スポークスマン (TTオタク)
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スポークスマン

 諸事情あり、ある目的にて執筆したのですが、期限を盛大に間違えており、また待つだけのこらえ性も無かったので酔った勢いで投下します。アニメ知識しかないです。申し訳ございません。


 スーツ姿の男が巨大スクリーンの傍らに立つ。男のスーツは主張しすぎないがはっきりとわかる上質な品であり、右手に付けた時計もまた最高級品であった。

 

「皆さんこんにちは。私は今回、司馬重工のスポークスマンをさせていただきます司馬総一郎です。リモートとは言え各国の軍事的、政治的指導者が一度に会するこの場所で、発表する機会を頂けたこと。誠に感謝いたします」

 

 総一郎の第一印象は決して良いと言えるものではない。丁重な言葉にもやる気や誠意は感じられず、どこかやる気のない印象を受けてしまう。語り口も聞かせると言うより話すことを楽しんでいるような口ぶりで、一部の堅物軍人はすでに不快感を露わにしていた。

 

「皆さん、戦争と言う物は古代より流動的に変化してきました。武器が変わり、装備が変わり、戦術が変わり、戦略が変わり、そして戦争が変わる。こん棒から剣へ、青銅から鉄へ、弓から銃へ。密集陣形は機関銃により散兵線となり、かつて最強の衝撃力を誇った騎兵突撃は鉄条網と機関銃に粉砕された。新兵器の存在は常に戦場を変え、戦場の変容は新兵器を生み出してきました」

 

「さて今この日、人類が直面しているのは歴史上類を見ない、人類種以外との総力戦です。この新時代の戦争に私たち人類はバラニウムという新兵器を投入し、モノリスを築き、弾や刃をバラニウムに変えて対応してきました。そうして人類は生存圏の死守に成功し、現在に至ります」

 

 ガストレアの再生を阻害し、遠ざける磁場を発生させるバラニウムはまさにガストレアに対する『銀の弾丸』である。モノリスと言うバラニウム製構造物によってガストレアの生息域との線引きをし、現在の人類はその内側で暮らしていた。

 

「黒い弾丸に黒い刃。確かにそれは新しい兵器でしょう。対ガストレア戦を目的とした新兵器として投入された事は事実であり、戦果を上げています。ですがそれ以外はどうでしょう? 対ガストレア用戦闘機、ヘリコプター、戦車、火砲、もっと言えば銃器、弾薬。それらが開発された事が有るでしょうか? ええ、研究途上にあるのは事実です、ですが縮小した、都市国家程度まで縮小した経済規模では現在の生産ラインを維持するのが精いっぱいで、新兵器など夢のまた夢でした」

 

「ですが、それでいいのでしょうか? 現在、我々がガストレアへ向けている兵器はかつての人類同士の戦争を想定した兵器の流用であり、弾頭や刃をバラニウムに変更したに過ぎません。弾薬規格は依然変わらず、それを放つ銃器もまた、対人兵器をそのまま使用しています」

 

 総一郎の言う通り、ガストレアの登場以来、彼らに向けた専用の兵器が開発されたと言う話は少ない。依然主流は対人用の兵器であるガストレア戦以前の銃器であった。

 

「ええ、弾頭のみの変更に留めれば既存兵器を流用して生産コストを抑え、生産ラインの混乱を最小にできる最上手です。もし私が当時の防衛責任者であったのならそう命令したでしょう。ですが、これは応急処置、いわば火事場における緊急手段に過ぎません」

 

「無理があるんですよ。今まで使ってもいなかったバラニウムという弾頭を既存弾薬の頭に据え付け、既存火器で打ち出す。当然最適な性能が得られるわけもなく、そもそも対人を想定した銃器や弾薬の規格では、あの醜悪な化け物どもを始末するにはあきらかにに口径と装薬量が足りません」

 

