アサルトリリィ ヒュージとリリィのFusioner (アイリエッタ・ゼロス)
しおりを挟む

プロローグ



サブタイトルは良いのが思いついたら変えようと考えています。


 日本にあるとある企業の研究所。そこでは、今まさに惨劇などでは表現できない様な事が

 起きていた。

 

「ヒ、ヒィィィ!?」

「や、やめてくれ!」

『....よくそんな事が言えるね』

 そこにいるのはこの研究所の研究員と、一人の年端もいかない少女だった。だが、

 その少女はただの少女ではなかった。

 

 何故なら、少女の身体からはおぞましい翼が生えており、片腕は巨大な銃剣に、もう片方の腕は

 人の腕だが、手に武器の様なものを持っていた。さらに、頭には禍々しいツノが生えており、

 髪の毛の一部は先が尖った触手に、そして血の様な真っ赤な目をしていた。

 

「き、貴様! 自分が一体何をしているのかわかっているのか!」

 すると、一人の年老いた研究員が少女に向かってそう叫んだ。その男はこの研究所の

 所長で、たった一人の少女に研究所を破壊された事に憤慨していた。

 

『何をしているか....? 私はただ、あなた達の様な人殺しを殺しに来た。そして、罪の無い

 リリィを助けに来た』

 そう言いながら少女は銃剣を振るった。その少女に一番近かった研究員の首は

 吹っ飛んでいった。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

『叫ばないで』

 少女は冷たい目で叫んだ男を睨むと、銃剣からマギで形成された弾丸を放った。その弾丸は

 叫んだ男の眉間に当たり、男はそのまま前に倒れ込んで絶命した。

 

「っ....! このバケモノめ....!」

『バケモノ....私はこうしたのはあなた達の企業よ』

 そう言いながら、少女は再び弾丸を放ち、手に持った武器を振るった。

 そして、気づけば生きているのは少女と研究所の所長だけになった。

 

『お仲間はみんな死んだ....あとはあなただけよ』

「....ふざけよって! 儂を殺すという事は、人類の知恵を奪うという事だぞ! 

 貴様は人類が消滅しても良いと言うのか!」

『人類の知恵....? ....幼気な少女の身体を改造するお前がそう言うのか!』

 少女は男の言葉に怒ると、男の両腕を斬り落とした。

 

「ガァァァァ!? 儂の腕がぁぁぁぁ!?」

『痛い? でも、人体実験をされたリリィ達の痛みはその程度じゃない。

 もっと痛かったし、苦しかった』

 少女はそう言いながら、男の眉間に銃口を当てた。

 

『....私は、お前達G.E.H.E.N.A.を許さない。....お前も知ると良い。死というものが、

 本当はどういうものか』

「や、やめろ....」

『....リリィ達もそう言ったはずよ。だけど、お前達はやめなかった。

 ....なら、私がやめる道理はない』

 少女はその言葉を最後に、銃剣のトリガー引いた。

 

 〜〜〜〜

 ? side

 

「....ふぅ」

 研究所の老害を殺した私は、所長室からこの研究所の研究資料を集め、

 老害が蓄えていた金の一部をカバンに入れて休憩していた。

 

「(....そろそろリリィ達や警察が来る。来る前にここから離れないと)」

 そう思いながら、私はカバンから数十個の❌マークがつけられた地図を取り出した。

 そして、その地図のある部分を赤いペンで❌マークをつけるとこう呟いた。

 

「さてと....次の目的地、何処にしようかな....」

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一話

「....到着っと」

 私は電車に乗って鎌倉府にある藤沢駅に来ていた。何故鎌倉府に来たかというと....

 

「(しらすご飯のお店、この時間にやってるかな)」

 鎌倉府の名物であるしらすご飯を食べるためだ。

 ここしばらく、ヒュージとの戦闘やG.E.H.E.N.A.の研究所の破壊が連続したため、

 気分転換をしようと思い、鎌倉府までやって来た。もちろん気分転換のためだけに

 来たのではなく、この近くにあるG.E.H.E.N.A.の研究所を破壊するのと、この付近に

 隠しておいたCHARMを取りに来るという理由もあった。

 

「(....それにしても、何だかリリィが多いような)」

 私は駅を行き交うリリィ達を見てそう思った。

 

「(あの制服、確か百合ヶ丘の....時期的に考えて入学式?)」

 そんな事を考えながら駅を行き交うリリィ達を見ていると、一際目立つリリィがいた。

 そのリリィは他のリリィ達と違い、変わった制服を着ていた。

 上はどこかチャイナドレスっぽく、スカートには深いスリットが入っていた。

 

「(あれ、制服って言うのかな....?)」

 そう思いながらそのリリィを目で追っていると、そのリリィのCHARMを入れていると

 思われるケースから何かが落ちた。よく見てみると、それは黒猫のストラップが付いた

 携帯だった。だが、そのリリィは携帯を落とした事に気づいておらず、どこか

 落ち込んだ様な表情をしながら歩いて行ってしまった。

 

「(....気づいていない? というか踏まれそう....!)」

 私は自分が使えるレアスキルの一つ、“縮地”を使ってリリィ達を避けながら、踏まれそうに

 なった携帯を回収してリリィ達から離れた。

 

「(さっきのリリィは....)」

 そして、私は“鷹の目”を使って携帯を落としたリリィを探した。そのリリィはここから

 少し離れた所にいるのがわかった。

 

「(急いで追わないと)」

 私は前にいるリリィ達を避けながら携帯を落としたリリィの腕を掴んだ。

 

「ふえっ!?」

「やっと追いついた....」

 私が腕を掴んだ事に、そのリリィは素っ頓狂な声を出して驚いていた。

 

「お姉さん、これ落としたよ」

 そう言って、私は拾った携帯電話を見せた。

 

「っ!? 私の携帯!」

「(ホントに気づいてなかったんだ....)」

 リリィの反応を見て私はそう思った。

 

「良かったねお姉さん、拾ったのが私で。変な人に拾われたら大変だよ」

「そ、そうだね....ありがとう」

 お姉さんがそう言ったので、私は携帯をお姉さんに渡した。

 

「どういたしまして。....その猫、なかなか良いセンスしてるね」

 私は携帯に付いている猫のストラップを見ながらそう言った。

 

「っ....! ありがとう」

「....どういたしまして。じゃあお姉さん、私はここで」

 そう言って、私はここから立ち去ろうとしたが....

 

「ま、待って!」

 私はお姉さんに呼び止められた。

 

「あのっ、拾ってくれて本当にありがとう。....それと、猫の事褒めてくれて嬉しかった」

「....そっか。それなら良かった。....それよりもお姉さん、電車の時間大丈夫?」

 私は時計台を指差してそう聞いた。すると、お姉さんはハッとした表情に変わった。

 

「急いだ方が良いよお姉さん」

「う、うん! 本当にありがとう!」

 そう言うと、お姉さんは私に一礼して駅の方に向かって走っていった。

 

「(かなり綺麗なリリィだったな....それにスタイルも良かったし、顔も好みだったし....

 名前ぐらい聞いておけば良かった)」

 私は名前を聞かなかった事を後悔しながら、この場から立ち去った。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二話

「....これでここも終わりっと」

 私は今破壊した研究所がある場所に❌マークをつけた。

 綺麗なリリィに出会って一週間近くが経ち、私は鎌倉府の近くにあるG.E.H.E.N.A.の

 研究所を片っ端から破壊していた。

 

「(後のことは、リリィ達に任せた方が良いわね)」

 私は別の部屋で眠っている強化リリィ達の事を思い出しながら、研究所を出た。

 そして、周囲を見渡すために“鷹の目”と“テスタメント”を同時に発動すると、遠くの方で

 巨大なヒュージの存在を発見した。そのヒュージからかなり離れた先には、かなりの数の

 リリィがいる事も分かった。

 

「(ヒュージがいるのは海の上? それにヒュージが向かってる先って確か....)」

 私は❌マークをつけた地図とは別の地図を取り出した。そして、移動の方向を予測すると

 ヒュージが向かっている先は百合ヶ丘女学院だった。

 

「(....百合ヶ丘のリリィか。あのリリィも確か百合ヶ丘だったし見に行ってみようかな)」

 そう思っていると、私はついでに良いことを思いついた。

 

「(ここにいた強化リリィ、百合ヶ丘まで運んであげよっと)」

 私は研究所で眠っているリリィ達を触手で運べる様に結んで、羽を展開して空に

 飛び上がった。そして、百合ヶ丘女学院の場所を再確認して百合ヶ丘女学院に向かった。

 

 〜〜〜〜

 

「(おおっと、結構な数のリリィね....)」

 強化リリィを百合ヶ丘女学院まで運んだ私は、リリィ達が集まっている場所の上空で“鷹の目”と

 “ユーバーザイン”を使って様子を見ていた。

 

「(見たところ、陸に上がったのをここで迎撃するのね....)」

 そう思いながら様子を見ていると、ヒュージが飛び陸地に上がった。すると、最前線にいた

 黒髪ロングのリリィがヒュージに突っ込んでいった。

 

「(良い動き....でも、随分と危なっかしい戦い方をするわね)」

 私は黒髪ロングのリリィの戦い方を見てそう思った。すると、リリィが攻撃したヒュージの

 殻の部分から何かの光が見えた。

 

「(今の光は....)」

 すると、黒髪ロングのリリィは相手の攻撃を利用して光った部分を爆発させた。すると、

 そこから現れたのは傷がついた無数のCHARMだった。

 

「何てCHARMの量よ....! あのヒュージ、どれだけのリリィを....」

 そう思っていた時、突然黒髪ロングのリリィから濃密なマギを感じた。

 すると、黒髪ロングのリリィの髪の色が突然白髪に変わった。

 

「ルナティックトランサー....」

 リリィの髪の色が変わったのは、私の使えるレアスキルの一つ“ルナティックトランサー”を

 使ったからと私はわかった。

 

「(完全に暴走してる....というか暴走してるのはヒュージもか....)」

 私は周りにいるリリィ達に危険が及ぶと思い、持っていたCHARMを銃の形に変形させ、

 “天の秤目”を発動させて暴走するヒュージの触手をマギで形成した弾丸と背中にある翼から

 放たれるレーザーで撃ち抜いた。

 

「(とりあえずバレてはないか....というかあのピンク髪のリリィは何をして....)」

 私が触手を撃ち抜いている間に、白髪になったリリィに向かってピンク髪のリリィが

 突っ込んでいた。そして、二人のリリィのCHARMがぶつかると、CHARMの間に

 マギスフィアが形成された。それと同時に、“ルナティックトランサー”を発動していた

 リリィの髪の色が戻り、“ルナティックトランサー”の発動が解除されていた。

 

「(あの子、“ルナティックトランサー”を解除した....?)」

 そう思っていると、二人はお互いのCHARMを重ねてマギスフィアをヒュージに叩きつけた。

 その一撃で、ヒュージは大爆発を起こした。その大爆発の爆風は、上空にいる私にまで

 届いてきた。

 

「(っ!? どんな威力してんのよ....!)」

 私は咄嗟に翼を動かして吹いてきた爆風から身を守った。そして爆心地から煙が晴れると

 そこには抱き合った二人のリリィがいた。

 

「(あんな凄い一撃放っといて穏やかな表情を浮かべてるわね....)」

 その様子を眺めていると、大爆発を起こしたヒュージの触手が小さく動いた。

 

「っ!」

 そして、その触手は近くにいた黒髪と亜麻色の髪のリリィに襲いかかろうとしていた。

 

「(狙撃は、ダメね....射線にリリィが多いから下手すりゃ落とされる。だったら....!)」

 私は髪の毛を触手に変えて空中を蹴り、触手が襲いかかろうとしたリリィ達の近くに着くと、

 二人のリリィ達の前に触手で壁を作った。そして、空中で一回転し持っていたCHARMで壁に

 ぶつかった触手を斬り伏せた。そのまま触手を地面から引き抜いて私は一気に上空まで飛んだ。

 

