ヘパイスに転生してTSアフロディと仲良くなった (あっかーまん)
しおりを挟む

ヘパイスとして生まれて

勢いで書きます。独自の解釈でやります。文法や誤字脱字訳の分からない、や。の使い方しますがよろしくお願いします ‍♂️


突然死んでしまった俺は、生前ハマりにハマっていたイナズマイレブンの世界に転生してしまった。

 

しかも転生したのはなんと世宇子中の通称ヘパイス、部灰炎だったのだ。

 

自我が芽生えた5歳くらいの頃から自分が転生者なのだと気づいた。

 

何故自分が?とかなんでヘパイスなの?とか色々思うことはあったが一緒に暮らしている鍛治職人の叔父さんはすごい優しくて大好きだし、毎日仕事の見学や手伝いをして遊ばせてもらっていて、いつの日かそんな事も気にならなくなってきた。

 

なぜ叔父さんと暮らしているのかというと、俺の両親は俺を産んだ後、叔父さんに俺を押し付けて逃げたらしい。

 

いわゆる捨て子という奴だったのだ、でも叔父さんが仕事の傍ら俺をここまで育ててくれて、親がいなくて悲しいと思ったことは一度もなかった。

 

叔父さんも赤ん坊の俺をもらう前に奥さんを亡くしていて、ひとりぼっちは寂しくて俺を受け入れてくれたのだとか。

 

そんな一般的とは言えないけど、平凡で楽しい毎日にとある事件が起こった。

 

小学校入学間近に迫ったある日、ほぼ毎日鍛治職人の叔父さんの手伝いをしていた俺はある程度の刃物なら自分だけで作れるようになっていた。

 

この日も叔父さんといっしょに作業に没頭していて午後にさしかかったころ、叔父さんがお昼ご飯を買ってくるといい原付バイクに乗って近くの弁当屋に出かけた時に俺はまだ作業を続けていた。

いつもなら監督者である叔父さんが戻ってくるまで作業をやめていたのだが、仕事への慣れからくる油断からかその日は作業を続行した。

 

作業場は灼熱の鋼材やハンマーなどが転がっており、油断すれば怪我では済まないことはわかっていた。

しかし午前中からの作業の疲れからか落ちている鋼材に気づかずに躓いて右の膝を地面に強打してしまった。

 

激しい痛みで動かなくなった俺は泣き叫んで助けを求めたが作業場は激しく鉄を打つこともあり防音がしっかりしていて、外には届かない。

 

その後運良くすぐに帰ってきた叔父さんは俺を見て顔を真っ青にして、俺に近づき「どうした!?大丈夫か!?」と叫び、急いで病院へと連れて行ってもらった。

 

診断結果は右膝の骨折と靭帯損傷、医者からは普通に歩くまでにはかなりリハビリの時間を要するとのこと。

 

絶望感が胸を支配した、鍛治の仕事に制限がかかるのももちろんだが、小学校に入学してからは友達を作り、おにごっこやかけっこなんかして遊びもしたかった。

そして、サッカーもやってみたかった。

ヘパイスである自分はサッカーをやる運命だとも思っていたし、まだみぬ世宇子のメンバーとも会ってみたかった。

叔父さんの鍛治職人の仕事を継ぎたいとは思っていたけど、新しい世界で、生前大好きだったイナズマイレブンの世界で生きているならば原作の人達と関わりはもちたかった。

 

叔父さんは目を離した自分の責任だと悔やんでいたが、俺は自分が作業をやめなかったのが悪いのだと言ったら、強く抱きしめて「ごめんな…」と謝った。

 

俺はその後ずっと泣き、泣き疲れて眠ってしまって起きたら朝だった。

 

来月からは小学校に入学になる、足は不自由だが叔父さんを不安にさせないためにも頑張って通おうと誓った朝だった。




ありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小学校入学

オナシャス


右膝の怪我から約一月が経ったものの未だに松葉杖が取れないまま、入学式に参加した。

 

慣れない環境に緊張したものの家から遠くはないこの学校は松葉杖でも通学はそこまで大変では無いことに安心した。

 

クラスのみんなは足の不自由な俺を優しく気遣ってくれて、友達も何人かできた。

 

だが休み時間になると外に遊びに行ってしまい、俺はひとり教室から友達がサッカーをやって遊んでいるのを見ていた。

 

最初の方は気を使って一緒に教室で遊んでくれた友達もいたが、俺が俺に気を使わずに外で遊んで来ていいと言って追い払ってしまった。

 

正直、友達も先生も優しくいい学校だと思ったけど楽しいと感じた事はなかった。

 

暗い日々を過ごしていたそんなある日、運命的な出会いがあったのだ。

 

学校が終わり、足の調子が少し良かった事からかいつもと違う道で遠回りして帰宅しようと思った俺は普段ならあまり人がこない工場跡地の横空き地から壁をバンバンと叩く様な音が聞こえた。

 

不思議に思い静かに近づいてみると、そこには長いブロンドヘアーを華麗に揺らし、真紅のルビーのような瞳に、白く透き通るような肌を泥と汗に汚しながら壁にサッカーボールを蹴り込んでいる子供の姿があった、そのあまりの神々しさから見惚れているとうっかり松葉杖を滑らして転んでしまった。

 

「!?」

 

しまった、見つかってしまうと思った矢先、テクテクと足音が近づいてくる。

 

「誰だい?キミは?」

 

見つかってしまった、見惚れてたのバレたら変な奴だと思われるかも…

 

「お、俺はたまたま下校の帰りに通りがかっただけで…!」

 

「ここでなにをしていたんだい?」

 

「別に…」

 

「立てるかい?」

 

金髪紅眼の子はそう言って手を差し伸べてくれた、怪我をしたあの日以降他人の優しさから逃げてきた俺はそのあまりの美しさから思わず手を取ってしまった。

 

「あ、ありがとう…」

 

「気にしなくていいよ」

 

その時の俺はきっと間抜けな顔をしていたんだと今なら思う。

それくらいこの1人の人間の事を見ていた、なぜなら、コイツは無印イナズマイレブンのラスボス、世宇子中のエースストライカー、アフロディこと亜風炉照美なのだから。

 

「ボクの名前は亜風炉照美、キミの名前は?」

 

「え?あ、俺は部灰炎、小1」

 

「じゃあ同級生だね、よろしく」

 

「ああ、うん、よろしく…」

 

あっけにとられているとどんどん話を進めていく亜風炉照美。

 

見れば見るほど美形な顔立ちをしてると思う、生前もこれが本当に男なのか?とも何度も思ってた。

 

「さっきはボクに見惚れてて転んでしまったのかな?」

 

「なっ!ち、ちがう!!」

 

「でも見てたのは本当だろう?」

 

コイツ俺が見てたのを気づいてたのか!?焦った俺は…

 

「いや、俺がみてたのはサッカーだから!!」

 

こう言ってしまった…

 

「キミもサッカーが好きなのかい!」

 

うおぉ、目キラキラだぁ。

 

「あ、いやでも、俺足悪いからできないんだよな…」

 

「治せばいいじゃないか!!」

 

「ーーッ」

 

こいつノータイムで難しい事言ってきやがった。

あまりにも簡単に言うものだから、今まで自分が悩んできた事がバカらしく思えてくる。

 

「ッハハ」

 

「?なにか面白いこと言ったかな?」

 

人差し指を顎に当てながら首を傾げる姿はあざとくもあるが、とても可愛らしかった。

 

「あまりにも簡単にいうもんだからおかしくってさ」

 

「人間に不可能なことなんてないさ」

 

人間離れした容姿をもつコイツはそのまま

 

「脚を治して一緒にサッカーやろうよ」

 

そう言ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リハビリ開始

完成させることに重きを置きます


「ところでなんでこんなところでサッカーやってるんだ?」

 

「キミは嫌なことをきくんだね…」

 

こんな廃工場の空き地でサッカーやる人なんていないだろうしなぁ。

 

「みんなボクが女の子だから一緒にサッカーやると怪我させちゃうと嫌だからやってくれないんだ…」

 

「あぁ、そうなのか…って、え?」

 

いまボクが女の子って言った?

 

「?」

 

少し涙目で首を傾げる、可愛いが過ぎる…!

 

いやいや!原作では男だったはずだろ!!

 

「そ、そ〜なのか、それは亜風炉も大変だな」

 

動揺しながらそういうと

 

「む、苗字で呼ぶのはやめてよ!アフロみたいで恥ずかしいじゃないか!」

 

「え、じゃあなんてよべばいいんだよ!?」

 

「て、照美!」

 

顔を赤くしながら言う、恥ずかしいなら名字でいいと思うんだけどなぁ

 

かくいう俺も美少女を初対面で名前呼びは恥ずかしい年頃で。

 

「じゃ、じゃあ照美?」

 

「や、やっぱり亜風炉でいいよ!」

 

照れて前言撤回してきた。

 

「…亜風炉でいい?」

 

ん?そういえばこいつのアダ名っていえば

 

「そうだな、じゃあアフロディーっていうのはどうだ?」

 

「アフロディー?」

 

「そう!愛と美の女神の名前だ!亜風炉にピッタリだと思うよ」

 

「愛と、美の女神…」

 

目を大きくして驚いてる様子だ、振り返ると自分でも大胆な事を言ったと思った、遠回しではあるが相手に女神みたいに美しいって言ってるようなものだから。

 

「アフロディーかいいね、ありがとう!じゃあこれからはそう呼んでね」

 

「りょうかい」

 

気に入ってもらったようでなによりだ

 

「キミのアダ名も考えておかないとね」

 

そう言って笑う姿はまさに女神のようだった

 

「そういえばキミの脚はどこのお医者さんに診てもらったんだい?」

 

「え、普通の町の診療所だけど…」

 

あの時は病院を選んでいる暇もなかったし、あの日以来脚が思うように動かないのだから医者を変えようとも思っていなかった。

 

「ならボクのパパの病院で診てもらうといいよ!そして脚を早く治して一緒にサッカーをやるんだ!」

 

あ、コイツのオーラは金持ち特有の余裕感からくるものでもあったんだな。

 

そんなこんなでアフロディーの親父の病院に連れられてその日以降は毎日そこでリハビリすることになった。

 

大病院の治療とはすごいもので見たこともない機械で足の状態をみて、ストレッチやインナーマッスルのトレーニング、歩行の練習から食事管理まで徹底的にやってもらった。

 

時にはアフロディーもサッカーの練習の合間に手伝ってくれた。

 

若い時の回復力は凄いもので2週間も経つと松葉杖なしで歩けるようになっていた。

 

当初俺は医療費の問題で通院に難色を示していたが、アフロディーが父親に頼んでほとんどを免除してもらった。

 

 




ちなみに照美ちゃんとは違う学校の設定です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

青春始動

細かい設定は書きながらつけてるので間違いとか矛盾とかあっても読んでいる方の解釈に任せます^^


アフロディーパパの病院に通院してから2ヶ月が経ち、俺の脚は完全に復活した。

 

完治したのだ、今は普通に歩いていても痛みも違和感もない。

 

しかしまだ激しい運動はしてはいけないらしく1週間は安静に過ごすことになった。

 

この時からまた叔父さんの仕事を手伝い始め、アフロディーも時々作業場に連れて行き、叔父さんと一緒にお菓子を食べたりした。

 

「アフロディー、本当にありがとうな」

 

俺はアフロディーに感謝の言葉を伝えた。

 

「なんだい急に?」

 

とぼけるように言うアフロディー、普段から一緒にいるようになると、今までアフロディーのイメージのクールな感じとは裏腹になかなか茶目っ気があると言う事に気がついた。

 

もちろん、そういったところも魅力的なのだが。

 

「俺は脚がこのまま治らなくて、ずっとつまらない人生を送っていくんじゃないかと不安になってたんだ、でもお前に元気をもらって真剣にリハビリさせてもらって気づいたんだ、諦めない心の大切さに」

 

「だから、きっかけをくれたアフロディーにありがとうって言いたかったんだよ」

 

ここ数ヶ月の感謝の気持ちを素直に伝えるとアフロディーは

 

「どういたしまして」

 

と言って目を細めて笑った。

 

その表情が夕日に照らされていた事もあり、あまりにも輝いて見えて、自分の心臓が大きく跳ね上がり、息をするのを忘れていたのに気づくのには少し時間が掛かるぐらいだった。

 

その後、動揺した俺は上手く話せずに叔父さんの晩ご飯の準備を手伝うために帰宅した。

 

次の日、学校では久しぶりに友達と遊んだ、休み時間には鬼ごっこをしたり、体育の時間はドッジボールしたりなんかした。

 

そして放課後、ここ数ヶ月で待ち望んだ瞬間が訪れようとしていた。

 

いつもの廃工場の空き地で彼女を待つ、学校で走り回って脚の調子は絶好調だ、リフティングのイメトレをしながら待っていると

 

「やぁ、待たせたね」

 

ボールを持った女の子がやってきた、金髪で紅眼、幼いながらと完璧なほどの美少女がこの俺とサッカーをするためにやってきたのだ。

 

「そこまで待ってないよ、じゃあさっそくやろうぜ」

 

「フフッ、そんなに楽しみだったのかい?」

 

