ヤバい大海賊に出会ってしまった北条響さんの話。 (スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐)
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ロックスと北条響

物語は北条響がONE PIECEの世界に迷い込んだ直後から始まります。
作者の妄想の産物をどうぞご覧ください。


「あァ………?何だお前は?」

 

「あ、アハハハ………」

 

 

 

 

これは本来なら交わらない筈の物語。

 

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ!ここは日本じゃないんですか⁉︎」

 

「ハハハハ…俺も色んな所を見て回ったが、ニホンなんて国は聞いた事ねェ。少なくとも、世界政府の加盟国・未加盟国共にそんな名前の国は無ェな」

 

「そ、そんな………!」

 

少女と話す青年がそう告げると、少女は目に見えて落ち込んだ。

 

「落ち込むのは勝手だが、今の状況分かってんのか?」

 

青年の言葉に、少女はハッ!とする。

周りを見渡すと、そこには血を流して倒れる男達。

血溜まりの中に自分がいる事に今更ながらに気付いた少女は足を震わせて、後退る。

 

「こ、これ………まさか、あなたがやったの?」

 

「ハハハハ…まあ、そんな所だ。ガキの割には中々度胸があるみてェだな。普通なら泣きだすか、気を失うもんだが」

 

「ッ!どうして、こんな事ッ!」

 

惨劇を生み出しておきながら、悪びれもしない青年に少女は激昂する。

元々正義感が強いその性格故に、少女は間違いなく青年に対して怒っていた。

 

「ハハハハ…そうは言うが、俺がこいつらを殺してなけりゃ、お前は間違いなく殺されてたか良くてヒューマンショップで売り渡されてただろうぜ。それに、俺もそうだがこいつらも海賊だ。いつかはこうなる事も覚悟の上だっただろうよ」

 

そう言って笑いながら自身の行いを正当化する青年に、少女は視線を逸らす事なく睨み続けていた。

 

「ハハハハ…!面白いガキだ!俺を前にしてそんな態度をとる奴なんざ、中々いねェ。おいガキ、お前の名前は?」

 

「………人に名前を聞く時はまず自分から名乗りなさいってパパとママが言ってたよ」

 

少女がそう言うと、青年は一瞬虚をつかれたような表情をして再び笑いだした。

 

「ハハハハ!確かにその通りだ。俺の名はロックス。ロックス・D・ジーベックだ。で、お前は?」

 

「………響。あたしの名前は北条響」

 

「ハハハハ!良い名前だな………さて」

 

ニヤリ、と笑みを浮かべて青年…ロックスは少女に、響に近づいていく。

 

「来ないで!それ以上こっちに来たら………!」

 

響は近づいてくるロックスに対して床に落ちていた剣を拾い、切っ先を向けた。

 

「ハハハハ…!まあ落ち着け。別にお前を取って食いやしねェさ…!響、俺についてくる気はねェか⁉︎お前程のガキなら将来は間違いなく大物になれるぜ。お前は、いつか必ずデケェ事を成し遂げる…!俺はこれでも人を見る目には自信があるんだ…!勿論、タダでとは言わねェさ!その様子じゃ、行く宛もねェんだろう?面倒なら見てやるから、俺に力を貸しな!悪いようにはしねェ…!ああ、そうとも!こいつは『儲け話』さ‼︎」

 

 

「ッ………!」

 

 

響は俯き、唇を噛んで剣の柄を思い切り握り締めた。

ロックスのような悪人に着いていくなど絶対に嫌だが、確かに右も左も分からないこの世界で、今の自分に行き場所はない。

仮に断ったとしても、それこそ殺されるか野垂れ死ぬかのどちらかだろう。

究極の二択を突き付けられた響は不安と恐怖で泣き出しそうになる心を押し殺しながらロックスに顔を向けた。

 

「分かった。あなたに着いていく」

 

「ハハハハ…!なら「でも!人を傷付けたり殺したりしたら、その時はあたしがあなたを止める!」…!ハハハハ!言うのは簡単だが、俺はガキにやられる程弱くねェ。そうしてェなら精々力をつけて俺を止められるくらいに強くなるんだな…!」

 

こうして、響はロックスと暫しの間共にする事になった。

この後、彼女に降りかかる数奇な運命を彼女自身を含めて知る由もなかった。

 

 

 

 

〜1か月後『海賊島・ハチノス』にて〜

 

 

ハチノス島は別名・海賊島と呼ばれている。

文字通り海賊達が寄り集まる島であるためにそう呼ばれているのだが、だからと言って一般人が居ない訳ではない。

海賊相手に商売をする肝の座った商人達や職人が多数住み着いていた。

しかし海賊達は彼等を襲うという行為をしない。

それはやはり、ハチノスの元締めであるロックスの影響が大きいだろう。

ロックスが画策する『儲け話』を実行に移すには、商人や船大工といった職人達が不可欠だ。

カタギには手を出すな、というロックスの言葉に逆らう者は殆どいない。

逆らったが最後、死ぬより恐ろしい目に合わされるのを皆理解しているからだ。

 

 

 

さて、あれから一月の間に響はロックスの元で様々な事を学んだ。

彼女がいた地球とは全く違う世界。

世界政府、海軍、海賊、天竜人etc…。

海王類という巨大な怪物や一度口にすれば超常的な力を得られるという『悪魔の実』。

悪魔の実の能力者に対抗できる『覇気』という概念。

 

見聞きすること全てが未知の世界だった。

 

 

「ハハハハ…!飲み込みが早ェな!やはり俺の目に狂いは無かった…!」

 

「うーん…でも覇気は難しいな。武装色は意外と簡単に出来たけど、見聞色はまだ少し練習しないとダメみたい」

 

そう言って笑う響にロックスは内心驚いていた。

覇気の習得というのはそう簡単な物ではない。

海軍ですら、覇気を扱える人間は限られる。

使いたいと思って簡単に使える様になる物ではないのだ。

 

 

「(それに僅かだが心を開いてきてるみてェだしな。上手く立ち回った甲斐があったぜ…!)」

 

ロックスはこの一か月間、響の前で一切殺しをしていなかった。

 

ハチノスはロックスが元締めとして指揮っているとは言え、喧嘩を売ってこない輩がいない訳ではない。

ロックスが少女を引き連れて帰ってきたという噂はすぐにハチノスに広がり、ロックスが腑抜けたと勘違いした者達が度々襲ってきていた。

非常に面倒ではあったが、響の目がある場所では殺さないように叩きのめした後、後日落とし前として殺すという事を繰り返していた。

そうとは知らない響は、少なくともロックスが殺しをしていない事で、時折話しかける程度には打ち解けていた。

 

「まあ、これくらいでなきゃ俺の船には乗れねェさ。ハハハハ…」

 

「何か言った?」

 

「いいや、何も。それより、明日はいよいよ俺が完璧に作り上げた『儲け話』をする日だ…!明日はお前も一緒に来い!面白い日になるぞ…!」

 

「………ロックス、何か悪い事考えてる顔してる」

 

「ハハハハ…!明日を楽しみにしてな!それと…明日からは島を離れる事になるだろう。町で楽しんできな!この島でのんびりできんのも、今日で最後だろうからな…!」

 

言うだけ言うとロックスはその場から去っていった。

 

「………確かに最後だって言うなら、何か美味しい物でも買いに行こうかな」

 

 

 

幸い、ロックスから貰った小遣いがある。

食べ物を買うくらいなら訳ないだろう。

そう思いながら、響は歓楽街の方へと足を運ぶ事にした。

 

 

〜ハチノス島・歓楽街〜

 

「おい、アレみろよ…!」

 

「やめとけ、あのガキには関わらねぇ方がいい!ロックスのお気に入りだって噂だぜ!」

 

荒くれ者の海賊達が行き交う中で歩く響の姿は色々な意味で注目の的となっていた。

海賊達の大半は、ロックスに関わりのある響に絡みに行こうとしなかったが、全員がそういう訳ではない。

 

「よォ、お嬢ちゃん。ここはお前みたいなガキの来る所じゃないぜ?気をつけねぇと、こわーいオジサン達に何かされちまうかもなあ…?」

 

「へへへ…!ガキとは言え中々の上玉じゃねぇか!ちょっと遊んだ後、ヒューマンショップにでも売り渡してやるか!」

 

下卑た笑みを浮かべながら、響に近寄る二人の海賊。

相手は年端もいかない少女。

故に彼等は失念していた。

 

 

あのロックスが目をかける少女が、普通な訳がないのだから。

 

 

「へへ、捕まえた…っ⁉︎」

 

「や、やめて下さいッ!」

 

響を捕まえようとした海賊の腕がパシッ!と打ち払われる。

 

「このガキ…!やりやがったな!ぶっ殺してやる!」

 

「ま、待て!こいつ、僅かにだが武装色の覇気を纏ってやがる!」

 

一人が怒りのままに剣を抜くが、もう一人がそれを止める。

確かによく見てみると響の両腕は僅かに黒金色に染まっていた。

 

「ハッ!だから何だってんだ!覇気を使えようが所詮はガキだ!そらッ!」

 

しかし、剣を抜いた海賊はそんな事は知るかとばかりに一瞬で間合いを詰めると、響の腕を掴み上げた。

 

 

「離して下さいッ!離してッ!このッ……!」

 

「痛ェッ⁉︎こ、このクソガキ…!」

 

響は一瞬の隙をついて自身を掴み上げている海賊の腹に打撃を加え、自身を掴み上げている腕を振り解く。

 

「もう頭に来た!死ねェッ!」

 

剣を振り上げ、二人が響に斬り掛かろうとしたその時だった。

 

 

「おい、ハナッタレ共…!くだらねぇ事してんじゃねぇよ…!」

 

 

「な………!」

 

剣を振り上げた海賊の頭を、背後から現れた大男が掴み地面に思い切り叩きつけた。

 

「ガアアアアッ⁉︎て、テメェは!『白ひげ』⁉︎」

 

「や、ヤバイ!逃げるぞ!」

 

突如現れた特徴的な三日月型の白い髭を持つその男…グラグラの実の地震人間である『白ひげ』エドワード・ニューゲート。

 

 

 

懸賞金額10億4600万ベリー。

 

 

 

二人の海賊達は戦意を失い脱兎の如く逃げ出そうとして………その内の一人が、空から前触れなく降ってきた瓦礫に押し潰された。

 

「ギャアアアッ⁉︎お、おい!待て、俺を置いてくんじゃねぇ!」

 

「し、知るか!」

 

瓦礫の下敷きになった海賊は助けを求めるも、無情にも見捨てられる。

 

「ジハハハハ…!哀れなもんだなあ、オイ!このハチノスはお前らみたいな根性なしの三下が来る場所じゃねェんだよ!」

 

笑いながら上空から舞い降りるのは長い金髪の男。

 

彼の名は『金獅子のシキ』。

フワフワの実の浮遊人間であり、白ひげと同じく名の知れ渡った海賊の一人である。

 

 

 

懸賞金額7億4900万ベリー。

 

 

 

「シキ…お前も来ていたとはな。奴の…ロックスの儲け話とやらに釣られて来たのか?」

 

「ジハハハハ!まあそんな所だ!そう言うお前もだろ、ニューゲート!それよりも………」

 

そう言って笑うシキは、呆然とした表情で自身とニューゲートを見ている響に向きなおる。

 

「ガキの癖に、武装色を使えるとは中々見どころがあるじゃねぇか。未熟な覇気だが悪くねぇ!」

 

「えっと…その助けて頂いてありがとうございます」

 

響が頭を下げるとシキはジハハ!と笑う。

 

「礼には及ばねぇさ、ベイビーちゃん。それに助けた訳じゃねぇ。あの程度の実力で粋がってる馬鹿共が気に入らなかったから潰しただけだ。ところで、ベイビーちゃんはロックスのお気に入りなんだろう?奴の儲け話の件で、何か知ってる事はあるか?」

 

うって変わって獰猛な獅子のような目付きで響に問いかけるシキ。

反射的に身体が緊張し、どうしようと響が思っていると、その状況を見兼ねたのか白ひげが割って入った。

 

「シキ、ガキ相手に大人気ねェぞ。その辺にしとけ。お前もあのハナッタレみたいに地面に沈められてェか?」

 

「ジハハハハ!大人気ねぇと言うが、こいつは歴とした情報収集だ。お前にどうこう言われる筋合いはねぇ。お前こそ沈められてぇのか?」

 

ピリピリとした空気がその場に広がる。

互いの視線が交差し、今まさにぶつかろうとしたその時。

 

 

「ちょ、ちょっと!喧嘩しないで!」

 

 

そう言って響が二人の間に入る。

二人は一瞬、驚いたように響を見ながら溜め息を吐いた。

 

「喧嘩はするなってか?ジハハハハ!そんな台詞をこの島で聞く事になるとは思わなかった!興が醒めちまったぜ」

 

「………ったく。俺ァ帰るぞ。それと小娘。お前もこんな所でウロウロせずに家に帰れ。ここはお前がいるような場所じゃねェんだからな」

 

シキは楽しげに笑いながら、白ひげは若干疲れたような顔をしながらその場から去っていく。

 

 

「はあ…何だか一気に疲れた。こういうとき、奏のケーキでも食べれば元気が出るんだけどなあ………」

 

 

溜め息まじりに、かつての親友の名を口にする響。

とある過去が原因で仲違いしてしまっている親友の顔を一瞬思い浮かべ、感傷に浸るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は世界の王になる!さあ、俺について来な!お前らの欲望を俺が叶えてやるよ!ハハハハハ!」

 

 

世界征服を始めようとするかのように(実際その通りなのだが)、集まった海賊達に演説をするロックス。

その姿を傍らで見ていた響は呆れたように溜め息を吐いていた。

 

「世界の王って……流石にどうかと思うんだけど。それに、何の関係もない人達を巻き込むの?」

 

「ハハハハハ…!いいか、響。この世界に生きている時点で、関係ない奴なんざいねェのさ!誰しもが、何らかの関わりを持ってこの世に生きている!それに、この流れは!時代は!誰にも止められねェ!ハハハハハ!」

 

響の問い掛けに、笑いながら答えるロックス。

滅茶苦茶な論理だが、これがロックスという男。

夢という甘美な匂いを振り撒き、人々を魅了し闘争と悪意に駆り立てる非道にして外道。

 

 

『海の魔物』ロックス・D・ジーベック

 

 

懸賞金額25億6900万ベリー。

 

 

 

 

海賊という存在を体現するこの恐るべき人間に、響は今更ながらに恐れを抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロックスを船長とするロックス海賊団。

ハチノスにて結成され、後に世界の禁忌に触れすぎたが為に歴史から抹消される運命を背負う恐るべき海賊団が、不思議な縁によって迷い込んだ一人の少女を乗せて船出するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に離れていく海賊島ハチノス。

それを響は、ロックスの私室の一角にある窓から眺めていた。

 

 

 

 

「ハハハハハ…!浮かない顔だな、響。だが、もう運命の羅針盤は動いちまったんだ…!覚悟を決めな。でねェと………」

 

 

 

 

 

死んじまうぜ?

 

 

 

 

 

 

その姿を後ろで見ていたロックスが笑いながら、そう言って部屋を後にする。

部屋から出ていくロックスに対して振り返る事もなく、響はただ黙って拳を握り締めた。

 

本心で言うと、響にとって当然ながら今の生活は納得のいくものではない。

元の世界に帰りたいし、両親や友達に会いたい。

だが帰る方法が分からない以上、じたばたした所で何も変わらない。

 

 

 

だからこそ、ここで踏ん張らなきゃ女がすたる‼︎

 

 

 

 

「絶対に、絶対に元の世界に帰るから…!必ず帰ってパパとママに会って、そして、そして…………!」

 

 

 

 

 

「奏と………仲直りするんだ!」

 

 

 

 

かつての親友を思いながら、北条響は決意したのだった。

 

 

 

 

 




ロックス・D・ジーベック………ONE PIECE世界に迷い込んだ北条響を成り行きで勧誘したヤバい大海賊。世界の王を目指している。
ゴッドバレー事件でガープとロジャーに敗れるが、その時謎の空間に引き摺り込まれてスイプリ世界に転移。
その後、スイプリ本編のラスボスとの戦いに割り込む形で乱入し、世界を支配する事を響達スイートプリキュアに対して宣言。
真・頂上戦争を始めるんじゃないかな。



北条響………学校帰りに変な空間に引き摺り込まれて、気が付いたら異世界。しかもロックスというヤバい海賊に目を付けられて大変。なんだかんだで海賊団結成からゴッドバレー事件まで付き添う事になる。
最後は現実世界に帰れる。御都合主義で、多分。
帰ってきたら時間が1か月くらいしか進んでなくて戸惑う。
行方不明になってたのは間違いないので、皆から滅茶苦茶心配されてた。
何やかんやで本編時間軸に突入し、プリキュアになった後は覇気とかを使って戦うんじゃないかな。
プリキュアに変身すれば身体能力上がるから、ビッグマムの威国とかも見様見真似で使えるようになるかも。
ロックス海賊団の経験を経ても、善の心は失ってはいない。
ただし、ロックスの影響で敵に対して容赦をしなくなっている。
トリオザマイナー死ななければいいんだが。


南野奏………今回名前だけ登場した北条響の親友。過去にある事がきっかけで喧嘩状態になっている。未だ仲直りはしていない。
響が行方不明になった時は滅茶苦茶動揺した。
でも1か月後、再会できた時はガン泣きした。
再会した後、少し雰囲気が変わってる響に若干戸惑うも、その後何やかんやで本編時間軸に突入し響と一緒にプリキュアになる。
覇気とかを当たり前みたいに使ったり敵を容赦なくボコボコにする響に⁉︎ってなる。


白ひげ………ロックス海賊団のメンバー。後の四皇。スイプリ本編の中盤くらいに何故か現れる。理由は頂上戦争で死んだ後、気が付いたらスイプリ世界にいたみたいな感じ。北条響とはロックス時代に面識あり。
何やかんやでスイートプリキュアの味方につく事になる。

ノイズ(スイプリのラスボス)は死ぬ。

ビッグマム………ロックス海賊団のメンバー。後の四皇。スイプリ本編の中盤くらいに白ひげが現れた少し後くらいに現れる。
北条響とは面識あり。
理由はホールケーキアイランド編で、城が崩壊した時に落下中に謎の空間に引き摺り込まれてスイプリ世界に飛ばされたとかそんな感じ。
何やかんやで南野奏の作ったケーキの旨さに満足して、白ひげとスイートプリキュアの味方になる。

当然ノイズ(スイプリのラスボス)は死ぬ。


カイドウ………ロックス海賊団の見習い。後の四皇。スイプリ本編の中盤くらいに日課の自殺をしていたら謎の空間に引き摺り込まれてスイプリ世界に転移。
北条響とはロックス時代に面識あり。
何やかんやで白ひげとビッグマムと一緒にスイートプリキュアの味方になる。
理由はノイズとやらがどれだけ強いのか確かめる為。

勿論ノイズ(スイプリのラスボス)は死ぬ。



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帰還した北条響とプリキュアへの覚醒

メロディ無双とまではいかないが、取り敢えずゴッドバレーでのロックスとの別れと元の世界への帰還と騒動、そしてプリキュアへの覚醒回を書いてみた。
作者の妄想クロスシリーズ第二弾です。


ロックス海賊団での濃密且つ強烈な日々を過ごしながら、ゴッドバレーという伝説の終わりまでの一連の出来事を経験し、再び現実世界へと帰って来る事が出来た北条響。

 

「ここは………もしかして、加音町?帰ってこれたの………⁉︎」

 

念願だった元の世界への帰還。

呆然としながら、響は暫くの間立ち尽くしていた。

それと同時に、先程までの記憶が蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ…!流石だぜガープとロジャー………あの二人が手を組むとはなァ。まさか敗けるとは思わなかったが…」

 

響がその場にたどり着いた時には、全てが終わっていた。

血みどろの姿で仰向けになっているロックス。

それは、彼が敗北したという事実を物語っていた。

 

「ロックス………!」

 

「あァ…?何でお前が此処にいるんだ、響?お前は島の反対側で戦ってた筈だろ?そんな情けねェ顔しやがって………!」

 

あらゆる感情が入り混じった顔をしながら声を掛ける響に、ロックスはいつもと変わらぬ不敵な笑みをもって返す。

 

「貴方………死ぬの?」

 

「ハハハハハ………どうやらそうみてェだ。見聞色で予知する間でもねェな。所で、少し前に島の4分の1を削った一撃…。アレは………お前か?」

 

「……………」

 

抑揚の無い響の問いに、ロックスは肯定する事で返しながら別の問い掛けをした。

しかし、響はそれに答える事なく、黙しながら哀しげな瞳でロックスを見つめる。

 

「成る程…その様子じゃ、『覚醒』でもしたか?この目で直接見られなかったのは残念だが………ハハハハハ!やはり俺の目に狂いは無かったって訳だ。あの…「貴方は」あァ?」

 

「貴方は…恐ろしくて、傲慢で、残酷で、優しさの欠片もない最悪な人間だった。でも、この世界に飛ばされて右も左も分からなかった私を助けてくれた事には本当に感謝してる。だから一つだけ聞きたいの。どうして、あの時私を引き入れたの?」

 

「おいおい、それが死ぬ一歩手前の人間に聞く事かァ?ハハハハハ…まあ構わねェが………強いて言うなら『気まぐれ』さ。魔物だ何だと言われたが、俺だって身体一つの心臓一つ………何処にでもいる唯の人間だ。ムカつく奴は殺すし、楽しけりゃ笑う………気まぐれでガキの面倒を見たりだってするんだよ。分かってんだろ…ガハッ…⁉︎」

 

「ロックス⁉︎」

 

死にかけの人間とは思えない程にロックスは饒舌に話すも、身体が限界を迎えて来たのか、口から吐血して咳き込んだ。

それを見た響は、思わずロックスの傍に駆け寄る。

 

「ハハハ…随分長くお喋りしたが、とうとう終わりみてェだ。ここでお前とはお別れだ。短い間だったが、お前との海賊生活………悪くなかったぜ」

 

ロックスは最後の力を振り絞って、響の頭に手を置いてゆっくりと撫でる。

彼から告げられる別れの言葉に、響は涙を流しながら同じように別れの言葉をかけた。

 

 

 

 

 

「さようなら、ロックス・D・ジーベック。そして………ありがとう」

 

 

 

 

 

その言葉を聞いたロックスは、満足気に目を閉じようとして………突如頭に流れ込んできた、未知の光景に目を見張った。

見聞色の覇気を使った訳ではない。

更には、自分を覗き込む響の背後でピシピシ!と軋みを上げる謎の空間の裂け目が現れている。

 

 

 

 

「ええッ⁉︎ちょ、これ何⁉︎」

 

 

 

 

それと同時に響は空間の裂け目に吸い込まれてしまう。

 

 

 

 

それを見ていたロックスは、まあ大丈夫だろうと確信を持った凶悪な笑みを浮かべた。

何故か?

その理由は、彼が先程見た物。

それは、この世界ではない別の場所で何者かと戦う響の姿。

ハート形の何かを取り出すと同時に、姿が変わり別人のようになる。

その傍らで一緒になって戦っているのは彼女の仲間なのだろう。

白い猫のような生き物と出会い、親友の少女や新たな仲間達と共に、世界の平和を守る為に戦う未来。

 

立ちはだかる敵を武装色で黒く染めた棒のような物(ミラクルベルティエ)でぶっ飛ばし、時には空の上から炎の雨を降らして天災を振り撒いたかと思えば、白ひげ・ビッグマム・カイドウ・シキを含めた面々で巨大な怪物をリンチする響。

 

 

 

 

 

そして、その果てに見た『ある光景』を思い出したロックスは。

 

 

 

 

口元を歪めて最後に大きく笑った。

 

 

 

 

「ハハハハハ!ハーッハハハハハハハハハハ‼︎またな(・・・)、北条響!いや………キュアメロディ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、一つの伝説が幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、物語は冒頭に戻る。

 

 

 

 

 

「そうか…本当に戻って来れたんだ…!」

 

 

あの世界から現実世界に戻って来れた事をようやく受け入れた響。

 

「あ!でも帰ってきたのは良いけど、どうしよう………。あれから1年以上経ってる訳だし………。パパやママや皆に何て言えば…」

 

うーん、と適当な言い訳を考える響。

しかし1年も行方不明になっていた事をどう説明すれば良いのか。

別の世界でロックスというヤバい海賊に拾われて海賊やってました何て言える訳もない。

 

「そうだ!記憶喪失になって1年放浪してましたって言おう!多分何とかなるでしょ。ここで決めなきゃ(言い訳を)、女がすたる!」

 

 

グッ!とガッツポーズを決めながら、決意する響。

その時だった。

 

 

 

 

「ひ………びき?響………なの?」

 

 

 

忘れる筈もない、少女の声が背後から聞こえる。

 

 

「か………なで?」

 

 

 

 

振り返った先には、北条響のかつての親友………南野奏が口元を手で抑えながら、涙を潤ませ立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!」

 

 

「ちょ、奏⁉︎」

 

 

 

買い物帰りだろうか、手に持っていた手提げ袋を放り出して響に全力で抱き着いてくる奏。

何とか踏ん張って倒れる事だけは耐えた響は、自分の胸に顔を埋めて泣きじゃくる奏の頭をそっと撫でた。

 

「ただいま、奏」

 

「ただいま、じゃないわよバカ!今まで一体何処で何してたの⁉︎響のお父さんとお母さんも、学校や街の皆もどれだけ心配してたか………!」

 

そう言って泣きながら喚く奏に、響はちょっとだけ意地悪な質問をする。

 

 

「奏は私の事を心配してくれなかったの?」

 

「心配したに決まってるでしょう⁉︎当たり前じゃない‼︎響のバカ!もう知らないんだからあ!」

 

 

顔を泣き腫らしながらプンスカと怒る奏に、響も調子に乗り過ぎたと思ったのか素直に謝る事にした。

 

「えっと………その、心配かけてごめん」

 

「ごめんじゃ済まないわよ!本当に心配で心配で、私………!1ヶ月も何処に行ってたの⁉︎」

 

「そ、それは、その何というか………って、あれ?1ヶ月?1年じゃなくて?」

 

「そう!1ヶ月!」

 

「そんな事って………いや、うん。まあいいか」

 

確かにあの世界で1年過ごした筈なのに、こちらでは1ヶ月しかたっていない事に疑問を覚えた響だったが、まあいいかと自分自身を納得させるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから更に数ヶ月後。

 

 

 

 

 

 

元の世界に無事帰還した北条響だったが、とにかく当初は大変だった。

何せ、1ヶ月行方不明になっていたのだ。

警察からは事情を聞かれ、両親からは泣きながら問い詰められ、学校の皆からはある事ない事噂され、ドタバタであった。

取り敢えず、記憶がないですの一点張りで押し通したが、その所為で病院で検査を受ける羽目になってしまった。

おまけに1ヶ月間の学業の遅れを取り戻す為、奏に手伝って貰いながら全力で勉強する事に。

 

 

色んな意味で響は疲れてしまっていた。

 

 

 

「………決めた。今日は彼処に行こう」

 

 

 

学校からの帰り道、響は家には帰らず海岸へと向かう。

 

 

「あれ………?響ってば、何処に行くんだろう?あの方角は響の家とは反対なのに…」

 

 

その姿を見た奏に後を付けられながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加音町は海に面している為、海岸や砂浜が当然ある。

ただ、夏ならともかく今の季節は冬である為、近づく人間は殆どいない。

 

周りを見渡した響は、誰もいない事を確認する。

 

 

そして。

 

 

 

 

 

「行くよー…………せーのっ!うおらあっ‼︎

 

 

 

 

 

 

武装色で染まった拳がドパアッン‼︎と、盛大な音を立てて砂浜に叩きつけられ、小さなクレーターが出来上がる。

 

 

 

「ふぅ………スッキリした。ストレス発散には武装色パンチが1番だよね」

 

 

 

ロックスにいた頃、自分によく喧嘩をふっかけてきたカイドウという見習いに対して、お返しとばかりにこれでやり返していた事を思い出して笑う響。

 

 

 

 

「(え?え?…今の何?響が地面を殴ったらクレーターが出来て?ちょっと待って、意味が分からない)」

 

 

 

その姿を隠れながら見ていた奏は、目の前で起こった光景が信じられず混乱する。

翌日、奏はその件で響に聞こうとするが中々聞く事ができず悶々とするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてーーーーーーーー運命の日が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ〜て、音符は何処かしら?」

 

 

 

辺りを見渡す一匹の黒猫。

彼女の名はセイレーン。

マイナーランドの歌姫である。

彼女の目的はただ一つ、メイジャーランドの女王アフロディテが散らばらせた伝説の楽譜の音符を回収し、不幸のメロディを完成させて歌う事。

そのために、セイレーンはトリオ・ザ・マイナーという3人の部下を引き連れて人間界へと渡り来た。

 

運の良い事に、最初に訪れた廃墟のような館でハートのト音記号を宿す少女に出会う事が出来たのもあって、気分は上々。

後はト音記号を目の前の少女から取り出して音符を集めるだけ。

所が、ここで予想外の出来事が起こる。

 

ト音記号を取り出そうとした瞬間、バチッ!とセイレーンの手が弾かれたのだ。

更に、目の前の少女の雰囲気が変わる。

 

 

 

「何をしたのか知らないけど、敵だっていうなら容赦しないからね」

 

 

 

そう言うと同時に少女の両腕が黒く染まり、空気が変わった。

反射的にセイレーンが飛び退くと、次の瞬間には少女の拳が壁に減り込み轟音を立てる。

セイレーンは慌てて外へと飛び出し、トリオ・ザ・マイナーに合流。

其処にレコードを持った2人目の少女…奏が現れたが、構っている余裕はセイレーンに無かった。

 

 

 

 

 

「奏!そいつらから離れて!」

 

「響⁉︎こ、これどう言う事⁉︎」

 

 

 

 

 

館の扉を吹き飛ばして現れた響に、目を丸くしながら奏が問い掛ける。

その時、突然上空から白い猫が降ってくる。

白い猫…メイジャーランドの歌姫であるハミィと、音の妖精であるフェアリートーンに驚く奏だが、前にいた世界で様々な生き物を見た経験がある響は、然程驚く事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「良い所に音符が…!出でよ、ネガトーーーーーンッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「ネガトォォォーーーーーンッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしている内に、セイレーンは奏の持っているレコードに宿っていた音符をネガトーンへと変化させる。

しかし、それが響と奏の怒りに触れた。

 

 

 

 

 

 

「あの大切なレコードを………!」

  

 

「あんな怪物にして………!」

 

 

 

 

 

 

 

 響と奏が呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「街を襲うだなんて……絶対に許さない!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が叫ぶと同時に、胸から光り輝くハートの形をしたト音記号が浮かび上がり、白を基調としたハートの形の物に変化する。

それを手に取り呆然とする二人。

 

 

 

 

 

 

「「何これ………」」

 

 

 

 

 

 

「あんた達、本当に何者………ッ⁉︎」

 

セイレーンは茫然自失となっていたが、ハミィだけがその答えを知っていた。

 

 

「ニャプニャプ〜!やっぱりそうニャ、この二人は伝説の戦士プリキュアニャ!」

 

 

喜ぶハミィを他所に、響と奏は互いの視線を合わせると頷き合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!」」

 

 

 

 

 

   

 

 

 

2人の姿が光に包まれ、変化していく。

そして光が収まると、響と奏が名乗りを上げる。

 

 

 

 

 

 

 

「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」

 

 

「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「届け!二人の組曲!スイートプリキュア!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フ、フンッ!伝説の戦士だから何だってのよ!ネガトーン、その2人を叩き潰しな!」

 

 

 

セイレーンは動揺しながらもネガトーンに指示を出す。

幾ら伝説の戦士だと言えども、所詮は戦いの経験もない素人。

ましてこちらはネガトーンだけでなく、自分とトリオ・ザ・マイナーという数の有利もある。

 

 

 

 

 

 

だから、こんな戦いは余裕を持って勝てる………などという甘い予測は、一瞬で覆される事になった。

 

 

 

 

 

変身した響………キュアメロディが懐から何かを取り出す。

伸縮性の警棒のようだ。

隣にいる奏………キュアリズムも何でそんなもの持ってるの?と言いたげにメロディを見る。

 

 

 

「何をするつもりかと思えば、そんなチャチな棒でネガトーンに勝てるとでも思ってるのかしら?」

 

「絶対に無理〜♪」

 

 

セイレーンが嘲笑し、トリオ・ザ・マイナーが後に続く。

 

 

 

 

それを意に介する事なく、メロディは警棒をグッ!と振りかぶり、ネガトーン達を見据えた。

 

 

「見様見真似だけど、技を借りるよリンリン………!食らえ、エルバフの槍ーーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それは放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「威国‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴバアッ‼︎と空気が炸裂するような破壊音と共に、恐るべき一撃がネガトーンを襲った。

 

 

 

 

 

「ネガアアアアアアッ⁉︎」

 

 

 

 

「ネガトーンッ⁉︎な、な……⁉︎」

 

 

 

 

 

放たれた一撃はネガトーンの片腕をアッサリと消し飛ばし、地面は槍で抉ったかのような惨状と化していた。

余りの事態に、セイレーン達は何が起こったのか理解が追いつかない。

 

 

 

 

「うーん…コントロールが難しいなあ、この技。腕を武装色で纏った上で使ってこれか………。巨人族でもないのに、こんな技を片手間で使うリンリンってホント反則………!」

 

 

 

 

そんなセイレーン達を余所に、この場には居ないお菓子好きの女性を思い出しながら呟くメロディ。

 

 

 

「じょ、冗談じゃないわ!あんな化け物の相手なんかしてられないっての!アンタ達、一旦退くわよ!」

 

 

「さ、賛成です〜♪」

 

 

 

勝ち目がないと悟ったのか、セイレーンとトリオ・ザ・マイナーは瞬間移動で撤退していった。

 

 

 

 

 

残されたネガトーンがその後どうなったのか………態々語るまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ロックス・D・ジーベック………ゴッドバレー事件にて、ガープとロジャーのコンビに敗れ去る。死ぬ間際に北条響と別れの言葉を交わすが、その直後に響がプリキュアとなる未来と、それに伴う『ある光景』を見た事で意味深な一言を残して、大笑いしながらゴッドバレー島と共に消滅した。果たして本当に死んだのか?


北条響………ゴッドバレー島にてロックスの最期を見届け、別れの言葉を交わしたが直後に空間の裂け目に吸い込まれ帰還。
まあ、御都合主義ですね、ハイ。
因みに奏と再会した後、喧嘩の原因となっていた入学式での件を話し合って和解。
最近ストレス発散として砂浜で小さなクレーターを作る武装色パンチをしていたが、後にテレビやネットで宇宙人の仕業か⁉︎などと報道された為自重するようになる。
何やかんやでプリキュアに覚醒する。
ミラクルベルティエは鈍器だと当初は真剣に思っていた。
もし暇があったらロックス海賊団時代の話を書くかも知れない。
同じロックス海賊団のメンバーであるビッグマムことシャーロット・リンリンに南野奏の話をした事で、シュトロイゼンの作るお菓子と奏の作るケーキのどちらが美味しいかで言い争いになるが、何やかんやで仲良くなった。
理由としては、リンリンも響も食べる専門なので話が合ったから。
ロックスの物言いから察するに、何かの実を食べて覚醒させている?


南野奏………北条響の親友。響の帰還時に鉢合わせ、大号泣した。
入学式での一件については後に和解。仲良しに戻りました。
ある日、響の後をつけていったら武装色パンチをしている場面を見てしまい、⁉︎となる。後にテレビやネットで報道された時、たまたま町に取材に来ていたテレビのインタビューを受けて滅茶苦茶動揺し、危うく真相を口走りそうになった。
因みに、響から奏の作るカップケーキの事を聞いていたシャーロット・リンリンに、会った事もないのに目を付けられている。
もしリンリンが加音町に来たら大量のカップケーキ作る事になりそう。
息子やるからウチに来いよ!とか勧誘されて大変。
頑張ってくれ。


カイドウ………名前だけチラッと登場。ロックス時代、事あるごとに北条響に喧嘩をふっかけていた。理由は特にないが、ロックスに近しい奴だから強い筈だろ!という感じ。要は強い奴と戦って自分を鍛える為。響からは手のかかる弟のように思われていたようだ。
リンリンから姉と呼べ!と一方的に言われ続けて迷惑していた。
正直、姉にするならリンリンより響の方がいいと思っている。
後の四皇。



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暴食の女王と北条響

作者の妄想シリーズ第三弾。


〜新世界・ホールケーキアイランド〜

 

 

四皇・ビッグマムの治める国『万国(トットランド)』の中心部であるホールケーキアイランド。

あらゆる物がお菓子で構成され、様々な種族が入り乱れるこの島は今、騒乱に包まれていた。

 

 

 

 

「皆、逃げろ‼︎緊急事態発生だ‼︎」

 

 

 

 

張り詰めた声。

平和そうにしている町の人々は、何事かと首を傾げ………シャーロット家の子供達が切羽詰まる顔をしているのを見て、全てを察した。

 

 

 

 

 

 

「プチフ〜ル‼︎」

 

 

 

 

 

 

「うわああああああ〜っ‼︎女王様の食いわずらいだァ〜〜〜〜‼︎」

 

 

悲鳴を上げながら逃げ惑う町の人々を尻目に、ドカァンッ‼︎と地響きを立てながら、巨大な老婆が降り立つ。

彼女こそ、この『万国(トットランド)』を統べる怪物。

 

 

 

 

 

四皇・ビッグマムこと『シャーロット・リンリン』

 

 

 

 

 

懸賞金額43億8800万ベリー

 

 

 

 

 

 

「ママ!ママ!ここはヤバいって!町の皆が住んでる中心部だ!」

 

「止めたってムダムダ。この状態のママには何を言っても意味ないって」

 

 

猛獣のように暴れ狂うビッグマムを、彼女のホーミーズである太陽『プロメテウス』が宥めようとするが、もう片方のホーミーズである雷雲『ゼウス』は諦めた顔をしながら傍観していた。

 

 

 

「全く…!またママの発作か!今回のお題は何なんだ、ペロリン?」

 

 

 

騒ぎを聞き付けてやってきたシャーロット家の長男『ペロスペロー』が額を押さえながら、近くにいた弟のカタクリに問いかける。

 

 

「お題はプチフールらしい。さっき広場で叫んでいた」

 

「プチフール?スポンジケーキとバタークリームを何層にも積み重ねた一口サイズのカップケーキの事か?」

 

「ああ。だが問題ない。プチフールなら城の貯蔵庫に幾つかストックがある。既に連絡して今持ってこさせている途中だ」

 

「そうか………なら今回は被害が少なくて済むだろうな、ペロリン………」

 

やれやれ、と溜め息を吐きながら滅茶苦茶に壊されていく町をただ眺めるしかないペロスペロー。

 

「………⁉︎不味い!ママ、其処から離れるんだ‼︎」

 

「どうした、カタクリ⁉︎」

 

 

 

鍛え上げた見聞色の覇気で未来を見たカタクリが、ビッグマムに叫ぶ。

それと同時にピシピシッ!と空間が裂けると、あっという間に広がりビッグマムを飲み込む。

それを阻止せんとカタクリはモチに変化させた腕を伸ばすが………後一歩という所で間に合わず、ビッグマムを飲み込んだ裂け目はあっという間に閉じてしまった。

 

 

「ママ………!間に合わなかったか………!」

 

 

ビッグマムが消えた事で、街がこれ以上壊される事はなくなった。

彼女が何処へ消えてしまったのか………それは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイレーンが、マイナーランドから人間界に渡り来て数ヶ月。

今日も音符探しは然程進まず、上司であるメフィストに小言をくらっていた。

 

 

 

『セイレーン!この所、音符集めが捗っていないようだな?何故だ?』

 

「も、申し訳ございませんメフィスト様。近頃、先日申し上げた伝説の戦士プリキュアに妨害されて思うように音符集めが進まず………」

 

 

 

セイレーンの脳裏に、毎度毎度現れては音符集めを邪魔してくる2人の姿が浮かぶ。

その2人の内、桃色の髪をした少女………キュアメロディを思い出したセイレーンは思わず身震いした。

特に、あのキュアメロディというプリキュアはヤバい。 

以前もプリキュア同士の仲を引き裂く為に人間の少女に変装したのだが、何故か秒でバレてしまった挙句追いかけられる羽目になり、結局偶々近くにあった音符をネガトーンに変えて戦わせている間に撤退する事となってしまった。

 

 

『こっちに帰って来てからも見聞色を鍛えておいて良かった。今日こそ捕まえてあげるから覚悟して』

 

 

凄く良い笑顔でよく分からない台詞を言ってきた時は真剣に怖かった。

夢に出そうだ。

しかも、あのプリキュアはミラクルベルティエという武器を手に持ち、元々の色が分からないくらい真っ黒に染め上げたかと思うと、それを鈍器代わりにして殴ってくるのだ。

どう見てもそれはそう言う使い方じゃないでしょ⁉︎と思いながらも、毎回殴られまくるネガトーンを眺めている事しか出来ないセイレーン。

現実は非情である。

それを見ているハミィも、ベルティエはそう言う使い方じゃないニャ〜!と叫んでいた。

とにかくアレにはあまり会いたくない。

 

 

 

『セイレーン!聞いているのか⁉︎』

 

「も、勿論!次こそは必ず大量の音符を集めます!」

 

『フン!その台詞は聞き飽きた。しかし、ネガトーンだけでなくお前達をも圧倒するとなると………やはり、プリキュアは最優先で排除すべきだな』

 

 

そう言ってメフィストは顎に手を当てて考える。

 

 

『………よし!決めたぞ。俺も人間界へ行く!俺を含めた全員でやれば、プリキュアとて一溜りもないだろうからな!』

 

 

ハッハッハ!と笑うメフィスト。

それを見ていたトリオ・ザ・マイナー達は聞こえないように呟き合う。

 

 

「そんな上手くいくんでしょうかね?どう思います、バスドラ?」

 

「俺に聞くな、バリトン。メフィスト様が来るなら流石に勝てる筈だろう。………負けるかも知れんが」

 

 

下手するとメフィスト様死ぬかも………とトリオ・ザ・マイナーは思いながらも、人間界に来るメフィストを迎える為の準備を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出でよ、ネガトーーーーンッ‼︎」

 

「ネガトォーーーーーーーーーンッ‼︎」

 

 

先日、ベルティエが初めて出現した海岸でセイレーン達とキュアメロディ・キュアリズムのプリキュア達が激突する。

 

 

「また懲りずに来たのね、セイレーン!何度来ても結果は同じよ!もう、悪い事なんてやめて帰りなさい!音符は渡さないんだから!」

 

「そうニャそうニャ〜!セイレーンも悪い事はやめてハミィと一緒に幸せのメロディを歌おうニャ!」

 

 

リズムがビシッ!とセイレーン達を指差しながら宣言し、ハミィも乗っかる形でセイレーンに声を掛ける。

 

 

「やっかましいわ!ハミィ、アンタの天然っぷりにはもうウンザリよ!今日こそ、アンタ達プリキュアを倒して音符を全て頂いてくわ!覚悟しなさい!」

 

 

いつになく強気なセイレーン。

リズムはその姿に僅かながらに違和感を覚え、隣のメロディに声を掛けようとする。

 

 

「メロディ?セイレーンだけど、何か企んでるかも知れないから注意して………ってどうしたの、メロディ?空なんて見上げて」

 

「え?いや、なーんか嫌な予感がするんだよね………」

 

じっ…と空を眺めて立っている親友につられてリズムも空を見上げる。

しかし、何もある筈がなくリズムは溜め息を吐いた。

 

「もう、変な事言わないで。メロディの予感って何故かよく当たるじゃない。もし何か起きたら………」

 

「大丈夫大丈夫。その時は私が何とかするからさ」

 

「何とかするって………全くもう。メロディは何時もそうなんだから」

 

ニコっと笑って親指を立てる親友に苦笑するリズム。

 

「いつまで喋ってるつもりかしら?今日の私達は一味違うのよ?さあ、メフィスト様!出番です!」

 

 

セイレーンが叫ぶと、先程まで居なかった男が現れる。

今までの敵とは違う強大な雰囲気を纏う男に、リズムは思わず身構える。

その男は笑みを浮かべながら前に進み出て、

 

 

 

「フッフッフ!ようやく俺の出番か!よく聞け、プリキュアども!俺は、マイナーランドからやってきたメフィ「プチフ〜ル‼︎」ぶふぉばあっ⁉︎」

 

 

 

台詞を言い切る前に、上から降って来たピンク髪の巨大な老婆に押し潰された。

 

 

 

 

「プチフールを持って来い〜〜〜〜‼︎」

 

 

 

暴食の女王が、咆哮を挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メフィストを押し潰しながら現れたビッグマム『シャーロット・リンリン』。

その姿を見たメロディも、流石に驚きの表情を浮かべる。

 

 

「嘘………もしかしてリンリン⁉︎随分見た目が変わってるけど………って、まさかとは思うけど『食いわずらい』⁉︎それにゼウスとプロメテウスまで⁉︎」  

 

『あれ?何で、おいら達の事知ってんだ?』

 

メロディの声に、リンリンの側にいる雷雲『ゼウス』が訝しげに問い掛ける。

分からないのも無理はない。

プリキュアに変身している時の格好は、普段の響とは違う姿であるからだ。

 

「ああ、この姿じゃ分からないか。私の事覚えてない?響だよ、北条響。ほら、ロックスにいた頃一緒にいたじゃない」

 

『え⁉︎何か姿が大分違うけど、その声と気配は確かに響だ!久しぶり〜………じゃなくて!見ての通り、食いわずらいなんだよ!ママを何とかしてくれ!今回のお題は『プチフール』なんだ!』

 

メロディが名乗った事でようやく合点がいったという感じのゼウスとプロメテウス。

しかし、そんな事を言っている場合ではない事を思い出し、響にリンリンを止めるよう頼んできた。

 

 

「言われなくても何とかするよ。リズム…つまり、奏がね‼︎

 

 

 

 

「私⁉︎」

 

 

 

 

「うん。プチフールってカップケーキでしょ?だったら奏の得意分野だし、問題ないと思ったから」

 

 

 

急に自分の名前が出された事にリズムは困惑。

この流れで自分に振られるとは思ってなかったのか、素っ頓狂な声で叫んでしまった。

そんなリズムの気持ちを知ってか知らずか、メロディはリズムの方を見ると、いつになく真剣な声色で話す。

 

 

 

「リズム、良く聞いて。あの大きな女の人は、シャーロット・リンリンっていう名前の私の知り合い。因みに、リンリンの側で彼女を止めようと頑張ってるのがリンリンの『魂』を直接与えられた特殊なホーミーズの雷雲『ゼウス』と太陽『プロメテウス』。で、今どういう状況かと言うと、リンリンは『食いわずらい』っていう発作を起こしてる。一旦これになると、食べたい物を口にするまで見境なく暴れ回るの。ここまではOK?分かった?」

 

 

 

「うん。ごめん、全然分かんない」

 

 

 

一気に捲し立てられたリズムは話についていく事が出来ない。

『食いわずらい』って何その傍迷惑極まりない発作は⁉︎とか、魂を与えられた太陽と雲って何よ⁉︎とか、そもそもあんな巨大な人間がいるの⁉︎等といった疑問が次々と湧いて出てくる。

 

 

「要するに!リンリンをあのまま放置しておくと、加音町が滅茶苦茶に破壊されるって事!だからリズムは、今すぐラッキースプーンに戻って『プチフール』を作って!プチフールを食べさせれば治る筈だから!」

 

「え、ええ…うん、そう………よく分からないけど、分かったわ!プチフールを作って持って来れば良いのね?」

 

 

もう何が何だかよく分からなくなってきたリズムは、考えるのをやめて無理矢理自分を納得させる。

それはそれとして、メロディはどうするのだろうか?

気になったリズムは聞く事にした。

 

 

「メロディはどうするの?ネガトーンも居るのに」

 

「私?私はリズムがプチフールを持って来てくれるまでの間、リンリンを足止めするよ。それにネガトーンは………」

 

 

チラ、と視線を向けるとリンリンに足を掴まれて振り回されているネガトーンの姿が目に入る。

 

 

 

「プチフールは何処だァ〜‼︎」

 

「ネガァァァァァァッ⁉︎」

 

 

 

「………放って置いても大丈夫でしょ。あれじゃ当分動けないだろうし。それじゃ、リズムはプチフールをお願いね‼︎」

 

 

「メロディ‼︎………全くもう。メロディったら、言うだけ言って行っちゃうんだから。いいわ、待ってて。直ぐに最高のプチフールを持って来るから‼︎それまで無事でいてよね‼︎」

 

 

互いに背を向け、それぞれの成すべき事を成すために走り出す。

失敗は許されない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママママ…!プチフールを寄越しな………!」

 

 

「ふ、ふふふ巫山戯るんじゃないわよ‼︎そんなもの、持ってる訳ないじゃない‼︎」

 

 

 

セイレーンは、メフィストとネガトーンをアッサリと叩きのめした目の前にいる謎の老婆に迫られ、完全に怖気付いてしまっていた。

なけなしの勇気を振り絞り、虚勢を張ってみせるが腰が引けてしまっている。

無理もない。

セイレーンには知る由もないが、彼女の目の前にいるのは四皇と呼ばれ恐れられる怪物『ビッグマム』なのだから。

 

 

 

「バリトン、ファルセット!セイレーンがあの婆さんを引き付けている間にメフィスト様をお助けするぞ‼︎」

 

「了解〜♪」

 

 

 

その隙に、バスドラ達トリオ・ザ・マイナーは地面にめり込んでいるメフィストを助ける為にビッグマムの相手をセイレーンに任せてその場を離れようとする。

 

 

 

「あ、コラ!アンタ達、私を置いて逃げんじゃないわよ⁉︎「何処に行く気だい………?」ガッ⁉︎」

 

 

 

それに気付いたセイレーンが、咎めながら追おうとして………ビッグマムの伸ばした巨大な手に鷲掴みにされた。

そして、ビッグマムの口からセイレーンへと、恐怖の宣告魂への言葉(ソウルボーカス)が放たれる。

 

 

 

 

 

 

ライフ((寿命))オアトリート((お菓子))………⁉︎」

 

 

 

「あ………あ……!」

 

 

 

 

 

ズズ…!と白い靄のようなものがセイレーンの身体から溢れ出す。

これが、ビッグマム『シャーロット・リンリン』が宿すソルソルの実の能力。

自身に臆した相手から、寿命を奪う事が出来る脅威の力。

 

 

 

 

 

 

 

「(死ぬーーーーーーーー!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『響打(きょうだ)』‼︎」

 

 

 

 

 

ビッグマムの手がセイレーンから溢れ出た寿命に触れようとした瞬間に、何者かがビッグマムの横っ腹に強烈な掌底を打ち込んだ。

かなりの衝撃だったのか、ビッグマムの身体が僅かに後退して手に掴まれていたセイレーンが解放される。

 

 

 

「ハア…ハア!どうしてアンタが………⁉︎」

 

 

 

「セイレーン、今の内に逃げて!貴方を守りながら『食いわずらい』のリンリンを止めるのは流石に厳しいから!」

 

 

 

何故、自分を助けたのかと問うセイレーンに、ビッグマムに掌底を加えた人物………キュアメロディはセイレーンの方を振り返らず、意識をビッグマムに向けたまま言い放つ。

今まで、ネガトーンや自分達にも一度も見せた事がない緊張感の篭ったメロディの声に、セイレーンは僅かに驚く。

 

 

 

 

「……………っ!言われなくてもそうするわ!た、助けてくれた礼なんて言わないから!」

 

 

 

 

そう言って、セイレーンは全速力で逃げていく。

 

 

 

 

 

 

「グッ…………ウ!テメェは………!」

 

 

 

「久しぶりだね、リンリン。リズムがプチフールを持ってくるまで、ちょっと付き合って貰うから………!」

 

 

 

 

 

自分を殺意を込めた眼差しで睨み付けるビッグマムの視線を受け流しながら、キュアメロディは不適に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プチフールを寄越せェ〜!寄越さねェなら死になァ!」

 

『逃げろ、響!俺はママには逆らえないんだ!』

 

 

 

先に動いたのはビッグマム。

徐に、傍らのプロメテウスに手を伸ばすとガシィッ‼︎と掴み、そのまま勢いよく振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

天上の火(ヘヴンリーフォイアー)ァ〜〜〜〜‼︎」

 

 

 

 

 

 

灼熱の太陽が炸裂し、辺りを劫火で染め上げる。

寸での所でそれを躱しながら距離を取るメロディ。

 

 

 

「相変わらず化け物だね、リンリン!だったらこっちも、出し惜しみ無しで一気に行くよ!」

 

 

メロディは両手を胸の前で翳した。

 

 

「奏でましょう、奇跡のメロディ。『ミラクルベルティエ』!おいで、ミリー!」

 

 

「ミミー‼︎(真っ黒に染められるのは正直勘弁してほしいミミ…)」

 

 

メロディの呼び掛けに、若干の愚痴を心内で漏らしながらベルティエに収まるフェアリートーンのミリー。

ミリーがベルティエに収まるのと同時に、メロディは懐から伸縮式の警棒『奏』を取り出す。

右手にベルティエ、左手に『奏』を握るメロディは両方の武器を武装色の覇気で染め上げた。

 

 

「(やっぱりこうなるミミ………)」

 

 

浄化技を使う時以外は基本ベルティエを鈍器として使うメロディに、最初こそ使い方が違うと言っていたフェアリートーン達だったが、最近はそれを言うのも諦めていた。

最も、ハミィはまだ諦めずに言い続けているが。

 

 

 

 

 

天上(ヘヴンリー)のボンボン‼︎」

 

 

 

 

 

リンリンが手に持つプロメテウスから、複数の火球が放たれる。

自身を狙って飛んでくる火球を、メロディは落ち着いた動きで躱しながら着実に距離を詰めていく。

 

 

「ちょこまかと逃げるんじゃねェよ!ナポレオン…刃に移りな……!