「(騒がしくなってる....今のうちに逃げよ....)」

 私は下で騒がしくなったリリィ達を見て、急いでこの場から離れていった。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三話

「こんな時間に呼び出してすまなかったのう」

「いえいえお気になさらず。どうせ四六時中起きてますから」

 巨大ヒュージとの戦闘があった数日後、私は理事長室に来ていた。

 

「無理はせぬ様にな。....それで、報告とは?」

「数日前のお昼頃、学園の校舎の前に倒れていた子達の事です。先程目を覚ましたので少し

 話しを聞いたのですが....」

「何か分かったのかね?」

「えぇ。....倒れていた四人はG.E.H.E.N.A.の研究所で囚われていたリリィ、強化リリィでした」

「G.E.H.E.N.A.か....となると....」

「おそらく、というか確実にG.E.H.E.N.A.殺しが関係しているでしょうね」

 G.E.H.E.N.A.殺しとは、数年前から世界中のG.E.H.E.N.A.の研究所を破壊し、研究所に

 囚われたリリィ達を救う謎の存在だ。その正体は謎に包まれており、誰一人として

 その正体を知る人間がいないと言われている。

 

「G.E.H.E.N.A.殺しか....」

「そのG.E.H.E.N.A.殺しなんですが! 実は彼女達の一人からG.E.H.E.N.A.殺しについての

 有力な情報が手に入ったんですよ!」

「有力な情報?」

「はい! それはもう、G.E.H.E.N.A.殺しの正体に近づくかもしれぬ情報が!」

 そう言って、私は持ってきた紙を見せた。

 

「情報を持っていたのは彼女達のリーダー格の子で、一瞬ですがG.E.H.E.N.A.殺しの姿を

 自分の目で見たらしいんです。その姿なんですが、銀髪で人間の様な姿をしており左手に

 CHARMを持っていたそうなんです」

「CHARMを....という事は、G.E.H.E.N.A.殺しの正体はリリィという事か?」

「話を聞いた上ではそうです。ですが、それだとおかしいんですよね」

「おかしいとは?」

「これを見てください」

 私は持ってきた端末を操作した。すると、理事長代行の前に空中ディスプレイが現れた。

 そのディスプレイにはある遺伝子が映し出されていた。

 

「この遺伝子は彼女達四人の衣服に付着していた謎の細胞を調べたものです。その結果、

 この細胞の遺伝子はヒュージ由来の物と一致しました」

「ヒュージ由来....」

「となると、先程理事長代行がおっしゃったG.E.H.E.N.A.殺しの正体はリリィという事が

 おかしいんですよ。現在、リリィであり、ヒュージの遺伝子を持った人物はこの世で

 一人として現れていません」

「確かに、その通りだ....」

「これを踏まえての私の予測ですが、現状は三つです。一つ目は表沙汰にされていない

 リリィの中にヒュージの遺伝子を持った人物が現れた。二つ目はリリィでヒュージを

 操る人物が現れた。そして三つ目がリリィに化け、CHARMを操るヒュージが現れた」

「....もしもどれかが当たっているなら三つ目はやめてほしいものだ」

「それに関しては私も同感ですかねぇ....」

 そう言いながら端末を操作して、私はディスプレイを消した。

 

「とりあえず、現状の報告は以上となります」

「そうか....ひとまずご苦労だった」

「はい。それと、彼女達の処遇はどうします?」

「とりあえずこの学園で保護という事にしておく。その後は彼女達の希望を聞いて

 生徒会の三人と相談して対応しよう」

「分かりました。じゃ、四人には私の方から報告しておきますね」

「あぁ。頼んだよ百由君」

「じゃ、失礼しました〜」

 そう言って私は理事長室から出た。

 

「さてと....」

「(ヒュージの遺伝子を持ったリリィか....我ながら何を言ってんだか....)」

 私は自分の発言に苦笑しながら工廠科の方に戻った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四話

 百合ヶ丘に強化リリィを送り届けた一ヶ月後、私は東京にあるとある墓場に来ていた。

 私の前にある墓には墓石は無く、マギクリスタルコアが抜かれ破損したCHARMが

 十六本刺さっており、そのCHARM一本一本には名前が彫られた金属製のドッグタグが

 固定されていた。そして、私の手には墓花があった。

 

「....久しぶりに会いに来たよ、紗矢華さん、紗夜さん、芽衣さん、春菜さん、ヒカリさん、

 美優さん、雫、凛、奏、未来、紫苑、蘭、セレナ、雪菜。....そして、ひたぎ姉様」

 そう呟いて、私はCHARMの近くに墓花を置いた。

 

「....あれから、もう五年も経ったよ。私も昔と比べれば結構背も高くなったし....

 まぁヒカリさんや紗夜さんやひたぎ姉様には負けるけど....」

 

「....まだまだヒュージとの戦いは終わりそうにないよ。G.E.H.E.N.A.やこの世界の

 闇との戦いもね....」

 

「でも、必ず終わらせる。私と、ひたぎ姉様達から受け継いだ力で。だから、どうか天国から

 見守っていてください」

 そう言い終わった瞬間、突然近くにあるサイレンからヒュージが出現した警報音が鳴った。

 

「(....ヒュージか)」

「じゃあ、もう行くね。また来るよ」

 私はそう言って、ヒュージの気配が感じる方向へ走り出した。

 

 〜〜〜〜

 

「(避難は終わってるのね....なら戦いやすい)」

 墓場から移動して、私は民家の屋根の上から“鷹の目”で辺りを確認しながらヒュージを

 撃ちまくっていた。

 

「(ここは雑魚ばかりだから楽だけど、反応が強いのが二体いる....)」

 私はヒュージが感じる事の出来る気配を肌に感じながら、強い気配を放つヒュージの方に

 向かっていた。そして、そのヒュージを目視で確認できる場所に着いた。

 

「アレね....」

 私の視線の先には八つの角を持った飛行タイプのヒュージが二体いた。

 

「(こっちにはまだ気づいていなさそう....)」

 私はそう思いながら"天の秤目"を発動してCHARMをシューティングモードに変形させて

 ヒュージに銃口を向けた。そして、CHARMにマギを溜め私はマギの弾丸を放った。

 マギの弾丸はヒュージに頭に直撃すると、その場で爆発を起こして消滅した。

 そして、私はもう一体を狙おうとしたのだが、もう一体は危険を察したのか大急ぎで

 この場から逃げ出した。

 

「逃がさない....」

 私はヒュージの逃げた方向にある屋根を伝いながらヒュージを追いかけた。すると、

 逃げた先には満身創痍の状態のリリィが五人いた。

 

「(っ....嫌な所に逃げたわね....!)」

 そう思っている間にも、ヒュージは一番近くにいた薄緑色の髪の長いリリィに向かって

 突進しようとしていた。

 

「っ、させるか!」

 私は脚にマギを流し、屋根を力強く蹴って薄緑色の髪の長いリリィの背後に着地して

 CHARMを真っ直ぐに構えた。そして、突進してきたヒュージをブレードモードの

 CHARMで受け止めて上空に弾き飛ばした。

 

「沈め!」

 私は一瞬にしてCHARMをシューティングモードに変形させて、無数のマギの弾丸を

 ヒュージにぶつけた。無数のマギの弾丸は全てヒュージに直撃し、ヒュージは上空で

 綺麗な爆発を起こして消滅した。

 

「....ふぅ」

 私は一つ息を吐くと、シューティングモードのCHARMをブレードモードに変形させて

 背中のケースに入れた。すると....

 

「あ、あの!」

 私の背後にいた薄緑色の髪の長いリリィが声をかけてきた。

 

「た、助けていただきありがとうございます....!」

「あぁ....気にしないで。こちらこそ、あなたを危険な目に合わせてしまってごめんなさい」

 そう言って、私はリリィに頭を下げた。

 

「い、いえ! あ、頭を上げてください!」

 リリィがそう言っていると、金髪のリリィの体を支えている銀髪のリリィがこっちに

 歩いてきた。

 

「私のレギオンのリリィを助けていただきありがとうございます」

 銀髪のリリィはそう言うと頭を下げてきた。

 

「(この子がレギオンのリーダーなんだ....どこのガーデンだろ....)」

「気にしないでください。リリィは助け合いが大事ですから」

 そんな事を思いながら、私は銀髪のリリィにそう言った。その時、金髪のリリィは私の事を

 どこか観察している様だった。

 

「(長居はしない方が良さそうね....)」

「では、私はこの辺で失礼いたしますね」

 そう言って、私はここを立ち去ろうとしたが....

 

「あ、あの、良かったら名前を教えてもらえませんか?」

 薄緑色の髪の長いリリィはそう言って私を呼び止めてきた。

 

「名前ね....」

「(....名乗る名前なんて、とうの昔に捨てたけど)」

 そう考えながら、私はこう言った。

 

「名無し」

「えっ?」

「私は名前が無いからね。だから名無しって名乗ってる」

「な、名無し....」

「わー☆凄い名前!」

 すると、薄ピンクとピンク髪のリリィは真逆の反応をしていた。

 

「ま、一応名乗ったからあなたの名前も教えてもらえる?」

「わ、私は土岐 紅巴です!」

「あ☆ぼくは丹羽 灯莉だよ! で、こっちは定盛☆」

「定盛言うな! ひめひめって呼びなさいって言ってるでしょ!」

「えー。でも定盛は定盛じゃん」

 そう言って、二人のリリィは言い合いを始めた。その二人を薄緑髪のリリィはどうにか

 止めようとしていた。

 

「あなたのレギオン、面白そうなレギオンですね」

「ご、ごめんなさい....」

「良いんですよ。....何だか、少し羨ましく感じますよ」

「えっ?」

「気にしないでください。ただの独り言ですから。....では、私はここで失礼します」

 そう言って、私は脚にマギを溜めて跳び、この場から離れた。

 

「(あの喋り方、疲れるなぁ....)」

 

 〜〜〜〜

 叶星side

 

「い、行っちゃった....」

 私は名無しと名乗ったリリィが走った方を眺めていた。すると....