 それは当然の話である。陸上自衛隊の主力小銃である89式小銃の発射する5.56mmNATO弾は人間相手でさえ、麻薬を使用した相手などには威力不足だったのだ。野生動物であるヒグマ相手にさえ力不足なのに、どうして異次元の化け物であるガストレアに通用しようか。

 

「転換期が来ているのですよ。そろそろ現実逃避の応急処置を止める時間です、いくらうまくいった応急処置も、所詮は応急処置に過ぎません。流血の止まらない傷はいずれバラニウムの枯渇という出血性ショックを引き起こし、人類はそのまま死する事になります」

 

 『銀の弾丸』たるバラニウムも、所詮地下資源である。どんなにガストレアに対する効果が高くとも、使い切ってしまったらそれっきっりである。

 

「だから戦争を変えてゆきましょう。これからの戦争は投射した砲弾を(トン)で換算する大量消費戦争ではなく、残弾数が決まった銃でいかに効率よく敵を殺してゆくかの戦争になります」

 

「そしてその第一歩として、我々司馬重工が皆さんに提示するのは新しい戦争、その一つの形です」

 

 総一郎の言葉に合わせてスクリーンに二つの弾丸が映し出される。

 

「8.6×94mm弾、14.7×118mm弾。我々の開発したこの新型弾薬は当然バラニウム弾頭の発射を前提としており、ガストレアに対する十二分なストッピングパワーを確保と遠距離における精度を確保しています」

 

 画面が変わり、今度は二つの銃器が映し出される。片方はブルパップ式が特徴的なアサルトライフルで、もう片方は見た目はアサルトライフルに近いが、異様に長い銃身と、握りこぶしのように膨らんだマズルブレーキが印象的な巨大な銃だった。

 

「そしてこれらの弾丸を発射する銃器SA86、SA147」

 

「形状を見ていただければわかる通り、両方とも歩兵の傾向する連射火器としての運用を想定しております。この二つとも重量と反動を無視すれば現行のアサルトライフルのように運用する事も可能です」

 

「それでは運用できないのではと疑うかもしれません。確かに人類の歩兵用自動火器の歴史は常に、重量と反動と弾薬のジレンマに悩まされてきました。効果的に敵を殺すために高い発射速度と長い射程を実現すればそれはすさまじい反動を生み、その凄まじい反動を抑える為に銃を重くする、すると歩兵が持てる重量ではなくなり、発射速度か射程かを妥協する事になります、すると兵器としての実用性が低下してしまうという難しい話です」

 

 事実、連射火器が設計されたその時からこの問題は付いて回った。重量と性能はトレードオフの関係であった。

 

「我々銃器設計者は100年近くこの問題に悩まされ続けてきましたが、ついに解決策が提示されたのです、それも二つ同時に」

 

「一つはみなさんご存じ外骨格(エクサスケルトン)技術。重量も反動も共に強化された身体能力の前では関係なく、高性能FCSにサポートされた銃撃は連射であっても的を粉砕し続ける精度を保てる。素晴らしい兵器です」

 

 画面には司馬重工が開発し、実用化した外骨格の開設画像が映し出される。

 

「ですがもう一つは、皆さんはより深く知っているはずです」

 

「そう『呪われた子供たち』です。人並外れた筋力、動体視力、頑丈さ、再生能力。コストに関しても外骨格を量産するより手軽に徴兵できます。さらには宿す因子によっては高い知性や身体的特徴などの『才能』も持ち合わせており、適正ごとに選別すればより効率的にガストレアを殺すことが可能です」

 

 呪われた子供たち。生まれながらにしてガストレアウィルスを身に宿し、ガストレアとしての力を人の身のままに振るう赤目の少女たちの事である。彼女たちは差別対象として危険なモノリス周辺に住まわせられており、衣食住がままならないマンホールチルドレンとして生活している。

 

「いえ、そもそも今までがおかしかったのです。彼女たちをまともに徴兵せず、適当な訓練をするだけで民兵同然の民警たちに渡してしまう。この現状を改善しましょう」

 