 

 

リンリンが頭に被っている二角帽が変化し、一振りの剣になる。

彼女はその剣にプロメテウスを纏わせ両手で振りかぶると、近づいてくるメロディに対して一気に振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

皇帝剣(コニャック)破々刃(ハハバ)ァ〜〜〜‼︎」

 

 

 

 

 

 

轟音が炸裂し、周囲を攻撃の余波が駆け巡る。

四皇の凄まじさを知らしめるような一撃。

 

 

「あァ〜⁉︎」

 

 

しかし、手応えがなかった事にリンリンは不思議に思いながら振り下ろした剣を見て………メロディの姿がない事に気付いた。

 

 

 

 

 

「私はこっち!これでも食らって大人しくしてなよリンリン!『攻響曲第1節』………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『脚音(アシオト)』‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「ウッ…………⁉︎」

 

 

攻撃を避けて上空に飛び上がっていたメロディは、空気が弾けるような音を出しながら、強烈な踵落としをリンリンの頭に食らわせた。

食らわされた衝撃の大きさに、リンリンの巨体を支える足が僅かに地面に沈む。

 

 

「まだまだ行くよ!雨音時雨(レインバースト)!」

 

 

 

続け様にメロディから豪雨のような音の衝撃波が放たれる。

 

 

 

「鬱陶しいねェ………!無駄な事してないで、さっさとプチフールを持って来いよォ‼︎」

 

 

「分かっちゃいたけど、全然効いてないか。だったら!」

 

 

 

雨嵐のような音の弾幕を食らっても無傷のまま立っているリンリンの姿に呆れながら、メロディはベルティエと『奏』を構えた。

リンリンもナポレオンをグッ!と構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「食らえよ、エルバフの槍ーーーー‼︎」

 

 

「奏でる音の一撃ーーーー‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『威国』‼︎」

 

 

「『奏天』‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音が、加音町を揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グララララ………!懐かしい気配(・・・・・・)じゃねェか!ちょっと行ってくるぜ、音吉」

 

 

「そうか。あの娘は君の知り合いか。なら、あの強さも納得だな。芯の強い音を感じる。ズレとる事もない」

 

 

「当然だ………!そうでなけりゃ、あの船でやってけねェよ…グララララ!」

 

 

 

そう言って、特徴的な三日月形の白い髭を生やした大男………『白ひげ』エドワード・ニューゲートは、『調べの館』の管理人である音吉に対して大きく笑いかけると、その場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ビッグマム………お菓子の帝国『万国』の女王にして四皇。本名シャーロット・リンリン。今回は、『食いわずらい』を発症して暴れ回っていた所を謎の空間の裂け目に吸い込まれ、カッコよく登場シーンを決めようとしていたメフィストを上から押し潰す形で、キュアメロディ達の前に現れた。相変わらずの化け物とメロディに称される程の、耐久力と攻撃力の高さを見せ付ける。
響の事を認識しているかは不明。
ONE PIECE世界におけるハ○ナス。
若しくはラ○キー。


北条響………またの名をキュアメロディ。今回は突然現れたリンリンに驚くも、直ぐに現状を把握しリズムに『プチフール』を作るよう頼んだ後、暴れるリンリンを止める為に戦闘に突入。
今話で明かされてはいないが、彼女は超人系悪魔の実『ジックジックの実』を食べたミュージック人間。
あらゆる音を出せるので、楽器無しで演奏が出来る。
覚醒していないと、正直攻撃手段として使うには大したことない能力。
響はこの能力をゴッドバレー事件の時に覚醒させ、『音の振動による衝撃波』を生み出す事で攻撃に転用している。
元の世界に戻ってからも、能力の鍛錬をしていた。


セイレーン………被害者その1。ビッグマムに虚勢を張るが、流石に相手が悪過ぎた。泣いて良い。
魂への言葉(ソウルボーカス)はトラウマになった模様。
因みに今作のセイレーンは原作通りにキュアビートになるのでご安心を。
でも、マムは怖い。
マム恐怖症。


メフィスト………被害者その2。今回最大の被害者。カッコ良く登場シーンを決めようとしたら、ビッグマムに押し潰された。
死んではない。今話のメフィストはギャグ補正が効いていたから一応無事。
砂浜に埋まっている所をトリオ・ザ・マイナーに救出される。
あんな化け物がいるなんて、人間界怖すぎる。

ネガトーン………被害者その3。ビッグマムに滅茶苦茶に振り回されてボコられた。今は犬○家の一族のような例の格好を決めながら気絶している。早く浄化してやれ。

南野奏………またの名をキュアリズム。
今回は彼女の肩に全てが掛かっていると言っても過言ではない。
プチフールを作らなければ加音町は滅ぶ。
早くしろ!間に合わなくなっても知らんぞーーーー‼︎


白ひげ………最後にチラッと登場。
世界最強の男。
笑い声が能力を表している。
その笑い方、何とかならなかったのか。


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ヤバい海賊二人に囲まれる北条響さんと南野奏さんの話

作者の妄想シリーズ第四弾


メロディがビッグマムと激戦を繰り広げている頃。

リズムは、自分の家でありスイーツ店でもある『ラッキースプーン』へと辿り着き、全力でプチフールを作っていた。

幸い、今日は休業日だと言う事もあり厨房には誰もいない。

両親は出かけているようだし、大丈夫だろう。

リズムはプリキュアに変身している為、誰かに見られたりすれば面倒な事になりかねない。

変身を解こうにも、それをしてしまえば戦っているメロディの変身まで解けてしまう。

故に解こうにも解けないのだ。

とは言え、それは然程重要な問題ではない。

 

 

今、自分がやるべき事は一刻も早くプチフールを作り、あの巨大な女性と戦っているメロディの元へと持って行く事なのだから。

 

 

 

 

 

「よし!気合いのレシピ、見せてあげるわ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜30分後〜

 

 

 

「うん………完璧ね。これなら大丈夫!後はメロディの所へ持って行くだけ!」

 

良い感じに完成し、焼き上がった10個ほどのプチフールを見てリズムは納得しながらプチフールを箱に詰めていく。

箱に詰め終わり、持って行こうとラッキースプーンを出ると同時に轟音と振動がリズムを襲う。

 

「きゃっ⁉︎な、何今の………?それに今の音が聞こえた方角ってメロディが戦ってる海岸じゃ…!」

 

僅かな不安に駆られながら、リズムはメロディの元へと走るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何………これ…?」

 

ようやくメロディが戦っている海岸に到着したリズム。

そんな彼女の目に入ってきたのは、咆哮のような叫び声を挙げながら戦う2人の姿。

 

 

 

 

 

 

「「オオアアアアアアッ‼︎」」

 

 

 

 

 

 

ドォン!という音を立てて、メロディとシャーロット・リンリンの拳がぶつかり合う。

その衝撃は凄まじく、ぶつかり合う度に砂煙が巻き起こり地を揺らす程。

殴り合いでは埒が開かないと悟ったのか、2人は距離を取るとリンリンは剣ーーーー『ナポレオン』を、メロディは警棒ーーーー『奏』を構える。

 

 

 

 

「「威国‼︎」」

 

 

 

 

不可視の大地を抉るような斬撃が同時に放たれる。

斬撃はぶつかり合い………メロディの方が押し負けた。

 

 

「ぐっ………う‼︎」

 

 

自分に向かって飛んでくる威国を、覇気を重ね掛けして纏わせた身体で受けとめるメロディ。

本来なら生身で受け切れるものでは無いが、メロディがプリキュアになっている事と、2人の威国がぶつかり合った事で威力が減退していたと言うのもあって、少し吹き飛ばされるだけで済んだ。

 

 

「まだまだ………‼︎」

 

「しつこい奴だね!おれの『威国』とお前の『威国』を一緒にするんじゃねェよ!打ち勝てるとでも思ったかい⁉︎」

 

 

リンリンが怒りの形相をしながらメロディへと歩み寄る。

 

 

「(さて、どうしようか…。『奏天』も『奏』を使っての攻撃じゃ威力不足だったし。『鎚』があればリンリンにも効いたんだろうけど、『向こう』に置いてきちゃったからなあ。その耐久力は反則だって!)」

 

内心で愚痴を漏らして笑いながら、迫りくるリンリンを見つめるメロディ。

その顔は、追い詰められながらも余裕があるように見えた。

 

 

「無いものねだりをしても仕方ないか!さあ、第二ラウンドと行こうじゃないの!」

 

そう言って、メロディはベルティエと『奏』を構えて体勢を取り直す。

 

「ママママ…!いい度胸だ!捻り潰して「そ、そこまでよ!」………あ?」

 

 

彼方から掛けられた声に、リンリンの動きが止まる。

その向けられた視線の先を見ると、そこにはラッキースプーンの箱を手にしたリズムが立っていた。

 

 

「リズム………!持って来てくれたんだ!」

 

メロディが喜色を顔に浮かばせながら、リズムを見て喝采を挙げる。

 

 

「待たせてごめんなさい!ほら、プチフールよ!受け取ってーーーー‼︎」

 

 

 

「プチフ〜ル‼︎」

 

 

 

プチフールの匂いを感じ取ったリンリンが、その巨体を震わせながら一気に駆け出す。

腕を振り、地響きを立てながら迫りくるリンリンにリズムは身構えると、プチフールの入った箱をリンリンの口目掛けて投げ飛ばした。

勢いよく飛んで行くプチフールの箱は見事にリンリンの口に収まり、そしてーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

「おいし〜〜〜〜い‼︎」

 

 

 

 

 

 

ビッグマム『シャーロット・リンリン』の食いわずらいは、終息を迎えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かった………。リンリンの発作が止まって」

 

大人しくなったリンリンの姿に胸を撫で下ろし変身を解く響と奏。

当のリンリンは余程満足したのか、そのまま寝てしまったようだ。

 

「響ー!今そっちに行くからー!」

 

「あはは…ありがとう奏!助かっ………奏っ、後ろ!」

 

「え?」

 

 

響が血相を変えて自分の方へ駆け寄ってくる奏に向かって叫ぶ。

その声にただならぬ雰囲気を感じ取った奏が振り返ると、其処には自身に向かって拳を振り下ろそうとするネガトーンの姿があった。

 

 

「あ………」

 

 

咄嗟の事に、奏は呆然となってしまう。

 

 

 

リンリンに振り回されて気絶していたネガトーン。

彼はメロディとリンリンの戦いが終わるのを見計らい、戦いが終わって油断した所を襲う腹積りだった。

漁夫の利を狙う姑息な方法かも知れないが、結果としてプリキュアの片割れの少女を仕留める事が出来る。

 

 

「しまった…!奏、頭を下げて!」

 

 

響は奏に向かって叫ぶと、警棒『奏』をネガトーンに向かって投げ飛ばす。

武装色で硬化された『奏』は綺麗な放物線を描きながら飛んで行き、見事にネガトーンのど真ん中へと命中する。

 

 

「ネガッ⁉︎」

 

 

ぶつけられた衝撃でもんどり打って倒れるネガトーン。

しかし、尚も立ち上がろうとして………突然横から迫ってきた地震のような衝撃波を食らって海へと吹き飛ばされた。

 

 

 

 

「グララララ………!久しぶりだな、響!何十年振りだァ?」

 

 

 

 

特徴的な笑い声。

それを聞いた響は2回目の驚きを持って、声の主の方を見る。

 

 

 

「ニューゲート………⁉︎」

 

 

 

其処には、かつてのロックス時代の仲間であり、ロックスを除けば最強と言わしめた仁義を重んじる最強の男………『白ひげ』エドワード・ニューゲートが佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白ひげの助力もあり、再変身してネガトーンを浄化した響と奏。

響は久しぶりに再会した白ひげに声を掛け、奏は新たに現れた謎の大男の滲み出る強者の威圧感に押されてしまっていた。

 

「ニューゲート!久しぶりー………って言いたいけど、何だかリンリンと一緒で随分歳を取ってる風に見えるね」

 

「開口一番の台詞がそれか。そう言うお前は何で姿形が変わっちゃいねェんだ?お前が食った悪魔の実にそんな力は無かっただろう?」

 

訝しげな顔つきで響に問いかける白ひげに、響も腕を組む仕草をしながら答えた。

 

「うーん………私もこっちに帰って来てから色々考えてたんだけど、どうもこの世界とあの世界じゃ時間の流れが違うみたいなんだよね。………所で、ニューゲート。その威圧感何とかならないの?奏が怖がってるじゃない」

 

奏が白ひげの威圧感に押されているのを見た響が咎めるように言う。

 

「な、何言ってるの響。怖がってなんか無いって、アハハハ………」

 

「んな事言われてもなァ…。覇気は使ってねェし、そもそも怖がらせる気はねェぞ」

 

奏は作り笑いを浮かべながら否定し、白ひげは若干困惑した風に溜め息を吐いた。

 

「まあいいや。それはともかく、何でニューゲートが此処にいるの?」

 

「俺が知りたいくらいだ。マリンフォードで、海軍と息子とは呼べねェバカ相手に戦って死んだ筈だが、気付いたらこの世界で倒れてた。其処を偶々、音吉って奴に拾われて今は『調べの館』って場所にいる」

 

 

響の疑問に答える白ひげ。

しかし、響にとって『白ひげ』が死んだという事実が信じられなかったのか、目を丸くして問いかける。

 

 

「え、ちょっと待って。貴方死んだの?何でマリンフォードで?彼処って海軍の本部でしょ?戦争仕掛けに行くなんて、まるでロックスみたいじゃない」

 

「その名前、久々に聞いたなァ。奴と一緒にするんじゃねェよ。そういうので殴り込みに行った訳じゃねェんだ」

 

 

ロックスと同じ括りにされたのが嫌だったのか、白ひげは露骨に顔を歪めた。

確かに、白ひげは海軍相手に積極的に喧嘩を売りに行くような男ではない。

寧ろ、ロックス時代を含めて珍しく穏健派な海賊である。

そんな彼をそうさせてしまうだけの何かがあったのだろう。

響はそう結論付けると、それ以上は聞かない事にした。

 

 

「それもそうだね。悔いはなかったの?」

 

「無ェな。『向こう』でやるべき事は、伝えるべき事は全部伝えてやってきた。後はアイツらが新たな時代を作り、成し遂げて行くだけさ………グララララ…!」

 

「その様子じゃ、『夢』は叶えられたんだね。良かったじゃない」

 

 

白ひげらしい答えに、響は満足そうな顔をして微笑む。

 

 

「そう言うお前はどうなんだ。やりてェ事は見つかったのか?」

 

「まだ………かな。自分探し中っていった所。それも含めて、話は取り敢えず明日にしない?立ち話もアレだからさ」

 

「構わねェ。それより、リンリンはどうすんだ?」

 

そう言って、白ひげは地面に横たわり寝ているリンリンを指差しながら、面倒臭そうな顔をする。

 

「そうだねー…私の家は無理だし、奏も当然駄目だし。消去法で、ここはニューゲートが責任を持って『調べの館』に連れ帰ってよ」

 

「あァ⁉︎お断りだァ!リンリンなんて面倒事、背負い込みたくねェぞ!大体、音吉にどう説明すりゃいいんだァ!」

 

「いいじゃない、同じ元ロックス仲間なんだしさ!昔、立ち寄った島で持ち合わせがなかった貴方にお酒飲むお金貸してあげたでしょ?そのお返しって事で‼︎そんじゃ、後は任せたから!奏、帰ろう!バイバーイ‼︎」

 

「え、ちょ響ぃ⁉︎置いてかないでよ‼︎」

 

 

白ひげの全力の抗議を、とても良い笑顔でスルーしながら走り去っていく響。

それを追う奏。

その姿を見送って居た白ひげは、思わず地面を殴り付けながら「ふざけんじゃねェぞ、響ィ!このアホンダラァ‼︎」と叫ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

加音町でも美味しいと評判のスイーツ店『ラッキースプーン』。

看板商品のカップケーキを始めとする様々な種類のスイーツを売りにしているその店は毎日人が絶えない。

 

しかし、今日この日だけは違っていた。

本来なら賑わう筈の店内は静まり返り、テイクアウトで買いに来た客もそそくさと帰っていく。

 

 

それは何故か?ラッキースプーンでケーキを食べている3人が原因であるからだ。

 

 

 

 

 

「ハ〜ハハハママママ!とっても甘くて美味しいケーキだねェ!もっと持って来な!」

 

 

 

 

ラッキースプーンの屋外テラスで、机の上に並べられたカップケーキを貪るように食べる巨大な老婆。

 

 

 

 

 

『ビッグマム』シャーロット・リンリン

 

 

 

懸賞金額43億8800万ベリー

 

 

 

 

 

「相変わらずの菓子狂いだな。見てるだけで胸焼けになりそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

『白ひげ』エドワード・ニューゲート

 

 

 

 

懸賞金額50億4600万ベリー

 

 

 

 

 

「『食いわずらい』の事も綺麗さっぱり忘れてるし。まあ、リンリンらしいっちゃらしいんだけどさ」

 

 

 

 

 

 

ロックス海賊団・元船員(クルー)

 

 

『音奏』北条響

 

 

 

懸賞金額26億1190万ベリー

 

 

 

ロックス時代の頃から何も変わっていない(強いて言えば容姿ぐらいか)リンリンの姿に、白ひげと響は思わず溜め息を吐く。

 

 

「ん〜?何か言ったかい、お前達?」

 

「「いいや、何も」」

 

「ならいいさ。ハ〜ハハハママママ‼︎」

 

 

 

一方、ラッキースプーンの厨房は戦場と化していた。

 

 

 

「姉ちゃん、カップケーキの追加注文だよ!プラス100個だって‼︎あのデカイ婆さん、どれだけ食べるんだよ⁉︎」

 

「こら、奏太!お客さん相手にそんな言い方しないの!聞こえたらどうするのよ!」

 

「だって、しょーがねぇじゃん!どう見てもアレはおかしいって!人間が食べる量じゃないよ!」

 

南野奏の弟である奏太は、リンリンの食べっぷりに思わず呆れを交えた愚痴を漏らす。

奏はそんな奏太を軽く叱りながらも、奏太同様リンリンの口に入っていくケーキの量を見てドン引きしていた。

 

「奏ー!こっちのケーキは出来上がったぞー!持って行ってくれ!」

 

「こっちも準備OKよー!」

 

奥でケーキを作っている奏の両親が出来上がった数え切れない程のカップケーキが乗った盆を渡してくる。

奏はそれを受け取ると、今もケーキを食べ続けるリンリンに急いで運んで行くのであった。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、中々異様な光景だよこれ。私が言うのも何だけどね」

 

カップケーキが山と積まれた机を囲み、大男と大女と少女が談笑している。

確かに、これ程珍妙な景色は中々お目にかかれないだろう。

 

「そう言えば昨日の事何だけどさ。結局2人とも『調べの館』で住んでるの?」

 

「まあな。昨日リンリンを連れて帰ったら、流石の音吉も『どうしたもんかのう…』って頭を悩ませてたぞ」

 

「そりゃそうだろうねアハハハハハ!」

 

ケラケラと笑う響。

それに対して、白ひげは眉間に皺を寄せながら溜め息を吐く。

 

「笑い事じゃねェんだぞ、ったく。そもそも、昨日お前が無茶振りして来たんだろうがァ!」

 

白ひげの抗議に、ごめんごめんと謝る響。

 

 

「リンリンとニューゲートも来てるなら、シキとかカイドウも来るのかな?あの2人も来れば、ちょっとした同窓会出来そうじゃない?」

 

「笑えねェ冗談は寄せ。あの時みたいな集まりはもう懲り懲りだ」

 

「マ〜ハハハハ!面白いじゃないか!もし全員集まったらお茶会をしよう!『地獄のお茶会』をねェ!」

 

 

響の半分冗談のような提案に白ひげは嫌そうな顔をして、リンリンは何やら不穏なワードを出して豪快に笑う。

そんな会話をしていると、奏が大量に積み上げられたカップケーキをお盆の上に乗せて持って来た。

 

「お、お待たせしました。カップケーキ100人前です(お、重い…!)」

 

「ハ〜ハハハママママ‼︎このケーキ達も美味しそうだねェ!おれは最高の気分だよ。気に入った!お前の名前を教えな!」

 

すっかり気を良くしたリンリンが奏に名前を聞く。

リンリンの鋭い眼光と巨体から滲み出る風格に、少し瞬ぎながらも奏は答えた。

 

「わ、私の名前は南野奏です!」

 

「ん〜?その名前どっかで聞いた事があるね…!たしか、響がよくケーキの話題になる度に名前を挙げてた娘だね!成る程、お前が奏か………ママママ!」

 

 

ニヤリ、と笑うとリンリンは驚きの二の句を放つ。

 

 

 

「奏ェ…お前、ビッグマム海賊団(ウチ)に来いよ!これからは、おれの為だけにカップケーキを作りな!何、タダでとは言わねェ!おれの息子を旦那にやろうじゃないか!そろそろカタクリにも身を固めさせなきゃなんねェと思ってた所だし、丁度良いだろう!お前は見た目も良いし、アイツも嫌とは言わねェだろうさ!ハ〜ハハハママママ‼︎」

 

 

「え、ええええええええええええええええええっ⁉︎」

 

 

リンリンの予想だにしない言葉に、奏は思わず絶叫した。

 

「ちょっと、リンリン。奏には王子先輩っていう意中の人がいるんだからやめなよ」

 

「ママママ!こいつはおれと奏の間の話なんだ。部外者のお前が口を挟むんじゃねェよ」

 

響か奏を庇うが、リンリンはお前には関係ないだろうと一蹴する。

そして、奏を見下ろしながら更に問い掛けた。

 

 

「当然、この話は受けるよなァ………!答えを聞かせて貰おうか!」

 

「………!」

 

言外に断るという選択肢は無いという事を態度で示すリンリン。

リンリンから発せられる重圧に呑まれそうになる奏。

すると、突然横から伸びて来た手が奏の手を握る。

伸ばして来た手の主は響だった。

落ち着いて、大丈夫だからという風に響は奏を見つめる。

 

「(響………)」

 

ありがとう、と奏は心の中で呟きリンリンの顔をしっかりと見据えた。

 

「ごめんなさい。お気持ちは嬉しいですけど、お断りします」

 

「ヘェ………?おれの頼みを断ろうってのかい?いい度胸だ、ママママ…!」

 

リンリンの目が剣呑さを帯び、先程まで笑顔でお菓子を食べていた老婆から、四皇・ビッグマムの顔付きへと変わる。

並の人間なら恐怖に駆られるそれを、奏は耐え凌いで見せた。

 

 

「おい、リンリン。その辺にしときな。海賊として、ここで何か仕出かそうってんなら………俺も海賊『白ひげ』として接するぞ」

 

 

奏とリンリンのやり取りを黙って静観していた白ひげが、そう言ってリンリンを牽制する。

 

「マ〜マママハハハ………まァ構わねェさ。本来なら許しはしねェが、このおれに盾つくだけの度胸と、お前が響の友人だという事と、カップケーキの旨さの3つに免じて今回だけは手を引いてやるよ」

 

 

奏は知る由もないが、シャーロット・リンリンという海賊は面子にも拘る事で有名だ。

自分の誘いを断る者には、四皇の顔に泥を塗り恥をかかせたとして、身内の誰かを殺して首を送りつける等といった恐るべき報復を強いる。

今回は白ひげと響という2人が居た故に、奏が難を逃れたというのは間違いない。

 

 

「それと白ひげ!テメェも、いつまでも最強気取ってんじゃねェぞ?『あの頃』とは違うんだからなァ………!」

 

「文句があるならいつでも来い。俺ァ、『白ひげ』だ………‼︎」

 

 

殺気を交えたリンリンの凄みも、白ひげはどこ吹く風とばかりに受け流す。

ピリピリとした空気が立ち込める中、響は白ひげとリンリンの間に割って入る。

 

「はいはい、もうそこまで!今日は折角ケーキを食べに来たんだから、それを楽しまないと。奏も一緒に食べよう?」

 

「う、うん。じゃあ、響の隣に座るわね?」

 

響に促され、奏はその隣に座る。

ぶっちゃけた話、響の隣以外は圧がヤバいので座るのが怖いというのが奏の本音だった。

 

 

「そういや昨日は聞きそびれたが、あの妙な格好といい、変な生き物といい何だったんだァ?」

 

白ひげが思い出したように響へと問い掛ける。

十中八九プリキュアの事だろうなと察した響は、近くで様子を伺っているハミィとフェアリートーン達を呼び集め、隠す事なく全てを話す事にした。

 

 

因みにリンリンは、ハミィとフェアリートーンを見て「人の言葉を話す白猫と妖精?珍しいねェ!この場にモンドールがいたら、本に入れて飾ってやったのに。残念だよ、ハ〜ハハハママママ!」と笑っていた。

 

 

ハミィとフェアリートーン達は、その台詞を聞いた時、若干悪寒が走ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響達がラッキースプーンで談笑?している頃。

 

 

マイナーランドの歌姫であるセイレーンは、何となくやる気なさげな様子で公園に設置されているベンチに座り込んでいた。

 

「ハァ…ここ最近、ロクな目にしか会わないわね。それもこれも、あのキュアメロディの所為よ!音符集めだって捗らないし、どうにかしてプリキュア共をギャフンと言わせる方法はないものかしら………」

 

愚痴を呟いていると、急に自分の前に影が射す。

誰かしら?と思いながら顔を上げると、其処にはつい最近急に現れ、自分達に協力している男が佇んでいた。

 

 

「フン、何だアンタか。マイナーランドに居たんじゃなかったの?」

 

 

「何だとは酷ェ言い草だな。あんな陰気臭い場所に居るのも退屈だから、こっちに来てやったのさ。それに、そろそろ俺の手助けが必要なんじゃねェのか?ここは一つ、俺の策に乗ってみるのはどうだ?」

 

 

 

葉巻を口に咥え、野心溢れる瞳を携えた男………『金獅子のシキ』はそう言ってジハハハハ!と笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 




北条響………『食いわずらい』のリンリンと激闘。奏の助力もあり、リンリンを止める事に成功する。『威国』の打ち合いでは分が悪かったのか、押し負けてしまった。前話で使用した『奏天』もあまり効いてはなかった模様。台詞から察するに、技を使うのに必要な『鎚』と呼ばれる何かが足りない模様。多分後半くらいに登場予定。
懸賞金額はゴッドバレー事件後の額。
ゴッドバレー直前では11億と少しくらいだった。
懸賞金が上がった理由としては、海賊団結成時からロックスと行動を共にしていたという事と、ロックスの楽しい遺跡巡りに付き合わされた事で世界政府から「禁忌に触れすぎだよ、お前」と判定されて爆上がりしました。
事件後は、ゴッドバレー島の4分の一を能力で消し飛ばした所為で更に額が激増。
因みに、ロックスを含む白ひげやリンリン達も、ゴッドバレー時点で懸賞金額は響よりも高くなってます。
取り敢えずマイナーランドは頑張れ。
作者ですら、どうやったらこんな超強化響ちゃんを苦戦させられる描写が描けるのか悩んでるんだからさ。

南野奏………今回の被害者枠その1。
食いわずらいを止める為にプチフールを作ったり、リンリンに『息子やるからウチに来いよ!断るなら死刑な!(意訳)』と恐怖の宣告を受けるなど気苦労が絶えない。響に勇気付けられ、リンリンの要求を跳ねつけた。よく頑張った。それでこそプリキュアだ。
また、リンリンとメロディの戦いを見て『ひょっとして自分は足手纏いになっているのでは…?』と少し悩んでいる。

ラッキースプーン………南野奏の実家。カップケーキ店。後に四皇達の溜まり場になる。被害者枠その2。

ビッグマム………世界最強のババア。食いわずらいの事はすっかり忘れている様子。原作見る限り四皇で1番頭がヤバいのは、カイドウよりもコイツじゃないのかと作者は思ってる。
今回は奏に要求という名の脅しを掛けるが、断られて失敗に終わる。
イラッとしたが、白ひげと響を敵に回すのは面倒だと思い、今回は手を引いた。
奏には、さり気なく覇王色の覇気を浴びせていたが耐えきった事に内心ほんのちょっぴり感心している。
カップケーキは美味かった。
ラッキースプーンでリンリンが食べた分の会計は音吉さんに請求が行く。

泣くなよ、音吉さん。


白ひげ………世界最強の男。頂上戦争で死ぬが、気がついたらスイプリ世界にいた。『調べの館』で倒れていた所を音吉さんに拾われて、今は其処で住んでいる。
初めてアコちゃんと出会った際は、少し怖がられたので割と傷ついた。


金獅子のシキ………変眉。終わり。
「おい、作者ァ!テメェ、ふざけんな‼︎」








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金獅子と響と奏と時々ミューズ

作者の妄想シリーズ第五弾


ある日の事。

 

セイレーンは、ある計画を実行に移す為に響達が通うアリア学園に足を運んでいた。

 

「あの男の計画に乗るのは癪だけど、プリキュアを倒すには確かにこれが1番確実かも知れないわね」

 

そう言って、セイレーンは先日交わした自分達の協力者である男の言葉を思い出す。

 

 

 『いいか、子猫ちゃん。倒そうと思うからお前は勝てねェのさ。お前らの目的は音符とやらを集める事であって、プリキュアとかいうガキ共を倒すのが目的じゃない。だったら、奴等を倒す事に拘らずもっと安全で確実な方法を使う必要がある。ーーーー要は、干渉されないようにするのさ。有り体に言えば、封印みてェなもんだ。なァに、俺の立てた計画通りにやれば上手くいくさ、ジハハハハ!』

 

 

成る程、確かに一理ある。

倒すのではなく、何らかの手段で異空間にでも閉じ込めるなり何なりして動けなくしてしまえば、後はこっちの物だ。

音符は奴等を封じてしまってから、ゆっくりと探せばいい。

最優先で封印すべきは、あの人間かどうか疑わしいキュアメロディである。

あの女さえ封じてしまえば後はどうにでもなる。

キュアリズムはメロディが居ないと変身出来ないし、最近邪魔をしてくる謎のプリキュアであるキュアミューズもメロディ程の脅威ではない。相手が1人だけなら倒せはしなくても撃退出来るだろう。

 

 

 

「出でよ、ネガトーーーーンッ!」

 

 

 

ならば善は急げだ。

ニヤリ、とセイレーンは笑みを浮かべ学校の体育館の扉に宿る音符をネガトーンに変化させる。

 

 

 

「さて、次はキュアリズムを罠に掛けてあげるわ。フフッ…楽しみね」

 

 

 

セイレーンは、そう言って自らも姿を変化させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響ー?もう、何処に行っちゃったのかしら。ねぇハミィ、本当に響は此処にいるの?」

 

「間違いないニャ。ハミィは、響に奏を此処に連れてきてと頼まれたニャ」

 

 

南野奏は、ハミィの言葉に溜め息を吐く。

そもそも何故、奏が響を探しているのかというとハミィに頼まれたからだ。

いつものように放課後、友人達や先輩が帰った後も家庭科室で暫く自分一人でケーキを作っていると、突然ハミィが部屋に入って来てこう言ったのだ。

 

 

「奏ー!響が呼んでるニャ!一緒に来て欲しいニャ!」

 

「響が?うん、分かったわ、今行くから!」

 

 

もし、ここで感の鋭い者なら気付いただろう。

ハミィの首元で輝く銀色のアクセサリーに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ハミィに連れられてついて来たのはいいものの、当の響の姿は影も形もない。

その場所は人気のない体育館の裏側だった。

奏は周りを見渡して響を探すが、やはり誰もいない。

 

「響ったら、こんな場所に呼んで何を………ってハミィ?あれ?何処に行ったの?」

 

いつの間にか目の前から消えたハミィに、奏が困惑しているその時だった。

 

 

 

「ジーハッハッハッハ!残念だが、いくら探してもベイビーちゃんの相棒は見つからねェさ。あの白猫と妙なチビ共もな」

 

 

「誰っ⁉︎」

 

 

 

空から聞こえてきた声に奏が振り向く。

振り向いた先には、縄で縛られているハミィと籠に入れられているフェアリートーン達を両手に抱えたトリオ・ザ・マイナーとネガトーンとセイレーン。

そして見た事のない一人の男が、不敵な笑みを浮かべて立っていた。

 

   

 

 

「へ、変な眉………」

 

 

「おうとも、俺こそが泣く子も黙る変眉の………って、誰が変眉だァ!」

 

 

 

 

思わず第一印象を口走ってしまう奏。

頭に突き刺さっている舵輪も正直気になるが、やはり眉の方が一番印象的だ。

一方、奏の呟きに反応した男はキレの良いツッコミをしてみせるも、直ぐに落ち着きを取り戻して葉巻に火を付ける仕草をする。

 

 

「まあいい。取り敢えず、自己紹介と行こうじゃねェか。俺は『金獅子のシキ』だ。宜しくな、ベイビーちゃん。にしても、セイレーン。お前の擬態能力は大したもんだな。俺の部下に欲しいくらいだ!」

 

 

火を付けた葉巻を口に加え、獅子の鬣を想起させるような金色の髪を靡かせる大男………シキはジハハハハ!と笑い奏に近付いていく。

 

 

「早速で悪いんだが………『キュアモジューレ』とやらを渡してくれねェか?俺にとっちゃどうでもいい代物だが、こいつらが必要だと煩いんでな」

 

「渡す訳ないじゃない!貴方、一体何者⁉︎セイレーン達の仲間なの⁉︎」

 

「ジハハハハ!それは違うな!確かに俺はこいつらと手を組んじゃいるが、あくまで唯の協力関係さ」

 

 

キュアモジューレを寄越せと要求するシキに、警戒を緩める事なく叫ぶ奏。

ポケットからキュアモジューレを取り出し、いつでも変身出来るように身構える。

 

「ハミィとフェアリートーン達を解放して!もし解放しなかったら「解放しなかったら、どうなるんだ?」っ⁉︎」

 

シキの笑みが消え、冷酷な海賊の顔付きへと変わる。

その威圧感に、奏は思わず身体を震わせた。

 

「勘違いしちゃいけねェな、ベイビーちゃん。俺はお願いしてる訳じゃねェ。命令してんだよ」

 

「………だったら!尚更渡す訳には行かないわ!」

 

「どうやら自分の置かれた状況が理解出来てねェみたいだな。だが、渡す気がないなら仕方ねェ」

 

そう言って、シキが手を動かすと地面が隆起し、まるで生き物のように動きながら奏の四肢を拘束した。

 

 

「な、何よこれ!離して!」

 

 

「驚いたか?フワフワの実って能力なんだが、あの世界の人間じゃないベイビーちゃんに言っても理解出来ないだろう。使い方によっちゃ、こんな事も出来るのさ。それにベイビーちゃんは1人じゃ変身できねェんだろう?」

 

「それは………」

 

痛い所をついてくるシキに、奏は言い返す事が出来ず押し黙ってしまう。

 

「威勢だけじゃ、どうにもならねェ事もある。悪いが『キュアモジューレ』は頂いていくぜ?」

 

そう言って、奏の手からキュアモジューレを奪おうとするシキ。

だが、モジューレはガッチリと奏の手に掴まれていて取る事が出来ない。

 

「ジハハ………渡しな!」

 

「嫌!「渡せ!」絶対嫌!「テメェ…!」」

 

 

意地でも手からモジューレを離さない奏に、シキの顔が僅かに歪む。

 

 

「最後に後一度だけチャンスをやろう。それを寄越しな」

 

 

腰に差していた剣を抜くシキ。

その剣を奏の喉元に突き付けた。

自身の命を一振りで奪えるであろうそれに、奏の目に僅かに恐怖が宿る。

 

 

「(怖がってちゃ駄目…!響が居ない今、ハミィとフェアリートーン達を助けられるのは私しか居ないの!ここで踏ん張らなきゃ………女が廃る!)」

 

 

奏は自分の心を叱咤してシキを睨み付けながら、沈黙を持って自分の意志をシキに見せ付ける。

それが気に食わないのか、シキは顔を歪めると剣の切っ先を更に近づけた。

 

 

「ジハハハハ…!無理すんな。体が震えてるぜ?だが、どうしても渡したくないってんなら仕方ねェな。セイレーン!何かねェのか⁉︎」

 

「私?まあいいけど。うってつけの物があるわ。プリキュアにはこれが一番効くかもしれないわね」

 

 

セイレーンがそう言うと、何処からともなく灰色の貝殻にも似た耳栓が現れる。

 

 

「これは、不幸のメロディを直接頭の中に流す道具。長時間聞けば発狂するほどの代物よ。さあ、不幸のメロディを直接聴いて絶望するといいわ!」

 

 

「ぐ………っ⁉︎ああああああああああああああああああああああ‼︎」

 

 

貝殻状の耳栓は奏の両耳にピタリと貼りつくと、不幸のメロディを一気に流し込み始めた。

心そのものを絶望に染め上げるような音色に、奏は苦悶の声を漏らしながら歯を食い縛って不幸のメロディに抗おうとする。

 

 

「ジハハ…!大した根性だ、ベイビーちゃん。お前ぐらいの奴が、あの時いれば『麦わらのガキ』にしてやられる事もなかっただろうな…!」

 

 

それを見ているシキは僅かに感心したような声で笑いながら、奏から視線を外して別の方向へ向ける。

 

 

 

 

 

「来たか…!響ィ‼︎」

 

 

 

 

シキが叫ぶと同時に、ドォンッ‼︎という音が響き渡り1人の少女が現れる。

 

 

 

 

 

「シキ………!」

 

 

 

 

 

リンリン、白ひげと続くロックス時代の仲間と再会した響は、僅かに顔を緊張させながらシキを見据えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロックス海賊団時代の仲間で、ロックス以外で最も敵に回したくない人物は誰だ?

地震を起こし、津波を引き起こす歩く天災・白ひげか?

魂を操り、天候すら従えるビッグマムか?

格上にも喧嘩を仕掛けるイカれた見習い・カイドウか?

 

 

あの頃を知る者達は、大抵が口を揃えて言う。

 

 

 

『あの男とはそもそも関わり合いになりたくない』と。

 

 

 

そう評されるのは力のみではなく、時に策謀を用いる最も油断のならない男。

 

 

ロックスという海賊の在り方を、色濃く受け継いでいる彼こそ。

 

 

 

 

金獅子海賊団・大親分

 

 

 

『金獅子のシキ』

 

 

 

 

 

 

 

懸賞金額44億4900万ベリー(インペルダウン投獄時)

 

 

 

 

 

 

 

そして今。

響は、他でもないシキと向かいあっていた。

 

奏に纏わりついていた拘束は既に解かれ、両耳を塞いでいた貝殻状の耳栓は粉々に砕かれて地面に転がっている。

捕われていたハミィとフェアリートーン達も解放されていた。

ネガトーンはというと、響を取り込んで閉じ込めようと扉状の口を開いた瞬間に音の衝撃波を連打で打ち込まれた挙句、奏と一緒に直ぐ様変身した響ーーーーキュアメロディの手によってアッサリと浄化されてしまうという哀れな最期を遂げている。

 

 

「久しぶりだね、シキ。ところで一つ聞きたいんだけど、奏に何をしていたのか教えて貰っても良いかな?」

 

 

いつもとは違う、見る者が見れば一目で怒っていると分かる笑顔を浮かべてメロディは努めて冷静に問い掛ける。

 

 

「おいおい、そう怒るんじゃねェよ。あのベイビーちゃんに手を出したのは俺じゃなくて、あの黒猫だ」

 

「剣を突きつけているように見えたけど、それは私の見間違いかな?」

 

「あー、それはアレよ。軽い脅しって奴だ。本気で傷付ける気はなかったぜ?」

 

 

メロディとシキが言葉を交わす事に、周りの空気が張り詰め軋んでいく。

セイレーンとトリオ・ザ・マイナーはその重圧に耐えるので精一杯なのか、足をガクブルさせながら影からそっと見ていた。

 

 

「ジハハハハ!しかし響とさっきのベイビーちゃんが、こんな姿に変化するとはな!確かに姿形は別人じゃねェか!見た目はアレだが、プリキュアってのは中々面白ェ!」

 

「そういうシキも見た目変わったよね。変眉は相変わらずだけど、何その鶏みたいな頭。舵輪を頭に嵌めるのが『向こう』での流行りなの?」

 

「変眉は余計だ!頭だって好きでこうなってる訳じゃねェよ。ロジャーの野郎の所為だ。そう言うお前も、見た目が全く変わってなかったじゃねェか」

 

「もうこの説明するのも飽きたんだけど、どうも『こっち』と『向こう』じゃ時間の流れが違うみたい。でも良かったね、シキ。舵輪のおかげで変眉が少しだけ影が薄くなってるからネタにされなくて済むし」

 

「どんだけ変眉で弄りてェんだよ、お前は⁉︎相変わらず口の減らねェクソガキだな‼︎」

 

 

シキと響の言葉の応酬に、周りで見ている者達もポカーンとなってしまう。

このままではいつまで経っても話が進まないと思ったのか、シキは強引に話題を変えた。

 

 

「まあいい。変眉議論は後にして「認めるの?変眉」うるせェよ!本題に入らせろ‼︎………とにかくだ!今日はお前と戦いに来た訳じゃねェ。仲間に誘いに来たのさ、響!」

 

「私を?」

 

 

誘いに来たと言うシキに、響は怪訝な顔をする。

 

 

 

 

「ああそうだ!ロックス時代は色々あったが、水に流そう!この俺とお前、そして俺が立てた完璧な計画とマイナーランドの不幸のメロディとやらを駆使すれば、俺達は今すぐにでもこの世界を支配出来る!俺の右腕になれ、響‼︎」

 

 

 

 

かつての時と同じように、シキは堂々と響を勧誘してみせた。

 

 

 

「うーん…悪いけど、私は支配に興味がないのよシキ。今こっちでやりたい事が色々あるしね。それに、リズムに手を出そうとしたアンタと手を組む気はないから!」

 

 

「ジハハハハ…!まあ、そう言うだろうと思ってたがな。交渉決裂だ!」

 

 

シキの勧誘を拒否するメロディ。

対するシキは予想していたとばかりに、笑みを浮かべると手を動かした。

それと同時に、メロディとリズムを囲うようにゴゴゴゴッ!と地面が大きく盛り上がる。

 

 

 

 

 

 

 

「獅子威し“地巻き”‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴバァッ‼︎と地面が巨大な獅子の顔に姿を変え、四方八方から2人目掛けて襲いかかる。

逃げ場の無い攻撃に、メロディはニッと笑うと自らに宿る力を発動させた。

 

 

 

 

 

「G線上の音霆圧(アリア)‼︎」

 

 

 

 

 

次の瞬間、迫りくる土の獅子がメロディの能力によって、紙細工を潰すかのようにひしゃげていく。 

その光景を見ていたシキは益々面白そうに顔を歪める。

 

 

 

「ジハハハハ!どうやら衰えちゃいねェようだ!なら、これはどうだ!獅子威し“瓦礫巻き”‼︎」

 

 

「何度やっても結果は同じよ!雨音時雨(レインバースト)!」

 

 

 

メロディはそのまま腕を振るうと、雨嵐のような音の連弾が飛来する瓦礫を打ち砕いていく。

彼女はそのまま間髪入れず、空へ目掛けて一気に飛び上がり武装硬化させた拳をシキ目掛けて突き出した。

 

 

「っ…容赦ねェな!」

 

「そりゃあね。同じロックスの元仲間だし、遠慮は逆に失礼かなって!それに、手を抜いて戦える相手じゃないからさ!特にアンタは‼︎」

 

「ジハハハハ!よく分かってるじゃねェか‼︎なら、こうなる可能性も当然考えてるよなァ………⁉︎」

 

「っ!リズム、逃げて‼︎」

 

 

シキの顔が悪意を含んだ物に変わる。

その意味を悟ったメロディがリズムに叫ぶ。

 

 

 

 

「遅ェ!獅子威し“大渦巻き”‼︎」

 

 

 

 

メロディやリズムの視界に入らないように、絶妙な位置で浮かされていた大量の海水が、獅子の形に姿を変化させてリズムを飲み込もうと迫る。

リズムは咄嗟に宙へ飛び上がり躱そうとするが、

 

「そうは行かねェよ」

 

ギュン!と海水の向きが変わり、宙にいるリズム目掛けて襲い掛かった。

 

「しまっ……!」

 

逃れられない事を肌で感じ取ったリズム。

海水の獅子が彼女を飲み込もうとしたその時、トンッ!と身体がシキの元から高速で戻って来たメロディによって押し出される。

おかげでリズムは難を逃れる事が出来たが、その代償にメロディが海水に取り込まれてしまった。

 

 

「メロディ………⁉︎そんな‼︎」

 

「ジハハハハ!お前なら、そうすると思ってたぜ響ィ!仲間を大事にするお前に、見捨てるという選択肢はねェもんなァ⁉︎だがな、そんなもんのために足を引っ張られて、テメェの命危ぶめてちゃ世話ねェや」

 

 

嘲りながらメロディを見下ろすシキ。

一方、悪魔の実の能力者にとっての天敵である海水に囚われた事で、メロディは全身から力が抜けて身動きが取れなくなってしまっていた。

 

 

「まさか…!貴方、最初からそのつもりで⁉︎」

 

「まあな。それにしても響、お前少し悪意に対して鈍くなってるんじゃねェか?ロックスにいた頃のお前なら、こんな見え透いた罠にかからなかった筈だぜ?」

 

シキは満足そうに笑いながら、メロディを囚えた海水の塊を自身の近くに引き寄せた。

 

 

「悪魔の実の能力者には苦しいだろう、今の状況は。さァ、響。もう一度聞こう!俺と手を組んで、世界を支配しようじゃねェか‼︎」

 

 

絶対的に優位に立った状況でシキは二度目の勧誘を行う。

海水の中ではいつまでも息は続かない。

断れば窒息死という確定した未来が訪れる。

メロディは僅かに動かせる手を使い、シキに向けた。

 

 

「ジハハ………!残念だ、それがお前の答えとはな!」

 

 

自分に向けて中指を立てるメロディに、シキは両手に持つ剣を構える。

 

 

「あばよ、ひびき…「やめるドド!」っ⁉︎誰だ⁉︎」

 

 

突然聞こえて来た声にシキは辺りを見渡し、見慣れない黒い服に身を包んだ謎の人物が居る事に気がついた。

 

 

「成る程な…!あれがセイレーン共が言っていたキュアミューズか」

 

 

「キュアミューズ………⁉︎」

 

 

リズムは唐突に現れたキュアミューズを見て呆然とし、シキは面白そうに笑う。

現れた黒服の人物………キュアミューズはシキの方を見て僅かに顔を顰めた。

それを見たフェアリートーンのドドリーが、ミューズの心の声を代弁しながらシキに話しかける。

 

 

 

「鶏みたいな頭と変な眉だドド。お前は何者ドド?」

 

 

「誰が鶏頭変眉だァ‼︎俺は変眉の…じゃなかった『金獅子のシキ』だ!そう言うお前はキュアミューズだな⁉︎」

 

 

「お前のような敵に教えてやる必要はないドド。早くメロディを解放するドド!」

 

 

シキは現れたミューズを睨み付け、ミューズもシキを警戒しながら睨み返す。

その時だった。

 

 

 

 

 

「………っ!……ァ……!」

 

 

 

息が限界に達したのか、メロディが苦しげに呻く。

それを見たリズムはミューズに手を貸すよう告げる。

 

 

「メロディ‼︎お願い、ミューズ!私をメロディへ向かって投げ飛ばして!」

 

ミューズは頷くと、リズムを抱えて思い切り投げ飛ばした。

 

 

「何をする気か知らねェが、俺を出し抜けるとでも…っ⁉︎」

 

 

砲弾のような速さで投げられたリズムがメロディ目掛けて突っ込んで行く。

その速さにシキも虚を突かれたのか、一瞬判断が遅れた。

 

 

 

 

「メロディーーーー‼︎」

 

 

 

 

ザプン!と海水の中へと勢いよく突入したリズムが、見事にメロディを抱き抱えて飛び出し、近くの地面に降り立った。

 

 

 

「ゲホッ!ゴホッ…!リズ………ム?ごめん、足引っ張っちゃってさ」

 

 

「何言ってるの!メロディが謝る必要はないわ!元はと言えば私の所為よ。あの時、私があの攻撃を避けてたらメロディがこんな目に合う事もなかった筈。とにかく、メロディはここで休んでて。後は私が………!」

 

 

リズムはそう言ってメロディを背に庇うように立つ。

 

 

「今回は私達も協力するドド!」

 

「ミューズ?手を貸してくれるの?」

 

 

シキ相手に、リズム1人では分が悪い事を悟ったミューズも加勢する意志を見せる。

 

 

 

 

「ジハハハハ!面白ェ!お前達2人も、俺の仲間になる気はねェか⁉︎世界を支「お断りよ!」…!いい度胸だ…!つまり、そいつは今ここで‼︎殺してくれという意味だよなァ⁉︎」

 

 

 

「貴方を、これからぶっ飛ばすって意味よ‼︎」

 

 

 

 

リズムの覚悟を決めた言葉に、シキの記憶にかつての宿敵が蘇る。

適合する事こそなかったが、同じ時代を生きてきた自分が唯一認めた男。

既視感に包まれたシキは、怒りで顔を染め上げる。

 

 

 

「黙れ!お前みたいなぬるま湯で生きてきたガキが、あのクソったれ(ロジャー)と同じ台詞を吐くんじゃねェよ………!」

 

 

 

シキは怒りのままに剣を構えてリズムとミューズに突進し、リズムとミューズもそれを迎え撃つ。

激しい攻防が繰り広げられ、一瞬の隙を突いたミューズがシキの手を蹴り飛ばす。

剣を持つ両手を弾かれて、僅かに仰反るシキに追撃を加えようとするミューズ。

 

「ミューズ、駄目っ‼︎」

 

「⁉︎」

 

何か嫌な予感を感じたリズムが叫ぶと、それと同時にミューズの鼻先を斬撃が掠める。

 

 

「チッ…!油断させて一撃で仕留める気でいたのによ」

 

「貴方…その足は………⁉︎」

 

 

リズムはシキの両足を見て驚く。

それもその筈、シキの両足からは膝下から剣になっていたからだ。

よく見ると、先程まで足だった部分は義足だったのか地面に転がっている。

 

 

「大した事じゃねェ。昔、脱獄した時に枷が邪魔だったから斬り落としたのさ。まさか俺が義足だとは思わなかっただろう?」

 

自分で自分の足を斬り落としたという事実を、大した事じゃないと言い切るシキに、リズムは空恐ろしさを覚えながらも油断なく身構える。

 

 

 

 

 

 

「斬波‼︎」

 

 

 

 

 

 

シキが脚を振るうと、不可視の斬撃が大地を穿つ。

掠っただけでも致命傷を免れないであろうその威力。

 

 

 

「どうした、ベイビーちゃん達?本番はここからだろう?獅子・千切谷‼︎」

 

 

 

続け様に斬撃を複数飛ばすシキ。

リズムとミューズは必死で避け続ける。

 

 

 

「(不味いわね…体力が追いつかない………!)」

 

 

 

度重なる攻撃を躱し続けた事で着実に体力が擦り減らされて行く。

このままではジリ貧だと思われたその時だった。

リズムとミューズの身体が、不意に軽くなる。

同時に心地良い感覚が全体を満たし、精神的な落ち着きが宿っていく。

何が起こっているのか分からず、2人が困惑していると何処かから声が聞こえて来る。

 

 

「〜〜〜〜♪〜〜〜〜♬」

 

 

声の主はメロディだった。

建物の壁に身体を預けながら、音楽を口ずさんでいる。

これこそ、メロディの持つ『ジックジックの実』のもう一つの力。

勇壮な音楽を流せば力が巡り、穏やかな音楽なら安らぎと冷静さを、そしてテンポの速い音楽ならばーーーー身のこなしが素早くなる。

 

 

「響…‼︎やっぱりお前だけは、先に始末しておくべきだったな‼︎」

 

 

シキは歯軋りすると、メロディに斬撃を飛ばそうと脚を振り被る。

 

 

 

「絶望のうちに死ね!斬…「残念だけど、ゲームオーバーだよシキ!」…何⁉︎」

 

 

メロディの言葉の真意が分からず、シキは思わず動きを止めてしまう。

 

 

「選択肢を誤ったね。アンタは、私じゃなくてリズムを優先すべきだった!」

 

 

まさか…!シキの背を嫌な汗が伝う。

空を見上げると、其処には砲弾の如くの速さで突っ込んで来るリズムの姿。

 

 

 

「ハアアアアッ‼︎」

 

 

 

リズムの華奢ではあるが、プリキュアになる事で強化された拳が唸りを上げてシキへと振り下ろされる。

だが………。

 

 

 

「っ⁉︎外したっ………⁉︎」

 

 

「ジハハハハッ!最後の最後でヘマをしたな!終わりだァ!」

 

 

 

スレスレの所でシキが身体を捻って躱す。

リズムはシキのように空を自由に飛べる訳ではない。

唯一の攻撃のチャンスを失ってしまった事で、シキの顔に余裕が戻る。

 

 

 

「まだ終わってない!気合いのレシピ、見せてあげる‼︎」

 

 

「なっ……………⁉︎」

 

 

 

重力によって自由落下するリズムは、偶々近くに浮いていた………シキが能力で浮かしていた瓦礫に着地し、そのままの勢いで身体を回転させて再び飛び上がる。

 

 

 

 

予想外の事に、言葉を失うシキの元へと。

 

 

 

 

 

 

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼︎食らいなさい、金獅子のシキッ‼︎」

 

 

 

 

 

「(反撃を…いや、奴の動きが早過ぎて間に合わねェ!そんな馬鹿な…!海賊ですらねェこんなガキに、この俺が阻まれるってのか………⁉︎)ロジャーァァァァァァァーーーーーーーーッ‼︎」

 

 

 

 

 

かつての宿敵の名を呼びながらシキは絶叫し。

 

そして、リズムの拳は吸い込まれるようにシキの顔面へと直撃。

 

 

 

 

 

 

大海賊『金獅子のシキ』は、そのまま意識を失って地面へと落下していくのであった。

 

 

 

 

 

 




北条響………奏のS○COM。今回は奏を脅したシキにブチ切れた。シキとはロックス時代にギャグの掛け合いをしていたので、それなりに仲は良かった。でも奏に手を出そうとしたお前は絶許。
今回の戦闘ではリズムを庇った事で戦闘不能に。
海水には勝てなかったよ………。
因みに戦闘中に使った『G線上の音霆圧』は広範囲のMAP技。
元ネタはG線上のアリアから。

シキからは昔に比べて悪意に鈍感になったと指摘されている。
まあ、海賊が蔓延るONE PIECE世界に比べりゃスイプリ世界は比較的平和だから仕方ない。
因みにシキがリズムに殴り飛ばされた後は、気絶するシキの向こう脛を蹴るという地味な仕返しを行う。


南野奏………MVP。響やリンリン、白ひげというヤバい奴らに囲まれる生活で肝が据わってきている。
今話では自分を脅すシキ相手に一歩も引かず、彼の勧誘に対して盛大な啖呵を切る程の根性を発揮。
純粋な戦闘力ではシキや響に及ばないが、今回はミューズの参戦による手助けとメロディの能力によるバフを駆使してシキを倒すという大金星を挙げる。



キュアミューズ………黒服に身を包む謎のプリキュア。一体、何者なんだ…?因みに白ひげと響には、とうの昔に正体がバレているが何か理由があって隠しているんだろうと、空気を読まれている。
勿論本人は身バレしている事に気づいてない。
シキには『鶏頭変眉』という印象を抱いている。
今回は化け物みたいに強いと思っていたメロディが危機に陥った事と、シキの戦闘力に脅威を覚えた為、特別に参戦。
しかし、割と空気だった。
もういっそ正体バラして皆に協力して貰った方が、事が良い方向に進むんじゃないかと思っている。


金獅子のシキ………油断のならない変眉。ONE PIECE世界でルフィに敗れて海に落下している所だったが、スイプリ世界に転移。
世界が変わっても目的は変わらず、野望の為にマイナーランドと手を組んでいた。
ONE PIECE世界では、無くした脚に『桜十』『木枯し』という刀を差して抜身で歩いていたが、スイプリ世界に来た後は義足を作りその義足に刀を差して歩いている。
取り外しも可能。

今話では響を勧誘するも断られ戦闘に突入。
フワフワの実を生かした海水攻撃で一番脅威である響を無力化。
更に奏も勧誘するが余裕で断られ、殺してやると息巻くが奏にエッドウォーの戦いでロジャーに言われた時の台詞を返され激昂。
奏やミューズの事をぬるま湯で生きてきたガキと見下していたが、その油断と慢心が祟りまさかの敗北。
その後、向こう脛を響に蹴られた。
シキは映画で出すには早過ぎた惜しいキャラだと思う。
こいつはギャグもシリアスも兼ね備えてるから今後、ドンドン絡ませたい。
でもマジでフワフワの実ってチート。
海水扱える時点で能力者にマウントとれるし使い勝手も良い。
作者も使いたい。
変眉にはなりたくないけどな‼︎




さて、次回はシキとスイプリ勢の会話。
そしてセイレーンに何かが………⁉︎
彼女に迫る謎の男の影!

次回、『魂の調べ、その名は………⁉︎』に続く!