 

「ねぇ叶星。今の子、本当にリリィなのかしら」

 突然隣にいる高嶺ちゃんがそう言ってきた。

 

「....高嶺ちゃん、それってどういう事?」

「さっきの子の指、叶星は見た?」

「指? 見てないけど....それがどうかしたの?」

「さっきの子の指に、指輪がなかったのよ。CHARMにマギを送るための指輪がね」

「えっ....!?」

 それを聞いて、私は耳を疑った。だって、さっきの彼女は紅巴ちゃんを襲おうとした

 ヒュージを倒していた。

 

「ありえないわよね。だって彼女は紅巴さんを助けるためにヒュージを倒した。

 CHARMから放たれるマギの弾丸でね」

「じゃ、じゃあ彼女は一体何者なの....?」

「さぁね。私にも分からないわ。リリィなのか、それとも別の何かなのか。....彼女の事に

 ついては、一度学園長に話してみるしかないわ。彼女についての情報はあまりにも少なすぎる」

「....そうだね。もしかしたら、学園長は何かを知ってるかもしれないね」

「そうね。....それと、もう一つおかしな事に気づいたの」

 そう言って高嶺ちゃんは再び耳を疑う様な事を言った。

 

「彼女のCHARM、マギクリスタルコアが一個じゃなかったわ」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五話

「....酷いことになってるわね」

 数時間前まで静岡にいた私は高速で飛んで東京の六本木に戻ってきていた。

 現在、東京の街はヒュージによる大規模な侵攻を受けていた。その理由は、東京にある

 巨大な壁、エリアディフェンスが破壊されたからだ。私は適当にタワーの上に降りると、

 辺りを"鷹の目"で確認した。

 

「(避難は終了してるか....なら少しは戦いやすい)」

 そう思い、私は背中のケースからCHARMを抜き、CHARMを一度半分にした。そしてCHARMの

 半分をもう半分のCHARMの先端に繋げて槍の形に変えた。すると、持ち手の部分のパーツが

 動き、狙撃銃のような形になった。

 

「"天の秤目"」

 そして、私がそう呟くと右目にいくつもの魔法陣のような物が現れた。私はその魔法陣を

 通して地面や空中にいるヒュージを捉えると、CHARMの引き金を引いた。銃口からは

 マギの弾丸が放たれ、照準に捉えたヒュージを一撃で倒していた。

 

「....数が多いだけってところか」

 そう思いながらヒュージを撃ち続けていたのだが、照準を移動させた時にたまたま

 ヒュージに押されているリリィが見えた。

 

「っ!」

「(随分と無茶な戦いしてるわね....この前のルナトラ使いよりもひどい....)」

 そう思っていると、そのリリィの背後からヒュージへの攻撃が迫っていた。

 

「マズい....!」

 私は瞬時にCHARMを元の剣の形に戻してリリィとヒュージの間に剣を投げ飛ばした。

 投げ飛ばしたCHARMは地面に突き刺さり、リリィへの攻撃を防いでいた。そして、CHARMを

 投げたのと同時に私も投げ飛ばした場所に向かって跳び出し、リリィへの攻撃を防いだ

 CHARMを一瞬で回収して攻撃してきたヒュージを斬り伏せた。

 

「そこのアンタ! 今のうちに引きなさい。そんな無茶苦茶な戦いだとマギが尽きるわよ」

「あ、あなたは....?」

「言ってる場合か!」

 そう叫びながら私はCHARMを分離させて片方をブレードモードに、片方をシューティング

 モードに変えてリリィの背後にいるヒュージを撃ちながら自分に近寄ってくるヒュージを

 斬りまくっていた。すると、こちらに向かって二人のリリィが走ってきた。一人は

 小柄ながらも斧のような巨大なCHARMを持っており、もう一人は茶髪のポニーテールで

 槍のようなCHARMを持ったリリィだった。

 

「そのリリィ二人! この青髪のリリィ連れて下がって! 青髪のリリィ、マギが乱れまくって

 戦いどころじゃない!」

「っ! わかりました! 藍ちゃん! そこのヒュージを倒して道を開いて!」

「はーい」

「ち、千香瑠様! 私はまだ....!」

 青髪のリリィは何かを言っていたが、千香瑠様と呼ばれたリリィはそれを無視して青髪の

 リリィを連れて走っていった。

 

「さて、不安要素は取り除けた。....ここからは手加減無しだ」

 そう言って、私は"縮地"と"ルナティックトランサー"を同時に発動させて辺りにいる

 ヒュージ全てを一瞬で真っ二つに斬り裂いた。

 

「(これでこの辺りはひとまず大丈夫かな....今のうちに)」

 私はヒュージの気配が一時的に消えたのを確認して、さっきのリリィ達が走っていった方に

 向かった。すると、私の隣を千香瑠様と藍と呼ばれたリリィが走っていった。そして、

 青髪のリリィが一人残っていた。だが、青髪のリリィの表情はどこか覚悟を決めたような

 表情をしていた。

 

「....覚悟が決まった。そんな表情をしてるわね」

「っ! あなたは....」

「さっきの焦っていた表情よりも良い表情してるわね」

「....私の仲間が、大切な事を思い出させてくれましたから」

「....そう。なら、その仲間を大事にしなさい」

 そう言って、私はある場所に向かおうとした。

 

「っ! 待ってください! ....先ほどは助けていただきありがとうございます。私は

 相澤 一葉と言います。あなたは、一体何者なのですか?」

「....ただの流れのリリィよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「流れのリリィ....」

「えぇ。....それよりも、早く行きなさい。きっと仲間が待ってるわよ」

「っ! はい!」

 そう言って、一葉は二人が走っていった方向に走っていった。

 

「(....あんなガーデンにも良い目をするリリィはいるんだ)」

 そう思いながら、私はヒュージの力を解放しエレンスゲ女学園に向かった。

 

 ~~~~

 エレンスゲ女学園研究室

 

「相澤 一葉は死んだか」

「いや、まだ死んでいない....」

「チッ....! せっかくここまで用意して計画したのに奴が死ななければすべて無駄だぞ!」

「わかっている。だが心配はいらん。あのデカブツのヒュージと戦闘になれば....」

『へぇ、デカブツのヒュージと戦えばどうなるの?』

 外でジジイどもの話しを聞いていた私はドアを蹴破って中に入った。

 

「な、何者だ貴様!?」

「お、おい衛兵達! この侵入者を始末しろ!」

 そう言った瞬間、中にいた兵士の服装の男どもが私に銃を向けた。だが、銃を撃つ前に私が

 自在に動かせる髪の毛で中にいた兵士を粉々に斬り裂いた。

 

「ひ、ひぃ!?」

「へ、兵士達が....!?」

「っ! その姿....貴様まさか、あの実験の!?」

『正解。それにしても、若い芽を潰す為にここまでするなんて。やっぱりこの世界にお前達の

 存在は邪魔だね』

 そう言いながら、右腕の銃剣をジジイどもに向けた。

 

「お、おい! 何をするつもりだ!」

『何って、お前らを殺すんだよ。じゃなきゃこんな所に来ないっての』

 そう言いながら、私はまず一人ジジイの頭をぶち抜いた。

 

「き、貴様ぁぁ!」

 ジジイを殺したのに逆上したのか別のジジイが私に向かってナイフを向けて突っ込んできたが、

 私は近づかれる前にジジイの首を触手で斬り落とした。

 

『さて、お仲間も殺されたけど命乞いでもしてみる?』

「ワシを殺したところでこの計画の行った人間は....」

『残念だけど、エリアディフェンスにいた人間は全員死んだよ』

「なっ!?」

『何でかわからないけど、ヒュージの襲撃にあったみたいだからね。()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()。どうしてかなぁ?』

「っ! まさか、貴様のレアスキルは....!」

 ジジイが何かを言おうとした瞬間、私はジジイを目の前から消滅させた。

 

『余計な事は言わないでいいんだよ』

 そう呟き、私は研究所にある気になった資料を回収して研究所の上空に飛び研究所に向かって

 巨大なマギの塊を落とした。研究所は落とした瞬間大爆発を起こして炎に包まれた。

 

『(これで証拠は隠滅っと)』

 そう思いながら下を見ると、一葉と、同じ服装をしたリリィがいた。

 

『....頑張りなよ、一葉』

 そう呟いて、私はこの場から離れた。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六話

「はぁ」

 私は一人、夜空を見ながらため息をついていた。その理由は、破壊しようとしていた

 G.E.H.E.N.A.が作り出したヒュージの核を持った人造リリィの卵を幾つか破壊し損ねて

 しまったからだ。

 

「(最悪....よりにもよってこんな大海原に投げ捨てて。こんな夜中じゃ探すのも

 一苦労だし....それにアルトラもいるし。変に刺激したら面倒だし....明日の朝に

 付近の海岸を捜索するしかないか....)」

 そう思いながら、私は沈没しかける船から飛び出し、近くにあった孤島で野宿をした。

 

 ~~~~

 次の日

 

「さて、とっとと探して破壊しないと」

 そう呟き、私は翼を生やして"鷹の目"を使って周辺の捜索を始めた。すると....

 

「(っ! マジかぁ....)」

 私は卵を見つけたのだが、卵の付近に百合ヶ丘のルナトラを止めたピンク髪のリリィがいた。

 

「(....一瞬で近づいて卵を破壊するしかないか)」

 そう思い、私はCHARMを構えて"縮地"を発動させて卵を破壊しようとした。そして、残り

 数センチで卵にCHARMが届くと思ったその時、私の卵への攻撃は二本のCHARMによって

 防がれた。

 

「っ!? 嘘っ!?」

 私の前にいたのはこの間のルナトラ使いと緑髪の活発そうなリリィだった。私はすぐさま

 距離を取って地面に着地した。すると、今の音を聞きつけてか六人のリリィが集まって来た。

 その中には以前携帯を拾ったリリィがいた。

 

「夢結様、梅様。どうかなさいました....」

「楓さん、今は近づいてこないで....」

「そうだぞ楓。....アイツ、ただものじゃない」

 そう言って、私の攻撃を防いだ二人は私にCHARMを向けて警戒していた。

 

「(まっずいなぁ....これは完全に想定外....)」

 私はそう思いながら嫌な汗が身体から出ていた。

 

「あなた....一体何者なのかしら?」

「そうだナ。CHARMを持ってるからリリィっぽいけど、お前....ただのリリィじゃないナ?」

「(マズいマズい! あの二人滅茶苦茶頭回るじゃん! どうするのよ私! 逃げる? いやでも

 卵の破壊が....)」

 そう思っていたら....

 

「お、お姉様....ど、どうしましょう?」

 突然ピンク髪のリリィがそう言った。私が視線を少しピンク髪のリリィに向けると、そこには

 卵から出てきたピンク髪の人の形をした何かがいた。

 

「っ!? 嘘でしょ....」

 私はその様子を見て身体の力が抜けた。

 

「梨璃、今は少し....って、その子は?」

「そ、それが、この卵から出てきて....」

「(気がそれてるうちにここは撤退をするしかないか....)」

 そう思って翼を広げようとしたのだが....

 

「ま、待って!」

 突然携帯を拾ったリリィに呼び止められた。

 

「あなたは一体どこの誰なの? 前、私の携帯を拾ってくれたの覚えてる?」

「....覚えてるよ。久しぶりだねお姉さん」

「良かった....でも、久しぶりじゃないよね?」

「?」

 私は彼女が言っていることに頭の中が? マークで埋め尽くされた。

 

「百合ヶ丘の近くでヒュージが現れた時、私と神琳を守ってくれたよね?」

「っ! 何でそれを....あ....」

 私はうっかり口を滑らせてしまった。

 

「やっぱり....一瞬だったから微妙だったけど、やっぱりあなただったんだ。あの時は

 ありがとう。おかげで私達は怪我がなかったよ」

「....それは何より。で、言いたいことはそれだけかな?」

「ううん。....あなたの事、もっと教えてほしい。私、あなたの事を全然知らないから。

 それに、私はあなたと友達になりたいの」

「っ! ....あははは! 面白いこと言うねあなた!」

 私は彼女が言った事に笑いが止まらなかった。

 

「はぁ....久しぶりにこんなに笑ったよ。....うん、気に入ったよあなたの事。そこの

 ルナトラ使いのリリィさんに緑髪のリリィさん。CHARM降ろしてくれる? 私もCHARMを

 降ろすから」

 そう言って、私はCHARMをケースにしまった。

 

「....どうする夢結」

「あちらに敵意は感じないわ。私達も一度降ろしましょう」

 そう言って、二人はCHARMを降ろしてくれた。

 

「あ、あのお姉様....私はどうしたら....」

 そして、ピンク髪のリリィは一人てんやわんやしていた。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七話

 雨嘉side

 

 海岸での捜査を終えた私達は一柳隊の控室にいた。

 

「....鶴紗。さっきからソワソワしてるけど、どうかしたの?」

「っ....!」

 私は控室に戻ってきてからずっと落ち着きがない鶴紗にそう聞いた。

 

「確かに....いつにも比べて鶴紗さん、落ち着きが無いように見えますね。

 どうかしたんですか?」

 神琳も気になったのか鶴紗にそう聞いた。

 

「....さっきのあの人、多分知ってる人かもしれない」

「「っ!?」」

 鶴紗のその一言に、控室にいた皆も驚いた表情に変わった。

 

「そうなのカ鶴紗?」

「....確証があるわけじゃない。でも、あの人の気配....もしかしたら、私をG.E.H.E.N.A.から

 助けてくれた人かもしれない」

「それって....」

「彼女が、あの噂のG.E.H.E.N.A.殺しという事....」

 夢結様の一言によって控室は一瞬にして静まり返った。

 

