真・恋姫†夢想-革命~三国無双の血を引くもの~ (疾風海軍陸戦隊)
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第一章 天水編
外史の始まり


主題歌「白月の灯火」

OP「十六夜涙」

ED「深紅の呂旗」


俺は沖田吹雪高校1年生だ。俺は今祖父の倉庫から剣を探していた。

夕方に祖父と剣術の修業をする予定だったからだ。

 

「結構重いな…この荷物・・・」

 

 

父さんは俺が7歳のころ交通事故で亡くなり俺は祖父の家に引き取られた。

俺は母さん事はあまり知らない。祖父の話では俺が4歳の時に出ていったそうだ。

ただ、俺は前に母さんの写真を祖父から見せてもらったことがある。赤い髪に赤い目が特徴の女性でとても優しそうな眼をしていた。いまはどこでなにをしているのだろうか・・・

 

「それにしても、じいちゃん・・・・元軍人とはいえ、すごい武器を持ってるな・・・これ、本物のライフルと拳銃だぜ」

 

俺が倉庫から見つけたのは、祖父が現役時代に使っていたという、「有坂式九九式小銃」だった。しかも銃剣と弾薬付きの・・・・・

九九式は三八式歩兵銃の後継銃で、6・5ミリ弾から対物強化のため他の西洋列強と同じ7・7ミリ弾となっている。一般的に九九式は「粗悪銃」なんて言われているけどそれは戦争末期の話であり、完成して生産された当初は高性能な威力を発揮し、戦後では誰が言ったか知らないけど「キング・オブ・ボルトアクション」なんてて呼ばれている。

他に見つけたのは、旧日本軍が使っていた南部一四年式拳銃だった。

 

「なかなか見つからないな~ってこれか?」

 

俺は埃をかぶった一振りの軍刀を見つけた。たぶん祖父の言っていたのはこれだろう。俺は鞘を抜くとそこには新品同様みたいに輝いている刀身があった。

 

「やっぱり日本刀はきれいだな‥‥」

 

俺がそう思っていると外から・・・

 

「吹雪!まだ見つからんのか!!早くせぬと素振り千回追加じゃぞ!!」

 

祖父の怒鳴り声が聞こえた。普段は優しいが修行となると鬼のように厳しくなる。

 

「やっべ!すぐに行かないと はい!今行きます!!」

 

と俺はその場を後にし祖父の所へ向かおうとしたが、その瞬間急に辺りが光り出した。

 

「な、なんだ!?」

 

吹雪が驚くもそのまま光に包まれ、収まった後には吹雪の姿は消えていた。

 

「やれやれ・・・とうとう行ってしまったか・・・」

 

誰もいない倉庫に一人の老人が入って来た。

 

「刀だけでなく、わしの九九式や南部それに軍服や連隊旗までもが消えている…まあ、旗はあやつのかばんに入ってると思うがな・・・・・」

 

老人は、倉庫から出て空を見上げた。

 

「吹雪よわしはお前に教えることはすべて教えたつもりじゃ。そして今外史の扉は開た。あとはどうするかお前次第じゃぞ。がんばれな・・・・・それとお前の母によろしくな」

 

 

老人はそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




革命版に合わせた改訂版となりますので話の内容はあまり変わりませんがところどころ旧作になかったストーリを入れたいと思います
感想や指摘なんでも歓迎です


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出会い

とある屋敷の中

 

「月?月?もうどこに行ったのよ~」

 

眼鏡をかけた少女は誰かの名を叫びながら屋敷の中を探し回った。廊下の角を曲がろうとすると・・・

 

「あ、華雄将軍」

 

「なんだ、賈駆ではないか、どうしたんだ?浮かない顔をして」

 

賈駆と呼ばれる少女が会ったのは、華雄という名の銀髪を短くそろえた女性だった。

 

「月が・・・いえ董卓様がまたいなくなわれてしまって・・・・」

 

「とすると、あれか・・・・・? お忍びで下々のものを暮らしぶりを見て回るという」

 

「ええ、それよ」

 

「やれやれ、仕事をほっぽり出して、フラフラ出歩くとは困った太守様だな」

 

「領民と直に触れあってその声を聞くのは決してて悪いことではないわ!」

 

「なら別に問題ないではないか」

 

華雄は平然と言うが・・・・

 

「そうはいかないわっ! ここの所、地方の賊の征伐に人手を取られて、逆にこの辺りの治安が悪くなっていると言うのにっ! それに物の値段が上がって、民の間に不満が募ってるし! 山の方では人食い熊が出るとか何とかっ!しかも、恋と霞は賊の討伐に出かけて居ないし!!」

 

賈駆は頭をわしゃわしゃ掻きながら叫んだ。

すると華雄は呆れ顔で・・・

 

「賈駆、そんな心配事を抱えすぎると早死にするぞ?」

 

「華雄将軍。あなたは悩みが無い分、長生きしそうね~」

 

「まあ、身体を鍛えているからな!」

 

と何気ない笑顔で返す

 

「はぁ~」

 

その皮肉言葉に気付かない華雄に賈駆はため息をついた。

 

 

 

 

賈駆が董卓を探しに行ったちょうどその頃・・・・

 

「あ・・・れ?・・・・ここはどこだ?」

 

確か俺はじいちゃんの倉庫にいたはずだ。そして謎の光に包まれて・・・・目が覚めたら見知らぬ場所にいた。

 

「あれ?なんだ?この格好!?」

 

今、自分が着てる服は、剣道の道場服ではなかった。枯草色の制服に同じ色のズボンそして黒の革のブーツに頭にのっけてる帽子の真ん中に金色の星が描かれていた。

これは確か前にじいちゃんのアルバムで見た、じいちゃんが昔来ていた旧日本陸軍将校・・・・・しかも陸軍中将服だった。そしてそばに置いてあったのは家にあった大きなリュックサックとさっき持っていた軍刀と・・・・

 

「これって、九九式小銃じゃないか!なんでこんなところに?」

 

そう、じいちゃんの倉庫で見た九九式小銃が置いてあった。

 

「なんでこんなものが・・・それに今着てる服も・・・・」

 

吹雪は疑問に思いつつさらにあたりを見渡すとここでまた疑問がわいた。

 

「それにしてもここはどこだ?なんか古代中国みたいな場所みたいだが・・・」

 

そう思っていると・・・・・

 

 

<きゃあぁぁぁ!!>

 

 

どこからが悲鳴が聞こえた。

 

「なんだ!?あっちの方角だないってみるか」

 

そう言い吹雪は悲鳴のする方へ向かった。

 

 

 

 

山の中のある人気のない場所…そこでは白い着物を着た少女が山賊たちに追い詰められていた。

 

「ひどい・・・・私を騙したんですね」

 

「別に騙しちゃいねえさ!!」

 

「でも、街への近道を教えてくれると言ったのにこんなところまで連れてきて…」

 

追い詰められながらも少女は臆することなく山賊たちに反論しまっすぐな視線を山賊に向けていた。すると山賊の頭はニタニタと下品な顔を浮かべてこう言った。

 

「近道は教えてやるよ。と、言っても街ではなく、天国だけどな」

 

「天国!?・・・・やはりそれでは私を殺すつもりなのですね?」

 

「「「うへへ」」」

 

すると賊たちは下品な笑い声をあげた。

 

「そうじゃねえよ!気持ちよくして、天にも昇る心地にしてやるつっもりなのですよ」

 

そう言い賊たちが少女に近寄ると。

 

「おい!貴様ら何をやっている!!」

 

茂みから何か木の棒みたいなのを構えた枯草色の服を着た少年が出てきた。

 

 

 

俺は悲鳴のする方向へ向かった。そしてそこには、何やら山賊みたいな恰好をした5人組が白に近い銀髪の少女を囲んでいた。最初は何かの撮影か、コスプレイヤーの悪ふざけかと思ったが手にしていた剣が鈍く光っている。これはレプリカじゃなくて本物。そしていま行われているのが演技じゃないと知ると俺は背に担いでいた九九式小銃に腰の弾薬庫に入っていた7・7ミリ弾5発を装填して茂みから出た。

 

「なんだ貴様は!?」

 

「俺のことはどうでもいい。さっさとその場から消えろ!!さもないと撃つぞ!!」

 

俺は銃口を山賊に向けた。

 

「へっ!そんな木の棒で何ができるっていうんだ!!お前、地味な色だが結構高そうな服着てんじゃねえか。おい、お前らそいつ殺してきている服を金にするぞ!!」

 

山賊の内、弓を持っていた小柄な奴が一本の矢を取り出し弓を射ようとしていた。俺はそいつに銃口を向けた。今思えば俺はこの時、精神がおかしかったのかもしれない。剣を突き付けられても動揺せず、銃口を平気に相手に向けていたんだから…

 

「とっととくたばれ!!」

 

山賊チビがそう言った瞬間、俺は九九式の引き金を引いた。

 

  『ダアァァァン!』

 

銃声を聞いて山賊だけじゃなく少女も目を見開き驚いていた。

銃口から放たれた熊の眉間も簡単に貫く7・7ミリの鈍色の弾丸は確実に山賊のチビの胸に当った。

そしてチビは腕をだらんと垂らして前のめりに倒れた。そこから赤い血が流れた。

 

「ひっ!な、なんだお前は!!」

 

もう一人の山賊が剣を握り俺の方へ向かってきた。俺はボルトを動かし再装填して、向かってきた山賊に銃口を向け引き金を引いた。

 

  『ダアァァァン!!』

 

今度は眉間に命中し、山賊はのけ反りになり倒れた。

 

「ひっ!こ、こいつやべえぞ!おい!逃げるぞ!!」

 

頭らしき男はそう言い残った2人を連れて逃げていった。

ある程度3人が遠ざかると俺は構えていた腕を下すとそのまま気絶してしまった。

 

 

 

 

町から帰る途中道に迷い、山賊に囲まれている私を助けようと茂みから現れた謎の少年。顔は少し幼い感じが残っている黒髪の少年でその瞳は赤かった。

彼は木の棒みたいなのを弓を弾いていた山賊に向け、その瞬間その木の棒から火を噴いた。最初はその音にびっくりしたけど、次の瞬間、山賊の一人が倒れそこから血が流れる。驚いた山賊のもう一人が剣を彼に向け、向かってきた。

 

『危ないっ!!』

 

と、言おうとしたけど声が出なかった。すると彼はさっきの棒を山賊に向けて無表情のまま、さっきの棒に火を噴かせた。すると向かってきた山賊は目を見開きそのまま頭から血を流し仰向けに倒れた。

それを見た山賊は戦意を失って走ってどこかに逃げて行ってしまった。

それをしばらく見ていた彼は腕を下してそのまま倒れてしまった。

 

「どうしたんですか!?しっかりしてください」

私は倒れた彼に駆け寄り体をゆすった。どうやら気絶してしまったらしい。

 

「気を失っている…?それにあの人が持っている物は一体…」

 

そう思っていると、馬のいななく声が聞こえた。そこには幼馴染の詠ちゃんがいた。

 

「あっ!月っ!」

 

「あっ!詠ちゃん!!」

 

そう言い月といった少女は賈駆のもとに駆け寄った。

 

「あっ!詠ちゃんじゃない!!連絡が着て探しに行っている途中すごい音が聞こえたから来てみれば。月、僕がどれだけ心配したと思ってるのよ」

 

「ごめんなさい・・・」

 

「下々の声を直接聞きたいとは立派な事だけど、もし危ない目にでも遭ったりしたら」

 

「それなら大丈夫…あの人に助けて‥‥そうだ詠ちゃんあの人、私を山賊から助けてくれたんだけど気を失っているの!」

 

そう言われ賈駆は気を失っている少年を見た。

 

「分かったわ。月の命の恩人みたいだし、それにその人から詳しい事情とか聞きたいから屋敷に連れていきましょ」

 

そう言い賈駆たちは吹雪を馬に乗せ街へと向かった。

 



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再会

とある道を賊の討伐が終わり、故郷である天水に帰る者たちがいた。

その先頭にいるの袴に下駄。更には羽織りを被って巨乳をサラシで巻いた女性張遼こと、霞と、赤い髪に赤い目をした2本のアホ毛が特徴の少女呂布こと恋だった。

 

「いや~やっと賊の討伐が終わったな。そうやろ?恋」

 

紫髪の少女は恋という赤髪の少女にそう聞いた。

 

「うん・・・・・」

 

だが恋の反応は薄かった。

 

「どうしたんや?この3か月程上の空やで?」

 

「なんでも・・・・ない・・・」

 

そう言う恋だが・・・・・

 

(それにしても恋の奴変わったな・・・・・3か月前、1週間、何処かに居なくなってふらりと戻ってきたと思うたら、なんか雰囲気が変わってたな。今まで箸がちゃんと持てなかったのに今はちゃんと持てたり、自分で料理とか作ったり・・・それに恋の顔たまに母親のような顔になったりするときがある・・・・・・あの行方不明になった1週間何があったんや?)

 

そう思いつつも二人率いる軍隊は董卓のいる天水に向かった。

 

 

 

 

 

 

「どう?詠ちゃん。あの人は目を覚ました?」

 

「それがまだよ。それにこれあいつの持ち物だけど・・・・・」

 

そう言い詠が見たのは吹雪の持ち物だった。

 

「この変わった剣はともかく、これね月、彼が使っていた鉄の棒って・・・・」

 

「うん・・・」

 

「なんか引き金があるから弩のようなものか?・・・・・」

 

詠が触っていたものは、吹雪の使っていた九九式小銃だった。そしてそれを見た華雄はそれを見て弩の種類かなんかと聞いた。

 

「いったいなんなのこれは・・・・」

 

「ん?詠ちゃんこれって・・・・」

 

と、月という少女は何かを手にした。それは写真だった。

 

「これは・・・・・絵かな詠ちゃん?」

 

「それにしてもよくできているわね・・・・・てこれは!」

 

「どうした賈駆・・・・・これは・・・・」

 

と、詠と華雄は写真を見て驚いた。するとそこへ・・・・

 

「帰ったで~、て、どうしたん?二人ともそんな紙を見て驚いて」

 

と、賊討伐から帰ってきた霞が来た。

 

「霞・・・・そう言えば恋はどうしたの?それにさっきまで屋敷にいたねねの姿が見えないし・・・」

 

「ああ、恋はここに着いたとたん『なんか懐かしいにおいがする』ってわけのわからん事いうてどっかにいったわ。ねねはさっき会ってな、恋を探しに行った。それよりどうしたん?」

 

「それがですね・・・・・」

 

月はそれまでのことを話した。

 

「なるほどな~そんなことがあったんか・・・・で、その紙がどうかしたんか?」

 

「霞さん・・・・この絵を見てみて…」

 

そう言うと月はその写真を霞に渡す。

 

「こ、これって・・・・・・恋やないか!?」

 

そう、その写真に写っていたのは白い服を着て赤ん坊を抱いた恋の姿だった。

 

 

 

そのころ恋は屋敷の廊下を歩いていた。

 

(なんだろ・・・・・何か懐かしいにおいがする・・・・この懐かしくてとても大切なこの感じは…何?)

 

恋はまるで誰かに呼び出されるようにそのまま廊下を突き進む。この先に何か大切なものがいるような感じがしたからだ。

すると屋敷の侍女にあう。

 

「あ、呂布様・・・・どうかされましたか?」

 

「・・・・・・この先に・・・・・だれか・・・いる?」

 

「え?あ、はい。先ほど董卓様を山賊から救ったという方がこの先の部屋にいるらしいですが・・・・・」

 

「わかた・・・・・ありがとう・・・・」

 

恋は侍女に礼を言うと、その部屋に向かって進んだ。そして彼がいるという部屋に着いた。

 

「ここ?・・・・・」

 

そしてドアを開いた。恋が見たのはベットに寝かされた一人の少年がいた。彼女にはその少年に見覚えがあった。

 

「っ!?・・・・・総司・・・・・?」

 

そこにいたのは私が愛した人・・・・でも総司じゃない。もしかして…この子は‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トントントン

台所で何か料理をする音がする・・・・・その台所では一人の女性が料理をして俺は3歳くらいだろうかテーブルに座っていた。すると女性は振り返り、微笑みを浮かべ

 

「吹雪・・・・・待ってて‥…ごはんもうすぐ・・・できるからね・・・・」

 

そう言っていた。

 

(これは・・・・・夢か・・・・あの女性は・・・・もしかして…母さんか・・・)

 

俺は母さんをあまり知らない・・・・・祖父からどんな人だったか聞いたことがある。祖父が言うには「純粋でとても優しい娘だった」とのことだった。でも、なんで母さんは出ってしまったんだ‥‥

そして母さんの料理ができ小さい頃の僕は母さんの作ってくれたご飯を食べてにっこり笑うと

 

「お母さん!僕!お母さんのこと大好き!!」

 

と、笑顔で言うと母さんも小さい頃の俺に嬉しそうににっこりと笑って俺を抱きしめて

 

「吹雪・・・・・お母さんも・・・・お母さんも吹雪のこと大好きだよ」

 

優しい言葉で俺にそう言った。その瞬間、辺りは光に包まれた…

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・・・ここは・・・・」

目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。俺はどうやら過度のストレスで倒れたらしい

そりゃそうだろ、人を助けるとはとはいえ初めて人を殺したんだ・・・・・

血だって怪我してちょっと流れたのを見たことがあるくらいだ人を2人も殺してその死体を目の当たりにすればそりゃかなりのストレスがかかるだろ・・・・

辺りを見渡すと部屋のドアの所に、赤髪の少女がいた。そして彼女は目を見開きそして…

 

「・・・・総司・・・・・」

 

なんで・・・・・彼女が・・・・父さんの名前を…もしかして・・・・・

 

「なんや恋ここにおったんか~おっと・・やっと目が覚めたようやな♪気分はどうや?」

 

すると、紫髪の女性と緑髪の女性、そして少し目のきつい銀髪の女性が入って来た。

 

「起きたようね?」

 

「は、はい……おかげさまでな……」

 

「うむ……何処か身体に異常はないようだな?」

 

「あぁ………」

 

「早速だけど、名前を・・・・ってどうしたの恋?」

 

「・・・・・・吹雪・・・・・」

 

「え?恋どうしたんや?」

 

すると吹雪は・・・・・

 

「も、もしかして・・・・・」

 

すると恋はにっこりと笑い・・・

 

「大きく・・・・・なったね・・・・吹雪・・・」

 

「大きく?どういうこと恋?こいつあなたの知り合い?」

 

「・・・・・母さん?」

 

「「「え?母さん!?」」

 

いきなりの事でその場の全員がおどいた。

 

「ちょっと、あんたなにをいっているの!?」

 

「どういうことなんだ呂布!?説明しろ!!」

 

詠が驚く中、華雄が恋に問い詰めると・・・・・

 

「この子は・・・・・・吹雪・・・沖田吹雪・・・・・・恋の・・・・・大事な息子・・・」

 

 

「「「えっ!?息子!!!」」」

 

いきなりの呂布の息子宣言に3人はびっくりして声を上げた。

 

一方

 

「恋殿~恋殿~どこにいるのですか~」

 

彼女の軍師である陳宮はまだ屋敷をさまよっていた。

 

 

 

 



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母と子

「呂布の息子だと!?」

 

「どういうことや!恋!息子って、お前いつ子供産んだんや!?こいつの歳計算しても勘定合わないやないか!!」

 

霞が恋に問い詰める。まあ、そうだろ、恋の年齢は17歳、吹雪は16歳。吹雪を産んだ歳を考えると1歳で吹雪を産んだということになるからだ。

 

「もしかして・・・・」

 

詠は何か思い出した

 

「恋。あなた確か3か月前、1週間行方不明になったよね。もしかしてその間に?」

 

そうすると恋は頷いて説明した。

 

母さんがが言うには3か月前、周辺の森を散歩していたら、謎の渦に巻き込まれ俺のいた現代世界に飛ばされたという。

そこで右往左往していたら当時、防衛大学校の学生だった父さんに会い、しばらく父さんの家に居候していた。

その後二人は相思相愛になり祖父ちゃんがコネを使って戸籍を取り結婚し、そしてその翌年。俺が生まれた。

そして現代に飛ばされ5年間いたらしいが母さんは元の世界に戻ることになったらしい。

どうやら世界を移動したときに出来た歪みのようなものが母さんを元の世界に磁石のように引っ張っていたらしい。

そして元の世界に戻ったとき体が俺の世界に飛ばされる前の姿に若返っていてこの世界では母さんがいなくなって、たったの1週間しか経っていないというのだった。

 

「なるほど・・・・信じられんが呂布が嘘を言うわけじゃないしな・・・・」

 

銀髪のお姉さんがそう言った。

ん?ちょっと待って呂布?それに母さんが言っていた『この世界』って・・・・

 

「あ、あの・・・・・あなたたちは?」

 

「え?ああ、そう言えばまだ自己紹介がまだだったわね。ボクは賈 文和。こっちは華雄であんたの隣にいるのが張 文遠そしてあなたの母は呂布奉先。そしてここは天水。我が主。董卓様の収める地よ」

 

・・・・・・・・え?

 

「母さんが呂布?それに賈 文和…華雄…………まさか……」

 

「どうしたのよ?」

 

「・・・・・・もしかして、あの賈駆 文和と華雄と張遼 文遠か?」

 

「ちょっと待って……何故ボク達の名前を知っているのよ⁉︎ボクは今、賈 文和と名乗って賈詡とは名乗らなかった筈よ⁉︎」

 

「貴様!まさか呂布の息子を騙る妖術使いか!!」

 

そう言い、華雄は大斧をこちらに向ける俺は咄嗟に腰にあった南部14年式拳銃を向けた。すると恋は華雄の手首をつかんだ。

 

「っ!?なんのつもりだ呂布!!」

 

「落ち着いて橘花・・・・・吹雪は妖術使いじゃない・・・・・吹雪も落ち着いて・・・・私がちゃんと説明するから…だからその拳銃をしまって・・・・」

 

母さんにそう言われ俺は拳銃をしまった。

そして母から聞かされたのはとんでもない話だった。ここは今から二千年程昔の中国で三国志の時代だという。確かに呂布、華雄は三国志に出てくる人物だ。

なぜ母さんがそんなことを知っているかというと、現代で三国志の漫画を読んだことがあるらしいが、事件や戦争の内容などは忘れたらしく。人物や俺のいた時代から何年も前の世界だということしか知らないらしい・・・・・それにしてもまさかあの三國無双と言われた呂布が自分の母さんだったなんて信じられない。

でもなんでみんな女性なんだ?まあ、二千年ほどたってるんだ途中でゆがんだか、三国志書いた人が登場人物を男として描いたのだろうか、もしくはここがパラレルワールドなのかはわからない

 

母さんから内容を聞いて3人は唖然と立ち尽くしていた。

 

「………信じられないわね……」

 

「俺だって信じられないよ。でも母さんが言ったことが本当なら辻褄が合う……そこで確認したいんだが賈詡さんの生まれは涼州武威郡姑臧県だった筈だよね?因みに君たちの主である董卓は涼州隴西郡臨洮県じゃないか?」

 

「ちょっ⁉︎なんで(ゆえ)の故郷も知ってるのよ⁉︎」

 

「ん?誰そのゆ・・・・ムグ!?」

 

俺は「月とはだれか?」と言おうとしたとき母さんに口をふさがれた。

 

「ふぁあふぁん!?ふぃふぃふぁふぃふぁにふふゅふぉ!!(母さん!?いきなりなにすんの!!)」

 

「吹雪・・・・・それ‥‥真名だから・・・・・言っちゃダメ」

 

「ふぁな?(真名?)」

 

「真名というのはな、その人物の本質を表す神聖な呼び名だ。本人の許しなく口にしたら命を取られても文句が言えない大事なものとなる」

 

と、華雄さんが説明してくれた。よかった…言わなくて俺は母さんに感謝した。というより、何その所見殺し。もし母さんがいなかったら、俺死んでいるじゃん

するとそこへ

 

「恋殿!やっと見つけました!!どこにいって・・・・・て何をしてるんですか!?」

 

小学5,6生ぐらいだろうか小さな女の子が入って来た。しかしその子が見たのは母さんが俺の口をふさいで俺に寄りかかっている姿だった。

 

「ちんきゅーきーっく!!」

 

といきなりその子は俺に飛び蹴りをしてきた。そして俺はもろに食らった。しかも顔面に・・・・・

 

「ぐはっ!!」バタン

 

「お前!恋殿に何をしてるのですか!!打ち首で・・・・「ゴツン!!」っうにゃ!!」

 

その子が何か言おうとすると母さんはその子の頭に拳骨を放った。

 

「うう・・・・何するんですか恋殿~」

 

「陳宮・・・・・いきなりの飛び蹴りは危ない‥・・・それに吹雪は・・・恋の息子だから・・・・」

 

「な!なんですと!?恋殿の息子!?いやでも恋殿は17歳でその男は見た目からして15~16歳・・・・恋殿の息子となりますと産んだのは…う~ん」

 

陳宮さんは今混乱して唸っている。すると母さんは賈詡さんたちに振り向いて

 

「‥‥詠・・・橘花・・・・霞…ねね…悪いけど・・・吹雪と二人きりで話したい・・・・・少し席を外してくれる?」

 

「え、ええ・・・・わかったわ…それじゃあ尋問は明日にするわ・・・・・」

 

「れ、恋殿をこんな正体もわからない怪しい男と一緒にするのは危険です!!私は残るのです!!」

 

「あほ!!せっかくの親子水入らず、積もる話があるのにそれを邪魔するんはだめやで!そう言うんのをお邪魔虫っていうんや!!それじゃあ、恋。息子さんとゆっくりと話し合いな~ワテらはこれで失礼するで~♪」

 

「ちょっ!なにするんですか!!降ろしやがるのです!!この男をほおっておけば恋殿に危険が!!」

 

ねねは残ろうとしたが、霞に首根っこを掴まれ4人は部屋を出ていった。

 

「・・・・・本当に・・・・本当に母さんなんだね・・・・・」

 

「‥・・・吹雪・・・・、本当に大きくなったね・・・・。お父さんに似たね」

 

そう言い母さんは俺の頭を優しくなでた。

 

「母さん・・・。」

 

「吹雪・・・・ごめんなさい・・・・・突然いなくなったりして・・・・心配かけて・・・本当にごめんなさい」

 

「いいよ、母さんだって仕方がなかったわけだし・・・」

 

母さんにも事情があったんだ、それをどうこう言う気はない。それに今こうして母さんに会えたんだから。

 

「・・・・・吹雪・・・・・総司は・・・・・お父さんは元気?・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「吹雪?」

 

「・・・・・父さんは‥‥俺が7歳の時・・・・9年前に事故で死んだ・・・・」

 

「えっ・・・・・?」

 

「ある時、父さんは車に轢かれそうな女の子を助けるため‥・・・身代わりになって車に轢かれて死んだんだよ・・・・」

 

「・・・・・そう・・・総司は‥‥最後まで総司だったのね・・・・」

 

「‥・・・母さん・・・・ごめん・・・・・俺、何もできなかった・・・・」

 

「・・・・・吹雪のせいじゃない・・・・・仕方ない・・・・吹雪はまだ子供だったんだから・・・・」

 

「母さんは大丈夫なの?」

 

「大丈夫・・・・総司が死んだのはとても悲しいけど・・・・いつまでも悲しんでたら・・・・総司に怒られる・・・・いつまでも悲しむな。前をみて生きろって・・・・」

 

「父さんなら言いそうだね?」

 

僕と母さんは笑いあった。

僕は12年間会う事のなかった母さんにこうして会うことができた。

だけど母さんに父さんを会わせられなかったことが少し悔しい。

でも父さんの言葉を思い出して気を取り直した。

 

「母さん・・・・俺これからどうしよう・・・この時代で俺はどう生きていけばいいのかな?」

 

「大丈夫・・・・・月は優しい・・・・それに吹雪は月を救った・・・・」

 

え?俺が董卓を救った?どこで・・・・

 

「吹雪・・・・・吹雪はもう一人じゃない・・・・だから寂しくない・・・・吹雪を一人にしないから。ここでの生活は私に任せて・・・」

 

「母さん・・・・・」

 

「・・・・・吹雪・・・・今日はもう遅い・・・・今夜は小さかったときみたいに一緒に寝よう・・・・」

 

「え?母さん?」

 

「‥‥久しぶりに吹雪と寝たいから・・・・・」

 

「う・・・うん」

 

その後、俺は母さんに添い寝されながら寝た。母さんは俺を抱きしめ頭をなでていた。そして俺は小さいときに感じたとても懐かしい匂いを感じながら俺は深い眠りについた。

 

 

そのころ陳宮は・・・・

 

「あんな男が恋殿の息子なんて認めないのです!!離すのです!!さっさとこの縄を解くのです!!急がないと恋殿が!!!」

 

霞に縄で縛り付けられ吊るされていて叫んでいた。



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天の御使い?と模擬戦申し込み

三国志の時代にタイムスリップして俺は小さいころいなくなった母さんと再び出会えた。しかも母さんがあの呂布だというのに驚き、その夜は母さんと一緒に夜を過ごした。

そして翌朝。俺は今後どうするか考えを纏めてたところに尋問の続きをしにきた賈詡さん達の案内で俺も後に続いた。

到着した部屋は玉座の間であり、集合を掛けられて集められた武官や文官。更には武装した衛兵が集まっている。だけど俺は一番奥の玉座に座っている人物に驚かされた。

玉座に座っていることだから間違いなく董卓だろうが、その董卓は何しろ第一印象が‘‘美少女”で昨日俺が助けたあの少女だったからだ。母さんが言っていたのはこういうことか・・・・・

俺が知っている歴史にて伝えられている董卓の印象は誇張が強過ぎるにしても悪逆非道で酒池肉林を目指していたヒトラーのような独裁者。そして正史の三国志でも『記録に残っている限り、これほどの悪人はいない』世言われた人物だ

そんな印象と目の前にいる可憐な少女とは全く不釣り合いだ。

そんな驚いた俺をアタフタしながら董卓が話し掛けて来た。

 

「あ、あの・・・・大丈夫ですか?具合は大丈夫?」

 

「え?あ、あの、その・・・・大丈夫です」

 

「話は呂布さんから詳しく聞きました。」

 

「は、はあ・・・・・」

 

「申し遅れました。私はこの天水を治めている董卓と申します。昨日は山賊から助けていただきありがとうございました。」

 

「あ、いえこちらこそ。俺は沖田吹雪と申します。先ほど聞いた通り呂布奉先の息子です」

 

「・・・・本当に呂布さんに似ていますね。」

 

そう言われて董卓は俺の顔を見る。言われてみれば俺と母さんを並べるとそっくりであり、違いは性別と母さんにあるアホ毛が無いのと髪の色が黒だということを除けば母さんと似ているからである。

 

「え、えーと・・・・・董卓さん。確か俺を尋問するんだったよね・・・・?」

 

すると董卓のそばにいた緑髪の眼鏡の子・・・・確か賈詡さんが答えた。

 

「ええ、そうよ。恋の息子でも、一応は尋問するからね。まず、恋から聞いたけど、あなたは何でこの時代に来たの?」

 

「わからない・・・・祖父の倉庫を整理してたらなぜかこの時代に来た。俺にだってどうしてこの時代に来たかわからないんだ」

 

そう・・・俺は確かに現在の令和の時代の日本で祖父の倉庫の整理をしててそして謎の光に包まれてこの世界に来ていた。正直言ってなぜここに来たのかは不明だ

 

「そう言えば・・・・・」

 

と、董卓さんが何か思い出したように呟いた。

 

「どうしたの月?」

 

「詠ちゃん。管路の占いって覚えている?」

 

「え?ああ、確か『天より二つの御使い降臨せん。一つは白き衣を羽織りし者。大器と深き情持ちし者。一つは枯草の衣を羽織りし者。雷鳴を轟かす武器を使い三国無双の血を引く者。抱きし思いは近しく遠く、願いは一つなれどその道は一つにあらず。行く道違えども見つめる先は等しく、目指すものは唯一つ。それ即ち、この大陸に生きる者が願う、世の平定なり』って奴?……まさか」

 

「ええ、まさかと思うけど沖田さんは、もう一人の天の御使いかもしれない」

 

「まあ、確かに見慣れない枯草色の服着ているし恋の息子やからな~たぶん間違ってないと思うで」

 

「それに噂では桃花村に白い羽衣を着た天の御使いが現れたと聞いたな・・・・」

 

月の言うことに霞と華雄はうなずいた。

 

「ま、まあ・・・御使いのことは置いといて・・・・・それよりもあなたに訊きたいことがあるのよ」

 

そう言って賈詡さんは俺の九九式小銃を取り出す。てか御使いの話は置いちゃっていいのかよ。結構重要なところだと思うけど・・・・

 

「これは何?月から聞いたけどこれがすごい音を出して火を噴いてあっという間に山賊を倒したらしいわね」

 

「・・・・これは九九式小銃と呼ばれる銃の一種だ」

 

「九九?・・・それに銃って?・・・・恋。あなた天の国にいたのよね。これは知ってるの?」

 

母さんは頷いた。

 

「知っている・・・・前に十三お義父さんが見せてくれた。これは古いものだけど、吹雪たちのいた世界の兵隊が使う物・・・・」

 

因みに十三は俺のじいちゃんの名前である。

 

「つ、つまり何よ・・・・・」

 

「一言で説明すれば、銃ていうのは、火薬の力によって鉛の弾をものすごい速さで撃ちだし、相手を貫通させる武器だよ」

 

「武器!?これが・・・・」

 

母さん以外の人が驚く‥・・・まあ、この時代はまだ弓か剣で戦う時代だからな。銃なんて母さんを除けば見たことないだろう。

 

「ま、まあ。これが何なのかは一応分かったわ。最後に質問。恋の息子っていうけどあんたって強いの?」

 

「あ、あの・・・・・」

 

一応、剣道はしていて中学では優勝した経験もあるけど実戦とスポーツじゃ力の差はわかりきっているし・・・・

 

「・・・・大丈夫・・・・・吹雪は強い・・・・・」

 

賈詡さんの質問に俺が迷っていると母さんが隣で言った。

 

「え!?ちょ!?母さん!?」

 

「なんや?恋。さっそく息子びいきか?」

 

「・・・・違う・・・ひいきじゃない・・・・気で感じる・・・・私にはまだ勝てないけど・・・・霞や橘花には互角に戦える・・・・・」

 

そう母さんが言った。いやいやいや、俺が張遼さんや華雄さんと互角?確かにじいちゃんから格闘技、銃剣術、剣術なんかを教わったけど。あの、三国志の武将に勝てるわけないだろ!!

そう思っていると母さんが俺の頭に手を置いた。

 

「吹雪・・・・・自信を持って・・・・あなたならできる・・・・はず?」

 

母さん‥‥そんな菩薩のような笑みで言っても駄目だからね。てか最後に聞こえたのは何?

それと俺はあることにか気が付いた

 

「ん?そういえば、陳宮さんはどうしたの張遼さん?」

 

そう、確か母さんの軍師?だったけか、その陳宮さんがいない。

 

 

 

 

 

 

「びえぇぇぇぇぇん!!恋殿!!」

 

外に吊るされていた陳宮さんを母さんが開放すると、陳宮さんは大泣きして母さんに抱き着いた。

 

「悪い悪い。あのまますっかり忘れてしもうたわ。許してえな♪」

 

「・・・・霞・・・・ねねいじめちゃダメ・・・・」

 

張遼さんがそう言い母さんが注意する。

陳宮さんは俺の方を見ると・・・・・

 

「また、お前ですか!!恋殿の息子を語る不届き者め!!くらえ!!ちんきゅーキーク!!」

 

そう言って陳宮さんは飛び蹴り攻撃をした・・・・・またこれかよ・・・・・

 

「ねね‥‥いい加減にする・・・・」

 

そう言い母さんは飛び蹴りをしようとする陳宮さんの襟首を掴んだ。もちろん優しくだ。

 

「なぜですか恋殿!!」

 

「吹雪は恋の息子・・・・そして、ねねも恋の娘・・・・・つまり兄妹・・・・・だから喧嘩はだめ・・・・」

 

娘!?・・・・母さんこの地で妹を生んだのか?そう思ってると張遼さんが・・・・

 

「誤解してると思うけど・・・ねねは恋の実娘じゃ、あらへんで、親無しの所を恋に拾われたんや。でも恋にとっては娘同然なんやで」

 

なるほど・・・・・ということは、俺に義理の妹ができたっていうことか・・・・でも陳宮さんの方は・・・

 

「な、何を言ってるのですか恋殿!?ねねは・・・ねねは・・・・」

 

そう言い、キッと俺の方を睨む。若干顔が赤い‥‥ヤバイこれは怒ってるのかな?

 

「ねねは認めませーん!!!」

 

そう言い顔から湯気を出しそのままどこかに走り去ってしまった。よほど嫌だったのかな・・・・まあ当然かいきなり憧れていた人の所にいきなり息子が現れたらみんなびっくりする。

 

「あ~あ、行ってしもうたわ・・・・・」

 

「まあ、いつものことだがな」

 

張遼さんと華雄さんがため息をつきながら言う。いつものことなのか?

 

「さてと・・・・確か吹雪ッち言うたか。そんじゃあお前の腕がどのくらいかぁみせてもらうで!」

 

「その次は私だからな。呂布の息子がどんなものか私も興味ある」

 

 

・・・・・・・・・・え?(冷や汗)

 



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吹雪、張遼と試合する

・・・・なぜこうなった・・・・

なぜか俺は張遼さんと試合することになった。最初は誰が最初かということになったんだけど、母さんは参戦せず見学を選び、華雄さんは張遼さんにじゃんけんで負けて観客という形になり、試合には参加しないことになった。

 

俺は祖父の軍刀を持ち正眼の構えをし、張遼さんに向かったが、力の違いなど痛いほどにわかっている。初撃をかわされてからはひたすら防御一辺倒になってしまったのだから。

 

「ほらほら、どうした?威勢がよかったのは最初だけかいな!」

 

そういいつつ振るわれる飛龍偃月刀それを俺はひたすらに受け流す

右からのなぎ払い、刀を斜めにして軌道を逸らす。逸らした先から降ってくる偃月刀の切っ先、横に飛びのいてかわす。偃月刀を受け止めたとき手がジーンっと響く。

そこへ再び偃月刀でのなぎ払い、刀で受けるにも間に合わないのでバックステップでギリギリのところで回避に成功した。

 

「どうしたんや?これで終わりかいな?」

 

そういう張遼さんに俺は苦笑した。やっぱり三国志の武将は強い。俺は目線をちらっと母さんの方を向いた。

母さんはただじっと見ている。でもその眼は少し悲しそうな眼をしていた。

俺は母さんの期待にこたえなくてはいけない。いや、自分自身の為にもこの試合は勝たなくちゃいけないそう思った。俺は息を吸って深呼吸した。

そして俺は今出せる力をめいいっぱい出そうと決め、得意剣技の構えをした・・・・・

 

 

 

霞視点

 

「どうしたんや?これで終わりかいな?」

 

恋の息子やからどんな腕をしてると思ったら、初撃はまあまあ良かったけどその後は防御一転になってしまっている。もしかして見込み違いやったかな・・・・すると沖田はしばらく立ち止まり息を吸ったと思うと突きの構えをとった。しかも沖田の雰囲気が少し違う・・・・

 

(さっきと覇気が違う・・・・それにあの眼付・・・・・)

 

目つきが変わり私は驚いた。あの覇気と目つきは間違いなく恋のと似ていたからだ。

 

(恋の息子っていうのもあながち嘘やないな・・・・)

 

これはうちも気を引き締めなあかんな。うちは偃月刀を握りなおし構えた。

 

 

 

恋視点

 

「恋。あなたの息子って本当に強いの?なんか霞の攻撃ばっかりかわしているだけじゃない」

 

詠にそう言われる。確かに今の吹雪は防戦一方。だがそれはまだこの世界の戦いに慣れていないだけ。しかもあの子はまだ自分の本当の力に気付いていない。

少し悲しい・・・・

すると吹雪はちらりと私を見た。できれば何か助言をしてあげたいけど、でもそれはあの子の為にはならない。こういうのは自分の力で乗り越えるしかない。すると吹雪は深呼吸して刀を構えなおした。すると今までのあの子の空気が一変に変わった。

どうやら少し目覚めたらしい。

 

「どうやら・・・・」

 

「ん?どうしたんだ呂布?」

 

「どうやら、風が変わった。」

 

「はぁ?」

 

「風ですか?」

 

橘花と月、詠が首を傾げた。

 

 

 

 

 

俺は得意剣の一つである、ある技を張遼さんに放った。その技は「左片手平突き」。とあるところでは「牙突」と呼ばれている。

 

「また最初の攻撃と同じやで!沖田!!」

 

張遼さんがそう言い最初の一撃をかわしたが・・・・

 

「なっ!?」

 

すぐに横薙ぎの攻撃に移る。平突きの特徴はたとえ突きをかわされてもすぐに横薙ぎの攻撃ができる2連撃技。かの幕末の新選組鬼の副長と言われた土方歳三の考案したこの技に死角はない

だが、張遼さんは偃月刀で受け止める。顔から冷や汗が少し見える。

 

「いいでぇ!いいでぇ!そうこなくちゃ、おもろうない!!」

 

張遼さんは嬉しそうに笑う。

 

「(最初は力量を図るためやったが本気出さんとあかんな・・・久しぶりに血ぃたぎってきよったで)」

 

その後も沖田は霞に向かって連撃をくわえた。しかし霞も負けていない。沖田の攻撃をかわしながら攻撃する。しかしなかなか決着がつかない

 

「このままじゃ埒が明かんな。沖田、次の一撃で決着つけようか!!」

 

「望むところです!!」

 

張遼は大きく振り上げ、一気に降り下ろす。沖田はは走りながら体勢を低くし、偃月刀を受け止める。その柄を沿う様に刀を走らせ、勢いを利用し振り上げた。

手から離れた偃月刀は、空を切りながら宙をを舞い、地面に突き刺さる。

 

「勝負ありましたね。張遼さん」

 

「・・・・(しあ)や」

 

「え?」

 

「霞。うちの真名やこれからは霞って呼んでえな♪」

 

「わかりました霞さん。じゃあ俺のことも吹雪でいいです。俺の国には真名の風習がありませんので」

 

「わかった吹雪。あとさん付けはしなくてええよ。それと華雄!あんたは今の戦いぶりを見てどう思う?」

 

戦ってる最中何かを試すかのように見つめていた華雄さんに霞が問う。

 

「ん?そうだな。まあ、はじめにしてはいいんじゃないか?まあ、確かに呂布の言う通りまだ荒いところがあるが鍛えようによってはいい武人になるんじゃないか?」

 

「・・・で、華雄。これから吹雪と試合するんか?」

 

「いや、今回はいい戦いが見れたし今日はやめとこう。」

 

そうして華雄さんが俺に近づき

 

「私の真名は橘花(きっか)だ・・・これからよろしく頼むぞ、吹雪」

そう微笑んで俺の肩をポンとたたき、そう言った

 

「ああ、よろしくな橘花さん」

 

「できれば華雄で頼む。真名で呼ばれると少し恥ずかしくてな。それとさん付けはいい」

 

と、頬をかきながら笑って言う華雄。

 

「ああ、わかったよ華雄」

 

俺がそうと、董卓さんたちがやってきて

 

「私も真名を預けます。私の真名は(ゆえ)です。よろしくお願いします。吹雪さん。ほら詠ちゃんも」

 

「もう…仕方がないわね・・・・僕の真名は(えい)よ。この真名あんたに預けてあげるからね。それと私も貴方を吹雪って呼ばせてもらうわ」

 

「ああ、よろしくな月、詠」

 

「吹雪・・・・・」

 

すると母さんがやってきた。

 

「母さん・・・・・」

 

母さんは俺に近づきそして俺の頭を撫でた。

 

「まだ、腕は荒いけど・・・初めてにしては‥‥よく頑張ったね。」

 

「ありがとう。母さん」

笑顔を見せて答えた。その後、俺は月の所に住むことに決まったのだがそこへ詠が

 

「あんたがそれくらい戦えるなら・・・霞!」

 

「なんや?」

 

「吹雪を武官として扱うことは出来ると思う?」

 

「まあ、そこは吹雪のがんばり次第やな。腕はまだ荒いとこあるけど、うちと互角に戦えるんなら賊とか一兵卒相手でも大丈夫やろ」

 

「そう・・・吹雪!あんたはこれから武官として働いてもらうからそのつもりでね!天の知識とかも必要になると思うから文官の仕事も手伝ってもらうから。とりあえずは今日はゆっくり休んで明日から働いてもらうからそのつもりでね」

 

こうして俺は董卓こと月の武官として働くことになったのだった。

 



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兄妹

ねねです。まだあの男のことが頭から離れません。あんな男が恋殿の息子なはずがありません。

それに恋殿は私とあの男を兄妹と同然だといった。そ、そんなはずはありません。あんな男が兄だなんてねねは絶対に認めません!!あんな奴に恋殿は渡しません!!

 

 

 

 

 

 

 

俺は詠に呼び出されとある部屋に来た。そして詠は積み重ねられた竹簡を俺に渡してた。

 

「・・・・・これは?」

 

「警邏隊からの報告書よ。最近になってから中央の腐敗は酷くなる一方で、それに合さって天水にも賊がやって来るようになったのよ」

 

「つまりこれは賊に関する報告書……逮捕歴や関連する情報かなにかということか?」

 

「そう。これを見て、どう感じてどうやればいいか立案して貰うってことよ。こういう時こそ天の国の知識が必要でしょ?で、どうなの?」

 

内容を見るとこれはひどい・・・・警邏の配置とかがむちゃくちゃだ。俺は報告書の中で気になる共通点を見つけたので、そこを指摘することにした。

 

「………事件発生から通報、現場到着までの時間が掛かり過ぎないか?」

 

「なんでそう思うの?」

 

「これでもかなり速いだろうが、俺から見たら遅過ぎるよ。これじゃ例え通報があったとしても距離があったら時間がかかる上に最悪の場合には出遅れになる可能性もあるよ」

 

「それ位は分かってるわ。現状では見回りの部隊を増やしてるのが精一杯なのよ」

 

「はぁ……町の地図を借りてもいいか?」

 

俺は壁に貼られた街の地図を手に取り、それを机に広げたて筆を手に取ると書き足していく。

 

「いいか?報告書をみる限りだと経路がバラバラで通報しようにも場所が分からない。これも問題の1つだ」

 

「仕方ないじゃない。増員しようにも人手が足りないんだから……」

 

「そこでだ………天水を合計で9箇所の区画に指定し、1つの区画に最低でも3つ、常駐警邏隊の派出所を空き家を利用して設置。民からの通報を円滑にして、民からの要望や交流をいいものにしていくんだ」

 

「あんた……話を聞いてなかったの?人手不足だっていったでしょ?」

 

「うん。聞いてたよ。だがそれは軍部内部の交代制でしているからだよ。俺の考えていることは兵役免除を条件に独立警邏隊への入隊で募集を掛けるんだ。待遇を軍と同じにして、給料もしっかり出せば必ず来る」

 

「………いい案だけど、資金もかなり掛かるわよ。それはどうするつもりなの?」

 

「孫子兵法にこんなのがあっただろ?『故に智将は務めて敵に食はむ。敵の貨を取る者は利なり。是れを敵に勝ちて強を増すと謂う』 始めに掛かる資金はやむを得ないが後は出現した賊や越境してくる敵から奪還し、増強していく。

それでも不安が残るなら地方の豪族からの寄付や不正を働く富豪を摘発して財産を没取する。手段は幾らでもあるよ」

 

じいちゃんに教わった経済学や警察機構なんかが役に立った。俺はその時の知識を詠に話すと

 

「・・・・・・・」

 

「どうだろう?・・・・」

 

「ねえ・・・・あなたの考え使っていい?」

 

「問題ないよ」

 

その後俺は詠にその警邏に関する立案書を纏めて書いて出すようにと言われ部屋に戻り、その立案書を纏めていた。

 

「なかなか終わらないな~」

 

俺は頭を抱えながら立案書を書いていた。するとドアからノック音がし、母さんが入って来た。

 

「・・・吹雪・・・・」

 

「あ、母さん・・・・どうしたの?」

 

「どう?・・・・立案書・・・がんばってる?」

 

「う~んなんとか大体できたんだけど…最後の方がね・・・」

 

かれこれもう4時間考え纏めている。すると母さんが

 

「吹雪・・・・少し気分転換するといい・・・・」

 

「え?」

 

「ここで悩み続けるの・・・・体に良くない・・・・」

 

確かに母さんの言うとうりだな・・・・少しガス抜きでもするか・・・

 

「そうだな。一度リフレッシュしようかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・で、なんでねねがお前と一緒に街に出かけなかならないんですか」

 

「そういうなよ陳宮。母さんにお使いを頼まれてただろ?」

 

「だからなんでお前が一緒なんですか!!お使いならねね一人で十分なのです!!」

 

そう俺は気分転換に街に出ることになったんだが、母さんに買い物に出かける陳宮の付き添いをしてほしいと言ってきたのだ。俺は別に問題ないけど、陳宮にいたっては・・・・

 

「まったく!恋殿もなんでこんな男を一緒に・・・・」

 

こう陳宮の姿を見てみるとなんか本当の妹のように思えるな・・・まあ一応母さんの養子?みたいだし俺にとっても義理の兄妹ということになるのかな?