※タイトルは仮定です。今後変更可能性アリ。

皆でハーモニー響かせよう♪



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哀愁のシキとお悩み猫のセイレーンと過去の追憶

作者の妄想シリーズ第六弾。
お待たせしました。



彼は、夢を見ていた。

 

 

『ジハハハハ!ロジャー、俺の仲間になれ!世界を支配しようぜ!』

 

『ワハハハハ!そいつはお断りだ!俺は自由でいたいんだよ!』

 

 

今となっては淡い夢。

その男に、夢の中で彼は何度も誘いをかける。

その誘いは毎度断られ、実力行使による小競り合いに至るまでがワンセット。 

だがその夢は終わりを迎え、場面は男が処刑されるシーンに変わる。

 

 

『ロジャー…何故死んだ。何故なんだ………。お前は、俺が認めた男なんだぞ。海軍なんぞに殺させるくらいなら、この俺が…!おい、ロジャー‼︎俺を置いて行くんじゃねェ!』

 

 

何度も何度も、彼は男に向かって叫び続ける。

その声が届かない事を分かって居ながらも、彼はそうせずには居られないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ‼︎ロジャー…⁉︎」

 

 

「あ、起きた。奏ー?シキが目を覚ましたよー?」

 

 

夢から覚めた彼…金獅子のシキが起きると、其処は見慣れない場所。

状況が呑み込めずに居ると、傍にいた響が足早に奥の部屋に入っていく。

 

 

「響…?こいつはどういう……そもそも何処だ、此処は?」

 

 

周りを見渡すと、其処には机や椅子が並んでいて、ケーキのサンプルらしき物が入ったショーケースが置かれている。

どうやら飲食店か何かのようだ。

よく見ると、自分も椅子に座らされていた事に気づき、近くの扉を開けて外へ出る。

 

 

「グララララ…!まさかお前も来てたとはなァ、金獅子ィ…‼︎」

 

「ハ〜ハハハママママ!懐かしいねェ!まるであの頃みたいじゃないか!聞いたよ、奏に殴り倒されたらしいじゃないか!ハ〜ハハハ‼︎」

 

「白ひげ⁉︎リンリン⁉︎何でお前らが………‼︎」

 

 

扉を開けた先にはかつての仲間であり、同時に敵でもあった2人の海賊。

エドワード・ニューゲートとシャーロット・リンリンが、机の上に山と積まれたカップケーキを囲んで座っていた。

 

「あー…話すと長くなるぞ。それに、話すとしても全員揃ってからだ。響とあの娘がもうすぐ来るだろうからな。それと、ここでは暴れんじゃねェ。俺とリンリンと響を敵に回してェってんなら話は別だがなァ」

 

白ひげがそう言うと同時に扉が開き、2人の少女…北条響と南野奏がカップケーキと飲み物を持って外へと出て来た。

 

「はい、お待たせっと。ほら、シキも立ってないで座りなよ」

 

「あ、ああ………」

 

生返事をしながら、シキは響に促されて椅子に座る。

 

「ラッキースプーンのカップケーキはとっても美味しいの。シキも食べてみなよ。因みにこれは奏の手づくり」

 

可愛らしい形のカップケーキが机の上に所狭しと並べられる。

甘く芳しい香りに、シキは一つ手に取って食べてみる。

確かに美味い。

 

「………お味は如何ですか?」

 

味の感想を求められたシキが振り向く。

其処にはつい先程、自身を打ち倒した少女…奏が何とも言えない表情を浮かべて佇んでいた。

 

 

「誰かと思えば、あの時のベイビーちゃんか。殴られた時の痛みがまだ残っててな。口を開く度に痛くてたまらねェんだ。ベイビーちゃんが責任を持って食わせてくれよ」

 

「それだけ話せるなら一人で食べられるでしょう?と言うか、今さっき自分で食べてたじゃないですか」

 

「ジハハハハ………確かにそうだ。で、これは何のつもりだ?俺が響やベイビーちゃんに何をしたか、分かってるだろう?」

 

「ええ。ハミィ達は勿論の事、響や私にも色々やってくれましたからね。ぬるま湯で生きてきたガキ(・・・・・・・・・・・・)に負けた金獅子のシキさん」

 

 

嫌味混じりのシキの言葉に、奏も微笑みを浮かべながら先の戦闘時にシキに言われた台詞をもって、刺刺しく言い返す。

響は若干目を逸らしながら「奏が珍しく毒吐いてる………」と呟き、シキはシキで奏に負けた事を指摘されたのが癪に触ったのか、苛立ちを滲ませた。

  

 

「ジハハ………確かに負けたのは事実だ。それ自体を否定する気はねェ。だがな、調子に乗るんじゃねェぞベイビーちゃん」

 

「私はベイビーちゃんじゃなくて、『南野奏』って名前があるんです。キチンと名前で呼んでくださいね。それと、響は貴方がした事を許してるみたいですけど、私はまだ許してませんから」

 

 

売り言葉に買い言葉。

2人の間に生じる摩擦で空気の重みが僅かに増して行く。

 

 

「(ニューゲート、何とかしてよこの空気)」

 

「(無茶言うな。本気で怒った女ほど面倒なもんはねェ。関わるのは御免だ)」

 

 

ヒソヒソと会話をする響と白ひげ。

どうしたものかと2人が思案していると、意外な人物が奏とシキの間に入った。

 

 

「まぁ落ち着きな、お前たち!生きてりゃ殺したい奴の100や200はいるもんだ!仲良くやんな!ハ〜ハハハママママ!」

 

リンリンがカップケーキを口に頬張りながら言うと、毒気を抜かれたのか、シキは溜め息を吐いて椅子に座り直した。

 

 

「さて、それじゃシキに今の私達の現状を教えるとしますか。と言っても、私だけじゃ説明出来ない事もあるから、ニューゲートにも所々で補足して貰うからね」

 

「ったく、そう言うのには慣れてねェが仕方ねェ。シキ、お前にも話を聞かせて貰うぞ。何でお前があの連中と一緒にいたのか…とかなァ」

 

 

響がそう言って話題を変え、白ひげもまた、仕方ないと面倒そうに言いながらシキを方を見る。

 

「ジハハハハ…!いいだろう、話してやるよ。信じるかどうかはお前達次第だがな…!」

 

シキはニヤリ、と笑いながらこれまでの経緯を話すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

「シキの話を纏めると。麦わら帽子を被った男に、油断と慢心と老化と変眉が原因でみっともなく負けて、こっちの世界に来てから性懲りもなくマイナーランドと手を組んで世界を支配しようとしたけど、油断と慢心と老化と変眉でまたもや敗北。で、今に至ると。こんな感じ?」

 

 

「間違っちゃいねェし実際その通りだが、もうちょっと気を使って物を言えねェのか、響ィ!それに、変眉は負けたのに関係ねェだろ!どんだけ変眉ネタで俺を馬鹿にすりゃ気が済むんだテメェ‼︎」

 

 

響の身も蓋もない言い方に青筋を浮かべるシキ。

 

「アハハ、ごめんごめん。冗談だって。それで、これからシキはどうするつもりなの?マイナーランド側に付くって言うなら海に沈めるけど」

 

「ジハハハハ…!やれるもんならやってみろ!………と言いたい所だが、今更マイナーランドに戻る気はねェよ。それに、お前らを敵に回すとなると流石に分が悪い。………こうなれば、いっそ隠居するのも悪くねェかもな」

 

シキの言葉に響は勿論、白ひげやリンリンまでもが目を丸くして意外そうに見つめる。

暫くの沈黙が続き、最初に口を開いたのは白ひげだった。

 

 

「………俺ァ、大抵の事じゃ驚かねェが今回ばかりは驚いた。お前からそんな台詞を聞く日が来るとは夢にも思ってなかったぜ。麦わらの小僧と、この娘に負けたのがそんなにショックだったかァ?」

 

「ママママ…!あの金獅子も落ちぶれたもんだ。ルーキー1人と奏に負けたくらいで。それでも昔、おれとタメを張った海賊かい?全く、情けないねェ…!」

 

 

白ひげに続き、リンリンも呆れたように言う。

そして響は何故か何も言わず、シキの顔を眺めていた。

 

 

「何とでも言え。それに身を引くと決めた訳じゃねェんだ。………あばよ。カップケーキは美味かったぜ、ベイビーちゃん」

 

 

そう言ってシキは椅子から立ち上がり、カランコロンと下駄の音を鳴らしながら歩き去っていく。

そして白ひげの横を通り過ぎようとした時、独り言のように呟いた。

 

 

「なァ、白ひげ。歳はとりたくねェもんだ。身体だけじゃなくて、心まで衰えちまう。………何、くだらねェ戯言だ」

 

 

哀愁の篭ったシキの言葉に白ひげは黙したままその背を見送り、シキも再びカランコロンと下駄の音を響かせながら、今度こそ去っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、マイナーランドの歌姫であるセイレーンは公園のベンチに座り、ボーッと周りの景色を眺めていた。

これは今に始まった事ではない。

ここ最近はこのように何もせず、無心でいる事が増えているのだ。

セイレーンとしても音符を集め、一刻も早く不幸のメロディを完成させなければならないのだが、相変わらず音符集めは行き詰まっている。

キュアメロディを筆頭とするプリキュア達も日を追う事に強くなり、益々手が付けられなくなって来ていた。

しかしセイレーンの心内を占めるのはそれではなく、全く別の事柄。

 

 

 

「ハミィ………アンタは何故、いつも私に構うの…」

 

 

 

ここ最近脳裏に浮かぶのは、袂を分かち敵となった今でも自分を構いにくるハミィの事ばかり。

 

最初は鬱陶しいとしか思っていなかったし、何故マイナーランド側に付いた自分に構い続けて来るのか、彼女には理解出来なかった。

一緒に幸せのメロディを歌おうとか、メイジャーランドに帰ろうだとか、馬鹿の一つ覚えのように言い続けてくるハミィ。

何度も何度も騙し、裏切り続けても決して諦めず見放しもしないハミィに、僅かながらにセイレーンの凍り付いた心が揺り動かされる。

そんな事はないとセイレーンは自分自身に無理矢理言い聞かせるが、納得がいかない。

そもそもセイレーンは、ハミィの持つ歌姫としての天賦の才に嫉妬し、悪の道に堕ちた。

 

そんな自分が、今更どの面下げてハミィとメイジャーランドに戻るというのか。

 

そう思い悩んでいる時だった。

 

 

 

 

 

「ハハハハハ…!人生ってなァ、何が起こるか分からねェ。だからこそ、面白い………!そう思わねェか?」

 

「(何…この人間?まあいいわ、面倒だけど猫のフリを……)」

 

 

 

 

 

逆立ちうねる髪を靡かせながら現れた謎の男。

セイレーンはいつも通り、猫を演じてやり過ごそうとしてーーーー

 

 

 

 

 

「俺は今、お前に話しかけてんだーーーー黒猫。それとも、セイレーンと言えば反応してくれるのか?」

 

 

 

 

 

男の言葉に、思わず振り返って立ち止まる。

何故?どうして、この人間は自分の名前を知っている?

まさか、メイジャーランド側の人間か?

 

警戒レベルを最大まで引き上げ、セイレーンは何時でも対処できるよう身構えた。

そして冷静に状況を分析。

相手は人間の男1人、近くにはプリキュアの気配もない。

いざとなれば、簡単に始末出来る。

 

 

 

 

 

「やめとけ。死ぬぞ(・・・)?」

 

 

 

 

 

その瞬間。

男から発せられた濃密という言葉ですら霞む程の殺意が、セイレーンの全身を襲う。

キュアメロディや、あの巨大な老婆とは質の違う、理から外れたような異様な気配。

 

 

決して抗ってはいけない、その瞬間に命を絶たれると確信してしまえる程のそれ。

 

セイレーンが男の威圧感に、圧倒されているのを感じ取ったのか、男は笑いながら嵐のように荒れ狂う殺意を霧散させる。

 

 

 

「おっと、悪い悪い。今のはちょっとした警告だ。それよりも…お前の話を聞かせてくれよセイレーン………ハハハハハ!」

 

 

 

身を竦ませ、怯えるセイレーンに男の言葉に逆らうという選択肢は………存在しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

tips①『悪魔の実』 

 

 

「ねぇ、ロックス。それって………」

 

「ハハハハハ…!見ての通り、悪魔の実だ」

 

 

ロックスに部屋へと呼び出された響は、彼が手に持っている『悪魔の実』を見て驚きを交えながら問い掛けた。

 

 

「前に俺達が叩き潰した天上金を乗せた船があっただろ?アレにこいつが乗せられてたのさ…!しかも、コイツはその辺にある悪魔の実とは一味違う!希少とされている自然(ロギア)系より、更に希少な………動物(ゾオン)系『幻獣種』の実だ!中々お目にかかれない逸品だぞ」

 

「ふーん…何だか変な見た目だね。食べる気しないなー…」

 

「よく言うぜ。『音符型の実』なんて妙な形の実を食べたお前が言う台詞か?ハハハハハ!」

 

「しょ、しょーがないじゃない!だってお腹空いてたんだもん。まさかアレが悪魔の実だった何て思わなかったし!それにすっごく不味かったんだから!」

 

 

先日、上陸した島で偶々見つけた『ジックジックの実』を食べてしまい、能力者となってしまった響。

一生カナヅチという代償と引き換えに手に入ったのが、楽器無しで音を出して演奏が出来るというこれまた微妙な能力。

その件でロックスには腹を抱えて大笑いされ、白ひげやシキからも僅かに同情的な目で見られる等、散々であった。

 

 

「あーあ。私の食べた実もシュトロイゼンみたいな食べ物を生み出す能力だったら良かったのになあ」

 

「ハハハハハ…!そう言うな。どんな能力でも鍛え方によって変わってくる。『覚醒』すりゃ、化けるかも知れねェぞ?得た能力をどう使うかはお前次第だ…!」

 

 

そう言って、ロックスは手に持っていた悪魔の実を鍵の付いた箱の中へと仕舞った。

 

 

「あれ?食べずに仕舞っちゃうんだ。どうして?」

 

「今の俺には必要のない物だからな。売るには勿体無さすぎるし、いつか相応しい奴に食わせるさ…!」

 

「そう言えばさ。その『悪魔の実』って何の動物になれる実なの?」

 

 

響の問い掛けに、ロックスはニヤリと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ…!よく聞けよ?この実はなーーーーーーーーだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

この悪魔の実は、様々な巡り合わせを経て、とある人物の手に渡る事になる。

 

最も、それを響が知るのはこれより後の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

tips②『彼を殺す者』

 

 

「なァ、響。俺を殺せる奴が居るとしたら、誰だと思う?」

 

 

ロックス海賊団の船長室。

船長であるロックスは、傍らにいる響に不意に問い掛ける。

唐突な問い掛けに、響は顔をロックスに向けて眉間に皺を寄せた。

 

 

「どうしたの、急に。私、そう言う話好きじゃないよ」

 

「ハハハハハ…!お前がこういう話を嫌うのはよく分かってるさ………!だからこうしよう。船長命令だ、響。俺の質問に答えな!」

 

「ズルいでしょ、それ!そう言う時だけ船長命令出すの!」

 

 

まさかの船長命令に、響は膨れっ面になってロックスに抗議するが、ロックスはハハハハハ!と笑って受け流した。

ハチノス島にいた時から思っていたが、ロックスという男は時々子供っぽい所がある。

こうやって悪戯っ子のように人を揶揄ったりするのだ。

 

 

意外に思うかもしれないがロックスは普段、船員にこれといった命令をしない。

目的地と何をするのかを簡潔且つ丁寧に説明した後は『楽しんでこい、好きにしろ…ハハハハハ!』と告げて何処かに行ってしまう。

 

これだけ聞くと本当に世界の王になる気があるのか?と思うかも知れないが、実は綿密に計画を立てた上での行動なのだ。

最も、響や他の船員達がそれを知るのは全てが終わった後というのが通例なのだが。

時には国家を崩壊させ、海軍支部を壊滅させたかと思えば謎の遺跡巡りに船員を付き合わせたりと、彼の行動にはとにかくいとまがない。

 

 

「ハハハハハ!そう怒るな!で、どうだ?俺を殺せる奴…この際、将来的に可能性がありそうな奴でも良い。言ってみろ。それがこの船の船員だったとしても、それを理由にして殺したりはしねェさ…!」

 

 

そう言って笑うロックスに対し、響は軽い溜め息を吐きながら、彼を殺せそうな者達を思い浮かべて口にする。

 

 

「まあ…そうね。あんまり言いたくはないけど、貴方を殺せそうなのはニューゲート、リンリン…シキ辺りかな。将来的な可能性ならカイドウとか。見習いでいるのが不思議なくらいの強さだしね。後は…海軍のガープとセンゴクとゼファー。それに、前に私達と戦った海賊のロジャーとか………」

 

「ハハハハハ…!中々見る目があるじゃねェか。確かに俺を殺せる奴らと言えば今お前が挙げた連中だろう。とは言え、奴らの今の実力なら無理だがな…!ガープは前の海戦でボロ雑巾にしてやったが………ロジャーの野郎の横槍で止めを差しそこなったしな。そのロジャーも叩き潰してやったが……逃げられちまった。いるのさ、ああいう『天性の運』を持つ奴が。アレは間違いなく強くなる。そして必ず俺の脅威になるだろう。奴が再び俺の前に現れるのが楽しみだ…!同じ『D』を背負う人間だけにな…!まあ、それはそれとして。後一人、名前が挙がってない奴が居るぞ」

 

 

楽しくて堪らないとばかりに笑うロックスは、後一人残っていると言って指先を立てる。

ロックスの指摘に、響は他の船員達や海軍の軍人達を思い浮かべるがロックスを倒せる程かと言われればそうでもない。

 

 

「う〜ん?分からない。誰だろ?」

 

「ハハハハハ…!成る程、確かに分からねェかも知れねェな…!なら、俺が特別に教えてやるよ。今挙げた奴ら以外で、俺を殺せる奴は………」

 

 

ロックスは響に顔を近づけると、その名を口にする。

 

 

 

 

 

 

お前だよ、北条響(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、ロックスは口端を歪めると言葉を失って立ち尽くす響を見て笑うのだった。

 

 

 

 

 

 




金獅子のシキ………ルフィにやられ、奏にも敗北した主人公補正の被害者。ルフィはともかく、海賊ですらない奏に負けた事で流石に自身の衰えを感じたのか、少し傷心気味。ONE PIECEで最もロジャーに執着してたのはコイツじゃないだろうか。シキの声を演じた竹中直人氏には『悲しくも切ない男』と評されている。
今は単独行動中。
シキのファンの皆様は安心して欲しい。
彼には今後見せ場がある。←重要。


北条響………今回は彼女に関して語る事は然程ない。
シキに溺れさせられかけた事に対しては、戦いだから仕方ないと思っている。
過去にロックスからは『俺を殺す事が可能な人間』リストに入れられていた。
ロックスが響をどう思っていたのかは、現時点では不明。


南野奏………今話では、響を殺そうとしたシキに対して毒を吐いた。
でもカップケーキは食べさせてあげた。優しい。


ラッキースプーン………被害者枠。日を追う事に増えていくヤバいメンツの溜まり場となりつつある。


セイレーン………プリキュアとの戦いや、音符集めに疲れて物思いにふけっていたら逆立つ髪をうねらせたヤバそうな男に絡まれてガクブル。
何やら不穏な空気が漂いつつあるが………⁉︎

………次回でプリキュアに覚醒するかも。


逆立つ髪をうねらせたヤバそうな男………誰なんだろーな。作者も分かんないや。多分ヤバい奴だよ。





次回こそ、ビート覚醒だから!多分!多分だよ⁉︎








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運命の覚醒を遂げる黒猫と、対峙する最強

作者の妄想シリーズ第七弾。
今回はちょっと長いよ。


〜マイナーランド〜

 

 

 

 

「………メフィスト様。只今、戻りました」

 

「む?セイレーン⁉︎貴様、今まで何処をほっつき歩いていた⁉︎音符集めはどうなっている⁉︎いつになれば伝説の楽譜は完成するのだ!」

 

 

マイナーランドの王・メフィストは、ここ最近姿を見せなかったセイレーンが今になって現れた事に、叱責を浴びせた。

しかし、当のセイレーンはメフィストの叱責をどこ吹く風と受け流しながら口を開く。

 

「その音符集めに関してですが…私にとっておきの策があります。しかし、これを実行に移すにはメフィスト様の協力も不可欠ですが」

 

「ほう?そこまで言うからには、相当な自信があるのだろうな?」

 

「はい。上手くいけば、あの忌々しいメイジャーランドのハミィとプリキュアを排除し、尚且つフェアリートーン諸共音符を手に入れる事が可能です」

 

 

セイレーンは両の金色に輝く目を見開きながら邪悪に笑う。

一方、メフィストは何処か信用できないという風な目でセイレーンを見る。

 

 

「だがセイレーン、貴様は今までハミィとやらに何度か心を絆され掛けていたではないか?今回はそうならないだけの確固たる自信はあるのか?」

 

「それなのですが………メフィスト様にお願いがあります。私に、もう一度強力な悪のノイズを流しては頂けないでしょうか」

 

「悪のノイズか?フフフ…いいだろう!どうやら今回は本気のようだな!ならば俺も人間界へ向かうとしよう!奴らから音符を奪い、不幸のメロディで世界を染め上げるのだ‼︎」

 

 

そう言って、高らかに笑うメフィスト。

同様に、セイレーンも氷のように冷徹な瞳で空の彼方を眺める。

 

 

 

 

 

 

戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニャプニャプ〜♪音符は何処かニャ〜?」

 

 

メイジャーランドの歌姫であるハミィは、今日も音符集めに勤しんでいた。

メロディとリズム、そして謎のプリキュアであるミューズのおかげもあって幸せのメロディを完成させる作業は順調だ。

それは間違いなく嬉しい事なのだが、ハミィはかつての自分の友達…いや、今もそうだと思っているセイレーンと仲直り出来ていないのが気掛かりでもあった。

幸せのメロディを完成させれば、きっとセイレーンも心を入れ替えてメイジャーランドに戻って来てくれる筈だと思いながら、ハミィは日々を過ごしている。

その為にも、一刻も早く音符を集めようと思っていたその時だった。

 

 

「………また会ったわね。ハミィ」

 

「ニャ?セイレーン?」

 

 

ハミィの頭上に影が差し、上を見上げる。

其処には、人間の姿に変化しているセイレーンが金の瞳でハミィを見下ろしながら佇んでいた。

 

 

「ねぇ、ハミィ。話があるの。フェアリートーン達も一緒に連れて来てくれないかしら?」

 

「分かったニャ!フェアリートーン達も連れて一緒に行くニャ!」

 

 

敵である筈のセイレーンの言葉に、迷う事なく即答するハミィ。

セイレーンは一瞬、何とも言えない………誘いが上手くいった事に対する喜びと、僅かな罪悪感に囚われる。

 

 

「(何で敵の私を、そんな簡単に信じるの…ハミィ)………ありがとう。こっちに来てくれる?」

 

 

悪のノイズに犯され、もう何も感じる筈のない胸の内の痛みにセイレーンはあえて気付かないフリをして、ハミィについて来るよう促した。

セイレーンの言葉に疑いを欠片も持たずについて行こうとするハミィの姿にフェアリートーン達は、不安そうな表情を浮かべる。

 

 

「どうするドド?限りなく怪しいドド…」

 

「だったらいい考えがあるシシ。ドリーとレリーは響と奏にこの事を伝えに行って、僕達はハミィについて行くシシ。これなら、何かあっても何とかなる筈だシシ」

 

「分かったレレ。ドリーと僕は響と奏の元に急行するレレ。皆気をつけてレレ!」

 

 

フェアリートーンのシリーの提案に、皆が賛成し気付かれないよう二手に分かれる。

 

 

「(何だか嫌な予感がするファファ………)」

 

 

ハミィとセイレーンの向かう先の空を眺め、ファリーは不安そうに心内で呟く。

セイレーンとハミィの向かう先には、今にも雨を降らしそうな暗雲が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたわ。ここよ、ハミィ」

 

「ニャ?ここは…?」

 

 

セイレーンに案内され、連れて来られた場所。

其処は加音町の中心部に位置する時計台のある広場だった。

もうすぐ雨が降りそうだと言うのもあってか、人の姿は殆どない。

  

 

「……………」

 

「セイレーン?どうしたニャ?」

 

 

急に立ち止まり、動きを止めたセイレーンにハミィは不思議そうに問い掛ける。

ややの間を置き、セイレーンはゆっくりと振り向く。

 

 

「今よ、トリオ・ザ・マイナー!」

 

「え?」

 

「「了解〜♪」」

 

 

セイレーンの言葉の意味を理解する間もなく。

ハミィと、フェアリートーン達は何処からともなく現れたトリオ・ザ・マイナーの手によって、一瞬で捕まってしまう。

 

 

「セイレーン?どう言う事ニャ?」

 

「まだ分からないの?騙されたのよ、アンタは。この私に………ね」

 

 

問い掛けるハミィに対し、セイレーンは冷酷な眼差しをもって答える。

そして同時に、赤い髪の毛の男性が拍手をしながら現れた。

 

 

「フハハハハ!よくやった、セイレーン!お前の計画通りだな!」

 

 

 

 

マイナーランド・国王

 

メフィスト

 

 

 

 

 

「ええ………ですが、まだ終わっては居ません。プリキュアを倒すまでが、今回の作戦です」

 

「そうだな!だが、セイレーン。貴様にあの化け物プリキュアを倒す事が出来るのか?」

 

 

ベルティエを真っ黒に染め、ネガトーンをボコボコにするキュアメロディを頭の中で思い出しながらメフィストは言う。

それもその筈、以前に巨大な老婆に押し潰された事と、その老婆と互角に渡り合うキュアメロディの姿が若干のトラウマになっているからだ。

セイレーンには知る由もない事ではあるが。

 

 

「問題ありません、メフィスト様。切り札がありますので………」

 

「ほほう?切り札とな?それは楽しみだ!さあ、トリオ・ザ・マイナー!フェアリートーンと、そのお喋りな白猫を連れてこちらに来い!コイツらの集めた音符と、今まで我々が集めた音符を使い伝説の楽譜と不幸のメロディを完成させるのだ!」

 

「「お任せ下さい〜♪」」

 

 

セイレーンは籠の中に囚われたハミィとフェアリートーン達を一瞥し、その場を離れていく。

 

 

「セイレーン!セイレーン、行かないでニャ〜!」

 

 

背後から自分を呼ぶ、ハミィの声が聞こえていない振りをしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急ごう、奏!ハミィとフェアリートーンの皆が危ない!」

 

「そうね!早く行かないと!」

 

 

フェアリートーンのドリーとレリーから、ハミィがセイレーンに連れられて行ったと聞いた響と奏。

ドリー達が言うには、時計台のある広場の方角へ行ったと聞いてはいたが、細かい事までは分かっていない。

もしも、マイナーランドに連れ去られでもすれば一大事だ。

 

 

 

「「無事でいてよね、皆………!」」

 

 

 

2人は駆ける。

戦いの場へと。

 

 

 

 

 

 

 

広場へと到着した2人。

辺りは静まり返っていて、ポツポツと小雨が降り始めていた。

 

 

「来たわね………プリキュア」

 

 

「セイレーン………!」

 

 

時計台の上から聞こえてきた声に振り返ると、其処には人間の姿に体を変化させたセイレーンが無表情で佇んでいた。

 

 

 

 

 

「決着をつけましょう。私は………覚悟を決めたわ。だからアンタ達も全力で来なさい。でないと………死ぬわよ?」

 

 

 

 

 

そう言うと、セイレーンは服の中から何かを…『珍妙な形をした実』を取り出す。

 

 

 

「セイレーンっ⁉︎それは、まさか………⁉︎」

 

 

 

セイレーンが手に持つその実に気付いた響が驚きの声を挙げる。

それも当然だろう。

何故ならそれは………『悪魔の実』は、この世界には存在しない筈の代物なのだから。

 

そして何より、響はその『悪魔の実』に見覚えがある。

かつて、ある男が所有していた希少中の希少と言われる『悪魔の実』。

 

 

 

 

 

 

 

 

確か、あの実の名前はーーーーーーーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

セイレーンは、悪魔の実を眺めながら先日出会った謎の男の事を思い出す。

 

 

 

『これは………?』

 

『コイツは俺のいた世界で、悪魔の実と呼ばれている代物だ。一口食うだけで、絶大な力を得る事が出来る。お前にやるよ。これをどう使うかはお前次第だがな…ハハハハハ!』

 

『………何が目的なの?』

 

『目的なんざねェよ。ただ…お前を見て、それが必要だと判断したから………強いて言うなら、面白くなりそうだと思ったからだ…!』

 

『………アンタが何を言ってるのか分からないわ』

 

『分かる必要はねェさ。じゃあな、キュアビー…おっと、危ねェ危ねェ!それはまだだったな(・・・・・・・・・)!また…会おうぜ?ハハハハハ!』

 

 

 

あの男は何者だったのか、それは分からない。

いや、今はそんな事などどうでも良い。

食べるだけで力が得られるなど俄には信じがたい話ではある。

だが、もし本当に力を得てあのプリキュア達に対抗出来るというのなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こういう賭けも悪くないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガブシュッ‼︎と、セイレーンは実に食らいつく。

想像を絶するような不味さが口内を満たすが、そんな事は然程気になりはしない。

実を齧り、飲み込んだ瞬間に今まで感じた事のない力が、湧き上がるのを感じたからだ。

 

 

 

 

齧った実をその場に放り捨てると同時に、セイレーンの身体に変化が訪れる。

 

 

 

ゴキゴキゴキッ‼︎と軋むような音を立てながら、セイレーンの姿が巨大な猫へと変容し、尾が生えたかと思うと二又に分かれ、その体躯を覆うかのように真っ赤な炎が舐めるように迸り、空には雷雲が立ち込めていく。

 

 

 

 

 

 

 

「ゴアアアアアアーーーーーーーーッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

地獄の底から這い出て来たかのような禍々しい咆哮を響き渡らせながら、セイレーンは響と奏の2人に告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来い………プリキュアァァァァァァァァッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

マイナーランド『歌姫』

 

 

セイレーン

 

 

ネコネコの実『幻獣種』

 

 

モデル“火車”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

並の者なら恐怖するであろう威容。

だが、この場にいる2人の少女の顔に恐怖と絶望の色はない。

2人は互いの顔を見遣ると頷き合い、キュアモジューレを掲げて叫ぶ。

 

 

 

 

 

「セイレーン…!貴方が其処まで覚悟を決めたと言うなら!」

 

 

「私達も、全力で行く!」

 

 

 

 

 

「「ここでやらなきゃ、女が廃る!/気合いのレシピ見せてあげるわ!」」

 

 

 

 

 

「「レッツプレイ!プリキュア !モジュレーション!」」

 

 

 

 

2人の姿が光に包まれ、変化していく。

そして光が収まると、響と奏が名乗りを上げる。

 

 

 

 

 

 

 

「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」

 

 

「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「届け!二人の組曲!スイートプリキュア!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜作者推奨BGM『暗黒の挑戦者』(ハートキャッチプリキュア)〜

 

 

 

 

ボボボボボボッ!と何かが弾けるような音が響く。

 

 

 

「来るよ、リズム!」

 

「オッケー!」

 

 

 

セイレーンの身体に展開された炎が、彼女の意志に沿うかのように胎動。

同時に、その巨体に見合わぬ動きで宙へと飛び上がったセイレーンは、身体を丸めて回転しながら2人目掛けて落下する。

 

 

 

 

 

「炎陣・火焔車‼︎」

 

 

 

 

 

ドカァンッ‼︎という轟音と共に、大地が抉られ暴力的な破壊が撒き散らされる。

 

 

間一髪で攻撃を避けた2人。

 

 

態勢を立て直して反撃しようとリズムは身構える。

すると、傍らにいたメロディが何故か突然リズムを抱え、その場を飛び退いた。

 

 

 

「キャッ…!メロディ⁉︎どうしたの⁉︎」

 

「これはちょーっと厄介かなー…?」

 

 

 

リズムを抱えたメロディが呟くと、先程まで2人がいた場所に別の敵が現れる。

 

 

 

「ネガトォォォーーーーーン‼︎」

 

 

 

甲高い声を挙げて現れたのは、ネガトーンだった。

 

 

「ネガトーン………⁉︎どうして⁉︎」

 

 

リズムが驚いたように叫ぶ。

そして、それを嘲笑うかのように現れるのはメフィスト。

 

 

「フハハハハ!今頃気がついても遅いわ、プリキュア!勿論、これだけではないぞ?見ろ‼︎」

 

 

そう言って笑うメフィストの背後には、10体以上のネガトーン達。

 

 

「まだまだ終わりじゃないぞ?さあ、プリキュアども!この白猫とフェアリートーン達を始末されたくなければ、大人しくするんだな!」

 

 

更にメフィストは、ハミィとフェアリートーン達を人質に取り、2人を揺さぶろうとする。

 

 

 

 

 

「卑怯者!鬼畜!変な赤髭!いい大人がそんな真似して恥ずかしくないの⁉︎ハミィ達に手を出したらぶっ飛ばすわよ‼︎」

 

 

「煩い!誰が変な赤髭だ!馬鹿にするな‼︎」

 

 

「リズムも最近激しい事言うようになったなあ………。でも、確かに何とかしないと………!」

 

 

 

 

リズムの口が段々と過激になって来ている事にメロディは若干焦りながらも(原因は他でもないメロディ自身と周りのヤバい奴等なのだが)、現状を打開する方法を探る。

しかし、考えてはみるものの良い方法が見つからない。

どうしたものかと思っていた、その時だった。

 

 

 

 

 

「グララララ…!何事かと思って来てみたが、中々面白い事になってるみてェだな…!」

 

 

 

 

 

特徴的な笑い声。

老齢でありながら、そんな事は微塵も感じさせない重厚な気配を纏う男が、その手に巨大な薙刀………むら雲切を携えながら現れる。

 

 

 

 

「どういう状況かはよく分からねェが、俺も混ぜさせて貰おうじゃねェか!」

 

 

 

 

『白ひげ』エドワード・ニューゲートは、そう言って不適な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニューゲート…⁉︎どうして貴方がここに⁉︎」

 

予想だにしていなかった白ひげの登場に、メロディが不思議そうに問い掛ける。

 

 

「何、偶々お前達が険しい顔で走っていく姿を見かけたんでなァ。少し寄り道がてら来たんだが…こんな事になるたァ、思わなかった。この猫娘は俺に任せて、お前達はあの捕まってる白猫どもを助けに行ってやれ!」

 

「………!ありがとう、ニューゲート!リズム、行こう!」

 

「え、ええ。でも、あの人だけでセイレーンを相手にするのは………」

 

「大丈夫!ニューゲートはリンリンや私より強いから!」

 

「そ、そうなの………なら、安心?ね」

 

 

あの巨大な老婆だけでなく、自身より強いと断言したメロディにリズムは考えるのを半ば放棄する。

何故自分の親友の周りに居るのは、人間をやめているような者達ばかりなのだろう?

そんな思考を頭の中で駆け巡らせながら、リズムはメロディと共に立ち塞がるネガトーンの群れへと突っ込んで行く。

 

 

その姿を見送った白ひげは、好戦的な笑みを浮かべながらセイレーンと対峙する。

 

 

「アンタが何者か分からないけど、私の邪魔をするなら誰だろうと容赦しないわ‼︎」

 

「グララララ!吠えるじゃねェか、猫娘!だったら、この一撃を受けてみろォ‼︎」

 

 

白ひげの握られた拳に、ヴーン!と白い膜のような物………振動エネルギーが集約されていく。

 

 

 

 

 

これこそ、白ひげがその身に宿すグラグラの実の力。

元いた世界において『世界を滅ぼす力』と呼ばれ、恐れられた所以。

 

 

 

 

 

次の瞬間、ドン‼︎と拳が宙に叩きつけられ、空間に亀裂が走った。

 

 

「(あれは………不味い‼︎)」

 

 

本能で危険を感じ取ったセイレーンは巨体を飛び上がらせて回避。

それと同時に、振動エネルギーが駆け抜けて行く。

 

 

「馬鹿げた威力ね………!だけど!」

 

 

バチバチッ!とセイレーンの二又の尾が帯電。

セイレーンは白ひげに向かって突進し、その尾を叩きつける。

 

 

 

 

 

 

「雷尾!」

 

「オオォッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

叩きつけられた巨大な尾を、覇気を惑わせた薙刀で防ぐ白ひげ。

 

 

「今の攻撃で大体分かったわ。アンタ、自分の力が強すぎて全力を出せないんでしょう?」

 

「グララララ…!お前のようなハナッタレには、丁度良いハンデだろう…!」

 

 

セイレーンの指摘に、白ひげも余裕の表情を崩さず言い返す。

とは言え、セイレーンの指摘は決して間違ってはいない。

白ひげの持つグラグラの実の力は、余りにも破壊力があり過ぎる為に周りへの影響力が半端ではない。

下手をしなくとも街一つ、国一つを片手間で滅ぼせるような力なのだ。

 

そして、白ひげという男は無用な破壊を良しとしない。

それが何の関係もない一般市民が住まう街の中心なら尚更だ。

彼が他者を顧みない人物ならば、話は違うのだろう。

 

 

故にセイレーンは、己の優位を確信する。

 

 

この男には、それを良しとするだけの非情さが無い。

戦いの場に置いて、そんなつまらない甘さ等、足枷以外の何者でもない。

ならば、付け入る隙は幾らでもある!

 

 

 

 

 

 

 

………だからこそ、セイレーンは白ひげという男を見誤った。

 

 

 

 

 

 

 

そもそも、白ひげの海賊としての長い戦いの経験において、全力で戦えない状況など幾らでもあった。

しかし、そんな己にとって不利な状況を、白ひげは悉く乗り越えて来たのだ。

 

人情や義理といった物を捨て去る事なく、海賊達の間では『甘さ』と言われるそれを、戦場でも貫き通すだけの信念が彼にはあった。

 

とある最強生物曰く、『強いが何処か甘い奴』

 

 

しかし、それを積み重ねたからこそ、彼は『生ける伝説』なのだ。

 

 

 

そうでなければ『世界最強の男』とは呼ばれないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてセイレーンは身をもって、その所以を思い知らされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォアアアアアア‼︎俺ァ『白ひげ』だァァァァァァ‼︎」

 

 

 

「なっ………⁉︎押し戻されて…⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

セイレーンは驚愕に目を見開く。

巨大化し、膂力では完全に上回っていた筈であるのに、それが覆されたからだ。

 

 

「隙だらけだぜ…猫娘ェ!」

 

「しまっ………⁉︎」

 

 

ドォンッ‼︎と、白ひげの振動エネルギーを纏った拳がセイレーンの脇腹に直撃。

強力無比な破壊力がセイレーンの全身を襲い、彼女は地面へと叩きつけられる。

 

 

「あ………がアアアアアアアッ⁉︎」

 

 

身体を駆け巡る痛みにのたうつセイレーン。

余程なダメージだったのか、獣化が解けて人間態の姿に戻ってしまった。

 

 

「ハア…ハア………ハア……‼︎」

 

「終いだ、猫娘。信念も覚悟も決まってねェお前じゃ、俺には百年かかっても勝てねェぞ」

 

「や…っ……かましい…わ!アンタに、私の何が分かるってのよ………!アンタやキュアメロディ………それにハミィのような、生まれた時から『持っていた』勝者には、私のような『持たざる者』の気持ちが分かる筈がないわ‼︎」

 

 

口から血反吐を吐きながら、セイレーンは胸の内に秘めていた感情を曝け出して叫ぶ。

その叫びを聞いた白ひげは、僅かに顔色を曇らせると口を開いた。

 

 

「俺が勝者だと?本当に………そう思うか?」

 

「…………?」

 

「笑えねェ冗談だ。俺が勝者で、本当に力があったなら…息子を死なせずに済んだ筈だ」

 

 

そう言ってセイレーンを見る白ひげの顔には、深い悔恨や自分自身への怒りといったあらゆる感情が渦巻いていた。

 

 

「俺は失ってしまったが、お前はまだ何も失くしてねェ。まだ幾らでも取返しが付く。後悔したくねェんなら、自分の信じる物を見つける事だな。お前は、これからどうしてェんだ?」

 

「わ…たしは…!」

 

 

セイレーンの脳裏に浮かぶのは、ある妖精の白猫。

敵対しても、自分に敵意も悪意もぶつける事なく常に寄り添おうとしてきたかつての友。

その昔、思い描いた夢。

ハミィと共に幸せのメロディを歌って、笑って……それから、それからーーーー。

 

 

「違う………違う違う違う‼︎そんな筈が無いわ‼︎私は全てを捨てて悪の道に堕ちた‼︎そんな私が本当に求めていたのが………あの子だなんて有り得ない‼︎あっていい筈が無い‼︎ア…アアアアアアアアアーーーーッ‼︎」

 

 

 

セイレーンは一瞬頭に浮かんだ光景を、受け入れらずに絶叫する。

行き場を失い暴走する心。

 

 

 

その感情に呼応するかのようにセイレーンの姿が変化していく。

頭には猫を思わせる耳が生え、二又に分かれた尻尾が現れ、口には牙が生え揃う。

身体には左右に雷と炎が纏わり付き、その姿はさながら地獄の使者のよう。

 

 

 

 

 

「人獣型か………!」

 

 

 

 

 

 

一部始終を見ていた白ひげは、警戒心を強めて薙刀を構えながら様子を伺う。

 

 

「ぐ………う!オアアアアアア‼︎」

 

「っ⁉︎しまった………!」

 

 

咆哮とも取れる叫び声を挙げながら、セイレーンは目の前の白ひげではなく、別の方向へと跳躍。

自分に向かって来ると思っていた白ひげは、虚を突かれた形となってしまった。

セイレーンを止められなかった事に、苦い表情を浮かべながら彼女が進んでいった方を眺める白ひげ。

 

彼の視線の先。

 

それは、キュアメロディとキュアリズムがネガトーンと戦っている場所であり。

 

 

同時に、ハミィとフェアリートーン達が囚われている方向でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭が痛い。

ハミィの事が頭に浮かぶ度、それを否定して捨て去ろうとも、何故か再び浮かんで来る。

こんな事は望んでいない。

私は何をどうしたかった?

本当に求めていたのは何だ?

分からない分からない分からない分からない分からないーーーー‼︎

 

 

何故、自分はこんなにも苦しんでいる?

何故自分だけが?

そもそもこうなったのは………誰の所為だ?

 

 

 

「アハッ、アハハハハハ…!そうね、簡単な事だわ。あの子を、ハミィを消し去れば全て解決するだけの話よ。待ってて、ハミィ。今からアンタの所に行くから………ね?」

 

 

そう呟き、張り付いたような笑みを浮かべながら、セイレーンはハミィの元へと駆けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駆け巡れ、トーンのリング!プリキュア‼︎ミュージックロンド‼︎」

 

「ネ、ネガァァァ………」

 

ベルティエを構えたリズムの放った攻撃が、ネガトーンを包み浄化する。

 

「ふう…!まだまだ!メロディ、そっちは………大丈夫そうね」

 

ネガトーンを浄化したリズムが、一緒に戦っているメロディの方を見て…最早何も言うまいというような表情をする。

 

 

「ミュージックロンド!ミュージックロンドッ!威国ッ!ミュージック………ロンドッ‼︎」

 

メロディが放つ技によって、ドカァン!ドカァン!と轟音を響かせながら、まるで作業のようにネガトーン達が次々と浄化されていく。

最早唯の糞ゲーである。

強くてニューゲームも真っ青だ。

 

 

 

 

 

 

「G線上の音霆圧(アリア)‼︎」

 

 

 

 

 

 

メロディが手をかざすと同時にグシャアッ‼︎と、彼女を囲んでいたネガトーン達が紙細工を潰したかのように地面にめり込む。

 

 

 

「纏めて浄化しよう!リズム、行くよ!」

 

「オッケー!」

 

 

 

メロディの掛け声に、リズムも勢い良く続く。

 

 

 

 

「ミラクルベルティエ!クロスロッド!」

 

「ファンタスティックベルティエ!クロスロッド!」

 

 

 

 

「「駆け巡れ、トーンのリング!」」

 

 

2人は共にクロスロッドを振った後、お互いの手を繋ぐ。

 

 

 

 

 

「プリキュア!ミュージックロンド!スーパーカルテット‼︎」

 

 

 

 

 

2人の掛け声と共に薄青色・薄橙色・ピンク・薄ピンク・薄黄色の5本のエネルギーリングが出現し、ハート形の光と共に螺旋の光波を描きながらネガトーン達目掛けて突き進み、瞬く間に浄化して行った。

 

 

ネガトーンが消え去ったのを確認し、メロディとリズムの2人はメフィストとトリオ・ザ・マイナーに向き直る。

 

 

「さあ!ネガトーンは全部倒したわ!後は…貴方達だけよ!」

 

 

リズムがそう言ってメフィスト達を指差す。

改めてプリキュア達の強さを見せつけられたメフィストは、悔しそうに表情を歪ませる。

 

 

「ぐぬぅ…!おのれ、プリキュアめ!だが、忘れたか⁉︎こっちには人質ならぬ猫質が居るんだぞ⁉︎」

 

「く………!ハミィ達を何とかして助け出さないと!」

 

 

ハミィ達を人質に取られている所為で、思うように手が出せない2人。

 

 

「フハハハハハ!勝負はここから…ん?妖精どもを入れた籠は何処に行った?」

 

 

勝ち誇ったかのように笑っていたメフィストだったが、ハミィ達を閉じ込めていた籠がいつの間にかなくなって居る事に気付く。

 

 

「………⁉︎リズム、あれ!」

 

 

何かに気が付いたメロディが、リズムに声を掛けてある方向を指差す。

指差す先には、ハミィ達が囚われている籠を抱えたセイレーンの姿があった。

 

 

「セイレーン?貴様、どういうつもりだ⁉︎」

 

 

同じく気が付いたメフィストが、セイレーンに問い掛けるも反応はない。

 

 

「確かニューゲートと戦ってた筈…!まさかニューゲートが負けたとは思わないけど、どうして此処に…⁉︎いや、それよりも様子が…⁉︎」

 

 

この場で何故現れたのか、そもそも何故ハミィ達の囚われている籠を手に持っているのか、様々な疑問が皆の頭を駆け巡る。

 

 

「おい、セイレーン‼︎聞いているのか⁉︎まさか、今になってプリキュア共の側に寝返るつもりじゃないだろうな⁉︎」

 

 

反応のないセイレーンに、苛立ちながらメフィストが再度問い掛ける。

 

 

「………さい」

 

「何?」

 

 

「煩い煩い煩い煩い煩いっ‼︎どいつもこいつも、やかましいのよ‼︎全部全部壊してやる‼︎アンタら全員、消え失せろってのよ‼︎」

 

 

 

怒声を響かせ、セイレーンが片手を空へと掲げる。

 

 

 

 

「っ⁉︎皆、何処かに隠れてっ‼︎」

 

 

 

 

危険を察知したメロディが叫ぶ。

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

「焼け落ちて死ね!羅苦雷(ラクライ)‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

閃光が、辺りを覆い尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが焼けたような匂いに、地面で倒れていたリズムは閉じていた目をゆっくりと開ける。

そうだ、確か自分はセイレーンが放った雷から逃げようとして………どうなった?

ふと、自分の身体の上に重みを感じてよく見ると、ある人物が自分を庇うようにして覆い被さっているのが目に入った。

 

 

「………?メロ…ディ?」

 

「アハハ…リズム、大丈夫?」

 

「う、うん…ってメロディ!背中が………!」

 

 

リズムはメロディの背中を見て驚く。

彼女の背中は服が少し破れており、服で覆われていなかった皮膚の部分が僅かに火傷になっていた。

 

 

「直前に覇気を纏って防いだんだけど、完全には防げなかったみたい。それより、リズムは大丈夫なの?」

 

「私は大丈夫…でも、メロディが………!」

 

「これくらい大した事ないって。『向こう』にいた時はもっと無茶してたしね。それよりも、他の皆は………?」

 

 

そう言って、メロディは辺りを見渡す。

 

 

「痛い!バスドラ、私の頭踏まないで下さいよ!」

 

「知るか!っておい、ファルセット!お前髪の毛焦げてるぞ⁉︎」

 

「ああ!俺の髪も焦げている!セイレーンめ!どういうつもりだ⁉︎」

 

 

………煙の向こう側からは何やら喚いているマイナーランド組の声が聞こえてくる。

どうやら彼等もギリギリ助かったらしい。

 

暫くすると、漂っている煙が晴れて周りの様子が見え始めた。

 

 

 

 

 

 

「セイレーン………!それにハミィ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

煙が晴れた先には………ハミィを掴みあげ、30センチ程の銀色の爪が生えた右手を喉元に向けるセイレーンの姿があった。

 

 

 

「アハハ…!ハミィ…アンタともお別れよ。アンタを殺せば、私はもう何にも煩わされる事もないわ。最後に、何か言い残す事はあるかしら?」

 

 

 

酷薄な笑みを浮かべて、ハミィに爪を向けるセイレーン。

あえてセイレーンは、ハミィに僅かばかりの猶予を与えた。

どんな生き物も死の瀬戸際には本性が出る。

幾らハミィと言えども、今度ばかりは自分を責め立てるだろう。

ところが、耳を澄ましているセイレーンの耳に入ってきたのは、彼女の予想の斜め上を行くような言葉だった。

 

 

「セイレーン………ハミィは……セイレーンにも幸せになって欲しいニャ」

 

「……………は?」

 

 

セイレーンの思考が一瞬停止する。

今、ハミィは何と言った?

 

 

「どうしてもセイレーンがハミィをそうしたいと思うなら…それでセイレーンが幸せになるならハミィは構わないニャ」

 

「ア…ンタ‼︎正気⁉︎今アンタは私に殺されかけてるのよ⁉︎何で、そんな台詞が言えるの⁉︎天然ボケを通り越して異常だわ‼︎」

 

「天然ボケでごめんニャ………でも、ハミィはセイレーンに何をされても、セイレーンの事を責めたりしないニャ。ハミィは何があっても、ずーっと!セイレーンの友達ニャ!」

 

「………‼︎」

 

 

良くも悪くもメイジャーランドに居た頃から、ハミィの事は良く知っている。

故に、今の言葉に嘘があるかないかくらいは分かってしまう。

 

 

ハミィは心の底から、セイレーンの事を案じている。

 

 

それが分かってしまったセイレーンは、今度こそ激しく動揺した。

 

 

「でも、一つだけお願いしたい事があるニャ。ハミィが居なくなったら………セイレーンが代わりに幸せのメロディを歌って欲しいニャ」

 

「………何を、言ってるの。私はマイナーランドの歌姫。不幸のメロディの歌い手なのよ。そんな願いなんて、私は聞けないし………ましてや幸せのメロディを歌う資格なんて、私には存在しないわ」

 

 

 

自分を真っ直ぐに見つめてくるハミィから、目線を反らして項垂れるセイレーン。

上手く働かない頭の中で、どうしてこうなったのだろうと思いを馳せる。

始まりは、ほんの些細な嫉妬からだった。

嫉妬はやがて、自分が歌姫に選ばれなかった事に対する大きな憎しみと恨みに変化し、導かれるままに悪の道へと堕ちていった。

やがて音符を巡ってハミィを含むプリキュア達と争いになり、今に至る。

 

 

 

あの謎の男から得た実の力を使っても、結局何も変えられなかった。

 

 

 

数えきれない程の人々をネガトーンを使って傷付け、ハミィを幾度も裏切り、挙句は勝手に暴走して手に掛けようとまでした。

 

 

 

 

 

 

 

「何やってるんだろう………私。馬鹿みたい」

 

 

 

 

 

 

 

そう呟いて疲れたように笑うと、セイレーンは爪を引っ込めてハミィをそっと地面に降ろす。

 

 

「セイレーン………?」

 

「………勘違いしないで。ただ、虚しくなったから解放しただけよ」

 

「ニャ〜。セイレーンも一緒に音符集めを手伝ってくれたら嬉しいニャ!」

 

「………私は「「捕まえ〜た♪」」トリオ・ザ・マイナー⁉︎」

 

 

隠れて様子を伺っていたトリオ・ザ・マイナーが一瞬の隙にハミィを拐った。

同じように隠れていたメフィストも姿を現すと、失望感を顔に滲ませながらセイレーンを見つめて言う。

 

 

「セイレーン、やはりお前に期待しなくて良かった。先程のお前の雷には肝を冷やしたが、もう遊びはこれまでだ!フェアリートーンから音符も回収し、楽譜は完成した!後は歌姫の役をもつ者に歌わせるのみ!」

 

 

高らかに楽譜を掲げるメフィスト。

髪の毛が若干焦げていなければ少しは格好がついた筈なのだろうが、実にみっともない姿である。

メフィストは掲げた楽譜をセイレーンに放り投げる。

 

 

 

「さあ、役目を果たす時だセイレーン!貴様には不幸のメロディを歌うという役割があるからな!友情!愛情!そんなものはまやかしだ!さあ、不幸のメロディを奏でよセイレーン!」

 

「………………」

 

 

 

楽譜を開き、セイレーンは暫し沈黙する。

そして………歌う事なく、楽譜の音符達を手で弾き飛ばした。

 

 

 

「馬鹿な⁉︎セイレーン、貴様何をしている⁉︎自分が何をやったのか分かっているのか⁉︎」

 

怒り心頭でセイレーンを問い詰めるメフィストに答える事なく、セイレーンは立ち尽くす。

 

 

「おのれ!音符を逃がしてなるものか!出でよ、ネガトーーーーンッ‼︎」

 

 

「ネガトォォォーーーーーーン‼︎」

 

 

 

逃げ出した音符がネガトーンに変化し、暴れるのを余所にセイレーンは項垂れたまま佇んでいた。

 

 

「フン!とうとう我々を裏切りおったな、セイレーン!これを見ろ!」

 

 

メフィストが指を鳴らすと、悪のノイズを流し込む小型の装置が現れる。

装置はハミィの耳に張り付こうとして飛び回るが、ハミィも耳を手で塞ぐ事で抵抗した。

 

 

「無駄な事を。トリオ・ザ・マイナー、やれ」

 

 

メフィストの指示に、トリオ・ザ・マイナーがハミィの耳を強引に開けようと掴みかかった。

 

 

「ハミィ………!や、やめて!」

 

「何を今更。お前はつい先程までその白猫を殺そうとしていたではないか。さあ、やれ!」

 

 

やめるよう叫ぶセイレーンに、メフィストは冷たい視線を向ける。

 

 

 

 

 

「(………確かにそう。何であれ、私はハミィを裏切り続け、更には手に掛けようとした。その事実は変わらない)」

 

 

 

 

でも。

 

 

 

『セイレーン………ハミィは……セイレーンにも幸せになって欲しいニャ』

 

 

 

 

それでも。

 

 

 

 

 

『ハミィは何があっても、ずーっと!セイレーンの友達ニャ!』

 

 

 

 

 

この光(ハミィ)を、手放す事なんて出来ない。

 

 

 

 

 

例え傲慢と言われても。

例え人から責められたとしても。

 

 

 

 

 

私は………ハミィを………‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシッと、セイレーンの銀色のアクセサリーが音を立ててひび割れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が溢れる。

不思議と悪い気はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

狙いは一つ、ハミィのみ。

跳躍し、トリオ・ザ・マイナーから一瞬で奪い返すと安全な場所にハミィを降ろす。

 

 

 

 

 

 

「ありがとうニャ、セイレーン♪セイレーンがプリキュアになるなんて、ハミィはとーっても嬉しいニャ〜♪」

 

「え………?」

 

 

 

 

 

ハミィの言葉で、セイレーンは漸く自分の姿が変わっている事に気付く。

水溜りを鏡代わりに自分を見ると、其処には青を基準とした服を纏い、紫色の髪をサイドテールにした少女が写っていた。

 

 

何故?

何故、自分がプリキュアに?

 

 

現実が受け入れられず、逃げるようにその場を離れるセイレーン。

 

 

 

 

 

 

 

自分を呼び止めるハミィの声を背中越しに聞きながら、彼女は走り去るのであった。

 

 

 

 

 

 




セイレーン………今話の主役。メンヘラ猫。謎の男から譲り受けた悪魔の実を食べ、能力者に。能力者となって初めて戦った相手がよりにもよって、白ひげという運の無い黒猫。
白ひげとの戦闘でボコられ、更に会話の中で心の底に仕舞い込んでいたハミィへの感情を思い出させられた事で精神に大ダメージを負う。
暴走する感情のままにハミィを殺そうとするが、死を前にしてもセイレーンを見放さなかったハミィに対して激しく動揺し、戦意喪失。
その後、メフィストが悪のノイズをハミィに流そうとした際にハミィへの思いが炸裂し、プリキュア?へと覚醒。
何故、悪である自分がプリキュアになれたのか分からず、困惑と動揺から戦場を離脱。
彼女は果たして響達の仲間になるのだろうか?それとも………?


因みに彼女が食べた悪魔の実は動物系『幻獣種』の火車。
火車の元ネタは、妖怪の火車から。
伝承によると、地獄から来て悪人の死体を奪っていくヤベー奴。
一説によると、正体は巨大な猫であり、雷雲を纏いながら現れるという。
口からは炎を吐き、銀色に光る三本の爪があるそうな。
ある話では、寺の僧侶が唱えた念仏?で撃退されたらしい。
日本のSOURYOヤバいな。



ハミィ………天然ボケの子猫。今話では、友達を想う心でセイレーンの光堕ちフラグをぶったてた。
ある意味MVP。


白ひげ………世界最強の男。セイレーンと対峙し、その強さを見せつけた。セイレーンに対しては、まだやり直す事が出来ると説いたが、逆にセイレーンの精神に大ダメージを与えてしまい、やり方をミスったかなと思っている。
こういうのはガラじゃねェとは本人談。

北条響………今回はセイレーンが実質主役だった為、かなり影は薄かった。今回の戦闘でリズムを庇い、背中に僅かだが火傷を負う。ちょっと痛い。セイレーンがプリキュアに覚醒したのを見たので、後でラッキースプーンに強制連行する事を決意する。


南野奏………響と同じで今回はちょっと影が薄め。
メフィストを変な赤髭呼ばわりした。
最近口が荒くなって来ている自覚はある。
メロディが自分を庇って怪我をしたのを見て、もっと強くなって足を引っ張らないようにしないと…!と内心決意したそうだ。
覇気習得フラグが立ちました。


メフィスト………奏曰く、変な赤髭。
セイレーンに裏切られた。髪の毛焦げた。ザマァwww



カイドウ………最強生物。次話で襲来予定。







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葛藤する黒猫と襲来する最強生物

作者の妄想シリーズ第八弾


走る。

 

 

 

「ハアッ、ハアッ…!何で………私が…!」

 

 

 

雨が降る街の通りを、セイレーンは1人走る。

傘も差さず、ずぶ濡れになりながら走る彼女を行き交う人々が奇異の目で見るが、セイレーンにはそんな事を気にする余裕も無い。

暫く走ると、近くの路地裏に駆け込み変身を解いて息を整える。

 

 

「私が、プリキュアになるだなんて…そんな事がある筈………!」

 

 

セイレーンは、自身がプリキュアになったという事実を受け入れられず困惑する。

 

 

「見つけたドド。セイレーン、こんな所で何をしてるドド?」

 

「…………」

 

 

額を抑えて蹲るセイレーンの近くに、彼女を密かに追いかけて来たキュアミューズが現れた。

ミューズの肩に乗っているドドリーが、セイレーンに話しかけるも彼女は答えず、沈黙を続ける。

 

 

「ハミィや皆の所に戻らなくていいドド?皆、セイレーンの事を探してるドド」

 

「………今更、どうやって戻れって言うの?皆を傷付け、ハミィを手に掛けようとまでした私が、プリキュアになったから仲間面して戻るなんて、余りに都合が良すぎるわ」

 

 

そう言って、セイレーンは顔を伏せる。

あれだけの事をして、プリキュアになったからと言って全部帳消し?

