないのよ残念ねープフゥー!!」

 

 そう言うとまた通信剣道・唐竹割の動作に戻るフレイ。

 俺はそれに反応しているどころじゃない。

 とりあえずウィンドウを閉じて深呼吸しよう、そう思った。

 

 震える指で右上の×ボタンを押した瞬間、また新しいウィンドウが開く。

 

 ------------------------------------------------------

  嘘です(はぁと)。             × 

 ------------------------------------------------------ 

 

 「はぁぁぁぁぁ!!??」

 

 俺の魂の叫びが草原へと響き渡った。



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6 荒ぶるステータスさん!?

UA1000超えました!身体から色々出てます!あざまっす!


 ゲーム等でよく使われるステータス。

 Lvだけじゃなく力や体力、魔力や精神力等を表す。

 細かい物になると攻撃力や防御力、魔法攻撃力や魔力抵抗、果ては属性値等様々だ。

 

 確認する為にはステータスウィンドウを見れば良い。

 そこには自身の絶対的な数字やスキルがそこ書いてある。

 そして書かれている事は絶対なのだ。

 

 俺の目の前にはステータスウィンドウがある。

 だけどそれはステータスであってステータスではなかった。

 

 ------------------------------------------------------

 雑ー魚、雑ー魚。                × 

 ------------------------------------------------------

 

 と、どこかで聞いたことがあるフレーズが書いてあった。

 これ知ってる! 確か薄い本とかに書いてあった! とか思った。

 

 「…なんでステータスにバカにされてんの? 俺、てかレベル100じゃないのかよ!!」

 

 ちょっとだけ期待していた。

 ゲームでのLv30なんて物はゲーム中盤位まで行かないと到達しないレベル。

 『俺ってもしかして選ばれし者?』なんて少しだけ思っちゃったりした。

 

 今はバニーガール痴女なのだけど男なのだ、精神は男の子なのだ。

 ステータスウィンドウの表示はそのまま『雑ー魚、雑ー魚』と表示されている。

 それ故に目の前に起こっている事実に理解出来ないでいた。

 

 俺はステータスに詰め寄って問いただしてみた。

 

 「ちょっとぉぉぉ!ステータスぅぅぅ!!何とか言えよぉぉぉ!!」

 

 膝を付きながらステータスウィンドウを両手で掴みガクガクと揺らす。

 掴めたのは驚いたがそれどころじゃない。

 そうするとまた表示が変わる。

 

 ------------------------------------------------------

 キモっ、必死すぎ(草)             × 

 ------------------------------------------------------

 

 「何だそれぇぇぇ! お、俺のレベルは! 俺のレベルはどうなったんだよ!!」

 

 必死にガクガクとステータスを揺する。

 そうするとまた表示が切り替わった。

 

 --------------------------------------

 サイキョウ・ミソギ Lv1  ×

 

 スキル

 ・変質操作

 ・おなかがすいたかもしれない?

 ・呪われてると思う

 --------------------------------------

 

 「レベル1!? それよりも何でスキルが疑問形なんだよ! 何で呪われてるんだよ! もうツッコミ追い付かねぇよ!! うわぁぁぁ!!」

 

 自身の両手で頭を掴みつつ叫び声を上げる。

 まだここにきて半日も経っていないのだ、情報量が多すぎて頭がパンクしそうだった。

 

 「……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 Lvが1になったからだろうか、肺の中の空気が底を付き始める。

 荒い息を吐きながらゆっくりと体育座りをした。

 フレイは俺の叫びを聞いたのかこちらへと近づいて来ている。

 

 「ねぇ? さっきから叫んでどうしたの? お腹痛いの?」

 「…違う、そうじゃない、ステータスがさぁ…バカにしてくるんだよ…」

 「ステータスにそんな事書いてある訳ないじゃない! 自分の強さの指標を数字で書いてあるだけよ? プフゥー!」

 「信じてくれよぉぉ!!」

 

 またまたフレイは口に手を当て笑っている。

 それを眺めつつ体育座りのまま『コテン』と横になった。

 そうすると視界に映る夕日に照らされた空が綺麗だった。

 ちょっとだけ涙が出て来る。

 

 「……もしかして……エア友? エア友にバカにされたの? プフゥー!!」

 

 フレイは俺の周囲を回りながら『エア友! エア友! プフゥー』と言っている。

 俺はもう限界だった。

 精神ポイントは0を振り切りマイナスだった。

 

 「もう、いーやー!! もう、いーやー!! おうちにかえりゅーーー!!」

 

 バニーガールの少女は赤髪の少女に煽られながら涙を流し精神年齢を赤子まで退化させていった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 夕日を背に二人の少女の姿がある。

 それは赤髪の少女がバニーガールの少女をおんぶしている状態で町へと歩を進めていく姿だ

 

 「アンタ軽いわねー、なんでそんなに軽いのよ?」

 「……」

 

 もう話す気力すらない。

 軽いのは先ほどステータスが『超軽量化を取得しました』と出ていたからだろうと思う。

 だけどそれを説明する気力が湧かない。

 唯々力なくフレイにおんぶされて町まで連行されて行く。

 

 「さ、さっきは煽り過ぎたわ、ゴメンね?お詫びにご飯奢ってあげるから…ね?」

 「……あい……」

 

 ご飯と言う単語を聞いた瞬間、少しだけ気力が戻った。

 そういえばここに来てから何も食べていない事を思い出す。

 途端にお腹が『グゥ』と鳴り出した。

 

 「アハハ!何食べたい?何でもいいわよー」

 「……お肉……お肉食べたい」

 「いいわ、美味しいとこ連れて行ってあげる!」

 

 項垂れている俺にフレイは気を使ってくれているみたいで少し嬉しくなる。

 まだ短い時間しか付き合っていないのだけど悪い娘ではないと言うのが自身の感想だった。

 見知らぬ俺に装備品を買い与え、初心者のクエストであるスライム討伐へと一緒に赴き、おんぶして俺を町まで連れて行ってくれている。

 

 不意に後ろから声を掛けられた。

 

 「ゲヒヒィ!お嬢ちゃん達二人かい?」

 

 何故か聞き覚えがあるフレーズ。

 フレイは俺をおぶったまま振り返ると汚らしい皮鎧を着たオッサン二人組がこちらへと近づいて来ている。

 今度は剣とハンマーを担いでいる、ちょっと羨ましい。

 

 「……」

 

 無言で後ずさりするフレイ。

 物凄い既視感を感じる、それは数時間前に起こった事。 

 

 「ゲヘヘ!ガストン、俺は赤髪の娘がタイプだぜぇ」

 「グエヘヘ!!それじゃバニーガールは貰うぞぉプレスぅ」

 

 厭らしい笑みを浮かべながらお互いの名前を呼び合っている。

 

 ……こいつ等にもチンコ付いてんだよなぁ…。

 

 不意に感じた嫉妬と怒りで気力が湧いてくるのが分かった。

 フレイは身体を震わせている。

 変態二人を前に痴女をおんぶしているのだ仕方ない事なのだろう。

 

 「……フレイ、ちょっと降ろしてくれ」

 「わ、分かったわ」

 

 背中から降ろされるとすぐさま腰の木剣を抜いた。

 スキルの使い方は前回で覚えた。

 そのやり方は精神を集中させて木剣へと念じると言う事。

 

 『どうしたい?』

 

 そう聞いてくるのは心の声だ、あの時もそうだった。

 目の前のオッサン達にはチンコがある。

 それをチンコが無い俺に向けようとする事が堪らなく許せない。

 

 ……俺と同じになっちまえ……。

 

 心の中で嫉妬しながら怒って念じる。

 ちょっとだけ八つ当たりも混じってる。

 

 雑念混じりで念じると木剣がピンク色の光を放ち輝く。 

 目を見開き木剣を横に構えたまま走り出す。

 

 「必殺!」

 

 ------------------------------------------------------

 高速流し切りスキルを取得しました。       × 

 ------------------------------------------------------

 

 「おいぃぃぃ! 今カッコいい所だろぉぉぉ!! ステータスさぁぁぁん!!」

 

 不意打ちでスキルを追加してくるのだが今の状況でそのスキル追加は最高だった。

 

 「だけどナイスぅぅぅ! 通信剣道!流し斬りぃぃぃ!!」

 

  俺は叫びながら流れるように身体はオッサン達へと吸い込まれていく。

 

 「……ぐえへへ? 何かやったかぁ?」

 「……へ? なんだぁ?」

 

 『ポコン』と可愛らしい音が二人の身体から1回ずつ聞こえた。

 当たった瞬間フレイへと駆け出す。

 

 「よし、フレイ、逃げるぞ!!」

 

 オッサン二人からピンク色の光が徐々に広がって行く。

 経験したから知っている、滅茶苦茶眩しい光が襲ってくる事を。

 

 「「ぬほおおぉぉぉ!」」

 

 叫ぶオッサンを尻目にフレイの手を掴み脱兎の如く逃げ出す。

 もう振り返る事なんてしない、どうなるかなんてのは知っている。

 

 「ミ、ミソギ? 何したの?」

 「スキル使った!! アハハハハ!!」

 

 笑いながら走るのだけどレベル1だからすぐ息が切れてしまう。

 倒れ込む俺を見かねてフレイにおんぶしてもらい町へと帰っていった。 



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7 超腹痛……

ちょっとだけ書き直すかもしれません。


 「……ぬおぉぉぉ……」

 

 その顔に似合わないような呻き声を出すバニーガール少女。

 大きなベッドの上で脂汗を垂れ流しお腹を押さえて苦しんでいる。

 

 「……たちゅけて……たちゅけて……」

 「あはは!! だから言ったのにー、あはは!!」

 

 助けを乞う姿は痛ましいのだけど自業自得なその状況。

 赤髪の少女は腹を抱えて笑っていた。

 

 「……おほぉぉぉぉ……」

 「あはははは!」

 

 何故そうなっているか、時は少し遡る。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ここはお高めのレストラン。

 店内はドレスコードを着た客がまばらに席へと座り優雅に夕食を楽しんでいる。

 その店内の一画に居る場違いな恰好をするバニーガール少女とローブ姿の少女が席へと座っている。

 

 ミソギは少し緊張している、高級レストランでの食事なんてのは人生生まれて初めてだった。

 それでもって場違いな自身の恰好に少しだけ恥ずかしい気持ちがある。

 

 「なぁ、ここって……超高いんじゃないの?超お高いんじゃないの?」

 「そんなに高くないわよ? それよりもほら、お肉が来たわ」

 

 フレイの視線の先を同じように辿るとタキシードを着た店員が此方へとステーキを運んで来るのが見えた。

 その足取りは優雅で迷いなく此方へと向かってくる。

 

 「お待たせ致しました、此方はドル王国産最高級のフィレでございます」

 「あ、どうも」

 

 社会人の癖なのか頭を下げてステーキ皿を受け取る。

 バターが乗った美味しそうな肉の塊がジュウジュウと音を立ててそこにある。

 

 ミソギ自身テーブルマナーはある程度知ってはいるがもう既にお腹は空き過ぎていて齧り付きたい衝動に駆られている。

 口からはヨダレが伝い身体はもう限界だとばかりに食欲が理性を押さえつけていた。

 

 「は、は、早く食べよう! 熱いうちに食べよう!」

 「はいはい、それじゃいただきまーす」

 

 ナイフで一口サイズに切り分けるとすぐさま口へと放り込む。

 その一口目の感想は『ヤバイ』だった、語彙力はない。

 肉が溶けるような感覚と柔らかすぎる肉にバターが上手くマッチして文字通り『頬が落ちる』と言う表現を身体で理解してしまう。

 

 「ヤバっ! ヤバっ! ウマ!」

 「美味しいでしょ? ここアタシのお気に入りなの!」

 

 口の中の肉をまき散らしながら感想を伝える俺にフレイは嬉しそうだ。

 自身とは違いフレイは優雅に食事を続けている。

 

 肉を頬張りながら食べ続けていると不意にお値段が気になって来る。

 美味しいくて柔らかい、絶対にお高いはず。

 

 「……このお肉……おいくら位するの?」

 「んー? えーっとね、ミソギのバニースーツと同じ位ね、あまり高くはないわよ?」

 

 それを聞いた瞬間、顔が青ざめた。

 

 ここに来る道中で果物の屋台に掛かれていた数字がリンゴ一つ100G。

 日本のスーパーでもそれ位だったと記憶している。

 つまり1円=1Gと言う事。

 

 バニースーツ1着は2万円だ、つまりこのお肉は2万円位。

 そしてギルドでスライム討伐で得たお金は10匹で4000G。

 このお肉1枚食べようとすれば5倍スライムを倒さなくてはならない。

 

 ……ヤバイ、高い、すっげぇ高い。

 

 目の前のお肉は俺の給料の10分の1もした。

 こんなお肉を気軽に食べられるフレイってお金持ち? とか思った。

 

 「もしかしてフレイってお金持ちだったりする?」

 「そんな事ないわよ?これ位なら毎食出してるしね、だからいっぱい食べなさい」

 「……あっ、お金持ちなんですね」

 

 理解した、フレイはお金持ちだった。

 それも無自覚お金持ちと言うヒモにとって最高の依存相手。

 フレイに拾われた自分は最高の運を持っているのかもしれない。

 

 異世界に来て多少なりとも不味いご飯を食べる事があるのだろうと思っていたがどうやら杞憂に終わるみたいで嬉しい。

 毎日フレイに奢って貰おう、いや養って貰おう、そう心の中で決心した。

 

 「フレイさん!一生ついていきます!」

 「え?…ウフフ、じゃー明日も明後日もよろしくね?お代わりもしていいわよ」

 

 笑顔で返すフレイに俺は心の中でガッツポーズをしている。

 

 「美味しい!美味しい!」

 「そう、良かったわね!」

 

 夢中でお肉を頬張る。

 もう半分位まで食べてしまったその途端、お腹が苦しくなって来る。

 男だった時よりも圧倒的に胃の容量が少なくなっているみたいだ。

 前ならもっと食べられたのにと心の中で思ってしまう。

  

 手が止まってしまいフレイに『どうしたの?もうお腹いっぱい?』と聞かれた瞬間だった。

 

 ------------------------------------------------------

 胃の拡張をしました。 

 ------------------------------------------------------

 

 ステータスウィンドウが俺の前に現れたと同時に急にお腹が減り始める。

 まだまだお肉がお腹に入りそうだった。

 すかさず口の中へお肉を詰め込む。

 

 ……ステータスさんナイス! これでもっと食べられる!。

 

 心の中で感謝をすると再度お肉をお腹の中に詰める作業へと没頭し始めた。

 幸せだった、初めてこんな美味しいお肉を食べたのだ。

 

 「店員さん!お代わりお願いしまーす!」

 

 またお肉がやって来る、そして苦しくなって来るとステータスが『胃の拡張をしました』と表示される。

 限界が来るまでの無限ループ状態だった。

 

 呆れるフレイを尻目にガツガツとお肉を頬張る俺は幸せを感じる。

 もう最高の気分だった、その時だけは、本当にその時だけは。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 お腹をポッコリと膨らませて幸せそうな顔のミソギはフレイ宅へとお邪魔している。

 

 やはりお金持ちだった、フレイは俺が借りていた部屋よりも広いお家に住んでいる。

 本人曰く『実家と比べると小屋』と言っていたが実家はどんな広さなのだろうと想像してしまう。

 

 あの後、招待されるがままにここまで来ている。

 初めて女の子の部屋に入ったが中は簡素で物が少ない。

 目につく物は大きなベッドとガラクタみたいな物だった。

 

 「いっぱい食べたわねー、お会計がアタシと合わせて10万G超えたわ、大丈夫なの? 食べ過ぎじゃない?」

 「大丈夫! ご馳走様でしたフレイさん! あざっす!!」

 「良いわよ、それよりも今日からここに住みなさい、どうせ泊る場所ないんでしょ」

 「…マジで? フレイさんマジ天使、もう添い遂げます!」

 「何言ってんのよ、アンタ女でしょ? そんな事よりもアタシはお風呂入って来るから後で入りなさいよ?」

 

 もうこれはアレなのではなかろうかフレイに着いて行くだけで人生安泰なのではないだろうか。

 そして俺の中の心の神は囁いている『一緒に風呂に入れ』と。

 今は少女の身体だ、お風呂まで一緒に入っても問題はないだろう。

 

 罪悪感?そんな物は『エア友エア友~』と煽られた時にあの場所に置いて来た。 

 お腹いっぱいお肉を食べて仲間のお風呂を気兼ねなく覗ける位に精神は回復している。

 だから女の子と一緒にお風呂へ入ると言う初めてのシチュエーションに心が躍る。

 

 「…これは行かなくてはならない…」

 

 大きなベッドの上で大の字になり寝そべって呟く。

 これは神様がくれたチャンスなのでは?と思ってしまう。

 

 「行くべきだ…」

 

 チンコがないからどうしようもないのだけど、せめて目の保養としてフレイの肢体を記憶に焼き付けてしまわなくてはいけない。

 それはもう義務なのだ。

 

 「…仲間だしー、今女だしー、別にいいよねー?」

 

 声に出し自身の正当性を再確認する、そうする事で残り少ない罪悪感が消え去った。

 

 「よし!行くか!」

 

 そう決心した俺はベッドから身体を起こした瞬間だった。

 

 ------------------------------------------------------

 胃の拡張を消去しました。 

 ------------------------------------------------------

 

 「……は?……は?……え?」

 

 突然の事過ぎて理解出来なかった。

 ステータスウィンドウが表示されて少し後から来た『ボコン』と言う音。

 

 「ぐほぉ!?」

 

 思わず変な声が出てしまっていた。

 そして徐々に来る不快感と痛み。

 

 それはまるで胃の内側から殴りつけられたかのような感覚。

 身体が委縮し目から涙が止まらない。

 痛いのと苦しいのがミックスしてベッドの上でのたうち回ってしまう。

 

 「……ぬおぉぉぉぉ、ぬごぉぉぉぉ」

 

 お腹を抱えていると脂汗が額から流れる。

 今の俺の顔は涙と鼻水とヨダレで酷く歪んでいる事だろう。

 不意に脳裏に過ぎってしまう『これ、逆腹パンじゃね?』と。

 

 アホな事を考えて痛みをごまかそうとしても紛れない。

 

 「ス˝テ˝ータ˝ス˝ぅぅぅ、裏切った˝な˝ぁぁぁ、ぎざま˝ぁぁぁ」

 

 目の前に表示されるステータスウィンドウには『ザマァ(草)』と書かれている。

 手を伸ばして掴もうとするがステータスは華麗に避けて来る。

 『動けるのかよ』と思ったがそれどころじゃなかった。

 

 「ぎざま˝ぁぁぁ、ぎざま˝ぁぁぁ、ゆるじでぇぇぇ、覗こうとか思ったのゆるじでぇぇぇ」

 

 ------------------------------------------------------

 胃の拡張をしました。 

 ------------------------------------------------------

 

 表示された瞬間、胃からの不快感と痛みが消える。

 

 「ステータスさん! ありがどぉぉぉ!」

 

 鼻水と涙を流しながら感謝の気持ちを伝えた瞬間だった。

 

 ------------------------------------------------------

 やっぱり消しました(はぁと)。

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 そしてまた身体から『ボコン』と鳴る音に俺は絶望した、酷い。



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8 初めての魔術!?

 頭の中で鳴り響くファンファーレの音。

 あまりの大音量に驚き目が覚めるとそこはフレイの部屋のベッドの上だった。

 

 周囲を見回すとカーテンから朝日が差し込んでいるのが見える。

 そしていつの間にかパジャマに着替えていた、多分フレイが着替えさせてくれたのだろう。

 

 手をニギニギして身体の不調を確認してみるも体調は万全だった、どこも悪い所はない。

 部屋の中にはフレイの姿はない、もう起きたのだろうか。

 

 まだ眠い目を擦り昨日の記憶を思い出す。

 

 「…あの後どうなったんだっけ」

 

 正直あまり覚えていない。

 お腹が痛くなって『たちゅけて…たちゅけて…』と言った所までしか記憶にない。

 その後は多分気絶でもしたのだろうと予想する。

 

 徐々に覚醒していく頭。

 そして目の前にはステータスウィンドウが表示されている。

 

 ------------------------------------------------------

 レベルアップしました!確認しますか? yes/no     

 ------------------------------------------------------

 

 「なんのレベルアップだよ…」

 

 起きただけでLvが上がるのなら今頃最強なのでは?と思う。

 だけどステータスさんなのだ、多分意味はない事など知っている。

 

 恐る恐るyesをタッチしてみた。

 するとステータスウィンドウの表示が変わる。

 

 -----------------------------------

 サイキョウ・ミソギ Lv1  

 

 12時05分位

 

 スキル          

 ・変質操作

 ・痛覚耐性

 ・逆腹パンに快感を覚える

 -----------------------------------

 

 「…………うん…うん…うん…」

 

 なんか変な事が書いてある、これは本当にステータスなのだろうか不安になって来る。

 俺は逆腹パンに快感を覚えてしまったのか、どんな変態なんだよと思ってしまう。

 それと同時に時間が間違ってないか?とも思ってしまう。

 

 もう何が何やら分からないがとりあえず起きなくてはならない。

 

 寝ぼけた頭を無理やり起こしベッドから這い出ようとするとドアが開く音がする。

 そちらへ視線を向けると仲間であるフレイがそこに居た。

 

 「あ、ミソギ起きた?着替えたら早く朝ごはん食べましょう?」

 

 そう言うとフレイは直ぐにドアを閉めてパタパタとリビング方面へと歩いて行く音が聞こえた。

 やっぱり今の時間帯は朝なのだ、お昼ではなく朝なのだ。

 ステータスへと視線を向けて言ってやる。

 

 「やっぱり朝じゃん!!」

 

 目の前のステータスはまた表示が変わった。

 

 ------------------------------------------------------

 時差です。

 ------------------------------------------------------

 

 「どこの時差だよ!ここの大陸の時間を表示してくれよ!てかステータスに時刻を乗せるんじゃないよぉぉぉ!」

 

 起き抜けなのにテンション高めに魂の叫びをステータスにぶつけるも『ドンマイ!』と表示されていた。

 

 「…………うん…うん」

 

 朝っぱらから精神がガリガリと削れて行くのが分かる。

 有用なのに無能なステータスさん。

 もう真剣に構うのは辞めておこうと決心した。

 

 「着替えるかぁ…」

 

 ベッドの横に着替えと言う名のコスプレ衣装が置いてある。

 出来ればフレイの服を借りたいのだけどバニースーツが置いてあると言う事はこれを着ろと言う事なのだろう。

 

 「またこれを着るのか…」

 

 そうするしかない事なのは服屋へ俺のスーツのサイズ調整をして貰っているからだ。

 だから俺自身の服はこれしかない、返って来るまでバニーガールなのだ。

 

 諦め半分でパジャマを脱いでバニースーツへと白く細い指を伸ばす。

 今日は心折れない事を願いつつ着替える痴女がここにいた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 今の俺はフレイ宅でソファーへと腰掛けてお茶を飲みながら思案している。

 対面にはこの家の主である彼女が居た。

 

 今日は珍しくチンコの事ではなく魔法の事で頭がいっぱいだった。

 ファンタジーと言えばやはり魔法だろう。

 

 フレイは昨日のスライム達との戦闘で火の玉を出していたのだ。

 滅茶苦茶興味をそそられたのだけど昨日はそれどころではなかった。

 だけど今なら大丈夫だ、たっぷり睡眠を取って気力も精神も……朝の事は忘れてしまおうそうしよう。

 

 「なぁフレイ、魔法教えて欲しいんだけども」

 

 「魔法?アタシは魔法は使えないわよ?魔術なら使えるわ、属性は火よー?火の魔術なら教えてあげられるかもしれないわねー」

 

 「マジか!やった!」

 

 その言葉を聞いた瞬間小さくガッツポーズをしてしまう。

 ちょっとだけでも良い、魔物を倒せるような火力じゃなくてもいい。

 ほんの少しだけ火の玉を出せたのならそれで満足なのだ。

 

 出来ない事が出来るようになる快感はチントレで充分理解している。

 あの感覚は忘れられないんだ。

 そしてここはファンタジー世界なのだ。

 日本で生きている限りでは絶対不可能な『魔術を使える』と言う可能性に心を躍らせてしまうのも無理はない。

 

 「それじゃー魔術書持って来るわ、流石に町の中で魔術は危ないから草原まで出かけましょう?」

 

 そう言うとパタパタと違う部屋へと歩いていくフレイを見送る。

 残された俺は茶柱が立つお茶を飲み干しご機嫌だ。

 

 「今日は良い事ありそうだなー」

 

 呑気にドアを開け放つと快晴の空が眩しく輝いていた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 町から出た草原、そこには二人の少女がそこに居る。

 一人は薄く赤い魔術書を持ち、もう一人は興味津々な様子でそれを眺めている。

 

 「それじゃーやりましょうか、まず『プチファイヤー』から行きましょう」

 

 「おねがいしまーす!!」

 

 フレイは右手を前に突き出した。

 そして『プチファイヤー』と唱えたその瞬間火の玉がまっすぐ草原を駆けていく。

 あまりにも簡単なその行為に拍子抜けしてしまった。

 

 「なんか簡単そうだな、てか魔術書いるの?」

 

 「これ位ならね?アタシは魔術書とか要らないのだけど初心者のミソギは必要でしょう?」

 

 「まぁ確かに、初めて魔術とか使うしなー」

 

 フレイから薄い魔術書を手渡されるとすぐさま本を開いてみる。

 パラパラと読み進めるも肝心の中身が理解出来ない。

 全て知らない文字や魔法陣みたいな絵で埋め尽くされているのだ。

 

 ちょっと不安になってきた。

 

 「これ内容が分かんないんだけど…」

 

 「大丈夫よ、魔術書って魔術が使えない人でも使えるようになる物だから、中身は魔術の術式なのよ、覚えきったら無詠唱でも使えるようになるわ」

 

 「…え?これ全部覚える必要あるのか、フレイ凄いなぁ」

 

 「ふふん!当たり前じゃない!それよりもそれに念じて言えば良いのよ『プチファイヤー』って」

 

 「よーし、んじゃやってみる!」

 

 「意識するのは魔術を使う方の手よ、後は勝手に魔術書がやってくれるからねー」

 

 それを聞いた俺はフレイと同じように右手を突き出した。

 狙う先は誰も居なさそうな草原だ。

 

 目を瞑り意識を集中させると先ほどまで高ぶっていた心が冷静になっていくのが分かる。

 突然魔術書と手の平が同時に熱くなる感覚に陥ってしまう。

 イメージとしては熱い塊がそこにある感じ。

 あとは『プチファイヤー』と発言すれば良いだけだ。

 

 初めての感覚に戸惑ってしまうがこれで俺も魔術が使えるのだ。

 冷静になった心がまた高ぶって来る、よし、やってみよう。

 

 「プチファイヤー!!」

 

 目を見開き言ってみた瞬間、ステータスウィンドウが見えた。

 とんでもなく嫌な予感がした。

 

 ------------------------------------------------------

 火の初級魔術を獄炎魔法に変換しました。

 ------------------------------------------------------

 

 「はぁ?」

 

 発現したのは地獄の業火。

 目の前に広がる光景は漆黒の色彩。

 

 自身の知っている炎の色はなく、どこまでも全てを塗り潰していくような黒の感覚を覚えた。

 広範囲に広がるそれは全てを焼き尽くすような勢いで草原へと突き進む。

 

 「ちょっ!」

 

 慌てて手を上にあげるのだけどもう遅い。

 草や木や土、果てにはスライム等様々な生命を飲み込み黒色の閃光を放つ。

 

 突如聞こえる爆裂音に俺は目と耳を塞いでしまった。  

 猛烈な突風が吹き抜け転んでしまう、どこも痛くはないのが幸いだった。

 

 徐々に弱まっていく光。

 恐る恐る目を見開くと目の前の全てが融解していた。

 地面が赤い線を帯びて黒く変色している。

 

 「………」

 

 唖然と見つめる俺の隣でステータスウィンドウが変わる。

 

 ------------------------------------------------------

 また何かやっちゃいました? 

