伝説の超鬼殺隊員 (ツキリョー)
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プロローグ

皆さんはじめまして。ツキリョーと申します。
これからは大変だとは思いますがなんとか頑張っていきます。どうぞよろしくお願いします。


ここは宇宙の中で一番環境が整った美しい星、地球である。今ここでは何度も宇宙を救ってきた英雄とその息子二人、そして彼らと対峙している悪魔と恐れられ、破壊の限りを尽くしてきた男による戦いに決着が付こうとしていた。宇宙の悪魔、ブロリーが放ったとっておきの気弾が少しずつ押され始めたのを三人は見逃さなかった。宇宙の英雄、孫悟空とその息子二人は一瞬の隙をついて放っている気功波の威力を大幅に強めたのだ。ブロリーの気弾はあっという間に打ち破られ、更にブロリー自身に向かって一直線に飛んできていた。

 

ブロリー「カカロット・・!」ポウポウポウ

 

彼はあわてて気弾を数発打ち込むが一瞬も拮抗せずに破られ、バリアを貼るもそれすらも意味をなさなかった。その威力に耐えきれずブロリーは吹き飛ばされ、地球を追い出された。なんとか押し返そうとするが、それでも気功波の勢いは衰えることはなく、全てを焼き尽くす真っ赤な星、太陽が背後に迫ってくる。彼の脳裏に敗北の二文字が浮かび上がり、自身の死が間近に迫っていることを悟った彼は心底動揺していた。

 

ブロリー(何故だ!?何故俺は吹き飛ばされている!?このまま負けるのか!?カカロットにリベンジも出来ないまま!!)

 

ブロリーはなんとか意識だけは失うまいと宿敵の事を考え続ける。しかし、現実は非情であり、孫悟空達が放った気功波『かめはめ波』の光と背後の太陽の光に飲み込まれた時に意識は薄れていった。最後に彼は宿敵に向かって恨みと憎しみを込めて名を叫んだ。

 

ブロリー「カァカァロッットオオオオオオオオ!!!!」

 

彼の叫びは広い宇宙空間に消えていき、彼の肉体も太陽に叩きつけられる。そうなればいくら伝説のスーパーサイヤ人でも死んでしまうことは明確だった。ブロリーの肉体が、太陽の熱と孫悟空達のかめはめ波の勢いに耐えきれずに、光の中に消えていった。こうして南の銀河を破壊し尽くした伝説のスーパーサイヤ人は完全に死亡した。

・・・・かに思われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは今から見ると遥か昔の世界。大正時代の地球、その中でも日本という国である。周りは一面白の世界であることから、季節は冬だということがわかる。とある山奥に、家族を失ったよく鼻が利く少年とその妹で鬼化した少女が、一人の鬼狩りと戦っていた。最も、普通の少年が強力な鬼を殺すために特別な鍛練を積んできた鬼狩りに敵うはずもないが、妹を守りたい一心で立ち向かっていた。彼、竈門炭治郎は鬼化した妹が鬼狩りに殺されないように土下座までしていた。しかし、鬼狩りの男、冨岡義勇はそんな炭治郎を一喝する。

 

義勇「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!惨めったらしくうずくまるのはやめろ!!そんなことが通用するならお前の家族は殺されてない。そんな弱者には何の権利もない。力で強者にねじ伏せられるのみ!!それが現実だ!何故さっきお前は妹に覆い被さった?あんなことで守ったつもりか?お前ごと妹を串刺しにしても良かったんだぞ!」

 

そして義勇が持っている日輪刀で炭治郎の妹、竈門禰豆子を刺そうとしたとき、炭治郎が動いた。

 

炭治郎「やめろーーー!!!!」

 

石を投げ、木の影に隠れたときに斧を上へ投げた。この炭治郎の戦略に義勇は驚き、禰豆子を掴んでいた手を緩めてしまった。その隙をつき、禰豆子は抜け出し、義勇も慌てて刀を振ろうとしたが、禰豆子が炭治郎を庇う姿勢を見せたのだ。人喰い鬼が人間を庇う、そんな光景を見た義勇は禰豆子の首に手刀を入れて気絶させ、彼女に竹を咥えさせた。そして気絶から気がついた炭治郎は禰豆子が無事だった事に安堵した。

 

義勇「起きたか。狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という老人を訪ねろ。冨岡義勇に言われて来たと言え。今は日が差していないから大丈夫なようだが、妹を太陽のしたに連れ出すなよ。」

 

炭治郎に指示と忠告をした後、義勇は去っていった。その後二人は殺された家族を埋葬し、義勇の指示のもと、その場を後にした。

―――とある里についた炭治郎は崖にあった洞穴に禰豆子を待機させ、日除けの籠を作って戻ってきた。

 

炭治郎「禰豆子。あれっ?禰豆子!」

 

禰豆子「ムー。」

 

炭治郎(穴を掘っていたのか・・妹がモグラみたいになってしまった。そしてすごく顔をしかめてる、よっぽど日に当たりたくないんだな。)

 

炭治郎がそう思ったその時、炭治郎の敏感な鼻が血の匂いを捉えた。

 

炭治郎(・・!血の匂い!)「禰豆子!少し待っててくれ!」

 

禰豆子「んー!」

 

わかったと言うようにうなずく禰豆子。それをみた炭治郎は一瞬だけ笑顔を向けると血の匂いがする方向に向かって走っていった。




プロローグを書き終わりました。主の語彙力の無さに少し絶望しています泣。今後は不定期投稿になっていくと思われます。何卒とよろしくお願いします。こんな小説ですが最後まで読んでくれたら嬉しいです。


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出会い

第二話です。最後まで読んでくれたら嬉しいです。


炭治郎は血の匂いがする場所へたどり着くと、そこには全身が血塗れになって倒れている男がいた。かつて宇宙で、破壊の限りを尽くしてきた"伝説のスーパーサイヤ人"ブロリーである。胸が貫かれて穴が空いており、手足があり得ない方向に曲がっていた。周りの雪も血で真っ赤に染まっており、少し離れてみれば、仰向けかうつ伏せなのかもわからないくらいの状態だった。もはやグロイという言葉が生温く感じてしまう位の悲惨な光景に他の人物が見たとしても、呼吸が止まってもう亡くなっていると諦めるだろう。

 

炭治郎(もうこの人は助からない・・せめて安らかに眠れるように埋葬しよう・・)ポロポロ

 

炭治郎もその例に漏れずに諦めて涙を流しながら、せめて埋葬だけでもしてあげようと近くの地面を掘ろうとしたその時だった。

 

ブロリー「カ・・・カ・・・ロッ・・・ト・・」

 

そんな声が確かに炭治郎には聞こえたのだ。炭治郎はすぐにブロリーへ向き直り、もう一度手首を触って彼が生きているのかを確認する。

 

炭治郎(脈はまだある、まだこの人は生きている!もしかしたら助けられるかもしれない・・!でも何故・・この人から物凄い悲しみの匂いがするんだ・・?)

 

炭治郎は悲しみの匂いに疑問を持つも、彼を助けるために近くの里の人間に協力を呼び掛けた。

 

炭治郎「すみませーん!!今危篤状態の方が倒れているんです!どなたか応急処置の道具をくださいませんか!?」

 

炭治郎の必死の呼び掛けにより、優しい数人の人が漢方薬をくれたり、包帯や止血剤もくれたりした。そして更にブロリーをその近くの洞穴まで運んでくれるといってくれた方がいた。

 

村人「よし!俺が手伝ってやる!」

 

炭治郎「ありがとうございます!」

 

炭治郎は手伝ってくれる村人をブロリーのところまでつれていった。ブロリーの現状を見た村人は怪訝そうな表情で炭治郎に問う。

 

村人「・・・・これ本当に生きているのか?」

 

炭治郎「確かにさっき声を出してたんです!」

 

村人が怪しみ、炭治郎が弁解していると

 

ブロリー「カカ・・ロッ・・ト・・」

村人・炭治郎「!」

 

彼が生と死の境をさまよっているなかで何者かの名のようなものを口にしているのが二人にははっきりと聞こえたのだ。

 

村人「・・確かにまだ希望はあるな。」

 

炭治郎「まだ彼は生きています。お願いします!手伝ってください!」

 

村人「よし!任せとけ!」

 

二人でなんとか洞穴の前まで運んできた。炭治郎は鬼がいるとバラされるのではないかと不安になったが、幸い禰豆子の姿が村人に見つかることはなかった。

 

炭治郎「手伝ってくださってありがとうございました!」

 

村人「良いってことよ。また必要になったら呼べよ。」

 

炭治郎「はい!ありがとうございます!」

 

村人は運び終えるとそそくさと姿を消してしまった。残された炭治郎は洞穴の中にいる禰豆子と共に先ほどもらったものでブロリーの応急処置を施した。処置が終わった後、炭治郎と禰豆子は驚きの光景を目にした。

 

メキメキメキメキ

 

炭治郎「!傷が治っていってる!」

 

禰豆子「んー。」

 

脈が強くなってくると同時に傷がみるみると修復していっているのだ。手足ももとの状態に戻って段々と身体機能も息を吹き替えしているようだった。しかし、更に悲しみの匂いが強くなっているのだ。そしてブロリーは意識を完全に取り戻すと、大声を上げて飛び起きた。

 

ブロリー「カカロットオオオオオオオオ!!!!」

 

炭治郎「!」ビクッ

禰豆子「!」ドキッ

 

目を覚ましたブロリーはすぐにハッとなる。そして周りを見回すと状況を把握する。

 

ブロリー(結局俺は、カカロットに勝つことは出来なかった・・それどころかその息子達と共に殺されるとは、・・それにしてもここはどこだ?俺は死んだはずだ、だとすれば此処は地獄か?だがここでは阿鼻叫喚は全く聞こえてこない。ならば此処は天国か?いや、星を破壊してきた俺が天国になんぞに行けるわけがない。・・身体に温もりがある・・俺は生きてるのか?)

 

炭治郎「気がつきましたか?」

 

ブロリー「へァッ!?」

 

ブロリーはすぐ近くで声がしたことに驚き、そちらをみた。そこには、赤髪の少年竈門炭治郎がいた。そしてその隣には竹を咥えた少女竈門禰豆子が覗くようにみていた。ブロリーの第一印象はこの二人は似ていると思った。そして二人を血のつながりがある兄妹だと判断した。とりあえず質問をしてみることにする。

 

ブロリー「誰だお前達は?」

 

炭治郎「俺は竈門炭治郎です。こっちは妹の禰豆子です。あなたが相当ひどい怪我をしていたので介護してました。」

 

禰豆子「ムー。」

 

ブロリー「介護だと?」(なるなど、それだと俺の身体が温もりがあってまだ生きている事にも辻褄が合う。)

 

ブロリーはまだ持っている疑問を解消するために、次の質問をする。

 

ブロリー「ここはどこだ?」

 

炭治郎「ここは里の近くにある崖にある洞穴です。里の方と協力して運んで来ました。」

 

ブロリー「お前達はここに住んでいるのか?」

 

炭治郎「いいえ、禰豆子が鬼になってしまったので日に当たらないようにしているだけです。」

禰豆子「んー。」こくこく

 

禰豆子もそうそうと言うようにこくこくとうなずく。

 

ブロリー「鬼って何だ?」

 

炭治郎「鬼とは身体能力が凄まじくて昔から人を襲って食べるんです。その鬼の血が入って、禰豆子が鬼にされたんです。俺の家族も・・鬼に殺された・・!」

 

ブロリー「・・・・」(・・嘘をついてるようには見えない。貴様も散々な目に合っていたのか。それと何故俺を助けたんだ?俺を助けるメリットなんてないはずだ。)

 

炭治郎「俺からもいいですか?」

 

ブロリー「・・何だ?」

 

炭治郎「貴方の名前は何ですか?」

 

ブロリー「・・俺はブロリー、サイヤ人だ。」

 

炭治郎「サイヤ人?」

 

ブロリー「戦闘民族のことだ。戦闘能力が普通の人間と比べると次元が違う。俺はサイヤ人のなかでも特に強い力を持っている。」

 

炭治郎(なるなど、だからこの人の気配が鬼とそっくりなのか!それと凄い悲しみの匂いがする。)「なるほど、だから最初は鬼の気配がしたのか・・」

 

炭治郎の小さい呟きはブロリーにも聞こえていた。そして最大の疑問を解消するために質問をした。

 

ブロリー「お前「炭治郎」・・は?」

炭治郎「俺はお前ではなく炭治郎です。」

 

ブロリー「・・炭治郎。何故お前は俺を助けた?俺をさっき言ってた鬼だと思ったならば、俺を助けるなどあり得ないはずだ!それなのに何故!?」

 

ブロリーはとても困惑していた。鬼という存在が本当に人間を喰うならば、人間は鬼を恐れるはずである。そして自分がその人喰い鬼と思ったならば、助けずにそのまま見殺しにするのが普通である。なのにも関わらず弱っていた自分を助けた。ブロリーは過去の出来事からこういうことを考えるのは大抵自分の力を利用する事を目的に見せかけだけの救いだと思っていたのだ。何か裏があるに違いないと。だからブロリーはあえてこの質問をしたのだ。そして返答次第では殺そう、そう考えていた。しかし、炭治郎の出した答えはブロリーにとって信じがたいものだった。

 

炭治郎「貴方がとても辛そうでしたから・・」

 

ブロリー「・・は?」

 

炭治郎「俺はよく鼻が利くんです。それも相手の感情がわかるくらいに。そして貴方からは物凄い悲しみの匂いがしたんです。恨みや憎しみの匂いもしましたが、悲しみの匂いがとても強く表れてたんです。貴方はいつも一人だったんだと、幸せを一度も感じたことがないと思ったんです。それを感じて受け入れないといけないと実感したんです。・・なのでブロリーさんさえ良ければ一緒に行きたいんです。俺は貴方を助けたい。・・駄目ですか?」

禰豆子「ムーんー」

 

炭治郎はブロリーと一緒に行きたいと思っており、禰豆子も優しく微笑んでいた。

 

ブロリー「・・・・」(・・まさかこんな奴に出会えるとは思ってもいなかったな。)

 

ブロリーは信じられないようなものをみたような目で炭治郎をみていた。そして、自分にあった負の感情が物凄く軽くなったことに気づくと、フッと表情を緩めて答えを出した。

 

ブロリー「・・どうやら炭治郎と禰豆子の事は信用してもいいみたいだな。わかった、着いていこう。」

 

炭治郎はその答えを聞いた瞬間にパァァァととても嬉しそうな表情をする。禰豆子も凄くにこにこしている。

 

炭治郎「ありがとうございますブロリーさん!」

 

禰豆子「ムー!」

 

炭治郎「じゃあ早速行きましょう。」

 

ブロリー「はい・・」

 

日除けの籠の中に禰豆子が入り、それを炭治郎が背負い、ブロリーと一緒に鱗滝左近次を訪ねるために狭霧山に向かうのだった。




遂にブロリーが炭治郎達と出会いました。次回は鬼との初戦闘になると思います。ブロリーの異次元の強さをご覧ください。こんな小説ですが、最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございます。次回もよろしくお願いします。


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鬼VS人間?いや、悪魔だ!

第三話です。原作とは内容が異なりますがご了承ください。最後まで読んでくれたら嬉しいです。


狭霧山を目指す炭治郎達は、途中の山でお堂を見つけた。

 

炭治郎「あっ。やっぱりお堂があるぞ、灯りが漏れてるから誰かいるみたいだけど。」

 

ブロリー「行くのか?」

 

炭治郎「もちろんです!」

禰豆子「ムー。」

 

三人が近づいたとき、炭治郎がお堂の中から血の匂いを感じた。

 

炭治郎「!!血の匂いがする・・この山は道が険しいから誰か怪我をしたんだ!」

 

炭治郎が走り出すと、禰豆子とブロリーもその後を追った。そしてお堂の扉を開くと・・中には沢山の人間の死体があり、二体の人喰い鬼が、喧嘩をしながら争うように食い荒らしていた。

 

炭治郎「大丈夫ですか・・」

 

禰豆子「!!」

 

ブロリー「・・・・」

 

鬼1「おいテメェ!!ここは俺の縄張りだ!人間を喰いたいなら他を当たりやがれ!」

 

鬼2「うるせぇ!!俺が最初にここの人間を喰ってたんだ!お前こそどこかに消えろ!!」

 

鬼は、炭治郎達の気配に気づくとゆっくりと振り返る。

 

鬼1「何だお前ら?ここは俺の縄張りだぞ。餌場を荒らすなら許さねぇぞ。」

 

鬼2「貴様らも俺の飯を横取りするつもりか?だとすれば容赦はしないが。」

 

鬼1「・・・んん?妙な感じがするな。お前ら人間か?」バッ!

 

鬼の片方は炭治郎に襲いかかり、お堂の外へと出された。人肉を見て涎を垂らしていた禰豆子もすぐさま我に帰り、炭治郎の援護に向かった。

 

鬼2「お前・・鬼なのか人間なのかよくわからない気配がするな・・まぁいい。良い肉で喰い堪えがありそうだ!」バッ!!

 

鬼のもう片方はブロリーを見てしたなめずりをすると、一直線にブロリーに襲いかかる・・が、しかし。

 

ブロリー「フンッ!!」ドカッ!!

 

飛び掛かってきた鬼に対して体勢を低くすると、手を地面に付けて下から空中へと蹴り飛ばした。

 

鬼2「ぐおっ!?・・ほぅ少しはやるようだな。だが、これならどうかな?」

 

鬼はさっきより更に速いスピードで迫ってくる。・・だが

 

ブロリー「デヤァッ!!」バキッ!!

 

鬼の顔面に拳をめり込ませ、その勢いそのままに振り抜き、鬼を殴り飛ばしたのだ。そしてそれだけでは終わらなかった。

 

ブロリー「はぁっ!!」ゴゴゴゴゴゴゴ

鬼2「!!」

 

ブロリーは気を高め、金髪碧眼の『スーパーサイヤ人』に変身したのだ。鬼はあまりの気迫に後ずさりする。

 

鬼2「な・・なんてやつだ・・」

 

ブロリーは鬼に指を差すと宣言する。

 

ブロリー「クズ・・まずお前から血祭りに上げてやる!」ゴゴゴゴ

 

ブロリーはさっきとは比べ物にならないスピードで鬼との距離を詰めると、胸にある金の首飾りに押し当ててそこから気を爆発させ、大ダメージを与える。

 

ブロリー「フハハハハハ!!」ドッカーン!!

鬼2「ぐあああああ!?」

 

更に地面に叩きつけられた鬼の顔面を掴むとおもいっきり上空に投げ飛ばす。そして先回りすると両腕を振り下ろし再び地面に叩きつける。

 

ブロリー「死ぬがいい!!」ズザザザー

鬼2「があああああ!!」

 

地面に倒れている鬼を走って蹴りあげ、だめ押しに、気弾を叩き込んだ。その気弾は最初に炭治郎達を襲った鬼を巻き添えにした。

 

ギュピギュピギュピギュピギュピギュピギュピギュピギュピギュピギュピドカッ!!!

鬼2「うわああああ!!」

ブロリー「フフフッ!!」ポウ ギュルル

鬼2「ジュエエエエン!!」

 

炭治郎「くっ!」

禰豆子「んん!!」

鬼1「んん?なんだ?・・うわああああ!!」ギュルルルルドッカーン!!

 

炭治郎「あっあれ?」

禰豆子「む。」

 

ブロリー「炭治郎!大丈夫か?」

 

炭治郎「えっと・・どちら様で?」

 

ブロリー「・・・ブロリーです。」

 

炭治郎「ブロ・・えええ!?ブロリーさん!?」

禰豆子「ムー!!」

 

炭治郎と禰豆子はとても驚く。それもそのはずである。二人はブロリーと出会うまでサイヤ人という種族すら知らなかったのだ。そんな状態で一部のサイヤ人だけがなれる、スーパーサイヤ人の形態など知るよしもなかった。さらに髪も逆立ち目の色も変わり、表情まで大きく変化してしまっては、同一人物だと思えと言われる方が無理な話である。

 

ブロリー「とりあえず、この姿についてはあとで説明する。」

 

炭治郎「わっわかりました。」

禰豆子「んー。」

 

炭治郎達に説明する必要があると思ったブロリーは、後で説明することを伝えた。

 

鬼1「くっくそ!」

鬼2「うぐっ!ああっ!・・なんてタフな奴なんだ、化け物め!!」

ブロリー「俺が化け物?違う・・俺は悪魔だ!!フハハハハハハハハハ!!」

 

鬼は満身創痍だった。本来鬼は、人間にとっての致命傷を負ったとしてもすさまじい回復力ですぐに回復するのだ。殺す方法としては太陽の光に当たるか、特別な日輪刀で首を斬るしか方法がないと言われていた。だがこの場合、ブロリーの攻撃が鬼の身体を持ってしても耐えきれず、鬼の細胞に大ダメージが入って回復力が著しく低下しているのだ。

 

鬼1「・・おいテメェ。気に食わねぇがここは手を組んだ方が良さそうだな。」

 

鬼2「ああ・・その方が効率が良さそうだし、特別にお前に合わせてやる。」

 

ブロリー「フハハハハハハ!!!雑魚がいくら集まったとて、この俺を超えることはできぬぅ!!」

 

鬼1「そんなのは、やってみなくてはわかんねぇだろ!」

 

鬼2「協力した方が一人よりも強いことを証明してやるぜ。」

 

満身創痍の鬼二体は協力することを決めたようだ。そして二体揃ってブロリーに飛びかかるが、しかし。

 

ブロリー「無駄なことを、今楽にしてやる!」ポウ ギュルルンドッカーン!!

鬼1・2「ぎゃああああああああ!!」ドカーン デデーン☆

 

ブロリーが最後に放った小さめの気弾は、二体の鬼に当たった瞬間に大きく大きく膨れ上がり、跡形もなく消し去ってしまったのだ。

 

ブロリー「その程度のパワーで俺を倒せると思っていたのか?」

 

炭治郎「すっ・・凄い・・」

禰豆子「ムー。」キラキラ✨

 

炭治郎はブロリーの圧倒的な強さに唖然とし、禰豆子は目を輝かせていた。そして鬼を倒したブロリーはゆっくりと振り返る。

 

ブロリー「炭治郎・・禰豆子・・大丈夫か?」

 

炭治郎「えっ?あっはい。大丈夫です。」

禰豆子「ムー!///」

 

ブロリーに安否を聞かれ、我に帰った炭治郎はあわてて返事をし、禰豆子も炭治郎の答えに合わせるように笑顔を向けた。

 

ブロリー「・・・・禰豆子、カワイイ!」

禰豆子「!?んー!///」ポカポカ

 

いきなりブロリーに可愛いと言われ禰豆子は恥ずかしかったのか、それをごまかすようにブロリーをポカポカと叩く。

 

炭治郎「禰豆子、叩いちゃダメだよ。」

禰豆子「ムーうー。」

 

炭治郎「ブロリーさん、大丈夫ですか?」

 

ブロリー「問題ないYO☆」

 

そしてブロリーは"スーパーサイヤ"人から"通常形態"へと戻る。ふとお堂の方を見ると、天狗のお面を付けた人が殺された人達を埋葬してくれていた。

 

炭治郎(殺された人達を埋葬してくれている。)「あっあの・・」

 

左近次「儂は鱗滝左近次だ。義勇の紹介はお前で間違いないな?だが、見たところ鬼がもう一体いるようだが?」

 

疑問を持つようにブロリーを見ると、炭治郎は弁解する。

 

炭治郎「この方はブロリーさんです。彼は鬼ではなくサイヤ人です。確かに鬼の気配とそっくりですが、ブロリーさんは鬼ではありません。」

 

左近次「ほぅ?何故そんなことを言い切れる?」

 

炭治郎「ブロリーさんは日に当たっても死にませんでした。そして、鬼特有の腐った匂いが全くしません。なので鬼ではないと断言できます。」

 

左近次「・・まぁいいだろう。」

 

炭治郎「俺は竈門炭治郎といいます。妹は禰豆子で・・」

 

左近次「炭治郎。妹が人を喰った時、お前はどうする。」

 

炭治郎「・・・」

 

何も答えられなかった炭治郎の頬を左近次は無言で叩いた。

 

左近次「判断が遅い。」スパーン!!

 

炭治郎「ッ!?」

 

左近次「お前はとにかく判断が遅い。そっちの男、ブロリーが鬼に止めを刺すまで動けなかった。今の質問に間髪入れずに答えられなかったのは何故か?お前の覚悟が甘いからだ。」

 

炭治郎「・・・・ッ」

 

左近次「妹が人を喰った時やることは二つ、妹を殺すお前は腹を切って死ぬ。鬼になった妹を連れていくというのはそういうことだ。しかしこれは絶対にあってはならないと肝に銘じておけ。罪なき人の命をお前の妹が奪う。それだけは絶対にあってはならない。儂の言っていることがわかるか?」

 

炭治郎「はい!!」

 

左近次「・・・では、これからお前が鬼殺の剣士として相応しいかどうかを試す。妹を背負ってついてこい。そしてお前もだ。」

 

鱗滝左近次の速さは異常だった。炭治郎は息を切らしながらついていくだけで精一杯の状態だ。最もブロリーは低空飛行しているため余裕そうだが。

 

炭治郎(速い!!この人は一体何歳なんだ?それと全く足音がしない!!それにブロリーさんも低空飛行している!?サイヤ人って本当に何者なんだろう?)ハァハァ

 

炭治郎はなんとか走り続け、必死の思いで家までたどり着くと質問する。しかし、帰ってきたのは非情な答えであった。

 

炭治郎「こっ・・これで俺はっ・・認めてもらえましたか?」コヒューコヒューゼェゼェ

 

左近次「試すのは今からだ。山に登る。」

 

炭治郎「・・・・」( ゚□゚)

 

霧が濃い山の奥の方までやって来ると、左近次は振り返る。

 

左近次「ここから山の麓の家まで下りてくること、今度は夜明けまで待たない。」

 

このときの炭治郎は鼻が利くため簡単なことだと思っていた。しかし、道中には沢山の罠があった。

 

炭治郎(まずい!!この調子で罠にかかっていたら朝までに山をくだれないぞ。それにこの山は・・空気が薄いんだ!!俺が住んでいた山よりも遥かに薄い!!だからこんなに息が苦しくてくらくらする。戻れるだろうか、失神するかも・・・・いや、戻るんだ!!呼吸を整えて罠の匂いを嗅ぎわけろ。人の手で仕掛けられた罠はやっぱり微かに匂いが違う!!よしっわかる!!わかるぞ!!)

 

最早炭治郎は精神力だけで動いていた。罠の匂いがわかったとしても、それを避けられる余力がなければ意味をなさない。炭治郎は次々に罠にかかっていたが、なんとか突破して夜明けまでにたどり着くことができた。

 

炭治郎「も・・戻り・・ました。」ガクッ

 

左近次「・・お前を認める。竈門炭治郎。」

 

鬼殺の剣士に相応しいと認めてもらった炭治郎、そして鬼殺隊に入隊するため、最終選別に向けてここからさらに過酷な修行に励むのだった。




ブロリーと鬼、どっちが強い?聞くまでもありませんでしたね。また駄文になっています泣今後もこの小説をよろしくお願いします。


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修行の成果を見せろ!最終選別!

第四話です。今回は話がかなり長くなってしまいました。こんな小説でも最後まで読んでくれたら嬉しいです。


鬼殺の剣士に相応しいと認められた炭治郎は、鬼殺隊についてブロリーと共に鱗滝左近次の説明を聞いていた。

 

左近次「儂は育手だ。文字通り剣士を育てる。育手は山ほどいてそれぞれの場所、それぞれのやり方で剣士を育てている。鬼殺隊に入るためには、藤襲山で行われる最終選別で生き残らなければならない。最終選別を受けていいかどうかは儂が決める。」

 

その日から炭治郎は鱗滝左近次の指導の下、血が滲むような修行の日々を送ることになる。様々な罠が施された山下りや刀の素振り、転がし祭りという素早く起き上がる訓練をしたこともあった。あまりに過酷な修行内容でも、炭治郎は弱音を一切吐かず自分を追い込んだ。鬼化した禰豆子を元に戻す為に。

一方ブロリーも、炭治郎が鱗滝左近次と共に修行をしている間近くの別の山へ行き、一人で修行をしていた。元々鬼を上回る力を持っている為、鱗滝左近次からは全集中の呼吸を教わった後、「儂から教える事はもう何もない。」と言われて更なる高みを目指そうと、自身が扱える気と教わった全集中の呼吸を組み合わせて使えるようになるための鍛練を積んでいた。かつて自分を負かせた宿敵、孫悟空を超えるためと・・初めてできた仲間、炭治郎と禰豆子を助ける為に。

それから禰豆子は、ある日を境に眠ったまま目覚めなくなり、その状態のまま半年が経った。医者に診てもらうも異常はなし、だがずっと眠り続ける禰豆子に炭治郎は心配していた。

炭治郎の山下りはより険しく、空気の薄い場所での訓練になっていき、死の恐怖とずっと隣り合わせだった。ブロリーの修行も質が上がっていき、今では通常形態のままそこら辺の鬼なら楽々倒せる位の実力になった。

 

左近次「もう教えることはない。」

炭治郎「えっ?」

 

修行を始めて一年、突然言われる。

 

左近次「あとはお前次第だ。お前が儂の教えたことを昇華できるかどうか。この岩を斬れたら最終選別に行くのを許可する。」

※ブロリーは既に許可をもらっています。(動きと型を見せたら鬼殺隊の柱を軽々と上回ると判断されたため)

 

炭治郎(岩って斬るものだっけ?刀で斬れるものだっけ?斬れる気がしない。刀が折れる・・)

 

鱗滝左近次はそれから指導をしなくなった。炭治郎は習ったことを繰り返す。しかし、それでも岩を斬れなかった。だんだんと焦りが生まれてきた。

 

炭治郎(足りない。まだ鍛練が足りない!もっと・・もっとやらないと)

 

ブロリー「炭治郎・・何してるんだぁ?」

 

声がした方を見ると、修行を終えたブロリーがいた。

 

炭治郎「!ブロリーさん!何って鍛練をしてるんですよ。」

 

ブロリー「鍛練?頭を押さえてうずくまることがかぁ?」

 

炭治郎「!」

 

炭治郎は自分の姿を見ると、ブロリーの言うとおりの姿勢になっていた。そしてそれに気づいた炭治郎はネガティブ思考になっていった。

 

炭治郎(わー!くじけそう!負けそう!)「頑張れ俺!頑張れ!」

 

?「うるさい!!」

 

ブロリー・炭治郎「!?」

 

二人が声のした方を見ると、狐の面を被った真剣を持つ少年がいる。彼、錆兎は岩に腰かけていた。

 

錆兎「男が喚くな見苦しい。どんな苦しみにも黙って耐えろ、お前が男なら・・男に生まれたなら・・」

 

そして急にブロリーに斬りかかる。しかしブロリーは刀を構えず、腕を組ながら楽々と避けていくだけだった。そのあまりにも素早い二人の動きに炭治郎は唖然としていた。

 

錆兎「ところで何故鬼がいる?今はまだ昼間だぞ?だがこの気配は間違いなく鬼だ!!だったら今すぐ俺が切り捨ててやる!!」

 

ブロリー「フハハハハハ!!そんな刀で俺を倒せると思っているのか?」

 

錆兎はブロリーの首、手、足、胴体と様々な場所を狙って刀を振り抜くが、ブロリーは余裕そうに避けるだけで反撃の素振りすら見せない。錆兎はしびれを切らし、質問する。

 

錆兎「おい!何故お前は反撃してこない?」

 

そして返ってきた答えは錆兎の神経を逆撫でするものだった。

 

ブロリー「お前ごときに反撃するまでもない。」

 

錆兎「!・・完全に見下してやがるな。」

 

再びブロリーに斬りかかる。今度は避ける素振りすら見せずにブロリーの身体に真剣が当たる。がしかし。

 

ガキィン!バキッ!

錆兎「!?」

 

ブロリー「フフフ!その程度か?」

 

なんとブロリーの身体を斬るのではなく、刀の方が折れたのだ。そしてそこに炭治郎が止めに入った。

 

炭治郎「待って!確かに鬼の気配がするけど、ブロリーさんは鬼ではない!!それは鱗滝さんも認めてた!」

 

錆兎「何?鱗滝さんが・・」

 

錆兎は一瞬動揺したが、何を思ったのか真剣をしまう。

 

錆兎「鱗滝さんが認めるなら、そういうことにしてやろう。」

 

次に木刀を取り出すと、炭治郎に襲いかかった。炭治郎も慌てて受け止めたものの押し返されてしまった。

 

炭治郎「急になにするんだ!!」

 

錆兎「お前こそ何をしている?構えもせずに。」

 

炭治郎「!!」

 

炭治郎は指摘されて慌てて立ち上がる。そして錆兎と対峙する。

 

錆兎「さぁかかってこい。」

 

炭治郎「でも、君は木刀で俺は真剣だ。」

 

錆兎「・・フハハハハハ!!それはそれは!!心配していただいてありがたいことだ。お前は俺に怪我をさせると思っているわけだ。心の底から安心しろ・・俺はお前より強い!!岩を斬ってるからな!!」

 

炭治郎「岩を斬った!?」

 

錆兎「お前は何も身につけてない、何も自分のものにしていない。特に鱗滝さんに習った全集中の呼吸。お前はそれを知識として覚えただけだ、お前の身体は何もわかってない。お前の血肉に叩き込め、鱗滝さんが教えてくれたすべての極意を決して忘れることが無いように、骨の髄まで叩き込むんだ。」

 

炭治郎「やってる!毎日やってる!必死で!!でも全然ダメなんだ前にっ・・進めないこれ以上。」

 

錆兎「進め!!男なら!男に生まれたなら!!進む以外の道などない!!かかってこい!お前の力を、見せてみろ!!」

 

炭治郎は斬りかかろうとしたが、木刀で顎を打たれ失神した。錆兎はブロリーに振り返る。

 

錆兎「いきなり斬りかかったりして悪かったな。でもお前の力を見せてもらった。・・お前ならあいつにも勝てるだろう。」

 

ブロリー「?」

 

錆兎「気にするな。それと真菰、後は任せるぞ。」

 

真菰と呼ばれた少女は去っていく錆兎の背中を見送ると、炭治郎の側までよった。それと同時に炭治郎が目を覚ました。

 

真菰「大丈夫?」

 

ブロリー「やっと目を覚ましたようだな。」

 

炭治郎「あっはい!大丈夫です。さっきの一撃、少しも無駄のない動きでした、本当に綺麗でした!俺もあんなふうになりたいです!なれますかね俺に?」

 

ブロリー「フハハハハハ!!炭治郎ならできるYO。」

 

真菰「うん。きっとなれるよ、私が見てあげるもの。」

 

炭治郎(可愛らしい・・)「君は誰だろう?」

 

ブロリー「カワイイ!!」

真菰「!?///」

炭治郎「ちょ!?ブロリーさん!」

 

炭治郎は心の中で思っただけなのだが、ブロリーが声を出して言ってしまったため、少しだけ恥ずかしい思いをした炭治郎であった。そして真菰は顔を真っ赤にして俯いたのだった。

真菰は炭治郎の悪いところを指摘してあげた。それを受けた炭治郎は無駄な動きや癖を直していった。

他にも様々な話をしてわかったことは、錆兎と真菰は兄妹ではなく、孤児だったのを鱗滝左近次が育てたことと、他にも子供たちはいて炭治郎やブロリーを応援していると聞いた。全集中の呼吸についても、血の巡りを速くすることと、心臓の鼓動を速くすることで人間のまま鬼並みに強くなると聞かされた。

 

炭治郎「それはどうやったら、できるかな?」

 

真菰「死ぬほど鍛える。結局それ以外にできることはないと思うよ。」

 

そこから炭治郎は更に鍛練を重ねたが、錆兎には勝てなかった。半年経つまでは。

 

錆兎「半年でやっと男の顔になったな。」

 

炭治郎「今日こそ勝つ。」

 

この勝負は一瞬で決まった。炭治郎の刃が錆兎の面を斬っていた。勝ったとき、錆兎は笑ったのだ。泣きそうであり嬉しそうでもある、安心したような笑顔だった。

 

真菰「・・勝ってね炭治郎、あいつにも。」

 

錆兎達は消えており、狐の面を斬ったはずの炭治郎の刃は岩を斬っていた。そこにブロリーも合流した。炭治郎とブロリーの二人は鱗滝左近次の話を聞いていた。

 

左近次「お前を最終選別に行かせるつもりはなかった。もう子供が死ぬのを見たくなかった。お前にあの岩は斬れないと思っていたのに・・よく頑張った。炭治郎、お前は凄い子だ・・」

 

ブロリー「へははは!!岩を斬ったようだな。流石炭治郎と誉めてやりたいところだぁ!」

 

二人の労いの声を聞いた炭治郎は泣いた。最終選別に行くことを始めて認められたのだ。

 

左近次「二人共、最終選別、必ず生きて戻れ。儂も妹もここで待っている。」

 

炭治郎とブロリーは狐の面をもらった。厄徐の面という悪いものから守ってくれるものらしい。そして二人は藤襲山に向かおうとする。

 

炭治郎「鱗滝さん行ってきます。錆兎と真菰によろしく。」

 

ブロリー「真菰にカワイイと言っておいてYO。」

炭治郎「もう!ブロリーさんってば!」

ブロリー「フハハハハハ!」

 

左近次「炭治郎、ブロリー、何故お前達が・・死んだあの子達の名を知ってる?」

 

藤襲山に着いた炭治郎とブロリーは、藤の花の量に驚いていた。

 

炭治郎(すごい、藤の花が・・咲く時期じゃないはずなのに。)

 

ブロリー(美しい花だ。花は何度か見たことがあるが、ここまで美しいのは見たことがない。)

 

二人が人だかりができているところへ着くと同時に、最終選別の説明が始まった。説明をしているのは産屋敷の着物を着た男性と着物を着た女性だった。

 

男性「皆さま、今宵は最終選別にお集まりくださってありがとうございます。この藤襲山には、鬼殺の剣士様方が生け捕りにした鬼が閉じ込めてあり、外に出ることはできません。」

 

女性「山の麓から中腹にかけて、鬼共の嫌う藤の花が一年中、狂い咲いているからでございます。」

 

男性「しかし、ここから先には藤の花は咲いておりませんから、鬼共がおります。この中で七日間生き抜く。それが最終選別の合格条件でございます。では、行ってらっしゃいませ。」

 

この言葉を最後に、鬼殺隊になるための最終選別が始まった。炭治郎とブロリーは共に行動し、山の奥へと向かうと鬼が四体出てきた。

 

鬼1「オイオイ、てめえは向こうに行け、俺がこいつを喰う。」

 

鬼2「いや、貴様が失せろ。」

 

鬼3「俺はデカイ方を喰う。」

 

鬼4「はあ?ふざけるな!こいつは俺の獲物だ。」

 

炭治郎とブロリーは鬼二体がそれぞれの方へと向かってくるので、必然と二体ずつと戦うことになった。

 

炭治郎(いきなり二人・・!やれるだろうか・・)

 

鬼1「鬼の獲物だぞ。」

 

鬼2「黙れ!!先に殺った方が喰えばいいだろうが」バッ!

 

鬼1「久方振りの人肉だ!!」バッ!

 

炭治郎「全集中・水の呼吸!肆の型!打ち潮。」ズバッ!

 

炭治郎は襲いかかってくる二体の鬼を同時に倒した。

 

炭治郎「斬れた。鬼に勝てた。強くなってる・・」

 

鍛練が無駄ではなかったという安堵と、鬼への同情の気持ちで灰になっていく鬼に手を合わせた。一方のブロリーは、自分の目の前で言い争ってる鬼に余裕の構えを見せた。

 

鬼3「何言ってるんだお前?俺の獲物に決まってるだろ?」

 

鬼4「ふざけるな!俺が最初に見つけたんだ。俺が喰うんだ!」

 

ブロリー「何をぐだぐだ言ってる!さぁ来い!ここがお前達の死に場所だぁ!!」

 

鬼3「人間が・・強気じゃねぇか。早い者勝ちだ!」バッ!

 

鬼4「望むところだ!」バッ!

 

ブロリー「破壊の呼吸!弐の型!イレイザーキャノン!」ポウ

 

鬼3・4「ぎゃあああああ!!」デデーン☆

 

ブロリーは左手から気弾を放つと、二体の鬼は跡形もなく消滅した。

 

ブロリー「ムシケラが・・俺に敵うと思っていたのか?」

 

炭治郎「ブロリーさん!大丈夫ですか?」

 

ブロリー「俺はなんともない。お前こそ無事なようだな。」

 

ブロリーと炭治郎が再び合流すると、炭治郎がとても強烈な匂いを感じた。

 

炭治郎(うっ!?何だこの腐ったような匂いは!)

 

その時、一人の最終選別の参加者が、大声を出しながら何者かから逃げるように走り去っていった。

 

「うわあああああ!!」

 

ブロリー・炭治郎「!?」

 

「何で大型の異形がいるんだよ!聞いてないこんなの!」

 

炭治郎とブロリーが彼が逃げてきた方向を見ると、一際大きい顔を大量の手で覆われている鬼が追いかけてきていた。既に一人、他の選別参加者の首をへし折っていた。そして新しく腕が生えると、逃げてきた参加者を捕まえる。

 

「ぎゃあああああ!」

 

炭治郎(怯むな。助けろ助けろ助けろ!!俺はもう無力じゃない、動け!!)「水の呼吸!弐の型!水車!!」

 

炭治郎の咄嗟の行動が、捕まった参加者を助け出すことに成功する。そして手の鬼はギョロっと炭治郎を見る。

 

手鬼「また来たな俺の、可愛い狐が。狐小僧、今は、明治何年だ?」

 

炭治郎「!?・・今は大正時代だ。」

 

それを聞いた途端、手鬼は気が狂ったかのように暴れだした。

 

手鬼「あああああああ!!!年号が!!年号が変わっている!!まただ!!また!!俺がこんなところに閉じ込められている間にああああ許さん許さんんん!!」

 

炭治郎「・・・・」

 

ブロリー「炭治郎。大丈夫か?」

 

炭治郎「ブロリーさん!」

 

手鬼「鱗滝め鱗滝め鱗滝め!!」

 

炭治郎「どうして鱗滝さんを・・」

 

手鬼「知ってるさぁ!!俺を捕まえたのは鱗滝だからなぁ、忘れもしない四十七年前、アイツがまだ鬼狩りをしていた頃だ。江戸時代・・慶応の頃だった・・」

 

鬼の語りに、さっきの選別参加者が異議の声をあげた。

 

「嘘だ!!そんなに長く生きてる鬼はここにはいないはずだ!ここには人間を二・三人喰った鬼しか入れてないんだ!選別で斬られるのと、鬼は共食いするからそれで・・」

 

だが、手鬼はそんなことを気にも止めずに言った。

 

手鬼「でも俺は生き残ってる。藤の花の牢獄で、五十人は喰ったなぁガキ共を。」

 

炭治郎(五十人!!)

 

炭治郎とブロリーは鱗滝左近次に、鬼は人を喰った数だけ強くなると聞かされていた。その事を二人は思い出す。

 

手鬼「ん?もう一人狐がいるなぁ・・十二・・十三で、お前達で十四十五だ。」

 

炭治郎「!?何の話だ。」

 

手鬼「俺が喰った鱗滝の弟子の数だよ。アイツの弟子はみんな殺してやるって決めてるんだ。そうだなぁ。特に印象に残っているのは二人だな、あの二人。珍しい毛色のガキだったな、一番強かった。宍色の髪をしてた口に傷がある。もう一人は花柄の着物で女のガキだった。小さいし力もなかったが、すばしっこかった。」

 

炭治郎(この鬼に殺されていた?でも二人は俺達と・・)

 

ブロリー(真菰と錆兎のことか?)

 

手鬼「目印なんだよ、その狐の面がな。鱗滝が彫った面の木目を俺は覚えてる。アイツがつけてた天狗の面と同じ彫り方。厄徐の面とか言ったか?それをつけてるせいでみんな食われた。みんな俺の腹の中だ、鱗滝が殺したようなもんだ。これを言ったとき、女のガキは泣いて怒ってたな。フフフフッそれからすぐに動きがガタガタになったからな、手足を引き千切ってそれから。」

 

炭治郎「ッ!」ブチッ

 

炭治郎は手鬼に怒りを覚え、話を最後まで聞かずに斬りかかるが呼吸が乱れている影響で、腕の一本に殴り飛ばされて木に叩きつけられ、気を失った。腕の数本が炭治郎に向かって飛んでいくが、ブロリーがすかさず蹴りを入れて吹き飛ばす。

 

ブロリー(錆兎・・真菰・・炭治郎)「クズがぁ・・お前だけは簡単には死なさんぞ!」

 

ブロリーは上手く腕をかいくぐり手鬼の腹に蹴りを入れて、手鬼は飛ばされる。

 

手鬼「ぐおお!?」

 

炭治郎もその衝撃で目を覚まし、再び手鬼に斬りかかる。そのとき土に異臭を感じ、ブロリーに伝える。

 

炭治郎「ブロリーさん!土から変な匂いがします!地面に気をつけてください!」

 

ブロリー「炭治郎?フフフッそういうことならやり易い。全集中・破壊の呼吸!参の型!プラネットゲイザー!」

 

ブロリーが地面に放った気弾が、凄まじい威力で地中の手を木っ端微塵に吹き飛ばされる。

 

手鬼「ぐあああああ!!お前・・!よくも!」

 

手鬼は自分に痛みを与えたブロリーを恨んで睨み、彼に全意識を向けていた。そのため、空中に高く飛んでいた炭治郎に気づくのが遅れたのだ。

 

手鬼(!?気づくのが遅れた!!でも俺の頸の守りは硬いから斬れない。アイツでも斬れなかった。俺の頸を切り損ねたところで、頭を握り潰してやる。アイツと同じように。)

 

炭治郎「全集中・水の呼吸!壱の型!水面斬り!」ザンッ!