そんな事があっていい訳ないし、自分のやった事は許されるべきじゃない。

 

 

「ハミィは、今もセイレーンの事を心配して探し回ってるドド」

 

「一々ハミィの事を話に出さないでよ!私は、ハミィなんてどうでも良いの!どうなったって………構わないわ」

 

 

ハミィを話題に出されたのが気に障ったのか、セイレーンが語気を強める。

ドドリーは、そんなセイレーンの態度にもめげる事なく更に話しかけた。

 

 

「なら、どうしてあの時ハミィを助けたドド?」

 

「分からないわよ、そんな事!アンタには関係ないでしょう⁉︎」

 

「確かに関係ないドド。でも、一つだけ確信を持って言える事があるドド。あの時、セイレーンはハミィを守りたいと思った筈。その友達を想う心が奇跡を起こして、プリキュアに変身した。だからこそ、セイレーンはその気持ちと向き合いながら、正義のプリキュアとして戦う運命なんだドド!」

 

「運命………」

 

 

セイレーンは、プリキュアとなった自分がメロディやリズムと肩を並べて戦う姿を想像するが………あり得ない、と同時に思った。

自分が今まで何をしてきたのか、自分自身が一番よく分かっている。

 

 

「ご都合主義が過ぎるのよ、そんな話は………ね」

 

「なら、セイレーンはこれからどうするんだドド?」

 

「そうね。私は裏切り者だからマイナーランドにはもう戻れない。だからと言ってアンタ達プリキュアと一緒に戦うのも無理だわ。いっそ、自由気儘に生きるのもいいかもね」

 

 

ドドリーの問い掛けに、セイレーンは自嘲気味に笑いながら答えた。

最早、マイナーランドにもメイジャーランドにも自分の居場所はない。

正直な話、自分の事なんてどうでも良いと思っているくらいなのだ。

 

 

「………セイレーンの意志は良く分かったドド。でも、これだけ言っておくドド。どれだけ目を逸らしても、必ずいつかは自分の運命に向き合う時が来るドド。後悔だけはしないようにするドド。失ってからでは遅いドド………」

 

 

ミューズとドドリーは、少しだけ悲しげな顔をしながら、そう言い残してその場を立ち去っていく。

 

 

「失う前に…か。もう、私が失う物なんて何もないのよ………」

 

 

去っていくミューズの背中に向かって、セイレーンは1人呟くと何処へともなく歩き出す。

降り続ける雨は、まるで彼女の心情を表すかのように益々勢いを増していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨は一向に止まない。

冷たさを含む雨が身体を打ち、体温を奪っていく。

しかし、今はそんな事も気にならない程にセイレーンの心は凍り付いていた。

俯きながら宛ても無く歩き続けていると、突然身体に降り掛かっていた雨の感覚が消える。

雨が止んだのだろうか?と思い、俯いていた顔を上げる。

 

 

「やっほ、セイレーン。こんなビショビショのまま、歩いてたら風邪引くよ?」

 

 

顔を上げた先には、傘を差して自分を見つめている北条響が居た。

 

 

「アンタは………」

 

「んー…取り敢えず、此処で立ち話するのもなんだから一旦私の家に行こっか。ハミィも、貴方の事心配して待ってるしね。一緒に来て欲しいの」

 

「何で…それに「拒否権はないよ?」ちょっ…!」

 

 

響の誘いにセイレーンは困惑しながら断ろうとするが、ガシっと手を掴まれ、半ば強引に連れて行かれる。

 

 

「は、話しなさいよ!」

 

「ヤダ。ハミィ以外の皆からもセイレーンを探して欲しいって頼まれてるし、私だって聞きたい事が沢山あるんだから。それに、その様子じゃ行く宛もないんでしょ?」

 

 

響はそう言って、セイレーンを腕を掴んだまま家へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

響の家に連行?されたセイレーン。

雨で濡れてしまった服は、ハンガーにかけられて乾き待ちとなっている。

取り敢えずシャワーでも浴びなよ、と勧められたのでシャワーを浴び、乾くまでの間、代わりとして響の私服を借りる事に。

 

 

「うんうん、よく似合ってる。私と背丈も体型も似てるから大丈夫みたいだね」

 

「………何のつもり?私はアンタ達の敵だったのよ?それを、家に招いて服まで貸したりして…訳が分からない。私が今まで何をやって来たか分かってるでしょう?それとも、私がプリキュアになったからかしら?」

 

 

セイレーンは敢えて挑発するような物言いで話すが、響はそれを特に咎める事もなく微笑みながら答えた。

 

 

「別にセイレーンがプリキュアになったから、そうしたって訳じゃないよ。確かに、街の皆を傷付けたりハミィを何度も騙したりしたのはよくないと思う。けど、だからってそれを理由にして、今困ってる貴方を放っておくのも違うと思うんだ」

 

「………甘いわね」

 

「まあ、自覚はあるよ。ロックスにもよく言われたしね」

 

「(ロックス………?)」

 

 

ロックスという聞き慣れない単語に眉を顰めるセイレーン。

気にはなったが、何かを懐かしむように語る響の姿を見て無用な詮索はしない事にした。

 

 

「そう言えば、ハミィは何処に?」

 

「ハミィは今日、奏の家に泊まってるよ。奏ったら、『今日は一日ハミィの肉球を堪能できる〜!』って凄い嬉しそうだった。取り敢えず、積もる話は明日ラッキースプーンに行ってからにしよう。………ああ、そうだ!ベッドは一つしかないから、私と一緒に寝る事になるけど大丈夫だよね?」

 

「ちょ、ちょっと…何でゆっくり私の方に近づいてくるのよ。ま、待っーーーー!」

 

「大丈夫大丈夫!諦めて身を委ねれば何の心配もないよ!」

 

「やっかましいわ!今のアンタを見て、大丈夫と思える訳ないでしょうがっ‼︎」

 

 

ニヤァ…!と笑うと、響は手をワキワキさせてセイレーンに躙り寄る。

嫌な予感がセイレーンの全身を駆け抜けるが、時既に遅し。

武装硬化された響の両腕が彼女を拘束し、言い知れぬ恐怖を抱いたセイレーンは『悪魔の実』の能力を発動させる。

  

 

 

その日の夜、北条家の一室は俄に騒がしくなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

 

加音町から少し離れた灯台にあるアジト。

其処では、メフィストとトリオ・ザ・マイナーが集まって会議をしていた。

セイレーンに裏切られた挙句、楽譜に揃っていた音符全てを失ってしまう結果になってしまったマイナーランド陣営。

辛うじてプリキュアや、その妖精達に音符を奪われる事はなかったものの、状況はまたも振り出しに戻ってしまった。

 

 

「おのれ、セイレーンめ!我々を裏切った上に、プリキュアになるとは!だが………あれは、本当にプリキュアなのか?」

 

 

メフィストはプリキュアらしき姿に変化したセイレーンを思い出しながら、疑問を口にする。

寧ろ、メフィストからすれば巨大な猫の怪物に変化したという方が驚きだった。

自分が知る限り、セイレーンには他人に変化する能力があったとは言え、あのような怪物に変化する力はなかった筈。

もし、あれ程の力を手にしたセイレーンがプリキュア側に味方するとなれば更に面倒な事になるのは必至。

次々と降り掛かる問題に、メフィストは頭を抱えそうになった。

そんなメフィストの気を知ってか知らずか、トリオ・ザ・マイナーの1人であるバスドラがメフィストの前に進み出る。

 

 

「メフィスト様。別にセイレーンがプリキュアになった件に関しては、もう良いのでは?何れにせよ、奴が裏切ったという事実は変わらないのです。これからは如何にしてプリキュア共の目を欺きながら、音符を集めて楽譜を完成させるのかが重要なのではないですかな?」

 

「そんな事は言われんでも分かっておるわっ‼︎そう言うなら、バスドラ!お前には何かこの状況を打開するような策があるのだろうな⁉︎」

 

「ええ、勿論ですメフィスト様。さすれば、私バスドラをリーダーにして頂きたく…!」

 

 

恭しく頭を下げながら、バスドラは笑みを浮かべる。

サラっとリーダーになる事を要望する辺り、野心が見え見えではあるが。

 

 

「なっ⁉︎1人抜け駆けは卑怯ですよ、バスドラ!」

 

「そうだそうだ!この卑怯者!バカドラ!」

 

「煩い!ならお前達に、俺の考えた策以上の何かがあるのか⁉︎ええ⁉︎言ってみろ!後、誰がバカだっ!次そんな事言ったら許さんぞ!」

 

「そ、それは………」

 

「むぅ………」

 

 

バスドラを除くメンバーの2人…バリトンとファルセットが抗議するが、バスドラの返しの言葉に反論出来ずに黙ってしまう。

 

 

「下らん言い争いなどしている場合かっ!今回はリーダーをバスドラ、お前に命じる!だが、抜かるんじゃないぞ⁉︎さあ、策とやらを聞かせてみろ!」

 

「ええ、勿論です。では………」

 

 

自信気に話始めるバスドラ。

マイナーランド側は、再び音符を手に入れる為に今日も悪の道に邁進するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで少し話を変えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて、北条響が一時期居た世界には『空島』と呼ばれる空に浮かぶ大地が存在する。

勿論、空の上にあるので万が一下に落ちたりすれば命はない。

 

 

 

 

 

 

その空島で今、1人の男が佇んで下を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

男はーーーー『死に場所』を探していた。

 

 

 

彼について語るならば…海賊として7度の敗北………‼︎

 

 

とある歴史の影に葬られた海賊団では、見習いという身でありながら、その凶暴性と元来からの異様なタフネスさで名を知らしめる。

 

 

同じ仲間である筈の『白ひげ』『ビッグマム』『金獅子』『銀斧』『王直』『キャプテン・ジョン』『音奏』………果ては彼らを纏め上げていた船長にまで喧嘩をふっかけては半殺しになる事、110回………‼︎

 

 

 

 

その海賊団が壊滅した後は、1人で海軍及び四皇に挑み…捕まる事18回………‼︎

 

  

 

 

1000度を越える拷問を受け、罪人として………生きてきた。

 

時に死刑宣告され、首吊りにあうも鎖はちぎれ、はたまたギロチンにかけられるも刃は砕け、それが40回。

その全てが彼には通じなかった。

 

 

 

 

 

その結果、1人で巨大監獄船を9隻沈める。

 

 

 

 

 

 

そんな経歴を持つ彼は…何を思ったか、島から身を投げ出す。

 

 

 

 

そう…彼は今まさに、『自殺』をしたのだ………‼︎

世に珍しい『空島』からの『飛び降り自殺』である………‼︎

 

 

 

 

猛烈な速度で落下していく男。

 

 

このまま下に落ちる筈だった彼を、予想外の出来事が襲う。

 

 

 

突然ピシピシピシッ…!と空間が裂け、落下する男を吸い込んでしまったのだ。

 

 

彼が何処に消えたのか、それは誰にも分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで、バスドラが話している場面へと戻ろう。

 

 

 

「つまりですな、メフィスト様。私の作戦というのは………グボェアッ⁉︎

 

 

 

得意気に自分の策を語っていたバスドラ。

突然、ドズゥン‼︎と轟音を立てて降って来た男に、彼は哀れにも押し潰されてしまった。

 

 

「な、何事だ⁉︎まさか、プリキュア共にアジトの場所がバレたか⁉︎」

 

 

メフィストは唐突に目の前で起こった光景に、思わず狼狽する。

バリトンとファルセットも、何が起こったのか分からずにバスドラが居た場所を見た。

よく見ると、床には巨大な穴が空いている。

 

 

「こ、これは………見る限り人の形のようにも見えるな」

 

「まさか、あの時の巨大な婆さんじゃ………?ていうか、バスドラ生きてるんですかね?」

 

 

メフィスト達は、前に現れた怪物のような老婆を思い出して身震いする。

 

 

 

だが………その予想は間違っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強き者が生き…弱き者は死ぬ。

 

 

 

 

この世はただ…それだけだ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、穴から伸びて来た巨大な手がドン‼︎と床を叩く。

 

 

そして、その穴から巨大な男が現れる。

 

 

 

 

 

 

その男こそ、先に『空島』から飛び降りた人物。

 

 

 

 

 

 

趣味は『自殺』

 

 

 

男の名は

 

 

 

 

 

「くそ………!頭、痛ェ…!死ねねェもんだな………!」

 

 

 

 

百獣海賊団 総督

 

 

 

 

百獣のカイドウ

 

 

 

 

 

 

懸賞金額46億1110万ベリー

 

 

 

 

 

 

 

一対一(サシ)でやるならカイドウだろう。

 

 

人々は口々にそう言う。

 

 

 

 

 

陸海空…生きとし生ける全ての者達の中で、最強の生物と呼ばれる海賊………‼︎

 

 

 

 

 

 

メフィスト達は、現れた怪物を前に立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

ラッキースプーンを訪れた響とセイレーン。

響が勢いよく扉を開けると、丁度ケーキを作っていた奏がエプロン姿で出迎えた。

  

 

「おはよー、奏ー!」

 

「お早う、響。セイレーンもお早う………って何か凄くやつれてない?」

 

「………ナニモナイカラシンパイシナイデ」

 

「そ、そう………」

 

 

何故だかゲッソリした顔のセイレーンに、奏が不思議そうに問い掛けるが、セイレーンは引きつった顔をしながら何もないと言って顔を逸らす。

  

 

「皆は来てるの?」

 

「響達以外は、早くから来て外のテラスで待ってるわよ。私も今作ってるケーキが出来上がったらそっちに行くわ」

 

 

そう言うと、奏は忙しそうに厨房へと戻っていく。

 

 

「じゃ、行きますか。………どうしたの、セイレーン?」

 

「えっと…その、やっぱり私行かない方がいいと思うのよ。どんな顔して、ハミィ達に会ったら良いのか分からないし…その」

 

 

言葉に罪悪感を滲ませながら、ハミィ達に会う事を躊躇うセイレーン。

やはりまだ、彼女の心の中で整理がついていないのだろう。 

昨日の今日なので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 

 

「うーん…セイレーンの気持ちも分かるけどさ。こういうときは、当たって砕けるくらいの気概で行こうよ!何とかなるって!」

 

「何とかって………ハァ、分かったわ。ここまで来たら逃げる訳にも行かないし、向き合ってみる」

 

「いいよ、セイレーン!その意気だ!」

 

 

響に励まされたセイレーンは、軽く息を整えるとゆっくり屋外テラスへ続く扉を開けてーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

「ハ〜ハハハママママ!白ひげェ!覚悟しなァ‼︎」

 

 

 

 

「お前のカップケーキなんざ、知らねェって言ってんだろうがァ!ちったァ、人の話を聞きやがれ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー秒で扉を閉めた。

 

 

「ちょっと、どうして閉めたの?」

 

「無理無理無理無理無理無理‼︎絶対無理‼︎何であのお婆さんが居るのよ⁉︎」

 

「お婆さん…?ああ、リンリンの事?大丈夫だって!今は『食いわずらい』発症してないから魂抜かれる事はないよ」

 

 

過去にリンリンに魂を抜かれかけた経験から、怯えてガクブルしているセイレーンを尻目に、響は扉を開けると外に出る。

 

 

「リンリン、ニューゲート!何で朝っぱらから喧嘩してるの⁉︎」

 

「あァ⁉︎響かァ⁉︎どうもこうもねェよ!白ひげの野郎が、おれが食おうとしてたケーキを食いやがったんだ!許さねェぞ、白ひげェ〜!」

 

「だから知らねェって言ってんだろォが!」

 

 

どうやら、リンリンが食べようとしてしたケーキが無くなり、それを白ひげが食べたと勘違いしたリンリンがキレているらしい。

白ひげは食ってないと主張するも、リンリンは信用していないのか怒りを露わにした。

 

 

 

 

「ナポレオン…!」

 

『はい、ママ!』

 

 

「ったく…!ここで事を構えたくはねェんだが、仕方ねェ………!」

 

 

 

 

リンリンは『ナポレオン』を取り出し、白ひげも『むら雲切』を構える。

一触即発の空気が漂い、今にもぶつかり合おうとしたその時だった。

 

 

 

「ね、ねぇ………何か、こっちに来るんだけど」

 

 

 

リンリンと目を合わせるのが怖くて、空を眺めていたセイレーンが何かに気付く。

セイレーンの言葉に釣られて響も空を見上げると、確かに何か巨大なモノがラッキースプーン目掛けて接近して来ている。

 

その姿は、まるで御伽噺に登場する東洋の龍のような姿をしていた。

 

 

 

「おいおい、アレはまた…面倒なのが来たな」

 

 

 

白ひげが眉間に皺を寄せて顔を顰める。

 

 

「アレが何か知ってるの、ニューゲート?」

 

「あァ、そうか。お前は知らねェんだったな。アレはカイドウだ」

 

「ええ⁉︎カイドウ⁉︎あの見習いの、喧嘩っ早くていつも皆に半殺しにされてたカイドウ⁉︎」

 

 

響の問い掛けに白ひげが答えると、響は驚きの表情で巨大な龍を見つめる。

 

 

「ハ〜ハハハママママ…!カイドウか……懐かしいねェ!ゼウス!プロメテウス!」

 

『『はい、ママ!ここに!』』

 

 

リンリンもまた、楽しそうに笑うと雷雲ゼウスと太陽プロメテウスを呼び出す。

どうやら戦う気マンマンらしい。

というか、リンリンとカイドウが街中で戦ったりすれば間違いなく大変な事になる。

 

 

「響!テレビを見て!何か大変な事になってるわよ⁉︎」

 

 

その時、バタン!と勢いよく扉が開けられ、中から奏が焦りながら飛び出して来る。

奏に連れられ、店内にあるテレビを見ると画面の向こうでは大変な騒ぎになっていた。

 

 

 

 

 

『信じられません!全く、信じられません!前代未聞、世紀の大事件です‼︎』

 

『この巨大不明生物は、加音町上空に突如として現れ現在ーーーー』

 

 

 

 

 

テレビ局のアナウンサーが、マイクを手にして興奮した様子で捲し立てる。

それを見た響は、踵を返して慌てたように店を飛び出して行く。

 

 

「響⁉︎何処に行くの⁉︎」

 

「ちょっと、あの龍と話してくるよ!アレ、私の知り合いなの!直ぐ戻ってくるから!リンリン、私も行くから連れてって!」

 

「マ〜ハハハハ!おれとお前の仲だ、良いだろう!しっかり掴まってなァ!」

 

 

響に頼まれたリンリンは、豪快に笑うと雷雲ゼウスに飛び乗る。

 

 

「ちょ、ちょっと!響ってばー!………ハァ」

 

 

後から追いかけて来た奏にサムズアップをしながら、響はリンリンの背に乗ると巨大な龍目掛けて飛び去っていく。

奏は段々と小さくなっていく2人を見ながら溜め息を吐いた。

 

 

「ねぇ、あの2人あのまま行かせて良かったの?大変な事になるんじゃ………」

 

「………大丈夫よ、多分。響に加えてリンリンさんも居るんだから、何とかなると思うわ」

 

 

去っていく2人を眺めていたセイレーンが問い掛けるが、奏は慣れた様な顔で言うと、セイレーンの方に向き直る。

 

 

「それより、セイレーンにもケーキ作るの手伝って欲しいんだけど…良いかしら?」

 

「まあ…良いけど。私、ケーキなんて作った事ないわよ?」

 

「それなら大丈夫ニャ!ハミィ達も、お手伝いするニャ〜♪勿論、セイレーンも一緒にニャ〜♪」

 

「ハミィ⁉︎アンタ、どっから現れたのよ⁉︎ええい、私の頭に乗るなー!」

 

 

ドッタンバッタン!と慌しく厨房へと入っていくハミィとセイレーン。

その姿を、奏は微笑ましいものを見るような目で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あァ〜!ここは一体何処だってんだ…ヒック!」

 

 

加音町の空を飛ぶ巨大な龍………カイドウは、つまらなさそうに呟く。

いつもの様に空島から日課の自殺をしたら、よく分からない空間の裂け目のようなものに飲み込まれ、見た事もない世界に来てしまっていた。

おまけに酒を飲みながらの突発的な行動であったが為に、思考が定まらない。

そんな彼の耳に、何処からか声が聞こえてくる。

その声は、昔見習いとして所属していた海賊団にいた頃を思い出させる懐かしい声だった。

 

 

 

「カイドウ〜‼︎」

 

 

「ハ〜ハハハママママ!カイドウ、相変わらずだね…!」

 

 

「響とリンリン………だと⁉︎」

 

 

 

信じられないものを見たかのような目で、響とリンリンを見るカイドウ。

あり得ない光景に、酒の酔いも一気に吹き飛んでしまう。

特に響に関してはゴッドバレー以来だ。

あの戦いで死んだのかと思っていたが、どうやら生きていたらしい。

 

 

「アハハ…久しぶりーーーーと言いたい所ではあるけど。取り敢えず、一旦その姿を解いてくれない?町が大騒ぎになってるしさ」

 

「あァ⁉︎何で俺がお前の言う事を聞かなきゃならねェんだ!黙ってろ!」

 

「ママママ…!何を言っても無駄さ、響!あの船に乗ってた海賊は誰かの言う事に従えるような奴等じゃねェ!お前やおれも含めてなァ!ハ〜ハハハ!」

 

 

カイドウは不機嫌そうに反発し、リンリンはナポレオンを構えながら笑う。

 

 

「そう………聞いてくれないなら仕方ないね。だったら、私も久し振りに、海賊のやり方で言う事聞かしてあげる!」

 

 

そう言うと、響の顔付きがガラリと変わる。

彼女の纏う空気が、ミシミシと唸りを上げ海賊のそれへと変化していく。

響はリンリンから離れると、カイドウの頭に向かって能力を発動させた。

 

 

 

 

 

音響砲(ハイパーボイス)!」

 

 

 

 

 

響が突き出した両手から強烈な衝撃波が放たれる。

その威力は、龍に変化しているカイドウの巨体に影響を与える程。

 

 

 

「オォ………⁉︎」

 

 

 

カイドウは身を震わせると、響を睨み付けながら口を開く。

 

 

「舐めやがって…!そんな下らねェ攻撃が俺に効くとでも思ってんのかァ⁉︎」

 

「今のは本の挨拶代わり!これでも食らいなよ、カイドウ………!」

 

 

響の両腕が武装色で黒く染まり、拳が引き抜かれる。

 

 

 

 

 

「ロックス直伝ーーーー『武装色パンチ』ッ‼︎」

 

 

「グッ………⁉︎オオオオオオオオォッ⁉︎」

 

 

 

 

 

メキャアッ!と音を立てて、カイドウの頭に拳が減り込む。

カイドウは白目を剥き、龍の姿から人間態へと戻りながら街中へと墜落した。

 

 

「マハハハハ!珍しい事もあるもんだ!カイドウが殴り倒されるなんてなァ‼︎」

 

 

ゼウスに乗りながら一部始終を眺めていたリンリンは、愉快そうに目を見開きながら呟く。

一方、殴り落とされたカイドウは直ぐに起き上がると、額から流れてきた赤い液体を見て僅かに驚いたような顔をしながら、楽しそうに響を睨み付けつつも笑う。

 

 

「ウォロロロ!久し振りだ、血を流すなんてな…!そうだ、もっと俺を楽しませろ!『ロジャー』『白ひげ』『赤髪』『リンリン』『おでん』…そしてお前。俺と戦える実力があるお前となら、少しは楽しめる!」

 

「相変わらず耐久力凄いよね、カイドウは。昔、ロックスから教えて貰った『武装色を応用した内部破壊』も大して効いてないし…!」

 

 

ロックス時代も異様な耐久力を持っていたカイドウ。

どれだけ打ち倒そうとも、不死身のように起き上がってきたあの頃より更に強大になった彼に、響は思わず冷や汗を流した。

 

 

 

 

 

その時。

 

 

 

 

 

「おい!其処までだ、お前らァ‼︎」

 

 

 

 

「ニューゲート…⁉︎」

 

 

「白ひげのジジイ…⁉︎」

 

 

 

再びぶつかり合おうとしたカイドウと響の間に、白ひげが割って入った。

カイドウは見る筈のないものを見たような顔をしながら、白ひげに問い掛ける。

 

 

「白ひげのジジイ…!死んだ筈だろう!何故生きてやがる⁉︎」

 

「グララララ…!悪いが、そう言う話は後だ。これ以上暴れりゃ、街がもたねェからな。一旦戦うのはやめにしておけ。ただでさえ、騒ぎになってやがんだ」

 

「カイドウ、取り敢えず一時休戦しない?私もお腹空いちゃってさ、アハハ………」

 

 

白ひげの言葉に乗っかるように、響も武装色の覇気を解除してカイドウに言った。

カイドウは軽く舌打ちをして、やる気なさ気に構えていた金棒を下ろす。

 

 

「………チッ、仕方ねェ。お前らの言う事なんざ聞く必要ねェが、興が削げちまった。さっさと連れてけ」

 

「ハ〜ハハハママママ!もう殺し合いは終わりかい?つまらないねェ………!それじゃ、おれは先に戻ってケーキを食べるとしよう!」

 

 

リンリンは詰まらなさそうに言うと、ゼウスに乗ったままラッキースプーンに帰っていく。

 

 

「リンリン………行っちゃった。まあいいか」

 

「別にアイツは居なくてもいいだろ」

 

「ウォロロロ…!それに対しては同感だぜ、白ひげのジジイ」

 

 

残された3人はそう言いながら、ラッキースプーン目指して歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『白ひげ』『ビッグマム』『金獅子』『カイドウ』………。

 

 

役者は揃いつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




セイレーン………前話にて、プリキュアに覚醒するも現実を受け入れられず逃亡。街中を彷徨っていたが、北条響に説得されて彼女の家でお泊りする事に。
その日の夜は一悶着あった模様。
翌日に、響に連れられラッキースプーンに顔を出すも、リンリンの姿を見て⁉︎となる。過去に魂を抜かれかけている為にリンリン恐怖症になっているが、その内慣れる。慣れって怖いね。
奏やハミィと一緒に、ラッキースプーンでケーキを作っている。
次話にて、本当の意味でプリキュアに覚醒予定。


北条響………加音町に現れたカイドウと、ちょこっとだけ戦闘。
カイドウが能力者になっている事を知って驚いた。
武装色の覇気の応用を駆使し、カイドウを殴り落として傷を付けた。
ロックス時代の仲間がまた増えた。


南野奏………今回はほぼ出番無し。次話に期待。
ケーキを作っている時、偶々テレビで龍形態のカイドウを目撃して驚くが、響の知り合いと分かったので考えるのをやめた。ラッキースプーンに、またヤバそうな奴が増える気配を感じ取ったが、デカい龍が増えた所で今更と開き直った。
今はセイレーンとハミィと一緒にケーキを作っている。


白ひげ………ラッキースプーンに集まるヤベー奴等の保護者ポジションに収まりつつある。俺はお前らの保護者じゃねェぞ!


ビッグマム………カイドウにデカい貸しがあるババア。彼が来た事でテンションがちょっと上がった。因みに、今話で白ひげと揉める原因となったケーキが無くなった事件だが、リンリンの物と知らずに食べてしまったファリーが犯人だった。
バレると殺されそうなので全力で知らんふりをしている。


カイドウ………最強生物。酔った勢いで空島から自殺をしたら、スイプリ世界に転移。
バスドラを押し潰しながら着地した。
死ぬ事は出来なかった模様。
その後は龍形態で加音町を彷徨いていたが、響とリンリンに出会ってしまう。
響に武装色パンチを喰らわされ、久しぶりに怪我をした事でテンションが上がる。
しかし、白ひげの乱入と響が戦う気をあまり見せなかった為やる気を無くした。
響はともかく、リンリンに会うのは気乗りしない。


トリオ・ザ・マイナー………被害者。主にバスドラが。
カイドウに押し潰されたが、ギャグ補正で無事だった。
哀れなり。


メフィスト………もうやだなー、人間界。


ラッキースプーン………ヤベー奴等の溜まり場となります。強く生きろ。




〜今後の予定〜

次回は、響達がカイドウの所へ行ってしまった後のラッキースプーンの話(主にセイレーンとハミィと奏。そして…あの男)と、ヒーリングチェスト回の予定です。
ヒーリングチェスト、お前寝てばっかり居ると大変な事になるからずっと起きといた方がいいぞ?

その次でミューズ加入回、更に次で………皆様お待ちかねの回です。


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騒騒絢爛大舞踏会!覚醒するはキュアビート!

作者の妄想シリーズ第九弾。

………更新が遅れた理由?

3月26日、モンスターハンターライズ発売。

理由はこれでいいか⁉︎



貫通ライトはいいぞぉ。


響・リンリン・白ひげといった面々が、加音町に現れたカイドウと邂逅している頃。

 

 

ラッキースプーンの店内では、奏とセイレーンに加えてハミィやフェアリートーン達が、ガヤガヤと騒ぎながら作りたてのカップケーキを食べていた。

 

 

「セイレーン、このケーキも美味しいニャ〜♪こっちはもーっと美味しいニャ〜♪」

 

「もう、ハミィったら。その説明じゃ、どんな味か伝わらないじゃない」

 

 

セイレーンは苦笑しながら、ハミィの薦めてくるケーキを手に取って食べる。

確かに美味しい。

続けて2つ目を食べようとしたセイレーンは、自分とハミィを温かい目で見ている奏に気付き、恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 

 

「………何よ」

 

「ふふっ、ごめんなさい。何だか貴方達のやり取りを見てたら、仲良さそうで微笑ましいなーって」

 

「当然ニャ!ハミィとセイレーンは親友だからニャ!」

 

「ハミィ………」

 

 

ムフン!と胸を張るハミィに、セイレーンは未だに自分を親友だと言ってくれる事に胸が熱くなるような感覚を覚える。

そして、同時に思うのだ。

 

 

やはり、自分はこの世界に居てはいけない………と。

 

 

マイナーランドを裏切った自分を、メフィスト達は許さないだろう。

いつ追手が来てもおかしくは無いのだ。

ただでさえ、音符を巡る争いで大変だというのに、自分のような存在がいても足枷にしかならないだろう。

それに…今まで他人を苦しめてきた自分が幸せになっていい訳がないのだ。

この幸せな世界を壊さない為にも、早く立ち去らなければいけない………。

 

 

「セイレーン?セイレーン、どうしたニャ?お腹いっぱいなのかニャ?」

 

「………ごめんなさい。私、やっぱり帰るわね」

 

「ニャニャ?セイレーン、何処に行っちゃうニャ?」

 

 

思考の渦に包まれて黙っているセイレーンを見たハミィが、不思議そうに問い掛けるが、それには答えずに帰るとだけ言い残して、去ろうとするセイレーンを奏が引き留めた。

 

 

「セイレーン…貴方、本当にそれで良いの?」

 

「私が居れば、いつか必ずアンタやハミィ達にも迷惑が掛かるわ。……これが最善の道なのよ」

 

 

そう言って店を出て行こうとするセイレーン。

そんな彼女の前にハミィが回り込む。

 

 

「ハミィ………?」

 

「セイレーン、ハミィはもっともーっと!一緒にお話したいのニャ!」

 

「ほら、ハミィは貴方と話したがってるみたいよ?少し2人で話してきたらどうかしら。今の貴方に必要なのはそれだと思うわ。私は残りのケーキを作ってくるから、外で待ってて」

 

「分かったニャ!行こうニャ、セイレーン!」

 

「え、ええ………」

 

 

奏からもそう言われ、セイレーンは促される様な形でハミィと2人で外のテラスへと出る。

 

 

「今日は良い天気ニャ〜♪セイレーン、あれを見てニャ!風に吹かれた木が良い感じにリズムを奏てるニャ。ヒュルル〜ヒュルル〜♪」

 

 

楽しげに歌い始めるハミィ。

しかし、セイレーンは歌を歌うような気分ではないのか、物憂げに景色を眺めるに留める。

すると、フェアリートーンのソリーとラリーがセイレーンに話しかけた。

 

 

「セイレーン、一緒に歌おうララ♪」

 

「ラリー、歌うより先に自己紹介しないと駄目ソソ。僕はソリー。宜しくソソ♪」

 

「僕はラリー。セイレーン、宜しくララ♪」

 

 

自分に話しかけてくるフェアリートーンの2人。

ハミィも、フェアリートーン達も何故、自分に構うのだろう。

自分が今まで何をして来たのか分かっている筈なのに、何故………。

セイレーンがそう思いながら、口を開こうとしたその時だった。

 

 

 

 

「「「セイレーン、見〜つけた!」」」

 

 

 

 

特徴的な声。

まさかと思い振り返ると、其処にはかつての部下であり仲間だった3人…トリオ・ザ・マイナーが不敵な笑みを浮かべて佇んでいた。

 

 

「皆、逃げ「逃がさない〜♪」ニャニャ〜⁉︎」

 

「ハミィ⁉︎」

 

 

逃げようとしたハミィだったが、バスドラによって呆気なく捕まってしまう。

 

 

「フッフッフ!鬱陶しい白猫は捕まえたぞ!後は貴様だ、セイレーン!」

 

「っ‼︎」

 

 

ニヤリと笑いながらセイレーンに近づくバスドラ。

するとその時、テラスの扉が勢いよく開いて奏が飛び出してきた。

 

 

「一体何の騒ぎ…って、トリオ・ザ・マイナー⁉︎」

 

「チッ、邪魔者が来たな!バリトン、ファルセット!そいつを捕まえろ!」

 

「なっ………⁉︎」

 

 

バスドラがそう言うと、バリトンとファルセットが奏の身体を掴んで拘束する。

 

 

「何するのよ!離して!ハミィを解放しなさい!」

 

 

奏は拘束から逃れようと暴れるが、流石に大の男2人に掴まれていてはどうしようも出来ない。

プリキュアに変身しようにも、響が居ないので不可能だ。

それでも何とかしようともがく奏だったが、それを見たバリトンが彼女を脅すかのように言う。

 

 

「おやおや、お嬢さん。余り暴れない方が身の為ですよ?お仲間が酷い目にあってしまうかも知れませんからねぇ…?」

 

「この卑怯者!前もそうやって人質取って脅したわよね⁉︎最低よ、貴方達‼︎」

 

「フン、何とでも言えばいい!勝てば良いんだ、勝てば!」

 

 

奏は叫びながら彼等を糾弾するが、バスドラは鼻を鳴らして居直る。

 

 

「や、やめて!アンタ達の狙いは私でしょう⁉︎ハミィ達に酷い事しないで!」

 

「酷い事………?フッフッフ!笑わせてくれるわ!お前も今まで散々その酷い事とやらをやってきたんだろうが!」

 

「それは………!」

 

 

セイレーンはハミィ達に手を出すのをやめるよう詰め寄るも、バスドラの言葉に、今まで行ってきた自分が犯した罪を思い起こしてしまう。

 

 

「(これが…私がやって来た事なの?これが、私の罪?)」

 

 

押し寄せる罪悪感によって、弱っていた心が音を立てて崩れていくのを感じ取ったセイレーン。

視界が揺れる。

呼吸も安定しない。

足元がフラフラして、立っているのも覚束なくなる。

全身から力が抜け、床に座り込んでしまう。

 

 

ああーーーーそうだ。

これこそ、自分が望む物じゃないか。

糾弾され、侮蔑され、この世の全てから忌み嫌われながら消えていく。

 

 

視界が暗くなり、あらゆる音も物も聞こえなくなり見えなくなる。

 

 

 

 

「は、はは……は………!」

 

 

私に、相応しい罰だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイレーン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………⁉︎」

 

 

 

闇の底に堕ちかけていた意識が、凛とした声によって引き戻される。

視界が開け、思わず声が聞こえた方を向く。

 

 

「しっかりして、セイレーン!貴方が絶望に堕ちたら、誰がハミィを助けるの⁉︎」

 

 

声の主は、奏だった。

芯の通る声を響かせながら奏はセイレーンを叱咤する。

 

 

「ハミィを…助ける?無理よ…!私には、そんな資格は………!」

 

 

声を震わせながら否定するセイレーン。

 

 

「甘えないでっ!今の貴方は、自分自身から目を逸らして逃げてるだけよ!資格?無理?ハミィは貴方の友達なんでしょう⁉︎最もらしい理由を並び立てて逃げるなっ‼︎」

 

「……………っ‼︎」

 

 

全力で叫んだのだろう。

ハアハアと、息を荒げてセイレーンを見据える奏。

それに続くかのように、ハミィは優しい口調でセイレーンに語りかける。

 

 

「セイレーン…セイレーンが悩んで苦しんでいるのは良く分かってるニャ。でもハミィは、それを理由にプリキュアになる資格がないとか言って欲しくはないニャ。自分が何かをしたいと思った時に、理由なんて必要ない。セイレーンは今、何をしたいのかニャ?」

 

「私の………やりたい事…」

 

 

何かが、カチリと嵌った感覚がセイレーンの身体を駆け抜ける。

そうだ。

自分は、過去の行いを口実にしてあらゆる事から逃げようとしていた。

罪の意識なんてものは、自分の心の逃げ道を作る為の言い訳に過ぎなかった。

最もらしい理由を付けて、背を向けて目を逸らしていただけだ。

 

 

カチリカチリと欠けていた何かが満たされていく。

 

 

 

ようやく理解出来た。

そう、私の心は今も昔も変わらない。

唯一の友達を………守りたい。

 

 

 

 

 

 

 

それがーーーー私の本心だ。

 

 

 

 

 

 

 

そして………セイレーンは心のままに叫んだ。

 

 

 

 

 

「私の犯した罪が消える事はない。過去は取返しがつかない。なら私は…この罪と向き合い、この罪を背負ったまま!ハミィや皆の暮らすこの平穏な世界を!これ以上壊さない為、壊させない為に!私は、ハミィとこの世界を守る‼︎」

 

 

 

 

 

その瞬間、眩い光がセイレーンから溢れ出し、彼女の胸から何かが浮かび上がる。

 

 

 

「これは………⁉︎」

 

 

 

それは、キュアモジューレだった。

セイレーンは導かれるかのように、そっとモジューレに手を添える。

暖かい春の日差しのような穏やかな心が彼女を満たし、更に光が溢れ出る。

 

 

 

 

迷いは、無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レッツプレイ!プリキュア !モジュレーション!」

 

 

 

 

 

 

 

 

セイレーンの姿が光に包まれ、変化していく。

そして光が収まると、彼女は名乗りを上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「爪弾くは魂の調べ! キュアビート!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キュア…ビート!」

 

「やったニャ〜♪3人目のプリキュアニャ〜♪」

 

 

奏とハミィは、颯爽と名乗りを挙げて現れたセイレーン………キュアビートに感嘆の声を挙げる。

 

 

「おのれ〜!キュアビートだと⁉︎だ、だが!忘れたのか?こっちには人質が居るんだぞ‼︎」

 

 

プリキュアへと覚醒したビートに、バスドラは動揺しつつも人質にしている奏とハミィの存在をチラつかせて余裕のある態度を取る。

その時だった。

 

 

「バスドラ、今のうちにセイレーンを…ゴブフゥッ⁉︎」

 

「どうしたファルセット⁉︎ってグボェッ⁉︎」

 

 

突然何処からともなく飛んできた何かが、奏を拘束していた2人の顔面を打ち据える。

何が起こったのか分からない奏だったが、よく見ると鉢植えが2つ地面に転がっているのが目に入った。

恐らくこれがバリトンとファルセットにぶつかったのだろう。

其処まで考えた奏は、ある事に気付く。

この鉢植えは宙に浮かんでぶつかってきた。

まるで、誰かに操られているかのように。

 

そして、そんな芸当が出来るのは奏の知る限り1人しかいない。

 

 

 

 

 

 

「ジハハハハ!中々面白ェ事してんじゃねェか!俺も混ぜろよ!」

 

 

 

 

 

 

特徴的な笑い声。

火を付けた葉巻を口に加え、獅子の鬣を想起させるような金色の髪を靡かせる大男。

 

 

 

 

金獅子のシキが、空に浮かびながら佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ⁉︎シキ、お前はマイナーランド側だった筈だろうが⁉︎そいつらに味方する気か⁉︎」

 

「ジハハハハ!勘違いするんじゃねェよ!お前達とは元々ちょっとした協力関係だったに過ぎねェ!それに俺は誰の味方でもねェんだ。ただ、強いて言えばセイレーンや其処のベイビーちゃんの在り方に多少なりとも心打たれたから…とでも言っておこうか!」

 

 

バスドラの焦ったような問い掛けに、シキは豪快に笑いながら言う。

 

 

「何を〜!だがこっちにはまだ人質が………っていない⁉︎何処にいった⁉︎」

 

 

完全に予想外の展開に動揺するバスドラは、自分が人質として掴んでいるハミィの姿がない事に気が付いた。

慌てて周りを見渡すも、ハミィの姿は影も形もない。

 

 

「バスドラ。探し猫はここかしら?」

 

「セイレーン⁉︎貴様、いつの間に⁉︎」

 

 

僅かな隙を突いてハミィを取返したビートが、これ見よがしにハミィを肩に乗せながら笑う。

完全に形勢が逆転した事に歯噛みするバスドラ。

だが、その時彼はある物を見て目の色を変える。

偶々、机の上に並べられたケーキに音符が宿っているのを見たからだ。

 

 

「丁度良い!こうなったら、出でよ!ネガトォーーーーーン!」

 

 

「ネガトォォォーーーーーン‼︎」

 

 

瞬く間にケーキが変化し、巨大な怪物と化して現れるネガトーン。

 

 

「フッフッフ!人質は無くなったが、ネガトーンも加えて戦力はこっちが上だ!さあ、ネガトーン!俺達と一緒に裏切り者のセイレーンを始末するぞ!」

 

 

バスドラは意気揚々とネガトーンに指示を出して、同時にビートを睨み付ける。

 

 

「セイレーン!プリキュアになったからと言って調子に乗るな!守るだなんだとほざいていたが、お前にそんな事を言う資格があるとでも思ってるのか⁉︎例えお前がプリキュアになったとて、お前が苦しめてきた人々はお前を決して許しはしないぞ!身も心も汚れきったお前が、誰かを守ろうなどと、烏滸がましいにも程がある!」

 

 

 

 

「そうね!アンタの言う通りよ!」

 

 

 

 

「何だと………⁉︎」

 

 

 

 

「確かに私は許されない事をして来たわ。数えきれない程に。でも、私は決めたの。例え許されなくても、烏滸がましくても、傲慢の極みだとしても!私は私の意思を貫き通す!糾弾するならすれば良い!責めたてるなら責めたてればいい!私はその全てを受け入れる覚悟を持って此処に居る!だから私は皆を、ハミィの居るこの世界を守り続けるわ!何があったとしても!茨の道だとしてもね!さあ、下らない揺さぶりはやめて掛かって来なさいよ、バスドラ!」

 

 

 

 

「セイレーン………‼︎貴様‼︎」

 

 

 

 

ビートを動揺させる目的で揺さぶりを掛けるバスドラだったが、彼女の心が微塵も揺らがなかった事で怒りを露わにする。

もう、ビートがこの先揺らぐ事はないだろう。

この場に居る誰もがそう思ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジハハハハ!良い啖呵だったぜ、セイレーン!ああ、今はキュアビート…だったか?お前らみたいなガキ共がそれだけ体張ってんだ。俺も海賊の恐ろしさを今一度、知らしめてやらなきゃなァ‼︎男が廃るってもんだ‼︎」

 

 

シキはそう言うと、好戦的な笑みを浮かべながらネガトーンの前に立ちはだかる。

 

 

「ベイビーちゃんは下がってな!お前は響が居なけりゃ変身できねェんだろう?さあ、本物の海賊の恐ろしさを見せてやる!」

 

「分かりました。でも、周りを余り壊さないで下さいね!」

 

「保証は出来ねェな!ジハハハハ!」

 

 

愉しげに笑うシキ。

奏は溜息を吐きながら、戦闘の邪魔にならないようにその場を離れようとするが、ビートに止められる。

 

 

「待って、ハミィをお願い!」

 

「オッケー、任せて!ハミィ、行こう!」

 

「セイレーン!頑張ってニャ!」

 

 

ビートにハミィを託され、奏は急いでその場を離れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネガトーンと対峙したシキは、ゆっくりと両手を挙げる。

 

 

 

 

 

「派手に行こうか!獅子威し・空巻き‼︎」

 

 

 

 

 

瞬間。

ゴバアッ!と大気が渦巻き、ネガトーンを襲う。

意思を持ったかのような大気のうねりに巻き上げられ、高所から地面へと叩きつけられるネガトーン。

 

 

 

 

 

「斬波!」

 

 

 

 

 

腰に差していた剣を抜いたシキが、無造作にそれを振るう。

強烈な斬撃がネガトーンを襲い、体が一瞬で真っ二つになってしまった。

しかし………。

 

 

「ネガ………トォォォーーーーーン‼︎」

 

 

2つに裂けたネガトーンの体は瞬く間にくっ付き、再生してしまう。

 

 

「再生能力持ちって訳か?面白ェ!なら、再生出来なくなるまで切り刻んでやろうじゃねェか!ジハハハハ!」

 

 

シキはそう言って笑うと、再び剣を両手で構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ビートはトリオ・ザ・マイナーと戦っていた。

 

 

「これでも食らえ、セイレーン!トリオ・ザ・ボンバー‼︎」

 

 

三位一体の高速突進とも言える攻撃でビートに突撃するトリオ・ザ・マイナー。

その突進を両手で受け止めるビートだが、流石に無理があるのか徐々に押されて行く。

 

 

「ぐ…ぎぎぎ………!」

 

 

「無駄だ無駄だ!諦めろ、セイレーン!お前などに俺達が倒せるものか!」

 

 

バスドラの嘲るような台詞を受け流しながら、ビートはプリキュアとしての力だけではなく………悪魔の実の能力を発動させる。

 

 

「な、何だと………⁉︎押されている⁉︎」

 

「バスドラ…!私を余り舐めない事ね!」

 

 

動物系の脅威的な膂力が発揮され、今度は逆にトリオ・ザ・マイナーが押し返されて行く。

それと同時に、ビートの姿も変化して行くのをバスドラは目にした。

ビートの口の上下に4本の牙が生え、二又に分かれた尻尾が伸びて頭には猫のような耳が飛び出す。

体には細長い雷雲と炎が纏わり付き、その周囲には鬼火が漂い始める。

 

 

 

 

人獣形態となったキュアビートは、金色の両眼でバスドラ達を見据えながら一気に持ち上げた。

 

 

 

 

 

「ま、待て!セイレーン!」

 

 

「待たないわよ!食らえ、火車墜し!」

 

 

 

 

 

ドカァン‼︎と、轟音を立てながらトリオ・ザ・マイナーが地面へと叩きつけられる。

 

 

「ぬがああああっ⁉︎何て馬鹿力だ、セイレーンめ!業腹だが、ここは一旦撤退するしかないか…!逃げるぞ、お前達!」

 

「あ!待って下さいよ、バスドラ!部下を置いてくなんて、それでもリーダーですか!」

 

「ぼ、僕を置いてかないで!待ってよ、バリトン!」

 

 

ビートに敵わないと悟ったトリオ・ザ・マイナーの3人は逃げの一手に走ろうとするが、それを見逃すビートではない。

 

 

「逃がさないわ!ラブギターロッド!おいで、ラリー!」

 

 

「ララ〜!」

 

 

ビートはラブギターロッドを出現させ、逃げようとする3人に向かって構えて弦を勢いよく鳴らす。

 

 

 

 

「ビートソニック‼︎」

 

 

「ヒィっ⁉︎逃げろぉ〜‼︎」

 

 

 

 

ギターの音に呼応するかのように現れた複数の音符が、矢の如く放たれて逃げる彼等に次々と着弾していく。

トリオ・ザ・マイナー達は、必死に逃げ惑いながら捨て台詞とばかりに

「「「覚えてろ〜!」」」と、叫んで去っていくのだった。

トリオ・ザ・マイナーが撤退した事で、一先ず胸を撫で下ろすビート。

しかし、まだネガトーンが居ることを思い出しシキとネガトーンが戦っている場へと向かう。

その場に到着したビートの目に入って来たのは。

 

 

 

「ジハハハハ!遅かったじゃねェか。待ちくたびれたぜ」

 

「ネ、ネガァ………」

 

 

 

数多の破片と化して力なく突っ伏すネガトーンと、退屈そうにしながら葉巻を吸うシキの姿だった。

 

 

「待たせて悪かったわね。って言うか、どうやったらそんな風に細切れに出来るのよ?」

 

「仕方ねェだろ?幾ら斬っても再生しやがるから、出来なくなるまで刻んでやったのさ。止めを刺すなら今の内だな。そんじゃ、俺は一足先にラッキースプーンとやらに戻っとくぜ」

 

 

そう言って、シキはフワフワの能力で空に浮かぶとラッキースプーンの方へと去って行く。

ビートはシキに手も足も出ずボコボコにされたネガトーンにちょっぴり哀れみを感じながら、浄化するのであった。

 

 

その後、響達に先んじて戻っていたリンリンの姿を見て彼女は悲鳴を挙げる事になるのだが………それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー………って、どうしたのこれ?」

 

「えーっと、その、これは………」

 

 

白ひげ、カイドウと共にラッキースプーンへと戻って来た響は、机や椅子が幾つか散乱している屋外テラスを見て、奏に問い掛ける。

 

 

「ジハハハハ!マイナーランドの野郎共の所為だぜ、これは!奴等が暴れ回ったからこうなったんだ」

 

 

奏の代わりに答えたのは金獅子のシキ。

その辺に転がっていた椅子に腰掛け、優雅に葉巻を吸っている。

 

 

 

「あれ?何でニワトリが此処に居るのよ?」

 

「誰がニワトリだっ!ったく……ありゃ⁉︎こんな所にニワトリが居るぞ⁉︎」

 

「そりゃ窓ガラスに写ったアンタでしょーがっ‼︎」

 

 

「「ハイッ‼︎」」

 

 

 

響とシキの息の合ったノリツッコミに、奏やセイレーンも頬を若干引きつらせながら白ひげに目線で何か反応してくれと投げかける。

白ひげは白ひげで、俺に振るんじゃねェよというような顔をした。

 

 

「グララララ…!海賊は引退するんじゃなかったのか、金獅子ィ?」

 

「馬鹿言え、あんなもん嘘に決まってんだろうが。俺は生涯現役だぜ?ま、それはともかくだ!折角あの頃の主な面子が揃ってんだから、飲もうじゃねェか!宴は大事だろ?ジハハハハ!」

 

 

そう言ってシキは何処から持って来たのか、巨大な酒樽をフワフワの能力で浮かしながら笑う。

 

 

「ハ〜ハハハママママ!なら早速お茶会といこうじゃないか!始めるよ、地獄のお茶会をねェ!カイドウ、お前はおれの隣に座るんだよ!」

 

「あァ⁉︎ふざけんな、リンリン!お前の隣なんざ座りたくねェよ!それなら金獅子か白ひげの隣にいた方がマシだ!」

 

「座る場所くらいで、喧嘩すんじゃねェよアホンダラ共がァ!沈められてェのか⁉︎」

 

「ジーハッハッハ!この殺伐としたノリ、懐かしいじゃねェか!なァ、響⁉︎」

 

「私に振らないでよシキ!あーもう、ロックスの頃から何も変わってないよね、アンタ達は!」

 

 

ガヤガヤと騒ぎながら宴会へと突入する大海賊達。

 

 

「もしかすると私達って…とんでもない人達と関わった感じかしら?」

 

「深く考えちゃ駄目よ、セイレーン。慣れたら大丈夫だから。慣れたらね」

 

 

ボソっと呟いたセイレーンに、奏が遠い目をしながら答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜1時間後〜

 

 

 

 

「ウォロロロ!おい、響!俺と昔みてェに殺し合わねェか⁉︎さっきの続きをしようぜ!」

 

「絶対ヤダ!アンタ酔うとホントに面倒くさいよね!」

 

「そう言わずに相手してやれよ!俺は嫌だがな!ジハハハハ!」

 

「ママママ!カイドウ、そんなに殺りあいたいならおれと殺るか?」

 

「ここで暴れ回んなって言ってんだろォが!金獅子、テメェも煽るんじゃねェよ!リンリンも菓子食って大人しくしてろ!」

 

 

酒に酔ったカイドウが金棒を手に響に迫り、シキが爆笑しながら煽る。リンリンはナポレオンを取り出し、白ひげが怒号を挙げる。

カオス此処に極まれりと言うべき空気が漂うその空間。

国一つを容易に滅ぼしうる力を持つ海の皇帝達が一堂に集い、酒を酌み交わす絵面は、恐ろしいを通り越して畏怖を感じる程だ。

もしこの場を海軍が見ていたら、卒倒する事間違いなしである。

海軍元帥のセンゴクはストレスで胃痛になるだろう。

そして遠巻きにそれを眺めるセイレーンと奏。

眺めている2人に気付いたのか、響が手招きする。

 

 

「奏とセイレーンも、そんな遠くに居ないでこっちに来なよ。大丈夫だって、誰も何もしないからさ!」 

 

 

正直全力で遠慮したいのだが、誘われた以上行かない訳にもいかず、2人はヤバい奴等のど真ん中へと入っていく。

 

 

「ん〜?お前がセイレーンかい?響の知り合いってんなら、持て成してやらないとねェ!ハ〜ハハハ!」

 

「ウォロロロ…!聞いたぜ、お前も動物(ゾオン)系の能力者なんだろう?百獣海賊団に来れば、『飛び六砲』とまでは行かねェが『真打ち』になら直ぐになれる!俺と共に世界最高の戦争を始めようじゃねェか!」

 

「あ、あはははは…。それはちょっとお断りした「あァ⁉︎俺の勧誘を蹴ろうってのかァ⁉︎」ひぃっ⁉︎」

 

 

酒が入り、急に怒り上戸になったカイドウに怯えるセイレーン。

そのカイドウは酒をグビグビと飲むと、今度は泣きだす。

 

 

「ウォォォォーーーーーン!響ィ、聞いてくれよォ!俺が折角勧誘してやってるってのに、こいつ俺の誘いを断りやがったんだ!ウォォォォーーーーーン!」

 

「ええ………(汗)」

 

 

突然泣き出したカイドウに、引いてしまうセイレーンは近くにいる響助けを求める視線を向ける。

セイレーンの助けを求める視線に気付いた響は、仕方ないなあと言う風な顔をしながらカイドウを止めに入った。

 

 

「カイドウ、セイレーンが困ってるじゃない。絡み酒やめなって言ってるでしょ?」

 

「ウォロロロ!まあ、嫌だってんなら仕方ねェ!先ずは飲み明かそうぜ!」

 

 

今度は笑い上戸になり、上機嫌になるカイドウ。

情緒不安定かコイツは⁉︎と内心思いながら、セイレーンはそそくさと奏の居る方へ逃げた。

 

 

「セイレーン、大丈夫?顔色悪いわよ?」

 

「大丈夫………多分。アンタは良く平気で居られるわよね。私じゃ無理だわ………」

 

「何事も慣れよ、慣れ。セイレーンも、その内何とも思わなくなるだろうから、それまでの辛抱ね」

 

 

カイドウとビッグマムというヤバい奴等に絡まれた所為なのか、心なしか顔色を悪くしているように見えるセイレーンを気遣う奏。

そんな2人の側に、響がケーキを食べながら近づいて来た。

 

 

「アハハ!騒がしくてごめんね、奏。セイレーンもカップケーキ食べてる?美味しいよ〜奏のケーキはさ!食べなきゃ損損!」

 

「え、ええ。じゃあ、後で食べてみるわね。それと、その………私の名前なんだけど…セイレーンって呼ぶのは無しにして欲しいの。名前を変えた所で、私の罪が消える訳じゃないけれど………」

 

 

過去の自分にケジメを付ける意味合いも含めて、セイレーンは名前を変える事を奏と響に伝えた。

 

 

「分かったわ。じゃあ、これから何て呼んだらいいかしら?」

 

「えーと…そうね………」

 

 

奏の問い掛けに、セイレーンは色々と考えてみるが中々思いつかない。

どんな名前が良いだろうか?