コロコロと笑いながら、持っていたボールをこちらに軽く蹴ってくるアフロディー

 

「よっと!」

 

イメトレ通りに胸でトラップして2.3回リフティングをしてアフロディーに返すと驚いた顔をしていた。

 

「キミ、今日が初めてだよね?」

 

「さんざんお前のプレー見てきたんだ、イメトレは完璧だぜ」

 

「そうか、じゃあお互い高めあっていけるね!」

 

この後熱中しすぎて夜暗くなり、ボールが見えなくなってから解散した。

そして2人共みごとに保護者に説教をくらったとのこと。

 

俺たちはこの日からほぼ毎日お互いにパス練習をしたり、1on1をしたりして技術や基礎を固めた、この時からアフロディーはオフェンスの能力が開花しており、そんなアフロディーの攻撃を防ぐために俺は自然とディフェンスの能力が上がっていった。

 

いつかコイツと試合に出れる日を楽しみに、今はサッカーができる喜びを全身で噛み締めていた。

 




ガンガンいくぞ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

亜風炉照美の休日

気合と愛と想像で書きます


亜風炉家の朝はどんなに忙しくても家族全員で食べる朝食から始まる。

 

「照美、最近帰りが遅いじゃないか、まだ日が長いからってあまり遅くまで外にいたら、パパは少し心配だな」

 

「ごめんよ、パパ。パパの病院で治療していた彼がサッカーを始めてね、あまりに上達が早いものだから楽しくてさ」

 

「あら、それってこの前言ってた部灰さん家の子のことかしら?珍しいわね照美が男の子とサッカーをやるなんて」

 

ボクの家ではパパが仕事で夜に居ないことが多いため、家族のコミュニケーションを取るために朝は必ず一緒に食べるようにしている。

 

パパは心配からボクが女の身でサッカーをやる事にあまり良くは思ってくれてないみたいで、ママはお気楽な性格からか面白がってとても応援してくれている。

 

「あぁ、部灰炎君だったか?ウチのスタッフのリハビリメニューをこなしていれば完治は間違い無いと思うが経過は良好そうでなによりだよ」

 

「リハビリとても頑張ってらしたものね!ママもリハビリ手伝った甲斐があったわ!」

 

ボクのママは院長夫人でありながらリハビリ科で働いてもいて、男性の患者さんからは聖母と言われているほど評判がいいほどだ。

 

「彼も2人には凄く感謝していたよ、今度ウチにお礼の挨拶に来たいって言われたんだけど、夕食に招待してもいいかな?」

 

「今どき珍しく律儀な子だな、もちろん僕は賛成さ、ママは?」

 

「もっちろん賛成よ!よーしママが腕によりをかけて料理振る舞っちゃおうかしら!」

 

「フフッ、じゃあ彼にも伝えておくね」

 

こんな感じで賑やかに朝食を済ませてからボクは身支度を始めた。

 

今日は土曜日、学校は休みだけどボクには優雅に休日を過ごしているヒマはない。

 

アンダーシャツとジャージに着替え、ボールとスパイクを持っていつもの待ち合わせ場所に向かう。

 

僕の家からあの空き地までの距離は自転車で10分程度、8月の朝の日差しはとてもキツく、何もしていなくてもほんのりと汗ばんでしまう。

 

しかし自転車に乗って風を受けていると涼しくて気持ちいいな、今度彼とサイクリングに行くのも悪くないかもね。

 

…本当、最近は彼の事を考えてばかりだな。

 

僕も最初から一人で空き地でサッカーをやっていたわけではない、入学当初は友達の女の子達とサッカーをやっていたけど、泥だらけになってしまうためかだんだんとやらなくなってしまった。

その後、男の子たちのチームに混ぜてもらおうと思ったらボクは女の子という理由で参加を拒否されてしまった。

 

それ以来、学校はつまらないものになってしまった。

 

だがそんなある日の下校中、いつもと違う道で帰っていた時、たまたまあった廃工場の空き地の壁がちょうどサッカーのゴールぐらいの大きさで、日々のつまらなさの苛立ちをボールに乗せて壁に打ち込んでいた。

 

その時に誰かの視線を感じると共に、物音がして見に行ったら彼がいたんだ。

 

あの日の怪我で弱っていた彼をみたら何故だか放っておけなくて、パパの病院を紹介した。

 

そして怪我を治して一緒にサッカーをやるんだと約束もした。

 

リハビリに励む彼はとても懸命で、「はやくお前とサッカーやるためだ!」と言われた時は胸が暖かい気持ちになった。

 

とても嬉しかった、誰かに一緒にサッカーをやりたいと思われているという事が。

 

リハビリは順調に進み、松葉杖を使わなくなってからは彼の育ての親である叔父さんの作業場に連れて行ってもらった。

 

彼の叔父さんはとても優しくて、ボクの事を娘ができたみたいだと言って喜んでくれて、お菓子も頂いた。

 

そしてリハビリ開始から2カ月したら彼は完治していた、驚くべき回復力だと思うけどまだ子供だからなのかな?

 

何にせよ初めて彼とやったサッカーは今までで1番楽しかった、初めてやったとは思えないほど上手だったし、それ以来ほぼ毎日練習している。

 

こんな日がずっと続けばいいな、なんて考えてしまう。

 

この気持ちはいったいなんだろう?

 

サッカーをやっている無邪気な彼の笑顔を見るとボクも笑ってしまう。

 

叔父さんと一緒に作業場で必死に仕事をしている彼を見ると鼓動が速くなる。

 

あぁ、そうか。

 

これが、

 

 

 

 

 

「これが弟ができた時のキモチなんだね」

 

 

 

 

 

本当の気持ちは神のみぞ知るという。

 

 




筆者は無印イナズマイレブンしかしりません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

純情な感情で

毎日書いていきたいのですが、見切り発車で始めたのでなかなかストーリーを考えるのが難しいです。



アフロディーと空き地でサッカーをやり始めて数ヶ月が経ち、俺たちは二年生へ進級する事になった。

 

怪我が治ってからの日々は毎日忙しく、放課後にアフロディーとサッカーをやっては夜は寝る前まで叔父さんに鍛治仕事について教えてもらっていた。

 

この二足の草鞋生活は飽きることがなく、その生活の充実感からも時間がいつくあっても足りずに、風のような速さで日々は過ぎていった。

 

が、ある疑問が俺の頭の中に一つあり、それは日々を重ねるごとに大きくなっていた。

 

 

 

なので、その疑問を本人にぶつけてみた。

 

「なぁ、アフロディー?」

 

「なんだい?」

 

優雅にリフティングをするアフロディーに向かって

 

「お前、俺のこと名前で読んだ事あったっけ?」

 

と聞いた。

 

「ーーッ!?」

 

動揺してボールを地面に落とすアフロディーは引きつった笑みを浮かべながら

 

「よ、呼んだことあるんじゃないかなー?」

 

と答えた。

 

「いーや、ないね!いつもお前はキミとか彼とかで俺のこと名前で呼んだことはないはずだ!!」

 

「ギクゥ」

 

この反応からして呼んだことはまずないとみた、そもそも俺の記憶に無いのだから本当にないんだろうな。

 

「…そもそもおれの名前わかるか?」

 

俺は少しからかうように問うと

 

「失礼なっ!それくらいもちろんわかるよ!」

 

激しい反論が帰ってきた。

まぁ流石に友達のフルネームくらいは覚えておいてもらわないと流石に傷つくからな。

面白くなった俺はさらにからかうように

 

「へぇ〜?じゃあ呼んでみてよ、名前でさ」

 

と言ったら彼女は頬を赤らめて俯き、目線だけこちらを見ながら弱々しく

 

「…へ、部灰…炎君」

 

「…ッ」

 

破壊力抜群の上目遣いは、第二次成長期前の俺であってもドキドキして、耳が熱くなるのがわかってしまうほど。

 

「な、なんだよぅ名前呼んだんだから、返事ぐらいしてよ!」

 

「お、おう!」

 

ヤバいヤバい!俺もめちゃくちゃ動揺してどうする!!

 

「もしかして、今まで名前で呼ばなかったから怒ってた?」

 

「いや!そんなことはな「ゴメン!ボクもいつか呼ぼうとおもっていたんだけど、キッカケとかつかめなくて、あと恥ずかしくて…」

 

まずい、アフロディーが勘違いして涙目になって謝ってきてる、誤解を解かなければ!

 

「違うんだ!お前があんまりにも可愛い呼び方するもんだからついボーってしちゃったんだよ!」

 

「かっ、かわいい!?!?」

 

「ハッ!?」

しまった!動揺しすぎて本音出た!!

 

「その…あ、ありがとう、周りの女の子達からはいつもカッコいいって言われてたから慣れてなくて…」

 

たしかにアフロディーは髪こそ長いものの中性的な顔立ちをしていて女子からしたら王子様みたいにみられてしまうのかもしれない。

 

「そ、そうなのか…」

 

「だから、その…嬉しかったよ、ありがとう」

 

アフロディーの“涙目上目遣い照れ微笑み”は効果バツグンだった。

 

動揺がピークに達した俺は持っていたボールを蹴り、全てを振り払うようにドリブルをしてアフロディーから離れた。

 

これが後のダッシュストームであった。

 




ヘパイス原作だと照美ちゃんより年上やん…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

名前を呼んで

とくにありません…


「来月から韓国に留学する事になったんだ」

 

 

たった一言で目の前が真っ白になるとはこの事だったのか。

 

この世界に生まれて9年と少し、親に捨てられ、怪我もしたが乗り越えて行けたのは叔父さんやアフロディが側にいたからだ。

 

「でも大丈夫!ずっと向こうに住むわけではないし、パパの仕事が順調に進めば年内には帰ってこれるからさ」

 

そんな俺を気遣ってから話を補足してくれるアフロディ、どうやら俺の顔色はそんなに良くなかったらしい。

 

「ずいぶん急じゃないか?」

 

心配させたくはないから取り繕うように質問する、それにしても来月には引っ越しってことはかなり急だと思うのも本音だし。

 

「…」

 

バツの悪そうな顔をするアフロディはゆっくりと話し始めた。

 

どうやらアフロディの父親はかなり医療に対して研究熱心らしく、これまでも海外の医療を学びに世界中飛び回っていたらしい。

 

そして今回、韓国での研究にアフロディの父親が招待されたのが半年前との事。

 

そこからはアフロディは俺に留学の事を言おうと思っていたが、中々言い出せずにいよいよ来月になってしまった。

 

「ごめんね、直前で言って…」

 

俯きながら暗い表情で話すアフロディを見ると、コイツが来月には居なくなってしまうという現実が押し寄せて来るのがわかる。

 

「…じゃあ、残りの1ヶ月めちゃくちゃサッカーやらないとな!!」

 

俺も悲しいけど日本生まれ日本育ちのアフロディが地元を離れて生活するのは不安が大きいはずだ。

 

なのにこのままお通夜みたいな雰囲気で見送るなんて絶対に嫌だ!

 

笑顔だ見送って、また笑顔で再開する!

 

これ以上アフロディに暗い表情はさせたくない、俺は自分の心の中でこの気持ちを強いものとした。

 

「…うん!そうだね!一生離れ離れではないし、すぐに戻ってくるようにパパにも言っておくから!!」

 

「その意気だ!それにしても韓国かぁ行ってみたいな俺も!」

 

「アハハ、じゃあ一緒に行くかい?」

 

笑顔になら、冗談をいうアフロディ。

 

うん、やっぱりコイツには不敵に微笑んでいてもらったほうが俺も嬉しい。

 

その後俺たちはいつものようにサッカーをやったが、白熱しすぎて泥だらけになり終わった後には疲れて10分くらい動けなくなっていた。

 

来月から小学3年生、それよりも俺は友達が遠くに行ってしまうという不安を拭うように今日はサッカーをしていた気がする。

 

 

 

 

そして意識していても日々が流れるのは早く、期限の1ヶ月はとっくに経ってしまった。

 

今日は日曜日、出発の前日の土曜日は準備のためアフロディに会っていない。

 

なので見送りのため俺は今アフロディの家に向かっている。

 

アイツがいつ日本に戻るかはわからない、早くて年内とはいっていたが確実とは言えない。

 

正直、俺は笑顔で見送れるかわからなかった。

 

でもアイツを不安にはさせたくはない、しかしもう会えないかもしれないという不安はこの1ヶ月で日に日に増していき、昨日は飯が喉を通らずに叔父さんを心配させてしまった。

 

そんな事を考えながら歩くともうすでにアフロディ宅の前までついてしまった。

 

しかし怖くてチャイムが押せなかった、このチャイムを押したらアフロディとの別れが始まってしまう気がして。

 

家の前でウロウロしていると後ろから声をかけられた。

 

「こんにちは、部灰君」

 

振り返るとアフロディの父が立っていた。

 

「あ、おじさんこんにちは、ご無沙汰してます」

 

「大きくなったね、会うのは怪我が完治した後の夕食パーティー以来かな?」

 

「そうですね」

 

「今日は晴れて良かった、引っ越しの準備も順調だしフライトも上手くいきそうだよね」

 

アフロディの親父は軽やかに言いながらこちらを見る

 

「…」

 

俺はまだ気持ちの整理がつかず、気の利いたことも言えないまま黙り込んでしまった。

 