「彼女たちに正規兵としての訓練を施し、適切な装備を渡し、適正を見て選抜を行い、より高度な訓練を行う」

 

「そうすればできるはずです、呪われた子供たちの軍隊が。複雑な作戦を遂行する特殊部隊を結成する事も可能でしょう」

 

 総一郎の声色はより一層、喜びや興奮の色を帯びる。まるで夢がかなった少年のように、どこか病的なエネルギーを振りまきながら話す。

 

「ええ、皆さんは疑うはずです。たかだか10歳程度の少女たちに何ができると」

 

「なので我々がまず示します。詳しい方はもうご存じでしょうが、我々司馬民間警備会社は実現しました。専門的な教育を受け、適切な装備を備えたイニシエーター集団を。プロモーターの指示で戦う存在ではなく、共に戦える兵士としてのイニシエーターを」

 

 イニシエーターとプロモーター。呪われた子供たちをイニシエーターとして、通常の人間をプロモーターとしてタッグを組ませる制度である。基本二人ペアで行動するが、大手であればそれだけペアは多く、大企業の司馬グループがイニシエーターを集団と言える数を確保しているのは当然の事だった。

 

「興味をお持ちならぜひ声を掛けて下さい、専門教育を受けた民警一個小隊をすぐに派遣しましょう。適正な弾薬と銃器、装備に身を包んだ次世代歩兵の集団です。きっとご満足いただけるでしょう」

 

 総一郎は心の底から楽しそうな笑みで言う。

 

「そしてもし性能に満足していただけたならば、それらの作り方をお教えしましょう。弾薬、銃器、装備、人材、戦術。全ての作り方、使い方をお教えします」

 

「繰り返しますが、これはあくまで次世代の戦争の第一歩に過ぎません。これを鏑矢とし対ガストレア戦争に適応した軍隊を作りましょう」

 

「発表は以上になります。この発表が、人類の夜明けの第一歩になる事を祈っています」

 

 質問を受け付けず、総一郎はその言葉のみを残して去った。

 

 

「ずいぶんと楽しそうでしたね、総一郎さん」

 

 リムジンの中、ショートカットの大人そうな、悪く言えば冷酷そうな少女が言う。

 

「そう言わないでくれよ夏世。僕たちが数年がかりで完成させたプロジェクトだぜ。というか、計画の中枢に夏世も絡んでるんだからもう少し喜んでもいいだろうに」

 

 総一郎は隣に座る夏世をなだめようとするが、なにも嫌味を言う相手は隣だけではなかった。

 

「あら、あんたはんはえらい楽しそうやったけど、うちら本社組には苦情の電話雨のようにふりそそいどったんやけどなぁ」

 

 上品に着物を着こんだ少女は、扇子の奥で兄に向けて蛇のような視線をむける。

 

「あの、はい。すみませんでした、未織さん。ホント申し訳ないです」

 

 妹である未織に気おされ、小さくなる総一郎をみて溜飲が下がったのか、未織はため息交じりに言う。

 

「そやけどまあ、苦情以上に依頼の電話の方多かったらしいけど」

 

「そうか」

 

 総一郎はにやりと笑みを浮かべる。その満足げな笑みに疑問を抱いたのか、夏世は疑問を口にする。

 

「なぜ総一郎さんはそこまで対ガストレア戦ドクトリンの構築に拘るのですか? 私のようなIQが高いだけの者まで起用して、御曹司である自らが実働部隊の隊長を務めるだなんて。小さい女の子と一緒に居たいロリコンでもない限り、鉄火場に身をさらす必要はないと思います」

 

 IQ210を誇る超天才児の千寿夏世は年齢以上に世俗への理解が高い。司馬グループの御曹司ともなれば、生命の危険とは縁遠い場所で生活するのも可能だろう。だが、わざわざ戦闘技能を磨き、指揮官として自社の民警達を率いる総一郎の思考が、ペア結成から二年経つ今も分からなかった。

 