因みに俺は九九式小銃は置いてきている。あっても邪魔だからな。代わりに護身用として南部14年式拳銃を携帯している。

そうしている間にも俺たち二人は目的の場所に着いた。そこは肉まん屋さんだった。

 

「ここは・・・・肉まん屋か?」

 

「そうなのです。ここは恋殿のお気に入りの肉まんが売っているのですぞ」

 

「へ~母さんって肉まんが好きなんだ…初めて知った。」

 

「フフーんどうですか!息子であるお前の知らない恋殿のことをこのねねは知っているのですぞ!」

 

勝ち誇ったかのように陳宮は言う

 

「まあ、確かに母さんと一緒にいたのは4歳ぐらいだったし、あんま母さんのこと覚えていないんだよな」

 

「え?」

 

すると店から店員おばちゃんが出てきた

 

「あら、あら、陳宮ちゃんじゃないの。あれ?今日は呂布ちゃんは一緒じゃないの?」

 

どうやら母さんと陳宮はこの店の常連らしい

 

「はいなのです。今日は恋殿は用事があっていないので私がきました。」

 

「あら、そうなの・・・あ、肉まんはいつものね」

 

「はいなのです」

 

そう言うとおばちゃんは店の奥の方へと入っていった。

 

「そう言えばお前、恋殿と一緒にいたのは4歳の時までって言ってやがりましたがどういうことなのですか?」

 

「それはだな・・・・」

 

俺は母さんから聞いたことを陳宮には話した。

 

「そんなことがあったのでやがりますか・・・・」

 

「はい、お待ちどうさん。特製肉まんよ」

 

「あ、ありがとうございますのです」

 

店の奥からおばちゃんが出てきて肉まんを陳宮に渡した。

 

「それにしても隣にいる人は誰だい?もしかしてお兄さんかい?」

 

「え?あい、いやその・・・・」

 

「ち、違うのですぅぅぅぅ///////」

 

そう言って陳宮はまた顔を赤くし肉まんをもってどこかに走り去ってしまいまった。

 

「まったく・・・・・じゃあ、おばちゃんありがとな」

 

 

「あら、あら・・・・で、お兄さんはどうなんだい?」

 

俺は陳宮は追おうとしたがおばちゃんに俺と陳宮の中を聞いた。

 

「・・・・・・妹みたいな存在ですよ。では私はこれで、肉まんありがとうございました」

 

そう言い俺はその場を後にした。

 

 

 

「さてと・・・・どこに行ったんだ陳宮は…」

 

俺は探せるところは探したが見つからない。あと残っているのは南の方角だでもあそこは一番治安が悪い・・・・もしあそこにいたら・・・・

 

「まったく。世話のかかるやつだ・・・・・」

 

俺は南部14年式拳銃の安全装置を外し撃鉄をコッキングして南門に向かった。

 

 

 

「何をしやがるのです!そこをどくのです!!」

 

ねねはおばさんにあの男が兄かと聞かれ、ねねは恥かしくなりその場から逃げてしまった。そして今・・・・・

 

「へっへっへ・・・・・お嬢ちゃん。こんなところで一人何してるの?」

 

「おじさんたちと一緒に来ないか?」

 

「おじさんたちは一人ぼっちの子にお家を探してあげる優しい人たちだよ~」

 

こいつら、人買いですか・・・・こうなるくらいなら恥ずかしがらなければよかった…

 

「さぁこっちに来るんだ!!」

 

ごろつきの手が伸びる…‥しかし・・・・

 

ドガっ!!

 

ごろつきのひとりが吹っ飛んだ。

 

「な、なんだ!?」

 

そこにいたのは・・・・

 

「てめぇ!!俺の妹分になにをするんだ!!」

 

あの男がいた。

 

「あ”ぁ!!なんだてめぇ!!」

 

「野郎!!」

 

二人のごろつきはあいつに向かおうとしたが・・・・

 

パァーン!!

 

あいつが手に持っている筒みたいなものを上へ向け、天に向かって火を噴いた。

それを見てごろつきは・・・

 

「ひっ!!」

 

「なんだあれ!?」

 

「こいつでどタマぶち抜かれたくなければとっとと失せろ!!」

 

「雷鳴轟かす兵器かあれは・・・・・と、なるとあれが枯草色の御使い!!」

 

「や、やべえぞ!!逃げろ!!」

 

そういい、ごろつき共はにげていった。するとあいつは近づいてきて手を伸ばした

やばい怒られる。私は覚悟を決めて目をつぶったが・・・・

 

「どこにいってたんだ?心配したんだぞ」

 

そう言いねねの頭を優しくなでた。

・・・・ずるいのです・・・そんなに優しくなでられ優しく言われたら…

嫌いになれないので。最初ねねはこの男に恋殿を取られると思った。でも恋殿は言った

 

『吹雪は恋の息子そしてねねも恋の娘・・・だから二人は兄妹』

 

そうです・・・・ねねは勘違いをしていたのです。家族を取られるんじゃない。家族が増えるんだって・・・・・

私は優しく微笑むこの男に温かい感情を抱くのだった

 

 

 

 

 

「さて、帰るか陳宮・・・「ねねです」・・え?」

 

「私の真名なのです。あなたに預けるのです」

 

そう言うとあいつはニコッと笑い

 

「・・・・わかった。ねね・・・俺のことは吹雪でいいよ」

 

「///////」

 

「どうしたねね?]

 

「な、何でもありません!さっさと帰りましょう恋殿が待っていますよ!・・・・・・・・・・・・・・・・・兄上」ボソッ

 

「え?」

 

「何でもありません!さぁ行きますよ!!」

 

「あ、ちょとねね!?」

 

ねねは吹雪の袖を掴み屋敷に向か会って走った。

 

 

 

 

 

 

「二人とも・・・・・こんな遅い時間まで何してたの?」

 

「「ご・・・・ごめんなさい」」

 

その後、二人は帰りが遅いことから恋に叱られるのであった。

 

 



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天水警邏隊

拝啓祖父へ。

現代社会から約1800年前の中国の時代に飛ばされた俺は幼いころ行方不明になった母さんと出会った。そして今俺は、ここ天水という町で働いています。仕事としては詠・・・・賈詡さんのところで文官。つまり公務員の仕事を手伝ったり、そして俺が立案した警邏の平隊士として手伝いをしています。

最初は字が分からなく、そして激しい仕事で大変でしたが、母さんが字を教えてくれたり、そして仕事の先輩?でもある華雄、張遼さんのおかげで何とか生活できています。

そしてこの世界に来て、半年ぐらいでしょうか?俺は詠にとある部屋に連れてこられました。その部屋は『警邏隊隊長室』という場所でした・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・え?俺を警邏隊の隊長に?」

 

「ええ、そうよ」

 

部屋に呼び出され詠に言われて俺は少し驚いた。警邏隊の隊長ということは俺の世界では警察署長、もしくは警視総監ぐらいの階級職になるからだ。別の時代の人間であり少し前まではただの高校生だった俺がそんな大事な役に付かせてもらうなんて正直言っていいのだろうかと俺は思った

 

「なんで俺が?一応、警邏隊の隊長は華雄さんじゃなかったけ?」

 

「華雄将軍は代理の隊長よ。先代の隊長がなくなってからその穴埋めとして代わりにやってくれてたの。それにあなたを隊長にって推薦したのはその華雄将軍・・・・橘花よ」

 

「え?橘花が?」

 

「ええ。貴方、武官見習いで華雄のところで働いていたじゃない?それでね華雄から『腕もいいし、覚えも早いから町の警邏を任せてもいいんじゃないか?』って言われたのよ」。それに恋・・・・あなたのお母さん・・・てこういうのはちょっと複雑ね・・・・とにかく、恋も吹雪が警邏隊の隊長になるの認めてたわよ」

 

「華雄と母さんが・・・・」

 

「それに僕だって。そろそろ大きなこと任せてもいいかな~って思ってたのよ。あなたの提出した警邏隊の立案所に銀行やら目安箱。それに学校とかもね。だからね吹雪。警邏については立案した吹雪に任せようと思っているの。どう?やる?」

 

詠が真剣な目で俺を見てそう言う。その目は俺を信頼して・・・期待している眼だ。ならその期待にこたえなくてはならない

 

「わかった。警邏隊長の件。引き受けるよ」

 

「そ、よかった。頑張ってよ吹雪」

 

「ああ。詠の期待に応えるように頑張るよ」

 

「な、何を言っているのよ。言う相手が違うんじゃないの!?僕だけじゃなくて、月の期待にもこたえるようにね///」

 

と、俺が不適の笑みでそう言うと詠は顔を少し赤くしてそう言って出てってしまった。

 

「とにかく頑張らないとな・・・・・」

 

部屋にただ一人残された俺はそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺は服を着替えて部屋を出ると・・・・

 

「お待ちしておりました。天の御使い様。私は警邏隊士の樊稠と申します」

 

と、長い銀髪で片眼に眼帯をした女の子が立って俺にあいさつをした。

樊稠って言えば騰と韓遂の軍を破る実力を持ちながらも、李傕に謀反を疑われて死ぬ事になった悲劇の武将だったよな?

 

「ああ、おはよう。樊稠さん。今日はよろしくお願いします」

 

と頭を下げる俺に彼女は驚いた顔をした

 

「えっと・・・・頭を上げてください。あなたは天の御使いであり私たち警邏隊の隊長・・・・上司になりますので、そんな下の者に頭を下げないでください」

 

「でもこれから共に働く仲間になるんですから、ちゃんと挨拶をしないとって思って」

 

「それは・・・・ご立派ですが。密偵の草上がりの私なんかに頭を下げなくても・・・・」

 

と、慌ててそう言う密偵ていうとスパイのことだったけか?

 

「それでもだよ。だからこれからよろしく樊稠さん」

 

「は・・・はい」

 

俺の言葉に彼女は戸惑った表情をして返事をする。そんなに頭を下げることがおかしいことだろうか?

そんなことを疑問に思いながら俺は樊稠さんに連れられ着いた場所は警邏隊の隊士たちがいる隊舎であった。そしてそこには総勢100名くらいだろうか?若い男女・・・・と、いうよりほとんど女の子だな…その隊士たちが整列していた。

俺は隊士たちの前に立ち

 

「え~本日より、ここ警邏隊の隊長に着任した沖田吹雪だ。世間では天の御使いなんて呼ばれている。隊長としては俺はまだ新人でありますが、精いっぱい頑張って君たちの期待に応えたいと思います」

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

俺はそうあいさつし頭を下げると、他の警邏隊士たちも頭を下げ返事をする。そして挨拶も終わり各自隊士たちは仕事場へと向かう中、一人だけ俺を睨み立ち尽くしている子がいた

 

「……あなたがここの新任の隊長ですって?」

 

「ええ・・・そうです。えっとあなたは?」

 

少しいらだった表情をし俺を睨む少女に俺はそう返事をすると

 

「ふざけるな!!」

 

「うぐっ!!」

 

そう言うなり俺を蹴り飛ばした。そして

 

「天の御使いだか、呂布将軍の息子だか知らないけど!あんたが先代の隊長の役を務められるわけないでしょ!!」

 

そう言い殺気のこもった眼で俺を睨む少女。そして少女は俺を指さし

 

「はっきり言うわ!私はあんたを絶対に隊長だなんて認めない!!あんたのような奴は足を引っ張るだけだ!さっさと自分の故郷に帰れ!!」

 

そう言い彼女は舌打ちをしてその場を去った。そして俺は立ち上がると

 

「大丈夫ですか?隊長?」

 

樊稠さんがそう訊く

 

「う…うん大丈夫だけど……彼女はいったい?」

 

「はい。彼女は李傕と申しまして、先代の隊長の副隊長であり姪であり、隊長が来るまでは隊長代役を務めた人です」

 

「あの子があの李傕・・・・」

 

俺は立ち去っていく彼女を見てそう言う。李傕と言えば董卓の腹心の武将で母さんである呂布と共に曹操を迎撃し、夏侯淵の部隊と戦う。董卓の死後長安を攻めて、郭汜と共に呂布を翻弄し、張済、樊稠に城を襲わせる。勝利後殺戮を行い後に郭汜と対立し、最期は曹操に敗北して山賊となり、段煨に討ち取られるんだっけ・・・

 

「隊長。気にしないでください。乱暴者に見えますが彼女は仕事熱心で優しい人なんです。多分隊長が新任隊長と聞いて少し驚いているだけですから」

 

と、そう言い樊稠さんは李傕さんの去った場所を見て俺にそう言うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ・・・くそっ・・・・何で伯父上の代わりがあいつなんだ・・・・なんで・・・・」

 

路地裏で壁を叩き李傕はそう言う。そして

 

「うぐっ・・・・伯父上。なんで亡くなられたんですか?あなたがいなくなってはこの警邏隊はどうなるんですか?・・・・私だけでは無理です。代理が華雄将軍ならいざ知らず、ましては出世不明のあの男が伯父上と同じ隊長になるなんて・・・・・」

 

そう、小さな涙を流す彼女、そして

 

「伯父上。私があの男から警邏隊を守ります・・・・必ず」

 

と、そう言う彼女李傕で会った

 

 



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天水に舞う雪の風

警邏隊の隊長になったのはよかった。幸いにも隊員たちにはだんだんと信用してもらえている。一人を除いては・・・・

 

「や・・・やあ、李傕さん。おはよう・・・」

 

「……おはようございます。何か用ですか?」

 

「あ、いや。朝の挨拶を・・・・」

 

「私はこれから見回りがありますので、用がなければこれで・・・・・」

 

朝早く、俺は隊舎の中を歩いていると李傕に出会って声をかけたのだが、案の定、冷たくされる。まあ、最初は無視されてたから少しは一歩進んだのかな・・・・でも

 

「今日もダメ・・・・か」

 

俺はそう言う。ここの隊長となってからは仕事も少しづつだができ、町の治安も少しは改善の兆候が見えだした。むろん隊士たちや町の人の交流も深めているのだが、どうもあの李傕さんだけは俺に心を開いていなかった。だが、仕事はきちんとこなしたり、部下の隊士にも的確に指示をしているし、他の兵や町の人にも慕われている。なのに俺だけ冷たい態度をとるのか?まあ、ずっとこの警邏隊を仕切っていたのだから、急によそ者である俺が警邏隊の隊長になるのを快く思っていないのも無理もない。

無理もないのだが、やっぱりな・・・・・

 

「はぁ・・・・・嫌われているのかな?俺って・・・・まあ、信用されるっていうのは難しいんだな」

 

そう言いながら俺は隊長室で各隊の見回りの報告書を見ながらそう呟く。

 

「昨日は、事件の数は10件。酔っぱらいの喧嘩にひったくりと・・・・前に比べればよくなったが、どうしたものかな・・・・・あ、この東地区はスラム街みたいになってたよな?警備の人員を増やすべきか・・・・いや、まずどこか改善するべきか自分の目で見ないといけないな。うん。そこは大事だな・・・」

 

と、少しため息交じりに言うと・・・・

 

コンコン

 

と、戸を叩く音が聞こえた

 

「ん?開いているよ?」

 

俺がそう言うとドアが開き

 

「隊長。失礼します」

 

そう言い入ってきたのは樊稠だった。

 

「ああ、樊稠さん」

 

「さん付けはおやめください。私はあなたの部下ですので・・・・・」

 

俺が敬語で話すと樊稠は苦笑してそう言う。

 

「それで隊長。その様子。また李傕に無視されたのですね?」

 

「ああ、清々しいくらいにな。まあ、まだ信用されていないってことだろうけど」

 

「まあ、李傕は少し頑固と言いますか、真面目と言いますか・・・・でも相手には忠義を尽くす人なんで。コツコツ信頼を取ればいいですよ」

 

「樊稠さ・・・・樊稠。李傕のことよく知っているね?」

 

「はい。同僚ですので警邏隊が結成された時からずっと働いていたので」

 

「そうか・・・・」

 

「それで隊長。私を呼んだ理由なんですが?」

 

「ああ、そうだった。樊稠。君って確か諜報とか間諜なんかの情報収集が得意だって言っていたよね?」

 

「は、はい。董卓様のところに入る前は情報屋を営んでいましたので。それ以前に何かを調べるのも好きだったので」

 

「そうか。なら話が早いな」

 

そう言うと俺は一枚の書簡を渡した

 

「あの、隊長?これは」

 

「うん。実は君にお願いがあるんだ」

 

「お願い・・・ですか?」

 

「うん。君のその情報収集力を生かして、警邏隊の諜報機関を作ろうと思っているんだ」

 

「諜報・・・・機関ですか?」

 

「うん。この先、情報戦が必要不可欠だと思うんだ。それでその部署を君をその部署の責任者として任せたいと思っているんだよ」

 

いつの時代でも戦や町の治安維持にも情報は大事だ。警察にも公安警察やアメリカのCIAなんかが代表的だ。そして今この時代でも町の治安維持のために情報を探ることを専門にする部署を作っても問題はないと俺は思っている。情報がなければ実働隊は動くことができないからな。

 

「私が責任者に・・・・ですがそのことは月様や詠様は承諾されているんですか?」

 

「うん。以前に詠にそのことを相談したらかまわないって言ってたよ。むしろ作ってくれって言ってた」

 

「なんと・・・・・それで私がその責任者に・・・私はただの警邏隊士ですよ?」

 

「身分は関係ないさ。でも情報収集は得意なんだろ?それなら適任かなっと思ってさ」

 

俺は樊稠にそう言う。彼女の経歴については前に華雄から聞いた。彼女の実力なら適任だし、何より初めて会った第一印象が、なんか忍者っぽかったしな服装もそうだけど

後は彼女が承諾してくれるかだが・・・・・

 

「で?どうかな?」

 

俺が訊くと彼女は少し黙ってしまうが彼女は微笑み

 

「承知しました。この樊稠。命に変えましても任務をこなします。そのためならこの体を使ってでも情報を掴んで見せます」

 

「いや、そこまでしなくていいよ。後、命は大事にしてくれ」

 

「え?」

 

俺の言葉が予想外だったのか樊稠は驚く

 

「たとえ王族だろうと平民であろうとたった一つの命だ。たとえ密偵出身でもな」

 

「しかし・・・・自分は密偵。身分では下っ端の身です。そして密偵は主君のため、上官のために死ぬ捨て駒だと、幼いころから教わりました」

 

「それは・・・・月たちが言ったのか?」

 

「いいえ・・・・育ての親にです」

 

「育ての親?」

 

「自分は孤児です。私を育ててくれた人は密偵の専門家でした。そしてその親から密偵や暗殺のすべてを教わりました。」

 

「そうか・・・・」

 

樊稠の言葉を聞いて俺は考える。平和な現代社会とは違いこの時代は身分の差や貧困の差が激しい。そして兵は主君のために命を懸ける。たとえ命と引き換えにしても・・・・・俺はこの時代に来てそう言うことを目のあたりにした時は驚いた。わかってはいたことだったのに現代社会に・・・・平和な世の中で生きてきた俺には衝撃的だったんだ。

だが、それを理由に目を背けちゃいけない。この時代に来たからにはこの時代のやり方で生きていかなきゃいけない。だが・・・・・

 

「だが、それでも命は大事にしてくれ樊稠さん」

 

「え?」

 

「命とは尊い物だ。命あるものに身分なんかは関係ない。たった一つの命だぞ?もったいないじゃないか?」

 

「ですが・・・わたしはそう言うことをばかりやらされた物で・・・・」

 

「ならば、今後しなければいいし、する必要もない。この先は俺たちのやり方だ。そして俺は君にお願いする」

 

「お、お願いですか?」

 

「ああ・・・・『生きてくれ…生きて生きて生き延びろ』。それが俺の君に対してのお願いだ。君には生きてほしいし、いや、君だけではない。戦に出るみんなにも生きていてほしいんだ。それが難しいことでもな。生きていれば必ず良いことだって起きる。月たちもきっとそれを望んでいる。だから、命を懸けてなんてそんなことは言わないでくれ」

 

俺は頭を下げてそう言う。俺の言ったことに嘘はない。甘いと言われるかもしれないが、俺は誰にも死んでほしくない。それが難しい道でも、自分はこの信念を貫きたい。だから俺は心の底から彼女にそう言う

 

「・・・・・・・」

 

俺の言った言葉に樊稠は目を見開き驚いている。そして

 

「隊長は強引な方ですね?」

 

「・・・・え?」

 

「隊長・・・・頭を上げてください」

 

「樊稠・・・」

 

彼女の言葉に俺は頭を上げると樊稠の顔は先ほどの硬くそして氷のように冷たい表情から顔の頬が赤くそして少し柔和な顔だった

 

「わかりました。絶対とは言い難いですが、隊長の願いとあらば、生きる努力をいたします」

 

「樊…「雪風です」・・・え?」

 

「私の真名です。雪の風と書いて雪風。それが私の真名です。この真名、隊長に預けます。よろしくお願いします沖田隊長」

 

「うん。よろしく雪風」

 

そう言い俺は手を伸ばす

 

「あの・・・・それは?」

 

「ああ、そうかこの時代にはそう言う風習はなかったけな。これは握手っていって、これからもよろしく頼むというか親交の証を示す一種の儀式だよ。だから手を握ってくれ」

 

「は・・・はい」

 

樊稠…いや、雪風は顔を少し赤らめ恐る恐る俺の手を握る

 

「これからもよろしくな。雪風」

 

「はい。こちらこそよろしくお願いします・・・・隊長」

 

と、ニッコリ笑ってそう返事をする雪風であった



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鬼の隊副長、その名は李傕

俺がここ、天水の警邏隊長となり半年・・・・・いまだにある人物と仲良くなれないでいた。その人物とは・・・・

 

「隊長。今日の報告書です」

 

「ああ、すまない李傕さん・・・・」

 

「では私は仕事がありますのでこれで・・・・」

 

そう。李傕出会った。あいさつ程度はしてくれるんだが、こうして今も不愛想で報告書を置いてしまうと、すぐに部屋を出て行ってしまう。

 

「はぁ・・・・・本当に嫌われてしまったもんだな」

 

軽くため息をつくと、戸を叩く音がする

 

「ん?誰だろう?開いているよ?」

 

俺がそう言うとドアが開き、入ってきたのは

 

「吹雪・・・・ちょといい?」

 

「母さん・・・・」

 

入ってきたのは母さんだった。母さんは俺の隣に並び俺の書き終えた報告書を見ると、ところどころ文字を指をさし

 

「吹雪・・・その報告書。誤字・・・・がある。あと字がまだ汚い・・・」

 

「あ・・・ごめん」

 

ゆっくりとした口調でそう言い俺に注意する母さん。そうこの世界に来て俺は日本語ではなく漢文で書いている。それはそうだ。なんてったってここは三国志の世界・・・・1800年前の中国だ。だから文字も中国語なのは当たり前だ。俺もこの世界に来て独自で調べて書いてはいるのだが、やっぱり中国の人から見れば汚いのだろうな・・・・

 

「最初はそれでいいけど・・・・でも仕事だとちゃんと書かないと相手に伝わりにくい・・・・」

 

「うん。俺も勉強しているけどまだ、分からない字とかあって」

 

「そう・・・・・じゃあ、恋が…お母さんが教えてあげる」

 

「え?いいの?忙しいでしょ母さん?」

 

「大丈夫・・・・それにこれは吹雪の今後の生活に役に立つから・・・・今から始めよ。でもちょっと待てて・・・・」

 

母さんはそう言うと、母さんは部屋を出てそしてしばらくすると戻ってくる。そしてその手には数冊の本を抱いていた

 

「まずは基本から・・・・覚えるの大事・・・・」

 

そう言い俺の前に置いた本は子供向けの教本だった

 

「まずは簡単な文字から…日本で言えばあいうえおと同じで・・・・・・」

 

こうして母さんの中国語講座が始まった。ゆっくりとそして途切れ途切れに言う母さんだったが、内容はとても分かりやすく。もしかしたら俺のいた時代で教師とかしていたんじゃないかと思うくらいだった。だが、後に訊いた話では母さんは一応、教員免許と自動車免許は取得していたらしいが基本は専業主婦だったらしい。ちなみに俺の世界では『沖田恋』て名乗っていたようだ。

一通り、母さんの授業が終わると

 

「吹雪・・・・・何か悩み事・・・ある?」

 

「・・・・え?」

 

「最近・・・・吹雪。考え事しているから・・・・一人で抱え込まないで話してみて・・・」

 

「うん…実は・・・」

 

母さんの言葉に俺は李傕について話した。仲良くしたいのだが向こうが受け入れてくれなくて少し困っていることを話す

 

「そう・・・・でも…無理に好かれようとしなくていいよ?」

 

「そうなんだけど。できれば仲良くしたいと思っているんだよ」

 

そう言うと母さんは少し考えるそぶりを見せる。そして・・・

 

「じゃあ、いい方法がある・・・・でもそれは吹雪じゃなくて向こうからくると思うよ?武人としての話し合いが・・・・」

 

「・・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、天水の街では

 

「李傕様。お疲れ様です」

 

「おう、お疲れ様・・・・」

 

町の巡回を終えた李傕が挨拶する隊士に返事をした。すると・・・

 

「ちょっと待ちなさい!貴様その格好は何だ?」

 

「え?」

 

「服装が乱れているぞ。そのだらしない姿で町の巡回に行くつもりか?」

 

「あ…す、すみません」

 

「非番のときはいいけど、仕事のときはしっかりした身なりをしなさい。服装のたるみは、精神がたるんでいる証拠。服装の乱れは心の乱れだ!わかったか!?」

 

「は、はい!!申し訳ございません!!」

 

李傕の指摘に隊士は慌てて服装を整え返事をし、慌てて去る。その様子を他の隊士は見ていた。それは李傕の同僚の女性隊士たちだった

 

「相変わらず、軍紀やら規律に厳しいよね・・・・李傕様は」

 

「うん。でもね服装がちょっと乱れてるぐらいであんなに言わなくてもいいじゃない。最近彼女調子に乗ってるわよ」

 

「そうそう先代隊長の姪だからって、副隊長の地位になるなんてね」

 

「しかも、先代隊長の亡き後に変わって入った新隊長さんに暴言を吐いたらしいわよ」

 

「あらあら、自分が隊長になれないからって、それはないよね~」

 

と、陰口と嫌味を叩きながら李傕を見ていた。そんな陰口にも気づかず李傕は廊下を歩いていると

 

「相変わらずの仕事熱心さね・・・・」

 

「・・・樊稠」

 

廊下の角で壁に背をかける少女。李傕の同僚である樊稠こと雪風がそう言う

 

「まだ、沖田隊長のこと、認めないの?」

 

「ああ、悪いけどね呂布の将軍の息子ってだけで隊長だなんて」

 

「そう言うあなたこそ先代隊長の姪で副隊長の地位についているじゃない」

 

「私は血縁で副長になったわけじゃない。ちゃんと訓練指導を受けて下の役割を果たして、上官に認められて今の役所に着いたんだ。叔父の口添えで副隊長にのし上がったわけじゃない」

 

「でしょうね。あなたは一番の努力家だからね。でもそれは沖田隊長もそうよ。あの人もここに初めて来たときは華雄将軍の下で一兵卒として働いて、その能力を買われて警邏隊長になったのよ。それに今の街の治安が良くなったりしたのも隊長が提案した案のおかげだってのも知っているでしょ?」

 

「確かに雪風の言う通りだと思うが・・・・・・」

 

「それにいくら望んでもあの人が、あなたの叔父である先代隊長のようにはならないわよ」

 

「っ!?・・・・わ…分かっているわよそんな事!!」

 

感情的にそう言う。しかし雪風は「でも」と付け加える

 

「でも先代隊長に似た感じはあるわ。あの人は・・・・」

 

「・・・・・雪風。あんた随分と沖田隊長のこと買っているわね?何か言われたの?私が隊長を尊敬するようにって?」

 

「そんな事は言われてないわよ。ただあの人は草上がりの私に対しても優しく…いいえ私だけじゃないわ町人や隊士たちにも天の御使いだなんだで鼻にかけて威張ったりせずにね。それにあの人はいつも現場を見るとき報告書頼りじゃなく、自分の足で運び自分の目で確かめているでしょ?」

 

「たしかに・・・・・だ、だがそれは警邏の仕事…隊長なら当たり前だ・・・・・」

 

そう言い李傕はその場を立ち去ろうとすると雪風は

 

「はぁ・・・・なら、李傕。どうしても納得ができないなら・・・隊長と手合わせしてみたら?」

 

「手合わせだと?」

 

「ええ、言葉や理屈で納得できないなら、武器を交えて隊長と模擬戦をするのよ。それが私たち武人の話し合いってものでしょ」

 

「・・・・・・・考えてみる」

 

そう言い李傕はその場を去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ‥…やっと書類仕事が終わった・・・・・」

 

翌日、俺は書類仕事という戦場で無事に終え、背を伸ばしている。母さんの中国語講座のおかげで字の書き方もきれいにはなってきたし、誤字も少なくなっている。すると廊下の外で足音が聞こえる。しかもその音はどんどん近づいてきている。すると・・・・

 

「隊長。失礼します!!」

 

急に李傕さんが入ってきた。しかもすごい剣幕で

 

「うわっ!?どうしたんだ李傕さん!?事件か!?」

 

俺が驚いてそう言う。いや、いつも無視されてていたのに、今こうして彼女から声をかけてくれたのにも驚いたけど、

 

「いいえ。違います・・・・・」

 

そう言う彼女。しかも目は若干殺気じみたものを感じた。なんだ?もしかしてクーデターでも起こされて俺、ジ・エンドか?

そう思う俺だが、彼女が発した言葉は

 

「隊長・・・・忙しいところ申し訳ないのですが、一つ。私と模擬戦をお願いします!」

 

「・・・・・え?」

 

俺は彼女の言葉に驚きそう返事をしてしまうのであった。

 




前作の李傕の真名は斗志でしたが袁紹の顔良の真名とかぶるので誠華という名前に変更いたしました


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李傕と武士道精神

「隊長!私と試合をしてもらえませんか!!」

 

机をバンっとたたき、そう言う李傕。その顔は真剣というか…なんか言葉では言えないほどの熱意を感じた

 

「(ん・・・・・これは引き受けないと収まらないな・・・)」

 

俺は断ってもしつこく来るだろうと判断し、俺は彼女に頷き

 

「分かった。少し待ててくれ。準備するから…場所は練兵所でいいのかな?」

 

「はい。そこでお願いします。ではそこで待っています」

 

そう言うとりかくは部屋を出て行った・・・・やれやれこれは面倒ごとになったかな?

 

 

 

 

 

 

 

数分後、俺は練兵所に行くと練兵所には李傕の他に複数の警邏隊士が集まっていた。いや、警邏隊士だけじゃない華雄さんもなぜかいた

 

「おお。来たか吹雪。話は聞いたぞ李傕と試合をするみたいだな?」

 

「ええ。彼女の熱意というか殺気というか・・・・それで華雄は何でここに?」

 

「審判を頼まれた。素人がやるよりはいいだろ?まあ、頑張れよ」

 

「は・・・はぁ・・・」

 

華雄に肩を叩かれて俺は練兵場の中央に立つと、目の前にいた李傕は剣を抜く。その剣は模擬戦用の刃の潰れた剣ではなく、李傕の自前の剣。俺の刀と同じ曲刀であった。つまり今回の模擬戦は文字通りの真剣勝負だ

 

「ではこれより、李傕と沖田の試合を始める。両者構え!!」

 

審判を務める華雄の言葉に俺とりかくは構える。どちらも剣道と同じ正眼の構えだった。

 

「始め!!」

 

華雄が言い終わるのと同時に李傕は俺に斬りかかった。だがそれは無鉄砲の切りかかるのではなく彼女の顔は冷静で剣の太刀筋もキレがあった

 

「おっと!?」

 

俺は最初の太刀筋をよけ、俺は突きの構えをし、そして李傕に向けて着いたが、その突きは躱されるが俺は瞬時に横凪の攻撃に移る。その技は俺の得意の平突きだ

 

「っ!?」

 

急な横凪攻撃に李傕は驚いた。そして俺の刀は李傕の横腹に当たる寸前で止まる

 

「そこまで!!勝者沖田吹雪!!」

 

華雄の判定により勝負がついた。そして俺は刀を鞘に戻し一例をするのだが、李傕は自分が負けたことを理解していないのか、ボーと突っ立っていた

 

「あ・・・・あの。李傕?」

 

俺は声をかけると彼女は俺の顔を見る。すると少し俺をじっと睨むかのように見て、無言で立ち去ってしまった

 

「えっと・・・・・これはまた嫌われちゃったかな・・・・」

 

李傕の表情を見て。そう言う俺だった

 

 

 

 

 

 

「負けた・・・・・私が…負けた」

 

試合が終わった後、李傕は歩きながら小さくつぶやく。最初、彼女は沖田に勝てる自信があった。

だが結果は負け。実戦なら横腹を斬られていた。すると

 

「残念だったね」

 

「樊稠・・・・」

 

廊下の影にいた樊稠こと雪風がいて、彼女にそう言う

 

「あれは・・・・私が油断していただけだ。真剣にやれば勝てた。いや絶対に勝つ!次こそは!!」

 

そう言い彼女は去っていき、それを見た雪風は

 

「…で、しょうね。まったく負けず嫌いなんだから」

 

と軽くため息をつき、雪風もその場を去るのであった

 

 

 

 

 

 

 

「李傕様!ご苦労様です!!」

 

「ええ!お疲れ様!!あと、また服装が乱れているわよ!!」

 

「す、すみません!!」

 

翌日いつものように李傕が服装がだらけている隊士を注意する。それを見た李傕の同僚の女性隊士が

 

「いつも以上に荒れているわね?あの女」

 

「そうよね。きっと昨日沖田隊長に負けたからじゃないの?」

 

「まあ、そうなんじゃない?」

 

と、小声でそう言っていた。そんな中、李傕は

 

「(絶対に負けたままにしない!今度こそ私が勝つ!!)」

 

と、吹雪のリベンジに燃えているのであった。そしてしばらく歩くと。そこには警邏の仕事を終えたのか?それとも報告をしているのか、吹雪が華雄と何か話していた。それを見た李傕は

 

「沖田隊長!!」

 

と、声をかけると沖田と華雄が振り向く

 

「ああ、李傕か。どうかしたのか?」

 

とそう訊くと彼女は不動の姿勢を取り

 

「今度、模擬戦をしてもらえませんか?」

 

と、そう言うと沖田は首を傾げ

 

「ん?昨日やったばかりだろ?」

 

「あ、あんなのでは納得できません!もう一度やらせてください!!」

 

そう頭を下げる李傕。それを見た吹雪は少し彼女を見ると微笑んで

 

「・・・・いいだろう。ならあと一回付き合うよ」

 

と、そう言うとその場にいた警邏隊士がざわめき始める

 

「なら、以前と同じ真剣での勝負でお願いします!!」

 

「わかった。なら以前と同じく本気を出せ。戦いはいつも手加減なしの真剣勝負だからな!」

 

腕を組んでそう言うと、李傕は

 

「今度は勝ちます!・・・・・では失礼します」

 

そう真剣な眼差しでそう言うと、彼女は彼の元を去る。そしてその場にいた華雄は

 

「いいのか?吹雪。この頃、書類仕事や現場の見回りで忙しくて休んでいないだろ?なぜ勝負を引き受けた」

 

と、そう訊くと吹雪はふっと笑い

 

「俺、ああいう分かりやすい性格。結構好きなんです。だから俺も彼女にちゃんと正面から向き合って答えてあげないと・・・て思ったんです」

 

「そうか・・・まあ、無茶して怪我はするな。後、審判はまた私がやろう。試合をするときは声をかけてくれ」

 

「ありがとうございます」

 

そして数時間後、先ほどの練兵所にて試合をすることが決まった。そして試合会場の前に立ち、互いに一例をすると審判の華雄が

 

「では両者・・・・試合始め!!」

 

と号令をかけるのと同時にまた李傕が俺に攻撃をかけた。今度は突き攻撃だが、俺は咄嗟によける。その瞬間、李傕は少しニヤッと笑った。持っていた剣を見るとその剣の刃が俺の腹の方へ向いていた。

 

「(やばい!これって平突きか!?)」

 

俺は李傕が横薙ぎの攻撃をする寸前すぐに腹の方へ刀を下へ下げて李傕の剣は俺の刀にぶつかり、カチンッ!!と激しい音を鳴らす。そして俺は刀を振り払い、いったん彼女と距離を取る。

 

「すごい・・・・あの李傕様と互角だ・・・・昨日はまぐれじゃなかったんだな・・・」

 

と、どこからか隊士たちの声が聞こえ、よく見ると皆驚いた顔をしていた。そんな中、俺と李傕は剣と剣を激しくぶつけ合い。そして今鍔迫り合い状態になっていた

 

「なかなかやるな」

 

「あんたこそ・・・・でも私は必ず勝つ!」

 

そう言い李傕は俺を剣で押し出し、間合いを取り切りかかり俺もそれに対抗して刀を振り上げると剣と刀の刃がぶつかり火花が散る。

そして俺と李傕は間合いを取り、相手の動きを探る

 

「(次で決着つけないと・・・・なら)」

 

そう思い、俺は刀を鞘に戻し構える。いわゆる抜刀術の構えをした

 

「勝負を捨てる気か!」

 

刀を鞘に納めて勝負を捨てたと思った李傕はそう言うと

 

「捨ててないよ。今からそれを証明するから。来なよ」

 

俺がそう言うと李傕はじっと俺を見るのだった。

 

「(勝負は捨ててない?ならなんで剣をしまう・・・・・いや、あの剣の変わった形、あの形で鞘に入れたとなると・・・・・そうか!間合いに入った瞬間。剣をものすごい速さで抜いて一撃を加えて決着をつける気か・・・・・)」

 

李傕はじっと剣を構え動かない、吹雪も同様だ抜刀術は待ちの剣。動いては技は発動できないからだ。にらみ合いはしばらく続く。

 

「(いつまでもこうしちゃいけない。イチかバチか仕掛けるか)・・・・・・行きます!」

 

そう言い李傕は吹雪めがけて突進した。すると吹雪はカッと目を見開き刀を鞘から抜き去る。

 

「(やっぱりッ!?それを狙ってたのね)」

 

李傕は急ブレーキをかけその一撃を避けようとするがしかし・・・

 

「(くっ・・・・速い!?だけどこの一撃をよければ・・・・・・・・私の勝ちだ!)

 

そして李傕は吹雪の抜刀術である一撃を交わした。抜刀術は一撃必殺の技。攻撃を躱されればあとは無防備になってしまう。彼女はその機を逃さなかった

 

「(よしっ!躱せた!!)」

 

李傕は勝利を確信した。だが・・・・・・

 

「甘いな・・・・」

 

「っ!?」

 

その時、李傕は気づいた。最初の一撃、吹雪が持っていたのは刀ではなかった。李傕が避けたのは・・・・

 

「こ、これは・・・・・鞘!?じゃ、じゃあ!!剣はどこに」

 

そう吹雪が持っていたのは鞘だった。そして肝心な刀はというと・・・・・・・鞘を持ったのとは逆の手に持っていた。そして吹雪は刀で彼女の首筋に当てる寸前で止める

 

「いい反応だったよ李傕。でも少し惜しかったね?」

 

「なっ・・・・・」

 

剣を首筋に突きつけられ、李傕は驚いたまま動かなくなる。そして・・・

 

「勝負あり!!勝者沖田吹雪!!」

 

華雄の声に周りから大歓声が沸くのであった。そして二人はたがいに礼をすると李傕は元気なさげにトボトボと無言で去ってしまった

 

それを見た吹雪は

 

「やっぱり李傕はすごいな・・・・あの剣筋。抜刀のとき少し遅れてたら、負けてたよ」

 

と、どこか嬉しそうな表情をしていた。

 

 

 

 

 

それから少し時間がたち日が暮れ始めたころ、李傕は自分が負けたことにショックだったのか無気力に歩いていた

 

「(負けた・・・・二度も負けた。今まで誰にも負けないように必死に修行をし、剣の腕を磨いてきたのに結局負けてしまった・・・・・私はいったい何のために剣を取って頑張ってきたのかしら・・・・)」

 

そう、思いつつ、隊舎に戻ると、廊下の角で話声が聞こえた。しかも笑い声まで聞こえていた

 

「(笑い声?なんだろう?)」

 

李傕は不思議に思い、耳を傾けると、それは同僚の女性隊士たちの声だった

 

「李傕副長。目を真っ赤にして悔しそうな表情してたわよね?」

 

「ほんと、かっこ悪いわよね~。まさか警邏隊では一番の剣客の李傕さんがここまで負けるなんてね~」

 

「まあ、こんなモノ(・・・・・)だったんでしょ?」

 

「っ!?」

 

彼女たちの言葉を聞いて李傕は目を見開く

 

「最近、あの人調子に乗っていたのよ」

 

「ほんと、いい気味だわ」

 

「規律にうるさいし、負けてよかったんじゃないの?おかげでスッとしたわ」

 

「私たちも小モノに付き合わされていたってこと?」

 

「ちょっとあんた。そこまで言うとかひどくないー?」

 

と彼女たちはあざ笑いながら李傕の陰口を言っていた。それを聞いていた李傕は拳を握り悔しそうに涙を浮かべた

 

「(だめだ・・・・・何一つ・・・・・言い返せない)」

 

悔しさと悲しさの入り混じっか感情の中、彼女は同僚のあざ笑う声を聴いていた。すると・・・・・・

 

お前らぁ!!!!

 

急に壁を思いっきり叩く音と男性の怒声が聞こえ、女性隊士が振り向くとそこには壁を殴って仁王立ちする吹雪がいた。そして吹雪は

 

全力で勝負を挑んだ者を陰で罵るとはっ!!恥を知れっ!!

 

「「「「っ!?」」」」」

 

「(えっ!?)」

 

あまりの怒声に隊士たちはおろか李傕も驚いた

 

「た…隊長殿!?」

 

吹雪の言葉に女性隊士たちは顔を青ざめると吹雪はこう続けた

 

「下劣な者ほど平気な顔で批判し馬鹿にするッ!!一人立って勝負を挑み敗北することの方が何百倍の価値がある!!」

 

「げ・・下劣!?」

 

女性隊士たちが顔を青ざめる中、吹雪は一呼吸入れ

 

これから先お前たちが武人として警邏隊士として勤めていくのなら自らに求道精神と武士道精神を持てっ!!!そして、お前たちも本気であがき続けて見ろ!!李傕のようにッ!!

 

「っ!?」

 

「「「し・・・・・失礼しましたっ!!!???」」」」

 

 

李傕の陰口を言っていた女性隊士たちは吹雪に怒られ、半泣き状態で走り去ってしまう。そして吹雪は

 

「まったく。共に戦う仲間を馬鹿にするなど許せん」

 

と、そう言い彼も去っていき、そして残ったのは陰でその会話を聞いていた李傕だけであった。そして彼女は

 

「沖田・・・・・・隊長・・・・」

 

今まで冷たい態度を取り、ぞんざいな態度を取っていたにも関わらず自分を庇い。そして自分のために叱ってくれたことに彼女は涙を流すのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女は自室に戻り夜空を眺めていた・・・・

 

「(武士道精神に求道精神・・・・・今までそんなこと考えたこともなかった・・・・今までの私はただ強くなることしか考えてなかった・・・・武士道精神だなんて初めて聞いた・・・・・)」

 

李傕は目をつむり吹雪の姿を思い浮かべる

 

「(沖田隊長はそれがあるから、私に勝つほどの強さがあったのかな?・・・・今の私と比べ物にならないしっかりした・・・・私には武士道精神や求道精神なんかまだわからないけど・・・・」

 

李傕は目を開き

 

「(『強さ』の意味・・・・武士道!あの人なら見つけられる!沖田隊長なら!!)」

 

李傕はそう思い星空を眺めるのであった

 

 

 

 

 

 

翌日・・・・

 

「隊長、今日の警邏の報告書です」

 

「ああ、ありがとう李傕・・・・・「誠華(せいか)です!」・・え?」

 

「私の真名です。これからは誠華と呼んでください・・・・沖田隊長」

 

李傕・・・・いや、誠華は笑顔でそう言うと最初は少し呆けた顔をした吹雪だったがやがてにっこりと笑い

 

「ああ、これからよろしくな。誠華」

 

「はいっ!!」

 

と彼女は笑顔でそう言うのであった。これがのちの鬼の副長と恐れられる李傕と吹雪の出会いであった・・・・



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不良武人、郭汜

仕事が忙しくなかなか執筆できないため今日は本当に短めです。本当に申し訳ございません



「隊長。今日の警邏の報告の資料と事件の内容です」

 

「ありがとう誠華」

 

あれから数週間。俺はいつものように見回りを終えた後の書類整理をしていた

 

「ふぅ・・・・」

 

「隊長。お疲れですか?もう休まれては?」

 

「いや。大丈夫だ。この書類を終わらせたら、休むよ。それにしても。治安が良くなったのはいいが、なんかな・・・・」

 

「平和なのはいいことじゃないですか?」

 

「まあな。でも・・・・・なんかいやな予感がする。なんか事件が起きそうな・・・・そんな予感がする」

 

「事件ですか・・・・あまりいいとは言えませんね。人員を増やしますか?」

 

「そうだな・・・・・最近警邏の志願者も出てきたし。でも士官級の人が足りないんだよな・・・・」

 

そう言い俺は腕を組み考える

 

「なあ、誠華。お前の知り合いになんかそう言う人いないか?」

 

俺がそう訊くと誠華は考えるそぶりをする。この頃、警邏隊に入隊したいという人が増えているのはいいのだが、それを指導する人、つまり教官や小隊長各の人が少ないのだ。ベテランの隊士はいるのだが、それを新人に教えるとなると話は別だ。

出来ればベテランだからって鼻に掛けて威張らず、ちゃんと指導でき手本となるような人がいいのだが、今現在、そのような人物は極端に少ない。ほとんどが高齢で除隊している

 

「そうですね・・・・・・・・一人だけ心当たりがいるんで、私と樊稠・・・・雪風の同僚で元警邏隊士だった人物なんです」

 

「へ~どんな人?」

 

「はい。私の幼馴染で郭汜というんです」

 

郭汜・・・・・たしか俺の知っている歴史では 董卓の配下。李傕の相棒で、母さん・・・・・呂布と共に曹操を迎撃し、曹仁の部隊と対する。

 董卓死後、李傕と共に長安を制圧。後に、李傕と交戦する。和解してのち、共に官軍と戦闘して曹操に敗北後、李傕と別れ、各々山賊となる。やがて、部下の伍習に討ち取られる武将だったけ。

 

「その人は今どこに?そう言えば元警邏隊士って言っていたけど・・・・」

 

「はい…その…なんといいますか。以前暴力沙汰やらの問題を起こして謹慎処分を受けたのですが、それが納得いかないで辞めて今は何処かでチンピラを集めてブイブイと荒れていると聞いています」

 

「つまり、ぐれたってこと?」

 

「言いにくいですがそうです。根は真面目でいいやつなんですが・・・・・」

 

少し困った顔でそう言うと

 

「沖田隊長!失礼します!!」

 

と、そこへ雪風が戸をノックした後、入ってきた

 

「雪風。どうしたんだ?」

 

「ん?誠華も一緒か。ちょうどいい。隊長。実は『隊長に合わせろ!』と騒いでいる者が複数の部下を連れて来て・・・・・」

 

「ん?俺に?」

 

「……おい、雪風。まさかと思うけど・・・・・・・」

 

俺が首をかしげると誠華はその来訪者に心当たりがあるのか雪風に訊くと雪風は気まずそうに眼を横に向け

 

「ああ…誠華。そのまさかだ。あいつ(・・・)が・・・・桜花の奴だ」

 

ため息交じりに言う雪風。桜花・・・・恐らくさっき誠華が言っていた郭汜のことだと思うが。俺がそう思った瞬間

 

「たのもー!!!」

 

と、ドアが勢いよく開き、そこから黒髪のショートヘアーでくせっ毛左もみあげを三つ編の少女を先頭に複数の、なんというかチンピラ風の少女たちが入り込んできた

 

「桜花・・・・・何の用だ?」

 

誠華が桜花と呼ばれた先頭の少女を怪訝そうな目でじっと見てそう言う

 

「久しぶりだな誠華。だけど、今回はお前に用はないんだ。用があるのはそっちの優男だ」

 

と、ビシッ!!と俺に呼び指してそう言う。ああ、あれだなあれって喧嘩売るパターンだな。俺は動揺せず、湯呑を手に取りお茶を少し飲み、穏やかに対応することにした

 

「えっと・・・・・君たちはもしかして入隊希望者かな?」

 

「あ?ちげぇーよ!私はお前に勝負を挑みに来たんだ!!」

 

「勝負?」

 

彼女の言葉に俺が首をかしげると取り巻きの子が

 

「おう、うちの総長様が、あんたら警邏隊に直々の勝負を挑みに来たんだ!そうですね総長!!」

 

「おうよ!そんな弱そうな男が警邏隊なんて務まらねえ!誠華もなんでこんな奴に真名なんか預けて言いなりになったんだかわからねえぜ!」

 

と、彼女らはそう言い、郭汜の言葉に誠華は少しむっとした表情になる。俺は小声で

 

「誠華。彼女がお前の言っていた幼馴染か?」

 

「はい。彼女が先ほどお話しした人物・・・郭汜です」

 

と、誠華は少し困った顔をして俺に言うと、郭汜は目をきっと吊り上げ

 

「それでてめぇ。勝負を受けるのか?逃げてもいいけどお前の負けになるぜ」

 

「隊長どうします?応援呼んで帰ってもらいますか?」

 

雪風が呆れた顔しながら俺に訊く

 

「う~ん・・・・・・えっと・・・・郭汜さんだったよな?話を要約すると。勝負に負けたら俺がお前の手下になって事実上警邏隊はお前の傘下になるってことか?」

 

「そうだ」

 

「じゃあ、逆に言えば、俺が勝負に勝ったら、君が俺の部下になるっていう考えでいいか?」

 

「ああ。それでいいぜ。私が負けるなんてこと絶対にないからな!!」

 

腕を組んで自信満々に言う郭汜。

 

「隊長・・・・無理に付き合わなくてもいいんですよ?なんなら私が話して追い返しますので」

 

誠華が申し訳なさそうに言うと、雪風も

 

「私も、華雄将軍や張遼将軍呼んできましょうか?なんか面倒ごとになりそうな気がします」

 

雪風も無理に勝負を受けない方がいいと言ってくれる。だけど・・・・

 

「いいよ。その勝負。受けた」

 

「「え?」」

 

あっさりと承諾する俺の言葉に誠華と雪風は若干驚く

 

「た、隊長。いいんですか?」

 

「ああ、受けた勝負は買うのが礼儀って死んだ父さんによく言われていたからな」

 

そう言い俺は郭汜の顔を見て

 

「いいよ郭汜。あんたの勝負。この警邏隊長の沖田吹雪が受けた」

 

と、そう言うと郭汜はニヤッと笑うのであった

 



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吹雪、郭汜と勝負をする

突如警邏隊者にカチコミに来た元警邏隊士であり副隊長である李傕こと誠華の幼馴染である郭汜が吹雪に勝負を挑んできた

そして吹雪はその勝負を受けるのだった。

 

「さて・・・・・勝負はどうするんだ?」

 

「勝負を仕掛けたのは私だ。だから勝負内容はあんたが決めてくれ」

 

「え?いいのか?」

 

「一方的に俺があんたに喧嘩売ったんだ。ならその相手にどんな勝負か決めさせるのが筋ってもんだろ?」

 

腕を組んで堂々と言う郭汜。不良ぽい子だけど、意外と筋を通す子なんだな?