 ------------------------------------------------------

 

 俺の初魔術は初魔法へと昇華した瞬間だった。

 

 



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9 ベトベトバニーガール……

 黒く焦げ付いた地面を眺める俺達は、無言で佇んでいる。

 融解した地表を眺めるフレイの視線は、こちらへと向いた。

 その表情は引き攣っていてちょっと怖い。

 

 瞬間的に『見捨てられるかもしれない』と思ってしまった。

 自分はこんな超火力の危ない代物を、気軽にぶっ放す危ない奴と、思われてしまう可能性がある。

 この威力は、そういう目で見られても仕方ない。

 

 「フ、フレイさん見捨てないでぇぇぇ!!」

 

 まるで寄生先の女性へと、ヒモ男が縋り付くように懇願してみた。

 実際、フレイの身体に鼻水を垂れ流してる俺が、抱き着いているから間違いは無いと思う、今は女だけども。

 

 「……それで今のは? アンタ何やったの?」

 

 特に引き剝がすような様子もなく淡々と聞くフレイの表情に何を思っているのか分からない。

 ステータスのせいでお世話になっている彼女に捨てられるかもしれないと思い込んでしまっている。

 

 「ち、違う! なんかこう……多分ブワッって! とりあえずグオって感じで!!」

 「何そのフワっとした表現は……」

 

 いつもなら理路整然と伝える事が出来る、伊達に社会経験を積んでいる訳じゃない。

 30歳、男の精神を持つ少女なのだがフワッとした表現なのは理由があった。

 

 それはステータスがやった事なのだ、自分じゃない。

 勝手に初級魔術が獄炎魔法へと変換された。

 だけどステータスはフレイには見えないのは知っている。

 だからこう……フワッとした表現になってしまう。

 

 結論、つまり俺は悪くない。

 

 「そう! なんか出たんだよ! こう、モワッと、ブワッって感じで! 多分そう! そんな感じ!」

 「そ、そうなのね、モワッとブワッて出たのね、ちょっとよく分からないわね…」

 

 身振り手振りで表現している様にフレイも呆れた様子で答えてくれる。

 

 ……これはもうこのままゴリ押しで行けるのでは? だってこの子はチョロイのだ、優しくてチョロイのだ。

 

 さらにここで畳みかけなくてはならない。

 とりあえず涙も出してみよう。

 

 顔を伏せながら見えないように細い指で目玉をブスッと突き刺す。

 ちょっと痛いけど我慢しなくてはならない。

 すると紅い瞳から薄っすらと涙が出て来る、完璧だ。 

 

 「……だから俺の事見捨てないでぇぇぇ!!」

 

 「わかったから離れなさいな、鼻水と涙が垂れてるわよ? もう…見捨てる訳ないでしょ?」

 

 俺へとハンカチを渡してくるフレイさんはマジ天使だと思う。

 コスプレ衣装に高級お肉、さらには宿泊先や魔術まで教えてくれる彼女に見捨てられたら俺の人生が終了してしまう。

 俺の大事な寄生先、路頭に迷うのはゴメンだ。

 なんとか誤魔化し切れたのは行幸だ。

 

 「あ˝り˝がどう˝、あ˝り˝がどう˝、フレイざぁぁん……」

 「はいはい、それじゃもう一回やってみましょうか、まだ成功してないでしょう?」

 「……え˝?」

 

 目の前に落ちている魔術書を拾い土を落としてこちらへと渡すフレイ。

 その発言に冷や汗が流れ落ちる。

 

 フレイの眼差しはこちらへと向いている。

 もう一度やって見ろとその目で訴えかけて来ている。

 

 これ以上やりたくないのだけどそうもいかないこの状況。

 まさに詰んでいるのではないか?と思ってしまう。

 

 ……マジで! ステータスさん、本当に余計な事するんじゃない!! お願いします!!。

 

 心の中で念じて魔術書を受け取る。

 冷や汗が止まらないのだけど無理やり大きく深呼吸をする。

 『ゴフォ』とちょっとムセたけど心は落ち着いて来た。

 

 ……よし行くぞ、だけど保険は掛けよう、絶対に。

 

 もう一度右手へと集中する。

 また感じる熱い感覚、それを正面へと放つのだ。

 ステータスをガン見しながら発動させる。

 

 「プチ『絶氷魔法へ変換しました』…………」

 「プチファイ『絶氷魔法へ変換しました』オー」

 「プチファイア『絶氷魔法へ変換しました』ー」

 

 呪文を唱えずフェイントを掛けたりしてみた。

 もうステータスさんのやる事は理解出来てきていた。

 大抵俺の邪魔をするのだ、有益だった事なんてあんまりない。

 

 少しの沈黙、ステータスウィンドウが『グヌヌ…』と表示されたその瞬間。

 

 「プチファイヤー!!」

 

 そう叫ぶと小さい火の玉が空を飛んで徐々に小さくなって消えてゆく。

 初めての魔術が発射された、それは感動的だった。

 

 「おおぉぉぉ! これ凄いな!手 の平からフワーって火の玉が飛ん言ったぞ!!」

 「おめでとう! ミソギも火の属性持ちなのねー、アタシと一緒ね!」

 

 拍手をしてくれるフレイに感謝しなくてはならない。

 だけどこれをもっと試したくなって来るのは男のさが。

 

 「ちょっとこれスライムで試してくるわ! お昼位にギルドで集合な!」

 

 すぐさま駈け出す俺にフレイは何か言っているは聞こえた。

 だけど逸る気持ちが我慢出来なかった。

 

 「おほぉぉぉ! スライム狩りだぁぁぁ!!」

 

 テンション高めで魔術書を持つバニーガールの痴女が草原を駆けていく。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 2発、3発、4発と撃っていくにつれてテンションが湧き上がって行く気持ち。

 まるで子供の頃に買って貰ったゲーム機で初めて遊ぶような感覚、超楽しい!。

 

 「プチファイアー!プチファイアー!うっひゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 もう既に10発から先は数えていない。

 かれこれスライムを10体以上討伐しただろうか。

 

 目の前で弾けるスライムを眺めると最高の気分だった。

 だけどステータスが邪魔をしないのは何故だろう、もしかして拗ねた?。

 

 そう思った瞬間だった。

 

 「うへへ! プチファイヤ……ぁ?」

 

 途端に腕が上がらなくなって来る。

 足もガクガクと震えてしまった。

 身体に力が入らない。

 

 もっと魔術を放ちたいのに魔術書を手放し身体が地面へと吸い込まれていく。

 

 「なんだ……これ……グヘェ……」

 

 顔から突っ込み倒れ込んでしまった。

 

 「たちゅけて、たちゅけて、フレイさん、たちゅけて」

 

 助けを呼ぶも肝心のフレイはここには居ない。

 

 「ステータスさん、たしゅけて、たしゅけて」

 

 頼みの綱のステータスウィンドウがすぐさま表示されるのだけど『ご愁傷様です…』と表示されていた。

 

 …え?俺死ぬの?マジ?早くない?まだお風呂覗いてないけども!?チンコまだ拾ってないけども!?。

 

 だが現実は残酷みたいで。

 周囲にはスライムが数体こちらへと跳ねて来ている。

 指一本動かないこの状況、最悪だった。

 

 スライムの1体が俺の横腹に突っ込んで爆ぜる。

 何故そこまでスライムは爆ぜたがるのかちょっと語り合いたいくら爆ぜる。

 そして飛び散る粘液。

 痛くはないがその爆ぜた周囲はベトベトになる。

 

 「おい……まて……やめろ……おい……」

 

 それは痛い事よりも屈辱的だった。

 次々と突撃慣行するスライムに動けない俺。

 2匹、3匹、4匹と次々と爆ぜていく。

 

 「……」

 

 うつ伏せの俺は無言で耐えるしかない。

 

 10を超えた辺りから数えるのを辞めた……。

 もう体中の至る所が粘液でベトベトだった。

 今の俺はバニーガール姿の粘液塗れ。

 

 最悪だ、生暖かい汁が体中を埋め尽くしているこの状態は最悪だ……。 

 

 「……」

 

 もう既に諦めている、泣きたい気持ちを堪えて唯々されるがままにベトベトになって行く。

 すると突然ステータスウィンドウが表示される。

 

-----------------------------------------------------------------------

 ……しょうがないにゃぁ。

-----------------------------------------------------------------------

 

 「……それ使いどころ間違ってる……」

 

 ツッコミを入れるだけの体力は残っていたみたいだった。

 そのまま動かずにボッーと眺めていると『魔力を回復しました』と表示された。

 それと同時に身体が動くようになる。

 

 ゆっくりフラフラと立ち上がると身体中から粘液が滴り落ちていく。

 

 ……この状態で町まで歩くのか……最悪だ、最悪だ、ああああぁぁぁ。

 

 慣れた手付きでポーチの中のふぐりを握り締めようとするがどこにもない。

 最悪だ、これ以上の最悪はない。

 多分何処かでふぐりを落としてしまった。

 

 「あぁぁぁぁぁ……」

 

 悲痛な叫びを上げる粘液でベトベトなバニーガールの少女が草原で黄昏ている姿がそこにあった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 黄昏ながらフレイ宅へと帰って来ている、今はお風呂で粘液を落としている最中。

 泡立てた石鹸をタオルに付けて身体を洗う、流石はお金持ちが買う石鹸だった。

 いい匂いがして泡立ちが良い。

 

 ゴシゴシ洗うと瞬く間にベトベトが落ちていく。

 そうしていると扉越しにフレイが語り掛けて来た。

 

 「ミソギー? ちゃんとベトベト落としなさいよー? ベトベト……プフゥー!!スライム程度に……プフゥー!!」

 

 ……あぁ、ふぐりを握りたい。

 

 切実にそう思う、後でふぐりを探しに行かなくてはならない。

 今なら秒間100回は握れそうな感じ。

 ふぐりがないと今夜は眠れないかもしれない。

 

 「タオルとか……プフゥー!! 置いて……プフゥー、……プフゥー!!」

 「ぬおぉぉぉぉぉぉ!! 泡立てぇぇぇぇ!! ぬおぉぉぉぉ!!」

 「プププ、プフゥー!!」

 

 フレイの煽りを受けながら泡立てた石鹸を髪へと付けてワシャワシャと洗う。

 

 今日はもう家で大人しくしていよう、明日から頑張ろう。

 ふぐりはまた今度探しに行けばいい。

 それで今日もフレイにお肉を食べさせてもらうんだ。

 

 お風呂から上がってフレイに魔術の勉強をしてもらいながらゆっくりした1日だった。

 

 



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10 鉛筆の芯の匂い!!

 今日の俺はミニスカートのメイド服を着ている、無理やり渡された白のガーターストッキング付き。

 バニースーツよりマシだったので快諾したのは言うまでもない。

 

 ふぐりを探し始めて1週間が経つ、クエストなんてそっちのけで一人で草原へと来ている。

 スライムしか居ない草原をずっと歩いているのだけどお目当てのユニークモンスターである青色のスライムは見当たらない。

 

 「ふぐりー! ふぐりー! どこだー! お前が居ないと今日も寝られないんだー!!」

 

 フレイには毎日『クエスト行きましょうよ』と誘われているが毎日8時間しか眠れなくなったこの身体にはふぐりが必須。

 町でチンコを探すも文字が読めず、周囲からは『痴女』と呼ばれる始末。

 あれを握らないと精神が持たない。

 

 「ふぐりー! ふぐりー!」

 

 もう今日は1時間位探している。

 歩きながら探していると少し離れたところに木々の隙間に誰か居た、遠目からでも青髪で耳が尖がっている事が分かる。

 ツーンとする匂いが漂ってくるのは何故だろう。

 

 こちらを視認するとそれは駆け寄って来た。

 レザーアーマーを着こなし背には弓がある。

 

 テンプレ的な見た目に思わず『エルフだ!!』と思ってしまった。

 初めて見たエルフは胸が大きく自分と同じ位の美人だった。

 近づいてくるたびに鉛筆の芯を濃縮したようスメルが漂ってくる。

 

 「は、初めまして、僕はアイギスって言います、あの、その……道に迷ってしまって…町はどこにあるのでしょうか?」

 「こんちわー、俺はミソギ、町ならここを真っ直ぐ行けば着くよ、一緒に行く?」

 「えぇ! いいのですか? けど僕……そのエルフなので……大丈夫ですか?」

 「いや、別に? 特に何も思わないけどー」

 

 芯・僕っ娘エルフ・アイギスの体臭は社会人だった時の上司を思い出す。

 良い上司だった、俺の為に残業してくれたり一緒に飲みに連れて行ってくれた。

 ちょっと体臭がアレだったけど俺にとって懐かし…くはないけど別に不快じゃない。

 

 「んじゃー行くか―、あ、けどちょっとだけ待ってくれない? 探し物があるんだよ」

 「探し物ですか? どんな物なんでしょう、お礼に一緒に探しますよ!」

 

 顔を近づけて、俺の顔を見ながら一緒に探してくれると言って来る。

 だけどその口から漂う匂いはドブのような香りがする。

 なんだかちょっと興奮してきた。

 

 「あぁ、ブルースライムって言うユニークモンスターだよ、特徴は青色なんだ、すげぇ大事でさ」

 

 「えぇ? ブルースライムを探しているんですか? それなら僕の通って来た場所にいましたよ! あそこの木の枝に引っ掛かってました」

 

 場所を指を差し視線を送ると木々の中だ。

 ありがたい、超ありがたい、滅茶苦茶探してたんだ。

 

 「マジか! ありがとう!! ふぐりー待っててくれよぉぉぉ!! 今迎えに行くからなぁぁぁ!」

 

 ふぐりが見つかれば今日は10時間眠る事が出来る。

 これで毎日フレイから『ダメ人間ー!プフゥー!』と煽られなくて済む。

 

 そのままハイテンション駆け出すと彼女の言う通り木の枝に引っかかってるふぐりを見つけた。

 

 1週間位ここで引っ掛かっていた為か少し元気がなさそうに萎んでいる。

 まるで真夏日の俺のふぐりのような状態。

 腰に付けた木剣の先でツンツンと突っつくと『ポトン』と落ちてきた。

 プルプルと震えて俺へと飛びついてくる。 

 

 ……可愛い奴め!! もう手放さないぞ! お前が居ない毎日が辛かったんだぞ、主に服装とフレイの煽りでな。 

 

 テンション高めで再会を喜ぶ。

 

 「ふぐりぃぃぃ!! 探したぞぉぉぉ!! お前が居ない夜は寂しかったよぉぉぉ!!」

 

 ふぐりを揉みまくる、そうすると心が洗われるような感覚に陥る。

 

 ふぐりは俺の本当のふぐりのような揉み心地なのだ、男時代は毎日揉んでいたから間違いない。

 しゃがんで頬擦りしながらポーチへと仕舞うと1週間履き続けた靴下の匂いが漂ってくる。

 皮のブーツから漂ってくる足の匂いはアイギスだった。

 

 「良かったですね! それじゃ、町までお願いします!」

 「あぁ、本当にありがとうな! マジで助かったよ!! んじゃ行くぞー」

 

 ふぐりが見つかって本当に良かった、これで俺の精神が壊れる事はない。

 フレイの煽りや衆人観衆の視線にも耐える事が出来るようになる。

 さらにはステータスさんのせいで魔術が魔法に昇華する可能性がある。

 危なすぎてあんまり使えない魔術へのフラストレーションも発散する事が出来る。

 

 俺は意気揚々と町まで向かう、その足取りは軽かった。

 アイギスの足は臭かった、興奮した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 町まで到着するとアイギスがお礼を告げて来る。

 

 「本当に助かりました! ミソギさん、ありがとうございます! 初めてです、僕の事を臭いと言わない人に出会ったのは……」

 

 アイギスは顔を赤くして俺へと詰め寄って来る。

 

 確かに匂うけど俺にとっては顔を顰めるほどの匂いじゃない。

 寧ろそれを補うほどの顔の美しい造形に大きい胸。

 そして僕っ娘と言う属性モリモリのエルフが臭いなんてメリットに成り得るのでは?と思う。

 

 「匂いなんて生まれ持った物だし俺は別に気にしないぞー」

 「エヘヘ……そう言って貰えたの初めてです……ミソギさんいい人ですね! だけど何故メイド服の恰好しているのですか? どこかにお仕えしているとか」

 

 お仕えではなく逆の事ならしている。

 毎日フレイにご飯を作って貰ったり奢ってもらったりしてグータラ過ごしてる。

 

 「いや、そういう訳じゃないんだ、安くて防御が高いから着てるんだ、深い意味はないんだよ」

 「そ、そうなんですね、その、凄く似合ってる思ってしまって」

 「あ、うん、どうも……ほら、俺って冒険者なんだよ? 今は木剣しかないけどその内ロングソードとか使う予定だし……」

 

 言っててちょっと悲しくなって来る。

 俺って超弱いからなぁ。

 

 「そうなんですね、剣士なのですか、わかりませんでした…」

 

 まぁロングソードなんて重すぎて持てないんだけどな。

 頑張ってショートソード……無理だわ、ナイフならいける。

 その内二刀流でナイフとか持って見たいなぁ……恰好良く逆手に持って見たい。

 

 「ああ、それじゃーな! また何かあったら早朝位にギルドへ来ると大抵居るから用事あるならそこで待っててくれよー」

 

 「はい! その時はよろしくお願いします!」

 

 手を振り別れたアイギスとを背にして家へと帰る。

 道行く人から『例の痴女だ』と小さく聞こえて来る、やはりこのフリフリの付きまくったメイド服は凄く目立つ。

 

 今日もフレイは一人で寂しくお留守番しているだろう。

 だってフレイってギルドで噂されているのだ『心折りに来る魔術師』って。

 可哀想だけど事実なのだ、ふぐりがなければ俺の心も折れていただろう。

 

 そして俺は『黒髪バニーの痴女』と言う不名誉なあだ名で呼ばれている。

 この間、今の俺より年下だろう少年に『お姉さんいくらですか?』と聞かれてしまった。

 相当ショックを受けた俺はその日、家に引き篭もったのは言うまでもない。

 

 家のドアを開けるとそこにはフレイがいた。

 優雅にお茶を飲んでいる姿がそこにある。

 

 「ミソギお帰りー、ふぐりは見つかった?見つかったなら明日こそクエスト行きましょうよー」

 「ただいまー、んじゃ明日行くか―」

 「やった! ようやくミソギが働くようになるのね! 私嬉しいわ!」

 

 その言葉にちょっとだけ心に刺さる。

 

 俺だって社会人だったのだ、その言葉に思う事はあるのだが事実なので言い返せない。

 仲間であり寄生先でもあるフレイの機嫌を損ねる事なんてしたくない。

 

 「……むぅ、まぁ最近ふぐり探してばっかりで何にもしてなかったしな、明日はどこだって着いてくよ」

 「ふふん! 当然よね! はいお茶よ、じゃあ明日はクエストで決定ね? それじゃー魔術と文字のお勉強しましょうか」

 

 俺の分のお茶を用意しつつ、フレイはあの時の魔術書と絵本を取り出し机に置く。

 ちょっと汚れているのはスライムの粘液でベトベトになった手で触ったからだ。

 

 毎日フレイを講師にして勉強している。

 俺から申し出たのを快諾してくれたフレイには頭が上がらない。

 その内無詠唱で『プチファイヤー』を撃てる日も来るだろう。

 

 「それじゃーまずは魔術の属性のお勉強ね!早く座りなさいなー」

 「フレイせんせー! 今日もよろしくおねがいしまーす!」

 

 途中途中で『プフゥー』と煽られながらふぐりを握り楽しい1日が終わるのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 早朝、この時間帯に目覚めるのはステータスさんが大音量でファンファーレを流すから。

 もう身体が起きる時間を覚えてしまっている。

 眠い目を開けて起き上がると目の前にはステータスウィンドウが待ち構えている。

 

 「……お、おはよう……」

 

---------------------------------------------------------------------------------

 0:55…起きました? 0:53…もうちょっと待ってください。

---------------------------------------------------------------------------------

 

 「あ、うん、起きた起きた、だからファンファーレ辞めて? マジで、あれ心臓止まるからさ、カウント止めよう? いやホントにさ」

 

 起き抜けでいきなりコレだ、俺に安寧の時間はあんまりない。

 ステータスを一瞥しながら着替えへと手を伸ばす。

 

 バニーかメイドかどっちでもいい。

 俺のスーツが帰って来る頃だからそろそろこの服達ともおさらばだ。

 これで痴女と呼ばれることもないと思うと感慨深い物はある。

 

-----------------------------------------------------------------------

 バニーでお願いします。0:21

-----------------------------------------------------------------------

 

 「あ、うん、分かった、だからファンファーレ止めよう、カウント辞めようぜ? お願いします、な? な?」

 

 慌てた俺はすぐさまバニースーツへと着替える。

 

 もう着慣れた物だ、人前に出るのは少し恥ずかしいのだがもう慣れた……はず?。

 俺って適応力が割と高かったんだなぁ。

 さすが俺だ、ファンタジー世界でも全然やっていけるぞ!。

 

 ポーチと木剣を持ってドアを開けるとフレイが朝飯を食べているのが見えた。

 

 「ミソギおはよう! さぁ早く食べて早く行きましょう? ほらほらー」

 「おはよー、んじゃ食ったらすぐギルド行くか」

 「ええ、今日は何するの? 何でもいいわ、またスライムでも構わないわ!」

 「俺も何でも良いや、適当に依頼書掴んでそれにしようぜ!」

 

 目の前の朝飯をモシャモシャ食べながら窓を見る。

 今日も良い天気だ、また茶柱が立っているお茶を啜りながら俺の1日が始まった。



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11 僕っ娘エルフ!!

ちょっと書き直すかもしれません


 早朝、ギルドの扉を開け放つと鉛筆の芯を凝縮させた匂いが鼻に付く。

 中へ入るとより一層、何故か、くさ……フェロモンの匂いが立ち込める。

 

 『あ、これ昨日嗅いだ匂いだ!』と思いつつも気にせず歩く。

 するとお尻に付いているバニースーツの尻尾を掴まれ俺のケツが丸出しになった。

 

 「んぁ!?なんぞ?どうしたフレイ、俺の尻尾に何か御用?俺のケツ可愛いの?」

 「いや、そうじゃなくて……ねぇ…その、あの…匂わない?…あの子から…ねぇ?…」

 

 指を差された場所へと視線を送ると青髪ロングの僕っ娘アイギスがポツンと寂しそうに椅子に座る姿がある、どことなく長い耳も萎んでいる。

 

 …やめなされ…やめなされ、アイギスも好きであの体臭になった訳じゃないんだろう。

 上司だって毎日お仕事頑張って手に入れた体臭なんだ。

 だからアイギスも同じ位頑張ったんだろうと思うんだ、だから俺は気にしない。

 

 「…あー、俺鼻利かないんだよなー、だからちょっと分かんないや…」

 

 とぼけながら歩いていくとアイギスが此方に気が付いたようで長い耳をピョコピョコ動かしこちらへと歩いてくるのが見える。

 まるで躾けられた子犬のような様相にちょっとだけ可愛いなぁと思ってしまう。

 

 「お、おはようございます!ミソギさん、昨日はありがとうございます!今、お時間御座いますでしょうか?」

 「おー、おはよー、今日は後ろのフレイと一緒にクエスト行く予定があってさ、昨日のお礼はしたいんだけど明日以降になりそうだ」

 「そ、そうなんですね…その…私もご一緒させて頂けませんでしょうか…足手まといにはなりませんので…」

 

 寂しそうに言うアイギスはやっぱり一人ぼっちなのだ、周囲には誰も寄り付かなかったのはそう言う事だ、美人で胸大きいのに勿体ないと思うなぁ。

 

 「お?いいよ、いいよ、一緒に行こうぜ?二人よりも三人で行った方が楽だしなぁ」

 「…本当ですか?良かったぁ……僕、頑張りますね!」

 

 俺の言葉に徐々にやる気に満ち溢れていくアイギス、先ほどよりもより一層耳が動いている、凄く分かり易い娘だ。

 

 その耳から漂う匂いはヘソのゴマを濃縮した匂いがして興奮した。

 

 「あぁ、よろしく頼む、ちょっとバランス悪そうだけど何とかなるだろ。」

 

 アイギスの弓にフレイの魔術、そして俺は応援役だ。

 俺はあんまり役に立たないから声だけは頑張って出して行こうと思います。

 

 「エヘヘ…ミソギさん優しいですね…、フレイさん!アイギスと申します!よろしくお願いします!!」

 「え、えぇ…アタシはフレイよ…よろしくお願いするわ…」

 

 その表情は嬉しさが若干勝っている模様、もう一方は……うん、言わなくても分かるだろう。

 フレイ的には一人でも多く仲間が欲しいもんなぁ、俺が来るまでパーティー組めなかったって言ってたし……フレイの煽りスキルはそれほどヤバイ。

 

 「ねぇミソギ、アタシは待ってるから適当に依頼書取って来てくれない?何でも構わないから」

 「あぁ、分かった、んじゃ行って来る、アイギス行こうぜ」

 

 そう告げて手招きするとアイギスは俺の隣へと来る。

 

 そのまま二人でクエスト板まで歩いていくとそこには依頼書が沢山貼ってあり下はスライムから上はドラゴンまで様々だ。

 

 アイギスにもやりたいクエストがあるのか聞いてみる。

 

 「アイギスはやりたいクエストとかあるか?俺達何でも良いからお前が行きたいの優先するけど」

 「いえ、僕は何でも良いですよ?ミソギさんにお任せします!」

 

 そう言われたのだけど腕を組みながらちょっと悩んでしまう。

 

 …全員が全員何でも良いって言うのはちょっと困るんだよな、だけどスライムとかもう飽きたし、うーん……。

 

 腕を組みながら依頼書を眺める、目に付く物はゴブリン討伐だ。

 

 その依頼書の内容は『ゴブリン討伐10体、報酬6万G』と簡潔に書かれている。

 

 丁度報酬が3等分出来るこのクエスト、もうこれでいいかなーとか適当な事を考えてクエスト板から依頼書を引っぺがしてそのまま受付のお姉さんに渡しに行った。

 

 受付のお姉さんは鼻を摘まんでいる、多分そう言う事なのだろう。

 隣のアイギスは顔を下に向けて俯いている。

 

 特に気にしてない俺はカウンターへ依頼書を出す。

 

 「これおねしゃーす、なるはやでー、3人でーす」

 「はい…うけたまゴフォォ…失礼…承りまグフゥ…した…」

 

 ギルドカードを提示して依頼書にスタンプを押して貰う。

 途中途中で咳き込むお姉さんに隣のアイギスはもう涙目だ。

 

 「どうぞ、それ…ゴフッ…ソレデハ、オキヲツケクダサイネ」

 「あざまーす、んじゃ行くぞアイギス」

 「……はい……」

 

 プルプルと身体を震わせ落ち込むアイギスを見ていると何となく俺と同じシンパシーを感じてしまう、例えると不幸属性とか幸薄そうとかそんなのだ。

 

 ……この子俺と似てるなぁ。

 

 そんな失礼な事を考えながら依頼書とカードをポーチに入れつつ俺はとびっきりの笑顔を作りアイギスの肩に手を置いて言ってみる。

 

 「今日は一緒に頑張ろうぜ!頼りにしてるからさ!あと俺はそんなに気にしてないからさ!」

 「……ミソギさぁぁぁん……」

 

 俺の笑顔にアイギスは涙目で抱き着いて来た、多分こういう態度に慣れていないのだろう。

 

 その大きな胸を堪能する為に抱きしめ返し頭を撫でると洗っていない犬の匂いがした。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「なぁフレイ、ゴブリンってここら辺にいるのか?結構歩いたけど……もうそろそろ休憩しない?ちょっと疲れてきたよ…」

 「えぇ、大抵森の奥とかの洞窟に屯している魔物だからもうすぐ出会うはずよ……ミソギもうちょっと頑張りましょう?あとちょっとだからね?」

 

 かれこれ2時間位歩く俺達は鬱蒼とした森の奥まで進んでいる。

 マイナスイオンたっぷりのこの環境で先頭を歩くのはアイギスだ。

 

 何かに気が付いたようで足を止めるアイギスが俺達へと振り返る。

 

 「見つけました、ゴブリン7体ですね!…僕が仕留めて来ましょうか?」

 「……え?数多くない?アイギス大丈夫か?フレイとかに援護して貰った方が……」

 「いえ!大丈夫ですよ、僕こう見えてとっても強いんです!だから見ててくださいね!」

 

 そう言った瞬間アイギスが消えた、その場にフェロモンだけを残して。

 森の奥から音が聞こえる、それは何故か打撃音だった。

 

 弓使いなのに打撃音がするのは何故だろうとか思うのだけどそれどころじゃない。

 俺とフレイは慌てて駆けつけて見るとゴブリンが5体ほど地面に倒れている光景が見えた。

 

 小学生位の背丈に緑色の体色をするゴブリンは腰布を巻き付けた姿だ。

 地面にはへし折れたこん棒らしき物が散らばっている。

 

 その先にはアイギスが6体目のゴブリンを素手で殴っている姿が見えた。

 ボコボコに顔が腫れているゴブリンを見ている無傷なゴブリンは恐怖に顔を引きつらせて腰を抜かしていた。

 

 「なぁフレイ…俺…要らなくね?てかアイギス、背中の弓はどうしたよ、何で拳?いや、もう何言えば良いか分かんない…」

 

 「……」

 

 7体目の小便を漏らしたゴブリンに腹パンを決めるアイギスをフレイが無言で眺めている。

 

 多分アレだ、フレイは目立ちたいのだろうと思う。

 恰好良く俺達に魔術を見せつけて自慢したいのだ、前のスライムの時でも褒めてあげるとつけ上がっていたのを思い出す。

 

 「フ、フレイ、今回は楽出来て良かったじゃん!な?な?アイギス強いし、危なくない事は良い事だ、な?」

 「えぇ、けどアタシも活躍したいのよ、久しぶりのクエストだもの、次はアタシがやるからね!……アイギスー!!次はアタシの番よーー!!」

 

 フレイはアイギスへと走っていく、7体目のゴブリンはボコボコにされて地面へと伏している姿は可哀想に思えた、まるで少し前の俺みたいだ。

 

 「分かりました!次はフレイさんの番ですね!僕はミソギさんと一緒に応援してます!それじゃ行きましょうか!」

 

 俺は『うんうん』と頷きながらギルドカードを見ると『ゴブリン討伐7/10』と書いてあった。

 

 適当に散歩してたらフレイとアイギスが仕事を終わらせてくれる、ホント楽な仕事だなぁとか思いながらゴブリンを探す為に歩き出す。

 その途中フレイが俺達に向かって笑顔で語り掛けてきた。

 

 「ふふふ!次はアンタ達は見てるだけよ?手を出したらダメなんだからね?」

 

 クエストジャンキーが張り切っている、もうこの二人に着いて行くだけで人生なんとかなりそうだ、もうこのままこの二人に寄生しよっかなとか考えちゃっている俺が居る。

 

 「おー、頑張ろうぜ、俺達応援してるからなー、あっ!………うーん…」

 「ミソギさん、どうしました?」

 「別に大した事じゃないんだけどさ、まぁいいや、行こうぜ」

 

 ちょっと思いついた事があるのだけどどうしよう、言ってみるべきか、それとも黙っているべきなのか……うーん…次見つけたらでいいか。

 

 そう思いながら腰の木剣を引き抜きブンブンと空を斬ってみる、試してみたい事はスキルの事だ、男を女にするスキル、これは魔物にも有効なのだろうかと不意に思ってしまった。

 

 森の中をちょっとだけ歩くとアイギスの足が止まる。

 

 「見つけました!数は……4体ですね、それじゃフレイさんお願いします!」

 

 やっぱりスキルを試してみたい、そう思う俺はフレイへと言ってみる。

 

 「なぁフレイ、ちょっとだけ試してみたい事があるんだけど……やって見て良い?止めはお願いするからさ」

 「えぇー……しょうがないわねぇ…それで何をやりたいの?」

 

 滅茶苦茶嫌そうな顔で俺へと聞いてくるクエストジャンキーに『まぁ見てろって』と返してポーチのふぐりを取り出した。

 

 「んじゃ行ってくるから危なくなったら助けてくれよ?」

 

 そう二人に伝えてゴブリンへと駆け出した俺はふぐりを奴等へと投げつける。



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12 スキルの可能性!!