するとアフロディの親父は真剣な顔をして腰を屈めて目線を合わせて言った。

 

「部灰君、照美と仲良くしたくれてありがとう、今回は僕の仕事の関係で君と照美を離れ離れにしてしまって申し訳ない。

最初は妻と照美を置いていこうとも考えたんだけど、照美はあぁ見えても寂しがりやだからね…」

 

「でも必ずまた日本に戻ってくるからその時はまた照美と仲良くしてもらってもいいかな?」

 

と言ってきた。やっぱりアイツは今日居なくなってしまう、そう思うと俺は感情が抑えられなくなり。

 

「…知ってますよ」

 

「?」

 

「アイツが寂しがり屋なのも、強がりなのに時々恥ずかしがり屋なのもサッカーが大好きなのも全部…!!」

 

抑え切られない感情は言葉で、目からは滴が溢れる。

 

「そうか、ありがとうね部灰君…」

 

アフロディの親父はそう言うと頭に手を乗せガシガシと撫でてくれた。

 

ゴツゴツした手で撫でられた頭はすこしボサボサになったが、暖かかった。

 

すぐに涙を吹いた俺は揺れていた気持ちを再確認した、笑顔で送って笑顔で再開する。

 

そのためにもアフロディにお別れを言わなくては。

 

「照美なら部屋で君を待ってると思うよ、呼んでくるから少し待ってて」

 

そういうと家の中に入って行った。

 

しばらく待つと大きな玄関の扉が開いて人が出てくるのが見える。

 

長く綺麗なブランドの髪、大きい深紅の瞳は見る物を魅了する宝石のような輝きを持つ、しかしキャップを深くかぶっていてその瞳はこちらからは見えない。

 

近づいてくるアフロディの表情が読めないまま俺は問いかけた。

 

「あ、アフロディ?だよな?」

 

「う、うん…」

 

暗い声音のまま返事をする。

 

「どうしたんだよ帽子かぶって、お別れ前に顔くらい見せてくれよ」

 

そう言って帽子を取ろうとする俺から素早く逃げるアフロディ、そんな動き練習でも見たことないぞ…

 

「い、嫌だ…」

 

バツの悪そうに答えるアフロディ

 

「なんでだよ!?もう顔も見たくないっていうのかよ!」

 

そんな奴だとは思わないが理由を知りたいためにカマをかける。

 

「…笑わない?」

 

頭を抱えながらそういうアフロディ、笑う?なにを笑うっていうんだ?

 

「あたりまえだろ!今日はお別れを言いにきたんだぞ、顔を見ずにお別れなんて方が俺は嫌だぞ!」

 

「わ、わかったよ…約束だからね…?」

 

そう言いながらゆっくり帽子を取ったアフロディの顔は少し赤くなっているもののいつものアフロディの顔だ。

 

「あ…」

 

思わず声が出てしまった、その理由はアフロディの髪にある。

 

 

前髪がぱっつんになっているのである、しかもちょっと切りすぎてる感のある…

 

「い、いや似合うと思うよ、イメチェンか?」

 

笑いはしないものの動揺した俺は引き立った顔のまま言った。

 

「お別れのためにオシャレしようと思って美容室にいったらこうなった…」

 

まさか俺に良く見せるために髪を整えに行ったら思ったより切られたのか!

 

俯きながら耳まで真っ赤にするアフロディ。

 

「アハハ!そうだったのか!可愛いじゃん!!」

 

なんだかお別れで意気込んでいた俺は気が抜けて笑ってしまった。

 

「あ!笑ったな!」

 

「いや可愛いって言ったじゃん!!」

 

「ボクを笑ったことは許さない!!」

 

掴みかかってくるアフロディから逃げながらなだめてなんとか普通に話をする事ができた。

 

 

その後はいつもの雰囲気で談笑していたら出発の時間になってしまった。

 

「色々あったけど楽しかったよアフロディ、向こうでもサッカーやるんだろ?観光しまくって下手になるなよ?」

 

「フフッ、キミこそボクがいないからって練習サボってまた会ったときにボクの相手にならないなんて事ないようにね?」

 

最後までからかいう俺たちは不思議とそこに寂しさは無かった。

 

「じゃあまたなアフロディ!」

 

俺はそう言って手を出して握手を求める

 

「…うん!」

 

一瞬迷ったアフロディは俺の手を取り

 

「ッ!?」

 

引き寄せ抱きしめて

 

「…早く帰ってくるから忘れないでね」

 

と消え入りそうな声で呟いた。

 

「たった1人の親友を誰が忘れるんだよ」

 

俺は強気にそう言って、抱きしめ返したが目が熱くなっているのがわかった。

 

「…ボクの名前を呼んで欲しい」

 

泣きそうな声だった、きっと泣いてるんだろう、抱き合っているから顔は見えない。

 

「…照美」

 

ハッキリとした声でアフロディの名前を呼ぶ。

 

数秒経って離れたアフロディは腕で顔を拭って、

 

「…うん!」

 

はにかんだような笑顔でこちらを見た。

 

そんな顔をみて俺は確信した。

 

あぁ俺は神様に恋をしてしまったんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「またね、部灰君!」

 

車に乗り込んで窓から話すアフロディ。

 

エンジンがかかり、走り出す車。

 

窓から顔と手を出して手を振るアフロディ。

 

俺はアフロディの最後の笑顔を思い出しながら車に向かって手を振り叫んだ。

 

「またなー!照美ーー!!!!」

 

桜の舞う並木道を帰りながら俺は照美との日々を思い出し空を見上げた。

 

 

 

 

 

 




青春といえば出会い、別れ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

風を感じて

はやく本編に絡ませたい…!


親友であり、俺の思い人でもあるアフロディこと亜風炉照美が引っ越してから一月、俺はとある場所に訪れていた。

 

「ここが天ノ使FCか…」

 

地元に最近できたクラブチームで、監督には元Jリーガーの紫電選手が監督を務めていてクラブ発足一年目ながらフットボールフロンティアU-12大会ではベスト16という成績を叩き出している。

 

強豪のクラブチームに入ってレギュラーを勝ち取れるかという不安はあったが、どうせやるのならば強いチームで自分の技術を磨いて上手くなりたいと思ったし、今まで照美との練習ばかりでチームの練習はした事がなかったから、中学生になるまでに連携とかの技術も学ぶ必要があった事。

 

そして、全国を制覇しU-12の世界大会に出場することがあったら、もしかしたら照美に会えるんじゃないか、という淡い期待も持っていた。

 

今日は地元の大学のグラウンドを借りて練習との事で、俺はキャンパスを入ってすぐ近くのグラウンドで練習している同い年くらいの少年達を見つけ、紫電監督と思われる人に声を掛けた。

 

「すみません、今日体験の部灰ですけど」

 

「おぉ!君が部灰君か!待っていたよ、早速だが着替えてアップを始めてもらってもいいかな?」

 

ツンツンしている赤髪に大きい瞳の高身長の筋骨隆々の男はまさに熱血漢そのもので、俺は若干引きながらも大人しく着替えアップをすませた。

 

 

「よし!ではこれから入団テストを行う!」

 

「えぇ!!?」

 

いきなりテスト!?入るつもりだけどまだ体験のはずだけど!?

 

「?ウチに入りたいんだろう?なら申し訳ないが監督者が私しかいなくてね!管理の関係で人数を制限させてもらっているんだ!」

 

ハキハキ説明してくれる監督、ざっとみて20〜30人くらいいるこのチームの管理者の大人が一人なのは厳しいだろう。

 

「ルールは簡単だ!ウチの子とPK対決をして勝ってみせてくれ!

しかし!キーパーも自分でやる事!交代制のPKというわけだな!!」

 

 

まさかのPK対決、しかも自分でキーパーもやるときた。

 

 

しかし俺だってだてに照美のシュートを受けてきたわけじゃない、キーパー専門じゃないからといって、ここで負けたら照美に笑われちまうな。

 

「わかりました、誰と対決するんですか?」

 

誰とやろうとも絶対に勝つ!

 

「いい目だな!」

 

笑いながらそういう紫電監督はグラウンドにいる選手達に向かって、1人の名前を呼んだ。

 

「戒〜!!入団テストをするから来てくれー!!」

 

“戒”と呼ばれた子はボールを置きゆっくりとこちらに近づいてきた。

 

その容姿に俺はとても驚いた。

 

 

キラキラ輝く銀髪をセミロングにし、ダボダボのユニフォームを着て、キーパーグローブを外しながら歩いてくるその頭には何故か月桂冠を付けているからだ。

 

「この子が入団希望の子?どーせ大したことないんだから私が相手する必要あるー?」

 

こっちを指差しながら紫の瞳で明らかに上から目線で煽ってくる。

 

「こら!ウチのメンバーになるかもしれない子だぞ!」

 

フォローしてくれる監督。

 

あれ?銀髪に月桂冠に紫電…

 

 

 

思い出した!!

 

コイツは原作イナズマイレブンのアフロディの没デザインの紫電戒だ!!

 

つまり監督と戒は親子で俺の記憶が正しければ紫電戒は男のはず…!

 

「まぁ一応アイサツしとくわ、私は紫電戒、この天ノ使FCの正ゴールキーパーやってるわ」

 

「お、おう…俺は部灰炎、小3」

 

わからない!照美もそうだけどイナズマイレブンのキャラは見た目だけで性別を判断するの難しすぎるわ!

 

「なーんだ私と同学年か、絶対年下だと思ったのに」

 

一人称が私だから女の子か!?

 

いや照美はボクっ娘だから…逆に男っていう可能性がある!?

 

そんな感じでひとりでモヤモヤしていると

 

「ちょっとアンタ、なにひとりで百面相してんのよ」

 

「ご、ごめんちょっと考え事しちゃってて…」

 

「私と話してる時になにを考えてるのよ」

 

いやもう直接きいてみちゃうのもアリか…な?

 

「えっと君は女の子…だよね?」

 

すると紫電は一瞬ポカンとした後、つり目がちな目がどんどん鋭さを増していき

 

「…それは私が男に見えるって事?」

 

めちゃくちゃ怒らせてしまった

 

「いやいやそういう訳じゃなくて!…そう!確認だよカクニン!

可愛い子すぎて逆に女の子じゃないんじゃないかな〜ってさ!」

 

あー自分でもなにいってるかわかんないぃ…

 

「ま、まぁ私の可愛さに気付けるなら多少認めてあげてもいいわ!」

 

ほんのりの頬を赤く染めながら認めてくれた紫電、なにを認めるのかわからないけど怒りが逸れたのならヨカッタ…

 

「あ、そんなことより父さんから聞いてると思うけど今からテストするから、絶対落ちると思うけど、私を楽しませられるぐらいせいぜい頑張りなさい」

 

突然発破をかけられた、いまいちここにきてから落ち着きがない俺だったがいざサッカーをやるという雰囲気になったら不思議と落ち着いてくる。

 

「おう、めちゃくちゃ楽しませてやるよ!」

 

5月の爽やかな風が吹く中、俺の転生人生を大きく左右する入団テストが行われようとしていた。

 

 

 




紫電戒ちゃんの性格はわからなかったので高飛車っぽい感じになっちゃいました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

激突、紫電戒!

筆者にサッカー経験はありません…




「ルールは5本蹴って多い方の勝ちよ、私が3本先取してアンタがゼロなら私の勝ち、簡単でしょ?」

 

紫電はそう言いながら、ペナルティマークの上にボールを乗せる。

 

「わかった」

 

俺も初めて着けるキーパーグローブのマジックテープを確認して、目線を紫電に向ける。

 

見るからに自信満々なのが分かる

 

「それじゃあ行くわよ!」

 

紫電は2、3回その場でジャンプして助走の準備に入った。

 

 

PKとは一見簡単にゴールを奪えるサッカー内でのミニゲームに思えるが、その失敗率はプロでも低くない。

 

最適な助走、コース、ボールを蹴る強さ、全てを完璧にできたとしても失敗に大きな影響を与える物がある、それはプレッシャーだ。

 

相手の行動を読み、自分の思考を読み取らせないように勝負する。

 

結局のところ心理戦である、そしてPKにおいて相手に最も心理的ダメージを与えるといえるのは…

 

 

 

最初のゴールを防ぎ、自分が先にゴールを決めること。

 

 

「よし、こい!!」

 

つまりこのシュートは絶対に止めらければならない!