 その言葉に、総一郎は笑って答える。

 

「手厳しいな。確かに君の事は大好きだが、別に僕は小児性愛者ではないぞ―――とまあそれは置いといて。そうだな、例えばじゃあもし夏世が自分だけ、人類の過半数が死に絶えるような戦争が起こる事を事前に知っていたらどうする?」

 

「質問に質問で返すのは感心しません」

 

 夏世は文句を言うが、総一郎は態度を変えなかった。仕方がないので夏世は思った通りの事を答える、

 

「もし―――その『戦争』が起こるのを知っていて、それが確実に起こるとしても。私はどうしようもないと思います」

 

「どうして?」

 

 総一郎の質問に、夏世は答える。

 

「自分しか知らない、その上実証も不可能な情報なんて妄想と大して変わらないからです。そんな妄言を真に受けて協力する者などいませんよ。人類は昔から、洪水が起こると船を作った賢者を嘲弄する種族なんです」

 

「ッぷ―――アハハッ、そうか、妄言か」

 

 総一郎は腹を抱えて笑い出した。自分の答えを馬鹿にされたと感じたのか、夏世は不機嫌になる。

 

「待て、悪かった。別に馬鹿にしたわけじゃない。賢い君ならそうできただろうと、自分の愚かさを笑っただけさ」

 

 総一郎の不可解な言葉に、夏世は聡い頭脳を回転させ多結果、飽きられながら言葉を口にする。

 

「私は別に、総一郎さんがガストレア戦争を止められたと思いませんよ。誰にとっても予想外の出来事でしたでしょうし、それに失われた世代(戦前世代)だからと言って、そこまでの責任を負わされるのは酷な物です」

 

 総一郎はその言葉に微笑み、いたって軽い事の様に口にする。

 

「じゃあもし、このガストレア戦争の勃発を、証明できない形だとは言え知っていたとしたら?」

 

 夏世はため息の後に答える。

 

「答えは変わりません。どうしようもないですよ。証明できない時点で詰みです。チェスでもそうですが、相変わらず詰みの状態から考えるのが好きですね、マゾなんですか?」

 

 夏世の言葉を聞いて、総一郎はつぶやくように言う。

 

「そうだね、君は正しいさ。知っていようが証明できない時点で詰み、王手、チェックメイト。マゾでもなきゃどうにもならないのならさっさとあきらめた方が精神衛生上良いんだけどね。止められなかったと悔いるなんて、論外の愚行だ」

 

 そろそろ聡い夏世でさえ良く分からない範疇に達し始めた総一郎の言葉だが、それっきり雰囲気を変える。

 

「しかし君は本当に頭がいいな。それに毒舌家だがそこが良い、千寿という苗字もとても素敵だが、司馬に変える気はないかな? 司馬夏世、いやいっそ千寿総一郎のほうが―――」

 

「未織さん。私は今セクハラを受けています。司馬グループのハラスメント委員会に報告しても良いでしょうか」

 

 未織は満面の笑みで言う。

 

「もちろんええで、うちが直々にしたるから」

 

 女性組の結託に、総一郎は蒼白になって止めに入る。

 

「待ってくれ、誤解だ。ここに誤解が生まれている」

 

「ハラスメントに誤解も何もないでしょう」

 

「せやなぁ。不快に感じたらアウトやし。おとなしゅうお縄につこか、お兄様?」

 

 がやがやと、VIPを乗せたリムジンとは思えない程の騒がしさを遮断しながら。リムジンは静かに道路を走ってゆく。

 

 

「まったく。仲がええのか悪いのかわからへん」

 

 総一郎の肩に寄りかかるようにして眠る夏世に、どこか嬉しそうに未織は言う。

 

「そうだな。強引に契約をもぎ取った甲斐があった物だ」

 

「まあ、この寝顔に一千万の価値があるか言われたら、殆どの一般人は躊躇するやろうけどなぁ」

 

「別に僕は何億だろうが構わないけどね」

 

