ONE PIECE プラントオーナー (ひよっこ召喚士)
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IF 【ONEPIECE FILM GOLD&EARTH】
【ONEPIECE FILM GOLD&EARTH】〜予告〜


 

 

【世界政府を倒すために、『プラント』と『グラン・テゾーロ』が手を組んだ!?】

 

【一切の取引を停止し、土と黄金で出来た要塞塔『バベル』を築き上げ、彼らは立て籠もった……】

 

【世界政府は事態を世間に隠し、備蓄を削る事で誤魔化したが、状況は風前の灯火】

 

【海賊、四皇、七武海、CP、海軍、革命軍、あらゆる陣営が動き出す!?】

 

【麦わらの一味は4年に一度行われる世界最大の食のイベント『ワールド・バイキング』に訪れていた】

 

【食料が無く、イベントどころではない。開催地にて事情を知っている謎の少女『グレーヌ』と出会う】

 

【『バベル』と言う『食』と『金』の渦巻く欲望の地で、世界の命運を賭けた戦いがいま始まる!!】

 

【「あたし、知ってるよ。神に挑む塔『バベル』あそこに黒幕が居るの」】

 

【「そこに行けば食い物が手に入るんだな?よし、行くぞ!!お前ら」】

 

【「マママママ、ウチとの取引を止めるなんてバカな事をしたよ」「ウォロロロロ、ふざけたことしやがるじゃねえか」「ゼハハハハハ、取引もそうだが、能力者が集まるだろうな」「酒も手に入らないとなると宴会も出来ねえな」】

 

【「いやぁ、怖いねぇ」「彼らは何を見てきたんでしょうねぇ」「老兵最後の大仕事に成りそうじゃわい」「大目付の私まで駆り出すか」「全く、あんたらもちっとは世界のことを考えな!!」】

 

【「誰じゃこんな所に邪魔な塔を建てたのは」「フッフッフ、面白い事やってんじゃねえか」「母ちゃん、あの塔を倒せば良いの?」「斬る事は叶わぬ、か」「ルームは届くのか」「はーはっはっは、行くぜお前ら座長であるオレ様に続けぇ」】

 

【「革命軍としても、世界を混乱させる真似は許せないな」】

 

【「元より神に喧嘩を売ってるんだ」「世界程度相手取ってやるよ」】

【「「”神”がいる限りこの世は地獄だ!!」」】

 

【「エンターテイメンツ、題材は「堕ちる神」なんて洒落がきいてるだろう?」】

 

【「その首も刈り取ってやろう」】

【「肥料にしてやろうかと思ったが、作物に毒だな」】

 

【「この復讐は止まらない。止められないんだ」】

【「地の底から湧き出る怒りを何処にぶつければ良いんだ!!」】

【「厭離穢土も欣求浄土も叶う事は無いと知れ!!」】

【「ここがお前の地獄だ!!」】

 

【『輝かしい金』も『命育む大地』も、何も意味は無い】

【そこにあるのは『怒り』と『失望』】

【世界を巻き込んだ復讐劇の決着は!?】

 

【ONEPIECE FILM GOLD&EARTH】




エイプリルフールネタのIF世界です。

これは予告でちゃんとした内容は明日から1日1話ずつ上げていく予定です。時間は12時ジャストです。何故、一気に投稿しないかと言うと、まだ最後まで書き上がって無いからです。現在、鋭意製作中です。

無駄に待たせてしまって申し訳ないと言う思いはあるのですが、少し、あと少しだけ猶予をください。

と言うことでいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 1

昨日の時点で熱が38度ありました。今日は少し下がりましたが、辛いです。発覚したのはフルタイムで働き始めて初日、職場から帰る際の検温でです。味覚は会社に奢って貰った寿司が美味しかったので大丈夫です。朝もうどんが美味しかったです。

こんな事になるとは思っていませんでした。現在構成は出来てますが、3までしか書けてないので4日で一度更新が止まります。申し訳ありません。


 聖地マリージョアに部屋を置く、世界政府の最高権力者、五老星…彼らは一様に顔を顰めていた。

 

「まさか、この様な行動に移るとはな……ざっと()()()か?長く怨みを隠したものだ」

「儂らも彼を信用しすぎてしまった。いまや彼は世界に必要な存在となっている」

()()()()()()()も問題だろう。革命軍で無かった事を良しと言えれば良いのだが…アレもまた大物だ」

「消す訳にはいかん…それどころか、消せるかどうかも怪しい、今は亡き白ひげが世界を滅ぼす力ならあ奴の力は世界を操る力……」

「だが、アレは世界政府だけでなく、四皇にさえ敵対した。もはや世界の変化など望んでおらん……アレはゼットと同じく破滅を望んでおるのかもしれんな」

「対応しない訳にもいかんが、その場が四皇と言う勢力が集まる場でもある以上出し惜しみは出来ん」

「情報を掴んだ革命軍の動きも怪しい……もし、一堂に会する事があれば、場は混沌と化すぞ」

「加盟国や天竜人は黙らせておけ、文句は言わせん。対処できなければ、世界が滅ぶだけだ」

「だが、広めることもままならないだろう。()()()()はこちらの落ち度である事に間違いない」

「今回の声明を見ても、狙いは世界政府と天竜人じゃからな」

「『()()()』か……神への挑戦なんてと一笑に出来れば良かったのだがな」

「相手はバベル、四皇、革命軍と言う世界の勢力…もはや決定は覆らん」

「表裏も今回は考えていられん」

「海軍とCP動かせる者は全て動かせ」

「七武海も強制招集をかけろ」

「神への反逆者を捕えるのだ」

 

 

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 バタバタと走り回る者で溢れる海軍本部、五老星からもたらされた情報と出された指示によって政府の動かせる戦力が新世界にある本部へと集結しつつある。

 

 中には緊急として急ぎで七武海の下まで走らされる者も居る。今回の招集は頂上戦争の際よりも強制力は強いものであると伝えられているため、会議には電伝虫での対応にはなるが全員が参加していた。

 

「それでは時間に成りましたので始めさせて頂きます。今回の会議の司会進行を任されておりますブランニューです。どうぞよろしくお願い致します。今回の会議は海軍の人間はもちろんの事でございますが、CP、七武海の方々も交えての場となっております。また、全員が集まることは出来ませんので別室とも繋いでいます」

 

 そう言う彼の視線の先には設置された映像転送電伝虫だった。彼の手元には普通の電伝虫もあり、それで他の部屋にも声を届けて居るようだ。

 

「今回の集まりは2年前の白ひげとの戦争よりも危険度と重要度は高い物と考えて頂いて構いません。規模は過去最大ですが、世間への秘匿性も高い物となっております。そのことを念頭に置いて、これからの議題についてお聞きください」

 

 そう言って設置されているホワイトボードに資料を張り、映像電伝虫を使って何かを映し出した。映し出された物は一つの巨大な国家の姿で、ホワイトボードに張られているのはその国の概要と要人についてだ。

 

「世界で知らない者は居ないと言われている大地が生み出す自然の国、()()()()()()()()()()でもある『プラント』!!この国で生産される食料は世界中に流通している食の半分以上を賄っています。我々海軍や世界政府にもそれらは卸されています。そして、かの国の特性により、()()()()アスカルは世界の通貨の30%を掌握しています」

 

 世界中の事件と明日関わるかもしれない者達であるからして世情に疎い者と言うのは少ないが、いくら有名とは言え一国家の情報を詳しく知ってる者ばかりでなく、初めて聞いた者はその国の強大さに驚きを表した。

 

「そして、この国は世界政府及び世界への貢献度も高く、所持している力も強い事から、元々は政府加盟国の1つでしたが、7年前に政府公認の()()()()として認められております。独立国家と言えばこちらの方が名前は有名でしょう、かの黄金帝ギルド・テゾーロの所有する『グラン・テゾーロ』と同じです。そして、こちらも説明させて頂きますと、世界最大のエンターテイメントシティとして多くの者が集う()()()で、黄金帝テゾーロは世界に流通する通貨の20%を掌握してる大富豪です」

 

 どちらも個人でありながら世界への影響を与える大人物である。彼らだけで世界の通貨の半分を所持しているのだから、普段世界には総量の半分しか出回っていないという事だ。しかし、彼らと今回の招集になんの関係があるのか、集まった面々は測りかねていた。

 

「アスカル王は独立国家と認められる以前と同じく、公平な取引を掲げ、世界と関わっておりました。黄金帝テゾーロに関しましても政府の介入は拒んでおりましたが、敵対的な行動は一切ありませんでした。ですが、それは3日前までの話でございます!!」

 

 ホワイトボードにバンッと手を叩きつけて映像を切り替える。そこには世界政府に送られた勝手な宣言としか受け取りようのない、あまりにも一方的な文だった。

 

 

【『プラント』、『グラン・テゾーロ』の両国は神殺しの同盟『バベル』と名乗らん】

 

【『バベル』は全ての関わりを絶ち、世界へ、神へと挑む】

 

【7日後に我らの手によって神は地に堕ち、神の地も沈まん】

 

【道を塞ぐ者に容赦することはないと知れ】

 

【『バベル』代表、プラント・アスカル】

 

 

「これだけでは何の意味かは分からず、読み取り方によっては政府や海軍に敵対すると言う暗喩にも思えますが、明言はされておりません。ですが、問題点は世界への影響力の強い2名が宣言通り外部との関係の全てを断絶させたこと!!政府は世界の混乱を避けるために現在この情報を世間に秘匿していますが、状況は風前の灯火といっても過言ではありません」

 

 世界に回る食料の半分以上がせき止められ、世界の50パーセントの資産が出回る事がなくなった。半分とただ言えば簡単だが、世界の半分を彼らは牛耳った上で、それを独占しているのだ。その影響は想像するまでも無い。

 

「この状況が続けば、世界の経済と食が完全に崩壊し、多くの国や人々が……いえ、世界中の人間の命が危険となるでしょう!!世界政府としてはこの状況が続くことを良しとせず、また、()()()()()ともとれる言葉の数々を世界貴族である天竜人、神の地を聖地マリージョアと仮定し、計画の阻止と両者の捕縛を命じました!!」

 

 そこまで一気に言い切ると、酸素を取り入れるためにぜぇぜぇと息を少し荒げている。ここに集められていた者達も世界の危機が訪れていると言う話に驚愕を示す者が多い、CPには冷静に情報を整理する者が、七武海の中には不敵に笑う者も居るが、それらは例外だろう。そんな中、手をあげる将校が一人いた。

 

「なぜ、捕縛なんだ?」

「理由は2つございます。まず、彼らは先ほども言った通り、犯行を明言していません。さらには独立国家である事から世界政府に彼らを取り締まる事は出来ず、罪を上げるとしても取引を無碍にした契約違反だけです。世界を混乱させたと言う曖昧な罪状で裁くことは難しいと言うのが1つ。もう1つは彼らの世界への影響力の強さも説明しましたが、彼らが居なくなった事で現在の事態となっています。そのため、彼らを殺す事は()()()()のです」

 

 非常にややこしい事態である事がその質問と答えで分かった。声明を上げてはいるが、その文面に()()の文字は無い。強大な力を持っている者が相手でありながら、安易に殺す事が出来ないと言うのは面倒でしかない。だが、そこに更に追い打ちをかける情報が足された。

 

「さらに重要な情報があります。『プラント』は建国当初から公平な取引を掲げ、政府、海軍、政府加盟国はもちろん、海賊や非加盟国であろうと取引をしていました。その中には新世界に居座る大海賊、四皇『ビッグマム』『カイドウ』『黒ひげ』『赤髪』の4名とも取引があり、生前には『白ひげ』とも関わりがあった事が認められています」

 

 この時点で更なる大物たちの名前の羅列に会議に参加している物は息をのんだ。それぞれが1勢力として強大な力を誇る海賊、世界の均衡を保つと言う名目で手を出しかねている海賊である。

 

「事もあろうか『バベル』は彼等との取引も停止させました。その事に四皇も何らかのアクションを取ると考えられ、『赤髪』を除く3人に至っては()()()()()()という情報が既に入っています。憶測ではありますが、4人中3人が動くとなると『赤髪』も動かざるを得ないでしょう。さらには世界への影響を考えてか『革命軍』にも動きがあります」

 

 会議場はシーンと静まり返った。世界に散らばる全勢力の人間が集まろうとしている。今回の問題である『バベル』に並び、『四皇』、『七武海』、『海軍』の3大勢力と『革命軍』という存在まで一堂に会すると言うのだから、その場は混沌と、地獄と化すことが理解できてしまった。

 

「我々、世界政府、海軍、七武海の目的を纏めさせて頂くと『バベルの計画を未然に阻止し、四皇や革命軍よりも先にアスカル、テゾーロの両名を捕縛する』です!!」

 

 2年前よりも力は増したとは言われている海軍ではあるが、『白ひげ』と言う年老いた伝説相手に大きな打撃を受けた事を忘れてはいけない。今度は()()()()()()()の相手をする必要があるかもしれないと言うのだから、その壮絶さは考えるのも恐ろしい。

 

「それに伴い、今回はかなり特殊な形で命令が出されています。『阻止と確保に重きを置き、向こうから敵対してこない限りはこちらも敵対するな』という物です。これは世界政府より出された命令です」

 

 これには会議室が先ほどと打って変わって騒めきだした。海軍や政府の人間に海賊や革命軍を前にして、手を出してこない限り敵対するなと言うのだ。元帥であり過激派として有名なサカズキがよくそれを承認したなと多くの者が思った。

 

「彼らの声明には7日後と記載されており、既に3日経っておりますが、不用意に事を構えるのは危険と判断し、戦力を整えてから赴く必要があります。七武海の招集なども含めて、作戦の決行は2日後となりました。現在確認中の『バベル』の正確な位置などを含め、状況の変化の次第によってそちらも変える可能性はありますが、それまでに情報の徹底と共に準備を行ってください。私からは以上です」

 

 会議室ではこの後で質問が飛び交ったり、本部内は作戦決行までの準備に追われたりする者で溢れた。七武海たちは全員参加を表明したが、皆が皆、好きにやらせてもらうと言い、2日後に合わせる事だけを厳命させるので精一杯であったが、これで政府側の戦力は微力だが確保出来た。

 

 世界の命運が掛かっていると言っても全く過言ではない。そんな戦いの始まりに世界がうねりを見せていく、不穏な空気に空も海もどこか澱んで見えた。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 グランドライン後半の海、新世界。ゴムゴムの実を食べてゴム人間となった男、モンキー・D・ルフィの海賊船、サウザンド・サニー号は順調な航海を続けていた。現在は目指している島が近く比較的安定した気候のおかげもあり、皆が比較的のんびりと過ごせていた。

 

「なぁー、ナミまだ着かないのか?」

「そうねぇ、気候は安定してきてるからもうすぐよ、ちょっと大人しく待ってなさい」

 

 麦わらの一味は新世界のとある島で4年に1度行われる世界最大の食のイベント『ワールド・バイキング』開催の噂を聞きつけ、エターナルポースを用いて開催地を目指していた。

 

「ナミさんを困らすんじゃねぇ。これでも食ってろ!ナミさ~ん、これ作ってみたスープ何だけど如何?」

「ありがとう、貰うわ。そう言えば今回は食に関わるイベントらしいけど、サンジ君も気になったりするの?」

「あ、いや、そうだなぁ…料理人としては、どうしてもな」

 

 『ワールド・バイキング』と言うのは食の祭典だ。1料理人として、世界中から集まる食材や料理には興味をそそられるものであるのだろうが、それ以上にどこかソワソワしている様子が見られた。

 

「ふふふ、『ワールド・バイキング』には多くの料理人も集まるから、料理人向けのイベントも多いのよ。料理コンテストやスペースを借りて出店を出したり、このスープもそれに合わせてだと思ったけど?」

「ロビンちゃんには敵わねぇな……最大のイベントともなれば料理人にとっても憧れの場所だ。そこで出すとなると生半可な物じゃダメだからな。向こうで手に入る食材もあるだろうが、ベースと言うか作る物の傾向は今の内から決めておこうと思ってたんだ」

 

 照れくさそうに言うサンジだが、世界中から集まる料理人に負ける気は無く、スープを飲んだナミやロビンからの感想を聞いて、他のメニューや味付けの工夫などを纏めていく。

 

「ふぅーん、サンジのメシはどれもうめぇからな大丈夫だろ」

「そうそう、って言うかいい香りだな。俺らの分はねえのか?」

「向こうに置いてある。好きによそって飲め」

 

 男と女で態度に差が出るのはいつもの事だ。それとルフィを筆頭に細かい感想などを望める様な連中じゃないので、聞きに行くことも無い。しかし、美味いと言われて多少ではあるが表情は緩んでいた。その様子を聞きながらも関係ないと言わんばかりに上で訓練と見張りを続けているゾロ、ふと船の進路の先に島が見えた。

 

「遠くに島が見えるが、アレが目的地か?」

「何!?島が見えたのか、ナミ!!」

「いま確認するわ。うん、エターナルポースの針は確かにあの島を指してるわ。あそこが『ワールド・バイキング』の開催地、『フルコースアイランド』よ!!」

 

 いくつもの島で構成され、島同士が大きな橋でつながれているこの島は、世界最大の食料生産国『プラント』の手によって作られた人工島で、それぞれの島でメインやオードブルなどの種類でだいたいが別れている。ドリンク専門の島もあったはずだ。

 

「お前ら!!島が見えたぞ!!上陸準備だ!!」

「「「おおー!!」」」

 

 島に着いたと言う声は全員に届き、それぞれが島を楽しむための準備を始めた。ルフィやウソップ、チョッパー、ブルックなどのお調子者組は料理を食べる気満々で、ナミは祭りを歩くための衣服を選び、ロビンもどこか楽しそうで、ゾロは酒はあるかなどと考え、フランキーもコーラはあるのかなどと考えている。サンジは調理の準備を再度整えていた。しかし、島に近づくにつれてその雰囲気のおかしさに気付いた。

 

「なんか、祭りって雰囲気じゃねえな」

「ああ、活気が感じられねえ。何かあったのか?」

 

 4年に1度の大きな祭りの開催地だと言うのに、祭りらしい音楽も無ければ、食べ物の匂いなんか全然しない。ただただ静寂が島を包み込んでいた。取り合えず島に上陸してみたルフィたちだが人が全然見当たらない。

 

「誰も居ねえのか?」

「いや、人の匂いは向こうからする」

「んー、人が集まってるな。よし、そこに向かうぞ」

 

 ルフィはチョッパーの鼻と見聞色の覇気を頼りにそっちに突っ走って行った。2人をを追いかけるようにウソップ、サンジ、ナミの3人が続いた。情報収集にはそれだけで十分だろうと、フランキーとブルックは船番として残った。ゾロも船に戻ろうとしたが、ロビンが遠くを見ているのを見て、声をかける。

 

「何を見てんだ?」

「いえ、能力で向こうの島を調べてたの」

「ほぉー、何か分かったのか」

「何の匂いもしない事が分かったわ」

「匂い?」

 

 何が言いたいのかよく分からないが、確かに食い物の祭りがあるって言うのに食べ物の匂いが一切しないと言うのはおかしいと思うが、それは上陸の前から気づいていた事だろうと首をかしげるゾロ。

 

「調べてたのは料理の匂いでは無く、食材の匂い。フルコースアイランドはプラントと直接つながっている。プラントの拠点、支部の様な扱いで、料理以前に食材が湧き出る場所がいくつもあるはずなの」

「それなのに、それすら無いって事はそのプラントって言う国の方で何かがあったって事か?」

「まだ、分からないけど。可能性としては十分あり得るわ」

 

 1つだけ確かな事があるとすれば、このフルコースアイランドとプラントの繋がりが切れてると言う事、それだけね。と呟いてロビンも船に戻っていった。プラントについて語る彼女の様子に違和感を覚えたが、特に気にせずにゾロもサニー号に戻った。

 

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 フルコースアイランドの中心地、本来であればありとあらゆる料理が集まるバイキングエリアなのだが、それらしい特徴は欠片も無い。そして、向かった先では何やら騒いでいる人だかりが出来ていた。

 

「なんで食料が届かないんだ!!」

「開催日まで時間は無いんだぞ!」

「せっかく来たのにどうなってんだ!!」

 

 なにやらトラブルだろうかと、近くにいた人を捕まえて事情を聴くことにした。ルフィは適当に腕を伸ばして、人だかりの外側にいる人間を1人を引っ張った。

 

「うわぁ、何なんだ君は!?」

「何やってんだ。コレ」

「あんたは黙ってなさい。私たちは祭りの話を聞いてこの島に来たんだけど、この騒ぎはどうなってるの?祭りの気配も何も無いし」

 

 まともに質問が出来ないルフィに変わり、ナミが事情を聴こうと男に話しかけた。ようやく、落ち着いたのか口を開いた男から飛び出てきた無いように全員が耳を疑った。

 

「「「「「食材が届かない!?」」」」」

「ああ、そうさ。祭り用の食材はもちろん、この島の人間用の食材も3日前からばったりさ。島の人間は常に湧いてくる食料を毎日とって食べてたから、パニックになってな。備蓄も少なくて衰弱してる者も居るみたいだぜ。そこのは祭りに出店予定だった奴らと観光に来た奴らだ。この島の代表も何が起きてるのか分からないって言うんだが、殆どが納得いかずに騒いでるんだ。俺は事態を聞いて呆然としてたんだが、お前に引っ張られたんだ」

「なんてこった。まさか祭りが中止の危機だなんて……」

「サンジ君……」

「えー、じゃあ食い物はねえのか?」

「むしろ、この島の人間が飢えてるぐらいだ。ある訳もないだろ。それじゃ、俺はあそこの塊で騒いでる知り合いを引きずり出しに行くからな。どうせ祭りは開かれそうにないし、食料の補給もままならないから早く帰らねえと……お前らも気をつけろよ」

 

 そう言って、男は人だかりの方に向かって行った。たくさん食べる気で来ていたのに、何も食べれないと知るやルフィはつまらなそうにしていた。サンジは祭りが開かれない事に少し落ち込んでいたが、男の言葉を思い返し、どこかに歩いて行った。

 

「サンジ!どこ行くんだ!?」

「サンジ、何しに行ってんだろう」

「とりあえず、船に戻りましょう。良いわねルフィ」

「ん-、メシもねえし、戻るか」

 

 

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 この島は祭り以外の時も人が住む居住区があり、その街には当然人が住んでいる。食料が湧き出るのが当たり前なこの島の人間が島の急激な変化についていく事ができず、弱っている者が多いのか人の姿が見つからない。やるせない気持ちを抱きながらも煙草に火を点けていると子供が近くに寄ってきていた。

 

「なあ、兄ちゃん。なんか食べ物持ってないか?」

 

 食料が届かなくなって3日、備蓄も十分とは言えないがあるとは聞いたので、やせ細ってはいないがどこか元気が無く、ふらついている。

 

「あんま食えてねえのか?」

「大人たちが騒ぎ始めてから、1日に1回少しだけ配られる食べ物だけだ」

 

 子どもの口から出たのは1日1食すらまともに食えてないと言う事実だ。食の祭典ワールド・バイキング開催地の名が泣くな。子供の方に向き直り、一つ質問をする。

 

「そうか……今も腹減ってるか?」

「うん」

「よし、少し待ってろ」

 

 返ってきて当たり前な答えに、点けたばかりのタバコの火を消し、サンジは子供の頭を撫でると、船を止めていた方向へと走り出した。食えない、腹が減った、そんな思いをする人間を前に動かないのは料理人じゃねぇと、心を震わせた。

 

 足には自信を持っているサンジの走る速度は速く、サニー号までは10分も掛からずにたどり着いた。何やら考え込んでいるサンジに、何処に行ってたのかとか以前にどうしたんだと疑問が湧く。

 

「ナミさん、この後で行く予定だった島までどれくらいかかるか教えてくれ!!」

「えっ、予定していた航路から少し離れてるからクードバーストを多用しても2週間から3週間はかかるわよ」

「ルフィ、この船の食料のストックが許すだけオレに使わせてくれ、頼む」

 

 土下座にでも移行しそうな勢いで頼み込んで来たサンジに対し、ルフィの答えは他の面々には直ぐに予想が付いた。彼の顔はどこか楽しそうに笑ってたからだ。

 

「シシシ、料理の事は俺には分かんねぇからな。サンジお前に任せる」

「はぁ、海賊が慈善事業ね。使った分は食費とは別に、サンジ君のお小遣いから引くわよ」

「ヨホホホホ、運び込みや配膳などなんでもやりますよ」

「少しは食べてるみたいだけど栄養失調用の薬を用意しとこう。栄養が偏ってる可能性も考えて栄養補助の薬も、後は食べれてないなら弱ってるだろうから胃腸の薬も念のため」

「この辺は今はしないけど料理の匂い、それと特殊な大地からの栄養で海の生物も多いはずよ。3日前からなら、魚や海獣はまだ近海に居るはずよ」

「ちっ、船の食料使って俺達が餓えたらどうすんだか、クソコック」

「海で狩りと行くか、海中探索にシャークサブマージ3号を出すか?」

「よーし、足りない分は俺達に任せとけ」

 

「お前ら……よし、とりあえず鍋と火さえあれば良い。食料と一緒に運ぶから手伝ってくれ、お前らちゃんと食えるもん取って来いよ」

 

 そうして、海からの食料調達の班と料理場の準備の班に分かれて作業が進められた。サンジは、カマバッカ王国で培ってきた料理の技術を用いて、疲弊している住民向けの料理作りに取り掛かった。

 

「食ってないと体温も下がるからな。こういった時は心も体もあったまるスープが良い」

 

 だしはこれで良いかと、次の段階へと進めようとしたところで、ルフィたち食料調達班が獲物を持って帰って来た。3頭の海獣の肉、スタミナをつけるには丁度いいが、弱ってる住民の事を考え消化しやすいようひと手間入れていく。

 

 大鍋で大量に作られる料理から漂う匂いは、段々と街を包み込んでいき、人を引き寄せ始めた。居住区で作っていたので、住民たちが多いが、中には外からやってきた連中、料理人も大勢いた。

 

「君は何をやっているんだ」

「ああ?腹空かせた奴に食わせるのが料理人の仕事だろうが」

「君たちも外から来たんだろう?船旅で食料の貯えが少ないのは危ないぞ」

「それに、こんな炊き出しをしたところで、解決にはならないぜ」

 

 サンジの行動を馬鹿にしていると言う訳では無い。むしろ、心配していると言う思いは感じられる。これがただの一時しのぎな事はサンジも分かっている。だけど、そんなことは……

 

「関係ねえな。食いたい奴が居れば食わせてやれば良い、腹減った奴ほったらかして何が料理人だ。このまま島を出て行ったとなれば俺が自分を許せねぇんだよ!!」

「!?」

 

 サンジの叫びは炊き出しの会場の周辺に集まっていた者達全員に届いた。解決なんか考えちゃいない、危険なんて百も承知、これは料理人としての信念の問題だ。

 

「……おい、うちの船の保存食は十分だったろ。日持ちしないものここで処分してくぞ」

「はい!!今すぐ持ってきます」

「粉だけならいくらかあるし、何かしら作れるか」

「大物の調理道具も街にあるから持って来るぞ」

「お前ら帰りは湧かした水だけだ。酒樽全部降ろすぞ」

「そっちに調理場造るぞ器用な奴誰か手伝え」

「おーい!参加者は出せる物をリストに書いてけ」

「肉だけなら結構あるんだな、これが」

「おい、お前ら釣り竿持ってる奴らは港にこい」

「酒だけじゃしょうがないだろ。ジュースが少しあったはずだ」

「オーライオーライ、こっちだこっち」

 

 祭りとは比べ物にならないほどに小さな騒ぎだが、静まり返っていた街に光が戻ってきたかのように感じた。食料を出し合い、それぞれが振る舞える物を振る舞おうと奔走しだした。

 

「動くなら最初から動けよな。ったく、『海獣の特製スープ』の完成だ。この騒ぎだと、食器も足りるのか?」

「そこいら辺も仕切ってる奴が居るから大丈夫そうだ。それに住民も皿は持ってるだろ」

「それもそうだな。スープ出来たから一列に並べ、住民優先だ。たくさん作ってあるから喧嘩するんじゃねえぞ」

 

 街に響いた声に住民たちは慌てて飛び出して、サンジの前に並んだ。注がれたスープの香りだけでも幸せな気分になり、口にしたものは感謝の言葉を送った。有志の奴らが弱ってて動けない人の所に食事を送り、チョッパーや他の船の医者も同行し、見て回った。

 

 半日近く続いた小さな宴は、人々の心を癒して幕を引いた。サンジ達は片付けに加わろうとしたら、周りの参加者たちから、自前の物を回収したらもう行ってくれて良いと告げられた。

 

「お前の言葉を聞いて、場が動いたんだ。これ位させてくれ」

「あんちゃんは最高の料理人だぜ」

 

 この場にいる者達や炊き出しを貰った者たちから賞賛の言葉を浴びせられたサンジは礼を言って足早にその場を離れた。感謝されるのは悪くないが、あそこまで注目を浴びると流石に気恥ずかしい思いの方が強かったのだ。

 

「さすが、サンジのめしだ。それに他の奴らの料理も美味かった」

「あの状況で他の所からも食ってたのかよ」

「お前は少し自重しろ」

「そんな事コイツに出来るわけないでしょ」

「「「うんうん」」」

「なんだぁお前ら!!やんのか!!」

 

 じゃれ合いの様な喧嘩をしながら、暗い雰囲気の晴れた街並みを通り抜けていく。とは言ってもこれ以上出来る事は無く、原因が分からない以上解決してやることも出来ない。

 

「プラントって所に行けば良いんじゃないか?」

「それは難しいわ、ルフィ」

「何でだ?ロビン」

「プラントは巨大な食料生産国として有名だけどもう一つ、機動要塞国家と呼ばれる、海を自由に航海する国でもあるの、その航路は世界経済新聞に常に公表されている……はずだった」

 

 そう言ってロビンが差し出した新聞をみんなで見るが、そんなことが掛かれている場所はなく、記事の隙間とかもよく見たが、無い物は無い。

 

「こっちは1週間以上前の物よ。ほら、ここに」

「あら、本当ね『プラント王国航路特別公開』って記事になってる」

「プラントの国王であるアスカルは世界経済新聞の社長モルガンズと直接契約しているはずなのにその状態が続いてるわ。重要な取引相手はプラントの住人のビブルカードを渡されてるはずだけど、まず入手は不可能よ」

 

 常に居場所が違っていて、更にはその情報も無いとなれば流石のナミでもたどり着くことは出来ない。プラントと直接取引を行っているような大物の知り合いなんて無法者である海賊に居るわけもないので、完全なお手上げである。だがそれだけで諦めるルフィでは無い。

 

「なあ、どうにかしていけないのかそのプラントに」

「何の指針も無いのに行けるわけないでしょう」

「あたし、知ってるよ」

「ほら、こいつが知ってるって言ってるぞ」

「場所を知ってるならどうにか……ってルフィちょっと待ちなさい」

「今の声は誰だ?」

「ナチュラルに混じってきたがお前はなんなんだ?」

「ん?そう言えばお前誰だ?」

「「「おい!!」」」

 

 茶髪で少しはね気味の髪をした少女がいつの間にか会話に入り込んでいた。会話の流れ的にプラントに関わる何かを知ってると言う事なのだろうか?ルフィは特に気にせずに引きよせて指をさしていたが、周りに指摘されてからようやく顔を見合わせて、言い放った誰だと言う言葉に全員が呆れた視線を送る。

 

「炊き出しの主催者って聞いたから後を着けてきたの、アタシは全部知ってるんだ。プラントは全部の取引を停止したの、世界政府や海軍、加盟国、海賊、ありとあらゆる取引を取りやめたの。この島の騒動はその一端でしかないの」

「すんなりと信じた訳じゃないけど、それが本当だとしたら世界がヤバい事に成るわよ!?」

「どうしてだナミ?」

「プラントってのは世界中の市場に回る食材の半分以上を掌握しているの、そんな国が取引を全部取りやめたら……」

「「「やめたら?」」」

「世界中で飢饉が発生する。そして世界中で多くの人が死ぬ事に成る」

「それだけじゃないわ。食料が手に入らないとなれば、今ある物の奪い合いになる」

 

 ナミの分かりやすい説明とロビンの捕捉によってどういった事態に陥るのか理解した面々は顔を顰めたり、青くする。

 

「なるほど、世界中で戦争の始まりってわけか」

「そりゃ、やべぇぞ!?」

「だけど、なんでお前がそんなことを知ってんだ?」

 

 本当と信じた訳では無いが、嘘として話すには突拍子も無さすぎる。とりあえずは少女の話を本当だと仮定して進めて行く事にした。

 

「アタシはプラント…ううん、『バベル』から逃げてきたの、だから少しだけど計画も知ってるの」

「「「「「「「「「バベル?」」」」」」」」」

「うん、『プラント』と『グラン・テゾーロ』が手を組んだ同盟の名前」

「っ!これまた大物の名前が出てきたわね」

「グラン・テゾーロってあの『黄金帝』と呼ばれるギルド・テゾーロの!?」

「そう、()()()()()『バベル』あそこに黒幕が居るんだ」

「そこに行けば食い物が手に入るんだな?よし、行くぞ!!お前ら」

「ちょっと、待ちなさいルフィ、彼女の話が本当でも嘘でも問題がある。むしろ今回に限っては嘘であって欲しいぐらいの相手よ」

 

 少女の話を聞くと、特に理解もしてないが黒幕が居るという事はそこに食べ物もあるだろうという楽観的な思考で船を出す事を決めたが、それをナミが制する。

 

「ルフィ、相手は『大地の王』に『黄金帝』などと呼ばれるほどのヤバい奴らなの。片や手を出してはいけない王、片や新世界の怪物、そんな奴らの同盟ってだけでヤバいのよ」

「おいおい、なんか不穏な単語聞こえてきたぞ!?」

「なんか、やべぇのか!?」

「黄金帝の戦力は未知数だけど、プラントの正式な国民は世界最少の超少数精鋭、私が聞いたことがある人物だけでも国王を入れて能力者は4人『アスカル』『モーダス』『ホーニィ』『モル』、アスカル以外は小人族よ。それと戦力としては魚巨人の『ピアス』諜報向きの『サイフォ』が居たはずよ」

「っ!?お姉さん、なんでそんなに詳しいの?プラントの情報って外にはあんまり知られてないのに……」

 

 すらすらと飛び出してくる情報に一番驚いたのは目の前の少女であるが、仲間たちもなぜそこまで知って居るのかと疑問の表情を浮かべている。

 

「20年以上前、私の故郷オハラで国王であるアスカルと会ってるのよ。それで色々と本人から聞かせてもらったのよ」

「『大地の王』と知り合いなのかよ、ロビン!!」

「20年以上前って、確かあの」

「そうね、バスターコールの時にも彼は立ち会っていた。五老星相手に弁護もしてくれたし、逃亡生活だった頃に何度かプラントの拠点に立ち寄らせて貰った事もあるわ」

 

 過去についてそれなりに話してくれたロビンだが、それでも全部を事細かに伝えている訳では無い。とは言えそれほどにロビンと関わりがある人物の話題がこれまで一度も出てないのは何故なのか疑問に思ったが、とりあえずは情報を聞くために話を進めた。

 

「おいおい、結構な恩人じゃねえか」

「アスカルって言う国王は何でオハラに来てたんだ?」

「あの時は王になって1年目と言ってて、国の為に色々な事を勉強しに来たって言ってたわ。博士たちにお土産を持ってきて、案内した私に果物や野菜の砂糖漬けをくれたわ」

 

 ロビンの説明を聞き少女は情報の出所について納得したようでなるほどと呟きながら頷いていた。

 

「そう、でもプラントには能力者は1人増えてる。『ラトニー』人間の女性だけど『モル』よりも高額の賞金首でもある。そして強さだけなら彼女はたぶん誰よりも強い!!」

 

 それを聞いたメンバー達はそれぞれ違った反応を示す、少女がそれだけ豪語する強大な存在への恐怖、賞金首が国の主要なメンバーに居る事への驚き、強者の存在に面白そうと笑うなどなど……

 

「国のメンバーに賞金首が2人もいるのか、金額は?」

「モルは『侵食者 320,000,000ベリー』だよ」

「へぇ、国の精鋭メンバーの割には低いな」

「いやいや、ちょっと待て、億越えな時点でやべぇからな!?」

 

 どうやら懸賞金に対する認識が大きく違うようなのですかさずツッコミを入れるウソップ、そこに更に恐怖を煽る情報が追加される。

 

「ううん、彼女は形だけ手配されてるの。顔も情報も海軍は把握してないし、その金額は初頭手配時から変化してないだけなの」

「初頭手配で3億越え!?」

「何をやったんだぁ、その小人族は?」

 

 金額で言えばエニエスロビーの後のルフィの賞金より少し上ぐらいだが、それが初頭手配であるとなれば話は変わる。一発目でそれだけの金額がつけられることをしたことになるのだから。

 

「侵食者の名前は知ってるわ。確か、世界政府加盟国がある島も含めて島22個を壊滅させたとか」

「やってる事の規模が桁違いなんだが!?」

「島ってあの島か!?」

「他にどんな島があるってんだよ」

 

 話しの規模についていけないウソップとチョッパー、ナミも顔を青くしているし、他のメンバーも一体どんな奴なのかと思案顔になっている。

 

「『ラトニー』って言う方は?」

「『暴食のラトニー 2,666,000,000ベリー』だよ」

「26億6千万!?」

「記憶が確かであれば『黒ひげ』よりも懸賞金は上ね」

「四皇以上って嘘だろ……そこに黄金帝とその部下も加わるんだろ。無理だ無理、ルフィ今回はよそうぜ。俺達の手には余る事件だ。断言できる!!」

 

 四皇よりも懸賞金が高いと言う事実を聞いてウソップが全力でやめる様に進言する。その際に黄金帝の部下を引き合いに出したのはまずかった。

 

「彼の部下たちは大丈夫なの」

「大丈夫って?」

「黄金帝の部下たちは今回の件にどちらかと言うと難色を示して、現在は牢に閉じ込められてるの。アタシの逃亡を助けてくれたのもその人たちなの」

「同盟つっても一枚岩じゃねぇってことか」

「それなら崩しようもあるか?」

「ねえよ!!『黒ひげ』以上の奴を従えてる奴と敵対って洒落になんねえぞ」

「一番強いのは、お…うさまじゃなくて、ラトニーだよ」

「へっ?トップの奴が一番強いんじゃねえのかよ」

 

 それは結構意外であった。人柄について行くという者もいるが、四皇を超える賞金首がそう言った物だけで着いて行くとは思えないので、てっきり実力で従わせているのだと考えていた。

 

「うん、準備さえ出来て、真正面からの勝負なら王様や黄金帝よりも全然強いし、なんなら同盟の全員と戦っても勝てるくらい強いよ!!ちなみにラトニーが居ない頃にプラントが四皇のビッグマムとその船団と戦った事があるけどその時の勝負には勝ったよ」

「中止決定!!」

「流石に無理よルフィ!!」

「ルフィ、死んでる奴はオレじゃ治せないからな!!」

 

 臆病トリオが一目散にそこに行くと言う選択肢を除外した。他のメンバーの顔も先ほどより渋くなっている。プラントはビッグマムに勝てる。ラトニーはそのプラントのメンバーにグラン・テゾーロのメンバーが足されても勝てるときた。挑んでもまず勝負になる訳がない。

 

「ラトニーは()()()()()に成るはずだから大丈夫。後はピアスお姉ちゃんはラトニーの手伝い、サイフォおじさんも()()()()()()()()()をするはずだから、実際にバベルで戦うのは、『モーダス』『ホーニィ』『モル』『テゾーロ』『アスカル』の5人だよ」

「ちょっとまって四皇に海軍に革命軍……意味が分からないんだけど」

「プラントが全ての相手と取引を辞めたって言ったでしょ。その中には四皇やその関係者も大勢いるの。特にビッグマムとカイドウは確実に本人が来るだろうって話してた。それに世界政府は現状をどうにかするために海軍を動かすしかないし、革命軍も動くだろうって」

「そんな混戦状態の場所に向かえばお陀仏だろうな」

「勢力同士のぶつかり合い、世界が危ない…なんて一言で済ませられねぇな」

「……行く方法はあるのか?」

 

 説明を理解して無いのかと問いただしたいぐらいに意思を曲げないルフィ。とは言っても一味の頭は紛れもなくルフィである。彼の言葉に全員が注目する。

 

「うん、ビブルカードがあるからいけるよ」

「どんな奴らが居るとかは関係ねぇよ。バベルとやらに乗り込むぞお前ら!!」

「四皇、海軍、革命軍…心配が要らねえのは革命軍だけか?」

「怖いなら一人で残っても良いんだぞ」

「誰が怖いつったか、えぇ!!下ろすぞ!クソマリモ!!」

「サニーはどんな所でもスーパー負けねぇ!!」

「ヨホホホ、背筋が凍る思いですね。私凍る背筋無いんですけど。ヨホホホホホホ」

「ドクター、もしかしたらオレそっちに行くよ」

「あ、諦めるなチョッパー、お、俺様、勇敢なる海の戦士きゃ、っきゃ、キャプテンウソップ様がついてる、ぞ」

「声も足も震えてるわよ、ウソップ」

「はあぁ、こうなるなんて……行く方法があるなら連れてくわよ。まったく、その代わりヤバかったらすぐ逃げるからね。わかった、ルフィ?」

 

 行くと決めたら行くのがルフィで船長の行きたい場所に船を進めるのが航海士である。方法が無ければ否定し続けられたのにと嘆きつつも出向の準備を整える。

 

「バベルに本当に行くの?」

「おう!!お前も一緒に来いよ。えっと、そういやお前なんて言うんだ」

「アタシはグレーヌ、よろしく」

「おう、オレはルフィだ。よろしくな」

 

 こうして、麦わらの一味は情報提供者であるグレーヌを連れて、世界最大の紛争地帯となる『バベル』へと針路を定めた。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 金ピカで目が痛くなるような牢の中に閉じ込められている者達、彼らは直接逆らった訳では無く、少し意見をしただけで相いれないと牢に落とされた者達だ。この場所が金だけで造られているのはせめてもの温情だろうか。

 

「するるる、世界を巻き込む事に難色を示しただけで、もう2週間くらいこのままです」

「あの少女は生きてるだろうか?」

「ありったけの幸運を預けたから生きてるはずよ。私も逃げたかったけど、きっと(運だけ)じゃ何もできないしね」

「とは言ってもいつまでこのままってわけにもいかないでしょ」

 

 タナカさん、ダイス、バカラ、カリーナ、更に隣りの牢の全員で協力してキーとなりえる少女を外に出すことが出来たが、バベルの外は海である能力者でもある彼女、手はあると言っていたが、どうなったかまでは分かる訳も無い。隣りからもやるせない気持ちからかため息が聞こえる。

 

「あの男を責める事は決して出来んが、あの小娘が救いとなってくれればと、信じるのも勝手が過ぎるか」

「何も出来ないのに関係ない所で悩んだところで変わりはしないよ。ま、私もあんたも、生きてるだけめっけもんだろうさ」

 

 アスカルの言葉通りであれば、本来マリージョアにいる二人、イスト聖とクチーナも攻撃に巻き込まれるのは確実だった。許されはしないが、()()の対象外に置いて貰える程度に関係が出来ていたと言うことだ。それでも、言葉が届くことは決してないだろう。

 

「それでも、契約を破った我はあの時、裁かれるべきだったであろうな」

「アレは馬鹿の仕業だ。あんたは名前(権力)を最大限に使ってたさ」

「だが、()()()()()()事に変わりはあるまい。一番死ぬべきものが奇しくもある意味一番安全な場所にいるのだ。これで気にするなと言うのは無理難題であろうよ」

 

 10年前のあの日、アレが全ての引き金であった。それによって今があり、その一番の被害者である少女がアスカルを止めるべき動いている。一つ抜け出した小さな歯車が、何を引き寄せるか、その結果がせめて救いとなる事を祈るばかりだ。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 大地と黄金の塔『バベル』の最上階、土の壁と黄金の床があるだけの殺風景な部屋、そこにそれぞれが能力で作り出した椅子に座っている。

 

「決行から2週間、宣戦布告から()()()か」

「時ってのは無情にも過ぎ行くものだな」

 

 何をしようとも、何も出来なくても、変わらずに進み続ける時間。時代の流れに寄り添いそこにあり続ける大地と時が過ぎても失われない輝きを持つ黄金は似て非なる物なのかもしれない。

 

「お前の部下には悪い事をしたな」

「……いや、良いさ。万が一が許されねぇ。少しでも乗り気じゃない場合は切るって言うのが同盟の条件だからな」

 

 今更過ぎる言葉に何も無いように振る舞って返した。それに『これはグラン・テゾーロの為でなく、俺の復讐でしかない』などとテゾーロは考えているためむしろこれで良いと考えている。

 

「それに、そっちは()()()()を牢に入れるぐらいだからな」

「言うな、まんまと逃げられたんだからな」

 

 そう言いながら手元の紙を恨みがましい目で見つめる。牢に入れた殆どがテゾーロの部下だったため、確かめる意味合いもあり、牢の周りは黄金で造らせ、自分は関与しないでおいたのだがそれが仇となった。テゾーロ自身の裏切りで無いのがむしろ面倒な事態となっており、死んでいない事を素直に喜べない現状を早く終わらせてしまおうと立ち上がる。

 

「ビブルカード、能力者のガキが海に落ちて生き残るとは……あいつらで共謀したか?」

「どちらにせよ、全て終わってから回収するだけだ。さて、始めよう」

 

 宣戦布告前からも準備はしていたが、ようやく塔の準備が完了した。塔の中心に立つとその身に宿る悪魔の力を振るう。やはり深くまで力を伝えるには火山を利用した方が良かったようで『ピリオ島』を選んだことは正解だったとアスカルは静かに笑う。

 

「『大地操作(グランドコントロール)世界壁(ワールドウォール)』」

 

 星の中心にまで届けた力は4つの海を隔てるレッドラインへ干渉し、その高さを少しずつ上げていった。元よりかなりの高さにある聖地マリージョアであるが、これにより何者の干渉も出来ない場所となり、天竜人を封じ込めた事になる。

 

「これで、他の海どころか楽園からも来ることは叶わない。秘密裏に進めていた政府と海軍も万全とはいかないだろう。そして、あの高さでは天竜人は降りる事は出来ない」

「魚人島も塞いだのか?」

「船が通れなくなってるぐらいだ。彼らも政府の被害者、手荒い真似はしない」

 

 世界をぐるりと一周する巨大な大陸へと干渉したアスカルには多少の疲労が見えた。全ての拠点を放棄し、分けていた力を集め、覚醒の域に至っているこの男でも厳しい物があったかと、テゾーロは笑う。しかし、それはこの状況下においても()()()()()()()()()()()に最大限に気を配る目の前の男の人間性に対してだ。湧き上がる恨みをもってしても、未だに優しさを捨てることの無い、矛盾を抱え、破綻した男、それがテゾーロから見たアスカルの評価だった。

 

「これからは詰めの作業に入る。後は任せたからな」

「ああ、にこの地には誰も近づかせん」

 

 壊れた者同士、同じ恨みを抱く同志として、神々の終わりを告げるために動き出す。これから先の3日間は動けないアスカルに代わり、この地を守る必要がある。部屋を後にして、アスカルの部下の所に顔を出すテゾーロ。

 

「テゾーロ殿レス!!」

「アスカル様はどうなったレス?」

「こっちは作戦通り待機中レス」

「さっきの揺れ、本格的に始まったな」

「アタシもそろそろ海に待機しとこうか?」

「許されてるからもう行っても良いよね?ボクもう待ちきれないよ!!」

 

 一癖も二癖もある者ばかりだが、全員が世界の中でも上位に入る実力者。そして、アスカルを慕う者、アスカルと同じく怒りを宿す者、ただついて行く者、思いは違えど向かう方向が同じな『プラント』に強さを感じる。既に細かい指示は渡されている。テゾーロは彼らに頷きだけを返し、何も言わずに自分の持ち場に向かった。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

「ちっ、何でわしらが先行せにゃいけないんだか、まったく」

『全部隊の合流が不可能になり、バベルの拠点がエンドポイントの一つであるピリオ島だからだ!!無駄に電伝虫を繋いでないで部下の指揮をとれ!!』

 

 バベルの攻撃と言えるのか分からないが、レッドラインへの干渉によるすべての海同士の隔離、情報の伝達は現状何とかなっているが、人の行き来は完全に封じられている。秘匿されているエンドポイントの占拠に対しても問題視され、先だって動ける人間が向かわされた。

 

『サカズキは上とのやり取りで手一杯、緑牛は出向いていたマリージョアの方に取り掛かり、今回ばかりは黙って従え』

 

 本部と新世界側の支部の人員を集めるため、また新世界側に来れていない七武海を呼び集めるためにも人員は必要で先行して来ているのは『ガープ』『センゴク』『おつる』などと古株ばかりである。

 

「ふん、今回の事件だって政府の尻拭いだろうに」

「それはどういうことですかガープ中将?」

 

 電伝虫が切れると同時に嫌な物を語るかのように政府への悪態をつく中将に対して、今回の作戦に同行しているコビーとヘルメッポの2名が尋ねる。

 

「あー、他に言うなよ。今回の件は世界政府が仕出かしたことへの復讐じゃろう。テゾーロは知らんが、わしとアスカルは建国時からの付き合いがある友人みたいな間柄だった。だからこそ、当時のアスカルの様子を思えば、ああそうか、と現状に納得がいくくらいだ」

「復讐と言いますと、世界政府にですか?」

「正確には天竜人とそれを守る世界政府にと言ったところだろう。あの文に政府の文字が無いように、政府が潰れるのはついでくらいの考えだろうな」

「世界最大の組織を潰すのがついでだって言うのかよ!?」

「それはあまりにもスケールが大きすぎます。政府、と言うより大地の王アスカルは天竜人に何をされたんですか?」

 

 世界政府をどうにかしたいのではなく、その結果世界政府がどうにかなると言う、意味通り世界を巻き込んだ復讐に今回の任務の大きさを再認識する。

 

「あいつの妻、マニュ王妃をくだらない腹いせで殺されたんじゃ。それも、理由は後見になっていたイスト聖と言う変わり者の天竜人への嫌がらせが目的だった。アスカルは抗議を行ったし、イスト聖も訴えを出したが、変わり者を嫌う天竜人の連名でその殺害が進められた事が分かり、政府は形だけの謝罪で全てを納める様にアスカルに伝えた」

「そんな事が!?」

「アスカルは残された娘を育てながら国の運営に身をやつしておった。レヴェリーにも呼ばれれば行き、政府との取引も続けておったから、上の連中は許されたとでも都合良く考えてたんだろう。その結果がこれじゃ……政府も政府だが、天竜人なんかのために働くのが正義なのか甚だ疑問だな」

 

 いうだけ言うとガープは何かあったら呼べとだけ伝えて船内に戻って行った。残された二人はまだ見ぬ、首謀者への感情をしまい込み、仕事に戻った。周囲の警戒を行いながらも船を進めていると、数時間後に二人のよく知っている海賊旗を見つけ、慌ててガープ中将に連絡を入れた。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 グレーヌから渡されたビブルカードは数人分あったがどれも同じ方向を指している様で、それを指針に真っ直ぐに船は進んでいる。

 

「そう言えばアスカルって奴は何でそんなことを始めたんだ?」

「えっ、ああ、確かに理由は教えてなかったの。アスカルは天竜人への復讐目的なの、政府や世界が大変な状況になるのはその過程で起こる事なの」

「ついでに世界が滅ぼされるなんて笑えねぇ話だな」

「復讐って事は理由があるんだろ?」

「うん、王様は奥さん、要するに王妃様を天竜人に殺されてるの」

「本当に天竜人ってのは碌な事をしねぇな」

 

 シャボンディ諸島で出会った天竜人の事を考えると、何をしてもおかしくないとさえルフィたちは思った。跪く事をしないだけで市民に銃を放つ、あれは下手な海賊よりも害があるだろう。

 

「それでもアタシは王様を止めたくて、そうしたらテゾーロおじさんの部下と同じ牢に入れられたの。その人たちに協力してもらってどうにかバベルから出れたんだけど、堕ちた先が海だったの。慌てすぎて咄嗟に能力も使えなかったんだけど、ポケットに入れてたこの子のおかげでどうにか漂流することが出来て、辿り着いたのがフルコース・アイランドだったの」

「おいおい、それはポップグリーンのボーティーバナナじゃねぇか!?」

 

 グレーヌが取り出したのは小さな種にも見えたが、ウソップはそれが何か直ぐに気が付いた。それもそのはずで普段からウソップが使ってる植物だったからだ。なんならサニー号で育てていて毎日水を上げているのだから気が付かない訳がない。

 

「知ってるの?バロンちゃんの島の植物さんから分けて貰ってるの」

「バロンちゃんってのは知らねぇが俺はポップグリーンを武器に使ってるからな」

「へー、そうなんだ。それとバロンちゃんはプラントに居るストマックバロンの事なの」

「ストマックバロンって、ボーイン列島を形作ってる巨大食肉植物だぞ!?そんな物まであるのかよ」

「あっ、もし小人と戦うならポップグリーンは使っちゃダメなの。3人の小人の中で2人は植物を操る能力を持ってるの」

「うげっ、緑星が使えねぇじゃねえか」

「それに二人が戦う場所にもきっとポップグリーンはあるから気を付けた方が良いの」

 

 こっちは使えずに向こうだけが使えると言うのだからやってられないなと思いつつ、普段から自分が使っているのでその有用性も分かれば弱点も分かる。他に攻撃手段が無い訳では無いので、今から対策を考え始めた。ウソップとグレーヌの会話を聞き、他にどんな敵が居るのかと言った質問も増え、他に回されるであろう戦力も含めて話していたのだが、ナミからの号令がかかった。

 

「みんな、船を動かすから来て!!場合によっては戦闘になるわよ!!」

「なんだってんだ!?もうバベルとかの近くに来たって言うのか?」

「違う!!近くに海軍の軍艦を見つけたのよ!!」

 

 ナミから伝えられた言葉を聞くとすぐに全員が船を動かすためにそれぞれ行動を始めた。

 

「クードバーストの準備はいるか?」

「まだどうなるか分からないけど、一応お願い」

「了解だ。オレはコーラを補充してくる」

「飛ぶ時に帆を直ぐに畳めるよう上で待機して置くぞ」

「指針から少しずれるけど、急いで離れるわ」

「あの空中の奴、こっちに向かって来てねえか?」

「えっ!?」

 

 そう言われて全員が示された方向を向くと今は少し遠いがその影はぐんぐんサニー号に近づいていた。向こうのスピードだとクードバーストは間に合いそうにない。一戦交える覚悟でそれぞれが準備を始めるが、それにまったをかける声がその影から発せられた。

 

「すみません!!ルフィさん!!」

「ん、この声って、ゾロ!!」

「おいおい、こんな所であいつと再会するのか」

 

 視認できる距離まで近づいてきた事により、ウォーターセブンの後で仲間になったブルック以外もその影の正体に気が付いた。知り合いとは言え海軍と海賊、どうなるのか分からないが、わざわざ声をかけてる事を考えると戦闘にはならないだろう。

 

「やっぱり、ルフィさんだった。皆さんもお久しぶりです」

「コビー!!あっちの軍艦に乗ってたのか」

「はい、ガープ中将も乗ってますよ」

「げっ、じいちゃん居るのか」

 

 和やかに談笑を始めたルフィとコビーだったが、段々と軍艦も近づいてきてるのが見えるので話をぶった切ってナミが割り込んだ。

 

「はいはい、話は後にしてね。コビーくんは何でこっちに来たの?いくら向こうの軍艦がルフィのお爺ちゃんが指揮してても、海賊船にわざわざ飛んでくるなんてありえないわ。何か要件でもあるから来たんじゃないの?それとも軍艦が来るまでの時間稼ぎかしら?」

「い、いえ違いますよ!!内容は話せませんが、現在は海軍総出で一つの事件に当たってまして、それが解決するまでは無駄に戦力を消費しないため、こちらから敵対しないようにと命令が出ているので、皆さんから攻撃されない限りはあの軍艦が攻撃することはありません」

 

 海軍に出されている異例としか言いようのない命令を聞き、普通なら嘘だと考えるところだがその事件と言うのに心当たりがある面々はそれを聞いて納得した。

 

「ふーん、なら爺ちゃんに挨拶してくか」

「ルフィ、攻撃されないって分かってるとはいえお前なぁ」

「いえ、聞きたい事もあるから船を向こうに寄せましょう」

「ナミ!?」

 

 聴きたい事って言うのはきっとバベルに関することだろうが、海賊船を軍艦の隣に持って行くと言う乗り込んで戦う時以外に聞くことが無い動きを指示したナミに驚きの声が上がるが、コビーが電伝虫で軍艦に連絡を入れてくれたのでスムーズに船は動き、海軍と海賊の船が仲良く並走することになった。

 

「おお、ルフィ久しぶりじゃな」

 

 海軍と海賊と言う関係性もなんのそのと、全く気にせずに家族として接している。2年前に頂上戦争で殴った事も既に気にしてないと言うより忘れているんじゃないかと思えるぐらい自然な声掛けだ。

 

「シシッ、久しぶり。じいちゃんたちもバベルに向かってんのか?」

「んな!?政府が隠蔽していると言うのになんでそれを知ってるんですかルフィさん!?」

「ほう、『も』ってことはバベルに向かう気か、ルフィ?」

「ああ、ワールド・バイキングに行ったのに食べ物がなくてよぉ。他の奴らも困ってたから取りに行こうと思ってな」

「ぶはははは、何が目的かと思えば食い物って、笑える……しかし、アスカルは強いぞ。あいつに戦い方の基礎を教えたのはわしじゃからな。って、ん?そこに居るのはグレーヌか!?」

 

 とんでもない発言にコビーたち海軍側も、ルフィたちも驚いているのだが、それ以上にグレーヌを見つけたガープの方が驚いているように見える。そもそも、なぜグレーヌを知って居るのかとルフィたちはそちらにも驚いた。

 

「知ってんのかじいちゃん。こいつがビブルカードくれたからバベルに行けるんだ」

「知ってるも何も、こいつはアスカルの娘、プラントの王女だぞ」

「へっ?」

「えっ?」

「へー王女なのか、グレーヌ」

「「「「プラントの王女!?」」」」

「そりゃ、内情に詳しいはずだ」

「牢に入れられたって言ってたが、自分の娘を牢に入れるとはクソ野郎か」

「アスカル王の娘って重要人物では!?」

「ガープ中将、どうするんですか!!」

 

 双方ともに驚き、その中心にいるグレーヌは慌てふためいている。グレーヌには聴きたい事があるが、海軍側もバベルに向かうのは確定。グレーヌがバベルの関係者と見なされれば、一緒に行動していた麦わらの一味も怪しまれ、戦闘になる可能性もある。この場の指揮を任されてるガープに注目が集まる。

 

「……ふがっ、はっ!!なんじゃ、騒々しい」

 

 寝てて聞いていなかったのか、その場の多くがずっこけそうになったが、あまりふざけても居られない空気を察してガープが口を開く。

 

「お前ら落ち着け、分かっとる。バベルについての認識を共有するためにも、まずは話し合うとしよう。コビーとヘルメッポ、つい来い。流石に艦内までは入りたくないだろうわしらがそっちの船に行く」

 

 突然の申し出に戸惑うがこのままの状況が続くよりはよいと了承し、サニー号に3人を招いて話をする事になった。そして、麦わらの一味側がまずグレーヌから聞いて知って居る事を話し、ガープは内容の捕捉とアスカルが事件を起こした理由をグレーヌに確認してから部下2人に聞かせた時と同じ内容を伝えた。アスカルの過去であり、グレーヌにとっても辛い話を聞き、麦わらの一味の面々は悲痛な表情でグレーヌを見てしまう。

 

「ふむ、テゾーロ側の戦力が減ってると言う情報は有り難いな。さて、グレーヌ、お前さんがバベルから逃げたことは聴いたが、それ以外に何か知ってる事はあるか?」

「ううん、計画の詳しい内容は教えて貰ってないの。ただ、マリージョアを沈めるとは言ってたの」

「なるほど、四皇の相手を『暴食』、海軍と革命軍の相手を『先読み』、そしてそのフォローに『刺突』、まあ配置としては妥当じゃな。しかし、刺突がこちらにいるとなると迂闊に軍艦を進められんな。バベルの内部にも『草花』『侵食者』『黄金帝』『大地の王』、現状だと攻め込めるかも微妙じゃな」

「じいちゃんたちでも無理なのか?」

「そもそも人員がな。わしと『センゴク』と『おつる』ちゃんだけが先行しているんだが、軍艦3隻でどうにかなる相手では無い。大将『黄猿』と『藤虎』が新世界に来れない七武海を迎えに行き、準備が整い次第他の連中もやってくる。それでも『刺突』の事を考えると迂闊に近づけんな。『藤虎』の奴なら宙を行けるだろうが……」

 

 ルフィたちもプラントの戦力の詳しい情報を聞いてるだけあって数で攻めればどうにかなるほど簡単では無いと分かっている。双方がどうした物かと考えているとガープ中将が声を上げた。

 

「そうじゃ、ルフィ、お前の船も空を飛べたな。海軍の一斉攻撃に合わせてお前らだけで内部へ入れ」

「おう、分かった」

 

 軽くお使いにでも行って貰うかのように告げられた情報に2人以外の全員が騒いだが、周りに言われて意見を変える様な物ではなく、爺孫揃うと非常に厄介で作戦はそれに決まってしまった。




ラトニーと言うキャラはメインの方でも出す予定です。と言うよりは本当はメインの方で先に出しときたかったんですが思ったより話を進められなかった。アスカルは設定的にも能力的にも強めになっていますがメインは植物や食材です。なのでアスカルの代わりに戦闘メインのキャラを用意しようと考えた結果生まれたキャラです。


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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 2

一部、心配の声を感想でくれた方には答えましたが、昨日の昼で37度まで下がり、15時には36度の平熱まで戻りました。今日に関して言えば喉はイガイガしますが、怠さはだいぶ取れました。

そして、ずっと寝てると退屈だからと地道に書いてたら4書けた。5日までの分までは仕上がった。良かった良かった。


 政府の一斉攻撃よりも先にバベルの領域まで到達した2つの海賊団。彼らは互いに睨み合いながらも目的の為にと手を組んだ。

 

「ハーハッハッハ、マママママ。全面的にそっちの言い分を聞いてやってるって言うのに取引停止って言うのは笑えないよ。なぁ、カイドウ!!」

「ウォロロロロ、取引停止に怒ってんのはこっちもだ。互いに邪魔だけはすんじゃねぇぞ。ババア!!」

 

 取引停止と言う共通の話題から一時的に同盟を組むことになった四皇の海賊団。バベルを倒した後の取り分はどうなるのかと言う話が纏まっていないので、仮に倒したとしても新たな戦争の始まりしかみえて来ない事に両者の部下が嘆いている。

 

 しかし、その嘆きは不要な物となる。海賊船の前の海に大きな影が現れると海面を揺らしながらそれなりの大きさの大地が浮かんできた。ドーム状の壁に覆われ中は見えなかったが、パカッと開くように土の壁は取り払われ、1人の姿が見えた。

 

「ふ~まだまだあるけどこんなに満足したのは初めてだよ!!」

 

 ドームの中にはとにかく大量の食料で埋まっており、その中に居るのは幸せそうに微笑んでいる少女に見えるが、四皇の前で平然としている様とそのオーラには不吉な物が感じられた。

 

「マママママ、まさかプラントが『厄災』を飼ってるとは、思いもしなかったよ」

「『厄災』だと!?どういう事だババア!!」

 

 『厄災』と言う言葉を聞き、ビックマム海賊団の者たちはまさか!?と言う顔で一様に驚愕している。百獣海賊団の中にも驚いている者はいるが向こうと比べると少ない。

 

「あいつはプラントよりも前に俺をコケにしてくれた奴さ。島を立て直すのにどれだけ苦労させられたか、忘れた事はないよ。制御不能、誰が相手だろうと構わず、全てを呑み込む、潰した国の数は天井知らず、本能のままに動き、止められない俺らよりも厄介な化け物さ」

「あの、餓鬼がか?」

 

 怪訝そうな顔で『厄災』と呼ばれた者を見つめるカイドウ。ビックマムの説明など関係無いとばかりにお茶を飲んでいたが、視線に気付き立ち上がったかと思うとその瞬間に姿は掻き消え、カイドウが吹き飛んだ。

 

「ふぅ、これで1人、後3人も相手にしないといけないから大変だな~」

 

 余波で吹き飛んだ船どころか、連れられてやってきている部下など目にも入ってないその傲慢さ。カイドウを飛ばして、あと3人と言う発言から、目の前の存在は四皇を1人で相手取ろうとしていると伝わった。

 

「くたばっちゃ居ないだろうが油断しやがって、百獣海賊団!!呆けてないで馬鹿を回収してきな。コイツは俺が倒せなかっただけでなく、底すら見えない正真正銘の化け物だ。回収は下っ端に任せて幹部以上の連中は戦闘に集中するんだね!!喧嘩すんじゃないよ。遺憾だけども全力で共闘しな!!」

「ウオォォ!?お前らカイドウさんを拾ってこい!!」

「まさかこれほどとは!?真打ち以上はビックマム海賊団と協力して戦闘に入れ!!」

「島が目の前だって言うのに、厄介な!?」

「ペロリン、ママの言う通りコイツには全力で当たれ!!将星を含む幹部はやられない程度に前へ出ろ!!チェス城兵じゃ意味ねぇ」

「嫌な未来しか見えないな」

「チッ、船上じゃビスケット兵もあまり使い物になんねぇな」

「とっととアスカル殿に会って、スムージーの材料を手に入れる予定だっんだがな。巨大化も限られてると言うのに……」

 

 一瞬で四皇の一角であるカイドウを吹き飛ばしたその姿に両海賊団は驚異に対処するため、全面的に協力してことに当たり始めた。それも関係無いとばかりにアクビをしながら少女は伸びをしている。

 

「まだやんの?どうせ意味無いのに、あーでもビックマム海賊団の船は美味しそうね。百獣海賊団も動物ばっかだから美味しいのかな?」

「その船とそっちの船の奴ら船を捨てて避けろ!!」

 

 ビックマム海賊団の将星カタクリが見えた未来から叫ぶように狙われてる船に警告を送る。幹部以上の人間はある程度、危機を感じ取り逃げ出したが、それでも被害は防ぎきれそうにない。

 

「アハハ、それじゃあゴクン!!」

 

 大きく口を開けたかと思うと彼女は先程までそこにあった船を乗っていた人ごと丸呑みにして見せた。現実的ではない光景から逃げる様に何処にそんな量が入るのかと疑問を浮かべて逃避するが、船2つが消え失せ、逃げ遅れた幹部クラスの戦闘員も失われた。

 

「バ、化け物!?」

「船が一瞬で!?」

「人を喰ったのか……」

「能力者も居たっていうのに!?」

 

 これまた嬉しそうな表情でお腹をさすっているが、食べた物が船と人でなければ絵になりそうだが、タイトルは地獄絵図で決まりである。

 

「酒を飲めば強くなる化け物や拳法使い、血を飲むことで強くなる吸血鬼と伝承などにもあるように、喰ったものは血肉となるが、その血肉さえも呑み込むことで強くなる。ボクは『ゴクゴクの実』の能力者、あらゆる物を呑み込み、呑めば呑むほど強くなる。ここは世界最大の食料生産国プラントだ。この国にいる限り、ボクは最強だよ」

 

 呑み込んだ物を糧とし、力を振るう『ゴクゴク』の力、それは単純故に強力、そしてかつてビックマムの領域に彼女が入り込んだのは運が悪かった。周りに飲み食い出来る物が多い環境で彼女が負ける事はあり得ず、ビッグマム海賊団も苦渋を飲む結果となった。

 

「暴れながら世界を巡り、あらゆる経験を呑み込み成長した。今日はアスカルから幾らでも呑んで良いって許可も出てるから流石に負けないよ」

「ハッハッハ、厄介な手駒をよくまあ隠し通してたものさ、『破々刃(ハハバ)』」

「ウォロロロロ、まさか何も出来ず吹き飛ばされるとはな『厄災』って言ったか小娘?『雷鳴八卦(ライメイハッケ)』」

「その名前あんまり好きじゃ無いんだよねぇ。『暴食』か『ラトニー』って名前で読んでよ。『豪飲(ゴウイン)』」

 

 当たり前のように覇王色の覇気を持ち合わせているラトニーと四皇2人とのぶつかり合いは空を割り、海を荒れさせるのに十分だった。幹部と言っても、ピンからキリまで居て中には近づくことさえままならない者も居る。そこそこ戦える幹部でさえ近づくのを躊躇う者が多かった。そして、その戦いを遠くから眺めてる者が居た。

 

「ゼハハハハ、混乱に乗じて能力者狩りと洒落込むつもりだったが、予定変更だ。ありゃ、馬鹿げてる。あの中に突っ込む気はねぇし、こっそり近づいても四皇に狙いを定めてる以上は戦闘は避けられねえだろう。せっかく、あいつら(ビックマムとカイドウ)が動いてるんだ普段より手薄な海で好き勝手してやろう」 

 

 狡猾な手口で四皇にまで登り詰めただけはある。手の早い2人を偵察代わりに利用し、その上で危険を避け、別の所で理を得ようとする。だが、それを止める者も現れてしまった。

 

「それを許す訳にはいかねえな。なぁ黒ひげ!!」

「チッ、あんたも来たのかよ。赤髪!!」

 

 ビックマム、カイドウ、黒ひげと同じく四皇である赤髪のシャンクスが仲間を引き連れて黒ひげの近くまでやってきていた。

 

「ただでさえ海が荒れているのに、掻き乱すような真似は放っておけないな」

「馬鹿を言うんじゃねぇよ。海賊は自由じゃねぇといけない。それをお前が否定すんのか?」

「ロジャー船長が語っていた様な自由とお前の我儘は別もんだろう?」

 

 お互いに話をしながら牽制しあっているが、それもここまでだろう。黒ひげも力を蓄え、2年前は避けた戦いにも乗り気である。

 

「お前はここで止める!!」

「ハッ、俺は黒ひげだ。止まらねぇよ!!」

 

 皮肉をきかせたセリフを口にしながら赤髪の剣に答えて攻撃を仕掛ける。それを合図にそれぞれの幹部もぶつかり始めた。だが同じ海域に四皇が揃っていると言う異常な自体はこれからの騒動のまだ始まりでしか無く、その様子を見守る塔は寂しくそこに建ち続けている。

 

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 四皇やそれに相対する化け物(ラトニー)の戦いによって周囲は海も空も荒れ気味であったが、それ以上に島に寄せ付けまいとする渦や波の数々に海軍の船はせき止められていた。

 

「こうも激しい流れの中を進めば軍艦同士がぶつかるのは目に見えてるな」

「藤虎!!お前さんだけでも行けるか?」

「視えちゃいませんが海中の御仁の良い的でしょう」

 

 新世界に居た七武海も迎えに行っていた七武海もそれぞれバベルに行く事やアスカル・テゾーロの確保は確約したが作戦などへの協力までは取り付けられていないのでこの場にはいない者もおり、居たとしてもいう事は聞かないだろう。それはともかく攻めあぐねている海軍を見てか、この現状を作り出している者が堂々とした佇まいで海から顔を出した。

 

「来たみたいだね。なんて言ったっけ、ほら警告は出していたし、別に海軍と戦いたい訳では無いからね。帰って貰えると助かるんだけどねぇ……そこん所はどうかい?」

 

 ガープは直接相手取るのは『先読み』だと聞いていたが先に顔を見せたのが『刺突』だった事を多少疑問に思ったが、むしろ顔を出すならこの荒れた海をものともしない『刺突』の方が適任かと自己完結する。問いかけに対し、応えたのは大目付のセンゴクだった。

 

「プラントだけでも取引を再開してくれればそれも考えられるが、世界の為にアスカル王の身柄を確保させてもらう」

「こんな状況でも王として丁重に扱うあたり、本当にうちの国に依存してるねぇ。それじゃ、賞金稼ぎとしての二つ名は『スティング・レディ』、プラント幹部としての名は『刺突』、魚巨人のピアスだ。お手柔らかに頼むよ」

「逃がさないよ~『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』!!」

「光速の攻撃だろうと海にいる私に当たる訳が無いだろう!!」

 

 大将黄猿によって無数に放たれる光の弾丸、しかし魚人の中でも速い種であるピアスが海の中を泳ぎ、見聞色の覇気で攻撃の軌道も読んでいる状況で当たる訳も無い。能力者以外の遠距離攻撃が出来る者も攻撃を仕掛けるが、距離をある程度取られている為に当てるのは難しくなっている。

 

「ピアスの嬢ちゃんとは酒飲み友達だが、こちらも立場がある。多少は攻撃をさせてもらおう『拳骨流星群(げんこつりゅうせいぐん)』」

「流石に早いけど対処は可能さ『海龍(カイリュウ)一本背負い』」

 

 覇気を流し、攻撃的な形に変化させた海流を背負い投げの要領で放つ、するとまるで意思があるかのように滑らかな動きで砲弾を全てのみ込み軍艦へと迫って行く。それは技名の龍と言う名にふさわしい猛々しい攻撃姿であった。砲弾を含み、覇気を纏った龍は軍艦を砕く前に有難そうな見た目となったセンゴク大目付の衝撃波でどうにか逸らすことが出来た。

 

「すまんセンゴク、まさか利用されるとは」

「くっ!!いや、砲弾はおまけ程度だ。動きから見聞色の強さは窺えたが、武装色の方も中々の物だ」

 

 今回は防がなければそれなりに被害が出ていただろうから大規模な攻撃で迎え撃ったが、こちらから大きな攻撃をしにくいと言うのが厄介である。荒れた海にどうにか留まり続けている状態で更に波でも起こせば転覆は想像に容易い。

 

「フフフフフ、手焼いてるみたいだな」

「笑いに来ただけなら帰りな、ドフラミンゴ」

「つれないな、おつるさん。こっちも攻めあぐねてるんだよ。ほら来た」

 

 糸を出して防御の姿勢を取り飛んできた銃弾や斬撃を受け止めている。その飛んできた方向を見ているとその斬撃や銃撃の主と思われる者はいつの間に来ていたのか鷹の目と既に戦闘をしていた。 

 

「『先読み』かい。あらゆる距離をカバーする見聞色の覇気とその詳細な認識能力、それと持ち前の頭で未来を見る人間以上に先を読む、達人を超えた才人」

「ああ、『先読みのサイフォ』の噂の化け物っぷりは本当らしい、空から行こうとした俺を落とすために糸を斬り、雲を散らしやがった。塔の方に伸ばした糸ももれなく防がれてな。船に糸を張って逃げてきたんだぜ。アイツと戦いながら俺や他の奴にも気を配ってやがる。」

 

 『先読み』は現在進行形で戦闘中であり、世界最強の剣士、ジュラキュール・ミホークが惜しむことなく黒刀”夜”を抜き斬り合っている。そんな中で塔に近づく者が居れば素早く妨害を行っていると言うのだからその実力は言うまでもない。

 

「なるほど、鷹の目の奴の相手をしていたのか」

「船の足止めを『刺突』それを掻い潜ってきた奴を『先読み』が相手取るか、厳重な守りになってるようだな」

「それよりも、他の奴らの姿がまだ見えてねえがどういう事だ?」

 

 ドフラミンゴが言うのはまだ到着してない七武海の事だろう。海賊女帝は軍の船に乗りたくないと拒否し、藤虎が九蛇の船を浮かして新世界へと運び、現在は船を進める準備をしている。暴君については黄猿が探しに行ったがマリージョアの天竜人が所持しているとなり、代わりのパシフィスタを積んだ軍艦を待っている状態だ。

 

「残りの連中は既に新世界にいるらしく、到着待ちだ」

「なるほどな。ハートと顔合わせが出来ると思ってたんだが、まあいい」

 

 フフフフフと笑うとまた空へと飛んで行こうとしたがそれを遮る水の攻撃が放たれた。普通の魚人や人魚の攻撃であれば普通に防御しても良いが、魚巨人であるピアスの攻撃を受ければ能力者はひとたまりもない。

 

「俺の邪魔をすんのか『刺突』?」

「サイフォのフォローが役目だからね。君も例外ではないよ『天夜叉』」

 

 軍艦を足場に糸を出して攻撃を仕掛けるドフラミンゴと周辺の水を自由自在に扱うピアスの戦いが始まった。巻き込まれないように軍艦を動かしつつも海軍も攻撃を再開し、海を突破するための戦いが始まった。

 

「ふっ、これで向こうの心配は要らないようだぞ。真剣に俺と戦え『先読み』!!」

「これで全力なんだけどな。さて、全てに対応しきったその先で、お前に敗北を刻んでやろう『鷹の目』!!」

 

 下手な小細工はするだけ無駄と拳銃を撃ち放つだけの時間があっても鷹の目には使わず、剣だけで相手を続けている。互いに斬撃を飛ばす事など容易く行うがサイフォはそれを特殊な使い方をして、間合いを保っている。

 

「面白い斬撃の使い方だな」

「『予剣(よけん)』すら簡単に対処されるとはな。こっちも驚いてるんだがなっと」

 

 斬撃を飛ばす技ではあるのだが、飛ぶ斬撃とは本来鋭く早い物が多いのだが、サイフォは動きの中でさりげなく刀を動かし、その場に斬撃を配置するかのように使い、立ち回りや罠として使っている。

 

「『千剣(せんけん)の明』」

「はっ、これほどの数を既に仕掛けていたか」

 

 『予剣』で配置した数々の斬撃、全てのタイミングを合わせて一斉に斬りかかる事で千近い、もしくは千を超える斬撃を相手に放つ、鷹の目は楽しそうに笑いながら斬撃を裁いて行く、服などに多少斬撃は通ったが彼本人にダメージはあまり入って居ない。

 

「もっと私を楽しませろ!!」

「楽しみたいだけなら向こうの軍艦に挑んで欲しいんだけどな!!」

 

 常に自身の間合いで戦い続ける事で互角以上に戦っているがこの調子では倒す事は敵わないだろうと『先読み』だからこそ自身の実力を加味して、次の展開を思考する。勝てない戦いに身を置きながらどれだけ貢献できるのか、まだ七武海は全貌を見せていないと言うのにこれなのだから、厄介だなとため息を一つ吐く。

 

「『暴君』は封じて、『天夜叉』はピアスが、『鷹の目』は目の前、残すは『白ひげJr.』『千両道化』『女帝』『死の外科医』、本当に面倒だよな」

「ふっ、『先読み」よ。想定外の客もやってきたみたいだぞ」

「なに!?」

 

 広く一帯を見聞色の覇気で覆っており、戦場に注目しているとはいえ侵入者を見逃すとは思えないが、戦闘中に目の前の男が詰まらない嘘を吐くとは思えない。どういうことだと呆けているといきなり海の向こうから船が飛んで塔が立っているピリオ島の中央まで突っ込んだ。そして、その最中に微かではあるが見知った気配を感知し、攻撃を躊躇ってしまい追撃は不可能となった。

 

「ハッ、侵入者が出たが放っておいて良いのか?」

「そう思うんなら引いてくれればいいのにな。性格が悪いってもんじゃねえな。これ以上侵入させる訳にもいかないんで、少し戦い方を改めさせた貰うけど、良いよな?」

「受けて立つ!!」

 

 いくらかはピアスの起こす波で封じれるだろうが、油断ならない者も多い。剣技も習熟しているが純粋な剣士かと言われれば首を振るであろうサイフォは意識を新たに『鷹の目』との戦闘を再開し、戦場らしい轟音が辺りに響き始めた。

 

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「本当に行くのか、これで」

「ジタバタしてもしょうがないだろ。船長命令だ」

 

 眼の前に広がるのは海軍に加えて七武海やCPなども動いている政府の一斉攻撃である。そんな中を飛んでいくとなれば目立つのは間違いない。

 

「準備はオーケーだ!!行くぜクードバースト!!」

 

 フランキーの合図で空へと飛び出したサニー号、空を飛ぶとは聞いていたが実際にその風を身に受けると年相応なはしゃぎっぷりをグレーヌは見せた。

 

「おい、下に居るの『鷹の目』じゃねえか、斬り合ってるのは誰だ?かなりの強さだが」

「あれ、サイフォなの。あっ、まずいの!!」

「何が不味いんだ?」

「説明した通り、サイフォはプラント一の見聞色の覇気の使い手、たぶん船に乗ってる私にも気づいたの」

「なるほどな。だが、報告する暇は無いと思うぞ。『鷹の目』を相手にして、そんな余裕が生まれるとは思えないからな」

 

 実際に『鷹の目』と戦い、そして修行をつけられたゾロの言葉はその通りで、グレーヌに気付けたのも『鷹の目』が麦わら一味に気付き、面白がって指摘したからであって、戦闘を再開したサイフォには報告どころか、詳細を確認する暇もない。

 

「それ以前にまずはこっちの対処が先だ。ウソップとグレーヌ頼んだぞ」

「おおよ、サニー号に傷はつけさせねえよ『緑星 トランポリア サルガッソー』!!」

「ふふんなの、『収納種(ストレージシード)開封(オープン)』家畜用の飼い葉、数年分なのね!!」

 

 ウソップの緑星、ポップグリーンによって船の衝撃を逃がし、グレーヌの取り出した飼い葉のクッションで軟着陸することが出来た。

 

「おおー!!グレーヌもすげえな!!」

「あたしの『タネタネ』の力、種を操るだけでなく、種を作り出したり、対象を種にして封じ込める事も出来る。さっきのはプラントに居た頃に家畜の餌として使用されてた飼い葉なの。あたしは種にして色んな物を持ち歩く癖があったけど、たまにこうして役に立つのね」

「持ち運びに便利そうだ。買い出しとかにあったら凄い楽になりそうだぜ」

「中身が入ってるのは『収納種』、中身の入ってないのは『空種』と呼んでるのね。『空種』をぶつける事で相手の攻撃を仕舞いこんだりも出来る。覇気も最低限使えるし、あたしも結構戦えるのね」

「空島のダイヤルより便利じゃねえか、いくつか譲ってくれねえか?こっから先だとポップグリーンが使えないから補うための武器が欲しいんだ」

「『空種』で良ければなの」

 

 ウソップに『空種』を渡して使い方やどれくらいの事が可能なのかといった点を詳しく説明している少女を眺めて何人かはその少女の口にした言葉に驚いていた。

 

「覇気使えんのか!?」

「その時点でルフィ、ゾロ、サンジの次に強い事に成りそうだ。能力も含めりゃ間違いなく強いだろうな」

「ここから先の敵は覇気を全員使ってくるのだから、王女である彼女も使えてもおかしくないわね」

 

 麦わらの一味で現在覇気を使えるのはその3人だけ、覇気は絶対では無いし、戦い方次第では負けないだろうが、その実力は計り知れない。準備を進めて塔に乗り込もうとしたが、船を守る人材も必要かと言われ誰かが残ろうとしたが、それをグレーヌが止めた。

 

「そう言う時こそ『タネタネ』の出番なの。えいっ『収納種』一緒上がりなの!!叩きつけて割れば元に戻るのね」

「ワオ、ありがとよ。船の心配もなくなったし俺も行くぜ」

 

 結果的にフルメンバーで突入することになり、戦力的な不安は多少消えた。敵として出てくるであろう人物の特徴もグレーヌから知らされているので対策も多少できている。

 

「よし、行くぞ!!」

 

 全ての準備を整えた事を確認すると、船長の合図で麦わらの一味+グレーヌは『バベル』へと侵入した。グレーヌからの『お願い』もあり、目的を止めるための戦いが始まった。

 

「塔の中が植物だらけだ。すっげぇ!!」

「ルフィ…グレーヌの話聞いてた?植物って事は」

「『草花』モーダスとホーニィの二人組なの」

「密閉空間で火を点ける訳にはいかねえしな」

「時間の都合も考えると外に出て待ってる暇はねえな」

「それ以前に火は付かないと思うの」

 

 グレーヌの言葉を聞き、事情を聴くよりも早くフランキーが火を吐き出したが、火はメラメラと最初は燃えていたが周囲の植物は一部は燃えたが無事な物の方が多く、直ぐに鎮火された。

 

「どういう事だ?」

「お父さんは植物が大好きで色々な植物を集めるのが好きだったの、その中に燃えにくい植物もあってこういった環境づくり用の植物には品種改良された耐火植物が多く使われてるの」

「なるほど、不思議植物か」

 

 理解していないが燃えないと言う事が他の人にはちゃんと伝わった。しかし、能力者が潜んでいるこの空間で落ち着いている暇などなく、周囲の植物の蔭から何かがとんできた。

 

「危ねぇ!!『悪魔風脚(ディアブルジャンブ)首肉(コリエ)ストライク』」

「キャー!?」

「ちっ、いきなりだな『厄港鳥』」

 

 それだけでなく周囲に生えている植物たちも枝を伸ばし、蔦を振り回し、ルフィたちを攻撃しようと迫ってきている。切り倒し、なぎ倒しながらどうにか攻撃を避けているが、普通の植物よりもかなり丈夫な植物の群れに時間を取られている。

 

「どうする逃げるか?『フランキー大砲(キャノン)』」

「何処にだよ!!グレーヌちゃんの話通りなら逃げ場なんてねえだろ」

「一帯が植物で埋まってるしなっと『火薬星』!!」

 

 周囲の全てが敵となればむしろ仲間から離れる方が危険でしかない。とは言っても次から次へとやってくる植物の相手を続けるのも現実的ではない。

 

「これ、終わりあんのか?」

「急速成長が出来るから無いの。えい『空種乱れ撃ち』!!」

 

 グレーヌも種の中に襲い掛かる植物を封じている。しかし、能力者を見つけ出さない限り終わらないという言葉に考える必要が出てきた。

 

「話を聞くと向こうも覇気が使える。簡単には見つからねぇはずだ。探すのに一か所に固まってたら向こうにもすぐにバレる。それにこのままじゃじり貧だ!!2,いや3チームに分かれるぞ」

「順当に分けりゃ覇気が使えるルフィ、ゾロ、サンジでそれぞれチームか?」

「ああ、だが全員で探すんじゃ駄目だ。ここの能力者2人を探すのが2チームで、ルフィのチームは先に進んでくれ」

 

 確かにその方が効率的という事で次に戦うであろう戦力の事も考えたうえでチョッパー、ブルックがルフィのチームに加わり、ゾロのチームにフランキーとロビン、サンジのチームにナミとウソップが入る事になった。

 

「それじゃ階段を見つけるために一掃するぞ!!」

「「「おう!!」」」

「ゴムゴムの象銃乱打(エレファント・ガトリング)

「フランキーラディカルビーム」

千八十煩悩鳳(せんはちじゅうポンドほう)

「これだけ開ければ見えるか『空中歩行(スカイウォーク)』っと見えた!!ルフィ、向こうに真っすぐだ。階段らしき物が見えた」

 

 遠距離攻撃の大技を持っている面々が一気に周囲の植物を吹き飛ばすと、新しい植物が空いた空間を埋めないようにそれぞれが援護を行いルフィチームの援護を行う。

 

「それじゃお前らまたあとでな。行くぞグレーヌ!!」

「はいなの。それじゃ二人を捕まえたら連れてきてなの!!」

「『角強化(ホーンポイント)』、前の植物はオレが蹴散らす!!」

「ヨホホホホ、私もお手伝いしますよ。『掠り唄 吹雪斬り』!!」

 

 それぞれ、分かれることになったが、グレーヌから戦闘のヒントになる情報や注意点は聞かされている。全員無事に上にたどり着けるよう検討を祈って、各自行動を開始した。

 

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 ルフィたちは仲間の援護もあり、会談までたどり着き塔の一つ上の階層へと辿り着いていた。しかし、そこは薄暗く、ジメッとしていて視界が悪かった。

 

「やっぱり、ここには『モル』が居るの!!」

「3億越えの賞金首でしたよね。ヨホホホ、恐ろしい」

「ウェェ、キノコだらけだ」

 

 そう、次の階層の番人は『キンキンの実』を食べた菌人間、『浸食者”モル”』がいる。とても危険な階層である。ルフィたちは直ぐに能力者の話を聞いてから用意した特別なマスクを装着した。

 

「うぉおお、カッケー!!でも息苦しいな」

「肺がキノコ塗れになったり、病気でグダグダになっても良いなら外すの」

「オレは絶対付けとく」

「ヨホホホ、私も念のためつけておきます」

 

 周囲に生えているキノコとその胞子以外にも、病原菌自体も操る敵を相手にするにはこういった装備がどうしても必要になる。

 

「まあ、私と敵対するなら最低限必要な対処レスね。それぐらいでやられるほど弱くもないのレスが、まさか最初にやってくる侵入者に貴女までいるとは、正直驚きレスね」

「「「!?」」」

 

 堂々とした態度で宙に浮いている小人の姿が現れた。伝えられた通り、彼女は『キンキンの実』の能力者なのだが、何のモーションもなく彼女はフワフワと浮いている。

 

「まあ、やることは一緒レス。菌を送り込めないのであればこうするだけレス『黒群』」

 

 モルは能力を介して、支配下に置いた菌に対して武装色の覇気を流した。黒く染まった極小の群れを目の前に顔を青くさせる。

 

「長くは持たないはずなの。どうにか凌げば……」

 

 グレーヌの言う通り、あの技は少々特殊で、自分の体以外に覇気を流すのは武器などでもあるが、極小な存在で、制御下にあるとはいえ他の生命()に覇気を流すと言うのは普通の方法ではない。そのため、あれは短期決戦型の必殺技である。

 

「逆を言えば我々を仕留める気満々という事ですね」

「菌か…ならグレーヌ!『空種』をおれにもくれ!!」

「敵以上の覇気を纏わせないと覇気を纏った物は仕舞えないの、それでも?」

「チョッパーなら何か作戦があるはずだ。グレーヌ、あるなら分けてくれ」

 

 言われるままに『空種』を作り出して渡すと、チョッパーは後ろから迫ってくる攻撃を避けながら何やら取り出した液体を詰め入れた。

 

「ルフィ、これを!!」

「ぶつければ良いのか?」

 

 チョッパーの頷きを確認するとルフィは種を細菌の群れに投げ込んだ。『空種』だと思ったのか避けさせなかったそれは中身をばら撒いて砕け散った。

 

「『黒群』が!?」

「覇気は攻撃に強くなるけど元々の性質が無くなる訳じゃない。殺菌、抗菌は医者の本分だからな」

 

 自由に飛び回っていた攻撃はまだ残ってはいるものの7割が地に落ちてしまった。最初は補充する事も考えたが残りの覇気を考えて、不用意な試みは控えることにしたモルは一度姿をくらました。

 

「逃げたぞ!!」

「ダメなの、罠に誘い込まれるの!!

 

 菌の方が殺傷性と言う面では優れているが、彼女の好むものはキノコ、多種多様な性質のキノコとそのキノコが出す危険な胞子の立ち込める森の中こそ得意フィールドである。そして警告は少し遅かったようでモルを追いかけようとしたルフィはキノコで出来た輪っかを踏み抜いてしまった。

 

「ルフィ!?」

「落ち着いてなの、あれは『フェアリーサークル』対応した別のサークルに送られるだけなの。サークルの場所事態に物は仕込めないけど、周囲に仕掛けを置くくらいは出来るの」

「どちらにせよ危険と言う訳ですね。早めに見つけ出さなければ!!」

「ルフィさんは強いから直ぐには死なないと思うの。だからその間位にモルを捉える準備をしてから合流するべきなの!!」

 

 グレーヌの言葉にルフィの心配をしながらも簡単にやられるとは思えない2人はその提案に頷きどうして行けば良いのかと訊いてくる。

 

「プラントの生産品は売り物から非売品まで知ってるから、逆にここにある物を利用させてもらうの!!」

 

 チョッパーも言った通り、能力者の支配下にあろうとその物の性質は失われない。この場にある物は危険な物だらけであるのならそれを返してやるだけである。

 

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「うおぉ、ここ何処だ。ってあぶねぇ!?」

 

 モルを追いかけて行こうとした勢いのままフェアリーサークルに飛び込んだルフィは勢いのままに目の前のキノコの山に衝突、すると黄色の胞子が飛び交い、周囲を埋め尽くした。

 

「なんかピリピリしてきた」

[それだけで済むわけ無いのだけど、不思議レスね。それだけのマヒ胞子を浴びて動けるとは、吸わなくても皮膚から吸収して呼吸困難に堕ちいるはずレスが生命力が高いのか、ゴム故の特性か……]

「どこに居るんだ!!出てこい!!」

[それで出てくる敵が居るわけないレス。毒だけでなく、身体異常全般への耐性は強いと見ました。私は無駄に消費したのも含めなくとも覇気で勝てるとは思えませんので、このマジックマッシュルームなどの特殊な効力のあるキノコで溢れる『魔法の森』で迷い続けると良いレス]

 

 正面からぶつかって勝てないと踏んだモルはフェアリーサークルに捕らわれたルフィをそのまま迷わせ続けて衰弱を待つことにした。逃げている方を追わないのはグレーヌの姿を見たからか、ルフィを見張るためか、その内はモルにしか分からないが、捕らわれたルフィは抜け出す事は出来ず、見事に迷い続けている。

 

「ちくしょう、段々足が重く、倒れそうになる。あれは、そこか!!」

 

 平衡感覚を惑わせ、マスクの事を除いても香りや音さえも変化を与えず、気が狂いそうになる中で殆ど聞かないとはいえ、毒を喰らい続けているルフィは少しずつ力を奪われていった。少しずつ視界も歪むようになり、居もしないモルの幻影を見て攻撃を繰り出し、更に体力を消耗させる。

 

「腹減った。周りのキノコ食えるのねえのかな。ああでも、マスクは絶対外すなってチョッパーとグレーヌが言ってたっけ」

[良いじゃないレスか、マスクを外して、大きく息を吸って、美味しいキノコに埋もれて、幸せそうな自分を思い浮かべるレス]

「ああ、そうだな。これ邪魔だ」

 

 ルフィがマスクに手をかけたその瞬間にドカンと爆音を響かせ森全体が揺れた。森のあちこちが吹き飛び、多少だが火も着いている。それとは別にルフィの目の前にも種がとんできて、音を立てて弾けた。

 

「ルフィ、マスクを外して深呼吸するんだ」

「チョッパー?分かった」

「それと、これを毒の分解を助ける薬だ」

 

 ルフィはチョッパーの指示に従い、マスクを外して呼吸を行う。『空種』に入れたのは爆風、消毒液、新鮮な空気の3つだ。綺麗な空気を吸い込み、身体に引っ付いていた胞子を剥がしたルフィにチョッパーは症状を確認すると注射を挿した。

 

「はい、新しいマスク、病原菌と違って胞子は皮膚からも入ってくるみたいだから気を付けて、ルフィなら腕を思い切り振り回して風を起こせば弾けるはず」

「ヨホホホ、種の設置終わりました。予想通り()()()()私は口さえ塞げば胞子は効かないようです。それと向こうの水は凍らせました」

「刺激を与えると爆発するキノコを利用した『種爆弾』、上手くいったの。それとあたしも空調を塞いできたの」

 

 ブルックが言ったように爆発はこれで終わりでなく連鎖的に爆発は広がり、多くのキノコと森が消失した。モルも少し衝撃によってダメージを受けたが、直ぐにキノコと森の空気を元に戻そうと能力を使うが、キノコは生えてこず、それどころか段々と火の影響で、乾燥に強いキノコを除いて他のキノコも枯れ始めた。

 

「あたしも、下の階層のモーダス、ホーニィも環境を無視して生やすのには力を多く使うの。水源が凍って、空調を塞いで、辺りは火で焼かれてる。多くのキノコに適していたこの環境が壊れた事で自由自在に使えなくなったはずなの」

「キノコを広げるにあたってプラントの領域と同じ作りにしたのが間違いだったレスね。それでも私もここを守らなければいけないのレス。『鬼乃虚(キノコ)ドーピング』」

 

 品種改良を重ね、強化することにだけを目的に作り出した強薬であるキノコ。毒々しい見た目をしているそれを躊躇することなく丸々飲み込むと、残り少ない胞子や細菌に武装色を纏わせ、それを自分の身体に纏わせた。自分の身体も硬化させているため、二重の武装色になっている。そのまま、周囲を小人特有の素早さで飛び回り、機会を伺うと一気に飛び出した。

 

「『菌愚(キング)狙撃(スナイプ)』」

「『ゴムゴムの火拳銃(レッドホーク)』」

 

 万全の状態に戻ったルフィは菌や胞子を焼き切り、その攻撃をモルにまで届かせた。覇気の総量、消費量共に負けていたモルは地面へと沈んだ。

 

「やったなのね!!今のうちに『収納種』、この蔦でしばりたいんだけどみんな能力者なの」

「なんだコレ、触ると力が出ねぇ」

「これって確かネブランディア、能力者殺しの島の特有種じゃ」

「プラントは政府や海軍とも関わりが深いから手に入った物なの」

 

 力が出なくなる能力者ばかりで四苦八苦しながらもどうにかモルを縛り上げることに成功し、次の階へと続く階段を登っていく。

 

「おい、見ろよ壁が」

「金ピカですね。ヨホホホ」

 

 先程までとは全然違う金色に輝く壁に変わった事でこの先に待ち受けている存在を意識し、危ないと感じた時にはもう手遅れであった。

 

「うわぁ、捕まった!?」

「なんですかこれは!?」

 

 金色に輝く壁がいきなり動き出してチョッパーとブルックの2人を捕まえた。どうにか最初の一撃を避けれたルフィとグレーヌも周囲の壁によって逃げ場を無くされ捕まってしまう。カツカツと音を立てて塞がれていた階段の上から男がおりてきた。

 

「海賊麦わらのルフィ、シャボンディ諸島にて天竜人を殴り倒した男。私としては君の事は嫌ってはいないが、逃げ出したグレーヌと共にいる事を考えれば計画の邪魔をしにきたのだろう」

「ギルド・テゾーロ……」

 

 バベルの主が1人、アスカルの同盟相手、グラン・テゾーロをまとめ上げていた男が不吉な笑みを携えてそこに立っていた。

 

「グレーヌも含め命までは取らんがこれ以上の邪魔は控えて貰おう」

 

 その言葉と共にルフィたちの身体は金の壁に飲み込まれそのままの勢いで地下にまで落ちて行った。ドカッと言う音と打ち付けた痛みの中でどうにか顔を上げるとそこは牢屋の中であった。

 

「ちくしょう!!」

「どこだ?牢屋か?」

「ここは、アタシが居たとこなの」

 

「グレーヌ!?また捕まったのか……」

「生きていたのか、良かった」

「また捕まって良かったといって良いのか?」

「人が増えているようだけど……」

 

 自分が逃げる際に手助けをしてくれた面々とグレーヌは再開することとなった。此処に落としたギルド・テゾーロの部下、イスト聖、クチーナ、全員が急に落ちてきたグレーヌとルフィたちに驚きを見せていた。




四皇2人を圧倒するラトニー、メインの方とあまり強さに差異は無いです。呑めば呑むほど強くなると言う単純だからこそ強力な能力です。過去にビッグマムの縄張りを荒らして回って生還している猛者です。好き勝手に動き回る防ぎようもない存在と認識されています。メインの方では最初は敵対関係で登場させる予定です。

元々は諜報担当のはずなのに、結構戦えるサイフォ。見聞色の覇気においてはプラントで1番と言う設定と『先読み』と呼ばれるほどの能力。刀はまあ使う方ではありますが、銃の方がメインなのに鷹の目と渡り合えてるのも動きの先を読んで準備をとにかく用意しているからです。

グレーヌ、大地や植物に関わる能力者として以前から考えていた『タネタネ』の能力です。種を生み出す、種に封じ込める、種を操ると言ったのが基本の能力。覇気さえ纏っていなければ何でも種に吸い込めるので結構強い。種の容量はかなりでかいので爆薬でも詰め込めば一個で国を破壊できる種とかも作り出せる。能力者対策で海水を詰め込んだり、ネブランディアの蔓を持ってたり、海楼石自体も少し種に仕舞って持ってる。

ルフィはマゼランの毒から生き残った事で毒に強い設定ですが、オコゼの毒で倒れてましたし、辺り一面が強力な毒であれば少しずつ効いて行くかなと思いました。それと覇気が使える者同士であれば騙しとか、幻惑なども通じるのではと思い、罠にはまってやられそうになったルフィでした。

医者で菌への対策が可能そうなチョッパーと皮膚が無く口以外から胞子が侵入しないだろうと思ってブルックが参戦しました。

意外と簡単にやられたと思うかもしれませんが、最初の攻撃で仕留めるつもりだったのにチョッパーが防いでしまったために消耗してしまいました。それと内情を知っていて、的確な妨害の指示が出来るグレーヌの存在も大きい。


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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 3

 ルフィを送り出したほか2チームは争うように能力者を探し出す事に躍起になっていたのだが、それぞれが狙い通り能力者と対峙することに成功した。サンジは草の生い茂る森の中で敵と対峙している。

 

「ようやくお出ましか、お前が『クサクサの実』の能力者のモーダスか?」

「そうレス。本来であれば永遠に植物に埋もれて貰うつもりだったのレスが、まさかあの物量を全てなぎ倒すなんて、正直恐ろしいレス、ですがこれ以上通す訳にはいかないのレス」

 

 そう言うと周囲の草を操り攻撃を繰り出してくる。プラントの作物の特徴の一つである品種改良が施された植物はそれ自体がかなり丈夫で覇気も混じると簡単に蹴り飛ばせないでいる。

 

「『悪魔風脚(ディアブルジャンブ)粗砕(コンカッセ)』」

「『雷光槍(サンダーランス)=テンポ』」

「必殺『鉛星』」

 

 油断せず、最初から全力で攻撃を叩き込む3人だが、その様子を見てモーダスは落ち着いて技を見極めて能力を使う。

 

「熱、雷、鉛レスか、『急成長・耐火蔓』『過成長・針々草』」

 

 熱を伴ったサンジの踵落としは耐火性の強いマグマにも耐えれる耐火蔓で防ぎ、大きく成長させた針々草を避雷針と弾除けに使った。

 

「さて、今度はこちらからいくレス『ネオ・デビル』」

「な!?あれは『デビル』なのか!?」

「あれって、あんたが偽物たち相手に放った奴じゃ」

 

 そう、ウソップも使っているポップグリーンの『デビル』にそれは似ていた。しかし、それはウソップの知っている物とは違い、赤黒く不気味な姿をしていた。

 

「噛み砕くレス」

 

 モーダスの指示とともに襲いかかってきたデビルを全員が避ける。避けた位置にあった物は全て切り取られたかの様に無くなっていた。

 

「『超過成長・デビル』枯れるレス。まあ、これぐらいは避けると思ってたレス『ネオ・ヒューマンドレイク』」

「なんだこいつら飛びつくんじゃなくて攻撃を仕掛けてくる!?」

「『突風(ガスト)ソード』避けられ、キャー!?」

「ナミさん下がって『悪魔風脚腹肉(フランシェ)ストライク』、こいつら蹴りに対応してくるぞ!?」

「『ネオ・ヒューマンドレイク』は纏わりつくだけでなく人の動きを再現し、直接獲物を仕留めに行くレス、足りない部分は『操作』してやれば熟練の動きも可能レス」

 

 1人に対して2体ずつ仕向けられた『ネオ・ヒューマンドレイク』、ナミに仕向けられたのはサンジとウソップが1体ずつ受け持ち相手をする。ウソップは自分の知ってる『ヒューマンドレイク』との違いに驚き手間取ったが、落ち着いて対処を開始する。

 

「お前は花の操作はできないし、動かしたり伸ばす部分が無くても無理だろう。必殺『緑星 ラフレシア トランポリア』!!」

 

 『ラフレシア』を咲かせ、突っ込んで来た『ネオ・ヒューマンドレイク』は急に咲いた『ラフレシア』に足を奪われ、それを見たモーダスが操作し、手助けを行おうとしたが足を取られた『ネオ・ヒューマンドレイク』が『トランポリア』によって吹き飛ばされる方が早かった。

 

「後はこいつだ必殺『手裏剣流星群』!!動けない空中で切り裂かれろ!!もう2体はこれを試してやる。必殺『空種星』」

 

 操作しても空中ではもたもたと手足を動かすのが精いっぱいなようで、ウソップの宣言通り、手裏剣によって切り裂かれた『ネオ・ヒューマンドレイク』が一体ばらばらと落ちてきた。もう2体はグレーヌから分けて貰った『空種』に吸い込まれ、堕ちてきた物を一応と回収した。

 

「こいつらも熱は効かねえのか、こいつらは植物、姿も根菜そっくり、相手が食材となれば仕方ない」

 

 サンジは『ネオ・ヒューマンドレイク』を野菜として扱う事に決め、包丁を取り出した。サンジが知ってか知らずかは分からないが、『ヒューマンドレイク』の時点でだいぶ品種改良されており、食べたら美味しいようになっているので間違いではない。迫ってくる『ネオ・ヒューマンドレイク』を目の前に向かってくるとさっと包丁を振るう。

 

「『イチョウ切り(クォータースライス)』」

 

 綺麗に『ネオ・ヒューマンドレイク』の皮を向き、その身をイチョウ切りにして、どこから取り出したのか皿に盛り付けた。試しに口に入れてみると普通にいい味で「美味いな。味が濃い目だからシンプルに野菜炒めにするのが良さそうだ」などと呟いている。

 

「そんなにのんびりさせるほど甘くないレスよ」

「うわぁ!?蔓がまるで鞭だぜ、サンジ」

「当たれば腫れるだけで済めば良いな。それにしても……『ネオ・ヒューマンドレイク』つったか、アレを操ってる間はやらなかったよな

 

 周囲の植物は未だに健在で次から次へと攻撃は仕掛けられる。多種多様な植物を一斉に操り、攻撃を仕掛けてきている。その数は先ほどまでの『ネオ・ヒューマンドレイク』の数とは比べ物にならない。だからこそ違和感がある。何で『ネオ・ヒューマンドレイク』を操ってるときにそれをしなかったのか、また何故『ネオ・ヒューマンドレイク』の数を増やさなかったのか、攻撃を裁きながら考えていると遠く離れていたナミが行動に移した。

 

「『レイン=テンポ』!!攻撃を受け止める植物の操作も地盤が緩んで居れば形無しでしょう。今よサンジ君!!」

「助かった。さっすがナミさん!!おら吹き飛べ植物ども『悪魔風脚(ディアブルジャンブ)最上級挽き肉(エクストラ・アッシ)』!!」

 

 思惑に気付いて根っこを操作して伸ばしたが間に合わず多くの植物が地表に現れそのまま吹き飛ばされた。埋め直すよりは新しく生やした方が早いのとこのまま同じ植物を生やしてもまた吹き飛ばされるだけだろう。雨は地面の下の方まではまだ届いていないがその内一面がぬかるみに変わるだろう。空を飛べるサンジは足を取られる心配はしなくてもよいが、植物では厳しくなった。

 

「まずは足技の男を排除するレス。コイツならぬかるみも関係ないレス『マーマンドレイク』」

「なんだそれ!?『ヒューマンドレイク』の亜種か!?」

「ヒレや水かき、魚人仕様の大根もどきか?ってうお!?思ってたより速ぇ!!」

 

 ぬかるんだ泥を泳ぐように近づき、攻撃を仕掛けてくる『マーマンドレイク』、その速度に驚き蹴りを入れるが泥の中を潜っている所為で動きが読みにくい。植物であるため人が相手の時よりも見聞色の覇気で読み取りにくいのもあって苦戦している。

 

「くらうレス『竹ジャベ林』」

「うお、ぐあぁ!!」

「サンジ君!?」

「サンジ!?竹は操作できるのかよ」

「大丈夫だ。覇気で防御はした。それよりもウソップ耳を貸せ……」

 

 直撃したサンジではあるが咄嗟に武装色で守り、吹き飛ばされる勢いに身を任せる事でダメージを防いでいた。とは言っても不意を撃たれた事で『マーマンドレイク』にも数発入れられてしまった。それでもすぐに立ち上がると近くまで来ていたウソップに何やら耳打ちをしてからモーダスに向き直った。

 

「竹は木ではなく草の分類レス。ポップグリーンを使う割に植物の分類までは詳しくないのレスね。そして竹は深く、深く根を張る植物、ぬかるみの届かない地面までポップグリーンであれば一瞬で根を張ってくれるレス。武装色レスか、ならばボクも攻撃をするだけレス『ネオ・団扇草』」

 

 『団扇草』はウソップが『ボーティバナナ』と一緒に使い、ボートをこぐ際のオールとして使っていたが『ネオ・団扇草』は葉の部分が薄く鋭くなっており、全体的にも丈夫に作られている。小人のスピードと筋力は普通の人間を優に超えるので自分の背丈の数倍の団扇草であっても軽々振って見せる。そして『ネオ・団扇草』は覇気によって黒く染まった。

 

「『黒扇(こくせん)扇ぎ斬り(あおぎぎり)』レス」

「風に乗った斬撃か」

 

 扇ぐように『黒扇』を動かし、斬撃を飛ばし、近づいてきたら薙刀の様に振るうか、扇部分の手前を持って棒術としても使ってくる。こちらの攻撃は小さいため当たりにくいが向こうの素早い割りに大振りの攻撃は的確にこちらを狙ってくる。合間を縫って攻撃を加えてくる『マーマンドレイク』も地味に厄介である。

 

「避けてるだけじゃ勝てないレスよ『茎打ち(くきうち)』『はたき堕とし』『回し切り』」

 

 茎で体の中心を狙うような突きを放ち、相手の方まで近づくと先端の方でくるりと獲物を回して扇部分をはたきの様に使って叩きつけ、衝撃波で吹っ飛ばす、最後に棒をくるくると頭上で回し、辺り一面に斬撃を飛ばす、流れる様な攻撃を掻い潜り、準備を待つ。

 

「『サイクロン=バースト』」

「必殺『空種星』」

 

 ナミが起こした強力な風により、身体が小さく軽いモーダスは吹き飛ばされ、周辺の泥や水も吹き飛び、一緒に泥の中に潜んでいた『マーマンドレイク』も吹き飛び、それをウソップが『空種』に封じ込めて回収する。

 

「扇も吹き飛んだレスが『ネオ・デビル』時間を稼ぐレス。そして『ネオ・団扇草』っとこれでまた振出しレス」

「いいや違うぜ。必殺『収納種星・ネオ・ヒューマンドレイク・マーマンドレイク』『緑星 ヒューマンドレイク デビル 竹ジャベ林 トランポリア』よっと、おれも空に逃げるぜ」

「なっ、『操作』しないと、あっ、でも数が多いレス、纏わりつくな『扇ぎ斬り』レス、くっ」

「やっぱり、そのネオなんとかってやつは強力な分、操作に余計な力を使うみたいだな。ナミさん失礼『空中歩行(スカイウォーク)』」

 

 『空種』に仕舞った『ネオ・ヒューマンドレイク』や『マーマンドレイク』を連続して放ち返された事により、自分の防御に放っていた『ネオ・デビル』も含め、『操作』が追いつかず、普通の『ヒューマンドレイク』に纏わりつかれ、慌てて『ネオ・団扇草』を振るうが落としきれていない。そんな中でウソップはトランポリアで、サンジはナミを抱えて空に跳び上がった。

 

「それだけ濡れた地面にくっついてれば関係無いわね『サンダーブリード=テンポ』!!」

「ギャー!?雷、く、身体が痺れ…」

 

 濡れた地面を離れていた3人は空気を通して少し痺れはしたが問題は無く、モーダスは直撃を受け体が痺れている。そこを『操作』出来ていない『ネオ・デビル』、『ネオ・ヒューマンドレイク』、『マーマンドレイク』に襲われている。

 

「そ、『操作』を…あ、後は『超過成長』を…」

「遅いぜ、必殺緑星『衝撃狼草(インパクトウルフ)』!!」

「がっ、ぐっ」

 

 放たれた衝撃で飛ばされ、落ちた身体はウソップの狙い通りに先ほど自分が使った『トランポリア』で、それに当たり空高くへと飛ばされるモーダス。その間にウソップはまたちゃっかり『空種』で改造されたポップグリーンを回収している。そしてサンジはナミを安全な場所に下ろし、また空へと向かう。

 

「さて、素早い動きで翻弄してくれたが痺れてボロボロのお前は空中で動けるか?」

「くっ、負けるわけにはいかないのレス『蛇花火(へびはなび)植物鎧装(プラントアーマー)』」

 

 敵に巻き付き破壊すると言う特製の『蛇花火』を自分でまきつけ鎧代わりにすると最後の気力を振り絞って武装色で硬化する。サンジも迎え撃つように攻撃の準備に入る。

 

「『黒草(こくそう)葉拳(はけん)』!!」

「『悪魔風脚(ディアブルジャンブ)野獣肉(ヴネゾン)シュート』!!」

 

 武装硬化した鎧から飛び出てくる黒い蔓による連続攻撃、それを両の足で蹴り飛ばし、最後に鎧事ぶち抜く勢いで踵堕としを叩き込み、草の鎧が粉砕したモーダスが地面に気を失って倒れた。

 

「ふぅ、大根もどきはまだしも、食えねぇ草の処理は料理人の仕事じゃねえぞ。まったく、まあグレーヌちゃんの頼みだ。コイツを連れて行くとするか」

 

 降り立ったサンジは煙草を吸おうと思ったがナミの援護によって雨が降っている所為で火は付かず、諦めて出した煙草を仕舞うとナミの無事を確認し、ウソップを交えてどうするか話し合い、ゾロたちのチームがどうなっているのか見に行く事に決まった。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 ゾロが先陣を切って進んでいく事に一抹の不安を抱えていたロビンとフランキーであったが、ゾロが襲い掛かってくる草を斬り伏せながら進んでいると一面に広がる花畑にたどり着いた。

 

「おいおい、なんともファンシーな場所に出たなぁ」

「でも、今回はゾロが正解を引き当てたみたいよ」

「一面の花、この階層に居るのは草と花の能力者、出てこい!!居るんだろホーニィとやら!!」

 

 ゾロが刀を抜いたまま辺りに響き渡る声で叫ぶと、ふわふわと浮かぶ花の一つが空中で静止した。その上には情報通りの小人の姿が見えた。

 

「アタシの所に来たレスか侵入者……プラント幹部『草花』が片割れ、トンタッタ族、『ハナハナ』の奇術を持つ者レス。短いお付き合いになるレスがどうぞよろしくレス」

「ほぉお、見かけによらず好戦的だな」

「いえ、任された役目を果たそうとしているだけレス『舞花(まいはな)』」

 

 ホーニィの言葉と共に一面に咲き誇っていた花が宙を舞い始める。花びらがではなく花全体が周囲をグルグルと回りながら空中に留まっている。

 

「『光華(サンフラワー)』貯め込んだ光を魅せつけなさい!!」

「くっ、黄猿のビームと大差ねえぞ!?」

「元を絶てば攻撃も止まるわね?『千紫万紅(ミル・フルール)』」

 

 攻撃を仕掛けてくる花に手を咲かせるとそのまま花を捻じ曲げる。ロビンの機転により連続的に放たれていたビームの雨は途切れた。

 

「その能力はもう1つの『ハナハナ』……アスカル様が昔言ってたオハラの少女レスね」

「ええ、彼には何度も助けられ、そのおかげでいま私は此処にいるわ」

「なら手伝うべきではないのレスか?」

「どうしてこのような事を起こしているのかは知る機会があったから訊く気はないわ。でも、それで本当に良いのか尋ねに行くつもりなの、だから邪魔をしないで『三十輪咲き(トレインタフルール) ハング』!!」

 

 話しで動きが止まっているホーニィの身体に腕を生やすと木の方から生やした腕とつなげて思い切り振り回して遮蔽物のない空中へと弾き飛ばす。絶好の反撃のチャンスを渡されたゾロが狙いを定める。

 

「へぇ、やるじゃねえか『千八十煩悩鳳(せんはちじゅうポンドほう)』!!」

「こちらは覇気の節約を考えないといけないと言うのに『花吹雪・桜龍《おうりゅう》』」

 

 直ぐに身動きが出来ない状態で飛んでくる斬撃に対してホーニィも技を放つ。近くに咲いている桜の木に花を咲かせると、覇気を流して硬化させた物を水が川となって流れていくかのように自然な動きで進めてぶつけた。その姿は技の名前の通り、桜から龍が生まれたかのように感じられた。

 

「重なり描かれる風情溢れる花吹雪、互いに衝撃を逃がし合う事で攻撃を効率よく防ぐレス。貴方は刀が自慢の様レスが、斬れたのはたった数枚レス。あたしはモーダス、もう一人の能力者と比べて器用とは言えないレスが、それ故に一芸に秀でる存在を目指したのレスよ。攻撃に使った花も回収ずみ『花吹雪・桜虎(おうこ)』」

 

 攻撃を難なく防いだ後で何枚かは空中に配置して自身の足場としている。完全に体制は建て直されてしまったようで、今度の攻撃は虎の形を取り、今にも獲物に噛みつこうと言う姿勢で攻撃は放たれた。先ほどとは逆で今度はゾロが迎え撃つ番となった。

 

「『極虎狩り(ウルトラがり)』!!」

「受け止めた…そう思ったら大間違いレス『花吹雪・別ち斬り』」

「形が解けて、くっ、ぐぁ!?」

「それは虎の形をとってるだけで実際には集合体、刀に衝撃を伝えた後でばらして仕舞えば、無防備な身体に攻撃が入るレス『花吹雪・桜冠(おうかん)』」

「おい、ゾロ!?ちっ『フランキーロケットランチャー』!!」

 

 隙が出来たゾロに桜を冠状にしてぶつけようとしていた所にフランキーがロケットランチャーを放って援護する。その攻撃によって花びらが壊されることは無かったが風にあおられ狙いは少しずれたようで、ゾロを守る事には成功した。

 

「軽いからか、風で吹き飛ばせるのか……」

「失われた訳では無いのレスから、時間稼ぎにしかならないレス」

 

 少し喋っている間に散らされていた花びらも集まり直している。攻撃を防ぐための方法は確立できたが、このまま戦い続けていればこちらが消耗するばかりだと少し考える。

 

「なら全部引き寄せてやるよ!!『黒縄(こくじょう)大龍巻(おおたつまき)』!!」

 

 作りだされた斬撃の竜巻は確かに空中を漂う花びらを引き寄せて切り裂き始めた。覇気を纏った花びらもいくつか切り裂かれた頃にホーニィも対策に回る。

 

「元より花は風に舞う物レス『風流花(ふうりゅうか)桜雨(おうう)』それとそんなに引き寄せたいのであれば『凶花粉(きょうかふん)』」

 

 むしろ竜巻で吹き飛ばされた花びらが遠心力を推進力に変換して突き刺さるように降り始めた。さらには竜巻の風に乗るように毒の成分が含まれている花粉が蔓延し始めた。

 

「このままじゃまずい、無理にでも吹き飛ばすぜ『風来砲(クー・ド・ヴァン)』!!」

「悪い、助かった!」

 

 ゾロが生み出した竜巻も壊すつもりで放ったフランキーの『風来砲』のおかげで花粉を吸いこむ事は無かったが、やみくもに風を起こしても無駄だと思い知らされる結果となった。

 

「風で飛ぶほど軽いのであれば『千紫万紅(ミル・フルール)』」

「何を!?しまったレス」

 

 花びら一枚一枚への操作の技量は凄いが重くては思うように操作は出来ないようで、ロビンが何かをする訳でもなく花びら1枚ずつに腕を生やす事で操作の妨害を試み、それは見事に成功した。地に落ちた花を無理やり操作しようとしたり、生えているロビンの腕を攻撃しようとしたらその腕を消して、避ける。操作を諦めて覇気を解除された花びらは念のため潰して操作できない状態にする徹底ぶりだ。

 

「時間を稼ぐわ。彼女を倒す方法を考えて」

「分かった。敵は覇気使いだ気をつけろよ」

 

 自分では倒す事は敵わないと言うのが分かっている。この方法も落ち着いて考えられれば簡単に攻略されてしまうだろう。だから最後の詰めを仲間に託して、時間稼ぎに徹する。ロビンはホーニィに向き直ると笑顔を作り、世間話でもしているかのような感覚で話しかける。

 

「最初に攻撃を防いだのも私ね?同じ『ハナハナ』でも私の方が能力として強いのかしら」

「言ってくれるレスね。『華麗なる花装束(ブリリアント・フラワードレス)』!!美しい花には棘があるものレス、遠くで操作するだけがアタシのやり方では無いのレス!!」

 

 挑発に乗ったのか、花びらの操作を諦めたのか、早々に戦い方を改めるホーニィ、一度地上に降り立つと多種多様な花をその身に纏い武装する。花が寄り集まって出来た棘の意匠が施されている槍も刺さればひとたまりもないだろう。

 

「安心して良いレスよ。ここは世界一の花畑、供花には困らないレス『毒槍花(どくそうか)』」

「心配なんてしてないわ。死ぬつもり何てないもの『千紫万紅胡蝶蘭(コチョウラン)』」

 

 売り言葉に買い言葉、強気に出てはいるが武装の所為で彼女に直接触れる事も出来なくなり、攻撃を能力でどうにか裁くので精一杯になっている。せめて少しでも抵抗の為に周囲の花を毟る事で彼女のフィールドを壊し、相手を苛つかせるべく知っている話を口に出す。

 

「騙されやすい元奴隷の小人だと聞いてたのだけれど、こちらの話に耳を傾けてくれないのね?」

「アタシたちへの命令はアスカル様と……ううん、アスカル様から直接渡される物のみレス。他者を介して伝えられる事もなく、一切の特例は無いのレス。やるべきことの定まっている今、惑わされる事は無いレス!!」

「能力は花の操作と花との会話が出来ると聞いているけど、花達はこの状況を喜んでいるのかしら?」

「うるさい!!うるさいレス!!アタシはアスカル様の命令をこなすだけレス。それが、それが私なりのマニュ様への恩返しなのレス」

 

 何か気に障る内容でもあったのか攻撃に乱れが出ている。集中しなければ覇気は乱れてしまう。それ故にこちらの動きを読むことも無く、繰り出される単調な攻撃を避け続けることが出来た。この後の作戦も気づかれずに聞くことが出来た。

 

「待たせたな、ロビン。まずはこいつを喰らえ『風来砲』」

「くっ、風が!?」

「『二輪咲き(ドスフルール)ホールド』」

 

 風で吹き飛ばされるのは花だけでなくホーニィも同じである。すぐに立て直すであろうが装備の方も多少剝がれている様で、その隙をロビンは逃さず剥がれた部分に手を生やして復帰を遅らせる。目を塞ぎ、咄嗟の操作も出来ないようにしてゾロの邪魔をさせない。

 

「”九山八海一世界、千集まって"小千世界"、三乗結んで斬れぬ物なし”『一大(いちだい)三千(さんぜん)大千(だいせん)世界(せかい)』!!」

 

 ゾロが一面に広がる花畑を斬って浮かせた。バベルの塔は壁も天井も硬く、壊せるような代物では無かったが、植物が生える様になっている地面の表層であれば容易とは言えないが可能だ。一瞬の浮いた地面の隙間に滑り込ませるようにロビンが腕を生やした。

 

「『千紫万紅(ミル・フルール)スパンク』」

 

 生やした腕で地面の片側に思い切り力を込め、花畑を裏がえしにして封じ込めた。咲いている花によるテリトリーの効果は凄まじく、花びらが掛けた際にも常に最大数を操作できるようにと近場から補給していたが、今は全ての花が地面の下に埋まってしまった。無論、能力を使えば生やすことが出来るが、花を持ってきて使うのと、生やして持ってきて使うのであれば遅れは確実に発生し、それは戦闘中であれば見過ごせないほどの隙となる。

 

「吹き飛ばした花は戻ったか?ここの花は燃えないらしいが、こいつならどうだ『フランキーラディカルビーム』!!」

「きゃぁぁぁ!?」

 

 目の前の光景に驚いていたホーニィはビームを避けきれず花も多くが散ってしまった。ただでさえ補給がすぐに出来ないと言うのに、何もない場所から花を咲かせるのには体力を多く使う、そして距離を取って咲かせた花はロビンの咲かせた手によってすぐに毟られてしまった。

 

「させないわ!」

「面倒な事をしてくれるレスね!!」

「その面倒事ももう終わりだ」

 

 怒りで動きを止めたホーニィ、見える範囲内では花を咲かせてもすぐに散らされる。ならば森にまで入ればとも思ったがそれを遮るようにゾロが割って入った。

 

「フ、フフフ、負けるわけにはいかないのレス『寄生花(パラサイトフラワー)』我が身を糧に咲き誇るレス『献身(けんしん)毒槍花(どくそうか)花葬(かそう)』!!」

「九山八海斬れぬ物なし”『(さん)(ぜん)()(かい)』!!」

 

 自身に直接花を咲かせると言う暴挙を持って足りない花を埋め、両の腕に装着された花の槍を持ってゾロ目掛けて突進する。ホーニィの動きを見切ると覇気を打ち破り、一瞬のうちに全ての花を切り裂いて、その身に攻撃を入れた。

 

「ったく、こんな狂った奴を確保して本当にどうにかなるのか?まあ良い、回収は頼んだ」

 

 倒れたホーニィをフランキーが器用に縛り上げて荷物に仕舞いこんだ。次はどうするかと話し合うと次の階層がどうなっているか分からない以上は先に合流できる所と合流しておくべきと言うロビンの案を採用し、サンジ達を探す事になった。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

「あいつら、そうか、やられたのか……」

 

 弱くなった気配からして侵入者にやられたのであろうがビブルカードが健在である事から死んではいない事に安堵する。何もかもを巻き込んだ作戦の最中にとも思うが、同時にこれ以失いたくはないと言う気持ちも確かにある。だが、それ以上に止める訳にもいかない。

 

「だいぶ馴染んできている。レッドラインの全てを、そして大地の全てを掌握する」

 

 これでようやく第2段階が終わり次へと進めるようになる。日が変わるまでまだ時間があるのだが、足止めの戦力はテゾーロしか残って居ない。彼には最後の仕事もあるから無茶はさせられないと言うのに……

 

「最終手段として外の3人を呼び戻す事もまだ出来るか……グレーヌめ、なぜ分かってくれない」

 

 娘を、妻の残した宝を失う訳にはいかない。だが、これ以上邪魔をするようであれば容赦をしてもいられないのも事実、計画は止められない。

 

「明日、全てを終わらせる!!」

 

 たった一人の部屋で響いた怨嗟交じりの声は誰にも聞かれずに溶けて消えた。



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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 4

 塔の中で戦闘が起き始めた頃、外での戦いも変化が少しずつ訪れていた。四皇と戦い続けていたラトニーは未だに送られ続けている食料を飲み込み、ただでさえ圧倒していた所に余裕すら見せるようになっていた。

 

「四皇か、海の皇帝よりもボクは大地の王様の方が好きでね。そろそろ潰れてよ」

「は、はーは…こんなにも傷をつけられたのは始めての経験だよ…アスカルの奴だっておれにかすり傷一つ付けるのがやっとだったってのによ」

「ウォロロ…お前との闘いは死ねそうで良いな…」

 

 既に彼らの仲間の姿はその場には無い。多くの者が呑み込まれ、船も残った数隻で幹部連中を逃がしたばかりである。既に満身創痍と言っても過言ではない四皇、陸に上げた所で問題は無いだろうと邪魔な船を飲み込み、自分の領域に踏み込ませている。

 

「金獅子はガキに敗れ、白ひげは死に、俺らもここで終わり……子供たちは逃がせたが、この先の海がどうなるか見物だよ」

「なにしみったれてんだババア…だが面白そうだな。この先の海か……」

 

 間違いなく荒れるだろうこの先の海、その原因を生み出したのが海ではなく大地の王の手先なのだから逆に笑えてきてしょうがない。

 

「最後くらいは派手に行こうか、ハーハッハママママ『魂の終焉(ソウル・フィニッシュ)』!!」

「ウォロロロロ、乗ったぜ『東神(とうしん)青竜(せいりゅう)』!!」

「なんでボクが付き合わないといけないんだか、はぁ『悪食の女王(グラトニー・ラトニー)』!!」

 

 三者の攻撃がぶつかり合う、正確には四皇2人の攻撃を迎え撃つ形でラトニーの攻撃がぶつかっている。魂を燃やし尽くし、全てを込めた一撃と幻獣種としての力を遺憾なく発揮し、その伝承の様な神を彷彿させる一撃、そして悪魔の如く、相手をあざ笑うかのように攻撃ごと相手を吞み込んでその戦いは幕を閉じた。

 

「うぷっ、流石に一度に呑み込むには膨大すぎたかな…能力者で実力者だと流石に重たい……う~ん、吐きそうだね。さて、向こうは勝手に戦ってるし放っておいても良いかな。でも邪魔だし、気持ち悪いから少し()()()()()()…」

 

 呑み込んだエネルギーによる体の強化、それによって更に呑み込めるようになり、更にエネルギーを貯めこみ、その繰り返しによって無限の強化が可能となっているが、いささか四皇2人と言うのは一度に呑み込むには大きすぎたようで少し吐き出す事にした。

 

「『放出(リバース)』」

 

 呑み込んだ物を吐き出すと言うのはあまりよろしくないが『ゴクゴク』の力により吞んだ物は全てエネルギーとなっている。要するに口から特大のエネルギー波を撃ち放つことで体のエネルギーを調整するのだが、そのエネルギーの行先は少し離れた位置で戦っている残る四皇の船の方だった。

 

「あれは不味いな!?『闇穴道(ブラック・ホール)』くっ、船がだいぶ削られたぜ。なあ、赤髪!!どっちにしろビッグマムとカイドウは死んだ!!お互いに戦い続けても利はねえだろ?解散と行こうぜ」

 

 元より能力者狩りの予定で来たがラトニーの姿を見て怯んで、主の居ない縄張りを荒らしに行く所を止められたが、その主が死んでしまったとなれば荒らすも何もない。勝手に荒れてく海に文句を言われる気は無い黒ひげ。

 

「咄嗟に使うのはやはり闇の方か…おい、こっちの被害はどうなってる?」

「死人は出てねえが、疲労は出てきてる。それに傷も多い、放っておけば不味いな。それとさっきの光線は逸らすために向こうが闇を広げたおかげか、結果的にこっちの被害は軽微になったが、それでも修理は必要だな」

「そうか……撤退する。指揮を頼む」

 

 互いに目障りな相手だがこれ以上の戦闘は失う物が多すぎると判断しその場は解散となった。横やりが入った結果の痛み分けではあるが、死者は出ずに戦力の減少にはならなかった。赤髪のシャンクスは戦闘中にちらりと見えた麦わらの髑髏を思いだす。

 

「気をつけろよ。ルフィ」

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 海軍の軍艦も常に妨害が入る中で何とかその数を減らすことなく持ち続けているが、進む事は敵わずに攻めあぐねていた。そんな中で周辺の観察、報告を受け持っていた軍艦から信じられない一報が入った。

 

「それは間違いないんだな。見間違いでは済まされんぞ!!」

『は、はい…幹部などは逃げましたが確かに四皇ビッグマムとカイドウの2名は討たれました。あれは【厄災指定・暴食のラトニー】で間違いありません。近海で戦っていた黒ひげ、赤髪の両者に攻撃を放った後でそちらの方角にゆっくりと歩いて向かっています』

「危険指定されている『ゴクゴクの実』の能力者か……あの馬鹿に話を聞いて居なければ信じられなかっただろうな。四皇2人を倒しきる存在を相手に何が出来ると言うんだ。ロックスよりも厄介な存在だろう」

 

 海軍と敵対関係にある海賊、その中でも皇帝と呼ばれるほどのビッグマム、カイドウの2名が死んだこと自体は海軍的には喜ばしい事だが、それを成し遂げた人物がこちらを倒しに向かっていると言うのだから報われない。センゴクは直ぐに中将以上を残し、後の者達は戦闘範囲からの離脱を命じた。

 

『離脱終わりました。ここから状況の把握は可能です。周辺情報も観測し、以上がありましたら直ぐに連絡いたします』

「分かった。危険だと判断したらそこからも離れろ。無駄に犠牲を増やす必要はない」

「なんだセンゴク、これから死ぬかの様な言い草だな」

「全てを呑み込むと言うその力、荒れる海の事を考えると下手に戦力は失えまい。それだけの事だ」

「事実、ここで死んでもおかしくは無いだろうよ」

「怖いねぇ、だけど帰る訳にはいかないか」

「視えはしませんが、恐ろしい気配が確かにありやすね」

 

 ここを死地かもしれないと覚悟を決めて残った中将以上の海兵たち、1つの軍艦に集まった10を優に超えた猛者の並び立つ姿は猛々しく、その強さは世界から見ても弱い物ではない。だが、それでも足りないのが『厄災』が厄災として認められる所以である。

 

 そして、少しではあるが戦力が増えており、遅れてやってきた七武海の姿が監視船から報告されていた。『死の外科医』『千両道化』『白ひげJr.』『海賊女帝』の4名の到着とが知らされていた。未だに到着していないパシフィスタが居ればもう少し安心できるのだが、とりあえずはこの場を持たせなくてはいけない。

 

「こちら海軍大目付センゴクだ。『死の外科医』お前の能力で内部に入れるのであれば入れ」

『……分かった。相手が相手だ成果は期待するな。それと顔を出す気は無い』

「『千両道化』その数で敵を出来る限り疲弊させろ」

『なに命令してくれてんだ。まあいい、終ったあとで金の回収をさせろ』

「『白ひげJr.』ラトニーと言う強者がいる。しばらく相手をしろ」

『塔は壊さなくて良いのか?母ちゃん、敵はラトニーって奴だって!!』

「『海賊女帝』天夜叉、鷹の目と共に塔を守る敵の排除だ」

『男が我に命令をするな!!ふん、敵を倒せばいいのだろう。好きに動かせてもらう』

 

 七武海の到着により打てる手は広がった。とりあえずは天夜叉、鷹の目、海賊女帝と共闘、『刺突』と『先読み』の打倒を最優先に動き、その後で荒れた海ではなく大地の上でラトニーを囲い込み、疲弊させる。

 

「これほど、厳しくなるとはな」

 

 ガープの馬鹿からセンゴクだけが1つ聞いていたふざけた報告を知って居る。そして確かに旗の確認にまでは至らなかったが確かに船は空を飛び、塔まで突っ込んでいくのを確認した。

 

「壊せるのであれば壊して見せろ。海賊」

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 プラントの縄張りとでも言うのか、食料の運ばれていた場所を確認し、生産地を廻っている一人の男が居た。既に跡地とでも言うような一部を除きすべての場所が何もない真っ新の状態になっている。

 

「ああ、とりあえずはどこも中継拠点は潰れているみたいだ。これからプラントの跡地、これまでに一度でも定着していた場所であれば一度調べてみる予定だ。合流が出来なくなったのはしょうがないさ、そのせいで調査に時間を取られてるが、確認が終われば俺も『バベル』に向かう」

 

 ゴーグル月のシルクハット、首蒔いたスカーフ、黒いコートと青が主体のコーディネート、その名も顔も既に知れ渡っている《《革命軍のNo.2》と名高い、革命軍が誇る参謀総長。

 

『きちんと連絡は入れてよ。絶対に無茶はしないでねサボくん』

「ああ、ああ、『ドラゴン』さんによろしく伝えておいてくれ」

 

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 七武海が加わったことにより戦闘にも少し変化が起きた。サイフォとの戦闘においては邪魔をするなと鷹の目が睨みつけているので介入できずにいるが、天夜叉と海賊女帝の2人が加わったことにより先ほどまでの余裕は無くなっている。

 

「へぇ、その船は波にも強いのか。遊蛇(ユダ)と言ったっけ、この波の中で船を支えるとはね」

 

 それだけでなく虜の矢(スレイブアロー)によって水での攻撃さえも石化して蹴りで砕く事で防いでいる。九蛇の戦士たちが覇気を纏った矢を放つことで船への被害を防いでおり、ピアスの攻撃は通らなくなっている。唯一救いと言えるのは他を守るために能力を使う事は無いので海軍や天夜叉への妨害は続けられていると言う点である。

 

「ふん、不愉快な。わらわを前にその尊大な態度『(ピストル)キス 』」

「悪いね。育ちが悪いもんでね。敬う態度とかは取れないんだよ『海撃(うみうち)』」

 

 とは言っても蹴り主体の格闘能力が戦闘の基本となっている海賊女帝と水を使った遠距離攻撃が主体のピアスではやはり不利なのは海賊女帝の方である。手数の多さでは全員が覇気使いと言う九蛇海賊団として勝っているが、水の中の魚巨人には当てられない。

 

「蛇姫様、これ以上波を起こされれば我らの船でも危険です!!」

「これ以上の接近は厳しいです!!」

「ええい、そんな事を言っている暇があれば矢を放て!!」

 

 自分に意見をすると言う暴挙と誇り高き九蛇海賊団として弱音を吐くとは何事かと2つの観点から激高し、怒りを纏ったまま覇気での攻撃を繰り返すが、どちらもまともに攻撃は通らずに場は膠着し続けている。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 一方で鷹の目とサイフォの戦いは次の段階へと進んでいた。その広い視点と柔軟な思考により戦い自体が多角的なサイフォの攻撃に追いついて行った鷹の目がサイフォを追い込む事が増えて行った。

 

「本当に残念だ。貴様が剣の道を歩めば高みへと辿り着けるであろうと言うのに」

「くっ、生憎だがな。剣士ではなく便利な諜報役なんでな」

「そうか、ではそろそろ終わりにしよう」

 

 黒刀”夜”を構えて一気に斬りかかる。これまでの戦いでサイフォの動きを理解していった鷹の目はサイフォが斬撃を置く隙を作れないように立ち回り少しずつ手札を減らしていった。その結果、直接のぶつかり合いが続き、ついにはサイフォの持つ2つの刀は吹き飛ばされ、サイフォの胸元にも浅くはあるが、確かに傷をつけられた。

 

「はぁ、流石は世界一の剣豪だな……紛い物の剣術で多少は満足できたかよ」

「ふむ、珍しく楽しい時間ではあっただろう」

「そうか…だが、悪いな。勝つのは俺だ」

「何!?」

「先にも言った通り、俺は剣士じゃない、それにお前の足止めは十分なようだ。()()()()()()()()()()!!変速撃ち『フル・クラッシュ・インパクト』!!」

 

 特殊な機構を持ち、弾速をその場で弄る事が出来る銃を用いて2丁で合計12発の覇気を纏った弾丸を撃ち放ち、一点でぶつかり合わせる事で衝撃波を放つ。その衝撃は鷹の目と同じ七武海の暴君が生み出す物に勝り、かつての四皇白ひげのグラグラの力にも迫る物であった。

 

「がっ、まさか先ほどまでの全てが戯れだったとは…踊らされたのはこちらであったか、フハハハ」

 

 衝撃を斬る事で直撃は避けたがそれでもそれなりのダメージが入った鷹の目、彼は自分がサイフォに剣で戦う事、自分と真剣に戦う事を強要していたつもりであったが、サイフォの方が一枚上だったようで、塔の完成までの時間、自分が塔を斬らないように足止めされていたと知らされた。鷹の目は試合に勝って勝負に負けたと分かり大きく声を上げて笑った。

 

「悪いな。さっきまでは確かにあんた(鷹の目)だけに時間を取ってたんだ。最後まで付き合えない事は悪く思わないでくれよな」

 

 そう呟くと侵入しようとしている七武海と未だに姿を現していない革命軍の対策の為に走り出した。彼がいた岩陰には血を流し倒れているCPの姿があった。




ここで一端投稿止まります。出来る限り頑張りますが、最低でも来週までは待ってください。

読んでくれいてる方々に多大なる感謝を。


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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 5

お久しぶりです。まずは、前回の投稿で来週まで待ってくださいと言っていたのは投稿が来月になってしまい申し訳ありません。

失踪はしませんし、まだまだ書きますのでご安心ください。ですが、仕事が本格的に始まり、更新はこれまで以上に遅れる可能性もあると思っていただけると幸いです。


 牢に落ちたルフィ達は先に牢に入っていた面々に現在の状況を伝え、自分たちを捕らえたテゾーロに対抗する手段は無いのかと、だめで元々と訊いてみる事にした。どうしてこの牢屋と言う場に落とされる事になったのか、テゾーロと戦闘にすらならずに制圧されてしまったと言う事を伝えると……

 

「なるほど、それで落とされた訳か、あの人が作り出す金は海水に触れれば崩れる。だがここは特別な設備も無い無骨な塔、海水を運び込んでばらまく手段が無い」

 

 部下だったと聞いているが躊躇することなくテゾーロの能力の情報をルフィたちに渡した。確かに島の中心の火山の天辺、高い塔まで海水を運び込む手段など普通は無い。だがそれを聞いてグレーヌは喜色の声をあげた。

 

「それならあたしの種があるの!!能力者対策で海水を詰め込んだ種が」

「なるほど、それは良いとしよう。それでどうやってここから抜け出す気だ?」

 

 戦いの最中では無いので会話が出来るだけの余裕はあるがここは牢屋の中、金への対策は可能なようだが、ここから出ることが出来なければそもそもどうしようもない。グレーヌは脱出出来たのだ何か方法があるはずだとルフィ達は考えたが、牢屋の面々は否定的である。

 

「運はほぼ使い切ってるからこれ以上手助けは出来ないよ」

「それにあの時は移動中だったから床を壊す事で脱出させられたが、話を聞く限りここは火山の真上、下手に落ちれば即死だろう」

「下を壊して落ちるだけなら修理される前に抜け出せるけど、上は壊しても登り切る前に塞がれるでしょうね」

 

 グレーヌの種で何とか抜け出せないかなども確認するが動物は収納の対象外で抜け出すには使えないと言われる。種に仕舞われてる物に脱出に使えそうな物は無いとの事だ。

 

「上に居るみんなと連絡が取れればな」

「戻れなくても気づいて貰えるかもしれませんし、天井を壊してみませんか?」

「よし『ゴムゴムの灰熊銃(グリズリー・マグナム)』」

 

 試しにとルフィが天井を攻撃すると、その威力を受けて大きな穴が開き、上の階層まで一気にぶち抜くことが出来たが、じわじわと空いた穴が塞がって元通りになってしまった。攻撃が上までは届いたので誰かが気づいてくれれば良いのだが伝わったと言う確証は持てない。何のコンタクトも無ければ時間を置いてもう一度試そうと言う事になった。

 

「それにしても修復が厄介ですね。あれでは確かに上る前に生き埋めになってしまいます」

「あれでも手動じゃなくて、自動での修復なの。何でかは分からないけどお父さんは牢屋を見てないの」

「監視する必要も無いという事か、それとも監視すら出来ないほどに忙しいのか」

 

 嫌な予感がしないでもないが脱出の邪魔をされないのであれば好都合と考える。天井を壊して様子見を繰り返しているとしばらくして牢屋の内側にロビンの姿が現れた。

 

「『体咲き(クエルポフルール)』こんな所に居たのね。みんな無事みたいね」

「ロビン!!」

 

 体を丸ごと咲かせる事で直接ルフィの目の前に現れたロビンに牢屋に落とされた経緯とテゾーロの能力の弱点、それと脱出のために手助けが必要な事を伝える。

 

「分かったわ。今こっちは全員が合流してるから情報を共有してくるわ」

「ああ、お前らも一緒に来るか?」

 

 捕まっている面々に確認を取るが全員が出た所で出来る事は無いと断わり、ルフィはチョッパーとブルック、グレーヌの3人を連れて跳ぶ準備をする。少ししてから天井が崩れ始め、大きな穴を埋める様に端から修復が開始されるが、その端を崩し続ける斬撃が見えた。

 

「ゾロだ。よし、行くぞ」 

 

 土の塊が降る灌ぐ中を軽快に跳んでいくが、3人を抱えているので操作されていない土塊であっても吹き飛ばせず一々避けている為に上るのに時間が掛かっている。すると突然ルフィの前方に会った瓦礫の群れが崩れる様に弾けた。

 

「『悪魔風脚粗砕(コンカッセ)』ルフィ、グレーヌちゃんとチョッパーを寄越せ」

「おっ、サンジ。二人を頼んだ。「ひゃあ/うわぁ」これで一気に上れる」

「ヨホホホ、頼もしいですねお二人とも」

 

 サンジが二人を受け取ったことでルフィも動きやすくなりブルックを背負ったまま振ってくる瓦礫をヒョイヒョイ避けたり、砕いたり、時には足場代わりに利用してバベルの一階部分まで帰って来れた。

 

「ルフィ!!」

「まったく、なに捕まってんだ」

「わりぃ、わりぃ、もう捕まんねぇからよ。シシッ」

「よぉ、グレーヌ。言われた通りに2人を確保しといたが海楼石で封じているから気をつけな」

「ありがとうなの。二人とも、無茶ばっかりして……」

 

 グレーヌはモーダスとホーニィの二人を海楼石に触れないように荷物に仕舞いこんだ。そして海水の入った種を取り出して全員に配る。入ってる量はかなりの物で上手く使わないと自分たちも巻き込まれてしまうと言うので今のうちに使い方や作戦を決めておく。

 

「ならおれが天井に向けて撃つから」

「私が良い感じに吹き飛ばして周囲にまき散らすわ」

「その後はルフィたちがテゾーロの相手をして、私とグレーヌでアスカルの所へ向かうわ」

「モーダスとホーニィが起きてないけど、行けば先に出来ることもあるの」

 

 ウソップとナミがテゾーロの操る金を封じる一手を打ち、ルフィ、サンジ、ゾロがテゾーロを倒す。その間を切り抜けてロビンとグレーヌでアスカルを説得に向かう。フランキー、チョッパー、ブルックについては脱出の準備とその手伝いと言う事になった。

 

「クー・ド・バーストも行きに使ったきりだしな。そろそろ準備はしとくべきだろう」

「ヨホホホ、場所探しや整備の手伝いをやらせて頂きますよ」

「おれも能力者相手に薬を結構使ったから補充ついでにコーラの補充やその他の準備を手伝ってくる」

 

 塔の外は激しい戦闘が続いているため出る事は厳しい、しかし行きとは違い帰りは海まで飛べれば最悪どうにかなるので、塔の中に置いて飛ぶ瞬間だけ壁を壊すのでも脱出は可能だ。そもそもアスカルを倒せば塔も崩れるだろうと言う結論に成り、問題は船を置くスペースになるのだが、それは3人が見つけてくれるだろう。

 

「よし、今度こそ行くぞ」

 

 仲間が集合しているこの状況で挑むバベルの3階、テゾーロの待ち受ける階層へと向かう。2度目は無いと階段の途中にある金の壁にも注意を向けながら進んでいく。辿り着いたのは部屋の全てが金で覆われた部屋だった。その中央に堂々とした佇まいでいるテゾーロは苦い顔で何かを考え込んでいる。

 

「今度は捕まんねぇぞ。おれと戦え!!」

「……()()()()()()()()()()()()に仲間に助けられ、部下から俺の生み出した金の弱点を聞き出し、仲間の揃った万全の状態でこの場に来た。偶然の一言では決して済まない……これが劇であれば最高の展開で心躍るエンターテイメントなのだが、こちらとしては笑えない最悪の展開だな」

 

 ルフィが啖呵をきってテゾーロに相対する。仲間たちはどのタイミングで仕掛けるかと機会を伺っているが、テゾーロは余裕とは違う、どこか達観した姿で喋り続けている。

 

「海水をばら撒くなら好きにすると良い、だがこの部屋にあるのは全てが天然の金だ!!」

「敵の言葉が信じられるか!」

「いや、こちらに海水の用意があるのを知ったうえで、試されれば直ぐにバレる嘘をつく必要は無いだろ」

 

 テゾーロはこちらが次の行動に移る前にそれを止めてきた。ウソップが啖呵を切って海水の準備を始めたが、ゾロが冷静にその行動を止めた。

 

 テゾーロはこちらの動きを察知していた。ここに居る事から逃げ出した事はわかっても()()()()()()()()()()()などの発言から、全て見ていたのだろうと驚く。何故、邪魔をしなかったのか、それとも出来なかったのか……

 

「塔の支えからも可能な限り集めた所為で更に塔は弱くなったが、今となってはどうでも良い事だ。この先に進んだ所でもう意味は無いが、自分の仕事はさせてもらう」

 

 そう言った瞬間に部屋の金が流動しこちらを攻撃してくる。しかし、それを読んでいた面々が攻撃を防いでグレーヌ達を先に進ませる。

 

「行けっ!!」

 

 役目の無くなったウソップとナミもグレーヌ達のチームに加わり先を目指す。その後ろで金を身に纏ったテゾーロと主力の3人が戦っている音が聞こえたが、振り返ることなく、勝利を信じて走り去った。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

「『白ひげJR.』ねぇ。確かにその力は強いけど、それだけだね」

「か、母ちゃん。こいつ、強いよ」

 

 能力で底上げされた攻撃を弾いているがそれでも確かに『白ひげJR.』にはダメージが入っている。だが、四皇2人分のエネルギーで逆に動きにくくなってるとはいえ、四皇を倒した実力者の足止めが叶ってる当たり、その強さは相当だろう。

 

「『消化』する必要があるんだ。悪いけどまともに相手はしてられない。吹き飛べ『放出』!!」

「か、母ちゃん、うわぁぁ!?」

 

 『ゴクゴク』の力は嘘偽りなく何処までも強くなれるが、それにもきちんと段階を踏む必要がある。これ以上無駄にエネルギーを使わず、一度呑み込んだ力をキチンと自分の物にする為に無理やり白ひげJR.を吹き飛ばして戦いを終わらせる。あれなら死んでは居ないだろうと思いつつ追撃はしない。

 

「既に塔は完成したらしいし、『四皇の排除』とこっちに『注目を集める』と言う仕事は果たしたでしょ。さてと、食休み食休み、少し下がらせてもらうかな」

 

 これ以上やろうと思えば戦えなくは無いが、四皇から得た物を無駄にするのは勿体ないと一度この場から離れる。未だに姿を現さない革命軍が不気味だし、他の比較的新しい七武海2人の姿もまだ見えてないが、そっちはサイフォの仕事である。

 

「へぇ、じゃあここは通らして貰っても良いのか?」

「サイフォの奴、こっちに来てるじゃん。ああもう面倒くさい、下がってから声をかけてくれたら気にしないでも良かったのに」

「あー、そりゃこっちとしても余計な事をした事になるのか?なあ、あんたはどう思う?」

「ちっ、こっちにふるな『革命屋』」

 

 そこに居たのは革命軍が誇る『参謀総長』と姿を見せていなかった七武海の1人、塔の中に侵入した麦わらのルフィと同じ、最悪の世代に数えられた海賊だった。

 

「『スキャン』、どうやらか呑み込んだエネルギーは体内、正確には胃に当たる部分に溜まってる様だ」

「うわぁ、女の子の体を勝手に調べるなんてやらしぃなぁ……殺すよ?」

 

 呑み込んだエネルギーの使い方は攻撃に転用する以外には、その場限りの強化と永続的な強化があり、四皇クラスのエネルギーを無駄にしないために永続的な強化を考えていたが、その為には少しずつ体にエネルギーを馴染ませる必要があり、その過程をラトニーは『消化』と呼んでいる。

 

「なるほど……『ゴクゴク』の力も万能じゃないと言う訳か、限りない強化にも手順があり、今の時点での限界は存在している」

「それが分かった所で何が出来ると言うんだか、四皇二人分のエネルギーを貴方達で全て受け止められるとでも?受け止めたとしても満身創痍でこの先に進んで生きて帰れるとでも?……めでたい頭だね」

 

 多少のロスはしょうがない物だと考えてエネルギーを消費しての迎撃に入るラトニー、既に仕事は済んでいるのに加えて、領分外の仕事という事でやる気は少ない。そのために大雑把な攻撃になるが、範囲と威力が規格外であるために敵対者はそれぞれ全力で回避行動をとる。

 

「『room(ルーム)』『シャンブルズ』」

「『竜の鉤爪』!!」

「なっ…転移能力!?くっ!?」

「『ガンマナイフ』!!」

 

 『死の外科医』が能力の及ぶ領域を作り出すと手始めに参謀総長をラトニーの後ろにとばして重い一撃を加える。それで気が削がれた所で体内を直接攻撃する技を喰らわせた。だが、その攻撃も致命傷とは決して言えない半端な物となったが、それでも不意打ちで喰らわせた技二つの成果は大きい。

 

「なるほどねぇ。『オペオペの実』……調査が足りなかったかな?『不老手術』の情報ばかりに目が向いてたけど、うん、厄介な力だね。()()()()()ボクに読み合いは苦手だし、不意打ちは正しい攻略法だよ。それも吞んだばかりのエネルギーの溜まる体内を狙うのは、ねぇ?」

「漏れ出たエネルギーの圧がヤバいな」

「だが、その膨大なエネルギーが邪魔して再生は出来ねぇよ。これであいつの戦闘時間に制限が出来た」

 

 『消化』させる事無く、『食い溜め』でたまったエネルギーを消費させるのを目的とした攻撃は見事にラトニーの『胃』を少しだけだが削り取った。それによって漏れ出るエネルギーをラトニーは瞬時に短期的な強化に流用して、意趣返しとした。

 

「勿体ないなぁ。でも使わないのはもっと勿体ないからね。食休みも意味ないならお望み通りに最後まで暴れてやるよ!!」

「ダメージ入れたのに強くなるんだからやってられねえな、おい」

「俺の一撃は確実に残ってる。革命屋お前も仕事をしろ。()()を忘れるな」

 

 そう言うと身体能力が数十倍、いや百の位すら飛び越えて数千倍の域まで跳ね上がったラトニーを相手に逃げに徹底した戦闘を開始する。()()()()()()()()()()()()()()()()()においての強さは四皇を屠った事から分かっているが、目の前の相手は予想通り()()()()()()なようで読み合いに全力を尽くす事で驚異的な強化の前でも戦闘が成り立っていた。

 

「喰らえ『呑砲台(のみほうだい)』!!」

 

 漏れだすエネルギーを弾丸状に形成して一気に放つ、速度、威力共に高水準なのに加えて、ラトニー自身も近寄って来ているので早速回避が難しくなっている。高速で動くラトニーにより四方八方からエネルギー弾が放たれ、避けた所をラトニーが一撃を入れようと近づく。

 

「撤退だ!!『竜の鉤爪』!!」

「…そうか!!『シャンブルズ』!!」

「地面に…?砂が邪魔だ『食前合掌(いただきます)』!!」

 

 能力や攻撃でエネルギー弾の対処はギリギリ可能だが、その数とラトニーの攻撃により早速攻撃を喰らうかと思ったその時に参謀総長が地面を攻撃、辺りに砂煙が舞い、視界が遮られ、小石があちらこちらへと散った。

 

 意図に気付くと死の外科医は対応がされる前に攻撃の範囲内からの脱出を図り、『room』内に散らばった小石の中で攻撃範囲外の位置の物と自分たちの位置を入れ替えた。

 

 ラトニーも覇気はそこそこ使えはするが、急に舞った砂と何の為にと言う思考により相手の動きの把握が遅れた。正しく状況を判断するために力任せに両手を打ち合わせて衝撃波を生み出し、辺りの砂を一気に吹き飛ばした。先ほどまで攻撃していた場所を見やると既にそこには二人は立っていなかった。

 

「『ラジオナイフ』!!」

「ひゃっ、危ない!?って腕が!?」

 

 死の外科医はその衝撃が収まった瞬間にラトニーの後ろに回る。そして一定時間どんな処置も能力でも接続不可能な攻撃を喰らわせ片腕を奪った。そして、一気に『room』を広げるとそれをどこかへと飛ばした。そして、先ほどまで一緒にいた『参謀総長』の姿も無くなっていた。それを瞬時に認識すると大きくため息を吐くラトニー。

 

「はぁ、面倒な手ばかりで嫌になる。まだ、四皇二人の方が素直だったよ?『破死忌(ハシゴ)』」

「それだけ雑に動いて勝てるだけの力を持ってるお前が面倒だよ厄災屋『タクト』!!」

 

 尽きることの無い連続的な鋭い攻撃を繰り出すラトニーに対して、『死の外科医』は周りの土や水、マグマなどを浮かしてぶつけようとする。

 

 放ったそれらは一瞬で飲み込まれるがその隙きに攻撃の範囲から大きく離れる。飲み込んだ物は少ないが、膨大なエネルギーを飲んだばかりで、胃にダメージの入っているラトニーは少し険しい表情をつくる。

 

「呑むのは好きだけど、呑まされるのは腹立つねぇ」

「とっとと呑み潰れろ!!」

 

 互いに消耗が激しい戦いの中で相手がボロを出すのを待ち続ける。だが、時間だけが味方の『死の外科医』と当たれば勝ちのラトニーでは差がある。胃が荒れ、万全では無いとはいえ、余裕を残すラトニー相手に不利な戦いが本格化していく。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 荒れた海はそのままに戦闘は膠着状態が続いており、互いの攻撃が繰り返されるたびに戦場の状態が悪くなっていった。海賊女帝の能力により撃ち落された攻撃が石化して周囲に残り、それが荒れた海をより複雑にしている。鎮座している大岩の数々が新たに海流を生み、引き寄せられると船体が削られ船にダメージが入る。海中に散らばる岩もピアスの動きを制限している。膠着状態である事に変わりは無いが戦闘が面倒な物となっている。だが、七武海全体としての成果は徐々に上がっていた。

 

「フッフッフッ、良い足場があるな『足剃糸(アスリート)』」

「はっ『海龍一本背負い』!!手数が増えようが関係ないだろう」

 

 岩の数々に糸をかける事で天夜叉がピアスとの戦闘に本格的に参戦するようになっていた。動きに制限はあるが、糸を掛ける場所が出来たことで今までより自由に動くことが出来る。そうなると回避時の心配が減り、攻めに転じれるようになった。

 

「攻撃を勝手に利用しおって、『芳香脚(パフューム・フィムル)』」

「おっと『伏龍』」

「『蜘蛛の巣がき』」

 

 多くの足場があり、驚異的な脚力と覇気をもってすれば岩から岩へと飛び移り攻撃を仕掛ける事など容易である。海賊女帝は攻撃を仕掛けている天夜叉ごと蹴り砕かんと石化効果付きの回転蹴りを放つが両者に逃げられ、隠すことなく舌打ちをする。

 

「ちっ、避けたか」

「こっちを巻き込むんじゃねえよ。同じ七武海の仲間だろう?フッフッフ」

「味方もろとも攻撃、いや味方とすら思われて無さそうだな。それにしてもサイフォは何を…いや、そう言う事か」

 

 読まれにくい攻撃や読まれても意味の無い衝撃波を扱うサイフォに足場となっている岩を壊してもらおうと考えたがその姿が見えない事に気付くピアス、そして時間稼ぎの必要が無くなった事を察する。だが、この場から引くためにはいささか強引なてが必要である。ピアスはこの場だからこそ出来る大技を放たんと更に深く海へと潜る。

 

「ん、何処へ行った?」

「逃げうせた訳では無さそうじゃの」

 

 ここはエンドポイントの一つに数えられる『ピリオ島』、作戦決行中の今でも地下深くに力強いマグマが眠っている。深い海で岩盤さえもぶち抜く大技を海底に向けて放たんとするピアス。

 

「『汎㮚瀚(ふうりがん)』」

 

 見事海底に大穴を作り出すといち早くその場から逃げ出した。勢いよく流れ込み始めた海流により大渦が出来上がるが既に上の海は荒れに荒れていて気付かれにくい。角度をつけたことにより突き抜ける海の一撃は海軍の軍艦の方まで届くだろう。

 

「おいおい、嫌な予感がするぜ。だが熱気で雲が生まれてる。俺は退かせてもらう」

「厄介な事を…船を動かせこの海域より離れる!!」

 

 七武海2人がその場からいち早く脱出を図る。その頃には海軍も異変を察知し始めていた。大きな攻撃に気配と大きく荒れ方を変えた海。流れ込んだ海流が熱されて一気に噴き出すその時が近づいている。

 

「此処より早く離れる!!藤虎、軍艦全てを動かせとは言わん。船の動きを助けるよう力を使え!!」

「了解しやした」

「20番以降の軍艦は捨てろ。いち早く範囲外の船へ移動、月歩が使える者は使えない者の移動を助けるんだ!!敵は意図的に災害級の自然を生み出した!!範囲内の人間は離脱を最優先。その他は船を動かすか、迎撃の態勢に入れ!!」

 

 軍艦の群れは元々荒れた海で立ち往生している関係上、逃げ出すにも一苦労であったが大将藤虎の能力で動きやすさを上げた軍艦は少しずつその一撃の範囲から出るが、全ての軍艦が逃げる事は叶いそうにないと判断し、範囲外の船に人員だけでも逃がそうとする。まだ多くの軍艦が残っている内にその海流が咆哮を上げるかのように飛び出した。

 

「『突き上げる海流(ノックアップ・ストリーム)』ならぬ『打ち倒す海流(ノックダウン・ストリーム)』だよ」

 

 意図的に角度をつけてあけられた大穴から一気に噴き出た海流は目の前の全てを破壊しながら突き進みまだ残った軍艦を大破させた。さらには海流は気流を作り出し、周囲の水や空気、船を引き寄せんと勢いを増していく。

 

『脱出中だった人員の多くが海流に呑み込まれました。被害は数万にも上ると思われます』

『こちら、船が破損。舵がやられこれ以上持ちこたえる事は、うわぁぁぁ!?』

『大破した船の欠片が引き寄せられ、それらがぶつかる事で少なくない被害が出ています』

「各員、少しでも被害を軽微にする為に努めろ、人命を第一に行動しろ!!この海域からの離脱を忘れるな!!」

「『重力刀(グラビトウ)猛虎』!!くっ、持ち堪えるのは難しそうです。早めに対処をお願いしやす」「ちっ、壊れた軍艦が邪魔じゃい『拳骨流星群』!!」

「破片は任してください『八尺瓊勾玉』!!それと出来る限り拾ってきます『八咫鏡』!!」

 

 素早く対処に入るが多くの仲間が失われ、軍艦の多くも大破している。被害を考えるだけで目の前が真っ白になりそうな物だが前線に立つ精鋭の手により、まだ残っているモノを救うための行動を開始する。直前まで観測していた七武海の姿ももはや確認する余裕はなく、これ以上海軍、いや世界政府が参戦するのも厳しいとしか言えない。最悪の置き土産を残してこの状況を引き起こした幹部の姿は消え失せていた。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 ピリオ島より遠く離れた海域でも作り出された『打ち倒す海流(ノックダウン・ストリーム)』は観測されていた。観測したのはラトニーの横入りがあったとはいえ、黒ひげと抗争して人的被害を出さずにその場を逃れた赤髪海賊団とそれに着いて行く形で危険な海域からさっさとおさらばした七武海『千両道化』だった。

 

「ふん、見たかお前ら。四皇をものともしない『厄災』は言わずもがな、幹部一人であの様だ。全戦力をもってすれば戦いにもなるだろうが、今この場でお前らを失う訳にはいかない。幸い、あー、その兄弟分である『シャンクス』がいたんだ。海軍には四皇を抑えていたとでも報告する。異論は無いな」

『俺らの事を考えて、なんと慈悲深い。異論何てありません。我らが座長!!』

 

 本当なら戦いたいはずなのに、七武海に成り、俺らに仕事を回すために前線に立たなく、いや立てなくなって久しい戦場で俺らの心配を……といった感じで更なる尊敬を集めた千両道化。

 

(あんな化け物相手に命がいくつあっても足りるかよ。うちの船を見張ってた海軍の監視船も『厄災』の攻撃の巻き添えで消えた。海軍の本隊もあの様子じゃ正確に把握は出来てねぇだろう。金やため込まれた財はおしいが、命あっての物種だぁ!!)