わらってみてくれるとうれしいです


 「いけ!ふぐり!足止めだ!」

 

 ゴブリン達へと投げつけたのだけど頭上を越えて飛んでいく。

 多分アレだリリースポイントが悪いんだ、真面目に物を投げた事なんて学生以降やってない。

 ちょっとだけ恥ずかしい気持ちで顔が赤くなる。 

 突然飛んできたふぐりに釣られて余所見をするゴブリン達。

 その間に右手の木剣へと念じてみる、その内容は『俺と同じになれ』だ。

 

 「いくぞ!必殺!」

 

 掛け声を出して走り出すと木剣がピンクに光り出す、その途端ステータスウィンドウが表示される。

 こういう時は有用なスキルを勝手に追加するステータスさん、今回はどうなのだろうと眺めつつも足は止めない。

 

-----------------------------------------------------------------------

 なんか用っすか?寝起きなんすけどーもう、しょうがないにゃぁ…

 高速流し切りスキルを取得しました。

-----------------------------------------------------------------------

 

 「呼んでないけどありがとう!奥義、通信剣道!横一文字斬りぃぃぃ!!」 

 

 感謝を述べると身体が加速する、視界がブレて景色が流れていく。

 転びそうになるのをなんとか踏ん張りそのままの勢いで前方のゴブリンの頭へと叩きつけた。

 『ポコン』と言う可愛らしい音を立てて振り下ろしたがダメージはない模様。

 

 殴られたゴブリンは何事かと言う風に頭を撫でている。

 横一文字なのに縦に斬りつけたのはなんとなくだ。

 

 「あ、やっぱり痛くないのか…ちょっとショックだ…」

 

 分かってた事だけど思わず呟いてしまう。

 だって俺って腕力無いんだもの、こんな白い細腕で殴られても痛くないだろう。

 そんな事を思いながらそのまま二人の元へ逃げ帰った。

 

 「お帰りなさい、ミソギさん」

 

 暖かい態度のアイギスにやる気充分のフレイ。

 

 「あれ?ミソギもういいの?それじゃーアタシの番ね!!ちょっと待ってなさい!!」

 「いや、まだだ!二人共、目を閉じた方がいいぞ、滅茶苦茶眩しいからな!」

 

 そう言った瞬間ピンク色に光り出す1体のゴブリン、それに戸惑う他のゴブリン達。

 

 「何かしたのですか?ミソギさん!」

 「また何かやったのミソギ」

 

 俺は『うんうん』と頷きながら両手で目を覆う。 

 ピンク色の眩い光を放ちつつゴブリンは変化するのかしないのか。

 俺達も他のゴブリンも目を腕で隠し耐えている。

 そして徐々に光が収まっていく様を俺達三人で見ている光景はちょっとシュールだった。

 

 「よし、そろそろだ」

 

 少しずつ光が収まり収束していく。

 両目を見開くとボン・キュ・ボンのメスゴブが誕生していた。

 当のメスゴブは何が起こったのか分かっていない模様。

 

 やっぱり人だけじゃなく魔物にも適用されるんだ!

 

 「おぉ、成功したぞ!二人共!見て見ろよ、ゴブリンがメスになってる!!」

 「「えぇ……」」

 

 指を差して喜ぶ俺。

 

 凄いぞこのスキル、魔物だけじゃなくて石とか植物とかどうだろうか。

 地面とか水とかにも効果はあるのか、もっと色々試してみよう!!

 

 呆れた視線を感じながら二人を盾に後ろに隠れる、情けないとか思わない、だって俺応援役だしな!

 

 「そんじゃーフレイ先生!やっちゃって………うわぁ……うわぁ…」

 

 そうフレイに言いかけて言い淀む、目の前に広がる光景がヤバイ。

 メスゴブに群がるオスゴブ達、『ギャギャギャ!』と興奮しているようで既にメスゴブは腰巻を剥かれて抱き着かれている。

 

 クエスト前にゴブリンはオスしか居ないとフレイに聞いていた。

 だから途中で思いついて試してみたいと思ったのだけどこうなるとは予想していなかった。

 

 「うわぁ…ひでぇ…」

 「「………」」

 

 メスゴブはガチ泣きしながら色々な汁を撒き散らすとさらに興奮するオスゴブ。

 さらに泣き出すメスゴブの無限ループ。

 なんかもう凄い事になってる。

 

 それを眺める俺達の間に如何ともしがたい空気が流れていた。

 

 「…楽じゃん?ほら、動き止まってるし狙い目じゃん?な?な?」

 「「……」」

 「………ごめんなさい」

 

 周囲に撒き散らされる汁、もうどっちがどっちのなのか分からない。

 

 『ギャッギャッ(はぁと)』とオスゴブが喚いてるのを眺めながら謝る俺。

 アイギスは顔を赤らめ目を背け、フレイは虫を見るような目で俺を見る。

 

 この空気は知っている、ご飯時にTVを見てる家族団欒のひと時に突如チャンネルが変わりハード系大人のDVDを見せつけられた時の空気だ、それも4P物。

 

 「…ファイヤーランス!!」

 

 くんずほぐれつして幸せそうなオスゴブ達へと容赦なく炎の槍が直撃する。

 炎が周囲を燃やし尽くし丸焦げになったゴブがピクピクと蠢いている。

 

 これはチャンスだと思った、この空気を変える為にフレイを褒めなくてはならない。

 すかさずごますりポーズで言ってみた。

 

 「さ、さすがフレイさん!今日も火の上級魔術の威力は凄いっすね!!マジさすがっす!!すげー頼りになるっす!」

 「………え??ま、まぁね?当たり前じゃない、アタシに掛かればこんなものよ!」

 

 あ、この子やっぱチョロいわ、クソチョロいわ。

 ちょっと心配になるほどチョロ過ぎてお姉さん(お兄さん)心配になっちゃうぞ。

 

 空気が変わった…そう思いながら俺はさらに追い打ちで褒めちぎる。

 

 「マジマジ!いやぁ俺もいつかフレイみたいに上級魔術使ってみてぇーなぁホントなぁー羨ましいなぁー」

 

 俺の『なぁーなぁー』責めに照れているフレイ、アイギスも適当に褒めとけばいいだろう。

 

 「いやぁーアイギスも凄いなぁ、ホント頼りになるわ!すげぇ強いし!俺も見習いたいなぁー!!」

 「え?そ、そうですか?…エヘヘ…嬉しいなぁ…」

 

 コイツもチョロいわ、この僕っ娘エルフもチョロすぎるわ。

 

 二人共チョロ過ぎてもうなんか楽しくなって来た。

 もう完全に空気が変わったのを感じる、このままの勢いでこの場所から離れなければならない。

 

 「そ、それじゃ、もうそろそろ行こうぜ!ほら、クエスト達成したし町に帰ってアイギスの歓迎会とかやらないとな?」

 

 『10/10』と書かれたギルドカードを見せながらその場を離れる俺に二人は仲良くついて来る。

 危機は脱した模様で安堵した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「いやぁ、フレイもアイギスもホント凄いなぁ!」

 

 町へと帰りながらまだまだ褒めちぎる作戦は続いている、あの光景を忘れて貰わなければならないからだ。

 

 「そ、そんなに褒めても今日のご飯しか美味しくならないわよ?」

 「エヘヘ…エヘヘ…僕の歓迎会…」

 

 お?もう良さそうな感じ?二人共凄く機嫌が良さそうだ。

 そろそろ褒めるのも飽きてきたから俺の興味がある話題に変えて見る。

 

 「なぁ、フレイは分かるんだけどアイギスってどうしてそんなに強いんだ?エルフって皆そんな感じなの?」

 「えっと、ちょっとそのお話は恥ずかしいのですが…知りたいですか?」

 「うんうん、超知りたい、だってレベル5だろう?それなのに強いって理由が知りたい」

 「アタシも興味あるわ」

 

 やっぱりフレイも興味あるみたいだ。

 そう、アイギスはレベル5だ、これはクエスト前に聞いた話。

 俺のレベルは30・100・5・1と変動しまくるのだけど自身の本当のレベルは1~3だと予想している。

 俺とそんなに変わらないレベルなのに矢鱈と強いアイギスに何か秘密があるのだろうと思う。

 

 「…笑わないでくれますか?絶対に笑わないでくれますか?」

 「笑わない!絶対に笑わないから教えて!」

 「…」

 

 俺達の顔をじっと見つめて何かを確認している模様。

 少し沈黙した後、深呼吸をしてアイギスは決心したように口を開く。

 

 「…エルフって臭ければ臭いほど強くなるんです…」

 「「…」」

 「エルフは臭いと能力が跳ね上がるんです」

 「「……」」

 「もう20年位お風呂に入っていません…」

 「「………」」

 「臭くなく綺麗になってしまうと弱くなっちゃうんです…」

 「「…………」」

 

 衝撃の事実に呆然とする俺に何かを思いついたフレイが肩を掴み『ちょっと来て』と囁いて来る。

 そのまま引きずられるようにアイギスから離れる。

 

 「ねぇ…あの子お風呂に入らせましょう、絶対その方がいいわ」

 「…うん」

 「あの子がお風呂に入れば弱くなっちゃうとしてもこれから一緒にパーティーを組むでしょう?」

 「確かに」

 「そうなれば私が活躍出来るじゃない!」

 「そうだな!」

 

 納得した、このクエストジャンキーは目立ちたいのだ。

 お風呂に入れさせて弱くなったアイギスを連れて自慢したいんだ。

 

 その瞬間に稲妻が脳内に走る、人はそれを天啓と呼ぶ。

 俺は僕っ娘エルフと一緒にお風呂に入る事が出来る、フレイは目立てて嬉しいWIN・WINな事に気が付いてしまう。

 これはやらなくてはならない…絶対にだ。

 

 …アイギスの事は知らん、臭いのが悪い、ゲロクサエルフが悪いんだ。

 

 「あぁ、分かったよフレイ、じゃあちょっと待っててくれ」

 

 手をかざしフレイから少し離れてアイギスへと振り返る。

 俺達の会話は聞かれていないみたいだ、ボケっと立ち尽くして此方を見ている。

 そうと決まればやる事は一つだ。

 

 右手を上げて『パチン』と指を鳴らす…心の中で。

 決して指がならなかった訳じゃない。

 ちょっと恥ずかしいけど今はどうでもいい。

 

 「ステータァァァス!!」

 

 叫んでみるとステータスウィンドウが表示された。

 

-----------------------------------------------------------------------

 マジ貫徹で眠いんすけどぉ…なんか用すかぁ?

-----------------------------------------------------------------------

 

 「お前さっき寝起きって言ってただろ!あとキャラブレ過ぎてちょっと統一した方がいいと思う!それよりも腕力系のスキルください!ちょっとやる事あるから!」

 

 お願いしつつもツッコミを入れる。

 するとステータスはまた『しょうがないにゃぁ…』と言いながら『剛腕スキル』を追加してくれた。

 

 信用はしていないが信頼はしている、試したいけどそんな事をしている時間はない。

 いやあるけど面倒臭い。

 

 アイギスはびっくりして俺を見つめている。

 それもそうだろう、いきなり叫び出したのだから。

 

 「よしアイギス、ちょっとフレイの家まで行こうか」

 「え?お邪魔してもいいのですか!?エヘヘ……今日は嬉しい事がいっぱいです!!」

 「えぇ、構わないわよ!一緒に行きましょう」

 

 何も知らないゲロクサエルフに罪悪感等微塵も感じる事はない。

 俺達は意気揚々とフレイの家まで帰って行った。

 

 




つぎはおふろかいですがんばります


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13 青髪エルフとお風呂!?

 …誰だよWIN・WINとか思った奴は……俺だよ、俺だったよ、俺のバカぁ……。

 

 ここは密閉した浴室、アイギスと俺の二人がここに居る。

 

 ドブと鉛筆の芯と洗ってない犬と足とヘソのゴマの匂いがするこの場所は地獄だ。

 

 俺の追加されたスキルで無理やり手足を縛られたゲロクサエルフを風呂場へと連行した。

 全てを衣服や装備を剝ぎ取られて涙目なアイギス。

 そしてしかめっ面の俺がいる。

 

 真っ裸のアイギスを眺めるのだけど興奮はしない。

 ブルンブルンと揺れる胸を眺めるがどうでも良い。

 風呂場に立ち込める臭気が鼻に付いてそれどころじゃない。

 あとチンコないからどうしようもない。

 

 フレイなんか一目散に逃げて行ってしまった。

 もうなんか萎えて来ているのだけど残った気力を振り絞る。

 

 「…うっ…うっ…どうしてこんな酷い事を…」

 「うるせぇ!だまらっしゃい!」

 

 『べチン』とケツを叩く、すると『キャン!』と言う可愛い声で鳴く。

 その手を見ると垢が大量に付いていてちょっと気持ち悪い、けどちょっと楽しい。

 少しだけテンションが上がった。

 

 そんなテンションとは裏腹にゲロクサエルフは文句を言ってくる。

 

 「痛いですぅ…なんでこんなことするんですかぁ…僕、信じてゴボボボボ…」

 

 お湯をぶっ掛けて黙らせる。

 何を言っているのか分からないなぁハハハ。

 

 笑顔になりつつ石鹸で青く長い髪を洗うのだが中々泡が立たない。

 フケや皮脂が手に絡みつき指が髪に引っ掛かりまくる。

 

 もうこれは髪と言う名の塊だ、ドロドロの塊だ。

 超汚いこれを綺麗にしなくてはならないのは結構キツイのではないかと感じ始めた。

 

 …汚すぎるんだ、汚すぎて泡が立たないんだ。

 

 ちょっとだけ顔が歪むのは仕方ない事。

 20年もお風呂に入っていないのは伊達じゃないみたいだ。

 何度も付けては流しを繰り返す。

 するとゲロクサエルフがまた泣き始めた。

 

 「うっ…うっ…ひっぐ…僕弱くなっちゃいまゴボボボボ…」

 

 なんかほざいているのだけど気にしない、構わずお湯をぶっ掛けワシャワシャ洗う。

 すると少しずつだけど小さな泡がブツブツと立ち始めて指が絡まなくなって来る。

 その様子を感じたアイギスがさらに泣き始める。

 

 「うわぁぁぁん!僕が弱くなってもいいんですかぁぁぁ!!もう止めてくださいよぉぉぉ…」

 「うるせぇ!だまらっしゃい!」

 

 泣きながら怒っているのだけどまた『ぺチン』とケツを叩く。

 また手に垢が付着するがどうでもいい、どうせ全部綺麗になるのだハハハ!!

 

 またまた悲痛な叫びがアイギスから放たれる、今度はちょっとだけ聞いてやろう。

 

 「僕、僕、弱くなったらお役に立てなくなりますよぉぉぉ…うっ…うっ…」

 「大丈夫だ、俺は見捨てないから」

 「………本当ですか?…うっ…うっゴボボボボ…」

 「本当だとも、フレイが見捨てても俺だけは絶対見捨てないからな!だから安心するんだ!」

 「本当に本とゴボボボボ…」

 「あぁ、俺を信じろ!」

 

 またまたお湯をぶっ掛けてなんとなく黙らせる。

 

 フレイが行かない時はお腹痛いとか言って休めばいい。

 そうすればアイギスも諦めてくれるだろう。

 だから見捨てると言うよりはお休みすると言うのが正しい。

 

 何度も洗っているともう石鹸が小さくなってきた、追加の石鹸をフレイに頼もう。

 浴室のドアを開けて叫ぶ。

 

 「フレイィィィ!!石鹸とタオル10枚追加でぇぇぇ!!コイツ超汚いわぁぁぁ!!」

 「…そんな事言わないでくださいよぉ…うっ…うっ…酷いですぅ…」

 「うるせぇ!」

 

 また『べチン』とケツを叩く、もう心の中はハイテンションだ。

 フレイが『はい、どーぞ』と浴室の前に追加の品物を置いてくれた。

 今度はタオルに石鹸を付けてアイギスの身体を洗う。

 

 ボロボロと落ちる垢、ネチャネチャになり変色するタオル。

 泣き叫ぶアイギス、ちょいうるさい。

 

 …コレどうなってんの?どんだけ汚ねぇんだよ…やべぇよこれ…そこらの浮浪者のレベルじゃねぇぞ。

 

 そう思いつつもしつこくゴシゴシと根気よく背中を洗うと地肌が見えて来た。

 

 …こいつ全身垢で覆われてやがる…まるでフルアーカーだ、防御力高そう。

 

 最低な事を考えながらタオルを変えてまた洗う。

 

 「…もう好きにしてください…もう諦めました…」

 「ああ、俺に任せろ!!」

 「やっぱりやめてくださゴボボボボ…」

 

 頭からお湯を掛ける必要はないのだけどついぶっ掛けてしまった。

 拒否するから悪いんだ、俺は悪くない、悪いのはこんなに垢を溜め捲ったアイギスだ。

 

 「本当に僕の事見捨てないんですよね…」

 「うむ、仲間を見捨てる何て事は俺には出来ない…それにこれからお前の歓迎会もあるんだ、そのままじゃ入店拒否されちまうぞ?」

 「そ、そうですね…」

 「あぁ、それにフレイが連れて行ってくれるお店は美味しい物がいっぱいなんだ、だから期待してもいい、大人しく洗われろ、な?」

 「わ、わかりまゴボボボボ…」

 「うるせぇ!だまらっしゃい!」

 

 またケツを叩きつつ、それから1時間位ずっと体中を洗っていた。

 ゲロクサからちょいクサになるまでの時間はとても長く感じた。

 

 その後の俺は語る『楽しくもあり辛くもあってやっぱりちょっと楽しかったです』と。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 リビングのソファーの上、俺とアイギスはそこに居る。

 

 俺の恰好はメイド服、アイギスはフレイのローブだ、俺のバニースーツはサイズが小さすぎたからフレイのを借りているらしい、服は全部捨てられた模様。

 

 お風呂から上がり大きな胸の中に顔を埋めて恍惚とした表情をしながら左右の触感を楽しんでいる最中だ、うん、最高。

 

 「髪の毛がスースーして落ち着かないです、あと肌がピリピリして痛いです…」

 「うんうん、いい匂いだぁ」

 「あの…聞いてますか?それよりどうして僕の胸に顔を埋まっているのですか…」

 「どうしてかって?それは匂いを嗅いでいるからさ!ハハハ!!」

 

 完全にセクハラしているのだけどセクハラにならないのは今の自分が女だからだ。

 それを堪能している俺は幸せ者なのだろう。

 アイシスの肌は擦り捲った影響で赤くなっている、だけど全然臭くない、臭くないんだ!!。

 ワキの匂い以外は。

 

 「いやぁ臭くないっていいなぁ、凄く良い匂いがする…アイギス、俺と毎日お風呂入ろう、そうしよう、そうするべきだ、そうしなくてはならない」

 

 欲望駄々洩れでお願いしてみる。

 だって女同士だしチンコないからお触りまでは大丈夫だろうと思う。

 

 「えぇ…僕嫌ですよぉ…もうお風呂入りたくないです…」

 「うるせぇ!入ろう!」

 

 『べチン』と胸を叩く、するとブルンと揺れて『キャン!』と鳴く。

 

 …何これ幸せ…幸せしか感じない…あとはワキだけワキだけ何とかすればもう最高…。

 

 俺は幸せな気持ちでアイギスのお胸に飛び込んでいる。

 アイギスが拒否しないのは風呂場で言った事を信じているからだろうなぁとか思ったり。

 

 そんな幸せな光景を邪魔する者がいる、フレイだ。

 

 「ミソギー、アイギス―、歓迎会行くわよー準備しなさいな」

 「分かりました、ありがとうございますフレイさん、今行きます!ほら、ミソギさん、行きましょう?」

 「………あい…」

 

 もうちょっと堪能したいのだけどしょうがない。

 ゆっくりと胸から離れて余韻を楽しむ。

 

 …ふぅ…イクか…。

 

 さぁこれから歓迎会だ、今日はあのフィレ肉を食べたレストラン。

 前回は食べ過ぎたのだけど今回は大丈夫、もう次は食べ過ぎない。

 フレイもアイギスももう準備は出来ているみたいで後は俺を待っている。

 

 「ミソギー早くいくわよー」

 「はーい、ちょっと待ってくれーすぐ行くからー」

 

 この後アイギスは臭いと言う呪縛から解放されたのか男達に絡まれるのをまだ知らない。

 

 




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14 ミソギと秘密のアルバイト!!

 現在は真昼間、大通りから少し離れた路地裏前に木製のプラカードを掲げた黒髪バニーガールの少女が立っている。

 プラカードの内容は『前金制・1回3万G、お試し1時間1万G♡』と書かれていて、どこか怪しい雰囲気を醸し出していた。

 

 「はぁ、こないなぁ」

 

 風呂場事案から一か月が経つ、5日間はクエスト行って2日間は休みと言う社会人生活を思い出させるこの生活にもう完全に慣れてしまった俺は今、どうしても欲しい物がある。

 

 今日はクエストがお休みの日だ、だからこうしてプラカードを持ってアルバイトに励んでいる訳だ。

 だけど今日は芳しくない、チラチラと俺を眺める人は居るのだけど全くお客さんが来ない。 

 

 「うーん……今日はあんまり来なさそうだなぁ……どうしようかなぁ……」

 

 悩みながら大通りを眺めるのだけどこっちに来る人は居ない、何故だろう。

 

 この姿なら客引きに向いているのでは? と思いバニーガールのコスプレをしている。

 もうこの姿も慣れた、今更どう思う事はないと……思う、多分。

 

 朝からこの場所に立ってもう3時間位経つのだけど一向にお客さんが来ない事に焦りを感じ始めている。

 

 「どうしよう、そろそろ場所変えようかなぁ……」

 

 そんな事を呟きながらボーっと立っていると一人のおじさんが俺に話しかけてきた。

 先週にも来たその人物は……ベンリーさんだ。

 この人は俺のリピーターだ、所謂お得意様って奴だ。

 外見は大きく突き出たお腹が特徴的な40代のオッサンだった。

 

 「お、お嬢ちゃん、ゲヘヘ、この間はありがとな…すげぇ楽しかったぜ」

 「ベンリーさん、こんちわー、今日もやってきますー? いつもの時間でいいですか?」

 「あぁ、頼むよお嬢ちゃん、ほら前金の3万Gだ! グエヘヘ!」

 「どうもー、……丁度ですね!ありがとうございますーベンリーさんも好きですねぇー」

 

 厭らしい笑顔を浮かべ金貨3枚を手渡してくるベンリーさん、それを笑顔で受け取りポーチへと入れる。

 

 「それじゃーあっちまで行きましょうか、ちょっとここじゃ人目に付きますしねー」

 

 手招きしてベンリーさんを路地裏まで案内する。

 そのまま奥まで歩いていくと薄暗くジメジメした雰囲気の場所へと出た。

 そこは裏路地の最奥、そして突き当り、もうどこにも行く場所はない。

 

 「ここでやりましょうかー、んじゃ、服脱いでくださいねー」

 

 そう言いつつ振り返るとベンリーさんは『もう待ちきれない』と言うようなその表情。

 

 服を脱ぎ始めて息を荒くさせているのはちょっと気持ち悪いがお得意様なのだ、文句なんて言わない。

 

 パンツだけの姿になったベンリーさんは俺へと語り掛けてきた。

 

 「お、お嬢ちゃん、もういいだろ? ここで……やっちゃってくれよぉぉぉ!!」

 「はーい、それじゃー始めますねー」

 

 ベンリーさんのテンションとは裏腹に冷めた俺はプラカードを地面に置く。

 そして右手にピンクの光を纏わせてベンリーさんの腹に叩きつける。

 この細腕だ、勿論ダメージはない模様。

 

 「んほぉぉぉぉ!! んぁぁぁぁ!!」

 「……うるせぇ……」

 

 ボソっと呟く俺とは対象にオッサンは身体が光りながら叫び出す。

 俺は目を手で塞ぎながら『うるせぇオッサンだなぁ』とか思った、割とマジで。

 

 ピンクの光が収束し巨乳美女TSオッサンになったベンリーさん。

 一々叫ばないといけないのかちょっとだけ問い質したいがお得意様だ我慢しよう。

 

 「一応説明しておきますね、効果時間は明日の朝までですよ」

 「んほぉぉぉぉ!!!」

 

 マジうるさい。

 

 そう、俺は色々スキルを実験した結果、効果時間までコントロール出来るようになった。

 1時間だけとか1日だけとかだ。

 だからこうして美女になりたいオッサン達にスキルを使って金を稼いでいる訳だ。

 超ボロい商売に満面の笑顔になってしまう。

 あとお胸見たいから服は脱がせてる。

 

 落ち着いた巨乳美女TSオッサンは俺の顔を見て言ってくる。

 

 「おう! 分かってる! お嬢ちゃん、ありがとな? これでちょっくら嫁と楽しんでくるわ! げへへ! 今日はどんな事をしてやろうか……ゲヘヘへへ!!」

 「……いえいえ、こちらこそありがとうございます、それじゃーまたよろしくお願いしますねー」

 

 服を着直し手を振って路地裏から出ていく満面の笑顔を浮かべた巨乳美女TSオッサン。

 それを眺めてプラカードを拾いながら思う。

 

 ……ちょっと奥さんとどうやってお楽しみをするのか興味あるなぁ。

 

 そんなふしだらな事を想像しながらポーチの中を確認すると3万Gが入っている。

 今日のお客さんは1人だけだ、多い時は変態が10人来る、ヤバイ。

 

 あんまり稼げなかったが仕方ない、目標額までまだまだ足りない。

 お腹空いて来たしアイギスにセクハラしなくてはならないからもう帰ろうかな。

 うん、そうしよう、アイギスの胸揉みに行こう。

 

 当初の目的を忘れてしまった俺はそのまま路地裏を抜けて真昼間の人通りが多い場所まで出て家まで帰った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 玄関のドアを開けると今はワキクサエルフへと格落ちしているアイギスだけがいた。

 アイギスもフレイ宅へと居候していて掃除とかの家事を手伝っている。

 

 「ただいまー、アイギスー? ちょっとお胸揉ませてー」

 「えぇ……嫌ですよぉ……とりあえずお帰りなさいミソギさん」

 

 ナチュラルに拒否されて落ち込んでしまうが仕方ない。

 俺はリビングのソファーに腰かけて偉そうにアイギスへとお茶をせがむ。

 面倒臭そうな素振りをせずにお茶を入れてくれるアイギスは良い子だった。

 

 そういえばフレイの姿がない、大抵リビングに居るのだけどどこかに出掛けているのだろうか。

 

 「あれ、フレイは? どっかいったのか?」

 「フレイさんなら出掛けましたよ、人と会うって言ってました」

 「へぇー、そうなんだ、誰か分かる?」

 「いえ、詳しい事は言われませんでしたけど、貴族の方だとしか聞いてないです」

 

 ……ふーむ、貴族と言う事はフレイもお貴族様なのだろうか、そうならばお金持ちなのも頷ける、それなら俺の出番はないなぁ。

 

 すぐさま興味が失せてお茶を啜りながらアイギスにお昼ご飯をせがむ、俺料理出来ないから。

 

 「ふーん、まあその内戻って来るだろう、んで今日のお昼ご飯なにー?お腹空いたー」

 「まだ出来ていませんが、どうします? 食べに行きますか? 食べに行くならお肉がいいです!」

 「えぇ……野菜も食えよ……」

 

 また肉だ、アイギスはまた肉が食べたいと申しておられる。

 歓迎会の時の肉がいたく気に入ったようでそれから『肉!肉!』とうるさい。

 

 この偏食ワキクサエルフは野菜は食べられるのだけど嫌いらしい。

 無理やり食わせようとすると涙目になるのでちょっと可哀想になって来るんだ。

 

 「お肉だけで良いんです! お肉があれば良いんですよミソギさん! 野菜なんていりません!!」

 

 真剣な顔をしながら俺の顔を見つめて来る。

 溜息を付きながら『あーうんうん』と返して残りのお茶を飲み干すとそのまま立ち上がり玄関へと向かう。

 

 「んじゃ、メシ食べに行くかー」

 「えぇお肉食べに行きましょう! 僕もお腹が空いてきました!」

 「野菜も食えよ……野菜もさぁ……」

 「僕のお肉が待ってます!さぁ、早く行きましょう!」

 

 大きい胸をブルンと震わせて玄関へと向かうアイギスは俺の話を聞いてくれない。

 ちょっと寂しい思いをしながらアイギスの胸を揉みドアを開けて町へと歩いて行った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 アイギスと二人で適当なレストランに入ると店員さんが『お二人ですかー?』と聞いてくるので『そうです』と答える。

 店員さんに適当な席に案内されて水を渡された。

 

 さっそくメニュー表を眺めるが文字が読めない事に気が付く。

 いや、ちょっとだけ読めるんだけど大半が分からない。

 魔術と並行して文字のお勉強しているのだけど芳しくはない。

 

 「……なぁアイギスさん、ちょっと文字を読んでくれませんかね……」

 「え? ミソギさんメニュー分からないんですか?…………わかりました! 任せてください!!」

 

 満面の笑みで俺を見るのだけどすっっっっごく嫌な予感しかしないのは何故だろう。

 

 アイギスはメニューに指を差しながら『これはお魚のムニエルです』とか『これはリゾットです』とか解説してくれる。

 

 その動作には迷いがない、ちょっと気にし過ぎたのかもしれない。

 優しいアイギスを疑ってしまうなんて嘆かわしいと思う。

 最近は精神が削れる事が全然ない、だから警戒していたのもあるのだろう。

 

 ……すまんなアイギス、俺はお前の事を疑ってしまった、さっき胸揉んでゴメンな?。

 

 心の中で謝罪する。

 

 「それじゃーその説明してくれた『お魚のムニエル』と『リゾット』注文するわ、ありがとな! 凄く助かる!」

 「エヘヘ!! いえいえ、どういたしまして!……すいませーーん! 注文お願いしますー!!」

 

 大きな声で店員さんを呼ぶアイギスは良い子だ。

 

 「これとこれとこれください!」

 「かしこまりました、少々お待ちくださいませ……」

 

 注文を受けた店員さんはそそくさと厨房へと戻っていく。

 疑ってしまったお詫びと注文してくれたお礼に今日は奢ってあげようと思う。

 水を飲みながらアイギスへと言っていみる。

 

 「今日は奢るから、いっぱい食べてくれ、遠慮しなくていいぞ?」

 「えぇ!! ホントですか! やったぁ! ありがとうございます! ミソギさん優しいなぁ……エヘヘ……」

 

 照れながら笑うアイギスに心が和む。

 

 うんうん、すっごく良い笑顔だ、照れてて超可愛い。

 こんな美人エルフの胸を揉みまくっている俺はなんて幸せ者なのだろう。

 今、まさにチンコが欲しいなぁ。。

 

 そんな事を思いながら待ってると店員さんが料理を持って来てくれてた。

 

 「お待たせしました、『フィレのステーキ』と『ハンバーグ』と『リブロースのステーキ』でございます、ごゆっくりどうぞ」

 「わぁ! 美味しそう! ありがとうございます!」

 「………」

 

 感謝を述べるアイギスに笑顔で対応する店員さん。

 そして俺側のテーブルに置かれたハンバーグとリブロースステーキ。

 それを無言で受け取り眺めていた。

 

 「ミソギさん、これ美味しいですよ? そっちのリブロースも美味しそうですね! 半分交換しましょう!!」

 「…………」

 

 俺の分まで食べ出すアイギスは笑顔だ、もう何も言うまいて。

 俺は無言でハンバーグの形をしたお魚のムニエルを食べた、美味しかった。

 

 




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15 魔道具店!!