 

 

「だったらさ、『エレン』っていうのはどう?」

 

「エレン………エレンか。…………うん、うん」

 

 

響としては割りかし適当に言ったつもりだったのだが、どうやらセイレーン的には気に入ったらしい。

何度もエレンという名前を呟きながら頷き、顔を綻ばせている。

 

 

「決めたわ。今日から、私はセイレーンじゃなくて『エレン』よ。ありがとう、響。とても良い名前だわ!」

 

「どういたしまして、エレン!これから宜しくね!私の事は響って呼んでもいいから!」

 

「私も宜しくね、エレン。私の事も奏って名前で呼んでくれていいからね」

 

「ありがとう………響、奏」

 

 

笑顔で2人の名前を呼ぶエレン。

本当の意味で、プリキュアとしての仲間が増えた瞬間だった。

 

 

「よーし!なら今日は、エレンの新しい旅立ちをお祝いしよう!という訳で、私はエレンが好きそうなケーキを持ってくるよ!」

 

 

そう言うと、響は足早にケーキが山と積まれている机の方へと走り去って行く。

 

 

「最もらしい事言ってるけど、響はケーキを食べたいだけでしょ?もう、ホント調子いいんだから…」

 

「あははは………」

 

 

呆れたように溜め息を吐く奏は、そう呟きながら響の元へと歩いて行く。

同じくエレンも、ケーキを幸せそうに食べる響を見て苦笑いを浮かべながら、騒ぎまくるヤバい奴等の中へと混ざりに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………。」

 

 

 

 

 

 

音楽の女神の名を冠する少女もまた、遠目からラッキースプーンで騒ぐ一堂を眺めて何かを決意するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

tips③『海軍の憂鬱』

 

 

「これは一体どういう事だ!奴等が現れてから、まだ3か月だぞ⁉︎被害の規模が尋常じゃない!」

 

「何故だ⁉︎今まで孤高の海賊を貫いていた奴が、何故今更海賊団なぞ結成した⁉︎しかも面子は高額賞金首ばかり…!悪夢というほか無い!」

 

「今はそんな事どうでもいいだろう!早急に対策を打たねば大変な事になる!」

 

「そんな事は分かっとる!だが、我々の戦力も無限ではないんだぞ⁉︎特定の拠点も持たない奴等を、どうやって補足して対処しろというんだ⁉︎」

 

 

怒号が飛び交う会議場。

ここは、世界の治安維持を担う正義の軍隊『海軍』の総本部。

またの名を『マリンフォード』。

そのマリンフォードの会議場で今議題に挙がっているのは、3か月前にロックス・D・ジーベックによって結成された『ロックス海賊団』だ。

海賊史上、未だかつてない最大にして最悪の戦力を誇る彼等。

メンバーの誰が船長であっても不思議ではない面子で構成される『ロックス海賊団』。

その個性的過ぎる我の強い面子を従える男『ロックス・D・ジーベック』。

結成されてから僅かな期間の内に、幾つもの国や海軍支部が攻め滅ぼされている現状に、危機感を抱いた世界政府上層部は一刻も早くロックス海賊団を何とかするようにと、海軍に圧力を掛けてきている。

故に今回の会議が開かれたのだが、荒れ模様が凄まじく議論どころの騒ぎではない。

 

紛糾する会議場。

その会議場から、1人の男が出て来ると暫くしてから、盛大な溜め息を吐いた。

 

 

「会議は踊る、されど進まず…か」

 

 

1人呟く彼の名前は『センゴク』。

海軍中将を務める将官であり、『仏のセンゴク』の異名を持つ彼は眉間に皺を寄せながら、煙草に火を付けて紫煙を燻らせた。

 

 

「よう、センゴク!煙草はやめたんじゃなかったのか?」

 

「ガープか…。禁煙は辞めたんだ。それより、お前は会議に出なくて良いのか?またコングさんにドヤされるぞ?」

 

 

煙草を吸うセンゴクに声を掛けたのは、センゴクと同じ海軍中将である『モンキー・D・ガープ』だった。

 

 

「ぶわっはっはっは!別に構わん!いつもの事だからな!」

 

「自信満々に言う事じゃないだろうが!馬鹿なのか⁉︎」

 

 

大声で笑うガープに、センゴクは頭を抱える。

とにかくガープという男は自由人過ぎるのだ。

同僚のセンゴクもガープの破天荒ぶりに悩まされている1人である。

 

 

「ハァ………まあいい。それより、『ロックス海賊団』についてだが一応俺の方でもメンバーの資料を纏めておいた。お前にも渡しておく」

 

「すまんな、センゴク!どれどれ…『白ひげ』『シャーロット・リンリン』『金獅子のシキ』成る程、こいつは大物ばかりだな。………ん?この娘は何だ?」

 

 

センゴクから手渡された資料をパラパラとめくり流し読みをしていたガープの手が、あるページを開いたまま止まる。

 

 

「どうした?気になる奴でもいたか?言っておくが、ロックス海賊団には、お前が躍起になって追っているロジャーとやらは居ないぞ?」

 

「そんな事は分かってる。ロジャーがロックスなんぞに与する訳がないからな。それより、この娘は何者だ?」

 

 

ガープはそう言って、開かれたページに載っている写真を指差す。

其処には、まだあどけなさを残した少女が写っていた。

 

 

「その娘か?詳しい事は分からんが、ロックスが海賊団を旗揚げする前から一緒に居る娘だそうだ。見た限りではロックスには似ても似つかないし、実の子供という訳でもなさそうだが…報告によれば、武装色の覇気を使いこなすらしい。実際、この娘と対峙した海兵…階級は大佐だったが、アッサリと返り討ちにされたそうだ。ロックスに関わっている上に海賊をしているとなれば、その懸賞金額も納得だろう。因みに名前は………」

 

「北条響…?変わった名前だな。この辺じゃ聞かない名字だ」

 

「まあ、名前についてはどうでも良い。今分かって居る事は、この娘も含めたロックスを船長とする海賊団を止めなければならないと言う事だからな。ガープ、相手が女子供でも相手は海賊だ。容赦するなよ?」

 

「誰に向かって言っとるんだセンゴク!俺は海兵だぞ?一々言われんでも、海賊どもは全員とっ捕まえて牢にぶち込んでやる!ロックス海賊団も、そしてロジャーの野郎もな!ぶわっはっはっは!」

 

「やれやれ、お前は気楽で良いな。全く………」

 

 

ガープは笑いながら資料を閉じると、呆れたようなセンゴクを尻目に歩いて行く。

 

 

 

ガープが開いていた資料には、こう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

ロックス海賊団・船員(クルー)

 

 

 

北条響

 

 

 

懸賞金額1億190万ベリー

 

 

 

 

 

 

 

tips④『音鎚』

 

 

「響、お前は武器を使わねェのか?」

 

 

喧騒と殺意が渦巻くロックス海賊団の海賊船の甲板で、1人覇気の練習をしていた響に白ひげが問い掛けた。

 

 

「うーん…まあ別に覇気があるから要らないかなーって。一応能力者にもなったしね。そう言うニューゲートは、どうして薙刀使ってるの?」

 

「俺のグラグラの力は確かに強ェが、周りを巻き込んじまうからな。状況によっちゃ使えねェ時もある。だからこういう武器があった方が便利なんだ。こんな風に、覇気を纏わせて使えるしな。それに戦い方の幅も広がる」

 

 

白ひげはそう言って、手に持つ『むら雲切』の刃を武装色で黒く染め上げる。

 

 

「成る程ね。私も何か使ってみようかな………うーん」

 

「剣じゃ駄目なのか?あれは初心者でも使いやすい部類だと思うが」

 

「剣かぁ………あまり良い思い出がなくて」

 

 

思案気に首を傾ける響に、白ひげは剣を使ってみたらどうだと勧めるが、本人は乗り気ではないらしい。

白ひげが知る由もないが、響がこの世界に来てロックスと邂逅した際に、彼女は剣で海賊達を虐殺しているロックスの姿を目撃している。

それがトラウマになっているという訳ではないが、彼女にとってあまり良い思い出ではないのは確かなのだ。

 

 

「………こんな事言ったら、甘いって言われそうだけどさ。あんまり目に見えて人を傷付けそうな武器はちょっと………。ああ、誤解しないでよね?別にニューゲートの使ってる武器を否定してる訳じゃないから。単純に私自身の考え方ってだけだから………」

 

 

「そうか…お前自身の事だから俺がどうこう言う義理はねェが。………あァ?あいつら、また仲間同士で殺し合い始めやがって!じゃあな、響。あの馬鹿どもを止めてくる」

 

 

そう言うと、白ひげは船上で殺し合いを始めた船員達を止める為に駆け出していく。

薙刀を振るって殺さないように加減しながら、船員達をぶっ飛ばしていく白ひげ。

ロックスを除けば、彼が最強と言われるのも頷ける程の強さだ。

 

 

「武器…か。ハァ………「おいおい、どうした?元気がねェじゃねェか、ハハハハハ…!」ってうわっ⁉︎ロックス⁉︎急に現れないでよ⁉︎」

 

 

突然、背後から掛けられた声に響は驚いて叫ぶ。

振り返ると、声の主であるロックスがニヤつきながら響を見下ろしていた。

 

 

「ハハハハハ!お前が勝手に驚いてるだけだろう?俺は何もしちゃいねェぜ?お前が珍しく悩んでいる風に見えたから、声を掛けただけだ。船員の事も俺はちゃんと見ているからな、ハハハハハ…!」

 

「もう………。悩みって程じゃないんだけど、「『私って武器を使うとしたら何がいいと思う?』」ちょっと!見聞色の先読みはやめてってば!」

 

 

見聞色の覇気による未来視で発言を先読みされた響は抗議するが、ロックスは気にする事なく楽しそうに笑う。

 

 

「ハハハハハ!そう怒るな!それにしても、お前が武器を使いたいなんて言ってくるとは思ってなかったぜ」

 

「さっきニューゲートに言われたの。武器は使わないのかってね。戦い方の幅も広がるって言ってたし………」

 

「確かに幅が広がるのは事実だ。俺もコイツを使っているしな…毒も刃に塗ってある。体内に入ったら最後、悶え苦しみながら死ぬ事になる程の猛毒がな。腕なんざ傷付けば、直ぐに斬り落としでもしねェ限り御陀仏さ…!」

 

 

腰に差している剣の束を撫でながらロックスは言う。

響がドン引きしているが、そんな事は御構い無しだ。

 

 

「ああ…そう。私はそんなの使う気はないからね」

 

「そんなのって言うんじゃねェ!仮にも船長の使う剣だぞ?敬意を払いな!」

 

「何で貴方の武器にまで敬意を払わないと駄目なのよ!この逆立ちうねり髪頭!」

 

「ハァ⁉︎これは俺が毎朝、苦心してセットしている髪型なんだぞ⁉︎シキの変眉よりマシだろうが!この大食い女!リンリンじゃあるめェし、馬鹿みたいに食べやがって!太るぞ‼︎」

 

「リンリンを引き合いに出さないでよ!一般的な基準から外れ過ぎでしょーが、比較対象にするには!」

 

 

遠くから「俺の眉は関係ねェだろ⁉︎」「おれも馬鹿にされている気がするねェ…!」と抗議する声が聞こえてくるが、あえて無視を決め込むロックスと響。

 

 

「………まあ俺の剣に敬意云々は、この際どうでもいい。それより、お前の武器に関してだが…これからの事も考えると、あった方がいいのは間違いねェ。使う使わないは別としてだ。仕方ねェ、少し待ってな!お前が使いやすい得物を調達してやるよ、ハハハハハ…!」

 

「え⁉︎」

 

 

そう言って、ロックスは呆気に取られる響を一瞥して船長室へと戻って行く。

少し不安な気もする響だったが、取り敢えず喧嘩を売ってきたカイドウをぶっ飛ばして考えるのをやめるのだった。

 

 

 

そして1週間後。

 

 

 

「よう、響!お前の得物が出来上がったぜ!後で俺の部屋に来な!ハハハハハ!」

 

朝から喧嘩を売ってきたカイドウを武装色パンチで殴っていた響に、ロックスは告げると笑いながら何処かへ行ってしまう。

 

 

「おい、響…!得物が出来たってどういう事だ?」

 

「顔が近いよ、カイドウ!アンタのアップは暑苦しいの!ロックスが私の武器を調達してくれたってだけの話だから!」

 

 

ズイ…!と顔を突き出して、怪訝そうに問い掛けるカイドウの顔面を引き離しながら響は言う。

 

 

「船長がお前に?それなら俺も頼めば良かったな」

 

「アンタはその金棒があるでしょ。それで充分じゃない」

 

「ハ〜ハハハママママ!カイドウ、新しい武器が欲しいのかい?おれが何か見繕ってやろうか?お前はおれの大事な弟分だからなァ!」

 

「急に出てくるんじゃねェよ、リンリン!俺はお前の弟じゃねェって言ってんだろうが!」

 

 

会話に割り込んで来たリンリンに対して、露骨に嫌そうな態度を取るカイドウ。

その後、何故か殺し合いに発展し、騒ぎを聞き付けた白ひげが止めに入るまで喧騒が絶える事は無かったのであった。

 

 

 

 

騒ぎを抜け出し、船長室へと来た響。

 

 

「ハハハハハ…!来たか!」

 

「もう朝から疲れた………。ああ〜、奏のカップケーキが食べたい………!」

 

 

ロックスは溜め息を吐いている響を見て笑う。

 

 

「ハハハハハ!朝から災難だな、響!さて、お待ちかねの武器が出来上がってるぞ」

 

 

子供のようにはしゃぎながら、ロックスは長細いケースから何かを取り出す。

それは一見すると、小さな棒状の物だった。

 

 

「これって………棒じゃない?」

 

「唯の棒じゃねェ。伸縮式の特殊警棒だ。海楼石仕込みの特注品だぞ?船に乗せてる職人に態々作らせたんだ…!これなら、剣と違ってまだ優しさがあるだろう?」

 

「結構高かったんじゃないの?」

 

「ハハハハハ…!大した額じゃねェ!金の心配なんざするな!代金は今後の働きで返せば問題ねェよ!………おっと!それだけじゃねェんだ。どちらかと言えば、こっちが本命だな」

 

 

どうやら一つだけではなかったらしい。

もう一つ大きなケースを取り出すと、ロックスは中身を出す。

 

 

「どうだ?これは作らせたものじゃねェが…以前叩き潰した海賊団の船に乗せられていた『大業物』の戦鎚さ…!俺が調べた所によると、そいつは『音を蓄積する特性』があるらしい。『集音鎚』というそのまんまな名前だ。多分だが、お前の『ジックジックの実』の力と併用すれば真価を発揮する筈だぜ」

 

 

「集音鎚………」

 

 

ロックスに手渡された戦鎚を見つめながら呟く響。

成る程、能力との相性も考えればこの武器は自分に向いているだろう。

 

 

「ありがとう、ロックス。大事に使うね。じゃあ、早速試しに………!」

 

「おい、待て。戦鎚を此処で振ったら「音鎚震!」………畜生、船室に穴が空いたじゃねェか。加減しろ、馬鹿野郎!」

 

「アハハハ………ごめんなさい」

 

 

能力によって生み出した音を少しだけ溜めて軽く放ったつもりだったが、破壊力が予想以上に高かったのか船室に穴が空く。

響は、空いた穴を見て頭を抱えるロックスに対して苦笑いを浮かべて誤魔化すのであった。

 

 

 

 

これ以降、北条響はロックスから貰った警棒と戦鎚を使って戦う事になる。

戦鎚を使う事は余りなかったが、やがて海軍や他の海賊からは音を使って戦う姿から『音奏』の異名をつけられる事になるのだが………それはまだ先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 




エレン………旧名セイレーン。
今話では、自分自身の罪と向き合い真の意味でプリキュアに覚醒した。
彼女のアホ毛を触ると音が鳴る。決してギャグではない。
エレンの心が揺らぐ事はないかと思われ。
精神攻撃耐性が爆上がりしました。
プリキュア状態での人獣形態を披露。
膂力ではプリキュア達の中で最強格確定。
今でもリンリンは少し苦手。
カイドウは情緒不安定だし、やっぱり少し苦手かも。
でも同じ動物系幻獣種なので後々絡みはあるかも知れない。


良かったな、エレン。君はようやく救われた。


ハミィ………エレンの覚醒への原動力。MVP。


北条響………過去にロックスに武器を貰っていた事が判明。
警棒は現在所持しているが、戦鎚は行方不明な模様。
戦鎚を使うとヤベー事になる。
セイレーンにエレンという名前を考えてあげた。
適当に思い付きで言ったとバレたらアレなので黙っている。


南野奏………準MVP。絶望しかけたエレンを叱咤し、立ち直らせた。
ラッキースプーンが、いよいよヤバい奴等の溜まり場と化した事に頭を悩ませている。


キュアミューズ………やっべ、何あの化け物集団。あの中に入るのは勇気が要るなぁ。どうしよう?ええい、ままよ!


金獅子のシキ………暫くの間、傷心状態となっていたが奏やセイレーンの覚悟を決めた在り方に、本人曰く胸を打たれて復活。
元来の野心家と海賊の誇りを取り戻した模様。
これから活躍するぞ!


トリオ・ザ・マイナー………裏切り者のエレンを粛正する為、精神攻撃によって崩壊一歩手前まで彼女を追い詰めるが、奏とハミィの言葉で覚醒したエレン基キュアビートにボコボコにされた。
バスドラは前話でカイドウに押し潰されていたが、ギャグ補正で無事だった模様。
大海賊達が揃った事で、マイナーランド側の勝ち目は0を突き抜けてマイナスになった。
泣いていい。
もうだめだ、おしまいだぁ………!


メフィスト………↑何を寝言言ってる!不貞腐れてる暇があったら戦え!
※因みに次話で登場予定。
四皇の洗礼を浴びます。
死ぬなよ?


ヒーリングチェスト………作者的には今回で出したかったが、尺の都合上断念。
次話で出る。
あまり寝てばかり居ると、カイドウの金棒で野球のボールみたいにかっ飛ばされるかも知れない。
頑張ってくれ。



次回から駆け足になるかも。
ヒーリングチェスト、メフィスト回を同時にする。
正味、ヒーリングチェストを手に入れる回は原作と変わりなしなので省きたい。決して書くのが面倒とかいう理由ではない。決して。
メフィスト回はミューズ加入回でもあるから、真面目にやる。
決着は直ぐつくけどね。
闇ファルセット?ノイズ?ああ、出るよ。勿論ね。

で、それが終わったら最終章突入だよ。

劇場版?DX3?フフフフフ!フッフッフッフッフッフ‼︎
ちゃんとやるよ。最高のタイミングでな!


ハハハハハ!








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ぷりぷり、とぅるんっ

うめぇよな、イカダガキ………。

作者の妄想シリーズ第10弾。


※タイトル名と内容は、一切関係ございません。


「おっはよー、アコちゃん。今日、暇かな?」

 

ある日曜日の朝。

調辺アコが住んでいる音吉の家に訪ねてきた北条響は、そう言ってニッコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

「こんな朝から何の用?私、お爺ちゃんの手伝いをしないといけないんだけど…」

 

「大丈夫!音吉さんには話を通してあるからさ。立ち話も何だし、ラッキースプーンに行かない?アコちゃんが、キュアミューズだって事も分かってるし。込み入る話は向こうでしよう」

 

 

サラっと、ミューズの正体はアコだと爆弾を投下する響。

アコは正体が見破られた事に内心動揺するが、何とか表情に出さずに取り繕った。

 

 

「キュアミューズ?一体、何の話?アンタの想像話に付き合ってる暇は「因みにニューゲート達にもアコちゃんの正体バレてるよ?」えっ⁉︎白ひげのお爺ちゃん達にも⁉︎そんな筈…だって完璧に変装してたのにバレる訳………あ!」

 

 

つい最近、アコ達と一緒に住むようになった白ひげ達にも正体がバレていると言われ、思わず余計な事を口走ってしまうアコ。

しまった…!と思い、口を閉ざすも時すでに遅し。

 

 

「えっと………まあ、そんな訳で。一緒に来てくれる?アコちゃんが、どうして正体隠してプリキュアをして居るのか気になってるし。何か理由があるんでしょ?」

 

「そ、それは………」

 

 

確かにアコには正体を隠す理由がある。

だが、それは深い事情があってのものだ。

もしその理由を知られれば、下手をすると大変な事になりかねない。

どうすれば良いかと悩むアコ。

 

 

「アコ、行ってくると良い。彼女達なら、アコの力になってくれるだろう」

 

「お爺ちゃん………」

 

 

いつの間か背後にいた音吉が、響と一緒に行く事を促す。

音吉は力の篭った眼差しで、響を見ると「アコを宜しく頼む」と言って家の中へと戻っていった。

 

 

「アコちゃん。どうする?無理強いはしないけど…」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

答えは、決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってラッキースプーン。

今日は休業日なのだが、屋外テラスでは複数の男女が机に積まれたカップケーキタワーを囲んで騒いでいた。

 

 

 

 

「ハ〜ハハハママママ!お茶会♪お茶会♪楽しいお茶会〜♪来ない奴等は皆殺し♪地獄のお茶会〜♪」

 

 

 

 

『ビッグマム』シャーロット・リンリン

 

 

懸賞金額43億8800万ベリー

 

 

 

 

「おい、ベイビーちゃん。この店に酒はねェのか⁉︎ケーキは美味ェが、それだけってのは些か物足りなくてな!ジハハハハ!」

 

 

 

 

金獅子のシキ

 

 

懸賞金額44億4900万ベリー

 

 

 

 

「ウォロロロ!おい、白ひげのジジイ!酒の飲み比べで勝負だ!断りはしねェよなァ⁉︎」

 

 

 

百獣のカイドウ

 

 

懸賞金額46億1110万ベリー

 

 

 

 

「グララララ!俺と酒で勝負だと?いい度胸だ、格の違いを見せてやろうじゃねェか…!」

 

 

 

『白ひげ』エドワード・ニューゲート

 

 

懸賞金額50億4600万ベリー

 

 

 

 

 

 

錚々たる大海賊達が集う魔鏡と化したラッキースプーン。

今日が休みの日で良かった…!と内心思いながら、南野奏は怪物達とケーキを食べていた。

 

 

「ケーキ屋に、お酒なんてある訳ないでしょう?甘酒なら、幾つかあったと思いますけど………」

 

「ジハハハハ!なら仕方ねェな!白ひげ、カイドウ!お前らだけで飲んでんじゃねェよ!酒なら俺の方が格上だ!」

 

 

酒はないと奏に言われたシキは笑いながら、飲み比べをしている白ひげとカイドウの元へと歩いて行った。

奏は溜め息を吐きながら、ケーキを運ぶのを手伝って貰っていた弟の奏太に部屋に戻っても良いと伝えようとして………その姿が見当たらない事に気付く。

 

 

「なあなあ!おっちゃん達って響ねーちゃんの知り合いなの?」

 

「ジハハハハ!ああ、その通りだ。昔、俺達は響と一緒の船に乗ってたんだ。あの頃はムカつく事も多々あったが、中々楽しくもあったぜ?船員同士の仲は最悪だったがな!」

 

「へー…!」

 

 

シキの語る海賊の話に夢中になる奏太。

奏としては海賊に憧れられては困るのと、あの面子に奏太を関わらせると色々厄介な事になりそうだと思った為に引き離しに掛かる。

 

 

「こら、奏太!この人達に変な事聞かないの!大人の話に首を突っ込まない!」

 

「えー、いーじゃんかこれくらい!ふーんだ!ねーちゃんのケチ!大体、ねーちゃんだって子供の癖に!」

 

「奏太っ!」

 

 

話を遮られたのが気に入らない奏太は、舌を出して「あっかんべー!」と言いながら外へ出て行ってしまう。

 

 

「おいおい、良いじゃねェかこれくらい。話した所で半信半疑にしかならねェよ」

 

「そう言う問題じゃないんです。奏太に変な話を吹き込まないで下さいね?」

 

「ジハハハハ!弟思いの姉を持つと苦労するな!なあ、カイドウ?」

 

「うるせェよ、金獅子!何で俺に言いやがる⁉︎ぶっ飛ばされてェのか⁉︎」

 

 

最早見慣れた怪物達の応酬。

奏は額に手を当てながら、溜め息を吐いた。

 

 

「奏、ケーキに乗せるフルーツなんだけど………ってどうしたのよ?」

 

 

店の扉が開き、エレンが顔を出す。

朝早くから今日の集いの為に奏のケーキ作りを手伝っていたエレンは、溜め息を吐いている奏を見て訝し気に問い掛けた。

 

 

「ああ、うん。何でもないわ。それで、ケーキのフルーツがどうしたの?」

 

「………?一応、言われた通りにしたんだけど、一度見て貰いたくて。それと、響とキュアミューズが今から此処に来るって電話があったわ」

 

「キュアミューズも?その内響に捕まるんじゃないかと思ってたけど、やっぱりこうなっちゃったか………。それにしても、アコちゃんがキュアミューズだっただなんて…予想外ね」

 

 

響に前もって、ミューズの正体を聞かされていた奏とエレン。

奏は今から響に連れられてくるキュアミューズ…調辺アコに同情しながら、溜息を吐く。

何せ今のラッキースプーンには、ヤバい奴等が勢揃いしている。

もし、何かあったら守ってあげないと………!と奏は決意して気合いを入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはよー皆『バッシャアン!』………は?」

 

 

アコと一緒にラッキースプーンの入り口の扉を勢いよく開けた響。

その頭上から、何かが降り注ぎ彼女の全身がビショビショに濡れる。

同時に虚脱感が身体中を駆け巡った。

何事かと思い、よく見てみるとそれは水のような液体。

近くの床には金盥が転がっている。

 

 

「ジハハハハ!引っ掛かりやがった!」

 

 

腹を抱えて笑っているシキ。

エレンは引きつった顔で眺め、奏はやれやれと頭を振っている。

 

 

「一つ聞きたいんだけど、これ何なの?」

 

「教えてやるよ!その液体は海水で、金盥にそれを入れて扉の上に仕掛けて置いたんだ。お前が何も知らずに入ってくると、金盥が落ちて全身ずぶ濡れって寸法だ。分かったか?中々面白いかったぜ、ジハハハハ!」

 

 

顔を俯けたまま問う響に、シキは尚も笑いながら答える。

 

 

「成る程成る程。………奏!」

 

「まあ、こうなりそうな予感はしてたけど………やり過ぎないでね、響」

 

「お、おい。何でお前らそんな物を取り出してんだ。今のはちょっとしたイタズラ「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!」」………マジかよ!」

 

 

ヤバそうな気配を感じ取ったシキは脱兎の如く背を向けて逃げる。

 

 

 

 

 

 

ま、待て!話せば分かる!

問答無用!プリキュア!ミュージックロンド×2‼︎

うおおおっ⁉︎危ねェだろうが!

プリキュア!パッショナートハーモニー‼︎

ギャアアアアッ⁉︎

 

 

「アホか、アイツらは………ったく。アコ、お前はああいう風にはなるんじゃねェぞ」

 

「う、うん………」 

 

 

プリキュアに変身した響と奏にボコられるシキを見ながら、呆れ混じりに呟く白ひげに、アコは何とも言えない顔をして頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう………シキもボコボコにしたし、漸く本題に入れるね」

 

「少しは加減しやがれってんだ!畜生、まだ顎が痛ェ………」

 

「自業自得だ、アホンダラ」

 

 

シキを奏とのタッグでぶちのめした響は、スッキリした笑顔を浮かべる。

一方、シキは顎を摩りながら文句を言うが、白ひげからそうなるのは当然だろうという指摘を受けて黙り込む。

 

 

「さて、アコちゃん。どうして、正体を隠しながらプリキュアをやっているのか…聞かせて貰っても良いかな?内容次第じゃ、私達にも何か協力してあげられる事もあるかも知れないしさ」

 

 

真剣な顔で、響はアコに問い掛ける。

勿論、響はアコがキュアミューズだということは当の昔から分かっている。

正体を隠している理由は、その気になれば強引かつ無理矢理にでも聞き出す事は出来た。

しかし、響はそれを決してしない。

そういう手段を響自身が好む性分では無い事が1つ。

もう1つは、明らかに何らかの事情を抱えていそうな相手には無理矢理聞き出すより、自分から言いたくなる…若しくは言わざるを得ない状況に持って行くのが一番良いと過去にロックスに教わったからだ。

まさか、こういう形で使う事になるとは響も思っていなかったが。

 

 

「……………」

 

 

アコは、どうすれば良いか分からなかった。

確かに、理由を話せば響達は協力してくれるだろう。

彼女達が力のみでマイナーランドを退けてきた訳で無い事は、かつて敵だったエレンがプリキュアとして仲間に加わっているのを見れば良く分かる。

助けを求めれば、手を差し伸べてくれるのは間違いない。

問題があるとすれば…………。

 

 

「ジハハハハ!どうした、ベイビーちゃん?折角、響が協力してやろうって言ってんのに黙っちまって!ええ⁉︎」

 

「ママママ!子供ってのはな、こうやって反抗期を迎える時があるのさ金獅子!ハ〜ハハハ!」

 

「お前と意見があうとは奇遇だな、リンリン。俺の息子にヤマトってのが居るんだが、いつもいつも反抗的で困ってんだ。オマケに直ぐ鬼ヶ島から出ようとしやがる。だから手首に嵌めた腕輪に爆弾仕込んで、逃げられねェようにしてんだが………!」

 

「アコの前で変な事ばっかり言うんじゃねェよ、ハナッタレ共が!次に妙な事言ったら沈めるぞ!」

 

 

この怪物達である。

アコにとって、白ひげのお爺ちゃんは良いとしても、この3人が問題なのだ。

とてもじゃないが話の通じる人間には見えない。

 

 

「アコちゃん?この変眉と見習いのバカとリンリンの事は放っといていいから。気にしなくて良いからね?」

 

 

誰が変眉だァ!と喚くシキを半ば無視しながら、響はそう言ってアコを椅子に座らせる。

アコが顔を上げると、自分を見下ろす怪物達が目に入った。

圧が半端ではない。

思わず逃げ出したくなるアコだったが、そんな彼女の心中を察した白ひげが声を掛ける。

 

 

「アコ…お前が嫌だってんなら無理に話す事はねェ。俺ァ、お前の意志を尊重するぜ。だが…もしも本当に困っていて、助けが必要だってんなら言えば良い。誰かに頼るのは、何も恥ずかしい事じゃねェ………」

 

「白ひげのお爺ちゃん………。うん、分かったよ」

 

 

白ひげの言葉に、アコは決心がついたのか大きく頷くと響達の方を向いて話し始める。

事の全ての始まり、そして自分が何故正体を隠しながらプリキュアをしているのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「メフィストが、アコちゃんのお父さん〜⁉︎」」」

 

 

響と奏、エレンの驚きの声がラッキースプーンに響く。

それもその筈、何と今まで自分達が戦ってきたマイナーランドの国王であるメフィストが、かつてはメイジャーランドの国王でありアコの実父であると言う事実が明かされたからだ。

 

 

「驚くのは当然だと思う。だけど、本当なの」

 

「って事は…アコちゃんはメイジャーランドのお姫様って事だよね⁉︎」

 

「そうよ。一応はね」

 

 

お姫様なのかという響の問い掛けに、アコは首肯して答えた。

それを見ていたエレンは突然畏まったように頭を下げる。

 

 

「ま、まままさか………姫様だったなんて!今までとんだご無礼を!」

 

「ちょ、ちょっと!そういうのは良いから!姫様って言っても、今は人間界に避難して来ている身だし、今まで通りに接してくれて構わないわ…」

 

 

アコはエレンに平伏するのをやめるように言うと、溜め息を吐く。

お姫様も色々と大変なんだなー…と、アコとエレンを見て響がそう思っていると、今度は奏が問い掛ける。

 

 

「アコちゃんは、どうして私達の世界に来たの?」

 

「メイジャーランドに居たら危険だから人間界に逃げなさいってママに言われて、一時的に逃げて来たの。こっちには、お爺ちゃん………皆の言う音吉さんが居てるから。お爺ちゃんも、昔はメイジャーランドの国王だったんだからね」

 

 

次々と投下される爆弾に驚きっ放しの響達。

音吉さんから漂う唯ならぬ雰囲気は、成る程そういう事だったのかと響達は納得した。

 

 

「でも分からないなあ。どうしてメフィストはアコちゃんやアフロディテ様を放って、マイナーランドの国王なんかに?しかも不幸のメロディを完成させようだなんて。一体、何があったの?」

 

「それは………ある時、パパがメイジャーランドの奥にある『魔響の森』へ行った事が原因なんじゃないかって私は思ってるの。実際、森から帰って来たパパはまるで別人みたいだった。何があったらあんなに優しかったパパが変わっちゃうのか………私にも分からない」

 

 

顔を俯けながら、今までの顛末を語るアコ。

幸せだったあの頃に戻りたい………そんな心情が簡単に読み取れるくらい、アコは悲しげに声を震わせていた。

響はそんなアコの姿を見て、何かを思ったのか傍に行くと優しく抱きしめる。

 

 

「ちょ、ちょっと………!」

 

「そういう事情があったんだね。話してくれてありがとう、アコちゃん」

 

 

急に抱き締められたアコは、顔を紅くしてワタワタと狼狽えた。

そして、響はアコから身体を離して真剣な眼差しで見据えながら問い掛ける。

 

 

「それで、アコちゃんはどうしたい?アコちゃん自身の意見を聞かせて貰えるかな」

 

「………私は、パパを元の優しかった頃のパパに戻したい。伝説の楽譜も取り戻して、昔みたいに音楽祭をして平和に暮らしたい。それだけよ。だから………その、私も一緒に……プリキュアとして…ううん…仲間になっても………良い…かな?」

 

 

辿々しく、普段のアコらしさを感じさせない程のか細い声色で言うアコ。

紡がれたアコの言葉に、響は奏とエレンを一度見すると小さく頷いて一斉に口を開いた。

 

 

 

 

「「「勿論‼︎」」」

 

 

 

 

かくして、スイートプリキュアの最後のメンバーが加わり物語は大きく動き始める。

 

 

 

 

『………響。聞こえますか?』

 

 

「ん?今、誰か私の事呼んだ?」

 

「どうしたの響?何か聞こえた?」

 

「うーん…?今確かに私を呼ぶ声が聞こえたんだけどなあ………」

 

 

 

 

 

それは、これから巻き起こる恐るべき巨大な戦いの幕開けでもあり。

全ての因縁、全ての悪、彼女達以外の全ての者達にとっての最終章の始まりでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュアミューズこと、調辺アコが仲間に加わってから早3日。

魔窟と化したラッキースプーンに、今日も今日とてヤベー奴等とプリキュアの皆が集まっていた。

 

 

「と言う訳で!第一回プリキュア会議を始めようと思います!」

 

「いや、プリキュア会議って何よ………」

 

 

唐突に謎の会議の開催を宣言する響を、呆れた眼差しで見ながら呟くアコ。

奏とエレンも同様の事を思ったのか、ウンウンと頷いている。

 

 

「アハハ!まあ、今のは冗談として。取り敢えず、やらなければならない重要な事をピックアップして行こうと思ってさ。マイナーランドもどんな手を打ってくるか分からないし、メフィスト…アコのお父さんも元に戻す方法も考えなくちゃいけないしね」

 

「ジハハハハ!お前にしちゃ、珍しく頭使って考えてんじゃねェか!」

 

「シキ、煩い。変眉を剃られたいの?」

 

 

時折茶々を入れてくるシキに応戦しながら、説明をする響。

因みに、アコの事をちゃん付け無しで呼んでいるのは本人の要望あってのものである。

 

 

「でも、元に戻すって具体的にどうするの?ネガトーンを倒す時みたいに、プリキュアの技で浄化する感じかしら?」

 

「正直な話、マイナーランドの場所さえ分かれば、リンリンとカイドウとシキとニューゲートの4人投げ込むだけで決着付きそうな気はするんだけどね。適当に暴れて貰って、その隙にメフィストを私達でボコボコにして浄化すれば万事解決………何だけど。それをしちゃうと、メイジャーランドも巻き込まれて滅びそうだし………ってどうしたの皆。冗談だって、冗談。それは最後の手段だから」

 

「そ、それだけはやめて。響が言うと冗談に聞こえないわ………」

 

 

響の恐ろしい提案に、エレンがプルプルと手を震わせながら言う。

ドン引きしているようだ。

 

 

「ま、まあとにかく!他に何か案のある人は居る?もしあるなら『響…聞こえますか?』………え?今、誰か私の事呼んだ?」

 

 

突然頭に響いてきた声に困惑しながら、響は皆に問い掛けるも全員が首を振って否定する。

 

 

「おっかしいなあ……3日くらい前にも、こんな事があった気がするんだけど」

 

「疲れてるんじゃない?ほら、昨日中間テストあったでしょ?」

 

 

奏がそう言い、響もそれかな?と見当を付ける。

確かに昨日のテストは強敵だった。

ロックス時代のどんな敵よりも強かった気がする。

 

 

「頭使ったし…やっぱり疲れてるのかな、私?でも『響…!もう時間がありません』………やっぱり聞こえる!幻聴じゃない!」

 

 

ガタッ!と椅子から立ち上がり叫び響。

 

 

「ちょっと、急に叫んでどうしたの?」

 

「ごめん、奏。少しだけ静かにして。間違いなく何か聞こえたんだよね、今」

 

 

そう言って響が立ち尽くしていると、再び声が聞こえて来た。

 

 

『響…!ようやく気付いてくれましたね』

 

「貴方は誰⁉︎何者なの⁉︎」

 

『落ち着いて下さい。私は、クレッシェンドトーン。今、貴方の心に話しかけています』

 

「クレッシェンドトーン………?」

 

 

聞き慣れない単語に、響は眉を顰める。

名前からしてフェアリートーンの仲間だろうか?

 

 

『私は訳あって、とある場所に封印されています。近い内に目覚めようとしている強大な闇の力に対抗するには、私の………ヒーリングチェストの力が必要不可欠です。早く…早く私を見つけるのです。残された時間は、限られています』

 

「闇の力?ヒーリングチェスト?一体どういう………」

 

『待っていますよ、響。一刻も早く私を………』

 

「ちょ、ちょっと待って………ああ、聞こえなくなっちゃった」

 

 

クレッシェンドトーンと名乗る者の声が消え、落胆する響。

今のは何だったのだろうか?

 

 

「ねぇ、エレンとアコ。それにハミィにも聞きたいんだけど、ヒーリングチェスト若しくはクレッシェンドトーンって単語を聞いた事ある?」

 

「う〜ん?私は聞いた事ないわね。マイナーランドにいた頃も、含めて知らないわ」

 

「ハミィも分かんないニャ。でも、名前からしてフェアリートーンの皆とも関係ありそうだニャ」

 

 

エレンとハミィは心当たりがないのか首を傾げる。

 

 

「私も聞いた事はあるけど、詳しい事は分からない。でも…もしかしたら、お爺ちゃんが何か知ってるかも!」

 

「そうだわ!音吉さんは、元々メイジャーランドの王様だったのよね。なら………!」

 

「じゃあ早速、音吉さんの所へ行こう!善は急げって言うしさ!」

 

 

アコがそう言い、響達も賛同する。

音吉さんなら、自分達が知らない事も沢山知ってるかも知れない。

一方、響達が居なくなる事を察したのか、白ひげがややの間を置いて口を開いた。

 

 

「気をつけて行けよ。こいつらの面倒は俺が見ておく」

 

「………前から思ってたけど、ロックスにいた頃より保護者が板に付いて来たよね、ニューゲート」

 

「馬鹿な事言ってねェで、さっさと行けってんだアホンダラァ!俺は保護者じゃねェ!」

 

 

こうして、響達4人は音吉の居る『調べの館』へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

〜調べの館にて〜

 

 

 

「クレッシェンドトーンに、ヒーリングチェスト…か。懐かしい名前を聞いたのう」

 

「知ってるんですか、音吉さん⁉︎」

 

「うむ。だが、それについては儂よりアフロディテが説明する方が分かりやすかろう。メイジャーランドに行って聞いてくると良い。どの道、ヒーリングチェストを手に入れるにはメイジャーランドに行かなければならぬからのう」

 

 

意味深な音吉の言葉に、何か引っかかる物を覚えた響達だったが、兎にも角にも音吉が準備してくれた虹色の道を伝い、メイジャーランドへと向かう。

 

 

その瞳に希望の光を宿しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。

 

 

 

 

 

響達を待つ、クレッシェンドトーンは言い知れぬ嫌な予感に身を震わせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(何なのでしょう、この胸騒ぎは………。私が感じる異質な気配。ノイズとも違う、この強大な闇の力は………全てを『支配』しようとするかのような恐ろしい力は一体…⁉︎)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

tips⑤『強化計画』

 

 

ある日の事。

今日も今日とて、怪物達が集うラッキースプーン。

その中で幸せそうにケーキを食べている響に、奏は意を決したようにグッ!と拳を握り締めて近づいていくと、意外な台詞を口にした。

 

 

「響、ちょっといい?」

 

「………?どうしたの、奏?」

 

「えっと!その、実は………私を鍛えて欲しいの!」

 

「えっ?」

 

 

奏から告げられた一言に、響は一瞬身体を硬直させる。

親友の口からそんな言葉が出てくるとは予想だにしていなかったからだ。

 

 

「な、何か変な物でも食べた?」

 

「失礼ね。私は真面目に言ってるの!」

 

 

響の言い草に、頬を膨らませる奏。

内心「怒った奏も可愛いなー」と思っていた響だったが、それを口に出すと機嫌を損ねてしまいそうなので、何とか喉元で押し留めた。

 

 

「まあ、別に良いけど………何で?鍛えなくたって、奏は強いじゃない。ネガトーンだって全然倒せてるし、プリキュアにもなれるんだから大丈夫だよ?」

 

「それじゃダメなの!変眉さんと初めて戦った時、私が力不足だったから響の足を引っ張っちゃったし………リンリンさんが来た時も、戦いは全部響に任せて私はケーキを作ってただけ。マイナーランドも今後どんな手を打ってくるか分からないし、その為には強くならなくちゃいけないって思ったのよ」

 

 

吐露された奏の胸中に、響は驚きを隠せない。

ただ、同時に奏らしいとも思っていた。

 

南野奏という人物は、真面目でしっかりしている上に面倒見も良く、優等生を絵に描いたような性格であるが、その胸の内には燃え上がるような激情と決して折れない芯の強さも秘めている。

激情の部分が表に出る事は滅多にないが、その一端は度々目にする事もある。

かつて、シキやメフィストにも臆する事なく啖呵を切ったのがその一例だろう。

 

それを思い出した響は、真剣な顔付きになると奏に向き直る。

 

 

「分かった。ただ、無理だけはしないでね。明日から早速始めるよ?」

 

「ありがとう、響!」

 

 

響の返答に、奏は喜色満面といった表情を浮かべる。

すると、2人の遣り取りを見ていたリンリンが面白い物を見たと言わんばかりに笑った。

 

 

「ママママ!響、お前が人に物を教える姿を見るのはロックス以来だねェ。おい、カイドウ!手伝ってやりな!」

 

「あァ⁉︎ふざけんじゃねェぞ、リンリン!何で俺がガキのママゴトに付き合わなきゃなんねェんだ!」

 

 

唐突に響を手伝ってやれと言われたカイドウは、苛立ちを露わにして怒鳴るが、リンリンが怯む筈もなく尚も笑みを浮かべながらカイドウに言う。

 

 

「マ〜ハハハハ!お前、そんな口を叩ける身分かい?おれにデカい借り(・・・・・)があるのを忘れた訳じゃねェよなァ、カイドウ?」

 

「……………!昔の話だ!その話を持ち出そうってんなら殺すぞ、リンリン!」

 

「いいや、一生の恩さ…!あの日、ロックスが滅んだ日!ゴッドバレーでおれがお前に、貴重な『ウオウオの実』の幻獣種をくれてやったんだ!恩は一生だぞ、カイドウ‼︎」

 

 

最も触れられたくない過去を持ち出され、カイドウは一瞬絶句するも殺意を交えながらリンリンを睨む。

その会話を聞いていた響は、珍しく本気で驚きながらリンリンに問い掛けた。

 

 

「カイドウ、それ本当なの?リンリンに『悪魔の実』を貰ったっていうのは?」

 

「チッ…………あァ、そうだ。認めたくねェが、事実だ」

 

 

カイドウは心底嫌そうに肯定し、響は絶句する。

それもそうだろう。

ロックス海賊団では、ある意味最も『唯我独尊』を地で行くリンリンが他人、それも当時見習いに過ぎなかったカイドウに希少な動物系幻獣種の実を無償で譲ったというのだから。

カイドウがリンリンから実を貰っていたという衝撃の事実に、白ひげやシキも目を丸くしてリンリンを見た。

 

 

「おいおい、そいつは何の冗談だ?『あの』リンリンに恩を売られたってのか?とんだ災難もあったもんだ、ジハハハハ!」

 

「カイドウの小僧、お前よりにもよってリンリンに借りを作っちまうとはなァ。同情するぜ、グララララ…!」

 

「黙れ!他人事だからと馬鹿にしやがって!ぶち殺されてェか⁉︎」

 

 

シキと白ひげの若干哀れむような物言いに、カイドウが青筋を立てながら金棒を持って立ち上がる。

流石に苛つきが限界に達したのだろう。

あるプリキュアの台詞を借りるなら『堪忍袋の緒が切れました!』とでもいう状況か。

 

 

「ママママ…!落ち着けよ、カイドウ!ここで暴れんのはおれが許さねェ。この店が潰れちまったら、ケーキが食えなくなっちまうからなァ!ハ〜ハハハ!」

 

「元はと言えば、お前が昔の話なんざ持ち出すからだろうが…!」

 

 

実に彼女らしい理由で、カイドウを止めるリンリン。

それに対して、カイドウは舌打ちをしながらズン!と持っていた金棒の先端を地面に叩きつけるに留めた。

 

 

「って言うか、リンリン。貴方、前にニューゲートがケーキを食べたと勘違いして暴れようとしてたじゃない。説得力皆無なんだけど………」

 

「あァ〜⁉︎細けェ事を気にすんじゃないよ!それでも元ロックスの船員かい⁉︎」

 

「いや、この話にロックス関係ねェだろ………」

 

 

響の指摘に、どこか的外れの答えを返すリンリン。

そして、その遣り取りを見ていたシキが呆れたように突っ込む。

今日も平常運転な怪物達の姿に、奏はやれやれとばかりに肩を竦めるのだった。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

 

 

 

 

「ってな訳で、『プリキュア強化計画』を始めようと思います!」

 

「おおー!(パチパチ)」

 

 

加音町にある山中にて、強化計画の開始を宣言する響。

奏はやる気に満ちた目で拍手を送る。

 

 

「いや、どういう事よ………」

 

 

若干困惑が入り混じった顔で呟くのは黒川エレン。

何故、彼女がここにいるかというと、響と奏に朝から連れられて来たからである。

勿論、理由の説明はない。

理不尽だ。

因みに黒川という苗字は、音吉さんが手配?してくれたらしく名乗っているとの事。

 

 

「朝から急に訪ねて来たかと思えば、山に行こうなんて………まあ良いけど。で、強化計画って具体的には何をするの?」

 

「具体的に言っちゃうと、2人には『覇気』を覚えて貰おうと思ってね」

 

「「『覇気』?」」

 

「うん。ほら、腕とか武器が黒くなる奴。こういうの」

 

 

『覇気』という単語に首を傾げる奏とエレンに、響は自分の腕を武装硬化させる。

 

 

「これは『覇気』っていうんだけど、使いこなせれば攻撃を予知したり固い物を砕いたりする事が出来る。もっと細かく言うと『覇気』は3つに分かれるんだけど、取り敢えず奏とエレンには『武装色』『見聞色』の覇気を教えるよ。向き不向きはあるかもしれないけど、頑張ってみよう!」

 

「覇気………それが響の使ってた力の正体って訳ね。成る程、ネガトーンじゃ勝てないのも納得だわ………」

 

 

合点がいったという風にエレンが呟き、奏もうんうんと頷く。

 

 

 

「という訳で。奏とエレンを鍛える為に、今回の強化計画に協力してくれる人達がいるから2人とも頑張ってね」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「は?」

 

 

 

響から告げられた一言に、2人は一瞬言葉を失う。

それと同時に、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 

 

「ったく、何で俺がこんな下らねェ事をしなきゃならねェんだ………!」

 

「ハ〜ハハハママママ!カップケーキ1000個の為だ、面倒だが引き受けてやるよ!」

 

「ジーハッハッハ!ケーキで引き受けるなんざ、実にお前らしいじゃねェかリンリン!」

 

「グララララ…!暴れ過ぎて山を崩すんじゃねェぞ、お前ら………!」

 

 

 

笑い声と共に現れたのは、最強の四皇(4人)

奏とエレンは、少しだけ後悔したとかしなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※因みに、こんな感じでした。

 

 

〜カイドウとエレンの場合〜

 

 

 

「あー…取り敢えず、人獣化してみろ」

 

「………これで良いの?」

 

「そうだ。んでもって、俺に殴りかかって来い。それを俺が受け止めて金棒で殴り返す。痛みを感じたくねェなら、必死で心で念じながら覇気を纏え。いいな?」

 

「いや、おかしいでしょ⁉︎………って危ないっ⁉︎殺す気だったわよね、今⁉︎」

 

「避けんじゃねェ!受け止めろ!」

 

「理不尽⁉︎」

 

 

 

結論:超実戦形式スパルタ理不尽教育。

 

 

 

 

〜リンリンと奏の場合〜

 

 

「ママママ…!奏、お前はどうも武装色が苦手みたいだねェ………!」

 

「う………教えて貰った通りにやってるのに。何故かしら?」

 

「だが、見聞色は呑み込みが早いじゃないか。見聞色は極めれば未来を見る事も出来るんだ。おれの息子のカタクリがそれなんだが………マハハハハ!懐かしいねェ!昔、ペロスペローやカタクリ達に覇気を教えてやった頃を思い出すよ!勢い余って殺しかけた事が何回かあったがな!ハ〜ハハハ!」

 

「は、はははは………(引きつった笑顔)」

 

 

 

結論:割と真面目に教えてくれるが、時折不穏ワードが飛び出して来て草も生えない。

 

 

 

 

 

〜響とシキと白ひげの場合〜

 

 

「ごめんね。鈍った勘を取り戻す為とはいえ、2人とも付き合わせちゃってさ」

 

「ジハハハハ!この俺が態々、相手してやるんだ。みっともねェ姿見せてくれるなよ?」

 

「グララララ!気にすんな、俺も最近身体が鈍ってた所だ!だが、やるってんなら覚悟しろ‼︎」

 

「じゃあ、遠慮なく!音塊(オンカイ)』‼︎

 

「こいつを喰らいな‼︎獅子威し “地巻き”‼︎

 

「まだまだ、お前にゃ負けねェぞ響!天地鳴動ォ‼︎

 

 

 

結論:災害

 

 

 

 

 




うめぇよな、イカダガキ………。



調辺アコ………劇場版において、エレンから『生意気な小娘』と陰口を叩かれた小学生。
実際生意気だから仕方ない。
その正体は、驚くなかれキュアミューズ。
正体を隠していた理由は、実父であるメフィストと表立って敵対したくなかったから(確かそうだった筈。間違ってたらスマン)。
変身後の決めポーズは、あざとさの塊。
やっぱりロリは最高だぜぇ‼︎

今話では、突然家に訪ねて来た響に正体を看破されビビった。
まあ、白ひげ達にも前からバレていたが。
ヤベー奴等に絡まれないかヒヤヒヤしている。
一応、メイジャーランドの王族なので、それに目を付けたリンリンに政略結婚の話とか持ちかけられそう。
頑張って生きろ。
因みに、アコちゃんも覇気を習わされます。
優秀な師匠が沢山いるから安心だね(リンリンとかカイドウとかシキとか白ひげとか響とか)笑!

漸く仲間に加わり、プリキュア側も役者が揃いました。



南野奏………覇気をリンリンから教えて貰いました。
武装色は苦手な様子。
見聞色の才能はあるようだが………?

ルフィですら2年かかったのに、習得早くね?という疑問がある方もいらっしゃるとは思いますが、それはホラ。
ご都合主義だよ。プリキュアではよくある事さ、多分。


黒川エレン………巻き込まれ枠。
カイドウの理不尽教育で覇気を教えて貰った模様。
頑張ってくれ。


北条響………アコちゃんをラッキースプーンへご招待した。
クレッシェンドトーンの声を聞き、ヒーリングチェストを探す為に皆と共にメイジャーランドへ。
奏から覇気を教えてと頼まれたので、基礎のみを教えた上で後は四皇達に丸投げした。
奏とエレンが覇気を習得している中、平和な加音町で鈍った戦いの勘を取り戻す為に、シキと白ひげ相手にスパーリングをしたようだ。


クレッシェンドトーン………響に声を届けた謎の妖精。はよヒーリングチェスト取りに来い。
強大な闇の力を感じ取り、現在ガクブル中。


メフィスト………前回登場させるとか嘘ついてごめん。
多分、次の次くらいかな?



次回はヒーリングチェスト回です。
お楽しみに!





ようやく、本作も佳境に入って来ました。
とは言え、まだまだこれからですがね笑
 
さて、完結していない状況でこんな事を言うのもどうかとは思うのだが、『ちょっと思いついたけど、まだ執筆するかは未定の作品(仮)』の発表をば。
 
 
 
①『光堕ちしたプリキュア達が巡り合ってわちゃわちゃする話』
 
タイトルは仮。
内容は、光堕ちプリキュア達が巡り合って世界を遊び歩くが、各地でトラブルに巻き込まれまくるドタバタコメディ。
ポンコツビート、天然スカーレット、空回り頑張る系パッション、大食いアムールなど、その他諸々の様々な光堕ちキャラを中心に描きたい。
最終的には世界を救う戦いになっていくかも。
 
「これが………ドリル‼︎良い!良いですわね!」
 
「ルルえも〜ん!何か未来の凄い道具はないの〜?」
 
「精一杯…飛ばすわよ!このレース、負けられないわ!賞金100万は逃せない………!」
 
「これがポルトガル料理………!(ゴクリ)」
 
↑※あくまで思い付きです。
 
 
②『ひかるのモンハン珍道中』
 
タイトルは仮。
内容は、スタプリの星奈ひかるがモンスターハンターワールドの世界に転移してしまい、ハンターとして駆け巡る話。
キラやば〜⭐︎と言って様々なモンスター、果ては古龍にまでスキンシップを取りに行く彼女に周りはハラハラ。
モンスター達には『何だ、この人間?』って困惑される。
古龍達とも仲良くなって学者先生達は頭を抱える。
導きの青い星から一目置かれる。
 
黒龍に目を付けられる。
 
新大陸ヤバーい。
 
 
③『ドラえもん ひかるの宇宙大冒険』
 
タイトルは仮。
まさかの国民的人気アニメ『ドラえもん』とのクロスオーバー。
内容としては、のび太が成長し役目を終えたドラえもんが未来に帰る途中、時空間の乱れに巻き込まれてしまい、スタプリの世界に転移してしまうというもの。
観星町のプラネタリウムにタイムマシンごと墜落してしまい、何やかんやで星奈ひかると関わる事に。
プリキュア達と一緒に、宇宙を巡る大冒険が始まるよ。
肝心な時にポケットからひみつ道具が出ないのはお約束。
 
ひかるに出会った際は、「喋る青いタヌキだ!キラやば〜⭐︎」と言われて「僕はタヌキじゃな〜い!」の流れになる。
アイドルに変装しているユニに惚れる。
都合よく、ひみつ道具を強請られてデレ〜!としながら貸すんじゃねぇかな。
 
 
④『あの日、あの時、彼に出会った』
 
オリ主のONE PIECE二次小説。
ロックスに拾われ、日々を過ごす内に親子のような関係に。
世界を支配すると言うロックスに、最後は歯向かって仲違いする。
ゴッドバレー事件が終わった後は、クロスオーバー作品になるかも。
 
 
⑤『プリキュアの世界に転生したから全プリキュアのおっぱいを揉むわ』
 
タイトルは超適当。
うん、マジでごめんね。
 
内容はタイトル名通り。
 
プリキュア世界に転生したオリ主が、プリキュアの子達のおっぱいを揉む為に全力を費やす話。
強キャラムーヴかましながら、ラスボス顔して色んなプリキュア達の前に立ちはだかるが、その実ただの変態。
 
決め台詞は「おっぱいに、良いも悪いもねェ!」
 
さあ、プリキュア達よ!
最恐の(笑)変態に、抗ってみよ笑!
 