 

「こんな所で会うとはなバギー!!船の修理に医療品まで貸してくれて助かったよ!!」

「はっ、何が『助かったよ』だ!!あの頂上戦争から今までオレを騙したことに対する謝罪、主に誠意の1つも寄越さねぇシャンクスくぅーん!!こっちもあの海域から出るのに必要だから手助けしただけだ。そこん所勘違いするんじゃねぇ!!」

「まだ根に持ってるのかよ!?悪かったって、あの時は急いでたんだよ。今回も助けられたんだ礼はするから許してくれって」

「はっ、それで良いんだよ!!礼さえあるんならな。こっちも一部可愛い部下を失っちまった。得る者なにも無しで帰ったじゃ、あいつらが浮かばれねえだろうよ。なぁ、お前ら?」

『おー、そうだそうだ!!』

「調子の良い奴らばかりだな。お前の海賊団らしいな、バギー」

 

 その後も小さい諍いがシャンクスとバギーの間で行われたが、特に被害も無くそれぞれの縄張りへと帰ることが出来た。バギーはシャンクスからの礼を受け取り、部下からの尊敬を更に高め、海軍への言い訳もあり、大儲けとはいかなかったが収支はそこそこのプラスで内心ほくそ笑んでいた。

 




小説のメインが進んでいないのと、このif話内のメインが進んでいないのも問題ですが、出した登場人物の方を少しずつ片付けて行かないといけないんですよね。こっちとこっちが戦い、結果はこうでしただけは味気ないですからね。

未だに1人も倒れてはいない外で戦っているバベルの幹部、鷹の目の攻撃を喰らったサイフォとサボとローから深い一撃を受けたラトニー、ずっと一部の強者を含めた大多数を相手取っていたピアス、どれも未だに行動は出来るだけの力は残ってます。

if話は全部で10話以内に終わらせたいなとは思ってます。本当は5話、要するにここまでで終わらせるつもりでしたが……少し規模を広げすぎたかなぁ?ですが後悔はしてません。

これで四皇は全部話は終わり、七武海もラトニーと戦っているローだけかな。海軍も行動不能、後は残った幹部の今後の動きとテゾーロ、アスカル、それと天竜人や世界政府がどうなるか、まあ最後に関してはハッピー、バッドの2つのエンドを書く予定ですが、そこいら辺かな。

ようやく終わりが見えてきた。本当なら4月中に完結しているはずだったのに、どうしてこうなったんだろう。子供の頃から夢だった仕事に就けたのは良いけど、趣味の時間をどうにか確保する方法を模索していきます。

明日も仕事、明後日も仕事、明々後日は休みなのでその日に書けるだけ書こう……うっかりAP〇Xを起動しない限りは執筆が進むはず……いや、進ませてとっととメインの話に戻らせないと、うん、大丈夫、きっと書くはず……

とまぁ、こんな感じで作者の計画能力の無さが露呈した辺りでいつもの再撮でさようならと行きましょう。

読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 6

お久しぶりです。丸々一ヶ月空きましたね。更新遅くて本当に申し訳ございません。待っていてくれた方々に感謝を。

今回は普通にif話の着地地点で少し悩む部分があり、修正してたら遅くなりました。でも、これで終わりまでの流れを作り終えたので後は書く時間を確保するだけです。


 周囲の黄金から繰り出される攻撃をゾロとサンジが受け流す、ルフィが一気にギアを上げると覇気で硬化させ、炎を纏った腕で攻撃を繰り出す、テゾーロは腕に黄金を纏わせるとルフィの攻撃に合わせてその腕を振り抜く。

 

「『ゴムゴムの火拳銃(レッドホーク)』」

「『黄金爆(ゴオン・ボンバ)』」

 

 攻撃の熱で金を溶かす事が出来たルフィだが、熱伝導を利用し直ぐに熱を逃がして再度金を身に纏うテゾーロ。特定の物を操作すると言う点ではドルドルの実と似ているがそれと比べて熱への耐性がありそうだ。この攻撃だと効率が悪そうだとルフィはなんとなく察する。

 

 テゾーロと言う男は黄金が、力を振るう環境がある限り無敵と言える程の能力である。大規模な攻撃に向かない塔と言う閉鎖空間であるが、その狭さ故に環境の維持はしやすい。そのため、場を崩してどうにかすると言う方法は出来そうにない。

 

 だが、単純に攻撃の威力で金を砕いたところで結果は先ほどまでの戦いと同じになりそうだ。金を貫いた上でテゾーロにまでダメージを与えぬ限り、勝つことは出来そうにない。

 

「このままでは鼬ごっこだな。そしてやはりここは狭いな。特製のステージへ招待してやろう『黄金爆(ゴオン・ボンバ)』」

「うわ!?」

 

 テゾーロが床を崩すと1階から3階までの床が崩れており、オーズほどでは無いがかなり大きい黄金製のテゾーロの像が出来ていた。

 

「『ゴールデンテゾーロ』バベルでの使用の為に少し小さいがな。『黄金の業火(ゴオン・インフェルノ)』!!」

「『ゴムゴムの象銃(エレファント・ガン)』くっ…ぐあぁぁ!?」

「『悪魔風脚(ディアブルジャンブ)牛すね肉(クロッス)ストライク』、ぐっ、重い、がぁ!?」

「『大辰撼(だいしんかん)』チッ、止められ、ぐっ!?」

 

 『ゴールデンテゾーロ』と呼ばれた巨大な像に乗り込んだテゾーロはその腕を強化し、爆発するパンチを放つ。攻撃事態は先ほどまでの『黄金爆』と似ているがその規模と重さが大きく違う。

 

「どうする?無駄にデカくなっただけじゃなさそうだぞ」

「腹ん中に居るんだ丸ごと倒せばいいだけだだろ」

「よし、ギア4で…」

「待てよルフィ、まだ上にも敵が居るんだぞ」

 

 ギア4は強力だが使えば一定時間、正確には10分間覇気が使用不可能になると言う弱点がある。継戦能力の低い、短期決戦型の技なのだ。まだ、敵が残っている状況でそれを使うのはリスクが高いだろうとゾロが止める。

 

「狙う場所が決まってんだ。お前ら合わせろよ?」

「ああぁ!?お前が合わせろクソまりも!!」

「ししし!行くぞ!!」

 

 吹き飛ばされた先からスッと立ち上がり巨大な敵へと駆け出した。吹き飛ばしはした物のダメージが少ないのはテゾーロも理解していたのか直ぐに迎え撃つ体勢をとった。

 

「『黄金の神の火(ゴオン・フォーコ・ディ・ディオ)』」

 

 なんとテゾーロは『ゴールデンテゾーロ』の開いた片目からレーザーを発射して見せた。巨大な像から繰り出されたレーザー攻撃にルフィは目を輝かせていた。

 

「ルフィ、集中しろ!!おいマリモ、俺は上に行く!!」

「たくっ、レーザーだのビームなんて色物はうちの変態だけで間に合ってんだよ。ああ、ルフィ攻撃の準備をしとけ」

 

 迫りくるレーザーをどうにか避けた三人、ルフィは正面から『ゴールデンテゾーロ』を目指し続け、ゾロとサンジは次の攻撃を警戒して迎え撃つ準備に入る。正面からぶつかるのは質量差を考えると不利なため攻撃の妨害を図った。

 

「『黄金の業火(ゴオン・インフェルノ)』」

「九山八海斬れぬ物なし『(さん)(ぜん)()(かい)』!!」

 

 回り込むように動いていたゾロは腕の根元を切り落としパンチを止めた。黄金製の腕は直ぐに再生が始まったがすぐに攻撃に使えないだろう。

 

「『黄金の神の火(ゴオン・フォーコ・ディ・ディオ)』」

「でかいだけあって蹴りがいがありそうだ『悪魔風脚(ディアブルジャンブ)首肉(コリエ)ストライク』!!」

 

 重たい身体だが頭部への攻撃でバランスを崩し、少しだけ身体を傾けた『ゴールデンテゾーロ』、その影響で放たれたレーザーは見当違いの方向へ放たれた。

 

「『黄金の神の裁き(ゴオン・リーラ・ディ・ディオ)』」

 

 無理に『ゴールデンテゾーロ』を維持するよりはと直しかけだった腕ともう片方の腕を巨大な触手に変えて叩き潰すように攻撃を繰り出してきた。

 

「オラ行ってこい『空軍(アルメ・ド・レール)パワーシュート』」

「三刀流”奥義”『六道(ろくどう)(つじ)』」

 

 迫り切る黄金の触手を6つに斬り分け、攻撃を止め、更には再生を遅らせる。両腕から繰り出された攻撃は止められ、レーザーで真下を瞬時に狙う事は出来そうにない。攻撃を避けるのを諦め、テゾーロは既に役立たずの『ゴールデンテゾーロ』から黄金をかき集め、自分の居る場所を守った。

 

「ギア3、武装硬化『ゴムゴムの』」

「『三刀流』」

「『悪魔風(ディアブル)焼鉄鍋(ポアル・ア・フリール)』」

「『スペクトル千八十煩悩(せんはちじゅうポンド)攻城砲(キャノン)』!!」

 

 ただ一か所を目指して同時に放たれた技は全ての障害を破壊してその威力をテゾーロに届けた。その衝撃は『ゴールデンテゾーロ』にも響き渡り、黄金の像も砕けて周囲に崩れながら散らばった。その瓦礫の中央の黄金に避けられたかのように空いた空間にテゾーロは満身創痍で倒れていた。

 

「はぁ、はっはっはっはっ……おれの負けか。」

 

 未だに意識があるテゾーロに気を緩めず睨みつける3人だが、テゾーロはその視線を受けても何ともないようで、それどころかどこか満足そうに笑い声をあげた。

 

「安心しな。もう戦闘は出来んさ。ここでおれの出番は終わりだ。だがまだ終幕では無い。築き上げた物を捨てての復讐、世界さえも顧みない行為、これでも部下には悪いことをしたと思っている。だが、これがおれの望みである事も確かでな……復讐に狂った者同士の契約、おれが最後に送るエンターテイメンツ、題材は【堕ちる神】なんて…洒落がきいてるだろう?()()()()()最後のステージへ向かうと言い」

 

 もう始まるぞ、とぽつり零した言葉と共に塔が大きな揺れを起こし始めた。何処か嫌な予感がする3人は先に行った仲間を思い、ボロボロで辛うじて形を保っている階段を急いで4階分登り始めた。既に何もする気の無いテゾーロは先へ進もうとする3人を見ることも無く、崩れてボロボロの塔の中心で無駄に輝く瓦礫を睨みつけていた。

 

「黄金に何が出来る……こんな物で世界になど挑めやしない……賭けるのは『この命(俺自身)だ』」

 

 その手で一矢を報いる事が厳しいのであれば、せめてこの身があの害虫を亡ぼす事を信じるばかりだ。もし、我儘が叶うなら、馬鹿を止めようとした部下に救いを……

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 死の外科医の力を借りて塔の中に入り込んだ参謀総長、なにやら内側からの姿を見渡すとおもむろに壁や床を叩きながら歩きまわり始めた。一度綺麗に壊されたのか、一階部分に結構広めの更地を見つけちょうど良いと自身も攻撃を放って壊す。ガラガラと音を立てて崩れた床とその修復されていく様子を見てから何やら思案する顔になった。微かにしたから感じる気配とは別に大きな流れを感じる。

 

「この塔の”核”は上じゃない。そもそもここじゃないのか……『竜の息吹』!!」

 

 もう一度今度は崩れていく床と共に落ちていく、堕ちた先には突然崩れた天井に驚きの表情を浮かべる者達を見つけ、微かな気配の正体を把握する。こちらを見てくる視線を無視して更に深く、塔の真下を打ち砕く様に一撃を放つ。

 

「……降りてきたのか?」

「何を……わざわざこの牢屋まで」

「あ、彼の顔、あれは…革命軍の!?」

「『竜の息吹』!!」

「何を!?」

「そんなことをすればマグマが!?」

「……上がって来てない?それどころか熱の欠片も感じられない」

 

 ここを拠点としたのにも意味はあったのだろう。その一つに囮と言う意味があり、その割合が大きい事がこれで確定した。エンドポイントの強力なマグマをこの場所まで力を届けるコードにしていたのだろうが、そのマグマがきれいさっぱり消え去っている。

 

「この塔は既に張りぼてか……俺はこの塔をぶっ壊すつもりだが、お前らはどうする?」

「……逃げる手段はあるのか?」

「ああ」

「戦う気も、邪魔になる気もないが、生き埋めになって死ぬ気は無い」

 

 牢屋に居た面々はお互いの顔を見合って参謀総長の提案に頷いた。天竜人だけが残ろうとしていたが、その部下らしき女に引きづって連れてこられていた。

 

「さて、勝手に人数を増やしちまったが行けるか?」

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 目的を果たすため、海に出た以上は命のやり取りなどとっくに覚悟しているが、これほどまでに死を間近で感じる戦闘も無いであろうと死の外科医は疲労の見える身体を誤魔化しながら動き続けていたがもう限界が近いと感じていた。

 

「はぁ、はぁ、くっ!『room』『シャンブルズ』」

「最初はボクに呑ませる事も出来てたのに、段々と後手後手に回ってきて、疲労が溜まってる証拠だね~」

 

 初めのうちはまだ良かった目論見通り、多量なエネルギーで逆に傷を治せないでいる所に避け切れない攻撃を呑ませて疲弊を進めさせた。しかし、途中からラトニーは雑な攻撃を更に雑な物にして無理やり攻撃を凌ぎ始めた。

 

「エネルギーを吐き出しまくった時には強化が少し足らなくて何度か更に攻撃は喰らったけど、結局は胃の修復が間に合っちゃったからねぇ。『呑み直し』すれば四皇は無理でも七武海クラスであればどうとでもなるんだなぁ、これが」

 

 『吞み直し』読んで字の如く吐き出したエネルギーを再吸収する技である。ラトニーは身体強化以外にも放出系の攻撃を多く使っていたが、それに乗じて一部のエネルギーを戦場の上空へと逃がし、蓄えていた。

 

「傷は無い、エネルギーは心もとないけどちゃんとある。満身創痍の君と万全なボクでは勝負するまでも無いとおもうけど…よくまあ粘るもんだね~『一鬼(いっき)』」

「がっ、ぐ、がぁ!?」

 

 素早く全身を駆け巡る一撃、衝撃を相手に呑ませるかのように伝えるこの技をもろに受けた死の外科医は地面を転がり身体を打ち付ける。先ほどまで展開していた『room』もこの時点で見えなくなっている。

 

「さてと、命乞いでもする?それとも何か遺言でもあれば聞いてあげても良いよ~?」

「……」

「あれれ~もしかしてもう喋れなくなってる?面倒な奴だったけど終わってみれば詰まらなかったな」

 

 ラトニーは目の前の存在をもう敵とは認識していない。勝利を確信し、油断しきっていたその表情は塔から聞こえてきた轟音と目の前に横たわる存在から微かに聞こえる掠れた声で塗り替えられた。

 

「……『シャンブルズ』」

「『竜の息吹』」

「なっ!?がはっ!?」

 

 いきなり目の前に現れて大技を放ってきたその存在、目くらましの後に消え失せた参謀総長の姿が吹き飛ぶ直前に見えた。そして、その傍らに他の人間の姿、それは地下牢にいたはずのテゾーロの部下に天竜人とその付き人であった。

 

「人数が増えた分、ここからじゃ届かねぇ。既に体力はギリギリだ。海岸まで俺を運べ……」

「ああ、それぐらいは任せてくれ。それと協定通り、塔の破壊についてはそっちで報告してくれ」

 

 視認できないほどに『room』を広げ、更には疲労している所を人数を増やして戻ってきてくれた所為でこの場所から脱出するのは難しくなった。海岸まで行けば一瞬だけ『room』を広げて全員を飛ばす事も出来るだろうと伝え、参謀総長がそれに応え、死の外科医を担ぐと一気に駆け出した。ラトニーがそれを追いかける事は無く、足手まといになりかねない者達も含め無事に戦場から消えた。

 

「はぁ~やってられないねぇ。結局エネルギーはすっからかんか。完全に騙されたけど、役目はこれで本当に終わりか……まっ、どうするかは起きてから決めようかな」

 

 そう言うと一番初めに待機していた食料置き場と化している土地に沈み込むかのように倒れてラトニーはいびきをかいて寝始めた。彼女が守っていたはずの塔は崩れさり、そこにはもう何も残って居ない。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 一足先に塔の最上階へと辿り着いたグレーヌ達はその部屋を警戒しながら覗き込んでいたが、その景色をぐるりと見渡したグレーヌはゆっくりと前へと歩いて行った。

 

「ここ…プラントをモデルにしてるの……」

「その通り…生まれ育った空気なら分かって当然か?」

 

 その声に全員がハッとしてそちらを向く、グレーヌは咄嗟に種に手を伸ばし、ロビンたちも一人進んだグレーヌを守る様にその隣に立って武器を構えている。

 

「父さん…?」

「繋がりの無い分身だがな。いや、だからこんな部屋にしてしまったんだろうな」

 

 そこに居たのはアスカル…の分身体であった。その話し声には微塵も敵意が感じられず、敵前だと言うのに気が抜けてしまう、謎の安心感が漂っていた。だが、それ以上に感じられる物悲しい雰囲気に言葉が出ない。

 

「ここ『バベル』は既に役目を終えている。俺、いや俺の本体も既にここにはいない。だからその手の中にある『種』に意味は無い……いや、目の前にあいつが居たとしても狂ったアスカルに届くとは思えないな」

「そんなの、やってみないと分からないの!!」

「分かるさ…俺もアスカル()に変わりはない。繋がりが完全に消え、ただ知識があるだけだから俺は狂っていないが、本体が狂う気持ちは理解している」

 

 分身体であるアスカルは優しい表情のままその手を固く握りしめている。土で出来た身体は痛みも無ければ血を流す事も無いが、どこか痛々しく見えてしまう。

 

「貴方はそれで満足なの、アスカル?」

「ロビンか……久しぶりだなとでも言ってお菓子でも渡せればよかったんだが、ここには何も残っていない。そして俺にはもう何もない」

 

 不退転の覚悟と言うほどの気迫は感じられない。ただ、事実を確認しているだけの作業の様な口調に説得は不可能だと感じさせられた。

 

「さて、お喋りはここまでだ。ここは『バベル』の最上階、お前らにとって敵地だ。何も無しでは互いに終われないだろう……『産土神』『マカナ』」

「腕が武器に!?」

「おいおい、なんだそれ!?」

「俺は分身だと伝えたはずだ。この身は手足であり、武器でもある。戦闘用の『土人形』の中でも最上品である『産土神』としてお前たちを倒させてもらう『黒点』」

「『殻々(ラフ・シード)』」

 

 そう言って構えた分身体は気持ちを落ち着かせる暇も許してくれそうにない。先ほどまでの空気と打って変わってしまったその場、いち早く迎え撃つ準備が出来たのはその動きを知っていたグレーヌだった。覇気で黒く染まった腕から繰り出された攻撃は何重にも重ねられた分厚い種の殻によって防がれた。しかし、その衝撃を直接では無いとはいえ受け止めたグレーヌからは苦悶の声が上がる。

 

「ぐぅ、重い……」

「攻撃の熱を防ぐための殻か……選択としては間違ってないな。だが、分厚い盾は視界が遮られやすいぞ『土師器』!!」

「まずいの……ここなの『空種』!!えっ、もう一つ!?きゃっ!?」

「グレーヌ!?」

「私達も攻撃を」

「おう!!」

 

 重ねた殻によって重たい攻撃を受け止められるが、殻の一枚一枚は特別丈夫という訳でもない。面での攻撃には強いが点での攻撃には比較的弱い。それでもよほど貫通性の高い攻撃で無いと同じ場所を正確に狙い続ける必要が出てくるのだが、そこは相手の技量が高かった。

 

 盾に穴が開いた瞬間にその穴を埋める様に種を生み出したグレーヌの技量も高かった。しかし、それすら読んでいたアスカルはもう一か所別の場所に素早く穴を開けて攻撃を通らせた。盾を突き破ってきた事で多少速度が落ちていた事もあり、覇気での防御が間にあった。

 

 慌ててフォローしようと動き始めた面々だが、覇気が使える者同士の戦いに割って入れる余裕は無かった。土で出来た体に関節技が効くわけもなく、天気や狙撃もそれほど有効とはいえなかった。

 

「『種油(たねあぶら)』『火種(ひだね)』!!」

「『地獣(ちじゅう)』喰らいつくせ」

「甘いの!!『弾種(ポップシード)』」

「それははお前だ。『沼地(スワンプ)』そして『地盤沈下(グランド・サブサイデンス)』」

「種が跳ね返らない!?それに足が……」

 

 油を生み出し、火を点けて飛ばしたが端からどんどん土で出来た獣に食われて鎮火された。だが、火は布石でしかなく、熱で弾ける種を火の中に放り投げて散弾銃の様に攻撃する。それを自身の身体と部屋の壁や床、天井を沼状にする事で防ぎ、更にはそのまま緩くなった地面を丸ごと下げて動きを阻害し、そのまま沼に落とした。

 

「今度こそ終わりだな。少し眠ってろ『黒点』」

「足をどうにか……『空種』で……吸い切れない!?」

「「「グレーヌ!?」」」

 

 足の止まったグレーヌを止めるために最初に繰り出した思い一撃を再度放った分身体、だがグレーヌに衝撃は届かず、その目の前にはテゾーロを倒してやってきた3人の姿があった。

 

「熱いし、硬ぇぞ」

「けっこう重い一撃だな」

「レディに武器を向けるんじゃねぇ」

「俺の攻撃程度で根を上げているようならアスカルには勝てねえぞ」

 

 その時、塔に衝撃が走り、下の方からピシピシと亀裂が入り、塔全体が崩れ始めた。目の前の分身の仕業かとルフィたちは思ったが分身は首を横に振っている。

 

「繋がりが切れ、黄金の支えも消えたこの塔に一撃いれた奴が居たみたいだな。丁度いい、さっきまでの戦いでここもボロボロだ。場を移すとしよう」

 

 そう言うと分身体は崩落していく塔に逆らわずそのまま落ちて行った。ルフィたちは完全に崩れ落ちる前に塔からの脱出を図る。ボロボロの壁を壊して外に出ると、船の準備をしていたフランキー達が事情を聴こうと近寄ってきた。

 

「おいおい、何があったんだ。急いで船を収納しなおしたからどうにかなったが、アスカルって奴を倒したのか?」

「いや、まだだ」

「それどころか、今相手にしてるのは本体じゃねぇ」

 

【だが、俺を倒せなければ、アスカルを倒す事も出来ないだろう?】

 

 周囲一帯に響き渡る重い声に全員がハッと音の発生源を向く、すると崩れ去った塔から分身体が現れた。しかし、その分身体は崩れた塔を少しずつ身に纏わせる事で身体を大きくしており、本体とうり二つの姿から形だけを真似た巨大な土人形に見た目が変わっていた。

 

【『産土神』を含め『土人形』は本体の操作下にあればほぼ無敵……だが繋がりが消えた今はエネルギーを使い切ればただの土塊に戻る。さて、限りあるとはいえ偉大なる大地の力、存分に味わえ『堕地』!!】

 

 ただ巨大な身体から放たれる一撃だが、その質量は並大抵のものではない。各々が被害を少しでも減らすために、攻撃範囲から逃げるために行動を開始する。

 

「『ギア4 弾む男(バウンドマン)』『ゴムゴムの大猿王(キングコング)銃乱打(ガトリング)』」

「『一大(いちだい)三千(さんぜん)大千(だいせん)世界(せかい)』」

「『悪魔風脚(ディアブルジャンブ) 牛すね肉(クロッス)ストライク』」

「『怪物(モンスター)ポイント』『刻蹄(こくてい)椰子(パルメ)』」

「『緑星 蛇花火(へびはなび)』」

「『ミルキーボール』」

「『千紫万紅(ミル・フルール)巨大樹(ヒガンテスコ・マーノ) スパンク』」

「『フランキーラディカルビーム』」

「『魂の(ソウル)パラード』」

「『武装硬化 空種一点狙い撃ち』」

 

 相手の攻撃をどうにか防ぎ、一部の攻撃は『産土神』にまで届き、その体を吹き飛ばすに至るが、壊れた体は巻き戻されるように回復していく、そしてまた腕を振り上げて攻撃を落としてくる。大声を出せば会話は成り立つぐらいであるが、最初に攻撃を回避した際に互いに距離を取って居るので全員が一度に狙われる事は無くなった。

 

「本当に限界があるのかよ」

「限りの無い力など存在しないの。あれはわざと纏う覇気を減らしたり、エネルギー消費を抑えてるからそう見えるだけ、だからこそ削り切ろうと思ったら時間が掛かり過ぎるの……土を補給できないようにすれば…流石に島ごと吹き飛ばすのは無理だから島の外までアレを吹き飛ばして身体を削り切れば……」

「あの巨体を丸ごと吹き飛ばせってのか!?」

「ほぉ、面白そうじゃねぇか、オーズとの戦いを思い出すな」

「吹き飛ばすなら出来る限り削っとくか、順番が前後しても問題ないだろ?」

 

 吹き飛ばすのは確定として、まず再生を潰すために地面から浮かす必要もある。そして海上から海底まで土を届かせないように出来る限り体を削っておく必要もあったので吹き飛ばす前に削ると言う案はむしろ正しい選択であった。やるとなったら迷う事はしない彼らは既にそれぞれの役割に合わせて配置に着いている。

 

「まずは浮かせるぞ。ゆっくり準備してる暇はねえんだ時間との勝負だからなウソップ、グレーヌ」

「緊張するから止めてくれフランキー……準備は出来てる。やってくれ」

「はいなの、『海種(シーシード)開封(オープン)』『収納種(ストレージシード)開封(オープン)』なの!!」

 

 グレーヌが放った種からどんどん海水が湧き出ていき、島の一角に規模は小さいが海が出来上がった。そこに更に閉まっていたサニー号を取り出すとフランキーとウソップが飛び乗った。

 

「コーラのセットは既に出来てる」

「ああ、船の角度を少し右に!!そこで大丈夫だ!!」

「よし、タイミングを合わせろよ」

【何をする気か知らないが、その船を壊してくれる】

 

 手を振り上げて船へと狙いを定めた分身体、水の発生が止まって水の流れに合わせて船が進んでいく、だがその程度はあの巨体の攻撃からは誤差にもならないだろう。拳が迫って船に当たる数秒前に船が急速に前に飛び出た。

 

「『風来砲(クー・ド・ヴァン)』」

「照準、良し『ガオン砲』!!」

 

 クー・ド・バーストではなくフランキーの腕から放たれた風来砲により短い急加速で分身体の間近まで迫った船はコーラ樽3つ分の衝撃波を放つサニー号の最終兵器をブチ当てた。発射によってその場にとどまった船は再度『空種』に収納された。

 

 衝撃波を間近で受けた分身体は本の少しだけその体を浮かせた。しかし、このままではすぐにでも地面に足が着くだろう。だが、その足を斬り落とさんと既に刀を構えているゾロの姿があった。

 

【させん!!『流星群(メテオシャワー)』】

「マリモの手助けは癪だが、グレーヌちゃんのためだ。『悪魔風脚(ディアブルジャンブ)焼鉄鍋(ポアル・ア・フリール)スペクトル』!!」

 

 放たれた無数の巨大な岩石を素早く空中を蹴って走り、全て打ち返していく。撃ち返されたのは岩石であるため問題なく再吸収された。分身体は身体の形状を変化させて次の攻撃を避けようとしたが、既に先手が打たれている。

 

【氷にこれは草の根か……】

「『レイン=テンポ』」

「『魂の(ソウル)パラード アイスバーン』沼化させませんよ凍ってください」

「必殺『種星』グレーヌからのもらい物だ。枯れさせてもその根は残るぞ」

 

 根は呑み込んで磨り潰す事で少しずつ消していくしかないだろう。腕を無理やり動かして氷だけでも剥がそうとしたが体の動きを止める様に巨大な腕が巨体を押さえつけていた。

 

「『千紫万紅(ミル・フルール)』『巨大樹(ヒガンテスコ・マーノ)』」

 

 足元までたどり着いたゾロ、そして分身体の身体を削るべく怪物化したチョッパーもその腕を振り上げていた。身動きが取れなくなった巨体はそれぞれの攻撃をもろに受けた。

 

「『一大(いちだい)三千(さんぜん)大千(だいせん)世界(せかい)』」

「『刻蹄(こくてい)椰子(パルメ)』」

 

 ゾロの攻撃により足が斬り落とされ完全に宙に浮いた状態となった分身体、そして鉄のハンマーをも打ち砕くチョッパーの平手打ちによって片腕と胴の中ほどまでが吹き飛んだ。だが、まだその巨体には結構な量の土が残っている。

 

「武装硬化『空種乱れ撃ち』!!」

 

 覇気を纏わせた空種を撃ち放ち、強制的に土の身体を削って行くグレーヌ、空種の使用上込めた分の覇気以上の量は収納できないが、的確に関節を狙った事で体に残った土は一気に減った。

 

「吹き飛べ!!『ゴムゴムの獅子王(レオ・レックス)バズーカ』!!」

 

 反発力を溜め、筋肉を膨らませた量で殻放たれた掌底は残っていた土の巨体を丸々吹き飛ばし、それは島の中心から海の上まで届かせるには十分だった。しかし、それだけでは足りないとルフィは宙を蹴り飛び、追いかけ、吹き飛んだ巨体の下側に回り込んだ。

 

【残ったこの身を捧げよう『堕地・神杖』!!】

「『ゴムゴムの大猿王(キングコング)銃乱打(ガトリング)』うおおおおおおおお!!」

 

 残った身体の全てを杖の様に長く鋭く汲み変えて重力を味方にして攻撃を繰り出した分身体、それを砕くために腕の筋肉に空気を送り込み巨大化させた腕で連続的に殴り続ける。落下速度を落とさせ、覇気と土を削るような連打、拳に突き刺さるように一点を狙った攻撃。

 

 先に覇気が尽きたのは元より限界の近かった分身体だった。分身体の覇気を上回り始めたルフィの拳が鉛筆を削るかのように土の杖を削り切って、最後はその拳で巨大な杖を突き破った。削られ、折られた土は崩れ落ち、海の中に溶けて消えた。

 

「はぁ、はぁ、やべっ!?覇気が切れる。戻らねえと!!」

 

 海の真上で力尽きてしまえば溺れ死んでしまうとルフィは余韻に浸る余裕もなくピリオ島に戻って行った。そこでルフィの戦いを観測していた仲間に迎えられた。

 

「よっしゃ―、ルフィ!!」

「やったな」

「ルフィ、手大丈夫か、怪我が無いか見せろよ」

 

 全員で挑んでようやく倒した分身体、厄介な能力とはいえ本体でない相手に苦戦させられた事を考えている者もいるが、ここバベルでの戦いに勝ったこと自体を祝い、その場は明るい雰囲気であった。

 

【分身を倒すか……流石は最悪の世代とうたわれるだけの事は在る様だな。海賊、麦わらのルフィ】

「!?」

 

 先ほどの分身と同じ声だが、伝わってくる威圧感のレベルがまるで違った。地の底から聞こえてくるかの様に低く響いた声はその通りバベルの跡地、その下から伝わってきているようだ。

 

【だが時は満ちた。計画は最終段階へと進む。テゾーロ】

「……分かっている。もう動けそうにない。この身体好きにしろ」

「何をする気だ!?」

 

 バベルあった底に巨大な穴が開いている。土によって動かされたテゾーロの身体はそのまま穴の上空へと吊り下げられた。そして、穴の中から飛び出してきた巨大な触手に貫かれたかと思うとそのまま獣が獲物を貪るようにその身は地の底に沈んでいった。

 

「な、何を仲間じゃねえのか!?」

【計画に必要な事だ。こうなる事をテゾーロも同意している。あいつの身は喰われ、これで『ゴルゴル』の力は受け継がれる。形作るのに時間が掛かったが、生まれてこい憤怒の獣よ。黄金を抱えたその身にこの名を】

 

 地面が揺れ動き、辺り一面に亀裂が入り始めた。ルフィたちは直感的にヤバいと感じてサニー号を取り出すと急いでコーラをセットし直してクー・ド・バーストで海へと逃げた。そして、次の瞬間にはピリオ島があった場所から分身体すらも小さく見える大きな影が飛び出した。ピリオ島は跡形もなく、開いた穴に流れ込む海水に飲まれないように船を動かしながら確認したその姿は伝説でよく耳にするドラゴンの物だった。

 

 

【『ファーブニル』】

 

 

「ば、化け物だ!?」

「金を操ってる!?」

「テゾーロって奴から能力を継承させたのか!?一体どうやって」

「……能力の伝達は物に食べさせる技術とかで確立されてたの、特殊な能力を利用した例外は知ってたけど……」

 

【悪魔の力が宿る悪魔の実、その力を宿した能力者は生きた悪魔の実と言っても過言では無い。後は必要な手順を踏めば別の存在に能力を移す事は可能だ。それをエンドポイントのマグマ、大地を流れる龍脈の力を練り込んで作った産土神の最終形態に喰らわせただけだ】

 

 物に悪魔の実を喰わせる技術を使い、ツチツチの能力で作り出した疑似生命体とでも言うような存在にゴルゴルの力を与えた。それにより、部分的ではあるがツチツチの力とゴルゴルの2つの能力を使える兵器を生み出した。

 

【お前たちの妨害もここまでだ。ファーブニル、やれ】

 

 アスカルの声と共に大地から力を吸い上げ、それを大きく息を吸うかのような動作と共に口の中にため込んだ。ファーブニルの身体が黄金色に輝いたと思うとその輝きが船を呑み込むように周囲の海を巻き込んで降り注いだ。

 

⁅グギャァァァァァァァァァァ⁆

 

 黄金と化した海は攻撃の範囲外の部分から海水に触れ、徐々に元に戻って行くが範囲が範囲なのでそれなりに時間が掛かるだろう。そして船の上で喰らった者達は黄金の彫刻となって固まっていた。彼らが海水に触れて自由になる事は叶いそうにない。

 

 それをファーブニルの目を通して確認したアスカルは次の命令を出し、それに従いファーブニルは進んでいった。その日のうちにマリージョアは壊滅し、天竜人と言う存在はこの世から消え去った。そして世界政府は機能を崩壊させた。




映画とかの敵って最終的にルフィだけでボスに挑むんですよね。他に幹部とかがいてそっちは仲間に任せてと言うのがお決まりのパターン。そしてルフィだけで倒せるのであれば、仲間、特にゾロやサンジと一緒に戦えば結構楽に倒せるんじゃないかなぁと私はよく考えてます。

普通のストーリーでも強敵はルフィが一人で倒す事が多いんですよね。だけど、オーズ戦は皆で戦ってる感が強くて好きなんですよね。まあ、あれも最終的にはモリアをルフィが一人で最後は倒してましたけどね。

ちなみにテゾーロへのとどめに使った

【「ギア3、武装硬化『ゴムゴムの』」
「『三刀流』」
「『悪魔風焼鉄鍋』」
「『スペクトル千八十煩悩攻城砲』!!」】

はシャボンディ諸島でパシフィスタに使った合体技の強化版です。


七武海としての立場を必要としていたロー、しかし、ドフラミンゴと出会う訳にはいかない。そして、ここで戦力を消耗することも良しとしない。その結果、協定を結んだのがサボ。

サボはバベルの調査とアスカルを止める事が任務だったが、バベルが囮である事に気付き、このまま挑むべきでは無いと判断し、牢屋に掴まっていた面々を引き連れて脱出。報告に戻るために海域より脱出。

サボの目的は半分は達成されたし、ローの方も政府に報告するだけの仕事は出来たし、五体満足だけど、政府が潰れて結局七武海も何もないと言う状態なのでどっちかと言うと損をしている。まあ、しょうがないね。


『ファーブニル』

大地を流れるマグマや龍脈の力をそのまま身に宿し、意思を持ち、自ら判断して動く事が出来る産土神の最終形態。テゾーロを喰らい『ゴルゴル』の力も手に入れている。

大きな島すら踏みつぶす、大陸に匹敵する黄金のドラゴン。
大地の力を操り、大地の力を黄金に変換して振るう。
必殺技は辺り一帯を黄金化させる『ゴールデンブレス』だ。

権力、天竜人への意趣返し、そして怒りを表すという事もあって龍、ドラゴンなどを以前から考えていた。そして『ゴルゴル』の力、黄金の力をも抱擁している事から名前は選んだ。

ビッグマムや黒ひげの話、政府が見つけた悪魔の実の力の伝達方法とかを考えるに不可能ではないだろうと思った。ツチツチの力で意思を持った生き物を創る。ツチツチの力を多少宿しているが能力者では無いので、もう一つくらい能力を詰め込んでも大丈夫だろうと判断。

龍にしようと決めたのは少し前ですが、元からテゾーロを犠牲に巨大な敵を作り出す予定はありました。そして、ルフィたちの敗北とマリージョアの崩壊も決めていた。

「ルフィが勝ったら恨みも張らせずに世界政府に奴隷のように働かせられるだけだろう」…などと言った感想がありましたが、勝敗の前に天竜人と今の世界政府は滅ぼす予定でした。

色々言われてたけど、「大丈夫です世界政府は滅ぼす予定なので」ってネタバレする訳にはいかないのがもどかしかった。まあ、私がとっとと次の話を投稿していればいい話だったんですけどね。

さあて、ルフィたちはどうなったのか、世界政府は滅んだが海軍や戦ってた七武海は、疲労しているとはいえまだ存在する幹部、そしてアスカルとファーブニルの次の目的は!?

ようやく、本当に終わりが見えてきたのが嬉しい。あー、思い付きでif話なんてもうやりたくない。いや、短編なら良いけど、今回みたいな長編はやりたくない。if書くなら1話で終わる奴にします。ええ、これ絶対。

それでは久しぶりにいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 7

いやぁ、こちらの方の投稿、半年ぶりですね。構想はあれど書く暇が本当にないんですよね。いい加減終わらしたい。


 あの全てを呑み込む光の奔流を目にした時点で私の行動は決まっていた。種で防ぐことは出来ないし、何かを取り出そうとしても取り出した傍から黄金化するのが理解できた。だからこそ全員が戦闘不能にならないために切り札を使うしかなかった。

 

「『命物種(ライフシード)』、まだ機能してて良かったの」

 

 寿命を込めて作られたこの種は自身の保険である。たとえ死んでも種から私が育ち、蘇ることが出来る。成長に関しては操作できない為に少し時間が掛かるのはしょうがないとして、植えた場所にしか蘇れない制約、それに加え払う寿命の量はそれなりの代償だが、それに見合うだけの価値はあった。自身の無事を確認して顔を上げるとソレが目に入った。

 

「まだ、残ってたんだ」

 

 あたしの目の前にあるのは小さな墓だった。刻まれた名前はプラント・マニュ、ここはプラントの王城の中庭に置かれたあたしのお母さんの墓だ。その隣に置かれたささやかな花壇に、お母さんのすぐ近くにこっそりと自分の命の欠片を埋めていた。

 

 プラント自体がどうなっているのか把握していなかったあたしは城壁を駆け上り、国の全貌を見渡した。確かにそこにある国の姿は見慣れた者だった。しかし、国の空を完全に覆っている天井を見て、プラントが置かれているのはどこかの海の底だろうとあたりをつけた。

 

「ボスも流石に国を壊すような事はしなかったな」

「サイフォ……なんで、ここに居るの?」

 

 後ろから聞こえてきた声に驚きを通り越して逆に冷静になって訊き返すことが出来た。それでもいざとなったら抵抗できるようにと服の内側に種を生み出して準備はしている。するともう一人別の声が聞こえてきた。

 

「塔を守ってアレを生み出すのを邪魔させないのがアタシたちの仕事だった。それも終わってここを守ろうと戻っていたら、お得意の見聞色で生き返ったお前を感知したんだとよ」

「ピアスまで……」

 

 この二人を同時に相手取ると逃げられるかどうかも怪しくなる。アレを止めなければいけないと言うのに、ここでアタシが止まる訳にはいかない。覚悟を決めようとしたところで二人から手で制された。

 

「戦う気は無い。と言うよりはその必要が無い」

「これを見なよ。グレーヌ」

 

 渡されたのは一枚の新聞、その日付はあの戦いの日より3日も経っていた。生き返りに思ってたより時間が掛かったようで他のみんなが無事なのか心配になる。そして、その記事にはバベルの概要と世界政府の崩壊、天竜人の死が報じられていた。そして一面には黄金の龍、ファーブニルの姿が載っていた。

 

「【『政府を滅ぼした黄金の龍『ファーブニル』その進撃は止まらず!!】バベルと言う組織の手によって生み出された黄金の巨龍、とある筋から手に入れたその名は『ファーブニル』!!一撃のもとに政府と天竜人を滅ぼしたその恐ろしさは語るまでも無い。島々を呑み込みながら、赤い土の大陸を黄金に染め上げていくその姿、世界が崩壊する時も間近か!?』これは……?」

「あの世界経済新聞も情報を集めるのに時間が掛かったみたいだな。まあ、どこからファーブニルの名を仕入れたのかは謎だけどな。あの日、お前らを倒した後でファーブニルは聖地を破壊し、天竜人を殺し、政府を崩壊させた」

「そして未だにその動きを止めていないみたいでね。狂って全てを恨んだアスカル様の事だ。テゾーロの犠牲も考えるに、神だけじゃ飽き足らず、言葉通りの意味で世界に復讐するつもりなんだろうよ」

「そ、そんなことはダメなの!!今すぐ行かないと!!」

 

 私は顔色を変えて叫んだ。考えなんて何も無いけど、思いだけで走り始めようとしたがその動きは遮られた。サイフォ、なんで止めるの?ピアス、なんでそんな顔で私を見るの?やめて、やめてよ。

 

「此処から出れたとして出来る事があるのか?ホーニィとモーダスを確保したのは種を上手く使うためだろうが、それでボスを止める事は出来ないだろうな」

「そんなこと……」

「お前の心配をしていたのは分身のボスだけだったな?本体のボスはお前も含めて攻撃を放ったな?それを考えればテゾーロの方がまだ理性的だ……部下やお前を見逃す程度にはな。それでも同じ復讐者同士の共鳴か、動き出した2人は止まらなく、いや止まれなくなっていった。止まれなくなった二人によって作られたのが今のこの世界だ!!」

「……」

「グレーヌ……アンタからしたら親父を止めたいだけで、世界や政府なんてそれこそ本当はどうでも良いんだろ?お前は親父とプラントが、日常が無くなるのが嫌だっただけだからな。もちろん、周りを心配する気持ちが0だったとは言わないよ。だけど、その一番の目的だった親父を止めるのが一番無理なんだよ。アタシじゃなくてもそう言うさ。なんなら試してみると良い、モーダスとホーニィは回収してあるからね。その種もいくつか持ってるんだろ?」

 

 その言葉に俯きながらもお父さんの説得に使う予定だった種を一つ取り出した。その種から育つ植物の名は『リリー・カーネーション』、別名『死と再生の花』、不気味な別名の通り、生贄を与える事で死者を蘇えらせると言う禁忌の花。

 

「マニュ様に、母親に訊いてみると良い。ホーニィの力を借りれば数分間程度なら代償無しに話せるんだろ?」

 

 私は突きつけられた現実に狼狽えながら、その申し出に頷いた。もう、それに縋るしか無かったんだ。あたしはモーダスとホーニィの居場所を聞き、そこに向かった。見慣れた国の風景に安心し、そこに無いお父さんの姿に落胆していると声が響いた。

 

「あ、グレーヌちゃんなのね」

「本当だ。何してる?」

「あら、グレーヌ王女、いつから戻っていたのですか?」

「元気がないみたいだけど、どうしたんだ!!」

 

「あ、四隊長……久しぶりなの」

 

 それぞれ名前をポコ、フィン、ティア、デルと言う、プラントの初期からの住人。仕事やエリアを任されている人たちのトップに立ち、本国における幹部直属の部下の様な扱いで、プラントの準幹部と言えるような人達だ。昔はよく遊んでもらってたのを思い出した。と言うかあたしの口調はポコ姉の影響が大半なの。

 

「どうしたのね?悩みならお姉さんに話してみると良いのね」

「ポコじゃ不安だろうな」

「失礼なのね。これでも頼れる大人なのね!!」

「周囲の人はいませんが、そう騒ぐと部下に示しがつきませんよ」

「話したくない、話さなくて良い」

「ま、たぶんアスカル様の事なのね」

「バカ!?そんなストレートに!!」

 

 どこかぎこちなさは感じていたが、不安そうにしているあたしを励ましているのだと思っていた。しかし、ポコ姉に突っ込んだデル兄の言い方でその理由が分かった。

 

「……知ってるの?」

 

 あたしの短い疑問の言葉にポコ姉以外が少し気まずそうにしながら答えた。

 

「一応幹部不在の時は国を任される立場だからな」

「バベル、概要は既知」

「私達は新聞の情報も伝えられてます」

「これでも私は偉い方なのね!!」

 

「……どうするべきだった?これから、どうすれば良いの?」

 

 その言葉に直ぐに応えたのはポコ姉だった。

 

「分かんないのね!!だって私はアスカル様でもグレーヌちゃんでもないのね。それに私は感覚派で考えるのは苦手なのね。だけど、なんでも自分の好きな様にやるのが一番だとは思うのね!!」

 

 それ以上は何も言えないからとポコ姉は去って行った。次に口を開いたのはデル兄だった。

 

「まったく、アイツは好き勝手言って……悪いなグレーヌ。だが、あれも一つの答えだ。あいつの言う通り、たとえ覇気が使えても相手の全てが分かるような事は無いんだ。正しいか正しくないかなんてのも誰にも分からない。だからこそ俺はどうなろうがお前を否定することはない。言えるのはそれぐらいだ」

 

 そう言ってデル兄も居なくなった。次はフィン兄だ。

 

「止まるな!進め!!」

 

 端的、と言う他ない言葉だった。だけどフィン兄らしい。最後はティア姉だ。

 

「私達はアスカル様にやりたい事をやらせてもらい、それが回りまわって今の地位にいます。ポコの言う様に自分で望み、デルの言う様に自分を信じ、フィンの言う様に進み続けた…その結果が今の私達です。グレーヌ王女、いえ、グレーヌ、貴女がやりたい事を私たちは応援します。不安な時は助けてくれる人を、自分の味方を思い浮かべてください。貴女は一人じゃないんですから」

 

 伝えきると丁寧に礼をしてからティア姉も去って行った。

 

「サイフォやピアスの言う通り無理なのかな。それでもあたしの望みは……」

 

 無理だと言われた、好きにやって良いと言われた。みんな、自分勝手だ。もちろん、あたしも含めて自分勝手だ。悩み自体は無くならず、別の悩みを増やして重い足取りで目的地へとただ歩き続けた。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

「回収してあるって、このままなの?」

 

 目的地に着いたグレーヌの目に入ったのは黄金に染まったままのサウザンド・サニー号だった。あの黄金の息吹は全てをそのままに黄金に変える。しかし、海水をかける事で解く事も可能だ。グレーヌはまだ残ってる海水の種を取り出して解放した。

 

「どうなってんだこりゃぁ?」

「ここは何処だ?」

「あれ、黄金の龍は?」

 

 ルフィたちはあの時のまま、固まり続けていたのだろう。目が覚めた彼らにグレーヌはここがプラントである事を伝え、新聞を含めた情報を渡した。モーダスとホーニィ、それとモルも倒された時のままみたいで目覚めるのに少し時間が掛かりそうなのでちょうど良いだろう。

 

「3日も経ってんのか!?」

「おいおい、世界政府が壊滅って……」

「マジでやりやがったのか」

「窒息どころか衰弱もしてないあたり、あくまで封じる能力か」

「ヨホホ、生きた心地がしませんでしたね。私もう死んでるんですけど」

「サニーも黄金化の副作用で、傷一つ無さそうだ」

「未だに食料の供給が途絶えているはずなのに、懸念していた戦争の話題は無いわね」

「ファーブニルが良くも悪くも混乱を招いて戦争どころじゃないんじゃないかしら」

 

 情報を確認し、現状とすり合わせていく彼らを待っていると、ルフィだけは別の方向を見ていた。

 

「負けたのか……」

 

 小さく零れた言葉に周囲も一瞬静まり返った。だけど次の瞬間にはその静寂を作り出した本人がぶち壊した。

 

「うっし、リベンジだ。次は敗けねえぞ。グレーヌ、ここプラントなんだろ。食いもん無いのか?腹減った、メシ!!」

 

 何も出来ずに黄金の光に呑み込まれたにも関わらず、再戦を望むルフィに呆れながらも驚きを表すグレーヌ、だけどその騒がしさに笑みがこぼれる。

 

「もちろん!!ここは食の宝庫、世界最大の食料生産国プラントなの。ホーニィとモーダスが起きるまで時間もある事だし、腹ごしらえするの!!」

 

 そう言うと食材と料理を城に運ぶように4隊長を捕まえて秘密裏にお願いした。まだ、国民全員に知らせるには早すぎる。

 

「ちょうど来たか、食事をすると聞こえたから場は整えて置いたからな。好きに使うと良い、ピアスは海鮮の類を用意しに行ってる」

「相変わらずなの……でもありがとうなの、サイフォ」

 

 城に着くとサイフォが待っており、既に会場の準備を終えていた。広大な国土の全てを細かに見通す見聞色を目の当たりにしてルフィ達も感嘆している。

 

「空島の神を軽く超えてやがるな」

「サイフォは海の向こうまでも見通し、聞き逃さないの。ビックマム海賊団の未来を見る覇気の使い手とはまた違う見聞色の極地、その体現者なの」

「そう言われてもな。俺は諜報には役立つが、それ以外は半端なんだがな」

「戦闘員でもないのに七武海を相手に足止めが出来てる時点でおかしい事に気付くなの」

 

 呆れた様子で呟きながらも会場に入る。時期に食料と料理が届き始め、完成品は会場を埋め尽くすように並べられていった。食材の方も一つ一つが高品質で、伝説で語られる様な物までも用意されていた。

 

「こいつは!?」

「ここにいる面子で料理出来るのはお前とグレーヌぐらいだから、食材の方は任せたぞ」

「はっ、これだけの物があるんだ。満足いくものを出してやるよ」

「ゆっくり料理なんて久しぶりなの」

 

 腕が成ると言わんばかりに調理場に入って行く二人、そして既に出来上がっている料理に群がる他のメンバー達、特にルフィは散々戦い、最後には覇気を消費しきっていたので消費したエネルギーを回収するかのように目の前の料理を口に含んでいた。

 

「うっめー、この料理うめぇぞ」 

「おいおい、喰いすぎだルフィ、俺らの分を残しとけよ」

「でも本当に美味いな」

「ああ、酒も良い物だ。こりゃいい」

「ヨホホ、疲労も吹き飛びそうですね」

「おい、コーラはねえのか?」

「うそ、このサラダの味、食感もすごい」

「新鮮でシャキシャキの食感、噛むほどに溢れる様な濃縮された素材の味、それにドレッシングも合う」

「あー、スープが落ち着くというかしみわたる」

 

「ほらっ、料理の追加だ」

「プラント名物の土壌料理や私の種料理なんかもあるの」

「ほれっ、少し潜って魚介類を獲ってきたぞ」

 

 様々な食材を使って次々と出された料理を味わい、サンジも見たこと無い食材や自身の知らない調理法などに心を躍らせている。楽しい雰囲気が続き、不安を吹き飛ばすように騒ぎは日が変わるまで続いていった。途中でモーダスとホーニィも起きたが、ルフィ達と同じく戦っていた三日前から意識は固まっていたのに起きたばっかりで宴が開かれている事に困惑していたが、いざこざは起こらず一度だけの協力を取り付けることが出来た。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 小さな墓の前に全員が揃っていた。そしてグレーヌの手の中にある種をそっと植えた。そして回復したモーダスとホーニィが前に出てきた。

 

「それじゃあ、やるレスよ?」

「うん、お願いなの」

「『急成長・リリーカーネーション』」

「『操作』レス、蘇ってください。()()()()!!」

 

 リリーカーネーション、オマツリ島と言う島に咲く固有植物でその効果は生贄と言う代償持って行われる死者の蘇生、今回は悪魔の実の力で無理やり操作しているので生贄は要らない。しかし、話せる時間も短いが確かにそこに彼女は現れた。

 

「久しぶりに呼び起こされたと思えば、()()()じゃなくあなただったのねグレーヌ。それにラトニー以外の幹部も集合してるようですし、それに見知らぬ方たちまで……何があったのか教えてくれるかしら?」

 

 頭にリリーカーネーションで蘇った者の印である葉っぱをつけて、確かに墓の前に立っているのはアスカル王の妻であり、グレーヌの母親であるプラント・マニュその人であった。彼女は周囲を見ると微笑みながら状況の説明を願い、グレーヌは何が起きたのかを一つずつ語っていった。

 

「そう、あの人が……そこまで壊れてしまったのね……グレーヌ、貴女は私に説得させるつもりだったのでしょう?」

「そうなの……私で駄目でも母さんなら!!」

「いいえ、それに意味はないわ。私は既に昔に蘇った事があり、その時に復讐などはしない様に伝えました。それでも彼は止まらなかった……それが答えです。私の声もとうに届きはしないのですよ」

「そんな……」

 

 その言葉に絶望の表情を浮かべるグレーヌ、彼女がリリーカーネーションの事を知って居たように、アスカルも幹部たちもその存在は知っていた。だけど今のこの現状になっているという事が答えに他ならなかった。

 

「サイフォやピアスは知ってたの?」

「予想はしていたな」

「一時期リリーカーネーションの研究、実験、改造が行われていたのは目にしていたからね。当然モーダスとホーニィも手伝ってたんだろ?」

 

 ピアスの言葉に頷く二人を見て更に項垂れるグレーヌ、母の言葉であれば止まるのではないか、その考えは甘すぎたのだ。

 

「かんけーねーだろ」

「!?」

「彼は……?」

 

 ルフィの事を知らないマニュに手伝ってもらってる経緯とルフィ達の立場などを端的に伝える。

 

「なあ、グレーヌ、お前はアスカルを止めたいのか?」

「何を始めから私はお父さんを止めようと……」

「その割にはお前本気にみえないけどな」

「な!?いくらルフィでも許さないの!!」

「だって口で止めたいって言いながら止めようと動いてないじゃねーか」

 

 その言葉に驚いているのはグレーヌだけでなく、グレーヌに諦めるよう伝えていたサイフォとピアスもだった。

 

「まあルフィの言い分も少しは分かる…グレーヌちゃんにはどこかちぐはぐな印象は感じてた」

「てめえ、止めなきゃってより止まって欲しいって気持ちの方が強いだろ?」

 

 そこまで言うとグレーヌは自身の行動や考えを思い出し、言い返せずに固まる。

 

「お前はどこかで父親を信じてたんだろ?本体に攻撃されて止まってくれないと気付いて、勝手に止められないって勘違いしてんだろ?諦めた奴に何かが出来る訳がないだろ」

「あ…あぁ…」

「で、どうすんだ。俺たちはリベンジに行くぞ」

「えっ?」

「お前はどうすんだ?一緒に行くか、それとも待ってるのか、それか俺たちを止めるか?」

 

 本当の心の内、自分でも知らなかった。知りたくなかった部分を曝け出され、その上で選択肢を与えられた。その事に困惑を覚えた。

 

「なんで?」

「お前のやりたいことはお前が決めろ」

 

 それだけを言うとルフィは仲間と出航の準備をするために仲間と一緒に出ていった。それを呆然と見つめる私の肩にそっと手が置かれた。

 

「難しいわよね。願っても叶わないと知ると、足掻く事さえ忘れてしまいそうになる」

「……」

「だけどね。足掻かなければ切り開けはしないの。私は諦めてしまったことがあるけど、助られてばかりの姫なんてやるせないものよ」

 

 グレーヌは震えていた手を固く握りしめるとルフィ達の後を追いかけた。庭の入り口で振り返るとこちらを見ている全員に手を振った。

 



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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 8

【これで赤い土の大陸の半分を染め上げたか】

 

⁅クギャア⁆

 

 これまで来た道のりを振り返ると、眼下に広がるのは黄金の巨大なライン。世界を二つに分ける大陸の半分を掌握したファーブニル。その体は更に巨大な物になっていた。

 

【やはりペースが遅いな。まだ生まれたばかりで能力の限界までが早いか。一度補給した方が良さそうだな】

 

 特殊な方法で生まれた金と少量だが土の力を操るファーブニル、その身に宿す力が大きいが故に与える影響も大きかったが操作できる限界、能力の練度自体はまだそう高くない。だが能力を鍛える時間なども無い。それ故に支配した大地に根を張り、エネルギーを吸収して無理やり進むと言う行軍を繰り返していた。

 

 黄金と化した大陸の上でファーブニルと大地を接続しているとファーブニルが上を見上げ、唸った。そちらの方角を見ると積み重なり辺りを暗くさせる特別な雲とそれに隠れてこちらに向かう未だ遠い小さな影。ファーブニルは威嚇をして攻撃を放つ姿勢を取る。

 

⁅グギャァ!!⁆

【ん、あれは積帝雲か?まさか……】

⁅グギャァアア!!⁆

 

 ファーブニルが黄金のブレスを吐き出すが積帝雲はびくともしなかった。海雲はその名の通り浮いている海、さらに言えば能力者を封じる海楼石の影響も含んでいる。物理的な破壊力の無い染め上げるだけのブレスでは何の影響も与えられない。

 

「『種籠り解除』なの!!」

「『ゴムゴムの雷将象銃(トールエレファント・ガン)』!!」

 

【ぐ!?奇襲か……やってくれるなぁお前ら!!】

 

 能力の探知の範囲になく空を、ファーブニルの攻撃で被害を受けにくい海雲を使ってやってくる。これだけの事を実力のある海賊とは言え簡単にやってくれるとは思っていない。

 

【そうか、お前らもそちらにつくか……いいさ、もとよりバベルで最後だった】

 

 麦わらの一味の方についたであろう元部下の顔を思い浮かべながら不敵に笑い、体勢を整えるアスカル。世界の命運をかけた最後の戦いが始まる。

 

 


 

 

「ふわぁ、なんとか海から出れたな」

「だいぶ危なかったけどね」

 

 奇襲までの流れは麦わらの一味がプラントを出た直後までに遡る。プラントが誇る環境調整技術によりシャボンが使える様でサニー号をコーティングして海上まで上がろうとしたところまでは良かったのだが、世界中で発生しているファーブニルによる被害で海流もメチャクチャでかなり危ない所だった。

 

「さて出たはいいがそもそもあの黄金の竜は何処にいるのか分かんのか?」

「指針はビブルカードがあるし、新聞の文はみたでしょ」

「ああ、赤い土の大陸を黄金に染め上げてるって奴か」

「今日の新聞でも赤い土の大陸沿いに進んでいる写真が載ってたの。世界経済新聞と連絡出来れば詳細な位置がわかるかもしれないけど、電伝虫が一向に繋がらないの」

 

 こんな状況でも新聞を出し続けている事に感心するが、流石に電伝虫に対応はしてられないのか、それとも電伝虫がひっきりなしにかかっていて順番待ちなのか、どちらにせよ情報はあまりない。

 

「とは言っても破壊された影響で海図も何も意味がない状況で追いつけるかも分からない敵を追いかけ続けるのは無謀よ」

「海流以外にも海は荒れに荒れてるみたいだしな」

「ん、数日分の新聞か……こっちの記事は『生き残った四皇、黒ひげと赤髪、新世界で相次ぐ縄張り争い、新世界を二分する二人の帝王の行く末は!?』『いきなり現れ暴れ出した伝説の厄災【暴食】、崩れた国々を呑み滅ぼす!?』『崩壊した政府、あくまで海賊を狩る事に専念した元帥サカズキの主導する新生海軍の動きは果たして?』『国の保護に動き出した革命軍とそれに賛同し合流する一部の海兵や元政府関係者、新たな政府の樹立の動きか!?』」

「どこもかしこもお祭り騒ぎってわけか」

 

 下手に動いて巻き込まれればアスカルを追うどころの話では無いという事だ。戦いの事も含めてどうしようかと考えていると船の上に声が響いた。

 

「空を行くって提案はどうだ?」

「サイフォ!?」

「こいつまたいつの間に!?」

「気配を消すのが上手すぎるぞ!?」

 

 船上にいつの間にか姿を現していたのはプラントに居たはずのサイフォだった。最初から船に乗っていたのかそれとも追いかけて来たのかは分からないがその提案自体は不思議と耳に残った。

 

「空を行くって?」

 

「海雲を作ってそこに船を乗せて文字通り空を飛んでいくんだ」

「ああ、雲流しって奴か?でもそれって処刑方法じゃなかったか?」

「昔、プラントが出てまだ間もない頃に空島を探すときに王が使っていた技術が残ってる。海雲や島雲のメカニズムについては共同研究で更に進んだからな。今では雲の操作もコツさえ掴めりゃ誰にでもできる。そっちの航海士は優秀なんだろ?」

「お前らの船を運ぶ作業はアタシがやってやるよ。海雲の生成については小人組が進めてるからそろそろ形が出て来るだろ。ほらっ」

 

 そう言ってピアスの指を指した方向には小さな雲が空高くに出来上がり、積み重なるごとにその厚さを増していった。元より敵対的では無かったが、アスカルを倒すのに協力的でなかった面々の登場にグレーヌが戸惑っている。

 

「あそこでの戦いが最後だったんだ。後は好きにしなって伝えられてた。否定的だったのは無茶をするアンタを心配してだったんだけど、そこの海賊さん達から随分とまぁ諦めの悪さを学んじまったようだしね」

「それにマニュ様から『助けてあげてください』って命令があったからな。それを聞いて小人組も手伝ってるってわけだな」

 

 騙されやすい小人たちはアスカルとマニュからの命令しか聞かない。アスカルからの命令が無い今、マニュからの命令が優先される。アスカルに恩義があるモーダスやホーニィ達は複雑な心境だがマニュからのお願いに頷くしかなかった。

 

「途中までは同行させてもうらよ。あたし等も用があるからね。邪魔はしないから安心しな」

「それとこれを渡しておこうかな」

「これ、エターナルポース?『カムリィ』ってどこよ?」

 

 2人の話す用件と言うのが気になったが渡された物にも注目が集まる。渡されたのは全て同じ場所を示すエターナルポースだった。グレーヌも聞き覚えのないようで首を捻っている。

 

「『プラント』になる前の島があった場所でな。暖かく落ち着いた雰囲気の良い島だった。ファーブニルに全て使われた産土の殆どがその『カムリィ』の土だからアスカルでなくファーブニルを追いかける際に役立つかもしれないな」

「そうか、アスカルとファーブニルが離れて行動したら追いかける方法が無くなるのか」

「おそらく一緒に行動はしてるだろうが、どうなるかは分からんだろうし、持っておいた方が良さそうだ」

 

 アスカルやファーブニルの居る場所へたどり着くための準備は整いつつある。そうなると次に浮かび上がってくる問題もある。

 

「それでどう戦おうか船長?」

「ファーブニルにアスカル、どちらも強敵だぜ」

「おれはアスカルって奴をぶっ飛ばす」

「あたしもお父さんと戦う」

「それじゃあ、他の面子でドラゴン退治か?」

「一緒に戦われたら対処も難しくなるし、単純だが分けるのは悪い手じゃないだろ」

 

 細かい作戦などいつも有ってない様な物だ。敵がいるのであれば倒す、決める必要があるのは誰がどの敵を相手に戦うのか程度だった。

 

「準備は出来た様だね。それじゃあ海雲まで飛ばすよ『海龍一本背負い』!!」

「勢いが早い!!落ちたらひとたまりも無いわよ」

 

 ピアスの生み出した大きな海流は海雲のある高さまで簡単に届いた。サニー号は宙に向かって進む細い海流の上をスイスイと進む白い海の上に浮かんだ。

 

「よっと、無事かお前ら?」

「なんとかな。ここで倒れてたら戦うも何もないだろ」

「それじゃあ行くぞ。此処からは船の航海とはわけが違うからな俺たちに任せときな。向こうが気づくギリギリまで近づくぞ」

「今更だけど海雲って平気なの?気付かれやすそうな見た目だけど」

「ファーブニルの遠距離攻撃に物理的な攻撃力は無いのはお前らも体験してるだろ。それに海は黄金化しないし、海雲や島雲には海楼石の成分が含まれてるから大丈夫だろう。王も同じで大地を用いる技が多いから空の上までは簡単に攻撃は届かないな」

 

 その説明に納得すると全員道中は比較的安全だと思い、戦いに備えて準備を始めた。身体を休ませる者も居れば戦いに備えて温めて置く者、コーラの補充や弾丸の整備、種の準備などそれぞれが戦いに備えた。

 

「見えて来たな!」

 

 サイフォが空の上からでも青い海を見渡す覇気でアスカルの位置を把握した。まだそれなりに距離があるが、ここからは落ち着いて動いて行く、海雲が気づかれたと判断した段階で一気に飛び出せるようにサニー号に麦わらの一味とグレーヌが乗り込みタイミングを見る。

 

「しまった、ファーブニルに気付かれた。ブレスが来る……被害はねぇだろうが奇襲は失敗だ」

「いや行けるの!ルフィ、サンジ!!」

「おう!」

「何をすればいいグレーヌちゃん?」

「ルフィと私でブレスの中を突っ込む、ブレスは種で防ぐから、サンジは種をファーブニルが居る方に蹴り飛ばして『種籠り』」

「なるほど、密閉すれば中に影響は無いってか、それじゃ後は俺の仕事だな『空軍(アルメ・ド・レール) タネシュート』」

 

 空島から落ちる様に進んでいく種、重力による加速も相まってその速度はとても早くなっている。ブレスによって種の表面が黄金化していくが完全に密閉された種の中にまでは届かない。

 

「『種籠り解除』なの!!」

「『ゴムゴムの雷将象銃(トールエレファント・ガン)』!!」

 

 上空から振り落とした一撃はファーブニルの上に乗っていたアスカルをぶっ飛ばした。ダメージもまだ少ないが確実に与えることが出来ただろう。目の前で主を攻撃されたファーブニルは今度こそブレスで黄金化させてやろうと攻撃に移った。

 

「『ミルキーボール』!!ここは任せて早く飛んでったアスカルの方に向かいなさい」

「おう、ありがとな」

⁅グギャァ⁆

 

 吐き出したブレスはファーブニルのすぐ目の前に作り出された球状の海雲によって全て防がれてしまった。ナミがその間にルフィとグレーヌをアスカルの下へ送り出した。ここまで来るとブレスでは仕留められないとファーブニルも気づき、その巨体に似合わぬ素早い動きで腕を振るい、敵を爪で切り裂こうとする。

 

「ナミさんに何をする気だクソトカゲ『悪魔風脚牛すね肉(クロッス)ストライク』!!」

⁅グギャァアアアアア⁆

 

 攻撃を拒まれ、腕を弾き飛ばされたファーブニルは怒りながらも広範囲に攻撃をしようと羽を動かし空に一度逃れようとする。

 

「おいおいどこ行く気だ『鬼気九刀流 阿修羅』!!」

⁅クギャァアア⁆

 

 次々と船から降りてファーブニルに好きに動かれない様に攻撃を始める麦わらの一味、ファーブニルは苛立ちを増して暴れようとする。攻撃が通って上手く言ってるように見えるが攻撃を加えてる面々の表情はあまりよくない。

 

「ちっ、直ぐに直りやがる」

「あれもバベルにいた分身体と基本は同じなんだろ」

「大地だけでなく黄金も操れるし、エネルギー量が桁違いらしいがな」

「動きも人型とは大きく違うみたいね」

「柔力強化でいけるかな」

「ブレスは私が防げるから。海雲を盾に使って」

「ヨホホホ、大きな敵ばかりで大変ですね。骨が折れそうです」

「言ってる場合か、的はでかいが効くのか微妙だぜ」

 

 

【麦わらの一味VS『黄金竜』ファーブニル】

 

 


 

 

【ブレスを掻い潜ったのはお前の種の力か……ここを見つけ出したのはサイフォか?船を運んだのはピアスだろうなぁ…この様子だと小人たちも手を貸してるか?そしてアイツもだろ?はははははは!!】

 

 どこか懐かしいものを見るような色を目に浮かべ、盛大に笑うと静かに敵を見据える。そこには王としての姿も父としての姿もない。

 

【一応訊いておこう。何をしに来た?】

「「お前/お父さんをぶっ飛ばしに」」

【そうか……では計画の為、オレもお前らを倒させてもらう】

 

 そう言うとまだ金に変わっていない大地を身に纏い鎧に変質させた。分身体と違いその身を武器に変えることは出来ないために手にアダマスの鎌を持っている。その鎧も鎌も完全に黒く染まり、その覇気の強さは手を合わせずとも感じられる。

 

【その命を刈り取らせてもらおう!!】

「やられてたまるか、いくぞグレーヌ!!」

「うん、ルフィ!!」

 

 アスカル、ルフィ、そしてグレーヌ、三者の攻撃がぶつかり合う、それぞれが持つ覇王色の覇気がせめぎ合う。大地の王、未来の海賊王、そして大地の王の娘、世界をかけた戦いの火ぶたがきられた。

 

【ルフィ&グレーヌVS『大地の王』アスカル】

 


 

 

 アスカルとファーブニルを相手に戦う者達を見送り、そしてとっくに黄金に染まっていた大地の上で見慣れた顔を相手に相対している。

 

「やっぱり来たのか」

「お前はアスカルが好きだからな」

 

 

 

 

「ん~、なんで二人が邪魔すんの?役目が終わってやる好きな事ってのがアスカルの邪魔なの?」

 

 

 

 

「はぁ、モーダスやホーニィ以上に懐いてるお前は必ず来ると思ってた。それに作戦が開始してからお前はずっと空元気だったからな」

「お前が呑んだって報道された国、全部世界政府加盟国だったからすぐに分かったよ……なぁラトニー?」

 

 こちらを敵対心は無く、睨みさえもしない。会話はしているが決してその眼はこちらを見ていない。その先に居るアスカルの事を見ている。だが今だけは動きを止めて問答は続いて行く。

 

「質問には答えてくれないの~?余裕が無いのかな?」

 

「お前が相手だと余裕は無くなるよ。グレーヌが答えを出そうと頑張ってるんだ。見守るのが大人の役目だろう?」

「そう言ったお前はなんでここまで来たんだ?」

 

 

「ボクは好き勝手やってたけどプラントは好きだったんだよ~?みんなもそうだし、アスカル様にもちろんマニュ様もね~だからさぁ、こんな世界滅んでも別に良いでしょ?」

 

 

「グレーヌやマニュ様がそれを望んでいないけど?」

 

 

「アスカルが望んでるならそれで良いんだよ~ボクはそれだけあればいいんだよ」

 

 狂っていると言う訳では無い。アスカルに止められ、教えられ、育てられた。実の娘であるグレーヌとは立ち位置こそ違うがその親愛の深さに違いはない。そしてラトニーにとってのアスカルだけでなくマニュへの想いもひときわ大きい。

 

「あの時、襲撃者を逃したのを気にしてるのか?」

 

 プラントを襲ったマニュを狙った襲撃、世界会議が開かれ、アスカルだけでなく多くの幹部が島を離れていた。残って居たのは外に出せないモルにラトニー、それとビブルカードの役目があるピアスだけだった。襲撃に気付き対処に当たっていた二人に対し、覇気が使えなかったラトニーはマニュの近くに居たのに襲撃されたその瞬間まで気づけなかった。そして目の前でマニュを殺された。

 

「ん~、少しは思い出してたかな?だけどボクだってリリーカーネーションでマニュ様にあってるし、泣いて、謝って、許されたよ~……だけどボクがボクと世界を許せないんだよ~」

 

 世間話をするように話しながら向かってくるラトニー……国を呑み、人を呑んで【厄災】と恐れられていた時の姿そのままにただ邪魔だからという理由で襲い掛かった。

 

 

【『刺突』ピアス&『先読み』サイフォVS『暴食』ラトニー】

 

 

 




9話で戦い全部書いて10話でエピローグ。
4月には一話読み切りのIFを書くから3月までに終わらせる予定。


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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 9

投稿です。ようやく終わる。


【『刺突』ピアス&『先読み』サイフォVS『暴食』ラトニー】

 

 駆けつけるために現れたラトニーとそれを止めるピアスとサイフォ、その衝突は最初から凄まじく、片や余波だけで国を滅ぼす一撃、片や島を沈める海を研ぎ澄ませた攻撃、そして相手の動きを阻害し続ける銃撃と斬撃の嵐。

 

「『千鳥足』」

「『クラッシュ・インパクト』」

「『海牢』」

 

 一瞬のぶつかり合いの横をすり抜ける様に進もうとするラトニー、それに気づいていたサイフォはラトニーが次に足を運ぶ場所を吹き飛ばし、その間にピアスが海流で牢を作り出し足を止めさえ、再び相対する形で戦場を維持する。

 

「先に進ませてくれないね。敵にすると本当にめんどうだよ~」

 

「ピアスはまだ海水を使えるが、こっちはほぼ無力化しやがるんだからな」

「その海水も弾かれちゃ形無しだけどね。でも、これは弾けないでしょ『海滅』」

 

 ピアスとサイフォを無視してでも進みたいラトニーだがそう簡単にはいかない。だがサイフォの衝撃波は直接ぶつけようものなら瞬時に呑み込まれる。海水が能力者であるラトニーにはとても有効であり、簡単には弾く事の出来ない量をぶつけて呑み込ませることが出来れば一気に弱体化が可能だ。しかし、そんな分かりやすい弱点を持ち続けるほどラトニーは馬鹿ではない。

 

「『放熱(カロリバース)』」

「あらら、蒸発して塩だけになっちまったか、しかしどうなってんだ?」

 

 呑んだエネルギーを熱に変換して放っただけだが迫りくる大波を一瞬で蒸発させたとなるとその熱量に驚かされる。それでいて別に火や熱に関わる能力者ではないのにラトニー自体に被害が無いのはおかしな話だとピアスはラトニーに視線を送る。だがその仕組みは遠巻きに見ていたサイフォが直ぐに見抜いた。

 

「熱を外に放ち、自分の身体に当たる前に呑みなおしてるんだ」

「なるほど、あれは攻防一体で厄介だが一瞬だけしか展開出来ないってわけか」

 

 そう認識するとピアスは絶え間なく海水をぶつけようと時間差を設けて海水を飛ばし始める。サイフォもラトニーが呑み込むのを邪魔するべく斬撃や銃撃を放つが、ラトニーはそれらを簡単に防いで見せた。

 

「自分が抜ける穴を作るくらいなら出来るんだよ」

 

 余裕そうに笑みを浮かべているラトニーだがその内心は焦りが増えていた。このままでは助勢することが出来ずに足止めされ続けるのではないか、間に合わなかったらなんて言う思いが渦を巻く。そして、ラトニーはその目的を駆けつける事ではなく間に合わせる事に変えた。

 

「『暴食道化師(喰ラウン)』」

 

「放出系最上位の技か……」

「情報通りなら国をかなり吞んでんだ。そりゃストックは十分だろうがよ」

 

 ラトニーの能力は吞み続ける事で行われる永続的な強化を除けば、呑み込む『吸収系』と吐き出す『放出系』の2つに分類される。飲み込む『吸収系』の最上位『悪食の女王(グラトニー・ラトニー)』が4皇2人を呑み込む程だった。

 

 呑み込み方や吐き出し方、範囲などに加えて、何を呑み込むか、何を吐き出すかの指定などゴクゴクの力は単純だからこそ技量が問われる。『暴食道化師』は道化の名にふさわしく、暴食でありながら喰らわず、延々と吐き出し続ける。敵を倒し、主へ笑顔を届けるまで、その身を削ってでも吐き出し続ける狂ったピエロだ。

 

 大量のエネルギーが吐き出されるとそれらが曲芸の様にラトニーの周囲を飛び交ってその数を増やし続ける。増え続けるそれが2人の視界を覆いつくす頃にはラトニーはその頬を少し痩せこけさせていた。それでもまだラトニーは吐き出すのを辞めない。

 

「死ぬ気か?」

 

「2人を出し抜くにはこれでも足りないでしょうに……」

 

 そう言うとラトニーは自身の身さえも喰らい、吐き出し、立つのもやっとな風体に成り下がり、微かに声を震わせ、そっと微笑んで見せた。

 

「私は知恵なき『厄災』、覚えた芸を繰り返す『道化師』……好きにやって、勝手に舞台から降り、後ろで笑い声が聞こえれば十分よ……『暴食道化師(喰ラウン)行進(パレード)』!!」

 

「行くぞ『海槍』!!」

「やるか『予剣』!!」

 

 次の瞬間にピアスとラトニーに向けて…ではなくその後方の戦いに向けて幾千ものエネルギーを撃ち放った。ピアスとサイフォは死ぬ気は無いが、それらを限界まで迎撃をしていった。技で壊し、その身で弾き、時には自身の身体で受ける事もした。だがそれでも全てを止めることは出来なかった。いくつかのエネルギーが戦いの場に飛んで行ったと同時に3人の元幹部たちは倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく回収する方の身にもなれってのよ。そっちに送るから適当に治療しなさい。それぐらいでいいでしょ、適当でも治療しとけば死ぬような奴らじゃないでしょ。勝手に戦って共倒れしてる馬鹿達なんじゃない。ただでさえ大人間を運ぶのは面倒なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

【麦わらの一味VS『黄金竜』ファーブニル】

 

 

 ファーブニルと言う存在は竜と言う形をとってはいるがその本質は大地と黄金そのものだ。それ故に意思があり、感情があろうとその身に感覚は無く、攻撃で怯むことも無く暴れ続ける。動物系の悪魔の実を物に食べさせたのとは違う。自動で動く様に設定した土の塊に黄金の力を与えて独立させた存在で思考はするがロボットに近い存在、それこそパシフィスタと大差はなく、しかも膨大なエネルギーが尽きるまで再生する機能までついている。それ故に相手にするにはただただ厄介な相手である。

 

「『ミルキーボール』」

 

 相手のブレスはミルキーボールの存在によって防げている。最初の攻撃時にアスカルから命令を出されてないファブニールは攻撃されたことに対する怒りと大地を染め上げる邪魔をさせないために戦い続けている。強大だが複雑な動きはしてこなかったファブニールであったが、次の瞬間に動きを変え、ミルキーボールの上からブレスを吐いたり、周囲を飛びながら吐き出すように動きを変えだした。

 

⁅グギャァアアアアア⁆

 

「うおおお、やべぇ!?」

「ブレスの反対側に周り込め!!」

「ナミ!!ミルキーボールをもっと出してくれ!!」

「今やってるわよ!!」

 

 生まれたばかりの怪物である。操られている状態であればその力を際限なく発揮するがそれ以外ではまだ拙いと言える。力に振り回される赤子だがそれでも学習する。何度も繰り返し、何度も失敗し、その末に学び、行動を変える。長期戦になれば不利になるのは目に見えている。

 

「くせェ息吐いてんじゃねぇ…その口を閉じろ!!」

「バタバタとうるせぇんだよ…その翼を止めろ!!」

 

『悪魔風脚ほほ肉(ジュー)シュート』

『死・獅子歌歌』

 

 ゾロがファブニールの羽を片方ではあるが斬り落とし、再生されるまでのわずかな時間ではあるがファブニールはその身を地面に落とした。サンジが頬に攻撃を加える事でブレスの方向を逸らして見せた。そして二人が攻撃している間にブレスを避けていた面々も準備をしていた。

 

「まずは中身の確認だ。フランキー」

「おうよ『フランキーラディカルビーム』!!」

 

 ファブニールの巨体の中央に目掛けて放たれたレーザービームは微々たる大きさではあるがその巨体を貫く穴を開けてみせた。もちろんそれによってファブニールがどうなる訳でもなく、その穴もじわじわと塞がって行く。

 

「『目抜き咲き(オッホスフルール)』」

 

 そこをすかさずファブニールを調べるためにロビンがその穴の中に目を咲かせた。小さい穴の為に目を咲かせてもしっかりと凝らさなければ見えない。念のために確認するために手を一つだけ咲かせて内部に触れる。

 

「どうだった?」

「ええ、確かに内部には土で出来ている部分があるわね」

「分身体は大地に接続していないとエネルギーを補充出来ない。それなら本質の変わらないファブニールも同じ」

「随分どでかい金メッキだこって」

「って事はさっきは確かめるために墜としたが、大地に降ろしたら回復するって事だよな」

「金の大地の方なら良いのでは?」

「いや、テゾーロの能力を受け継いでんだ。あの質量を操られてみろ」

「そりゃ喰らえば一発でお陀仏だろうが、回復されるよりはマシだろ」

「能力も使えば疲労する。操らせればエネルギー自体は尽きやすくなるんじゃないか?」

「まぁ、体勢も崩させず、羽を残したまま削り続けるってのは無理でしょうね」

「まずはアイツを金の大地にとばすか」

「規模は違うが能力者だ。最後は海に墜とせばいいが、それまでは」

「どうにかしてアイツのエネルギーを減らす必要がある」

「しかも普通の攻撃が効くわけじゃねぇ」

「基本的にはゾロとサンジが攻撃で俺達がその補助だよな」

「そして最後はウソップ、頼んだぞ」

「おう、速く削り切ってくれよ」

 

 既に体勢を立て直しているファーブニル、羽が回復するや否や既にその身を空に置いている。先ほどまではこれでもかというぐらいにブレスを吐き続けていたが、今度は直ぐには撃ってこない様だ。まだ何か行動を変えたのか警戒しながら行動を開始する。

 

「おい、アイツ上昇し始めたぞ」

「真上からブレスを放つ気か?」

「それなら『ミルキーボール』『ミルキーボール』そして『トルネード=テンポ』」

 

 真上から金色の吐息を吹きかけるとそれは攻撃地点から拡散するように環状に広がって行く。ナミが着弾地点の周囲にミルキーボールを作り、万が一にブレスが流れてこない様に風も発生させた。

 

「おいウソップ跳ぶ奴出せ」

「おう、必殺緑星『トランポリア』」

 

 飛んでくるゾロを好機ととらえてブレスを撃ち放つファブニール、視界を遮り、迫る黄金の壁に対してゾロは落ち着いて刀を構える。

 

「あんときゃ焦り過ぎだ。たかだか息だろ……三刀流『千八十煩悩鳳』」

 

 ブレスを貫く様に斬撃を放ち、その斬撃はファーブニルの口に吸い込まれ喉を切り裂いた。副次的に発生した風と衝撃によって吐息も殆どが霧散している。

 

「ぶつ切りになれ『黒縄・大龍巻』!!」

 

 空中で発生させた斬撃の渦に呑み込まれたファーブニルはその全身を次々に切り裂かれていく、再生が追いつかずに段々とその体積を小さくさせていくファーブニル。

 

「遠くまで飛ばせよ」

「誰に物を言ってんだクソマリモ!!『悪魔風脚腹肉(フランシェ)ストライク』」

 

 再生を続けどうにか渦から逃れようと動いている本体を見据えると素早く蹴りを撃ち放ち、金色に染め上げられた赤い土の大陸へと飛ばした。

 

「来たようね。とりあえず抑えて見ましょう『巨人咲き(ヒガンテフルール)海竜花(シーサーペント)』」

「とりあえずオレもやってみる。ロビンそのまま抑えてて『怪物強化(モンスターポイント)』『刻蹄(こくてい)椰子(パルメ)』!!」

 

 鉄のハンマーでも粉砕する威力を持つ怪物強化状態のチョッパー、その力は抑えられているファーブニルを掘削するかのように削っていく。

 

「頼もしいですね。『夜明歌(オーバード)・クー・ドロア』、穴開けましたよ~ヨホホホ」

「おう、まだ全然動くからこいつで削ってやる必殺緑星『ドクロ爆発草』!!」

 

 ブルックが飛ぶ斬撃による突きで正確に体の中心部に穴を開けるとすかさずそこにウソップによって強力な爆発性のポップグリーンで狙撃する。次々と身体を削られることに怒ったのか大きく暴れてロビンの拘束から抜け出す。

 

「もう一度!」

「いや、逃げるならそのままこっちに飛ばせ!!」

「分かったわ。魚人空手『花葱(ギガンチウム)』!!」

「へっへっ、良い覚悟で飛んできたな『ジェネラルスープレックス』!!」

 

 もう一度拘束を試みたロビンだがフランキーの言葉に従いそのまま逃げるファーブニルに対して追撃を放ってフランキーの場所へ飛ばすとさらに後方へと投げ飛ばされた。

 

「よし、だいぶ奥まで飛ばせたな」

「こっからもっと削って行くぞ」

「危ねぇ!?『厄港鳥』」

「金が!?『爆ボックリ』!!」

「『熱卵(ヒートエッグ)』!!」

 

 このまま畳みかけようとしたがゾロがいち早く異変に気付くと迫っていた金による攻撃を切り裂いた。切り裂かれようとも関係ないと言わんばかりに周辺の金がせり上がり攻撃を放ち始めた。

 

「ヨホホホ、ナミさん水を出して貰えますか?」

「何するのか知らないけど『レイン=テンポ』!!これで良い?」

「ヨホホ十分です。『魂のパラード アイスバーン』」

「うお、凍らせたのか」

「一時的ですがね。それに範囲外から来ますよ」

「きりがねぇな。『将軍ランチャー』!!」

「というかファーブニルは何処に!?」

「たぶん金の中だ!!」

「ナミ!!エターナルポースを出せ!!」

 

 次々と襲い来る金の攻撃をナミに出してもらった水を凍らせることで一時的に封じる。がりがりと氷を削る音が聞こえ、氷の範囲外からの攻撃も始まるがどうにか足場を確保する。そして姿が見えないファーブニルを探すためにナミは受け取っていた【カムリィ】のエターナルポースの針を読む。

 

「うん、針は下をさして……でも段々上がって!?飛び出して来る!!」

「なっ逃げろ!!うお!?」

「馬鹿間に合わねえよ!!『悪魔風脚首肉(コリエ)ストライク』」

「出てきた所を斬る『煉獄鬼斬り』!!」

 

 ファーブニルが飛び出そうとする影響か金の大地が波打つように揺れて足元を取られる。全員を逃がしてる時間が無いと判断したゾロとサンジがファーブニルが頭を出した瞬間に攻撃を繰り出し、勢いを止める。無理やり地面の下に戻す事でどうにかなったが厄介な攻撃に変わりはない。

 

「金の操作はテゾーロの方が厄介だったが」

「面倒くささはこっちの方が上だな」

「ウソップ、削り具合は足りそうか?」

「いやまだだ。けどあと少しなんだ!!」

「よし、アイツを叩きだすぞ。後は落ちながらだ」

「ナミ!!どこから来るか読めるか?」

「うん、指針を読み取るなら任せて……右、右、下がった、上、下、これはたぶんフェイク、大きく外れて旋回、上昇……来るサンジ君の斜め前!!」

「しくじるなよ……九山八海一世界、千集まって"小千世界"、三乗結んで斬れぬ物なし、三刀流奥義『一大・三千・大千・世界』!!」

「『悪魔風脚画竜点睛(フランバージュ)ショット』!!」

 

 飛び出してくるであろうファーブニルを大きな黄金の大地から切り離すように周囲の黄金事切り分けて見せると、その巨大な山一つ分の金塊を蹴り飛ばした。落下していく金塊から慌てたように飛び出そうとするファーブニル。

 

「飛ばせねえよ『将軍砲(ジェネラル・キャノン)』からの『フランキーラディカルビーム』!!」

「行け!!ウソップ!!」

「おうよ。必殺『種星』!!」

 

 吹き飛び落ちていくファーブニルに開いた穴にポップグリーンではなく、グレーヌからもらった種を撃ち込んだ。その瞬間、ファーブニルからエネルギーを吸い取り急成長する。内部でエネルギーを吸い、黄金を突き破って成長する植物にファーブニルは絡み取られ、そのまま動くエネルギーもなくなり海へと沈んだ。

 

「終わったのか?」

「出てこねぇ様子を見るにそうだろ」

「さっき撃ったのはグレーヌの?」

「グレーヌが作ったらしいが、なんでもプラントで使われる予定だった特殊な種で既存の植物ではないんだとさ。貴重だから外さないでって1個渡されたんだ」

「おかげでどうにか封じ込めれたな」

「元が生物じゃないから生きてはいるのか?」

「さぁな。エネルギー全部吸い取られれば死ぬんじゃないか」

「くっちゃべってないでルフィの方に行くぞ」

 

 静かに黄金の輝きを反射させている海面。その下には成長し続ける植物に押し潰れたファーブニル、そして枝の先に黄金色の果実が海底で海流に揺らいでいた。

 

 


 

【ルフィ&グレーヌVS『大地の王』アスカル】

 

 二対一でどうにか成り立っていると言える戦況は悪いと言うしかないだろう。むしろアスカルの攻勢に対して対処することしか出来ていない事に少なからず焦りを覚えてしまうぐらいだ。

 

【甘い覇気だな。それでもあのガープの孫か?】

「じーちゃんは関係ないだろうがっ!!」

【っと、見聞色は敗けてるか……だがぬるい!!】

「危ないのルフィ『殻々(ラフ・シード)』きゃっ!?」

「いってぇ!?形が変わったのか」

「お父さんの武器は途中でも形は変えれるの、だから気を付けて」

 

 斬り裂くような形状に違いは無いが鎌の形から大きく変わり、三画の刃を持つ鍬に似た形状をとった。マルンと呼ばれる農具を基にした武器で豪快に振り下ろすその一撃は簡単に大地を砕く。アダマスの鎌と比べて取り回しは遅くなるが破壊力に関して言えば一番大きい形状だ。

 

 途中までアダマスの鎌の形状であった為に素早く振り下ろされた刃を避け切れず咄嗟にグレーヌが出した種のおかげで腕が千切れる事は無かったがルフィの腕には赤い線が出来ていた。体勢を崩された処に攻撃を入れられたらたまらないとルフィたちは避けた動きのまま少し距離を取る。

 

「『種機関銃』!!」

【遅い、石霧】

 

 追撃を避けるためにグレーヌが撃ちだした種たちはアスカルが生み出した霧の壁を通り抜けると段々とその体積を増し、地面に落ちて行った。アスカルは石化した種を踏みつぶしゆっくりと確実にルフィたちの方に詰めていく。

 

「なんだこれ灰色の霧か?」

「吸っちゃダメなの!!これは敵を石にする霧なの」

「そうか、分かった。あれを吹き飛ばす『ゴムゴムの」

【それには及ばないさ『ネビル』!!】

「あれどんな技だグレーヌ」

「あれは私も知らないの、でも気を付けた方が良さそうなの、だいぶ圧縮されてるの」

 

 周囲に広がりつつある霧をルフィが吹き飛ばそうと息を大きく吸い込んでいるのをアスカルは静かに止めるとマルンを持っている手と反対側の手にその霧を集め出した。渦を巻く様に一点に集まっていく霧はゆっくりと一つの球体を生み出していた。

 

 その球体はアスカルが腕を突き出すと同時にルフィとグレーヌ目掛けて飛んでいった。慌てて種で壁を作り出したグレーヌだがネビルと呼ばれた球体はその形を一度霧散させて壁を通り抜けるとそのままルフィ達を追い続けた。通り抜けた部分は石化し、削れ、ボロボロの風体に変わっていた。

 

「あぶねぇ!」

「消耗が激しいけど仕方ないの。武装硬化『空種』!!」

 

 グレーヌが空種を撃ちだしてアスカルの攻撃であるネビルを吸い込もうとしたが触れた瞬間に表面を少し削っただけでそのままネビルはルフィとグレーヌに迫って行った。

 

「『ゴムゴムの鷹回転弾』!!ぐっ、重てぇ、うおぉ!!!」

「ルフィ!?武装硬化『空種乱れ撃ち』!!」

【そっちにばかり集中してるとその首がなくなるぞ『ハーベスト・リーパー』】

 

 いつの間にかまた武器の形状をアダマスの鎌に変えていたアスカルが必死にネビルに対処している二人の背後に近づいていた。並んでいる二人の首を刈り取るように鎌を薙ぎ払った。

 

「ギア4『タンクマン』!!ぐぅああ!?」

【防御特化か、硬さで大地と競おうってのは無謀だぞ】

 

 ルフィが咄嗟に防御を行ったために二人の首は無事繋がっているが大きく体を斬られ、そのままの勢いで弾き飛ばされた。飛ばされてすぐにギア4を解除したが覇気をだいぶ使用してしまっている。ルフィの動きも少し鈍い様な部分もある。

 

「ルフィ、無茶はしないの」

「平気だ。まだいける。合わせろグレーヌ『ゴムゴムの灰熊銃(グリズリーマグナム)』」

「『種明かし・針々草』」

 

 ルフィは武装色で硬化した巨大な両腕で掌底を放ち、グレーヌは素早く種を操作すると先ほど石化されて踏み砕かれた種、その種の中に隠してた種の更に中に入っていた物を吐き出させた。その中身はインペルダウンで使われてる針々草だったが、モーダスが品種改良して作った鋭く、身体を切り裂く代物だ。

 

【挟撃か『断層断崖(フォウトクリフ)』『地震』】

 

 前後からの攻撃にアスカルは落ち着いて自身の立っている地面をずらし、攻撃を避けて見せた。そしてそのまま大地を揺らし相手の足を奪うと姿の見えないのを利用し大地の下を通って一気に近づいた。

 

【『マカナ』『大・黒・点』】

「ぐっ、がぁ!?あっちぃ!?けど捕まえたぞ『ゴムゴムの鷹銃乱打(ホークガトリング)』」

「くっ!?『種子島』なの!!」

【むっ、自爆覚悟か。くっ!?】

 

 振動を発生させ一気に熱を宿させた武器を振るいやすい短いこん棒型のマカナと言う武器に作り変えるとそのまま熱と衝撃をルフィとグレーヌに流すように振るった。だが攻撃を受けながらルフィはアスカルを捕まえ、二人で同時に攻撃を放つとようやくダメージらしいダメージを与える事に成功した。

 

【ははは、いいぞ。良い覚悟だが、ここまでだ】

「……」

【遊びは終わりだ。厭離穢土も極楽浄土も叶う事はない。ましてや落ちる必要などない。ここがお前らにとって地獄だからな『偉大なる大地(グランド・グラウンド)』】

 

 ルフィとグレーヌに止めを刺すかのように凝縮した大地を撃ち放った。そのサイズは決して急いで走ったとしても逃げきれるような大きさでは無かった。そして消耗した二人にどうにか出来るものでもなかった。

 

「今なのルフィ()()()()()

「おう!!ギア4『弾む男(バウンドマン)』『ゴムゴムの大猿王銃(キングコングガン)』!!」

【なに!?】

「うおおおお『ゴムゴムの猿王群鴉砲(コングオルガン)』!!」

【『大地壁(グラウンドウォール)』】

「武装硬化『空種乱れ撃ち』!!」

「うおおおおお!!」

【ぐっ、がっぁああああ!!なめるなぁ!!】

 

 急激なルフィとグレーヌの強化、いや回復に驚くアスカル。咄嗟に壁を張ったがそれすらも種によって削られルフィの一撃がアスカルに届いた。しかし攻撃が通っても変わらぬ勢いで周りの地面を全てを盛り上げ自身を巻き込んだ大地の大波を放った。

 

 圧死されてはたまらないとルフィとグレーヌは波を避けるために飛びのいた。大地を構成する砂一粒一粒にまで巡らされた覇気に脅威を感じたが先ほどまでの余裕は無くなり、攻撃に荒々しさが出ていた。作戦を上手く使い隙を見事について見せた。

 

【今のは?】

「種に力を込めておいただけなの」

 

 そう仕組みは単純だ。事前に体力や覇気などを込めて置くだけ、それを噛み砕けばその力が戻る。自分で力を込めないといけないなどと少ない制約はあるが余裕がある時に込めて置けばすぐに回復できる優れものだ。

 

【なるほど、消耗する覇気や体力を即座に回復されるなど厄介極まりない。だが効率はどうかな。果たしてその種は何個あるのか】

「関係ねぇ。このままお前を倒すだけだ『ゴムゴムの猿王銃乱打(コングガトリング)』」

【ぐっ、ファーブニルの反応も途絶えたか、ならばこうするまで『産土神』『堕地・神杖』】

「でかくなったならおれもだ。『ゴムゴムの大王猿(キングコング)銃乱打(ガトリング)』!!」

 

 海底に横たわったファーブニルから産土を回収し身に纏うとそのまま鋭く形状を変化させるとルフィ達に向けてその腕を振り抜く。ルフィもそれを迎え撃つように両腕を巨大化させ連続で拳を放つ。ガリガリと削れていく産土、そのまま拳をアスカルに見舞おうとした瞬間、光球がそれを邪魔するかのように降り注いだ。

 

「なんだコレは!?」

【まだ着いて来る気かアイツは……だが付き従う馬鹿が居るんだ。王としての一撃を見せてやろう『大地接続』『地殺し』】

 

 アスカルの周囲の土壌が瞬時に枯れ果てたかのようにボロボロになって行く。地盤まで全て壊れているのか静かに大地が沈んでいっている。揺れが酷く、周囲には砂煙が絶えず舞っている。大地を殺し、そのエネルギーを身に纏いアスカルは腕を振りかぶった。

 

【『大地の支配者(ルーラー・オブ・ジ・アース)』!!】

「『ゴムゴムの獅子王(レオ・レックス)バズーカ』!!」

「『圧種(アッシュ)』『開封(オープン)』『悪魔の種』!!」

 

 三者の攻撃がぶつかり合い、押し合っていたルフィとアスカルの攻撃の隙間からグレーヌの種の一撃がアスカルに刺さると一気にその力を減衰させていった。そのままルフィの拳がアスカルの身体に入り、アスカルはその場に静かに沈んだ。 

 

【……負けたか、やはりオレは戦闘には向いてないみたいだな】

「お父さん」

【ふっ、なんだ?じきにここも崩れるぞ】

「プラントの王位をもらうの。そして世界を直す、それがあたしの役目なの」

【そうか……なら持って行くと良い】

 

 そう言うとアスカルは自分の身体から生えていた蔓の先に実った果実とファーブニルを引き寄せた際に回収したもう一つの果実をグレーヌに投げ渡した。グレーヌは危なげもなく受け取ると万が一にも失わない様に種の中に仕舞った。

 

【知ってるだろうが不味いぞ。お前の相手にでも食わせると良い……じゃあな】

「『空種』……余計なお世話なの」

 

 物となったアスカルを種に仕舞いこむとそれを大事に握りしめ、一筋の涙を流した。仲間と合流後、プラントに戻るとその種を中庭の一角に植えられた。偉大なる建国者、大地の王ここに眠ると書き記された石は隣の墓と並んで静かに佇んでいた。




最後、ちょっと駆け足過ぎた気もする。まぁ、終わらせないとって言う思いはあったけど、時間がある時にもしかしたら手直しするかも。

この後20時にエピローグ的なのが投稿されます。
何時もの挨拶はそちらで行います。


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ONEPIECE FILM GOLD&EARTH 10

エピローグです。

本日2話投稿してます。
こちらは2話目です。
前の方を見ていない方はそちらからどうぞ。


 世界政府が世間に公開することを渋っていたことが幸いし、バベルとファーブニルの名ばかりが知れ渡りプラント自体が悪評を受ける事は無かった。しかし、新政府との話し合いの結果、世界が回復されるまでの半強制的な協力が求められた。

 

 結果としてプラントは事件の被害を受け、アスカル国王を失ったと言う情報だけが世間には知られた。詳細を知らない国々はそのせいで取引が出来ていなかったのだなと納得した。そしてこれからの食料事情はどうなるのかと不安の声も多く挙げられていた。

 

 だがアスカルに変わりグレーヌが女王としてプラントをせおっていくことを表明した事とそれを新政府が賛同した事で不安の声は落ち着きを見せた。まだ幼く見えるグレーヌに対して文句を言う者も居たがアスカルと言う前例が居たためにその声もすぐに落ち着いた。

 

 新政府が問題なく運用され、新世界の情勢も落ち着きを見せてきたころに事件後初めてのレヴェリーが開かれた。海軍も再建の目途が立ち、少しずつではあるが人員も戻りつつある。事件から1年の時が経過したその時、落ち込みつつある世間を盛り上げる意味も含めて政府も協力しての『ワールド・バイキング』の開催が決定され、祭りでは一つの海賊団に特別な招待状が女王の名前で送られていた。

 


 

【それではこれより『ワールド・バイキング』の開催を宣言いたします。開催に当たって開催主導国プラントの女王であるグレーヌ様より一言お願いいたします!!】

 

 女王として相応しい衣装を身に纏ったその姿と堂々とした立ち振る舞いに会場の人々の眼が集まる。落ち着いて会場を見据える彼女はとある一角を見ると微笑み、静かにマイクを受け取ると挨拶を開始した。

 

『……ワールド・バイキングに集まられた皆様、プラントの女王グレーヌです。本来であれば去年に執り行われるはずだったこのワールド・バイキングですが、あの事件の影響により大幅に遅れての開催となりました。そのためこの瞬間に無事開催を告げれる事を心から嬉しく思います。独立国家プラントの名において、この場では無粋な立場などは忘れて楽しんでくれることを望みます。以上の言葉を持ちましてワールド・バイキング開催の挨拶とさせていただきます』

【グレーヌ女王、ありがとうございました。さぁて、お前ら腹は空かせたか?食材の準備は出来てるか?世界最大の食の祭典だ。これから一ヶ月、盛大に楽しむぜぇ!!ワールド・バイキングスタートだ!!】

 

「「「「うおおおおおおおおおおお!!」」」」

 

 島中で歓声が鳴り響き、料理の匂いがそこら中からしてくる。世界中から集まった料理人によって提供される数々の品々が人々に笑顔を与えていく。

 

「おっ、向こうの肉も美味そうだ。あー!!生ハムメロンがあるぞ!!今度こそ食ってやる」

「よし、俺は酒を見に行くか。どんなものか楽しみだ」

「おいおい、ゾロ!!?お前一人で行ったら迷うだろ。おれもついてってやるよ」

「確かに料理はおいしそうだけど、これ服に匂いが付いて落ちなくなるわね」

「ヨホホホホ、楽しいですね」

「この島では捕まる心配も無いしな。おっ、向こうのステージ飛び入り参加OKってあるぞ。いっちょ歌ってきたらどうだブルック?」

「たまにキツイ匂いもあるけどこういう雰囲気好きだ。お菓子の甘い匂いもあるな。綿あめあるかな?」

「屋台料理やお祭り料理の区画を見てましょう」

 

 特別な招待状を持っているので特別な店などにも入ることが出来、ルフィたちは祭りを思い切り満喫していた。肉を食べ、酒を飲み、甘味を楽しみ、盛大に騒いだ。そして料理人であるサンジは区画を貰って一時的に店を開いて祭りを盛り上げていた。

 

「魚料理お代わり頼む!!」

「こっちのステーキもだ」

「このスープ凄すぎる!?味が濃く、それでいて癖が無い」

「これが海賊麦わらの一味のコックの腕か」

「デザートも素敵、見た目も味も繊細!!」

「それになんか食ったら元気になった気がする」

「おいおい、まだ席あかねーのか?」

「匂いだけなんて拷問だぜ」

 

「うるせー黙って順番待ちやがれ、おっとそちらのレディ、お先に奥のお席にどうぞ」

 

「女ばっか優遇してんじゃねぇぞ」

 

「野郎よりレディ優先に決まってんだろ。窓際の席が空いたから勝手に座ってろ。メニューをどうぞ。オススメは特製スープです」

 

 麦わらの一味の名が売れている事と特別な店舗を任されてることから客足が途絶えることは無かった。東の海でバラティエで働いていた事を知ってる者なんかも来ており、昼から夕方にかけて常に満席となっていた。

 

「よぉ、サンジメシ」

「繁盛してるな」

「おいクソコックとっとと料理を用意しろ」

 

「うるせー、手伝いに来たんじゃねーんなら帰れ!!ったく今は夜にやる予定のコンテストや料理対決の仕上げ中だ。そっちの鍋と皿の中にまだ料理が残ってるから勝手に食ってろ」

 

「うん、久しぶりに食べたけどサンジのごはん美味しいの!!」

 

「って、グレーヌちゃんか!!なんでこんな所に、運営側だし忙しくないのか?」

「サイフォもいるし、四隊長達も協力してくれたおかげでどうにか時間を作れたの。それでお忍びで途中からルフィ達と一緒に祭りを見て回ってたの」

「途中で料理人同士の喧嘩や海兵と海賊のいがみ合いとかを仲裁したり、ブルックのファンの追っかけをまいたり、面白かったぞ」

「ヨホホホ、ファンの方は嬉しいですけど。ずっと付きまとわれると怖いですね」

「乱闘にはノリノリでグレーヌも乱入するもんだからひと騒ぎだ」

「久々のルフィとの共闘なの」

「能力使った瞬間にばれて逃げ出したよ」

「あっはっは、楽しかったな」

「うんなの」

 

「話を聞くだけならたしかに楽しそうだ。ナミさんやロビンちゃんはどうだった?」

「まあ、色々と食べたり飲んで普通に楽しんでたわ」

「チョッパーと一緒にあちこち回ってたわ。途中で政府関係者に出くわしてお互いに微妙な雰囲気になったわね」

「綿あめもあったんだ。高級綿あめって高かったけどすっげー甘くてうまかった」

「CPとか海兵とか普通に居るからな」

「あー、海兵は一応警備もかねて招待してるの。CPとか諜報員はこっちの面子を潰すようなことはしないけど情報収集に便利だからなの」

 

 祭りを満喫した面々だがそれでもまだ始まったばかりの祭りだ。これから更に店も増え、催しも沢山行われる。その中でも一カ月を通して行われるコンテストや料理対決などは世界クラスの料理人同士で競い合う一大イベントだ。

 

「あたしも、女王として審査するの」

「それじゃとびきり美味いもん作らないとな」

「うん、楽しみにしてるの」

 


 

【レディース&ジェントルマン!!これよりワールド・バイキング初日の料理コンテストを始めるぜ。料理の審査にはグレーヌ女王、政府及び海軍からプラントとも関わりの深い英雄ガープ殿、抽選に当たった客や料理人の方々をお招きしてるぜ】

 

 

「げっ、じーちゃん」

「まぁ、知名度があって、事件のことを知ってる、海賊を見ても放置できる海兵なんて他にそうそういないからな」

「って事はコビーも来てるんじゃないか」

「捕まる心配も無いんだから後で訊きに行けば良いんじゃない」

「コンテストってどんな感じなんだ?」

「うふふ、始まるのを待ちましょう」

「サンジさんを応援しましょうか。ヨホホホ」

「アイツならスーパーな記録を出すだろうよ」

 

 出場したコンテストをサンジは順調に勝ち抜いていった。決勝戦では2年間で学んだ攻めの料理の技をしっかりと見せて観客全員を魅了し見事優勝を飾った。

 

【優勝は海賊麦わらの一味のコック、黒足のサンジだ!!それでは女王から記念品と優勝カップの進呈です】

『優勝おめでとうございます。サンジさん、とても素晴らしい料理でした』

「あー、ありがとうございます女王グレーヌ」

『記念品は特別製の皿や食器になっています。船員の人数分を後で贈らせて頂きます。そしてこちらが優勝カップです』

【それでは改めて優勝者に盛大な拍手を!!】

 

 楽しみにしていたワールド・バイキングに一年越しに参加し、見事優勝を飾る事が出来たサンジは会場から贈られる拍手にいい笑顔を向けて優勝カップを掲げて見せた。そして次の日からサンジが担当する店への来客数が数倍に増え、人員が足りなくなり何人かクルーが駆り出されることになった。

 

 


 

「ふぅ、ワールド・バイキングは無事成功してるし、プラントも国々も順調に復興してる証拠ですね」

 

 開催地であるフルコースアイランドから少し離れた位置に置かれたプラント、その王城内の中庭で執務の疲れを癒しながら静かに報告を続ける。

 

「ルフィ達も来てくれたし、サンジはコンテストで優勝しました。こっそりだけどイスト聖達も来てたからお話しさせてもらいました。お父さんの事ばっか話してたんだから、墓参りしてくれないかってお願いしたんだけどそんな資格は無いって断られちゃいました」

 

 ワールド・バイキングを巡っている時だってプラントの用意した食材を見るたびにどこか遠い所を見ているような感じだった。それと一緒に来ていたクチーナさんはコンテストで準優勝だったよ。とても技術が高くて繊細な料理だったけどガープさんがそんな料理よりがっつり食べれる方が良いって理由でサンジの料理の点数を高くしたのが敗因だ。他の審査員の点数は完全に互角だった。最後はガープさんの好みで勝敗が決まったんだけど、理由はあんまりだと思ったので公開せず、隠しておいた。

 

「それと直接会う事は無かったけどサイフォがラトニーの気配がした気がするって言ってたの」

 

 事件の事もあり、ラトニーはプラントに居られなくなった。バベルとは別に多くの国を襲っちゃったから懸賞金もかなり上がっていた。今でも厄災として有名で元気にしてるのは分かるけど姉みたいな存在である彼女に会えないのは少し寂しい。

 

「まだ悪魔の実の継承者の問題は片付いてないけど、ツチツチの能力が無くても今のところは維持できてるの。まぁ、世界人口が大幅に減少したおかげなんだけど、後は科学技術や他の能力の応用なの」

 

 島の移動はシャボンや空島の技術にモーダスのクサクサの能力で頑張って貰ってる。流石に移動速度はお父さんが動かしてた時より遅いけどね。それと輸送とか取引の問題は種を使っている。今まで見たいに直ぐ届くって訳にはいかないけど鮮度の問題はないし、輸送関係の仕事が復活して各国の財政も良くなってるからこれはこのまんまで良いかもしれない。直ぐに届かないから万が一船が襲われたりして届かない事を考えてまた農業も復活しつつある。

 

「天竜人がいなくなって、新政府が主導する体制は人々からも受け入れられているから安心なの。新世界の海賊国家の情勢を懸念して新海軍も大きくなってるみたいだけど……」

 

 政府や海軍も人手不足が多く、教育を進めたり、事件によって滅んだ国から孤児などを集めたりと活動が今も続いている。プラントでも一部、優秀な子供を次世代候補として育てたりしている。

 

「そんな風に上手くいってる。今は私がプラントオーナーとしてしっかりやってる……だから心配しないで見守ってて欲しいの」

 

 事件から一年が経過した。その一年でたくさんの事があったが、それでもプラントは在り続けた。まだ小さな女王が全てを背負って。種は蒔かれ、新しい芽は出た。新しい世界でのプラントの日々はずっと続いて行く。

 

 

GOLDEARTH FIN

 




これにてGold&EARTH完結です!!
まさかほぼ一年がけの長作になるとは思わなかった。
ですが、どうにか終わらせることが出来ました。

9の方書いてて思ったのは戦闘だけだと感情や心境的な物を表現するのが難しいと言うか、私の力量不足が感じられる。技名叫んだり、作戦やオリジナル悪魔の身を活用しただけって感じ。9話の方でも書いたけど時間が出来たら少し直すかも。

エピローグのお祭りには他にもキャラを出そうかなとも思ったけどやめた。最低限のキャラやモブだけで書きました。食の祭典だしネタでも多く出してるトリコとかアニメオリジナルの料理人キャラとか出そうかなとか考えたけどなんかエピローグ感が無くなりそうだから諦めた。

さてと、これでようやく来月の一話読み切りのIF話がかける。さて、締め切りまでちょうど一ヶ月。頑張るぞい……

それとそろそろ本編も進めないと。外部プラントの4を出してそのまま放置してるからね。5ってなに書く予定だったっけってなる位には放置してましたからね。テゾーロとステラか……こっちが結構殺伐としてたから幸せな感じにしよう。

まぁ、色々と書きましたが長い間付き合っていただいた読者の皆様方には感謝しかありません。本当にありがとうございました。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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単発IF話
IF話 アスカルがロジャー海賊団だったら


IF話であります。


 力ある海賊たちの争いが絶えないこの海。たとえ前半の海と言えどグランドラインに位置する島は絶対的に安全とは言い切れない。しかし、その島の近海には壊れた船と破れた海賊旗がまるで墓場を示すかのように積み重なっていた。

 

「ロジャー船長~!?ここヤバいって噂がある島でしょ!?行くのやめましょうよ」

「ははは、なぁに心配は要らねえよ何が出ても俺が倒してやるよ」

「レイリーさん、あの船潰されてる?」

「ふむ、普通の兵器や武技の類では無さそうだな。おそらく能力者がいるんだろう」

 

 そんな海賊たちに逆に恐れられている海域にある島を目的地としてやってきた一つの船があった。その船もまた立派な髭を生やしたドクロを帆に描いて、堂々とした佇まいで進んでいた。船員の中には周囲の雰囲気に怯える者も居たがなんて事無く船は島につける事が出来た。

 

「ほれ、なんてことはない…と言いてえが」

「どうやら感知されているな。見られている気配がする」

「何かしら居るのは確かだな。よし、船に残るのと上陸するので2チームに分かれるぞ」

 

 島の土を踏んだ瞬間にこちらを観察するかのような感覚に襲われた。特別害意は感じないが、友好的でもないその空気に船長と呼ばれた男はワクワクしており、副船長はその様子に呆れていた。そして二人の会話を聞いた見習いもまた騒ぎ始めた。

 

「何が居るのか分かんないのに行きたくねーよ!!絶対危険だしおれは船に残るぜ」

「おいおいバギー、さっきまで壊れた船が並んでたんだから船の方が危ないんじゃないか」

「……船長!!やっぱ俺も船長に着いてく!!一緒に行かせてくれ~!!」

「はっはっは、調査なら数人いれば十分だろ。俺にレイリーとそれじゃあバギーと……シャンクスも来るか?」

「行く!!」

 

 探検したいと言う気持ちを隠さない船長に呆れつつも笑って他の船員たちは周囲の警戒をしつつ酒盛りを始めた。バギーはロジャーとレイリーに張り付く様に歩き、シャンクスは周囲の様子を見ながら進んでいた。

 

「あれ畑だよな」

「元よりこの島『カムリィ』は農業が盛んな島として有名だったからおかしくはないな。」

「でも人が全然いないぞレイリーさん」

「島から人が去り続け、このような島になったらしいが……」

 

【お前らは何をしにこの島に来た?】

「ヒッ!?土の怪物だーッ?!」

 

 いきなり現れた気配に全員が驚きを示した。誰もその声の主が近づいてくるのに気付けなかった。声の主は土の鎧とでも言うような姿でこちらを上から見据えている。

 

「おう!!お前がこの島の住人か?俺はゴール・D・ロジャー、海賊だ」

【そうか海賊……お前らも島を荒らしに来たか?それとも住人の減ったこの島を拠点にでもしにきたか?この島はオレのモノだ。オレの畑を荒らす奴には死んでもらおう!!】

「うお!急だなぁ…だが分かりやすい!!」

「はぁ、お前らおれから離れるなよ」

 

 いきなりその体を振り回し攻撃を仕掛けてきたことに驚きを見せながらも嬉々としてロジャーも剣を取り出し、その攻撃を弾いて見せた。それをみたレイリーは戦闘をロジャーに任せて見習いの二人を保護することに専念した。

 

「そこそこ重いなぁ。能力もかなり鍛えられてる。ははははは楽しいな!!」

【これを防ぐか……とっとと死ね!!】

 

 土の鎧が連続で攻撃を仕掛け、それを防ぐと言う一見簡単な攻防。そこに横やりを入れるかのように外周から土製の武器がロジャー目掛けて飛んでいく。それを難なく回避とはいかず、傷こそつかないが体勢が少し崩されたが、そのまま大きく距離を取る事でどうにか盤面を立て直した。

 

「なるほど、鎧からして分かってたが土を操る能力者か……この島丸ごとお前の支配下って訳か、道理でそこら中から気配がする訳だ。お前ら走るぞ!!」

「あぁ、分かった。二人とも死にたくなけりゃ必死について来い」

「ヒエー!?」

「行くぞバギー!!」

 

 急に鎧と反転してレイリーたちの方へ駆けて来た。そのまま一気に支持を叫ぶとレイリーは見習いたちをフォローしながらもロジャーの移動について行く。鎧は逃げる四人を逃がすまいと追いかけ始め、地の利が明らかに向こうにあるため基本的には防戦一方になっている。周囲からも攻撃が飛んでくるがそれを常に捌き続けている

 

「なるほど、こっちだな!!」

【なっ!?お前、それ以上先に進むな!!】

 

ロジャーが進む方向を変えた瞬間に焦ったかのように鎧が動き、周囲の土の動きも増え、より鋭敏な物に変わった。それを見てレイリーが見習いを守るだけでなく、道を切り開く様に剣を振るおうとした瞬間にロジャーがそれを邪魔した。

 

「それはダメだぜ」

「なっ……なんの考えがある」

「今日はちょっと遠回りだ」 

「はぁ、こっちの負担も考えろよ」

 

 少しペースを落としつつも鎧に追いつかれない様に島中に広がる畑の隙間をねって進んでいく。明らかに一つの場所を見据えて動くロジャーの動きに鎧が動揺しているが、それ以上にロジャーが進んでいくごとに、さらに言えばロジャーが攻撃を弾いたり、道を切り開いていく際にも動揺が見られた。そして追いかけっこは終わることなく、一軒の家にたどり着いた。

 

「よぉ!ここに居るんだろ?出てきてくれよ?」

 

 周囲からの攻撃が止み、ようやく足を止める事が出きた見習い二人は生きも絶え絶えでロジャーが何を言っているのかもあまり聞き取れていないぐらいだ。レイリーは警戒をしながら黙って様子を見守っている。少し間を開けると扉がギギィっと音を立てて開き中から青年が現れた。

 

「何のつもりだお前?」

「お前が許さないって言ったからそうしたまでだ。それで話をする気になったか?」

「……家に入ると良い、どうやらお前らは客のようだ」

 

 家の中に入ると部屋に通され、そこにあったテーブルの前の椅子に座って待っている様に言われ、ロジャー達はそれに従った。古臭いが清潔感はあるといった印象で、そう家具は多くない。彼は少なくともここで生活しているのだろうがあまりそう言った生活感は感じられない。少ししてから男は茶とお茶請けを持って部屋に戻って来た。

 

「育てている茶と作物の砂糖漬けだ。好きにつまむと良い」

「海賊に出すには上品すぎるもんだな。まっ、たまにはこういうのも悪くねぇか……それでこの島とお前さんについては喰いながら訊いても良いのか?」

「……別に隠すような事ではない。オレの能力はさっき味わっただろう」

「ああ、土の能力だろ?」

「『ツチツチの実』の大地人間、大地を自由自在に操る。オレは元々は唯の農家だった。だったと言っても別に農家を辞めた訳でもなく、この力を手に入れてからも変わらず農業を続けていた。そのせいでオレ以外の農家が潰れ段々と人が消え、オレ一人になった。話せばそれだけの詰まらない話だ。島外の海賊船の事であれば島や畑を荒そうとした連中を返り討ちにしたってだけだな」

「それであんな事を言って襲い掛かって来た訳か」

「真っ当な奴はこの島に近づくことは無くなったからな。迷い込んでしまった船でもない限りは全て敵だった。だがお前らは逃げる際にも畑を荒らすようなことは一切しなかったからな……少し信じてみた訳だが、悪かったな。特にそっちの子供二人」

「本当だよ!?すっげ怖かったからな。死ぬかと思ったんだぞ!!」

「ここ最近で一番必死に走ったからな。流石にもう勘弁してほしい」

 

 能力について詳しく聞いたり、島を見て回ったり、他の船員たちに紹介されたり、島の作物を提供しての宴を楽しんだり、誰も居なかった島で感じる事の出来ない人の輪の暖かさを味わって静かに笑ったその時、ロジャーが声を掛けた。

 

「お前も一緒に来ないか?」

 

 


 

「アスカルさん!!」

「んっ、ああ……シャンクスか?島でも見えたのか」

「違う!敵船だよ!!なのにアスカルさん畑仕事しながら寝てるんだから。急いで上にあがって来いって」

 

 懐かしい夢を見ていた。あれから何年経ったかなんてのはどうでもいいし、自分の変化なんかも気にはしない。しかし、昔の自分の酷さと今の自分の呑気さはいい加減直した方がいいかもしれないな。船長は良いが、副船長にまた怒られそうだ。

 

「そうか。伝言ありがとな。にしても今さら船長たちで勝てない相手は居ないだろうに」

「能力者がいて中々船同士の距離を詰めれないんだよ」

「あぁそれでか。という事は少し急ぐとしよう。一緒に行くか?」

「戦いを見たいから行くよ」

 

 オレは自分用に後から付け加えた畑から甲板に出るためにシャンクスを抱えて土に潜り込むと専用の通路を通って一気に船の上まで飛び出た。敵船は少し遠いが、銃撃や砲撃、飛ぶ斬撃などは届くくらいの距離だ。相手の能力も届いているが状況は拮抗していると言える。

 

「あれは炎の能力者か?木船にとって天敵の様な能力だな。『船体()―ピング』」

 

 畑から土を少々借りてきて船体を覆わせる。攻撃の直撃は防げないが散らした余波程度であれば吸収可能だ。ここまでくれば敵の攻撃を捌きながら近づけば問題はない。オレが船に仕掛けを施した瞬間に船長が敵船に突っ込むように指示を出した。敵船から吹き上がる炎を散らしながらぶつかるように乗り込むとそこかしこで戦闘が始まる。

 

「『土槍(ドソウ)』『地縛』」

 

 土の槍を用いて乱戦に飛び込むと敵の武器を取り込んで体勢を崩させたり、自由に操れる土の柔軟性を活かせて、攻撃を受けるも流すも状況に合わせて好きに選択し相手を翻弄した。流石に数が多いので戦闘を出来ない様に土で相手を縛って動きを封じたりと戦局を見ながらフォローをして動いた。

 

 敵の船長はロギアで覇気が使えるといった。グランドラインの後半においてもちゃんとした強者ではあったが、流石にこちらの船長には及ばなかったようだ。邪魔をさせずに船長同士の一騎打ちになればすぐに勝負は決まった。敵が仲間や船を狙った際にロジャー船長が防がずにこっちに丸投げした件については後で仕返しをするとしよう。

 

「はっはっは、良い戦いだったな」

「戦利品もそこそこあるし、こっちの被害はあまりないな」

「いやいや俺汚してるんすけど」

「生きてるんだから良いだろ」

「そんな小さい事より勝利を祝って乾杯だ!!」

「「「乾杯!!」」」

「今日は呑むぞ。肉持って来い」

 

 こういった戦闘があった後は必ず騒ぐことになる。まぁ、祝う理由が無くても普段から騒いでいるんだけどな。それにしても肉酒肉酒とこいつらは……オレは料理人と一緒に皿を持つと騒いでいる机に持って行きドカンと置いた。

 

「野菜も喰え、お前ら。それともオレが作った野菜が不味いとでもいうか?」

「こっちが健康を考えても喰わなきゃ意味ねぇだろうが!!」

 

「いや美味いし、喰う分には良いけどさ」

「やっぱ酒には肉をがぶっと行きたいだろ」

「こういうのは勢いがある内に楽しまねぇと」

 

「そう言って酒が入ってバカ騒ぎに変わって、お前らが健康に気を使って野菜を喰う事があるか?酒飲んで頭パーになって忘れましたは許さんぞ」

「人が作った物をゴミにするような不届き物は肥料にして埋めるぞ?」

 

 そう言って食う様に進めているとロジャー船長が船員とオレ達の間に入って仲裁にやってきた。イラっとしたのを隠しつつレイリーに視線を向けると頷いていたので容赦はしなくてよさそうだ。

 

「まぁまぁ、こういった時は煩わしい事は忘れてぱぁーっと楽しめよ。ほれアスカルお前も呑めよ?」

「ただでさえ病気なんだからアンタこそ体調に気をつかえ、クロッカスに酒を控えろって言われてなかったか?それと何食わぬ顔でオレの前に来てるが、さっきの戦いで面倒な作業を押し付けたのは忘れていないぞ?」

「おいおい、アレは寝てて戦闘に直ぐ来なかった分でチャラだろ?」

「そもそも設備への被害を考えずに戦って畑をぶっ壊してくれたのはどこの誰だ?」

「あれは白ひげの奴の所為だろう!?」

「壊したのはお前の攻撃だよ。お前の口に酒が入る余地があると思うなよ『土砲台』!!」

「ムッ、ぐッ、ちょっ、やめ、野菜を詰め込むな!?せめて調理して、ごぱっ!?」

 

 船長に矛先が向かった事で他の奴らは同じ目に合わない様に時々野菜をつまみながら宴を再開していた。ロジャー船長がやられている姿を肴にしてさらに楽しんでいるようだ。それでいて自分の身に降りかからない様にしっかりとこちらとは目を逸らしてるんだからな。どうせ言っても一日で忘れる様な奴らだと思い、席について飲もうと酒に手を伸ばすと、それを止める様に肩を掴まれた。

 

「それでは私からお前にも説教をさせてもらおうか?」

「レイリー……いや、オレが寝てたのはロジャーの所為で生まれた仕事が原因だろ?アイツを倒してチャンチャンでいいだろ?!」

「覇気も使えて、ロジャーの声を除けば、探知などはお前の得意分野だろ。それなのに戦闘が始まって砲撃が響いてる中で寝続けてるのは問題だろう」

「そもそもオレは食料番だ。戦闘員ではない訳だし、海上では出来る事に制限が多いと言うのもあるだろう」

「そんな分かり切った事を踏まえても実力は上から数えた方が早いだろうが、言い訳無用!!」

 

 しばらくの間、趣味の分の畑を広げることは叶いそうにないだろう。直接的なペナルティこそないが、宴の傍らで延々と説教されると言うのはどうにも堪える。だが、こんな事も踏まえてこの船は楽しいと思える良い場所だ。

 

「……説教中になに笑みを浮かべているんだ?」

「ああ、何でもない」

「はぁ、もう終わりにするから同じようなミスはするなよ。ロジャーの奴もそろそろ開放してやれ」

 

 そう言い放つとレイリーも自分の席に戻って行った。オレは説教の八つ当たりに野菜を飛ばし続けていたロジャー船長を解放し、ケンカしながら宴の方に一緒に戻って行く。

 

「やってくれたな。この野郎!!」

「ちょっとした仕返しだよ。はいよ船長」

「っと、ありがとよ。それじゃぁまあ」

「「乾杯!!」」

 

 ハチャメチャな部分も多いがとても楽しい船だ。こんな冒険の日々がずっと続いてくれたら嬉しんだがなぁ。と終わりが見えている船でその最後までの航海を味わいつくすとしよう。

 


 

 白ひげの船からこれまたハチャメチャな奴が乗り込んで来たもんだ。ワノ国の侍ねぇ、実力はこの前の戦いでよく分かっているが、面倒を起こさないで欲しいものだ。

 

「そんなことを考えていたんだが、てめぇ畑から勝手に作物を持って行くんじゃねぇ!!」

「良いだろ、あんなにあるんだからちょっとくらい。ほらっ、お前にも食わしてやるから」

「そう言う問題じゃなくて報告して許可をとってからにしろって言っているんだ。言ってる傍からなんで追加で大根を煮ているんだお前は!!生き埋めにしてやろうか!!」

「やれるもんならやってみろ」

「言ったな?このまま押し潰れてしまえ!!『大地球(ガイアボール)』」

「はっ、窮屈なもんを押し付けるな!!『銃・擬鬼(ガンモドキ)』」

 

 

「副船長、おでんとアスカルが喧嘩を始めた」

「おれ達じゃ止めれません」

 

「お前らいい加減にせんか!!ロジャーも笑ってないで止めるのを手伝え!!」

「良いじゃねえか、面白いどっちが勝つか賭けようぜお前ら。ズズッ、はふ、このおでんも美味いな」

 

 

 ま、良くも悪くもロジャー海賊団にあってる男で間違いはなかった。船を降りる際には特製の土鍋と作物をくれてやったが、素直に礼を言って気持ちが悪かったな。

 

 


 

 処刑の刃は振り下ろされ、立ち込める熱気が呼び込んだのか雨が降り、紛れ込んでいた船員の涙を隠している。バカ騒ぎが好きな奴だったが世界を巻き込むとはな。

 

「若い芽も多い、ロジャーと言う陽を浴びてどう育つか」

 

 流石にオレは顔が割れすぎているのでかなり遠くから見ていたが、今日と言うこの日を忘れる者は居ないであろうと言う最高の余興だった。

 

「アスカルさん……」

「シャンクスか、お前さんはどうするんだ?」

「海賊になるよ。バギーの奴も誘ったんだが断られた。だけどきっとアイツも同じだ」

「そうか……オレはまた畑でも耕すとしよう。また会えると良いな」

 

 それだけ伝えるとオレは島を出て故郷であるグランドラインへ向かう事にし、自分以外に誰も乗って居ない寂しい土の船は嵐の中を静かに進んでいった。

 


 

「そんなこともあったなぁ。にしてもお前の仲間もなかなかいい面構えじゃないか。お前さんにすっかり懸賞金も抜かされたし、若い奴らの時代になるのかな」

「アスカルさん、幹部の仲では若い方だったでしょうが。それにさしで戦えばまだ勝てる気はしませんよ」

「隠居人の話なんてするもんじゃない。お前が託した子供の話でも肴にもっと呑もうか」

「ああ、色々と面白い話があるんだけど、なにから話そうか。会ったらアスカルさんも気にいるんじゃないかね」

「良い奴なんだな。芽が出るのが楽しみだ」

 

 


 

 

「なんだ。この島、畑だらけだ!!」

「あー、もうだめ!!変な霧でこれじゃ船も出せない」

「何かこの海域を出る方法が無いか調べよう」

「畑があるって事は人がいるはずだろ」

 

 

 

「なんだ。おっさん、ここに一人で住んでるのか?」

「そう言う事になるな。まぁ、隠居してから畑を作って勝手気ままに暮らしているってわけだな。それにしても」

「なんだ?」

「思ってたよりもその麦わら帽子がよく似合うじゃないか、モンキー・Ⅾ・ルフィ?」

 

 

 


 

 

【DEADorLIVE】

 

ロジャー海賊団 

 

地帝のアスカル 27億2700万ベリー

 

 




懸賞金も一応考えて作りました。

ロジャー海賊団の色々なキャラの事が分かればもっと膨らませられそうだけど、長くすれば面倒になるだけなので冒険の中の数ページを切り抜いた感じで書きました。

白ひげや海軍、他の四皇や金獅子とかとも話させれば面白そうだけど、うまく纏められる気がしないので諦めた。

気が向いたらか、向かなくても4月にはIF話を上げるのでまたアンケートはやりますね。なにかあればお気軽に感想やメッセージをください。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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IF話 アスカルがロジャー海賊団だったら2

……2話目の時点で単発じゃないであります。
……それでもIF話であります。
……去年書き忘れたけどウソップ誕生日おめでとうであります。


 

 

 何かあれば宴会、何もなくても宴会が常のこの船はどうにも騒がしくて落ち着いてる暇なんて何処にもない。この男が乗り込んでからはさらに酷くなった。

 

「だから持ってくなって言ってんじゃねぇ!!()()()持ってくなって言ってんだよ!!」

 

「めんどくせぇなぁ…どうせ許可すんなら一緒だろ?」

 

「一緒じゃねぇから言ってるんだろクソボケ侍がぁ?!」

 

 何度も何度も言っても改める気のない奴にはほとほと困りもんだ。確かにこいつはおでんに使える物しか持っていかない。

 

 そのおでんだってコイツ一人が食べるわけでは無いから食料の計算もそこまで狂うことは無い。とは言えその処理を誰がやってると思ってるんだ?

 

 人が丹精込めて作ったものを黙って持っていって良いとは決してならねぇんだよ。食った後に美味いと感想を伝えるのはまぁ良いが……その配慮が出来るなら許可も取りに来い!!

 

「腹を斬る準備は出来てるか?辞世の句とやらは用意したか?肥料になる心構えは?死に晒せぇ!!」

 

「はっ、俺は人に指図されねぇんだよ!!ちまちまと小言ばっかで煮え切らねぇより分かりやすい!!おりゃぁ!!」

 

 辺りからはまたやってると呆れの声とやれやれーと囃し立てる様な声が聴こえてくる。見世物のような扱いには腹が立つがそちらに意識を持っていくと負けかねないから目の前に集中する。

 

「こうしておでんと喧嘩してんのみると、アスカルが変わったのがよく分かるよな?」

 

「ああ~たしかに昔と比べるとな」

 

「本当、本当!!船に乗ったばかりのアスカルを思うと考えられねぇ」

 

「ちょっと待てお前ら!!なんの話をする気だ?!」

 

 目の前の奴に集中しないといけないというのに場外から聴こえた不穏な会話につい振り向きそうになる。そして、おでん程の相手にそれは致命的なミスとなる。

 

「面白そうな話だな?それはさておき隙ありだ!!」

 

「ちょ、待てよ?!ぐはぁ?!」

 

 出会った頃はまだ覇気も甘い部分があったのに船長と鍛錬始めてからありえねぇくらい腕が上がったから油断してた所に一撃喰らうと洒落にならない。

 

「おっ、珍しくアスカルが負けたぞ」

 

「情けないぞ〜」

 

「お、お前らの所為だろうが……」

 

 好き勝手言ってくれるがそれなら思えらはおでんに勝てるんだろうな?!

 

「それでアスカルの奴、昔はああじゃなかったのか?」

 

「そうだな。おでんでもつまみながら話すとするか」

 

「よし、酒も持って来い!!」

 

 やめろと叫ぶ気力もなく、あいつらが酒盛りをするのを見てるしか出来ない状況に項垂れるのだった。

 

「今ではちゃんと自己主張するけど昔は張り合いがなくてな」

 

「言われた事だけやって、後は畑ばっかり弄ってたな」

 

「船長に副船長、それと見習い二人としか初めは話さなくてよぉ」

 

「それでも加入したての宴ではけっこう騒いでたろ?」

 

「あれもかなり懐かしいなぁ」

 

 


 

 

「オレがお前の船にか?」

 

「おう!!」

 

 ロジャーから船員に誘われたオレは直ぐに頷く事が出来なかった。オレにはこの島を滅ぼした張本人だ。せめてその姿は維持しなくてはという自責の念があった。

 

「悪いがオレにはこの島を守る必要がある」

 

「そんなに島が大事なのか?この島に自分を縛りつけて、んな窮屈な生き方ぁ俺には我慢できないな」

 

 窮屈か……確かにその通りかもしれないな。だがそれも能力を手に入れ、成功に浮かれ、目先の事しか考えなかった結果だ。

 

「と言うわけでお前がなんと言おうが俺はお前を連れてく!!」

 

「は?」

 

「ついてこないってんなら畑を壊すぞ?」

 

「はぁあああ?!」

 

 戦ってた時の配配は何処に行ったんだと目を見開き、柄にもなく大声で叫んでしまった。急に話が通じなくなったロジャーを横目に他の面々に視線を向けるも苦笑いを返されるばかりだ。

 

「それにここらは広まってる噂で滅多に人は来ねぇだろ。俺等より前に人が来たのは何時だ?」

 

「……5年前だ。とは言っても全く来ない訳じゃないんだ」

 

「なら島に上陸出来ないようにお前の能力で島の形を変えちまえ!!そうすれば問題ないだろ?」

 

「畑の世話もある!!」

 

「大事なもんだけ船に積み込んじまえ!!確か物置が一つ空いてたよな?」

 

 此方が何を言っても返してくる。その返しが強引過ぎる事にはなんとも言えないが……

 

「空いてはいるが、まさか船内に畑を詰め込む気か?」

 

「部屋一つでアスカルが乗んなら儲けもんだろ?」

 

「乗るとは一言も言ってない!!」

 

「俺が乗せるって決めたんだよ!!」

 

「はぁ……悪いが早めに諦める心構えをしておけ。一度決めるとこいつは梃子でも動かん」

 

 迷うことなく此方を見据えてそう言い放つ姿には気迫がある。自由過ぎるその在り方は羨ましくも思う。だが……

 

「うじうじと悩むな!!お前はどうしたいんだ?この誰も居ない島にずっと一人で居る気か?」

 

「あぁ……」

 

「畑さえ耕せば満足か?そうじゃねぇだろ!!」

 

「畑があればオレは……」

 

「誰のための畑だ?誰が作ったもんを食べる?お前だけで使い切る事のない畑になんの意味がある!!」

 

「この島に畑がある。それだけで意味が……」

 

「んなもんねぇ!!それだけで十分だってんなら、なんで俺たちが食ったときにあんなに笑ってんだ?」

 

「ッ?!」

 

「嬉しかったんだろ?そうじゃなきゃあんなに笑うわけがねぇ!!」

 

「……」

 

「ここで俺とお前が会ったのにも意味がある。アスカル、俺と一緒に来い!!」

 

 


 

 

「というわけで今日からこの船に乗せるアスカルだ!!」

 

「……よろしく頼む」

 

 ロジャーとレイリー達の雰囲気の差を感じ取り、船長の餌食になったんだなと同情半分でアスカルを見ていたが何処を見てるのかも分からないその挨拶には流石に呆れの視線が混じる。

 

「そいつ、大丈夫なんですか?」

 

「んな調子でうちでやってけんのか?」

 

「ははっ、アスカルなら大丈夫だ!!なんてったって俺が勧誘したやつだぞ!!」

 

「そりゃ、なおさら心配だな」

 

「そうだな!うちにはろくな奴居ねぇからな」

 

「てめぇもその一人だろうが!!」

 

 アスカルをそっちのけ…という訳では無いが元からいた船員達でその場は盛り上がり、アスカル自身もその輪に混ざることなく淡々と準備を進めている。

 

「あー、見ての通りうちの連中は騒がしい。初めはなれないかもしれないが悪い奴らではない。程々に付き合ってくれ」

 

「分かった。出航までにどれくらい猶予はある?」

 

「この島のログが溜まるのにはどれ程かかる?」

 

「4.5 時間もあれば溜まった筈だ。感覚的にも合ってる。おそらく出ようと思えばもう出れるはずだ」

 

「それならちょっと待て…おい、ロジャー!!アスカルに聴いた所、ログはもう溜まってるらしい!!船はいつ出す予定だ?」

 

「んなもん決まってんだろ?アスカル加入の祝いをしてからだ!!お前ら今日は宴だ!!」

 

 船長の声が聞こえた途端、船員たちのざわめきがピタッと止まる。そうすると次の瞬間には間欠泉が吹き出したかのように一気に叫ぶ声が響き渡る。

 

「「「うおおおおお!!」」」

「よっしゃ呑むぞー!!」

「料理の準備も急ぐぞ!!」

 

 そんなテンションを上げてバタバタと動き始めた船員達の様子を見て、アスカルは目を丸くしていた。

 

「海賊と言うのはこうも騒がしいものなのか?」

 

「うちは大概煩い方だが。まぁ、そういうものだ」

 

「そうか……宴とやらをやるには酒と食べ物は幾らあっても平気か?」

 

「…!あぁ、酒なんかはあるだけ喜ぶだろう。それに下手したら連日で騒ぐから食材も喜ばれる」

 

「なら、持って来よう。酒も能力で大量に作って保存してある。食料なんかは今収穫できるものに保存食も合わせればかなりになるぞ?」

 

「ははっ、海賊の胃袋は中々に底なしだぞ。おーい!!アスカルから酒の提供がある!!手の空いてる奴は手伝ってやれ!!」

 

「本当か!!」

「よし、おれが行くぜ!!」

「お前が行ったら運ぶ前に空になんだろうが!!何処に行けば良いんだ?」

 

 レイリーの声掛けによって喜嬉とした表情でアスカルに話かける面々、それに戸惑いつつもなんとか動きを再開させる。

 

「……地下の保存庫から順番に出す、それを必要な場所に持っていって貰えると助かる」

 

 そう伝えると大地を操作して次々と酒や保存食を取り出すアスカル、その姿を見てようやくアスカルが能力者だと理解した。

 

「すげーじゃねぇか!!」

「土、操れるって陸なら最強じゃねぇか?!」

「でも俺たち海賊だぞ?」

「ダメじゃねぇか!!」

「「ははははは」」

「なぁ、アスカル!!ステージとか作れねぇか?どうせなら思いっきり宴やりたいからよぉ!!」

「竈とか作れるか?それと火を焚ける様に囲いとかも」

 

 周囲にドンドンと集まり、運び出しをしつつも色々と要望を伝えてくる船員にアスカルはたじたじになりながら応えていった。

 

「よっしゃあ、それじゃあ。新しい仲間に乾杯だ!!」

「「「「乾杯!!」」」」

 

 音頭が掛かると即座に騒ぎ出し、酒を呑み、料理を喰らい、歌を歌ってと大盛りあがりになる。アスカルは始まってから端の方でその様子が眺めながら少しずつ料理を摘んで居たがしばらく経つとそこに覚えのある顔が近付いた。

 

「アスカルさん、ジュースありがとう!!」

 

「あぁ…シャンクスだったか?気にするな。加工したほうが長持ちするから色々と作ってただけだからな」

 

 一緒に居たもう一人の見習いであるバギーの姿が見えないのをアスカルが尋ねるとシャンクスは盛り上がってるステージの方を指さした。

 

 そこではバギーが身体をバラバラにして踊ったり、ナイフを避けたりと何やら芸を披露していた。

 

「あいつも能力者か……中々に器用な事をする」

 

「褒められる事は少ないからそれを聞いたらたぶん喜ぶよ。それと船長達が向こうで呼んでたよ」

 

「そうか、伝言ご苦労だったな。助かった」

 

 それだけ言うと自分が座っていた椅子を崩して立ち上がり黙々と呼んだ本人の元へと歩いていった。

 

「よう、呑んでるか?!」

 

「程々にはな」

 

「どうだうちの連中は賑やかで良いだろう?」

 

「ここまでくると喧しいが、その、なんだ……悪くない」

 

「そうか、それなら良かったぜ!!」

 

 それからは飲み比べに誘われたり、何か芸をしろと強要されたりと慣れない場に振り回されながらも時折笑みを浮べて触れ合っていった。

 

 三日三晩騒ぎまくった後で島の整理を終え、周辺の海の地形を変化させると、土の船を作って海賊船の後ろに浮かべて繋いだ。

 

「もうちょい、絞れなかったのか?」

 

「慣らした土の方が操作をしやすい。あれはオレの武器でもある」

 

「とは言えこのままとは如何だろう。船を変えるときに何かしらの仕掛けを用意するしかないか……」

 

「……苦労をかける」

 

「その分働いて貰うから覚悟しておけ」

 

「おらぁ、お前ら出航だ!!」

 

「「「「おおー!!」」」」

 

 船での生活、それも集団との生活に慣れていないアスカルは何度か問題を起こす事もあったがそれ以上に周りからも振り回されながら徐々に染まっていった。

 

 


 

 

「なるほどなぁ、アスカルはそうやって加入したのか」

 

「そうそう畑や作物関連だと昔から譲らなかったが、今みたいに実力行使になったのはだいぶ慣れてからだったな」

 

「食料番を任された頃じゃないか?料理できる連中とつるんでからけっこう遠慮なくなったよな」

 

「そうだ!そうだ!任された事はしっかりこなすから交流も深まって」

 

「買い出しとかにも関わって話す奴も増えて」

 

「それで出来上がったのがあれか?」

 

「そうそう、あれあれ!!」

 

「人をあれやこれで呼ぶんじゃねぇ!!」

 

「うぉ?!流石に復活も早いな」

 

「ったく、持ち出した食料については報告するからな?」

 

「ん、そんだけか?いつもならもちっとねちっこく言ってくるんだが?」

 

「バーカ、恥ずかしがってここから離れたいんだよ」

 

「あ、なるほど!」

 

ピキッ………既に作ったもんは仕方ないとたまには目を瞑ろうかと思ったんだが、そうか、そうか、それほど痛い目をみたいか?」

 

「あ、やべ?!」

 

「あいつ、土を集めて…ガチだ?!」

 

「へへ、そう来なくちゃなぁ?」

 

「その曲がった性根を骨ごと砕いて肥料にしてくれる!!『凱亜銃(ガイアガン)』!!」

 

「おらぁ『銃・擬鬼(ガンモドキ)』!!ってなんだこの攻撃、馬鹿みてぇに重ぇ?!ぐっおぉおおがあぁ?!」

 

「おでん?!」

 

「アスカルがガチギレだ?!誰か船長か副船長を呼べ!!」

 

「なんだ?何事だ?」

 

「おっ、楽しそうな事してんな?俺も混ぜろ!!」

 

「待てロジャー!!船を壊す気か?」

 

 思い出話を肴に酒傾けて、演し物には喧嘩は如何と、今日も今日とて騒がしく、何処までも自由に船は征く。

 

 

 


 

 

 とても見慣れた麦わら帽子ではあるがその主の顔をこうして直接見るのは初めてになる。それでもその麦わら帽子は正しい位置にあるかのように誇らしげに見えた。

 

「思ってたよりもその麦わら帽子がよく似合うじゃないか、モンキー・Ⅾ・ルフィ?」

 

 俺が名前を口にすると分かりやすく驚いて見せた。素直な少年だな。彼の仲間たちは少々警戒を強めている様だ。中々にバランスの良い関係だな。

 

「おっさん、俺の事を知ってんのか?」

 

 なんで知ってるかを答えるのであれば嫌という程聞かされたからと言う所だが、まぁ敢えて伝える必要もないか。それに見知った名前が新聞に載るようになると目で追ったりもしたし、それも理由と言えるしな。

 

「まぁな……とは言ってもこんな所で立ち話をするのもなんだ。オレの家に来るといい、多少だがもてなすだけの物はある」

 

「おぉー!!おっさん、良いやつだな!!よし、みんなでおっさんの家に行こう!!」

 

「ちょ、ちょっとルフィ待ちなさい?!」

 

「お前…なんでそれでのこのことついてこうとするんだ?」

 

「諦めろ。こいつはそういう奴だ」

 

「まさか……」

 

「着いてっちゃ駄目なのかウソップ?あのおっさん良い人みたいに思えるけど?」

 

「馬鹿馬鹿、チョッパー!!悪い奴が自分は悪いですって表に出す訳ねぇだろ!!」

 

「でも俺たち海賊だけど堂々と海賊旗を掲げてるぞ?」

 

「そ、それはだなぁ……」

 

 ふむ、流石にいきなり声を掛けて家に招待するのは怪しすぎたか…とは言えこうも土の上でコソコソと話をされるとは、言っては悪いが昔の見習い組を思い出す。

 

 そんな事を考えていると何か考え込んだかと思うとじっとオレの顔を見ていたクルーが此方に一歩近付いた。あれはニコ・ロビン…オハラの考古学者だったか?それなら何処かで情報を仕入れていてもおかしくないか。

 

「この島の名前を聞いても良いかしら?」

 

「構わないとも、この島の名は『カムリィ』かつて農業でそこそこ栄え、一人の農家によって滅んだ島だ」

 

「農家によって島が滅んだぁ?」

 

「なんとも胡散臭え話だな」

 

「やっぱり……航海士さん、私の考えが合っていればついていっても問題ない筈よ」

 

「えっ、ロビン。何か知ってるの?」

 

「それも含めてついていけば分かるわよね?」

 

「聞きたいことがあるなら答えるくらいの余裕は持ち合わせてるつもりだ」

 

 そう断言するとこれまた微妙な表情を浮かべながら否定的だった面々で話し合いが行われ、ようやくどうするかが決まった様だ。

 

「おっさんの家に行くぞ!!」

 

「そうか。ならまずは船を上げると良い。周りの海を見れば分かるだろうがここは特殊な海流が発生している。このまま置いておくと潮の流れが変わって岩礁地帯まで運ばれるぞ」

 

 そう言いながら彼らが乗ってきた船へと目を向ける。グランドラインの前半の海とはいえ他の4つの海とは比べ物にならない程過酷な海をよくもまぁこんな小さな船で渡ってきたものだ。

 

「それが本当ならやべえがよぉ。どうやってメリー号を上げるってんだ?」

 

「乗り上げる訳にもいかねぇだろう」

 

「そっちを見ろ。あの船くらいなら余裕で入る池がある」

 

 そう言って指をさすと彼らもそっちに視線を移し、目と鼻の先に確かに池があるのを確認する。

 

「あそこまで船を持って運べってのか?!」

 

「安全な港はねぇのか?!」

 

「港は無いが、わざわざ運ぶ必要はない……船に戻って待ってろ」

 

 そう言うと首を傾げながらも言う通りに船へと戻っていった。何かしてきたらそのまま沖に逃げれるからちょうど良いとでも考えているんだろう。

 

 さて、久々の客人だ。少々驚いてもらうとしようか。彼らが戻ったのを確認すると分かりやすく島に手をついた。

 

「おっさん、何やってんだ…うわっ?!」

 

「なんか、すげぇ揺れ始めたぞ?!」

 

「見てあそこ!!」

 

「島が割れてやがる」

 

「能力者か……」

 

「あのおっさんがやってんのか?!スゲー!!」

 

「あれが……記録と実物では桁違いね」

 

 それなりに盛り上がってくれた様で何よりだ。メリー号と言ったか?その船から池まで一本の水路が出来上がった。

 

「ほれ、早く入ってこい!!」

 

 船を池まで入れてからまた水路を閉じると島内を案内しながら進み始めた。島自体は殆どが畑の為にそこまで見るものは無いが、色々と気になってはいるようだ。

 

「なぁ、おっさんも能力者なのか?」

 

「あぁ、『ツチツチの実』を食べた大地人間。自然系っぽい名前だが超人系だ」

 

「おっ、俺と一緒だ。俺は『ゴムゴムの実』を食ったんだ。ニシシッ」

 

「おっさん!おっさん!おっさんは何が出来るんだ?」

 

「この能力は結構幅が広くてな。応用次第で色々とできるんだが…基本的にはさっきやったような大地の操作だな」

 

「もしかしてこの島の周りの海流って?!」

 

「大昔にオレが弄くり回して出来た人工ものだ。外部からの敵には効果的でな今となっては主な用途は対海軍だな」

 

「海軍相手てこたぁ手前ぇ賞金首か?」

 

「そうだな。懐かしむ程度には前の事だが海賊をやっていた…っとそうこうしてるうちに家に着いたな。続きは家で語ろう」

 

 海賊というワードを口に出した途端にさらに目を輝かせているが、とりあえずはもてなしの準備といこうか。

 

「この家は土製には見えねぇな」

 

「そりゃあそうだ。ここには能力者になる前から住んでいる。ほれ、紅茶とお茶請けだ。俺が育てた物だが品質は保証する」

 

 そう言って出したが完全に信用はされていないようでおずおずと手を伸ばしているのが目に見えて分かる。だが一口目を口に含むとその表情は一変した。

 

「なにこれ美味しい!!」

 

「良い香りね」

 

「クッキーもうめぇ!!」

 

「この甘いのなんだ?!」

 

「こりゃ砂糖漬けだな。にしても確かに良い味だな。素材が良いのが分かる」

 

「茶に甘いものばっかか…」

 

「出されたもんに文句つけるなよゾロ」

 

 自分が作ったもので喜んで貰えるなどいつ以来だろうか?この感覚は何度味わっても良いものだな。しかし、確かに海賊に出すには少々上品過ぎたか。

 

「畑で採れる物が基本だからな。なぁに穀物も作ってるから酒もある」

 

「おっ?そりゃいい」

 

 そう言いながら渡された酒を口にする剣士くん。確か彼は手配書が出ていた。ロロノア・ゾロくんだったか?警戒はしているが機嫌は良さそうだ。

 

「さて、とりあえず落ち着いた所で自己紹介でもしよう。オレの名前はアスカル、ここ海賊の墓場の主だ」

 

「海賊の墓場?!なんだその物騒なのは?!」

 

「知らずに迷い込んだか?ここの海流と能力を合わせれば並大抵の海賊は敵では無いからな。島に手を出そうとする奴にはもれなく沈んでもらっている」

 

 そう言いながら視線だけを鋭くすると何人かが怖がる様子を見せたが他の面々は害意が無いのが分かっている。色々と素質はありそうだな。

 

「裏を返せば敵対しなければ何もする気はねぇのか?」

 

「はは、誰彼構わず噛みつく様な年はもう過ぎたよ。隠居してからもう長い、世間ではもう死んだことにでもなってるんじゃないかい、考古学者のお嬢さん?」

 

 そう言うと皆の視線が彼女へと集まる。そう言えばと言った感じで彼女がオレについて知っているのを思い出したんだろう。

 

「……死亡説は語られているけど、手配書はそのままね」

 

「海軍も来なくなって久しいが楽隠居はさせてくれないか」

 

「海軍も27億の首を放置はしないでしょう」

 

「「「「「「27億?!」」」」」」

 

 彼女が口に出したが賞金額に全員が目を見開いて驚いている。後半の海であっても二桁の億超えとなると限られてくる。前半の海ではまず聞くことのない額ではあるな。

 

「おっさん、スゲー奴なのか?!」

 

「海賊をしてたって言ってたが一体何者だ?!」

 

 これでも名は知れ渡ってる方だと思ったが船長達と比べると分かりにくいか。そう思い、少し笑みを浮かべながら口を開く。

 

「ただの食料番には過ぎた額だが……まぁ、これでも世界一周を果たした者の一人だよ」

 

 その言葉の意味を理解するとその場にまた絶叫とでも言える大きな声が響いた。一人の寂しい家が久々に賑やかなのは楽しいものだ。

 

 


 

 

「久しいな、アスカル。元気そうで何よりだ」

 

「こっちのセリフだ。あんたもういい年だろう?」

 

「やかましい。いずれお前もそうなる」

 

「そうだな。誰もが年をとり、老いて死んでいく。そして大地や海へと還る」

 

「お前はどっちなんだ?」

 

「自分で何かするタイプじゃねえんだ。処刑の日からずっと隠居して畑を弄ってる。オレが還るのは故郷の土だろうよ」

 

「そうか、それもまたお前らしいな」

 

「まぁな……それでこいつが噂のクジラか?話には聞いていたがかなりデカいな」

 

「あぁ、ラブーンと言う。私が船に乗った理由だな……まさか私自身があの地に辿り着くとは思ってなかったがな」

 

「傷もだいぶ痛々しい……もし、必要ならこいつが通れる穴を開けるか?」

 

「そうか、お前の能力ならそれも可能か……」

 

「あぁ、とは言ってもレッドラインをぶち抜こうと思えばそれなりに時間は掛かるがな。どうする?」

 

「……いや、やめておこう。ラブーンは帰りたい訳じゃない。約束を信じて待って、自分がここに居ると報せてるだけだ。穴を開けたとして何も変わらんだろう」

 

「そうか、確かに探しに行くのなら目の前の海を行けば良いし、此処でそうする事に意味を持たしてるのか……」

 

「おそらくな」

 

「昔のオレを見てる様な気持ちだ。オレにとっての船長みたいな存在がこいつにも現れてくれれば良いんだがな」

 

「連れ出す存在か?」

 

「救ってくれる奴だよ」

 

「そうだな。私では支える事しか出来ん。そんな奴が現れてくれれば良いんだがな」

 

 


 

 

「お前との思い出には碌なのがねぇな……ははっ!!とは言っても今となれば懐かしい……」

 

「なんで馬鹿ってのは死ぬのが早いんだ?どいつもこいつも好き勝手引っ掻き回しておきながらいなくなって」

 

「あの船しかなかったオレとは違うだろうが!!お前には居場所があったってのに……」

 

「おでんでも供えれば喜びそうだが、あれは煮えてなんぼなんだろ?酒だけで我慢しとけ、流石に火を使えばバレるからな」

 

「正直何かをやる気はもうねぇんだ。島からあまり離れる気もな。だからまた来るって訳にはいかねぇが許せ」

 

「それで、そこの木に隠れてるお嬢ちゃんはオレになんかようか?」

 

 


 

 

「まさかお前らがこんな所に来るとはな」

 

「前半にも縄張りはあるしな。とは言っても此処に来たのは事故なんだが」

 

「買い出しレベルの船とはいえ新世界を渡ってるお前らが楽園で事故とはな……白ひげの旦那は元気か、マルコ?」

 

「なんなら顔を出すか?あんたならオヤジも会うだろうさ。地帝のアスカル?」

 

 

 

TO BE CONTINUE ?