 

炭治郎は澤見の力を込めて刀を振るった。そしてなんと、錆兎でも斬れなかった手鬼の頸を炭治郎は斬ったのだ。

 

手鬼(くそっくそっくそおお!!死ぬ!!体が崩れて消えていく、止められない。どうせアイツも、汚いものを見るような目で俺を見るんだ。最後に見るのが鬼狩りの顔なんて・・)

 

しかし、手鬼の予想とは裏腹に炭治郎は手鬼の悲しみに同情するような表情で見ていたのだ。そして炭治郎は、崩壊していく手鬼の手を握った。手鬼は最期の最期で救われたことを実感し、かつての兄のような温もりを感じながら涙を流していた。

 

炭治郎「神様どうか、この人が今度生まれてくるときは、鬼になんてなりませんように。」

 

炭治郎は最期に手鬼の来世の幸せを祈った。その後のブロリーは派手に暴れまわり、藤の花の牢獄にいた残りの鬼を一人残らず消し去ったのだった・・

最終選別が始まってから七日後の早朝、厳しい条件を勝ち抜いて合格できたのは、わずかに五人のみ。炭治郎はその人数の少なさに驚いた。

 

炭治郎(たった四人・・!?二十人くらいいたのに。あの人もいない。)

 

炭治郎とブロリーが周りを見ると、一人は蝶と戯れており、一人は超ネガティブ思考になって呪文なものを呟いていた。また一人は刀を催促していた。

 

「死ぬわ。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。ここで生き残っても結局死ぬわ俺」ブツブツ

 

「で?俺はこれからどうすりゃいい。刀は?」

 

女性「まずは、隊服を支給させていただきます。体の寸法を測り、その後は階級を刻ませていただきます。」

 

男性「階級は十段階ございます。甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸。今現在皆様は一番下の癸でございます。」

 

「刀は?」

 

女性「本日中に選んでいただき、刀が出来上がるまで十日から十五日となります。さらに今からは鎹鴉をつけさせていただきます。」パンパン

 

バサバサバサバサッ!

 

ブロリー「へぁっ!?」

 

着物を着た女性が手を叩くと、それぞれの新隊員の元に一羽ずつ鴉が肩に乗った。・・が一人だけ雀だった。

 

「えっ?鴉?これ雀じゃね?」「チュン」

 

男性「鎹鴉は主に連絡用の鴉でございます。」

 

着物の男性が説明しているが、刀を催促していた男は鴉を振り払うと、女性に掴みかかる。

 

「どうでもいいんだよ鴉なんて!刀だよ刀!!今すぐ刀をよこせ!!鬼殺隊の刀!!色変わりの刀!!」

 

炭治郎はすぐに男の腕を掴む。そして凄みながら声を荒げた。

 

炭治郎「この子から手を放せ!!放さないなら折る!!」

 

「ああ?何だテメェは、やってみろよ!!」

 

炭治郎が少し力を入れるとミシッと出てはいけない音がした。腕をへし折ったのだ。折られた少年は苦悶の表情を浮かべて炭治郎を睨み付けた。ブロリーもすぐに着物の女性に寄った。

 

ブロリー「平気か?」

 

女性「大丈夫でございます。」

 

男性「お話は済みましたか?ではあちらから、刀を造る鋼を選んでくださいませ。鬼を滅殺し、己の身を守る刀の鋼は御自身で選ぶのです。」

 

最終選別の最後は鋼を選んでから解散というながれだった。

―――一方その頃、産屋敷邸では鎹鴉からの報告を聞いた一人の男性が穏やかな声で呟いた。

 

?「そうか。六人も生き残ったのかい。優秀だね。また私の子供たちが増えた・・どんな剣士になるのかな?」

 

―――最終選別が終わり解散になると、炭治郎はブロリーに背負われて帰路についていた。帰るときにブロリーが背負ってやると言い出したのだ。最初炭治郎は拒んでいたが、木の根などをまたぐ力すらも残っていなかったため、頻繁に転けていたのだ。そんな状態でまともに歩けるはずもなく、ブロリーに背負われざるを得なくなって今に至る。

 

炭治郎「ブロリーさん・・すごいですね。鬼を全滅させておいてまだ俺を背負える余力が残ってたなんて。」

 

ブロリー「俺はあの程度ではバテない。むしろ全然力を使ってないぞ?」

 

炭治郎「あれでまだ力を使ってないんですか?」

 

ブロリー「俺が呼吸を使えるようになる前に、俺が金髪になるやつを使ったことがあっただろう?あれが俺の力だ。」

 

炭治郎「あのすごい力だったやつですか?」

 

ブロリー「そうだ。もうひとつ別の姿もあるんだが、呼吸が使えるようになったことで大猿のパワーをそのまま出せるようになった。」

 

炭治郎「大猿ですか?鬼ではなくて?」

 

ブロリー「サイヤ人が満月を見ると大猿に変身する。戦闘力が大幅に上がるんだ。だが、あれは理性を失うからな。よいものではない。」

 

炭治郎「そうなんですか。」

 

ブロリー「それより、着いたぞ。」

 

炭治郎が顔を上げると、鱗滝左近次の家に着いていた。ブロリーは炭治郎をゆっくりと降ろす。

 

炭治郎(着いた・・鱗滝さん・・禰豆子・・)

 

そのとき家の扉が吹き飛び、中から二年ぶりに目を覚ました禰豆子が出てきた。

 

炭治郎「あーーっ禰豆子ォお前っ・・起きたのかぁ!!」

禰豆子「!!」ぎゅ

 

禰豆子も炭治郎に気づくと走りだし、彼を抱き締めた。炭治郎は禰豆子の腕の中でわんわんと泣いた。

 

炭治郎「わーっお前何で急に寝るんだよぉ!ずっと起きないでさぁ!!死ぬかと思っただろうがぁ!!」

 

ブロリー「ただいまです・・」

 

鱗滝左近次も三人をまとめて抱き締める。

 

左近次「よく生きて戻った!!」

 

炭治郎は今までの思いが溢れたように号泣し、ブロリーもされるがままになっていた。鬼殺隊の刀が届くまで三人は鱗滝左近次の家にお世話になるのだった。




今回初めてブロリーが呼吸を使いました!今後も出てくるので、ブロリーの呼吸をまとめておきます。

ブロリー
全集中の呼吸・・破壊の呼吸
壱の型「ブラスターシェル」
弐の型「イレイザーキャノン」
参の型「プラネットゲイザー」
肆の型「ダブルイレイザーキャノン」
伍の型「イレイザーブロウ」
陸の型「ギガンティックバスター」
漆の型「オメガブラスター」
捌の型「ブラスターメテオ」
玖の型「スローイングブラスター」
拾の型「ギガンティックミーティア」

原作ではオメガブラスター、スローイングブラスター、ギガンティックミーティアは同じ技ですが、この小説では別の技として扱いますのでご了承ください。今後もこの小説をよろしくお願いいたします。


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新しい武器日輪刀!いざ初鬼退治!

第五話です。遂にブロリーが一人堕とすようです。相変わらず駄文ですが、最後まで読んでくれたら嬉しいです。


炭治郎とブロリーはこの日の修行も無事に終えて、就寝の準備をしていた。最終選別から十四日が経ち、炭治郎の疲労や傷等はすっかり治り、動きや呼吸が鈍らないようにするために山下りの修行を欠かさずにこなしていた。一方のブロリーも、傷はおろか疲労すら貯まっていなかったので、もう次の日から別の山での修行を再開。もう破壊の呼吸の他に別の型の呼吸を取得しようとしていた。

そして今は準備も終わり、鱗滝左近次の家にお世話になっている三人は、もう既に夢の世界へと意識を移していた。三人はそれぞれ違う部屋で寝ていたのだが、その真夜中のこと。

 

ブロリー「ZZZ...」スースー

 

ブロリーが凄く気持ち良さそうに寝ている。そこに忍び寄るひとつの影・・

 

ギギギ・・・

 

ブロリーが寝ている部屋の扉が、音を立てないようにゆっくりと開かれる。さらにその者は、起こさないように忍び足で歩を進めていく。ブロリーの顔にその者の影が被さったとき、目を覚ます。

 

ブロリー「んん・・・禰豆子ォ・・何だぁ・・?」

 

なんとブロリーに忍び寄る影の正体は禰豆子だったのだ。それに気づくと、眠そうな顔でどうしたと聞く。

 

禰豆子「ムー。」

ブロリー「へぁっ!?」

 

ブロリーは声をあげて驚くがそれもそのはずである。なんと禰豆子はブロリーが寝ている布団の中に入ってきたのだ。それだけではない。ブロリーの身体に抱き着きながら寝始めたのだ。この部屋は日の出の時間帯になっても日が射さず、鬼になっている禰豆子にとっては最適な寝床であった。それに、初めてブロリーの力で炭治郎と共に助け出された禰豆子は、ブロリーの事を目で追うようになっていた。その表情は、熱が出たときのように頬が朱くなっている。つまり、惚れてしまったのである。そしてこの日、ブロリーは日中でも光が当たらない場所で寝ている。これをチャンスだと思った禰豆子は行動を起こした訳である。しかし、そんなことを知らないブロリーにはひたすらに困惑していた。

 

 

禰豆子「ん・・」スースー

ブロリー「・・・・ZZZ」スースー

 

ブロリーは困惑こそしていたものの、真夜中の睡魔には勝てず、禰豆子に抱き着かれた状態のまま、夜明けまでもう一度寝たのだった。

そして翌日、日が昇り始めた頃に炭治郎が目を覚まして、ブロリーを起こすために目を擦りながら廊下を歩いて来た。

 

炭治郎「ブロリーさん、朝ですよ。・・!?」

 

炭治郎も禰豆子とブロリーが一緒に寝ているのを見てしまい、とても驚き、同時にブロリーと禰豆子も目を覚ます。

 

ブロリー「んん・・炭治郎・・朝ですかぁ?」

禰豆子「んー・・」

 

炭治郎「ブ・・ブロリーさん・・何故・・禰豆子に抱き着かれて寝てるんですか・・?」

 

ブロリー「わからん。禰豆子が昨夜急にこうしてきた。」

 

炭治郎「そうなんですか?」

 

禰豆子「ムーんー。」コクコク

 

禰豆子もそうそうと言うように頷く。しかし、ブロリーの身体をなかなか離さない。

 

ブロリー「禰豆子、離れてくれないと動けないんだが。」

 

禰豆子「ムー!」フリフリ

 

ブロリー「嫌なのか?」

 

禰豆子「んー!」コクコク

 

ブロリー「炭治郎・・お助けくだサイヤ。」

 

炭治郎「禰豆子が幸せそうなんです。丁重にお断りします。」

 

ブロリー「そうですかぁ・・」

 

それから更に30分が経ち、満足したのかブロリーはようやく解放された。一方の禰豆子はとても満足そうな笑みを浮かべながら籠の中に入った。

それから数時間が過ぎ、家に帽子を被った人がやって来た。

 

炭治郎「あっ鱗滝さん、あの人かな?」

 

その人の帽子は、沢山の風鈴が付いており、歩く度にチリンチリンと音がなった。

 

炭治郎「ふっ風鈴。」

 

「俺は鋼鐵塚という者だ。竈門炭治郎とブロリーの刀を打った者だ。」

 

炭治郎「竈門炭治郎は俺です。中へどうぞ。」キリッ

 

炭治郎はかっこよく決めたつもりだったが、鋼鐵塚は話を聞かずにその場で箱の開封を始めたのだ。

 

鋼鐵塚「これが日輪刀だ。」

 

炭治郎「あの・・どうぞ中へ。」

 

鋼鐵塚「俺が打った刀だ。」

 

炭治郎「お茶を入れますよ。」

 

鋼鐵塚「日輪刀の原料である砂鉄と鉱石は太陽に一番近い山でとれる。猩々緋砂鉄、猩々緋鉱石、陽の光を吸収する鉄だ。陽光山は一年中陽が射している山だ。曇らないし雨も降らない。」

 

炭治郎「ふろしきが土で汚れると思うんですよ。」

 

左近次(相変わらず人の話を聞かん男だな。)

 

ブロリー(何なんだぁ?)

 

炭治郎「ちょっととりあえず一旦!立ちませんか?地べたから・・」

 

炭治郎が顔を覗きこむと、お面がついていた。

 

炭治郎(ひょっとこのお面・・!!)

 

鋼鐵塚「んん?んんん?あぁお前赫灼の子じゃねえかこりゃあ縁起がいい。」

 

ブロリー(赫灼の子って何だぁ?)

 

炭治郎「いや俺は炭十郎と葵枝の息子です。」

 

鋼鐵塚「そういう意味じゃねぇ。頭の毛と目ん玉が赤みがかっているだろう、火仕事をする家はそういう子が生まれると、縁起がいいってよろこぶんだぜぇ。」

 

炭治郎「・・そうなんですか?知りませんでした・・」

 

鋼鐵塚「こりゃあ刀も赤くなるかもしれんぞ?なぁ鱗滝。」

 

左近次「ああ。」

 

興奮が治まったのかようやく鋼鐵塚は家に上がり、炭治郎は刀を抜いた。

 

鋼鐵塚「日輪刀は別名、色変わりの刀と言ってなぁ、持ち主によって色が変わるのさぁ。」

 

炭治郎「!!」ズズズズ

 

ブロリー(色が変わるのか・・)

 

炭治郎の刀は漆黒に変化した。

 

鋼鐵塚「黒っ!!」

 

左近次「黒いな・・」

 

炭治郎「えっ黒いとなんかよくないんですか!?不吉ですか?」

 

左近次「いや、そういうわけではないが・・あまり見ないな漆黒は。」

 

鋼鐵塚「キー!!俺は鮮やかな赤い刀身が見れると思ったのにクソー!!」ボカボカ

 

炭治郎「いたたっ危ない!落ち着いてください何歳ですか!?」

 

鋼鐵塚「三十七だ!」

 

左近次「・・ブロリー、お前も刀を抜いてみろ。」

 

ブロリー「はい・・」

 

ブロリーは鋼鐵塚の近くにあった自分の刀を取ると、刀身を引き抜いた。

 

鋼鐵塚「おおっ!お前は何色だ?」

 

ブロリー「・・・・」ズズズズ

 

ブロリーの刀は光沢がある緑色に変化した。

 

鋼鐵塚「緑!?」

 

左近次「・・緑だな。」

 

ブロリー「みどリーです・・」

 

炭治郎「うわぁ!綺麗な色ですねブロリーさん!」

 

いつの間にか横に来ていた炭治郎が、ブロリーの刀の色を見て思わず声をあげる。ブロリーもそれに頷く。そのとき、炭治郎とブロリーの鎹鴉が声をあげる。

 

鎹鴉「カァァ!竈門炭治郎ォトブロリーィ!北西ノ町へ向カェェ!!鬼狩リトシテノ!最初ノ仕事デアル!心シテカカレェェ!!」

 

炭治郎「・・仕事!?」

 

禰豆子「んー。」

 

ブロリー「フフフッ!とうとうムシケラを狩るときが来たようだなぁ!!」

 

鎹鴉「北西ノ町デワァ!少女ガ消エテイルゥ!毎夜毎夜少女ガ少女ガ消エテイル!!」

 

炭治郎「ブロリーさん!行きましょう!」

 

ブロリー「はい・・」

 

北西の町に着いた二人は早速、顔色が悪く目の光が消えており、焦点が合ってない男の人を見かけた。

 

町娘「ほら和巳さんよ可哀想にやつれて・・一緒にいた里子ちゃんがさらわれたから。毎晩毎晩気味が悪い、ああ嫌だ。夜が来るとまた、若い娘がさらわれる。」

 

ブロリー「・・・・」

 

炭治郎「・・和巳さん!!ちょっとお話を聞きたいのですが、いいですか?」

 

和巳「・・・・」

 

和巳と呼ばれた少年は炭治郎とブロリーを婚約者が消えたところまで案内した。

 

和巳「ここで里子さんは消えたんだ・・信じてもらえないかもしれないが・・」

 

和巳は今にも消え入りそうな声で説明する。その口調から婚約者を失った辛さがビリビリと伝わってくる。

 

炭治郎「信じますよ!!信じる!」

 

炭治郎は地面に這いつくばり、匂いを嗅いで鬼の行方を探す。

 

炭治郎(微かに鬼の匂いが残っているけど、斑というか・・変な感じだ・・)クンクン

 

ブロリー「・・・・はぁ!」ゴォ

 

炭治郎が鬼を探していることを察したブロリーは、自身も気を使って鬼を探す。

 

ブロリー(・・向こうからクズの気を感じる、こいつは何をする気だ!)

 

和巳(・・・この人達は一体なんなんだ?何をしてるんだろう?)

 

そのとき、とある家の一人の町娘が寝ようとしていた。目をつぶったとき、地面から怪しい黒い影が出てくる。

 

ブロリー「・・!!炭治郎!あっちだ!」

 

炭治郎「!はいブロリーさん!確かに匂いが濃くなった!鬼が現れてる!」

 

和巳(速い・・)

 

炭治郎は屋根を走っていき、ブロリーは空中を飛びながら移動する。

 

和巳(鬼の話と鬼殺隊本当に・・鬼殺隊になると空を飛べるの?)

 

炭治郎(今ここにいる!二種類の匂い!鬼と人間の女の人。どこにもいない、だけど。匂いが一番濃い場所!ここだ!!)

 

炭治郎は日輪刀で匂いが濃い地面を刺した。

 

「ギャッ!!!」

 

地面から悲鳴が聞こえると、真黒の液体が滲み出くる。更にその中から、さらわれた町娘の一人が気絶した状態で出てくる。炭治郎は鬼が出てくる気配を感じていた為、素早く町娘を抱えると後ろに飛び退く。現れたのは、地面に沼のように沈むことができる異形の鬼だった。

 

炭治郎(異形の鬼!!)

 

ブロリー(こいつが血鬼術とやらを使うのか?)

 

炭治郎とブロリーは、鱗滝左近次から特殊な術を使う異能の鬼の話を聞かされていた。そのため、血鬼術を使う鬼を目の前にしても驚くことはなかった。

 

炭治郎「さらった女の人達はどこにいる!!それから二つ聞く・・」

 

沼の鬼「・・・・」ギリギリギリッ

 

しかし、沼の鬼は歯ぎしりをするだけであり、炭治郎の質問には答えようとはしなかった。そしてそのまま再び地面に潜る。

 

ブロリー「この俺が逃がすと思っているのか?破壊の呼吸!参の型!「ブロリーさんダメです!」!?・・炭治郎・・何故邪魔をする!」

 

炭治郎「ブロリーさんの参の型のプラネットゲイザーは、地面を抉って鬼を殺す呼吸ですよね。強い型ですけど、ここで使ってしまうと周りの民家にも被害が出ます!ですのでここは俺に任せてください!」

 

ブロリー「・・いいだろう。その代わり絶対にあのムシケラを潰せ!」

 

炭治郎「もちろんです!ブロリーさん!必ず倒します!それとこの人を抱えて守ってください!」

 

炭治郎は町娘をブロリーに預ける。そして、匂いを嗅いで鬼の気配を探る。

 

炭治郎(地面や壁からなら多分どこからでも出てこれる。だけどこの鬼は、潜っている間も匂いを消せない!!)「・・来た!水の呼吸!伍の型・・!?」(三人!!落ちつけやれる!!)「捌の型!滝壺!!」

 

炭治郎はとっさに型を変えることでなんとか鬼に攻撃はできたが鬼の急所を全て外してしまい、対してダメージも入っていないのかなんともない顔をしている。そして、また地面に潜る。

 

炭治郎(三人とも同じ匂い!基本的に鬼は群れないと聞いた。一人の鬼が三人に分裂してるんだ。)

 

炭治郎が推測しているとき、炭治郎の目の前とブロリーの真後ろに同時に出現する。

 

炭治郎「水の呼吸!弐の型!水車!!・・!ブロリーさん後ろです!」

 

沼の鬼「その娘を寄越せ!!」

 

ブロリー「はぁ!」ゴォッ

 

ブロリーは町娘を抱えているためうまく攻撃ができないので、襲いかかってきた鬼にはバリアを張ることで対処した。そして一人の沼の鬼が声をあげて怒鳴る。

 

沼の鬼1「貴様らァァァ!!邪魔をするなァァァ!!女の鮮度が落ちるだろうがぁ!!もうその女は十六になっているんだよ!早く喰わないと刻一刻と味が落ちるんだ!!」

 

沼の鬼2「冷静になれ、俺よ。まぁいいさ、こんな夜があっても。この町では随分十六の娘を喰ったからな。どれも肉付きがよく美味だった。俺は満足だよ。」

 

沼の鬼1「俺は満足じゃないんだよ俺よ!!まだ喰いたいのだ!!」

 

和巳「化け物・・一昨晩さらった。里子さんを返せ。」

 

和巳は恐怖で震えながらも沼の鬼に向かって言った。

 

沼の鬼2「里子?誰のことかねぇ?この蒐集品の中にその娘のかんざしがあれば喰ってるよ。」

 

沼の鬼は着物の内面を見せて沢山のかんざしが付いている部分を見せる。非情なことに里子の頭のリボンがそこにはあった。

 

炭治郎「!!」ビキ

 

ブロリー「・・クズがぁ・・」

 

炭治郎が斬りかかろうとしたとき、三人目の沼の鬼が炭治郎に不意打ちを仕掛ける。しかし、それを気配で感じた炭治郎は、首を斬ろうとするが、再び避けられる。

 

炭治郎(しまった!壁に近づきすぎた!)

 

壁に近づきすぎた炭治郎は二人の沼の鬼に挟み撃ちされそうになる。万事休すかと思われたが、炭治郎の背負っている篭が開いて後ろの鬼の首を蹴り飛ばした。中から禰豆子が攻撃したのだ。

 

沼の鬼2「・・何故人間の分際で、鬼を連れてる!」

 

禰豆子は二年間眠り続けている間に鱗滝左近次に鬼を倒し、人間を助けるための暗示をかけられていた。

 

禰豆子は箱から出ると、鬼の力で踵落としを喰らわそうとする。しかし、沼の鬼は地面に逃げる。更に追い討ちをかけようとしたとき、炭治郎に声をかけられる。

 

炭治郎「禰豆子!!深追いするな!!こっちへ戻れ!!」

 

その声に反応し、禰豆子は炭治郎の下へ戻ってくる。兄である炭治郎は妹の禰豆子が鬼になって強くなったが、それでも妹が心配なのだ。いきなり炭治郎の足元に黒い沼が現れる。

 

炭治郎「禰豆子、ブロリーさん!俺は下に行きます!!二人を守ってください!」

 

炭治郎は沼の中の鬼を倒しに行った。そして地上に残った禰豆子は鬼に攻撃をする。

 

沼の鬼「ぐがっ!」(この女強い!何の異能も使えないようだがそれでもこの強さ!!この女は恐らく分けられた地の量が多いんだ!!だが単調な攻撃に慣れてきたぞ。)

 

沼の鬼が一瞬の隙をつき、禰豆子の顔を傷つける。

 

和巳「あっ!!」

 

ブロリー「・・貴様。この娘ェを預かってくだサイヤ。」

 

禰豆子を傷つけた鬼にブロリーはキレた。和巳に有無を言わさず強引に突きつけると、沼の鬼との距離を一瞬で詰める。

 

ブロリー「デヤァッ!」バキッ!

 

沼の鬼「うわああああ!」

 

禰豆子「!!」

 

沼の鬼と禰豆子の間に立つブロリーは鬼に指を差す。

 

ブロリー「ムシケラ・・まずお前から血祭りにあげてやる!」ゴゴゴゴ

 

気を高めながら沼の鬼に接近し、胸の首飾りを押し付けて爆発させてダメージを与える。

 

ドッカーン

沼の鬼「ぐわぁぁぁ!」

 

ブロリー「フハハハハハ!!」ドカドカドカドカドカッ!!

 

沼の鬼「がっ!?あぁ!ぷぉぉ!?」

 

続いて連続で打撃攻撃をして、鬼に大ダメージを与える。

 

ブロリー「チイイイイ!!」ポーヒーポーヒーポーヒーポーヒーポーヒーポーヒー

 

更に容赦なく連続で気弾を投げつける。

 

ブロリー「とっておきだ・・全集中!破壊の呼吸!壱の型!」ポウ

 

沼の鬼「ゴホッ・・お前ちょっとしつこいぞ。」

 

ブロリー「ブラスターシェル!!」ドッカーン!!

 

沼の鬼「ぎゃあああああ!!」

 

ブラスターシェルを食らった沼の鬼は大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。それと同時に二体の鬼を倒した炭治郎が戻ってきた。

 

炭治郎「お前達は腐った油のような匂いがする。酷い悪臭だ。一体どれだけの人を殺した!!」

 

沼の鬼「女共はな!!あれ以上生きてると醜く不味くなるんだよだから喰ってやったんだ!!俺たちに感謝しろ!!ギャッ」

 

鬼が喋り終わる前に炭治郎は鬼の口を斬った。

 

炭治郎「もういい。鬼舞辻無惨について知ってることを話してもらう。」

 

実は炭治郎とブロリーは鱗滝左近次の話を聞くなかで、人間を鬼に変えるたった一体の鬼について教えられていた。鬼の祖、鬼舞辻無惨のことを知った炭治郎は、沼の鬼に更なる情報を聞き出そうとしたのだ。

 

沼の鬼「・・・・言えない。」ガタガタガタガタ

 

沼の鬼「言えない言えない言えない言えない言えない!!言えないんだよォォ!!」メキッビュッ!

 

突然発狂しだした沼の鬼は炭治郎に襲いかかってきた。それを紙一重で避けると首を跳ねる。

 

炭治郎(禰豆子!!)ダッ!

 

ブロリー「禰豆子・・大丈夫ですかぁ?」

 

禰豆子「ムー。」うとうと

 

禰豆子は傷を癒すためと体力の回復のための眠りにつきかかっているが、その両手はブロリーに伸ばしていた。それは、おんぶしてと甘えているようにみえる。

 

ブロリー「・・何だぁ?」

 

炭治郎「・・ブロリーさん、背負ってあげてください。箱よりもブロリーさんの背中の方がいいみたいですから。」

 

ブロリー「・・・・」

 

ブロリーは禰豆子を背負うと、炭治郎と共に和巳の下へ行く。

 

炭治郎「和巳さん、大丈夫ですか?」

 

和巳「・・婚約者を失って、大丈夫だと思うか?」

 

炭治郎「・・・・和巳さん。失っても失っても、生きていくしかないです。どんなに打ちのめされようと。」

 

和巳は炭治郎に掴みかかった。

 

和巳「お前に何がわかるんだ!!お前みたいな子供に!!」

 

炭治郎は優しく包み込むようなどこか悲しい表情をした。それに気づいた和巳は手を離す。

 

炭治郎「俺はもう行きます。これを。この中に里子さんの持ち物があるといいのですが・・」

 

和巳「・・・・!!」

 

和巳は炭治郎も自分と同じ境遇にあってきたことを悟り、ブロリーと共に背中を見せて去っていく炭治郎に謝った。

 

和巳「すまない!!酷いことを言った!!どうか許してくれ!すまなかった・・」

 

和巳と別れた炭治郎は握り拳を固める。

 

炭治郎(俺だけじゃない!一体どれだけの人を殺し、痛めつけ苦しめた!鬼舞辻無惨!俺はお前を絶対に許さない!)

 

ブロリー(鬼舞辻無惨・・か。炭治郎達を苦しめた本人か。見つけたら血祭りにあげてやる・・)

 

二人が鬼舞辻無惨への怒りを覚えていると、鎹鴉が声を出す。

 

鎹鴉「カァァ!!次ハ東京府浅草ァ!鬼ガ潜ンデイルトノ噂アリ!!」

 

炭治郎「えっ!?もう次に行くのか?」

 

鎹鴉「行クノヨォォ!!」

 

炭治郎「ちょっと待って。」

 

鎹鴉「待タァナイ!!」グサーッ

 

ブロリー(禰豆子が寝ているのに騒がしいです・・)

 

最初の仕事をこなし、沼の鬼をやっつけた炭治郎達。浅草にいると噂される鬼を倒すために鎹鴉につつかれながら歩を進めるのだった。




ブロリーと炭治郎と禰豆子のトリオ強すぎますね笑。ちなみにブロリーは、呼吸を取得してからスーパーサイヤ人や伝説のスーパーサイヤ人にはなっていません。ですが今後は必ず出てきます。こんな小説ですが、今後もよろしくお願いいたします。


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遂に遭遇鬼舞辻無惨!倒せ鬼の刺客!

第六話です。駄文ですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。


沼の鬼を倒してから二日の時が経ち、炭治郎達は東京の浅草に到着した。炭治郎は初めてきた都会の明るさや建物の高さに困惑して脳がついていけておらずにオーバーヒートを起こしかけていた。

 

炭治郎(街はこんなに発展しているのか!!夜なのに明るい!!建物高っ!!なんだあれ!!都会って・・都会って・・眩暈がする・・)「禰豆子・・ブロリーさん・・あっちへ行きましょう。」

 

ブロリー「炭治郎大丈夫か?随分とやつれているが・・」

 

禰豆子「ムーんー♪」←ブロリーに背負われている

 

あまり明るくないところに屋台を見つけた三人は、ちょうど空腹だったこともあり、そこで夕食を取ることにしたようだ。最も、実際に食べるのは炭治郎とブロリーだけだが。禰豆子をベンチに降ろすと自身も腰かける。

 

炭治郎「山かけうどんください・・」

 

ブロリー「俺にも一つ頼む。」

 

店主「あいよ」

 

炭治郎(こんなところ初めて来た・・・・人が多すぎる。)

 

ブロリー(随分と発展している街だな。少なくとも新惑星ベジータよりも全然良い環境だ。)

 

炭治郎「・・・・!!」ダッ!!

 

炭治郎は浅草に着いてもう疲れきっており、ブロリーはかつて自分がいた星と比較していた。山かけうどんが出来上がり、いざ食べようとしたそのとき、炭治郎は同時に気配を感じた。そしてその方向に物凄い勢いで駆けていった。

 

ブロリー「炭治郎?どこへ行くんだぁ?」

 

ブロリーも炭治郎の後を追って行き、炭治郎がある人物の肩を掴む。その人物は二人、いや三人にとっての宿敵にして、鬼の祖である"鬼舞辻無惨"だった。炭治郎は鬼顔負けの形相で日輪刀を引き抜こうとする。

 

炭治郎(こいつが!!)

 

無惨「私に何か用ですか?」

 

ブロリー「炭治郎、どうしたんだぁ?」

 

そこにブロリーが少し遅れてやってくる。そして炭治郎の見たことのない表情を見たブロリーは察する。

 

ブロリー「・・お前が、鬼舞辻無惨とやらか。」

 

無惨「!!」ジリッ

 

ブロリーの姿を見た無惨は数歩後ずさりする。その額には冷や汗が浮かびあがっていた。無惨は初めてのブロリーの気配に危機感を露にして警戒する。

 

無惨(こいつ・・鬼の祖である私を何百倍も上回る強さだ・・!この男は今すぐに私の支配下においた方がいい。)

 

無惨は目にも止まらぬ早さでブロリーの体を引っ裂き、傷口から血を入れようとする・・が、しかし。

 

ヒュッ!ガキッ!ピキッ

 

無惨「!?」

 

なんとブロリーの体を傷つけるどころか無惨の爪の方が割れたのだ。ブロリー本人もなんともない顔をしているが、今の行動で攻撃されたことを理解し、無惨の頭を掴んで血祭りにあげようとする。

 

ブロリー「・・なんなんだぁ?今のはぁ?」ガシッ

 

無惨「・・!」(もうダメだぁ・・おしまいだぁ・・)

 

しかし、その行動はできなかった。なぜなら・・

 

女の子「ねぇ。お父さんに何してるの?」

 

ブロリー「ッ!」バッ

 

ブロリーの腰布を掴む一人の女の子がいた。しかもその子は、無惨を父親と呼んだのだ。それを見たブロリーは思わず無惨を掴んでいた手を離す。

 

炭治郎(こいつ・・こいつ!!こいつ!!人間のふりをして暮らしているんだ!!)ぞわぞわ

 

炭治郎は無惨が人間として暮らしていることに驚いている。ブロリーも表情には出さないが、かなり動揺していた。

 

女の人「あら、どうしたの?」

 

女の子「お母さん。」

 

炭治郎(人間だ、女の子と女の人は人間の匂いだ!知らないのか?わからないのか?こいつが鬼だって!人を喰うって!)

 

それだけではない。無惨の隣に女の人がやって来たのだ。女の子がお母さんと呼んでいることから、無惨の妻であることがわかる。

 

女の人「お知り合い?」

 

無惨「いいや、困ったことに少しも・・知らない子ですね。人違いでは、ないでしょうか。」

 

女の人「まぁそうなの?」

 

無惨は女の人の問いに答えると同時に、すぐ近くを通る別の夫の首を引っ裂き、自身の血を入れる。

 

炭治郎「!!」

 

夫「うぐっ」

 

妻「あなた、どうしました?」

 

夫「グォォォォォ!!」ガッ!!

 

妻「キャアアアアッ!!」

 

炭治郎はすぐに鬼になって飢餓状態の夫を妻から引き離すと、地面に押さえつける。

 

妻「あなた!!」

 

炭治郎「奥さん!!こちらよりも自分のことを!!傷口に布を当てて強く押えてください!!ブロリーさんお願いします!」

 

ブロリー「はい・・」

 

ブロリーは妻の前にしゃがみこみ、布を傷口に押さえる。妻はショックと怪我で気絶する。

 

炭治郎(大丈夫きっと何とかする。奥さんの傷は致命傷じゃない大丈夫だ。この人は誰も殺してない!!)

 

それを隙とみた無惨は、女の子と女の人と一緒に去ろうとする。そのとき、無惨の視界に炭治郎の耳飾りが入って目を見開く。

 

無惨「麗さん危険だ。向こうへ行こう。」

 

炭治郎「!!鬼舞辻無惨!!俺はお前を逃がさない!どこへ行こうと!」

 

無惨「!」(あの耳飾り・・)

 

炭治郎「地獄の果てまで追いかけて!必ずお前の頸に刃を振るう!!絶対お前を許さない!!」

 

炭治郎は去ろうとする鬼舞辻無惨に吠える。しかし、そこへ警官隊の集団がやってくる。

 

警官隊1「貴様ら何をしている!!」

 

警官隊2「酔っぱらいか!?離れろ!!」

 

炭治郎「だめだ!拘束具を持ってきてください!頼みます!やめてください!俺以外はこの人を押さえられない!」

 

警官隊1「あっ、なんだこいつの顔、これは・・正気を失っているのか!?少年を引き剥がせ!」

 

警官隊2「わかった!」

 

炭治郎「やめてくれ!!この人を誰も殺させたくないんだ!!邪魔をしないでくれ!お願いだから!!」

 

炭治郎を引き剥がそうとする警官隊に必死で抗議するが、警官隊は気にも止めない。万事休すかと思われたときだった。

 

?「惑血。視覚夢幻の香。」

 

炭治郎「!?」(何だこの香りは・・)

 

ブロリー「・・なんなんだぁ?」

 

「わぁぁ!何だこの紋様は!周りが見えない!」

 

一人の女の鬼が血鬼術を使ったのだ。炭治郎は新手の鬼の攻撃かと一瞬警戒したが、その警戒はすぐに解かれることになった。女の鬼、彼女の名を珠世と言う。鬼になった人を助けようとする姿勢を見て手助けしたのだ。

 

珠世「あなたは、鬼になった者にも、人という言葉を使ってくださるのですね。そして助けようとしている。ならば私もあなたを手助けしましょう。」

 

炭治郎「・・何故ですか?あなたは・・あなたの匂いは・・」

 

ブロリー「・・鬼かぁ?」

 

珠世「はい。鬼ですが医者でもあり、あの男、鬼舞辻を抹殺したいと思っている。」

 

炭治郎とブロリーが珠世の協力を得て、鬼化した夫と怪我を負った妻を運んでいった。

―――一方の鬼舞辻無惨は女の人と女の子と別れて人気のない路地裏に来ていた。

 

無惨(あの男は私をずっと上回る強さを持っている。私の血を入れて支配することは不可能のようだ。それにあの耳飾りを着けた鬼狩りの隣にいた。・・もしもあの男が鬼狩りだとしたら・・私の日を克服する目的は何もかもおしまいだ。特にあの男は早急に対処しなければならない。)パチン

 

無惨が指をならすと着物を来た男女の鬼が現れる。二人を殺すように命令した。

 

「「何なりとお申し付けを。」」

 

無惨「耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りの頸と、そいつと共に行動している男の頸を持って来い。いいな?」

 

無惨は人間の女性と娘に接していた謙遜的な態度とはうって変わって高圧的に二人の鬼に告げたのだった。

―――その頃屋台では、禰豆子が店主に絡まれていた。

 

店主「俺が言いたいのはな!!金じゃねぇんだ!お前が俺のうどんを食わねって心づもりなのが許せねぇのさ!!まずその竹を外せ!!何だその竹!箸を持て箸を!!」

 

禰豆子「んー・・」

 

禰豆子が困っていると、炭治郎とブロリーが戻ってきた。炭治郎は店主の持っている箸を掴むと、うどんを平らげる。ブロリーもうどんを食べた。

 

炭治郎「ごちそうさまでした!!おいしかったです!!」

 

ブロリー「うまかったYO。」

 

店主「わかればいいんだよわかれば!!」

 

屋台を後にすると禰豆子がブロリーに両手を伸ばす。抱っこを求めているのだ。それを理解したブロリーはしゃがみこんで禰豆子と視線を合わせる。

 

禰豆子「ムー。」

 

ブロリー「またですかぁ?」

 

ブロリーは禰豆子を背負ってあげ、禰豆子はとても嬉しそうな表情をした。炭治郎は禰豆子に謝る。

 

炭治郎「ごめんな禰豆子。置き去りにして・・」

 

そのとき、禰豆子は何かに気づき、前を睨む。そこにいたのは珠世と一緒にいた男の鬼、"愈史郎"と言う者が待っていた。

 

炭治郎「待っててくれたんですか?俺は匂いで辿れるのに・・」

 

愈史郎「目眩ましの術をかけている場所にいるんだ、たどれるものか。それより、鬼じゃないかその男と女は。しかも醜女だ。」

 

炭治郎(しこめ・・しこめ?誰が?禰豆子のことかぁぁ!)「醜女のはずないだろう!!よく見てみろこの顔立ちを!町でも評判の美人だったんだぞ禰豆子は!」

 

ブロリー「炭治郎、醜女って何だ?」

 

炭治郎「醜い女って意味ですよ!禰豆子が醜女のはずがない!」

 

ブロリー「禰豆子はカワイイですYO。」

 

禰豆子「!?///んー♪」

 

炭治郎「ブロリーさん、わかってますね。」

 

愈史郎「行くぞ。」

 

炭治郎「いや、行くけれども醜女は違うだろ絶対!!もう少し明るい所で見てくれ!ちょっとあっちの方で!」

 

炭治郎はずっと抗議をしながら歩きブロリーも禰豆子を背負ったままで、四人は豪華な一軒家に到着した。中には椅子に座っている珠世と、気絶した妻がベッドに横になっている。

 

愈史郎「戻りました。」

 

炭治郎「この口枷のせいかもしれない!これ外した禰豆子を一度見てもらいたい!!」

 

珠世「お帰りなさい。」

 

炭治郎「あっ大丈夫でしたか?お任せしてしまいすみません。」

 

珠世「この方は大丈夫ですよ。ご主人は、気の毒ですが拘束して地下牢に。」

 

炭治郎「・・人の怪我の手当てをして辛くないですか?」

 

そう聞いた瞬間に愈史郎が炭治郎の胸元を殴り、炭治郎は咳き込む。

 

愈史郎「鬼の俺たちが血肉の匂いに涎を垂らして耐えながら、人間の治療をしているとでも?」ドゴォ!

 

炭治郎「うっ!?」ゲホゲホ

 

珠世「よしなさい。なぜ暴力を振るうの。」

 

珠世が制止させる。そして少し間ができたときにブロリーが珠世に向かって問う。

 

ブロリー「・・誰だ?お前は?」

 

愈史郎「珠世様に向かってお前って言うな!!」ドゴォ!

 

愈史郎は今度はブロリーを殴るが、

 

ブロリー「なんなんだぁ?今のはぁ?」

 

愈史郎「!?」

 

ブロリーはびくともしなかった。それどころかなんともない顔をしている。

 

珠世「愈史郎!次にその子達を殴ったら許しませんよ!」

 

愈史郎「はい!」(怒った顔も美しい・・)キュン

 

珠世「そういえば名乗っていませんでしたね。私は珠世と申します。その子は愈史郎、仲良くしてやってくださいね。」

 

炭治郎(難しいな・・無理だなこれは・・)

 

珠世「辛くはないですよ。普通の鬼よりかなり楽かと思います。私は、私の身体を随分弄っていますから、鬼舞辻の呪いも外しています。」

 

炭治郎「かっ身体を弄った?」(呪い?)

 

珠世「人を喰らうことなく暮らしていけるようにしました。人の血を飲むだけで事足りる。」

 

禰豆子「ムー。」パタパタ

 

家の中に案内され、珠世と愈史郎に向かい合う形で炭治郎とブロリーは座り、禰豆子は寝転がって足をバタつかせていた。

 

炭治郎「血を?それは・・」

 

珠世「不快に思われるかもしれませんが、金銭に余裕のない方から輸血と称して血を買っています。勿論、彼らの体に支障が出ない量です。」

 

炭治郎(そうか・・この人たちから鬼特有の異臭がしない理由はそれなんだ。でもやっぱり人の血は必要・・血だけなら禰豆子も・・)

 

ブロリー(なるほどな・・道理でこいつらからはムシケラの気を感じない訳だ。そうなると今の禰豆子も血が必要ってことか?)

 

珠世「愈史郎はもっと少量の血で足ります。この子は私が鬼にしました。」

 

炭治郎「えっ!あなたがですか!?でも・・えっ?」

 

珠世「そうですね。鬼舞辻以外は鬼を増やすことができないとされている。それはおおむね正しいです。二百年以上かかって、鬼にできたのは愈史郎ただ一人ですから。」

 

炭治郎「二百年以上かかって鬼にできたのは愈史郎ただ一人ですから!?珠世さんは何歳ですか!?」

 

愈史郎「女性に歳を聞くな無礼者!!」ゴン!!

 

珠世「・・愈史郎」ゴゴゴ

 

愈史郎「投げたのです珠世様。殴ってません。」

 

珠世「どちらも駄目です。一つ・・誤解しないでほしいのですが、私は鬼を増やそうとはしていません。不治の病や怪我などを負って余命幾許もない。そんな人にしかその処置はしません。」

 

ブロリー「・・それは本当か?」

 

珠世「本当です。信じていただけますか?」

 

炭治郎(嘘偽りのない清らかな匂いがする・・この人は信用できる。)「ブロリーさん。珠世さんは信用できます。」

 

ブロリー「そうか。」

 

炭治郎「珠世さん。鬼になってしまった人を、人に戻す方法はありますか?」

 

―――その頃、静まった街の中を歩く男と女の鬼がいた。二人は鬼舞辻無惨の命により、炭治郎達を殺そうとしている鬼である。女の鬼である朱紗丸は毬をてんてんとドリブルさせており、男の鬼である矢琶羽は手についた目で炭治郎達の足跡を探し当てた。

 

朱沙丸「見えるかえ?」てんてんてん

 

矢琶羽「見える見えるぞ、足跡が。これじゃこれじゃ。あちらこちらをぐるりと大回りして、三人になっておる。一人は女を背負って、もう一人は何か大きな箱を持っておる。」

 

朱沙丸「どうやって殺そうかのう。うふふふ、力が漲る。今しがたあの御方に血を分けていただいたからじゃ。」

 

矢琶羽「それはもう残酷に殺してやろうぞ。」

 

二人は炭治郎達を殺すことをすごく楽しみにしていた。もはや自分達の殺戮のシナリオしか考えていなかったのだ。

―――一方の珠世達の家では。

 

珠世「鬼を人に戻す方法は、あります。」

 

ブロリー「どうやったら戻るんだぁ?」

 

愈史郎「寄ろうとするな珠世様に!!」

 

ブロリー「でぇや!」ドカッ!