 

「じゃあ、本当に俺が決めてもいいんだな?」

 

「いいっすよ」

 

そう言うと俺は一枚の紙紙に文字を書いていく。怪訝な表情をする郭汜を他所に何かを書き終えると、俺は紙を掲げながらこう言った。

 

「何しているんだ?外で剣術か殴り合いの勝負とかじゃないのか?」

 

「勝負っていうのは拳や武術だけとは限らないよ・・・・・さて、郭汜さん。この分を翻訳してみ?」

 

全員が紙を覗きこむ。紙にはこう書かれていた。

 

『this is a pen』

 

『お前は荒井〇か!』

 

と書かれていた。その分にみんな首を傾げ郭汜の部下は

 

「何これ?全然読めない・・・・」

 

「わかるの荒井〇だけしか読めない・・・」

 

「隊長・・・・これは ?」

 

「俺の国の言葉」

 

とざわつきながら話す。それはそうだ書いたのは英語と日本語だ。漢文が主流の中国。しかもまだ日本ができてるかどうかの時代じゃ翻訳できるわけがない

 

「むむぅ・・・・・」

 

郭汜も読めないのか困った表情をする。そして

 

「じゃあ、この勝負は俺の勝ちってことで・・・・」

 

俺がそう言いかけた時

 

「ふ、ふざけるな! 何だこの勝負は!」

 

「そうだそうだ!男なら腕で勝負しろ!!」

 

「そうだ卑怯だぞっー!!」

 

と郭汜の部下たちはいっせいにブーイングをし文句を言う中

 

「お前らよせッ!!」

 

「総長!?」

 

文句を言う部下たちを止めたのは意外にも郭汜だった

 

「相手に勝負を決めさせたのは私だ。今回の勝負は私の負けだ」

 

「じゃあ、約束通り。俺の部下に…「ちょっと待て」・・え?」

 

「私は一言も一回勝負と入ってないっすよ。今回は負けたが次は必ず勝つ!てかこの勝負は私自身も納得はできないからな」

 

「まあ、言うと思ったよ。勝負はいつでも受けてやるから納得いくまで来いよ」

 

「言ったな?次は覚悟しろよ!!行くぞおめえらッ!!」

 

そう言い郭汜は部下を連れて去っていった

 

「行っちゃったな?」

 

「隊長。いいんですか?あいつの性格上毎日にでも来ますよ?」

 

「そうだな?次はこんな子供だましの勝負引き受けないだろうな・・・・・剣術の練習でもするかな?」

 

「なら、私が練習相手になりますよ?」

 

「すまない誠華」

 

俺は誠華に礼を言うと雪風は

 

「それにしても彼女、昔のままね誠華・・・・」

 

「ああ、まあ、筋を通したり、自分の気持ちに素直なのがいいところなんだけどね…喧嘩癖さえ何とかなれば・・・・」

 

「そう言えば誠華。彼女は昔問題ごとを起こしたって言っていたけど何が原因なんだ?」

 

「私も聞いただけなんですが、なんでも人家に殴りこんで牛を盗んだとか何とか?」

 

「牛?」

 

「はい。そのことが原因で謹慎処分になっていたんですが、その事件を馬鹿にした隊士や武官とさらに揉めて喧嘩騒動になりまして、しかもその喧嘩でその隊士と武官が重傷を負って。それが問題で一時は死刑という話になったんですが董卓様が何とか説得してくれて、数か月の謹慎ということになったんですが、桜花・・・・郭汜はそれ以降、警邏隊士を辞めてしまったんです」

 

「そんなことが・・・・それで郭汜さんが牛泥棒をした動機は?」

 

「それが、先の喧嘩騒動のせいで詳しくは牛を盗まれた被害者の方も行方をくらませて・・・・」

 

「ん・・・・・雪風。ちょっとお願いがあるんだけど」

 

「なんでしょう?」

 

「その牛泥棒事件について一から調査してくれないか?俺が見ても彼女がどうもなんも理由もなく泥棒をするようには見えないんだよ。大変だと思うけどお願いできないか?」

 

「畏まりました。しかしもう昔の事件ゆえ、調べ終わるのに時間が少々かかりますが?」

 

「大丈夫だ。いい結果を待ってるよ」

 

「はっ!」

 

そう言い雪風はまるで忍者のように消えた

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃

 

「なあ、恋。聞いたか?」

 

「・・・・何を?」

 

霞が吹雪の母親である恋と話をしていた

 

「吹雪がなんか郭汜と勝負しているらしいで?あ、覚えているか郭汜・・・・」

 

「覚えてる・・・・・まじめでいい子だったね?・・・・・それでなんで吹雪と勝負?」

 

「う~ん。勝負というか喧嘩というか?まあ警邏隊の指揮官についてもめているみたいやで?」

 

「そう・・・・・」

 

「あれ?呂ふっちは何も思わへんの?こう、母親として助けてやろうとか?」

 

「子供の喧嘩に・・・・親は口出ししない・・・・それにこれは吹雪の部署の問題。隊長である吹雪自身が解決しないといけない」

 

「厳しいこと言うな~・・・・・」

 

「厳しくない・・・・当たり前のこと。相談は乗るけど、それだけ。あの子もいつまでも子供じゃないんだから・・・・」

 

と言いつつ、彼女の表情は若干心配している顔をしていた。口ではああいっているが内心は自分の子が心配でならないのだ

それは霞にもわかっているのか

 

「うちには子供おらへんからわからへんけど、まあ、呂布っちの言いたいこともわかるで?それに桜花がぐれたのもうちの部下が悪いしな」

 

「そう言えばあの事件・・・・喧嘩売ってたの霞の部下だっけ?」

 

「そやで?桜花の方は無視していたらしいんやけど、あんまりにもしつこくやるもんやからああなったんや。あの事件についてはうちにも責任があるで」

 

「その部下どうしたの?」

 

「あの後、説教してやったわ!でも気に食わなかったのかすぐにやめたけどな」

 

「そう・・・・・」

 

「それで、吹雪はこの件解決できると思う?」

 

霞が心配そうに言うと恋は

 

「大丈夫・・・・・あの子、ああ見えて人を見る目はちゃんとあるから・・・・」

 

と、そう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「たのもぉー!!勝負に来てやったぜ!」

 

「本当に来たな・・・・」

 

翌日の昼休みの最中、またも郭汜が部下を引き連れてやってきた

 

「おう、来たな・・・・・て、あれ?ちょっと部下の人数減ってないか?」

 

「うるせぇ!今日こそ勝ってやるぞ!今日は・・・・・」

 

そう言う。ああこれは彼女の得意分野で来るだろうなと思うと

 

「今日はかけっこの勝負だ」

 

「・・・・え?」

 

意外と平和的な勝負内容だった。てっきり剣術勝負かと思ったんだが・・・・

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「ああ、いや。てっきり剣術の勝負かと?」

 

「ああ、そう思ったんだけどな?今回私の得物。修理に出したのと誠華が今日の練習場はいっぱいだからするなってうるさくてよ。だから今日はかけっこにしたんだ」

 

「はぁ・・・・」

 

本当にまじめな子だな…見た目とは裏腹に

 

「勝負はここから、あの塔まで早く着いたやつが勝ちだ!合図!」

 

「はい、い1,23,開始!!」

 

「あ、ちょっと!?」

 

早口で勝負内容を言った瞬間、彼女の部下が合図を出し、郭汜はまるでチーターのようにダッシュした。完全にスタートが遅れた。

俺は走り出す

 

「ハハハッ!!この足に追いつける奴はいないぜ!!」

 

完全に勝ったと思った郭汜は笑いながらゴール地点の見張り塔に向かうのだが、すぐに誰かが彼女を追い抜き、塔に到着した

 

「え?・・・ええ?」

 

あまりの速さに郭汜は驚き、その人物を見ると、それは吹雪だった

 

「よっと・・・久しぶりに全力で走ったな・・・・中学の陸上短距離走大会以来かな?」

 

と、、そう言う吹雪。実は吹雪は中学の時陸上短距離走大会で全国一位となっており、かけっこは得意分野なのである

 

「嘘だろ・・・・総長がまた負けた?」

 

「最初のは仕方がないとはいえ二回目となると・・・・・」

 

部下たちが驚く中、郭汜はよほど悔しかったのか・・・・

 

「まだだ・・・まだ終わっちゃいないぜ!明日だ!明日また勝負しに来るぞ覚えていろ!!」

 

そう吐き捨て部下たちを引き連れまた帰ってしまうのだった。それを見た吹雪は頭を掻き

 

「はぁ‥‥これは当分、あいつの勝負に付き合うことになりそうだな・・・・・」

 

軽くため息をつきそう言うのであった

 

 

 

 



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雨の日の桜

あの後も郭汜は何度も俺に勝負を挑んできた。毎日毎日毎日・・・・正直言って彼女が勝負しに来るのが日常茶飯事になるくらいだ。

だが勝負の内容は『腕相撲』だとか『駆けっこ』、『馬術』と、かなり平和な戦い方だ。しかも彼女の得意とする剣術は一切出てこない。

 

「剣で戦はないのか?」

 

と聞いたこともあったが

 

「そんなもんやらなくても勝てる!」

 

と、粋がってそう言っていたのだが、結果は10試合中10連勝と俺が勝ち続けている。

まあ、馬術に関しては結構ぎりぎりで勝ったけど

 

それでも彼女はあきらめず俺に勝負を挑んでくる。そして負けるたんびに彼女の取り巻きたちはどんどん減っていった。

それでも彼女は俺に勝負を挑んでくる

 

いい加減に決着をつけたいと思っていた。だが、それは意外にも早く来ることになった

それはある激しい雨の日のことだ。俺は自室で書類仕事をし、隣では誠華も手伝ってくれていた

 

「すごい雨ですね」

 

「ああ、これじゃあ泥棒も外に出て悪さするのは無理だな」

 

「ですね。私だったら絶対に出ませんね。戦なら好都合ですが」

 

「ああ、雨に紛れて敵の本陣に奇襲攻撃ってか?まるで桶狭間の戦いだな」

 

「なんですかそれ?」

 

「ああ、俺がいた国で400年前。ちょうど俺の国中の武士…まあ武人たちが天下を取ろうと争っていた時代だな。その中で織田信長という俺の国で有名な武将がいたんだ。織田信長は当時は小さい領地の国主だったんだけどその時今川義元っていう当時、一番天下取りに近いと言われた強力な武将がいて、その今川義元が信長の領地を攻めてきたことがあったんだ」

 

 

俺の言葉に誠華は静かに耳を傾けていた。その顔は少しキラキラと嬉しそうな顔だった。前に誠華が俺に勝負を挑んで以来彼女は侍とかに興味を持っていたからな

 

「それで織田信長は夜遅く出陣した。密偵から今川義元の本隊を見つけてな。相手が4万5千に対し、織田の方はわずか5千人だ。そして織田軍は情報で得た今川本陣へたったの二千人で向かった。すると空が曇り大雨が降った。馬のかける音もかき消すぐらいの大雨だ。そして敵本陣にたどり着くと敵の本陣は数々の敵陣へ兵を送っていたため、いたのはたったの五千人だった。そして織田の兵はほかの兵に目もくれず今川義元の首めがけて突撃し、結果、今川義元は討ち死に。数で劣っていた織田軍の勝利に終わったという話だ」

 

「すごいですね。その織田信長という人は」

 

「まあな、結構有名な武将だからな」

 

と、そう言いながら俺と誠華は黙々と書類仕事をする

 

「それにしても…きょう。彼女は来るのかな?」

 

「え?」

 

「いいや、郭汜のことだよ。今日は来ないのかな?」

 

「こんな大雨です。さすがに来ないと思いますが、周りにいた連中もいなくなっていましたし・・・・・」

 

そう言い俺と誠華は窓を見てザンザン降ってくる雨を見て。今日は流石に彼女は来ないだろうと思っていた。だが・・・・

 

「勝負だっ!!」

 

バンッ!と力強くドアが開き、そこからびしょぬれ状態の郭汜が現れた

 

「・・・・来た」

 

「桜花。びしょ濡れじゃないか。この雨の中来たのか?」

 

「今日は・・・・お前だけなのか?」

 

「うるせぇー!こうなったらどうやってでもあんたに勝つぜ!」

 

「でも、この雨だぞ?今日はやめにしないか?」

 

俺はこの雨だと勝負は無理だから今日はやめにしないかと彼女に提案したのだが・・・・

 

「逃げるのかてめぇ?」

 

「ああ、わかったわかった。じゃあ、雨が上がったらでいいか?」

 

ヤンキー口調で睨む彼女に俺は雨が上がったら勝負すると言ったのだが、彼女は首を横に振り

 

「こんな雨大した事ねえぜ!勝負しろ!!」

 

と、そう言った瞬間、雷が鳴り、思わず俺も含め都市と郭汜も驚く

 

「雷も鳴ってきたな」

 

「だな。まあ今はこの天気だし、お前もずぶ濡れだから、少し休んでいけ。ああ、そうだちょうど昼飯の時間だから何か食おう」

 

「メシなんていらねっ!!」

 

と、そう言った瞬間彼女の腹から大きな音が鳴った。その音に隠しは顔を真っ赤にする

 

「ほら、腹は正直だ。勝負はこの雨とお前の腹がいっぱいになってからだ」

 

「うう・・・・わかった」

 

俺の言葉に彼女は頷き、俺は二人を連れて厨房へ行く。

 

「今日はそうだな・・・・あれを作るか」

 

「隊長。料理が作れるんですか?」

 

「一流とは言い難いが…まあそこそこな。誠華。彼女に毛布を用意してくれるか?このままずぶ濡れでは風邪をひく」

 

「了解しました」

 

そう言い、彼女は毛布を取りに行き、俺は鍋に水を入れ火にかける

 

「さて、この料理をおいしく作るには塩加減と火加減と時間が大事…ああ後ちょっとした愛情っかな」

 

と、俺は鼻歌交じりに料理を作る。そんな中、誠華が戻ってきて

 

「ほら、桜花。毛布持ってきたぞ。これで体を拭け」

 

「・・・・借りとく」

 

そう言い郭汜は誠華から毛布を受け取り。群れた顔や髪を拭く

 

「よし!出来たぞ!!」

 

そう言い俺は料理を彼女の前に置くと誠華と郭汜は不思議そうに首をかしげる

 

「隊長…なんですかこれ?見たところ麺料理みたいですけど…麵が赤いですよ」

 

「それにこれ、卵が乗ってるぜ?なんて料理だ?」

 

「ああ、これは鉄板ナポリタンだよ・・・・鉄板に乗ってないけど」

 

「「鉄板ナポリタン?」」

 

俺の言葉に二人は首をかしげる。そう俺が作ったのはこの時代にはない麵料理『ナポリタン』だ。パスタはイタリア生まれだが、このナポリタンは日本生まれのパスタ料理で俺が子供のころ茨城のとある港町の喫茶店で食べたスクランブルエッグの乗ったナポリタンがとても美味しく、それ以来俺はナポリタンやイタリア料理を作るのが趣味になっていた

 

「まあ、俺の国の料理かな?誠華の分もあるから食べて見なよ」

 

「あ、はい・・・」

 

「・・・・・」

 

そう言い二人は俺の作ったナポリタンを食べると

 

「「う、うまい!!」」

 

と、嬉しそうにそう言う

 

「隊長!おいしいです!」

 

「熱っ!?熱いけどうまいぜ!お代わりあるか!?」

 

「隊長。私もお願いします」

 

「ああ、あるぞ。ちょっと待ってろ」

 

そう言い俺は誠華と郭汜のさらに追加のナポリタンを盛ると二人は嬉しそうに食べ始める。いや~見事な食いっぷりでどうやら口にあってもらえたみたいで俺も少し嬉しかった。

すると・・・・

 

「あっ!・・・・・・もういいや」

 

「ん?何がもういいんだ?」

 

急にもういいと言い出した彼女に俺が訊くと

 

「なんか、勝負とかそう言うのがっすよ。なんか隊長さんの料理食べて考えるうちにどうでもよく感じちゃったんすよ」

 

「いや、別に迷惑じゃないんだが・・・・・じゃあ、これで俺の勝でいいんだな?」

 

「ああ、それでいいっす。あ~あ。手下は皆実家に帰っちゃたし、これで一からやり直しか~」

 

ああ、いないと思ったらみんな実家に帰ったのか

 

「じゃあさ。郭汜さん。もう一度、警邏隊に入らないか?」

 

「え?でも私は途中で抜けだしたんすよ?もどれるのか?」

 

と、そう言うと誠華が

 

「桜花・・・あなた。退職届出してなかったでしょ?そのため董卓様からは長期休暇の扱いだったのよ。それに今もあなたは長期休暇の扱いよ」

 

「でも誠華。私には牛泥棒の疑いがあるんだぜ?前科者の警邏隊士なんて嫌だろ?」

 

と、そう言うと、今度は俺が

 

「その件なら、あんたの無罪で解決しているぞ」

 

「え?どういうことっすか?」

 

「雪風に頼んで、例の事件一から調べ直したんだ。結構時間がかかったけどな。それで調べた結果。牛を盗まれた人物は本当は別のところから馬を盗んだ人物だということが判明で郭汜さん。。あなたはその被害者の盗まれた牛を取り返そうとしたということが分かったんだ。そしてその盗んだ犯人は、以前貴女がもめ事を起こした警邏隊士と武官の身内だとわかり、君はその二人にその盗んだ犯人に自首するように言ってくれと説得しに行って、結果二人はそれを無視し逆に隠蔽しようとしたのを君が止め、乱闘騒動になったということもわかった」

 

「そこまで調べたんすか?」

 

「まあ、調べたのは雪風だけどな。まあその後は俺が君の相手をしている間に牛泥棒の犯人は逮捕したよ。それに加担し隠ぺいしようとした二人組も近々、重い処分が下されるよ。よって月と詠には君は無実お咎めなしということになった」

 

「じゃあ・・・・・」

 

「ああ、警邏隊に戻ってきてくれないかな?君のことは斗志から聞いたけど。君のように責任感と正義感のある人にはぜひ警邏隊に戻ってきてほしんだよ」

 

「でも・・・いいんすか?私、隊長に喧嘩を売っていたんすよ」

 

と、彼女がそう言うのだが・・・・・

 

「え?あれ喧嘩売っていたの?」

 

「え?」

 

「いや~ちょっと年下の子が背伸びしてつかかって微笑ましいな~ぐらいにしか思っていなかったんだけどな・・・・」

 

「隊長。それは少し違うような・・・・」

 

と、誠華が少し呆れてそう言うと彼は郭汜の肩をポンと叩き

 

「俺はたいして気にしてないしよ。ま、君が悪いと思っているし、俺も君に対し最初は不利な勝負をしちゃったし。ここはお互いさまでいいだろ」

 

と、ニコッと笑う彼に郭汜は

 

「(なんて 器のでっけえ人だ…!)」

 

と、彼の言葉に惚れる郭汜

 

「じゃあ、郭汜さん・・・・「桜花です!」・・・え?」

 

「桜花!桜の花とかいて桜花!私の真名です!どうか私のことを真名で読んでください!吹雪の兄貴!!・・・じゃなかった隊長!!」

 

と、まさにどこぞのヤンキーみたいに笑顔でそう言う郭汜こと桜花。

 

「分かった。これからもよろしく桜花」

 

「おうよ!」

 

と、返事をする

 

「よし!じゃあ、誠華。すまないけど俺は月と詠にこのこと報告するから、桜花の入隊手続きお願いできるか?」

 

「分かりました」

 

と、そう言うと

 

「あ、隊長。失礼ながらお願いがあるっす!」

 

「ん?なんだ?」

 

「最後に・・・・最期に勝負してほしいんです!」

 

「ん?構わないけど。勝負は何だ?」

 

と、吹雪は彼女にそう訊くと彼女は

 

「最後の勝負は武人としての勝負・・・・・剣術での勝負です!」

 

 

 

 

 



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天水の狂桜

郭汜こと桜花が最後に俺に挑んだ勝負は剣術での試合だった。

無論断る理由もなかったため俺はそれを受け、彼女と試合をすることにした。

しかし外は大雨だったため、試合場は隊舎内の道場でやることになった

そして見届け人は誠華。そして道場内では剣と刀を持った桜花と俺が対峙していた

 

「剣を持つのは久しぶりだな・・・・」

 

彼女は剣を振りまわしてそう言う。彼女の剣は片手直剣で、柄も刀身も真っ黒だった

 

「それが…君の剣なのか桜花?」

 

「おうよ!やっと質屋から取り戻して、剣の手入れが終わって戻ってきたんだ?」

 

「え?どういうこと?」

 

「あ~いや。なんでもない昔の話っす。いや本当に何もないっすよ?昔、やけ酒して酔っているところを騙されて剣を売られて、それでやっと質屋に入れられてたのが分かって、やっと取り戻したと思ったら刃がボロボロだったからこれじゃあ勝負できないから鍛冶屋で修理を頼んでようやく今、終わって私の手に戻ったんすよ」

 

「ん?と、言うことは、今までの勝負で剣術が出てこない理由はそう言う理由なのか?」

 

「え!?なんで隊長!知っているんすか!?超能力者っすか!?」

 

いや、さっきべらべら自分でしゃべってたろ?誠華も俺と同じこと言いたいのか呆れた顔をしている

 

「まあ、いいっす!これで隊長さんと勝負できるんすからね!!」

 

そう言い彼女は構える。

 

「そうか・・・・じゃあ、俺も遠慮なくいくよ」

 

そう言い俺は刀を突き刺さした構え・・・家に伝わる流派の構えを取る

 

「奇妙な構えっすね?」

 

「天然理心流・・・・・俺の6代前の先祖の使っていた流派だ」

 

俺は祖父ちゃんから、俺の先祖は幕末の京都で活躍した新選組の一番隊組長沖田総司って言われている。それが本当かどうかはわからないが、天念理心流は新選組がよく使っていた流派だ。沖田総司じゃなくても先祖が新選組の隊士の可能性がないわけでもない

まあ、今はそんなことは言い。今は目の前の試合に集中しなければならない

 

「誠華・・・・・試合の合図を頼む」

 

「分かりました」

 

そう言い誠華は右手を上げ、そして振り下ろした

 

「始め!!」

 

「っ!!」

 

そう言い終わるや否や、桜花は物凄い息酔いで俺の方へ飛びそして

 

「おりゃぁーーー!!」

 

剣を振り下ろし俺はそれをよける。だがすかさず桜花は横薙ぎで俺の首を狙う

 

「うわっ!?」

 

俺は少し驚き、俺は急いでよけるが、彼女は

 

「もらった!!」

 

そう言い刀を俺の頭めがけて振り下ろし俺は間一髪で刀で受け止めるのだが

 

「(くっ!すごく重いな!!)」

 

彼女の剣の一撃はあまりにも重かった。下手をすれば刀を折られるんじゃないかと思ったくらいだ

 

「へ~すごいっすね隊長の剣。あんまり薄いから私の一撃で折れると思ったすけど意外と頑丈なんすね?」

 

「まあな・・・これでも強度は世界一と言われているくらいだからな」

 

「そうっすか?でも隊長の顔は余裕ない見たいっすけど」

 

「それはどうかな!!足が留守だぞ!!」

 

「うわっ!」

 

俺は彼女の足を払いのけ、彼女のバランスを崩し倒れそうになったが、彼女は俺にめがけて切りかかり俺は刀でそれを防ぐ、そして体勢を立て直した桜花は俺から少し距離を取り構える

 

「いや~少し油断しちゃったっすね~」

 

「今のは卑怯とは言わないんだな?」

 

「これは競技じゃなくて、実戦を想定した試合っすよ。真剣の勝負にましてや戦いに卑怯云々はないっす。戦いは常に強いものが勝つ。かっこつけ行儀よく負けても勝者によって真相は捻じ曲げられ、あるのは負けたものは悪者になるだけっす」

 

「なるほど・・・・」

 

意外と彼女は戦・・・戦争についてよく知っていると俺は正直思った。そうあらかじめルールが決められた競技やスポーツとは違って、戦いは常に強いやつしか生き残れない。歴史が常にそれを物語っている。いかに行儀よく負けても勝者によって捻じ曲げられ、負けたものは悪とされる

いわゆる『勝てば官軍、負ければ賊軍』ってやつだ。

だから勝負は使える手は何でも使い全力でぶつかりつつ相手には敬意を表す

それは俺がガキの頃から教わったことだ。無論ルールがあるのであればそれに従う

だが、今回の桜花の試合はルール無用の一本勝負。だから俺も全力で彼女と戦うことにしているのだ

 

そして俺は再び天念理心流の構えを取り、彼女もまた構えなおす

緊迫の中、またも先手を打ってきたのは桜花だ。彼女は素早さで俺に斬りかかる。斗志のような川のような滑らかな斬撃ではないが、まるで暴風のような狂った太刀筋でしかも、その一撃ちに重みがある。誠華が静の剣であるなら桜花は剛の剣ってところだな

 

「隊長…なかなかやるっすね?」

 

「君もな桜花・・・だがそろそろ決着をつけるぞ!!」

 

「おうよ!!」

 

そう言い俺と桜花はたがいに距離を取り剣を構える。そして俺は左肩手平突き・・・・牙突の構えを取り、彼女に向かって突進する。そして桜花もまた全力でこっちに突進し向かう。そしてその瞬間

 

「おりゃっ!!」

 

「っ!?」

 

桜花は俺に向けて剣を投げる。俺は咄嗟に刀でそれをはじき返し桜花を見るが彼女は飛び上がり、懐に隠し持っていた短剣を抜いていた

そして彼女は俺はいきなりのことに倒れ、その上に彼女が立ち首筋に剣を立てていた

 

「・・・・あたいの勝っすね?」

 

桜花が二カっと笑ってそう言うが誠華がやってきて

 

「いいえ・・・・引き分けよ。自分の腹を見て見なさい桜花」

 

「え?」

 

そう言い桜花は自分の腹部を見るとそこには三十年式銃剣の切先を彼女の腹に向けていた俺がいた

 

「いつの間に・・・・・」

 

桜花が驚く中、俺は

 

「どうだ?俺の実力は?」

 

俺は立ち上がり桜花に訊くと桜花は剣を鞘に納め

 

「強いっすね・・・・あたしが知る中で呂布将軍や華雄将軍と同じくらい強いっすよ」

 

「そうか。君に認めてもらってよかったよ」

 

俺がニコッと笑うと桜花は若干顔を赤くする

 

「ん?どうした桜花?」

 

「な、なんでもないっす」

 

俺が訊くと桜花は恥ずかしそうにそっぽを向いて答えると・・・・・

 

「それで・・・・三人とも何をしているの?」

 

「「「っ!?」」」

 

どこから現れたのか、母さんが立っていた

 

「「りょ、呂布将軍!?」」

 

「母さん!?」

 

俺と桜花と誠華が驚く中、母さんは

 

「吹雪に用事があって・・・・隊長室に行ったら居なかった。それで警邏隊士の人に訊いたら・・・・ここで桜花と斬り合いをしているって聞いたからここに来た・・・・・それで何しているの?私闘は・・・・禁止のはず・・・だけど?」

 

「それはその・・・・・」

 

俺と母さんが話す中、桜花は

 

「なあ誠華」

 

「なんだ?」

 

「さっき。隊長。呂布将軍のこと『母さん』とか言っていたけどなんでだ?」

 

「なんでもかんでも、隊長は呂布将軍の息子さんだ」

 

「え?マジっすか!?そう言えば確かに似ているっすね・・・・でも呂布将軍若すぎじゃないっすか?お姉さんて言われても信じちゃうくらいっすよ?」

 

「そこは深く考えるな。いろいろと事情があるんだろ?」

 

と、二人が小声で話す中

 

「つまり・・・・・桜花と一緒に剣の稽古をしていた・・・・?」

 

「うん。そうだよ」

 

「・・・・・・・」

 

俺の言葉に母さんは俺と桜花を交互に見て

 

「分かった……そう言うことにしとく」

 

と、小さく頷いていう

 

「それで母さん。俺に用事って何?」

 

「詠が・・・・・警邏の予算表・・・・・夕方までに持ってきてッて」

 

「ああ、分かった。」

 

俺が返事をすると母さんは桜花を見て

 

「吹雪・・・・・問題は解決・・・・した?」

 

「うん。無事に」

 

「そう・・・・・・なら安心」

 

そう言い母さんは去っていった

 

「さてと・・・・早速仕事にかかるか」

 

「予算の書類まとめですか?隊長。まだこの国の文字。不慣れですよね?」

 

「ああ・・・・まあ、何とかなるよ。そう言う斗志も計算苦手だろ?」

 

「それ、言われると痛いですね」

 

俺はまだこの国の文字を完璧に覚えていない。だが計算はできる方だ。だから俺が計算し誠華が書類に書くという仕事でやっているのだが、それでも時間が掛かる。正直言って夕方までに終わるかどうか・・・・・

 

「ん?隊長たち予算の書類をするんすか?」

 

「ああ。そうだよ夕刻までに詠に渡すことになってな」

 

「そうなんすか…計算なら私の得意分野っすよ!私に任せるっす」

 

「・・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

警邏隊長室

 

パチパチパチパチパチパチ

 

警邏隊長室で桜花は素早い指さばきで算盤玉をはじき、予算書類をチェックし、書類を書き込む

 

「すごい・・・・書類がどんどん減っていく」

 

「そう言えば桜花は計算が得意だったな」

 

「人は見かけによらないものだな・・・・・」

 

俺と誠華が驚いていると

 

「終わったすよ」

 

「はやっ!?」

 

桜花が警邏室に入り、まだ30分も経っていないのに山住の書類を特に計算をする必要のある書類を終わらせた

 

「はい。予算案を簡潔にまとめた書類っす。隊長。確認をお願いするっす」

 

「あ・・・ああ」

 

俺は桜花の書いた書類をチェックする。内容は文句なしに全部合っている。しかも警邏の予算部分も余計なところを切り崩し、優先すべき装備など効率よくまとめられていた

 

「全部合っているな・・・・・すごいな」

 

「へへ!これくらい朝飯前っす!・・・あ、いまは昼だから昼飯前・・・・いやおやつ前っすかね?」

 

「いや…そこはわからんけど。まあおかげで助かったよ桜花」

 

「お役に立てて光栄っすよ隊長」

 

俺の言葉に桜花はニッっと笑う

 

「じゃあ、俺はこれを詠に提出してくるよ。あ、あと桜花の復帰の件も報告もな。二人ともありがとう」

 

俺は二人に礼を言い部屋を出た。そして部屋の中で二人は

 

 

「・・・・・・・・それでどうだ桜花。隊長と戦ってみて?」

 

「正直燃えたっすよ。あれほど血がたぎったのは久しぶりだったす。正直言って退屈はしなさそうっすよ。むしろ隊長と一緒にいると面白いことが置きそうっす。誠華の方はどうっすか?」

 

そう言うと誠華はふっと笑い

 

「私も同じ気持ちよ。あの人のそばにいると落ち着くわ」

 

と、そう答えるのであった

 

 

 

 

 

その後、桜花は警邏隊に復帰し、その後、警邏隊の副長助勤及び勘定方という役職に就くことになるのだった

 




沖田が使用した天然理心流は龍が如く維新の流派『天念理心流」の構えです


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天水の狼集団

桜花が隊に入ってから一週間がたった。俺はいつも通りに書類仕事を一通り終えていた

 

「西地区の治安は以前より改善して町の道路整理もよくなったけど、まだ端っこのあたりはスラム街やら仕事を無くしたホームレスがいっぱい知るな。警邏隊士の人材が増えてはいるが、やっぱり予算のことを考えると考えることは山積みだな・・・・・」

 

治安は以前より良くなってきている。最初の事件数が一週間に50件以上だったのに対し、今は一件か二件ぐらいまで減少した。

だが、それでも事件が出る。強盗やら空き巣やらなんかだ

警邏隊も逮捕しようと奮闘するのだが、従来の鎧のせいで動きにくいという話もある。かといって鎧を外しても服装は一般市民と同じだから、警邏隊士という感じがない。なるべく民衆が警邏隊だと印象付ける衣装とか必要だな。

 

「う~ん・・・・・デザインはどうするかな・・・・」

 

俺がそう考えている。一応候補としては幕末の新選組みたいな服装。もう一つは明治時代の警察官の服装とかだ

 

「う~ん・・・・・ここで考えてもしょうがないな。パトロールしながら考えるとするか」

 

俺は軍刀と14年式拳銃を持ち部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

部屋を出て俺が向かった場所は西地区だ。前は治安は悪かったが、今は改善され、歓楽街とか料理の店が多くできている。まあ、それでもごろつきとかが多くまだまだ改善するところが多いいけどな。

だが・・・・

 

「あ!隊長さん。こんにちわ!」

 

「こんにちわ皆さん元気で何より。どうだ?この頃の様子は?」

 

「ええ。前に比べて。いいっすよ!」

 

俺が西地区に行くとガラの悪い連中が笑顔で俺に話しかけてくる。

 

「そうか。それはよかったよ」

 

「とんでもないっすよ。俺たち結構隊長さんにはよくしてもらっているっすから」

 

「そうっすよ。それだけじゃなく割と厄介な時には相談に乗ってもらったり、仕事を紹介してくれたり」

 

「そうそう。今の俺たちがいるのも隊長さんのおかげですよ」

 

「アハハ・・・・買い被りさ」

 

「隊長さん!俺たちあれから心を入れ替えて、風紀やら治安を守るようにそれなりに努力しているんですよ!今日だって道に落ちているごみの清掃とかしているんですよ!」

 

「俺たちも今月はまだ違反とかしていないっすよ!!」

 

「おっ!すごいじゃないか!」

 

俺に話しかけたのは以前ここいらの治安を荒らしていた奴らだ。その時は誠華たちとともに鎮圧したのだが、すぐには牢には送らず、なぜ治安を乱すのかどうか聞くと、理由としては職がない。お金がないという理由だった。俺は彼らを解放し、代わりに職を紹介した。場所は従業員が足りない店とか土木工事とか役所の警備員とかだ。中には警邏隊に志願する奴もいた

それもあってか彼らも少しは心を入れ替え、慈善活動とかしている

 

「隊長さんは町の警邏ですか?」

 

「ああ。お前らも頑張れよ」

 

俺は笑顔でそう言い、彼らと別れる。すると

 

「隊長。お疲れ様です」

 

と、そこへ誠華と桜花、と雪風がやってきた。彼女たちは俺が来る前の警邏隊。つまり初代のころからの仲のため、古参からは「天水三羽烏」と呼ばれているらしい

 

「おお、お疲れ。三人揃ってどうした?」

 

「えっとー、これからお昼に行こうと思うんだけど、隊長も誘おうと思って」

 

「ん、そうなのか?」

 

「そろそろお昼の時間なので、もしかしておじゃまでしたか?」

 

誠華が申し訳なさそうに言うと俺は首を横に振り

 

「いや、全然気にする必要はないぞ」 

 

「そうですか。よかった」

 

俺の言葉に誠華は安堵の笑みを浮かべる。

 

「で、お前らはなんか食いたい物とかあるのか?」

 

「「「朱雀屋で」」」

 

「即答だな・・・・まあ、俺も同感だ。じゃあ朱雀屋に行くか」

 

「「「はい!!」」」

 

因みに朱雀屋とはこの西地区にある小料亭であり、警邏隊士がよく使用する料理屋。安くておいしい。そしてその店の店長は客に会った料理を出したり、異国の料理とかも挑戦して作るという。

掻くいう俺もそこの店長と仲が良く、よく俺に俺の国の料理とか聞いてきているため店には俺の知る西洋料理や日本料理なんかもメニューにある

そして俺たち4人は朱雀屋でご飯を食べることになった

 

「「「「いただきます!!」」」」

 

料理が運ばれ俺たちは食事を堪能した。ちなみに今日のメニューは餃子と麻婆豆腐と言った中華料理だ

 

「悪い、誠華。酢醤油取ってくれないっすか?」

 

「もぐもぐ・・・・・・んぐっ、ん・・・・・・はい」

 

「ありがとうっす。雪風はいるっすか?」

 

「いただくわ。お礼に餃子。一個あげるわ」

 

「お~すまない雪風!」

 

「目が欲しいって言っていたからね。はい。どうぞ。誠華もいる?」

 

「いただくわ」

 

と、仲良く食事をする中、俺は白ご飯の上に麻婆豆腐をかける

 

「ん?隊長何をしているんすか!?ご飯の上に麻婆豆腐をかけるなんて!?」

 

桜花は驚き、雪風も少し唖然とした表情をし、誠華も珍しい物を見るような目で見ていた

 

「ああ。丼ものの文化は日本だけか・・・・・これは麻婆丼って言ってな。俺のいた国じゃいたって普通なんだ。ご飯と同時に食べられるしお手軽だぞ?」

 

「そ、そうなんですか?私にはちょっと抵抗がありますけど?」

 

雪風がそう言うがその反面桜花はというと

 

「へ~ちょっと一口良いっすか?」

 

「桜花。それ食べる気なのか?」

 

「食の探求を忘れるな・・・・てやつっすよ誠華」

 

「そうか・・・・なら私も試しに」

 

「私もいただきます

 

と、そう言う桜花。ちなみに彼女の趣味は料理で、俺の作った鉄板ナポリタン以来、いろんな料理を暇があれば俺の国の料理。特にナポリタンを作ったりして研究とかしている。

そして桜花、誠華、雪風はレンゲで俺の麻婆丼をすくい上げそれを口に入れる

その瞬間彼女たちの目は見開き

 

「旨い!うまいっすよこれ!!」

 

「本当だ美味しい・・・・」

 

「意外な組み合わせですね…でも美味しい」

 

桜花がそう言うと誠華も雪風もどうやら気に入ったみたいだ。

 

「気に入ってもらえて何よりだ」

 

俺は黙々と食事を始める。と、その時。

 

パリン

 

と皿の割れる音がした

 

「どうしました?」

 

とこの店の主人が居た

 

「どうしたんだ店長?」

 

俺が店長に訊くと店長は

 

「隊長さん!」

 

「はい?」

 

「君のおかげでさらに新しい料理ができそうだよ!ありがとう!!!」

 

「あ・・・ああ。どういたしまして」

 

店長はそう言うとすごい勢いで厨房に戻った

 

「店の料理が増えそうですね隊長」

 

「ああ。そうみたいだな」

 

誠華の言葉に俺はそう答えるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

そして大体の話が終わった後俺と誠華たちは軽い小話をしていた

 

「そう言えば隊長。聞きました?私たち天水警邏隊の別名」

 

「ん?別名なんてあったか?」

 

「はい。「天水の狼集団」とか「野良犬隊」と呼ばれています」

 

「そんな仇名が・・・・・まあ、うちらの隊士はガラの悪そうで血の気の多いい奴が多いいからな。仕事は真面目にやっているけどな」

 

「はい。元盗賊出身もいますので。私も昔はいろいろと問題児でしたので」

 

「あ~そう言えば私も昔は喧嘩ばっかりだったな~」

 

誠華と桜花が言うと雪風も二人と同じく無言で頷いていた。実際天水警邏隊の隊士は女性隊士も多いいが、それ以前に血の気の多いい連中が多いい、いわばヤンキー集団ともいえるほどだ。普通の家柄の隊士は数名だが、ほとんどが元盗賊だったり問題児な子が多い。だが民間人に暴力や脅して金を巻き上げようとする奴は一人もいないむしろ仕事は真面目にやる奴がほとんど、この時代当たり前の賄賂とかそう言う不正をしようとする役人相手でも問答無用で捕まえるほどだ。

理由は彼らが真面目なのもそうだが警邏隊の隊規。つまりルールを守っているからだ

そのルールはこういったものだ

 

 

一、士道、人道ニ背キ間敷事(武士道、人道に背く行為をしてはならない)

 

一、緊急時以外デ民間人ニ暴力モシクハ恐喝スルベカラズ(緊急時以外で一般市民に暴力を振るう事を厳禁とする)

 

一、勝手ニ金策致不可(無断で借金をしてはならない)

 

一、私ノ闘争ヲ不許(許可なく個人的な争いをしてはならない)

 

一、賄賂を受け取るべからず(賄賂、不正をしてはいけない)

 

一、敵と内通せし者これを罰する(敵と内通してはならない(戦略的な意味では例外とする))

 

以下略

これを破りし者、厳罰とする

 

 

 

となっており、この隊規を作ったのは俺と誠華が話し合って決めたものだ。当初、誠華は隊規を違反したら死罪という考えをしたみたいだがさすがにやりすぎと思い俺は却下した。

この隊規ができて以降隊士たちは真面目に仕事をしている

 

「ま、、大丈夫だろう。今のところ乱暴狼藉はおろか職務だってちゃんとしているし、町の人と仲良くしている。言いたい奴は言わせておけ」

 

「ですが・・・・」

 

「大丈夫だ。今は野良犬なんて言われているがいずれは猛犬部隊まで言われるようになるよ。のらくろみたいに」

 

「はぁ?なんですかそれ?」

 

「こっちの話だ」

 

俺はそう言う。それにしても天水の狼か・・・まるで新選組の壬生狼みたいだな

 

「さしずめ今の俺は近藤勇ってことか?」

 

「隊長。何か言いました?」

 

「いいや。なんでもないよ。さて仕事に戻るか」

 

「はい」

 

「了解っす」

 

「御意に」

 

そう言い俺たちは店を後にした。その後天水の狼集団と言われる天水警邏隊が大事件を解決するのはまだ先の話・・・・・




真・恋姫夢想をやって見て思ったのですが、孫乾こと美花って十六夜咲夜に見えるのは私だけでしょうか?

感想をもらえたらとても嬉しいです


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詠と吹雪、兵器について語る

「今夜仕事が終わったら僕の部屋に来て」

 

そう昼間に政務をこなしている時に詠に呼ばれた俺は詠の部屋の前まで来ていた。

 

「(・ ・・何かまずったのか?大きな失敗をした覚えは無いんだがなぁ?)」

 

そんな風に考えながら目の前の扉を軽く二回ほど叩く、その音に対して中から

 

「吹雪?入っていいわよ」

 

そう呼ばれて部屋の中へと足を踏み入れた。

 

「それで、詠?何か用事なのかな。最近失敗は無かったと思うんだけど」

 

「第一声が説教の心配なわけ!?・・・安心していいわよ、吹雪は警邏とか役職とか文官の手伝いとかよくやってくれていると思ってるし、ここの文官は基本的に皆信頼しているけど、それでも絶対に月を裏切らない文官だしね、吹雪は。今日はそんなんじゃなくてね・・・天の国だっけ?吹雪がいた世界の事を聞きたくて呼んだのよ」

 

そう呆れた風に言われてしまう。

 

「俺の世界?母さんじゃなきゃダメ?」

 

「確かに前に恋に天の国のことを訊いたけど恋は『吹雪のほうが滞在時間とその時代の常識が私より詳しい』って言われてね。で、あなたを呼んだわけ」

 

母さん・・・・・面倒くさかったのかな?

 

「まあ、答えられる範囲だけどそれでいいか?」

 

「ええ、別にいいわよ。お礼っといってはなんだけど。町でいいお菓子が手に入ったから、一緒に食べない?」

 

「うん。頂こうかな?」

 

そう言い俺は彼女の言葉に甘えて席に座り、詠はお茶菓子とお茶を持ってきて、湯呑にお茶を注ぐ

 

「いい香りだな?」

 

「でしょ?これは僕のお気に入りのお茶なのよ」

 

そう言って笑みを浮かべ

 

「さぁ、貴方の世界を聞かせて頂戴?」

 

「聞かせてといわれてもな・・・」

 

お茶を注いでもらいそれで香りを楽しみながら俺はこう答えた

 

「漠然としてまとめ切れないからな・・・詠が質問をしてそれに俺が答えるという形式じゃダメかな?」

 

「そうね、そのほうが僕も知りたいことを絞れそうだしそれでいいわ。・・・随分前に警邏の設備や区画整備の時に聞いた程度だったし・・・そうね、まずは政治関連ってどうなっているの?」

 

そんなまじめな問いに対して俺は自分の持っている知識で受け答えをしていく。

法整備に関しての法律、学校のこと、どのようなものが売れていたか、農耕はどうなっていたか。農業道具ではどんなのが使われているのか

自分が知りえる限界の答えしか出せないことを少し歯がゆく思いながらも答えていった。

 

「そう、やっぱり天の国はかなり進んでいるのね。あ、僕もお茶貰っていいかしら?」

 

「ああ。俺が注ぐよ」

 

「ありがと」

 

そう言い俺は詠の湯飲みにお茶を注ぐ。」

 

「それでね。吹雪・・・・聞きたいことがあるのよ」

 

「なに?」

 

「あんたの持っている。銃ってやつなんだけど」

 

「ああ・・・・量産するかどうかって話のことだろ?」

 

詠は俺の九九式小銃について聞いた。理由は以前。その銃の性能を見たいって言われ広場で射撃試験をした時だ。的は500メートル離れた鎧の中で一番固いやつを標的にして俺は撃った。

結果は俺の放った九九式小銃の7・7ミリ弾は見事に貫通。その威力にその場にいた詠たちが驚いていたのを覚えている

それで詠はその銃を生産しようと考えていたのだ

因みに母さんは『吹雪の判断に任せる』と言っていた。だがそれはちゃんと決断する時は責任を持てと言う意味も俺にはわかっていた。

 

「うん。実際のところどうなの?」

 

「正直言って九九式ほどまでの銃は難しいと思う。それ以前なら何とかなりそうだけど。少し危険かな?」

 

「危険?」

 

「強力な武器は次の戦の引き金になると思うし、何より他国がまねして生産する可能性がある。そうすればそれを超えるために新たな強力な兵器を作ることになる」

 

「キリがないわね・・・・それ」

 

「ああ、とある人が言っていたよ『血を吐きながら続ける悲しいマラソン』・・・・追いかけっこだって」

 

「じゃあ、吹雪は反対?」

 

「侵略のための使用目的なら大反対だ。それに銃とは無縁のこの世界で強力な兵器はいわば核兵器と同じだ」

 

「何それ?」

 

「65年くらい前に俺たちの国に使われた兵器。人口35万人の大都市がたった一発で灰燼に帰した。それを考えればを殺す方法については俺達の世界は一流だろうなぁ、大国二つが戦争すれば文字通り人類は絶滅するしな。20年くらい前まで二つの大国がその対立状況にあってね。直接戦わないことから冷戦って呼ばれてたよ」

 

「恐ろしい話ね・・・・・じゃあ、その銃も」

 

「ああ、この時代ではそうなりかねない・・・・けど」

 

「けど?」

 

「もし、月やこの町の人々を守るためだったら・・・・・侵略じゃなくて守り・・・・・自衛のためで使用するなら。俺はその兵器を作っても構わないと思う」

 

「・・・・・矛盾ね?」

 

「言った俺もそう思うよ。まあそれ以前に銃を製作できる技術者…鍛冶屋がいないからな。できたとしても時間はかかるよ」

 

「吹雪。もし、その銃が生産することができたら作ることのできる人がいるならどうするつもり?」

 

「・・・・・・」

 

詠の言葉に俺は少し黙ると。俺は一冊の書簡を出した

 

「吹雪。これは?」

 

「俺が考えた『近代国防軍事理論』つまり天の国の軍事についてそして国防についての資料だよ」

 

詠は俺の書いたその資料を見る

 

「正直俺は人殺しは嫌だしやりたくもない。だけど大切な人や家族を守るためなら俺はどんな手でも使う。銃も製造する。だがそれは侵略ではなく専守防衛・・・・自衛の時のみ使用。運用も俺の部隊で運用しようと思う」

 

俺が話す中、詠は

 

「吹雪。この書簡の件とあんたの意見。考えてもいい?」

 

「うん。ありがとう詠」

 

俺は少し軽く笑うと詠は少し顔を赤くし

 

「か、勘違いしないでよ。あんたのためじゃなくて月のため・・・あんたの言う家族のためだから!そこのところ勘違いしないでよね?」

 

「うん。わかってる……お茶無くなっているね。注ぐよ」

 

「・・・・・・・ありがとう吹雪」

 

俺は彼女の湯飲みにお茶を注ぐのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。俺は今日は非番で今日は俺の軍刀を研ぐため鍛冶屋に向かっていた。刀のメンテナンスは祖父ちゃんに教わり一通りで来ていたが研ぐとなるとやっぱり専門家に診てもらった方がいいと思ったからだ

俺が町の中を歩くと

 

「あ、隊長。お疲れ様です」

 

「ご苦労様です」

 

「なんだな」

 

と俺たちはパトロールをしている警邏隊員にあった腕には白い腕章をしている。

因みに警邏服も変わった。服装は黒い軍服風のいわば銀魂の真選組みたいな隊服になっている。まあ明治時代の警官も黒服だし。同じか

因みに黒色の理由は町の人への印象付けの他『何色にも染まらない』という強い意志を象徴してその色にした。

 

ああ・・・それと、俺の目の前にいる3人は前にねねに手を出そうとした3人のチンピラだった。

因みにあの3人組は半月前。

この日は朝から町へと繰り出していた。目的は特に無い。ただの散歩。しかしそこで意外な顔に再開する。それが彼ら3人組だった。

今度は物取りとして現れた彼らだったが、相手が俺と気付くとその場で土下座。

「見逃してください」と。

しかし、別に俺は彼らをどうこうする気は無かった。というか、今の今まで忘れていたのだから。そこでふと疑問に思ったのだ。

 

「あんたら、他に働き口ないのか?」

 

現代では無くこの世界なら。他にやろうと思えばいくらでも仕事はありそうな物なのだが。話を聞くと、どこかで畑を耕そうにも良い場所には既に人が。元手となる金も無し。兵をやろうにも、自分達は所詮街のチンピラ。戦争なんぞできるハズも無く。文字も書けず、計算も出来ず。どこか遠くの寒村なら暮らせるだろうが、そこまで行く路銀も無し。とまぁ、そんな状況だ。

そこまで聞いて、流石に俺も同情。そこで、俺は力になる事にした。

と言っても金を与えるのではない。それでは一時しのぎにしかならず、根本の解決にはならないからだ。俺は警邏隊に入らないかと誘って、彼らを警邏隊に入隊させた。今のあいつらの顔を見ると前と違って生き生きとしている。

 

「それじゃ、隊長。俺たちはまだ警邏の続きがあるんで」

 

「おう、頑張れよ!」

 

「「「はい!!」」」

 

そう言い俺たちは3人組と別れた。

 

「さて・・・・俺もいくか」

 

 

 

 

 

「ここか・・・・」

 

俺は目的地である武器屋に着いた。武器屋はこの街で4つあるのだが俺の持っている軍刀(分解して銘を見たらあの有名な「中曾根虎徹」だった。これはびっくり)をメンテナンスできるところは4軒中ここだけだったったのである。

 

「お邪魔しま~す。おっちゃんいる?」

 

俺は店に入り此処の主人であるおっちゃんを呼んだ。するとそこには・・・

 

「あ、すみません。親方なら今、陳留に旅にでてるよ」

 

椅子に座って何か設計をしているのか、何かを作っている少女がいた。

髪は少し緑がかった銀髪で前髪がぱっつんでセミロングをポニーテールにして大きな緑のリボンで留めていた。

 

「あ、あの何か用か?」

 

「え?ああ、この剣を研ぎなおしてもらいたくて・・・・」

 

「ふ~ん。変わった形ね見せてくれる?」

 

「え、いいけど・・・・」

 

そう言い俺はその子に刀を渡した。しばらくその子は俺の刀を見ていたが・・・

 

「・・・・なんなのこの剣・・・・どうやって作っているの‥‥これ折り返しかしら‥‥何層あるのこれ。それに鋼も研ぎも、いったい何がここまでさせてるのすごいわ!!ねえ!ちょっとあんた!!」

 

「え、はい?」

 

「これは何なの?どこにあるものなの?」

 

「え・・・・あ、あのこれは日本刀って言って俺の国の剣だよ」

 

「二ホントウ!?すごいわね・・・・でもどんなにすごい剣でもいずれ技術の進歩で剣と弓の戦いはなくなるわ」

 

この人、剣の戦いがいずれ終わることを読んでいる・・・・

 

「はぁ・・・そうですか・・・・・あのそれでお姉さんはいったい何を書いていたんですか?」

 

そう言うとその人はふふんと鼻を鳴らし

 

「弓に代わる新兵器を考えていたのよ。私は火薬のことを調べていたんだけどね。その火薬を使って弓よりも高性能な武器の設計図を描いていたのよ。これがそうよ」

 

そう言いて彼女はその設計図を俺に渡す。

 

「名前は決まっているの名付けて「火薬弓」火薬の爆発する力を使って玉を飛ばし相手を瞬殺するという兵器よ」

 

俺はその設計図を見る。その「火薬弓」の姿は戦国時代の火縄銃に似ていた。

 

「すごい・・・・でもこれって構造上1発撃つと次の装填に時間がかかるんじゃないか?」

 

「あなた・・・話が分かるわね今まで誰も聞く耳も持たなかったのに。そうよ、それが問題なのよ。しかもこれ火縄だから雨とか風の日なんか火が消えちゃうし・・・・あなたとは気が合いそうね。あなたの名前は?」

 

「ああ、俺の名前は沖田吹雪だよ」

 

「・・・・・・え?ごめん聞き間違いかな・・・・今沖田って言った?”あの”沖田吹雪?」

 

「ああ、”あの”かどうかはわからないけど。沖田吹雪は俺だ」

 

「ええぇぇぇぇぇ!!!!」

 

その人は驚きの声を上げた。

 

「沖田吹雪って言ったら、雷鳴轟かす武器を持つ枯草色の御使いじゃないの!!そういえばあなた枯草色の服を着てるわ!!」

 

そう言ったとたんに彼女は顔を近づけた。てか近すぎる!