 





感想で続きがみたいという要望があったのでアンケートにも載せたし、選ばれたからにはと本来単発の予定だったのを伸ばしてみたけどこれで満足してもらえたでしょうか? 蛇足になってないと良いけど……どうでしょう?

きりの良い、オチまで書こうと思うと時間がかかってしょうがないのでこういった所で関わりがあるよとか、仮に出会ったらこんな感じみたいなのを雰囲気で感じて楽しんで欲しいです。

麦わらの一味との出会いは差し込むには厳しいとは思うけど空島からウォーターセブンの間に設定してみた。そのためロビンのナミの呼び方が役職呼びで他人行儀ですがこの呼び方は呼び方でけっこう好き。役職呼びはそれはそれで味があると思う。

TO BE CONTINUEとは書いたけどこれ以上は思いつかない……訳でもないけどとりあえずロジャー海賊団だったら編は一度おしまいでオナシャス。(完全に打ち切りという訳ではないけどね)

という訳でアンケートに参加してくれた皆様ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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トリココラボ
プラントオーナートリコ✕ワンピースコラボ導かれし美食屋、海賊、大地の王



単発でもIFでもないですが4/1企画のスタートです。
ウソップの誕生日おめでとう!!

前もってこれ書いたらなんか満足しきってここ数ヶ月やる気がわかなかった。本編はそのうち書くのでお待ち下さい。


 

 誰かが言った…大きな物でも肉眼で捉えるのがギリギリの大きさでありながら、丸々と肥えてジューシーな肉汁たっぷりの豚『プランク(トン)』がいると…

 

 誰かが言った…食べると特殊な能力が身に付く悪魔の実があると…その中には食べると体がゴムのようになる『ゴムゴムの実』があると…

 

 誰かが言った…ラザニアの様な濃厚なソースの血とパスタの身がミルフィーユみたいな層を作っているピラニア『ピラザニア』がいると…

 

 誰かが言った…食べると特殊な能力が身に付く悪魔の実があると…その中には食べると自在に大地に干渉し操れる様になる『ツチツチの実』があると…

 

 世はまさにグルメ時代であり大海賊時代、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を求め冒険する海賊蔓延る中、未知なる味を求めて、探求する大地の王の時代…

 


 

 偉大なる航路を漂いながら規模を拡大し続けている世界最大の食料生産国であるプラント。取引に食材探索、加工に品種改良と常に賑やかなこの国にて運営の役割を持っている幹部以上、もしくは幹部と同等の面々が一堂に会していた。

 

 『大地の王(だいちのおう)』アスカルを中心に『取引妃(とりひき)』マニュ、『芽吹姫(めぶき)』のグレーヌと仕事の多い王族組、プラントにおける最高位が三人。

 

 最高幹部として名を連ねるのは『草花(くさはな)』モーダス&ホーニィ、『刺突(しとつ)』のピアス、『先読み(さきよみ)』サイフォ、『侵食者(しんしょくしゃ)』モルの五人。

 

 そして続いて幹部クラスが『暴食(ぼうしょく)』のラトニーと『闘克(とうかつ)』デル、『水浸(すいしん)』フィン、『明快(めいかい)』ティア、『槌撃(ついげき)』ポコの通称四隊長を合わせた五人。

 

 そして少し特殊な立ち位置ではあるが幹部と同等とされているのがコーヒヒ代表『室長(しつちょう)』、獣憑きの総隊長である『月狼(げつろう)』ことオオカミ、さらにハニカムハニーの開発者がラブビーの代表者となり『微笑(ハニカム)』ハニ&カムとして幹部扱いになり、一人と三匹。

 

 そして完全なプラントのメンバーとは言えないが、それなりに力と立場があるカスタードとエンゼルの二人も呼ばれている。

 

 またグラン・テゾーロを離れられない為にこの場に来ていないが『黄金帝(おうごんてい)』ギルド・テゾーロと『黄金妃(おうごんき)』ギルド・ステラの二人は最高幹部扱いである。

 

 プラントと言う世界屈指の国家の運営に関わる十八人と三匹の内、十六人と三匹もがこうして集まる自体というのは『微笑』は当時は就任してなかったがワールド・バイキングの計画始動時以来である。

 

「よく集まってくれた」

 

 普段は接しやすいアスカルの真剣な声色に、プラントの今後に関わる大事かと全員が少なからず緊張を覚えながらも、直ぐに頭を下げ礼を尽くす。

 

「今回集まって貰ったのは突き詰めれば食材探索だ。だが偉大なる航路でもかなり特殊で危険な領域へと行く事になる」

 

 偉大なる航路では何が起こってもおかしくない。ましてや世界規模で考えても上から数えた方が早い実力者であるアスカルが危険と評する領域だ。

 

 普段の食材探索とは理由が違うと気を引き締め直し、説明の続きを黙して聴く。

 

「少し前に話題になったルルカ島に関する論文を知ってるのは何人くらい居る?」

 

 アスカルの問い掛けに手を上げたのはマニュ、グレーヌ、ティア、室長と三人と一匹だけだった為、それに関する説明が挟まる。

 

「その島には『虹色の霧』が広がり、その霧の中に入ると船の墓場『エイプスコンサート』に辿り着く、そしてその霧の中に広がる世界は、時間と空間が捻れている場所だ」

 

 事実として外で何十年も経っても中では子供のままだった者や捻れに巻き込まれ過去へと飛ばされた者が確認されている。

 

 そしてアスカルがそれを例として持ち出そうとしたという事は勘の良い者は気付き始めた。探索予定の領域と言うのがそれと似通った性質を持った場であると。

 

「探索予定の領域の名は『美食領域』!! 昔よりこの世界と繋がりが深いにも関わらず、全くの別の世界である彼方とオレ達が住む此方が混ざりあって生まれた領域だ」

 

 アスカルによる説明はまだ続き、この領域は常に存在する訳ではなく、例が少ない為に規則性があるかどうかは分からないが、一定の期間だけ偉大なる航路のあちこちにその領域へと入り込む場が出来上がる。

 

 二つの世界の法則さえも混じり合うその領域は本当の意味で常識が通じない場となるかもしれない。それ故にこの時代まで記され、残されている情報も少ない。

 

「遮ってしまい申し訳ありません。アスカル様、質問を許して頂けないでしょうか?」

「あぁ、良いぞ」

 

 研究者として優秀であるティアが手を挙げ、アスカルの話が途切れた所で質問の許可を取り、その口を開いた。

 

「その領域は彼方から人が、いや人に限らず、彼方側の存在も入ると考えてよろしいでしょうか?」

「あぁ、その通りだ。それ故に危険度はかなり高くなる」

 

 見知らぬ世界の見知らぬ技術を使う人も恐ろしいが、どんな特性を持ってるか分からない異世界の化け物と出会う可能性もある。

 

 だがそれでも通常では観測すら出来ない領域の食材を回収する事が出来た際のメリットは計り知れない。

 

 メリットとデメリットのどちらも多い、ハイリスク・ハイリターンな計画である。

 

「今回はオレも出る事に決めているが『美食領域』にてプラントまで能力を維持出来るか不明だ。仮に分身まで消えた場合は最低でも数日間はオレの地下流通網が使えなくなる。それ以前にプラントが停留する事は確定している。その為、緊急令を出して対応するがプラントの維持や防衛に専任する者と探索に出る者をこれから指名する。名前を呼ばれなかった者は通常業務に加えて専任の者の補助だ」

 

 専任と探索のどちらに選ばれたとして責任重大である。自分が選ばれるか、選ばれるならどちらに選ばれたいか、誰が一緒になるか、皆が様々な思考を巡らせる。

 

「まずはプラントの維持、マニュを筆頭にモーダス、ホーニィ、モル、室長だ」

 

 続けて理由を語るが、マニュはアスカル不在時の国の運営と指揮をする事が決まっており、アスカルが探索に出る時点で役割は確定している。

 

 モーダスとホーニィは交易品の維持だ。アスカルが居ないと用意出来ない物もあるが、それ以外はある程度なら二人でも保たせられる。

 

 モルはアスカルの代わりとして流通網の維持を期待してになる。『フェアリーサークル』では大量の輸送は出来ないが各地の流通を途切れさす事はない。

 

 室長は室長自身としてではなく人手不足を補う為にコーヒヒ全体に手を借りる為のコーヒヒの指揮要員だ。

 

「次にプラントの防衛、サイフォを筆頭にピアス、デル、ポコ、オオカミだ」

 

 サイフォは優れた見聞色の覇気の覇気と状況把握能力から防衛時や別働隊の指揮をよく任されており、彼自身防衛の言葉が出た時点で予測していた。

 

 ピアスは探索に連れて行けば海の安全性は増すが上陸出来る場所があるか分からない為に除かれ、防衛の方に回る事になった。

 

 デルとポコは幹部未満の者の指揮である。四隊長と呼ばれているのは伊達ではなく、作戦時に割り振られた部隊を纏め、全体の指揮をとるサイフォの指令から、細かい調整をしながら警備を強化する。

 

 オオカミは言わずともプラントの影の部分を任されている『獣憑き』を指揮してプラントの護りを一層固めるだけである。

 

「最後に探索班、オレを筆頭にグレーヌ、フィンだ」

 

 グレーヌは『タネタネの実』の力を用いての食材回収要員としてと多くの事に対処出来る適応能力の高さから選ばれた。

 

 フィンはピアスの代わりの水中要員である。水中では早々敵は居らず、地上でも水の中で鍛えた力を発揮し素早く動ける為に斥候役にも慣れる。

 

 そして何処にも選ばれなかったメンバーは普段通りの仕事とプラントに残る専任組の補助になる訳だが、きちんと理由はある。

 

 ラトニーも普段から防衛を命じているが基本的に待機であり、仮に世界政府や四皇が出てきたら最終手段として活躍する役な為に表立って防衛には参加できない。

 

 ならば探索ならどうだとなるが、呑める物を確保しなければ『ゴクゴクの実』の力は望めず、あったとしても力が強過ぎて食材まで破壊しかねないので選ばれなかった。

 

 ティアは四隊長の中で一番戦いが苦手である為に防衛には向かず、探索には機材を持っていけない為に研究面でも役に立てない。一応指揮能力は高いのだが今回は個人の武もいるのでいつも通りの研究に専念する。

 

 ハニ&カムは蜂である為に多くの作業は任せられず、探索で必要になる機会も望めない。そもそも絶対数が少ないので蜂蜜の生産をいつも通りやってもらう必要がある。

 

 カスタードとエンゼルは普段からビッグマム海賊団への対応が役割となっており、決まった仕事を普段はしてないので補助に回る形になる。

 

 

維持チーム

リーダー:マニュ

生産担当:モーダス・ホーニィ

流通担当:モル

指揮担当:室長

 

防衛チーム

リーダー:サイフォ

水中担当:ピアス

陸上担当:デル・ポコ

暗部担当:オオカミ

 

探索チーム

リーダー:アスカル

回収担当:グレーヌ

水中担当:フィン

 

その他チーム

メンバー:ラトニー・ティア・ハニ&カム

     カスタード・エンゼル

 

 

「それでは零時から緊急令を発令、特別体勢でプラントを運営開始、明朝には各チームが稼働できる様に備えてくれ、以上だ」

 


 

 海賊王を目指し偉大なる航路を航海する『麦わら』のルフィが率いる一行サウザンド・サニー号では大変な事態となっていた。

 

「「「えーーー!!!」」」

「メ、メシがないだとー?」

「ああ。底をついた」

 

 コックを務めるサンジがサウザンド・サニー号の食料が零になった事を告げたのだ。

 

「底をついた、じゃねーよ!コックだろー?ちゃんと食料管理しとけー!」

「お前にはガッカリだ!」

「見損なったぞ!」

 

 ルフィ、ウソップ、チョッパーの三人が食料管理をしているサンジに対して言及しているが…

 

「って、おめーらが見境なく食っちまったんだろうが」

 

「「「グギギ・・・」」」

 

 食料が完全に尽きた要因はむしろ騒いでいる三人の方にあり、即座に立場は逆転した。

 

「最悪だわ!嵐でよく分からない海域に流された挙げ句に、食料までなくなるなんて」

「とにかく、どっかに立ち寄って食料確保しねーとな」

「しかしそう都合良く補給する場所なんか見つかるのか?」

「ねぇ、あれは?」

「あ?」

 

 比較的気候は安定している様だが偉大なる航路の上、よく分からない海域でそんな都合のいい場所がはたしてあるのか、先行きの不安しかない中で一味の考古学者であるロビンが何かを見つける。

 

 ロビンが示した先にはぼんやりとだが島らしき影が浮かんでおり、このままでは餓死する未来しか見えない一行は急いで島を目指して舵をきった。

 


 

 鬱蒼と草木が生え茂り、日に照らされ暑い空気の中を真っ直ぐに進んでいく二人組。

 

「トリコさ〜ん。ちょっと待ってくださいよ〜」

 

「小松が早く来いよ。こっちから美味そうな匂いがするんだ止まってられねぇよ!!こいつを見習えよ!!」

 

 美食屋四天王の一人として数えられている美食屋のカリスマであるトリコ、そして料理人の小松がグルメの島の探索を既に始めていた。そしてそこにもう一人……

 

「なぁフィン!!」

 

「…知識…ある…それに…反応も…だから…とりあえず…着いてく」

 

 トリコと小松が船で進んでいる際に出会ったプラント幹部の一人、探索班に所属している筈のフィンが命の紙(ビブルカード)を片手に二人の道行きに同行していた。

 

 近くに自身の言葉を読み解いて理解してくれる人がいない為に少しばかり口数を増やしている。彼が何故、トリコと小松と共にいるのか、それを語るには少し時間を遡る必要があるが…

 

 かくして、何の因果か美食屋、海賊、大地の王とそれぞれの仲間達は導かれるかのようにグルメの島とも呼ばれる伝説の島、ハングリラ島へと集まるのであった。

 



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いざ突入?果てしなき不思議の美食領域!!グルメの島での出会い!!


企画の続きでございます。
ジンベエ誕生日おめでとう!!
でも時期的に仕方ないとはいえ、ジンベエ欠片も出ないのではと作者は訝しんだ。


 

 

 誰かが言った…とある島にはサルサソースを好み、思わず踊りたくなってしまう様な美味しさのサルサ『サルサルサ』を作り出す猿『サルササル』が居るとか…

 

 誰かが言った…食べると特殊な能力が身に付く悪魔の実があると…その中には食べると体がゴムのようになる『ゴムゴムの実』があると…

 

 誰かが言った…透明な果肉でその姿を隠して海中を揺蕩い、海の栄養を豊富に取り込む事で成長し、果肉に塩が染み込む事でさらに味を引き立てるスイカ、『カイスイカ』があると…

 

 誰かが言った…食べると特殊な能力が身に付く悪魔の実があると…その中には食べると自在に大地に干渉し操れる様になる『ツチツチの実』があると…

 

 世はまさにグルメ時代であり大海賊時代、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を求め冒険する海賊蔓延る中、未知なる味を求めて、探求する大地の王の時代…

 


 

 日を跨いだ瞬間に緊急令を正式に発令させ、娘であるグレーヌと幹部の一人フィンと共に特製の船で『美食領域』へと向かった。

 

 事前に調べていた通りに『美食領域』へと入り込む入口を観測する事が出来、入るまでは問題は無かった。それが来たのは突入してからメンバーと話してる時だった。

 

「お父さん…このリストの食材全部集めるつもりなの?」

「島、後幾つ巡る?」

 

 既にリストの一部は回収に成功しており、ペースが良いためにそのまま探索を続けているから全て回収するつもりなのではと疑ってる様だ。

 

「それはあくまで判明している『美食領域』の食材を纏めた物だ。可能な限り集めたいし、リストにない物も収集はするが、基本的には安全第一にだ。何せ偉大なる航路以上に不思議な海だからな」

 

 そう言って明らかに海水ではない海から一杯のスープと麺を掬って見せる。『美食領域』の食材は特殊調理食材や特殊賞味食材でない限りはそのまま食べられる物が多いと聞くのでそのまま食べてみる。

 

「これはシャンヌードルか、という事は此処はシャンヌードルの海、『オーシャンヌードル』ってところか」

 

 鶏がらスープにもちっとした米麺が絡み合い、鶏や豚のひき肉を辛めに味付けた具材も味わい深い一品はもう一杯、もう一杯と手を伸ばしたくなる。

 

「今さら食材の海で驚きはしないけど、中々にバリエーションが豊富なの…これもある程度は回収なの」

「火傷…ない…熱そう…」

 

 品自体はとても美味いし、場所が場所故に特別な料理とも言えるが海になってるだけで基本は変わらないので回収は参考程度で問題ない。

 

 フィンは流石に暖かい麺の海を泳ぐのは火傷こそしなくても熱さに悶える事になりそうだと自分の得意分野を潰す海をじっと見つめている。

 

「『オーシャンヌードル』はメインじゃないが、麺の海を超えた先に『ゴールデンプン』を含んだ『金色芋』を身に生やすジャガー、『金色ジャガーイモ』の生息する島に着く筈だ」

 

 本来の『ジャガーイモ』に生えるじゃがいもも通常の物とは味の深みが全然違うそうだが、変異種である『金色ジャガーイモ』は段違いだと書に残されている。

 

 中でも『金色芋』を使って作る『コンジキッシュ』は見た目の華やかさはもちろん。輝きに負けない味の煌めきを見せてくれるそうだ。

 

「それ育てるならそのジャガーの捕獲もきっと必要なの」

「金…硬そう…」

 

 確保した食材から種を生み出したとしても生育に必要な条件がなければ育てるのは難しそうであり、おそらく『金色芋』も『金色ジャガーイモ』ありきに食材だろう。

 

 種を生み出すだけでは確実と言えない事にグレーヌは力不足を少し感じている様だ。フィンは今から捕獲方法を模索している。まぁそれぞれ真摯に今回の作戦に参加している証拠だと思っておこう。

 

 そんな事を考えていると予定通りに『オーシャンヌードル』を超える事が出来たが、海水の海が高い波を作り始めた。

 

「まずいな…急に海が荒れてきた。一雨くるじゃ済まないかもしれん」

「潜ってくる…」

 

 フィンが水中に潜り海の様子を確認し、近くに居る魚の意思を読み取って先を探る。数十秒経ってから船に戻ったフィンの表情は悪い。

 

「嵐…くる…避けれない…」

「嫌な予想ばかりが当たるものなの……避けれないなりに舵のとり方はどうするお父さん?」

「他の島への航路が分からないからな。目的地を目指し真っ直ぐ進むしかないだろう」

 

 船をそれぞれ能力を用いて補強し、嵐に少しでも耐えれるように力を注いで荒れた海を進んでいく、気候帯が変わったのか途中から嵐の様相が変わる。

 

「これただの雨じゃないの…ラッシーなの?!」

「ラッシーの嵐…『アラッシー』…?!」

「飲んでる暇はないな。回収も考えなくて良い、とりあえずこの場を……ちょっとまずそうだ」

「あはは…竜巻なの……」

「…海流…寄ってる…船…避けれない…」

 

 船への損傷は今のところ見られずこのままなら沈没する事なく進めると思っていたが、遠くに見えるあれは耐えれそうにない。

 

「ただの竜巻でもなさそうだ。竜巻の根本を見えるか?」

「あれは甲羅なの?」

「大きい…」

 

 竜巻の根本を見ると高速で回転をし続けている甲羅らしき物が遠くからでもはっきりと捉えられる。あれには見覚えがある。

 

「『タートルネード』、甲羅に籠もり回転することで巨大なトルネードを生み出して身を守る亀だ。硬い甲羅とトルネード、二つの鎧に守られている身は絶品らしいが……突き破って攻撃する程の土は無いな」

 

 小難しく考えてる時間はないため、端的に出来ることを考えるが大技を使える程の土は持ってこれていない。甲羅の破壊だけなら土が無くても可能だが流石に身一つで竜巻の中に入り込むのは厳しい。

 

「『タネタネの実』の力でも打開策は思いつけそうにないの…」

「…甲羅…無理…」

 

 グレーヌはお手上げ状態で、フィンは内部に入り込めても甲羅を突き破って倒すのは自分では厳しいと答える。

 

「各自回収済みの食材を持って脱出する。オレは生きたままの食材の保護の為に船をコーティングしてなんとか耐える。フィンは泳いで海域を脱出、グレーヌは種に籠もれ、集合は誰かの命の紙(ビブルカード)を目印にだ」

 

「了解…!!」

「了解なの!!」

 

 言うが早くそれぞれ『収納種』に詰められた食材を身体に括り付けると、フィンは海に飛び込み、グレーヌは自らを種に封じる。

 

「『船体土ーピング』」

 

 なけなしの土を船を完全に覆うようにすると、全力で覇気を流し込み衝撃に備える。大きな揺れに 問答無用でシェイクされ、どれ程続いたか分からないが大きく跳ね上がったのを確認すると共にオレは意識を失った。

 


 

 食料調達をする為にサウザンド・サニー号を降りたルフィ、ナミ、サンジ、チョッパーの四人は暑さに耐えながら島を歩いていた。

 

「みな~みの~島は~あち~あ~」

「はぁ…はぁ…」

「メシ~メシは~どこだぁ~…」

 

 適当な歌も元気がなく、毛皮があり暑さに弱いチョッパーも息も絶え絶えな様子だ。

 

「町で買い出しショッピングって思ったけど、あたしがバカだったわ。町どころか人っ子1人いないなんて」

「どうやら無人島のようだな。ナミさん、何が出るか分からないから、オレから離れないように」

「えー!何か出るのかー?やっぱりゾロやウソップ達と、サニー号に残ってれば良かったんだな…」

 

 思った通りにいかないことをナミが嘆き、サンジがナミの護衛を買って出ると、怖がりのチョッパーは着いてきたことを嘆いた。

 

「うおおーーー!!」

「ルフィ?」

「に…肉だあぁぁーーー!!」

 

 ルフィの目の前には、巨大な肉の実をつけた木があり、腹ペコのルフィは駆け出して行った。

 

「ん…うめー!本物の肉みてーだ!」

「随分と肉食系な植物ね」

 

 疑うことなく食べ始めるルフィ、ナミは普通は見ることのないその木を不思議そうに見る。するとチョッパーも何かを見つけた。

 

「見ろよ!このキノコ綿あめだぞ!うまーい!」

「えええ?」

 

 大好物の綿あめで出来ているきのこを見つけたチョッパーも嬉しそうに食べ始める。辺りを気にし始めたサンジも近くの草を見てしゃがむ。

 

「この草は…絶妙な湯で加減のアルデンテのパスタだ」

「何なのこの島は…」

「まぁ食材の確保には事欠かないみたいだが…」

 

 食料不足に陥っていたルフィ達にはうってつけの島だが、不思議な品々にナミは頭を抱える。

 

「ん、あれは…稲折り草だ!!煎じて飲むと、どんな胃痛も治っちまうって言う…オレ見るの初めてだ…え?」

 

 チョッパーから見ると大きな草の中から突然腕が飛び出してきてチョッパーの身体をガシリと掴んだ。

 

「ほほう…」

 

 チョッパーを掴んだのは、青髪の大男で掴んだチョッパーの事をじっと見つめている。

 

「トリコさーん!もう置いてかないで下さいよー!」

 

「鍛える…推奨…弱い…」

 

 そこへもう大男と比べると小柄な黒髪の青年と三叉の銛を持って青年を守りながら進むフィン、そして大きな狼がやって来た。

 

 ぎこちない動きの小松に辛辣だがアドバイスを呟くが進むのに必死で聞こえてない様だ。どうやら彼らは知り合いの様で捕まえたチョッパーを二人へと見せる。

 

「見ろよ小松にフィン!!珍しい動物だぞ?」

「さすがハングリラ島!変わったのがいますねー!」

「…たしか…見覚え…あ…麦わらの…」

 

 大男がトリコと呼ばれ、もう一人の小松と呼ばれている男はこの島の名前らしき物を言いながらチョッパーを見ている。

 

 一方でフィンと呼ばれた男はチョッパーを見た事があり、思い出しているとアスカルが話していたによく聞いていたルフィが目に入った。しかし呟きは拾われずトリコは自由に行動する。

 

「え?」

「こいつうめーのかなー?」

「ええ?」

「食ってみるか?」

「ええええーーー!?」

 

 どうしたら良いのか分からないまま固まっていたチョッパーは眼の前で自分を食べた際の事を語り出したトリコに恐怖を覚える。

 

「チョッパーを放せー!」

 

 仲間の危機に黙ってないルフィはチョッパーを取り戻そうと腕を伸ばした。いきなりな事に小松は対応出来て居なかったが狼に助けられている。フィンはとっくに範囲から抜けていた。

 

「うわっ?!腕が伸びたー?!」

「何だ、こいつ?」

「…ゴムゴム…狙いは良い…」

 

 小松もトリコもルフィの腕が伸びた事に驚いており、トリコはそのままルフィの連続パンチに応戦すし、フィンはその様子をじっと観察している。

 

「えい!!」

「フン!!」

「ルフィ!!」

 

 続けて繰り出したルフィの蹴りを難なく受け止めるトリコ。その様子を見ていたナミが相手の強さに驚き、防がれたルフィを心配して叫ぶ。

 

「チョッパーをどうするつもりだ!!」

「あ?…いいか?こいつはオレが捕まえたんだ。だからオレの獲物だ!」

「え?獲物って、本当にオレを食うのか?」

「おお」

「なぁなぁおい、オレ美味しくないぞ?ビックリするほど不味いぞ!」

「何?お前不味いのか?不味いなら食ってもしょうがないなー。いや待て、もしかしてって…喋ったぁ?!」

「えええーーー!?」

 

 食べられたくないチョッパーは慌てて自分はマズイぞと伝えるとチョッパーが喋れる事に気付き驚きを見せる。

 

「…能力者食べる…泳げなくなる…非推奨…」

 

 フィンはフィンで方向性の違う指摘をぼそっと呟いている。そして「いや…踊り食い…の場合か…」と自分で訂正している。

 

「あ?」

「な、何でこいつ喋るんだ?!」

「チョッパーは、オレ達の仲間なんだから、勝手に食うな!!」

「ふぅ…やれやれ…」

「何で喋るか聞いてんだよ!!」

 

 喋れるチョッパーについてルフィに訊ねるも捕まったままのチョッパーを心配するルフィと話が噛み合わずに怒鳴るトリコ。

 

「え?」

「な、何?」

 

 そんな騒動の中にいるルフィとトリコ達の前に大きな食材が顔を出し、小松とナミが何事かと声を漏らす。

 

「こいつは?」

「旨そうな匂い…何だ、こいつら?」

「いつの間にか縄張りに入っちまったようだな…『マルヤキブタ』のな…!!」

 

 身体が焼かれており、肉の焼ける香ばしい香りが辺りに漂うとても大きな豚が姿を次々に現した。

 

「スゲェ!!ブタの丸焼きが歩いてるー!!」

「『マルヤキブタ』自分の縄張りを犯した者には、容赦なく焼きを入れる凶暴なブタ」

 

 『マルヤキブタ』その生態をトリコが語り、ルフィは始めて見る歩く丸焼き豚に目を輝かせる。

 

「焼きを入れるって、自分らのボディが既に焼かれてんじゃない!!」

「怖えええ…」

 

 焼かれているブタ自体がか、それとも『マルヤキブタ』の凶暴さがか、チョッパーは震えている。

 

「ええ、高草やお化けトリフをエサにしていてそのまま食べても味は絶品、でも捕獲レベルは1」

「捕獲レベル?」

「はい。国際グルメ機関IGOが定めた獲物を仕留める難しさの度合いです。捕獲レベル1は猟銃を持ったプロのハンターが10人がかりでやっと仕留められる難しさ。トリコさんにとってはそんなに高い捕獲レベルじゃないんですけど…これだけの数になるとヤバいですよ!!」

「でもないみたいだけど?」

「「旨そー!!」」

「念の為…回収…」

 

 ナミが視線を向けた先ではと二人で仲良く涎を流しているルフィとトリコの姿があった。フィンも銛を持って並んでいる。

 

「『マルヤキブタ』だ?そのまま食えるなんて料理人泣かせだ。許せねぇ!」

「ツッコむとこそこー?」

 

 サンジも料理人として許せない物があるらしくいつもよりやる気を漲らせて『マルヤキブタ』へと向かっていった。

 

「ん?」

「いただきます!!」

「にひひ!!」

 

 そんな中でトリコはそっと手を合わせ、それに気付いて不思議そうに見つめるルフィ。動作を終えると『マルヤキブタ』へトリコは駆け出し、ルフィも続きます。

 

「とりゃ!!」

 

 サンジも奮闘し蹴りを叩き込んだがその瞬間に異様な匂いが漂い思わず鼻を覆った。

 

「何だこの匂い?!」

「焦げ臭ぇ!!」

「奴らを怒らせるな!!怒ると熱くなってせっかくの匂いが焼け焦げちまう!!一瞬で方をつけろ!!」

「よし!!」

「『突浸』!!」

 

 殴って向かってくる『マルヤキブタ』を倒していくルフィとトリコ、サンジも一撃で仕留められる様に蹴りの威力を強め、フィンも鋭い一撃で食材の損耗が無いように倒す。

 

 そんな四人の戦いを見ていたチョッパーが感心した様にトリコに対する感想を零す。

 

「あいつ動物の生態に詳しいんだな」

「動物と言うか食材に詳しいんです。トリコさんは美食屋ですから!!」

「美食屋って何だ?」

「美食屋って言うのは…未知なる味を求めまだ知られていない食材を捜して食べる食の探究者です。トリコさんは世界中で約30万種の食材の内2%…およそ6000種を発見した美食屋のカリスマなんです!!」

「あいつ凄いんだなー!!」

 

 次々と『マルヤキブタ』を倒していく中でルフィが伸ばしていた腕を元に戻す様子を見ていたトリコが不思議そうに訊ねる。

 

「さっきから気になってたんだが…お前の体まるでゴムみたいだな!!」

「ああ『ゴムゴムの実』を食べたからな」

「『ゴムゴムの実』だと?!それってどんな味だ?旨いのか?」

「いや、めちゃくちゃ不味かった!!」

「なんだ不味いのか…」

「ああ、よっ!!」

「んじゃ、しょーがねーな!!」

「ああ!!」

 

 一方でトリコは自身が聞いたことのない食材の名前に目を輝かせるがルフィの答えを聞いて落胆する。

 

「いや、そこは味どうでもいいんじゃねーの?」

「食関係者…味大事…悪魔の実…全てマズイ…」

 

 サンジのツッコミもそれに対するフィンの呟きも二人の耳には届かず最後の『マルヤキブタ』を倒して戦闘は終わりを迎えた。一方その頃、サニー号では…

 

「腹…減った…ルフィはまだか?」

「随分遅いわね」

「道にでも迷ってんじゃねーか?しょーがねーな。探しに行ってやるか…」

「ゾロぉ…お前は行くな?!余計ややこしくなる!!」

「い…?!」

 


 

 そして同時期ハングリラ島の西岸にて目を覚ました男が辺りの散策を行っていた。

 

「だいぶやられたが、船も食材も大事な所は無事で済んだな…しかし、なんだこの島は?操れる大地が異様に少ない…っと、二人共今のところ問題なさそうだな…」

 

 ボロボロになった船を最低限整え、島について多少探り、最後に起きて直ぐに一度確かめたが、もう一度部下と娘の命の紙が無事な事を改めて確認する。

 

「動き方からしてフィンは近そうだが、帰り道能力で保たせるのもキツイからとりあえず船を直してからだな」

 

 



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遭難者達の出会い、激突ハングリラ鳥!!


企画はまだ続きます。
ブルック誕生日おめでとう!!

最初の口上をヨミヨミの実でも作ろうかと思ったけど、面倒で悪魔の実の部分は原作主人公とこの作品の主人公の実で統一しました。誕生日組で能力者なのブルックだけだしね。




 

 誰かが言った…油の海の上空で黄金色に光りを放つ、まるで灯台の様に暗い夜を照らす空飛ぶサクサクのポテトの塔『フライトポテ塔』があると…

 

 誰かが言った…食べると特殊な能力が身に付く悪魔の実があると…その中には食べると体がゴムのようになる『ゴムゴムの実』があると…

 

 誰かが言った…大きく太った水々しい果肉の中にまるでバンズ、パティ、濃厚なソースの味わいが広がるきゅうり『キューカンバーガー』があると…

 

 誰かが言った…食べると特殊な能力が身に付く悪魔の実があると…その中には食べると自在に大地に干渉し操れる様になる『ツチツチの実』があると…

 

 世はまさにグルメ時代であり大海賊時代、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を求め冒険する海賊蔓延る中、未知なる味を求めて、探求する大地の王の時代…

 


 

 

「いただきまーす!」

 

 戦闘を終えたルフィ、トリコの一行は切り分けた『マルヤキブタ』を葉っぱを皿にして食べ始めた。

 

「うまーい!」

「『マルヤキブタ』!!甘く滴る上質な油!!食欲をそそるこの香草の香り…たまらねぇ!」

「こんなうめぇもん食えるのもトリコのおかげだー!ありがとな!」

「…『マルヤキブタ』…リスト未確認…プラントティア4…現時点で参考用回収…美味…」

 

 次々と肉に手を伸ばし食べていく二人の近くでフィンも黙々と肉を食べながら一部を種へと仕舞う。そして少し離れた位置ではチョッパーとテリーと呼ばれていた狼が話していた。

 

「お前テリークロスって言うのか。オレはチョッパーだ。よろしくな!ハハハハハ、そっか!」

「おお!テリーが心を開くとは、お前面白い奴だな!そいつは『バトルウルフ』って言って、滅多な事じゃ人に懐かないんだ。さっきは食おうとして悪かった」

「もういいよ。こいつとも友達になれたしな」

 

 流石にきちんと意思を持って喋る相手を食べる気はトリコにも無いようで、先程の事は水に流し、互いの関係は良好の様だ。

 

「それにしても、丸焼きのブタが襲って来るなんて、一体どこまでシェフな島なの?」

「ここはハングリラ島ですからね」

「ハングリラ島?」

 

 ナミが島の不思議さに一周回って呆れているとトリコに着いてきた料理人である小松が島の説明を始める。

 

「豊富な食材で溢れ返るというハングリラ島。その存在は伝説とされていましたが…」

「それがここ?」

「はい」

「広い海でこんな小さな島をどうやって見つけたの?」

「いや、海を進んでたら食い物のいい匂いがしてな。で見つけた」

「あんた、どんな鼻してんのよ?!」

 

 広い海の中で島一つを嗅覚だけで見つけて辿り着いたと言う航海士に喧嘩を売るかの様な手法に突っ込みを入れていると……

 

「んナミすわぁぁーーん!!『マルヤキブタ』をアレンジしてみたよー!」

「うわあ!!」

 

 ナミの前にサンジがソースのかかったステーキのような物を差し出す、付け合せなのか飾りなのか上には小さな果実も載っている。

 

「ポイントは豊富な森の食材から作ったサンジ特製ソース。上品な香りが『マルヤキブタ』を引き立てて…」

「はむっあむあむ、うめー!!」

「ルフィ!!それはオレがわざわざナミさんのために!!」

「お前料理の天才だなー」

「って何でおめーらが食っちまうんだよ!」

 

 料理の説明をしていると一つは腕を伸ばしたルフィが、もう一つはルフィに注意をしている内に後ろへと近付いていたトリコに喰われてしまった。そしてもう一人、肉こそもう無いが残ったソースに小松が手を伸ばした。

 

「すいません…」

「てめーもかよ!!…お?」

「何ておいしいソースなんだ…こんなソースを作れるなんて感動です!!」

「あいやぁ…そう真っ直ぐ本当の事を言われると照れるんだが…」

 

 ソースの美味しさに感動してか蕩け切った顔になって満面の笑みで感想を伝える小松に流石のサンジも勢いを失う。

 

「仄かな柑橘系の香りと酸味がすごくいいです。あ、分かった!これ、ビックリオレンジの果汁ですね?」

「おまえ、分かるのか?」

「僕も料理人の端くれですから…」

「(って、隠し味にほんの一滴入れたオレンジの果汁が分かるとは、何だ、こいつの味覚)」

「あの…このソースの後に出すのは恥ずかしいんですが、もし宜しければ味を見て貰えますか?」

「ん?ああ、(ぉうめー!この芳醇な味、絶妙な塩加減!)…中々いい仕事してるじゃねーか!」

「ありがとうございます!」

 

 料理人同士で通ずるものがあるのか、互いに称え合う良い関係が出来上がった。

 

「さてと!食料は集まった事だし、サニー号に戻りましょう!って…『マルヤキブタ』は?」

 

 そこにあるのは腹がいっぱい膨れた二人の姿と骨だけになったマルヤキブタだった。

 

「旨かったぞ!」

「全部食べなくてもいいでしょーが!」

「ごちそう様でした!」

「いつもいつも…!せっかく持って帰ろうと思ったのにー!」

「いいじゃねーか!食いもんならそこら辺にたくさんあんだからよー!」

「食料が必要なら、とびきりのがある」

「ん?」

「『ハングリラ鳥』だ!」

 


 

 広い海の上を進む小さな船と大きなカラス…船の上にはカラフルな髪をした男と黒髪で赤い服の女、そしてカラスの上には緑のターバンの男が居た。

 

「輝きを放つ雄大な海とオレ…(つく)しい!!」

 

「お兄ちゃん!!相変わらずうざいこと言ってないでちょっとは船の事も手伝うし!!」

 

 兄妹らしき二人は出港してからと言うもの、何度も口喧嘩をしているが目的地を目指す上で大きな問題はなく、いつもの事とターバンの男も笑って見ていた。

 

「ん…あれは…キッス少し向こうに飛んでくれ…すまない二人共!!少し離れる!!」

 

「ココ!!」

 

「何かあったし?」

 

 ココと呼ばれる彼の目が何かを捉え、キッスと呼ばれたカラスにそちらへと飛んでもらい確かめに行く。船にいる二人も彼が意味の無い事はしないと送り出す。

 

「一瞬だったが確かに強い電磁波を感じた…そこだ!!」

 

 キッスに水面ギリギリを飛んでもらい、片腕を伸ばしてその特殊な目が捉えた電磁波の正体を手にする。

 

「これは種か…?とりあえず二人にも見せるか」

 

 キッスの飛行能力は高く置いていく事は無いだろうと二人はそのまま船を走らせているが難なく追い付いて船上に降り立つ。

 

「おかえり〜」

 

「いったい何を見つけたんだ?」

 

「コレさ」

 

「「種?」」

 

 持ち帰ってきた種を二人共まじまじと見ているが珍しい食材の知識も持ち合わせている二人でも見覚えがない代物だ。

 

「これから何を感じたんだ?」

 

「強い電磁波…生命力の様な物が収まっている。きっとこれは普通の種ではない。おそらく中に何かが居る……むっ?!」

 

 種についての所見を語っていると持っていた種の微妙な変化に気付き、咄嗟にココは種を足元へと放った。そして次の瞬間に種から風が巻き起こり何かが飛び出した。

 

「ふぅ…なんとか助かったみたいなの」

 

「「「人?!」」」

 

 種から出てきたのはふわふわな茶色の髪を肩まで伸ばしたまだ子供と呼べる女の子だった。

 

 緑の布地に茶色で模様が描かれた民族衣装の様な探検服の様な服装は雰囲気と合っていて不思議と彼女の印象を強めていた。

 

「あまり見ない技術なの、きっと…助けて頂いておいて不躾に視線を向け、失礼しました。世界政府協力独立国家プラントが第一王女、グレーヌと申します。もしご迷惑でなければしばらくの間、道行きを共にさせて頂ければ幸いです。異界の方々…」

 

 こうして遭難者の一人であるグレーヌは美食屋四天王二人とその妹との会合を果たしたのであった。

 


 

 『マルヤキブタ』を食べ切ってしまい別に手に入れる食料として『ハングリラ鳥』を提案された一行は森の中を進んでいた。

 

「『ハングリラ鳥』?」

「ああ!伝説の食材『ハングリラ鳥』。オレ達は奴を捕まえにこの島に来たんだ。まぁ奴を相手にするとなれば、命の保証はないがな!!だがそいつの肉は舌に乗せると瞬時に蕩け、濃厚な甘さとえも言われぬ香ばしさが駆け巡る!!」

「複雑でバラエティ豊か、食べた者を捉えて離さないその味は全ての味はハングリラに通ずと言う諺を生み出したほど、一度食べた者がその味を忘れられず、気付くとこの島を目指して海を泳いでいたという話も…」

「『ハングリラ鳥』どんだけうめーんだー?」

「ああ!!想像しただけで、「腹減っちまったなー!!」」

「あんたらどんな腹してんの?!」

 

 さっきまで膨らんでいたルフィとトリコのお腹が一気に萎み、音を鳴らす。普通はあり得ない肉体の反応にナミが突っ込みをいれる。

 

「伝説…回収価値あり…伝承から…複数個体…」

 

 フィンは彼方の世界で伝説と呼ばれる食材ならば回収に値すると判断し、伝承が残っているなら複数個体存在しているとプラントの分の確保を考え始める。

 

「伝説のハングリラ鳥なら、オレのフルコースメニューに入るかもしれねぇ…」

「オレの?」

「トリコさんはオードブルからデザートまで、人生のフルコースメニューを作ってるんです」

「トリコのフルコース…食いてー!!」

「と言ってもまだ全然決まってねーがな!」

「一人一人…各個人のフルコース…面白い…プラント…いや、アイランドに導入…」

 

 美食屋や料理人、他にも食に関わる存在の多くが作り上げると言うフルコースメニュー、フィンから見て()()にない考えに感心していると声がかかる。

 

「ねぇ『マルヤキブタ』の時からプラントティアとか呟いてたけど、あなたプラントの人間なの?」

 

 ナミの質問にルフィやサンジ、チョッパーといったプラントを知る人間は興味深そうにし、プラントが何か知らないトリコと小松は不思議そうにし、どちらにせよフィンに注目が集まる。

 

「…機動国家プラントが幹部、四隊長が一人『水浸』フィン、国防に食材探索、水産物管理を主に任されてる…アスカル様が後見していた麦わらのルフィ率いる一味だと気付いていた」

 

 途切れ途切れに単語で喋るフィンが普段からは考えられないくらいの長文で喋ったのはやはりルフィが居て、質問者がその仲間だからだろう。

 

「プラント…国の名前らしいですがあいにくと僕は聞き覚えがないです」

 

「俺もあちこち回ってるがIGO非加盟国にも聞いた事がねぇな」

 

「そのIGO、国際グルメ機関っていうのにこっちは聞き覚えが無いのよね」

 

「世界政府の関連組織じゃねぇんだよな?」

 

「世界政府?なんだそりゃ?」

 

「えぇ?!IGOは非加盟国であっても世界に知らない者はない組織ですよ」

 

「それを言えばこっちは世界政府を知らねぇのが驚きだぜ」

 

「「…?」」

 

 あまり興味ないチョッパーとよく分かってないルフィを除いてだが互いの常識があまりにも食い違い、通用しない事に流石におかしいと気付き始める。

 

「…『美食領域』…知らない…?」

 

「「「「「「『美食領域』?!」」」」」」

 

 ルフィ、チョッパー、サンジ、ナミ、トリコ、小松、そして声は上げてないがテリー、五人と二匹にフィンがアスカルに説明された際の例を出したりしながら『美食領域』に関する説明を行い、トリコや小松に対しては此方側の常識についても一部説明する。

 

「なるほど、異世界ねぇ。流石は偉大なる航路、何が起きるか分かったもんじゃないな」

 

「虹の霧かぁ、懐かしいなぁ。パンプキン海賊団の奴ら元気かなぁ」

 

「へぇ、ここでしか手に入らない薬草とかあるかなぁ」

 

「ちょっと待って、それなら此処は予定していた航路とは全然違う場所って事じゃない……記録指針はどうなるの?!……それに早くしないと戻れなくなったりとかは?!」

 

「巨大な政府組織が統治する中で無法者である海賊の溢れかえる海の世界…こ、怖いですねトリコさん」

 

「こっちと違う食材があるんなら楽しみだなぁ。海王類ってデカい生物を一度食ってみてぇな」

 

 各自が思い思いの反応を示している。悩んだり怖がったりと悪い反応を見せているのはナミと小松の二人しかいない。

 

「領域範囲外…元の位置戻る…別々駄目…出るのは自由」

 

「良かった…それなら食料を積んだらそのまま航海を続けられるのね」

 

「なぁフィン、アスカルも此処に来てるのか?」

 

 ナミが『美食領域』の仕様を聞いて安心していると話が終わったと判断してルフィが気になっていた事を訊いた。

 

「来てる…居場所…不明…」

 

「えっ、なんでなんだ?」

 

「…『タートルネード』の竜巻…遭難中…」

 

「『タートルネード』…捕獲レベル70の超危険生物ですよ?!それで船が、あれでも確かフィンさんって……」

 

「あぁ、だから会った時泳いでたのか」

 

「泳いでた?!遭難する様な怪物がいる中で荒れた海を?!」

 

「いったいどんな出会い方をしたんだ?」

 

「歩きながら……」

 

 そう言うとフィンは思い出すかの様にゆっくりとだが遭難してからトリコに合流するまでの流れを語ってくれた。

 


 

 アスカル様の命令で回収済みの食材を仕舞い込むと直ぐに海に飛び込んで荒れている海域から泳いで脱出した。

 

 津波で遊べる魚人族の子供には身体の作りでは勝てないけど、泳ぎのスピードでは負けてない為に竜巻で吸い寄せられてる海流に逆らう事が難なく出来た。

 

「持ち物…無事…とりあえず島目指す…」

 

 流石にどれだけ泳ぎが得意でも魚人に人魚、魚巨人の様にずっと水の中にはいられない。魚の声を聞いて一番近い陸地を探しながら泳いでた。そしたら変な声が入ってきた。

 

 『フネトヌシガタタカッテル』?……『船と主が戦ってる』?……という事は人が居るんだろう。でも仲間の気配ではない。

 

 相手がどんな人物かは分からないし、この海で主と呼ばれる相手と戦える者の所へ向かうのかは結構悩んだ。

 

 ずっとは居られないと言っても二週間は泳ぎ続ける自信があった。切羽詰まっている状況でも無いのに博打の様な行動はしなくても良いとも思った。

 

 たぶん主を倒した瞬間の衝撃が海水を伝って響いてきた。ガツン、ガツンと二発目の衝撃が主であろう気配から響いてるのに気付いて考えを改めた。

 

「面白い…」

 

 主と戦っている人物が想像よりも強いと、そして何やら面白い衝撃の使い方をしていると気付き見てみたいと感じた。そしてその船の方へと泳いでいった。

 

「おい、小松見ろよ特大の『アナゴン』だ」

 

「トリコさん加減してくださいよ〜あんなに派手に戦ったり、こんな大きい食材を載せたら、船が壊れちゃいますよ〜」

 

「良いから調理してくれよ。ドラゴンの様な凛々しい顔つきと巨体を持つコイツは硬い鱗の処置が大変だが、油がたっぷりのったとろける旨さの身を持つ最高級のアナゴなんだぜ!!」

 

「分かりました。今から捌いて来ますのでちょっと待っててください。えっと天ぷらには塩でも良いからなんとかなるけど、食材に合うレベルのタレに使える物があったかなぁ」

 

 食いしん坊と料理人だろうか、海の中から盗み聞き限りはそんなに危険な相手には思えない。それにおそらく大男と一緒に乗ってる狼には気付かれているので手を挙げながらそっと乗り込んだ。

 

「はい…タレを撃ち出す砲台の列島『タレットウ』の蒲焼ダレ……」

 

 既に回収済みの食材の中にちょうどいい代物があったので量は問題ないので一部を近くにあった皿に載せて渡した

 

「うわぁ、銃弾の雨を避けるかのような技術がないと採種出来ない希少調味料じゃないですか!!ありがとうございます……って誰ですか?!」

 

「へぇ、良いもの持ってんな。焼き鳥のタレもあるか?来る途中で手に入れた鶏に化けた『怪鳥百面鳥』があるんだ」

 

 気付いていない方は驚いたのか急に叫び出した。もう一人の方からは無事に敵認定されなかった様で良い感じに話し掛けてくれている。

 

「問題なし…他の皿…」

 

「小松渡してやれ」

 

「えぇ〜?!誰かも分かってないのに良いんですか?!いや、お皿ならありますけど…」

 

「よし、それじゃ『怪鳥百面鳥』の焼き鳥と『アナゴン』料理をみんなで食おうぜ!!」

 

 トリコがそう言うと小松は仕方ないと調理を開始した。その間はなんとなく狼と視線を合わせて遊んでいたが、中々に警戒心の強い子だ。

 

「出来ましたよ〜『怪鳥百面鳥』の焼き鳥に『アナゴン』の蒲焼丼に、天ぷらはシンプルに『おしりしお』で、最後に『サクランライス』に『リラック酢』のシャリで作ったお寿司です。タレは『タレットウ』の物を真ん中に置いてあるので足りなければ掛けてください」

 

「この世のすべての食材に感謝を込めて」

 

「「「いただきます!!」」」

 

「うおお『タレットウ』のガツンと舌に叩きつけてくる様なタレが竜の重厚感を感じさせる肉厚な身に溢れ出る旨味の強い油の『アナゴン』と見事に調和して、蒲焼丼最高にうめーー!!」

 

「『怪鳥百面鳥』の方はタレを途中で塗ってよく馴染ませながら火をいれたので良い感じです!!噛んだ時に中に閉じ込められてる肉汁と周りのタレが口の中で合わさって、美味しいです!!」

 

「…寿司…美味…高揚感…味深く感じる…凄い…」

 

「そうなんですよ〜『サクランライス』はそのままだと美味しいけど影響が出過ぎて暴れたくなってしまうんですが、『リラック酢』と合わせる事で高揚感だけを残して、より食材の味を感じやすくするんですよ。気付いてくれて嬉しいです!!」

 

「天ぷらもサクサクで最高だ!!この衣は『ウロコムギ』か?」

 

「はい、硬くて削り出すのは大変でしたし、少し磯の香りがする小麦なんですが魚介にはちょうどよくマッチしてサクサクに仕上げられました!!」

 

 なんとなく手土産…とは少し違うが相手の欲しい物を渡せば話もスムーズになるかと思っての行動だったがなんとなく雰囲気は楽しめ、泳いだ疲れが取れる良い食事となった。

 

「「「ごちそうさまでした!!」」」

 

「それでお前はいったい何処の誰でなんて名前なんだ?俺はトリコだ」

「改めて考えると何一つ知らない人とご飯食べてたんですよね。僕は小松と言います」

「名前フィン…海域探索中に遭難…島まで泳ぐつもりだった…何処か陸まで乗せて欲しい……」

 

 互いの関係性が零だったとは思えない状況だったけど、実際に何も知らない相手なのでならって自己紹介と自身の状況を端的に話す。

 

「うわ…海の真ん中でそれは災難でしたね」

「フィン一人だったのかそれは?」

「仲間二人…リーダー?…上司?…それとその娘…バラバラに逃げた…」

 

「それならその人達も助けにいかないと?!」

「…問題ない…二人…僕より強い…合流方法ある…基点…近くの陸地…」

「それなら途中まで俺達と一緒に行こうぜ。ちょうどこの海域にある『ハングリラ島』を目指してたんだ」

 

 プラントに所属している以上、知らない食材は少ない方だと思うがそれは自分の世界での話、おそらく彼らは彼方の世界の人間、その知識があるのはこの海域では強い。それに陸地を目指しているのであれば好都合でもある。

 

「…よろしく……」

 

「よし、それじゃ腹も膨れた事だし島を目指すとするか、船を向こうに進めるぞ。あっちから美味い匂いがする!!」

 

「……匂い?」

 

「トリコさんは物凄く鼻が良いんです。それで目的地は食材が溢れてる島なのでまず進路に問題はないかと……」

 

 嗅覚だけでまだ見ぬ島のある方向を認識出来るとは……謎の衝撃と合わせて彼方の世界の人間は侮れない。

 

 そんな事を考え、道中でも食材を手に入れながら『ハングリラ島』に辿り着き、探索をしていた所でトリコがチョッパーを見つけたのである。

 

 


 

 

「色々と美味そうなもんくってたんだなぁ〜」

「プラントは偉大なる航路においても精鋭って話だけど、それにしたってやばいわね」

「おれ『タートルネード』には会いたくねぇぞ……」

「料理人としてはその食材は一度使ってみたいもんだぜ」

 

 『ハングリラ鳥』がいるであろう山を目指す道中でトリコ達とフィンの出会いを聞いてそれぞれ反応を示しているとそう言えばとチョッパーがトリコ達に訊ねる。

 

「でもどうして『ハングリラ鳥』が山の頂上にいるって分かるんだ?」

 

 美食屋と言う食材のプロとも言えるトリコだからこその視点があり、トリコは笑いながら答える。

 

「見てみろ、ハングリラ島の植物は成長が異常に早い。にも関わらず山頂には草一本生えてねぇ。つまり、植物が育ち切る前に食っちまうほどの食欲を持つ者…伝説の鳥『ハングリラ鳥』がいるに違いねぇって訳だ!」

「なるほどねー」

「ガルル…」

 

 ナミが関心したその時、先頭にいたテリーが警戒を示す。トリコ達の前に頭の付近にユニコーンの角のような物が刺さった巨大なクマが現れた。

 

「こいつはやべぇぞ!」

「何なんだよ、こいつらー!!」

「『一角ベアー』!!」

「やろうってのか?『ゴムゴムの…」

「止めとけ、こいつらの肉は硬くて食えたもんじゃねぇ」

「はぁ?」

 

 攻撃しようとしたルフィをトリコが制し、聞いてもいない食材としての特徴を伝える。そうして一気に駆け出した。

 

「だから…逃げろ!!」

「えええーーー?!」

 

 驚きつつも『一角ベアー』たちの攻撃をかわしながらトリコの後に他の面々も続く、フィンと小松は少し慣れている様にも見える。

 

「ちょっと?!さっきみたいにちょいちょいって倒しなさいよ!!」

「食う目的以外では獲物の命は奪わねぇ!!それがオレのルールだ!!」

「ふーんそっか。んじゃ全力で逃げる!!」

「『ゴムゴムのぉ」

 

 しかしトリコ達の行く手を『一角ベアー』が塞ぎます。そう言うとルフィは『一角ベアー』の角に両手を掴み腕を伸ばしま。

 

「スタンプー』!!」

 

 『一角ベアー』は顔にまともに喰らい、その隙を見て逃げるトリコ達。だが『一角ベアー』はなおも追いかけて来る。 

 

 どうするかと皆が考え始めたその時、もの凄い風が吹き、その風に小松、ナミ、チョッパーが飛ばされ、木に捕まったルフィが腕を伸ばし、三人を救う。

 

「あれは!!」

「何だ?」

「この威圧感…間違いねぇ、こいつが『ハングリラ鳥だ』!!」

 

 『ハングリラ鳥』鳥獣類に分類される捕獲レベル3の猛獣であり、トリコ達が求めている伝説の食材がその姿を現した。

 

「グッ…うおおー!!ぬうっ!!」

 

 トリコが投げ飛ばし打ちつけられるハングリラ鳥。だがすぐに起き上がり、真っ直ぐナミ達の所へ向かう。

 

「ナミさーん!!あっ?!てめっ犬!!」

 

 サンジが追いつく前にテリーが小松とナミ、チョッパーを連れてその場から遠ざける。サンジも『ハングリラ』に攻撃を仕掛ける。

 

「『グリル…おわっ!」

「サンジ?!『重力強化(ヘビーポイント)!!」

 

 必殺技を打とうとしたが飛ばされ、チョッパーもパンチを仕掛けるが、地面に叩き付けられた。

 

「チョッパー!!」

「『ゴムゴムの(ピストル)』!!」

 

 ルフィも必殺技で応戦するが攻撃は鋼のような鎧に当たりびくともしない。

 

「こいつ硬ぇ!」

「まるで鋼鉄の鎧を着てるみてーだ!!」

「来るぞー!!」

 

 羽ばたいて一気に四人に近付くと高速で何度も連続で嘴を突き刺そうとする。避け続けているが鋭い攻撃に対して反撃できずにいる。

 

「鋼鉄の鎧を纏ってるわりには、素早いじゃねーかよ……」

 

「『突水(ツキミズ)』!!」

 

 その瞬間、少し離れた位置から小さな水の弾丸が差し出されている嘴目掛けて放たれ大きく嘴を弾いた。衝撃が強く警戒したのか風を巻き起こして四人を吹き飛ばしながら下がる。

 

「助かったぜフィン!!」

「銛なのに遠くに攻撃出来るのか、面白ぇな!!ありがとう!!」

「あれは魚人が使ってた奴と一緒か…? とりあえず助かったぜ!!」

「フィン!!ありがとう!!」

 

 攻撃を弾いてくれたフィンにそれぞれ礼を言って『ハングリラ鳥』との戦いは仕切り直しになるが突破口は見えない。

 

「何とかなんねぇのか?」

「奴が硬ぇのはあの羽で体全体を覆っているからだ。だがなそこまで硬ぇ物で必死に覆ってるって事はそれだけ中に柔らかくて旨い物を隠してるって事だ!!」

「そうか!!」

 

 なんの解決にもならない考察だが、その肉を食べた時の事を考えている。倒せなかった事を考えないその姿にルフィも笑みを浮かべる。

 

「けどなぁ…ああ飛び回られたんじゃ打つ手がねぇか!!」

「落とせばいいんだな?」

「え?」

「おう!!オレに任せろ!!」

 

 落としたらトリコにも打てる手があると判断したルフィは拳を構えながら『ハングリラ鳥』の前まで一気に飛び出した。

 

「『ゴムゴムの銃乱打(ガトリング)』!!うりゃりゃりゃりゃりゃ…うおえぃ!!」

「やるな!!」

「やった!!

「いや、攻撃自体は効いてねぇ!!」

 

 そのまま連続で放った攻撃に姿勢を崩して『ハングリラ鳥』も地面に落ちる。しかしサンジの言う通り内側まで攻撃は通っていない。

 

「『ハングリラ鳥』よ!!お前に敬意を表し…」

 

 ルフィと代わるようにトリコが話しながら『ハングリラ鳥』へとゆっくり近付いて…

 

「何だ?」

 

 トリコのルーティンである両の手を打ち鳴らす動作をしながら、『ハングリラ鳥』を見据え…

 

「オレも見せよう…人間の武器を!」

 

 それぞれの手が人間の武器、フォークとナイフを想起させる煌めきを見せ…

 

「金属音?」

 

 打ち鳴らす時になるのは人体からなる音とはかけ離れている金属音…

 

「この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます!!」

 

 手を合わせて食前の挨拶を行うと構えた腕を『ハングリラ鳥』へと振り被り…

 

「うおおお…『フォォォォーク』!!『ナイフ』!!」

 

 身体を貫通するかの様な衝撃と共に『ハングリラ鳥』を突き刺し、切り裂くかの様な鋭い一撃を返すように放った。

 

「やるな!!」

「凄い!!」

「さすがトリコさん!!」

 

 完全に攻撃が決まった『ハングリラ鳥』は先程までの動きが出来る訳なく…

 

「ごちそう様でした!!」

 

 そう言うトリコの背後で落ちて戦闘は終わった。その様子をフィンもじっと見ており…

 

「覇気でも能力でもない…武術とも少し系統が違う力…危険…でもないか…」

 

 その力が振るわれる理由は食の為、それ以上の理由はトリコにない。近くで見ていたフィンが一番分かっており、そっと喜んでいる輪へと近付くのだった。

 


 

 島の西岸部でずっと船の修復を行っていたアスカルだが、トリコ達が『ハングリラ鳥』を倒したぐらいでようやく船の修理を終えた。

 

「ふぅ、全機能の回復までは持ってる素材じゃ無理だったが…これなら帰りくらいは保つだろう」

 

 『美食領域』の詳細が分かっていなかったから少数の編成で来たが懸念していた悪魔の実の能力は問題なく使えている。

 

 領域内と領域外の接続は絶たれているがプラントや各地に置かれている分身等に影響は無さそうだと感覚で判断出来ていた。

 

 そのアスカルの感覚は正しく、以前の余裕が無かったビッグマム戦時と同じく、土分身が独立して活動している状況になっている。

 

 命じてきたチームはあまり意味が無かったのだが、良い経験になったと割り切り、次があるなら人数を増やしても大丈夫だななんて考えていた。

 

 特に船などに問題が起きた時の事を考え、技術者を含めて人数を増やす事をアスカルは心に決めた。修理が思ってたより面倒だったのも影響しているだろう。

 

「一人用の土船や特注の探索船に頼り過ぎだな。似た状況が無いとは言えんし色々と把握はしといた方が良さそうか?」

 

 専門の者を乗せると決めたがそれはそれとして危険な場所には何故か国王であるアスカルが出向く事が多いので少しばかり勉強も決意した。

 

「さて、暗くなるのに動くのは危険だが…そろそろ動き出すとしよう」

 

 


 

 食料調達に出た面々を待ち続けているサニー号では普段騒がしい者も力をなくしていた。

 

「は…腹…減った…」

「私も腹ペコでお腹と背中がくっつきそう…最も私、お腹も背中もないんですけどー!ヨホホホホホホホホホホホ…」

 

 



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消えたナミと小松、アマタのフルーツを追え集うプラント美食領域探索隊!!


三人の誕生日が終わって企画も最終日です。
正直、一番最初の口上で使う食材考えてる時が一番楽しかったです。


 

 誰かが言った…紫色の羽の隙間から見える半透明な身はまるでゼリーの様で、口に含むとほのかな甘みと花の香りが広がる蜂『アケビー』がいると…

 

 誰かが言った…食べると特殊な能力が身に付く悪魔の実があると…その中には食べると体がゴムのようになる『ゴムゴムの実』があると…

 

 誰かが言った…雪が降る冷たい大地に氷の様に透明感溢れるひんやりとした実を付けるオリーブの木『コオリーブ』の木があると…

 

 誰かが言った…食べると特殊な能力が身に付く悪魔の実があると…その中には食べると自在に大地に干渉し操れる様になる『ツチツチの実』があると…

 

 世はまさにグルメ時代であり大海賊時代、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を求め冒険する海賊蔓延る中、未知なる味を求めて、探求する大地の王の時代…

 


 

「うめー!」

「この香ばしい何とも言えねぇパリパリな食感の皮の…その下には高級和牛のような肉汁滴る下振りの肉が広がって舌の上に乗せればすーっと蕩けちまう。まるで油ののった絶品の大トロみてーに!!う…旨ぇ!!」

「さぁ、どんどんやってくれー!!」

「スープもいい出汁が取れてますよー!!」

 

 料理された『ハングリラ鳥』に感動するトリコ、それに続くように皆がどんどん食べていく。

 

「いい匂い……おいしい!!」

「うまうまうまうま…」

「こいつは最高だぜ!!」

「ああ、トリコ達のおかげでうめーもんがいっぱい食えたよ!!」

「何言ってんだ。こうして『ハングリラ鳥』が食べられるのもルフィ、お前達がいたからだぜ?」

「こんなにおいしいんだもの。トリコのフルコースには入るんでしょう?」

「んー…それなんだけどなー」

「えー?伝説の食材じゃなかったのか?」

 

 伝説とも言われ、これだけの美味しさだと言うのにフルコースに入らない事に驚いたり、不思議に思う面々に対してなんて事のない様にトリコは言う。

 

「最高には違いないんだけどな。だが、世界にはまだまだ旨い食材がたくさんあるんだ。そう焦って決めるもんじゃねーよ!!さあ、どんどんやろうぜー!!」

「おう!!」

 

 トリコとルフィ達が宴を開いている所から少し離れた場所で小松がスープを熱心に掻き回していました。

 

「よいしょ…っと…これ入れて…」

「ねぇ、スープのおかわり貰える?」

「ああはい。ちょっと待って下さい!」

 

 ナミがスープのおかわりを貰いに来ると小松はリュックから何かを取り出しました。

 

「よいしょ…よいしょっと…」

「それは?」

「あは…スパイスの種、『スパイシード』です。さっき拾いまして…これを入れるとスパイスが効いて、スープがまた違った味に…」

 

 小松が楽しそうに説明していると森からガサガサと音が響いてくる。何事かとそちらへ視線を向けると…

 

「は!」

「んん?」

 

 森の奥からコアラのような動物数十匹がじっと二人を見つめ、狙いを付ける。

 

「「うわあ?!」」

 

 宴の騒ぎでその叫び声も届かず、その場に残されたのはスープのセットとリュック、箱からこぼれ落ちた『スパイシード』だけとなった。

 

「はー食った食ったー!!」

「旨かったぜー『ハングリラ鳥』!!」

「ホントにお前のフルコースにこの『ハングリラ鳥』を入れねーのか?」

「あーそれなんだがなー…」

「え?」

 

 トリコが『ハングリラ鳥』をフルコースメニューに入れない理由を詳しく話そうとするとテリーからチョッパーが何かを聞き驚きの声を上げる。

 

「あ、どうした?」

「小松とナミがいないって!!」

 

 突然の情報に驚きながらも小松とナミが攫われた現場に近付くトリコ達。

 

「あー?何だーこの足跡…」

「スンスン…何かいい匂いがする」

「スンスンスン…上質なココアの香り…この足跡、間違いねぇ!『ココアラ』だ!」

 

 特別鼻の良いトリコだからこそ分かる情報から犯人を突き止めるが特殊な食材に詳しくないルフィ達には聞き覚えがない相手だ。

 

「『ココアラ』?」

「オレも見た事はねぇが、捕獲レベルは3。肉は不味くて食えたもんじゃねぇ。だが、背中には最上級の甘いココアの実が成っているそうだ」

「そんなファンシーな奴らがナミさん達を襲ったってのか?」

「襲った…?…何があった……」

「フィンお前何処に行ってたんだ?」

「辺り…探索…ごめん…今戻った」

 

 手短にナミと小松が居なくなった事を伝え、『ココアラ』についての話に戻す。

 

「多分攫って自分達の巣に持ち帰ったんだ。『ココアラ』は雑食!!どんなもんでもエサとして蓄えちまう習性がある。そして奴らは、『アマタノフルーツ』の木に巣を作る!!」

「『アマタノフルーツ』?」

「メロン、スイカ、リンゴ、マンゴーなどの数多の果物の旨味、甘みをあわせ持つフルーツ!!別名“大地に実る フルーツパーラー“!!くぅ~、食いてぇー!!」

「って仲間の心配より食いもんのかよ?!」

 

 優先順位において食が第一にくるトリコでは最早当たり前といった所だが、彼の頭の中は既に『アマタノフルーツ』でいっぱいになっている。

 

「それで、そいつはどこにあるんだ?」

「『アマタノフルーツ』は、とびきり甘い実を付けるために最も太陽が当たる場所に生息すると言われている!!」

 

 トリコ達は条件に合う場所を探すために崖の上に向かい、到着すると直ぐにその存在を捉えた。

 

「見つけたぜ…」

「これが…」

「間違いねぇ!!『アマタノフルーツ』だ!」

「ナミすわぁーん!!今行くよー!」

「待ってろー!!『アマタノフルーツ』!!」

「オレ、小松が不憫でならねぇ…」

「言ってやるな……」

 


 

 一方で食料が尽きた状況でほぼ一日が経過しようとしているサウザンド・サニー号。

 

「へぇ…ルフィよ…メシはどうなったんだよ?!…ルフィよ…」

「ウソップ…お前随分老けたな」

 

 ウソップのボロボロ、ヨレヨレ具合にむしろ感心するかのように言葉も漏らすゾロ。

 

「このままじゃブルックみてーに骨だけになっちまうんじゃねーか?」

「ナイススカルジョーク…ヨホホホホ」

「ッフフ…それにしても…」

 

 ウソップも喋れてはいるし、他の面々も冗談を言ったり、笑う余裕はまだある様だ。しかし、何かが起きているのではないかとロビンは島へと視線を向ける。そしてその様子を上空から見ていた者が二人。

 

「先に行っててなの…」

「ん、彼らは知り合いかい?」

「一方的に知ってる相手ではあるけど、ただプラントの人間としてお腹を空かせた人を放っておけないだけなの」

 

 「海上じゃないなら追いつくのも無問題なの」と言って乗せて貰っていたキッスの背中から飛び降り、甲板へと着地する。

 

 着地する前からゾロはその気配に気付いていたが敵意が無いためにとりあえず相手の反応を待っている。ロビンもいきなり手を出したりはせず、相手を見据えるとその顔で直ぐに気付く。

 

「貴女…プラントの……?!」

 

「ご存知ならば説明短縮なの…プラントの人間としてお腹の鳴る音は見過ごせないの…『開封(オープン)』!!」

 

 そう言いながら幾つも放り投げた種の中から回収した食材や持ってきていた料理を取り出して広げる。

 

「ふふふ、召し上がれなの!!」

 

 豪勢な料理の数々を並べ終え、そう言って笑い掛ける少女を前にして一部のクルーは歓声をあげて喜んだ。

 


 

 ナミと小松と『アマタノフルーツ』を目指して一番高い山を目指して突き進むルフィとトリコ達。

 

「何だ、この蒸気は?」

「間欠泉?うわーたっ!」

「気を付けろよ!どっから吹き出すか分かんねぇ!」

「スゲェあちぃよこれ!……あめー?!これ、チョコレートだ!!」

「何ー?ホントかー?」

 

 あちこちから吹き上がる間欠泉、一部掛かって口に入ったチョッパーがその正体を告げるとルフィは目を輝かせている。

 

「目輝かせてねーできっちり走れ!!こうしてる間にもナミさんが!!…お?」

「何だ?」

「少し…マズイ…」

「でけーのが来る!」

「え?」

「うわー!」

 

 チョコレートの間欠泉がルフィとトリコ達は高々と飛ばされ、落下地点が川である事に気付きルフィ達は焦り出した。

 

「あちぃー!」

「うわああ!やべぇ、川だ!」

「えーー?」

「どうした?」

「悪魔の実の能力者は、泳げねーんだよー!」

「何ー?」

「うわああ!」

 

 一行は川へ落ちルフィとチョッパーは溺れると思い込んで藻掻くがどうも様子がおかしいと気付く。助けるつもりでいたフィンも川が水でないと直ぐにわかった。

 

「落ち着け…」

「あり?これ水じゃねぇ!」

「クリーム…?ホイップクリームの香りだ!」

「旨ぇ!」

「よーし、もう少しだ!」

 

 普通の水では無かった為に溺れる事なく、全員が川の流れにのってそのまま山を目指していく。

 

「よっし!!ッヒヒ…お?」

「この森を抜ければ『アマタノフルーツ』に到着だ!」

「お?」

 

 川を上がって後少しだと意気込んでいるとルフィの後ろから呻き声が耳に届く。

 

「何だよ今の!!」

「やはり、『カーステ・レオ』!」

「『カーステ・レオ』?」

 

 『カーステ・レオ』哺乳獣類に分類される捕獲レベル4の猛獣が立ち塞がる。

 

「捕獲レベル4。やつの鬣はふわふわのカステラで絶品だぜ!!」

「重低音でウーハーウーハーってシャレのつもりか?」

「オレ達はナミの所へ行くんだ!!邪魔する奴は誰だろうと許さねぇー!!」

 

 近付こうとしたルフィだが、『カーステ・レオ』の咆哮と共に飛ばされてしまう。

 

「わああー!」

「ルフィ?!」

「何だ?」

「音の衝撃波だ!!」

「奴のカステラスポンジは音を放つ。巨大なスピーカーってとこだな!!」

「新素材…確保したい…」

「何か手はないのか?」

「そうだな…奴の攻撃を正面に集められるか?」

「よし!」

 

 サンジとテリーが近付きますがルフィと同じ様に衝撃波を食らってしまう。しかし、それだけの隙が作れれば十分とトリコが動く。

 

「よし今だ!」

「トリコ!」

「奴の音波攻撃は正面のみ!!側面からならいける!!3連…『釘パンチ』!!」

 

 トリコの攻撃を喰らった『カーステ・レオ』は思い切り吹き飛んで倒れた。

 

「すっげー!!何だ今のー?」

「釘を打ちつけるかのように数回のパンチを1箇所に打ち込む。『釘パンチ』だ!!」 

「ガルル…」

「お?」

「まだ…居る…」

 

 目を輝かせるチョッパーとルフィにトリコは説明するが…テリーの唸り声に感付くサンジとフィン。すると森の中から複数頭の『カーステ・レオ』が現れた。

 

「こんなにいやがったのか…」

「しかもでけーし」

「こいつらは群れで動く。7頭の『カーステ・レオ』と3頭の小さな『カーステ・レオ』…囲まれちまったようだな」

「ええー?!」

「『フライ返し』!!」

 

 絶対絶命かと思っていると何処からか声が響き、『カーステ・レオ』を防ぐ。

 

「お?」

「何て美しい登場のしかた…!!」

「サニー!!」

「『ポイズンライフル』!!」

「あ…!!」

 

 続けて毒攻撃を喰らった『カーステ・レオ』達も倒れその場に余裕が生まれる。

 

「『エンドルフィンスモーク』!!」

「今度は何だ?」

「静かになりやがった…」

 

 突如に『カーステ・レオ』の近くに煙が立ち込めると残っていた奴らが大人しくなる。

 

「『種機関銃』!!」

 

 煙の範囲外に残っていた『カーステ・レオ』達には何処からか種が飛んできて、その身を吹き飛ばす。

 

「やあ、トリコ」

「ココ!!リン!!」

「やっほーフィン兄」

「来てたか…グレーヌ…」

「トリコー!無事で良かったしー!」

「うおー!天使が舞い降りたっ!」

「すげー!トリコの仲間にフィンの仲間か?」

「そう…」

「ああ、まぁな。って、何でお前らがここに?」

「トリコが、『ハングリラ鳥』捕獲に出発したと聞いてね。『ハングリラ島』の秘密を教えに…」

 

 助けにやってきた仲間の登場に喜びつつ、何故来たのかを訊ねるとココが何かを話そうとした所で…

 

「つーかあたしを置いて行くなんてトリコ酷いしー!!この島探すのすっごい苦労したし、超ムカつくしー!!」

「そう言えば…」

 

 リンが割って入り話題が途切れる。ココは周りを見渡しこの場のおかしな点に気付いた。

 

「小松君はどうした?」

「それが、ココアラに攫われちまってな!!」

「え、何だって?」

「ああ、オレ達の仲間も一緒なんだ!」

「ええ?」

「この動物ぱねぇ!!喋ったー?!」

 

 サニーがチョッパーに驚いて叫んだその時、一度倒された『カーステ・レオ』達が再び起き上がり始めた。

 

「ち…復活してきちまったな!」

「こいつらの相手してる暇なんかないのに!」

「早く、ナミを助けに行くぞ!!」

「しっかしこいつら厄介だぞ?」

「美しい…!!仲間を思う心、それは何よりも美しい!!トリコ、ここはオレ達に任せて小松を!!」

「あたし達だけで、大丈夫だし!」

「お前ら?」

「さあ、君達も早く!」

「すまねぇ!!」

「私はフィン兄達についてくの」

 

 急いで仲間を助けたいと思っている面々を見てこの場での戦闘をサニー、ココ、リンの三人が買って出る。グレーヌはトリコやルフィ達のチームに加わる。

 

「じゃあ頼んだぜ!絶対『アマタノフルーツ』を手に入れてみせるからなー!!」

「え?『アマタノフルーツ』?」

「小松君は?」

「何かトリコの目的だけ、皆とズレてね?」

 

 トリコだけが小松を助ける為ではなく、『アマタノフルーツ』目当てである事に驚きと呆れが見えるが請け負った以上は関係ない。

 

「ま、何にしても…相手にしてやっか!!」

 

 サニーがそう言うと、ココとリンも戦闘態勢に入り、『カーステ・レオ』に向き直り、戦いを始めた。

 

 一方で『カーステ・レオ』の縄張りを通り抜けたトリコは何やら思案している顔つきで走り続けている。

 

「どうしたトリコ?」

「いや…『カーステ・レオ』は何故捕獲レベルが自分達よりも低い『ココアラ』を襲わなかったのかと思ってな」

「はぁ?」

「さっきの『カーステ・レオ』のエリアを『ココアラ』達も通った筈だ。小松達を抱え早く動けない『ココアラ』は『カーステ・レオ』にとって絶好の獲物。だが奴らは腹を空かせていた。何か『ココアラ』を食わなかった理由があるはず。嫌な予感がするぜ…!」

 

 何か予想外の事態が待ち受けているのではないかとトリコが美食屋としての勘を働かせてる頃、『ココアラ』の群れに捕まった小松とナミは…

 

「放しなさいよ!お化けコアラ!この」

「んん?これは!『アマタノフルーツ』!は…初めて見ましたよ!感動ですー!」

「はー?」

「ああ…どんな味なんだろう…どう料理すれば素材が引き立つんだろう…!」

「そんな事より、あんた、この状況考えなさいよ!」

「え?」

「え?」

「ええ?」

 

 二人を覆う影の主の方向を見るとそこには『ココアラ』なんかじゃ比較にならない程に大きいコアラが()()が立っており恐怖で叫び声をあげる。

 

「あの声はナミさん!!うおおお!!」

「サンジ!!」

「んナミすわあああーーーん!!」

「…『ココアラ』の…群れ?!」

「ルフィ!!サンジ君!!」

「トリコさん!!」

「ナミ!!」

「あれは…!」

「『ドツクゾコアラ』?!奴らがボスか!!『ココアラ』が成体になると『ドツクゾコアラ』になるって話だが、あそこまででかい『ドツクゾコアラ』なんて聞いた事がねぇ!!」

「ガルル」

「『カーステ・レオ』が『ココアラ』を襲わなかった理由が分かったぜ!!『ココアラ』のボス『ドツクゾコアラ』達を恐れていたんだ!!」

 

『ドツクゾコアラ』達が一声上げると、『ココアラ』達も反応する。

 

「あいつら本性を現しやがったな?」

「やれやれ。こいつらを倒さねーとどっちみちナミさんを助ける事は出来ねぇって事か!!」

「何だ、この速さ?!」

「戦闘態勢に入った『ココアラ』の捕獲レベルも3じゃすまねぇって事か!!」

「おい、トリコ!!」

「ルフィ、トリコ!!ってええー?!」

「あたしもいくの!!」

「付き合う…」

「っておい?!」

 

 『ココアラ』の群れを無視して『ドツクゾコアラ』達を目掛けて駆け出すトリコとルフィ、そしてフィンとグレーヌ。

 

「ここはお前らに任せた!!」

「ええー?!」

「分かった!ルフィ!トリコ!ナミさんを頼む!」

「おう!!」

「一匹は請け負うの!!」

「任せろ…」

「ナミを助ける!!」

「あのー僕はー?」

「ルフィ達の邪魔はさせねー!」

 


 

 何やらずっと騒がしい様子の島と何時までも帰ってこない仲間から何かあったのではないかと皆が思い始める。

 

「何か騒がしいわねぇ」

「しゃーねーな。このまま待っててもらちがあかねぇ!!島の裏側まで船を廻してみるか…」

「よし、腹も膨れた事だしばっちりだ」

「ヨホホホー私も働きますよー!!」

「とっとと、帆張るぞー!」

 

 グレーヌのおかげでお腹いっぱいになった面々は元気に船を操り、島の裏を目指すのだった。

 


 

 二匹揃っていれば戦いはきついどころの話ではないとフィンは『ドツクゾコアラ』の分断の為に先駆けて動いた。

 

「魚人空手応用槍術…擬似奥義…『均屠馼(ナラズモン)』!!」

 

 黒く染まった槍はまるで黒馬が走る様に飛んでいき、通り道の全てを均し、屠っていく。そして標的である『ドツクゾコアラ』に刺さる…ではなく衝撃だけを伝えてピタリと静止し、次の瞬間に貫通した水が『ドツクゾコアラ』を吹き飛ばした。

 

「よし、下まで転がってるの!!こっちはあたしとフィン兄に任せてなの!!」

 

 そう言うとグレーヌとフィンは吹き飛ばした『ドツクゾコアラ』を追いかけて、山を駆け下りていった。

 

「強い…」

 

「直接の攻撃じゃないとはいえフィン兄の覇気を込めた一撃を耐えきるってヤバいの」

 

 二匹の『ドツクゾコアラ』が居たがグレーヌとフィンが請け負った方が強さを感じた。それはおそらくトリコとルフィも感じ取っていただろう。

 

「おかしい…」

 

「ボスだとしたらこっちの筈なのに二匹の関係に差を感じなかったの…番って訳でも無さそうなのに…」

 

 体格からしてオスとメスではある様だが番ならば見られるそれらしい反応が一切ない。そうなってくると群れの中での序列が分からなくなる。

 

「それだけじゃない…手応えと威力…差がある…」

 

 フィンは幾らこの『美食領域』の動物が規格外だとしても覇気を纏った奥義で落としきれないとは思っていない。

 

 何よりも普段と比べて技の与えた結果が大きく劣っている様に感じられたが故におかしいとこぼしたのだ。全く効果が無い訳では無いが何処か覇気が弱い、それはグレーヌにも心当たりがあった。

 

「来る途中で海で戦ったけどダメージが少なかったの…これは『美食領域』だからなの?」

 

()()()()()()()…此方だけの技術…使いにくいのかも……」

 

「でも、悪魔の実の能力はそんな様子は見られなかったの……」

 

 自身はもちろん、ルフィやチョッパーを含めて使いにくいとか、いつもと違うならば気付く筈だ。彼方に悪魔の実があればいくら不味くても食材の知識豊富なトリコが知らない筈がない。

 

 おそらくだが悪魔の実は此方の存在…それなのにこの領域内においても問題なく作用する。その不自然の謎を解明しなければ答えはでないだろう。

 

「来る…『突水(ツキミズ)』!!」

 

「考えるのは倒してからなの!!『弾種(ポップシード)』」

 

 向かってくる『ドツクゾコアラ』に対して構えるとフィンが出だしを封じる様に水を飛ばし、グレーヌは妙に高めの地熱を利用して弾ける種をばら撒いて飛ばした。

 

 『ドツクゾコアラ』は水を殴って壊すと勢いを殺さずに二人の方へ突っ込んでいく。『弾種』は『ドツクゾコアラ』な速度に負けて殆どが当たっていない。

 

「…魚人柔術応用槍術…『水心刺(ミコシ)』『昇龍(ショウリュウ)』!!」

 

 近くに山があり、間欠泉がある事から水脈があると判断したフィンは槍を地面に突き刺すと水では無いがチョコレートを引っ張ってきて地面の下から空へと刺し放った。

 

 流石の『ドツクゾコアラ』も地下から引き上げられたチョコレートを理解できずに諸に食らってチョコレートごと吹っ飛んだ。

 

「トドメなの!!『圧種(アッシュ)』『開封(オープン)』!!」

 

 すかさずグレーヌが圧力や運動エネルギーごと種の中に種を詰め込んで封じ込めた代物を相手に撃ち込む様に開放する事前準備の必要な大技を放った。

 

 体勢が大きく崩れ、まだ着地もしていない空中での狙い撃ち、それが『ドツクゾコアラ』に当たるその瞬間に重低音が響き渡った。

 

「なんで『カーステ・レオ』が?!」

 

「獲物…横取り…違う…助けた?」

 

 『ドツクゾコアラ』に当たろうとしていた種は周囲から届いた『カーステ・レオ』の衝撃波によってそらされてしまった。

 

「『カーステ・レオ』が『ココアラ』を襲わなかったのは『ドツクゾコアラ』を恐れてじゃないの…こいつらは同じ群れだったの!!」

 

「『ドツクゾコアラ』同士…序列の謎も…分かった…きっと上がいる…『ドツクゾコアラ』…ボスじゃない!!」

 

 グレーヌとフィンは『カーステ・レオ』が『ドツクゾコアラ』を庇った事でようやくこの場においての状況を把握出来た。

 

「…四隊長が一人フィンに命令(オーダー)します。一分で『カーステ・レオ』を倒し切りなさい」

 

「…!!…了解いたしました!!」

 

 共闘されればいかにグレーヌとフィンが実力者であっても一筋縄ではいかない。グレーヌは前衛ではない自分が『ドツクゾコアラ』相手に問題なく保たせられる時間を考えた。

 

 そしてフィンが『カーステ・レオ』を倒し切る時間を考えた。その上で妹ではなく王族として命じ、フィンもそれに応えた。後はグレーヌは『ドツクゾコアラ』を封じるだけだ。

 

「私に従うの…『種竜(シードラゴン)』!!」

 

 『種竜』…種でありながら込められた養分だけでは満足せずに竜の形をとって周囲のありとあらゆる生物を喰らい尽くす食欲旺盛で危険な種。

 

 制御下に置くだけでも至難の技であるそれを自在に操って戦わせるなんて真似は出来ない。それでもぶつけ合わせる事くらいは可能だ。

 

「眼の前のココアを喰らい尽くすの!!」

 

 種は堅固な殻で守られおり、生半可な攻撃ではひび一つ入らず、それでいて小さい為にスピードも速い。欠点は操れる時間が三十秒程度な事ぐらい。そして時間制限も上手く使えば問題はなくなる。

 

「今なの!!『芽吹け』!!」

 

 『ドツクゾコアラ』の足元に潜り込ませた『種竜』に働きかけて無理やり芽吹かせる。グレーヌは芽吹かせるまでは出来てもモーダスやホーニィの様に成長を操作する力は無い。

 

 だがそれも芽吹くことで解放される種ならばなんの問題もない。『種竜』は芽吹いた瞬間に喰い漁り蓄えた養分でポップグリーンもかくやという速度で一気に成長する。

 

 双葉が芽吹いたかと思うと急速に伸びながら『ドツクゾコアラ』へと絡みつき、瞬く間に大木へと変わる。さらに幹を太くしてさらに高く成長し、『ドツクゾコアラ』も中程まで押し上げられ、身動きを封じられる。

 

「助けようとすれば衝撃波が『ドツクゾコアラ』にも当たるの。ましてやそれ以前に…」

 

「『カーステ・レオ』はもういない!!…魚人空手応用槍術…擬似奥義…『突槍鬼瓦(トソウオニガワラ)』!!」

 

 動けない『ドツクゾコアラ』に対して衝撃の全てを余すことなく叩き込み、大木の中で『ドツクゾコアラ』は意識を完全に失った。

 

「ナイスなのフィン兄!!それじゃ…」

 

「急ぎ…合流…」

 

 まだ見ぬ『ココアラ』と『カーステ・レオ』を従える本当のボスが巣の中に潜んでいる。もう一匹の『ドツクゾコアラ』と戦っているルフィとトリコの場所へと二人は駆け出した。

 


 

 場面はフィンによって離されたもう一匹の『ドツクゾコアラ』との戦闘開始へと戻る。

 

「ルフィ!!」

「トリコさん!!」

「ルフィ大丈夫か?」

「おお」

「奴めこりゃ捕獲レベル5ってのははったりくせーな!!」

 

 『ドツクゾコアラ』は挑発するかの様に木の上でジャンプして、勢いをつけると攻撃を仕掛けてくる。

 

「うわっ?!」

「やるな!!」

「おい、お前!!ナミを返せ!!」

「そうだ!『アマタノフルーツ』を寄こせ!」

「ええー!僕を助けに来たんじゃ…」

 

 救助ではなく『アマタノフルーツ』目当てなトリコに小松は驚愕している。

 

「うがっ!!」

「ルフィ!!」

「うわ」

「トリコ!!」

「ぐおお…?!」

「何て力だ?!」

「よし、今度はオレが『ゴムゴムのー…うわっ?!」

「『ナイフ』!!」

「ナミ達を盾に使うなんて汚ねーぞ!!」

 

 『ドツクゾコアラ』は実の幹に摑まると回転し始め、その勢いを利用し、巨大な爪でトリコを攻撃する。

 

「うわー?!」

「トリコー!!」

「うわーーーあ?!」

「ナミ!!小松!!」

「さすが『アマタノフルーツ』の木だ!!」

「え?」

 

 攻撃を仕掛けてくる『ドツクゾコアラ』の勢いに捕まっている二人も揺られている。攻撃を受けたトリコはそれよりも『アマタノフルーツ』の木に注目している。

 

「『ドツクゾコアラ』のあの激しい動きを支えてびくともしやがらねぇ!!しかもその反動でやつの攻撃力はとんでもなく上がってる!!」

「なんか厄介だな」

「だがあの大きな幹、さぞいい養分をあの実に送ってるんだろうなぁ…!!」

「ん?」

「『アマタノフルーツ』絶対に食う!!」

「まだそんな事言ってやがる?!」

「ヒヒヒ。そうだな!!」

「ッへへ」

「ちょっとルフィ?!あんたまで?!」

「何考えてんだよ?!」

 

 仲間第一のルフィだが意志を持って食材と向き合っているトリコに合わせて笑い、仲間達に驚かれる。だがそれも助け出せると信じているからで『ドツクゾコアラ』を見据える目には揺らぎはない。

 

「この世の全ての食材に!!」

「感謝を込めて!!」

「「いただきます!!」」

「ちょ、ちょっとー?!」

 

 自分達が居るのに思い切り攻撃しようとしているルフィ達に驚いているがルフィが『アマタノフルーツ』の木を用いて自身を発射台にすると、ゴムの力を利用してトリコが『ドツクゾコアラ』へと向かっていく。

 

「『ゴムゴムの…」

「釘パンチー』!!」

 

 勢いよく叩きつけられた一撃は『ドツクゾコアラ』を沈めきり、無事にナミと小松も助け、二人で手を合わせる。

 

「「ごちそう様でした!!」」

 

 くしくもフィンとグレーヌのペアが『ドツクゾコアラ』を倒したのとほぼ同時に倒したのであった。

 


 

「この気配は少しいただけないな…」

 

 命の紙の方向を確かめるとどちらも同じ方を指しており、二人が相手取るにしても少しきついだろう気配もそこから漂っている。

 

「悠長にし過ぎたな。この距離だと間に合わないか?」

 

 趣味の植物収集をしながら進んでいたのがまずかったなと反省しつつ、戦いの場を見据える。

 

「なら届かせるのみだ」

 


 

「さて、『アマタノフルーツ』をいただこうか!!」

「楽しみだな!!」

「ナミすわぁああん!!無事で良かった!!」

「ナミも小松も怪我はないか?」

「振り回されたけど怪我はないわ」

「僕も大丈夫です。ありがとうございます」

 

 ルフィとトリコはさっそく『アマタノフルーツ』を目指して歩き出し、サンジはナミの無事を喜び、チョッパーは二人に怪我はないか訊ねる。

 

 戦いが終わり全てが解決してめでたしめでたしで終わりそうな空気が広がる中に強い足音が耳に入る。何事かと視線が向くと慌てて駆け寄るグレーヌとフィンの姿があり……

 

「気を抜いちゃダメなの!!」

「終わってない…!!」

「なに?…うおぉおお?!」

「トリコ?!うわあぁあ?!」

 

 グレーヌとフィンの注意の声が響いたと同時に『アマタノフルーツ』の影から何かが飛び出し、トリコとルフィを吹き飛ばした。

 

「おいルフィ?!」

「トリコさん?!」

「ちょ、ちょっと大丈夫なの?!」

「な、何が居るんだ?!」

 

 終わったと思っていた所に現れた大きな影に対して全員が注目を向ける。そこにいたのはココア色をし、胴体はカステラで覆われ、背中や尻尾の先に大きなココアを付けた雌ライオン。

 

「なんだありゃ?!」

「『ココアラ』と『カーステ・レオ』の特徴を併せ持つ猛獣だと?! 変異種か?!」

 

『ココアライオネスピーカーステラ』、『ココアラ』と『カーステ・レオ』を統率する存在で、群れのトップに君臨する女王。

 

 繰り出される音の衝撃波は『カーステ・レオ』以上で背中のココアを飛ばして共振させることで爆破させたり、衝撃波を強める。

 

 捕獲レベルは平均で5前後のハングリラ島において捕獲レベル30 を記録する正真正銘ハングリラ島の主の座に位置する。

 

「どうするトリコ?」

「どうするつってもなぁ、ルフィ。こいつを倒さねぇと『アマタノフルーツ』にありつけねぇんなら…やるしかねぇだろう?」

「ひひひ、そうだよなぁ」

 

 『ハングリラ鳥』も『ドツクゾコアラ』も可愛らしいくらいの威圧感の中で二人揃って吹き飛ばされた時に付いた汚れを払うとニヤリと笑う。

 

「胃もたれ起こしそうなおかわりなの」

「グレーヌ…後衛…」

 

 覇気が十全じゃない状態ではまだ幼さが残り、動物系でもないグレーヌは危険と判断し、グレーヌも納得して少し後ろに陣取る。

 

「サンジ!!チョッパー!!ナミを連れて離れろ!!」

「テリーお前も小松を!!」

 

「了解だ船長!!ナミさんには傷一つつけさせねぇ!!」

「おれも頑張るぞ!!」

「ガウ!!」

 

 戦えない訳では無いが基本的には非戦闘員であるナミと完全に非戦闘員である小松を下げてから戦いに臨んだ。

 

「『ゴムゴムの(ピストル)』!!こいつ、速えぇ?!」

 

 ルフィが腕を伸ばした頃にはそいつは動いてその場を離れている。その速度は目で追えるギリギリのレベルだ。

 

「ならこいつでどうだ?『フライングフォーク』!!」

 

 ルフィの攻撃が避けられたのを見て素早く広範囲を攻撃する様に連射型の『フライングフォーク』を放つが間をすり抜ける様に距離を詰めてくる。

 

「避けられてる…魚人空手応用槍術…『鳳慄峙(フォーリッジ)』!!」

 

 それを見たフィンが水の伝播を利用した衝撃による範囲攻撃を槍から放つが次の瞬間に敵も身体から衝撃波を放つ事で相殺する。

 

「一発勝負『種子島(タネガシマ)』なの!!」

 

 衝撃波を放つ為か少し減速した所に後方も後方、『ココアライオネスピーカーステラ』も気付かない距離から放たれた一発の種、これならばとその場の者が期待した一撃は突如背中から放たれたココアによって弾かれた。

 

「それ飛ぶのか?!まるで砲弾だぞ!!」

「しかも放たれた所を見てみろ。もう既にカカオの実がなってやがる!!」

「…残弾…実質無限…いや…相手の体力…」

「あの重量じゃ中の種を操作してもびくともしないの」

 

 『ココアライオネスピーカーステラ』の攻撃のヤバさに気付いた瞬間に全員が退避行動に出た。遠く離れたグレーヌも例外でなく、まず間違いなくココアの砲弾の射程範囲内だ。

 

「『ゴムゴムの風船』!!ってきりがねぇ?!うわぁ?!」

「めちゃくちゃだな?!『フォーク』!!」

 

 弾き返しても次から次に飛んでくるココアに耐えきれずルフィはダメージこそ無いが飛ばされ。トリコは『フォーク』を壁の様に使ってなんとか耐えているが動けずにいる。

 

「…とりあえず…避けるか…防ぐ…『突水』!!」

「中に種があるから狙いはつけやすいの『種爆弾』乱れ投げなの!!」

 

 生えるのは確かに速いが撃ってから生えるまでに多少の時間が掛かっている。今は攻撃を凌ぐのが先決と二人で迎撃に当たる。

 

 フィンは持ち前の速度を活かして飛んでくるココアを水で撃ち砕いていく、グレーヌは自身の能力で飛んでくる弾であるココアを正確に把握できる為に砲撃の速度にも対応できている。

 

「もうすぐココアが切れるから作戦を考えるの!!」

 

 砲撃の嵐の中では少し離れただけでも仲間の声が届かず、思い切り声を張り上げての作戦会議が行われる。

 

「基本的に足を止める役と攻撃する役で良いよな!!」

 

「おれ、足止めは出来ねぇぞ!!」

 

「足止め!!…こっち!!…そっち!!…突っ込め!!」

 

 とは言っても凝った作戦を考えてる暇はなくトリコが分かりやすい案を提案を出し、常に真っ向勝負のルフィは足止めは担えないと返す。

 

 トリコも牽制などは出来るが基本的には近距離での殴り合いがスタイル。それをずっと行動を共にしていたフィンが把握してない訳もなく、足止めはグレーヌとフィンが請け負った。

 

「グレーヌ…()()()…」

 

「任せてなの…ポップグリーン『竹ジャベリン』!!」

 

「魚人空手応用槍術…『鳳慄峙(フォーリッジ)』!!」

 

 『竹ジャベリン』で生えてきた竹を急ぎ根本を叩き折り、急拵えだが竹槍として受け取る。

 

「「『唐草竹ジャベリン』!!」」

 

 大量の竹槍に水を滴らせて投げる事で辺り一面だけでなく、さらに遠くにまで水の衝撃波を走らせて逃げ場を無くし、投げ続ける事で相手に相殺させ続ける。

 

「衝撃波を突き破って一撃を入れてやる!!ルフィ!!」

「ああ!!」

 

 『ココアライオネスピーカーステラ』が動けない内にルフィがまた発射台になり、トリコが衝撃波同士のぶつかり合う中を飛んでいく。

 

「『ゴムゴムの…」

「…釘パンチ』!!」

 

 衝撃波がなんのそのと敵目掛けて突っ込んでいったトリコの拳が当たるかと思うと次の瞬間、『ココアライオネスピーカーステラ』とトリコがいる位置が大爆発が起こり、そして小規模だがフィンやグレーヌの近くでも爆発が起こる。

 

「トリコ…?!フィン?!グレーヌ?!」

 

 『アマタノフルーツ』の木に巻き付いていて爆発に巻き込まれなかったルフィが必死な様子で声を上げる。

 

「…こっち…無事…」

「少し食らったけどなんとか防御が間に合ったの……でもトリコは……」

 

「おい!!トリコ!!」

 

 あの至近距離で特大の爆発を食らったトリコがどうなったのか見えていないかった。何処にいるかも分からないので必死に呼びかけると少し離れた位置から声がきこえる。

 

「ここだ……がはっ…俺も咄嗟に『フォーク』を纏わせはしたが……このざまだ……」

 

 体を守りながらも諸に爆発を喰らってしまい遠くまで吹き飛ばされボロボロになっている。

 

「俺の事はいい…それより防げたって事はあの攻撃の正体は分かったのか?」

 

「たぶん…ココア…爆破…」

「ほぼ誤差みたいなものだけどあいつに近いのから順々に爆発していったの」

 

「なるほど…おそらく衝撃波による共振だ…内部が耐えきれなくなって粉々に破裂…そしてその粉末が振動で熱されて粉塵爆発を引き起こしてる…殴る瞬間に妙な振動を感じてそれで防御を間に合わせられた…」

 

 それがなければ死んでたかもな。なんていう笑えない冗談を口にしているが正直状況はあまりよくない。

 

 爆破を引き起こした『ココアライオネスピーカーステラ』自身は衝撃波とカステラでその身を守り傷一つ負ってないのに対して四人中三人がダメージを負い、トリコに至っては重症だ。

 

「トリコ、まだ戦えるか?」

 

「俺は食えば回復する…この騒ぎならほら」

 

「トリコさ〜ん!!」

「おーい大丈夫か?!」

 

 小松が山の様な料理をチョッパーに協力してもらいながら運んできている。チョッパーは医療器具も持ってきている。

 

「サンジさんにも手伝って貰ってこれだけ持ってこれました!!」

「火傷が凄いぞ?!これ薬を染み込ませた包帯…少しの間だけでも巻かないと…」

 

「でかした小松…って訳だからよ…食い終わるのに五分もいらねぇ…保たせてくれ」

 

「にしし、急がねぇとおれたちで倒しちまうからな!!」

「あの攻撃もココアを着弾させなければ良いだけなの!!」

「簡単…」

 

 トリコが一旦戦線を離れて回復に努める。その間は三人で代謝しないといけないがさっきの経験を活かして今度は三人で固まっている。

 

 固まっていれば全員でココアの撃墜にあたれるが逆に『ココアライオネスピーカーステラ』の狙いも集中している。次々とココアが三人に放たれていく。

 

「破壊…確実に…『突水』!!」

「『種機関銃』!!」

「『ギア2』『ゴムゴムのJET銃乱打(ガトリング)』!!」

 

 だが三人がかりで撃墜していけば撃ち漏らす事なく、飛んでくる全てのココアを破壊出来ていた。だが…

 

「向こう…自由…」

「撃ちながら向かってくるぞ!!」

「厄介なの…」

 

 先程まではある程度の撃墜をしてから足止めの流れだったが、撃ち漏らしを爆破されない様にココアの破壊をしていると足止めに移る余裕がない。

 

「ルフィ!!一瞬で良いからココアを全て落として欲しいの!!」

 

「やってみる。『ギア3』『ゴムゴムの巨人の(ギガント)銃乱打(ガトリング)』!!」

 

 ルフィは少しでも撃ち漏らしを無くすために両腕を一気に巨大化させるとココアが放たれる方に思い切り打ち続けた。

 

「うおおおおお!!」

 

「今のうちにもう一度『竹ジャベリン』なの!!」

 

 先程使った『竹ジャベリン』はだいぶ使い切ったのと爆発で破壊されたのでなくなっており、新しく竹林を生やした。

 

「交代だ…魚人空手応用槍術…『鳳慄峙(フォーリッジ)』!!」

「「『唐草竹ジャベリン』!!」」

 

 再びの協力技でココアの破壊と足止めをフィンが同時に引き受ける。竹を生やした後はフィンが投げるだけなのでグレーヌの手は空き。

 

「能力は十全なの!!『空種乱れ撃ち』!!」

 

 種の中に色々なものを仕舞い込む事も出来る『タネタネ』の力を用いて『ココアライオネスピーカーステラ』が放つココアと衝撃の一部を種に収めていく。

 

 『ココアライオネスピーカーステラ』の衝撃波を封じた上で衝撃が込められた竹槍が相手に届き、ようやくまともに攻撃が通った。そこにすかさずルフィが向かう。

 

「『ゴムゴムの巨人の(ギガント)(アックス)』!!」

 

 動きを封じてる状況で吹き飛ばすと不味いと判断して上から巨大化させた足を思い切り振り下ろす事で一撃をいれる。

 

「そのまま押さえてろ!!」

「トリコ!!おう、任せとけ!!」

 

 用意された料理を食べ体力と身体を回復させたトリコが戻ってきた。『ココアライオネスピーカーステラ』は飛ばすココアと衝撃波を封じ込め、頭を踏みつけて身動き一つ出来ない。

 

「喰らえ!!『レッグナイフ』!!」

 

 完全に封じ込めに成功し、カステラで覆われていない頭への大技が向かう。そしてそれを嘲笑うかのように茶色がトリコを弾き、ルフィも跳ね除けられる。

 

「うわっ?!なんだ?!」

「ぐっ?!茶色いココアが見えたが…」

「尻尾なの!!尻尾の先のココアが叩きつけられたの!!」

「自由自在…厄介…」

 

 無理やり振りほどく為に動かしただけで、あまり勢いもなく攻撃は妨害されたがダメージは少ない。とはいえ遮られた事で決定打を与えられ無かったのは惜しい。

 

「でも攻撃は出来てるの。このままいけば…」

「倒す…可能…」

 

 体勢を整えた『ココアライオネスピーカーステラ』が再びココアを飛ばし始めた。

 

「それはもう効かねぇぞ!!『ゴムゴムのJET銃乱打(ガトリング)』!!」

「『フライングフォーク』!!」

 

 残さず叩き落とす様に質より量を重視した攻撃に切り替えて対応する。

 

「今度は全身縛ってやるのポップグリーン『蛇花火』!!」

 

 植わると直ぐに生えるポップグリーンの中では珍しく強い衝撃がなければ成長しない種だが、操作できるグレーヌならば関係ない。

 

 一気に成長した『蛇花火』によって『ココアライオネスピーカーステラ』は縛られ尻尾目も含めて雁字搦めになる。

 

「今度こそ『ゴムゴムのJET攻城砲(キャノン)』!!」

「『レッグフォーク』!!」

「魚人空手応用槍術…擬似奥義…『突槍鬼瓦(トソウオニガワラ)』!!」

 

 三者三様の攻撃が『ココアライオネスピーカーステラ』に叩き込まれる。爆発を起こししても爆発ごと吹き飛ばせる様な猛攻撃。そして確かな手応えを感じると共に重たい衝撃波が三人を吹き飛ばした。

 

「うわぁ?!」

 

「うぉお?!」

 

「う……?!」

 

 『ココアライオネスピーカーステラ』の全身から放たれる衝撃波は全員が確認していた。その程度であれば踏ん張れる筈だった。

 

 しかし、結果として三人はバラバラに山の中腹まで飛んでいった。ココアは爆発させるだけでなく衝撃波の増幅も出来たのだ。

 

「な…フィン?!ルフィ?!トリコ?!まずいの…きゃあ?!」

 

 『ココアライオネスピーカーステラ』も無事ではなくよろよろで動きは遅い。しかし復活したカカオをグレーヌ目掛けて飛ばすくらいは訳なかった。

 

 満タンのココア全てを一人で防ぐ事は難しい。しかも仲間がやられた動揺で覇気が乱れてしまい諸に直撃を受ける。

 

「…うう…あ……」

 

 地面に倒れるグレーヌが視線を上げると『ココアライオネスピーカーステラ』の顔が見えた。

 

「「「グレーヌ!!」」」

 

 それぞれの方向から復帰してきた三人の声が届く、三人の中で最も速いフィンが一番近くまで来ているが届かない。

 

 グレーヌに相手の尻尾による叩きつけが直撃すると思われたその瞬間、飛来した塊によって『ココアライオネスピーカーステラ』は吹き飛んだ。

 

「あれは…まさか…」

「おいグレーヌ無事か?!」

「打ち身は酷いが折れてはなさそうだな」

「なんとか無事なの……」

 

 吹き飛んだ事で復帰してきた三人がグレーヌの所へ駆け寄る。怪我の状況を確認するが動けなかったり、命の危険があるレベルでなく息を吐く。

 

 その間も謎の攻撃は続いており『ココアライオネスピーカーステラ』は為す術無くやられている。それも尻尾を失い、全身のカステラを切り裂かれながら地面へと叩きつけられる形でだ。

 

「いったいなんなんだありゃ?!」

「尻尾の先がねぇぞ!!」

 

 思い当たる節のない二人は助かったのは確かだが何事かと眼の前で繰り広げられる事態に驚きを示す。

 

「あれは…お父さんの技なの!!」

「遠距離…あの威力…流石…」

「アスカルのか!!」

「お前の親父さんか、信じてなかった訳じゃ無いがだいぶ強いな」

 

 『ネビル』、渦巻く高密度の霧状の大地が触れた部分を削りきると言う霧状の大地を生み出し纏めると段階を踏まないといけない技だがその威力はこの通りだ。

 

「相手…隠し玉…もう無い…」

「自力で対処出来てないのは悔しいけど…」

「ここまでお膳立てされたら…」

「決めるしかねぇよな?」

 

 ゴム人間でもないのに直撃を受けたグレーヌはもちろん。身体の内外から揺らされたルフィ、トリコ、フィンもそれなりのダメージがある。

 

 それでもこれだけ手助けされておいて後は任せたと休んでられるほど大人しくはない。四人で顔を見合わせるとそっと手を合わせる。

 

「「この世の全ての食材に!!」」

「「感謝を込めて!!」」

「「「「いただきます!!」」」」

 

 手負いの獣ほど恐ろしい。そんな言葉がある様に『ココアライオネスピーカーステラ』も諦める様子はなく、むしろ牙を見せ付けるように吠えて見せる。

 

「作戦があるの!!『竹ジャベリン』!!フィンは足止めを…ルフィとトリコはこっちに来て欲しいの!!」

「了解…魚人空手応用槍術…『鳳慄峙(フォーリッジ)』!!『唐草竹ジャベリン』!!」

 

 カステラが切り裂かれた事で防御はもちろん、相手側の衝撃波は弱まっている。だが飛んでくるココアはまだ健在な為にフィンがそれの対処に当たる。

 

「あっちはしばらく保たせてくれるだろうが…」

「何をすれば良いんだ?」

 

「今から私が残る力を全て込めて一つの種を作るの…それに全力の攻撃を私が言うまで叩き込んで欲しいの。種は芽吹くもの、種は可能性…私の種は何でも包容する…溜め込んだ攻撃全ても…」

 

「なるほど俺達の攻撃を限界まで溜め込んであいつにぶつけてやれば良いんだな!!」

「面白そうだなぁそれ!!」

 

 グレーヌの提案は二人にも受け入れられた。『竹ジャベリン』で生える竹は多いが限りがある為に急ぎ取り掛かる。

 

「いくの『最大収納種(マキシマムストレージシード)』!!」

「『ゴムゴムのJET銃乱打(ガトリング)』!!」

「『一点集中13連アイスピック釘パンチ』!!」

 

 ルフィはとにかく叩き込む事を考えて止まること無く連続で拳を叩き込み、トリコは自身が出せる最高出力の技を放つ。

 

「まだいけるの…」

「うおおおおお!!」

「消費が大きいが『レッグナイフ』!!『レッグフォーク』!!」

 

 ルフィが声を張り上げ気合を入れ直して拳の動きを速くする。トリコも足を大きく動かして攻撃を叩き込んだ。

 

「ストップなの!!」

 

 力を使い果たして息も絶え絶えだが種の限界が近づいたのに気付くと振り絞る様に静止の声を上げ、ルフィとトリコもピタッと攻撃の手を止め『最大圧種(マキシマムアッシュ)』が完成する。

 

「見た目は小さいままだが…はち切れそうなエネルギーが伝わって来やがる!!」

「後は俺とトリコに任せろ!!フィン、一瞬で良い、動きを!!」

 

 トリコが種を受け取り、ルフィがトリコの後ろに回りながらフィンへと『ココアライオネスピーカーステラ』の足止めを頼む。

 

「簡単に…言う…『月泳(ゲツエイ)』…()()()泳法応用槍術…『浸槍海天(シンソウカイテン)』!!」

 

 足をヒレの様に動かして空気を泳ぎ蹴る事で負担はいつも以上に激しいがホームである水中と同じ速度で敵に接近する。

 

 そうして海と天を同時に貫くが如く『ココアライオネスピーカーステラ』の真下から中心を貫く様に槍を持ったまま相手に突進する。

 

 ピアスのその身を槍として突撃する『海神槍』を模倣技、その一撃は残ったカステラの防御をものともせず衝撃を貫通させ、そのまま巨体を大きく跳ね上がらせる。

 

「いくぞトリコ!!」

「ああ!!」

 

 今度は発射台になるのではなく、トリコを前にしてルフィは空中にいる『ココアライオネスピーカーステラ』の身体を腕を伸ばして掴む。そのまま腕の縮む勢いで二人で突っ込んだ。

 

「「『ゴムゴムの種パンチ』!!」」

 

 ゴムの勢いで突っ込み、トリコの全力のパンチと共に『最大圧種(マキシマムアッシュ)』が叩き込まれ、その衝撃が開封される。

 

「「うおおおおおお!!」」

 

 その衝撃の全てを『ココアライオネスピーカーステラ』に流す様に全力で拳を押し込み続け、最後に弾かれるように互いに吹き飛んだ。

 

「はぁ…はぁ…」

「やったか…?」

 

 ルフィとトリコはなんとか受け身をとって着地をすると『アマタノフルーツ』の木へと吹き飛び、めり込んでる『ココアライオネスピーカーステラ』の様子を見る。

 

「もう…動いてない…」

「やったの…」

 

 フィンとグレーヌも二人の側に近寄り、動かなくなった『ココアライオネスピーカー』を確認する。そして四人で自然と手を合わせる。

 

「「「「ごちそう様でした」」」」

 

 


 

 

「この領域内であれを倒したか…あいつらも中々頑張るな」

 

 信じていなかった訳では無いが万が一を考えて用意していた衝撃を増幅させていた土の球を消しながら笑う。

 

「それに…まさか流れ着いたのが()()()だったとはな…」

 

 琥珀糖の島でいつか行ってみたいと思っていた島に来れるとはと自分達の強運を思いさらに笑みを深めながら歩き出した。

 

 


 

「さあてと今度こそ『アマタノフルーツ』をいただくとするか!!…あ?」

「何だ?!なんかぐらぐらしてるぞー?!」

「な、何だ?!」

「ん?おい、お前達!!」

「そっか!!ぱねぇぞ!!」

「ありゃ?」

「皆ー!!山を下りろー!!」

「ええー?!」

 

 倒し切ってようやく『アマタノフルーツ』にありつけるかと思ったら、這々の体でその場から離れる事になる。しかし、降りきった所で先程までいた山が大噴火を起こした。

 

「島の本来の姿が現れる!!」

「本来の姿?」

「僕達はトリコに『ハングリラ島』の秘密を教えに来たと言っただろ?」

「ああ」

 

 結局聞けていなかったが確かに合流した時にそんな事を言っていたなと思い出し頷く、その最中にチョッパーが帽子に付着した液体を口にいれる。

 

「うめー!!これカラメルだ!!」

「何?!ホントだ…どう言う事だ?」

 

 トリコも確かめる様に口に含むと確かにそれはカラメルだった。元より何もかも食材で出来ている様な島だったが、何かがおかしいと気付き訊ねる。

 

「古から『ハングリラ鳥』の伝説は様々な文献に記されていた。先人達はその文献を転写し伝説を現在まで伝え続けてきた」

「だからその文献に載ってた伝説を頼りにこの島を見つけ幻の食材『ハングリラ鳥』を捕獲したんだ」

 

 トリコ、ルフィ、フィンとで戦って『ハングリラ鳥』の捕獲に成功し、既に味わっている。だがそもそも前提が違ったのだ。

 

「だが実は幻の食材は『ハングリラ鳥』ではなかったんだよ」

「え?」

「ほら、鳥と島って文字が似てるし書き写す人が読み違えて書いたみたいで…」

「じゃあ幻の食材は…『ハングリラ鳥』じゃなくて『ハングリラ島』だったのか?!」

 

 食材のある伝説の島ではなくこの島自体が幻の食材そのものだったと知り、全員が驚く中で『ハングリラ鳥』が群れで飛び立つ。そしてその何羽かが地面へと落ちた。

 

「この島については名前や場所は知らなかったがオレも知っていた」

「アスカル様!!」

「お父さん!!」

「アスカル!!」

 

 そこには幻の食材でこそ無かったがこの島の固有種であり希少な事には変わりない『ハングリラ鳥』を捕まえて悠々と佇むアスカルの姿があった。

 

「降り注ぐはカラメル、プリンやアイスの山、流れるクリームの川、数々の巨大な果物達…ここまで言えばこの島が何か、君には分かるんじゃないか?」

「どうりで『ハングリラ鳥』がインパクト弱かったわけだ。この島自体が幻の食材…天然のプリンアラモードだったんだ!!」

「すっげー!!」

「規模が大き過ぎるの」

「はは…持ち帰れない…」

 

 全員が真の姿を取り戻した『ハングリラ島』に感嘆の声を上げる。そして、トリコとルフィの二人は一番にプリンの山の頂上の果実に向かった。

 

「あーん!!」

「あーん!!」

「「うめー!!」」

「数多の果物を凝縮したようなこの豪華絢爛な甘み!!これが『アマタノフルーツ』!!まさに大地のフルーツパーラ!!」

「種は此処に植えてく分以外はこっちに寄越すの!!間違って飲み込まないようになの!!」

「このプリンの山もうめぇぞ!!」

「お、ホントだうめー!!」

「あの二人聞いてないの?!」

「まぁまぁ、ルフィはともかくトリコは食べれない部分は食べないだろうから他の物を回収するぞ」

「あーおい?!そこはオレが食おうと思ってたのにー!!」

「いーじゃねーかいっぱいあるんだし。あ、そう言えば隣の山はアイスだって言ってたよな。先に行ってるぞ!!」

「何ー?!抜け駆けすんじゃねー!!」

「クリーム…カラメル…巨大果実一部と種…食材植物も各種回収……」

「おーい!!このカステラもうめーぞ!!」

「おい、それさっきの『カーステ・レオ』の鬣じゃね?」

「ガルル」

「えー?!」

「よっと、こいつらも持ち帰るか。どのエリアにするか…いや、いっその事プラントで再現…トリコ達から聞いた話に例えるなら再生するのも良いか」

 

 ルフィとトリコがとんでもない速度で島を食べ尽くす中でプラントの面々が遭難での遅れを取り戻す様にこの島で回収出来るだけの食材を集める。

 

「んで、散々食べといて結局トリコのフルコースには入らないのね」

「まぁな。世界は広い。旨いもんはまだまだたくさんあるハズだしな」

「お前ホントに食いしん坊だなー」

「デザードで悪魔の実を食っちまうお前が言えねぇだろルフィ? あんなにまずいのに残さず食っちまうしな」

「食い始めた物を残さねぇのは良いことだぜ」

 

 ルフィの知り合いであり、フィンの上司、グレーヌの父でもあるアスカルと直ぐにトリコも話すようになり、ルフィを含めた三人でなんてこと無い話をしていると……

 

「アスカル様…詰め込み…終了…」

「大物はそのまま種に、管理が必要なのだけ残った設備に入れといたの!!」

 

船の近くまではアスカルが運び、船の中にまでは種に詰めれるグレーヌが作業する事で大量の回収食材の運び込みも短時間で終わる。

 

「それじゃオレ達は先に行く、最初から躓いてるがこれでも仕事なんでな」

「プラント探索隊出発なの!!」

 

 ある程度は大丈夫とはいえ長く離れている訳にはいかないアスカルとグレーヌは少しでもこの領域を探索する為に船を動かし始めた。

 

「おう!!いつかプラントにも冒険しにいくからな!!」

「良い食材を見つけたら今度会った時に教えてくれ!!」

 

 プラントの船が出発してから数十分後、食材管理もしているコックのサンジがサニー号が声を上げた。尽きていた食料の補給を終わらせた様だ。

 

「食料はばっちりだぜ。いつでも出航出来る」

「おう!!それじゃ、オレ達も行くよ!!」

「ああ!!またどこかで会おうぜ!!そん時はオレの人生のフルコースをご馳走してやるからよ!!」

 

 再開の約束をすると手を振り、声を張り上げながらの賑やかな出港となった。

 

「じゃあな、ルフィ!!」

「じゃーなー!!」

「さようならー!!」

「オオーン!!」

 

「馴れ馴れしく別れるのもいいが…」

「あいつら、一体誰?」

 

 後から合流した四天王二人とその妹、そしてサニー号にて残っていた面々からすれば出会いもなく別れの場が初対面故、当然の疑問である。

 

「さあ、この海域から出るわよー!!食料も確保したし!!」

「ってそれプリンばっかじゃねーかよ!!」

「いやいやいやいや、これはしょうゆをかけるとウニの味がすると言うバリエーション豊かな食材で…ってウニなら海で捕れよー!!」

 

 動植物もあったので他にも食材はあるがプリンアラモードの島で集まりやすいお菓子にフォローと見せかけたノリツッコミをウソップが披露して幕はは閉じた。

 

「ッフッ。んじゃ小松、そろそろオレ達も行くか!!新しい食材探しの旅に!!」

「はい!!トリコさん!!」

 

 海賊王を目指す男と人生のフルコース完成を目指す男、そして大地の王、そしてそれぞれの仲間が巡り合うその時までの一時の別れ。

 



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第1章
第1プラント ツチツチと独りの島


オリジナル悪魔の実色々と考えてたらとりあえず書きたくなったので比較的設定を細かく考えている物を選んで書いてみた。



 偶然か必然か海の秘宝とも呼ばれるその実を手にすることが出来た。食べれば一生カナヅチが確定するし、どんな能力なのかは食ってみてからのお楽しみ、運要素の強すぎるそれからオレは何故か目が離せず思い切り一口で食い切った。まあ、その後で噂以上のまずさに悶絶したんだがな。

 

 俺が食った実の名前は【ツチツチの実】と言うらしく、名前だけ聞くと自然物に思えるので最強とうたわれる自然系の悪魔の実と感じるかもしれないが、正確には土と同化したり、土の状態が分かったり、土を操作することが出来るという能力だった。因みに土人間ではなく()()()()だ。

 

 土への干渉能力は非常に高く、オレは自分の持っている土地で農業を始めた。作物に適した土壌の状態を維持し、害獣や害虫は土を操作して締め出した。耕すのも、水やりも何もかもを能力でやっていた。慣れないうちは操作がおぼつか無いので苦労したが、それでも作物の出来はかなりの物に成った。

 

 作った物を売り、順調に金を稼いでその金で新たな土地や作物を手にして、それの繰り返しで島一番の農家と成り、商船の人たちからも高く買ってもらえている。盗みに入るような人間も時には居るが、そう言った奴らには()()()が相手と成る。

 

 本来大規模な農業には人手がいるのだが、自分一人で全てを行っている為、そして管理が徹底されている為に利率が高いので収益も大きいのだ。それだけではなく、新たに買い取った山などで山菜や薬草等の自然の中で育つ物を育ちやすいように環境を整える事で更に商いの手を広げた。

 

 しかし、そうなってくるとどうしても他の農家の人間たちは少しずつ仕事から離れて行った。それもそのはず、自分たちは苦労して自分の手で重労働をこなしてやっとこさ作った作物がたった一人の能力で楽して作られた作物に評価で負けているのだから。

 

 自分が作っていない作物や作れない作物を作れば良いと思うだろうが、自然に作物に適した土壌がなんとなく分かってしまうため、気候さえ合っていればオレはどんな作物でも上手く育てられた。そのためオレの作物以外ではこの島の気候で作る事が出来ない物しか売れなかった。要するに外から持ってこられた物しか売れず、市場を完全に独占してしまったのだ。

 

 そうなると違う商売(農業以外)を行えない者は少しずつこの島を離れて行った。そしてその離れた者の土地も自分の物となった。しかし、そうして多く居た農家の人間とその家族が居なくなると少しずつ他の商売も売り上げが落ち、停滞していった。

 

 それもそのはず、どんな商品を持っている商売人だって買う人間がいなくなれば、どんなにいい宿屋だって泊まる人間がいなければ意味が無いのだから、最後まで残っていたのは土地の売買の仲介を行っている業者だったが、オレが遂に()()()()()買い取ったら、その日のうちに島を出て行った。

 

 今では月に何度かやってくる商船との取引以外では人との関わりは無くなった。その頃には大抵の事は一人で何でもできる様になっていたため、不便は無かった。家畜を飼い、作物を育て、自給自足の生活で金だけがどんどん貯まっていった。

 

 オレは無くなった穴を埋める様に農地の拡大のため海底から少しずつ土を引き上げて島を拡大していった。元々の島の大地や海底に埋まっている鉱石なども多く手に入ったが利用法も無いし、価値もよく分からないので倉庫に死蔵してある。その他には農家らしく品種改良や珍しい植物を育てたりなど色々と行った。その過程でどうしても気候的に育てられない植物も多かったが色々と収穫はあった。農家だけにってか。

 

 今更ながらこの島は偉大なる航路(グランドライン)に存在し、たまに旅の船や海賊船もやってくる。最初から敵対的な者に対しては容赦なくやらせてもらった。この島は勿論のこと周辺の海底にも手は広げているので土で出来た巨大な腕で船を握りつぶしてやった。

 

 しかし旅の船は勿論、友好的な海賊も結構多く、そう言った者達は歓迎して作物や家畜の肉、そして作物から作った酒などを振る舞った。この酒も今では商船でそれなりの値段で買ってもらっている人気の商品だ。歓迎だと言ってるのに律儀に金や宝を置いて行く奴らも居るくらいだから、気の良い海賊に出会えると気分が上がった。

 

 そうしてたまにしかない人との出会いを楽しみにしている事に気付いてようやく自分が独りである事を自覚し、それを寂しいと感じていることに気付いた。とは言え人を呼んだところでこの島でやってもらうことなど思いつかなかった。そのまま途方に暮れて、変わらない生活がしばらく続いた。

 

 オレが生まれたこの島は既にオレが知って居たはずの姿を失っており、一回りも二回りも大きくなっていた。あまりにも暇な時に作った土で作った城に街、島を守るための防壁なども存在し、その規模から見てもたった一人だけの国の様だった。これが本当の独裁国家というものだろうか、いやここは島であって国では無い。

 

 この島で作られる食料は質が良く、量も凄いという事で取引をしている商船は数多く居た。最近では他の島の代表や国からの命令で買いに来る船もいるぐらいだった。それを知ってからはお偉いさん相手なら便宜を図っておくべきだろうと少し安くそして多めの量を売っていたら多くのお偉いさんとの繋がりが出来た。

 

 そのお偉いさんの中には特別感謝を示し、こちらに対して下手に出てくる人までいた。何でも国が飢餓に陥っている際にダメもとで打診したら多くの食料を売ってくれたからだと直接出向かれて言われた。飢餓って餓えて人が死んでしまうって事だよな。そんな状態なら大変だろうし言ってくれたらただで食料を援助するぞと伝えたら泣いて頭を下げられた。お付きの人もまるで聖人でも見るかのようで見てきて、少し居心地が悪かった。

 

 何の因果かその国とオレとの間で友誼を結んだ。とりあえず友達みたいな関係に成ったのならと思い、復興の最中なら物資はあった方が良いだろうと食料や酒、肉類なども渡せるだけ渡した。嬉しさと申し訳なさの入り混じった表情で「いつか、いつか必ず返す、この恩を我が国は忘れない」と言われた。風の噂で聞くとその国にオレの銅像が立ち、街の学校で偉人として習うそうだ……もう気にしない事にしよう。

 

 一つの国を救った者として近隣の国々に知れ渡ってからは更に多くの島、多くの国との商談が入ってきた。今まではオレ一人でどうにかしていたがこうなってくると商談に関する仕事が追いつかないので今こそ人を雇うべきでは無いかと思い至った。友誼を結んでいる国王に話すと「要するに優秀な秘書となる人材が欲しいのか」と言われたので頷いた。ちなみにこの国王様はよくうちの島に遊びに……いやいや、訪問に来る。何故かと言うとオレは作物や家畜の世話で島を離れられないからだ。

 

 国王が言うにはうちの国で募集すれば多くの者が働きたいと名乗りだすだろうが、相手取るのが海千山千の者ばかりとなればそれなりの人材でないと捌ききれないだろうと言い「良し、いい案があるので次に遊びに来るまで待ってて欲しい」と言って帰られた。いや、国王本人が遊びに来ていると明言しちゃダメだろう……

 

 そして何とか農地の更なる拡大と並行して商談を裁いていると約束通り国王がやってきた。いつものお付きの人々だけでなく、始めてみる凛々しい綺麗な女性が着いてきていた。挨拶をするとどうやら国王様の娘らしく、なんでもオレに感謝しているらしく仕事を手伝わせて欲しいらしい。国王様からは「嫁いだとでも思って使ってやってくれ」と言われたんだが……深く考えないで手伝いが増えたと考えたと思っておこう。「よろしくお願いします旦那様」と呼んでくる王女なんてオレ知らない。

 

 まあ、とりあえず仕事に関してはマニュ様が来てからかなり効率的になった。マニュ様って誰だって?王女様だよ、文の流れで分かれよ。名前で呼んで欲しいと言われて、様も要らないと言われたがとりあえずこれで呼ばせてくれとお願いしたんだよ。困っているのを感じ取ってくれたのか許してくれたんだが、その結果お互いに様付けで呼び合っている……なんとなくおかしい関係だ。

 

 ああ、そうだ仕事が効率的になった話だったな。正確な収穫量の計算から取引に使える量を割り出したり、商船や貿易船の来る日程を纏めたりしてくれたおかげでロスがだいぶなくなった。今までは必要以上に作って余った分は飼料にしたり、加工して誤魔化していたのだが無駄が無くなった。まあ、加工した物は加工した物で結構なペースで売れていたので必要以上に作る事には変わりないのだが、気持ち的な面で大きく変わった気がする。これでオレは独りでは無いのだから。




本日連続して次の話が投稿されます。
これが1話目です。

修正

『特にこの大海賊時代呼ばれる今の海は海賊が多かった。』を消去。




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第2プラント ツチツチと世界政府

連続投稿2話目。


 独りじゃなくなった島で過ごし始めたが効率的になった事以外で仕事で大きな変化は無いが、最近はかなり驚くことがあった。それと言うのも海軍から人がやってきたことだ。軍でも食料というのは多く必要になるので、安くて良い食材を多くの島々に売っているという話を聞いてやってきたらしい。軍全体の食料を賄う事は出来る訳も無いが、それでも十分な削減に成るから頼むというので契約することになった。

 

 これからも農地は拡大する予定なので、年度ごとに契約を更新し可能な限り食料を海軍に卸すのはいかがですかと訊いたら結構感謝された。その代わりに他の取引なども尊重してもらえるように深くお願いした。海軍の方も国々に文句は言われたくないと言って了承してくれた。

 

 しかし、そのお願いは海賊などの無法者との取引に関してへの効果を期待している。もちろん残虐な者を含め悪党と取引をしたいわけではない。この島はグランドラインに存在し、今でも海賊や旅の船も立ち寄っている。無駄な略奪をしない海賊などにも食料を売っている。基本的に商売人が海賊相手に商売してもそれが禁制品の類でなければ取り締まられる事は無いのだが、海賊相手に取引し、海軍との取引を蔑ろにしていると言われたらたまったもんじゃない。

 

 島の拡大と商売の拡大が並行して進められ、金ばかりがどんどん溜まって行った。しばらくその状況が続いて行った。最近では王女様をマニュとようやく呼び捨てに出来るぐらい慣れ親しんでいたのだが、海軍に続く様に更にヤバい所から人が来た。まさかの世界政府だ。

 

 世界政府の役人さんが言うにはオレの影響力、資金力共に既に世界に影響を与える立場にあるとのことで、世界政府に加わらないかという誘いに来たんだそうだ。要するにこの島を国として定め、オレに王様にならないかという話だ。

 

 延々と小難しい話をされたのだが、要約するとこれだけの力を持った個人を放置して置けるわけがないので加入してくれない様であれば色々とこちらも考えなければいけないという脅しだった。立場を得ると更に人づきあいが面倒になりそうだが断る方が面倒になりそうなのでしぶしぶ了承し、国王一人と言うわけにはいかず、流れでマニュと結婚し、王と王妃として世界政府の正式な書類に書かれた。

 

 マニュの父親、要するに一番慣れ親しんでいる国王、今となってはオレの義父に当たるこの人がいの一番に話を聞きつけてお祝いをしてくれた。なんでも自国でも盛大に祭りを行っていると聞かされ、わざわざ映像電伝虫で中継してその様子を見せてくれた。是非スピーチをと言われたが丁重にお断りした。遠慮せずお義父さんとこれからは呼んでくれと言われたのだが、時間をくれる様に切に願った。

 

 一番に駆け付けたのがこの人だったが、他の取引相手達からもかなり祝われた。祝いの品として様々な代物が渡され、どうして(どう扱って?)良いのかよく分からないのでとりあえずマニュに任せた。そう言えば世界会議(レヴェリー)は如何すればいいのだろうか、なり立てのオレが呼ばれるとは思えんが4年に1度の頻度で加入国の中から代表50か国が聖地マリージョアに集まり行われる大会議。

 

 他の国々への顔合わせを全くしない訳にもいかないだろうし、それとなく聞くと話題性から来年に行われるレヴェリーに早速呼ばれる可能性が高いという。王が集まる会議であるためオレも行く必要があるのだが、作物は勿論、家畜の世話に島の防衛も全てオレが行っている。あまり離れるわけにはいかない。

 

 レヴェリー自体は7日間、それぐらいであれば人を雇えば何とかなるが移動も含めるとかなりの時間が掛かりそうだ。それ以前にオレが持ってる服は最低限のスーツぐらいで王様らしい服なども無い。マニュが言うには自分に合った物を今から何着か仕立てて貰う必要があるそうだ。はぁ、世界政府の所為で色々と面倒になりそうだ。これからを考えると憂鬱になるが使えない頭を動かしてこれからに備えるしかない。一つため息を吐いてからマニュと共に予定を立てていった。




まだまだ続くよ。
タイトルを考えられる人は凄いと思う。
後、名前や地名も。


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第3プラント ツチツチと小人

連続投稿3話目。


 色々と面倒になりそうだが、緊急性の高い物から優先してかたづける必要がある。最低限の人材を用意する必要性があるのだが、今となってはあまり多くの人数が島に定住してほしくは無い。最低限の人間だけで廻していけるのが理想だ。どうした物かと悩んでいるとウチの島に来る商船の中では珍しい部類でオレに商品を売り込みに来た船がいた。

 

 結論から言うとその商品と言うのは奴隷だった。オレの島、いや国が農業に力を入れていると聞き、植物に精通した者を取りそろえたと紹介してきた。新しく王に成る存在に取り入ろうと考えているのだろう。とりあえず奴隷を見せてもらうとそれらは全て小人族だった。全く他の種族を見たことが無い訳では無いが小人族を見るのは初めてでついマジマジと見てしまった。

 

 「オークションでは70万ベリーからで欲しがるものがいれば500万まで伸びる事もあるんですが」と前置きをしてから「今なら一体につき200万ベリー、いや150万ベリーでお譲りします」とのことだ。そして「それとは別になってしまうのですが2体はどうやら能力持ちのようでして、悪魔の実は基本的に1億ベリーを下る事はまずなく、能力者は時価で取引がされるのですが、そちらも数億単位で取引されています」と頼んでも無いのに続けて説明された。

 

 少し小人たちと話をしてみるとどうやら話がおかしく、彼に旅についてこないかと誘われて着いてきたのだがあまり外を見れてない。でも船に乗せて貰っているので働いて恩を返しているとの事だ。騙されてるぞと伝えると「そんな馬鹿な!?」と言わんばかりの顔で驚いていた。なんとなく気が抜けてしまい、同情と言う訳では無いが金にはかなり余裕があり、人手を欲していたのも事実なので小人族を全て買い上げる事にした。もちろん、味を占めて奴隷を次々に連れてこられても困るので、マニュの指示の下徹底的に二度と来るなとお話しさせてもらった。

 

 小人たちは能力持ち2人を含めて20人いた。彼らに騙されていた事と安全に故郷に送り返してやる事が出来ないという事を伝えて、お前らが良ければウチで働かないか、食事や住居など生活に必要な物は保証するぞと伝えると助けてくれるなんて優しい良い人レスと言われ懐かれた。

 

 特注らしい小人用の首輪は既に外してあるが、全員オレやマニュの仕事を手伝ってくれており、かなり騙されやすい様なのでオレやマニュ以外にあまり姿を見せない事とオレやマニュ以外の指示を聞かないように伝えた。緊急時であっても誰かに伝言することは無いし、指示書を預ける事も無いと伝えておいたが、それでも不安だがとりあえずはそんな感じで話は纏まった。

 

 能力者である2人には能力と出来る事をとりあえず見せてもらった。それぞれの能力は女の方が【()()()()の実】、男の方が【クサクサの実】だそうだ。悪魔の実図鑑を広げて見てみるとハナハナと書かれた項目を見つけてこれかと思ったら同名の別の実だったようだ。クサクサに関しては載ってすらいなかった。しょうがないので能力を実際に使って説明してもらうと、だいたいこんな感じだ。

 

 

()()()()の実】 

 

花人間

好きに花を咲かせることが出来る

花に関しては絶対的な操作が可能

花と会話が可能

同名の実が存在する

 

【クサクサの実】

 

草人間

好きに草を生やすことが出来る

草に関しては大体操作が可能

草と会話が可能

 

 

 植物の操作だと【モサモサの実】と言うのがあるみたいだがそっちが植物全体に効果があるのに対してこちらは限定的な分、細かく強く操作が出来るそうだ。クサクサの実の『草』と言うのは草の定義通りで能力の効果が及ぶのは主に樹木以外の植物だそうだ。そして会話と言っているが基本的には情報を聞き出せる程度で、多少力を持った植物や賢い植物でないとしっかりとした会話は出来ないそうだ。

 

 どちらもかなりの強能力だった。土壌さえオレがしっかり操作していれば2人の能力である程度の作物は素早く育てることが出来る。ハナハナの実があれば受粉は簡単だし、薬効のある花なども咲かせられるし、普通に珍しい花や綺麗な花であれば売れる。クサクサの実なら作物全体を操れるのでこれまで以上の物を作れる。

 

 2人に頼みたい事を考える前に色々と悪魔の実は面白いなと感じた。2人の能力は樹木自体には効かない。しかしハナハナの実で樹に花を咲かせることは出来、その咲いた花は操れる。そしてクサクサの実で草花であれば咲かせることが出来る。それぞれの能力で出来る事は一部被っているが出来る程度はそれぞれ違う。

 

 まあ、話が逸れたが2人がまだ慣れていないので少しずつではあるが、これまでより良い作物と言う枠組みでは作物の高級品とでも言うべき物の栽培と品種改良を、そしてもう一つの特色としてこれまでより短期間での作物の栽培が可能となった。

 

 植物の交配を操作して種の品質の向上を図るのは勿論の事、作物の養分などの調整を行い時間をかけて特別な作物を作り出すのが結構良かった。果物の様に甘い野菜や砂糖を遥かに超える甘さで決してくどくはない果物、薬効の強い薬草、そして何より全体的に栄養価が高く健康にも良い。そしてそれを加工して作った保存食や酒類などがこれまた非常に高値が付けられた。

 

 そしてもう一つの短期栽培の前にグランドラインの島は春島、夏島、秋島、冬島とあり、そしてそれぞれの島で幅はあるが基本的に春夏秋冬が存在する。しかし、うちの島は多少上下はするが一定の気候が保たれている為、一年を通して作物の栽培が可能である。それだけでも十分でいつでもこの作物ならありますよと言う強みとなっていた。

 

 その栽培を早めてくれるのがクサクサの実の力である。野菜、穀物に限らず草であれば干渉できる能力で栄養の吸収と成長を早める事が出来るのだ。本来であればそんなことをすれば直ぐに土の栄養が枯渇するのだがそれを補うツチツチの実の能力がある。

 

 これまで以上に作物を大量に作れるようになったのと更には地味ではあるが重要なのが熟しているとでもいえば良いのか、作物は収穫しなければ段々駄目になってしまうがその心配が無いのだ。作物のピークとでも言うべき状態で置いとくことが出来るのだ。そしてそれはある程度であれば収穫した後にも効果を及ぼせる。

 

 これにより作物の販路が一気に広がった。本来であれば駄目になってしまうため売ることが出来なかった相手に売れるようになるのだ。そして販路を広げた際の作物の量の心配もクサクサによる早期栽培で解決できる。

 

 纏めに成るが、より良い種の確保、新しい商品と特別な商品、大量の作物、新しい販路、これらの獲得によりうちの国の商売は一気に盛り上がった。元々国家となった際に取引は増えたのだが、それを遥かに越すレベルでの商売の拡大で、革命と称しても良いレベルだ。一応国としてこれからやっていくためには発展は必要不可欠である。この国の産業である農業の新たな可能性にオレは大いに喜んだ。しかし、何かを忘れているような気もするがのだが……とりあえず小人たちの歓迎を先にしてしまおう。嫌な事は後だ。

 




まだまだ続くよ。


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第4プラント ツチツチと機動国家

連続投稿4話目。
一部修整しました。


 さて、何の話だったか……そうだレヴェリーの話がまだだった。服装や持ち物についてはいくらでもあてがあるのし、人手の問題は解決し、作物の保存が可能になった事でだいぶ余裕は出来ているが、それでも一ヶ月離れるだけでうちの国は成り立たない事に変わりはない。いっそのこと聖地とうちの国が近所であれば良かったのにと思った。

 

 ……それだ!!何を考えているんだとも思うかもしれないが聖地までが遠いのが問題ならば聖地に近ければ良いんだ。国と離れられないのであれば()()()()()()()()()。暴論も此処に極められたとでもいえば良いのか、でも実際にこれ以外の方法は思いつかない。

 

 とは言っても上手くいくか確かめる必要はあるので一番関りが深く、融通の利く相手で試す事にした。もちろん先方への連絡は怠っていないし、相手に伝えると驚いてはいたが是非にと言われた。そして取引中の相手全員に連絡を取り、用件がある人はマニュの故郷の国に来て欲しいと伝えて準備は完了である。

 

 オレは島全体と周辺の海底に存在する土を操作して国土を覆う様な形で大地を成形していく。船の形にして浮かせられないかと思っての事だが、いささか難しいようだ。と成ればもう一つの方法で行こうと形成していた土を壊して全てを島の下に持って行く、そして島を持ち上げた。

 

 島が持ち上がると少し揺れたが現在島にいる人たちには伝えていたので騒ぎにはなっているが問題は無い。それにしてもどこからか噂を駆けつけてやってきた世界経済新聞社の社長であるモルガンズと言う人がとにかく煩い。まあ、新聞はついでに契約させてもらった。

 

 島を持ち上げると島を支える部分、土台とも言える場所は硬化したうえでしっかりと固定する。そのさらに下の部分の海面より下の部分を操作する。足を生やして歩いても良いがそれがと揺れが酷いし、バランスを崩して倒れた際が悲惨になる。

 

 戦車と言う兵器のキャタピラを再現するかのようにして、土台の下を大きくしかし少しずつ動かして遂に島は動き出した。国王の意思のままに動き、敵対者を能力で跳ね除けるその姿はまるで海を移動する機動要塞のようだったとモルガンズは後に新聞で大々的に取り上げ、更に世間や有力者からの注目を集めた。

 

 移動中も、いや移動中だからこそ自由に海底から土を拾いやすく目的地であるマニュの故郷である国がある島にたどり着くまでに更に一回りは島が大きくなった。海底に足を点けているのと同じのため、海流や風に左右されること無く進む国土は想定より早く目的地へとたどり着いた。

 

 たどり着いた国はぶつかる少し手前で止めると土台を少しず下げてその場に国土を固定させると動かすのに使っていた土を操作して国と国を繋げる大きな橋を作り上げた。それは幅も距離も相当な物で自分の足で歩けば1時間以上かかってしまいそうだが、よく見るとその橋の表面は移動を助ける様に動いており、いずれ見る事に成る聖地のトラベレーターに似ていた。

 

 窮屈で申し訳ないが小人たちにはカバンの中に隠れてもらい、オレとマニュと少し離れて客人と言うか独占取材中のモルガンズと数人だがその部下が橋に乗った。すると転ばないように少しずつ速度を上げて行ったのだが出せる速度には限界があった。

 

 立っているから速度が出せないんだと思い付き、一度止まると土を操作して椅子を作って全員にそれに座る様に伝えた。するとまた少しずつ速度を上げていく、転ぶ心配が無いので速度は出せたが今度は風が凄いので、いっそのこと移動用の部屋を作ることにした。と言うかその方が見栄え的にも良いだろう。

 

 見た目だけだが馬車の様な作りで形作ると今度こそ全員で移動を再開させた。すると結構な速度を出しているが快適で特別問題はなかった。しいて言うのであれば思い付きのため装飾も家具も存在しないので、取材を急に頼みこんで来たモルガンズは気にしないと言ってくれたが、客人を載せる際にはもうちょい設備をよくする必要があるだろう。

 

 少し手間取った為30分ほど時間が掛かったが、最初から準備を整えて置けば半分くらいの時間で渡ることが出来そうだ。到着して馬車を解除して降り立つと一気に歓迎の声が響き渡った。何処からともなく盛大な音楽までも流れている。

 

 横断幕が広げられるとその場に集まった人全員が「ようこそ、スキーラ王国へ、アスカル国王、マニュ王妃」と一斉に言い放った。ちなみにアスカルと言うのはオレの名前だ。それとウチの国の名前は『プラント』だ。

 

 とそれはさておき、到着する前に連絡が欲しいと言われたのはこれの準備の為か。と言うか国全体を巻き込んで歓迎するっていささか盛大過ぎる気がするんだが、一応オレはこの国を救っているらしいから歓迎もされるのも仕方が無いのだろう。オレは根っからの農家なんだけどなぁ……まあ良いこういった事にもこれから慣れていかなければいけないのだろう。そう思って自分のアイデアの成功と歓迎を素直に喜ぶことにした。

 




まだまだ続くよ。

同じ操作系の能力を持つテゾーロが、海水が黄金に当たると操れなくなる点と今回のオリ主の能力との相違点の説明を少しばかり。というか説明と言うより悩んでいる案を2つ紹介。

まず第1の説の説明の前にこの実には操作以外にも能力があり、大地との同化も出来るという事から考えます。

これはミンゴことドフラミンゴの最高幹部ピーカのイシイシの実の岩石同化人間に近い。と言うより元々はそちらよりの能力として考えていました。土壌を細かく操る能力を普段は農業にメインに使っているが、本来同化が能力のメインである。原作でピーカが水に浸かったシーンは無いので判断は出来ないが、能力者は水に浸かると力が出なくなるが全く使えない訳では無い。膝から腰位までの水位であれば力は出しにくいがルフィも腕を伸ばしたりは出来てたはず。となるとこれらの能力は()()である。要するに同化した全体を体として考える。海面から少し持ち上げたのは上半身より上を海より出したという事、海面より下で動いてるのは腰より下だけで使いにくいだけで能力は使える。もっと島を大きくして上に出す面積が増えれば今回の移動より早く動けるようになるかもといった特性を利用した抜道説。


そして第2の理由ですが、少し無理やりのこじつけ。

「どこにあろうと力強く!!!生み出し…育む!!!この雄大な”力”を!!!お前には落とせやしない!!!お前がどれだけの森を燃やそうと!!!どれだけの遺跡を破壊しようと!!!」

「大地は敗けない!!!」

単行本32巻のワイパーの言葉です。

そうこの能力はツチツチと名付けられてますが本質は大地。
彼言う通り大地とは生み出し、育む雄大な力です。
陸海空と並びたてられることの多い3つの空間。
そう海の秘宝と呼ばれる悪魔の実ですが持っているのは海と並びたてられる存在である大地の力、自身が海に沈めば勿論溺れてしまいますが、そもそも悪魔の実の力事態が他の実と比べて強い。海水を浴びても操作が途切れる事が無いという説。


筋は通っているが無理やりな説ですね。この説を押していく場合には他の空の実と海の実も考えてそこで争うとかが思いつきますね。まあ、この作品でそれはやりませんけどね。

他の二次創作などでも海の力を持つ実はよく見ますし、空の能力の実も見かけたことがあります。

海は基本的に操作系が多く、普通に溺れるのもあれば海が避けるので溺れる心配はないとかもあったかなでもロギアでは無いのが比較的多かった。

空はロギアで書かれている物を読んだことがあり、天気を操ったり、空と同化したり、空=空間と捉えて、空間を操ったりもあった。

こうしてみると大地は完全に物理よりのため他の二つの実と比べて弱い気がする。まあ、そこはこの作品には関係ないので掘り下げないけど。

話が逸れましたがこの二つの説で悩んでおり、どちらかの説を選ぶかどちらも混ぜてみるかとかいろいろと悩んでいる最中です。とりあえず、同化説と大地最強説と仮称します。

同化説の場合は全体的にパワーアップの理由づけがしやすいため、チート化を進めるうえでの作品の違和感を減らすことが出来る。

大地最強説は伏線としての利用がしやすい。先ほどしないと決めましたが他の最強の実と争うとか、特別な実の力を危険視して世界政府と戦うとか、話の展開の重要な部分を描きやすくなる。

どちらにもメリットもあればデメリットもあるので確定はさせませんが、軽く頭に入れておいてくれると今後読む際に役立つ可能性が……少しはあるかも。

そもそも現段階で能力の覚醒もまだですからね。覚醒した場合の能力については完全に設定は0なので、いま必死に考えてます。イトイトが周りを糸にするだろう。周りを土に変える……強そうだけど地味だな。大地…地球…星自体への干渉とかもありか?グラグラだって世界滅ぼせるし、地球は水の星と呼ばれているけど、名前は地の球である様に地の星だし、考えると面白そう。候補には入れとこう。

修整

メタ発言のつもりで入れていたが、転生者と間違えそうなので下の文を丸々切り取り。

『ある人物が言うには大地の「アース」と栽培の「カルティベイション」からだそうだ。

 更に因むとスキーラは「飢餓」から「すきっ腹」でスキーラといった感じで、うちの国の名前はプラント王国で由来は草花の「プラント」と生産設備としての「プラント」で2重に掛かっている。マニュは生産の「マニュファクチャー」からだ。「マニュファクチャー」は日本語だと工業製手工業なので生産する事全体を指す「プロダクション」の方がまだ合っているのだが、名前に向かないので却下された。』


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第5プラント ツチツチと今後

連続投稿5話目。


 これで国全体の移動が可能と決まったので正式にレヴェリーの参加が決まったら開催に合わせて聖地へと移動すればいい。しかしその間は取引を流石に中止する必要があるかな? 移動中は何処にうちの国があるのか分からなくなるだろうからな。そんなことを考えているとそれについてはいい案があるぜとモルガンズから提案があり、詳しくは今回の取材の礼として後で伝えるとのことだ。

 

 そうだな、せっかく歓迎されているんだから自国の問題について考えるより、しっかり歓迎を受けた方がいいだろう。既に橋の手前には移動用のちゃんとした乗り物が用意されている。どうやらそれに乗って城まで行く様だが閉ざされていない見た目から考えるに道中は手を振った方が良いのだろう。はぁ、段々とこういった状況に慣れてきているのが嫌だ。手を振る度に歓声が巻き起こるのに内心すこし怖いと感じるが、表情に出す事は無かった。しかし、途中で通った広場に立っているオレの像を見た瞬間に顔が少し引き攣った。おい、モルガンズ……像の写真を撮るんじゃねぇ。

 

 国王様については何度もあっているし、今となっては完全に身内であるため普段相手にする取引先と比べては気楽ではあるがやはり少しばかり気を遣う。と言うより何故この人はこんなにもフランクに接するようになったんだろうか? 仰々しく接して来た最初よりは良いけども、まだオレは慣れていない。

 

 まあ、城では特別な歓待などはなく、落ち着いて過ごすことが出来そうだ。まあ、仕事の話や国王としてのアドバイスを貰う事と後は服の仕立などやる事は色々とあるのだが、外のお祭り騒ぎみたいな事は無いので良しとする。

 

 仕立については身体を測ってもらい、どんな感じの服が良いのか方針だけでも良いから意見を出してくれという事だった。とりあえず派手な物は嫌だという事、可能であれば能力を活かす、もしくは阻害しない物である事、農業とか農家的な雰囲気だと嬉しいという事の3点を伝えた。

 

 自分でも結構無茶ぶりだと思っているので仕立て屋にどうだろうかと尋ねると「民族衣装で参加する王族の方もいらっしゃいますので装飾と統一感を出せばご要望通りのコーディネートは可能です。是非とも私共にお任せください」と仕立て屋から力強い返事を貰えた。

 

 自分の想像より煌びやかにはなるだろうがそれでも金銀財宝で彩ったりしたような派手な衣装に成るよりはマシだろう。お願いすると伝えるとそれでは失礼しますと深く礼をすると仕立て屋は帰って行った。良い物が出来る事を祈っておこう。

 

 次に終わらせるのは相談とアドバイスだ。オレは王としての役割は果たすが王らしくあろうとしない事にしようと考えていると伝える。はっきり言って影響力は強くとも典型的な成り上がりで思考が平民なオレでは学ぶことを辞めはしないが付け焼刃になる。

 

 ならば逆に王らしくない王として定着させてしまおうと考えたという訳だ。あくまで生産者であり、商売人であるオレはその立場から発していこうと、他の王を商売相手と同じように考えて接していこうと考えている。そう考えると今までと変わらない、変わる必要性が無いのだ。

 

 そう宣言すると少し待って欲しいといい、うーんと唸りながら色々と思い出すようにしながらオレの発言について考えている。10分ほど時間がたってようやく結論が出たのか口を開くと「まあ、特異な目で見られるだろうがありかなしで言えばありだろうな」とのことだ。

 

 何でも王と言う存在は国の代表をしているだけあって生半可な者では成り立たない。それ故か特徴的な者が多いのでそう言った王らしくない王と言うのもまあ受け入れられなくとも真っ向から否定する者は居ないだろう。逆に真っ向から面白いと笑って賛同する者が居る可能性すらあるそうだ。

 

 先ほどまで考えていたのはレヴェリーで見かけたことのある特徴的な王を思い出していたそうだ。オレは分類的にはかなり特徴的な分類の仲間入りをするだろうとのことだ。自分を偽るのとどちらが苦労するだろうかを真剣に考えてくれていたそうだが、判断は任せると言われた。

 

 そして最後に仕事の話だが、今回この国まで島ごとやってきた。そのため普段は船に載る量しか取引が出来ないが今回は作物の貯えそのままが取引の限度となる。まあ友達価格と家族価格でかなり勉強させてもらっているがそれでもいい取引が出来た。ついでにこちらは大物の家具や生活用品などの中で商船から買えなかった物などを揃えた。

 

 その後でお試しである事と取引がこれから重なってくるので島を元の位置に戻す必要があると伝えて、来てから3日目に帰る事にした。帰りの際にも多くの人に見送られることになった。その様子もモルガンズに撮られたり、メモされた。

 

 あ、言い忘れていたが王様にだけ小人たちを紹介した。もちろん買った時の情報と売り込んできた商人の名前と特徴も伝えておいた。彼らの働きとそれによって出た利益をマニュが伝えると王様は目を見開いて小人を見て、小人たちはとても誇らしそうだった。

 

 帰ってからモルガンズに良い案があると言われて聞いてみるとグランドラインの後半の海、通称新世界に存在する命の紙(ビブルカード)の存在だった。ビブルカードと言うのはお店に爪を持って行くと作ってくれる紙で爪の提供者の位置と生命力を表すアイテムだという。

 

 モルガンズは丁寧に国王の位置を知らされる訳にはいかないから誰か国に留まって道しるべになってくれる人材を島に置いて、取引相手にビブルカードを渡せば国が何処にあろうとプラント王国へ来れる。それと電伝虫の窓口を作ったり、移動の航路を公開していいのなら新聞に載せても良いとのことだ。

 

 最後のはうちの国の動向が気になる者が必ず新聞を買うし、うちの国の動向をいち早く知れるからだろう。だがモルガンズの案はどれも良いものに思えた。マニュに相談してみても悪くは無いとのことだ。今ならモルガンズの方でビブルカードを用意してくれるとのことだ。

 

 とは言ってもうちには常に国に居て、居場所を公開できる存在がいない。王と王妃であるオレたちは勿論、小人族も公表は駄目だろう。となると電伝虫の窓口の事も含めて人員が新たに必要となる。スキーラにて人を募るべきだったかとも思うが、秘匿すべき内容が多すぎる事と故郷に帰れない事を考えると一般からの募集は憚られる。

 

 小人族とは別に奴隷を買うべきだろうかとも思ったが、どうしても人を買うという考えには納得がいかなかった。しかし、普通の人には強要することが多い仕事を押し付ける事も出来ないので、奴隷の購入を検討することなった。

 

 とりあえず来年のレヴェリーの際には取引を取りやめて、レヴェリーの準備を兼ねて前後一ヶ月も取引を止める事を現在取引中の相手に伝えた。もちろん、可能な限りその穴を埋める方法を考えマリージョアまでの経路と予定を公表し、そこに来れば規模はどうしても小さくなる上に人数も制限が掛かるが取引が出来ると伝えた。その条件でも大丈夫な人の情報を纏めて多少無理をしても多すぎる場所は争いになっても困るので優先度の高い取引先を除いて後は勝手に抽選で決めた。

 

 そうして来年の準備がようやく整ってくると政府からまた人がやってきた。今回の騒動をモルガンズが記事にしたことで事実確認にやってきたんだそうだ。話を聞き、国の運営の都合上長く離れる訳にはいかないので国ごと聖地の近くまで向かうと伝えた。役人は話を聞くと電伝虫で連絡を取っていて、最終的に問題は無いとのことだ。しかし、移動の前にこちらにも通達するようにと厳命された。

 

 今後の方針としては、まず作物についてはこのまま続けていけば良い。島についてはこのまま拡大していけば良い。レヴェリーについては参加が確定したら予定通りに移動する。そしてマリージョアに向かう途中か帰りでシャボンディ諸島に立ち寄って仕事を行ってもらうための奴隷を購入する。そしてビブルカードを作るのと電伝虫の窓口を作る。そっから先の事はその時に考えればいい。

 

 それよりも今はまだ自由に移動が出来ないので難しいが、将来的にはもっと色々な作物を作っていきたいのでこの島とは違った気候の場所で空いている場所を見つけたい。可能であれば少しの移動で春夏秋冬の全ての季節が揃えばいい。本当なら冬島の冬から夏島の夏まで揃えたいが16の季節が安定している海域など流石に無いだろう。

 

 4つまでなら4種類の島が近い海域を探せばいい場所が見つかるかもしれない。そうすれば四季全ての作物を育てることが出来る。何ならその4つのエリアを跨ぐほどに島を成長させ一気に育てられればいいのだが……まだエリアさえ見つけていない現状でこの考えは捕らぬ狸の皮算用である。

 

 さて、それでは来年までの準備は多くしておくに越したことはない。島と販路の拡大、自分自身の勉強も含めて今年の残りを精一杯働いて行こう。




ここまでで(修正しながら投稿したので変化してると思うけど)13500字ほどで、一気に書いた物を区切って投稿してます。どこで区切るべきかとかタイトルとかあまり考えてないので、伏線とかは基本的に無いです。

そもそも前の後書きでも言ったがオチをどうした物かと考えている段階だしね。流れやそこまでの段階は思いついてるけど、原作と関わるか、関わらないか、何をしたら終わりにするのかとかを考え中。

能力的にかなり影響力は高くなり、世界政府もあまり強く出れないぐらいの存在になる予定。位置的にはグラン・テゾーロに近い扱いになってくれればと考えている。海賊、海軍、世界政府のどれにも嫌悪感は抱いておらず、敵対してこない限り公平に取引を行う。数年の内に先進国の食料の多くを取り扱うぐらいの立場にしたい。最低でも世界の食料の数十%を担い、流通通貨の10%を握る位には成長させたい。

今現在正確には決めてませんが原作開始より20年ぐらい前、もしかしたらそれ以上前のつもりなんですよね。いまこの時間軸は、大海賊時代は始まってるけど、始まってからそれほど時間は経ってないと思ってくれ。

問題なのがオリ主の年齢の設定をしてないんだよな。ルフィに出会う頃までにあまり年を取って欲しくないので、可能な限り若くしたいが王を任せられる年齢と考えると……18~20が限界かな?となると原作開始20年前としたら18としても38か。

ルフィが確か原作開始時17だから20以上離れてるのか……まあブルックほど離れては無いから良いか。(比べる対象がおかしい)まあ冗談抜きでフランキーと4つしか違わないから別に良いか。別に仲間に成る予定は一切ないけど、ルフィ位から見て老人やおじさんキャラにはなって欲しくないと考えてます。

食べ物関係だから祭りでも開けばルフィたちと出会うだろうか?でもこれだと映画みたいな感じでの関わり方で原作との関わりが無いよなぁ。原作だと何処で出会う事にすればいいだろうか。そこを何とかしたい。オチの方は映画っぽい感じでも良い気がするというより本来なら在り得ない展開にしてこその二次創作。

原作だと出会いそうなのが他の国との交易中か、奴隷を買うためにシャボンディ諸島に来ている時かのどっちかかな?もしくは2年後の魚人島や新世界側の何処かでもいいかも。

ビッグマムと取引する予定があるからそこでもいいかも、こっそり匿ったりとか、でもそれより前に面識は必要だよな。初対面の奴らをいきなり匿ったりはしないだろうし、ましてや取引先から庇うってまずないよな。

こうして考えると出会う可能性が少しでもある場所はアラバスタ・ウォーターセブン・シャボンディ諸島・魚人島・ドレスローザ・トットランド・和の国かな。

アラバスタだと出会うのが早すぎるから、お互いに話題に出てくるが出会ってはいないぐらいかな。アスカルは内乱で大変なアラバスタに支援に来たって感じかな。でもここで面会してても面白そうではある。

ウォーターセブンは近くに美食の街があるのでそっちに出向き、アクアラグナの被害が酷かったウォーターセブンに支援かな。ここでファーストコンタクトのイメージはあまりない。

シャボンディ諸島は海軍や世界政府に食料を下した帰りに奴隷を見に来て、そこで出会って騒動に巻き込まれるって感じかな。取引中の相手を持って行かないでくれませんか?って感じで黄猿から多少庇ったり?いやそこまでやったら流石に関係が悪化するか。世界政府が無視できない存在になったとしても権力で天竜人には負けるだろうしな。そこいら辺は今後考えるとしてとりあえずファーストコンタクトはシャボンディ諸島が今の所有力かな?そもそもケイミーをアスカルが買えば解決か。問題も起こらないし、でもそうなると修行と頂上戦争への関わり方を考えないとな。

魚人島で再開するのもありよりのありで、ドレスローザもありかなしかで言えばあり、トットランドもありっちゃあり、和の国はまだ分からん。

原作との関わりはとりあえずこんな感じかな。大体の流れだけで細かい所は未定でその流れだって変更の予定はある。ちまちまと書いて行くのでよろしくお願いします。


とここで終わるつもりだったが、もう数話書けたので連続投稿はまだまだ続くのじゃ。




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第6プラント ツチツチと修行

連続投稿6話目。


 どんどん巨大化する島に対して少しずつ自身の成長が遅れてきている。成長しない訳では無いのだが操作範囲や速度を高めるのに時間が掛かっている。能力は鍛えれば伸びると聞いたことがあるが、やはり限界はあるのだろうか?