 

愈史郎「ぐはっ!?」

 

なんと再び殴ろうとした愈史郎を、逆にブロリーが殴り飛ばしたのだ。愈史郎は屋敷の壁まで吹き飛ばされて勢い良く叩きつけられ、蹲った。

 

炭治郎「ブッブロリーさん!すみません珠世さん!ブロリーさんが・・」

 

珠世「いいえ。またも殴ろうとした愈史郎が悪いのです。炭治郎さんもブロリーさんも気にとめないでください。」

 

炭治郎「・・そう言っていただけると幸いです。ブロリーさんももう駄目ですよ?」

 

ブロリー「正当防衛ですYO。」

 

珠世「話を戻します。どんな傷にも病にも、必ず薬や治療法があるのです。ただ、今の時点では鬼を人に戻すことはできない。」

 

炭治郎「・・・・」

 

珠世「ですが私たちは必ず、その治療法を確立させたいと思っています。治療薬を作るためには、たくさんの鬼の血を調べる必要がある。あなたにお願いしたいことは三つ。一つ、妹さんの血を調べさせてほしい。二つ、できる限り鬼舞辻の血が濃い鬼からも血液を採取してきてほしい。三つ、ブロリーさんの血を調べさせてほしい。「待て」どうしました?ブロリーさん。」

 

ブロリー「鬼舞辻とやらに近いムシケラ共の血を取ることには納得した。禰豆子も鬼になっている今、血を調べることにも申し分はない。だが何故俺の血を採る必要がある?」

 

珠世「?ブロリーさんは鬼ではないのですか?」

 

ブロリー「俺は鬼じゃないぞ。」

 

珠世「!?じゃあ、貴方は・・」

 

炭治郎「ブロリーさんはサイヤ人っていう戦闘民族らしいです。それにブロリーさんは昼夜問わずに外を歩くことができます。後人を喰ったことは一度もないです。なので鬼ではありません。それと何故禰豆子の血を?」

 

珠世「・・戦闘民族・・なるほど、だから鬼と似たような気配をしているのですね。そして禰豆子さんの件ですが、そうですね。禰豆子さんは今、極めて稀で特殊な状態です。二年間眠り続けたとのお話でしたが恐らくはその際体が変化している。通常それほど長い間人の血肉や獣の肉を口にできなければ、まず間違いなく凶暴化します。しかし、驚くべきことに禰豆子さんにはその症状がない。この奇跡は今後の鍵となるでしょう。」

 

愈史郎(珠世様は今日も美しい・・きっと明日はもっと美しいぞ・・)

 

炭治郎(・・・・禰豆子・・)

 

珠世「もう一つの願いは過酷なものになる・・鬼舞辻の血が濃い鬼とは即ち、鬼舞辻に・・より近い強さを持つ鬼ということです。そのような鬼から血を奪るのは容易ではありません。それでも貴方はこの願いを聞いてくださいますか?」

 

炭治郎「・・それ以外に道がなければ俺はやります。珠世さんがたくさんの鬼の血を調べて薬を作ってくれるなら、禰豆子だけじゃなく、もっとたくさんの人が助けられますよね?」

 

珠世「!・・・・そうね。」

 

炭治郎の無意識に言った言葉はとても温かく、誰でも笑顔になれるような優しいものだった。珠世も笑顔になる。そのとき、ブロリーが何かに気づき、その方向を見る。

 

ブロリー「!!」

 

炭治郎「ブロリーさん?どうしました?」

 

ブロリー「向こうからクズの気を感じる・・どこのどいつだ?」

 

ブロリーが眼光を鋭くして壁を睨む。そして愈史郎も気づき、声を荒げる。

 

愈史郎「!?まずい!ふせろ!!」

 

ガガガガガガ

 

叫んだ瞬間毬が部屋を縦横無尽に飛び、壁や床を破壊した。毬が戻っていく方向には、楽しそうに顔を歪ませている女の鬼と、本来の場所にある目は瞑っていて変わりに掌に眼球がついている男の鬼がいた。

 

朱沙丸「キャハハッ矢琶羽の言う通りじゃ。何も無かった場所に建物が現れたぞ。」

 

矢琶羽「巧妙に物を隠す血鬼術が使われていたようだな。そして鬼狩りは鬼と一緒にいるのか?どういうことじゃ?それにしても朱嗟丸。お前はやることが幼いというか・・短絡と言うか・・汚れたぞ。儂の着物が塵で汚れた。」

 

朱沙丸「うるさいのう、私の毬のお陰ですぐ見つかったのだからよいだろう。たくさん遊べるしのう。それに着物は汚れてなどおらぬ、神経質めが。」

 

炭治郎(毬・・!毬を投げて家をこれだけ破壊したのか・・!!)

 

ブロリー「誰だお前達は?死にたいのか?」

 

朱沙丸「キャハハ見つけた見つけた。」てんてん

 

愈史郎(あの女、鬼舞辻の手下か!?)

 

朱沙丸が持っている毬を再び投げる。すると、愈史郎の顔に当たり頸が飛んでしまう。そして愈史郎を身体を珠世はあわてて抱き抱える。

 

炭治郎「愈史郎さん!!・・禰豆子!!奥で眠っている女の人を外の安全な場所へ運んでくれ!!」

 

炭治郎の指示で禰豆子は妻を抱えると、ものすごい勢いで外に飛び出して行った。

 

朱沙丸「キャハハッ一人殺した。ん?」

 

炭治郎は刀を構え、ブロリーは握り拳を作り二人は並ぶ。

 

炭治郎(今までの鬼と明らかに匂いが違う・・!!強いのか・・?濃い匂いだ。肺の中に入ってくると重い!!)

 

朱沙丸「耳に飾りの鬼狩りは、お前じゃのう。そして、それと共に行動している金の首飾りの男はお前かえ?」てんてん

 

炭治郎(!!俺とブロリーさんを狙っているのか!?)「珠世さん!身を隠せる場所まで下がってください!」

 

珠世「炭治郎さん。私たちのことは気にせず戦ってください。守っていただかなくて大丈夫です。鬼ですから。」

 

珠世はどこか悲しそうな顔でそう言った。

 

ブロリー「炭治郎、ムシケラは二体いる!もう一体は外の木の上だ!」

 

炭治郎「!!わかりました!ブロリーさん!」

 

朱沙丸は再び毬を投げて来る。炭治郎はそれを刺して威力を和らげようとする。

 

炭治郎(よけてもあの毬は曲がる!!)「全集中・水の呼吸!漆ノ型!雫波紋突き・曲!!」グサッ!

 

朱沙丸(斜めから曲線で突いて毬の威力を和らげたな、ふん!)

 

炭治郎「!?」ぶるぶる

 

なんと毬を刺しても毬は動くのだ。炭治郎はその事に動揺する。一方珠世に抱えられてる愈史郎がもう頸を修復する。

 

愈史郎「珠世様!!俺は言いましたよね?鬼狩りに関わるのはやめましょうと最初から!俺の目隠しの術も完璧ではないんだ!貴女もそれはわかっていますよね!人数が増えるほど痕跡が残り、鬼舞辻に見つかる確率も上がる!」

 

珠世「・・・・・・」

 

愈史郎に声をあげられた珠世はしょんぼりとして、黙り混んでしまう。

 

愈史郎「貴女と二人で過ごす時を邪魔する奴が俺は嫌いだ!大嫌いだ!!許せない!!」

 

朱沙丸「キャハハッ何か言うておる。面白いのう、楽しいのう。十二鬼月である私に殺されることを光栄に思うがいい。」

 

炭治郎・ブロリー「「十二鬼月?」」

 

珠世「鬼舞辻直属の配下です。」

 

朱沙丸「遊び続けよう!朝になるまで、命つきるまで!」バッ!

 

炭治郎は迫ってくる毬を次々と斬るが、それでも炭治郎にぶつかってくる。軌道がいきなり変わることにも対策を出せないでいた。そのとき、家を破壊できるほどの威力の毬が珠世と愈史郎に襲いかかる。

 

ゴーー!

シュタッ

 

ブロリー「はぁっ!」ゴォッ!

珠世・愈史郎「!?」

 

毬は珠世と愈史郎に当たるかと思われたが、ブロリーが二人の前に立ち、バリアを張ることで防いで助けたのだ。珠世はそれに驚き、そして声をかける。

 

珠世「ブロリーさん・・どうして・・私達は負傷してもすぐに再生する鬼なのに・・」

 

ブロリー「?ムシケラだろうが人間だろうが、危険な目にあってる奴を助けるのに理由なんているか?」

 

珠世「!・・ブロリーさん・・」

 

それだけ言うとブロリーは朱沙丸の気を引き付けるために外に飛び出す。愈史郎は炭治郎に叫ぶ。

 

愈史郎「おい!間抜けの鬼狩り!!矢印を見れば方向がわかるんだよ!矢印をよけろ!!そうしたら毬女の頸くらい斬れるだろう!俺の視覚を貸してやる!!」ビッ

 

愈史郎が札を投げ、炭治郎の額に当たる。すると矢印が見えて毬の軌道がわかるようになった。

 

炭治郎「愈史郎さんありがとう!俺にも矢印見えました!珠世さん!この二人の鬼は鬼舞辻に近いですか!?」

 

珠世「恐らく。」

 

炭治郎「では必ず!二人から血をとってみせます!!」

 

ブロリーが外に出たとき、矢琶羽に飛ばされた禰豆子が飛ばされてきた。それに気がついたブロリーは難なく禰豆子を受け止めた。

 

ブロリー「禰豆子!大丈夫か?」ガシッ

 

禰豆子「ムー・・」

 

ブロリーはゆっくりと禰豆子を降ろす。

 

ブロリー「禰豆子。炭治郎と一緒にもう一人の鬼の相手を頼むYO。」

 

禰豆子「んー。」コクン

 

禰豆子はうなずくと炭治郎達の援護に向かった。そして残ったブロリーは矢琶羽に指を差す。

 

ブロリー「まずお前から血祭りにあげてやる!」

 

矢琶羽「なんて穢らわしい奴なんじゃ。儂に汚ない指を向けるな!」バチン

 

ブロリーには愈史郎の札は貼られてないため、矢印などわかるはずもない。当然ブロリーの身体には矢印は刺さるが。

 

ブロリー「フハハハハハ!デヤァッ!!」バコッ!

 

矢琶羽「グッ!?」(何故だ!何故こやつには儂の血鬼術が効かない!)

 

ブロリーに小細工は一切通用しない。そしてそのまま殴り飛ばされる。

 

ブロリー「今殺してやる!全集中・破壊の呼吸!陸の型!ギガンティックバスター!」ドカッ!バキッ!

 

矢琶羽を上空へと投げ飛ばすと、落ちてくるタイミングを見極めて回し蹴りを入れる。

 

矢琶羽「グハァ!?」

 

ギュピギュピギュピギュピギュピ!!!ドカッ!ポウッドッカーン!

 

矢琶羽「クソマァ!!」デデーン☆

 

そのまま走って矢琶羽を蹴りあげ、最後に気弾を喰らわした。矢琶羽の身体はバラバラになり、灰になっていく。

 

ブロリー「あとは血を採るだけだぁ!」

 

ブロリーが珠世からもらった針で残った身体を刺すと、容器に血が貯まる。

 

ブロリー「炭治郎、禰豆子。俺もそっちに行くYO。」

 

ブロリーは急いで炭治郎達の元に向かった。ちょうどそのとき、禰豆子が朱沙丸の投げてきた毬を蹴り返そうとしていた。

 

珠世「蹴っては駄目よ!!」

 

珠世の制止も虚しく禰豆子は蹴ってしまった。足がちぎれ、目の前にいた朱沙丸に蹴り飛ばされる。

 

炭治郎「禰豆子!」

 

朱嗟丸「楽しいのう楽しいのう。蹴毬も良い。」

 

珠世「禰豆子さん。」ダッ

 

珠世は急いで禰豆子に駆け寄り、注射器に入った薬で脚を回復させる。そして再び戦えるようになった禰豆子は投げてきた毬を蹴り返す。

 

朱沙丸「!?」(このガキ!!蹴り返すようになってきた!!蹴毬はもうやめじゃ!!)

 

朱沙丸は澤見の力を込めて毬を投げつける。しかし、禰豆子は更に凄い威力で蹴り返し、朱嗟丸の後ろにある壁に穴をあける。

 

朱沙丸「・・・・」

 

愈史郎「珠世様、これは・・」

 

珠世「私が使ったのはただの回復薬です。鬼専用の・・体を強化する作用はない。禰豆子さんの力です。人の血肉も喰らわずに、彼女が自分の力で急速に強くなっている。」(しかし、相手も強者、全力で潰しにこられたらひとたまりもない。私がなんとかしなければ。)

 

朱沙丸「面白い娘じゃ!今度はこちらも全力で毬を投げてくれそうぞ!」

 

珠世「十二鬼月のお嬢さん。貴女は鬼舞辻の正体をご存知ですか?」

 

朱沙丸 ビクッ「何を言う貴様!!逃れ者めが!」

 

珠世「あの男はただの臆病者です。いつも何かに怯えている。」

 

朱沙丸「やめろ!!貴様やめろ!!」

 

珠世「鬼が群がることができない理由を知っていますか?鬼が共喰いする理由。鬼達が束になって自分を襲ってくるのを防ぐためです。そのように操作されてるのです貴女方は。」

 

朱沙丸「黙れ黙れ!!あの方はそんな小物ではない!!あのお方の能力は凄まじいのじゃ!誰よりも強い!」

 

愈史郎(!珠世様が能力を使っている。)

 

朱沙丸「鬼舞辻様は!・・!!」ハッ

 

鬼舞辻と言った瞬間にハッとなり朱沙丸の顔がみるみると青ざめてゆく。まるで何かに怯えているように。

 

珠世「白日の魔香です。その名を口にしましたね。呪いが発動する・・可哀想ですが・・さようなら。」

 

朱沙丸は絶叫しながらこの場にはいない鬼舞辻無惨に許しをこう。

 

朱沙丸「ギャアアアア!!お許しください!お許しください!!どうかどうか許して!ギャアアッぐぅううっ・・・・」

 

炭治郎「・・・・!!」

 

バキッ!!ぐちゃぐちゃ・・

 

なんと朱嗟丸の口と腹を太い腕が突き破り、そのまま身体全体をぐちゃぐちゃに潰したのだ。

 

炭治郎「・・死んでしまったんですか?」

 

珠世「間もなく死にます。これが呪いです。体内に残留する鬼舞辻の細胞に肉体を破壊されること。基本的に・・鬼同士の戦いは不毛です。意味がない。致命傷を与えることができませんから、陽光と鬼殺の刀、そしてブロリーさんの気弾以外は。ただ、鬼舞辻は鬼の細胞の破壊ができるようです。」

 

愈史郎がいきなり炭治郎の口を布で押さえる。

 

愈史郎「珠世様の術を吸い込むなよ、人体には害が出る。」

 

そこへちょうどブロリーが戻ってくる。ブロリーは辺りを見回すと珠世に問いかける。

 

ブロリー「何があったんだ?」

 

珠世「ブロリーさん。鬼舞辻は味方である鬼にも名を口にしただけで殺されるようです。それと炭治郎さんにブロリーさん。この方は十二鬼月ではありません。」

 

炭治郎「・・・・!?」

 

ブロリー「なにぃ!?」

 

珠世「十二鬼月は眼球に数字が刻まれています。この方はない・・もう一方も恐らく十二鬼月ではないでしょう。弱すぎる。」

 

炭治郎(弱すぎる・・!?あれで!?)

 

ブロリー(やっぱリーです。手に目があるキモいムシケラがあれだけでもう死んだ。あれでは弱すぎる。)

 

炭治郎は弱すぎることに驚きを隠せないが、ブロリーはなんとなく察してたようだ。

 

珠世「血は採りました。私は禰豆子さんを診ます。薬を使ったうえに術も吸わせてしまったので、ごめんなさいね。」

 

愈史郎「頭の悪い鬼もいたものだな。珠世様の御体を傷つけたんだ当然の報いだが。もう後は知らんぞ、布は自分で持て!!俺は珠世様から離れたくない少しも!!」

 

炭治郎「・・・・・・」

 

炭治郎は身体をなんとか動かし、虫の息である朱沙丸に毬を持っていってあげた。

 

朱沙丸「ま・・り、ま・・り・・」

 

炭治郎「・・・・毬だよ。」チリン

 

朱沙丸「遊・・ぼ・・あそ・・」

 

炭治郎(小さな子供みたいだ。十二鬼月だとおだてられ騙され戦わされ、鬼舞辻の呪いで殺された。救いがない・・死んだあとは骨すら残らず消える・・人の命を奪った報いなのか・・鬼舞辻、あの男は自分を慕う者にすらこの仕打ち!本物の鬼だ。)

 

そんな鬼にも同情することができる炭治郎の姿をずっと見てきたブロリーは、毬を持っていってあげる炭治郎を見て思った。

 

ブロリー(炭治郎。お前は優しすぎる。人を殺してきた奴らをも同情の目で見ることができるとはな。それは禰豆子も同じだ、だからこそ俺はお前達に心を開くことができた。俺も他の星を破壊してばっかりいたからな。そんな俺をそばにいさせてくれる二人には感謝せねばな。俺は必ずこの恩を返す。)

 

ブロリーは炭治郎達に恩返しをすると心に決めたのだ。そして二人はボロボロになった家に入った。

 

炭治郎「・・珠世さん」

 

珠世「こちらです。地下へ。」

 

二人が地下へいくと禰豆子が走ってきて炭治郎に抱きついた。そしてすぐさま禰豆子は振り返り、珠世も抱き締める。そして愈史郎には頭を撫でている。・・本人は嫌がっているが。

 

珠世「先程から禰豆子さんがこのような状態なのですが・・大丈夫でしょうか?」

 

炭治郎「大丈夫です。多分二人の事を家族の誰かだと思っているんです。」

 

珠世「?しかし、禰豆子さんのかかっている暗示は、人間が家族に見えるものでは?私達は鬼ですが。」

 

炭治郎「でも禰豆子は人間だと判断してます。だから守ろうとした。」

 

それを聞いた珠世は禰豆子を抱き締め返し、泣いた。悲しみではなく、嬉しいときに流す涙だった。

 

珠世「ありがとう禰豆子さん。ありがとう・・」

 

少しして禰豆子は離れて会話できる状態になる。

 

珠世「私達はこの土地を去ります。鬼舞辻に近づきすぎました。はやく身を隠さなければ危険な状況です。それに、うまく隠しても医者として人と関わりを持てば、鬼と気づかれる時がある。炭治郎さん。」

 

炭治郎「はい。」

 

珠世「禰豆子さんは私たちがお預かりしましょうか?」

 

炭治郎「え?」

 

珠世「絶対に安全とは言いきれませんが、戦いの場に連れていくよりは危険が少ないかと。」

 

炭治郎「・・・・」(そうなのかもしれない・・たしかに、預けた方が禰豆子のためにも・・)

 

ぎゅっ

 

炭治郎・ブロリー「!!」

 

炭治郎が悩んでいると、禰豆子が炭治郎とブロリーの手を握ってきたのだ。それは禰豆子の炭治郎達と行くと言う意思の表れだった。それを見て決めた。

 

炭治郎「・・ありがとうございます。でも、俺たちは一緒に行きます。離れ離れにはなりません。もう二度と。」

 

珠世「・・わかりました。では武運長久を祈ります。」

 

愈史郎「じゃあな。俺たちは痕跡を消してから行く。お前らも早くいけ。」プイ

 

炭治郎「あっはい。じゃあ・・日が差してるし、箱を。」

 

愈史郎「炭治郎。お前の妹は美人だよ。」

 

ブロリー(わかったようでよかったYO。)

 

愈史郎は振り返らずにそう言った。炭治郎はそれを聞くと微笑んだ。そして珠世達と別れた三人は次の鬼を狩るために歩みを進めるのだった。




少しブロリーの出番が少なめになってしまいました。ブロリーを積極的に出したいです。こんな小説ですが今後もよろしくお願いいたします。


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炭治郎の同期登場!兄妹を守れ!鼓屋敷の戦い!

第七話です。遂に炭治郎の同期が登場します。最後まで読んでくれたら嬉しいです。


珠世達と別れた三人は、次の場所に向かって歩みを進めていた。そしてそれを知らせるために鎹烏が叫んでいる。

 

鎹烏「南南東!南南東!南南東!!次ノオ場所ハァ南南東!!」ギャー!

 

ブロリー「うるさい!!」

 

炭治郎「わかった!!わかったからもう少し黙ってくれ。頼むから・・」

 

「頼むよぉ!!」

 

炭治郎・ブロリー「!!」

 

炭治郎とブロリーが騒がしい鎹烏に抗議の声をあげていると、前の方から一番大きな声が聞こえてくる。二人が前を見ると、黄色い服を着た金髪の隊服を着た少年が少女に抱きついて何かを懇願していた。少女の方はとても迷惑そうな顔をしている。

 

炭治郎「何だ?」

 

ブロリー「何なんだぁ?」

 

「頼む頼む頼む!!結婚してくれ!!いつ死ぬかわからないんだ俺は!!だから結婚してほしいってわけで!!頼むよぉー!!」

 

「~~~~っ」

 

二人が困惑していると、炭治郎の元に一羽の雀が慌ててやってくる。この雀は、最終選別を終えたあとに各隊員に鎹烏が与えられたが、一人だけ何故か雀だったのだ。そのときの雀が今ここにいるのだ。つまり、この隊服を着た少年、我妻善逸は炭治郎の同期である。そして善逸は最終選別を終えたあと、呪文を唱えていた人である。

 

雀「チュン!チュン!」

 

炭治郎「そうかわかった。何とかするから。」

 

ブロリー「何がわかったんだ?」

 

炭治郎「どうやらあの子が嫌がってるのに無理矢理結婚を迫っているみたいなんです。俺はあいつを止めます。なのでブロリーさんは女の子の方の安否をお願いします。」

 

ブロリー「わかった。」

 

善逸「助けてくれ!!結婚してくれ!!」

 

炭治郎は善逸の襟元を掴んで引き離して怒鳴った。

 

炭治郎「何してるんだ道の真ん中で!!その子は嫌がっているだろう!!そして雀を困らせるな!!」

 

善逸「あっ隊服、お前は最終選別の時の・・」

 

炭治郎「お前みたいな奴は知人には存在しない!知らん!!」

 

善逸「えーーっ!!会っただろうが会っただろうが!お前の問題だよ!記憶力のさ!!」

 

炭治郎と善逸が言い争っているうちに、ブロリーは女の子を自由にする。

 

ブロリー「大丈夫ですかぁ?もう帰っていいYO。」

 

女の子「ありがとうございます。」

 

善逸「おいーーーっ!!その子は俺と結婚するんだ!俺のこと好きなんだからな!!」

 

それを聞いた女の子はドン引きしながら善逸を叩こうとする。それにいち早く気づいたブロリーは女の子の肩を押さえて止める。

 

ブロリー「落ちつけ。」

 

女の子「いつ私があなたを好きだと言いましたか!!具合が悪そうに道端に蹲っていたから声をかけただけでしょう!!」

 

善逸「俺のこと好きだから心配して声をかけてくれたんじゃないの!?」

 

女の子「私には結婚を約束した人がいますので絶対にありえません!それだけ元気なら大丈夫ですね!さようなら!!」

 

善逸「待ってくれ!待っ・・」

 

この一連のやり取りを見た炭治郎は善逸を別の生き物・・いや、生き物ではない別のなにかを見るような目で見ていた。ブロリーも悲しそうな同情するような表情をしている。

 

善逸「何なんだよその顔!!やめろーっ!!何でそんな別の生き物見るような目で俺を見てんだ!お前責任とれよ!!お前のせいで結婚できなかったんだから!俺はもうすぐ死ぬ!!次の仕事でだ!!俺はな、物凄く弱いんだぜ!舐めるなよ!」

 

炭治郎「俺の名は竈門炭治郎だ!!お前じゃない!」

 

善逸「そうかい!!ごめんなさいね!俺は我妻善逸だよ!」

 

炭治郎と善逸がお互い自分の名前を言ったあと、不意に善逸がブロリーを見る。ブロリーを見てからしばらく何かを考える表情をしていたが、やがて思い出したように叫ぶ。

 

善逸「あーーーっ!!!貴方は最終選別んときに鬼を全滅させた人だぁぁぁ!!うわぁぁぁ!!」ガシッ

 

ブロリー「へぁっ!?」

 

善逸はブロリーに抱きついて大泣きしており、今度はブロリーが迷惑そうな顔をした。炭治郎も困惑している。

 

炭治郎「ちょっ!?善逸!?」

 

善逸「ずっとずっと探してた!!俺を守ってくれ!!助けてくれぇぇぇーーっ!!俺のそばから離れないでくれーーっ!!」

 

ブロリー「なんだお前は!お前は何者だ!」

 

善逸「俺は我妻善逸ですよー!貴方は誰ですかー!最終選別が終わったあとどこに行ってたんですか!!俺はずっと貴方を探してたんだから!!」

 

ブロリー「俺はブロリーだ。何故貴様は俺を探した!俺は貴様のことなど知らん!」

 

善逸「俺を守ってもらうためですよー!鬼を全滅させた貴方のそばにいれば安心できると思ったからー!頼むから俺を助けてくれぇぇぇ!!」

 

炭治郎「やめろ!ブロリーさんが迷惑そうにしているだろう!」

 

炭治郎が善逸をなんとかブロリーから引き剥がすと、両肩を掴んで叫ぶ。

 

炭治郎「助けてくれってなんだ!何で善逸は剣士になったんだ!何でそんなに恥をさらすんだ!」

 

善逸「言い方ひどいだろ!女に騙されて借金したんだよ!借金を肩代わりしてくれたジジイが育手だったの!!毎日毎日地獄の鍛練だよ!死んだ方がマシだってくらいの!最終選別で生き残るからいまだに地獄の日々だぜ!あー怖い怖い怖い怖い!イイヤアアアーッいやあああ!助けてぇー!!」

 

炭治郎「どうしたんだ、大丈夫か?」トントン

 

善逸「ヒィーッヒィーッ」ブルブル

 

なんとか善逸を落ち着かせたあと、なんだかんだで三人は共に行動することになった。

 

ブロリー「貴様も散々な目にあってきたようだな。」

 

炭治郎「善逸の気持ちもわかるが雀を困らせたらダメだ。」

 

善逸「えっ?困ってた雀?なんでわかるんだ?」

 

炭治郎「いや、善逸がそうやってずっと仕事に行きたがらないし女の子にすぐちょっかい出す上にイビキもうるさくて困ってるって・・・言ってるぞ」

 

雀「チュン」

 

善逸「言ってんの!?鳥の言葉がわかるのかよ!?」

 

炭治郎「うん。」

 

善逸「嘘だろ!?俺を騙そうとしてるだろ!」

 

善逸が疑ったとき、鎹烏により指示が入る。

 

鎹烏「カァァ!!駆ケ足!!駆ケ足!炭治郎、善逸、ブロリー走レ!!共二向カエ!次ノ場所マデ!!」

 

善逸「ギャーッ!!烏が喋ってる!」どてん

 

善逸は鎹烏が喋った驚きと恐怖で腰を抜かしたようだった。そして、三人はとある屋敷にやって来た。

 

炭治郎「血の匂いがするな・・でもこの匂いは。」

 

善逸「えっ?なにか匂いする?それより何か音がしないか?あと俺たち共同で仕事するのかな?」

 

ブロリー(この建物の中からムシケラの気を感じる。それと、そこの陰からも弱い気を感じる。どこのどいつだ?)

 

炭治郎「音?・・!!」

 

炭治郎と善逸とブロリーが音のする方を見ると、男の子と女の子が抱き合いながら炭治郎達を怯えた表情で見ていた。二人の様子から兄妹であることがわかる。

 

善逸「子供だ・・」

 

炭治郎「どうしたんだろう?こんなところで何してるんだ?」

 

炭治郎が近づくと、二人は後ずさる。それを見た炭治郎はかなり怯えていることを悟る。そして善逸の雀を見せることにしたのだ。雀も何かアピールしようと炭治郎の掌の上で踊った。

 

炭治郎「じゃじゃーん!手乗り雀だ!!」

 

雀「チュン!!チュン!!」ぴょこぴょこ

 

炭治郎と雀を見た怯えてた二人、兄の正一と妹のてる子は足から力が抜けて地面に座り込んだ。いまだに涙は流しているものの、炭治郎達が敵ではないと気づき、安心したようだった。

 

炭治郎「何かあったのか?そこは二人の家?」

 

炭治郎の質問に正一が屋敷内での恐怖を思い出したのか震えながら答える。

 

正一「違う・・違う・・ばっ・・化け物の家だ・・兄ちゃんが連れていかれた、夜道を歩いてたら。俺たちには目もくれないで兄ちゃんだけ・・」

 

炭治郎「あの家の中に入ったんだな。二人で後をつけたのか?えらいぞ!頑張ったな。」

 

正一「・・・・うう・・・・兄ちゃんの血の跡を辿ったんだ。怪我したから・・」

 

炭治郎(!!怪我・・)「大丈夫だ。俺たちが悪いやつを倒して、兄ちゃんを助ける。」

 

てる子「ほんと?ほんとに・・・・?」

 

炭治郎「うん。きっと・・」

 

善逸「炭治郎。なぁこの音何なんだ?気持ち悪い音・・ずっと聞こえる、鼓か?これ・・」

 

ブロリー(!!何か来る!)「炭治郎気を付けろ!何か来るぞ!」

 

善逸「えっ!?何々何々!?何か来るってなんなの!?いやあぁぁぁ!」

 

ポンポンポンポン

鼓を叩く音が屋敷の中から聞こえてくると、全身から血を垂れ流してもう虫の息の男性が、上階から落ちてきて地面に叩きつけられる。

 

てる子「キャーッ!!」

 

炭治郎「見るな!!」

 

炭治郎とブロリーはすぐに男性の元へ駆けつける。

 

炭治郎「大丈夫ですか!?しっかり・・!!」(傷が深い!これは・・・・)

 

男性「せっ・・かく・・あ・・あ・・出られ・・たの・・に・・外に・・出ら・・れた・・のに・・死ぬ・・のか・・俺・・死ぬ・・の・・か」

 

炭治郎は男性を抱きしめる。それを見たブロリーは炭治郎に声をかける。

 

ブロリー「炭治郎、一旦退いてくれ。」

 

炭治郎「なっ何をいってるんですか!?この人はもう脈がかなり弱っています!!それなのに見殺しにするなんてできません!」

 

ブロリー「違う!俺なら治せるんだ!だから退け!」

 

炭治郎「本当ですか!?」

ブロリー「本当だ!」

 

炭治郎「・・わかりました!お願いします!」

 

炭治郎は男性を離し自身も距離をとると、入れ代わりにブロリーが掌を男性に向ける。そこから緑がかった金色のオーラが出て来て男性を包んでいった。すると、男性の致命傷がみるみる回復していき、脈も安定したのだ。炭治郎はその普通ではあり得ない光景に口を開けて唖然としていた。

 

男性「あっあれ?・・俺・・助かったのか?傷が治っている。」

 

炭治郎「・・・・!」(凄い!あれだけの致命傷を負ったのに、今はもう傷一つない!本当にブロリーさんは、治すことができるんだ・・!)

 

傷を治し、生死の境をさまよっていた男性を助け出したブロリーは、男性に話しかけた。

 

ブロリー「俺の気を分けて貴様の傷を治した。この建物の中は危ないから、貴様はすぐにここから離れろ。」

 

男性「!ありがとうございました!この恩は忘れません!」

 

男性はブロリーの指示に素直に従い、ブロリーにお礼を言ってから走り去っていった。炭治郎と善逸は唖然としていたが、正一の声により我に帰った。

 

正一「あの人は兄ちゃんじゃない・・兄ちゃんは柿色の着物きてる・・・・」

 

炭治郎「!!」(そうか、何人も捕まっていたんだ。)

 

炭治郎「ブロリーさん!!善逸!!行こう!」

 

ブロリー「はい・・」

 

善逸「・・」ブンブン

 

ブロリーは返事をするものの、善逸は首を横に振って拒否を意思を示した。

 

炭治郎「・・そうか、わかった。行きましょうブロリーさん。」

 

善逸「ヒャーッ!!何だよぉー!!何なんでそんな般若みたいな顔をするんだよー!!行くよぉー!!」

 

炭治郎「無理強いするつもりはない。」

 

ブロリー「臆病者はついてこなくていい。」

 

善逸「行くよぉーッ!!」

 

炭治郎は正一とてる子の前に禰豆子が入ってる箱を置いた。

 

正一・てる子「!?」

 

炭治郎「もしもの時のためにこの箱を置いていく。何かあっても二人を守ってくれるから。」

 

それだけを伝えると、善逸とブロリーと共に、屋敷の中に入っていった。

 

善逸「ブロリーさん、ねぇブロリーさん。守ってくれますよね?俺を守ってくれますよね?」ガタガタガタガタ

 

ブロリー「・・時と場合によるな。」

 

善逸「ヒィーッ!!最終選別の時は鬼を全滅させたじゃないですかー!!そこは嘘でも"絶対に守りきってやる"の一言くらい言ってくださいよ!!何なんですかー!!その曖昧な解答はぁー!!リアル過ぎて怖いんですよぉー!!」

 

炭治郎「善逸、静かにするんだ。お前は大丈夫だ。」

 

善逸「炭治郎!気休めはよせよぉーッ!!」

 

炭治郎「違うんだ、俺にはわかる!善逸は・・ダメだ!!」

善逸「ギャーーーッ!!!」

 

炭治郎「入ってきたら駄目だ!!」

 

炭治郎が叫んだ方向を見ると、正一とてる子が走って炭治郎達の方へ来ていた。

 

ブロリー「貴様ら!何故入ってきた?ここは危ないんだぞ!」

 

正一「だっ、だってあの箱カリカリ音がして・・」

 

炭治郎「だっ・・!!だからって置いてこられたら切ないぞ!あれは俺の命より大切なものなのに・・」

 

ミシッ!ギイイイイイイ!ミシッミシッ!ドム

 

善逸「キャアアア!あっごめん・・尻が!」

 

ポンポンポン

 

ちょうどそのとき、炭治郎とてる子とブロリーが善逸と正一とはぐれてしまった。部屋がいきなり変わったのである。

 

炭治郎達side

 

炭治郎(部屋が変わった!!いや、俺たちが移動したのか?鼓の音に合わせて)

 

てる子「ううう・・・・」

 

炭治郎「!!お兄ちゃんと離れ離れにしてごめんな。でも必ず俺とブロリーさんで守るから。お兄ちゃんのことも善逸が守るよ、大丈夫。名前は?」

 

てる子「てる子・・」

 

ブロリー「てる子、カワイイ!」

 

てる子「!?」

 

炭治郎「もうブロリーさん!言ってる場合ですか!?」

 

ブロリー「フフフッ良い名前だと誉めて・・誰だ?」

 

ブロリーが廊下の方を見てそう言った。それに炭治郎も何かの匂いを感じとり、廊下を見る。すると、腹や肩等、全身に鼓をつけたのか鬼が姿を現した。

 

炭治郎(!!いくつかの匂いの中でもこの屋敷に染みついたきつい匂いだ。かなり人を喰ってる!!こいつが屋敷の・・主!!)

 

ブロリー(こいつからムシケラの気を感じる。この建物に住んでいるのか?)

 

善逸達side

 

善逸「死ぬ死ぬ死ぬ!死んでしまうぞ!これは死ぬ!!ブロリーさん達と離れちゃった!」

 

正一「てる子!!てる子!!」

 

善逸「だめだめだめ!大声出したらだめ!!ちょっと外に出よう!」

 

正一「なんで外に?自分だけ助かろうとしてるんですか?死ぬとかずっとそういうこと言っていて恥ずかしくないんですか?あなたの腰の刀は一体なんのためにあるんですか?」

 

善逸「ぐはっ!?すごい言葉の切れ味が!ぐはっ!?違うんだよ!俺じゃ役に立ちそうにないから人を・・大人を呼んでこようとしているんだよ!」

 

正一「放してください!」

 

善逸「子供だけでどうにかできることじゃないからこれは!!」ガラッ

 

しかし、善逸が開いた本来外へ繋がるはずの扉は何故か畳の部屋になっていた。

 

善逸「嘘だろ嘘だろ嘘だろ!ここが玄関だったのに!!外はどこに行ったの!この戸が・・こっちか!?」ガラッ

 

善逸が開いた扉の先には、上半身裸で腰に鹿や熊の毛皮を巻き、頭に猪の被り物を被っている男がいた。

 

「ふしゅうううう!」ダッ

 

善逸「化け物ダァーーーッ!!ギャアアア!!」

 

しかし、その猪の被り物を被った男は善逸達には目もくれずに走り去っていった。

 

正一「・・・・・・」ジトー

 

善逸「何だよぉー!!その目なに!?やだそんな目!」

 

炭治郎達side

 

炭治郎「てる子、叫ぶのは我慢だ。部屋は動くから、廊下に出るな。ブロリーさん!てる子を頼みます。俺はあいつを斬ります。」

 

ブロリー「はい・・てる子、この棚の後に隠れてろ。」

 

炭治郎は鼓をたくさんつけた鬼、響凱という名を持つ鬼に向かって日輪刀を構える。

 

響凱「何故だ。どいつもこいつも余所様の家にづかづかと入り込み、腹立たしい・・小生の獲物だぞ。小生の縄張りで見つけた小生の獲物だ・・あいつめ・・あいつらめ。」

 

炭治郎「俺は鬼殺隊階級・癸!!竈門炭治郎だ!今からお前を斬る!!」

 

ブロリー(・・なにも言わずに頸を斬っていれば不意打ち出来たものを・・)

 

炭治郎は不意打ちができない男だった。わざわざわかるように鬼に宣言してしまったのだ。

 

響凱「俺が見つけた"稀血"の子供なのに。」ポン

 

響凱が身体についている鼓を叩くと部屋がぐるりと回転し、畳が側面に来る。このとき、棚が上に来てしまったので、てる子が重力に従って背中から落ちていく。

 

てる子「キャアア!!」

 

ブロリー「!!」ヒュン ガシッ

 

なんと、ブロリーが宙に浮かび、落ちてくるてる子を受け止めたのだ。そしてそのまま自分の胸のなかに片手で抱えながら、てる子に聞いた。

 

てる子「!!」

 

ブロリー「大丈夫かぁ?」

 

てる子「うん///」ポッ

 

炭治郎「!!」(畳が側面にある・・部屋が回転したんだ。これがこの鬼の血鬼術!屋敷すべてが鬼の縄張り・・!!)

 

そのとき炭治郎とブロリーがそれぞれ別の気と匂いを感じとる。

 

ブロリー「!!何か来る!」

てる子「えっ?」

 

炭治郎(!?何だ!?匂いが迫ってくる。)

 

そこに障子戸を突き破ってさっきの猪の被り物を被った男、嘴平伊之助が姿を現した。

 

伊之助「猪突猛進!!猪突猛進!!」

 

炭治郎(何だあの男、猪の皮を被って・・日輪刀を持ってる。)

 

同じ鬼殺隊ならここで響凱に向かっていくはずである。だがしかし、伊之助が標的にしたのは、てる子を抱えたブロリーだった。それに気づいたブロリーもてる子を一旦降ろし、伊之助と対峙する。

 

伊之助「さぁ化け物!!屍を晒して俺がより強くなるため!より高くいくための踏み台となれぇ!!」

 

ブロリー「俺が化け物?違う・・俺は悪魔だ!フハハハハハハハハハ!!」

 

炭治郎「やめろ!!ブロリーさんは鬼ではない!斬りかかるのはよせ!!」

 

響凱「腹立たしい・・小生の家で騒ぐ虫共。」ポンポン

 

ぐるん

 

てる子「ぎゃっ!」

 

伊之助「アハハハハハハハハ!!部屋がぐるぐる回ったぞ!面白いぜ面白いぜぇ!!」

 

てる子「ううっ・・」

 

ブロリーが伊之助にラリアットを決めて投げ飛ばした。その理由はてる子を踏みつけていたからだ。

 

ブロリー「てる子を踏むなぁ!!」

 

伊之助を飛ばしたあと再びブロリーはてる子を片手で抱える。

 

ブロリー「大丈夫か?痛くなかったか?」

 

てる子「・・大丈夫・・ありがとう///」ポッ

 

何故かブロリーの安否に答えるときのてる子は顔が赤くなっていた。そしてとても、もじもじしている。炭治郎はてる子を踏みつけにした伊之助を怒鳴る。

 

炭治郎「人を踏みつけにするな!!」

 

伊之助「なんだぁてめぇ・・」

 

炭治郎「小さい子を踏みつけるなんてどういうつもりだ!!」

 

伊之助「アハハハハハハハハ!!いいねいいね!いい威勢だ!嫌いじゃないぜぇ!!」ダッ

 

炭治郎「!?」(何故俺に向かってくるんだ?鬼殺隊じゃないのか!!」

 

ブン!!

伊之助が斬りかかるも炭治郎はかわす。鬼がいる状況なのに己に向かってくることに炭治郎は困惑を隠せない。

 

伊之助「俺の刀は痛いぜ!!坊っちゃんが使うような刀じゃねぇからよぉ!千切り裂くような切れ味が自慢なのさ!」

 

炭治郎「やめるんだ!!そこに鬼がいるんだぞ!!」

 

伊之助「知るか!!」ダッ

 

響凱「虫め、消えろ、死ね。」ポンポンポン ギャギャ

 

響凱が鼓を叩くと今度は衝撃波が生まれて四人に襲いかかる。二人はそれぞれ避け、一人はてる子を抱えながらバリアを張ることで防ぐ。

※ブロリーに衝撃波など効くわけないが、てる子に傷を負わせないために一応張ったのだ。

 

炭治郎「!」(突然畳が裂けた!鼓の音と同じ速度で、獣の爪痕のような形!だんだんわかってきたぞ!)

 

響凱「虫め、虫けら共め・・」ポンポン

ポン!

 

ブロリー・てる子「!!」

 

響凱の鼓とは別の鼓を叩く音が聞こえると、炭治郎の姿がなかった。

 

ブロリー「炭治郎?どこへ行った?」

 

炭治郎side

 

炭治郎「!!」(また部屋が変わった!!でもどういうことだ?さっきあの鬼は鼓を打ってないぞ。この屋敷は複数の鬼の匂いがする。別の鬼も鼓を持っているのか?血の匂いがする。これまでとは違って今まで嗅いだことのない独特な匂いだ。出血量は少ないみたいだ。)「ブロリーさんとはぐれてしまった。」

 

炭治郎が匂いを頼りに襖を開くと奥に男子の姿が見えた。その男子は鼓を持っていて炭治郎を警戒するように見ている。それを悟った炭治郎は優しく声をかけた。

 

炭治郎「大丈夫?怪我はない?」

 

男子「貴方は・・」ブルブル

 

炭治郎「俺は竈門炭治郎、悪い鬼を倒しに来たんだ。君の名前は?」

 

男子「・・清。俺の名前は清。」

 

炭治郎「清。いい名前だね。さぁ傷を見せて独りで良く頑張ったな。」

 

清「うっ・・うっ・・」

 

炭治郎が安心できる存在だとわかると清は安堵したのか、その場で泣き出してしまった。

 

炭治郎「この傷薬はすごいんだぞ!俺の師匠がくれたものだ!!俺の師匠は天狗のお面を被っててな。よしできた!!痛みが引いたろ?」

 

清「・・うん。・・そういえば正一とてる子は?二人は無事?」

 

炭治郎「・・実はてる子とは、この屋敷の途中ではぐれちゃってね。「えっ!?」でも大丈夫だ!てる子と一緒に俺と同じで、悪い鬼を倒すブロリーさんって人がいるから!ブロリーさんはね、俺よりもずっとずっと強くて、どんな鬼にも絶対に勝つんだ!俺が密かに尊敬して憧れてる人なんだよ!」

 

清「・・炭治郎さんがそういうなら信用する。」

 

炭治郎「ありがとう。ここで何があったか話せるか?」

 

清「・・化け物に拐われて・・く・・く・・喰われそうになった。そしたらどこからか別の化け物が来て、こ・・殺し合いを始めた・・誰が俺を・・喰うかって・・それで、体から鼓が生えてる奴・・あいつが他の奴にやられたときに、この鼓を落としたから。叩いたら部屋が変わって・・何とか今まで。」

 

炭治郎「そうか。頑張ったんだな。えらいぞ!・・そういえば稀血って言ってたが・・」

 

清「!!そうだそう・・俺のこと稀血って呼ぶんだ!」

 

鎹烏「カァーァ!!稀血トハ珍シキ血ノ持チ主デアル!!」

 

清「うわっ・・」

 

鎹烏「グワハハハ!!ガキメ!!ツツキ回スゾ!!」

 

炭治郎「よせ。珍しき血ってどういうことだ?」

 

鎹烏「生キ物ノ血ニハ種類系統ガアルノダ馬鹿メ。稀血ノ中デモサラニ数少ナイ血デアレバアル程、鬼ニハ!!ソノ稀血一人デ五十人!!百人!!人ヲ喰ッタノト同ジクライノ栄養ガアル!!稀血ハ鬼ノ御馳走ダ!!大好物ダ!!」

 

清「・・・・」ガタガタ

 

ブロリーside

 

ブロリーは、はぐれてしまった炭治郎を探して屋敷の中を歩いていた。てる子を片手で抱っこしながら。

 

てる子「うっ・・ううっ・・」

 

ブロリー「てる子?どうしたんだ?」

 

てる子「清兄ちゃん・・大丈夫かな・・?」

 

ブロリー「清?」

 

てる子「清兄ちゃん・・私のお兄ちゃん・・私・・生きてお兄ちゃんに会えるかな・・?化け物に食べられないかな・・?お兄ちゃんも生きてるかな・・?」ガタガタ

 

ブロリー「てる子・・大丈夫だ、人間の気を上から感じる。炭治郎とは別のものだ。絶対に清は生きている!それに途中でてる子と俺がムシケラ共と会ったら、俺がムシケラ共を血祭りにあげるだけだ!だから安心しろ。」ぎゅっ

 

てる子「ムシ・・ケラ・・?」

 

ブロリー「そうだ。てる子にとっての化け物は俺にとっては雑魚のムシケラだ。あんなやつらは俺を倒せない!フフフッ!」

 

てる子「ほんと?ほんとに清兄ちゃんに会える・・?鬼が出ても、守ってくれる・・?」

 

ブロリー「ああ、てる子を守りきること。その役割、この俺が任されよう。」

 

てる子「ありがとう///・・カッコイイ」ボソッ

 

ブロリーがてる子を安心させていると、ブロリー達の前から一体の鬼が匍匐前進する形で近づいてくる。

 

「ぐへへへ!人間の子供だ!肉が柔らかくて上手い子供だ!おいお前、その子供を寄越してくれないか?とても美味そうだから是非とも喰いたい。」

 

てる子「ひぃ!?」ビクッ

 

ブロリー「俺が大人しく、てる子を飯にすることを許すと思っているのか?てる子は渡さん!」

 

「そうか。ならばお前を倒したあとにそいつを喰ってやる!」バッ

 

鬼は飛びかかってくるが、ブロリーは体を少し動かすことで簡単によける。ブロリーは片腕が塞がっているため、一見不利だと思うが、本人にとってはなんともないみたいだった。

 

「俺を避けられるとは、運のいい奴め、だが、次で終わりだ。」

 

ブロリー「いくら向かって来たところで無駄なのだ。」

 

鬼は再度飛びかかり、ブロリーの至るところに攻撃しようとするが、ブロリーはこれも楽々すべて避ける。

 

ブロリー「てる子、これからとっておきをするYO。」

 

てる子「?」

 

ブロリー「見ててYO。全集中・破壊の呼吸!漆の型!オメガブラスター!!」ポウ ギュルル

 

「ギャアアアアア!!」ギュルル ドカーン デデーン☆

 

ブロリーが放ったオメガブラスターは鬼を包み込んで飛んでいき、屋敷の外に出たタイミングで爆発したのだ。そして鬼は跡形もなく消滅したのだった。その一部始終を見ていたてる子は唖然として言葉を失っていた。

 

てる子「・・すごい・・」

 

ブロリー「てる子。これでも俺が鬼なんかに負けると思うか?」

 

てる子「ううん。お兄ちゃんのそばにいれば大丈夫!」ニコッ

 

てる子はそこではじめて笑顔を見せた。子供らしい無邪気で素直な笑顔だった。

 

ブロリー「フハハハハ!流石てる子、カワイイ笑顔だと誉めてやりたいところだぁ!・・!すぐ近くから炭治郎の気を感じる。そしてもう一人、人間の気もあるな。てる子、行くYO。」

 

てる子「うん!」

 

てる子の元気のある返事と共に近くの襖を開くと、なかには炭治郎と清がいた。清は最初、鬼が来たと思って鼓を叩こうとしたが、ブロリーの腕の中にいるてる子の姿を見て叩こうとしたのをやめた。

 

てる子「清兄ちゃん!!」

 

ブロリーはてる子が叫んだのに気づいて、優しく地面に降ろしてあげた。

 

てる子「兄ちゃん!!兄ちゃん!!」

 

清「てる子!!てる子!!」

 

二人は駆け寄って抱き合い、お互いに無事なことに安堵する。

 

清「てる子!無事だったのか!」

 

てる子「うん!お兄ちゃんが守ってくれたから!」

 

清はブロリーを見上げると、ブロリーはすでに炭治郎と話していた。

 

炭治郎「ブロリーさん。大丈夫でしたか!そういえばさっき凄い爆発音しましたけど何かあったんですか?」

 

ブロリー「てる子と一緒にいたらムシケラが襲いかかってきたからな。返り討ちにした。」

 

そのとき、炭治郎とブロリーは同時に響凱の匂いと気を感知した。

 

炭治郎「二人とも、俺たちはこの部屋を出る。」

 

清「えっ!?」

 

炭治郎「落ち着いて、大丈夫だ。鬼を倒しに行ってくるから。」

 

ブロリー「てる子、清は本当に今疲れてるんだ。だからしっかりと守ってやれよ。」

 

炭治郎「俺たちが部屋を出たらすぐに鼓を打って移動しろ。今まで清がしてきたように、誰かが戸を開けようとしたり物音が聞こえたら、間髪入れずに鼓を打って逃げるんだ。」

 

てる子「でも、私たちが逃げちゃったらまた会えるかな・・?」

 

ブロリー「問題ない。俺は気を探って見つけることができる。清と言ったな?お前は強い奴だ。頑張れるな?」

 

清とてる子は力強くうなずく。それを見た炭治郎とブロリーは笑みを浮かべて立ち上がる。

 

炭治郎「えらい!強いな。行ってくる!行きますよ!ブロリーさん。」

 

ブロリー「はい・・」

 

響凱が部屋に来る直前に炭治郎が叫ぶ。

 

炭治郎「叩け!!」

ポン

 

てる子と清は鼓を叩くと共に消えた。それを見た響凱は歯軋りをする。

 

響凱「虫けらが・・忌々しい・・」

 

ブロリー「ムシケラは・・お前だろ!」

 

ポンポンポンポン

 

響凱が鼓を叩いて部屋を回転させたり、爪の攻撃を打ってきたりするが、ブロリーは宙に浮いているためなんの意味もなかった。最も炭治郎にはきつそうだったが。

 

炭治郎(ヤバいヤバい!万全の状態じゃないから間合いの内側に入ろうとしたとき痛みが走って足がもつれたら・・俺は輪切りだ!怪我のせいで悪いことばかり想像してしまう。)「!!」

 

炭治郎の目の前に爪の攻撃が迫っていた。当たる直前にブロリーが炭治郎の前に降り、爪攻撃を諸に食らった。しかし

 

ザン! ドゴォン

 

炭治郎「!!ブロリーさん!」

 

ブロリー「なんなんだぁ?今のはぁ?」

 

響凱「!!」(小生の攻撃が効いてないのか!!)