「夢結様....彼女は今どちらに?」

「理事長室よ。生徒会長の三人が一緒に行くのを見たわ」

 

 ~その頃~

 

 名無しside

 

 百合ヶ丘女学院に来た私は理事長室に案内されていた。そして、私の目の前には学園長と

 思われる老人とCHARMを持ったリリィが三人いた。

 

「....まずは一つ。話し合いという場でありながらCHARMを持つことを許してくれるか?」

 学園長と思われる老人は私にそう聞いてきた。

 

「別に構わないよ。警戒するなって方が無理な話しだろうしね」

「そうか。感謝する。まずは自己紹介だな。私は高松 咬月。百合ヶ丘女学院の理事長代行だ。

 そして、後ろにいる三人は左から秦 祀君、出江 史房君、内田 眞悠理君。我が学園の

 生徒会長だ」

「これはご丁寧にどうも。じゃ、私も少し自己紹介しますか」

 そう言って、私はソファから立ち上がった。

 

「名前は無いから名無しって名乗ってる。見た通りリリィよ。ま、ただのリリィじゃないけど」

「そうであろうな。報告には君の背中からはヒュージのような翼が生えていたという報告が

 あったからな」

「これの事?」

 そう言って、私は背中から翼を生やした。それを見た瞬間、三人のリリィはCHARMを構えた。

 だが、それを学園長は手で制止した。

 

「ふむ。確かに報告通りか....」

 学園長は少し考えるようなそぶりをするとこう聞いてきた。

 

「単刀直入に聞かして欲しい。君はG.E.H.E.N.A.殺しか?」

「....えぇ。そうだけど、それが何か?」

 私は素直にそう答えると、三人のリリィは目が丸くなった。

 

「彼女があの....!」

「G.E.H.E.N.A.殺し....」

「やはりそうか....」

「で、それを知ってどうするの? 政府にでも報告する?」

「そんな真似はせんよ。報告すれば儂の首も学園が危険になるからのう」

「そ。なら安心だよ」

 そう言いながら、私は翼を消してソファに座った。

 

「名無し君といったか。君は一体何のためにG.E.H.E.N.A.の研究所を襲撃し、強化リリィを

 助け、G.E.H.E.N.A.の研究員を殺す?」

「そんなの決まってるよ。リリィがリリィであるため、リリィとしての幸せを手に入れてほしい、

 そして、これ以上私達のような被害者を増やさないため」

「私達の様な被害者....それは、あなたも強化リリィという事かしら?」

 秦 祀と呼ばれたリリィは私にそう聞いてきた。

 

「そうとも言えるし、そうとも言えない。私はただの強化リリィじゃないから」

「ただの?」

「....今から見るもの、黙っといてよ」

 そう言って、私は自分の姿をヒュージと融合した姿に変えた。

 

「っ!?」

「な、何ですかその姿は....」

「まるで、ヒュージと変わらない....」

『その通り。私はヒュージの細胞を身体に埋め込まれたリリィ。ヒュージとリリィの融合者、

 Fusionerって言ったところよ』

「Fusioner....」

「それは、G.E.H.E.N.A.によるものなのか?」

『えぇ。これが証拠よ』

 そう言って、私は重要機密を入れているケイプを開き、その中から私達に行われた

 実験の書類を取り出して投げた。学園長と三人のリリィは書類をくまなく見ていた。

 

「....ここに書かれていること、全て本当なの?」

『えぇ。私以外にも50を超えるリリィがその実験の被害者よ。....そして、実験の成功者は

 私を合わせて16人。それ以外のリリィは実験の途中で亡くなった』

「あなた以外の15人は今どこに?」

『....死んだ、いや、私が殺した』

「っ!?」

「どうして....」

『....蠱毒って知ってる?』

「....確か、一つの壺の中に100体の毒虫を入れて戦わせ、最後の1体を使って人を殺す

 ものだったかな」

「っ! それってつまり....」

『そうよ。これ以上は言わないでよ。私もあまり思い出したくない事だから』

 そう言いながら、私はヒュージの姿を解除して人の姿に戻った。

 

「さて、今話せることは私は全て話したよ。今度は私が聞いても良い?」

「あぁ。何かね?」

「どうして私がG.E.H.E.N.A.殺しだと分かったの? 私は誰にもバレないように裏工作は

 完璧に行ってきた。なのにどうして?」

「それは、君が助けた強化リリィの子のおかげだ」

「えっ?」

 私は学園長が言った言葉に一瞬思考が停止した。

 

「二ヶ月ほど前、学園の校舎に横たわっていた強化リリィの一人が君の姿を目撃して

 いたのだよ。銀髪で左利きのリリィを見たとね」

「....それだけで私がG.E.H.E.N.A.殺しと分かったの?」

「そうなるかな」

「(なるほど....私はまんまと口車に乗せられたわけか)」

 てっきり私は私の正体を裏付ける何かを持っているのかと思っていた。だが、それはどうやら

 私の早とちりだったようだ。

 

「はぁ....あなた、見かけによらずにおっかないね。まるであの人と一緒だ」

「....一応賛辞として受け取っておこう」

「それはどうも。さて....話しは全部終わったし、私はそろそろお暇せてもらうよ」

「もう行くのかね?」

「えぇ。私がいれば、ここにいるリリィ達に迷惑がかかるからね。リリィ達の邪魔になる事は

 できるだけしたくないの」

「....ふむ」

「じゃ、お邪魔しました」

 そう言って、私は学園長室を出ようとしたのだが....

 

「待ちたまえ」

 突然私は学園長に呼び止められた。

 

「まだ何か?」

 すると、学園長は思いがけない事を言ってきた。

 

「名無し君。君さえよければ、百合ヶ丘に籍を置くつもりはないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八話

「....本気で言ってるの?」

 私はその言葉に困惑しながらそう言った。

 

「うむ」

「だ、代行! それはいくら何でも無茶です!」

「彼女は仮にも世界中の裏組織やG.E.H.E.N.A.から狙われている方です。彼女が

 もしもこの学園にいると分かれば....」

「そこの二人の言う通りだと私も思うんだけど?」

 私は眞悠理と史房に続くようにそう言った。

 

「確かに、名無し君がいれば学園は危険になるかもしれん。だが、彼女もまたリリィ。

 ならばこの学園にいるのは問題はない」

「ですが....!」

「それに、彼女はG.E.H.E.N.A.や政府への牽制になるかもかもしれん」

「どういう意味ですか....?」

「名無し君、この報告書に書かれていることは全て真実かね?」

 理事長代行は私が投げた報告書を持ってそう聞いてきた。

 

「....えぇ。全て真実よ。G.E.H.E.N.A.の研究所から全部盗んできたものよ」

「そうか」

「代行、それがどうかしたのですか」

「ここに書かれていることが全てなら名無し君は死亡扱いになっている。ヒュージと

 リリィの人体実験、通称Fusioner計画。実験第一段階成功16人は全て死亡。同じく

 実験を行っていた研究所の職員も爆発で全員死亡と書かれている。G.E.H.E.N.A.は

 全員死亡した事で口封じの必要がなくなりこの実験の事については特に気にしては

 いないだろうな」

「....なるほど。あなたの言いたい事は理解できたよ」

 私は理事長代行が言いたいことが何となく理解できた。

 

「どういうことですか?」

「簡単に言えば、私がここにいる事でG.E.H.E.N.A.は下手な手出しができなくなるって事。

 その情報で、私は奴らの弱みを握ってる事になるからね」

「っ! そういう事ですか....」

「この情報が公に広まれば奴らは崩壊する可能性もある....」

「それどころか、政府のG.E.H.E.N.A.に加担している人間もただではすまない....」

「そういう事。全く、私がいつか起こそうとしてた事を考えるなんて....本当に恐ろしい」

 そう言いながら、私は理事長代行の方を見た。

 

「当然、これは君の事を利用する事と同義だ。なので、儂もそれ相応の物を差し出そう」

「相応の物?」

「君の後ろ盾になろう。それに、衣食住も保障すると約束しよう。そして、君の行動には

 よほどのことがない限りは口出しをしない。どうだろうか?」

「へぇ....私は人を殺すけど?」

「何かを守るには何かを犠牲にしなければならない....儂はそう考えておる。リリィを

 守るためには仕方のない犠牲だ」

「....そ」

「(この人、芽衣さんや紗夜さんと同じタイプの人か)」

 私は話しを聞いてそう思った。

 

「それで、どうだろうか?」

「そうね....少し考える時間を貰える?」

「構わんよ。ゆっくり考えてほしい」

「そっか。じゃあ少しだけ時間を貰うよ。学院の中、散歩しても良い?」

「構わんよ。あぁ、祀君。良ければ彼女に学院の案内をしてもらえるか?」

「っ! よろしいのですか?」

「うむ」

「....わかりました。では、私についてきてください」

 そう言って、祀は理事長室の扉を開けた。

 

「じゃあ、また後で」

 そう言って、私は祀というリリィの後を追って理事長室から出た。

 

 ~~~~

 代行side

 

「....」

「代行....本当によろしかったのですか?」

 名無し君が出て行ったあと、眞悠理君はそう聞いてきた。

 

「....うむ。彼女がこちら側についてくれれば君達にとっても、私達反G.E.H.E.N.A.主義の

 ガーデンにとっても非常にメリットがあると儂は考えておる。彼女自身もリリィの事を

 第一に考えておるように感じた。君達の事を無下にするような事はしないはずだろう」

「....」

「....だが、決めるのは彼女自身。今は彼女の回答を待つとしよう」

 そう言って、儂は再び彼女が残していった報告書を見た。

 

「(Fusioner計画か....)」

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九話

「わざわざありがとね。こんな危険人物の案内させて」

 理事長室から出た後、私は前を歩いている祀にそう言った。

 

「っ! いえ、これも生徒会長の仕事ですから....」

「そ。あ、あとそんな敬語じゃなくていいよ。敬語使われるような人間じゃないし」

「ですが....」

「良いって良いって」

「そういう事でしたら....わかったわ。こんな感じで良い?」

「うん。そんな感じで」

「わかったわ。それで、何処か見たい所とかある? 無いのだったら私が自由に

 案内するけど」

「そうだね....」

 そう言うと、突然私のお腹が鳴った。

 

「....とりあえず、お腹空いたから食堂で」

「....ふふっ、わかったわ」

 そう言って、祀は食堂があると思われる方に歩いていった。

 

 ~~~~

 食堂

 

「ここが食堂よ」

「おぉ....広い。でも人少なくない?」

 着いた食堂はとても広かったのだが、人がいる様子はほとんどなかった。

 

「今は授業中のクラスが多いから。この時間に利用するのは私達生徒会か外征に

 行っていたレギオンの子達ね」

「へぇ....」

 そう言いながら、私はメニュー表を見ていた。

 

「結構色々揃ってるんだ。じゃあとりあえずこれとそれと....」

 私は券売機の前に立ち適当にボタンを押してお金を入れた。

 

「祀も何かいる? 奢るけど?」

「私はいいわ。さっき食べたから」

「そっか」

 私はそう言って、食券を取って厨房にいた人を呼んだ。

 

「いらっしゃい祀ちゃん。って、見ない子だね。編入生かい?」

「おばちゃん、この子は....」

「一応理事長代行のお客だよ。理事長代行とは少し知り合いでね」

 私は適当に今思いついた嘘を言った。

 

「おや、そうなのかい」

「そ。今日は少し理事長代行と話し合いがあってね。お邪魔させてもらってるよ」

「そうかいそうかい。ま、ゆっくりしていきな」

 そう言って、厨房のおばちゃんは食券を持って奥に歩いていった。

 