 人が行き交う大通り、出店が並び老若男女が入り乱れて沢山歩いている場所。

 その通りをバニーガールの俺とローブ姿のアイギスはブラブラ散歩しながら歩いてる。

 

 「お前、いっぱい食べたなぁ、まぁいいけどさ」

 「ミソギさん! ご馳走様でした!」

 

 お腹を膨らませ大きい胸を揺らすアイギスを尻目に俺はポーチの中を見ている。

 

 中身は2000Gとふぐりしか入っていない。

 ベンリーさんから貰った3万G、今日の稼ぎがほぼ吹っ飛んでしまった。

 隣で感謝してくるアイギスが嬉しそうな顔をしてるから文句なんて言うつもりは無い。

 

 ……仕方ない、また明日も変態をカモにして稼ぎに行こう。

 

 とか思いつつ町をブラブラ歩く。

 

 ジロジロと視線は感じるが今はアイギスがいるから気にしてない。

 するとアイギスが俺に向かって話しかけて来たから振り返り胸を揉む。

 ちょっと嫌そうだけど気にしてない、俺はな。

 

 「………そういえばアルバイトは順調ですか? 最近すっごく楽しそうに帰ってきたり悲しそうに帰ってきたり表情が豊かなので少し興味がありまして」 

 「あぁ、うんそうだな、まぁ順調だよ、順調」

 

 そう、割と順調に変態が来てくれる。

 今日は稼ぎが少なかったのは多分時間帯が悪かったのかもしれない。

 次はもっと夕方とかに行ってみるか?。

 

 そんな事を考えてたら。

 

 「そうなのですね!! それでどんなアルバイトをしているのですか? 僕もフレイさんもミソギさんのお仕事内容知らなくて……」

 「まぁ色々だよ、色々、そうだなぁ……ウルトラTSクリエイターみたいな物だな、うん」

 「何故か凄そうなお仕事ですね! どんなお仕事なのですか!?」

 

 キラキラした瞳で聞いて来るアイギスにどう答えようか悩んでしまう。

 

 うーむ、とりあえず適当に答えて見ようそうしよう。

 だって『ウルトラTSクリエイター』なんて適当に言ってみただけだし。

 アイギスってチョロいから何とかなるだろ。

 

 前髪を掻き揚げて恰好付けながら言ってみた。

 

 「……フッ……人の願望を叶えて満足してもらう仕事さ……」

 「す、凄いです! フレイさんにも話しておきますね!」

 「え˝? いや、べ、別にフレイに言わなくてもいいかな……な?」

 「そうですか? ミソギさんが言うならそうします!」

 

 話が分かるアイギスは好きだ。

 また今度お肉を奢ってあげようとアイギスの胸に手を当てて心に誓う。

 

 そう、俺はアルバイトの内容を二人に話していない。

 だってお金欲しさに男を美女にしてるなんて理由を大っぴらに言える訳がない。

 聞かれても困るし、その美女になった男の人達がやる事なんて説明できない。

 もう凄い事してるだろうと思う、『アレをコレしてアッー!!』だな多分。

 

 「そうしてくれると助かるなぁー」

 「はい! 何か欲しい物とかあるのでしょうか」

 

 何故バイトをしているのか、それは『チンコが生えるかもしれない魔道具』が欲しいから。

 だから聞かれても本当の事を言えない俺は悩んだフリをしながら適当に答える。 

 

 「あー、そうだな……貯金したくてさ! 冒険者って結構危ないじゃん? だから老後の為に今の内にお金貯めても悪くないなって……」

 「偉いですね! 僕はお金持ってしまうとすぐお肉に変わっちゃうのに……」

 

 ちょっとだけ悲しそうにするアイギスを励ましながら思い返す。

 『その魔道具が欲しい』そう思ったのは少し前の出来事、今はそれを思い出していた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 クエストがお休みの日、文字が読めない俺はフレイに町を案内されがてら『ここが魔道具店よー』と腕を掴まれ拉致られた。

 

 アイギスは縛ってベッドの上に置いて来た、大抵出掛けると『お肉食べに行きましょう、お肉!!』とうるさいから。

 フレイも『アイギスはちょっとお留守番ね?』と言っていた。

 

 まぁそれは置いといて。

 

 店のドアを開けた瞬間、少しホコリっぽいイメージがあった。

 商品棚にはガラクタのような物が所狭しと並んでいる。

 俺達以外に客の姿はなくてどこか物悲しい雰囲気の店。

 奥にはシワシワ顔のおばあさんがポツンと座っていた。

 

 「いつもの嬢ちゃんと……噂の黒髪の美痴女? まぁいいさ、いらっしゃい、ゆっくりしていきな」

 「……美が付いてる…何でだよ……」

 「また来て上げたわ! 今日は何があるの?」

 「さぁてね、適当に見ていきな」

 

 そう言われては奥へ入っていくフレイ、俺は気分を落としながらついて行く。

 

 周囲の棚には手の平サイズの地球儀やトイレットペーパーの芯みたいな物、果ては大きな鏡や盾みたいな物等様々だった。

 

 最初はあまり興味はなかった、フレイが楽しそうに色々見ているのを眺めてた。

 すると聞いても無いのにフレイが話し出す。

 

 「アタシ良くここで掘り出し物が無いか来てるのよ、結構楽しいわよ?」

 「へぇ、てか魔道具って何? なんか全部ガラクタみたいに見えるんだけど……」

 

 見たまんまの意見を言ってみるとフレイは『フフン!』と鼻を鳴らして自慢する時の顔をする。

 

 「魔道具は凄いのよ? 魔力か魔石を原動力にいろんな事が出来るの、例えば毎日お風呂入ってるでしょ? あれは魔石を入れた魔道具のお陰よ? お湯を沸かしたり凍らせたり出来るの!」

 「へぇー魔道具すげぇー」

 

 フレイは楽しそうに説明している。

 そこに水を差すのも悪く感じて相槌を打つ。 

 

 「他にも色々あってね、このリングなんかは凄いのよ? 付けると……ほら、こうやって目の色が変わったりするの!」

 「おお、緑色、いや翡翠色? から赤色に変わったなー」

 「でしょー? だけど高いのよ? これ一個100万Gするの、こういう特殊な物はあまり数はないから高額なのよ?」

 「え˝!? フィレ肉50枚分!?」

 

 値段を聞いた瞬間ビビってしまう。

 

 ……超たけぇ、確かフレイの部屋に色んなガラクタあったけど全部魔道具なのか。

 

 何故フレイの部屋の事を知っているのか。

 それはパンツとかブラジャーをパクって遊んでいるから。

 偶に『ねぇ、アタシの下着ないんだけど』って言われるけど知らんぷりしてる。

 まだバレてないみたいで助かってる。

 

 そんな事を思いながら聞いてみる。

 

 「……すげぇ高いな、他にどんな物があるんだ?」

 

 「このチョーカーは確か髪の色が変わって、この首輪は……ほら! 爪の色が変わるのよ!」

 「うわぁ、すげぇー!」

 

 フレイに実際に見せて貰って興味が出てきた。

 もしかしてチンコとか生える魔道具があるかもしれない。

 多分高いだろうけどアテはある。

 

 「そうねぇ……これなんかどう? この銀色の腕輪なんか凄いのよ? 魔力を込めながら念じれば……ほら、手を出してみて?」

 

 そう言われて右手を出す、そうすると見えない何かに触れられている感触がした。

 

 「え? 何これすげぇ!」

 「でしょう? これはねー、自分しか見えない想像した物を作り出す腕輪よ!」

 「……マジで? 何それすげぇ!!」

 

 超欲しい、だって自分で想像するって事はチンコだって……サイレントチンコだって出来るかもしれない。

 サイレントチンコ……別名『静寂のティンコ』あ、コレ結構センス良くね? 俺マジ名前付ける才能あるくね?。

 その腕輪を使えばこのツルツルの股間にチンコを生やす事が出来るんじゃね?。

 そうすればこの異世界でいっぱい……色々出来る!!。

 

 ピンク色の淡い邪な思いを胸に秘めてフレイに言ってみた。

 

 「なぁ、フレイ」

 「んー? どうしたの?」

 「……その腕輪買ってぇぇぇ!! お願いぃぃぃ!! クエストのお金1年間いらないからぁぁぁ!!」

 「……えぇ……」

 

 そう、アテと言うのはおねだりだ。

 いきなりの俺のおねだりにフレイはドン引きしているが構わない。

 お金とチンコを天秤に掛けたらチンコに傾くのは当然だ。

 

 さらに縋り付きながらおねだりする。

 

 「フ˝レ˝イ˝ぃぃぃ!! 買って˝ぇぇぇ!! わがまま言わないからぁぁぁ!! 良い子にするからぁぁぁ!! お掃除も手伝うからぁぁぁ!!」

 

 情けないとは思わない、今が絶好のチャンス。

 ここで買って貰わないとチンコが遠のいてしまう。

 その腕輪があればアイギスやフレイ……多分フレイにはバレるからアイギスだけだ。

 アイギスにもっとセクハラ出来る。

 だから体裁なんて気にしない。

 

 「……ミソギ、これってすっごく高いのよ? アタシでもおいそれと買えないの……ゴメンね?」

 「……ちなみにおいくら?」

 「1000万Gね、あのレストランのフィレステーキ500枚分よ?」

 「あ、無理っすね、すいません」

 

 すぐにフレイの身体から離れて謝った。

 

 フィレステーキ500枚分は無理だわ、俺でも思う。

 てか1000万Gってぼったくりじゃねぇの? 高くない? 家立つよ?。

 

 そう思うのだけどすぐさま思い直す。

 

 ……いや、俺のチンコの値段だ、高くて当然だな、チンコに値段なんて付けられないし。

 

 冷静になって考えた、妙に納得してしまったけど、どうしよう。

 超欲しい、どうしても欲しい、けど手が出ない。

 

 悩む俺を尻目にフレイは腕輪を棚へと返した。

 それを恨めしそうに眺めるとある考えが思いつく。

 

 ……アルバイトしよう。

 

 けども割のいいバイトなんて物はない。

 文字もあんまり読めない俺はどこも雇ってくれないだろう。

 なら自分で需要を作ればいいのでは?。

 まだ物はある、ゆっくり考えて俺の得意分野でお金を稼ごう。

 

 そう考えながらフレイが魔道具店を出るまで待っていた。

 

 




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16 下着!?

 何度目だろう、俺がこんな事をしているのは、多分5回目か6回目だったはず。

 1回目は魔が差したのを覚えている、すぐに立ち去った。

 2回目は少しだけ手に取ったりしていた、10分も居なかったと思う。

 3回目は慣れて来て、持って見たり眺めたり。

 それ以降は完全に調子に乗りまくり、履いたりパクって遊んだりしてた。

 

 夕日が窓から差し込みカーテンを閉め切った少し薄暗い部屋の中。

 俺はタンスの中をゴソゴソと漁っている。

 これは俺のタンスじゃない、フレイのタンス。

 

 俺は童貞故に女の子の部屋に興味があった。

 可愛い女の子のパンツ漁りをしてみたかった。

 もう癖になっちゃったこの行動、たったそれだけの理由でここにいる。

 

 今、俺は頭にパンツを被りながらハイテンションでブラジャーを握った。

 

 「……うひょぉぉぉ……ピンク色だぁぁぁ……」

 

 それをブンブン振り回し遊び出す俺は最高にスリリングなこの状況を楽しんでいた。

 

 場所が場所故に大声が出せないのがもどかしい。

 

 ハイテンションのままで大声を出しちゃうと他の部屋にいるアイギスにバレる。

 まぁ、あの子チョロいし、なんとか出来るけどめんどくさい。

 

 「……うひょぉぉぉ……」

 

 もう腕や足にもパンツとブラジャーを巻き付けたりして遊んでいる、最高だった。

 タンスの奥から赤色のパンツを見つけたので手に取る。

 フリフリが付いた赤色レースのパンツだ。

 

 「……おほぉぉぉ……フリフリだぁぁぁ……」

 

 それを持ち上げ小声で喜びながら腕へと通す。

 身体に纏うはフルパンツアーマーだ、いやフルブラパンツアーマーだ。

 

 すげぇ! 防御力高そう!!。

 今のメイド服の恰好と合わせて超防御力高いかもしれない!!。

 

 そんな事をしつつ頭のパンツを被り直して思う。

 

 ……フレイも大胆なの持ってるなー、やっぱり可愛い女の子だしなー、よし何個かパクッていこう、いやもう付けてる奴全部持っていこう、んで後で履いてみて鏡見ながらポーズしてみよう!!。

 

 今の俺は可憐な少女の姿だ、メイド服が似合う少女なんだ、精神は男だけど。

 

 ブラジャーを握り締め『この姿を見られたら終わる』、そんなギリギリの緊張感が俺の欲望を掻き立てる……。 

 

 こんな事が出来るのは最近フレイの帰りが遅いから。

 お貴族様だったフレイは休日、お貴族さまのお家へとお呼ばれしているみたいであんまり構ってくれない。

 『何しに行ってんの?』と聞いて見たら『ちょっと用事が……』と言っていた。

 だからこれ幸いとパンツをパクって遊んでる。

 

 赤色のパンツとピンクのブラジャーを両手で掴み持ち上げた。

 ジッと見つめて思ってもない事を突然口に出してしまう。

 

 「……これ売れるんじゃね?」

 

 その一言はある種の閃きだった。

 まさに今、天啓が俺に舞い降りた瞬間だった。

 

 「アルバイトしつつ、フレイの下着もついでに売ったらすぐにチンコの魔道具買えるんじゃね? やっべぇ!!」

 

 ……可愛いフレイと言う名の女の子のパンツだ、多分変態達には需要があるはず。

 あ、それならアイギスのも売ろう! 最近すっごく良い匂いするし需要あるかもしれない!!。

 いやどうせならセット売りしてみるか? それとも単品? 値段はどうする? やっふぅぅぅ!!。

 

 とんでもない事を思いついた俺はすかさず白く細い指で下着をごっそり掴む。

 そしてメイド服の前掛けのポケットにいっぱい下着を捻じ込むと頬が緩んでしまう。

 罪悪感を少し感じてしまうけど、チンコを優先してしまう俺はイケない奴だ、色んな意味で。

 

 「お金は入ったらバレないように適当にパンツ補充しとけばいいだろ……よっし、そろそろ引き上げよー、もうこれ以上は持てないよなぁ………よし、これを一旦俺の部屋に置いてきて脱衣所とアイギスの部屋へ行こう!!」

 

 そう自分に問いかけながら、まだまだたくさんあるタンスの中身を見た。

 

 名残しいけど立ち上がり、最高の気分でドアへと歩く。

 両手いっぱいポケットいっぱい、さらには身体に巻き付けた下着をパクってウハウハしつつドアを開けた瞬間だった。

 

 ポトリと一つのパンツが落ちた、俺の心はそのパンツのように地獄へと転がり落ちていく。

 

 「ねぇ、ミソギ……どうしてアタシの下着を持ってたり身体に着けてるの?」

 「!?!?」

 

 ドアの先には笑顔を浮かべたフレイの姿。

 無言で佇む俺の額から流れる汗は止まらない。

 言い訳を考えるも現行犯なこの状況。

 すでに頭はフル回転していたけど魔道具3割とチンコ7割にリソースを割いていた。

 

 つまり言い訳を何にも考えられていない。

 

 「いえ、その、ほら……その……あの……パ、パンツいる?」

 「……」

 

 咄嗟にパンツを差し出す俺にフレイは満面の笑顔で見つめる、超怖い。

 

 「やっぱりミソギだったのね? ……ねぇ、リビングに行きましょう? お話はそこで聞いてあげるわ?」

 「……しゅ、しゅいましぇ……しゅいましぇ……」

 

 抱え込んだ下着をポトポト落としながらフレイの後へとついて行く俺の謝罪は虚しく廊下に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 リビングのソファーへ腰かけるフルブラパンツアーマーを剥かれた俺と冷めた目で見るフレイさん。

 いっぱい……いや、それなりに怒られた俺はずっと謝罪を続けている。

 

 「しゅいましぇ……しゅいましぇ……」

 「もうこんな事しちゃ駄目よ? 全くミソギったら……下着が欲しいなら買ってあげるわよ?」

 

 フレイは俺の下着が少ないからと勘違いしたみたいで助かった。

 それくらい俺の下着は少ない。

 身体に巻き付けたのは『持てなかったから』と言い訳した、嘘だけど。

 男だったらもっと怒られていただろうと思う、いや多分それで済んでない。

 

 プリプリと怒るフレイは可愛いのだけどちょっと怖い顔をしていた。

 

 「まぁ、下着の事はもういいわ、それよりね? ミソギに話があるのよ」

 「しゅいましぇ…………なにー? お話聞かせて―!? 超興味あるー!! なになにー?」

 

 話題を変えて欲しい俺はすぐさま精神年齢を落としその話に飛びついた。

 だって気まずいんだもの仕方ない。

 

 「もう……調子良いんだから……えっとね、アタシの叔父がね? ミソギに会ってみたいって言ってるのよ、だから今度のお休みの日にアンタは叔父のお家に行ってきなさいな?」

 「はい! 分かりました! 行かせていただきます!」

 「えぇ、そうして頂戴? 勿論明日はクエストよ?」

 

 そう言われてフレイの顔見るともう怒ってないみたいだった、嘘だちょっとだけ怒ってる。

 そしてちょっとだけ空気は重いまま。

 その雰囲気を変えたくてフレイにオドオドしながら明日の事を聞いてみる。

 

 「……明日どうする? 何行くの?」

 「そうねぇ、ゴブリンは飽きたから次は……アタシが活躍できるのなら何でもいいのだけど、明日から5日間はクエストだから、いっその事遠出しましょう!」

 

 楽しそうに考えてるフレイ、まぁ何でも良いやと考える俺は『あ、いいっすね』と答える。

 

 勿論、俺に選択肢は無い。

 フレイのお願いは快く聞きつつ、ついて行かせて頂く。

 そして褒めて褒めて褒めちぎって今日の事は忘れて貰おう。

 

 そんな事を思っていると俺のお腹が可愛らしく『グゥ』と鳴る。

 すかさず俺はフレイへと精神年齢を落としつつ聞いてみる。

 

 「そういえばご飯まだー? 俺、お腹すいたー 今日のご飯なにー?」

 「アンタねぇ……ハァ……すぐ作るから待ってなさい、あとまだあるでしょ? アタシの下着を全部返しなさい?」

 「しゅいましぇん……」

 

 すぐさま精神年齢を引き上げてメイド服のポケットのパンツを返して謝った。

 

 それに溜息を付いて呆れながら受け取るフレイはすっごく『母親みたい』と感じてしまう。

 『フレイママ!』とか呼んだらどう反応するのだろうか。

 すっごく興味があるのだけどこれ以上フレイの機嫌を損ねたくない。

 だけどギリギリの所を攻めて見たい、だって俺は冒険者と言う名のチャレンジャー。

 

 さりげなく言ってみる事にする。

 

 「フレイっておかあ「今日のご飯はお肉ですかー?」……」

 

 なんか変な奴がリビングへやって来た。

 アイギスは俺の会話を遮り、パンツを籠へと入れていくフレイへと寄っていく。

 

 「んー? お肉もあるわよ? けどちゃんと野菜も食べなさいな」

 「えぇ……嫌ですよぉ……」

 「ちゃんと食べないと明日の朝ごはんは野菜だらけになるわよ?」

 「えぇ……僕をイジメないでくださいよぉ……」

 「もう、しょうがないわねぇ、アイギスの分はお肉多めにしてあげるからちゃんと野菜食べなさいよ?」

 「やったぁ!! 嬉しいなぁ、エヘヘ!!」

 

 呆れた様子のフレイに喜ぶアイギス、その会話を眺めつつ思う。

 

 ……やっぱりママじゃね? フレイやっぱりママじゃね?。

 

 言いたい気持ちを引っ込めて偉そうに足を組みなおしてアイギスにお茶をせがむ。

 するとフレイから冷えた視線を感じたから慌てて姿勢を伸ばしてそれを待つ。

 

 「……」

 「……しゅいましぇ……お願いしますぅ……」

 「わかりましたー! 任せてください!」

 

 そう言ってキッチンへ駆けていくアイギスの姿が可愛らしい。

 そしてフレイは怖い。

 

 ……今日は危なかった、次はもっと上手くやらないとな。

 

 そう思った一日だった。




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17  鉱山都市!?

すいませ!書き直しました!


 ここは宿の3階奥の部屋、ベッドの上には鼻提灯を膨らませながら『チンコォ……』と寝言をほざきつつグースカピーと幸せそうに寝る黒髪少女がそこにいた。

 時刻は朝の7時丁度、ステータスウィンドウが突然開き、少女の脳内にファンファーレの音を叩きつける。

 

 「ふぉぉぉ!? なんだ!! 朝か!!……チンコの良い夢見てたのに……」

 

 寝惚け眼で周囲を見るとステータスウィンドウ、通称『ステータスさん』が表示されている。

 内容なんて見なくても分かる、多分『レベルアップ』だろう。

 

 --------------------------------------------------------------

 レベルアップしました!確認しますか? yes/no    × 

 --------------------------------------------------------------

 

 ほらこれだ、またこれだ、レベルなんて上がって無いのにレベルアップしている摩訶不思議なステータス、それにいつものツッコミを入れつつ起き上がる。

 

 「レベル上がってねぇからな? ステータスさんおはよう、今日も良い天気だなぁ……」

 

 カーテン越しにでも見える朝日からステータスへと視線を移す。

 画面の『no』をタッチしようと人差し指を伸ばしてウィンドウを消そうとした。

 

 グイッと動いて避けられた。

 

 「なんでだよ!! 消させろよ!! 朝の挨拶しただろうがよぉぉぉ!!」

 

 朝っぱらから叫びつつステータスに言ってみるも無駄みたいだった。

 

 ------------------------------------------------------

 心が籠ってないタッチはNGです。 

 ------------------------------------------------------

 

 「知らねぇよ!! なんだよ心を籠めろって、訳わかんねぇよ!! なぁ、最近ステータス見てないから見せてよ……」

 

 半分諦めの気持ちでお願いしつつ触ろうとして。

 

 また避けられた。

 

 「またかよ!! ステータスが避けてんじゃねぇよぉぉぉ!! 触らせてくれよ、俺のステータスだろ!?」

 

 朝っぱらから叫びつつ立ち上がり身体ごと腕を伸ばすが避けられてまた表示が変わる。

 

 -------------------------------------------------------

 変態! その厭らしい手付きでタッチして乱暴するつも  

 -------------------------------------------------------

 

 「見切れてんだよぉぉぉ!! ステータスさぁぁぁん!? ちゃんと改行しろよ!? 見えねぇよ!!」

 

 ここ最近ちょっと楽しくなってきたステータスさんとのやりとり。

 ステータスさんも間違えた様でその後『りでしょう!薄い本みたいに!!』と改行して表示された、やらねぇよ……。

 

 ……朝から疲れた……まぁ良いや、さっさと着替えよう、そうしよう。

 

 机の上で大人しく鎮座するスキルで実験しまくったピンク色に変わったふぐり。

 立ち上がって、その隣にある着替えに手を伸ばす。

 

 そこにあるのは少し前に戻って来たおばあちゃんに買って貰った大事なスーツ。

 シャツに腕を通して背広を着て見るとピッタリだった。

 

 服屋でサイズ調整して貰ったおかげだろう。

 160ほどの身長にそれなりに豊満な胸のある身体でも違和感なく着こなせる懐かしのスーツ。

 真新しい洗剤の匂いを感じながら腕と背筋を伸ばしてみると、社会人時代を思い出した……。

 

 

 それはいつも、いつも、窓際一歩前だった自分、適当に仕事して『おつかれっすー』と大体定時で帰ってた。

 以上だった、それ以外にはない。

 

 

 ……会社の思い出短くないか? まぁ、別に苦労なんてしてないな、うん。

 

 と自問自答で頷きながらも特に思い出深い物はない、強いて言うなら上司に連れられて行ったノミニケーションくらいだろう。

 

 飲んでは毎回『ゲロゲロオエー』する上司に慣れた手つきで介抱する俺。

 それなりのメンタルを持つに至ったのはこのせいだろう。

 

 まだ頭はボッーとしているが自身のケツを撫でながら窓へと向かう。

 昨日の朝から夜に掛けてずっと馬車に乗っていてケツがまだちょっと痛い。

 

 「馬車で1日掛けてここまで来たもんなぁ……大変だったなぁ……」

 

 途中で馬車酔いして『ミソギ、ゴメンね? ありがゲロゲロオエー』するフレイ。

 その隣でスヤスヤ眠る図太いアイギス、妬ましく思う俺は慣れた手つきで介抱してた。

 

 昨日の出来事を思い返してカーテンを開けると眩しい朝日で目が眩む。

 手で日光を遮って、3階の宿の窓から見える景色は武器屋防具等のお店が所狭しと立ち並ぶ。

 

 「おー、今更実感湧いて来たな、鉱山都市アステロイドだっけ、スゲーなぁ……ファンタジーの鉱山都市って感じだなぁ」

 

 今、俺達がいる場所は貴重な鉱石や鉱物が良く取れる鉱山が近くにある都市『アステロイド』。

 

 この大きな都市の特徴は、何といっても武器や防具の品質だろう。

 近場の鉱山から搬入した様々な鉱石や鉱物を織り交ぜた装備品。

 それは中級冒険者から上級冒険者のステータスであり羨望の的。

 ドル大陸一の鍛冶職人が作り上げた最高品らしく、有名すぎてちょっとやそっとじゃ手が出ない。

 

 まぁ、フレイの受け売りですが、勿論その自慢を褒めちぎりましたとも。

 

 「んじゃ、行くか―」

 

 ポーチの中にふぐりを入れて荷物を持って部屋を出る。

 

 ……これからクエストだ、今日も応援頑張ろう。

 

 他力本願、そんな思いを胸に宿を出る。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ダラダラと平坦な岩場を歩く俺達は、トカゲみたいなモンスターを探している。

 思い返すのは鉱山都市のギルド内での事。

 

 フレイが『アタシが炎の魔術で倒すから見ておきなさい!!』と小さなお胸を張って依頼書を引っぺがして来た。

 そのクエスト内容は『ダイナマイーター討伐』と言う何とも物騒な名前を持つトカゲのモンスターのクエスト討伐。

 

 もう探して彷徨い2時間位歩いているのだけど、一向に現れないモンスターに疲れ始めた俺は、愚痴りながら二人に聞いてみた。

 

 「……まだ歩く? 結構疲れてきたんだけど……」

 「えぇ、もうすぐよ、あと少しだから頑張りなさい?」

 「そうですよミソギさん! もうちょっと頑張りましょう!!」

 「二人共、元気だなぁ……」

 

 俺は、真新しい皮鎧を着たアイギスに背中を押して貰いながら、息を切らせてひたすら歩く。

 

 「それでそのダイナマイーターって何なのさ、トカゲって聞いても良く分からんのだけども」

 

 先頭を歩く、物知りフレイに聞いてみる。

 

 「ダイナマイーターはね、ダイナマ岩を食べるトカゲよ」

 「うんうん、うん? トカゲが岩食べるの? マジで?」

 「食べますよ? ダイナマイーターはダイナマ岩しか食べませんよ?」

 

 補足を入れてくれるアイギスに首を傾げながらとりあえず分かったような素振りで頷いてみた。

 引き続き笑顔で語り出すフレイに耳を澄ませて聞いてみる。

 

 「それで、鉱山内の発破作業で良く使われるダイナマ岩を食べちゃう害獣みたいな扱いのダイナマイーターを討伐しましょうってクエストね。あまり強くないから大丈夫よ」

 「発破って事はダイナマ岩って爆発でもすんの?」

 「しますよ? ダイナマ岩は爆弾なんですよ、良く鉱山の中で使われてますね!」

 「……爆弾落ちてるファンタジーやべぇな……あとダイナマってなんなんだ……」

 

 俺はそう呟きながら、ダイナマダイナマ言われ過ぎてダイナマが分からなくなって来た。

 

 続けて説明してくれるフレイ。

 「ダイナマ岩は赤いスイッチが付いてるから分かりやすいわ、ほら……これとか、あれとか、それとかね、これを食べるダイナマイーターが近くに居るはずよ? 擬態してるから分かりにくいけど」

 「擬態もするのか、カメレオンみたいだなぁ……」

 

 フレイの指を差す方向を見ると確かに赤いスイッチが付いて居る岩が無数にある。

 

 スイッチ付いてる岩とか、その岩食べるトカゲとか、ツッコミたいけど異世界なんだ。

 その程度ではインパクトが足りない。

 

 俺はそんな事を思いながら歩いていると、足が石に引っ掛かり転んでしまった。

 もうそれはツルンと擬音をが出るくらいに……。

 

 そして、受け身を取ろうとした俺の手を伸ばした先には、小さなダイナマ岩のスイッチが何故かある。

 勿論『ポチッ』と言う音が響き渡り、全員が『あっ……』と言う声があがる。

 

 ……ヤッベッ! ヤっべ!! 押しちゃったよぉ……。

 

 とか思いながら、四つん這いの俺は、後ろに居る二人へとすぐさま振り返るのだけど。

 「……逃げましょう」

 「はい、逃げましょう」

 と、何やら不気味な事を呟いた後、俺の身体を掴み駆け出した。

 

 「あああああ……スーツが破けるぅぅぅ……」

 

 絶叫を上げる俺に対して、真顔の二人に引きずられるていると『ジジジ……』と導火線に火が付いたような音がする。

 

 すると突然後方で爆発が起こった。

 それはもう、耳をつんざくような大きな爆発。

 小さなダイマナ岩から想像出来ない程の音に、俺は少しだけ顔を青くさせてしまう。

 

 そしてその爆発は連鎖する。

 至る所から爆発音が聞こえてくるこの状況、まるで新人スタントマンになったかのような感覚に陥ってしまう。

 

 「……あああああ、ああああ! すいませ! すいませ! ごめんなさいぃぃぃ!!」

 

 あまりにも爆発音が怖すぎて、叫びつつ謝る俺。

 二人の声は爆風で、搔き消されて聞こえない。

 

 その後、無事に逃げ切った俺は二人にそれなりに怒られた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 あの爆発の後、怒られた俺は涙を流しながら土下座ポーズで涙を流している。

 平坦な岩場だった場所は無数のクレーターがあちこちと作られてとんでもない事になっていた。

 

 「二人共、ホントにありがとねぇ……俺死ぬかと思った……ごめんよぉ……ごめんよぉ……うっ……うっ……」

 

 必至に謝りまくったおかげなのか。

 

 「ほらほら、もう大丈夫だからね?」

 「危なかったのですがケガがなくて何よりです! これどうぞ、お水ですよ、ゆっくりのんでくださいね?」

 

 とフレイに背中を摩られて、アイギスがバッグから取り出した皮の水筒を渡された。

 

 怒られたけど何だかんだ優しい二人。

 俺は改心した、もうあんまりパンツをパクらない事を多分、心に……誓う気がしたような事もあるかもしれない。

 

 つまりあんまりない。

 

 「もう大丈夫ね?」

 「ありがてぇ……ありがてぇ……」

 

 摩るのを止めたフレイは俺から離れて心配そうに見ている。

 ちょっとだけ精神を回復した俺はそう言いつつ座り込み、ポーチから取り出したピンクのふぐりを握り締めて、ギルドカードを眺めて見ると『ダイナマイーター5/5』と書かれている。

 

 ……あれ? もうクエスト終わりじゃね? ダイナマ岩のスイッチ押したの俺だからダイナマイーター倒したのは俺の功績じゃね?。

 

 そう、ダイナマイーターは連鎖して爆発したダイナマ岩ごと消し飛んだみたいだった。

 つまり俺のお陰じゃね?と考えてしまった。

 

 「どうしました? もしかしてお怪我とかされてましたか? 結構強引に引き摺ってしまいましたので……」

 「いや、違う、そうじゃない……水筒返すよ、ありがとう」

 

 アイギスは心配してくれている、俺は水筒を渡し返す。

 そしてゆっくりと立ち上がってギルドカードをフレイとアイギスに見せた。

 

 「……クエスト終わったぞ? あの爆発でダイナマイーター倒したぞ、ハハッ! 楽勝だったな!」

 

 ドヤ顔の俺にフレイからは感情が消えた目で見られた。

 アイギスは見下した目で俺を見る。

 俺は瞬時に悟った『これ選択肢を間違えた』と。

 

 「すいません……ホント、すいません……ちょっと調子に乗って……痛ひ……痛ひ……抓らないで引っ張らないで、そこはもう回らないし伸びないからぁ……」

 フレイに両ほっぺを抓られアイギスに耳を引っ張られた俺はちょっとだけ涙目だ。

 

 痛かったけども少しだけ興奮した。

 

 

 




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18 ニンジン!?