 

ブロリーにはダメージどころか傷一つさえつけることができなかったのだ。そして炭治郎に背を向けながら、聞こえるように渇を入れる。

 

ブロリー「炭治郎!貴様には俺がいる!一人で抱え込むな!それと気合いいれろ!貴様ならできる!」

 

炭治郎(!!そうだ!俺ならできる。できるようなことをやって来たんだ!己を鼓舞しろ!)「頑張れ炭治郎頑張れ!!俺は今まで良くやって来た!!俺はできる奴だ!」

 

炭治郎が己を鼓舞しながら響凱の攻撃を避ける。このとき、響凱の作品が床に散らばっており、炭治郎はそれを踏まずによける。

 

響凱「!!」

 

炭治郎「!!」(わかった。紙を踏まないように避けたおかげで、怪我が痛まない体の動かしかた呼吸の仕方がわかった!)

 

響凱は炭治郎が自分の書いた物を踏まずによけたことに驚き、動きを一瞬止める。その隙をついてブロリーは響凱に向かっていく。

 

ブロリー「うおおおおお!!」ギュオオオオ

 

響凱「!!」

 

響凱の攻撃は受けるものの傷つかないので構わずに突き進み、響凱の腹に拳を入れる!

 

ブロリー「デヤァッ!!」バキッ!!

 

響凱「ぐっ!?」

 

ブロリーが攻撃を入れて響凱を怯ませる。そして間髪いれずに叫ぶ。

 

ブロリー「炭治郎今だ!」

 

炭治郎「!はい!全集中・水の呼吸!玖ノ型!水流飛沫・乱!」

ブロリー「全集中・破壊の呼吸!伍ノ型!イレイザーブロウ!」

 

炭治郎とブロリーの息はピッタシで隙が全くなく、響凱が攻撃しても二人には当たらなかった。

 

炭治郎「君の血鬼術は凄かった!!」

 

響凱「!!」

 

ザン

ドッカーン!!

 

炭治郎の刀が頸を斬ってブロリーのイレイザーブロウが胴体を吹き飛ばした。そして宙にいた二人は着地する。

 

タン

シュタ

 

炭治郎(はー!!いだだだい!!深く息を吸ってしまった!!)

 

ブロリー「炭治郎大丈夫か?」サスサス

 

ブロリーは炭治郎の背中を擦ってあげてた。そこに響凱が灰になりかけながらも炭治郎に問う。

 

響凱「小僧・・答えろ・・」

 

炭治郎・ブロリー「「!?」」

 

響凱「小生の・・血鬼術は・・凄いか・・?」

 

炭治郎「・・凄かった・・でも、人を殺したことは許さない。」

 

響凱「・・・・そうか。」

 

響凱は炭治郎が自分の書いた物を踏まずによけたことと最後の質問の答えに、最期の最期で自分が認められたことを実感しながら涙を流し、灰になって消えていくのだった。そして炭治郎とブロリーは、清とてる子がいる場所に向かって歩き、部屋の襖を開けた。

 

炭治郎「清!!てる子ー!!」

 

てる子「キャアアア!!」

清「うわーっ!!」

 

炭治郎「!!」

ブロリー「へぁっ!?」

 

二人が部屋に入った瞬間物が飛んできて驚く。

 

炭治郎「なんで物を投げつけるんだ!」

 

ブロリー「・・・・」

 

清「たっ炭治郎さん。ごめんなさい、鼓が消えちゃって混乱して・・」

 

炭治郎「さ。外に出よう。」

 

炭治郎は清を背負い、ブロリーはてる子を抱えて屋敷内を歩く。

 

炭治郎「あっ善逸と正一の匂いがする。外に出てるな、二人とも無事・・アイタタタ。」

 

清「大丈夫ですか?」

 

ブロリー「てる子、清をしっかりと守りきるとは、天才か!?」

 

てる子「ううん。清お兄ちゃんに助けてもらったから天才なのは清お兄ちゃんの方だよ。」

 

四人は鬼を倒したことで一段落し、ほのぼのとしながらゆっくり玄関までやってきた。そのとき、炭治郎が外から血の匂いを感じとる。

 

炭治郎(!!血の匂い!)

 

炭治郎は今までの経緯からか、すぐさま走り出して外に向かった。それにブロリーも後に続いた。そして外にたどり着くと衝撃の光景を目の当たりにする。

 

伊之助「刀を抜いて戦え!!この弱味噌が!!」

 

伊之助が善逸を蹴っていたのだ。蹴られてボロボロになっている善逸は、禰豆子の入った箱をかばっていたのだ。炭治郎の姿を見た善逸は言った。

 

善逸「炭治郎・・俺・・守ったよ・・お前が・・これ・・命より大事なものだって・・言ってたから・・」

 

炭治郎は現状を見て憤り、伊之助に殴りかかって行くのだった。




善逸と伊之助が出てくる回を分けようと思いましたが、鼓屋敷の戦いをひとまとめにしたかったので二人同時に登場させてしまいました。次回もよろしくお願いします。


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束の間の休息!遂に揃うかまぼこ隊!

第八話です。2週間近くかかってしまいました。楽しみにしてくれてた方申し訳ありません。こんな最低な小説でも最後まで読んでくれたら嬉しいです。


鼓屋敷の外。今ここでは炭治郎とその同期である伊之助が対立していた。何故こうなったかと言うと、それは数十分前に遡る。

 

正一「善逸さん!」

 

善逸「・・・・」

 

正一「大丈夫ですか?」

 

炭治郎達が鼓屋敷を出る数分前に、善逸と正一は先に屋敷を抜け出していたのだ。そして二階の窓から落ちて善逸は気絶していたのだ。目を覚ました善逸の視界に入ったのは泣いている正一だった。

 

正一「部屋が変わったときの勢いで外に飛ばされたんです。二階の窓から落ちました。」

 

善逸「そうだっけ?」ハハハ

 

正一「善逸さんがかばってくれたので俺は大丈夫ですけど・・」

 

善逸「それはよかった。でもなんでそんなに泣いてんの?」スッ ぬるり

 

不意に自分の頭を触った手が何か液体に触れる感触がした。手を確認すると、それは自身の血だった。それを見た善逸は全てを悟った。

 

善逸「なるほどね!?俺が頭から落ちてんのね!?」

 

正一「はい・・」

 

善逸が現状を理解して取り乱していると、屋敷の扉を突き破って伊之助が現れた。

 

伊之助「猪突猛進!!猪突猛進!!」バキッ!

 

善逸「ギャアアア!!また出たああ!!化け猪!!」

 

伊之助「アハハハハハ!!鬼の気配がするぜぇ!!」

 

善逸「あっ!あいつ・・今声聞いてわかった!五人めの合格者・・最終選別のとき誰よりも早く入山して誰よりも早く下山した奴だ!せっかち野郎だ!」

 

伊之助は禰豆子の入った箱を見つけると、惨殺しようと斬りかかろうとする。しかし

 

伊之助「見つけたぞおおお!!」

 

善逸「やめろーーっ!!」

 

伊之助「!!・・なんだぁ?テメェは?」

 

善逸は急いで箱の前に立ちふさがり、伊之助の行動を止めた。伊之助も邪魔者が入るとは思っていなかったのか、あわてて動きを止めた。

 

善逸「この箱に手出しはさせない!炭治郎の大事なものだ!!」

 

伊之助「オイオイオイなに言ってんだ?その中には鬼がいるぞォわからねぇのか?」

 

善逸「そんなことは最初からわかっている!!」

 

善逸は炭治郎の背負っている箱の中に鬼がいることを知っていたのだ。もともと音に敏感で、炭治郎からは今まで聞いたことの無いくらいの優しいものだった。だからこそ彼は鬼をつれている炭治郎を信じようと思ったのだ。納得できる事情があると。

 

善逸「俺が・・直接炭治郎に話を聞く。だからお前は・・引っ込んでいろ!!」

 

善逸が怒鳴ると伊之助は殴る蹴るの暴行を加えて、力ずくで善逸を箱から引き剥がそうとする。しかし、善逸は粘り強く箱を抱えて守っており、自身がどんなに怪我を負おうと反撃の素振りを見せなかったのだ。それを見ていた正一は涙を流していた。そこに炭治郎とブロリーが屋敷の外に出て来て現在に至る。

 

伊之助「同じ鬼殺隊なら、刀を抜いて戦って見せろ!!戦わねぇなら、さっさとどきやがれ!!」ドカッドカッドカッ

 

善逸「ぐはっ!」

 

ついには力尽きてしまい、箱を抱えながら倒れた。それを見た炭治郎は沸々と怒りが湧いていた。

 

伊之助「もういい・・お前ごと箱を串刺しにしてやる!」

 

炭治郎「やめろ!!」バキッ

 

炭治郎は一瞬の間に伊之助の懐に入ると腹に拳をめり込ませ、あばら骨を折った。

 

炭治郎「お前は鬼殺隊員じゃないのか!!」

 

善逸「骨、折ったぁ!!」

 

炭治郎「何故善逸が刀を抜かないかわからないか?隊員同士で徒に刀を抜くのは御法度だからだ!!それをお前は一方的に痛めつけていて楽しいのか?卑劣きわまりない!!」

 

伊之助「ガフッゴホッハハハ、グハハ!アハハハッそういうことかい悪かったな。じゃあ素手でやり合おう・・!!」

 

炭治郎「いや全くわかってない感じがする。まず・・隊員同士でやりあうのが駄目なんだ!素手だからいいとかじゃない!!」

 

善逸はタイマン勝負になっている二人を見て心の中で突っ込む。

 

善逸(うわぁぁアイツ・・なんつー動きだ。というか実は、炭治郎も御法度に触れるんじゃないか?折ってるし・・)

 

伊之助の身体能力に炭治郎は四足獣と戦っているような錯覚を起こす。

 

炭治郎(低く狙え!!相手よりもさらに低く!!)

 

 

しかし、伊之助の間接の柔らかさで顔を地面に叩きつけられ、出血してしまった。そしてそれと同時に伊之助に飛びかかるひとつの黒い影が。

 

ブロリー「でやああああ!!」ドカッ

 

伊之助「ガハッゴホッゴホッ」

 

影の正体はブロリーだった。炭治郎を怪我させられたことに怒ったのだ。そしてそのまま伊之助を蹴り飛ばす。

 

炭治郎「!ブロリーさん!」

 

ブロリー「・・貴様は炭治郎を負傷させた挙げ句禰豆子を殺そうとした・・これ以上やると言うなら俺が相手だ。」

 

伊之助「ハハハッハハハ!!そういやもう一体鬼がいたんだったな・・ちょうどいい。お前を始末してやる!」

 

伊之助はしまっていた刀を再び抜いて、ブロリーを斬りつけようとする。しかしブロリーは腕を組みながら余裕をもって伊之助の剣捌きを避けていく。

 

善逸(ブロリーさん・・なんてうごきだ。彼奴の剣が全く追いついてないぞ!)

 

てる子(やっぱり、お兄ちゃんかっこいい!)

 

伊之助とブロリーの勝負が始まってからブロリーは一度も反撃していない。その事に気づいた伊之助は刀を振り回しながら怒鳴った。

 

伊之助「逃げてねぇで反撃してきやがれ!!刀を抜かねぇ弱味噌が!!」

 

ブロリー「・・弱味噌だと?それは俺に言ってるのか?」

 

伊之助「テメェ以外に誰がいる!!かかってきやがれぇ!!反撃する意思を見せやがれ!!」ダッ

 

善逸(ニャメロン!!勝てる訳がない!!あの人は最終選別で鬼を全滅させた天才剣士なんだど!!)

 

ブロリー「クズがぁ・・血祭りにあげてやる!フンッ」ガッ

 

伊之助「ガッハァ!?」ドカッ

 

伊之助はブロリーにラリアットでぶっとばされ、木に叩きつけられる。それを見た炭治郎がブロリーを止めた。

 

炭治郎「ブロリーさんもう十分です!これ以上やってはいけません!俺は大丈夫ですからもうやめてください!」

 

ブロリー「炭治郎・・わかった。」

 

炭治郎に説得されたブロリーは追撃をやめた。しかし、それを見た伊之助は激怒した。

 

伊之助「おい!!勝手に勝負を終わらすんじゃねぇ!!俺はまだやれんだよ!!テメェはすっこんでやがれ!!」

 

炭治郎「駄目だ!!自分では気づいてないだけでお前の身体は悲鳴をあげてるんだぞ!!骨を痛めてるんだからやめておけ悪化するぞ!!」

 

伊之助「悪化上等!!今この刹那の愉悦に勝るもの無し!!」

 

炭治郎「将来のこともちゃんと考えろ!!」

 

伊之助「知るか!!」

 

尚も炭治郎に殴りかかって来る伊之助に、炭治郎は澤見の頭突きをする。

 

炭治郎「ちょっと、落ち着けぇ!!」ゴッシャ

 

善逸「うわああああ!!音!!頭骨割れてない!?」

 

炭治郎の頭突きを喰らった伊之助はダメージが大きく、後ろによろめく。そして猪の被り物が落ちて素顔があらわになった。

 

善逸「女!?ゑ!?顔・・!?」

 

ブロリー(こいつ、よく見ると俺と格好が似ているな。だが、サイヤ人ではなさそうだ。)

 

伊之助「何だコラ・・俺の顔に文句でもあんのか・・!?」

 

善逸(気持ち悪い奴だな・・むきむきしてるのに・・)

 

伊之助「俺の顔をじろじろと見てやがる!!」

 

善逸「べっ!?別に、見てないよ・・!」

 

伊之助にガンつけられた善逸は怯えて、てる子の後ろに隠れながら否定する。

 

てる子・正一・清・ブロリー「・・・・」

 

炭治郎「君の顔に文句はない!こぢんまりしていて色白でいいんじゃないかと思う!!」

 

伊之助「殺すぞテメェ!!かかって来い!!」

 

炭治郎「駄目だ!もうかかって行かない!」

 

伊之助「もう一度頭突いてみろ!!ほら!!」

 

炭治郎「もうしない!!君はちょっと座れ、大丈夫か!」

 

伊之助「おいでこっぱち!!俺の名を教えてやる!嘴平伊之助だ覚えておけ!!」

 

炭治郎「どういう字を書くんだ?」

 

伊之助「字!?じっ・・俺は読み書きができねぇんだよ!名前はふんどしに書いてあるけどな・・」ピタッ

 

そのとき急に伊之助の動きが止まる。そのことに対して善逸達は驚く。

 

善逸「!?どうした?」

 

正一「止まった・・」

 

ブロリー「・・なんなんだぁ?」

 

伊之助「・・・・」クラッ バターン ブクブク

 

急に後ろに倒れたかと思うと、白目を剥きながら泡を吹いて気絶した。炭治郎の頭突きが今になって響いたのだ。

 

善逸「うわっ倒れた!死んだ?死んだ?」

 

炭治郎「死んでない、多分脳震盪だ。俺が力一杯頭突きしたから・・」

 

善逸(えっ怖っ・・炭治郎額から血も出てないし、どんだけ頭硬いんだ・・猪は失神してるのに・・)

 

てる子「お兄ちゃんは頭大丈夫?」

炭治郎「うん!大丈夫だよ。」

 

てる子「すごーい!お兄ちゃんの頭触ってもいい?」

炭治郎「どうぞ。」

 

てる子「お兄ちゃんの頭硬ーい。」

 

炭治郎「そうかな?」

 

ブロリー「フフフ、頭突きをしても傷ひとつ付かないとはな、流石炭治郎と誉めてやりたいところだぁ!」

 

善逸(そしてブロリーさんはそんな炭治郎を誉めてるし・・)

 

その後、気絶している伊之助を地面に寝かせて炭治郎達は殺された屋敷の中の人を埋葬してあげていた。しばらくして伊之助が目を覚ます。

 

伊之助「・・・・うがああああ!!」ガバァ

善逸「うわぁぁ!起きたぁ!?」

 

伊之助「勝負ゥ!勝負ゥ!!」ドドドド

善逸「寝起きでこれだよ!一番苦手これ!」ドドドド

 

善逸は再びてる子の後ろに隠れた。伊之助は埋葬するために穴を掘っているブロリーと埋め終わって石を置いてあげる炭治郎の姿を見つけた。

 

伊之助「何してんだお前ら!?」

 

炭治郎「埋葬だよ。伊之助も手伝ってくれ。まだ屋敷の中に殺された人がいるんだ。」

 

伊之助「生き物の死骸なんて埋めてなんの意味がある!やらねぇぜ!手伝わねぇぜ!!そんなことより俺と戦え!!」

 

ブロリー(戦うことはこいつの本能なのか?)

 

善逸(うわ・・本当におかしいんだこいつ・・なんの意味があるって・・)

 

炭治郎「そうか・・傷が痛むからできないんだな?」

 

伊之助「・・・・は?」ピキッ

 

炭治郎「いや、いいんだ。痛みを我慢できる度合いは人それぞれだ。亡くなった人を外まで運んできて土を掘って埋葬するのは本当に大変だし、善逸とブロリーさんとこの子たちで頑張るから大丈夫だよ。伊之助は休んでいるといい。」ニコッ

 

清・正一(ずれてる・・)

 

ブロリー(炭治郎・・ちょっと違うぞ?その言い方だとこいつ、違う意味で捉えるぞ?)

 

伊之助「はあ゛ーーん!?舐めるんじゃねぇぞ!百人でも二百人でも埋めてやるよ!!俺が誰よりも埋めてやるわ!!」

 

ブロリー(やっぱリーです・・)

 

伊之助はそういうと、"屋敷の中に入って死体を持ってきて穴を掘っては埋め、屋敷の中に入って死体を持ってきて穴を掘っては埋め"を繰り返し、気がつけば埋葬は全て終わっていた。伊之助を除く六人が手を合わせて拝んでいる中、伊之助はただ一人、木に頭突きを喰らわしていた。

 

伊之助「うがああああ!!」ドムッ

 

てる子「何やってるの?あの人?」

清「・・見ちゃ駄目だ。」

正一「うん・・」

 

そのとき、炭治郎の鎹鴉が伝令を伝えるために飛んできた。

 

鴉鴉「カアアッ!山ヲ降リロ!山ヲ降リロ!カアアッ!」

 

正一「鴉が喋ってる!?」

清「・・もう何も考えるな。」

てる子「うん・・」

 

鎹鴉「サアツイテ来イ!!コノ私二!!カアアッ!」

 

鎹鴉の伝令により山を降りることになった炭治郎たち。しばらく道なりに進んでいくと、分かれ道に出た。てる子達とはここでお別れである。しかし、善逸は正一にすがりついて駄々をこね始めた。

 

善逸「駄目だ!駄目だ駄目だ駄目だ!正一君は行っちゃ駄目だぁ正一君は強いんだ!!正一君に俺を守ってもらうんだ!」

 

炭治郎「正一君が嫌がっているだろう!!」

 

善逸「俺を置いていかないでー!」

 

炭治郎「いい加減にしろ!!」ドン!

 

正一を連れていくとごねてあまりにもしつこい善逸に炭治郎は手刀を喰らわせて気絶させた。それから鴉が藤の花の香り袋を吐き出した。鬼除けになるので今後稀血の清は持ち歩けとのことだった。

 

清「本当にありがとうございました。家までは自分達で帰れます。」

 

清は炭治郎達にお礼を言い、てる子は頭を下げていた。しばらく三人は炭治郎達の姿が見えなくなるまで見ていた。

 

てる子「・・大きくなったら私、ずっと守ってくれたブロリーお兄ちゃんのお嫁さんになる!」

 

清・正一「えっ・・ええーー!?」

 

てる子のとんでも発言に、兄二人は混乱して騒がしく帰っていくのだった。

一方、三兄妹と別れた炭治郎達は、鴉についていきながら山を下っていた。その最中、伊之助は炭治郎にずっと突っかかっており、ブロリーは気絶した善逸を背負っていた。

 

伊之助「勝負ゥ!!俺は必ず隙を見てお前達に勝つぞ!!」

 

炭治郎「俺はお前じゃない!竈門炭治郎だ!!」

 

伊之助「かまぼこ権八郎!!お前に勝つ!!」

 

炭治郎「誰なんだそれは!!」

伊之助「お前だ!!」

炭治郎「違う人だ!!」

 

善逸「だああぁぁー!!うるっさいわ!!」

ブロリー「へぁっ!?」

 

善逸は二人のうるささに目を覚まして叫んび、ブロリーはそれに驚いたのだ。そしてそのまま二人も伊之助に紹介した。

 

善逸「俺は我妻善逸だ!」

ブロリー「・・ブロリーです。」

 

伊之助「稲妻紋逸にブロッコリーか・・特にブロッコリー!!俺はお前に勝つ!!」

 

炭治郎「ブロッコリーじゃない!!ブロリーさんだ!!」

伊之助「黙ってろ紋次郎!!」

炭治郎「炭治郎だ!!」

 

善逸「だああからうるっさいわ!!」

 

鴉が三人を連れていったのは藤の花の家紋の家だった。そのとき再び炭治郎の鴉が叫ぶ。

 

鎹鴉「カアアーーッ休息!!休息!!負傷二ツキ完治スルマデ休息セヨ!!」

 

炭治郎「えっ?休んでいいのか?俺今回怪我したまま鬼と戦ったけど・・」

鎹鴉「ケケケッ」

炭治郎「ケケケッて・・」

 

家紋の家から家主である老婆のひさが門から出て来て炭治郎達を招き入れた。

 

ひさ「はい・・」

 

炭治郎「あっ夜分に申し訳ありません。」

善逸「お化けっ・・お化けだ!」

炭治郎「こらっ!!」

 

伊之助「何だテメェは!?弱っちそうだな・・」

炭治郎「こらっ!!」

 

ひさ「鬼狩り様でございますね。どうぞ・・」

 

ひさは動きが異様に速く、善逸が妖怪扱いして炭治郎にしばかれた。

 

ひさ「お食事でございます・・」

 

善逸「妖怪だよ炭治郎!あの婆さん妖怪だ!速いもん異様に!妖怪婆・・」

炭治郎「!」ごちん

 

そして四人は食事を取り始めたが、野生児の伊之助は食べ方が異常で、箸を使わず全て手掴みで食べていた。

 

伊之助「ガツガツガツ」

善逸「箸使えよ・・」

 

伊之助「ガツガツ」ひょいパクッ

炭治郎・善逸「!?」

 

しかも炭治郎を挑発するために彼のおかずを取ったりしたが、普段から自分の食事を兄妹に分け与えていた炭治郎には効果がなかった。

 

炭治郎「そんなにお腹が空いているならこれも食べていいぞ。」ニコッ

 

伊之助「ムキーー!!違う!!」

 

善逸(こいつ完全に箱のことを忘れてるな・・ふざけんなよこの野郎!そんなすぐにどうでもよくなるならなんで俺の事ボカスカボカスカ叩きまくったんだこの野郎!!馬鹿!!まつ毛!!)

 

しかしそのとき善逸はあることに気づく。

 

善逸「!!」(待てよまさか、こいつがこんなに食べ方が汚いならブロリーさんはどうなんだ!?)ギギギギギ

 

善逸は伊之助の食べ方が汚いなら、同じ野生児であり、なおかつ最終選別での大暴れしたブロリーはもっと食べ方が汚いと思い、恐る恐るブロリーの方を向く、がしかし。

 

ブロリー「モグモグ」カチャッフキフキ

善逸「ってゑゑゑええぇぇぇ!?お上品!?」

 

ブロリーの食べ方はとても綺麗で礼儀正しかったのだ。それも善逸や炭治郎よりも優雅で綺麗なのだ。その事に善逸は驚きのあまり腰を抜かしたのだった。

 

ブロリー「善逸・・なんだぁ?」

 

善逸「い!?いや、上品だなと思いまして・・どこで教わったんですかマナーを?」

 

ブロリー「ガキの頃親父に叩き込まれた。サイヤ人とはいえ最低限のマナーは身に付けろとずっと言われてきた。そして気づいたら飯は行儀よく食うことが俺の中では当たり前になっていただけだ。」

 

炭治郎「なるほどだからそんなに上品なんですね!」

 

そして食事を終えた四人は寝床へと向かった。四人の行き着く先の部屋に再びひさがいた。

 

ひさ「お布団でございます。」

 

善逸「出たぁ!妖怪婆・・」

炭治郎「 」ごちん

 

善逸がまたひさを妖怪扱いして再び炭治郎にしばかれた。その隙をついてすぐに伊之助が一つの布団に飛び込む。

 

伊之助「早い者勝ち!俺がこっちだ!」

 

炭治郎「いいぞ。好きなところで寝ろ。」ニコッ

 

食事の時に炭治郎を怒らせられなかった伊之助は今度は寝床で挑発を試みるがこれも効果はなく、八つ当たりで善逸に枕を投げつけた。それからひさは医者をも呼んでくれた。診察した結果、ブロリー以外全員重傷だとわかった。そして四人は布団に入り、就寝の準備をしていた。

 

伊之助「肋よりコブが痛え・・」

炭治郎「ごめん。」

 

善逸「俺も痛かったんだぞ。ボカスカボカスカ叩きやがって。謝れ。」

伊之助「断る。」

善逸「謝れよ!」

伊之助「断る。」

炭治郎「謝るんだ。」

 

炭治郎は謝罪したが、伊之助は善逸に謝罪していないのだ。そして何かを思い出したように善逸は炭治郎とブロリーに聞いた。

 

善逸「・・炭治郎、誰も聞かないから俺が聞くけどさ。鬼を連れているのはどういうことなんだ?」

 

ブロリー「鬼・・禰豆子のことかぁ?炭治郎にもしっかりとした事情がある。」

 

炭治郎「!!善逸・・わかっててかばってくれたんだな・・善逸は本当にいい奴だな。ありがとう。」

 

善逸「おまっ!そんな誉めても仕方ねぇぞうふふっ。」

 

炭治郎「俺は鼻が利くんだ。最初からわかってたよ。善逸が優しいのも強いのも。」

 

善逸「いや、強くはねぇよふざけんなよ。お前が正一君を連れてくの邪魔したのは許してねぇぞ。」

 

炭治郎「・・・・」アセアセ

 

善逸「・・・・」ジトー

 

善逸が正一を連れていくのを邪魔した炭治郎を恨みジト目で見ていると、禰豆子の入った箱がカタカタと音がなった。禰豆子が出てこようとしてるのだ。

 

善逸「うわっうわっえっ?出てこようとしてる!?出てこようとしてる!?」

炭治郎「大丈夫だ。」

 

善逸「何が大丈夫なの!?ねぇ!?ねぇ!?」

炭治郎「しーっ夜中なんだぞ善逸・・!」

 

伊之助(なんで挑発に乗らねぇんだ?飯とられたのに・・何回かアイツ怒ってたの何だったっけ?忘れた・・)

 

ブロリー(禰豆子が出てこようとしてるのか?そういえばもう日は沈んでいたな。)

 

箱がギイイと音がなり、ふたがゆっくりと開いていった。

 

善逸「キャーーッ!鍵かかってないんかい!!」

 

炭治郎「しーっ。」

 

善逸「まままま守って!!俺を守って!!」

 

善逸は急いでブロリーの後ろに隠れ、ガタガタと震えていた。そしてふたが完全に開き、中から禰豆子が顔を出した。

 

禰豆子「ム。」ひょこ

 

善逸「ヘ?」

 

炭治郎「禰豆子。」

 

炭治郎に名前を呼ばれると、禰豆子はゆっくりと身体の大きさを元に戻していった。

 

禰豆子「んー。」キラキラ✨

 

善逸「!!」

 

禰豆子はブロリーに気がつくと、ひょこひょことブロリーの前まで歩いてくると抱きついた。ブロリーは禰豆子の頭を優しく撫でてあげ、禰豆子も目をトロンとさせてとても気持ち良さそうにしていた。

 

ブロリー「ハハハハハハ!!禰豆子カワイイ!!」

 

禰豆子「!!・・ムー♪」

 

炭治郎「善逸。禰豆子は俺の・・「炭治郎」?」

 

善逸「お前・・いいご身分だなぁ・・!!!」

 

炭治郎「えっ?」

 

善逸「こんな可愛い女の子連れていたのか・・こんな可愛い女の子連れて毎日毎日、うきうきうきうき旅してたんだな・・」

 

炭治郎「善逸!ちがっ!」

 

善逸「俺の流した血を返せよ!!!俺は!!俺はな!!お前が毎日アハハのウフフで女の子といちゃつくために頑張った訳じゃない!!そんなことのために俺は変な猪に殴られ蹴られたのか!?」

 

炭治郎「善逸落ち着け!どうしたんだ急に・・」

 

ブロリー「どうしたんだぁ?なんで怒っているんだぁ?」

 

善逸は自身の日輪刀を抜き、炭治郎に矛先を向けた。

 

善逸「鬼殺隊はなぁ!!お遊び気分で入るところじゃねぇ!!お前のような奴は粛清だよ即粛清!!そういや俺の結婚を邪魔した罪と、正一君を帰した罪もあったな・・即粛清!!鬼殺隊をなめるんじゃねぇぇぇ!!」ジャキン!

 

炭治郎「うわぁぁ!善逸!やめろぉー!」

 

ガシッ!

善逸「!!」

炭治郎「!ブロリーさん・・!」

 

善逸の日輪刀は第三者によって止められた。日輪刀を抑える腕がある方を見るとブロリーがいた。そう、ブロリーが抑えていたのだ。

 

ブロリー「善逸・・貴様が何を勘違いしているかは知らんが、炭治郎に怪我をさせるようなら俺も容赦はしないぞ?」

 

善逸「ブロリーさん!当たり前でしょう!可愛い女の子の彼女を連れていちゃつくためにお遊び気分で鬼殺隊にいるような奴は粛清した方がいいんですよ!」

 

ブロリー「貴様・・禰豆子が炭治郎の恋人だと思っていたのか?違う・・炭治郎と禰豆子は兄妹だ。」

 

善逸「・・ヘ?き・・兄妹?ほっ本当なのか炭治郎!」

 

炭治郎「そうだよ!それを説明する前に善逸が斬りかかって来るからできなかったんだよ!」

 

善逸「えっと・・ごめんな炭治郎・・」

 

ブロリー「フハハハ!誤解が解けたようでよかったYO。」

 

ブロリーが善逸の暴走を止めたことで何とか和解できた二人。その日は鼓屋敷での戦いの事もあり、布団に潜った瞬間に爆睡するのだった。

次の日の夜。禰豆子は日が暮れた事もあり、箱の中から出てきた。

 

禰豆子「ん。」

 

善逸「禰豆子ちゃ~ん!」

 

善逸の声が聞こえそっちに顔を向けると、そこにはデレデレ顔でうねうねしている善逸がいた。

 

善逸「うふ!うふふ!禰豆子ちゃ~ん!」

 

禰豆子「!」

 

禰豆子はびっくりして善逸から逃げるが、善逸はデレデレ顔のまま禰豆子を追いかけた。部屋には幸いにも炭治郎とブロリーがいたので、禰豆子はブロリーの後ろに隠れた。そして困り顔で様子をうかがうように善逸を見ている。

 

ブロリー「禰豆子、大丈夫ですか?」

禰豆子「ムー。」

 

更にブロリーと禰豆子の前に炭治郎が割って入り、二人を庇う。

 

炭治郎「善逸!いい加減にしないか。」

 

善逸「・・た、ん、じ、ろ、う。うふふっ。」

 

炭治郎「うわぁぁ!善逸頼むからくっついてこないでくれー!」

 

善逸「そんなこと言うなよ炭治郎~!」

 

しかし、善逸はデレデレ顔をやめず、禰豆子と炭治郎は恐怖し逃げ出すが、善逸はまたも二人を追いかけた。更にその数分後。

 

伊之助「うがああああ!!」スパーン!

 

炭治郎・善逸「!!」

 

伊之助「うがああああ!!」ドム!

 

伊之助は炭治郎に頭突きしたのだ。突然の事に動揺して動けなかった炭治郎は諸に背中に喰らった。

 

炭治郎「なっ、なんだなんだ!?」

伊之助「がああああ!!」

 

伊之助は聞く耳持たずに暴走し、炭治郎に追撃を喰らわそうと追い回す。善逸もデレデレ顔のまま炭治郎を追い回した。

 

炭治郎「待って待って!!止まってくれー伊之助!!」

 

三人が部屋のなかで走り回って暴れているため禰豆子は追いかけられることがなくなり、ブロリーの後ろからひょっこりと出てきてブロリーに頭を差し出した。前日にブロリーに頭を撫でてもらったのがとても気持ち良く、この日も撫でてもらおうとしているのだ。

 

禰豆子「んー。」

 

ブロリー「また撫でてほしいのか?フハハハハ!禰豆子は甘えん坊です。」ナデナデ

禰豆子「ムー///♪」トロン

 

暴走している三人は、しばらくしてようやく気が治まったのか。布団に入るとすぐに眠ってしまった。そしてブロリーに撫でてもらって満足した禰豆子も、箱の中に戻りそこで眠った。ブロリーもそんな四人を見ると、自身も眠りにつくのだった。

更に数日後、炭治郎、善逸、伊之助の三人の骨折が癒えた頃、炭治郎の鎹鴉により緊急の指令が来たのだ。

 

鎹鴉「北北東!北北東!次ノ場所ハ北北東!四人ハ那田蜘蛛山二行ケ!那田蜘蛛山二行ケ!」

 

鎹鴉からの指令を受けた四人は、早急に那田蜘蛛山に向かう為、藤の花の家紋の家の玄関先まで来ていた。

 

炭治郎「では行きます!お世話になりました。」ペコリ

 

ひさ「では切り火を・・」カッカッ

 

炭治郎「ありがとうございます!」

 

伊之助「何すんだババァ!!」

 

切り火の意味を知らない伊之助はひさに殴りかかろうとしたが、善逸によって止められた。

 

善逸「馬鹿じゃないの!?切り火だよ!お清めしてくれてんの!危険な仕事行くから!!」

 

ブロリー「炭治郎、切り火ってなんだぁ?」

 

炭治郎「そうですね。相手に向かって行うお清めの儀式です。お婆さんは俺たちの無事を祈ってくれてるんですよ。」

 

ブロリー「そうなのか。おい、一晩世話になったのとお清めをしてくれたことに礼を言うぞ。」

 

ひさ「どのようなときでも誇り高く生きてくださいませ。ご武運を・・」ペコリ

 

四人は藤の花の家紋の家を後にして那田蜘蛛山に進路を取った。そしてその夜に炭治郎達は目的地である那田蜘蛛山の麓に到着するのだった。




今回は戦闘はありません。四人の休憩という話になりました。これからもこの小説をよろしくお願いします。


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入山!那田蜘蛛山!操られた隊員をくぐり抜け!

第九話です。

ふおお!?ガシッヒューン!!ドゴォ!!←岩盤の音

ブロリー「主・・何で投稿遅れたんだぁ?」

主「おおお前を活躍させるために・・ネタの準備だぁ!」

ブロリー「携帯でゲームをやりながらかぁ?」ガシッ

主「!!」

ブロリー「主!遺言はあるか?」
主「お助けください!!」
ブロリー「断る。うおおおお!!」ボコボコメキメキ←主の入ったポッドを潰す音

ブロリー「うおおおおらああああ!!」ビシュ!ヒューン!

主「」

ブロリー「皆さん、待たせてしまってすみません。では本編どうぞ。」


那田蜘蛛山の麓。ここには鎹鴉により緊急指令が伝えられた炭治郎、善逸、伊之助、ブロリーの四人が来ていた。そして中に入ろうとしたときに善逸が三人に声をかける。

 

善逸「待ってくれ!!ちょっと待ってくれないか!怖いんだ!!目的地が近づいてきてとても怖い!!」バーン

 

善逸の怖がりが発動してしまい、地面に座り込んでいるのだ。それを見た伊之助にドン引きされた。

 

伊之助「なに座ってんだこいつ、気持ち悪い奴だな・・」

善逸「お前に言われたくねーよ猪頭!!」

 

炭治郎(!恐怖の匂い!)

 

ブロリー「炭治郎、前になにかいるぞ。」

炭治郎「えっ?」

 

ブロリーに言われた方を向くと、そこにはひとりの鬼殺隊員が地面に寝そべっていた。炭治郎が理由を聞こうと駆け出して伊之助とブロリーがあとを追う。

 

「たす・・助けて・・」

 

炭治郎「隊服を着てる!!鬼殺隊員だ何かあったんだ!大丈夫か!どうした!!」

 

そのとき何かに引っ張られるように宙を舞い、山の中腹へと引きずり込まれていった。

 

「アアアア!繋がっていた・・俺にも!!たすけてくれぇ!!」

炭治郎「・・・・!!」

伊之助「!?」

ブロリー「へぁっ!?」

 

鬼殺隊員が引きずり込まれていき、ヤバい雰囲気を感じた炭治郎と善逸と伊之助、重い空気を絶ちきったのは炭治郎だった。

 

炭治郎「・・・・俺は行く。」

伊之助「俺が先に行く!!お前はガクガク震えながら後ろをついてきな!!腹が減るぜ!!」

炭治郎「伊之助・・」

 

善逸「腕が鳴るだろ・・」プルプル

 

善逸は震えながらも的確に突っ込みを入れたのだが、ブロリーが善逸の前に現れる。

 

ガシッ!

 

善逸「!!」

ブロリー「善逸も俺たちと一緒に行きますYO。さぁ来い!!」

善逸「イヤアアア!!怖い!!怖い!!行きたくない!!離してください!!お助けください!!」

ブロリー「出来ぬぅ!!」

 

ブロリーが善逸の腕を掴み強制的に連行させたのだ。四人は山の中に入ったものの、至るところに蜘蛛の巣があり、先頭を行く伊之助は悉く引っ掛かり苛立っていた。

 

伊之助「チッ蜘蛛の巣だらけじゃねーか!邪魔くせぇ!!」

 

炭治郎「そうだな・・伊之助、善逸、ブロリーさん。」

 

伊之助「何の用だ!!」ババッ

善逸「たっ炭治郎・・なんだ?」ガタガタ

ブロリー「んん?」

 

炭治郎「ありがとう。全員来てくれてとても心強いよ。山の中からきた捩れたような・・禍々しい匂いに俺は少し体がすくんだんだ。ありがとう。」

 

伊之助「・・・・」ほわほわ

善逸「俺は・・ブロリーさんに・・無理矢理・・連れてこられただけ・・だけどな・・」ガタガタ

ブロリー「フハハハハハハハ!!俺はいつでも炭治郎のそばでムシケラどもを破壊し尽くすだけだぁ!!」

 

炭治郎のお礼にそれぞれ反応を示した矢先、炭治郎が尻餅を着いている隊員を見つけた。村田という名前の剣士である。近寄り、状況を聞こうとする。しかし相当怯えているのか、炭治郎達の気配を感じるとすぐさま振り返り、刀に手をやった。炭治郎は安心させるために、自分の名前と階級を告げた。ブロリーもそれに便乗する。

 

炭治郎「応援に来ました。階級・癸、竈門炭治郎です。」

 

ブロリー「炭治郎と同じ階級のブロリーです。」

 

村田「癸・・癸・・!?なんで柱じゃないんだ・・!!癸なんて何人来ても同じだ!意味がない!!」

 

しかし、四人の階級が癸であるとわかった瞬間、炭治郎達の応援を無意味だと言った。それを聞いた伊之助は村田の顔を殴った。

 

炭治郎「伊之助!!」

伊之助「うるせぇ!意味のあるなしで言ったらお前の存在自体意味がねぇんだよ!さっさと状況を説明しやがれ弱味噌が!!」

 

村田「俺の方が先輩なのに!」

 

村田の方が先輩であるはずなのに髪を掴んでずけずけとものを言うのは、流石伊之助と言ったところだろうか。そして伊之助に催促された村田は説明した。

 

村田「かっ鴉から・・!!指令が入って十人の隊員がここに来た!山に入ってしばらくしたら、隊員が・・隊員同士で・・斬り合いになって・・!!」

 

説明してる村田と炭治郎達の視線の先には口から血を流しながらゆらりと立ち上がる別の隊員の姿があった。

―――その頃鬼殺隊の本部の屋敷では、縁側に座る一人の男性の膝に息を切らした鴉が状況を報告していた。

 

「よく頑張って戻ってきたね。私の剣士たちは殆どやられてしまったのか。そこには十二鬼月がいるかもしれない。柱を行かせなくてはならないようだ。義勇、しのぶ。」

 

義勇・しのぶ「御意。」

 

返事をしたのは、かつてブロリーが炭治郎と禰豆子と遭遇する前に、禰豆子を人を襲わない鬼と判断した男性、冨岡義勇と蝶の羽の模様を模した羽織と髪飾りを着けた女性、胡蝶しのぶである。

 

しのぶ「人も鬼もみんな仲良くすればいいのに。冨岡さんもそう思いません?」

 

義勇「無理な話だ。鬼が人を喰らう限りは。」

 

「あっそうそう。今の那田蜘蛛山には、鬼の気配がするサイヤ人の私の剣士がいるから、その人は攻撃しないようにね。」

 

不意に男性が縁側に座りながら追加の指示を出した。義勇としのぶは頭にクエスチョンマーク『?』を浮かべながら首を傾げ、那田蜘蛛山へ向かった。

―――場所は戻り、那田蜘蛛山。炭治郎達は襲ってくる隊員の攻撃を防いでいた。善逸は怯えて震えたままだが、その前を三人が引き付けていた。

 

伊之助「アハハハハ!!こいつらみんな馬鹿だぜ!!隊員同士でやり合うのが御法度だって知らねぇんだ!」

 

炭治郎「いや違う!!明らかに動きがおかしい!何かに操られている!!」

 

伊之助「よしじゃあぶった斬ってやるぜ!!」

 

炭治郎「駄目だ!!生きてる!!まだ生きてる人も混じってる!それに仲間の亡骸を傷つけるわけにはいかない!!」

 

伊之助「否定ばっかするんじゃねぇ!!」ドム

 

炭治郎に否定されまくる伊之助は怒り、炭治郎に頭突きをする。そのときブロリーが隊員の背中に何かの気配を感じ、手刀で背後をはらうと、ブチブチと音がして隊員が力なく地面に倒れる。

 

ブロリー「炭治郎!!こいつらの背中になにかある!!それを斬っていけ!!」

 

炭治郎「!ブロリーさん!はい!わかりました!」

 

炭治郎はブロリーの言うとおりに動きがおかしい隊員の背後に刀を振るうと、さっきと同じようにブチブチと音がなり、隊員が地面に倒れこむ。それを見た炭治郎は操ってる何かを見破った。

 

炭治郎「糸だ!!糸で操られてる!!糸を斬れ!!」

 

伊之助「お前より俺が先に気づいてたね!!」

 

炭治郎(敵はどこだ?操ってる鬼の位置!!)