 

 毎日少しずつ大きくなる島を操作しているので、自然と能力の練習になっているとは思うが、もう少し意図的に修行の様な事をした方が良いのだろうか?少しずつ成長しているのでまだ限界ではないはず、となれば足りないのは自身の努力だろう。

 

 大きくなってきている島の表面は畑や山、街並みが存在するので動かせないが、海面より下の部分を島を揺らさない様に気を付けながら、難しい動きを繰り返す事にした。大地で細かい形を作ったり、大地の触れている物を感知して指定した物だけを取ったりとか、色々と試していく。

 

 その他にツチツチの力は土と同化することが本質である。という事は土の操作=自分の身体の操作とも捉えられる。オレは島を見て回っていたため、運動不足では無いが自分の腕力で畑を耕したりしている訳では無いのでどうしても肉体の力では普通の農家にも負けてるかもしれない。

 

 小人たちは作業を多くやってくれているのでオレより動いてるのもあるが、元から力なども強いようで動き方に無駄が無く攻撃力が高い。以前に強さを見せてもらった際には小さな体が繰り出すパワーに驚かされた。それ以来何人かに交代でオレとマニュの護衛について貰っている。

 

 マニュも護身術とかを昔から習っていたようで、能力なしの戦いなら普通に負けると思う。自分で言ってて少し情けなく感じたが、みんながこの島を支えてるオレだって凄いと言ってくれた。嬉しかったがやっぱり男としては強くありたいし、能力の為にも努力していきたい。

 

 とりあえず小人たちの真似は難しい、と言うより普通の人間であるオレには出来ないんじゃないかと思うのでとりあえず仕事の空いてる時間にマニュから基本的な身体の動かし方と一人での鍛錬の仕方を教えて貰う事になった。

 

 普段の動きに加えて身体を動かしているので当たり前だがいつもより疲労は溜まる。仕事に支障が無いようにしているつもりだが、心配してくれているのかマニュ達が代われる仕事を一部負担してくれている。その甲斐もあり地道な修行はオレの日課として定着した。

 

 体の動かし方を知ってからはやはり土の操作にも変化が出た。それも劇的な変化で、操作範囲と一度に操作できる量、操作性能大幅にアップした。自分が今までどれだけ能力の上にあぐらをかいていたのかが分かった。

 

 本格的に体の動かし方を習おうと思うと人を呼ぶ必要があるが、いつ時間が取れるか分からない状態では失礼だと思い、基礎をとにかく反復練習するのに加えて、小人たちと鬼ごっこやかくれんぼなどでたまに遊ぶことにした。

 

 全速だと目にもとまらぬ速さで動ける小人たちとの鬼ごっこは勿論のこと、小さくて見つけにくい小人を島全体を使ってのかくれんぼとなると集中力が必要となる。かくれんぼは能力ありだがそれは向こうの2人も同じである。こっちが土で感知できるように向こうは植物で感知できる。身体も能力も心や勘だって鍛えられる1石4鳥な訓練である。小人たちはとても楽しそうなので5鳥かもしれないな。

 

 分かると思うがオレは鬼で固定だよ。オレが逃げても隠れてもすぐに捕まる未来しか見えないだろ。捕まらない様に逃げるとしたら掘れない深さまで土に埋まるしか方法は無いよ。それやってもつまらないだろうし何の訓練にもならないのでやらない。

 

 島の動かし方とかも工夫すれば能力の特訓に成るのだろうか、特訓もそうだがより効率的な能力の使い方とかも知った方が良いだろう。オレよりも小人の能力者2人の方がたぶん能力を使いこなしている。それは知識の差が大きいと感じた。

 

 彼らは元から植物に関しての知識や技術を持っているため、どうすれば良いのかを感覚で理解しているだけのオレよりも上手く使えているんだと思う。オレが能力を上手く使うためには大地についての知識を得る必要がある。そのため農業は勿論、地質学など、様々な観点から学んで行く事に決めた。

 

 別に国王としての勉強から逃げる言い訳では無い。逃げて苦労するのは自分だし、自分が国王らしくしなくても相手を理解するための知識は持っておく必要があるし、商売の為の努力と考えればまだまだ頑張れる。とは言ってもマナーの勉強は今度じゃダメですか?ダメみたいですねやりますよ。

 




まだまだ続くよ。


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第7プラント ツチツチとレヴェリーに向けて

連続投稿7話目。


 去年から始めた修行なのだが、日課にしてからというもの体調を悪くすることも少なくなり、元気に今日も畑に交易、島の拡大といつも通りの日常を過ごしていました。過ごしてたんだけどなぁ……世界政府から連絡がきやがった。

 

 正式に今年のレヴェリーの参加が決定してしまった。はぁー……覚悟してはいたけどこうも突き付けられると辛いものがある。

 

 海賊王であるゴール・D・ロジャーが処刑され、大海賊時代と呼ばれる新たな時代が幕を上げた。そのため、どこの国でも海賊の被害が増え、色々と大事な話し合いがあるそうだ。なんでこんな時に国王になっちゃったんだろう。

 

 とは言ってもそんな弱音ばかり吐いてるわけにはいかないのだ。決まったからには事前に立てていた計画の準備をしないといけない。

 

 とりあえず交易相手全員にレヴェリーが確定したことを通達、事前に決めていた島や国にうちの国が1日とは言え停泊することの感謝を伝え、取引予定の相手には念のため合流ポイントと取引を行う時間を知らせる。世界政府にも移動時間を計算して、レヴェリーの1月前から移動を始めると連絡。

 

 すると今度は世界政府と海軍から合同で連絡が来た。何でもレヴェリーの移動中は海軍から護衛が出されるんだそうだ。移動を始める前に軍艦を寄こすという事だったが、堅苦しいのは嫌いなので断ろうとすると、なるべく堅苦しくない奴を向かわせるからと食い下がられた。

 

 ならばとそもそも島と言うには大きすぎるうちの国、そこそこの土を操作すれば下手な海王類よりでかい攻撃も繰り出すことが出来るし、土に岩や鉱石を混ぜて壁にすれば大砲の嵐だって無傷でいられるだろう。攻守ともに優れていると断言できる。

 

 まあツチツチのスペックを置いとくとしても移動中襲われて、仮にやられるんだとしたら国を亡ぼせるような奴が敵なわけで、国を守れるような()()の様な人でも居ない限りは護衛は結構ですと伝えた。そこまで言うと向こうから了解したと返事を得ることが出来た。

 

 これで護衛が来ることは無いだろう。ただでさえ移動中にも商売の仕事があるのに、知らない人がやってくるのは勘弁してほしかったのだ。とは言ってもよくよく考えるとウチの国はツチツチの力で何でも行っているがオレに何かあった際が本当に危ないよな。

 

 絶対的な防御は難しいだろうが誰でもできる防衛手段は用意しとくべきだろうか?とは言っても例えば武器を用意してもそれを操作できる人手がいない訳だしな。土人形だったら細かく命令しなくても簡単な作業はしてくれるだろうし、砲台などを用意しとけばとりあえずは良いだろう。

 

 最悪は国を丸々土で覆ってから固めてしまえば生半可な存在では手が出せなくなると思うので、最終手段の一つとして記して、みんなに共有しておく。備えあれば憂いなしという奴だな。さて、これまでのレヴェリーの議題と前回のレヴェリーの細かい内容、他の出席者の名前と国の特徴などを今から覚えないとな。分かってるさ、せっかく纏めてくれてるんだから読まないとな。はあぁ、レヴェリー中止になんねぇかな?

 

 




修正点

『海賊王であるゴール・D・ロジャーが処刑され、大海賊時代と呼ばれる新たな時代が幕を上げた。そのため、どこの国でも海賊の被害が増え、色々と大事な話し合いがあるそうだ。なんでこんな時に国王になっちゃったんだろう。』を追加。


ゴール・D・ロジャーが処刑されたのはエースが生まれる1年3ヶ月前とあった。エースは1月1日生まれ、1月の3ヶ月前は10月。

大海賊時代が始まっている設定だと、世界会議がほぼ年末に開催されてることになりそう……世界会議と言うなの忘年会になりそう。

世界会議の期日が4年に1度としかかかれてないから、私の小説では開催する月は多少ばらつきがあり、ロジャーの処刑で出る影響を話し合うため、開催が遅かったことにしました。


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第8プラント ツチツチと英雄

連続投稿8話目。
これで連続投稿は本当におしまい。
あ、初の原作キャラ登場です。


 ついにこの日がやってきてしまった。そうレヴェリーに向けての移動を開始しないといけない日だ。一応かなり余裕を持っての移動になるのだが、遅れた時が怖いので予定通り出発する。オレが能力を発動して国を持ち上げて動き出した。

 

「がははは、本当に国ごと行くとはな!!実際に目にすると珍妙な光景じゃわい!!」

 

 そして、その移動に伴って海軍からの護衛艦がやってきているのだ。それも何故か()()()()()()()という事になっており、あまり堅苦しくなく、海軍内において英雄と呼ばれるほどの実力者であるガープ中将とその部下が旅路を共にする。

 

 この人がやってきた時は本当に驚いた。出発の日である今日より約1週間前に突然海軍の軍艦がやってきてレヴェリーに向けての護衛だと伝えられたのだ。どういう事だろうと思って色々と事情を聴いてみた所……

 

「お前さんが気さくで英雄みたいな奴と言う条件を付けたんだろうが?そのせいでワシは上から此処に行って来いと指定されたんだからな」

 

 と呆れた様子と不機嫌な様子が見られた。確かに最初からこのように接してくる相手を堅苦しいとは思わないが、出てきた相手が予想外の大物過ぎた。それと本当に英雄がやってくるとは思わなかった。

 

 要望として伝えたつもりは無かったとはいえ、こちらの意思を酌んだうえで来てくれた相手という事で、初めの内は多少気を使っていたのだが段々と使わなくなった。それもそのはず、こんな人は他にはいないだろうと思えるぐらいインパクトが強すぎた。

 

 初日に小人の存在を見つけるし、もてなしをしたら遠慮なく喰いまくるし、修行をしていたら堂々と混ざってきたのだ。混ざってきた修行は基礎訓練だけでなく鬼ごっこやかくれんぼの遊び要素のあるやつにも参加して、問答無用で勝ちをもぎ取って行った。部下の人に謝られたが、気にしてないので大丈夫ですとだけ伝えておいた。

 

 まあ、色々とためになっている部分はあるので納得はいかないが強く言えないというのもある。実戦形式とは言え英雄からの手ほどきと言うのはとてもためになる。その他にも能力者や能力に付いて知ってる話をしてくれた。まあ、ほぼほぼ情報が足りず部下の人が捕捉してくれてようやく理解できたのだけどな。

 

 体の出来がしっかりしており、精神の方もある程度整っていると褒められた。そしてこれだけ基礎が出来ているのなら大丈夫じゃろと言って、訳の分からない訓練が開始された。

 

「移動自体は能力の感知でどうにかなる。方向の訂正などは口頭で伝えるから安心せい」

 

 と言ってオレの顔に目隠しが装着させられた。そしてその状態で容赦なく、いや手加減はされてるのだが本当に容赦せずに殴りかかられた。察知して避けるか、防ぐかしろと無茶苦茶な事を言われた。日に日に傷が増えていくが、防衛本能なのか段々と避けれるようになっていくから文句が言えない。

 

 そしてそれと並行して力を纏う訓練も行われた。なんでも気合を攻撃に乗せろとのことで、とにかくかかってこいと言われた。その後で部下の人に鎧を纏ったり、攻撃を弾いたりするイメージで、能力で土を纏っている感覚を思い出せば想像しやすいとアドバイスを貰った。

 

 その結果2週間と言う急ごしらえではあるが覇気と言う物の基礎の基礎を覚えられた。気配を感じるのが『見聞色』、身に纏って攻撃や防御に使えるのが『武装色』、そして最後に「才能はありそうなんじゃが」と言われたものの使えなかった『覇王色』という3種類があるそうだ。

 

 覇気と言うのは誰でも取得できるものではなく、絶え間ない鍛錬、天性の資質、後は戦いなどの経験で培われていくものらしく、短期間で基礎の基礎とはいえ身に付けるのは本当に才能があるらしい。そう言われるとやっぱり嬉しく感じる。

 

 そしてこれを覚えてからは能力を使用する際にも覇気を使う事でこれまでとは全然違う使い方も出来るようになった。それ以前に操作性なども一気に上がったので自分の成長が目に見えて分かった。

 

 そのほかにも能力は極める事で『覚醒』というワンステージ上の領域に到達できるとか。オレはまだ覚醒の段階には至っていないのでまだまだ伸びしろがあると考えられる。まあ、波乱万丈はあった物の思いがけないパワーアップを経験することが出来た。

 

 覇気の基礎を習得してからは、覇気の訓練も日課に入った。オレとしてはこれで満足なんですけど、その「面白い奴もいたもんじゃ、六式も仕込んでみるか?」というよく分からないけど不穏な言葉を取り下げてください。オレ国王であって、海軍入隊希望では無いですから、推薦されても入りませんよ。

 

 まあ、世話になったのは確かなので困ったことがあれば出来る限り相談に乗りますし、個人用の連絡先も渡しておきますのでこれで勘弁してください。組手の訓練ですか?ああ、はい分かりましたよ。仕事に支障出たら手伝ってくださいよ。まったく、変わり者の英雄もいたもんだ。まあ、嫌いでは無いけど、いやデレたって何?どこにも需要ないから。

 




ガープを変わり者扱いしているけどオリ主も十分変わり者、だから目をつけられてるんだからね。

面白がって修行に協力、在り得ないレベルで能力を使いこんでおり、体もそこそこ鍛えられている為に修行についていけてしまった結果がこれ。

覇気習得……武装色と見聞色のみ
     覇王色は持ってるが開花してない
六式習得ならず……そのうち習得するかも
覚醒……まだまだ先

次で残りの移動の間の修行の成果を書き
少しだけ先にシャボンディ諸島に立ち寄り
そしてレヴェリーの予定
レヴェリーまではガープが付き添い続ける



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第9プラント ツチツチとシャボンディ

 ようやくマリージョア近海の停泊予定地へと辿り着いたのだが、振り返って見なくとも分かるくらい、とても長く感じる旅路だった。いや、立ち寄らせてもらった島との交易も元より予定していた商船との取引も問題なく終わってくれたのだが、あの異常に濃密な修行が印象に残ってる。

 

 武装色と見聞色の覇気ならそこそこレベルになったし、結局は六式とやらの訓練も追加されてしまった。指銃・鉄塊・紙絵・剃・月歩・嵐脚の内で覇気の修行に比較的似通っていた鉄塊と紙絵を習得でき、指銃は威力が足らず、剃が制御できないが速度は出せるようになった。月歩と嵐脚?あんなの直ぐに出来るかい!!

 

「それで、まだレヴェリーまで時間があるようじゃが、どうするつもりなんじゃい」

 

 シャボンディ諸島に向かう予定だと伝え、念のためと言うより護衛としてしっかりついてきてもらう。シャボンディ諸島はヤルキマン・マングローブで出来ているので操れる土がどうしても少ない。一応この服の下に動きを阻害しない程度に土を入れているけど念には念を入れる。

 

「ふん、覇気が使えて六式を甘く採点して半分使える奴が前半の海でやられるわけないと思うがな」

 

 能力に頼って生きてきたから能力が全力で使えない場所に不安を感じるんですよ。こちとら新興とは言え王族ですよ。世界政府にお金払ってますし、海軍との取引も勉強してますから仕事してください。まあ、小人の護衛も居ますけど目に見える護衛がいた方が人が寄りにくいからね。

 

 それにしてもシャボンディ諸島の名前通り、ふわふわとシャボンが漂ってて面白い。生息に適した気候で無いとシャボンは十分に効果を発さなくなるそうだが、どうにかヤルキマン・マングローブを島に植えれないかと考えてしまう。

 

 種子を手に入れられたら適した土で苗レベルまで育てて、適した海底の土に植える事は出来るだろう。でも気候まではどうしようもないだろうから諦めるしかないな。ウチの二人も樹木は管轄範囲外だからどうしようもない。4季が揃っていてヤルキマン・マングローブの生息にも適した場所なんて都合のいい場所は流石に無いだろう。

 

 シャボンがあれば荷運びなどでも役に立つだろうし、シャボンディ諸島の文化を借りることだってできるから本当に欲しいんだよな。モクモクの実の樹木人間とかどっかに居ないかな?まあ、無い物ねだりしてもしょうがないのでボンチャリで遊ぶか。

 

 いや、これ楽しいな。漕ぐと楽に進めるので面白い、因みに風を感じたいので中に入るのでなく上に座席を載せるタイプのをレンタルした。ふむ、饅頭が美味しいな。あ、煎餅も買いましょう二人で分けません?ああ、美味しいけどお茶が欲しくなるな。あ、みんなの分も買うから国に戻ったら全員で食べようね。

 

 今いるのは40番GR~49番GRの旅行者向けの観光・お土産エリア。1番GR~29番GR概して無法地帯となっている場所へ赴いて人間屋さんを訪ねるとしましょう。

 

「流石にワシが堂々とそこに入る訳にはいかんからな、さっさと済ませてこい」

 

 事情は話してあるとはいえこういった場所は嫌いなようでどうにも機嫌が悪い。オレも別に奴隷が好きなわけではないので許してほしい。とりあえず、案内の店員に奴隷について尋ねるが基本的な説明だけなので自分で見て回った方が良いだろう。

 

 待機してもらう予定の奴隷はビブルカードを不特定多数に配ってもらうからどうしても危険が伴ってしまうので多少腕っぷしに自信がある人物の方が良いと思っている。だが、そこまで強いと思える人材は居なかった。それで電話の応対が出来る様な人材を探したところ使えそうな人材がいたので買った。大人が男2人、女3人、子どもが男女2人ずつだ。

 

 全員警戒しているが、とりあえず必要な物を揃えてもらう必要があるから日用品や服や家具をそろえて一度荷物を置きに行こう。その後で特別な奴隷はオークションに流される事が多いと聞いたので、戻ったら今度は1番GRへと向かうとしよう。




シャボンディ諸島を新興国王と海軍の英雄が観光している。
六式……完璧なのは鉄塊と紙絵、中途半端なのが指銃と剃、出来てないのが月歩と嵐脚。

この頃はまだドフラミンゴのオークションハウスは無いと思うけど、オークション自体はあってもおかしくないので同じ1GRにある設定にしました。

因みにキャラの名前を考えるのが苦手で、まだ殆ど名無しです。お義父さん国王、小人の能力者二人(ハナハナ女、クサクサ男)、奴隷のビブルカード役と電話役の代表一人くらいはきちんと登場させたいが、性格とかも難しい。

次でオークション会場で天竜人と関わらせるかで少し悩んでいる。後必要な奴隷以外になんかしら濃いめのキャラを入れたい。まあ、あくまで予定ですけどね。

ではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第10プラント ツチツチと天竜人

投稿です。

中々に読んでくれている方が多く、思っていたより評価されていて、驚きと喜びで舞い踊っています。


 奴隷達はそこまで悪い扱いをされ無さそうだと分かると多少安心している様子が見られた。こちらの対応から調子に乗って行動を起こすようなことも無さそうで、仕事の内容も落ち着いている内に話すといつ決めたのか代表が「奴隷に落ちて命と生活が保障されるんだ文句は言わない」と答えた。

 

 他の奴隷の人たちも考えは同じなようなのでひとまず安心した。奴隷と言うのは家族や仲間、知り合いなどに買ってもらえない限りは悲惨な最後を迎えるのが普通らしいので、日用品や生活家具、食事や嗜好品、挙句は住処や少額とは言え給料が貰える奴隷なんて普通は在り得ないそうだ。流石に金を多少使わないと不味いかなと思い始めただけなんだけどな。

 

 因みに俺が新興国の国王だと伝えたら、何処かの要人程度には考えてたが王とまでは思わなかったらしく少し驚いていた。とは言ってもそれで何かが変わる訳では無いのでその話はそれだけで終わった。奴隷からの呼び名は蔑称でない限り好きにして良いと伝えた。あ、来客がいる時は別ね。

 

 細かい説明はマニュに頼んで、小人の事については小人全員が姿を見せても良いと思った人にだけ見せて、国の秘密であり広める事を禁止すればいいという事で決定した。いずれは奴隷から解放する事も考えており、その際に残って国民になってくれると嬉しいが、在り得たとしてもまだだいぶ先になるだろう。

 

 そしてもう一度赴いたのシャボンディ諸島の1番GR、人間屋最大のオークション会場にやってきた。今日のオークションの時間に間に合って良かった。とりあえず適当な席に座って始まるまでの時間を潰す事に決めた。こういった会場に来るのは無法者だけでなく、金持ちや貴族なども多く居るこの格好で積極的に話しかけられる事は無いだろうと油断していた。

 

 すると会場に取引をしている商船の人や国の方が居たようで嬉々として話しかけてきた。その声を聞いた人たちが関係を持っておこうとそれぞれ挨拶にやってきた。声が声を呼び、話題性のあるオレは会場の注目の的にされてしまった。

 

 そして、なんの因果かその場にオレに興味を持ち始めていた権力者が居て、他の者達と比べて行動力のあるそいつは自らオレに声をかけてきた。

 

 最悪最高の権力者と名高いその男の向かう先がオレだと気付くとオレに話しかけていた者達は慌てて道を開けてオレから離れていった。

 

「お前がプラントの国王か?」

 

 オレは目の前の世界貴族、天竜人に対して、切実に機嫌を損ねないように願いながら頷いて応えた。オレが肯定すると目の前の男は喜々とした表情をみせた。

 

「そうかそうか。お前の国の食材は特別な種でもないのに素晴らしい質で、特別気にかけていたんでな。顔を知れて良かった」

 

 何でもこの天竜人様、名前を教えて貰ったのだがイスト聖、ある人物が言うには由来は味、風味、好み、趣味、把握するなどの意味のテイストからだそうだ。

 

 イスト聖は食道楽で、食のために金や権力を惜しむことは無いとのことで、オレの国の食材を気に入ってくれたらしい。

 

 食への関心が高いという事で、作物を褒められた事を喜びつつも何かしら無茶な要求をされるのではないかと、内心ビクついていたのだか、イスト聖は笑って否定した。

 

「我は他の天竜人から変人扱いされるレベルでの食道楽だ。それ故に食に関しては学んでおり、食に携わる者は尊重している」

 

 それ以外がどうなろうと知ったことではないがな。と付け足し、その後で他の天竜人に対する愚痴をこぼし始めた。

 

 ろくに味も分からん癖に有名な者を呼び寄せ独占、酷いときには使い潰す。それは料理人についてだが、生産者においてもそうだ。

 

 権力をかさに食材を献上させて金を払わず成り立たなくさせたり、気に入らなかったなどと好みで潰したり、食材の独占や無理な徴収で過労死させるなどあいつらは愚かにもほどがあると凄い剣幕だった。

 

 一通り話した後でイスト聖から提案があった。強制するつもりはなく、断ってくれても良いと前置きの後に自分を後見にしないかと言われた。

 

 イスト聖が言うには、変人と扱われているが天竜人内での権力は高い方で、愚かな奴に目をつけられる前に素晴らしいと感じた人材の保護をしているとのことだ。

 

 オレの場合は国ごとイスト聖の保護下になるそうだが、はっきり言って断わる理由はあまり無い。やっかみはあるかもしれないがうちに何かしてくればそれこそイスト聖から制裁される。政治面での安全面はかなり上がりそうだ。

 

 その反面、天竜人とつるんでいると離れる者や敵対的になる者も増えるだろう。だが武力行使ならばある程度防げるし、取引を辞めたいと言うのならば止めはしない。

 

 そもそもうちは殆ど全てを自給自足で賄えている。それに世界政府と海軍が顧客で無くなることはまず無いだろう。たぶん目の前の人物もこれからお得意様になるだろう。

 

 オレは後見して頂く方向で検討する旨を伝えた。すると。かなり上機嫌で笑っていた。その後で予想通り、食材を定期的に卸すよう言われた。

 

 今は直ぐ側に国ごと来ている事を伝えると新鮮なうちの作物が手に入ると更に喜びお付きの人に直ぐに人を向かわせるよう伝えていた。

 

 オレは一言断りを入れてから何時も携帯している電伝虫を取り出してマニュに連絡を取った。内容は取引の相手についてと取引の優先度についてだ。これからお世話になるから値段、量、質、全てにおいて良いものを渡すようにと伝えた。

 

 色々と想定外の事態ではあったが、まあ結果的には悪くないので多少の面倒は諦める。さて、そろそろオークションが始まるようだ。メインの用事の前にどっと疲れたが、気を入れ直そう。

 




アスカルはイスト聖と親しくなった。
アスカルは権力者へのコネクションを手に入れた。
新興国プラントに天竜人の後見人が着いた。
世界政府は頭を抱えている。

役に立つが、強い力を持ち始めたアスカルとプラントを警戒している世界政府が手を出しにくくなってしまった。

まだ、立場的にはプラントだけで強く出れる程ではないので、それまでの間の守りとして登場したのがイスト聖、名前は考えたが、家の名前の方はあえて設定しない。19の家の名前のどれかは今の所は決めません。

さて、天竜人を出す場合の設定は考えていたが、次の話で登場予定の奴隷はまだ考えてないので、今必死に考え中です。

奴隷の条件は、自衛が出来るぐらい強いこと、そしてアスカルで制御できそうな人柄であること。その条件内で二人は考えておきたい。

何かあってビブルカードが使えなかったら問題だし、二人以上入れば月ごとに交代で休むとか出来るかもしれないし、それでも国への拘束は強いけどね。

ま、こんな感じでいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第11プラント 盛り上がるオークション会場?狙うは目玉商品!?

投稿です。


 一国の王であり、たった今手に入れた物ではあるが天竜人との関係も持っている。そんな存在に近づきたくない者と出来る限り関係を持っておこうとする者に二分化されたが、予定していた気楽にオークションを覗くというのは出来なくなった。

 

 あの後でやっぱり自分で出向くと言ってイスト聖はプラントに向かってしまったので、先ほどまでの様にオレの周りに人だかりが出来てしまっている。とりあえず、イスト聖が向かう事をマニュに連絡したいのとオークションに集中したいので後で話す約束を取り付けて一度離れて貰った。さてと、もう一度電伝虫を出してマニュに報告した。無理難題だとは思うがなんとか頑張って欲しい。悪いようにはしないと思うから、あの人は。

 

 そうして、やっとオークションを見る事になった。売れ筋であるのか、それとも人の性か、美男美女が多く紹介され、多くの金が払われ買われている。オレが欲しいのは自衛が出来るだけの力を持っている奴隷になるので、海賊だった人物などが狙い目となる。とは言っても懸賞金も低いし、覇気を使えないのはしょうがないとしても、戦えそうな雰囲気を感じられない。そして、荒くれ者らしさだけは在る様で従順そうには見えない。

 

 戦える者と言うのはこの世界において、海軍、国軍、賞金稼ぎ、海賊、用心棒や傭兵といった者達に成るのだが、こういった場所に出される連中となると当たり前だが犯罪者やそれに近い者に限定されるので人格面で受け入れられそうな者はまあ居ない。

 

 ずっと見送っていると、もう紹介される奴隷も最後となってしまった。来た分だけ骨折り損かなと考え、席を立って帰ろうと思っていたのだが、目玉商品と宣伝されているので一応見て行こうと上げかけていた腰を下ろした。

 

 そうして、今までは順番に奴隷をステージに連れてきて見せているだけだったが、今回は違うようで幕がしまったままになっている。どうやら、毎回目玉商品の時はこういった演出にこだわっているそうだ。売り物が売り物だが商売の努力と言う点は何でも一緒か。

 

 そう考えていると、いきなり幕の奥がライトアップされたのか、幕に影が映り込んだ。その影はライトの当て方を間違っているんじゃないかと初めは持った。しかし、ライトの当て方は正しかったようで、普通の人より遥かに大きいその影の紹介が始まった。

 

「こちらは今まで持ち込まれた事のある奴隷の中でもかなり稀少、珍しさと言う点だけなら人魚にも匹敵すること間違いなし、魚人と巨人のハーフ魚巨人(ウォータン)の女賞金稼ぎ、その攻撃手段からついた呼び名が『スティング・レディ』ことピアスだ!!!!」

 

 魚人と巨人のハーフはウォータンと言うのか、初めて知ったな。巨大で強靭な肉体の割には細身なのは魚人の種族による物だろうか。ふむ、予定とは違うが強さと言う面では目を見張るものがある。巨人と魚人の双方の力を持っているという点も面白い。

 

 鋭い目をしているが、顔は整っており、体の方も細身ではあるが男性に好まれそうではある。競り落とそうと考えたら、それなりの出費は覚悟した方が良いだろうか。まあ、いくらになるかは分からないが必要経費と割り切っておこう。

 

「魚人族なら100万から、巨人族の女性なら1000万からですが、二つの種族の力を有し、賞金稼ぎとして名も知れ渡り、綺麗な顔立ちに綺麗な身体、希少性は7000万からの人魚の女性にも劣らない。そんな本日の目玉商品である彼女の最低金額、5000万ベリーからスタートです!!」

 

「5000だ!!」「こっち5500万!!」「私は6000」「6200だ」「6600でどうだ」「珍しい7000出すぞ」「もらったぁ8000万だ」

 

 それだけ珍しいという事か、能力の高さを買っているのか、それとも彼女の身体が目当てなのか、それぞれ思惑は違うだろうが、段々と値段がつり上がって行く。そろそろ一度声を上げても良いかもしれないな。

 

「1億で」

 

 一気に2000万ベリーも吊り上げた声に視線が少しオレの方に集まる。それが会場で話題になっていた人物だから、更に動揺が広がる。しかし、相手が誰であろうとオークションでは金がある方が正義。負けじと声を上げようとする者もいる。

 

「1億1000万」

 

「2億で」

 

 競り合う時間が面倒に思えてきたので一気に値段を吊り上げる。金にはまったく困って居ないので数億程度であれば本当に必要経費で済む。まだ、戦おうと思えば戦えそうだが余裕のあるオレの表情を見て、相手が悪いと他の者が諦め落札は確定した。

 

「そこまで、それでは本日の目玉商品、魚巨人のピアスはアスカル様の落札となりました!!これにて本日のオークションは終了です。落札されたお客様は会場裏より受け渡しを行いますので、お伺いください。ではまた次のオークションでお会いしましょう」

 

 これで良かったのだろうか、オークションのマナーなどは一切知らないので分かりはしないが、彼女を買うことが出来たから良かった。当分は問題は無いと思うが、一人しかビブルカード役が居ないのは問題なのでそのうち何とかしないとな。まずは、彼女との顔合わせをしなくてはいけないから裏に向かうとしよう。




後書きでビブルカード役の奴隷は最低2人は用意したいなどを散々話しておきながら完全に裏切って登場させた新オリキャラです。

彼女の魚人要素も既に決めてますが、名前から刺さりそうな魚という事でわかる人は分かるでしょう。結構危険な魚です。


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第12プラント 戦闘勃発!?ツチツチVSダツの魚巨人ピアス

すみません。12話から後の話の流れがどうにも自分で書いておいて納得いかず書き直しました。18:00から順番に投稿されるはずです。以前の奴は削除します。




 会場内に金を大量に持ち込むのは何なので外で待っていて貰ったガープ中将に預かって貰っていたのだが、ガープ中将の周りに何やらゴロゴロと転がっているのが見える。オレの目が悪くない限りは人で、たぶん周辺のごろつきが集まってきたのだろう。

 

「ようやく終わったのか、まあ向かってくる奴らがいたから退屈はしなかったがな。で目的の奴隷は買ったのか?」

 

 オレは頷いて、買った奴隷の情報を話しながら金を返してもらう。魚巨人である事を伝えると、ほほぉと面白そうな顔でニヤリと笑った。自分で鍛えて、バトろうかと考えているのか、それともオレの趣味とでも思っているのか。後者だったら殴ってやる……まあ余裕で躱すか防ぐかするだろうけど。

 

 まあ、金を持ってオークションのスタッフに案内される形で裏に向かい料金を支払う。そして、ピアスに付けられている奴隷用の爆発する首輪の鍵を受け取る。そして、不機嫌さを隠すことなく立っているピアスと対面する。

 

「……」

「黙ってないで、主人に挨拶しろ!!申し訳ありませんアスカル様。入荷したばかりで何もしつけられてなくて」

 

 別にそこはどうでも良いので謝罪を適当に聞き流してピアスを受け取る。とりあえず、何の反応もない彼女にとりあえず付いてくるように伝える。

 

「ぶわっはっはっは、お前凄い睨まれてるのぉ、ウケる。それにしても、こういったきつめのが好みな、おっと、冗談じゃ冗談、本気で殴りかかるな」

 

 オレにはマニュがいるから、ガチでそう言った冗談はやめて欲しい。いや、王族の中には一夫多妻や逆に一妻多夫も多いし、マニュはたぶんオレが望んだらむしろ喜んで女を集めそうなところがあるから怖いんだよ。オレは理解はしてるが自分がそう言った立場にはなりたくないんだよ。

 

 憤慨しながら殴りかかるオレを予想通り余裕の表情で避けるこの爺、どうにかして葬れないだろうかと考える。なんでこの人にあんな出来た部下の人たちが付いてるんだろう。いや、この人がこんなだから部下が頼もしくなるのか。

 

 まあ、この人が周囲の人を惹き付けるのも分かるけどね。この性格、揶揄いをオレに向けるな。まあ、今のは別の意図があっただろうけどね。

 

 魚巨人であるピアスを連れてあるけばそれなりに目立つので、オレ的には街中もそうだが普通に無法地帯であってもあまり長距離の移動は避けたいので、行きと同じように60番台の海軍駐屯、政府出入口の役割となっているエリアから直接国へと戻る。

 

「……海軍、顎で使って……コイツ何者だ?」

 

 何やら呟いているようだが、その声ははっきりと聞き取ることはできない。だが、どこか警戒しているように見える。

 

 島の殆どが農地や牧場、食材の加工場になっているので巨人サイズの彼女の足の踏み場が全然ない事に気付いた。とりあえずは足の踏み場だけあればいいだろうと思い、城の周囲に広がる町をどけてスペースを確保した。

 

 ここから先はオレとピアスの問題になるので、海軍と別れてはそこに向かうが、ガープ中将の横を通る際に一言だけ伝えられる。

 

「ま、頑張ることじゃな」

 

 まあ、この人ならそう言うか。手は出さないぞと伝えられたわけだがそれが正解だろう。あれだけ殺気を向けられれば嫌でも気づく、マニュや小人、他の奴隷の守りだけはしてくれるだろう。

 

 国の中央にたどり着き、オレとしては自己紹介して、話し合いといきたいのだがそうもいかないらしい。ピアスは首輪を気にすることなく、オレに殴りかかった。

 

 力強く鋭い一撃だが、来ると分かっていて避けれないことはない。主人に逆らった奴隷の首輪がその力を発揮しようとするが、恐怖はあるようだが彼女に焦りは見られない。

 

 彼女は手に隠していた水を首の周りに纏うと、爆発を待つように目を閉じた。そして、爆発の瞬間に剃を超える速度で動き、爆発から逃れた。

 

 逃れたと言っても致命傷をさけただけで、水を纏ってダメージを抑えたようだが、それでも多少は喰らっている。彼女は万全じゃない状態にも関わらずこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 

 先程の移動速度よりも速く、鋭い攻撃だ。オレは国土の下の土台とも言える部分を上に持ってきて壁を作る。

 

大地壁(グラウンドウォール)

 

 そして、ガープ中将が動いてくれているが万が一にも被害を出さないために、他の国土を守るドームを作ると、戦闘に必要な地面以外を沈める。

 

 攻撃を防がれた事を理解した彼女は次の攻撃を仕掛けてくる。質量には質量で応戦するのもまあ、悪くは無いだろうと土を身に纏い、土の巨人となり攻撃を受け止める。

 

 そして、安全性を示すためにも、攻撃されてそのままと言う訳にもいかない。相手を拘束する為に動くが、国を沈めた事で彼女が手を伸ばせば届く距離に海がある。

 

『大海槍』

 

 彼女は海に触れると、能力者の弱点である海水を飛ばしてきた。たが土の巨体は水分を上手く吸収して逃す、少し削れはされたが直ぐに補給出来る。

 

 彼女は分が悪いと感じてはいるか逃げる気は無い様で、海に潜るが未だに殺気がこちらに届いている。流石に魚巨人、水を得たことで先程以上のスピードで向かってくる。水を纏い、自身を巨大な槍のようにして突っ込んできた。

 

『海神槍』

 

 速度では完全に負けており、剃を使っても対応は出来ないが、見聞色の覇気を使って相手の動きを正確に読み取り、くる位置を把握すると、拳を振り上げた姿勢で止まり、集中する。

 

『堕地』

 

 地を墜とし、地へ堕とす、質量で叩き潰す、シンプルで、それでいて強力な一撃だ。彼女は地に叩きつけられて意識を失う……オレの勝ちだ。

 

 とりあえずは、これで良いだろう。オレは国土を元に戻し、海軍と取引先に安全は確保されましたと強く報道する。突然の事態に戸惑い、恐怖していた人も、映像電伝虫でオレの戦いをマニュが大体的に見せてたので興奮した様子で帰ってきた。

 

 さて、彼らとの話を終えたら気絶している彼女について考えるとしよう。まずは、彼女が通れるように道を確保して、いやいっそのこと、国の整備をこの機会にしてしまうとしよう。

 

 

 




と言う訳で訂正12話でした。
続けて修正13話も投稿されてるはずです。
いや、急に大幅変更してしまい申し訳ありません。

前書きに書いた通り、自分で納得がいかず、一度妥協すると、次からも妥協して段々とこの小説が駄目になってしまう気がして直さずにいられませんでした。


『大海槍』

海流一本背負いに近い技。
巨人の腕から繰り出される特大の海の槍。
普通の山なら吹き飛ばせる。


『海神槍』

海を身に纏い、ダツとしての特性を最大限に生かし、自らを一本の槍として放つ技。当たれば島を壊して突き抜ける。


大地壁(グラウンドウォール)

大地を壁にする防御技。


『堕地』

地を墜とし、地へ堕とす、質量で叩き潰す、シンプルで、それでいて強力な一撃。
大地を纏い、巨大な土の巨人となり、その全ての質量を一撃に込めて叩き潰す。


やっぱり、強さを感じ取っただけで従うというのは味気ないというか、よくよく考えるとピアスの性格設定的にないなと思い、一度倒す事にしました。


読んでくれている方々に多大なる謝罪と多大なる感謝を。


ここから下のは以前の12話に書かれていた後書きをコピーで持ってきたものです。



感想で訊かれた質問の答えも一度書きます。

問1 原作キャラの救済はするのか?

答え 救済になるかは分かりませんが改変する事はあります。
   その場合は流れで関われる相手だけです。


問2 原作沿いで進みますか?

答え 基本的にはその予定です。
   改変されても大きく流れは変えない予定


※問2に関しては予定であり、確定では無いと思ってください 
※大きく流れは変えないので麦わらの一味関連は基本救済しない


そして次なのですが、一応設定を変更した理由に繋がるのですが、質問された訳でもこうしてくださいと頼まれた訳でもなく、こちらに振られた話題について答えてるうちに、自分がこうした方が良いかもと感じたからです。


まずそのままでは無いですが「キャラの救済するならテゾーロが気になる」的な話題がでました。

元々の設定だと、小説の時間軸が、現在の20年前、原作開始の18年前の設定でした。そこだと丁度ステラが死んでるので救済は無理だなと答えました。

テゾーロとは取引だけの関係でも問題ないとその時は思ってましたが、よくよく考えると救済されないと、倒されてテゾーロの「グラン・テゾーロ」はいずれ無くなる運命にあるよなぁ、と思いました。

因みにその際に「まだ島に娯楽が無い」とも言われましたが、この国は研究・生産・加工・取引を行う「プラント」なのでその面はそこまで必要として無い。何なら働くのが楽しい人たちが殆どなので。(少人数で運営、アットホームでワーカーホリックが集まる国家ですww)

仮に救済したとします。すると表面上は同盟関係で実際には忠誠度MAXの従属国の様な関係性になり、使える金と権力も増え、取引も増えそうだなとは思いました。

助けようと思うとマリージョアへ行く必要があるが、丁度いい事に天竜人のコネはあり、不可能ではなさそうと感じました。

確実な問題はゴルゴルの実を食べたのがフィッシャー・タイガーの襲撃で逃げて、ドフラミンゴのオークションで奪ったからなので、そこだけは確実に改変する必要がある。まあ、ハンコック達みたいにお遊びで食べさせられた事にすればいい。

でも、成り立たせるために必要な改変はそれぐらい、なら変えてしまうのも悪くは無いかもと考え、助けるために時間設定を変更しました。

レヴェリーは4年に1度、となると必然的に時間が丸ごと4年前になり、となると国王に成ったのが大海賊時代より前に成る。そのため、これまで投稿した話を修正作業を行ってました。


各話で修正点は書いてますが、一応ここでまとめておきます。

1話目で『特にこの大海賊時代呼ばれる今の海は海賊が多かった。』を消去。


7話に『海賊王であるゴール・D・ロジャーが処刑され、大海賊時代と呼ばれる新たな時代が幕を上げた。そのため、どこの国でも海賊の被害が増え、色々と大事な話し合いがあるそうだ。なんでこんな時に国王になっちゃったんだろう。』を追加。


下のは7話目の後書きに追加したものです。

ゴール・D・ロジャーが処刑されたのはエースが生まれる1年3ヶ月前とあった。エースは1月1日生まれ、1月の3ヶ月前は10月。

大海賊時代が始まっている設定だと、世界会議がほぼ年末に開催されてることになりそう……世界会議と言うなの忘年会になりそう。

世界会議の期日が4年に1度としかかかれてないから、私の小説では開催する月は多少ばらつきがあり、ロジャーの処刑で出る影響を話し合うため、開催が遅かったことにしました。


修正については以上に成ります。
そしてオリ主の基本設定を確定させようと思います。
これ以上の変更はしませんので、改変できるのは大海賊時代始まってから後の人物だけです……結構多いな。と言うより基本的に殆どオーケーじゃん。ま、良いか。


そんなわけで、アスカルが国王に成ったのはロジャーが処刑される前の年、原作開始の23年前、王になった年齢だと若くても18かな?と考えてましたが、原作開始時に41歳と言うのは個人的に嫌だったので、ブルックを除いて麦わらの一味で一番年上は2年前で34歳のフランキー、そこに合わせたかったが、そうすると11で国王になったことになってしまう。それは流石におかしいので諦める。ギリギリ原作開始時も2年後も30代でいられる14歳の設定にしました。レヴェリーに15で出席……在り得ないメンタルだな。4年の時間変更は大きいなやっぱり。変更が無ければ王に成ったのは19年前だから18歳で良かったんだけどねぇ。

まとめ

名前:アスカル
性別:男
年齢:国王になった時 14歳
   現在      15歳
   原作開始時   37歳
   2年後     39歳
能力:ツチツチ
立場:新興国家『プラント』の国王


抜けは無いですかね?自分でやってて段々分からなくなってるので不安ですが、これで確定させます。長かった、とても長い道のりだった……



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第13プラント ピアスの事情、プラント代表会議開催!!

納得がいかずに大幅に直した修正版13話になります。
12話から修正しているのでそちらを見ていない人はそちらから見て頂けると幸いです。

少し誤りがあったので修正。
内容に変更は無いです。


 オレは今後の事を考えると島の全体を整備し直そうと思い至った。オレは自分の周りの足場を柱の様に伸ばしていき、島を空高くから見下ろす。

 

 今は元の島に土を付け足す形でやっていたので歪んでいるが大体円状になっている。しかし、区画や道の整備の事を考えると四角の方が良いだろう。懐から電伝虫を取り出して地上の面々にこれから行う事を伝えて、しばらくしてからオーケーサインが出たので始める。

 

 今ある畑や山などを分類ごとに分けて一纏めにする。そしてそのままの風景を残した自然エリアと農業用の土地を組みなおす。作物などは同じ種類の物はある程度纏まってたがしっかり揃えて並べていく、何やらパズルでもやっているような感覚になる。あ、高級用や品種改良の物などは別区画にまとめよう。加工場と貯蔵も別かな。

 

 家と言うか城などオレ達の拠点は比較的中央にまとめて、そこを中心に4方へまず巨大な道を通しておく、とりあえず生産エリア、自然エリア、研究エリア、加工・貯蔵エリアの4つの区画にした。島が動くので方角で例えられないが、左上、右上、右下、左下で並んでいる。

 

 そして今までは船の出入りが一か所しかなく、防衛面では良かったのだがどうしても受け入れられる数に限界が出てきているので、4つの道の先に港をきちんと形作り、とりあえずは政府や海軍用、取引先用で分ける。そして他の2つのうち1つは海賊用だ。もちろん、この国に敵対的でない者たち専用で、普段は侵入されないように締め切っておく。もう一か所は大きめに作り住民用にしておけばいい。

 

 今までの外壁も少し組み直して港の外側と内側の2重に大き目の壁を作り出し、4つの港の所に門を建てる。エリアごとに分けた所にも壁を作ろうかとも思ったが見通しが悪くなるし、移動がしにくくなるので止めておこう。

 

 そして城の周りの街、はっきり言って住んでる住人が殆ど居ない、見栄えだけの為に現状存在している。小人や奴隷の住居を確保しても殆どが空き家である。とは言ってもある程度そう言ったものが無いと国としての威厳が皆無になるので残して置く。そしてその周囲にもぐるりと外壁を作っておく。

 

 そしてピアス用の入り口を作ったのは良いが場所をどうしたものか、中央に作る事も出来るが彼女には手狭だろう。となると一番使えそうなエリアは自然エリアだろう。自然の中で育つ植物の生産地でもあるが、多少崩したところで問題は無い。自然エリアの一部を崩して道を作り、山と山の間に平らな場所を用意する。後は大きめの家を建てれば完成。家具は土で良ければ作れるけど、そこいら辺は相談して決めよう。

 

 正面を取引用の港とした場合、右に研究エリア、左に加工・貯蔵エリアがある。そしてその反対側にピアス用の港があり、そちらを正面にした場合、右に生産エリア、左に自然エリアがある。その左右にある港はどちらが海軍用でどちらが海賊用かは決めてない。どちらも常に使うわけではないので、その時々で問題は無いだろう。

 

〈彼女が目を覚ましました。暴れることなく、大人しくしていますがどうなさいますか?〉

 

 オレは今後について話し合うべきだろうと伝えると、それならいっそのこと代表者を集めて、まとめて話すのはどうだろうと提案される。オレは頷き、自然エリアにある大きい土の家を会場にして欲しいと伝え、オレも向かった。

 

 着いてみて出来を直接確認してみる。仮ではあるがピアスの住居として作ってみた土製の小屋はサイズ的には問題は無さそうだ。

 

 そして、会議については先程伝えたばかりマニュはすでに準備をが出来ているようだ。小人は隠れて席についている。

 

 奴隷も一応代表者とその補佐として二人ほど席についている。彼らもピアスについての話し合いを見守るらしい。まあ、急に魚巨人なんて存在がやってきて、いきなり戦闘が起これば気にもなるだろう。

 

 とりあえずは、改めてこの場にいる面々で自己紹介でもしていこう。小人は、どうしたものか……いや、奴隷の代表者とも何度も会うだろうし、()()()()()()()()には出てきてもらおう。

 

 あ、「ホーニィ」は()()()()の実の能力者で、「モーダス」はクサクサの実の能力者だ。名前でなんとなく分かるだろうがホーニィが女でモーダスが男だ。一応今では小人の代表みたいな扱いだ。

 

 あ、奴隷の代表者と補佐も男と女のペアになってる。代表の男が「スレイ」、補佐の女が「テル」だ。元々は代表だけだったが、代表に何かあった際に困るからとマニュが決めさせたらしい。

 

 さて、話がそれたがまずはオレとマニュから始めていこう。小人に関しては次の人を指定する際に呼べば姿を出すだろう。

 

 では、オレからだな。名前はアスカル、姓は国の名前を使ってる。立場はこの国、プラントの国王だ。とは言っても元々農民兼商人と言った感じで、去年から王になった完全な成り上がりだな。そして、ツチツチの実の能力者だ。呼び方は蔑称でない限り好きにしてくれ、っとこんなもんかな?次はマニュ頼む。

 

「では、私はプラント・マニュです。旧姓はスキーラと言い、スキーラ王国の第一王女でしたが、国を救済してくれたアスカル様に憧れ、この国に嫁ぎました。今では忙しいアスカル様に代わり内政の多くを取り仕切らせて頂いてます。次はホーニィとモーダス出てきて良いですよ」

 

 マニュが名前を呼んで促すとヒョコッと姿を表し、全員から見えるように机の上に並んで立った。

 

「はいレス。トンタッタ族とアタシたちは呼称してたレスが、大人間には小人族と呼ばれる種族レス。アタシはトンタッタの代表者が1人、ハナハナの奇術を持つホーニィと言うレス、よろしくレス」

「ボクもトンタッタの代表者をやらせてもらってる1人レス。ボクが持つのはクサクサの奇術レス。ボクたちトンタッタが騙されて奴隷になってた所をアスカル様が助けてくれたレス。その恩を返すために働いてるレス。これからよろしくレス」

 

 オレとマニュの方を振り向いて小声で「これで良かったレスか?」と聞いてきたので頷いておく、この場では隠れなくて良いと伝えるとオレたちの席の前に座った。

 

「説明にあった通り小人族の代表者です。彼らはとにかく純粋で非常に騙されやすいので基本的に人前に出ず、私達からの指示しか聴かない様に伝えてあります。まあ、それでも不安なので、少し気にかけてあげてください。ですが、小人については仲間にも他言無用です。一応、小人全員が信頼して良いと判断したら顔を見せる様にと伝えてありますので、それを待ってください。では次にスレイ、テル、二人も自己紹介を」

 

 順番的に振られるとは思っていたようで狼狽えている様子はない。二人とも立ち上がり、一拍おいてから口を開いた。

 

「奴隷の代表と言う事になっているスレイだ、じゃなくてスレイです」

 

 話しにくそうなので、外部の人間がいる場でなければ話し方もそこまで気にしなくて良いと伝えた。

 

「正直助かるが、俺のことだ。うっかりやらかすだろうから、今後は練習させてもらう。なんていうか、堂々としてるからってリーダーを任された。元々、船乗りだったんだが、海賊に捕まり、その後で人攫い屋を介して売られて、その後でアスカルの旦那に買われてここにいる。商人によく雇われてたから、多少難しい話も理解は出来る。よろしく頼む」

 

 そう言って頭を下げるスレイ、まあ威厳とかはどうでもいいから、タメ口でも良いとオレは考えているが、流石にダメだとマニュから言われた。

 

 そして、別に奴隷になった経緯は言わなくても良かったんだが、そう言った海賊と人攫い屋が裏で協力して金を稼ぐ事もあるのか、色々と危険だな。続いて補佐のテルが口を開いた。

 

「スレイさんの補佐になりましたテルです。スレイさんが動けないときは私が代表の代理として働きます。奴隷になった経緯は知り合いと飲んでたんですが、気付いたら檻の中でした。元々は小さな店を開いてたので、顧客や取引先との対応などは問題ありません。これからよろしくお願いします」

 

 こっちはこっちで奴隷になった経緯がやばいな。知り合いに変装してたとかじゃない限り、知り合いに嵌められた事になる。恨みとかはないのか少し気になったがその場で訊かずに座るよう促した。そして、暴れることはしないがあまり機嫌は良くないピアスには目を向ける。すると、観念した様に

 

「賞金稼ぎのピアスだ。種族はダツの魚巨人だ。奴隷になった経緯を言う前に言いたい事がある」

 

 そこまで言うと彼女は、何か覚悟を決めた様な顔をしたあとで地面に手をついて謝罪の姿勢を取る。そう、土下座の姿勢になったのだ。

 

「アタシは奴隷になったことが認められなかった。だから、暴れて逃げ出してやろうとしたが、アンタに真正面から叩きのめされた。本気で殺す気でやってあのザマだ。アタシはもうアンタに逆らわない。巨人の血を引く戦士の一人として、その誇りに誓ってアンタに従う。許してくれなんて、都合のいい事は言いやしない。アタシの頭なんかに何の価値も無いのは、分かってるがこれしか誠意を示すやり方をアタシは知らない。今回は本当にすまなかった」

 

 そう言って、土下座の姿勢のままピクリとも動かないピアスにオレは少し面を食らった。とりあえず、土下座をやめるよう伝えると、素直に姿勢を直す。

 

 オレとしてはこれ以上暴れないのであれば言うことはない。オレに従うと言うのであれば、この国の数少ない仲間だ。これからよろしく頼むと伝える。

 

「微力だがこの力、アンタの為に使うよ」

 

 いい感じに話がまとまった所で蒸し返すのもなんだが、戦ったオレとしてはこれピアスが奴隷になる経緯が良くわからない。

 

「今は綺麗に負けて気分が良いんだけどな。思い出すと本当に腹が立つ、アタシは同業者に騙されて、嵌められたんだ。薬を盛られたのか、身体が思うように動かせず、陸だったのもあって、数で押されたんだ」

 

 魚巨人相手に騙して一服盛るとは中々に度胸のある奴だったんだな。身体がデカイ分、巨人とかには薬は効きにくいと言うのに……まあ、盛られた方からしたらたまったもんじゃないだろう。

 

「勝負に負けたんなら話は別だったが、あんな騙し討ちで終わるのは納得がいかなかったが、アンタはアタシを受け止めて、それ以上の力で返してきた。だから、アタシはアンタに従う分にはむしろ嬉しいくらいさ」

 

 元々はオレを倒して逃げ出したら復讐するつもりだったらしい。そしたら認めるしか無いくらいの強さをオレが持っていて今に至る。

 

 ピアスも今は復讐なんてどうでも良いみたいだが、色々と問題のある業者がシャボンディ諸島に居座っているのはあまりよろしく無いだろうからどうにかしたい。

 

「その同業者の名前は分かるが、アイツはよくよく考えると、計画立てて誰かを嵌めるとか出来るタイプじゃないから、アタシとして裏に誰かいるんじゃないかと思ってるよ」

 

 それが本当だとするとソイツを叩いても意味がなさそうだ。だが、その情報はピアスの予測なので、本当かをまずは確かめる所からだな。と考えていると意外なところから援護がきた。

 

「すみません。私も知り合いに騙されたと言いましたが、奴隷の中に同じ様な手法を取られてる人が多くいるんです。奴隷たちの話でも、人間屋の間でも不思議だと噂になってます」

 

 それが本当だとしたらピアスの言うとおり裏に何者かが居て、組織だった動きをしている可能性はあるだろう。そして一般人に多く手を出していることから、見つければしょっ引く事も出来そうだ。

 

「おっ、ここに居たのか!邪魔するぞ」

 

 話がまとまりそうな所に見慣れては居るが珍しい来客である。ガープ中将はオレとかに絡んでは来るが、こういった国の事には直接関わることは無かったのに、そう思っていると彼が一人で無いことに気付く。

 

「悪意は無さそうだが、妙な動きをしていてな。捕まえてみたらお前さんと話がしたいとの事だ」

 

 そう言って、出てきたのは何処に居てもおかしくないような。特別目立ちそうにない男だったが、動き方を見るにそう見せているのが分かった。

 

「俺の名前はサイフォ、傭兵みたいなもんだな。一応通り名で『先読み』なんて呼ばれてるな。まあ、よろしくしてくれると助かるんだが、ちょうど俺の伝えたい話に関わる話し合いだったみたいだからちょうど良いな」

 

 ちょうど良いと言う男の言葉に最初は首を捻ったが直前に話していた内容は奴隷の違法売買の手引をしている人物についてだが……

 

「俺はそこの魚巨人の姉ちゃんの監視を任されてたんだな。オークションの会場に居たんだがな、買ってったのは天竜人とも関わりのある新興国の国王だってんだからな。連絡も忘れて後を着けて、戦いを見届けて、このままじゃヤバいって保身のためにここに来たってわけだな。俺はその組織について知ってるし、トップについても教えられる」

 

 中々に興味深い内容だが、ピアスの方をみるがオレに任せてくれるらしい。そして一応ガープ中将の方を見るが好きにしろとのことだ。まずは話を聞こうか。

 

「そいつは裏で『斡旋』って通り名で、名前はション、『斡旋』のションって呼ばれてるな。ソイツは能力者でもあるんだな。名称は『ポワポワの実』、悪魔の実にしてはいささかハズレ枠で影響力は弱い、相手の意識をほんの少しポワポワさせる事が出来る。そして完全に意識を掌握すると意識の間に指示をねじ込めるんだ。命令と言う程の力は無いが暗示に近く、それをされると自然と言う事を聞いてしまうんだな。だけど普通にやっても意識の掌握なんて出来ないから、アイツは酒場に入り込んでカモを探すんだな。逆にターゲットを決めてから、その交友関係内で酒飲みを探すこともあるな」

 

 なるほどその話が本当であれば先程の仮説は確定だろう。そしてサイフォが嘘をついてる感じはしない。では、堂々と殴り込みと言うのも可能だろうか?

 

「証拠を確保してからの方が良いぞ。証拠があれば首輪を壊して暴れた奴隷の擁護もできるじゃろう」

 

 主人であるオレが許しても、他にも人がいる場所で暴れたので一応処罰の対象らしい。と言う事はピアスは留守番になるのかな?

 

「自由に動かせてはやれないな」

「残念だがアタシの自業自得だ。主であるアンタに任せっきりで申し訳ないが、大人しく留守番をしておくよ」

 

 それじゃあ、案内にサイフォは当然として、ホーニィとモーダスにも手伝ってもらうとしよう。夜になったら『斡旋』とやらの事務所へ行こうか。

 

 




続けて修正14話が投降される予定です。

ピアスのセリフや態度が結構変わってます。叩きのめされたことにより、完全に従属というか、傘下に入ったかの様な、舎弟にでもなったような感じですね。いや、舎弟の意味は男だから、言うとしたら妹分?なんか違う気がする。まあ、素直にいう事を聞く様になったという感じで覚えてくれれば大丈夫です。

サイフォと先に知り合います。
それと敵の情報を結構変わってます。



下のは以前の13話の後書きに書かれていた内容です。


【ちょっと、境遇がありきたり過ぎたか?しかし、犯罪者でもないのに、売られるとなると無法者か違法な人攫い屋に狙われたか、知り合いに騙されるかぐらいだろう。

さて、復讐の代行ですが、あまり考えていない。元々は、険悪な関係から少しずつ仲良くなっていく話にする予定だったけど、どうして攫われたのか考えてるうちに、方向性が変わった。

まあ、アスカルは国王だし、能力者だし、なんとかなるだろう。頼もしい仲間もいますしね。】


この部分で少し妥協してしまったのが駄目だった。
この時点でもっと何か無いかとか設定を練って居れば良かった。
本当に申し訳ない思いで一杯です。



すみません。改めてここより下は以前の後書きです。



下のはそれぞれの理由です。
コピペ、バンザイ。

【お義父さん国王 → 「ヒモジーダ3世」(ひもじい+何番目の君主)
 ハナハナ女   → 「ホーニィ」(蜜を意味する「Honey」から)
 クサクサ男   → 「モーダス」(草木が”萌ゆる”の「Moe」と、男性的なイメージで、怒りに”燃える”という、意味的な語呂から)】

ちなみに、提案レベルでしたら、どなたであろうと色々言って貰って大丈夫です。まあ、絶対的に変えれないラインはしっかり定めているので、その範囲内かつ流れ的におかしくない場合は検討します。

私は作品を作る際には世界観や流れを特に意識しているので、作品の根幹に当たる設定と相反すると判断した場合はごめんなさいと言う形になります。

目指すべきゴールはしっかりと決めてあるので、この作品らしさを損ねず、その範囲内で皆様の楽しめる作品になっていったらと思っております。

上のは、感想での質問?心配?のようなものへの回答も含めて、この作品のあり方を1度はっきりさせてもらいました。

自分で考えた奴隷の名前に触れるの忘れてた。
まあ、奴隷からスレイブでスレイと電話係なのでTELからのテルなんですけどね。単純すぎるって?……気にすんな。

さて、話が長くなりましたが今回はこんなところで終わりますか。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第14プラント 小人の潜入!!戦いは殲滅戦!?

修正版14話になります。
12話から修正してますのでそちらを見てない人はそちらから見て頂けると幸いです。これで修正の投稿はおしまいですね。いや、本当に突然で申し訳ありません。

修正前の物は削除する予定です。



 サイフォに案内されて来たのはシャボンディ諸島の無法地帯の一角、怪しげな酒場が立ち並ぶ中、路地の裏から抜けることでたどり着ける場所だ。その中でもひと目につかないようにとオレたちは裏口の影に隠れている。

 

「行ってくるレス」 

「すぐに探し当ててくるレス」

 

 まずは証拠の回収にホーニィとモーダスに侵入してもらう。小人の小ささと速度なら覇気を使ってくる様な相手でない限りはまず見つからないし、見つかっても逃げられる。

 

 実は既にサイフォは事務所の中に入っており、ションとやらに偽の報告をして、意識をそらし、時間を稼いてくれているので、安心して送り出した。

 

 それから10分後、二人は書類の束を持って帰ってきた。早かったのもそうだが、よくまあ見られたらアウトな物を置いておくもんだ。

 

 サイフォが言うには、裏の世界だからこそらしく、口約束など無いも同然、契約書ですらときには破られるのが当然の世界。だけども下手に信用を失えば今後生きてはいけないから、契約書は全く効果が無いわけではなく、取り引きの証拠は捨てられないんだとか。

 

 仁義がなんだと言う古臭い連中も居るには居るが、今では少なくなってて、ルールの無い本当の意味での無法者で溢れているそうだ。

 

 と話はそれたがこれだけ証拠があれば言い逃れはできないだろう。おっ、サイフォの契約書も見つかった。約束通りオレはそれを燃やした。

 

 サイフォは傭兵と言ったが、雇用形態的には用心棒みたいなもんだと言っていた。そこそこ腕っぷしはあるが、それでも得意なのは情報収集らしい。

 

 ションとやらの情報を手に入れて、力を示せばそこそこの金で雇ってくれるからと従い、能力のことを考えればそうそう危険は無いと踏んでいたが、権力者と言うのも危惧していたが、それ以上にオレの何かを感じ、後をつけたらしい。

 

 さて、二人が戻ったことでサイフォが裏切る可能性は殆ど考えなくても良いだろう。それに既に仕込みは終わってるから、派手に暴れるのも良いだろう。

 

 まずは戦う前に場所を再確認しようか、ここは『斡旋』のションと呼ばれている奴の事務所の裏口で、シャボンディ諸島の一角にある。

 

 シャボンディ諸島は木の集まりのため土が少ない。そのため、戦闘用にいくらか持ってきたがそこまで大きな物は作れない。

 

 それを踏まえたうえで、逃さない為に少しだけモーダスに手伝ってもらう。図鑑に載ってたモサモサの実に出来る事の一部はモーダスのクサクサでも出来るはずだ。

 

「はいレス『急成長』『草結び』」

 

 シャボンディ諸島の地面であるヤルキマン・マングローブの他にも植物は存在している。それを急速で育てて、草同士を結んで丈夫に作り上げ、周囲をぐるりと囲む。壊せないわけではないが、そこそこ丈夫な草の檻に閉じ込めた。

 

 後は全員を倒すだけだが、サイフォの他にも護衛や裏の仕事の仲間はいるらしく、最低限頭数を揃えようと、土を操作する。

 

「土人形レスか?」

 

 その強化版の『赭土(あかつち)人形(にんぎょう)』だよ。赭土とは酸化鉄を含んで赤く見える土のことだが、操作できる限界まで鉄を含ませているので、普通の土人形と比べて丈夫になっていて、攻撃も強い。

 

 言ってしまえば戦闘用の土人形だ。別に戦隊ヒーローのように青や緑、ピンクなどは居ない。いや、作ってみたら面白いかもしれないけどやらないよ。

 

 そして、次に自分の武器を作ろう。そのまま土を身に纏って戦っても良いのだが、不格好なのであまり好きではない。それにどうしても力押しな戦い方になりがちなので、練習にならない。

 

 オレは農家だから、武器もそっちに似ている方が良いだろう。()()()土を超高密度に凝縮してから、形を作り出す、3画の刃を持つ鍬の様な農具だ。

 

『マルン』

 

 オレは軽く覇気を流して、二、三度振り回して調子を確かめる。そしておもむろに相手の事務所の壁に目掛けて振り下ろした。まあ、()()()としてはこんなもんだろう。

 

「て、敵襲!?」

「裏口が全壊したぞ!!」

「襲撃だ!!集まれ」

 

 眼の前にあった壁は3本の線が入ったかと思うと、ズドォンと揺れを感じさせる程の衝撃を伝えて、3本の線の周囲もまとめて崩れた。ガープさんは拳で島を沈められるが、オレだと武器を使ってこれがやっとだ。

 

 うーん、能力のおかげで自分では分かりにくいが、結構な重さに仕上がってる様だ。直接マルンが触れたところらは圧に耐えられずに崩壊しているほどだ。

 

「アスカル様流石レス!!」

「アスカル様かっこいいレスね!!」

 

 まあ、続々と人が集まりつつあるので、そこに『赭土人形』を差し出す、彼らの身体と同じ『赭土』で作られた武器を持っているので、それなりに戦える。

 

「この赤い奴ら強いぞ!?」

「攻撃が通らねぇ!?」

「た、助けて、くれぇ」

 

 なにせ、あいつらは固くしてあると言っても土だ。形が守られている限り、どんな攻撃を受けても怯むことなく戦い続ける。と言うか、そもそも無法者たちでは傷も満足につけれてないようだ。

 

 さて、能力での戦い方と言うのであればこのままでもいいが、もう少し自分の身体を動かす必要があるだろう。

 

 マルンは鍬の形に近いので、振り回して具合を確かめていたが、基本的な使い方は振り下ろすだけで、その他の応用には向かない。

 

 そのため、近接戦用の武器は別に考えてある。先程と同じように基本は()()()()で十分だろう。と言うより、2つも武器はいらないのでマルンを崩して新しい武器の形を作るが、大きさはこちらの方が大きいので、崩した土に赭土を混ぜ込んだ。

 

 そして出来上がった武器だが、それは草を刈るには少し大きすぎて、覇気を纏わせれば関係ないが赭土のせいで血に染まって見えるため不気味に思える。

 

『アダマスの鎌』

 

 死神が持つと言われる鎌の様で、自身の身長よりも一回りは大きい鎌。今度は先程のマルンよりも大きく振り回して具合を確認するが、問題は無さそうだ。

 

 オレは赭土人形と無法者の戦いに飛び込むと、空中で一振りして見せた。何者だ、何事かと視線が集まる中、何の音も立てずに敵の首が落ちた。

 

 全てを切り裂く、そう思いを込めて作った自慢の鎌だ。ボーッと突っ立っているとその首も刈り取るぞ。と言った感じで威圧してみせるが、別に首が欲しいわけでは無いので、もう少し威力を抑えて振るおう。

 

「ち、近づかせるな!!」

「銃だ。銃を撃て!!早くしろ!!」

 

 ただの銃弾なんて覇気を使わずとも、鉄塊で防げるので問題はない。近づかせないようにしても意味はないんだけどな。と思いながら鎌を一閃すると、鎌から飛び出た斬撃で敵が切り裂かれた。今度は死んでは無さそうである。

 

 嵐脚を見せて貰ったので斬撃を飛ばすイメージは十分だった。足で斬撃を作れはしないが、元々刃がある武器ならなんとか飛ばせるようにはなった。

 

「ば、化け物だ!?」

「かなうわけがねえ、逃げろ!!」

 

 逃げ出した所で、逃げ場は無いのだが、もう一つ技を試してみよう。近くにいた赭土人形を崩して、拳銃の形を作る。

 

土師器(ハジキ)

 

 宙に浮いているたくさんの土製の拳銃、オレの合図とともに一斉に放たれる。音を残して飛んでった銃弾は敵に当たっても、壁に当たっても、止まることなく、敵を蹂躙した。

 

 この大海賊時代で戦えませんってのは死んでも文句は言えない。自衛を繰り返す内に敵に対しては容赦しなくなってったが、張り合いが無いな。

 

 戦ってると段々と人数が減ってきた。すると、指示を出し、逃げ去っていく者を叱りつけてる奴がいた。隣にサイフォが立っているから、アイツがションだな。

 

 さて、トップを叩いて引き渡すとしよう。オレが近づくと、部下だったであろう男は逃ていった。逃げ出した奴はどうせ、草に纏わりつかれて拘束されてるはずだ。

 

「チクショウ、こうなりゃヤケだ!!喰らえ『ポワポワ波動』」

 

 なるほど、抗えないと言うこともないが喰らいさえすれば、どんな相手でも動きを止められそうだ。使い手が強ければ、別にハズレとはオレは思わない。

 

 わざと喰らってやったわけだが、相手は喜々としてサイフォに攻撃の指示を出し、指示を出した本人は逃げ出そうとする。

 

 だが、それが叶うことはない。ションの前方にフードを被り、顔を隠している小さめの影が立ち塞がる。ションは驚きながらも、『ポワポワ波動』とやらを放つが、()()()に効くわけが無いだろう。

 

 サイフォに隠して持っていって貰った赭土人形だ。土の状態でなら、身体に少しずつ纏わせたり、荷物に混ぜることで運び込めた。たがやはり大きさは普通の土人形よりも小さくなってしまった。

 

 土人形に叩き返されたションに目もくれず、サイフォは演技をやめて、お疲れ様だな、とこっち側に立った。

 

「何なんだよ!?お前は!!それにサイフォ、お前なんでそっちにいるんだ。まさか、お前が手引したのか?!」

「いやいや、死にたくないから新しいボスについただけだな。この惨状はお前の自業自得だな」

 

 無駄話をするつもりは無いので、オレは近づくと、素早く鎌を回して、持ち手を叩きつけてぶっ飛ばした。すると、『斡旋』のションは泡を吹いて気絶している。さて、こいつと書類を持って海軍まで向かうとしよう。

 




敵役を能力者にして、もっと組織的な存在にしました。そして名前を付けました。そして、事前にサイフォに合ってるので戦略や会話の内容も大幅に変わってます。

あ、これは名前の由来です。

『斡旋』+『ション』で『アセンション』
上昇、即位、天国へ行く事、キリストの昇天などを意味する言葉です。
直ぐやられるキャラなので丁度良いかなと思いました。


そして修正版の話はタイトルを少し変えてみました。今までのはなんかタイトルと言うより何を書いてるか把握するためのメモみたいだったので、お試しで変えてみました。どっちの方が良いですかね?と言ってもそのうちタイトルのネタが切れて自然に元の形に戻っちゃいそうな気もします。


読んでくれている方々に多大なる感謝を。
ちゃんとした続きの投稿も早めに頑張ります。


これより下のは以前の14話の後書きから持ってきたものです。


以前9話で奴隷以外にも濃いめのキャラ入れたいなと言ったと思います。ダツの魚巨人であるピアスも十分濃いめのキャラですが、なんでしょうか、種族とかの特徴ではなく、立ち位置や考え方が特徴的なキャラが欲しいなと思って出したキャラ、サイフォです。名前はフォーサイトからです。

立ち位置が少しアウトローよりのキャラが欲しいなと思い考えました。そこそこに戦えて、情報収集が出来ると言う基本設定です。

初めのうちはなんでしょうか、少しコウモリな感じで利益をもたらすけど信用は出来ない位置、胡散臭い情報屋みたいにしようと考えてたんですが、それだとアスカルは受け入れないなと思って、多少初期設定から権力や強いものに従う、長いものに巻かれる性格を引き継いでますが、裏切ることは無いです。

なんとなくで強さを読み取ってるのは、見聞色の覇気の伏線です。それでアスカルについたほうが良さそうと判断できた。

先延ばしにしているわけではありませんが、次の話で戦闘を行います。メインで戦うのはアスカルです、他は基本的には補助になります。まあ、技だけは色々と考えてあるので、次回の投稿をお持ちください。


ここから下は15話の後書きから持ってきたものです。



『マルン』と『アダマスの鎌』は大地や農業に関係する神話から農具の形をしている物を探しました。黄猿の天叢雲剣みたいなノリです。他にそう言った関係の物あったら急募。神話はそこまで詳しくない。あ、神話と言ってもとりあえずクトゥルフは無しの方向で。(クトゥルフでワンピースは今人気なのあるしね。アレはとても面白い)

土師器は土器ですね。

『弥生土器の流れを汲み、古墳時代から奈良・平安時代まで生産され、中世・近世のかわらけ・焙烙に取って代わられるまで生産された素焼きの土器である』コピペ

土で物作るという部分は一緒だし、ハジキってそのまま銃が連想できる丁度いい代物があって良かった。

土で素材と言うか、丈夫に使えそうな物でとりあえず思いついたのが、赭土だったんですよね。鉄含まれてるなら堅いやろっていう単純な発想です。一応現段階では『赭土』よりも上、と言うより武器であろうと土人形であろうと、一番最上の素材の設定は考えてあります。

なんか、土木とか、地質学とか、詳しい人でこんな土あるよ、みたいなのあれば教えて貰えると嬉しいですね。『土 種類』で検索しても園芸用品しか出てこないんだよねぇ、ちくしょう!!

こういった技名を考えていると気になってきたのが、ワンピースの世界では神話とかってあるんですかね?悪魔の実の幻獣種とかがあるから、そう言った実在しない動物の話はありそうですが、そもそも宗教とかってあったっけ?なんかブルックの飛ばされた先では悪魔信仰みたいなのあるけど。

国引きオーズやモンブラン・ノーランド、ジェルマ66などおとぎ話や伝説などになってる人はありますが、神話ってなるとないと思うんですよね。

天竜人が神と呼ばれてる世界で神話の扱いってどうなんだろうって思います。一応エネルとかも居ますけど、あれは国のトップの呼び名の違いみたいなもんだからね。ワンピース自体が神話から持ってきたネタが結構あるけど、作品内では本当にどうなんだろう?


『土人形』

組み込んだ指示を行う土の人形
作る際に力を使うが上限は無い
そこそこ戦えるが、複雑な事は無理


『赭土』

鉄分を多く含んだ土を操作する。
覇気ほどでは無いが丈夫


『赭土人形』

土人形より丈夫だが基本は同じ


土師器(はじき)

土で銃を作り出し撃ちだす


『アダマスの鎌』

高密度に凝縮した大地で作らる
赤黒く、不気味な大きな鎌は死神の鎌のよう


『マルン』

高密度に凝縮した大地で作られる
鍬に似た、三画の刃を持つ農具



あ、あと下のは使ってないけど公開しても良い技。


『タイムカプセル』

青雉の『アイスタイム』みたいな感じで、土に埋めて相手を完全に戦闘不能にする技
 

『地縛』

土で作られた拘束具で動きを封じる
もしくは、土で体を固める

 
さて、それと日常会が見たいという意見がありましたので、レヴェリーが終わり次第、マニュ視点とトンタッタ視点で書こうと考えてます。レヴェリーはいい加減始めるか、復讐終わって報告、王族との出会い、レヴェリーの話し合い、レヴェリー修了って感じですかね。場合によっては長くなりますが、そう遠くないでしょう。

その後については決めてあるのですが、今の所問題なのはレヴェリーの50人の王に誰を入れるかなんですよね。全員決める訳では無いですが、誰と出会うかなんですよ。

王の年齢などの設定をまだ確認してないので何とも言えないのですが、条件に入ってれば、アラバスタのネフェルタリ・コブラとドラムの先代、ドレスローザのリク・ドルド3世、プロデンスのエリザベロー2世は入れたいなと思ってる。トンタッタは島で待機の予定なのでリク王とあう心配は無い。

とまあ、こんな感じですかね
ではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。



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第15プラント 奴隷騒動終了、始まる世界会議

投稿です。ここから新しい部分に成ります。


 とりあえずは証拠、首謀者、部下の3つをガープ中将に持って行く。ここはシャボンがあって便利だね。倒した人を纏めて大きいシャボンに入れれば簡単に運べる。表面を土で覆えば簡易的な移動牢獄の完成である。やっぱりシャボンと言うかヤルキマン・マングローブ欲しいなぁ。

 

「こんな人がぎゅうぎゅう詰めになったシャボン何て初めて見たわい。それより証拠が揃ってるからあの嬢ちゃんについてはこっちで処理しとくぞ」

 

 ガープ中将に礼を言い、引き渡しと諸々の手続きが終えたら島に戻る。報告をしようとピアスハウス(仮)に顔を出すと結構遅い時間だと言うのにみんな待っていたようだ。

 

 どんなことをやってきたかと端的に説明をすると、証拠の強制押収、事務所の崩壊、撃入れて気絶、海軍への引き渡しぐらいかな。端的に説明すると本当に短くなったな。まあ、実際にかかった時間も短いと言えば短いからな。小規模とは言え1つの組織を潰してきたのに日帰りだからな。

 

 それとピアスは無罪放免になったと伝えると改めて感謝された。他の知人、友人に騙された奴も今なら解放すると伝えるが、テルはこのままここに留まると言った。

 

「首謀者が捕まったのは良いんですが、私が売られてから結構時間が経ってます。たぶん私の店はもう残ってないですし、操られてた知り合いと顔を合わせるのもなんなので、ここに置いてください」

 

 そういう事なら構わないと伝える。翌日に他のション被害者らしき奴隷の一人に同じ内容を伝えたが、似たような理由で断られた。仕事があって飯が食えて、ちゃんと休みもあっての生活とほぼ無一文で故郷に戻るのならここにいる方が良いとのことだ。

 

 なんだか普通に住み込みの職場としてしか認識されて無い様で、良いことだろうがなんとなく変な感覚である。騙された組の首輪を外そうと考え、面倒になったので他の奴隷の首輪もまとめて外した。首輪が実際に外れたら考えが変わる者もいるかと思ったが、そんなことはなく、大人も子供も全員がこの島の正式な住人となった。

 

 ここまでくると奴隷に拘っていた意味があまりないような気がしてきた。いや、仕事の内容や国の秘密の関係で普通に募集はできないのだけど、妙に腑に落ちない。

 

 まあ、生産性のないことを話していても仕方が無いので、早速呼び寄せたお客の相手をする。

 

「いやぁ、魚巨人とは珍しいですね。約束通りビブルカードの方は任してください!!なのでプロジェクト開始の際には航行情報の独占をよろしくお願いしますよ!!くわははははは、いいお話が出来て本当に良かった。また何かあったらいつでも連絡してください」

 

 そうその客と言うのは世界経済新聞社の社長であるモルガンズだ。目印となっても問題ないだけの実力を持っているピアスが島に居続ける事を了承してくれたので、ようやくビブルカードを作ってもらうことが出来ることになった。

 

 ビブルカード役の目途が立ったと伝えると部下をよこすでもなく、自分でやってきたのだ。こういった行動力がある人間がやっぱり成功するんだろうか。と思いつつ事前に貰っておいたピアスの爪を渡す、欠片でもかなりの大きさになったが、取引先に渡すのだから何枚も必要だろうからそのまま渡した。

 

 モルガンズは爪を受け取り、一通り歓待を受けてから帰って行った。そして、ビブルカードの店は新世界にあると聞いたが、2日後の新聞と一緒に大きな紙が何枚も届けられた。置いてみると微かに動き確かにピアスの居る方向を示している。

 

 世界政府の方にも事前に移動の事を伝えれば移動は制限しないとの約束なのでこれで色々と出来る事が増える。まあ、適当に移動してもしょうがないので目標を整理しよう。

 

・春夏秋冬が揃って安定した海域の捜索

(それぞれの島が近い場所を探せばありそう)

 

・新規の取引相手、ルートの確保

(今までは取引出来なかった相手とも取引が可能になる)

 

・珍しい植物の採集

(特有の種だと難しいかもしれないが、様々な植物の種だけでも手にいれる。作物の種は優先的に確保していく)

 

・島の更なる拡大

(移動しながら回収しても問題ない土を吸収していく、これはいつでもできるので重要度は低いが、特殊な土とかを移動先で手に入れる事も考える)

 

 1番目が当初の目的だ。安定した四季があればこれまで以上に様々な作物を自由自在に育てることが出来る。そうすればプラントの作物の評判はもっともっと上がるだろう。

 

 2番目に関しては逆に遠くなって取引できませんと言う事も在り得る。だが、もともと島があった位置に細工をする予定だ。これが成功すれば今までの取引相手とも取引を続けていける。

 

 3番目は作物以外にも目を向けており、どちらかと言うと趣味に近い。だが、グランドラインの植物は突拍子もない物も多いので気を付ける必要があるだろう。

 

 4番目は普通の土の回収は問題ないのだが、島や国となると向こうに許可を取るか、何かしたの取引が必要となる。その時々で臨機応変にやるしかないだろう。

 

 

 これでようやく当面必要となる人材を集めることが出来た。国を移動しながら取引が出来ればなぁ、と軽い気持ちで考えたことがこれほど事態が大きくなるとは思わなかった。

 

 そして、無駄にシャボンディ諸島で騒いでいる間に遂に来てしまった。そう、奴隷を買って、戦ってとあれこれやってるうちに時間は過ぎており、レヴェリーの始まりの日となってしまった。

 

 ここから聖地まではかなり近い、特別張りたい見栄もないし、流石に豪華な船とかは時間的に用意できなかったのでオレは海軍の軍艦で向かう。マリージョアの下、レッドラインを挟んで2つ存在する赤い港(レッドポート)、ここにようやくたどり着いた。

 

「おい、あれは何処の王族だ。どっかで見たことあるような気がするんだが」

「あれだ!!世界経済新聞、社長モルガンズの独占取材!!」

「新興国、機動国家、大規模食糧生産国、今世界で一番注目を集めてるプラント王国だ!!」

「ロジャーの死後、増えた海賊による悪いニュースばかりの中、他の国々への支援を惜しむこと無い聖人として一気に知れ渡ったアスカル国王だ!!」

「彼が世界政府や海軍に食料を安く提供することで、軍備が整い、助けられている地域は多い」

「それだけじゃない。彼は加盟国、非加盟国なんて関係ないと誰とでも取引をする。真に平等な人物としても名高い」

「影響力だけなら他の国王に負ける事は無いお方だぞ」

 

 随分騒がしい歓迎だし、聞こえてくる声がどれもオレの事ばかりで気恥ずかしいが、練習した通り顔には出さず堂々と通って行く、そしてマリージョアへと向かうシャボン玉で飛ぶリフト”ボンドラ”に乗り込んだ。他の国の王も何人か乗ってるので気疲れはするが、人に囲まれていないだけでも少しは楽だ。

 

「ひどく疲れているように見えるが、大丈夫かな?」

 

 人の輪から外れる様に少し端の方に避け、気を抜いていたオレはその人の接近に気付けなかった。本当に実力者の人は意識せずとも気配とかを察知できてるが、オレには絶対に無理だな。

 

 っとえっとこの人も此処にいて話しかけてくるって事は何処かの王様なんだろう。まずは服装、民族的な傾向がある物は宗教か気候などの面での特色がある国の可能性が高い。全体を見るに乾燥した気候の出身では無いかと考えられる。

 

 そしてその王の顔を見る、流石にオレよりは年は上、と言うよりオレより若い王はたぶん居ないだろう。まあ年いってるのが多い中では比較的若く、少し長めの黒いあごひげ。と言うかこの人は有名だからと写真を見せてもらったっけか。慌てすぎて気づけなかった。

 

 この人は名君と名高いアラバスタ王国国王、ネフェルタリ・コブラ様だ。自国だけでなく他国にまでその名は響くほどである。何か狙いがある訳でもなく、オレの様子を見て声をかけてくれたのだろう。ご心配ありがとうございます。下の喧騒で疲れてしまいまして、成り上がりの若輩なもので、と伝える。

 

「王と言う立場に慣れていないということは、君はあのプラント王国の国王か!!」

 

 コブラ王の言葉に頷くと、オレは名前を告げ、改めて挨拶をする。話してみると意外と気さくな方でもある様で困ったことがあれば王の先輩として力になれるだろうから何でも聞いてくれと言ってくれた。いや、この人マジでいい人だ。礼を言いたい、と言うか何かしら礼をしたい。

 

「アラバスタは砂と付き合い、これまで生きてきた。それ故に独自の文化が多くある。だがやはり食糧事情は交易に頼ってる面も多い。君さえよければ私の国と交易をしてくれるとありがたい」

 

 是非ともお願いしますとオレから頭を下げた。するとあまり簡単に頭を下げると舐められてしまうと伝えられた。元々成り上がりで舐められるのも覚悟の上ですから、むしろ思う存分に舐めてもらうぐらいでやって行きますと返したら。はっはっはと笑って、背中を叩かれた。

 

()()()()()()事が君の良さなんだろう。私は君の考えを尊重しよう」

 

 オレの考えの言っていない部分までも当ててくるとは、オレは驚きが少し表情に出てしまった。仮面の無い方が君には良いのかもしれんな。私個人としては素の君でいっても問題は無い思うよ。と告げられた。王ってのは奥が深いというか、オレなんかじゃ絶対敵いそうにないという事が分かった。まあ、あの人は王の中でも優秀な人だが、やはりオレはオレらしく、やっていこう。

 




心配してくれて、友好的で交易の話などをして、少し自分の事を話すと、話していない考えまでも拾い、そのうえで認めてくれる。アラバスタ国王コブラ。

人を大事にするあの人は、よっぽどの事でない限りは人の考えを認めてくれるだろうと解釈してます。

今現在アスカル15歳、コブラ26歳かな。

よくよく設定考えると周り全員大人の中に放り込まれるって結構状況が酷いな。コブラさんは絶対に出す予定でした。と言うか結構アラバスタとは付き合って行く予定です。


次でレヴェリーの実際の会議とその前後の親睦会?みたいな感じのに顔を出す予定。会場はマリージョア、マリージョアに住んでる存在、天竜人……イスト聖も登場させようかな?変にちょっかいかける人がいなくなるだろうし、イスト聖ならそれぐらいの事はやりそう。

それと立場的にプラントについても議題に上げる予定で、その話し合いの中でプラントの今後の運営方法も出てきますね。ま、内容はまだ練ってる部分もありますが、大体は決まってます。

しかし、まあ。他の王って適当で良いのかね。ちゃんと設定のされてる王族って少ないしなぁ。話し合いの表現が難しそうなのが難点。


一気に話が変わりますが、感想、評価、誤字報告などなど、ありがとうございます。きちんと全体に感謝の気持ちを伝えた事が無かったなと思い至り、言わせていただきました。


では、そろそろいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第16プラント 交友と攻防、渦巻く世界会議

投稿です。


 あの後もボンドラに乗っている間は、コブラ王から気を付けた方が良いことを教えて貰った。物覚えは悪くない方だと思うが、やはり不安はある。

 

「何、君は世界政府に関わりが強い。そこまで心配は無いだろう」

 

 それなら良いんですが、この後すぐに会議が始まるわけではなく、社交の場が用意されている。新興だからこそ避けれないイベントになる。

 

「まあ、交友の深い王にそれとなく話しておこうか?」

 

 お願いします。とオレは無言で視線を送った。それにしても、この移動手段は嫌だな。気配で分かってしまうのが辛いが、考えるのはやはり世界貴族だろうか。

 

 トラベレーターと言うこのおぞましい機構にオレは耐えられなかった。他の王族は気付いていないのだろうが、気付いてしまえばどう思うのかは分からないが、奇異の目で見られることを承知でオレは歩いて城へ向かった。

 

 と言っても遅れて到着することは無かった。伊達に鍛えてはないと言う事だ。着いた先では様々な顔付き、服装の人が居て、全てが王族とその護衛なのだろう。

 

 服装といえば作業着のオシャレ版とでもいえばいい物になっている。あまり派手じゃない方が良いと言う注文の通り、茶色が大部分を占めている。

 

 しかし、民族衣装の様な独特の紋様が全体に、緑と金の線も入っている。それと、装飾品として首飾りなども身に着けている。ぶっちゃけジャラジャラして邪魔くさい。

 

 ああ、無理ならいいと言っていた土を仕込めるスペースがあればと言う注文にも応えられており、袖や裾、服の裏地に見えないようにポケットがついていた。

 

 とは言っても土の仕組める量はそれほど多くはない。土人形一体も満足に作れないだろう。圧縮して多く詰めようかと思ったが、固まった土で服まで固定されたので却下された。

 

 まあ集めれば草刈り用の鎌位なら作れるし、最低限の防御も出来るからオレとしてはそこそこ満足している。次は靴も特製で作ってもらおう。

 

 酒は弱いわけではないが特別強くも無いので無し、しっかり食事を取ると気疲れもあって眠くなりそう。と言う事でノンアルドリンクとサラダだけ頂いてたのだが、まさかこんな所に来てまで自国の食材を食べることになるとは……ムシャムシャ。

 

 サラダをチラッと見てみると、明らかに見覚えがある食材で、手にとって食べてみると案の定、超高級路線とか銘打ってモーダスに作ってもらってた奴だ。

 

 ちなみに時間をかなりかけて作っており、味はもちろん栄養価もあり得ないレベルで、一個が数十万から高いものだと数百万の物もあるのだが……このサラダ一皿だけでも一体いくらだ?王族の集まりってのはおっかねえ。

 

「食べれている所を見るに多少は落ち着いたようだが……それはサラダか」

 

 見慣れた物のほうが落ち着くのでつい手にとってしまったんですと言って、食べ終えた皿を近くにいた従業員?はちょっと違うか、政府の役人(たぶん)に渡す。人を使うことにはようやく慣れてきたな。

 

「特殊な作物を除けば、野菜は殆どプラントの物が使われているそうだね。私も先程軽食をとったが中々に驚かされたよ」

「食事もそうだが、うちとしては君の国で作られている薬草について聞きたいところだな」

 

 ナチュラルに話に入ってきた男、ここはそこまで寒くはないのに、毛皮の上着を持っている。自分の国が寒い場所なのだろうか、そして薬草への興味。医療大国ドラムの国王かな。確認を取ると正解だった。

 

「その通りだ。うちの医師たちが絶賛していたよ。効果が高く、新鮮な薬草だとね。魔女でさえ、他に無いのかと言い寄る程だからな。うちが出せるものとなると医薬品や医療の知識などになるが交易していけると嬉しい」

 

 知識ということは医者の派遣などを含めた技術交流レベルでの話まで考えているということなのか、こちらへの期待が伺えて嬉しいやら怖いやら、とりあえずよろしくして貰った。ところで魔女って一体なんなんだろうか?まあ、能力者か何かだろう。

 

 ドラムの王に続いて他の国の王も話しかけてくるようになった。しばらくは似たような感じで友好的な話し合いが多かったのだが、予想できていた事態が現実となった。

 

「土臭い農民が上手く世界政府に取り入ったものだな。その手法をぜひ教えていただきたいね」

 

 悪意を隠しもしない様子に、逆に清々しく感じる。何も言わないで黙るのは悪手である。ご自身がおっしゃった通りしがない農民の出ですから、取り入ろうなどという考えは持ち合わせて無いですと伝える。

 

 農民であると言う事は認めつつ、そんな悪い事は思いつきもしないし、ここにいるのは実力だと言ったわけだ。返しに苛立ったのか、次はオレ本人ではなく、プラントに関わる物、作物を貶し始めた。

 

「高級などと銘打っているが所詮はただの野菜、誇大広告は時として詐欺になるから気をつけることだな」

 

 高らかに言い放って帰ろうしたその王を止めたのは黒服の仮面を着けた男だった。周りがざわざわし、驚きの声が広がる。

 

「な、何故私の腕を掴むCP0!?」

「我の取引先にケチをつけるからだろう?レヴェリーでこの地に来ていると聞き、我自ら訪ねてみれば、聞くに堪えない負け惜しみが聞こえたのでな」

 

 そこにあったのは世界政府の絶対的な権力者である天竜人の一人、シャボンディ諸島で知り合ったイスト聖だった。何やら怒りを露わにして嫌味を言っていた王を睨んでいる。

 

「この前の取引は中々に良いものであった。賞賛の言葉を送っておこうか、アスカルよ。そして我も食しているものを馬鹿にした愚か者には退場願おう、CP0やれ」

「……」

「お待ち下さい。知らなかったのです。どうか、お赦しを!!」

「ところでアスカルよ。次の取引の話もそうだが頼みたいことがあってな。今度は我が屋敷の方まで来てもらいたいんだが、今はどれだけ離れられる?」

 

 既に下手なことをしてしまった王のことをいない者としているイスト聖を見て、この人もやはり天竜人の一人なんだなと改めて実感した。

 

 離れる手段は考えている所で、今後の国の動きに合わせて試して行く所なのですが、早めに伺った方がよろしいでしょうか?と訊いてみる。

 

「初めに少し伝える事と渡す物があるが数時間で済む、別に急ぎでは無いし、依頼自体も長期の物になるだろう。来れるのであればレヴェリーが終わり次第、一度来てくれると面倒では無いだろうがな」

 

 でしたら、レヴェリーを終えたら伺わせていただきます。と伝えると、終わる頃に案内の者を寄越すという言葉を残して帰って行った。

 

 騒ぎの元凶が去り、あたりの喧騒も何も無かったかのように静まり返っている。だが、こちらの様子を窺う視線が一層増えた。

 

 騒動に意外と時間を取られていたようで、もうレヴェリーの始まる時間になったようだ。この雰囲気のまま、落ち着く暇もなく会議場へ移動した。

 

「あー、皆切り替えようか」

「そうだな。今回の議長は誰だったか?」

「私だ」

「リク王か」

「話が纏まりやすそうだな」

「今回もこの美しい世界について話していこう」

 

 ついに始まったレヴェリー、変に見渡すようなことはしないが、ある程度は顔を覚えておく必要があるだろう。

 

「今回は特別だからな。前回までの議題より優先する形で話し合う議題がある『海賊王の死後の影響について』だ」

 

 補足するように情報をまとめた資料が配られた。ロジャーの死後始まった海賊の増加傾向、通称『大海賊時代』についてと各海、各国での被害についても纏められていた。

 

 それに伴って進められている世界政府の対策と海軍の軍備の強化、警戒態勢の構築なども載っているが、こちらはこれからといった所か。

 

「ロジャーの死は見せしめの意味を完全に失ってしまった」

「海賊の終わりを告げる筈がなんてザマだ」

「海賊の被害もそうだが、海賊を目指す若者の増加も気にするべきだろうな」

「海に出られることで人口が減り、それに伴って税収も減少しているはずだ」

「とはいえ、逆に海賊がいる事で成り立つ島もある」

「海賊の落とす金で成り立つ島は言うまでもなく、海賊を倒し糧としている国も急激な増加に戸惑いつつも利益は出ている」

「潰れている島が出始めている事も忘れてはいかんぞ」

「加盟国の減少は少ないが実際に起きた事件だからな」

「特に問題になってるのは天上金を奪われる事件だ。警備の質は高いが、数に押し負けている事例もある」

「しかし、元々無法者。言って聞くような相手でない以上体制を整えるしかないのも事実」

「グランドライン全体の被害は特にでかいな」

「力をつけたルーキーが四つの海から出てくる」

「大半は潰れてくれるが、乗り越えられると厄介だ。新世界に辿り着く様な者はもう手出しが出来ん」

「金獅子のせいで海軍も少なくない被害を受けた。現状を維持しているのも賞賛されるべきなのだろうが……」

「やはり、対策にまで漕ぎ着けていないのは見逃せないな」

「本来であれば、出資を募ってでも海軍にテコ入れする時なのだろうが資金などの問題は既に緩和されたからな」

「それだけでなく、現状多くの国も助けられているからな」

「海賊の被害を受けてなお助かった話はよく耳にする」

「次の議題の話になるが一度話を聴くのも悪くないと思うのだが」

 

 会議の様子をじっと見守っていたのだが、急に話の流れが変わった。議長手出しがあるリク王とオレの所に視線が集まる。

 

「そうだな。紹介の為にも次の議題へ一度進もう。次の議題は『新興国プラントについて』だ。話は行っていると聞いた。アスカル王、前に出てくれ」

 

 用意させた資料を片手に全員の視線を集める位置に立つ。頭が真っ白になりそうなのを我慢して、息をそっと吸ってから口を開く。

 

「昨年より世界政府に加盟した新興国家である『プラント』の国王をしているアスカルと申します。お集まりの皆様、どうぞよろしくお願いします」

 

 さて、どうなることやら。不安もありつつ、道化だって構わないから精一杯この場で演じてくれよう。

 




容赦の欠片も無いイスト聖、天竜人の鑑。

海賊の被害ではなく天竜人の怒りで消えた国王…南無三。まあ、国王が消えたけど国は消えてないから世界政府的にはセーフ。

ドラムの先代の王様って名前無いよね。私の見逃しで無いことを祈る。とりあえず、アラバスタ、ドラム、えっと、えっと、そうだドレスローザだ。その3国の国王は出せた。(3国の中では比較的新しい国の筈なのに名前がいつも出てこないドレスローザ。本当になんでだろう?)

ゴア王国はどうしようかな。あの国は天竜人を称えているから天竜人との関わりが強いアスカルを見てどう反応するかだよな。すり寄るのか、嫉妬するか……後者の気もするけど、権力を大事にしている奴が権力者を蔑ろにはしないだろうって思えるから悩ましい。

次回で会議の続きとイスト聖からの頼みを聴いて、そしたらようやく一区切り。そしたらリクエストされた日常回を書いて、次の章へ突入。

この章の名前どうしようかな……ヤベ、何も思いつかない。冗談とかでなくて本当に思いつかない。えー、この章で起きたことは、大地人間爆誕、プラント王国建国、奴隷騒動、世界会議、かな大まかに纏めると、いやぁこれを章タイトルに纏められるかな……提案及びアドバイスお待ちしてます。

流石に投稿が遅れてたからか、日間ランキングからは外れてたな。週間ランキングにはまだ入ってるけど、いつまで持つことやら。

まあ、前振りはその辺で、少しペースが落ちて申し訳ないです。この前みたいな書き直しが無いように多く書いて、前後の流れに納得してから切り取って投稿する形にしました。最初の一気に投稿してた時と同じ方式ですね。

それと、他の作品も書きたいから、今週から来週にかけては投稿が遅くなると思います。

読んてくれている方々に多大なる感謝を。


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第17プラント 動乱の中心へ!!圧巻PLANT計画始動!!

投稿です。


 自己紹介の方はまぁまぁと言った所か、特に良い反応も悪い反応もない。しかし、視線は一様にオレに集まっている。

 

「『プラント』の概要については資料があるので読み上げさせてもらうが良いか?」

 

 構わないと頷くと手元の資料の何処に掲載されているか伝えてからリク王によって説明がなされた。

 

「プラント王国。アスカル王も言っておったが、昨年度から世界政府に加入し、建国がなされたばかりの全く新しい国だ。だが、アスカル王の力によって国土は自由に操られ、大量に生産されるとても質の良い食料に政府も海軍も助けられており、その重要度は極めて高いとされている」

 

 間接的に取引しているものとなるとこの中にもそれなり居ると思っている。とリク王が付け足すと、頷く者が何人か居た。

 

「そう言った世界への影響力を考え、顔合わせと意思の疎通の場としてこの議題が提案されたわけだ。アスカル王より直接聞ける機会であるが、もちろん分かっていると思うが常識の範囲内でだ」

 

 リク王が余計な事にまで及ばない様にと話の内容に牽制をかけてくれるが、その必要が感じられないくらい一様に頷いている。イスト聖とのやり取りを見てまで手を出そうとす愚か者は流石にいない。

 

「それではアスカル王、後は任せても良いかな?」

 

 ではまずはプラントの在り方と今後について説明させてもらいます。こここら先は話しやすさを優先させて頂きます。

 

 資料には詳細は記載されてないが、オレは悪魔の実の能力者でその力で国を作った。その国で大量に食料を生産している。

 

 ここまでは確認みたいなものだ。オレはよく働いた。働き続けた。その結果、世界政府が放っておけないと考え始めた。その結果誕生したのが『プラント』だ。

 

 つまり、オレは王にさせられた人間であり、王に成らんとした人間では無いということを頭の隅にでも入れておいてくれると助かる。

 

 特別な野心などは無いと思ってくれて構わない。あー、いや、うちの作物はできる限り広めていきたいなとは思ってるが、農家としての野望だなそれは。

 

 オレ自身は誰に対してでも、平等とはいかないが、誰とでも取引はしている。そう、それは先程問題にあがってた海賊とかも含めてだ。

 

 少し、煩いですよ……続きを話すと、とは言っても別に海賊を優遇してるわけでもないです。話の通じない相手は潰してます。ああ、資料にも載ってるが、プラントの建国前から、だいたいオレが能力者になってからですかね。プラントよりあとの島では海賊の被害が減ってるはずです。ええ、ご確認頂けたでしょうか?

 

 取引は絶対です。約束は守るのが常識ですからね。農家として、商売人としてそこは宣言しておきたかったんで。ちなみに取引に関しては海軍には了承されてますし、世界政府もそう文句は言わないでしょう。

 

 それで、今も多くの方と取引をしているんですが、オレの島は四季がなく、気候が常に安定してます。そのため、決まった作物を一年中育てる事が出来てる。当たり前だが気候に合わない作物も多い。

 

 うちの国は国土の拡大と作物を含めた植物の収集も行ってます。植物に関しては殆どオレの趣味ですが、農家としてはより様々な作物を育てたいんです。

 

 そこで、これからのプラントは新天地を求め、植物の収集を行いながら、この世界を航海します。今も噂になってますが、機動国家の名の通り、海に左右されずに動く国土はグランドライン後半、新世界においても問題なく移動できる事でしょう。

 

 目標としているのは、春、夏、秋、冬、全ての季節が安定している海域。それぞれの気候の島と近い海域でしたらあり得なくは無いでしょう。常識を疑うのがグランドラインの常識です。

 

 しかし、移動する国家を追いかける事はどんな船であろうと不可能。それに、うちの作物は特別な処理により新鮮な状態が長く続くが、遠くなれば国につくまでも保たない方もいます。そうなると今まで取引してきた方々との取引が難しくなってしまう。

 

 その解決策が次の2つです。移動する国家に対応できないログポースに代わり『ビブルカード』を持った者が国に留まっています。皆様にもお配りします。

 

 ビブルカードだけでなく、あの世界政府新聞社の社長であるモルガンズさんとの契約により、航路の情報が新聞に記載されます。これで国に来る方法は大丈夫です。

 

 国に来れなくても連絡だけでしたら、専門のスタッフによる電伝虫での対応もありますので抜かりはありません。

 

 そして、位置関係により取引できない方の為にこれまでプラントが置かれていた位置に中継地点を設けます。中継地点には能力で作った分身を置きますし、こちらにはログポース、エターナルポースで来ることが可能です。

 

 これに関しては、現在プラントが存在しない事により、プラントを通る航路が機能を果たし切れていない事の解決にも繋がります。海賊、冒険家、問わずプラントがあるはずの海域でしたら立ち往生は困りますから。

 

 取引する物は、本体と分身の力で海底より下、地底を道にして、トンネルの様に作物の運び込みをします。専用のケースを用いて運びますし、能力による保護もあるので、商品には一切の問題はありません。

 

 今後とも取引の拡大に合わせて中継地点を増やしていきたいのですが、多くの分身の作成に必要な物と私の力量がどれだけになるかが判明していないので詳しくは語れません。

 

 それと、探している海域が長く見つからない場合はそれぞれの四季の安定したポイントに国を分けて配置することも視野に入れています。ですがこれは最終手段ですね。出来れば全てを眼の前で一度に育てられる環境が欲しいですね。

 

 とりあえず、国についてはこんな感じですね。ああ、それと近くにいた人は耳に入ったかもしれませんが、イスト聖からの依頼もありますので、それを優先する可能性もありますね。

 

 まぁ、オレとしては取引するのであればよろしくお願いしますと言った所です。それと能書きよりも実際の物を見て判断してほしいところですね。以上で終わります。

 

 オレが話を終える頃には部屋の中は完全に静まり返っていた。しかし、一人が口を開くと、もう一人と、どんどん喧騒が広がる。

 

「……なんと言って良いのか分からんが、これまでよりも影響力を強めるというのか」

「ふむ。確かに作物は素晴らしい物だ。これだけでも関わりを持つには十分だ」

「たった一人、王によって成り立つ国家か」

「危ういがそれ以上に力はある。ここは我が国も関わっていくべきか」

「世界中に広がった際にはそれこそプラントによる独壇場だろう」

「だが、何も出来ないだろう。この状況ではな」

「若さが功をなすかどうかだな」

「死にさえしなければ続くだろう」

「後ろ盾も十分過ぎる。消されることは無い。これは見過ごせまい」

 

 その後もいくつかの議題は出されたが、オレの時ほど口は開かれず、会議関わり終わり次第その場にいた王たちから取引について話を受け、多くの国と国交を持つことになった。

 

 あれで良かったのか、正解は分かりはしないが、問題がないのであれば、それがオレにとっての正解だと信じる事にする。

 

 7日に渡る会議も海賊についてと海軍についてが殆どで、あまり具体的な話にはならなかった。先行きの見えない状況で、押し付けられるのを皆避けたのだろう。

 

 もちろん、一部の王達は危機感を持ち、軍への要請などについても詰めていた。まあ、そこいら辺は役に立てることはないので参加しなかった。

 

 そんなこんなでレヴェリーも終わりとなり、約束を果たす為に案内に連れられて本来であれば入ることの出来ない『神々の地』の一室、約束の相手であるイスト聖の部屋までやってきた。

 

「7日と言うのは待っている間は長く感じるものだな。まあ、その席に座れ。何かつまめる物を用意させよう」

 

 お構いなくと言う前にイスト聖は部屋と直接繋がっている厨房の方に声をかけた。すると、数分もしないうちに調理服を着た女性が皿を持ってやって来た。

 

「お客さん来るなら先に言っといて欲しいんだけど?はい、つまめる物って言われたからとりあえず用意したけど、簡単で悪いねえ」

 

 そう言って出された物は一つ一つは小さいが彩りが鮮やかで、むしろ手間がかかっているように見えた。イスト聖もつまんでいるのでオレもヨウジを持ち、口に運んだ。あ、美味い、そしてこれもやっぱりうちの野菜が使われてる。

 

「ソイツは『ソイツ?』…クチーナはオレに最初に与えられた奴隷でオレと年はほぼ同じ、今は奴隷の前に元がつくがな。基本的な調理は任せてる」

「そこの馬鹿の専属料理人みたいな感じよ。天竜人の客が来るわけ無いのは分かってるけど、お客さんは何の人?食事関係だと思うけど……国王?!それと農家って、農家と国王って兼任するような職業だったっけ?え、あの野菜の生産者!!あれ、凄いのよ。いや、生産者だから私より詳しいかもしれないけど、料理の味がかなり変わるし、新鮮で彩りとしても優秀で、あの野菜を持ってきた時はソイツを褒めたものよ」

 

 イスト聖と彼女のヒエラルキーはなんとなく分かった。イスト聖がソイツと呼ぶのは怒るのに自分は平気で馬鹿とかソイツ呼ばわりをしている。

 

 と言うかオレとイスト聖での対応がかなり違うんだけど……まあうちの野菜を褒めてくれてるから良い人だろう。イスト聖そっちのけで会話が弾む。イスト聖は部屋の端に移って料理をつまんでいる……いつの間にかにクチーナさんがイスト聖の席を奪っていた。

 

 イスト聖とクチーナさんの昔の話なども一緒に聞けた。昔はイスト聖も他の天竜人と変わらなかったらしい。ある日、暇だから何かしろって命令をイスト聖は出したらしい。

 

 その際にクチーナさんは料理を作ったらしく、それをかなり気に入って、それを盾に段々と今みたいな関係になったとか。ちなみに料理には自信があり、バカにして来たら抱きついて首輪の爆発に巻き込んでやろうと考えてたらしい……料理関係者以外に当たりが強いのはこの人の影響か。

 

「いやぁ、話し込んじゃってごめんね」

 

 いえ、こちらも楽しかったです。これからも食材は卸しますので美味しい料理にしてあげてくださいと伝えた。そうしてクチーナさんは厨房に帰って行った。ちなみにあの厨房もイスト聖に造らせたらしい。

 

「……ようやく終わったか」

 

 イスト聖が帰ってきた。なんとも哀愁が漂っており、どこか疲れているように見える。触れないであげた方が良いだろう。

 

「予定外に時間を取らせてしまったから手短に話すとしよう。まずはこれを見てくれ」

 

 そうして手渡されてのは数十枚に渡る纏められた資料だった。なになに、『イートグラスランド』『落花星(ラッカセイ)』『ヌードルアイビィ』『(ウォ)ーターランド』『超味粱(ちょうみりょう)』『石食島(せきしょくとう)』『ボーイン列島』『巨食獣』『デザートデザート』『酔う滝(ようろう)』『ピクル湿地』……まだまだ続いているが、一体これは何なんだ?

 

「それは我が調べられただけで見つけた、食に関わる土地と植物、一部は動物もだな。それとは別にこっちに食以外の植物に関する情報も纏めておいた。お前の嫁が言うには植物収集が趣味と聞いたからな」

 

 前金ならぬ前報酬としてらしい、それは普通に嬉しい。それとは別に報酬もできる限りは約束してくれるらしいが、そもそも何をすればいいのかを聞いていない。

 

「それらをお前の土地に組み込めないか?そうすれば食が集まる一大地としてプラントも成長するだろう。世界政府や軍の管理している情報も集めたがそれでも全てとは言えないだろうな。やはり、『オハラ』に人を送るべきだったか?」

 

 つまり、機動国家の話を聞き、これらの土地を廻って獲得してきて欲しいとの事だ。うわっ、どっちの書類にも機密と書かれた物がある。厳重に保管しておこう。えっ?処分なんてしないよ。大事な植物の資料だからな。

 

 それと『オハラ』と言うのは考古学の聖地とされ、世界最大の図書館である『全知の樹』がある島らしく、情報量に関しては右に出る地は無いだろうと言われた。調べるために一度行ってみるか、今なら分身が余ってるし、送るのも良いかもしれない。

 

「特別急がせる気はない。しかし、頭の隅にでも入れておいて、もし、確保できたなら連絡をしてくれ。その時に報酬についても話し合おう」

 

 オレとしてはこれだけ情報があるのであれば問題はないので、この契約を受けることにした。クチーナさんも食材なら私にもちょうだい、と言われた。どうせイスト聖経由で渡るだろうが、個人的に料理研究にも使いたいらしい。料理としては引き換えにそちらも約束した。

 

 やはり、専門の人間の味と言うのは素晴らしいと言う事が分かった。プラントにも料理人を募るべきだろうか?真剣に検討しよう。料理の形でさらに作物の魅力を伝えられるかもしれない。

 

 料理だけでなく、取引に関して言えば、加工食品も複雑な物を作るのにはそれぞれ専門の人間がいるだろうし、人材というのは大切だなと改めて実感した。

 

 最後の最後でかなり建設的な話が出来たのでレヴェリーの疲れが結構吹き飛んだ。まあ、国々との取引に関しても纏めていく必要があるので、帰ったらまた仕事だけどな。

 

 移動中は特に何もなかったので、いう事は無い。プラントに帰ると、すぐにマニュや代表者たちに世界会議の概要と取引について、そしてイスト聖からの依頼についてざっと話した。

 

 特に問題はないが、これから電伝虫の対応が増えるだろうから電伝虫の対応グループは頑張ってほしい。直接の対応はオレとマニュでやりきる。分身もあるからやってできない事は無いはずだ。

 

 それと、小人はオレがいない間の作物の管理、ピアスはオレがいない間の国の防衛、それぞれご苦労様。問題はなかったか?なら良かった。

 

 これで1週間程度ならオレが居なくても保つ事がわかったな。しかし、やっぱり土地の維持ができないからやれない事も多いか……長くても2週間が限度だろう。

 

 それでは、今までも言っていた計画も実行に移す時がやってきた。まずは、元の位置に戻り、中継地点の作成とスキーラに挨拶も改めてしておこう。それが終わり次第、機動生産国プラントとして、世界に発信し、実行する。今までと変わることも出てくるだろう。だが、オレ達なら問題はない。

 

「『PLANT計画』の開始を宣言する」

 

 2日後に全ての準備を整えたオレ達『プラント』については世界経済新聞によって世界中に伝えられた。さて、どこまで行けるのか分からないが、行けるところまで行ってやろうじゃないか。




前回や今回みたいに、話の区切り、宣言などにおいては喋らせても良いんじゃないかと思い、アスカルのセリフを入れた。元々「 」が無いだけで喋ってはいたからね。そう大して変わらないだろう。

というか、次に書く予定の日常回だと別視点なのでアスカルのセリフはどうせ書くので良いかなと思った。あえて喋らせて無い所はあったが絶対的な制限では無かったのからね。

各国の王を説得したというより、今までの実績と計画の大きさで圧倒し、押し切った感じですね。それにより、話の流れ、中心がアスカルに向き、止められることが無くなった。世界政府、海軍との取引、イスト聖の後ろ盾も大きいですね。

元奴隷の尻に敷かれているイスト聖、胃袋を掴まされたから逆らえない。あっ、別に彼らは付き合ってませんよ。イスト聖とクチーナは、会話とか関係性は結婚してそうな感じになってますが、言い表すなら恋愛感情の無い幼馴染ですかね。

イスト聖によってもたらされた依頼と情報、まずは何処に向かうか、時系列と相談しながら候補の中から絞って行きます。ちなみに、しつこいようですが麦わらの一味のメンバーの救済はしないので、もしオハラに行ったとしても助ける事はしません。

それと食材や植物以外にもプラントには足りないものが多い、なまじっか土地で移動できるから放置されてるが、きちんとした船も無いし、武器などの整備も完ぺきではない。医者も料理人も大工も、何も居ないんですよね。今の所は知識を持ってる人間が代役を務めていますが、大きくなってきて立場が確立したらもっと人を呼び集めても良いかもしれませんね。

船となるとやっぱり『ウォーターセブン』かな。トムの処刑まで14年も時間があるので、カティ・フラム時代のフランキーにもあっちゃうよなぁ。まあ、こっちも同じかな。

ドラムとの取引がありますが、こちらはまだチョッパーが生まれてないので問題なし、関係を持ちそうなのは先代の王とくれは、ヒルルクかな。ドルトンはまだ11だから合わないだろう。

PLANT計画と国の名前をそのまま名前にしてみました。あえて意味を持たせるならplant、Large、And、National、translationって所ですかね。あ、andとか入れてますが別に文にはなって無いです。単語を並べてるだけです。本当はsop作戦みたいなネタを入れたかったんですが、流石に思いつかなかった。

では、次は約束通り日常回を現段階で書いても問題ない範囲で書いて行こうと思います。章設定は、2章目を書き始めて、章タイトルも思いつけたら行います。

一応これで、一区切りまで書けたのかな?いやあ、どうにかここまで来れました。人気作にあやかってでしょうが、一時期は日間ランキングにも載ったりと、今でも信じられない位です。

 今も週間には載ってますね。しかし20位台→30→40→50ときてついに101まで落ちましたね。月間も101ですね。一昨日までは60位台にはいたんだけどな。落ちるの早すぎる。

上位に入れた時はほぼ毎日投稿してた時でしたね。やっぱり目に留まる回数って大事なんですかね。まあ、準備期間も終わり、ネタのストックの多い部分に成るので書く気力さえ湧けば多めに投稿するのも夢ではない。まあ、評価やランキングもそうですが、止めてしまわない事を第一に自分なりに納得のいく物を書いて行きます。

ここまで来れたのも全てこの作品を見つけ、読んでくれている方々のおかげです。評価や感想などはどれも励みとさせて頂いてます。(誤字報告には助かってます。いや、本当に助かります。今後ともお願いします)

では、いつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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外部プラント2 「トンタッタ」

トンタッタ全体での過去話とそれぞれの日常話をまとめて一話にしてみました。

子供の口調を少し変更しました。後、見つけたミスの修正も行いました。内容は変わってません。



「今日も元気にお仕事レス!!」

「収穫したものは倉庫レス!!」

「一部は加工場にも持ってくレス!!」

「異常があったらアスカル様に連絡レス!!」

「リーダー達にも連絡レス!!」

「行くレスよ!!」

 

 毎朝同じやり取りをしてから駆け抜けていく仲間たち、ここに来てから故郷では体験できない事も多く、みんな優しいし、仕事も楽しいから元気いっぱいレス。

 

「それじゃあ、アタシは花畑を見てからエリアを右回りで回るレス」

「ボクは左回りで回るレス」

 

 二人で確認した方が確実なので、反対回りで多角的に見回りをしていくレス。仕事にミスは許されないレス。みんな恩を返すために一生懸命働くレス。生産エリアと自然エリアはトンタッタが取り仕切るレス。

 

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 あの時の事はよく覚えてるレス、族長の言いつけを破って全員で外に遊びに出て大人間に見つかったレス。そこで急いで逃げれば良かったのに、呑気に話をして、船に乗せてくれると言われてのこのこと乗ったレス。

 

「小人か、珍しい種族が居たんだな」

「あいつらは素直すぎる。相手をしてやろうぜ」

 

 毎日、色々と話をしてくれる人がいて、始めの内は楽しかったレスが、部屋からずっと出られなくて段々と退屈になって行ったレス。これなら自由に走り回ってた村の方が良かったと思ったレス。

 

「俺達がせっかく乗せてやってるんだぞ」

「そうそう、お前らを乗せるのにどれだけ苦労したか」

「そうだったんレスか!?文句をいってごめんなさいレス」

 

 アスカル様に色々と教えて貰ったレスが、その言葉嘘だったらしいレス。信じて言う事を聞き続けてしまったレス。そして、全員あの船に乗せられたレス。今まで一緒にいた男たちはニコニコとした顔で僕たちを渡していたレス。

 

「これから良い場所に連れて行ってやるから大人しくしてるんだぞ。みんなで旅行、楽しいぞ」

 

 旅行と言う言葉は嘘で船が止まっても降ろしてもらえることは無かったレスが、最終的に良い場所には連れてきて貰ったレス。最後の船旅となったあの日、船の中にいつも船長が相手をしている人とは雰囲気の違う人が来たレス。

 

「お前らはどうしてここに居るんだ?」

「旅です」「旅行に連れて行ってもらいます」

「はぁ、お前ら騙されてるぞ」

 

 アスカル様の言葉にはかなり驚いたレス。何か話が違う気もするけど約束してくれたからいつか降ろしてくれると思ってたレス。このまま、旅も出来ず、故郷にも帰れないレス。そう悲観していると、アスカル様が提案をしてくれたレス。

 

「安全に故郷に送り返してやる事は出来ない、だけどお前らが良ければウチで働かないか?食事や住居など生活に必要な物は保証できると思う」

 

 どうなるか分からない船に乗って騙され続けるよりは全然良いレス。それどころか僕たちをわざわざ助けてくれるなんてと感激して、お礼を言ったのをよく覚えてるレス。

 

「まあ、なんだ。『プラント』にようこそ。国王として歓迎するよ」

 

 それからずっと続くことになる『プラント』での楽しい生活が始まったレス。

 

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SIDE:ホーニィ

 

 アタシはハナハナの奇術が使えるからリーダーに大抜擢されたレス。花を咲かせることでプラントの役に立ててるのでこの力に誇りを持ってるレス。

 

「今日も綺麗に咲いてるレス。ん、何レスか?そろそろ蜂蜜が溜まるレスか!?教えてくれてありがとうレス」

 

 この花畑の花たちとは仲がいいので色々とお話してるレス。花たちが取られた蜜の量から推測して回収時期を教えて、アタシたちが速さを活かして蜂にばれる事無く蜂蜜を集めるレス。それにしても栄養が多いからか花たちが賢いレス。モーダスも草が賢いと言ってたので、プラントの植物はきっとみんな頭が良いのレス。

 

「あれ、ホーニィだ!何しに行くんだ?」

「ホーニィ、お仕事中?」

「ホーニィ、獲っても良いお花さんある?」

「ホーニィ、私もお花さんとお話ししたいのね」

 

 ふふ、子どもたちはもう休憩中のようレスね。アスカル様から全員が認めたら顔を見せても良いと言われたレスが、彼らは直ぐにプラントに馴染んで仲間に成ったのレス。ちなみにもう大人たちとも顔合わせは終わってるレス。みんないい人、大人間は良い人が多いレス。

 

「みんなはお仕事練習と勉強終わったレスか?」

「もちろんだ!!」

「学校、あったけど、こっちのが楽しい」

「学校あったんだ。うちは村長が教えてたよ」

「仕事ばかりだったから勉強は新鮮なのね」

 

 ふむふむ、では少しくらい大人としてご褒美を上げても良いレスね。アスカル様からも花や蜂蜜に関しては自由にしてくれて言いと言われてるレス。アスカル様なら子供たちに上げたり、お茶に入れたりは許してくれるレス。と言うか前に似たような事をしても許してくれたレス。

 

「ちょっと、待ってるレス」

 

 アタシは超特急で森の中を駆け抜けて目標を視界に収めるレス。そうしたら巣がある高さと同じくらいの位置に立って、木を蹴って巣の真下を横切るレス。跳んだ先の木をまた蹴って何度も巣の下を通るレス。その際に少しずつ蜂蜜を回収するレス。もちろん、蜂の分は残すレス。今日は子どもたちの分だけで勘弁してやるレス。

 

「待たせたレス」

「待ってねえよ」

「ホーニィ、早いよ」

「かけっこじゃ勝てないよね」

「当たり前なのね」

「まあ、頑張ったご褒美を上げるレス。みんな口を開けるレス」

 

 素直に口を変えたみんなに特製の花粉をまぶした蜂蜜玉をプレゼントレス。いきなり入ってきた物に驚いているレスがすぐに笑顔に変わったレス。

 

「何これ凄い甘い!」

「蜂蜜、貰って良い?」

「美味しい、ありがとう」

「ご褒美嬉しいのね」

 

 ふふふ、喜んでくれたのなら良かったレス。笑顔を見てるとこっちも嬉しくなるレスね。さて、まだ仕事が残ってるレスからそろそろ行くレスね。

 

「じゃあ、また今度レス」

「ありがとな!!」

「また、遊ぼう」

「今度お花教えて」

「お話するの忘れないでなのね」

 

 さて、花畑はこれで終わりレスね。そう言えば最近はマニュ様も疲れてるみたいレスからお茶に入れる用に蜂蜜を持って行くレス。モーダスにリラックス効果のあるハーブを集めてもらうレスかね。アタシも効果のありそうな花たちに花弁を分けてもらうレスね。

 

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SIDE:モーダス

 

 自然エリアの中、特に山の中にしか生らない物はボクが周りの草たち教えて貰って探し出すレス。それ自体が草ならここにいるという声を聞くだけで良いのレスが、キノコや果物は管轄外という奴なのレス。

 

「これとそれと、そっちにもあるレスね。ありがとうレス。目標クリアレス」

 

 だけど教えてくれるだけでも本当に有難いレス、ボクらは自然の中での活動が得意な者が多いレス、それでも広い範囲を当てもなく探すより早く済むレス。

 

「ここでの仕事はこれで終わりレス。今日も、小屋に寄ってくレス」

 

 自然エリアの一角にある巨大な小屋、会議がある時は全員で集まる場所でもあるレスが、普段はピアスの家になってるレス。お日様も上に上がってるレスからね。そろそろ、起こした方が良い頃合いレス。

 

 ボク達用にと作られた大人間からしてみれば小さい入り口を通って小屋の中に入るレス。今日も起きてないようで、グースかと声が聞こえるレス。声の聞こえてくる部屋に入り、耳元に立つレス。

 

「『しっぽハンマー』」

 

 トンタッタコンバットと言う戦闘術、しっぽを思い切り打ち付ける技をふかふかの布団にあえて放つことで衝撃をそのまま、音に変えて伝える。スパァンと言い音がなったと思うとようやく彼女も目を開けたレス。 

 

「ああ、朝になったのか」

「いつも言ってるレスがもう昼レス」

「ああ、ありがとな、モーダス。いつも助かってる」

 

 彼女はこの土地に居る事自体が仕事の様な物でたまに大きな荷物の積み込みやアスカル様に代わって敵の迎撃などを行う事もあるが、基本的には仕事が課されていないのレス。だけど寝すぎるのは体に良くないので起こしてるレス。

 

「そうだ。これこの前泳いだ時に採ったんだ。えっと何て言ったっけか……そうだ、『3色海ブドウ』だ。緑のは普通のと一緒だが、黄色は甘くて、赤は少し辛い、アスカル様にも渡したら島の地下で育るか試してるらしい。これはたくさんあって余った奴だ」

「緑は普通で、黄色が甘くて、赤が辛いレスね。みんなと食べてみるレス」

 

 アスカル様は植物が好きレスが海藻や海草もその枠に入るんレスね。海中の食材の調達などはピアスに頼んでるのをよく見かけるレス。面白い食材や危険度の高い食材なども集めているレスが、殆どアスカル様の趣味だと思うレス。趣味と言えば、自分の趣味を優先しすぎて故郷を追い出された()()()の事を思い出すレスね。あいつも()()()で強いレスから生きてるとは思うレスけどね。

 

「お土産も貰ったので帰るレス。たまには自分で起きるレスよ」

「アタシは人に起こされないと起きれないんだよ」

「そうだったんレスか!?なら、起こしてあげるレス」

「……面倒だから言い訳しただけで本当じゃない。気にすんな」

 

 嘘じゃ無かったレスが本当でも無かったレス!?うーん、言葉って難しいレス。アスカル様みたいにボク等も勉強するべきレスかね?とりあえず、帰ってからみんなと話すレス。

 

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「「点呼レス」」

「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」「10」「11」「12」「13」「14」「15」「16」「17」「18」

「全員いるレスね」

「報告会始めるレス」

「先にリーダー業務は問題なしレス」

「同じく、こちらも問題なしレス」

「生産エリア班、問題なしレス」

「自然エリア班、問題なしレス」

 

 トンタッタは真面目で毎日仕事の進み具合や問題点などが無いかなどを話あっている。少しでも違和感があればすぐにアスカルに報告する。優秀な警備員でもある。そして業務の報告を終えると、報告会と言う名のお話会に変わる。

 

「大人間の子供組と会って、蜂蜜を分けたレス」

「喜んでたレスか?」

「もちろんレス」

「作物がどんどん良くなるレスね」

「リーダー、作物や花の改良は次どうなるレス」

「花は綺麗なのや蜜が美味しい物、後は好きにして良いと言われてるレス」

「作物は持ち味を活かした物と味ではなく食感を高めた物も試してるレス」

「どっちも楽しみレス」

「そう言えば、自然エリアで3色海ブドウって言うのをピアスに貰ったレスからみんなで食べるレス。緑は普通で黄色が甘くて、赤は辛いレス」

「緑を食べてみるレス、美味しいレス」

「赤いってみるレス、辛いレス、けど風味が良いレス」

「黄色甘いレス、陸ブドウみたいレス」

「赤と黄色同時に口に含むと味が喧嘩して面白いレス」

「それと、アスカル様の趣味について考えてたら、追放されたアイツを思い出したレス」

「あーレスね。能力者で趣味に打ち込んでて、自由レス」

「確かに似てるかもしれないレス」

「違うレス。アスカル様は周りの迷惑を考えるレス」

「でも、アイツの能力は食べ物に関わるレスし、アスカル様の役に立つと思うレス」

「今度、進言してみるレスか?」

「探せばすぐに噂くらい手に入るレス」

「どうせ、問題を起こしてるレスからね」

「そうだ。アスカル様への報告書を渡しに行くレス」

「忘れてたレス」

「どうせならみんなで行くレス」

「「「「行くレス!!」」」」

 

 楽しそうな雰囲気を背負ったまま、20人全員に詰め寄られてアスカルは驚いたが、報告や世間話を聞いて、一緒に笑って過ごした。アスカルと小人の関係は良好である。




トンタッタの言う、アイツと言うのは新キャラのフラグです。多少ぶっ飛んだ自由なオリキャラとなる予定です。

後は何だろうか。日常話を全員登場する形の会話の多い物を1つ書けばとりあえずはノルマクリアで良いだろうか?というかそもそも日常回じたい、メッセージで頼まれたのはマニュ王妃視点だけだった所をトンタッタも書いたんだよな。

プラントでの日常を書くか、それとも何かイベントみたいに絡めて書くかどっちが良いかな。3月だとイメージ的にはお花見だけど、桜が無いよな。

桜を島に植えて欲しいという意見があったから、いっそのこと番外編で桜を回収するのもありかな?

ところで、他のキャラはもう良いかな。ピアスとサイフォはまだ出てきたばっかだし、ピアスは一応、トンタッタのついでに出てきたしね。サイフォは真面目に思いつかない。

奴隷組も子供は出せた。男女2人ずつ、名前を用意するべきだろうか?子供って動かしやすいんだよな。なんか、何しててもおかしくなさそうで、場を動かすのに便利。

という事で、日常回は出来るだけ全員が参加する物を最低1つ、多くても2つ書いたら次の章へ移行します。しかし、その前に書きたい物があるので少し時間を貰います。

ミスについて、追記。

ミスは荷物の積み込みが詰め込みになってたり、3色海ぶどうが3食海ぶどうだったりですね。


ではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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外部プラント1 「マニュから見て」

日常の前にこれまでを各視点で振り返ります。

一回、書き途中のデータが消えて泣きそうでした。本当なら昨日には投稿できてたのに、最近似たミスが多い。


 机の上に並べられた書類の山々、今日は来客が少ないのでそこまで大変では無いでしょうが、毎日やり(支え)がいのある仕事ですね。いつも通り仕事を開始しながらふと窓の外の景色が目に映る。

 

 思い返すとプラント(ここ)もだいぶ変わってきましたね。プラント(此処)での生活は宝であり、『プラント』は私にとっても誇りになってます。今が幸せだからこそ私は昔の事を思い出してしまうんでしょうね。

 

 私はあの日々を生涯忘れる事は出来ないでしょう。新世界から命からがら逃げてきた海賊、彼らは前半の海(楽園)でやり直すために、手始めにスキーラを標的に定めた。彼らは決して弱くなく、抵抗したものの結局は略奪の限りを尽くされました。

 

 それでも死者は少なかった。国民が無事で不幸中の幸いだと、素直に喜ぶことが出来れば良かったのですが、壊され、奪われ、ボロボロとなったスキーラにとってそれは絶望の始まりでしかなかったのです。食べられないという本当の飢えを経験した者は少なかったでしょう。

 

 多くの者がどうしようもないその現状を嘆き、苦しんでいた。生き地獄と言う言葉の意味を真に理解しました。それでも、どうにかしなければと復興を目指しましたが、限界は遠くなかったでしょう。私も出来るだけの事をしていたと思っていました。しかし、国民も含めて全員が知っていた話、私と引き換えに支援をするという話が国にきている事を知りました。

 

 私は情けなくなった。苦しんでいるはずの国民に私は守られていたのです。私は泣き叫びながら父にどういう事かと訊きに行きました。どうして知らせてくれなかったんだ、何故国民が私をまもるんだと……私に守られるほどの価値があるのかと。

 

 私は情けなくなり、父に私を相手に差し出すように進言しましたが聞き入れてもらえませんでした。父はなけなしの金と水だけを積んで船に乗りました。必ず食料を持って帰ると国民の前で宣言しました。

 

 父が居ないのであればと、私が代わりに現場での指揮を執り、復興のために尽力しました。私に出来る事であれば自ら働き、国に尽くしました。それでも、私に向ける笑顔が無理をしている様にしか見えませんでした。

 

 私は国民に期日までに食料の入手に失敗した場合は私を相手に差し出すと一方的に宣言しました。父が帰らなかったら、新しいリーダーを立てるようにも伝えました。そうして反論をされないように、向こう数カ月の指示書を置いて、部屋に引きこもりました。あれは自己犠牲なんて尊い物ではなくただの逃げ、悲劇のヒロインに成る事で、自分の心を守っただけでした。

 

 そろそろかと思い、相手国への返事を出そうとした時に、国に激震が走りました。父の船が食料を持って帰って来たのです。国民は一様に歓喜し、その知らせは一気に広まりました。私は、ただ一人、閉じ篭っていた部屋の中で泣いていました。それと同時に救世主とでも言うべき人の事も国王の口から伝えられました。

 

 多くの食料のおかげで国は希望を取り戻し、立ち上がるだけの力を手にしました。そこからの立ち直りの早さと言うのは凄まじいの一言です。誰もが幸せな日常を夢に見て働くことで、国は段々と安定していきました。

 

 父はその間も稼いだ金を大事に預かり、食料を買いに行きました。何度か航海を重ねていましたが、ある日の父は持って帰って来た食料は多くあるのに、持って行ったはずの資金をそのままに帰ってきました。謎でしか無かったため私は理由を聞くと、父は泣きながらその人の事を語りました。

 

「アスカル殿は、この国が大変だと聞いたら無償で支援をすると言ってくれた。あの方は『そんな状態なら大変だろうし、食料はただで良いぞ。早く言ってくれたら良かったのに』と助けるのが当たり前だとでも言うように、多くの食料を持たせてくれたんだ」

 

 その言葉を聞いても私は直ぐに理解が及びませんでした。その様な人がこの世の中に居たのかと、父の言うようにその人は聖人か何かでは無いかと思ってしまいました。父はこのことを国中に伝えると、国民は皆、涙を流してその方に祈りました。

 

 復興も途中だというのに、国民からその人の像を建て、その人の事を後世に伝えましょうと進言し、父も二つ返事で了承しました。父はその人と友誼を結んだんだと嬉しそうに、誇る様に言ってました。その頃から更に復興のスピードは上がり、襲撃から1年も経ってないのに、国は国としての形を取り戻していました。

 

 ある日、父が普段と同じように航海から帰ってくると、なにやら話があるという事で呼び出されました。航海での話や自身が居ない間の話でもないようなので、何なのだろうかと疑問でした。初めのうちはいつも通り、アスカル様の話からでした。

 

「……それでなアスカル殿の所は取引が増えて人手が足りないと嬉しい悲鳴を上げていたんだ。それで聞いて行くうちに優秀な秘書の様な人材が居れば楽になるだろうと思い、こちらで人材を用意しようと思ったんだ。少しでも恩返しになればと思ってな。そこでマニュ、お前が行く気は無いか?」

 

 初めは何を言ってるんだと、意味を理解することが出来ませんでした。確かに下に妹と弟が居ますがようやく赤ん坊を卒業した位で、いずれは私が結婚して、旦那様を迎えて、国を導いていくんだと、そう思ってましたし、そう言われてこれまで生きてきました。他の選択肢がふっと湧いてきた事に驚きが隠せませんでした。

 

「襲撃からの事で、お前にはかなり助けられた。だが、お前に押し付け過ぎていたと気付いたんだ。お前を渡す代わりに支援をしてやるという話が来た時、直ぐに否定したのは家臣たちの方だった。お前なら許してくれるんじゃないかと考えてしまっていたんだ。王以前に親失格だろうな。そして、話を聞きつけた時のお前の姿を見て、言わなくて良かったと思った。お前は荷を背負い込み過ぎてしまう気概がある。それはこれまでの王族としての在り方を言い続けてきたからだろう。だけどな、もう少し別の道があっても良いんじゃないかと、思ったんだ。これは王としてではなく、お前の親としての提案だ。どうだ、マニュはどうしたい?」

 

 第一王女としての立場を考えず、私が何をしたいのかを訊かれていたのが分かった。しかし、自分のしたい事と言うのはあまり分からなかった。だけど、あの時、国民を救い、私を助けてくれた人に会いたいと思った。

 

 気づけば私は手慣れた手つきで航海を仕切る父の船に乗っていた。目的地はまだ『プラント』と言う名前も無いただの島だったが、私にとっては運命の場所だ。

 

「アスカル殿、度々来訪してすまんな」

「別に構いませんが、その殿って言うのはやめてくれませんか?あんた一国の王でしょう?オレはただの農民なんですが…」

 

 父が気さくに話しかけている。呼んでいる名前からしてこの人があの救世主様だ。父に殿と言う敬称で呼ばれて、居心地悪そうに頬をかいている姿を見て、私は可愛いなんていう感想を抱いてしまった。その間にも父とアスカル様の話は進んでいった。

 

「それでそちらの凛々しい女性はどちら様で?初めてお会いしたと思うんですが?」

「そうだ。紹介しよう、娘のマニュだ。それでこの前の件で連れてきたんだ。この娘じゃだめか?嫁いだと思って使ってくれて良い」

 

 嫁!?そんな話は私は聞いてないんですが!?恩を返したいとは思ってます。しかし、いきなりその様な事を言われても私にも覚悟というものがありますし、いや嫌だとは思ってませんし、憧れていましたから、嫌ではないんですが、などと誰に言うでもなく言い訳を頭の中では繰り返していました。

 

「よろしくお願いします旦那様」

 

 しかし、私の口から出た言葉は、私自身もそれを望んでいると言わんばかりの発言でした。その日から私のプラントでの生活が始まりました。

 

「マニュ様、これを頼んでも良いかな?」

 

 最初のうちは私が王女と知っているからアスカル様も私の事を様付けで呼んでいた。少し距離があるようで寂しく感じながら、強要して困らせたくないので、慣れてもらうまで待った。

 

 時間は掛かったが仕事などを頼まれたり、交渉などについて教えたりを繰り返していく内に呼び捨てにされる様になっていった。初めてマニュと呼ばれた時は嬉しくて泣きそうでした。

 

 それから、世界政府の人が来て、この場所が正式に国となり、プラントと命名され、わ、私とアスカル様は夫婦になりました。

 

 人手不足で悩んでいたら、奴隷商に騙された小人たちをアスカル様が助けて迎え入れた。彼らは騙されやすい事を除けば非常に優秀なので本当に助かってます。彼らのおかけでプラントの名産が増えました。

 

 その後でしたかね。レヴェリーの話が来て悩んでいたら、アスカル様が島ごと移動すると言う意見を出しました。あの時は、私達とはスケールが違うと感じました。

 

 そして、その練習で故郷に久しぶりに帰ることになりました。あの時のみんなは少し、いえ、かなりはしゃぎ過ぎです。気持ちは分かりますが、恥ずかしかったです。

 

 そして、レヴェリーへの移動を考える時期になると、あの英雄として知らないものはないとされるガープ中将がやってきました。

 

 その豪快な性格にも驚きましたが、最近鍛え始めたアスカル様を面白いと自ら修行をつけ、それについて行けるアスカル様も凄まじいと感じました。ガープ中将の部下が嘘だろと、声を漏らしていたのをよく覚えています。

 

 そして、マリージョアの近海まで向かい、到着してからも余裕があるので、人手不足解消の為に奴隷を買うことになりました。

 

 電伝虫係の方達はアスカル様の雰囲気を感じ取り、何も問題なく働いてくれることになりました。問題だったのはその後で来たピアスです。

 

 珍しい種族という事で2億という大金で買われた彼女は奴隷としての立場を認めず、プラントで暴れました。首輪の爆発を耐えて、アスカル様に襲いかかった際は心臓が止まりそうでした。

 

 事前に国としての決まりなどを考えた際に緊急時の対応なども決めてあったので、それに従いアスカル様は私や客人を守り、戦いました。ガープ中将も避難には協力してくれました。

 

 私はドキドキしながらもアスカル様の勝ちを信じて電伝虫の映像から目を逸らすことはありませんでした。なんなら、安全性を疑うものの為に、客人全員に見れるよう映しました。

 

 そして、お互いに大技を放つ最後の一瞬、集中していたアスカル様の目が見開き、ピアスを地に叩き伏せました。あの時は客人も含みて全員で歓声を上げていました。

 

 そう言えば、映像を食い気味に見てヤベーなと呟いている男が居ましたが、今思うとあれはサイフォだったのではないでしょうか?

 

 その後はプラントの強さを知り、そして心躍る戦いを見せてもらったと取引が増えたりとトラブルがむしろプラスになりました。

 

 そして、ピアスが目覚めました。彼女はこれ以上暴れる気はないと素直に会議に参加しました。

 

 会議が進んだ結果判明した奴隷たちの間で広まっている事件。そして、その答えを知っているとガープ中将に連れられて来たサイフォ。

 

 胡散臭いと思いつつも裏切る事は無いと言うのは理解できました。アスカル様の話を聞いた上で、私もホーニィ、モーダス、サイフォというメンバーで能力者に挑むことに了承しました。

 

 まあ、しっかりと仕事をして全員無事で帰ってきてからは仲間としてみんな接しています。もちろん、私も認めてます。彼は情報収集能力も高評価ですから。

 

「っと、これで終わりですか?考え事をしていたからでしょうか、時間が経つのが早く感じます」

「おや、仕事終わったのか。なら、差し入れと思って持ってきたんだけど一緒にどう?」

 

 ここは仕事用の部屋なのでアスカル様はノックしなくても良いと言っていますが、入ってきたのに気付けなかったとは、かなり集中していたみたいです。

 

 持ってきたのは最近アスカル様が嵌っていると言っているスムージーだ。果物のは言うまでもなく、プラントの野菜は糖度が高い物が多いので、普通の果物のジュースよりも甘く、仕事の後など疲れている時には丁度いいのです。

 

「ありがとうございます。みんなに配っているんですか?」

「あー、最初にマニュに飲んでもらおうと思って、いつも助けて貰ってばかりだし、自分ではかなり美味しく出来たと思ってるんだけど、やっぱりマニュに感想を言ってもらえると嬉しいから」

 

 ……そういった事を素で言ってくるのは少しずるいですね。普通だと本人は言ってますがこの人より格好良い人を私は知りません。

 

「では、一緒に飲みましょう」

「ああ、そうだね」

 

 乾杯と二人でカップをカランとならしてから特製スムージーを頂きます。冷たくて、喉が潤います。野菜の苦味は一切なく、雑味やザラザラとした舌触りもせずにゴクゴク飲めます。とても美味しいです。ですが……

 

「明日からは冬島の気候区域に入るのでこれで最後にしてくださいね」

「もう少し研究したかったけどしょうがないか。次はスープでも仕込んでみようかな」

 

 自分のやりたい事をやっているこの人が、いつも笑っていて、楽しそうなこの人が、私の旦那様で、世界一の人です。

 

 この人の為に、この人の居場所を守る為に、私も頑張って行きましょう!