実はこれを一番書きたいなんて言えない。
 
 
 


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ヒーリングチェストッ‼︎

作者の妄想シリーズ第11弾。



〜メイジャーランド〜

 

 

「へー…ここが、ハミィとエレンの故郷なんだ………!」

 

「その通りニャ!あの湖が、セイレーンと一緒に歌の練習をした場所で、あの山の麓が昔セイレーンが迷子になった場所ニャ〜♪」

 

「ちょ、ちょっとハミィ!そういう余計な事は言わなくて良いの!」

 

 

ヒーリングチェストを手に入れる為、メイジャーランドを訪れた響・奏・エレン・アコの4人。

初めて目にするメイジャーランドの景色に、響は物珍しそうに周りを見渡し、ハミィにしれっと過去の恥ずかしい話をバラされたエレンが顔を赤くしながら抗議する。

 

 

「もう、ハミィ。私達は遊びに来た訳じゃないのよ?フェアリートーンの皆も何だか元気が無いし、やる事が沢山あるんだからね?」

 

「あ、そうだったニャ。ニャプ〜♪」

 

「久しぶりにママに会える………♪」

 

 

メイジャーランドの主な場所を得意げに説明するハミィに、奏は苦笑しながら言い、アコは久しく会えていなかった母であり女王であるアフロディテに再会出来る事に内心喜んでいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、メイジャーランドへようこそ。歓迎します」

 

 

メイジャーランドに到着した響達を出迎える長身の女性。

彼女こそ、この国を治める女王にしてアコの実母であるアフロディテだ。

見ただけでも分かる気品と美しさに、アコとエレンを除く2人は思わず見惚れてしまう。

アコは久しぶりに母に会えたのが嬉しかったのか、思わず抱きついて喜ぶ。

 

 

「ママ!」

 

「アコ、久しぶりね。元気なようで何より。それにしても、貴方がキュアミューズだったなんて…知ったときは驚きました。皆さんも、アコを支えて下さってありがとう」

 

「い、いやそんな!お礼を言われるような程の事はしてないですよ!私達もアコちゃんには色々と助けて貰ったりしているので!あ、あははは……」

 

 

和かに笑いながら、感謝を口にするアフロディテ。

それに対して、響は手をブンブンと振って恐縮しながら笑って誤魔化した。

 

 

「さて、ハミィから事情は聞きました。ヒーリングチェストを求めて『魔響の森』へ取りに行くのだとか。ヒーリングチェストを手に入れれば、フェアリートーン達も回復するでしょう。………過去にも『魔響の森』へヒーリングチェストを求めて足を踏み入れた勇気ある者達が居ましたが、誰一人戻って来る事は叶いませんでした。でも、貴方達なら。伝説の戦士プリキュアであり、仲間との絆を信じている貴方達なら必ず闇の力を跳ね除け、ヒーリングチェストを手にする事が出来ると信じています」

 

「はい!必ず、ヒーリングチェストを手に入れて来ます!」

 

 

元気よく答える響にアフロディテも柔和な笑顔を浮かべる。

 

 

「実に頼もしいですね。では、今は動けないフェアリートーン達に代わって、一時的ではありますがプリキュアへと変化させましょう」

 

 

アフロディテがそう言って、腕を振るうと眩い光が響達を包み込み、光が収まると同時に、全員がプリキュアへと変身を遂げていた。

 

 

「凄い………フェアリートーン達が居なくても変身出来るなんて」

 

「あくまで一時的な物です。ですが、『魔響の森』へ行って帰ってくるまでの間なら持つ筈ですよ」

 

「ありがとうございます、アフロディテ様!………ところで。『魔響の森』って、どうやって行けば良いんですか?」

 

「メロディ………」

 

 

威勢良く言ってはみたものの、肝心の『魔響の森』への行き方が分からず首を傾げるメロディに、リズムは若干呆れたような表情で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、『魔響の森』の入り口………?」

 

「何だか不気味ね………」

 

 

アフロディテに案内され、『魔響の森』へと続く門へとやって来たメロディ達。

門の中は黒紫色に染まった空間が渦を巻き、如何にもな雰囲気を漂わせている。

 

 

「よし!じゃあ、行くとしますか!いざ、『魔響の森』へ!」

 

「ニャプニャプ〜!『魔響の森』へ、レッツゴー!ニャ〜!」

 

「メロディ!ハミィ!………ああもう。直ぐ突っ走っていっちゃうんだから!エレン、アコ!響達を追いかけましょう!」

 

 

一切の躊躇なく門の中へと飛び込んで行くメロディとハミィに、リズムは嘆息しながら門を潜り抜けていく。

 

 

「全く、落ち着きがないわね………」

 

「まあまあ。2人は何時もあんな感じですし………私達も行きましょう!」

 

 

足早に飛び込んで行った2人に対し、呆れたように呟くミューズ。

ビートは苦笑いを浮かべながら、ミューズと共に門を潜り抜け『魔響の森』へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜『魔響の森』〜

 

 

 

 

「ここが『魔響の森』…。随分、殺風景な場所だねー………」

 

 

『魔響の森』へ足を踏み入れた一行。

辺りには荒廃した大地と枯木の樹海が広がるのみで、ヒーリングチェストをどうやって探せばいいのか見当もつかなかった。

 

 

「ヒーリングチェストさーーーーん‼︎何処にいるのーーーー⁉︎」

 

 

能力によって増幅させた大声を出して叫ぶメロディだが、当然ながら返答はない。

 

 

「声でかっ………!そんな叫んだくらいで見つかるなら苦労しないわよ」

 

 

声量がかなり大きかったのか、ミューズがジト目で抗議しながら響を見る。

ごめんごめん、と謝るメロディ。

その時、何かの気配を感じ取ったリズムが険しい顔をしながら叫んだ。

 

 

 

「皆、気をつけて!何か来るわよ!」

 

 

 

奏が言うと同時に地面がゴゴゴッ‼︎と蠢き、モアイを模したかのような巨大な石像が現れる。

 

 

 

『フハハハハ!よく来たな、プリキュアよ!だが、お前達の力ではヒーリングチェストは取り返せな「威国‼︎」ゴバァッ⁉︎』

 

 

 

高らかに笑いながら現れた石像は、いつの間にかベルティエを取り出し構えていたメロディの威国をまともに喰らい、哀れにも地面に倒れ込んだ。

最早見慣れた光景にリズムは遠い目をし、ビートは額に手を当てながら天を仰ぎ、ミューズは改めて目の当たりにしたメロディのヤバさ加減に絶句する。

 

 

「いや、隙だらけだったものだからつい………。ベルティエで威国使ったのは初めてだけど中々いけるね」

 

 

アハハ、と笑いながらベルティエを武装色で染め上げて笑うメロディに石像は怒りに顔を震わせる。

 

 

『お、おのれプリキュアめ!だが調子に乗って居られるのも「音響砲‼︎」ブフゥ⁉︎す、少しは喋らせろ‼︎』

 

 

ハアハアと肩で息をしながら叫ぶ石像。

こんな奴等を相手にするとか聞いてない!と内心愚痴を漏らすも、何とか表情に出す事だけは避けた。

 

 

「この流れだと、貴方を倒せばヒーリングチェストが手に入る的な感じかな?悪いけど、直ぐに終わらさせて貰うよ!」

 

『フン!寝言をほざきおって!ならば、これを見るが良い!』

 

「ニャ、ニャプ〜!捕まったニャ〜!」

 

 

ニヤリ、と笑う石像の肩の上辺りにシャボン玉のような膜に捕らえられているハミィとフェアリートーン達が現れる。

 

 

「ハミィ⁉︎また捕まってる⁉︎」

 

 

まさかハミィが捕まっていたと思わなかったメロディ達は、僅かに動揺してしまう。

石像はその隙を逃さなかった。

 

 

『フハハハハ!隙を見せたな?最高純度の悪のノイズを喰らうがいいわ!』

 

 

何処からともなく現れた貝殻のような見た目の耳栓が、4人の両耳にピタリと貼りつく。

それは悪のノイズを流し込み、ノイズを聞いた者を悪に染め上げる恐るべき代物。

余程の精神力を持つ者でなければ抗う事すら出来ない凶悪な洗脳道具だ。

 

 

「ぐ………う………⁉︎」

 

「あ…………‼︎」

 

 

絶え間なく流される悪のノイズに、苦痛の声を漏らすメロディ達。

 

 

『フハハハハ!これで終わりだ、プリキュア‼︎』

 

 

勝利を確信し笑う石像。

そんな中、メロディは悪のノイズに耐えながらリズムに話しかけた。

 

 

「リズム…!聞こえる?大丈夫、私達なら乗り越えられる………!だから、決して諦めないで!」

 

「………!勿論よ、メロディ!私達の友情と絆は、誰にも破れないわ!」

 

「メロディとリズムは前向きよね…!だけど、確かに2人の言う通りよ!こんな所で立ち止まる訳には行かないわ!心のビートを止める事なんて、誰にも出来ないのよ!」

 

「私だって…!パパを元に戻すまで、諦める訳には行かない…!漸く、皆と仲間になれたんだもの!」

 

 

メロディの掛け声に呼応するように、リズムだけでなくビートやミューズも自らの思いを胸に、心を奮い立たせる。

 

 

 

 

 

「「「「私達は、決して屈したりなんかしない!友情、愛情!それが私達の力になるんだ‼︎」」」」

 

 

 

 

 

4人の叫びに応えるかのようにハーモニーパワーが高まり、ピシッ!と音を立てて耳に貼りついていた貝殻状の耳栓が粉々に砕け散る。

それを見た石像は、信じられない物を見るかのようにあからさまに動揺して見せた。

 

 

『ば…馬鹿な⁉︎あれ程の悪のノイズを喰らっておきながら、正気を保っているだと………⁉︎おのれぇ、プリキュアッ‼︎』

 

「さあ、覚悟してよね!貴方を倒し………え?あれは…?」

 

 

両手を武装硬化させ、石像に拳を叩き込もうとしたメロディは、何かに気がつくと空を見上げる。

よく見ると、其処にはメロディが何度か目にした事のある空間の裂け目のような物が存在していた。

そして、その裂け目から何かが飛び出してくる。

 

 

「あれは………まさか!」

 

 

メロディは思わず叫ぶ。

それは、メロディが元の世界に戻ってくる際に置き忘れてきた筈の物。

ロックス海賊団時代に愛用していたそれを目にして、メロディは顔を綻ばせる。

 

 

 

それは、一振りの戦鎚。

ロックス直々に貰い受けた『音奏』の異名が付く所以となった武器。

 

 

 

 

 

 

『大業物 集音鎚』

 

 

 

 

 

 

ヒュンヒュンと、空を切りながら落下する戦鎚を両手で掴むメロディ。

 

 

「また使えるとは思ってなかったけど………まあいいか。慣らしも兼ねて、アンタで試し打ちと行こうじゃない!」

 

 

そう言って、戦鎚を石像に向けたメロディは両手で柄を握り締め大きく振りかぶる。

ミシミシミシ…!と、莫大な力が戦鎚に集約されていく様に石像は本能的に恐れを抱いた。

 

 

『(ば、馬鹿な…⁉︎何だというのだ、この重圧感は………⁉︎何をする気かは知らんが、今直ぐ奴を始末せねば大変な事になる‼︎)フ、フン!そんな武器が増えたから何だと言うのだ‼︎さっさと消え失せろ‼︎』

 

 

戦鎚を構えるメロディに対し、石像は口元に禍々しい黒色の光を蓄えると一気に収束させ、戦鎚を構えている彼女に向かって放つ。

 

 

「メロディ、危な………⁉︎」

 

 

食らえばタダで済まないであろう攻撃に対し、リズムは咄嗟にメロディに向かって叫ぼうとして………それを止めた。

その理由は至極単純。

 

 

 

 

 

「穿いて響かせ鎚の音撃………‼︎」

 

 

 

 

 

バチバチバチッ‼︎と、赤黒い稲妻のような物がメロディの両手と戦鎚を駆け巡り、集まった其れ等が今にも放たれようとしているのを目にしたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「“音鼓(パンドラ)”‼︎」

 

 

 

 

『……………⁉︎』

 

 

 

 

 

ズアッ‼︎という大気を穿つような轟音と衝撃波が放たれ、迫りくる黒光の波を真正面から打ち砕く。

尋常ならざる光景に言葉を失う石像。

 

 

 

「「「「プリキュア!パッショナートハーモニー‼︎」」」」

 

 

 

彼が次に目にしたのは、自らに向かって迫りくるプリキュア達の浄化の光。

 

 

『ば………馬鹿…な!こんな事がある訳が………あっていい訳がない!お前は、お前達は何なのだ⁉︎プリキュアーーーーッ⁉︎』

 

 

そうして、石像は最後の最後に恐怖の混じった雄叫びを挙げながら光の奔流に呑まれ、欠片も残す事なく消滅するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は特に語るべくもない。

ヒーリングチェストを手に入れた響達は、疲弊していたフェアリートーン達をクレッシェンドトーンの力を借りて復活させ、意気揚々と人間界に帰還。

そしてクレッシェンドトーンと、調辺音吉両名の口から語られた立ち向かうべき敵………『ノイズ』の存在を知り、新たな戦いに備える事となる。

 

 

 

 

 

 

 

一方マイナーランド側はと言うと、未だ音符集めが捗らない事に業を煮やしたメフィストが再び人間界に行く事を宣言し、トリオ・ザ・マイナーを慌てさせていた。

 

 

「メ、メフィスト様が直接プリキュアと戦われるのですか?流石にそれは………!」

 

『煩い!元はと言えば、お前達が不甲斐ないからだろうがっ!不幸のメロディの完成を急がなければならんというのに、呑気に焼肉なんぞしおって!』

 

「や、焼肉は今の話と関係ない気が………」

 

 

叱責もなんのその、という風に七輪を使って焼肉を食べるトリオ・ザ・マイナーの姿に、メフィストは呆れと怒りを交えて怒鳴る。

 

 

『とにかくだ!お前達はマイナーランドで伝説の楽譜が奪われる事のないように見張っておけ!音符集めはこの俺がやる!分かったな⁉︎』

 

「「「り、了解です〜♪」」」

 

 

こうして、マイナーランド側は国王であるメフィスト自ら出陣する事となった。

そして………メフィストの行動が、この物語において大きな転回点となるのだが…それはまだ少し先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響達がヒーリングチェストを手に入れ、メイジャーランドから帰還してから数日が経過したある日。

いつも通りの平和な日常を謳歌する加音町の大通りを、見上げる程の巨体を震わせて歩く老婆が居た。

 

 

「ママママ…!何だかとっても良い匂いを感じるねェ〜♪」

 

 

老婆………『ビッグマム』シャーロット・リンリンは、クンクンと鼻をひくつかせながら上機嫌で呟く。

通りを行き交う人々が、普通の人間というには巨大過ぎるリンリンの姿を見て驚きに満ちた目をしながら眺めるが、そんな好奇の眼差しを気にする事もなく、何処からともなく漂ってきた甘い匂いを伝いながら歩き続ける。

 

 

「あれ………?リンリンさん?」

 

 

不意に声を掛けられたリンリン。

声の聞こえて来た方を見ると、其処には不思議そうに自身を見ている少年の姿が目に入った。

 

 

「ん〜?お前は奏の弟じゃないか。丁度良い、聞きたい事があるから教えなよ………!この甘くて美味しそうな匂いは何なんだい?」

 

「匂い………?ああ、今日は町の中心にある広場でスイーツフェスティバル?だっけかな、があるんだってさ。ウチの店も参加するからって、朝から大忙しだったんだよ。ねーちゃんのケーキ作りも手伝わされたし、大変だった…」

 

 

少年…南野奏太から、スイーツフェスティバルという単語を聞いたリンリンの目が見開かれ、怪しい光を帯びる。

 

 

「へェ………!スイーツフェスティバルだって?それはそれは実に楽しそうな祭りじゃないか!よし、案内しな!」

 

「ええ⁉︎まあ、良いけどさ………」

 

 

リンリンからの頼みに、若干渋々という雰囲気を漂わせながらもスイーツフェスティバルの会場へと連れて行く事を了承する奏太。

ぶっちゃけ、断るとヤバそうだからというのもあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?リンリンは何処に行ったの?」

 

 

今日も今日とて、怪物達が集まるラッキースプーン。

いつもなら必ずいるリンリンの姿がない事に違和感を覚えた響が、酒を飲んでいるカイドウに尋ねる。

 

 

「俺が知るか。あのババアなら、ちょっと前に『いい匂いがするねェ〜♪』とか言って何処かに行っちまったぞ」

 

 

興味無さげにカイドウは言うと、グビグビと酒を呷る。

 

 

「ジハハハハ!どうせ、その辺のお菓子の匂いでも嗅ぎつけたんだろ!直ぐに戻ってくるだろうし、放っておけばいいじゃねェか!」

 

「いい訳ないでしょ。あのリンリンだよ?何処かのお菓子屋か何かを襲って、店ごと食べてるかも知れないじゃない」

 

「………否定できねェな」

 

 

放っておけばいいと言うシキに対して、響が言い返すとシキは黙り込んでしまう。

お菓子は何処だと叫びながら、町を破壊するリンリンの姿が容易に予想出来るからだ。

 

 

「仕方ねェ。俺が探してくる」

 

「いいの、ニューゲート?本当に?」

 

「俺も直ぐに戻ってくると思って放っていたからな。どうせここで座ってても退屈なだけだ。道すがら探してくるぜ、グララララ…!」

 

 

リンリン探しに名乗り出た白ひげは、そう言うと町の方へと出かけて行く。

 

 

「まあ、ニューゲートが行ってくれるなら良いかな。私も奏の手伝いで忙しいし………シキ、カイドウ!私ももうすぐ奏達と一緒に出掛けるから、くれぐれも問題を起こさないでよね!」

 

「心配しなくても何もしやしねェよ。喧嘩売ってくるバカが居たら話は別だがな!ジハハハハ!」

 

「だから心配なのよ、変眉舵輪頭!」

 

「誰が変眉だァ‼︎舵輪だって好きで付けてる訳じゃねェって言ってんだろ‼︎」

 

 

いつものやり取りをシキと交わし、響はラッキースプーンの店内へと入って行く。

因みに今日は、スイーツフェスティバルが開催される日。

奏の実家であるラッキースプーンも当然ながら出店を出すとの事で、響・エレン・アコの3人もなし崩しで手伝う事になったのだ。

 

 

「響ー?そろそろ行くわよ?早く来てー!」

 

「ごめんごめん、今行くよ!あれ?エレンとアコちゃんは?」

 

「あの2人なら先に行ったわよ。ほら、早く!」

 

 

奏に急かされながらラッキースプーンを後にする響。

今日も一日慌しくなりそうだーーーーと思いながら奏と共にフェスティバル会場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マ〜マママハハハ!美味しそうなスイーツが沢山あるねェ!」

 

「そりゃ、スイーツフェスティバルだからなあ。んじゃ、俺は行くよ」

 

 

会場に並べられたスイーツ達を見て、目を輝かせるリンリン。

彼女の道案内に付き合わされた奏太は、さり気なくその場を去ろうとするもリンリンに呼び止められる。

 

 

「まあ待てよ!この場所を教えて貰った礼に、おれが、お前に何かお菓子を買ってやろうじゃないか!」

 

『(出た…!ママが10歳以下の子供に対して稀に見せる“マザーモード”だ!)』

 

 

傍らに居るプロメテウスが、久しぶりに見たというような顔をしながらリンリンを見る。

 

 

「いや、俺は別にそんな大した事してないし………」

 

「子供が遠慮なんかするんじゃないよ!マ〜ハハハハ!」

 

「じゃ、じゃあ少しだけなら………」

 

 

何だかんだでリンリンにお菓子を買って貰う流れになってしまった奏太。

姉にこんな所を見られたら面倒な事になりそうな気がしたが、まあいいかと思ってリンリンの言葉に甘える事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハ!何やら随分と楽しそうな事をしているな!その楽しみ、俺が不幸に変えてやろうではないか!」

 

 

町の中心部にある時計塔の屋上で、メフィストは眼下で幸せそうな催しをしている人々を見て邪悪な笑みを浮かべた。

幸いな事に、付近にプリキュアの気配はない。

今なら問題なく音符集めをしながら、人々を不幸に染め上げる事が出来るだろう。

その考えに至ったメフィストは、早速その辺に居た音符を近くにあるドラムに宿らせ、ネガトーンへと変化させた。

 

 

「出でよ、ネガトーーーーンッ‼︎」

 

「ネガトォォォーーーーーン‼︎」

 

 

メフィストによって生み出されたネガトーンは、その身から不幸になるノイズを響かせ始め、町の人々はネガトーンの発する音波によって次々と悲しみに包まれ倒れて行く。

 

 

「うわあああ〜ん!悲しいよぉ〜!」

 

「どうしたんだい、急に泣き出して?………おや〜?あれは…?」

 

 

ネガトーンの発する音波を受け、他の人と同じ様に泣き出して蹲る奏太。

突然の事に、リンリンは訝しげな顔で問い掛けるも奏太は泣いて蹲るばかりで反応がない。

不審に思ったリンリンが辺りを見渡すと、其処には何やら妙な音を垂れ流す珍妙な生き物とニヤついた顔で倒れる人々を眺めている赤毛の男の姿が目に入る。

 

 

「さあ、ネガトーン!その調子でどんどん他の奴等を不幸に「おい…!お前ェ…!」…⁉︎き、貴様は………‼︎」

 

 

意気揚々とネガトーンに指示を出していたメフィストだったが、急に背後から声を掛けられ振り返ると、其処には恐ろしい形相で見下ろす巨大な老婆が佇んでいた。

その老婆が、以前自分を押し潰した人物だという事に気付いたメフィスト。

咄嗟に背を向けて逃げようとするも、背後から伸びてきた巨大な腕に掴まれてしまう。

 

 

「逃げんじゃねェよ…!」

 

「や、やめろ!離せ!」

 

 

メフィストを鷲掴みにするリンリンは怒りの形相に染め上げる。

 

 

「奏太を泣かせた挙句、おれが楽しみにしていたスイーツフェスティバルまで台無しにしやがって…!無事に済むと思うなよォ‼︎」

 

 

そう言って、リンリンは頭上にいるゼウスに手を伸ばし………勢いよくメフィストへ振り下ろした。

 

 

「よ、寄せぇっ!やめ「“雷霆(ライテイ)”‼︎」ギャアアアア〜⁉︎」

 

 

ドカァンッ‼︎と雷を纏ったリンリンによる掌底がメフィストに直撃。

メフィストは堪らず悲鳴を上げて地面に突っ伏してしまうが、何気に耐久力だけはあるのか地面を這いずってでも逃げようとする。

 

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃっ⁉︎ネガトーン、俺を助けろぉっ‼︎」

 

「ネ、ネガァァァ‼︎」

 

 

メフィストの必死の叫びに、ネガトーンが果敢にもリンリンの前に立ちはだかるが………。

 

 

 

「“刃母(ハハ)()”‼︎」

 

 

 

「ネッ………⁉︎」

 

 

 

振り下ろされたリンリンの剣『ナポレオン』の一太刀で、無残にも斬り捨てられてしまう。

 

 

「こ、こんな筈では………⁉︎」

 

「ハ〜ハハハママママ!これで終わりだよォ!天上(ヘヴンリー)の…!」

 

 

最早万事休す。

リンリンの手に掴まれているプロメテウスがゴォ!と燃え広がり、メフィスト目掛けて今にも振り下ろされようとしたその時だった。

 

 

 

 

絶体絶命の危機に瀕したメフィストの前に、現れた少女が庇うように立ちはだかる。

 

 

 

「あァ………⁉︎」

 

「やめて!もう充分でしょう⁉︎」

 

「キュアミューズ………⁉︎いや、お前は…⁉︎」

 

 

少女ーーーー調辺アコこと、キュアミューズがメフィストを庇うように両手を広げる。

一方、メフィストは初めて目にしたミューズの素顔に激しく動揺してみせた。

 

そして、ミューズに続くようにしてプリキュアへと変身しているメロディ・リズム・ビートの3人が現れ、更にリンリンを探し回っていた白ひげも合流する。

 

 

「リンリン、流石にやり過ぎ。取り敢えず機嫌を直しなよ。ケーキが食べたいなら後で奏が作ってくれるしさ」

 

「全く…派手に暴れ過ぎだ。もう充分だろう」

 

「………ママママ!いいだろう!その代わり、おれが必ず満足できるくらいのケーキを寄越しなよ!」

 

 

メロディと白ひげの言葉にリンリンは暫し考えた後、笑いながらズシンズシン!と足音を響かせてラッキースプーンの方へと歩き去っていく。

 

 

「さて、後はメフィストだけど………」

 

 

チラ、とメロディは頭を抱えて蹲るメフィストを見る。

 

 

「ぐ…うあああああ⁉︎ア…コ⁉︎いや、そんな筈はない!俺に娘など……!」

 

「パパ!目を覚まして!あの頃の優しいパパに戻って!お願い‼︎」

 

 

ミューズがメフィストに駆け寄り懸命に声を掛けるが、メフィストはその手を振り払うと瞬間移動で姿を消してしまう。

 

 

 

「パパ………!」

 

 

 

父を思うミューズの声は、虚しさを孕んだまま虚空へと消えていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

tips⑥『白ひげと、新たなる出会い』

 

 

 

白ひげ………本名をエドワード・ニューゲート。

海を支配する四人の皇帝・『四皇』の一人として世界に君臨し続けた世界最強の男。

財宝や名声には興味を持たず、何よりも『家族』を重んじた伝説の海賊。

 

そんな彼は、今まさに激動の人生を終えようとしていた。

 

 

「う、撃てェ!この怪物をぶっ殺せェ〜‼︎」

 

 

かつての『息子』否、今は息子とは呼べる訳もない男が叫び、男を含めた海賊達が無数の銃弾を、刀傷を彼に浴びせ掛ける。

 

 

「(随分長く旅をした………!こんな俺について来てくれた事に礼を言う。さらばだ、息子達…!)」

 

 

薄れゆく意識の中で、彼が最後まで自分を慕ってついて来た『家族』の事を、そして次の新時代を担うであろう者達の事を思いながら長い人生に別れを告げた。

 

 

「し、死んでやがる…!立ったまま‼︎」

 

 

死してなお その体は屈することなく。

頭部半分を失うも 、敵を薙ぎ倒すその姿 まさに"怪物" 。

その身に受けた刀傷 実に二百六十と七太刀。

受けた銃弾 百と五十二発。

受けた砲弾四十と六発。

さりとて 、その誇り高き後ろ姿には…あるいはその海賊人生に

 

 

 

一切の"逃げ傷"なし!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お爺ちゃん…!この人は………⁉︎」

 

「ふむ………?」

 

 

 

………………………。

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

「ん………あァ…⁉︎」

 

 

鳥が鳴く声と太陽の暖かい日差しの感触で『白ひげ』は目を覚ました。

 

 

「………どういう状況だ、こいつは?俺ァ、確か………!」

 

 

ガバッ!と身体を起こし、困惑する白ひげ。

そうだ。

自分は確かにあの時死んだ筈。

何故、生きている?

それどころか、あの戦いで負った傷も全て消え失せているではないか。

様々な疑問が渦巻く脳内を落ち着かせながら、ゆっくりと身体を起こし、冷静に身の回りを確認する。

ここが何処かは皆目見当もつかないが、一応何かしらの建物である事は間違いない。

誰かが自分をここに運び込んで蘇生したのか?

いや、如何に海軍が保持する科学力でも死者を蘇らせる事など不可能だ。

仮に出来たとして、海賊である『白ひげ』を蘇らせる理由がない。

ならば、誰が何の目的で?

次々と湧いて出る疑問に苛まれているとキィ、と小さな音がして部屋の扉が開く。

 

 

「……………⁉︎」

 

 

扉を開けて現れたのは、眼鏡を掛けた年端もいかない少女だった。

白ひげが目を覚ましていると思わなかったのか、目を大きく見開き固まっている。

暫しの沈黙が流れ、ややあって白ひげが静かに問い掛ける。

 

 

「おい…此処は何処だ………?」

 

「……………‼︎」

 

 

話しかけられた少女は、ビクッ!と身体を震わせると扉を開けたまま何処かへ走り去っていく。

 

 

「参ったな………」

 

 

頭を掻きながら、溜息を吐く白ひげ。

この後、調辺音吉と名乗る老人が部屋を訪れ、音吉との会話を交わした白ひげは自分の身に起こった事に更に困惑する事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「成る程のう。世界政府、海軍、四皇、海賊王、ひとつなぎの大秘宝……。お主が只者ではないとは薄々思ってはいたが………まさか、別世界から訪れていたとはな」

 

「俺だって半信半疑なんだ。これが悪い夢ならまだ良かったんだが、紛れもない現実だってんだからタチが悪ぃ」

 

 

苦虫を噛み潰したような顔で言う白ひげ。

別世界に転移してしまう等、あまりに荒唐無稽な話ではある。

事実、白ひげ自身まだ信じられないのだ。

実際に、この世界の地図を音吉に見せて貰った際は軽く目眩を起こしそうになったくらいだ。

 

 

「しかし、よくこんな話を信じてくれたな。普通なら狂人扱いされるか、下らない与太話だと言われると思っていたんだが」

 

「ふふ…何、儂もお主と似たようなものだからのう。まあ、儂の場合は少々事情が異なるが………」

 

「そうなのか?なら、あの娘もお前と同じ…」

 

「うむ。あの子は儂の孫じゃ。名前はアコ。儂とあの子はメイジャーランドという別の世界から来ておる」

 

 

まさか自分以外にも別世界から来ている人物が居るとは…それも、目の前にいる音吉と自分の様子を見に来た娘がそうであると思っていなかった白ひげは内心で驚く。

 

 

「して、お主はこれからどうするつもりじゃ?」

 

「どうすると言われてもなァ。元の世界に戻る事も出来ねェし、まあ適当に海に出てから考えるさ、グララララ…!」

 

「そうか………。ならば、一つ提案があるのじゃが…どうかね?」

 

「提案………?」

 

 

音吉の含みを持たせた言い方に、白ひげは怪訝そうな顔をする。

 

 

「うむ…。実は、儂にも色々と複雑な事情があってな」

 

「………何か荒事でも抱えてるのか?」

 

 

問い掛ける白ひげに、音吉は話し始める。

伝説の楽譜、マイナーランド、騒動の全ての元凶たるノイズ。

古より伝わる戦士プリキュア。

そして、孫娘のアコがメイジャーランドの王女であるという事も。

 

 

「成る程なァ。お前も中々にややこしい事情を抱えているのは分かった。それで、俺にどうしろってんだ?」

 

「プリキュアの事は話したな?実は、アコがそのプリキュアなのだ」

 

「あの娘が?伝説の戦士とやらには見えねェが………」

 

 

プリキュアというものがどれ程の強さかは分からないが、あの年端もいかない娘がそうであると言われ、半ば信じられないといった風に呟く白ひげ。

 

 

「そこでお主に頼みがある。これから先、アコは苦しい戦いに身を置く事になるだろう。もし、あの子が困っていたら少しでも良い。助けてやってはくれんか?勝手な頼みだというのは重々承知しておる。もし引き受けてくれるなら、暫くの間この家で過ごして貰っても構わんが…」

 

「そいつは構わねェが………いいのか?俺みてェな素性の分からねェ…それも、海賊を招き入れちまってもよ」

 

「問題ない。儂も悪人と善人を見分ける事くらいは出来る。お主からは邪悪な意志などは感じられんし…構わんよ」

 

 

音吉はそう言って白ひげを優しげな瞳で見る。

その目に宿る確かな意志を感じ取った白ひげは少しの間を置いてから口を開いた。

 

 

「………分かった。その頼み、引き受けようじゃねェか」

 

「引き受けてくれるのかね?すまんが、宜しく頼む」

 

「グララララ…!ああ、任せておけ。俺ァ『白ひげ』だァ…!」

 

 

こうして、数奇な出会いを経た『白ひげ』は再び『世界最強の男』と言われた力を振るう事となる。

因みに、この世界に来た白ひげが最初に梃子摺ったのが、自分を警戒して中々近寄って来ないアコとの関係を構築する事であったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

tips⑦『東刹那』

 

 

ある日の夜。

加音町を見下ろす事が出来る高台の上で、適当な場所に腰を下ろした黒川エレンは、ラブギターロッドを抱えて静かに音を弾き鳴らしていた。

 

 

「今日は良い星空ね………」

 

 

自分以外誰もいないその場所で、エレンは1人呟きながら空を見上げる。

 

 

 

『爪弾くは魂の調べ!キュアビート!』

 

 

 

ついこの間の事だというのに、未だ実感が湧かない。

マイナーランドの歌姫として数多くの人々を不幸に貶めて来た自分がプリキュアになるなど、誰が予想出来ただろう?

実際、これは本当は甘い夢なのではないかと思う自分が居る。

プリキュアとして覚醒し、過去に犯した罪から目を逸らさず向き合いながら生きていく事を決意したエレン。

しかし、だからと言って罪が消える訳でも許された訳でもない。

 

 

「………考えていても仕方ない、か」

 

 

そう呟き、再びギターを弾き鳴らすエレン。

その時だった。

 

 

 

「こんばんわ。とても良い夜ね」

 

 

「誰⁉︎」

 

 

突然、背後から何者かによって話しかけられたエレンは咄嗟にその場から飛び退いて身構えながら、己の身に宿る悪魔の実の力を引き出し右手から伸びる銀爪を向けて睨み付けた。

エレンが向ける視線の先。

其処には1人の少女が佇んでいた。

 

 

 

「ごめんなさい、驚かせるつもりは無かったの」

 

 

 

そう言って、ふわりと笑う少女。

 

 

「質問の答えになっていないわよ。貴方は、誰なの?」

 

「落ち着いて。私は貴方の敵じゃないわ。私は…せつな。『東せつな』よ。宜しくね」

 

 

敵意のない笑みを向ける『東せつな』と名乗る少女。

怪しい人物ではあるが、取り敢えず敵ではなさそうだ。

そう思ったエレンは、一先ず銀爪を引っ込め様子を見る事にした。

 

 

「今日は良い夜ね。星空が綺麗。貴方も、そう思わない?」

 

「まあ…ね。それは同意するけど、そんな事を言う為に私に話しかけた訳じゃないでしょう?」

 

 

言外に、目的を話せと言うエレンに『東せつな』は微笑みながら語りかける。

 

 

「………貴方、今悩んでるんじゃない?」

 

「え?」

 

 

自身の心を見透かされたかのような問い掛けに、エレンは思わず呆然とした顔で彼女を見つめた。

せつなの紅い瞳が、星空に照らされ煌めいている。

その眼には何が写っているのだろうか。 

 

 

「そうね。確かに私は悩んでる。でもこれは、答えのない悩みよ。考えても仕方がないって分かってるし、だからと言って忘れたり目を背けて良いものではないわ………」

 

 

エレンは頭を振りながら、何とも言えない顔をしながら言う。

深い後悔と苦悩が其処彼処に滲む言葉に何かを思ったのか、せつなは両手を後ろ手に組みながらポツリと囁くように語り始めた。

 

 

「昔…ある所に1人の女の子がいたの」

 

「………?」

 

「その女の子は、ある国家に所属していて、己の主たる指導者に絶対の忠誠を誓っていた。世界は絶対的意志の元に、管理統制されて然るべきとの考えに一切の疑問を抱く事なく主の命令に従い続け、関係のない人々を巻き込み不幸へと導いて行った。そんなある日、その女の子はある人物に出会った。その子は些細なことで幸せを手に入れたと言っては、はしゃいで喜んで、いつも笑っていた。女の子は何故かその子の事が無性に気になり始め、友達のフリをして距離を縮めて行ったの。そして彼女はだんだん、その子に魅かれていった」

 

 

 

 

淡々と静かに語るせつな。

何故だか、エレンは気が付けばその話に聴き入ってしまっていた。

 

 

 

 

「女の子は、その子を羨ましいと思った。何故なら、自分にないものを…自分が心の底で望んでいたものを、全て持っていたから。彼女にとって、その子の在り方は余りにも眩し過ぎるものだった」

 

 

「……………」

 

 

 

その話を聞いたエレンは不思議な感覚に満たされているのを自覚した。

今の話は…そう、まるで自分とハミィに近しいものを孕んでいるようであったからだ。

 

 

「過程は省くけど…その女の子は自らの犯した過ちに気が付き、向き合いながら生き続ける事になった。かつて、敵対した………自らが羨み同時に魅かれた女の子と共に」

 

 

「………何が言いたいの?」

 

 

「人は何度でもやり直す事が出来る…という事よ」

 

 

「‼︎」

 

 

エレンは目を見開き、激しく動揺した。

これまでの自分の行いを思い出し、歯を噛みしめる。

分かってはいた。

分かってはいたのだ。

プリキュアとして覚醒した時、バスドラ達に向けて放った言葉は決して嘘偽りではない。

だが、同時に罪を犯し続けた自分がやり直す事など許されるべきではないのではないかとも心の片隅で思っていた。

 

 

「1つだけ覚えておいて。今の貴方は決して一人じゃない筈。罪を悔い、背負い続ける貴方を信じて支えてくれる友達や家族が居る。それだけは忘れちゃ駄目よ。私は、その果てに今ここにいる」

 

 

「そ、それって………!」

 

 

「私も貴方と同じ。でも、やり直す事は出来る。他ならない私自身がそうであったように(・・・・・・・・・)

 

 

せつなはそう言うと、穏やかな目をしたままクルリと一回りして見せる。

次の瞬間、せつなの身体が光に包まれたかと思うと、赤を基調とした服に身を包んだ桃色髪の少女が佇んでいた。

 

 

「嘘…!貴方も、プリキュア………⁉︎」

 

「また会いましょう、キュアビート(・・・・・・)。貴方なりの精一杯で…頑張ってね」

 

 

刹那、そう言うと彼女の姿が一瞬にして消える。

まるで初めから、其処に誰も居なかったかのように。

 

 

 

 

「………言われなくてもやってやるわよ。私なりの精一杯で…ね」

 

 

 

 

エレンは、せつなが立っていた場所に向けて言うと、ゆっくりとした足取りでその場から去っていく。

自分を待っていてくれる友の元へと。

 

 

ふと、立ち止まりエレンは星空を見上げる。

見上げた空は、相も変わらず眩い煌きを放ち続けていた。

 

 

 




北条響………ロックス時代のメインウェポン『集音鎚』を手に入れた。
ヒーリングチェストも手に入れ、物語はとうとう佳境に。
 
 
南野奏………今回は余り出番なし。次回に期待かな。
 
 
黒川エレン………tips⑥にて、東せつなと出会っていた事が判明。
彼女との出会いを経て、決意を新たにしたようだ。
今回は余り出番なし。次回に期待。
 
 
調辺アコ………久方ぶりに母親であるアフロディテと再会し、ウキウキしていた。
『魔響の森』でのメロディの暴れっぷりを見て、絶句していた。
ヒーリングチェストを手に入れ、人間界に舞い戻った後は響の覇気トレーニングに付き合わされた模様。
今話では、父であるメフィストがリンリンにボコられているのを見て思わず庇った。
何とかメフィストを説得しようと声を掛けるも、逃げられてしまったので親子の和解は次回に持ち越し。
頑張れよ、姫様。
 
 
 
ビッグマム………奏太に対し、マザーモード発動。
メフィストによって、スイーツフェスティバルを台無しされた事に激怒しボコボコにした。
メフィストは不運としか言いようがない。
このババア暴れ過ぎな。
ステージギミックボスかよ、お前は。
 
 
白ひげ………tips⑥にて、スイプリ世界に来てからの経緯が明らかに。
アコちゃんの警戒を解くのには苦戦した模様。
世界最強の男すら苦戦させる幼女とは一体何ぞや?
まあ、あんなデカイおっさんが現れたらビビるわな。
 
 
メフィスト………リンリンにボコボコにされた不幸な人。
アコちゃんの父親。
キュアミューズに変身しているアコを目にした事で、記憶の混濁を起こした模様。
親子の和解は次回に持ち越し。
 
 
 
 
東せつな………サプライズ登場。フレッシュプリキュアに登場するキュアパッションと同一人物。
tips⑦にて、悩むエレンに自らの経験を話し彼女の背中を押した。
加音町に何故来ていたのかは謎。
多分偶々遊びに来てたんだろうな。
口癖は『精一杯、頑張るわ!』
 
実は貴重な黒タイツ枠プリキュアであり、プリキュア初の光堕ちプリキュアでもある。
フレプリ以前も光堕ちキャラは登場していたが、光堕ち後にプリキュア化したのは彼女が初。
 
名前が印象的。
東せつな…切ないとも、刹那とも言える彼女の在り方が表された名前だよなあ。
 
玩具として発売されたパッションハープの売り上げが悪かった事を口にしてはいけない………おっと、誰か来たようだ。
 
 
 
 
 
今回の所感。
 
かなり駆け足気味になった感は否めないかな。
ヒーリングチェスト回も、響に音鎚使わせたかったら書いたようなもんだし。
メフィスト回、次回に持ち越したが多分アッサリ終わるんじゃないかな。
 
それと次回から…正確には次次回から最終章に入ります。
 
プリキュア、ノイズ、集うヤバい奴達がどのような結末を迎えるのかお楽しみに。
 
 
 
 
DX3…?次回を見れば分かるさ。
 


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ROCKS

作者の妄想シリーズ第12弾。

※今回は、怒涛の展開となります。
目まぐるしく状況が変わりますので、お気をつけ下さい。


巡り合わせというものは、分からない。

本来なら出会う筈もない者達が一堂に集まるなど、奇跡的な偶然でもなければ有り得ないだろう。

 

 

しかし。

 

 

 

 

それでも巡り合ってしまう事を………『宿命』と呼ぶのかも知れない。

 

 

 

 

 

故にーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

「もう。なぎさが寝坊するから遅れちゃったじゃない」

 

「ごめんごめん!あり得ない事に、目覚ましが壊れちゃってたからさ。あははは…」

 

「まあまあ………落ち着いて下さい、二人とも。折角ですし、楽しみましょう?」

 

 

 

 

 

 

 

「この日の為にスイーツを1週間我慢して来た…!今日もお腹は絶好調ナリ〜!」

 

「1週間は我慢の内に入るのかしら……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついに来ました、加音町!今日は美味しいスイーツを沢山食べるよ〜!けって〜い!」

 

「のぞみ、はしゃぎすぎ………」

 

「でも、気持ちは分かりますよ?何せ日本中から集められたスイーツが食べられますから………はっ!思い付いたわ!お菓子作りで修行に来た女の子が、歳の離れたケーキ職人の青年と恋に落ちるラブロマンス…!」

 

「こまちの小説語りが始まったわね………」

 

「こまちさんらしくて良いじゃないですか♪」

 

「慌てなくてもスイーツは逃げないわ。だから気をつけて歩き「いった〜い!何でこんな所に石が落ちてるの〜⁉︎」………はぁ、言ってる傍から。のぞみ、大丈夫?」

 

 

 

 

 

 

 

「いい天気だね!今日は皆でスイーツ食べて、幸せゲットだよ!急いで行くよ!美希たん、ブッキー、せつなー!」

 

「ラブったら、よっぽど楽しみにしてたのね」

 

「ラブちゃんらしいね♪」

 

「ふふふ………(そう言えば…前に会ったあの子は元気にしてるのかしら?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらほら、もうすぐ加音町に着くよ!」

 

「え、えりか〜!待って下さいよぉ!」

 

「もう………落ち着きがないんだから」

 

「まあ、気持ちは分からなくもないけどね。僕も楽しみだなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュアと呼ばれる少女達が、加音町で偶々開催されていた『スイーツフェスティバル』に集まったのも、決してそれは偶然では無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…ぐ、うあああああ!ハア、ハア………‼︎」

 

「メフィスト様⁉︎ご無事ですか⁉︎」

 

 

不幸にもリンリンにボコボコにされ、音符も集められなかったメフィスト。

命からがら、マイナーランドへ逃げ帰ってきたメフィストは苦しそうに喘ぐ。

苦しむ主を見かねたバスドラが声を掛けるが、今はそれに答える余裕も無さそうであった。

彼は覚束ない足取りで玉座に座り込むと、痛む頭を押さえて苦しげに呻く。

 

 

「(そうだ…!俺は確か、魔響の森へヒーリングチェストを取り戻しに行ったのだ!だが、その時何があったのか全く覚えていない…!)」

 

 

メフィストの脳裏に、断片的な記憶が蘇る。

魔響の森、ヒーリングチェスト、アフロディテ、アコ………。

 

 

「(アコ…!そうだ、何故今まで忘れていた⁉︎自分の娘の事を、何故…⁉︎)ぐ………⁉︎」

 

 

忘れていた事実を思い出し、記憶を取り戻しかけたメフィスト。

しかし、両耳に貼りついた貝殻状の耳栓から強烈な悪のノイズが流れ込み、意識が塗り潰されていく。

 

 

「やめろ、やめてくれ!うおああああああああああああ⁉︎」

 

 

メフィストの意識は闇に呑まれ、奈落の底へと堕ちていく。

そして、それと同時に彼の身体が急激に肥大化。

リンリンやカイドウに並ぶ巨体に変貌したメフィストは、咆哮のような雄叫びを挙げると、そのまま人間界へと飛び出して行ってしまう。

 

 

「メフィスト様⁉︎一体、何が起こって………?」

 

「どうしますか、バスドラ?追った方がいいんですかね?」

 

 

トリオ・ザ・マイナーの2人は呆然とメフィストが去っていった方を眺め、途方に暮れる。

しかし、最後の1人であるファルセットだけは違った。

 

 

「………チッ!使えない奴だ。全く、お前達2人よりはマシだと思っていたんだがな」

 

 

普段の大人しそうな雰囲気から打って変わって、荒々しく粗暴な口調で悪態を吐くファルセットに、バスドラとバリトンは呆気に取られてしまう。

 

 

「ファルセット?どうし「黙れ!使えないクズが…‼︎」な………ぐわああああ⁉︎」

 

 

ファルセットの変わりように、思わず声を掛けたバスドラ。

しかしそれすらも気に入らなかったのか、ファルセットが腕を一振りすると上空から飛来した電撃がバスドラを襲う。

 

 

「まあいい。だが、あのプリキュアどもが厄介なのは事実。ならば、メフィストには存分に哀れなピエロとして踊り狂って貰おう。そして…奴等が油断している隙に音符を全て奪えば、真の意味でノイズ様が蘇り………我々の勝利は確実になるだろう」

 

 

そう言って、ファルセットは眼前に鎮座する巨大な石版を見つめながらニヤリと邪悪に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、響達はメフィストによって一度中断されたスイーツフェスティバルを楽しんでいた。

 

 

「元気だしなよ、アコちゃん。メフィストには逃げられちゃったけど、会う機会は必ずある筈だからさ。元はと言えば『ノイズ』ってのが原因なんだしね。ここで悩んで居ても解決しないし、今は楽しもう?」

 

「……………うん」

 

 

メフィストを説得する事が出来なかった事に、アコは悲しげな表情で弱々しく頷く。

アコを何とか元気付けようと色々と声を掛けるが、返ってくる言葉には覇気が無い。

仕方ないといえば、仕方ないのだが。

 

 

「(全くもう…アコちゃんをこんな顔にさせるなんて。正気に戻ったら武装色パンチ1発は覚悟して貰わないとね)」

 

 

周りが聞いていたら全力で止められるであろう愚痴を内心で漏らす響。

何とかアコちゃんを元気付けられないものかと思案していると、遠くから奏とエレンが近づいてくるのが見えた。

その腕には何やら箱のようなものが抱えられていて、2人はアコに近寄り優しい声色で話しかける。

 

 

「アコちゃん。スイーツ持って来たから、一緒に食べよう?」

 

「姫様、元気を出して下さい。ほら、このドーナツなんて如何ですか?」

 

「うん………ありがとう」

 

 

アコの顔に僅かではあるが笑顔が戻った。

沈んだ表情を浮かべていたアコが漸く見せたその笑顔に、響達は安堵する。

 

 

「あれ?奏、私の分は無いの?」

 

「心配しなくても、ほら。ちゃんとあるわ」

 

「やったー!奏大好き!」

 

「はいはい。あんまり食べ過ぎないようにね」

 

 

目を輝かせて抱きつく響に、奏は苦笑しながら箱に入っているケーキやお菓子を取り出していく。

そして、皆で食べようとしたその時………それは現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウ………ウガアアアアアアアアアア‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

何処からともなく、咆哮を挙げながら巨大な体躯の男が突如として現れる。

その男は、他でもないメフィストその人であった。

目は血走り、一目で正気ではないと感じさせる理性なき瞳が加音町の人々へと向く。

メフィストは口を開けると、禍々しい悪のノイズを発し人々を次々と悲しみと絶望の渦へと貶め始めた。

 

 

「嘘………⁉︎またメフィスト⁉︎さっき帰ったばかりじゃない!」

 

「それより、何か見た目変わってない?あんなに大きかったっけ?リンリンやカイドウといい勝負だわ………」

 

 

本日二度目のメフィスト来襲に奏は驚き、響は呑気に見た目の変化を指摘する。

 

 

 

「パパ………⁉︎」

 

「っ!姫様、危険です⁉︎」

 

 

 

変わり果てた父親の姿を見たアコが、血相を変えながらエレンの制止を振り切って駆け出して行く。

 

 

 

「パパ!やめて、正気に戻って‼︎」

 

 

 

「ウグウウウウ…!パパ…だと⁉︎俺に娘など、おらんわぁ‼︎オアアアア‼︎」

 

 

 

「………っ⁉︎そんな………‼︎」

 

 

 

駆け寄ったアコの必死の呼び掛けにも、メフィストは否定しながら咆哮する。

悪のノイズに犯され、正気でない状態だと頭では理解していても、父から自身の存在自体を否定されたアコは顔を蒼白に染めながら力無く地面に座り込んでしまった。

そして、そんな隙を逃すようなメフィストではない。

 

 

「まずは貴様からだ…!消え去るがいい‼︎」

 

 

「あ………!」

 

 

巨大化したメフィストの豪腕が、呆然と見上げるアコの頭上へと振り下ろされる。

絶体絶命。

まさか、父親の手で自分は死ぬのだろうか?

襲いくる『死』に、アコは目を閉じて俯く事しか出来なかった。

 

 

「…………?」

 

 

だが、いつまで経っても『死』どころか痛みも何もやって来ない。

不思議に思い、恐る恐る目を開ける。

 

 

「……………」

 

 

「何…………⁉︎」

 

 

目を開けた先には、振り下ろされたメフィストの拳を武装硬化した片手で、受け止めている響の姿があった。

 

 

「全く…!操られてるからって、実の娘に手を出す父親がいるかっての!」

 

 

武装硬化され、黒く染まった響の拳がメフィストの腹に思い切り食い込む。

響の拳をまともに食らったメフィストは、身体をくの字に曲げながら近くの建物へと吹き飛び突っ込んで行く。

 

 

「ふうっ!さあアコちゃん、プリキュアに変身するよ」

 

「え………?」

 

「メフィストを、お父さんを元に戻すんでしょう?」

 

「………!うん!」

 

 

響は一息吐くと、アコの方を向くとプリキュアへの変身を促した。

アコは一瞬呆気に取られるも、すぐに頷いて立ち上がる。

 

 

「姫様!私も手伝います!」

 

「私も、アコちゃんに協力するわ。お父さんを必ず取り戻しましょう!気合いのレシピ、見せてあげるわ!」

 

「皆………!ありがとう………!」

 

 

エレンと奏もそう言ってアコの隣に並び立ち、4人はキュアモジューレを取り出してプリキュアへと変身する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!」」」」

 

 

 

 

 

   

 

 

 

4人の姿が光に包まれ、変化していく。

そして光が収まると、全員が名乗りを上げる。

 

 

 

 

 

 

 

「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」

 

 

「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」

 

 

「爪弾くは魂の調べ! キュアビート!」

 

 

「爪弾くは女神の調べ! キュアミューズ!」

 

 

 

 

 

「「「「届け!皆の組曲!スイートプリキュア!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

戦いの幕が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いはやはりというか、圧倒的であった。

プリキュアとしての力に加えて、覇気を大なり小なり差はあれど、扱える4人。

その内の2人…メロディとビートに関しては悪魔の実の能力をも保持している。

故に、優位にメフィストとの戦いを進めていく。

だが、今回に関してはメフィストを倒す事が目的でない為に、やり過ぎてはいけないという制約はあるが。

 

 

「ぐぬ…グアアアアア!」

 

 

ゴバアッ!と、メフィストの口からメロディ達目掛けて黒光の光線が放たれる。

 

 

 

「ビートバリア‼︎」

 

 

 

放たれた光線に対し、ビートがラブギターロッドを鳴らして展開したバリアで防ぐ。

すると、遠距離攻撃は無駄だと悟ったのかメフィストは距離を詰めると、巨大な体躯を生かした近接戦へと切り替えて襲い掛かって来た。

1人ずつ倒すつもりなのか、メフィストは標的をリズムに絞ると彼女目掛けて拳を振り抜く。

巨体から繰り出される拳による純粋な暴力に、リズムは動じる事なく最小限の動きで躱し続けていく。 

 

 

「(リンリンさんから教わった見聞色の覇気…成る程、こういう感覚なのね)」

 

 

以前、響やリンリンから覇気の使い方を教わっていたリズム。

武装色は終ぞ苦手なままであったが、その分『見聞色』は未熟ながらもそれなりに扱えている。

繰り返される攻防の果てに、とうとうメフィストの方が根負けしたのか動きを止めた。

その隙を突いて、ミューズがメフィストへと近付くが、それを見逃す程彼も甘くはない。

近付いたミューズを踏み潰そうと足を振り上げるが………

 

 

 

「ビートブラスト‼︎」

 

 

音響砲(ハイパーボイス)‼︎」

 

 

 

ビートが放った炎を纏う音符の弾幕と、追撃とばかりにメロディが放つ強烈な音の衝撃波を食らった事でバランスを崩し、たたらを踏む羽目になってしまった。

 

 

「おのれ…!小癪なプリキュア共め!」

 

 

メロディ達に翻弄され、怒りを滲ませるメフィスト。

するとその時、メフィストの眼前に光が降り注ぎ、1人の女性が現れた。

 

 

「貴方………!もうやめて!」

 

 

「お前は………アフロ…ディテ⁉︎」

 

 

現れた女性は、メイジャーランドの女王でありミューズの母でもあり…メフィストの伴侶であるアフロディテだった。

突然姿を現したアフロディテに、メフィストは動揺を隠せない。

そして、それと同時にメフィストの頭の中に封じられていた記憶が再び蘇る。

 

 

「グ………‼︎オオオオオオオオオオ⁉︎」

 

 

頭を抱え、巨体を揺らしながらフラフラと歩き回るメフィスト。

そして、その隙を逃さないのがメロディだった。

彼女は素早くミューズの元へ駆け寄り、ミューズ自身が為すべき事を告げる。

 

 

「ミューズ………ううん、アコちゃん。今こそメフィストに、アコちゃんの気持ちを思いっきりぶつけて!私やリズム、エレンの声じゃメフィストには届かない。あの人を取り戻せるとしたら、アコちゃんだけだ!」

 

 

「メロディ………!うん、任せて!必ずパパを取り戻してみせるから!」

 

 

メロディの言葉に、アコは大きく頷き返してそう言うとメフィスト目掛けて走って行く。

その足取りには迷いも躊躇いも恐怖も哀しみもない。

全ては家族を取り戻す為。

希望の光だけが、今のミューズに宿っていた。

 

 

 

 

「パパ…!私の全てを受け止めて!」

 

 

 

 

ミューズは勢い良く飛び上がると、光輝く拳を構えてメフィストを見据える。

 

 

 

 

 

 

輝く女神の降せし光槌(ミューズ・マエストロ)‼︎」

 

 

 

 

 

 

ミューズの渾身の一撃は、吸い込まれるようにしてメフィストの身体に突き刺さり。

 

 

 

 

 

 

 

光と轟音が、辺り一帯を揺らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メフィストは、夢を見ていた。

アコやアフロディテと共に過ごす平和な日々。

何故、こんな事になってしまったのだろう?

甘い算段で、魔響の森に足を踏み入れてしまったからか?

それとも、闇の力に呑まれてしまった己が未熟だったからなのか?