 

ブロリー「向こうからクズの気を感じる、どこのどいつだ!!それと、上からも気を感じるな。」

炭治郎「!!」

伊之助「!!」

 

善逸「確かに・・ブロリーさんが向いている方・・から・・鬼の音が・・する・・!」プルプル

 

ブロリーが顔を向けた方向には、隊員達を糸で操ってる女性の鬼がいた。この鬼は那田蜘蛛山に住んでいる蜘蛛の糸を使う母親の役の鬼である。母蜘蛛鬼は沢山の糸を手で操りながら、一人言を言った。

 

母蜘蛛鬼「ウフフ。ウフフフフ。さぁ私の可愛い人形たち、手足がもげるまで躍り狂ってね。」キリキリキリキリ

 

そしてブロリーの言葉に反応した二人は、同時に上を見上げる。するとそこには、子供の姿をした鬼の少年が張り巡らした蜘蛛の糸の上に立っていた。この少年は"累"という名をもち鬼舞辻無惨の配下、十二鬼月の一人である。累は炭治郎達を見て邪魔臭そうに言った。

 

善逸「キャアアア!!出たぁー!!」

 

累「僕たち家族の静かな暮らしを邪魔するな。お前らなんてすぐに、母さんが殺すから。」

 

それだけ言うと、累はその場を去っていった。伊之助が斬りつけようと、隊員の背中を踏み台にして斬りかかるが、後少しのところで届かず落下した。受け身の取り方を知らない伊之助はそのまま地面に叩きつけられた。

 

ブロリー「あいつは去っていったが、向こうのクズはまだいるようだ・・だが襲ってくる気はないみたいだな。だったら、俺の方から潰しに行くぞ!炭治郎!伊之助!善逸!ついてこい!」

 

炭治郎「ブロリーさん!駄目です!それだとえーっと・・「村田だ!!」村田さんが・・!」

 

村田「大丈夫だ!ここは俺に任せて君達も先に行け!!」

炭治郎「えっ・・」

 

伊之助「小便漏らしが何言ってんだ!」

 

村田「誰が漏らしたこのクソ猪!!テメェに話しかけてねぇわ黙っとけ!!情けない姿を見せたが、俺も鬼殺隊の剣士だ!!ここで操られているやつらの動きは単純だ!糸を斬ればいい!鬼の近くにはもっと強力に操られている者もいるはず!四人で先に行ってくれ!!」

 

炭治郎「・・わかりました!!感謝します!!」

 

ブロリー「フフフ!一人で沢山を相手にするとは、流石村田と誉めてやりたいところだぁ!炭治郎!行くぞ!」

炭治郎「はい!ブロリーさん!」

 

炭治郎は村田に殴りかかろうとする伊之助を、ブロリーは動こうとしない善逸を無理矢理引っ張り、山の中を駆け抜けた。

 

伊之助「まずテメェを一発殴ってからな!!誰がクソ猪だ!!戻ってきたら絶対殴るからな!」

 

善逸「イヤアアア!!また出る!!また出るから!!俺今度こそ死ぬ!!行かない!!行きたくない!!お助けください!!」

ブロリー「出来ぬぅ!!」

 

しばらく走っていくと、四人は再び何かを感じてそっちを見た。すると

 

炭治郎「!!」

 

「駄目・・こっちにこないで。」

 

鬼の糸によって操られている女の剣士がいた。彼女は意識があり、片腕に人間の首を刺した日輪刀、もう片腕にはすでに亡骸になった剣士の髪を鷲掴みにしながら炭治郎達に自分の方に来ないように泣きながら懇願する。

 

「階級が上の人を連れてきて!!そうじゃないとみんな殺してしまう!!お願い・・お願い!!」

 

そしてその剣士達を操っている元凶の母蜘蛛鬼は岩に座り、手の指先から出ている糸で操っていた。

 

母蜘蛛鬼「ウフフ。私に近づく程糸は太く強くなり、お人形も強くなるのよ。」キリキリ

 

累「母さん。」

 

母蜘蛛鬼「!!」ガタガタ

 

そこに累がやって来た。すると母蜘蛛鬼はガタガタと震えていた、怯えているのだ。

 

母蜘蛛鬼「累・・」ガタガタ

 

累「勝てるよね?ちょっと時間がかかりすぎじゃない?」

 

母蜘蛛鬼「・・・・」ガタガタ

 

累「早くしないと、父さんに言いつけるからね。」

 

『父さん』累がその言葉を口にした瞬間、母蜘蛛鬼の震えが更に大きくなり取り乱しながら累に懇願した。

 

母蜘蛛鬼「!!大丈夫よ!!母さんはやれるわ!!必ず貴方を守るから!!父さんはやめて!!父さんはー…!!」ガクガクブルブル

 

累「だったら早くして。」

 

累は母蜘蛛鬼が震えているのは無視して淡々と早く始末するように促し、姿を消した。取り残された母蜘蛛鬼は息が荒く、冷や汗を大量にかいていた。そして切羽詰まった表情で糸を動かし、隊員を再び操り始める。

 

母蜘蛛鬼「はぁ、はぁ、ううう!!死ね!!死ね!!さっさと死ね!!でないと私がひどい目にあう・・・・!!」

 

母蜘蛛鬼の操る糸は女の剣士にも影響し、本人の意思に関係なく体が勝手に動かされ、日輪刀を振り回し始めた。

 

「逃げてぇ!!」キリキリ

 

彼女の本来の身体能力を上回る動きで炭治郎達に襲いかかってきた。鬼に無理矢理動かされているからである。動きが全く違うのだ。

 

炭治郎(速い!!)

 

「操られてるから・・動きが全然違うのよ・・!私達、こんなに強くなかった・・!」キリキリ

 

彼女の動きは炭治郎を最初に切り捨てようとしていた。しかし、ブロリーは全く動かないため、彼女の動きは彼を標的にした。しかし

 

「駄目!!逃げてぇ!!」キリキリ

 

ブロリー「・・逃げろだと?それがどうした?」

「・・え?」

 

ブロリー「この俺が怖じ気づいて逃げ出すと思っていたのか?うおおおお!!」ゴオオオオ

 

なんとブロリーは避けるどころか振り回している彼女に真正面から突っ込んでいったのだ。

 

「アアアッ・・!!」ビュン!

ガキーン!!

 

「!!」

ブロリー「フフフ!」ブチブチ

 

ブロリーは彼女の日輪刀を避けずに正面から喰らうことで、刀を折って動きを止めたのだ。それだけではなくすぐに彼女を繋いでいる糸を斬り、体の自由を取り戻させる。だが、糸で無理矢理動かされていたため、全身の骨が折れていたのだ。それでいて、とても一人で動ける様子ではなかった。

 

ブロリー「・・・・」ポワワワワワ

 

ブロリーは掌を向けて、そこから緑がかった金色のオーラが彼女を包み込む。すると、全身の折れた骨や傷がみるみるうちに回復していった。

 

「・・!傷が・・!」

ブロリー「俺の気を分けて傷を治した。お前の日輪刀は折ってしまった、済まないな・・お前もう戦う武器が無いならすぐにここから離れろ。」

「!・・ありがとう!」

 

女の剣士はブロリーに礼を言うと、残りの軽傷で済んでいる隊員達を折れた日輪刀の柄の部分で糸を斬っていき、数人で山を降りていった。炭治郎はブロリーの方を見て驚いていたが、自身に向かってくる重傷の隊員達が目の前に迫っており、すぐに現実に引き戻された。

 

炭治郎(ブロリーさんは、やっぱりすごい!だけど今はこっちに集中だ!)

 

重傷の隊員が操られ、炭治郎達に斬りかかってくるなか、隊員は炭治郎に悲願した。

 

「こ・・殺してくれ・・手足も・・骨が・・内蔵に刺さって・・るんだ・・動かされると・・激痛で・・耐えられない・・どのみち・・もう死ぬ・・」

炭治郎「・・!!」

「助けてくれ・・止めを・・刺してくれ・・!!」

 

隊員が口にしたのは炭治郎に止めを刺すように催促した願いだった。当然、心優しい少年である炭治郎にそんなことはできない。しかし、伊之助は言葉通り隊員に斬りかかろうとしていた。

 

伊之助「よしわかったぁ!!」

炭治郎「待ってくれ!!なんとか助ける方法を・・」

伊之助「うるせぇえぇ!!お前うるせぇえぇ!!本人が殺せって言ってんだろうがよ!!こいつら早えからモタモタしてるとこっちがやられるぞ!!」

炭治郎「考えるから待ってくれ!!」

 

そして何かをひらめいた炭治郎は走りだし、操られている隊員は追撃するために追いかけさせられる。それを見た伊之助は怒り、炭治郎に怒鳴った。

 

炭治郎(よし、ついて来る!!)

伊之助「テメっ・・なーにをグルグルと逃げ回ってんだぁ!!ふざけんじゃねぇ!!」

 

炭治郎はある地点に止まると、振り返ってから隊員を鷲掴みにすると、呼吸を使って木の上に放り投げたのだ。うまく糸が絡まり、隊員が宙吊りになった。

 

炭治郎(よし!!うまく絡まった!!)

 

伊之助「な・・なんじゃああそれぇぇ!!俺もやりてぇぇ!!」

 

炭治郎の動作を一部始終見ていた伊之助とブロリーは驚き、伊之助は同じ事をするために他の隊員を引き寄せに行った。ブロリーは炭治郎の作戦を誉めていた。

 

ブロリー「フハハハハハ!!木に絡めて傷つけずに動きを止めるとはな!!炭治郎、化け物?いや、天才か!?」

 

炭治郎「ありがとうございます!でもまだブロリーさんには及びません。」

 

伊之助「ウハハハハ!!サーッどらぁ!!イヤーッハァー!!」

 

伊之助は木に絡めることに成功して雄叫びと歓喜の笑い声をあげると炭治郎に振り返り、自慢気に言った。

 

伊之助「見たかよ!!お前にできることは俺にもできるんだぜ!!」

 

しかし、炭治郎は別の隊員の相手をしていたため、伊之助の動作を見ることができなかった。

 

炭治郎「すまない!!ちょっと見てなかった!!」

伊之助「なァーにィー!!」

炭治郎「状況が状況だから!!」

 

見てなかったことを言われて怒った伊之助はもう一度同じ事をするので見るように炭治郎に忠告する。

 

伊之助「よしあと一人!俺がもう一回やるからちゃんと見とけ!!」

 

炭治郎「わかったそれでいい!!とにかく乱暴するな・・」

 

ブロリー「デヤァッ!!」ガシッブン!

炭治郎「!!」

 

ブロリーは炭治郎達とは違い、刀を避けずに強引に操られている隊員の顔面を掴むと、そのまま片手で木の上に放り投げた。

 

ブロリー「炭治郎、こんな感じでいいのか?」

炭治郎「そうです!上手です!そのような感じでお願いします!」

ブロリー「はい・・」

 

母蜘蛛鬼は炭治郎達により逃がされたり、木に絡められて操ることができなくなったことを知って自暴自棄なった。

 

母蜘蛛鬼「私の人形達が・・うまく操れなく・・もう脆い人間の人形は必要ないわ!!役立たず!!あの人形を出すしかないわね・・!!」

 

母蜘蛛鬼が無理矢理糸を動かすと、操られていた重傷の隊員達の首が勢いよくあらぬ方向へと曲げられ、バキッボキッと骨が折れる音がなった。その音はとても禍々しく、今操られていた隊員全員が一瞬で命が奪われたことが明らかだった。

 

善逸「!!」

伊之助「あーっ!!畜生!!みんな殺られたじゃねーかよ・・」

炭治郎「・・・・」ゴゴゴゴゴ

 

炭治郎の放った殺気は背後からでも気配がビシビシと伝わり、伊之助は言葉を失った。

 

炭治郎「行こう。」

伊之助「・・そうだな。」

ブロリー「はい・・」

善逸「うん・・」(えっ何・・炭治郎怖っ・・)

 

四人は母蜘蛛鬼のいる方向へと駆け出していった。しばらく進むと、二体の鬼の気配を感じた。母蜘蛛鬼とその十八番の人形である。

 

伊之助「こっちだ!!かなり近づいてるぜぇ!!」

 

炭治郎(風向きが変わって鼻も利くようになってきたぞ、匂いはあと二つ・・)

 

ブロリー(クズの気が強くなってきている、もうすぐそこにいるな。)

 

そして四人の前に現れたのは、両腕が刃物になっている頸がない鬼の人形であった。

 

炭治郎(!!これは・・!!)

伊之助「頸が無ェェェ!!アイツ急所が無ぇぞ!無いものは斬れねぇ!!どうすんだどうすんだ!」

 

日輪刀で鬼を殺すには頸を斬る必要があるが、この鬼はその頸がないのだ。伊之助は倒せないと思い動揺していた。しかし、ブロリーがニヤリと笑みを浮かべて一歩前に出る。

 

ブロリー「フフフ!頸が無いだと?それがどうした?頸を斬って殺せないなら・・身体ごと跡形もなく破壊し尽くすだけだぁ!!破壊の呼吸!玖の型!スローイングブラスター!!」ポウ ギュルル ドカーンデデーン☆

炭治郎・伊之助・善逸「!!」

 

ブロリーは掌サイズの小さな気弾をぶつけると、一瞬で膨張して爆発、頸の無い鬼を跡形もなく消滅させたのだ。鬼は頸を斬ることで殺すことができる。だがそれは日輪刀での話である。ブロリーが持つ異次元の力は鬼を身体ごと消滅させるため、頸があろうとなかろうと関係ないことだったのだ。

 

ブロリー「フハハハ!!あと一人潰しに行くぞ!炭治郎!善逸!伊之助!ついてこい!」ビューン!

 

炭治郎(ブロリーさん・・空飛べるんだ・・)

善逸(やっぱ強すぎだろ・・逆に怖くなってきた・・)

伊之助(なんだアイツ・・急所がなくて斬れない鬼を跡形もなく消したぞ・・アイツ間違いなく・・俺より強い・・)

 

ブロリーは頸の無い鬼を倒すと、母蜘蛛鬼がいる方向に向かって低空飛行して向かっていった。炭治郎達はしばらく呆然としていたが、ブロリーの言葉に我に帰って後を追った。一方母蜘蛛鬼は、取って置きの人形を倒されて焦っていた。

 

母蜘蛛鬼(やられた・・!!やられた!!あの人形が一番速くて強いのに・・!!そもそも累が脅しに来たのが悪いのよ!!それで焦って・・焦って・・)「!!」

ブロリー「フハハハハハ!!」ズザー!

 

不意に前を見ると、ブロリーが高笑いしながら迫ってきているのが見えた。そして母蜘蛛鬼の目の前で砂ぼこりをあげながらブレーキをかけて止まったのだ。その姿は母蜘蛛鬼から見て父蜘蛛鬼と重なって見えたのか身体が震え出していた。その原因は蜘蛛鬼一家の私生活の中にあった。

 

―――

 

母蜘蛛鬼「ギャアアッ!!」

 

父蜘蛛鬼「・・・・」

 

これはとある日の回想である。母蜘蛛鬼が父蜘蛛鬼から出血する程の暴行を加えられ、父蜘蛛鬼に許しを乞うていた。

 

母蜘蛛鬼「悪かったわ・・謝るからもう許してよ・・何に怒ったの?何が気に食わなかったの?」

 

累「何に怒ったのかわからないのが悪いんだよ。」

母蜘蛛鬼「そんな・・・・だって・・・・」

 

兄蜘蛛鬼「くふっ。」

母蜘蛛鬼「!!」

兄蜘蛛鬼「また母さんが父さんに怒られてる。くふふっ。」

 

父蜘蛛鬼「・・・・」ガシッグイッ

母蜘蛛鬼「キャアッやめて!!嫌あっ!!嫌ああ!!」

姉蜘蛛鬼「・・・・」

 

父蜘蛛鬼からの理不尽な暴力、それを見ている兄蜘蛛鬼からの嘲笑う姿、姉蜘蛛鬼の無関心な表情、累の心ない言葉、それらを全て受けてきた母蜘蛛鬼にとって蜘蛛の家族はトラウマの対象になっていたのだ。

 

母蜘蛛鬼(えっ・・?父さんじゃない!?だけど・・)「ヒッ・・!」ガタガタ

 

ブロリー「・・・・」ニヤリ

母蜘蛛鬼「!!」ガタガタブルブル

 

ブロリーは母蜘蛛鬼が自分に怯えているのを理解すると怪しい笑みを浮かべて臨戦態勢を取る。それを見た母蜘蛛鬼は恐怖が最高潮に達して更に震えが大きくなった。ブロリーが鬼殺の隊員であることは赤の腰布と金のベルトの間に刺している日輪刀を見て理解した。地面に降りると膝と手を地面に着き頭を深々と下げた、土下座である。震えた声でブロリーに言う。

 

母蜘蛛鬼「・・悪かったわ・・ごめんなさい・・貴方の仲間達を殺してしまったことは謝るわ・・だからお願い許して・・私をひどい目にあわせないで・・」ガタガタブルブル

 

ブロリー「・・いいだろう。」

母蜘蛛鬼「えっ?本当に?」

ブロリー「と思っているのか?今(炭治郎が)楽にしてやる。」

 

母蜘蛛鬼がブロリーが指差す方向の上を見ると、炭治郎が上空から日輪刀を構えて迫っていた。実はブロリーが母蜘蛛鬼に向かって飛んでいったあと、伊之助が炭治郎を上空に放り投げて、その勢いそのままに母蜘蛛鬼を斬りかかろうとしているのだ。母蜘蛛鬼は焦る。

 

母蜘蛛鬼(殺される・・!!頸を斬られる!!考えて・・考えるのよ!!ああ・・でも・・)

 

炭治郎「ブロリーさん!!伏せてください!!全集中!水の呼吸!壱の型!」

 

炭治郎が叫ぶとブロリーは言葉に従い姿勢を低くする。そして頸を斬ろうとした時だった。

 

母蜘蛛鬼(死ねば解放される・・楽になれる・・)

 

炭治郎「!!水の呼吸!伍の型!干天の慈雨!」スーッ

 

炭治郎は母蜘蛛鬼が頸を差し出していることに気づき、最も苦痛が起きない剣撃の型に変えた。

 

母蜘蛛鬼(優しい雨にうたれているような感覚。少しも痛くない、苦しくもない、ただあたたかい・・こんなにも穏やかな死がくるなんて・・)

 

ブロリー「おい貴様、俺は貴様の身に何が起こったかは知らん。だが貴様が俺に命乞いをしたのを見て、散々な目にあってきたことがわかった。次生まれたときは、もうムシケラなんかにはなるなよ。」

 

母蜘蛛鬼「!!・・ありがとう・・そっちの坊や・・十二鬼月がいるわ気をつけて・・!!」バサ

 

炭治郎「!?」

 

母蜘蛛鬼は最期に炭治郎とブロリーに十二鬼月の情報を教えて静かに灰になっていった。炭治郎は母蜘蛛鬼にもらった情報を推測した。

 

炭治郎(十二鬼月!?この山には十二鬼月がいるのか?十二鬼月は鬼舞辻の血もかなり濃いはず・・!!禰豆子が人間に戻る薬の完成に近づく!!・・そうだ伊之助と善逸!!)「ブロリーさん!伊之助と善逸の所に戻りましょう!」

 

ブロリー「わかった、行こう。」

 

伊之助「倒したかよ!!」

 

善逸「炭治郎もブロリーさんも無事だぁ!!良かったー!!」

 

炭治郎(・・重傷を負っていた他の仲間を助けられなかった・・あの人からは恐怖と苦痛の匂いがした。死を切望するほどの。この山は一体どうなっているんだ?十二鬼月がいて・・鬼の一族が棲む山?鬼は群れないんじゃなかったか・・)

 

ブロリー(まだムシケラの気配を感じる・・ここには少なくともあと三匹のムシケラがいるな。珠世はこいつらは群れないと言っていたが、普通に群れてるではないか。どうなっているんだ?いや、これ以上考えると知恵熱がでそうだ。見たところ、さっきのガキのムシケラが仕切ってるようだな。だったら俺はそいつを血祭りにあげるだけだ。)

 

善逸は二人の無事を喜び、伊之助は炭治郎に対し対抗心を燃やしていた。四人は他にいる鬼の位置を探りながら、さらに山奥へと進むのだった。




那田蜘蛛山編長い・・ブロリーがどのように活躍させるか迷いました。これからもよろしくお願いします。


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それぞれの過去。新たなる力!

第十話です。今回は十話目を記念して文字数が若干多くなっております。ですが、出来映えはいまいちです泣。では本編どうぞ。


那田蜘蛛山の中腹。母鬼を倒した四人は、山の中を流れる小川に出ていた。

 

善逸「小川だ・・」

 

ブロリー「炭治郎、この水は飲めるんですかぁ?」

炭治郎「飲めないですよ!?お腹壊すので絶対にやめてくださいね!?」

ブロリー「へあっ!?ははははい・・」

 

ブロリーは水が飲めるか炭治郎に聞いたところ、炭治郎からすごい剣幕で警告してきたのでブロリー本人も焦っていた。その時、バシャッと何者かが水を踏む音がした。四人が顔を向けると、そこには蜘蛛鬼一族の一人、姉蜘蛛鬼がいたのだ。

 

善逸「イヤアアア!!また出た!!」

 

姉蜘蛛鬼「!!」

 

炭治郎(鬼!?この山に流れる匂いのせいで、全く気づかなかった!!)

 

伊之助「おおお!!ぶった斬ってやるぜ!!鬼コラ!!」

炭治郎「伊之助!!」

 

伊之助は獲物を見つけるやいなや、逃げようとする姉蜘蛛鬼に斬りかかっていった。姉鬼は振り返ると叫んだ。

 

姉蜘蛛鬼「お父さん!!」

伊之助「誰が父さんだ!!」

 

姉蜘蛛鬼が叫んだ直後、伊之助に被さる大きな黒い影、その正体は蜘蛛鬼の中でも一際大きな体格を持つ父蜘蛛鬼であった。父蜘蛛鬼は炭治郎達に威嚇するように雄叫びをあげる。炭治郎と伊之助はヤバい気配をびんびんと感じた。

 

善逸「ギャアアア!!デカいよ!!デカいよ!!」

 

父蜘蛛鬼「オ゛レの家族に゛近づくな!!」ドゴォ!!

 

父蜘蛛鬼が放ったストレートパンチが伊之助がいた岩を粉々に砕いた。その隙を突いて炭治郎が攻撃を仕掛ける。

 

炭治郎「水の呼吸!弐の型!水車!」ガキッ

 

しっかりと頸を狙って刃を振ったのだが、父蜘蛛鬼は腕でガードしていた。それだけではない、身体が頑丈で刃が通らないのだ。その事に動揺して、動きが止まった炭治郎を父蜘蛛鬼は見逃さず、ストレートパンチを放とうとするが、今度は伊之助が動きを止めた。

 

伊之助「硬えええ!!」

 

しかし、それでも父蜘蛛鬼の身体は斬れず二人の身体を掴むと、上空へと投げ飛ばす。そして標的が伊之助へと変わり、力が入ってない腕に殴られただけで後ろへと飛ばされた。

 

伊之助(いってえええ!!力が乗りきってねぇ腕に当たっただけでこの威力!!)

 

炭治郎「水の呼吸!弐の型・改!横水車!」ギャ ギイイイイイ

 

炭治郎は近くにあった木を斬って、父蜘蛛鬼を下敷きにすることで動きを止める。

 

父蜘蛛鬼「ガァア!!」

 

伊之助(アイツが木を斬ったのか!?やるなクソーッ!)

 

炭治郎「水の呼吸!拾の型!・・」

 

しかし父蜘蛛鬼は木を掴むとそれを振り回し、炭治郎と近くにいた善逸にも当たり、二人は吹き飛ばされてしまった。

 

伊之助「健太郎ーっ!紋逸ーっ!」

ブロリー「炭治郎!善逸!」

 

善逸「うわあああ!!」

 

炭治郎「伊之助死ぬな!!そいつは十二鬼月だ!!俺が戻るまで絶対に死ぬな!!ブロリーさん!!伊之助をよろしくお願いします!!」

 

炭治郎は飛ばされながらもブロリーと伊之助に向かって叫んだ。

 

善逸side

 

善逸はかなり飛ばされて、地面にすごい勢いで激突しそうになるも、受け身を取ることで衝撃を最低限にまで和らげた。

 

善逸「痛い!あのでかい化け物!少しは手加減を知らないのか!?いやそんなこと言ってる場合じゃない!!ヤバい!ブロリーさん達とはぐれてしまった!!それだけじゃない!炭治郎の奴禰豆子ちゃん持ったまま吹き飛ばされやがった!禰豆子ちゃんにまで危害が及んだらどうするんだ!とんでもねぇ炭治郎だ!」

 

とりあえずわめいてみるものの、近くには鬼や人間の音は一切聞こえない。

 

善逸「やってる場合じゃない・・早くブロリーさん達と合流しないと・・俺が死ぬ!」

 

善逸はブロリー達と合流するために山の中を歩きだした。

しばらく時間が経つも、炭治郎や伊之助の人間はおろか、鬼の音すらいまだに聞こえてこなかった。おまけに何かチクッとした感覚に襲われ、それが善逸の怒りをさらに倍増させた。

 

善逸「いてっ・・・・」

 

善逸は痛みを感じた手を見て何もなかったことにすら腹を立てていた。

 

善逸(なんかチクッとしたーー!!なんじゃああもーー!!腹立つううーー!!)「炭治郎達も見つかんないし最悪だよ!どこ行ったのよどっちよ!!そしてくさいんだよこの辺!!くさい!!もう泣きたい!!蜘蛛がカサカサする音がすごい気持ち悪いし!いや蜘蛛も一生懸命生きてるんだろうけどさ!」

 

善逸は後ろから大きめの蜘蛛の音を感じとり、振り返り様に怒鳴った。

 

善逸「もーーっ!!うるさいよ!じっとしてて!!」

 

善逸はそこでこの世のものとは思えない蜘蛛がいることに気づいた。その蜘蛛は顔が人間のものだったのだ。それを見た善逸は山の木々を掻き分けるように駆け抜けた。

 

善逸「こんなことある!?人面なんですけど人面蜘蛛なんですけど!!どういうことこれどういうこと!?夢であれ夢であれ夢であれよお願い!!夢であってくれたら俺頑張るから!起きたとき禰豆子ちゃんの膝枕だったりしたらもうすごい頑張る!畑を耕します一反でも二反でも耕してみせる!!悪夢から覚めてくれぇーーっ!!」

 

しかし、現実は非常である。善逸の目の前に、蜘蛛にされかけている大量の人間と一軒家が蜘蛛の糸に吊るされているのだ。

 

善逸(何あれ何あれ何あれ!!人間が蜘蛛にされてんの!?家浮いてるの!?チラチラ見えるけど糸?)

 

家の中から今までとは比べ物にならないくらいの大きな人面蜘蛛が糸を伝って出てきた。蜘蛛一族の一人、兄蜘蛛鬼である。糸にぶら下がったままくるくると回っている。はっきり言って気持ち悪いのだ。

 

善逸「・・俺お前みたいなやつとは口利かないからな!!」

 

善逸はきびを返し、走り出す。それを見た兄蜘蛛鬼はニヤニヤと笑っている。

 

兄蜘蛛鬼「くふっ。逃げても無駄だぜ。お前はもう負けてる。」

 

善逸「話しかけんなよ!!嫌いなんだよお前みたいな奴!!」

 

兄蜘蛛鬼「手を見てみなくふふっ。」

 

善逸「はぁ!?手!?手がなにさ!!」

 

言われた通り手を見てみると、青く腫れ上がっていた。さっき蜘蛛に噛まれたことによる毒だったのだ。

 

兄蜘蛛鬼「毒だよ。咬まれたろ?蜘蛛に、お前も蜘蛛になる毒だ。くふっくふふっ。四半刻後には俺の奴隷となって地を這うんだ…」

 

さらに時計を取り出すと丁寧に説明をした。善逸は顔面が青ざめていき、やがて発狂した。

 

善逸「ギャアアッギャーッ!!」ダッ

 

兄蜘蛛鬼「逃げても・・「無駄ねハイハイ!!わぎゃってんだよ!わかってんの!」

 

そして近くにあった木に登った。それを見た兄蜘蛛鬼は善逸を嘲笑った。

 

兄蜘蛛鬼「ハハハハ!!何してるんだお前。」

 

善逸「うるせーよ!!うるせぇ!!」

 

兄蜘蛛鬼「怯えることはないぞぉ、毒が回りきって蜘蛛になったら知能もなくなる。」

 

善逸「いや、だからそれが嫌なんだわそれが!!なんでわかんないのお前さ・・友達・恋人いないだろ嫌われるよ!!」

 

兄蜘蛛鬼「・・・・」カチーン

 

善逸「ひいいいひいいい嫌だ嫌だァ!あんなふうになりたくないひいいい!!」ぶんぶん

 

このときの善逸は昔の事を思い出していた。女に金を貢がされて借金していた所を育ての師範が立て替えてくれたことから始まり、厳しい修行から何度も逃げ出す善逸をたった一人だけ見限らずに連れ戻していた。善逸にとっては修行は辛くて嫌だが何度でも連れ戻すことがとても嬉しかったのだ。髪の色も、修行から逃げ出し、木に登っていた所を雷に打たれたことで変わったのだ。善逸はそんな自分が嫌いだった。本当はちゃんとした人間になりたかったのだ。

 

善逸「でもさぁ俺だって一生懸命に頑張ってるよ!!なのに最期髪ずる抜けで化け物になんの!?嘘でしょ!?」

 

兄蜘蛛鬼(何なんだコイツは・・)

 

カサカサ

善逸「!!」

 

ふと下から音が聞こえて下を見てみると、さっきの人面蜘蛛が木を登ってきたのだ。

 

善逸「ヒギャッ・・登ってくんなよ!ちょっとでいいから一人にして!!ちょっとでいいから!」ブチブチ

 

頭に触れていた手を離すと、髪が抵抗もなくごっそりと抜けた。それを見た善逸はみるみる顔が青ざめていった。

 

善逸(もう、この段階で抜けるの?毛の抜け始め!あいつさっき説明しなかった!!)「ぱうっ・・・・」きゅー

 

恐怖が最高潮に達した善逸は、木の上に仰向けになる形で気絶した。それを見た兄蜘蛛鬼は呆れていた。

 

兄蜘蛛鬼(なんだこいつは?俺達一族を殺しに来た鬼狩りではないのか?失神?なんという腰抜けだ。)

 

しかし木から落下している時、善逸の様子が変わる。なんと、眠ったまま呼吸を使い、兄蜘蛛鬼を斬りかかっていったのだ。

 

善逸「雷の呼吸!壱の型!霹靂一閃!」シイイイイ

 

兄蜘蛛鬼「!?斑毒痰!」ブー

 

善逸の変わった様子に木をも溶かす強力な毒を放つも、身をよじられ簡単に避けられる。しかし、兄蜘蛛鬼はあることに気づいた。

 

善逸「雷の呼吸!壱の型!霹靂一閃!」シイイイイ

 

兄蜘蛛鬼(全く同じ構えを何度もしている!!ハハハ間違いないこいつ・・一つの技しか使えないんだ!)ニタァ

 

兄蜘蛛鬼の推測通り、善逸は雷の呼吸の壱の型しか使えない。だが、その動きは洗練されており、並大抵の努力ではすることができないような動きだった。そう、善逸の師範は壱の型しか使えないのならば、それを極限まで磨いて極め抜けと指導されていたのだ。今は毒で身体の動きも鈍くなっていくなか、善逸は一つの剣撃に力を込めた。

 

善逸「雷の呼吸!壱の型!霹靂一閃!六連!」ドドドドド!!

 

善逸の動きは雷の如く、素早く的確に、兄蜘蛛鬼の頸を跳ねることに成功した。

 

兄蜘蛛鬼(!?!?斬られたのか?俺が?斬られた?アイツに?)「バカな!!毒でろくに手足が動かせない奴にいいいい!!!」

 

兄蜘蛛鬼は善逸に恨み節を吐いて絶命した。しかし、善逸の身体の毒は消えず、もう手足がろくに動かなかった。呼吸で少しでも進行を遅らせようと息を整えた。しかし、時間が経つにつれ、呼吸もうまくできなくなってきていた。そしてそのまま気を失いそうになったとき

 

しのぶ「もしもーし。大丈夫ですか?」ひらり

 

鬼殺隊の柱の一人、胡蝶しのぶが蝶の如く舞うように現れたのだ。そして応急処置を施されたあと、胡蝶しのぶは去っていった。

 

ブロリー・伊之助side

 

炭治郎が吹き飛ばされたあと、ブロリーは怒りに震えていた。それもそのはずである。ブロリーは炭治郎と禰豆子の事を心の底から信頼していたからだ。何故信頼しあえる仲になったのか、それは鱗滝左近次に認められた日の翌日の事。

―――鱗滝左近次の家に着いたブロリーと炭治郎は、禰豆子を交えて自分の力の事を説明していた。

 

ブロリー「炭治郎と禰豆子は覚えているか?俺がムシケラを殺したときに金髪の姿になったことを。」

 

炭治郎「!!はい!はっきりと覚えていますよ!そういえばまだ説明されてませんでした。指しさえなければ教えてくださいませんか?」

禰豆子「ムー!」こくこく

 

ブロリー「・・あれはスーパーサイヤ人と言う形態だ。普段の姿と比べて何十倍にもパワー、スピード、スタミナ、戦闘力が増した姿なのだ。」

 

炭治郎「!戦闘力を・・上げた姿・・!」

 

ブロリー「それだけじゃない。俺の力である気ですら飛躍的に上がるからな。これの威力も増す。」ポウ

 

ブロリーは自分の掌に緑色の気でできた球を作り出す。そしてそれを炭治郎達に見せる。

 

炭治郎「ブロリーさんの力・・!」

 

禰豆子「ムー・・!」

 

禰豆子がブロリーの緑色の球に触ろうとするがすぐにブロリーは消す。

 

ブロリー「触っては駄目だ、怪我する。」

禰豆子「!!・・ムー・・」

 

炭治郎はスーパーサイヤ人についても驚いていたが、それ以上に気になることがあった。それは説明しているブロリーから漂う悲しみの匂いだった。炭治郎はそれに戸惑っていたが、やがて意を決してブロリーに聞いた。

 

炭治郎「ブロリーさん、貴方からはすごい悲しみの匂いがします。その力の説明を始めてから、悲しみの匂いが漂ってました。もしよろしければ、話してくださいませんか?微力だとしても、俺は貴方の力になりたいんです。」

 

それはブロリーにとっては魅力的な言葉だったのだが、同時に怖くもあった。自分のことを知られたら、また裏切られて一人になってしまうのかもしれないと。だが、炭治郎の鋭い視線に折れたブロリーはやがて話し出した。

 

ブロリー「・・俺はサイヤ人と言う戦闘民族だ。それは炭治郎も知っているだろう?」

 

炭治郎「はい!説明されましたから!」

 

ブロリー「サイヤ人が宇宙人だと言ったら?」

 

炭治郎「!・・薄々感じてはいました。普通の人間ではない時点でどこか別の場所からやって来たんだと。」

 

ブロリー「そうか・・ここからが俺の過去になる。」

 

宇宙人と言うことで拒まなかった炭治郎に対して、心の奥底にわずかな希望を持ちながらブロリーは話し始める。

 

ブロリー「・・赤ん坊の頃の俺は、他の誰よりも戦闘力が高かった。それも周りの大人よりもだ。そしてその力を恐れた王家のやつらは俺を殺そうとした・・」

炭治郎「!!」

 

そう、ブロリーは生まれた時から戦闘力が非常に高かったのだ。普通のサイヤ人の大人は平均的に2000~3000程であり、エリートクラスでも4000くらいだ。しかし、赤ん坊なのにも関わらず戦闘力が10000となれば、いかに異常なのかがよく分かる。その力を懸念した王家ベジータ王は、いずれ王家を脅かす存在になるかもしれないと判断し、ブロリーを抹殺しようとしたのだ。その時のブロリーの父、パラガスが必死に説得を試みたが、逆にベジータ王の逆鱗に触れることになり、親子共々瀕死の重体を負わされゴミのように捨てられてしまったのだ。

 

ブロリー「だが、俺達サイヤ人の星が滅ぼされたときに俺はこの姿に覚醒してなんとか脱出できた。だが幼少期の俺はこの力を制御できなかった・・サイヤ人の本能の赴くままに破壊行為を繰り返した・・俺は成長するに連れて徐々に制御できるようになっていったんだ。俺の親父は、俺が破壊行為をしても叱るだけでなにもしなかった!俺を殺さないと信用してたんだ・・だが、ある日・・!」

 

炭治郎(!!・・匂いが変わった!?今度は、恨みと憎しみの匂い!!)

 

ブロリー「親父は、俺の力を恐れて俺に制御装置をつけてきた!そこから俺は親父の道具になった。自由を奪われた!その時から俺は何もかもがどうでもよくなった。全てを本能に任せて破壊してしまおうと思った!」

 

炭治郎「自分の息子を・・道具としてしか見ていなかった・・だと・・!?」

 

炭治郎は、ブロリーを道具としてしか見ていなかったこの場にはいないパラガスに対して怒りを覚えていた。そしてブロリーも、当時の事を思い出し、恨みを込めながらほぼ叫ぶように語った。

 

ブロリー「操られている俺ではそんなことは不可能だった・・だが、それも突如終わった!赤ん坊の頃俺を泣かせた奴、カカロットに再び出会ったんだ!俺はそいつに対する恨みのお陰で親父のコントロールから解放されたんだ!本当の自由を手に入れることが出来たんだ!まずは恨みの対象であるカカロットを血祭りにあげるところから始めた。俺は圧倒していた!だが、親父はコントロールを外れた俺を置き去りにして自分だけ彗星と衝突しそうな星から脱出しようとしてたんだ!!」

 

炭治郎「!!息子を・・見捨てた・・!!?」

 

ブロリー「そうだ・・俺は見殺しにしようと捨てられそうになった・・もう親父にはなんの未練もなかった!親父が乗り込んだ一人用のポッドごと殺したんだからな!!」

 

炭治郎「!!実の・・父親を!?」

禰豆子「!!」

 

ブロリー「フン!もはやあんなのは俺の親父なんかじゃない!その後俺はカカロットをも殺そうとした・・恨みの対象さえいなくなれば、もう俺が恐れるものは全てなくなると思ったんだ・・だが、カカロットが仲間のパワーを吸収して形勢が変わった。俺はカカロットに負けたんだ・・生死の境をさ迷ったんだ。その後俺は、もうひとつあった一人用のポッドに乗り込んで地球に向かったんだ。だが、地球でもカカロットの息子らと共に地球を追い出され、太陽に激突して俺は殺されたかと思ったんだ。そして気づいたら炭治郎達に助けられていたんだ。」

 

炭治郎・禰豆子「・・・・」

 

ブロリーは自分の過去を全てぶちまけると、炭治郎達の方を見る。二人は、ブロリーの悲惨すぎる人生に目を見開いたまま固まり、言葉を失っていた。思い空気の中、口火を切ったのは禰豆子だった。ゆっくりと立ち上がり、ブロリーのそばまで歩いてくると、ブロリーを優しく抱き締めたのだ。

 

ブロリー「!?」

禰豆子「・・んー・・」ポロポロ

 

なんと、禰豆子は泣いていたのだ。幻滅されるとばかり思っていたブロリーは当然困惑する。

 

ブロリー「禰豆子・・?」

 

炭治郎「ブロリーさん!」

 

突然の炭治郎の声にブロリーがそっちを向くと、炭治郎も涙を流していた。目元をぬぐいながらブロリーに言った。

 

炭治郎「ずっと辛かったんですね・・確かに父親を殺したり、関係のない場所まで破壊するのはやりすぎだと思います・・でも、多分俺も同じ境遇にあったらブロリーさんと同じ事をすると思うので。」

 

ブロリーは驚いた。今までいつも自分の力のことが解られると、待っている仕打ちは拒まれるか利用しようとするかのどちらかだったのだ。だが、炭治郎と禰豆子はそのどちらでもない同情しながら受け入れているのだ。信じられないものを見た表情をしながらブロリーは恐る恐る尋ねる。

 

ブロリー「・・のか?」

炭治郎「はい?」

 

ブロリー「俺が怖くないのか!?俺の力は全てを破壊できるんだぞ!!怖くないのか?」

 

ブロリーの問いに対して炭治郎は一度うつむき、再び顔をあげるその表情は柔らかく温かい満面の笑みだった。

 

炭治郎「確かにそれはとてつもない力です。でももうブロリーさんは制御できるじゃないですか。それにその力を俺と禰豆子を守るために使ってくれましたよね?なのでもう脅威ではありませんよ。もうブロリーさんは俺の大切な仲間ですから。」ニコッ

 

ブロリー「ぐ・・ぐあああ・・う゛ああああーー!!」

 

生まれて始めて受け入れられたことを実感したブロリーは抱き締めてくる禰豆子を抱き締め返し号泣した。今まで溜まりにたまった悲しみや怒りをぶちまけるように泣き晴らした。破壊の限りを尽くす伝説のスーパーサイヤ人も、心の底では常に孤独だったことに悲しんでいたのだ。周りの家庭は、笑い合いながら楽しそうに幸せに過ごしていたが、自分の家族や周りの奴等が向けてくる視線はいつも拒絶か私利私欲のために利用を考えているかのどちらかでしかなかった。しかし、目の前にいる二人は、拒絶も利用もせず、ただ温かく受け入れたのだ。ブロリーは生まれて始めて心の底から信頼しあえる、守りたいと思える本当の仲間を手に入れることができたのだ。このときからブロリーは、破壊の力をこの二人を守るために使うと心に決め、現在に至るのだ。

―――そんな炭治郎を吹き飛ばした父蜘蛛鬼は、ブロリーにとって血祭りの対象でしかなかった。気を高め今にも飛びかからんとするが、その前に伊之助が飛び出した。

 

伊之助「オラアアア!!」ガキン

ブロリー「!!」

 

伊之助「カロリー!!お前ばかりにいい思いはさせないぜぇ!!オラアア!!」ギャリィン!!

 

しかし、それでも父蜘蛛鬼の身体は一本の日輪刀では斬れなかった。すると伊之助はすかさず、もう一本の日輪刀で更に叩き、腕を斬り落としたのだ。

 

伊之助「しゃアア斬れたアア!!簡単なことなんだよ!一本で斬れなければその刀をブッ叩いて斬ればいいんだよ!!だって俺刀二本持ってるもん!ウハハハハ!!最強!!」

 

すると何を思ったのか、父蜘蛛鬼は逃げ出した。それを見た伊之助は青筋を浮かべて激怒する。

 

父蜘蛛鬼「・・・・」ダッ

 

伊之助「何逃げてんだコラアアア!!」ダッ

ブロリー「お前らどこへ行くんだぁ?」

 

伊之助は父蜘蛛鬼の後を追いかけていってブロリーがその場に取り残された。伊之助は木の上にいた父蜘蛛鬼を見つける。その身体は震えていることに気づいた。

 

伊之助「!!フハハハ!!俺に恐れをなして震えてやがる!」

 

だが、父蜘蛛鬼は脱皮して前よりも更に大きな姿になって伊之助の前に降りてきた。

 

伊之助(いや、デカくなりすぎだろ。やべぇぞこれは。ダメだ勝てねぇ・・俺は殺される・・)

 

しかし、脳裏に炭治郎やひさの記憶がよみがえる。絶対に死ぬなという二人の直訳の意味が、伊之助の原動力になった。

 

伊之助(絶対に負けねぇ!)「俺は鬼殺隊の嘴平伊之助だ!!かかってきやがれゴミクソが!!」

 

父蜘蛛鬼の素早い動きに翻弄されるも、伊之助は宙へ跳んだ拍子に頸を狙った。

 

伊之助「獣の呼吸!参の牙!喰い裂き!」バキン!

 

しかし、父蜘蛛鬼の頸は斬れずに伊之助の日輪刀の方が折れた。その事に動揺した伊之助は動きを止めてしまった。その隙を父蜘蛛鬼は見逃さず、木に叩きつけた後頚椎を握り潰そうと伊之助の頸を持ち上げる。

 

父蜘蛛鬼「オ゛レの家族に近づくな゛アアア!!」ミシミシ

 

伊之助(ダメだ・・殺される・・)

 

伊之助が己の死を悟り、一瞬走馬灯を見た。伊之助の母親が涙を流して泣きながら自分に何度も謝っていた。最も、自身は猪によって育てられたと思ってるので、その人物が誰なのかは伊之助にはわからなかった。それ以外にも、自分に優しくしてくれた炭治郎と善逸、藤の花の家紋の家主であるひさの姿が脳裏によぎった。もう諦めかけたそのときだった。

 

伊之助(誰だ・・)

 

ブロリー「でやあああ!!」ドカッ

 

ブロリーが伊之助の頸を締め上げていた腕を蹴りあげ、伊之助を解放させたのだ。そして父蜘蛛鬼を睨み付けて言った。

 

伊之助「パセ・・リー・・!」

 

ブロリー「・・お前が誰の親父なのかは知らん。だが、俺はお前のような雑魚の相手をしている暇は、無い!!」ゴオオオオ

伊之助「!!」

 

ブロリーは気を高めながら父蜘蛛鬼に突っ込んでいく、伊之助にはブロリーの父蜘蛛鬼をも凌ぐ威圧感と気配に圧倒されていた。

 

ブロリー「デヤァッ!!」バキッ!!ドカッ!!