 

「ねえ!あんたそのうわさで聞いたその武器持ってるの!?あったら見せてくれる!!」

 

キラキラした目で言い寄る

 

「あ、あの落ち着いてください・・・・・」

 

「あ、ごめんね。つい‥‥あ、そういえば名前を名乗っていなかったわね‥‥コホン」

 

そう言うとその少女は一度深呼吸を置いて名を名乗った。

 

「私は馬鈞。性は馬、名は鈞、字は徳衡よ」

 

「え?」

 

馬鈞ってあの馬鈞か!?三国一の発明家の!? でも生まれてくるの早すぎじゃないか?

馬鈞て言ったら曹操の孫の曹叡に仕えていた人じゃなかったけ?

 

彼女が馬鈞と聞いて驚く吹雪であった。

 




アンケートの結果。警邏隊の服装は銀魂の真選組の隊服に決定しました!
感想をいただけたらとても嬉しいです



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三国志の発明家その名は馬鈞

ある時俺は、非番の日、刀を手入れしてもらおうと行きつけの武器屋に行った。するとそこにいたのは、いつものおじさんではなく。タンクトップ的な服を着ていた少女だった。

しかも彼女はなんと三国志後期に活躍した発明家の馬鈞であった。

「で、それよりも早くその天界の武器見せてよ!」

 

馬鈞さんは目を輝かせながら俺に言った。仕方がない見せるか。それと馬鈞さん顔が近いです。

 

「わかりました。分かりました。だから落ち着いてください。でも壊さないでくれよ」

 

「分かってるって♪」

 

俺はホルスターから14年式拳銃を出した。もちろんセーフティーにしてあるしマガジンは抜いてある。14年式拳銃を受け取った馬鈞は興味津々で機関部をのぞいたり銃口をのぞいたりとまるで子供のようにはしゃいでいた

 

「へ~これがそうなの。私が考えていた「火薬弓」よりも小さいね。でも噂だとなんか木の棒のようなものだって聞いたけど・・・・でこれはなんていうの?」

 

おそらく九九式小銃のことだろう。九九式小銃はあまり使う機会がないから部屋の戸棚にしまっている。警邏とかそう言うのなら14年式拳銃でも十分だと思ったからだ

 

「それは拳銃って言って銃のなかじゃ小さいほうに分類するよ」

 

「銃?それがその兵器の名前ね。拳銃っていうから。たぶん拳に収まるくらいだからそう言われているのでしょ?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「構造は私の考えた構造と似ているわね・・・・・この筒の中にある溝は・・・・わかったわこれは弾を発射する時に弾を安定させるものね!!」

 

「すごいな…よくわかりましたね」

 

本当にこの人三国志時代の人?俺と同じく未来から人じゃないかと俺は正直疑ってしまう

 

「これが、あればこの国・・・いや世界中の戦の戦い方が大きく変わるわ!!でもこの拳銃っていうのはどうやって弾を入れるの?正面じゃあ溝が邪魔で入らないし火薬も詰めないわ。ん?」

 

すると馬琴さんはあることに気が付いた。

 

「この拳銃の持つところに下、何か抜き取った後がある。そうかそこに弾を装填するのね!ねえ沖田。その抜き取った部品見せてくれる?できれば弾も」

 

「え、あ、ああ・・・わかった」

 

俺はマガジンとその上の一発の8ミリ南部弾を取り出して馬鈞さんに渡した。すると馬琴さんはマガジンを拳銃に装填した。

 

「やっぱり・・・・それにこの弾丸私が考えていた弾と比べると丸じゃなくてどんぐりみたいな形ね。それにたまにくっついているこの金色の筒は何かしらそれにその下についている丸いの‥‥これは水銀・・・?」

 

「薬莢だよ馬鈞さん」

 

「やっきょう?」

 

俺の答えに馬鈞さんはきょとんとする。

 

「ああ、その中に火薬は入っていてその上に弾丸をはめ込む。そして引き金をひくと拳銃について針が薬莢の底についている雷管を刺激し雷管が破裂して火薬が爆発し弾が出るって構造だよ」

 

俺が説明すると馬鈞さんは肩をわなわな震わせている・・・・なんか怒らすようなこと言ったかな・・・

 

「・・・・・・・すごいわ」ボソッ

 

「え?」

 

俺は馬鈞さんがつぶやいた言葉が聞こえなかったため首を傾げた。すると・・・

 

「すごいわ!!これで装填時間も解決できるし、それにうまくいけば連発だってできる。弓矢がもうおもちゃに見えるわ!!いいえ。これが大量に出回れば弓で戦う時代も密集んで陣形を取って戦う時代も終わってしまうわ!!」

 

そう言い馬鈞さんは喜びのあたり俺に飛びついてきた

 

「わっ!ちょ!落ち着いて!馬鈞さん!!」

 

「夕張よ!」

 

「へ?でもそれって真名じゃあ」

 

「いいの。いいのこんなに素晴らしい天の国の武器を見せてくれたんだから。これはせめてものお礼♪だから私のことは夕張っと呼んでね沖田」

 

「わかったよ。夕張さん。じゃあ俺のことも吹雪で」

 

「さん付けはいいよ。吹雪っていくつなの?」

 

「え?16歳だけど」

 

「じゃあ、私と同い年じゃん!だから気軽によんでよ♪」

 

「え?同い年!?」

 

てっきり年上だと思った。

 

「どうしたの?吹雪?」

 

「え?あ、いや何でもないよわかった。じゃあ気軽に呼ぶよ夕張」

 

「うん、よろしい・・・・・・よし決めた!」

 

すると彼女は何か決意したようだ。

 

「え?何が決めたんだ夕張?」

 

「私吹雪と一緒に行くよ!私も吹雪の仲間になるわ!」

 

「えぇぇぇ!!」

 

俺はいきなりの発言にビックリした。

夕張はきょとんとして俺の顔を見る

 

「え?どうしたのよ?いきなり声を上げて。」

 

「そりゃ、ビックリするよ!てか店そのままにしていいの!!」

 

「大丈夫店は親方が帰って、それで許可をもらってから出るつもり、それにあなたと一緒にいると何か面白そうなことが起きそうだからね♪」

 

ここまで言うとこの人絶対に譲らないだろ・・・・仕方がない

結局俺は夕張が俺の隊に入ることを許した。しかしそれは旅に出ているおやっさんが帰って許可を取ってからという条件付きだ。彼女もそれを認めた。

その後夕張は俺の刀を研ぎ直し俺はその刀を受け取り、その場を後にした。

 

「また来てね~♪それとあの約束も頼んだわよ~」

 

「わかってる。分かってる。じゃあ、またな夕張」

 

そう言って彼女とは別れた。後で詠達に言わないとな・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~お茶が美味しいな・・・・」

 

俺は今、とある茶屋でお茶とゴマ団子を食べていた。席は外で食べれる場所だ。

 

「本場のゴマ団子は美味いな・・・・」

 

俺はそう呟きゴマ団子を食べながらあたりを見ていた

 

「それにしても・・・・・・」

 

俺は道を行く人々を見る。通行人は商人や一般人が通っているのだが武器を携帯した者もいた。この頃そう言う連中が多く見かける

 

「旅の武人・・・・・・て訳ではなさそうだな」

 

見た目からして旅の武人なら、もう少し気品さがあるというか純粋な気配を感じる。だが今、うろついている連中はどっちかというと禍々しいというか血で汚れたというか…なんというか危険な連中という感じだ。

 

「・・・・・」

 

俺がその浪人たちを見ると

 

「隊長・・・・」

 

背後から声がし、俺は目線だけ後ろを見るとそこには町人の格好した女性が座っていた

 

「・・・・・・蘭花(ランファン)か?」

 

「はい」

 

俺の言葉に彼女は小さく頷く。彼女の名は姜維。真名は蘭花。天水警邏隊の密偵部隊の隊員であり雪風の部下だ。

それに姜維と言えば元は魏の臣。文武両道で孝心が強い。第一次北伐の際、蜀に帰順。以後の北伐では、孔明の作戦をそつなくこなし、孔明の死後、北伐を引き継ぐ。兵法や陣形に精通し、しばしば魏軍に完勝。名将鄧艾とも、好勝負を繰り広げる。両者は武芸でも互角。魏の知将である鍾会が蜀に侵攻すると、剣閣を堅守する。劉禅降伏後、姜維は鍾会をそそのかし、反乱を起こさせ成功後、鍾会を始末する算段だったが、しかし鍾会の兵たちが暴動を起こし、鍾会は討死。姜維は自害するんだっけ。

 

「樊稠班長からの報せです。最近身元不明の浪人たちがこの天水のどこかに集まり何やら企んでいるみたいです」

 

「ああ、さっきからその浪人連中がうろついているとは思ったがな…他に何かわかったことは?」

 

「今のところ、私ども含めて監視を続けています。何かあればすぐに報告します」

 

「分かった。引き続き頼む。後危ないと思ったらすぐに離脱するように」

 

「善処します」

 

そう言い俺は立ち上がりその店を後にする

それにしても謎の浪人集団か・・・・・何事もなければいいんだが・・・

俺はすっかり日が暮れ空に浮かぶ月を眺めながらそう思った。

だがそれは後の俺たち警邏隊の本領を発揮する事件となるのだった。



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天水警邏隊初陣!!三国志池田屋事件

あれから数日。雪風から不穏な動きを見せる浪人たちの正体が分かった。

その正体は黒山衆。

黒山衆と言えば張燕率いる100万と言われる大軍を集め、後漢王朝すら手が出せないほど強大な勢力を持っていたマフィア集団ともいえる連中だ。

だが雪風の調べでは数はまだ数万くらいで、恐らく俺のいるときはまだまだ勢力が大きくなっていないようだが、それでも漢王朝の官軍を打ち負かしたりと厄介な組織なのは変わらない。

だが、連中が何を企んでいるのかはわからないため理由もなく捕らえることもできないが監視を強化していた。だが一向に尻尾を出すことはなく手詰まり状態だった

 

 

 

 

 

「今日も異常はなし・・・・か」

 

町の中をパトロールする中、俺はそう呟くあの浪人たち以外では何も異常はなく町は平和そのものだ。

すると・・・・

 

「隊長。少しお話が・・・・」

 

「ん?ああ雪風か?」

 

俺に話しかけてきたのは雪風だった

 

「どうかしたのか?」

 

「はい。実は桜花たちの隊が店先で浪人と交戦しまして」

 

詳しい話を聞いたところ桜花が率いる警邏隊がある商家によったところ、偶然黒山衆の浪人とばったり会い、浪人の方が斬りかかり、これに応戦したとのことだった

 

「あいつら・・・・で、何かわかったのか?」

 

「はい。その浪人の中に黒山衆の幹部らしき人物を捕らえたとのことです。既に隊舎に連行しています」

 

「っ!?わかった。すぐに行く」

 

そう雪風に言われ、俺は隊舎に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お手柄だな桜花。乱闘の末、その店に運び込まれた武器を回収したのと、その黒山衆間者の元締めの幹部を捕らえてくるなんて」

 

報告を聞いた俺が桜花にそう言うと

 

「いや~運がよかったすよ」

 

と笑いながらそう言うと誠華が

 

「笑い事じゃないぞ桜花。あの商人の店が黒山衆と黒いつながりがあるということで泳がせていたんじゃないのか?調査していた雪風や蘭花に申し訳ないと思わないのか?」

 

誠華がそう言うと雪風と蘭花は首を横に振り

 

「いいえ。私たちのことは気にしないでください」

 

「はい。班長と一緒に調査していましたが手詰まり状態でしたので、正直桜花さんが動いてくれたおかげで取り押さえることができましたので」

 

と、そう言うと・・・・

 

「吹雪~いるか?」

 

と、そこへ取り調べをしてくれた霞が来た

 

「ああ。霞。どうだった?」

 

「ああ、吹雪が思った通り、あいつらとんでもないことを企んでおったわ」

 

「とんでもない事?」

 

「そや」

 

その後霞が話した内容は確かにとんでもない内容だった。黒山衆のたくらみとは都である洛陽の街に火を放ち。町が混乱している隙に漢王朝の役人や天子つまり皇帝の抹殺をするということだった。そしてその重役の会議場所は都の役人の目の届きにくいここ天水で行うことになっており、その頭目は黒山衆の張牛角と張燕とのことだった。そしてついでにこの天水の街にも火を放ち高官役人を暗殺するという内容だった

 

「都洛陽を焼き討ちにして天子様の抹殺・・・・なかなか過激な連中だな」

 

「それにしても張燕と牛角か・・・・」

 

「隊長。二人のことについて何か知っているのですか?」

 

「いや。名前だけ知っていることぐらいだな」

 

張燕は確か黒山衆の棟梁で牛角はその前棟梁だったはずだ。すると雪風は

 

「ですが張燕と牛角は対立状態にあると聞きます。破壊行動はすれどなるべく被害を最小限にする穏健な考えの張燕と過激で無差別な狼藉を働く牛角と常に張り合っているという報告がありましたが・・・・」

 

「どっちにしろ放っておくわけにはいかないな・・・・・会合はいつなんだ霞?」

 

「たしか今夜にでも集まるらしいで?場所を吐く前に舌を噛んで自殺したからこれ以上は聞くことはできやなかったけどな」

 

と、ため息を吐く霞。

 

「詠たちにも言うたけど、今華雄や恋は賊討伐の遠征でいないしな。かく言ううちの部隊も西涼まで遠征したから、うちはともかく。部下は休ませなかあかんし」

 

「と、言うことは出撃できるのは俺たち警邏隊だけということですか・・・」

 

「ほんま。すまんな」

 

「いや。霞が謝ることじゃないよ。それより問題は会合場所だ」

 

そう言い、そして桜花は町の地図を広げる

 

「いま、大きな宿屋があるのは、四川屋と池田屋の二つだけです」

 

誠華の言うことに俺は目を見開いた。この時代に池田屋があったのだ。なぜ池田屋があるのか?まあ、単なる偶然だと思うけど・・・俺は深く考えるのをやめた。

 

「誠華。ここは隊を二つに分けよう。俺と桜花、雪風は池田屋を。誠華、蘭花は四川屋に行ってくれ。それと剣術に長けた隊士も至急集めてくれ。恐らく乱戦になる」

 

「分かりました」

 

「ほな。うちもいくで」

 

「霞・・・・いいのか?」

 

「あったり前や!都やこの天水の街を焼き打つなんて、うちは絶対に許さへんで!そんなやつらを成敗しなきゃ、うちの気が収まらへん!!」

 

どうやら止めても無駄なようだ。

 

「分かった。霞、頼む。霞は誠華の部隊を頼む」

 

「応、任せとき!」

 

こうして、再び。歴史は繰り返す・・・?

 

彼らは、日が沈んだ街を行く。

 

三国志の歴史のは残らないが天水の歴史に名を起こす事件が起ころうとしていた。

 

 

 

 

 

一方月たちは・・・

 

「まったく。やっとここも平和になったと思ったらまさか、そんな恐ろしいことを企んでいるなんてね」

 

本当はもっと援軍を出したいけど今は賊討伐の為できないのだ

 

「詠ちゃん・・・・吹雪さんたちだけで大丈夫かしら・・・」

 

「わからないわ・・・・でも霞も一緒にいるなら大丈夫と思うけど・・・・」

 

二人とも吹雪のことが心配なのだ。

 

(吹雪さん…どうかご無事で・・・・)

 

(もし、大怪我負ったら、許さないんだからね吹雪・・・)

 

そう心の中で吹雪の無事を祈る二人だった

 

 

 

 

 

 

 

夜、

ついに決行の時が来た。霞と誠華の隊は池田屋より数百メートル離れた四川屋に吹雪と桜花の隊は池田屋に向かった。

隊士たちは剣術に長けたものが集まったが風邪やら病気やらで行けたのは両部隊合わせて42名そのうち吹雪の部隊は15名。誠華の部隊が27名となっている

そして池田屋前。沖田、桜花の隊総勢15名が集まっていた

 

カタカタカタ・・・・・

 

吹雪の刀、虎徹はまるで鞘から抜け出しそうに震えていた

 

「(今宵の虎徹は血に飢えている・・・・てやつか・・・・よし!)」

 

吹雪は覚悟を決めると桜花にこう言った

 

「よし、桜花・・・・行くぞ!」

 

「はいっす!」

 

「いいか?極力一般人に被害を出すな。敵の特徴は覚えたな?対象のみ仕留めろ」

 

「敵の首領は捕縛。。他は各自の判断に任せる。アニ、チビ、デブ。あんた達はそれぞれ五人を率いて裏口とここ。入り口を封鎖。一人も逃がすなっすよ!!」

 

「「「応っ!」」」

 

吹雪の命令を桜花が引き継ぎ。隊士達が皆返事をしたのを見て。

 

「突入!!」

 

そのまま。宿屋のドアへと向かい。

 

ドカン!!

 

蹴飛ばす。

そして、店内全てに響く大声で

 

「御用改めである!!天水警邏隊だ!!!」

 

吹雪が叫びながら店の中へ。

因みにこのセリフは吹雪が一度だけ言ってみたかったセリフである

 

「ひっ!け、警邏隊!皆さん!逃げて!逃げてぇ!!」

 

なんとも。ノリの良い店員さんは、御用改めの意味も分からないだろうに、そのまま叫びながら店の奥へ。すると二階から物音がし

 

「桜花!上にいるぞ!!雪風は誠華の部隊に伝令!!残りは俺に続け!」」

 

「おう!!」

 

「御意!」

 

俺の言葉にまずは桜花が先陣を切り二階へ駆けあがる黒山衆の浪人が剣を取り現れ

 

「何者だ!!」

 

と、そう言った瞬間、そのまま、桜花は一瞬で階段を駆け上り、一閃。

男は、剣技を放つ間もなく、代わりに悲鳴をあげながら激しく階段を転がり落ちた。

 

「なんだ!?」

 

「明かりを消せ!!」

 

大広間で会合をしていた黒山衆たち60名は騒ぎを聞きろうそくの灯を消すと襖が開き、そこに吹雪と桜花と数名の隊士が剣を構える

 

「警邏隊だ!大人しくお縄につけ」

 

吹雪がそう言うと黒山衆の一人がろうそくを斬り部屋一面が暗くなる。浪人も警邏隊士も剣を抜き構える。そしてどこからか飛んできたのか蛍の光があたりを薄く照らしそして両者の剣の刃を妖しく光らせた。

 

「ええいっ!!!」

 

隊士たちが斬りかかった瞬間、敵も斬りかかり激しい乱闘となる。剣と剣がぶつかり合い火花が飛び散りるのだった。一人の黒山衆が窓から屋根へと逃げようとすると、吹雪が追いかける

 

「待て!逃がさないぞ!」

 

そう言いうと賊は

 

「だ、誰が逃げるか!」

 

そう言い斬りかかろうとするが吹雪の三段突きによって切り伏せられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、四川屋は

 

「くそっ!空振りや!」

 

「霞様落ち着いてください」

 

四川屋に着いた霞と誠華の隊50名は四川屋に着いたが、だれもいなく空振りに終わっていた。

 

「となると、池田屋やな!」

 

「すぐに行きましょ!!」

 

すると伝令に行っていた雪風が到着した。

 

「雪風か!?どうしたんや!やっぱり池田屋か!?」

 

「はい!やはり賊は池田屋に潜伏していました。いま隊長たちが突入したのですが相手の数は60人!人手が足りません!」

 

「分かった!すぐに行く!!よし!誠華いくで!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

一方池田屋では4人が負傷し戦線を離脱し極めて厳しい戦いになっていった。

 

「くっ!隊長大丈夫っすか!?」

 

「大丈夫だ!!・・・・!?桜花後ろ!!」

 

桜花が振り向くと賊が今にも斬りかかろうとしている。剣で応戦しようとするが、剣が戸に引っかかった。

 

「しまった!」

 

「死ねやっ!!」

 

賊は桜花に斬りかかろうとしたが

 

ダアァーン!!

 

側の剣は桜花に届かず頭に穴が開いて血を流し倒れた。桜花が音のする方に向くと、吹雪が14年式拳銃を構えていた。

 

「大丈夫か?桜花」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

「よし!背後をを頼む!!」

 

「了解っす!!」

 

吹雪は攻めた来た賊に弾丸を撃ち込み弾を撃ち尽くすと刀で対応した。

すると・・・・

 

「吹雪!待たせたなぁ!!」

 

「隊長!大丈夫ですか!?」

 

別動隊が到着し、結果60対40しかも霞の登場で一気に制圧され、テロ計画を企んでいた黒山衆は10人死亡。逮捕者48名を出した。

 

「おい張燕や牛角はいたか?」

 

「張燕はいませんでした。しかし牛角は奥の部屋で腹を切って自害していました」

 

「そうか・・・・・」

 

主犯の一人の牛角の死亡は確認したが、もう一人である張燕は見つからなかった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある宿舎では・・・

 

「張燕様・・・・」

 

「なによ。焼き討ちとかして、もうどうなっても知らないって、牛角には・・・・・」

 

宿の中、静かに本を読んでいた少女がやってきた男性に言う。彼女こそが張燕だ。彼女は牛角の焼き討ちには反対派であり、何度も牛角と口論していたがついにたもとを分かれてこの宿屋で不貞腐れていたのだ

 

「池田屋に天水の警邏隊が突入しました」

 

「何ですって、あの狼どもに・・・・だから言わんこっちゃないのよ。すぐに他の連中にこの町から離れるように言いなさい。今ここで乱闘するのは得策じゃないわ。来るべき往復戦に備えろと言いなさい。それと牛角に変わって私が黒山衆を指揮すると伝えて」

 

「分かりました」

 

と、そう言うと男は下がり少女張燕は

 

「やるじゃないか天の御使い」

 

とそう言いその宿から逃げ出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明朝、天水警邏隊は返り血まみれながらも疲れの色を見せずに凱旋!!

大通りを堂々と行進するのだった。

これで三国志の池田屋事件と呼ばれた事件は終わったのであり、そしてこの黒山衆による都放火を未遂で止めた吹雪たち天水警邏隊の名は全国に広がったのだった。



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新たな仲間

池田屋事件から数日後、警邏隊に新たな仲間が加わった。それは・・・・

 

「初めまして。私は馬鈞といいます。新参者ですが吹雪隊の人たちの足を引っ張らないように頑張りたいと思います♪」

 

そう、夕張が仲間に加わったのだ。あの騒動の後、武器屋のおやっさんが旅から帰って気て、夕張はさっそく「吹雪隊に入る」っとおやっさんに言った。おやっさんは「ここにいるより御使いの旦那といた方がいい修行になるな」っと快く許してくれた。

そして今、吹雪隊にはいったのだ。ちなもに彼女の部署は・・・・

 

「えー彼女は発明とかが得意なので技術開発部に入ることになった。」

 

技術開発部それはおれが警邏隊に入って作った部署の一つであり、主に民たちの暮らしを安定させる道具を作ったり、新しい鎧や兜、剣などを開発する部署だ。他の部署には工兵部、諜報観察部、衛生部などがある。

 

「よろしくね。馬鈞さん」

 

「よろしくっす!」

 

誠華や桜花が夕張を歓迎している。どうやら問題ないようだ。

その後俺たちは夕張の歓迎会をした。

 

「あ、そうそう。隊長。ついに決まったんすよ」

 

「ん?何が決まったんだ桜花?」

 

桜花の代わりに誠華が答えた。

 

「我が吹雪隊の旗です。桜花や雪風と話し合って決めたんです」

 

「そうか・・・・でどんな旗だ?」

 

「はい・・・・・隊長の持っていた朝日の旗にと決まりました。」

 

雪風が答えた。

つまり連隊旗もとい旭日旗が俺の部隊の隊旗になったらしい。

 

「あ、そうだ隊長!こんな本が出てきたんすけど」

 

「たぶんこの字は天の国の文字だと思いまして・・・・」

 

そう言い二人は、1冊の本を出す。そこには・・・・・

『大日本帝国陸軍小火器、砲火器兵器設計図』と書かれていた。

 

「‥‥これは・・・・誠華、桜花。これをどこで見つけたんだ?」

 

「はいっす。それは・・・・・」

 

桜花が言うには警邏隊の倉庫を掃除してた時のことだった。

 

回想

 

「どう?桜花そっちの方終わった?」

 

「駄目っす。全然すよ誠華。雪風そっちは?」

 

「一通り終わりましたが、まだやるところがたくさんあります・・・・・」

 

「倉庫の掃除も大変ね・・・・それに埃臭い・・・・」

 

「でも、ちゃんと掃除しないと、気分悪いいっす」

 

桜花が棚を整理してると

 

カサカサ・・・・・・

 

「ん?・・・・・・」

 

突然聞こえた、何やら小さい物が移動するような音に、桜花がゆっくりと、視線を音の主の方へと向けると…………非常に細い2本の触角をユラユラと揺らし、窓から射し込む光に照らされ、反射して一部が艶っぽく輝いている、平べったいモノが居た。

 

「っ!? で、でたあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ど、どうしたのよ!?桜花!!」

 

桜花の悲鳴を聞き雪風と誠華がやってきた

 

「あ、あああああ油虫だ!!」

 

「「っ!?」」

 

※油虫とはGの別名

 

すると黒きものは飛び立つ。だが、飛んでいった方向が悪く、二人の元へと飛んでいってしまったのだ。

当然、二人は悲鳴を上げながら逃げ回る。3人は逃げ回っていたが、桜花がとある棚へと激突してしまった。そして上から書物なんかが落ちてくる。

 

「いつつ・・・・・」

 

「桜花!大丈夫?」

 

「大丈夫っすよ誠華・・・・・・ん?なんだこの書物?」

 

「どうしたの?桜花」

 

「この書物に書かれてる字なんだけどさ。隊長が時たま書いていた天の国の字と似てねえか?」

 

「言われてみれば確かに似ているね・・・・」

 

「・・・・とにかくこれは隊長に見せましょう」

 

 

 

回想終了

 

「…‥と、言うわけっす。どうですか?やっぱり天の国のものっすか?」

 

俺はその設計図を読む。どうやらこの書を持っていた人は何十年か前にこの地に降り立った旧日本陸軍の軍人ものらしい。

設計図の横に書かれていた日記によると彼は中国大陸で戦った「関東軍」の兵士であり技術仕官で、ソ連が満州に進行してきた時、敵の砲火に巻き込まれて、気が付けは、この地にいたったということだった。

日付からしてもう80年以上前のことらしい。他に武器以外では、日本酒……清酒の作り方やアルコール。簡易的に作れる地雷なんかの製造方法が詳しく書かれていた。設計図も幕末に作られた四斤山砲や単発式ボルトアクション銃に駐退復座の大砲やリボルバー式拳銃の設計図が掛かれていた。

設計図が書かれた理由は日誌によれば上層部の命令で大戦末期となり資材が不足になった今で青銅やほかの物資で簡易的にできるもや弾薬がないかを研究するものだという。

確かに大戦末期の日本軍は物資不足になり、本土決戦となったときは日露日清の武器、または幕末の武器や火縄銃までも駆り出されたほどだ。

満州を支配していた関東軍が少ない物資で製造できる兵器の開発の設計図を書いても何ら不思議ではない

 

「隊長。どうっすか?」

 

「ああ・・・これは天の国の字でしかもこれは兵器の設計図だよ。」

 

俺がそう言うと・・・・・

 

「天の国の兵器の設計図!?吹雪。見せて!見せて!」

 

その言葉に反応したのは言うまでもなく夕張だった。そして夕張はその書物を見て・・・・

 

「すごいわ!!これ!私の知らない道具がこの書に・・・・ぐへへへ~」

 

「夕張!よだれ!よだれがこぼれてるっすよ!!」

 

「夕張。この書に書かれている物。作れそうか?」

 

「う~ん。少し難しいと思うけど。やれるだけやってみるわ!!よーし腕が鳴るわ!!」

 

そう言って夕張は書物をもって部屋を飛び出した。

あいつ…下手したら戦車とか飛行機とか作り始めそうだな・・・・渡したのは失敗だったかな・・・・・

俺は首をかしげながらそう思いつつも宴会を楽しむのであった。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

「あ~頭が痛い・・・・・」

 

「昨日は飲みすぎたからな桜花。酒瓶三つは飲んでいたわよ」

 

「それを言ったら誠華だって蟒蛇のように飲んでたじゃないかよ~」

 

「私は酒に強い方なのよ。雪風を見なさい平気な顔で仕事しているわよ」

 

「私は下戸です」

 

「ああ。そうだったわね。そう言えば雪風。蘭花どうしたのかしら?」

 

「あの子なら報告書をまとめるように言っておいたわ。私たちだけじゃ手が足りないから」

 

と、誠華、桜花、雪風は書類作業に追われていた。町を見て回るのが警邏隊の仕事だけじゃない。報告書の書類整理も幹部の仕事なのだ。

すると、蘭花が慌てて入ってきて

 

「緊急殺人事件発生!」

 

「「「っ!?」」」」

 

「現場は東町の広間!犯人は二人!!ただいま東門に向かって逃走中!!全警邏隊員は全員出動!!」

 

蘭花の言葉に皆は殺人現場と逃げた犯人を追うため出動しようと部屋を出ようとした瞬間

 

「‥‥‥‥と、これが三日前解決した事件の日誌内容・・・・っと」

 

「「「どわっ!?」」」

 

ただの日誌の内容だったため三人は思わず、ずっこける

 

「コラァl!紛らわしいのよあんたは!!」

 

「本当だ!声がでかすぎるんすよっ!!」

 

「こういうのは静かに報告書を書きなさい!!」

 

三人に叱られる姜維こと蘭花は慌てて頭を下げる

 

「す・・・すみません・・・あ、樊稠班長。追加の書簡です」

 

「はぁ~・・・・・分かったわ。そこにおいて・・・・それよりも蘭花。隊長を見なかった?」

 

「沖田隊長なら先ほど、詠様に呼ばれましたけど?」

 

「詠に?何かしら?」

 

と、皆は書類仕事をしながら首をかしげるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、吹雪は

 

「単刀直入に言うわ吹雪。あなたに一個師団を任せたいの」

 

「・・・・・え?」

 

詠の言葉に吹雪は思わず固まってしまうのだった



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董卓軍独立部隊「新選組」

「・・・・ごめん。詠もう一度言ってくれる?」

 

「だから、あなたに一個師団を任せようと思っているのよ」

 

詠の言葉に俺は驚いてしまい言葉を失う。いやそれはそうだろう数か月前までただの学生でそして今は警察組織のトップ。

そして今、一個師団の師団長。つまり約一万から二万の軍隊の責任者。軍の将官になろうとしている

だが、なぜ急に詠がこんな話を切り出したのかが分からなかった。俺は彼女に訊いてみることにした

 

「詠。今の俺は警邏の隊長だぞ?なんでまた急に軍隊を着けようと?」

 

そう言うと詠は

 

「あんたのその来ている服・・・・聞けば天の国の軍。しかも将軍が着ている服なのよね恋から聞いたわ」

 

と、俺の着ている九八式軍衣を指してそう言う。確かに俺の着ている服は昔、祖父ちゃんが旧日本軍時代に来ていた服で階級も陸軍中将の奴だ。だから将軍が着ていたというのもあながち間違いはない

 

「まあ、80年以上昔の軍服だけどね?それがどうかしたの?・・・・」

 

「仮にも天の御使いであり、そして将軍服着ている人物が警邏隊の隊長どまりじゃ示しがつかないというか格好がつかないのよ」

 

「なるほど・・・・・で、正直に言うと?」

 

俺が少し笑って言うと詠は少し気まずそうに

 

「実はあんたが渡した案を実施することに決めたのよ。でも警邏隊はあくまで町の治安維持を目的した組織だし・・・・・それに最近あんたのところに入隊してきた馬鈞て子。聞けば銃を生産できるみたいじゃない。だから・・・」

 

「なるほど、銃なんかの近代兵器を所持する実験部隊として一個師団を俺に任せたい・・・と?」

 

「ええ。あなた前に言っていたじゃない。『銃を所持するのなら俺の部隊で』て」

 

「確かに言ったな・・・・それで一個師団と言っても何人だ?」

 

「引き受けてくれるの?」

 

「案を出したのは俺だ断る理由はない。むろん誠華たちにも相談する。だが実験部隊なら師団じゃなくて一個大隊の方がちょうどいいと思う。兵站への負荷も少なくかつ戦力の最低限の単位だ。実験部隊から始めるにはちょうどいい数だと思うよ。それで詠。実験部隊の運営はあえて言うなら平時は警邏隊、戦の時は軍隊という認識で構わないか?」

 

「ええ。簡潔に言えばそうよ。じゃあ実験部隊の件お願いできる?」

 

「ああ。何とかやってみせるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警邏隊室

 

「一個大隊の責任者ですか・・・・・・」

 

「ああ、急な話で済まない誠華。警邏の件でも忙しいのにな」

 

俺は警邏室に戻った後、誠華たちに詠に一個大隊の指揮官を任せられること、そして実験部隊としての運用を任せられることを彼女たちに話すと

 

「いえ、私たちも警邏隊士が増えるのはいいことですし、何より隊長が着任される前の警邏隊も族とかの討伐のため戦地に行くことが多かったので大して問題はありません。むしろ喜ばしいほどです」

 

「そうっすよ。それ以前に隊長がせっかく将軍になれる機会を何で大隊規模の隊長にしたんすか~もったいないっすよ~」

 

「不満なところそれか桜花?まあ一個師団は多すぎるうえ、今の幹部の人数では運用も大変だ。まずは大隊規模なら何とかなると思ったんだが?」

 

現在吹雪隊の幹部は俺以下、誠華、桜花、雪風、蘭花(雪風の部下から幹部に昇格した)夕張だけだ。本当なら中隊規模にしたいところだが・・・・大隊でいいと言ったのは俺だし今更引き下げられない

 

「ぶ~ぶ~言うんじゃない桜花」

 

「けどよ誠華~」

 

ぶー垂れる桜花に誠華があきれ顔でそう話していると

 

「それで隊長。募集の件ですが、[天の御使い]の元で兵として働きたいものは集まれという広告でよろしいですか?」

 

姜維こと蘭花がそう訊く

 

「ああ。天の御使いというと胡散臭くなるそうだけどな」

 

「実際隊長は天の御使いじゃないっすか?」

 

「まあ・・・・そうなんだけどな?自覚はないけど。後、こう書き加えてくれ『出仕、身分問わず、あるのは実力と志だけ』と」

 

「分かりました」

 

「それで、夕張。銃の生産の方は?」

 

「まだよ。一応吹雪に借りた銃を参考にして私なりに作ってはいるけど、剣とか鎧とか勝手が違うから、もう少し研究させて。その代りつなぎの武器を作っているわ」

 

「そうか…まあそうだよな」

 

どっかのドワーフみたいに一日一丁作れるわけないもんな。うん。当たり前のことだけど

 

「ええ。できたとしても日に10丁が限界だから。だからごめんね」

 

「・・・・・できるんかい」

 

前言撤回、やっぱこの人ドリフターズのドワーフ並みにすごい

 

「それで隊長。部隊名はどうするんすか?」

 

「部隊名?」

 

「はい!沖田隊もいいかもしれませんがなんかこう・・・・もっとかっこいい名前とかがいいすよ」

 

「確かに桜花の言う通りね。噂では陳留の曹操には「虎豹騎」という精鋭部隊があります。我々も天の御使いの部隊ですので何か名前を付けた方がいいのでは」

 

「そうか・・・・そうだな」

 

俺は少し考え

 

「『新選組』・・・・・新選組っていうのはどうだ?」

 

「「「「新選組?」」」」

 

「隊長。何ですか新選組って?」

 

俺の言葉に皆は首を傾げ、雪風が訊くと

 

「幕末・・・・俺がいた国の約150年前に存在した最強の剣客集団の名前だよ」

 

「へ~天の国最強か・・・・・いいすねそれ!なんかかっこいいっす!」

 

「新選組・・・・・いいかもしれません」

 

まあ、そんなこんなで俺たちは実験部隊の隊士を募集することになった。

 

『出仕身分問わず、戦争では死と隣り合わせの危険な戦場で戦う兵士、平時は治安と平和を守る警邏隊士に!![天の御使い]の元で兵として働きたいものは集まれ!!いるのは志と実力のみ!来たれ新選組に!』

 

と、半ばプロパガンダ的な内容のポスターが張り巡らされ、そしてその噂は天水のみならず他のところにも出回り志願兵が次々に現れたのだが・・・・

 

「おい・・・これは予想外だぞ?募集をしてからまだ三日目だぞ?」

 

はじめは誰しも戦争なんかに進んで参加したくないだろうから集まっても数百人いけばいい所だろう、思ってしまったのが運の尽き

現実はこうはならなかった。

沖田吹雪の部隊、それは天の御使いの部隊、すなわち天軍である。天に仕えれば吉兆がある。しかも沖田率いる天水警邏隊は池田屋事件の件で有名になり猶更吉兆があるという噂話が広がり、ここら近辺の邑から総勢2千人以上が集まった

その志願書の書類の山のような多さを見て沖田は驚き、斗志らは選考資料に追われた

 

「大隊どころか1個連隊規模だ。ちょっと集まりすぎだな。月や詠も驚いていたしね」

 

「そうですね。しかも面接での志願理由も権力や名声とか目当てで来ているところもありますね・・・・・」

 

「こりゃ、少しふるい落とした方がいいっすよ。半端な実力や名声だけこだわって入ったら、無駄に命落とすだけっすよ」

 

書類を見て誠華と桜花がそう言う

 

「そうだな・・・・ここは試験をさせてみる必要があるな・・・・・」

 

俺はため息をつきながらも選考試験を始めた。確かに桜花の言う通り、名声や権力だけにつられただけの腕だったら今後生き抜くのは難しい。

よって面接から始めたのだが・・・・

志願した人たちの大半はやはり桜花たちの言う通り

 

「有名になりたい」

 

「権力を持つようになりたい」

 

とかの子が多く、中には家族を守るため、平和な時代を作りたいとかいう人はごく少数だった。中には親が権力者だの貴族だのでここに志願して幹部になるのが当然という奴までいた。

 

「(これは…最初の試験で結構落ちるやつ出るかもしれないな・・・・・)」

 

俺はそう思っていると

 

「隊長。訓示をお願いします」

 

「分かった・・・・・」

 

誠華の言葉に俺は席を立ち練兵場に行くと志願した二千人の人たちがいた

流石に2000人にもなるとそれだけでかなりの圧迫感だ。

周りの視線が俺と誠華に集中して、次第に辺りが静かになっていく。ある程度静かになったところ、俺が口を開いた

 

「諸君は新選組に志願した隊士希望の者である!今回君たちはまだ正式に隊士になっていない!いわば仮入隊である。正式に新選組に入隊するためには、13週間の入隊訓練を受けて貰う!この訓練を耐えきった方のみ、入隊が許可され新撰組隊士となる!訓練内容の詳細を明かすことは出来ないが極めて厳しいことだけ伝えておく」

 

俺の言葉を志願者たちは緊張し黙って見る

 

「それと俺から大事なことを伝えておく。この部隊では男女差別及び民族差別は一切厳禁とする!もし誰かの尊厳を尊重し敬意に接することができないのなら出ていくように。たとえどんな形であっても人を侮辱するような者は出ていけ。そんな人は部隊には必要ない!」

 

その言葉に皆の緊張はさらに高まり

 

「それでは君たちの教官を教える!」

 

「新撰組副長!李傕だ!君たちが無事に隊士に合格し、さらに新兵を卒業できるまで鍛える覚悟しておくように!!!!」

 

「郭汜だ!おめえらを一人前な隊士になるまでの間、共に地獄で鍛えるっすからよろしくっすよ!」

 

「「「「「「「応!!!」」」」」」

 

こうして新撰組隊士の選定試験が始まるのであった

 

 

 



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新選組選定訓練開始

説明会から翌日、志願者たちは新選組及び警邏隊が泊る隊舎へと集まる。

人数はちょうど2500人。

まず最初に名簿で名前を確認し、本人かどうか確かめる。あり得ない話だが関係ない他者がいるかもしれない。あくまで念の為だ。

名簿を確認すると、書類にサインをさせた大部屋に移す

俺は彼女達の前に立ち、指示を出す

 

「名前を呼ぶので、呼ばれた方は前に来て軍服と靴を受け取ってください」

 

そして名簿順書かれている隊士希望の人たちに漆黒の軍服。新選組の軍服を渡す

通り配り終えると、その場で着替えて貰う。無論希望者には女性も多数いたため男子とは別室で着替えてもらった。というより天水警邏隊の件と言い新撰組志願者と言い、なぜか志願者は女性が多い。今回の志願者2500人中、約半数が女性。しかも10~20代の若者ばかりだ。

この世界に来てから現代との違いさに驚かされるばかりだ。まあ華雄や霞たちのことも考えると女性軍人はこの世界が男性よりも多くそして当たり前のようだな

まあ、それでもやることは変わらない。俺は男女差別はしないし、訓練をするに至っても男女平等だ

そして私服を脱ぎ隊服を着た希望者の感想は・・・

 

「なんかこれ、ぴっちりしているな?」

 

「首元が閉まってちょっと息苦しい・・・」

 

「でも動きやすいね?」

 

と、様々な感想があった。まあ初めて洋服を着た人たちからすればそんなもんだろう。そして脱いだ私服は、こちらで一時保管。

名前タグを付け、別室にしっかりと保管される手筈になっている。

返却は今回の入隊訓練が終了、又は本人が訓練に脱落し途中で辞退した場合返却する予定だ。

そして隊士希望者たち外の広間に集まった。

だが皆はそれぞれおしゃべりをし周りはざわつくすかさず俺は

 

「誰が喋っていいと言った!!」

 

俺のの怒声にざわつきはぴたりと止む。

 

「ここはお遊びの場じゃない!ここは訓練所だ!今までの生活を捨て、命を懸けて戦う兵士を育成する場!この訓練を終えたとき、各人は優秀な兵器となる。私たちが愛する平和を踏みにじる奴らを死へと叩き込む死神へとなる!わかったか!」

 

「は・・・はっ!」

 

「声が小さいぞ!!もっと腹の底から声を出せ!!」

 

「「「はっ!!!」」」

 

俺の怒声に、すかさず希望者たちは兵舎一杯に響く声を上げる。

 

「それではこれより訓練を開始する! 足腰立たなくなるまできつくいくから覚悟しろ!!」

 

「「「「はっ!!!」」」」

 

俺の言葉に彼らは返事をする

 

「桜花」

 

「はっ!お任せを」

 

そう言い桜花は俺に敬礼すると、一歩前に出て

 

「それではさっそく訓練を開始する。始めは軽く走り込みをするっすよ?」

 

「「「?」」」」

 

桜花の言葉にみんなきょとんとした顔をするてっきり拷問に近い厳しい訓練でも始めるかと思っていたからだ

 

「どこの部隊でも同じ、走り込みは一番必要っす。警邏で泥棒を追いかけるにも、戦場で走り敵陣へ素早く動くにも体力と持久力が必要不可欠。なのでまずはこの天水の街を覆う城壁を取りあえず走り込みながら一周をするっすよ~」

 

飄々な態度で言う桜花に希望者たちは

 

「何だ走り込みか~」

 

「もっと厳しいかと思ったら楽勝じゃない」

 

「そうね、私たちいつも野原を走り回ってたしね~」

 

「まったくだ。これなら俺たちすぐに合格できるな」

 

「ああ、もしかしたら幹部にも慣れるかもしれないな」

 

と、完全になめた表情で言うが、彼らはまだ知らない。

 

「そうっすか~それならさっそっく・・・・・・・」

 

これが最初の試練だということに、そしてこれが地獄の門の入り口だということに

 

「・・・・始めるっすよ」(凶悪な笑み)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

楽だと思っていた。簡単に合格できると思っていた数分までは彼らはそう思っていた。だが今は地獄のような苦しさが襲っていた

 

イッー()!!イッー()!!イッー(1、2)!そぉーれ!!」

 

「「「イッー()!!イッー()!!イッー(1、2)!そぉーれ!!」」」

 

「声がちいせっ!もっと声上げろ!!イッー()!!イッー()!!イッー(1、2)!そぉーれ!!」

 

「「「イッー()!!イッー()!!イッー(1、2)!そぉーれ!!」」」」

 

大声を出しながらの走り込み最初は楽だと思ったが半分も行かないうちに息が上がり足がまるで鉛のように重くなる。まるで重い鎖を引きずっているみたいだ。だが、隣にいる訓練教官の郭汜が鬼の形相で怒鳴り、そして入隊志望者たちは彼女の歌を復唱しながら真夏の暑い道を走る

 

「我らは精鋭新撰隊!『我らは精鋭新撰隊!!』目指すは平和な街づくり!!『目指すは平和な街づくり!!』朝日の『朝日の!!』旗を『旗を!!』掲げて!!『掲げて!!』敵陣!!『敵陣!!』突き進む!!『突き進む!!』」

 

と、喉が枯れるまで歌いながら走る。まるでフルメタルジャケットのようだ

 

「俺たちゃ、無敵の新選隊!!『俺たちゃ、無敵の新選隊!!』恐れるものなど何もない『恐れるものなど何もない!』俺たち無敵の新選隊!『俺たち無敵の新選隊!!』敵軍、賊軍ぶっ倒す!!『敵軍、賊軍ぶっ倒す!!』」

 

大声で走りながらランニングを続ける。すると女性隊士と若い男性隊士が倒れ吐いてしまう。そしてそれを見た数名も動きを止めてしまう

 

「コラッー!何寝ているんだっ!さっさと立てっー!!」

 

桜花の怒声に、希望者たちは

 

「も・・・もう走れません・・・・」

 

「もう限界・・・少し休ませて・・・・・」

 

「俺も一歩も歩けないぜ」

 

と、そう言うと、彼女たちに刀を向けるものがいた。副長の誠華だ

 

「立て・・・・そして走れ。走らなければ士道不覚後として私が斬るわよ」

 

「「「ひっ!!!??」」」

 

「入隊希望書に著名し、そしてこの軍服を着た以上。入隊訓練期間は入隊訓示の最中教えた新撰組隊規以外法律は全く通用しない。今のあなたたちにある選択肢は2つ。今すぐ走るか、ここで士道不覚後として私に斬られて死ぬか‥‥…どっちか選べっ!!!!」

 

「「「は、走りまーす!!!」」」

 

誠華の威圧に動きを止めていた訓練者たちは涙目で走り始めた

 

「やれやれ…文句が言えるということはまだまだ元気がある証拠だな・・・・・」

 

「でもさすがに斬るのは可哀そうじゃないっすか?」

 

「あんぐらいでもしないと、ああいうのは動かない者よ」

 

「確かに・・・・・じゃあ、誠華。私は戻るっすから」

 

そう言い桜花は訓練兵たちの元に戻る。そして先ほどの広場につく

 

「はぁ・・・はぁ・・・・やっと一周終わった・・・・」

 

「ただの走り込みだけなのに疲れた・・・・・」

 

と、みんな息を切らして座り込むと、到着した桜花は

 

「おや、おや?お前らまだまだ余裕そうっすね?まあこれで体も温まってきたことだし、そろそろ本番いくっすか」

 

「「「は?」」」」

 

「それじゃあ、今さっきのを5回続けて見るっすよ~!!」

 

「「「「っ!?」」」」

 

桜花の笑顔に皆は絶望した表情をする。さっきのが準備体操だとは思わなかったからだ。そしてその後、桜花の地獄のランニングが再び始まり、時は過ぎ、空は茜色に染まっていた

 

「よぉーし!今日の訓練はここまで!!」

 

ランニングが終わり桜花は訓練終了の号令をかけるが希望者たちみんなは地べたに倒れ白目をむいていた

 

「それじゃあ、明日もこんな調子で頑張ってみるっすよ~えいえいおっー!!」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

と声をかけるのだが誰一人返事できるものはいなかった・・・・・この3人だけは

 

「「「は・・・はい・・・が、がんばります」」」

 

ふらふらながら膝をつきそう返事をする訓練者に桜花は

 

「おっ!元気な子たちっすね?名前はなんていうんすか?」

 

と聞くと3人の少女はは筋肉痛ながらも腕を上げ敬礼すると

 

「は…はい私は鄧艾と言います・・・・」

 

「自分は杜預です」

 

「わ、わたしは羊祜・・・です」

 

と、そう答えたのだった。

 



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不寝番と未来の三勇士

新選組選定訓練試験から一週間。半数以上が脱落し去っていった。理由は訓練の厳しさに耐えられなかったこと、不正行為をしたもの、そして意志が足らず、やはり名声だけのうわべだけの者がこの地を去っていった

そしていまだに残ったのは激しい鍛錬が続くのだった

その練度の厳しさはまさに旧海軍の『月月火水木金金』並であった

 

明朝、起床ラッパが鳴り響き、若き訓練兵たちは飛び起きる。もしくは教官らに怒鳴られ起床し広場に集合する

そして整列したのちに朝の準備体操が始まり、それが終わるとランニング。それが終わると障害物訓練。壁を飛び越え、縄をかいくぐるそれほど派手ではない訓練。

そして最後は そしてひたすら行進させる。

何回も、何回もだ。むしろこの行進の方の訓練時間が長い 運動会の行進のようにただひたすら何回も繰り返す

隊士希望者はだんだんと疑問を抱えてくる

 

(どうして私達はこんなことをやらされているの?)