 

中腰で手を広げ全集中をしてシュートを待つ、紫電はゆっくりと助走をとりボールに近づくと素早くシュートの体制に入った。フェイントだがアフロディとの特訓で経験済み

 

紫電が大きく走り出し右足を振り上げシュートをする、目線は左だが蹴り足が若干ボールの右側(紫電から見て)を蹴っていたのを視て俺はとっさに右へ飛んだ。

 

そのままボール弾こうとしたときボールが少し右にブレて俺の顔面に激突した。

 

「ヘゴォッ!?」

 

「!?」

 

ボールはそのままゴールの外へいき、俺は無事にゴールを阻止した。

 

「あ、あんた大丈夫…?」

 

「…ウン、ダイジョブ」

 

恥ずかしさと痛みで声が小さくなってしまった。

 

飛びすぎで顔面ブロックしてしまったが、紫電は明らかに動揺していた、俺がゴールを阻止したというのもあるが顔ブロの効果もあったのだろう、心理的には俺が優勢だ。

 

「今度は俺の番だ!」

 

俺はシュートには自信はあまりないが、先制を抑えた事によって心に少しだけ余裕ができた。

 

狙いはゴールの左上、先ほど紫電が狙ってたコースをあえて狙い裏をかく。

 

助走を取りボールを蹴る前に紫電の方を見て俺は驚愕した

 

彼女はロクに構えも取っておらず、ただ俺がボールを蹴るのを待っていた。

 

一瞬同様したが、俺はそのまま目線のフェイントから左端へシュートを打った。

 

コースはやや低いが、スピードはある。

 

確実に決まったと思ったその瞬間、紫電は右手を前に出し

 

「チェイン・オブ・ヘブン」

 

そう呟いたときに紫電の背後から無数の黄金の鎖が飛び出しボールに巻きつき、紫電の手の中に収まった。

 

「…まじかよ」

 

「悪くないシュートだとは思うけど、私からゴールを奪うのは諦めなさい」

 

どこか冷めたような目でみてくる紫電。

 

まさかこの歳で必殺技を習得しているとは、そしてこの完成度はまさに神技といえるだろう。

 

才能もあると思うが、きっと死ぬほど努力してきたのだろう。

 

そう思わせられるほどの凄みが彼女から伝わってきた。

 

紫電のどこか諦めたような、つまらなさそうな態度は自分に匹敵する相手がおらず高め合えるパートナーが居ないという天才ゆえの孤独から来るものだったのか。

 

 

 

 

 

 

 

その後、調子を崩され紫電に1点を取られたがなんとか残りのシュートはセーブしたものの、俺のシュートは全て止められての俺の最後のシュートの番になった。

 

ボールを持ったまま呆然と立ち尽くす俺に向かって紫電は

 

「もういいわ、アンタ結構センスあるしそれなりに楽しめたわよ、パパには私から入団させてもらうように告げ口しておくから今日はもう帰りなさいな」

 

と呆れたような顔で言った。

 

「…諦めろっていうのか?」

 

「そういう事になるわね」

 

諦めることは簡単だ、もう入団もさせてもらえるらしいし、天才の紫電にセンスを認められているのだ、入団後のレギュラー入りも難しくはないだろう。

 

 

 

 

 

 

ーーーこんなんで終わり?ハハッ!そんなわけねぇだろ!!!

 

ここで引いてやすやすと逃げ帰るようじゃい今までアイツと練習してきた自分を否定する事と一緒だ。

 

それにこのイナズマイレブンの世界っていうのは諦めないで挑戦する者に勝利の女神が微笑むって事を俺は知っている!

 

「悪いけどここで帰るわけにはいかない、ぜってーお前から点取ってみせるからさっさと構えろ!!」

 

啖呵を切って俺はボールを置き、紫電を見る。

 

「バカね、何回やってもおんなじよ」

 

さっさと打ってきなさい、と言う紫電は完全にこちらを嘲笑っていた。

 

そこは気にしない、気にするとすれば紫電のチェイン・オブ・ヘブンをどう破るかだ。

 

ーーーやるしかねぇな必殺シュート…

 

打てるかは分からない、以前から照美と必殺シュートを練習していたが未だに俺も照美も打てたためしはない。

 

でもやるしかない、できるできないじゃない、やるんだ!

 

イメージしろ、ひたすら真っ直ぐに、槍の様にゴールに突き刺さるボールの軌道を。

 

この悔しさも、サッカーに対する情熱も、これまでの照美との日々の思い出も、一つ一つ三叉の槍の穂先に織り込んで。

 

俺はボールに向かって走り出す、加速して一気に近づく、紫電は未だ余裕の態度だ、だが関係ない。

 

右足を天へ向けて大きく振りかぶり、振り下ろす。

 

狙うはゴールの中心、ボールの真ん中をトゥキックで当たることによってシュートの威力に全振りする。

 

「くらえ!トライデントアロー!!」

 

「ッ!! チェイン・オブ・ヘブン!」

 

先程とは何かが違うことを感じ取った紫電は、すぐに必殺技を放つ。

 

俺のシュートにはぼんやりとだが三又の槍が浮かんでゴールへ真っ直ぐと向かった。

 

だが紫電のチェイン・オブ・ヘブンの鎖に阻まれ、彼女の元へボールが戻ろうとした時、鎖に段々とヒビが入っていった。

 

そしてそのヒビは広がり、鎖は砕けた。

 

 

しかし、ボールはゴールポストに当たり得点にはならなかった。

 

「う、嘘よ…こんなの…!」

 

尻餅をついた紫電は自分の必殺技が破られたことを信じられずに呆然と座り込んでいた。

 

俺は弾かれたボールの行方を見て自身の敗北を実感した。

 

でも不思議とさっきまでの敗北感や悔しさなどは感じていない。

 

ーーーあぁ、やっぱりサッカーって楽しいな

 

俺は紫電との真剣勝負を楽しんでいたのだ、そして土壇場での必殺シュートの発現。

 

負けはしたものの、そこには照美との特訓の成果ともいえる自身の成長を感じることができる経験ができた充実感でいっぱいだった。

 

「紫電大丈夫か? ほら、手貸すから立ちなよ」

 

俺は座り込む紫電に手を差し出したが

 

「いらないわよ!!」

 

と言って叩かれてしまった。

 

なんで勝ったのにキレてんだろうと不思議に思っていると。

 

「お疲れ様だ、2人とも!部灰君の最後のシュートは凄まじかったな!!気迫を感じたよ!」

 

紫電監督が声をかけてきて 

 

「ぜひ君をチームに歓迎したいのだが、どうだろうか!」

 

顔を近づけて物凄い熱量で言ってくる監督。

 

俺の気持ちはもう変わりない。

 

「はい!お世話になります!」

 

と元気よく返事したのをジト目で背後から見ていた紫電の視線が気になって振り返ると顔を逸らされてしまった。

 

「戒の事も宜しく頼む!あの子は少し気難しい子だが、根は優しい子なんだ、少しずつでも仲良くしてくれると嬉しい!」

 

監督に頼まれたら断れないが、紫電は俺と目も合わせてくれず、そっぽ向いたままだ。

 

「…もちろんです」

 

返事したはいいもののどうしたものかと悩みながら、今日のところは見学も終わったので帰り支度をして帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 




頭の中の妄想ストーリーを文字にするのってマジで難しい…

オリジナル必殺技は読者様の方で咀嚼して飲み込んで頂けると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

チーム天ノ使FC!

あらためてイナズマイレブンの劇場版みました、木野と円堂と染岡と半田の四人が好きです。


天ノ使FCに入団して1ヶ月がたった。

 

チームの皆は存外良い奴らばかりで新参者の俺を優しく迎え入れてくれた。

 

特にキャプテンでエースストライカーの波久奴カオルという奴、同い年とは思えない高身長に金髪ロング碧眼という風貌でイケメン、誰にでも優しくまさに王子様みたいな人間だ。

 

おまけにサッカーがめちゃくちゃ上手い、必殺技こそないものの、そのFWの能力は照美にも匹敵するほどだ。

 

でも俺はコイツが苦手だった…その理由は。

 

「お疲れ様炎、これ飲みなよ」

 

「お、おうサンキュー…」

 

ただひたすらに良い奴すぎるのだ…最初こそ普通に良い奴だなーって思っていた俺も段々その狂気にも似た優しさに恐れ慄いていった。

 

逸話として聞いた話だが、通っている学校の生徒会長を3年生ながら勤めていて、自分が所属していない委員会全ての手伝いを自発的に行なっているとか、休みの日には街中で困っている人が見かけ次第に助けに行っているところをチームメイト全員に確認されていたり、極め付けには相手の心が読めるのではないかと思えるほどの気配りと言葉選びが出来ることである。

 

「もうこのチームには慣れたか?なにかあったら僕に言ってくれ、力になるよ」

 

「あぁ、特にはないかな…?」

 

いや、まだ紫電と口聞いて無かったな、これから練習試合とか組まれると思うし連携の為に普通に話せるようになっておきたいんだけどなぁ。

 

「戒とはまだ仲良くなってはいないと思うんだけど、連携は大丈夫なのか?」

 

ーーーやっぱコイツ苦手だわ…痛いところ突いてくるわぁ…

 

「イヤ、ベツニナカイイヨ?」

 

「嘘、だな」

 

バレたか、こいつホントにメンタリストでもやったほうがいいんじゃないか?

 

「戒はあぁみえて繊細なんだ、この前の入団テストの時に自身の必殺技が破られたのは初めてだったからな。

プライドが傷ついてしまったんだろう、それでも彼女も根は友達思いのいい子だ、炎から話しかけてやってくれないか?」

 

コイツはマジで人の悩み事となると饒舌になるよな。

 

「わかったよ!どっちみち紫電には話そうと思ってたところだから」

 

「ならいいんだ、うるさく言って悪かったな」

 

「別にいいよ、心配してくれてありがとな、ってかお前そんなに人のお節介ばかり焼いてて疲れないのか?」

 

波久奴の奴はたまにマシーンみたいなところがある、疲れとかは顔に出さないけど、少し心配になってしまった。

 

「僕は大丈夫だ、優しいな炎は」

 

しかし、肝心の波久奴はいつもの王子様スマイルで人の心配をスルリと躱してきた。

 

ーーー人の心配ばっかして、自分は顧みないみたいな自己犠牲な精神が俺は苦手だ…

 

 

 

 

なんやかんやで波久奴に諭された俺は練習の休憩時間に1人でどっかに行った紫電を探しに行った。

 

紫電は休憩時間になると一人でどっかに行っていつのまにか帰ってきてみんなと飯を食ったりしてる。

 

今は昼休憩の前、アイツが居なくるタイミングを見計らって後をつける事にした。

 

トテトテと歩いて行く紫電の手にはバッグがあった。

 

ーーーいったい何をしにいくんだ?

 

紫電はそのまま、いつも道具を保管しておくプレハブ小屋の中に入って行った。

 

今なら周りに人は居ないし、2人で話し合えるし、あの入団テスト時に何か俺がイラつかせてしまうような事をしたなら謝罪するべきだ。

 

この扉の向こうには紫電がいる、俺は思い切って扉を開し声をかけた。

 

「なぁ紫電、俺に何か不満なところがあったらー…」

 

俺はまるでメドューサの目を見て石になった人のように固まってしまった。

 

「え?」

 

目の前に広がる光景、それはユニフォームを脱ぎ、下着姿になった紫電の姿だった。

 

「いやぁぁぁぁあ!!?!!」

 

「ごめーん!!」 

 

俺はすぐに扉を閉めて部屋から退出した。

 

ーーーやってしまった、和解しようとしたのにまた嫌われるようなことをしてしまった、しかもラッキースケベ、いや今回は自分の不注意だ、誠心誠意謝罪しよう。

 

心の中で反省会をしていると後ろから扉の開く音がして、振り返ると頬を赤く染めながら不機嫌そうな顔をした紫電が出てきた。

 

「あの、さっきはゴメンな着替え中に入っちまって…」

 

「…いいわよ、鍵かけ忘れた私も悪かったし」

 

お互い俯きながら気まずい雰囲気が流れた。

 

「じゃあ私いくから…」

 

紫電がこの雰囲気に耐えきれず皆んなの元へ戻ろうとした。

 

ーーーここで逃したらいつ2人で話せるかわからない、ここで和解するしかない…!!

 

「ちょっ、まてよ!」

 

ガシッと腕を掴んで紫電の動きを静止した。

 

「な、なによ!」

 

止められた紫電は睨むが、俺は気にせず言葉を続ける。

 

「和解しよう!!紫電!」

 

「ハァ?わかい?いきなり何言ってんのアンタ!?」

 

いきなり和解を口にした俺に戸惑いをあらわにする紫電。

 

「俺は新参者で気に食わないことも多いかもしれないけど連携が不安なんだ、練習や試合だけでもいいからコミュニケーション取ってくれると助かる!」

 

正直な気持ちを伝える、ここで濁した言い方をする方が後々ややこしくならないと思ったからだ。

 

「別にアンタが新参者だから話してないってワケじゃなくて…」

 

目を晒しながら言う紫電はどこかバツが悪そうだった。

 

「じゃあ教えてくれ!俺はどうすればお前にチームの一員として認めてもらえるのか」

 

「わかったわよ!!」

 

畳み掛ける俺に吹っ切れた様子の紫電は静かに語り始めた。

 

「ただ、私は許せなかったのよ…自分自身が慢心していた事に。

アンタの事を大したことないヤツって決めつけてた浅はかさにね…」

 

どうやら紫電は自己嫌悪に陥っていたようだ、プライドを傷つけられた事を怒っていたわけではないようで少し安心した。

 

ーーーでも実際は俺は負けているのだけど…

 

「だからアンタは別に悪くないわ、謝るのは私の方…ごめんなさい」

 

そう言って頭を下げる紫電、まさか紫電が謝るとは思わずにビックリした俺だが元々俺も和解をしに来たのだし、コイツに謝られるのはなんだかむず痒いから少しイジることにした。

 

「お前でも素直に謝るんだな…」

 

「“お前でも”ってなによ!!私だって普通に謝るわよ!」

 

息を吹き返した紫電、やっぱりコイツはこっちの方が似合ってる気がする。

 

なんやかんやで普通に紫電と話せるようになったところで後ろから声がかけられた。

 

「おーい二人ともこんな所に居たのか、皆んなのとこにいないから探したぞ」

 

波久奴だ、休憩中に俺達が居ないものだから心配で探しに来てくれたようだ、今日も絶好調のお人好し加減である。

 

「カオル!?違うのよ!!2人で話してたけど、別にそーいうのじゃなくて!!」

 

急に慌てふためく紫電、これはもしや…!!