「....あなた、よくそんなにペラペラと嘘をつけたわね」

「仲間に嘘が得意な子がいたからね。その子のおかげよ」

 私は紫色の髪で嘘が得意な仲間の事を思い出しながらそう言った

 

「はいよ。お待ちどうさん」

 そう話している間に、おばちゃんは注文した料理をカウンターに置いた。

 

「ありがとおばちゃん」

「たくさん食ってきな」

 私はおばちゃんにそう言うと、料理をバランスよく持って近くの席に座った。

 

「ふぅ。じゃ、いただきます」

 私はしっかりと手を合わせてそう言って、買った料理を食べ始めた。そして、しばらく

 食べていると祀がこう聞いてきた。

 

「そういえば、私はあなたの事を何て呼べばいい?」

「ん? 好きに呼んでくれたらいいよ。勝手に名前つけてくれてもいいし」

「そんな適当で良いの....」

「良いの良いの。呼ばれ方なんてあんまり気にしてないし」

 すると、祀は少し考えこんでこう言った。

 

「じゃあ銀華っていうのはどう? あなたの髪の色にピッタリだし」

「銀華ね....良いね、気に入った。じゃあこれから私の名前は銀華にするよ」

「そう。気に入ってもらえたなら良かったわ」

 そう言って、祀は笑っていた。すると、祀は何かに気づいたのか私の手を見ていた。

 

「ねぇ銀華。CHARMにマギを送る指輪、着けてないの?」

「指輪? あぁ....着けてないよ。指輪が私のマギに耐えられないからね。マギ送った瞬間に

 粉々に砕けるし」

「じゃあどうやってCHARMにマギを?」

「手から直接」

「えっ?」

「だから手から直接だって」

 そう言った私は手のひらを天井に向けた。すると手のひらから黒と白のマギが出た。

 

「こうやって直接マギを送ってCHARMを動かしてるの」

「....色々と規格違いね」

「こんなんで驚いてたら胃薬いるよ」

「えっ....」

「ふぅ、ごちそうさまでした」

 私は固まっている祀を気にせずそう言った。

 

「さ、祀。次行こ」

「え、えぇ....」

 

 ~~~~

 

 その後、図書室や屋上の足湯、訓練場を見た私は校舎に戻ってきていた。

 

「とりあえずは一通り回れたわね」

「ありがと祀。助かったよ」

「どういたしまして。....それで、どうするの? ここに籍を置く? それとも....」

「それを決めるのに、一つ寄りたい所があるんだけど」

「寄りたい所?」

「今日海岸で見つかった女の子がいる場所。祀、何処なのか知ってるでしょ?」

「....どうして?」

「まぁ、ちょっとね。安心してよ。一目見るだけだから」

「はぁ....わかったわ。ついてきて」

 祀はそう言うと私の前を歩き始めた。

 

 ~~~~

 

 しばらく歩いていくと、着いたのは保健室のような場所だった。

 

「ここよ」

 祀の視線の先には心電図が繋がれてベッドに眠っている少女がいた。

 

「まだ眠ってるか....」

「(ま、それはそこまで重要じゃないけど....)」

 そう思いながら、少女を見ていると背後から誰かが近づく気配を感じた。振り向くと、

 そこには以前ルナティックトランサーを止めたピンク髪のリリィがいた。

 

「あ、あなたはさっきの....!」

「どうも。ルナトラを止めたピンク髪のリリィさん。さっきぶりだね」

「ごきげんよう梨璃さん」

「ご、ごきげんよう! えっと....」

「二年の秦 祀よ。はじめまして」

「し、失礼いたしました祀様! えっと、お姉様と同じ部屋の方ですよね?」

「(お姉様、ね....)」

 

 ~~~~

 

『■■....』

「ひたぎ、姉様....」

 

 ~~~~

 

「っ....」

「(久々に思い出しちゃった....)」

 祀に梨璃と呼ばれたリリィの言葉に、私はあまり思い出したくなかった記憶を思い出して

 しまった。

 

「夢結から何も聞いてなかった....って、銀華。顔色少し悪いけど大丈夫?」

 すると、祀が私の顔を覗き込んでそう聞いてきた。

 

「....うん。大丈夫。祀、私は先に理事長室に戻っとくよ。祀は少しその子の相手

 してあげなよ」

「ちょ、ちょっと!」

 そう言って、私は祀の言葉を無視して一人理事長室の方に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十話

「....あ」

 一人理事長室に戻ってきた私の目の前には、眼鏡をかけてタブレットを持った

 リリィがいた。

 

「(あのリリィって確か....)」

「確か、真島 百由だっけ? 世界的にも有名な戦うアーセナルの」

「代行、もしかして彼女が....?」

「うむ。彼女がそうだ。名無し君、祀君は?」

「祀なら梨璃って子と海岸で見つけた子の病室にいるよ」

 そう言いながら、私はソファに座った。

 

「で、まぁ先に戻って来たってわけ。あ、私にはタメ口で良いよ百由。変に

 気を遣われるの好きじゃないから」

「は、はぁ....」

「さて、それでどうするのか決めてくれたかね」

「....一応決めたけど、一つ聞いても良い?」

「何かね」

「海岸で見つけた子、目を覚ましたらどうするの?」

「....一先ずはリリィであるならばここで保護をする。一般人ならばあるべきところに

 引き渡すつもりだ」

「....そ。だったら良いや」

 そう言って、私は理事長代行の前に立った。

 

「あなたなら信頼できそうだし。有難く百合ヶ丘に籍を置かせてもらうよ」

「っ! そうか....ならば、これからよろしく頼む」

 理事長代行はそう言いながら手を差し出した。

 

「えぇ。こちらこそ」

 私はそう言って、差し出された手と固く握手をかわした。

 

 ~~~~

 

「それで、私はこれからどうしたら良いの?」

 私は理事長代行から渡された書類にサインをしながらそう聞いた。

 

「一先ず、君のバイタルデータとCHARMについて教えて欲しい。君についてこちらも

 知っておきたいのでな」

「わかったよ。....はい、書けたよ」

「確かに....」

 理事長代行は私が渡した書類を確認していた。すると、最後の書類を見て首を傾げた。

 

「銀華....名無し君、これが君の本当の名かね?」

「いや、祀がつけてくれた名前だよ。名前が呼びにくいってこともあったからね。一応

 これからはそれで呼んでくれたら良いよ」

「そうか。ならそう呼ばせてもらおう。では百由君、銀華君を頼む」

「わかりました。じゃ、行きましょっか」

「えぇ。じゃ、失礼しました」

 私はそう言って、百由の後について行った。

 

 ~百由ラボ~

 

「ようこそ~、私のラボへ!」

 着いたのは百由のラボだった。ラボの中には作りかけのCHARMやCHARMのパーツ、ヒュージの

 組織細胞などがあちこちに置かれていた。

 

「....良い機械使ってるじゃん」

「おっ! それに気づくなんて、お目が高いわね!」

「まぁね。今使ってるCHARM、自分で作って自分で整備してるからね」

「ほほう! それはそれは....どんなCHARMか益々気になってきたわ!」

 百由は目をどんどんキラキラさせながらそう言った。

 

「焦らなくても見せるよ。その代わり、CHARMに触れる時は指輪外して手袋した方が良いよ。

 じゃないと、身体の中にあるマギ全部吸い取られるから」

「そうなの?」

「そうだよ。私のCHARM、ある意味一番危険なCHARMだから」

「そう....なら、言われた通りに....」

 百由はそう言って、指輪を外して手袋をし、作業服を着て広い机の前に立った。

 

「さて、じゃあここに置いてもらえる」

「了解」

 私は百由がいる机の前に自分のCHARMを置いた。すると、百由はCHARMを見た瞬間、

 ありえない物を見るような眼になった。

 

「何このCHARM....見るだけでとんでもなく複雑で繊細なのがわかるわ....それにCHARMに

 付いているマギクリスタルコアが十七個って....どれだけのマギで動いてるのよ....」

 百由はCHARMを裏返しながら顕微鏡の様な物でしっかりと観察していた。

 

「このCHARMに付いてるコアは?」

「私の死んだ仲間たちが使っていたCHARMのコアよ」

「....そう。これ、銀華が作ったって言ってたけど一人で作ったの?」

「作ったのは私だけど、設計図を描いたのは死んだ仲間のアーセナル志望の子よ。三人いた

 アーセナルの子が私のために残していてくれたの」

「そうなのね....」

 百由はそう呟きながらもCHARMを真剣に観察していた。

 

「このCHARM、変形とかはできるの?」

「できるよ。大体十数パターン」

「十数パターン!? このCHARM一本で!?」

「そ」

「現行のCHARMの域を遥かに超えてるわね....変形パターン見せてもらって良い?」

「良いけど、ここだと狭いから後で広い所でやろ。ここで変形させると色々と壊しかね

 ないからさ」

「OKOK。じゃ、後で練習場で確認っと....」

 百由はそう言いながらタブレットを操作していた。

 

「さて、じゃあ次は銀華のデータをっと....銀華、これの上に手を置いて。スキラー数値と

 レアスキルを確認するから」

「わかったけど、壊れても知らないよ」

「大丈夫大丈夫! この機械、よっぽどの事じゃ壊れ....」

 百由は笑いながらそう言っていたのだが....

 

『ス、スキラー数値、計測不能....!』

 

 機械はそんな音を立てながら小さな爆発を起こした。

 

「う、嘘でしょ....」

「....やっぱり」はぁ

 

 ~~~~

 

「スキラー数値は測定不能っと....」

 あの後、もう一個使ったが同じような爆発を起こしたためスキラー数値を測るのを百由は

 諦めた。

 

「仕方ない。銀華、レアスキル口頭で教えてくれる?」

「レアスキル? 鷹の目、円環の御手、ルナティックトランサー、ファンタズム、テスタメント、

 ヘリオスフィア、フェイズトランセンデンス、ブレイブ、天の秤目、この世の理、縮地、

 ゼノンパラドキサ、Z、ユーバーザイン、レジスタかな」

「....ちょっとストップ。それってほぼ全部のレアスキルを持ってるって事?」

「そうだよ。本当は後一個あるけど、今は言わないでおくよ。色々と面倒だからね」

「いやそれはわかったけど....マジ?」

「マジ。証明できるものは後で練習場で見せてあげるよ」

「....なら、しっかり観察させてもらうわ」

 百由がそう言っていると、タブレットの音が鳴った。

 

「おっ、丁度いいタイミング。銀華、練習場空いたみたいだから行くわよ」

「わかったよ」

 私はCHARMをケースに入れて百由の後について行った。

 

 ~~~~

 雨嘉side

 

「それにしても、本当にあの人がG.E.H.E.N.A.殺しなんでしょうか?」

 食堂に移動してしばらくお茶をしていたら、唐突に二水がそう言った。

 

「急にどうしたんじゃ?」

「もしも彼女がG.E.H.E.N.A.殺しならば、素直に私達について来るかなと思って。だって、

 これまで情報は一切無かったんですよ?」

「確かに、そう言われてみると....」

「そんなに気になるなら、いつもの記者魂で本人に聞きに行けばいいのでは?」

「そうしたいんですけどね~。理事長室にはもういなかったんですよね」

 そんな話しをしている時、私はふと外を見た。すると、外に二人の人が歩いているのが見えた。

 私は誰だろうと思い、天の秤目で見てみると、歩いている正体は百由様とG.E.H.E.N.A.殺しと

 思われている彼女だった。

 

「いた....!」

「いたって、何がいたんですか?」

「海岸にいた人だよ! 百由様とあそこにいる」

 そう言うと、皆窓の方に来て外を見た。

 

「本当ですね....」

「何か喋ってるみたいだナ」

「歩いてる方向にあるのって、確か練習場だよな」

「一体何のために....私、早速取材の方に....!」

 そう言って二水が走り出そうとした瞬間チャイムが鳴った。

 

「あ....」

「そういえば授業が残ってましたわね。ちびっ子一号、諦めて授業に行きますわよ」

「そんな~」

「雨嘉さん、私達も行きましょう。夢結様ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう」

 そう言って、私は神琳とともにこの場から離れた。

 