 

(こんなに行進をして何の意味があるんだよ)

 

(もういや、もういや、辞めてしまいたい……ッ)

 

彼らの間に不信感が募る。

1日経つたび、空から降る雪のようにそれは高く積もっていく。

 

 

 

 

 

その夜、訓練が終わり、訓練教官を務めた桜花と誠華はお茶を飲み隊長である吹雪と話していた

 

「どうだった桜花?」

 

「正直言って、みんな根性がまだまだ足りないっすよ。こっちは完全にぶっ倒れないように手加減することの方が大変っす」

 

「確かに・・・・走り込み以外の障害物を突破する訓練も8以上が進めませんでした。あと剣術も槍、弓術、馬術もそこそこと言ったところでしょう。正直言って先が思いやられます・・・・」

 

「まあ、初めはそんなものだよ。しかも彼らは訓練を開始したばかりだ。人を教育する者は短気を起こしちゃいけないよ。人の育成は時間が掛かるものだ」

 

「確かにそうですが・・・・・」

 

「まあまあ、誠華。隊長がこういうんだ」

 

「はぁ・・・・わかりました。それより隊長は何をしていたんですか?」

 

「ああ、これを書いていた」

 

そう言い吹雪は二人に書簡を見せる。それは軍の教練についてだ。内容は―気を付け、休め、敬礼の基本動作。そして董卓軍や漢王朝の歴史。そして警邏隊についての目的などだ

 

「体力も大事だが、座学も学ばなくてはいけない。兵一人一人が兵法を学ぶのは大切なことだ。戦の際作戦が一番下の兵にも理解させないといけないからな。そのための物だ」

 

「なるほど・・・」

 

「ふ~ん…そういう物っすか?」

 

「そう言う物だよ桜花・・・・そう言えば桜花。なんか訓練候補生になんか気になったやつがいるって言っていたな?」

 

「はい。鄧艾、杜預、羊祜の三名っすよ」

 

「っ!?」

 

桜花の言葉に吹雪は驚いた。その三名は後三国志時代後期に活躍する志士たちだからだ

 

「ああ、その三人なら私も知っている。だが杜預は運動神経は悪いですね。障害物は乗り越えれない。武術もそこそこ、走り込みも鄧艾、羊祜、用に支えられながらも走っていました」

 

「だが、自身はやめようとしなかったんだろ?見ていたよ俺も」

 

そう、走り込みの鍛錬は吹雪も見ていた。確かに杜預は史実でも運動音痴であり、この世界でも同じみたいだが、どうやら支え合える仲間がいるみたいだな

 

「はい。なんでもあの三人。旅の仲間でありここに来るまでは一緒に旅をしていたそうです」

 

「そうか・・・・まあ、大丈夫だろう・・・・さてと」

 

吹雪は立ち上がり軍帽をかぶる

 

「隊長。どこに行くんですか?」

 

「今夜の不寝番の当番は俺だ」

 

「ですが隊長。朝から晩まで警邏や選定試験の仕事で休んでいないじゃないですか。今日は私が変わります」

 

「いいや。誠華と桜花も教官職で疲れてるだろ?明日も鍛錬の指導だ。今のうちに休んどけよ」

 

「それは隊長も同じでは?」

 

「大丈夫だよ。見回りが終わったら、すぐに休むから」

 

と、そう言い吹雪は部屋を出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、兵舎で啜り泣く声が響く。

掛け布団を頭からすっぽり被り枕で抑えているが、鄧艾や羊祜や杜預には聞こえてしまう。そして三人は消灯時間を過ぎているのにかかわらず、ベッドを抜け出し、外に出て夜空を見上げる。三人は幼いころからの仲良しであり、そして村を離れずっとともに旅をして来た仲だった

 

「今日もきつかったからね・・・・」

 

「うん・・・・・澪はどうなの?」

 

「私は正直二人の足を引っ張って・・・正直辛い気持ちでいっぱいです・・・・」

 

「何を言っているのよ!助け合うのは当たり前でしょ)」

 

「そうだよ。一蓮托生。それに教官たちは確かに厳しいけど、それでも以前いた袁紹のところに比べれば手が出ない分まだましよ」

 

「確かに。あそこは身分差別激しかったからね」

 

「そ、そうだね・・・・・・・」

 

とそう話し合い、夜空を見上げる三人。すると・・・・

 

「そこの三人。何をしている?」

 

「「「っ!?」」」

 

急に声をかけられ振り向くと、そこには灯籠を手に持った人物がいた。不寝番に来ていた人間だとわかった三人。しかもその不寝番の人はただの隊士ではない。新選組の黒服とは違う枯草の色の軍服。それを着ているのはただ一人だけ

 

「「「お、沖田隊長!!??」」」

 

そう、不寝番の当番をしていた吹雪だった。それを見た三人は慌てて敬礼をすると

 

「今は就寝時間だから敬礼はしなくていい。後声が大きい他の連中が起きるぞ」

 

「す、すみません」

 

「それで。もう消灯時間は過ぎているぞ?こんな時間に何をしていたんだ?」

 

吹雪が軽く首をかしげて訊くと杜預が慌てて

 

「あ、あの決して脱走とかそう言うわけではなく、ただ夜空の星を見ようと思いまして」

 

「星を?」

 

「はい。辛いときはいつも星を見ていたので、星を見ると勇気が出るんです」

 

「そ、そのとおりであります。杜預の言う通り私も同じです」

 

「私もです!」

 

杜預に続き、羊祜、鄧艾もそう言うと吹雪は

 

「別にそんな脱走とか風には思っていないよ。そうか星か・・・・確かに星を眺めるにはいい夜空だな」

 

そう言い吹雪は空を見上げそう言う

 

「いつの時代も星が奇麗なのは一緒か・・・」

 

「え?」

 

「いや。なんでもない。それじゃあ君たちは・・・・」

 

「は、はい!新選組訓練候補生の鄧艾です」

 

「同じく杜預です」

 

「羊祜です」

 

「そうか…君たちがあの三人組か。誠華・・・・李傕教官と郭汜教官から聞いているぞ。他の訓練生同様、かなり頑張っているみたいだな。特に杜預さんは」

 

「い、いいえ・・・私は運動がダメで、いつもみんなに迷惑ばかりかけてしまっています・・・・」

 

「そんなに気に病む必要はないよ」

 

「え?」

 

「人間、向き不向きはあるものだ。なら不向きなところをどう直せばいいか?簡単だ仲間と助け合えばいいだけの話だ。人一人にできることなんて限られている。軍隊も組織も・・・そして人というのは互いに助け合わなければ生きてはいけない生き物なんだよ。仲間同士協力して与えられた困難な試練を乗り越えていくこれが一番大切なんだよ。それを三人はしている。いいことじゃないか」

 

吹雪は三人にそう言う。そう人も組織も一人では何もできない互いに助け合うことで大きなことを成しえる。それは吹雪が幼いころ祖父と父に教わったことだ

 

「大丈夫。君たちなら…いや、この場にいるみんなならきっと乗り越えられる皆で一緒に頑張れば13週間なんてあっというまだよ。だからがんばれ」

 

「隊長・・・・はい。頑張ります」

 

と、杜預は力強く頷く

 

「うん。その意気だ。じゃあ、三人はそろそろ寝室に戻れ。明日も厳しいぞ」

 

「分かりました」

 

そう言い、羊祜と杜預は戻るが

 

「沖田隊長」

 

「ん?どうしたんだ杜預さん?」

 

「最後に質問。いいですか?」

 

「うん。いいよ?」

 

「この前、隊長と李傕教官が「士道と武士道」について話していましたが、武士道と士道とは何が違うんですか?」

 

と、そう訊く彼女。その彼女の問いに吹雪はこう答えた

 

「武士道とは見返りを求めず死ぬ覚悟。士道とは死ぬ覚悟を内に秘め、恥じないように生きる覚悟のことだ」

 

「・・・死ぬ覚悟と生きる覚悟・・・・そう捕らえてもいいんですね?」

 

「ああ」

 

彼女の問いに吹雪は頷く。すると杜預は少し満足げに頷き

 

「分かりました・・・・ありがとうございます」

 

そう言い彼女は敬礼すると寝室へと戻っていくのであった

そして吹雪は少し微笑むと

 

「さて・・・・もう少し見回るか」

 

とそう言いその場を後にするのだった。

そして隊舎に戻った三人はまるで不安がなくなったかのように安らかに眠っているのであった



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新選組選定試験 卒業

その日も俺たちは少女達に意味もなく行進をさせる。

そして罵声を飛ばし、不信感を募らせた。

しかし彼ら達は決して不平や不満を告げず、訓練に食らいつく。

ランニングでペースが落ちた仲間を励まし合い、声をかけ指定された時間内に完走しようとする。

その様子を見た俺たちは少女達に気付かれないよう満足げに頷いた。

なぜ彼女達の『不信感』をわざと煽るようなマネをしたのか?

それにはちゃんとした理由がある。

『これには何の意味があるのか?』――この理不尽への不信感こそが、彼ら達、新兵に『皆と協力しないと目標を達成できない』、つまり『チームワーク』の大切さを理解させる。つまり、わざと辛い状況へと追い込み、『仲間と助け合わなければ』と強く思う環境を作り出しているのだ。

軍隊の訓練で新兵が追い詰められて取る行動は大きく分けて2つしかない。

1つは訓練を去る、という行動。

そしてもう一つは、『1人ではこの過酷な訓練を乗り越えることは不可能』と気付き、周りと助け合い、訓練を乗り越えるという行動だ。

前者を選ぶ者は少なく、大抵は後者を選択する

すなわち「新選組を支えるのは自分1人だけではない』と理解するのである。

『1人は部隊のために、部隊は1人のために』だ。こうして少女達は『チームワーク』の大切さを学び、仲間同士協力して与えられた困難な試練を乗り越えていく。

その後も訓練は続く、剣術、格闘術、馬術、槍術、そして弓矢による射撃。この時、渡された弓は正確には弩だが、ただの弩ではない。

 

それは夕張がつく言ったレバーアクション式の弩。すなわちクロスボウだ。しかも弓の上には弾倉・・いや矢倉が付けられ見た目は艦これの大鳳が持っている奴をレバーアクションにした感じだ。

命中率もよく、また弦も通常の弦より強めで矢も鉄製のため威力も倍。以前米俵を標的に50メートルぐらいの距離で撃ったら貫通。後ろにある壁に突き刺さった。はっきり言って威力は戦国時代の火縄銃にも引けを取らないだろう

この連発弩(夕張命名)は夕張が製造する小銃の繋ぎとして弩を改造したものだ。

そして射撃の他に障害物を乗り越え、地形、地物を利用した射撃のやり方。タコツボの堀りかたなども教え込む。

他にも様々なこの時代にはなかった戦術技能を指導していく。

彼らはは一人前の兵士として成長していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

13週目最終日、晴天。

 

「全員!気を着けっ!!!」

 

誠華の声とともに、約1500名の訓練候補生たちは新選組軍服姿で整列していた。

彼ら達の前に立つオレ達も、きっちりとした軍服姿で並ぶ。

俺の目の前に並ぶ彼らは13週前、普通の一般市民だったが、そんな面影はどこにもない。

地獄のような13週間の訓練をくぐり抜けた一人前の兵士達しかいない。

そして俺は彼らを見渡し

 

「本日をもって君たちは訓練生を卒業する!すなわち!今日から貴様等は誇りある・・・・恐れ多くも!」

 

「気を付け!!」

 

俺が恐れ多くもと言った瞬間、誠華の声に皆は不動の姿勢をする

 

「董卓様直下の部隊であり街の平和を守る警邏組織「新選組」の隊士たちである!戦友の絆に結ばる君たちが戦死するその日まで我々は共に戦う同志であり、戦友であり!兄弟である!これから君たちは『新選組』の隊士としてある時は戦い、傷つき、最悪の場合は命を落とすだろう。だが、心に刻んでおけ! 貴様等は何時か確実に死ぬ!だが!簡単に命は捨てるな!生きる意志は何よりも強い!たとえ敗北主義の犬畜生と罵られようともその命尽きるまで生きて戦おうとする意志を決して忘れるな!」

 

「「「はっ!!」」」

 

かれらの聞き慣れた返事が、グラウンドの端々まで響き渡る

そしてその後、卒業した隊士に記章を渡す。

卒業生の中には「鄧艾」、「杜預」、「羊祜」の三名もいた。この13週間で彼女もすっかり立派になっていた

渡された隊士は最後の音楽とともに行進をする

流れた曲は日本の分列行進曲「抜刀隊」だ。警察や自衛隊でも使われている名曲だ。そもそもこの分列行進曲「抜刀隊」の元は西南戦争で戦った警視庁の特別部隊抜刀隊を歌った歌「抜刀隊」から来ている

警察組織になっている天水警邏隊もとい『新選組』が使用しても何ら問題ない。むしろあの時代より前の時代に使用しているためパクリ?にはならない・・・・はず?

 

「それでは本日を持って君たちを新撰組隊士とする!! 一同解散!」

 

行進が終わり、整列した彼らに俺がそう言い終わるのと同時に叫び声をあげ、指示したわけでもなく一斉に皆が帽子を手に取り空へと思いっきり投げ上げる。

帽子はまるで羽が生えているかのように、雲1つない青空へ舞い上がった。

彼らはは晴れやかな表情で涙を浮かべ、抱き合い喜ぶ。そんな彼らをオレ達も晴れやかな気持ちで見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・」

 

訓練が終了し俺は自室で休む。誠華たちも今は自分の部屋で休んでいる。

そう言えばこうしてゆっくりするのはいつぐらいだろうか?

俺がそう思っていると、誰かがドアをノックする。誰かな?斗志か?

 

「・・・・吹雪いる?」

 

その声には聞き覚えがあった。これは・・・・

 

「母さん?うん。いるよ。」

 

そう、母さんの声だった。俺はドアを開けるとやっぱり母さんだった。

 

「母さん。なんか用?」

 

「中に入ってもいい?」

 

「え?うん。いいけど?」

 

そして今俺と母さんはベットの上に座っている。

 

「・・・・・・吹雪。ここにはもう慣れた?」

 

「うん…いろいろ大変だったけど。今はもう平気だよ。仲間もいるしね」

 

「そう・・・・・」

 

そう言って母さんは俺の頭を撫でた。なんか少し恥ずかしい・・・・

 

「ごめん…‥嫌だった?」

 

「ううん。少し恥ずかしいけど嫌じゃないよ」

 

「そう・・・・よかった。」

 

母さんは微笑んだ。そして母さんは

 

「吹雪・・・・新兵の訓練お疲れ様・・・・」

 

「うん。でも誠華やみんなのおかげで何とか終えたよ」

 

「そう・・・・私も霞も見た・・・・・あれ向こうの時代のやり方でしょ?」

 

「やっぱり母さん知っていたんだ・・・・」

 

「総司の仕事は自衛官・・・・・だから知っている」

 

「そう言えばそうだったね」

 

そう言えば父さん、陸自の人だったな

 

「でも…ハートマン軍曹にはなれなかったね」

 

「さすがに厳しい言葉は言いずらかったよ頑張ったけどな・・・・・てか何でフルメタルジャケットを知っているの母さん・・・・」

 

「私が向こうで生活していた時に総司と初めて見た映画が、それだった・・・それ以降、暇なときはいつも家で見ていた」

 

「そ、そうなんだ・・・・」

 

父さんと母さん。いったいどんな結婚生活をしていたんだよ・・・・気になるな・・・・

その後、俺は母さんと会話した後、部屋のベッドで寝っ転がる、

すると今までの疲れが一気に襲い俺はあっという間に眠りに落ちるのであった



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拠点フェイズ月:町巡り

その日、月は始めて二人きりで吹雪と街へと出掛けていた。

理由はもちろん民の暮らしを見て回るため。月は吹雪と出会う前はたびたび町娘に扮して民の暮らしを見て回っているのだ。吹雪との出会いもその帰りの時だった。

だが、以前のように単身で言ったらまた盗賊に襲われる可能性があったため

詠は護衛を着けることにした。ただ町娘に扮している月に完全武装の兵士がいるのは不自然なため。誰か一人、護衛を着けることにしたのだが、

詠は当然の如く政務が山のようにあったし、霞は調練。恋と華雄はこの街の近くに出たという山賊の討伐兼武力偵察へと出掛けていた

そんな理由も相まって月の護衛に白羽の刃が立ったのが吹雪であった

吹雪なら町のことは見て回っているため庭のようなものであるうえ、実力もあるため月の護衛にはもってこいだった。

吹雪も断る理由がないため承諾し、今彼女のそばにいた。

だが彼の着ている服装は警邏隊の黒服でも天の御使いを象徴する枯草…つまり軍服姿ではなく一般市民が来ているような服装であった。ただ一般市民と違うのは腰に刀を差し、懐には南部14年式拳銃を携帯していることである

 

そんなわけで始めての二人きり、吹雪に対して命の恩人であり尊敬とも敬愛とも取れる感情を抱いている月は胸がどきどきしてたまらなかった

 

「月?大丈夫か?」

 

「へぅ…だ、大丈夫です吹雪さん」

 

「そう?顔が赤いけどもしかしてどこか悪いの?」

 

「い、いいえ大丈夫です」

 

と、顔をさらに赤くする月。そして月は吹雪の横を歩いていることで緊張してしまい話を聞いてないこともしばしばあった

彼女の親友にして頼れる軍師、詠こと賈詡の発案により吹雪はここ天水の街で、[天の御使い様]として、民衆に紹介され、

さらに天水警邏隊こと新選組の発足され、池田屋事件や治安維持での活躍によりそのせいもあってか、二人が街を歩いていると周りからの視線がとても気になるのだ。そんな時

 

「お、御使いの兄ちゃんじゃねぇか。いつもの格好はどうしたんだい?」

 

と、お饅頭屋さんの店主に声をかけられる

 

「今日は非番ですよ」

 

「そうかい。そっちの子と逢引ですかい?だったらこれを二人で食ってはどうだ?味は保障するぜ!」

 

「ありがとう、おっちゃん。」

 

こんな感じで声を掛けられ、いい笑顔を称えてそれを受け取る

 

「それよりどうだい景気の方は?」

 

「ええ。以前に比べて結構住みやすくそして商売もしやすいですよ。これもあなたたち新選組やここを収めてくれる董卓様のおかげですよ」

 

「そうか。隊士たちや董卓様が聞いたら喜ぶよ…そうだよな月?」

 

「へぅ・・・・そ、そうですね」

 

その後、二人は店を後にし大道りを歩く、大通りは結構人が多く混んでいた

「はい、月」

 

と、吹雪は先ほど店から貰ったまんじゅうを月に渡す

 

「へぅ・・・ありがとうございます。」

 

せっかく吹雪と二人っきりなのにそんな返事しか出せない自分に若干嫌になる月。軽いため息をついてしまう。その時、月は人にぶつかりバランスを崩してしまう

 

「っきゃ!」

 

先ほど受け取った饅頭も落として転びかけた、が

 

「大丈夫か?月。」

 

来ると思った痛みなど来ることも無く、暖かな温もりが体を包んでいた。理由は月は今、吹雪に抱きとめられている、その事実にさらに真っ赤になり、そして涙目なる月

なにを勘違いしたのだろうか。それを見た吹雪は

 

「大丈夫!?痛かった?」

 

吹雪がそう言うが月は首を横に振る

 

「そうか・・・・良かった」

 

その様子を見てほっとする吹雪。そして地面に落ちたまんじゅうを見る

 

「あ~饅頭もだめになっちゃったね」

 

「ごめんなさい。せっかくのお饅頭を」

 

「大丈夫だよ。ほら俺のあげるよ」

 

「え?でも吹雪さんの分が」

 

「俺は大丈夫だよ」

 

そう言いニコッと笑い吹雪は月に自分の分のまんじゅうを上げ。そして吹雪は月の手を握る

 

「っ!?」

 

手を握られたときの月の顔は面白いほど真っ赤になった

 

「転ぶと危ないからね?これならきっと大丈夫だからさ、あ!嫌なら言ってね?」

 

そんな笑顔で言う吹雪に月は顔を赤らめたまま頷いた。その後、二人は町や村々を見て回った。月は終始吹雪に手を握られ顔を赤くしたままだった。

そして屋敷に戻った二人

 

「吹雪さん。今日はお休みなのに付き合ってくれてありがとうございました」

 

「いいや。問題ないよ。月と一緒に行くの楽しかったし」

 

「っ!?」

 

不適の笑みでそう言う吹雪に月はまた顔を赤くしてしまう

 

「月?本当にどうしたんんだ?今日は一日中顔が赤かったよもしかして熱でもあるのか?」

 

そう言い吹雪は自分のおでこに月のおでこをくっつけ熱を測った。温度計を持ってないため吹雪は彼女に熱がないかを確認するのだったが

 

「~~~っ!?///」

 

ボフンッという音とともに彼女の顔はさらに赤くなりそして頭から煙が出てきた

 

「熱はなさそうだけど・・・・・て、月?ど、どうしたんだ?」

 

吹雪は月の顔を見ると顔は真っ赤で目はぐるぐると回っていた

 

「月!?本当に大丈夫か!?」

 

心配してそう訊くと月は

 

「い、いえ・・・だ、大丈夫れす・・・・ふふびゅきしゃん・・・そ、それでは私は戻りますね」

 

若干噛みながらも月は顔を真っ赤にしながら逃げるように吹雪のもとを

去った。それを見た吹雪は

 

「行っちゃった・・・・・・俺、何か悪いことしたかな?」

 

吹雪は月のことを心配してやったつもりだったが、月の様子を見て何か気に障ることをしてしまったんじゃないかと思う吹雪であった

 

 

一方、月の方は

 

「はうぅ・・・・吹雪さん」

 

先ほど飲んことを思い出し月は顔を耳まで真っ赤にしていた。そして吹雪がずっと握ってくれた手を見て

 

「・・・・・私ももっとがんばらなきゃ・・・・吹雪さん」

 

顔を真っ赤にしながら月はその手をぎゅっと握り、そしてその手を胸に抱き吹雪のことを考えるのであった

 



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拠点フェイズ霞:月見酒

ある月明かりの夜、俺は屋敷の庭を散歩していた。これは俺に秘かな楽しみだ。

 

「やっぱり、夜の散歩はいいな・・・・」

 

そう呟き歩いていると・・・・

 

「・・・・・・・ぶきー・・・・」

 

「ん?」

 

急にどこからか俺を呼ぶ声が聞こえた。周りを見るが見えない

 

「・・・・気のせいかな?」

 

俺がそう首をかしげる

 

「ふーぶきー」

 

気のせいじゃない。やっぱりどこからか声が聞こえる。俺は立ち止まり、よーく周囲を見渡す。

 

「こっちや、こっち」

 

声のするほうへ顔を向けると・・・

 

「あ、霞!」

 

「あ、やっと気ぃついてくれたー♪」

 

少し離れた芝生に植えられた一角。霞はそこの木の根元に少しによりかかるように座って酒を飲んでいた。俺は霞のところに歩みよる。

 

「何してるのこんな夜中に?」

 

「見てわかれへん?」

 

「お酒飲んでる」

 

「わかってるやないか~♪それより吹雪もこないな時間に何しとるねん」

 

「散歩だよ。毎夜は庭を散歩するのが日課なの」

 

「はは、そっか。じゃあ、うちも夜にこうやって月を見ながら酒飲むのが楽しみなんや。ほら、吹雪も隣すわりや」

 

と、霞は手で自分の隣の芝生をポンポンとたたく。俺は断る理由もないので隣に座った。すると霞はくいッと盃に盛られたお酒を飲む。

 

「はぁ~美味いわ~」

 

「本当においしそうに飲むね霞は」

 

「あったり前や。こんないい月夜に飲む酒ほど美味しいものはないで。あっ!そうや。ちょうど盃がもう一つあるから吹雪も飲まへん?」

 

と、霞はにっこりと俺にそう言う

 

「い、いや…俺、未成年だから・・・・」

 

「未成年?なんやそれ?」

 

「ああ、俺の国では二十歳になるまでお酒飲んじゃいけないことになってるんですよ」

 

「か~もったいないな!それ人生損してるで~」

 

「そうかな?」

 

俺がそう言うと、霞はもう一つの盃に酒を注ぎ、

 

「二十歳になるまで酒を飲めんのはあかんで、ほら、飲み!」

 

「え?でも俺・・・」

 

「大丈夫や。ここは天の国やないんやから。ここで飲んでも苦情なんか一切来やへんで」

 

「じゃ、じゃあ遠慮なく」

 

そう言い、俺は霞から盃を受け取る、朱色の盃には濃い琥珀色のお酒が月夜に照らされキラキラと輝いていた。俺はそっとその酒を飲む。冷たい液体が流れ込み少しの酸味の後、まろやかな甘みが口いっぱいに広がった。

 

「どうや?」

 

「・・・・・・・美味い。お酒って美味しいんだな」

 

「そうやろ。そうやろ♪これうちの大好きな酒なんよ。よかった~吹雪に気に入ってもらえて♪」

 

俺がそう言うと霞は嬉しそうに頷きながら言う

 

「霞。これなんてお酒?」

 

「これ?これはな老酒や」

 

「あ~これが老酒か。話には聞いたことがあるけど。これどうやって作るの?」

 

「ああ、これはもち米や。蒸したもち米に小麦麹を混ぜて、醸してるんねよ」

 

「え?これお米で作られてるのか?」

 

「うん。せやで。もち米を蒸す前に、水につけて発酵させるんがミソらしーわ」

 

「へ~発酵させてから蒸すんだ。だから同じ米が原料でも日本酒とは味が違うのかな?」

 

「にほんしゅ?何それ?」

 

「ああ、日本酒って言うのは俺の国の天の国の酒だよ。老酒と同じで米から作られているんだ」

 

「へぇ~天の国の酒かぁ~それ美味しいん?」

 

「俺はまだ飲んだことないけど、祖父ちゃんは美味いって言ってたぞ。老酒と違ってまた違った魅力があるから霞も気にいると思うよ。現に今、酒屋のおっちゃんに作ってもらっているし」

 

「ほんまかぁ!?」

 

「ああ、いつできるかわからないけど」

 

そう。今、天水街の酒屋で今、日本酒を作ってもらっている。なぜ日本酒の作り方を知っているかというと、前に桜花たちが見つけた旧日本兵が書き残した銃や大砲の設計図の本の余ったページに清酒の作り方が書かれていたのを見つけたからだ。

 

「そっか~そりゃ、楽しみやな~出来たら絶対に飲ませてな。約束やで!」

 

「ああ、わかった」

 

その後、俺と霞は月を肴に酒を飲んだ。

 

「あ~やっぱ月を見ながらのいっぱいは美味いな~。なあ吹雪」

 

「そうだね。春は夜桜 夏には星 秋に満月 冬には雪 それで十分酒は美味い・・・・・てね」

 

「なんやそれ?」

 

「ん?俺の祖父ちゃんが酒を飲む際、よく言ってた言葉だよ」

 

「へ~吹雪のじっちゃんの言葉か~ええ言葉やな~」

 

と、霞は感心したように言う。確かにあの時の祖父ちゃんの言葉は正直言ってかっこいいと思った。

 

「いい言葉を聞いたな~・・・・ほな。吹雪。もう一度、飲もうや。まだ酒はまだたんまりあるやさかい」

 

「そうだな」

 

そう言い俺は霞の盃に酒を注ぎ、霞も俺の盃に酒を注ぐ。

 

「さて、もう一度乾杯ッと行こうか」

 

「そうやな。・・・・で何に乾杯するの?」

 

「そ、そうだな・・・・」

 

俺は考えた。君に瞳にって言うのもキザすぎるしな。かといって『宙天に輝く、銀月の美しさに』って言うのも俺には似合わないし・・・・・あっ!そうだ

 

「じゃあさ。俺とみんなが出会えたことにかな?」

 

俺が浮かんだ言葉はそれしかない。いやそれしかなかった。正直言って俺はこの時代で母さんやみんなに出会えたことが本当によかったと思っている。

 

「そうか。じゃあ吹雪と、うちらが出会えたことに」

 

「「乾杯!」」

 

と、俺と霞は盃と盃を合わせ小さな音が鳴る。そして俺たち二人は月を眺めながら酒を飲む。

 

「ほんまに今夜はいい日やな~」

 

と、霞は嬉しそうに酒を飲み

 

「ああ、俺もだよ・・・・・ん?どうした霞?」

 

俺が霞のほうを見ると霞はちょっと震えていた

 

「ああ、いや。どうやらちょっと冷えたみたいやな。あはは・・・」

 

と、笑いながらそう言う霞。確かにその格好じゃ寒そうだな。俺は軍服の上着を脱ぎ霞に掛ける

 

「吹雪?」

 

「これなら寒くないでしょ?」

 

「そりゃそうやけど、吹雪は?寒くないんの?」

 

「お、俺は平気さ。男ならこのくらい我慢しないとな。それに女の子が体を冷やすのはよくないし」

 

正直言ってこれはやせ我慢だ。今の気温は少し寒い。だがこれで霞が風邪をひかないよりはましだ。そう思ってると

 

「ほんま、いい男やな~吹雪は。そや。うちいいこと思いついた」

 

そう言い、霞は俺の後ろにつきそして俺を抱きしめる

 

「し、霞?」

 

「どや?これで吹雪も暖かいやろ///?」

 

「///」

 

と、霞は笑顔でそう言う。

 

「あはは・・・ありがとう霞」

 

「いいっていいって。さあ、二人で温まってきたところやし、このまま酒飲もう」

 

「そうだな」

 

と、俺と霞はこの体勢で月見酒をするのだった。

 

「それより吹雪?警邏隊の新部隊の新選組の方はどうや?うまくいっておるか?」

 

「ああ。誠華や桜花のおかげでうまくいっているよ。それに騎兵部隊の訓練は経験の少ない二人に変わってなんだかんだで付き合ってくれたり、おかげでとりあえず戦場に出しても大丈夫といえるくらいにはなったと思う。霞の部隊との模擬戦ではわけの分らないうちに全滅ってことはなくなったしね。おかげで自信を付けたのか警邏のほうも前より問題発生数が少なくなってきているんだ、自信がいい感じの気持ちの余裕になっているんだと思う。それにいつも部隊の調練の後にこうして俺と一対一で鍛錬を付けてくれるんだから、それをふと考えたら・・ありがとうって」

 

俺は霞に礼を言う。霞は華雄…いや橘花と同じく訓練が終わった後、俺に稽古をつけてくれた。今こうして盗賊とか戦って死なずに済んだのは、霞たちが稽古つけてくれたおかげだ

 

「にゃはは、かまへんかまへん、ウチにはなんだかんだでこの武しかないからなぁ・・・吹雪みたいに文官との両立なんて柄やないし、ある程度はそっちもいけるんやろうけど・・・それに永久就職ってのもウチには合わんと思うんよ?やっぱウチは戦場で戦う人やからなぁ。本職が手伝うのは当然や」

 

「武だけってことは無いと思うけどな、霞は十分女性らしくて可愛いと思うし」

 

「っな!何言い出してるん吹雪!ウチが可愛いとか無いわ」

 

「いや、可愛いし魅力的だと思うよ?」

 

「・・・そんなにいうならウチのこと吹雪がもろうてくれるんか?ないやろ?」

 

「ん?霞が俺でいいなら別に構わないけど?」

 

「!?!?・・・/// コラッ!酔っての冗談はそれくらいにしとき!!全く・・・ほんまにそう言うところは母親似やな・・・・・でももし吹雪と一緒になったらウチ、恋のことお義母さんって呼ばなかあかんな・・・・・」

 

「どうしたの霞?ぶつぶつ呟いているけど?」

 

「なんでもあらへん!!ほら!飲むで!!今夜はとことん飲む!!吹雪も付き合い!!」

 

「ああ。わかった」

 

その後吹雪は霞の晩酌に付き合った。霞の顔は酒の酔いなのかはたまた別の意味なのか真っ赤になっていたのだった

 

 

 

そしてそれから翌日・・・・

 

天水街

 

「あ、頭がいて~」

 

「隊長大丈夫っすか?」

 

 

宮中

 

「あ、あかん。あ、頭が割れそうやな~」

 

「霞さん大丈夫ですか?」

 

二人とも朝から二日酔いの頭痛のせいで大変な目に合うのであった・・・・・・・

 



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黒山衆の乱勃発、新選組出動!

天水警邏隊が新選組となって数か月。天水の街は平和だった。

だが天水の外はいまだに賊らがはびこり戦や飢饉が絶えなかった。

そしてその現状に不満を持つ人々が、この現状を変えるべく一揆をおこしたり、はたまたそれに便乗して賊とかが新たに増えていた

そして漢王朝はそれを止める力はほとんどない

そんな漢王朝に追い打ちをかけるような戦争が起きた。だがそれは史実の黄巾党の乱ではなかった。黄巾党も確かに存在はしていたがある日を境に激しい動きは見せていなかった。だが黄巾党より先に動き出した集団が現れた

それは黒山衆であった。

黒山衆は史実では黄巾党の36万人の倍の100万の軍勢がいた。

だが、黒山衆は天水で起きた池田屋事件で大半の幹部が打ち取られ捕縛され黒山衆も散り散りになったと思ったのたが、幹部の一人の張燕だけは捕らえることができなかった。

そして張燕は今の漢王朝に不満を持つ武人や盗賊らを再び集め総勢10万ぐらいの軍団であった。

そしてその軍勢は各地に攻撃を始め、それを見た漢王朝も放ってはおけずにすぐさま討伐軍を差し向けたが結果は惨敗をし苦戦を強いられていた

 

 

 

 

「それで?その邑に攻め入ってきた黒山衆の総数は大体どれくらいか分るの?」

 

「っは!見た限りですが3万以上はいたかと思われます。

 

天水の広間では詠たちが軍議を開いていた。議題はもちろん武装蜂起し近隣の邑を襲っている黒山衆についてである。漢王朝の官軍を倒した黒山衆は現在、天水近くのところに攻め入っているのだ。無論漢王朝もただ黙ってやられているわけにはいかず残った兵力で追撃し、そして今現在董卓のところに援軍要請をしその要請を受けた月は承諾し討伐部隊を編成しているところだった

 

「三万か・・・結構いるわね・・・華雄、貴方の部隊で鎮圧にいけるかしら?」

 

「愚問だな、三万とはいえ所詮は烏合、私の精兵ならば相手が倍の数であろうと正面から叩き潰して見せましょう」

 

詠の言葉に華雄は自信満々に言う。

 

「そうね・・・出来れば僕も一緒に行きたいところだけど個々最近の街の区画整理とか警邏とかでやらなきゃいけない仕事も増えたからね・・・ごめん」

 

「かまわんさ、私一人で大丈夫だろう」

 

「ちょっと、ええか?」

 

詠と華雄の会話に割り込む形で霞が入っていった。

 

「なによ霞、言っておくけど貴方の部隊はこの間、西涼まで遠征させちゃったから動かしたくないんだけど?」

 

「ちゃうちゃう、ウチの部隊や無い。話したいのは吹雪の部隊のことや」

 

「吹雪の?」

 

詠がそう言うと霞は頷き

 

「そや。ここ数か月で吹雪の部隊もとりあえず見れるようになってきた。そろそろ模擬戦や訓練ではなく本格的な戦場を経験させて起きたくてな?そのための吹雪の部隊やろ?」

 

霞が詠に言う。確かに吹雪の部隊「新選組」は警察機関ではあるが有事の際は武装鎮圧のための軍隊にもなる部隊であり、さらには吹雪のいた時代の戦術などの近代的な戦法や戦術を取り入れた実験部隊でもある。

この機を逃す手はないと霞は考えたのだ。

 

「確かに前に視察に行ったら兵の士気もすごかったし、あの練度なら大丈夫だと思うけど・・・・吹雪はどう?池田屋の時とは違うけど大丈夫?」

 

詠が少し心配そうに訊くと吹雪は

 

「俺もそろそろ隊士たちに戦場を経験しておいたほうがいいと思う。まあ、華雄がよければでいいんだけど・・・・」

 

「ふむ・・・私は構わんぞ、張遼がそういうなら本当に足手まといになるなんてことは無いのだろうし・・だが沖田はいいのか?確かに賈詡の言う通り池田屋とは違い本格的な戦いだ。新選組の初陣は沖田の本格的な初陣になる」

 

確かに今回は池田屋の時とは違い本格的な戦になる。もしかしたらこれが最期になるかもしれない。だが吹雪はもう心に決めたのだ。

 

「あぁ、俺自身の初陣でもあるからこそだ。いざという時に戦えなかったら新選組がいる意味がない。町の治安を守るのが新選組じゃない。人々が安心に暮らせるために戦うのが新選組の役目だ。だから俺は戦うよ。それに本当にいざということになる前には何とかしてくれるんだろう?」

 

「当たり前だ、兵の命は重い。無駄に失うことなどするものか」

 

「それなら大丈夫だね・・・詠今回は俺と俺の部隊も行くということでいいかな?」

 

「・・・そうね、くれぐれも無茶はしないように気をつけなさい!」

 

「あの、吹雪さん・・・お気をつけてください」

 

そう激励と心配を受けて俺達は戦場に出ることになった。そして吹雪は新選組の隊舎に向かう途中・・・

 

「・・・・吹雪」

 

「・・・・母さん」

 

隊舎に向かう途中の廊下で今回の軍議には参加していなかった母である恋に会う。そして恋の顔はすごく真剣な顔をしていた

 

「話・・・・華雄から聞いた。戦場に行くって本当?」

 

少し威圧めいた目でそう言う恋に対し吹雪は

 

「ああ・・・・・行く」

 

「・・・・それ、どういう意味か分かっている?」

 

言葉は少ないが吹雪は母の言葉の意味が分かっていた。戦場に行くということは死ぬかもしれないし、逆に言えば人を殺すことになる。恋は現代育ち生まれの自分の子に正直、戦場に入ってほしくない。できれば平和に暮らしてほしいという気持ちがあるが。吹雪の性格上必ず戦場に行く。

なら、戦場で人を殺し、その責任を背負う覚悟があるのか愛する息子である吹雪に訊いたのだ。

すると吹雪は

 

「自分の汚れた血刀と犠牲になった命の向こうに誰も安心して暮らせる新時代があるんだったら、俺は自分が殺めてしまった魂の分を背負い続けて戦い続けるよ」

 

吹雪は恋に自分の思いを言った。もう吹雪は現代に生きる学生ではない。今は天の御使いでもあり、警察機関の責任者であり一部隊の隊長だ。

そして吹雪はここに来たばかりのころ月を助けるためや池田屋事件で人を殺してしまっている。そのことは今でも罪悪感がある。だがそれを理由に戦いを止めてはいけない。

殺した以上奪ってしまった命は二度と戻らない。これからも平和な時代を目指すために多くの賊や敵になる国の兵を銃で撃つか刀で斬るかもしれない。だがそこで立ち止まってはいけない殺してしまった人の分まで平和な時代になるまで吹雪は戦い続けなければならない。それが殺してしまった人のせめてもの償いになるのなら。自分は死ぬまで戦い続ける。そう心に誓ったことを母親の恋に言うのだった

 

「・・・・・・本気?吹雪?」

 

「ああ・・・・そう自分に誓った」

 

恋の言葉に吹雪は頷いてそう言うと

 

「分かった・・・・・そこまでの覚悟があるのなら・・・・もう何も言わない・・・・でもこれだけは約束」

 

そう言うと恋は吹雪の肩に手を置き

 

「必ず・・・・生きて帰ってきて・・・・・」

 

数少ない一言・・・だがその一言が恋が吹雪のことを心配しているのかそして母親が自分の子をどれだけ想っているには彼には十分すぎる言葉だった。

その言葉に吹雪は頷き

 

「分かった。必ず帰るよ。約束する。必ずここへみんなと一緒に帰ってきます」

 

「約束・・・・・」

 

吹雪の言葉に恋は頷くと吹雪は敬礼をし、恋のもとを去り隊舎に向かった。

そして隊舎に戻り、吹雪は誠華たち幹部を呼び出し、新選組が黒山衆の討伐のため出撃することを伝えた

 

「そうですか・・・・ついに時が来ましたね」

 

「うっしゃーついに新選組出撃っすね!!」

 

俺の言葉に誠華は頷き、桜花は戦と聞いてうきうきした表情をしていた

そして、その後、すぐに誠華の号令にて出陣に志願した新撰組隊士たちが集まった。さすがに街の警邏もあるため全軍は出撃できないが部隊の8割ぐらいの隊士たちが出陣することになった。

 

「新選組隊長。沖田吹雪大隊長に敬礼!!」

 

誠華の号令に全員が俺に注目し、敬礼を取る

 

「休め!!」

 

桜花がそう言うと隊士たちは不動の姿勢を取る。今回の戦いは警邏隊、基新選組の初陣である。池田屋事件を経験したものはほんの僅か。他は事件後に入隊した新人たちである。隊士たちはは初陣ということもあり警邏のパトロールやはたまた今までしてきた訓練や模擬戦の時とは違いどこか動きが硬かった

これから命のやり取りをするのだから仕方がないと言えば仕方がない。

 

「新撰組隊士諸君!今回の黒山衆討伐の任務に志願してくれて心より感謝する!今から俺たちは初めて命のやり取りの戦地へと向かう。この中の誰かが死ぬかもしれない、その恐怖もあるだろう。そして人を殺すことに恐怖する人もいるだろう!・・・俺は正直人を殺すのが怖い、だが、立ち止まるわけにはいかない!我々新選組の任務は何だ?町を巡察することか?模擬戦をすることか?否!!その町に住む人々を外敵から守るのが任務だ!今世間を騒がせている黒山衆は各国の村や町を襲い、そして今!この天水へと向かってきている!今回の我々の任務は治安維持!賊を討伐し天水の街を守ることだ!隊士諸君!今回の戦!命を懸けた戦になる!だが決して無駄の命を散らすな!!どんなことがあっても必ず生きてこの地に帰ろう!!新選組諸君!俺は常に君たちの先頭にあり!!」

 

「「「「「「ウオオオオオオォォォォォ!!!!」」」」」」

 

歴史の名を残した名将たちほどの演説ではないはないが、もとより沖田吹雪の天軍として志願した彼等の士気は、その信ずる隊長の言葉で最高潮まで達していた

 

「新選組!!出動!!!!」

 

吹雪の号令とともに蒼天に吹雪の部隊「新選組」基天軍の旗である旭日旗が掲げられたのだった

こうして吹雪たちは戦場へと向かうのであった




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定軍山

黒山衆討伐の命令を受けた董卓軍は討伐隊として華雄を指揮官以下吹雪の新選組を含めた軍団が戦地へと向かっていた

 

『賈駆さん賈駆さんお馬の前にヒラヒラするのは何じやいな?』

トコトンヤレ、トンヤレナ~~♪

『あれは朝敵征伐せよとの天の御旗じや知らないか』

トコトンヤレ、トンヤレナ ~~♪

 

『一天萬乗の帝王に手向い、帝に手向いする奴を』

トコトンヤレ、トンヤレナ~♪

『狙い外さず、 狙い外さず、どんどん撃ち出すどんどん撃ち出す董卓軍』

トコトンヤレ、トンヤレナ ~♪

 

『国を追うのも人を殺すも、誰も本意じゃないけれど』

トコトンヤレ、トンヤレナ~♪

『天子を守る董卓軍の先手に手向ひする故に』

トコトンヤレ、トンヤレナ~♪

 

笛、太鼓を鳴らしながら華雄軍。特に吹雪率いる新選隊は歌を歌いながら行軍する。歌っている歌は吹雪のいた時代の幕末の戊辰戦争時に新政府軍が歌った『宮さん宮さん』の替え歌であった。歌詞の変わった部分は宮さんを董卓軍の軍師であり参謀職についている詠の名である賈駆に薩長土を董卓軍に変えて歌っていた。その姿に行軍を見る農家の人達は見慣れない服装。洋式の服装をし旭日旗を掲げた吹雪隊こと新選組の姿を見て

 

「あれが天の御使い様が率いる天の部隊か~」

 

「見たこともない服装じゃな?」

 

「だが奇麗な隊列じゃの・・・・」

 

笛太鼓を鳴らし歌を歌いながら行進する新選組をみて、好奇心で見る者。本当に天の軍隊と拝む者が多かった

 

「お前もなかなかの人気者だな吹雪?」

 

「揶揄わないでくれ・・・・」

 

笑いながら俺に言う華雄に俺は苦笑して答えた

 

「それより吹雪。例の銃という奴は兵たちに配備していないのか?」

 

「ああ、まだ実戦配備できそうになくてな」

 

と華雄…いや橘花はそう言う。そう今回の戦いで俺の部隊は銃を所持していない。理由はまだ信頼性に欠けているからだ。実際のところ夕張は銃の生産に成功しているのだが、射撃試験で不発だったり、機関部に中国大陸特有の砂が入って動作不良を起こしたりと、まだまだ実戦配備はできない状態だったため。吹雪の持つ九九式小銃以外の隊士たちは槍や剣。そして銃の繋ぎとして作った連発弩を配備していた

 

「そうか・・・だが、そんなものがなくても我々の武だけで事足りるだろうな」

 

「あはは・・・・華雄に言われるとなんか説得力があるな。でも賊だからと言って油断はしないでよ。雪風の偵察部隊によると敵は元軍人だったり傭兵が多いって聞いた。華雄の武を疑うわけじゃないけど。それでも油断はしないようにね」

 

「大丈夫だ。私はこう見えて体を鍛えているからな。だが心配をしてくれてありがとな」

 

と華雄は軽く吹雪の頭を撫でた。華雄と吹雪の仲はよく。吹雪も警邏隊の隊長になる前は華雄隊に所属し一兵卒として彼女の元で指導を受け、吹雪から見れば姉貴分といった感じだった。

そして華雄こと橘花も吹雪のことは弟のような感じに思っているため

二人はいわば元上司と部下というより義姉弟のような感じであった。

 

そして華雄、吹雪の部隊は敵陣へ到着。既に追撃に出ていた漢王朝の軍隊が黒山衆と激戦を繰り広げていた。

その場は定軍山。現在の陝西省漢中市勉県にあり標高約800メートルある山だ

黒山衆はここに厳重な防御陣地を築いた。その長さは定軍山を中心に総延長10km。

約一万以上の一個師団ぐらいの兵力が配備されていた。

そしてすぐに漢軍と華雄軍の連合と黒山衆の戦いが定軍山で起きた。

だが、すぐに苦戦を強いられるようになる

理由としては黒山衆の地の利を活かして山の上から攻撃に漢軍は動けず、進めなかった。そして兵士の戦う姿勢にも違いが見られた

一騎当千の勇猛果敢な華雄軍とは違い追撃に来た漢軍は物資が貧弱で武器も旧式。そして何よりその兵が元軍人や盗賊中心の黒山衆とは違い漢軍の兵のほとんどが徴兵により農民や町人が主体であり、黒山衆の気迫に怯えた。突撃を命じても声を上げるだけで命令には従わず、脱走兵も続出した。敵への恐怖が根強い庶民軍の弱点が露呈された。漢王朝の軍はもはやそこまで弱体化していたのだ。

開戦一週間で漢軍の死傷者は1000人以上出した。勇猛果敢に戦う華雄軍も獅子奮迅に戦うが定軍山に立てこもる敵の防衛人を突破するには至らなかった

だが、その戦いの中に吹雪たち新選組の姿はなかった。

その肝心の新選組はというと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

司令部近く・・・・・

 

「隊長・・・・退屈っす」

 

桜花が物資の入った木箱の上に座り、制帽を人差し指でクルクルと回しながら、足を上下にブラブラと揺らして、「私暇です」をアピールしていた。

 

「文句を言うな桜花。漢軍の後方支援、それが今の俺達の仕事だ」

 

「そうだぞ桜花。そんなに暇ならこの物資運ぶの手伝ってくれ」

 

吹雪は物資の目録が書かれた書簡に目を通し、誠華は物資の入った袋を運んでいた。現在吹雪たち新選組は軍の後方支援、周辺の治安維持活動に従事していた。理由としては官軍連中に『警備隊ごときが俺たちの畑を荒らすな』の一言、その言葉を聞いて華雄は物凄い剣幕で抗議したが受け入れてもらえず、仕方なく吹雪の部隊は後方支援という形になっていた

 

「後方支援っていつも、怪我人か死体運びに物資、戦闘配食運びだけっすよ~~あー!わたしも戦いたいっすーーー!!」

 

と、桜花は子供みたいに頬を膨らませ、定軍山の方を見る

 

「隊長や誠華だって戦いたくはないんすか!?絶対戦いたくてうずうずしているでしょ!」

 

「ま、否定はしない・・・・隊長はどうですか?」

 

「俺も同じだ。華雄が戦っているのに俺たちだけここでのんびりとやっているわけにはいかないからな・・・・・」

 

誠華は桜花の言葉を否定せず自分もできれば戦いたいと言いそして吹雪も双眼鏡を除き定軍山の状況を見てそう言う。ちなみに双眼鏡は吹雪が持っていたリュックサックから見つけ、現在夕張が製造を試みている

 

「隊長~それで黒山衆の連中見えるっすか?」

 

「ああ。山の頂上では食事の狼煙上げて飯食ってやがる。向こうは余裕だな」

 

「このままここで足止めを喰らっていたら、他の黒山衆の連中が着て挟み撃ちにされるっすよ」

 

「だな・・・・・仕方がない。上申書でも書いて、華雄から漢軍の指揮官に出してもらうしかないな」

 

「上申書?」

 

「そうだ。俺たち新選組が最前線に出してもらうための上申書だ」

 

「そんな回りくどいことしなくても『俺は天の御使いだ!』とかなんか言ってごり押しすればいいんすよ~!」

 

「あのな桜花・・・・俺は確かに天の御使いだとは言われたはいるけど、それはただの称号みたいなものだ。実際の俺は警備部隊の隊長。元の世界ではいち一般市民に過ぎないぞ?それにだあんまり権力利用してそう言うことするのは俺は好きじゃない。やる時は筋を通す。それが俺のやり方だよ。まあともかく斗志たちも隊士たちにメシや睡眠とって体力をつけていつでも出撃できる準備はしろと伝えておいてくれ。俺は少し戦場の見回りをしてくる」

 

「え?ですが隊長。もう日が暮れそうですよ?