 

「?、2人で話が出来るまで仲良くなれたんだな、良かったよ」

 

肝心な波久奴は俺たちが仲良くなっている事に安堵していて、紫電の気持ちには気づいていないようだった。

 

ーーー普段メンタリストみたいに心を読むクセにこういうのには疎いんだな…

 

波久奴の鈍感さにまた機嫌が悪くなった小さき暴君こと紫電をなだめながら、いつも通りの優男王子様と共にチームメイトが昼食を採っている場所へと戻った。

 

 




イナイレ3に十二天王ってチームあったなぁって思って…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

紫電ちゃん波久奴くん

この2人のこと、好きになっちゃったみたい…

なので2人の事についての事を書きます。


ーーー私はワタシが好きじゃない。

 

物心ついた時から私の周りには老若男女色んな人間がいた。

 

もちろん私が目当てではない、パパだ。

 

パパは有名なサッカー選手で、私が小学生になって引退してからも情報番組に出たり、試合の解説などでメディアに出ていた。

 

昔からパパのプレーを見ててサッカーが好きだったし、パパも大好きで、休日にパパとやるサッカーはすごい楽しくて朝から日が暮れるまで

やっていてママを心配させる事もあった。

 

だけどパパは引退してからテレビに呼ばれるようになり、忙しくて一緒にサッカーをやる時間が少なくなっていった。

 

仕方がないとは思っていたけど、私は寂しかった。

 

小学校に入ってからは寂しさを埋める為に小学校のクラブチームに入ったが、素人が大半のお遊びサッカーのような感じで、真剣にサッカーをやりたかった私とは心持ちが違ったのだ。

 

半年もたった頃には、寂しさからイライラを隠せなかった私は同級生に向かってキツイ態度や暴言を吐いて周囲を困惑させてしまっていた。

 

いつからか私は周りから“暴君”と影で言われるようになっていて、クラブチームの中で浮いた存在になってしまった。

 

 

 

グラウンドの端で1人で練習している時、アイツはやって来た。

 

「僕にサッカーを教えて欲しい」

 

サラサラヘアーの金髪に碧眼に端正な顔立ちから学年問わずに学校中から人気を集めている波久奴カオルだ。

 

ハッキリ言うと第一印象は嫌なヤツだと思った。

 

学校の人気者が私に私と関わってメリットがあるとすれば、誰にでも優しい王子様的なポイント稼ぎになるからだと考えていたからだ。

 

「なによ、王子様がハブられてる私を助けて点数稼ぎのつもり?

練習のジャマだからどっかいきなさいよ!」

 

冷たくあしらって毒を吐けばすぐにどっかに行くはずだ、と思っていた私は練習を再開するために彼に背を向ける。

 

 

「いつも楽しそうにサッカーをやる紫電をみて俺もやりたくなった、

紫電が学年で1番サッカーが上手いと聞いたから習うなら紫電がいい。

それにサッカーは1人でやるよりも皆んなでやるほうが面白いってきいた。」

 

背後から放たれた彼の言葉を聞いて何故か怒りがこみ上げてきた。

 

「なによそれ皮肉?仲間外れの私が、いつもどんな気持ちでサッカーやってたのか知らないくせに!!知ったようなこと言わないで!!」

 

自分でも理不尽な怒りだと理解している、だが溜まりに溜まった鬱憤は今は誰かにぶつけなければ収まらなかったのだ。

 

曇りがちな暗い空と同じく、場の雰囲気も暗いものとなっていた。

 

 

 

「紫電が仲間外れをされていたのに気付かなかったのは申し訳ない。

でも、紫電が可哀想だからとかで一緒にサッカーをやりたいんじゃない、紫電のサッカーに対する情熱や姿勢がカッコよくて、僕はこの人と一緒にサッカーやりたいと思ったんだ」

 

背後から聞こえた声はいつも優しい王子様の柔らかい声とは違った、強い意志がこもった言葉に私は驚き、おもわず振り向いてしまった。

 

そのあまりに真っ直ぐで透き通った目に私はなにも言えなくなり

「勝手にしてなさい!」

といって、自主練を再開した。

 

波久奴カオルは私から少し離れた場所でこちらをチラチラとなにかを盗むように観察して自主練していた。

 

 

 

 

 

 

 

僕が彼女を見つけたキッカケはあまり思い出せない。

 

だだ、初めて彼女を見たときに感じた興味は、彼女の瞳に宿っているサッカーへの情熱と愛は自分自身が持っていない物だったからだったのだろう。

 

僕は元波久奴財閥という、今はいわゆる没落貴族の長男として生まれた。

 

没落貴族と言っても、栄えていたのは祖父母の時で、父は普通にサラリーマンとして働いている。

 

ごく普通の家庭の、ごく普通の長男だった僕は、一つだけ誰にも言えない悩みを抱えていた。

 

 

それは何かを好きになることができないと言うことだ。

 

 

両親からはとても良く育ててもらっているつもりだ、誕生日にプレゼントをもらう、美味しい料理を食べさせてもらう、遊園地にも行ったこともある。

 

 

しかし、それらに心が躍ることはなかったし、両親から僕がはしゃいでいた、という話は聞いたことがない。

 

周りの人の反応をみて、俺は間違った反応をしているのだと気づいた。

 

そこから僕は、周りの人間をよく観察し、合わせるようになったおかげで人の考えていることが表情などから読み取れるようになっていった。

 

小学校に入ってからは、容姿のおかげかたくさんの女子に好きだと告白された。

 

好きの意味を頭で理解できても、心では受け入れられずに告白をすべて断っていった。

 

その罪悪感からか僕は学校内で困っている人を見つけては手助けをし、皆んなに勧められて生徒会にも入る事になった。

 

それでも僕は何事にも情熱を感じることなく、半ば諦めながら過ごしていた。

 

そんなある日の放課後、僕は生徒会の仕事を終えるて帰宅する時に窓から見えるサッカークラブの活動が目に入った。

 

その中で、1人だけ外れたところで練習している子がいた。

 

生徒会仲間に聞いたところ、彼女は素行の悪さから別メニューをしているというらしい、そしてレベルが違いすぎて練習にならないからとも。

 

 

実に1週間、彼女を観察してみてわかったことがある。

 

彼女のプレーは凄まじく、素人目から見ても同年代とは思えないほどだった、きっと将来はもっとすごいプレイヤーになると確信した。

 

そして、彼女が他の生徒と揉めているところも目の当たりにしたが、彼女の刺々しい口調は寂しさの裏返しなのだと感じた。

 

あれは決して本心ではない、言った本人も自己嫌悪から苦しそうな表情をしているのが俺にはわかるからだ。

 

そうとわかってはいてもたってもいられなかった、こんなに衝動的に行動したのは初めてではないか?と自分でも驚くほど駆け足で彼女の元へ向かって行った。

 

罪悪感を消す為の人助けではなく、自分が彼女とサッカーをやってみたいと心から思っているのかもしれない。

 

好きを知らない自分が魅力されたのはサッカーかそれとも彼女自身なのか、それをまだ知らないまま、僕は彼女に声を掛けた。

 

「僕にサッカーを教えて欲しい」

 

 

 

 




なんとか捻り出しました… 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

紫電ちゃん波久奴くん2

誤字脱字すみません。


「だから!パスの時はトゥキックじゃなくて、インサイドキックにしなさいと何回言わせるのよ!」

 

「おぉ、そうだったね」

 

「そうだったねじゃないわよ!ふざけてんの!?」

 

「真面目にやってるさ」

 

無駄に爽やかな汗をかきながら、私の叱責をヒラリと交わす波久奴。

 

アイツはあれから、毎日私の隣でサッカーの練習をしていた。

 

時折アイツのへたくそすぎるプレーに見ていられなくなり、口を出してしまうのは悔しい。

 

アイツは才能があるタイプだ、自分の身体の動きを俯瞰的に見ることができるかのように私がプレーやフォームを指摘したときには、その日の練習のうちに意識して練習をやりまくり、翌日にはできてしまうようになるほどだった。

 

でもまだ一緒に練習をできるほどではない、まぁ普通に部活動でのほほんとやっている奴よりは上手くなっているけど、まだ認めたわけじゃない。

 

良くて中の下ってところかしら。

 

アイツは本当に毎日サッカーをしていた、私が居る時も、いない時も、雨な日も台風が来た時だってアイツは放課後にずぶ濡れになりながら練習を続けていた。

 

最初に見た時は目を疑ったわ、アイツは自分に対する周りの評価のためだけに私に取り入ろうとしていると思ったから。

 

私の顔色を伺って接待のようなプレーしかしないチームメイトや、有名人のパパの娘である私を腫物のように扱う大人達みたいに。

 

でもアイツは違った、泥だらけになりながらも必死でボールを追いかける目でわかってしまった。

 

いやアイツと過ごす数週間のうち、途中から気づいてはいたのだ。

 

 

アイツはもう、私の事を考えていない、だだ目の前のボールを真っ直ぐに見ていた。

 

アイツは、波久奴カオルは本気でサッカーが好きなんだと。

 

気づいたら私の身体は波久奴の所へ走っていた。

 

この気持ちがなんなのか自分ではよくわからない、でも胸の奥から湧き上がる感情を抑えられなかった。

 

台風の大雨でグランドの状況は最悪、一瞬で靴下までびしょ濡れになってしまったけど、構わない。

 

最終的に傘も投げ捨てて一心不乱に彼の元へ向かっていた。

 

私が息を切らしながら近づくと、彼は練習を止めてこちらに向いた。

 

「紫電?ずぶ濡れじゃないか、傘忘れたのか?」

 

「…なんでよ」

 

「なにがアンタをそこまでさせるわけ!?先生にひとりぼっちで可哀想な私と一緒にいろって言われたにしても、アンタにメリットなんて何もないのよ!!」

 

「もういい加減ウザいのよアンタみてるの、優等生でみんなの人気者なアンタがサッカーやる必要なんかないでしょ!?

私にはサッカーしかないのよ!!」

 

支離滅裂だ、これまでに味わったことない感情は留まることはなかった。

 

私の悪い感情は今ここに全部出てしまったのではないのかと思うほどだ。

 

しかしアイツは一瞬驚いたのか目を見開いていたが、すぐにいつもの切長の目に戻りコッチを真っ直ぐ見つめて言った。

 

「最初にも言ったけど、僕は誰かに言われてサッカーをやってるわけじゃないし、キッカケは紫電だけど、可哀想だとかそんな事を思った事はなかったよ」

 

アイツはゆっくりと年下の子を諭すかのような口調で続けた。

 

「正直言うと、ここ数日は紫電の事を考えている余裕はなかったんだ、紫電が教えてくれた事を覚えるのに必死で生徒会の仕事もあんまり手をつけられていないほどに…」

 

「今日だっていつか試合出た時に雨の日だったら困るでしょ?だから慣れておこうと思ってさ」

 

そういって泥でグシャグシャになった靴を見せつけてきた。

 

確かにアイツはここ数日放課後になるとすぐにグランドの端で私と同じタイミングで練習していた、これは生徒会の仕事をほったらかしにしていたからだったとは思わなかった。

 

コイツは優等生でサボりなんてした事ないやつだと思ってたから。

 

「アンタ、生徒会の仕事サボってサッカーの練習してたってこと?」

 

「結果的にサボってしまったな、副会長の相沢さんには迷惑かけちゃったな」

 

「なんで?なにがアンタをそこまでさせるわけ!?」

 

私は訳がわからず、責めるように波久奴を問い詰める。

 

その時さっきまで散々降っていた雨の曇から光が差し込み、眩しい日差しが目に入る。

波久奴も雨が止み、日が出てきたのを確認したのち、ゆっくりとコチラを向き、ハッキリとした声でこう言った。

 

「初めて好きになれたかもしれないんだ、サッカー」

 

「今までよくわからなかったけど、ようやく他の事なんてどうでもいいって思えるほど夢中になれる物を見つけたかもしれないから」

 

柔らかい日差しと共に、波久奴は今まで見たことのないような笑顔でそう答えた。

 

その瞬間、私を縛っていた鎖のような物がバラバラと崩れた音がした。

 

有名人の娘という周囲の目や、腫れ物を扱うような教師やクラスメイトたちとの人間関係の憑物が取れた気がした。

 

もうなにもかもどうでもいい、波久奴のように何にも囚われずに、純粋にサッカーだけを楽しみたい。

 

というか、楽しめば良かったんだ、サッカーを…

 

パパに負けない選手になり、有名人の娘ではなく、1人の人として自分を確立するためにサッカーを利用していたのかもしれない。

 