 ~~~~

 夢結side

 

「あれ、夢結は授業に行かないのカ?」

 一年生の皆が行った後、紅茶を飲んでいる私に梅がそう聞いてきた。

 

「えぇ。取れる単位は全て一年生の間に取ってしまったから」

「あっそ....じゃあ百由と一緒にいたアイツでも見に行くのカ?」

「どうして私が....」

「気になるだロ? さっきまであまり興味ないふりしてたけド」

「....相変わらず、人の事をよく見てるわね」

「そりゃどうも。何かわかったら教えてくれよナ」

 そう言うと、梅は縮地で去っていった。

 

「....」

「(少し、見に行ってみましょうか)」

 そう思い、私は紅茶セットを片付けて練習場に向かった。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十一話

「さて、とりあえず銀華には私が作ったこれと戦ってもらうわね」

 練習場にある観客席にいる百由は下のフィールドにいる私にそう言ってきた。

 すると、フィールドの一部が動き出してそこから機械っぽいヒュージが出てきた。

 

「(ヒュージじゃないか....)」

「百由、コイツって機械?」

「そうよ! 私が作ったメカヒュージ。一応言っておくけど、普通のヒュージと変わらない

 ぐらいの性能よ」

「へぇ....」

「じゃ、早速スタート!」

 そう言って、百由が端末を操作するとメカヒュージの目は光り、私に向かって触手で攻撃を

 仕掛けてきた。

 

「(....普通の奴よりは少し攻撃速度が速いか)」

 私はステップを取りながら攻撃を躱し、メカヒュージの性能を見計らっていた。

 

「(....うん。大体見計れた)」

 躱して数分後、私はメカヒュージの大体の性能が分かりCHARMを構えた。

 

「百由、アレ壊しても良い?」

「別に良いわよ」

「OK。じゃ....死んでもらおうか」

 そう呟き、私は縮地で一瞬のうちにヒュージの背後に回り、一撃でメカヒュージを破壊した。

 

「う、嘘でしょ....」

「....百由、コイツ等もう少し出せる? 一体じゃデータが全然取れそうな感じしないよ」

「わ、わかったわ!」

 すると、さっきメカヒュージが出た場所から五体の追加のメカヒュージが現れた。

 

「(さて、少しこちらも趣向を変えるか)」

 そう思いながら私はCHARMを握って特定のマギクリスタルコアにマギを流し込んだ。すると、

 CHARMは自動的に変形していき鎌の形に変わった。そして、私はこう呟いた。

 

「ユーバーザイン」

 

 ~~~~

 夢結side

 

「っ! 消えた....」

 練習場の死角から私は彼女の戦いを見ていた。

 

「(一体どこに....)」

 そう思っていると、突然メカヒュージがメカヒュージ同士で戦いだした。

 

「(暴走? いや、暴走にしては動きが....)」

「盗み見してないで観客席で見たら?」

「っ!?」

 すると、突然背後から声をかけられた。私は驚いて背後を見ると、そこにはさっきまで

 メカヒュージと戦っていた彼女がいた。

 

「あなたっ....!? 一体どこから....!?」

「普通にそこの入り口から入って来ただけだよ。ま、ユーバーザインを使ったけど」

 そう言いながら、彼女は戦っているメカヒュージに目を向けた。

 

「メカヒュージにもユーバーザインは有効か。これは良い情報を知れた」

 彼女はそう呟くと笑みを浮かべていた。

 

「あなた....一体何者なの?」

「話しても良いけど、色々と面倒になるからね。だから今はまだ秘密。知りたければ百由や

 生徒会の三人、理事長代行に聞いてみなよ。もしかしたら教えてくれるかもよ?」

「....」

「ま、これからこの学園にお世話になるから。色々とよろしく」

「あなた、それはどういう....」

 そう言った瞬間、彼女の姿は一瞬にして消えた。そして、同時にメカヒュージが斬り刻まれて

 大爆発を起こした。そして、その爆心源の近くには鎌を回している彼女がいた。

 

「(今はこれ以上聞けそうにないわね....)」

 そう思い、私はこの場から離れた。

 

 ~その日の夜~

 

「ただいま~....」

 部屋で本を読んでいると、同室の祀さんが帰って来た。だが、普段に比べて祀さんが帰って

 来るのは随分と遅かった。

 

「今日は遅かったのね」

「まぁね。ちょっと色々と仕事が重なったからね」

「それって、例の彼女の件?」

「え、えぇ」

「そう。そういえば彼女、この学園にお世話になるそうね」

「っ!? どうしてそれを....」

「彼女と会ってね。そう教えてくれたわ」

「勝手に喋ったか....」はぁ

 祀さんは呆れたようにため息をついていた。

 

「それで祀さんは彼女について知っているのでしょう? 何を知ったか教えてもらえないかしら」

 そう言うと、祀さんの表情はどこか微妙そうな表情をしていた。

 

「うーん....できたら教えてあげたいんだけど箝口令が敷かれたからね。下手に話すと私が

 罰せられるから」

「そう。....それなら仕方ないわね」

「ごめんね。....あ、でも。これなら言っていいかも」

「?」

「彼女の名前は銀華よ。まぁ、私が付けてあげた名前なんだけどね」

 

 ~その頃~

 百由side

 

「これは....」

「百由さん....これは本当なの?」

 理事長室にいた私は銀華のデータを理事長代行と史房様に見せていた。

 

「えぇ。疑いたくなると思いますがすべて事実です」

 銀華の戦闘センスに判断力、CHARMの使いこなし、マギの保有量、どれを取っても現在

 存在しているリリィのレベルとは遥かに違っていた。

 

「正直、銀華一人でレギオンとして成り立ってますよ」

 そう言いながら、私は笑ってしまった。

 

「確かにその通りじゃな....」

「でも、どうするの? このまま報告するわけにはいかないし、そもそも銀華をどのような

 扱いにするの?」

「報告は適当に書き換えますよ。それと銀華についてですが、強化リリィの子達のケアと

 学園にいるリリィへの戦闘訓練、そして一部のレギオンへの予備メンバーに回ってもらうと

 いうのが良いかと。後は私の助手をしてもらおうかと」

「それを銀華君には?」

「言いましたよ。本人は全て別に構わないと」

「そうですか....代行、これで行きますか?」

「....銀華君本人が良いというのならそれで行く方が良いな。百由君、その方向で頼む」

「了解しました。では、明日にでも銀華の紹介をできるように準備しますね」

「頼んだよ、百由君」

 そう言われ、私は理事長室を後にした。

 

「さて、今日も徹夜かしらね....」

 そう呟きながら、私は銀華が待っている自分の部屋に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十二話

「百由。この辺の整備終わったよ」

 何だかんだあった日の次の日の朝、私は百由の部屋にあった整備しなければならない

 CHARMを寝ずに整備していた。

 

「ありがと銀華! いや~、助手が増えたおかげで助かったよ!」

 そう言いながら、百由はタブレットを操作していた。すると、百由の部屋の扉が開いた。

 入って来たのは祀だった。

 

「あ、祀おはよう」

「おはよう二人とも。百由、こっちは準備ができたわよ」

「ありがと祀。じゃ、銀華。学園の生徒に挨拶に行くわよ。私達についてきて」

「了解」

 私はそう言って二人の後をついて行った。

 

 ~~~~

 夢結side

 

「朝から集会なんて珍しいナ」

「....そうね」

「(きっと彼女の事ね....)」

 私は昨日の彼女の事を考えていた。そう考えていると、百由が出てきた。

 

「はーい、皆さんごきげんよう。急に集まってもらってごめんね~」

 百由は端末を持って現れると私達にそう言った。

 

「今日皆に集まってもらったのは一人紹介したいリリィがいるの。早速だけど呼んで

 紹介するわね。来てー!」

 百由がそう叫ぶと、百合ヶ丘の制服を着た彼女が現れた。

 

「彼女は銀華。少し前に学園長に接触してきたフリーの強化リリィよ。本日付けで

 百合ヶ丘の実技教官兼強化リリィのケア兼一部レギオンの予備メンバー兼私の助手に

 なってもらう事になったわ」

 すると、案の定生徒達同士でざわざわし始めた。

 

「(まぁこうなるわよね....それにしても百由が嘘を言うなんて珍しいわね)」

 私は一人頭の中でそう考えていると、突然CHARMが起動する音が聞こえた。音の方を

 見ると、CHARMを起動させたのは亜羅椰さんだった。

 

「(....)」

 私は壇上に近づいていく亜羅椰さんを見てどこか嫌な予感がした。

 

「百由様。そこまで勝手な行動が許されるという事は彼女は相当の実力という事ですよね?」

「まぁそうね」

「そうですか....ではその実力とやらを見させてもらいますわ!」

 そう叫ぶと、亜羅椰さんは彼女に接近してCHARMを振り下ろした。亜羅椰さんのCHARMは

 そのまま彼女に当たると思われたが、亜羅椰さんのCHARMを彼女は素手で掴んでいた。

 

「なっ!?」

 亜羅椰さんも流石に素手で止められると思っていなかったのか動揺した声をあげていた。

 それは見ていた生徒達もそうで、隣にいた梅でさえ口を開けてぽかんとしていた。

 

「悪いね。その攻撃は読めてたよ」

 彼女はそう言った瞬間、CHARMを抜いて一瞬にして姿が消えた。亜羅椰さんはすぐさま

 CHARMを構え直したのだが、既に亜羅椰さんの背後には彼女がおり、彼女のCHARMは

 亜羅椰さんの首元にあった。

 

「勝負あり、で良い?」

「....わかりましたわ。今日のところは私の負けを認めますわ」

 彼女の言葉に亜羅椰さんは素直にそう言うとCHARMを収めた。

 

「それは何より」

 彼女も亜羅椰さんがCHARMを収めるのを見てCHARMを収めていた。

 

「はい! じゃあ一悶着も済んだ所で解散! あ、一柳隊のメンバーは全員残ってね」

 百由のその言葉によって、集会は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十三話

「(....ふーん。結構バランスの取れてるレギオンだ。全員レアスキルも違うし)」

 私は目の前にいる九人のリリィを見てそう思っていた。

 

「で、百由。私達が残された理由は何なのかしら?」

「一応銀華を発見したのは一柳隊だからね。あなた達にはある程度の事を知る権利が

 あるからね」

「それで私達だけを残したのね....」

「そゆこと。それに、基本的に一柳隊の予備メンバーとして動いてもらうのよ」

「わ、私達の部隊にですか!?」

「そ。じゃあ取り敢えず自己紹介しなよ銀華」

「分かったよ。....昨日はどうも。私の名前は銀華。元フリーの強化リリィよ。これから

 よろしく」

 そう言って私は九人に頭を下げた。

 

「こ、こちらこそ! 私は一柳 梨璃です!」

 すると、昨日会ったピンク髪のリリィが私に頭を下げてきた。

 

「わ、私は王 雨嘉だよ。こ、これからよろしくね」

 次に名前を名乗ったのは私が携帯を拾った黒髪のリリィだった。

 

「私達も名乗りましょうか....白井 夢結よ。梨璃とシュッツエンゲルを結んでいるわ」

「私は楓・J・ヌーベルです。グランギョニル社の娘ですわ」

「ふ、二川 二水です! あの、後でいくつか取材の方を....」

「二水よ。それは後にするのじゃ。ワシはミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス。

 戦うアーセナルじゃ。お主のCHARM、後でじっくり見せてもらっても良いかのう?」

「吉村・Thi・梅ダ。前は斬りかかって悪かったナ」

「郭 神琳です。以前は助けていただきありがとうございます」

 そう言って挨拶をしていくうちに、最後の一人になった。

 