日間オリジナル35位になってました!あざます!あざます!


 またまた平坦な岩場地帯をフレイとアイギスを先頭に、俺は後ろをついて行く。

 フレイはちょっと悔しそうだったけど、俺達はアステロイドへと帰る道を歩いている。

 ダイナマイーター討伐が終わった今、もうここに用はない。 

 

 ……もう宿に帰ってお昼寝したい。

 

 俺は赤くなった頬と耳を交互に抑えつつ、そんな事を思っていると、アイギスが耳をピョコピョコ動かして言って来た。

 

 「ダイナマイーターのクエスト終わりましたし、アステロイドに帰ってどうします? 観光でもしますか? それともお肉食べに行きますか? 僕、お肉なら嬉しいです!」

 

 その欲望全開の発言と笑顔に毒されたフレイは、溜息を吐きつつそれに答える。

 

 「またお肉なのね……、それじゃ、夕食はお肉食べに行きましょうか、アステロイドの美味しいお店知っているから、そこに行きましょう?」

 「やったぁ! フレイさん優しいですね! 大好きです!」

 

 戸惑うフレイに胸を擦り付けるように抱き着くアイギスを見ていると何となく『これが胸の格差か……』とか思ったりしている。

 

 そんな事をしながら歩いていると、岩と岩の間にニンジンが半分埋まっているのが見えた。

 オレンジ色したそれはもう完全にニンジンだ、二人はそれに気が付いて居ない。

 

 ……どうしよう……抜いてみたい……。

 

 そんな思いが込み上げて、凄く葛藤してしまった、結構悩んでしまった。

 

 だけど俺の心の中の神は囁いている……。

 『抜いちゃえよ? 抜いて楽になろうぜ?』と。

 

 それに素直に従った、何故なら正直に生きていたいから、真っ直ぐ心のままに生きて行くってカッコいいじゃん? とか思った。

 

 俺は、すぐさましゃがみ込み、ニンジンの葉を掴んで引っこ抜いてみた。

 『スポンッ』と抜けたニンジンは、触覚の手足のような物が付いて居た。

 そして顔のような物が浮かび上がって来る。

 

 『やぁ、可憐なお嬢さん、今夜僕と、(ピー)して(ピー)しながら(ピー)しないかい?』

 

 と良い声でニンジンが突然とんでもない事を喋り出す。 

 俺にしっかりと葉を握られたニンジンはさらに。

 

 『ハハッ! その紅い目が可愛いね? その瞳に見つめられると僕は赤くなってしまうよ……』

 「……何言ってんだコイツ……ナンパか?」

 

 ちょっと何言ってるか分からないけど、何となくニンジンにナンパされている事は理解できる。

 矢継ぎ早にナンパしてくるニンジンはさらに語り出す。

 

 『フフフ……そんなに僕の事が気になるのかい? 今夜ベッドの上で語り合おうじゃないか!!』

 「フレイィィィ!! アイギスゥゥゥ!! ニンジンがナンパして来たぁぁぁ!! なにこれぇぇぇ!?」

 

 俺は少し離れてしまった二人に大きな声で、ニンジンを持ち上げて聞いてみる。

 こちらに戻って来た二人は、俺の持つニンジンをまじまじと見た。

 少しの間を置いてフレイが説明してくれる。

 

 「……それ、多分マンドラマーンね、結構めずらし『やぁ!! 可憐なお嬢さん達、僕と今宵、4(ピー)しないかい? 満足させてあげるよ?』……植物のモンスターね」

 

 俺達全員に、とんでもない事を言うニンジン、それを冷めた目で見ながら説明するのが失せたフレイ。

 それに見かねたアイギスが俺が毎日セクハラしまくったお陰なのか、そういう事に少しだけ耐性が付いたようで、代わりに説明してくれる。

 

 「マンドラマーンは、女性が引き抜くと男性、男性が引き抜くと女性の声でとんでもない事を言ってくるモンスターですね、それ……食べられますよ、オレンジの味がしますよ?」

 

 ニンジンことマンドラマーンに指を差すアイギスは、これが食べられると言っている、マジか……。

 

 「え? これ食えるの? ホント?『フフフ……僕は君たちを食べる側さ……』……おい黙れ」

 

 俺は『ぺチン』とニンジンを叩きながら黙らせる。

 

 「……この世界って変なモンスター多いなぁ、マジでどうなってんだ……」

 「そんな変ですかね? それよりもとりあえず、味見してみますか? それ美味しいですよ? ……はい、どうぞ、土落とせばそのまま食べられますよ?」

 

 水筒を渡して来るアイギスは俺に食べろと遠回しに勧めて来る。

 えぇ……? これ食えるのか……? そんな事を考えながら、土が付いたニンジンを眺める。

 すると『4(ピー)したい4(ピー)したい』とほざき出したからまた『バチンッ!』と叩いて黙らせた。

 

 俺は、とりあえず水筒の水で土を洗い落として、少しだけ齧ってみる。

 シャリシャリとした食感、すぐに甘い味が口に広がって来た。

 

 齧られたニンジンことマンドラマーンは。

 『んほぉぉぉ!? 僕は食べる側なのにぃぃぃ!! 食べられりゅぅぅぅ!!』

 と恍惚とした表情を浮かべて悲鳴を上げている。

 

 「んー、オレンジって感じよりもミカンの方が近いかなぁ、けど結構美味しいな!」

 「ですよね! それ、葉の少し下だけ残して土に埋めるとすぐに再生するので、お家のプランターに入れましょう? 毎日食べられますよ!」

 「……えぇー…… アタシの家に持って来るの?……仕方ないわねぇ……」

 

 ちょっとだけ嫌な顔をするフレイ、それを眺めながらポーチの中へニンジンを仕舞う。

 

 「んじゃ、帰るか」

 

 立ち上がって、二人にそう促す。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 日が暮れてきた夕暮れ時、ツルハシを持った仕事帰りのドワーフ等の人達が歩く大通り。

 鉱山都市に帰って来た俺達は、フレイのオススメのお店で夕食を済ませた。

 フレイは自慢気な顔をして、その隣のアイギスも満足したようでお腹を膨らませて幸せそうだ。

 

 「それじゃ―ギルドまで討伐報酬貰いに行きましょう! 換金して明日もお肉です!」

 「ええ、そうね、それじゃ、明日は観光でもしていく? アタシが案内してあげるわよ?」

 「おー、俺、この木剣しかないから、他の武器とか見てみたい! 軽い剣とかあればそれが欲しいなぁ」

 

 腰の木剣に手を当てて眺めてみると、少しボロくなった印象を受ける。

 基本的に応援しかしてないけども、やっぱりカッコいい剣が欲しくなって来るのは男のさがだろう。

 それにフレイが答えてくれた。

 

 「ミソギ、ずっとそれ使ってるものねぇ。そろそろ換え時かしら? けどここの武器ってすっごく高いのよねぇ……あんまり無駄遣いしたくないし……」

 

 腕を組みながら悩むフレイ。

 

 今回は値段が値段だけにおねだりも利かないだろう。

 クエストに行く前に、少しだけ武器屋に寄った時、見てしまったのだ。

 『ショートソード1本100万G』と。

 

 ……あれはヤバイ、フレイの近所の武器屋は、その1/10の値段で売っている。

 家庭的だけどお金持ちのフレイでも、やっぱりここの武器を買うのは少し腰が引けているみたいだ。

 

 なら近所で買えばいいじゃん? とか思ったが質が低すぎてすぐ壊れるとフレイに説明された。

 それもそのはず、町の近場は初心者でも勝てる、弱いモンスターしか居ない。

 近場の武器屋もそれに合わせて、中級冒険者のお下がりで錆びてボロボロの物が並んでいる。

 まともな耐久がある鉄の武器など、売ってない現状だった。

 だからフレイに『新品の木剣の方がマシよ』と、バニースーツと一緒に買って貰った訳だ。

 

 「だよなー、ここの武器って高いもんなぁ、アイギスもその木の弓、結構ボロボロだもんな」

 「そうですねぇ、そろそろこれも買い換えたいのですが……お金がありません」

 

 そう言いつつ所々補修してある弓を背中から取り出し眺めてる。

 

 「出来れば頑丈な鉄の弓が欲しいのですが……ここの都市だと最低でも50万Gとかします……」

 「そうねぇ、そろそろ二人共、武器の新調してあげたいわねぇ、うーん……」

 

 俺は、最近というか最初から、フレイに頼り過ぎている現状に罪悪感を感じている、パンツをパクってるのは感じて無いけど。

 だからか俺は、悩むフレイに言ってみた。

 

 「最近俺はフレイに頼りすぎてるから、このままでもいいかなぁ、俺あんまり役に立たないし、アイギスの弓が先でいいよ」

 「……ミソギがそんな事を言うなんて……明日は槍が降って来るのかしら……それともハンマー?」

 「……あれ? ……俺ってそんなに信用なかったか?」

 「一緒に買い物行くとき大抵『アレ買ってぇぇぇ!!』『コレ買ってぇぇぇ!!』って強請ってくるじゃない、別に構わないのだけどね?」

 「……あ、すいませ……これから少しだけ自重します……」

 

 思い当たる事が在り過ぎる俺は、それ以上何も言えずにトボトボと二人ついて行く。




これならだいじょうぶだとおもいました。

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19 青い鉱石!!

 夕暮れ時、ちょっとだけ休憩を挟んだ俺達は宿に戻ってフレイと分かれた。

 満面の笑顔で駆けていくフレイは、明日のクエストを選びに行って、ここには居ない。  

 今はアイギスとブラブラ散歩しながら、まだまだ活気ある鉱山都市を歩いている。

 

 「最近あんまり稼げてないよな……」

 

 俺はそう言いつつポーチへと手を伸ばして中を見る。

 そこに入っている金貨が10枚。

 これはダイナマイーターの報酬分のお金。

 これを少ないとみるか多いと見るかは人それぞれだろう。

 

 「フレイからお金貰ったか?」

 「はい、貰いました! けど……うーん……」

 「今回は……まぁ、それなりに楽だったけど、やっぱり少ないよなぁ……」

 

 俺とアイギスの感想は少ない、だから俺は変態相手にアルバイトをしている。

 それでもチンコを買うには全然足りない、現在の所持金は100万ちょい。

 一緒に買い物へ行った時に、フレイにおねだりしつつ、節約して貯めたお金。

 

 「そうですねぇ、装備品の補修費用とか考えるとちょっと少ないですね」

 「いや、お前、どうせ肉買って消えるじゃん、弓の補修とかフレイにお願いしてお金出して貰ってるの、俺知ってるし」

 「……ヒュー、ヒュー、……何のことですかね? ちょっとよくわかりませんねぇ……」

 「吹けてない、吹けてない」

 

 アイギスは吹けてない口笛を吹きながら、そう言いつつ俺から顔を逸らす。

 そして思いついたように、話題を変えてきた。

 

 「そ、それよりも! ぼ、冒険者ってあんまり稼げませんね! 僕はミソギさん達と組む前は一人だったのですが、今まで素手で大丈夫だったので、武器とかにお金を掛けるって事が無くて、あんまりお金が必要なかったから、金銭感覚が良く分かってませんでした!」

 「それは仕方ないよな、肉肉言う前はお金掛からなさそうな見た目だったし、それに俺にお風呂入れられて弱くなったしなぁ」

 

 そう、臭くないアイギスはそれなりに弱い。

 もう弓が無いと、まともにゴブリンとは対峙出来ない程。

 あの頃の腹パン決めてたアイギスはもう居ない。

 

 「うーん……それは、そうですが……もう済んだ事ですし、今はこうしてミソギさんやフレイさんと一緒なので、弱くなりましたが、特に気にしてませんよ?」

 「そっかぁ」

 

 まぁ、偉そうに言っている俺はアイギス以下の以下だけど。

 

 「冒険者って、ホント夢が無いよなぁ、なんかこう、もっとブワッてドンッと稼げる物だと思ってたんだけどなぁー」

 「……フワッとした物言いですけど、そうですよねぇ……僕もそうだと思って冒険者になりました……」

 「だよなぁ、もっとこう……グワッと欲しいよなぁ……」

 「ちょっと良く分からないです」

 

 身振り手振りで、フワっとした会話をしている俺達。

 

 「え? そう? なんかこうグワッて、ブワッと、ドンって……」

 「ちょっと良くわからないですねぇ……」

 「そっかぁ……わからないかぁ……」

 

 そんな会話をしつつ、露店が並ぶ通りを歩いていると興味を引く物が沢山あった。

 青い石が付いたペンダントとか赤い石が付いたネックレスとか様々な物。

 

 ……フレイに一つ買って行こうかなぁ、またパンツパクってバレた時の為に。

 

 そんな事を思い、足を止めて眺めていると、値札に違和感を覚える。

 青い石のペンダントは1000G、赤い石のペンダントは10万G。

 違いなんて色だけだった。

 

 値段が違い過ぎるそれを俺は指を差しながらアイギスへ聞いてみる事にする。

 

 「なぁ、アイギス、なんで青い石と赤い石の値段が全然違うんだ?」

 「それはですね、オスタイトとメスタイトって言う鉱物の違いですね、オスタイトは供給が多すぎて安いんです。逆にメスタイトはあまり取れなくて価格が高いんですよ?」

 

 アイギスは説明しながら露店の青い石のペンダントを手に取ろうとした瞬間。

 椅子に座る、おばちゃん店員さんに腕を掴まれた。

 

 「「!?」」

 「どうぞどうぞ! 好きに見て言ってください! これなんかどうです? 男性へのプレゼントですか? えぇえぇわかりますともわかりますとも、どうぞどうぞ、さぁさぁ、どれでも好きな物を買って行ってください!!」

 

 目が血走り、早口で捲し立てて青い石の付いたペンダントをアイギスの頬に擦り付ける、おばちゃん店員さん。

 あまりに必死過ぎて俺はドン引きしている。

 アイギスは何が起こったか理解出来ないでいる。

 

 「あ、もしかして自分へのプレゼントですか? わかりますよぉ? 見たところ冒険者さんですよね? ええ若い頃は私も冒険者を目指した者です、ほらお似合いですよ? それじゃ1000Gになります!」

 

 そう言うと、いきなりおばちゃんは、アイギスのカバンの中に手を突っ込んだ。

 無理やり銀貨1枚を引っ手繰って、ペンダントを無理やりアイギスの首に巻き付ける。

 その一連の動作はまさに達人を彷彿とさせる。

 

 それを例えるならシュッとしてブンッとなってグワッとしつつドンッて感じだと俺は思った。

 

 「ありゃあっしちゃぁぁぁ!!」

 「「……」」

 

 そう言うと何もなかったように笑顔に戻って商売を続けるおばちゃん店員さん。

 何が起こったか分からない俺達はそこに突っ立ったままだった。

 あまりの手際の良さに息を巻いてしまった。

 

 隣のアイギスは呆然自失としている。

 

 「……な、なぁ、それ、俺、買うよ……」

 

 アイギスにそう呟くのは俺の優しさだった。

 なんと言うか、ちょっとだけ可哀想に思ってしまった。

 いきなり買わされた物なんていらないだろう。

 

 俺はポーチから一枚銀貨を取り出し、アイギスへと手渡す、その瞬間だった。

 おばちゃん店員さんの首がグルンと動いて、銀貨を持った俺の腕を掴み言って来た。

 

 「これなんかどうです? ほらお似合いですよ? はいどうぞ、今なら銀貨1枚です! とてもお買い得ですよ!」

 

 とおばちゃん店員さんに青い石のネックレスをグリグリと頬に擦り付けられた俺。

 そして手の中の銀貨をふんだくられて、無理やり首に巻き付けられた。

 

 「ちょっ! ちょっ! いらない……」

 「ありゃあっしちゃぁぁぁ!!」

 

 拒否する俺にそう言って、椅子へと戻るおばちゃん。

 2つも売れたのか、ちょっと嬉しそうで、今度は足を組んで満面の笑顔をしている。

 俺達が何か言おうとすると、首をグリンと回して聞く耳を持とうとしないその態度。

 

 「あの……」

 「……」

 

 語り掛けても無視された、その雰囲気に何も言えなくなってしまう。

 何故か良く分からないが、いつの間にか俺達は買い物をしたらしい。

 巻き付けられたネックレスがちょっと痛い。

 

 何がなんだか分からないがアイギスと目が合った。

 多分同じことを感じているのだろう。

 

 「……帰るか、また何か買わされそうで怖い……」

 「そうですね、帰りましょう……」

 

 俺達は宿へと逃げ帰った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 俺は今、押し売りされたネックレスを一人部屋のベッドの上で眺めてる。

 

 特に必要ないこれの処分に困っていた。

 フレイに渡そうとしても『アタシもさっき買わされた……』とアイギスと同じ物を見せて、断られたのはついさっきの出来事だった。

 

 「これどうしようかなぁ……いらねぇなぁ……」

 

 そんな独り言を呟いていると。

 机に置いたポーチから、マンドラマーンことニンジンとふぐりが抜け出している。

 ニンジンはふぐり相手にとんでもない事を言いつつ、ふぐりにボコられて喚いていた。

 

 『ピンク色の可愛いお嬢さん、そんなに僕の事がすぎぃぃぃ! いぐっ!! タネミィィィ!! タネコォォォ!! 愛してるよぉぉぉ!!』

 「お前、浮気してたのか……」

 

 呆れながらそんな光景を眺めていると、青色からピンク色に変わったふぐりの事を見ている。

 毎日スキルで試し打ちした結果、こう言う色に変色してしまった可哀想なスライムだ。

 

 ……こいつネックレス食べないかなぁ。

 

 そんな事を思いつつ、ニンジンをボコるふぐりを掴む。

 試しにネックレスを擦り付けてみたらモゴモゴしながらネックレスを飲み込んでいく。

 

 『ぼくはぁぁぁ!! ぼくはぁぁぁ!! 君達がぁぁ……』

 「ちょっとうるさい」

 『んほぉぉぉ……』

 

 ニンジンを踏みつけ黙らせる。

 再度ふぐりを眺めていると『ペッ』とネックレスを吐き出した。

 

 ……ふぐりは金属食べないのかー。

 

 とかそんな事を思いながらそれを眺めていると、目の前にコロンと転がるネックレス。

 その石の色は変色していた、。

 

 赤色だった。 

 

 青から赤へ変色したオスタイトに俺は天啓を得てしまった。

 ニンジンを踏みつけながら仲間を呼ぶために立ち上がる。

 

 『もっとぉぉぉ! 僕をもっとぉぉぉ! ふんでくださぁぁぁい!! イグッ!!』

 「アイギィィィス!! フレイィィィ!! ちょっときてぇぇぇ!!」

 

 ちょっとだけ潰れたニンジンを尻目に、大きな声で二人を呼んだ俺は、満面の笑顔をしていた。

 

 




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20 採掘!!

オリジナル日間ランキング20位!!
オリジナル週刊ランキング49位!!
あざまっす!!あざまっす!!


 鉱山労働者が沢山出入りしている場所、ここは鉱山の入り口。

 一般開放されている入り口前の看板には『3時間1000G』と俺でも読めるように書いてあり、入って採掘するにはお金が必要なようだった。

 今の時刻は朝、キラリと太陽が眩しく輝いていて、俺達3人を照らして祝福してくれている。

 

 青色の作業着に鉄のヘルメット、各々の背中には籠を背負い、腰にはピッケルと言う恰好でこの場所に来た。

 これから採掘のお仕事だ、今の俺じゃ、体力とかが持たない事は知っている。

 だから呼ぶ、たまに有能で大抵無能な、されども便利なあの奴を。

 

 「……いくぞ……」

 

 俺は右手を上げて指を『パチン』と鳴らせてみた。

 かわりに『ぺチン』と鳴って、ちょっとだけ顔を赤らめた。

 …………鳴らなかったので仕方ない、代わりに叫んで呼んでみる。

 

 「ステェェェタァァァスゥゥゥ!!」

 

 呼ぶと大抵来てくれるステータスさんは、最近優しいと思ったりしてる。

 俺は、すぐさま気を取り直してステータスへと向き直る。

 

 -------------------------------------------------------------------------

 もう! こんな夜中に呼び出して! 何時だと思ってるの!?。

 -------------------------------------------------------------------------

 

 「……今は朝だけど……、超太陽眩しいけど……、今日はちょっと面倒見の良い彼女みたいなキャラだな、それよりも、早速なんだけど、採掘と体力みたいな奴くださいよ! ちょっと必要なんですよ! ステータスさん!! お願いしますよー」

  

 頭を下げて腰を曲げる、腰の角度は45度、最敬礼の状態なこれは社会人時代で培った技術だった。

 今の俺はお願いする立場だ、出来る限り下手に出て機嫌を取ろう。

 そう思った瞬間にウィンドウが変わる。

 

 -------------------------------------------------------------------------

 チッ……、めんどくせぇなぁ……ほらよ。

 採掘上手・体力上昇スキルを取得しました。

 -------------------------------------------------------------------------

 

 「……なんか俺、変な事言ったっけ? まぁいいや、ありがとう!! もう用はないからさっさと消えてもいいよ!」

 

 そう伝えると『シャーコラ、シャーコラ! マジッベッースッゾ?』とかキレ気味に表示されたけど無視した。

 後ろの二人はステータスが見えないからか、口に手を当てて可哀想な目で俺を見る。

 

 「……ミソギさん、何故、何もない所で……」

 「シッー!! アイギス駄目よ? あれはミソギのエア友達なのよ、だから邪魔しちゃ……プフゥー!!」

 「ミソギさん、可哀想……僕達が居るのに……プフゥー!!」

 

 いつもの『エア友』煽りにアイギスまで加わり、途端に恥ずかしくなってしまい両手で顔を覆う。

 

 「めっちゃ聞こえてるんですけど……、俺にエア友なんていないんだよ……、なんかもうやだ……お家に帰って休みたい……」

 

 だけどもそうはいかない、今日はお金を稼ぎに来ているから。

 久しぶりに、朝から気力がちょびっと削られたが、これは仕方ない事。

 

 「……二人共いくぞー、早く行こうぜー……」

 「「はーい!!」」 

 

 アイギスとフレイに手招きしつつちょっとだけテンションを落とした俺は、ポーチから銀貨1枚を受付の人に渡して、鉱山の入り口へ入っていく。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 辺り一面には青い色の鉱石がずらりと埋まっている光景。

 ここは鉱山の小さな一画。

 そこで『カン! カン! カン!』と片手に持ったピッケルで俺は鉱石を掘っている。

 ポロポロと落ちていく石ころを眺めている余裕はない。

 

 すでに身体中は汗を掻いているのだけど、不快感は無かった。

 寧ろ、この作業に没頭する行為に、労働意欲が湧いてくる。

 何度も何度も繰り返しては、頬が緩み弛緩した。

 

 「金じゃぁぁぁ!! お金の鉱脈じゃぁぁぁ!! 拾えぇぇぇ!! 拾いつくせぇぇぇ!!」

 「ひゃぁぁぁ!! ミソギさん!! 凄いですぅぅぅ!! 一杯ですぅぅぅ!!」

 「……アンタ達、元気ねぇ……まぁ、そんなに張り切るのも分かるけど、ホントに元気ねぇ……」

 

 金の魔力は恐ろしい、その鉱石がお金に見えてからのテンションの上り幅がヤバイ。

 目が血走り、欲望に塗れ、テンションが最高潮な俺とアイギス。

 呆れながらもそれを見てるフレイは冷静だった、お金持ちなフレイは興味ないのだろう。

 このクエストジャンキーめ……。

 

 俺は掘る役、アイギスは拾って籠に入れる役、フレイはそれを眺めてる。

 他には誰も居ないこの場所は、俺達にとって最高の環境。

 もう既に、2つの籠は青い鉱石が沢山入っていて、まだまだ入る籠はアイギスの背負う籠のみだった。

 俺とアイギスは満面の笑顔で顔を合わせる。

 

 「すげぇー取れたな―、いくら位だろう……100万? 200万?……もしかして300万かなぁぁぁ? イヒヒィ!!」

 「さささ、300万ですか!? ……ひゃぁぁぁ! お金持ちですねぇ!!」

 

 指折り数えるアイギスに、超ハイテンションな俺はさらに、鉱石を掘る作業に没頭する。

 アイギスは『ひゃぁぁぁ!!』と奇声を上げながら、鉱石を背中の籠に入れる作業へと戻る。

 

 「……頑張りすぎてケガしないようにねー」

 

 フレイは眺めつつ心配してくれているようだった。

 

 俺が掘っている、この鉱石の名はオスタイト。

 だけど誰も採掘しないのには理由があった。

 それは供給が多い事、多すぎて需要が釣り合ってない。

 

 これは昨日、アイギスから聞いた話、ここから先はフレイから聞いた話。

 

 武器や防具に使われる素材との事で。

 相場価格は大体、1G~100G、子供のお小遣い程度の物。

 あまり価値が無いこれは、こうして壁に大量に埋まっている。

 誰も取らないのはお金にならないからで、こうして大量に余っている。

 

 ならこれをどうするか、それは俺のスキルとふぐりでちょちょいと変換するだけだ。

 そうすることで、メスタイトに変化して、鉱石の価値は跳ね上がる。

 

 そんな回想をしていると、突然アイギスが、壁にピッケルを突き立てている俺へと語り掛けて来る。

 

 「ミソギさん! もうそろそろ一杯ですよ? 帰る前に、一旦休憩しましょう!」

 

 ピッケルを持つ手を止めて、作業を中断する。

 アイギスの方へ振り返ると、背負う籠の中には満杯に詰まったオスタイト。

 そして、その顔は金の魔力に……いや肉の魔力に唆された欲望全開の表情だった。

 

 「よし! んじゃちょっと休憩すっか!」

 「フヒヒ! そうしましょう!」

 「……アンタ達、元気ねぇ」

 

 ピッケルを放り出して地べたに座り込むと、流れる汗が心地いい。

 少しだけ息を整えつつ、フレイにお茶をせがんでみる。

 

 「一杯取ったわねぇ、大変だったでしょう? ……はい、どうぞお茶よ」

 

 フレイが木製のコップと水筒を俺達に差し出してくれた、それを飲んで休憩する。

 

 アイギスがオスタイトを撫でながら。

 「大量ですねぇ……、これだけ取れば、もう良いですよね?」

 「ああ、大量だなぁ、もう充分だ、これだけあれば、お前の弓も俺の剣も、そしてお肉が一杯食べられるぞ!!」

 

 そう言うと、口に手を当ててにんまりと笑うアイギスを横目に、俺はお茶を啜りながら、額から流れる汗を袖で拭いて籠を眺める。

 我ながら沢山取った物だなぁ、とか思ってた。

 ちょっと位、使っても魔道具を買うのには誤差だろう。

 

 「んじゃ、帰るか、今からこれを変換する作業に戻るぞ!!」

 

 二人にそう伝えた後に、俺は背中に籠を背負う。 

 だが立とうとしたけど籠が重すぎて、立ち上がれない。

 力を籠めるも微動だにしないそれに、少しだけ顔を青くさせた。

 

 ……そういや、俺って貧弱だったわ……。

 

 俺の様子がおかしいのかアイギスが。

 「……どうしました? ミソギさん、もしかして……持てないとか?」

 と聞いてくる。

 

 「い、いや……別に何でもないから、ちょっと二人共、耳を塞いでてくれないか……」

 「……またエア友ね?……プフゥー!!」

 

 フレイに煽られて、また少し顔が赤くなるけど、やる事は一つしかない。

 二人が耳を塞いだのを確認してから小さな声で呼んでみる。

 

 「……ステェェェタァァァス ……たすけてぇぇぇ……」

 

 するとステータスウィンドウが目の前に現れた。

 

 ------------------------------------------------------

 オオォン? シャースッゾ? シャースッゾ?。

 ------------------------------------------------------

 

 「……さっきは本当にすいません……心を入れ替えますので、許して頂けませんでしょうか……」

 

 その後、ステータスさんに土下座ポーズでおねがいして『雑ー魚、雑ー魚。』と煽られたが。

 なんとか『剛力スキル』を貰って精神を削られながら宿へと帰った。

 

 

 

 




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21 変換作業!!