 

「失礼します。マニュ様、新しい取引に関する問い合わせが15件、取引の変更について20件、うちの国に寄ってくれというお話も多数来ています」

 

 ……さて、仕事を再開しましょう。とりあえず、国家からの電伝虫を回して下さい。私が話した方が早いです。その他のは書類に纏めて送ってください。それと、来たついでに頼むのはなんですが…終わった書類を各部署に持っていってください。はい、お願いします。

 

「さて、やりましょう」

 

 頬をパンパンと叩いて気を引き締める。再び山積みとなった仕事を見て、笑顔になるというのは少し危ない気もしますが、プラントに貢献しているのが実感できて、楽しいです。




ワーカーホリックとはちょっと違うけど休ませないといけないことには変わりはない。

自分の作った作物の活用法を模索するアスカル国王。

今回、呼び方をアスカル様で殆ど統一したけど、心の声を旦那様呼びにしようかで悩んだ。

各視点ともう少し日常っぽい、会話の多い物も準備中です。しばらく、お待ちください。

とりあえず最新話として投稿したが、別の場所と言うか、ストーリーの前にまとめた方がいいだろうか?悩ましい。

読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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外部プラント3 「作物以外の食料事情」

お花見は無しにしました。そして前回も登場したこどもの元奴隷組が再登場して島を廻って勉強します。

まあ、現在のプラントを紹介しますという話ですね。その過程で住民たちの姿を見ていければと言った感じです。


「アスカル様、作物以外にもプラントにはたくさんの食材があるのね。それらはどこから手に入れているのね?」

 

 訊いてきたのは元奴隷の子供組、『ポコ』だった。「〜のね」って語尾につけてる女の子で、特徴的だからすぐに名前も覚えた。

 

「他の皆も早く覚えてなのね。それで何処からなのね?」

 

 確かに、育ててる作物以外は見る機会がないから子供には分からないかもしれないな。勉強として、島について教えるのはありかもな。

 

「よし、それなら明日にでも島の探検に行こうか?」

「やったなのね!!みんなにも伝えてくるのね」

 

 そして次の日、約束の時間に集合地点に行くと子供組が全員揃って待っていた。

 

「アスカル様来たぞ!!」

「今日、どこ行く?」

「ありがとうございます。アスカル様」

「待ってたのね」

 

 力強い男の子が『デル』、おとなしくて片言気味な男の子が『フィン』、丁寧な口調の女の子が『ティア』、そしてさっきも言った『ポコ』の4人だ。

 

「今日は家畜小屋、自然エリア、研究エリア、海だな。畑以外で食べ物を手に入れてる場所を一通り見ていこう。準備は良いか?」

 

 訊かれるまでも無いといった表情で頷く子どもたち、とりあえずは家畜小屋に向かおう。

 

「ここは生産エリアと自然エリアの間ぐらいに位置してる。理由は飼料を運び込み易いし、放牧用の土地を確保しやすいからだ。まあ、オレの能力で簡単に用意出来るけどな」

「まあ、肉や乳製品、食料では無いが革も一部はここからだな。餌やりとかの簡単な作業は土人形で出来るが、生き物相手だから最初は殆どオレが世話をしていた。今は人が、増えて交代で手伝ってもらってる」

「アスカル様、私はここで働きたいのね!!」

 

 ポコは元々住んでいた場所では動物の世話の仕事をやっていたらしい。なら、オレより詳しい可能性すらあるし、任せるぶんには問題ない。一応、怪我とかの予防を考えると監督役は必要だろうが、前向きに検討すると伝える。

 

「やったぁなのね!!」

「ポコ仕事、見つかった」

「やったな」

「良かったね」

 

 元奴隷組は基本的には電伝虫対応や雑用が仕事になってるが、取引が落ち着けば問い合わせも落ち着いて行くので、新しい海域についてからしばらく時間が経てばそこまで人は要らなくなる。

 

 それも、新聞で今後の航路と取引可能範囲を図にして載せてもらったからだ。それと一緒に『今後、こっちに来いとか言う勧誘の電話をしてきた所との取引はしない』と言う言葉も載せたから余計な電伝虫がかなり減った。

 

 そんな訳で彼等も忙しい時期以外は他の仕事に携わる事になっている。そのため子どもたちは電伝虫対応の勉強と並行して他の仕事を探しているのだ。少しくらい休んでても良いのに、みんな働き者だな。

 

 さて、次は自然エリアに向かおう。子どもたちは島の中を走り回っているので、山道もなんのそのとたくましく育っている。

 

「この山の中では畑で育たない物がたくさんある。ほら、そっちの木の下や向こうの上を見てみな」

「キノコだ!」

「バター炒め」

「果物もある!」

「デザートなのね」

 

 オレが指し示した場所にはキノコや木になる果物が存在する。ポコはまあ分かるが、フィンお前も食いしん坊なのか?まあ、美味いけどな。

 

「畑みたいに整えるより、自然の中で少し整備する方が良いんだよ。収穫は少し大変だけど、モーダスが頑張ってくれてるよ」

「人手いるなら俺が手伝えるか?」

「そうだなぁ、日によってはモーダスが何度も往復する必要もあるから、荷運びを手伝う人員はいるかもな。どうなるか分からないけどモーダスに伝えとくよ」

「アスカル様、ありがとう!!」

「良かった」

「決まると良いね」

「モーダスならOKしてくれるのね」

 

 多少楽観的だが、確かにモーダスならOKしてくれるだろうな。丁度いいし、ピアスを起こして先に海に行くとしよう。そこで昼食にすれば丁度いいだろう。

 

「と言うことで小屋に入ろうか」

「ピアス姉ちゃんの家でけーな」

「あの人が、でかいから」

「ピアスお姉さん用の扉はもうただの壁ですね」

「でかい壁なのね」

 

 部屋に入り、未だに寝ているピアスの近くに立ち、思い切り殺気を送る。すると、ガバッと起き上がり、体勢を立て直している。そしてオレの姿を確認する。

 

「びっくりするからその起こし方は辞めてくれないか?」

「モーダスの起こし方とそう変わらないと思うんだけどな。海に潜って貰っても良いか?昨日伝えたと思うが、いい時間だから昼食にしようと思ってな。採ってきて下に運んでくれ」

「ああ、そういう事なら任せておくれ」

 

 

 そう言うと、オレ達の事を待たずにピアスは海の方へ向かっていった。まあ、別に問題は無いが、どうせなら姿を見せるためにオレ達も早く向かう。プラントの中であれば下を通れば早い。

 

「潜るぞ」

 

 端的に伝えると、オレと子ども4人を土で覆って土の下を高速で移動する。調節すれば、中に衝撃が来ることは無い。便利な移動方法だ。数秒もせずに住民用の港に辿り着いた。

 

「アスカル様やっぱ凄いな。もう着いた」

「だって、国王様だし」

「ピアスお姉さんより強いですからね」

「あの戦いは格好良かったのね」

「まあ、それよりピアスの方を見てみな」

 

 海の方を指差すと豪快に泳ぎながら魚を追い込んだり、海獣や小さい海王類を狩っているピアスの姿が見えた。

 

「魚や肉の一部はピアスが狩っているんだ。後は海草とかの回収もピアスの仕事だな。後はピアスが持ってくるのを下で待っていようか」

 

 オレの下という言葉に疑問を感じているようだが、すぐに分かる。もう一度土に潜るとこの前に作ったばかりの場所ヘ向かう。

 

「一応、街の中や国土の側面から採光出来るようにしてるんだが少し薄暗いか、すぐに明かりをつけよう」

 

 照らされて見えて来るのは地下の大空間、そして広々と広がる水、ここは地下の中でも最下層で海と繋がっている。ここは海草の栽培と貝など砂浜の生物の養殖、他には魚の生簀代わりとして使っている。土の栄養を流し込んだり、砂浜を最適な状態にする事で結構成果が出ている。

 

「日光が足りないのが課題だな。まあ、今はモーダスのおかげでなんとかなってるけどな。今日はそっちの人工砂浜でバーベキューだ」

 

 そう、宣言すると子どもたちは目に見えて喜んだ。そして、ほぼ同時くらいに水面の中央からピアスがざぶんと波を立てながら出てきた。

 

「こんなもんで良いかい?」

「十分だな。自分で採ってきて貰うことになるが一緒にどうだ?酒も多少なら持ってくるぞ」

「それは嬉しいね。折角だからご相伴に預かろうかね」

「ピアス姉ちゃんとご飯だ」

「ピアス姉ちゃん、凄い」

「ピアスお姉さん、昼からお酒?」

「普通ならダメな大人なのね」

「はっはっはっ、アタシはこれでも働いてるからな。だよなアスカル様?」

 

 ここにいる事で自体が仕事ではあるし、彼女は一回海に出るだけで普通の人間の数十倍の成果を出すから、これでも働きとしては大きい。そもそも、酒を渡すことを提案したのはオレだからな。見逃してやってくれ。

 

「『砂鉄』」

 

 最近は土以外の操作も色々と試し始めた。元々、オレは大地人間、大地に存在する物は操れるのだが、能力を畑用に使いすぎている事と土以外への知識が少ない事で土以外は遅れを取っている。

 

 今は砂鉄を集めて形を網状に変更している。ピアスの分も焼くのでかなり大きい網が必要なので試しにやって見た。思いの外、上手くいった。

 

「よし、何を食べたい?」

「肉!」

「貝、食べたい」

「まずは野菜をお願いします」

「魚を食べるのね」

「アタシは適当に焼かせて貰うね。海獣をまるごと焼くけどちびっこ達も食べるかい?」

「食べる!」

「少し」

「私も」

「食べるのね」

「そうか、そうか。巨人流の豪快な味をご馳走してやる」

 

 ふむ、貝にはこれが良いだろう。田で育てた米で作った酒だ。鎖国国家として名高いワノ国から生まれた酒でかなり手間がかかるが、かけた甲斐があったと思ってる。開いた貝に自家製の魚醤と一緒に一滴ずつ垂らす。

 

「うん、美味いな。これは持ってきて正解だな」

「それアタシにもくれないか?」

「お前にやると一気に減るからな。オレも今回はこれで辞めにするからお前も一回で満足しとけ」

 

 そう言って、人を平気で食い殺しそうな牙のある巨大な貝に魚醤と酒をドバっといれる。大きさと味が良いからオレは気にしないが、焼く時にギャーと叫び声を上げる貝はバーベキューの雰囲気に合わないからな。子どもたちが引いてるぞ。

 

 と言うか見覚えがあるな。資料に載ってたっけか、えっと、海の食材、単品……あった!なになに、珍味『船溶かし』、潮を吹き出す様に溶解液を船に飛ばし、船を沈め、溺れ死んだ人を喰らう。溶解液は必要な時に体内で随時生産するので、調理の際に気を付ける必要はない。食事を繰り返し、際限無く成長、旨味を体内に溜め込む。普通の貝の数十倍濃厚で、とても美味いと語り継がれてる。

 

「ピアス、潜って採ってきてくれ、最低量を区画分けした生簀に保存、餌は家畜だな。一応、他で代用出来ないかは探るか」

「飼うのソレ!?」

「アスカル様、止めたほうが……」

「人を喰う化け物貝が地下に……」

「美味いのね?」

「美味いぞ。酒精は飛んでるし、一口いるか?」

「食べるのね!」

「マジかよ」

「強いな、ポコ」

「私なら嫌ですね」

 

 男の子以上に勇気のあるポコに他の子どもたちは戦慄を覚えている。逆に度胸のあるポコをピアスは気に入ったようだ。さて、みんなティアを見習って野菜も食べなさい。うちの野菜は美味しいから。

 

「甘いし、美味しいから良いけどさ」

「普段から、食べてる」

「折角だから色々と食べたいのね。人食い貝、美味しかったのね」

「身体に良いから食べなさい。真面目な話、肉や魚だけで終わらせるのはダメだからな。それとポコ、外聞が悪いから船溶かしと言おうな」

「「「はい」」なのね」

 

 そこいら辺は徹底しておく、まあ、子どもたちが言ったように他の島の野菜と違ってうちの野菜は甘みが強いので子どもも苦手で意識なく食べている。まあ、他の物の方が多いが、食べているなら大目に見る。ピアスも子どもの手前、もう少し野菜を食え。

 

 さて、仕事の作業や世間話をしていたら結構時間が経ったな。みんな、もうお腹いっぱいだろうし、休憩したら次に行くぞ。トイレは向こうだから全員行っとくといい。

 

「それじゃ、今日はわざわざありがとな」

「こんくらいなら何時でも使ってくれ」

 

 ピアスは帰って寝ると言って潜っていった。言ってくれりゃ、家まで送るんだが、泳ぐ速度を考えればそこまで時間は掛からねぇか。

 

「あの、アスカル様」

「フィンか、どうかしたのか?」

「ここ海に繋がってる、どうなってる?」

 

 フィンは口数が少ないから質問の意味を読み取る必要があるが、意外と何を聞きたいのかは視線と表情で分かる。

 

「一番下の方にピアス用の出入り口があるが、きちんと金網の扉もあって安全になってる。危険な場所や養殖の場所とも違うスペースなら泳いだりも出来るくらいだな」

「安全、ここ仕事ある?」

「ここで働きたいのか?」

 

 そう尋ねるとコクンと頷いた。ここでか、整備関係は上はオレ、水中はピアスでやってるからな。餌やりも能力での作業だな。さて、どうしたものか……そうだ!あれならいけるか。

 

「少し地味で大変だけど、海草や貝類の養殖所を観察して、できる限り細かく状態を報告してほしい。砂浜はオレの能力で出来る。しかし、海中の物は魚なら会話でどうにかなると言ってたが、ピアスだと小さくて養殖所の管理までは上手くいかないからな。やり方とかの決まりもこれから決める感じになるけど、それでも良いか?」

「やる!!」

 

 力強い返事をもらったので少しずつ試していこう。異変が無いように毎日みて欲しいが、それはおいおい人員を増やしてからだな。とりあえずはオレと交代でやっていこう。オレが、付き添いの時には潜って見てもらうのもありかもな。

 

 さて、フィンと話しているうちにみんなも帰ってきたから、次は研究エリアに行くとしよう。地下からの移動なので直で行くことになるので、到着まで一瞬だ。

 

「さて、ここが研究エリアの施設だ。今の時間ならホーニィとモーダスがいるはずだ。っと、もう来たな」

「アスカル様、ようこそレス」

「なんの用レスか」

「見学だな。子供組に仕事を見せてやってくれ」

「「了解レス」」

 

 そう言って施設の中を進んでいく、ここの植物は色々と手を加えているので、あまり外に見せないほうが良い。まあ盗まれたとしても能力無しで、育てられるとは思えないがな。

 

「ここは、作物確保エリアレス」

「僕が能力で気候に合わない作物を作り、すぐに回収と言うのを繰り返して、国内で食べる分と特別な取引の分を確保しているレス」

「補足すると、ここの土は植物の負荷を負担するために特別な配合にしてある。それでも、量は全然取れないし、無理をさせ過ぎてるからか、少量収穫したら枯れる」

「割に合わないんだな」

「モーダス達、仕事出来ない」

「そっか、他の事が出来ないんですね」

「最低限なのね」

 

 そういう事だ。ホーニィとモーダスの仕事は色々とある。任せきりで申し訳なく思っているが、能力ありきの作業なので手伝う事は出来ない。

 

「次はここレス。品種改良エリアレス」

「植物を少しいじって作り変えるレス」

「ホーニィはより綺麗な花やより美味しい蜜の花、より薬効の強い花などを、モーダスは味の濃い野菜、味の違う野菜、食感の違う野菜、薬効の強い薬草などだな」

「美味しい方が良いもんな」

「今より、美味しく?」

「綺麗な花が楽しみですね」

「美味しい蜜なのね」

 

 そうそう、美味しい方がより認めてくれる人が増える。オレはあまり気にしてないが美味くなると高く売れる様になる。綺麗な花や薬効の強い植物もだ。

 

「次は新種開発エリアレス」

「組み合わせたり、思い切り組み換える事で、全然違う植物を作るレス」

「とは言っても目標はある。例えばオレンジとリンゴでオレンジ味のリンゴとか、リンゴとさくらんぼでリンゴサイズのさくらんぼとかな。作りたい姿を考えてから作っていくんだ。場合によっては1から作るときもある。大変な場所だな」

「アタシ達はアスカル様ほどの発想力はないレスから、今は言われたものしか作れてないレス」

「ボク達だけで驚かす様な物が作れたら良いのレスが、難しいレス」

「アスカル様、ここで働くことは出来ますか?」

「機密情報も多いからなぁ。正直、一番難しいな。作業的にも要望的にもな。どうしてもって言うなら植物の勉強をして、テストに合格して、作りたい植物の案をオレに見せてくれ、それでオレの納得のいく物なら許可する」

「やらせて下さい」

「他の仕事もやった上で、自由時間を削ってやる事になるぞ」

「構いません」

 

 決心は固いようなので、とりあえず一週間後までに勉強の道具を渡すと伝えた。こういった実験よ様な物が好きなのは男子とポコ達の方だと思ってたので意外だった。

 

「頑張るレスよ」

「合格したら一緒に働くレス」

「直ぐにとはいかないけど、絶対受かるから待ってて」

 

 しかし、見学を行って正解だったな。人間誰でもやりたい事を待たずにやるのが一番だ。まあ、限度を考えないとオレみたいに失敗するけどな。今はだいぶ賑やかになって毎日を楽しく感じている。

 

「どうせだ。加工・貯蔵エリアと取引所の方まで見に行くか?」

「良いのか!」

「取引所、お客さん、居る」

「普段は行ってはダメと」

「ルール違反なのね」

 

 ルール決めてるオレが許可を出してるから良いんだよ。今日だけの特別だから、普段は行くんじゃないぞ。それと、向こうでは騒いだり、走り回っては駄目だからな。

 

「「「「はい」」」なのね」

 

 そういって加工・貯蔵エリアを禁止しているのは、仕事の邪魔になる可能性が高いからだ。ここに貯めた商品を相手に卸すので、ここは土人形が大量に往来している。今はオレが少し、操作しているのでぶつかる心配はない。

 

「ここで食べ物の加工を行ってる。加工する理由は加工しないと食べれない物や加工した方が美味しい物、加工する事で別の味や食感が楽しめる物、加工する事で長持ちするから、などなど理由は様々だ」

「渋かったり、アクがあったり、毒がある奴だな」

「加工する、食べれる様になる」

「食感は風味にも影響するってコックさんが言ってた」

「ああ、シャボンディ諸島近くにいた時、やって来た強いコックのお姉さんなのね」

 

 シャボンディ諸島近くで国の内側まで入れるコックの女性……クチーナさん、オレがレヴェリーの間に来てたのだろうか?子どもたちと知り合ってたとは思わなかった。当時は子どもたちもあまりうろついてなかったと思ったんだが、どこで出会ったんだろうか。

 

「そして、こっから先は本当に静かにな」

 

 ここから先は取引相手も出歩いているエリアだ。ここからマニュが居る仕事場の方まで行く予定だが、話しかけられないと良いんだがな。などと不安に思っていたが流石に子どもを引き連れている所に声をかけてくる者は居なかった。仕事場に突然来たことを謝罪しながら、マニュに取引について説明してもらう。

 

「別に構いませんよ。アスカル様からの頼みですからね。さて、取引についてですが、プラントはいくつもの他国の食を牛耳るほどの食料があり、美味しくて安いので、大量に売れています。ですが、うちは少人数で運営されているうえに、国内で大抵の物は賄えます。そのため、こちらが売るばかりで買う事は滅多にありません。今度国庫を見せてあげても良いですが、大量にお金が積み上げられて、使い道に困っているくらいです。生活用品や家具、武器、資材など、あっても困らない物を購入していますが、お金は増えるばかりです。最近は研究用に植物の種や自然エリアに植える木なども買ってますが、収支のバランスは取れてませんね」

「良い事なんじゃ?」

「使わない、貯まる、邪魔?」

「問題ではありますが」

「嬉しい悲鳴って奴なのね?」

「正直な事を言うとお金はいくらあっても困らないというのにも限度があるのではと考え始めました。他国では食料生産に携わる方、特に農家の方の失業も心配ですし、世界のお金の廻りを考えると使い道を考えた方が良いですね」

 

 失業者の増加に関しては、オレがやらかした失敗が下手したら世界規模で再現される可能性があるという事だ。それだけはどうにかして避けないといけないな。今のうちに少しでも良いから対策を考えておこう。

 

「他にもトラブル対応、契約確認、受け渡しなど色々と作業はありますが、基本的には私達が売って、お客さんが買いに来ていると覚えて置けば問題は無いです。たまにアスカル様に直接商品を売り込もうとする方も居ますが、まとも者は少ないです」

「一応安全面を考えて土人形は配備してるけど、何が起こるか分からないから入らないように伝えてるんだ。説明ありがとう。それじゃ、みんな帰ろうか」

「うん、それじゃさよなら」

「マニュ様、ありがと」

「ありがとうございました」

「さよならなのね。説明ありがとうございましたなのね」

 

 これにてプラント探索と銘打った見学ツアーの様な物は終了となった。結果的には色々と子供たちの発見もあり、子どもの視点から島について考える機会にもなったのでオレとしても悪くなかった。さて、周辺環境の調査や島の拡大改造など、溜まってる仕事を片付けよう。

 




桜ってワノ国以外にあるのかな?そんなことを考えて調べたりしてみたんですが、明確な情報はなく、適当に設定を作っても良いかとも思ったんですが、やめときました。

そして、本来はこども組を使う予定も島の紹介をする予定も無かったんですが、事前に書いてた奴が少し時期をずらした方が良さそうな内容になったので、急遽変更して書き上げた。島はアスカルの手によって随時改造されるので、前と内容が違ってても気にしない、アーユーオーケー?

そして、やっぱり登場しないサイフォと元奴隷組こと電伝虫組のリーダー達。このままだと子供組がレギュラーに昇格してしまいそうだ。まあ、しませんけどね。冗談はさておき、サイフォの登場をどうにかしないとな。一応、役割に沿ってキャラは作ってあるので出番はあるけど、普段の存在感が薄くなってしまう。まあ、諜報や隠密などが基本だからある意味正しいのかもしれませんがね。

島の地下空間は何層にもなっていて、光の無い場所で育つ植物を栽培する階層、土の回収の時に拾った物を置いておく階層、食料以外の備蓄品を仕舞っておく階層など様々な階層があり、今回出てきた海草や貝類などの養殖、海の魚用の生け簀などが役割の最下層がとりあえず構想にはあります。最下層の周辺の土は海王類の攻撃を受けても平気なように鉱物がふんだんに混ぜられております。そもそも、グランドラインの島は鉱物が多く含まれてるけどね。

中央エリア、城下町については未だに触れてませんが、とりあえず日常回は終わりかな。次から2章の始まりとしましょう。


出したいキャラが敵味方で色々と思いつているし、行事に向けて作り始めてる話もあったりと、忙しいですが、とりあえずは進めていきましょう。

2章では、何を行っていくのか、お楽しみに。
それでは、いつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第2章
第18プラント 捜索開始!!食と植の追求!?


今回から多少書き方が違う部分があります。
と言うか2章の進め方で悩み中です。
詳しくは後書きで語ります。




 イスト聖に渡された資料は詳細な情報が記載されている物もあれば、噂や伝承レベルでしかない物もある。とりあえずは場所が判明している物を順々に回って行く事にした。最初に到着する予定の場所にあるのは植物であり、鉱石でもあると言う特殊な代物『落花星(らっかせい)』だ。

 

 到着した島自体は結構でかいのだが、見る限りは火山ばかりで地面も完全に石で覆われている。こんな場所に植物や食材があるのかと疑問に思うが、そう言ったものを探す専門家がうちには存在する。

 

「石の下から声が聞こえるレス!!」

「アタシも聞こえるレス。花の声レス!!」

 

 ホーニィとモーダスに言われた場所を探るために石の大地を操作してみると、そこには石の中で育つ植物があった。とは言ってもこれが狙いの物と言う訳では無い。しかし、そこら中に植物が埋まっている様だった。

 

「この子たち凄いレス、火を点けても燃えないレス」

「熱への耐性が物凄いレス」

 

 そこには取り出したばかりの植物に火を近づけている小人の姿が、話を聞いていない人が見れば自然破壊を推奨している様に見える光景だ。石の一部を取り出して、能力も使ってよく観察してみるとどうやら全部冷えて固まった溶岩だった。

 

 どうやらこの植物たちは溶岩の中でも燃えずに育つことが出来る様だ。と言うより溶岩の中に混じっている栄養を吸収して育つようで、溶岩が固まる前に育ち切って、溶岩と共に固まる前に種を空に飛ばすらしい。溶岩の熱で上昇気流が発生しているので種は溶岩が固まるまで宙に浮き続けることが出来るといった仕組みだ。噴出岩に当たっても大丈夫なように植物の高さはマグマより低くなってるようで、樹木なども低木ばかりのようだ。

 

 こいつらの繊維を研究すれば耐火性能の高い服が作れそうだな。防護服とかにすれば危険な場所での探索を安全に行えるだろうし、燃え広がらないという事は火事などを防いだりも出来るかもしれない。普通の場所で育てられるかは分からないが、マグマの操作も出来るので最悪地下空間にマグマを貯めて置ける階層を用意すれば良い。飛ばした種は天井でキャッチだ。

 

 と言う訳で依頼に関係ない物だが植物を回収していく、中には実をつける物や食べれそうな物もあったので、研究にも回そう。それで、肝心の落花星とやらは何処にあるのかと探しているといきなり火山が連動するかのように噴火を開始し始めた。流れてくる溶岩は操作できるが、飛んでくる石までは防げないのでそっちは注意が必要だ。火山灰も積もった物は操作できるが、降ってくる物はどうしようもない。地面と接して無い物には操作が出来ない。

 

 地面の底に熱を逃がし続けているのだが、熱された空気までは対処できず、熱気が凄まじい。このまま探索を続けるのは無理だと判断し、噴火が終わるのを待つことにして撤退してると、噴火している火山から流れ出るマグマや上がっていた煙がピタッと止まった。

 

 と思うと堰き止められたものが溢れようとしているのか、火山がまるで風船のように膨らみ始めた。遂には火山口の方が吹っ飛んで岩石の塊がそこら中に吹き飛んできたので慌ててでかい壁を張って防ぐ。岩石を防ぎきってようやく火山口を塞いでいた物の正体を見ると、岩で出来た落花生だった……あれが『落花星』か。

 

 火山の噴火と共に隕石の様に降ってくる、皮が鉱物を大量に含んだ鉱石になっている落花生……『落花星』。噴火が完全に収まってから火口を見てみると落花星の本体が生えていた。受粉した花を火口からマグマへ直接落としてマグマの中の成分を吸収しながら成長し、噴火と共に飛び出す様だ。マグマの中を探ると火口を塞いでいたのとは別にいくつか小ぶりな物が出来ていた。

 

 こんな山と変わらないサイズにまで育てるのは難しいが、落花星の本体を回収すれば小ぶりな物は作ることが出来そうだ。それと溶岩や火山灰なども土壌や国土の改良に使えるのではないかと回収する。鉱石が大量に含まれた冷えた溶岩を操作してある程度取り込んだ。今回はそれで終わりである。火山を持ってきたところでマグマだまりと繋げなくては唯の岩山である。なら、その時々でマグマを持って来る方が良い、育成に必要なのはマグマであって火山では無い。

 

 とりあえず最初の食材確保が成功したのでこれ以上ここに用は無いので早く離れよう。危険地帯に行くという事で直接の来訪しての取引を停止してるし、ここいら辺は空気が悪いので住民にもよくないからな。

 

 

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 火山では苦労をしたが次は超味粱(ちょうみりょう)と言う植物で生息地にそこまで以上は無いらしい。粱とは上等な穀物を意味する言葉だが読み方からしてそれ自体を食べるものでは無いのだろう。

 

 たどり着いた土地は一面が小麦色と言うか、穀物で覆われていた。しかし、手に取って試しに齧ってみるとものすごくしょっぱかった。これ醤油だな……いや液体じゃないんだが、これすり潰して粉にすれば醤油の粉になるな。今回も探索にとモーダスとホーニィに着いてきて貰っていたがその必要は無さそうだ。

 

 探索して回収すると砂糖、塩、酢、醤油、味噌の身近にある調味料もあれば、他にも胡椒やトウガラシなどの香辛料などの味付けの物もあれば、ソースやケチャップ、マヨネーズなどもあった……一体どうなってるんだろうか。

 

 調べてみるとこの島の土地が特別らしい、正確には土の中にいる細菌とこの超味粱と呼ばれる植物が問題らしい。植物が栄養を吸い貯える際にこの細菌も一緒に吸い込むのだが、そいつらが養分を別の形に作り変えてしまうらしく、それによって味が変化しているそうだ。

 

 本来であればこの細菌を吸ってしまえば植物はダメになってしまうのだが、細菌と共生できるように進化できたのがこの超味粱と言う訳だ。そのため、この土地では他の植物はなく、当然人も動物も住めるわけが無く、細菌と超味粱の天下となっている。

 

 土壌ごと全種類の超味粱を回収するが、この細菌が他の土に広がると問題である。この細菌は空中を飛ばず、土の中でしか生きていけないようなので、プラントに回収する際に岩石で囲い、土壌と岩石の囲みの間に水も入れて隔離して確保した。まあ、広がったとしても土の異常なら気付けるし対処は出来るが、実際に起きた時に一々対処するのは面倒なので最初に処理をしっかりしておこう。

 

 ここの土は細菌だらけなので国土の拡張には使えない…と言うより拡張に使えるように細菌を排除するよりは移動しながら海底の泥を集めた方が早い。これが、土の中にしか生息しない菌だから良かったが、空気中を飛んだり、人に寄生する物だったら危なかった。

 

 医者の確保はなるべく急いだ方が良いだろうな。ドラム王国との話し合いも進んでいるが、こちらが忙しいのと人手がやっぱり足りないので次の段階に進めていないのが辛い。まあ、取引で医療品は多く入手出来ているので、最低限の治療は可能である。

 

 それと、持ち帰ってから調べてみると調味料系統の味が偶然多く生き残ってるだけで、他の食べ物の味などの物や、味として成り立っていない物もある。植物の問題であれば品種改良が出来るが、菌の問題となるとどうしようもないな。ちなみに菌は種にも入り込み次に引き継がれるらしい。

 

 今の物を育てるのと菌が変異した時の事を考えて、一部の菌を土ごと冷凍保存して置いた。もちろん、種の方も保存しておく、こちらはモーダスに頼んでいる。それと、菌に関して悩んでいるのを見ていた小人たちからキノコで溢れた島を探して欲しいと言われた。

 

 キノコに関する土地ならイスト聖のリストの中に『胞子の森』『マッシュルーム王国』『キノコ団地』などが在る様だが、そう言ったのではなく、普通の島だったのに急にキノコだらけになった島とかは無いかという話だった。

 

 そんな話があるのなら海軍の方に話がいっててもおかしくは無いだろうと思い、ガープ中将の電伝虫にかけてみるが、出たのは別の人だった。どうやら本部にはいないようなのでもう1つの番号にかける。すると思いのほか直ぐに出てくれた。

 

「なんじゃ、こんなに直ぐにかけてくるとは思わなかったが、何の用じゃ?……ふむ、急にキノコで溢れた島じゃと、ちょっと待っておれ、いま本部に連絡を入れる……おう、センゴク、グランドラインの島でキノコで溢れ始めた事件ってないか?『お前は仕事を放って何処をうろついているんだ!!』いや、そう怒るなって、うるさい奴だのぉ。分かった、分かった帰ったら仕事をするから情報を寄越せ……んあ?わしでは無いぞ。知りたがってるのはアスカルの奴じゃ、ほらプラント『それを早く言わんかぁ!!』」

 

 別の電伝虫を使って会話をしているのだろうがこっちの電伝虫の受話器をすぐ近くに置いてあるのかガープ中将の声は全部入ってくるし、センゴクさんとやらの怒鳴り声も入ってくる。しばらくして、ようやくこっちの電伝虫にガープ中将が帰って来た。

 

「待たせてすまんの、それで現在公開されてるプラントの航路とはまあまあ離れているが1週間ほど前にあったぞ。この事件自体は数年前からある様で、しばらくは駆除しても駆除しても生えてくるが一定の期間で生えなくなるらしい。とは言っても駆除には時間も金もかかるし、キノコの種類によっては危険も多いから、海軍が駆り出されたり、島を諦めて捨てたりする事が多いらしい。何が行われているのか分からないが人為的な事件と判断し、犯人には懸賞金が掛けられておる。被害が出てる島に加盟国が置かれてる島もあったから高額手配じゃな。お前なら大丈夫だろうが、出向いてキノコ狩りでもするつもりか?」

 

 と訊かれてもオレもあまり事情に詳しい訳では無いので噂で聞いて気になっただけですと適当に返して置いた。すると特に興味が無いのか「ほーん」と呟いた後に「それじゃ、また今度な」と一方的に言って電伝虫が切れた。

 

 そのことを小人組に話すと「絶対にそこレス」と全員で大盛り上がりをしている。どうしてそんな事を気にしていたのか確認を取ると、周囲を巻き込んで自分の趣味を突き通したために故郷を追放された能力者がいるらしい。どういった能力なのかと訊いてみた。

 

「『キンキンの実』菌人間レス」

 

 繰り返しの部分だけ聞くと飲み物とかが冷えてるみたいな名前だな。なんでも菌全体に操作が効き、菌を体から生み出す事が出来るらしい。病原菌とかを操作する事も出来、危険な悪魔の実として有名な代物だが、能力者本人はキノコが大好きで、好き勝手キノコを生やして暮らしているらしい。それで島をいくつか潰しているとなればとんでもない奴だな。新聞に手配書があるかと探してみたらあった。写真も特徴の情報も何もないが『Dead or LIVE 侵食者 320,000,000ベリー』と書かれている。島や国を潰しているため初頭手配で結構金額が高い。支配してるのではなく、キノコでじわじわと土地を奪ってるから侵略では無く浸食なのか。

 

「そいつなら、超味粱の菌も操れるレス」

「ウイルスは防げないレスが病気の心配は減るレス」

「それに、キノコも育てられるようになるレス」

「場所を十分に与えれば満足するはずレス」

「能力者同士で交流はあったので説得は出来るレス」

「賞金首になってるとはレス」

「いつかやると思ってたレス」

「結構やばい犯罪者レス」

「族長には絶対言えないレス」

 

 彼らが強い要望をいう事は少ないし、それもプラントの為になると考えての事なので進路の多少の変更くらい認めようじゃないか。今は中継地点を置いて、直接来る人は居ないし、航路は結構時間に余裕を持って設定しているので、直ぐに向かえば問題ないだろう。

 

 

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 と言う訳でやってきた島だが、全体的にじめっとしており、薄暗い。胞子が島全体を覆っているようで光が遮られているようだ。現在は厳重に土で体を覆い、口と鼻を覆うようにマスクをつけて上陸している。この島、情報だけ見るとカラッと晴れてて空気の気持ちいい秋島だと聞いてたんだけど、普通の気候帯の6月の様にジメジメしている。

 

「水を生み出すキノコがあるレス」

「海水を吸って霧を噴出するレス」

 

 モーダスとホーニィは菌に対抗できる植物や花を身に纏って防御に能力を使っている。そのため、2人ともコロッと丸くなっているのだが、元々小人は妖精みたいで可愛い見た目なのだが、フォルムと纏っている草花のせいでファンシー度合いが上がってる。

 

 それにしてもそのキノコを上手く使えば空気中の湿度を調整できそうだな。真水の獲得に関してはオレやモーダスでも出来るし、オレ達の方は真水を得る際に副産物で塩も取れるから興味は無い。

 

「アイツが色々と見せてくる無駄に知識はあるレス」

「ボク達も草花を教えたレス」

 

 色々なキノコが育っていた。霧シイタケ、ドキドキノコ、ちいさなキノコ、マイタケ、ワライダケ、ヒトヨタケ、マンドラゴラ、おおきなキノコ、キノコプリン、トリュフ、ヒンヤリダケ、飛び跳ね毒キノコ、ヘタレダケ、ゆうめいなキノコ、シメジ、ニトロダケ、アミウダケ、ダイキノコ、クリーム松茸、かおるキノコ、マッシュルーム、アオキノコ、ジューシイタケ、マヒダケ、クシャミダケ、ポキポキキノコ、毒テングダケ、カラダカラキノコガハエルダケ……本当に色々とあるな。

 

「アイツは菌は平気レスが、最低限の住処は菌を払ってたレス」

「だから菌の壁が出来てる所が住処レス」

 

 そこに入ろうとした菌を止めるだけなのでガラスにへばりつくように菌で壁が作られているらしい。それだけ分かりやすい場所があるのなら、土はちゃんとあるのでオレの力で探知が出来るはずだ。菌糸だらけになっているせいか、操作するのに時間が掛かったが、どうにか見つけた。

 

 探し当てた場所に向かうとそこには、菌で造られた壁があった。しかし、菌が寄らないようにしているだけで別に堅い訳でもないのでモーダスとホーニィが成れた手つきで払っていた。そこにあったのは巨大なキノコの家だった。

 

「マッシュルームを改造して家にしてるレス」

「中は春の気候レス」

 

 本来は4階層で構築されてるのを品種改良したらしい。キノコの内部なのでオレは操作できないから急速栽培が出来ないが、これを使えば気候の合わない作物を最低限を確保するのが楽になるのではないか?そんな事を考えながら扉を開いて中に入る。

 

 部屋に入ってみると外のジメジメとは無縁と言った感じで少しぽかぽかと暖かいが過ごしやすい。そして中央にはやはりふかふかっぽいキノコの上に寝ている小人の姿が、キノコのベッドの周辺にもキノコが生えており、フェアリーリングが出来てる。

 

「これ、能力で作った『フェアリーリング』レス」

「許可なく入ると対応するフェアリーリングにワープするレス」

 

 何度も使えると言う訳では無いが侵入者を強制的に飛ばす罠らしい、二人が言うには容赦のない性格をしているらしく、たぶん飛んだ先は毒胞子だらけか、罠の真ん中だそうだ。キノコを取り除けば解除できるらしい、2人が取り除いて入れるかと思ったが、まだらしい。

 

「絶対これだけじゃ無いのレス」

「……あったレス!ベッドの下に隠してフェアリーリングがあるレス」

 

 それを解除してようやく入れるようになった。悪戯では搦手がすきでこういった事を素でやるらしい。というか周りでこれだけドタバタしてて起きないのも凄いな。

 

「さて、今度こそ。起きるレス!!」

「起きるレスよ『モル』!!」

「ふぇ!?な、なんレスか!!えっ、何で2人がいるレスか!?知らない人もいるレス!?どういう事レス!?あー!!フェアリーリングが解除されてるレス!?2人がやったレスね!!それよりなんでここが分かったレス!?いつ来たレス!!何しに来たレスか!!」

 

 今までに見たこと無いタイプの小人だな。何と言うか騒がしいと言うか、自己主張が激しいな。そしてかなりの早口だ。キノコが好きだったり、この島の状況から大人しいと言うか、地味な感じの子を想像していただけに勝手だがギャップを感じている。2人が落ち着かせて、事情を説明してくれている。

 

「そう言う訳で来たレスか、私の事を回収に来たわけでも、追放が解除された訳でもないレスね。まあ、追い出されたのはしょうがないレスし、好き勝手やってるので諦めてるレス。それよりも賞金首になってるのは不味いレスね。話を聞く限り、私だってバレてる訳では無いみたいレスからしばらくは大人しくするレス、私が億越えの賞金首レスか……それとその国に行くのは良いレスよ。言われたキノコも作るレスし、病原菌は排除するレスし、土づくりや食品の加工もやってやるレス、時間はかかるレスが菌を創るのもやるレス、だけど好き勝手しても良い場所を用意してほしいレス、そして海軍から守って欲しいレス、お願いするレス」

 

 確約は出来ないし、悪気は無かったでどうにかなるレベルの話では無いな。とは言え、能力自体は非常に嬉しい物である。それに、小人たちも一応気にしていたようで、追放されなければ賞金首ならなかったんじゃないかと、話し合ってるのを聞いてしまったので放置はしにくい。

 

 と言う訳でプラントに強力な能力者が仲間入りした。これでオレを含めて4人の能力者がいる事になる。うちの国って強さ的にも強化されていってるな。そして、これにより解決しそうな探索食材があるし、キノコや発酵食品も特別な物が作れる。プラントの強みが広がるのは良い事だ。

 

 とりあえずは要望に応えるために土地を用意する必要がある。今の国土から切り取って与えても良いが、一つ思いついている案があるのでもう一度ガープ中将に連絡を入れる。

 

「またか、それで今度はなんじゃ、ん…そうだ。これまでに被害が出た島が30近くある。8個は元々無人島だが、残り22個は人口に差はあれど有人島じゃった。そのうち捨てられた島は10個あるがどうしたんだ?なるほど、2個は世界政府加盟国が置かれていたから政府の方に話を通してくれとのことだ。8個の島に関しては先ほど提示された金額で譲るとのことだ」

 

 そう、土地を分けなくても既にキノコに覆われている島を集めて与えてしまえばいいじゃないか、ログポースが機能するようにある程度島の土台は残しておくが上の部分はすっぽりもらい受けて行くのだ。政府の方に連絡を取ったら、浸食された国の国王と繋げてもらうことが出来、国土を売り渡す契約をしっかり結ぶことが出来た。

 

 と言う訳で18個の島の上部分を集めて巨大なキノコの土地がプラントに出来た。そっちの土地から菌が出る事は無いが、見た目がやはりおどろおどろしい。しかし、取引する物が増えてからプラントの評判は上がっているようだ。

 

 

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 次に訪れた島は上陸する前にモーダスとホーニィから一度ストップがかかった。オレなら大丈夫だとは思うがこの島自体が植物で島の上に生えてる植物の多くが人食い植物などの危険な植物らしい。 

 

「危険な植物以外にも美味しい物もいっぱいあるレス」

「それと凄い力を持った植物もあるレス」

 

 という事なのである程度の準備をしてから2人を連れて内部に入って行った。こうして入る分には食料だらけで文字通り美味しい島なのだが、島の中心から背を向けて外に出ようとすると島の姿は変貌する。周囲の安全な植物に紛れ込んでいた食肉植物が襲い掛かってくる。

 

「止まるレス」 

「そっちもレス」

 

 この2人がいいる以上は植物がこちらに手出しをする事は出来ない。安心して歩き回ることができ、島中の食べ物を食べ歩いて確認し、ポップグリーンと言う特殊な力を持つ植物も回収出来た。しかし、島全体が1個の植物とは本当に規模のでかい話だ。

 

 最高に上手いとかめちゃくちゃ高級品みたいな感じでは無いが、食いでがある食材で溢れた暴飲暴食の島。豊富な食物に引き寄せられた動物を喰らう食肉植物『ストマックバロン』と言う花が並んでいるここは、ボーイン列島と呼ばれているそうだ。

 

 オレ達はこの島を1つ持って行く事にした。食肉植物ではあるが、3人の能力を合わせれば問題なく生育できそうだという事が調査で分かった。ストマックバロンやストマックバロンに生えている植物の説得には時間が掛かったが、たまに肉や代用品でも良いから土の栄養以外も与える事で納得してもらった。

 

 もちろん、持ち帰るだけでも十分な食材の確保に成るが、島1つでは限界がある。とは言え、列島全部を連れていく訳にはいかないので、いっその事と思ってストマックバロン本人?に聞いてみた所、種を作ってくれた。植えればストマックバロンに成長するらしい。栄養さえあれば急速成長も出来るので、いくつものストマックバロンから大量の食料やポップグリーンを回収できるようになった。

 

 それは良いのだが、菌の森やストマックバロンの花畑のせいで、やはりプラントの一角が不気味な仕上がりになってしまっている。とは言え、その2か所の恩恵は大きいので景観は諦める事にした。

 

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 凪の帯(カームベルト)は海楼石を混ぜ込んだ土船のおかげで安全に抜ける事が出来たが、プラントと比べて遥かに小さいこの大地じゃ、移動速度に結構な差が出てしまった。それもそのはず、そのままのサイズで象と蟻が競争したら象の方が早いに決まってるのだから。

 

 多少は土を回収しながら来ているから動きは早くなっているが、普段と比べると遅いのはしょうがない。ちなみに、もうカームベルトを通る事は無く、オレはこのままウエストブルー側の拠点担当になるから、拠点を大きくするために土は回収し続ける予定だ。今は拠点は作るだけ作って放置されてる状態だ。

 

 ウエストブルーに来るにあたってはグランドライン前半から行こうと思うとレッドラインを超える必要があったのだが、分身であるオレの力だけじゃ操作に時間が掛かりすぎるので、イスト聖のコネを利用してマリージョアを通って新世界へと入った。

 

 直接ウエストブルーの方に降りれば、わざわざカームベルトを通る必要は無かったんじゃないかと思うかもしれないが、新世界側に拠点を置くためにそこまでは分身3人で行動していたのだ。そして、新世界側の拠点と繋がりを作りながらオレはウエストブルーへ、もう一人の分身は北の海(ノースブルー)へと向かった。向こうは確か珀鉛(はくえん)と言う白い鉛製の食器と甘味料の確保では無く、調()()だ。一緒に行動はしてないが東の海(イースト)南の海(サウスブルー)に向かった分身も居る。

 

 ()()はまだグランドライン前半の海をうろうろしているようだ。向こうは向こうで順調なようでいくつか食材の確保に成功しているようだ。こちらも目的の物以外にも役に立ちそうな物は確保していけたら良いのだが、そう成果が転がって居るわけもないので、適当にやっていく。

 

 それにしても、PLANT計画始動からだいぶ分身も増えて情報や物の行き来が増えてきている。流石にまだ4つの海では取引用の準備は出来てないが、それぞれの拠点が成長して行ったら拡大して行く事も出来るだろう。

 

 本体の技量と後は分身を生み出すのに必要な『産土(うぶすな)』の確保に時間が掛かるのだけが問題だな。拠点とトンネルに関しては特に問題は無い、分身の作成と維持に必要な物が多いのが難点だ。産土はプラントでしか生成されないし、新しく産土となるにはそれなりに時間が掛かるからな。

 

 っと、ようやく島が見えてきた。グランドラインと違ってログポースなどが無いから海図とにらめっこする必要があったが、どうやらあの島が『オハラ』で間違いが無いようだ。あの巨大な樹が全知の樹で間違いないだろう。島に上陸して、確認してみたがオハラで合っていた。持ってきていた大地は港のない海岸に接岸して固定した。

 

「それにしても遠くから島を見てるときにも思ったが、近くで見るとそのデカさが際立つな」

 

 下手な山よりも巨大な樹、この樹が生まれたのはざっと5000年前だと言われている。世界中から運び込まれる文献により、世界最大最古の知識を誇る図書館であり、世界中から集まる学者の考古学研究所でもあるとか。ん、後ろに小さな気配が、子どものようだが入り口の近くに居て邪魔になってしまっていたようだ。

 

「悪いねお嬢ちゃん。邪魔だったか?」

「ッ!いえ、大丈夫です……図書館は誰でも来て良い場所だから」

「そうか、オレは今日この島に来たばかりでな。この図書館に用があって来たんだ。お嬢ちゃんはこの図書館によく来るのか?」

 

 小さい少女はオレの質問に怯える様子を見せながらもコクンと頷いた。図書館の中には外部の物に見せないと言ったルールの場所もある。世界一と名高いこの図書館がそう言った知識の隠蔽をするとは思えないが、一応図書館の責任者、館長と話をしようと思っていたのだ。

 

「なら、よかったら館長さんに紹介してくれないか?しばらくこの図書館の世話になるつもりで此処に来たから、話をしときたいんだ」

「博士に?……私で良いなら」

「ありがとう、オレはアスカル。プラント・アスカルだ。よろしく」

「私はニコ・ロビン、よろしく」

 

 オレはまだ7歳にしてはとても利発な少女であるロビンに連れられて全知の樹に入った。ロビンはここの考古学者たちととても仲が良いようで、彼等とは気軽に会話が出来ている。オレについて聞かれると「博士のお客さん、私が案内してるの!」と得意げに答えていた。そしてロビンが博士と呼ぶ人物、ここの館長を呼んできてくれた。

 

「客人を待たせてすまんな。わしがここの館長のクローバーじゃ。ロビンが案内をしたと言ってるが失礼はなかったかの」

「博士!!」

「いえ、失礼なんて、ここには今日来たばかりですので彼女がいて助かりましたよ」

「なら良いのじゃが、客人はわしに用があると聞いたが、何用でこの全知の樹に?」

 

 クローバー博士の質問に答える前にこちらもある程度自己紹介はした方が良いだろう。どうせ、目的を話した後で何故とは一度聞かれるだろうし、先に話した方が面倒では無いからな。

 

「用件の前にまずはこちらも自己紹介を、オレは世界政府加盟国『プラント』の国王をやらせて貰ってる。プラント・アスカルと言うんだが、少しばかり国の事業を進めていくうえで調べたい情報が多くて、この全知の樹にしばらく厄介になりたい」

「こ、国王!?一国の国王がわざわざ自分でこの地まで来たのか!?いや、来たのですかな?」

「口調は崩して大丈夫ですよ。オレは元々農民の成り上がりですから、国が出来たのも去年の事です。それと、直接と言う訳でもないですしね。調べ終わるまで長期間ここに滞在しますので、ここは研究所も兼ねてますので先に話を通しておこうと思った次第です。それとこちらは手土産です」

「わざわざご丁寧に、それと話については了解した。元々ここの知は自由な物として扱われておる。好きなだけここを利用してくれ」

 

 お土産としてプラントから拠点を作っていた際に取り寄せた食料品を渡す、ロビンにも案内のお礼にと砂糖漬けにした野菜や果物をプレゼントした。最初は困惑していたが理解が追いつくとありがとうと言って喜んでいた。

 

「なあ、あんたが調べに来たのは何なんだ?」

「物によっては探すのを手伝えるぜ」

「ウチの国は農業と食が売りでな。今は色々な場所の植物や食にまつわる話を調べてる所だ」

「それなら、これとかはどうだ?伝説や伝承の食材とかがまとめられてる」

「植物だと図鑑か?しかし、普通の植物ではなく珍しい奴だろ」

「あ、ほら、あれならどうだ。奇抜な植物を集めた色物な図鑑」

「どちらも参考に成りそうだ。助かるよ、後は気候なんかについても調べたいんだが」

「それならアイツが詳しいぞ」

「おっ、気候かい?それなら4つの海での差がまとめられた論文とグランドライン前半と後半でそれぞれいくつか文献があるよ」

「先にこっちを読み終わったら見させてもらうよ」

 

 何日も出入りしていくと話しかけられることも増え、お互いに交流を深めていった。彼らもここでずっと学んできたのだから、オレよりここの本については詳しい。彼らの助言はとても助かっている。

 

「食文化とかを知ろうと思うと気候や習慣、生態、島の歴史とかも関わってくるからなぁ」

「おっ、この機会に考古学の世界に入ってみたらどうだ?」

「国王考古学者の誕生か?」

「専門家に追いつける気はしないな。国や能力の為に帝王学や地質学とかを学ぶので手がいっぱいだからな」

「そりゃそうか、毎日新聞に載る、有名国家の国王様は忙しいか」

「ん、今、能力つったか?」

「ああ、オレはツチツチの実を喰った大地人間だからな。因みにロギアじゃなくてパラミシアだ。大地に関わる物は操作できるんだが、如何せん土以外への知識が足りなくてな。それも今回で克服していきたいところだ」

 

 来る日も来る日も調べているが、なかなかに終わりが見えない。深く知ろうと思うとどれもその土地の過去などが関わってくるので、考古学者であるここの者達から話を聞くのがかなり重要になってくる。ふと会話の中で能力という言葉を出したら食いつかれた。そう言えば明言していなかったっけか。

 

「アスカルさんも能力者なの!?」

「おっ、ロビンか。『も』って事はロビンも悪魔の実を食べたのか?アレは不味いからな。口に入れた時は驚いたろ?どんな能力か聞いても良いか?」

「……うん」

 

 そう言うと、ロビンの手と寸分違わず同じ手がいくつも生えてきた。これは悪魔の実図鑑で見たことがある能力だ。ホーニィと同名の実『ハナハナ』の実、身体の一部を花の様に何処にでも咲かせることが出来ると言う強力な能力だ。

 

「ハナハナの実か、良い能力だな」

「知ってるの?」

「ああ、悪魔の実図鑑で見たことがある。それと図鑑には載ってないが同名だけど別の能力の悪魔の実なんてものもあったりする」

「良い能力って……この能力怖くないの?」

 

 そう言った言葉が口から自然に出てくるという事は、普段から怖がられているという事だろう。この島は治安が良いせいで、本当に怖い物を知らないのだろう。悪魔の実も4つの海ではなかなか見かける事は無いから、知らないから、自分と違うからと拒絶するんだろう。全知の樹があるオハラであるのに無知ゆえの過ちがあるとはな。

 

「うちの国にはオレも含めて4人も能力者いるからな。能力者なんてグランドラインならそこら中に居る。そこまで珍しいとは思わないし、ロビンみたいな優しい子が持ち主なら怖くないに決まってるだろ?」

「そう……ありがと」

「はは、まあ本当に良い能力だよな。使いこなせれば色々な作業が早く出来る。うちは人手不足だからロビンさえよければウチの国に来て欲しいくらいだ」

「ふふ、私は皆やお母さんと同じ考古学者に成るからいけないよ」

 

 最近はオレにも見せてくれるようになった笑顔が顔に戻ってきた。子供は元気な方が良い、うちの国の奴らは今日も元気に働くか、走り回るかして過ごしている事だろう。さて、オレの調べ物はどれだけかかるか本当に分からなくなってきたからな。新しく分身を送ってもらうことも視野に入れつつ仕事をこなしていこう。世界中から集まる書物の事を少し舐めていたな。

 

「ねぇ、アスカルさんの国の事教えて」

「ん、ああ、調べ物しながらで良いなら。そうだなまずはオレの国に居る人たちについてかな、マニュはオレの奥さんで、ホーニィ、モーダス、モルは小人の能力者だ。ピアスは魚巨人って言う珍しい種族でな。サイフォは……」

 

 調べ物の効率は少し下がるが、たまになら良いだろうとロビンと話をしていく、そろそろ拠点とオハラを繋げることも出来るので、そうしたら人員の増加の願いと調べ終わった情報を送るとしよう。ジャンルは絞られているので何年もかからないことを祈るばかりだ。




とまあ、こんな感じで始まりました第2章。いやぁ、私的にはプラント単体での話はパッパと進めて、早めに原作との関わりがある部分へ入りたいとも思っているので、こんな感じでポンポンと新しい展開へと進んでも良いんですが、今までと少し書き方が違うのが皆さん的にはどうなんでしょうか?


とある方との感想のやり取りで

『航海などの合間合間のシーンはあまり入れず、島の探索、食材の捜索、拠点の作成、四季が揃った気候域の捜索、、新しい技術の獲得、オリキャラの加入、などを1話ずつで出来る限り纏めて書いて行く予定』

と答えたのですが、1つだと短すぎて、とは言っても無理に内容を水増しするのも難しいと感じ、途中の移動をカットして、場面場面を繋げて1つの話にして投稿してます。そのため、前後の繋がりが曖昧だったり、場面が跳ぶ事もあります。どうしていくのが良いか模索しながらやってる所でもあります。


また、同じ方とのやり取りで原作キャラとの関わりについても尋ねられていたのですが

『まあ、ちょこっとだけ我慢して頂けると1年後ぐらいから原作キャラも出始めます。まあ、もう少しの間はオリキャラやオリジナルの島や敵が出てきますが、そう待たせないと思います。』

『この原作に関わらない期間、約1年間の間にプラントを大きく成長させます。そして、ここから先でようやく、原作キャラなどに関わり始める予定としています。』

などと答えていたにも関わらず、思いっきり主張を変えて「ロビン」を登場させた事をとりあえず謝罪します。大変申し訳ありませんでした。

と言いますのも、基本的に麦わらの一味の原作の流れを大きく変えずに関わる方法が思いつかなかったので、関わる気が無いと答えていたんです。ですが、オハラと関係はどうにかして手に入れておきたかったんです。必死に悩んだ結果、これなら大きく変えずに関われるんじゃね?と言う案が思いついたんです。感想に答えてるときはまだ思いついてなかったんです。そこだけは信じてください。

オハラの分身の話は1年後のバスターコールの時まではもう出てきません。情報収集役として話題には出てくるかもしれませんが、オハラの話はいったんこれでおしまいです。

と言う訳で、アスカルの分身が東西南北4つの海へ旅だち、1人はオハラへ、1人はフレバンスへ、東と南は行きたい場所はあまり考えてなかったけど、あり得そうなのはガープに誘われてフーシャ村ですが、まだルフィが生まれてないのでまだ先の事です。南の海は植物という事でチョッパーが飛ばされたトリノ王国にでも行くのはありかもなと考えてます。

分身の1人がフレバンスに向かいはしますが、事件が起こるのは7年後なので、救済は無いです。フレバンスの王族、医者、政府などには話を聞くなどを行う予定です。それと、滅亡は免れないが情報をしっかりと知る者が居るので、ローの扱いは多少変わるかも。

グランドラインと言うか、ワンピースの世界全体的に結構何でもありだし、ボーイン列島の事もあるし、トリコとコラボもしてたし、こんな島とか特徴の場所あっても良いんじゃねと結構思い付きで書いてます。と言うか、食材関連の物は結構トリコに引っ張られてる所はある。

なんか、こういった食材どう?こういった植物及び菌類はどう?みたいな話題でしたら結構好きに感想で言ってくれて構いません。採用するかはその時々ですが、単純にプラントに足りてない物とかを教えてくれるのもありがたいですね。

と言うかキノコの名前が羅列してる所には普通にトリコの食材混ぜたしね。実在のキノコの他に、ワンピースの物やトリコから持ってきた物、それ以外にもゲームとかからも一部持ってきてますが、皆さんはいくつ知ってますかね。ネタとして入れただけですので、特別それらで何かするつもりはあんまりない。

それと、オリキャラばかりで申し訳ありませんが、新しく能力者『モル』の登場です。初めは、また別の方と感想のやり取りで「ネブランディアの植物やきのこどう?」と言う話題から、少しメッセージでもやり取りをさせて頂き、「きのこは草花の管轄外、つるに関してはオーケー」と言う会話の後に、「きのこと言えばノコノコの実とかあったな」と言う話から類似品や上位互換として「カビカビとかどう?」と言われ、菌を操れる能力者は欲しいと思い、採用しました。語感はカビカビの方が良いのですが、カビなのに菌全体を操るのはどうなのかと思い、名称は「キンキンの実」に変えさせて頂きました。名前の方はカビの「モルド」から取りました。

賞金首ですが、顔が割れてないので否定し続ければセーフ、嘘は下手なので菌の溢れる森に基本引きこもってもらいます。賞金の額は少し適当ですが、司法の島を落としたルフィが3億です。他にも政府に喧嘩を売ったとか、CP9を倒し、バスターコールから逃げたと言うのもありますが、政府関係の島一つを潰したルフィが3億なら、22の有人島を潰し、そのうち2つは加盟国が置かれていたのだから、それより高くてもおかしくは無いと言う判断です。

名前と言えば前回の番外編に登場した子供たちについてですが、名前の由来は特にありません。ポコは最近遊んだゲームのキャラから少し変えてですが、他の3人に至っては自動で名前の案を出してくれるアプリを使いました。

これから先も似たような展開が続くのでとりあえず①と表記して、次も同じタイトルでも良いんじゃないかと考えてます。別の話題が主の時はきちんと変えるので、これ位の横着は許してください。

これで、大体の事は話せたかな?自分の事も、把握漏れがあり、凡ミスが多いので、あまり信用出来ないんですよね。

まあ、今日はこの辺でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第19プラント 捜索続行!!食の大地と海

投稿です。

前回までに入手した物。
『船溶かし』『落花星』『超味粱』『ストマックバロン』


 これまでに手に入れた食関連の物は『船溶かし』『落花星』『超味粱』『ストマックバロン』の4つだ。4つだけでも結構な成果に思えるが、膨大なリストの事を思うとまだ報告するのは早い気がするので、まだまだ収集活動は終わらない。

 

 国土ごと航海している理由の四季の揃った海域も未だに見つからないでいる。特殊性の高い新世界で探すべきか、情報の多い楽園を探すかは結構悩ましい。新世界だと島自体に何かが起こる事もあると聞くし、安定した海域が存在するのかも怪しいので、可能性的にはやはり楽園側かなと思ってる。

 

 っと、そんなことを考えている内に目的地に着いたようだ。最近は更に国土も広がり、移動が速くなってきた。それと中継地点を置いたのも能力の成長に良かったかもしれない。拠点を作ると制御が難しくなるが、要はその状態って能力を最大限に使ってるわけだから修行にはなってる。

 

 拠点は増えてはいるが、ポンポンとでたらめに拠点を作ってる訳では無い。今は負担(拠点の数)以上に成長して逆に余裕が出来ている状態なんだろう。という事は仮に本気で戦う場合とかは負担を外す必要があるから、拠点を全部解除する必要があるのか?…まあ、そんな敵はそうそう現れないだろうから考えるだけ無駄か。

 

 さあて、取り合えず上陸してみたが、この島の情報はあらかた載っていたので心配は無い。弱り切って居ない限りはここ『石食島(せきしょくとう)』は安全な場所だ。

 

 にしても石だらけで歩きにくいったらありゃしない。ここは危険は少ないが住むのには向いていない。と言うか定住してる人の居ない無人島である。石だらけではあるが野生動物は普通に生活できている。だが草食動物は総じて背が高く、歯が丈夫な傾向がある。それもそのはずでこの島の植物は多少石化しているのだから。

 

 この島は周期的に成分豊富な霧が噴出される。その霧が触れた部分は段々と石化する。とは言っても動物が動けば簡単に壊れるほどの硬さで、植物もある程度成長していれば砕くことが出来る。しかし、まだ弱い種は石化すれば育つことが出来なくなる。

 

 そのため、この地の植物は種を地面に落とすタイミングをずらしている。この島に発生する霧は一気に吹き上げて、層になって空高くから地面に降ってくる。霧が噴き出したタイミングでまずは少量の種を落とし、次に石化した種を先に落とした物に被せて霧から守るのだ。

 

 発芽してからある程度育つまでの栄養が種には詰まっており、その後は周りの石に根を張り、石を突き破って石化した動植物の栄養で成長していき、霧に負けない強さを手に入れれば、むしろ霧から栄養を吸収して成長する。もちろん、植物らしく光合成も行う。

 

 そして石化した動植物にも特殊な性質があり、オレはそこいら辺に落ちている石から色の濃い物を選んで口に放り込んだ。がりごりと噛んで味わうと、思ってたよりもずっと味が濃くて美味しかった。そう、この島の石は食えるのだ。

 

 そのため、草食動物は石ごと植物を食べるために丈夫な歯に成ったり、石化していない部分を食べるために背を高く進化していった。上から下に石化するなら全体的に石化してると思うだろうが、光合成をするために新しく葉が作られるので、上の方に新しく葉が出来る。むしろ根元の方はこれ以上大きくならないって所まで行くと表面の石が段々厚くなって守られているのだ。

 

 草食動物の中には大量に食べてから、霧の噴出口付近に言って少し強めに石化して眠ると言う種も居る。肉食動物から身を守るための知恵だが、加減を間違えて石を剥がせずにそのまま死んでしまう可哀そうな個体も居る。死ぬ前に運よく仲間に見つけて貰えると助かる事がある。

 

 そう、先ほどから動植物と言ってる様に、わざと石化する動物が居る様に、石化するのは動物も同じである。元気なら動いて石を剝がせるが、病気や怪我で弱ったり、寿命で動けなくなると、徐々に石化して最終的には死んでしまう。さきほどの草食動物の例がある様に石化しても呼吸は出来るらしい。弱って石化した動物の主な死因は餓死である。

 

 生まれたばかりの子供は石化した際に親の力で石を剥がしてもらおうと思うと結構なダメージになり、逆に死んでしまうので石化しないように親の身体の下に隠れて霧を耐える。それでも石化してしまった場合は水につけて、浸食作用で削ろうと試みるが、石化の範囲が広いと削り切る前に衰弱死する。

 

 石化した動植物は周りの石の成分によって変質し、中で発酵熟成され、その後で内部まで石化が進む。生きてる間は石化しないので、餓死するまでの時間が掛かる。そのため、石化してすぐだと中身が残ってると言うか、そこいら辺の霧が固まっただけの石と同じでそこまで美味しくは無い。オレが先ほど色の濃い石を選んで口に入れたのもそれが理由だ。

 

 植物と動物では味が違うようで、色の違いで見分けられると情報があるので、様々な色の石を収集する。動物も草食か肉食、植物も実や種だけでなく、折れた枝や落ち葉が石化した物もある。珍しいのが嵐で打ち上げられた魚などが石化した物である。

 

 石の養分が吸われてる可能性が高いので、低めの植物の周りは採取ポイントに向かない。大きな木の周囲か逆に植物の無い場所が狙い目。動物に関してはその動物のテリトリー、住処などが探すべき場所である。川の中には削られて砂状になった物もあり、それも味わいが違う。川底の物と海の近くの物だとこれもまた違うみたいだ。

 

 この石化はここに島がある事で成り立っているので島ごと持って行っても意味が無い。ツチツチの力で真似できないかと試みたが、食べれる石化などと言う都合の良い物は流石に無理だった。ただ、霧を浴びせて石化させる技は完成した。

 

 新しい技として『石霧(セキム)』と名付けた。とは言ってもこの島の霧ほどでは無いが、固まるのに数秒は掛かるし、硬いとは到底言えないので子供や小動物以外には効きそうにない。脅しや広く散布することで行動阻害に使えるかな程度だ。

 

 と話がずれたが、この石は入手しておく必要があるので、ここに中継地点を設置することにした。持ち主は居ない様なので、石食島を含めて国の領土扱いになる。拠点を通じて食材を運び込んで石化させることで色々な石を創っていく実験を行おう。やるつもりは無いが衰弱した人間がこの島の霧に触れたらやはり石に成るのだろうか?考えていると恐ろしく思えてきたのでその思考は封印した。さて、次の島を目指そう。

 

 

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 石食島の石の様にその場でしか作れない物だとそこに中継地点を作るか、近くの中継地点からトンネルで繋げる必要があるので面倒だという事が分かった。余分な拠点は無い方が良いので、操作範囲が広がったり、拠点が増えてきたら、拠点の位置関係や数を整理する必要が出てくるな。

 

 正直な事を言うと面倒でしかないが、やっておかないと万が一の時が怖いので自分の能力くらいは万全な状態にしておこう。何が面倒かっていうと、その拠点を置いてる場所に街や国がある場合何だよな。中継地点がある場所は人の出入りが増えて、経済に影響があるらしいから、いきなり移転とかを言われても納得してくれないだろう。

 

 なので人が住んでる島に中継地点を置く場合は他の中継地点との位置関係をよく考えてから置いている。うちの島に来てくれと言う声はあるのだが、応える訳にはいかないのだ。いくらでも置けるのであればオレだって置いてあげたいが、そうもいかないのを分かって欲しい。

 

 さて、次にやってきたのも特殊な島なのだが、この島の情報はそこまでない。何が採れるのかと言う、食材の情報はあるのだが、島については情報が全然ないのだ。という事で調査にと、ホーニィ、モーダスに加えてモルにも来てもらった。小人は基本的に優秀だからね。

 

「ここでは何が採れるレスか?」

「モルも呼んでるって事は菌が関係してるんレスか?」

「それならあんたらを呼ばないと思うレスが、でも真面目に何で私まで連れ出したレスか?超味粱は見せて貰ったレスが、あれみたいに植物と菌の双方が関連するものなんてそうそうあるとは思えないレスがねぇ」

 

 まず第一に様々な視点から調査したいと言うのがあるんだけど、ここで採れると言われてる食材……と言うより食べ物がどっちも関わっていると言えば関わってそうだからなんだよ。この島と言うかこの『ピクル湿地』で採れると言われてるのは『漬物』だからね。

 

「「「漬物レスか!?」」」

 

そう、ここで採れるのは作物ではなくその加工品なのだ。そして、今歩いている地面と言うか湿地の泥を見るにあるとしたらこの下だろう。この湿地に泥は栄養が豊富すぎるからな。どうしてこんな泥が島一体に湿地として広がってるのか、そこいら辺も含めて調査する必要が……

 

「危ない!!『赭土・盾』」

「ひゃあレス!?」

「何レスか!?」

「でかい()()()レス!!」

 

 でかいとか言うレベルじゃないだろアレは……調査する内容を伝えているといきなり土の底から飛び出てきたソイツは家なんか簡単に一飲みに出来るサイズのミミズだった。あれだけでかければ巨大な畑でも良い働きをしてくれるのではと思ったが、別にミミズ居なくてもうちの畑には関係なかったな。

 

 ミミズの突進を盾を作って防ぎ、次に備えるが特別何かしてくることはなかった。別に敵対して来たとか、こっちを襲って来たつもりは無かったのだろうか?知らない奴が居たから見に来たとか、いつものルートにオレらが居た感じだったのかもしれない。地中には同じサイズのミミズがそれなりに存在していたが、別にこっちに近づいてきてないので、それらの説が濃厚だ。

 

 とりあえず、気を取り直して探索と行こう。もしかしたら同じように飛び出してくる奴は居るかもしれないので一応注意しておくように小人たちに伝える。さて、漬物自体はこの泥の中に在る様なのでオレの能力で取り出す事が出来る。

 

 問題なのはなんでこのような泥があるのか、泥の性質、勝手に漬物になってるか、漬物の元となっている野菜とかはどこにあるのかだ。とりあえずは野菜の生えている場所を探すとしよう。モーダス、ホーニィ、植物はどっちにある?

 

「向こうから声は聞こえてるレス」

 

 言われた方向に全員で向かうと確かにそこには野菜と穀物が大量に育っていた。オレはその野菜や穀物の生えている姿を見てせわしないと感じた。まさか、うちの国の急速栽培レベルで育つ植物があったとは驚いた。

 

 植物は一気に育ち、実を作り、熟して落ちて、枯れる。それを高速で繰り返している。熟した実は落ちて地面の栄養となり、種からまた育つ、それを永遠と繰り返している。穀物、というか米も同じで、というか他の作物よりも米の方が大量で、この島全体が米ぬかもどきになってる原因は間違いなくあれだろう。

 

「栄養が多すぎるレス」 

「だけど腐って無いレス」

「あの稲の真下が栄養が多くて菌も活性化してるレスよ」

 

 確かに、肥料も水も上げ過ぎはよくないはずなのにこの島の植物は問題なく育っている。あの急速栽培は植物の生存戦略で、根が腐る前に必要な養分を一気に吸って、一気に育つとかじゃないかとオレは考えたが、実際の所は不明である。

 

 育っては熟して枯れてを繰り返す植物によって発生した栄養豊富な泥、それだけだとすぐに腐っていきそうだが、環境を整えているのがあの巨大ミミズだろう。あいつが地面を動き回る事で自然とかき混ぜられて、常に泥が最適な状態で維持されているのだ。

 

 そして、熟して落ちてるのに漬け込まれている作物があるのかと疑問に思っていたが、それもしばらく観察していれば見ることが出来た。急速成長の際に耐え切れず、熟す前に落ちた物が段々と地面に沈んでいく、そして地面の下で動き回るミミズによってさらに下へと運ばれ自然に漬物が出来上がるようだ。

 

 この環境は植物と巨大ミミズによって作られているので、この島ごと持って行っても問題ない。なので、プラントの国土に組み込むようにピクル湿地を回収した。地面の底の方にあった野菜を回収して齧ってみると酸味が強めだが、良い味わいだった。

 

 この泥自体が漬物に最適なようなので泥を回収してうちの国の野菜を漬け込んでみる事にした。後は逆にピクル湿地にうちの国の野菜を適当に沈めて放置した。出来上がりにどれくらいかかるのかの実験もかねてだが、上手くいけば大量に美味しい漬物を作る事が出来るだろう。漬物は保存食では一般的な物であるため良い物が出来ればいい商品になるだろう。

 

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 さて、北の海(ノースブルー)での拠点の下地を作り、トンネルを引きながらやってきたのは白い町として有名な国『フレバンス』、この国で採れる珀鉛と言う鉱石から作られる食器と甘味料とやらを調べに来たのだが、目が痛くなりそうな町だな。

 

 きちんと物は買っていくつもりではあるが、珀鉛について調べるために島の地面に能力を発動して探っていく、地面下には確かに見慣れない鉱石があり、感知した感覚ではそれは白いが、これを甘味料にして売り出しているなんて正気だろうか?

 

 それ以前にこんな物を掘り返していれば問題になってもおかしくないと思うのだが、珀鉛を調べたことが無いのだろうか?だとしたら、この国の王は相当な大バカ者である。こんな毒物を掘り起こしているのだから。

 

 商品自体は体に取り込む甘味料を除けば問題は無いだろう。食器も塗料も別に害にはならないだろう。しかし、掘り起こす際に出る粒子が確実に体を蝕んでいくはずだ。……少しばかり、この国について調べる必要がありそうだ。

 

 まず、問題の有無を確認しやすいのは病院だろう。オレは街の中でそれなりに大きい病院に入って、患者を観察したら、思った通りの症状が出ている患者が何人もいた。身体に入り込んだ珀鉛が身体を壊し、表面にまで現れている。

 

「君は誰だい?お見舞いか、それとも君自体が病気かい?」

 

 医者に見つかってしまったようだ。しかし、むしろ話を聞くいいチャンスかもしれないと思い、話しかけてきた医者の方へ向き直って病気について聞いてみる。

 

「あれは珀鉛病と呼ばれている。僕は特徴からしてこの国の珀鉛に関係する一種の中毒だと考えてる。今は無理だが必ず珀鉛を除去する方法があるはずだ」

 

 国は珀鉛や珀鉛病について何も言わないのか?

 

「今の所かかっているのが年よりばかりだからか、それとももっと根深い所で何かがあるのか……国に訴えても何も変わらなかったよ。だから私は私に出来る事をやって行くのさ」

 

 そうか、と呟き邪魔をして悪かったと謝罪をして病院を後にした。大地に存在する鉱石なのでオレの範囲内ではあるが、流石に体内に入り込んでいる物をどうにかする方法に検討は無い。とりあえずは延命になるかも微妙だが、大地から舞う粒子を少しでも抑えておこう。

 

 現在舞っている物も地面を操作して出来る限り集めたが、それでも限界はある。主導しているこの国の王にコンタクトを取ってみるか、まずは把握しているのかどうかだな。こうなっては甘味料はいらないし、食器だけを買っていくつもりだから時間に余裕はある。

 

 電伝虫を通して、世界政府経由でアポイントを取るとプラントの名はここまで届いていた。まあ、レヴェリーの内容は加盟国には送られるから当たり前と言えば当たり前か。

 

「アスカル王、我が国にようこそ!!自慢の白い町の景観はいかがでしたか?もっと事前に連絡していただければ、歓待の用意も出来ましたのに」

 

 いえ、国とは関係ない私用でやってきましたので、むしろ突然邪魔してしまい申し訳ない。今回はこの国の特産品である珀鉛についてお聞きしたいのですが?

 

「珀鉛についてですか?アレはうちの国でしか採れない特殊な鉱石でして、全てお話しすることはかないませんが?」

 

 それで結構です。私が能力者である事はご存じでしょうが、私は大地を司る存在です。その私が見た限り、あの珀鉛には微量ですが毒が含まれているようですが、ご存じでしょうか?

 

「ええ、知っております。ですがアスカル王も言われた通り微量な物、商品を使って害はありません。よければアスカル王もいかがですか?」

 

 しかし、国民は少しずつ毒を貯めこみ中毒を起こしているようですが?そして珀鉛から作られる甘味料、あれは流石に害があると思いますが、同じく食に関わる国としてあれには納得が出来ません。それと世界政府はこのことをご存じで?

 

「ははは、国民の犠牲で我が国は世界でも上位に立てるだけの金と知名度を手に入れた。世界政府もビジネスに関わる事で利益を上げています。これは必要な犠牲ですよ。甘味料についても買うのは何も知らない連中だけです。ご心配はいりませんよ」

 

 ……そうですか、お聞かせいただきありがとうございます。もし、国王様方もご存じなければ危険と思い、出過ぎた真似をしてしまいました。良ければ食器を買って帰ろうと思うのですがよろしいですか?

 

「ええ、あのプラントの国王が買ってくれたとなれば良い宣伝になります。では楽しい商談といたしましょう」

 

 その後、簡易的ではあるが接待を受けながら、食事を共にして国から食器を多めに購入した。国がこれで、政府もたぶん認めているとなると、下手に関わるべきでは無いか。やるせない思いを残し、ノースブルーの拠点へと還り、報告書と食器を本国に送った。

 

 

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 4つの海へ送った分身から様々な情報や物資が送られてきている。まだ、それぞれトンネルを作って、拠点の基礎は作ってるが、中継地点自体は各海に1つしか作れていないので、進捗は遅めだ。今の所はオハラに言ってる分身からの情報が一番成果としては大きい。

 

 異常な環境の多いグランドラインの情報も結構入ってきているため本当にありがたい。今回やってきた海域も詳しい情報が無くて参っていたが、送られた情報の中に詳細があったので手を出すことが出来た。

 

 今、プラントの国土の周りにあるのは海水ではなく溶けた塩と塩の大地である。そして、それらが海水の代わりに動き続けている。ここは『渦塩』と言い、海水が無く塩が渦を巻き続ける灼熱の海域だ。

 

 昔はかなりの高温の海水が渦を巻いていると言うそこそこ危険な海域だったが、地の底で何か異常でもあったのか、高温の発生源がこれまで以上の熱を発するようになったのだ。

 

 高温に耐えられず海水が蒸発して塩が残り、高温の海水が多くの塩を含んで渦を巻く、それをずっと繰り返していたが、遂に塩の発生量が水に溶ける限界量、溶解度を超えた。渦を巻く海水が飽和水溶液と化したのだ。

 

 そのため、段々と渦に塩の塊が発生するようになり、その割合を増やしていった。そして段々と海水よりも塩の方が多くなり、熱で溶けてどろどろとなった塩が渦を巻くようになった。塩は熱を受け止めながら回り続け、周囲の海水を蒸発させて塩の範囲を広げていった。

 

 しかし、渦の中心から離れれば温度は下がっていくため、海水によって塩が冷やされて固まる部分が生まれ、それより先まで塩が広がる事はないが、ある程度固まった塩の大地が渦の一番外側に形成されている。

 

 外周部の塩は海水を蒸発させただけの物で、渦を巻き続ける中央部の塩は高温で完全に変質している。どちらも食材というか調味料としてはそこまで適していない。回収する必要があるのは、その真ん中くらい、さらに言えば海中で固まってる部分だ。

 

 外周部でなくても渦は円錐状になっており、海水に触れてる部分が固まっている。その部分を削って取ると海の成分が浸み込んだ最高の塩が採れるのだ。

 

 だが、この海は塩の部分以外もかなりの温度で触れようものなら火傷は必須だ。海面より上は外周以外は固まっていないので上から攻める事は出来ない。塩を回収しようと思えば、渦の塩が割れて、外側に弾かれるのを待たないといけないのだが、オレにはツチツチの力がある。

 

 土を伸ばして渦の真ん中の塩を剥がして回収していく、大渦であるため結構な量が採れた。次に採りに来るのは塩が形成されて成分が溶け込んでからだから、まあまあ先になるだろう。ここにわざわざ拠点は作らなくて良いだろう。

 

 塩を味わえると言うか塩の味を活かせるような料理という事で、天麩羅(テンプラ)を揚げて塩で食べたり、普通に魚を塩焼きにしたり、少し良い魚を塩釜焼きにして食してみた。味はと訊かれたらまあしょっぱいと言うのが正直な感想なのだが、栄養はしっかり在る様だ。何人かは塩の味の違いを理解していたがオレには分かりそうにないのが少し残念だ。

 

 

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 さて、渦潮の際に魚を結構味わっていたが、どうせなら美味しい魚を食べたいと思い、次に向かう進路を『(ウォ)ーターランド』と言う場所に決めた。その海域で獲れる魚だけではあるが、味が良く、かなり大きい魚の獲れる場所である。

 

 目の前に広がる光景はシャボンディ諸島に類似しているが、けっこう違う。宙に浮く泡の中には水で満たされており、最低でも一回り大きく成長している魚たちが自由に泳ぎ回っている。

 

 ヤルキマン・マングローブに近い塩生植物の()()()()()()()()()()()()によってこの景色は形成されている。呼吸の際にシャボンに近い性質の()()()を生み出すが、その中は魚が自由に動けるくらいの水で満たされており、シャボンよりかなり大きいのも特徴だ。

 

 また、バブルは海中で作られ、生み出される時の周囲の海流をそのまま維持する性質があり、バブルの生成時に周囲が渦巻いて居れば、バブルの中も渦をまく。ジシンマン・マングローブは広く群体で生息し、空中に浮く様々なバブルには多くの魚が住んでいる。

 

 宙に浮くバブルの中で一種の生態系も出来上がっている。バブルはシャボンより割れにくく、変形した形の物やバブル同士でくっついてる物もある。枯れ葉や死んだ魚などが積み重なり中央には大地が出来ており、山や川も出来ている。さらには長い年月をかけて、鹹水魚から淡水魚に変わった種もおり、川がバブル化した物もある。淡水と海水では性質が違うのかバブル同士がくっつくことは無い。

 

 そして、何故魚が巨大化するのかと言うとバブルに含まれる成分が少しずつ内部の水に溶け込んでいき、それらが魚に作用しているそうだ。魚以外は巨大化することは無く、バブルに貝や海獣をいれても大きくはならない。そのため魚と海獣をバブルに入れると1ヶ月くらいでパワーバランスが逆転する。

 

 ちなみにここには拠点を置き、中継地点とする予定だ。まずは、バブルに含まれる成分をプラントの生け簀に利用できないかと言う研究がしたいのと、研究が完成するまで大きな魚を確保するためにこの地は確保して置く。

 

 例えばだけど魚人や人魚をこのバブルに入れたらどうなるんだろうか?魚の様に巨大化するとしたら結構な危険物になるが、まあ、流石にありえないだろう。ピアスに入ってもらうかとも思ったが、万が一にこれ以上でかくなったら居場所がなくなってしまうので止めといた。馬鹿な事を考えていないで次の場所へ向かおう。

 

 

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 その日は海賊側用の港に多くの船が止まっている日だった。海賊同士の争いもプラントにいる間は禁止としているため、問題が起こる事はまずないのだが、その日は別だった。

 

「俺の船の金を盗んだのは誰だ!」

「ウチの船から宝が消えてんだぞ。おかしいだろ」

「誰の仕業だ。落とし前付けてやる!」

「こっちの船もだ。どうなってんだよ!!」

「お前らが奪ったんじゃねえだろうな」

「こっちも困ってんのが見えねえのか?手前の眼は節穴か?」

「盗まれたふりしてる可能性はあるよな」

「そのままその言葉を返してやるよ」

「やんのか」

「やってやろうじゃねえか」

 

 一色触発の空気に流石に無視は出来ず、事情を訊くことになった。すると、全員が船の積み荷を奪われたと証言している。そして、全員が他の船の奴を疑っているのだ。外でやってくれと港から追い出しても良いが取引先の船が襲われた場合が少し問題なので強制調査となった。

 

 それぞれの船を見せてもらったが確かに金目の物が一切無い様だった。隠されてる事も考えて調べた。船自体に仕掛けが無いかとかも能力で調べたが、何も見つからなかった。とりあえずは港で騒ぎを起こされても嫌なので、戦いは無しで、待ってもらう。

 

 その間の飲食などはプラントから提供させてもらった。変にケチる事はせず、接待向けの物を提供したので現状は文句は出てない。とは言え長く留まってくれるとは思えない。だが、抜け駆けして出ていくようなことが無いように海賊たちで相互監視が成されている。

 

 オレは世間に公表されていない人材である小人たちに見つからないようにそれぞれの船の監視について貰った。さらに、モーダス、ホーニィ、モルの3名には能力も使ってもらっている。小人も能力者もそれぞれ交替で見張りをしているので24時間、死角は無いはずだった。

 

 しかし、次の日に倉庫の物資と取引所に置かれている分の金銭が盗まれた。どうやって侵入し、盗んだのか分からないが、プラントに留まっているのが海賊たちだけなので、犯人がこの中にいるのが分かったとも言える。そして手口から考えるに能力者だろう。

 

「この中に犯人がいるのが分かってよかった」

「そうだな。後は見つけて吊るし上げるだけだ」

「侵入方法も隠蔽も分かってねえのが問題だな」

「どうするんだ、国王様よぉ?」

 

 これが物語であるなら証拠を掴んで、推理で追いつめると言った展開が望ましいのだろうが、こっちとしては国の業務は滞るし、国にも被害が出てるから、素早い解決が望ましい。犯人を捜そうと思うのであれば、手っ取り早い方法があるじゃないか。

 

 

『皆さん、海に飛び込んでください。溺れたのが犯人です。元々泳げないと言う人は海楼石を貸し出します』

 

 

 海賊でカナヅチだと言う人は滅多にいないし、生まれつきカナヅチだと主張する人には海楼石に触れても力が抜けないかで判断してもらえばいい。危険が無いように海にはピアスが待機している。この状況で飛び込まない理由があるとすれば能力を隠している犯人だけだ。

 

 説明を聞いて理解したのか次々と飛び込んでいく海賊、泳げないと言う人は居なかったようで海楼石の出番は無かった。そして、最終的に1人だけがその場に残った。煽る気は無く、念のため飛び込まないんですかと声をかけるとこちらに一気に迫って攻撃をしてきた。

 

「あー、上手くいってたのになぁ。余計な事をしてくれたもんだぜ」

 

 飛び込めないという事は能力者なんだろうが、腑に落ちない点があるため強めに警戒しておく、海に飛び込んでくれた海賊の皆さんはピアスが引き揚げ作業を行っている。目の前の男が犯人だと知り、加勢しようと来ているが能力が分からないので止まって貰ってる。話を聞いてくれる海賊ばかりで良かったと思っておこう。さて、貴方は何者で?

 

「海賊だけど、盗みを重視してんだ。まあ、弱い島は襲ってるけどな。それなりに売れてるから顔と船を犠牲してまで入ったのに、ばれちまうんだからやってられないぜ」

 

 そう言いながら男は手元に何かを作り出してそれを投げつけてきた。能力に由来する物なのか見た目より威力はあるが、覇気は纏っていないので簡単に防げる。この板状の攻撃は何なんですか?と訊きながら土師器(はじき)で攻撃する。

 

 覇気を纏った土の銃弾は真っすぐ男に飛んで行ったが男の目の前に展開している板に触れた瞬間に方向を180度変えて反って来た。少し驚きながら操作して攻撃を解除する。

 

「板は板でもこいつは反射板、こいつは攻撃を反射して綺麗に反すんだ。遠距離攻撃は無駄だぜ」

 

 板と言う発言から考えるに悪魔の実の名前は『イタイタの実』と言ったところか?

 

「ああ、俺はイタイタの実を食べたパネル人間、様々なパネルで自在に戦うぜ。さっきのも反射パネルってのが正式名称だぜ」

 

 そう言いながら鋭い板をいくつも投げつけてくる。板自体を攻撃してみたが、反射されることは無く壊すことが出来た。その様子から考えるに反射板だけが特別なんだろうか、それとも条件があるのか……先ほどの発現から考えるに防げるのは飛び道具だけか?そう考えて一気に近づいてアダマスの鎌で()()斬りかかる。

 

「危ねえな。防御用のパネルを重ねたってのに結構割れちまったぜ」

 

 なるほど、攻撃、防御、反射と役割の違うパネルがそれぞれ存在する様だ。だが、近接攻撃を反射することは出来そうにないのが確実となったので次は本気で斬りかかればいいだけだ。そう思って、パネルを避けて向かっているといきなり背後に気配を感じた。だが、心配はいらない。

 

「『立体化(スリーディー)・ウェポンパーティ』」

「悪いがパーティは中止だな。『見斬り(みきり)』」

 

 うちの国のメンバーは全員優秀でね。奇襲とかの対応は得意らしいので頼んだが、いきなり現れた武器や銃弾の数々を全て斬り伏せるとはね。『先読み』の名は伊達じゃないなサイフォ。今は勝ってるけど将来的には見聞色の覇気は敗けそうだな。最高のタイミングで攻撃できたと相手は思っていたのに邪魔されてご立腹の用だ。

 

「ペラァ!!俺様の奇襲を防ぐんじゃねえよ。『スリーディー・バッドエンド』質量の前に潰れろ」

 

 大きな紙から飛び出したのは崩壊し、所々燃えている家屋の塊。破壊されて滅んだ村か。それは確かにバッドエンドと言うにふさわしい光景だ。小さな村が燃えながら丸ごと降ってきてるが、サイフォは問題は無いと言わんばかりに次の攻撃の準備をしている。

 

「『大海槍』」

 

 ピアスの山を吹き飛ばす特大の海の槍でバッドエンドは掻き消えた。そして、敵が唖然としている間にサイフォは相手の懐に入っていた。武器である一本の刀は鞘に納まったままである。

 

「『黄泉斬り(よみきり)』」

「ペラァァァァ!!」

「ボスの命令で峰打ちだってのに大げさだな」

 

 死んだときに能力がどうなるか分からないので殺さないように伝えておいた。そのため、サイフォはもう一つの得意武器である2丁拳銃も使っていない。だが、敵は衝撃をもろに喰らって気絶しているようだ。

 

「船長!?」

 

 あっちが船長だったのか。能力の発動中は見聞色で探れないので厄介だったが、何処かに潜んでいる事は分かっていた。犯行が起こった日に目の前のパネル人間は動いていなかったと小人から報告を受けていたから、どこかにもう一人能力者がいると確信していた。それと、目の前の男の能力で盗んだ物を隠す事が出来そうにないと言うのもある。

 

「ちくしょう、『立体パネル・ドリル』」

 

 さて、部下が仕事を終わらせてんだからオレも目の前の奴を倒すとしよう。敵はパネルを組み合わせて形を作って攻撃して来た。それに合わせるように今度は全力でアダマスの鎌を振るわんと構える。

 

「『ハーベスト・リーパー』」

「ぐほぉぉぉぉぉ!!」

 

 命まで刈り取ってしまわないように気を付けたが、治療しなければ死んでしまうであろう切り傷を負いながら敵はパネル事ぶっ飛んだ。その様子を見ていた被害者海賊たちは「うおぉぉぉ!!」と声を上げていた。

 

 船長とやらの能力は『ペラペラの実』の平面化人間、自身と物体を平面化できると言う能力だった。それを用いて壁や床から倉庫や金庫に侵入し、盗んだ物を平面化して隠し持っていたらしい。平面化した物は平面に依存するらしく、平面が壊れれば平面化は崩れる様だ。

 

 それぞれが自身の持ち物が描かれた紙を破り捨てて盗品を取り戻した。うちの国の金や作物もきちんと回収出来た。他にも色々とため込んでいたらしく、財宝や金があったが海賊たちはそろって迷惑料として受け取ってくれと言われたのでプラントで貰った。海賊たちは口々に礼を言ってプラントを後にした。

 

 そして、問題の海賊は逃げれないように海楼石で拘束してから知り合いの海兵、と言うかガープ中将に連絡を入れた。すると、直ぐに出てくれたので要件と経緯、海賊の特徴を伝えた。

 

『そいつらは能力から考えるにDAEDAL・DEAD海賊団、通称2D海賊団だな。2人だけの小さい海賊だが、それなりに実力がある上に奇襲などを好み、島を襲う悪質な海賊でな。能力を使っての逃走も上手いから中々捕まらなかったのだが、まあお主なら捕まえられるだろうな。人を送るから渡してくれ、それじゃな』

 

 言うだけ言って切りやがった。DAEDAL・DEADねぇ、多彩な死の海賊団と言う意味になるが、殺す気満々の命名だな。後日に引き渡した事で懸賞金も入った。生け捕りの為丸々入ったのでそこそこの金額だ。業務は滞ったが儲けは出てるから良しとしよう。

 

 

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 変に足止めをされたが目的地にたどり着くことが出来た。島の情報はあるので調査の必要は無いが、色々と回収するために降り立つ。地面に足を着けると少しべトッとした感触がするが、ここはそう言う場所である。『デザートデザート』と言い、島全体が甘い砂漠である。そのため砂とかも水も甘いが少しべたべたとしているのだ。

 

 この島は、植物が草食動物に狙われないようにと考えて進化した結果、動物が食べたがらないくらい、動物の歯が悪くなるくらい甘く、柔らかく進化したのだ。普通なら食べにくくしたり、不味い、もしくは毒を持つように進化するが、その島の植物はあえて大量に栄養を貯めこみ、それを甘味に変換してるのだ。

 

 しかし、動物に食べられなくなったのは良いが、脆く進化してしまったので天候の前に敗北し、島はかつての姿を失い砂漠と化した。今では細々と残った植物とオアシスによって環境が保たれてる。水分が少ないため、カサカサとしたお菓子っぽくなってる。

 

 枯れ木の様にも見えるカサカサの木を折って口に入れる。食感や味はウエハースのようだがかなり甘い、珍しい食材ではあるが、いささか甘すぎる気がする。珈琲とかが無ければ少しきついかもしれないくらいだ。

 

 植物によって作られた土地なので、植物の管理さえ出来れば島ごと持って行っても問題ない場所である。品種改良などを行って、少しずつ種類を増やしたりして良ければお菓子を簡単に用意できるようになるかもしれない。とりあえず、最初に行うのはもう少し甘さ控えめに改造しよう。

 

 島の水は濃いめの砂糖水って感じだ。砂はもうほぼ砂糖と言っても過言ではない。動物は居なくなってるが、虫は生き残ってるらしく、生息している虫たちも食べると飴細工の様な味だと情報には載ってる。まあ、虫には抵抗は無いので口にしてみると、他の食材よりましな甘さだった。

 

 とりあえず回収した物を子供たちにプレゼントしてみたが、流石に甘すぎるようで途中でギブアップしていた。島ごと回収はするが当分は使えない土地に成りそうだ。むしろ、普通の虫が集りそうなので対策をしておく必要が出来た。仕事を終えたと言うよりは仕事が増えただけな気がするが、愚痴を言っても状況は変わらないので次の島を目指す事にした。……小人たちに後は任せよう。




今回はあえて植物要素が少なめ、という別の要素が強い物を纏めてみました。タイトルの方もちゃんと新しいのを考えることが出来た。

しかし、意外と食材の設定を考えるのに時間が掛かる。投稿が遅くなり申し訳ないですね。(他に就職の準備で忙しいのも遅くなった理由なので許してください)


前書きにしばらくは入手した物を書いていく予定です。前回までに、とある様にどんどん足していく予定です。

以前感想で土を食べる料理があると聞き、色々調べている内に食べれる石があるとか聞いたので、ならこういったのがあっても良いかなと思って作った『石食島』。

生産面での強みはあるので、いっそのこと加工面で強みを用意しようと漬物特化の島、『ピクル湿地』、ピクルは漬けると言う意味です。

そして、分身が良くノースブルーの旅。
行先はフレバンスでお送りしました。
これも事件が起こるまでは何もない予定。

そして、渦巻く塩と言う、海といって良いのか微妙な海域。特殊な塩って言ううとアニメオリジナルのウォーターセブンを思い出します。

そして、『(ウォ)-ターランド』と言う、レジャー施設と魚を被せたダジャレの様なこれもまた海のエリア。ジシンマン・マングローブはそこそこ考えて作った。

そして戦闘回。オリジナルの敵の登場ですが、覇気が使えるので楽に勝てる。能力の特殊性が強いので、少し手間はかかったくらいですね。

因みに現在覇気が使えてるのはアスカル、サイフォの2人です。将来的にはピアス、モーダス、ホーニィ、モルも使えるようになる予定。

アスカルは武装色と見聞色が使える。覇王色は要練習といった段階。

サイフォは今使えるのは見聞色だけです。武装色は練習中。

ピアスはもうすぐ武装色を覚える。ぎりぎりサイフォより先に覚えられそうな感じ。

モーダス、ホーニィ、モルはまだまだ練習期間。

そして、今までは多少は役に立つ島や食材ばかりでしたが現状では何の役にも立たない島として登場『デザートデザート』です。元々はトリコのサンドガーデンみたいに食べれる砂漠を創る予定だったが、途中でハングリラ島のイメージも混ざって、よく分からない島が出来上がり、その結果がただただ甘いだけの島。命名は砂漠のデザートと食後のデザートです。

次は飲み物系を予定しています。
後はトリノ王国でも書くかな。

とまあ、この辺でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第20プラント 探索続行!!飲み放題の島々!?

投稿です。少し遅れましたね。

これが投稿されてる頃、私は卒業式に参加していると思います。打ち上げには不参加の意を表明しているので直ぐに帰れると思いますが、帰ってから書く気力があるのかは微妙ですね。


 今までは一応食べるものやその材料が多かったが、飲み物などの島の探索を進める事になった。いま歩いている島もその一つである。そこら中に植物が生えており、あちこちで間欠泉が噴き出し、流れる川も暖かくなっている。

 

 生えている植物と言うのが場所によって違い茶葉、ハーブ、豆、麦、そば、などなどのお茶の原料となる植物ばかりが生えているのだ。そして、間欠泉で噴き出しているのも、川で流れているのも暖かいお茶である。

 

 ここ『ティーポッ島』は間欠泉ごとに噴き出すお茶が違い、間欠泉の数だけ川も流れている。そして、少しではあるが春夏秋冬、四季によって味が変化している。

 

 この島の特徴としては川は島の中心に向かって流れており、中央にはすべてのお茶が滝となって流れ込む湖がある。ただし、この湖のお茶は毒と化しているため、飲んではいけない。島の地下にはさらに毒の成分だけがたまった地底湖も存在する。

 

 この島は持ち運んで問題は無いので、今までと同じくプラントに吸収合併してもらう。この島は結構有効な島で茶葉やハーブ、豆、麦、そば、それぞれ単独でも作物としての価値があり、結構上質な種となっている。栄養が多いのもそうだがお茶として適しているからか香りがどれも良く、食欲をそそる。

 

 しかし、ハーブなどは物によっては異常なまでに繁殖するのでエリア外へと広がらないように気を付ける。何でこの島のハーブ以外の植物が無事なのかを調べたら、成長速度は変わらないが生命力が結構強いようだ。それと間欠泉の熱で根腐れしない程度に熱への耐性もある。

 

 ハーブは種類が多いのでブレンドに結構嵌まり、疲れ気味のマニュに飲んで貰って感想を聞いてる。ハーブの中には薬効のある物もあるので、そっち方面でも色々と試せそうだ。

 

 

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 次に向かった島なんだが話を聞いたピアスが一緒についてきた。目的は島にある『()(ろう)』だろう。最近はモルが仲間になったことでさらに酒造りが進んだと言うのにまだ飲み足りないのか?

 

「あれも旨いんだけど、ここにはガツンとしたのがあるって話だからね」

 

 そう言うが早く、先に島の中央の山に登って行ってしまった。この島は円形で、島の中央にウェディングケーキの様に段々となっている山がある。段は全部で4段で山の頂上には泉が湧きだしている。

 

 その泉には特殊な生き物が生息しており酒虫(しゅちゅう)と言う水を酒に変えると言う生態で、魚みたいな見た目をしているが実際はよく分かって居ない。まあ、毒などは無いし、襲い掛かってくることも無いのでどうでも良いけどな。

 

 泉はとめどなく水が溢れ、酒虫によって酒となった物が滝となって落ちていく、因みに滝は10本あり、等間隔で広がっている。段を降りるごとに周りの植生に合わせて味が変化している様だが、その代わり下の方は酒精が弱まっている。

 

 段の上であるほど酒精が強く下であるほど弱い、また段の上であるほど余計な味や風味は無く、下であるほど味や風味が強い。余計な味や風味が無いと言っているが一番上の泉も無味無臭と言う訳では無い、泉の酒自体がそこそこ上物である。

 

「ん-いやぁ、結構効くねぇこの酒は!!アスカル様も飲んだらどうだい?」

 

 まだ仕事もあるし、飲めない訳では無いがお前と同じペースで飲んだら倒れるわ。とは言っても確かめないといけないので1口だけ含むと、ピアスが強いと言うだけあり舌が痺れる様に感じた。酒精が強い分、アルコール特有の苦みも際立つが、それがいい味である。飲み込む時に喉が熱く、体温が上昇したかのように感じる。

 

 美味いとは思うが何杯もは飲めないな。と言うか一杯でも少し不味いかもしれないぐらいだ。しょうがないのでこの島に生えてる『ウコーン』を食べた。『ウコーン』は肝機能を高めてくれるコーンでとても薬効が強い。ウコン特有の苦みも無く、甘い。二日酔いにも効くので育てて売っても良いかもしれない。

 

 話が逸れたが、酔う滝の酒は余計な味が付いてないから逆に何かを漬けたりするのに良いかもしれない。それとこれだけ強ければ簡単にアルコールを取り出す事も出来そうだ。酒虫自体も研究できればいいが、与える水を変えたり、餌を与えてみたりが限界だろう。

 

 うちの国は酒を特別好んで飲むのはピアスぐらいだが、小人も含めて成人してる人間で飲めない者はいない。オレはうちの作物から作ってる奴を適当に飲んでるが、マニュはワインを好んでいるらしい。なんでも香りが好きらしく、軽快で飲みやすい物より熟成樽でしっかりと熟成させた重厚な物が多い。

 

 モーダスは飲むなら薬草系が好きらしく、最近は薬草系のリキュールを割って飲んでいる。最近はアブサンという物をよく味わうらしく、砂糖に垂らして火を点ける際の香りはなんとも言えない。

 

 ホーニィは花の酵母で作る酒や蜂蜜酒などを飲んでいる。能力や関わっている物への興味なのか、酒の好みとしてなのかは分からない。前者は香りがよく、フルーティでアルコール度数も低いので飲みやすい。蜂蜜酒はほのかな蜂蜜の風味がよく、炭酸水で割って飲んでいるそうだ。

 

 サイフォは店とかで飲む分にはエールとかが多いようだが、何が好きかと言われるとウイスキーらしい。蒸留酒はアルコール度数が高い物が多いとよく聞くが、サイフォはそのままでも飲むって言うから結構強いんだろう。

 

 ピアスはワノ国で生まれた米から作る酒を気に入ったんだとか、この前の『船溶かし』の時に分けたからだろう。今ではモルの能力もあり、酒も一気に造れているので大量生産中だ。それと単純に強くて喉に来るのが好きだとも言ってた。

 

 酒造りやチーズ作り、納豆、醤油、味噌、様々な発酵食品を任されている彼女自身はあまり酒を飲まないと言うが、キノコを漬け込んだ物には興味があるらしい。キノコと酒の料理も好んでおり、たまに酒蒸しにして食べてるのを見かける。酔っぱらって間違ってヒトヨタケを食べないかと心配だが、菌のスペシャリストだし大丈夫だろう。

 

 まあ、とりあえずこの島の特徴である酒の泉は酒虫が要因なので移動させても問題が無いので島ごと回収する。プラントにくっつけてるとピアスが常に飲みそうな気がするが、そこは飲まないように言って聞かせるしかないだろう。

 

 酒は飲み水代わりにする事が多いし、娯楽が少ない船旅では結構重要な物である。そのため、手間が掛からずに手に入る酒と言うのもいい商売のタネとなる。『酔う滝』の酒はプラントの名産の一つに加わった。

 

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 名は体を表すと言うのはよく聞くが、この島は流石にどうなんだろうかとオレは疑問に思う。2つの大きな山があり、川にはミルクが流れ、天然のミルク風呂が存在すると言うこの島は『乳島』と言うらしい。

 

 乳を出す生き物が多く生息しており、外敵が居ないこの島で平和に暮らしている。あまり関係ない話ではあるがあやかりたいと来訪する女性が後を絶たないとか、まあ特別な効果とかは無いらしい。何故だか知らないが周辺の海ではオイスターが良く取れた。

 

 この島の動物たちは子育て中以外も乳が出るらしく、人懐っこいので頼めばミルクを分けて貰える。それとモーダスに調べて貰ったんだが、この島の草は動物の乳に良い影響を与えるらしいので、うちの家畜用に少し育てる事にした。念のために言うと人間には効果は無いらしい。

 

 この島は人がよく来るので回収はせずに拠点を置くつもりだったが、人の出入りが増えて島や島の動物たちに被害が出るようになってきたと聞き、急遽回収するように変更した。

 

 島に流れるミルクはとても濃厚でどの動物とも違う特別な物らしく、川にはミルクやバター、生クリームなどミルクから出来る食品も自然に作られていた。それらも質が良いため、回収しているが、ミルクを回収してモルに能力を使ってチーズやヨーグルトを作ってもらう予定だ。

 

 ミルクは汎用性が高く、色々な物に使えるので、この島の獲得の影響は大きい。とりあえず、天然ミルク風呂に使っている時に考えたのだが、今日の昼はシチューに決定した。もちろん具はうちの野菜だ。美味しくて小人や子供から人気だったと言っておく。

 

 

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 次にやってきたのはこれまでと違って危険な火山地帯となっている島だ。この島自体には特別何かがあるわけではないが、この島の生物に特別な奴がいる。

 

 とりあえず、そいつを見つけるために歩き回っているのだが、なかなか姿を表さない。それどころか目的とは違う恐竜に襲われるばかりだ。

 

 ここは進化から取り残された太古の島の1つとなっていて、生息しているのは恐竜ばかりで、狙っている食材もその恐竜の一種だ。

 

 適当に恐竜を捌きながら探索を続けていると、オレの背後をとろうと動き回る恐竜がやってきた。おそらくこいつが狙いの恐竜だろう。それにしても動きの割には結構な巨体である。数階建ての家どころか小さな船よりは確実にでかい。

 

 そんな相手の動きにあえてオレが立ち止まると、相手はギザギザの牙も鋭い爪も使わずオレを掴むとそのまま後ろに放り投げた。思いっきり投げるのでオレの身体は溶岩の方へ向かうが、空を蹴って安全な場所に着地した。

 

 先程の投げで倒せたと思っていたのかオレの方を見てそいつは驚いていた。こいつは『スープレックス』と言い、敵の背後を取って掴んで投げ飛ばすという攻撃方法を好む恐竜だ。

 

 こんな場所に生息している恐竜なら溶岩にも耐性は少しあるだろうから思いっきり投げているのだろう。投げる力は強く地面でも溶岩でもそのままの勢いで突っ込めばそれなりのダメージにはなりそうだ。

 

 食材となるのはこいつの骨であるのでどうしても倒さなくてはいけない。オレは近くの溶岩を操作すると黒い棍棒を作り出した。

 

 覇気を纏わせていないが黒いそれは、吹き出したマグマが急激に冷やされたりする事で生成される火山岩の一種、黒曜石製の武器だ。

 

 黒曜石は性質がガラスと似ていたり、結構硬いため優秀な武器となる。さらに覇気を纏わせてしまえば壊れる心配も無い。

 

『マカナ』

 

 至ってシンプルな形状の武器であるがそれ故に強力な一撃を打てる。黒曜石は割ると鋭い刃になるのだが、切る武器はマルンやアダマスの鎌があるのでたまには違う武器も良いだろう。

 

 スープレックスはその強靭な体の脚力を活かしてオレに接近して背後を取らんとぐるぐる回る。オレは相手の接近を待ちながら、マカナの硬さを維持しつつ、温度を高める。

 

 元々が溶岩だから操作することで熱は結構蓄えられる。向かってきたスープレックスに合わせてオレは跳躍すると、黒く熱い棍棒を上から下へと叩きつける。

 

『黒点』

 

 当たった場所、頭からジュワッと焼ける音がして、その熱は打撃と共に体の内側へと伝わる。圧倒的な衝撃と熱の前にスープレックスは意識を失った。

 

 捌くために棍棒を刃に変形させる。鋭い刃になると言ったとおり、火山の熱に耐える強靭な皮膚もスッと切れる。そして解体して肉と骨に分ける。

 

 目的である骨以外にも肉も食材となるのでしっかりと回収する。島に帰ると既に準備は済んでいるので、水をはった鍋に骨を入れて火を点ける。後は特別なにかをする必要はなく、放っておくだけでけで極上のスープが完成する。

 

 そしてこのスープに一番合う具材こそが骨の持ち主である恐竜の肉である。恐竜の肉を一口大に切って入れるとスープの味が馴染み、とても肉が柔らかくなるのだ。元々の恐竜が巨体だなけあり骨も肉も大量にあり、一匹だけで結構な量のスープが出来上がった。

 

 スープに含むと濃厚さを感じれる香りがまず口いっぱいに広がる。骨から染み出る味はとても濃厚であるが、飲みにくさは一切なくゴクゴクと飲める。スープを飲み込むごとに身体が温まり、幸せな気持ちになっていく。スープの王様の名前に相応しい味わいだ。

 

 環境的に暑い場所でないと生きにくいだろうが、溶岩を操作して循環させれば疑似的に火山地帯を再現できるので、国土に組み込んで他の恐竜ごと回収した。見た目もそうだが、伝わる空気も熱いので少しでも熱を遮断するために壁を作った。

 

 もちろん、中にいる恐竜の事を考えて空気の交換などは行えるようになっている。その際に生じる熱気は一端地下に集めてから逃がしたり、蒸し料理やサウナなどに利用している。スープレックスは基本的にはそのまま生態系を整えて確保するが、一部は隔離して餌を与えて育てる事にした。その結果スープの味に変化があるかは分からないが色々と試していこう。

生態系を整えて確保するが一部は隔離して餌を与えて育てる事にした。その結果スープの味に変化があるかは分からないが色々と試していこう。

 

 

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 熱い火山地帯と打って変わって暖かい空気が広がり、爽やかな風の吹く、リゾート地の様に過ごしやすい島にやってきた。ただし、その空気も風も甘い匂いなのが特徴的である。

 

 『カジュース島』といい、ありとあらゆる果物の生る木『超ハッピーの木』と言う木が生えている。この木は島の中央に生えており、巨大な木は島の上空を覆うかのように伸びており、気に見合った巨大な果実が乱雑になっている。

 

 『超ハッピーの木』から巨大な果実が落ちてくるが島に危険は無い。『幹ジューサー』と言うミキサーやジューサーの役割をこなす木が生えており、果実を受け止めるとその中の種を喰らうために果実を砕き、ジュースに変える。目的が種であるため種の有る物を入れないと稼働せず、普段は唯の木である。

 

 『幹ジューサー』は果物を砕いた後の余分なジュースを枝から排出する仕組みになっており、枝の先にジュースの詰まった玉を生み出して落とすが、枝の先を加工することで蛇口の様にジュースを好きな時に取り出せるようにもなる。

 

 ジュースの玉は持ち運びにくい形状である事を除けばそれなりに便利で、そのまま凍らせたり玉のまま保存することも出来る。飲みたいときはそのままストローを挿せるし、素材が植物由来なので捨てても自然に影響はない。

 

 どんな素材でも舌触りの良いジュースに変えてくれるこの木は結構役に立つ。木の操作が出来る人材はいないのでそのままの環境を維持することで確保するしかないが、地道に研究して数を増やしていければいいだろう。

 

 『超ハッピーの木』の方は巨大な果物を落とさず回収して商品には出来ている。ただし、枝を植える事で小さい物を作れないかとも考えているが、そちらは中々上手くいかない。

 

 現状は巨大な果物とジュースを大量に獲得できるようになった段階だが、他にも利用方法はあるだろう。ジャムやお菓子に加工したり、乳島のミルクと混ぜて見たり、色々と試していこう。

 

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 甘い香りとは打って変わって香ばしい落ち着く香りの広がる島にやってきた。ここは『コーヒー島』と言い、コーヒーに関わる植物が溢れた島であり、コーヒーをこよなく愛する動物で溢れている島でもある。この島でコーヒー以外の香りを漂わせようものなら、その者を排除するために食物連鎖も忘れて、島の動物が集まってくる。やられることは無いが面倒は避けたいので気を付ける。

 

 島の中心には巨大なコーヒーの木が一本生えており、その木と為を張れる大きさの猫がピクリとも動かず寝ている。訪れる島の動物たちの対応を見るに島の主の様な立場にいるのだろう。主を観察し、一応声をかけてから撫でてみたが、触り心地は良かった。

 

 主に危害を加えないと分かると少し離れて行ったがオレの周りを見張る様に囲んでいる動物が常にいる。『コーヒヒ』と言い、肉は固くて不味いが、背中に極上のコーヒーの実がなる。生えるコーヒー豆の種類ごとに群れを形成し、更に群れの内部でブラック派、ミルク派、砂糖派に分かれる。だがミルク派と砂糖派はそこまで中は悪くないようで、どっちの派閥にも参加するヒヒがいる。その他に別の少数派閥のヒヒもいるそうだ。

 

 それぞれ自分になっているコーヒーの実に自信が在る様で、頼むとコーヒーの実を分けて貰える。それどころか淹れ立てのコーヒーも貰った。まずはブラック派のヒヒからで、そのまま飲むように促される。口に含むと苦みを感じるが、香りが強く酸味の少ない物で苦手では無いのでそのまま飲んだ。飲んでいる内に気分が落ち着いていく、良い一杯だった。感謝を告げてカップを返すとご機嫌で帰って行った。

 

 次はこっちだと言わんばかりにミルク派と砂糖派のヒヒに引っ張られていく、先にあったのは見た目はごつごつしていて硬そうだが、決まった方向に絞る事で微かにクルミの香りがするミルクが滲み出る『ミルクルミ』と言う物だった。

 

 山積みになったそれを指で示す、どうやら好きな物をとって入れろと言っているようだ。『ミルクルミ』は熟成された物ほど絞る際に必要な力が大きいので、古い物だと道具を使っても一切絞れないなんてこともある。だが、オレは結構熟成された物を手に取り、土で腕を作り出すと力を込める。

 

 時間も掛からず瞬時に蓄えていたミルクを吐き出したクルミを返し、ミルク入りのコーヒーを口に含む。まろやかになった事で飲みやすさはある。そしてミルク自体の風味がコーヒーとよく合い、優しさの感じる味わいだ。 

 

 今度は飲み尽くす前に引っ張られ、砂糖派だろうヒヒについて行くと『長糖(おさとう)』が生えていた。砂糖の長と言うに相応しい砂糖を生み出すサトウキビで、その名の通りとても長いのに加えて硬くもある。傷をつけると傷をつけた節目の区画分の砂糖が溢れ出る。根本より上部の節目の砂糖の方が上物になっているが、高く硬いためなかなか取れないので良い砂糖を手に入れようと思うと一苦労である。

 

『アダマスの鎌』

 

 土で鎌を作り出すと一本の『長糖』の上部に狙いをつけて振るう、嵐脚を見ていたため斬撃を飛ばす感覚は理解している。鋭さをそのままに跳んで行った鎌の刃は『長糖』の上部をスパンと綺麗に切り落とした。落ちてくる切った部分の砂糖と『長糖』の上部を回収するととりあえず砂糖を飲みかけのコーヒーに加えた。

 

 ミルクでまろやかになっていたが苦みは健在だった。だが、長糖の砂糖を加える事で苦みが中和されて、ごくごくと飲めるものとなった。少し甘いのとやはり香りもブラックと比べると弱いが元々の『コーヒヒ』のコーヒーが良い物なので風味もそこそこである。それぞれ好みはあるだろうが疲れている時には砂糖とミルクを入れた物が良いかもしれないな。そう伝えるとミルク派、砂糖派共に喜んでいた。

 

 コーヒーを飲み終わってから島をどうしようかと考えていると島の主らしき巨大猫がやってきた。どうしたのかと疑問に思っているとペタンと巨体に似合わない音で肉球を押し付けられた。そして、中央にある巨大なコーヒーの木の豆を渡された。

 

 そしてプラントのある方とこっちの島を示してからフニャンと一言鳴いて帰って行った。好きにすれば良いという事だろうか。とりあえずプラントと島をくっつけるが特に何も言われない。そのまま合体吸収しても問題は無く、どうやら主に許されたらしい。

 

 『コーヒヒ』達はプラントを結構行き来し、自分なりのお気に入りスポットでコーヒーを飲んだり、自分のコーヒーを進めたりと好きにしている。ミルク派は乳島の方へ出入りすることが多く、乳島の動物とも仲良くしている。砂糖派はデザートデザートに『長糖』の苗を運び込んでいた。どうなるのか分からないが成果が出たら向こうから伝えに来るだろう。

 

 一部のヒヒは『酔う滝』の酒をコーヒーに入れたり、コーヒー豆で酒を造る様に頼んで来た。君たち結構表現力豊かだよね。ボディランゲージがとても分かりやすくて、何が言いたいのか直ぐに分かった。コーヒーに合う軽食やお菓子を創ろと頑張ってるヒヒも居る。

 

 それぞれの派閥から代表を出すように伝えて『コーヒヒ』達による開発部門を新設、代表会議にも主だった派閥であるブラック、ミルク、砂糖から持ち回りで参加するようになった。それとは別で開発に一番嵌まってる開発部門代表のヒヒも会議に参加している。とりあえず、『コーヒヒの豆』『ミルクルミ』『長糖』を獲得し、『コーヒヒ』が住人に加わった。

 

 それぞれ派閥のボスをそれぞれ『黒ヒヒ』『白ヒヒ』『甘ヒヒ』と呼び、開発好きが開発部門のトップなので役職で『室長』と言うあだ名がつけられた。主はそのまま『主猫』や猫の王、皇帝みたいなので『王者(おうじゃ)皇猫(こうねこ)』などと呼んでいる。他には主猫(ヌシネコ)と言う呼び名を使うことも多い。

 

 現在の住民の割合はコーヒヒ>小人>人間>魚巨人となるのだが、人を誘致するべきではないかという悩みが再浮上してきた。悩みを忘れるべく、砂糖とミルクを大量に入れてコーヒーを啜る……うん、甘くて美味いな。現実は苦いけどな。

 




まずはお茶の島ですね。皆さんは何茶が好きですか?私はそば茶を飲む頻度が高いですね。後はパックの麦茶がどうしても多いですかね。

酒の島ですが、私は酒が得意では無いので書くのに苦労しました。私は新成人で、12月が誕生日なので12から1、2、3と大目に見ても飲めるようになって4ヶ月ですからね。飲む機会も少ないですし、元々パッチテストとかで飲まない方が良いって言われてますしね。ほろ○い一口で顔が真っ赤になり、一缶で少し気持ち悪くなります。てか、アレ以外は飲めないですね。でも書く際に参考になるかと飲みながら書いてみたりしたんですよね。調子に乗って活動報告を書いたりもしました。今後は書くか分かりませんが、そこで飲んだ際の感想を募集して、コメントから一部は表現をお借りしました。後、キャラの好みもそこからいくつから決めました。いや、本当にありがたいことです。

3つ目ですが、ネタのつもりも、洒落のつもりもなく、いい案が思いつかなかったのでそのままの前に名前になりました。

4つ目、飲むものと言えば飲むものだしと言う事でスープが参戦しました。スープレックスは技名と恐竜のレックスの響きとスープのレックス(王様)で結構いい名前が出来ました。個人的には気に入ってる。

5つ目、『超ハッピーの木』と言うね。まあ、乗り捨てられる恐竜のちびのお話に出てくるのと親近感ありますね(すっとぼけ)。6連続で同じ果物を食べても何もありません。

6つ目、コーヒー党とかけた名称の『コーヒー島』です。そしてなぜか住民になった『コーヒヒ』、『コーヒヒ』は『ココアラ』を思い出して考えつきました。主猫こと『王者皇猫』、王ジャコウネコですね。はい、そのうちコピ・ルアクの様な物も取れるかもしれませんね。ちなみに私はコーヒーは練乳を大量に入れることでようやく飲めるぐらいには苦いのは苦手です。香りは好きなんですけどね。どうやっても飲めない。

圧倒的に人間の少ない島になってしまった。電話組が子供入れて9人、アスカル、マニュ、サイフォで合計12人。小人はモルが入って21人で、魚巨人がピアス1人でコーヒヒがたくさんです。まあ、当面というか必要無い限りは人は増えませんがね。コーヒヒは正直勢いで入れたけど、いろいろな物の開発や加工などが出来る手先が器用で人件費のかからない戦力となりました。室長を含め、一部はコーヒーに関係ないものにも興味を持ち始めてます。

そろそろ、食材以外の流れを加えても良いかもしれないな。……元々はボーイン列島以外を国土に組み込んだりする予定すら無かったしな。思ってたより、食材や島を考えるのが楽しかったからしょうがない。四季の海域の話と取引の話あたりをもう少し進めて行かないとな。

ネタの構成を見直してると時系列的に調整が必要な部分もあったりと、中々に書くのが大変になってますが、なんとかやっていきます。

ではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第21プラント 激戦開幕!!四皇ビッグマム!?

投稿です。



 多くの島を巡って食材を手に入れ、プラント全体はかなりの規模となった。一番の目的である4季の揃った海域は見つかっていないが、イスト聖に良い報告が十分できるので、そろそろ向こうに分身を送るのもありかもしれないと考えていると、海賊用の港に一隻の船がやってきた。

 

「ボンにちは、手前タマゴ男爵と申しまソワール!!名前だけでも憶えておいてシルブプレ」

 

 これまた奇妙な客人がやってきたもんだと顔を顰めたが、話を聞くにあの大海賊シャーロット・リンリンの使いでやってきたとのことだ。万国(トットランド)とは海賊が、それも四皇が作り出した国のため世界政府に認められている訳も無いが、その勢力は目を見張るものがある。

 

「こちらの国は海賊とも取引を行うと聞いていたでソワール。そのためさほど心配もなくやってきたが、早速ビジネスの話をしていきたいボン」

 

 世界政府や海軍からはまたつつかれそうではあるが、公平な取引を掲げている以上は客を差別することはしない。とりあえずは向こうの要望を聞くところから始めたが、オレは唖然としてしまった。

 

「良質な小麦に長糖の砂糖、その他にも乳島のミルクやそこから作られる上質なチーズにヨーグルト、カジュース島の果実、お菓子に合うであろうティーポッ島の飲み物、アクセントに酔う滝の酒、どれも素晴らしい品ばかりだボン。他にも上げてはいないがプラントには素晴らしいボン。今回の提案はそれらの品を我が海賊団に献上して欲しいとの要請でソワール」

 

 何でも四皇として名の知れ渡っているビッグマムの縄張り、庇護下においてやるから毎月指定された量の食材を渡せと言う話だった。はっきり言ってメリットは全くないと言っても問題は無い。そう言う話でしたら断わるとはっきりと伝えた。

 

「言う事は素直に聞いておくべきだと忠告するでソワール。ママは思い通りにいかない事が大嫌いだボン。それ故に黄身が頷かなければ、黄身達と関わる者に被害が及ぶかもしれんでソワール。黄身自身に繋がりが深い者は居ない様であるが、奥方の故郷となれば話は別でソワール?」

 

 なるほど、体の良い脅し文句である。オレは元在った島では人と関わる事は無く、後からやってきたマニュや小人、電伝虫組、ピアス、サイフォなどの島に要る面々以外に大事と言える相手はいない。となれば標的となるのはオレの身内であるマニュの大事な人になる訳だ。

 

 タマゴ男爵にとりあえずの土産として渡せる物を渡して帰ってもらった。契約前のご機嫌取りだと判断したタマゴ男爵は軽快な足取りで帰って行ったが、オレはすぐさま連絡を入れて行動に移る。幸いな事にスキーラのすぐそばにプラント跡地があり、分身を送り込む事は簡単にできる。

 

 後の事は分身に任せて、本国の守りが出来そうな海域は既に見当をつけている。オレはプラントの国土の大半を土で覆い海に沈めて保護し、最低限の国土を巨大な大渦の中心に置き、ビッグマム海賊団に提示された条件で取引はしないと宣戦布告を返した。

 

 その次の日には夥しい数の船とビッグマム本人がやってきた。天候を従えると言われる要因であるプロメテウスとゼウス、太陽と雷雲のエネルギーは目を見張るものがある。だが、船は大渦で近づけず、プロメテウスやゼウスに乗っかってビッグマムだけが初めにやってきた。

 

「マママママ、あんたがおれとの取引を断ったアスカルって奴だね。私に従えばみんな幸せになれるって言うのに本当に愚かだよ。おれは優しいからもう一度だけ訊いてやるよ。おれにお前の所の食材を提供し続けろ!!そうすりゃ、引いてやるよ」

 

 悪いが公平を掲げる者としてあんなふざけた要望を飲み込む事は出来ない。地の利は、いや海の利はこちらにある。一部の大きい船と能力者を除けばここまでたどり着く事すら出来ない状態、張りぼての船が脅しになると思うなよビッグマム。

 

「生意気なまま死ね!!『雷霆(ライテイ)』」

 

 ビッグマムは雷雲ゼウスを掴むと思い切り叩きつけようと振りかぶった。図体に似合わない動きで腕を振り下ろして来るが、それより先に防御は完成する。海底から浮かび上がらせた重厚な大地の盾である。

 

「『大地壁(グラウンドウォール)』大地に雷が効くと思うか?」

 

 そう言うと忌々しいといった様子でゼウスに乗り換えて今度はプロメテウスを振りかぶって振り下ろしてきた。大地で受け止めるのでも良かったが、火には水だろうとピアスに合図を送る。

 

「喰らいな『大海槍』」

「ギャァァァァァッ!?」

 

 見た目通りで水に弱かったようで攻撃は敵わずビッグマムの攻撃は届かなかった。仮に水でどうにかならなかった時ように壁は健在だったが、必要が無くて良かった。ピアスは近づこうとしてくる船と能力者の対応をサイフォと共に頼んだ。あの様子ならあの太陽は使い物にならないだろう。雷雲も何度か攻撃させれば自然と電気が切れるはずだ。

 

「了解したよ『海神槍』」

 

 そう言うとピアスは船を貫きながら水の中を泳ぎ始めた。魚人ですらない、ただの魚であっても危険で死人が絶えないダツと言う魚の特性をよく活かした戦い方である。見聞色の覇気が使われ突撃を読まれてもこの大荒れの海の中、水中からの攻撃を防ぐ手段はそうそうないようで、次から次に船が沈んでいく。

 

「船の底が穴だらけだ!?」

「防げるような穴じゃねえぞ!!」

「プロメテウスまでやられた!?」

「ゼウスの攻撃は効いてねえぞ」

「いくらママでもヤバいんじゃねえか?」

「どうにかママの所に、グハァ!?」

「なんだ!?急に倒れたぞ!!」

「狙撃だ!!狙撃に注意し、ガゥア!?」

 

 そこそこ鍛えられている見聞色の覇気、未来を見通すほどの力は無いが、荒れ狂う海で揺れ動く船の上で慌ただしく走りまわる船員を確実に撃ち抜くだけの感知能力と技量をサイフォは持ち合わせている。

 

「『決め撃ち』、船だけあってもしょうがないな」

 

 落ち着いた様子で焦らずにまるで全て決められているかのように次々に撃ち抜いていく。淡々と流れ作業の様にやられていく船員たちを見て、幹部たちも少し焦りを見せる。船を動かし、維持するだけの人手が足りなくなっていったのだ。やがて、操作を失っていった船は波に呑まれて沈んでいった。

 

【ママ、船は持たない。これ以上は近寄れそうにもない。邪魔になるだけだから下がらせる】

「ここまで虚仮にされるとは思わなかったよ!!プロメテウス、十分回復したね。ゼウスも来な。ナポレオンは刃に移れ、『皇帝剣(コニャック)』『破々刃(ハハバ)』」

 

 部下や子供からの報告に怒り心頭なビッグマムはプロメテウスの炎を纏った巨剣の一撃を放つ。操作してるだけの大地では受けきる事は難しいだろう。そう、判断するが早く、オレは一番操りやすい土を持ってきて、元々あった壁を覆った。

 

「『産土(うぶすな)』武装硬化『黒壁(こくへき)』」

 

 『産土』生まれた土地を指す言葉であり、プラントの大地となって長い土が段々とこれに変化していく、この土は異様に操作がしやすく、自分の身体と同じぐらいに感じる程だ。それ故に覇気の通りも極めてよく、この土は攻撃にも防御にも持って来いなのだ。

 

 楽々とは言わないが、衝撃をそのまま大地の底へと逃がせるため直接防御するのとは効率が全然違う。だが、自慢の一撃で傷一つ付けられなかったと言う事実を目の当たりにしたビッグマムは初めて顔を歪ませた。だが、そこにビッグマムの電伝虫に連絡が入り、その顔は禍々しい笑みに変わった。

 

【ママ、ボビンだ。言われた場所へ向かった】

「ハーハッハッハッハ、スキーラとか言う国は燃やしたのかい?」

 

 せめてもの意趣返しなのか電伝虫での会話を聞かせてやろうと大きな声で話すビッグマム。だが、親切なタマゴ男爵が教えてくれたと言うのに対策を取って居ない訳がないだろう。

 

【いや、違うんだママ。指定された海域に向かったがそこには何もなかった】

「ハァ!?」

【それどころか、プラントの跡地や管理地も消え失せてる】

 

 そうだろうな。こうなった以上はスキーラをどうにか匿わなければいけないと思い、一番は目の届く範囲に置くこと、要するにプラントに統合してもらう事だったのだが、とりあえずやり過ごすために海底のそこまで沈んで貰っている。潜水艇があったとしてもたどり着くことは不可能だ。

 

「あんたの身体に傷をつけれる自信は無いからな。これで頭を冷やしてこい!!『産土神(うぶすながみ)』」

 

 オレはありったけの『産土』を身に纏い大地の巨体を作り上げると、腕を引き狙いを定めて掌を押し出すように撃ち放った。掌底の形で放たれた攻撃は地を揺らし始め、その衝撃は海へと伝播する。

 

「『破海(はかい)』!!」

 

 雄大な大地よりも遥かに広がる海を打ち砕くかのように放たれた衝撃は『産土神』の掌よりより先の全てを巻き込むように飛んでいき、まじかで喰らったビッグマムも一度吹き飛んだ。慌てて追いかけたゼウスやプロメテウスのおかげでその時は海に落ちなかったが、あまり関係は無い。

 

「海が!?海が迫ってくる」

「おい、どうにかしろ!!」

「出来る訳がねぇだろ」

 

「あはははは、魚巨人のアタシでもありゃ無理だよ」

「ボスらしい攻撃だな」

 

 全てを巻き込むと言った通り伸ばされた先の海も海面から海底までの全ての水を巻き込んで何もかもを飲み込む壁となってビッグマムとその後方にいた船を襲った。生憎と幹部や子供の乗っている船は無かったようだが、そちらはそちらで船長が海に沈み、流れていく様を見てすぐにその場を後にした。

 

 干上がったかのように水が無くなった海底はしばらくそのままだったが、しばらくして波が帰ってきて段々と水が満たされていった。この付近に島は無いので被害は出てないと思うが、改めて無駄な時間を過ごしてしまった。

 

「ビッグマムがあれで死ぬとは思えないな」

「サイフォの言う通り、あれだけやられて報復を考えない奴らじゃないだろうね」

 

 向こうは海賊、欲しい物があるとくれば奪い取ると言うのは至極まともな考え方である。だが奪うどころか返り討ちに会ったままと言うのは向こうの沽券に関わる。舐められたら終わりな海賊稼業、このままと言う事は無いだろう。

 

「しばらくの間は厳戒態勢を取り続ける。普段の取引は政府と海軍の助力を受け、指定の位置でのみ行う。一番の懸念であるスキーラは海底を進み、合流を急いでいる状態だ。向こうが攻めてくる限り、守りに徹すれば負けは在り得ない。英気を養い、次に備えろ!!」

 

 小人の特徴や能力の都合上、荒れ狂う海が戦場では戦いにくいと判断し、入念な準備の出来ない今回は参加を見送った。だがそれは総戦力でもないのにビッグマムを追い払ったという事であり、この事実を知った政府と海軍からの反応もそれは凄い物だったが、今はどうでも良い。

 

 この様な事態になった以上はスキーラ王国は巻き込まない為にも庇護下に置いた方が良いと考えた。国王や国民は事態の全容を知った上でプラントに、ひいてはオレに従うと言ってくれている。安全を確保するためにスキーラ王国はプラント王国に吸収されることが決まった。

 

「何時になるかは分からないが、必ずまた来るだろう。それを乗り切れば勝ちとも言える」

 

 数だけを揃えても意味が無いと判断したビッグマム、今度は幹部だけを纏めて、渦に負けない船を揃えてやってくることだろう。だが、それさえも凌いでしまえば向こうに打つ手は無くなる。向こうも痛手を喰うだけの事に時間を取り続けるのと面子を潰された事を飲み込むのとどっちが良いかは分かるだろう。次は小人も参加できる作戦を考えて迎え撃つ予定だ。さあ、プラントに手を出したことを後悔させてやろう。




投稿が遅くなり申し訳ありません。

私は新成人の新社会人でございまして、火曜日から研修が始まりましたので書く時間が全然取れていないんです。まだ、仕事に慣れていないので帰ってからは疲れて休む事も多く、全体的に執筆は遅れてます。次の話を待ってくれてる方々には申し訳ありませんが、首を長くして、温かい目で見守っていただけるとありがたいです。私事で本当にすみません。


さて、少し急展開ですが、そろそろ進めないといけないと思いましたので、国力強化の話は終了、ストーリーが進んでいきます。感想などでも多くの人が危惧していましたビッグマム襲来です。これは話を書き始めた時点で必要だと感じ、予定しておりました。

今回はモブの様な部下と少しの名前持ち(というかボビンだけかな)しか登場してないですが、次回は総戦力戦となるので、主要なキャラは出せたらなと考えてます。

プラント、スキーラを吸収合併。国民(人間)が大量に増えました。機密があるからと拒んでいたので、そんな事を考えてられない状況にしちゃえば良いと言う判断です。構想時は考えてませんでしたが、途中で思いついた展開です。

ビッグマムを終わらして、オハラの問題と前から言ってたテゾーロ&ステラをどうにかする話と、四季の海関連の話と続いて行く予定です。その後はまた数年ほど関わるイベントが無いけど、四季の海の問題が解決した後は国力強化の必要性は殆どなくなるので結構すっ飛ばす予定。ビッグマムの事を聞いて、他のヤバい奴らが寄ってくるとかも考えてるけど、ネタがあるのは金獅子ぐらいなんだよな。まあ、なる様にしよう。あ、もう1人だけプラント主要メンバーとしてオリキャラを出す予定なのでその期間に追加するか。

なんか、久しぶりに一気に書いてたら疲れました。
そろそろいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第22プラント 総力戦!!プラント対四皇ビッグマム

10日ぶりの投稿です。やっぱり就職してから投稿の頻度が下がってますね。ただでさえ進みが遅めなので出来る限り投稿していきたいんですが、中々時間が取れない……



 前回の戦いでは小出しの戦力であった事と初見だった事で対応させる暇を作らずにトップを戦闘不能に持ち込めたからどうにかなった。だが、向こうも2度目は対策を持ち出してきた。

 

「アスカル様、少しずつだが海が固められていってる。アタシでも泳ぐと危険だよ」

 

 ピアスからの報告の通り、プラントの大地を用いて作られた大渦は少しずつ侵食するキャンディによって封じられつつある。この調子だとそう時間は掛からず海は固まってしまうだろう。

 

「ペロリン、キャンディで全部固めれば波もかたなしさ」

「ハ〜ハハハママママ、流石だよペロスペロー」

「固まり次第チェス城兵を大量に投入、同時に俺らも攻め込んで一気に制圧する」

「内外からの一斉攻撃の前には敵わないだろう」

「ウィッウィッウィッ、鏡の方は準備万端よお兄ちゃん」

「ッ!?そう簡単にはいかないらしい。アメじゃ無理だ。ダイフクは魔人で、オーブンも援護を、空からくるぞ」

 

 カタクリの警告から少し遅れて船のすぐ近くに熱を伴って巨大な岩が海へと落ちていった。海はジュージュー言いながら煙を上げその温度を上げていく、それと一緒に固まりつつあったアメも溶けていった。

 

「火山弾だ。火山弾がプラントから飛んできている『モチ突き』」

「これはやばいな『魔人斬(マジギレン)』」

「凄まじい熱だ『熱風拳(ヒートデナッシ)』」

 

 スープレックスの生息している島の火山を操作してアメを溶かし、船に直撃するものは防いでいるとはいえ、周囲へ伝わる衝撃は凄まじく、多少のダメージは入っている。

 

「チッ、どちらにせよ近づけないのであれば鏡から強襲するか?」

「お兄ちゃん、ごめんプラントの鏡は全部割られちゃった」

「何!?」

 

 まさかの事態に兄達からの視線は厳しい物になっている。プラントでは侵入にいち早く気付き、2丁拳銃を手に鏡を割って回った男が次を見据え、報告していた。

 

「まさか鏡から攻め込まれるとはな。もしもし、ボス?向こうはアメと言い鏡といい、能力者を揃えてると見ていいだろうな」

 

 裏で入り込んだチェス城兵と侵入手段はサイフォが潰し、電伝虫でアスカルへと報告を行う。侵入手段を直ぐに潰した事により状況は襲撃者の数を除けば前回とそう変わらない物になった。

 

「なんで先にチェス城兵を侵入させたんだ!?」

「気付かれるとは思わなかったのよ!!それに兄さん達の作戦が上手くいくと思ったから出遅れない様に……」

「もういい、どうするママ?」

 

 この場に居るビッグマムの子どもはオペラ、クラッカー、オーブン、ダイフク、カタクリ、ペロスペロー、アマンド、ブリュレの8名、アマンド以外は能力者だが、島まで届く攻撃が可能な者は居ないだろう。

 

「島に踏み込みさえすればこっちのもんさ。おれはゼウスで仕掛けるお前らも何か考えな」

「ペロリン、そうは言ってもママ、海はアメも溶けちまう温度でアメウミウシは使えない。はっきり言って打つ手はないぜ」

「それを考えるんだよ!!」

 

 どやされたペロスペローは必死にアイデアを振り絞って一つの作戦を考え実行に移す。ビッグマムがゼウスに乗り、かなり空高く飛び上がり船とは島を挟んで反対側へと向かった。何をする気かとプラントの面々が見守っていると、船を動かして火山弾の飛んでこない、温まって居ない海でアメウミウシを作り出すと、この前の仕返しとばかりに大きな波を作り出した。

 

「少しでも対処に気を逸らせれば後はママがやってくれるさ、溶けるの覚悟で進むんだアメウミウシ、ペロリン」

「それで終わりか?ぺロス兄」

「ビスケットは雨でしけり、海はこっちが熱さずとも十分熱々、近づけばアメは溶けて、魔人もクリーム餅も刀もこの距離では届かないんだ。そもそも普通の相手ならあんな大波は対処できずにやられるんだ。俺は悪くない、向こうがおかしいんだ」

 

 情報だけを見るに出来たばかりの国を潰すだけと考えていたのに、一度目は油断していたとはいえママを吹き飛ばし、2回目も自分たちのフィールドを維持し続けている。ペロスペローはママからの無茶ぶりと何を相手にしているんだと言う思いから軽くやけくそ気味になっていた。

 

 前方からは大波、後方からはビッグマムと言う、災害もビックリな状況だがプラントに焦りは無い。前からくる波はアスカルが作り出したものと比べると規模は小さい。そちらは他の面々が受け持ちアスカルはビッグマムに集中できるようにした。

 

「さて行こうか、()()()()()()()()”奥義”『汎㮚瀚(ふうりがん)

「二丁拳銃・合わせ撃ち『クラッシュ・インパクト』」

「蔓を合わせ束ね、守るレス『支配された豆の木(ジャックズ・ツリー)』」

「咲き乱れるレス『守護の花園(フラワーガーディアン)』」

 

 まず技を放ったのはピアス、魚人空手の奥義『武頼貫(ぶらいかん)』を基に魚巨人としての技に昇華させた『汎㮚瀚(ふうりがん)』、辺り一面の水の制圧を真髄とする魚人空手としての性質を失わないそれは衝撃をそのまま波へと伝えた。

 

 突き抜けた衝撃は波の大部分を消失させ、僅かに残っていたアメも排除した。それでもまだ残る勢いをサイフォの2丁拳銃が捕捉する。それぞれの拳銃から放たれた銃弾は波の直前でぶつかり合い、衝撃波を発生させる。連続して放たれる銃弾により広範囲残る波を全て弾き飛ばした。

 

 残った波はプラントの中央部までは届かないだろうがまだそれなりの勢いは残っている。倉庫や農地を守るためにモーダスが豆の蔓を束ね編み込む事で丈夫な壁を生み出し、その隙間を埋めたり、弾いた波の飛沫を防ぐために咲かせた花の花びらを飛ばし屋根とした。

 

「ちっ、あれはアスカルの部下か、綺麗に防ぎやがって」

「植物操作の能力、国王のツチツチと合わせればその力は遺憾なく発揮されるだろうな」

「ん、これはなんだ?」

 

 事の顛末を見守っていた面々もプラントの力の一端を痛感していると、宙を舞っている粉や埃の様な物に気付く。船や身体に纏わりつき、それは段々と船を侵食していく。

 

「これはカビだ!?」

「何でこんな物が急に!?」

「船が腐りだしているぞ!?」

「チッ、アメでどうにか補強する。オーブン、熱で排除しろ!!」

 

 船の木でできた部分と食材はもちろん、能力者も食べ物に関わる能力の者がいる所で腐敗やカビなどが蔓延すると言うのは恐怖でしかないだろう。消毒作業に追われ、砂糖が多く水分を奪い取る事でカビることの無いアメでどうにか出来た穴は塞いでいくが、ペロスペローは船の補修作業に追われる。

 

「『フェアリーサークル』からの『腐敗の風』レス」

 

 キノコの胞子を飛ばし、船の側面にフェアリーサークルを作り出すと船や食材を腐らせるカビを含めた菌を大量に送り込んだ。熱消毒の所為で『フェアリーサークル』も壊れたのでこれ以上送る事は出来ないが、蔓延した分の菌でも十分な被害になるだろう。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 大波と共に反対側から攻め込んだビッグマムと正面から衝突している。前回と違うのはプロメテウスを確実に防ぐピアスの手助けが無いと言う点だが、土の壁で炎も防げるためそこまで問題では無い。そもそも悪天候の水で多少は弱っているのでそこまで対策は必要ではない。

 

「向こうの様子は気にならないのかい?『破々刃(ハハバ)』」

「オレの仲間も優秀だからな。心配はしてない『黒壁(こくへき)』」

 

 攻撃を防ぐ、やはり四皇と呼ばれる化け物の攻撃は重く、こちらの体力ばかり削られる。前回はビッグマムが部下からの報告を聞いて驚いている所の隙をつけたから大技を当てられたが、今回はその隙を作る所から始めなければいけないので正直きついどころの話では無い。

 

「『纏地(てんち)・土流』」

 

 地を身に纏い、身体を守るため表面の土を流動させて力を分散させる。更に熱量を高め、マグマを彷彿させる腕を形成する。プロメテウスと呼ばれる太陽もどきの事を考えると熱攻撃が聞くかは分からないが何もないよりはマシだと信じて攻撃を繰り出す。

 

「『大黒点(だいこくてん)』」

 

 自身の身体を武器に以前に『マカナ』でスープレックスに対して放った技『黒点』を大規模にして繰り出した。身体から放たれる熱量は雲を蒸発させるほどでゼウスは苦しい顔をしている。純粋な炎でないのでプロメテウスは攻撃を吸収は出来ない様だ。肝心のビッグマムは顔を顰め、少し身体に跡が残った。ようやく、攻撃を残すことが出来た。

 

「痛いじゃないか。まさかおれに攻撃を通すとはね…これはお返しをしないとね」

 

 そう呟くと先ほどまでとは動きを変え、一気にこちらの懐に入られた。ヤバいと感じて体に土を集めて硬化させていくが、気付いた時には衝撃が身体を走っていた。

 

「エルバフの槍『威国』!!」

 

 意識がとびそうな中で吹き飛ばないように土を維持し続ける。ボカンと音を立てて島の反対側にまで吹き飛ばされたが、ちょうど波を防ぐために張ったのか、モーダスの生やした植物に引っ掛かり、海に落ちるのは回避できた。まだ、身体は問題なく動く、攻撃を当てた事でご機嫌気味にビッグマムと意図した形では無いが距離を取り、大技の準備も可能である。

 

「モーダスとモル、少し手伝ってくれ」

「はいレス」

「何をするのか早く教えるレス」

 

 吹き飛ばされて来たオレの周りに駆けよって心配していた仲間の中から次に放つ技に協力してもらうため二人を確保する。何をするつもりかを話して、土に彼らの能力を仕込んでもらうと、急いで大地の操作に取り掛かる。巨体のビッグマムを飲み込む一撃、吹き飛ばしてまた来られても困るから、相手を縛り付け、封じるための一撃を、そう願って作られたのは操作できる限界の大地を凝縮し、小さく纏めてもなお巨大な一つの球体。

 

「『偉大なる大地(グランド・グラウンド)』」

 

 持ち上げ、宙に浮かんでいる大地の球、月が落ちてきたのかとでも思うかのような質量のそれはビッグマムを目掛けて落ちていく。ビッグマムは攻撃を放ち壊そうとするが、操作限界まで詰め込んだ大地をそう簡単に壊されたらたまったもんじゃない。

 

 触れた所から土に取り込むかのようにビッグマムの持っていたナポレオンを飲み込んで、更にそのままビッグマムの腕まで土は取り込もうとする。仕方が無いとナポレオンから手を放そうとした瞬間、土から植物が伸びてビッグマムの腕を固定した。

 

 それだけではなく、麻痺成分の詰め込まれた胞子が一面に広がり、ほんの少しではあるがビッグマムの動きを阻害する。植物も胞子も本の数秒を稼ぐのが精いっぱいだがその数秒の間にビッグマムの腕を取り込むことに成功する。

 

「なんだい離しな!!これは、腕が抜けない。何のつもりだい!?」

「本来であれば凝縮した土に潰れて貰う技だが、それだけで倒せるとは思えないからな。凝縮された土に吞み込まれろ」

 

 腕を取り込み、そのまま落ちてきた土の球がビッグマムの身体に直撃するとそのまま巨体を吞み込んだ。凝縮された所を更に中からと外からも植物や菌糸で強化されている。中は麻痺成分でも満たされているので動ける生き物は居ないだろう。ビッグマムを取り込んだ時点で関節を意識して更に凝縮を強め、封じ込めは完成した。

 

「『偉大なる大地(グランド・グラウンド)・タイムカプセルバージョン』って言った所か?そのまま土の中で眠り続けるんだな」

 

 表面を岩盤で覆い、出来る限りの補強をしてから海の底に沈める。これでも死ぬかどうか不安なのは四皇の凄まじさの一端である。アメが無くなり、少し冷めてきた海を泳いでピアスがビッグマム海賊団の船も確保した。既にボロボロの状態で抵抗する気も無いようで、意外と大人しく話が出来そうである。

 

「ママが負けた!?」

「嘘だろ!?」

 

 その理由の一つにビッグマムが搦手とはいえ、2度も敗北して今度は完全に封じ込められたのだから投降を考えるには十分だったようだ。ビッグマムが居ない状態で長男であるぺロスペローと言う男が代表として話をする事になった。

 

「それで、ウチとの戦争に勝ったおたくはこちらに何を望みで?」

 

 と言われても何かを望んで戦っていた訳では無いので欲しい物とかは無い。しいて言うならもう攻め込んでこないで欲しいのと、戦争だと言うのであれば賠償金を払ってくれると嬉しい。取引の一部停止も響いてそれなりに金銭的被害は出ている。ビッグマムやあんたらを置いておくのもなんだから、そちらも捕虜交換と同じく金銭で払ってくれれば解放する。

 

「ペロリン!?そんな事で良いのか!?ママだって一応人間だからあのまま放置しとけば殺せるかもしれないし、俺達を海軍に引き渡したりもしないのか!?ここプラントは世界政府加盟国だろ!?」

 

 それをして残りのビッグマム海賊団が復讐に来ても面倒だし、それなら海軍に渡した時に貰える懸賞金分の値段を払って解放した方が安全だ。それと、他に要求をした方が良いなら、ちゃんとした条件での取引と何人かこちらに料理人と言うかお菓子職人を寄越してくれれば良い。

 

「は、ははは。分かったその条件を飲む。懸賞金と賠償金を合わせれば100億を優に超えるだろうがそんなの死ぬよりは全然マシだ。それにこちらとしても何の利も出ない戦いをこれ以上やる気は無い。食材も取引をしてもらえるのであれば、それで作ったお菓子でママは何とか説得すると誓うよ。職人の方も希望者を募る。もしかしたら約束の証として料理人とは関係なく兄弟姉妹の誰かが一緒に来るかもしれないが、それは構わないか?」

 

 スパイとかなら困るので好ましくは無いが、まあ良いだろう。研究内容は作物は能力ありきな物が多いので最近では一部を除いて秘匿性はそう高くなくてもよい。まあ、全員で監視はすることになるだろうが、それはただの職人でも同じことだ。

 

「だけど一つだけ頼みがある。ママは癇癪を起しやすいから、おたくらが完勝したという事を言いふらさないで欲しい。うちらが引き下がった事が広まるのはしょうがないが負けを突き付けられたママが何をするかは分からないし、俺達でもそれは止められない」

 

 まあ、ビッグマム海賊団を退けたと言うだけでも十分な威嚇になるし、武勇を誇る趣味は無い。自分から誇るべきものは畑と作物ぐらいだ。縄張りを持つ大海賊との取引となれば大規模になるのは確実で、儲けも見込めるのでそれぐらいは構わない。

 

 船は殆ど壊れていたのでこちらも資材を渡したり、能力で補強して帰れる分の食料と初回の取引としていくつか食材を積み込んだ。ビッグマムは土の球の状態でプラント保有の船に乗せて、引っ張って帰ってもらう。この場で開放する度胸は無い。

 

 戦闘に使っていた『産土』をようやく他に使えるので分身を作り、そちらに連れ添ってもらう。ビッグマムの万国(トットランド)に着き次第『偉大なる大地』は解除する。そして、ペロスペローとの取引の契約書はあるが、ビッグマムが落ち着き次第正式な物を貰う予定だ。

 

 なんやかんやあったがビッグマム海賊団は帰り、ようやく一段落出来た。プラントの復帰、取引の再開、吸収したスキーラについて、それと今後次第ではビッグマム海賊団との取引と色々とやる事は山積みである。休めそうには無いが、命の危険がある訳では無いので、全員十分な休息を取り次第通常業務へと戻るように頼んだ。

 

 それから少しして、ビッグマムとの取引は正式な物となり、分身から縄張りの端っこにプラントの中継地点を構えて落ち着いたとの報告が入った。そして、ビッグマムの子供を含めて料理人も送られて来た。名前はカスタードとエンゼル、二人とも女性で3つ子らしく、もう一人は男らしい。馴染んでくれれば問題は無いが、ビッグマムの娘らしく二人とも強くなりそうだ。

 

 海軍や政府への報告が面倒だが、そう言ったやり取りも含めて終わったと実感が出来たのでそれほど苦には感じなかった。ビッグマムとの取引は色々と言われたがどうにか認められ、それに応じてあの四皇ビッグマムが認める食材として更に取引が増えた。なんとも言いにくいが、終り良ければすべて良しという事にしておこう。




よくよく考えたら食べ物の能力者が多い所にモルの能力ってヤバそう。餅もかびるからきっとカタクリにもカビが生えた事でしょう。餅に生えたカビって削っても中まで菌糸が入り込んでるらしいから大変そう。

どうにか頑張ってようやく傷1つ付けるのが精いっぱい、ならば封印して仕舞おう。という事でビッグマムを土の球に吸い込んで封じました。ビッグマムって喰い煩いで暴走してるときの方が強いと思ってるので暴走してないのでどうにか出来たと言う状態です。

ビッグマムの娘から2名を選んだのは大臣でないキャラでアスカルと年が近めで年上のキャラから独断と偏見で選びました。45歳の3つ子って事は-23で22歳、アスカルが年が変わって16歳になった所かな。向こう的には手を出してくれればなと言う打算から女性を送り出してますが、アスカルは多少警戒はしてますが普通に国民として受け入れてます。

次から本当に色々と起こる予定ですので何がとは言えませんが待っててください。いや、続きの構想は出来てるんです。構想だけは……時間が本当に足りない。

それより先にエイプリルフールでネタを一つやる予定です。そちらもまだ途中までで完成してないので必死に制作中です。後4日か、間に合うかなぁ……こちらもご期待ください。

ではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第23プラント 後始末と報酬

久しぶりの本編の投稿です。

本編も更新して欲しいと言う要望が多かったのと、IFの方がまだ書きあがってないからこのような形で本編だけ投稿しました。


 ビッグマム海賊団との戦闘後の後始末について、終わった感があって作業も苦じゃないと言ったが、実際に一気に増えた仕事の処理をし続けていると段々と参ってくる。海軍はまだ良いが政府からの電伝虫が毎日四六時中かかってくる。

 

「加盟国がビッグマムとの関わりを持つなんて前代未聞ですから仕方がないのでしょう。裏で繋がりがある程度ならまだしもあの二人も堂々と居ますからね」

 

 そう、マニュが言うビッグマム海賊団から贈られて来たビッグマムの子供、あの存在があるから政府も追及を止めないのだろう。名前はカスタードとエンゼル、二人とも女性で3つ子の22歳とのことだ。オレが今16だから6つも上になるな。

 

 3つ子のもう一人はクラッカーと言い、この前の戦いの時も出張っていたらしく、ビスケットの能力と訊いて分かった。うちの子たちの報告によると雨によって完封できた能力者だったか……言わないでおいた方が良いだろう。

 

 それと送られた2人で思い出したがビッグマムから送られたのはオレ的には子供がメインじゃなく料理人がメインである。今までも技術を持っている者は集める様にしていたが流石に新世界でもトップクラスの腕を持つ者達、そのレベルが違った。

 

 料理やお菓子としてその場で提供する物がどちらかと言えば多いが、それでも加工方法のバリエーションが広がった。日持ちする物などは取引にも少し載せたが、プラントの食材でビッグマムの料理人が作った菓子という事で異様な値段で売られていった……もはやあれはオークションに近い状態だった。

 

 料理人の件を除いても、そもそもビッグマムとの取引によって取引額の総額は一気に上がり、それに追従するようにプラントの知名度も駆け上り、全体的に取引の件数が増えている。今回の件では裏関係での知名度が一気に上がり、良くも悪くもプラントの影響力も増している。

 

 まあ、政治関連の話はマニュに任せておいた方が良いだろう。無論オレとしては怪しい取引とかは無しの方向性で考えてる。こちらの商品を売る分には構わないが今回で増えた顧客から持ち出される話は大抵アウトな物だからな。

 

 それと忘れ気味と言うか半ば現実逃避の最中だったが吸収合併した元スキーラ王国の人たちの件もある。これによって人材面では困る事はそうそうないだろう。と言うより彼らはプラントに吸収されたことを喜んでいる節があるのがいささか疑問である。

 

 よくよく考えればマニュ以外にも政治方面の手伝いが出来そうな人材が増えた事になる。立ってる者は親でも使えという言葉がある。義理の父親でもそう変わらないだろうという事でまずは相談と言う形でいくつか仕事をお願いしたら快く受け持ってくれた。これでマニュも少しは休みが取れるようになるだろう。ちなみにオレに休みはしばらく無いと思った方が良い……ビッグマムから生きのびても疲労で死ぬんじゃないだろうが?

 

 とまぁ笑えない冗談にもならない現実は置いといて、政治は専門家に放り投げ…任せるだろ、戦闘に使ってた産土を勢力の拡大に回して、増えた取引で手に入れた作物の植え付けを行って、取引相手に挨拶だけはしておかないといけないし、本当に仕事が多いな。

 

 それと並行してマリージョアに分身を送らなければならない。と言うよりビッグマムの件が無ければ手に入れた食材の報告を既に終えてるはずだったのに、ビッグマムとの取引とそれに付随して増えた取引で報告する物が少し増えてるし、面倒な事になったが、とりあえず増えた物は置いといて現状ある資料と食材を持たせて分身体を送る事にした。

 

 そう言えば各海に送った分身からの連絡も戦闘に意識を割き過ぎて半分途切れていたと言うか、ちゃんと見れていなかったのもあり、確認しないといけない情報は予想していたよりも多かった。しょうがないので分身との接続を直して、重要な情報だけ纏めて送り直してもらった。はぁ、いつになったら終わるのか俺はため息を吐いた。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 中継地点同士を接続し直して一気にマリージョア近くの拠点に分身と大量の食材が送られた。その送られた分身である俺はイスト聖が用意した専用の船に食材を乗せるとすぐに聖地まで向かった。

 

 出迎えるのはイスト聖子飼いの部下たちなので息がつまるような高圧的な空気はなかったがそれでも場所が場所なのでやはり落ち着かない。

 

 まあそこは諦めるしかないので仕事と割り切って以前訪れた部屋まで向かった。イスト聖の私室に入ると物凄く上機嫌で出迎えられた。その様子を呆れたを含んだ視線で見ているクチーナさんの姿もあった。

 

「先に送られた報告書は見せてもらった。お前の功績は非常に大きく、素晴らしい物だ。この短期間でよくあれだけの品を収集してくれた。それと四皇との小競り合いについても聞かせてもらった。あれも被害が大きいが食に関して精通している面もある。煩い連中は黙らせるから取引は好きにするんだ」

 

 プラントが食の集まる地となるのもそう遠くない未来の事に成りそうだとイスト聖はまだ見ぬプラントの姿を想像して歓喜に震えている。

 

 ビッグマムとの件で大っぴらに擁護して立場は問題ないのかと思ったが、本当にこれでも天竜人の中で権力は強い方らしい。クチーナさんを含め部下の人も頷いているので本当なのだろう。

 

「それで報酬についてだが出来高制でその時に話そうと以前言ったがこれだけの成果を上げたとなれば我に出来る事であれば大抵の事はかねてやっても良い」

 

 人手に関しても技術者に関してもだいぶ潤ってきており、頼む予定であったビッグマムの件についての擁護も先ほど話の流れで決まっている。四季の有る海域については実は以前から調べて貰っている。そのため望む物があるかと言われればこれと言った物は無い。しいて言うのであれば面白い物とか何かないかと世間話の延長線で訊いてみた。

 

「面白い物か……面白いかは分からんがこの前どこかの家が悪魔の実を入手したと言う話があったな。不味いうえにかなづちになるような代物を喰おうとは思わんが、価値も高いし、能力次第では面白いのでとりあえずはそれでどうだ?」

 

 どうだ?と言われても他の家の物を勝手に報酬にして良いのかと疑問が湧くが、圧力をかければどうとでもなるとのことだ。やはりイスト聖も天竜人何だなと実感する横暴さである。決まれば行動も早くその悪魔の実を入手した家に圧力をかけに出かけて行った。そして連れて帰って来たのが目の前の男だそうだ。いや、何があったんだよ……

 

「悪いが、既に悪魔の実は娯楽として奴隷に食わせた後だったらしい。食わせて判明した能力は『ゴルゴルの実』黄金を操る能力だそうだが、いるか?」

「……」

 

 こちらをじっと睨んでくる相手をよそに話を続けるのか……いや、金を操ると言われてもオレの能力なら似たような事は出来そうだが、それに特化してる分の強みもあるのだろう。だが、能力以上に目の前の人物が気になった。彼はどういった経緯でここに?

 

「興味が無いから訊いていなかったな。本人に尋ねる方が早いぞ」

 

 食以外の事に関して期待するのが間違いだったなと心の中でイスト聖の認識を刻みなおして、テゾーロと名乗る男は俺より3つほど年上だそうだ。奴隷になった経緯を聞くとイスト聖、と言うよりは天竜人に対して恨みを込めて、怒鳴り散らすように語った。好きな女の為に天竜人に逆らうとはなんともまあ、無謀も良い所だな。

 

 だが、それだけ本気になれる人間は賞賛に値し、根は腐っておらず潜在能力も高そうだ。本来の予定とは違うが人材として考えても問題は無いだろう。ただし、もう一つおまけをつけてもらった方がスムーズに話が進みそうだ。

 

 イスト聖に報酬について追加条件を伝えると元の予定であった悪魔の実が無かったことから快く了承し、また別の家に圧力をかけに出かけた。そして、マリージョアからの帰りの船には先ほどの男と少し衰弱しているが美しい女性も一緒になった。あ、別に深い感謝とか忠誠とか要らないからな。

 

 




今回はちょっと短めですかね。まあ、話の区切りと言うか合間の様な場面ですので、次はもう少し内容も増えます。

まあ、ビッグマムの攻撃対策とは言え領地と住民が一気に増え、食材確保の報酬として将来的に使える事確定のテゾーロとステラの救済がまあ終わりましたので、次からは食材系の話は減って話を進めていく予定です。

それと、やっぱり本編の方が書きやすいんですよね。IFは休みがあんまりない事を除いても2、3週間かかるんですが、本編は長くても数日ですからね。短きゃその日のうちに書き切れます。

なのでIFを書くのを辞める気はないですが、これからは本編をチマチマ投稿していこうかなと思ってます。今までよりは投稿頻度が増える……と良いな。

と言う訳で本編の投稿が再開しますと言うお知らせでした。
では今回はこれ位でいつもの挨拶でさようなら。

読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第24プラント オハラの少女と流れ着いた巨人

連続で投稿なんていつ以来かな?
今日も今日とて本編の投稿です。

本編書きやすい、と言うか本編書いてる方が楽しい。
楽しいとリラックスになってIFの方の作業も捗ります。

とまあ雑談はこの辺で本編どうぞ!!


7/9:終わりの方を修正しました。詳しくは後書きで。


 ん、ようやく拠点とプラントの繋がりが戻ったか。大地からのエネルギーの回収が出来るから本体との繋がりが無くても平気とはいえ情報が伝わってこないのは少し心配だったから良かった。それにこの島は全知の樹があるから大地の力をあまり奪う訳にもいかないから早めの復旧はどちらにせよ良かった。これで品の確保も本当にギリギリだが間に合いそうだ。

 

「えーと、ビッグマムとの戦争に勝利、正式な取引の開始、げっ、情報の整理と送り直しの要求、それに他の海の分身からの調べ物の依頼も溜まってるな。面倒だけどコレが間に合ったから良いか」

 

 きちんと接続されたことにより停滞していた情報が一気に共有されていく、とりあえず本体に必要であろう情報を纏めて送り返すと、頼まれた調べ物をリスト化し、逆に俺の方から頼んだ品物を受け取ると全知の樹へ向かう事にした。

 

「忘れる所だった『豊穣の大地』」

 

 エネルギーの心配がなくなったため、借り受けていたエネルギーをこの島に多めに還元する。これで悪影響などが出る心配はないだろう。それにしても早めに西の海におけるエネルギー回収が可能な地点の確保やそこまでの道を繋げたりをやって行かないとな。

 

 そんなことを考えていると既に全知の樹の目の前まで来ていた。既に中はお祭り騒ぎの用で外までワイワイと声が響いている。オレは気付かれないようにそっとドアを開いて今日の主役に近づくとその名を呼んだ。

 

「よっ、ロビン。博士号試験合格、考古学者就任おめでとう!!」

「アスカルさん!!ありがとう!!」

 

「おっ、アスカル遅いぞ!!」

「遅れてきて目立つ算段か?」

「ははっ、間に合ったみたいだな」

「料理とケーキはまだあるぞ」

「ほらっ、アスカル、お前もこっちに来て飲め!!」

 

「一気に話しかけないでくれよ。先に渡す物を渡してからだな。それとロビンの祝いの席でお前は何を飲んでんだ?」

 

 外野が煩いのはご愛嬌だ。酒を誘って来た奴は周りからも少し叩かれてたが、「一番のめでたい時に飲んで何が悪い」と言う声でそれもそうだなと何人かが酒飲みに寝返って行った。無論、真面目な奴に没収されていたけどな。「まったく、ロビンを口実にするとは何事だ」と説教の声も聞こえている。

 

 それにしてもロビンは名前を呼んでお祝いの言葉をかけただけで花が咲いたようにその顔は綻び、満面の笑みとなった。ハナハナの能力者だけにってか……これは口に出さないでおこうか。事前に博士たちから聞いており、突然の接続切れで焦ったが、笑った顔を見ると本当に間に合って良かったと思える。

 

「ロビンこれは祝いの品だ」

「貰っても良いの?」

「もちろんだ。開けると良い」

「わぁ、これはコート?それにカバンまで!!それとこれは白紙の本に不思議なペン?」

 

 入っていたのは全部で四つだ。ロビンに合わせて作った特製のコートとカバンは色々な島を巡って採取した植物の繊維を組み合わせて作ってある。丈夫さと着心地・使い心地はもちろんのこと、難燃性、撥水性などにも優れている一品だ。それに加えて目玉なのがモーダスとホーニィ、それにモルの協力を得て作られた特製の本とペンだ。

 

「ロビン、その本にペンで何か書いてごらん」

「うん……うわぁ、書きやすい!!」

「そのページを破ってごらん」

「えっ!?」

「大丈夫だから」

「うん、えい!!」

 

 ビリっと音を立てて破けた本、破けたと言ってもページを綺麗に切り取ったようになっており、そのままっ本の後ろの方に挟んで保管できるようになっている。そして、破れたページをしばらく見ているとうようよと動き、段々とページが修復されていった。

 

「ええ!?」

「その本は生きている本なんだ。生きてると言っても動物みたいな物ではなく、生命力、再生能力の高い植物を生きたまま本の形にしたんだ。ペンも同じで生きた木なんだ。そのペンのインクは樹液の様な物で、地面に刺せば少し育ってインクも回復する。ペンの方は育ったら削る必要があるけどね。本は樹液以外の物は吸収しちゃうから水やジュースを零しても平気だ。でも蜂蜜は平気だけどメイプルシロップとかは零さないように注意が必要になる。あれは元が樹液だからね」

「凄い!!いくらでも書ける本とペンなんて!!あっ、でもお世話とか手入れは大丈夫なの?」

「表紙の所に水をたまにかけてあげれば大丈夫、ペンの方はインクの補充で地面に刺して置けば問題は無いよ」

「分かった!!本当にありがとうアスカルさん!!」

 

「こりゃまた凄いもんを用意したな」

「流石は国王様、持って来るもののレベルが違うな」

 

「どちらかと言うと趣味や実験で造った物なんだけどな。調査や調べ物に役立ちそうだからこれは良いと思って」

 

 予想通りロビンはかなり喜んでくれた。大事そうに本とペンをカバンに仕舞うと早速コートを羽織ってカバンを肩に下げて皆に見せて回ってる。あれだけ嬉しそうな姿が見られたのなら満足だな。しかし、オレの用意した物よりも次に渡される物の方がメインだからな。パーティを楽しんだ後にクローバー博士直々にそれは手渡された。

 

「さァ、学者の証だ!!ロビン、これを……よいかロビン!!考古学者が何たるかをよく知っておけ!!」

「よかったなロビン」

「おめでとう!」

 

 オレが渡した品の方がインパクトはあったし、はしゃいではいたが実際に嬉しいのはこの証の方だろう。博士や母親と同じ考古学者の証、それを遂に手に入れたロビンの感動は測れるような物では無い。

 

「『知識』とは!!!すなわち『過去』である!!!」

 

「樹齢五千年!!!この『全知の樹』に永きに渡り世界中から運び込まれた膨大な量の文献の数々、これらは我々全人類にとってかけがえのない財産である!!!」

 

「世界最大最古の『知識』を誇る図書館、この『全知の樹』の下にあらゆる海から名乗りを上げて集まった優秀な考古学者達!!我々がこの書物を使う事で解き明かせん歴史の謎などありはしないのだ!!」

 

 演劇の披露するかのように壮大に考古学者とはを語り切ったクローバー博士、権威と呼ばれるだけあり、その言葉の重みは考古学に身を投じていないオレにも少し伝わった。周りの学者やロビンもうんうんと頷きをもって応えている。

 

「よいな!これ程の土地で考古学を学べる幸せを誇りに思い、この先もあらゆる文化の研究で世界に対し貢献することを期待してる」

 

 証と博士の言葉を胸にし、頭を撫でられながら微笑むロビン、しかし、次にロビンから発せられた言葉で図書館の雰囲気は一変する。

 

「博士!私は……”空白の歴史”の謎を解き明かしたいの!!