 

「うん。知ってるよ」

 

蘭花の言葉にそう言い、吹雪は軍帽をかぶり見回りに出かけるのだった。

その後、新撰組内で噂が広まった‥‥自分達も前線に出ると言う噂が‥‥

普通そんな噂が出ると、怖気づいてしまうものだが、此処に集まった隊士たちはやっと出撃できると士気が非常に高かった。全員、前線に出たくてうずうずしていたからだ。

その噂が隊士内に広まった直後、吹雪は華雄に上申書を提出。華雄は漢王朝の司令に上申書を出すが却下された。やはり警邏隊ごときに手柄を取られるのが嫌だったのだろう。

だが、今の現状、定軍山は未だに落ちず、味方の被害が増える一方だった。

その戦況についに漢軍指揮官もついに折れた。というよりも華雄の気迫にビビったというのが正しいかもしれない・・・

そしてついに新選組の参戦が決定した。

 

 

そして最前線に向かった新選組の目の前にある定軍山には黒山衆が陣を張っている

 

「大丈夫か吹雪?これからあれと殺し合いをするわけだが?」

 

隣にいる華雄が声をかける。体は少し傷がついているがぴんぴんした様子だった。

 

「ん?あぁ大丈夫だよ華雄、実際始まったらどうか分らないけれど今は落ち着いているから、俺よりも俺の部隊の奴等のほうは士気は高いがちょっと緊張して硬くなってる」

 

「・・・ふ、それがわかっているなら吹雪が声をかけて鎮めてやればいい、そういうことをするのも将の役割だ。しっかりやれ。お前ならできると信じているぞ」

 

「あぁ、ありがとう・・・橘花」

 

「な、真名は!」

 

吹雪の言葉に華雄は少し驚く。華雄は吹雪に真名を預けているが、面と言われて恥ずかしいためなるべく華雄と呼ばせるようにしている

 

「俺にとっての初陣・・・特別な時だからさ・・・うん、ちょっと落ち着いた」

 

「・・・まったく・・・だが本当に妙に落ち着いていたな吹雪は・・・・だが無茶はするな」

 

「分かっている。それに新選組には万が一危なくなった時は董卓軍随一の猛将。華雄将軍が率いる部隊がいるからな」

 

「ふっ…その時は任せろ。だから死ぬなよ・・・」

 

「ああ・・・・じゃあ、行ってくる」

 

そう言い吹雪は

 

「新選組!行くぞ!!」

 

「「「「おおーーーーー!!!!」」」」

 

吹雪の号令に新撰組隊士は声を上げる。そして吹雪たちは定軍山へと向かうのであった

 

 



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黒山衆vs新選組~定軍山の激闘~

深夜。月の出ない新月の夜。闇夜に紛れ吹雪たち率いる新選組は敵である黒山衆の要る定軍山へと昇る。

何度も勝ち続け酒を飲み干す黒山衆は、まさか夜襲をかけてくるとは思ってもいなかったのか大半の賊は酔っぱらっているか酔いつぶれて眠っていた。

そんな中、総勢千名の吹雪隊は敵に気づかれないようにそっと近づいた。

幸いにも今夜は新月。光の無い山の中は真っ暗であり吹雪たちの着る黒い軍服がその闇に溶け込み、さらには空は雲が陰り雨が降ってきた

 

「雨が降るなんてついているな」

 

「はい。これなら敵にも気づかれずに接近できます」

 

雨に打たれながらも吹雪はこれは好都合だと誠華に言う。実際にこの雨音で新選組が近づく足音は雨音でかき消され敵はその存在に気づいていなかった

そして吹雪は隊士たちに行った

 

「いいか。この戦いは極めて重要な戦いの一つであり、俺たち新選組の初陣だ。そしてこの戦いに負ければ敵は君たちの祖国を家族を危険な目に合わせるだろう・・・・そうならないためにも俺たちは勝たなければならない!今敵は官軍に勝ち続け、酒と食べ物をたらふく食って油断している。今が好機!だが決して油断はするな。戦いは常に全力でそして気を引き締め戦え!そして敵であっても戦う相手に最大の敬意を払い、細心の注意をもって敵を倒せ!!」

 

「「おおっ!!」」

 

俺の激を聞き、至るところで鬨の声が上がる。そして吹雪たち独立大隊「新選組」は敵陣のすぐ目の前にまで接近することに成功した。

だが敵陣は全員が眠っているわけではなく吹雪たちの前に1人の黒山軍の兵士が見回りをしていた。

 

「隊長ここは私がやります」

 

隣にいた雪風は吹雪にそう言うと、雪風はすかさず、その兵士の背後に回り、

 

「むっ!?」

 

手で口を押え、短刀でその兵士の頸動脈を切断し、その兵士を失血死させた。

 

「これで大丈夫です」

 

「よし、全員抜刀!」

 

周囲に見張りの兵がいないことを確認した雪風が吹雪に報告すると吹雪は隊士全員に戦闘態勢を取らせ、隊士たちは剣と槍持つ

そして黒山衆の兵士が眠っている至近距離まで来た。

 

「君!突撃喇叭!!」

 

「はい!!」

 

吹雪が平隊士にそう言うと隊士は喇叭を手に持ち突撃喇叭を吹いた

 

「突撃にーーーー前へぇーーー!!!」

 

『わぁぁぁー!!』

 

突如、喊声をあげて斬り込む新選組に寝ていた黒山衆たちは突然の奇襲攻撃にパニックになった

 

「き、貴様ら何者だ!!」

 

「董卓軍!警邏特別部隊!そして天の御使い様である沖田吹雪様に仕える部隊「新選組」警邏抜刀隊だっ!!!かかれぇー!!!」

 

「「「「おおおおおっーーーーー!!!!!」」」」

 

そう叫ぶ新選組の隊士たちは黒山衆に斬りかかり、黒山衆も応戦し激しい斬り合いが始まった。

だが敵は酒を飲んでいたせいで視界がおぼろげになり次々と新撰組隊士に切り伏せられる。

さらには新撰組隊士は一人に対し複数で斬りかかる波状剣術「草攻剣」及び突き技を躱されてもすぐに横凪の攻撃に転換できる「平突き」で次々と敵を討ち取っていった

だが、数なら黒山衆の方が上。奇襲があったとはいえなぜこんなにも新選組に倒されているのか?それは新選組の隊士たちが恐れる事無く猛烈な気合と共に斬り込み身体を乗り出して正確に敵に斬りつけているからだ

逃げる黒山衆の前に新選組の隊士は逃げずに常に前進していた

理由は新選組、および天水警邏隊の隊規第一条にある

 

『士道、人道に背きことあるまじきこと』

 

をしっかり守っていたからだ。敵前逃亡は士道不覚後。守るべきものを守らないで逃げ出すのは人道不覚後。武士としての道、人としての道を踏み外すことは一番の恥。ならば今ある道はただ前進し敵を倒すことに集中すること、撤退命令があるまで、負け戦とわかるまでは隊士たちは絶対に引かない。引けば自分の住む町や故郷にいる村が奴らに蹂躙される

それを防ぐために戦っているのだ

 

「賊ども覚悟しろ!!!」

 

「私たち新選組がお前ら全員倒してやるぜ!!!」

 

新選組幹部である誠華と桜花も敵を次々と打ち取っていく。そして乱戦の中、

 

「あ、暁ちゃん!大丈夫!?」

 

「う、うん私は大丈夫!!澪ちゃんは!?」

 

「わ、私も大丈夫です!」

 

新選組に入隊した新入隊士である、鄧艾、杜預、羊祜の三人もこの戦に参戦していた

 

「おりゃっ!」

 

「きゃっ!」

 

「澪ちゃん!」

 

黒山衆に押されバランスを崩す杜預にその隙を逃さず彼女に斬りかかろうとしたその時、吹雪が彼女たちの前に現れ、杜預に斬りかかろうとした賊を斬り倒す

 

「大丈夫か!」

 

「お、沖田大隊長!?」

 

「大丈夫か!?」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

吹雪の言葉に杜預は礼を言うと、他の黒山衆が襲い掛かってきた。

 

「た、隊長!敵が来ます!」

 

鄧艾と羊祜が剣を構えると吹雪は手で押しとどめ

 

「ここは俺に任せろ」

 

そう言うと吹雪は単独で無数の黒山衆に向かってくる。そして目にも止まらぬ神速の抜刀術や牙突で次々と敵を切り伏せていく。鍔迫り合いになったときは敵の足を払いその隙に斬る。その速さに敵はおろか見方も驚いていた

 

「す、すごい・・・・・」

 

「相手の急所を一撃で仕留めている・・・・」

 

隊士たちが驚く中、誠華は

 

「全員隊長に後れを取るな!我等も続け!!」

 

『おおおお!!』

 

先頭をきる吹雪の姿勢に他の隊士たちも吹雪に続き、黒山衆の兵士を斬っていく。そしてこの時吹雪率いる「新選組」は敵の防衛陣地を突破し、そしてそれを合図に華雄軍が吹雪たち新選組を先頭に突撃し定軍山を陥落させることに成功したのだった。

 

「ふ~とりあえずはいったん終わったな・・・・」

 

陥落させた定軍山の頂上で吹雪は切り株に座りそう呟いた。そう。今回の戦いはまだほんの一部に過ぎない。まだ戦いは続くのだ。

 

「(今回は刀だけで勝ったけど…次はこいつを使うかもしれないな)」

 

吹雪はちらりと背中にしょっている九九式小銃を見る。

すると・・・・

 

「隊長!」

 

突然声をかけられ、顔を向けるとそこには鄧艾、杜預、羊祜の三人が敬礼をした

 

「ああ、君たちか・・・・・今日はよく頑張ったな」

 

「いえ。隊長こそ、すごいかったです!」

 

「私たちも次はもっと頑張ります!!」

 

「・・・・」コクコク

 

鄧艾たちは張り切ってそう言うと吹雪は少し笑い

 

「そうか・・・なら安心して背中を任せられるな。鄧艾、羊祜、杜預」

 

と微笑んで言うと三人は顔を見合わせ頷き、鄧艾が一歩前に出て

 

「私の真名は椛と言います!」

 

「同じく真名は暁と言います!」

 

「真名は澪と言います!」

 

と、鄧艾、羊祜、杜預の順番に彼女は自分の真名を吹雪に言った

 

「いいのか?真名って大切な名前だろ?」

 

「はい!三人で決めました。ぜひ自分たちの真名!隊長に預けさせてください!」

 

三人は真剣な目でそう言うと吹雪は

 

「・・・・・わかった。君たちの真名預かるよ。俺の国には真名の風習がないからいつもの通り、沖田吹雪で頼む。これからも激しい戦いになると思うけどよろしく頼むよ。椛、暁、澪」

 

「「「はい!!よろしくお願いします!!」」」

 

こうして後に三国志の時代で大きな活躍をする三人の若き隊士たちは吹雪に真名を預けるのであった。

 

 

そして新選組の初陣ともいえる定軍山の戦いは官軍を打ち負かした黒山衆を破り敵の大部隊を破るという大勝利となったのだった



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黒き飛燕、その名は張燕

定軍山の戦いの後、沖田の所属する董卓軍討伐隊は定軍山の勝利を皮切りに、次々と戦地を転々とし、黒山衆を撃破していった

特に吹雪率いる新選組は黒山衆の戦い後、常に最前線で戦いその地にいる黒山衆を撃破するなど獅子奮迅の活躍をした

そして吹雪も常に部隊の先頭に立ち、黒山衆の賊を切り伏せたり、または持ってきた九九式小銃で後方にいる敵の指揮官を狙撃して倒した。

そしていきなりの狙撃に倒れた指揮官を見て、取り残された賊たちは瓦解し、そのうちの多くは逃散した。そしてそれを追尾し打ち取る新選組の幹部や隊士たちの抜刀部隊はその烈火のごとく敵の各地に点在している小規模部隊を各個撃破していった。

だが、それは簡単にできる行動ではない。可能な限り素早く敵部隊を倒し、素早く次の敵部隊にむかわねばならない

言うは易し行なうは難し

ではなぜ吹雪たち新選組がそれを可能にしたのか?

 

その理由は『指揮系統の細分化』と『後方援護部隊』にあった

先ず『指揮系統の細分化』だが、これは皮肉にも武勇の将が少数であった事が原因である

つまりは将が居ないのなら、将に頼らない部隊を作り出そうという訳だ

この時代の軍隊というのは、率いる将の資質に大きく左右される

成る程、有能な将に率いられた軍勢は確かに強い

しかし、それは個人の資質に依存する物であり、ある意味で非常に不安定な物であるのも事実だ

新選組は、誰が率いても同じ程度の戦果を期待出来る、言わば近代的システマチック軍隊の整備を急いでいた

戦闘状況をパターン化し、司令部が指示を下す

場合によっては軍師による修正が加えられて、それを前線部隊が実行に移す

遅延無く正確な指示を下すために、偵察部隊を無数に放ち正確な情報を入手、そして各部隊への伝令を増やし、太鼓や銅鑼、あるいは手旗信号による通信手段も確保する。

そして複雑で有機的な運用を可能にする為、末端まで目の届く指揮系統を設立

つまりは、将→佐官→尉官→下士官→兵といった具合に吹雪は指揮系統を細分化したのだ

人間1人が直接指揮を取れる人数には限界がある

だからこそ細分化する事によって、命令が届かなかったり過ちが起こったりする事を防ごうという訳である

当然ながら1人が1000人に指示を下すよりも、10人に指示を下す方が簡単だし錯誤も少ない

これによって新選組は幹部士官が少ないにも関わらず、驚くほど正確で素早い用兵を可能にしていた。そしてなにより兵卒がきちんと作戦内容を理解していたのが大きかった

 

次いで『後方援護部隊』だが、この重要さは言わずもがなだろう。新選組隊士の半数は出撃をしているが、残りが遊んでいる訳ではない

主力軍に絶え間なく補給を繰り返し、場合によっては疲弊した兵と入れ替わるといった仕事を黙々とこなしている

後の時代の補給部隊と違い、後方援護を主任務とする部隊であっても、半分は戦闘部隊として運用が可能なのが強みである

言うまでも無いが十分な補給がある軍隊と無い軍隊では、勝敗は始めから決まっている

その上、兵士達は適度に後方援護部隊と入れ替えを行っているから士気の低下も抑えられる

これは吹雪が元の時代の軍事知識から考えたやり方をアレンジした結果である

他にも他の軍勢に対して董卓軍の十八番の騎馬の比率が高かったり、輸送を専門部隊に任せてしまう等の細かな改良点も多い。そして何より雪風率いる偵察部隊の正確な情報が新選組を無駄なく動かすことができた

こういったこの時代には無かったシステムを多数取り入れた新選組の近代戦法は見事に成功し、新選組は現時点で世界最高の機動力を有する部隊であった

 

そしてその電撃戦さながらの行動力と攻撃力に何時しか黒山衆からは董卓軍。漢王朝の官軍よりも強くそして華雄軍とともに戦場を駆け巡るその黒い軍服姿から『黒い狂狼集団』と呼び恐れるようになった

そしてその隊長である吹雪も修羅さながらに敵を倒すその姿から

『人斬りの沖田』と呼ばれていた

 

 

 

黒山衆を次々と撃退する董卓軍だが、討伐している黒山衆の中に、肝心の黒山衆の棟梁である張燕の姿は何処にもいなかった。

 

「ここにもいなかったか・・・・・どうするか」

 

黒山衆の乱が始まって数週間。みんなが寝静まった夜に天幕の中で俺はそう呟く、いくら、討伐部隊である華雄軍や俺たち新選組の快進撃が続けど。長期戦になれば、物資も不足するし兵や民も疲弊する。だから吹雪はそろそろ決着をつけたいとそう思っていた。

 

「う~ん・・・・いったん外の空気でも吸うか」

 

そう呟き、俺は天幕を出た。俺は陣営から少し離れた場所にある少し大きな石に座り星空を見る

 

「ここにきてもう半年以上か・・・・・」

 

俺は小さく呟く。すると・・・・

 

「あの・・・・」

 

「ん?」

 

振り返ると、そこには女性が立っていた。服装からして一般市民のようだが・・・・

 

「あの・・・・新選組の人ですか?」

 

俺はその女性を見る。いや、女性というよりは少女だ。見た感じの年齢は俺と同じか一個下のような感じだ

 

「ああ・・・・そうだけど…君は?」

 

俺は少し警戒しながら彼女に訊くと

 

「あ、私近くの村の者でございます。実は黒山衆のことでお話ししたいことが・・・・ここではなんですので私の家に来ていただけませんか?」

 

「それならうちの天幕で話した方がいいんじゃないですか?」

 

「それはそうなんですが・・・・皆さん寝ていますし、何より大勢の前では言えないことが・・・・」

 

「なるほど・・・・それでお宅の村は?」

 

「はい。ここから少し歩いてすぐです」

 

「・・・・そうか。わかった。案内してくれ」

 

そう言うと彼女は俺を村まで案内し、俺はその場を離れるときある場所を見て小さく頷く。するとその場所にあった草がカサカサと揺れ、俺は村娘の後をついていくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村娘は俺を連れ出し、着いた場所は確かに村だったがそこはだれも住んで言うようには見えない荒れ果てた廃村だった

 

「なあ、そろそろ教えてくれないか?なんでこんなところに・・・・・」

 

連れて来たんだ?と続けようとした所、周りの建物から武器を持った集団が現れた。

 

「なるほど・・・・どうやらこの人の言う通り、黒山衆はここにいたようだな」

 

と、そう言い彼女を見ると

 

「はい。驚きましたか?枯草の御使い基新選組の隊長さん?」

 

「ああ・・・・まあ、うすうすはわかっていたんだけどな?」

 

「どういうことですか?」

 

「こんな夜中に村の娘がやってくるわけないだろ?それに黒山衆が潜伏しているという情報があったしな。まさかと思ったが当たっていたか・・・・・・それであんたが張燕さんか?」

 

「いいえ。私はその同志の于毒といいます。張燕様は多忙なお方・・・・ですので私たちが変わっておもてなししましょう」

 

そう言い指をパチンと鳴らすと、周りにいる黒山衆は剣を抜き弓を俺に向ける

 

「なかなかの歓迎だな?」

 

「随分と冷静ですね?自分の置かれている状況分かっていますか?私が黒山衆の一人と知っておきながら一人でここにきてそして今、無数にいる我が同志たちに殺されようとしているのに?」

 

「ああ。わかっているつもりだよ。でもおかしいと思わない?」

 

「何がです?」

 

「なぜ俺が一人で来たと思い込んでいるのかな?」

 

「何ですって?」

 

宇毒が俺の言葉に怪訝そうな顔をした瞬間・・・・

 

「う、宇毒様!?ま、周りを見てください!!」

 

「何ですって?」

 

一人の黒山衆の言葉に宇毒は周りをよく見ると囲んでいる黒山衆の背後一面、誠華以下、新選組の隊士たちが取り囲んでいた

 

「い…いつの間に」

 

「あんたに連れられる直前に、雪風に伝え隊士たちを誘導してもらったんだよ」

 

そう、先ほど吹雪は宇毒についていく前に草むらに潜んでいた雪風に連絡し、隊士たちを起こし、そして吹雪は自分から囮となりここに仲間を誘導したのだ

 

「それで・・・・宇毒さん。ここでやるつもりか?」

 

そう言い吹雪は刀を抜き構え、そして新選組隊士たちも剣や弩を構える。そして黒山衆も新撰組隊士に剣や弓を構え膠着状態になる

すると・・・・

 

「失礼します・・・・」

 

「「っ!?」」

 

いつの間にかフードをかぶった女性が立っていた。恐らく彼女も黒山衆の仲間だろう。するとその女性は

 

「張燕様があなたにお会いし話したいといっております。むろん話す相手は新選組隊長であり天の御使いである沖田吹雪殿ただ一人。二人きりで向こうの小屋で話をしたいと・・・・・」

 

「張燕が?」

 

「はい。よろしければ来てもらえますか?無論その間兵たちは動かしませんとおっしゃっています」

 

「わかった・・・・にここで睨みあうのもつまらん。話を聞きましょう。誠華、みんなすまないが少しだけ待機してくれ何かあれば合図する」

 

「わ・・・わかりました」

 

「では、こちらへどうぞ・・・・・」

 

俺が誠華にそう言い、その少女についていこうとすると・・・・

 

「お、お待ちください!!」

 

「?」

 

宇毒が少女を呼び止める。だがその時俺は彼女の言葉に何か違和感を感じた。すると少女は

 

「・・・・・・張燕様に逆らうおつもりですか?」

 

「うっ・・・」

 

少女に睨まれ、宇毒は顔を背ける。そして俺は少女に連れられ小屋の中に入る

 

「張燕様・・・・お連れしました」

 

とそう言う。小屋の中は火が灯してなく薄暗かったが、部屋の中に誰かいるのはわかった。そして俺のもとへ近づくとそこには女性がいた

 

「ごくろう・・・・・・で、あなたが、沖田吹雪か?定軍山に陣取らせた精鋭部隊を蹴散らし、宇毒のたくらみを暴くとは・・・さすがは池田屋で我が同志の幹部を打ち取っただけのことがあるな・・・・」

 

「ああ・・・・で、あんたが張燕か?」

 

「いかにも・・・・・」

 

「なるほど・・・・・つまりここに呼んだのは話し合う前に俺を試そうとしているんだろ?」

 

「・・・・どう言うことかしら?」

 

張燕を名乗った女性は目を細めると俺は

 

「だって、あんたは張燕じゃないよ。そろそろ下手な芝居はやめたらどうだ?あんたは張燕じゃないよ・・・・本物の張燕は・・・・あんただろ?わざわざ影武者使ったつもりだけど俺にはわかるよ」

 

そう言い俺は先ほど俺を小屋に案内したフードの少女を見る。するとフードの少女は小さく笑いだした

 

「ふふ・・・・・ふふふふ・・・・・まさか見抜かれていたとわね・・・・なぜわかったのかしら?」

 

そう言いフードを取るとそこには白髪の長髪の少女…黒山衆頭目の張燕が俺の顔を見てにやりと笑いそう訊く

 

「さっき、宇毒があんたに対して『お待ちください』と言っていた。敬語を使うのは黒山衆の頭目であるあんただけだと思ったからさ。それに雪風の情報では張燕は身長が少し低いということが分かってな。だからさっきの女性が張燕じゃないって言うのが分かったのさ」

 

「なかなかの推理力ね・・・・・まあ、いいわ。あんた。明かりをつけてくれる?それと私の秘蔵の酒とそれに合う肴も用意して」

 

「畏まりました張燕様」

 

と、張燕は先ほどの女性に言うと女性は明かりをつけ始める

 

「さて・・・・・それではさっそく話を聞こうじゃないか張燕?」

 

俺がそう言うと彼女はにやりと笑うのであった



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張燕と沖田

「隊長たち何をしているんすかね~?」

 

「分からない。もうあのまま一刻立つ・・・・・無事だといいが」

 

「争っている様子はなさそうですが・・・・・」

 

誠華たちは吹雪のいる小屋を見てそう話す。小屋の外では新選組と黒山衆が対峙し、いつ斬り合いが始まるかどうかの緊張感があった。

 

「(隊長は・・・・張燕と一体何の話をしているのだろうか・・・・)」

 

副隊長である誠華は隊長である吹雪がいるであろう小屋を心配そうに見るのであった。すると

 

「隊長のことが心配っすか?」

 

隣にいる桜花が訊くと

 

「当たり前だ。桜花。お前はどうなんだ?」

 

「そりゃ心配に決まっているっすよ。今私がいるのは隊長のおかげだし、何よりこの場にいる隊士たちみんながそう思っているっすよ。それに私たちが隊長を信じないで誰が隊長を信じるんだ誠華?」

 

「そうか・・・・・そうだな」

 

そう微笑み誠華たちは吹雪と張燕が会談をしている小屋を見るのであった

 

 

 

 

 

 

「どうしたのかしら沖田君?気難しい顔をしているが?」

 

黒山衆の頭目である張燕とあった吹雪は今小屋の中で酒を飲みながら話す張燕と話しをしていた

 

「遠慮せず、君も飲み食いしたらどう?別に毒なんかいれていないよ」

 

「そうは思っていない。ただこれは何処から持ってきたものだ?」

 

そう言い吹雪はさらに盛られた料理と酒を見る。どれもただの賊が用意できるほどの高級な物ばかりだったからだ

俺が何を思っているのか分かったのか張燕は

 

「ふっ…安心したまえ、天の御使いさん。これは村から略奪したものでも貴族共から巻き上げたものではない。ちゃんと自分のお金で買い集めたものさ。私はいい酒や香料を集めるのが趣味でね」

 

「・・・・・・」

 

「その顔は疑っているね?まあ無理もない。私は大盗賊集団のお頭。なぜそんなのを買うお金があるのにこんなことをするのか?」

 

「ああ・・・・それともう一つ。今回の乱。お前たちは周辺の村を襲わず、漢王朝の兵だけを撃破している・・・・・・お前たちは一体何をしたいんだ?お前たちの目的はなんだ?」

 

そう・・・今までの戦いの中、雪風の調査で黒山衆は漢王朝の軍勢を撃破はしても一度も村を襲っていない。一部では襲った連中もいたが、それは物資を奪っただけで村人には死人が出ていなかった。

なぜそんなことをしているのか俺は彼女に訊くと彼女は

 

「ふふっ・・・・目的?目的ね・・・・・」

 

と、小さく笑う

 

「沖田吹雪・・・・それは愚問という物だ・・・・目的とはね」

 

そう言い小さく笑った後、俺を見てニヤっと笑う

 

「極論としていってしまうのであれば沖田君。私には目的など存在しないのだよ」

 

「何?」

 

「覚えておくといい賢い少年よ・・・・世の中には手段のためなら目的を選ばないというどうしようもない連中が存在するのだよ・・・・そう我々のようにね?だが・・・強い目的を作るとすれば……君の存在だ」

 

「なに?まさか池田屋事件の復讐か?それで最終目的は洛陽放火か?」

 

「あんな連中と一緒にするな。私は洛陽放火には反対派だった」

 

「じゃあ、池田屋事件での洛陽放火作戦は・・・・」

 

「あれは牛角が勝手にやり始めたものだ。私は町を放火してのやり方が気に食わなかった・・・・・・だからあいつと袂を別った。私の手段は無駄な血を流すのは極力避ける方なんでね。まあ手段を実現するため犠牲はやむを得ないのだがな」

 

と冷ややかな笑みで酒を飲みそう言う張燕

 

「矛盾だな・・・・・ならなぜこんな騒動を起こした?」

 

「だから言ったろう?強いて理由を作るのであれば君の存在だ」

 

「俺の?」

 

「そうだ。今この漢王朝という国は腐りきり、金持ちや権力を持つ者は贅沢にそして裕福に生きる反面。そうでないものは貧困や差別により苦しむ。そう。今の状態がそうだ。我々がする手段とはその腐りきった連中を消毒することなんだよ」

 

「そして・・・・新たに国を立ち上げると?」

 

「それに近い形だ。」

 

「張燕。お前は破壊活動をして新たな世界を作るというが民衆はどうだ?急な改革で民衆がそれを認めると?」

 

目を細めそう言う吹雪に対し張燕は

 

「こんな話を知っているかい沖田君。カエルを熱湯に入れるとカエルはすぐに飛び出す・・・・だが、普段の水の温度より少しだけ温かい水に放り込んでもカエルは自ら出ようとしない。そのまま水をどんどん上げていくとカエルは水の温度が上がったことに気づかず、茹で上がってしまう」

 

そう言い肩をすくめ

 

「ようは慣れということだ」

 

「人間はカエルとは違う」

 

「そう祈っているよ・・・・・話がそれたね・・・・それでこの大陸には二人の『天の御使い』と呼ばれる存在がいる。一人は調べたところまだまだ青く脅威ではない・・・・だがもう一人。つまり君だ。私にとっては厄介な存在だよ。『天の御使い』と呼ばれ短期間で天水の治安を改善させ、そして荒くれ者たちを率い漢軍ですら倒せなかった定軍山に布陣させた我が同胞を少数で打ち取った。池田屋と言い定軍山と言い非常に厄介な相手なんだよ君は。だから今回の乱はこの騒ぎを起こせば必ず君が出ると踏んでわざわざ同胞たちを天水近くまで進行させたのだ」

 

「つまり・・・俺を抹殺するためか?」

 

「それだったら天水の街に暗殺専門の同志を送り込み君が寝ている隙にその首を掻き切っているさ…要は池田屋の奇襲以外での君たちの実力が知りたかった。結果には満足しているよ」

 

「それは光栄だな?で、どうする張燕。ここでやるつもりか?」

 

吹雪がそう言い腰のホルスターのふたを開け14年式拳銃のグリップを持つと彼女は両手を上げ

 

「いや。よそう…今は食事中なうえ。食事中に暴れるのは礼儀に反する。言ったろ結果は満足していると・・・・・今回は私の負けということで我々の方から引こう」

 

そう言い張燕は指をパチンと鳴らすと、そばにいた女中が食器と食事を片し、そして張燕は先ほど自分のまとっていたフードを取り

 

「さて・・・・なかなか楽しい話だった。今回は私の負けだが・・・・・」

 

そう言い彼女はフードの中に隠していた長剣を俺の首筋に当て

 

「次は負けないよ・・・・私は決して君に打ちのめされない。君にもし私を破滅させるだけの知力と武力があれば、私にもまた君を破滅させるだけの知力と武力があるのだよ沖田君」

 

そう言い、不適の笑みで言う張燕に対し沖田は

 

「その挑戦はいつでも受けてやるよ張燕。だが俺からも言っておく。俺は君を確実に破滅させることが出来るならば、公共の利益の為に俺は喜んで死を受け入れよう」

 

と不敵の笑みで返すと張燕は少し驚いた顔をするが

 

「ふふ・・・・期待通りの男だな君は。君のご高説承ったよ。それに君の覚悟もね」

 

そう言った瞬間、あたりから黒い煙が立ち込めた

 

「っ!?」

 

吹雪が驚いた瞬間

 

「また会おう。沖田君」

 

そう言い彼女は煙に紛れて消えるのだった。そして煙が晴れた時にはそこには誰もいなかった。すると・・・・

 

「隊長!大丈夫ですか!!」

 

と、誠華たちが入ってきた

 

「誠華・・・・ああ。俺は大丈夫だ。それより表はどうなったんだ?」

 

「はい。奴ら黒い煙を出して、私たちの目をくらませてその隙に逃げられてしまいました・・・・隊長。張燕は?」

 

「ああ、誠華たちと同じように逃げられたよ」

 

「くっそ!せっかく敵の親玉を捕まえると思ったのに!」

 

桜花が悔しそうに言うと

 

「大丈夫だ。また捕まえればいいだけの話だ。さて・・・・俺たちも戻るぞ」

 

そう言い吹雪は帽子をかぶり小屋を出た

 

「(あの張燕・・・・長い付き合いになりそうだな。それにしてもまるでモリアーティー教授のような奴だったな。侮れない)」

 

そう思うのだった。そしてその後、定軍山の戦いを最後に黒山衆は突如と姿を消し、黒山衆の乱は終結するのであった。

そして初陣を飾った吹雪たち新選組も華雄軍とともに天水へと帰還するのであった

 

 

 



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信頼

黒山衆の乱が終わり、部隊が天水へ帰還。新選組も凱旋する。

そしてその翌日、

天水警邏隊及び新選組は戦後処理に追われた。黒山衆と官軍の戦いによって壊滅させられた街の治安維持や戦災復興の手伝いをしていた。

そして隊舎でも

 

「班長。書類まとめてきました」

 

「ありがとう。そっちにおいてくれる?」

 

「え・・・と、この区域の警邏報告書はと・・・・」

 

「ねえ、これ計算間違っているぞ?ちゃんと計算しろ!」

 

「あ、はい!すみません!」

 

「次は西地区の警邏ね。どこの班だっけ当番?」

 

「第2班と第4班だろ?」

 

と、桜花や蘭花などの幹部士官や班長格の下士官級の隊士たちが書類仕事に追われていた。

戦いとは始めるより終わった後が大変というのはまさにこのこと。

黒山衆の乱終結後、前線に赴いた部隊は戦果や戦線の報告書の整理、そして戦死者リストのまとめ。後方部隊は物資の残数や、武器の修理などの依頼、そして町に残った部隊はかく地区の警邏などであった。

 

「いったいこの書簡。いつになったら終わるんすかね・・・・」

 

「私に聞くな・・・・えっとこれは密偵からの報告書だな」

 

「ええっと・・・・・この計算どうやるんだっけ?」

 

「鄧艾さん。この書類まとめて経理部に渡してくれる?」

 

「あ、はい!」

 

「おい、羊祜。外回り(パトロール)にいくっすよ!」

 

「あ、はい!郭汜班長!」

 

と、大忙しであった。そして隊長格である吹雪も書類仕事やらで大忙し、休んでいる暇などなかった

 

「誠華。これから月や詠に事件報告しに行くことになっている。同行してくれ。時間は18:00だ。覚えておいてくれ」

 

「あ、はい・・・・それよりも隊長」

 

「ん?どうした誠華?」

 

「最近休まれていないようですけど・・・・大丈夫ですか?この頃隊長は事後処理や、町の警邏、そして書類の仕事で徹夜続きでしたし、今日は休まれては?」

 

誠華は心配そうに言う、確かに吹雪は事件後、休まずに仕事ばかりし続けていた。そのことを心配した誠華は吹雪に休むように言うが

 

「あはは…大丈夫だよ」

 

と、そう言い、席を立ち上がろうとした瞬間、

 

ぐらぁっ・・・・

 

「(あ・・・れ?)っ!?」

 

突如目の前の景色が歪みだした瞬間、吹雪はバランスを崩し倒れそうになるが

 

「隊長っ!!」

 

誠華が吹雪を受け止める。そして誠華、そして吹雪の顔色が悪いことに気づき額に手をやると

 

「っ!?熱があるじゃないですか!今日は休んでください!」

 

そう言うと誠華は吹雪の肩を抱き、運び

 

「雪風。私は隊長を部屋に運ぶから残りの仕事、お願いできる。運び終わったら戻るから」

 

「分かったわ」

 

雪風にそう言うと誠華は吹雪の肩を貸りを運ぶのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪の部屋

 

「・・・・まったく。体調が悪いなら悪いと言ってください。あのまま倒れたら怪我していたかもしれないんですよ?」

 

「あはは…すまないな誠華」

 

部屋に運ばれベッドに寝かされた吹雪は苦笑して誠華に言う。吹雪が倒れた原因は医務員の診断では過労とのことだった

 

「それにしても、やっぱり君に怒られるのは怖いね。隊士たちが怖がる気持ち少しはわかったな」

 

「私は真面目に言っているんですよ隊長」

 

呆れながら誠華はそう言うと吹雪は起き上がり

 

「あはは・・・・すまないな・・・・もっと俺がしっかりしないとな」

 

と頭を掻き申し訳なさそうに言うと誠華は

 

「隊長…隊長が私たちに気を使って人一倍に働き、そして具合が悪いことを言わなかったのはわかっています。確かに私たち警邏隊・・・いえ新選組は結成し始めたばかりで新人隊士が8割以上いて、熟練幹部もほんの僅か・・・・しかも隊士もこの頃増えて、例の黒山衆事件の後処理ときていますので隊長がいろんなことに対応せざるを得ず重圧も何倍です・・・・・・・ですが、その強さ、を支えるために私たち幹部がいるんです」

 

そう言うと誠華は吹雪を見て

 

「それとも・・・・隊長は私たちのことをそんなに頼りない存在なのでしょうか?」

 

そう心配そうにそして真剣な目つきで吹雪にそう言うと、吹雪くは小さく笑い首を横に振り

 

「いいや・・・・いつも信頼しているよ」

 

「隊長・・・・」

 

「誠華・・・・俺がこの国出身じゃないのは知っているよな?」

 

「はい。隊長は天の国から来た人・・・・ですよね?」

 

「まあ、天の国というのはちょっと違うかもしれないが、まあ、異国出身なのは当たっているよ・・・それでな俺は何も前触れもなく突如この国に飛ばされた。それが神の意志か何かの悪戯化はわからないけどな・・・・突如違う世界に飛ばされた俺はどうすればいいかわからなかった。もし母さんや月に出会わなかったらきっとどっかの盗賊に襲われ死んでいただろうな・・・・」

 

「いや、黒山衆の盗賊たちを倒してきた隊長が言うのはちょっと説得力が・・・・」

 

「まあ、飛ばされた時はまだ学生・・・いや、一般市民の感じがあったからな・・・・まあ、極論を言えば俺は居場所を・・・今いる場所にいたくて、必要な人間だと思われたくて必死になっていたんだなって・・・・」

 

「隊長・・・・」

 

「だが、今の発言で目覚めたよ。…ありがとう誠華。心配してくれて」

 

そう言うと吹雪は誠華の頭をポンポインと撫でた。撫でられた誠華は顔を赤くし

 

「べ・・・別にそうして欲しくて言ったわけではありません」

 

と、そう照れ気味にそう言う誠華に吹雪は微笑み

 

「それより誠華。仕事は・・・・」

 

「その件なら大丈夫です。先ほど雪風にお願いし、書類関係は蘭花が、密偵の任務は雪風が、外回りの警邏は桜花がすることになっています。そしてわたしはこれから、月さまのところに行って今回の事件をまとめた報告をしに行きます」

 

「そうか・・・・頼りにしているよ副長」

 

と、そう言うと誠華はニッコリと笑い

 

「はい。お任せください…隊長」

 

誠華がそう言った時、突如、地響きがし、何かが近づく音がすると

 

「隊長!大丈夫ですか!!」

 

「具合は大丈夫ですか!!」

 

「実家から持ってきた薬もってきました!!」

 

「私、体にいい果物買ってきましたよ!!」

 

ドアが勢いよく開き、そこから桜花の他、新撰組隊士たちが雪崩のごとく部屋に入ってきた。しかもその手には薬箱や果物やらいろんなものを持っていた

 

「おまえら・・・・」

 

「隊長が倒れたと聞いていても経ってもいられず、休憩時間を利用し見舞いに来たっすっ!!」

 

桜花がそう言い敬礼すると他の隊士もう頷きながら敬礼する。それを見た誠華は

 

「隊長…みんな、あなたを慕っているんですよ?」

 

「ああ・・・誠華も含めて自慢の仲間たちだよ・・・・」

 

と、そう言うと吹雪は笑い

 

「・・・・ここまで信用されて俺は幸せ者だなっ!!」

 

と、笑い心の底から嬉しく思う吹雪であった。



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登場人物紹介(新選組編)

沖田吹雪(おきた ふぶき)

身長172㎝

体重58キロ

 

呂布奉先こと恋の息子であり、天水警邏隊(新選組)隊長。

現代日本から突如、外史である三国志の時代に飛ばされる。

見た目は髪の色とアホ毛以外は顔立ちは母親である恋に似ている。仲間や味方は命をかけて守り、それらに害する敵には、容赦はしないし、非情な策すらとることも。戦い以外での性格は穏やかで、読書好き。剣の腕は祖父に鍛えられているため、霞と華雄と互角くらいの腕前。

堅苦しいのは嫌いで気さくに話す姿勢から部下たちには慕われている。

先祖代々武士の家系であり祖父から武士道を教わっているため、義や人情に熱い。祖父曰く祖先は新選組一番隊組長沖田総司とのこと

 

所持品

刀:長曽根虎徹

小銃:九九式小銃(前期生産型)

祖父が現役時代に使用していたもので三十年式銃剣もおまけについている。

 

拳銃:南部十四年式拳銃

 

服装は陸軍三式軍服(階級章は外している)軍帽に略帽を所持している

 

 

 

 

 

 

李傕 稚然(りかく ちぜん)

cv:日笠陽子

真名 誠華(せいか)

董卓軍警邏隊所属で新選組副隊長。黒い長い髪が特徴の少女。剣の腕は強く警邏隊の隊士から「鬼の副長」と呼ばれている。性格は温厚で真面目だが、吹雪が着任した時は彼のことは毛嫌いし、試合を申し込むが完敗。

同僚に陰口を叩かれているところ吹雪が庇い、そして彼の人柄と武士道精神に感銘を受け次第に尊敬の念を持つようになる。桜花とは幼馴染でよく彼女のストッパーなどをしたりしている。また、新兵の訓練教官もしていて彼女の訓練を受けた人は彼女の名を聞いた瞬間震えあがってしまうという。

訓練時は厳しいが、非番では部下と一緒に酒に付き合うなど、面倒見の良い一面がある

隊士曰く新選組一番の巨乳とのこと

 

武器:日本刀によく似た曲刀

 

 

 

 

 

郭汜(かくし)

cv:大地 葉

真名 桜花(おうか)

董卓軍天水警邏隊(新選組)所属、隊長、副隊長の補佐をする副長助勤を務め、場合によっては戦闘隊長も務める実働部隊の責任者。

黒髪のショートヘアーでくせっ毛左もみあげを三つ編みが特徴のボーイッシュな少女で誠華の幼馴染。

見た目はチンピラ風に見え喧嘩好きだが、性格はいじめは決して許さない真面目な性格で、昔馬泥棒に遭った人の馬を盗んだ奴から取り返してくるなど正義感の持ち主。見た目とは裏腹に計算が得意で警邏隊もとい新選組の財布を握っている勘定方も任せられている。たまに語尾に「~っす!」という時がある

剣の腕は荒々しいがとても強く、奇襲に特化した戦法をよく使う。

吹雪とは何度か勝負を挑んだが敗北し、次第に尊敬の念を抱く。そして吹雪の悪口をいう奴には容赦しない。

 

 

武器は、片手直剣

 

 

 

 

樊稠(はんちゅう)

cv:井上麻里奈

真名 雪風(ゆきかぜ)

董卓軍天水警邏隊(新選組)所属、新撰組諜報機関部隊長。長い銀髪に左目に眼帯をした少女。新選組の縁の下の力持ちで、吹雪が作った諜報機関を任せられている。

彼女の情報収集がなければ、池田屋事件は存在せずテロが成功していたかもしれないって言われたほどだった。

性格はあまり喋らず、表情も変えないから、冷徹な人と思われがちだが、私情を挟まず、また部下に対しても優しく接するなど極めて心優しい性格。

吹雪に対しては幹部の中では一番忠誠心が強い

武器は短剣

 

 

 

馬鈞 (ばきん)

cv:ブリドカットセーラ恵美

真名 夕張(ゆうばり)

天水の武器屋に奉公していた娘で、姿はタンクトップで髪は少し緑がかった銀髪で前髪がぱっつんでセミロングをポニーテールにして大きな緑のリボンで留めているのが特徴。

昔から発明とかが好きで、李典こと真桜とは発明友達でもある。しかし真桜とは違い火薬を中心とした発明が得意で、「火薬を使った武器が戦争の雌雄を決する」っと、先のことまで読んでいた。また彼女は独自の知識で火縄銃の設計図を描いていた。

吹雪と出会い、銃の仕組みを知ってから彼に興味を持ち、天水警邏隊(新選組)技術開発部に入る

 

 

 

 

姜維

CV:水樹奈々

真名:蘭花(らんふぁん)

天水警邏隊(新選組)の密偵であり、雪風の部下だったが幹部に出世する。黒髪のお団子ヘアで口数が少なく冷静沈着な性格だが、実は内気で恥ずかしがり屋。

任務は幹部になっても変わらずの隠密密偵や、隊士内の不正取り締まりなどをする監察官を務める

 

 

 

 

鄧艾

CV:永田依子

真名:椛(もみじ)

天水警邏隊(新選組)の隊士であり、士官候補生。髪型は短いツインテールで、かなりのくせ毛特徴の女の子、性格は穏やかで仲間想いの性格。元は旅の武人であり羊祜、杜預とは幼馴染。新選組隊士募集の広告を見て三人と共に志願し、厳しい訓練の中、協力し合ってこれに合格する。

拳法の達人であり、肉弾戦が得意。

 

 

 

羊祜

CV:米澤円美

真名:暁(あかつき)

天水警邏隊(新選組)の隊士であり、士官候補生。鄧艾と杜預とは幼馴染。穏やかなでしっかり者で礼儀正しく、気が利く性格である。茶髪で小柄な女の子。新選組隊士募集の広告を見て三人と共に志願し、厳しい訓練の中、協力し合ってこれに合格する

夕張の技術開発部に所属することになる

弓などの射撃が得意。

 

 

 

杜預

CV:竹達彩奈

真名:澪(みお)

天水警邏隊(新選組)の隊士であり、士官候補生。鄧艾と杜預とは幼馴染。黒のツインテールが特徴。性格は相手を気遣ったり、面倒を見てくれたりと優しい性格である。上司である桜花にはいじられたり、意地を張ったり、自分の気持ちをダイレクトにぶつけるなど素直で子供っぽい一面もある。

そして運動が少し苦手であり、日焼けしやすい体質らしい

隊長である吹雪と副長である誠華のことを尊敬し、特に吹雪の言う武士に憧れれているという一面もある

 



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拠点フェイズ華雄: 武の心

本日は吹雪と華雄の話を書いてみました


練兵所

 

誰もいないそこには誠華が抜刀術の構えをしていた。そして誠華は剣を抜刀する

 

「・・・・・・我、人に勝つ道を知らず・・・・・我に勝つ道を知る・・・・・」

 

そう言い誠華は刀を鞘に納める

 

「私は護りたい・・・・・大切な人を」

 

「ん?李傕ではないか。」

 

「・・・・・あっ華雄将軍。」

 

そこに華雄が入ってきた。

 

「お前、一人で何をしているのだ?」

 

「あ、はい。武士道精神を鍛えるため精神修行をしていました」

 

「武士道?なんだそれは」

 

「はい。沖田隊長に教わった天の国の武人の心得だそうです。天の国の武人は剣で戦うこと以外に相手を敬い戦うとか、特に自身の心を強くすることを大切にしているらしいです」

 

「心か‥‥変わっているな」

 

「私も初めて聞いた時は変に思いましたが・・・・・」

 

「・・・・で、やってみてどうなんだ?その心の修行っていうのは?」

 

「はい。やってみるとなんていうか・・その。もう一人の自分っていうか弱い自分を見つめなおしもう一度強くなろうって気持ちになりました」

 

「そうか・・・・・・ところで李傕。お前のその剣、変わった形をしているが、うちに入ったばかりの時は違う得物だっただろ?・・・・・」 

 

「ああ、これですか?これは隊長の剣を真似て作ってもらったんです。少しでも隊長のような立派な武人になるために・・・・・」

 

「そうか・・・・・」

 

「では華雄様、私はこれで失礼します」

 

誠華はそう言い華雄に一礼をして練兵所を後にしたのだった

 

「ふむ‥…武士道っか・・・・・」

 

一人残された華雄はそう呟くのだった。あれから翌日、練兵所のほとり二人の人物が模擬戦をしていた。

 

「腕を上げたな吹雪っ!」

 

「いえ、俺なんてまだまだだよ」

 

と、吹雪と華雄が刀と巨大な斧で戦っていた。鉄と鉄がぶつかるような激しい金属音が鳴り響いていた。

 

「謙遜するな。あれだけ私の一撃をかわせ私の懐に飛び込み攻撃できるのは正直誇っていいぞ?何しろ今お前の相手をしていたのは私なのだからな。」

 

鍔迫り合いの中、華雄は笑って吹雪にそう言う。

 

「それは武術教えてくれた人が上手かったからだよ。」

 

「はは!そうか張遼と、呂布が鍛えているだけはあるな。・・・・・わきが甘いぞ吹雪っ!」

 

そう言い華雄は力押しで吹雪を押し、弾き飛ばす。すると吹雪は剣を構えた。それは牙突の構えじゃなかった。吹雪の構えは刀を突き刺さした構えだった。

 

「・・・・・吹雪なんだその構えは?」

 

「・・・・・・俺の実家・・・・・沖田家の流派の構えです」

 

「流派?」

 

「天然理心流・・・・・曾祖父から伝わる剣術だ」

 

そう言い、吹雪はじっとするそれを見た華雄は

 

「(・・・・・隙がない・・・・)」

 

それを見た華雄は得物を握り直し構える。そして

 

「「いくぞっ!」」

 

そう言い、二人は激突するのだった・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・はっ!」

 

「おお、気が付いたか吹雪」

 

「あれ?華雄?・・・・」

 

目が覚めると華雄が俺の顔を覗き込んでいた。

俺は確か華雄と模擬戦をして、得意の流派で華雄と戦っていたはずだ。そしてしばらく戦っているうちに華雄が大斧を振りかざしてそれを受け止めたまでは覚えているんだけど・・・・・・

 

「まったくお前は私の渾身一撃を受け止めたはいいが、その衝撃で脳震盪を起こして気絶するやつがあるか。戦場だったらその隙に殺されてたぞ?まあの一撃を受け止めたのは呂布以外ではお前だけだがな」

 

「あ、ああ・・・・ところで華雄」

 

「ん?なんだ?」

 

「なんで華雄が膝枕しているんだ?」

 

そう今俺は華雄に膝枕されている状態だった。

 

「あ、いや…その・・・・・倒れているのを放っておくわけにはいかないからな。・・・・・嫌だったか?」

 

「いや嫌じゃないよ‥‥むしろ心地いいくらいだ」

 

それになんか、いい匂いもするし・・・

 

「そ、そうか///」

 

そう言い華雄は微笑んでいた。華雄にもこんな一面があるんだな・・・・

 

「吹雪、お前に訊きたいことがある」

 

「ん?なに?」

 

「前に李傕に訊いたのだが、武士道とは・・・・どういうものなのだ?」

 

「え?ん~とそうだな・・・・武士道っていうのは一口に言っても千差万別であるからな・・・・まあ、簡単に言えば人としての誇りかな?」

 

「誇り?」

 

「ああ、どんなに時代が変わろうとも決して忘れてはいけない武人としての・・・・・人としての誇り。それが武士道だと思うよ。まあ、あってるかどうかはわからないけど」

 

「そうか・・・・それが武士道ってやつなのだな。・・・・・・・吹雪、私にとって武はすべてなんだ・・・・私が武人になったのは父の影響だ」

 

「お父さんの?」

 

「ああ、お前は信じられないかもしれないが、幼い頃の私は体が弱くいつも部屋に籠りっきりで本を読むのが趣味なごく普通の少女だった。だが、ある時な父が庭で武術の練習をしているのを見てな。こんな体の弱い私もあんな風になれたらっと武人の道を目指すようになったんだ・・・・・」

 

俺は黙って華雄の話を聞く。華雄は懐かしそうに頭目で見て話をつづけた。

 

「それでな、私はその後、父に頼み込んで武術を始めたんだがこれがなかなか上手くいかなくてな。たったの素振り10回でばててしまってな。またある時はただのかけっこでもすぐに息切れしまうほど私は弱かった。辛いと思うことも多かった。・・・・・だが私は武術をやめなかった。」

 

「なぜ?」

 

「それはな。少しでも父のようになりたかったからだ。私の憧れる父のように。その後、私は母親に反対されながらも武術の鍛錬をつづけた。父もそんな私を見て一生懸命に教えてくれた。だから私はその期待に応えるため頑張りそして今に至る。私が今持つ金剛爆斧も父から譲り受けた大切なものだ。だから私にとって武とは父との大切な思い出なんだよ」

 

「そうか‥‥‥で、お父さんは今?」

 

「・・・・・・5年前に他界した」

 

「・・・ごめん」

 

「いや、お前が謝る必要はない父は天命を全うしたんだから・・・・・・」

 

そう言って華雄は空を見上げる。その顔は少し寂しい顔をしていた。

 

「華雄・・・・」

 

「すまない。湿っぽい話をしてしまったな。今のことは忘れてくれ。・・・・・・・・それより吹雪」

 

「ん?なに?」」

 

「お前何か悩んでいるのか?」

 

「・・・・」

 

「図星だな。まあ、言いたくなければ言わなくていい。ただ一言だけ言わせてくれ。」

 

「なに?」

 

「お前に悩む必要はない。お前には私やみんながいる。だからお前はお前の思うがままに進めばいい」

 

そう微笑んで言うのだった。その笑顔に俺は安心する

 

「ああ…そうだな。ありがとうな華雄。おかげで少し気分が軽くなったよ」

 

「それはよかった。だがその代わりだ。もしも私が暴走するようなことになったら止めてくれ」

 

そう言われ俺が顔を見上げると華雄の顔はどこか照れくさいのか赤かった。

 

「ああ、その時は全力で止めるよ華雄」

 

不適の笑みでそう言うと、華雄は顔を赤くして

 

「////・・・・ところで吹雪。お前はいつまで私の膝に頭を乗っけているんだ?」

 

「え?ああ、ごめんごめん」

 

俺は慌てて立ち上がる。そして吹雪は華雄に手を差し伸べる

 

「立てる?」

 

「ああ、ありがとうな吹雪。」

 

そう言い華雄は吹雪の手を取り立ち上がろうとするが・・・・

 

かくっ

 

「うわぁ!?」

 

「え?わぁっ!?」

 

華雄は立ち上がろうとする際バランスを崩し倒れ、華雄の手を握っていた吹雪もまた引っ張られる感じで倒れてしまうそして・・・

 

「「・・・・・」」

 

今二人の格好は、吹雪が華雄を押し倒している感じの格好になってしまっていて、そして互いの鼻がくっついた状態になってしまっていた。

 

「うわ・・あ・・・///」

 

と、わけの分らない言葉を口に出しながら、その顔を真っ赤に染め上げていく。そして・・・・

 

「うわあぁぁー!!」

 

ドガンッ!