サッカーを始めた頃は純粋に楽しかった。

 

パパと遊べてたというのもあるけど、できない事を出来るようになるというのが楽しかったからだ。

 

「なんだ…こんな簡単な事だったのに」

 

なぜ忘れていたんだろう、サッカーを愛する気持ちを。

 

私にはサッカーしかないというのに…

 

「あ、あともう一つ。」

 

波久奴は思い出したかのように話し始めた。

 

「ありがとう、僕にサッカーを教えてくれて。」

 

「まだ未熟だから、紫電に教えてもらえると助かる、あとお前は1人じゃない、僕もいる、そして世界にはもっとサッカーが上手い奴がいる。

 

だからクラブチームに入って本格的にサッカーをやらないか?」

 

「ちょっとまって!アンタ本気なの!?」

 

話が急すぎて動揺が隠せない、そもそも地元にクラブチームがないと伝えたら、作ればいいさ、なんて簡単に言ってみせた…

 

どーやって誰が作るのかさっぱり考えてなさそうなアイツの脳天気ぶりに少しだけおかしくなって笑ってしまいそうになったけど、すこし波久奴に救われたような気がした。

 

ハッキリと言葉でお前は1人じゃないって言われた時は不覚にもドキっとしてしまった。

 

しかしアイツはまだまだサッカーが下手っぴだ、これからちょっとだけ、ほんのちょーっとだけ、面倒見てあげてもいいかななんて考える事にした。

 

「これで紫電とようやく友達になれたかな?」

 

「調子のらないで、アンタみたいな下手っぴが友達なんて10年早いわ!」

 

友達というワードに少し嬉しくなってしまったが、反射的に憎まれ口を叩いてしまった。

 

自分の素直じゃないところが嫌になる。

 

しかし波久奴は笑って

 

「じゃあ上手くなれば友達になれるって事だな」

 

と言って、ボールを足で掬い上げリフティング練習を開始した。

 

「〜っ!う、上手くなれれば考えてあげるわっ!」

 

コイツのポジティブさはどこから来るのか不思議に思う反面、友達になる事を求められているという事が嬉しくて少しニヤけてしまう。

 

そのニヤケ顔を隠すために急いで後ろを振り向くと、空には虹が掛かっていた。

 

 

 

この日以降、放課後は波久奴と一緒に練習する事もあった。

 

まぁ私が指導してあげているって感じだけど!

 

そもそも基礎練しかしていない波久奴は、応用からフェイントまで使う私に1on1で足元にも及ばず、項垂れていた。

 

しかし、私に受けたフェイントをコピーするかのように真似し、使用してくる技にはすこし驚いた。

 

そこから数ヶ月して、パパがクラブチームを作った。

 

どうやら波久奴が家に来て、パパに直談判したらしい。

 

「すごい情熱の子だったな!今どき珍しいタイプの子だったのでついOKしてしまった!!」

 

パパは高笑いしながらこう続けた。

 

「それに戒もそろそろ全力でサッカーをやりたいと思ってな!」

 

ポンポンと頭を撫で回しながらそう言った。

パパは忙しいから、学校生活なんか知らないと思ってた。

聞くところによると、数ヶ月前、波久奴がパパに直談判したときに

「少しでも時間を作って紫電を見てあげて欲しい」と言ったようだ。

 

そこからパパは仕事の休憩中に抜け出し、フェンスの向こうから放課後に校庭でサッカーをする私達を見ていたらしい。

 

 

アイツは意外と強引なところがある、たまに人の話を聞かないところもある、そして私に負けず劣らずサッカーが好きだ。

 

今日も放課後アイツとサッカーをする、最近は学校に行くのが嫌では無くなってきた、アイツのおかげかもしれない…

 

かもしれないなんて、また素直になれない私が現れてしまう。

 

もう少し大人になって、素直になれたなら、アイツに感謝の言葉を伝える事ができるのだろうか。

 

そして、友達になって下さい…と。

 

 

 

 




ありがとうございます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閉じ込め大作戦

いつか書こう書こうと思っていたのに全然かけなかったでござる…

作者には勢いで書くことしか脳がありません故

誤字脱字、矛盾点などあれば、私の心を抉らないようにオブラートに包んで指摘していただけると嬉しいです。


俺、部灰炎はいま非常に困っている…

 

主に我がチーム天ノ使FCのチームメイトの波久奴カオルと紫電戒についてだ…

 

ていうかチームメイトの全員が感じていることだろう。

 

ーーーアイツら早くくっつけや!!!!

 

しかし、現状波久奴はそもそも恋愛感情の有無がわからないし、紫電に関しては絶対に自分から好意を伝えるような事はしないだろう。

 

なので俺とチーム天ノ使FCは考えた、どうすればヤツらが素直になり、お互いを意識していることに気づかせられるかを。

 

 

 

「やっぱり、2人きりの状況を作るべきだよな」

 

「たしかに、でもその後はどうする?」

 

「有識者によると、協力して困難を乗り越えた2人は固い絆でむすばれるらしい」

 

「「「それだ!!!」」」

 

 

チーム練習後、2人抜きで集まり作戦会議を行った俺たちは無い知恵を振り絞り、2人をくっつける為に作戦を考えた。

 

作戦の要約はこうだ。

 

練習後、道具の保管庫に2人を閉じ込めて鍵をかける、保管庫内の窓には窓があり、2人が協力さえすれば開けて、外に出られるように細工をするのだ。

 

細工に関しては家が鍛冶屋の俺がちょちょいと済ませた。

 

なんやかんやあり、練習後に2人に動道具を片付けにいってもらうことにし、紫電監督に許可を取り、保管庫の鍵を手に入れた。

 

ーーーよし、後は奴らが大人しく保管庫に入るのみだ!!

 

陰に隠れながら様子を伺うと、ターゲットである2人が大荷物を持ちながら近づいきた。

 

 

「まったく、なんで今日に限ってこんなに道具が多いのよ」

 

「お陰で有意義な練習ができた、提案してくれた炎たちには感謝しなくちゃな」

 

うむ、いつも通りの当たり障りのない2人の会話だ、今日こそその均衡をぶっ壊してやるぞ。

 

2人が保管庫内で作業を開始したのを確認して、扉を思いっきり閉めた

 

「キャッ、なに!?」

「うわ!?ビックリした」

 

驚き声を上げる2人、気にせず俺は鍵を掛けた。

 

あとは保管庫内のギミックを2人で協力して突破して、絆を深めてもらうだけだ。

 

若干の罪悪感を感じつつ、チームの為だと割り切って外から様子を伺う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜保管庫内〜

 

誰かに扉を閉められた私達は、すぐに開けようと扉に手をかけた。

 

だが開かなかった、速攻で鍵まで閉められていた。

 

「ちょっと、鍵かけられてるじゃない!誰よ!!」

 

「間違えて閉め出されちゃったようだね」

 

「なんでそんなに呑気なのよ!?」

 

時刻は17時過ぎ、もうすぐに暗くなるというのに、この男はいつもと変わらない雰囲気で突っ立っていた。

 

 

「そんなに焦っていてもしょうがないよ、今は冷静になってどうにか倉庫内から出る方法を考えよう」

 

「うぐっ…、たしかにそうね、でも扉はビクともしないし状況は最悪よ」

 

「時間が経てば僕らがいない事に気づくかもしれないしね、監督とか探しに来るんじゃないの?」

 

「今日はパパはこの後TVの仕事でさっき1人で帰ってくれって言って、行っちゃったわよ…」

 

「…これは、"詰み"だね」

 

「呑気にいってんじゃないわよ!!どうするのよこのまま誰も来なかったら!」

 

閉じ込められた不安と焦り、練習終わりの疲労で私はついカッとなって大きい声を上げてしまった。

 

「ごめん、無神経だったね、僕も不安だけど戒を安心させたくて」

 

こんなときまで自己犠牲、優しい人、私はそんな自分にまた自己嫌悪してしまう。

 

罪悪感で涙がでてきてしまう、泣きたくなんてないのに。

 

「ごめんなさい、カオルは悪くないの私が勝手に喚いて、迷惑だってわかってるのに、本当最悪よね私…」

 

「最悪なんて、僕が尊敬してる人を悪くいうのは君でも許さないよ」

 

カオルが珍しく真剣な顔つきで怒っていた、尊敬してる?私を?

 

「それに戒は泣いてる顔は似合わないと思うんだ、サッカーやってる時の自信たっぷりの笑顔が僕は好きだからさ」

 

頭がこんがらがってフリーズしてしまった、好き?カオルが私の笑顔を?

 

涙は一気に引いて、焦って目をぐるぐる回している私に対してカオルはすぐにいつもの調子で

 

「あ、あの窓少し高いけど、道具とかを台にすれば登れそうだよ」

 

いそいそと道具たちを集めて土台を作ろうとしていた。

 

顔に熱がのぼっていくのがわかる、薄暗い倉庫内で良かったと思った。

 

「ほら、戒も手伝って」

 

「わ、わかってるわよ!!」

 

動揺を隠すように急いでカオルの手伝いをする。

 

しばらく積み上げていくと、すぐに窓に手が掛かるくらいの高さになった。

 

「窓が大きめで助かったね、ちょうど僕らくらいなら倒れそうだ」

 

「でも私の背じゃ、ちょっと届かないかも」

 

「僕が担ぐから肩ぐるましよう」

 

「え!?な、何言ってるのよ!?」

 

「嫌かもだけど、こうしないとでれないよ」

 

汗もかいてて乙女的には避けたいけど、そうしないと出られないのも事実

大人しく従う事にした。

 

「へ、変なとこ触るんじゃないわよ?!」

 

「戒に変なところなんてないし、触らないから大丈夫だよ」

 

「そういうことじゃないわよ!」

ほらほらと手招きするカオルに少し呆れる、普段はエスパーくらい気が使えるのに、私といる時はなぜか空回っている。

 

「じゃあ、いくわよ…?」

 

戸惑いながらも、カオルの肩に脚をかけていく

 

「じゃあ、上げるよ」

 

カオルは私の脚をしっかりと持って落ちないように身体を起こした。

 

私の脚に触れているカオルの手から熱を感じる、意識してしまうと恥ずかしくて身体が強張る。

 

「戒?大丈夫?」

 

カオルはこちらの異変を察知して、頭を上に向けてこちらを見る。

 

身体を密着させてる恥ずかしさとこっちを向いたカオルとの意外な顔の近さに驚いた私は思わず取り乱してしまった。

 

「キャッ!な、なんで見るのよ!?」

 

反動で大き仰け反った私はバランスを崩し、落下しそうになった。

 

「ッ!?危ない!!」

 

カオルは咄嗟に身体を反転、私を抱き抱えるような形で私の下敷きになって

 

ーーードサッ

 

「あいたた…」

 

「ッ!?カオル!!大丈夫!?」

 

「土台に積んだ道具たちがクッションになってくれて助かったよ、戒こそ大丈夫?」

 

「私は大丈夫、カオルが庇ってくれたから…」

 

今の状況を振り返る、抱き抱えられて助けられた私はそのままカオルの上でまだ抱き抱えられたままで見つめ合っている。

 

「あ、あのカオル?ありがとうだけど、そろそろ離して…」

 

「あぁごめん、苦しかったよね」

 

そういうとカオルは私の手を取り、立たせてくれた。

 

「あ、ありがとう…ね」

 

「うん、戒が無事でなによりだ」

 

いつも通りの笑顔で応えるカオル、私は恥ずかしさからその顔をあまり見られなかった。

 

 

けど私だけが動揺してるみたいで悔しいからそのあとはまた肩車をしてもらい、窓から外に脱出。

 

カオルも続いて窓から出てきて、なんとか倉庫内からの脱出劇は幕を閉じたのであった。

 

そして、鍵を閉めたやつをボコボコにするために次の練習で会うメンバーにはひとりひとり尋問してやると心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあまた来週、戒も身体休めてね、バイバイ」

 

壮絶な脱出劇の後、帰路についた僕と戒は道の途中で別れた。

 

1人になり、今日のことを振り返る。

 

「ふぅ、焦ったなぁ」

 

危なかったとはいえ、戒を抱きしめてしまった。

 

いままで感じたことのない、感覚。

 

心臓が早く脈打ち、顔が熱を帯びている。

 

ーーーこれはなんだろう、不思議と心地良い感じがする

 

今はまだ気づくことができない気持ちを抱きながら、僕は家に帰った。

 

帰ったらお母さんに「顔赤いわよ?!熱!?」といままで引いたことがない風邪を疑われてしまった。




ありがとうございました…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

U-12 全日本サッカー選手権開催

いよいよ試合の描写に挑戦したいと思います。

今回もよろしくお願い致します。


 

「今日はみんなに伝えることがあるっ!!」

 

監督は練習終わりにみんなを集めてミーティングを開催して、開口一番にそういった。

 

こういう時の監督に一抹の不安を抱えた俺は監督に質問を投げた。

 

ざわざわと湧き立つチームメイトを代表して、俺は監督に聞いた。

 

「…まさか、クラブ解散とかですか!?」

 

「ちがう!!もっと良いニュースだぞ!!」

 

「ついに我が天ノ使FCもU-12 全日本サッカー選手権の出場規定を満たしたのだ!!!!!」

 

「「「おおぉ!!!」」」

 

なんと公式戦の発表だった、近くのクラブチームとの練習試合などはやってきたが、公式戦はチーム発足後初めてとの事だ。

 

「このチーム最上級生である戒、カオル、炎達5年生は10人、四年生が8人、3年生が5人だ!!」

 

決して多いとは言えない出来立てのチーム、しかも6年生は無し。

だけどチームのみんなや俺は頑張ってきた成果が形になるのが楽しみで仕方なかった。

 

「登録メンバーは18名だ!3年生たちには悪いがまだ身体も出来上がっていないし、基礎練も足りていないので今回はメンバーから外させてもらう!!」

 

下級生達から残念そうな声があがった。

そりゃ俺もその年だったら上級生に混じってでも試合出てみたいわな。

 

「3年生のみんなはまだこれからまだ出れるチャンスがあるんだ、今回は僕たちが活躍してみせるから応援して欲しいな」

 

カオルが下級生達に優しく諭すように声をかける。

 

「アンタ達じゃまだ試合は早いわ、もっと上手くなってからにしなさい!