 宿の3階、一番奥の部屋、

 お昼を過ぎた頃に、ここで『フンス! フンス!』と鼻息を荒くさせた黒髪美少女が、白く小さい拳で青色の鉱石を殴りつけている姿があった。

 もう既に何度も何度も繰り返していた、この作業。

 部屋の中ならいざ知らず、ピンクの光が窓を通して外まで溢れ、近所迷惑甚だしい。

 ほんの少し前、従業員に諭されるも『いやー、ホント、すいませーん』と悪気も反省の色も無い。

 そして今もまた、怒り顔の若い男性従業員が階段を上がり、彼女の部屋へと向かって行った。

 

 「お客さぁぁぁん! またですかぁぁぁ? 困りますよぉぉぉ! ちょっとピンク色に光り過ぎて通行人から苦情来てるのですがぁぁぁ!! ここそういう宿じゃないんですけどぉぉぉ!?」

 

 チィ……またバレたか……。

 まだ籠の中には、オスタイトが少し残っているが仕方ない。

 スキルでの変換作業を中断させて、ドアへと向かう。

 

 途中、ニンジンを踏みつけたが『イグッ!』とちょっと潰れて鳴くだけで、俺は特に気にせずドアノブを回した。

 

 「はーい、今開けますねー、……いやぁ、すいませーん。なんか突然身体が光り出しましてぇ……」

 

 俺は、ドアを開けつつ申し訳なさそうに謝りながら、従業員さんの顔色を伺う。

 ……先ほどよりも怒っているようで、今、着ている俺の白いシャツから、透けて見えるブラチラを拝んでいる様子はない。

 

 「……さっきは『シュッとしてブンッってなってドンッとしつつピカッとしてました』とか言いませんでしたっけ? ……とりあえず、勢いありすぎて良く分からなかったのですが、もう光らせるの辞めてくださいね?」

 

 やっぱり分からないか、こうシュッとしてピカッて分からないか。

 アイギスもフレイも『ちょっと分からない』とか言ってたな。

 

 とりあえず適当に謝っておこう。

 

 「いやぁ、ホントにすいません……次から気を付けます……、もうブンッてしてからピカッってさせないようにしますから……」

 「……ちょっと何言ってるかわからないですけど、お願いしますね……、それでは失礼します!」

 

 凄く申し訳なさそうな顔を作り、謝罪をしつつドアを閉める。

 だが辞める訳にはいかない。

 続けるには光り過ぎるスキルを、もうちょい抑える必要があるみたいだった。

 腕を組みつつ頭を悩ませる。

 

 ……とりあえず布団の中で変換作業でもするか? あと少しだし。

 

 そんな事を思いながら、しゃがんで籠の中から鉱石を取り出す。

 するとまたドアがノックされた。

 扉ごしから聞こえる声はアイギスだ。

 

 「ミソギさーん、ふぐりちゃんが動かなくなりましたよー」

 「イヒィ!! ……あ、ああ、すぐ行くよ……」

 

 背筋がビクンと跳ねて、ちょっとだけ興奮してしまった。

 フレイにもして貰った、この行為は既に癖になってしまっている。

 

 鉱石を持ったままドアを開けると、ふぐりを掴んだアイギスがその先に居た。

 

 「ふぐりちゃん、籠の中身、半分位でこんな状態になってしまいまして……」

 

 耳を萎びさせて、申し訳なさそうな顔しつつ、ふぐりを差し出してくるアイギス。

 俺はまた、背筋ビクンと跳ねて、恍惚した表情になってしまう。

 

 無知ハラは良い……、心と身体が満たされる。

 可愛い青髪ロングの僕っ娘エルフが『ふぐりちゃん、ふぐりちゃん』と必死に連呼しているこの状況が堪らない。

 

『それ俺のふぐり!!』と叫びたくなるのを堪えつつ、変色してスライムメスとなったふぐりを受け取る。

 今は亡き男時代のお風呂上り直後の俺のふぐりのように項垂れて元気がなさそうだった。

 

 「働かせすぎたかなぁ、なんとかするから気にしないで、また後でふぐり持っていくからさ」

 「……わかりました、それじゃ、部屋に戻ってますね……」

 

 暗い顔をするアイギスはそう言うとドアを閉めると、隣の部屋へと戻って行く。

 俺は渡されたふぐりを眺める。

 

 ……うーん、どうしようか、コイツ本当に元気ないなぁ。

 

 昨日よりもツヤもハリも無くなっていて、ダランと垂れたふぐりを見るのは忍びない。

 とりあえず、落ちてるニンジンの傍に置いてみた。

 反応から見るに多分、ニンジンを殴り出すだろう事は分かってたから。

 

 直後、ふぐりはグニグニと動き出して、器用にゲル状の手足を作ってニンジンへと向かう。

 

 ふぐりに寄られたニンジンが、勢い良く元気に起き上がり。

 『やぁ、また会えたね……ピンクのお嬢さん、今夜、僕と一緒に夜のランデ……ブベッ!!』

 とナンパしつつ、ふぐりにマウントを取られボコられる。

 

 やっぱりだ! やっぱりふぐりはニンジンボコるのが好きなんだ!!。

 

 それを眺めながらベッドに腰かける。

 ……モンスター対モンスターだし放っておこう。

 そう思いつつ放置した。

 

 10分後。

 

 その後、所々欠けたニンジンは『イグッ!!』と言った切り、白目を剥いて動かなくなる。

 それとは対照的に、ハリとツヤを取り戻したテカテカのふぐりは手足を引っ込めて、部屋の中を元気に跳ね回っている。

 

 ……うむ、満足したようで何よりだ。

 ニンジンボコるだけで元気になるスライム、なんてコスパがいいんだろう。

 今後ふぐりが元気がなくなった時は、ニンジンを添えて対処しよう。

 そう心に決めた瞬間だった。

 

 立ち上がってふぐりを掴む。

 

 「おぉ、ふぐり、……元気になったなぁ……、やっぱりニンジンと相性良いんだな!」

 

 撫でまわしつつ声を掛けるとプルプルと震えるふぐりに、さらに愛着が湧いてくる。

 だが、ふぐりをアイギスに渡して酷使させなければならない。

 

 残りのオスタイトを変換した後、俺は白目を剥いたままのニンジンを掴んで、ふぐりと一緒にアイギスの部屋へと持って行く。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ドアをノックして中へ入ると、ベッドに腰かけたアイギスとフレイが仲睦まじく談笑している姿が見えた。

 『キャッキャウフフ』と笑い合っているその雰囲気。

 邪魔はしたくないけど致し方ない理由で割って入る。

 勿論金だ、金の為だ、チンコすら買える金の為に、その空間へと無造作に入っていく。

 

 ベッドまで歩いていくと二人はようやく俺に気が付き、視線をこちらへと向けてくる。

 

 「アイギスー、ふぐり復活したぞー、……はい」

 

 俺はアイギスの手にふぐりを渡す。 

 

 「はい! これで変換作業が出来ますね!」

 「うんうん、また俺のふぐりを酷使してあげてくれ……」

 「わかりました!! ……ふぐりちゃん、頑張りましょうね!!」

 

 受け取ったアイギスは早速、籠の中にふぐりを突っ込みモゴモゴさせて、変換作業に戻る。

 

 「……イヒィ!!」

 

 今日は何度目だろうか、数えてないが、またもや俺の背筋が跳ねる。

 

 ……最高だよ、アイギスさん、もう癖になっちゃったよ、俺……。

 

 そんな事を思っているとフレイが。

 「それで次のクエストはいつ行くの? 昨日はしょうがなくミソギに付き合ってあげたんだからね? 明日こそクエストに行きましょうよ?」

 と不満たらたらな顔で俺を見る。

 

 そう、本当なら昨日は採掘じゃなく、クエストへ行く予定だった。

 それをフレイに頼み込んで、鉱石堀りへと向かった訳だ。

 滅茶苦茶嫌な顔をされたけど、仕方ない。

 

 今日も今日とてクエストには行かず、目立てないと言うフラストレーションが溜まっているのが見て取れる。

 俺は拳を握り締め、目を瞑りながらフレイへと力説した。

 

 「……フレイ、お金が入れば俺達はもっと安全にクエストが出来るだろ? もし、万が一、億が一、安全なクエストでも……、もし!! 危ないモンスターが乱入してきて、強いフレイじゃなくて弱い俺達を狙って来たら、俺達はどうしようもない……、だからこれは必要な事なんだよ!!」

 

 目を見開きフレイと目を合わせる。

 勿論、チンコと新しい武器が欲しいからとか、口が裂けても言える訳がない。

 フレイも俺の熱意が伝わったのか、真剣な面持ちで俺の話を吟味している。

 

 「そ、そうかもしれないわね……、けど明日は……、明日こそは必ず行きましょう?」

 「ああ、勿論さ! 明日は必ずクエストに行こう! 好きなクエストを受ければいいさ、な? アイギス? 、俺達はフレイが頼りなんだ、フレイが居ないとダメなんだよ。 寧ろ喜んでついて行くよ!!」

 

 俺の言葉にアイギスは頷き、フレイは『し、仕方ないわね!』と赤らめた顔を横に向けて照れている。

 

 ……フレイってマジチョロいわ、チョロ過ぎてこれからもこんな感じで説得出来るわ。

 けど明日クエスト行くの面倒だなー、また適当にお腹痛いとか言って休もうかなー。

 

 とか思っていると、アイギスが作業を終わらせたようで俺へと話しかけてきた。

 

 「ミソギさん、終わりましたよ、今から換金されに行かれるのですよね? 場所はわかりますか?」

 「ああ、知ってる、ギルドの中にある鉱石換金所だろ? あそこに行ってメスタイト全部売って来るから」

 

 俺は頷きつつ籠を背負ってアイギスに答えた。

 するとフレイが手を上げた。

 なにやら物欲しそうな顔で背中の籠を見ている。

 

 「……ミソギ、ちょっと待って? アタシに一つだけメスタイト頂戴な? 魔術系の杖と相性良いから欲しいのだけど……」

 「どうぞ! どうぞ! 一つとは言わずに沢山あるからいっぱい持って行っていいぞ!」

 

 背中の籠を下ろしてフレイへと渡す。

 フレイは大事そうにメスタイトを握り締めて、俺に向けて笑顔で感謝してきた。

 

 「……ありがとう! けど一つでいいわ、今日は武器屋へ行って、木の杖に付けて来るから、それじゃ、いってらっしゃい!!」

 「ミソギさん、早く帰って来てくださいね? いってらっしゃい!!」

 「うん、いってきまーす!!」

 

 俺は籠を背負い直すと満面の笑顔で宿を出た。




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22 床の上は冷たい!!

 こんにちわ、ミソギです。

 

 捕まりました。

 

 地面の床は冷たいです。

 

 鉱石偽造罪とかなんとかの罪で捕まりました。

 よく分かりません。

 

 「どうしてこうなった……」

 

 嘆くもここからは出られません。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ここは騎士団の留置所、一時的に犯罪者等を入れて置く為の場所。

 室内は薄暗い、周囲は石作りの壁と地面で出来ていて、正面には鉄格子。

 小さな窓があるのだけど、脱獄なんて出来るはずもない。

 

 床には何も敷いてなく、お尻がヒヤリと冷えている。

 鉄格子の正面にはカッコいい剣を持った、金髪の軽鎧を着た女性騎士の看守さんが立っていた。

 

 勿論俺は無実を訴える。

 

 「俺は無実だぁぁぁ!! 信じてくれよぉぉぉ!!」

 

 鉄格子を握り締めて必死な形相で叫ぶ。

 演技じゃない、割とマジで思っている。

 ただ換金していただけなのに逮捕されている。

 

 「うるさい! 罪が確定するまで大人しく待っていろ!!」

 「はひぃ!!……しゅみましぇん……」 

 

 看守さんに怒られてシュンとなってしまった。

 大人しく体育座りをすると、涙が頬をポロリと流れる。

 

 どうしてこうなった、俺は鉱石を換金していただけなのに。

 一生懸命ギルドまで鉱石運んで換金しただけなのに。

 ちょっとホントに訳がわからない。

 

 「俺、無実なのに……」

 

 ぼそりと呟くも、聞く者は誰もいない。

 

 そのままの体勢で横になる。

 まだ春真っ盛りなのに、石畳の地面に体温を奪われて身体が冷えていくのは何故だろう。

 ……ちべたい……心も体も懐も、ちべたい……。

 

 「……」

 

 思い返すはギルド内の鉱石換金所での出来事だった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ガヤガヤと喧騒がうるさいここはギルド内の換金所。

 俺以外にも籠を背負った冒険者が何人もいて、今日の酒代の事やらギャンブルの事やらを話す声が聞こえている。

 

 1から10まで番号が振られたカウンター。

 整理番号を渡された俺は、呼ばれるのを待っている所だった。

 期待に胸を躍らせつつ、呼ばれるまでの時間がもどかしい。

 

 「103番のミソギさーん、お待たせしましたー」

 「……はーい、今行きまーす」

  

 堂々とした足取りで向かう先は受付。

 カウンターにいる受付嬢は美人で愛想も良く、胸元が開いた制服を着ていた。

 そして笑顔で俺に要件を聞いてくる。

 

 「今日はどのようなご用件でしょうか?」

 

 そのサービススマイルが眩しく綺麗なお顔。

 ちょっとだけ胸元に視線を移動して、チラチラ見つつカウンターに籠を置く。

 

 「これの換金おねがいしまーす!……結構重いですけど大丈夫ですか?」

 

 見るからに目の前の受付嬢の身体は、胸以外は華奢だ、力がありそうにない。

 ちょっとだけ手伝おうかな? とかそんな親切心を出し、さりげなく胸を揉む事を考えていると。

 

 「わぁ! 沢山取ってきましたねぇ! ……ええ、大丈夫ですよ? 少々お待ちくださいねー」

 

 受付嬢は驚きつつブルンとお胸が揺れる。

 また笑顔でそう言いつつ片手で籠を掴むと、そのまま持ち上げて、そのまま奥へ。

 その足取りは軽やかでふらつく素振りも見せていない。

 

 ……マジで!?。

 

 俺の方が驚いてしまった……。

 

 あの細腕からどうやったら重い籠を持てるようになるのだろう。

 ステ公から貰ったスキルで、筋力強化してある俺でも、背負うだけで精一杯の籠。

 それを片手で持ち上げて歩いている光景。

 

 俺は深く考えないようにした、だってファンタジーなんだもの、、深く考えるだけ無駄なのは知っている。

 きっと多分凄い怪力の人なんだろう。

 

 

 とそんな事を思いつつ、待つこと1時間。

 

 

 戻って来たお姉さんが、大きな袋を持ってきた。

 ジャラジャラとカウンターに広げて数えると、金貨200枚。

 

 つまり200万、超大金、フィレ肉100枚分。

 

 俺は驚き過ぎてカウンターに手を付いて、

「マジっすか!! マジっすか!? そんなになるんすか!?」

 と聞いてしまった。

 

 テンション高めな俺に対して優しい受付のお姉さんは。

 「マジですよ、マジマジ~、使えない物も混じっているので、端数は切り捨てだけど~」

 とタメ口混ざりのギャル口調で答えてくれた。

 だが、顔はニコニコなのだけど目が笑ってない。

 

 「それよりも、どうやってこんなに掘れたのですか?」

 「……そうですね、日頃の行いが良くてですね……、それでこんなに取れたんですよ、アハハ」

 

 後頭部に手を当てつつ、笑って誤魔化す。

 

 「そうですか、鉱石を錬成して犯罪に手を染める錬金術とかが流行っているので……鑑定は致しましたので、問題ないとは思いますが、一応の確認です」

 

 冷や汗が流れ、目が泳ぐのが自分で分かる。

 だけど混じりっけなしのメスタイトだ、バレる事は無いと思う……多分。

 

 「……そんな事ある訳ないじゃないですかー、嫌だなー、ハハハ……。偶然ですよー、偶然、あと2つ位の籠一杯のメスタイトが取れたんですよー」

 「……そうですか、それではどうぞ!!」

 

 そう言われ、200枚が入った袋を手渡された。

 かなりの重さの袋に、今のやり取りの事が吹っ飛んだ。

 

 ……重い……そしてその重さが良い……これがあと2回、最高だ……。

 

 半日も経たず、ちょちょいと掘って、ちょちょいと変換するだけで200万。

 あまりにボロすぎる金策に『バイトとかやってらんねぇな!!』とか思ってしまった。

 

 とりあえず受付のお姉さんに『ありがとうございます』と感謝しつつ退出した。

 だって後ろには、まだまだ並ぶ冒険者いるのだから、時間を掛けては迷惑だろう。

 

 足早にギルドを出ると夕日が眩しい。

 

 ホクホクで暖かすぎる今の懐具合。

 腰のポーチから収まり切れない金貨が溢れた瞬間。

 もう一人の俺が誘惑して来る……。

 

 

 ……逃げちゃえよ……、これ持ってさ……?。

 

 

 最初はそんな事が頭に浮かぶ。

 

 勿論俺は。

 「いや! ダメだろ! そんな事!?」

 と口に出して、必死に抵抗している、ちょっとだけ。

 

 だが、さらに囁く内なる俺。

 

 

 ……フレイ? 誰それ、貧乳の子? アイギス? いたっけ、そんな乳デカエルフ、……それよりもさぁ……これ持ってバックレようぜぇぇぇ?!。

 

 

 それは甘美すぎた、だって自力で稼げるこの金額、対して労力なんて掛からない。

 強いて言うならステータスさんにお願いする位だろう。

 

 だが、俺はすぐに我へと返る。

 

 「だ、ダメだ……そんな事をしてはいけない……フ、フレイとアイギスを裏切るなんて事……出来る訳がな……いや、あいつ等チョロいし? 1つ目の籠が100万位にしかならなかったとか言って、半分だけちょろまかすか!! ……いやいや、ダメだろ、正直に言わないと、後でバレたらヤバイ……まぁ、ちょっと位ならいっか!!」

 

 頭を振って正気に戻ると頬を両手で叩く。

 仕方ない、お金の魔力は怖いんだ。

 それなりに正直に伝えよう、それが仲間達への信頼や信用に繋がる。

 

 「よし! 帰るか!!」

 

 気合を入れ直してギルドを出る。

 

 

 ◇

 

 

 意気揚々と宿へと戻り、俺の部屋へと戻る。

 色々……まぁ色々、荷物を下ろして隣の部屋へ向かった。

 

 大きな袋に入った金貨をアイギスに渡しつつ満面の笑顔で言ってあげた。

 

 「はい、150万Gだ、これで全部だよ!」

 

 そう伝えるとアイギスは耳がピョコピョコ動きまくり、喜びすぎて目が血走っている。

 

 「ミソギさん!! 凄いですよ! 150万ですよ!!」

 「なー! 凄いよなー! 何買う? 何買うー?」 

 と二人で喜びを分かち合う。

 

 ……ゴメンな? 50万パクったわ。

 

 勿論、俺の部屋に隠してある。

 

 幸いな事に、フレイは出掛けて居なかった、多分武器屋へと行っているのだろう。

 だからアイギスと『100万になったよ!!』とフレイの取り分を少なくする為に二人で50万を分けて談合する。

 そして2つ目の籠も同様に、アイギスと分け合って……50万抜いた奴を分け合って、またまた喜びを分かち合った。

 

 一時の休息後。

 

 「……また、行かれるのですね……? 道中、充分にお気を付けてくださいね……」

 「あぁ……、行ってくるよ……、俺は絶対に帰って来る、必ずだ!!」

 「待ってます……、ずっと待ってます!!」

 

 とキャッキャウフフと女同士の会話をしつつ、そのままギルドへと向かう。

 

 その道中、背負う籠は重く、額から流れる汗がキラリと流れる。

 袖で拭き、張り付いた白いシャツから透けているのが分かる。

 俺が今付けている、黒のブラジャーを通行人がチラチラ伺う様子が見て取れた。

 

 だが構わない、そんな事より金だった、チンコ7割、金3割の割合でリソースが脳内を占めていて、自分の様相なんて興味がなかった。

 これで最後、3つ目の籠で最後なのだ。

 

 長い長いギルドまで道のりは永遠にも思えたが、1歩進むごとにこれからの人生が……俺の人生が、非常に楽しくなるだろうと言う想像をしてしまう。

 

 たまに鉱山に籠り、ちょこちょこフレイのクエストに付き合いつつ、無限にメスタイトを作り出して売る。

 それだけで平和で平穏な人生がやって来る……、勿論チンコを忘れる訳がない。

 貯蓄して貯まった金で魔道具を買い、チンコを生すんだ!!。

 

 そんな未来の事を思うと心が躍るのも無理はない。

 

 「イヒヒ!! イヒヒ!」

 

 口から笑みが零れてニヤニヤしてしまう。

 そのまま歩き続けていると、ギルドの扉が見えている。

 意気揚々と軽い足取りで階段を上り、ギルドの扉を開けると何やら騒がしいギルド内。

 俺は気にする事なくそのまま中へ入ると……。

 

 扉の先には女性の騎士が4人ほど立っている姿がある。

 

 「ミソギと言う名の女冒険者はお前の事か?」

 

 付けている鎧がカッコいい、リーダー格のような様相の一人が、俺へと話しかけてきた。

 何やら用事があるようなのだけど、コメカミを引くつかせているのは何故だろうか。

 

 「あ、はい、ミソギです、何か御用で?」

 

 自己紹介をしつつ、ポーチの中のギルドカードを取り出す。

 これは一応身分証になる為、ずっとポーチの中に仕舞ってある物。

 それをリーダー格の騎士さんへと差し出す。

 

 「……ああ、確認した。それでは素直について来て貰おうか……抵抗はしない方が身のためだぞ?……まぁ抵抗しても良いのだがな?」

 

 腰に差したカッコいい装飾が付いた剣の柄を手で撫でながら威嚇されている。

 そして俺の周囲には4人の女騎士が逃げ出さないように回り込んで来る。

 

 ……何故?。

 

 ボケっとそれを眺めつつ、思う事はそれだけだ。

 

 少しの間が空いて、気が付く。

 

 俺って今、何かしらの罪で逮捕されると言う事を。

 脳内はすでにフル回転している。

 ……ヤバイんじゃね?。

 出てきた結論はそれだけだ。

 

 「お前には鉱石偽造の罪で逮捕される、これから私達と一緒に来て貰う」

 「……いや、俺は無実です、青い髪のエルフが全部やりました!!」

 

 何となく、アイギスに責任を擦り付けるも、両腕を掴まれ連行されていった。

 

 

 




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23 尋問!?

新しい仲間回……。


 今は朝の時間帯、窓から薄く朝日が差し込むここは、留置所の中だった。

 昨夜毛布を渡された俺は、それに包まり朝までぐっすりと眠っていた。

 

 何故なら異世界に来て約2か月位。

 すでに身体は慣れて来ていて、心は荒み切っている。

 だからだろう、図太く朝まで寝ていられたのは。

 

 勿論ポーチなどは無く、ふぐりも没収された。

 多分、お金も没収されているのだろう。

 

 起き上がって周囲を見渡す。

 昨日と代わり映えしない石畳の部屋。

 看守さんは居るのだけど、眠りこけていて起こすのは申し訳ないと感じる。

 今の俺の話し相手はステ公しか居ない。

 

 毛布を畳んで隅っこに置いた後、ちょっと寂しいから空中に語り掛ける。

 

 「やぁ、ステータスさんおはよう、今日も良い天気だね……」

 

 そして浮かび上がるステ公。

 

 ------------------------------------------------------

 ZZZ……。

 ------------------------------------------------------ 

 

 「…………」

 

 思う所はあるのだけど、ガチで寝ていたら申し訳ない。

 ……いや、多分起きているだろう事は何と無く分かる、だってステ公だもの。

 

 「……起きてるんだろ? 知ってるから」

 

 するとまた表示が変わる。

 

 ------------------------------------------------------

 ハッ!! 0:30。

 ------------------------------------------------------

 

 表示された傍から徐々に少なくなっていくカウント。

 

 「……やっぱり起きてんじゃねぇぇぇかよぉぉぉ!! おい、カウント止めろよ!! もう俺目が覚めてるから!!」

 

 制止するも、全く聞く耳を持たないステ公は、そのままカウントを0まで進めて行く……。

 

 --------------------------------------------------------------------

 レベルアップしました!確認しますか? yes/no    × 

 --------------------------------------------------------------------

 

 突如、脳内に轟くファンファーレの音。

 やっぱり音量調節をミスったボリュームで、思わず耳を塞いでしまう。

 

 「無理やりかよぉぉぉ!! 無理やりすぎるだろぉぉぉ!! レベルアップしてねぇからぁぁぁ!!」

 

 文句を言いつつ、止める為に手を伸ばすのだけど、避けられる。

 俺とステ公は、その行為を何度も繰り返し……。

 

 「避けんなよ!! ステータス見せろよ!! ……………ハァ……、もう疲れた……」

 

 畳んだ毛布を枕にして横になりつつ、溜息を付く。

 

 ……傍から見ると、完全に一人で暴れているように見える。

 それを想像してしまうと、悲しくなって来たから、途中で諦めたのは言うまでもない。

 

  ステ公は『……もう終わりか? 情けない奴め!!』と煽りの文章を表示してくるのだけど、構うだけ無駄と思った。

 

 「虚しい……」

 

 そう呟くとステータスが『しょうがないにゃぁ……』と表示された後にステータスウィンドウが切り替わる。

 

-------------------------------------------------------------------

 ミソギ・チンコ・サイキョウ Lv1   ×

 

 時刻(15:05)

 ラーメンタイマー『05:00』

 

 スキル

 ・変質操作

 ・トイレする時、淵を外れて、たまに外に零す。

-------------------------------------------------------------------

 

 勿論俺は目を見開き、すぐさま立ち上がり、ツッコむ。

 

 「………これは……、お前の落書き帳じゃねえぇぇぇ!! ミドルネームにチンコ入ってるし、時間間違ってるし、異世界にカップ麺ねぇし、そもそもスキルが……なんでスキルに俺のトイレ事情を書いてんだよぉぉぉ!!!!」

 

 ……もうやだ、情報量が多すぎて頭がパンクしそうだ、……アイギス、ゴメンな? 零したのお前のせいにしてフレイに伝えつつ、後で怒られて涙目になるお前を見るとちょっとだけ興奮するんだ……。 

 

 心の中で謝罪しつつ、毛布を顔を埋めて叫ぶ。

 

 「……あああああああ……」

 「うるさいぞ!! 静かにしろ!!」

 

 うるさくし過ぎた様で、起きた看守さんに怒られてしまった。

 『しゅいましぇん……』と謝って大人しくする。

 

 

 そうして時間だけが過ぎていく……。 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ここは取り調べ室、朝飯を食べた後、連れてこられた場所だ。

 小さな部屋の中には小さな椅子が二つあり、椅子の間には小さな机が設置してある。

 

 目の前には栗色のサラサラロングを靡かせる、麗人のような出で立ちの、女性騎士が俺と向かい合い座っている。

 

 取り調べが始まって、まずはお互いの自己紹介からだった。

 普通の取り調べを受けているように見える光景。

 

 ……だが徐々に様子がおかしくなってくる、目の前のアンネと言う女性騎士は、肩や背中へのボディタッチがやたらと多く、頬が緩み切り、まるで獲物が罠に掛かったような瞳で、俺を見ている。

 

 最初の頃は特に不振感等はなく、『まぁ美人さんに触られるなら役得じゃね?』くらいにしか思っていない。

 

 もう途中からは、ウへへと隠そうともしない声を出す変態女性騎士。

 俺はそれに動揺しつつ、尋問と言う名のナンパ……いや、セクハラを受けていた。

 

 「……ミソギちゅわぁん!! どうしてこんな事をしたのかなぁぁ? 可愛いお顔してるねぇ、舐めてもいいかなぁ? ……失礼……、私に教えてくれないかなぁぁぁ↑」

 

 ……アンネとかいう目の前の女騎士は変態だ、変態レズ騎士だ、鎧が似合う女性騎士だけど、変態だ。

 実年齢は21だそうで、俺よりも年下……年齢だけは下なのだけど、なのに『騎士団長』とか言う役職らしい。

 凄いと思うと同時に、こんな人種にはあった事がない、どうしたらいい、分からん……。

 

 とりあえず俺は、手で制止して待ったを掛ける。

 

 「……いえ、舐めないでください、嬉しいけど舐めないで……ちょ! 手を掴まないで!!」

 

 机を挟んでいるのだけど、すかさず身体ごと乗り出して手を掴んで来るアンネ。

 その手はゴツゴツしたイメージではなくて、柔らかく暖かい。

 