「はぁ」

 

 司馬未織は相変わらずこの酔狂な兄に困っていた。2年前、一千万円をあるプロモーターに叩きつけ、その対価としてやって来たのがこの千寿夏世だった。当時は兄の乱心ここに極まれりと困惑していたが、今ではその審美眼に呆れを含みつつではあるが感心している。一千万などと言うはした金を帳消しにする程度には、IQ210の天才児は有用な存在だった。

 

「まだ信じてるん? あの未来予知の話」

 

 未織の言葉に、総一郎は答える。

 

「事実、ここ最近の事件やガストレアの動向、あの仮面殺人鬼の動向さえ当てて見せただろう。いい加減信じてくれてもいいんじゃないか?」

 

「まあ、そやけど」

 

 未織はいまだに半信半疑だった。兄がガストレアがニュースに乗ったのを皮切りに、自分に『これから起こる事』をぶちまけてきたのは今でもトラウマになっていた。自分のよく知る兄がいきなり別の生き物になったかのようで、ひどく混乱した物だった。しかもそれがすべて現実に起こった事であるのが混乱に拍車をかけていた。なまじ兄が才能のあるやり手であると知っているので、才人特有の狂言として利用しつつ聞き流していたが、それでも最近は予言の頻度が上がって混乱するばかりだ。

 

 千寿夏代の事にしたって、ある日突然プロモーターにわざわざ金を払って奪ってきたと思えば、自分の手の者を使って件のプロモーターを『事故死』させるなど、奇妙としか思えない手を取っている。

 

 だがその手の奇策はことごとく成功し、司馬重工の民警部門が独立して子会社として運営されるようになるほど、総一郎は成果を上げていた。

 

「ガストレアの発生を防げなかった事。まだ悔いとるん?」

 

 未織の言葉を、総一郎ははっきりと否定する。

 

「違うよ未織。防げなかったんじゃない、()()()()()()()()。情けない事に。何も起こらないだろうという馬鹿みたいな楽観視が、この世界を殺したんだ」

 

 総一郎は、悲痛な面持ちで、夏世の明るい髪をなでる。

 

「この子だって、僕がまともに行動していればもしかしたら呪われた子供たちにならなかったかもしれない。もしかしたら、親元で暮らすことができたかもしれない。自分の事を『殺しの道具』などと言い、殺人に手を染める事も―――無かっただろう」

 

「里見蓮太郎君も、天童木更さんも、相原延珠ちゃんも、誰も彼もが被害者だ。僕は知っていたのに」

 

 総一郎の尽きぬ自嘲に、未織は否定の言葉を口にする。

 

「夏世も言うとったやろ。あないな事だけではどないしようもなかったんやって」

 

 その言葉に、少し救われたように、だがどこか傷ついたように、総一郎は未織の顔を見上げる。

 

「ああ、そうだね。でも知ってしまった以上は止まれないんだ」

 

「それに行動も起こしてしまった。呪われた子供たちを兵士として銃を持たせると言う案。アレは間違いなく僕の罪だ。将来の教科書には僕は罪人として載るだろうさ。だがそれでもやらなきゃならない。自由というのは、銃声という産声を上げて生まれる弾丸の双生児だ。失われた世代にとって失い難い戦力となった呪われた子供たちは、確実に地位を向上させるだろう。戦力として必要になった被差別階級に自治権や人権が与えられるのは、歴史が証明してくれている」

 

 総一郎はその言葉とは裏腹に、自分のズボンを震える程固く握りしめた。

 

「限られた未来の知識でもって少しでも犠牲を減らす。それが読者(カミ)の視点を知る代弁者(スポークスマン)としての、僕の役割なのだから。たとえそれが屍山血河の地獄であろうとも」

 

 未織は目をそらす、いつも笑っているお調子者の兄の泣きそうな顔は、未織にとってもつらい物だった。

 

 だから見逃してしまったのだろう、夏世の手が握りこぶしを作っていたことを。



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