 

 

答えは出ない。

 

 

 

いや………今はそんな事などどうでも良い。

己の望みはたった一つだ。

 

 

 

 

「……パ!……きて!」

 

 

願わくばーーーーあの日々をもう一度………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ‼︎」

 

 

「はっ⁉︎私は、何を…⁉︎」

 

 

意識が戻る。

真っ先に視界に入ったのは最愛の娘の顔。

 

 

「アコ…!」

 

「………っ!」

 

 

涙を溜めた娘が声にならない叫びを上げて、己の身体にしがみつく。

そっと手を出して頭を撫でると、更に強く抱き締められた。

 

 

「すまなかった、アコ。心配を掛けてしまったな………」

 

「心配………したもん!したに決まってるじゃない!パパのバカ!もう知らないんだからあ!」

 

 

漸く訪れた親子の再会と和解。

ミューズは再び戻った家族の絆に、喜びと幸せを噛み締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は虚を突かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クックック…!油断したな、プリキュアども…!」

 

 

 

 

「「「「⁉︎」」」」

 

 

 

 

 

 

何処からともなく、顔の右半分を烏のような仮面で覆った男…トリオ・ザ・マイナーの1人であったファルセットが現れる。

 

 

「アンタは………ファルセット⁉︎何だか雰囲気が………⁉︎」

 

 

「フン!俺の事など、どうでも良いだろう?これを見ろ!」

 

 

ファルセットの変貌ぶりに、メロディが驚いたように呟く。

一方のファルセットは、つまらなさそうにメロディ達を一瞥すると後ろ手に隠していた『ある物』を取り出した。

 

 

「どうだ…!貴様らが集めた音符は、全て回収し楽譜に収めてやったぞ?」

 

 

ファルセットが取り出した物、それは『伝説の楽譜』だった。

しかも、何故か音符が全て収まっている。

 

 

「どうして…⁉︎音符はフェアリートーン達が持っている筈よ⁉︎どうやって奪ったの⁉︎」

 

「馬鹿め!貴様らがメフィストと戦っている隙に、全て奪わせて貰っただけの事だ!我が主………ノイズ様の手によってな‼︎」

 

「ピィィィーーーー‼︎」

 

 

リズムの問いに答えるかのように、一羽の小鳥が甲高く鳴いてファルセットの肩に止まる。

見かけこそ、普通の鳥ではあるが、内から生じる禍々しい気配は正に邪悪のそれを醸し出していた。

 

 

「ノイズ………ですって⁉︎まさか………‼︎」

 

「ニャニャ⁉︎本当ニャ!フェアリートーンの皆の中にあった筈の音符が全部盗られちゃってるニャ⁉︎」

 

「いつの間に奪われたドド…⁉︎」

 

 

フェアリートーン達を掴み、中を見たハミィが驚きの声を挙げる。

当のフェアリートーン達も、いつの間にか消えている音符に困惑を隠せないようだ。

 

 

「嘘でしょ………⁉︎じゃあ本当に、あの小鳥がノイズだって言うの…⁉︎」

 

 

リズムとビートが驚いたようにノイズと思しき小鳥を見つめ、ミューズは不安そうに拳を握り締め、メロディは黙したままノイズとファルセットを見据えていた。

 

 

「クックック!そうだ!予め、俺が不完全ではあるが『不幸のメロディ』を歌って封印されていたノイズ様を復活させたのだ!そして、今!音符が揃い準備が整った………と言いたいが、肝心のト音記号がないのだよ。だが、俺は運が良い。ト音記号は目の前にあるのだからな!」

 

「どう言う事………⁉︎」

 

 

ニヤリ、と邪悪な笑みを浮かべてメロディ達を眺めるファルセット。

訝し気にビートが問い掛けると、ファルセットは小馬鹿にするような口調で淡々と語る。

 

 

「分からないか?お前達プリキュアが持っているキュアモジューレ………それが、楽譜に使うト音記号なのだ!さあ、大人しくそれを渡すがいい!」

 

「………渡すと思う?」

 

「渡すとも!お前達は必ず、自分から俺にキュアモジューレを渡す事になるのだ!………これを見ろ!」

 

 

ファルセットは勝ち誇ったかのような表情で、自身の背後を指差す。

其処には、虚ろな目でメロディ達を見る加音町の人々が立っていた。

 

 

「その人達に何をしたの⁉︎」

 

「何、ほんの少しばかり洗脳させて貰っただけだ。言っておくが、妙な真似はしない方が良いぞ?これ以上は言わなくても理解出来るな?さあ、キュアモジューレを渡して貰おうか!」

 

 

ファルセットがクイ、と手を動かすと操られている人々がゆっくりとした足取りでメロディ達に近づいていく。

 

 

「(覇王色で気絶…は駄目か。それで皆の洗脳が解けるとは限らないしリスクが高すぎる。かと言って、キュアモジューレを渡せばノイズが………!)」

 

 

心の中で迷うメロディ。

皆の身の安全と引き換えにしてでもノイズが復活するのを阻止すべきか否か。

 

 

「………メロディ。私は、貴方の判断を尊重するわ」

 

「リズム………?どうして…」

 

「長い付き合いだもの、考えてる事くらいは分かるわよ。多分、どちらを選んでも正しいと私は思う。それに、ノイズが復活したとしても………大丈夫よ、今の私達なら!」

 

 

迷うメロディの背中を押すかのように、リズムは優し気にそう言うと微笑む。

そしてリズムに続くように、ビートとミューズも口を開いた。

 

 

「迷うなんて、アンタらしくないわ。キュアモジューレを渡した後、ボコボコにしてやればいいのよ。今まで通りにね!」

 

「笑い事じゃないわよ、ビート。全く………!まあでも、そうね。私が見てきた貴方達なら…どんな事になったとしても何とかなるわよ、きっと」

 

「皆………!」

 

 

皆、それぞれが自身の思いの丈をメロディに伝える。

彼女達の顔には一点の曇りもない。

すると、メロディ達の遣り取りが気に食わないとでも言いたげに、ファルセットは鼻を鳴らすとキュアモジューレを渡すよう詰め寄った。

 

 

「フン!話し合いは終わりか?さっさと寄越せ!」

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

4人は無言でキュアモジューレを投げ渡し、ファルセットは満足そうに笑う。

 

 

「フハハハハッ!どれだけ強かろうと、人質を取ってしまえば簡単なものだ!まさか、これ程早くノイズ様を復活させられるとは思わなかったからな!そういう意味では感謝するぞ、プリキュア!遂に、遂にノイズ様の復活だ‼︎」

 

 

モジューレの姿がト音記号に変換され、楽譜の中へと収まっていく。

それと同時にメロディ達の変身も解け、元の姿に戻る。

それはつまり、とうとう『伝説の楽譜』が完成した事を意味していた。

後は完成した楽譜を使って『不幸のメロディ』を歌うだけ。

ファルセットは高らかに笑いながら、自らの背後に巨大な烏の石版のような物を出現させ、『不幸のメロディ』を歌い出す。

その禍々しい歌声に、耳を押さえながら顔を顰める響達。

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

「グオオオオオォーーーーーーーーーーーーッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

石版が粉々に砕け散り、その中から溢れ出た闇の力がファルセットの肩に止まっている小鳥…ノイズを包み込むと、瞬く間に巨大な鳥竜の姿へと変化した。

完全体として復活したノイズが雄叫びを挙げる。

 

 

『………長かった、長かったぞ!フハハハハ!』

 

「ああ、ノイズ様!復活おめでとうございます!このファルセット、貴方様に生涯をかけて仕えましょう!さあ、今こそ世界を不幸と絶望の闇に突き落とそうではありませんか‼︎」

 

 

 

 

 

 

「何という事じゃ…!ノイズが復活してしまうとは………!」

 

「音吉さん!ここは危ないですから、アフロディテ様達を連れて逃げて下さい!」

 

「むう…!だが、しかし………!」

 

 

復活したノイズの邪悪な力を感じ取ったのか、駆けつけて来た音吉が険しい顔をしながらノイズを見上げて呟く。

響がこの場を離れるよう促すが、それでも音吉はノイズから目を離そうとしない。

やはり、ノイズが目覚めてしまったという事実に少なからずショックを受けているからだろう。

 

 

 

 

そんな音吉達を嘲笑うかのように、ノイズは邪悪に顔を歪める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フン…!さて、ならば早速世界から音を消し………⁉︎』

 

 

「ノイズ様?如何され………⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

突如として、ノイズの言葉が途切れる。

異変に気付いたファルセットがノイズの方を振り返ると。

 

 

 

「ハハハハハ…!」

 

 

 

 

「は………?の、イズ様………?」

 

 

 

 

 

ノイズの背中から、胴を突き破るように何かが生えている。

よく見ると、それは黒い腕のようだった。

 

 

 

『あ……バ…馬鹿なっ………⁉︎俺の力が、奪われていく…だと…⁉︎』

 

 

苦悶の声を挙げるノイズ。

有り得ない事に、その身に宿している闇の力が瞬く間に吸い取られていく。

 

 

「あ、あ………あ!ノイズ…様⁉︎」

 

 

何が起こったのか理解出来ず、呆然と力を吸われていく主を見上げるファルセット。

 

そして、フラフラと力を全て吸い取られ体毛が白くなったノイズだったものが、力なく地面に落ちていく。

それを一瞥することも無く、ノイズを一瞬で無力化した『逆立つ髪をうねらせた男』が狂喜と歓喜を交えた瞳で響を見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、北条響…!いや、それとも…こう言った方がいいか⁉︎キュアメロディ!ハーッハハハハハハハハハハ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

聞こえたその声に、北条響の瞳が大きく見開かれる。

それは聞こえる筈のない声。

『あの島』で、その人生に終わりを告げた男の声。

しかし、聞き間違いでは断じてない。

彼の声を忘れた事など一度もないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「ロックス……………⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

ロックス海賊団・船長

 

 

 

『海の魔物』

 

 

 

ロックス・D・ジーベック

 

 

懸賞金額55億4890万ベリー

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ…!始めようじゃねェか!俺達の俺達による俺達の為の『支配』をよォ‼︎」

 

 

 

 

 

 

ロックスはそう言うと凶悪な笑みを浮かべ、今度はエレンに視線を向けた。

 

 

「ハハハハハ!また会ったな、セイレーン!」

 

「アンタは…あの時の⁉︎」

 

「覚えていてくれて嬉しいぜ。その様子じゃ、俺が渡した『悪魔の実』は役に立ってるみたいだな………!」

 

「……………っ!」

 

 

かつて、エレンがプリキュアとなる前に出会った男。

あの時の得体の知れない恐怖感を彼女は覚えている。

まるで、この世の全てを『支配』するかのような禍々しい気配。

それを思い出し、エレンは思わず後退った。

 

 

「………質問に答えて、ロックス。どうして貴方がこの世界にいるの?それと目的は何?」

 

「月並みな質問だ。まあ答える分には構わねェが…おっと、少し待て」

 

 

険しい顔で問い掛ける響に答えようとしたロックスは、視界の端から飛んできた何かを、片手に握っているカトラスで弾き飛ばす。

飛んできたそれは、黒く光る鞭だった。

鞭を放った人物………ファルセットは、怒りに顔を染め上げロックスに迫る。

 

 

「ハハハハハ…!今は響と話してるんだ…!割り込むのは無粋ってもんだろう………?」

 

「貴様アアアアアア!よくも、よくもノイズ様をーーーーッ‼︎」

 

 

シュンッ!と振り抜かれた鞭が、唸りを上げてロックスを襲う。

 

だが………。

 

 

 

 

 

「ア……………!」

 

 

 

 

届かない。

ロックスの放つ圧倒的な『覇王色』の前に、呆気なく地面に倒れ伏すファルセット。

 

 

「この程度で倒れるとはなァ。だが、お前みてェな俗物でも多少は役に立ったぜ?おかげで、更に力を手に入れる事が出来たからな…!」

 

 

白眼を剥いて気絶するファルセットを見下ろしながら、邪悪に笑うロックス。

 

 

「響の質問に対する答えだが…ニューゲート達やお前と同じさ。最も、俺の場合は少々異なるがな…!この『ブラックホール(・・・・・・・)とやらの力(・・・・・)も中々面白ェ…!」

 

「一体何の話をしてるの、ロックス?」

 

「お前には関係のない話だ。さて、2つ目の質問だったか?これについては一々聞かずとも分かってるだろう?」

 

 

ニヤリ、と邪悪な笑みを尚も崩さないロックスに、響の顔つきが険しくなる。

確かに聞くまでもない。

 

今も昔も、ロックス・D・ジーベックが掲げる目的など1つしか存在しないのだから。

 

 

 

 

 

 

「北条響!もう一度、俺と来い!俺は『世界の王』になる!欲しい物、叶えたい物…!共に来るなら全てをくれてやる!俺と共に、世界を手に入れようじゃねェか!ああ、そうとも!こいつは…『儲け話』さ‼︎」

 

 

 

 

 

 

あの時と同じ様に。

ロックスは再び堂々と響を勧誘する。

そして響は、その勧誘を………。

 

 

 

「断る‼︎」

 

 

 

躊躇う事なく、一蹴する。

 

 

 

 

「ほう………⁉︎俺の『儲け話』を蹴るのか?それが何を意味するか…分からねェ訳じゃねェよなァ⁉︎」

 

 

「アンタに、この世界は支配させない!だから、その誘いは『お断り』よ‼︎」

 

 

 

明確な拒絶の言葉に、ロックスの笑みが深くなる。

まるで、最初からその答えを待っていたとでも言わんばかりに。

 

 

 

「ハハハハハ…!よく言うぜ。『あの世界』にいた頃は、俺の『野望』に手を貸していた癖に…!自分のエゴを貫くつもりか?全くもって勝手な奴だ!だが、それで良いのさ!自分勝手で我儘で『欲』に忠実なのが『海賊』だからな‼︎」

 

 

「……………‼︎」

 

 

「ハハハハハ!まあ、こうなりゃ仕方ねェ!当初の予定通りにやらせて貰おうじゃねェか!役者も揃い踏みと来てるようだからな…!」

 

 

「っ!どういう事?」

 

 

 

ロックスの意味深な台詞に、響が訝しげに眉を顰める。

そして、その台詞の意味は直ぐに分かった。

 

 

暗雲広がる空が、光輝いたかと思うと大量の何かーーーーよく見ると妖精だ…が降って来る。

それに紛れるようにして、複数人の少女達も同様にその場に落下して来た。

 

 

「もう、何なのよ〜!急にデザトリアンみたいなのが襲ってくるし、変な裂け目に呑まれたかと思ったら空に投げ出されるし!」

 

「ま、マリン!大丈夫ですか?」

 

「私は大丈夫!それよりサンシャインとムーンライトは?」

 

「私なら無事だよ」

 

「私も問題ないわ。それよりも………!」

 

 

何処かで見たような服装に身を包んだ少女達が、不思議そうに辺りを見渡す。

他にも、彼女達以外にも似たような服装を見に纏った少女達が其処かしこに立っていた。

少女達もまた、不思議そうに辺りを見渡している。

 

 

「嘘………!もしかして、あの子達プリキュア …なの⁉︎」

 

「こんなに大勢いたのね………」

 

「(あの子…!前に夜の丘で会ったプリキュア………⁉︎)」

 

「でも、これだけプリキュアが居れば心強いわね………」

 

 

自分達以外にもプリキュアが、それも数多くいた事に驚く響達。

すると、同じようにその光景を眺めていたロックスが余計に愉しそうに笑って口を開いた。

 

 

 

 

「ハハハハハ…!出て来い、野郎ども‼︎」

 

 

 

 

ロックスがそう言って叫ぶと、それに応えるかのように8人の男女が飛び出した。

 

 

 

 

 

「クククッ!ようやく出番か?随分と待たせてくれたじゃないか。なあ、弟よ?」

 

「俺もだぜ、兄よ。今こそ俺達が最強のコンビだと言う事を証明してやろうじゃないか!」

 

 

 

ドツクゾーン

 

『氷の戦士』

 

 

フリーズン&フローズン

 

 

 

 

「やれやれ、プリキュアがこんなにも…。砂漠の使徒の力の前にひれ伏すといい」

 

 

砂漠の使徒

 

『男爵』

 

サラマンダー

 

 

 

 

「ブラックとホワイトは私が始末するよ。あの2人には個人的な恨みを晴らさなければならないからね…!」

 

 

ドツクゾーン

 

『大幹部』

 

魔女

 

 

 

 

「なら、わたしはキュアブルームとキュアイーグレットを。あの時の屈辱を晴らさせて貰おう…!」

 

 

ダークフォール

 

『滅びの戦士』

 

サーロイン

 

 

 

 

「ボクは誰でもいいかな?ロックス船長の命令だもんね!」

 

 

『玩具魔神』

 

トイマジン

 

 

 

「わたしも誰でもいい。プリキュアどもを、菓子にして食べてやろう!」

 

『虚無の男』

 

ムシバーン

 

 

 

「なら、あたしはあのイケ好かないプリキュア5を。奴等にやられた借りを返さないとね…!」

 

『簒奪者』

 

シャドウ

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘でしょ………⁉︎どうして、サーロインが⁉︎」

 

「サラマンダー男爵…⁉︎また悪の道に⁉︎」

 

「どうして魔女が居るの⁉︎ありえないんだけど…!」

 

「トイマジン…?貴方は、幸せになった筈なのに…⁉︎」

 

 

それぞれのプリキュア達が、かつて倒した若しくは和解した筈の敵が再び現れた事に困惑を隠せずに動揺する。

 

 

「っ!皆、あれを見て!」

 

 

そして、更に追い討ちをかけるように大小様々な怪物達…『ザケンナー』『コワイナー』『ウザイナー』『ナケワメーケ』『デザトリアン』

『ネガトーン』が現れる。

 

 

 

 

その数、およそ5000体…!

 

 

 

 

 

 

そして、とうとう最後の怪物達がこの場に足を踏み入れる。

 

 

 

 

「ジハハハハ!随分騒がしいと思って来てみれば…面白い事になってんじゃねェか⁉︎しかも、死んだ筈の野郎が居ると来たもんだ…!」

 

「ハ〜ハハハママママ!懐かしいねェ!ロックス、テメェ今更何をしに来たってんだい!」

 

「ウォロロロ!何だかよく分からねェが、戦争をするんだろう⁉︎だったら参加しねェ訳にはいかねェよなァ⁉︎相手が元船長(ロックス)だろうと叩き潰してやるだけだ‼︎最高の戦争を始めようぜ‼︎」

 

「グララララ…!何十年振りだ、ロックス?まさか、また会う事になるたァ思わなかったが…この世界をも支配するってんなら放っておく訳にはいかねェな…‼︎」

 

 

 

 

争乱を嗅ぎつけ現れたるは、最強の怪物達(4人)

彼等もまた、かつての船長を目にして一瞬驚きこそすれど、其処は流石の大海賊。

獰猛な笑みを浮かべながら、各々が戦闘体勢に入る。

 

 

 

 

「ハハハハハ!来たな、シキ!リンリン!カイドウ!ニューゲートォ!そうとも、この戦いに打ち勝った奴が世界の命運を決められる‼︎海賊、一般市民、プリキュア、老若男女…この世界に生きてる以上、そんな物は関係ねェ!」

 

 

 

戦争が始まる。

この世界の命運を決める、プリキュア史上究極にして最大の戦争が。

 

 

 

「覚悟しろ、平和を愛するプリキュア(バカ)ども!誰が本当の『支配者』なのか…この戦争で教えてやる‼︎ハハハハハ‼︎」

 

 

 

 

 

攻め入るは、『海の魔物』“ロックス”率いる最悪の悪人達

 

 

迎え撃つは、光の使者(プリキュア)と最強の海賊(4人)

 

 

 

 

誰が勝ち、誰が敗けても未来が変わる!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終章 開幕

 

 

プリキュアオールスターズ

 

EPISODE FILM “ROCKS”

 

 

真・DX3

 

 

未来を掴め!希望の花と世界を繋ぐ響奏曲(コンツェルト)‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

次回『加音町頂上戦争(U L T I M A T E )

 

 

 

 

 

 

 




ぼくのかんがえたきゅーきょくのでらっくすすりー編、はーじまーるよー!
 
 
 
 
 
ロックス・D・ジーベック………満を持して遂に登場。
ゴッドバレーで死んだ………と思われていたが、実際は死んでおらず響と同様に謎の空間の裂け目に吸い込まれ、スイプリ世界に漂着。
その時、偶然にも『ブラックホール』と名乗る存在に出会い、力の一部として取り込まれそうになるも強力な自我と『ブラックホール』を上回る悪意の強さで逆に『ブラックホール』を取り込んでしまう。
以後は、新たに得た力を駆使し、プリキュア達に倒された者達の悪意を回収しながら密かに暗躍を続けていた。
本来起こる筈だった『DX3』が無かったのはこの為。
因みにエレンに渡した悪魔の実は、スイプリ世界に来た時に一緒に漂着していたらしい。
 
今話では、復活したノイズの身体をぶち抜いて力を奪いながら現れるという鮮烈な登場の仕方で自身を飾る。
その後、再び響を勧誘するが前回と違って真っ向から断られた。
しかし、ロックスにとってはそれすらも計算づくだったらしく、当初の予定通りに『世界の王』を決める戦争の開幕を宣言。
プリキュア達とかつての部下であるシキ、リンリン、カイドウ、ニューゲート達に宣戦を布告した。
かつてない程テンションが爆上がりしている模様。
プリズムフラワー………?興味ねェ。
 
 
 
響に何やら拘りがあるようだが………?
 
 
次回から大暴れするぞ!
 
 
北条響………メフィストを正気に戻し、アコちゃんとの感動の再会を楽しんでいたら、まさかのノイズ復活とロックスとの再会という予想外の状況になってしまった。
 
ロックスに再び勧誘されるも、彼の『支配』によって加音町や、この世界が戦禍に巻き込まれるのを防ぐ為に申し出を拒絶。
そりゃそうだわな。
ロックスとの決戦に挑む事に。
 
尚、ノイズ復活の際にキュアモジューレを失った為に現在はプリキュアへの変身は不可。
多分次話でアッサリ復活するから大丈夫大丈夫。
 
 
後、プリキュアが自分達以外にも沢山いた事に対しては割と驚いていた。
伝説の戦士とは何ぞや?
 
次話で大暴れするぞ!
 
 
南野奏………概ね響と同様の状態。
メフィスト戦では『見聞色』を初披露した。
相変わらず『武装色』は苦手な模様。
このロックスって人、絶対ヤバい人だわと内心思っている。
次話で暴れるぞ!
 
 
黒川エレン………響、奏と概ね同様の状態。
ロックスと再び出会い、セイレーンだった頃の記憶を思い出して若干ガクブル中。
次話で暴れるぞ!
 
 
調辺アコ………上記の3人と概ね同様の状態。
大切なパパを取り戻したと思ったら、ノイズが復活し、ロックスが登場し、プリキュアが大勢現れるという怒涛の展開に頭が若干ついていっていない。
白ひげ達もちゃっかり戦う姿勢を見せてるし、この状況はひょっとしなくてもヤバいのでは?と思っている。
次回で暴れるぞ!
 
しかし、メフィストに放った技名が厨二過ぎないか?
君はまだ小学3年だろう。
 
 
 
四皇達………何か騒がしいなと思って来てみたら、ロックス居てるし訳わかんねェ。でも戦争するってんなら、ぶっ飛ばしてやるよォ‼︎
 
テンション爆上がり中。
 
特に、カイドウとかカイドウとかカイドウとか。
 
次話で滅茶苦茶暴れるぞ!
 
 
ノイズ………出落ちラスボス(笑)
折角復活出来たと思ったら、ロックスに不意を突かれて力を奪われた挙句、地面に投げ捨てられた。
一応、死んでは居ない。
後々救済されるから、それまで大人しくしてな。
 
 
ファルセット………スイプリ後半から性格が豹変する男。
こいつのキャラ変化ぶりに、当時驚いた人は沢山居た筈。
 
音符をズル賢い手段で一気に集め、洗脳やら脅迫やらといった数々の小物作戦を駆使してノイズを完全復活させるが、直後にノイズがやられてしまった事で茫然自失に。
その後、ノイズの仇を討つためロックスに攻撃するも、彼の覇王色の覇気を食らった事でアッサリ気絶して退場。
 
お前に割く文字数はねェ。
 
まあ、でも確かに自分より強い奴に対抗するとなれば人質は有効な手段だよな。
ただ、相手が話の通じる奴じゃないと意味ないが…。
 
因みに洗脳していた人々は、ファルセットが気絶した事で正気に戻り無事に逃げた模様。
 
 
トリオ・ザ・マイナーの2人………マイナーランドから状況を眺めていたが、怒涛のヤバすぎる展開に「どうしよう………?」となっている。
後々重要な役を果たすかも知れない。
 
 
 
メフィスト………ミューズの愛情パンチを食らって正気に戻った。
 
 
 
音吉さん………ノイズ復活してる⁉︎あれ、やられた⁉︎え、何あの人間?ヤバくね?
 
 
プリキュアオールスターズ(スイプリ勢を除く)の皆さん………おかしいな、遊びに来た筈なのに何かヤバそうな事に巻き込まれたぞ?
ってか、妖精達が降ってくるし今まで倒してきた敵が復活してるし、それを従えてるあの男って何者なのよ⁉︎状態。
 
次話で、ヤバい奴はロックス以外にも存在する事を知り、驚きの連続になる。
 
 
プリキュア諸君、頑張ってくれたまえ。
 
 
彼等に常識は通用しない。
 
 
 
加音町………町中にネガトーンやら何やらが出現し、大パニック。
更地となる事が確定しました。
本当にありがとうございました。
 
 
やめて下さい死んでしまいます。
 
 
 
 
以下、所感↓
 
 
 
 
うーん、超駆け足になってしまった。
展開が怒涛すぎて、ついていけないよー!って人も居るかも………。
正直ダレかけてる部分もあったから、それを吹き飛ばす為に話を進めた感がある。
 
これは反省すべき点かな。
 
ただ、1番やりたかったDX3編に突入出来たので満足はしてる。
 
次回からは、戦闘シーン多めになるから其処は安心して欲しい。
 
 
ロックス、四皇、プリキュア………それぞれの人物達がどういう結末を辿るのか?
 
北条響の運命は如何に⁉︎
 
それでは、次回をお楽しみに‼︎
 
 
 
 
 
 
 
 
 
………ロックスの部下の悪役達が、あの8人だけと言った覚えはないぞ?
 


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加音町頂上戦争

お久しぶりです。
投稿が長期に渡り遅延してしまいました。
仕事やら何やらで、最近まで病んでたのよ。


作者の妄想シリーズ第13弾。
さあ、頂上戦争の開幕だ!


東京

内閣府 宇宙開発特別捜査局

 

 

 

 

「これは一体、どう言う事だ…⁉︎」

 

 

局長である香久矢冬貴は、普段の冷静さを感じさせない程に困惑と畏怖を醸し出した表情で会議室に設置されたテレビ映像を眺めていた。

 

 

『えー、臨時ニュースです。たった今、××県加音町で大規模な暴動が発生したとの事です………訂正がありました。暴動ではなく、謎の生物群が加音町を襲撃しているとの情報が入って参りました。………えー、当局のアナウンサーが現地に入りました。中継します』

 

 

『はい!加音町より生中継でお送りします!本日未明、加音町に突如として現れた謎の生物が、町や人々を襲い始めました!この生物達が何処から現れたのか、原因は未だ不明です!………今、町の中心部でしょうか、大きな爆発音が響きました!く、雲が二つに裂けています!このような光景は到底信じられません!加音町では以前にも、巨大な龍や巨人のような男女の目撃情報が多数寄せられておりーーーー』

 

 

テレビ画面に映し出される映像に釘付けになっていた冬貴に、部下の男が書類を片手に駆け寄った。

 

 

「香久矢局長!これを見て下さい!」

 

「…!これは、確かなのか⁉︎」

 

「はい。日本各地の米軍基地の動きが俄に活発化し始めています。加音町の一件が関係していると見て間違いないでしょう」

 

「上はどうだ?」

 

「今、総理と各閣僚が特別会議を開いています。状況が状況です、国会の承認を事後にする形で………」

 

「我が国初の、自衛隊による防衛出動もあり得る、という事だな?」

 

「それは………ですが、相手が国家やテロリストでない可能性もあるので害獣駆除か治安維持活動の名目で動かす事になるかも知れませんね」

 

「そうだな……………」

 

 

重苦しい空気が漂う会議室に沈黙が満ちる。

 

 

「一体、加音町で何が起こっていると言うんだ………!」

 

 

絞り出すように呟いた冬貴の問い掛けに、答えられる者は居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かい合うプリキュア達とロックス率いる悪の軍団。

張り詰めた空気の広がり、プリキュア達はどういう訳か、再び復活したかつての敵達を見て険しい表情を浮かべる。

 

 

「全く…あの頃より随分と数が増えたものだな?プリキュア………!」

 

 

自分達を睨み付けるプリキュアに対し、忌々しげに呟く魔女。

闇の世界の住人である魔女達にとって、プリキュアは因縁深い相手でもある。

何せ一度はその光の力で浄化され、打ち倒されたからだ。

 

 

「クックック…!なら、先ずはアタシが行こうじゃないか。目障りなプリキュアには借りを返さないと行けないからねぇ………!」

 

 

そう言って、一歩前に進み出るのはシャドウ。

 

 

「ハハハハハ…!まあ、落ち着け!お前達は一度奴等にやられて居るんだろう?それに、お前1人で勝てる程プリキュアとやらは甘くねェと思うがな…!」

 

「アタシはあのプリキュア5のガキどもに借りを返さないと気が済まないんだ!固い事言わないでくれないかい⁉︎」

 

 

言外に、お前は力不足だと言われたシャドウは不機嫌さを隠さず、ロックスに反論する。

幾ら今の自分の主とは言え、復讐を止められるのは気に入らない。

だからこそ反論したのだが………それはロックスという男に対し、この上ない悪手だという事に気が付けなかった。

 

 

「ハハハハハ…!おい、シャドウ…!今………抵抗したな?この俺に!」

 

「は?ロックス船長、何を言ってーーーーギャアアアア⁉︎」

 

 

シャドウの視界が揺らぎ、何故か地面に落ちる。

それが、一瞬で自分の身体が両断された事によるものだと漸く理解したシャドウは悲鳴を上げた。

彼女を一瞬で両断した人物………ロックスは、更に片手に持つカトラスをその胴に突き立てる。

 

 

「分かってねェな、シャドウ…!俺は俺の意見に従わねェ奴が何よりも嫌いなんだよ!おい、聞いてんのか⁉︎」

 

「ガッ………⁉︎ろ、ロックス…船……⁉︎」

 

「俺の部下になり、俺の下についた時点でお前は俺の『支配下』なんだ!それを拒むってんならーーーー態々生かしておく価値はねェよなァ⁉︎」

 

「ま、待ってロックス船長⁉︎従う!アンタに従うからーーーー⁉︎」

 

 

漸く、己の行いがロックスの逆鱗に触れた事を理解したシャドウが必死で懇願する。

だが、もう遅い。

ロックスの支配に逆らった時点で…シャドウの運命は決まってしまったのだから。

 

 

「死ね」

 

 

ロックスはそう言うと、右腕でシャドウの頭を掴むと力任せに握り潰した。

 

 

「嘘でしょ⁉︎自分の仲間を………⁉︎」

 

「まともじゃないわね………!」

 

 

情け容赦も慈悲も無く、ただ口答えしたというだけで部下を簡単に殺害したロックスに、プリキュア達は信じられないものを見るかのような目で彼を見る。

 

 

これがロックス。

傲岸不遜、邪智暴虐、唯我独尊を地でいく生粋の大海賊。

 

 

 

その有様は正に『海の魔物』

 

 

 

暫くすると、頭が割れたザクロのようになったシャドウの身体が、黒い霧のようなものに変わりロックスの身体へと吸収されていく。

 

 

「ハハハハハ!俺の『支配』に抗う奴はこうなるんだ…!俺の一部として取り込まれたくはねェだろう⁉︎」

 

 

部下である魔女達は皆一様に顔色を青ざめさせ、ロックスはそれを見て愉快そうに笑い続ける。

 

 

「全く、使えねェ部下のせいで貴重な時間を無駄にしたぜ。魔女!さっさと始めな!」

 

「………!お任せ下さい、ロックス船長…!」

 

 

魔女の水晶玉が妖しく光り、不気味な気配を漂わせ始める。

それと同時に風が吹き荒れ始め、禍々しい力が辺りを駆け抜け始めた。

 

 

「お前達には別々の空間に行って貰うよ!プリキュアとて、バラバラになれば力を発揮出来ないだろうからねぇ!」

 

 

カッ!と光がその場を満たし、プリキュア達と面白そうに見ていた四皇達を呑みこんで行く。

光が収まると………その場にいた面々は、ロックスと北条響を除き全員が姿を消していた。

 

 

「………………ロックス(・・・・)!」

 

 

覇気を靡かせる少女………北条響を視界に見据えたロックスは、満足そうな笑みを浮かべて笑う。

その笑いは、誰に向けたものなのか。

それを理解出来るのは、他ならないロックス自身でしかない。

 

 

 

 

「アンタがそのつもりだって言うなら………私も『海賊』の北条響として戦うわ!」

 

 

「ハハハハハ…!遠慮はいらねェ!海賊らしく、かかってきな‼︎」

 

 

 

 

互いの一言を皮切りに、響とロックスは同時に駆け出す。

 

 

 

 

 

武装硬化された響の拳とロックスの剣が交差し。

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

禍禍しいと形容すべき赤黒い稲妻が辺り一帯を駆け抜け。

 

 

 

 

 

 

天が裂けた(・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「キャアアア〜〜〜〜⁉︎」」」

 

 

 

 

魔女の発する水晶玉の光に飲み込まれたプリキュア達。

気がつくと、彼女達はそれぞれが全く異なる世界へと移動させられていた。

 

その内の1人………南野奏は空中から落下しているという、割と危機的な状況に悲鳴を上げる。

プリキュアに変身していれば、高所からの落下程度どうという事はないが、今は変身能力を失った生身。

眼下には広大な海が広がっており、このまま叩きつけられれば間違いなくタダでは済まないだろう。

 

そうしている間にもグングンと海面が迫って来る。

万事休すかと思った奏だったが、海面に叩きつけられる直前に先に着地していたキュアミントに優しく受け止められ間一髪難を逃れた。

 

 

「あ、ありがとう」

 

「いいの。気にしないで」

 

 

ミントは軽く微笑むと、奏を降ろし辺りを見渡す。

広大な海と朽ちた廃船がひしめく世界に、他のプリキュア達も戸惑いながら、キョロキョロと自分達を取り巻く環境を不思議そうに眺めていた。

 

 

「わあああああ〜⁉︎どうなってるのよ、これぇーーーー⁉︎」

 

 

少し遅れる形で空から騒がしく降ってくるキュアマリン。

あわや海にダイブ………する直前、伸びてきた腕に掴まれ水浸しになる事を免れる。

 

 

「大丈夫か、小娘?」

 

「ふひぃ〜!危なかった…!って、お爺さん誰っ⁉︎身長高すぎでしょ⁉︎」

 

腕を伸ばしてマリンを掴んだ男…『白ひげ』の姿に驚くマリン。

 

 

「騒がしい小娘だな。お前もプリキュアなのかァ?」

 

「私は小娘なんて名前じゃなくて『キュアマリン』っていうキュートな呼び名があるの!ってかいつまで掴んでるのよー!」

 

「自分でキュートとかいう奴が、そうだった試しはねェが………あいつらと違って別の意味でややこしい奴だ」

 

 

マシンガンの如きトークで捲し立てるマリンに、若干ゲンナリしながら呟く白ひげ。

いつまでも騒がれるのも困るので、近くの廃船へと投げ飛ばした。

 

 

「ちょっとー!レディの扱いがなってないんじゃないのー⁉︎ねぇ、聞いてるのー⁉︎」

 

 

「………………」

 

 

投げ飛ばされたのが気に入らなかったのか、マリンが白ひげに抗議するも、白ひげは聞こえない振りをして沈黙を貫いた。

 

 

「………にしても、妙な場所だな」

 

 

白ひげが一言呟いて周りを見ると、マリン以外のプリキュア…キュアホワイト・キュアイーグレット・キュアミント・キュアアクア・キュアベリー…そして南野奏と黒川エレンも不思議そうに一面海の世界を廃船上から眺めている。

 

 

「ここって、魔女の船の墓場とフリーズンフローズンの氷の世界が混ざって……」

 

 

マリンと白ひげのやり取りを尻目に、同じく飛ばされて来た別のプリキュア…キュアホワイトが冷静に辺りを見渡しながら呟く。

 

 

「「ハーハッハッハッハ!ようこそ、俺達の世界へ」」

 

 

高笑いする声が上から響き、皆が空へと視線を向ける。

其処には、魔女と身体が氷で出来た様な瓜二つの二人の男…フリーズン&フローズンが悪意を孕んだ笑みを浮かべながら空に佇んでいた。

 

 

「フリーズンとフローズン!ここは一体何処なの⁉︎」

 

 

ホワイトが油断なく身構えながら二人に問い掛ける。

 

 

「見ての通りだ。この世界はロックス船長の闇の力と、俺達の心象記憶を抽出して生み出された閉鎖空間とでも言っておこうか」

 

「貴様らは逃げも隠れも出来ない!勿論、元の世界に戻る事もなあ!ハーハッハッハッハ!」

 

「つまり!お前達は何も出来ないまま、無様に朽ち果てるしかないのだ!さあ、出でよコワイナー‼︎ウザイナー‼︎ザケンナー‼︎」

 

 

フリーズンとフローズンがプリキュア達を嘲笑い、魔女が手を振り上げると、海が揺れ巨大な三体の敵…コワイナー・ウザイナー・ザケンナーが次々と海中から現れる。

 

 

「コワイナ〜〜〜〜!」

 

「ウザイナ〜〜〜〜‼︎」

 

「ザケンナーーーーッ‼︎」

 

 

現れた敵を前に、険しい顔をしながら身構えるプリキュア達。

だが……………。

 

 

 

 

「壊天‼︎」

 

 

「「「ガッ⁉︎」」」

 

 

 

 

ドォン‼︎と地響きのような音が響き渡り、それと同時にコワイナー達が

吹き飛ばされ、少し遅れるようにして海を抉るような衝撃波が通り抜けていく。

 

 

「何ッ………⁉︎」

 

「馬鹿な!あのコワイナー達は相当な力を持っていた筈だ!それを軽々と吹き飛ばしただと…?」

 

 

目の前で起きた光景に、僅かに困惑するフリーズンとフローズン。

同じく、魔女も眉尻をピクリと上げ衝撃波を放った人物を睨み付けていた。

 

 

 

 

衝撃波を放ち、コワイナー達を吹き飛ばした当人………白ひげに、プリキュア達もそれぞれが驚きの表情を浮かべて眺めている。

 

 

「マジかー…あのお爺さんめっちゃ強いじゃん。いやいやいや、おかしいでしょ」

 

「いや、あれをおかしいの一言で片付けていいのかしら?」

 

「で、でもコワイナー達に攻撃したって事は一応敵ではないって事…よね?」

 

 

一早く正気に戻ったマリンが引きつったような顔をしながら呟き、それに続くようにしてミントとアクアが困惑しながら白ひげを見る。

 

 

「おい、白い小娘。アイツらの事を知ってるのか?知ってるなら話せ」

 

「え⁉︎(し、白い小娘………)あ、えっと、あの氷のような2人はフリーズンとフローズン。もう1人は魔女といって、船を浮かべたり氷を使った攻撃をしてくるわ」

 

 

唐突に白ひげに話しかけられたホワイトは、少し動揺しつつも正確に彼等の情報を伝えた。

それを聞いた白ひげは、何が面白いのか…楽しげに笑う。

 

 

「グララララ…!吠え面かくなよ、ハナッタレども!小娘どもも…しっかり船に捕まってな…!」

 

 

「ちょっと、それってどういう…」

 

 

白ひげの言葉の意味が今一つ分からず、ベリーが問い掛けるが白ひげは答える事なく両手の拳をクロスさせ………一気に振り抜いた。

 

 

 

 

「⁉︎大気に、ひびが…⁉︎」

 

 

 

 

ビキビキビキビキッ‼︎と、巨大な罅割れが大気に広がり駆け抜けていく。

それを目の当たりにしたエレンは白ひげが何をしようとしているのか、正確に理解すると全員に聞こえるように叫んだ。

 

 

 

 

「皆!あの人の言う通り、何かに捕まって!でないと………!」

 

 

 

 

エレンの叫びに呼応するかのように、ゴゴゴゴッ!と重厚な音が遠くから響き迫ってくる。

何事かと戸惑うプリキュア達。

 

 

 

「ほら、来たわよ。白ひげさんの仕掛けた『海震』が!津波になって返ってくる‼︎」

 

 

 

水平線の彼方から巨大な壁が迫り来る。

否、それは壁ではなくまごう事なき大津波。

その大きさは上空にいるフリーズンとフローズン、魔女をも呑み込む程だ。

 

 

 

 

 

 

「グララララッ‼︎」

 

 

 

「ちょ…ちょっとちょっと⁉︎嘘でしょぉぉぉぉぉぉぉぉ⁉︎お、大津波ィ〜〜〜〜⁉︎ってか笑ってる場合じゃないわよぉ!私達も巻き込まれるじゃない⁉︎」

 

 

 

 

 

 

その場にいる全員を挟み込むように迫り来る大津波の姿に、マリンが顔を青ざめさせながら絶叫する。

 

 

「あ、兄よ!アレは不味いぞ!」

 

「慌てるな弟よ!このような時こそ、我等の力で!」

 

 

フリーズンとフローズンは慌てながらも、互いの手を津波に向かって翳す。

 

 

 

 

「「フリージング・ブリザード‼︎」」

 

 

 

 

カッ!と万物を凍てつくさんという程の強烈な冷気エネルギーが2人から放たれ、津波を…海をも瞬く間に凍らせていく。

 

 

「フン…!青雉の若造みてェな真似をしやがって…だが!」

 

 

かつて、マリンフォード頂上戦争で自身が起こした津波を凍らせた海軍大将・青雉ことクザンを思い出しながら笑う白ひげ。

 

 

「お陰で良い足場が出来た。これで思う存分やり合えるな。覚悟しろよ、ハナッタレども…!」

 

 

「「し、しまった!貴様、最初からそのつもりで………‼︎」」

 

 

まんまと白ひげの仕掛けた策にハマってしまった事に、漸く気づいたフリーズンとフローズンは悔しげに白ひげを睨み付ける。

 

 

「成る程…白ひげさんか津波を起こしたのはこの為だったって訳ね。合点がいったわ」

 

「いやいやいや!合点がいったわじゃないでしょ⁉︎普通の人は津波なんて起こせないわよ⁉︎何なの、あのお爺さん⁉︎それに貴方も何でそんなに冷静なの⁉︎」

 

「ベ、ベリー落ち着いて………」

 

 

脳内キャパシティを超えたのか、ベリーは頭を抱えながら冷静に状況を分析する奏に盛大に突っ込み、ミントに宥められていた。

 

 

「と、とにかく!海が凍ったから戦いやすくなったのは事実だわ!早くあの3人を倒して元の世界に戻りましょう!」

 

 

冷静さを取り戻したアクアに促され、他のプリキュア達も臨戦態勢に入る。

 

 

 

第二ラウンドが、幕を開けようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃………。

 

 

 

魔女の力で砂漠が広がる世界へと飛ばされた他のプリキュア………キュアブラック・キュアブルーム・キュアドリーム・キュアピーチ・キュアブロッサム達はと言うと、目の前で起きている光景に絶句していた。

 

 

 

 

「……………‼︎」

 

 

 

 

ブォン‼︎と、男………百獣のカイドウが金棒を振るう度、数多のナケワメーケやホシイナーが塵芥を散らすかの如く吹き飛んで行く。

吹き飛ばされ、倒れ伏した彼等をカイドウは作業のように淡々と金棒を振り下ろし、トドメを刺す。

 

 

「雑魚ばかり寄越しやがって!さあ、片っ端からかかってこい!誰か俺を傷付けられる奴ァいねェのか⁉︎」

 

 

心底つまらないーーーーそういった感情を孕んだカイドウの雄叫びに、残されたナケワメーケ達もたじろいでしまう。

無理もない、今彼等が相対しているのは『この世における最強生物』なのだから。

そんな状況を見兼ねたのだろうか、1人の筋骨隆々とした壮年の男『ムシバーン』が黒光りする刀のような剣を手にカイドウの前に降り立った。

 

 

「大層な口を叩くではないか。ならば私が相手になろう…!」

 

 

「あァ………?」

 

 

目の前に現れたムシバーンに、カイドウは怪訝そうな顔を向けて睨み付ける。

ムシバーンは、剣を構えカイドウに向かって突貫。

その速さはプリキュア達をしても捉えるのが困難な程だ。

だが………。

 

 

 

 

 

「この一撃を受けてみ「雷鳴八卦‼︎」………ッ⁉︎」

 

 

 

 

 

届かない。

 

 

百獣のカイドウには、その程度では届かない。

 

 

 

 

「誰が相手になるだと?小僧………‼︎」

 

 

 

 

一撃で叩きのめされ地面に倒れ込むムシバーンを見下ろすと、カイドウは金棒の先端を地面に叩きつけて、不機嫌そうに呟いた。

 

 

「ムシバーンが一撃で倒されちゃうなんて………‼︎」

 

「それより、あの人は味方?それとも敵?」

 

「そもそも、人なんでしょうか?角生えてますし………」

 

 

プリキュアではない謎の大男の無双っぷりに若干引きながら、ドリーム、ピーチ、ブロッサムがコソコソと話し合う。

そんな彼女達に近づく1人の男。

 

 

「ジハハハハ!あれくらいで驚いてるようじゃ、まだまだだなベイビーちゃん達!」

 

「え、えっと…貴方は?」

 

 

笑いながら近づいて来た獅子の鬣を連想させる髪をした男…金獅子のシキ話しかけられ、僅かに警戒しながらブロッサムが問い掛ける。

 

 

「おっと、こいつは紹介が遅れたな!俺は金獅子のシキ。で、向こうで暴れてるのがカイドウだ。見た感じ、お前らもプリキュアとやらだな?どいつもこいつも、揃って年端もいかねェガキだってのが面白ェ!」

 

 

この男も、只者ではない。

これまでプリキュアとして様々な強敵達と対峙してきた経験から、プリキュア達は言い知れぬ強者の貫禄というものを肌で感じ取っていた。

ただ、どうしても気になる事があったのだろうか。

ドリームが意を決したようにシキの前に歩み出ると、不思議そうに問い掛けた。

 

 

「ん?どうした、ベイビーちゃん?俺に何か言いたい事でもあんのか?」

 

「その、一つだけ気になる事があって」

 

「ジハハハハ!構わねェよ、言ってみな!俺は海賊だが、質問の一つや二つくらい答えてやる!」

 

「じゃ、じゃあ!えっと、その変わった形の眉毛って地毛なんですか?どうしても気になっちゃって…アハハ」

 

「てめェもかよ⁉︎誰が変眉だァ!それにこの眉は地毛だっ‼︎」

 

 

 

 

どうにも締まらない感じの砂漠組。

その光景を見ていた敵であるサーロインは、内心で(…?ひょっとしてとんでもない奴等を連れてきてしまったのか?)と思っていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、更に別の違う場所では、ちょっとしたパーティが開かれていた。

 

 

「ハ〜ハハハママママ!このクッキーはとっても甘くて美味しいねェ!それにこのドーナツも♡やるじゃないか、お前達!ハ〜ハハハ!」

 

 

そう言ってご機嫌に笑うのは『ビッグマム』シャーロット・リンリン。

彼女の目の前には巨大な机………ではなく、仰向けになって床に突っ伏すトイマジンが横たわっており、その身体の上には山盛りのクッキーやドーナツが積み重ねられていた。

 

 

「こ、こんな事を僕にするなんて許さな「動くんじゃねェよ」グヘッ⁉︎」

 

 

机代わりにされている事に抗議するトイマジンの頭にリンリンの拳が振り下ろされ、トイマジンは一撃で気絶してしまう。

 

 

「そう、それでいいのさ。当然だね、机が勝手に動いたり話したりする訳がない。そうだろう?ハ〜ハハハママママ!」

 

 

そんな光景を見せられているプリキュア達はドン引きしながら、若干遠巻きに眺めている。

 

 

「トイマジン…貴方だったら耐えられるって私信じてる!」

 

「その台詞って、こういう時に使うものじゃないんじゃないかしら………?」

 

 

パインの台詞に、やんわりと突っ込むパッション。

そもそも何故このような状況になっているかと言うと、魔女の力で飛ばされた際に、得意げな顔で現れたトイマジンをリンリンが叩きのめしたからだ。

因みにトイマジンの周りにいたデザトリアン達はリンリンに脅され、お菓子を作る作業に強制従事させられている。

もし逃げたりサボろうとしたりすれば、リンリンのホーミーズであるゼウスとプロメテウスに消し炭にされるのでどうしようもない。

ブラック企業も真っ青である。

更に、トイマジンと一緒にいたサラマンダー男爵に至ってはリンリンのヤバさを目の当たりにした瞬間、行方をくらませて逃亡した。

その判断は正しいと言わざるを得ない。

 

 

「それにしても凄いですね、あのお婆さん。大きさも食べる量も、何もかも」

 

「感心してる場合じゃないでしょ。どーすんのよこの状況…」

 

「気にしたら負けよ。リンリンさんは、いつもあんな感じだもの」

 

 

感心しながらリンリンを眺めるレモネードに、ルージュが呆れを交えて呟き、アコが遠い目をしながら溜め息を吐く。

 

 

「とにかく、このままのんびりしてる訳にもいかないわ。早く出口を見つけて脱出しないと」

 

「そうだね。それに、あのお婆さんも敵か味方か今一つ分からないし………」

 

 

ムーンライトとサンシャインはお菓子を食べ続けるリンリンを流し目で見ながら言う。

その時、ミルキィローズが床に転がっている何かを見つけ皆の傍に駆け寄って来た。

 

 

「ねぇ、こんなの見つけたんだけど。ひょっとして、このサイコロみたいなのを振れば進めるのかしら?」

 

「はいはーい!私が投げます!」

 

「あのね、レモネード。遊びじゃないんだから「そーれ♡」もう投げてるしっ⁉︎」

 

 

すると、芸能人魂?が騒いだのかレモネードがサイコロを受け取り、ルージュが嗜める前にポーン!とサイコロを投げ飛ばした。

 

 

「やった!6が出ました!」

 

 

サイコロの目は6。

すると、皆のいた場所が光り6マス進んで止まり、マス目から文字が飛び出してくる。

 

 

「えーと、何何………『スーパーモグラ叩き百人倒せばクリア』?」

 

「なら、早く終わらせましょう。行くわよ!」

 

「何か緊張感ないと言うか………まあいいか」

 

 

ムーンライトがハンマーを手に飛び出していくのを見ながら、ルージュが呟いて同じようにハンマーを担いで駆け出していく。

 

 

 

 

そうして、お菓子を食べるリンリンを尻目にプリキュア達は脱出のため奮闘するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

tips⑧『天竜人』

 

 

「……………はぁ、疲れた」

 

 

今日も今日とて、喧騒が絶えないロックス海賊団。

その船の甲板の隅で、北条響は珍しく溜め息を吐きながら近くの椅子を引き寄せて座り込んでいた。

 

 

「ハハハハハ!どうした、響?辛気臭ェ溜め息なんざ、つきやがって!またカイドウかリンリン辺りに絡まれでもしたか?」

 

「うーん、まあそれもあるけど。今回は別件よ、別件」

 

「ほう?となれば………前の天竜人の一件か?あれは最高だったな!」

 

 

少し疲れ気味に呟く響。

その様子から大体の当たりをつけたロックスがそう言うと、響は顔を顰めて目を伏せる。

 

 

「何処が最高よ。アンタの感覚ってホント、わかんないわ………いつもの事だけど」

 

「ハハハハハ!そう褒めるな!とは言え、中々楽しかったろう?本物のクズをぶちのめす事ほど楽しいもんはねェさ。それに、事の発端はお前だっただろうが」

 

「それはそうだけど………」

 

 

先日、食糧や武器の補充の為に立ち寄ったとある島。

そこで響は遭遇してしまったのだーーーー天竜人に。

天竜人の事は響もロックスから聞いてはいたものの、人から聞くのと実際に目にするのとは違う。

 

 

初めて天竜人を見た響の目に飛び込んで来たのは、年端もいかぬ少年とその母親らしき人物が天竜人に鞭で叩かれている光景だった。

 

 

「わちきの前を横切るとは生意気なガキだえ!下々民の分際で、身の程をしるんだえ!」

 

「お、お許し下さい!この子には私がよく言い聞かせておくので…!」

 

「黙るんだえ!下々民ごときが、わちきに口を聞く事自体不敬だえ!」

 

 

ピキ、と響のこめかみに青筋が浮かぶ。

元来、正義感の強い彼女には到底見過ごせないものだった。

 

 

「……………」

 

「何だえ?お前も鞭を打たれたいのかえ?」

 

 

響は、天竜人の問いかけを無視しながらゆっくりとした足取りで近づいていく。

 

そして。

 

 

「おい!貴様、どう言うつもりだえ⁉︎わちきが誰か知って「知らないわよ、バーカ」グブゥエッ⁉︎」

 

 

メキィ!と小気味良い音を立てて、武装硬化された響の拳が天竜人の顔面に減り込む。

鼻の骨が折れる音がしたが、響にとってはどうでも良い事だった。

 

 

「や、やべェ…!あのバカ、天竜人を殴りやがった!た、大将が来るぞ!今すぐ島から離れろォ〜〜〜‼︎」

 

 

響が天竜人を殴り飛ばすのを見ていた見物人の1人が叫ぶと、周りの者達も我に帰り血相を変えて逃げ始めた。

 

 

「ジハハハハ!何やら騒がしいと思って来てみたら、とんでもねェ事やらかしてんじゃねェか、響!」

 

「シキ………?何しに来たのよ」

 

 

ニヤついた笑みを浮かべて現れた船員のシキを不機嫌そうに睨みながら問いかける響。

シキはそれを見ると、大袈裟に手を挙げてみせる。

 

 

「おお、怖い怖い。落ち着けよ。今回は騒ぎを起こすなって船長に言われてたろ?何やってんだ」

 

「この人達が鞭で叩かれてたから………つい。ほら、天竜人はもうぶちのめしたから、早く逃げて」

 

「は、はい…!ありがとうございます!」

 

 

チラ、と鞭で叩かれていた親子を見ながら響が言うと親子は礼を言いながら足早にその場を去っていった。

 

 

「随分とお優しいこって。そういや、お前は初めてなんだっけか?天竜人を見るのは。中々のクズっぷりだっただろ?俺達も他人の事は言えねェがな、ジハハハハ!だが、一つだけ問題がある。天竜人を出したら海軍が大将連れて押し寄せてくるんだ。それが分からないお前じゃねェだろ?海賊が、変な正義感出してんじゃねェよ」

 

「うるさいわね。分かってるよ、そんな事。それより早く船に戻らないと」

 

 

そう言って、響はバツが悪そうにシキから顔を逸らす。

シキもそれ以上咎める事はなく、2人はそのまま船へと戻り、事の次第をロックスに話すとゲラゲラと楽しそうに笑われた挙句。

追いかけてくる海軍の相手をさせられたのであった。

 

 

 

 

 

 

「………話には聞いていたけど、あそこまで酷いとは思ってなかった」

 

 

そう言って、その時の事を思い出しながらゲンナリとした顔で響は顔を俯ける。

 

 

「だから言ったろう?そうさ、この世界はあんなクズどもが我が物顔で仕切ってやがる。俺はそれが気に入らねェ。だから………」

 

「世界の王を目指すって?」

 

 

ロックスの台詞を先取りして響が言うと、彼はニヤリと凶悪な笑みを絶やさないまま口を開く。

 

 

「ハハハハハ…!その通りさ。だが、天竜人は数ある理由の一つに過ぎねェ。あんな奴等を始末するだけなら、世界の王にならずともマリージョアを焼き払うだけで事足りる。俺の目的はもっと巨大で、かつ壮大なもんだ」

 

 

両手を天に掲げ、自らの野望を語るロックス。

だが、その姿に何か引っ掛かりを………小さな違和感を感じた響は、思わず問い掛けてしまった。

 

 

 

「ねぇ、ロックス。アンターーーーいや、貴方の目的は本当に『世界の王』なの?今まで貴方の色々な面を見てきたけど………」

 

 

 

ーーーー………とてもそうは思えない(・・・・・・・・・・)

 

 

 

その言葉を口にする事は躊躇われた。

何故なら。

 

 

 

 

「さあ………どうだろうな?なら聞こうじゃねェか。俺の目的は何だと思う?」

 

 

 

「……………っ‼︎ごめんなさい、今の話は無しにして。もう、変な事聞いたりはしないから」

 

 

 

瞳の奥に宿る猛烈な怒りの炎を…本能的に察してしまったからだ。

それと同時に、響の身体に寒気がする程の感覚が走る。

それが覇気の類ではなく、純粋な殺気であると理解した時には思わず甲板に座り込んでしまっていた。

 

 

「ハハハハハ…!賢明だ、響。心配するな。何れはお前も気付く時が来る。それまでは大人しくしてな」

 

 

ロックスがそう言うと、放たれていた殺気が嘘のように雲散霧消する。

 

 

「さあ、無駄話は終わりだ。俺は船長室に戻る。何かあったら呼びに来い」

 

 

船長室へと戻っていく彼の姿が見えなくなるまで、響はその姿から目を逸らす事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新作予告(※これは嘘予告です)

 

 

 

 

 

今宵………ついに、悪のプリキュア (ダークプリキュア )復活…‼︎

 

 

 

 

彼女の目的はたった一つ。

 

 

 

 

キュアムーンライトへの復讐………!

 

 

 

 

「さあ…始めようか」

 

 

 

 

再び蘇った悪のプリキュア (ダークプリキュア )の魔の手が、キュアムーンライトに迫る‼︎

 

 

 

 

「見せてやろう。この私の、更なる進化を………!」

 

 

「貴方、その姿は一体………⁉︎」

 

 

「そうだな。お前達のセンスになぞらえるならば………『ゴールド・シルエット』とでも言っておこうか!」

 

 

 

 

激闘の果てに待ち受ける最悪の結末とは………⁉︎

 

 

 

 

 

「ハーハッハッハッハ‼︎」

 

 

「キュアムーンライトーーーーッ⁉︎」

 

 

劇場版

 

ハートキャッチプリキュア! 