 手を離そうとしても痛くない程度に握られて、振り解く事が出来ない。

 受付のお姉さんすら怪力だったのだ、女騎士だととんでもない怪力なのも頷ける。

 

 「ウヘヘ……、スベスベだねぇ……、今夜私と……」

 「いや、俺、逮捕されてここに居るんですけど!!! ……てか取り調べしてくださいよ!!」

 

 手を離す事を諦めた俺は、アンネの言葉に食い気味に話を進める。

 すると手を掴んだまま、指を絡ませてきて答えるアンネ。

 

 「うむ、君の罪状は鉱石偽造と言う……まぁ、それなりに重い罪なのだけど、今回はちょっと毛色が違ってな。君が換金した大量のメスタイトの一部が、オスタイトに変化してしまったんだ」

 

 嬉しいけど絡ませられた指が、なんとなく気持ち悪い……。

 

 「……」

 

 無言で頷く。

 

 「常識で考えるのなら、錬金術で変換した場合は、鉱石と錬金素材に分離するはずなのだけど、今回はそうじゃない、素材がなく、オスタイトだけしかない」

 「……」

 

 ……そりゃそうだろう、錬金術なんて使ってない、そもそも知らない。

 ただ『フンス!』と気合を入れてスキルを使っていた。

 お陰で宿の店員さんに、ブラチラ見られたり怒られたのは良い思い出だった。

 

 だが、思い当たる節はある俺は、手はそのまま、顔を下に向けながら真剣に考える。

 

 ……もしかしてバレたのは、アルバイトでの職業病かもしれない……。

 スキルを実験する前は、効果時間なんて考えてなかった。

 実験を繰り返して、効果時間がコントロール出来るようになった。

 そしてバイトでいつも効果時間を考えて使っていたのだった。

 

 もしかして無意識に、一部のオスタイトにも効果時間を、想像してしまっていたのかもしれない。

 それならば説明が付く。

 

 俺が原因を考えていると、アンネが唐突に言い放つ。

 

 「……まぁ、そんな事はどうでもいいのだがな?」

 「おい!! 今俺の取り調べ中だろぉぉぉ!! 仕事しろよぉぉぉ!!」

 「構わん!! 今日は非番だ!! プライベートなのだ!!」

 「……休日くらい休めよぉぉぉ……こんなとこきてんじゃないよぉぉぉ……」

 

 もう諦め半分で、がっくりと項垂れる俺にすかさずアンネは。

 

 「……フヒヒ!! ……嫌がらないねぇ? 同意? 同意的な?」

 

 満面の笑顔。

 

 その言葉と顔に俺は、脊髄反射で身体が拒否してしまう。

 もう片方の手でアンネの指をこじ開けようとするも、その手も掴まれて、指を絡ませてくる。 

 両手はもう凄い絡み合っている。

 

 「同意じゃねぇぇぇ!! このっ!! お前が、離さないからだろぉぉぉ……俺の手を離せぇぇぇ……」

 

 手を振り解こうと藻掻く。

 

 だが押したら押しただけ引いていき、引くと万力のようにその場で固定されるこの状況。

 正しくどうしようもない。

 

 アンネがウヒヒと笑い出し。

 

 「俺っ娘……、いいぞ!! 凄く良い……最高だ!!」

 「いや!! 俺、男だから!! 30歳の男だから!!」

 

 とりあえず手を離して欲しい俺はカミングアウトしてしまう。

 

 するとアンネは……。

 「合法か!! 良いぞ!! 最高だ!! 私はそっちもイケるのだ!! 経験はないがな!!!!」

 「自慢する事じゃねぇぇぇ!! てかどっちもイケる口かよぉぉぉ!! 離せぇぇぇ!! 俺は女だからぁぁぁ!! ……女だけど男だからぁぁぁ!!」

 「なら、なおの事良し!! うひょぉぉぉぉ!!」

 

 もう何を言っているか分からない俺は今、混乱している。

 アンネは錯乱しているようで正気だと思う。

 

 そんな事をしていると大きな音を立ててドアが開く。

 中に入って来たのは、昨日のリーダー格の女性騎士だった。

 

 物凄い剣幕でアンネへと詰め寄り……。

 「団長!! やはりここでしたか!! 更衣室のロッカーの中に、ミソギ容疑者への取り調べをする団員が、気絶して放り込まれて居るのは、あなたの仕業ですね!?」

 「…………さぁ?」

 

 そう言われてアンネは目が泳ぎつつ、そっぽを向いた。

 構わず女性騎士は、アンネの肩に手を掛けて続ける。

 

 「あなたって人は……、どうしてこう……、任務は忠実で優秀なのに……ハァ……、行きますよ団長、彼女の手を離してください、今日は非番でしょう?」

 「…………」

 「返事をしなさい!! 団長!!」

 

 アンネはそっぽを向いたまま無言で俺の指をがっしりと絡ませて梃子でも動かなそうだ。

 

 ……毎回こんな感じなのだろうか、この変態は。

 

 さらに指を強固に絡ませてアンネが口を開く。

 

 「だってー、3年で女性の騎士団長になったのはいいが、団員は全員ガードが固くて相手にしてくれないしー、留置所に来る可愛い子とかいないしー、……だからこれは運命なのだ、私がこれまで培ってきた努力が報われた瞬間なのだ!! だから副団長の出番はない!!」

 「何が運命ですか!! 変態騎士団長の汚名を返上しなさい!!」

 「ヤダ……別にいいもん……」

 「ヤダじゃありません!!」

 

 必死に怒りつつ、副団長さんは指をこじ開けようとしている。

 

 俺はそれを……。

 ……この団員さんも可哀想だなぁ。

 とか思いつつ、それを眺める。

 

 だが俺の指とアンネの指は一向に離れず、団長の力の強さが垣間見えた瞬間でもあった。

 そして目が血走り、怒りながら叫ぶ副団長。

 

 「誰かぁぁぁ!! 誰か来いぃぃぃ!!」

 

 その叫びは他の団員の耳に入ったようで、時間を掛けてゾロゾロと集まってくる。

 

 多勢に無勢とはこの事を差すようで、無理やり引き剥がされたアンネは、『ミソギちゅあぁぁん……』と悲痛な叫びをあげて引き摺られつつ、退場する様が俺の目に映っていた。

 

 「……大変ですね、そちらも……」

 「あぁ、まぁ、お前のような容姿がタイプなのだろうな……よくわからんが……」

 

 まぁ、俺もアンネみたいな人種は初めてだからわからんでもない……。

 美人なのに気持ち悪いを両立させた人間なのは見た事も聞いた事もない。

 

 同情しつつ、副団長が話し出すまで待つ事にする。

 

 「……それで君には二つ選択肢がある……」

 「あ、はい」

 

 少し疲れたような面持ちで、俺に語り掛けてくる。

 

 「……このまま黙秘して団長に尋問を受ける……」

 「全部話します!!! 全部話して楽になります!!!」

 

 俺に選択肢は無かった。

 




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24 室内での一幕!!

アンネとアンナ間違えて書いてしまい、直してました。


 ここは小さな窓から月明かりが照らす独居房。

 今は深夜の時間帯。

 周囲は静まり返り、鉄格子前の女性看守は、眠りこけて仕事をする気が無い模様。

 そして、その中には毛布に包まった囚人服を着た黒髪少女が、グースカと眠りつつ、満面の笑み浮かべて幸せそうな寝顔。

 ……だが、栗色の髪をした女性の不審者が、足音を殺して、黒髪少女が眠る独居房へと近づいて行く姿があった……。

 

 

 

 ……熱い、昨日までは少し寒かったのに、今日はやけに熱い。

 

 無意識に、毛布を跳ね除けてようと藻掻いてみるのだけど、身体が動かない。

 その身動きが取れないと言う状態に、俺の意識が徐々に覚醒していく……。

 

 俺の耳元からは『グヒヒ……グヒヒ……』と欲望に塗れた声が聞こえた。

 背後に誰かいるみたいで、俺のCカップ位の両胸を揉まれているみたいだった。

 

 何となく誰かは分かる、恐怖はない、俺は目を見開き背中の誰かに声を掛けた。

 

 「おい……、胸揉むの止めろ……。多分、アンネだろ? おいアンネ……、グヒヒはやめろ……、ホント心臓に悪いから……」

 「む? バレてしまってはしょうがないな!!」

 

 俺の胸から暖かい手が引っ込む。

 それに伴って、身体が動くようになった。

 多分腕ごと抱き着かれている状態だったのだろう。

 

 俺は毛布を跳ね除けて起き上がる。

 周囲を見渡すと、看守さんが前のめりに倒れている姿が見えた。

 

 ……多分気絶させて鍵を奪ったのだろう。

 可哀想に……、いや? 昨日も眠りこけてたから、たいして変わらないか。

 

 ……視線を下に移すと、寝転んだままの黄色のパジャマ姿のアンネ。

 コイツを見下ろしながら……見下した目で言ってやる。

 

 「おい、何しに来た……、俺の寝込みを襲って何しようとしてんだ……看守さん可哀想だろ……」

 

 するとアンネはそのままの姿勢で、手をワキワキさせながら、ほほ笑んだ。

 

 「彼女は気絶させたぞ、邪魔だったからな……勿論……ミソギちゃんの胸を!! 揉みに来たに!! 決まっているだろぉぉぉ!!」

 

 ……コイツはロクでもねぇ奴だ。

 自信満々で胸を揉む宣言をしてくるアンネ、その自信はどこから来るのだろう。

 

 アンネに若干引きつつも俺は。

 

 「……お、おう……、お前、何考えてんだよ……」

 「フッ……君の寝顔があまりにも可愛かったから……思わず……な?」

 「……な? じゃねぇよ!! ……よし、お前も揉ませろ! 胸出せやぁぁぁ!!」

 

 寝転んだままのアンネへと飛び掛かる……が瞬時に身体を掴まれて背後に回られた。

 それはゴブリンの時のアイギス以上の速度、目の前に居たのに認識出来なかった。

 

 「遅いっ!」

 「速い!? ……おい!! 胸を揉むんじゃねぇぇぇ!!」

 

 そしてまた抱き着かれて両胸を揉まれる。

 もうグワシグワシと揉まれまくる。

 

 背中に当たる胸はアイギスほどではないが、それでも俺よりは大きい胸。

 素晴らしい……、大きいのは良い事だ……。

 

 だがそんな事をしている場合じゃない。

 

 俺は頭を振って正気に戻り、全力で藻掻く。

 だがアンネとは力の差が違い過ぎて、振りほどけない。

 

 「フフフ……こういう時の為に、鍛錬を怠ってはいない!!」

 「偉そうに言うんじゃねぇ!! 離せぇぇぇ!! 俺も、俺も揉ませろぉぉぉ!! 不公平だぁぁぁ……」

 

 俺の悲痛な叫びを聞いたのか、アンネの腕から力が抜けるのを感じる。

 ……何故だ? 意図が分からない。

 

 すぐさま振りほどいて距離を取る。

 するとアンネは両手をさらにワキワキさせながら。

 

 「駄目だ、私は攻めだ、ミソギちゃんは受け、だから……、揉まれる訳にはいかないのだ!!」

 

 ……そういう事かよ!! ちょっとだけ後悔とかしたのかなって勘違いしたぞ……、ちくしょう、もう許さん。

 

 黄色のパジャマからくっきりと見える大きな胸を偉そうに張るアンネ。

 その姿、その言葉に……俺の中にちょっとだけあるプライドとか矜持的な物。

 それが吠えて唸りを上げる。

 

 両足に力を籠めてしっかりと立ちつつ、俺はアンネに言い放つ。

 

 「お前は……お前は邪道だ……、胸を揉んで良いのは揉まれる覚悟がある奴だけなんだよ!!」

 「……フッ、それはどうかな?」

 

 アンネは身体全体で『やれやれ……』といったポーズを取り、俺を挑発している。

 心の中でチカラを渇望した。

 

 ……チカラが欲しい、目の前のアンネを圧倒出来るチカラが……。

 泣かせてやりたい、コイツを、この存在を。

 揉まなくてはならない、コイツの胸を……。

 

 ……突然だが、俺はアイギスの胸を唐突に揉む。

 アイギスは仕返しで揉み返してくる。

 だから俺も構わず揉み返す。

 

 だがアンネは覚悟がない、揉み返される覚悟が足りない。

 俺には覚悟がある、『揉まれてもいいさ、胸だもの』と言う覚悟が。

 

 ……ならば分からせなくてはならない。

 だから呼ぶ、最近俺の能力をぐちゃぐちゃにして来た、憎たらしいアイツを。

 

 アンネはそのままの体勢で俺を見つめている。

 

 俺は腕を高く掲げて指を『パチン』鳴らす。

 そして叫ぶ。

 

 「ステェェェタァァァス!!!」

 

 ------------------------------------------------------

 ちわーっス、ステ屋でーす。

 ------------------------------------------------------

 

 俺とアンネの間に表示されたステータス。

 それに俺はアンネを指を差しながら、お願いする。

 

 「アイツを……アンナを圧倒出来るレベルとスキルをください!! 後で肩とか揉むから!! ……肩がどこかわからんけど!!」

 

 空中でお願いし出す俺に対して、アンナは不思議な顔をして聞いてくる。

 

 「ミソギちゃん……空中に話しかけて、何をしようと言うのだ?」

 「……お前を泣かす為の儀式的なもんだよ!!」

 

 そう叫ぶとウィンドウが切り替わる。

 

 --------------------------------------------------------------------------

 あっ、いっすよ、ご注文は以上っすね? あざーす。

 肉体強化(大)を取得しました。レベルが30上昇しました。……多分。

 --------------------------------------------------------------------------

 

 その表示を見た瞬間、身体からチカラが湧き上がるのを感じた。

 

 ……これならイケる、これなら勝てるかもしれない。

 

 そう思って、アンネへと向き直す。

 

 「多分とか要らないけど、ステータスさんありがとう!!……これで泣かせてやんよぉぉぉ!!」

 

 俺はステータスさんに感謝しながら、アンネへと飛び掛かる。

 だが、アンネはそれを受け止める。

 手と手を掴み合い、お互いのチカラは拮抗する状態。

 

 強い……、今の俺は多分、超強いはずなのに……。

 

 それとは対照的に、余裕な顔のアンネは俺の能力が爆発的に上がった事を肌で感じているみたいで。

 

 「……ほう? 先程とは別人みたいだな……だが!!」

 

 アンネの腕力がさらに上がるのを感じる。

 徐々に押され始めた。

 焦る俺はさらにチカラを求めようと。

 

 「ステェェェタァァァス!! もっとだ!! もっとよこせぇぇぇ!!」

 

 足を踏ん張りつつ、両腕にチカラを込めて、強欲に、さらにステータスへと叫ぶ。

 するとステータスさんは。

 

 ------------------------------------------------------

 すんませんー、閉店時間っすー。

 ------------------------------------------------------

 

 と絶望のウィンドウを表示してきた。

 

 「ステェェェェタァァァス!!??」

 

 その叫びと同時に押し倒された俺は、朝まで揉みまくられたのだった……。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 あれから数日が経った……、俺が居る場所は面会室。

 勿論容疑者側の方で、椅子に座りながら人を待っている所。

 囚人服に着替えた俺の後ろには、鎧を着た女性騎士さんが二人立っている。

 

 後ろから、二人の女性騎士さんに『可哀想に……』と言う視線を感じながら椅子へと座る。

 

 ……多分、団長の事なんだろうな、あの変態麗人騎士、いやニンジン騎士とか俺もどう対処していいか分からないもんなぁ。

 

 そんなアンネの事で頭を悩ませていると、正面のドアが開く。

 入って来るのはフレイと、俺が外したおしっこの罪を擦り付けられたアイギスだった。

 だが矢鱈と血色が良いのは何故だろう、俺の事を真剣に探してくれなかったのだろうか。

 

 そう思いながら二人が用意された椅子へと座るまで、考えていた。

 

 「ミソギ!! 心配したわよ? それよりも、何でアンタ捕まってるのよ……」

 「そうですよ、ミソギさん!! あの後戻ってこなくて……すっごく探し回りました……」

 「そうよ? 全く……、捕まったなら捕まったって言いなさいよ!!」

 「いや、それ無理だから……、けどありがとなぁ……」

 

 心配した顔で、俺に語り掛けてくれるフレイとアイギス。

 

 ……やっぱり探してくれていたんだ! 元気良さそうだけど、ちゃんと探してくれたんだ!。

 

 その嬉しさと、会えなかった寂しさもあって、俺はちょっとだけ涙が流れてしまう。

 その涙を囚人服の袖で涙を拭く。

 

 「うっ……うっ……、あぁ、俺は良い仲間を持ったなぁ……、なんかさ、鉱石偽造の罪で捕まったみたいでさ、ホントなら面会もダメらしいんだけどな」

 

 ……本来なら面会は出来ないはずなのだけど、初犯かつ知らなかったと言う事。

 副団長さんは良い人だった、俺の話を親身に聞いてくれて、情状酌量の余地があるとして、こうして仲間に面会出来る機会を設けられている。

 

 そんな経緯を思い返していると、小声でフレイが聞いて来る。

 

 「……そうなのね、でもそれなら何故アタシたちは捕まってないのかしら……アタシたちも同罪じゃないの?」

 「……そりゃーあれだよ、俺が二人の事を避けて、俺だけの責任にしたからだよ……」

 

 後ろの女性騎士に聞こえないように、小声で答えるとアイギスが驚いたように、口に手を当てて話し出す。

 

 「……ミソギさんって、そんな事が出来る人だったんですね!! 感心しました!!」

 「……う、うん……偶に心に刺さる事言うよな、アイギスって……、まぁいいや……」

 「ご、ごめんなさい……」

 

 耳がシュンとするアイギスに『気にしてないよ』と返す。

 

 ……捕まる瞬間、『青い髪のエルフが唆してきました!!』とか言ったような気もするけど、アイギスが捕まってないのだからセーフだな、うん、お相子お相子。

 

 そう思いながら、話題を変えたい俺は、少しだけ咳払いをする。

 そろそろ本題に入らなくてはならない、二人に真剣な顔を向ける。

 

 「それでさ、換金したお金ってどうなった? ……実はさ、あれを返せば刑期が短くなるんだよ……、お金ってアイギスに渡しただろ? あれの他にも俺の部屋に隠しちゃっててさ……ゴメンな?」

 

 謝りつつも正直に話す俺に対して。

 二人が息を合わせたように目が泳ぎ出して、そっぽを向く。

 

 少しの間、俺はその状態の二人を見て、ある想像をしてしまった。

 

 ……もしかして、もしかして、まさか。

 おい、嘘だろ? マジかよ……。

 

 俺は顔を青くしながら二人を見る。

 

 「……な、なぁ、もしかして……もしかしてなんだけどさ……」

 「いえ、大丈夫ですよ!! ちゃんとありますよ!! ……200万だけ……」

 「つ、使っていいのかなーって思ったのよ? 居なくなったから、探すついでにミソギの部屋を探したら100万G見つけたし……」

 「……」

 

 二人は思い思いに、絶望を俺へと語り出して来る。

 自業自得とは言え、無言になって両手で顔を隠す俺。

 

 ……つまりこいつ等、この数日で『200万』使いやがったと言う事か……。

 

 多分、武器とかご飯とか……宿のランクも上がってそうだった。

 やたら血色が良い顔をする二人は、フカフカのベッドでお休みしてたんだろう。

 

 ……ま、まぁしょうがない……、二人は知らなかったとは言え、俺も悪かったのだ、しょうがない……。

 

 プルプル肩を震わせて、下へと顔を向ける。

 

 「あ、あぁ、いや、大丈夫、うん、大丈夫……」

 「ま、まぁ何とかなるわよ!! 大丈夫よ! アタシたちはちゃんとミソギが帰って来るのを待ってるからね?」

 「そうですよ! ミソギさん! 僕達は絶対にミソギさんを見捨てませんから! なんと言っても仲間ですからね!!」

 

 顔を上げると、フレイは『うんうん』とアイギスの言葉に頷き、アイギスは大きな胸を張って『エッヘン!!』と偉そうにしている。

 

 その言葉に目を見開き俺は思う。

 ……マジでその皮鎧から、溢れてブルンと揺れる大きな胸を、掴んで引っ張って千切りたい……。

 切実に思うのだが、そんな事しても何にもならない。

 

 息を吐いて心を落ち着けた後、ゆっくりと顔を上げる。

 

 「……ありがとなぁ……ちょっと刑期長くなるけど、必ずお前たちの元に返って来るからなぁ……、残りのお金はちゃんと団員さんに返して置いてくれよ……?」

 

 その言葉を最後に、後ろの女性騎士さんが『時間だ、そろそろ良いか?』と聞いて来る。

 俺はそれに笑顔で『はい、ありがとうございます!!』と返して二人へと手を振り、退室した。




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25 鉱山労働!!

お気に入りとかブクマとかありがとうございます!!



 ここはアステロイドから近い、鉱山。

 この場所に移送された俺に言い渡された刑罰は『1週間の鉱山労働』だった。

 本来なら1ヵ月ほどの予定だったらしい。

 

 だが留置所で夜な夜な侵入してくるアンネへと『お金貸してくだしゃい……』とダメ元で頼んでみた所。

 アンネは下心有り有りで『フヒヒ!! これで良いか?』と言いながら、金貨200枚、200万を肩代わりしてくれた。

 そのおかげで刑期が短くなっている。

 

 ありがたいけど後が怖い……、まるで闇金から借りたお金のような心境。

 取り立てなどはどうなるのだろうか……。

 そんな一抹の不安を抱えつつも、今日も元気良く鉱山労働に従事していた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 『おはようございまーす!! 今日も安全第一で作業を行いましょう!! アステロイド式体操始めまーす!!』

 

 現場監督からの大きな掛け声と、体操を終えて早数時間……。

 周囲の作業員は各々の鉱山作業を行っている姿が垣間見える。

 

 籠を背負い運ぶ者。

 ツルハシやピッケルを持って鉱石を掘る者。

 休憩している者。

 他人にダイナマ岩を運ばせて、腰をクネクネしつつ、キャバ語録で応援している者等、様々だった。

 

 俺の担当する仕事は、ダイナマ岩業者が搬入したダイナマ岩置き場から、ダイナマ岩をコロコロして、ダイナマ岩を鉱山内の所定の位置に、ダイナマしていくお仕事だった。

 

 再度、ダイナマ過ぎてダイナマがなんなのか分からなくなって来る。

 だが、ダイナマはダイナマなのでダイナマなのだろう。

 

 そんな脳内でダイナマが埋め尽くされた俺は、作業着姿で腰をクネクネ動かしつつ、隣のドワーフのダンチさんへとウィンクしている所だった。

 

 「私ぃ~、ダンチさんのぉ~、……このぉ~? 腕とかぁ~、すっっっごくぅ~、逞しいなってぇ~? ……キャピ☆」

 「そ、そうかのう? ……フヘヘ、もう3日目か、慣れたかのぅ?」

 「はい~、ダンチさんとかぁ~、皆さんのお陰でぇ~す! ……キャピ☆」

 

 問題ない、俺のキャバ語は今日も通用している。

 

 ノーパンバニーやらメイド服やらで鍛えた図太い精神。

 そして上司につれられたキャバクラでのキャバ語録。

 それらが合わさり、混じり合い、驚異的な速度で俺は成長しているのを実感する。

 ……まぁ、あんまり嬉しくないけども。

 

 「ありがとうございますぅ~!! ……キャピ☆」

 

 感謝しつつ、ウィンクを欠かさない。

 そして頬を赤らめるダンチさん。

 

 彼の見た目は、筋骨隆々で長いヒゲを生やし、俺より低い背丈。

 他のドワーフさんの見分け方等は……ヒゲの長さ位しか分からない。

 典型的なイメージと、そう変りないドワーフと言う種族。

 どっかの体臭で強くなったり弱くなったりする、青髪エルフとは大違いだ。

 

 腕を組み『うんうん』と頷く俺に、ダンチは不思議そうな顔で聞いてくる。

 

 「どうしたんじゃ? なんかあったんかのう?」

 「いえ~、私ぃ~、全然力がなくてぇ~? すっごくありがたいって言うかぁ~。そんな感じですぅ~、……キャピ☆」

 

 作業着を腕まくりしつつ、白く細い腕をアピールする俺。

 それを見るダンチさんは納得したようだった。

 

 「……お嬢ちゃんは非力じゃのう! 仕方ない、こういうのは俺達ドワーフの仕事じゃからな!」

 「わぁ~……、逞しいですぅ~!! ……キャピ☆キャピ☆」

 

 さらに腰をクネクネしつつ、さらにパチパチとウィンクをする。

 それを見たダンチさんは『フン!』と言いながら、ダイナマ岩に力を籠めてコロコロする。

 

 「いいって事じゃ! 女の子を助けるのに理由何ていらんのよぉ!」

 

 恰好良い事を言うのだけど、その視線は俺の腰や胸へと釘付けだ。

 だが気にするほどの事ではない、バイトのお陰でもう慣れた。

 

 だから俺はさらに。

 「キャ~、ダンチさん素敵っ!! もうそのヒゲがダンディでぇ~、そこはかとなくぅ~、……なんかこう……素敵っ!!」

 「それ、褒めてるのかのう……」

 「勿論ですぅ~!! すっごく素敵ですぅ~!!」

 

 何となく褒める。

 俺だって褒められたら嬉しい。

 フレイとアイギスも褒めると嬉しがる。

 

 そんな適当な誉め言葉に、満更でもないダンチさん。

 出会って3日なのだけど、俺の分のダイナマ岩を、ダンチさんが代わりにコロコロしてくれている。

 

 ……初日は、岩を一人で運んでみようと思ったのだけど、無理だった。

 真面目に罪を償うつもりで、働いていたのだけど、マジで重い。

 もう完全に動かない、これでもかって位に『グヌヌ……』と力を籠めるも、俺のクソ雑魚腕力ではピクリとも動いてくれない。

 

 勿論、ステータスさんに頼もうと思ったのだけども『留守です、折り返しお電話ください』と取り合ってくれない。

 そして途方に暮れていた俺に、他のドワーフさんが『どうしたのじゃ?』と声を掛けられて、今に至る。

 

 だから俺は、腰をクネクネして

 

 「私のぉ~、仕事を~、代わりにぃ~、やってくれるなんてぇ~? 素敵っ!!」

 

 さらに腰をクネらせつつ褒めて褒めて、褒め捲る。

 ダンチさんも満更ではないようで、『フヘヘ』から『グヘヘ』に変わっている。

 

 ……便利すぎるだろう、このウィンクと腰クネクネとキャバ語録。

 マジで便利すぎて、もう癖になっちゃいそうだった。

 今の俺なら連続で☆が飛ばせると思う、やってみるか……。

 

 そんな事を考えながら俺とダンチさんは、鉱山内へと入って行った……。

 

 

 

 ……中は薄暗く、ジメッとして、足場が悪い。

 壁に埋まる鉱石の大半は、オスタイトのようで純度が低いのだろう。

 誰も採掘する様子はなく、放置されている。

 

 最奥には、超希少な鉱石とかが壁の中に埋まっていると聞いた。

 それはミスリルやオリハルコン等、アニメやゲーム等の超有名な鉱石。

 俺にとって、興味をそそられるのは仕方ない事。

 

 ミスリルで出来た剣とか、オリハルコンで出来た剣とか、凄くカッコいいと思う。

 アンネが持って居た恰好良い剣なんか、ミスリル製らしく『スパスパ切れる』と本人談。

 

 ……羨ましい事この上ない。

 

 そんな事を考えながら俺は、ダンチさんへとついて行く。

 

 足場が悪いのに、器用にコロコロとダイナマしていくダンチさんは突然、足を止めた。

 何やら真剣な面持ちで、俺に聞きたい事があるようだ。

 

 「それで、お嬢ちゃんはどうしてこんな男ばっかりの所に来たのかのう、何かやったんかのぉ?」

 「……」

 

 なんだろう、凄く答えにくい、いや、言いたくない。

 ……鉱物偽造で取っ捕まりましたとか、恥ずかしくて言えない。

 さらにヤバイ奴からお金を借りて、刑期を短くしましたなんて言える訳がない。

 

 引き攣る顔面を無理やり抑えながら俺は。

 

 「えぇ~、それはぁ~、……色々ですっ! ……キャピピピピ☆」

 「色々かぁー、なら仕方ないのぅ!」

 

 ちょっとだけ顔に影を作りながら、連続ウィンクで誤魔化す。

 

 「……そうですぅ~、乙女の秘密なんですぅ~! ……キャピ☆」

 

 乙女とか言っておけばなんとかなるだろう……多分。

 

 そんな事情を知らないダンチさんは『ムホホ!』と笑いつつ、ゴロゴロとさらにチカラを増して、鉱山内の奥までダイナマしてくれた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 荒れた岩場へと来ているアタシ達、今は二人でクエストの真っ最中。

 ミソギが離脱して3日程が経った今、二人で散歩がてら、ゆっくり歩いてここまで来ていた。

 

 今は、アイギスに索敵して貰っている最中。

 先ほど、アイギスの感知スキルに引っ掛かったモンスターがいるようで、瞬時に戦闘態勢を取っている。

  

 「フレイさん、ダイナマイーター見つけました! ……あそこです! 擬態が解けてます!」

 

 アイギスが指を差す先、そこにはダイナマ岩を鋭い牙でガリガリと削って食べる、赤銅色の大きなトカゲ。

 いつもなら擬態して見つけにくいモンスター。

 だけど食事中は擬態を解いて無防備な姿を現す事は知っている。

 

 アタシの隣で、アイギスはしゃがみ込み、背中から新調した鉄の弓と矢を番えつつ、ぼそりと呟く。

 

 「……ミソギさんいないと、寂しいですねぇ……」

 「そうねぇ……あの子が居ないと寂しいわねぇ……」

 

 萎びた耳がアイギスの心境を読み取れる。

 明らかに元気がない……。

 それもそのはず、この子はミソギに懐いているみたいで、いつも一緒にいる。

 

 『仲間だから!! 仲間だから!!』と言われながら、野菜を口にねじ込まれて涙目になるのに、決して酷い事などを言わないアイギスは、いい子だと思う。

 

 「ホントですねぇ……、ミソギさんが居ないと物足りないですねぇ……えいっ!!」

 

 アイギスは、引き絞った弓から矢を放つ。

 

 空を斬りながら、それはダイナマイーターの胴体へと『プスッ』と刺さる。

 すると『ギョエェェ』と鳴いて、二足歩行になりながら、アタシ達へと向かって来るのが見えた。

 

 杖を左手に、そのままの状態で、右手を前に突き出す。

 念じるは、火の中級魔術。

 

 「アタシがやるわ、……ファイアーボール!!」

 

 火球はダイナマイータへと直撃する……。 

 

 そして火だるまになって、転げまわり、煙を放つダイナマイーター。

 まだピクピクと動いているのだけど、一応トドメの為に2~3発、ファイアーボールを打ち込んだ。

 

 アイギスが若干引きつつ、アタシへと振り向く。

 

 「結構、念入りにやりますね……、けどさすがです! あの威力の火球は、やっぱりそのメスタイトのお陰ですか?」

 「……ありがとう。そうね、それもあるのだけど……やっぱりレベルが上がったからじゃないかしら?」

 

 アイギスは褒めてくれているようで、耳がぴょこんと跳ねている。

 

 ……だけど全然足りない、褒められ足りない。

 ミソギだったら『マジぱねぇっす!! フレイさんマジ最高っす!! あのファイアーボールの軌道がマジリスペクトっすわ!!』と、あの可愛らしい顔を崩して、間抜け顔で褒めてくれるのに。

 

 「確かレベル15でしたっけ? 凄いですね、僕なんて、まだ10なのに……」

 「大丈夫よ? アイギスもその内、沢山レベルアップしていくと思うわ。だから、そう悲観せずに一緒に頑張りましょう?」

 「そうですね!! お風呂に入るのを我慢すれば、もう少し強くなるのになぁ」

 

 真剣に悩むアイギスなのだけど。

 ……夏場とかヤバそうね……。

 そんな失礼な事を思いながら、アイギスへと真顔で答える。

 

 「……毎日お風呂には入りなさいな? またミソギに『しゃぁぁぁ!!風呂行くぞぉぉぉ!!』とか言われてゴシゴシされるわよ?」

 「……すっごく言い方が似てますね!! けど、あのゴシゴシ、すっごく痛いから、もうちょっと手加減して欲しいです……。あっ、クエスト完了してました、後は報告だけみたいです!」

 

 アイギスはカバンから取り出したギルドカードを見せてくる。

 そこには『5/5』と表示されていて、クエストの終わりを告げていた。

 

 「それじゃ、帰りましょうか。ミソギが帰って来るまで、後4日でしょう?」

 「そうですね! 騎士団の人達が言ってました! けど、ちょっと不思議に思ってる事がありまして……」

 「……何かしら?」

 

 何やら神妙な面持ちで立ち上がるアイギスは。

 

 「あの200万って、肩代わりしてあげられなかったのかなって思いまして……、僕達が使ってしまったのもありますが、やっぱりちょっと罪悪感が……」

 「うーん、アタシも一応貴族の娘なのだけど、使えるお金はあまりないのよ。それに関しては、確かにアタシも悪い事しちゃったなって、思うわね……」

 

 アタシ達はちょっとだけ雰囲気を落としながら、帰路へと歩く。

 

 




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26 黄金色!!