 

「へぶし!?」

 

顔を真っ赤にした華雄は吹雪に顔面パンチした後、顔から湯気を出して走り去っていった、しっかりと武器はもったまま。一方吹雪はというと、華雄のパンチをもろに喰らったため、夕張が来るまで気絶してたのだった。因みに吹雪は「あのパンチ…絶対に世界狙えた・・・」と言っていた。

 

 

「はぁ・・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

自室の中、華雄は胸を押さえていた。

 

「(まったく、何を赤くなっているんだ、私は……だめだ胸の鼓動が止まらない…‥やはりあの時が原因なのか?)」

 

顔を赤くしたまま華雄は先ほどのことを思い出していた

 

「(待て待て!あいつは私にとって弟みたいな存在だ。・・・だけどなぜあの時、…なぜだわからない!。この感情はなんなのだ!?)」

 

と、自室の中、華雄はしばらく謎の感情に悩まされるのだった。

 



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昇り竜

「あ、吹雪。警邏お疲れさん」

 

街を歩いていると、私服姿の夕張に会う

 

「おう、夕張。お前は買い物か?」

 

「ええ、あ、そう言えば吹雪例の銃。やっと生産と実用性が出てきたわよ…あとでもう一回性能試験とかするけど見に来る?」

 

夕張は以前、吹雪の九九式小銃をベースに小銃を作り出しては見たものの、弾丸の不発やら、大陸の砂が機関部に入って動作不良を起こすなど、問題が多く、以前の黒山衆の戦いでは導入できなかったが、現在は改良に成功し実用段階まで来ていた

問題の薬莢は流石に真鍮の薬莢は出来なかったため紙薬莢となっている。本当にすげえよ夕張は何でも作れる。

 

「分かった。警邏が終わったら見に行くよ」

 

「ああ、楽しみにしとけよ。そう言えば吹雪、最近妙な噂があるんだよ知ってるか?」

 

「妙な噂?・・・・・ああ、華蝶仮面のことか?」

 

華蝶仮面とはなぜか突如現れた。謎の人物だ。報告では、白い服を着てパピヨンマスクをつけた女性だというのはわかったのだが正体まではつかめなかったらしい。各州ごとに現れては暴漢退治といった街の治安維持に貢献しているのだが、やり方が過激らしく各州の役所からお尋ね者となっていたりする。

 

「ええ、何でもその華蝶仮面がこの天水に来ているらしいのよ」

 

「へ~そうなのか。誠華がきいたら新選組全隊士を使って捜索しそうだな」

 

「ええ、確かに誠華、その準備をやっていたんだけど…」

 

やってたのかよ・・・・

 

「何でも、西の地区の豪商相手になんか苦戦してるのよ」

 

「ああ、あいつか。まだ証拠が出ていないのか?」

 

夕張の言う西地区の豪商とは文字通り西地区にいる豪商のことである。その豪商は何かと怪しい男で、物資の横流しや、麻薬、そして黄巾党に武器などを送っているという疑いがあり、月や詠の権限で誠華たちが家宅捜索をしようとしたが、何でも朝廷の高官の身内ということで拒否されたうえ、証拠も出ないため未だ行き詰っているという。以前は桜花が力づくで強制捜索をしようとしたが、その時は蘭花や雪風に止められた

 

「ええ、誠華もそのことで頭抱えているのよ。じゃあ、私は行くね」

 

「ああ、またな」

 

そう言い俺は夕張と別れて警邏の続きをした。しばらく歩いていると向こうで何やら人だかりができていた。なんだろうと俺はその人だかりの所に行く。

 

「何があったんだ」

 

俺はすぐそばの人に訊く

 

「あ、これは吹雪様。何でもごろつき共があの店の主に難癖つけて店の商品を奪っていこうとしたのさ。それを旅の武芸者が・・・」

 

「旅の武芸者?」

 

俺は様子を見る。すると確かにごろつき8人と白い服を着、長い槍を持った女性が今にも喧嘩をおっぱじめようとしていた。

 

「やれやれ・・・・止めに行くか」

 

そう言い現場に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、何度も言ってるだろ武芸者さんよ~。この品は盗品。俺たちがこの前盗まれたものに似てるんだよ。だから盗まれたものを取り戻すのは当たり前だろう?」

 

なんとも無茶苦茶な理由である

 

「ほ~ 貴様らのようなごろつきがそんな高価なものを持っていたとはな。疑わしいものだな」

 

白い服の女性にそう言われごろつきの頭に血が上る

 

「な、なんだと!」

 

そう言いごろつきは剣を抜き襲い掛かろうとしたが・・・・

 

「そこまで!!」

 

「「!?」」

 

騒動が始まろうとしたそのとき、別の人物の声が上がる。皆がその声をした方を見ると、其処には吹雪がいた

 

「お前たち何を騒いでいるか知らないが、暴力を振るおうとするのは感心しないな。もしお前らの言う事が正当ならば裁判でそれを証明しろ。そうじゃなければ品を返して店の主人に詫びろ。もしここで争うというなら俺が相手になるぞ」

 

吹雪は少し殺気を出しながら言う

 

「なんだ、てめえは!」

 

そう言い、ごろつきの一人が吹雪につかみかかろうと迫るが子分の一人に止められる

 

「ちょ、ちょっと待てよ兄貴。そいつ警邏隊・・・新選組の奴だぜ・・・・」

 

「しかも黒服じゃなくて、枯草色・・・・・こいつ警邏隊・・・・新選組の沖田吹雪だぜ。さすがにまずいですよ」

 

「何!?あの黒山衆を破った・・・・・」

 

「あの人斬り沖田か・・・・」

 

「ほぉ・・・・この男が」

 

と、ごろつきの部下がそう言うとさすがに警邏隊とことを荒らしたくないのか、ごろつきの兄貴は舌打ちをする中、女性の方は興味深そうに彼を見ていた

そして分が悪いと思ったのかごろつきの兄貴は子分の男達と共に去って行った。ごろつきどもが去ると野次馬からは歓声があがる。

 

「店主大丈夫ですか?」

 

「ええ、ありがとうございます沖田様。それと旅の武芸者さんも」

 

「なに、困っている人を見過ごすわけにはいかないからな当然のことをしたまでだ」

 

「ところで店主。あのごろつきをどうしますか?被害届を出せば、しょっぴきますが?」

 

「いいえ、こうして品物を返していただいたので・・・・」

 

「そうですか。ですが、またこういうことがあったらすぐに警邏隊に伝えてくださいね」

 

「はい。ありがとうございます」

 

店の主人はお礼を言うと店の中に戻った。

 

「さて・・・・・旅の武芸者さん。怪我とかはありませんか?」

 

「ふむ。おぬしのおかげで、怪我はしてはいない。しかし、みすみすあいつらを見逃しても良かったのですかな?また同じ事を繰り返すだけなのではないか?」

 

「ふっ・・・その時は責任をもって逮捕するつもりですよ」

 

「そうですか。そう言えば自己紹介がまだでしたな。私は趙雲と申す。」

 

ん?・・・・趙雲?趙雲、趙雲、趙雲!?まさか・・

 

「失礼ながら、君はもしかして常山郡の昇り龍。趙子龍か?」

 

「ほう!私のことをご存知でしたか!さすがは天水の狼と恐れられている天の御使い殿」

 

「・・・・なんで、俺が天の御使いとわかったのですか趙雲さん」

 

「なに、風の噂に聞いた姿とあなたの姿が同じだったのでな。もしかしたらと」

 

「なるほど。そう言えばまだ名乗っていませんでしたね。おれは沖田吹雪。趙雲さんの言った通り、天の御使いなんて呼ばれている。」

 

「やはりそうでしたか。」

 

「では、俺は警邏の続きがあるんで、趙雲さん。また・・・・」

 

と、その場を後にしようとしたのだが、趙雲に襟首をつかまれる

 

「あ、あの・・・・趙雲さん?」

 

「すまぬ。沖田殿。私はこの街に来たばかりなのだ。迷惑でなければこの街の案内をしてくれないか?」

 

と、趙雲は不敵な笑みをして、吹雪に言う。

 

「えっ?まあ、別に構いませんが」

 

「では、行こう沖田殿」

 

沖田はしかなく趙雲の為に街の案内をするのだった。最初に案内したところは市役所、その次に病院、学校など街の隅から隅まで案内した。そして、とある店でご飯を食べることになった。しかし、吹雪は趙雲と食事やに向かう途中、わかったことがあった。それは彼女が最近巷で噂になっている華蝶仮面だということに。なぜ吹雪がそう思った理由は話すたびに華頂仮面のことを持ち出すのだ。それで確信した。彼女こそが華蝶仮面だということに・・・・

 

「ん?沖田殿どうかなされた?」

 

「あ、いや何でもない。」

 

「そうですか・・・・そう言えば沖田殿は食事と言いましたがどこに行かれるのですかな?」

 

「ああ、メンマの園という店だよ。最近はやり出してな」

 

「なんと!メンマの園だと!?」

 

「知っているんですか?」

 

「ああ、メンマ好きなら知らない者はいないという店だぞ」

 

え、そうなの?

 

「いや~その店に行くのが楽しみになってきました」

 

「そうですか・・・・「隊長」ん?誠華?」

 

吹雪が趙雲と話していると、誠華がやってきて敬礼する

 

「何をしていらっしゃるんですか?」

 

「いや、別に大したことはないよ。この旅人さんに街を案内してたんだよ・・・・」

 

俺がそう言うと誠華は趙雲を見るすると、何か納得したような顔をする。

 

「そうですか・・・・・それよりも例の西地区のことで来ていただけないでしょうか至急」

 

真剣な顔でそう言う誠華。これはただ事ではないな。

 

「わかった。すぐに行く。すまない趙雲さん。こんなことになって」

 

「いや、沖田殿には仕事中にもかかわらず半日以上も案内させてしまった。別に問題はないメンマの園は私一人で行きますので」

 

俺が趙雲に謝ると趙雲は笑って許したのだった

 

「感謝します」

 

そう言うと俺はこの場を後にし、誠華と一緒に西地区に行くのだった。

 

 

 

 

「さてと・・・・・なんか事件のようだし、私も行くか」

 

一人になった趙雲は街の人気のない裏通りに行き裾から、蝶の仮面を出すのだった。



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月下の仮面の英雄

西地区に行く・・・・言葉で言うと簡単だが、現代の感覚は通用しない。天水地区は本当に広い。西地区に着くには馬を使っても半日以上かかる。

 

「で、誠華。西地区のことで分かったのか?」

 

「はい。雪風の隊からの報告で、怪しい動きをしているのがわかったんです。それで詠様から家宅捜索するように言われたんです」

 

「そうか。でなんか証拠は出たのか?」

 

「いえ、掴めそうなのですが、なかなか奴らの裏工作の為・・・」

 

「まったく。悪徳豪商はずる賢くて困るな・・・・まあ、家宅捜索くらいなら別にいいだろ」

 

 

 

 

 

「駄目です」

 

「え、なんでですかな?別に問題ないでしょ」

 

西地区についてさっそくその豪商に家宅捜索すべく行ったのだが、なぜか門の中に入れてくれない。秘書らしき、いかつい男に俺たちは交渉するのだが・・・・

 

「我がご主は、忙しいのです。帰らないと警備隊を呼びますよ」

 

「私たちが警備隊です。いい加減にしないと公務執行妨害罪で逮捕しますよ。こっちは天水太守様である董卓様の命で来ているんです。後ろ暗いことがないなら中を見て捜査しても問題ないでしょ?」

 

誠華の言う事はもっともだ。後ろ暗いことがないなら別に入れても問題ないはずだ。それにここにきてやっぱりこの豪商の家は怪しい。それにこの地区もなんか元気がない・・・・治安が悪い証拠だろ

 

「とにかく。例え董卓様の命でも、駄目なものはだめです。お引き取りを」

 

どうやら一筋縄じゃ行かないな・・・・

 

「あなた!」

 

そう言い誠華はつかみかかろうとするが吹雪は誠華の肩を掴む

 

「隊長!」

 

「誠華、いったん戻ろう。分かりました。では私たちは戻ります」

 

「ふっ・・・・」

 

そう言い秘書は皮肉たっぷりな笑みを浮かべながら屋敷の中に戻る

 

「隊長。なんで戻るなんて言ったんですか!」

 

「落ち着けよ誠華。真正面から言っても駄目なら。張り込みをしよう。そうすれば」

 

「・・・・・なるほど。そこであいつらの証拠現場を押さえるわけですね。」

 

「そうだ。さあ、西地区の宿屋に泊まるか。あの商家の目の前だし監視しやすい」

 

「そうですね。それと隊長」

 

「ん?なんだ誠華」

 

「あ、あの・・・宜しければ、夕食をご一緒にどうですか?」

 

誠華がもじもじしながら言う。そう言えばもう夜だ。

 

「そうだな。それじゃあ、行こうか」

 

「はいっ!」

 

誠華は花が咲いたように笑い、食屋に向かうんだが・・・・・

 

「……」

 

気まずい・・・・本当に気まずい。なぜ気まずいというと・・・

 

「「「「「・・・・」」」」

 

俺の両側や前に、誠華を始め、桜花、雪風、蘭花がいた。事の始まりは、俺たち二人が店にはいった時のことだ。ドアを開けるとなぜか桜花や雪風、蘭花の3人がいて相席になった

そんなことはさておき、本当にカオスな雰囲気になってる。

 

『なんで、あなたたちがいるのよ。桜花、雪風、それに蘭花?』

 

『誠華~一人だけ抜け駆けは許さないっすよ~』ニヤニヤ

 

『右に同じです』ニコニコ

 

『わ、私はただ雪風さんについてきただけです』

 

『あなたたちね~#それよりあなたたち警邏の仕事はどうしたのよ!』

 

『詠さんに頼まれたんだよ。もしかしたらてこずるかもなって、他の地区は椛たちに頼んであるっすよ』

 

と、桜花はそう言う。

 

(なんか知らないけどこの4人、目線だけで会話しているな・・・)

 

俺は拉麺をすすりながらその様子を見ていたが、ふいに外を見るすると・・・・

 

(ん、あれは趙雲さん?)

 

そう、外を見ていたら趙雲さんが歩いていたのだ。しかも屋根の上を飛んで顔にはパピヨンマスクをしていた・・・・これは何かしそうだな。

 

(追跡した方がいいな?誠華たちは・・・・・)

 

俺は誠華たちを見たが、未だに桜花たちと睨み合って火花が飛び散っている。これじゃあ、無理かな。俺は仕方なく店の主人に拉麺代を払い一人で追跡することにした。

 

 

 

 

 

一方、あの豪商の家の中

 

「ご主人様。先ほどお昼頃警邏隊の人が来られたのですが・・・・」

 

「で、どうしたのだ?」

 

「はい。追い返しときました」

 

「そうか。よくやった。董卓にこのことがばれたら私の商売はお終いだ。」

 

「そうですね。我々が黄巾党に武器を送っているなどとばれたらまずいですもんね。そう言えばご主人様例の噂聞きましたか?」

 

「ああ、あの華蝶仮面だったか?心配するな。ちゃんと対策はしてある」

 

そう、豪商が言いかけた時・・・

 

「話は聞いたぞ悪党ども!」

 

二人しかいないはずの部屋に突如声がする

 

「な、なんだ!?姿を見せろ!!」

 

豪商がそう叫ぶと2階の窓から人影が現れる

 

「あ!あそこに誰かいます!」

 

「顔を見せろ!!」

 

「乱世を正すため、地上に舞い降りた一匹の蝶・・・・・・」

 

そして曇っていた空が腫れ月光がその人物を照らす

 

「美と正義の使者・・・華蝶仮面!!推参!!」

 

「なっ!お前が華蝶仮面か!飛んで火にいる夏の虫だな。ぞ、賊が侵入した!であえ!であえ!」

 

秘書がそう叫ぶと部屋のあたりから次々と護衛兵が出てくる。

 

「悪徳商人め、この華頂仮面が成敗する。とぉー!」

 

そう言い、華蝶仮面は飛び降りて、護衛の兵を蹴散らす。

 

「この仮面野郎がいい気に乗りやがって!」

 

そういい、護衛兵は、襲いかかるが

 

「はいはいはいはいーーーー」

 

と見事な槍捌きで兵を倒すのだが

 

「ふふふ・・・甘いな。華蝶仮面とやら・・・・・おい!あの煙を流せ!!」

 

豪商がそう秘書に言うと、秘書は何か大きな箱を取り出し、何かの煙を流す。すると・・・・

 

「な、なんだ。この煙は!?か、身体がしびれて動けない!!」

 

護衛兵と戦っていた華蝶仮面だが、煙が足元に流れた途端体がしびれるような感覚に襲われ動けないのだ。

 

「ガハハハッ!どうだ!我が新商品のしびれ煙は!?これはいずれある組織の連中に高値で売る予定だったんだ!それより今のうちだ!!さっさと殺れ!」

 

豪商の号令で華蝶仮面の攻撃から生き残った数人の護衛兵が襲い掛かろうとするが・・・・・

 

パアァーン!

 

パアァーン!

 

 

キンッ!

 

キンッ!

 

「うぐっ!」

 

「ぐわっ!」

 

 

いきなり大きな音が鳴り響き護衛兵の持っていた剣が弾き飛ばされた。

 

「な、なんだ!?」

 

「誰だ!姿を見せろ!!」

 

護衛兵がそうっ怒鳴った瞬間

 

「はっはっはっは!!」

 

「「!?」」

 

先ほど華蝶仮面のが現れた時と同じ場所にまたもや人が立っていた。月を背に白づくめの服装に黒いサングラスの姿の男が立っていた。

 

「何者だ!貴様は」

 

「ふふふ・・・・私か?私は弱きものを助け、悪を挫く。黒き拳銃は正義の証!月から来た正義の使者、月光仮面!!」

 

そう言うと月光仮面は飛び降りながら拳銃を撃つ。撃たれた護衛兵は急所を外れたため命に別状はないが衝撃のあまり気絶する。月光仮面は華蝶仮面に近づく。

 

「立てるか?華蝶仮面」

 

「ああ、」

 

月光仮面は華蝶仮面に手を差し伸べ華蝶仮面はその手を取る。その隙に豪商と秘書が逃げ出そうとするが・・・

 

パアァーン!

 

月光仮面が拳銃を撃ち銃弾は彼らの手前に着弾する。

 

「ひっ!」

 

「動くな・・・・これの威力がわかったろ?頭に風穴開けたくなければそこを動くなそして警邏隊を呼ぶ……というところだが、どうやらその必要はないようだな」

 

月光仮面がそう言うと、部屋の扉から誠華たちが入って来た。

 

「動くな。新選組だ!!貴様を武器の裏取引や麻薬密輸で逮捕する!!証拠は貴様の部下が吐いたのと、そして野盗への武器輸出と漢王朝への不正役人への闇取引の書類が見つかった、しかも貴様の署名入りだ。言い逃れはできないぞ。しっぴけ!!」

 

そう言い、豪商は逮捕されたのだが。この時、華蝶仮面や月光仮面の姿はいなかった。豪商は黒幕は奴らだっと言っていたが、横流しや麻薬などの違法の物的証拠がそろっていたため無駄に終わったのである。

 

「そう言えば隊長どこに行ったんだろ?そう言えばあの屋敷に銃跡があった。銃を持ってるのは隊長だけ・・・・もしかして隊長が?・・・・・いやまさか・・・・・」

 

そう考える誠華であった。

 

 

 

あの事件から翌日

俺は警邏の仕事を終え、俺はお気に入りの場所である夕日がとてもよく見える丘にの転がっていた。因みにそこは前に月と一緒に来たとこに見つけたんだがその話はまた今度話そう。しばらく夕日を見ていたら。

 

「おや、これは沖田殿ではありませんか。」

 

「ん?あぁ、趙雲さんか。どうしたんだ?こんな所に。」

 

「いえ、外がきれいな夕焼け空故、それを肴に1献と思いまして。沖田殿もどうです?」

 

「そうだな、じゃあ貰おうかな。」

 

俺は趙雲から器を受け取った。しばらく無言で飲んでいると。

 

「今日は災難だったな趙雲さん。」

 

「・・何の事でしょう?」

 

「とぼけても無駄ですよ。西の豪商のしびれ霧で身動きが取れなかったでしょ?華蝶仮面さん?」

 

「っ!?なぜそれを!?」

 

「いや、誠華はともかく。俺はすぐに分かったよ」

 

「そうですか。ならば礼を言わなければいけませんな。助太刀感謝致します。月光仮面殿」

 

「ハハ・・・どういたしまして」

 

そう、月光仮面の正体は俺だ。まあ、読者の皆さんは気付いていたと思うけど。

 

「沖田殿は面白いな。」

 

「俺が面白いか?」

 

「ええ、どうでしょう沖田殿。私はあなたのこと少し興味が持ちました。だから私を客将として雇ってくれませんか?」

 

「いいのか?」

 

「ええ、さっきも言ったように沖田殿に興味を持ちました。沖田殿がよければの話ですが」

 

「…‥わかりました趙雲さん。客将の件は詠に頼んどくよ。よろしくな」

 

「私のことは星でいいです沖田殿。客将と言えども、信頼して槍を預ける身、この真名お預けします」

 

「じゃあ、改めてよろしくな星」

 

こうして、昇り龍と呼ばれる趙子龍こと趙雲が客将として仲間に加わったのである。

 



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若葉少女たちの日常

黒山衆の戦いが終わり、天水の街の様子も落ち着いてきたころ・・・・・

 

「あっ!澪!!」

 

「あ、椛!!暁!!」

 

日が沈む夕暮れ時に警邏服を着た少女三人がある店の前に集まった。この三人の名は鄧艾、羊祜、杜預。新選組隊士第一期生であり、今現在は士官候補生の若き警邏隊士である。

 

「ごめん今日は西地区の見回りだったから遅れちゃった・・・」

 

短いツインテールで、かなりのくせ毛の子。鄧艾こと椛が笑ってそう言いう

 

「西地区・・・あそこは治安が改善されてきたとはいえまだまだ喧嘩が絶えない場所ですからね」

 

短い茶髪でどこかお嬢様風の子。羊祜こと暁が頷いてそう言うと

 

「それじゃあ、どこに行く?」

 

「もちろんあそこでしょ?」

 

「ですね」

 

三人は頷いて

 

「「「朱雀屋!!」」」

 

三人ははもってそう言う。朱雀屋とは小さな料理店兼喫茶店であり、天水警邏隊基新選組隊士行きつけの料理屋である。

理由としては料理が安くておいしく、またその店の店長は人柄がよく慕われているのも理由の一つであるが、

何より大きいのが吹雪の国の料理。つまり天の国の料理が唯一食べられる場所だからである

そして朱雀屋につくと

 

「いらっしゃいませ!あっ!鄧艾さん!羊祜さん!杜預さん」

 

店に入ると、その店の店員である大きなリボンをした女の子が元気よく挨拶をする

 

「あっ!典韋ちゃん!こんにちは」

 

椛が彼女にあいさつをする。彼女の名は典韋。この店で働いている子であり料理が得意で客には看板娘のようにかわいがられている子である

 

「今日も見回りですか?」

 

「うん。で、今、今日の見回りが終わったから一緒にここで夕食を食べようっと思って」

 

「そうですか。ではお好きな席にどうぞ・・・・料理はいつものですか?」

 

「うん。私はラーメンと餃子ね」

 

「私は、コロッケ定食を・・・」

 

「私は鉄板ナポリタンをお願い」

 

「畏まりました。少し待っててくださいね」

 

典韋はニコッと笑い厨房の方へと向かう。そして厨房からは慌ただしい音が聞こえてくる

そんな中、三人は今日の仕事のことを話していた

 

「そう言えば、美緒。今日は桜花班長と見回りだったわよね?大丈夫だった?前、なんか騒動に巻き込まれてたけど?」

 

「うん。桜花班長と一緒に西地区に行ったら、喧嘩騒動が起きて桜花班長止めようとしたんだけど・・・・逆に喧嘩に巻き込まれて桜花班長までもが喧嘩に参加して大事になったんだよね・・・・」

 

黒髪のツインテールの子、杜預こと澪がため息交じりに言う

 

「ああ。それ知ってる。その時、沖田隊長が来て、天の国の兵器・・・・銃?だったけそれを空に向けて何発か撃って収まったんだよね?」

 

「あ~あの火薬を使った兵器?だっけ?訓練所で隊長が射撃してたところ見たことがあったけど、すごい音だったわね。私びっくりしちゃったよ」

 

「あ~それ、分かります。心臓止まるかと思ったくらいのすごい音でしたよね?…あ、それで澪。その後どうなったの?」

 

「その後、私と班長は誠華副長に滅茶苦茶怒られたんだ。『警備隊が騒動を起こしてどうする!!』て、まあ主に桜花さんが怒られてたんだけど・・・・」

 

「でも、桜花さんのことだから。いつもの通りなんでしょ?」

 

「うん。いつも抱き着かれたり、からかわれたりでちょっとね・・・・」

 

「それは、澪のことを可愛がってる証拠だと思うよ?」

 

「可愛がるにしてももう少し加減というか・・・・・」

 

「まあ、桜花さん。いつも飄々としているからね」

 

暁の言葉に澪はため息をつく

 

「・・・・でも、なんやかんやで今の職場が一番いいかも・・・・」

 

「あ、それ分かる。なんて言うか沖田隊長のところは何と言うか明るいというか…お固い雰囲気はないよね?訓示とか訓練の時以外は」

 

「確かに椛の言う通りですね。私は軍と言いますともっと怖い感じでしたが訓練の厳しさを除けば意外と寛容と言いますか、なんかなじめる場所ですね。他の皆さんも悪ノリが好きというか?バカ騒ぎとか好きだよね?」

 

「確かにしかも隊長は優しいし、副長も隊規に触れなければ寛容な人だしね。まるでお父さんとお母さんて感じかな?」

 

「お父さんとお母さんか・・・・私的にはお兄さんとお姉さんぽいかな?・・・・なんか憧れるな~~私姉弟がいないからちょっと羨ましいかも・・・」

 

澪は羨ましそうに言うと

 

「そう言えば、みんな他の部署だったよね?暁は確か馬鈞さんの技術開発部だったけ?」

 

「うん。馬鈞さん。いろんなもの発明してるの。確か人力田植え機とか、蓄音機?とか!あと、夜道でも明るく照らす街灯とか、生活に便利なのもいっぱい作っているんだよ」

 

「へ~すごいんだね?確かに夜間警備の時も街灯ていう絡繰りのおかげで泥棒の数も減ったしね」

 

「それに馬鈞さんすごく優しいんだ。確か椛さんは・・・・」

 

「私は雪風さんのところかな?最初は無口で怖い人かなって思ってたけど。すごく優しい人だったよ?」

 

「いいな~私は郭汜班長のところだからな・・・・いや悪い人じゃないんだけどね・・・・」

 

「じゃあ、郭汜さんはどんな感じなの?」

 

「あ~あの人はけっこう大雑把でいい加減だからちょっとね~」

 

と、呆れ声で言うと

 

「ちょっと澪・・・・・」

 

「どうしたの?暁?椛?」

 

「今言ったの私たちじゃないよ?」

 

「・・・・・え?」

 

二人の言葉じゃないと言われた澪は首を傾げた瞬間後ろから

 

「ほぉ・・・・誰が大雑把でいい加減だぁ?」

 

「ひゃわわわっ!!!?」

 

澪の背後に桜花が座っていて目がギラリと光、その声を聴いた澪は驚きの声を上げるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

 

今現在澪は桜花に抱き着かれ頭をぐりぐりされていた。そして澪は涙目になり彼女に謝っていた

 

「桜花班長もこの店に来ていたんですか?」

 

「おうよ。ちょうど仕事も片が付いたわけだし、ここでご飯を食べようと思ってな!」

 

暁が訊くと桜花はにっこりと笑い返事する。

 

「今日は書類仕事でしたっけ?」

 

「おう!今日は隊長も誠華も天水にいないしさ。」

 

「あ、そう言えばお二人は定軍山で戦死した隊士の遺族のところに弔問に行って居ないんだっけ」

 

「おうよ。雪風も天水の外の状況の情報を収集しているし、蘭花も今は新しく入った新人の指導をしているし、警邏やほかの報告書のまとめは私がやっているんだよ。」

 

「桜花さん・・・書類仕事できるんですか?」

 

「杜預。おめえは私のこと、なめているのかぁ?」

 

「ひっ!ごめんなさい」

 

「まあ、こんな見た目だがそう思われないけどな。私の仕事は警邏の他、後方での書類整理仕事だぞ?」

 

「あ、そう言えば班長は勘定方でしたっけ」

 

「全然そうには見えないけど・・・・」

 

「おめえらよ・・・・」

 

桜花は突っ込むのを諦めたのか軽くため息をついた。すると・・・

 

「や、やめてください!!」

 

「「「「ん?」」」」

 

急に声がし4人が振り向くとそこには典韋が男性に絡まれていた・・というよりナンパされていた。そして典韋は仕事中のためか迷惑そうな表情をしていた

 

「ん?あれ家のところの隊士ですね?しかもこの前入ったばかりの子たちですね?」

 

「この店の看板娘ちゃんに絡むなんていい度胸ですね?」

 

「どうしますか?桜花班長殿?」

 

「‥‥‥…シメる」

 

そう言い4人は立ち上がりその男性隊士たちの背後に回り

 

「おい・・・そこの平隊士ども!」

 

「「っ!?」」

 

桜花に声をかけられた若い平隊士は振り向くとそこには桜花や澪たち女性隊士がいた。ただでさえ新選組の女性隊士はそこらの男性兵士より強いにもかかわらず、今いる女性隊士では一人は大幹部級であり残り3人は候補生とはいえ士官級の人たちのため男性隊士の表情は強張る

 

「おめぇら・・・・一所懸命に働くこの店の看板娘に何の用だ?」

 

「あなたたち・・・・どこの班ですか?」

 

「ここじゃなんです・・・・ちょっと外でオハナシ(・・・・)でもしましょうか?」

 

「特別に会計はしといてやりましたから」

 

ブラックスマイルで言う4人に男性平隊士たちは顔を青ざめるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後平隊士たちは桜花たちに注意され、警邏任務に戻った。その後席に戻る4人に典韋は4人にお礼を言っていった

 

「あ、あの!ありがとうございました!!郭汜さん!鄧艾さん!羊祜さん!杜預さん」

 

「何、身内とはいえ風紀を乱す奴は許さない質なんで」

 

「「「まったくです」」」

 

「やっぱり新選組の皆さんは親切な方ばかりですね!!」

 

「あはは!あんがと!」

 

「あ!すぐに料理もってきますので!少しだけ待ってくださいね!」

 

典韋はニッコリ笑い、厨房へ戻る

 

「親切だって」

 

「おうさ、うちら新選組は見た目は悪くても心は紳士淑女の部隊だからな!」

 

「今日は班長のおごりですか?」

 

「調子に乗るなっつーの!」

 

と、笑いながら話すのだった。



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雨の私塾

新選組隊舎の中、誠華や桜花たちは書類仕事に追われていた。

だが、隊長席には、いるべきではずの吹雪の姿はなかった

 

「隊長・・・・そろそろ着いたころっすかね?」

 

「多分な・・・・・」

 

と、意味ありげなことを話し合っていると

 

「ん?桜花と誠華じゃないか?」

 

客将をしている星が部屋に入ってきた

 

「おう、星。お疲れ様。」

 

と、誠華が挨拶すると、星は

 

「そう言えば・・・・吹雪殿の姿が見えないのだが・・・・」

 

「ん?隊長に何か用っすか?」

 

「いや、この頃姿が見えぬと思って気になっていたんだ」

 

と星がそう言うと桜花は

 

「ああ。隊長は今、荊州にいるっすよ」

 

「荊州?なんでそんな場所に吹雪殿が?」

 

星が首をかしげる。それもそうだ荊州は天水よりかなり離れた場所にあるからだ。そんな地になぜ行ったのか星は尋ねると

 

「そこに先の黒山衆の戦いや賊の戦いで戦死した隊士たちの遺族がいるんだ。まあ弔問の旅ってところっす。そう言えば雪風や蘭花も今行っているところっすね」

 

「それで隊長が自ら、その隊士の最期を伝えに行ったんすよ。うちの隊士は天水以外に荊州だとか、遠ければ幽州や冀州出身。中には五胡の羌出身の子もいるからね・・・・」

 

「ふむ…そう言うことか。ということは桜花たちも遺族の弔問に?」

 

「行ったっわ隊長と一緒に近隣や成都ととかにね。どこに行っても泣かれるか罵られるかだったわ・・・」

 

「でも隊長言ってたッすね『遺族の悲しみや辛さに比べれば俺たちが何言われようが比較できないって』・・・・・今頃、何を言われているのやら」

 

「幹部である私たちでも酷い言われ方だったから、隊長の方はもっと言われているんだろうな・・・・・・」

 

と、二人はそう言い上を向き、隊長である吹雪が無事か心配し、聖もその姿を見て何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘!?嘘でしょ!?あ・・・・あの人がそんな!!!」

 

雪風と蘭花は戦死した遺族の家に戦死した隊士の最期を伝えていた。その悲報を聞いた遺族は・・・・

 

「だから、あたし、農業辞めないでってあんなにも止めたのに!!わぁ~~~~~~!!!」

 

夫の戦死を聞いた妻は大泣きする

 

「・・・・申し訳ありません・・・・奥さん」

 

「子供を抱えて私はどうやって生きていくのさ!!わぁ~~~~!!!」

 

雪風と蘭花は頭を下げる中、妻は泣き崩れそう言うと傍にいた幼い男の子が

 

「母ちゃん泣くな!俺が母ちゃんを守る!父ちゃんの分まで頑張るよ!!」

 

と、母親を慰めると雪風は小さく頷き

 

「うん・・・・よく言ったぞ坊主。えらいぞ。お母さんを頼むぞ」

 

「うん!…あの、眼帯のお姉ちゃん!一つ訊いてもいい?」

 

「?」

 

「僕の父ちゃんすごかった?!?敵を何人やっつけたの?」

 

「っ!?」

 

その言葉に雪風は少し黙ると蘭花が

 

「・・・・・・5人。しかも幹部を倒したって聞いたわ。でもあまりにも勇敢で常に最前線で切り込み隊長だったから命を落としたそうよ」

 

「幹部を5人も!すごいや父ちゃんは!さすが僕の父ちゃんだ!!母ちゃん聞いた!父ちゃんすごい働きだったって!!」

 

子供がはしゃいで母親に言う中、

 

「「・・・・・」」

 

雪風と蘭花は複雑な表情をしていた。そしてその家族と別れ、馬で帰る途中の道・・・・・

 

「すまない蘭花。」

 

「いえ、子供の前でしたから本当のことは言えませんでした。まさか足を滑らせ倒れた直後に一撃でやられたなんて・・・・・絶対に言えませんでしたから」

 

「ああ・・・・あの子には悪いと思うが、その方が帰っていい・・・皆やり場のない気持ちは同じだよ。だけど生きているうちはそれを乗り越えなければいけない」

 

「沖田隊長。大丈夫ですかね一人で荊州に?私たちでもこの状態じゃもっと言われているんでしょうか・・・・・・」

 

と二人は吹雪のことを心配するのであった

 

 

 

 

 

 

 

荊州

 

「嘘だわぁ!!!」

 

荊州のとある村の家で女性の声が大きく聞こえた

 

「あなた!私の息子と娘を見殺しにしたのねぇ!!そうでしょ!!そうでなければなんでうちの子たちだけがぁ~~~~!!!!」

 

母親は涙を流し吹雪に怒鳴る中、傍にいる父親は

 

「お前、もうやめないか。隊長さん自ら来てくださったのだぞ?」

 

と妻をなだめる男に吹雪は

 

「本当に申し訳ございません・・・・・私の力不足でこんなことになってしまい」

 

と深々と頭を下げ謝る吹雪に対し父親は

 

「いや。隊長さんが謝ることではないよ。私も退役の軍人・・・・二人も進んで軍人として武人としての道を進みました。今日あることは常々覚悟はしておりました」

 

「しかし・・・・惜しい・・・・未来を担う人を死なせてしまいました・・・・あまりにも惜しい人たちを失いました」

 

「隊長さん・・・・そう気に病でください。戦死したものはもう戦うこともない・・・・務めは終わったのです・・・・ですがあなたはこれから激しい戦いが続きます・・・・息子娘にはよくあなたのことを聞かされていました。良き上官であり隊長だと・・・・・ですので息子や娘のためにもどうか、二人のことを忘れ、今後のことをお願いします」

 

「・・・・お慰めするはずの自分が帰って励ましを受け心苦しい次第です」

 

「隊長さん・・・・退役軍人…つまり君の先輩としてもう一つ忠告しよう・・・・・もっと生身の人間らしく生きなさい。それがほかならぬ軍人や武人の道でもあるんじゃ・・・・・」

 

「・・・・ありがとうございます・・・この戦いで・・・いや今まで亡くなった人たちのためにも一日…いえ一時も早く平和な時代を作ることを約束します」

 

そう言い吹雪は頭を下げ、遺族に礼を言いその場を後にするのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天水は平和でも周辺は飢餓や族がまだ多いな・・・・」

 

吹雪はそう呟く。天水の外に出て、目的地に向かう途中に荒れ果てた村や荒野。さらには飢餓に苦しむ村も結構見てきた

その光景で自分のいた時代がどれだけ平和で恵まれていたのか身に染みた

 

「やらなければいけないことが星の数ほどあるってまさにこういうことだな・・・・・」

 

そう小さく呟く。できれば天水だけじゃなく大陸中の人々も平和な生活のできる時代にしたい・・・・吹雪はそう思う。ただ一人では不可能だと思っていた

 

「(月は・・・・いつもこういう風に考えているのかな?)」

 

吹雪は月のことを考える。彼女も平和を愛し、民が幸せに生きることを望んでいる・・・だがどうすればそれが出来るのかいつも悩んでいる。

そんな彼女の力になりたいと思い吹雪は詠とともに、案を考えたりしていた

 

「戦は続く・・・・歴史通りに・・・・・どうすれば」

 

吹雪がそう考えていると、

 

ブルルル・・・・

 

吹雪の傍にいる額に白い星の模様のある黒い馬が吹雪の顔を摺り寄せる

まるで主を心配するかのようだ

 

「ああ・・・すまないウラヌス。行こうか」

 

そう言い馬にまたがる吹雪。この馬の名はウラヌス。吹雪の愛馬だ。吹雪が天水を出発する前に月と詠がくれたものだ。

なんでも仮にも天の御使いならいい馬に乗らないとだめだと詠と月が用意してくれた馬だ

その馬は雌らしいがどの馬よりも大きく、涼州でもなかなかいない馬だそうだ。

しかもその馬は気性がとても荒く月以外誰にも懐かないらしかったんだけど、

俺が鼻面を撫でてやると、ぶるるっと一声息を吐いた。月や詠いわく

『気に入られた』というらしい。そして名前がなかったので『ウラヌス』と名付けた。理由は額の白い模様が星のようだったのと、第二次大戦の軍人。西竹一中佐の愛馬「ウラヌス」からとったものだ

まあそれはさておき、俺はこのウラヌスと一緒に戦死者弔問の旅に出ている。天水周辺地域は雪風に任せ俺は遠くの地方に行って戦死者の最期を知らせに行っている。無論丸腰で言っているわけじゃない旅道中に山賊やら最近現れてきている黄巾賊に襲われる危険性があるため、軍刀と拳銃と99式小銃を布に巻いて持ってきている。

刀ならまだしもなぜ銃を所持しているのかというとまあぁ‥‥中国じゃ虎や熊が出るしさすがに刀では心もとないから持ってきているのだ

まあ・・・俺の知っている中でそう言う猛獣に勝てそうなのは霞か華雄か母さんぐらいだしな・・・・正直言って俺の剣術じゃ役に立ちそうにないし・・・・

 

「ん?」

 

ふと空を見上げると空はいつの間にか雨雲に覆われており、雨が降りだした。

 

「まいったな・・・・ちょっと急ごうか。ウラヌス」

 

そう言い俺はウラヌスを走らせる。次第に雨はどんどん強くなり、止む気配がなかった走り続けていると1つの建物が見えてきた。

 

「あそこの軒で雨宿りでもするか。」

 

俺は建物の軒下に入った。軒下はちょうど馬と人がすっぽりと入るくらいの広さだ。

 

「こりゃまいったな。」

 

俺は布でウラヌスの体を拭きながらそう呟く雨は暫くは止みそうにない、辺りは静かで聞こえるのは雨のザーっという音だった。さてどうするかと考えていると、

 

キィ。

 

「ん?」

 

音のした方を見ると建物の扉から14歳くらいだろうか茶髪の女の子がじっと俺を見ていた。この家の子だろうか?

 

あ、あの…こんにちは」

 

「こ、こんにちわ・・・・」

 

少女が警戒するように答える。すると建物の奥から

 

「橙どうしたのだ?ん?誰だあんた?」

 

するとその少女の後ろからこの人はイタリア人か?グレーのかかった銀髪にツインドリルをした少女が出てくる。しかも少女は剣を腰に差している。

 

「どうしたの?橙?アンチョビさん?・・・・あら?」

 

2人の後ろから妙齢の婦人が出てきた。

 

「あ、すみません、雨に降られてしまったので軒をお借りしてました。宜しければ小降りになるまでお借りしてもよろしいですか?」

 

俺がそう言うと・・・・

 

「な、なんでそんなこと早く言わないんだよ。風邪を引いたらどうするんだ!?」

 

さっきのイタリア人が驚いてそうい言う

 

「そういう事でしたら家へ入らしてください。濡れているようですし、雨が止むまで休まれてください。」

 

「いいんですか?」

 

「お困りのようですので。」

 

ありがたい申し出だ。雨もやみそうにないし、お言葉に甘えますか

 

「ではお言葉に甘えます。」

 

「ではこちらへ。」

 

中に入れてもらった。本当に良かった。因みにウラヌスは馬小屋で牧草を食べて大人しくしている

案内してもらってる途中に自己紹介を済ました。この建物は私塾でこの人は水鏡さんというらしい。案内された部屋でくつろいでいると、水鏡さんがやってきた。

 

「雨は止みそうにありませんので、今日はもうこちらでお休みください。今食事をお持ちしますので。」

 

「何から何まで本当にすみません。」

 

すると、さっきの二人が料理を持ってきた。

 

「お待たせしました」

 

そう言って茶髪の子はそそくさと出ていってしまった

 

「はは・・橙は恥かしがり屋だな・・・・まあ口に合うかはどうかは知れないけど、ほいどうぞ召し上がれ、」

 

「大丈夫ですよ。アンチョビさんの料理は美味しいですから」

 

「ア、アンチョビ?」

 

アンチョビって確かニシンの塩漬けだったような・・・

 

「申し遅れたな。私はローマ帝国軍ケントゥリオ(百人隊長)のアンチョビーナ・ユリウスだ。アンチョビって呼んでくれ」

 

確か百人隊長って現代で言う少尉とか中尉とかぐらいの階級だよな。それ以前に・・・・

 

「へ?ローマ帝国?なんでローマ帝国軍人がここにいるんだ?」

 

「うっ‥‥そ、それはだな・・・・」

 

アンチョビさんは気まずい顔をして説明した。

アンチョビさんが言うには祖国の命を受けて漢進行のためシルクロードを通っていたんだけど、いきなりロシア地域の部族やゲルマニア人の奇襲を受け部隊は壊滅。仲間は散りじりになり、6か月前一人になってしまったアンチョビさんはこの地まで彷徨い、行き倒れたところに丁度、水鏡さんに助けられて今はここの用心棒いわゆる警備員をしているらしい。

 

「そんなことがあったんですか・・・・」

 

「まぁ、いろいろとあったけど私は水鏡先生に助けられて、本当に良かったと思っている。出なければ朱里や雛里に藍そして橙という妹分に出会わなかったからな」

 

「・・・あのそれって真名ですよね。誰なんですか?」

 

すると水鏡さんが

 

「ああ、言っていませんでしたね。朱里と雛里の名は諸葛亮と鳳統。椿の名は司馬懿。そしてこの子、橙は徐庶といいます。朱里と雛里は今、旅に出て、司馬懿も一人旅をしていますが」

 

え!あの子があの徐庶!劉備に諸葛亮を家臣にするように助言した?俺は驚いた。しかし諸葛亮と鳳統は旅に出てしまったのか・・・たぶん劉備とかの所にいるはずだな・・・・

 

「ところであなたは・・・・・」

 

水鏡さんが俺を尋ねる。そう言えば名前を名乗っていなかったな

 

「そう言えばまだ名前を言っていませんでしたね。俺の名前は沖田。沖田吹雪です」

 

俺がそう名乗ると二人は驚く

 

「沖田って…あの沖田吹雪ですか?天水の董卓殿の領地にいる警備隊・・・・・「新選組」の?」

 

「お前が噂になっている人斬りの沖田か・・・・」

 

「好き好んで人を斬っているわけじゃないんですけどね?」

 

俺がそう言う。ああまずいなもしかしたら出て行けと言われるんじゃないか?そう心配していたのだが・・・・

 

「お前の名前は知ってるぞ!確か街に火を放とうとする悪党どもをたった30人で防いだっていう。あの話を聞いた時は感動したぞ!!それに定軍山であの黒山衆を打ち破ったそうじゃないか!うちのローマ軍にもお前のような人間がいたらと思うと‥‥」

 

「あはは・・・・」

 

そう言い、俺は、アンチョビさんの話を苦笑しながら聞くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人が・・・・・沖田吹雪・・・・」

 

扉の裏でこっそりと話を聞く徐庶こと橙がいたのだった

 



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雨の日の軍師

翌朝、昨日より雨は弱まったものの、依然として雨は降り続いていた。

 

「雨止まないな・・・・・」

 

今俺は水鏡さんを探している。いままで世話になった恩返しをする為だ。武士の言葉に一宿一飯の恩義って言葉もあるし、それに泊めてもらっているのに何もしないというのも自分としてはとても居心地が悪い。そのため俺は塾内を探していると、程なくして見つけることができた。

 

「あ、水鏡さん、探しましたよ。」

 

「あら、沖田さん。どうかなさいましたか?」

 

「お世話になりましたので何かお礼をさせてほしいのですが?」

 

「いえ、お礼なんて・・・」

 

「いえ、ぜひお願いします」

 

「そうですか・・・・では1つお願いしたいのですが。」

 

「何なりと言ってください。」

 

「昨日料理を運んでくれた二人・・・・徐庶とアンチョビさんなんですが、隣街まで使いに出したのですが。少し帰りが遅いので様子を見に行ってもらえませんか?寄り道するような子達ではないのですが、何より今このご時世ですし、様子を見に行ってもらえませんか?」

 

水鏡さんは心配そうに言う

 

「分かりました。」

 

俺は水鏡さんに街までの道を聞くといったん部屋に戻って支度をして、私塾を出てウラヌスに乗りを走らせた。幸い外は雨が霧雨状態で問題はなかった。ウラヌスも雨なんて気にしない表情でむしろ、外に出られて少し機嫌がよかった

私塾からは街までは約4キロ。生い茂った森を越えた先にある。寄り道するような人ではないのなら何かあったのならこの森だ。俺は森の中心で立ち止まり、

 

「この近くかな…‥ん?あれは・・・・)

 

俺はあたりを見ると奥の方にあの2人が何者かに囲まれている。

 

(・・・・見つけたけど、あの4人のやつらもしかして盗賊か。となるとやばい!!)

 

東で約300メートル程の距離で2人を発見した。しかし、嫌な予感がする。場所はそう遠くない急ぐか。

 

「ウラヌス!!」

 

俺がそう言うとウラヌスは嘶いてその場へと走り出すのだった

 

 

 

「くっ・・・・」

 

「お姉ちゃん大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫だ橙・・・これぐらいかすり傷だ・・・」

 

私達は水鏡先生に言われ隣街まで使いに来ました。用事を済ませ、帰ろうとしたら賊の人達が突然襲いかかってきました。何とかスキをみて、逃げ出したのですが、囲まれてしまいお姉ちゃんが剣で応戦したんだけど多勢に無勢、アンチョビお姉ちゃんが右腕を切られて左手で腕を抑えている

 

「・・・・百人隊長である私の剣の腕も落ちたな・・・・こんな盗賊ごときに‥‥ぐッ!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

お姉ちゃんの右腕から血がポタポタと落ちる…早く治療しないと・・・・

 

「どうする兄貴?楽しんでから殺るか?」

 

「はっ!そのガキに興味はねぇよ!でもそこの外国人はいい体してるな・・・・いや、やっぱり盗るもの盗ってさっさと殺っちまうぞ!」

 

そう言い賊たちは私たち目掛けて剣を振り下ろそうとした。すると・・・

 

ダアァァァーン!!