「私で最後か....安藤 鶴紗。後であなたに聞きたい事がある。時間を貰っても良い?」

「(この子....私と同じ強化リリィか。それに安藤、ね....)」

「良いよ。ミリアムと二水も後でね」

「はい。そんな感じで、仲良くやってね皆」

 百由のその言葉によって、私と一柳隊の顔合わせは終わった。

 

 ~~~~

 

 顔合わせが終わってから少し経ち、私は鶴紗と共に校舎近くの森にいた。

 

「この辺なら他の人も聞いてないはず....」

「そうね。それで、私に何を聞きたいの?」

「あなた、G.E.H.E.N.A.殺しだよね? それに、()()()()の成功者だよね?」

「....へぇ。やっぱり、強化リリィの鶴紗にはわかるものなんだ」

「まぁ、明らかに強化リリィの気配にしてはおかしいから。それに、梅様と夢結様相手に

 一切引かなかったから相当の強さを持ってるのが分かったから」

「そっか。それで? 私の正体は知ってどうするの?」

 私は少し圧をかけてそう言うと、鶴紗は私に頭を下げてきた。

 

「ありがとう。あの時、私を助けてくれて。あなたのおかげで、私は救われた」

「....礼はいらないよ。私は私がやらなければならない事をやっただけだから」

「それでも....! 私はあなたに助けられた。だから....ありがとう」

「(....私は、礼を言われるような人間じゃないんだけどね)」

「そう。なら、今はその礼を有難く受け取っておくわ」

「うん。そうして欲しい」

 そう言って、私と鶴紗は校舎の方に向かって歩き出した。

 

「そういえば、今何歳なんですか?」

「私? ちょうど20歳だけど?」

「じゃあ銀華様って呼んだ方が....」

「いいよ様付けしなくて。普通に呼び捨てとかで良いって。様付けされるとなんか変な感じ

 するからさ」

「流石に呼び捨ては悪いから....銀華さんって呼ぶよ」

「お好きにどうぞ~」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十四話

「取り敢えず、部屋はここを使ってくださいって」

「そう。ありがとう鶴紗」

 顔合わせがあったその日の夜、私は鶴紗に案内されて寮に来ていた。

 

「何かわからない事があったら聞いて。私は三つの隣の部屋だから」

「了解」

「じゃあ、おやすみなさい」

 そう言って、鶴紗は部屋から出ていった。

 

「さてと....」

 私は背負っていたCHARMケースを壁に立てかけると部屋にあった椅子に座った。

 

「(取り敢えず明日は荷物を揃えて部屋に置いて....足りない物は通販で揃えるか)」

 そうして明日の予定を考えながら、私は目をつぶった。

 

 ~~~~

 

 そして気づけば朝になっていた。

 

「うわっ....寝てたか」

 私はイスから立ち上がり身体を伸ばした。

 

「お風呂にでも入りに行こうかな....」

 そう思い、私は着替えといくつかの荷物を持って寮を出るとお風呂場に向かった。

 

 ~~~~

 

「いや~、広い」

 身体を洗い、私はだだっ広い湯船につかっていた。

 

「(これは身体の疲れも取れるわ....)」

 そう思っていると、風呂場の扉が開く音が聞こえた。扉の方を見ると、そこには百由がいた。

 

「百由」

「ありゃ、銀華じゃない。こんな時間にお風呂?」

「その言葉そっくり返すけど?」

「まぁ徹夜してからねぇ....」

「そ」

 そう言いながら、私は湯船から出た。

 

「じゃあごゆっくり。私は先に出るから」

「はいはーい。銀華、今日は一年の子達の実技あるから指導よろしくね~」

「わかったよ」

 そう言って、私はお風呂場から出た。

 

 ~~~~

 

「(さてと....)」

 10時ぐらいになり、私はグラウンドにいた。そして、私の目の前には二クラス分の一年生が

 いた。その中には一柳隊のメンバーや昨日斬りかかって来たリリィがいた。

 

「取り敢えず、挨拶であった通りたまに私が実技指導になりました。一応指導方法は考えたいから

 今から五人か六人ぐらいのチームを作って。その後、全員私と五分ぐらい模擬戦をしてもらうよ」

 私がそう言うと、リリィ達は驚いた様子だった。

 

「全員の実力を知るのに一番早いからね。さ、グループ作った作った」

 そう言うと、リリィ達はそれぞれグループに分かれていった。

 

「さて、何処のグループからやる?」

「なら、私達とやってもらいましょうか」

 そう言って前に出てきたのは私に斬りかかって来たリリィのグループだった。

 

「確か、アールヴヘイムだっけ? あなた達のレギオン名は」

「えぇ。前回はお預けされましたから。今回は楽しませてもらいますわ」

「そうだね。じゃあ早速....」

「ちょーっと待った!」

 私は早速模擬戦を始めようとした時、突然誰かの言葉によって止められた。声の方を見ると、

 そこには何かの箱を持った百由がいた。

 

「百由」

「模擬戦するのは良いけどそのCHARMでやるのは駄目よ。そのCHARMでやったら全員の

 CHARMが壊れるから。だから、ここから好きなCHARMを使って」

 そう言って百由が持っていた箱を開くと、その箱の中には数本のCHARMが入っていた。

 

「訓練用のCHARMよ。好きなの使って良いわよ」

 そう言われ、私は箱の中にあるCHARMを見た。その中には、ひたぎ姉様の使っていたCHARMと

 私が昔使っていたCHARMがあった。

 

「百由、これとこれ借りるよ」

 そう言って、私はグングニルとブリューナクを手に取った。そして、私は背中に背負った

 ケースからCHARMと整備用の工具を取り出して自分のCHARMから二つのマギクリスタルコアを

 外してグングニルとブリューナクに取り付けた。そして、数回素振りをしてアールヴヘイムの

 リリィ達の前に立った。

 

「待たせて悪かったね。....じゃあ、始めようか」

 そう言って、私はCHARMを構えた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十五話

「じゃあ、始めようか」

 そう呟いた私の目は赤く光った

 

「一番槍はいただくわ!」

 そう言って最初に攻撃してきたのは以前私にCHARMを向けてきたピンク髪のリリィだった。

 その攻撃を私はグングニルで受け流し、ブリューナクを振るってピンク髪のリリィのCHARMに

 直撃させて吹き飛ばした。

 

「重っ!?」

 ピンク髪のリリィは後方に吹き飛ばされたが、何とか受け身を取って着地していた。

 

「亜羅椰を軽々吹き飛ばすなんて....! 皆! 一人で突っ込んじゃダメよ!」

 緑髪のリリィはすぐに状況を理解したのか、他のリリィたちにそう言って変わったアホ毛を

 した茶髪のリリィと同時に攻撃を仕掛けてきた。だが、私はその攻撃を軽々と躱した。

 

「(太刀筋は良い....連携も問題なし)」

 そう思いながら、私は背後から飛んできたマギの球をアホ毛のリリィに向かって弾いた。

 

「噓っ!?」

 アホ毛のリリィは突然の攻撃に驚いたが、何とかCHARMでガードしていた。だが、ガードの

 タイミングが悪かったのか後方に飛ばされていた。

 

「月詩!?」

「敵から気をそらしちゃダメだよ」

 私はそう言って、緑髪のリリィにブリューナクを振り下ろした。緑髪のリリィは咄嗟に

 ガードを取ったが体勢を崩して片膝が地面についていた。

 

「ぐっ....!」

「連携は素晴らしいの一言だけど、乱されて気が一瞬でも逸れるのはだめだよ。そこを

 突かれたら一瞬で連携は崩壊するからね」

「だったらこれは読めたかしら!」

 そう叫んで、ピンク髪のリリィは私の背後の上空から私に斬りかかって来た。

 

「うん、読めてるよ」

 そう言って、私はグングニルで攻撃を受け流して緑髪のリリィにピンク髪のリリィを

 激突させた。

 

「「いったぁ!?」」

「仲間が近くにいる時は攻撃に注意しなよ? こうやって同士討ち狙われるからね」

 私はそう言いながらブリューナクとグングニルをシューティングモードに変形させた。

 

「さて....しっかり避けなよ? 威力抑えるけど、結構痛いと思うよ?」

 そう言って、私はマギの弾丸を撃ちまくった。

 

 ~~~~

 鶴紗side

 

「わ、私達、アレと戦うんですか!?」

「ふ、二水ちゃん! アレって言ったら失礼だよ!」

 壱盤隊と戦っている銀華さんを見て二水はそう言っていた。

 

「....完全に動きを読んでますわね」

「えぇ....それにCHARM捌きも一切の無駄が無いですね」

 楓と神琳は銀華さんの戦いを見て情報収集をしながら戦術を練っていた。

 

「あんなに強いんだ....」

 雨嘉は銀華さんの戦いに見惚れていた。

 

「あんなものじゃないよ、あの人の強さは」

 私は雨嘉にそう言った。

 

「えっ?」

「あの人の本気の強さを100にするなら、今は多分5とかだよ」

「っ!?」

 その言葉には一柳隊全員は驚いた表情をしていた。

 

「ア、アレでですか!?」

「うん。私、一度だけあの人の本気を見たことがあるけどあんなものじゃなかった。本気の

 あの人は、怪物って言葉が似あうかな」

「怪物....」

「あの人の前で油断したらダメ。一瞬で狩られる」

 そう話していると、壱盤隊との模擬戦は終わっていた。模擬戦を行っていた壱盤隊の面々は

 かなり疲れた顔をしていた。

 

「銀華さん、次は私達のところとやって」

 私は戦いを終えて息を整えている銀華さんにそう言った。

 

「良いよ。ちゃっちゃか始めよ」

 そう言った銀華さんの纏っている気配は一瞬にして変わった。

 

「(っ! ....これは、結構覚悟して戦わないとダメかな)」

 

 ~~~~

 夢結side

 

「....これは、一体どういう状況?」

「く、樟美....? どうしたの?」

 授業が終わり、梅と天葉と依奈と食堂に行くと壱盤隊のメンバーと梨璃達が一緒にいた。

 だが、何故かほとんどのメンバーの周りにはお通夜の様な空気が纏われていた。

 

「あ、夢結に梅。と、天葉と依奈だっけ?」

 すると、私達の後ろからかつ丼を持った銀華が現れた。

 

「銀華....」

「銀華、これ何があったんダ?」

「あぁ~....まぁ多分だけど、今日の模擬戦のせいかな....」

「模擬戦って....」

「今日の授業、私がやったからね。実力測るために全員と模擬戦やったんだよね」

 銀華は事も無げにそう言って近くの席に座った。

 

「模擬戦を全員と!? あなた一人で!?」

「まぁね。いただきます」

 依奈の言葉に答え、銀華はかつ丼を食べ始めた。

 

「それで....何で模擬戦でこんなにお通夜状態になってるのよ」

「多分だけど、模擬戦やった時に一方的にやられたからじゃないかな....」

 銀華はどこか申し訳なさそうな表情をしながらそう言った。

 

「攻撃も一回も当たらなかったから....多分それでへこんでるんだと思う....」

「一回もって....いくら何でもそれは冗談じゃ....」

「冗談じゃないよ、天葉姉様....」

 すると、樟美さんがそう言った。

 

「私達の攻撃、一回も当たらなかった。亜羅椰ちゃんと壱っちゃんなんて同志討ちさせられた」

「樟美....思い出させないで....」

「アレは屈辱的ですわ....」

 樟美さんの言葉に、二人はダメージを受けているようだった。

 

「マジか....」

 その様子を見て、珍しく天葉は驚いているようだった。

 

「てことは、こっちも....」

「まぁ、多分....」

 梅が梨璃達の方を見ると、銀華はそう言った。

 