1万PVあざますあざます!!


 今は夕方、1週間の刑罰が終わった。

 ポーチやスーツを返してもらった俺は、垂れているピンク色のふぐりを握りながら、退所手続きを終わらせた所。

 全ての荷物を持って、鉱山の宿泊所のドアを開ける。

 

 そのまま外へ出て見ると、軽鎧を着た騎士団長ことアンネが待っていた。

 その後方には普通の馬車がある。

 

 俺を移送する、お仕事の一環なのだろうと思う。

 アンネは栗色の長い髪を靡かせて、笑顔で俺の所へと歩いて来る。

 

 「アンネ、待たせてゴメンな? 荷物とか退所手続きに手間取ったよ……」

 「いいや、問題ない。……そういうプレイもアリだと思うぞ!!」

 「……」

 

 アンネが鼻息を荒くして、俺に寄ってくる。

 呆れた俺は、無言で見つめ返すのだが……。

 

 「どうした? 私に見惚れているのか? フフフゥー!! ……今夜は寝かせないゾ?」

 「寝かせてくれよ、真面目に働いて疲れてんだよ……」

 

 ……モデル体型のイケメン美人さんが残念すぎる。

 チンコがあれば嬉しいのだけども、チンコがないから嬉しくない。

 ……いや、本音を言うと、ちょっとだけ嬉しい。

 もう少し欲望を抑えてくれたら……と言う条件があればだけど。

 

 俺は、クネクネしてるアンネを、スルーしながら溜息を付いた。

 

 「……準備出来たし、送ってくれるんだよな? ありがとう、助かるよ……」

 「ああ、勿論だとも!! それではアステロイドへ帰るぞ。ミソギちゃんの仲間達とも語り合いたいしな!!」

 「……」

 

 何を語り合うのだろう、目の前の変態は、テンション高めで何を語るのだろう。

 アイギス辺りにセクハラするのだったら、俺も混ざりたい。

 フレイにするのなら、……ちょっとだけ様子見しながら、止めに入ると思う。

 

 興味があるのだけども、それを我慢して馬車の後部へと乗り込んだ……。

 

 

 

 ……ガタゴトと揺れる馬車の中。

 その道中、馬車の手綱を握るアンネが、笑顔の俺へと話しかけて来た。

 

 「……さっきから、嬉しそうに握ったりしているそれは……、もしかしてオリハルコンか?」

 「ああ、そうさ! これ売って、お前に借りた借金を叩き返してやらぁ!!」

 

 そう息巻く俺は、金色に輝く拳大の鉱石をニギニギしている。

 

 これは所謂オリハルコンと言う名の鉱石。

 鉱山労働の中で、色々あって入手した超希少金属だ。

 

 「……それを、どこで、どうやって手に入れたか……聞いて良いか? 確かミソギちゃんは、ダイナマ岩の運搬作業だったと、記録に書いてあったのだが……。オリハルコンの採掘場とは全く違う場所ではなかったか?」

 「まぁな?」

 

 不思議そうな顔で、荷台の俺へと振り返るアンネ。

 

 ……やっぱり気になっちゃうかー、超希少金属だもんなー、これ売れば高いだろうしなー。

 

 そんな事を思いながら、俺はアンネの隣へと移動する。

 

 「それ聞いちゃう? 聞きたい? いいよいいよ! 教えてやんよ!! ……あれはダイナマしていた時の事だった……」

 「……ダイナマとは? ……いや、なんでもない……」

 

 頭を左右に振るアンネ。

 その横顔を眺めながら、さらに続ける。

 

 「お世話になっていたドワーフ族のダンチさんって人にさー、鉱山労働の6日目に『ちょっと奥まで見学してくか?』とか提案されたんだよ。んで、鉱山の奥まで一緒に行った訳だ!」

 「……休憩時間や業務終了後は自由だからな。問題はないだろう」

 

 手の中のオリハルコンを見せびらかしながら、俺はアンネへと話し続ける。

 

 「それで、最奥まで行くとさ、作業員さんがダイナマしてたんだよ。そしたら……こう、ダイナマした後に、俺の足元にオリハルコンがコロコローって転がって来てさ!! 拾わなくちゃって思ったんだよ!!」

 「……」

 

 身振り手振りで、ダイナマとオリハルコンを入手した説明をする俺。

 アンネは無言で首を傾けている。

 

 「……つまり、ダンチと言う者と一緒に、発破作業をしている作業員を見学していたら、足元にオリハルコンが転がって来た……。と言う事だろうか……」

 「そう!! そういう事!! だけど、そのまま拾ったらバレるからさ、ダンチさんをな? 俺のスキルで光らせてる途中で、服の中に隠して持ってきた!! 後、ダンチさんはロリ巨乳になってたよ!!」

 「…………」

 

 呆然とした顔で、アンネは俺の顔を見ている。

 気にせず、さらに続ける。 

 

 「これ売ればいくらになるかなぁ……、アンネへの借金とか返して、お釣りとか来れば嬉しいなぁ……」

 「……そうだな、それなりの値段にはなるだろうな……、それこそ私への借金を返して、お釣りが来る位にな……」

 「まじかよ!!」

 

 『オリハルコンは高値で売れる』と言う事実に、俺のテンションが上がる。

 それが嬉しい俺とは対照的に、ちょっとだけ残念な顔をするアンネ。

 

 だが、表情を変えたアンネは、すぐさま俺へと向き直して問いかけて来る。

 

 「……いや、それよりも、そのダンチさんは……、どうなったのだ? ……お世話になったドワーフなのだろう?」

 「え? どうって、そりゃあ……色々と……」

 

 引き攣った顔のアンネ。

 

 ……もしかして、モサモサヒゲのダンチさんに興味が?。 

 いや、可愛い系ロリ巨乳になったダンチさんに興味があるんだろう。

 あれは凄かった、アイギス以上のボリュームだった……。

 そうか、合点がいった、アンネは俺を含めた、小さい子なら誰でも好きなのか。

 

 オリハルコンをポーチへと入れながら、納得してしまった。

 

 「……あぁ!! そういう事か!! えっとな? 宿泊所に戻った俺は、涙目のダンチさんを部屋まで連れて行ってさ、胸揉んでたよ。自分の状態に気が付いた時は『なんじゃこりゃぁぁぁ!!』とか叫んでたけどさ」

 「……そ、そうか……」

 

 何とも歯切れが悪いアンネ。

 勿論俺は、真実を伝える。

 

 「だけど、悪いな。朝には元に戻る様にスキル使ったから、今はヒゲが長いドワーフさんに戻ってるぞ? ダンチさんも、朝起きたら『夢か……』とか言ってたし」

 「……あ、あぁ……いや、そういう事じゃないんだが……、まぁいい……」

 

 ……?。

 ………??。

 

 反応が鈍い、ロリ巨乳は趣味じゃないのか?。

 俺は好物なのだけど、もしかして、アンネは貧乳ロリが好きなのかもしれない。

 まぁ、アンネの性癖なんて、これっぽっちも興味はないのだけども。

 

 口には出さずに荷台に戻り、寝転がる俺。

 アンネは、そのままの体勢で、手綱を握りしめて、俺へと話しかける。

 

 そうして夕暮れに照らされた馬車は、アステロイドへと向かって進む……。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ここに来た時に泊っていた宿の入り口で、アイギスとフレイは、仲良く俺を出迎えてくれた。

 武器を新調しているみたいで、新品の鉄の弓と、メスタイトが付いた杖を持って居る二人。

 ……羨ましく思うも、自業自得なので何も言えない。

 

 「「お帰りなさい!」」

 「……ただいまー」

 

 そんなやり取りをした横で、アンネは『うむ、いいぞ……』と良からぬ事を企んでいる顔をしている。

 

 ……一応、紹介しておかなくてはならない。

 

 「……こちら、アンネさん。騎士団長で、俺の監視役だったんだけど。……刑罰が終わったから、後は借りたお金返すだけの間柄だよ」

 「それだけではない間柄だがな?」

 「ホントに、ちょっと黙ろうか……」

 

 俺が制止するも、アンネは『フッ……』と不敵に笑う。

 

 ……コイツまじで泣かせてやりてぇ……。

 そんな気持ちを押さえつける。

 

 アイギスは俺の背中に隠れながら『どうも』と挨拶をしている。

 

 「……アイギスって人見知りだっけ? そんな印象なかったけども……」

 「……いえ、ここの人達って、結構強引な所があるので……」

 

 ……あぁ、あの押し売りのせいか。

 

 なんとなく納得してしまう。

 

 そして、フレイは俺達を代表して、アンネへと向かって話しかけた。

 

 「うちのミソギがお世話になったみたいで……、色々とご迷惑をお掛けしなかったかしら?」

 「いやいや、とんでもない。ミソギちゃんは大人しかったぞ? それこそ、……な?」

 

 深々と頭を下げるフレイに、俺へと意味ありげに視線を送るアンネ。

 

 ……された方なのだけども、鉱山に移送されるまで、毎晩看守さん気絶させて侵入して、副団長に毎朝怒られながら、出勤してたの知ってるんだけども……。

 

 勿論、俺は借金をしている身、アンネが不利になるような事は、何にも言わない。

 

 「それで、ミソギの借金を肩代わりして頂いたのは助かったのだけども……、 騎士団長クラスの方が、留置所に入って居るミソギを庇っても、大丈夫なのかしら?」

 

 フレイがアンネへと心配そうに言う。

 だがアンネは、またもやニヤリと笑い……。

 

 「あぁ、問題ない。肩代わりした事を、正直に騎士団へと伝えた……。そして明日から1年間の謹慎処分を受けたぞ!! そして降格した……、つまり1年間自由だ!!」

 「「「……」」」

 

 盛大に胸を張り、とんでもない事を言ってくるアンネ。

 それに呆気に取られる俺達3人。

 

 俺へとウィンクしながら、さらに続けるアンネ。

 

 「だからこれからよろしく頼むよ、フレイにアイギス、そ・れ・と、ミソギちゃん?」

 「「「……」」」

 

 無言の俺達なのだけど、突然、俺の背中越しにアイギスが。

 「……アンネさんって凄く豪胆な方ですねぇ……、ミソギさんの為に、お金払って正直に騎士団の方達に報告するなんて……」

 と囁いてくる。

 

 ……間違ってない……、間違ってないけど……。

 けどそうじゃない、勘違いをしている。

 コイツは女漁りしたいがために、女性だけの騎士団に入った奴なんだ。

 

 ……と言いたいが喉から出そうになるのを、必死に堪える。

 もうそれは自分の首をリアルに絞めながら……。

 

 「どうしたの? ミソギ、自分の首を絞めて……」

 

 不安そうに、心配してくれるフレイ。

 深呼吸しながら俺は。

 

 「いや……大丈夫、……ふぅ……落ち着いた」

 

 ……重すぎる……重すぎてヤバイ、話題を変えなくてはならない……。

 

 そんな事を思っているさなか、アイギスは俺の手を掴んだ。

 

 「それでどうでした? 鉱山労働大変でしたか?」

 

 ……ナイスすぎる!! 。

 

 俺は、ちょっとだけ苦労したような態度を見せて。 

 

 「あ、ああ、……うーん……それなりに、大変だったぞ。それよりも見てくれよ!!」

 

 するりと話題を変える。

 

 「何か持って帰って来たのかしら?」

 

 フレイとアイギスは、俺へと視線を向ける。 

 そんな俺は意気揚々と、ポーチの蓋を開けると……。

 

 ……オリハルコンが無くなっていて、代わりに金色に輝くふぐりがこんにちわしていた。

 

 「……え?」

 

 呆然とする俺にアイギスとフレイが興味津々で食いついてくる。

 

 「ふぐりちゃんが金色になったんですか? すごいですね!!」

 「ふぐりが金色に輝いているのだけど、すごいわね! どうしたの?」

 「……」

 

 事情を知らないアイギスとフレイ。

 いつもなら『ふぐり』発言に、ちょっとだけ興奮するのだけど……。

 ……今は、その言葉に反応出来ない。

 

 「……」

 

 無言で金色に輝くふぐりを掴む。

 感触は、いつも道理で柔らかくプニプニだった。

 ただ、ふぐりが黄金色に変わっているだけだった……。

 

 アンネが、小声で俺の耳元へと囁く。

 

 「……ミソギちゃん……オリハルコン、なくなったな……、フヒヒ!!」

 「……」

 「フヒヒ!! フヒヒ!!」

 「……」

 

 アンネへと視線を移動させると、その表情は満面の笑顔だった……。

 そして無言を貫く俺は今、ふぐりにオリハルコンを食べられたのだと認識する。

 

 ……そっかぁ……、お前、オスタイト食べないのに、オリハルコン食べるのかぁ……。

 

 ポロリと涙が、俺の頬を伝う。

 

 借金はまだまだ返せそうにない……。

 




誤字とか脱字とか、申し訳ありません……、いつも訂正して頂いて感謝です!!。


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27 フレイの叔父!!

 アステロイドから家へと帰って来た俺達。

 昼前なのに、アイギスはまだ寝ているみたいで、起きてこない。

 アンネは、フレイ宅へと居候するようで、お役所で引っ越しの手続きへと出かけている。

 

 そしてフレイはテーブルの前へと座っていて、俺はその隣で文字を教えて貰っている所だった。

 

 「なぁ、なぁ『セット売り』と『バラ売り』ってどう書くの?」

 「ええっとねぇ……、こう書くのよ?」

 

 長く赤い髪をポニーテールにしているフレイが、ペンを持って羊皮紙に文字を書く。

 それを眺めながら、お茶をズズズッと啜る俺。

 

 「これが『セット売り』で、これが『バラ売り』よ? ……でもどうしてこんな文字が必要なの? アルバイトに関係あるのかしら……」

 

 不思議そうな表情で、俺の顔を見るフレイ。

 

 「そうそう、ちょっとバイトでさー。使うんだよ、この文字をなー」

 「ウルトラTSクリエイターだっけ? アイギスに聞いたわよ。どんなバイトなのよ?」

 

 ……チィ……、あいつ口割りやがったのか……後で胸揉んでこよう。

 そう心の中で舌打ちをしながら、俺はそっぽを向く。

 

 「……」

 「………」

 

 ……非常に気まずい。

 

 だから俺は、口を開かざる負えなかった。

 

 渋々とフレイに言ってみる。

 「……どんなって言われても……まぁ、その色々と……」

 と、ちょっとだけ言い淀んでしまうが仕方ない。

 

 だが、フレイは尚も引き下がらない。

 

 「その色々って何よ?」

 「……」

 

 ……どうしよう、おじさんとかお兄さんとかを、TSさせて金を巻き上げてるだとか。

 大っぴらには言えないしなぁ……。

 

 無言でそんな事を思いながら、必死に考えた、その結果……。

 

 前髪をかき揚げて、フレイへと恰好を付けながら言ってみた。

 

 「……フッ……、人の願望を叶えて満足してもらうお仕事さ……、その為には、必要なんだよ、この文字がさ……」

 

 トントンと、羊皮紙の『セット売り』と『バラ売り』の文字へと指で叩く。

 するとフレイは、訝しげな表情で。

 

 「……そのバイトに『セット売り』と『バラ売り』の文字が、何故必要なのかしら……、ちょっと良く分からないわねぇ……、また、変な事をしなければいいのだけども」

 

 フレイは腕を組みながら、俺を心配するような表情で見てくる。

 勿論俺は、それ以上何にも言わずにズゾゾゾゾッと、お茶を飲み干した。

 

 ……なんとか誤魔化せたようで、一安心する。

 

 魔道具を買いたい、それはもう喉から手が出る程に。

 だが、先にアンネの借金を返さなくてはならない。

 それは人として当たり前の事だろう。

 それにこれ以上、奴に借りを作ったままじゃ、安眠出来ない、物理的に……。

 

 俺は飲み干したコップを机に置いた後。

 「……フレイ!! お茶お代わり!! いつもの奴!!」 

 と要求すると。

 

 「……もう、しょうがないわねぇ……。淹れてくるから、その代わりにアイギス起こして来て頂戴? もうそろそろお昼でしょう? アンネももうすぐ帰ってくるから、皆でどこかにご飯を食べに行きましょう!!」

 

 俺のコップを持ったまま、ゆっくりと立ち上がりキッチンへと歩いていく。

 だが、その途中、何かを思い出したかのように、俺へと振り返る。

 その表情から察するに、大事な事なのだろうと思う。

 ……なんだろか?。

 

 「……どしたの?」 

 「思い出したわ!! 今日はご飯食べた後に、叔父の家に行くわよ!! アステロイドで、ミソギ捕まっちゃってて、結局行けなかったじゃない?」

 

 ……そういや、そんな事言ってたな。

 5回目だったか、6回目だったかの下着パクってた時だっけ。

 フレイに怒られた後に、叔父がどうたらとか……。

 

 俺は頷きながら、それに答える。

 「ああ、ああ、覚えているとも。色々あって、すっかり忘れてたなぁ……」

 

 ……ホント、色々あり過ぎて、その事がぶっ飛んでたわ。

 

 俺の言葉にフレイは『そうよ!』と言いながら。

 「ええ、調度アンネも仲間になったじゃない? まとめて紹介したいから、一緒に行きましょう!」

 と、ほがらかな表情を俺に向けて来る。

 

 超お世話になっている身としては、是非とも叔父へと自己紹介に行かせてもらおう。

 俺は『了解!!』と敬礼して、アイギスの部屋へと向かった。

 

 

 

 ……アイギスの部屋は、2階の階段を上ったすぐ傍にある。

 階段を上りきった俺は、アイギスのドアの前に立ち、そのまま開け放つと……。

 

 「起きろやぁぁぁ!! フレイさん呼んでんぞぉぉぉ!!」

 

 だが、叫んでみるも返事はない。

 

 別に怒っている訳じゃない、こうしないと起きてこないアイギス。

 寝起きが悪いアイギスは、大きな声で起こさないと起きない。 

 今日は、これでも起きないみたいだった。

 いつもなら『ひゃい!!』とか聞こえるのだけども。

 

 そのまま気にせずに、ズカズカと中へと入ると……。

 

 ベッドの上には『グースカピー』と鼻提灯を作りながら、シャツをはだけさせて、腹を出すアイギスが幸せそうに眠っていた。

 

 ……まだ寝てる、寝る子は育つって言うけども、それ以上育ってどうするよ。

 

 そんな事を考えながら俺は、アイギスへと近づいて、唐突に鼻と口を塞ぐ。

 揺らしても起きなさそうだったから。

 

 すると、アイギスは『ムグググ……』と言いながら、冷や汗を流し始める。

 

 「……」

 「ムグググ……」

 

 起きそうで起きないのがエルフクオリティ。

 いや、僕っ娘耳長エルフ特有なのかもしれない。

 

 無言で離したり、塞いだりしていると、ちょっと楽しくなって来たのだけど、残念な事にアイギスの瞼が徐々に開き始めていく。

 

 「……おはよう。もう昼だぞ? はよ起きろ」

 

 声を掛けた後に、アイギスの目が開ききった所で、すぐさま手を引っ込める。

 こういうギリギリの、バレるとかバレないとかの緊張感が、やっぱり楽しいと感じちゃう。

 

 俺の行為に、気づいた様子はないアイギスは、呼吸を荒くして。

 「っプハァ!! ……ハァ……ハァ……ハァ……。あ、朝ですか?」

 「いや昼だよ」

 

 そう言うと、アイギスはハッ! としながら跳ね起きて息を整えている。

 ヨダレで手がベトベトになった俺は、メイド服のミニスカートで、それを拭う。

 うへぇ……。

 

 「ふぅ……ふぅ……。お、おはようございます……、なんだか水の中で溺れる夢を見てました……」

 「そっかー」

 

 ……そりゃ、手で鼻と口を塞いでたからな、そんな夢も見るだろうさ。

 俺はベッドに腰掛けて、溜息を付きながらアイギスへと話しかける。

 

 「……それよりも今日、アンネ含めた4人で昼飯食べに行くってさ。だから服着替えて行こうぜ?」

 

 フレイに言われた事をアイギスへと伝えてみると……。

 アイギスは笑顔になって、ベッドから降りてシャツを脱ぎ始めた。

 そして、タンスの中をゴソゴソしながら『どれにしましょう?』とか俺に聞いてくる。

 

 「……俺と同じメイド服でいいんじゃね? アステロイド行く前に、フレイと一緒に、服とか買い物に行ってたよな? 確か、その時フレイに『これもミソギが着ていた物と同じ物よ!』とか言われて買った奴とかどうよ」

 

 フレイの物まねをしつつ、さりげなく俺と同じ物をオススメしてみる。

 何となくメイドシンパシーを感じていたい。

 

 ……外へ出歩くのに、俺一人だけメイド服で浮くのは嫌だしな。

 

 そんな事を思いながら、アイギスを眺めていると。

 ダンスから引っ張り出して来たメイド服を、俺へと見せながら、笑顔のアイギスが元気良く言った。

 

 「わかりました!! 着替えたらすぐに行きますね!!」

 「うんうん、そんじゃ、俺はフレイのトコ行ってるからなー」

 

 頷きながら満足しつつ、俺はアイギスの部屋を出る。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 俺達は仲良く昼飯を食べた後、フレイの叔父の屋敷の前へと来ている。

 大きな門を抜けた先、その屋敷のドアの前に、セバスチャンっぽい老執事が、俺達を待っていた。

 

 ゆっくりと、そして完璧なお辞儀をした後に、俺達へと語り掛ける。

 

 「いらっしゃいませ、ブラスター家へようこそ。フレイ様。それとお客様達、どうぞお入りください……」

 「ご苦労様、セバスタン。後はアタシが案内するから、叔父さん呼んできて頂戴?」

 「畏まりました」

 

 ……セバスチャンじゃなくてセバスタンなんだ。

 

 俺は『あ、どうも』と執事さんに頭を下げながら、フレイの後について行いていく。

 

 中に入ると、目の前に広がるのは、イメージ通りの広い玄関。

 周囲には、高そうな調度品が並んでいる。

 

 それに『ホエー』と見とれながら、屋敷版お上りさんになっている俺に向かって、セバスタンが微笑みながら、再度お辞儀をする。

 

 「……それでは、ご当主をお呼び致しますので、居間でお待ちください」

 「居間はこっちよ? ついてきてね?」

 

 俺達3人は、フレイに案内されるまま、居間の中に入って椅子に座って大人しく待つのだけど。

 ちょっとだけ緊張している俺は、それを解す為に、隣に座るフレイに聞いてみた。

 

 「……フレイの家名って、ブラスターなの? ちょっと恰好良いな……」

 「ええ、そうよ? けど恰好良いかしら……、そんな事考えた事ないのだけど……」

 

 首を傾げるフレイに、俺の小声を聞いたアイギスが、こっちに向きながら。

 

 「ブラスター家は、ここら辺一帯を取り仕切る領主様ですよ、だからあまり粗相しちゃだめなんですよ?」

 「……お前、俺を何だと思ってんだ……」

 「仲間です!!」

 「あ、うん……ありがとう……仲間ってなんだっけ……」

 

 なんだか分からないけど、何となくアイギスへとお礼を伝える。

 すると隣のアンネが、俺の肩へと手を置きながら言う。

 

 「……マナーとかは大丈夫か? 分からないなら私の言う通りにするんだぞ? ……フヒヒ!!」

 「……知らないけど、やってやんよぉぉぉ!! 見てろやぁぁぁ!! 粗相なんてしねぇからよぉぉぉ!!」

 

 大きなテーブルを両手で叩きながら叫ぶ。

 するとフレイがフフッと笑い、俺へとほほ笑えむ。

 

 「別に粗相とかマナーとか、マキシマム叔父さんは気にしないわよ?」

 「そっかー……、え? マキシマム叔父さん?」

 「そうよ? それがどうしたの?」

 「なにそれかっけぇ……」

 

 不思議そうな顔をするフレイは『何故?』首を傾けているのだけど……。

 

 ……家名と合わせたら、マキシマム・ブラスター叔父さんだろ? なにそれかっけぇ……。

 ということは、フレイも、フレイ・ブラスター? すっげぇかっけぇ……。

 

 その響きに俺の中にある、少しだけ残った厨二的な心がくすぐられてしまう。

 目を輝かせた俺に、フレイはさらに続ける。

 

 「だからあんまり緊張しなくていいわ。叔父さんはユニークな人よ?」

 「あ、うん。マキシマム・ブラスター叔父さんで、緊張とかぶっ飛んだわ……」

 「あらそう? なら良かったわ、それじゃ大人しく待って居ましょう」

 

 フレイにそう言われた俺達は、マキシマム・ブラスター叔父さんを待ち続ける……。

 

 

 待つ事数分。

 勢い良く、居間の扉が開かれた。

 俺達は、一斉にそこへと視線を向ける。

 

 そこに立つ人物は、フレイと同じ髪色をしたオールバック、40代のナイスミドルだった。

 

 「やぁ、フレイのご友人達だね? 私はフレイディザスターの叔父の マキシマム・アトミック・ブラスターだ! よろしくお願いするよ!」

 

 ……マキシマム・アトミック・ブラスター!?。

 いや、それよりもフレイディザスターって事は、フレイの本名は……。

 フレイディザスター・アトミック・ブラスター!? なにそれかっけぇぇぇ!!。

 

 とんでもない自己紹介に、もう俺の口と眼は最大まで開かれている。

 

 それに気にした様子はないマキシマム・アトミック・ブラスター叔父さん。

 開かれた扉の様に、勢い良く歩き、そのままの速度でフレイの対面へと座る。

 

 「叔父さん、ごめんなさいね? ちょっとアステロイドで色々あってね……」

 申し訳なさそうに言うフレイに、マキシマム・アトミック・ブラスター叔父さんは。

 「構わんよ! こうしてわざわざ来てくれたのだろう? それで充分だ」

 と笑顔で答える。

 

 アンネとアイギスは、マキシマム・アトミック・ブラスター叔父さんへと、自己紹介を済ませて俺の番が回って来たのだけど。

 放心して、それどころじゃない俺は、マキシマム・アトミック・ブラスター叔父さんを見つめている。

 

 もう名前が凄い、フレイもマキシマムさんも名前が凄すぎる。

 

 その、あまりに恰好良すぎる名前に、未だ心ここに有らずの状態。

 もう脳内は『しゅんごぉぉぉい』と『かっけぇぇぇ』で埋め尽くされてしまっている。

 

 俺は口を押えてプルプルしていると、不意に横腹に違和感を覚えた。

 横を見ると、隣のフレイディザスター・アトミック・ブラスターが、俺の横腹を突き『どうしたの?』と聞いてくる。

 

 ……ハッ!? 俺は一体何を……、そうだ、マキシマム・アトミック・ブラスター叔父さんに自己紹介をしなきゃいけないんだった……。

 

 なんとか正気に戻った俺は立ち上がり、腰を45度に曲げて、お辞儀をしつつ。

 「初めまして! ミソギ・サイキョウと申します! いつもフレイディザ……フレイさんにお世話になっております!!」

 

 ……マキシマム・アトミック・ブラスター叔父さんへと挨拶をした。

 

 




マキシマム・アトミック・ブラスター叔父さんにフレイディザスター・アトミック・ブラスターさん回でした。
アルティメット・クラスターかアトミック・ブラスターかで、すっごく悩んでしまいました。


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