「!!!な…い……いかんっ!!それだけは禁止だ!!今まで通り禁止だ!!!」

「え、どうして!?”歴史の本文(ポーネグリフ)”を研究すれば空白の100年に何が起こったかわかるんでしょ!?」

 

 はぁ、既に()()()()から良かったし、誰も指摘することは無かったけど、一応部外者であるオレがいる前でその言葉を言ってはダメだろう。

 

「ぬおーーっ!!お前っ!!……なぜそんな事まで!!さてはまた”能力”で地下室を覗いたな!!!”歴史の本文(ポーネグリフ)”を解読しようとする行為は”犯罪”なんだと承知のハズだぞっ

!!!」

 

「だけどみんな!!夜遅くに地下室で”歴史の本文(ポーネグリフ)”の研究をしてるじゃないっ!!!」

『!!?』

「貴様!!ロビンっ!!!なぜそんな事まで……どういう事だ!?それも全て覗き見てたというのか!!!」

「だって堂々と行ったってお部屋に入れてくれないじゃない!!」

 

 それはそうだろうな。ロビンは賢い、同世代の子供とは比べ物にならないレベルである。だけど、8歳の子供を世界規模で禁止されている犯罪に巻き込む事は出来ないだろう。たとえそれがその子供たっての願いであってもだ。

 

「だから…ちゃんと”考古学者”になれたらみんなの研究の仲間に入れて貰えると思って、私頑張ったのに!!!」

「……!!」

「ロビン…」

「確かに…学者と呼ばれるほどの知識をお前は身に付けた…だがロビンお前はまだ子供だ!!!」

 

「我々とて…見つかれば首が飛ぶ、覚悟の上でやっている事なのだ…命がけだ。800年前…これが世界の”法”となってから現実に命を落とした学者たちは星の数程おる……!!」

 

「いい機会だ教えておくが……歴史上古代文字の”解読”にまでこぎつけたのは唯一この『オハラ』だけだ。踏み込む所まで踏み込んだ我々はもう戻れない」

 

「全知の樹に誓え…!!今度また地下室に近づいたらお前の研究所と図書館の出入りを禁ずる!!いいな!!」

 

 ロビンはその言葉を聞くと頷くこともなく、涙を流しながら走り去っていった。フォローは必要だろうが、今追いかけるべきでは無いな。その前にまずは……

 

「子どもだと言うなら、もっと分かりやすく子供扱いしてやれ。ロビンがああなったのも、あんた等が要因の一つだろ?」

「……返す言葉も無いな。だが、あの子を道連れにする訳にはいかんのだ」

 

 そう心の底から苦しそうに思いを吐き出すと、一枚の新聞を渡された。歴史の探査船の生き残り、『ニコ・オルビア』と逃亡を手助けし、脱走した海軍本部中将、『ハグワール・D・サウロ』の指名手配に関する物だった。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 一晩立って多少は気持ちの整理も少しはついたかとロビンを探す、島にの大地から感知できるオレなら何処に誰が居るのか直ぐに探すことが出来た。そして、ロビンのすぐそばに異様な存在がいる事にも気づいた。オレはその場に急いで走って行った。

 

「ロビン!!それにお前は……ハグワール・D・サウロか!?」

「しまったで、見つかってしまったか!?」

「アスカルさん!?どうしてここが分かったの!?」

「土を伝って探知くらい訳はない。だが、驚いたな」

 

 そこに居たのは昨日クローバー博士から渡されてみたばかりの脱走中の海軍本部中将の姿があった。ボロボロで傷ついた身体、濡れた衣服、遭難して運よく流れ着いたのがこの島だというのであればDと言う名が持つ運命に恐怖を覚える。

 

「アスカルさん、サウロは悪い巨人じゃないの、だから内緒にして欲しいの、お願い!!」

「巨人かどうかなんて些細なことだ。ロビン、サウロと話をしたい。オレが行くように言ったと伝えて図書館で博士たちと過ごして待ってるんだ」

「でも……」

「サウロ、この島はオハラと言う名でロビンは考古学者の1人だ。ここまで言えば何の話がしたいか分かるな?」

「此処がオハラ!?それにロビンが考古学者!?ロビン、考古学者って言うのは本当だで?」

 

 サウロは慌ててロビンに確認するとその剣幕に驚きながらも頷いた。サウロはそれを見て放心しながらも、ロビンに大丈夫だと伝えて2人で話せる場を作った。

 

「数日前の新聞の記事だ。巨人には見にくいだろうがな」

「……既に手配までされたのかでよ。この島は既に疑われている処の話ではない。オハラは見せしめに”バスターコール”が掛けられる事になってるでよ!!」

 

 その言葉に博士たちの覚悟を決めて語った運命と言う言葉を思い出した。そして、それが間違っていないであろうという確証まで手に入ってしまった。

 

「博士たちの推察通りか……オハラの運命は決まっているのか……オルビアはどうなった?」

「別れてからは分からんでよ。追ってはワシが引き受けたから無事だとは思うでよ」

「そうか、オルビアが来るとしたらこの島だ。お前はどうする?」

「作戦まで数日ある。それまで体を休めるでよ。ワシは政府のやり方に納得は出来ん。それに助けてくれたロビンをみすみす殺させるような真似はさせられん!!」

「そうか……ロビンのフルネームはニコ・ロビンだ。その意味が分かるな」

「っ!?そうか、オルビアの……なおさら死なす訳にはいかんでよ!!」

 

 直ぐに確信が持てる情報が手に入ったのが幸いだ。このことを博士たちに伝えれば今後どう動くかも決めやすいだろう。大人たちは無理でも、子どもであるロビンならまだ逃がす事もまだ出来るかもしれない。博士たちはどうすることも出来ないだろう。だがそれ以上に問題なのがロビンの説得か……賢い、良い子であろうとするあの子でもこればかりは頷いてくれない可能性が高い。

 

「はぁ、厄介だな」

 

 ため息を一つ吐くと、最速で図書館に向かうためにオレは地面の下に潜って行った。そして、この時の本体と接続が切れ、エネルギーを節約するために覇気を使用していなかったオレには能力を使って聞き耳を立てていたロビンの存在を感知できなかった。急ぐあまり能力でロビンの居場所を確認せず、サウロの所にロビンが戻って行くのを見ていなかった。そのまま、いつも通り研究をしている彼らに近づくと海岸でであった巨人と彼の話を全て伝えた。

 

「そうか……手配書の件から無事だとは思っていたが良かった。それにしてもその巨人がここに流れ着くとはこれもまた運命か、その彼の言う通り、オハラの事がバレたことを伝えに彼女も戻ってくるだろうな」

「それでどうするんだ?」

「わしらはこの『全知の樹』を捨てる事は出来ん。政府がわしらと研究の全てを消し去るつもりだというのであれば尚更にな」

「ロビンはどうする?」

「あの子だけは逃がす、早くに知る事が出来て良かった。今からなら余裕を持って船に乗せてやることが出来る」

 

 覚悟を持ってこの地に残る事を決めた学者達、研究を取りやめてロビンを逃すための準備に入り始めた。海岸からここまでならそろそろロビンが来てもおかしくないと思ったのだが、ロビンが一向に訪れない事に不振に思い海岸に戻ると慌てた様子でサウロが叫んだ。

 

「アスカル!!全部ロビンに聞かれてたんだでよ!!ロビンの奴、お母さんが帰ってくるなら島を出ないと一点張りで姿を隠しちまった!!」

「オレのミスか……探知……見つからない!?土に触れないように木から木へ能力で移動してるのか!!」

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 アスカルが潜って行ったのを確認すると遠くの木の上に潜んでいたロビンはそっとサウロの近くに戻って行き、声をかけた。

 

「サウロ」

「ロビン!?お前、アスカルの言ってた図書館に行ったんで無かったのか!?」

「お母さんと会ったって本当?」

「お前、どうやってそれを!?」

 

 サウロの疑問にロビンは腕や目、耳を咲かして見せる。能力者である事は直ぐに分かった。そして、盗み聞くには最適な能力だと理解した。

 

「博士たちが殺されるって本当なの?」

「ああ、全部本当のことだ。だからロビン、お前は直ぐにでもこの島を出るんだで!!」

「全部本当なのね。ならお母さんがこの島に戻ってくるってのも本当なのね。なら私はお母さんを待つ!!」

「いかん!?いかんでよ!!そんなことをしたら逃げる時間が無くなるでよ。逃げなかったら政府にお前まで殺されるでよ!!」

「逃げても居場所なんて無い。博士たちみんながいないなんて、お母さんにもう会えないなんて絶対にいや!!」

「ロビン!!!」

 

 ロビンはサウロにこれ以上何かを言われる前にその場から走って去って行った。追いかけようにも足を怪我しているサウロではどうすることも出来ないでいると、そこにアスカルが戻ってきた。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 図書館に着いたオレは全体に響き渡るような声でロビンがいなくなった事を伝えた。どういう事だと全員が集まった所でオレのミスとロビンの考えを話した。

 

「能力で探査は無理だった、探すとなれば森をしらみつぶしに探す事になる。それこそ逃げ場を無くすぐらいの勢いでだ」

 

「なるほど、ロビンの能力を考えれば追手を見つけて逃げるにはもってこいじゃ」

「どうする?作戦の日は五日後だろ?不審に思われずに逃げ出すなら明後日までが限度だ」

「そもそも、定期船は明後日出航だ。それに乗れないと不味いだろう」

「準備の事も考えればすぐにでも出てきて貰わないと……」

 

 騒ぎは学者全員に瞬く間に広がりロビンの脱出の準備をするチームと捜索チームが別れて結成されていった。

 

「いじめの事を聞いて護身用に色々教えたのが仇になったな」

 

「こんな事はワシらでも予想できん。悔やんでる暇はない」

 

「……研究物を地に沈める事も出来るぞ」

 

「……いや、これはオハラの、いやワシらの運命じゃ、王であるお主には慕う者がいる。それを守らなければならない。それこそ巻き込むわけにはいかんよ」

 

「そうか……いや、そうだな」

 

 その後もロビンの捜索は続いたがなかなか見つけられず日が落ちて行った。まだ子供であるロビンが眠らずに警戒を続ける事は出来ないだろうと人数と体力に任せて捜索を続行したが見つける事は叶わなかった。




装備とアイテムをゲットし、少しだけ戦闘や諜報の手ほどきを受けたロビンちゃん。前後の本隊の方でのトラブルがあって本調子では無かったとはいえ、アスカルを出し抜いて逃走。

【7/9:初めは逃げきれず捕まった事にしましたが、次の話が書きにくかったので変更しました。ロビンちゃん、アスカルを出し抜いて逃走成功】


プラントの方はどうしようかな。この作品は年表とにらめっこしながら書いてるんですが、この後関われそうな事件が全然ないんですよね。まったくないわけでは無いんですがね。

いや、以前から言ってた話を進めると言った面もあり、プラントの目標達成に少し近づける話は入れるつもりなんですが、それに何年もは流石にかからないしな。今回のオハラと次に関われそうな事件とプラントの目標に関する話、全部合わせても3,4年が良い所……どうしても空白の部分が出来そうだな。あ、IFで先に出してるキャラの加入もあるか。あいつで味方のオリキャラは最後の予定だし、丁度良いか。その後は色々と関われる点も増えるからどうにかなりそう。

食べ物系の話もそろそろストックが心もとないし、ついでに各海で関わりたい島、後は映画やアニメオリジナル系も漁って見るかな。

まあ、今回もこの辺でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第25プラント 降りかかるバスターコール!?ロビン絶対絶命!?

久しぶりの投稿です。遅くなって申し訳ありません。実は7月中に職場で倒れて、救急車で病院に運ばれたりしておりまして、すぐに退院しましたし特別異常は無かったのですが、念のため体を休める為に仕事も休んで何日か寝て過ごしていたため、執筆が遅れました。

完全に意識を失ったのも、救急車に乗ったのも初めてでした。本当に意識失うと前後の記憶が結構飛ぶんですねぇ……貴重な体験をしましたが、もう2度と味わいたくはないですね。……検査で異常は無いって結局は原因が分からないって事なんですよね……働き始めて4か月……疲労かストレスかそんなところでしょう。我ながら貧弱すぎますね。

と言う訳で言い訳をしつつ遅くなった本編をどうぞ。


 交替で捜索に明け暮れ、誰かの身体にロビンの目や耳が咲かせられてないか互いに注意しながら探し続けたがその成果は得られなかった。ロビンを見失ってからかなりの時間が過ぎ、何度も日が沈み、昇った。

 

「もう、5日目だ」

「政府がやってくるのは今日だぞ」

 

 オハラに政府の人間がやってくる日、考古学者が殺される日になってもロビンは姿を現さなかった。みんなが焦りを隠せずにいると、いきなり図書館にその人は入ってきた。

 

「久しぶりね、みんな……」

「オルビアさん……」

「オルビア……」

 

 問題のロビンが合う事を望んでいるオルビアだった。元より海軍から逃げ出した事は知っていたが、ロビンよりも先にこの人に出会う事になるとはな。オルビアが博士たちに政府が来ることを話そうとしたが、それは既に知ってる事だ。それよりも最悪な問題が残っていることをオルビアに伝えた。

 

「ロビンが!?」

「ああ、逃げてから丸々5日経っている。すまない」

 

 ロビンが自分に会う為に島から逃げ出さず、ましてや博士たちから逃げ続けていると聞かされたオルビアは眩暈でも引き起こしたのかふらついて倒れそうになった。慌てて支えられたが顔色はとても悪く見える。

 

「ごめんなさい、少し困惑してしまったわ。だけどこうなったなら尚更会う訳にはいかないわね。断ち切らなきゃ、あの子が知っていても関係ない。彼女を”罪人の娘”にする訳にはいかない。もう行くわ、全員!!いいわね!!私とみんなは仲間でもなけりゃ知り合いでもないっ!!これを頭においておいて!!何が起きても!!」

「オルビア!!!待て!!何をするっ!!」

 

 駆け出した女性を止める事は出来ず、ロビンの母親は銃を片手に図書館を出て行った。それとほぼ同時にオレはようやくロビンの能力の気配を感じ取れたのでロビンの居場所を探る事に集中した。

 

「これは不味いか?」

 

 ロビンのだいたいの居場所が出て行ったオルビアの位置と重なり、その近くには普段は島から感じられない気配がいくつか存在する。政府の人間の近くにいては危ないと考え追いかけようと思ったが既に図書館の外にも役人が近づいているのに気づく、せめてとオレも能力を使ったが、結果は分からない。成功を祈るばかりだ。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 銃を持ったオルビアと相対している政府の人間、CP9のエージェントが二人とその長官、余裕を持った表情で淡々と島に来た理由と軍艦の意味を告げると、部下に命令を伝えた。

 

「仕留めろ……」

 

 その瞬間にCP9によってオルビアに攻撃が繰り出されるはずだったが、その動きを封じる様に身体から生えた小さい手が動きを邪魔した。在り得ない出来事に直面したCP9は片方は動き出そうと勢いのままに転倒し、その身体能力が仇となり頭を強打し気絶、もう一人は何とか持ちこたえて踏みとどまり、自分の邪魔をしている手を振りほどこうとしたが綺麗に体を抑えられ直ぐに外せず、呆気に取られていたオルビアが咄嗟に手元の銃を撃ち放った事で痛手をおった。しかし、無理やり手を振り切り、オルビアに一撃を入れる事に成功した。

 

「ウ……!!!」

 

「おいおい、今のは何だったんだ?」

「分かりません。ですが何かしらの悪魔の実の能力である事とさっきの物がその者の身体であればおそらく10歳にも満たない子供かと」

「ちっ、ガキにしてやれられたってのか……おそらくコイツの関係者だろう。考古学者連中と関わりのある子どもについて調べりゃ出てくるか?とりあえずこの女を連れて行くぞ。そこの馬鹿は部下に回収させとけ」

 

 能力者を探すかと考えたが、事前の任務が先だと気絶した奴をその場に残し、オルビアを担がせると図書館の方へ向かった。そこから少し離れた場所には少し赤くなった手を抑えて、気配を消しているロビンの姿があった。

 

「お母さん……図書館に行かなきゃ……これは?」

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 政府の役人が慌ただしくやってきた。扉の近くにいた者を乱暴に押しのけ、聞く耳を持たない姿に呆れる思いだ。碌に話も聞かずにオレも一緒に追い出す始末、これは政府に対して使えそうだな。しばらく、学者に混ざって待っていると長官と呼ばれる政府の高官らしき者が現れた。

 

「やっとるか諸君~~」

「ご苦労様です!!長官殿」

「しかしまァ、この島の森には…恐ろしい猛獣が出るんだな。殺されかけたぜおれァ、ムハハハ」

 

 そう言って投げ出されたのは先ほど出て行ったオルビアだった。ボロボロになった姿が痛々しく、昔からの仲間である学者たちは狼狽え、目を背けている。

 

「こいつは脱獄囚…この女の一団も先日古代文字解読の罪で消されたのさ…てめェらがこの女とつながってるってんならだいぶ話は早ェんだがな」

 

 誰も口を開かずにいる所を考えるに出ていく時のオルビアの言葉を尊重しているんだろう。しかし、全知の樹に響いた爆音によってそれが意味の無い物となった。全知の樹への被害を考え、学者たちは怒りに打ち震えるが電伝虫からの報告でまた顔色は変わった。

 

『発見致しました!!地下に部屋があり”歴史の本文”と見られる巨大な石が一つと明らかな古代文字の研究書類が!!』

「……!!」

「ムハハハ…さて『オハラ』の学者達よ…!!!ここに貴様らの『死罪』が確定した!!実に残念…今日この日…世界一の考古学者達が一同に命を落とすとは……!!……みろ拍子抜けだ。こんだけだおれの仕事は後は”五老星”に報告だ」

「了解」

 

 五老星に直接報告するほどの案件なのかと少し疑問に思いながらも特に何もせずに様子を見守る。まあ、五老星との電話に割り込むくらいの事はしておこうと考えていると先に立ち上がった人物がいる事に驚く。

 

「死ぬ前に”五老星”と……世界のトップと話をさせろ!!この考古学の聖地『オハラ』が長きに渡り研究を続け、夢半ば”空白の百年”に打ち立てた仮説を報告したい!!!」

 

 長官と呼ばれた男が掛けた電伝虫が掛かったタイミングでオレも話に割り込む事にした。このタイミング以外で此処を離れる手段は無いだろう。

 

「その仮説とやらはオレは聞いてちゃダメな奴じゃ無いかなクローバー博士?」

「そうじゃった。客人であるお主を巻き込むわけにはいかんな」

『その声は!?』

「誰だお前、いきなり割り込んで、学者じゃないのか?」

「ああ、プラント・アスカル。プラント王国の国王をしている。ここには調べ物で来たんだが、五老星にはイスト聖からの依頼と言えば伝わるだろうか?」

「国王!?」

『やはりか……』

 

 そこまで言うと長官と呼ばれた男は顔色を変えた。何でこんな所に居るんだよと言った感情が漏れ出ている。五老星と繋がった電伝虫はなんとも形容しがたい表情を浮かべた。

 

『しかしなんともまぁ間の悪いことだ……CP、その人物は政府にとって、また世界にとって重要な人物だ。丁重に対応するように』

「了解しました!!」

「既に、学者と一緒に無理やり図書館を追い出された処なんですが、そこいら辺の話は何処ですればいいですかね?それと図書館が無くなると少々困るんですが」

『知りたい情報については最大限に協力するよう伝える……それで頷いて貰えると思っとるがどうだろうか?』

「ええ、それではオレはこの場から離れさせてもらいます」

 

 学者たちの研究は凄まじいの一言に尽きる。きっとその仮説を耳にしてしまえばオレも五老星の排除する対象に含まれてしまう可能性がある。これ以上この場に居続ける訳にはいかない、ロビンの事については彼らに任せるしかないが、それだけが心残りだ。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

SIDE:クローバー

 

『消せ』

 

 ワシが打ち立てた仮説を語り切ろうとしたその時、銃の音が聞こえた。ワシは驚き、その王国の名を口にする事は出来なかった。しかし、ワシが撃ち抜かれる事は無かった。その原因はその人物の腕を押した幼い腕によるものだった。

 

「また、この腕か!?探せ、能力者が潜んでるはずだ!!」

『先に攻撃の合図を出せ、オハラは知り過ぎた……誰一人逃がしてはならん!!』

「では大将センゴクより預かったこの”ゴールデン電伝虫”で『バスターコール』だ!!!以後よろしく」

 

 『バスターコール』……海軍本部の戦力を用意していたというのか!?だとすればすぐにでもロビンを逃がさねば、しかしこやつらの前で動くわけにもいかん。そう思い詰めていると誰かの叫びが耳に入る。

 

「おい……!!アレ……」

「うわァ!!!”全知の樹”に火が……!!!」

「おい、何のマネだ世界政府!!!」

「俺たちの首だけとればいい筈だぞ!!!」

「知らねェよ、さっきの爆破で火がついちまったんだろ?」

「フザけるな!!あそこにどれほど貴重な文献があると……」

 

 口々に叫んだ者達を押さえつけようとするが、長官と呼ばれた男が引き上げを命じたため、わしらも動けるようになった。みなが図書館の火を消し止めようと動き出した。

 

「その女は連れてこい!!まだそいつしか知らん情報があるんでなここで死なれちゃ困る」

 

 そう言ってオルビアを無理やり立たせて連れて行こうとする。弱った彼女をこれ以上どうするのかと何人かが止めようと動いた。それと同時にまた幼い手が咲き誇ったのが見えてしまった。

 

「お母さんを放せ!!『十輪咲き(ディエスフルール)カードスロウ』!!」

「なっ!?ぎゃぁああああ!!??」

 

 いきなり響き渡った堂々とした声と共にオルビアを連行しようとしていた役人の周りに等間隔で腕が生え、遠くから放たれた紙を役人を擦るように投げてはキャッチしてを繰り返している。紙はとても鋭利な様で、切り傷が体中に出来て血を流している。そして、それをやった犯人であるロビンもその姿を現している。

 

「よ、よくも、今すぐアイ、ツ…を……あ、へ」

「から…だ…が……」

「樹液と薬草を混ぜてしみ込ませた特製のカード、そのまま眠ってて」

 

 アスカルめ……何が調査に役立ちそうだからじゃ……あんな物騒な代物をロビンに渡しおって。無力化された長官とCPに怖気づきながらもロビンに銃を向ける他の役人たちも素早く関節を封じ、カードを投げて動きを封じた。ワシもオルビアも成り行きを見守っていた者達も驚きの視線を送ることしか出来ないでいる。

 

「お母さんですよね?私、ロビンです……ごめんなさい。博士もお母さんも絶対に喜ばないって分かってたけど、どうしても会いたくて、お母さんが傷つくのが見たくなくて……一人はもう嫌なの、一緒に居てよ。私ね。勉強したんだ。考古学者にもなれたの。”歴史の本文”も読めるんだよ。だから…だから…一人にしないでよお母さん」

 

 ”歴史の本文”を読めるという告白に全員が驚くが、それ以上にわしはやるせない思いで胸がいっぱいになった。”独りにしないで”と言ったようにロビンは自分を一人と思っていたんじゃ。ああ、わしたちは何も出来ていなかった。アスカルの言う通り、もっと子供として扱うか、きちんと仲間として扱っていれば何かが変わって居たのだろうか?ロビンの言葉を聞いて、驚きで固まっていたオルビアもそっと近寄っていった。

 

「ロビンなのね?大きくなったわね……驚いたけど私も会えて嬉しかったわ。ごめんなさい、貴女を一人にしてしまって、ごめんね、ロビン」

「お母さん!!」

 

 抱き合う二人を関係ないと言わんばかりに島に砲撃の雨が降り始めた。図書館の中におった役人たちが慌てて外に飛び出し、倒れている仲間や長官に驚きながらも動けるものが担いで島から逃げ始めた。

 

「”歴史の本文”を読めるというのは本当か!?わしがちゃんと目を光らせておれば……!!」

「ごめんなさい……でもそれ以外思いつかなくて」

「そんなことも出来る様になってるなんて…本当に驚いたわ。頑張ってたくさん勉強したのね。誰にでも出来る事じゃない…すごいわロビン!!」

「幸いにもロビンの姿を見たのは遠巻きに見てた役人だけ、”歴史の本文”はもちろん、学者である事も割れてない。ここでぐずぐずしてはいかん。オルビア……ロビンを連れて逃げろ!!!何とかロビンを避難船に潜りこませれば島を出られる!!!」

 

 そうワシが捲くし立てていると見覚えのある顔の巨人が現れた。ロビンの名を叫び、ずっと探していたという彼こそサウロ元中将だろう。アスカルから聞いていたが、実際に目の前にすると運命の恐ろしさを感じる。

 

「サウロ!!……あなたがなぜこの島に」

「何の因果かかと……!海で遭難してもうて浜辺でロビンに助けられた。そんな事より事態は最悪だで!!早く島を出ねぇと!!」

「……ロビンをお願い!!!娘を…!!必ず島から逃がして!!」

「いやだ!!お母さんは!?一緒にいてよ!!来ないなら私も残る!!本気だよ」

 

 ロビンはそう言うと手に本を持って構えた。何が何でも動かないという意思を見せるが、それでもオルビアの意思は変わらない。そっとロビンの肩に手を置いて説得を始める。

 

「"歴史"は…人の財産、あなた達がこれから生きる未来をきっと照らしてくれる。だけど過去から受け取った歴史は次の時代へ引き渡さなくちゃ消えていくの……。「オハラ」は歴史を暴きたいんじゃない。過去の声を受け止めて守りたかっただけ……!!私達の研究はここで終わりになるけど、たとえこの『オハラ』が滅びても……あなた達の生きる未来を!!私達が諦めるわけにはいかないっ!!!」

「わからない!!」

「いつかわかるわ、さァ行って!!サウロ!!」

「ええんだな!!」

 

 巨人族の身体には並大抵の毒では回らない、ロビンのカードも意味をなさないだろう。どれだけ腕を生やそうと小さな子供の力では巨人の力には敵わない。彼がいてくれて良かった。そのおかげでロビンを逃がす事が出来る。

 

「お母さァん!!」

「生きて!!!ロビン!!!」

 

 泣き叫ぶロビンの声はだんだん聞こえなくなり、辺りに響くのは砲撃の音だけとなった。すすり泣くオルビアの声もワシの耳にさえ届かん。ああ、生きてくれロビン。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

SIDE:ロビン

 

「サウロー!!戻ってお願い!!」

「だめだでそれはできん!!」

 

 私はお母さんの願いでサウロに連れられてこの島から出ようとしている。サウロにはカードも能力も効かないし、私の意見を聞いてもくれない。手の中から出れない私はせめて周囲を確認しようと目と耳を生やした。

 

「ロビン!!!誇れ!!!ロビン!!!お前の母ちゃんは立派だで!!!オハラは立派だでよ!!!この島の歴史は!!いつかお前が語り継げ!!ロビン!!オハラは世界と戦ったんだでよ!!」

「サウロ!!砲弾が来る!!少し開けて!!『五輪咲(シンコフルール)カードスナイプ』」

 

 カードに勢いをつけるために腕を5本咲かせて、次々と力を加えながら真っすぐにカードを放った。するとサウロに向かっていた砲弾に当たり、砲弾は空中で爆発した。

 

「助かったでロビン!!お前さんは避難船へ走れ、ロビン」

「サウロ?」

「ロビンが傷ついたらどうするんだで……!!」

 

 サウロは岸の近くの海軍の船に近づくとその船体を持ち上げんとその力を振るった。サウロに生やしていた耳と目のおかげでそのやり取りは聞こえていた。制止の声も届きはしない、サウロは止まりはしない。

 

「うわァア!!中将やめてください!!何する気ですかー!!!」

「それ以上…!!」ちょっと待って気は確かですかー!!!

「何が正義か今はわからんで、ワシはただ友達を守る…!!!覚悟せェ…ワシを敵に回すと…たたじゃ済まんでよ…!!!」

 

 サウロは襲い掛かる砲撃や銃弾をものともせずに船体を持ち上げると別の船に叩きつけた。大きな爆発が上がり、何隻もの船が沈んでいく。だがサウロも傷つかない訳では無い、少しずつボロボロになって行くサウロを見ていられなかった。

 

 そして未だ変わらず、いや少し前よりも悲惨な状況になっていく島の姿を、燃え尽きていこうとする全知の樹の姿を目に移し涙がこぼれる。戸惑っている私にサウロが声を上げた。

 

「ロビン!!お前の母ちゃんの望みは何だ!!!」

 

 それを聞いて私は急ぎ船へと走り始めた。まだ船の姿は見える。これでも体は同年代の子よりも鍛えられている。能力を多用して疲れているけど、まだ十分走れるし、今ならまだ間に合うはずだ。今は理解できないけど、お母さんとサウロの想いを無駄にしない為にも私は船へと足を進めた。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

SIDE:サウロ

 

 良かった。ロビンはどうにか避難船に乗り込む事が出来た様だで、後はワシはどうなるかは分からんがこれだけ暴れたんだ。目立つこの身ではこの状況から逃げ出すのは無理だろう。せいぜい最後まで暴れてみせるでよ。

 

「”アイス(ブロック)”『両棘矛(パルチザン)』!!!」

「……!!クザン!!!」

「あららら…『バスターコール』が元海兵によって阻止されたんじゃあ、恰好つかんじゃないの…」

 

 既にロビンは逃がした。ワシは悪あがきをして、少しでも余裕があれば図書館の方を見に行く気だったが、こいつが居た。クザンやサカズキの奴も参加していたはず、こいつらの強さは異常だで、ワシでは到底かなわん。目的は達成しているんだで、無理に戦う必要はないが、ワシはどうしてもコイツに聞かにゃならんことがある。

 

「……!!クザン……!!おめェはこの攻撃に誇りが持てるのか!!?おかしいでよ……!!お前も知っとるハズだで!!!これは”見せしめ”だ……!!その為にオハラを消すんだで!!」

「それが今後の世界の為なら仕方ない。現に学者達は法を破ってんじゃない…!!正義なんてのは立場によって形を変える。だからお前の”正義”を責めやしない。ただ俺達の邪魔をするなら放っておけねェ……!!!」

 

 

ドォン!!

 

「うわァア!!!避難船が吹き飛んだァ!!」

「な…な!!!なんでだ!!!」

「砲撃です!!軍艦から……!!」

「サカズキ中将の艦から!!!:

 

「……!!バカ野郎……!!」

 

 クザンが小さく何かを呟いていたがワシはそれどころでは無かった。ロビンがあの船に乗り込んだところをワシは見た。きちんと逃げれたかワシは確認したんだで、それが、それが……!!!!

 

「これが正義のやる事か……!!!これでもまだ胸を張れるのかァ!!!」

 

 ワシはやりようのない気持ちの全てをぶつける為に、クザンへと殴り掛った。クザンも動揺した為か動きが鈍かったがワシの攻撃が当たるほどではない。

 

「……!!あのバカ程行き過ぎるつもりはねェよ!!!」

「ふざけるな!!!何が正義だ!!!ワシは…ワシは…お前らを許さんぞ海軍!!!!」

「くっ!?”アイスタイムカプセル”!!!」

 

 もはや何も関係ないこの惨状を生み出した海軍に…そして政府に少しでも痛手を与えてやろうとなりふり構わず船を襲おうと飛び出した。しかし、それをこいつは許さなかった。伸びてきた冷気に掴まったワシの身体は徐々に凍り付いて行った。

 

「……すまんでよ…オルビア…ロビン……」

「”アイスタイム”」

 

 無念だで、オルビア願いを叶えられず、ロビンを守り通す事も出来ず、八つ当たりも出来ないまま静かにワシの意識は眠りつく様に薄れて行った。

 




完全なオリジナルと違って、原作とセリフとか状況見合わせながら書くので照らし合わせる作業に時間が掛かったし、セリフを映すのにも時間が掛かりましたし、そこいら辺も投稿が遅れた理由です。内容考えてるのと違ってみながら文章打ち込むだけって結構面倒で憂鬱な作業です。

ロビンちゃん、実は結構な強化でした。プレゼントはただのメモ帳ではございませんでした。樹液と一緒に薬効成分をしみ込ませることが出来、防刃、防火、防水など耐久に優れた丈夫な紙は切れ味の凄い投擲武器になってます。

コートはとにかく丈夫なだけでこれ以上特別な要素は無いです。カバンとペンに関しては一応設定がありますが、まだ登場させません。

ロビンちゃん、手ほどきを受けて多少心身共に強化、妖怪や化け物呼ばわりされてもめげずに無理やり避難船に乗り込みます。CPはロビンちゃんが既に無力化しており学者である事もばれてません。その結果がこれです。

アスカルは王としての立場がありますし、IF話ほどの立場は無いので無理やりな手段も取れません。冷たいと思うかもしれませんが、何もかも救うような都合の良い話はありません。学者やサウロの死はそのままです。

さて、そろそろいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第26プラント 生きるオハラの意思、PLANT計画への道

 ふわふわとした感覚と纏わりついてくる様な倦怠感、そして段々と気づいていく身体中にはしる痛みの数々……海水に触れている事によりその痛みはより強く感じる。

 

「……」

 

 意識が覚醒していくと共にフラッシュバックする光景…砲弾が降り注ぐ故郷、炎に包まれる大切な場所、残る事を決めた肉親と過保護な保護者達、そして短い時間だったけど確かな友達……微かな意識がかすれる様に更に薄れようとした時、ふっと身体が浮く感覚を覚えた。

 

「う…あ……」

「無事…とは言えないけど、生きてて良かったと思ってるよ」

 

 そっと海に漂っていた身体を持ち上げると痛みの原因である海水を払い、治癒効果をこれでもかと言うぐらいしみ込ませた包帯を負傷部分に巻き付けた。そして、漂流して弱った身体をいたわるように少しずつ飲み物を流し込んだ。まだ少し耄碌しているロビンに彼女の意識を失う前の行動を順番に語った。

 

「君は船に乗ってからもサウロが心配で『目』を張り巡らせていたから砲撃に気付いたようだけど、あれだけ多くの人がいれば砲弾を防ぐだけの威力でカードをぶつけるのは不可能だった」

「……」

「そう咄嗟に判断して船外に飛び出ようとしたが近くの人が邪魔で一歩遅く、爆風に焼かれながら吹き飛ばされて海に叩きつけられた」

「……」

「子どもの能力者が爆風に焼かれて海に叩きつけられれば普通は死ぬけれど、耐衝撃、耐炎に優れたコートと浮力に優れたカバンのおかげで命からがら漂流していたというわけだ」

「アスカルさん」

「なんだい?」

「せっかく、教えてくれたのに何も出来なかったよ……」

 

 そう言うとロビンの目からはポロポロと零れる様に涙があふれ始めた。子供らしくない賢さ故に直ぐにあれらが夢や幻の類でないと気付いてしまった。受け止めてしまったトラウマに、何も出来なかった不甲斐なさに、ただ打ちひしがれていた。

 

 

 

 オルビアが攫われたあの時、ロビンは急いで後を追いかけようと図書館の方へ走り出そうとした。しかし、ロビンの居た()()から飛び出すようにそれは現れた。

 

「これは?説明書?」

 

 それにはアスカルからプレゼントされた道具、コート、カバン、ペン、本の性能と使い方が事細かに書かれており、いま必要であろうページに付箋まで付けられていた。

 

「これなら!!薬草はそこらにいくらでも生えてる。私なら簡単に見つけられる!!」

 

 言うが早く、目を咲かせ、腕を伸ばし、樹液と混ぜると次々に本にしみ込ませてはページを破っていった。そうして、博士を助け、母を救い、サウロを守れた。しかし、最後には全て失い、自分だけが生き残った。

 

 

 

「助けられると思って、渡した物ではないよ」

「…!?」

「あれはロビンが生き残るために、その手助けとして渡した物だよ。政府が来るのは結構前から分かっていた事だからね。博士たち学者が着いていけない以上は一人で生きるための物は必要だと思った。あの場で逃げる様に言ってもロビンは逃げなかっただろう?だからあのページを見せた」

 

 その言葉はロビンの心を揺らす、裏切られたかのような感覚だが、決してそうでは無いのが分かる。博士たちと変わらない、ロビンの事を考えての事に違いはない。それがロビンが望んだ光景では無いとしても、それは関係が無い。

 

「なんで…私だけ生き残ったんだろう…一緒に居たかっただけなのに」

「それを誰かが望んでいたか?みんなは君になんて言った?ロビン」

「……生きて」

 

 何度も言われた。博士たちには自分だけでも逃げるよう説得され、母には考古学者としての在り方と共に託され、サウロにも母の望みは何だと怒鳴られた。母も博士もサウロも、決してロビンに助けてもらう事を望んだ訳では無い。ロビンに生きて欲しかった。ただそれだけである。母の言葉の意味が分からずとも、残された者は残した者の言葉に従う他は無いと目に少しばかり光が戻った。

 

「目的を果たすために生きるだけが全てではないけれど、ロビンはこれからどうしたい?」

「……私はオハラの子、世界最高、考古学の聖地、オハラが最後の学者、私は過去を受け止める、自身の過去も受け止めて、そして”空白の歴史”を解き明かす!!」

「続ける限り政府からの追跡は免れない。表立って協力することは出来ないけど、応援しているよ。カバンの中の物は餞別だよ。今は少し休むと良い」

 

 そうアスカルが言うとロビンの意識は心地よい暖かさに包まれたままゆっくりと沈んでいった。次に目を覚ました時にはアスカルの姿は無かった。不思議と痛みは無く、自分の身体をみて見ると怪我の殆どが治っていた。

 

「私はやり遂げてみせるよ」

 

 堅い覚悟をその身に宿して、オハラ最後の考古学者の歩みが始まった。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

「政府から目をつけられる訳にはいかないから、これ以上は本当に手を出せないな」

 

 調べ物の為だけに立ち寄った島で偶然、出会っただけの少女だった。彼女がこれからどうなっていくのか、これから先の人生までは保証できない。当たり前の事だが、世界と戦う少女に手助けが出来ない事実に遺憾を示しながらも次の行動へと移る。

 

「この海での拠点とエネルギー確保の場所の目途は立った。そして今回の補填として政府の情報網を使えるのは本当に大きいな……」

 

 見聞色の覇気でロビンを捜索したり、オハラから持ちだせた資料の情報を纏めたりしている間に本体は五老星とのやり取りで手に入れた権利を既に使用していたようだ。

 

「PLANT計画の段階を進める事が出来そうだね」

 

 安定度といった面では不安があるが、四季が独立して存在する海域の情報と政府とは別口で入手したとある天候を研究している島の情報が計画に役立ちそうだ。

 

「四季の海域は新世界担当に任せるとして、これは情報網の確立を急がないとな」

 

 送られた情報に記されたのは『ウェザリア』と言う”天候を科学する”と言う世界中を漂う空島についての情報だった。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 新世界と言うのは大海賊時代だとか以前に屈強な海賊たちが蔓延る危険地帯だ。力を持つ海賊の縄張りとなっている島が無数に存在するこの海で自身の領域を広げるというのはまず難しい。

 

「流通の強化の恩恵を受けれるんだから十分でしょう。事実、以前に受け取った縄張りからの菓子類の品質は上がっているでしょう?」

『確かに利も多い話だが、そればかりでママを納得はさせられないんだ。こちらの事情も少し汲んではくれないか?』

「まあ、付き合いもありますし、こちらが取り扱う食材の優先権と次回からの取引を少し勉強しますよ。それと具体的な物が必要なら菓子類で質が良い物はいくつか手に入れてるので贈りましょう」

『すまない、助かる』

「ええ、では今後とも取引はもちろん、縄張りに関する情報交換なども含めてお願いします」

 

 ビックマムと言う大海賊と取引があるプラントならではの方法はある。まずはビックマムの縄張りの近い、ビックマムの影響力がある海域の島を手にしたり、ビックマムの縄張りで優先度の低い場所を多少の対価で譲って貰ったり、ビックマムの顰蹙を買って滅んだ島を貰ったりとそれこそ色々と出来る。

 

「拠点の数は確保できてるがそれでも範囲が狭いか」

 

 だがどうしてもビックマムの影響が及ぶ範囲にかたまりがちで前半の海や他の4つの海に比べて広がりが悪い。これでは新世界独自の品々の回収は進められないし、そう言った国の利益はもちろん趣味でもある植物の採集もままならない。

 

 新世界の一部海域にて四季の恩恵を安定して受けれる場所があるとこの前の政府からの情報提供で手に入れたがその場所がどうにも面倒な位置にあり、戦略的な拠点としての価値が高く、四皇の縄張りに含まれていないが各陣営から睨まれている場所だ。

 

 今の段階でプラントがそこをとった場合はビックマムとの取引がある現状他の四皇から危険視される可能性がある。そのため必要になってくるのは段階的にビックマムの勢力を削る事で取引中のプラントを危険視する目を減らす事とプラントとしての新世界での勢力の確立だ。

 

 それを続ける事でプラントの立場を新世界においても確かな物にして他の四皇や新世界における有力者との取引につなげていけばプラントの価値はどんどん高まっていく。そして政府も手出しできない存在と成れれば、いやそれはまだ考えるには早すぎるか。

 

「年単位で進めていくしかないか……だが情報網だけでもどうにか確立したいな。経路を繋げると流石にバレるが、切り離した分身を放てば多少は情報も手に入るか?」

 

 新世界における情勢は大事であり、ビックマム海賊団や世界経済新聞からの情報だけではまだ不安はある。自分の目や耳で手に入れた情報かどうかと言うのは大事なポイントだ。

 

「抑止力となれるのが本体以外に居ない現状、幹部クラスを本国から大きく離れさせるわけにはいかないし、サイフォの力は借りれないし、前途多難だな」

 

 ウェザリアは世界中の天候を記録していると言う、新世界の非常識な天候は何かしらの要因で崩れる事があり、大きな変動も稀とは言いにくい、ウェザリアが何を目的としているのかは分からないがグランドラインでも後半の方が発見する可能性は高いのではないかと考えられる。

 

「あの特殊な火山地帯を抑えられればエネルギーの多くは賄えそうなんだが、アレに関われば政府が黙って無いしな……地道な作業が強いられそうだな」

 

 グランドライン後半、新世界担当の分身は先の見えない仕事に頭を悩ませながら、少しずつプラントの影響を広げるべく淡々と行動していく、それが計画への唯一の道なのだ。

 




ロビンについては現状はこんな感じ、直ぐに指名手配はされないし、オハラの考古学者とはばれてないから、政府からの徹底的な追跡などは無い。しかし、研究を続けていればどこかで足は付くでしょう。そうなればある程度の逃亡生活は変わらないし、後は原作に近い形で進んでいく予定。

ウェザリアを見つけたいけど全世界を回っているので、世界中で独自の情報網を形成して、しらみつぶしに探していくという脳筋戦法。

大海賊同士の縄張りってあるじゃないですか、縄張り同士が重なる、もしくは触れ合う部分は絶対的に出てくるわけで、そう言った場所を少しずつ手に入れて新世界でのプラントの居場所を確保する。そしてそのうえで四季のある海域を重要な拠点として整えていく。しかし、実力集団を複数も敵に回すのは不可能、なので探りながら地道に勢力拡大を狙う。緩衝材になるので政府や海軍的にも悪くないのでは?

さて、そろそろオリジナルの島の話とかも書いて行くかな。そして、少し時間を飛ばしてウェザリア発見につなげるか、他の四皇との接触か、最後のオリキャラの追加か……どこから進めていくべきかねぇ。一段落ついたらテゾーロとか追加でプラントに入った人員の閑話も書きたいな。(そして、いい加減IF話を終わらせないとな……)

とまあ、こんな所でいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第27プラント 空島捜索と文化交流の準備、北・東・南それぞれの分身事情

 四皇とのいざこざが終わったと思えば次に入ってきたのがオハラのバスターコールの情報って少し忙しすぎじゃないかオレ?オハラの件で実際に忙しいのは西の海担当の分身だが、情報を整理するこっちとしても結構大変なのだ。特にオハラで調べる予定だった情報を別で調べないといけないので予定の変更が結構ある。

 

 考古学者たちについて、そして政府の反応と強行的なバスターコールについてを考えるとあまり政府に頼り過ぎるのは良くないので五老星から与えられた権利についても早めに使って無くしておいた方が無難だと思い、PLANT計画の目標の一つである四季が個々に安定した海域についてを訊いておしまいにしたのは良い判断だろう。

 

 それとグランドラインの前半の海で手にした『空島』に関する話だ。いくつかの航路がしっかりと確立されており、特定の島であれば向かう事も不可能ではないそうだ。そしてもう一つこちらは航路は発見できてないがジャヤと言う島の近海で積帝雲と言う空島を形成している特殊な雲を見つける事が出来た。

 

 空島の存在を知った上でしっかりと調べれば意外と情報は手に入るが、組織だって調べなければこうも広く情報は集められないし、世間で空島の存在がおとぎ話と同列な扱いなのは仕方が無いのだろう。

 

 空島同士であればもしかすれば交流があるかもしれないし、情報が手に入るのではないかと思える。どうにかして空島に分身を送るのも良いかもしれない。空島特有の品もあるかもしれないと考えればそう悪い話では無い。

 

 しかし、分身を送っても大地の繋がりが無い以上は即座に情報伝達は出来ない。それにエネルギーについてもどうにかしないといけない。分身を構築維持するだけのエネルギーをどれだけ詰めれば空島まで持つか、空島に危険があるかどうかもわかってないのに適当に送るのは悪手である。

 

 とりあえずは情報収集を優先して分身を送るにしても準備を整えてからの方が良いだろう。分身を維持するエネルギーを獲得する方法も別の手段を用意出来ればいいのだが、今はまだオハラで手に入れた土以外の知識も頭に詰め込んでいる最中だ。これ以上並行して能力の練習をする時間はない。

 

 空に目を向けるよりも地上で出来る仕事を先に片付けるとしよう。まずは、ドラム王国やアラバスタ王国へ分身を送るか?取引については多くの国と話したがその2つの国からはぜひ一度国を訪れてくれと言葉を貰っている。

 

 アラバスタについては砂漠特有の知識などを目的とした文化交流が一番の目的だ。国王としてのあれこれやレヴェリーで助けられた事も考えると色々とおかえしもしておいた方が良いだろう。

 

 医療従事者の殆ど居ない現状の解決の為にはドラム王国に行くのは良いかもしれない。南の海に行った分身に別のアプローチもお願いしているが国民の事を考えれば色々と手は打っておいて損はない。さて、プラントの国力強化のためにも色々と進めていくとしよう。まずは今日の分の書類を片付けてから文書を送らないとな。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 北の海での活動は意外と上手くいっている。この前のフレバンスの調査は問題はあったが良質な食器とサンプルとして調味料と白鉛鉱石自体の回収も出来た。拠点も手に入れて少しずつ情報網も確立できている。

 

 他の海の分身より早くに仕事が進んでおり、一部では取引も既に開始できている。フレバンス相手にも取引はしており、食器に罪は無いので高級な食料と交易を続けている。

 

 そしてある程度のエネルギーの確保も出来たので今は本体から別の分身を用意して貰って仕事を任せて調査に出ている。今度の調査の目的地は北極、調査対象は『北極の怪物』と称されるクラーケンだ。

 

 その生態は「殺戮に飽きることを知らず、船を狙って大海原を駆け巡る」とされ、全長は300メートル、推定体は4000t位とされている。頻繁に脱皮するとも言われていたのでその脱皮した皮なども何かに使えるかもしれないので確保しておこう。

 

 巨大なイカは不味いと言われているが、タコは大きくても美味いと言われている。それだけ大きいタコ、それも北極と言う極低温化で生きているとなればその身はかなりしまっているのではないだろうか?実際に食材リストには”クラーケン”の項目はあった。流石にあの大きさの怪物を捕まえに北極までやってくる変わり者は居ないようで味などの情報は無かった。

 

 軟体生物を捕まえるというのは難しい、知能も高い様なのでタコ壺の要領で捕まえる事は出来ないだろう。とりあえずは調査がメインでやって行く方が良いだろう。そう思って北極に行ってみるといきなり移動に使っていた土が砕かれた。

 

 分割された土を操り、土を壊した触手をすり抜けて足場を構築し直すとその足は情報通りの大きさのタコの足だった。どうやら水中から顔を出してはくれないようで触手だけを伸ばして攻撃されている。海底からの反応を通して居場所を突き止めるとまずはクラーケンを勢いよく持ち上げて地上に出してみる。

 

 これで行動不能になってくれれば楽なのだが、どうやら陸上でも問題なく行動できるようで、空気の寒さで弱っている様子も見られない。地上に引っ張り上げられた事に怒り、こちらをしっかりと目視して攻撃をしてきた。固めていない土であれば簡単に壊していたが凝縮すれば攻撃は防げるようで問題はない。

 

「土に余裕はないんでな肉弾戦だな『痲土(マッド)』」

『グギャァ!?』

 

 土から相手へ流れる様に力を流し込み打ち込んだところから身体を痺れさせる。そしてそのまま動けない体に攻撃を加えていくと、一本の触手が付いてに千切れた。クラーケンは身体が麻痺しているがある程度の痛みは感じている様で顔を歪ませている。少し見ていると麻痺した状態でも少しずつ触手が再生している。

 

 あれだけ再生能力が高ければ定期的に触手を貰えれば十分食用分を確保できそうだが、タコには痛覚があるので対価を払っても斬らせてもらえるかどうか……そもそもこれだけ敵対している状況で交渉が出来るとは思えない。

 

 とりあえず足一本は確保できたのでオレは痺れているクラーケンを放置して帰る事にした。クラーケンはある程度の戦力があれば問題なく戦えるだろう。だがクラーケンは群れで生息していると聞くので多数で攻められれば分身一人では勝てないかも知れない。

 

 試しに少しだけ確保した足を刺身にして食べてみたが弾力があり、とても美味しかった。あれだけ巨大な生物がそんなに直ぐに増えてはくれないだろうし、真面目に交渉について考えるべきだろうか?そんなことを考えながら本体への報告と共にクラーケンの足を輸送した。

 

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 本体への連絡にこの情報を送るべきでは無いとオレは感じているが、逆に何も知らずにいる方が怖いのかもしれない。どちらにせよこの大海賊時代を揺るがしかねな情報をポンと寄越してくれたこの爺さんには怒りが湧いてくる。しかし、既にどうすることも出来ないのは理解しているので諦めるしかないだろう。

 

「なんじゃい、文句を言ったと思えば今度は深いため息か?」

 

 今オレはこの人の着いてきた事を結構後悔している。何度か世話になっている手前断り切れなかったのだが、お目付け役のセンゴクさんに連絡してでも今度からは拒否しようと心に決めた。そうしなければ次はなんの共犯にされるか分かったものじゃない。

 

 ここは東の海(イーストブルー)、世界政府加盟国の一つであり、隣りにいる海軍の英雄様の故郷のゴア王国、その外れにあるコルボ山の山小屋にオレはいる。東の海の拠点を広げるべく、適当な島を探して回って居たら途中で見慣れた海軍の船に見つかってしまい、里帰りに行くから着いてこないか?と声を掛けられたのが問題だった。

 

「ほら、可愛い赤ん坊でも抱けば機嫌も直るだろ?」

「その赤ん坊が問題なんでしょう!!」

「うきゃうきゃ、きゃっきゃっ」

 

 孫に会いに行くというガープに半ば無理やり連れていかれた。それもまだいい、預け先が山賊であるというのも問題だがまだいい、なんでその子が海賊王の子供だという情報をオレに話したのかを数日間かけてでも話してやりたいくらいにオレは怒ってるつもりだが、この爺さんには伝わらないらしい。

 

「あんた苦労してるんだな」

「あのガープさんにいい様に使われてるあんた等ほどじゃ無いよ」

「「はぁあー」」

 

 山賊の女頭領であるダダンさんとはそれなりに愚痴を言い合って仲良くなったつもりだ。ウチの国の作物から作った酒や酔う滝の酒などを何本かプレゼントするくらいには同情している。

 

 漏れ出れば世界を震撼させる事間違いなしの情報を与えられておいてこっちには何の利も無いのだから嫌になる。このゴア王国の在り方は少し面倒で天竜人と関わりがあるプラントを変に持ち上げて関りを持とうとしてきたり、権力への執着心が強く、取引の話などをこちらから持ち掛けるのは少し憚られる。

 

 フーシャ村も一応ゴア王国の領土に入っているので勝手に拠点を造る訳にはいかない。まあ、ガープさんのフォローなのか部下の人から近辺の支部から取り寄せた海域情報を貰ったので無人島をいくつか拠点には出来そうだが、絶対的に心労と釣り合っていない。

 

 ばれた時にこっちに流れ弾が来ない様にと何度も念押ししたが本当に分かっているのかこの人……自分が育てる訳にはいかないのは分かるし、表の人を巻き込みたくないのは分かるけどそれで預け先を山賊にしてしまうような人だからな。

 

 まあ、赤ん坊に罪は無いのでそこそこ可愛がってあやしたりもした。そう離れていない島に拠点を作るのでたまにプレゼントくらいは持って行ってあげるとしよう……後はダダンたちにも差し入れ位はあげてもいいかもな。まったく、平和な東の海の担当なら楽かと考えていた頃の自分を殴りたい気分だ。隣で大笑いしているガープは殴っておいた。なんでじゃ!?と叫んでるが自分の胸に手を当てて考えて欲しいな。いや、本当に。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 ここは南の海に位置する『トリノ王国』、この国は科学と薬学に優れており、勉強させてもらう為に訪れさせてもらった。そしてこの島の中心にある天を貫くような木には薬効の強い貴重な薬草が生えているという。

 

 木に対して干渉できる能力者は居ないが薬草であればモーダスとホーニィでどうにかなると思うので出来れば根っこからいくつか採集し、可能であれば種なども手に入れておきたいところだ。

 

 薬であれば材料とレシピがあればある程度作れるし、有事の際に備えて事前に作って置いておくことも可能だろう。医者が居ない以上は健康に対してどれだけ気を付けても無駄では無いだろう。

 

 それにしても分身のため普通の人間と違い主成分が土なので鳥たちから見つかりにくいので問題なく薬草を採取できているが、鳥と人間たちの争いは何なのだろうか?

 

 元々はあの大きな鳥はこの島におらず、別の島からやってきたいわゆる外来種だ。これまで木に登って薬草を採取していた住民たちにとっては目の上のたんこぶと言っても良いだろう。こちらは色々と配慮して貰ってるので薬草が無くならない様に注意しつつ、住民たち様にも薬草を採って行く事を忘れない。

 

 今日も鳥に見つかることなく戻ってくることが出来た。別にオレならばあの鳥を倒す事も出来るが、食べる為ならばまだしも邪魔だからと生き物を殺すのは違うだろう。それにこの島の問題によそ者がしゃしゃり出るのも何か違うだろう。

 

「おや、アスカル!降りてきたんだな」

「本当だおかえり、アスカルさん」

「アスカル!それは薬草か?」

 

 少し丸っこい体をしている彼等、この島に住んでいる民族でまあ見た目は言っちゃ悪いがどこかの部族の人間ですか?と言いたいくらいに古臭く、科学技術が進んでいる様には見えない。

 

「ああ、今回の分だ。色々と助けて貰ってるのに少しで悪いな」

 

「なに言ってんだ。アスカルが居なきゃこんな簡単に手に入らねえんだ。むしろこっちが礼を言いたいくらいさ」

「そうだそうだ」

「おいアスカル、さっきイノシシ取ってきたんだ。鍋にするから喰いに来いよ」

「おっ、じゃあこっちも取れた魚わけてやるよ」

 

 彼等との交流は非常に友好的な関係が築けており、薬草とかの確保も順調である。栽培できるかどうかはプラントに居るモーダスとホーニィ次第だが、この木の要素が必要になってくるのであればどうにかしてこの木をプラントに植えたいところだが、枝を持って行けばいけるのか、それとも気候とかこの島の要素が必要なのか検証するべきことは多い。とりあえずは薬草を採取しつつ、この島の図書館で情報収集や勉強を続けていくとしよう。

 



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第28プラント プラント国家間交流!!探索再開?狂暴食材討伐!!

2ケ月ぶりとなってしまい申し訳ありません。

ここ最近仕事が非常に忙しかった事と他の小説の投稿も進めていたため、プラントオーナーの執筆が遅れていました。(あとは新しくゲームやってたのもあるかな。ガデテル面白いですよ)

とまぁ、久しぶりですがとりあえずまだチェックして下さってる方、もしくは新しく見てくれた方も本編をどうぞ。


 グランドラインの島々の中で火山帯を除けば一番暑いのではないかと思えてくる。自分の国と全然違い、それは大地にも言える。水が少ない影響か養分なども乏しい土、しかし大地の力は弱くはない、むしろ強いくらいだ。国の在る大地と言うのはそれだけで重みがあり、それはその国の歴史を表す。

 

「アラバスタ、始まりの20人の例外、天竜人に成らなかった、由緒正しい王家の一族か……」

 

 成り上がりであるオレとはその血の意味は大きく違うだろう。かの王の在り方には積み上げられてきた確かな実がある。力だけのオレとは違う、王としてあるべき姿を教えてくれる人、尊敬できる人と言うのはああいう人の事を言うんだろう。

 

 特産品を見て回るのもやはり面白い、砂漠の気候だからこそ育つ植物、生息している生物、それらを利用して作られる品々には目が奪われてしまうが、ここで買いあさるわけにはいかないのでまた今度にしておこう。個人的には固有の植物、特にサボテンは手に入れておきたいな。

 

「ま~~~♪ま~~~♪ま~~~♪……アスカル様ですね?お迎えにあがりました」

 

 色々と店を回って動いていると前方から近づきそっと周りに気付かれない様にささやかれた。目立ちたくないというオレの考えを理解してくれたコブラ王が迎えを1人だけ送ると言ってくれたのだが……貴方が護衛隊隊長ですか?

 

「はい、イガラムと申します。お待たせして申し訳ありません」

 

 いや、むしろ待ち合わせの範囲内とはいえ動き回っていたオレが悪い。なにぶん、自分の国とは何から何まで違うから、気になってしょうがなかったんだ。コブラ王を待たせるのは申し訳ない早速向かいたい。

 

「それでは街を出ましょう。離れた場所に足を用意してあります」

 

 軽くうなずくとイガラムの案内の下、用意された乗り物まで向かった。王宮までは少し距離があったが、中は工夫が施されており外と比べると涼しく、道中はとても快適だった。建物や街のつくり一つとってもその国に適した物が作られている国と言う名の作品を見せられている気分になる。

 

 そんな事を考えながら過ぎ行く景色を見つめているとあっという間に王宮へ着いてしまった。既に交流の用意はされている様で部屋までの案内もイガラムさんが行ってくれるそうだ。一切知らない場所なので案内に従いただついて行くと一つの部屋に通された。

 

「アスカル王をお連れいたしました」

 

 そう伝えて声が合図が帰って来たのか扉を開けてオレに道を譲る。感謝を告げて中にはいると護衛隊のメンバーだと思われる人間数人とコブラ王だけがその場に居た。お久しぶりです……今回の交流の機会を頂き感謝します。

 

「構わんよ。それとこの場では無礼講と行こう。私と君の立場は”誓い”に在る様に平等……面倒な腹の探り合いなど君も(互いに)好かんだろう?」

 

 コブラ王の人となりは理解している。こちらの要望にこれだけ沿ってくれて、ここまでお膳立てしてくれたんだ。これからの話は有意義な物にしていきたい。ならばこそ、ここはその誘いに乗ってしまうのが良いだろう。

 

『そう言う事なら普段通りに話させてもらうが、これでいい良いのか?』

「ああ、その方が有意義な時間が過ごせるだろう」

 

 互いに国を預かる立場であるからしがらみが多いがその全てを取っ払って話をしたいと言えるその胆力に感心し、またオレをその相手に選んでくれたことを光栄に思う。

 

「まずは以前に話していた交易の話でいいかな?」

『そうだな。この国は気候によって作られた固有の種が多く、それに伴った特産品も多い、市場を見させてもらったがぜひ欲しいと思えるものばかりだった』

「そう言ってもらえると嬉しいよ。だがこの国はその気候による悪い面も多い」

 

 まずはレヴェリーの際に出ていた交易について詰めていく。これに関して言えば普段の仕事とあまり変わりはない。欲深い商人やこちらを陥れようと考えてる者が相手じゃないので警戒しなくていい点を踏まえれば少し楽な部分もあるかもしれない。

 

『問題点と言うとオアシスを含めた限られた水源だけでしか農業が行えない事による食料自給率の低さか』

「砂漠の生物を家畜化することや水をあまり必要としない植物の改良なども古くから進められているが他の国と比べれば得られる糧は少ない」

『土壌の改良などはしてないのか?』

「一部で研究はしているが成功するか分からないうえに、成功しても環境が壊れてしまう可能性を思えば推し進めるのは難しい」

『そうか今ある物を壊す可能性があるのか、様々な物を取り入れ続けているうちの国ではあまり想像にすら出ない心配だな』

 

 様々な島を丸ごと取り込んでいくうちの国で環境の変化を気にする事はそうそうない。まあ、それもオレが能力で管理しているから言える事なのだが環境変化で気を付けた事と言えば超味粱(ちょうみりょう)の取れる島の細菌やスープレックスの生息する火山の維持と気温管理などぐらいだ。

 

『食料に関しては特産品とそれぞれ照らし合わせレートを決めていきたいと考えている。目録は持ってきているので目を通して欲しい。それと水不足に関してであれば一部改善が出来る植物やキノコがある。植生を考えると環境破壊の心配は少ないと思う』

 

 オレが見せた目録と水不足対策の資料を見せるとかなり考え込んでいる。オレが提示した物はモルが島を乗っ取る際に使っていた海水を吸い霧を吹き出すキノコと同じような効果を持つ植物だ。どれも熱帯に存在する種なので暑さ自体には耐性がある。初めに環境を用意して手入れをすればあとは自然と海水から水を補ってくれるはずだ。

 

「アラバスタの為にありがとう。それとこちらも資料は用意している。特産品の他にアスカル王の趣味である植物収集の対象になるであろう物も用意してある」

 

 特産品もどれも面白い物が多いし、植物も固有種の数がやはり凄いな。サボテンだけで何百種もあるとは……これはプラントに専用の砂漠エリアを作るべきだな。

 

『とても興味深い内容だった。それともう一つ提示したい内容がある』

「なんだい、ぜひ言ってみてくれ」

『オレを信用してくれるのであればオレの能力で砂漠を失わないように水脈をいじる事も可能だ。水が無駄に失われないように整えるだけでかなり変わる』

「ふむ、()()()()()()()()……仮にそれを頼んだとしてその対価はどうなる」

 

 雰囲気が少し変わった。国の先を預かる者としての責任の重圧、それ故に無礼講と称したこの場であっても決して軽く考える事は出来ない。

 

『そうですね。アラバスタの管理内に無人島があればそれを頂くか、砂漠の一部をもらう形でも取らせて頂きます』

「ふむ、君の趣味を考えれば釣り合いは取れてない訳では無いという事か……こればかりは少し考えてから答えさせてもらう事になるだろう」

『交易も含め、まだ話す事はあるでしょう。いくらでもとは言えませんが、じっくり考えてください。互いにいい話になる事を祈ります』

 

 それからオレはしばらくアラバスタ王国に留まった。何日も話し合いは続き、交易を含めた今後の国交について纏める事が出来た。流石に全てを裏で済ませる訳にはいかないので国民の前に立ったり、来賓として有力者と話したりも行い、正式に国交が成立した。

 

 多くの品を持ち帰り、近くに拠点を置く事まで出来た。そして、アラバスタでは新たな水源確保として海辺での実験が進められると共に砂漠での調査が行われ、砂漠の砂が大幅に減少したとの話題と共に各地域での水質と量が上がったそうだ。

 

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 南の海で最近凶暴な魚の噂が出ている。噂に聞く特徴とトリノ王国の図書館にあった情報を照らし合わせると中々に危険な存在らしいという事が分かった。その名は『エレファントアカミィ』、アカミィと言う相手の力を糧として奪う魚の固有種らしい。

 

 生半可な力では倒せず、下手に力を吸収されると成長してしまうために出没したという報告がなされた地域は世界政府により退去命令が出され、監視が行われていたらしいがつい先日その監視の一部が力を奪われ衰弱し、無残な姿で発見されたそうだ。グランドラインでは無いとはいえ海王類はなくても海獣ぐらいであれば出会う事もある。まったく動けない状態で救援も呼べなければどうなるかは自明の理である。

 

 警戒範囲から一度逃げ出した『エレファントアカミィ』はいくつかの島の人々を襲い、力を蓄えているという。完全に見失う前にもう一度捕捉出来た今、確実に討伐するためにオレの所にも話が来たのだ。

 

 厄介な事にその魚は力を持っていながらそれを隠す事に得意だと言う。それ故に見聞色での探知は不可能だ。さらに言えばそいつは海だけでなく陸地、正確に言えば宙を泳ぐことで大抵の場所で活動が可能だという。探そうと思えば少し面倒であるが策は考えてある。

 

「『大地接続(コネクト)』」

 

 深く、深く接続した大地を操作し行うのは周辺の海域を破壊しかねない行動。オレが出るという事で最低限の見張りを残して全ての人員が撤退したからこそできる技だ。

 

「新たな地の誕生をここに祝え、星の息吹を持って大地讃頌の響きとなれ」

 

 

『新天地』

 

 

 地下深くから呼び起こしたマグマをそのまま地上まで引っ張り上げて巨大な火山を作り上げる。ここに巨大な島が生まれたことで海流の変化や生物の生息域などに影響が出るだろうが『エレファントアカミィ』の被害を考えれば目を瞑って貰えるだろう。

 

 吹き上げるマグマと煙、そして微粒な火山灰。火山灰はその勢いによって広範囲に降り注いでいる。また海に流れた物も辿れば灰の届く場所全てが今のオレの探知範囲となる。たとえ気配を消そうともそこに存在するのであれば逃がす事はない。

 

「見つけたぞ」

 

 だが、それは向こうも同じなようだ。この異常な現象を引き起こした存在がいると気付いた『エレファントアカミィ』はその存在を糧にしてくれようとこちらに向かってきている。出来立てではあるが足場もあるのでこの場で戦うのに問題はない。

 

 能力で近づいて来ているのを確認しているが一切見聞色の覇気で捉えられないのでとてつもない違和感を覚えてしまう。そして、その姿は大きく『エレファントアカミィ』とは少し違っている様に感じた。

 

「火山があるんだ『流星群(メテオシャワー)』、小手調べだ」

 

 今も煙を吐き出し、多くの物を吐き出し続けてる火山に干渉する事で意図的に『エレファントアカミィ?』の方向へと炎を纏った岩を撃ちだした。しかし『エレファントアカミィ?』はそれを触手で軽く打ち砕きながら進んでいる。

 

 明らかに一回り以上巨大化し羽も生えているその姿、原種である『アカミィ』の成長形態である『中トロー』に酷似している。さしずめ『エレファント中トロー』と言うべき存在だろう。その強さは桁が違うだろうし、さらに言えば味も格段に違うそうだ。余裕があるのであればさらに成長してから捕らえるべきなのだろうが、流石にその為だけに多くの人を犠牲にする訳にはいかない。

 

 『流星群』程度では脅威と認識してもらえなかったようで未だに物凄い速度で『エレファント中トロー』は近づいて来ている。基本的には生物の力を吸収すると訊くがエネルギーであれば喰らわれる可能性も高いので物理攻撃で仕留めるべきだろう。

 

「魚を狩るんであればこの形だろう、『土神槍』」

 

 ピアスの『海神槍』を真似た物だが巨大な土の槍を銛の様に構えると相手の姿を見据えて突き進む。すれ違い様に貫かんと巨体の中心を目掛けて振り抜くが触手をいくつも束ね、力を上手く逸らされた様だ。そして、そのまま喰らいつくかのように体を捕らえられた。

 

[ぐぎゃぁああああ!!!]

「悪いが俺は分身(土塊)でね。じわじわ吸ってはいるようだが、お前が欲する物とは勝手が違うだろう?エネルギーを吸収されきる前にこっちから喰らわせてやろう『自爆』」

「そして攻撃エネルギーを吸われちゃ敵わないんでな。外からも同時に喰らうと言い『マカナ』『黒点』」

 

 銜えられていた分身が残ったエネルギーをそのまま爆散させると同時に隠れていたもう一体の分身が飛び出し強烈な一撃を伝える。内外からの逃げ場のない攻撃に『エレファント中トロー』も吸収が間に合わず、そのまま意識を落とした。

 

 成長が中途半端ではあったがこの段階でも十分なレベルの食材だろう。まぁ、今回は一部の被害を受けた有力者用にその身を渡さないといけない事になっている。調べた資料にもあったが力を奪われた存在を回復させるにはその身が必要になるらしい。まぁ、狂暴な怪物を前に力が抜けて生きていた者は少ないので減ったとしてもそこまで心配は要らないだろう。

 

 イスト聖に渡す分を除いたとしてもかなりの量の身を確保することが出来た。新鮮なのでそのまま刺身にしてみんなで頂いてみたが生体エネルギーが影響しているのか、かなり濃縮された旨みであった。幼体ですらかなり危険な生態をしているため流石に養殖は出来ないのが残念だ。まぁ、そもそもどこでどの様に生きているか詳しい生態は記録されていないのでやるとしたらその研究からになってしまうだろう。とりあえずは依頼の報酬も手に入れられたのだからそれ以上を望むのは止めておこう。

 

 

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 アラバスタに赴いた際にも思ったが気候の違いが大きいな。向こうが熱気に包まれていたのに変わり、こちらは冷気がしみる様に伝わってくる。

 

「”医療大国”ドラムか……」

 

 一つの分野に特化しているという点ではプラントと似通っているとも言える。だがオレとしてはプラントの評価などとは比べられないレベルで医療の分野が優れていると感じている。まぁ、まったく違う分野なのだから実際には比べようは無いのだが、事実この国の医療は恐ろしいとすら思える。

 

 死んでもおかしくない様な外傷であろうと死んでさえいなければ塞ぐことがこの国のトップレベルの医者ならば容易く出来る。そんな驚くべき技術が”悪魔の実”などが無くても存在するのだから技術というものは恐ろしい。攻撃してもすぐ直ってしまう可能性と言うのは仮に攻める側の視点に立って考えれば悪夢でしかない。

 

 医薬品なども手に入る材料に限りがある所為で後れを取る部分もあるが、研究のレベルでは他と負けていない。正しく知識と技術を持てばそれは確かな力となる。”大国”と呼ばれるに値するのは何も国土だけの話では無い。国土が多くても全てが荒廃した荒野では誰も優れてる等とは言わない。医療の力において”強国”であると世界に認められたからこそ”医療大国”なのだ。

 

『それにしても城が山の上にあるとは移動が大変では無いか?』

「おっしゃる通り時間は少々かかりますが、防衛などの面に関しては優れています。それと国の全てを見守るという王族の在り方を意味しているとも伝えられています」

『なるほど、確かにここからなら見渡せないものは無いでしょう』

 

 肉眼では限界がありそうだし、吹雪いてなければと条件もありそうだけどな。それとも吹雪などの障害も関係なく見渡して見せるという事なのだろうか。まぁ、権力者というものは何かと高い位置に立ちたがる傾向があるから、そう言った権力の可視化もあるんじゃないかと思うが、過去のことが分かる訳は無いから黙っておこう。

 

「まもなくドラム城に到着します」

『ああ、準備は大丈夫だ。案内を頼むよ』

 

 ドラム王国の寒冷な気候はもちろん、標高5000メートルの「ドラムロック」の上に位置する城となるとその空気の薄さも中々の物だ。この環境下で他の国の軍隊と変わらずに動ける守備隊の兵士たちの実力も相応の物だろう。

 

「よく来てくれたプラントの王よ。ドラム王国は貴殿を歓迎する」

『歓迎感謝する。今回は国交、技術交流と交易に関しての話をするという事で相違ないだろうか』

「ああ、互いの国の更なる発展を目指し、良い話し合いに[大変です陛下!!]何事だ。国賓の前だぞ」

[申し訳ありません。ですが、ドラムロックに魔女の姿が発見されました。現在守備隊で対処していますが、隊長の居ない隊士だけでは進撃を止めれず、いまも此方に向かっております。狙いはアスカル陛下と思われます。今すぐ避難を]

 

 慌てた様子で室内に入って来た隊士は謝罪をしながらもなにやら報告を始めた。どうやらこの城に侵入者が現れた様だが”魔女”というワードには聞き覚えがあり、そして隣で報告を聞いている王に焦りはなく、ただ疲れたような表情を見せている。

 

「はぁあ、あの魔女め。どこから情報を手に入れたのやら。アスカル王、申し訳ないが話し合いの場に医者を一人置いても良いだろうか、この騒動で信用はならないかも知れんが、一方的に害を与える様な人物ではない。問題がある人物なのは否定しないが優秀な医者でもある」

「良い判断だね国王!!ヒーヒッヒッヒ、ハッピーかい?」

『こちらの方が魔女ですか、レヴェリーでもたしか少しお聞きしましたが、なんでもうちの国の薬草に興味を持っていただいてるとか』

「ああ、『マスターオブ医者』とも称されるほどの優秀な医者だが医療費をぼったくるため恐れられ『魔女』と呼ばれ始めた。たしかそろそろ年は120にな「アタシはまだ117だよ!!」ぐほぉ」

『大変お元気な様で』

「なんだい若さの秘訣かい?」

 

 いきなり部屋に入り込んで来たのはかなり高齢に見えるが活発に動き回っているお婆さんだった。パワフルさは凄まじく、少し上に行った国王に蹴りを叩きこむほどだ。その年でこれだけ動き回る秘訣があるんだとすれば聞いておきたいと少し思ったが、話し合いが進まないので国王の提案を了承し話の場を整えた。

 

「騒がしくなってしまったがようやく話が進められそうだ。まず、なんで城にまで来たのか教えて貰おうか、Dr.くれは」

「ヒーヒッヒッヒ、下手な権力者同士の牽制で薬草が入らなきゃ困るからね。馬鹿なことしてないか見物に来たんだよ。あんたがあの薬草を降ろしてる国の国王だね。あれはどうやって作ってんだい?」

『別に規制するような情報では無いが、あれはうちの国に居る能力者の協力で品種改良した物だ。種としては完成してるが、成長にかかる時間の短縮や必要な栄養の確保など一部ではオレも含めて能力を使っている。興味があるなら種をやる事も可能だ。熱や寒さには強いから室内であれば育つだろうし、毎日肥料を与えれば5年で数枚は取れるだろう』

「なるほどねぇ。あんたの国だからこそ提供できるってわけか、まぁ種は有り難く頂いとくよ。これも研究には十分使えるだろうからね。それで他の薬草も含めこいつらは卸すのかい?」

『商売だから対価さえもらえれば卸す、プラントは平等な取引を掲げてるからな。量の確保を含め、優先させるにはどうしても優先させるだけの理由が必要になる』

「それがこの国の知識と技術だろう?良いんじゃないかい?もとよりこの国に医療を学びに来る者も居るんだ。それに薬草を産地で研究したいと言ってる奴が居るって聞いたよ。そいつらを代わりにくれてやれば万々歳だろう」

 

 ドラムの王が一切喋って居ないのにどんどん話が進んでいく、流石に決定権は無いだろうが王もどこか諦めた様な姿を見せている。Dr.くれはの言葉は本当らしく、プラントに行きたいと考えている者がいるようだ。その他にも共同での研究や技術交流も考えていたようで、間の話し合いをとばす形になったが結果は向こうが考えていた内容とあまり変わらない様なので、そのまま纏める事になった。

 

 技術交流が決定したが今すぐにプラントに行くという訳にはいかないのでまた後日に移動などを行っていく手筈となったこちらとしても未だにプラントに医療の研究設備やしっかりとした病院は存在しないのでそれらを整えておく必要がある。

 

 忙しくなるかもしれないなと思いながらドラム王国の街並みを見物しながら帰り道を一人で歩いていると、いきなり後ろから話しかけられた。シルクハットを被った独特な髪形の男は自分も医者であると語った。

 

「あんた、あの薬草の提供者なんだろ。頼む、少しだけ、いや一枚で良い譲ってくれねえか」

 

 話を聞くと自分の研究を進める為、そしてその時間を作るのに必要になるとのことだ。交易が始まれば出回るという事を伝えたが首を横に振った。

 

「あれを買う金は俺にはねぇ。あれは救える命を増やす代物だ。横から掠める訳にはいかない。頼む、たいして出来る事はねぇが俺に出来る事ならやって見せる。どうか一枚譲ってくれ」

 

 懸命に縋るその姿に困惑を隠せなかったが悪い人間では無い事は読み取れた。とは言え平等な取引を掲げている身として例外を作る訳にはいかないので、彼の研究とやらを見せて貰いそれを対価とした。彼の話を聞いた時は呆気に取られてしまったが、彼の様な医者がいても面白いのではないかとオレは笑った。

 

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 この前に続いてまた危険な食材を相手にする事になった。まぁ、これはイスト聖の依頼とは別に世界政府からの依頼でもあるからしっかりとこなさないとな。きっと被害にあっている農場の損失がでかすぎるんだろう。それに被害の原因が規格外な『カラットボーリューミー』だからな。

 

 好物である『カラットジュ―ウシ』を食べ尽くさんとする暴竜で、その食性からか肉は絶品でとめどなく溢れる肉汁は長く生きる竜である事からか濃厚で芳醇な香りと味わいが楽しめる。『カラットジューウシ』と同じく、骨はダイヤモンドで出来ている。

 

 竜と言うのは千年竜しかり、グランドラインの島々でも古代に生きた恐竜などが存在する。そして悪魔の実の中にも竜の力を持つ物があるらしいし、そう珍しい存在ではない。巨大な生物と言う事であればカームベルトにでも入れば海王類がうじゃうじゃといるぐらいだ。

 

 しかし『カラットボーリューミー』は暴竜の名にふさわしい存在だ。『カラットジュ―ウシ』のダイヤモンドの骨ごと容易く噛み千切り、食い散らかすその牙とあごの強さ。その身を守る鱗もとても硬く、銃弾や刃も弾いてしまうだけでなく、多少の覇気であれば弾くレベルだという。

 

「ビッグマムよりは柔らかいだろう」 

 

 あれよりも硬いとは思えない以上そこまで心配はしていない。問題視しているのはドラゴン型の敵の機動力だ。オレの攻撃は手元で持って振るう武器を除けば広範囲の物や重たい一撃が多いが素早さという点では劣っている。その特徴から空を飛ぶ敵と言うのは基本的に狙いにくい。

 

 敵が大型であるのでまだ良いが、攻撃が届かない範囲に出られると有効な攻撃手段に乏しいと言わざるを得ない。この前の『アカミィ』はエネルギー目当てでオレ目掛けて近づいて来ていたから罠に嵌められたが今回は相手がこちらに向かってくるばかりではない。

 

 『カラットジュ―ウシ』に被害が出ない様にする必要があるので農場の近くでは満足に戦う事は出来ない。地形を含め環境を破壊しかねない攻撃もあまり使えない。外から大量の土を運んでいる時間もないので必然的に肉弾戦が中心になるだろう。

 

 CP達も案外使えないもので問題の竜の住処を未だに把握できていないという。そのため農場がある島、さらに言えば沿岸での防衛線を強いられてしまうのだから面倒な事だ。そんな面倒な案件に関わり、張り込み続けてから既に1週間が経過している。世界政府に加盟しているとはいえいつまでも拘束されているのを良しとは言えない。そろそろ断りの電伝虫をかけようかと考えていると海の向こうから突風が吹き、島全体を揺らした。ようやくお出ましの様だ。

 

 軍艦なんかよりも大きいその巨体が羽を動かしこちらへ一直線に向かってきている。その体は”黒”としか言い表せない濃く、夜の闇を貼り付けたかのような色だった。飛んでくる軌道を予測するとオレに目もくれず、農場の方へと真っすぐに向かっている。近づかせる訳にはいかないので軌道の間に立ちふさがらんと月歩で跳んでいく。

 

 まだ遠くに見える竜はこちらの事を障害物とすら思っていないらしくスピードを緩めない。もしかしたらこちらの事など見ていないのかもしれない。ならば初めのうちに少しでも機動力を落としておくべきだろう。それならば狙うのは羽だ。

 

空小地面(スカイプラット)

 

 服に仕込んでいた土を操作し、空中に足場を形成する。ただ月歩で踏み込むよりも、こちらの方が勢いをつけやすい。足場を利用し、巨体の真上に位置どると、少しでも機動力を削ってしまおうと羽に狙いをつける。

 

『リープ・リーパー』

 

 武装色の覇気を足に纏わせると踏み込みの勢いのままに嵐脚を連続で放ち攻撃をくわえていく。少し硬いが連続で放たれる攻撃に少しずつ翼膜も破けていく。

 

 この調子で行けば落とすこともできるかと考えていると巨体の身体を捻じり、尻尾を叩きつけてきた。覇気で防御したが、覆っている鱗に少し削られ、腕から血が流れる。そして空中で重たい攻撃を受け止めきれる訳がなく、勢いのままにオレは飛ばされた。

 

 意識はしっかりあり、怪我も重症でもなんでもないのですぐに体勢を整え、空を蹴って勢いを殺していく。結構な高さで戦っていたので海に落ちる事は無かったが少し警戒した方が良さそうだ。

 

 向こうもこちらを警戒しているようでじっとこちらを見ている。そのままこちらに注目してくれているなら農場の方は流れ弾にだけ注意すれば良いので楽になる。

 

 だが相手は自分の食事を確保する事を優先させたのか飛ばされたことで遠くにいるオレを一瞥すると農場の方へと飛んでいった。

 

 再び『空小地面』を用いて高速で空を駆けていく、あれほどの巨体であれば降り立つだけである程度の被害が予想される。

 

 それを避けるために全力で足場の生成と剃を組み合わせた独自の空中移動技を行い、どうにか竜の背に届くか届かないかぐらいの距離へと近づいた。

 

 やる事は単純明快、先程竜がオレにやったように邪魔な奴はそこから退かせばいい。

 

 オレは腕をとにかく素早く振り、土を竜目掛けて放った。その速度は凄まじく、並の相手であれば触れただけで身体を削られるだろうが硬い鱗では意味を持たない。

 

 しかし、これ自体は技でもなんでもなくその下準備である。宙に出来たオレと竜を繋ぐ土の道、それを意識しながらオレは拳を振り抜いた。

 

地連摩(ジレンマ)

 

 すると竜は一拍遅れて衝撃を受け、その巨体を回転させながら島の外まで飛んでいった。

 

 ピアスの使う我流の魚巨人空手や、その元である魚人空手の本質である水から水への衝撃の伝播を真似した土を操り、土に力を流すオレだから出来る技だ。

 

 衝撃を伝えると言っても魚人空手の様に水への伝播で無いので体内に攻撃は通らないので吹き飛ばすだけでダメージはないだろう。体内に土があれば別だろうがなと考えると一つ妙案を思いついた。

 

 飛ばされた竜が戻ってくる所に大量に土をばら撒くと再び『地連摩』を放った。空中で腕を動かすオレに警戒しているが流石にまだ絡繰には気づけていないようで竜もまた攻撃を喰らった。

 

 そして今度は竜は少しではあるが苦悶の表情を浮かべて声を荒らげた。体内にあるであろうダイヤの骨に無理やり接続させてみたのだが、こちらのエネルギーの消耗と釣り合っていない様だ。

 

 ダメージを負ったあちらよりこちらの方が疲弊しているというのは間抜けな結果だ。それも体内の骨がダイヤだという奇抜な生物だからこそ出来たのだから他に使いどころが無い。身体がダイヤな敵なんてまず存在しないだろう。

 

 だがいいヒントを得ることが出来た。体内への衝撃は微弱であったが内部でぶつかりあって増幅されていた。サイフォの『クラッシュ・インパクト』を思い浮かべる。

 

 掌に小さい土の球を作り出す。そしてその球の内外に衝撃を喰らわせ、逃がす事なく維持し続ける。互いに増幅させ合いながら蓄積していく衝撃が詰まった爆弾。

 

 集中しなければ自滅してしまいそうな衝撃をどうにか操作しているとダメージを回復させた竜がこちらに迫ってきた。球を載せたまま掌を相手に向け、相手の方に軽くそれを放つ。

 

 『空小地面』を生み出す余裕が無いので『剃刀』で移動し、オレと球と竜がそれぞれ触れ合う直前の位置に調整する。そして、一度腕を引き、溜めた後で球ごとその両の腕を叩きつけた。

 

 

凱亜銃(ガイアガン)

 

 

 

 増幅された衝撃がその身体を突き抜ける様に迸る。その威力は身体が爆散させられたと勘違いを起こす程のもので喰らった竜は声を漏らす事も許されず静かに目を閉じ、海へと堕ちた。

 

 回収した竜は内部の骨はボロボロになっており、ダイヤとしての価値をだいぶ落とすことになったが、肉の状態はそこまでではなく、むしろ肉を柔らかくさせられたようで重厚で柔らかい肉の旨味を存分に味わった。

 

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 丈夫に作られた船体は底に土が敷き詰められ、草木が植えられ、浄水機構を利用して水も流れている。これは少量ではあるがエネルギーを補給し続ける為に考えられた生きた大地を載せた船である。大地を生かす為に船自体にも多くの工夫がされているのでどうにか収支はとれているが、船の動力もツチツチの力なので本当に回収できるのは微々たるものだ。

 

 こんな物を使ってどこへ向かうのかと言えば、大地の存在しない場所と言う答えになる。それは具体的に示すと『海中』か『大空』のどちらかとなる。そう、今目指しているのはPLANT計画の要になりうるであろう技術を持つと予測される空島『ウェザリア』……ではなく、手掛かりを得るために位置情報を手に入れた空の島を目指している。

 

手に入れた空島の情報は特定の空域を巡っているという空島だ。その空島の通るルートの一つである島に気候条件が整う事で海雲と呼ばれる雲が年に一度、山頂まで降りてくる。はっきり言ってそれを利用して向かうというのはとても確率が低い賭けになる。

 

 そもそも空島とその島の軌道が重なる日は少ないうえに気候条件が整うのはたった一日、しかもその一日でさえ振れ幅が大きく、酷い時には海雲が届かない年もある。届いたとしても海雲に乗り込んだ後でその海雲が空島を形成する積帝雲にたどり着くかは運頼みだ。

 

 海雲が下に流れ、海の少し上で崩れれば船は壊れるが生き残れる可能性がある。しかし、見当違いな方向に流されれば永久に空を漂う事になる。だが、今でもこのやり方がこの島では行われている。それは空島との交易がとても儲かるからだ。一攫千金を目指し、船を用意する者は後を絶たない。

 

 だが、それで空島にたどり着き、生きて帰ってくる者は5年に1人も現れれば良い方である。その5年に1人と言うのも初めに成功した人物の子孫である商人が大量の人と船を投資した結果だ、素人の成功率は0と言っても過言ではない。

 

 空島までの航海で一番最初に必要なのは乗り込んだ海雲が上にあがる事だ。風向きなどを見て上にあがる雲を選ばなければそもそも話にならない。だが、海雲と言えど雲である事に変わりはない。周囲に空気を熱することが出来れば上昇気流を生み出すのは訳も無い。

 

 海雲に乗ったオレは山頂の地面を操り大量の熱を生み出すと一気に空へと上がった。そして、空島が通るルート上にある島々のエターナルポースを基に空島への舵をとった。と言っても大きく大地から離れたのであまり干渉は出来ない。風向きを見ながら自分のいる海雲の進路を予測していくのが現状の仕事だ。

 

 初めのうちは大きく空域から抜ける事無く順調に進んでいた。しかし、近くの空で嵐があったのか大きく雲が流されていた。一部の雲は逃れているが、オレが載っている海雲は少しずつ引っ張られ、高度を落としつつあった。

 

 オレは流れつつある海雲を観測すると船のマストから一つの仕掛けを取り出した。それは小さな船がロープとくっついた物でそれがいくつもマストと繋がっている。オレは船を持つと近くにある海雲にその船を次々投げ渡すと、本船を海雲から落とした。すると、投げ入れた海雲に浮く小舟に支えられ海雲にぶら下がる事に成功した。オレは溺れて能力の制御から外れない様に船内に入るとロープの巻き取り機能を作動させ海雲の上に浮上した。

 

 用意された小舟はクウイゴスと呼ばれる浮力がとても高い事で知られる木材で造られている。海雲は特殊な性質をしているが雲であるという事実から察するに海水よりも浮力は少ない。それ故に浮力が高い小舟をいくつも用意することになった。

 

 オレは次々に海雲を渡って行き、無事に流されることの無い海雲までたどり着いた。その後もいくつか問題はあったが海雲を渡って行く事で航海は進んでいった。そして、目的地で会った空島『フリートガンクラウド』にたどり着いた。

 

 この島は多くの島を巡るがその中に活火山がいくつもあり、巻き上げられる噴煙の影響で多くの海雲や島雲が生まれるという。しかし、それらが纏まる事は無くまるで群れを成すように塊となって巡っていく。いくつかの海雲や島雲は雲の道で繋げられているが殆どは群れの羊が燥ぐように飛び交っている。

 

 この島の一番の特徴はその広さである。多くの海雲と島雲が生まれるだけあってその国土はとても大きく、住んでる人も多い。それ故に多くの物が作られ、独自の文化が発展しているそうだ。だが、近年は国土の大きな変化は少ないらしく、現在の規模が今のルートを維持する限界なのだろうと調べられており、貝を用いてルートを維持しつつ更に雲を貯められないかの研究も進められているそうだ。

 

 ここ『フリートガンクラウド』は多くの島から物が流れ着くだけあって資源も豊富で様々な物に溢れている。それ故に奪い合う必要はなく、古来から助け合い、譲り合って生きてきた故におおらかな人が多い。交易がおこなわれている記録から行っても敵対することはそうそうないと考えていたが、着いたその日に歓迎されるとは思ってもみなかった。国で調べ物をしたいという旨を伝えるといつまでも居てくださいというような言葉が直ぐに出てくるような人たちに思わず笑ってしまった。

 

 無論、色々と手助けされているのでこちらも何かを返す必要がある。持って来た植物の種などを含めた地上の品々や能力を利用しての流れ着いた土壌の修繕などをする事で対価とした。それらの対価はかなり喜ばれ、逆にお礼を言われる事の方が多かった。

 

 『フリートガンクラウド』を形成しているのが大きな海雲や島雲ではないため移動手段の中にも落ちた際の助けとなる機構が組み込まれていたり、国の警備隊の中には落ちた人を助ける専門の部隊があったりした。そもそも海雲に落ちた際の救命胴衣の様な物が存在するそうだ。

 

 ヴァイパーと呼ばれる乗り物があるそうだがいくつかの機構を上手く使うと少しの間空を飛ぶことも出来るという。雲貝や炎貝など風貝以外のダイヤルも埋め込まれた高級品だとかなりアクロバティックな動きが可能だという。

 

 漁も海雲に生息する魚などを獲るだけでなく、ヴァイパーを用いて数人がかりで網を引いて空を掛け、飛んでいる鳥や怪物の類を仕留める事もあるそうだ。それらを使った特別な料理はとても美味しかったがこれだけ気圧の差が大きければ新鮮な状態で食材を地上に持ち帰るのも難しく、調味料などを持ち帰っても中々再現は難しいだろう。

 

 調べ物については流れ着く物を保存し、研究する施設が存在していたためかなり捗った。他の空島からの雲流しに使われた雲が流れ着く事もあり、他の空島の情報も一部纏められていた。流れ着いた時期などを基にその空島の位置を調べたりも行われている様で地上から持って来た地図と見比べる事でだいたいの位置は知る事が出きた。

 

 肝心の『ウェザリア』についてだが関わった記録が残っており、『ウェザリア』の誕生した場所などの手がかりとなりえる情報が存在した。『ウェザリア』を含めた他の空島の情報を纏め、能力の行使を対価に多くの貝や調味料、空島で育った植物の種などの物資を集めていった。 そして物資が十分に溜まり、有力な情報を纏め終わった頃、数ヶ月単位で居座った『フリートガンクラウド』を去る事を決めた。長くかかわった人たちもおり、別れは盛大に騒いで行われた。

 

 来る際に使った船も今では多くの空島の技術を使って改造されていた。より多くのエネルギーを回収できるようになった他、多少の飛行機能や加速装置などギミックが詰め込まれた船は『フリートガンクラウド』の端に立つと一気に飛び降りた。マストや船体に埋め込まれていた貝に収納された帆が一気に開き、炎貝や風貝の効果で船体を安定させ、船体の横からマストへつながる羽の様な機構で風を受ける事で空を滑空しながら帰りの航海を楽しんだ。

 

 持ち帰った情報は地上に付き次第共有し、物資などもプラントに送り届けられた。改造された船は空島を目指すにあたって非常に役立つとされ、引き続き空島への航海に使用される事となった。そして、見事に空島への航海を成功させたオレは引き続き、空島の調査の仕事が割り振られた。次に目指す目的地も決まっており、そこは『ウェザリア』と取引を行っているという噂があるそうだ。プラントの発展にかなりの影響を与えた空島の調査はまだまだ続きそうだ。

 




他の国々との対談、しかもどちらも世界的に有名な国家ときた。アラバスタやドラムってプラントが影響力が強いと言ってもまだ釣り合うとは言えないと思う。アラバスタは歴史が、ドラムは医療が、それぞれの味がありますよね。特にドラムの技術に関しては普通にチートだからね。

原作のキャラがちらほらと出てきてますね。一応年表とかと見比べながら作っているんですがおかしなところがあれば遠慮なくご指摘ください。

食材についてはいつも通り、というか今回に限ってはトリコ要素がかなり強めになっていますね。完全なオリジナルの食材や島のネタはそろそろ少なくなってきたというのと今回は戦闘を試しに書いた感じですね。

空島は『ウェザリア』への鍵としての役割と技術的な旨みがありますね。貝に関して言えば普通に凄い代物ですからね。最近のワンピースだと全然見ないけどね。ワンピースって登場したけど段々出てこなくなる物が多いよなぁ。

まぁ、今回はこんな所でいつものご挨拶。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第29プラント 緊急コール、近づく厄災の影

新年あけましておめでとうございます!!(遅い

去年から引き続きご覧になってくれている方々、今年になって見つけてくれた方も拙い作品でございますがどうぞ温かい目で見守っていただけると幸いです。

正月って怖いですね。久しぶりに連休を味わっていたら時間が吹き飛んでった。直ぐに仕事だし、担当の月の制作の準備とか進めたりしてたら忙しくて時間が取れない。この前の土曜日には餅つきなんてあって手足や肩、腰にダメージがあるし、おのれカタクリ!!(違う

とまぁ、言い訳はさておいて今年もよろしくお願いします。



 とある激動の事件の始まりは2つの電伝虫から始まった。各海や食材探索、空島探索の分身の報告を纏めたり、国の運営に関わる書類の仕事をいつも通り片づけていた所にそれぞれ順番にかかって来た。

 

『ぷるるるる、ぷるるるる』

「世界政府直通の電伝虫か……はぁ」

 

 鳴っている電伝虫の置かれている場所を確認すると思わずため息を一つ吐いてしまった。これまでも面倒な事が多く舞い込んできたが政府関連には特にいい思い出が無い。

 

「はい、プラント王国国王アスカルです」

『アスカル国王、突然の電伝虫失礼したね。だが今回は本当に急を有する事態だ。場合によっては世界が傾く可能性すらあるね』

 

 世界政府は面倒事を持ち込むが無駄に自信に溢れている組織でもある。そんな組織が正直に世界がヤバいと言うような事態と言うのに少し気を引き締めた。

 

『【厄災】が動き出した。それも特大の爆弾である四皇に噛み付いた上でね』

「【厄災】……?何かの隠語、もしくは通り名か何かですか?それと四皇と言うのはまさか」

『【厄災】は政府が対処不能な災害と認定したとある賞金首を示すものだ。そして君に連絡したのは2つの理由からだが、1つは食料の提供の願い、もう1つがビックマムから情報を得て欲しい』

 

 【厄災】、政府が対処できないと判断した存在か……厄介ごとの匂いしかしない話だ。そしてビックマムへ探りを入れろという事か……噛み付いたと言う表現からその【厄災】がビックマムに手を出したという事だろう。

 

「食料については取引であればいくらでも、それと【厄災】の詳細と範囲は?」

『資料を電伝虫で送る。情報は出来る限りで良いがビックマムの今後の動きを少しでも知れれば有難い』

「了解しました。可能な限りでやらせて頂きます」

『いつもすまない。プラントには感謝している』

 

 それだけを告げると電伝虫は切れた。そして別の電伝虫で資料が送られて来た。名前:不明、性別:女。年齢:不明、備考欄:『ゴクゴクの実』の能力者 『ゴクゴクの実』:あらゆるものを糧とし呑み込み、呑めば呑むほど力を増す。 被害:多くの国や島が呑み込まれて滅んでおり、その数は数百にも上る。 二つ名:『暴食』

 

「純粋な力が強化される訳か…仮に戦えば手強い相手に成りそうだな」

 

 そう思いながらもう一つの依頼であるビックマムについて考える。縄張りの被害やビックマム自体の癇癪で取引に影響が出ないと良いが……ああそうだカスタードとエンゼルにも伝えてやらないとな。そう思い立って席を立とうとした瞬間……

 

『プルルルル、プルルルル』

「ビックマムの所か……」

 

 後でかけようとしていた場所からの連絡、しかも騒動があったと予想が出来る場所からの電伝虫だ。正直言えば出るのが怖い思いがあるが放置しておく方が問題である。意を決して電伝虫を手に取る。

 

「プラント王国国王アスカルだ」

『ペロリン、久しぶりだなアスカル王』

「あんたか、ペロスペロー。何の用だ?」

 

 取引についての話は少し前に終わらせた。何のつもりでかけてきたのかと問いかける。これが取引の変更のお願いなどであれば面倒だがまだ良いと思えるかもしれない。

 

『悪いが社交辞令を述べてる暇も無くてね。これは特別な取引のあるプラントだから話す事だが、ビックマム海賊団では少し問題が起きていてね。色々とその問題の解決に協力してもらいたいんだ』

「目に見える火に飛び込む奴はいないと思うが」

『いや、流石にそちらを潰すような真似はしないさ。どちらかと言うと現状こちらの問題と言うのは暴れてるママの対処だ』

「癇癪を起すような何かがあったのは事実だろう?」

『……ぺろりん、まあそう言う事だが、先に対処したいのは癇癪を止めてママを宥める事だ。プラントの方で大量のお菓子を用意して欲しいのが1つ目の願いだ』

「特別料金が掛かるが払える状態と見て良いのか?」

 

 ビッグマムが癇癪を起すような事件とその癇癪で出た被害を踏まえて、機嫌を取るだけの菓子を緊急で用意するだけの資金が残っているのならそこまで心配は要らないのかと勘繰る。

 

『正直厳しいがギリギリ捻出できると言っておく、しばらく他勢力とは小競り合いすらできそうにないがな』

「ならこちらは平等な取引の下、指定の品を用意しよう。それで1つ目という事は2つ目、3つ目の願いもあるとでも言うのか?」

『他に今後の取引内容についての話があるが、それは願いじゃない。もう1つの願いはプラントへの警告だ』

「警告?」

『ああ、【厄災】には気をつけろ。あれは普通の手法ではどうしようもない』

「【厄災】……それはなんだ?それが原因か?」

 

 知らないていで話した方が情報を得られるだろう。政府からの依頼云々は置いておいても詳細は知っておいて損はないだろうしな。

 

『あー、簡単に言えば島や国を呑み込む化け物、もっと言えば人さえも喰い散らかす狂人だ。あれは腹が減ったか目に入ったとか言った理由だけで動く……ママの癇癪には理由があって過去にも【厄災】は縄張りを荒らしている。その時も殺す事は敵わず、昔と比べて戦力の強化された状態でまた対処できなかった』

「つまり【厄災】と言う化け物は成長していると?」

『そう言う事だな。幸いそちらは機動国家、この海域から離れる事を推奨する。っとすまんがママの癇癪がまた始まった。また後で連絡させてもらう!!』

 

 急ぎ言い切ると電伝虫は切れた。あれでも一大勢力だからトップの暴走で滅びる様な事になれば笑い話にもならないだろう。有るもので誤魔化すにも限界はあるだろうし、取引先を失うのも不味いので急いで商品と支援物資についても用意して置くとしよう。エンゼルとカスタードの二人に持って行かせるのが一番面倒ではないだろうから連絡を入れて準備を急がせた。

 

 肝心の対策だがプラントを移動させようにもその【厄災】の進行方向が分からなければ避けようにもないが、それとも新世界(この海)から一度離れろという事だろうか。流石に取引についての話があるからそこまで大きく動き回る事は出来ない。

 

 それにしてもそれだけ強大な存在であれば早くに感じ取ることが出来るはずだ。ここいら辺は勿論、ビッグマムの縄張り自体に接続は出来ないが、縄張り内に中継地点は置いてあると言うのにオレは感知できていない。サイフォに確認をとっても海の先から異変は感じ取れないとのことだ。

 

 とりあえず周辺の警戒もかねて四方に大地を伸ばし、オレの感知範囲を広げた。そしてサイフォには出来る限りで見聞色での警戒を、ピアスには少し遠洋まで泳いで偵察に出て貰った。するとピアスの方から異常を知らせる連絡がすぐに入った。

 

『アスカル様、海の様子が明らかにおかしい』

「言い切るって事は理由があるんだろ。話してくれ」

『ああ、西の方からの海流が昨日までと大きく違う。それに魚が全然いねぇんだ。少しだけいる奴らから話を聞こうにも焦ってんのか何を言ってんのか分かんねぇんだ』

「分かった。注意しておく、異変は近そうか?」

『魚たちがもう結構離れたかな?とか話してるのは聞こえたから大本からはまだ距離があると思う。もうしばらく探っておくよ』

「ああ、頼んだ」

 

 この海域での取引は明日で終わる予定だ。それさえ過ぎれば少しの間この海域から離れる事はできる。オレもそちらを手伝いに向かおう。能力での警戒も西の方を中心に切り消える。一点に集中させた方が精度は良くなる。これで早く動けるはずだ。そう思って取引所の方へ顔を出したらマニュに声を掛けられた。

 

「国相手の取引が激減したわ」

「国相手?」

「正確に言えば世界政府加盟国相手かしらね。たぶん加盟国に対して注意喚起が成されてるんでしょう。何も知らない個人の商船や世界政府非加盟国の船は寄ってるわ」

「それなら取引時間を早められるか?積み込みに時間が掛かるから入港だけして待たせてる状態だろう?緊急事態と伝えれば向こうもそう拒まないだろう。港の形も積み込み可能個所を増やして対応できそうか?」

「今は働き手が余ってる状態だから国民から募れば全然余裕ね。変更予定の港の形を決めたら提出をお願い、こちらで人員のリストアップと取引相手への説明を進める」

「そのまま現場の人員への説明もやってくる。何かあったら電伝虫でたのむ」

 

 決まってからの行動は早かった。現状のプラントは働かなくても喰うに困らない国になりつつある。農地は年々拡大してるがそれ以上に一時に増えた元スキーラ国民が多くて働き手が余っている。農地の仕事の多くが小人やヒヒ達がやってくれてるおかげだ。

 

 船が行き来できるスペースを広くとって、止めれる場所を大幅に増やす。人手が集められれば一気に積み込みを進めて取引を終わらせてしまおう。形をそのまま報告、仮の番号を港に刻んでわかりやすい様にして置く。マニュに頼んである取引相手との話し合いは今の所スムーズな様で取引相手はそのまま約束の順番は変わらずに時間だけ変更で来るそうだ。

 

 ならば先に積み荷の方を所定の場所にオレの能力で運んでおこう。倉庫のリストと取引内容を照らし合わせ積み上げていく。ここのリーダーはスレイだったか、港の変更と積み込み時間の前倒しを伝える。

 

「分かりました。仕事に慣れた人間をそれぞれの港に1人着けて指揮する形で進めます」

 

 元奴隷組もだいぶ落ち着いたな。スレイみたいに船に関わりがある面子は港の方での仕事に加わったり、電話組の方は完全に体制が整ってテルが纏めているらしい。他にも研究所で働いたり、書類仕事をしたりしている面々も居るようだが、後から来た元スキーラの人たちに教えられるだけの立場になっているというのは頼もしい事だ。

 

『話は全部ついたわ。父さんたちも駆り出して一気に進めたから案外直ぐに終わったわね。後は順当に回していければ午後までには終われるはずよ』

「そうか、こっちも整備は終わって、後はスレイたちに任せた。総動員で働くことになるが午後までなら持つと言ってる」

『プラント内での処理は後回しで必要な書類を揃えてるから後でやる事務仕事が溜まるのは覚悟しといてね』

「わかった。急な対応なのに助かった。ありがとう」

 

 こういった時の対応の素早さには本当に助かる。オレだけだと進められる部分が限られるからマニュが居てくれて有難い。お義父さんも手伝ってくれるとは、まぁ内政関係であれば国王歴がオレより長いから出来て居当たり前だが、こういう時に進んで助けてくれるから頭が上がらない。

 

 そう考えていると西の方から大きな水しぶきが上がると息を切らしながら飛んでくるピアスの姿があった。幸い取引関係者の眼に触れることは無かった。オレは何事かと思い、直ぐに地面に潜りピアスの足元に移動する。

 

「どうした!?」

「は、はぁ、アスカル様か。まだ移動は出来そうにないのかい?」

「まだだが、【厄災】が来たのか?」

「いや、まだだ。私はアスカル様の伸ばした大地より外側を見てたんだけど、いきなり身体が周りの海ごと()()()()()()()()()()。勢いが凄くて慌てて海流を生み出して飛び出す形で戻って来たんだ」

「海ごと引きずり込まれかけた……魚巨人であるピアスをか?」

「ああ、あのまま放って置いたらその【厄災】の前まで引きずられたか、もしかしたら視認する前に胃袋に収まってたかもしれないね。逃げるなら直ぐにでも移動を開始した方が良いよ」

 

 ピアスの訴えを聞き移動に向けてすぐに動こうと思ったが、探知用に伸ばしていた大地が急に生まれた海流に引きずられる形で抉れたのを確認した。まずい、相手の能力の影響が出る範囲にこのままでは完全に入ってしまう。

 

 とりあえずプラントを逃がす事を最優先に考えよう。ビッグマムの時と同じで人員と本土を沈めて隠すか?いや、海流で削られる可能性もあるからむしろ危険か……プラントを離れた位置に隠すまでの時間を稼ぐ必要がありそうだ。

 

 使用しても問題ないギリギリの大地を捻出するとそこに【厄災】の気を引くことが出来るであろう物を用意していく、プラントが誇る『食材』をだ。関係なしに呑み込むと言うがビッグマムの縄張りに寄り付くんだ。食への関心はあると考えて良い。これなら間違いなく気を引けるだろうが、問題は相手を強化してしまうという事だろう。

 

 『ゴクゴクの実』の能力も全てが解明されている訳では無い。だが悪魔の実にも限界はあり、無敵な能力などある訳がない。見極めることが出来れば勝機とまではいかなくても単身で逃げおおせることくらいはして見せよう。

 

「モーダス!!居るか?」

「はい居るレスよ」

「プラントの大地をこれから動かす、大地が崩れることは無いように固めて置くことは出来るが万が一にオレが能力を使用できない状態に陥った際に少しでも動かせるようにプラントの足の内部に植物を張り巡らせろ」

「アスカル様!?そんな死にに行くみたいな事を言わないで欲しいレス!!」

「死ぬつもりはない。本当に万が一の事を考えてだ」

「それなら僕らも行くレス」

「ダメだ。逃げる手段がないだろう?オレなら大地に潜って逃げ出す事も出来る」

「あっ!モルのフェアリーサークルがあるレス!!」

「プラントを動かせば範囲外に出るだろ。無駄に土は消費できないから中継地点は置けない。それに中継地点何て置けば辿ってくれと言うような物だからな」

 

 そこまで言って無理な事を分からせるとしぶしぶ了解して大地に根を張るように植物を張り巡らせていた。ホーニィやモルにもプラント自体の防御用の花やキノコを生やして貰った。これで対策は大丈夫だと思い、オレはプラント内への放送用の電伝虫を起動させた。

 

『緊急放送、これよりプラントは緊急時特殊移動形態をとり、移動を開始する。繰り返す、これよりプラントは緊急時特殊移動形態をとり、移動を開始する。寄港した方々は現場職員の指示に従い、国民は緊急コールEに従い行動せよ。繰り返す、寄港した方々は現場職員の指示に従い、国民は緊急コールEに従い行動せよ』

 

 幹部たちには既に連絡をいれてある。時間がもったいないが規定で決めていた数分を数えるとプラントは形を変えて動き出した。切り離したオレが居る小さな島を残して……。小さいと言ってもオレの生まれた時の島よりはでかいけどな。そんな軽口のような思考を巡らせ精神を落ち着かせる。

 

「疲れは無し、体調良好、土の残量やや不足、覇気は揺るがず、能力の容量4割弱」

 

 体を軽く動かし、武装色と見聞色の覇気を巡らせ、能力の確認までを行う。全力での戦いとなるとビッグマム以来だが、そのビッグマムから逃れるだけの力量をもった相手だ。やってのけた事だけを見ればオレと同格と考えられるが、それが甘い考えでない事を祈るばかりだ。




主人公に無茶ぶりをするのが当たり前になりつつある世界政府、いつか痛い目を見ると良いと思うよ。ただの取引のお願いだけでなく、警告までしてくれるビッグマム海賊団の方が優しく見えるから不思議。

さて、ようやく最後のオリキャラが出せる。ここまで長かった。この作品掻き始めたのが去年の2月からだからもう少しで1年経つのか……時の流れがマジで早くなりつつあるのに戦々恐々しております。

第2章の終わりまであと1話を予定しております。そして第1章と同じく、外部プラント3話を挟んでから第3章に移行いたします。えっ?Gold&EARTHはどうしたって?ナにソレシラナイ……ってのは冗談でそちらもどうにか終わらせる予定。今年は今年でIFネタはやりたいからね。今年は1話で読み切りにする。絶対にそうする。去年のこの作品の進みが遅かった理由の多くはあのIF話だからね。(あとは意識失って倒れたりも理由であったけど大半は本当にIF話の所為ですね)

第3章は間の出来事の殆どすっ飛ばして、関わりたい事件だけ拾ったら手っ取り早く原作開始する予定。そのため第3章の5から8話までにはルフィ達麦わらの一味視点とかが入る予定。なにもかも予定ですみませんね。


そしていきなりですがアンケートを実施します!!
イエーイ!!ドンドンパフパフ♪

今のうちから決めて書き始めないと直前までやらなそうだから今年の4月にやる予定のIF話はどれが良いかのアンケートを下に貼ります。投稿時には貼れてるはずです。どれが見たいかを選んでください。単純に書きやすさとかは置いといて選ばれた物を出来る限り頑張って書きます。締め切りはそうですね。外部プラント4が投稿されるまでにします。


それでは、いつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第30プラント DEADorLIVE!?厄災襲来!!PLANT計画完了?驚愕ウェザリアの天候の科学

しばらく待っているが【厄災】自体の姿は見えない。進路を逸れてくれたなら有難いのだが、生憎と引きずられる様な海流は未だに続いている。能力の制御で完全に大地を固めているから大丈夫だが、やめればすぐにでも島が崩れてもおかしくはない。姿が未だに見えないのにこれとはふざけた力だ。

 

「海の呪いも形無しだな」

 

 まさか海を呑み込みながら移動するとは……能力者の弱点であるはずの海がまったく機能していない。特殊な能力の中には海水でその効果が切れるものもある位には能力者と海の力関係は絶対的だ。それを覆すような光景に目を疑いたくなった。

 

 オレも大地で海を掻き分けて進むとかは可能だが、それとは仕組みが全然違う。海に能力の効果を伝える事が出来る能力者も居ない訳では無い。だが、それは相当な()が必要になる。オレが同じことをやろうと思えば大地で海を吸い取ろうとするようなものだが……1分持てばいい方だろう。

 

 同じ能力者と言う土俵に上がっている様に見えるかもしれないが、動物系、自然系、超人系はもちろん、同じ分類に属していてもその力の意味や方向性と言うのは違う。能力の練度で劣っていようとも何も出来ないと言う訳では無い。それは()()していたとしても変わる事は無い。

 

 待ち続ける事、30分ぐらいだろうか?ようやく引力の中心を捉えることが出来た。見聞色の覇気でも微弱な気配を感じ取ることが出来た。なるほど、能力だけが優れている者なのだろう。本人自体の存在感とでもいうべき物は一般人と何ら変わりない。

 

 気配を探れなかった理由が分かったが全く油断はできない。むしろより警戒を強めた方が良いかもしれない。戦闘のせの字も知らない様な厄災に未来を見れる実力者(カタクリ)が勝てない。分かっていても避けようがない力があるという事だ。

 

 それはさておきこのままでは進行方向にあると言うだけで海のついでにこの島が呑み込まれてしまう。時間稼ぎの意味もかねている身としてはこちらに注意を向けて貰わなければならない。まずは海のそこに居るあろう厄災を引きずり出そうと海底の大地を押し上げて目線を同じにする。

 

「うわぁっと、あれぇ、なんで急に地面が盛り上がったのかな?まぁいっか、おかげで()()()()を飲まずに済んだからね。って、ん、お兄さん誰?」

 

 海中から現れた厄災、その姿はまだ小さい子供の様な姿であった。いきなり地上まで持ち上げられた反応も不思議そうに周囲をきょろきょろと見渡したり、楽しそうに笑うと言った当たり前な幼い仕草ばかりだ。こちらに気付いた厄災、戦わなくて済むのであればと口を開き、接触を図る。

 

「初めまして【厄災】、オレはプラントの国王、アスカルだ」

「む、お兄さんもボクの事を厄災って呼ぶの!?ボクには”ラトニー”って言う名前があるんだよ!!」

 

 厄災と言う呼び名はあまり好きでは無いようだ。腕を振り、頬を膨らませる姿は街の子供とそう変わらないが、あまり怒らせるのは得策ではない。向こうから教えてくれたのだから名前で呼んでおくべきだろう。

 

「そうか、ではラトニーと呼ばせてもらおうか。君は何でこちらに進んでいるんだい?」

「ん?えー、なんで、なんでって言われてもなんで?」

「理由は無いのか?ビッグマムの縄……いやお菓子ばかりの島を食べたのは覚えてるかい?それはなんでか教えて貰えるか?」

「お菓子……?島を食べた……あの甘い奴の事かな?あそこはいつ見ても呑みがいがあって、美味しいの!!いい匂いもするからね。()()()()()行った方が良い気がして、あっ、そうそう、こっちに来たのも同じ理由だよ。こっちの方に行きたい気がするんだ!!」

 

 簡単な言い方をしたはずだがまさかお菓子もあまりよく分かって居ない様だ。彼女は一般的な常識、知識が欠けているように感じられる。行動理由は食欲に忠実なのかとも思える発言だ。だが()()()()()か……動物系に多く見られる能力に引っ張られる様な状態か?超人系や自然系でも在り得なくはないし、強い能力であれば無意識にそちらに寄せられる事もある。彼女は悪魔の実に従って生きているとでも言うのだろうか。

 

「なるほど、たぶん君が目指してるのはオレの治める国がある島だろう。君はその島を食べないでくれとお願いしたら我慢してくれるかな?」

「ええー、なんで目の前にあるのに食べちゃダメなの?」

「そこに住んでる人や関わりがる人たちが困るから、じゃ伝わらないよなぁ」

「そんなのボクにはかんけいないじゃん。邪魔するんならアスカルも呑み込んじゃうよ。それにさっきからアスカルの後ろにある奴が気になってるんだ。もう我慢は出来ないよ?」

「参ったなぁ。オレも呑まれる訳にはいかないんだ」

 

 これは価値観の問題だな。彼女は狂ってる訳では無い。彼女にとってはそれが当たり前なのだろう。そのやり方しか知らないのだろう。動物系の悪魔の実の能力者が自然と能力を使えるようになっていくように、彼女はゴクゴクの悪魔の生き方でこれまで生きて来た。それ以外の生き方を知らない子供だ。

 

「勉強の時間だ暴食悪魔の幼子(ラトニー)……」

「他の人と食べる時はこうするんだよね。飲み込んじゃうよ(頂きます)!!」

 

 彼女は手を合わせるとそのまま口を開いた。嫌な予感を感じ取ると反射的に島ごと体を動かして避けると、彼女の口が開いていた方向がぽっかりと抉られていた。少し土を吞まれたか……急いで海底から補充するが連発されればすぐに足場など消し飛ぶだろう。

 

「んー、ようやく不味いお水以外を呑めた。たまにいるお魚だけだと全然力が出なくて困ってたんだよね」

 

 発言から考えるに海水は飲めるだけ、海水をいくら飲んだところで強化はされないと思って良いだろう。むしろ力が出ないと言うのが強制的な物だとすれば海水を呑ませることで身体能力自体は封じることが出来るのかもしれない。だとすれば地上に出したのは失敗だったか?いや、こちらから手が出せない状態だと一方的にやられていた可能性もある。得策とは言えないが失策ではないだろう。

 

 彼女は足場を蹴るとこちらに飛び込むような勢いでやってきた。攻撃かと思い身構えるがどうやら違う。狙いは後ろにある囮の食料か。それにしても動きが早い、抉られた土の量は小さな丘位(それなり)だったと思うがあれでこの強化率と考えると呑ませる訳にはいかない。

 

 ラトニーとビッグマム海賊団との相性は悪いなんてもんじゃないだろう。こんな微弱な気配では縄張りに侵入されてもまず気付くことは敵わない。どこかの島に上陸して家の数軒でも呑まれればそこらの兵士では何の役にも立たない。先ほどの吸引力を考えるに幹部が来るまでに島の半分も食べればもう手は付けられない。

 

 だがそれはプラント本島も同じことだ。世界を支えるプラントと名高い食料を呑み込まれた日には抵抗すら許されないだろう。絶対にプラントにラトニーを進ませるわけにはいかなくなった。そのためにはより正確にその能力を知る必要がある。

 

「頂きま、「『地割れ(クラック)』」うひゃぁ!?『豪飲(ゴウイン)』!!」

 

 ラトニーが囮である食材を呑み込もうと飛んで行った場所を操作してぽっかりと穴を開けた。勢いのついたラトニーは止まる事が出来ずにそのまま空いた穴から海に落ちていく。普通の能力者であればこれで終わりだがラトニーは海を呑み込んで見せると海底からジャンプしてまた戻って来た。

 

 先ほどよりも勢いは弱い、海水で強化が-されるのは確かだろう。強制解除で無いのが残念だが、海に落とす事が叶えば流石に解除されるだろう。しかし、地面の操作は流石に今ので警戒される。次はそう易々とかかってはくれまい。

 

「『土人……いや呑まれてエネルギーになるだけの悪手だな。覇気を流し込んでも微量なら吸い込んでくるみたいだしな」

 

 オレが立っている小さな島には遠くからの吸引を防ぐ際から少量だが覇気を纏わせていた。しかし、最初の攻撃を受けた際に避け切れなかった部分は耐えたとはいえ抉れている。あれが全力かも分からない状態で数だけ用意する『土人形』系統の技は使えない。

 

「っ!しまっ『断層断崖(フォウトクリフ)』『沼地(スワンプ)』」

「やった!あたった!あたった!今のうちに行っちゃえ、こっちからいい匂いがするよ!!」

 

 迷った隙に一気に近寄られて反応しきれずに一撃が身体にささった。咄嗟に地盤をずらし自分の背後に壁を作り出すとそれを沼状に変化させて自身を受け止める準備をした。そして沼に埋まるように吹き飛ばされたとはそのまま地面の下に潜って機会を伺った。

 

 向こうは吹き飛んだこちらの事をもう気にしていないようで食材がある方に向かっている。オレが地中に居る事に気付いていない様だ。やはり覇気を使う事は出来ていない様だ。それでこの有り様なのだから能力の理不尽さがよく分かる。

 

 既に食料にたどり着いていたラトニーは食材を美味しそうにゆっくりと味わう様に口に運んでいた。エネルギーを得るためと言うの意外に楽しむと言う考えがあるのが幸いだ。オレは大地の中を泳ぐように進んでラトニーの真下まで移動するとそのまま足を掴んで引きずり込んだ。

 

「むぐっ!!アスカル、まだいたんだね。とりゃあ!!」

「『大地壁(グラウンドウォール)』」

 

 ラトニーは埋まって行く体に力を籠めると周りの大地を吹き飛ばして脱出する。そのままこちらに対してまたパンチを繰り出してきたので壁を作って一瞬だけ動きを阻害すると急いで横にずれて攻撃を避けた。力もパワーも段違いに上がっている。これでは集中しても見えないかもしれない。

 

 しかし、動きはどれも単調で攻撃などもただ腕や足を振るっているだけ、技量だけを見れば子どもの喧嘩レベルである。それを災害レベルに引き上げる身体強化には驚かされるばかりだがな。視線や手足の微妙な動きに注意すれば見えなくてもどうにか避けれる。駆け引きさえ間違えなければ戦えなくはない。

 

「『地震(アースクエイク)』」

「え、ちょっ!?足がとられる!!??」

 

 立ち姿なども軸が真っすぐでない事などから不安定な場所で十分にその身体能力を発揮することは出来ないと踏んだが、予想通り足をつけた瞬間に島を揺らすと上手く立てないようで戸惑っている。そのままラトニーに攻撃を繰り出して食料から遠ざける。

 

「んもう!!怒ったからねぇ」

「『断層断崖』『断層断崖』『大地壁』『大地壁』『地盤沈下(グラウンド・サプサイデンス)』」

 

 言葉の通り、アスカルに怒りをぶつけんと体当たりやパンチや蹴りを当てようと猛スピードで飛び交うラトニー、その動きを読んだり、察知するために壁や崖を作り出していく。壁が多ければ自分が潜ったり、万が一の防御にも使える。さらに周辺全てを沼地に変えて沈める事で相手の足を奪う。

 

 しかし壁を作りすぎると壁事呑み込もうとしてくるので相手を強化させる要因になっている。覇気を纏っているのでそう簡単に削られることはしないが、こちらの体力は減る。覇気を吸い込んだ際の相手の影響は分からないが特に気にせずに壁を呑んでるのであるとしてもデメリットは大きくないのだろう。

 

 そこいら辺も考えて場を整えた方が良さそうだが、とりあえずあのスピードとパワーは脅威であるため、可能であれば弱体化させたいが、そのためには海水を呑ませる必要がある。どうしたものかと考えながら迎撃や防御を続け、とりあえずは海を直接ぶつけてみようかと距離をとって準備をする。

 

「ん、アスカル?どこにいった~?おっとっと、また地面が揺れてる」

「こっちだ……『地震』からの簡易版『破海』!!」

 

 島を覆うほどの津波と強力な衝撃波を撃つ技だが、今回は波を作り出してぶつけることが出来ればいいので海底で地震を起こして波をラトニーの方にぶつける。

 

「美味しくない水は要らないよ『リバース』!!」

 

 ラトニーは口を開けながらそう言うと口の中からエネルギーが飛び出し、迫っていた津波を穿って弾けた。飲み込んで蓄えたエネルギーを撃ちだす事も出来るのか、今までやらなかったって事は連発は出来ないのか?いや、楽観視は出来ないので警戒はしておこう。

 

 それにしても直接海水をぶつけても拒否されるのであれば何かに海水を隠して呑み込ませると言う手段を取らなければいけなくなる。壁の中に海水を敷くか?いや、直ぐに気づかれるし、一発で大量に飲ませなければ警戒されてしまう。となれば、まずはどれくらいなら吞んでくれるか確かめて行こう。耐久戦になるが気を引き締めて頑張るしかないな。

 

「『偉大なる大地(グランド・グラウンド)』」

「なにない、土の飴玉?それぐらいなら一飲みだよぉ!!」

 

 次々と()()()()()()()『偉大なる大地』を撃ちだすとラトニーはそれを苦も無く呑み込んでいく、ある程度飲むとたまにさっきのエネルギーを撃ちだす技を放つが、どうやらあれはある程度エネルギーが溜まって居ないと放てない様だ。放つ前と放った後では動きの速さも違っていた。となれば仕掛けるのはエネルギーを撃った次。

 

「流石にこれは呑めんだろう『偉大なる大地』!!」

「ふっふーん、それぐらいの大きさならまだまだ飲めるもんね」

 

 こちらを馬鹿にする様子はないが楽しそうに笑って余裕の表情を浮かべているラトニー。宣言通り偉大なる大地は跡形もなくラトニーに呑み込まれた。しかし、次の瞬間にラトニーは顔を顰めて膝をついた。さらにはぺっぺっと舌を出して、口の中の唾液を吐き出している。その拙い動作もかなりゆっくりである。

 

「悪いなラトニー、さっきの攻撃の中身は濃縮された海水だ」

「げほっ、けほ、そ、そんな酷いよアスカル」

「それだけ弱ってれば良いだろう。『タイムカプセル・海水入りバージョン』」

「うう、力が抜ける……お腹も空いてきた……」

「あぁ、どうにかなったな」

 

 終始翻弄することが出来ていたが、有効打を喰らった回数はこちらの方が圧倒的に多い。覇気を纏っていたにも関わらず骨が折れ、全身に打撲の跡がある。さらに言えば連続での大技で初めにあった島は見る影もなく、残った足場は小さな公園ぐらいだ。覇気も既に底をつきかけている。先ほどのアレを呑んでくれていなければ、飲んだ後に余力が残って居れば、負けていたのはオレだった。

 

「ううん、出してよアスカル~、お腹空いたよ!!」

「出したらお前は島だけじゃなく()()()食うだろう?」

「うん、だってお腹空いたもん」

「はぁ、一個ずつ教えるしかないか。とりあえずプラントに着くまではお前はそのままだ。着いたら特別製の海楼石のアクセサリーをプレゼントするよ」

「海楼石ってなに美味しいの?」

「……お前なら喰っちまいそうで怖いよ」

 

 呆れ半分、恐ろしさ半分でラトニーの言葉に苦笑しながら残っている食料をラトニーの口に運んだ。能力が使えない状態でそこらの土を喰わせる訳にはいかないからあまり上げれる分は無いが、その少量の食料を嬉しそうに頬張る【厄災】と恐れられる少女を見て、オレはもう一度ため息を吐いてからプラントに連絡を入れた。

 

 


 

『それで【厄災】は消息不明という事か?』

「ああ、プラントから逸らすので精一杯でした。あの様子なら生きているでしょうが、確認しに行くような真似は出来ませんよ。ビッグマムの方は癇癪を起している所為と今回の被害でしばらく活発な動きは無いでしょう。そのせいで情報もあまり正確には分りませんがね」

『いや、それでいい。無理をしてプラントに被害が出る方が今は世界にとって損害も大きい。アスカル国王、君の世界政府への献身に感謝する。何かあれば便宜を図らせてもらおう』

 

 世界政府への報告はこれで良いか。便宜を図ると言われてもPLANT計画についてはもう問題はないと言える。便宜を図ってもらうような事態は無い方が嬉しいかもしれないな。

 

「アスカル王、いま戻った」

「カスタードにエンゼルか。二人ともご苦労様、予期せぬ形での里帰りとなったがどうだった?」

「島は壊れていたが再興は可能そうだ」

「みんながママを必死に宥めて落ち着かせていたよ」

「そうか。それで向こうへの報告も問題はなかったか?」

「ああ、プラントが無事な点とどうやって追い払ったのかは聞かれたがそれ以外は事前の情報通りどうにか誤魔化せた」

「兄さんたちに色々と訊かれて大変だったんだから」

「無理をさせた分の報酬も用意している。だがオレとしては助かったけどこれで良かったのか?」

 

 カスタードとエンゼルの二人は生まれ故郷が被害にあった事を気にしていたようなので、支援物資を届けさせる役目を与えて一時的にトットランドに帰らせたが、その際にラトニーの事について少し嘘の報告をしてもらう事になったが、家族を裏切るような行為では無いのだろうかと頼んでおいて悪い気がしていた。

 

「まぁ、ビッグマム海賊団への攻撃の為とかなら命がけで逃げてましたが、そう言う訳ではありませんでしたしね」

「兄さんたちならママの癇癪を納めるために処刑しようと言い出すでしょうが既に支援物資やこの前運んだお菓子でだいぶ機嫌は治ったようですから」

「そうか。とりあえず急な仕事はこれで落ち着いた感じだな。あまり支援ばかり送るのも向こうにも面子があるだろうから後は少し休んでからまた通常業務にもどってくれ」

 

 二人に報酬である好物や金銭と少しだが休みを渡すと少し嬉しそうにしながら下がって行った。まぁ、怒りの矛先があるのであれば利用したいだろうが、無抵抗な状態のアイツを差し出す気は無いな。

 

『プルルルル』

「電伝虫か……お前は悪くないがどうも音を聞くと警戒してしまいそうだ」

『ガチャ、あー、あー、こちら空島探索分身だ。まだ地上に降りれていないが電伝虫の範囲に入ったので連絡を入れいてる。声は問題なく届いてるだろうか?』

「ああ、問題はない。こちら本体、何か緊急事態か?」

『いや、ある意味そうかもしれんが違う』

「ん、どういう事だ」

『”ウェザリア”と接触することに成功した』

 

 どうやら最後にかかって来た電伝虫は良い知らせを届けてくれたようだ。

 


 

 空島『フリートガンクラウド』にて得た情報を基に目指す事になった空島『ビルカ』、ウェザリアが立ち寄り取引をしていると言う噂だったが『ウェザリア』を作り出したのがここの『ビルカ』の科学者なんだそうだ。

 

 『ビルカ』の人々から話を聞き、『ウェザリア』の行方を聞くと改造した船と少しの海雲を利用して目指す、本当にその方向にあるのか分からないが、目指してる方向が合っているのか確かめながら空の上での生活を続ける事数週間、ようやく『ウェザリア』に到達することに成功した。

 

 ウェザリアでは天候の科学という物が研究されており、ハレダスと言う気象学者に色々と教えて貰った。その中でも『ウェザーボール』と言う代物には驚かされた。天気自体を売り買いすることは今もやっているようだが『ウェザーボール』自体を外には出していないらしい。

 

 オレはハレダス氏にプラントの目指している場所、PLANT計画について話し、そのために『ウェザーボール』を使いたいと言う旨を正直に話した。

 

「ふむふむふむふむふむふむ、なるほど。天候を生む『ウェザーボール』で気候を制御するのぉ。正直面白い発想じゃ、一研究者として気にもなる。それとその実験を行える土地として解釈すれば悪くない。さらに一大農業国家となればノウハウを理解すれば『ウェザーボール』の大量生産も夢では無いのぉ」

 

 エリアを巨大な『ウェザーボール』、『シーズンボール』とでも言うような物で囲い、微調整の為に『ウェザーボール』を規則的に活用し制御する。プラントであれば地熱の操作で更に細かくいじれるだろう。

 

「今の段階で直ぐにと言う訳にはいかんな。まず第一に『ウェザーボール』だけでは不可能じゃしのぉ。日の光などの問題も重要じゃしな。細かい所を詰めるにしてもまずは共同研究からといかんかなアスカル王?」

 

 ハレダス氏との話し合いにより、興味のある研究者をプラントに置き、定期的に『ウェザリア』がプラントに訪れるという事になった。現在は地上でのウェザーボールの育成、ウェザーボールの巨大化、大規模な気候への影響実験などを進めている。

 

 


 

 プラント王国本島地下、基本的に部外者の入ることが出来ないエリアが多い場所だが、その中でもまず人が寄り付かないストマックバロンやモルの住む菌の森の地下にわざわざ空間を作っている。この場所にはオレかピアスでないと入れないだろう。

 

「ラトニー勉強の時間だぞ」

「アスカル~!おやつはある~?」

「あるから真面目に受けてくれよ」

 

 ここはラトニーの住居エリアとなっている。世界政府から危険指定を受けている特別なお尋ね者だ。秘匿レベルはモルよりも上と判断された。それ故に環境をしっかりと整えたうえでの地下暮らしとたまに王城やその周りで過ごすだけで我慢してもらっている。

 

「う~ん、美味しい!!」

「そりゃぁ良かった。それにしてもだいぶ慣れてきてるし、制御も進んでるか」

 

 ラトニーの首には海楼石で作られた首輪がつけられている。そして万が一に首輪が外れ、更に彼女が暴走した際にピアスでも対処できるように居住エリアの周囲は海水で覆われている。覇気で呑み込みを防ぐことが可能と分かれば海流に覇気を纏わせられるピアスであればラトニーを溺れさせて落ち着かせることが出来る。

 

 だがその心配が必要なのは最初の頃だけであった。初めは暴れようとする姿も多かったがちゃんと食事を出して、少しずつ話をしていくうちに段々と落ち着きを見せて来た。知らないだけで頭は悪くなく、覚えも良いので今ではお菓子の為にと頑張って勉強をしてどんどん賢くなっている。

 

「ビッグマムって人の島に行きたいな~」

「ダメに決まってるだろ」

「あ~、やっぱり?」

 

 分かった上での冗談だと思いたいがたまにこのように食欲が優先されることもあるのでまだ完全に安心は出来そうにないが……こうしてまたプラントの愉快な仲間が1人増えた。

 

 


 

 

 共同研究開始から1年が経過した。プラントの農地のエリアごとに大きく透明な壁が張られている。その中と周囲には研究者や協力者が集まり見守っている。そしてアスカルとハレダス氏が起動のボタンを入れた。

 

「こちら春エリア、日射量、気温、湿度、目標値達成」

「こちら夏エリア、同じく目標値をマーク」

「秋エリア同じく」

「冬エリアもです」

 

 その報告が電伝虫から流れた瞬間、会場中、いや関係する島中の人間が喜び声を上げた。プラントとウェザリアの共同研究が実を結んだ。プラントは何処に居ても四季の恩恵を得ることが出来る様になった。

 

「アスカル……」

「ああ、プラント王国国王アスカルの名においてPLANT計画の完了を宣言する。この後世界政府には電伝虫にて連絡、明日には来賓のモルガンズの新聞で全世界に公表する!!」

 

 プラントにおける天竜人も関わる一大プロジェクト『PLANT計画』、それはレヴェリーでもアスカルの口から話され、注目を受けていた議題だった。それだけに全世界でプラントの話題で盛り上がりを見せた。

 

 世界を巡る超巨大な食料プラントとなったプラント王国、そのプラントの主と言えるアスカルについても話題となり、モルガンズ以外にも取材などが度々訪れる騒ぎとなった。そのアスカルの操る土の力から、『大地の王』やプラントの主である事からこうも呼ばれるようになった。

 

 

『プラントオーナー』

 

 

 




なんともまぁ最後は駆け足になってしまいましたがタイトルを回収する事が出来、少し落ち着いた気分です。

長い間ご愛読いただきありがとうございました(嘘です。まだ終わりません)

ここから先で拾いたい事件や書きたい描写となると何があるかねえ。ワノクニは関係性があまりないし、ビックマムと関わりがある以上は手を出しにくい。

とりあえずはフレバンス、マリージョア襲撃かな。魚人島は白ひげがあるから関われないからオトヒメ様とかは無理そう。ウォーターセブンやドレスローザはやりようによっては関われるかな程度。後は世界会議は何回か描写しようかな。

食材ネタはチマチマと間に挟むか話の中で登場させる程度になりそうです。まだネタはあるけど一気に出せるほどは残ってない。貯める時間をください。

麦わらの一味と関わるのはどのタイミングだろうか。悩むけど不自然じゃなければいいかな。

とこの辺でいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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外部プラント4 「島一番の働き者」

外部プラント投稿です。
ほぼ1年ぶりの外部プラントですね。


 荷物を運び、収穫を手伝い、商品の開発、料理や炊事などの家事、アスカルが忙しい時は最低限畑の維持の為に鍬を振ることもある島一番の働き者、彼らは興味が赴くままに行動しているが島のどの種族よりも働き者であった。

 

 


 

 さてさて、僕たちがこの島にやってきてからだいぶ時間がたったな。いや、ここは国だったっけ、まぁなにはともあれプラントに移ってからは忙しくてたまらないがだからこそブレイクタイムの楽しみも増すってものだけどね。

 

 さてさて、今日は種族会議の日だ。ここ最近は雨が続いてたから島では話しづらいと言って白さんがマニュ様に使っても良い場所を訊いてくれたし、アスカル様への報告は黒さんがやってくれた。主様には甘さんが電伝虫を繋げる準備を今してくれてるはずだ。任せっきりにならない様にしたいけど僕はどうしても忙しいからな。分かってて率先してやってくれてるんだろうけど……まったく研究報告で少しでもお礼になると良いんだけどね。

 

 時間に成ったので渡された地図の場所に来たけど、ここであってるかな?こんな建物は初めて見るけど、あっ見張り君が居るって事はあってるね。良かった地図を読み間違えてるかなって疑っちゃったよ。え?白さんや黒さんがアスカル様たちに連絡したらわざわざ専用の建物を造ってくれたの!?

 

 確かに持ちつ持たれつの関係に近いけれど、どちらかと言うとアスカル様達には守られてばかりだし、お世話になりっぱなしなんだけどなぁ……僕らもいつもありがとうって言われてるけどやりたい事やってるだけだからむしろこっちがお礼を言わないといけないくらいなのに、まぁそこがアスカル様の良い所だからね。

 

 もうみんな着いてるみたいだから急いで部屋まで行かないと……ええっとここの会議室ってプレートの所であってるよね。さて丈夫に作ってあるだろうけど力をセーブしてノックをして、失礼しまーす遅れてすみません。特別な立場になりつつあるけど、大派閥の長であるみなさんと違って僕は無所属だから未だに少し緊張するよ。

 

「遅かったなぁ……迷ってたのか、あぁ?」 

「そんな訊き方じゃ威圧を感じてしまいますよ。それとまだ時間には余裕がありますから安心してください」

「そーそー、この中じゃ一番忙しいんだからさー、こんな時くらいゆったりしなー」

 

 黒さんは訊き方こそ威圧感があるが心配してくれてるだけだ。知らない方からすれば怖いと感じるかもしれないけどしっかり者で頼りになる。

 

 白さんは丁寧と言うか話し方からして優しさが溢れている。お節介過ぎてないか気にしているけどそんなことを思う方は居ないでしょう。

 

 甘さんはおおらかと言うかなんというか一番接しやすい方で自然体で居られるようにしてくれて初めのうちは緊張をほぐして貰って助かってました。

 

 ちなみに黒さんと僕が男で白さんと甘さんは女だ。だけど強さで言えば白さんと甘さんが1,2を争う強さだ。逆に黒さんはあんな感じだが僕に負けないくらい器用さが高い、まぁ僕と違ってそこまで開発に興味は無いんだけどね。

 

『……ベシッ』

 

「あっ、すみません主様、それでは始めさせて頂きます。今回も進行は僕がやります。どうぞよろしくお願いします」

 

 主様は外敵が現れると島を守ってくれる守り主だけど、普段は何も気にせずにのんびりしてる人だ。この会議にだって参加はしてくれてるが基本的に僕たちに全部任せてくれている。プラントに来てからは守りをアスカル様がやってくれてるから更に最近のんびりしてる気がする。

 

 

「それではまず派閥報告を順番にお願いします。まずは黒さんお願いします」

 

「おう、うちのは最近派閥入りしたのが20、そのうち育ちたてが5だ。残り15のうち8は無所属だった奴らだが、後は最近増えてる兼任組だ。白のとこからのが3で甘が4だ。そっちでも確認してるはずだよな?」

 

 白さんと甘さんが頷いているので問題は無さそうだ。提出されている記録や名簿とも合致しているので問題はない。黒さんの所との兼任はやっぱプラントに来てから増え始めたなぁ。今までは黒さんの所に兼任は少しだけだったけどやっぱ環境で意識も変わるかな。まぁ兼任を除いても居れても黒さんの所が最大の派閥である事に変化は無さそうですね。

 

「続いて白さんお願いします」

 

「ああ、私たちの所は派閥入りが40、新規が30で兼任は甘の所からが8で黒からが2になってる」

 

 全体の総数では黒さんの所に負けてるけど最近の新規の数がやはり増えてますね。乳島の影響が大きいんでしょうかやっぱり、良い品を簡単に仕入れられるようになりましたからね。

 

「続いて甘さんお願いします」

 

「はーい、うちはプラスが30、新入りちゃんが20で兼任が白ちゃんから9の黒ちゃんから1だよー」

 

 やっぱり白さん所と甘さん所は兼任が多いな。兼任を除くとお二人の派閥の総数を足しても黒さんに勝てないレベルですからね。まぁ勝ち負けでは無いですし、みなさん仲が良いですから何も無いんですけどね。派閥があるのもそれぞれのやり方を守るための指導ですからね。

 

「続いて無所属及び少数派閥ですがそれぞれ手元の資料でご確認ください」

 

 プラントに来てから細かい派閥が増えてしまったから管理が大変すぎる。出来ては潰れてを繰り返してた移住初期よりはマシですけどね。

 

「続いて経過報告です。こちらは僕が纏めて読み上げてさせて頂きます」

 

 黒さんの原種の保護と品種改良の調子は順調な様です。新しい品種が増え、品種ごとのこだわりを持つ派閥も出来る程ですからね。まぁ、失敗作もそれなりにある方ですが僕も開発に失敗がつきものなのはしってます。ですがその失敗作を好む変わり者が毎回現れるのだけはどうにかならないものですかね。

 

 白さんの所は乳島のミルクの確認とミルクルミを植えた場合の変化ですね。濃厚になった物や育ちが良くなったもの、味に変化があった物と場所によって違うみたいですね。コントロールできないか、違いは何か調査中ですね。

 

 甘さんのデザートデザートの長糖はいちおう成功ですか。育ちが早くなったけど砂糖の品質に変化なしですか、味の改良が出来なかったのは残念ですね。まぁまだ実験は続けてるみたいなので変化があれば報告をお願いします。

 

「さて最後に僕の番ですね。開発部門は料理やお菓子の種類が一気に増えました。危機も多かったですがプラントとビッグマムと言う海賊の取引は大きく開発にも影響を与えています。我々の商品が逆に購入されることも増え、開発費用も上がりました。品を一つずつ紹介してると時間が足りなくなるので冊子にしておきました。全員が欲しがるでしょうから電伝虫を借りて好きなページを誰でも印刷できるように設置予定です」

 

 試したい物が増えすぎたから開発部門はだいぶ手が不足ですね。それぞれのこだわりがあるから無理に手を増やす事が出来ないから興味を持ってる人がいれば紹介して欲しいですね。

 

「最後に主様からはありますでしょうか?」

 

『ふわぁ……宝の熟成間近くらいか、イベントはそっちで調整を……ブチッ』

 

「寝たな」

「寝ましたね」

「電伝虫無事ですかねー」

「流石に潰して無いとは思いますが、ハハハハ……」

 

 とは言っても『宝』ですか、これはぜひともアスカル様たちにも献上しなくてはいけませんね。となれば僕たち主導でのイベントが好ましいですが、許可は必要ですね。必用なのは宝の確認、主様への確認、アスカル様たちへの確認、参加者の確認、後は催しの内容でしょうか?