父蜘蛛鬼「!!」

 

父蜘蛛鬼にストレートパンチを顔面にめり込ませた後、地面に手をついて父蜘蛛鬼の身体を空中へと蹴り飛ばす。そして両手にそれぞれ気弾を作る。

 

ブロリー「破壊の呼吸!肆の型!ダブルイレイザーキャノン!」ポーヒーポーヒー

父蜘蛛鬼「があああああ!!」ドカーン デデーン☆

 

ブロリーの放った二つの気弾は、父蜘蛛鬼を跡形もなく消し飛ばしたのだ。自分が頸を斬る事に苦戦した相手をいとも簡単に倒してしまう実力を見て、普段なら強者と戦うことに喜びを感じる伊之助だが、このときばかりは戦意を喪失していた。

 

ブロリー「うおおおおお!!!炭治郎はどこだぁーーー!!!」ビュオオオオ!

 

父蜘蛛鬼を倒したブロリーはそのまま炭治郎の気を感じる方向へ雄叫びをあげながら飛んでいった。取り残された伊之助は自分とブロリーとの間に力の差を痛感して意気消沈としていた。そしてその様子を見ていた者がいた。

 

義勇「・・・・」

 

炭治郎を鬼殺隊に導いた張本人、冨岡義勇はブロリーが雄叫びをあげながら飛び去って行くのを終始見ていた。ブロリーを見つけたときは、斬りかかろうとしたものの、刀を抜いた時に鬼とはわずかに違う気配に気づいたのだ。そのため、様子見をしていたのだ。義勇は沈んでいる伊之助を尻目にブロリーの飛んでいった方向に走り去って行くのだった。

 

炭治郎・禰豆子side

 

父鬼に吹き飛ばされた後の炭治郎は信じられないものをみていた。

 

姉蜘蛛鬼「ギャアア!!」

炭治郎「!?」

 

なんと姉蜘蛛鬼の顔を累が糸で刻んでいたのだ。家族同然と言える関係なのにも関わらずそのような光景を目にした炭治郎は怒りをぶつけた。

 

炭治郎「何してるんだ・・!!仲間じゃないのか!!」

 

累「仲間?そんな薄っぺらなものと同じにするな。僕たちは家族だ、強い絆で結ばれているんだ。それにこれは僕と姉さんの問題だよ。余計な口出しするなら刻むから。」

姉蜘蛛鬼「・・・・」

 

累は自分たちのことを家族だと言っていたが、炭治郎はその主張を否定した。

 

炭治郎「家族も仲間も強い絆で結ばれていれば、どちらも同じように尊い。血の繋がりが無ければ薄っぺらだなんてそんなことはない!!それから、強い絆で結ばれている者は信頼の匂いがする!だけどお前たちからは、恐怖と憎しみと嫌悪の匂いしかしない!こんなものを絆とは言わない!紛い物・・偽物だ!!」

 

そのとき、累を見つけて斬りかかろうとした隊員がいたが、一瞬でサイコロステーキの如くバラバラにされたのだ。そして炭治郎に振り返り、凄い殺気を放ちながら聞き返す。

 

累「お前、今何て言ったの?」ゴゴゴゴゴゴ

 

しかし、炭治郎は怯まずに否定をやめない。真剣な表情で累に抗議する。

 

炭治郎「何度でも言ってやる!お前の絆は偽物だ!!」

 

炭治郎の強気な姿勢に、累は呆れたようにため息をつき、再び炭治郎を睨み付ける。

 

累「お前は一息では殺さないからね。うんとズタズタにした後で刻んでやる。でもさっきの言葉を取り消せば一息で殺してあげるよ。」

 

炭治郎「取り消さない!俺の言ったことは間違ってない!!おかしいのはお前だ!間違っているのはお前だ!!」

 

累が糸を張り、炭治郎がそれを斬ろうとする。しかし

 

炭治郎「水の呼吸!壱の型!水面斬り!」バキン

 

累(思ったより頭が回る奴だ。恐怖に怯まない。・・まぁ関係無いけどね。)

 

炭治郎(刀が折れた!!信じられない・・!!この子の操る糸は、さっき斬れなかった鬼の身体よりも硬いのか!?)

 

刀が折れてそれに動揺した炭治郎に、隙ができてしまった。累はそれを見逃さず、炭治郎の前に大量の糸で刻もうとする。

 

炭治郎(避けきれない!!)

 

炭治郎は己の死を覚悟し目をつぶるが、いつまでたっても痛みはこない。目を開けて見てみると、禰豆子が炭治郎を庇って糸に斬られていたのだ。

 

炭治郎「禰豆子!!」

 

禰豆子「ム・・ん・・」

 

炭治郎は禰豆子を抱えると、近くの木に寄りかからせた。その表情はとても申し訳無さそうだった。

 

炭治郎「禰豆子・・禰豆子!兄ちゃんをかばって・・ごめんな・・」

 

炭治郎達の様子を見ていた累が、二人を指差し、ワナワナと震えた。

 

累「兄妹か?」

 

炭治郎「だったら何だ!!」

 

炭治郎の突き放しを肯定ととらえた累は、右手で口元を抑え、考えている。

 

累「兄妹・・兄妹・・妹は鬼になっているな・・それでも一緒にいる・・妹は兄を庇った・・身を挺して・・本物の絆だ!!欲しい・・!!」

 

姉蜘蛛鬼「!!る、累!ちょっと待って!!待ってよお願い!私が姉さんよ!姉さんを捨てないで!!」

 

炭治郎と禰豆子の絆を見た累は羨ましがって欲すと、姉蜘蛛鬼が懇願の声を上げるが、それは累の逆鱗に触れるだけだった。

 

累「うるさい黙れ!!」バラ

 

炭治郎「!?」

 

累が右腕を振るうと、姉蜘蛛鬼の頸と共に周りの木々も斬り倒された。

 

累「結局お前達は自分の役割をこなせなかった・・いつも・・どんな時も・・」

 

姉蜘蛛鬼「待って・・ちゃんと私は姉さんだったでしょ?挽回させてよ・・」

 

累「・・だったら今、山の中をチョロチョロする奴らを殺してこい。そうしたらさっきのことも許してやる。」

 

姉蜘蛛鬼「わ、わかった・・殺してくるわ。」

 

姉蜘蛛鬼は累に怯えながら、指示された条件を達成するために頸を繋げながら去っていった。そして姿が見えなくなると、累は炭治郎に話しかける。

 

累「坊や、話をしよう。」

 

炭治郎(話・・!?)

 

累「僕はね、感動したんだよ。君たちの絆を見て。体が震えた。この感動を表す言葉はきっとこの世に無いと思う。でも君たちは僕に殺されるしかない。でも回避する方法が一つだけある。"君の妹を僕に頂戴。"大人しく渡せば命だけは助けてあげる。」

 

炭治郎「そんなことを承知するはずがないだろう!それに禰豆子は物じゃない!!自分の意思も想いもあるんだ!お前の妹になんてなりやしない!」

 

累「大丈夫だよ。僕の方が強いんだ。恐怖の絆だよ。逆らうとどうなるかちゃんと教える。」

 

累の主張に、炭治郎は遂にキレて折れた刀を向けて怒鳴った。

 

炭治郎「ふざけるのも大概にしろ!!恐怖でがんじがらめに縛りつけることを家族の絆とは言わない!その根本的な心得違いを正さなければお前の欲しい物は手に入らないぞ!!禰豆子をお前なんかに渡さない!」

 

累「いいよ。お前を殺して力ずくで奪うから。」

 

炭治郎「俺が先にお前の頸を斬る。」

 

累「威勢がいいなぁ、できるならやってごらん。十二鬼月である僕に・・勝てるならね。」

 

累は自身の目にある数字を炭治郎に見せる。そこには下弦の伍と刻まれていた。その言葉と共に戦いの火蓋が切っておとされた。一瞬の間に禰豆子に糸を絡ませると、そのまま引っ張り自身へと引き寄せる。

 

炭治郎「禰豆子!!」

 

累「さぁもう奪ったよ。自分の役割を自覚した?」

 

炭治郎「放せ!!」

 

累「逆らわなければ命は助けてやるって言ってるのに・・」

 

しかし、禰豆子は鬼特有の爪で累の顔を引っ掻く。累は無表情のまま更に糸を禰豆子に繋げた。出血するほどきつく絡ませていたのだ。そしてそのまま上空へと引っ張りあげる。血がたりなくなったせいか、禰豆子は気を失った。

 

炭治郎「ねっ、禰豆子!!」

 

累「このくらいで死にはしないだろ。鬼なんだから。でもやっぱりきちんと教えないとだめだね、暫くは失血させよう。それでも従順にならないようなら、日の出までこのままにして少し炙る。」

 

炭治郎は自身に感情を高ぶらせるなと言い聞かせ、冷静に累の頸を狙う。

 

炭治郎「全集中!水の呼吸!拾の型!生生流転!」

 

身体の回転数が増えて強くなっていく剣擊で、張り巡らされている糸を斬って行くが。

 

累「ねぇ、糸の強度はこれが限界だと思ってるの?血鬼術・刻糸牢!」

 

累の両手が赤くなると、先ほどよりも更に強い糸が蜘蛛の巣状で炭治郎に襲いかかる。これを斬るには回転が足りず、炭治郎は本能的に死を感じた。

そのとき走馬灯を見た。幼少期の炭治郎が、父が舞を舞っている姿だった。この舞は、『ヒノカミ神楽』という正しい呼吸をすることにより、長時間舞うことで祈りをする竈門家の伝統であった。父親である炭十郎が炭治郎に教えていた。

 

炭十郎「どれだけ動いても疲れない息の仕方があるんだよ。正しい呼吸が出来るようになれば炭治郎もずっと舞えるよ。寒さなんて平気になる。この神楽と耳飾りだけは必ず、途切れずに継承していってくれ、約束なんだ。」

 

炭十郎が炭治郎に託した伝統を思いだし、現在の状況を打ち破ろうとする。

炭治郎の呼吸が水から変わった。

 

炭治郎「ヒノカミ神楽!円舞!」バラ

 

累「!!」

 

ヒノカミ神楽の呼吸は、累の血鬼術である糸を斬ったが、それでもすぐに新しい糸によりなかなか届かない。炭治郎は、相討ちを覚悟で禰豆子を守るために腕を動かす。一方、失血により気を失った禰豆子も暗闇にあった意識に、突如として母親の竈門葵枝の幻が語りかける。

 

葵枝「禰豆子・・禰豆子、起きて。今の禰豆子ならできる・・頑張って。お兄ちゃんまで死んでしまうわよ・・」

 

幻とはいえ、自身の母親の悲しみの表情は、禰豆子にとって許せるものではなかった。母が流した涙を見て、禰豆子の意識は戻り、累と戦っている炭治郎を見つける。そして援護と救出するために右腕に力を込めて握ると、鬼特有の異能の力を発揮した。

 

禰豆子「んー!!」(血鬼術!爆血!!)ボォォォ!

 

累が張った糸は禰豆子を捕まえた糸と全く同じものだった。そのため禰豆子の血が染み込んでおり、瞬く間に糸全体に火が燃え広がったのだ。糸は炎に弱い。炭治郎が触れただけで焼き切れたのだ。

 

累(馬鹿な!!糸が焼き切れ・・だが糸を切ったところで僕の頸は斬れない。鋼糸よりも僕の体の方が硬いんだ。)

 

累の思惑通り炭治郎の刀は最初、頸にあたると、硬さもあって動きが止められる。しかし、炭治郎の日輪刀にも禰豆子の血が付着していた。日輪刀が燃えだすと、加速する。

 

炭治郎「俺と禰豆子の絆は誰にも、引き裂けない!!」

 

そのまま炎を帯びた日輪刀を振り切り、累の頸を撥ね飛ばしたのだった。こうして蜘蛛の家族の鬼は全員倒した・・かに見えていた。




今後のブロリーの変身形態はスーパーサイヤ人、伝説のスーパーサイヤ人ですが、それ以外の形態(スーパーサイヤ人3、スーパーサイヤ人4フルパワー等)を取り入れようかどうかは迷っています。是非希望をコメントで、伝えてくれたらと思っております。では、また次回。


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ブロリー激怒!!遂に覚醒!伝説のスーパーサイヤ人!!

第十一話です。何とかゴールデンウィーク期間に投稿できた・・こんな小説ですが、最後まで読んでくださると嬉しいです。それでは本編どうぞ


那田蜘蛛山。炭治郎と累が死闘を繰り広げていた。一方その頃、累の指示により他の鬼殺の隊員を殺しに向かっている姉蜘蛛鬼は、自分の失態を後悔していた。

 

姉蜘蛛鬼(しくじった、しくじった!私だけは今までしくじったことなかったのに!家族ごっこを・・!!)

 

蜘蛛鬼の家族とはいえ、血の繋がりが無ければ知り合い等でもない他人同士の寄せ集めだったのだ。いつか殺しに来るであろう鬼狩りに怯え、仲間を欲しがっていた。この一族が使える能力は全て累のものであり、家族になることを交換条件に分けてもらったのだ。そして下弦の伍である累は、鬼舞辻無惨のお気に入りでもあった為、多少の勝手な行為も許されていた。累の要求に従わなければ地獄のような仕打ちを受けるため、姉蜘蛛鬼は自分が良ければいいと考えていた。母蜘蛛鬼と兄蜘蛛鬼が殺された後、姉蜘蛛鬼は自身が殺られない為に、父蜘蛛鬼を炭治郎達に仕向けたのだ。その後累と二人で逃げる事を提案したが、それが累の逆鱗に触れたことで糸で顔を斬られ現在に至る。

 

姉鬼「!!見つけたわ・・!」

 

遂に姉蜘蛛鬼が鬼殺隊の隊員を一人見つけた、それは炭治郎達の大事な仲間である一人の村田だった。姉蜘蛛鬼は自身の力になった血鬼術を発動する。

 

村田「!!」(鬼!!)

 

姉蜘蛛鬼「溶解の繭!」

 

村田「・・!!」

 

彼女の手から出された糸は村田を糸の中に閉じ込めると、糸の間から怪しい液体が溢れ、瞬く間に繭の中は満たされた。村田は必死になって糸を斬ろうとするが、その糸はビクともしなかった。

 

姉蜘蛛鬼「無駄よ、切れやしない。私の糸束はね、柔らかいけど硬いのよ。まず溶解液が邪魔な服を溶かす。それからあんたの番よ。すぐにドロドロになってあたしの食事になる。」

 

村田を閉じ込めたことにより、勝ち誇ったように能力を自慢する姉蜘蛛鬼、しかしその背後に蟲柱の胡蝶しのぶが音もなく現れた。

 

しのぶ「わぁ!凄いですね。掌から糸を出しているんですか?こんばんは、今日は月が綺麗ですね。」

姉鬼「!!」バッ

 

姉蜘蛛鬼は即座にしのぶから離れ、溶解液が出る糸でしのぶを閉じ込めようとするものの、しのぶは蝶の如く速く美しく舞って糸を全く触れずに避けながら近づいていく。

 

姉蜘蛛鬼(!!繭糸を少しも触れずに避けている!)

 

しのぶ「私と仲良くするつもりは、無いみたいですね。」ゴゴゴゴ

姉蜘蛛鬼「!!」ゾワッ

 

姉蜘蛛鬼は、しのぶに獲物を見るような目で見られ、本能的に自分の死がすぐ近くにきていることを感じた。

 

姉蜘蛛鬼「待って!!待ってお願い!!私は無理矢理従わされてるの!!助けて!!逆らったら体に巻きついてる糸でバラバラに刻まれる!!」

 

しのぶは姉蜘蛛鬼の言い分に、口元に人差し指を当てて少し考えるしぐさをすると、やがて口を開いた。

 

しのぶ「そうなんですか?それは痛ましい。可哀想に。助けてあげます。仲良くしましょう。協力してください。」

 

姉蜘蛛鬼「!?た、助けてくれるの?」

 

しのぶ「はい。でも、仲良くするためにはいくつか聞くことがあります。可愛いお嬢さん、あなたは何人殺しましたか?」

 

しのぶが殺した人数を聞くと、姉蜘蛛鬼は涙を流しながら答えた。

 

姉蜘蛛鬼「・・・・五人。でも命令されて仕方なかったのよ。」ポロポロ

 

しかし、しのぶは笑顔を浮かべたまま姉蜘蛛鬼の答えを否定する。それでも姉蜘蛛鬼はしらを切り通そうとした。

 

しのぶ「嘘は吐かなくて大丈夫ですよ。わかってますから。さっきうちの隊員を繭にした術さばき、見事でした。八十人は喰っていますよね?」ニコッ

 

姉蜘蛛鬼「・・喰ってないわ、そんなに。殺したのは五人よ。」

 

しのぶ「私は西の方から来ましたよ。お嬢さん、西です。山の西側では大量に繭がぶら下がっているのを見てきました。中に捕らわれていた人々は液状に溶けて全滅。その場所だけでも繭玉は十四個ありました。十四人死んでるんです。私は怒っているのではないですよ。確認しているだけ、正確な数を。」

 

淡々と語っていくしのぶに、姉蜘蛛鬼はだんだんと苛立ちが募っていき、不機嫌な声で聞く。

 

姉蜘蛛鬼「・・確認してどうすんのよ。」イライラ

 

しのぶ「お嬢さんは正しく罰を受けて生まれ変わるのです。そうすれば私たちは仲良しになれます。」

 

姉蜘蛛鬼「罰?」

 

しのぶ「人の命を奪っておいてなんの罰もないなら、殺された人が報われません。人を殺した分だけ私がお嬢さんを拷問します。目玉をほじくりだしたり、お腹を切って内臓を引き摺り出したり、その痛み苦しみを耐え抜いたとき、あなたの罪は許される。一緒に頑張りましょう。大丈夫!お嬢さんは鬼ですから死んだりしませんし、後遺症も残りません!」ニコニコ

 

笑顔とは裏腹にえげつない内容を伝えるしのぶに、姉蜘蛛鬼は顔を青ざめさせながら狂ったように繭糸で攻撃した。

 

姉蜘蛛鬼「冗談じゃないわよ!!死ね!クソ女!!」ドバッ

 

しのぶ「蟲の呼吸・蝶ノ舞・戯れ。」

 

しかし、スピードではしのぶの方が圧倒的に上であり、呼吸を使った剣擊で姉蜘蛛鬼の全身を刀で刺した。それは、姉蜘蛛鬼の目には見えないほど速かった。

 

しのぶ「仲良くするのは無理なようですね。残念残念。」

 

姉蜘蛛鬼(見っ見えなかった・・!!でも頸は斬られてない。体が小さくて腕力がないから頸を斬れないんだわ!これなら勝てる・・)

 

頸を斬れないことを知った姉蜘蛛鬼は余裕の表情を浮かべる。だが、余裕と生涯はここで終えた。しのぶの使う毒が全身に回ったのだ。

 

ドクン!

姉蜘蛛鬼「・・!?ゴフッ・・!!」ドサッ

 

姉蜘蛛鬼が倒れたのを見て自身の勝利を確信すると、しのぶは刀を器用に振り回しながら自己紹介をした。

 

しのぶ「鬼殺隊・蟲柱胡蝶しのぶ。私は柱の中で唯一鬼の頸が斬れない剣士ですが、鬼を殺せる毒を作ったちょっと凄い人なんですよ。」

 

姉蜘蛛鬼はすでに息絶えているためしのぶの紹介を聞いてるはずもなく、なんの反応も示さなかった。その事に紹介が終わってからようやく気づいたしのぶは、軽く丸めた手を自分の頭に軽くコツンと当てた。

 

しのぶ「ああ、失礼しました。死んでいるからもう聞こえていませんね。うっかりです。」

 

その後、繭糸に刀を刺すことで、閉じ込められた村田を助け出して安否を確認した。

 

しのぶ「大丈夫ですか?」

 

村田「ゲホッゴホッガハッ!だっ大丈夫です。ゴホッ鬼には、止めを刺さなくていいのですか?」

 

しのぶ「藤の花の毒で殺したんです。もう死んでいるのであのまま腐ります。私は薬学に精通しているんですよ。服が溶けただけで体は殆ど無傷ですね。よかったです。」

 

しのぶの言うとおり、体は五体満足で無事だったのだが、服が溶かされて素っ裸だったのだ。村田は男としての何かを失ったと思い、顔を真っ青にして力なくしおれた。

 

一方、累の頸を撥ね飛ばした炭治郎は、地面に着地すると倒れこんで動けなくなっていた。その原因は、水の呼吸からヒノカミ神楽の呼吸に急に切り替えたことによる反動だった。そして糸が焼き切れたことで地面に倒れている禰豆子を見て、そちらにいこうと匍匐前進しながら少しずつ進んだ。

 

炭治郎(勝った・・父さんが助けてくれた・・身体中に激痛が走ってる・・呼吸を乱発しすぎたせいか?早く回復しなければ・・俺はまだ戦わなければならない。伊之助とブロリーさんの元へ早く向かうんだ。禰豆子、大丈夫か・・)

 

しかし、気絶している禰豆子の元へ向かっている途中絶望することが起こってしまった。なんと累の体は灰にならず、傷が回復していってるのだ。手から頸が繋がっている糸を引っ張ると、頸と胴体が繋がれた。

 

炭治郎(!!血の匂いが濃くなった!死んでないのか?頸を斬ったのに!)

 

累「僕に勝ったと思ったの?可哀想に、哀れな妄想をして幸せだった?僕は自分の糸で頸を斬ったんだよ。お前に頸を斬られる前に。もういい、お前も妹も殺してやる。こんなに腹が立ったのは久しぶりだよ。」

 

炭治郎(立て!!早く立て!!呼吸を整えろ!急げ早く!!)

 

自分を鼓舞し無理矢理体を動かそうとするが、炭治郎の体は言うことを聞かず、なかなか進まない。なんとか禰豆子の元にたどり着くも、そうしている間に炭治郎と累との距離はどんどん縮まっていき、遂に累は炭治郎に追い付いてしまった。

 

累「そもそも何でお前は燃えてないのかな?僕と僕の糸だけ燃えたよね。妹の力なのか知らないが苛々させてくれてありがとう。何の未練もなくお前たちを刻めるよ。」

 

炭治郎(正しい呼吸なら、疲弊していても関係ない。早く、急ぐんだ!禰豆子を守らないと・・!)

 

累「血鬼術・殺目篭!」

 

累の血鬼術で、炭治郎と禰豆子を囲むように糸が現れる。やがてそれが二人の体の目と鼻の先にまできたとき、炭治郎は自身の死を悟り、彼の頭を様々な想いが駆け抜けた。

 

炭治郎(ああ・・もう腕が上がらない・・俺はまだ、死ぬわけにはいかないのに・・善逸や伊之助のところに・・助けにいかないといけないのに・・禰豆子を人間に戻してないのに・・何もできないままここで殺されるなんて・・禰豆子を幸せにしてやれないなんて、俺は本当にダメな長男だ・・善逸、伊之助、助けられなくてごめんな・・禰豆子・・人間に戻せられなくてごめんな・・そしてブロリーさん・・勇気を振り絞って、辛い過去を話してくれて、大事な仲間になってくれたのに・・また貴方を・・一人にしてしまって・・ごめんなさい・・)

 

炭治郎は禰豆子を抱き締めながら、自分に来るであろう痛みと衝撃に備えるため強く目を瞑る。そしてとうとう、二人に累の血鬼術が当たり、身体をバラバラに―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチブチ!

 

―刻まれることはなかった。確かに何かが引きちぎれる音がしたのだが、炭治郎と禰豆子の体は無傷だったのだ。

 

炭治郎(・・・・。おかしいな・・なかなか血の匂いやバラバラにされる痛みが来ない・・一瞬すぎて痛みすら感じないのか?いや、そうじゃない。俺の前に誰かが来た匂い?一体誰が・・?)

 

炭治郎は自身に襲いかかってくる痛みや衝撃がなかなか来ないことを疑問に思い、恐る恐る目を開ける。禰豆子も誰かの気配を察したのか、目を覚ました。そして左右を見ると、先ほどの累の糸がバラバラに千切れて散乱していた。そして前を見ると、そこには

 

炭治郎「・・・・え?ブ・・ブロリーさん!?ど、どうしてここに!?」

禰豆子「んー!」

 

目の前にいたのはブロリーだった。その姿を見て炭治郎は一瞬で理解する。ブロリーが累の糸をバラバラにして自分が助けられたことに。そして累は炭治郎達を殺そうと刻むために出した糸が、第三者によって引き千切られたものなので当然面白いはずもなく、不機嫌になりながら声をかける。

 

累「お前は誰?邪魔をするならお前も刻むよ?」

 

炭治郎「ブロリーさん!お願いします!禰豆子を連れて逃げてください!殺されるのは俺だけで大丈夫ですから・・!」

ブロリー「・・・・」

 

しかし、ブロリーは炭治郎の声にも累の問いかけにも反応せず、ただ黙ったまま青筋を立てて累を睨み付けていた。ブロリーはかなり怒っているのだ。それもそのはずである。炭治郎と禰豆子を見つけたと思いきや、あと少し自分が駆けつけるのが遅ければ二人はサイコロステーキの如く刻まれていたのだから。その状況に瞬時に気づいたブロリーは、累と炭治郎達の間合いに入り、なんと手刀で糸を刻んだのだ。

ブロリーは、両手に握り拳を作ると力を込めながらやや上を向くと、自身の気を目一杯解放した。

 

ブロリー「・・はあああああぁぁぁぁ!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

炭治郎「!!地震か!?」

禰豆子「ムー!」

累「!!」

 

ブロリー自身を囲うようにあふれ出た気は、周囲の空気を地震の如く揺らし、やがて突風のように当たり一面に吹き付けられ、炭治郎は禰豆子を抱えながら吹き飛ばされないように地面に伏せ、累も同じく吹き飛ばされないように足に力を込めて踏ん張る。突風のようなものが治まると、当たり一面の空間が緑色に染まっており、その場にいる者はまるで別世界に来たような感覚に襲われた。

 

炭治郎「!?これは!?」

禰豆子「!!」

累「!?」

 

だが、それも突如終わりが訪れた。緑色のエフェクトはブロリーのいた場所に収束していき、空間が元の色合いに戻るとそこには別人のような姿のブロリーがいた。黒髪から緑がかった金髪へと変わり、元々あった筋肉質の体は更に大きく筋肉が膨れ上がり、身長も三メートルを超えるほどの大きさになっていた。そして恐怖の象徴とも言える白眼と、全身を包む禍々しい気がその異次元レベルの力の差を物語っていた。この姿こそがかつて南の銀河を破壊し尽くし、悪魔と呼ばれたブロリーの真の姿、『伝説のスーパーサイヤ人』である。しばらくして空気の揺れが治まると、ブロリーは累を指差した。

 

ブロリー「炭治郎と禰豆子を殺そうとしたクズ。まずお前から血祭りに上げてやる。」

 

累「・・姿が変わって鬼の気配がより強くなった・・ねぇ君、僕の家族にならない?」

 

ブロリー「家族だと・・?」

炭治郎・禰豆子「「!?」」

 

なんと累はブロリーに自身の家族にならないかと提案してきたのだ。これにはブロリーだけではなく、炭治郎と禰豆子も驚いた。あろうことか累は交換条件まで出してきた。

 

累「君は、見たところ凄く強い力を持っているから、僕の兄さんにぴったりなんだよね。それにそこの二人とも本物の絆で結ばれている。その絆も欲しいと思ったんだよ。君が素直に僕の兄になるなら、そこの二人は殺さずに見逃してあげるよ。どうだい?」

 

ブロリー「フン、俺に偽物の絆などいらぬぅ!!俺は大事な仲間の炭治郎や禰豆子と共にお前を倒す!!」

 

累「そう、じゃあもういい。僕達の絆を偽物呼ばわりしたお前は一息では殺さないよ。じわじわ痛め付けた後で刻んでやるから。」

 

ブロリー「その程度のパワーで俺を倒せると思っていたのか?お前だけは簡単には死なさんぞ。」

累「できるものならやってみな。」

 

累は一見、伝説のスーパーサイヤ人になったブロリーの前で余裕そうに大口を叩いているが、実は足元を見ると小刻みに震えているのだ。覚醒した時に発生した禍々しい気は炭治郎や禰豆子だけではなく累にまでひしひしと伝わっていた。その気配に累の本能は戦わずに逃げろと警告しているのだ。その事に気づいた累は驚きを隠せずにいた。

 

累(!?体がすくんで・・上手く動かない!?こんな鬼狩り如きに怯えてると言うのか・・?僕は十二鬼月なんだぞ・・!あの方に認められた異能の力を持つ十二体の配下の一人だぞ!それなのに、僕が怯えてる!?そんなはずはない!こいつもすぐに刻んでやる。)

 

しかし、累がそう思うより先にブロリーに殴り飛ばされる。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ドカッ

累「ぐはっ!?」

 

少し怯むも累はすぐに体制を立て直し、ブロリーに血鬼術を使う。

 

累「血鬼術・殺目篭!」バッ

炭治郎「!!ブロリーさん!」

 

しかし、累の血鬼術はブロリーの体に当たるものの、傷ひとつ付けることができず、刻まれたのは糸の方だった。

 

ブロリー「なんなんだぁ?今のはぁ?」

累「!!チィッ!血鬼術・刻糸牢!」

 

だが、血鬼術を変えてもブロリーには通用せず、どんなに当てても糸が刻まれるだけだった。そして累の技の合間をぬって距離を詰めると、ラリアットを決めてそのまま上空に蹴りとばす。

 

ブロリー「フハハハ!!はぁっ!」バキッドカッ!

累「がはっ!!」

 

炭治郎は禰豆子の肩を借りて、ブロリーの一方的な戦いの様子を見ていた。そしてそこに、ブロリーの後を追ってきた義勇がやってくる。

 

炭治郎「やっぱりブロリーさんはすごいなぁ・・!」

禰豆子「ムー!」キラキラ✨

 

義勇「炭治郎。」

 

炭治郎「!!貴方は・・!確か、冨岡さん!」

禰豆子「んー。」

 

義勇「炭治郎、(あれ)なんだ?」

 

義勇の言葉が足りないものの視線がブロリーの方を向き、心なしか引きつったような顔をしていることから、その戦いぶりの事を言ってるのだと理解する。

 

炭治郎「彼はブロリーさんです、俺の大事な仲間です。」

 

義勇「(彼は)サイヤ人か?」

 

炭治郎「!!よくご存じで!」

 

義勇「(お館様から)聞いた。(彼には)手を出すなと言われた。(鬼の気配とは)少し違う。」

 

三人が話している間にも一方的な戦いは続いており、ブロリーに散々痛め付けられた累は片膝をついて肩で息をしていた。

 

累「・・くそっ!」

 

ブロリー「フフフ!よく頑張ったがとうとう終わりの時が来たようだなぁ。」

 

累「・・!!悪魔だ・・僕の邪魔ばかりする屑め!血鬼術・刻糸輪転!」

 

ブロリー「無駄なことを・・今楽にしてやる!!破壊の呼吸!拾の型!ギガンティックミーティア!」ポウ ガシッ ポーピー

 

ブロリーの技は掌サイズの気弾だったが、手から放たれた瞬間何十倍何百倍の大きさに膨れあがりながら累の技とぶつかり合う。だが、拮抗することなく打ち破り、そのまま累を飲み込んだ。

―その直前、累の視界に入ったのは炭治郎と禰豆子が支え合う姿だった。それを見て更に、累の憎悪が激しく増していた。

 

累(くそっくそっ・・殺す殺す!あの兄妹は必ず・・殺す!!)

 

しかし、憎悪と同時に脳裏にあることがよみがえってきていた。それは鬼の家族を作ったとき、人間の頃の記憶を取り戻そうとしている昔の自分の姿だ。累は生まれつき体が弱く、歩くことさえ呼吸困難に陥ってしまう程であった。ある日鬼舞辻無惨が現れ、鬼になることで強い体を手に入れることができた。だが、累の両親は喜ぶことはなかった。累が人間を喰わなければいけなかったからだ。

 

「何てことをしたんだ!累・・!!」

 

当時は人間を喰った累を殺そうとした両親。そのときの累は、自分と親の絆が偽物だと思って殺したのだ。しかし、父も母も最期は累を丈夫に産めなかったことの後悔と、罪を共に背負って責任を果たそうとする親としての努めの言葉を言って、この世を去って行ったのだ。このときの累は本物の絆を自分の手で切ってしまったことに初めて気づいた。絶望しているなか、無惨は同時の累にこんな言葉をかけた。

 

無惨「全ては、お前を受け入れなかった親が悪いのだ。己の強さを誇れ。」

 

全てを失った累は無惨の言葉にすがる他なかった。親が恋しいあまり偽りの家族を作った。それでも自分が一番強い理由から、誰も庇えないうえ守れないのだ。そのため虚しさが止まず、自分が何をしたいのかも忘れていた。しかし、ブロリーの技に当たった瞬間、累ははっきりと思い出す。自分の両親に謝りたかったのだ。

 

累「でも・・山ほど人を殺した僕は・・地獄に行くよね・・父さんと母さんと・・同じところへは・・行けないよね・・」

 

その時、累に手を差しのべたのは両親の幻であった。二人は優しく声をかける。

 

「一緒に行くよ、地獄でも。父さんと母さんは累と同じところに行くよ。」

 

累「ごめんなさい!全部僕が悪かったよ!ごめんなさい・・!ごめんなさい・・!」ドッカーン デデーン☆

 

累は人間の姿に戻りつつ両親に泣きついて、両親は優しく抱き止めた。累の心からの謝罪を最期に、緑のエフェクトに包まれていった。―ブロリーの技『ギガンティックミーティア』に完全に飲み込まれたのだ。そしてそのままブロリーの技は大爆発を起こし、累の体は跡形もなく消えて着物だけが宙を舞って炭治郎の前に落下した。

 

炭治郎(小さな体から抱えきれない程の大きな悲しみの匂いがする・・)

 

炭治郎は残った累の着物に両手を合わせて冥福を祈った。そこに義勇が足で着物を踏みつけて炭治郎に厳しい言葉をかけた。

 

義勇「人を喰った鬼に情けをかけるな。子供の姿をしていても関係ない。何十年何百年生きている醜い化け物だ。」

 

炭治郎「殺された人たちの無念を晴らすため、これ以上被害を出さないため・・勿論俺は容赦なく鬼の頸に刃を振るいます。だけど、鬼であることに苦しみ、自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない。鬼は人間だったんだから、足をどけてください。醜い化け物なんかじゃない。悲しい生き物だ。」

 

義勇「お前って奴は・・」

 

義勇が何かを言いかけたとき、ブロリーが三人の前に戻ってきた。

 

ブロリー「炭治郎、大丈夫か?」

 

炭治郎「ブロリーさん、俺は大丈夫です。ありがとうございました!」

禰豆子「ムー!」

 

ブロリーの安否の確認に、炭治郎も禰豆子も笑顔で無事を伝えた。それに安堵したのか、ブロリーは通常形態に戻ると義勇の方を見る。

 

ブロリー「誰だぁ?」

 

炭治郎「この方は冨岡さんです。俺と禰豆子をこの鬼殺隊へ導いてくれたんです。」

 

義勇「・・冨岡義勇。(炭治郎たちが)お世話になっている。(貴方は)サイヤ人か?」

 

ブロリー「ブロリーです・・。何故貴様は俺がサイヤ人だと知っている?」

 

ブロリーは自分の種族を教えていないはずなのにも関わらず、サイヤ人と当てた義勇に対して眼光を鋭くした。

 

義勇「(お館様に)聞いたからだ。(俺は貴方を)殺す気はない。」

 

炭治郎「ブロリーさん。冨岡さんも殺す気はないみたいです。なのでそこまで警戒しなくても大丈夫ですよ。」

 

ブロリー「・・炭治郎がそこまで言うなら信じる。」

 

ブロリーが義勇への警戒が解けたと同時に禰豆子がブロリーへと抱きついた。

 

禰豆子「ムー!」ぎゅっ

 

ブロリー「禰豆子。抱っこですかぁ?」ひょい

 

ブロリーは軽々と禰豆子をお姫様抱っこして、お互いに微笑み合っていた。その光景を見て、義勇は最初に炭治郎達と山で出会ったときのことを思い出していた。しかし、それは突如として終わる。何者かが炭治郎達に近づき、気配を察知した義勇は刀を振り、ブロリーは禰豆子を抱えながら後ろへ跳んで、何者かから距離をとった。

 

しのぶ「あら?どうして邪魔するんです冨岡さん。鬼とは仲良く出来ないって言ってたくせに、何なんでしょうか?そんなだからみんなに嫌われるんですよ。」

 

その正体は、刃が切っ先にしかない独特な刀を持っているしのぶであった。しのぶは刀を義勇達に向ける。

 

しのぶ「さぁ冨岡さん。どいてくださいね。」

 

義勇「俺は嫌われてない。」

炭治郎・しのぶ・ブロリー「!!」

 

しのぶの要件に対し、全く違う答えを返した義勇。その答えに炭治郎、ブロリー、しのぶが反応する。

 

しのぶ「あぁそれ・・すみません。嫌われている自覚が無かったんですね。余計なことをいってしまって申し訳ないです。」

義勇「!!」

 

しのぶの言葉に今度は義勇が反応し、炭治郎は冷や汗をかいていた。

 

しのぶ「坊や。」

炭治郎「はっはい!」

 

しのぶ「坊やの後ろの二人は鬼ですよ。危ないですから離れてください。」

 

炭治郎「違います!いや違わないけど・・俺の妹と仲間です!」

 

しのぶは禰豆子とブロリーの事を鬼だと言っていたが、炭治郎は妹と仲間と答える。だが

 

しのぶ「まぁそうなのですか。可哀想に、ではー・・苦しまないように優しい毒で殺してあげましょうね。」

 

なんとしのぶは、禰豆子とブロリーを優しい毒で殺すと宣言したのだ。その表情は冷たく、炭治郎は恐怖で震えるのを必死に我慢していた。しかし、ここで禰豆子を抱えたブロリーが一歩前に出た。

 

ブロリー「誰だお前は?死にたいのか?」

 

しのぶ「あぁ・・そういえば名乗っていませんでしたね。胡蝶しのぶ、鬼殺隊の蟲柱です。そして、今から貴方を冥土に送る者です。私の毒で優しく殺してあげます。」

 

ブロリー「毒だと?フハハハハハ!!ハハハハハハ!!毒如きでこの俺を殺せるとでも思っているのか?可愛くないクズめ。」

 

ブロリーの言葉にしのぶは反応し、青筋を立てて言葉を返す。

 

しのぶ「それは私のことを言っているのですか?それと私では貴方に勝てないと言いたいのですか?」

 

しかし、しのぶが聞き返したときには、ブロリーはもうしのぶの方を見ていなかった。甘えてくる禰豆子に夢中になっていた。それを見たしのぶの怒りは更に高まった。

 

禰豆子「ムー。///」

ブロリー「フハハハ!禰豆子は甘えん坊です。カワイイ!」

 

しのぶ「・・無視ですか。いい度胸してますね~。」

 

ブロリーが禰豆子から視線を戻すと、再びしのぶの方を見る。そして再び言葉を放つ。

 

ブロリー「なんだ、まだいたのか?大人しく帰っていれば無視されずに済んだものを。流石ムシケラと誉めてやりたい所だぁ!」

 

完全に最初からいなかったかのような扱いを受けたしのぶは我慢の限界に達し、ブロリーに襲いかかった。しかし、ブロリーは禰豆子を抱えたまま楽々回避した。

 

しのぶ「坊やの大事な仲間と聞いたので、優しい毒で殺してあげようかと思いましたが気が変わりました。やっぱり貴方だけは絶対に許しません。私の毒で心置きなく殺します。」

 

ブロリー「フン!こいつはいい。やってみろ!」

 

笑顔だが目が笑っておらず冷たい表情で、しのぶは再びブロリーに刺突しようとしたが、ブロリーの前に義勇が出て刃を弾き、そのまま組み合いになる。

 

しのぶ「冨岡さん?鬼を斬りに行くための私の攻撃は正当ですから、違反にはならないと思いますけど。冨岡さんのこれは隊律違反です。鬼殺の妨害ですからね、どういうつもりですか?」

 

義勇「胡蝶、(彼は)サイヤ人だ。(鬼とは違う気配が)わからないのか?(殺しては)いけない。」

 

しのぶ「何言ってるんです?どこをどう見ても鬼じゃないですか。そんな適当な事を言ってるからみんなに嫌われるんですよ。」

 

義勇「俺は嫌われてない。」

 

義勇としのぶが組み合っている間に、ブロリーは禰豆子をゆっくりと降ろす。禰豆子と炭治郎は不思議そうにブロリーを見たが、本人は斜め上の方向を見る。

 

ブロリー「誰だ?こっちに向かってくる気を感じる。」

炭治郎「!!」

 

ブロリーの言葉に反応した炭治郎と禰豆子も同じ方向を見る、その二人につられるように義勇としのぶも斜め上の方向を向いた。そこには一人の少女が木の枝の上に立っていた。しのぶと同じ蝶の髪飾りをつけていて、隊服に白い羽織を着ていた。名前は栗花落カナヲであり、胡蝶しのぶの継子である。しのぶはカナヲのことを見ると提案する。

 

しのぶ「カナヲ、丁度いいところに来ましたね。二人で後ろにいる鬼二人を倒しましょう。」

 

しのぶの提案にカナヲは日輪刀を抜き、ブロリーに襲いかかる。しのぶも義勇の拘束を解くと、独特の刀で同じように襲いかかった。しかし、カナヲとしのぶの日輪刀をブロリーは素手で受け止めた。

 

ブロリー「フン!こんなもの!」ガシッ

 

カナヲ(!!素手で刀を・・!)

 

しのぶ「なっなんで・・!?」

 

素手で刀を受け止めたことにカナヲは内心で驚き、しのぶは動揺していた。二人の疑問に答えるように義勇が口を開く。

 

義勇「(彼は十二鬼月の)血鬼術(さえ)効かなかった。刀を止める(ことくらい)簡単だ。(それに)鬼ではない。」

 

炭治郎「ブロリーさんは鬼ではありません!サイヤ人です!人を喰ったりはしません!」

 

しのぶ「坊やまで・・どうしましょう。」

 

カナヲ「・・・・」

 

義勇やしのぶ、そして炭治郎の口論を聞いていたカナヲは、懐から表裏とかかれた一枚の硬貨を取り出すと弾いた。出た目は表であり、それを見たカナヲは刀をしまうとブロリーの前まで駆け寄る。

 

しのぶ「?カナヲ?」

 

カナヲ「貴方、鬼じゃない・・確か、最終選別で鬼を全滅させた人・・」

しのぶ・義勇「!?」

 

鬼を全滅させたとカナヲのとんでもない情報に、義勇としのぶは驚きを隠せなかった。その時、鎹鴉が騒がしく飛び回った。

 

鎹鴉「伝令!!伝令!!カァァ!伝令アリ!!炭治郎・禰豆子両名ヲ拘束!本部へ連レ帰ルベシ!!炭治郎及ビ鬼ノ禰豆子!拘束シ本部へ連レ帰レ!!炭治郎!市松模様ノ羽織、額二傷アリ!竹ヲ噛ンダ鬼禰豆子!!」

 

鎹鴉の伝令にカナヲは禰豆子と視線を合わせる。

 

カナヲ「あなた禰豆子?」

 

炭治郎は疲労と怪我で気絶すると、ブロリーが背負う。そして義勇がブロリーに声をかける。

 

義勇「(これから炭治郎達と共に)本部の産屋敷へ向かう。(貴方も)同行願う。」

 

ブロリー「はい・・」

 

ブロリーは承諾し、炭治郎を背負い禰豆子が入った箱を片手で抱えて義勇、しのぶ、カナヲの三人についていった。

 

てくてく、てくてく

 

とことこ、とことこ

 

ギュピ、ギュピ、ギュピ、ギュピ

 

義勇・しのぶ(何の音だ?/何の音なのでしょう?)

 

一人だけ全く違う足音に、二人は疑問に思いながらも歩いていく。六人は那田蜘蛛山をあとにして、産屋敷へ向かうのだった。




今回で那田蜘蛛山編は終わりです。遂に伝説形態が登場しました。他にも様々な形態が登場する予定です。それではまた次回。


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ブロリー大暴走!破茶滅茶の柱合会議!

第十二話です。ふおお!?

ガシッ キーン ドゴーン!!

ブロリー「主・・三週間も遅れるとはどういうことだぁ?」

主「ごっごめんなさい。キャラの台詞を書くのが大変で・・」

ブロリー「ほう?だから遅れたと?」

主「はっはい。」

ブロリー「どうだ?炭治郎。」

主「えっ?炭治郎!?」

炭治郎「主!嘘はいけないぞ!二週間の間は全く手付かずだったじゃないか!」

ブロリー「主・・遺言はあるか?」

主「お助けください!」

ブロリー「出来ぬぅ!炭治郎手伝え!」

炭治郎「はい!ブロリーさん!」

主「えっ?ちょ・・ま・・ギャアアアアア!!!」ドカバキベキ

主「」チーン

ブロリー「皆さんお詫び致します。主には俺からきつく言っておきます。」

炭治郎「三週間も遅れてしまって本当申し訳ありません。それでは本編どうぞ。」


ここは鬼殺隊の本部である産屋敷である。気絶していた炭治郎は腕を後ろに縛られ、那田蜘蛛山の事後処理を行った隠の掛け声により目を覚ます。

 

隠「起きろ。起きるんだ。起き・・オイ!オイコラ!やいてめぇ!やい!!いつまで寝てるんださっさと起きねぇか!!柱の前だぞ!!」

 

炭治郎の目の前にはしのぶと義勇を含め、大小様々な体格の九人の剣士が見下ろしていた。彼らは鬼殺隊の中で最も位の高い剣士、柱である。

 

炭治郎(!!柱・・!?柱ってなんだ?何のことだ?この人たちは誰なんだ?ここはどこだ?)