「一応、連携は粗削りだったけどいい動きはしてたよ。ただ、要所要所で気になるところは

 あったかな。明日ぐらいに纏めて渡すからその点を修正できるようにしてあげて。天葉と

 依奈の方もよろしく」

 そう言いながら、銀華は立ち上がった。見ると、既にどんぶりからかつ丼は消えていた。

 

「悪いけど、あの子達励ましてあげて。私だと逆効果になりかねないからさ。何かあったら

 百由の部屋に来て。夜までは百由の所にいるから」

 そう言いながら、銀華はどこかに行ってしまった。

 

「....取り敢えず、私達はあの子達をどうにかしましょうか」

 私は天葉達にそう言って、梨璃達に話しかけに向かった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十六話

 一年生との模擬戦から三日ほど経った。あれから私は二年と三年の生徒とも模擬戦を

 行い、大体の実力が把握できた。

 

「このレアスキルを持ってこういう戦闘をする子はこうで、こういう子はこう....」

 私は今回の模擬戦で得た情報をもとに、百由のラボで自主練メニューを作っていた。すると、

 百由がラボに戻って来た。

 

「あ、銀華。海で見つかったあの子、目を覚ましたみたいよ」

「へぇ....へっ!?」

 私は適当に返事をしたのだが、言葉をよく思い出してみればその内容は適当な返事では

 済まないことだった。

 

「あの子、目を覚ましたの!」

「えぇ、ついさっきね。まぁ、まだ目覚めたばっかりだから会話はちょっとおぼつかない

 感じだけどね」

 そう言いながら、百由は自分の椅子に座ってキーボードを叩き始めた。

 

「ま、さっき検査してきて今から照合やら何やらかんやらするんだけどね~」

「....」

 私は百由の検査結果が気になり、百由のパソコンを見た。

 

「ところで銀華~....あの子の事について、何か知ってるんじゃない?」

「....」

 百由は突然、ディスプレイから目を離さずにそう聞いてきた。

 

「....どうしてそう思ったの?」

「銀華はあのヒュージの残骸があった場所に現れたんでしょ? それで、銀華は彼女が入って

 いた卵の様な物を破壊しようとした。そして、彼女はその卵から出てきた....」

「....」

「まぁそれで、ある一つの仮説が頭に浮かんだってわけ」

 そう言うと、百由はキーボードを叩く手を止めて私の方を見てこう言った。

 

「あの子、G.E.H.E.N.A.に関係してるんじゃない?」

「....」

「(....黙ってても仕方ないか)」

「そうだよ....あの子は、G.E.H.E.N.A.に関係してるよ」

 私はそう思いながらも百由にそう言った。

 

「何なら、あの子とG.E.H.E.N.A.の関係についても知ってる。データもあるけど....まぁ、

 このデータは代行にも見せた方が良さそうだし。後で見せるよ」

「OK! 頼むわよ銀華」

 そう言って、百由は再びキーボードを叩き始めた。

 

「....」

「(悪い方向に転ばないといいけど....)」

 そう思いながら、私は百由のパソコンを見ていた。

 

 ~~~~

 

 照合が終わり、私と百由、途中で会った祀は彼女が眠っている病室に向かっていた。

 

「スキラー数値50。リリィとしてはギリギリの数値ね」

「まぁ目覚めたばっかってのもあるかもね。もしかしたら急激に跳ね上がるかもしれないし」

「そうなったら身体の負担やばいことになるわよ....」

 そんな話をしていると、気づけば病室に着いていた。そして病室に入ると、そこには何故か

 梨璃がいた。

 

「梨璃」

「銀華様! それに祀様に百由様まで!」

「その子の相手をしていたの?」

「はい! それよりも祀様! この子の手が私に指輪に触れたらマギが....」

「そりゃそうよ~。その子リリィだから。保有マギは50。ちょっと心許ないけどリリィは

 リリィよ」

 私は百由が梨璃にそう話している間に、目が覚めた子の顔を見た。

 

「....」

「(ヒュージ特有の気配はあるけど敵意は無し....これだと殺す必要は無いか....)」

 そう思いながら、私はその子から視線を逸らした。

 

「百由、私は先に代行のとこ行っとくよ」

「はいはーい。じゃあまた後で~」

 私はその言葉を背中に受けながら病室から出た。

 

 ~~~~

 

「....?」

 理事長室の前に着くと、中から話し声が聞こえてきた。

 

「(誰かと喋ってる?)」

 私は扉を少しだけ開けて中の様子を見た。部屋の中では、代行が二枚の空中ディスプレイと

 会話をしており、その会話を史房がソファで聞いていた。

 

「....」

 私はユーバーザインを発動させ、こっそり部屋の中に入り代行の隣に立った。

 

『リリィ一人がどれだけの戦力になるか....そのリリィを一ヶ所に集中させてシビリアン

 コントロールを受けさせずに自治などと....それがどれだけ危険視されているか....』

「....」

「(権力に塗れたジジイの考えそうな事だこと....)」

 そう思いながら、私は空間キーボードを展開させた。

 

「(安全審査保障委員の長官と副長官....あぁ、こいつ等か)」

 私はキーボードを叩きながら代行が話している人間の情報をハッキングした。

 

「(そろそろ消すのも丁度いいか....まぁ、その前に少し嫌がらせしておくか....)」

 そう考え、私は紫苑、蘭、春菜さんの三人がかつて作った特製のコンピューターウイルスを

 保障委員の二人のパソコンやデータに送りつけた。すると、突然通信の向こうが慌ただしく

 なっていた。

 

『っ....また改める』

 そう言うと、通信は切れた。

 

「委員の人間もろくな人間がいないもんだね」

「っ!? あなた、いったいいつからそこに!」

「さっきだよ。今の会話、言うつもりはないから安心しなよ」

 そう言いながら、私は史房の隣に座った。

 

「それで、今日は何か用事があって来たのかね?」

「さっき目覚めた彼女について、情報を共有しておこうと思ってね」

「....彼女について、何か知ってるの?」

「もちろん。出生から何からまでね。百由が来たら話すから、しばらく待っててよ」

 そう言って、私は空間キーボードを展開させてあるデータを纏め始めた。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十七話

「あ、銀華様! ごきげんよう!」

「梨璃。ごきげんよう。今日もあの子の所?」

「はい!」

「そう」

「(目が覚めて一週間以上経ったか....)」

 件のあの子が目が覚めて一週間以上が経っていた。現状特に問題は起こっておらず、

 一部のリリィと関係者にしか彼女についての情報は伝えられていなかった。

 

「少し、私も様子を見に行ってみようかな」

「本当ですか! きっと結梨ちゃんも喜ぶと思います!」

「結梨?」

「あ....え、えっと今のはその....!」

「名前、付けてあげたんだ。まぁ名前があった方がわかりやすいもんね」

 そう言いながら、私は結梨と名付けられたリリィのもとに向かって歩き出した。

 

「早く行くよ梨璃」

「は、はい!」

 

 ~~~~

 病室

 

「あ、祀」

 病室に着くと、中には祀がいた。祀は結梨と名付けられたリリィに制服を着せていた。

 

「梨璃さんに銀華。ごきげんよう」

「ごきげんよう祀様」

「何やってんの?」

「見ての通りよ。今日から彼女も正式に学園の生徒だから」

「へぇ....」

「そうなんですか! 良かったね結梨ちゃん!」

 私は結梨と呼ばれたリリィをじっと見た。

 

「(普通に見たらただのリリィと変わらないな....)」

 そう考えていたら、結梨は私の方を見てきた。

 

「ねぇ梨璃。この人は?」

「この人は銀華様だよ。とっても強いリリィなんだよ」

「ごきげんよう。名前は結梨だったね。私は銀華。ここに世話になってるリリィだよ」

「銀華....」

「そ。まぁ、これから長い付き合いになると思うから。よろしく」

 そう言って私は結梨の頭を撫でた。

 

「....」

「ちょっと銀華。せっかくセットした髪が崩れるんだけど?」

「おっと。そりゃごめん」

「よし、これでOK。それじゃあ梨璃さん、結梨ちゃんを一柳隊がいる所に連れて行ってあげて。

 結梨ちゃん、一柳隊に所属してもらいたいからね」

「わかりました。じゃあ結梨ちゃん、行こっか!」

「うん!」

 そう言って、二人は病室から出て行った。そして二人の姿が見えなくなると....

 

「ねぇ銀華....あなたが言っていた事本当なの?」

 祀は私にそう聞いてきた。

 

「嘘をつく必要がないでしょ。まぁ、見た目はただのリリィと変わらないけど....」

「....」

「しばらくは出歯亀への警戒かな。何かあったら私に言って。処理はするからさ」

 そう言って、私は病室から出た。

 

 ~~~~

 

 病室から出て食堂を通った時、夢結達が集まっているのが見えた。

 

「一柳隊お揃いで。結梨とは仲良くやれそう?」

「銀華」

「そうね。梨璃がしっかりと面倒見てくれていたみたいだからね」

「そ。なら良いんだけど....」

 そう言って、私は結梨を見た。

 

「....?」

 私の視線に気づいたのか結梨は不思議そうに首を傾げた。

 

「....梨璃」

「何ですか銀華様?」

「結梨の事、しっかり見てあげなよ」

 そう言って、私はこの場から離れた。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十八話

「銀華様~、このパーツも貰ってよいのか?」

「いいよ、そこにあるのは好きに使って」

 結梨が一柳隊に加入してから数日が経った。私とミリアムはラボで結梨のCHARMを

 作っていた。

 

「にしても、こんなパーツよく残ってたのぉ。随分と希少なパーツじゃのに」

「G.E.H.E.N.A.の研究所からスッてきたからね。この辺のパーツほぼタダだよ」

「手癖悪いのう....」

 そう言いながら、ミリアムはパーツを繋げていた。

 

 ~~~~

 

「よし、これで完成じゃ! じゃあ結梨の所に行ってくるのう!」

 そう言ってミリアムは完成したCHARMを持ってラボを出て行った。

 

「....」

「(手伝い終わったし、体動かしに行くか....)」

 そう思い、私はCHARMを持ってラボを出て練習場に向かった。

 

 ~~~~

 夢結side

 

「梨璃、私と同じCHARMなんだね」

「そうだよ。初心者でも扱いやすいからね」

「(後ろから見ていると、本当に姉妹のようね....)」

 私は前で歩いている二人を見てそう思った。すると、前から銀華が歩いてきた。

 

「あ、夢結。それに梨璃に結梨。何してんの?」

「図書室に行くところよ。あなたは?」

「練習場で体を動かした帰り」

「そう」

 そう話していると、結梨が銀華に近づいていた。

 

「....銀華」

「何?」

「銀華はどうして戦うの?」

「私が戦う理由?」

「(その質問、さっき私達に聞いていた....)」

 結梨の質問は、控え室で私達に聞いてきた内容だった。

 

「....お姉様との約束のためかな」

「お姉様?」

「そ。私にも梨璃みたいにお姉様がいたの。でも、私を守るためにお姉様は死んだ。

 その時に約束したんだよ。必ず戦いを終わらせるって」

 そう言った銀華の目はさっきと違って少しだけ寂しそうな目をしていた。

 

「(銀華....あなたも....)」

「そうなんだ....銀華、皆よりも悲しい匂い....」

「匂い? ....なるほど、匂いで感情がわかるんだ。面白い才能ね。使い方によっては

 脅威になりうりそう。....その才能、大事にしなさい結梨。きっとその才能はいざと

 いう時に役に立つわよ」

 そう言うと、銀華は結梨の頭を撫でていた。

 

「さて、そろそろ私は行くわ。やることがあるからね。またね」

 銀華はそう言うと、私達が来た方に歩いて行った。

 

「銀華様にあんな過去があったんですね....」

「そうね....ああいう人に限って、背負ってるものは誰よりも大きいものよ」

 梨璃の言葉に私はそう返した。

 

「....私達もそろそろ行きましょうか」

「うん」

「はい!」

 そう言って、私達は図書室に向かった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。