 

「宝と主様への確認は俺がやろう」

「内容は後で決めるとしましてアスカル様への報告は私がしましょう」

「参加者ってさ何処まで参加するかもってことでしょ?これも内容次第じゃあない?」

 

「宝であれば国民全員に行き渡るでしょうから、これまでの成果を見せる発表会の様にしませんか?三大派閥の長が提供で開発部門は合わせを屋台形式で提供します。それ以外は基本的にお祭りで、外からのお客さんにはアスカル様に訊かなければ対応は出来ませんね。後は僕たちで演武でもやりますか?」

 

「楽しそうじゃないか、よし主様に出るか見学するか確認しておこう」

「ふふ、腕がなりますね。では詳細を詰めながら告知なども含めて一度アスカル様に伝えましょう」

「それなら私も一度白ちゃんと一緒にアスカル様に会いに行かなきゃねー」

 

 


 

 そうして話し合いが続いて行った結果、無事に開催が決まり、今に至る。国の中は良い香りに包まれている。僕たちには在り得ないが人の中には嫌いな人もいるみたいなので配慮はされているようだけど、多くの人が楽しんでくれてるみたいだ。あっ、アスカル様の挨拶が始まった。

 

「ああ、今日は楽しい祭りの日と成った。つまらない話を続けるつもりはない。それぞれ自由に楽しんでくれると主催である彼らも喜んでくれることだろう。そして今日のメインの登場だ」

 

 そう言うとあたりに一瞬影が出来て暗くなったと思うとアスカル様すぐ横に主様がいた。その手には巨大な岩の様な物がある。きっと演出として取らずにギリギリまで熟成してたんだろう。アスカル様が岩を割るとその岩の中に光り輝く大きな豆が入っている。

 

「これが特別なコピ・ルアクである『キング・コピ・ルアク』だ。特別な環境下で熟成されたためにその全てが至高の域にあるらしい。オレも彼らから聞いただけだけで、文献の内容も少ないが、ひとたび飲めば頭が冴えわたるそうだ。それでは早速彼らが淹れてくれた物を頂くとしよう」

 

 そう言うとアスカル様はそれぞれの長が淹れてくれた物をしっかりと味わいながら飲んだ。そして最後には僕たちが作った菓子もつまんでくれた。

 

「味や風味と言うのが段違いだな。そして目が冴えわたるような気分だな。そしてどのカップにも合うお菓子の提供もありがとう。お菓子やそれ以外の食べ物も屋台に多く出ているので各自好きな物を楽しんでくれ」

 

 そう言うとアスカル様は祭りの開始を宣言した。多くの人が僕らに挨拶して祭りを楽しんでくれている。屋台の方も盛況なようだ。お客様の対応はアスカル様とマニュ様が行ってる。主様は真ん中でずっしりと構えている。子供に好かれて乗っかられているみたいだけど気にせずに微笑んでる。

 

 さてと祭りは暗くなっても続く、というか暗くなってからが僕たちの演武が始まった。派閥ごとの物と全体での物とどちらも大盛況だ。奔走して準備を頑張った甲斐があったね。ん、アスカル様がこっちに来た。どうしたんだろう。

 

「やぁ、最初に訊いた時には驚いたけど本当に眠くならないね。それでいて不健康なわけじゃないってのが凄いね」

 

 『キング・コピ・ルアク』の効果ですね。昔はこれを呑んで3日3晩躍るのが伝統だったぐらいですからね。特別な栄養で体はむしろ健康なはずです。効果が切れると逆に飲んだ人をぐっすりと眠らせてくれるようになってます。

 

「執務とかに便利そうだよ。黒の香り、白の風味、甘の味わいどれもとても素晴らしかった。もちろん君が作ってくれた菓子や料理もね。祭りは成功だし、主も楽しそうだし、キングが無くても祭り自体は毎年やっても良いかもしれない」

 

 そうなるとまた仕事が増えそうだ。キング・コピ・ルアクの熟成次第で日がずれたり、熟成が間に合わない年もあるだろうし、調整が大変だろうけど、これだけ楽しんでもらえてるならそれも悪くないかな。さて、僕もそろそろブレイクタイムといこうかな。

 

「酒じゃないから乾杯はしないけどこれまでの成果とこれからの成功も祈って一緒に飲ませてもらうよ『室長』」

 

 アスカル様と静かに飲んだ一杯も話して燥ぎながら飲んだ一杯もどれも良い物だった。祭りの満足感からくる高揚感も相まって自然と笑みがこぼれた。キング・コピ・ルアクの効果も相まって祭りは3日続き、問題なく終了した。後片付けや通常の仕事も再開してまた忙しくなったが構いはしない。

 

 僕らは興味の赴くまま、自分のこだわりを大切にし、プラントと共に生きる事を決めたプラントの国民一員。僕たちの提供する一杯に笑顔があればそれでいい。さて次は何を開発しようか?『室長』のコーヒーブレイクを含めたコーヒヒ達のこだわりの日々はまだまだ続いて行くんだから、笑顔の助けになればそれでいい。

 




メインにはあまり登場しないけど小人たちよりも多く働いている縁の下の力持ちであるコーヒヒ、その代表の一人である『室長』視点でお送りしました。

呑んだり食べたりの描写を増やしたいけど、どちらかと言うと心情とか、キャラの動きを書いて行きたいからどうしても削られる。そしてコーヒヒを生み出しといてなんだが私はコーヒーは練乳を入れないと飲めないぐらいなので描写が出来ない。香りは好きなんだけどね。


という訳でアンケートは締め切ります。
結果は御覧の通りです。


(80) 海賊だったら(ロジャー海賊団)
(44) 海賊だったら(麦わらの一味)
(52) 海賊だったら(オリジナル海賊団)
(52) 海軍だったら(頂上戦争)
(47) 海軍だったら(立場大将VS麦わらの一味)

という訳で4月のIFはアスカルがもしロジャー海賊団だったらです。
立ち位置はどうしようかな。ある程度流れは考えてるけどネタバレはしたくないので書きません。


その代わりに外部プラントの予定は載せちゃいます。

5テゾーロ&ステラ
6カスタード&エンゼル


他にも書きたいキャラはたくさんいるけどね。マニュと小人たちはまとめて書いたけど他の幹部だとサイフォとピアスかな。それとモルもか、ラトニーは出て来たばっかだしまだ先かな。後はイスト聖とクチーナあたりも面白いか。それぞれの勢力からどう思われてるかのまとめとかも今後はしたら面白いかな。それと公開できる設定集も纏めたいね。やることだらけで笑えてきます。

とりあえずはこの上の5,6の方々を書く予定です。カスタードとエンゼルはアニメを見てないからどんな感じか正直分からないんですよね。自分でも調べますが誰か教えてくれませんか?口調とか特徴とかをざっくりで良いんですが。あると嬉しいです。

実を言うとテゾーロとステラに関してもそこまで詳しくはないがカスタードとエンゼルに関しては元々がモブとまでは言わないがずっと出る様なキャラじゃないから情報が少なすぎる。見た目だけで選んだのは失敗だったかも。

とまぁとりあえずはこれ位でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


あっ、明日Gold&EARTHの8が投稿予定です。
ようやくです。10で終わります。


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外部プラント5 「輝いている二人」

 結局は何かを持っている者でないと世界と言うのは生きていけないものなのだという事が理解できた。今までは金が全てだと思っていたがそれだけでは無かった。あの憎き天竜人から与えられた力のおかげで私たちは助かったのだからなんとも皮肉なものだがな。

 

 私達を救ったこの国の王、アスカルには感謝をしているがそれでもどこか劣等感を抱き、嫌悪する私がいる。能力を手にして全てを手にし、世界に影響力を持つ男だ。私の様な者とはなにもかも違うという事しか分からないが、王にも私の様な者の気持ちも分からないだろうとそう思っていた。

 

 最初にプラントの土地を踏んだ時には未だに信じられなかった。天竜人から逃れられたという事実に頭が追いつかず、ステラと共に呆然としていたり、天竜人の罠なのではないかとなんとも無駄な警戒をしていた。だが、ここで生活するうちにそんなものは直ぐになくなった。

 

 私たちが落ち着いた頃にアスカルから声が掛かった。私達の現在の立ち位置やプラントについての詳細などを知ったのはその時だった。来たばかりの私たちはよく言えばアスカルに保護されているという扱いであり、悪く言えば天竜人からアスカルへの下賜された報酬であった、

 

 だがアスカルはその立場を使って何かすることは無く、「何かしたい事はあるか?」などとこちらの意思を尊重した。これまでの人生でここまでお人好しな人物は見たことが無かった。『王らしくない王』とはよく言ったものだとその異名を知った時にはしきりに頷いた。

 

 その問いをされた時に私は夢を直ぐ語る事が出来なかった。ステラ以外に認めてくれる者が居なかった故にどうせ否定されると思い込んでいた。そんな時にステラがアスカルに「この島に歌や劇をやるステージの様な娯楽施設はありますか?」と尋ねていた。

 

 ステラの問いに「ホールの様なものはいくつかあるけど完全な娯楽施設と言うのはないかな」と答えていた。それを聞いた際にはステラの行動に驚きながらも内心で少しがっかりしていたのを覚えている。後から娯楽施設が無かった理由を知ったが、プラントはもといた人は少なく、求める声も無かったため存在せず、吸収されていたスキーラは少し前まで滅びるかどうか、風前の灯火状態であったためにそのような物を運営している余裕が無かったそうだ。

 

 それを聞いてもステラは止まる事は無く「それなら私たちに娯楽施設を運営させてください」とアスカルに提案していた。そのままアスカルとステラの話はトントン拍子に進んでいき、おいて行かれがちであった私が娯楽部門のトップとなった。

 

 そして1から、いや0からのスタートをきった。土地と部下を与えられ、施設を構想していくのと並行してそこで行われる興行などの練習や運営方法をくみ上げていった。さらには私が持っていたゴルゴルの力を上手く活用していくためにアスカルから能力を鍛える手ほどきを受けた。

 

 多くの施設が完成していくと共に不安も少し出て来た。上手くいかなかったらどうなるのか、そもそもこれは本当の事なのか、寝て起きたらまた地獄に居るのではないかと悩み、苛立ちから訓練中にアスカルにあたったことが一度あった。「全てが上手くいってるお前に私の何が分かる!!天竜人から引き取ったのだってその場だけの同情だろう!!」と言い放った。だがアスカルはそれさえも許して私に笑ってこう語りかけた。

 

「境遇が分かるなんて言うつもりは無いし、同情する気も無いよ。ただ、あの場に居ても未だにいつかはステージで歌を歌うという夢を持ち続け、ステラと言う希望を信じていた。天竜人への恨みを忘れず、諦める事をしなかった。何もかも成り行きで夢なんて持っていないオレとは違うテゾーロが凄いと思った。それだけだよ」

 

 アスカルと言うのは偶然で悪魔の実を手にし、なんとなくで農業を始め、いつの間にか有名になっており、たまたま力をつける機会を得て、お礼として嫁を貰い、気付いたら国を作っていた。この男は何一つ自分から望んで目指したものなんて持っていないのだ。叶えた夢も叶えたい夢も思いつかない寂しい人間を自称した。私はPLANT計画は夢と違うのかと尋ねた。

 

「色々な作物を作りたい、四季が安定した国にしたい。それは趣味である農業や仕事の延長でしかないし、取引を拡大する上での思い付きだ。国の目標であって、オレの願いかもしれないがオレの夢ではない。そもそも計画だって国にとっては通過点でしかない。そんなものは夢とは言えないだろう?」

 

 アスカルの言葉に私は呆然とし、納得はいかなかったが言いたい事を理解はした。後に達成したPLANT計画達成の際にも喜びはしていたがそれだけだったからその言葉は事実だったのだろう。夢が無いからこそ夢を持っている私を羨んだアスカル。

 

 私は恵まれてるからこそ言える戯言と切って捨てることはできなかった。アスカルの言葉は本心であり、上からの目線は無く、中身のない共感も、一方的な同情も存在しなかった。その在り方はまるで彼の能力を表しているようだと私は感じた。

 

 多くの物を育む雄大なる力を持つ大地、だがそれは決して語る事は無くその場にあるだけだ。小さな願いはあれど大きな夢を持たず、流れに身を任せるかのように生き、周りに影響だけを与える。強大であり空虚な彼は王ではなく、ただの人間なのだと思い知った。

 

 それから私がアスカルに噛み付くことは無かった。アスカルへの感謝を忘れることは無かったが望まない忠誠などを押し付ける事は無く、彼が望んだ私の夢の集大成をみせつけてくれようとより事業への意欲を高めた。その結果出来上がったのがプラント直属巨大都市型娯楽施設『グラン・テゾーロ』だった。

 

 本当ならプラントやアスカルの名前が付くはずだったが責任者と言う事で押し付けられた。私の能力の関係で多くの黄金が使われており、とても豪華な仕上がりを見て評価はしていたが少し敬遠していたのを知っているのでこれも恩返しと思って受け入れた。

 

 『グラン・テゾーロ』が運営を開始してからという物の私たちの仕事は一気に忙しくなった。元より王族などを含む有力者との関りが深いプラント故に噂が噂を読んで毎日のように人でごった返すようになり、更なる人員の増加と規模の拡大が急がれ、今この瞬間もグラン・テゾーロは急速に増改築が進められている。

 

 ショーには私やステラが出る特別な物も存在し、初めての舞台はアスカルや先輩であるプラントの幹部たちを招待して執り行われた。自分の夢を魅せきったそれにアスカルは大きな拍手を送り、「素晴らしかった。また時間を作って見に来る」と嬉しそうに言っていた。

 

 グラン・テゾーロが大きくなってくるにつれていくつかの問題も発生した。一つ目は人員不足、これについては元スキーラから働いてくれている者が居るがこれだけ大きな施設を回していくとなると私の下に準幹部とでもいうような補佐の人間がいないと滞りなく回すのは厳しい。

 

 これについては直ぐにどうこうできる問題ではない為にプラント内に置いて信用が置かれている小人たちに一時的に手伝ってもらっている状況だ。内部に悪戯に人を呼び込むわけにもいかないので時間をどうにか作って自分で人員を確保する必要があるだろう。その際にはアスカルにも確認を取らないといけないだろうな。

 

 二つ目は私もアスカルも予想外な苦情が多かった。なんでもプラントとグラン・テゾーロの景観が合わない。『素晴らしい自然の近くにあんなにギラギラした施設は合わない』やら『別世界の様な夢の都市なのに永遠と続く畑が目に入ると気分が下がる』などといったものがアンケートなどに大量に寄せられていた。

 

 こちらも今すぐには難しいがグラン・テゾーロの独立をアスカルと一緒に計画中である。流石に景観をどうにか出来ないので解決しようと思えば話し合いの結果切り離すという事になった。プラントとグラン・テゾーロの両方に行っていた客には悪いが小さい娯楽施設を城下町に作り直して後は全て無くなる予定だ。

 

 三つめはステラに言い寄る客が多いという事だ。同じく表に出る事が多いプラントの幹部であり、一緒にショーに出ているので人の眼に触れることは多い。そして見た目も麗しい彼女に交際や結婚を申し込む者が後を耐えなくなった。

 

 殴り飛ばしたり、金で固めたり、出禁にして追い出したりと当然の対応をしたら「お客様に何をやっているの?」とステラに怒られた。だが彼女に言い寄る男たちが許せなかった事を話して謝り、私はステラに求婚した。

 

 奴隷からの解放、プラントでの暮らし、グラン・テゾーロの建造に修行、そして運営。これまで一緒に居すぎて当たり前だと思っていたが彼女に告げたことも応えて貰った事も無かった。それ故に意地汚い独占欲を隠すことなくその場で伝えた。

 

 その結果、私とステラは結婚し、その式はプラントで豪華に執り行われ国中に知れ渡り、夜には外部への発表もかねて盛大な特別なショーが執り行われた。一部からは私へのブーイングも聞こえたが無視して二人で最高のショーを見せつけた。

 

 まだまだ人員確保が出来ていないために大きくプラントから離れることは出来ないが景観を維持するために近々切り離しの実験が行われる予定になっている。その際にはしばらく仕事が減るので可能であれば二人で旅行にでも行きたいものだ。

 

 私はきっとアスカルが嫌いだろう。私にないものをたくさん持っていた彼が嫌いである。それでも感謝を忘れる事は無く、ここで彼女と夢を歌い続けよう。それがきっと恩返しに繋がると思っている。さて、そろそろ今日の仕事を終わらせるとしよう。まずは未だにステラに手紙を送り続けてる馬鹿の始末に行くとするか。それでは世界が誇るプラントが幹部、娯楽統括、グラン・テゾーロが主、『黄金帝』ギルド・テゾーロの一日を始めるとしよう。

 

 


 

 初めはどうして呼び出されたのか、なぜ彼がここに居るのか、何一つ意味が分からなかった。プラントへと向かう船に乗ってる間もプラントについてからも信じられなかったのを覚えている。

 

 不安が無かったわけではないけれどすぐ近くにテゾーロが居たからどこか安心していた。そしてきっとなんと

なるという予感もあった。プラントに来てからは驚くことだらけで、どうしていいのか分からないことだらけでよく悩んでいたっけ。

 

 アスカルくん、この呼び方は本人から許してもらったものだ。助けられた恩もあるし様呼びした方が良いか尋ねた際に「好きに呼んでくれて良いよ。年上と言っても結構近いし、年下相手に様呼びって難しいでしょ」と言われたからです。とは言っても恩人を呼び捨てにするのもなんだし、国王呼びも硬いなと思った結果が君付けでしたが、新鮮で面白いって笑って許可をくれたわ。

 

 それでプラントで暮らしている間はアスカル君が保護してくれたこともあってこれまでとは比べ物にならない平穏な生活を送る事が出来た。そして私とテゾーロが落ち着いてきたことにあの話が持ち掛けられた。

 

 何かしたい事は無いか?という問いに対して嬉しそうに笑って夢を語り、毎日のように会いに来ては歌を歌っていたテゾーロの大きなステージで歌いたいという素敵な夢、それを叶えたいと思った。いつしかテゾーロの夢が私の夢にもなっていた。

 

 それからは忙しいなんて言う生易しい物ではない日々が始まった。巨大な工業施設の構想に加えて新参者でありながらプラントの幹部にテゾーロと一緒になってしまった。最低限の訓練に仕事と本当に大変で楽しい日々が始まった。

 

 そしてようやく叶った『グラン・テゾーロ』の完成。自分の名前がついた巨大な施設に呆然としたり、恥ずかしがってる姿を少し見たがやっぱり内心は嬉しいみたいでそんな感情の爆発して百面相している彼がなんだか可愛かったな。

 

 それから私たちの仕事は更に忙しくなり、私とテゾーロの名前は広く知れ渡った。テゾーロが同じ幹部なんだからとショーの名前に私の名前を入れたからだ。でもお揃いみたいで嬉しかったから恥ずかしいのは我慢した。

 

 一緒にショーをやったり、運営している内に私にもかなりのファンが出来ていたようで声を掛けられることも増えていた。そしてお客様を叩きのめしているテゾーロの姿もよく見かけるようになっていた。裏では私に声を掛けた奴がいつまでばれずにいられるか個人個人で賭けをやっているお客も居るくらい当たり前の光景になっていた。

 

 流石にお客への対応では無いし、同じことを繰り返している毎日に呆れてテゾーロに叱ったらまさかその場でプロポーズされるとは思わなかった。まぁ、その場で受けた私も私だし、ムードとかについては何も言わなかった。

 

 結婚式では国民までを含んだプラントのメンバーで盛大に執り行われて、色々な人たちから祝われてお祭り騒ぎだった。一部の能力者の人たちは能力まで使って演出をしてくれていた。舞い散る草花はとても綺麗で、一瞬で建てられた私たちの像の完成度にはとても驚いた。

 

 夜にはグラン・テゾーロでショーという形で外に向けても結婚を報告した。プラントと言う一大勢力の幹部であるために多少は仕方ないとは言えプライベートな事を大勢の人に知られるのは恥ずかしかった。だけど惜しまれつつも多くのおめでとうの声に胸が暖かくなった。

 

 テゾーロにはブーイングや殴りかかる客も多かったが声は完全に無視し、ケンカを売って来たお客には真正面から対峙して打ち倒していた。一種のパフォーマンスの様になっていて祝福してくれたお客様でも腕に自信がある人は笑いながらテゾーロに突撃していった。騒がしい一日だったけどとても最高な一日で忘れられない思い出となった。

 

 思い出して楽しくなってつい顔が緩んでしまう。まだまだ仕事はあるんだし気を引き締めないとね。それでは世界が誇るプラントが幹部、娯楽副統括、グラン・テゾーロが主のお嫁さん、『黄金妃』ギルド・ステラの一日を始めましょう。

 




予告通りにテゾーロとステラの話でした。救済された場合の性格とかがどんな感じになるかあまりつかめず四苦八苦しました。まぁ、これもある意味IF話なので思ってたのと違うという方もご了承ください。

テゾーロの方はアスカルの情報もかなり多い仕上がりになり、作者もなんでこんな話になったんだっけと少し首を傾げています。まぁ、別に設定上で問題はないですけどね。少し公開が速くなっただけだし良いか。

ではそろそろいつもの挨拶でお別れと致しましょう。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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外部プラント6 「甘くてあまくない日常」

今回の外部プラントの最終話です。

少し遅れての投稿になりました。実は活動報告でお知らせしているのですが、パソコンが壊れました。詳しくは活動報告の方を見てほしいのですがしばらくは投稿がこれまで以上に遅くなりそうです。


 

 今日も特別に用意されている区画にて重要な荷物を見慣れた船に積み込んでいく。私達が手伝っていることは知られているのでなにかあった際に向けられるママからの怒りを思うと大事な物は自分たちでやった方が安心できる。

 

「今回の分はこれで全部よ」

「了解しました。それではカスタード様、エンゼル様、また次の取引物の受け取りの際はよろしくお願いいたします」

 

 船を任されている者からの礼を受け取り、船を見送ったところでようやく一息つけるなと互いに顔を見合わせて笑った。

 

「ふぅ、普段任されている仕事より緊張するわね」

「アスカル様は強いけど怖くは無いからね」

 

 ママに送られる予定の荷物になにかあればいかに娘と言っても処罰は免れない。それがお気に入りのお菓子やその材料となれば最悪、死を覚悟する必要だってあるのだから。

 

 アスカルから任された仕事であれば手を抜くような真似はしないが安心して、落ち着いて作業が出来るし、なにか問題が起これば上司自らフォローまでしてくれる優しすぎる職場だ。

 

 まぁ、プラントは海賊ではなくただの、と言うには影響力が強いが国である。そのため殺伐とした雰囲気は似合わず、このような在り方でもおかしくはない。

 

「こっちのミス、というか運送船が壊されて困ってた時には無償で貨物と船をくれるくらいだしね」

 

 以前にビックマム海賊団への報復としてプラントから出た船を襲われた事があった。情けないことに部下はやられて、船も届けられるはずだった荷物も駄目になってしまいどうしようかと困っていたらポンと丸ごと全部代わりの物を用意したのだ。

 

 当時はふたりとも驚いていたのを思い出す。取引という形ではあるが立場的に言えば良くても捕虜、悪けりゃスパイ扱いでもおかしくはないというのに色々と気遣いまでされる始末。

 

 カスタードとエンゼルの両名は色々と悩んでいたのも馬鹿馬鹿しくなってしまい、プラントでの仕事をこなしながらその生活に慣れていった。

 

 時には万国から送られた料理人の指揮をとり、取引や連絡の際に間に入って調整したり、最近ではグラン・テゾーロの手伝いをすることもある。

 

 来客の多いこの島ではイベントが頻繁にあり、その度にアスカル様自身や幹部たちが走り回っており、エンゼルとカスタードもよく駆り出されていた。

 

「篭絡すんのは無理だろうけどね」

「マニュ様も怖いしね」

「あら?アスカルが望めば私は別に良いわよ。アスカルが望めばね?」

「「ヒッ!?」」

 

 後ろを振り向かずとも声で誰か分かってしまった。アスカル様の奥様、プラントの王妃であるマニュ様がニコニコと笑顔で二人の後ろをとっていた。

 

 アスカル様や幹部の人たちに埋もれていて普段は目立たないがマニュ様も普通に強者の枠に入る人物だ。能力無しの戦いに関しては国の中でも上位に入る。

 

 それもそのはずで、アスカル様や幹部の訓練が始まった頃からたまに参加しており、護身術などを基礎に鍛錬は欠かさず行っているそうだ。

 

 覇気も六式も扱えないらしいが、むしろそんな状態なのに渡り合えるだけの技術に驚かされる。とは言っても気配を消して近寄るのは止めてほしいと内心で思うと二人であった。

 

「二人はビックマム海賊団に敵対はできないでしょうけど、プラントを裏切る気はないでしょうし、そのうち私に子供でも出来れば、その間の相手くらいは居たほうが良いでしょうからね」

「か、勘弁してください……」

「ママからはそういう事も命じられてるけど、関係ができるとそれはそれでまた面倒になりそうなんですよ」

 

 ビックマム海賊団としては関係性を強めたり、娘を経由してプラントに干渉したりを期待してる節があるが、今の状態で成立している関係から変化するのも避けたい所があるのだ。

 

 仮に関係をもったとする。そこまでであれば問題はない。アスカルの為人は知ってるし、好ましいと感じている。強さや財力などは言うまでもない。

 

 だが、仮に子をなしてしまったとすると面倒な事になる。今の状態でもビックマム海賊団と関わりがあるとして目をつけられているプラント。

 

 ビックマムの身内となってしまった場合は流石の政府も何らかの動きを見せるだろうし、ビックマムも関係が深まった事を理由に仕掛けてくるだろう。

 

「ふふふ、縁を結んで引きずり込もうとしない辺りプラントに染まってきてるわね」

「兄弟姉妹も居ますので離縁する事はないでしょうがねぇ」

「ここは居心地がいいからな……」

「裏切らない限りは自由に過ごしなさい。試して悪かったわね。さっきの話は忘れてくれて良いわ」

 

 そう言うとマニュ様は二人から離れていった。小さく、「国民から募ればいくらでも相手はいるしね」と呟いていたのは聞かなかったことにして二人もまた歩き始めた。

 

「マニュ様や元スキーラ国民のアスカル様至上主義は相変わらずだな」

「アスカル様も苦労しているな。っとこのあとはどうする?」

「いつもみたいに開発室か研究室に顔を出すんで良いんじゃない?今日は予定無いし」

 

 イベントなどで駆り出される事がなければ基本的には、雑務をこなしたり、新しいお菓子や料理の研究などが主な仕事になっている。

 

 その過程でコーヒヒの開発部門や小人達による研究室などには頻繁に顔を出しており、小人と共にお茶会をしたり、コーヒヒたちの顔を見分けられる程度には顔なじみになっている。

 

 新商品作りはもちろん上手くいくばかりではないが試行錯誤を繰り返していくのも悪くないものだ。そう思って開発部門に向かうと、アスカル様がおり、コーヒヒ達と何かを行っていた。

 

「何をしているんですか?」

 

「ん?あぁ、カスタードにエンゼルか!積み込み作業はもう終わったのか、ご苦労さま」

 

「まぁ、ママへの荷物だしな。むしろあそこまで用意してもらって悪いね。それで何かまた作ってるのかい?」

 

 アスカル様は多趣味であり、思いつきで何かを始めることも多い。それによって利益を出したりすることも多いので呆れる事もあるが、まぁ止められることなく行われている。

 

「実はまだ少し先なんだがマニュの誕生日があってね。パーティ用のケーキやお菓子を試行錯誤してたんだ。今日は主にクリームだね」

 

 そう言うと既に決まっているレシピやパーティの計画書を二人に見せていた。けっこう前から進められていたようで料理の方はイスト聖監修で既に終わっているとのことだ。

 

「ちょうど良いし二人にも手伝ってもらえないかな?二人も専門家みたいなものだろう?」

 

「あぁ、ある程度は出来るし、カスタードクリームなら間違いなく専門だな」

「素材はもう決まってるの?」

 

 プラントには多くの食材が集まっており、日々新たに生み出される種もある。それ故に組み合わせなども無限に思えるほどの可能性がある。

 

「実を言うとそこも含めて試行錯誤中なんだ。色々と用意はしてあるんだが、長糖、クルミルク、メロンエッグ、マツボックリーム、乳島のミルク、十黄卵、バターバッタ、デザートデザートの砂糖虫、ココノッツミルク、獅子糖、取り寄せれば他にもあるけどとりあえずこんなところ」

 

 聞き覚えがあるものから、はじめて聞くようなものまで様々だ。とりあえずは特徴を知るために素材の説明を聞いたり味見を行っていく。

 

「知ってるのは省くとしてマツボックリームから」

「というかこれって既にクリームとして完成してるんじゃ?」

 

「マツボックリームは鍋でじっくり煮込むと美味しいクリームとなるマツボックリでね。乳島と相性が良いんじゃないかと思って一部の区画で実験的に植え替えたりしてるんだよね。植物性だからカロリーの心配はいらないし、風邪予防とかにもなるらしいよ」

 

「クリーミィで良いわね。それに少し香ばしさを感じるかな」

「焼き菓子やコーヒーやココアとかと合わせて使うと良いんじゃないか?生地とかにも香りを高めるのに煮込む前のマツボックリを粉にして使ったりは出来ないのか?」

 

「なるほど、そっちを使うのは考えてなかったね。たしかに香りは良いし、煮込まないと甘みは薄いけど生地に混ぜ込んだりするには良いかも」

 

 アスカル様はその発想はなかったと面白そうに笑ってメモをとっていた。コーヒヒ達もコーヒーと一緒に混ぜ込んだりをさっそく試している。

 

「でこれがバターバッタ?虫がバターの代わりになんてなるのね」

 

「体液がミルクと似通っていてね。外敵を見つけると慌てて逃げ出すんだけど、追い掛け続けられて体温が上がると固形化する体液を排出するんだ。それがこれ」

 

 そう言って取り出されたバターの量はとても少なかった。どうにか体温を上げすぎないように捕まえて増やしているそうだが、バッタ自体が小さく量を確保するのが難しいらしい。

 

「バタークリームとして活用するには少し足りないでしょうし、お菓子作りにも大物には使えないわね」

「濃厚で虫と聞いていたけど臭みとかは感じられないけど、これじゃあ試作しておしまいになるわよ」

 

 虫と聞いて嫌悪感は少しあったが食べてみると濃厚でありながらくどくなく、優しい味わいだった。これでクッキーとかを作ればそれなりに良いものが出来るだろう。

 

「でもどこか乳島のバターに似てない?」

 

「流石だね。最近少し餌の草に乳島の植物を混ぜたんだ。あれはミルクを良質に変えるから何かしら影響はあるんじゃないかと思ってね。でもそこまで違いがないならあえて使う必要性もないね」

 

「それで後はココノッツミルクねぇ。これはまた面白い食材ね」

「ココナッツとしても美味しいのかしら?」

 

 ココノッツと言う九個の実が合わさった状態で形成されるココナッツ。それから作るココノッツミルクをクリームにして使えないかと言う事だ。

 

「これまた、濃いわね。流石は九個分といったところかしら?これも香りが良いけどマツボックリームと比べるとそこまでだし、癖が無い分使いやすいんじゃないかしら」

 

「それにこれが獅子糖ね。ししとうと同じ形だけれど、かじっても問題はないのね」

 

 アスカル様の頷きをみて獅子糖にかじりついてみると、口の中に一気に甘みが広がった。デザートデザートの砂ほどの残留性はないがひたすらに濃い甘さだ。

 

「甘すぎるぐらいの甘さね」

「量の調整をしないといけないけど味は良いし、インパクトを与えられそうね」

 

 口の中を蹂躙するかのような甘みだが、獅子の名にふさわしい強さを感じられた。上手く手懐ければお菓子を1ランク上に押し上げてくれるだろう。

 

「クリーム同士の相性も見ていきたいし、しばらくは掛かり切りになりそうね」

「煮るときに少しだけマツボックリームを混ぜたりとかも良いかも」

「長糖と獅子糖とかも配合して専用の物を作れるかな」

「使わない部分は生地に混ぜ込むとして、試作品はどうしようか」

「無難にクッキーやケーキにしときましょう」

 

 試作品を作っては試して、何度も小さなお茶会が開催された。万国でのドキドキするお茶会と違い、忙しいが暖かく感じられる良い時間だった。

 

 ここでは新しいお菓子に出会える機会が多い。それと同時に仕事も増えるのであるがその苦労を軽く上回る喜びもある。

 

 アスカル様やコーヒヒ、追加の食材を運んできた小人も交えての研究は日が暮れるまでずっと続いていた。まだ先だが来たるべきパーティの日までは似たような研究の日々が続くことになりそうだと二人は笑った。

 

 抜けたつもりも無いし、許されないだろうが語るのであれば元ビックマム海賊団の二人と称するべきとさえ思うプラントでの日々。

 

 ビックマム海賊団とプラントとの間に挟まれがちで仕事はちっともあまくはないが、毒気を抜かれるようなあまい人々と甘いお菓子のあふれる日常を彼女たちはどっぷりと浸かっているのだ。

 

 




うぅん、こんな感じで良かったかな?どちらも裏切れない立場、それぞれの立場からの板挟みになりつつも楽しみも見つけられる、そんな甘くてあまくない日々を描いたつもりです。

出てきた食材の中には前に出てきた食材を加工した物や新しい食材や一部トリコの食材が混ざっております。トリコの食材の説明はしませんので気になるカタハご自身でお調べください。

次回から外部プラントではなく通常の話を書いていく予定ですが、前書きに書いた通りパソコンが壊れて満足に書ける状態でないので、もしかしたらまた別の外部プラントを書く可能性もあるかもしれません。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第3章
第31プラント 新たな火種、旅先の密取引!?


どうにか投稿出来ました。

未だにパソコンは壊れてますし、新しいのも買えていない状況です。スマホで打ち続けるとかなり疲れます。パソコン壊れる前よりスマホの文字入力の速度が格段に上がってると思う。

まぁ、そんなどうでもいい私の話は置いといて、本編をどうぞ。


 

 

 

 ここ最近働き続けて疲れが周りから目に見えて分かるほどに溜まっていたのか強制的に休みをとらされた。

 

 能力を全て止めることは出来ないが、国も止めておく予定地だったのでちょうどよく、各地に散る分身との最低限の繋がりを残すだけになっている。

 

 周りにはオレ以外の姿はなく、完全に一人になっている。戦力的には護衛はいらないが、立場上仕方なく連れ歩いてもらっていた者も今日はいない。

 

 かつての独りの時を思い出すが、その時に感じた穴は感じず。どこか清々しい気分を感じつつ、溶ける心配のない泥舟で適当に海に出た自分の選択を自賛していた。

 

 分身が船旅をした記憶はあるがオレ自身が一人で海に出るのはこれが正真正銘初めての経験となる。海底を通じて位置や島のある方向が分かるオレは適当に島を探しては立ち寄った土地を覗いたりして何気ない時間を楽しんだ。

 

 単純に観光を楽しめる事もあれば、グランドライン特有の不思議な現象を目の前にしたり、荒事に巻き込まれることも少なくはない。それが偶然による不運であれば良いのだが中には明確にオレなんかを狙ったものがあるから有名になるというのも困りものだ。

 

 PLANT計画が正式に指導し始めたレヴェリーからわずか4年で成し遂げたオレの名前は以前よりも増して世界に広まっていった。

 

 その年のレヴェリーにはもちろん呼ばれ、少しでも利を得るためにと我先にと関係を結ぼうとする王の姿には少々呆れる事もあったが……まぁ頼りになる王に助けられたり、天竜人の権力によってその場で手荒に解決した内容もあった。

 

 その所為かは知らないが他国からの刺客やプラントの資産や研究を狙った賊などはだいぶ見慣れたものとなってしまった。

 

 刺客程度でやられる程にプラントの防衛面は弱くない。街や住民を狙った者はもちろん取引先の安全なども常に守られている。

 

 まぁ、そっち方面の防衛を任されてるサイフォの功績が大きいのだが、怪しげな動きを感知してオレが捕まえる事もたまにある。

 

 捕まえるといえば政府ではなく海軍からの通達がこれまでよりも増えたりもしたな。手を出してきた海賊の捕縛への感謝だけなら問題はない。

 

 しかし、自分で言うのもなんだが安価で優れた食材を海賊などの海軍の敵対者にも売っている事は未だにくどくど言われている。献上したり、支援している訳ではないので強く言われる事は無いが、海賊の補給が安定化したことによって多少は影響が出ているらしい。

 

 規模が大きくともあくまで商売であるために、違法でもなんでもないので文句を言われる筋合いはないのだが被害が出ていると言われると無視しづらいのだ。

 

 他にも微妙なストレスもあり、息抜きや趣味で軽減しているが周りには不安にさせる面もあったのかもしれないな。せっかくの休みなのだから景色などを楽しんで気を休めた。

 

 それにしても今いる島は中々に過ごしやすい気候である。日差しは夏島のそれだが、多くの水場と常に吹いている風によって苦しさを感じない。散歩や単純な運動などをするにはちょうど良い空気だった。

 

 プラントでは細かく気候を設定する事が出来る。基本的には範囲ごとに決められた気候が維持されているだけだが、イベントなど目的に合わせて調整することもある。

 

 そのため過ごしやすい気候に設定しようと思えば出来るが、自然に存在する場所で気をぬいてる時間の方がなんとなく贅沢な気がする。

 

 国土の気候を自由自在に操れるウェザリアとの共同研究の成果は非常に大きく、プラントはこれまで通りの移動する国家を続けられている。

 

 国土を訪れる手段は一般にも公開されているために直接的には防犯に役立つことはないが一箇所に留まらないことで多少は狙いにくくなっているはずだ。

 

 そもそも用もないのにプラントに滞在する人というのはいない。色々と観光しやすい場所もあり、住むには面倒はそこまでない国なので適当な理由を作って居座り、警戒を解こうとするスパイの様な者もいるが、短期で忍び込んで盗みを働くには向かない土地なのは間違いない。

 

 土地と言えば計画の完成後も趣味と実益を兼ねた採集は行われている。植物だけに限らず、イスト聖の依頼の食材などもこれまでと変わることなく集めている。

 

 依頼は終わることはなく報告の度に新しい資料を渡されるくらいだ。終わらない食材集めの過程で島ごとプラントが回収することもあり、未だにプラントの国土は増大し、一部は異様な光景を作り出している。

 

 とは言っても食材集めだけに絞るとオレが役に立つ物ばかりでもない。特徴がつかめずにモーダスとホーニィに頼るのは多々あるし、海の食材の場合は主に働くのはピアスになる。

 

 この前なんかも島と変わらない大きさの貝をとってきてもらったりもした。海底ごと持ち上げようとしたら泳いで逃げようとしたもんだから驚いたのは記憶に新しい。

 

 大きすぎるために流石に養殖は出来ないので乱獲せずにその一体を大事に頂いた。山と同じ位の貝柱などは中々に面白く、醤油で味をつけ、焼いたものはとても美味かった。

 

 食べ物の話をしていたらついつい腹が減るなんて事もあるだろう。能力を扱う際のエネルギーは大地から少しずつ吸収しているし、今日みたいに使用の少ない日はプラス、普段でもトントンくらいだ。

 

 戦闘でもしない限りは消耗している状態にはならないが、疲れはするし、空腹自体は感じる。食わなくても死なずとも大丈夫とはならない。

 

 懐から種を取り出すと足元の地面を軽く能力で耕し、パラッと適当に蒔いた。種が土に埋もれたその瞬間には土を押しのけ、空気をかき分けるように猛スピードで成長したそれを即座に手に取ると口に運んだ。

 

 オレのサポートがあったからこのような畑でもない場所でも美味しく育ったが、ピクル湿地の植物と合わせて改良した品種は恐ろしい。

 

 サポートがなくとも育ちはするだろう。辺り一帯の養分を吸い付くし、満足に実をつけることもなく枯れるだろう。そしてその場所は雑草さえも育たなくなる。

 

 そういった危険性を含むために全ての研究を外部から遮断する必要がある。安全な研究もあるが出入りが増えればどこから漏れるかが分かったものではないからな。

 

 仮にこの品種が外に持ち出され、どこかの国が手に入れたとする。この種を育てて、たくさんの作物を手にするのは不可能だ。

 

 能力もなく、対応出来る品種や生物がいない状況で植えればその国は枯れ果てて滅びるだけだ。そして、それを理解したうえで持ち出したとすれば兵器としてだろう。

 

 戦争中の敵国に撒き散らせば良い。運び込まれる物に少しずつ混ぜるだけで相手の国は勝手に弱って滅びていくのだ。中途半端に大地が豊かであれば、僅かな実をつけ、種を増やし、広がっていく、十分な国への攻撃手段になり得るものなのだ。

 

 外に持ち出す物は種を作らないように改良した使い捨ての品種だが作物が枯れ果てるのを確認してからその場を離れる必要がある。

 

 念には念を入れ、火が使える場所であれば燃やしておけば尚良い。便利なだけであれば良いのだがそうもいかないのが中々面倒だ。

 

 簡単な腹ごしらえが済んだところでまたぶらぶらと歩きながら最近の事を考える。というよりも何をしてても普段の仕事や趣味に思考を繋げてしまいがちなだけなんだがな。

 

 これで休暇になってるのかときかれれば一瞬悩むが、まぁのびのびと出来てはいるし、ストレス解消にはなっているだろうから問題はないだろう。

 

 それに昔の事ばかりが頭に浮かんでいた時期よりは良いことだろう。日々の事が思い浮かぶのは毎日がそれだけ充実しているととれなくもない。忙しすぎるのは考えものだが何もない日々よりはずっと良いだろう。

 

 だが最近は通常の仕事が多かっただけで大きな出来事というのは少なかった気もする。直近で何かやったことといえば、ピアスをプラントの外に送り込んだのは初めての試みだな。そもそもオレが休暇を取れてるのもピアスを送り込むためにプラントを固定したからだ。

 

 それもこれも少し前までに一応と頭につくが世界政府加盟国である魚人島が白ひげ海賊団の縄張りになったと言う情報が広まった。

 

 偉大なる航路の前半と後半との間にあり、一部の者を除いて多くの者が航路にせざるを得ない海底にある魚人や人魚の住まう国。

 

 海底独自の文化など気になる物も多かったが故にその情報を聴いた際には驚かざるを得なかった。そして、早めに関係を築いていなかった事を後悔したのは記憶に新しい。

 

 ただてさえ奴隷を買ったという情報や天竜人との関わりがあるために警戒されやすいというのに、白ひげ海賊団の縄張りにビックマム海賊団と取引を行っている国が出向くというのは問題でしかないのだ。

 

 本当にただの加盟国同士の話し合いだとしても周りがそう思ってはくれない。そして万が一にもプラントと魚人島が接触した事が海の皇帝の戦争に発展すれば目も当てられない。

 

 極秘に国のトップと話し合える都合の良い場があれば良いのだが、魚人島はレヴェリーに出ることもない。だからこそピアスという、魚人島を訪れてもおかしくない人員を動かす必要があったのだ。

 

 ピアスも休暇中であり、親の故郷に旅行に出掛けてもおかしくはない。その過程で知り得た事を土産話として酒の席にでも聞ければ十分だ。

 

 縄張りと言っても常に白ひげ海賊団がいる訳ではないだろうが、実態を知らずに動くことは出来ない。だが海底の話は大事であっても伝わるのは遅い。それ故の今回の一手が重要になる。

 

 向こうも不用意に接触する事は無いだろう。面倒な事は正式にはなかった事にするのが一番手っ取り早いからな。あくまでピアスの私用でプラントは関係の無いことである。引き下がらなかった時も考えてはいる。プラントと魚人島の問題には発展しないだろう。

 

 ちなみにオレは魚人島が白ひげ海賊団の縄張りになったことは世界政府の情報網よりもはやく知ることができていた。

 

 その情報元と言うのはビックマム海賊団であり、なんでも魚人島はビックマムも一目置く様なお菓子の産地であり、白ひげ海賊団の事がなければ動いていたかもしれない国とのことだ。

 

 いっそのことビックマム海賊団の縄張りになっていてくれればプラントとしては面倒がなくて良かったかもしれないな。まぁ、そんな仮定の話をしても意味はないのでピアスの帰りを待つとしよう。

 

 ついでにそのお菓子とやらもお土産に頼んでおけば良かったかもしれないな。いや、それこそビックマムの干渉を疑われかねないか。

 

 本当に面倒なことばかりで困ったものだ。興味のない国からは持ち上げられ、興味を唆られる国とは関わりにくくなるとは頭の痛い思いだ。

 

 それなのにこれまた厄怪事になりそうな存在が目の前に現れた場合はどうすれば良いのだろうか。いつもの刺客であれば適当に相手をしてやるだけで済むのだがそうも言ってられない有名どころがアポイントもなしに訪れると言うのは困りものだ。なぁ、()()()殿。

 

「ジハハハハ……敬う気もねぇのに敬称なんてつけるんじゃねぇよ。それにしても常に土の掌握をして…おれの能力はけっこう知られてるが、戦い方まで知ってるのか?それともリンリンの奴から聴いたか?」

 

 ビックマム海賊団と取引を始めてから関わりのある勢力などについて多少調べさせてもらった事がある。コネがあると古い情報も手に入りやすくてね。それで何の用件ですかね。わざわざオレが一人になるのを待ち続けて、脱獄したてで暇なんでしょうか。

 

「なぁに、大した事じゃねぇし、なんなら喧嘩を売るつもりもねぇから安心しな。下手な手で計画を潰す馬鹿はしたくないんだ。単純な依頼だ。報酬だって払って良いな」

 

 取引以外の仕事をあんたじゃなくても海賊から受けるわけにはいかないんだがなぁ。ただでさえ公平な取引にだって文句を言われてるんだ。伝説に数えられる様な海賊様の依頼が許される訳がない。

 

「それなら取引の枠に収めればいい話だろうよ。お前の国から食料を買おうじゃないか。単純に安全に補給出来る場所というのも利がある話だからな。それにおれの提案はそっちにも利がある話だ」

 

 面倒事を上回る利があるとは思えないが、こちらが政府や海軍に叩かれる様に、そちらがビックマムからの不利益を受ける可能性もあるんじゃないか。

 

「おれとアイツじゃ見るものが違う。心配はいらねぇ」

 

 ……それでも断ると言ったらどうする。関わるのはビックマム海賊団だけで十分だと、これ以上の特別はいらないと言ったら。

 

「そうなりゃ手を引くしかねぇだろうな。お前を相手にするのもそうだし、リンリンの奴は諦めが悪くて面倒だからな。だが、お前は断らない」

 

 そう言えるだけの何かがあるんだろう。強者と言うのはハッタリなんてものは考えない。無駄な駆け引きに時間をさくべきではない。本題の内容を詳しく話してもらおうか。

 

「なに、お前の国や趣味にピッタリな事だ。育てて欲しい植物がいくつかある。そいつは今おれの拠点にしている土地の固有種だ。もちろん育てるだけ育てさせて全部寄越せなんてケチくさいことは言わねぇ。ただ、それらを外に漏らさなければ好きにしてくれて構わない」

 

 海賊が育てるだけの価値がある代物か……だが、固有種と言うのは興味が惹かれる。オレは周囲の土の操作を止め、続きを促した。

 

「ジハハハハハ、話が分かるやつは嫌いじゃない。なぁに、共犯なんて思いはしねぇ。ちっとばかし商売品に花やなんかが加わるだけだ」

 

 この日からプラントの管理地に金獅子の船が寄り付く姿が確認されるようになった。本土に来ないのはオレへの配慮か知らないが、プラントにいくつかの植物が持ち込まれた。中でも面白いI・Qと名付けられた花は使い方によって大きくプラントに貢献してくれることだろう。

 

 

 




年表とにらめっこしても、関われそうなものが少ないんですよね。それでも拾えるものは出来る限り拾っていけ予定。

ここから第3章になります。第1章の建国までや、第2章の計画完遂などと違い、原作開始までの準備期間といった感じで、特に目標があるわけではないので、前と比べると一貫性はないと思います。

現在が20年前、原作開始までは18年といった時間です。私は思いつきで変えがちなので長さがどれくらいになるかはまだ分かりませんが、今後ともよろしくおねがいします。

……書き上がり、同日4:45……おやすみなさい。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第32プラント 誕生ガープの孫?強制旅行フーシャ村

少し遅くなりました。未だにパソコンがないので執筆に手間取っています。何卒ご理解ください。


 


 

 大海賊として有名である金獅子のシキとの取引は公にこそなっていないが、シキの海賊船がプラントの管理地に立ち寄る様になったことはやはり話題となった。

 

 ビックマムの取引の際にも大きな論争となったにもかかわらず、海軍本部を襲撃した危険人物とも関わりがあるのではないかとプラントについても不審に思われているのは間違いない。

 

 ただの補給についてはとやかく言われる必要はないので普段のクレームと同じように対処する。そして取引についても補給の一部に混ぜてしまえば問題はない。

 

 そんなことよりもオレとしては手に入れたばかりの植物であるI・Qを研究したいところだ。シキの部下であるDr.インディゴの研究資料の一部も送られたが、動物の進化に大きく影響を与えている。

 

 その進化をコントロールできれば家畜を含めた食材生物へ投与することでより美味しく変化させる事も可能だろう。やりようによっては新しい動物を生み出す様な事も出来る。

 

 そしてなにより興味深いのはこれは人にも作用するという事だ。この植物が生えている土地、メルヴィユには腕に羽を生やし、空を飛ぶことが出来る人が住んでいるとのことだ。

 

 シキはI・Qを使って動物の凶暴化、ひいては兵器化を目指しているようだが危険度で言えばこちらの方が上だとオレは感じている。

 

 人への影響をコントロールすることが出来れば、デメリットの無い能力者を量産する事だって不可能とは言い切れない。

 

 悪魔の実による飛行能力が世界で五種しか確認はされてないというのに、悪魔の実がなくとも飛べると言うのはかなりの強さを発揮する。

 

 六式による月歩なども存在するが体術であり、修めていないと使えない技術とは違うと言うのは大きい。

 

 ホーニィにI・Qと会話してもらったところ、ストマックバロンと同じくらい賢く、多少であればI・Qと協力して進化の方向性を定める事も出来るとの事だった。

 

 凶暴化には興味は無いが資料にあった巨大な生物は面白い。一体で多くの肉を生み出してくれるようになるだけでも十分助かる。

 

 プラントで研究を担当しているのは小人達かコーヒヒ達が大半だし、どちらも研究内容がバレにくいので大まかなところは任せるとしよう。

 

 小人達はとりあえずはI・Qを増やすところを行い、コーヒヒ達が今ある分で研究を行っていく。自身に生えているコーヒー豆の質を上げるのに使えるかもしれないとコーヒヒ達は乗り気だったし、成果が見られるのを楽しみにしておこう。

 

 


 

 

 久しぶりにガープ中将がプラントに姿を見せた。いや、正確に言えば仕事では海軍の代表としてプラントを訪れているのだが、個人的にやってきたのは久しい。

 

 大胆で突拍子もない行動が多いために何をしに来たのかは分からないが、いきなり身体を掴まれるとアレヤコレヤと船に乗せられ、気付いたら東の海までやってきていた。

 

 東の海にも担当の分身がいるのでオレに伝えたい事があるのならそっちを通してくれると有り難いんですがと苦言を呈するが豪快に笑って誤魔化している。

 

 分身との位置関係や以前に来たことがある経験からどこを目指しているのかは検討がついているので何しに行くのかをガープ中将に聞いてみる。

 

「ワシの孫が生まれたんじゃ、お前さんとも顔を合わせておこうと思ってな。それとエースにもたまには直接顔を見せてやれ」

 

 顔を合わせるって生まれたばかりの赤ん坊相手にどうしろと言うんだか……まぁ、赤子のうちから合わせておくことで覚えてもらえておけば御の字だとでも考えているんだろう。あれで抜け目のない爺さんだからな。とりあえずダダンさんのために酒でも取り寄せておくか。

 

 


 

 長い船旅を終えてガープ中将の故郷であるフーシャ村があるドーン島に着いた。普段であれば挨拶を程々にエース君のいるコルボ山に向かうが今日は長く村に滞在することになった。

 

「ルフィちゃーん!!おじいちゃんですよ〜!!」

 

「キャッ!キャッ!」

 

 あの顔が目前に迫ってきて笑ってられるのは血の繋がった家族だからだろうか。ひょうきんに見せようとしているが無理があって不気味に思えるのはオレだけか。

 

「どうじゃアスカル!この天使のような可愛い子がわしの孫じゃ」

 

「何回孫の可愛さを語る気だ?ルフィ君が可愛いのは分かったからちょっとは落ち着いてくれ」

 

 島についてからというもの、永遠と孫であるルフィ君の事を語り続けるガープ中将(孫馬鹿)に辟易していると救世主が現れた。

 

「いつまでやるつもりだお前は」

 

 フーシャ村の村長であるウープ・スラップさんだ。常識人で稀に見る人格者である彼には感謝しかない。

 

「ガープの奴が申し訳無い。アスカル殿、ここに来たのも強制でしょう?」

 

 気にしてないとは決して言えないが早急に対応が必要な案件は無かったのでそこまで問題はない……だが狙ったかのように攻めにくい時期に誘ってくるのには少しイラッとくるかもしれないな。

 

「狙ってはないだろうがあやつは妙に勘がいいからな…だがタイミングが良く、顔見知りだとは言え一国の王を突然連れてくるとは……」

 

 おそらくその勘は覇気とは関係のない生まれ持ったものや野生動物の持つものに近いのだろう。そして、何の連絡をもなく連れて行かれる方も連れてこられる方も中々に困った事になる。

 

「アスカル様は国王様なんですよね。それなのに良いんですか?」

 

「アスカルで良いよマキノちゃん。まぁ、少なからずガープさんにお世話になってるのも確かだし、山にいる友人に会いに行くのも悪くないからね」

 

 呼び捨てでも気にしないと伝えたが「それならアスカルさんて呼ばせてもらいます」と言われた。まだ10歳やそこらだというのにしっかりとした子だ。

 

「山と言うとあやつらか……ご無礼かもしれませんが山賊などと馴れ合うのは如何かと」

 

「子供の前で言うことでは無いが商売人故に金さえあれば誰とでも取引するんで、相手が何者かは横に置きがちなんだ」

 

 取引の回数、金額双方において海賊相手が多数を占めているプラントの事を考えると山賊との関係なんて些細なことに思えるだろう。

 

「確かにそろそろ時間か…悪いがまたルフィを頼む。山を登るとするか、そうじゃマキノも来るか?」

 

「馬鹿者!!お前なんぞに預けて山賊の住処に送り出す訳がないわ!!」

 

「わしだけじゃなくてアスカルもおるし大丈夫じゃろ」

 

「アスカル殿が居てもそれ以上にお前が信用ならん」

 

「口うるさい奴じゃのう」

 

 ガープさんは思いつきのようだったがけっこう残念そうにしている。エースの味方を少しでも増やしておこうとしているんだろう。

 

 オレはもちろんだがガープさんも立場上絶対的な味方にはなれないのだ。肩入れできないのに口を出すべきではないだろう。そう思いオレは口を閉ざして状況を見守った。そして結果は……

 

「けっこう山道凄いですね」

 

「道なんて禄に整備されてない場所だからのぉ。ぶわっはっはっ!!」

 

 ガープさんが譲らずにオレの存在を全面に出して村長さんからマキノの同行を勝ち取った。そしてオレは村長さんから土下座でマキノちゃんの保護を頼み込まれた。

 

「ここに居るんじゃ。おい、居るのは分かっとるぞ。ダダン、出てこんか!!」

 

 ドンドンと扉を叩くガープさん、普段の力から考えるとかなりセーブしているんだろうが、小屋に対してはオーバーパワーに感じられる。そして面倒臭さを隠さずに、それでいて少し慌ててダダンさんが出てきた。

 

「ガープさん勘弁してくださいよ。突然来て今度はなんなんですか!?」

 

「エースの様子を見に来ただけじゃ、定期的に来ておるだろう」

 

「最近はうるさくて仕方がないんですよ。興味持ったもの何でも訊いてきて作業の邪魔はするし、なにより自分の親について知りたがってるみたいで、ってアスカル!アンタも来てたのか」

 

 確かに久しいなと思いつつ酒を大樽で渡し、手土産だと伝える。慣れない子守やガープさんの無茶振りに疲れてるのか土産を渡しただけで泣きそうになってるのが哀愁を感じさせる。

 

「ふむ、もうそういう年頃か……どうしたもんかのぉ」

 

 エースの成長を喜びつつもどう伝えたものかとガープさんは腕を組んで悩んでいた。そして会話を混じれずに少し後ろからあの人達が山賊さん?とマキノはチラチラと視線を送っていた。

 

「あ、ジジイにアスカル、それにお前、誰だ?」

 

「あなたがエース君かしら?私はマキノ、よろしく」

 

 エースも久しぶりだな。3歳にしては賢く、ダダン達の目を盗んで森を探索しているらしく、小さな傷がチラホラと見える。あまり困らしてやるなよと頭を撫でながら土産の菓子を手渡す。

 

 オレがマキノの事を山賊とエースに紹介すると物怖じしない性格が幸いしたのか意外と良い関係を築けているようだ。それでどうするんですか?

 

「…子には知る権利がある。知りたいと言うなら教えてやるもんじゃろう。だがどう伝えるべきか……」

 

 まぁ、オレはロジャーについて知ってることなんて世間に流れてる噂程度だが、ガープさんは違う。敵としての面識がある自分から伝えることによって歪んで伝わる事も気にしているんだろう。

 

 何かを伝えるという時点で主観を交えずにと言うのは殆ど不可能に近い。それならいっそのこと預けられたガープさんがロジャーとの思い出でも語ってやれば良い。

 

 あくまで昔話として主観満載でガープさんからみたロジャーを伝えてやればいい。仮だろうが、義理だろうが祖父を名乗るなら世間の評価よりも自身の言葉を伝える方がオレは良いと思う。

 

「…いつもすまんな」

 

 その後は持ってきたお土産を用いて小さな宴の様なものが開かれた。みんなで騒ぎ、誰もが楽しい時間を過ごした。その日の夜、小屋を抜け出したエースとガープさんが寝る前に長く一つの物語を語っていたようだ。どう受け取るかは分からないが、いい未来であることを静かに祈るばかりだ。

 

 


 

 



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第33プラント 甘い食材探索? フレバンスへの想い

 

 

 久しぶりに分身ではなく自分で食材調達に出かける必要があり、小人を引き連れてやってきたのは密蜜列島の一角にあるハニー島。人が普通に住んでいるために危険性はそこまで高くはない。そして名前からも分かる様にここははちみつで有名な場所であり、生息している動植物も適応した種が多い。

 

 例を上げるならばミツベアなんかが挙げられる。蜂蜜を食べて育ち、コロコロとまぁるく育ったクマで、子供は歩くことが出来るが、大人は手足が地面に届かず転がって移動する。

 

 生態とは裏腹にかなり獰猛な性格をしており、縄張りに入った存在をどこまでも追い立てる。肉は甘い香りを放ち、とても柔らかく、野生とは思えないくらいに臭みは少ない。仲間同士のつながりがとても強く、群れでギュウギュウに集まって夜を過ごすとか。

 

 普通のくまであれば他にも色々と食べるのだろうがミツベアは蜂蜜しか食べないで育つのだから驚きである。蜂も幼虫や卵を狙わないと分かっているので取りすぎない限りはミツベアのことを黙認しているようだ。

 

「島の植物より蜜の量も質も上レスね」

 

 花が至るところに咲き誇っているためホーニィにも来てもらったが同じ系列の花でも違いがあるようで観察したり、何やら話し合ってプラントに植え変わって貰おうと交渉をしている。

 

 花も大事ではあるが蜂蜜を得るために絶対的に必要になってくるのは蜂そのものである。蜂もこの島の固有種がいるらしい。

 

「ん~故郷には虫の奇術使いがいたので共生してたレスからどこか懐かしいレス」

 

 なんでもムシムシの実という悪魔の実があるらしく、蜂やカブトムシ等のモデルが彼らの故郷では見られたらしい。能力がないと共生は難しいという訳ではなく、この島に生息している蜂は言葉を理解し、頼めば蜜を分けてくれる事もあるそうだ。

 

 そして、面白い性質も持っていて通常であれば群れを作り、集団で生息するのが蜂の特徴に含まれるが、この島の蜂は二匹の番で暮らしているそうだ。名前をハニービー&ダーリンビー、通称では夫婦蜂や仲睦まじい様子からラブビーとも呼ばれている。その中でも長く生きている蜂から可能であれば蜜を分けてもらう予定だ。

 

 ラブビー達は蜂蜜以外も食すのでプラントから持ってきた果物などがお眼鏡にかなうなら良いのだが、上手くいくかは会ってからになるだろう。島の奥の方に歩いていくとあちこちに小さな、とはいっても普通の蜂の巣と比べると大きい巣が見られる。まだまだ若い蜂の巣がここいら辺は多いらしい。

 

 近くにいた蜂に声をかけて果実を味見してもらうと好評のようでお礼にと良いものを教えてもらった。蜂に言われるままに木の洞や地面に空いた穴に手を入れると球状の蜂蜜飴が手に入った。

 

 後から調べて知った事だが、これは花粉転がしというこの島特有の種であるフンコロガシが作り出した天然の蜂蜜飴で多少の薬効を含んでいるんだそうだ。転がし始めたばかりの物の方が薬効は高いらしいが、作り終わった物も蜂蜜飴としての質は高いので穴を見つけたら探してみるのが良いらしい。

 

 試しに1つ口に放り込んで見たが、雑味がなく、風化してザラザラしている感じもないので口当たりはかなり良い。花粉転がし独自の手法なのか熱で酵素が破壊されていないようだ。一定数確保出来るのであれば売り出すのも良いかもしれないが花粉転がし次第で得られる数が変わるのであまり商品には向かないだろう。

 

 リストには載っていなかったが島の人なら知っている事のようだった。現地で探索していると思いがけない気付きや出会いがあるのが時折楽しいものだ。道中も楽しく過ごしていたが奥地へと辿り着くと中々に荘厳な光景が広がっていた。木々を覆い尽くすかのように広がる巣とそこから漏れ出た蜂蜜の滝や泉。

 

 これらの光景をたった二匹の蜂で生み出しているのだからその凄さは計り知れない。普通の蜜蜂だと一生に集めるのはスプーン二杯とは聞いたことがあったが、彼らは一生でどれだけの蜂蜜を集めるのか、少し興味がわいたくらいである。

 

 幻想的な光景に目を奪われていると一際大きいラブビーが現れた。若い蜂でも人間の子供ぐらいの大きさだったが、彼らは優に大人を超えている。少し迫力に押されながらも話しかけ、持ってきた果物などを材料に交渉を重ねると、果物と交換で定期的に上物の蜂蜜をおろしてくれる事になった。

 

 初回という事でプレゼントを色々とサービスしたら、逆にローヤルゼリー等の希少な物を分けてくれた。とても話が分かる、良い蜂だった。

 

 お礼を言って帰る途中で若い蜂がなぜが数十匹集まっていた。どうしたのかと思い、色々と尋ねるがこちらは相手の言葉はわからないので読み解くのにかなり時間がかかったがどうやらプラントに興味があるそうだ。

 

 正確に言うとこれだけ美味しい果物がなる植物の蜜を集めたらどのような物が出来るか試したいそうだ。他にもお相手が果物自体を気に入ったとかの理由の蜂もいた。小人達が集めている蜜もあるが、蜂が集めるものとはやはり違いが感じられたので分けてくれるのであればとそちらも話をまとめて終わった。

 

 


 

 

 ハニー島でのやるべき事を終わらせるとそのまま休む間もなく次の島へと向かう。こちらはハニー島とは違って小人達の手伝いは必要ではないので一人での探索になる。

 

「……『黒点』」

 

 訪れた島は見た目こそきらびやかな輝きを見せ、まるで島の全てが水晶かの様に思える幻想的だが、油断は決して出来ない。島に降り立った時から構えていた土製の武器『マルン』を素早く振り抜くと、地面の隙間から襲いかかってきた獣に打ち付けた。

 

「地面や山も全て琥珀糖か……香りがビッグマムの縄張りに負けないくらい甘いな」

 

 本来は砂糖と寒天によって作られる琥珀糖だが、この島では降り注ぐ雨、いや飴の様な物が琥珀糖へと変化する。飴玉が降ってくるというのはグランドラインではよく見かける。ビッグマムの縄張りではそれぐらいは珍しくもないと言える。

 

「大気中に寒天やそれと同じ働きをする成分でも溶け込んでるのか?砂糖はおそらく蒸発して混ざったか、火口から上がってる煙、そのまま綿あめに出来そうだ」

 

 火山の途中から流れてきている溶岩もどうやらカラメルの様だ。正直こちらは殆ど焦げているようなもので味については微妙だった。

 

 そう言えば名前も場所もわからないので探索できていないが丸ごとプリンアラモードになっている島があるそうだ。その山は噴火すると美味しいカラメルが出てくると伝承があるが何か条件が違うのだろう。

 

 この砂糖自体も他の島では見かけない物で一つ一つがウサギの形を取っていた。ウサトウと言って優しい味で思わず跳び跳ねたくなるんだとか。味のバランスでは長糖の方が良さそうだが、パーティ等に出されるお菓子などに使えば場を盛り上げるのに使えるだろう。こちらもしっかりと回収していく。

 

「琥珀糖は島の表面の物は湿ってたり、不純物が混ざってるな……」

 

 試しに口に含んで見るが、寒天特有のプリッとした食感があるわけでもなく、潮風に当たってたせいか結晶化してないのにジャリッとしてしょっぱさを感じる。近場で取れるものは全て自分で食すのにも使えない不良品だ。となれば潮風が当たらず、適度に乾燥している場所に行く必要がある。

 

 琥珀糖が邪魔をして島の土は動かせないので月歩を用いて上空へ跳び、島全体を見渡すと火山からそう離れていない位置に深い渓谷を見つけた。火山の影響で地上付近は少し溶けて固まっていないが、少し下に下がると適度に乾燥して冷え固まった層がある。

 

「下がりすぎると地熱で溶けるか……」

 

 それに地上よりも生息している猛獣の類がかなり多い。身体を琥珀糖に擬態させる種や琥珀糖の隙間に潜んでいる種、中には溶けた琥珀糖を身体に纏わせて潜んでいる種もいる。見た目が似通っているが戦う際には外骨格なのか、纏っている琥珀糖なのかによって対処を変えないといけないので覇気が使えないと少し面倒だったかもしれない。

 

 常に琥珀糖の雨が降っているという訳ではないのでどの層も結晶化している様に見える。それはそれで美味しいとは思うが、食感の違うものが欲しいので雨が多く溜まりやすい場所を探す。一度に溜まっている量が多ければ表面が先に固まるので柔らかい層を回収出来るはずだ。

 

 渓谷を見て回ると罅がはいってる場所を見つけた。奥に行くにつれて狭くなっているが大人が潜っても問題ないサイズなのでスッと降りて行く。下まで辿り着いた所で床を切り取る。気持ち深めに切ったつもりだったがまだまだ全体が結晶のようだ。

 

 土の感覚が感じられないのでちまちまと柔らかい層を探すのではなく、かなり深くまで切れ込みをいれて一気に探す。地層の調査のような事を繰り返し、何箇所か柔らかい層を見つけ、これ以上乾燥しないように気を付けながら回収した。プルンと動く琥珀糖は光を通すとまた違った輝きを放ち、本当の宝石を思わせるくらいの美しさだ。

 

 取れる場所がそれなりに危険だが普通に作るのと比べて色の鮮やかさ等がかなり違うのが素人目でも分かる。食べる宝石という名に恥じないこれらは安定な供給は出来そうにないからこそ価値は高くなりそうだ。イスト聖は甘いものへの関心は高くないし、既に完成した物なのでクチーナさんも興味は薄そうだ。

 

「主に取引用だな」

 

 身内で大量に消費するような物でもないが、新しく商品が増えたことを素直に喜び、島を破壊しない程度に琥珀糖を回収し、プラントへ戻った。

 

 


 

 

 世界政府からの通達よりも早くモルガンズから情報が入ってきた。情報操作の関係上、世界経済新聞が先に知る事柄が多いのは当然の事だ。おそらく独自の情報のルートもあるだろうしな。

 

「白鉛病の一斉重症化、周辺国からフレバンスの封鎖……戦争も秒読みか……」

 

 国王は既に国を捨てて逃げ出した様だ。それでもなお世界政府が動かないということはそういう事なのだろう。多くの国があり、その数だけその在り方があるのだろうが、白い街の住人達は酷い外れを引いた。

 

 世界政府や王族が白鉛病を知っていた事は表に出ることはないだろう。戦争が始まれば白鉛病そのものの真実も隠されてしまうだろう。周辺国にも矜持がある。中毒を感染病と間違えて隔離しただけでも恥と考えそうな連中だ。戦争まで引き起こせば意地でも白鉛病は感染病になる。

 

 王族や政府が失態を隠そうとしているのは最早どうでも良いが、病の情報が間違ったまま広がるのは不安だ。しかし、国が位置する海すら違うプラントがこの問題に下手に干渉するのは難しい。

 

 これだけの規模の出来事なら確実に五老星まで話は届いている。オハラのときは天竜人からの依頼という大義名分があったが、それがない状態で首を突っ込めばプラントの立場が悪くなる。

 

 今年のレヴェリーに呼ばれていないのはオレが国王に白鉛病の事を確認した事があるからだろう。万が一にも会議の場で変なことを言われない様にと単純な対策だ。だがレヴェリーは4年に1度、それだけ時間があれば全て終わっている予定なのだろう。そうすれば何を言っても後の祭り……言うだけ無駄、むしろこちらを追及する様にされたらたまったものではない。

 

 そもそも白鉛病を治す手段が確立されていない状態で下手に庇ったとしても、()()()()()()()()()?と言う話になってしまう。次々に衰弱していく恐怖、死ぬまで終わらない苦しみを長引かせるだけかもしれない。

 

 ツチツチの能力で体内の白鉛に干渉するのは可能だが操作しても排出させる方法がない。無理やり引き出そうものなら皮膚が引き裂かれるだけで済めばマシな方だ。身体中、表面だけでなく内部まで浸透している白鉛を集めるのさえ難しいのだ。

 

 唯一使えないかと思いついたのは溶岩から養分を吸収し巨大に成長する()()()だ。あの植物は殻を形成するのに根から吸収した養分にならない鉱石を使っている。あの植物なら白鉛を人体から吸収する事も出来るのではないか、いや白鉛だけでなく様々な中毒を解決に導けるかもしれない。

 

 だが落花星と言う種の成長した姿の巨大さを踏まえると吸収時に与える人体への影響も計り知れない。大きくなるように品種改良を施すのはI・Qの入手により比較的簡単になったのに比べて、小さくするというのは中々に難しい。近縁種との交配なども試したが養分の吸収方法が変わってしまえば意味がなく、トライアンドエラーで研究こそしていたがコレだと言えるものは出来上がらなかった。

 

 こうなる前に完成していればなどと、もしもの話を考えてもどうにもならない。研究は続けるが改良した落花星がフレバンスを救うことは決してないのだ。それでも、悪あがきにもならないだろうが分身に作りかけの種を病院や研究所へと運ばせた。あの国にオレの知らない天才がいてくれたらきっと……なんて非現実的な夢をみるくらいは許されるだろう。

 

 


 

 

 I・Qの改良の第一陣が出来上がった。体へ与える影響を抑え、食用に適した形で繁殖させ、飼料として完成させた。そのために大量に経口接種しなければ変化は起こらないので既存の環境が壊れる心配は少ない。念の為エリアは分けているんだけどな。

 

「アスカル様、食べすぎてないかチェックとI・Qを外に出さない以外に他になにか注意とかはあるのね?」

 

 この特別な農場は以前から動物を任せていたポコに一任することにした。これまでの働きぶりからみても問題なく任せられると考えての判断だ。

 

 フィン、ティア、デルも合わせた四人組もお手伝いレベルから正式に仕事を始めてから長い。一つのプロジェクトの責任者を任せるにも足り得る人材へと成長してくれている。

 

 指導を幹部陣が行うことが多いのでそれに伴って訓練なども空き時間にやっているようで、グランドラインの前半では生き残れるくらいには強くなっている。

 

「ないとは思うがここに通ってる事で体調等に変化が起きたらすぐに言ってくれ、体調管理も仕事のうちだ。もし影響があればそれを元にまたI・Qの調整が必要になる」

 

「ん~ポコも大きく美味しくなるかもなのね」

 

 そうなったとしても喜ぶのはストマックバロンくらいだろう。いや、プラントのストマックバロンは大人しくて友好的なのでそれはないか。最近では養分とは別に提供してる家畜を栄養面から評価してくれるくらいにはすっかりプラントの一員だ。

 

「ピアスお姉さんみたいになれるなら大きくなるのもありかもなのね」

 

「巨人族や魚巨人を差別する気はないけど勘弁してくれ」

 

 こういった発言はするのでヒヤヒヤする時もあるが、遊んでいい時とそうじゃない時の線引はしっかりしているので大丈夫……なはずだ。

 

「フィンの所の巨大魚が羨ましかったから嬉しいのね」

 

 なるほど、フィンには魚ーターランドの水の成分を利用して巨大な魚を養殖するという企画を任せていたな。口数が少ない彼とピアスのコンビは不安もあったが大雑把なピアスと細かい作業も苦と思わないフィンは相性が良いようで仕事はとても良い仕上がりだった。今は養殖で育てた大人しい魚を集めた水族館を作って観光名所にしないかと、見た目重視の魚を育てている筈だ。

 

「この飼料を魚の餌に混ぜれば成長をさらに促進出来るか……あそこは仕事量が多いからさらに任せるのは悪いか?」

 

「ん~フィンはティアと違って無理なら無理って言うから伝えて良いと思うのね」

 

 一緒に育ったポコがそういうのなら間違いないだろう。実際に意見を言うときなど臆してる姿は見たことがないのでこのままの足で伝えに行くとしよう。

 

「それじゃあ、任せたぞ」

 

「アイアイサーなのね!!」

 

 自分の身体に種がついでないかチェックし、花粉なども落としてから土の中に潜り込むと仕事場である養殖場まで一気に進む。

 

「ん、アスカルか!なにか仕事か?」

 

「フィンもここにいるよな」

 

「アスカル様、来た、用事?」

 

 気配を探ったが姿が見えないと思ってるとちょうど海から顔を出した。土の上にはおらず巨大魚の気配のせいで覇気を使っても探りにくいがオレが来たのを察知してわざわざ上がってきてくれた様だ。フィンは仕事柄水と関わることが多く、水中での行動はピアスについでプラントで二番目に上手い。

 

 まぁ、プラントの人員の大半が能力者なのも相まってだろうがな。だがきちんと道具を使えば子供の魚人にも負けないレベルだとピアスから太鼓判を貰っているのは普通に凄いだろう。

 

「ああ、さっきまでポコの所に居たんだが、I・Qを利用した飼料については聞いてるか?」

 

「既知」

 

「それを魚の餌に混ぜて巨大魚の育成を促進できないか試してもらいたいんだが……正直ここは人手が足りてないから余裕がある時で良い」

 

「了解、問題なし、場所確保」

 

「貝の養殖は安定してるし、巨大魚の生態もだいぶまとめられてきたから大丈夫だってさ。だけど試験するのに場所だけは別で用意して欲しいって、可能なら私とフィンのふたりとも出入りしやすいと助かるね」

 

 ずっと一緒に行動してるからかピアスがフィンの言いたいことを四人組の他三人と遜色ないくらいに読み取れる様になっている。そう言うことならそのまま頼むが、場所を用意するのに少し時間がかかるので本格的に始めるのは来週からで良いか?

 

「了解、奮闘」

 

「了解っとそれじゃあ仕事に戻らせてもらうよ」

 

 キビキビと働いて、作業自体を楽しんでいるようだが今後の事を考えれば真面目に新しい人材は用意しなくてはいけないだろうな。可能であれば魚人か人魚等の水中で活動出来る種族が良いが彼らはなかなか出会えないから難しいだろう。魚人島へ行ければとも思うがそれはまた別の問題があるからしばらくは頑張ってもらおう。

 

「I・Qの品種改良の立役者にも伝えておくか」

 

 品種改良を行っている部門はコーヒヒの室長とティアがそれぞれ仕事を回している。人手だけは多いので最近ではモーダスとホーニィが常にいる必要がなくなっており、他の作業に集中出来る様になっている。

 

 こうしてそれぞれの場所の責任者が育ってくれたおかけで一々オレが確認する必要が減ったのはかなり有難いことだ。全員がよく働いてくれてるがきちんと休んでるのか心配になる。……そう溢したところ「あなたがそれを言うの?」とマニュに呆れられたんだったか。それでもここの人員よりは休んでいると思っている。

 

「あら、アスカル様。なにかご要件でしょうか?」

 

「キキッキキキキ!!」

 

 コーヒヒはブレイクタイムを取っているのを見かけるのでまだ良いが、室長はコーヒヒの中では明らかに働き過ぎだし、あちこちへ駆け回っているのをよく見かける。ティアは研究所に籠もりっぱなしになっているのは些か問題だと思う。

 

 コーヒヒは大切な仲間であるが、年頃の女性がヒヒの群れに混ざって泊まり込みで寝食を共にしているというのは常識的に考えると少し問題があるように思える。いや、そういった点を責めるのであれば未だに四人組で同じ家に住んでるのも注意しなくてはいけないんだろう。だがそれは小さい時からだしどうなんだろうか……いや、ここに来てから考えてもしょうがない。待たせるのも悪いので先に要件を伝えるとしよう。

 

「I・Qについてなんだが完成させてくれた物をポコに渡して来た。何かあればポコと連携して推し進めて欲しい。それと巨大魚関係にそのまま応用出来ないかと実験的にフィンに試して貰ってる。データの共有をして、魚向けに調整も可能であれば頼みたい」

 

「ぜひとも私にお任せください。今は動物全体ヘの微量な効果ですがいずれは種族ごとに適したI・Qの開発を目標としています。データはあるだけ嬉しいですし、哺乳類と魚類での効果の差が判明すれば新しいアプローチの仕方も見つけられるかもしれません。そもそもプラントの食材の中には恐竜や爬虫類、両生類、鳥類に貝類など幅広いですからね。いずれは効果の方向性もより細かく、多様にしてみせます」

 

 元々真面目で丁寧な性格だったが、研究の仕事はとても彼女にあっていたようで喋り声こそ優しげなのだがどこか圧を感じさせる。

 

「キーキキキ、キキキーキ、キキキキキ!!」

 

「ええ、室長の言う通りコーヒヒへの進化適用のプロジェクトも進めており、こちらは室長が担当しており、結果は別に纏められています。もちろん、上がってきている品種改良の原案の方も別途で進行しており、完成した新種と改良された品種については次回の会議にて資料と共にご説明させて頂きます」

 

 コーヒーへの情熱が強い彼らは味の向上の為に全員で日々研究に明け暮れている。単純にコーヒヒ達の方が先にI・Qを触り始めたからそちらの方がデータも多い筈なのに先に結果を出しているティアの優秀さは計り知れない。

 

 それにしても身振り手振りやイントネーションで分かりやすくはあるが、文字を書いてもらってもいないのにコーヒヒの言葉を完璧に読み取れるのは凄い技術だな。おそらく研究を共にする上で自然と分かる様になったのだろう。

 

「ああ、いつも助かっている。新種の種は既にモーダスとホーニィに渡しているのか?」

 

「はい、試験的に育てて貰っています。次の交易品の目録の更新の際には取引に応じられる様に進めています」

 

 新しく食材を見つけたり、研究所で作られて新しい種が出来る度に貿易の品は変化している。取引の更新時にはこれまでの種にするか変更するかなどを決めて貰ったりする。中には廃止する種等もあるし、説明などがややこしいので取引所は年々忙しくてなっているそうだ。こちらは人員の増加でどうにかなっているが、全体を纏めているマニュには頭が上がらない。

 

「そうか……研究は引き続き任せるが、必ず休息を取るのと、家には帰る様にしなさい」

 

「……善処いたします」

 

「他の三人も心配しているし、オレも心配している。身体を壊す前に休みを取りなさい」

 

「……了解しました」

 

 少し落ち込んでいる様子のティアを室長が励ましているが室長も同じだからな。コーヒヒ内での役割の仕事があるのは知っているし、こちらが趣味に近いのも理解しているが、それでも働きすぎには変わりないんだからな。

 

「キキ……」

 

 これだけ言っておけば大丈夫だろう。家にちゃんと帰ったかどうかは他の三人に訊ねればすぐに分かることなので誤魔化せはしない。まぁ、もとからティアは誤魔化しとかをするような性格ではないけどな。

 

 ここまで来たらデルにも会いに行くとしよう。とはいっても何処で何をやっているのかわからないからな。覇気と能力で居場所を探るとしようか……あぁ、今はサイフォの所に居るみたいだ。土に潜って向かうとサイフォがデルに稽古をつけている途中だった。

 

「とりゃっ!!」

 

「刀の扱いは良くなってきているが足運びがまだなってないな。武器が変われば間合いも変わるからな。そこを意識しなければ学べないな」

 

 こうしてデルが幹部陣から稽古をつけて貰っているのは珍しい事ではない。四人組は指導の関係上少なからず稽古は受けているが中でもデルはその時間が多い。

 

 モーダスとホーニィの仕事が減ったことや収穫などの単純な作業はコーヒヒ達が手伝ってくれる様になってからデルの手伝いの仕事は格段と減った。

 

 だがデルはそれをどうしてもやりたいと思っていた訳ではない。役にたちたい、とにかく働きたいという意識を持っていた為に悲しむことはなく、手伝いが必要ないと自分で判断した瞬間に何か他に出来ることはないかと訊きに来ていた。

 

 それからというもの努力家な彼はとにかく人手の足りない所に助っ人に行っては色々な仕事を覚えてプラント中を駆け回り始めた。

 

 一箇所で仕事を続けている他の三人よりも幹部と出会うことは多く、彼に新しい仕事を教える上で技術等の指導も一番多くなる。

 

 その結果、彼はたいていの事はそつなくこなせる様になり、戦闘技術においても他の三人より頭一つ分飛び抜けているのだ。

 

 四人組の纏め役、リーダーの様な役割まで担っているがそれを重荷に思わずに相応しいようにと自分を高め続けている彼のことは全員が気にかけている。全員にとって弟子のような存在と言える。

 

「ここまでにしような。気付いてるだろうがボスも来ているからな」

 

「ご指導ありがとうございました!!」

 

 どうやらオレが来ていた事には二人共気付いていた様だ。オレが何も言わずに見守っていたから緊急性はないと判断したんだろう。

 

「それでボスはどちらにって、訊くまでもないな。デル、お前への要件だな。しかと聴いてくるんだな」

 

「はい!!アスカル様、俺に何のご要件でしょうか!!」

 

 相変わらず元気な子だな。この元気をそのまま努力に注ぎ込めるのだからこの子には感心するばかりだ。オレにはない熱意を感じる。

 

「今日は他の三人にも会ってきてね。それについての連絡と報告書じゃなくてたまには直接君の最近の仕事について聞いておこうと思ったんだ。鍛錬の邪魔だったら申し訳ないね」

 

「いえ、わざわざ俺の為に有り難い限りです!!」

 

 真っ直ぐこちらを見ているデルにオレは今日あった他の三人について概要を伝えた。聞き終わると「全員が新しい仕事を進めているなら疲労とか気をつけて見ないとな」と小さく呟いていた。リーダーとしての適性は高いが、周りを優先しすぎないか少し心配になるな。だから全員が見守っているんだろうけど。それで最近は何をしていたのか訊いても良いかい?

 

「はい、今日は交易用の食材の狩りにサイフォさんと共に出向き、スープレックスを含めた恐竜の討伐を行いました。昨日はモルさんと共に菌エリアの整備、一昨日はピアスさんと共に魚ーターランドまで天然物の巨大魚の確保を。その前の日は海賊向けの取引所の警護にて騒動の鎮圧を交代までに3回行いました。後は最近だとピクル湿地や空島にも行ってきました。それと業務外ですがガープ中将にお会いした事もあります」

 

 おそらくガープ中将の感覚がデルの何かを察知したのだろう。話を詳しく聞く限りどの日も鍛錬は欠かせずにやっている様だし、ガープ中将とも戦ったそうだ。

 

「サイフォ、ちょっと良いか?四人って覇気についてはどんな感じだ?」

 

「見聞色は全員出来てるな。方向性はそれぞれ違うけどな。武装色は兆しは見えるがちゃんと出来てるのはデルだけだな」

 

 実戦を経験しているかどうかの差はやはり大きいだろうな。それ以外にも他の三人は国の外に出る機会もあまりないし、そういった所も経験させてやりたいものだ。

 

「励むのは良いことだけど詰め込みすぎないようにな」

 

「ご心配ありがとうございます!!」

 

「ボスもほどほどにな」

 

 オレの場合は代われない仕事が多いから働いてる部分もあるのだけどな。まぁ、頭の片隅にでもいれてその場をあとにした。

 

「……プラントの未来は安泰か」

 

 最も本当に未来の事を考えると跡継ぎの事とかも問題になってくるんだけどな。お義父さんこと元スキーラ王国の国王もなにかと期待してさり気なくしているつもりで促している。まぁ、実際にはまだ先のことになるだろう。今は今できることをやるだけだ。

 

 




大変遅くなりました。実は風邪にかかり熱が39℃出てちょっと先月は力尽きておりました。1週間寝込んでたのが遅れの一番の原因です。

パソコンが壊れてから一切買い替えの話が出てないのでまだまだ更新は遅くなると思います。

ちなみに最近、スマホも壊れまして、画面が外れてパカパカしており、電話がかかっても相手の声が聞こえません。こちらはもうじき買い替える予定です。なので執筆が完全にとまることはありませんのでご安心ください。

さてここからは本編の話をしていきます。久しぶりの食材の話、他にもネタはまだあるけどどのタイミングで入れるかとか色々と悩んでます。公開してないデータとかもいつかは全部出したいけど、とりあえずは本編の執筆優先でやってます。

フレバンスのことについて少し触れました。こちらに関してはまぁ特に言及はいたしません。どうなるかは決めてますが、ネタバレは無しです。

I・Qに触れつつ、おそらく外部プラント以来の登場ですかね。四人組の話ですね。あれから年単位で時間は経ってますのでまるっきり子供だった時からは成長しています。これからは経験を積ませるためにアスカルと一緒に外に出る機会ももあるかも?

ということで今回はこれぐらいでお別れとさせて頂きます。待ってくださっている方々に謝罪と深い感謝をこめていつもの挨拶でさようなら。

読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第34プラント 危険な遭遇!?逃げ出した奴隷フィッシャー・タイガー

どうにか書けたので投稿です。段々とスマホでの執筆に慣れつつありますが、やはりパソコンが恋しいです。


 

 久しぶりにイスト聖に直接呼び出され聖地を訪れる事になった。世界政府のお膝元であるため、昨年のフレバンスの事を思い出してあんまりいい気持ちはしない。

 

 フレバンスという国は一年と持たずに消えてしまった。生き残りが居るかどうかは分からないし、種に気付いたかどうかも定かではない。

 

 組織というものは大きいものほど暗い部分が出来てしまうものだが、世界政府という世界を回す組織のあり方がこのようではいささか疑問を覚えそうになる。まぁ、王とは言っても個人が何を言っても仕方がないだろう。

 

「アスカル国王陛下、ご協力に感謝します。開門!!」

 

 それにしても今日はなにやら衛兵やCP-0の姿が多い様に見える。普段も仰々しい様子で警備は厳しいがレヴェリーの開催時に負けないくらいになっている。何かあったのだろうか?と不思議に思いながらももう慣れてきたイスト聖の屋敷の一室へと辿り着く。

 

「よく来たな。報告書や送られてくる食材には満足してる。いつもなら依頼の話をするんだが、今日直接呼び出したのは面倒が起きたからだ」

 

 面倒ねぇ……それも天竜人であるイスト聖が言う面倒だ。どれほどの自体かはあまり考えたくないが、聞かないわけにはいかない。

 

「天竜人にも家同士の付き合いがあり、いがみ合いの様なものもある。これがまた厄介なのだが…ここ数年、プラントの発展や提供物によって吾の立場、影響力というのが天竜人の中で上がった」

 

 天竜人の派閥などもあるのだろうか?天竜人のトップと言えば五老星があるが、その下が勝手に争っているとは…衛兵も大変だろうな。もしやいざこざで被害でも出たのか、それで衛兵も多いのか?

 

「いざこざは否定しないが衛兵は別件だ。なんでも奴隷が逃げ出したらしい、吾にはあまり関係の無いことで動きに制限がかかって不愉快だがな」

 

 なるほど、天竜人の奴隷となれば恨みも多いだろう。潜んで天竜人を殺す機会を窺うなんて事を想定すればこの警備の厳重さも納得がいくというものだ。奴隷の事は私には関係が無い、とすれば呼び出された案件はいざこざ絡みか。

 

「なにくわぬ顔で吾の保護する場に顔を出す馬鹿が現れ、色々と理由をつけては妨害をしている。逃げ足ばかり早く、捕まえられたのはごく一部……プラントも保護対象であり、グラン・テゾーロを一部の天竜人が気に入ってプラントの重要性は上がっている。そこで逆に被害が出れば……」

 

 保護が出来ていないイスト聖の責任も問われるという事ですか……確かに政府も海賊も関係なく集まるプラントで事をおかしてもしらばっくれやすいし、狙われてもおかしくはない。今回の件、警告だけですか?

 

「それなら白電伝虫を置いてかけるだけだ。狙われると分かってるなら罠を仕掛けるに決まってるだろう」

 

 プラントを大捕物の場にするというわけですか……天竜人の命令で出張ってくるのは十中八九サイファーポールだが、相手取ることを考えると面倒でしかない。それに狙ってくるタイミングが分からなければ対処も難しい。

 

「それは問題ない、吾がプラントに逗留すれば良い。馬鹿共も吾がいる間に手を出す事はしない。それなりに居座って、急用とかで私が消えれば、我慢の出来ない奴が手を出す」

 

 それをしばいて終わりになれば良いんだが、懲りずに何度も来るのであれば正直対応するだけ無駄と言える。

 

「動かせばどうしても足はつく、後は黙らせるだけだ」

 

 権力持ってる存在がこうも強いと味方だとしても恐ろしく思えるな。敵対者にはご愁傷さまとだけ念じておこう。滞在人数と予定している期間、後はイスト聖の護衛などはどうなりますか?

 

「吾とクチーナだけで十分だ。期間は最低でも1ヶ月、後は相手の動き次第だ。護衛は必要ない、吾も自衛程度は出来る。それにクチーナの奴は新世界でも戦えるレベルだ」

 

 料理の修行先で色々と学んで来たらしい。覇気が使えるのは知っていたが……なんで料理の修行で戦闘技術が向上するのだろうか?まぁ、それはおいといて開始はいつですか?

 

「まぁ待て、逗留期間があるんだ。準備が出来てれば怪しまれる。まぁ、逗留の理由くらいは伝えておこう」

 

 いきなり来るつもりですか……ッ!?理由の方も了解しましたが……いえ何も言いませんよ。オレにとって悪い事ではなさそうですのでね。

 

 オレはいきなり視察に来たイスト聖の対応に追われていれば良いんですね。なんとも面倒な事になったが断るという選択肢はそもそもないのだかは心の準備だけしておこう。

 

 


 

 

「話はどうだった?」

 

 聖地から降りて土船を進めていると海中からピアスが顔を出して問いかけてきた。緊急の用件との話だったので足になって貰ったのに悪いが今は言わないほうが良いだろう。

 

「そうかい…まっ、アスカル様がそう言うなら聞かないでおくよ。それで帰りは真っ直ぐプラントに向かっても良いのかい?」

 

 入出で記録はついてると思うが……少し潜って行こうか。敵じゃなくてもコンタクトを取ろうとしている相手は多いからな。

 

 そう言って船を土で覆って固めるとピアスは了解と端的に返し、完全に密閉されたのを確認すると船を沈ませる様に思い切り引っ張って泳ぎ始めた。

 

 ピアスは魚巨人の特徴である巨体だが、その遊泳速度を持ってすれば大抵の追跡は振り切れる。海の底の方まで潜れば相手が魚人や人魚でない限り、そもそも追うことは不可能だ。

 

 取引以上の関係を築こうと近寄ろうとしていた船は土船が潜った時点で諦めていた。サイファーポールらしき気配もあったが月歩だけではついてこれなかったようで引き返していった。まぁ、オレが探知出来る範囲での話なので確証はないけどな。

 

 この土船は完全に密閉されても内部は問題ないのでしばらく海中の航海を行くとしよう。光源としてマグマを置き、光合成を盛んに行なう植物を一緒に配置することで呼吸面は数日保てるだけの余裕はある。

 

 食料なんかは非常用の植物の種があるので問題はない。水は周りから土を通して濾過が可能だ。コーティングを必要とせずに気軽に潜れるが周囲を見れないのがこの移動方法の唯一の問題点と言える。

 

 水圧で潰れる程の深さまで潜ることは無いので万が一に土船が危険になればクウイゴスの木片を身体に括り付けて飛び出せる様にもしている。まぁ、そもそも海中でピアスが負けるほどの相手は少ないとない思うがな。

 

「ん……アスカル様、少し良いかい?」

 

 しばらく海中を進んでいると船が止まったのに気付き、どうしてのかと思っているとピアスの方から声がかかった。

 

 今は特別急ぐ理由もないから構わないが、アスカルの感知には何も引っかからないので何かあったのか?と不思議に思い尋ねる。

 

「いや、海水に混じって血の匂いがしてねぇ。ちょいと耳を澄ませたら魚たちが魚人が血まみれで泳いでたって話し声がしたんだよ」

 

 なるほど、魚人がねぇ……一人で世界政府からそう離れていない海域に来る魚人なんてまずいないだろう。逃げ出した奴隷というのが魚人なのではないかと推測出来る。

 

 正直な事を言えば気づかないふりをして関わらないのが一番だろう。何がどうなって面倒事に変わるのか分からない。特に天竜人関係は最悪なトラブルを招きかねない。

 

「今のアタシにも立場があるのは分かってるよ……でも奴隷に落とされた事がある身としては他人事に思えなくてね……」

 

 世界は広い、オレより強いやつなんていくらでもいるだろう。探知を掻い潜って逆にこちらを監視されてないとも限らない。

 

 分かった、分かった……仕方がない、場所が分かるなら教えてくれ。噂を聞いて立ち止まったって事はここらにまだ居るんだろう?お前が動くと流石に目立つ、海流に載せてそこまで船を飛ばせ、何かあっても道中の事故で通す。

 

「…分かった!『海流一本背負い』!!」

 

 海の中をそれなりの勢いで進んでいく土船……少しばかり衝撃に見舞われたがどうにか目的の場所には着く。土に接続出来たのでようやく分かったが探してる相手はどうやら島に上陸して治療中か休憩中のようだ。

 

 おそらくすんなりとはいかないだろうが、ゆっくりと相手の場所へ歩いていくこちらが姿を確認すると向こうも気付いたかようで閉じていた目をカッと開き向き直った。

 

「……ッ!!追手か?!」

 

 戦闘態勢をとりつつ振り返ったのは赤い肌の魚人だった。傷が多く、疲れは見えるが立ち姿に覇気があり、生きるために全力をかけているのが分かった。さて、こっからどうするかねぇ……

 

 


 

 

 どうにかあの地獄の場から逃げ出すことが出来た。しかし、無事とは言えず放置しておけば危険な怪我も負ってしまった。

 

 そんな状態で逃げるためとはいえ夜通し泳ぎ続けて体力、気力共に限界に近かった。休息を取るため、そして怪我の応急手当をするために手近な島に上陸した。

 

 魚たちに確認を取ったが、ここは幸い人の出入りの全くない無人島の様で隠れるにはピッタリだった。使えるものを素早く集めると拙いが手当を行う。

 

 その後は疲れを少しでもとるために水を飲んで喉を潤し、自生していた果実などで腹を黙らせた。狩りをするほど体力も気力も回復していないので、そのまま仮眠を取ることにした。

 

 なにやら海の方から魚たちの声が聞こえた。噂するような声の中に俺たち魚人や人魚と会話するかのような音が混じっていた気がしたが気の所為だと思って身体を休めているとすぐ近くに人間が近づいていた。

 

 足運びが上手く、気配も隠している。かたぎの人間とは思えない。俺は焦りつつも咄嗟に走り出せるように立ち上がり、相手に向き直った。

 

 まさか追手がこんなにも早くやってくるとは……そうこぼすが相手はそれを否定した。だがそんなもの…いや…人間を信じられるか!!

 

 人間というのは簡単に嘘を付き、同族であっても貶める。そんな存在の言葉が信じられる訳がない。油断させるための策略に違いない。

 

「オレとしては関わりたくなかったぐらいなんだよ。天竜人関連には触れないのが鉄則だからな」

 

 天竜人……忌々しいその名を聞いただけで身構えてしまいそうになる自分に嫌気がする。そしてその名を出したということは俺のことを知ってる事に他ならない。

 

「そもそも、こんな格好の追手がいる訳ないだろう?この姿が諜報員や政府の役人に見えるんだとしたら医者にかかることをおすすめする」

 

 相手の言葉を鵜呑みにするわけではないが確かに地獄でみた連中とは毛色の違う服装なのは確かだ。しかし、俺が知らないだけという可能性もある。

 

 それにどちらにせよ目的の分からない相手だ。警戒をとく理由にはならない。それに関わりたくないというのにここにいる時点で矛盾している。

 

「オレの部下に魚巨人(ウォータン)…魚人と巨人のハーフが居るんだよ。そいつが魚たちからお前の話を聞いて放っておけないって言うからな……本人は図体がでかくて目立つから海に潜ってる」

 

 先ほど聞こえた声が幻聴では無かったのだとすれば辻褄が合う。こちらを配慮している?ハッ……それだけの筈がない。

 

「そんなに気になるのなら海に向けて声でも飛ばせ……返ってくれば確認出来るだろう」

 

 人間の指示に従うのは納得がいかないがいざとなれば泳いで逃げれる位置に移動できるのであればと表面上、素直に従い海面に近づいていく。

 

 魚人や人魚、魚たちにしか伝わらない声を出すと確かに返ってきた。こちらを労る豪快な声であった。そして目の前の人間が相手の上司で信頼出来るとも言っていた。

 

 人間なんて信じられる訳がない。しかし同族の言葉までも疑えば何を信じられると言うんだ……何も信じず生きることなんて不可能だ。

 

 俺は警戒こそしたままだが人間……アスカルとの会話に応じた。島に生えてるものなんかより良い治療道具と携帯食などをそのまま渡された。

 

「何があってもオレの名前を出すなよ……それと、プラントは商売において絶対的な平等を貫く。対価を払えるなら寄るといい。プラントの管理地は政府関係者も自由には動けないからな」

 

 渡すものを渡し、話すだけ話すとそのままアイツは土で出来た船に乗って海を進んで行った。少し進むと船は海中に潜っていった。ロープが見えたのでおそらく同族が引っ張っているのだろう。

 

「プラント……一応覚えておこう」

 

 何をするにも準備は必要だ。通すべき義理もある。しゃくではあるが怪我の具合はだいぶ良くなった。もう少し休んだら一気に魚人島を目指すとしよう。

 

 


 

 

 イスト聖とのやり取り、そして逃げ出した奴隷、フィッシャー・タイガーとの会話からそう経たない内に新聞には聖地の襲撃と奴隷解放の記事が載った。

 

 プラントに居る人間の中でも古参の者は元奴隷の者が多いだけあり、一時期話題に尽きない様子で賑わっていた。

 

 タイヨウの海賊団か……魚人だけでなく虐げられている者たちからすればそれこそ希望そのもの。世界への影響力は計り知れない。

 

 それにしてもやってくれたもんだ……タイガーの奴め、プラントの管理地に帰る場所のない奴隷を送りやがった。

 

 補給に寄るのまでは海軍と結んだ約束でまだどうにかなるが奴隷を置いていくのでは想定外だ……本土でないのがまだ救いだろう。まだ切り離しのなされていないグラン・テゾーロには天竜人も来てるからな。

 

 変えやすい部分に手を入れ、どうにか姿を誤魔化し捜索の手から逃している。しかし、バレれば知らなかったと白を切ることしか出来ない。

 

 イスト聖に連絡を入れて計画を早めて貰うか……いや、逆に注目を集めてこちらの情報が向こうに流れる方が危険か。

 

 どちらにせよ護衛に走り回ってるサイファーポールやタイヨウの海賊団の対処に回ってる海軍が本格的に動くまでにはこちらで打てる手は考える必要がある。

 

 当座の問題は焼印だな……あれを消せば追求を逃れやすくなる。しかし、跡が残れば逆に怪しまれてしまうだろう。

 

 医療方面……特に手術技術などははっきり言って遅れていると言わざるを得ないプラントでは完璧な皮膚移植等はとうてい出来ない。

 

 植物を利用した治療技術はあるが、余りにも時間が経ちすぎてる。焼印をされた直後ならば可能かもしれないが、あり得ない仮定を考える余裕はない。

 

 救世主だのなんだと言われているが所詮は何もできないただの人間だ。悪魔の実の能力があるだけ……と私事だから簡単に言えるのかもしれないが結局はそれだけだ。

 

 全てをどうにか出来る訳はなく、今は取捨選択の時だ。まずは奴隷たちを選別しなくてはいけない。協力的かそうでないか、覚悟はあるかないかを。

 

 スキーラ王、マニュの父も自ら行動した。救いを求め、宛もなく海へと出てオレの島にたどり着いた。悪いがオレは助けられるのが当たり前だと言う考えの奴を掬い上げる力はない。

 

「……サイフォ、お前に選別の一切を任せる。どんな手段を使っても良い……頷いた者だけを本土に連れてこい」

 

「ああ、ボスの仰せのままにだな。だけどモルを借りても良いかな?」

 

 ああ、そこいらへんの采配も任せる。確かにモルの操る菌類を利用すれば相手の心の底も覗きやすいだろう。プラントの不利益になるものは許せないからな。

 

「どれくらい来るかは分からないが…室長とティアにも通達しておこう」

 

 それから一週間も経たない内にサイフォはプラントの管理船を利用して密かに本土に奴隷達を連れてきた。既に破棄された名簿よりも少し少ないが予想よりは多い。

 

 忘れたい、決別したい過去があり、帰る場所のない、縋るモノのない者たちだからこそか……覚悟があるというよりも、後がない者か……

 

 連れてこられた者たちは纏めてプラント直下の部隊として幹部達に周知された。彼らをみて、元奴隷だと分かる心配はないだろう。

 

「悪魔が宿る程の変革は無いが確かに力は得られる『獣憑き』とは良い言葉を当てはめたな」

 

 だがこれで初期段階ではあるが正式名称は隠して……そうだな仮称を『TEMPO』としよう。これらの精製、接種の実験は成功と言える。今は五感や身体能力の向上程度だがいずれはさらなる改良がある事だろう。

 

「適正を見てさらに部隊を分けるかもしれないが、今は通常の訓練を推し進めてくれ」

 

 基本的には裏方で表に出ることはない。表に出てはいけない者たちだ。組織体型が出来上がるまではサイフォが上に立ち、指導する形になるだろう。

 

 いずれはオレ直属の部隊にしたほうが命令系統がごちゃごちゃにならないだろう。そもそも何か対処しなくてはならない事態が起きて始めに動くのは幹部だからな。『獣憑き』が動くのは実験や情報収集、幹部が動いた後の後処理などになるだろう。

 

 管理地に送られてくる奴隷達に対して同じ作業を繰り返していき、程なくして事態は収束した。見込みのなかった奴隷達は目敏い政府に全員みつかり、送還されていったらしいがオレには関係の無い話である。

 

 そもそも後ろ盾であるイスト聖への安否確認の連絡をしたその日には既に逃げた奴隷の何%かは連れ戻されていたそうだ。まともな手段で真っ向から立ち向かい、相手になるような存在ではないのだ。

 

「奴隷解放の英雄……儚い夢を見せられた者からすればそれこそ悪魔に思えるのかねぇ」

 

 世界があり、歴史があり、価値観があり、世論があり、今の時代を生きている壊れた英雄。同情することは出来ないが取引は平等に行おう。

 

「たとえそれがどれだけ残酷であろうともな」

 

 


 

 





全ての奴隷が解放されたとは思えませんし、また捕まった場合ってこれまで以上の地獄だと思います。コアラは見逃されるように交渉があったが、そんなものがない奴隷達はけっこう連れ戻されてると私は思ってます。

故郷が女ヶ島のような特殊な場所だったりしない限りは少し探れば足取りはつかめるでしょうし、魚人に限らず特殊な種族でもないただの人間であれば特に逃げ続けるのは不可能でしょう。解放したところで世界から奴隷がなくなるわけでもないですしねぇ。

最後の部分についてはまだ余り語っていませんが、なんとなくこれまでの話の流れである程度予想は立てれると思います。

ではそろそろいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。



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第35プラント 再びのフーシャ村、遭遇大海賊!!

 

 

 新世界を漂うようになってからは情報にはかなり気を配る様になった。新聞社に海軍、世界政府、懇意にしている国や商人、そして海賊。

 

 情報源はどれだけあってもいい。選別こそ大変になるが些細な事が大きな出来事の前兆だって話は幾らでもある。というよりは新世界では些細な事が大事件に発展しやすいだけなのだろうが……

 

 まぁ、普段から新聞のチェックを欠かさないのもそういった点からだが……今日は中々に興味深い情報が入ってきた。

 

「歴史の本文を探す一団を新たに手配、ノックス海賊団か……」

 

 歴史の本文絡みの情報はついつい目に入ってしまう様になったが、この集団はどういう理由でそれらを探し求めているのだろうか。

 

 オハラの一件を政府が大々的に発表してからというもの、歴史の本文を探ることの危険さは知れ渡り、探す者に対する世間からの目も冷たいものとなっている。

 

 それでも探しているということは歴史の本文に何らかの意味を持っているのだろう。それが歴史なのか力なのか、はたまたそれ以外かは分からないがな。

 

「ミンク族か……流石に探るには相手が悪い」

 

 特有の文化を持つであろう伝説の地『ゾウ』には興味を持っていたが彼処は伝手が無ければまず辿り着くのも困難な場所だと聞き、諦めていた。

 

 探りながら国を動かし続けるほど暇でもなくなったのも諦めた理由の一つだ。ただの島であれば探りやすいが生きた大地が相手では分が悪い。むしろ見聞色の得意なサイフォの方が得意な相手だ。

 

 『ゾウ』のことはさておき、ノックス海賊団がプラントの管理地を訪れてくれれば接触を図るくらいは出来るだろうがそんな都合の良い状況はやってきてはくれまい。そんな事よりもこっちの方が個人的には目を引く情報だ。

 

「『西の海にて歴史の本文を探る人影、オハラの生き残りか!?』……名前と顔が割れてなくても関連付けるのが当たり前か」

 

 同時期に情報が入ってくるということは政府が定期的に歴史の本文を探る者がいないか確かめているという事か?そうでも無ければ潜んでいる歴史を探る者を捉える事は難しいだろう。

 

 新聞に載っている写真は顔こそ写っていないが、見覚えのあるコートとカバンが確かにそこにある。政府相手に7年も見つからなかったと考えればまぁボチボチとも言える。

 

 それだけ時間も経てば確認のしようがないだろう。だが政府は危険性を考え、オハラの生き残りとして仮定して動き始める。そうなれば本気で取り掛かる政府を相手に逃げ続けないといけないのだから大変だろう。

 

「名前なし、写真なしで手配書は作れないだろうが時間の問題だな」

 

 諜報機関は不気味だが仕事は確かだ。面倒極まりないくらいに執念深くもある。ロビンなら逃げれはするだろうが苦労もするだろう。

 

 戦い続けることを選択した少女が折れてしまわないように密かに祈り、そのまま新聞をたたんでいつもの仕事へと戻った。

 

 


 

 

 この島に来るのは久しぶりだなぁと辺りを見渡すとソワソワした空気が漂い、何処か期待したような表情を浮かべている人が見られる。

 

 ここに来るのは国が使う船造りをお願いしに来たとき以来だが、街は以前より荒れ果ててしまっている。

 

「それで完成したんですねトムさん?」

 

「たっはっはっ、アスカル王、よく来てくれた!!」

 

 船造りで有名な所と聴けばウォーターセブンと誰もが言っていた。アクアラグナと言うなの途方もない高波による浸水と大海賊自体によって治安が荒れるまでは。

 

 船を造ってもらおうと思った際に候補に上がり、島を訪れた。だが、いくら造船技術があろうが材料が無ければ船など造れない。それ故にゆっくりと死んでいく様な街だった。

 

 プラントでは木を早く育てる事は出来ないので卸せてもやはり割合的に見れば少量、他から買って卸すとなれば割高になってしまう。

 

 一応取引が出来るようにはしたがそれでも死に行く島を延命する程度でしかなかった。それでも感謝する人々が痛々しく思えたのが未だに記憶に残っている。

 

 それでも技術は確かである為に頼もうとしていたが数多くいる船大工の中で誰が良いかなんて知らなかった。依頼だけを無責任に投げれば会社同士、船大工同士の喧嘩を誘発させるだけだ。

 

 そんな時に目をつけたのが海賊王の船を造り、海列車という途方もない発明に着手していた魚人の船大工、トムさんだった。

 

 海列車を造っている最中のトムズワーカーズに依頼を出すというのは悪い気がしたが、話だけでもしてみようと訪れたのがオレとトムさんの出会いだった。

 

 


 

 

「やはりもう少し国が使う船は合った方が良いのか?」

 

「そうですね。アスカルの土船も装飾などで見栄えはよく、一種の象徴にはなってますが、もう少し国として所持しておくべきかと」

 

 国ごと移動するという普通とは違う在り方とPLANT計画などで度肝を抜き、そちらばかりに目がいき誤魔化せていたが、土船ばかり使うのは能力の誇示に見えてあまりよろしくないかもしれないという。

 

「となると船造りを依頼しないといけないわけか、この国には船大工はいないからな」

 

「触りなら出来る者も居るようですが、国で使うような物は流石にいませんね」

 

 そうなると何処かの島に出向く必要があるわけだが慎重に選ばなければいけないと二人で相談しあって決めたのが……

 

「ここがウォーターセブンか……なんとも暗い雰囲気だな」

 

 世界屈指の造船技術を持つというウォーターセブンならばいい船を造って貰えるだろうと土船で向かった。情報では昔と違い荒れ始めているとあったが確かなようだ。

 

 潰れた会社や途方に暮れた船大工が珍しくもない沈んだ街を彷徨いて情報を集めているとその名前は直ぐに耳に入り、酒場等ではよく話題になっており、オレもすかさず聴き込んだ。

 

「……それでトムの奴は海賊王の船を造ったんだが、裁判に連れて行かれてねぇんだよ。海列車か……本当かは知らねぇが出来てくれりゃぁな……」

 

 酒を呑み、愚痴を溢していた元船大工だという男から話を聞き、トムという船大工がいる事、そのトムという男が海賊王の船を造った事、そして今、ログも必要なく海を渡る海列車という物を造っていることを知った。

 

「島のためか……邪魔をするのは申し訳ないがそれだけの構想があり、実現しようとする技術がある船大工は気になる」

 

 他の船大工達の事も聞いていったがそれでもそのトムという男以上に気になる者はいなかった。それ故に邪魔になるかもしれないが、その翌日にトムという男の会社であるトムズワーカーズを訪れた。

 

 橋の下にあるという本社には誰もおらず、街の人から聴き込んだ情報によるといつも廃船島と呼ばれる場所で作業しているらしく、そこまで出向いた。

 

「あそこにいる人達か?」

 

 廃船島にいる人がそもそも彼らぐらいであり、なにやら転がっている廃船から使えるものを探し出し、造船している様だ。

 

 ゆっくりと歩いて近付いて行ったが、街の荒れ具合からか、それとも政府の司法船が来たことからか見慣れぬ人物に一部の面々には少し警戒心を持たれている様だ。

 

「ンマー!!あんた、こんな所に何しに来たんだ?」

 

「たっはっはっ、この島の人じゃなさそうだがわしに何か用ですかな?」

 

「いえ、貴方個人への用はありません。しかし、そちらの事情は街で聞き及んできました。忙しい時分に申し訳ありませんがトムズワーカーズに依頼をお願いしたく、お話に参りました」

 

 余所行きの言葉遣いでそう告げると政府関係者でも、邪魔をしに来た雇われの人間とかでも無いことが分かり、空気が和らいだ。

 

「たっはっはっ、わしの事を聞いておきながら造船の依頼か?こりゃあけっさくだ。だが少したて込んでて少し待ってもらってもよろしいか?」

 

「海列車ですね。作業中であることを重々承知しています。こちらとしてはそちらの都合の良い時間で構いません」

 

 話を聞いてもらえなければ全くの無駄骨である。待つだけで良いのであれば数日程度ならば待つつもりであった。

 

「作業終わりまで待たせても??」

 

「えぇ、待ちます」

 

 今日中に話をさせてもらえるのならばむしろありがたい。

 

「そりゃ本当にありがたい。それと話し方はもっと楽でも誰も気にするもんはおらんよ」

 

「ならそうさせてもらう」

 

「たっはっはっ!!ココロさん、悪いがお客を倉庫に案内してくれ」

 

「あぁ、わかってるよ!」

 

 そこから一度訪れたトムズワーカーズの本社に案内され、今日の作業が終わるのを待っていた。

 

「おまたせしました」

 

「いや、構わない。聞いてもらえればありがたいくらいだからな」

 

「それで依頼というのは?」

 

「うちの国で使う船を造って欲しい。小さいものから大きいものまでそれぞれ数隻ずつ」

 

「曖昧!たっはっはっ!!うちの国と言うと?」

 

 まぁ笑われても仕方ないだろう。どれくらいあれば良いかなんて分からないし、船をおさめる場所は能力で作れるので数があっても困りはしない。

 

「オレが治めてるプラント王国が使う船と言う意味だ。申し遅れたがアスカルと言う。先にいったようにこれでも国を治めていて、船に入れて欲しい国旗や紋章等の意匠は図柄を持ってきている」

 

「たっはっはっ、国王直々にこんな場所に来るとはな。わしの名前は知ってるだろうが、トムだ!!ドンと好きに呼んでくれ」

 

 こちらも別に好きに呼んでくれて構わないと伝えるとさらに笑っていたが接しやすいいい人物の様だ。そのまま受けてもらえるかは分からないが依頼の詳細を詰めていった。

 

「なるほど、船の素材等は用意してもらえると……それはありがたい。船も小・中・大を3隻ずつ造った所でさほど待たせんだろう早くに必要なら出来た物から納品も出来るが……」

 

「やはり、時間が取られてしまうのは問題か?」

 

「ドンと請け負いたい所ではあるがわしには時間が無いのでな。請け負った仕事を中途半端には出来んし、安易に頷けん」

 

 この人は自分の心配ではなく、心の底から海列車が完成しないことでこの島を救えないことを心配している。なんとも大きな人なんだろうか。

 

「それなら受けてもらえる通常の船の代金に加え、海列車に必要な素材や道具等もうちの国で出すってのはどうだ?」

 

「それは…!!」

 

「そうすれば海列車造りにかかる時間の短縮も出来るだろう。金の方が必要なら前払いでも良い。依頼を受けてもらえるならプラント王国、国王アスカルがトムズワーカーズのスポンサーになる」

 

 弱みに漬け込むようで申し訳ないが、それでも海列車を作り出そうとする姿からその技術が確かであることくらいは分かる。

 

「たっはっはっはっはっはっ」

 

 オレが言った条件に対してなにやら思案していたトムさんであったが、頼み込んで少しすると倉庫中に響く様な大きな声で笑い出した。

 

「こんな暫定犯罪者をそんなに高く買ってくれるとは、笑うしかないわ。言ってくれた条件はこちらに都合が良すぎるくらいで、一周回って怪しさが吹き飛びそうだ」

 

 オレからすると船を造っただけで犯罪者というのもおかしな話に思えるが、海賊王の影響力を考えれば仕方のない事なのかもしれない。そんな事を考えているといきなりトムさんは深く頭を下げた。

 

「その依頼、ドンとわしに受けさせてもらいたい!!」

 

 その言葉を聞くとオレは静かに手を差し出した。トムさんはすぐにその手を取り、契約の成立の証という訳では無いが自然と握手をかわした。

 

 それから先、ウォーターセブンには造船に必要な素材を売る船が来るようになった。だが島中の造船所が使えるほどの量はなく、少しの延命程度でしかない。

 

 それとは関係なく、廃船島にも頻繁に船がやってくるようになり、トムが必要とする物が届けられるようになり、試行錯誤を繰り返す海列車造りはかなり捗るようになったそうだ。

 

 


 

 

「あんたにあった日が懐かしいな。アイスバーグとフランキーは元気か?」

 

「あぁ、いつも騒がしくて愉快な奴らだ。あいつらも廃船島で待ってるだろう」

 

「それで肝心の出航は?」

 

「街に完成は知らせた。もうすぐ乗客と観客が集まる筈だ」

 

 島を救うかもしれない海列車の完成を聞き、人々はソワソワしていた。あの様子なら多くの人間が集まるだろう。

 

 話をしながら廃船島へと向かう。トムさんはどうしても目立つために道中で話しかけられることも多かったが、「ドンと見に来てくれ」と多くを語らずにそのまま進んでいく。

 

「遅いぜトムさんってアスカル!!お前も来たのか!!」

 

「ンマー!!バカンキー!!アスカル様は依頼人なんだぞ!!」

 

「ってぇ!?そのアスカルが良いって言ってんだからいいじゃねぇか!!」

 

 相変わらず賑やかだな。プラントも段々と賑やかになっていったが、ここの雰囲気も中々に楽しいものだ。それぐらいにしてやってくれアイスバーグ、土産を持ってきたからみんなで仲良く食べてくれ。

 

「よっしゃ、ありがとなアスカル!!」

 

「ンマー、本当に申し訳ない」

 

 フランキーがタメ口で喋ってもオレは気にしないし、年上であるアイスバーグこそもう少し砕けてくれても構わないんだけどな。

 

「ンマー、この馬鹿みたいに考えなしには話せませんし、トムさんみたいに対等に渡り合う胆力もまだないんで。依頼人であることを置いてもアスカル様は一国の国王ですから、勘弁してください」

 

 ちなみに年齢の差はオレがフランキーの3つ上でアイスバーグがオレの1つ上だ。そんなに離れていないので話し相手としてはかなり楽でオレとしては得難い友人の様に思っているんだけどな。

 

 しばらく駄弁っていると廃船島に多くの人が集まり、辺りが騒がしくなってきた。そして、初の出航となる海列車『パッフィング・トム』に乗客が乗り込むとココロさんが出航の声を掛けた。

 

 一度海列車が走り出すと、誰もがその光景をじっと見つめ、笑みを浮かべ、涙を流し、島中が歓喜の声で溢れた。

 

 これでもトムの夢は始まったばかりで、これから司法船に告げた線路を全て作るにはまだまだ時間がかかるだろう。だが、それでも確かに彼は偉業を成し遂げたのだ。海賊王とも関係ない、彼だけの偉業を。

 

「おめでとう」

 

「たっはっは、ありがとう」

 

 


 

 

 ガープ中将には何度も大変な目に合わされた。それでも共にフーシャ村に行くことはあった。エースやルフィの様子を見に行くことは個人的にもある。だが、あの爺さんがオレ一人でフーシャ村に行くように言った時点で怪しむべきだった。

 

「ほぉ、世界的に有名なプラントの国王とこんな場所で会えるとはな」

 

「この村にアンタ程の海賊が居るとはこっちも知らなかった」

 

 なんでオレがここに寄越されたのかはよく分かった。あの爺さんは腐っても海軍、線引は流石に弁えていたのだろう。

 

 目の前にいる海賊達もそこらの海賊とは一線を画す腕利きだ。ガープ中将が来るのを知れば行くのを辞めたり、タイミングをずらしていたのだろう。

 

 おそらくは代わりに確認してこいという事だろう。海軍の人間が使えないのであれば他を頼るのは当たり前だろう。しかし、一国の王をこんな危険度の高い使いっぱしりにするのはあの人ぐらいだな。

 

 オレと赤髪の間に特別な確執があるわけではない。それでも新世界で活動する海賊からすればビックマムと関わりの深い相手は警戒の対象だろう。

 

 自分のことを棚に上げていると思うがこんな辺鄙な海にオレがわざわざやってくるというのも疑いの要因だろう。

 

 互いに牽制しあい、まだ本気ではないが武器にも手をかけている。オレも万が一を考え懐に忍ばせている土を意識している。

 

 ビックマムと違い慢心していない。こういった成長中の怪物の方がよっぽど厄介だ。ヤルとすれば揃ってる向こうに分があるが陸の上という環境ならばこちらが有利か。

 

「敵対する気はない…と言った所で信じはしてくれないか?」

 

「航海を終え、休んでる所に現れてはなぁ」

 

 疲弊している所にやってきた政府や大海賊との関わりが強い世界政府加盟国の王の言葉はこの状況では弱いか……間を図り、土に力を込める。視線が交差し、読み合い、動き出そうとした。

 

「お〜い、シャンクスにアスカル!!二人して何やってんだ!!」

 

「「ルフィ?!」」

 

 お互いに目の前の相手に集中しすぎていたのか、なんの警戒心も持たずに近づいてくるルフィの存在に全く気付かなかった。

 

 ルフィの手前でやらかす訳にはいかないとオレが土をしまっていると赤髪も剣をバレない様にしまい、何もない様に振る舞っている。

 

「だははは、ルフィにはしてやられたな」

 

「ククッ…あぁ、全くだ」

 

 未だに信用しきってはいないだろうがルフィの態度から考えて悪いようにはならないと判断し、この場での矛を収めた。

 

 


 

「宴だぁ!!お前ら騒げ!!」

 

「イエーー!!」

 

「おらおら酒だ酒!!」

 

「てか上手いなこの酒!?」

 

「料理もだ!!」

 

「あ、てめぇそれは俺が食おうとしてたやつだぞ」

 

「早いもの勝ちだバーカ!!」

 

 マキノちゃんの酒場を貸し切りにすると一気に宴だなんだと騒ぎ始めた。わだかまりを残しておくのもなんなので酒と飯をいくつか提供したらさらに騒ぎ出した。

 

「ルフィ、お前はジュースにしとけ」

 

「分かってるよ。アスカル、お土産ありがとな!!」

 

「オレを寄越したのは爺さんだ……今度会ったら礼でも言ってやれ、死ぬほど喜ぶだろうよ」

 

 それを隣に座ってる男に聴かせるように伝えるとルフィは苦い顔をしながらも頷いていた。まぁ、あんな爺さんでは苦手意識も仕方がないか。

 

「そういうわけだ。お前らが居るのを知ってた訳でもなけりゃ、意図して来たわけでもない」

 

「なるほど、ルフィの爺さんならやりかねないな」

 

「こっちとしては貧乏くじを引いた気分なんだよ」

 

「それは悪いことをしたな。まぁ、色々と提供されておいて言うのも何だが楽しんで気でも紛らわせてくれ」

 

 暗に政府やビックマムは関係ないと伝えると以外にもすんなりとそれを信じた様子だ。なるほど、こいつは確かに本物だな。

 

「そうだ!マキノ、この二人ケンカしてたんだ!!さっき港で!!」

 

「あらあら、フフ、それはいけないわね。後で叱っておくわ」

 

「おいおい、ルフィ。あれはなんでもないって言っただろ」

 

 海賊になると言い出した子どもがケンカを言いつけるのか……なんとも気の抜ける話だが25にもなって年下からの説教は勘弁してほしいな。

 

「それで赤髪さんは言っちゃ悪いがこんな辺鄙な海に何の用があるんだ?」

 

「んん、あぁーまぁ探しものをな。詳しくは流石に勘弁してくれ。それとその呼び方はなんかくすぐったいから辞めてくれ。シャンクスで構わない」

 

 詳細は話してはくれないが略奪などで無いのなら問題はないだろう。元より一つを除いてそう暗い話は聞かない海賊団だ。オレも呼び捨てでも構わないと伝えておく、元よりかしこまるような人間じゃないだろうが気楽な方がこちらも良い。

 

「まぁ、オレは基本的に国や知り合いに手を出す輩以外には不干渉だ。ここで暴れないならオレには関係ない。ルフィとも仲良いみたいだしな……爺さんに報告する身としてはなんとも面倒だがな」

 

「それは俺にはどうしようもないな。それにしてもプラントか……警戒するだけ無駄だったな。もしかしたら立ち寄らしてもらう事になるかも知れないからそんときは頼む」

 

 こちらとしては取引が誠実であれば誰が相手であっても問題はない。特別扱いはしないぞと伝えるもそれで良いと笑っている。器から違う、本物だな。

 

 ガープ中将が立場上来れないとするならばもう何度か会うこともあるだろう。取引関係のものも次の機会にでも持ってくるか。

 

「さて、宴の途中でちょっと悪いが失礼する」

 

「ん、何か用事でもあるのか?」

 

「山に行くんですかアスカルさん?」

 

「また行くのかアスカル!!いっつもズルイぞ!!」

 

 ルフィとエース、片方だけに会って帰るということはまずない。そして位置関係的に先にルフィに会ってからエースの所に向かうことになるのだが、ここ最近はオレが何処かに行ってる事に気付いて連れてけと言い出した。

 

「ルフィ、お前の爺さんから頼まれてオレは行ってるんだ。行きたいなら爺さんに相談してからって言ってるだろ」

 

「ここ最近ちっとも来ねぇからアスカルに頼んでんだよ!!なぁ、連れてってくれよ。マキノがたまについて行ってるの知ってんだぞ!!」

 

「マキノちゃんはマキノちゃん、お前はお前だ。お前はルフィであってマキノちゃんとは違うんだ。同じ扱いはしないし、出来ない」

 

 ルフィはまだまだ賢いとは言えないが道理は分かっている。納得がいくかはまた別だろうがな。宴の途中だから出ていかなかったが、ぶーたれて机にもたれかかっている。

 

「……何しに行くんだ?」

 

「……爺さんのもう一人の孫の様子を見に行くんだよ」

 

「……へぇ、ルフィに兄弟がいたのか?」

 

「……いや、血は繋がってない。養子、いや養孫か」

 

 この反応ならおそらくエースを探りに来たわけではなさそうだな。なんでオレが確認してんのか分かったもんじゃないがな。これで本当に心配事は消えた。ご機嫌斜めなルフィはシャンクスに押し付けて行くとするか。

 

「マキノちゃんは…って今日は無理か」

 

「えぇ、よろしく伝えといて」

 

 マキノも山の上に顔を出しており、山賊組ともエースとも程々にいい関係が築けている。昔から登り降りを繰り返したからか足腰はそこらの人間よりも強い。元々、物怖じしない性格だったが昔よりも強くなったな。

 

 そのまま渡すといっつも遠慮するので店の裏に目録と一緒に土産を置いて酒場を後にする。いつもは先に挨拶しているのだが、先の騒動のまま酒場に来てしまったから村長さんの所に顔を出してから山に向うとしよう。

 

「あれで10億4000万か……」

 

 


 

 

 山にやってきたは良いが最近はエースがこの時間にいることは稀だ。どうやら山を超えて嫌なゴミ捨て場まで足を伸ばしているそうだ。

 

 そこでなにやら一緒に行動する友達がいるそうだが、二人してあまりいい話は聞かない。まぁ、ヤケになっている訳ではないのでそこまで問題とは思っていない。

 

「それでお前らから見て最近のエースはどうだ?」

 

「どうだっつってもねぇ……あたしらの所にいつも居る訳ではないからな。まぁ、元気なのは確かだよ。ここ最近では自分の食う分以上に獲物を持ってくるくらいだ」

 

「自己流でここらの猛獣相手に戦えてるなら大したもんだな。まぁ、死なない程度には見といてやってくれ、オレが言うのもおかしな話だけどな」

 

「自分の子でも無ければお前が預かった訳でもないのに毎月見に来てんのもこっちからしたら大概だよ。ふん、酒代分くらいは動いてやるよ」

 

 山賊ではあるが筋は通すタイプの人間だ。そこらの一般人よりもかえって信頼が出来るのだから笑えてくる。土産の酒を器に注いでやるとそっとこちらも器を掲げる。

 

「洒落臭い…ってのは間違いか。そんなでも王様か……とはいっても似合わない真似をするもんだね」

 

「ねぎらいの意味だがそんなに似合わないか?」

 

 格好つけたつもりは全くないがそんな風に言われると多少は気になる。歯に衣着せない山賊からの意見だからこそな。

 

「結婚してんだろうに、奥さんは何も言わないもんかい?こんな辺鄙な所に通って子供の様子を見に来るって浮気を疑われても仕方ねぇだろう」

 

 暗に巻き込んでくれる様な真似は勘弁してくれと伝えているんだろうがその心配は無いと言っておく。流石にエースの出自までは伝えてないがガープ中将関連と言えば納得する。

 

 プラントの人間はガープ中将を見慣れているから、彼のハチャメチャさはよく知られている。それに浮気とかの疑いがあればむしろ喜んで相手を迎え入れるだろうから変にネジ曲がって伝わっても危害が加わる事は無いから安心してほしい。

 

「どんな嫁だ!?それに安心出来るか!!あんたとは友人付き合い程度の関係で十分だよ。全く王族だからか?これだからお高い身分の奴は面倒だね」

 

「オレは元はただの農家だよ。それと価値観の違いで片付けられる話でも無いと思うが……最近は特に押しが強くてオレだって困ってるんだ」

 

「ん、何かあったのかい?」

 

 なんの躊躇もなく訊いてくるか……いや、友人としてはこれぐらい砕けている方が望ましいか。にしても、気付いてる連中はさておき、初めに伝えるのがダダンとはな。

 

「……が出来た」

 

「なんだい?聞こえないよ」

 

「……子どもが出来たらしい」

 

「へぇそれはめでたいじゃ……子ども?アスカルとその奥さんとの間にかい?」

 

 一応国のトップなので跡継ぎとかの問題もあった。建国したてからこれまで忙しい日々を過ごしていたがようやく落ち着いてきたからな。そういう時間もとれる様になってきた訳だ。

 

「それで自分が相手出来ない間の相手をってのは王族なら普通の事なのか?」

 

「知るか……」

 

 心底理解できないといった表情を浮かべて問うてくれるのは別に構わないがその答えをオレは持ち合わせていない。だからこそオレも悩んでいるんだ。

 

「どうなるか分からないがルフィやエースに会わせる機会もあるかもな」

 

「無いとは思うけどうちに預けるんじゃないよ」

 

「あの爺さんと一緒にしないでくれ」

 

 

 




タイトル以外の内容も含まれますが、いい感じに纏められなかった。

それにしてもようやっと原作開始の兆しが見えてきましたね。今が原作開始の10年前、今連載中の時期から12年前を書いてます。

正直、干渉するような部分はあらかた終わってきたから、後は既に干渉した場所にまた触れなら次の章、ようやく原作開始時のを書けそうです。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第36プラント 不穏な天模様?波乱のパーティ会場

あけましておめでとうございます(馬鹿野郎)

更新が大変遅れていました。
実に3ヶ月ぶりという事で待っていてくれている方々には申し訳無さと感謝でいっぱいです。

12月は別の作品に忙しく、1月中は活動報告を見ている方は知っていると思いますが正月ボケが中々治らずぐーたらしていたらこんなに空いていました。

こんな感じの作者ですが消えることだけはしないようにしているので何卒本年もよろしくお願いします。





 

 

 

 ガープの爺さんからの依頼はあれからもあり、フーシャ村に何度か訪れては赤髪海賊団とも交流を深めていった。

 

 国に戻ってからもルフィとエースの報告を書いたり、東の海におけるプラントの支部での赤髪海賊団への対応に気を付ける様にと通達を送ったりと程々に忙しい。

 

 そんな折にプラントへイスト聖がやってくるのも最早仕方がないと諦めの境地に立っている。大変な物事ほど何かと重なるものだ。

 

「ふん、子が出来たと聞いたからな。保護している者を祝いに出向くのは天竜人としてはおかしな部類だが筋は通る。計画を明かさなくても良いと利用させて貰った」

 

 まだ生まれていないが子供が出来たことは世界政府や海軍はもちろん。イスト聖、モルガンズ、関わりの強い国や商人、他にもフーシャ村の面々等には前もって報せていた。それがこんな事になるとは思っていなかったが……祝いの言葉は有り難く頂戴しよう。

 

「本当に悪いねアスカル王。こいつも守る気はあるんだよ……迷惑とかは度外視なだけでさ……アタシも警備は手伝うから許しておくれよ」

 

 基本的にクチーナさんはイスト聖の護衛という形になるだろう。離れる事は出来ないが来賓席の近くは一緒に守るということで頼もしい限りだ。

 

「船に祝いの品も載せてきた。明後日のパーティで出せば目玉にもなるだろう」

 

 そのパーティが無事に終われるのであれば良いのだが……懐妊を祝い、出産に向けての祈願としてのパーティだというのに嫌な騒がしさになりそうだ。

 

 ただでさえマニュが妊娠してから仕事の引き継ぎで全体的に人手が足りてない状況なのに幹部を警備に回さないといけないのはかなりの痛手だ。

 

 土の分身で単純作業は効率化しているが事が起これば確実に対応に追われることになる。四人組にここ数年で多くの仕事が任せられる様になったのが救いだ。

 

 そろそろ、準幹部くらいの地位は渡しても良いかもしれないな。それよりも今の幹部を最高幹部にして、彼等を幹部に上げるか……そこいらへんの名称なども含めて次の会議からは正式に参加して貰うか。

 

 っと、そんな事を考えている間にまた1人引っかかったか……面倒だが一々能力を使うのが手っ取り早くはある。

 

 何と言ってもサイフォにはプラント全域を見てもらう必要がある。ヤバイなと感じるものにはいち早く動いてもらうが基本的には待機して見ることに集中してもらっている。

 

 グラン・テゾーロはテゾーロに一任している。彼が操る黄金によって彼処で好き勝手する事は出来ない。練度こそ低いが人員も多く割かれているので数だけの有象無象も対処可能だ。

 

 菌に溢れた胞子の森は並大抵の装備では入り込むことは出来ない。そして、モルの感知から逃れる事は出来ない為こちらも心配はいらない。

 

 海はピアスと調教が済んでいる巨大魚によって警備がされており、不審な船などは直ぐに分かる。それが潜水艦等であっても関係ない。

 

 小人の存在も政府には調査の段階で知られているだろうから隠しはしない。一般に知られないように陰から警備に加わっている。

 

 特にモーダスとホーニィは植物を操っての監視が役に立っている。能力の使用時には周囲に気を付けるよう伝えていたため、未だに能力者の詳細は割れていないようだ。それ故に視線を感じさせることなく、自然エリアを中心に見てもらっている。

 

 土に触れる場所はオレの領域、空も今となっては問題はない。それに知られてはいけない事を知った奴には災いが降り掛かるだろう。

 

 万全と言えるかは分からないが出来る限りの準備はしてきた。パーティを台無しにされる訳にはいかないからな。

 

 オレが野暮用を終わらせている間にイスト聖とクチーナさんも準備を終え、共にグラン・テゾーロへとやってきた。

 

 面倒な天竜人対策として多くの物が用意されているここにはプラントが誇る食事処も点在している。その中でもVIP専用エリアにある個室を借り、ようやく一息つける。

 

「侵入者は今どれくらいだ?」

 

「100を超えたあたりです。まだ増え続けてます」

 

 席に腰掛けると食前酒をグラスに注ぎながら状況を尋ねられる。答えるとグラスを傾け、満足そうな表情だ。

 

「CP0は?」

 

「指示通り泳がせています」

 

 CP0もその中でのレベルには差があるが、それ以外との差は大きい。全て把握できているかは正直怪しいのが心配な所だ。

 

「アイツラは天竜人直下、それ故に五老星共が出した()()()()()()に従うからな。お守りはできてもそれ以上は動けはしない」

 

 安心させるかのように伝えられるがそれがどれだけの効力を発揮してくれるかはその時にならないと分からないだろう。それに……

 

「実行は他からですか……上手く利用なさいますね」

 

 裏で計画を推し進め、五老星の了解を先にとることでCP0を半無力化するとは……それでいて外に漏れ出ない様に五老星から他には伝わらない。

 

「理由を知らない以上、余計に下手な事は出来ん。後は他を全て炙り出せば諸共動けなくなる。そうなれば時を待つだけよ」

 

 知っていた知らなかったは関係なく責任を取らされる者には同情するが、抑止力となってもらえればありがたい限りだ。

 

「計画の公表は?」

 

「終わりに……と言いたい所だが後日で構わん。世経をお前は使えるだろう?」

 

 モルガンズは何日も前から手土産を持参してプラントに滞在している。面白い話には目がない奴の彼のことだ、間違いなく食いついてくれるだろう。

 

「あぁ、一つ忘れていたが計画に()()も含まれる事になりそうだ」

 

 イスト聖は忘れていた事を告げるかの様に追加の情報を渡した。興味は薄いようだが予定にはないようでなんとも微妙な表情だ。

 

「グラン・テゾーロがですか?分かりましたが、それは…?」

 

「協力側の派閥からだが…横槍だな。プラントに関わり辛くなるのであればこちらもとな」

 

 イスト聖だけに美味しい所を持っていくのは向こうとしては面白くないのだろう。そうした所で直接関われる訳では無いだろうが、それでもイーブンな場所である方が有り難いのか。

 

「まぁ、元より切り離しは予定されていましたし、立ち位置が少し上になるだけでテゾーロなら卒なくこなすでしょう」

 

 規模が規模であるからな世界政府も扱いに困りそうだが、プラントの一部でなくなった時点で娯楽施設のトップだけじゃいられなくなるそうだ。

 

「ここも食事場所としての雰囲気は悪くは無いが……施設としては吾の管轄外だ。ある意味、保護としてはむしろ申し分ない筈……故に計画はそのままだ」

 

「えぇ、イスト聖のままに」

 

 テゾーロに天竜人の相手をさせるのは酷かもしれんが既に客として入り浸ってる連中を上手くあしらっているのだ。あれらの庇護下に入ることに嫌悪は示せど必要なことと割り切る余裕はあるだろう……ふむ!

 

「…どうかしたのか?」

 

「……失礼、少々面白い事になりそうです」

 

 

 


 

 

 

「何も出来ていないと言うのかえ?そんな報告をするとはどういう事だえ!!」

 

 部屋の中央でこちらの事なんか気にもせずにただ叫んでいる我々の主、この世界における最高権力者、天竜人の一角。

 

 報告を任せられているあの男には同情するばかりだが、その怒りがいつこちらに向くか分かったものではないのだ。下手に口出ししてもそれはただの自殺行為、傍観する事しか出来ない。

 

 出て行った仲間が任務に動き出した側から確保されている。妨害工作を行うどころか相手の情報を得ることも出来ていない。

 

 元よりこの地の防衛能力の高さは知られていたことだ。しかし、そんな事は雇い主からしてみれば関係のない事だ。

 

 出来なければ我々であっても関係なく処分されるだけだ。大きな事件などがあれば戦力確保の面から手を回して貰える事もあるが比較的安定している昨今の情勢では望みは薄いだろう。

 

「あの食狂いは賭け好き共を味方に付け始めたんだぇ。ここで止めなければ次世代には派閥の一角として立つんだえ!!」

 

 天竜人も珍しいものや面白いものへの興味は大きい。奴隷などでも男ならどれだけ強い存在だったか、女ならどれだけ綺麗か等で自慢が耐えない。

 

 食と言うのも程々に話題になるがイスト聖のこだわり様は天竜人の中でも異常に見えるために密かに利用する者はいても下につく者は居なかった。

 

 それがプラントという強大な存在と繋がった為にひっくり返った。世界政府としてもプラントの存在は大きく、五老星も存在を認めている。

 

 プラントを五老星が認めた事でそれを保護しているイスト聖の影響力も大きく上がった。そこにプラントの一角、今となっては世界最大の娯楽施設とも言われているグラン・テゾーロが出来た事で流れは一気に持っていかれた。

 

「落ち着くのだ……聖の言いたい事は分かるが上があちら側に立ったのは確かだ」

 

「だからこそここで潰さなくてはならんえ!!あの食狂いに好き勝手されるなんてごめんだぇ……お前ら今度こそ行ってくるぇ!!やれなければ死んで償うえ!!」

 

 天竜人の派閥争い、いや派閥の形成を止めるために集められた我々だが護衛としてついているCP0(アイツラ)が動いていないのがきな臭い。

 

 いや、幾つかの情報は向こうが集めてこちらに渡してくれているのだがな。アイツラだけが捕まっていないのが我々とアイツラの格の違いだけで片付けて良いものか。

 

 しかし、命じられた以上は仕方がない。運が悪かったと諦めて部屋を出ようとしたところで待ったがかかった。

 

「まぁ待て、プラントが食狂いと関わりが深い故に陥った状況なのだ。かくなる上はプラントをこちらにつければ良い」

 

「どういうことだぇ?」

 

「プラントがこちらにつけば、アイツが得ようとしているものがそのままこちらのものだ。その為にアイツの信用を落とすのだ。ちょうど良く、明後日はイベントがある。そこで問題が起これば……」

 

「アイツの信用がなくなるえ!!そうなれば後は全部頂くだけだえ!!よし、それでいくえ、お前ら準備を急ぐえ!!」

 

 新しい指示を出されたが今すぐ強行突破でなくなっただけでどちらにせよ被害は出るだろう。それでも全体的に猶予は出来た。

 

 ご機嫌になって高笑いをしている天竜人は集まっている部屋ではなく自身の部屋に戻ることにしたようで、自分の護衛だけ連れて戻っていった。

 

「はぁ、状況が悪いな。あれでも手を回すのは早いようだ。ここで下手なことをすれば五老星からの覚えが悪くなるだけだ」

 

「とはいえ今から向こうにつくのは無理だろう。責を聖に押し付けたとしても流れから外されれば今後に響く」

 

「プラントの王妃懐妊は事実だったが、このタイミングでわざわざ足を運んだのは罠か……どう動く?」

 

 基本的に我々に命令を出していた天竜人がいなくなった途端に他の方々が話し合いを始めた。耳を塞ぎたい気持ちに襲われるが何を聞いても何も変わらないだろう。

 

「後の立場がどうなるか分からないが家の関わりで離れるのは不味い。制御がなくなった際に落とし所を用意する役も必要だろう?」

 

「そうか、頃合いを見て働きかけられる様にはしておく。こちらもどう転ぶか分からんがグラン・テゾーロに顔を出している面々と多少繋ぎがある」

 

「ふむ、なら私は一か八かになるが向こうに直接働きかけてみるか……」

 

「それは……先も言ったが厳しくはないだろうか?」

 

「何を選んでもこうなっては厳しい。なれば試すだけ得というものだろう。おい、そこのCP!!」

 

 ……どうやら声をかけられたのは俺の様だ。嫌な予感しかしないが黙って呼ばれた方の前に跪き命令を待つ。

 

「これを持ってプラントもしくはイスト聖に接触を図れ、忍び込んだ者が帰ってきていないのは十中八九向こうの仕業だ。幾らでもやりようはあるだろう?」

 

 要するに手紙を持たせるから向こうに捕まってこいという事ですか……

 

「了解いたしました。直ちに向かいます」

 

 そう答えることしか出来ないこの立場に本当に嫌気が差す。やるしかない現状に覚悟を決めて俺はその場を離れた。

 

 


 

 

 なるほど、そういうやり取りがあっての事か……道理で前に捕まったCPと全く同じ場所にやって来た訳だ。そうする事でこちらに気付かせようとしたのは理解できるが少々分が悪い賭けだったのではないか?

 

「最悪この身がどうなろうと構いませんので、多少の疑問を抱かせることが出来ればそれでと」

 

 天竜人の考えそうな事だな。裏取りも必要だがこちらとしても被害は少ないほうが良い。今後の問題も減るのであればオレとしては万々歳だ。この手紙はイスト聖に渡しておこう。そっから先をどうするかはオレは関与しないがな。

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 イスト聖からの指示があるまではこの場で待機していてくれ。対応次第ではあるが隠すにも誘い込みに利用するにも決定してからになる。

 

「接触後はイスト聖に従うようにと指示されています。いかようにもお使いくださいと」

 

 


 

 

 準備に追われてばかりであったがなんとか間に合い、予定通りとはいかないが無事に開催することが出来た。パーティには繋がりの強い王族も多く出席し、華やかな姿がみられる。

 

「この度は目立たい場に…」

「王妃様に置かれては…」

 

 代わる代わる多くの者が挨拶にやってくる。オレも慣れたもんだ。島で一人で暮らしてた頃のオレが見たらどう思うんだろうか?そんな事を考えてしまうくらいには自身の変化を感じている。

 

「よう、おめでとうと言っておこうか若いの!!」

 

「お前は…この場にあった言い方があるだろう?」

 

 会場内に響きそうな声で近寄って来た大男とそれを嗜める落ち着いた男、もちろんこの二人も王族であり、かなり名のしれた人物だ。

 

「はっはっはっ、こいつはそんなの気にしねぇよ!!なぁ、アスカル?」

 

「まぁ別に構いませんが…レヴェリー以来ですかね?変わらず仲が良いようで何よりです。リク・ドルド三世、エリザベロー二世」

 

「おう!!」

 

「騒々しくしてすまないな。アスカル」

 

 非戦争派のトップと言っても良いような戦争否定派であるリク・ドルド三世も戦う王の異名を持つ強さを誇るエリザベロー二世もわざわざ祝いに来てくれるとは嬉しい限りだ。

 

 真逆の様に思えるがエリザベロー二世も戦いを好いても戦争を好くような人間ではなく恩義あるリク・ドルド三世との仲がとても良い。

 

 二人とも在り方に差はあれど良き王の見本だ。リク・ドルド三世とは少しばかり縁があるのでわざわざプラントに来てくれたこの時に話したい事もあるがそれはまた後回しだ。

 

「ところでアスカルよ。少しばかり祝いの場に相応しくない空気があるがこれはなんだ?」

 

 オレの側に近寄って声を潜めるなどエリザベロー二世らしくないと思ったが流石だな。戦う王の名は伊達じゃない。

 

「少々()()が悪い様ですので備えは用意してますがお気を付けください」

 

「なるほど、お前も苦労するな…手を貸すか?中庭でも借りればメインまでには間に合うぞ」

 

 戦う王の異名の元となるエリザベロー二世のキングパンチ……一時間の精神集中とウォーミングアップが必要だが放たれる一撃は要塞を粉砕し、四皇にも届く程だと言う。

 

 身内と判断した相手には中々に人が良いこの王の事だ。頼めば快く受けてくれるだろう。今からでもメインイベントまでには確かに時間はある。それでも…

 

「オレなら大丈夫ですよ。あんたが心配なら中庭は貸しても良いけどな」

 

「はっはっはっ、ぬかしおる!!ならば適当にパーティを楽しませてもらおう!!リク王、さっそく行くぞ!!」

 

「おい、待て!ったく、お前もアイツも豪快が過ぎる。それと……妖精に注意しておけ、自然に顔を見せに来たからな

 

 エリザベロー二世はあんな性格なので整えはすれど基本的に素のままに王をやってるオレと気は合う。信頼に応える為にもしっかりと終わらせなければな。

 

 そして小人たち、ドレスローザにはいつか訪れて交流をと思っていたがまさか顔を出したか。リク・ドルド三世もなんとも言えない表情だった。

 

 まぁ、これで話はしやすくはなった。そう思うことにしておこう。小人達の中ではリク・ドルド三世は特別なんだろう。リク王の一族の話は彼らからかなり聞いたしな。それはともかくとして否定しない程度に注意はしておくか。

 

 天竜人は好き勝手やっており会場にすら来ていないのが殆どだ。国の王と言っても天竜人からすれば下々の者、そこに差はなくある意味平等に扱われる。

 

 そんな中でこの場に顔を出しているのはどのような意図があるかは別だが全員が見物人だ。見据えるのはこの国か、それども天竜人か、はたまた仕掛ける道化をか。

 

「…アスカル国王、そろそろメインイベントですが大丈夫でしょうか?」

 

 挨拶にかなり時間を使っていた様で気付けば既に予定に決めていた時間になったようだ。

 

「問題ない。既に準備は出来ている」

 

 さて、まずは正式な挨拶とスピーチからだな。人前に出るのには慣れたが不得意なのに変わりはない。幸い、イスト聖からの贈り物が目立つのでそこまで苦ではないだろう。そう思いながら体調を考慮して控えていたマニュの所へ足を進めた。

 

 


 

 

 来客が全てVIPと言っても良い状態の為に華やかであり、話もあちこちで盛り上がりを見せている。そんな中で今日の主役とも言えるオレとマニュが現れた事で視線が集まる。

 

「誓いにならい王族以下、この場を祝いに来てくれた全ての者に感謝を」

 

 天竜人は崇められるのが当然であり、下々の者を祝いに来た気など微塵もない。面白そうだから立ち寄っただけであり、正式な来日出ない限りは下手に触れないのがベストだ。

 

 ましてやここは後見人としてイスト聖がいるので紹介するとしたら聖だけで十分だ。そして今回は伝えるのは贈り物だけで良いと言われている。

 

 こういった挨拶の場においては訪れる王族相手にはどれだけ国力に差があっても平等に扱う。虚の玉座の誓いに倣うことで主催者も含めて対等であるする。

 

 こうすることで面倒事をなくして話を進める。レヴェリー等では水面下に争いが移るだけだが祝いの場で騒ごうと思うのは少数派の為これで問題ない。

 

「………となる。挨拶は以上だ。清聴に感謝を」

 

 形式ばった物言いは本当に面倒だ。この場にいるのはそういうのに慣れているだろうが嫌にならないのか聞いてみたいぐらいだ。

 

『続きまして、プラントの後見人であられます。イスト聖からの贈り物を紹介させて頂きます』

 

 その姿は会場で見られるが誰も視線を向ける様な真似はしない。だが天竜人からの贈り物と言う事で少なからずざわめきは発生する。

 

 そしてそのざわめきさえも一瞬で呑み込む轟音が会場へと響き渡り、運び込まれていた贈り物と主催者目掛けて影が走る。

 

「何事だ?!」

「護衛!!こっちへ来て俺を守れ!!」

「これはテロか?!」

「警備は何をしているんだ!!」

 

 大抵の者はその影を見ることも出来ず、混乱の中で何が起きてるのか把握しようと試み、またある者は護衛を近くに寄せたり、警備の責任にしたりと様々な方法で自身を安心させようとした。

 

「始まったか…」

「通りで多いと思ったが、これでは文句は言えんな」

「おいおい、また特大スクープか?!」

 

 事情を知っている者、事態の予想がつく者、何が起きようと関係ない者、彼らはこの会場内でも比較的落ち着いた様子で事態を見守っている。

 

「捕らえよ!!」

『『はっ!!』』

 

 この場においてオレが動く必要はない。そもそも脅威ですらない相手だ。会場の警備をしている特製の鎧を着たプラントの兵士とでも言うべき者に指示を出す。

 

 命令を出すと重たく丈夫な鎧を着込んでいるとは思えない速度で影に近付き攻撃を開始する。まだ、技までは教えられてない筈だが持ち前の力で動きをカバー出来ている様だ。

 

「……『獣憑き』の表面化に一役買ってくれ」

 

 表に出すことが出来ない部隊だが完全に隠すことは出来ない。それこそ尻尾を掴まれれば誤魔化しがきかなくなる。ならば隠したまま見せれば良い。

 

 今回の会場の警備に当たってるのは鎧で姿を完全に隠した『獣憑き』の人員だ。元より訓練はしているし下手なことはしないだろうがこれは試験でもある。天竜人がいる場で感情を制御して任務に当たれるかのな。

 

 幸いな事に問題を起こした者は居なかったが、まだまだプラントにおいては新参者。事情があるとは言え、安全に運用するには段階が必要だ。そんな事を考えている間に既に捕縛は終わっており、会場は静けさを取り戻しつつあった。

 

『制圧完了しました』

 

「ご苦労、受け渡しを済ませ指定の位置に戻れ」

 

 捕縛した襲撃者達を連れて裏へと持って行くのを横目に少しばかり崩れた会場へと身体を戻し、電伝虫を手に取る。

 

「招かれざる客が居た様だがプラントの力を見せる事で良いリクリエーションになってくれた。()()采配に感謝しよう」

 

 これだけ強調して言えば気付かない者は殆ど居ないだろう。下手に文句を言う事は出来ない為に多少はフラストレーションがたまるだろう。この場の客は普段の取引における上客ばかりだしなんとかフォローしないとな。

 

「気を取り直して、イスト聖からの贈り物の紹介をさせて頂こう」

 

 一部で協力してくれる者がいるおかげで会場の雰囲気は少しずつ戻り、滞りなく進める事が出来そうだ。そして、贈り物に視線が集まっている間にそっとサイフォが姿を表した。

 

「……襲撃者の確保は済んだな。()()()と言って良いのか微妙だがな」

 

「……そうか、居ないと思うが裏で警護は続けてくれ」

 

 ふぅ、これで本当に問題は片付いたと思って良いだろう。後の処理はイスト聖がきちんとやってくれる事に期待するしかない。ようやく一息つけるなと思っていると横から飲み物が差し出された。

 

「主役なのにあまり構えなくて悪かったな」

 

「ふふ、動き回ってたのは知ってるから良いわよ。お疲れ様」

 

 労いの言葉と共にそっと乾杯をするとグラスを傾けて飲み干した。仕方ないと一言で終わらせず埋め合わせはしっかり考えておくか。それにしても面倒事はこれっきりになってくれると嬉しいんだけどな。

 

 


 

 

 パーティも終わり、客も一部を除いて帰路についた。プラント全体は未だにお祭り騒ぎなのに対して部屋の中は嫌に静けさに包まれている。その原因は縛られて身動きがとれない中で顔を青くして唸っている連中だろう。

 

「小奴らが下手人か……ふん、見るものが見れば何処の系列か分かるだろう。襲撃すら出来なかった上に捕まるなどその程度が知れる」

 

 語気は強めであり、手を引いているであろう者への怒りは感じられるがそれでいて上機嫌なのはプラントが上手いことやれたからだろう。お気にめして貰えたのであればまぁ良かったと思っておこう。

 

 彼らは何も知らされずにただ命令に従っただけだが狙われた側としてはいい気分ではないので同情する事はない。

 

 そして縛られた者とは違い、その場に控えて黙っている者へとイスト聖の視線が移った。彼らは会場の襲撃をしたメンバーだ。

 

「襲撃者よりも先に襲撃を仕掛ける事で敵を炙り出すとはな。とはいえそう簡単に受け入れられるとは思うなよ」

 

 そう、彼らは事前にこちら側と内通していたCPの男とその仲間だ。裏を取りけれていないのに使うのはどうかとも考えたがこうも上手くいくとは。

 

 これからイスト聖は敵対派閥への対処に、派閥を変えようもしている者への対応、それと今回使われたCPと使ったCPの裏取りと他にも色々とやることがあるだろう。

 

 大変になるのが分かってるからこそ面倒事を増やすような真似をすればどうなることやら……もし入り込んだ者が居たとしてもこうもギチギチに釘を刺されては下手に動けまい。

 

「吾は帰るが警戒は続けておけ、馬鹿は何をするか分からんからな。それと計画は遅くとも二月以内に報せろ」

 

 そう言うとイスト聖は部屋を出ていき、それに従う面々が縛られた者たちを運んでいった。

 

 それからプラントも変わらず忙しなく動くことになった。警戒は続ける必要があるし、パーティの後片付けに遅らせざるを得なかった取り引きの再開。そして、イスト聖の指示に合わせて準備を終わらせた。

 

「クワハハハ、最高だ!!なんたるビックニュース!!これを扱わせてくれるとはこの感情をどう表現すりゃ良いのか分からないくらいだ!!」

 

 パーティの際にも独占取材でかなりの盛り上がりを見せていたが今回ばかりは規模が規模だ。その愉しそうな表情に少し心配になるくらいだ。

 

「クワハハハ、安心してくれ!!正式な通達でありながらこれほど世界を震わせる情報……下手な事にならないよう厳重に取り扱うと約束する!!」

 

 万が一が起きてプラントとの関わりがなくなるのはモルガンズにとって不利益でしかない筈だ。こいつが言うところのビッグニュースへの期待がある限り、裏切る事はないだろう。

 

 そして、モルガンズが急いで本社へと帰ると何度もこちらとやり取りを重ねながらその新聞は作り上げられ世界へとばら撒かれた。

 

「さて、これから一気に騒がしくなるな」

 

 

 

【運営の完全独立化を世界政府が認定?!】

【プラント&グラン・テゾーロ独立国家化!!】

 

建国から以前世界を賑わし続けている機動国家であり、世界最大の食料生産国であるプラント。そしてそのプラントの娯楽施設であったグラン・テゾーロが独立国家として世界政府に認定!!この背景にはプラントの後見人であるイスト聖の働きがあると予想されて……

 

 

【プラントからグラン・テゾーロが分断?!】

 

プラントに存在する世界最大の娯楽施設グラン・テゾーロが独立化!!気になるその航路も世界経済新聞に記載が決定!!グラン・テゾーロ自体も1国家として認められる模様?!詳しくは見出しのプラント及びグラン・テゾーロの情報………

 

 





はい、という事で前書きでも言いましたがお久しぶりでございます。

プラントとグラン・テゾーロの在り方が大きく変わりましたがこの章はもう少し続きます。後もう少し原作開始までに拾っておきたい要素を書いたら次の章に入る予定です。

そして、4月1日のIF話企画用のアンケートを行いますので参加してもらえると嬉しいです。

去年の続きはロジャー海賊団だったらです。ロジャー海賊団としての航海を追加で書くかは分からない、どちらかというとロジャー海賊団だったアスカルが原作キャラと絡む感じを予定。

ルフィの仲間になったらは出会いと全員との絡み。出会いはグランドライン前半の何処かにぶちこむ予定、絡みの方はIFなので時系列とか無視して全員とのやり取りを少しずつを予定。

オリジナル海賊団は結成と航海少しにシャボンディでルフィ達と絡むかな?結成理由を決めてないから新世界での動き方は書けるか分かんない。

海軍になったらは内容決めてないです。海軍キャラとの絡みにするか、海軍としてルフィ達と戦うかのどっちかにはなると思う。去年のアンケは忘れてください。去年は去年、今年は今年。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第37プラント 漂う思想?!魚人との交流

 

 

 プラントが独立してからというもの、各国家から声が掛かる機会がかなり増えた。今までは同じ世界政府加盟国であったが、その枠組みから完全にではないが一歩離れたプラントとの繋がりを強化したいらしい。

 

 その他にも非加盟国や海賊などの中で世界政府を嫌っている者達が僅かだがプラントを利用するようになった。こちらに関してはグラン・テゾーロが独立して天竜人がプラントにあまり来なくなったのも関係してそうだが…顧客が増えたのは良いことだ。

 

 他にも細かな所で色々と変化が起きているのだが、彼等がこの地まで訪れたのもそれが影響しているのだろう。

 

「船を数日停めておきたい。休息と食料や物資の補給が主な寄港の目的だ」

 

タイの大アニキなんで人間なんかの国に……

黙っとれアーロン!!何の理由もなく行動する人じゃない

 

 世間を賑わしている奴隷解放の英雄、フィッシャー・タイガーとその仲間と思われる者達がプラントにやってきた。

 

 一緒に船から降りてきているのは幹部的な立ち位置のものだろうか? 何事もない顔をしているが面倒事を押し付けたのを忘れている訳じゃないだろうな。

 

 まぁ、対価を払えば何処の誰だろうと提供するというスタンスを変えることはない。主だった理由以外もあるなら早めに言う様に伝える。それと他の利用者といざこざを起こすようなら追い出すと釘を刺すのも忘れない。

 

「分かってる。お前らここで暴れて俺の顔を潰してくれるなよ。商売上だが平等を謳い、政府関係者でも手を出せないこの地で備えを万全にするぞ」

 

「ああお頭、了解じゃ」

 

「チッ、大アニキがそう言うなら……」

 

 カリスマとでも言うべきか他者を率いるだけのものは持っている様だな。この様子ならおそらくあっちの素質もあるだろうな。とりあえずピアスは呼んでおくとしよう。

 

 


 

 

 魚巨人のピアスがプラントでは近海の警備でよく顔を出すためにプラントに訪れる顔ぶれには魚人への慣れがあるからか変に騒ぐ者がいないのは幸いだった。

 

 タイヨウの海賊団の魚人たちにもピアスをつけてからは多少雰囲気が和らいだ様に感じられる。半分とはいえ魚人の血を引いてるピアスが国の中でも上の立場にいるのも要因の一つだろう。

 

 交渉や貨物の運び込みなどは別の人員に任せてフィッシャー・タイガー、ジンベエ、アーロンの三人はオレとの話し合いの場に出向いてきた。

 

「ここは……?」

 

「プラントの地下だ。政府関係者はもちろん、幹部やそれに準ずる立場の者以外は入れない。水産関係の施設でもあってそこの水は海に通じている」

 

「お茶、どうぞ」

 

 普段はピアスとフィンの二人が働いている場所だ。周囲の目をどうにかするにはこういった場所に来るしかない。

 

 それに水が近くにあるだけで魚人は有利を取れるし、海に通じている事で逃げ道も配慮しているので文句はないと思いたい。

 

 フィンは客に気付くと飲み物とお茶請けを置くだけ置いて直ぐにまた海に潜っていった。近くの隔離されている生け簀では巨人族ばりにでかい魚が跳び跳ねている。

 

「あの魚は自然に存在するものか?」

 

「魚ーターランドという特殊な海域には幾らかいるはずだ。ここのは成分を分析して調整しているがな」

 

 人魚は基本的に魚を食べないと聞くが魚人は普通に食べると聞く。気になるようなら食事として出してもいいし、土産に持っていくかと訊ねる。

 

「いや良い。あれはさっきの子供が?」

 

「あぁ、上にいた魚巨人のピアスと一緒に此処を管理している。流石に人間だから装備無しで深く長くは潜れないが魚人の子供に迫る程の遊泳能力持ちだ」

 

「ほぉ、それはすごいのぉ」

 

「人間が泳ぎで魚人に迫るだぁ?!」

 

 フィンに適正があったからこそだろうがピアスと殆ど共に過ごしている故だろう。I・Qを取り込んだらエラとヒレを獲得してもおかしくない程度に海中で過ごしている。

 

「人と魚人の共存か……オトヒメ王妃が喜びそうな事だ」

 

 オトヒメ王妃……魚人島は一応と頭につくが世界政府加盟国に違いはなくその名前は知っている。だが共存は個人ならともかく全体でとなると難しい問題だらけだろう。

 

「魚人と言うにはピアスはでか過ぎだと思うがな」

 

「ネプチューン王でも敵わないが大きさ自体は近しい。そう対して違いはない」

 

 そう言えばリュウグウ王国のネプチューン王の異名は大騎士だったか……魚人も人魚もその種によってその特徴が大きく違うから大きな魚人がいてもおかしくはないか。

 

「ピアス殿には感謝している。後ほど俺個人としても話をしたいと思ってる」

 

「それは好きにすると良いが、オレからピアスに話せとも話すなとも言わない」

 

 個人間のやり取りにまで口を挟むつもりはないからな。それでもタイガーはそれで十分だと示すように頷いて応えた。

 

「それで観光に来たわけじゃないだろう。こちらとしても言いたいことはあるが、何をしに来た? 船に乗っている人間の子供が関係しているのか?」

 

 これまでも保護された人間の奴隷の多くをプラントの管理地に送り付けてくれたが……政府が手を出しにくくなったプラントに直接連れてきたとかじゃないだろうな。

 

「いや、コアラは関係ない。確かに元奴隷に違いはないがコアラはうちの船の客だ。ここに持ち込む気はないし、俺たちで送り届ける」

 

「お前らが? 政府に目の敵にされ、海軍から追われている状況で抱え込むとはな。そんな余裕があるのか?」

 

 世界政府を、海軍を舐めているとしか思えない。魚人族の海戦能力や操船能力の高さは目を見張るものだ。だがそれ故に活動が出来ているに過ぎない。陸に上がれば話は変わる。

 

「アイツラと同じになるのはごめんだ」

 

「嫌悪感から来る反抗心か…それとも元奴隷としての同情か?」

 

「「ッ?!」」

 

 元奴隷といった瞬間に連れ二人の身体が大きく跳ね、信じられないといった表情のまま視線がオレとタイガーの間を行き来している。知らなかったのなら悪いことをしたか?

 

「………いや、いずれ知られる事だ。死に際に呟くよりはマシだ」

 

 その割にはこちらを射抜くような力強い視線だな。憎悪はそう簡単に消えはしない。腹の中でずっと燃え続けるだろう。

 

「大アニキが元奴隷……?!」

 

「お頭……」

 

「事実だ…俺はあの聖地で天竜人に飼われていた奴隷のうちの一人だった」

 

 それを聞いて浮かべるのは納得と怒りか……これは根が深いな。落ち着くのを少し待ってから話を再開させるとしよう。

 

 


 

 

 そこからは天竜人の所業、自他含めて聖地でのあれこれを、そして逃げ出してから奴隷解放までの話を事細かにタイガーは語った。

 

「クソっ!!人間どもが!!」

 

 憤慨するのも分からなくはないが人間で纏めると苦労するだろう。人間ほど仲間意識が低く、集団意識の高い面倒な生き物はいない。

 

「……タイの頭を助けてくれた事に感謝する。通りでタイの頭が信頼する訳だ」

 

 感謝されても礼はピアスに伝えてとしか言いようがないんだがな。あの時の俺は自分から関わる気は欠片もなかったからな。

 

 それにかなりの傷を負いながらあれだけ覇気(怒り)を感じさせる男だ。おそらく適切な治療が無くとも生き残っていた筈だ。

 

「…俺は認めねぇぞ!!お前もどうせ人間だ!!それに此処は天竜人の一人から保護を受けてんだ!!テメェもあいつらの仲間に変わりはねぇ!!」

 

「おい待てアーロン!!」

 

 それだけを叫ぶとアーロンは海に飛び込んでこの場から泳いで去ってしまった……念のためツチツチの力で地上に連絡はしておこう。

 

「構うなジンベエ!!……話を戻そう。お前の読み通り直接この地まで来た理由がある」

 

 このタイミングなのは訪れやすくなったからだと言う。いくらプラントでは海軍による捕縛がないとはいえグラン・テゾーロがあった頃は天竜人が頻繁に来ていたからその判断は妥当だろう。

 

「幾つかあるが、まずは今後の取引についてだ」

 

 今回プラントの本土にやってきたのはオレと直接取引を定めておきたいからだそうだ。海上での強みを活かした戦闘は流石の一言に尽きる。

 

 だが航海を続けていく上で色々と物資は必要になる。さして丈夫とも言えない少女が乗っているなら他にも必要な物は幾らでも出てくるだろう。

 

「支払いは奪った宝からになるが問題はあるか?」

 

 それに関しては一切ないと言える。海賊相手にも商売してるのに真っ白な金銭だけでなんて事は出来るわけがない。払えるのであれば取引は行うがそれだけじゃないんだろう。

 

「宝は多く払う。その余剰分で奴隷を買うってのは出来ないか?」

 

 魚人ではというのもあるが、追われている身ではそもそもヒューマンショップに寄る事すら出来ない。それならば入れる者に正規の手段でという訳か。

 

 プラントで匿えと言うのであれば不可能だと伝える。数年前なら人員不足も相まって奴隷購入も視野に入れただろうが今は人手不足は解消されているのに加え、外部の者をそう簡単に入れる訳にはいかない。

 

「ならば魚人や人魚に絞って解放する形ならどうだ?」

 

 購入したものをどうしようと自由ではある。魚人や人魚であり、体調さえ万全なら再度捕まることなく魚人島へと帰ることが出来るだろうが…それでこちらの利はどうなるんだと訊ねる。

 

「使用した分と同額を納める」

 

 まぁ、妥当か……やるとするならばヒューマンショップの多いシャボンディ諸島でが基本になるだろう。海軍本部やマリージョアと近いために拠点はあるので時間や場所の問題はない。

 

 とはいえオレが直接動いてと変な噂でもたてられればたまったものじゃない。奴隷を手に入れても不思議でない理由が必要だ。そしてちょうどよく元奴隷が運営している天竜人御用達の娯楽施設なんてものがある。

 

「グラン・テゾーロか……」

 

 不安そうな表情を浮かべるのは天竜人との関わりがかなり強いからだろう。彼処のトップが自分と同じだと知ると渋々だが認めた様だ。

 

「次なんだが魚人島についてだ」

 

 これまた面倒そうな話を持ってきたな。自分でも分かっているのか何処か苦い顔をしながら語りだした。

 

「今の、世界から見た魚人島の立場は著しく悪い。地上への移住なんてとうてい叶わない程にな」

 

 自分たちの活動が内外の両方の意識を変えているとタイガーは言った。地上の人間には恐怖や怒りを抱かせ、魚人島からはタイガーを称賛し、地上への好戦的な思考を広めている。

 

 さぁ仲良くしましょうとはとてもじゃないが言えない状況なのは確かだろう。だが、流石に国同士の関わりをこの場では決められない。

 

 そもそもなんの立場もなく追われる側のタイガーの口添えでは聞くわけにはいかない話だ。魚人島側がうちと取引をしたいと望むのであれば対応はするが特別扱いは出来ない。突き放す様で悪いがそれでこの話は終わり、いや無かったことにしよう。

 

「あぁ……悪い。さっきの話は忘れてくれ」

 

 タイガーもこちらの話の方が道理だと考えたようで提案自体を撤回した。それでまだ()()()()()()()があるなら聞く。

 

「あぁ、後は世間話だけだ。プラントに送った者たちがどうなったか聞いておきたかった。それと勝手なことをした謝罪だな」

 

 奴隷たちと共に費用以上の財を置いていなければ彼処まで面倒はみなかっただろうし、代価があろうとなかろうと随分と一方的な手法をとったもんだと当時はどうしてくれようかと思ったものだ。

 

 プラントに帰属することを選んだ者は引き取って兵士…『獣憑き』の隊員となっているが、そこまで詳しく話す必要はないだろう。ぼかしながら一部がプラントで働いてるとだけ伝える。

 

「他の者は?」

 

 プラントの管理地にいつまでも置いておく事は出来ない。それ故に故郷や縁のある地へと送り届けた。だいぶ苦労をしたと付け加えると申し訳無さそうな顔をする。

 

「そうか、奴隷の者達を救けてくれて感謝する。その分も払えるだけ払うと約束する」

 

 ……本当に何も分かってないんだなと呆れる思いだ。昔ならオレも分かりそうにないと考えると随分と黒くなったな。

 

 送り届けた者達が助かる訳がないだろう。無事に故郷へと帰ることは出来てもそこから先が安全な訳がないだろう。

 

「どういう事だ?」

 

 奴隷たちの情報程度調べようと思えば簡単に調べられる。逃げられてカンカンの天竜人達がそれをぼーっと許す訳がないだろう。

 

 分かりやすく故郷なんかに帰れば即座に捕まり、また奴隷へと逆戻り。良くてもその場で殺されて終わりだろう。だから初めに言ったんだ少女(コアラ)なんて乗せてる余裕があるのかとな。

 

「……待ち伏せされてると言うのか?」

 

 少女(コアラ)を狙っているのならまだマシだな。あれがお前らを狙うために用意された餌の可能性の方が高いとオレは思うがな。

 

 目的を確実に達成するにはその少女の故郷の協力も必須、少女の知らないところで取引があってもおかしくはない。

 

 分かりやすい所で言えば少女を見逃してやるから魚人を捕まえるのを手伝えとかな。ありきたりだが良く効くだろうな。

 

「そこまですると言うのか?!お頭によって助かったというのに……」

 

「…………」

 

 平気でそういった事をするのが世界政府だ。真っ当な運営がされているなんて思わない方が良い。タイガーは思い至る所がある様だな。

 

「そんな善意を利用するような真似を、悪魔の様な事をするのか……?」

 

 欲を持つものを悪魔と呼ぶならば何かを成し遂げたいと願う者も誰かの幸せを願う者も悪魔になり得るんだろうよ。

 

 だが真に無欲な聖人なんて存在がいたらそれこそ人とは思えない。別の化け物だとオレは考えるがな。それでこの話を聞いてどう選択する。

 

「コアラを送り届ける事は変わらない」

 

 なら準備だけは、覚悟だけはしておく事だな。どういう結末になろうと後悔だけはしたくはないだろう。

 

 そこまで言うとタイガーは黙って頷き、呆然としているジンベエと呼ばれた男を連れて戻っていった。

 

 


 

 

 地上に戻ると堂々と歩き回ることが出来るということでそれなりの人数が船から降りて観光している魚人の姿が見られた。

 

 その輪の中には先程までしていた話の中心とも言える少女の姿もそこにあった。何人かが引率するかのように近くを歩き、話し、笑い合っている。

 

「アスカル様、少々よろしいでしょうか?」

 

 遠くから眺めていると『獣憑き』の隊長格の一人から声を掛けられた。何か問題でも起きたのかとも思ったがその者が非番なのに直ぐに気付き、何かの私用だと判断し落ち着いて対応する。

 

「『獣憑き』の者で彼らへの接触を希望する声が上がっています。許可を貰うことは可能でしょうか?」

 

 聖地から逃したタイガーはもちろん。一部のものは彼等の手で管理地まで送られたのだから話したいと思うのは分からなくもない。

 

 人数を聞くとそこまで多くはない。詳しく聞いていくとタイガーに一言お礼を言いたい者、魚人達全体にお礼を言いたい者、見覚えがある元奴隷仲間に声をかけたい者に別れている。

 

 タイガーに礼を言いたい者については向こうに声をかければ場所は用意出来るので楽な方だ。問題は残りの二つだ。

 

 『獣憑き』はプラントの兵としてそれなりに知られてにている。タイヨウの海賊団全体と話せば何をしているのかと怪しまれる。

 

 そして元奴隷仲間と話したい者については無茶を言うなというのが正直な所だ。顔を合わせずにその場を作るのは難しいし、そうなると証拠の提示等も必要だが、あってはいけない痕跡を自ら用意するようなものだ。

 

 タイガーへの面会希望は向こうに伝えて許可が出たらオレも拒否しない。タイヨウの海賊団への声掛けは荷物の受け渡し時にひっそりと行えるなら許可を出そう。だが最後のは流石に却下だ。

 

「そうですか……お時間を頂きありがとうございます」

 

 一瞬だが残念そうな顔をしたがもしかして元奴隷との会話を望んだ一人だったか?