 

炭治郎が状況を飲み込めずにいると、しのぶがまるで心を読んだかのように説明した。

 

しのぶ「その様子ではわかっていないようですね。柱とは、鬼殺隊の中で最も強い九名だけがもらえる称号です。そしてここは鬼殺隊の本部です。貴方は今から裁判を受けるのですよ。竈門炭治郎君。」

 

しのぶがこれから行われることと柱の説明をすると、金髪に炎を連想させる羽織を着ている。炎柱である煉獄杏寿郎が口を開く。

 

杏寿郎「裁判の必要などないだろう!鬼を庇うなど明らかな隊律違反!我らのみで対処可能!鬼もろとも斬首する!」

 

杏寿郎の言葉を肯定するように、派手好きな音柱、宇随天元が自分が頸を斬ると言い出す。

 

天元「ならば俺が派手に頸を斬ってやろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう派手派手だ。」

 

しかし、しのぶと共に柱ではもう一人の女性である恋柱、甘露寺蜜璃は悲しそうな表情をして胸を痛めていた。

 

蜜璃(えぇぇ・・こんな可愛い子を殺してしまうなんて・・胸が痛むわ・・苦しいわ・・)

 

蜜璃は声に出しておらず、心で思っていたのでそんな心中を知らずに、一際大きな体格で数珠を持ちながら両手を合わせて涙を流している、岩柱、悲鳴嶼行冥は炭治郎の存在そのものを否定する。

 

行冥「あぁ・・なんというみすぼらしい子供だ、可哀想に・・生まれてきたこと自体が可哀想だ。」

 

炭治郎に一切興味を示さず、空を流れている雲を見ている霞柱、時透無一郎は物思いにふける。

 

無一郎(何だっけ?あの雲の形。何て言うんだっけ?)

 

行冥「殺してやろう。」

杏寿郎「うむ。」

天元「そうだな、派手に。」

 

柱達が各々の思いを口にしているなか、炭治郎は禰豆子やブロリーのことを探していた。するとその時、上からも声が聞こえてきた。

 

炭治郎(禰豆子!!禰豆子どこだ!ブロリーさん!ブロリーさん!善逸!伊之助!村田さん!!)

 

「そんなことより冨岡はどうするのかね。」

 

炭治郎「!?」

 

炭治郎が声をした方に顔を向けると、木の上に口元に包帯を巻き、頸回りに蛇が乗っている蛇柱、伊黒小芭内がネチネチと義勇を責めていた。

 

小芭内「拘束もしてない様に俺は頭痛がしてくるんだが、胡蝶めの話によると隊律違反は冨岡も同じだろう。どう処分する、どう責任を取らせる、どんな目に合わせてやろうか。何とか言ったらどうだ冨岡。」ネチネチ

 

蜜璃(伊黒さん、相変わらずネチネチして蛇みたい。しつこくて素敵)キュン

 

義勇「・・・・」

 

蜜璃(冨岡さん、離れたところに一人ぼっち、可愛い)キュン

 

蜜璃は小芭内のネチネチとした言葉責めにも少し距離があるところで一人佇んでいる姿にも胸をときめかせていた。そして小芭内のことをしのぶがなだめていた。

 

しのぶ「まぁいいじゃないですか。大人しくついて来てくれましたし、処罰は後で考えましょう。それよりも私は坊やの方から話を聞きたいですよ。」

 

炭治郎(俺のせいで冨岡さんまで・・)「・・・・っ」ゲホッゲホッゴホッ

 

炭治郎は何とか声を出そうとするも、積み重なった疲労と怪我の影響もあってうまくしゃべれなかった。そこにしのぶが鎮痛剤入りの水を飲ませた。

 

しのぶ「水を飲んだ方がいいですね。ゆっくり飲んでから話してください。鎮痛薬が入ってるため楽になります。怪我が治ったわけではないので無理はいけませんよ。」

 

水を飲んだことで少し楽になった炭治郎は、柱達に説得を始めた。

 

炭治郎「・・俺の妹は鬼になりました。だけど人を喰ったことはないんです。今までもこれからも、人を傷つけることは絶対にしません。」

 

小芭内「くだらない妄言を吐き散らすな。そもそも身内なら庇って当たり前。言うこと全て信用できない。俺は信用しない。」ネチネチ

 

行冥「あああ・・鬼に取りつかれているのだ。早くこの哀れな子供を殺して解き放ってあげよう。」ジャリジャリ

 

炭治郎「聞いてください!!俺は禰豆子を治すために剣士になったんです!禰豆子が鬼になったのは二年以上前のことで、その間禰豆子は人を喰ったりしてない!」

 

天元「話が地味にぐるぐる回ってるぞアホが。人を喰ってないことこれからも喰わないこと、口先だけでなくド派手に証明してみせろ。」

 

無一郎(なんだっけあの鳥・・ええと・・)

 

ここで、今まで思うだけで口に出していなかった蜜璃が一つの疑問を口にした。

 

蜜璃「あのぉ、でも疑問があるんですけど・・お館様がこのことを把握してないとは思えないです。勝手に処分しちゃっていいんでしょうか?いらっしゃるまでとりあえず待った方が・・」

 

蜜璃の疑問に他の柱達は黙っていた。炭治郎はそのあとも頑張って説得を続けた。

 

炭治郎「妹は俺と一緒に戦えます!鬼殺隊として人を守るために戦えるんです!だから!」

 

「オイオイ、なんだか面白いことになってるなァ。」

 

炭治郎の言葉を遮って横から声が聞こえた。その方向に顔を向けると、全身に傷がある風柱、不死川実弥が、隠の言葉を気にも止めずに、禰豆子の入った箱を片手で持ち上げながらやって来た。箱を見た義勇は顔をしかめた。

 

隠「困ります不死川様!どうか箱を手放してくださいませ!」

 

実弥「鬼を連れた馬鹿隊員はそいつかいィ?一体全体どういうつもりだァ?」

 

蜜璃(不死川さん、また傷が増えて素敵だわ)キュン

 

隠「胡蝶様、申し訳ありません・・」

 

しのぶ「不死川さん、勝手なことをしないでください。」

 

しのぶの声のトーンが少し低くなり、怒っていることがわかった。だが、実弥にはしのぶの言葉は耳に入ってないようだった。

 

実弥「鬼が何だって?坊主ゥ。鬼殺隊として人を守るために戦えるゥ?そんなことはなァ、ありえねぇんだよ馬鹿がァ!!」ドス!!

 

禰豆子「ム!!・・うう・・」

 

実弥は言い切ると同時に、持っていた日輪刀で箱ごと禰豆子を串刺しにした。義勇としのぶは顔をしかめ、蜜璃は悲しそうな表情をする。箱の中で禰豆子が苦しそうに目を瞑り、箱の角から血が滴った。炭治郎は怒りで実弥に頭突きを食らわそうとする。しかし、炭治郎が動くよりも先にブロリーがどこからともなく現れ、実弥を殴り飛ばし、塀に叩きつけられる。

 

ブロリー「デヤァッ!!」バキッ!

 

実弥「ぐはっ!?」ガッシャーン

 

「!!」

 

炭治郎「!!ブロリーさん!」

 

ブロリー「チィ!」ガシッ!

 

実弥「がぁっ!?」

 

ブロリー「フン!」ドカッ!

 

実弥「ぐぼっ!?」

 

それだけではなく、更に実弥の頸を絞めて持ち上げると、そのまま蹴り飛ばす。そしてどさくさに禰豆子の箱を奪い返すと、守るように抱き抱えて実弥の方を睨んだ。他の柱はブロリーの登場に驚きを隠せなかった。

 

杏寿郎「・・よもやよもやだ!日に当たっても死なない鬼がいたなんてな!」

 

天元「いきなり鬼が現れたと思ったら、派手に不死川を殴り飛ばしたな。俺も派手に驚いた。」

 

蜜璃(この人、凄く体が大きくて格好いい上に同じ鬼の子を庇って怒ってる。素敵!)キュン

 

行冥「南無・・日に当たるという鬼の弱点を覆してしまった哀れな青年だ。」

 

しのぶ「・・那田蜘蛛山の時の・・」

 

無一郎「鬼なのに、隊服を着ている。仲間を装ってる鬼?」

 

実弥は痛みに耐えながら地面から起き上がると、青筋を立てながらブロリーを睨み付け、日輪刀を構える。

 

実弥「テメェェ、何で鬼がここにいるんだよォ?しかもなんで日に当たっても平気なんだよォ?」

 

ブロリー「何勝手に俺の大事な仲間の炭治郎と禰豆子を殺そうとしてるんだぁ?義勇以外全員クズなのか?それともただの馬鹿なのか?」

 

この言葉に義勇と蜜璃以外の他の柱達は腹を立てた。実弥に関しては更なる怒りで表情が歪んでいた。

 

無一郎「君、僕達は柱だよ?口の聞き方もわからないの?」

 

ブロリー「?炭治郎、柱ってなんだ?」

 

炭治郎「えっと・・鬼殺隊の中で最も強い九人だけがもらえる称号らしいです。」

 

ブロリー「最も強い?炭治郎、それは本当なのか?」

 

炭治郎「えっと・・胡蝶さんが言うにはそうらしいです。」

 

炭治郎の説明により、ここにいる人物とその意味を理解する。しかし、ブロリーは他の柱達を見回すと、更に神経を逆撫でする言葉を呟いた。

 

ブロリー「弱い、話にならん。」

 

本人は呟いたつもりだが、その言葉は他の柱達にもしっかり届いてしまっていた。義勇と蜜璃以外の柱は怒りの表情を浮かべ、刀を構える。

 

天元「テメエは誰の前にいるのかわかってねぇみたいだな。派手にお灸をすえてやるよ。」

 

行冥「南無・・上下関係を知らない哀れな青年の鬼だ。殺して解き放ってあげよう。」

 

実弥「テメエ・・ぶっ殺してやる!!」

 

ブロリー「フン、そうこなくちゃ面白くない。」

 

ブロリーが不敵に笑って柱達と激突しそうになったが

 

義勇「やめろ!!もうすぐお館様がいらっしゃるぞ!!」

 

義勇が皆を止め、声に反応した柱達は渋々刀をしまう。そしてブロリーがふと蜜璃を見ると、彼女がいる場所まで歩いていった。

 

ギュピ、ギュピ、ギュピ、ギュピ

 

ブロリー「さっき炭治郎と禰豆子を助けてくれたことに対して礼が言いたい、感謝する。えっと・・」

 

蜜璃「・・蜜璃。甘露寺蜜璃です。鬼殺隊の恋柱をさせてもらっています。」

 

ブロリーに唐突に話しかけられて戸惑いながらも蜜璃が自分の名前を言うと、ブロリーは口元に笑みを浮かべる。

 

ブロリー「甘露寺蜜璃か・・覚えたぞ。カワイイ名前だ!」

 

蜜璃「ありがとうございます!よろしければ貴方の名前も教えてください。」

 

ブロリー「ブロリーです。」

 

蜜璃「ブロリーさんですね、キュンキュンします。素敵なお名前ですね!」

 

ブロリーと蜜璃は互いの名前を誉めると微笑みあった。その光景に、他の柱は度肝を抜かれていた。するとそこに、最終選別時にいた産屋敷家の四女、産屋敷かなたが家主が来たことを告げる。

 

かなた「お館様のおなりです!」

 

お館様の正体は、身体は細身で顔が花から上が火傷の跡のように爛れていた。この産屋敷の主産屋敷耀哉である。

 

耀哉「よく来たね。私の可愛い剣士たち。」

 

炭治郎・ブロリー「!!」

 

耀哉「お早う皆。今日はとてもイイ天気だね。空は青いのかな?顔ぶれが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられたこと、嬉しく思うよ。」

 

産屋敷輝哉が姿を現すと、他の柱たちが全員その場に膝をつく。そして義勇が小声で炭治郎に指示する。

 

義勇「炭治郎、俺達の真似をしろ。」

 

義勇の声に反応し、炭治郎はあわてて柱達と同じように膝をついた。そしてブロリーは皆とは少し離れた場所に立っていた。

 

実弥「お館様におかれましても御壮健で何よりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます。」

 

輝哉「ありがとう実弥。」

 

炭治郎(この人・・知性も理性も全く無さそうだったのにすごいきちんと喋りだしたぞ。)

 

蜜璃(私が言いたかった・・お館様にご挨拶・・)

 

実弥は見た目と裏腹にきちんと挨拶を言うと、炭治郎は若干引いていて、蜜璃は心で実弥に先越されたことを悔しく思っていた。

 

実弥「畏れながら、柱合会議の前にこの竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士と日に当たっても死なない鬼ブロリーについて、ご説明いただきたく存じますがよろしいでしょうか?」

 

輝哉「そうだね。驚かせてしまってすまなかった。まずはブロリーについて、彼は鬼ではなくサイヤ人という戦闘民族だよ。確かに鬼と気配はそっくりだけど、どうやら義勇は鬼とは違うことに気づいているみたいだね。」

 

「!?」

 

他の柱達は、義勇がブロリーを鬼ではないと見破っていたことに対して驚いていた。実際にこの場でブロリーのことをサイヤ人だとわかったのは輝哉、義勇、炭治郎、禰豆子の四人のみだったのだ。そして義勇は輝哉の意見を肯定する。

 

義勇「御意。人を喰わずに炭治郎と共に鬼を倒していたので、彼をサイヤ人と判断いたしました。」

 

輝哉は義勇の答えに頷き、産屋敷家の子供達に教えられてブロリーがいる方向へ向いた。

 

輝哉「そこにいるのはサイヤ人であるブロリーだね。はじめまして、こうして対面したことはなかったね。」

 

しかし、ブロリーはサイヤ人であることを当てられると、怪訝な表情を浮かべる。そして

 

ブロリー「誰だお前は?何故俺の事を知っている?それにお前は俺の親父ではないだろう、何故俺を自分の子供と言うんだ?殺されたいのか?」

 

「!!!」

 

ブロリーの爆弾発言にはその場にいる全員が驚き、義勇と蜜璃以外の柱に関しては青筋を浮かべて今にも飛びかからんと言わんばかりの形相だった。

 

実弥「テメエ!!何お館様に失礼な態度をとってんだァ!?殺してやろうかァ!?」

 

無一郎「お館様への口の聞き方もわからないの?頭大丈夫?」

 

天元「テメエは俺が派手に頸を跳ねてやるよ!派手派手だ!」

 

しのぶ「あらあら・・これは後でお仕置きが必要ですね・・!」

 

しかしブロリーは他の声は全て無視しており、ひたすら輝哉の方を怪訝な表情で見ていた。輝哉は人差し指を口に当てて"静かに"のジェスチャーをすると柱達は静かになる。

 

輝哉「ごめんね。確かにいきなり知ってるように聞かれたら怪しむよね。私は産屋敷輝哉。産屋敷家と鬼殺隊は昔からずっと深い繋がりがあるんだよ。だから私は鬼殺隊に入っている人たちを私の子供達と呼んでいるんだ。それにサイヤ人のことについては鎹鴉から聞いたよ。戦うことに特化した戦闘民族だってね。でも私は君の力を利用するつもりはないよ。信じてくれるかい?」

 

ブロリー「・・炭治郎。俺はどうすればいい?」

 

炭治郎(くんくん・・お館様から嘘の匂いはしない。本当に大丈夫みたいだ。)「ブロリーさん、大丈夫です。俺はお館様を信用しますよ。」

 

ブロリー「炭治郎がそういうなら、輝哉を信じるとしよう。」

 

輝哉「ありがとうね、ブロリー。」

 

炭治郎に促されたブロリーは輝哉を信用することにした。だが、彼を呼び捨てで呼んだことに、柱達の怒りはまだ収まらないようだった。しかし、ブロリーの信用を得た輝哉は笑みを浮かべてお礼を言った。その後再び柱達に説明を始めた。

 

輝哉「彼は強大な力を持っているんだ。ブロリーがその気になればこの日本、いや地球そのものを粉々にすることができるだろうね。だから彼一人で鬼舞辻を軽々と倒せるんだよ。皆は信じてくれるかい?」

 

「!!!?」

 

この説明には、すでにブロリーの力を知っている炭治郎と義勇以外の全員が驚いていた。日本だけでなく、惑星一つが破壊されると聞けば誰だって驚くはずである。そして鬼殺隊の全員の最終目標である鬼舞辻無惨を軽く倒せると聞けば動揺もするだろう。しかし、ここにいるのは厳しい鍛練をくぐり抜けてきた柱達である。すぐに落ち着きを取り戻し、各々が口を開く。

 

行冥「嗚呼・・いくらお館様の説明でも、私は理解できかねる・・」ジャリジャリ

 

天元「俺も派手に信用できない。そもそもそこまでの力がその地味な身体のどこにあると言うんだ?」

 

小芭内「信用しない信用しない。そんな伽噺話のような妄言信じれるわけがない。」ネチネチ

 

杏寿郎「にわかに信じられない話だ!全力で否定する!」

 

実弥「一人で鬼舞辻を倒せる力など存在しない。お館様に無礼を働いたこの者の処罰を願います。」

 

義勇「・・・・」

 

蜜璃「私はお館様の言葉全てを信用します。」

 

無一郎「僕はどちらでも。」

 

しのぶ「私も信じます。彼は私と継子であるカナヲの刀身を素手で受け止めたのですから。」

 

柱の中ではブロリーの力を信じる者と信じない者に別れた。それを見た輝哉は、ブロリーに力の掲示を依頼した。

 

輝哉「では、直接本人に見せてもらうとしよう。実際に見れば信用せざるを得なくなるからね。皆もそれでいいかい?」

 

「「御意。」」

 

輝哉「ブロリー。君の力、見せてくれるかい?」

 

ブロリー「・・炭治郎、どうする?」

 

炭治郎「えっと・・お願いします。」

 

ブロリー「・・はぁ、一回だけだぞ。はああああぁぁぁぁ!!」ゴゴゴゴゴゴ!!

 

「「!!?」」

 

諦めたようにため息をついたがすぐに切り替えると気を高め、背が三メートルを超え、髪が緑がかった金髪で白眼が特徴的な『伝説のスーパーサイヤ人』に覚醒した。信じてない柱達は驚き、信じている柱達は満足そうな表情を浮かべている。そしてブロリーの変身が終わると、各々が思った事を再び口にした。

 

かなた「これが・・鬼舞辻をも凌ぐ程の力・・」

 

杏寿郎「よもやよもやだ!まさか本当に強大な力を持っていたとは!」

 

天元「姿が派手になったな!いいな!派手派手で良い変身だった!よし、俺にも方法を教えろ!それを取得して誰よりも派手派手な姿になってやる。」

 

行冥「南無・・お館様の仰っていたことは本当だったのか・・疑ってしまった自分が恥ずかしい・・」ジャリジャリ

 

小芭内「・・・・」

 

実弥「・・チッ。」

 

輝哉「素晴らしい。私は病の影響で目が見えないけど、鬼舞辻を凌ぐ力がひしひしと伝わってくるよ。」

 

ブロリー「輝哉。一応やってみたがこれで良いか?」

 

輝哉「うん、十分だよ。ありがとうブロリー。これでブロリーが本当に力を持っていることの証明が出来たね。」

 

「!!」

 

輝哉「それから禰豆子のことだね。炭治郎と禰豆子のことは私が容認していた。そして皆にも認めてほしいと思っている。」

 

「!!」

 

行冥「嗚呼・・たとえお館様の願いであっても・・私は承知しかねる・・」

 

天元「俺も派手に反対する。鬼を連れた鬼殺隊員など認められない。」

 

蜜璃「私は全てお館様の望むまま従います。」

 

無一郎「どちらでも・・」

 

しのぶ・義勇「・・・・」

 

小芭内「信用しない信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ。」

 

杏寿郎「心より尊敬するお館様であるが理解できないお考えだ!!全力で反対する!!」

 

実弥「鬼を滅殺してこその鬼殺隊。竈門、冨岡両名の処罰を願います。」

 

輝哉「では、手紙を。」

 

ひなき「はい。」

 

輝哉に指示されて出てきたのは産屋敷家の長女である、産屋敷ひなきである。鱗滝左近次にもらった手紙の内容を、要点だけ読み始めた。

 

ひなき「こちらの手紙は元柱である鱗滝左近次様から頂いたものです。一部抜粋して読み上げます。―"炭治郎が鬼の妹、そしてサイヤ人のブロリーと共にあることをどうか御許しください。禰豆子は強靭な精神力で人としての理性を保っています。飢餓状態であっても人を喰わず、そのまま二年以上の歳月が経過致しました。それだけではなく、過去の出来事の影響で心に深い傷を負っていたブロリーを心身共に救い出しました。人の命を助けているのです。俄には信じ難い状況ですが紛れもない事実です。もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は竈門炭治郎及び、鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します―"。」

 

その手紙には鬼殺隊のメンバーの中に禰豆子が人を襲わないことに命をかけるものが三人もいることが書かれており、炭治郎は義勇も信用してくれていることに涙を流した。

 

実弥「・・切腹するからなんだと言うのか。死にたいなら勝手に死に腐れよ。なんの保証にもなりはしません。」

 

杏寿郎「不死川の言うとおりです!人を喰い殺せば取り返しがつかない!!殺された人は戻らない!」

 

輝哉「確かにそうだね。人を襲わないという保証ができない。証明ができない。・・ただ、人を襲うということもまた証明ができない。」

 

実弥「!!」

 

その時、今まで静かにしていた『伝説のスーパーサイヤ人』形態のブロリーが口を開いた。

 

ブロリー「おい、輝哉。俺も禰豆子に命を懸ける炭治郎達の名の所に俺の名前も入れろ。」

 

実弥「!!テメエ・・お館様に何命令してんだァ!?」

 

しのぶ「・・私が教育し直す必要があるみたいですね・・!」

 

輝哉「!?ブロリーいいのかい?」

 

ブロリー「構わない。俺は炭治郎と禰豆子に助けられた。その時から俺は二人の為に力を使うと決めた。コイツらがいないこの世など俺にはなんの価値も無いからな。禰豆子が人を殺した場合、禰豆子と炭治郎を殺して俺も死ぬ。」

 

輝哉「ブロリーにも相当な覚悟があるんだね。わかったよ。これで禰豆子に命を懸ける者が三人から四人に増えたね。」

 

ブロリー「だが、「だが?」禰豆子が人を喰わずに鬼殺隊の勝手な判断で殺された場合、俺はこの星を破壊し尽くすだけだ。」

 

「!!?」

 

この発言にはブロリー以外の全員が驚き、義勇と蜜璃以外の柱に至っては青ざめた顔でブロリーを見ていた。

 

輝哉「わかったかな?禰豆子が二年以上もの間、人を喰わずにいるという事実があり、禰豆子の為に四人のものの命が懸けられている。これを否定する為には否定する側もそれ以上のものを差し出さなければならない。」

 

実弥「・・・・っ!」

 

杏寿郎「・・・・むう!」

 

輝哉「それに炭治郎とブロリーは鬼舞辻と遭遇している。ブロリーは実際に鬼舞辻の頭を鷲掴みにして倒そうとしていた。」

 

「!!!」

 

輝哉の言葉に柱達は驚き、禰豆子の箱を持っているブロリーと炭治郎に詰めよって質問責めする。

 

天元「そんなまさか・・柱ですら誰も接触したことが無いというのに・・こいつらが!?どんな姿だった!?能力は!?場所はどこだ!?」

 

無一郎「戦ったの?」

 

実弥「鬼舞辻は何をしていたァ!?根城は突き止めたのかァ!?おい答えろォ!!」

 

天元「黙れ!俺が先に聞いてるんだ!まず鬼舞辻の能力を教えろ!」

 

ブロリー「フン、教えると思っているのか?」

 

実弥「柱としての命令だァ!鬼舞辻の情報を教えろォ!」

 

ブロリー「うるさい!俺に命令するな!」

 

鬼殺隊の柱の命令は一隊士如きでは逆らうことは絶対できない。組織である以上上下関係は絶対のはずなのだが、ブロリーにとってはそんなことは知ったことではない。柱が力ずくでねじ伏せようとしても、惑星を遊び感覚で壊すことができるブロリーの力があれば楽々返り討ちにできるのだ。自分よりも弱くてなお認めていない人物に命令されるのはブロリーにとっては屈辱以外のなにものでもなかった。頑なに答えようとしないブロリーと質問責めしている柱達の空気は再び緊迫するが、輝哉が再び静かにのジェスチャーをすると、柱達は静かになった。

 

輝哉「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくない。恐らくは禰豆子にも、鬼舞辻にとって予想外の何かが起きているのだと思うんだ。」

 

炭治郎「・・・・」

 

輝哉「わかってくれるかな?」

 

「・・・・」

 

実弥「わかりませんお館様!人間ならば生かしておいてもいいが鬼は駄目です。承知できない!」ギリギリ

 

実弥は歯軋りをすると、自分の腕を日輪刀で傷つけ血を吹き出させる。

 

炭治郎「!?」

 

蜜璃(え?え?何してるの何してるの?お庭が汚れるじゃない。)

 

実弥「お館様・・!!証明しますよ俺が!鬼という物の醜さを!!」

 

輝哉「実弥・・」

 

実弥はそのまま禰豆子を傷つけようと、箱を持っているブロリーに向かっていくが、ブロリーは禰豆子の箱を抱えながら余裕を持って実弥の刺突を避けた。

 

実弥「サイヤ人・・退けよォ。俺が証明してやるからよォ。」

 

ブロリー「貴様、さっきも言ったが禰豆子を傷つけるならば俺はこの星を破壊し尽くすぞ?それともそれを知っててもなお殺ろうとすることは、わざわざ俺に殺されたいってことなのか?貴様がその気なら俺も殺るぞ?」

 

実弥「・・テメエは黙って聞いてりゃいい気になりやがってェ!柱だけのみならずお館様にまでタメ語を使った挙げ句命令までするとはいい度胸だァ!テメエは今この場で殺してやるよォ!」

 

実弥は青筋を浮かべて表情を歪ませた、ブロリーへの怒りが限界に達し、我慢できなくなったのだ。日輪刀を構え直しブロリーに斬りかかっていく。しかし

 

実弥「風の呼吸!弐の型!爪々・科戸風!」ブン

 

ブロリー「こんなもの!」ガシッ

 

実弥「!!がぁっ!?」

 

ブロリーは片手だけで実弥の日輪刀を受け止めた、そして動揺して動きを止めた実弥の胸ぐらを締め上げた。ただあまりにもブロリーが力強く胸ぐらを持ち上げているため、隊服が実弥の頸を絞めていた。実弥は刀を離し、苦しそうに両手で片腕を掴み足をばたつかせていた。早くブロリーが手を離さなければ実弥が窒息死してしまう。

 

ブロリー「おい貴様!最後に言い残すことはあるか?」

 

実弥「うがっ・・ぐあっ・・あぁっ・・」

 

ブロリー「何もないのか?ならばもう死ぬがいい。」

 

ブロリーが禰豆子の箱を置いてもう片方の腕で気弾を作り、実弥に止めを差そうとしたそのとき

 

炭治郎「ブロリーさん!やめてくださああぁぁい!!!」ゴッシャア!

 

ブロリー「馬ぁぁぁぁ鹿ぁぁぁぁなぁぁぁぁ!!!」

 

実弥「ゴホッゴホッゴホッ」

 

なんと炭治郎が実弥を庇ってブロリーに頭突きをしたのだ『伝説のスーパーサイヤ人』形態でも、炭治郎の頭突きはダメージが大きかったらしく、ブロリーは実弥を離し頭部を押さえていた。実弥は意識が朦朧としていた影響で受け身を取れずに地面に落下してそのまま気を失った。頭突きされたブロリーは怒りと困惑で炭治郎に叫んだ。

 

ブロリー「炭治郎!!何故邪魔をする!?」

 

ブロリーの怒号を受け、多少怯みはしたものの、炭治郎は実弥の前から退くことなくブロリーに叫び返した。

 

炭治郎「ブロリーさん!確かにこの傷だらけの人は日輪刀で禰豆子を傷つけようとしました!でもだからと言って殺そうとするのはやり過ぎですよ!!禰豆子がさっき傷つけられたこと、本当は俺もすごく腹が立ちました!でもブロリーさんがこの人に制裁を加えてくれたからスッキリしたんです!それに二回目の時はブロリーさんが禰豆子を守ってくれたんですから!一方的にこの人を殺してしまったら、ブロリーさんだけが悪者になってしまうんです!俺はそんなのは嫌だ!だからお願いです!もうやめてください!」

 

ブロリー「・・・・」

 

ブロリーは炭治郎を叫びを聞き、しばらく黙りこんでいたが、やがて『通常形態』に戻ると、炭治郎に頭を下げた。

 

ブロリー「・・炭治郎済まなかった。俺が暴走していた。」

 

暴走が止まったことがわかり、炭治郎はブロリーに微笑んだ。

 

炭治郎「もういいんですよ。ブロリーさん、禰豆子を守ってくれてありがとうございました。」

 

炭治郎とブロリーのやり取りを柱達は青ざめた顔で見ていた。そして輝哉が二人に声をかける。

 

輝哉「ブロリー、あまり柱達をいじめないでくれないか?そして炭治郎、これから証明しなければならない。炭治郎と禰豆子、そしてブロリーが鬼殺隊として戦えること、役に立てること。」

 

炭治郎(なんだろうこの感じ。ふわふわする・・)

 

輝哉「十二鬼月を倒しておいで。そうしたら皆に認められる、炭治郎の言葉の重みが変わってくる。」

 

炭治郎「俺は・・俺と禰豆子は鬼舞辻無惨を倒します!!俺と禰豆子が必ず!!悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう!!」

 

輝哉「今の炭治郎にはできないからまず十二鬼月を一人倒そうね。」

 

炭治郎「はい・・」

 

輝哉に今の実力を指摘された炭治郎は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になり、他の柱達は笑いを堪えていた。しかし

 

ブロリー「炭治郎、俺の名前を忘れてるぞ。俺も一緒に決まっているだろう?だったら、鬼舞辻無惨なんてクズは楽々血祭りにあげられるYO。」

 

炭治郎「ブロリーさん・・ありがとうございます!」

 

ブロリーがすかさずフォローして炭治郎を助けた。そして炭治郎もお礼を言った。

 

輝哉「そういえばブロリーは十二鬼月を一人倒したね・・皆、ブロリーを十人目の柱に任命したい。」

 

「!!!」

 

これには柱だけでなく炭治郎までもが驚いていた。柱の中から普段は滅多にしゃべらない義勇が待ったをかけた。

 

義勇「お館様。柱になれる条件は『階級が甲であること』と『鬼を五十体以上もしくは十二鬼月を一人倒す』の二つであったはずです。彼は十二鬼月は倒していますが、階級は炭治郎と同じ癸であるはずです。」

 

(めっちゃ喋るじゃん!)

 

義勇の口から出る言葉に他の柱は皆心の中でツッコミを入れていた。そして輝哉は義勇の意見を否定した。

 

輝哉「それは違うよ、義勇。彼は最終選別で偉業を成し遂げたから階級はあらかじめ甲なんだよ。」

 

しのぶ「偉業ですか?」

 

輝哉「そう。彼は最終選別のとき、藤の花の牢獄の中にいる鬼達を全滅させたんだ。だから私の家族と話し合って彼は最初から階級を甲にしたんだよ。」

 

「!!?」

 

最終選別の鬼を全滅させる。それは今の柱たちでさえ成し遂げることができなかった、偉業中の偉業なのだ。そしてブロリーが暴れたことにより、他の人たちも迂闊な気持ちで最終選別に来たことを後悔しながら自主的に去っていったのだった。そして輝哉はブロリーに提案した。

 

輝哉「これで柱になる条件はそろったね。ブロリー、柱になってくれるかい?」

 

ブロリーは一瞬考えるしぐさをしたが、すぐに答えを出した。

 

ブロリー「・・断る。俺が柱になれば炭治郎と禰豆子と行動ができなくなるからな。」

 

輝哉「そこは変えるつもりはないよ。柱になってもブロリーには引き続き炭治郎達と共に行動してもらおうと思ってるよ。」

 

ブロリー「・・炭治郎。」

 

炭治郎「なってください。ブロリーさん。俺は貴方に憧れています。ずっと言いませんでしたが、いつか俺はブロリーさんの弟子になりたいと思っていたんです。それに実力は次元が違うんですから、自信を持って大丈夫ですよ。」

 

ブロリーはしばらく考え、答えを出した。

 

ブロリー「わかった、輝哉。引き受けよう。俺は柱になる。」

 

輝哉「ありがとうブロリー。柱の名前は『破壊柱』にしようか。」

 

天元(破壊柱。派手で良い響きだ。羨ましい・・)

 

輝哉の命名により、破壊柱ブロリーがここに誕生し、自分よりも派手なブロリーに天元は羨望の感情を向けていた。

 

輝哉「炭治郎の話しはこれで終わり、そろそろ柱合会議を始めようか。」

 

しのぶ「でしたら竈門君と彼は私の屋敷でお預かり致しましょう。」ニコニコ

 

炭治郎「え?」

 

しのぶ「はい連れていってください!」パンパン

 

しのぶの合図と共に隠が現れ、炭治郎と禰豆子の入った箱を持って去ろうとするが

 

ブロリー「何処へ行くんだぁ?」ガシッ

 

隠「ひぃぃぃ!?」

 

しのぶ「・・ブロリーさん、彼らは隠といって鬼と戦いが終わったあとに後始末をする事後処理部隊です。彼らは安心ですから信用してください。」

 

ブロリー「出来ぬぅ!」

 

輝哉「ブロリー、彼らは本当に炭治郎達に危害を加えたりしないよ。だからその手を離してやってくれないかい?」

 

ブロリー「出来ぬぅ!」

 

結局、ブロリーは最後まで隠を信用することは出来ず、このままでは埒が明かないことから仕方なく隠が折れて炭治郎と共にブロリーは柱合会議に参加するのであった。




完全なタイトル詐欺になってしまった・・三週間も遅れてしまって申し訳ありません。一気にキャラが増えたので大変でした。こんな小説ですが、今後もよろしくお願いします。それではまた次回。


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リハビリの機能回復訓練!全集中常中を取得せよ!前編

第十三話です。今回はヒロイン候補が出てきます。こんな小説ですが、最後まで読んでくれたら嬉しいです。


禰豆子を巡った柱合会議を終え、ブロリーは禰豆子の入った箱を背負って、炭治郎を背負っている隠(男)と道案内をしている隠(女)と共にしのぶの屋敷である蝶屋敷へとついていた。柱になったブロリーは本来屋敷を建てることができるが、建設するまでに期間があるため、その間は蝶屋敷で過ごすことになったのだ。

 

隠(女)「破壊柱様。こちらが蝶屋敷でございます。」

 

ブロリー「貴様は何故そんなに俺にぺこぺこしてくるんだ?」

 

隠(女)「いえ!?貴方のような柱の方と私如きのものは身分が違いますゆえ、慕わせていただきます。」

 

ブロリー「そうですかぁ・・」

 

隠(男)「お前自分で歩けよな。」

 

炭治郎「すみません。ほんともう体中痛くて痛くて・・」

 

隠(男)「お爺さんかよ。」

 

蝶屋敷の庭にはいると、カナヲが様々な模様の蝶と戯れていた。それを見つけた隠達はカナヲに声をかける。

 

隠(女)「あれはえーっとそうだ。」

 

隠(男)「継子の方だ。お名前は栗花落カナヲ様だ。」

 

炭治郎「継子?継子って何ですか?」(最終選別の時の子だ。)

 

隠(男)「継子ってのは柱が育てる隊士だよ。相当才能がないと選ばれない。女の子なのにすげぇよなあ。」

 

隠(女)「胡蝶様の申し付けにより参りました。お屋敷に上がってもよろしいですか?」

 

カナヲ「・・・・」ニコニコ

 

しかし、いくら聞いてもカナヲはニコニコと笑みを浮かべているだけで一言も喋らず、隠(女)は困惑していた。するとそのとき

 

「どなたですか!!」

 

隠(男)・炭治郎「!!」ビクーッ

ブロリー「へぁっ!?」

 

急に後ろから大声が聞こえ、ブロリー達が驚きながら振り返るとそこには黒い髪を青い蝶の髪飾りで頭部の二ヵ所にとめた少女、神崎アオイが荷物の取っ手を体の前で両手で持ちながら気の強そうな表情で聞いてきていた。

 

隠(男)「いえっあの・・胡蝶様に・・」

 

アオイ「"隠"の方ですか?怪我人ですね。こちらへどうぞ。」

 

アオイに付いていき、屋敷の中に入ると病室から善逸の騒ぎ声が聞こえてきており、近くにいるこの屋敷で働いている三人の少女の一人、寺内きよを困らせていた。

 

善逸「五回!?五回も飲むの?一日に!?三か月間飲み続けるのこの薬!?これ飲んだら飯食えないよ!すげぇ苦いんだけど辛いんだけど!というか薬飲むだけで俺の腕と足治るわけ!?ほんと!?」

 

きよ「静かにしてください~。」

 

善逸「もっと説明して誰か!一回でも飲み損ねたらどうなるの!?ねぇ!」

 

アオイ「まだ騒いでるあの人・・」

 

炭治郎「善逸・・!!」

 

ブロリー「あいつは何故騒いでいるんだぁ?」

 

アオイ「静かになさってください!!説明は何度もしましたでしょう!いい加減にしないと縛りますからね!」ガミガミ

 

アオイの怒鳴り声に善逸は完全に怯え、布団を頭から被ってうずくまっていた。そしてアオイときよが病床室から出ていくと、炭治郎が善逸に話しかける。

 

炭治郎「善逸!大丈夫か!?怪我したのか!?」

 

善逸「た、炭治郎・・ブロリーさん・・うわあぁ炭治郎聞いてくれよーっ!臭い蜘蛛に刺されるし毒ですごい痛かったんだよ―っ!さっきからあの女の子にガミガミ怒られるし最悪だよーっ!」

 

アオイ「・・」ギロッ

 

善逸「!!」ビクッ

 

善逸は愚痴をぶちまけるとアオイに睨まれて再び怯えていた。

 

炭治郎「伊之助は?村田さんは見なかったか?」

 

隠(男)「ちょっと離れろよ・・俺関係ない・・」

 

善逸「村田って人は知らないけど、伊之助なら隣にいるよ。」

 

炭治郎とブロリーが視線を向けると、そこには意気消沈している伊之助がいた。あまりにも静かだったので二人とも気づくことができなかったのだ。

 

炭治郎「あっ本当だ!思いっきりいた!!気づかなかった!」

 

ブロリー「何故伊之助はこんなに静かなんだ?いつもは騒がしいのだが。」

 

伊之助が落ち込んでいる原因はブロリーの圧倒的な力と絶対に追い付けない程の実力差なのだが、当の本人は自分が元凶だと気づいておらず不思議に思っていた。

 

炭治郎「伊之助!!無事で良かった・・!!ごめんな助けにいけなくて・・!!」

 

伊之助「・・イイヨ、気ニシナイデ。」

 

炭治郎は伊之助の姿を確認すると、生きていたという安堵と助けられなかった罪悪感から涙を流していた。しかし、伊之助からでた声はガラガラに枯れており、炭治郎が伊之助を本人ではなくそっくりさんだと疑う程だった。

 

炭治郎(!?声が・・伊之助・・か!?)

 

善逸「なんか喉潰れてるらしいよ。」

 

炭治郎「えーっ!?」

 

善逸「詳しいことよくわかんないけど首をこうガッとやられたらしくてそのときに声帯がやられて喉がえらいことに。落ち込んでんのかすごい丸くなってて滅茶苦茶面白いんだよな。ウィッヒヒッ。」

 

炭治郎「なんで急にそんな気持ち悪い笑い方するんだ?どうした?」

 

善逸が炭治郎に伊之助の経緯を伝え終えると同時に、アオイと実弥を背負った隠、そしてしのぶが慌ただしく病室に入り、実弥を空いているベッドに寝かせると、三人は退室していった。その後しばらくすると、しのぶが青筋を浮かべながら笑顔でブロリーに近づいていき、ブロリーに同行を促す。

 

しのぶ「ブロリーさん?これから少し私達の鍛練に付き合ってくださいませんか?」ゴゴゴゴゴ

 

ブロリー「?」

 

自分が呼ばれることに心当たりが全くないブロリーは、疑問に思いながらもしのぶについていった。そして、しのぶから怒りの匂いを感じ取った炭治郎は、まるで目の前に般若がいるような錯覚を覚え、顔を青ざめさせてガタガタと震えていたのだった。同じように音を感じ取った善逸に至っては頭から毛布をかぶり、身を守ろうとしていた。

 

ブロリーside

 

しのぶに言われるままついていき、ついた部屋は訓練場と呼ばれる一際広い部屋だった。入り口のすぐ近くにはアオイが待ち構えており、ブロリーが部屋の中に入るなりいきなり説明を始める。

 

アオイ「ここは私達が普段の鍛練に使っている訓練場です。貴方はこれからしのぶ様の計らいにより私達の鍛練に付き合っていただきます。まずあちらをご覧ください。あの子達が体をほぐします。」

 

ブロリーが顔を向けた方向には、きよの他に、中原すみ、高田なほの三人の少女がいて、那田蜘蛛山の負傷から割りとすぐに回復した一般隊士が体を思いっきり揉みほぐされて激痛のあまり悲鳴をあげていた。

 

アオイ「それから反射訓練。湯飲みの中には薬湯が入っています。お互いに薬湯をかけ合うのですが、湯飲みを持ち上げる前に相手から湯飲みを押さえられた場合は湯飲みを動かせません。」

 

次に紹介した所はテーブルの上にお湯が入った大量の湯飲みが置かれており、すでにカナヲが一般隊士を相手に素早い動きで圧倒していた。一般隊士はずぶ濡れになり、近くにあった手拭いで顔を拭いていた。

 

アオイ「最後に全身訓練です。端的に言えば鬼ごっこですね。私アオイとあちらのカナヲがお相手です。」

 

訓練の内容はこれから参加する者のやる気を削ぐような過酷なものばかりだがブロリーは表情一つ変えずにアオイに質問する。

 

ブロリー「ちょっといいか?」

 

アオイ「?何かわからないことでも?」

 

ブロリー「全員カワイイ!」

 

アオイ・なほ・すみ・きよ「「!?///」」

 

ブロリー「それと俺はどれからやれば良い?」

 

アオイ「・・ゴホン。まずはあちらで柔軟をして体をほぐします。行って下さい。」

 

ブロリー「わかった。」

 

ブロリーはおとなしく三人の少女がいる場所へ向かう、同時に一般隊士のほぐしが終わり、目の前にいたブロリーに同情の声をかけた。

 

「・・貴方も大変ですね。この訓練凄くきつくて痛いですから・・まぁ頑張ってください・・」

 

一般隊士は目が死んでおり、重い足を引きずりながら次の鍛練場へと歩いていった。そしてブロリーの順番が回ってきた。

 

なほ・すみ・きよ「「「私達がほぐすのでうつ伏せになってください。」」」

 

ブロリー「はい・・」

 

言われるままブロリーはうつ伏せになると、なほとすみは動かないようにブロリーの足を抑え、きよはブロリーの両腕を掴むとそのまま後ろに思いっきり伸ばすが

 

きよ「んんー!」グググッ

 

ブロリー「・・・・」

 

アオイ・しのぶ「・・・・」

 

なんとブロリーの体が大きすぎて伸ばしきれてないのだ。当の本人は全く表情を変えない。それを見てアオイは交代を告げた。

 

アオイ「・・やっぱり私がやります。きよ、変わってください。」

 

きよ「・・ごめんなさい。」

 

アオイ「大丈夫です。」

 

きよに変わってアオイがブロリーの両腕を掴むと同じように思いっきり後ろに伸ばす。すると、今度はブロリーの体は伸びきるが、

 

アオイ「フンッ!」グググッ

 

ブロリー「・・・・」

 

それでもブロリーは悲鳴をあげるどころか苦悶の表情すら浮かべることはなかった。理由は単純、きつくないのだ。サイヤ人は戦うことに特化した戦闘民族である。そのため運動神経が普通の人間と比べても桁違いで体も非常に柔らかいのだ。ブロリーもその例に漏れず体が柔らかいため、本人にとっても苦痛に感じることはなかった。

 

そして、柔軟を終えると次は反射訓練場へと場所を移した。視線を向けると、先ほどの一般隊士がカナヲと勝負をしていた。だが、カナヲはすでに全集中の呼吸を常にやり続ける『全集中常中』を取得しているため、反応からお湯をかけるスピードまで全てが桁外れであり、一般隊士は手も足も出ずにずぶ濡れになっていた。

 

アオイ「次は貴方の番です。カナヲの反対側に座ってください。」

 

ブロリー「はい・・」

 

アオイ「では、私が『はい!』と言うのでその合図でスタートです。それでは・・はい!」

 

ブロリー「・・っ!」バシャッ

 

しのぶ・アオイ「・・・・」

 

ブロリーは反応を全く見せずにカナヲにお湯を勢いよくかけられるが、手拭いで拭いたあとのブロリーの口元は笑っていた。

 

ブロリー「なるほどな・・なかなかのスピードだ。だが、すでに見切った。」

 

アオイ・しのぶ「「・・っ!」」

 

ブロリー「もう一回頼む。」

 

アオイ「ではもう一度・・はい!」

 

ババババババッ!