 

急に雷の音がした。私は目を開けると・・・・

 

「う・・・・がぁ・・・・」

 

先ほど剣を振り上げた盗賊は頭から血を流し倒れた。

すると、蹄の音が聞こえ、そこには馬に乗った人が私の顔を見て

 

「どうやら、間に合ったようだな・・・・」

 

「・・・・おき・・・た・・・・さん・・・」

 

 

 

 

 

 

俺は二人のもとに着いた時、一人の盗賊が怪我をした二人に向けて剣を振り下ろそうとしていた。

 

(まずいっ!!)

 

俺は九九式小銃に急いで7・7ミリ弾を装填し頭を狙って引き金を引いた。

 

ダアァァァン!!

 

弾は見事命中し盗賊の一人が絶命する。

 

「どうやら間に合ったようだな・・・・」

 

俺はすぐに彼女たちに駆け寄る

 

「大丈夫か?徐庶さん。アンチョビさん」

 

「・・・・おき・・・た・・・・さま・・」

 

「沖田!すまない・・・私がいながら橙を・・・」

 

「そんなことはない!それよりアンチョビさん腕の怪我・・・・」

 

「大丈夫だ。こんなのはかすり傷だ」

 

そう言うが、これはかすり傷ってほどの怪我じゃない。早く手当てしないと。

 

「おい!なに俺たちを無視してるんだ!!何だテメェは!」

 

俺は賊に振り返り九九式小銃を奴らに向けた。

 

「これから死ぬ奴に名乗ったて意味がねえなっ!!」

 

「なんだと!!」

 

「おいっ!やっちまえ!!!」

 

そう言い奴らは剣を持って突撃し始めた。しかし・・・

 

ダアァァァン!!

 

剣が届く前に九九式の7・7ミリ弾がもう一人の盗賊の喉を貫いた

 

「ぐぎゃぁっ!!」

 

そいつは口から血を噴き倒れる2人目の賊も果てた。

 

「なっ!」

 

「なんだあれ!!」

 

俺が近づくと賊も同じだけ退く。

 

「ガ、ガキだ!ガキを人質にとれ!」

 

「お、おう!」

 

賊の1人が徐庶に振り返る。すかさず俺は奴の頭に向けて撃ち3人目の奴もばたりと倒れた。

 

「つくづく救えないやつらだな・・・・・」

 

残りの1人は腰を抜かして後退りしている。

 

「俺が悪かった!もう悪い事しないから許してくれ!」

 

命乞いをしてくる。

 

「悪いな‥‥人を苦しめそれを糧にする奴は許せない質でな。だが、お前が言った通りもうしないというのであればこの場は見逃す。気が変わらないうちにとっとと失せろ」

 

「へ、へい…ありがとうございます」

 

そう言い賊は俺にそう言い後を去ろうとして俺が後ろを振り向いた瞬間

 

「馬鹿め!後ろ振り向いたのが貴様の運の尽きだ!」

 

そう言い、隠してたナイフで襲い掛かろうとしただが・・・・

 

「ぐえっ!!」

 

傍にいたウラヌスが俺に襲い掛かろうとした賊を思いっきり蹴飛ばし、吹っ飛ばされ遠くのかなたまで飛ばされ空の星となった

 

「グッジョブ。ウラヌス!!」

 

俺がグッジョブサインをするとウラヌスは嬉しそうに鳴いた

そして俺は小銃を背中に背負い、急いで二人のもとに向かった。

 

「徐庶さん!アンチョビさん大丈夫か?」

 

「わ、私は大丈夫です。それよりもお姉ちゃんが!」

 

「分かった!取りあえず塾に戻ろう!」

 

「わ、分かりました!」

 

俺はアンチョビさんと徐庶をウラヌスに乗せ私塾へと帰った。

その後に私塾まで2人を連れて帰り、事の顛末を聞いた水鏡さんが、

 

「橙とアンチョビさんを救っていただき本当にありがとうございます。あなたがいなければ今頃どうなっていたかことか。」

 

と水鏡さんは深々と頭を下げた。幸い治療が早かったためアンチョビさんの腕は半日で治るそうだ。

本当に良かった。

 

「間に合ってよかったですよ。」

 

本当にギリギリだったもんな。もし遅れていたらアンチョビさんは失血死していただろう。

 

「あ、あの・・・・沖田さん・・・」

 

「ん?何、徐庶さん」

 

「命を助けていただきありがとうございます。何かお礼をさせてください!」

 

「何、こっちとしては世話になった礼を返しただけだから気にしないでくれ。」

 

「いや、そうわけにもいかん」

 

アンチョビさんがやってきた。

 

「私や橙は命を救われた。それを返さないのは私は納得できない。だから私からも頼む!」

 

そう言い、アンチョビさんは頭を下げる。ここまで言われ断るのはかえって失礼だな。

 

「そうか。ならありがたく受け取らせてもらうよ。」

 

さてどうしたものかな。あ、そうだ!

 

「そうだ。徐庶さん読み書き出来るよね?俺にこの国の文字を教えてくれないか?」

 

一応、文字は母さんや詠に教わってはいるんだけどまだ片言で何度も誠華や桜花にも指摘されている。今後もまだ旅は続くそのためにも漢文字の勉強をしようと思ったのだ

 

「はい!喜んで!」

 

「ならよろしくお願いします徐庶さん。」

 

「私のことは橙でいいです。この真名あなたに預けます沖田さん」

 

「じゃあ、俺も吹雪でいいよ。橙」

 

「はいっ!」

 

彼女は花が咲いたような笑みを浮かべて言った。その様子をアンチョビさんや水鏡先生が微笑んで見ていた。

 

それから三日後、雨はまだしとしと降っている。橙に文字を習う吹雪。

最初は文字を間違えるなどあったが、彼女のおかげで以前よりも向上した

字を教えていた橙も嬉しそうで一生懸命な彼に彼女もまた一生懸命に教えていた。その時に彼女は彼に何かの感情が芽生えていたがその感情は何か彼女はまだ知らなかった。

 

「だいぶ雨が弱まってきたみたいですね・・・・」

 

「そうですね。水鏡先生方には大変お世話になりました。何とお礼すればいいのか」

 

「困った時はお互い様、お礼なんて別に」

 

「それでは私の気がすみません。何か私に出来ることがあれば、言っていただけませんか?」

 

水鏡は道具を片付けていた手を止めて言う。

 

「それでは、一つお願いがあるのですか」

 

「はい」

 

「ご迷惑かと思いますが、橙を一緒に旅に連れて行って欲しいのです」

 

「橙を?」

 

思いも知れない頼み事に吹雪は驚いて聞き返した

 

「はい。あの子は以前から、先に旅立った姉弟子や同僚の子たちが旅に出るのを見て同じく旅に出て世の中を見て回りたいって言っておりました。私も若い頃は、あちこち旅をして見聞を広め、多くの物を得ました。ですから、あの子にも同じ様にやらせてあげたいと思っていたのですが。最近は物騒ですし。幾ら確りしているといっても、あの年でたった一人旅というのも・・・それで、もし宜しければ、あの子を旅のお仲間に加えて頂きたいたいのですが・・・」

 

「そうですか・・・しかし、水鏡殿はそれで宜しいのですか?」

 

「そうですね。確かにあの子が居なくなくるとここは寂しくなります」

 

しかし、水鏡の決意は揺るがなかった

 

「でも、旅に出たいと言うのはあの子が私に言った、たった一つのおねだり。その気持ち叶えてやりたいと思います」

 

「・・・・・・」

 

そのことに吹雪が少し黙る

 

「・・・・沖田さん」

 

「・・・・わかりました。この新選組の沖田。責任を持って彼女をお預かりします」

 

真剣な表情になって申し出を受けた。しかしその会話を聞いていた橙がいた。橙は部屋にこもって考えていた

 

「(吹雪さんと旅に・・・・・でもそれだと先生を一人にしてしまう・・・・でも旅に行きたい・・・・どうしよう)」

 

そう考えていると彼女の部屋から戸を叩く音が聞こえる。

 

「橙…‥いるか?」

 

この声は・・・・

 

「アンチョビお姉ちゃん?開いてますよ」

 

そういうと、アンチョビが入って来た。

 

「お姉ちゃん。どうしたの?もう右腕は大丈夫?」

 

「ああ、この通り大丈夫だよだよ。それより橙・・・・・」

 

「? 何お姉ちゃん?」

 

「お前・・・悩んでるだろ?」

 

「!?」

 

アンチョビは真剣な顔でそう言う図星をつかれた橙は目を見開いた。

 

「やっぱり・・・・ほら、お姉ちゃんに話してみな」

 

「うん。実は・・・・・」

 

橙は悩んでいることを話した。

 

「なるほどな~・・・・で、橙はどうしたいんだ?」

 

「わからないの・・・どうすればいいのか・・・旅に出て見聞を広めてみたい・・・でもそれだと先生を一人にしてしまう」

 

と、そう言うとアンチョビはポンッっと手を頭に乗せ

 

「橙は優しいな。だが心配するな。先生のところには私がいるから、お前は旅に出ていっぱい世間を勉強しろ。先生もきっとそう思うぞ?」

 

「お姉ちゃん・・・・ありがとう」

 

「「まぁ、かわいい妹分のためだ。じゃあ私は行くな」

 

そう言いお姉ちゃんは私の頭を撫でた

 

「うん。おやすみなさいお姉ちゃん」

 

そう言い、アンチョビは部屋を出た。

 

「(・・・・吹雪さんと話してみて決めよ)」

 

 

 

 

 

 

 

吹雪が部屋にいると戸を叩く音が聞こえた

 

「ん?開いてるよ?」

 

そう言うと、部屋に橙が入ってきた

 

「あ、橙。どうしたの?」

 

「あ、あの吹雪さん・・・・」

 

「ん?なに?橙」

 

すると橙は真剣な顔をする

 

「あなたは董卓さんとともにこの国で何をするおつもりですか?」

 

真剣な目で、そう聞かれた。

 

「月…董卓はなこの乱世を終わらせ、民が戦に怯えることのない世界を創りたいそういう理想を持っている。もちろん、その平和な世が来るまで大量に人を死なすことになるだろう。それでもこの国に住む民の為、そして未来に生きる民が安心して暮らせるため月は戦っている。俺も月と同じ気持ちさ。だから俺はそんな月を支えたいそう思っているんだよ」

 

「ですが、それだと反感を生むものも現れるではないですか?」

 

「その時は俺たちみんなで何とかすればいい話だよ。俺たちみんなで協力し合って月を守り、そして輝かせる。それが俺の信念だ」

 

「吹雪さん。あなたの言葉には矛盾があります。まるで子供の言い草ですよ?」

 

「いいんだよ。実際に俺はまだ子供だ。もし、大人になるのが、人生で何かを斬り捨て諦めるのなら俺はまだ子供でいい。それに俺はな、何事も諦めが悪い方なんだよ」

 

俺は真剣に答えた。実際に俺はまだ16。大人になるため大切な何かを天秤にかけ大切なものを切り捨てるのが大人なら俺は子供でいい。

俺がそう言うと橙は

 

「吹雪さんって無茶しそうな人ですね?」

 

「あはは・・・よく言われるよ」

 

「私。そう言う人は放っておけないんです・・・・ですから。この徐庶。字は元直。真名は橙。全力で吹雪さんを御支えします!!」

 

と俺に言う。幼き顔ではあるがその顔はキラキラと輝き清らかな感じがした。

 

「分かった。それとそう堅苦しいのはいらないよ。いつもの感じでいいよ。これからよろしくな橙」

 

「わかりました。これからよろしくお願いします!吹雪さん!」

 

こうして橙こと徐庶が仲間に加わるのであった

 



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旅立ちと義勇軍三羽烏

橙が仲間になった翌日雨は上がった。

俺と橙はたびに出発することになった。

 

「本当にお世話になりました水鏡さん」

 

「それではこの子をお願いします吹雪さん。志乃?身体には気をつけるのよ?」

 

「お世話になりました。先生もお元気で。アンチョビお姉ちゃんも」

 

「ああ。橙もな。まあいずれ尋ねに行くよ」

 

「私は私塾に戻りますので、それではこれで。」

 

「本当にお世話になりました。」

 

と頭を下げ、水鏡さんを見送った。

 

「じゃあ、行こうか橙」

 

「はい!」

 

俺達は陳留へと向かうため俺はウラヌスに乗りその後ろにちゃんが乗った

 

「気を付けてな!!」

 

とアンチョビさんは手を振りながら俺たちを見送るのだった

 

 

 

 

「速い!とても速いですよ吹雪さん!」

 

ウラヌスを飛ばしていると志乃がはしゃぎながら言う

 

「ああ!ウラヌスほどの駿馬はなかなかいないからな!だろウラヌス?」

 

俺がそう言うとウラヌスも「当たり前です」と言いたげに嘶く

 

「それよりも橙。大丈夫か?速すぎるんなら速度を落とすけど」

 

「大丈夫です。風が強いですが、気持ちいいです」

 

そう言い笑う橙。すると橙は

 

「吹雪様・・・・気になってたんですが・・・その背中に下げている筒なんですが、それは何ですか?以前盗賊から助けてくれた時もそうですが・・・・」

 

ああ、そうかまだ小銃のこと説明してなかったな。

 

「これは銃って言ってな。天の国って言っても約1800年後の火薬を使った武器だよ」

 

「1800年後・・・・なるほど吹雪様は未来の人なんですか・・・」

 

「驚かないのか?」

 

「はい、少し信じられないですけど。今までの吹雪様の常識外れの知恵とその武器のことを考えれば納得がいきます」

 

「俺の話信じるのか?」

 

「はい、吹雪様は嘘をつかない人なので」

 

「そうか・・・ありがと」

 

「吹雪様・・・・では、これから起きることも知ってるのですか?」

 

「ああ・・・大体は・・・でもそれが必ず起きるとは限らないよ橙」

 

「え?」

 

「だって、ここにいるはずのない俺がここにいる。もしかしたら俺が知っている歴史も変わっているかもしれないし、それに先のことがわかってちゃ、つまんないだろ?」

 

「確かに、そうですね。何でも知っていたら人生がつまらないですね」

 

そう言うと橙は何も言わなかった。

 

 

 

 

 

しばらく走っていると、空が曇って、ゴロゴロと小さな雷鳴が鳴る。

 

「これは・・・・また降りそうだな橙」

 

「そうですね。早くどこかの村にでも行って雨宿りした方がいいです吹雪様」

 

「そうだな。ウラヌス。すまないけどもう少しだけ頑張ってくれるか?」

 

俺の言葉にウラヌスは大丈夫と言いたげに鳴き、先を急いだ

 

 

 

 

天気はまだ曇りのままだ。本当に雨がいつ降ってもおかしくない。暫くすると、村を発見する。村の門に着くと、門番らしき二人の少年が、槍を交差させて立ちはだかる。

 

「止まれ!」

 

「お前ら、何者だ?」

 

「何者って……見ての通りの旅の者だが?」

 

「旅の者?嘘つけっ!お前らも盗賊の仲間だな!!」

 

「いや、違うんだが・・・・俺は・・・・」

 

中々疑り深い門番兵の二人。

 

「楽進さん達を呼んでこい!」

 

「分かった!」

 

一人がそう言うと、もう一人は急いで呼びに向かった。

 

「なんだか、随分警戒されてるみたいですけど……」

 

「きっと近くに賊が出るんだと思います…」

 

「なるほど・・・・それにしては、子供を門番に立たせるって言うのもなんかな・・・・」

 

「そうですね」

 

ご時世とはいえ、子供が武器を持つなんてな・・・・・

そうしていると、向こうから門番兵の一人が呼んできたのだろう。二人の少女達が走ってきた。

 

「于禁さん!李典さん!」

 

眼鏡をかけて、そばかすが少しある、今でいうギャル風な少女と薄い紫の髪で小さくツインテールにしている、上半身がビキニの少女がやってきた。。

 

「真桜ちゃん!きっとあの人達なの!」

 

「よっしゃあ!賊共、覚悟!」

 

李典は両手で持っていた小型の砲台をこちらに向け、発射した。その弾は俺達の上に行くと、急に大きな網となって降りかかる。これは銃を使う必要はない。

 

「っ!」

 

俺は虎徹の鯉口を切った。

 

「んなっ!?」

 

「ええっ!?」

 

チンッと俺は刀を鞘に収める。一筋の軌跡が見えたかと思うと、網はバラバラに切り裂かれていた。

 

「一介の旅人に向けて、攻撃するとは随分無粋だな・・・・」

 

「旅人や?嘘つけ!そんな変な恰好をした旅人がいるか!」

 

「そうなの!」

 

二人はまた攻撃しようとする。‥…仕方がない

 

ダアァァァン!!

 

「ひっ!」

 

「なんや!」

 

俺は空に向けて南部拳銃を発砲した。その音に二人は腰を抜かす。

 

「二人ともどうしたんだ!」

 

すると奥の方から傷だらけの少女がやってきた。

 

 

 

 

 

村へと案内され、一軒家に上がる吹雪達。一行の目の前には、先程の李典と于禁の二人に加えて、もう一人の少女がいた。銀髪の髪を、一つの三つ編みに束ねている。彼女の名は楽進さんというらしい。。

 

「……本当にすまなかった」

 

楽進さんは謝罪を含めて、頭を深々と下げる。

 

「こちらの早とちりで御迷惑をお掛けして、申し訳ない」

 

「楽進さん、頭を上げて下さい」

 

「誤解と分かれば、俺たちはもう……」

 

「真桜も沙和も、決して悪気があってした事では……」

 

楽進の後ろで、李典と于禁の二人が気まずそうにしている。

 

「沙和…あんたが賊が来たって大騒ぎするからやで…?」

 

「けど、門番の子が慌てて走ってきたから、どうしたの?って聞いたら、変な賊の手下が来たって……」

 

ヒソヒソと話していると、楽進がわざとらしく大きな咳をする。ビクッ!と肩を震わせる李典と于禁。

 

「かなり盗賊に警戒していましたね。何かあったのか?」

 

「ええ実は我等三人は、仕官の道を求めて、曹操殿の元へ赴く途中だったのです」

 

「曹操に?」

 

「はい。・・曹操殿は、有為の人材であれば、身分の上下に関係なく召し抱える、度量の広い人物だと聞いたもので・・しかし立ち寄ったこの村にはこの頃、盗賊がこの村を襲っていたらしく私たちはこの村にとどまりこの村を守っていたんです。そしたらちょうどあなたたちが来てその・・・・・」

 

楽進さんは気まずそうに言う。

 

「俺たちを盗賊の手下と勘違いしたと・・・」

 

「はい」

 

まあ、確かにこのタイミング出来たら盗賊と間違えられてもおかしくないな。

 

「それに聞けばこの村は若い男はみんな出稼ぎや戦に人手を取られ村にいるのは老人や子供だけだと聞きました」

 

なるほど・・・・だから子供が門番をしていたのか・・・・その後の話では賊は人手不足なのをいいことに隙を見ては襲ってきてるも楽進さんが一生懸命に戦い撃退しているのだが、彼女たちもいつまでもこの村にいるわけにはいかず、もしこの村を捨ててしまえば賊の集団はここを拠点にしそしてまた新たに近隣の村を襲う可能性がある。

 

「吹雪様・・・・」

 

「ああ、わかってる。楽進さん。俺も協力します」

 

「私もです」

 

この状況・・・・見過ごして逃げるわけにはいかない。話を聞いた俺と志乃はここの義勇軍の助太刀をすることに決めた。

 

「ありがとうございます。あの・・・あなたは?」

 

「おれは

「俺は沖田。沖田吹雪、今は流浪の旅人だ」

 

「私は徐庶。こちらにいる沖田吹雪様の軍師を務めております」

 

すると三人は俺の名を聞いて固まる

 

「お、沖田って・・・・あの沖田吹雪さんですか!?あの天水の新選組の隊長で天の御使いの一人の!?」

 

「それと池田屋事件や黒山衆の戦いで敵を何十人以上相手に一人で倒したという!?」

 

ここまで届いているのかよ・・・・

 

「ああ、確かに俺は沖田吹雪だよ」

 

俺がそう答えたら、三人はさらに驚くのだった。ああ、それは置いといて俺たち5人は今夜襲ってくる賊に対しての対抗策を考え村の見取り図を見ていた。

 

「こんな絵地図しかありませんが……」

 

「いいえ、これでも結構です。ここが村、そしてこっちの山にあるバツ印が山の中の賊の住処。そしてこれが村の前にあった橋。この村の入り口はここだけですか?」

 

「はい。この村は目の前は川、後ろには崖山があって入り口はここだけです」

 

「そうですか・・・・・。ん?これは・・・・湖ですか?」

 

橙が指をさした場所は村に流れている川から上流にあるところに大きな湖があった。

 

「村の人の話ではそこは竜神湖っというらしいです」

 

「竜神湖?」

 

「はい。なんでも龍神様が住むという言い伝えがあるらしく、村人の話では、昔はかなり大きな湖だったが、今は水の量が減り、村の前を流れる川もすっかり細くなってしまったとか……」

 

この川・・・・さっきの堀のような場所か・・・・・あの大きさなら

 

「橙・・・・」

 

「はい。これで何とかなりそうです。後は龍神様の力を借りれば万事解決です」

 

作戦会議が終わった後は全員それぞれの時間を過ごす。

楽進は一人、湯船に浸かっていた。

 

(あれが・・・・もう一人の御使い沖田吹雪さんか・・・・)

 

沖田の噂は村にも伝わっていた。もう一人の白き御使いは幽州で義勇軍を率いてると小耳に訊いたがそれよりも彼のなした池田屋事件の方が有名だった。なんたって街を放火し重要役人を暗殺しようとする賊を彼が率いる警邏隊が未然に防いだのだから。訊けば彼は先の黒山衆の戦いで戦死した隊士たちの弔問の旅をしているとのことだ

 

「それにしても徐庶殿は小さい見かけによらずかなりの軍師らしいがいったい何を考えて・・・・」

 

そしてその吹雪は、李典と一緒にいた。

 

「それじゃあ、このからくりは李典さんが作ったのか?」

 

「そや。細い鋼をこないな風に巻いて、その螺旋の力で物を打ち出す仕掛けになっとんねん」

 

「成程、李典さんは物作りが得意なのか?」

 

夕張が見たら喜ぶな・・・・

 

「おう!材料さえ揃えば、大抵のもんは何とかしたるでぇ♪そう言えば沖田さっきのバァン!!ってすごい音を出した絡繰り見せてくれんか?」

 

「ああ、南部拳銃のことか。壊すなよ」

 

俺は南部拳銃を渡す

 

「これがそうか~夕張が見たら喜ぶで~」

 

「っ!?李典さん!夕張…馬鈞を知ってるのか!」

 

「え?御使いさん。夕張のこと知ってんの?」

 

「ああ。今天水で俺の警邏隊の技術開発部にいるよ。李典さん夕張の知り合いなのか?」

 

「夕張とは発明友達や。そっか~今あいつ天水にいるんか~普通のからくりとかはうちが上やけど武器とかの発明はうちより夕張の方が上やで」

 

「そうなのか・・・・」

 

夕張の奴今頃元気にしてるかな・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天水

警邏隊技術開発部部署

 

 

「ぶえぇくしょん!!」

 

「どうかしたのですか?馬鈞様」

 

「え?なんか今、誰か私の噂をしたような・・・・・」

 

「は?」

 

「いや、何でもないよ・・・・さぁーて。さっさとこれ完成させるか。この回し取手をもっと改良すれば連発も・・・・・吹雪の奴きっと驚くわよ!」

 

そう言い夕張は発明の仕事に戻った。



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義勇軍と官軍

夜、みんな交代で見張りをしている中、俺は外に出て九九式小銃の手入れをしていた。別に中でもよかったのだが先端に油の染み込んだ綿のついた棒を腰の小物入れから取り出し、その棒で銃身の掃除を掃除しなければならない。その時の音でみんなが寝付けなくなってしまうので、あえて俺は外で小銃の整備をしていた。

 

「これでどこまでやれるか・・・・・」

 

俺は九九式小銃を見ながらそういう。旧日本軍の九九式小銃は同じボルトアクションのイギリスのリーエンフィールドライフルの10連発やアメリカの半自動式小銃のM1ガーランドの8連発とは違い俺の九九式小銃は5連発。しかもボルトアクションは撃った後またボルトを動かして装填しなければならない。つまり装填してる間にスキが出てしまうのが弱点だ。俺と橙を含めても村の義勇軍の数は100人。聞けば相手の数は2千以上果たしてどこまでやれるか・・・・すると

 

「吹雪さん?」

 

すると、橙がやってきた。

 

「橙・・・・なんで。」

 

「『なんっでここに?』ですか?それは私のセリフです。吹雪さんこそなんでこんな時間に?」

 

「え?ああ、ちょっと銃の手入れをな」

 

「手入れ?」

 

「ああ、これからこの村で賊との戦いが始まる。だからその時に不具合が起きない様にってね」

 

「そうですか・・・・」

 

「それよりもどうだ橙。龍神様のご機嫌は?」

 

俺は夜空を見ながら橙にそう言う

 

「そうですね・・・・龍神様はまだその気ではないのか、いまだに天上でゴロゴロと唸っていますね・・・・」

 

「そうか、龍神様。協力してくれるといいな」

 

「はい。」

 

そんなほかの人が聞いたらわけのわからないことを二人はしばらく話し、その後、俺たちは、明日の為に寝るのだった。

 

 

そして翌朝、

 

「みなさん。今日一日調べたのですがどうやら龍神様の力を借りられそうです」

 

「・・・というと?」

 

「はい、まず竜神湖付近に(せき)を築き、湖から流れる水を止めます。たとえ水量が少なくても出口止めてしまえば水は溜まります。さらにこの村の村長さんに聞いたところここいらでは毎年この時期にひと月雨の日が続くそうです。そして湖に水がたまったら、夜に乗じて賊の住処を少数で襲い、橋のところまで誘き出し仲間が橋を渡ったら、橋を落とします。当然賊は枯れた川に降りてこの村へと侵入してくるでしょう。ですがここで・・・・」

 

「なるほど・・・・そこで湖の堰を外すのか・・・・」

 

「そうです。全滅まではいきませんが大半の賊は消えると思います」

 

なるほど、それならこちらの被害を最小限にできるな・・・

 

「よぉーし!そうと決まればおもろなってきたわ!うちに任せや!」

 

そう言い李典が胸をたたく。そして数日後・・・・

 

「まさか、数日で堰ができるとはな・・・・」

 

「ほんとにすごいですね。・・・・」

 

あれからほんの数日、竜神湖の前に大きなダムができていた。恐るべし李典。

 

「まあ、夕張には少し劣るんやけどな。どやなかなかのもんやろ?」

 

「本当に李典さんはモノづくりが得意なんですね」

 

「いや~そないにほんまのこと言われるとうち照れるがな~♪」

 

橙が感心して言うと李典は嬉しそうに頭をさすりながらそう言う

 

「あとは水がたまるのを待つだけか・・・・」

 

俺はそう言い、ダムのほうを見る。すると、さっき門番をしていた少年がこちらのほうへと走ってきた。

 

「大変ですー!!」

 

「なんだ賊か!?」

 

「いえ、賊じゃないんですけど、数百人の武器を持った人が来て、その旗は『夏候』って書かれていました」

 

夏侯・・・・もしかして

 

「橙」

 

「はい。おそらく官軍でしょう」

 

俺たちはとにかく外に出てこの村にやってきたという武装集団に会ってみることにした。そして門の前にいたのおは水色のショートヘアーをした女性と、その後ろには金髪の長い髪の少女と小柄な少女二名いた。

 

 

 

 

「私は夏侯淵。字は妙才。 曹操様にお仕えする将だ。こちらに賊が現れると聞いて援軍に来たのだが、ここの指揮官は貴殿か?」

 

夏侯淵・・・・というと曹操軍の奴か・・・・それに夏侯淵といえば曹操に仕える闘将夏侯惇の弟…ここでは妹か。で、弓の達人だったはずだ・・・・

 

「いや、俺はただの旅人だ。ここを指揮していたのはこの三人だよ」

 

そう言い俺がそう言うと

 

「なるほど・・・・で、今の状況は?」

 

夏侯淵にそう言われると俺たちは今までの状況とそして実行する作戦を彼女に話した。そして夏侯淵さんはその話を聞き、彼女率いる300人の兵たちは村にいる義勇軍に協力してくれるのだった。

そしてその日、突然雨が降り出した。それもただの雨じゃない台風級の大雨だ。これなら湖の水もすぐにたまるだろう。

皆が武器の手入れやら交流会をしている中

俺は、部屋の窓際に腰掛けて雨と風の音を静かに聞きながら今度は俺の愛刀である虎徹の手入れをしていた。すると・・・

 

「隣いいか?」

 

後ろを振り返ると夏侯淵と金髪の髪の長い女性が立っていた。俺は断る理由がないため頷くと二人は俺の傍に座る

 

「すごい雨だ。生まれて18年。こんな雨は見たことがないな・・・」

 

彼女はそう呟く。

 

「だがその大雨で湖の水はたまるのが早くなるんだし。別になんも支障はないよ」

 

俺がそう答えると金髪の少女も

 

「そうですね。後はお姉さまの援軍が来れば・・・・」

 

「えっと…あなたは」

 

「そう言えば、名前を名乗っていませんでしたね。私は性は曹。名は純…字は子和と申します。以後お見知りおきを」

 

「あなたが曹軍精鋭騎兵部隊『虎豹騎』の隊長ですか・・・・」

 

「知っているんですか?」

 

「噂程度では、曹軍最強部隊だと聞き及んでいます」

 

「・・・・で、そう言うお前の名は?ただの旅人ではないだろ?」

 

夏侯淵が俺を怪しむように見る

 

「あの時の作戦会議での作戦指揮と言い、態度と言い、何よりお前のその格好で普通の旅人というのは無理がある。」

 

「ま、それもそうですね・・・・俺は性は沖田。名は吹雪。字はないよ。董卓軍の軍人だ」

 

俺が名乗ると二人は驚いた表情をする

 

「沖田って・・・・あの沖田か?西涼の董卓のところにいる天の御使いと呼ばれている」

 

「それに起きたと言えば、池田屋事件や黒山衆の乱・・・・定軍山の戦いで数々の黒山衆を倒した「新選組」隊長の・・・・」

 

「そう呼ばれているみたいだけどな。知っているの?」

 

洛陽や陳留からすれば西涼はど田舎だ。そんな場で俺の名が届いているのは少し驚いた

 

「お前の名は陳留まで届いている。むしろ新選組の強さは知らないほどだ。池田屋、黒山衆の乱では大活躍だったからな」

 

「謙遜するな。お前のなしたことはすごいことなのだぞ。それに私の姉者も言っていたよ。『たった30人で60人以上いる悪党どもの悪行を未然に防ぐなんてただものではないな』っと褒めていたよ」

 

「はい。それに華琳お姉さまも、定軍山での戦いの奇襲攻撃や大陸で見たこともない戦法を使って黒山衆を撃破した新選組や指揮官である沖田さんのことを高く評価していましたし」

 

「それは光栄ですね」

 

と、雨の中二人はそんな他愛のない話をしていた。夏侯淵が言う姉者とはおそらく夏侯惇だろう。っというか夏侯惇も女か‥‥とすると、曹純も恐らく曹操の真名だろうが、お姉さまというからには曹操も女だろう・・・・もし曹操が女だったらどんな格好なんだろう・

 

「それで沖田さんは何でここに?」

 

曹純の質問に俺は答えた。なぜ俺がこの地にいるのかを・・・・

 

「そうですか…黒山衆の戦いで戦死した兵士たちの弔問に・・・・」

 

「ええ。遺族のいる陳留へと向かう途中、この村につきまして、放っても置けず、今ここにいます」

 

「そうか・・・・」

 

そう言うと夏侯淵は何も言わず、そしてあたりは激しい雨音が鳴り響くのであった

 

「(雨が上がったら決戦か・・・・・)」

 

吹雪は内心そう呟くのであった



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雨の激闘

夏侯淵さんたちとの話を終えた俺は、部屋の奥へと入る。緊迫した中、俺は、気を落ち着かせるため。携帯食料であるクッキーを少し食べた。

因みにこのクッキーは。朱雀屋の看板娘である、典韋こと流琉ちゃんと一緒に考案し作ったものだ。

彼女とは俺が非番の日、朱雀屋で新メニューや俺の時代の料理を考え作る際に仲良くなった子であり、流琉は彼女の真名である

 

「・・・・・」

 

すると何か視線を感じた。俺が少し振り向くと、先ほど夏侯淵さんたちと一緒にいた桃色のツインテール?みたいな髪型のこと、李典に似たビキニ姿の小さい子が物欲しそうにジ~と見ていた。

それを見た俺は

 

「よかったら、食べるか?」

 

と、クッキーの入った袋を彼女たちに向けると

 

「いいの!!」

 

と、嬉しそうな表情をし俺は頷くと、二人は袋からクッキーを出し一口食べると

 

「美味し~!!」

 

「うん…美味しい」

 

二人とも嬉しそうな表情をする。どうやら気に入ってくれたみたいだ。

 

「それで君たちは・・・・・」

 

「あっ!僕は許褚ていうんだ!」

 

「シャンは…徐晃って言うんだよ」

 

許褚は元気よく答え、徐晃はゆっくりとあいさつした。俺はその二人の名を聞いて少し驚いた。こんなに幼いとは…まあ、義妹の陳宮・・・音々音も今いる橙も幼いし・・・うん。あまり深く考えるのは止めにしよう。混乱するだけだからな

 

「ところで兄ちゃん。お兄ちゃんて、天の御使いって本当?」

 

許褚ちゃんが俺に訊いてくる

 

「分からない。ただの異国から来た人間だよ。みんなが勝手にそう言っているだけ・・まあ、異国のことを天の国というなら間違ってはいないと思うけどな」

 

と、そう言うと徐晃ちゃんは

 

「でも、シャンは知っている・・・・お兄ちゃん。新選組の隊長・・・・だよね?」

 

「知っているの?新選組のこと?」

 

「うん・・・・涼州でかなりかなり強い集団だって噂になってる」

 

「僕も知ってるよ!池田屋っていう宿屋で悪いことを企んでいた奴らをやっつけたんだよね!それに黒山衆ていう集団もやっつけて活躍したって春蘭様が言ってた!」

 

と、目をキラキラさせて言う許褚ちゃん。徐晃ちゃんもなぜか興味深そうに俺を見ていた

 

「あれは俺だけの力じゃないよ。新選組のみんなと主である、湯…董卓様のおかげだよ」

 

少し苦笑いしながらそう言うと

 

「兄ちゃん!これからはボクの真名の季衣って呼んでいいよ。よろしくね兄ちゃん♪ 」

 

「シャンのことは香風て呼んで・・・・」

 

すっかり懐かれてしまった

 

ああ、じゃあよろしくな季衣。香風」

 

「うんよろしくね兄ちゃん♪」

 

「よろしく…お兄ちゃん」

 

その後、俺は二人と別れ外を眺める。雨は強く振る。それはこれから起こる戦を表すかのようだ

すると

 

「吹雪さんちょっといいですか?」

 

橙がやってきた

 

「どうしたんだ橙?」

 

「はい。さっき湖の様子を見に行ってきたのですが、先ほどの大雨で予定していた日よりも早く水がたまりました。」

 

「・・・とすると」

 

「はい。今夜でも夜陰に隠れ攻撃を仕掛けます」

 

そしてその夜、橙が建てた作戦が決行される。そして賊を誘き出すメンバーは俺、夏侯淵と季衣と香風ら数名、楽進さん、于禁さん。李典さんはダムを開けるため湖の近くで合図を待っている。

 

「いいですか。皆さんにはまず賊の住処を襲撃してもらいます」

 

「わかった。」

 

「うむ」

 

「この命に代えてでも、もしもの場合私が討って出ます・・・・」

 

と楽進さんがそう言う。しかし

 

「ダメだよ!」

 

と季衣が強く楽進に言う

 

「そんな考えじゃ…ダメだよ。絶対に春蘭様たちが助けに来てくれるんだから、最後まで頑張って守らないと」

 

季衣がそう言うと俺も頷き季衣の頭をポンと撫で

 

「うん。その通りだ。楽進さん。俺たちは死ぬために戦うんじゃない。民の命を守るために戦うんだ。死んだら戦えない。だから何としてでも生きようとする意志は忘れてはいけない。君の力ならこの先何千人の命を救うことができるんだからな」

 

「・・・・肝に命じときます」

 

俺と季衣の言葉に楽進さんは申し訳なさそうに言うと

 

「ふふ・・・」

 

突然、夏侯淵さんが笑い始めた

 

「ん?何ですか夏侯淵さん。俺何か変な事言いました?」

 

「いやなに。そんな幼い顔に似合わず大人みたいに論しているのがおかしくてな…季衣も昨日あれだけ姉者に叱られたお前も一人前に言うのもまた面白い」

 

「幼い顔っていうのは余計です夏侯淵さん」

 

「そうですよ~!」

 

と俺と季衣は少し頬を膨らませて抗議する中、橙は

 

「吹雪さんの言う通りです楽進さん。とにかく水が来たら私がどらを鳴らして合図します。そうしたら川のそばから離れてください・・・・・・」

 

「わかった」

 

「では皆さんご武運を!」

 

こうして作戦は実行されるのであった。

 

 

 

 

 

 

外では雨の中、おとり部隊が賊の軍と交戦していた。

 

「おりゃぁー!!」

 

吹雪は虎徹で賊と戦っていた敵を斬り倒し撤退しつつ追ってきた敵をまた倒してたりと繰り返していた、

 

別の場所では

 

「賊ども覚悟っ!」

 

夏侯淵率いる少数部隊も同じく賊と戦い彼女は遠距離から弓で攻撃し、

 

「おりゃぁーーー!!」

 

「えいっ!!」

 

季衣と香風も賊相手に、季衣は巨大なモーニングハンマーを、香風は巨大な巨大な斧みたいな武器で敵を倒して、撤退しながら賊をあの橋のところまで誘導していた。

そして違う場所では、于禁が賊の一人と戦っていた。しかし、防戦一方でしかも運の悪いことに雨の降った後なため泥に足を滑らせてしまい尻餅をついてしまう。賊が槍で止めを刺そうとするも、後ろから楽進に槍の先端を掴まれたため攻撃できず逆に楽進に蹴りを入れられ賊は倒れた。

 

「沙和、大丈夫か?」

 

「も、もちろんなの!」

 

楽進が手を伸ばして言い、于禁はその手を取り立ち上ろうとした、その時だった

 

「隙ありだぜぇ!!」

 

茂みに隠れていた賊が楽進が于禁を起こそうとした瞬間を狙い襲ってきた。しかし・・・・

 

「ぐわっ!」

 

二人を襲おうとした賊は神速のごとくやってきた吹雪に切り伏せられた

 

「大丈夫か二人とも!」

 

「沖田さん。助かりました!」

 

するとそこへ夏侯淵がやってきて

 

「沖田、そろそろだ!」

 

「おう!楽進さん!」

 

「承知っ!」

 

「撤退だっ!急げ!」

 

吹雪の掛け声を合図に、みんなは村へと戻っていく。そしておとり部隊が走り去っていくのを、少し高い崖から見下ろす賊のリーダー。

 

「ふっ…どうやら連中、村まで逃げるみたいだな!不意をついたつもりだろうが、所詮は多勢に無勢。ようしっ!奴等を追ってそのまま村に攻め込むぞ!」

 

「し、しかし兄貴!連中、橋を落としやした!」

 

「そんなこと気にすんじゃねえ!あそこは浅い川だ!すぐに突破できる。そのまま一気に押し渡って連中を皆殺しだぁ!!」

 

『『『おおぉー!!』』』

 

そう言い賊たちはまるで雪崩のごとく村に向かっう。するとまた雨が降り出し雷が鳴る。そして賊たちが堀を登りあがろうとすると入り口にいた吹雪たちが必死に叩き落すし、夏侯淵も弓で相手を射る。

 

「……そろそろ、いい頃合いですね」

 

高台から様子を窺っていた橙は、手に持っている松明を掲げ、李典に合図を送る人に知らせる。そしてそれを見た見張りも人も同じく松明で李典に合図をする。

 

「おっ!?合図が来たな。ほなさっそく始めるか!」

 

合図を見た李典はダムの開閉装置を発動させた。しかし・・・・

 

「あれ?動かへん?」

 

李典は何度も装置のレバーを引くだがなぜかダムが開かない。

 

「どうなってるんや・・・・・あっ!?」

 

李典は装置のからくりを確認する。すると門を開閉させるための装置の要である紐が切れていたのだ

 

「くそっ!こないなときに!」

 

そう言い、李典は急いで壊れた装置を修理し始めるのだった。

 



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撃退と別れ

お久しぶりです何とか書くことができました


「くッ、水はまだ来ないのか!?」

 

「もう矢が尽きそうなの~!」

 

真桜が修理をする中、弓を放ちながら夏侯淵はそう言い。于禁が矢が無くなりそうだと言う。となるとまずい。ここを守るのもそろそろ限界が来てる。

李典さん。何かあったのか?

 

「きゃあっ!」

 

「なっ!?」

 

急に夏侯淵と曹純の足元の岩が崩れ、二人とも堀の底に落ちてしまう

 

「柳琳様!秋蘭様!!」

 

香風と季衣が声を上る、

 

「柳琳。大丈夫か?」

 

「え・・ええ・・・・でも足をくじいたみたいで」

 

夏侯淵が曹純に訊くとどうやら、彼女は落下時に足をくじいてしまったようだ。そして堀の底に落ちた二人に賊たちが取り囲んだ

 

「くっ!」

 

取り囲む賊に対し、夏侯淵は弓で対応しようとしたが・・・・

 

「(しまった!?今の衝撃で弓が折れている!)」

 

さっき落ちたせいで夏侯淵が持っている弓自体は大丈夫あのだが肝心の弓矢は軸が折れて使用不能になっていた。それを見たひとりの賊は

 

「さっきはよくもやってくれたな!二人ともまとめて串刺しにしてやる!」

 

槍を二人に突き刺そうとした瞬間、

 

ダアァーン!!

 

「ぎゃっ!!」

 

雷鳴に近い音が鳴り響いた瞬間二人を殺そうとした賊が頭から血を流し仰け反って倒れた

 

「な、なんだ!?あの音は!?

 

「落雷か!?」

 

急に血を流し倒れた仲間を見て周りの賊は動揺し始める

 

「(違う…あれは雷鳴なんかではない)」

 

夏侯淵は先ほどの音が雷鳴ではないと思った時、

 

「二人とも無事ですか!」

 

沖田と香風と季衣が滑り降りてきた。そして沖田の手には九九式小銃が握られていた。あの銃声は吹雪が発砲したものだった。秋蘭はその銃を見て先ほどの音の正体が分かったのだった

 

「(あれが噂に聞いた雷鳴をとどろかす武器か・・・・)ああ・・・だが、柳琳は・・・」

 

「大丈夫です」

 

「大丈夫じゃない・・・・柳琳様。足怪我してる・・・・」

 

香風の言葉に吹雪はちらっと彼女の脚を見ると、捻ったのか青い痣ができていた

 

「・・・・香風。季衣。二人は夏侯淵殿と曹純殿を連れて上へあがれ」

 

「え?…でも兄ちゃんは?」

 

「もうじき水が来る。それまで俺がここで時間を稼ぐ」

 

そう言うと吹雪は銃を背中にしょい代わりに愛刀の虎徹を抜く

 

「ダメです沖田さん!」

 

柳琳はそう言った瞬間、賊たちは

 

「沖田?」

 

その名に反応する

 

「枯草色をした異国の服・・・・見たこともない曲刀・・・・おい・・・まさか、あの新選組の『人斬り沖田』!」

 

「なっ!あの狂狼集団の隊長・・・まずいですぜお頭!」

 

盗賊たちが沖田を見て怯えだす。黒山衆の乱以降、盗賊の中で『新選組』は天敵であり、恐怖そのものである。しかもその隊長である沖田は最強格であり、賊からしてみれば悪夢そのものだった

沖田の名を聞き動揺する賊たちではあったが、その頭が

 

「新選組がこんなところにいるわけねーだろう!張ったりだ!張ったり、全員で嬲り殺せ!」

 

「「おおーーーー!!!」」

 

頭の言葉と同時に賊が一斉に吹雪に向かっていく

 

「沖田さん!」

 

「沖田!」

 

「兄ちゃん!」

 

それを見た柳琳たちはそう叫ぶが沖田は

 

「手練れ相手に集団で斬りかかる‥‥戦いの基本はなっているみたいだな・・・・だが・・・・」

吹雪は賊をギラリを睨むのであった

 

 

 

「ふ~やっと直ったで」

 

一方、李典はダムの開閉装置を何とか修理することができた。そして彼女はその開閉装置のレバーを引く。すると門が開き今までたまっていたものすごい量の水が流れ出す。

 

「あっ来ました!」

 

見張り塔から見ていた橙は水が来たのを確認すると銅鑼を鳴らす。これは水か来るっという合図だ。銅鑼の音はあたり一面に響きわたるのだった

 

 

 

「クッソ…化け物め・・・」

 

「本当にあの人斬り沖田なのかよ」

 

剣を構え狼狽える賊たち、その彼らの前には無数の賊の死体が転がる中一人立つ少年。吹雪がいた。

無数に斬りかかった賊たちは吹雪の剣技によってたちまちに切り伏せられまさに死屍累々と言った状態であった

 

「すごい・・・・あっという間のあの数を・・・」

 

「吹雪さん・・・・」

 

「わぁ~兄ちゃん春蘭様みたいに強い」

 

「うん・・・すごい」

 

吹雪の強さに秋蘭や季衣や香風が驚く中、銅鑼の音が響き渡るのだった

 

「この音はっ!?」

 

「水が来る合図ね。沖田さん!」

 

「ああ、撤退だ。曹純さん!ちょいと失礼」

 

「え?きゃっ!」

 

吹雪は刀を鞘に納め、足をくじいた柳琳を抱きかかえて秋蘭たちとともに堀を上がりはじめる

 

「・・・・あっ!奴ら逃げるぞ!追えッ!!」

 

先ほどまで、吹雪の殺気にビビっていた賊たちだったが、すぐに気を取り直し、吹雪たちを追いかけるのだったのだが・・・・・

 

「ん?あ、兄貴!あれ!?」

 

部下の男があるものを指さす。その先にはダムから流れた激流が津波のごとく押し寄せてきた

 

「なっ!まずいおい早く堀から出ろ!水流に巻き込まれるぞ!」

 

頭はそう叫ぶがもう後も祭り、激流が続たちを飲み込み、激流は賊たちの断末魔とともにはるか彼方へと流していくのだった。

 

「終わったか・・・・・・」

 

吹雪が軽く息をつき、そう呟く中

 

「あの……あの!沖田さん!」

 

「ん?どうしたんですか?」

 

「あの…そのなんていいますか?」

 

曹純に声をかけられ彼女の顔を見ると、彼女は顔を真っ赤にしてもじもじしていた

 

「アイヤ~吹雪さん・・・・」

 

「兄ちゃん・・・・」

 

橙と季衣は驚いた表情をし、夏侯淵は呆れたようにため息をついて

 

「沖田…今自分がしている状況を見ろ」

 

「え?」

 

指摘された吹雪は、自分の状況をよく見ると、曹純を抱きかかえたまんま、つまりお姫様抱っこをした状態だったのだ

 

「吹雪さん・・・・そろそろ降ろしてもらってもいいですか?」

 

「ああっ!これは大変失礼!」

 

そう言い吹雪は慌てて、彼女を優しく降ろした。そして

 

「あの・・・助けてくれてありがとうございました」

 

と頭を下げる曹純に対し、吹雪は

 

「いや、そんな大したことはしてませんよ」

 

と笑っていると彼女は

 

「あ、あの!沖田さん!私の真名は柳琳です」

 

「え?いいんですか真名を教えて?」

 

「はい。沖田さんは私たちを助けてくれましたし、それに・・・・」

 

そう言い柳琳はもじもじしだす、吹雪は首をかしげるが

 

「分かった、柳琳」

 

「///」

 

吹雪がっその名を言うと彼女の顔がさらに赤くなるのだった。今度は楽進たちがやってきて

 

「沖田さん。先ほどは助けていただきありがとうございました。」

 

「いや、いいよ。それより楽進さんに怪我がなくてよかった」

 

「私の真名は凪です。凪とお呼びください。」

 

「分かったよ凪、」

 

俺がそう言うと今度は夏侯淵さんがやってきた

 

「沖田・・・・」

 

「ん?何ですか?夏侯淵さん」

 

「お前のおかげで命拾いした。礼を言う」

 

そう言い夏侯淵さんは俺に頭を下げる

 

「頭を上げてくれ夏侯淵さん。俺は別に・・・」

 

「秋蘭だ」

 

「え?」

 

「私の真名だ。命を助けてくれた礼としてこの真名。受け取ってくれ。それとさん付けもいい」

 

「・・・・わかった。じゃあ、秋蘭。今回の戦いお疲れ様」

 

その後、村では祝勝会みたいなのが開かれていた。沖田は先ほどの賊の戦いでの強さに季衣や若い少年たちに質問攻めにされたり橙は見事な作戦に柳琳から質問を受けた李、そして吹雪は皆に手料理を振る舞って絶賛されたりなどにぎやかな宴会になっていたのだった

 

 

そして明朝

皆が寝静まる中、吹雪と橙は荷物を整えていた

 

「一晩で水は引いたようですね?」

 

「ああ・・・・賊も一層できたし、これで一件落着ってところだな」

 

橙の言葉に吹雪は頷き、そして吹雪は口笛を吹くと、厩からウラヌスが現れる

 

「さ、行こうか」

 

「はい。」

 

そう言い吹雪と橙はウラヌスにのいると

 

「もう行ってしまうのですか吹雪さん?」

 

声がし、振り向けば、柳琳と秋蘭、そして季衣と香風がいた

 

「ああ・・・・まだやるべきことがあるからね」

 

「そうか・・・・寂しくなるな・・・」

 

そう言う秋蘭。

 

「兄ちゃん…本当に行っちゃうの?」

 

「お別れは・・・寂しい」

 

季衣と香風も寂しそうな表情をするのだが、吹雪は

 

「俺は戦死者の遺族のいる陳留の街に行く、もしかしたらそこで会えるかもしれないよ」

 

と、軽く笑い。そして

 

「じゃあ、柳琳。秋蘭、季衣、香風。しばしのお別れだ・・・・・・・ウラヌス!」

 

吹雪はそう言うとウラヌスは嘶き走り出す。吹雪と橙を乗せて物凄い速さで走り出し、柳琳と秋蘭たちはそれを見送った。

そして季衣は

 

「兄ちゃぁーん!ありがとぉー!!!」

 

遥か先にいる吹雪にそう叫ぶ季衣であったのだった

 

 

 




最期のシーンは映画「シェーンのラストシーンを見て思いつきました


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