…練習なら手伝ってあげるから」

 

戒も発破を掛けるように言う、しかし最後は恥ずかしさからか声がだんだん小さくなっていった。

 

「ん?戒、最後なんて言ったの?」

 

「うっさい!!」

 

お決まりの夫婦漫才、チームのみんなも見飽きたのか呆れてる。

 

「では来週の練習までには予算の第一試合の相手がわかる!!各自しっかりと身体のケアをして、しっかり遊んでしっかり勉強もすること!!」

 

「解散!」

 

「「「ありがとうございましたー!!!」」」

 

そうして、天ノ使FCの初公式戦が決定したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

帰宅して、今大会の情報について気になったので色々調べてみることにした。

 

そこで衝撃的な事実を知る事になる。

 

「まじかよ…」

 

それは優勝チームはU-12ジュニアサッカーワールドカップに出れるという事だ。

 

アジアからはイラン、日本、韓国、オーストラリア、カタール、サウジアラビアが出場する。

 

韓国、今は照美が住んでいる国だ。

 

アイツもサッカーをやっているだろう、良い仲間に恵まれているだろうか?

 

あ、そういえばイナイレ3でアフロディ、ガゼル、バーンがなぜか韓国代表だったよな。

 

ん?まさかアイツら向こうで知り合いになってるなんて事ないよな?

 

なぜあの3人が韓国代表だったかは覚えてないけど妙に嫌な予感がする…

 

いやいや、そもそも全国制覇する事自体が前提だし、照美も俺も勝ち上がっても会えるかもわからない。

 

今は目の前の試合に集中しよう、欲張ってはダメだ、一個一個課題をクリアしていこう。

 

来週には対戦相手の発表もある。

 

どこのクラブチームが来ても負けはしないように今はめちゃくちゃ練習だ!!!!

 

そのまえに叔父さんと晩御飯を食べなくちゃ、ささっと作って食べて明日に備えて寝ますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌週、とうとう初戦の相手が監督の口から発表される。

 

「公式戦初戦の相手は“トロイアFC”だ!」

 

 

監督が相手チームの映像をタブレットで見せた。

 

トロイアFCはイナズマイレブンで世宇子中GK、ポセイドンこと歩星 呑一が率いる強豪チームで地区大会では失点が0のままその大会は終わったそうだ。

 

ここにきて世宇子中の連中と会うことになるとは、試合の映像を見た感じだと攻撃力は高くはなさそうだが、ポセイドンの圧倒的なセーブに流れを持っていかれ負けるチームがほとんどだった。

 

「相手のキーパーの歩星くんは凄いがウチが負けるとは思えない!

今は練習で力をつけよう!!!」

 

「「「おぉー!!!」」」

 

監督の力強い言葉に励まされる、流石は監督だ、相手のことはもう調査済みなのか。

 

「…」

 

「戒?どうした?」

 

俯き、小刻みに震える戒に気付き、カオルが声をかける。

 

「歩星 呑一…同い年のキーパーなら知ってるわ、アイツは強い」

 

戒が素直に認めているくらいだ、きっと俺の想像よりも凄いやつなんだろう。

 

「…でも怖いわけじゃないんでしょ?」

そんな戒に、いつも通り微笑みながら問うカオル。

 

「当たり前よ、これは武者震い…絶対に勝つわよ、私達でね!」

 

「うん」

 

すこし心配してしまったが、逆に戒は燃えているようだ。

 

俺も負けていられないな、こちとら照美に会うまで負けるわけにゃあいかないんだ。

 

「よっしゃ!じゃあ練習いつもより気合い入れていこーぜ!!」

 

「「「おぉぉー!!!!」」」

 

チームも一致団結し、練習にも熱が入った。

 

来月の初戦まで時間はない、チームのレベルアップと、自分自身のレベルアップを精一杯やって初戦をかならず勝ってやる!!

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初戦、トライアFC


頑張って書きました!
暖かい目でお願いします。

今回は天ノ使FCメンバー紹介も含まれてます!



初戦のチーム発表から翌月、チーム全員怪我なくしっかりと練習を重ね、ようやくこの日を迎えることが出来た。

 

開会式も紡がなく終わり、各チームそれぞれの球場で開幕戦をむかえる。

 

我が天ノ使FCもグランドでウォーミングアップを開始する。

みんなに緊張の色はなく、調子は良さそうだ。

 

特にカオルと2トップのFWを務める箕田は闘牛士の赤いマントを目の前にした猛牛の様に血走った眼でアップをしていた。

 

「相手は地区大会失点ゼロ!俺が初ゴールぶっかましてやらぁ!!」

 

「気合いは良いけどまたボールごと相手のゴールに突っ込むなよ?!怪我するからな!」

 

彼の伝説は闘争心が溢れすぎて相手のGKをぶっとばして自身もろともゴールにタックルした事で有名だ。

 

もちろんファールだけどね。

 

「おい猪突猛進バカ、今日はファールするなよ」

 

「うるせぇ手瀬!!お前はいい加減地図見ながら道迷うんじゃねぇ!」

 

手瀬は道を覚えるのが苦手で、今日も球場のベンチからトイレに行っただけなのに軽く迷子になってしまって、手瀬は持参した毛糸で道標を作っているぐらいの方向音痴、だが試合では道に迷うことなくゴールに最速で進む脚の速さもある。

 

今日のMFは手瀬、愛音、射矢須、識野だ。

 

「大事な試合前なのに、あの調子で大丈夫なのー?」

愛音はこのチームで2人目の女の子で、カオルに釣られて入ってきたが、戒がいるからとカオルを諦めて、今は逆に戒とカオルのカップリングを推している。

 

「問題ないよ〜いつも通りさ〜♫」

射矢須、気づけば何かを口ずさんで歌っているが、ドリブルが得意なトリックスターだ。

 

「まぁ緊張してガチガチよりかはいいよね〜」

識野は常にヘラヘラしているがときどき未来予知のような指示をだし、広い視野を持つ名プレイヤー。

 

 

我ながら思う癖の強いチームだなぁと、しかし賑やかでみんなサッカーに直向きなのだ。

 

「部灰ー!ちょっとDF陣でフォーメーションの確認したいんだけどいい?」

話しかけられる振り向くと俺を含め4人が集合していた。

 

「相手は4人のFWでくる、この試合は俺たちDFが鍵になるぞ」

DFミーティングを仕切ってくれているのは軽部で、彼は相手の攻め方によって様々なフォーメーションに切り替えられる優秀なDFだ、試合中だと性格がコロコロ変わるから脳みそ3つくらいあると思ってる。

 

「じゃあ僕は部灰さんのサポートに入りますね!」

木舞はスタメンの中で唯一の四年生、四年生ながら類稀なる才能でDFを務めるが、実際どこでもやれそうな雰囲気がある天才タイプ。

そしてなぜか俺を慕ってくれている。

 

「んじゃ真ん中は俺と木舞でいくわ、軽部と部灰はサイド頼む」

長身の青蓮は抜群の跳躍力で空中を支配できる、たぶんそろそろ翼生えると思ってる。

 

GKの戒と闘う前にこのDFを突破しなくちゃいけないんだから、敵ながら可哀想に思えるくらい粒揃いのメンツだ。

 

「よし、全員集合!!」

 

監督の号令に集まる皆んな、俺も駆け足で向かった。

 

「皆んな初の公式戦だからって心配するな!!練習はたくさんやった!今日は楽しんでプレーしてこい!!」

 

「「「はい!!」」」

 

しっかり準備はしてきた、緊張は少ししてるけどそれも心地良い。

 

両チームグラウンドに集合し、整列をする。

 

相手と並んで初めて感じたのはトロイアFCのGK

歩星 呑一のデカさだ。

 

デカすぎる、こいつほんとにランドセル背負ってんのか!?

 

対面してる戒が睨みつけて威嚇してるが、大型犬に吠えるチワワにしか見えない!かわいい!

 

睨まれてる歩星は気まずそうに目を逸らしていた。

あ、この子いい子だなぁと直感で感じた。

イナイレだと敵キャラだけど、実際あってみると良いやつオーラが半端ない!!

 

だが勝負は勝負、全力で挑ませてもらうぞ!

 

 

審判の号令と共に「お願いします!」と礼をして、ポジションについた。

 

キックオフはコイントスで決まって、天ノ使FCから。

カオルからセンターバックの愛音にパスが渡る。

 

そこで気がついた、相手は攻めてきていないことに。

 

「あんにゃろ〜、舐めやがって!!」

 

愛音からのパスをもらった箕田は動かない相手を無視して敵陣に突っ込む。

 

「くらいやがれッ!!!」

そのままシュートを撃つ。

コースは良い、誰もが決まったと思った。

 

しかし、

「良いシュートだ、だがまだまだだな」

目にも止まらぬ速さで一歩動き、そのまま手を伸ばしただけでゴールポストギリギリのシュートを止めてしまった。

 

「ま、マジかよ…!」

 

渾身のシュートを止められ驚く箕田。

 

「油断するな!来るぞ!!」

キャプテンのカオルが何かを察し、呆気に取られていた皆んなに声をかける。

 

歩星はそのまま大きく振りかぶる投球のモーションに入った。

その瞬間、相手のFW、MFは走り出した。

 

反撃がくる。

 

大きなモーションで投げ出されたボールはさながら投石のようだった。

 

キュルキュルと風を切る音と共に、俺の横をものすごい速さで通り過ぎたボールは戒の守るゴールは飛んでいった。

 

「この程度ッ!!」

 

カオルの声にいち早く反応していた戒は、ボールを止める体制に入りパンチングでボールの軌道をずらす事に成功した。

 

だが、弾かれたボールをオフサイドコースギリギリから狙い澄ましたように相手のFWがシュートを放ち、体勢の立て直し切れていない戒はボールに手が届かず、ゴールになってしまった。

 

相手は余裕があるから攻めてこないんじゃない、ゴール前にある絶対的な"壁”があるからボールを奪う必要がないんだ。

 

 

1-0、試合開始からわずか3分たらずの出来事であったが、天ノ使FCの全員を絶望させるには充分なものであった。

 




読んで頂きありがとうございました。
誤字脱字等ありましたら、すみません。

サッカー全然詳しくないのでおかしいところあっても超次元で流して頂けると幸いです。


詳しいメンバー紹介いりますでしょうか?

コメントにて教えて頂けると嬉しいです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初戦、トロイアFC 2

詰まってた用事が済んだので頑張って書きます。

よろしくお願いいたします!

誤字脱字あります、ご理解ご了承の程よろしくお願いいたします


先制点を獲られ、呆気に取られる我らが天ノ使FC。

 

しかし

 

「みんな切り替えていくぞ!!すぐに取り返そう!」

 

みんなを鼓舞するカオル、こんなときでも楽しそうにサッカーをしている。

そんな姿に皆んなは付いて行きたくなる、だからカオルはキャプテンに選ばれたのだ。

 

「ゴールは任せなさい!!もう一点だってやらないんだから!」

 

カオルに負けじと戒も声を出す。

 

俺も負けてはいられない、相手のカウンターが凄いならそれをさせないように動くだけだ、歩星のスローイングだって身体で止めてやる!!

 

「いくぞ箕田!」

 

「おうキャプテン!」

 

2人はパスを繋ぎながら軽快に相手ゴールへと進むが、トロイアFCのディフェンス陣は動く気配がない。

 

あいつら舐めやがって

 

いや舐めてるんじゃない、自信があるんだ。

絶対的な守護神の存在が後ろで守っているからだ。

 

まったくと言っていいほどに動かないトライア陣営に君の悪さを感じながらカオルと箕田は攻めていく。

 

箕田のシュートは止められ反撃、カオルのシュートも止められて反撃で俺たちDF陣も頑張ったが、トライアFCの全員攻撃で削られ、いつの間にかスコアは3-0になっていた。

 

ホイッスルがなる、ハーフタイムだ。

みんなは一旦ベンチに戻ると

 

「みんな、ゴメン私が不甲斐無いばかりに…」

 

戒はうなだれて、力無い声でみんなに謝った。

静まり返る皆の中、カオルが声をあげた。

 

「戒、まだ試合中だよ?謝る必要なんかない、後半は僕たちが絶対に逆転する。」

 

「皆んなも諦めたわけじゃないだろう?確かに今までの闘ったどの相手よりもつよい、でも僕たちもすごい頑張ってきた!この先もまだまだ強い相手とサッカーするためにも後半何としても逆転しよう!!」

 

「「「おおぉぉー!!!」」」

 

さすがキャプテン、みんなを鼓舞するのが上手い。

さっきの暗い雰囲気は一気に消えて、戒も照れ臭いのか顔を背けているが、耳まで真っ赤になっていてモロバレだ。

 

「お前たち!ここまでよく耐えた!!後半は我々のターンになる!!!」

 

今まで口を閉ざしていた監督が皆んなに声をかける。

 

後半は俺たちのターン?