 

「いえ、危険な提案なのは承知していました。アスカル様の判断に従います」

 

 『獣憑き』の面々は危機管理をしっかりさせるために見つかった者がどうなったのか、その末路を知っているだけありとても従順だ。

 

 任務などでも成果を上げつつある。この前のパーティでの動き等も含めると報いてやりたい気持ちはあるが、こればかりはな。

 

 魚人や人魚にだけ伝える事が出来れば他の提案も含めて色々と取れる手段が増えるだろうが………ん、そう言えば……いけるか?

 

「アスカル様?」

 

 急に固まって考え始めたオレを不安に思い声が掛けられたがゆっくりと答える暇はない。もしかしたら直接ではないが話せるかもしれないとだけ伝えて、とりあえず待機命令を出してピアスの所へと急いだ。

 

 


 

 

「アスカル様、ありがとうございます」

 

 電伝虫越しにはなってしまうが希望した『獣憑き』全員がタイヨウの海賊団の者たちと会話する事が出来た。突拍子もない思いつきだったが上手くいってよかった。

 

「魚の言葉について詳しく教えてくれっていきなり言われた身としては驚いたよ」

 

 今回はピアスにはけっこう無茶を言ったからな。多少の嫌味は受け入れるし、報酬もしっかりと用意させてもらおう。

 

 魚の言葉も周波数は違えど振動であることに違いはなくダイヤルを用いて記録することは可能だった。後は言葉や文章を構築するのに必要な数だけ、母音や子音に当たるものやその組み合わせ等を記録すれば他に伝わる事はない安全な会話が可能になった。

 

 対応するダイヤル等を覚えるのはそれなりの作業だっただろうが話すことを希望した者たちはそれを苦とせずに頑張ったのだ。

 

 こちらから向こうへの伝達手段としては問題ないが、相手から魚の言語で伝えられてもこっちは聞き取れないという問題がある。

 

 そのために相手からの声は一度記録して、流してその波長を観測して翻訳するという高度な技術が必要になったが、どうにかなったとだけ言っておく。

 

「そのままプラントの暗号にでも使えそうだね」

 

「『獣憑き』のうち8割は既に習得済みです」

 

 魚人や人魚には筒抜けになるだろう。海軍や政府に所属していなくても、魚人や人魚を雇っている組織や国がないとは限らない。

 

 だがそのまま使えないというだけで間接的に利用する分には有用かもしれない。身内にしか伝わらない合言葉を魚語で伝える……うん、まず部外者にバレる心配はないだろう。

 

 まぁ、『獣憑き』の面々に喜んで貰えたのは普通に良いことだ。副次的な効果として一部の魚人達からの反応も良くなったし、突飛な思いつきの結果としてはこれ以上ないだろう。

 

 


 

 

「こ、こんにちは」

 

 あぁ、こんにちは。昔と違って服装や覇気等で多少の威圧感を与えやすい。腰を下ろし、目線を合わせて挨拶を返しながら、視線でこの状況を作った者に問いかける。

 

「ニュ〜、すまねぇアスカルさん。俺たちの話を少し聞かれて会ってみたいと言われてよぉ」

 

 タイヨウの海賊団の中でも珍しく人間に対しての悪感情を余り持っていないタコの魚人。彼が少女、コアラの面倒をよく見ているらしい。

 

 『獣憑き』との電伝虫での会話について船内で話した魚人がいたそうだ。船内に部外者は入れないだろうが気を抜き過ぎではないか。

 

 それで興味を持ったらしく、あまり我儘を言わない……悪く言うと元奴隷らしく自己主張の少ない少女の願いを叶えたかったそうだ。

 

 とは言っても『獣憑き』の面々と会わせるのは如何なものか……いや、魚人達と比べるとまだおかしくはないがな。

 

 同じ元奴隷に興味を持ったのではなく、プラントの精鋭である兵士に興味を持って子供らしく話してみたいと望んだ……それなら辻褄は合うだろう。

 

「ニュ〜、ありがとう!!」

 

「ありがとうございます……」

 

 『獣憑き』とそれの統括をしているサイフォに連絡を入れて場を整えて二人を送り出した。なんやかんや便宜を図りがちだが許容範囲だろう。

 

 それにしても子供か……大人向けの娯楽施設はグラン・テゾーロが独立してからその補填として幾つか作られたが子供向けのはまだ少ないな。

 

 食材の採れる地の幾つかは観光出来る様になっていたりするがもっと遊びらしいものもあった方が良いかもしれないな。それこそマニュのお腹の子が産まれ、大きくなるまでに用意するか。

 

 とは言ってもどういったものが良いのか、一から考えるのも良いがとりあえずは既にあるものを真似させて貰うとしよう。後日、何か良い案はないかと幹部たちにも訊ねたところ、サイフォとピアスから同じ案が出た。

 

「シャボンディパークを真似たらどうかな?」

 

「せっかくシャボン技術があるんだから使わない手はないだろうよ」

 

 なるほど、シャボンディパークを基にしてバブルやウェザーボールも使えばもっと色々と幅が広がりそうだな。

 

 


 

 

 プラントの管理地では海賊たちも海軍を警戒する必要がないために長期的に停泊することもそれなりにある。

 

 その中でもピアスがいるプラント本土は魚人に対しての意識も世間と比べるまでもなく良い為にタイヨウの海賊団も長く留まっていたが、今日出港すると言われた。

 

「世話になった」

 

 あまり世話をしたつもりはないがな。迷惑をかけられた部分はあるが、まぁ取引の範囲だと思っておく。

 

「それと追加の件もよろしく頼む」

 

 あぁ、フールシャウト島の永久指針が手に入ったら確保しておく。管理地に立ち寄ったらそこの係の者か、オレの分身がいたら訊ねると良い。

 

「お前からの忠告、気に留めておく」

 

 最後にそう呟くと自分の船に乗り込み、出港の合図を出し、プラントを去っていった……あれは生き方をそう変えられる男ではないだろう。

 

 取引の関係上で伝手がとにかく多いために直ぐに永久指針は手に入れられるだろう。

 

 見聞色はあまり得意とは言えないが永久指針を渡したらどうなるかは簡単に予測できる。だからどうしたと言えばそこまでだ。

 

 こちらから関わるなんて気はさらさらない。取引についての話だけを進めていく。とりあえずはテゾーロへ奴隷の件を話すことからやっていこう。

 

 


 

 

 久しぶりにフーシャ村へと訪れると相変わらず赤髪海賊団の姿が見えたがその頭の姿が大きく変わっていた。

 

「こりゃあ、気にすんな」

 

 お前ほどの奴が左腕を丸々無くしておいて無茶を言うな。だが、ここいらにそれほどヤバイ奴が現れたという話は聞かなかった。

 

 そしてシャンクスの姿を見た時、僅かにルフィの表情が変化したことから察するにそういう事なんだろうが、もうちょいやり方があっただろう。

 

「あいつが無事ならこれぐらい安いさ。それとお前にも行っとくがもうすぐ俺たちはここを離れる」

 

 そうか、元々こんな辺境の海、最弱の海と呼ぼれる様な場所に居るのがおかしいレベルの海賊団だ。出ていくというのも当然と言える。行くのは新世界かと訊ねる。

 

「そうだな。この海での目的は果たした。向こうで動き出すつもりだ。たぶん大丈夫だとは思うがルフィのことは頼んだ」

 

 お前らがいるからガープの爺さんはオレを寄こしてるんだ。お前らが居なくなればおそらくルフィはガープの爺さんが見るはずだ。

 

「仕事じゃなくても顔見せてる時があったろ?山にも顔を出してるようだしな」

 

 時間に余裕があれば顔は出しておく、ガープの爺さんに止められたらそこまでだがな。それと新世界に来るんなら本土に寄って金を落とせ。

 

「ははっ、そうさせてもらう」

 

 数日後、赤髪海賊団はフーシャ村から完全に撤退した。残されたルフィの頭には見慣れた麦わら帽子が鎮座していた。まだまだ不格好だが悪くないじゃないか。

 

 


 

 

 それなりに深く関わってしまった海賊団の出港をこうも立て続けに見送ることになるとはな。まぁ、先の奴らとあいつらでは印象が全然違うがな。

 

 そんな事を考えながら少しばかり意気消沈しているルフィを軽く撒いて山に登るとこれまた見慣れた山賊小屋へと顔を出す。

 

「アスカル!!来てたのか?」

 

 ちょうど外へ出る所だったのか入り口を開けて入って直ぐでエースとばったり出くわした。まぁなと軽く挨拶をして土産を渡しながらダダンが居るか訊ねる。

 

「あぁ、奥に居る。今日は何をしに来たんだ?」

 

 報告と世間話だな。定期的に来ていたけどこれから先は来る機会がたぶん減るだろうからいつもより多めに色々持ってきてもいる。

 

「アスカル来なくなるのか?!」

 

 オレが来ていたのはガープの爺さんの代わりだ。ガープの爺さんが来れなかった理由がなくなったから、定期的に来ることがなくなるが、全く来なくなるわけじゃない。

 

「そうか……今日は飯食ってくのか?それならこれで何か狩ってくるぞ」

 

 そう言って鉄パイプを振り上げてみせる。それなら頼むと伝えると少しだが嬉しそうに笑い山道へと駆け出していった。

 

 勝手に飯を食うことを決めたがダダンなら断りはしないだろう。そう思いながら道中の山賊達に手を振りながら奥に居るダダンの所に顔を出す。

 

「アスカルか、またこんなとこまで来たのかい?」

 

 憎まれ口は相変わらずだな。それとオレが来る頻度は減るだろう。これからはガープの爺さんが顔を出すと伝えるとダダンたちの顔が一気に引きつった。

 

「げっ嘘だろ?!なんでまたそんな?!」

 

 前から言ってたがここ最近、オレばかりが来ていたのは下にそれなりの海賊が居てガープの爺さんが動きにくかったからだ。

 

 そいつらが拠点にしていた村を去った。邪魔がなくなったからにはあの爺さんは時間をみつけては顔を出すだろう。それと今日は飯時まで居させてもらう。

 

「マジなのか最悪だ……ここ最近は襲来に怯えなくて済んでたってのによぉ……飯は勝手に食ってけ、お前は土産を寄越すし、どうせ肉を狩るのはエースの奴だからな…はぁ……」

 

 だいぶテンションが下がったな。まぁ、伝えないよりは覚悟が出来る分マシだと思う。あの人は本当に唐突にやってくるからな。

 

 その、なんだ…最近の調子はどうなんだ。山賊に訊くのもなんだと思うが、稼業は順調か?

 

「変な気を使うんじゃねぇ!!ったく、あんたが取引の品を運んでくれるおかげで他の連中よりは上手くいってるよ」

 

 共犯者のよしみって訳じゃないが取引を行うためにはプラントの管理地までは来てもらう必要があるところをダダン達に限りこの拠点まで配送している。

 

 拠点である船ごと入れる海賊と違い、山賊だと帰り道を狙われる可能性が高く、プラントを利用しようにも難しい部分がある。

 

 それがなく安全に適正価格で物資の入手が容易な分だけダダン達は動きやすいという訳だ。まぁ、ガープさんから遠回しに頼まれてるエースのサポートの一貫だ。

 

「そういうあんたはどうなんだ?つっても国なんかの事はわかりゃしないけどね。最近、また新聞に記事が載ってただろう」

 

 面倒事がけっこう立て続けに起こったがなんとか乗り越えたと言えるかな。苦労と見合ってるかは微妙だけど総じて利益的には上々と言えるよ。

 

「互いに命があって、儲かってんなら悪くないんじゃないかい……そう言えば子供の話はどうなったんだ?パーティがあったのは記事に載ってたけど」

 

 あぁ、母子ともに無事に産まれたよ。まだ政府にも世経にも伝えてないけどね。奇しくもまた世間よりダダンの方が知るのが早くなった訳だ。

 

「早く知った所でなんの得もないだろう。それとも世経にたれ込んでいいのかい?」

 

 モルガンズの奴なら即座に対応しそうなもんだけど。たれ込んだ瞬間からオレとお前の関係性を調べるだろうし、ガープの爺さんやエースにたどり着かれたら終わりだぞ。

 

「冗談に決まってんだろ。それでその子の名は?」

 

 意外と興味を持ってくれてるんだな。その子には()という意味を持つ言葉を名付けたよ。いつか必ず芽を出すようにと……

 

『グレーヌ』

 

「良い名じゃないかい」

 

 




いつもより書きやすかった。

ですが痛みで眠れない中で書いたので変なミスしてる可能性は高いので誤字脱字ありましたら教えていただけると助かります。いつも報告してくださる方々には頭が上がりません。

あ、痛い原因は親知らず抜いたからです。常に口の中が血の味がして不味いです。抜いた日は一睡も出来ませんでした。ただひたすらに辛い……

皆さま、アンケートにご協力頂きありがとうございます。アンケートの結果、去年の続きを書くことになりました。というかもう書きましたので4/1をお楽しみに。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第38プラント プラント最終計画!!食の祭典ワールド・バイキング!!

 

 

 フールシャウト島の永久指針を送り付け、取引相手が受け取ったと報告が来てからたったの数週間か……ピアスで実感しているが魚人が操る船の航行速度というのは目を見張るものがある。

 

 フィッシャー・タイガーは不器用な奴でそう簡単に生き方を変えられなかった。世界経済新聞に載った『フィッシャー・タイガー死亡』の記事はその証拠だ。

 

 これで取引については完全に白紙となった訳だ。たった数ヶ月であったがそれなりに儲けはあった。テゾーロにも手間をかけさせたが向こうは向こうで思うところがあったようだ。

 

 立場上完全な慈善事業とはいかないようだがグラン・テゾーロの方ではやり方を変えて似たようや取り組みはしていくらしい。

 

 取引で行っていた頃からテゾーロの手伝いをしたいと残った元奴隷がおり、規模の拡大という面でもそう悪くはないだろう。

 

 取引の頃は人魚や魚人が中心だったが今では他種族の元奴隷職員もいると聞いた。とはいっても全員そのままグラン・テゾーロで使える訳ではなく、選考とかの関係で人魚や魚人以外はまだまだ少ないらしい。

 

 そんなグラン・テゾーロでは既にそれなりの数がいる人魚や魚人の力を借りて行う新しいショーが人気になり話題を呼んでいるそうだ。抜け目のないテゾーロのその手腕には感心するばかりだな。

 

 とはいってもグラン・テゾーロばかりが話題になっているのも後見人の事を考えるといささか問題がある。

 

 基本的にはイスト聖の影響力が強まっているそうだがグラン・テゾーロについている…というと少し語弊があるが関わり深い派閥の力が強まりかねない。

 

 最近ではグレーヌの誕生を世経で報せた事で話題にはなったがあくまで内々の事だ。周りへのアクションを起こす必要があった。

 

 そしてプラントといえば『食』、それに関する大きなイベントの原案は既に出来ている。その為に必要な準備も整いつつある。

 

 仕掛けるのなら今だろうと電伝虫を取り、もはや馴染み深い番号にかける。一度目のコールが終わらない内にガチャリと相手が受話器をとったのが伝わる。

 

『クワハハハ、アスカル王!!()()()()()()()()()で会って以来か?そちらから連絡を貰えるとは特大のビッグニュースを期待してしまいそうだ!!』

 

 それはオレが何かする時しか連絡を寄越さないからこそだろうが、今回ばかりは互いにかなり都合のいい話になること間違いはない。モルガンズの期待とやらも叶えられるだろう。

 

「お茶会もある意味その布石だが……こっから()()掛けての大事業をプラント主導で行う。その宣言と併せた独占密着取材……なんてのはそそられるんじゃないか?」

 

 ここまで分かりやすいエサもないだろう。これ程の情報を渡された上で断るなんて選択肢はモルガンズにはありえない。

 

『ッ?!……クワハハハハハハ!!流石はアスカル王!!私の喜ばせ方をよく分かっている!!それで()()()以外に私は何をすれば良い?』

 

 互いにWin-Winの関係である限りは世経は害にはならない。プラントが彼にとって有益である限りはとつくが、過去の話を蒸し返すほどせこくもないので問題はない。

 

「とにかく盛り上げてくれればそれで良い。その為なら情報は好きに扱ってぐれて構わない」

 

 とにかく話題になれば良いのだ。それはモルガンズにとっても必要なことだ。言われなくてもやるだろうが言っておいたほうが彼は燃えるだろう。

 

『クワハハハ!!とんだお祭りになりそうだぜ!!おれは()()()じゃねえが、そういったのも得意分野だ。ジャーナリストであり、時にはウソも使って人を踊らせる活字のDJ!!新聞王(ビッグニュース)の名は伊達じゃねぇって所をみせてやるよ!!』

 

 張り切りすぎて空回りしなければ良いが本気も本気で取り組んでくれるのであればこちらとして言う事はない。

 

『それで詳しく訊かせて貰うのはそっちに出向いてからが良いが、その事業について軽く知りてぇが聞いても?』

 

「あぁ、開くのはそちらが言った通り()()だ。プラント主催の食の祭典、世界中のありとあらゆる食材、料理、全てがそこに集う……その名も」

 

 

 

 

【ワールド・バイキング】

 

 

 

 

 世界の全て、それこそ世界そのものを食らう位の気持ちで挑む食の最高峰にしてまだ見ぬ食の極地。

 

『クワハハハハ!!世界規模とはこれまたスケールのデカい!!それをプラントで行うとなれば話題を呼ぶだろう!!』

 

 プラント()()やら()()とは言ったからかモルガンズは1つ、だがとても大きな勘違いをしている。

 

「プラントでは行わないさ」

 

『なにッ?!』

 

「新しく1から、それこそ島から全て創り出す、食の祭典に相応しい島々をね。その為のノウハウは万国(トットランド)から得た。2年の時間はその為のもの…食の全てを堪能する聖地を」

 

 

 

 

【フルコースアイランド】

 

 

 

 

「それを創り出す」

 

 そう告げると電伝虫からの声がピタリと止んだ。通話が切れた訳ではないだろうと待っていると直ぐに笑い声が響き渡った。

 

『……………クワハハハハハハ!!』

 

 それから話はトントン拍子で進んでいき、何度かのプラントでの話のすり合わせを挟んでからその情報は世界へと報じられた。

 

 【フルコースアイランド】を創る作業にはオレが直々に動く必要がある。取引に問題は出ないだろうが少なからず、遅れが出る業務はある。

 

 それを少しでも減らすための考えも纏めてあった。その1つが四人組の正式な幹部昇進、それに併せて行われた現幹部陣の最高幹部就任だ。

 

 3年前の段階ではデルだけが使えていた武装色の覇気も全員が基礎は習得しており、戦闘面ではまず問題はない。今も鍛錬自体は各々で行われている様なので心配もいらない。

 

 それぞれが任されていたプロジェクトも問題なくこなしている。仕事面でも問題はなく、部下を使うということも覚えている。

 

 彼らは決して【ワールド・バイキング】に合わせて早めた訳ではなく、順当な評価の上での昇進だ。これは外に報じる様な話題ではないが、プラントの国内では盛大に祝われ、彼らもかなり喜んでいた。

 

 元の幹部陣の最高幹部就任に関しては指揮系統を混乱させないためというのが理由だ。それと同じ理由で『獣憑き』内で『獣憑き』を纏める地位の者も立場上は幹部と同じ扱いになる。

 

 ヒヒ達に関してはどうするかかなり話し合う事になったがプラントに直接関わる開発に携わっている『室長』が一応幹部の扱いとなった。

 

 他のヒヒの長達はヒヒの纏め役ではあるがプラント自体へ大きく関わってはいない故の判断であり、主様についても同じである。

 

 まぁ、そもそもヒヒ達や主様はそういった事に興味もあまりないようだった。それでも『室長』の正式な立場の決定は彼等の中で祝われていたのを見かけた。

 

 それらと一緒に国内にも報されていないが幹部に就いた者もいた。ビッグマムからの電伝虫を受けて戦い、捕縛することになったラトニーだ。

 

 捕縛された当初の様な暴走の兆しは一切なくなり、食欲に引っ張られる事のない精神も育った。そして、前提条件さえ揃っていればその戦力は誰よりも上だ。

 

 彼女こそが2つ目の対策であり、オレの代わりにプラント自体の守りを担当する切り札だ。無論、他の最高幹部及び幹部が防衛をしないという訳ではないが万が一に動ける存在というのはありがたい。

 

 彼女単体で四皇クラスの相手に持ち堪える事が容易である。プラントという土地のアドバンテージを活かせば覇気が未熟であっても関係ない。

 

 それに『モル』と同じく手配こそされているが顔まで把握している存在は少ない。彼女も含めて顔の割れていない実力者というのは国防において非常に優秀な存在と言える。

 

「……成し遂げた先がプラントの集大成となるだろう」

 

 確固たる自身の信念もないままに此処までやってきた。主であるオレに先がないままプラントの完成が見えている事に苦い笑みを浮かべながら計画を進めるのだった。

 

 


 

 

 準備こそ念入りにし、計画の全体を見て遅れこそ出ていないが取り掛かって直ぐだと順序が前後したりで予定に空き時間が出来る事もあった。

 

 これから先は更に忙しくなるのはわかりきっていた。プラントの人間はもちろん新聞を読んでいれば簡単に想像出来る事だが新聞を読みそうにもない知り合いに会いに行っておくにはちょうど良かった。

 

 計画に空き時間が出来たのであれば本来の業務をして欲しいと物語るマニュや幹部陣の視線を無視して久しぶりにドーン島までやってきた。

 

 フーシャ村に顔を出すと何度も来ていたためにすっかり覚えられており、オレの来訪は直ぐに知れ渡り、村長とマキノが顔を見せてきた。だがいの一番に来るであろう顔は見当たらない。

 

「あぁ、ルフィの奴はガーブに引きづられて山に行ったよ」

 

「今はダダンさんの所に預けられてるわ」

 

 なんで海賊に憧れた孫を山賊に預けるんだ…あの人は真っ直ぐだけど何処か他の人とズレている。どっちにしろあちらにも顔を出すつもりだったからちょうどいいと思っておこう。

 

 マキノもどうやらたまに顔を見せている様でオレが行くならとついてくる事にしたようだ。それは別に良いんだが「3人とも元気かな」と呟いているのはどういうことだ?

 

「来たのかアスカル!!」

 

「うおぉ、アスカル!!久しぶりだなぁ!!」

 

「なんだ?!エースとルフィの知り合いなのか?」

 

 ダダンの山小屋にやってくるとその理由は簡単に分かった。エースにルフィに加えてオレの知らないところで悪ガキが一人増えていた。

 

 名前をサボと言うようで以前からエースとは友人だったらしく将来海賊になるために一緒に貯金をしたり、向こうのゴミ山で暴れまわってるそうだ。

 

「そうそう、おれたち兄弟になったんだ!!」

 

 楽しげに語るルフィだが唐突過ぎて何も分からないでいると将来別々の船で海賊になっても絆を繋げる為に兄弟盃を交わしたという。

 

 なんとも普通の子供からはかけ離れた考え方だがある意味三人らしいと思える。いつか海賊になったらプラントに来いと言う。美味いものがたくさんあると伝えたら今から楽しみだと騒がしい奴らだ。

 

 元々の用件で今日から二年近くはまともにこちらに来れないと伝えるとそれなら飯だけでも食ってけと良い、3人揃って山に狩りに出掛けていった。

 

 話が二転三転し、慌ただしく駆け回る。ただの子供の様な姿にマキノと共に笑みを浮かべていると後ろから声が掛かる。

 

「本当に来なくなりやがって、定期的にガーブのジジイにどやされてんだぞこっちは」

 

 悪態をついているが歓迎はしてくれているようで酒と盃を手に持ってダダンがやってきた。盃と交換する様に手土産を渡し、真っ昼間から酌み交わす。

 

「新聞で見たよ。よく分からねぇがまた何か大きな事をやるんだって?」

 

「ワールド・バイキングの記事はフーシャ村でも話題になってましたよ」

 

 世界一の祭典を謳っているんだから話題になってくれなきゃ困るんだが、実際に知ってもらえているのを確認すると安心するというものだ。

 

 そのまま他愛無い話を続けていると三人組が返ってきて野性味ある肉の山を築き上げ少し早い夕食を楽しんだ。

 

 三人組が疲れて寝静まった頃にダダンに別れを告げ、遅くなった事を謝罪しマキノを村に送り届ける。一人帰路に着く前に何気なくゴア王国の端に位置するフーシャ村を見渡す。

 

「……カムリィもこうだったか?」

 

 長閑な風景に広がる田畑、活気ある村人は常に農具を抱えて土に汚れ、遊び回る子供達が作物に悪戯をし怒られる。そんな昔に見たそれと決して似つかないが落ち着く空気を感じる。

 

 皮肉にしか思えないがここゴア王国は東の海で最も美しい国と言われている。外れも外れにあるこの村は確かに美しいと思えた。

 

「来るのが楽しみだな」

 

 


 

 

 計画が始動してから一年が経った。フルコースアイランドの形だけは殆ど出来ており、後は中身と表面に取り掛かろうとした時だった。

 

『アスカル様、プラント本島に新しい七武海である海峡のジンベエ様が訪れています』

 

「七武海がわざわざ……?」

 

 幸いなことにフルコースアイランドは動き回るプラントの本島と常に繋げられる様にと地下深く、地盤から何から何まで整備されている。

 

 その時の距離次第ではあるが潜れば航海するよりも遥かに短い時間で行き来が可能になっており、島の形が出来てきた為にオレがいなくても進められる作業もそれなりにある。

 

 これが名前しか知らない相手なら放っておくのだが少なからず関わりのある相手だ。対応に出向くのもそう悪い結果にはならないだろう。

 

 能力に任せた無理やりな移動方法だが急ぎでなんとか本島までやってくると港に見覚えのある船が泊まっているのが確認出来た。そして、船を眺めていると直ぐにこれまた見覚えのある魚人の姿が見えた。

 

「アスカル王、この度は約束も無しに機会を設けてもらいかたじけない」

 

 ジンベエザメの魚人であり、タイガー亡き後のタイヨウの海賊団の船長ジンベエがそこに立っていた。とりあえず七武海就任おめでとうと言っていいのか?

 

 それで政府から認められている海賊となったあんたがわざわざこのプラントに来たのはどういう要件でだ?

 

 他の海賊を狩ることを期待されているあんたが此処にいきなり現れたことで多少なりとも混乱が起きている事にはとりあえず目を瞑る。

 

 腹の探り合いで時間を無駄にするほど暇じゃないんだ。とっとと本題に入ろうじゃないか。そう皮肉混じりに言うと話ができる場所へと移る。

 

 そこはタイガーやアーロンも一緒に招いたあの場所だ。再現するかのようにフィンがお茶を用意したところでようやく口を開く。

 

「今日来た理由は二つあるんじゃが一つは魚人島についての話をするためなんじゃ」

 

 国同士の話をと思ったが確かに今のジンベエには多少なりとも()()があり、仲介役としては申し分ないと言えるだろう。あの時のタイガーとは違ってな……

 

 丸一年かけて島を創る部分は終わっている。まだまだオレが手を入れる必要はあるが数日程度の時間を作ることは可能だ。

 

 海中にある魚人島を目指すとなると能力者故に不安が無い訳では無いがタイヨウの海賊団とピアスを護衛にと考えればまず事故は起きないだろう。

 

 詳しく聞く限り、そちらの王族もこの話を認めているのであれば問題ないだろう。日時を協議して決めたら向かわせてもらおう。それでもう一つの話は?

 

「もう一つは此処に居ないアーロンの話じゃ」

 

 あれはタイガーが死んだ時に捕まり投獄されたと聞いたが、あんたが七武海になったならその恩赦で出てきている訳か。その割には姿が見えないし、居なくなった顔もあるようだな。

 

 海賊の内輪の話はこちらには全く持って関係ないと思うんだが、それともアーロンがこちらに何かしてくるのか。

 

「いやあいつも馬鹿ではないからプラントに仕掛けるような事は無いはずじゃ。だが仮に迷惑がかかってもうちや魚人島は関係ない。あいつ個人とそれについていった者の責と考えてもらいたい」

 

 どういうことかと詳しく聞くとジンベエのやり方に反対したアーロンがタイヨウの海賊団から出て行ったそうだ。

 

 人への恨みをいだき続けている為に何かしでかさないかとジンベエがわざわざ海軍等に頼んでまで見張っているという。

 

 それでないとは思うがアーロンが暴れた事でプラントに被害が出て魚人島とプラントの関係が最悪なものになってはと不安に思ったから故の行動らしい。

 

 元々が海賊なんて言う無法者、それ故に出身地に責を問う気はない。それに出て行ったのであればあんたが面倒を見る必要がないのは道理で間違いはない。だがそれだけで良いのか。

 

「あぁ、ここは平等を謳ってるんじゃろ?それならアーロンだけを差別させる様な真似は頼めん」

 

 なるほどよく分かっている。タイヨウの中で一番世の中を生きていくのが上手いのはジンベエだろう。立ち回り方が違う。

 

 無事に話し合いを終え、後日決めた通りに魚人島へと赴くことになった。一通り魚人島を案内してもらい、タイガーの墓にも一応手を合わせておいた。

 

 そしてリュウグウ王国との正式な国交を結ぶ事が出来た。完全に土との接続のない空島程ではないが海底1万メートルという立地では制御無しに荷物の運搬は難しく、交易のために海上に新たにプラントの管理地を置き、そこに来てもらう形で決まった。

 

 海底の大騎士と呼ばれるネプチューン王はそう言われるだけの実力を持っていた。そしてオトヒメ王妃も身体こそ弱いが、いや弱いからこそ見聞色の覇気に優れている様だ。

 

 何はともあれ魚人島との交流自体は行いたいと考えていた。少なからず友好的な関係が築けたのであれば良かったと思っておこう。

 

 


 

 

 ついにここまでやってきた。能力をフルに使っても二年という長い時間が必要だった。

 

「食材提供エリア何処も異常無しレス」

「料理提供エリアも問題無しレス」

 

 この土地にはその名の通りフルコースを味わうかのようにそれぞれの島には特色があり、どの島にも食材や料理そのものが湧き出る土地がある。

 

 汚れが食材等に混ざらないように浄化作用や掃除の役割を持てる植物やキノコもエリアごとに植えられている。

 

 そもそも歩く大地については石食島を利用している。この島の土は食べることが可能であり、他と混ざる心配のない石を砕いたものだ。

 

 大地に落ちた汚れなどは少しずつ染み出ている霧に包まれ、直ぐに石化する。食品の衛生面での問題は重要なので様々な物を利用して二重三重に対策している。

 

 とは言っても正式に稼働させて客を迎え入れる訳だ。念入りにチェックはしておかないといけないが問題がないなら良かった。

 

 湧き出る食材は多岐にわたる。肉に魚に野菜等の基本的な物や調味料等の類、飲み物各種が自然と融合する形で存在する。

 

 食材としての形だけでなくプラントから食材となる動植物自体も持ち込まれており、独自の生態系が形成されている。

 

 それ故に多少は腕がなければ街道を外れるのはオススメできない。街や街道には今のところ『獣憑き』から人員が割かれている。

 

「海の方も問題なし、船が大量に来ても事故はないよ」

 

 プラントから持ち込まれた魚類は機密であるI・Qの影響を受けたものが多いため島内にある湖や海水を引き込んで作った場所にしかいない。

 

 だがこの周辺の海は栄養豊富になっている為に天然の大型の魚類はもちろん、島から漂う食材の香りは海獣さえも引き寄せる。

 

 普段ならば良いのだが祭りの開催時期は多くの船が一度にやってくる。混乱の元にならないようにこうしてピアスに処理してもらう方が面倒にはならない。

 

「人員配置も問題なしだな。それと招待客関係もな」

 

 プラントが開催している為にその関係者もスタッフとしているのだがこの地で暮らしたいと望む料理人やその家族等からも出てきている。

 

 今後の移住希望も考えればそのうちここの人員だけでの開催も難しくない。むしろここだけですべてが回る様になるのが好ましい。

 

 そして、招待客についてもかなりの数になる。一応国の一大イベントな訳だから関係の深い人はもちろん。それなりに取引のある国などにも送らなければならない。

 

 個人的に親しいトムに来て欲しかったが政府に捕まったと聞いた。他にも親しくなったばかりのリュウグウ王国にも話はしていたが今はそういう空気にはなれないだろう。

 

 リク王の一件があったからエリザベロー二世も来ないとの返答が来ている。何かとタイミングの悪い年に開催となってしまったものだ。

 

 コブラ王が問題なく来てくれたのが唯一の救いか。ドラム王国の方も王が代替わりしてからは関係性は悪くなる一方だしな。

 

 海軍や政府からもそれなりの立場にいる者がリストにちらほらと見える。中にはガープの文字もあったが、まぁ問題は起きないだろう。

 

「アスカル、そろそろ行きましょう」

 

 確認だけでもだいぶ時間を使ったようでマニュに声を掛けられ時計を見ると既に開会まで僅かといった所だ。

 

 身だしなみを再度確認し終えると揃って会場へと入り、拡声器へと繋がれた手元の電伝虫へと手を伸ばす。

 

 格式張った挨拶から始まるがこれは初回だけで十分だろう。次に開く際は省略されて開会の宣言だけになる予定だ。

 

 来賓への感謝、来れなかったものからの祝電に手紙、開催するまでの経緯、多くを語り、そして終える。最後は告げるだけで良い。

 

 

「ここにワールド・バイキングの開催を宣言する!!」

 

 

 その瞬間に会場中からの歓声と拍手が島全体へと響き渡った。その熱が世界中へと伝わるものとなることを望むばかりだ。

 

 





ちょっと無理やりというか、詰め込んだ感はあるけど拾いたい要素は拾って開催までこぎつけたかな。

IF話で先に名前だけは出てきてたけどとりあえずワールド・バイキングの開催でプラント自体の成長は打ち止めかな。

食材探索系の話はまだ出す予定だし、以前コメントで言われた食材を使ったり食べてる描写も増やしていけたらなといった感じです。

表現力が問われる……ワンピースって基本的に海が広がる世界だが私はあんまり魚介類食べないんだよなぁ……エビイカタコカニ全部食べれない。(他にも好き嫌い多いし、なんで食べ物系の作品書こうとしたんだコイツ)

さてここから小話、外部プラントを挟んでからついに原作の開始ですね。とは言っても麦わらの一味と直接関わる訳では無いから変化した様子を書き込んでいくだけになるかな。

初期案ではIFの映画みたいにグレーヌを麦わらの一味と関わらせる。本格的に仲間入りさせる案もあったけど、これプラントオーナーの名の通り、一応主役はアスカルだしなぁと思ってやめたんですよね。

多少は関わる事はあるでしょうが麦わらの一味は基本的に原作の流れでいく。まぁ、ロビンについてはだいぶテコ入れしたけど……

前にロビン以外で関わることがあるとしたら他はフランキーやチョッパーかなとか言ってたけど結局全然関わらなかったなぁ。

まぁ、多少行き当たりばったりに書いてるので拙い部分も多いですがエタる事だけは無いように頑張る予定です。

あ、何時までも原作を追っかける気はないです。リク王と関わりある設定なのでドレスローザまではやるつもりでその後は映画っぽく、IFとはまた違った感じでやって終了の予定です。

ワノ国も悩んだんですけどIFのロジャー海賊団だったらと違って関わる理由もそんなにないですし、他の四皇と違ってカイドウとは関わらずに終わるかな?いや断言は出来ないですがね。

さて、来年中には終わるかな?今年中は多分無理だし、たまに余分に書ける時があるけど順調に進んでもまだまだかかるでしょう。

これからも気長にお付き合い頂けると助かります。
それではいつもの挨拶でさようなら。

読んでくれている方々に多大なる感謝を。



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外部プラント7 「吠えるは宙空、牙捧ぐは大地」

 

 私はプラントの裏に位置し、表に出たとしても内側を明かすことは出来ない部隊、『()()()』のリーダー、隊長達を纏める総隊長を任されています。

 

 『獣憑き』は憚ることなく言えば天竜人の支配から離れた逃亡奴隷によって形成されている部隊です。まぁ、一部例外も居ますが、その事情により外に出なくても口が裂けても音には出来ません。

 

 そもそも聖地から逃げたは良いものの、宛など無い中で悲観にくれていた際にあの方達が、サイフォ殿とモル殿がアスカル様の命令を受けてやってきたのが始まりでした。

 

 出会ってすぐに行われたのはモル殿の能力とサイフォ殿の話術による選別。これに合格出来たことを後から思い返してどれだけホッとした事か……

 

 選ばれ無かった者の事を考えない訳では無いですが、他人を優先している余裕なんてありません。明日と言わず数秒後に死んでもおかしくない状況では自分が大事です。

 

 生き汚いと言われれば死にたがりの偽善者めと言い返してあげましょう。それだけなりふり構わない生きる意志を持っていたからこそ今此処にいるのです。

 

 そしてプラントにやって来て与えられたのがこれまでの自分の全てを捨てるという自らの手で過去の自分を殺す決断。

 

 『TEMPO』……これは万が一に漏れても辿り着かれる事の無い様にと用意された仮称です。幹部以上の者でも一部の者しか正式名称は教えられていません。

 

 私達などとは比べ物にもならないくらい遥かに長くプラントに居る方でも一部しか教えられていない極秘。それなのにその数少ない一部の一人に私は入っています。直接関わるが故でしょうが、少し畏れ多い気持ちがあります。

 

 『Beastly Possession Medicine』…そのまま読むと『獣憑きの薬』…それを約して『BPM』。それ故に仮称が『TEMPO』となったそうです。

 

 全く別のジャンルの用語に絡める事で偽装も簡単になるらしく、音楽関係に見える様な書類を数枚見かけたことがあります。

 

 『獣憑き』の存在がバレても、まず疑われるのは悪魔の実です。むしろ動物系の悪魔の実の能力者による部隊だと勘違いされやすい。それ故にそちらは大っぴらに呼んだとしても問題は無いです。

 

 ですがそれらが悪魔の実とは関係のない薬によってもたらされる事が知られないようにしなければいけません。

 

 『TEMPO』も『BPM』もそれだけを聞いた所で薬の名称だとは思えません。目立つのは『獣憑き』という部隊名ばかりとなれば成功です。

 

 そのため謀の出来ない小人の方々には知らせない事が決まり、知っているのが開発者と指導者を含めた関係者だけなのです。

 

 それだけ厳重に隠している薬ですが、最近では改良はしていても使われてはいないそうです。

 

 それもそのはずで奴隷をプラントに送っていたフィッシャー・タイガー殿。私達の恩人である彼が死んでからはプラントに姿を偽る必要がある者が来ないからです。

 

 基本的には秘匿する部隊が故にそこまで数を増やすのも問題だと思われるので現状は別に悪いわけではありません。

 

 たまにグラン・テゾーロから獣憑きへ送られてくる奴隷も居ますし、最初に言った通り事情があり過去を捨てざるをえない者も稀に来ます。

 

 そういった方々は後がないのが普通のため覚悟は決まってますし、実際に成ってからは感謝もあって裏切る事はないので制御はしやすいです。

 

 それに、スパイらしき方々は事前に弾かれて私まで回ってきませんので部隊運用以外は本当に考えなくて良いので意外と楽です。

 

 とはいってもその部隊運用が大事だからこそリーダーなのですがね。選ばれた際には不思議に思い、任命理由を訊ねた事があります。

 

 その答えが出自が出自故に地頭が悪くなく、状況判断や指揮能力が他より高かったからとのことです。情けない事ですが強さで言えばぎりぎり下から数えた方が早いぐらいですからね。そこまで聞いてようやく納得しました。

 

 もう一つ上げるとすれば『TEMPO』との相性が良かったのも理由でしょう。環境が劣悪だったゆえに小柄な身体に薬がよく回っただけかもしれませんが、第一世代で完全発現しているのは10人にも満たないのですから。

 

 『TEMPO』の改良が進んでいく中、第二世代や第三世代を合わせてもまだ3人しか完全発現者は出ていません。第一世代と比べて人数が少ないというのもありますがそれでも珍しい事です。

 

 動物系の悪魔の実の様に形態変化が出来る訳では無いが、意識することで獣の姿を濃くし、その力を十全に扱える…それがどれだけ強いかは考えるまでもありません。

 

 それなのに戦闘訓練では下から数えた方が早いのは恥じ入るべきなのでしょう。ですがこればかりはセンスの問題もあるので仕方ないと思って欲しいものです。

 

 出来ない事をやる必要は無いのです。私に出来ることを全うし、少しでも恩を返す、それで良いのです。その邪魔をするものは使えるもの全てを使って薙ぎ払うまで。

 

 全てはプラントの為に、ひいてはプラントの王であるアスカル様の為に、この身の血の一滴までもこの大地へと捧げましょう。……ところでなんで私の腕を掴んでいるんですか?

 

「貴女を止める為ですね」

 

「新人が引くのでそれぐらいにしてください」

 

 第四世代で初めての完全発現者が現れたのですよ。次の部隊の隊長候補なのですから今のうちからしっかりと指導するのは当然の事です。

 

総隊長に選ばれたのはあれだけ狂信的なら裏切る心配ないからだろ……

チューさんの次に小柄で可愛いのにあれでは詐欺ですね

私達もアスカル様への感謝はありますけど……

まぁ、あいつには負けるよな

そもそも下から数えた方が早いのだって訓練だからですわよね

殺しありならトップ3に余裕で入るな

流石は血狼様だな

新人の内に恐怖を植え付けるのか怖え、怖え

 

 何やら私の狼の耳がおかしな話し声を拾っているんですが気の所為でしょう。そして、私のコードネームは『月狼』です。

 

 えぇ、私は隊長ですからこんな扱いを受けるのはおかしい訳ですからね。だからそろそろ放してはくれませんかね。ちょっと……

 

 結局は新人を指導するのは他の隊長達に任せる事になってしまいました。私は当たり前の事をしようとしているだけなのになんで分かって貰えないのでしょう。

 

 何はともあれこの牙はプラントの敵を屠る為に、獣憑きが総隊長()()()()、コードネーム『月狼』、アスカル様の名の下に、影よりこの国を支える礎となりましょう。

 

 

 



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外部プラント8 「義娘と娘の結目に」

 

 朧気な思い出の中で最も古いのは関係性だけで言えば親とでも呼ぶべき存在達が顔を引き攣らせて銃口を向けている姿。

 

 いつからこの力があったのかは欠片も覚えてないが産まれて直ぐに与えられたということを知っている。

 

 とても硬い物や刺激的な物で溢れたそこでボクは過ごしていた。毎日毎日色々な物を呑み込んで、全てを呑み込んで島がなくなった。

 

 ただ満たされない渇きを誤魔化すため、呑みこむ快感を味わうために本能的に次の場所を目指した。

 

 呑んでも呑んでも満たされない空っぽ。それもその筈、そこにボクはなくて、初めから悪魔が宿っていたんだから。

 

 ボクという自我が生まれるよりも先に悪魔が宿った。ボク自体が悪魔の上で生まれた存在。

 

 その頃には多くを呑んで知識だけはたくさん持っていた。呑んだ存在の全てを混ぜ込んで生まれた出来損ないこそがボクだ。

 

 確固とした自己のない存在が本能を抑える事は出来ない。そのため出来上がったのが人らしく振る舞う悪魔。

 

 自分を抑えず、他者から邪魔もされない。我儘な自由は考える必要を無くし、楽ではあった。

 

 そのまま死ぬまで呑み込み続けて終えると思っていた。だけど誰にも止められなかったボクを止めた人がいたんだ。そう、アスカルだ。

 

 美味しい匂いのする方向へと進む途中でアスカルと出合って戦い、ボクは負けた。そして何故かプラントにボクも住むことになった。

 

 アスカルは根気よくボクに教育を施した。知ってるだけでは意味がないと使い方を教えてくれた。そこで初めてボクは出来損ないではなくなったんだ。中身の無い暴食(具なしのグラトニー)ではなく、ただのラトニーになったんだ。

 

 それから特に暴れるでもなく、バレないように隠れながらプラントで食べて勉強して寝ての生活がずっと続いていった。

 

 そして見つからないように気を付けていれば割りと自由に動ける様になった頃、アスカルとマニュに子供が出来た。

 

 周りも騒がしくなり、しばらくお祭り騒ぎで普段とは違う物を色々と食べれたのは嬉しかったけど、全員が忙しそうにしていて少し退屈だった。だけどある時、マニュを見に行った時からそれは綺麗に消えてしまった。それはマニュの小さな一言だった。

 

「もうすぐラトニーもお姉さんね」

 

 自分が何歳か正確な所は分からないけど身体が小さく、見た目が幼いだけでボクはアスカルやマニュよりもたぶん年は上だ。

 

 それでも二人から子供の様に扱われるのは生物としてはまだしも、人としてまだまだ子供だからだろう。ボクもそれが心地よかった。

 

 そんな時に二人の間に子供が出来たのは嬉しさと寂しさがあった。だけどこの子のお姉さんになって良いんだと知って、産まれてくるのが待ち遠しくなった。

 

 色々と騒動の後で無事に産まれたその姿を見た時には私が教えられる事なんてないかもしれないけど、絶対に守って上げるんだとそう思えた。

 

 だってアスカルとマニュの子供なんだから、ボクの空っぽを埋めてくれる人たちの所に産まれて来たんだから、きっと素敵な物が一杯詰まった子だから。寝ている姿を見て、こういう時になんて言うのかを思い出した。

 

「食べちゃいたい位可愛いね」

 

 うん、ボクが言うと喩えにも冗談にも聞こえないのは分かったけど、本当には食べないから遠ざけないでボクにも撫でさせてよ。

 

 



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外部プラント9 「菌糸の森の禁忌の掘り手」

 

 色々と仕事でプラント中を走り回っている小人たちだが、途中から参入したモルだけは任された仕事だけをこなしてあとの時間は自由に過ごしている。

 

 緊急時を含めて何かしら動く必要がある時は匿ってもらっている恩もあり協力的だが、自分の趣味のために故郷を追放され、外の国を幾つも滅ぼした究極の自己中である。

 

 姿を隠さないといけないのを理由にして普段の集まりには代理を立ててサボる事もある程度には好き勝手している。

 

「今日は予定が何もないレスねぇ。他のみんなは忙しそうレス。どうするレスかねぇ……ちょっと遠出してみるのも良いレスね」

 

 突拍子もなくそんな事を思いついて誰にも伝えずに実行に移してしまうくらい彼女は自由であった。

 

 能力を用いてキノコで環を作り、それをフェアリーリングにする。これは帰り用であり、今回限りの入り口でもある。

 

 フェアリーリングは対応する2つ以上のサークル間での移動を可能とするとても強力な力だがその場で作らないといけないし、キノコが枯れてしまえば効力を失う。

 

 しかし、その前提さえ満たしていれば数にも距離にも制限は無い。そのために彼女は多くのフェアリーリングを作っており、その数は調べない限り何処に繋がってるか自分でも分からない程に膨大だ。

 

 そして、今回使うのは現存するフェアリーリングの何処かにランダムで移動するサークルである。サークルが残っている環境であれば危険も無いだろうと彼女は躊躇なく飛び込んだ。

 

「んん、此処は…っと西の海(サウスブルー)の無人島レスかね。なんでこんな所にサークルがあるレスかね?」

 

 フェアリーリング同士の位置関係を把握できる為に距離や方角から此処がかなり離れた地であると予測を立てる。

 

 流石にグランドラインから離れた海にまで行ったことは無いモルはプラントの管理地でもないのに確かに存在する自身のサークルであるソレを不思議そうに観察する。

 

 そしてハッと何かに気付くとフェアリーリングの直ぐ下を掘り、朽ちかけている木の土台らしき物を見つける。

 

「放浪中に船を襲った際に付けたサークルが流れ着いてそのまま機能してたレスか」

 

 流れ着いたのはフェアリーリングだけでない様で多くの船の破片からキノコが島に侵食していき、自然とキノコで埋もれた様だ。

 

 今回の件は普通のキノコよりもモルの生み出すキノコの方が強力で生命力が強いが故に起きた事だろう。

 

「とりあえずフェアリーリングの補強と島の探索くらいはしておくレスかね」

 

 そう言うとポンポンとキノコの上を跳びはねる様に木々の間をすり抜けて島の奥へと入っていった。そして彼女が島の奥へ進むと同じ頃、彼女の居る位置とは島を挟んで反対側に小船から一人降り立った。

 

「此処に歴史の本文がある筈……それにしてもジメっとした薄暗い島ね……キノコの数も異常なレベル……対策をしてから進むべきね」

 

 彼女は船を固定し、隠すとカバンから幾つもの道具を取り出して探索の準備を進める。

 

 呼吸は能力や持ち物を用いれば問題ないので口と鼻を布で完全に覆い、念の為に目をゴーグルで塞いでいく。少々視界は悪いが安全には代えられない。

 

「身体はコートで防げるわね」

 

 大切な贈り物の1つであるコート、その耐性を考えれば菌も通さないだろう。周りに付着した分は後で燃やせば良い。

 

 後は何があるか分からない中で最低限対処できる様にと装備の確認を終えると調べた情報と地図、そして現地の姿を見比べる。

 

「やはりキノコの事は書かれてない。これは近年の変化ね。地形も少し変化している……歴史の本文があるとすれば村落の跡地や関連する建造物内……まずは中央を目指すほかないわね」

 

 そう言うと彼女もまた、草木をかき分け、危険なキノコを避けつつ島の中央を目指して足を進めていった。

 

 


 

 

 菌の影響を気にしなくて良いモルは軽快に島を探索し、何やら建造物のあった場所に辿り着いていた。

 

「うわぁボロボロレス。私の所為…って訳じゃなさそうレスね。木造じゃなくて石造りレスから腐敗は効かないレスし、明らかにもっと昔のものレス」

 

 そこには素人目でも分かるほど風化しつつある石造りの建物が多く並んでおり、街と言える程の規模ではないが村落としては最大級だった。

 

 長い時が感じられる程に苔むしては居るが周りの森と比べるとキノコは全然根付いておらず、その広さも相まって普通に呼吸をしても問題ない空間が出来ていた。

 

 崩れそうな物も多いがまだ形は残っている建物もあり、負荷を掛けないようにふわりと跳びはねて中を覗いてみたりと興味のままに動いている。

 

「そんな面白いものでもないレスね。これだけ侵食してたら固有種があってもダメになってる可能性が高いレスからお土産になりそうな物も期待出来ないレスね」

 

 文化も生態系も全てを侵食する。ある意味破壊者としても凄まじい能力である。今は遊べる土地が用意されている為に大人しいが派手に暴れられたらどうなることやら考えるだけでも恐ろしい。

 

 侵食による損失をこうして理解しているにも関わらず辞めようとしないあたりは本能的に暴れていたラトニーよりも遥かにたちが悪いと言える。賞金首になるのも当たり前である。

 

「此処はハズレみたいレスし、とっとと帰るレスね…っと痛いレス?!」

 

 そう言って建物から出ようと入り口目指して歩き出すと突然足元が抜けて転んでしまう。そしてそれが引き金になったのかそのまま建物が崩壊していった。

 

「これは不味いレス早く出ないと…きゃっ!?」

 

 転んだ状態からでは小人自慢のスピードも役に立たず、勢いがなければ瓦礫を吹き飛ばす事もできずに埋もれていった。

 

 幸いなのはその身体の小ささ故に瓦礫と瓦礫の隙間に入り死ぬことは無かった。これなら覇気を使わずとも生き延びているが、脱出は困難と言える。

 

「隙間がなくて身動きは取れないレスね…瓦礫ばかりでキノコも生やせそうにないレス…私自身を苗床にするのはこの状況だとリスクが高過ぎるレス…菌に覇気を纏わせるのも体力が先に尽きるレスね…ビブルカードがあるから居ないのに誰かが気付けば…いや、だとしても発見まではどれだけかかるか分からないレス……なんとか、なんとかしないとレス……」

 

 


 

 

 島の中を進んで行く中で人体に害のあるキノコも多くあったが、キノコに対する知識は専門家には負けるが人よりは持っているために危険を上手く避けていた。

 

 それでも海を渡っていく術や遺跡や自然の中を歩く術はもう既に熟知していると言っても良い彼女だがキノコの蔓延る森を進むのには慣れておらずそれなりに疲労している。

 

「ふぅ、ジメジメとしてるせいか精神的にくるわね。うん、あれは……」

 

 一休みしようにも足の踏み場もない様な場所なので座ることも出来ない。その場で少し楽な姿勢をとって少し遠くを見つめていると、小さなキノコがトコトコと歩いているおとぎ話の様な光景が目に入った。

 

「……幻覚かしら? 気付けと抗幻覚…いえ、違う。あれはもしかして……」

 

 こちらに気付いていない様子なのでそっと近付いて観察してみるとそれは図鑑にも載っていた少し珍しいキノコだった。

 

「キトコトコにあるくきのこ、おばけきのこに歩き茸……足生型のキノコがこんなに……」

 

 それらは菌類に違いはないが他の生物の様に足を持ち動き回る性質を持っている。逃げるために動く種もあれば外敵を排除するために動く種も入り混じっている。

 

「類似種とはいえ近縁でもないキノコが何故一緒に……もしかして、統率する様な存在がこの先に居るのでは?」

 

 彼女は考古学者であって菌類学者でも植物学者でもない。持ち物を上手く活用する上で菌類や植物の知識も持っているが専門は考古学である。

 

 それでも学者として誰も発見していない未知の存在がいるかもしれないという事態には興味がひかれる。危険の可能性も高いがもとよりこの先に進む必要もあるのだと足を進める。

 

 先程までの疲れなど忘れたかのようにキノコ達の列を慎重に追いかけていくと開けた空間、村落の跡に辿り着いた。それは本来の目的地が近い証でもあった。

 

「村の形状を把握できれば特定出来るわ。ん…あれは……」

 

 村を見つけた事で意識から外してしまっていたが追いかけていたキノコ達を探すと何やら崩れた建物の周囲に集まっていた。

 

 観察してみると瓦礫を蹴飛ばしたり、手のあるキノコは運んだりしているのが分かる。だが危険な種もいるとはいえあくまでキノコ……その作業は本当に少しずつしか進んでいない。

 

「下に何かあるのかしら?……ッ!? これは何?!」

 

 建物を観察しているといきなり周囲の森から何かが飛んできた。その事実に驚き跳びはねる様にその場から距離を取ったが特に何も起こらない。

 

「これはキノコの胞子? これは、M…A…Y…D…A…Y、メーデー?!救命信号?! これはキノコによるものじゃない。おそらく人、それも能力者、あのキノコ達の動き…生き埋めになってるの!?」

 

 菌の動きが鈍く、直ぐに読み取る事は出来なかったが彼女の眼の前で確かに形作られたMAYDAYの文字。救命信号を知っている事から人為的なものであり、能力者によるものだと確信した。

 

 そしてキノコ達が瓦礫を退かそうとしている理由にも直ぐに思い至り、大量の手を生やすと瓦礫の山を崩さないように周囲に目も生やして確認しながらも急速に瓦礫の撤去を始めた。

 

 退かしても退かしても姿が見えない事に少し焦りが見えてきていたが、瓦礫の半分を移動させた頃に声が聞こえる様になった。

 

「だ…か…居る…」

 

「ここに居るわ!!安心して聞こえてる!!助けるから待ってて!!」

 

「………居るんレスね!!こっちレス!!キノコで居場所を伝えるレス!!」

 

 瓦礫を退かすごとに声もはっきりと聞こえて来るようになり、意思疎通しながら作業を進められる様になった。

 

「少し光が入る様になったレス!!こっちの隙間に何か木の枝とか刺せないレスか?何か苗床に出来る物があれば内側から開けれるレス!!」

 

「分かったわそこね!!刺せるけどそちらが見えないから少しずつ入れてくから声を掛けて!!」

 

「分かったレス!!…………ストップレス!!吹き飛ばすから安全な場所まで離れて欲しいレス!!」

 

「直ぐ移動するわ!!30秒待って!!」

 

 そろりそろりと相手にまで刺してしまわないようにそっと木の枝を穴から入れていき、相手が無事に受け取った。

 

 そしてその場から離れる為に少しだけ時間を貰うと駆け足で瓦礫の山から離れて森に入り、大きめの木の陰に隠れる。

 

 そこに着くまでには15秒もあれば十分だが念の為に倍の時間を貰うことによる安全確保の徹底ぶりは流石である。

 

 

 木の陰から覗き込む様に瓦礫の山の様子を確認していると、次の瞬間にら大きなキノコが瓦礫の山を突き破るように生えて、周囲へと瓦礫を散乱させた。

 

「トランポリンキノコ……外に出れたレス!!」

 

 生やしたキノコを感慨深く眺めるのは人よりも遥かに小さな小人、彼女はようやく外に出ることが出来たと嬉しさから手を振り上げて喜びを示していた。そしてひとしきり喜び終えると近くに立っている人間の姿に気が付き、慌てた様に近付く。

 

「あ、貴女が助けてくれたレスね!!今回ばかりはやらかしたと思って救助まで過酷な断食を覚悟していたレス!!だから本当にありがとうレス!!」

 

「無事で良かったわ。私はロビンというのよろしく…たぶんだけどモルさんで合ってる?」

 

「エ?!なんで知ってるレスか!?確かに私はモルレスが……」

 

「アスカルさんから聞いた事があるのよ。私の故郷、オハラでね……」

 

「なるほど、だから知ってたレスね。では改めて、プラントが幹部の一人、キンキンの秘術の使い手、『侵食者』とモルレス」

 

「ふふ、私はオハラの最後の考古学者、ハナハナの実の能力者で、最近は『()()()』なんて呼ばれてるロビンよ」

 

 こうして、プラントから遠く離れた西の海でアスカルの知り合いであり、能力者であり、賞金首である二人が出会うのだった。

 

 


 

 

 アスカルの仲間なら言っても問題ないだろうと歴史の本文を探しにここに来たことを伝えると助けてもらったお礼に手伝うと言ってロビンの目的にモルが同行する事になった。

 

「ところで心棒者ってなんなんレス?」

 

「最近顔は隠せてるんだけどこのコート姿で写真を撮られてしまって、指名手配されたのよ」

 

 そう言ってカバンから取り出されたのは『心棒者 10,000,000ベリー』と書かれた手配書だった。その手配書が出された時の新聞では大きく取り上げられてもいたのだ。

 

【西の海にて歴史の本文を探る影が?!】

 

 あの悪魔の住まう土地オハラのあった海にて歴史の本文を探るコート姿の怪しい人物が最近になって見かけられる様になっている。

 

 その風貌から世界を滅ぼさんとする悪夢を崇拝する信者ではないかと噂されており、調査に関わった海軍や政府役員を容易に撒いてみせた事、オハラの悪魔の意志を継ぎ、世界を滅ぼす危険を省みての手配となっている。

 

「世界を滅ぼす危険ねぇ…私なんて実際に島や国を滅ぼしてるんレス。それと比べたらなんてことないレスよ」

 

「それでも顔が割れたらもっと上がる筈よ」

 

 手配額というのは強さではない。確かに尺度の1つにはなり得るが、危険度や厄介さ加減などがより重要になっている。

 

 オハラの研究は政府を脅かす危険があり、ロビンは顔を隠し、追手を撒く厄介さからこの様な額になっている。

 

 まだ危険性はオハラの研究を追っているかも()()()()程度だが、顔が割れた瞬間に母オリビアとの関連から確定となる。

 

「ふぅん、世界政府ってのは臆病で面倒なんレスね」

 

「そうかもしれないわね……あっ! ここ、この柱の模様、文献と一致している」

 

「当時の写真レスか……でもこれ遺跡の上部レスよね?」

 

「たぶんこの下に埋まってるの。地層とかを見た感じ地盤沈下が酷かったみたいだから」

 

「吹き飛ばす訳にはいかないんレスよね?」

 

「歴史的に貴重な物だから建物には傷をつけたくないの」

 

 水に沈むかのように埋まっていったのであればそのままの形を残してくれているだろうが一気に落ちたのであれば建物の耐久次第だがモルが埋もれていた時の様に瓦礫の山を掘る必要が出てくる。

 

「アスカルが居れば簡単に解決出来るんレスがねぇ…私の能力だとモーダスやホーニィと同じ様に過成長で土を枯らして掘りやすくする……のは時版が余計に悪くなりそうレスね………ううん、中に空間があれば菌糸を伸ばしてサークルを置けるんレスが……」

 

「サークル?」

 

「フェアリーリングって知ってるレスか?」

 

「キノコが環状に並んで出来た輪っかの事よね? 伝説とかでは妖精の世界への入り口だとも言われている」

 

「そうレス。私が作るフェアリーリングはフェアリーリング同士でワープ出来るんレス。キノコで環状のサークルを作ればそこに跳べるレス」

 

「なるほど、遺跡内に十分な隙間があればそのサークルを経由して掘らずに潜れる訳ね」

 

 可能性があるのであれば試さない手は無いと早速モルは菌糸を操り、遺跡の形を手探りで確かめながら伸ばしていく。

 

「アーチ状の柱が3つあるレス」

 

「そこは入口より下の階段の飾り、少し上の奥を探してみて」

 

「階段の突き当りが崩れて埋まってるみたいレス、他に入口は?」

 

「建物を挟んで反対側にもう一つ、形状は同じよ」

 

「入口は入れたレスが通路が二手に別れてるレス」

 

「左に進んでみて、途中から螺旋階段の様になっていれば当たりの筈……」

 

「ん……行けたレス!!途中から土がなくなったレス!!」

 

 菌糸越しでの探索の為にかなり時間が掛かったがたしかに遺跡内の空間を見つける事が出来た。

 

「先にこいつらを送り込むレス」

 

「大きなキノコだけどなんのため?」

 

「コイツラは胞子を飛ばすために空気を溜め込む性質があるレス。操作してやれば遺跡内での呼吸問題は解決するレス」

 

 大量の胞子が蔓延している閉鎖空間はロビンに酷だが、そこはモルが調整すれば良いのでフェアリーリングを通じて次々に送り込んだ。

 

 そして光源となり得る菌を手に二人でフェアリーリングを潜ると埃っぽく、少々狭苦しい。小人のモルはまだ余裕があるがロビンは少し辛そうだ。

 

「大丈夫レスか?」

 

「えぇ、ここ先に部屋がある筈……そこにおそらく歴史の本文も………!……あった……」

 

 下へと下っていく通路を降りきり、遺跡の最奥の部屋、その中央に異彩を放ち置かれている石の文。

 

「何が書いてあるレスか」

 

「歴史の本文は二種類あるの。情報を持つ石とその石のありかを示す石、これは石のありかを示している方……」

 

 ロビンはモルの質問に答えながらも視線は歴史の本文にずっと向けられ、必要な情報を本に記入すると何かを考えながら遺跡の外へと戻った。

 

「次はその場所を目指すんレスか?」

 

「そうなるわね。幸いにも記されてるのは同じ西の海みたいだから」

 

 ロビンの目的も達成し、二人がこの場にいる必要もなくなった。モルはロビンが船に戻りやすい様に能力で菌を制御しながら船へとついていく。

 

「ありがとう助かったわ。アスカルさんにもよろしく伝えておいて」

 

 モルはあまり表に出てはいけない身だ。プラントという帰る場所もある以上はここでお別れであるが、何も言わずに目の前にフェアリーリングを作り出す。

 

「……これを潜ればプラントに行けるレスよ?移動経路もバレないレスから消息不明になって追っても完全に撒けるかもしれないレス」

 

「ありがとう…でもやめとくわ。さっきの石のありか以外にもまだこの海でも探さないといけない物も多いし、これは私がやらないといけない事だから」

 

「そうレスか、プラントに来ることがあったらまた話そうレス」

 

「えぇ、楽しみにしてるわ」

 

 


 

 

「アスカル…」

 

「モルか? 菌エリアの事で何かあったか?」

 

「違うレス……ロビンって良い娘レスね」

 

「……どうして面識があるのか聞きたい所だが、まぁそうだな。周りより少し賢いだけの普通の良い娘だよ」

 

 



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第4章
第39プラント 零の時来たれり、幕裏の酒宴


こっから新章でございます。
みなさまお久しぶりです。


 

 

 プラント建国から23年、一人娘であるグレーヌが産まれてから12年、集大成であるワールド・バイキング初開催からは10年、気付けばかなりの時が流れた。

 

 当時は14歳の最年少国王などと有る事無い事で騒がれたが今はもう37歳と国王としては若い方であるがそれなりに歳を重ねたと言って良い。ふり返ると感慨深い思いである。

 

 フルコースアイランドや各海に大規模な交易所が完成するのに伴いプラント自体を訪れるのは海賊や冒険者を除けばよっぽど特殊な事情を持つ者だけとなった。

 

 今までは交易に必要だったために公開していたプラントの航路、これは未だにモルガンズを通して世界に提供している。今まではと称したのは公開の理由が変わったからだ。

 

 表の物流において大幅にリードしているプラントが一律の値段で何処にでも何でも売ってしまうと問題が出てしまう。その為に一部の商品は値段の調整を行い、能力行使分の人件費として足し、プラントや採集所と各支部との距離を基に示している。

 

 プラントの動き方次第で値段が変わる商品が存在する以上はプラントの位置情報は重要になってしまう。その為に未だに公開し続けているのだが、これで得をしているのはモルガンズだけだろう。

 

 そのモルガンズ自身は情報の為に未だにあちこち動き回っている様でこの前はビッグマムの所で会ったが、何やら海賊についての情報を集めていたのは覚えている。

 

 その海賊のせいで今は国交の途絶えたドラム王国が滅ぼされたと情報が入ってからはアイツの耳は何処にまで通じてるのかほとほと疑問に思ったものだ。

 

 国交と言えばアラバスタの方はここから先どうなるか。プラントは誰とでも取引すると謳ってる以上はオレとコブラ王の繋がりは印象に影響は与えられない。仮にこのまま反乱が進んだとしてもプラントは国相手に取引を続けるだけだ。

 

 ただグレーヌの良き友人であったビビ王女が行方不明になり2年間、未だに何処で何をやっているのかは疑問に思う。端からただの反乱ではないとは分かっていたが色々と世界に変化が訪れているのかもしれない。

 

 さてと身近な変化の1つを見に、東へと行くとしよう。成長という名の変化を、友人と見守ろうか。食材採集の方は心配せずともあの子達に限って問題はないだろう。

 

 


 

 

 偉大なる航路に初めから存在するが島々には多くの鉱物が含まれており、その鉱物が持つ磁気によって天候などに影響が出ており航海が難しく、とはいえその磁気を記録指針(ログポース)に記録する事で航海が可能になっているのだが……

 

「うわ〜記録指針(ログポース)が尋常じゃない動きしてるのね」

 

「ここ、新世界」

 

「いや〜3つともイカれるのは新世界でも珍しいのね」

 

 帰りの事は命の紙(ビブルカード)永久指針(エターナルポース)のおかげで考えなくてすんで良かったのね。と呟きながらより記録指針の動きがおかしくなる方へと船を進める四隊長と呼ばれるプラント幹部のポコとフィン。

 

 楽園と呼ばれる前半の海で使える針が一つの記録指針では航海できず、新世界で使われる三つの針がある記録指針、それさえも使えない屈指の魔の海域、そこに二人で食材探索に来ていた。

 

「アスカル様みたいに島の場所を感知は出来ないのね。だから針が当てにならない海の進み方を考えたのね。ポコの考えではより影響の大きい方へ舵をきれば辿り着く筈なのね」

 

 確かに目指している島の影響下でこうなっている以上は間違いではないだろう。とはいえ明らかに事前の情報なしに行き当たりばったりでの考えに胸を張る姿には不安を覚える。

 

「最悪、泳ぐ」

 

 そう言って海を指差すフィン、だがその海は風が吹き荒れ、波が高く、その波の中に光を反射する様な光沢ある石が混じってたり、明らかに電気を帯びていたりするのが見える。

 

「フィンでもこの海で泳ぐのはキツイのね。荒れまくってるのは腕前で、ビリビリは装備で防げても、鉱石が混じってるのはどうしようもないのね」

 

 四隊長が幹部に正式になってから専用の装備なども持てるようになり、フィンが要望として出したのは水中での活動を助けるものや水中でも問題なく使える武具などだった。

 

 それらを用いれば大抵の障害はなんとかなる。鉱石に関しても武装色の覇気を使えば当たっても防げるだろうが島の影響の範囲から抜け出すまで覇気の維持はまだ保たない。

 

「だから、最悪」

 

「……はっ?!ポコをおいてくつもりなのね?!そうなのね?!」

 

 最悪泳ぐというのは島につけなかったらの話ではなく、推測で船の舵をとるポコに対しての万が一を想定しての話であり、それにようやく気付いたポコが慌てて追求、そして弁明を始める。

 

「島による異常と天候の異常を見分けたり、見つかる鉱石の数に注視すれば大体の距離感はつかめるのね。幸い命の紙や永久指針もあってそれらのさす方向から自分たちの場所も把握できるのね。だから何も心配ないのね」

 

「了解」

 

「そもそも食材の情報を考えれば視界に入ったら直ぐに分かる筈なのね。だからある程度の危険は承知で記録指針が暴れる方へ進むのね」

 

 唯一信じられると言われる記録指針の針さえも狂わせる海域の奥へとひたすら船を進めていく、影響により機械は使えないこの海域で、特別な設備なんて全然ない小型の船を走らせる。

 

 ある時には電気に耐性を持つ海王類に襲われ、またある時には磁気を操り鉱石と共に空を飛ぶ魚の群れとフィンが会話をし、またある時には電気を纏った怪獣をポコが飼い慣らし、電気と磁気、鉱石の溢れる海域にて五日程の航海を続けた。

 

 

「左前方、十時、影」

 

「試しにと保管庫から出してた安物の永久指針がぶっ壊れたのね。使ってる記録指針の方もブレブレ……間違いないのね」

 

「目的地、フォースマグネ」

 

「四つの巨大な磁力を持つ島同士が干渉し合う、強力な影響は星にも届き常に磁気嵐に見舞われる危険な島……」

 

 島自体が浮いており、周辺の鉱石を引き寄せたり弾いたり、果てには島同士でぶつかり合い、火花や電撃を発生させている。

 

「さてどうやって上陸するのね」

 

「船、危険」

 

 守りも無しに船をとめて行けばまず間違いなく帰りの足を失うことになる。とはいえありとあらゆる機械が使えないこの場で船を飛ばす様な物はない。

 

 島の近くにおける気候帯の影響が強すぎるせいでウェザリア産の技術もろくに使えない。雲などを生み出したとしても直ぐに掻き消えてしまう。

 

「月歩」

 

「うへぇ、と言いたい所だけどそれしかないのね……」

 

 二人でここまで来たことから分かる様にそんなに大きな船ではない。新世界に派遣しても問題ない実力者な二人は船を持ち上げて空を跳ぶのも不可能ではない。

 

 なんなら普段から巨大化した動物や魚を相手にしている二人なら一人でも持とうと思えば持てるだろうが安定を取るために協力して運ぶのだ。

 

 しばらく島の動きを観察し、規則性などというあるかどうか分からない存在を見出すのではなく、一時的に乗り上げる為に危険の少ない場所を探す。

 

 そうして幾つかの場所をピックアップして番号をふると海面に触れない様に気を付けながら二人で船を持ち上げながら空気を蹴って上空へと跳び上がる。

 

「島が変わったのね…4番に向かうのね」

 

「了解」

 

 幼少期から一緒に過ごして来ただけあり、四隊長は息を合わせるのが得意であり、もの静かなフィンと騒がしいポコも相性悪そうに見えるが余裕で島の高さまで駆け上がった。

 

 島が新しい動きを始める前に上空へとやってくると即座に降下して船をおろし、移動時にすっ飛ばない様に固定して、一息をつく。

 

「ふぅ、なんとかなったのね」

 

「疲労」

 

 普段の仕事とは全然違う為に肉体的にはまだしも精神的な部分では多少は疲労している。だがそれくらいで弱るほど軟でもないと歩きだそうとした瞬間に地面が大きく揺れる。

 

「っとと、危ないのね」

 

「壁ない、風も危険」

 

 島同士がぶつかり合って起こる衝撃もさることながら島が動く際にもろに吹き抜ける風も支えがなければ空に真っ逆さまに落ちかねない。

 

 より研究がされれば安全に探索する事も可能だがとりあえず二人は足裏で地面を掴むようにして歩いていく。すると突然、茂みから獣が飛び出してきた。

 

「友好?」

 

 ポコの見聞色は対象の心を読み取る方向に伸びた。その見聞色で特に動物の気持ちを読み取り仲良くなるという特技があった。

 

 フィンも似たような事を魚相手に出来るがポコと違い魚の言語を理解しているから見聞色だけの力ではない。見聞色の心方面の力量だけをみればポコが上である。

 

 だがフィンは広い海で魚の位置を把握したり出来、気配の小さい存在を細かく感知したりする点では優れている。

 

 ティアはコーヒヒと一緒にいたから多少は読み取る力はあるが、力が弱いために相手の力を利用して戦うのでどちらかと言うと相手の動きを読む方が得意だ。

 

 デルは覇気全体が強いがそんなに特徴はなく、よくも悪くも普通な感じだ。見聞色は方向性が違うため純粋な強い弱いは分かりにくいが武装色の強さはデル>ポコ>フィン>ティアとなっている。

 

「残念だけど仲良くはなれそうにないのね」

 

 ポコがそう言った瞬間に相手は飛び掛かりこちらへ猛スピードで接近してきた。その獣は手足に鉱石の様な爪を持っているのが見えた。

 

「速さの仕組みはあれなのね」

 

「電磁浮遊、引力、斥力」

 

 この島の磁気を読み取り利用するだけの知能がある。それでいてこの凶暴性を考えるとかなり自然が厳しい環境なのだと判断出来る。

 

 覇王色はどちらも持っていない為に戦闘を避けることは出来ない。そうと決まればそれぞれ得意の得物を取り出して構える。

 

「先」

 

 たった一言伝えると水中で魚人レベルに動ける脚力を活かした最速の動きで接近し、銛と似通った()()()()三叉の槍、その少しだけ他より長く鋭い真ん中の刃で相手の爪だけを的確に連続で突く。

 

「『突浸(トッシン)』」

 

 槍に滴る水を伝って突きの鋭さに合わせて衝撃を内へと浸透させる。それを獣の四肢の先にある爪全てに放ち、再び元の距離まで戻る。

 

 相手からすれば一瞬だけフィンの動きがぶれただけに見えるだろう。気にせずに襲い掛かろうとすると何が起きたのか分からないままに自身の爪が割れて砕けるのだ。

 

 普段から磁力を用いて島の動きに対応していたのだろう。爪がたてれないのもあって揺れるがままに身体を倒して動きもままならなくなっている。

 

 ポコは獣の尻尾の様にモフモフとしたハンマーをヌンチャクの様に繋げた物を武器としている。

 

 彼女ののらりくらりと過ごす姿は働き者なトンタッタとは似ていないが、純粋で何処か抜けた所とは通じた様で相性が良く、共に散策して遊んだりして仲もかなり良い。

 

 戦闘訓練が始まってから何人かの友達からトンタッタコンバットを教わり、種族の差で真似できない動き以外はマスターしたのだ。

 

 彼女はトンタッタ族の様に素早く動く事は出来ないが身のこなし自体はとても軽やかでパワーはトンタッタのそれよりも遥かに強い。

 

 相手の目の前でクルリと前宙し、回転の動きを取り入れ、腕に力を込めて、ヌンチャクの振り回しを合わせて衝撃を叩き付ける。

 

「トンタッタ…『ポコポコハンマー』!!」

 

 人間を半分近く地面に埋める本家の威力にまったく劣らないそれは獣の身体を土で完全に隠し、その衝撃が地面にも伝わり、獣の周囲までも陥没している。

 

「格付け完了なのね」

 

「強さ、位置、何処」

 

「素早い割にはフィンの動きは追えてなかったのね。全体の真ん中くらいじゃないのね」

 

 この島から感じられる気配からも最上位ではないのは分かっていた。おそらくこの獣の動きを見切る事も可能な相手やより重い攻撃を仕掛けてくる相手もいるかもしれないと仮定して動いていく。

 

 それでも一度それなりの相手を完膚なきまでに叩き潰したのは効いたのか近くの同じくらいの気配の獣はこちらを見はしても仕掛けてくる事はなかった。

 

「探しやすくて良いのね」

 

 妨害がないとは言え土地が土地のために進んでいくには時間がかかる。面倒なのはこの島に目的の食材がなかったら他の島までまた渡らないといけないのだ。

 

 仕事である以上は見つかるまで探索するつもりであるが出来るならば最初の島で見つかってほしいと願う二人。その願いだけは案外簡単に叶うのだった。

 

「またうわ〜なのね」

 

「ボス、縄張り」

 

 目的とした食材は運動エネルギーを栄養に作り変えるという特殊な生態を持つ。この島の磁気と反応し、成長した葉の部分が宙に浮かぶ。

 

 浮かんでからは他の浮かんだ葉と干渉し、まるで観覧車の様な姿をとり、回せば回すほど旨味も甘みも増し、シャキシャキになるキャベツ、甘藍車。

 

 溜め込む栄養が増えるほど大きく育ち、大きく育つほど含む磁気も大きくなり、甘藍車の規模も大きくなるそうだ。そしてそんな甘藍車を縄張りにする野生動物がいた様だ。

 

「コング系」

 

「トロルコングのボス個体シルバーバック、その亜種のパンクシルバーバックに似てるけど」

 

 身の毛がこすれて発生する静電気で毛を逆立てて威嚇を行うだけでなく、その反発力で地底の超重力にも耐えるシルバーバックの一種。

 

 特に頭髪には大量の電気が蓄えられ、アフロのように弾けているため、パンクロッカーのような風貌になっているのがパンクシルバーバックだが……

 

「弾けてる」

 

 アフロどころではなく、毛という毛が完全に伸び切って棘の様になっており、毛と毛の間に電気が走っているのが見えている。

 

 身体に纏う電気が静電気どころではなく、磁気を完全に操り宙に浮いて甘藍車を乗り継いで遊んでいる姿が見える。

 

「私の場合触れたらアウトなのね」

 

「潜水服、ゴム入り」

 

 ポコのヌンチャクは耐火や撥水性はあるが生憎と帯電性はない。フィンは武器は金属製だが身につけている装備が帯電性能が高い素材で出来ている。

 

「宙、数、辛い」

 

 自然と戦いはフィンが請け負う形になるが空中戦は別に得意ではないフィンが自由に飛び回るパンクシルバーバックの群れを相手に戦い続けるのは厳しい。

 

 とは言いつつも排除しなければ食材採取を出来そうにないので果敢に挑んでいくフィン。三叉を片手に空に跳ぶと一番近い相手に思い切り突く。

 

「硬い」

 

 突き刺さりはせず、なんとか吹き飛ばしはしたものの倒せてはいないだろう。纏う電気で体中の毛が逆だっているがピンピンになった毛が硬さの一因だろう。

 

 長い毛は触れれば切れる鋭さで短い毛はびっしりと生えていて攻撃を防ぐ攻防一体の鎧となっている。毛の段階で攻撃を止められると衝撃が空中に逃げて内側にも届かない。

 

 今度はしっかりと武装色の覇気を纏わせて次に近い敵に突き刺すと今度は毛をへし折って内側まで刺さり、その衝撃を叩き込む事も出来た。

 

 だが次の瞬間に上から鋭い攻撃が届き、三叉を上に構えて防ぐが月歩では踏ん張れず地上に一度落ちる。

 

「消耗」

 

 纏わせる武装色はもちろん、何処から向かってくるか把握する為に見聞色も使い、常に月歩で走ってと覇気も体力も同時に消耗していく。

 

 再び戦闘に戻るが既に多少は警戒されており、最高速を出さなくては刺しにかかることも難しい。空中移動能力持ちの厄介さが嫌でも分かる。

 

「あの食材を少し使えば補助出来るかもなのね」

 

 ポコは戦闘を任せる以上はなんとか補助をしなくてはと考え、利用できる物はないかと探してる際に目の前にちょうどいいものがあると思い出した。

 

 収穫の際には甘藍車同士の磁気に気を配らなければ鮮度が著しく落ちるのにくわえ、急に磁気を失った他の甘藍車が思い切り飛び散る。

 

 存在した筈の磁気を急に失えば移動に磁気を用いているパンクシルバーバック達の動きに影響を与えられる。フィンとタイミングを合わせれば一掃する事も出来る。

 

 甘藍車自体はまだ数がある。一つ失ったとしても仕事には影響は出ない。そうと決まるとポコは早速動き出した。

 

 ポコはパンクシルバーバック達がフィンに集中してるのを確認すると気配を消して甘藍車の直ぐ下までやってきて、ヌンチャクハンマーを構える。

 

「ついでに向こうに飛ばす…『ポコポコスイングハンマー』」

 

 本来のトンタッタコンバットでのスイングは相手を振り回してやる技だが、そのスイングの勢いを乗せてハンマーを叩き付ける。

 

 思い切り吹き飛んだ甘藍車は真っ直ぐに群れの真ん中に飛んでいき、残った甘藍車もあちらこちらへと散らばっていった。

 

 肝心の効果はどうかと見てみると悠々と空を飛んでいたパンクシルバーバックは制御できずに真っ逆さまに落ちたり、なんとか持ち堪えてもふらふらで先程までの素早さは見られない。

 

「『突水(ツキミズ)』」

 

 簡単に狙いをつけれる様になったパンクシルバーバックを見据えると全体を狙える位置につき、三叉を硬化させると水にも覇気を載せて飛ばした。

 

 『撃水』よりも小さい水の弾は突きと共に無数に放たれ空で身動きが取れなくなった哀れな相手を全て捉えてみせた。

 

 空中のが全て倒され残りは落ちたパンクシルバーバック達と思っていると、どうやら落ちた相手は体内の調整までやられたのか纏っていた電気がなくなっている。

 

「『ポコポコアッパー』!!」

 

 倒れているパンクシルバーバック達の間をすり抜けるように駆け抜け、すれ違いざまに跳ね上げる様な勢いでハンマーを喰らわし、群れの殲滅を達成した。

 

「やったなのね」

 

「戦闘終了」

 

 戦いを終えてじっくりと甘藍車の対応が出来るようになり、磁気を損なわないように気を付けながら集めきり、苗や種も見つけ出して回収した。

 

「どう持ち帰る?」

 

 集めたのはいいものの、苗や種はまだしも甘藍車自体はとても大きく乗って来た船に載せるのは厳しい。そうフィンが悩んでいるとなんでもないようにポコが何かを取り出した。

 

「グレーヌちゃんから『空種』をもらって来てるのね」

 

 アスカルの娘でありアスカルと同じく悪魔の実の能力者であるグレーヌ、彼女が生み出す種の中でも一際便利な収納機能を持った種の中身がないものだ。

 

「何個?」

 

「大物だと思ったから幾つかもらったのね」

 

「…………」

 

 それを聞くやいなや、静かに目を細くさせてポコの事をじっと睨み続けるフィン、異様な雰囲気に負けてポコが自分が何かしてしまったのか訊く。

 

「な、なんなのね?!」

 

「船、仕舞えた」

 

「あっ?!……はははははなのね」

 

 笑って誤魔化されてはくれず、いらない苦労をさせられた分だけ帰り道で働かされたポコだった。

 

 


 

 

 同じく偉大なる航路の後半、新世界を進む船が一隻。この海域を進むに当たって丈夫な金属を使われた無骨な外輪船(パドルシップ)になっている。

 

「よし!!見えてきたぞゴロゴロ海域!!」

 

「それでは早速動かしますね。雲道外輪(ミルキーウェイパドル)稼働!!」

 

 ティアが船の機構を操作すると外輪の前方に調整された海雲が次々と生み出され外輪がそれを掴むように周り船が空中を進み出した。

 

 海雲は浮力が弱いために外輪部分だけで船全体を浮かせるのは難しく、確実に掴ませる為に島雲に少しだけ。近い性質、硬さを持つ様に作られている。

 

 どちらかと言うと船というよりも線路を走る列車に近い動きが出来るのがこの雲道外輪船である。

 

「それにしても既にわけのわからない海だな!!」

 

「そうですね。名前の通りゴロゴロ転がってはいますが……っと面舵きります」

 

 前方から空中を走る船を容易く呑み込むであろう海の玉が転がって来て、躱すために舵をきって避けてから再び進路をもとに戻す。

 

「向こうには土の塊もあれば岩の塊、向こうのは鉱石だろうか?当たれば一溜まりもないな!!」

 

「ここいら辺に存在する特殊な鉱石が持つ引力……核となる鉱石が大きい程より大きな玉へと成長するらしいですよ」

 

 海の玉が出来上がるのは鉱石が海水に混ざっているからで海水を引き寄せた微小な鉱石を大きな鉱石が引き寄せる事であれは出来上がっている。

 

 船が金属製なのはその微量な金属の影響で普通の木製の船だと結構なペースで削られて使い物にならなくなってしまうからだ。

 

 金属製の船も使われている金属を引き寄せる鉱石の影響を受けてしまうので気をつける必要がある。鉱石ごとに集めやすい物が違い、それらは鉱石が生成される時の条件によって変わるらしい。

 

 生成時の条件は分かっていないがその鉱石を無効化する方法は判明している。近くに少し強い影響を持つ塊に船が引かれているのを確認するとティアは懐から銃を取り出した。

 

「それはピストルか?そんな物でなんとかなるのか!!」

 

「これは特殊な代物ですから、試験運用にぴったりです」

 

 そう言ってまだ遠くにある塊に向けてティアが一発の弾を撃ち出すと着弾した瞬間にその弾の範囲内を焼き尽くすかの如くの爆発が発生し、落ちることはなかったが船も大きく揺られた。

 

「ティア、それはいったいなんだ?!」

 

「アスカル様が地下深くから見つけました物をわざわざ加工して頂いたダイナ岩を用いた極小弾です」

 

 古代兵器に匹敵するとも言われる威力のダイナ岩、本来であれば危険性から海軍が全て管理しているが、一般的な技術では回収不可能な位置に自然生成された物を研究用にと確保していたのであった。

 

 ゴロゴロ海域を作り上げている鉱石は熱に弱い。弱いと言っても炎程度では効力を失う程にはならないがマグマクラスの熱量を加えると途端に引力を失う。

 

 そして再び効力を発揮するには一度完全に冷え切らないといけない。海水に浸かるなどして冷却すればそのうちまた効力が復活するだろう。

 

「それでは人目がある所では使えないのか!!」

 

「いえ、誤魔化しようはいくらでもあります。とりあえず先程までのサイズでしたら対処は可能です。速度は落とさず真っ直ぐに向かいましょう」

 

 この機能満載の船を使えば特殊な海域とは言ってもそこまで苦労はしない。海域に入ってから3日も経ったら玉が見られなくなり、空気が少し暑くなって、そして……

 

「島が見えたぞ!!」

 

「鉱石単体での反応の確認されない火山島……情報に間違いはなさそうですね」

 

 島に上陸してみると空気からも分かっていたがかなり暑く、触れる場所によっては熱いくらいの地面もあり、厳しい環境なのが窺える。

 

 この島は鉱石の産地でありながら鉱石の効力が失われているという面白い島である。実をいうと興味を持った研究者が調査するまでは何処から鉱石が出てきているのか謎だった。

 

 まさか鉱石の特徴が見られないこの島が産地だと誰も思わなかったそうだ。鉱石は火山が噴火する際に噴出される溶岩や噴石に混ざっており、冷まされながら削られて海水や土壌に混じる。

 

 そうしてまだ効力を発揮する前の段階の鉱石を養分と共に吸収し成長するこの島の作物は様々な物に対して引き寄せられ自然と転がり出す。

 

「あったな!!あれらがゴロゴロお野菜か!!」

 

「普通は料理に含まれる大き目の野菜の事ですが…まさにゴロゴロしてるお野菜を見るとは、中々興味深いですね」

 

 何を引き寄せやすいか性質も分からない内から吸収するために決まった軌道はなく、不規則に転がる作物。

 

 その取り込んだ鉱石の何割かは作物の栄養となり得る物質を吸着し、作物は触れた部分から吸収してどんどん育つ。

 

 成長してからも鉱石は取り込むためさらに栄養を集め大きくなり、鉱石を取り込む空間も増えて、さらに引力は増し、さらに栄養を引き寄せと際限なく成長する。

 

 ちなみに作物の適応なのか進化なのかは分からないが鉱石は作物の外側に蓄える性質があり、葉物なら外葉が、根菜などは皮に鉱石は貯まる。

 

 食べる際には鉱石の存在しない場所に安置し、一週間経ってから硬質化している部分を除いて調理するそうだ。

 

 大きな鉱石の影響なくゴロゴロ転がるのはこの野菜たちくらいで、本来なら微量な鉱石だけではこの様な挙動は見せない。そもそもこの島は地熱がかなり高めの温度になっているため鉱石が冷え切らず効力は出ない筈なのだ。

 

 おそらく野菜が取り込んだ水分などによって一部の鉱石が冷やされていくのだろうが、流石に設備もない環境では検証する事は出来ず少し残念そうなティア。

 

「これはどうやって回収するんだ!!」

 

「とりあえず先にこの島の作物の種と鉱石及び鉱石が含まれている土壌を大量に回収します」

 

「おう!!プラントでも育てられるか実験用だな!!それで作物本体はどうするんだ!!」

 

 ゴロゴロ転がる野菜は海域とは違ってしっかりとした地面があるのでそれなりの速度が出ており、外側が硬質化している影響でかなり危険である。

 

「作物なのでマグマクラスの熱を与える訳にはいきません。隔離してからの時間経過以外に鉱石を取り除方法はありませんので、力ずくですね」

 

「おう!!……え?」

 

 珍しく勢いが落ち、声が小さくなるデル。その顔は少しばかり引き攣り、目だけでマジ?とティアに聞き返している。

 

「作物が生きてないと鉱石は取り除けませんし、猛獣食材用の檻に入れるしかないでしょう。捕まえて来てください」

 

「……小さめのでも良いか?」

 

「全種全サイズ五個ずつあれば足りるでしょう。海王類用の檻も載せてあるので問題はありませんよ」

 

 せめてもの抵抗をしてみるがそれも儚く終わり、その為にこの編成になったんですよと船を操作して檻などの設備を準備するティア。

 

 デルは頑張った。武装色の覇気を全力で使い、ガス欠になって回復してを繰り返し、ほぼ丸一日かけて全ての野菜を捕獲した。

 

「温度は高めでも大丈夫、水も温めで頻度は少なめ、大サイズ野菜の鉱石が活性化しない様に調整出来てますね。環境設定完了、それでは帰還しましょう」

 

「おう……」

 

 ヘトヘトのデルを横目に生きたまま管理しないといけないゴロゴロお野菜用に船内の特別倉庫の状態を変更し終えるとプラントに向けて舵をとるのであった。

 

 


 

 

 久々に生身でやってきたフーシャ村、まだ日も出て来ていない時間だ。まだルフィはダダンの所にいるのだろう。

 

「おや、あんたは確かアスカルさん!!」

 

 そうかまだ村全体が起きている訳では無いが漁船なんかは早いところだと出ててもおかしくはない時間だったか。騒がしたい訳では無いので軽く挨拶をすると黙っててもらう様に伝える。

 

「あんたも見送りか」

 

「なるほどサプライズなのか」

 

 顔を見せるつもりはないさ。いやプレゼントは用意しているからサプライズには違いないがな。そう言うと不思議そうにはしていたが納得し、そのまま分かれた。

 

 ある程度立場があると一々説明をしなくてもきっと理由がある。何かしらそうする必要がある。なんて相手が考えてくれて便利な時がある。

 

 フーシャ村の港に酒場、コルボ山の小屋近くに森奥、不確かな物の終着駅、ゴア王国の壁の内側、あいつが過ごした場所、訪れた事のある場所を巡り、ドーン島の各地を歩いた。

 

 この地で育った生意気な種がこれでようやく全て芽吹く訳だ。20年近い年月をオレもかなり足繁く通って見守ってきた。

 

 とても長い期間を、それこそ建国してからの国の運営期間と3年しか違わない時間をだ。そりゃあ思い入れも深くもなるし、多少は贔屓している自覚もある。

 

 そこいらへんもなんとなく計算に入れてそうな所はあの爺さんにしてやられた気分だが、まぁそれすら悪くないと思えてしまう時点で負けだろう。そう、オレはルフィの味方なのだ。

 

 


 

 大き目の波にのまれただけで転覆してしまいそうな小さな小舟、それに乗っているのが完璧な金槌であるのだから笑えるな。

 

 のんびりとした船出を遮るのは因縁のある近海の主と呼ばれる存在。船ごと呑み込もうとするその相手をなんなく拳一つで倒してみせた。

 

「海賊王におれはなる!!!」

 

 偉大なる航路の海獣達と比べればまだまだだがここいら辺の主を一撃か。あの赤ん坊だった…生意気なガキだったルフィが強くなったんだな。

 

「強くなったなァあいつ」

 

「すげェ近海の主を一撃…」

 

 村の人達に気を使った結果だろうがそこまでこそこそ隠れて見なくても良いだろうに……色々と不器用だな。贈り物も済んで後は()()()()だ。

 

『プルルルルルプルルルルル』

 

 先程から音を隠していたが懐からずっと鳴り響いて振動を届けていた電伝虫を取り出す。こんな時に取り出すんだから嫌な予感になれてるダダンは直ぐに気付いた様だ。

 

「その電伝虫…まさか?!」

 

 ジェスチャーで静かにしている様に伝えて受話器を持ち上げると見慣れた面に変わった。

 

『出たか……どうじゃったか?ルフィの様子は』

 

「何も問題なしでしたよ」

 

『そうか、妙な予感がしたんじゃが気の所為じゃったか』

 

 いきなりお前もしかして東の海にいるか?と電伝虫がかかってきた時には流石の勘だなと驚いたが、これぐらいは構わないだろう。

 

「あんたのその胆力には呆れるよ」

 

 ひどい言い様だな。そっちだってわざわざこっそり降りて見守ってんだ。ルフィ達の為ならあの人を殴り飛ばすくらいはしそうだと思うが。

 

 まぁ、追求はしないでおこう。さて…帰ろうかとも思ったが本格的に顔を出す事は無くなりそうだ。

 

「まぁ、ルフィまで巣立ったらなァ」

 

 これで最後って訳では無いだろうが、せっかくのめでたい日なんだ。呑んで騒いでも文句は言われないだろうよ。

 

「こんなんが国王なんだから。世の中わかんねェもんだね」

 

 本当に言ってくれる。そんな国王にタメ口を聞く山賊だっているんだ。世の中何があってもいいもんだよ。ほれ、ルフィに……

 

「ルフィに……」

 

 

 

乾杯

 

 





とりあえずこれまでのまとめに食材系の話、そして原作開始の合図となる話でした。ありきたりと言えばありきたりでしたが、見守り人が一人増えたルフィ。

贈り物と仰々しい言い方しておきながら登場してませんが、そこまでとんでもない物ではないです。そのうち普通にサラッと出てきます。

基本的にプラント視点とルフィ視点での時の流れと食材探索、もしくは食材を食べる話が入る予定です。

さてもう11月です、後一月もすれば年末、来年までそんなに時間がない訳ですが…来年のIF単発もそろそろ見据えないとなぁ。次の投稿でアンケート載せるかも。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第40プラント 流れ巡る月日、竜の千年と人の二十年

良いのが思いつかなくてシンプルだったタイトルだけ変えた。


 

 せっかく東の海までやってきたんだ。こっちで最近掴んだ情報の確認くらいはしておこう。何でもこの近くに千年竜と呼ばれる存在がいるらしい。

 

 古臭い伝説からの情報故に正確な事は殆ど分かっていないがその竜骨は不老不死の妙薬だとかいう胡散臭い話があった。

 

 それが本当かどうかはどうでも良いし、不老不死なんてものに対して興味はないが、竜なんて付く生物は大抵特殊な身体をしており、味が良い種が多い。

 

 実在するかどうかに加えて、可能であるならば味についても数がいるならば確認しておきたい。まぁ伝説となってる時点で存在はあったとしても多くはなさそうだがな。

 

 千年竜の伝説が残っている島である軍艦島、東の海に拠点を設置していた当時は確証のない情報の場所に割いてる時間はなく詳しく調べていなかったが、島の東に肉眼で見えない島があるな。

 

 蜃気楼や植物の効力、空間の歪みや能力、魔術や霊能力、呪いに科学なんかもそうだな。考えられる要因は幾らでもあるが隠された地というのは心躍るものだ。

 

「なるほど、確かに居たな千年竜」

 

 目の前の存在は戦えば勝つことは容易な相手だろう。だが積み重ねてきた年月、その存在感というのは適うものではないと対面すれば分かる。

 

 向こうもいきなり現れたこちらを図りそこねている様だが、生憎とオレは見聞色の覇気の精神方面はそこまで得意ではない。

 

 とは言えこのまま見つめ合っていても何も生まれない無駄な時間が過ぎるばかりだ。どうしたものかと考えていると地面を踏む感覚が伝わる。

 

 千年竜の存在でオレの覇気では気配をどうにも読みにくくなってしまうが能力による把握は何も問題はない。重量からしておそらく子供だろうが、この竜の知り合いか。

 

 ここに来ようとしてる子供はあんたの友か、そう聞くと肯定を示すのと同じ意味である軽い威圧がとんでくる。まぁ存在感に圧倒されるが覇王色とは部類が違う。

 

 手を出すつもりはないと伝えて安心させて子供の到着を一人と一頭で待つ。短い時間ではあるが一応言葉を聞き入れては貰えた様だ。

 

「りゅうじい、来たよ!!ってあなたはだれ?!」

 

 友達なんだろう相手の所に見たことない男が居座っていたらまぁそりゃあそういう反応にもなるか。これでも顔は知れ渡ってるから新鮮な気持ちになるな。

 

 お嬢ちゃんにも君の友達であるりゅうじいと言ったか?彼にも手を出すつもりはないから安心してくれ、自己紹介をしておこう。

 

「オレはアスカル。プラントという国の王をしている。よろしく頼むよ」

 

 千年竜は食材には向かなそうだったが、その存在を起点にして偶然に出合った特殊な能力者であるアピスとの縁は普通に良いものとなった。

 

 聞く能力……才能を与えるかの様な実は超人系の中でもだいぶ特殊な枠になる。見聞色を身に着けたら何処まで届くのかその深度を思うと身震いする程だ。

 

 確かリク王の娘に『ギロギロの実』と言う目に関する能力者が居たと聞いた覚えがある。あれは視る力、そして『ヒソヒソの実』は聴く力、耳に関する能力、他にもアピスが知らないだけで出来る事は有る筈だ。

 

 捜し物があるからと直ぐの勧誘は断られてしまったが、ロストアイランドを見つけてからなら考えても良いと返事を貰うことが出来た。

 

 千年竜の故郷であるロストアイランドか……失われたにしてはしっかりと形がある様に思えるが、それはオレが『ツチツチ』の能力者だからだろうな。

 

 感じ取れる様子から考えればその目で見てもらってからでも全く遅くはないからな。それにその目で見なければ信じ難いだろう。きっと見つけられると励ましの言葉だけを送って別れる。

 

 偉大なる航路に近いからか、海流の影響でもあるのか……大地だけで再現可能なら中々に面白いんだがな。そんな事を考えながら軍艦島を離れ、プラントへの帰路に着いた。

 

 


 

 

「ふぅ、これでおしまいなの」

 

 そう言って汗を拭うような仕草を見せるのは12歳の少女、その周辺に散らばるのは壊れた船の残骸と意識を失い武器を手放した賊とも呼べない荒くれ者達。

 

「ポコ姉風に言えば格付け完了って所なの」

 

 アスカルの娘であり、世界政府加盟国の王女であるグレーヌ。彼女がいるには似つかわしくない雰囲気を纏う島は、海賊や裏社会等の人間が集い、回している島。

 

 こういった場所は偉大なる航路のあちこちに存在し、巨大な一つのマーケットとしての機能を果たしている。闇の世界の商談が纏まる事もあれば、裏切りや殺しも日常の場所である。

 

 グレーヌを襲ったのは彼女の身分等とは全く関係のない話であり、そもそも彼らは島の中では底辺に位置するような存在であり、この島の中で役目も居場所もない者たちだ。

 

 島の入口や路地裏で目をつけた存在をただただ襲いその日糧を得てる先のない者たちだ。無論この様に失敗すればその時点で人生も終わりを告げる悲しき弱い存在だ。

 

 能力者であり覇気も使えるグレーヌに下手したら街のチンピラよりも弱い奴らが幾ら襲おうと傷一つ付ける事も出来はしないのだ。

 

「さて目当てのオークション会場もそうだけど、マーケットもあちこち見ないとなの。面白い種とかあったらラッキーなの」

 

 グレーヌは『タネタネの実』を食べた種子自在人間である。種を生み出し、種を操る事が出来る能力者だが、元となる植物や種自体がある方が消費は少ない。

 

 それ以前に父親が植物の収集をしている様にグレーヌ自身も趣味として自然に存在している種をコレクションしているからという理由もあるが、仕事のついでに島全体を回り始めた。

 

「あれは麻薬食材なの。普通の粉や薬と比べて管理が難しいのによくやるの」

 

 毒星にフグ鯨なんかはまだこの偉大なる航路の海だ。何処ぞで大量発生しててもおかしくはない。だがエレキバナナにドラッグマイマイとそれなりのラインナップを見てよくやると一周回って感心しているグレーヌ。

 

 エレキバナナの種ならその帯電性を顧みて携帯しているグレーヌであるが、育てるとなるとライジン島の様な気象条件のあった島を見つけるか能力や科学に頼る必要があり、手間が掛かっている分だけ値段はかなり割高になっている。

 

 プラントやウェザリアの様に気象を自由に操る事が出来れば話は変わってくるのだが、裏の世界でそこまで出来るのは極一部だろう。なんでわざわざ用意するんだかと口にしようとすると……

 

「あれが好きってもの好きもいるし、あの程度の毒は効かない奴には美味いだけの極上の食材だからな」

 

 それに単純に儲けにはなりやすいのも要因だと教えてくれる声は自分の真後ろから響いており、聞き覚えのある声にそっと振り向いた。

 

「あれれ? 確か「カタクリだ。カスタードとエンゼルの兄であってる」その見聞色はやっぱりずるなの……それで…」

 

 四皇の一人ビッグ・マムことシャーロット・リンリンが率いるビッグ・マム海賊団の最高幹部である四将星の中でも最強と名高い実力者、『モチモチの実』の能力者、シャーロット・カタクリだった。

 

「マーケットに出回る食材からめぼしい物を集めるのとオークションが目的だ。共に行くのも別に問題はない。こちらもアスカルの娘であるお前には興味があるからな」

 

 話が早く済むのは楽で良いが何でもかんでも読まれるのは考えものだと苦笑いを返すグレーヌ。それでも知り合いと偶然あった事は嬉しいのか直ぐに機嫌は元に戻った。

 

 次は何処に行こうか相談しようと思うと先に少し待てと声が掛かり、カタクリは店の人間に声を掛けて売っていたエレキバナナを全て買い取った。

 

「うちのママはここで売られてる食材程度は難なく食べれる。以前麻薬食材で食い患いを起こした際に対応が遅れてから積極的に購入している」

 

 麻薬食材の入荷は時期以外にも運なども絡んでくる為に定期購入は難しく、ピンポイントで食い患いを起こされれば被害が洒落にならないそうだ。

 

 その対策としてマーケット等に訪れた際は麻薬食材を含めた違法食材をチェックしているそうだ。食材である以上、プラントにもあるのだが流石に取引には載せれないのでグレーヌもそこは口を結んだ。

 

「良いなの?」

 

「あぁ、助かる」

 

 止めてこない時点で問題はないだろうと質問の最中には生み出した空種をエレキバナナの山に投げ付け、着弾した瞬間に全てが一つの小さな種に納まった。

 

 礼を伝えながらそれをスッと拾ったカタクリは種を懐にしまい込んでからグレーヌの方に向き直った。

 

「何処をみる予定だ? それならオークションまでの時間は東から回れば良い。東は品切れが早く西はまだこれから運び込みの品も多い」

 

「了解、それじゃあレッツゴーなの!!」

 

 一方的な問い掛けと返答というおかしな状況であるが既に慣れたグレーヌは決まったならば即行動と東へと走り出した。

 

「むむっセンネントケイソウなの。クロック諸島からの持ち出し禁止の植物……欲しいけど公に育てられないの」

 

「千年もの時を刻み続ける多年生植物で五十年毎に成るコンパッションフルーツは幻の食材か、ウチで貰おう」

 

「あっずるいの?!」

 

「この大きさでは秘匿して運び込み、十分に育てるのはプラントでは手間だろう。こちらは海賊なんでなルールには縛られん」

 

 円卓サイズの花を付ける違法植物に後ろ髪を引かれながらも面倒をプラントに持ち込むわけにはいかないと断念し、カタクリの手に渡る。

 

「この生命力は本物のいのちのりんごなの……50億ベリーの価値はあって当然なの……でもオークション資金がなの……」

 

「このりんごになんの価値が……なるほど一個で森が出来上がる程の力を宿す果実であり種か」

 

「再生の力、得られるエネルギー、本来であれば原産のスリープランドの禁足地である深い森でのみ育つけどウチならもしかしたら……買ったなの!!」

 

「好きにすると良い。この灼熱オレンジをあるだけ用意しろ」

 

 オークションの前だというのに大金を払って果実一つを買い込むグレーヌと一つしかない物を持ち帰り気に入られると厄介だと大量に売られてる特殊な生態をしているオレンジを買うカタクリ。

 

「あぁ…これで本命の品以外は躊躇しないといけないかもなの」

 

「プラントならウチよりも資金面は充実してそうだが? なるほど、一部に大量に流してバランスを崩さない様にという配慮か…世界政府加盟国は大変だな」

 

「正式には世界政府協力国と言う立ち位置なのね。独立国家な分だけ他の国々よりこれでもマシなの」

 

 それに周囲に悪影響を及ぼしても世界レベルに発展しなければ見逃される可能性は高い。それでも配慮してるのは一重にアスカルの人柄故で、それをグレーヌも守ってるだけだ。

 

「こっちは食材目的だがそっちは何を? 被る心配はないなら別に問題はないか」

 

「自己完結しないで最後まで聞くなら聞くなの。うちが狙ってるのは『宝樹アダム』なの」

 

 世界に数本しかないまさに宝と名に付くのに相応しい貴重な樹木。その素材が大量に流れたと聞いてそれを纏めて手に入れるのが目的だと言う。

 

「……研究による新たな宝樹の作成か、それなら大量に素材が必要になる訳だ。国の護りに土地の安定、狙いはそんな所か」

 

「喋ってから…ではないなの。考えたあたしが言うのもなんだけど一応こっちの秘匿研究なの」

 

 もっとやばい内容も色々とあるが流石にそっちはなんやかんや関わりの深いビッグマム海賊団でも口にも思考にも出せない。

 

「そちらの不利益になることは今さらしない。しかし、ゲン担ぎで宝樹を求める海賊やここで買い他で売って儲けようとする者も多い、買い占めれば反感もかうぞ」

 

「その程度でやられるあたしじゃないなの」

 

 そう言って胸を張る姿から受け取れる自信は確かな実力がある故にカタクリも心配はしていない。そうかと受け流して時間も時間なのでオークションへと向かった。

 

 オークションでは互いに目的の品を無事に確保する事が出来、襲いかかってくる馬鹿の処理も難なく終わり帰路へと着いた。

 

「ママがお前の事を気に入っていた。プラントとの関係を深める為にも弟達の誰かとお前の婚姻を狙ってるから気を付けておけ」

 

 別れる直前に急に思いついたかの様に告げるカタクリ。ビッグマムの意向に従うのであればそれとなく働きかけるべきなのだろうが、アスカルやプラントとの敵対に繋がら無いようにも動く必要がある。さらに言えば本質的な部分でグレーヌは万国には合わないと判断した。

 

「うへぇ、お父さんも未だに狙ってるのにあたしもなの……流石に四皇と親戚関係になったら言い訳出来ないなの」

 

「それならば早めに婚約者でも決めておくんだな」

 

 相手が嫌だからではなく四皇の一味だからと言う理由での辞退であることから立場が関係なくなり、相手が悪くなければ可能性は無くはないとカタクリは判断した。

 

 その報告が出来れば仮に狙ってる事実を肯定し、アドバイスまでした事がバレても面目は立つと判断し、カタクリは済ました顔で帰路に着いた。

 

「あたしの心配や妹弟の面倒よりも自分の心配もしたらどうなの。アラフィフ男が、なの」

 

 心優しく、誰かを助ける事も多いグレーヌだが、その性格の中には負けず嫌いな一面もあり、上から目線なカタクリにとんでもない陰口を吐いた。この未来を見る前に帰れたのはカタクリの幸運である。

 

 


 

 

 千年竜とアピスと親睦を深める事で予定とは違う収穫を得ることができた訳だが、帰路に着く前に大きな気配が近寄ってきた。

 

「ジハハハ、こんな所で会うとはなぁ!!」

 

 20年来のお得意様である大海賊”金獅子のシキ”、初めの契約の時を除いて一切姿を見せることのなかった彼がこの東の海へと何をしにきたのやら。

 

「なぁに、まだ計画の前段階だが試験先候補はこの目で確かめておこうと思ってな」

 

 それについては何も言うことはない。彼の計画というのは十中八九海賊としての計画であり、その標的となろうとしている東の海が悲惨な目に合うとしても関係はない。

 

 そういったのは海軍の仕事であり、独立国家の国王が出張る事ではない。各国や各島々もそれぞれの守りで対処できなければこの大海賊時代で先はないだろう。

 

 だがそれによってプラントの拠点や経済区域に影響が出るのであればそれなりの形で抗議する必要がある。目に見える土の刃とかでな。

 

「そう威嚇してくれるな。計画のためとは言え20年はちと長過ぎた。今のお前と真正面から事を構えるのはゴメンだぜ」

 

 その言葉ですら何処まで信じられるか分かったもんじゃないな。確かにあちこち衰えてはいる様だがそれでも世に蔓延る四皇達の同期と言える存在相手に楽観視は出来ない。

 

「始まりの合図は盛大に上げる予定だ。そしたら一度見に来ると良い。面白い物を見せてやるよ」

 

 言いたい事だけを言い切ると天高く飛び上がり去っていった。後ろ姿を狙ったとしてもあちらも周囲の水を浮かして防ぐだろう。

 

 戦う気がないと口にはしながらオレがいる島の周辺の海を囲う様に能力を回しているのだから油断ならない。合図か……そう遠くないとは思うが面倒だな。

 

 あぁ…だが、上手く行けばあの土地を得られると思えば悪くない。あの植物、IQの生息地、おそらくシキの手によって環境は大きく変わってるだろうが、それは招待された時に確かめるとしよう。

 

 


 

 

 色々と重なって精神的に疲れている所にティーパーティへの誘いが来た。ティーパーティと言ってもビッグマムのお茶会とは違うものだ。

 

 もし今このタイミングでそれが来たらオレは何をするか分からないぐらいにはあれは面倒極まりない。疲れが取れるどころか倍プッシュで増えてしまう。

 

 ラブビー達のティーパーティもこれで何回目だろうか。ハニー島から移り住んできた特殊な蜂であるラブビー。何組かの夫婦で移ってきたのでその数を少しずつ増やしているが、彼らが作り出す蜂蜜は本当に良い物だ。

 

 植物性の物も動物性の物も食べようと思えば食べれる彼らだが、好むのは果物や花の蜜等だ。たまに肉なども取っているが、基本的には甘いものが多い。

 

 そんな彼らも食の宝庫であるプラントの環境に適応しつつあり、素晴らしい蜜はそのままに段々とバリエーションを増やしたり、新たな形に挑戦している。

 

 その発表の場がこのティーパーティであり、基本的には新しい何かが出来るとよく開かれているのだが発表物の傾向や数もまばらで、たまに何もなくても開かれる事もある。

 

 そこまで気楽な集まりになっているのは研究者気質と言うかきっちりと仕切られてる群れで社会を形成するコーヒヒと違い、ラブビー達は群れ社会を形成しないのが関係してるだろう。

 

 招待と言うのも近くに居た人を誘ってるだけで今回タイミングよく通りかかったからと言う、オレの地位も関係ないゆるく気楽な理由。

 

 疲れを取るには甘いものとよく言われるし、せっかくなので誘いに乗ることにすると誘いに来たラブビーのペアは何処か嬉しそうに音を鳴らした。

 

「「ブブブブブ〜」」

 

 そのまま案内されるままに飛んでるラブビーを追いかけていくと森の中の花畑、その少し空いた空間に何やら敷物が用意されているのが見えた。

 

 これは『蜜編み』か……花粉転がしの技法を模倣して成分を殺さずに固形化した蜂蜜を糸状にして編み込んだ代物。それでこれほどの敷物を用意するとは手間がかかっただろ。

 

 食べれるのはもちろん、表面は完全に固形化している為に座ってもベタつく事も汚れることもない。見た目もファンシーで女性に人気な一品だ。

 

 固形化していても蜂蜜なのは間違いなく、健康的な甘さを届けてくれる。噛み切った所から口の中の酵素と反応して溶け出してその甘さが一気に広がるのだが初めて食べた際には圧巻の一言だった。

 

 何より凄いのは風味の全てを封じ込めているかのような味わい。蜂蜜の作成時に使われた花が周囲に咲き誇ったのではないかと錯覚する程に香りも届けてくれる。

 

 まぁ今回は座る為に用意された様だし、他にも用意されてる品はあるようなので食べる事は無いだろうな。何処に座れば良いか訊ねると席に向かう。

 

 席に座ると直ぐにカップを渡されるがそれもどうやら『蜜編み』で作られているのが分かる。なるほど、三つ編みのラグならぬ『蜜編みのマグ』ね……お前ら暇だったのか?

 

 そう聞くと慌てて弁明を始めた。別に駄洒落の為だけに作り出した訳でなく、特別に薬効を詰め込んだ蜜で作られていて、長く使う事で少しずつ薬効だけが溶け出して、身体を整えてくれるそうだ。

 

 薬効とは言っても薬草の様に特別苦いものではなく、蜂蜜自体の甘い香りは常にマグから漂っている為に使い続けるのはそう難しくは無い。これは中々に良い品になりそうだ。

 

「「ブブブ〜」」

 

 続けて出されたのは落花生の蜂蜜漬けだが、味わってみるとかなり落花生の味が濃い。これはもしや『落花星』か?!

 

 マグマから養分を吸って育ち殻に鉱物が大量に含まれており、一つ一つが小さくても家よりはデカく最大で一つの山と同じ大きさに育つ特大の落花生だ。

 

 オレが初めて回収した食材であり思い入れは深い。こいつはふんだんな養分を吸っている分、通常の落花生と比べて非常に栄養価が高く、風味も濃い。『落花星』の生る大地そのものを味わっている様な感覚を与えてくれる。

 

 マグマの熱でも無事な性質からどう茹でれば良いのか初めは疑問に思ったが、『落花星』は剥きさえすればそのまま食べれるのも特徴の一つだ。

 

 大きすぎるので剥いてそのまま齧るとはいかないが削って小さくすればお菓子としてもオツマミとしても最高だ。ソースに使用したり、ピーナッツバターにして食べても美味しい。

 

 ただ大量に使い過ぎると風味がピーナッツ一色になってしまうので適切な量を使用するには調理者の腕が必要になる。

 

 驚きはしたものの『落花星』の蜂蜜漬けは交易商品にも既にあるがと思ってると、設営協力をしていたコーヒヒ達が何やら大きな物を持ってきた。

 

 まさかお前ら『落花星』を丸々一つそのまま蜂蜜漬けにしたのか?下手な家より全然大きいこれを漬けるだけの蜂蜜を用意したのか?なんとも大胆な事を考えるな。

 

 いや、まぁ作ってるのはお前達だから別に文句とかは全くないんだ。むしろ感嘆しているくらいなのでもっとよく見せてくれ。

 

 なるほど生えてる『落花星』の殻に穴を空けてそのまま蜂蜜を流し込んだのか。これはもしかして生きたまま蜂蜜漬けにしてあるのか?

 

 成長に合わせて蜂蜜が直接『落花星』に浸透する事で完成しているのか。なるほど食材自体がとても巨大で丈夫だからこそ成立している漬け込み方だな。

 

 だが『落花星』も『ラブビー』の蜂蜜もどちらも風味が強いのが特性の食材だが喧嘩している様子はない。なるほど『落花星』と同じ植生の花から蜜を集めたのか、素材から相性が良いものを選んでいるとは凄いな。

 

 それとおそらくだが成長に合わせて取り込んだ事でより良い方向へ変化している部分もあるのでは無いだろうか。それと『落花星』の持つ熱で多少は蜂蜜側の風味も弱まってるからちょうど良いのかもな。

 

 少し甘いものばかりを食べたからそろそろお茶が欲しいなと考えると飲み物が運ばれてきた。ただそれも多量の蜂蜜が使われてる他、何やらアルコールの香りが漂っている。

 

 ティーパーティと言ってもこれまでもお茶が必ず出てた訳でも無いからお茶でないのはまだいい。お茶会と称して菓子を食い漁るのがメインの海賊もいるからな。

 

 ティーパーティだからお茶が出るというのはオレの固定観念が悪いんだろう。だがいきなり蜂蜜酒を出された困惑はどうすれば良い?

 

「「ブブブブブブ〜」」

 

 えっとこれは『酔う滝』の『酒虫』を利用して作ったのか?!何世代も『酒虫』を蜂蜜に慣らして、蜂蜜の中でも生きていける『酒虫』を作り上げたと……

 

 なんかお前らだけ顔が赤いのは気の所為か?自分たちの巣で『酒虫』を飼ってる。蜂蜜酒を気に入って巣をそのまま蜂蜜酒で作ったと……馬鹿なのか?

 

 本来なら水を酒に変える『酒虫』だがその酒は酒精が強く質も悪くないが味はないと言う代物で何かを漬けこんでから売ってるのだが、この蜂蜜酒はシンプルではあるが蜂蜜自体の味や成分が影響してるのか普通に美味い。

 

 シンプルだからこその飲みやすさはあるが、『酒虫』による度数の高さはそのままなため、何か割る物は欲しいかもな。『ティーポッ島』のハーブとかと一緒に売るとちょうど良いか。

 

 中々に驚かされて変に疲れはしたが悪くなかった。認めるのは少し癪な部分もあるのは確かだが概ね楽しく、有意義な時間を過ごせた。

 

 ラブビー達にお礼を伝えてから帰り、この後の仕事も頑張るかと気持ちを切り替えていると何やらお土産として一つの蜂蜜入りの瓶をくれた。普段の蜂蜜とは装飾が違うが特別なものなのか?

 

 なになに、最近作り上げた最高傑作である蜂蜜『ハニカムハニー』……思わず笑みが零れそうになる程の究極の甘さと風味のハチミツだって?

 

 ついででお土産に渡すような品じゃないだろお前ら。これをメインで紹介してくれよ。作れる量や作るのにかかる時間などを聞き出して商品に出来るかなどの協議の予定を入れたり、仕事が増えた。

 

 悪気がないのは分かっているし、色々と助かっているのも確かだがこういった所は直してくれないだろうか。そう項垂れながらも味見した『ハニカムハニー』は甘く、オレの顔は笑みを作っていた。

 

 


 

 

 珍獣蔓延る無人島でガイモンと別れたルフィ、ゾロ、ナミの三人は果物だけでは満足いかないという男二人の我が儘を黙らす為に補給の為にプラントの拠点に置かれたマーケットに来ていた。

 

「あんたらねぇもう少し考えて飲み食いしなさい。私が管理したっていつもあのペースで消費してたらいつか揃って餓死するわよ」

 

「おっ、いい酒があるな」

 

「でけえ肉だ。あれも買おうぜ!!」

 

「話を聞きなさい馬鹿二人!!あ、お兄さん。それちょっと安くならないかしら…ねぇお願い?」

 

「勘弁してくださいよお客さん。ここはプラントですので……」

 

 各海から取り寄せることが出来る酒の数々を永遠と物色し、世界各地に生息する猛獣や海獣の肉に次々と突進し、プラントの経済圏が出来る前と比べて格段に安くなった食料をさらに値切ろうとする。

 

 略奪者よりも厄介な客として認定されかけているとルフィが、あ、そうだ!!と呟いて大渦に飲み込まれて減った数少ない荷物から何かを探す。

 

「何してんだよ」

 

「前に良いもの貰ってよ。ここプラントだろ。あったあった!!」

 

「正確には各地に点在するプラントの拠点の一つよ。特殊な流通経路に経済圏を抱え、安く質の良いものが手に入る様になってるのはその拠点のおかげでもあるのよ」

 

 そこまで分かってるならこれ以上値切りを試みるなよとマーケットの職員が項垂れているとルフィがようやく荷物から探しものを取り出し、ゾロは首を傾げ、ナミと職員は目を見開いた。

 

「なんだそりゃカードか?!」

 

「ってなにそれ…えっ、もしかして?!」

 

「特別優待会員証……しかもアスカル様と関わり深い存在しか貰えない最上位のブラックカード……失礼しましたお客様、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

「おれか? おれはモンキー・D・ルフィ、海賊王になる男だ!!」

 

 ナミはその存在を噂には聞いていても世界政府の役人や王族でも持ってないと知りあくまで噂でしかない代物と判断していたが、その実物を見てまだ固まっていた。

 

 それもその筈、金色の優待会員証でさえ王族が持ってるくらいであり、そこそこの金持ちでも銀色が精一杯なのだ。

 

 その銀色だって珍しく仮に裏に流れれば顔を変えたり、似てる顔を用意すれば使える事もある為に優待会員のみが買える商品への期待もあって高額で取引される。

 

 まぁ電伝虫による伝達で使用停止される事も多いのだが、それでも普通は手に入らない品を手に入れれば十分にもとはとれる算段なのだろう。

 

 ちなみに無くしたり盗まれても再発行は基本的には受け付けていない事が希少性を高めている。ちなみに特例の一つがブラックカードだったりする。

 

 金色ともなれば()()()使()()()()()()その存在への価値で高額で取り扱われているくらいだ。銀で一億、金は五億が裏での相場だ。

 

 いきなり態度を変えた職員を不思議そうにしながらもルフィは呑気に自己紹介を終え、職員は手元の電伝虫で何やらやり取りをして確認を取っている。

 

 やがて確認を終えると佇まいを直してルフィへと向き直り、大きく丁寧に礼をしてみせた。

 

「お待たせしまして大変申し訳ありません。確認が取れました。お客様には特別な商品の提供も可能でございます。こちらの目録からご確認ください。こちらは帰りにご返却願います。また、通常の商品は全て7割引きで提供させていただきます。その他にも黒色会員様のみですが会計の先延ばし、いわゆるツケも受け付けています」

 

「おぉー!!安くなるのかこれでたくさん買えるよな。なぁナミ……ナミ?」

 

 あり得ない破格の対応の数々にもルフィはいつもの調子で喜ぶだけである。銀や金の優待の内容はそれぞれ段階は違うが提供される商品の開放だけである。

 

 公平な取引を謳うプラントにおいて割引は常時からなく、値引き交渉を試みたナミも駄目で元々と割り切っての事だった。ましてやツケなんて言葉は存在すらしてはいけないのだ。

 

 ナミも黒色の噂は聞いており、尾鰭も背鰭もついた物だと考えていた。あり得ない内容の噂も確かにあったが大抵の噂よりも真実の方がとんでもなかった。

 

「安く買えるよなじゃないのよ!!黒色なんて噂だけが出回る幻の存在なのよ?!王族すら持ってない物なの!!優待内容だってあり得ないものばかり、さっきの職員の言葉から察するとあんたあの”大地の王”と知り合いなの?!」

 

「アスカルの事か、爺ちゃんとアスカルが知り合いでよ。昔から遊んでくれてたんだ。これは出航祝いだってくれたんだよ」

 

 いやあ〜無くさなくて良かった。はっはっはっと軽く笑って見せるルフィに絶対に価値を分かってないと膝を折るナミ。

 

「おっ、ルフィこの酒買おうぜ…っていってぇな?!何すんだナミ?!」

 

「八つ当たりよ!!そいつは殴っても効かないでしょうが!!もう良いわよ安く買えるなら万々歳よ!!」

 

 そして一人で黙々と渡された目録の酒のページを見ていたゾロに向けてルフィの分の苛立ちもぶつけて、吹っ切れたナミ主導で無駄なく補給を終えて出航するのであった。

 

 





とりあえずアルビダ、モーガン、バギーは飛ばしました。ゾロの加入とナミの臨時加入もね。

ルフィへのプレゼントはこんな感じの物です。多少は影響が出るけど本筋には関わらない特典ですね。ちなみに黒色を持ってる設定の人は現状ではルフィ入れて7人です。(もしかしたら増えるかも)

ルフィ、エース、サボ、ガープ、ミホーク、レイリーとオリキャラのクチーナ。世間に噂として出回ってる原因はガープとミホーク。

プラント関係者は除外されるし、イスト聖はそんなの関係なく優待する相手だし、七武海以外の海賊には流石に渡すとまずい故にこんな感じ。レイリーは例外中の例外。

食材を食べてるシーンを出来るだけ書こうとしてみたけどあんまり上手く表現出来た気がしない。もっと書いたり、参考になりそうな物を探そう。

元々はずっとアスカル視点で、番外編で他の視点をって感じだったけど他のキャラの視点が新章から増えてます。これからもこんな感じになるとは思いますがアスカルが基本にはなるようにはします。

アンケートが追加されてる筈です。次のIF話のアンケートですので良かったらご参加ください。

海賊団は書けそうなの書きます。海軍はとりあえず大将だったら設定で何かを書きます。革命軍はどういう立ち位置にするか悩むけどなんとか書きます。

トリココラボはアニメのワンピースとトリコのコラボにアスカルを加える感じです。IFと違うと言ってるのは元々書く予定なのを時系列無視して先取りしてるだけなので、仮に選ばれたらまぁ追いつくまではIFのところに配置予定。(IF書くのが大変なので用意した逃げ道、元々書く予定なので既に幾つか設定がある。選ばれろ〜)

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。


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第41プラント 見据えるワールド・バイキング!!現れた赤い髪の男?!

 

 ワールドバイキングは四年に一度だが運営側が動くのは開催される年だけでなく、開催されるまでのインターバルである三年間も地道に準備に取り掛かる必要がある。

 

 一つは開催地に招待する料理人の選定、自力で開催地に来れる料理人は参加資格ありと見なすが、それ以外にも参加するだけの技術があると判断された者は費用や移動の問題をこちらが負担するシステムがある。

 

 選定には料理の腕前はもちろんだが、人柄や名声など選ばれるに足る理由が揃ってないと不満が出てしまうので中々に慎重になる作業だ。

 

 腕前は何か一つの料理を極めた人もいれば、各料理を使いこなす人も、特別な技法を持っている人、少し特殊だがこの厳しい海で特別な食材を手に入れる技術なども考慮される。

 

 名声とはいったが料理人としてのでなくても問題はない。ようは知名度があれば良いわけだ。人柄はまぁ問題を起こさなければ多少は目をつむる。

 

 辞退した人が多い場合は別の人を選定しないといけないこちら側の理由に加えて、選ばれれた側も準備が必要になるし、予定の調整が必要になる。

 

 船旅が基本のこの世界、遠ければ半年はざら、天候も踏まえれば一年かかる事も考えると二年前くらいが初めの選定の時期としてはちょうどいい。

 

「東の海、バラティエオーナー、赫足のゼフ様より店を空けられるかと招待をお断りになられました」

 

 東の海で一番とも言われる海のコックの集まった料理店。料理人として元海賊としてネームバリューはかなりの物だが断られたか、残念だ。

 

「同じく東の海より、黄金の大海賊ウーナンの友であり、卓越したおでんの腕前を持つ岩蔵様、招待を了承なされました。食材の準備はするそうですが移動はこちらにお願いするとの事です」

 

 おでんだけに絞ればその味は世界一と言っても過言ではない。それはオレ自身が足を運んで確かめている。本人の知名度が小さな屋台船の為に無いが、友人の知名度を申し訳ないが利用させてもらう。

 

「西の海、世界政府加盟国花の国、国王ラーメン様より料理人の招待の許可を快く頂けました。料理店とは現在交渉中、また必要であればラーメン様に仕えている料理人から料理長であるワンタン様を貸し出す事もやぶさかではないとのご連絡も頂いてますがどういたしましょう?」

 

 他の国に国民を寄越す事になるのだからきちんと許可を取っておいて損はない。ワールド・バイキングは各国から注目されているからな。

 

 アピールの場としては申し分ないから協力的な所は少なくないが自身の配下を送る程にとは、中々に買ってくれているのか、それとも恩を売っているのか。そこは慎重に動くように伝えてくれ。

 

「北の海、世界政府加盟国ホワイトランド王国、国王イワトビ様より料理人の招待の許可を頂きました。料理人のマカロニ様が可能なら腕を示したいと参加の意思を示しています」

 

 こちらは料理人が言い出しているのなら問題はないと思うが、念の為確認を取ってから話を進める様に。

 

「南の海の薬学大国であるトリノ王国から特殊な薬草を用いた薬膳料理を扱う料理人の招待に成功で〜す」

 

 あそこは文明レベルが高い国であり、島に生える巨大樹に生える植物は本当に貴重なものばかりだ。それらを十全に扱う彼らの技術は招待に値する。誰もが知ってる訳では無いが医療に携わるものならトリノ王国の名は有名な為、知名度も問題ない。

 

「偉大なる航路、ウォーターセブンより塩使いのバンバン爺様、招待を了承するとの事でした」

 

 トムさんに船を作ってもらいに行ってた頃からオレも食べさせてもらったが、あの人のシンプルだからこそ見えてくる味、食べる人を常に考える姿勢は素晴らしい。ぜひ港で薬膳料理を振る舞って欲しいが、それに従事させるだけでは勿体ないしな。そこいらへんはバンバン爺さんと相談していこう。

 

「偉大なる航路、美食の町プッチより料理コンテスト優勝者の招待に応えられると市長ビミノ様より連絡がございました」

 

 美食を謳っている様にその島の料理人のレベルも高く、知名度も申し分ない為にワールド・バイキングと提携させて頂いている。

 

 優勝者が辞退したり、コンテストが開けなかったりしない限りは最大で四人の優勝者がワールド・バイキングへと参加する。開催年の優勝者は間に合わないので次の開催時に参加し、インターバル中の三人を合わせて四人である。

 

 開催年の優勝者はワールド・バイキングの参加者がコンテストに参加してないとしてランクが下がるのではと一部から懸念の声もあったがそんなことは無いと断言できる者しか今までは参加していない。まぁ、今年も問題はないだろう。

 

「偉大なる航路、カマバッカ王国女王代理キャロライン様より、新人類拳法師範数名の派遣、了承頂けました」

 

 あそこも独特な文化圏な事に加えて、本来の王が革命軍の隊長の一人だからな。こちらでもあちこち警戒はしておく必要があるな。

 

「偉大なる航路、世界政府加盟国リュウグウ王国より、料理人の派遣に関しては残念ながらまだ見送るとの事でした」

 

 個人で参加する魚人や人魚は居るがやはり天竜人も来る場所に国家としては参加しにくいか……これに関しては仕方がないと思っておこう。

 

「凪の海より女ヶ島なんですが……レイリー様とシャクヤク様経由で料理人……一名の派遣をなんとか頷いて貰えました」

 

 それでも一人か……警戒が強いな。こちらとしても事情を知っているから世界政府とましてや天竜人と関わりの深いプラントに一人でも送ってくれるならかなり譲歩してくれたと思っておこう。

 

「凪の海がインペルダウン調理部門から署長専属料理人毒調理師イロード様、了承頂きました」

 

 『ドクドクの実』の能力者であるマゼランは常人では食す事が出来ない毒すら好んで食べると聞き、その料理を作っている人物について聞けば普通の人でも食べれる毒料理も可能だと知り、政府や海軍経由で連絡を取った。

 

 新しい試みで注目を集めやすいとは思うのだが、取り敢えず配達ミス、調理ミス、誤飲など扱う物が物なので間違いだけは無いように人員の配置を考えておこう。

 

「赤髪海賊団のコック、ラッキー・ルウ様、現地には赤髪海賊団で来るそうですが、ご自身で見て回りたいのでイベント参加の招待は辞退するとの連絡がありました」

 

 陽気な性格だからのってくれるかと思ったが、そうか食べる事自体も好きだからそっちに回ったか、なるほどなぁ。それは個人の意思だからどうしようもないな。

 

「ワノ国への侵入は成功し、脱出も問題ないですがその地の料理人の逃亡補助は難しそうです。また百獣海賊団にプラントとしてのコンタクトは難しく、工作員はそのまましばらく潜入を続けるそうです」

 

 『獣憑き』の何人かが動物系の能力者と偽り百獣海賊団に潜入したそうだが、流石に鎖国国家であり四皇の縄張り、何もかも上手くいくなんて甘い話はない。

 

 それでも無事にやり取り出来てるだけでも十分な成果だろう。工作員には無理をしない様に伝えてくれ。

 

「契約相手であるビッグマム海賊団より総料理長シュトロイゼン様、補助としてWCI31、総勢32名参加の意思確認済みです」

 

 ビッグマムも子供たちも来客としてくるから食い患いに関しては現地で対応できる様にしておけば問題ない。おそらく各大臣も来るだろうし、何が出てくるか楽しみだ。

 

「招待予定であった白ひげ海賊団、四番隊隊長サッチ様、死亡が正式に確認されました」

 

 死人は招待しようが無いからな。元々の予定ではエース経由で招待をかける予定だったが残念だ。こうなっては他に候補を見つけなくてはな。

 

 世界政府への嫌がらせも含めて四皇から招待を募る企画は失敗だな。まぁ毎年ビッグマム海賊団が大きく動くだけでも厄介だろうがな。

 

 後は目玉となる食材や料理、調味料などの確保だな。特にメインイベントのワールド・バイキング・コンテストの優勝者に与えられる賞品となると食材選びは絶対に失敗出来ない。

 

 初めの開催では巨大化に成功した『カラットジューウシ』のインパクトで誤魔化したと言うのが正直なところだ。

 

 高級で高価なものしか食べない牛で、肉は絶品。とめどなく溢れる肉汁は肉のジュースとも呼ばれており、骨は数千カラットのダイヤで出来ている。

 

 紛れもない高級食材ではある。だが普段食べるのは天竜人や一部の王族ばかりだが一般にも出回る事がある食材だからな。

 

 まぁそれでも高級食材の中でも上位の食材には違いなく、ダイヤモンドで出来てる骨の量を考えれば賞品としてのポテンシャルは悪くない。

 

 実際に初開催時の優勝者はとても喜んでいたし、観客たちも賞品の説明を聞いて一気に歓声を上げていたからな。だが誤魔化した分だけ、それ以上の価値がある物を次からも用意する必要が出た訳だ。そして次はプラントだからこそ用意できる様な物が好ましい。

 

 そうして次の開催では『イチジクリスタル』という皮がクリスタルで出来ている種を増やし、十年に一度生る『ダイヤモンドイチジクリスタル』をメインに据えて。

 

 その改良種である『ルビーイチジクリスタル』『サファイアイチジクリスタル』『エメラルドイチジクリスタル』と三大宝石シリーズを賞品とした。

 

 プラントの品種改良の技術がなければ生み出せない代物、正真正銘世界に出回ってないプラントだからこその食材である。

 

 純粋な食材としては少々使いにくいと思われるだろうが、二回目の優勝者はパティシエだったので幾つかの候補の中からこれを選んで賞品としたのだ。

 

 デザート部門の優勝ではなく、総合であるワールド・バイキング・コンテストで優勝したのはかなりの驚きだったが、屈強な男共も満足するデザートの数々は確かな物だった。

 

 話がずれたが優勝者が決まるまではその賞品も秘匿されている。これは一回目も同じで優勝と共に発表した方が盛り上がる為の仕様だ。

 

 だが優勝者が使わなさそうな物だとマズイので余裕が出来たと言うか、一回目の反省を踏まえて二回目からは賞品の候補を複数用意しているのが功を成した。

 

 複数の候補を用意しているのならそこからまた使えば良いとならないのが食材の辛さ。よっぽど特殊な食材でもなければ四年も経てば腐ってしまう。

 

 その年の状況次第ではまた手に入れるのは難しいなんてのはざらで、商品として使われなかった食材を確保には向かうが手に入るのが一個あれば良い方だった。

 

 そして前回のワールド・バイキングだと海の料理人らしい海鮮料理を得意とする者が優勝者だったので特別な育て方をした『船溶かし』を商品とした。

 

 クジラが潮を吹き出す様に溶解液を船に飛ばして沈め、溺れ死んだ人を喰らう人食い貝だが、賞品となる物は生け簀にて卵から育てた完全保証の品だ。

 

 溶解液は必要な時に体内で随時生産するので、調理の際に気を付ける必要はない。食事を繰り返し、際限無く成長、旨味を体内に溜め込む。普通の貝の数十倍濃厚で、とても美味いと語り継がれている。

 

 広範囲に生息しているが木だろうが鋼鉄だろうが構わず溶かす溶解液もあって、魚人や人魚でもある程度実力がなければ扱えない。

 

 栄養を多くして、『魚ーターランド』のバブルの成分を使い、IQも用いて巨大化させたそれは大きな山くらいのサイズになり、その身も小さな山サイズ、さらには豪邸より大きな真珠があった。

 

 溶解液を必要としないレベルで安全で栄養の多い環境を用意すると自然と真珠を作るようで、賞品にする直前に貝が気付く前に仕留めた一品だ。

 

 真珠は光沢を持ち、見方で色が変わって見えるのはよく知られているが、『船溶かし』の真珠は多少の溶解液の成分に耐える真珠層が独特な構造をしているのか、それとも成分的な問題かは知らないが常に七色に変化して輝きを放っていた。

 

 持ち帰るのに苦労していたが、今はその優勝者の開いた店に堂々と飾られているらしい。あのサイズだと普通の手段では盗めないからこそ出来る事だな。

 

 メインコンテスト以外の各部門の賞品はプラントの交易品の最上位から優勝者が望む物を用意するだけで良いのだが、問題のメインの賞品をどうするか。

 

「鱗や骨が金で出来た鮎の『AU(アーユー)』とかはどうですか?巨大化していれば価値もありますし、金と言うのはそれだけでも高級感漂います。味もそこらの魚とは一線を画しますんで賞品としての基準は満たしているかと」

 

「二回連続で水産物と言うのは大地の王であるアスカル様のイメージに合わないのでは……最近『もち石』の鉱物化に成功したとの事ですし、『もち金』や『もちダイヤ』などは大地を感じられるので良いと思うので如何ですか?大量に用意するのは大変かもしれませんが、食感に時代を感じられる深い味わいは格別かと……」

 

「金はまだしも宝石はマンネリに繋がるんじゃないですか〜?『カラットジューウシ』のダイヤに『イチジクリスタル』の宝石の記憶、それらが美化されてたらインパクトに負けますよ〜。そこで私からの提案としてはドキドキ感を追加で全身宝物で出来た馬である『宝ース(ホウース)』の『C宝モツ』なんてどうですか?上手く調理しないと爆発し、上手く調理できたら宝物を吐き出すモツは味もお宝級の逸品です!!」

 

「優勝賞品がモツだけってのはどうなんだ?!それに優勝者に爆発物を寄越してやるなよ?!でもイベントとしては使えるか…いやそれよりも先に賞品でしたね。王冠の実を付けるオクラの『オクラウン』、中に指輪を作るカリンの『カリング』などの野菜や果物由来のはプラントらしいし、クラウンやリング部分は高価なアクセサリーに成ります。他のアクセサリー系の物も見繕ってセットとしてまとめればそれらしくなるかと」

 

「私も何か言うべきですかな。それでは『牛島君』なんてどうですか?原種の時点で島と見間違う巨大さの熟成肉を持つ牛の君と呼ぶに相応しい存在。更には地層を象った様な舌の『ストラータン』には多くの資源が眠ってます。生きてる限り自慢の再生力で取っても生えてきますし、派手さはなくとも価値は高いです。大きさと生きてる事でインパクトも十分ではないですか」

 

 金銀宝石、野菜果物、大地そのものにインパクト、それぞれ色々と考えて出してくれているのは本当にありがたい。とりあえず『宝ース』はイベント方面で検討する。

 

 馬肉と言う考えはパッと出て来なかったのでアイデア自体は素晴らしいが特殊調理食材と特殊賞味食材は除いておきたいので賞品には出来ないな。

 

 それ以外は候補としてはどれも申し分ないから取り敢えずリストに入れて、今から準備しつつ開催時に確保が出来るか次第だ。

 

 デザートで総合優勝する人がまた出るとは中々思えないが何があるか分からないのもこの世界。一応パティシエ寄りの物も考えつつ、オレも何かしら新しい食材の確保に出向くとしよう。

 

 とりあえずはイスト聖に食材を受け渡す際に何か聞くのが良いか、自分が食べたい物を容赦なく伝えるからちょうど良い物が分かる。さてまだまだ働くとしよう。

 


 

 その日はプラントに訪れた海賊たちがいつも以上に騒がしく、それでいて大人しいという妙な雰囲気であった。それもその筈であり、本来なら簡単に顔を出してはいけない相手が港に居た。

 

「よう久しぶりだな。アスカル!!」

 

 そう言って豪快に一本しかない腕を振り上げてこちらに声を掛け笑みを見せる赤い髪を揺らす男。これ程の馬鹿な知り合いは他にはいない。

 

「12年を久しぶりの一言で済ますのか、シャンクス?」

 

 有名な船であるレッドフォース号から港へと降り立ったのは新世界に居座る四皇の一人である赤髪のシャンクスだ。最近は大海賊が会いに来るのが流行ってるのか?たくっ……

 

 寄っても別に問題ねぇなと自分で言っておきながらかれこれ12年間もプラントに近付くことが無かったというのに何を考えているんだか。

 

 そのせいでルウに招待を送るのにも縄張りや傘下の海賊などあちこちに手を回して苦労したと言うのに、思い出すと腹が立ってきたな。

 

「また色々と事情があったんだよ……その事はまたおいおいとして、本題なんだがちょっときな臭い事になりそうでな。安全に補給が出来るだろうってお前がいる時を狙って寄港させてもらった」

 

 堂々と厄介事を持ち込むかもしれないと宣言してくれるなぁ。この調子ならビッグマムとの取引が済んだタイミングも確実に把握している。

 

 元々あまり大きく動くタイプではないがこれまた随分と行動が慎重だな。四皇の一角ともあろうものが何をそんなに警戒しているんだか……

 

 まぁ、とりあえず補給だろう。何が必要なのか目録があるなら寄越せ、最優先で用意させてやる。お前らに文句を言う奴らもいないだろうしな。

 

「ベックマンが纏めてくれてな。これを……後は何があるのか確認もしたいから交易品の目録は目録で彼奴等に渡してくれ、それと別で用意してもらいたいものがあるんだ」

 

 とりあえず渡された目録を流し見て特別やばい物は無いのでそのまま職員に引き継いで運び込む様に伝える。回し見る程上品じゃねぇから目録は5.6冊渡すようにも言っておいたが、人数分の方が良かったか?

 

 それで悠長に話してる暇もないと言った様子だから12年のゴタゴタはもう良い。此処に来るまでの経緯とこれからについて……話をしたいなら聞くぞ。

 

「あぁ、頼む」

 

 それならば場所を変えよう。ここではまだ何処の目があるのか分からないからな。土でオレとシャンクスの身体を覆うと一気に地下へと潜る。

 

 能力無しでは辿り着けない、道のない部屋。植物を利用して送られる空気で呼吸は問題なく、これまで何度も使用してきてその都度設備が追加されているので居心地も悪くない。

 

「以前招待された王城と遜色ないな。娯楽品や飲食含めればそれ以上か?」

 

 これでも王族だからな。それなりの物は使ってるし、プラントは今となっては多くの物を生産している。それらを置いておけば適当でもそれなりには見える。

 

 うちの王城の応接室の方が価値の高いものは多いが、使いやすさも含めればこちらのが個人的には好きなぐらいだ。私室に至ってはここより使いやすく、ここよりも安いだろう。

 

 くだらない事を考えながら席に座るように促して、互いにテーブルを挟んで向かい合う。空気が変わり神妙な顔つきへと変化する。

 

「ルフィの事をお前は見送ったのか?」

 

 これでも後見してきた様なものだからな。育てとしても支えとしてもかなり目をかけたつもりだ。見送らない理由はない。

 

 まぁ、見送ったと言っても顔は見せずにプレゼントを出航祝いにくれてやったぐらいだが、お前は手配書を見て知った口か?

 

 この前に出た3000万ベリーの手配書は東の海出身としては破格の額と言える。まぁ、偉大なる航路で活動しているオレやお前からしたらはした値段だが、()()()夢への一步は輝かしく見えるだろ。

 

「あぁ、この時が来たかと胸が踊り、船員と鷹の目と宴をして祝ったさ。それで……ルフィの兄であるエースの事をお前は昔から知ってたな」

 

 既に予想はしているだろうが、あの頃に山に行ってた理由はあいつの様子を()()()()()()()()()()見に行ってたからだな。あいつはだいぶ前に名を挙げたがお前に挨拶にでも行ったか。

 

 幼少期からは比べ物にならないくらいに礼儀よくなったからな。あれはマキノちゃんの手腕を褒めて然るべき成果だ。

 

 それであいつが今何処の所属かは言うまでもないだろう。同格の敵船に乗ってるあいつの事で何か思うことでもあるのか?

 

「……お前は黒ひげと言う海賊を知っているか?」

 

 お前が話題に上げるほどの奴だとは知らなかったが、最近になって暴れ始めた海賊でちょっと前にドラム王国を滅ぼしたと新聞屋経由で聞いたよ。

 

「それだけでも耳に届いてる方だが、付け加えるとあいつは昔から白ひげの船の船員で、エースが務める二番隊所属で船を降りた際に仲間を、四番隊の隊長を殺している」

 

 なるほど白ひげ海賊団の仲間に手を出してはいけないと言うのは海賊の中でも暗黙の了解として伝わる程だ。四皇に挑もうとしている者でなければ戦闘自体を避けることが多い。

 

 そんな船で裏切り行為を、それも多くの船で禁忌とされている仲間殺しを行い逃げているとなれば落とし前をつける必要が出てくる。これだけ情報を落としてもらえば簡単に想像がつく、それがあいつなんだな。

 

「あぁ、下手人である黒ひげを追って偉大なる航路を逆走しているそうだ」

 

 それだけなら知り合いの兄として心配はしてもおかしくはないが他の船の人間の事だし、口出しするのはタブーに近いんじゃないか。

 

「惚けるつもりか?」

 

 そう威圧してくれるな。おそらくお前の予想であってるとして、仮にあいつが捕まればどうなるかくらいは分かるさ。

 

 お前が不安に思うくらいだから今のあいつが勝てる可能性は低いんだろう。それでもプラントとしては手出しする事はない。それをして良い立場ではないからな。

 

 お前だって形振り構わないと言うのであれば勝手に黒ひげを殺してやるくらいは訳無いだろう。そこん所を弁えているのなら後は賭けるだけにしておけ。手が足りなくてもオレを煽ってくれるな。

 

「わるい……酒を特性の容器でくれ、俺の故郷の酒なんだが……」

 

 こいつの故郷のとなると西の海のかそれなら問題ない。流通経路が確保されてから買いやすくなった分、求める人が増えて様々な作り手がその生産量を増やしている。

 

 例外があるとすれば農作物だが、それも予想よりマシな状況で落ち着いている。と話がずれたがその酒はそれなりの量を用意しても取引に支障は出ない。直ぐに用意しよう。

 

「……俺は重ねてるだけだが、お前は本当にそれで良いのか親代わりみたいなもんだろ?」

 

 今日はしつこいな。そんなにねちっこい男じゃなかっただろお前は。支えを自ら失い、四皇の一角という重みで歪んだか?

 

 ルフィには実の親父と祖父がいる。あいつは親父とあったことなさそうだがそこは関係無い。それと違ってあいつに関しては親族すら居らず、あいつの親代わりはオレとダダンの奴がそれになる。

 

 だが既に自立して親元を離れ、ましてや寄る辺を見つけているのだ。何から何までやってやらなきゃならない赤ん坊ではない。

 

 ()()()()()()()()()()()オレがここで手を出せばそれはくだらない自己満足にも足らないあいつを侮辱する行為だろう。

 

 それに親になった事もなく、()()()()()()満足に全うしてない奴に言われる筋合いはない。話はそれで終わりだ。

 

 互いに引き時を見失う訳にはいかず、取引を淡々と済ませると気不味さもあってか直ぐに出港していった。それにしても交易の殆どが潰れたのは大損害だ。

 

 今後あいつが来るかは分からねぇが、来なかったとしても問題はない。元より用がなければ12年顔も見せない奴だ。とは言っても残念だな。

 

 過去に囚われるのもマヌケだが、未来を見てる奴は何かと忙しない。オレにはそんな芸当は出来ないが、つまらない奴にはなったのかもなお互いに……

 

 っとそんな事を考えていると出港した赤髪海賊団と入れ替わる様にグレーヌがマーケットから帰ってきた。きちんと目的の物を手に入れている様だが、他にも幾つか気になるものがあるな。

 

 まぁそこまで目くじらを立てて言及する事では無いからな。とりあえず、宝樹アダムは研究所の方に送ってくれ。それぞれ品種改良とIQの部屋、そう小人組の所とティアとコーヒヒの所だ。

 

「分かったなの。それじゃ手配を終えたらアタシは休暇をもらうの」

 

 うちの国は式典とかはそんなに多くないし、普段から多くの賓客が貿易関係で来るから対応も簡略化が許されてるから王女が国を離れていてもそこまで問題はない。

 

 年齢もまだ若いので仕事はさせつつも結構自由にさせているのだが、これは主にオレの方針だな。マニュは今のうちから色々と仕込みたがっているが、一応オレの判断とグレーヌの自主性に任せてくれている。

 

 お義父さんなんかはグレーヌに相手してもらえれば別にどうでも良いみたいだし、色々と教えつつもかなり甘い。あの人もう国王やめてるし、スキーラは併合されたから王族ですらないし気楽なんだろう。

 

 ところでグレーヌ、休暇は好きに過ごしても良いが今回は何処に行く予定なんだ。プライベートまで管理する気は無いが危険な海だから場所は知っておきたい。

 

命の紙(ビブルカード)に『命物種(ライフシード)』もあるのに心配し過ぎなの」

 

 前半は距離まではわからないし、後半は使わなければ問題ないが使う事になれば今の段階では寿命が縮まる技だろうが……というか使う事になる様な事態を想定して動くな。

 

「冗談なの。まぁ気を付けておけば危険はないと思うの。今回行くのは釣り、レッツフィッシングなの」

 

 プラントの敷地内なら安全……とは言えないが何かあってもたいおうできるが、問題は何処に行くかだ。何を釣りに何処へ行くんだ。

 

「えへへ、食材リストにあった『リト(マス)』をちょっと……」

 

 『リト鱒』か…どんな水質環境にも適応する生存能力の高さを持つ鱒で、水がアルカリ性か酸性かによってその色を変えると言う。

 

 人間にとって危険な水に住んでいる程、ようは酸性やアルカリ性の強い水に居るやつ程その味は良くなると言う。ただ、その味を保ったまま食べれる様にするには技術が必要になる特殊調理食材の一つでもある。

 

 中性に近い物なら一般的な調理でも問題なく普通のマスよりは美味しい程度の物となる。だが、リストにあったのは危険地帯の筈だ。

 

「耐性装備全身一式あれば問題ないの」

 

 いや、別に行くなとは言わないがそれで果たして休まるのか?休みに釣りに行くと言うのは休暇の過ごし方としてはまぁ聞く話だが、食材確保にするとほぼ仕事だろ。

 

「それは全然平気なの…釣りがしたいなぁ〜って思ったときにみつけてちょうど良かったからついでなの」

 

 どんな水質でも住めるって事は少なからず浄化作用を持っているって事だ。濃度が高い水は何かしら反応して熱を持ってたり、冷たかったりもするがそれでも生きていける。

 

 そんだけ強ければ砂漠でも耐えれるだろうし、淡水海水関係無いから海水の逆流が発生してる川にも適してる。ほぼ泥みたいなオアシスでも生きれるかもな。

 

 浄化作用があれば本来なら使えない水も使ったあとの水も時間をおけば使えるようにしてくれる。そうすれば多少の不足は補える。

 

「…………」

 

 他国の事に勝手に手を出すのはご法度だ。それらが友人の国で危機に陥っていたとしてもな。と言ってもそれだけじゃ納得しないだろ。

 

 あそこにも管理地を置かせて貰ってる。交流を始めたばかりの頃に手を施した水脈、地脈に明らかに別の手が加えられている。あの水不足はおそらく人為的な物だ規模からしてオレ等と同じく能力者だろう。

 

 それがどんな奴らなのかは分からないが、お前が動けばアラバスタ王家の面子を潰すし、国を傾けようとしてる奴らの怒りもかう事になる。変に手を出すのは止めるんだ分かったな。

 

「……はいなの」

 

 友人として力になりたいお前の気持ちは分かるさ。さてそれじゃあオレも仕事は一段落しているんだが一緒に『リト鱒』釣りに行くか?

 

「えっ……?!」

 

 ビビ王女の失踪はおそらく自ら起こしたものだろう。イガラム護衛隊長も一緒に消えてるんだ。そう考えた方が辻褄が合うだろう。

 

 何者かが攫うために襲ったとしてわざわざ護衛を無力化して連れ去る意味が無い。そして王女を攫ったのに王家に何も要求が無いのもおかしい。

 

 お前と負けず劣らずのお転婆な王女だからな。黙って攫われることはしない。護衛隊長がその場にいて報せられない訳もない。ならば何処かで戦ってるんだろう。

 

 戦いが終わったらプレゼントしてやれば良い、復興支援と言う名目であれば手を貸すことも出来る。それまでは無事を祈って、信じてやれ友達なんだろ。

 

「うん、ありがとうお父さん!!それじゃあ釣りに行ってくるの!!」

 

 割り切るのはまだ難しい年頃だから受け取り安い様な話をしてしまうのはやはり甘いんだろうな。だがいつもの元気を取り戻したから良しとしよう。

 

 それはともかく、オレと一緒に行くって提案は頭からすっぽ抜けてるみたいだな。はぁ……次の仕事を前倒しで進めるとするか。

 


 

「おい、ルフィ。さっきまで喜んでたってのに自分の手配書見ながら何を考えてんだ?」

 

「こいつに同意するのは甚だ遺憾だがらしくはねぇな」

 

 ルフィの手元には満面の笑みの顔写真とDEAD OR ALIVEの文字、そして3000万ベリーと言う堂々としたお尋ね者を示す書。

 

 海上レストランバラティエにてクリーク率いる一団を倒し、サンジを仲間として迎え入れた。

 

 船を取り戻しにやってきたコノミ諸島、そこで島の事情とナミの過去を知ったルフィ達は魚人海賊団相手に殴り込んだ。

 

 アーロンパークにやってきたルフィ達が手下と幹部を蹴散らした後、建物内でルフィとアーロンとの一騎打ちになった時だった。

 

「人間は下等な存在だ!!そうでなければいけねぇんだ!!あの人が認めた大地の王だって変わらねぇ!!」

 

「大地の王?アスカルの事だよな?」

 

「その名を俺の前で呼ぶんじゃねぇ!!」

 

 自分から話題にする様な事をしながら名を呼ぶ事は錯乱したかの様に否定する。何処かちぐはぐな様子にルフィすら少し気圧される。

 

「あいつは分かっていながら結局あの人を見捨てた!!あのクソ共となんら変わらねぇ!!」

 

「アスカルを馬鹿にすんな!!」

 

「人間なんて所詮自分が一番可愛いに決まってる。この東の海にもプラントの拠点は数多にあるってのにこうして虐げられてる奴らは居るんだからな!!その点、俺は仲間は大事にする」

 

 後はアーロンなりの理屈があってのナミの扱いをツラツラと語り、部屋を壊し、ルフィの戦斧によってパークごとアーロンを終わらせた。

 

 瓦礫を押しのけ山の中から這い出る直前に、息も絶え絶えで殆ど意識が無いアーロンが口を開いていた。

 

「あいつの身内側があいつを擁護したって何も見えてねぇんだよ……あいつは自分の手の中の物しか見てねぇ…あの人は決して認めても友とは呼ばなかった……あいつがそう思ってなかったのを理解していたからだ……テメェもいつか裏切られる……その時の絶望と失望が今から楽しみだ……シャハ…ハハハ………」

 

 んなもん知るかと一蹴して瓦礫へと腕を振るい、外へと出てナミを仲間にした。それなのに手配された理由の要であるあの時の最後をルフィは何故か思い出していた。

 

「おい、なんか島が見えるぞ?」

 

「見えたか……あの島が見えたってことはいよいよ"偉大なる航路"に近づいてきたっこと!」

 

 柄にもない思考に囚われそうになっていたルフィを引き戻すかのように仲間の声が耳に入り、目を開く。

 

「あそこには有名な町があるの『ローグタウン』別名"始まりと終わりの町"かつての海賊王G・ロジャーが生まれ…そして処刑された町」

 

「海賊王が死んだ町……!!」

 

「行く?」

 

 ナミの問いかけに対する答えは聞かれるまでもなく決まっていた様なもので、それにより無駄な思考も完全に搔き消え、賑やかな町の喧騒に消えるのだった。

 





料理人の名前はアニメオリジナルや映画からかき集めても足りなかったので、現在名前だけですが捏造やオリジナルも登場させています。

オリジナル食材とその紹介が多めに載っていますが、いつか食べてる所や捕獲や養殖時の様子も描けたら描きたい。

そして最後はルフィ側の大体の進行状況ですかね。あまり変化はなく、アーロンが色々と喋ったくらいですかね。

偉大なる航路に入ったくらいから変化が増えるだろうし、もう少し書く量が増えると思います。

それとアンケート締め切ります。まぁ、私も分かっていて出した様なもんですがトリココラボに決定しました〜!!

もはやIFではないですがエイプリルフールに投稿しますね。既に書いており、四話構成になってるので4/1から1日1話ずつ投稿する予定ですのでそこまで期待せずに楽しみにしていただけると(←どっちだよ)

と宣伝もここいら辺にしましょうか。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれた方々に多大なる感謝を。


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