 

 

復活の『D』

 

 

 

 

 

近日公開‼︎

 

 

 

しません。

 

 

 

推奨BGM『マキ○マムザホ○モン「○」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




北条響………ロックスとのサシの勝負に突入。
2人の放つ覇王色によって雲が真っ二つに割れました。
まだ本気は出してない。
正直な話、プリキュアに変身出来ていない為、今現在では勝機は無い。
加音町は死ぬ。
 
 
 
南野奏・黒川エレン・調辺アコ………響と同様、変身能力を喪失中の為に戦力としては微妙。
ただ、覇気は使える。
エレンは能力者でもあるので、戦闘能力は高い。
次回では必ず活躍させたい。
 
 
 
白ひげ………世界最強の男。
今話では、魔女の力で船墓場に飛ばされる。
グラグラの実の力を使って大津波を起こした。
これにはプリキュア達も「⁉︎」となった。
こいつの前では殆どの敵が雑魚になる模様。
いや、もう地震起こせるってチートよ。
阪神淡路大震災のエネルギーが原爆4000発分らしいし、そんなエネルギーを使って地震起こせる白ひげはヤバすぎる。
 
因みにまだ実力の半分も出してない。
海震は挨拶みたいな感じ。
 
フリーズンとフローズンは死ぬ。
魔女も死ぬ。
 
 
 
カイドウ………最強生物。
耐久お化けその1。
今話では魔女の力で砂漠の世界に飛ばされるも、ナケワメーケ達を金棒で無双し、挑んできたムシバーンを鎧袖一触とばかりに雷鳴八卦の一撃でぶっ飛ばした。
満足のいく戦いが出来ない事に不満を持っている。
 
 
 
金獅子のシキ………カイドウと同じく魔女の力で砂漠の世界に飛ばされた。
キュアドリームに眉毛について弄られた。
俺は変眉じゃねェッ‼︎
 
 
 
ビッグマム………世界最強のババア。
今話では、魔女の力でおもちゃの世界に飛ばされた。
飛ばされて早々に、トイマジンをボコってお菓子を置く机がわりにする。
デザトリアンをボコってお菓子を作らせたりとやりたい放題やっている。
プリキュア達からもドン引きされている模様。
 
因みに、この世界で野球対決をした場合、マムがピッチャー役で球代わりにプロメテウスが飛んでくる。
相手は死ぬ。
 
 
 
ロックス・D・ジーベック………ロックス海賊団船長。
最強にして最大の海賊。
傲岸不遜・邪智暴虐・唯我独尊を地でいく男。
今話では自身と響以外の全員を魔女の力で転移させ、響と加音町の中心部で覇王色をぶつけ合った。
現時点では実力の1割も出していない。
補足しておくと、響がプリキュアに変身したとしても一対一での勝ち目は無きに等しい。
 
 
シャドウ………ロックスに粛正された雑魚。
もう出番はない。
 
 
 
 
 
 
 
???…………何かを感じ取った。
近い内に目を覚ますかも知れない。
 
 




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バトル・オブ・バトル‼︎

更新遅れてスマソ。


最近のONE PIECEは展開がやばいっすね。
ギア5は賛否両論ありますが、私は好きです。

それはそうと、夢原のぞみって絶対覇王色の覇気適性あるよね。


「ぬぐぉっ⁉︎」

 

 

 

辺り一面氷が覆い尽くすその場所は、振動と衝撃に揺るがされていた。

全身が氷のようなもので形作られている男の1人…フローズンの苦痛を交えた呻きが、氷の大地にそびえる廃船を粉砕した音に紛れて途絶える。

 

 

「お、おのれ………!こんな事が…⁉︎」

 

 

体に走る激痛に顔を顰めながら、フローズンは廃船の破片を軽くどけて立ち上がる。

 

 

「大丈夫か、弟よ⁉︎」

 

「今の所はな。プリキュアどもを相手にするだけならば、こんな不覚を取らなかったものを!」

 

忌々し気な目付きで、己を吹き飛ばした相手を睨み付けるフローズン。

兄であるフリーズンは仕方があるまい、と呟き悠然と歩いてくる男に目を向ける。

 

 

「あのジジイが強すぎる!最強のコンビである俺達ですら手が付けらんとは………!」

 

 

彼等の瞳に写るのは、巨大な薙刀を手に佇む『白ひげ』エドワード・ニューゲート。

 

 

 

「グララララ…!その程度か、小僧ども?」

 

 

 

白ひげから放たれる威圧感に、フリーズンとフローズンは気圧されてしまう。

 

 

「仕方あるまい!こうなったら、もう一度アレをやるぞ兄よ!」

 

「なるほど…わかったぞ、弟よ!」

 

 

フリーズンとフローズンは邪悪に笑うと、互いの手を白ひげに向かって翳す。

 

 

 

 

「「フリージング・ブリザード‼︎」」

 

 

 

 

先の巨大津波も凍らせた程の強烈な冷気エネルギーが2人から放たれるが、何故か白ひげだけは避けもせずに真正面から攻撃を受け、全身が凍り付いてしまった。

 

 

「「ハーハッハッハッハ‼︎どうだ‼︎我等兄弟にかかれば、どんな敵であろうと敵わないのだ‼︎」」

 

 

完全に凍り付いてしまった白ひげ。

しかし………。

 

 

「……………!」

 

 

氷の中にいる白ひげが…ニヤリと笑う。

次の瞬間、氷が粉々に砕け落ち…無傷の白ひげが佇んでいた。

 

 

「グララララ!振動は凍らせられねェぞ、小僧…!」

 

 

「「馬鹿な………そんな馬鹿な事が………⁉︎」」

 

 

兄弟による最大の技も、グラグラの実の能力者である白ひげの前には意味を為さない。

特に彼等にとって不幸だったのは、よりにもよって伝説の怪物を相手にしてしまった事だろう。

技が効かなかった事に動揺している一瞬の隙をつき、いつの間にか二人に近づいた白ひげが振動エネルギーを纏った腕を振りかぶった。

 

 

「遊びは終わりだハナッタレ!歯ァ食いしばって耐えてみろ…!」

 

「し、しまっ…⁉︎」

 

 

ドォン‼︎と、破壊的な一撃がフローズンの横っ腹に直撃し…耐える事も叶わずに爆発四散する。

 

 

「お、弟⁉︎そんな「戦闘中に余所見たァ、余裕だな」ま、待て!やめ⁉︎」

 

 

パァン‼︎とフリーズンの頭が、割れたザクロのように無惨に砕け散り、同時に頭部を失った氷の身体が崩れ消滅していく。

 

 

勝敗は誰の目にも明らかであった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、魔女とプリキュア達の戦いも互いに一進一退の攻防戦となっていた。

 

 

「いつまでも調子に乗るんじゃないよ…!こいつを喰らいな!」

 

 

魔女がその手に持つ水晶玉を掲げると、其処から黒光りする闇のエネルギー波が四方八方に発射される。

 

 

「ミント・シールド!」

 

「…!おのれ、プリキュア!」

 

 

しかし、咄嗟に皆の前に進み出たキュアミントが展開したバリアに攻撃を防がれ、魔女は怒りに顔を歪ませた。

その隙を逃すまいと更に別のプリキュア…キュアマリンが片手に青いエネルギー弾を集約させ、魔女に向かって肉薄する。

 

 

「マリンインパクトッ‼︎」

 

「プリキュア・サファイア・アロー‼︎」

 

「ぐぅっ⁉︎小賢しい!そんな攻撃で私がやられるとでも思ったか!」

 

「なら、これはどう⁉︎プリキュア・エメラルドソーサー!」

 

「っ…⁉︎」

 

 

至近距離からマリンの一撃を受け、更にアクアの追撃を喰らい空中でたたらを踏む魔女。

反撃しようと水晶玉に力を込めるも、間髪入れず放たれたミントの攻撃を喰らいそうになり、焦りと怒りの入り混じった表情を浮かばせる。

 

 

「チィッ…!どいつもこいつも小賢しい真似を‼︎「トリプル・プリキュアキーーーーック‼︎」⁉︎」

 

 

更に畳み掛けるようにイーグレット・ベリー・ホワイトの合わせ技が魔女に炸裂し、とうとう魔女は本気で怒り出した。

 

 

「おのれ…!おのれおのれおのれ、プリキュア‼︎こうなったらこの世界ごと私の力で消し「捕まえたわよ…!」貴様、いつの間に⁉︎」

 

 

再び闇のエネルギーを集め、撃ち放とうとした魔女だったが突然背後に現れたエレンに捕まえられてしまう。

 

「逃がさないわ…!これで終わりにするわよ‼︎」

 

「な、何をするつもりだ⁉︎離せ!」

 

ネコネコの実の能力を発動させ、人獣型へと変貌したエレン。

動物系の持つ膂力で魔女をホールドすると、その身に宿る能力を発動させる。

 

 

 

 

 

火雷針(ヒライシン)‼︎」

 

 

 

「ギャアアアアアアア〜〜〜〜‼︎」

 

 

 

 

 

裁きの雷とも形容すべき雷撃が魔女を襲い、その身体を焼き焦がして行く。

 

 

「おのれぇぇぇぇ‼︎せめて、一人くらいは道連れにしてくれるわぁっ‼︎」

 

「なっ………⁉︎しまった⁉︎」

 

 

雷に身を焼かれながらも、強引に拘束を振り切った魔女が離れた場所で戦いを見ていた奏へと向かう。

 

 

 

「はははははっ!死ぬがいい、小娘ぇ‼︎」

 

 

プリキュアに変身できない状態の小娘なら倒せると踏んだ魔女。

邪悪な笑みを浮かべ、近づいた瞬間。

 

 

魔女が目にしたのは、腕を黒く変化させる奏の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「響直伝の…武装色パンチッ‼︎」

 

 

 

「グホェェェ〜〜〜〜⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

メキャアッ‼︎と奏の右拳が魔女の顔面に炸裂し、魔女は悲鳴を挙げながら完全に消滅。

 

その手に持っていた水晶玉も粉々に砕け散るのだった。

 

 

「やったわ!魔女とフリーズンフローズンを倒した…!」

 

「早く元の世界に戻りましょう!」

 

 

 

 

プリキュア達の勝鬨の声が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、おもちゃの世界に飛ばされたビッグマムとプリキュア達。

半ば強制のゲームに付き合わされている彼女達は、スナッキーやデザトリアン相手に野球勝負に勤しんでいた。

 

 

 

 

 

天上の火(ヘヴンリーフォイアー)ァ〜〜〜〜‼︎」

 

 

 

「ズナッ…ギィ〜〜〜〜⁉︎」

 

 

 

 

 

ピッチャーマウンドに佇むビッグマムの手から灼熱の太陽(プロメテウス)が放たれる。

哀れ、打席に入っていたスナッキーは断末魔をあげながら消し炭となって消滅する他ない。

 

 

「ママママ!もう終わりかい?大したことないねェ!ハ〜ハハハ!」

 

 

高らかに笑うビッグマムことシャーロット・リンリンと、そんな彼女を引き気味で眺めているプリキュア達。

 

 

「なんか敵に同情しちゃうね…」

 

「滅茶苦茶だわ。あのお婆さん、ホントに人間なのかしら?」

 

「ねぇ、サンシャイン。貴女の盾ならあれ防げる?」

 

「う〜ん…ちょっと………いや、無理かな」

 

ルージュ・パッション ・ミルキィローズ ・サンシャインが呆れたように話していると、ズシンズシンと足音を響かせてリンリンが近づいてきた。

 

 

「ママママ!さっきお前らが作ったお菓子はまだあるだろ?寄越しな!」

 

 

「お菓子?ああ、お菓子対決の時のね。はいはい分かったわよ………あれ?」

 

 

野球勝負の前に行ったお菓子対決。

その時に、パインとアコがメインで作ったお菓子はリンリンにも好評だった。

まだ幾つか余っていたので、傍にある籠を開けて取り出そうとしたミルキィローズだったのだが………何故か中身がない。

 

 

「ハーハッハッハッハ!探し物はこれかな、プリキュア?」

 

 

上空から聞こえてきた声の方向にプリキュア達が顔を上げると、其処には美味しそうにシュークリームを頬張るサラマンダー男爵の姿があった。

 

 

「お前ェ…!何おれのお菓子を食ってんだァ‼︎」

 

 

リンリンが青筋を浮かべて怒号をあげるも、サラマンダーは動じない。

更に、いつの間に復活したのか、トイマジンがサラマンダーの隣に現れる。

 

 

 

 

「ふん!残念だが、お菓子は今私が食べたので最後だ!遊びは終わりにしようじゃないか!行くぞ、トイマジン!」

 

 

「分かってるさ、サラマンダー!ボクを散々な目に合わせてくれたお婆さんにもやり返さなきゃいけないしね!」

 

 

 

 

 

二人がそう言うと同時に、彼等の身体が瞬く間に変化して行く。

サラマンダーは巨大な西洋のドラゴンに、トイマジンは熊を模した怪物に。

 

 

「くっ………!私達は負けないわ!」

 

「トイマジン…!必ず貴方を止めてみせる…!」

 

 

プリキュア達が決意の表情を浮かべながら構えを取る。

今にも戦いが始まろうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「おれの…お菓子…!ク…ロカン………ブッシュ‼︎」

 

 

 

 

「え」

 

 

 

 

 

 

 

リンリンの目が、グルグルと渦を巻いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、砂漠世界。

 

 

 

「ジハハハハ!獅子威し・地巻き‼︎」

 

 

「ぬぅっ⁉︎これは………!」

 

 

空中に浮かぶシキが手を翳すと、地面の砂が瞬く間に複数の巨大な獅子へと姿を変え、ムシバーンに襲い掛かる。

 

 

「大袈裟な技だな…!だが、宙に逃げれば大した事はない!」

 

 

「そういうテメェもな!カイドウに一撃で伸されてた奴が何言った所で、たかが知れてるってもんだ!」

 

 

ギィン‼︎と空中に浮かぶシキとムシバーンの剣がぶつかり合い、剣戟の音が辺りを満たして行く。

 

 

「金獅子の野郎、ガキみてェに騒ぎやがって…!雑魚を相手にするのはもう沢山だ…!」

 

 

シキとムシバーンの戦いを眺めるカイドウは舌打ちをしながらドッカ!と座り込み、手にもっていた酒瓶を呷る。

 

 

「あァ〜〜〜〜‼︎早く戻ってロックスと殺し合いてェってのによォ!だが…あのガキ共も響と同じで面白そうだな………!」

 

 

グビグビと酒を流し込むと、カイドウは視線をサーロインと戦うプリキュア達に向ける。

 

 

「プリキュア・シューティング・スター!」

 

「ブロッサム…シュート!」

 

「チィッ、プリキュアめ…!」

 

 

ドリームの近接技とブロッサムが放った弾幕で僅かに押されるサーロイン。

攻撃の手を緩めないプリキュア達を煩しげに睨み付けると、反撃とばかりに砂色の光球を次々と撃ち出す。

 

 

「プリキュアの数が多いのは厄介だ。しかし、私とて二度もプリキュアに負ける訳にはいかないのでな。勝ちに行かせて貰おう…!」

 

 

サーロインがそう言うと、砂の中から何体ものウザイナーやザケンナーが現れる。

だが、それも歴戦を潜り抜けてきたプリキュアにとっては慣れた物。

 

 

「「「ハアアアアアアアッ‼︎」」」

 

 

ブラック・ブルーム・ピーチの連続攻撃にウザイナー達は吹き飛ばされ

呆気なく倒されて行く。

 

 

「次はアンタの番よ、サーロイン!もう一度倒してあげる!」

 

「生意気な…!貴様だけは許さんぞ、キュアブルーム!」

 

 

ビシッ!とサーロインを指差し、倒すと宣言するブルーム。

サーロインは以前に自分が倒された時を思い出し、眉間を皺寄せながら怒りを露わにした。

 

 

 

 

「もういい…!お前らの下らねェ小競り合いは飽きた!」

 

 

 

 

サーロインの怒りを上回るドスの効いた低い声が響く。

 

 

 

 

「ちょっとちょっと…!あり得ないんだけど…⁉︎」

 

「何なんですか、アレ⁉︎」

 

 

ブラックとブロッサムが驚きに満ちた表情を浮かべながら、姿を巨大な龍へと変化させたカイドウを見る。

プリキュア達の驚きに構う事もなく、カイドウは苛立ちと共に口を開いた。

 

 

「纏めて終わらせてやる………!」

 

 

「皆!何か来るよ‼︎」

 

 

危険を感じたドリームが叫ぶと同時に、それは放たれる。

 

 

 

 

 

 

熱息(ボロブレス)‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

ゴバッ‼︎と全てを焼き尽くす破壊光線がカイドウの口から放たれ、ウザイナー達を消し飛ばして行く。

 

 

 

「…⁉︎やべェ‼︎」

 

 

「な、何だ…グワァァァァァァ⁉︎」

 

 

 

見聞色の覇気で察知し、背後から迫っていた光線を間一髪避けたシキ。

一方、ムシバーンは突然迫ってきた光線を避ける事叶わず、無残にも焼き尽くされ消滅して行く。

 

 

「カイドウ!テメェ、ふざけやがって!俺まで巻き込まれる所だったじゃねェか‼︎」

 

「あァ⁉︎知るかそんな事!文句あるならブチ殺すぞ‼︎」

 

 

シキの怒りの抗議に、カイドウは怒鳴りながら言い返す。

 

 

「あ、危なかった〜!皆、大丈夫⁉︎」

 

「私達は大丈夫…あれ、ブロッサムは?」

 

「ここですぅ………」

 

 

プリキュア達もギリギリで回避する事に成功していたのか、ドリームが皆の無事を確認している。

ブロッサムは攻撃の余波に煽られたのか、何故か頭から地面に突っ込んでおり、ブルームに助けて貰っていた。

 

 

 

「(な、何という威力だ…!直撃すれば一溜りもなかった…‼︎)」

 

 

 

サーロインもまた、何とか避ける事が出来ていたもののカイドウの放った熱息の威力に動揺を隠せない。

しかし、本当の動揺はここからだった。

 

 

 

「な、何この揺れ…?」

 

「地震…⁉︎」

 

 

 

サーロインは思わず馬鹿な、と呟いてしまう。

 

 

「魔女め…!まさか倒されたというのか⁉︎」

 

 

この異空間を作り出した当人である魔女。

彼女が何らかの手段でプリキュアに倒されたのが原因なのか、世界そのものがギシギシと軋みをあげ始めたのだ。

 

 

 

「くっ…元の世界に戻されてしまう⁉︎」

 

 

 

サーロインがそう言うと同時に、作られた世界は轟音を立てて崩壊するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………戻ってこれた…?」

 

 

プリキュアの誰かがポツリと呟く。

魔女が倒され、異空間が消滅した事で元の世界へ戻る事が出来たプリキュア達。

お互いがお互いの再会に喜び、士気が湧き上がる。

 

 

「ジハハハハ!生きてたか、白ひげ!」

 

「当たり前だ。お前こそ平気そうだな」

 

「ったく、次から次へと場所を変えやがって…!俺はまだ暴れ足りねェぞ!」

 

 

プリキュア達と同じように戻ってきたシキ・白ひげ・カイドウ。

人間形態に戻っているカイドウは若干不服そうに呟いていた。

 

 

「あれ?でも、サンシャインとムーンライトが居ない⁉︎」

 

「パインとパッションも居ないわ!どうして…⁉︎」

 

「ミルキィローズとルージュにレモネードも居ないよ!」

 

「ルミナス?ルミナスは⁉︎」

 

 

おもちゃの世界に飛ばされたメンバーだけが戻って来ない事にプリキュア達は皆焦りを滲ませ、顔色を変える。

 

 

 

「………⁉︎待って!上よ!上から来るわ!」

 

 

 

見聞色で察知した奏が、空を指差して叫ぶ。

皆が空を見上げると、揃っていなかったプリキュア達が次々と降り立って来た。

だが、そんな彼女達の顔は何故か焦りに満ちている。

 

 

「ちょっと!大丈夫⁉︎」

 

「私達は大丈夫!それよりも………‼︎」

 

 

ベリーが近くに降りてきたサンシャインに問い掛けると、サンシャインは何かに備えるかのように構える。

同時に………凄く嫌な予感が空を見上げているエレンの体を駆け巡った。

 

 

「あ…あ………まさか…‼︎」

 

 

 

 

 

 

「クロカ〜〜〜〜ンブ〜ッシュ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

ズゥン‼︎と轟音を立てて降り立つ巨体。

 

 

 

ビッグマム………シャーロット・リンリンその人だ。

 

 

 

 

 

「リンリンさんの食いわずらい〜〜〜〜⁉︎このタイミングで⁉︎」

 

 

 

 

まさかの事態に絶叫する奏。

他のプリキュア達も暴れ狂う巨大な老婆に驚きを隠せない。

 

 

「ちょっと!何なのよ、あの人⁉︎急に暴れ出すし、手に負えないったら…‼︎」

 

 

ミルキィローズが奏に問い詰めるが、奏としても何故リンリンが食いわずらいを発症しているか分からない為に答えようがなかった。

しかし、解決方法は以前の一件で知ってはいる。

 

 

「それなら方法があるわ!あの人…リンリンさんが叫んでいるお菓子を食べさせれば正気に戻る筈よ!確か、クロカンブッシュって言ってたわね」

 

「本当にそれで戻るの⁉︎〜〜〜〜!悩んでる暇はないわね!」

 

「問題はお菓子ね。材料もだけど、何処で手に入れて作るのか考えないと」

 

 

傍で話を聞いていたアクアが冷静に言うと、奏はハッ!と思いついたかのように声を挙げた。

 

 

「いい場所があるわ!時計塔の広場…スイーツフェスティバルの会場よ!あそこなら材料も、何ならクロカンブッシュ自体があるかも知れない!」

 

 

「そうね…確かにそうだわ!でも………」

 

 

アクアは奏の意見に納得しつつ、暴れるリンリンを横目で見ながら溜め息を吐く。

 

 

 

 

「クロカンブッシュを持ってこい〜〜〜〜‼︎」

 

 

「皆下がって!サンフラワー・イージス!………きゃあっ⁉︎」

 

 

 

ドカァン‼︎と、サンシャインの展開した盾を片手で破壊し、暴れ狂うリンリン。

 

 

「あれを放っては置けないわね。それに街中にいるコワイナー達も何とかしないといけないわ」

 

「確かにね…」

 

「ああもう!なら、どうするの⁉︎」

 

 

 

頭を抱えるアクア・奏・ミルキィローズの三人だったが、そのやり取りを聞いていたドリームが駆け寄る。

 

 

 

「だったら皆で手分けしよう!あのお婆さんを止めるチームとお菓子を作るチーム、それとコワイナー達を倒して街の皆を助けるチームの三手に分かれれば何とかなるよ!」

 

「何とかなるって、もうドリームったら………」

 

「まあでも、確かにそうするのが一番ですね!」

 

 

ドリームの提案にルージュが苦笑し、レモネードが賛同する。 

 

 

「ジーハッハッハッハ!ちったあ、頭を使えるみたいだなベイビーちゃん達!だったら俺はリンリンの奴を止めてやるのに協力してやるよ!面白そうだしな!」

 

 

「ウォロロロ…!この街がどうなろうと、どうでも良いがあのデケェ奴等を相手にすんのは暇潰しくらいにはなりそうだ。暴れてくるか…!」

 

 

 

シキは食いわずらいのリンリンを止める側にいく事を宣言し、カイドウは再び龍の姿に変貌すると街を闊歩するコワイナーやネガトーンを潰しに飛んでいく。

龍の姿になったカイドウを見慣れていない一部のプリキュア達は目を丸くするが、直ぐに頭を切り替えて自分達の取るべき行動を取り始めた。

 

 

 

マックスハートとスプラッシュスター、ハートキャッチ組はネガトーン退治に。

YESプリキュア5GO GO!組はリンリンを止めに。

フレッシュ組は奏と一緒にリンリン用のお菓子作りに。

 

 

 

そして、あの男も動き出す。

 

 

 

「グララララ!俺はロックスと響が戦っている場所に行ってくるぜ。………何か嫌な予感もするしな」

 

白ひげは何やら気になる事があるのか、むら雲切を構えてロックスと響が戦っている方角を見据える。

 

「白ひげさん…分かりました!響を頼みます!リンリンさんのお菓子を作ったら私も直ぐに行くので!」

 

「奏!私達も行くわ!」

 

「エレン、アコちゃん…。じゃあ、アコちゃんは私と一緒にお菓子作りを手伝って!エレンは響を白ひげさんと探しに行って!全員必ず無事で帰ってくる事!良い⁉︎」

 

「分かったわ!響は任せて!白ひげさんも居るし、百人力よ!」

 

「………うん、分かった!」

 

 

エレンはサムズアップしながら笑顔で頷き、アコも小さく頷くと、それぞれがそれぞれの行くべき場所へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場所は、まるで災害にでも遭ったかのような様相を呈していた。

木々は根本から引きちぎれ、建物は一部を残して瓦礫と化し、地面には所々に大穴が空いている。 

 

その惨状を生み出した当人である男…ロックスは愉しげに笑いながら静かに語りかける。

 

 

 

「戦争ってのは複雑そうに見えて単純だ。勝つ為の秘訣は攻める事。押して押して押しまくれば、無理も罷り通るし道理も引っ込む。俺は世界の王になる。言った筈だよな?………まあ、聞こえちゃいねェだろうが」

 

 

「……………。」

 

 

 

 

 

地面に力なく倒れ伏す北条響に向かって(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

「足腰衰えてねェだろうな、ババア‼︎」

────────百獣のカイドウ

 

 

「誰に口きいてんだ、小僧‼︎」

────────ビッグ・マム

 

 

「おい、白ひげ!腕は鈍っちゃいねェよなァ⁉︎」

────────金獅子のシキ

 

 

「こっちのセリフだ、ハナッタレ‼︎」

────────白ひげ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、『覇海』

 

 

 

 

 

 




次回はYES!プリキュア5GOGO!&シキVSビッグ・マムと、響VSロックスがメインになります。
それと、スイプリ組がプリキュアへの変身能力を取り戻す回になると思われ。
 
 
 
 
北条響………ロックスとの戦いで敗北?何があったのだろうか。
 
 
南野奏………今話では魔女を響直伝の武装色パンチでぶっ飛ばし、異空間から現世に戻るキッカケを作った。MVP。
現在はリンリンの食いわずらいを止める為、フレッシュ組及びアコちゃんと行動中。
早くクロカンブッシュを持って来い!
間に合わなくなっても知らんぞー!
 
 
黒川エレン………現在変身能力を失っているメンバーの中で、響の次に強い人。
今話では魔女を能力を使って黒焦げにするなど大打撃を与えた。
現在は白ひげと共に、ロックスと響が戦っている場所に向かっている。
 
 
 
調辺アコ………プリキュアに変身出来ない現状に歯痒さを感じつつも、先ずはリンリンの食いわずらいを止める為に奏と共に行動中。
 
 
 
ビッグマム………世界最強のババア。
突然現れるギミックボス枠。
現在、食いわずらい発症中。
テメェーーーーッ‼︎またかァ⁉︎
 
 
 
カイドウ………最強生物。
リンリンの食いわずらいに巻き込まれたくないので、早々に離脱した。
現在はネガトーンやコワイナー相手に無双しているが、雑魚相手は退屈な模様。
 
 
 
金獅子のシキ………変眉。
現在は食いわずらいで暴走中のリンリンをYES!プリキュア5GOGO!組と共闘する形で止めに入っている。
 
「おい作者ァ!誰が変眉だァ‼︎」
 
 
 
白ひげ………世界最強の男。
今話ではフリーズン&フローズンを圧倒し、打ち破った。
現在は、何か嫌な予感がしたのでエレンと共に、ロックスと響が戦っている場所に向かっている。
 
 
 
ロックス・D・ジーベック………海の魔物と呼ばれた男。
世界の王を目指す大海賊。
響との戦いについては、次話で何があったのか分かると思われ。
 
 
 
 
ロックスの部下達………魔女・フリーズン&フローズン・ムシバーンは消滅。生き残りはサラマンダー・トイマジン・サーロインのみ。
現在、気を窺って潜伏中。
 
 
 


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Natural born monster

ドリーム好き、ああドリーム好きドリーム好き。

※投稿時間が深夜の為、テンションがおかしくなっています。


それはまさに、歩く災害と言っても過言では無かった。

ズシンズシンと、地響きを立てながら歩く巨大な老婆…『四皇』“ビッグ・マム”シャーロット・リンリン。

 

『食いわずらい』を発症し、理性が彼方へと飛んでいってしまっている彼女の歩みを阻止出来る者など本来なら、存在しないと言っても良い。

 

 

そう、本来ならば。

 

 

 

「クロカンブッシュは何処だァ〜〜〜〜‼︎」

 

「ここには無いって言ってるでしょ!今作ってる途中なの!それまで我慢しなさい!」

 

「持ってないなら死になァ〜〜〜〜‼︎」

 

「ああもう!話が通じないお婆さんね!」

 

 

リンリンが振り下ろす剛腕を機敏な動作で避けながら、ミルキィローズ は思わず愚痴を漏らす。

どれだけ声をかけようと、耳を貸さないどころか本気で殺しに来ているリンリンに、嫌気が差すのも無理はないだろう。

 

 

「このままじゃ持たないわ!動きを封じる事が出来れば…!」

 

「だったら私に任せて下さい!」

 

 

アクアの声に応えるように、前に進み出たのはレモネード。

彼女は素早い身のこなしでリンリンの背後に回ると、その身に宿るプリキュアとしての力を発動させた。

 

 

「プリキュア・プリズム・チェーン!」

 

「あァ⁉︎」

 

 

レモネードが叫ぶと同時に黄金に輝く鎖が飛び出し、瞬く間にリンリンを拘束する。

 

 

「やったわ!これで暫くは…って嘘⁉︎」

 

「グウゥ………‼︎」

 

 

安心したのも束の間、リンリンは恐るべき膂力で強引に鎖を引きちぎろうと腕に力を込め始め、徐々に鎖にヒビが入っていく。

余りにも強引な抜け方にレモネードも驚きの表情を浮かべるが、次の瞬間、鎖は派手な音を立てながら粉々に砕け散ってしまった。

 

 

「ママママ…!ゼウス!プロメテウス!」

 

 

鎖による拘束から脱出したリンリンは、ホーミーズである雷雲ゼウスと太陽プロメテウスを呼び出す。

その目に宿るのは狂気に近い食への欲求。

故に邪魔をする者に対し、容赦はない。

 

 

『はいは〜い!ママ!』

 

『ごめんよ、君達!ママの命令には逆らえないんだ!』

 

 

プロメテウスは楽しそうに笑い、ゼウスは若干申し訳なさそうにプリキュア達に対して呟く。

 

 

「何あれ?喋る太陽と雲?」

 

「呑気な事言ってる場合じゃないよ、ドリーム!ほら、来るよ!」

 

 

プロメテウスとゼウスを見たドリームが興味深げに言い、ルージュ若干呆れながらも直ぐに対応出来るよう構えを取る。

 

 

天上の(ヘヴンリー)ボンボン!」

 

「プリキュア・エメラルド・ソーサー!」

 

 

リンリンの手に掲げられたプロメテウスから、複数の火球が放たれる。

直撃すれば一瞬も耐えられないであろう業火を防いだのはミントだった。

 

 

「くだらねェ事しやがって…!だからよォ、お前ら…!」

 

 

攻撃を防がれた事が癪に触ったのか、リンリンは少し俯くと怒りの形相でミントに向かって走り出す。

 

 

「さっさとクロカンブッシュを持って来いって………言ってんだろうがァ〜〜〜〜‼︎」

 

 

「………⁉︎」

 

 

あの巨体からは信じられないスピードで走ってくるリンリンに、驚き反応が遅れてしまうミント。

リンリンの腕が彼女を捕らえようと伸ばされ…寸前で横から割り込んだドリームがミントを突き飛ばし、捕まってしまった。

 

 

「くぅっ………⁉︎ミント、大…丈夫⁉︎」

 

 

「ドリーム⁉︎そんな‼︎」

 

 

ミントが悲痛な声を上げ、リンリンに捕まえられたドリームを見上げる。

リンリンは理性のない瞳でドリームを睨みつけ、掴んでいる手に力を込めた。

 

「あぐっ………!」

 

「ハ〜ハッハッハ!捕まえたよ…!」

 

 

そして………リンリンの口から恐るべき宣告魂への言葉(ソウルボーカス)が放たれる。

 

 

 

ライフオアトリート(寿命かお菓子か)………⁉︎」

 

 

「……………?」

 

 

しかし、何も起こらない。

シーン…と、気まずい静寂が辺りを包み込む。

 

 

 

 

『嘘だろ…⁉︎あいつ、ママに1ミリもビビってないのか⁉︎』

 

 

 

 

リンリンの『魂への言葉(ソウルボーカス)』を受けながらも一向に寿命が滲み出てこないドリームを見て、驚愕するプロメテウス。

 

 

「ね、ねぇルージュ。ライフオアトリートってどういう意味なのかな?」

 

「私が分かるわけないでしょ!全く、アンタって子は………。とにかく、今の内に助けるよ!」

 

 

何処か緊張感がないドリームの問い掛けに、ルージュ達は呆れながらもドリームを助ける為に駆け出した。

 

 

「これが効かねェなら…こいつを喰らいなァ!」

 

 

業を煮やしたリンリンの手が、空中に浮かぶゼウスに突っ込まれる。

バチバチバチッ‼︎と尋常ではない雷の音が響き、ドリーム目掛けて振り下ろされようとした瞬間だった。

 

 

 

「獅子威し“(とぐろ)巻き”!」

 

 

「⁉︎」

 

 

地面が揺れ、リンリンの足元の土が盛り上がり蛇が獲物を締め上げるが如く、身体を締め上げていく。

不意を突かれたのもあってか、リンリンはドリームを掴んでいた手を離してしまった。

 

 

 

「ジハハハハ!食いわずらいのリンリン相手に良くやるじゃねェか!俺も加勢するぜ!」

 

 

 

不敵な笑みを浮かべながら、空から降り立つ金獅子のシキ。

敵か味方か今一つよく分からないシキの登場に、プリキュア達は困惑と警戒が入り混じった視線を向ける。

そんな中、プリキュア5のメンバーで唯一シキと話した事のあるドリームが思い出したように叫んだ。

 

 

 

 

「貴方は…あの時の変わった眉毛の人‼︎」

 

 

「真っ先に出てくる台詞がそれかよ⁉︎俺は変眉じゃねェッ‼︎」

 

 

 

 

最早定番となっている眉毛ネタに、思わずシキは頭を抱えるが直ぐに頭を切り替えると、プリキュア達に歩み寄る。

 

 

「まあいい。それより、リンリンを止めるんだろう?俺に良い作戦があるんだが…乗るか?」

 

「分かった!どんな作戦か教えて!」

 

 

シキの提案に、迷う事なく即答したのはドリーム。

いくら敵対していないとはいえ、まさかの即答即決にシキは一瞬だが呆気に取られた。

 

 

「おいおい、ベイビーちゃん。流石に警戒心なさすぎじゃねェか?何処の誰だかよく分からねェ奴に、テメェの命預けるってんだぜ?」

 

「う〜ん…でもさっき私がやられそうになってる時、助けてくれたし…それが理由じゃ駄目かな?」

 

 

ポリポリと頬を掻きながら屈託なく笑うドリームに言葉を失うシキ。

 

 

「おい、赤髪のベイビーちゃん……」

 

「皆まで言わないで…ドリームはこういう子なの」

 

 

やれやれと言った感じで溜め息を吐くルージュ。

 

 

「まあ、ドリームらしいわね」

 

「ドリームはいつもこんな感じよ」

 

 

アクアとミルキィローズも同意し、レモネードやミントもうんうんと頷いている。

 

 

「ジハハハハ!全く…!ロジャーの野郎とは少し違うが、似てやがるなお前は!なら、早速作戦を話そうじゃねェか。いいか、あいつが剣を………」

 

 

ドリームの姿に、僅かながら曾ての宿敵の影を見たシキは楽しそうに笑うと作戦を話し始めた。

 

 

 

 

「上手くいくかどうかは五分五分。それでもやるか?」

 

 

 

 

「「「「「「YES‼︎」」」」」」

 

 

 

 

「ジハハハハ!威勢の良い返事だ‼︎期待してるぜ、ベイビーちゃん達‼︎」

 

 

 

シキが作戦の内容について話し終えるのと、リンリンが拘束を無理矢理解くのはほぼ同時だった。

 

 

「金獅子ィ〜〜‼︎邪魔すんじゃねェよ!クロカンブッシュは何処だァ⁉︎」

 

「ジハハ!そんなもん俺が知るかよ!ただ…暫くは付き合って貰うぜリンリン!」

 

 

邪魔をするシキへ怒りを露わにするリンリンは、力技で無理矢理拘束を解くと、二角帽を宙へと投げる。

 

 

「ナポレオン…刃に移りな!ゼウス、プロメテウス!お前達も来い!」

 

『『『はいママ!』』』

 

 

宙へと投げられた二角帽は瞬く間に巨大な剣へと姿を変え、プロメテウスがリンリンの伸ばされた腕に纏わり付くようにしながら頭部へと移っていく。

更に巨体に見合わぬ身軽さでゼウスに飛び乗り、ナポレオンを大きく振りかぶるリンリン。

 

 

 

「喰らえよ、エルバフの槍…‼︎」

 

 

「…⁉︎プリキュア・ミント・シールド‼︎」

 

 

 

何か途轍もない攻撃が来る。

直感的に察知したミントは咄嗟に皆の前に進み出て盾を展開しようとするが…。

 

 

「やめろ、それは受けんじゃねェ‼︎」

 

 

「え?」

 

 

シキが叫ぶも時すでに遅し。

限界まで振り絞られたリンリンの巨腕から、破壊そのものと言うべき技が放たれる。

 

 

 

「威国‼︎」

 

 

 

放たれた一撃は、ミントの展開した盾を紙細工を潰すかのように粉々にし、近くの建物を軒並み破壊し尽くしていく。

まるで、巨大な槍で大地を抉ったかのような攻撃に言葉を失うプリキュア達。

 

 

「ミント!ミントは⁉︎」

 

 

アクアが顔を真っ青にしながらミントの無事を確かめようとするも、立ち込める土煙で視界が遮られてしまう。

 

 

「けほっ…けほっ…!私は大丈夫よ、アクア!」

 

 

土煙の所為で咳き込みながらも無事に現れたミント。

彼女はギリギリの所でリンリンの威国を避ける事が出来ていた。

最も、それは単純に運が良かったのと、リンリンが理性をなくしていた為に威国の精度が僅かながらに落ちていた事、更にこれまでの戦いの経験による勘がそれを可能にしたのではあるが。

 

 

「ハ〜ハハハママママ!ちょこまかと鬱陶しいガキ共だ…!纏めてスライスしてやるよォ‼︎」

 

 

グン!とリンリンの右手に握られたナポレオンが巨大化。

立ち尽くすプリキュア達に向かって、巨剣が一気に振り下ろされる。

 

 

皇帝剣(コニャック)破々刃(ハハバ)ァ〜〜〜〜‼︎」

 

 

轟音が炸裂し、攻撃の余波だけで大地が揺れ動く。

これをまともに喰らえば只ではすまない事は明白だろう。

 

 

「ママママ…さあ、金獅子!残るはお前だけだよ!覚悟しなァ‼︎」

 

 

リンリンは視線をシキの方へと向けて叫ぶが、当のシキは葉巻を吸いながら悠然と佇んでいる。

 

 

「ジハハハハ!馬鹿言ってんじゃねェよ、リンリン!覚悟すんのはお前の方だぜ‼︎」

 

 

「あァ⁉︎何を………⁉︎」

 

 

其処で漸くリンリンは気付く。

ナポレオンが、黄金色に輝く鎖のようなもので絡め取られている事に。

絡み付く鎖の正体。

それは、レモネードの放つプリズム・チェーンだった。

 

 

「このガキィ…!離し「今です、アクア!」⁉︎」

 

「プリキュア・サファイア・アロー‼︎」

 

 

リンリンがレモネードに気を取られた一瞬の隙を突いて、アクアが水の矢を放つ。

即ち、リンリンのホーミーズであるプロメテウスへと。

 

 

『ギャアアアア〜⁉︎アチ、アチチ⁉︎』

 

「プロメテウス⁉︎」

 

 

アクアの放った水の矢を喰らい、悲鳴を上げるプロメテウスにリンリンが驚きながら頭上を見上げる。

 

 

 

「今よ、ドリーム!」

 

「任せて!行くよ、ローズ!」

 

 

リンリンが動揺した隙を突くように、ミルキィローズとドリームは間近に近づくと全力の拳を打ちつけた。

 

 

「「プリキュア・ダブル・パンチ‼︎」」

 

 

「うっ………⁉︎」

 

 

その気になれば巨大なクレーターを作る程の威力があるパンチが炸裂し、リンリンが思わず呻く。

彼女の巨体が震える程の威力と言えば、その凄まじさは伝わるだろうか。

これが、プリキュア5のクレーター職人の力である。

 

 

「………って!誰がクレーター職人よっ‼︎」

 

「私何も言ってないよ⁉︎」

 

 

 

メタなツッコミをするミルキィローズに困惑するドリーム。

そんな2人に対し、リンリンが怒りの形相を浮かべて叫ぶ。

 

 

 

 

 

「ガキが舐めやがって…!おれが誰だか分かってんのかい⁉︎おれは… “ビッグ・マム”だぞ‼︎」

 

 

 

 

「「それがどうしたってのよ‼︎」」

 

 

 

 

 

 

 

覇王色の覇気をまき散らしながら叫ぶリンリンに、ドリームとミルキィローズは負けじと言い返す。

 

 

「言ったね…ママママ!クロカンブッシュも寄越さねェ、おれに逆らう…!なら、殺してやるよ!」

 

「くぅ………⁉︎」

 

 

リンリンの振り下ろした拳を反射的に受け止めたドリームとミルキィローズだったが、徐々に後ろに押されていく。

 

 

「力で…勝てると思うなァ‼︎小娘がァ‼︎」

 

「「きゃあっ⁉︎」」

 

 

ドォン‼︎と2人が吹き飛ばされ、近くの建物に突っ込んでいく。

 

 

「ミ、ミル〜〜〜〜………⁈」

 

 

吹き飛ばされたショックか、変身が解けて元の妖精の姿に戻ってしまうミルク。

 

 

「マ〜ハハハハ!クロカンブッシュがないなら死になァ!刃母(ハハ)「そこまでよ、リンリンさん‼︎」⁉︎」

 

 

倒れ伏すミルクに近づきナポレオンを振り上げるリンリンだったが、その時、皆が待ちわびていた声が響いた。

皆が向ける視線の先には、これでもかとばかりに積み上げられたクロカンブッシュの山を乗せたリヤカーと、息を切らせて立っている南野奏の姿があった。

 

 

「皆、遅くなってごめんね!パッションさん、お願い!」

 

「分かったわ!アカルン‼︎」

 

 

パッションがアカルンの力を使い、瞬間移動でクロカンブッシュをリンリンの目の前に移動させる。

 

 

「クロカン…ブ〜〜〜〜ッシュ♪」

 

 

満面の笑みでクロカンブッシュの山に飛び込んだリンリンは、猛烈な勢いで喰らい尽くしていき………。

 

 

 

 

 

「おいし〜〜〜〜い!これこれ〜‼︎」

 

 

 

 

 

かくして、“ビッグマム"シャーロット・リンリンの食いわずらいは一応の終息を迎えた。

幸せそうにお菓子を食べるリンリンの姿に、プリキュア5は若干疲れたような顔をしながら溜め息を吐く。

 

 

「なんとかなった………みたいですね」

 

「無茶苦茶よ、全く!」

 

「まあまあ、今はあの人を止められた事を喜びましょう」

 

「そうね。でも、まだ街にコワイナー達が沢山いるわ。気を抜くのは駄目よ」

 

「じゃあ早く行かないと!他の皆も戦ってるみたいだし、街の人達も助けないとね!」

 

「ドリームは元気ね…まあ、確かに休んでる訳にもいかないし、もう一丁やりますか!」

 

 

彼女達はそう言って、街で暴れているコワイナーを倒す為に駆けて行く。

 

 

「ジハハハハ!全く、忙しない奴らだ!にしても、5人がかりとは言え、リンリンを押さえ込むなんてな。俺が殆ど手出しする事なく終わっちまいやがった。仕方ねェ、白ひげと合流してロックスでも潰しに行くとするか………!」

 

 

つい先程まで、『四皇』ビッグマムと戦っていたと思わせない軽快さで走り去っていくプリキュア5の後姿を見ながら、シキは新しい葉巻きに火を付けながら豪快に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽が栄える平和な加音町は今、大混乱に陥っていた。

 

 

 

 

「コワイナ〜〜〜〜‼︎」

 

 

 

 

「ネガトォォォーーーーーン‼︎」

 

 

 

 

 

「に、逃げろ!怪物が来るぞー!」

 

「誰か警察、いや自衛隊を呼べ!」

 

「馬鹿、怪物が暴れてる何て誰が信じるんだ⁉︎」

 

 

叫び声を挙げ、慌てふためく一般市民達。

突如、何の前触れもなく現れた怪物達に彼等は何の抵抗も出来ず、逃げ惑う事しか出来ない。

 

 

 

「「「ハアアアアッ‼︎」」」

 

 

「「コワイナーァァァァ⁉︎/ネガァァァァァ⁉︎」」

 

 

逃げ惑う人々を追い回していた怪物達が、現れた少女達によって蹴散らされる。

 

 

「き、君達は………⁉︎」

 

 

「早く逃げて下さい!ここは危険ですから!」

 

 

人間では太刀打ち出来なさそうな怪物達を鎧袖一触とばかりに打ち倒した少女の1人ーーーーキュアブロッサムが呆然と立ち尽くす人々に向かって叫ぶ。

その言葉に我に返ったのか、住民達は慌てて逃げて行く。

 

 

「ひゅう!ブロッサムかっこいい!」

 

「ちょ、ちょっと!揶揄わないで下さいマリン!」

 

 

マリンに揶揄われたブロッサムが顔を真っ赤にしながら叫ぶと、フワリと音も無くムーンライトとサンシャインが2人の傍に降り立った。

 

 

「2人とも、遊びじゃないのよ?まだまだ敵は居るんだから、気を抜かないの」

 

「えへへ…ごめんなさい、ムーンライト」

 

「全くもう…」

 

 

緊張感のない2人に呆れながら言うムーンライト。

サンシャインも2人のやり取りに苦笑いを浮かべているが、次から次へと現れるコワイナーやネガトーンを見て僅かに顔付きを険しくさせる。

 

 

「それにしても凄い数ね。地道に倒していくしか………」

 

 

その時だった。

サンシャインが呟くと同時に、コワイナーやネガトーンが紙屑のように吹き飛ばされた。

 

 

「………⁉︎一体何が…?」

 

 

 

 

 

 

 

「弱すぎんだろ…!俺を舐めてんのか、雑魚どもがァ‼︎」

 

 

 

 

 

プリキュア達が見上げた先にいたのは、巨大な東洋風の龍。

この世における最強生物にして、『四皇』に数えられる1人。

 

 

 

 

百獣海賊団『総督』

 

 

百獣のカイドウ

 

 

 

懸賞金額46億1110万ベリー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ああああれって!砂漠の世界にいた大きい人⁉︎」

 

 

「ブロッサム!そんな大きい声だしたら…!」

 

 

 

魔女の力で飛ばされた砂漠の世界で、カイドウの強さとヤバさを目の当たりにしていたブロッサムは思わず叫んでしまう。

その声に気付いたのか、カイドウの視線がハートキャッチプリキュア達に向けられた。

 

 

 

 

「お前らは…あの時のガキ共か。丁度良い、雑魚の相手にも飽きてた所だ。俺の相手に「隙ありだ!」ホブ⁉︎」

 

 

 

 

プリキュア達を見下ろしていたカイドウに、何処からともなく飛来した光弾が降り注ぐ。

しかし、ダメージは殆ど無かったのか、煙の中から無傷で現れるカイドウ。

 

 

「ふん…まるで手応え無しか。化け物め」

 

 

「貴方は!サラマンダー男爵‼︎」

 

 

悪態を吐きながら悠然と現れたサラマンダー男爵に、プリキュア達は身構えた。

 

 

「プリキュアよりも、今は貴様の方が脅威だ…!早々に排除させて貰おうか!」

 

 

サラマンダー男爵はそう言うと、身体を巨大な赤色の西洋風の龍…ドラゴンへと姿を変化させていく。

 

 

「ウォロロロ!お前も動物(ゾオン)系の幻獣種か⁉︎何処のどいつか分からねェが、少しは俺を楽しませてみろ‼︎」

 

 

それを見たカイドウは興味深そうに眺めるとニヤリと笑みを深めた。

やがて、完全に姿を変化させたサラマンダーは、カイドウを見据えると口を開きエネルギーを溜め込んで行く。

カイドウもまた、受けて立つとばかりに口を開き莫大な力を収束させる。

 

 

 

 

 

両者の必殺の一撃が放たれるのは同時だった。

 

 

 

 

 

 

「ドラゴンブレス‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

熱息(ボロブレス)‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

ドンッ‼︎と互いの放った熱線がぶつかり合い、地震のような衝撃波が辺りを駆け抜けていく。

 

 

「ウォロロロ…相殺したか!少しはやるようだな」

 

 

サラマンダーと引き分けた事に対し、楽しげに笑うカイドウ。

一撃では駄目だと判断したサラマンダーは、更に間髪入れず2発めのブレスを放つ。

しかし、迫りくるブレスを前にカイドウは避ける素振りを見せない。

 

 

 

「サンフラワー・イージス‼︎」

 

 

 

咄嗟に、サンシャインが黄金色の向日葵のような形をした盾を展開し、迫るブレスから仲間達とカイドウを守る。

 

 

 

「チッ…余計な事すんじゃねェ!ガキは引っこんでろ!」

 

 

 

戦いに割り込まれたと感じたカイドウが、苛立ちを露わにしてサンシャインに怒鳴ると、それを聞いたマリンが怒りマークを浮かべながらカイドウに抗議した。

 

 

「ちょっと!守ってくれたサンシャインに対してその言い方はどうなのよー‼︎」

 

 

「黙れ!俺はそんな事頼んじゃいねェぞ!水を差すってんなら、お前らから始末してやろうか⁉︎」

 

 

言い争うカイドウとマリン。

四皇であるカイドウに臆する事なく言い争えるマリンは、ある意味凄いのかも知れない。

 

 

 

 

「ギャアアアアアア〜〜〜〜⁉︎」

 

 

 

 

言い争うマリンとカイドウの頭上から、悲鳴を挙げる巨大な何かが降って来る。

ドズン‼︎と轟音と共に落ちてきたそれは、ロックスの仲間としてプリキュアや四皇達と先程まで戦っていたトイマジンとサーロインだった。

 

 

 

更に少し遅れるようにして、プリキュア達に加えてリンリン・シキ・白ひげの3人も現れる。

 

 

 

「ハ〜ハハハママママ!随分と苛立ってるじゃないか、カイドウ!」

 

「ジハハハハ!お前もお前で楽しそうだな!俺も混ぜろよ、暇してんだ‼︎」

 

「ったく、滅茶苦茶に暴れやがって。このアホンダラどもが」

 

 

 

 

「お前ら…!何しに来やがった⁉︎」

 

 

 

何処からともなく現れた彼等に対し、カイドウは苛立ちを隠そうともせずに睨み付ける。

 

 

「ママママ!何、ちょっとコイツらと遊んでたのさ」

 

 

そう言って、右手に握るナポレオンでトイマジンとサーロインを指し示すリンリンに、カイドウは舌打ちをしながら人型へと姿を戻した。

 

 

「フン…こんな骨のない奴等を相手にすんのはウンザリだ。纏めて終わらせねェか?」

 

「なら、カイドウ‼︎久々にアレをやろうじゃねェか!」

 

「ジハハ…ロックスの頃にやっていたアレか?」

 

「このわけわからん奴らと戦い続けるのも面倒だ…!響とロックスの所にも行かなきゃならねェし、仕方ねェ。やるぞ、お前ェら‼︎小娘どもは下がってろ!巻き添え食らっても知らねェぞ‼︎」

 

 

白ひげがプリキュア達に注意を促すと、集う四皇達の雰囲気がガラリと変わる。

皆、各々の武器を構えると不敵な笑みを浮かべて佇んでいた。

 

 

 

 

「足腰衰えてねェだろうな、ババア‼︎」

 

 

「誰に口きいてんだ、小僧‼︎」

 

 

「おい、白ひげ!腕は鈍っちゃいねェよなァ⁉︎」

 

 

「こっちのセリフだ、ハナッタレ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「ま、待て!やめろ⁉︎」

 

「こ、この化け物どもめ‼︎プリキュアに復讐する事すら出来んというのか…⁉︎」

 

 

散々四皇達にボコボコにされたトイマジンやサーロインが何とか逃れようと後退りするも、最早遅し。

唯一、サラマンダーのみがブレスを放とうとしていたが………本当の天災の前では、そんな抵抗は無意味であると知る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

「ウォロロロ…‼︎」

 

「ママママ…‼︎」

 

「ジハハハハ…‼︎」

 

「グララララ…‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“覇海”‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴバァッ‼︎と、破壊という力そのものが具現化したかのような攻撃を前に、サラマンダーのブレスは拮抗すらせず消滅。

攻撃を放った彼自身も同じ道を歩む事になり、目も眩むような閃光と衝撃波が、トイマジン達を消し飛ばしていく。

衝撃波によって巻き上げられた土煙が晴れると、辺り一帯は更地と化し、何も残っては居なかった。

 

 

 

「ジハハハハ!ちょっとやり過ぎちまったか?」

 

「加減はしたんだ、こんなもんだろう。俺はもう行くぞ。お前も来るか?金獅子」 

 

 

 

周囲のプリキュア達が、眼前で引き起こされた光景にドン引きしているが、気にする事なく歩き去っていくシキと白ひげ。

 

 

「ハ〜ハハハママママ!カイドウ!弟分のお前は、おれと来るんだよ!」

 

「誰が弟だ!ふざけた事を抜かすのもいい加減にしろ、リンリン‼︎」

 

「おれに、でかい借りがあるのを忘れたのかい?それに…白ひげと金獅子がロックスとぶつかり合って、共倒れになれば好都合だ。だろ?」

 

「ウォロロロ…まあいい。だが、リンリン!お前だけに1人勝ちさせる気はねェぞ。精々気をつけるんだな…!」

 

 

リンリンとカイドウは不穏な会話をしつつ、まだ残っているコワイナーやネガトーンを潰しに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、奏」

 

「どうしたの、エレン?」

 

「私、あんな人達と戦って無事に生き残れたのが奇跡だって思うわ」

 

 

何度目か分からない遠い目をしながら呟くエレンに、奏は何とも言えない顔を向けた。

 

 

「まあ…うん、そうね。エレンは前にリンリンさんに寿命取られかけてたものね」

 

「ビビったら寿命抜かれるんでしょ?ビビらなければいいんじゃない?」

 

 

ビビらなければいいのでは?というアコの指摘に、エレンは肩を竦ませた。

 

 

「いやいや、姫様。あの人相手にビビらない人間って、そうそう居ないと思うんですけど」

 

「ま、そりゃそうよね………。そんな人が居るなら会ってみたいわ」

 

 

割と身近に、リンリンの『魂への言葉(ソウルボーカス)』を素で跳ね除けた例外(キュアドリーム)が存在しているとは夢にも思わない3人は、首を振ると先に響の所へ行ってしまった白ひげとシキの後を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

tips⑨『パワーハラスメント』

 

 

 

 

「頭を垂れて蹲え。平伏しろ」

 

 

「「「………!」」」

 

 

不機嫌さを隠しもしないロックスのその一言に、海賊達はすぐさま膝を付く。

彼等は、つい最近ロックス海賊団の傘下へ降った者達であった。

 

 

「俺が聞きてェのは一つ。何故、襲撃した海軍基地の奴等を取り逃がした?1人残らず殺せと言った筈だよなァ?」

 

「「「申し訳ありません!」」」

 

 

示し合わせたかのように平謝りする海賊達。

 

 

「誰が喋って良いと言った。お前らの下らねェ意志で物を言うな。俺に聞かれたことにだけ答えろ……そうだな、其処の図体のデカいお前」

 

「へ、へい!」

 

 

ロックスに指名された体格の良い男は冷や汗を流しつつ、すぐさま応える。

 

 

 

「俺よりも海兵が怖ェか?」

 

「いいえ!お、俺はロックス船長の為に命をかけて戦います!」

 

「ほう…お前は俺が言うことを否定するのか?」

 

「……ぎゃああッ⁉︎ゆ、許し……⁉︎」

 

 

 

無造作に振るわれたロックスの剣が、男の身体をなぞる。

斬られた痛みで悶絶する男は、のたうちまわりながらヒィヒィと情けない悲鳴を漏らした。

すると、今度は別の海賊がロックスの前に進み出る。

 

 

「せ、船長!俺はまだお役に立てます! もう少しだけ猶予を頂けるのならば必ず!」

 

「具体的にどれ程の猶予を? お前はどんな役に立てるんだ? 今のお前の力でどれだけの事ができるか言ってみろ」

 

「か、金と武器さえ貸して貰えれば!必ず成果を出して見せます!」

 

「何で俺がお前に指図されて動かなきゃならねェんだ。図々しいにも程がある、身の程をわきまえろ…!」

 

「違います、違います!俺は……ギャアアア⁉︎」

 

「黙れ。何も違わねェ。俺は何も間違えねェのさ。全ての決定権は俺にあり、俺の言うことは絶対だ。俺が正しいと言ったことが正しいんだ。お前は俺に指図した。死という支配が必要みてェだな………!」

 

「ひ………ヒィ⁉︎」

 

 

 

余りに理不尽なロックスと傘下の海賊達のやり取りに、他の船員達は面白そうに眺めている。

 

 

「ギャハハ!また船長に詰められてる馬鹿がいるぞ!」

 

「海軍なんぞにビビって、追撃も出来なかったんだろ?船長の命令を実行できなかったんだから、当然だな!」

 

「畜生、この場に白ひげと響のガキが居ねェのがつまんねェな。あいつら、今日は傘下に入ってねェ海賊を潰しに行ってんだろ?」

 

「ああ。今度あいつらに会ったら、目に物みせてやろうと思ってんだ。気に入らねェからな!」

 

「へェ、そうなのか?奇遇だな、俺はお前が気に入らねェよ!」

 

「ウッ⁉︎て、テメェ…やりやがったな⁉︎」

 

 

ロックスの折檻を受けている海賊達の傍らで、船員同士の殺し合いが始まる。

これがロックス海賊団の日常。

仲間殺しも厭わない最強最悪の海賊団。

船上での喧騒を余所に、海は憎たらしい程穏やかだった。

 

 

 

 

 

因みに、仲間殺しは遠征から帰ってきた白ひげと響によって一旦抑え込まれたそうな。

 

 

 




思った以上にビッグマム戦が長くなってしまった。
色々考えた結果、スイプリ復活回及びロックスとの戦闘回は次回に持ち越し。
前回、予告したのに本当に申し訳ありません。
 
 
 
 
 
キュアドリーム(夢原のぞみ)………YESプリキュア5GOGO!のリーダーにしてカリスマ。
ココの嫁。
この子のメンタルの強さとカリスマ性は化け物だな、と作者は思っている。
今話では、食いわずらいのビッグマムにソウルボーカスを投げ掛けられるも、全く臆していなかった為に寿命を取られなかった。
金獅子のシキからは『少しの違いはあるが、ロジャーに似ている』と評される。
激昂したビッグマムの覇王色も難無く受け流していた。
流石、2年間プリキュアやっただけはあるな。
 
因みに響ではなく、のぞみがONE PIECE世界に飛ばされていた場合、ロジャー海賊団に拾われて暴れ回るルートになる。
元々メンタル化け物な上に、海賊王とか冥王とかから戦い方を教わって帰ってくるから、戦闘力も化け物になる。
ナイトメアもエターナルも死にます。糞ゲーまったなし。
ダグラス・バレットと絡ませたら、良い対比になりそう。
この2人の掛け合いを見てみたい自分がいる。
 
 
 
キュアレモネード(春日野うらら)………ドリーム信者。のぞみ信者ともいう。
プリキュア5の作中では最早崇拝のレベルに達しているのでは?と思うくらいドリームを慕っている。
今話では、シキの指示でプリズム・チェーンをナポレオンに絡ませて動きを封じるという大役を果たした。
髪型が残念。
 
 
 
キュアルージュ(夏木りん)………プリキュア5のツッコミ兼苦労人枠。
「あんた他に友達いないの?」は名言。
今話では、他のメンバーとともにビッグマムを食い止めた。
プリキュア5の面子で一番純情乙女なのは、この子だと作者は思っている。
 
 
キュアミント(秋元こまち)………羊羹。
いや、ふざけてる訳ではない。
何故、羊羹なのかは原作を見るべし。
ナッツの嫁。
怒らせると一番怖いタイプだと作者は思っている。
 
今話では、盾を駆使してビッグマムの足止めを行うも、威国で殺されかけた。
しかし、それでも間一髪避けきったのは流石である。
 
 
 
キュアアクア(水無月かれん)………中学生というには無理があるんじゃないかと思うくらい声がババ・・・ゲフンゲフン!低い人。
間違ってもBBAなどと言ってはいけない。
ミルクの旦那。
 
今話では、リンリンのホーミーズであるプロメテウスをサファイア・アローで射抜き、ダメージを与えるという戦果を挙げた。
 
 
 
ミルキィローズ(美々野くるみ)………クレーター職人。
何故クレーター職人なのか分からない人はオールスターズを見よう。
厳密にはプリキュアではないが、最近は普通にプリキュアという扱いになっている。
正体は妖精のミルク。
かれんの嫁。
 
今話では、ドリームと一緒にビッグマムにクレーターパンチを喰らわせたが、硬すぎてダメージは然程通らなかった模様。
ブチ切れたビッグマムに吹っ飛ばされ、妖精の姿に戻ってしまったが、ビッグマムの足止めにはかなり貢献したのではなかろうか。
 
単純なパワーなら、全プリキュアで一番じゃないかと作者は思っている。
 
 
 
南野奏………今回も無事お菓子を作り、ビッグマムの食いわずらいを止めた。よくやったな。
 
 
 
ビッグマム………ナチュラルボーンモンスター。
食いわずらいを引き起こして暴れ回った。
正気に戻った後は、トイマジンやサーロイン相手に戦っていた模様。
シキ・カイドウ・白ひげによる合わせ技『覇海』でトイマジン達を消滅させた。
 
 
 
白ひげ・カイドウ・シキ………ほぼ上記と同じ。
『覇海』をノリノリでぶっ放し、格の違いを見せつけた。
 
 
 
 
 
 
以下、本編とは関係ない話↓
 
 
 
 
最近、プリキュア5を見返してるけど改めて見ると名言沢山あるなと思った。
 
 
『私はずっと同じ私じゃないの!昨日の私より、一時間前、一分前、一秒前!そんな私より!もっといい自分になりたい!!』
 
 
これ好き。
私もこんな風に前向きでいたいですね。
 
 
 
もう一つ好きなのが、「騙される方が悪いんだよ!」 という敵の発言に対しての反論↓
 
「自分でやっといて、なんで人の所為にするの!!騙した方が悪いに決まってるでしょ!!」
 
 
ド正論すぎて納得するしかなかった。
「○○される奴が悪い!」「○○された側にも問題がある!」という加害者側の論理を全否定する台詞。
個人的には爽快でした。
 
 
 
 
 
 
さて、それではまた次回。
お楽しみに!
 
………次で必ずスイプリ勢復活をやる。やるったらやる。
 


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