どういうことだ、このままじゃ皆んなジリ貧で逆転のチャンスすらなさそうだけど…

 

「カントクー!私たち結構疲れちゃったんですけど大丈夫なんですかー?」

 

能天気そうに監督に尋ねる愛音、実際体力はあまり残っているとは言えない、前半にトロイアFCの猛攻にかなり苦戦したからだ。

 

「そう、皆んな疲労しているだろう!ウチのチームは脚をよく使うプレーが多い!そして練習からかなりの走り込みをこなしている皆んなが疲れているんだ!」

 

「不思議に思わないか?自分たちが疲れているのは相手の猛攻を抑える為、その相手は疲れていないと思うか?」

 

「「「ッ!!?」」」

 

ハッとして相手のベンチを見る、ほぼ全員で攻撃をしていた向こうのチームはGKの歩星以外は肩で息をしていた。

 

ていうか歩星やばいな、あんだけシュート捌いて、スローイングもかましてるのに全然余裕そうだ。

 

「実際にここまでの試合、トライアFCは後半の得点率だけ異常に低い!

先行逃げ切りが彼等の闘い方なのだ!!」

 

「てゆーことはー、勝機はあるってカンジ?」

 

「そういうことだ!愛音!流石の理解力だな!!」

 

高らかに笑う監督、いや言葉にしたのが愛音だけであって皆んなわかってるだろ…

 

しかし、あの監督の元でプレーしているとネガティブな感情が一切湧かないな、生きるポジティブみたいなもんだからなぁ。

 

「よし!ここまで言えばもうわかるだろう!後半も全力でお前たちのサッカーをやって来い!さすればかならず勝てる!!」

 

「「「はい!!!」」」

 

沈みかけた士気は再上昇、カオルや監督は本当にすごい、俺もまだ、なにも出来ていない、必ず爪痕残してやる。

 

 

 

 

 

 

 

ピーーー!!!!

 

後半開始のホイッスルが鳴る、箕田からカオル、MFの愛音、手瀬とパスを回しつつ前線を上げていく。

 

監督の言う通り相手の動きは落ちてきている、あとは絶対的な守護神をぶち抜くだけだ。

 

相変わらず最小限の動きしかしないトロイアFCのDF陣、いやもうあまり動く体力もないのかもしれない。

 

あっさりと1対1になる歩星とカオル。

 

「打て!カオル!!」

気づくと声を出していた、ポジションは良い、カオルのシュートなら今度こそ抜ける!

 

と思ったが

 

「いや、僕じゃないここは…」

 

「ぜってぇキメる!!」

 

目が血走り、口から煙が出ている紅いオーラを纏った箕田が来ていた。

 

箕田にパスを出すカオル。

 

シュートは真っ直ぐ歩星に向かう、ボールは歩星により弾かれる。

 

いや、歩星は今までずっとキャッチしていた、今回は初めて弾いた。

 

弾かせたのだ、箕田の強烈なシュートによって!!

 

「もういっちょだ!!!」

 

弾かれたボールをそのまま打ち返す箕田。

 

「まだまだぁ!!!」

 

弾かれる、打ち返す。

 

「入りやがれぁ!!!!」

 

迫力が凄すぎて誰も間に入らない、あれはまさに箕田のゾーンだ。

 

「ッオラァ!!!!!」

 

ボレーシュート、かなりの威力だ、歩星も両手でパンチングをしてもなお体勢が崩れる。

 

その刹那

 

「クリムゾン・ブル!!!」

 

弾かれたばかりのボールの行方を読んでいた箕田が深紅の雄牛さながらのヘディングで突っ込んでいた。

 

そしてボールと共に自らゴールネットを揺らした。

「おっしゃぁ!!」

 

「「「おぉぉー!!!」」」

 

遂に1点を返すことができた。

 

流石の歩星も驚きを隠せていない、他の選手にいたってはかなり動揺している。

 

ここがチャンスだ、畳み掛けるしかない!

 

 

点を取られ焦った、トライアFCのFWからボールを奪うのは容易かった。

 

こいつらパス回しも碌にできていない。

 

ボールは箕田に回り、強烈なシュートを何回も叩き込むシュート技、クリムゾン・ブルで歩星を削り隙をみてカオルのコーナーギリギリのシュートが決まり、点差は1点となった。

 

このまま逆転いけるぞ、と思った矢先、向こうのFWが自陣のゴールキーパーまでボールを回し始めた。

 

歩星はボールをゆっくりと拾い上げると大きく振りかぶり、こっちのゴール目掛けて思いっきりスローイングをしてきた。

 

空気を切り裂く音が聞こえるほどの豪速球。

 

まだこんな元気あるのかよ!?

 

箕田のシュートでだいぶ腕が消耗してるはすだが、アイツも負けたくないのだ。

 

気力でブン投げてきている。

 

しかし、威力は先ほどまでとはいかず、俺はスパイクの裏でトラップし、ゴールにいる歩星を見る。

 

俺だって反撃の一撃をくれてやる。

「お前らがやってきたこと、そのまま返してやるよ!」

 

俺はカオルと箕田にアイコンタクトをして、シュートの体勢に入り、打つ。

 

「トライデントアロー!!」

 

戒と対戦したときには未完成だったが、今回はハッキリと三又の槍のオーラを纏った必殺シュートを打つことに成功した。

 

「舐めるなぁ!!!」

 

歩星は両手でしっかりとボールを抑えようとするものの、先ほどの猛攻で消耗が著しい、なんとか弾いたそのボールはゴールポストに当たり…

 

「クリムゾン・ブル」

 

箕田が空中でボレーシュートで押し込み、同点となった。

 

「ナイシュー!箕田!!」

 

「部灰こそ、鬼強ぇーロングシュートだったぜ!!」

 

俺たちはガッチリと手を合わせ、点の獲得を喜ぶ。

 

その後も天ノ使FCの猛攻は続き、歩星も最後まで粘りをみせ、試合終了1分前まで同点が続くものの、最後は箕田のシュートフェイントのカオルへのパスでカオルがゴールポストギリギリのコースに狙いシュート。

 

 

 

 

これが逆転弾となりそのまま試合終了のホイッスルがなり、スコアは4-3で我々天ノ使FCが勝利した。

 

「「「ありがとうございましたぁ!!!」」」

 

試合終わりの挨拶を済ませ、自陣のベンチに戻る中、俺は歩星に声をかけた。

 

「歩星!」

 

「…なんだ?」

 

「お前凄かったよ、正直負けも覚悟した…俺たちはこの大会必ず優勝する!だからまたサッカーやろうな!!」

 

「…今度は負けない、覚悟しておけ」

 

「おう、またな!」

 

俺たちは握手を交わし、また一緒にサッカーをやることを誓った。

 

まぁ原作通りいくなら、世宇子中で一緒にサッカーやるから頼もしい事この上ないな。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

試合後、全体で軽くミーティングをし、今回の反省を行い。

 

それぞれ帰路に着くことになった。

 

カオルと戒と比較的に家の近い俺は、3人で帰ることとなった。

 

「今日の試合はヒリヒリしたなぁ、でも最後まで楽しかったね」

 

「楽しくないわよ!!3点も取られて悔しいわ!!!」

 

「まぁまぁ、俺もDFの役割出来なかったし、良い勉強になったから…」

 

戒は悔しがり、俺がなだめる、カオルはどこ吹く風で今日の試合の余韻に浸っている。

 

試合後は毎回こんな感じの構図ができあがっている、戒はいつも悔しがっている。

 

意識が高すぎるんだよなぁ、逆にカオルは試合後は気が抜けてホワホワしてて使い物にならない…

 

「じゃあ俺、ここで曲がるから」

 

「うん、またね炎」

 

「おつかれ、次の試合も頼むわよ」

 

2人と別れて、自宅へ進む。

 

1人になるとつい考えてしまう。

 

これでまた彼女に近づけただろうか。

 

なんとしてもこの大会を勝ち抜け、世界大会で照美とサッカーをやる。

 

照美もきっとサッカーをやっているはずだ。

 

俺たちの再会はサッカーでないとダメな気がする、出会いがサッカーだったように。

 

熱くなる心を抑え、俺は帰路についた。

 




サッカーの描写難しいですが、超次元なのでブッ飛んでいても良いですよね?

最後まで読んでいただきありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アフロディの憂鬱

お久しぶりです、仕事で色々ありかけませんでした…

今後の展開、かなり悩んでます。

感想にてこうしてくれたら嬉しいみたいなのくれたら嬉しいです。


 

パパの仕事の都合で韓国にきて、数ヶ月。

 

僕は早速ホームシックになっていた…

 

「ハァ…今頃炎君はなにしてるんだろう…」

 

転校先の小学校には日本人の子もいて、韓国語も少しだけなら話せるので生活に不便はないものの、毎日一緒にサッカーをしていた部灰炎の存在が脳裏から離れない。

 

幸いなことに同級生の日本人の子2人が在籍している、サッカーのクラブチームに入ることぎできたので孤立することはなかった。

 

むしろ、女の子なのにサッカーが上手いという事で懐かれてしまっている…

 

彼らは同じ孤児院出身で、孤児院のオーナーが見つけた隕石の研究の為だとかで、数人の子がついてきているとの事だ。

 

名前は南雲晴矢(なぐも はるや)と凉野風介(すずの ふうすけ)

南雲くんは太陽のように騒がしい子で、涼野くんは常にクールな印象がある。

 

彼らのサッカー好きも相当なもので、僕が自主練をしているといつも一緒に練習しようと誘ってくれる。

 

2人ともストライカーで、素早いドリブルや、強烈なシュートを得意としていた。

 

彼らとサッカーをしていると楽しいし、勉強にもなる。

 

どんなチームを相手にしても、南雲くんの突破力と涼野くんの冷静なフェイントなどで確実に相手を削り、僕も含め3人で確実に点を稼ぐ。

 

連携も全く問題なく、対戦相手もどんどん強くなってくるが、満たされないものがどうしてもある。

 

それは僕たち3人のこの攻撃を彼ならどう防ごうとするのか。

 

きっと僕の想像を超えた事をしてくれるに違いない、という期待を無意識にしてしまう。

 

「おーい!アフロディ!!」

 

「また考えごとか?」

 

練習終わり、帰路についている途中、南雲くんと涼野くんが話をしていたらしく、物思いに耽っていた僕は彼らの問いかけを聞きそびれていた。

 

「あぁ、ごめんね」

 

僕は話を聞いていなかった事を謝った。

 

「またアイツのことでもおもいだしてたんだろ!?」

 

「アフロディはいつもそうだからな」

 

呆れ顔でそう言う南雲・涼野ペア

 

「なっ!!別に炎くんのことを考えてたわけじゃないよ!!?」

 

僕は図星ながらも、気恥ずかしさから否定する。

 

「わかった、わかった!みなまで言わなくもいいっつーの!」

 

「…ふん、誰も名前まではだしてない」

 

「えっ」

 

否定するものの彼らにはもう周知のようで、軽くあしらわれてしまった…

 

「でもアフロディがそんなにお熱なやつなら、一回サッカーやってみてぇよな、ディフェンスだろ?」

 

「それに関してわ、南雲に同意だな。実力が気になる。」

 

ごめん炎くん、やっかいな人達に目をつけられてしまったかもしれません。

 

「に、日本に帰ることがあったら紹介するよ…」

 

 

賑やかなまま帰路を進めていくと

 

「じゃあ僕はこっちだから、ここでバイバイだね」

 

僕が住むマンションは彼らの家とはここで道が分かれるので、別れの挨拶をする。

 

「おう、またあしたなー!」

 

「おつかれ」

 

ふたりとも手を軽く振り挨拶をしてくれる。

基本的にいい子だ、サッカーの時以外は…

 

僕を女の子扱いして遠慮することもなく、言いたい事やプレーも全力でぶつかってきてくれる。

 

大切な友達だ。

 

でも僕の1番大切な人は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アフロディと別れた後…

 

「なぁ、アフロディってやっぱアイツのこと好きなんかなぁ?」

 

「どう考えてもそうだろ、俺たちの話をスルーするくらいにはね」

 

アフロディが毎日のように語る、部灰炎のことについて話す2人。

 

2人は少し考えると同じ結論に至った。

 

 

「「ムカつくな」」

 

アフロディのチャームは異国の地にて、さらなる惨劇を巻き起こそうとしていた。




バーンとガゼルとは幼馴染設定でいきましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。