 

アオイ・しのぶ「!?」

 

アオイとしのぶは驚くが、それも当然である。なんと二回目ですでにカナヲと互角の反射速度で対等に戦っているのだ。それどころか、徐々にカナヲを押し始めていた。

 

カナヲ「・・っ!」バッ

 

ブロリー「・・ゴクゴク」

 

ドテッ/

 

少しの間攻防が続くと、ブロリーの湯飲みがカナヲの抑える手よりも早く抜け、ブロリーはそのまま薬湯を飲み、しのぶとアオイは盛大にずっこけていた。

 

ブロリー「・・まずい。」

 

しのぶ「それはまずいはずですよ。本来飲み物では無いんですから。」

 

アオイ「薬湯を飲む人は始めて見ましたよ・・」

 

ブロリー「だが、俺の勝ちのようだな。」

 

カナヲ「・・・・」ポカーン

 

アオイ「そっそれでは、次の訓練に参ります。」

 

アオイの掛け声でしのぶとカナヲが立ち上がり、次の訓練へと歩いていった。ブロリーも三人の後をついていった。

 

アオイ「最後は全身訓練の鬼ごっこです。ルールは単純でこの部屋を縦横無尽に逃げ回る私達を捕まえてください。まず私アオイがお相手です。」

 

ブロリー「一つ聞きたい。」

 

アオイ「?何かわからないことでも?」

 

ブロリー「何をしてもいいんだな?」

 

アオイ「はい。武器を使わなければ鬼ごっこと同じルールに添う形になります。」

 

ブロリー「わかった。」

 

確認をとったブロリーはニヤリと笑い、アオイとの鬼ごっこが始まった。しかし、始まってから三秒も満たないうちに

 

ブロリー「捕まえたぞ。」ガシッ

 

アオイ「!!なっなんで・・」

 

なんとブロリーがアオイの右腕を掴んで捕らえていたのだ。勝負はあまりにも一瞬すぎて、アオイは動揺を隠せなかった。しのぶも流石にこれには驚き、カナヲも心なしか若干目を大きく見開いているように見えた。そして勝負に負けたアオイは悔しそうに下がっていき、入れ替えにカナヲがやってきた。

 

アオイ「・・次の相手はカナヲです。」

 

しのぶ「カナヲ、行ってきてください。」

 

カナヲ「・・・・」

 

カナヲは何を言っても無反応だったが、言うことは聞いているのでしっかりと指示はわかっていた。二人にエールを送られながらブロリーの真正面に立つとニコニコと微笑みを浮かべていた。

 

ブロリー「よろしく頼む。」

 

カナヲ「・・・・」ニコニコ

 

ブロリー「・・・・」

 

カナヲ「・・・・」ニコニコ

 

しのぶ「カナヲ、挨拶はしっかりと返すべきですよ。」

 

しのぶに促されるとカナヲは懐から銅貨を取り出すと弾き、自分の手の甲の上で止める。出た目は裏であり、それを確認するとカナヲがブロリーに返した。

 

カナヲ「よろしくお願いします。」

 

ブロリー「はい・・」

 

アオイ「それでは、始め!」

 

アオイの掛け声と共に鬼ごっこが始まった。しかし、そのわずか五秒後

 

ブロリー「デヤァッ!」ガシッ

 

カナヲ「!!」

 

しのぶ・アオイ「「・・えっ?」」

 

カナヲは口をわずかに開いて驚きを隠せない様子だったが、端から見ていたしのぶとアオイは勝負が一瞬で決まった理由を見つけていた。

 

しのぶ「彼・・空を・・飛んでますね。」

 

アオイ「空中を・・飛んでる!?」

 

そう。ブロリーは空を飛んでいたのだ。元々サイヤ人で舞空術を身につけていたブロリーは自在に飛ぶことができるのだ。いくら全集中常中を取得して高く跳び跳ねることができても、ブロリーにとっては自分の下位互換でしかなく、空中は彼の独壇場であった。

こうしてアオイとカナヲの鍛練に付き合った形による勝負はほとんどがブロリーの勝利で終わったのだった。

 

しのぶ「最後は私が相手です!」

 

ブロリー「わかった。」

 

だが、自分の継子や血が繋がっていなくてもかけがえの無い家族が軽くあしらわれるのが気に食わなかったのか、最後にしのぶ自らが鍛練という名の勝負を買って出たのだ。

 

しのぶ「反射訓練で勝負です!ブロリーさん、私はカナヲみたいに頭に乗せたりしないでくださいね。遠慮なくかけてください。」

 

ブロリー「はい・・」

 

アオイ「それでは、始め!」

 

ババババババッ

 

アオイの掛け声により二人の勝負が始まったのだが、ブロリーは先ほどのカナヲとの戦いですでに学習しており、しのぶのことを徐々に押していた。そして

 

ブロリー「デヤァッ!」バッ

 

しのぶ「!!」バシャッ

 

勝負が決まり、しのぶの言葉を鵜呑みにしていたブロリーは盛大に薬湯をぶっかけ、しのぶの全身はびしょ濡れになってしまった。しのぶは笑顔で青筋を浮かべながらブロリーを見ていたが、やがて立ち上がると、ブロリーの前に瓢箪を置いて炭治郎達がいる病床へと歩いていった。

 

炭治郎side

 

ブロリーがしのぶ達に連れられて約一時間、一向に帰ってくる気配はない。怒りの匂いを漂わせながら連れていかれた為、炭治郎はブロリーを心配していた。

 

炭治郎(ブロリーさん・・大丈夫かな・・?傷つけられたりしてないかな・・?)

 

炭治郎が心配している中、病床にやってきたのはブロリーを連れていったしのぶ本人であった。しかし一時間前の姿とは違い、しのぶの全身はずぶ濡れになっていた。そして炭治郎の前にやって来ると、笑顔で青筋を浮かべて怒りの匂いを更に濃くして炭治郎に聞いた。

 

しのぶ「竈門炭治郎君。私の今の気持ちをどこにぶつければいいですかね?」ゴゴゴゴゴ

 

炭治郎は先ほどよりも更に怒っていることがわかり、怯えた表情をしながらガタガタと震えていた。隣で寝ていた善逸もしのぶの怒りの音で目を覚まし、炭治郎と同じように震えていた。だが、そこへ救世主が現れた。

 

蜜璃「しのぶちゃーん。」

 

しのぶ「あら、甘露寺さん。何故蝶屋敷にいるんですか?」

 

蜜璃「あのね、ブロリーさんの様子が気になって来ちゃった。・・しのぶちゃんなんでずぶ濡れなの?」

 

しのぶ「それがですね。彼を相手に鍛練をしたら返り討ちにされてこのザマですよ。」

 

蜜璃「あらあら・・それにしても、しのぶちゃんにスピードで勝つなんて凄いね。ブロリーさんは何処にいるの?」

 

しのぶ「彼ならまだ訓練場にいますよ。ちょうど瓢箪を彼に渡したので今はアオイから説明を受けていると思います。」

 

蜜璃「わかったわ。私訓練場に行ってきますね~。」

 

蜜璃は陽気にブロリーがいる訓練場へと向かった。そして怒りを完全にへし折られてしまったしのぶは、ため息をつきながら再び炭治郎に向き合った。

 

しのぶ「先ほどはごめんなさい。八つ当たりな行為をしてしまって・・ですがまだ一隊士であった彼が柱を殺そうとした。それがどれだけ罪深いことかわかりますか?」

 

炭治郎「はい。ブロリーさんがすみませんでした!」ペコッ

 

優しく注意するしのぶに炭治郎は頭を下げて謝罪する。それを見たしのぶはクスリと苦笑する。

 

しのぶ「謝罪なら私ではなく彼にするべきじゃないですか?」

 

炭治郎「えっ?」

 

しのぶが指差す方向に顔を向けると、いつの間にか目を覚ました実弥が青筋を浮かべながら一点を見つめており、まるで"近づいたら殺すぞ!"と言わんばかりの怒りのオーラを放っていた。

 

炭治郎「あの人にも謝罪しなきゃ・・」

 

しのぶ「頑張ってくださいね。」

 

炭治郎はそのオーラに怯みながらも実弥の所に向かい、炭治郎の姿が視界に入った実弥は案の定怒鳴り付けた。

 

実弥「竈門ォ!!あのサイヤ人はどこ行ったァ!!」

 

炭治郎「ブロリーさんがすみませんでしたーっ!!」ドゲザー

 

実弥「!?・・ッ!」

 

炭治郎「本当にごめんなさい!!彼には俺から厳しく言っておきます!!とんだ御無礼を本当にすみませんでしたーっ!!」

 

実弥「・・チッ!あいつに次はねぇと伝えとけェ!」

 

炭治郎「はっはい!ありがとうございます!」

 

流石の実弥も土下座をされてはとても怒れるような雰囲気では無くなってしまい、炭治郎に厳重注意をするだけでとりあえず修めることにした。

 

実弥「胡蝶妹ォ。あの後何があったァ?」

 

しのぶ「不死川さん。実は・・」

 

しのぶ説明中・・

 

実弥「なんだとォ!?あいつが柱になったァ!?」

 

しのぶ「お館様がおっしゃるにはすでに彼は階級が甲だったことと、十二鬼月を一体倒した実績もあって柱になる条件は揃っていたみたいです。」

 

実弥「・・オイ、竈門ォ。あいつについでで伝えとけェ。俺はテメェを柱だと認めねェってなァ。」

 

しのぶ「それと不死川さん。禰豆子さんが人を喰うか喰わないかを証明する為に少し付き合ってください。」

 

しのぶは鬼になった禰豆子を善良な鬼か悪い鬼なのかを見極めるための準備に入り、それが終わるまで炭治郎と実弥は禰豆子が人を喰うか喰わないかを口論しているのだった。

 

ブロリーside

 

しのぶに瓢箪を目の前に置かれ、何をするのかわからないブロリーは瓢箪を手にとって四方八方から見ていた。

 

ブロリー「なんなんだぁ?これは?」

 

きよ「あのぅ、ブロリーさん。」

 

ブロリー「んん?なんだぁ?」

 

後ろから声が聞こえてきたので、ブロリーが振り返るとそこにはなほ、すみ、きよの三人が、もじもじして少し怯えながら話しかけてきていた。自分に怯えてるとわかったブロリーはしゃがみこんで視線を合わせた。

 

ブロリー「お前達はここで働いている少女たちか。カワイイ!」

 

ブロリーは三人の頭を撫でると、三人がパアアと嬉しそうな表情になる。そしてきよはそのまま説明を続ける。

 

きよ「瓢箪に息を吹いて破裂させるってことだと思います。」

 

ブロリー「何故そんなことをするんだぁ?瓢箪を吹く修行か?」

 

きよ「えっと、全集中の呼吸を四六時中やるための鍛練だそうです。」

 

ブロリー「?そんなことできる奴がいるのか?」

 

きよ「はい!柱の皆さんやカナヲさんができます。それが出来るのと出来ないのでは天地ほどの差があるそうです。」

 

ブロリー「そうですかぁ・・試しに吹いてみても良いですかぁ?」

 

きよ「はい!良いですよ!」

 

ブロリー「・・・・フッ!」ミシミシミシバリン!

 

きよ、すみ、なほ「「!?」」

 

なんとブロリーは軽く息を吹いただけで瓢箪を粉々に破裂させてしまったのだ、これには三人も驚きを隠せないみたいだ。

 

すみ「すごい!」

なほ「初めてやって出来たのを見たのは初めて!」

きよ「ブロリーさん!すごいです!簡単に破裂させてしまうなんて!もしかしてすでに全集中の呼吸を四六時中やっておられますか?」

 

ブロリー「!?俺はもうそれができているのか?」シイイイイ

 

実はきよの予想通り、ブロリーはすでに全集中常中を取得していたのだ。ブロリーはサイヤ人なので元の力もずば抜けているが、その他に脅威的な学習能力も併せ持っており、彼がその気になればどんな技でもたちまち取得できてしまうのだ。

 

ブロリー「そういえばお前達の名前を聞いてなかったな。」

 

きよ「そうでしたね。寺内きよです。」

すみ「中原すみです。」

なほ「高田なほです。」

 

ブロリー「すみ、きよ、なほか。カワイイ!俺はブロリーです。」

 

きよ「よろしくお願いします!」

 

ブロリー「はい・・それときよ達のおかげで俺は全集中の呼吸を四六時中やることが出来るようになった。ありがとう。」

 

ブロリーのお礼には三人とも顔を綻ばせていた。そして三人と別れたブロリーは炭治郎達がいる病床へと歩いていった。そして歩いている途中で恋柱の蜜璃と出会った。

 

蜜璃「ブロリーさん!」

 

ブロリー「んん?蜜璃ですかぁ?なんでここにいるんだ?」

 

蜜璃「貴方の様子が気になって来ちゃった。貴方星を壊せるほどのすごい力を持ってたんですねすごく格好いいです///それをあの子を庇うために使ってるなんて素敵!///」キュン

 

ブロリー「俺は炭治郎と禰豆子に助けられたからな。あの二人がいない世の中など俺には価値がない。命を懸けてでも庇うYO。」

 

蜜璃「素晴らしい愛ですね。素敵!あっそういえばしのぶちゃんが禰豆子ちゃんが人を襲わない為の証明を行うって言ってましたよ。」

 

ブロリー「そうですかぁ。教えてくれたことに礼を言うぞ。ありがとう。蜜璃はカワイイ!」

 

蜜璃「えっ!?ありがとうございます!どこが可愛いですか?」

 

ブロリー「髪の色だぁ。ピンク色カワイイ!」

 

蜜璃「髪の毛が素敵なんて言われたの初めてです!ブロリーさんもそのムキムキの体すごく格好いいですよ!」

 

ブロリー「フハハハハハ!!ありがとう。それじゃ俺はもう行くYO。」

 

蜜璃「はい!いってらっしゃいませ。」

 

ブロリーは再び炭治郎達がいる病床へと向かった。それを見届けた蜜璃は一人になると物思いに耽っていた。

 

蜜璃(ブロリーさんに誉めてもらっちゃった♪すごく嬉しい♪それにしてもブロリーさんを見ていると他の人よりもドキドキするの。私、彼に恋しているのかな?今度二人でどこかに出掛けたいなぁ。)

 

蜜璃は顔を赤らめ、両手で顔を覆った。そして禰豆子のことも気になった為、ブロリーの後を追っていった。

 

炭治郎side

 

しのぶが病床を出てから数分間炭治郎と実弥は口論を続けていた。

 

炭治郎「禰豆子は人を喰いません!これまでも喰ったことはないしこれからも喰うなんて絶対にあり得ません!お館様もそうおっしゃってた!」

 

実弥「お館様が頷いたからと言って俺が認めるわけじゃねェ!鬼なんて信用できるかよォ!これからも喰わない保証はどうやって証明するつもりなんだァ!?」

 

しのぶ「炭治郎君に不死川さん。ここは病床ですよ?もう少し静かにお願いします。」

 

証明の準備から戻ってきたしのぶが持っていたのは試験管であった。

 

しのぶ「さて、炭治郎君。禰豆子さんに命を懸ける者が四人いたとしても物的証明ができなければ誰も信用できません。なので今から行うその証明に禰豆子さんを連れて参加してくださいね。」

 

炭治郎「はい!」

 

しのぶ「それでは不死川さん。こちらの試験管に血を流し込んでください。」

 

実弥「わーったよォ。」

 

言われた通り実弥は試験管に血を入れると、炭治郎は禰豆子を連れてきて、しのぶは病床に差す日光を遮り、何故か実弥は日輪刀を構えていた。

 

炭治郎「しのぶさん。禰豆子を連れてきました。」

 

禰豆子「ムー。」

 

しのぶ「不死川さん?何故日輪刀を構えているんですか?」

 

実弥「俺は鬼を信用してねェ。その鬼が俺の血にかぶりつくか、俺が人を襲わねェ証明が出来なかったと判断したら即行で滅殺する。」

 

炭治郎「そんなことはさせない!!禰豆子は絶対に人を襲わない!!」

 

しのぶは血が入った試験管を禰豆子に近づけると、禰豆子が反応を見せて涎を垂らしていた。それだけではなく、実弥が更に自分の腕を傷つけ近づけると、稀血の匂いをもろに嗅ぎ、フラフラと実弥へと近づいていった。

 

禰豆子「フーッ・・フーッ・・」フラフラ

 

実弥「どうだァ?欲しいんだろォ?」

 

炭治郎「禰豆子!」

 

足が止まらない禰豆子に実弥は勝ち誇ったような笑みを浮かべるが、そこへ救世主が現れた。ブロリーが病床へと入ってきたのだ。

 

禰豆子「!!・・ム。」プイ トテテテ

 

気配を感じ取った禰豆子は横目でブロリーの姿を見つけると、実弥の稀血そっちのけでブロリーに向かって走っていき、抱きついたのだ。

 

禰豆子「ムー♪」ムギュッ

 

ブロリー「禰豆子?なんだぁ?」ナデナデ

 

禰豆子「ムーんー♪///」トロン

 

ブロリー「フハハハ!なんだかよくわからないが、禰豆子カワイイ!」

 

蜜璃(禰豆子ちゃんブロリーさんに思いっきり甘えてる!!可愛い!///)

 

しのぶ「あらあら、禰豆子さんは不死川さんの稀血よりもブロリーさんの方が好きみたいですね。鬼の本能を抑えて理性を保つなんて、感心感心。」

 

実弥「・・チッ!」ガタッ

 

実弥は舌打ちをすると乱暴にベッドから立ち上がり、自分の日輪刀を持って蝶屋敷の出入口まで行くと、その直前で炭治郎の方を振り返る。そして一言呟いた。

 

実弥「俺は認めねぇ・・!」

 

それだけを言い残すと、蝶屋敷を出て自分の屋敷へと帰ってしまった。炭治郎達はしばらくポカンとした表情をしていたが、我に帰ると再びしのぶが仕切りだした。

 

しのぶ「・・ゴホン!それではこれで禰豆子さんが人を襲わないという証明ができましたね。私は禰豆子さんを鬼殺隊の一員として認めます!」ニコッ!

 

炭治郎「しのぶさん・・!ありがとうございます!ありがとうございます!」ペコペコ

 

人を襲わない証明がされて否定する理由がなくなったしのぶは、素直に禰豆子のことを認めた。柱の一人に認められたと実感した炭治郎は泣きながらお礼を言い、何度も頭を下げるのだった。

 

そしてその夜。全集中の呼吸を四六時中行う『全集中常中』を取得したブロリーは蝶屋敷の屋根の上に座り、ずっと全集中常中を続けていた。そこにしのぶがやってきた。

 

ブロリー「・・・・」シイイイ

 

しのぶ「頑張ってますね。」

 

ブロリー「ヘアッ!?」

 

しのぶ「ふふっごめんなさい。驚かせるつもりはなかったんですけど。」

 

ブロリー「お前は・・しのぶと言ったか?」

 

しのぶ「はい。蟲柱、胡蝶しのぶでございます。ブロリーさん、柱の就任おめでとうございます!これからもよろしくお願いします、破壊柱さん。」

 

ブロリー「・・ありがとう。・・それと、済まなかった。」

 

しのぶ「?なんで謝るんですか?」

 

ブロリー「山で会ったとき、お前を可愛くないクズって言ったことだ。禰豆子を殺そうとする奴が許せなくて思ってないことを言った。済まなかった。」

 

しのぶ「ああ、その事ですか。もういいですよ、もう気にしてません。それに私の方こそごめんなさい。禰豆子さんを殺そうとしてしまったことと、八つ当たりで鍛練に無理矢理付き合わせてしまったことを。」

 

ブロリー「もういい。なんだかんだ言ってしのぶは禰豆子のことを認めてくれた。それだけで充分だ。」

 

しのぶ「そう言って頂けると助かります。」

 

ブロリー「・・ところで何故ここへ来た?」

 

しのぶ「・・えっ?」

 

ブロリー「しのぶはいつも笑顔だが、今俺の隣に来るまでは禍々しい気を感じた。昔の俺のような嫉妬や怒りや悲しみが混じったような複雑な気だった。」

 

しのぶ「・・そうですね。禰豆子さんの存在は公認となりましたが、鬼殺隊の隊員は鬼に家族や大切なものを奪われた復讐心でなる方がほとんどなんです。体の一番深いところに鬼に対するどうしようもない嫌悪感がある。他の柱達もきっと同じようなものです。」

 

ブロリー「・・しのぶ、嘘はつかなくていい。」

 

しのぶ「!!」

 

ブロリー「しのぶが持っていた禍々しい感情はムシケラに向けられたものではない。奴らに対する嫌悪感は本当かもしれんが、少なくともその気はムシケラではなく、まるで俺に向けられているようだった。」

 

しのぶ「・・ばれてしまいましたか。貴方の言うとおりです。私は貴方に嫉妬しています。私が何故毒を使うかわかりますか?」

 

ブロリー「いいや、知らん。ムシケラの弱点を突く戦いかたをするためではないのか?」

 

ブロリーの問いにしのぶはゆっくりと首を横に振り、悲しそうな表情でブロリーに解き明かす。

 

しのぶ「私が毒を使う理由は、私が非力だからですよ・・私にはかつて姉がいた。両親を殺されてから、姉と二人で悲しむ人たちを助ける決意をして鬼殺隊に入ろうとしました。でも最終選別では、生まれつき体が小さかったこともあり、腕力が足りずに呼吸を使っても鬼の頸を斬ることが出来なかった・・それどころか刀が折れてしまって、結局私は七日間逃げ隠れて生き延びることしか出来なかった・・」

 

しのぶが暗く悲しそうに自分の過去を話しているのをブロリーは声を出さずに静かに聞いていた。

 

しのぶ「それでも合格の条件は満たしましたが、私は力がなくて鬼を殺せない・・何度も周りの隊士達から脱退しろと言われるほど私は落ちこぼれでした・・姉が私を継子に無理矢理選んでくれたおかげでなんとか脱退は免れたんです・・それから私は研究時間を費やしてようやく下弦の鬼ならなんとか殺せるほどの毒を作り出すことに成功したんです。なので私は頸を斬らない隊士になりたくてなったわけではないのです。」

 

そこまで言うとしのぶの気が変わり、今度はブロリーへの嫉妬と逆恨みの感情になった。

 

ブロリー「!!」

 

しのぶ「なのに貴方は、日輪刀を使わずに自身の力で鬼を殺せる。跡形もなく始末できる。おまけに最終選別では鬼を全滅させた。同じ鬼殺隊の柱のはずなのに・・私の後輩のはずなのに・・なんなのですかこの差は?不公平にも程があると思いませんか?それに貴方は一人で鬼舞辻を倒せる力を持っているとお館様から聞きました。それはすなわち、上弦の鬼も敵ではないということです。私の姉は上弦の弐に惨殺された。貴方が悪くないことはわかっています。でもどうしても思ってしまうんです。貴方がもう少し早く鬼殺隊に入ってくれたら、姉は死なずにすんだんじゃないかって・・!うぐっ・・う゛ああああ!!ーーああーー!」

 

そして遂にしのぶは姉が惨殺された時の事を思い出したのか、顔を覆って泣き出してしまった。ブロリーはそんなしのぶの頭を優しく撫でた。突然のことに驚きつつも、今はブロリーに身を委ねることにしたしのぶは、そのままブロリーに抱きついて泣き続けた。

数十分後、しのぶは恥ずかしさで顔が真っ赤になっていた。

 

しのぶ「先ほどはすみませんでした。私もまだまだ感情が制御できていないことがわかったので、精進の必要がありますね。」

 

ブロリー「・・いいのではないか?」

 

しのぶ「えっ?」

 

ブロリー「ずっと我慢していても辛いだけだ。たまには感情のままに従ってもいいと思うぞ。」

 

しのぶ「・・ブロリーさんは優しくて強いのですね。どうしてそんなに強くいられるんですか?」

 

ブロリー「・・俺は優しくない。俺は前まで本能のまま破壊してきた悪魔だ。」

 

しのぶ「そういうのは素直に受けとるべきですよ。でも貴方のおかげでだいぶ気持ちが楽になりました。ありがとうございました。・・貴方の前では少し素直になれそうな気がします。それでは頑張って下さいね。」

 

ブロリー「はい・・」

 

しのぶは屋根の下へと降りていき、ブロリーは引き続き全集中常中の練習をした。そして完全にマスターしたブロリーは蝶屋敷の中に入り、炭治郎達の様子を見に行くのだった。




機能回復訓練編は長いので前編と後編に分けさせていただきます。おそらく後編は文字数が少なくなると思われます。それではまた次回。


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リハビリの機能回復訓練!全集中常中を取得せよ!後編

第十四話です。再び三週間弱かかってしまって申し訳ありません。文字数は普段と変わらなくなってしまいました。今回はブロリーの出番少なめです。こんな小説ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


ブロリーが全集中常中を取得してから数時間後、浴場で体を洗い終わり、夕食を蝶屋敷の住人達と共にして就寝の時間になると、箱から禰豆子が顔を出してブロリーが寝ているベッドまでやってきた。

 

禰豆子「ん。」ヒョコ

 

ブロリー「んん?禰豆子ぉ?なんだぁ?」

 

禰豆子はブロリーが寝転がっている姿を見てとてもそわそわしていた。それを見て何かを察したブロリーは掛布団をめくり、スペースを開けるとそこをポンポンと叩く。

 

ブロリー「禰豆子も一緒に寝るか?」

 

禰豆子「ムー!」パァァァ

 

すると禰豆子は目を輝かせ、喜びながらブロリーのベッドの中に入って添い寝をしていた。同部屋にいる炭治郎はその光景を見て微笑んでいて、伊之助は我関せずとばかりにさっさと夢の世界の住人となっていたが一人だけは違った。

 

善逸「ブロリーさん!なんで禰豆子ちゃんと一緒に添い寝してるんですか!?」

 

ブロリー「禰豆子から俺のところに来たのだ。大方俺と一緒に寝たいんだろう?まぁ、前も一緒に寝たことあるからな。」

 

善逸「・・今何て言ったんですか?」

 

ブロリー「?大方俺と一緒に寝たいんだろう?」

 

善逸「そのあとだよ!」

 

ブロリー「?前も一緒に寝たことあるからな?」

 

善逸「それだよ!!前も一緒に寝たってどう言うことだぁ!!何で俺の禰豆子ちゃんに勝手に手をだしてんだ!!」

 

炭治郎「善逸落ち着け!別にブロリーさんは禰豆子に手出しをしていない!今みたいに禰豆子からブロリーさんに迫って添い寝をしていただけだ!」

 

善逸「今みたいにってことは一度までならず二度も寝てるってことだろうが!!禰豆子ちゃんを弄びやがって!このサイヤ人の面汚しめ!!」

 

炭治郎「コラ!!」

 

禰豆子に甘えられるブロリーに嫉妬した善逸は、血涙を流しながらブロリーを罵倒していたが、そこにしのぶが笑顔で青筋を浮かべながらやってきた。そして威圧感を込めて注意を始めた。

 

しのぶ「炭治郎君に善逸君?ここ蝶屋敷では病院としての役割りも担っているんですよ?他の隊士達の迷惑になりますので、もう少し静かにしていただけませんかね!?」ゴゴゴゴゴ

 

炭治郎・善逸「「す、すみませんでした!!」」ペコ

 

普段は温厚の彼女から怒りの匂いと音を感じ取った二人は、速攻でしのぶに頭を下げて謝っていた。そしてしのぶが去ったあと、炭治郎と善逸はそれぞれのベッドで眠りについた。禰豆子もブロリーの体に密着しながらスースーと寝息を立て始め、ブロリーも禰豆子の頭を撫でながら夢の世界へと入って行った。

その翌日、炭治郎達五人は蝶屋敷でそれぞれが回復する為の休息に入った。

 

炭治郎「ぐああああ・・!」

 

炭治郎は顔や腕、足に大量の擦過傷に加え、筋肉痛と肉離れの地獄のような痛みに耐えまくった。

 

善逸「飲んだっけ!?俺昼の薬飲んだ!?飲んでるトコ見た!?誰かーっ!!」

 

善逸は全員の中で最も重傷であり、右腕右足が蜘蛛化による縮みや痺れ、左腕の痙攣を治すために薬を飲んでいるが、効力重視の薬はとても苦く、おまけに本当に治るのかどうかの不安にも駈られて病室で一人騒ぎまくった。

 

伊之助「ゴメンネ・・弱クッテ・・」

 

炭治郎「頑張れ伊之助!頑張れ!」

 

善逸「お前は頑張ったって!すげぇよ!」

 

伊之助は喉頭と声帯の圧挫傷を治すためにベッドで安静にしていたが、本人があまりにも落ち込みまくっていたため、両側から炭治郎と善逸が励ましまくっていた。

 

禰豆子「・・ZZZ」スースー

 

禰豆子は消費した体力を元に戻すためにひたすら箱の中で寝まくった。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ガシッ

 

しのぶ「きゃっ!!」

 

―――――――――――――

 

ブロリー「フハハハ!!」グイッ グワン!

 

しのぶ・アオイ「「!?」」

 

―――――――――――――

 

ギュピギュピギュピギュピギュピギュピ!!

 

しのぶ・アオイ(またあの音ですね・・/なんの音ですか?)

 

ブロリーは全くの無傷だったので炭治郎達の回復が終わるまでアオイやカナヲ、しのぶの鍛練の相手になっていた。そんな毎日を送って行くなかで、村田と那田蜘蛛山で母鬼に操られてた女隊士、尾崎が二人でお見舞いに来たのだ。

 

村田「よっ。」

 

尾崎「こんにちは。」

 

炭治郎「あっ村田さん!!・・と誰ですか?」

 

尾崎「はじめまして、私は尾崎っていうの。ところであの男の人はどこにいるの?」

 

尾崎が探していたのはブロリーであり、タイミング良く炭治郎に居場所を聞いたと同時にブロリーが病床に入ってきた。

 

炭治郎「ブロリーさんなら今病床に入って来ましたよ。」

 

ブロリー「んん?お前は?」

 

尾崎「あのときはありがとうございました。私は尾崎という者です。那田蜘蛛山で貴方に助けられたから私は今ここにいるんです。本当にありがとうございました。」ニコッ

 

ブロリー「・・あの時のか。無事に山を降りられたようでよかったYO。俺はブロリーです。」

 

村田と尾崎は那田蜘蛛山での仔細報告のために柱合会議に召喚させられたらしく、二人揃って愚痴を言っていた。

 

村田「地獄だった・・怖すぎだよ柱・・」

 

尾崎「そうね・・彼によって生き延びることができたのに生きた心地がしなかったわ・・」

 

村田「うん・・最近の隊士はめちゃくちゃ質が落ちてるってピリピリしてて皆・・」

 

尾崎「那田蜘蛛山行ったときも、私達が命令に従わずに行動したのに鬼に操られたってことがわかったら、物凄い圧をかけられたわ・・」

 

村田「その"育手"が誰かって言及されてたよね・・」

 

尾崎「そうね・・柱怖いわ・・」

 

しのぶ「誰が怖いんですか?」

 

村田・尾崎「!?」

 

二人が振り返ると、柱合会議から帰って来たしのぶが音も立てずに真後ろにいたのだ。

 

しのぶ「こんにちは。」

 

村田「あっどうもさよなら!!」

 

尾崎「おっお邪魔しました!!」

 

しのぶがやってくると、二人はそそくさと帰っていってしのぶはそれを笑顔で見送っていた。

 

しのぶ「あらあら、さようなら。どうですか、体の方は?」ニコー

 

炭治郎「かなり良くなってきています。ありがとうございます。」ペコ

 

しのぶ「ではそろそろブロリーさんも交えて機能回復訓練に入りましょうか。」ニコニコッ

 

炭治郎「・・機能回復訓練?」

 

ブロリー「フフフ!楽しい時間の始まりだ。」

 

炭治郎と伊之助、そしてブロリーはしのぶに連れられて病室を出ていった。その数時間後、三人は病室へと戻ってきたが、炭治郎と伊之助は何故かげんなりしてやつれており、対称的にブロリーは満足そうな表情を浮かべていた。

 

善逸「何があったの?どうしたの?ねぇ?」

 

炭治郎「・・ごめん。」

 

善逸「何々!?炭治郎が寝込むほどの何かをやらされたの!?ねぇブロリーさん!何があったの!?教えて下さい!」

 

ブロリー「善逸、すまないな。しのぶから善逸には明日まで内緒にしてくれと頼まれてるんだ。」

 

善逸(教えてくれよ!!明日から俺も少々遅れて訓練に参加するんだからさ!!本当に何があったの!?わかんないよ!!怖いよ怖いよ!!ブロリーさんは楽しい時間って言ってたけど炭治郎が寝込むほどだぞ!!怖いよ!)

 

ブロリーの言った楽しい時間という言葉が引っ掛かった善逸だったが、炭治郎と伊之助が寝込むほどの過酷なものだということが嫌でも伝わり、次の日まで震えていたのだった。

翌日、善逸は炭治郎の服に掴まり、震えながら訓練場へと足を運び、三人で正座をしてアオイの説明を聞いていた。

 

アオイ「善逸さんは今日から訓練参加ですので、ご説明させていただきますね。まずあちら、寝たきりで硬くなった体をあの子達がほぐします。」キリッ

 

伊之助「ギャアアア!!」

 

アオイが指さした方を見ると、伊之助が布団の上にうつ伏せになり、なほ、すみ、きよの三人がおもいっきり伸ばして悲鳴をあげていた。

 

アオイ「それから反射訓練。湯飲みの中には薬湯が入っています。お互いに薬湯を掛け合うのですが、湯飲みを持ち上げる前に相手から湯飲みを押さえられた場合は湯飲みを動かせません。」

 

湯飲みがたくさんある場所には、カナヲと炭治郎がすでに対戦しており、炭治郎がカナヲにお湯をかけられて惨敗していた。

 

アオイ「最後に全身訓練です。端的に言えば鬼ごっこですね。私アオイとあちらのカナヲがお相手です。」

 

ブロリー「デヤァッ!!」ガシッ

 

カナヲ「!!」

 

逃げ回ろうとしたカナヲをブロリーが一瞬で掴まえて、流石のカナヲも目を見開いてブロリーの強さにポカーンとしていた。その様子を見ていた善逸は、怪訝の表情を浮かべてアオイに尋ねた。

 

善逸「すみません。ちょっといいですか?」

 

アオイ「?何かわからないことでも?」

 

善逸「いや、ちょっと。来い二人共。」

 

炭治郎「?」

 

伊之助「行かねーヨ。」

 

善逸「いいから来いって言ってんだろうがァァァ!!」

 

炭治郎・伊之助・アオイ「!?」

 

善逸は突如怒り、怒った姿を見たことがなかった三人は驚きで硬直している。そんなこともお構い無しに善逸は炭治郎と伊之助の首根っこを掴んで引きずっていった。

 

善逸「来いコラァ!!クソ共が!!ゴミ共が!!」

 

そして外へと連れ出した善逸は、炭治郎と伊之助に正座を強要した。

 

善逸「正座しろ正座ァ!!この馬鹿野郎共!!」

 

伊之助「なんだとテメェ・・!」

 

突っかかろうとした伊之助を善逸は殴り飛ばし、蝶屋敷の壁に叩きつけた。炭治郎は善逸を叱るが、本人には逆効果だった。

 

伊之助「ギイイイイイ!!」

 

炭治郎「何てことするするんだ善逸!!伊之助に謝れ!!」

 

善逸「お前が謝れ!!お前らが詫びれ!!!天国にいたのに地獄にいたような顔してんじゃねぇぇぇぇぇ!!女の子と毎日キャッキャッしてただけのくせに何をやつれた顔してみせたんだよ!土下座して謝れよ切腹しろ!!」

 

炭治郎「何てこと言うんだ!!」

 

善逸「黙れこの堅物デコ真面目が!黙って聞け!いいか!?女の子に触れるんだぞ!体揉んでもらえるんだぞ!湯飲みで遊んでいるときは手を!!鬼ごっこのときは体触れるだろうがァァ!すれ違えば良い匂いがするし、見てるだけでも楽しいじゃろうがい!!幸せ!!うわああ幸せ!!」

 

伊之助「わけわかんねぇこと言ってんじゃねーヨ!!自分より体小さい奴に負けると心折れるんだヨ!!」

 

善逸「やだ可哀想!!伊之助女の子と仲良くしたことないんだろ!山育ちだもんね!遅れてるはずだわ!あー可哀想!!」

 

カッチーン

伊之助「はああ゛ーん!?俺は子供の雌踏んだことあるもんね!!」

善逸「最低だよそれは!!」

 

一方その頃、屋敷の中にいたブロリー達はというと、善逸の大声を聞いてドン引きしていた。

 

アオイ「・・あり得ません。あんな邪な気持ちで訓練しようとしてるなんて・・」

 

しのぶ「善逸君・・」

 

ブロリー「善逸が済まないな。あいつ出会った時から女に求婚を無理矢理迫っていたような奴だったが、まさかあそこまでだったとはな・・」

 

しのぶ「彼そんなこともしてたんですか!?」

 

アオイ「女の敵ですね・・!」

 

アオイ、しのぶ、ブロリーの三人は善逸の悪態をついており、なほ、すみ、きよの三人も善逸達が出ていった方向へ厳しい視線を飛ばしていた。しかし、突如としてしのぶが話題を変えた。

 

しのぶ「ブロリーさん。お願いがあるのですがよろしいですか?」

 

ブロリー「なんだぁ?」

 

しのぶ「彼らがもし、うちの妹達に訓練で勝てるようになったら、今度はブロリーさんが彼らの相手をしてあげてほしいのです。お願いできますか?」

 

ブロリー「・・いいだろう。炭治郎達にとってもいい鍛練になるだろうからな。」

 

しのぶ「ありがとうございます。」

 

しのぶの提案を受け入れたブロリーはしのぶと微笑みあって炭治郎達が成長するのを楽しみにしていた。そして、良いのか悪いのか善逸の参加により士気が上がった。

 

炭治郎(そんな邪な気持ちで訓練するのは良くないと思う。)

 

すみ「んんー!」ギリギリ

善逸「ウフフフフフ♪」

 

善逸は揉みほぐされる中、激痛が走っても笑い続け、ただ者ではないことを見せつけていた。

 

伊之助(あいつ・・やる奴だぜ。俺でも涙が出るくらい痛いってのに笑ってやがる。)

 

ババババババッ!

ピタッ

 

更に反射訓練ではアオイに勝って、カッコつけてみせたが

 

善逸「俺は女の子にお茶をぶっかけたりしないぜ。」

 

しかし、大声で話した内容もあり、アオイや少女達の目は厳しかった。全身訓練の鬼ごっこでも勝ち星をあげるものの

 

善逸「わっしょい!!」がばーっ

アオイ「!!」バキッドカッドゴォ!

 

体に触れた瞬間にぼこぼこに殴られたりするのである。そして、善逸が快進撃を見せることで、負けず嫌いの伊之助も奮起し、反射訓練でアオイに盛大に薬湯をぶっかけた。

 

伊之助「ヨッシャァァ!!」バッ

 

アオイ「・・っ!」バッシャァ

 

更に反射訓練ではアオイを掴まえたあとも、伊之助は容赦しなかった。

 

伊之助「エイサァァァァ!!」グイッ

 

アオイ「痛い!!」

 

二人が好調の兆しを見せるなか、ただ一人勝てない炭治郎は恥ずかしさとひもじさを感じていた。

 

炭治郎(俺だけ負け続けてずぶ濡れ・・恥ずかしい・・)

 

しかし、二人が順調だったのはそこまでであった。反射訓練では運動神経がいい伊之助も

 

カナヲ「・・・・」ひょい

 

伊之助「ギイイイイイ!」ズザー

 

参加してから脅威的な反射神経で、アオイを相手に勝ち星を上げた善逸でさえ

 

カナヲ「・・・・」バッ

 

善逸「・・っ!」バシャッ

 

カナヲには勝てない。湯飲みを押さえることも、掴まえることもできない。ただ一人を除いて。ブロリーだけはカナヲを相手に瞬殺させていた。

 

ブロリー「フハハハ!!」ガシッ

 

カナヲ「!!」

 

また、反射訓練では

 

ブロリー「デヤァッ!!」バッ

 

カナヲ「!!」

 

そんなブロリーの姿を見て、かまぼこ隊の三人は更に落ち込んでいた。

 

伊之助「紋逸が来ても結局俺たちはずぶ濡れで一日を終えたな。しかも俺たちが勝てないあの雌相手にブロッコリーは瞬殺するしな。」

 

善逸「改名しようかな、もう紋逸にさ・・ブロリーさんは普段はとても心強い味方だけどこの場ではひしひしと実力差を見せつけられるだけだな・・」

 

炭治郎「ブロリーさんはともかく、同じときに隊員になったはずなのにこの差はどういうことなんだろう?」

 

善逸「俺に聞いて何か答えが出ると思っているならお前は愚かだぜ。」

 

その日から五日間、三人はカナヲに挑み続けたが、負け続ける日々が続いた。負け馴れていない伊之助は、ふて腐れてへそを曲げる。

 

伊之助「・・フン!」

 

炭治郎「伊之助・・」

 

善逸も早々と諦めムードに入った。

 

善逸「俺にしてはよくやった。遊びに出掛けよう。」うむ

 

善逸と伊之助は訓練場に来なくなり、ブロリーは鍛練という項目で参加しているため、実質リハビリしているのは炭治郎ただ一人になった。

 

アオイ「あなただけ!?信じられないあの人たち!!」

 

炭治郎「すみません。明日は連れてきます・・すみません。」

 

アオイ「いいえ!あの二人にはもう構う必要はありません。あなたも来たくないなら来なくていいですからね。」

 

アオイの突き放しに炭治郎はしょんぼりとしていたが、二人の分まで俺が頑張って勝ち方を教えようと気持ちを切り換えた。しかし、その日もいつもの如く惨敗。炭治郎が勝てないまま、カナヲは続けざまにブロリーと対戦することに、カナヲが負ける姿を見た炭治郎はあることに気がついた。

 

炭治郎(うーん。なんとなくブロリーさんがこの屋敷に来るときよりも強くなっているような気がする。普通の姿なのにまるでスーパーサイヤ人になっているとき並の強さだ。短期間でここまでの変わりようには、絶対に何か秘密があるはず!よし、ブロリーさんの事を徹底的に観察しよう!)

 

その日、炭治郎は機能回復訓練だけでなく、そのあとの自由時間ですらブロリーから視線を外すことなく観察し続けた。数時間後、観察し続けた成果もあり、ついに炭治郎は発見した。

 

ブロリー「・・・・」シイイイイ

 

炭治郎「!!」(あれは全集中の呼吸!?そうか、ブロリーさんは全集中の呼吸をずっとやり続けることで、あの脅威的な反射速度を出すことが出来るんだ!それはおそらくあの子にも出来ている。よし、そうと分かれば俺もやってみよう!)ダッ

 

ブロリー「・・・・」(炭治郎、どうやら気づいたようだな。)

 

こうしてブロリーの変化の秘密を解いた炭治郎は、長時間全集中の呼吸をやろうとするが

 

炭治郎(全っ然できないできなーい!!全集中の呼吸を長くやろうとすると死にそうになるよ。苦しすぎる、肺痛い耳痛い、耳がドクンドクンしてる鼓膜・・)ハァハァハァ

 

簡単に習得できるはずもなく、今までに感じたことのない苦しみに襲われていた。そのとき炭治郎は耳から心臓が飛び出たような感覚に見舞われ、自分の両手を見て何も出てないことに安堵した。

 

炭治郎「ふがいなし!」(呼吸は肺だ、ちゃんとできてないっていうことは肺が貧弱なんだ。もっと早起きして走り込む、そして息止め訓練。頑張れ!!頑張ることしかできないんだから、俺は昔から。努力は日々の積み重ねだ。少しずつでいい、前に進め!!)

 

炭治郎「ハイ!!」

 

炭治郎の様子を影から見ていた者がいた。なほ、すみ、きよの三人である。常に頑張り続けている炭治郎に、差し入れを持っていこうと話し合っていた。

 

なほ「炭治郎さん毎日頑張ってるね。」

きよ「うん。」

すみ「おにぎり持っていってあげようよ。」

きよ「そうだね、あと瓢箪も。」

 

炭治郎に差し入れを渡すと、屈託のない純粋な笑顔でお礼を言われて、三人は嬉しそうに笑みを浮かべていた。そして瓢箪について説明をしていた。

 

炭治郎「瓢箪を吹く?」もしゃもしゃ

 

きよ「そうです。カナヲさんに稽古をつけるとき、しのぶ様はよく瓢箪を吹かせていました。」

 

炭治郎「へぇー。面白い訓練だねぇ。音が鳴ったりするのかな?」

 

きよ「いいえ。吹いて瓢箪を破裂させてました。」

 

炭治郎「へぇー・・破裂!?えっこれを?この硬いの?」

 

きよ「はい。しかもこの瓢箪は特殊ですから通常の瓢箪よりも硬いです。」

 

炭治郎(そんな硬いのをあの華奢な女の子が!?)

 

きよ「だんだんと瓢箪を大きくしていくみたいです。今カナヲさんが破裂させているのはこの瓢箪です。」でーん

 

きよが見せた瓢箪は、きよが正座をして同じ程の大きさの瓢箪であった。さらに

 

きよ「ちなみにブロリーさんが破裂させているのはこの瓢箪です。」ででーん

 

もうひとつ見せた瓢箪は、きよが立ちあがって同じ程の大きさの瓢箪であった。彼女一人だけでは運べなかったので、三人で同時に運んできたのだ。

 

炭治郎(でっか!!頑張ろ!!)

 

この衝撃の事実を伝えられた炭治郎は、少しでもカナヲとブロリーに追い付くために、気持ちを入れ直して頑張ろうと決意するのであった。その十五日後、蝶屋敷の屋根の上にはブロリーと炭治郎が並んで全集中常中をしていた。

 

ブロリー「・・・・」シイイイイ

炭治郎「・・・・」ヒュウウウ

 

ブロリー(この屋敷にきて全集中常中ができるようになってからカナヲやしのぶよりもさらに強くなったと思うが、まだこのままではカカロットには勝てない。奴を超えるためにはもっと強くならなければ、そして炭治郎と禰豆子に恩を返すんだ。)

 

炭治郎(よし、かなり体力が戻ってきた。そして以前よりも走れるし肺も強くなって来たぞ、いい感じだ。昼間は走り回って速い動きで肺を酷使してるから今はゆっくり、瞑想は集中力が上がるんだ。鱗滝さんも言ってた。・・すみません鋼鐵塚さんすごい怒ってるだろうな・・)

 

しのぶ「もしもし。もしもし。もしもし。」

 

炭治郎「ハイッ!?」

ブロリー「へぁっ!?」

 

しのぶ「ふふ、ブロリーさん。また驚かせてしまいましたか?頑張ってますね。お友達二人はどこかへ行ってしまったのに、二人きりで寂しくないですか?」ちょこん

 

声がした方向を見ると、しのぶが炭治郎の隣にちょこんと座って笑顔を浮かべていた。

 

ブロリー「しのぶ。」

 

炭治郎「いえ!できるようになったらやり方を教えてあげられるので!」

 

しのぶ「・・君は心が綺麗ですね。」

 

炭治郎「・・あの、どうして俺たちをここへ連れて来てくれたんですか?」

 

しのぶ「禰豆子さんの存在は公認となりましたし、君たちは怪我もひどかったですしね。それから・・君達には私の夢を託そうと思って。」

 

炭治郎・ブロリー「「夢?」」

 

しのぶ「そう、鬼と仲良くする夢です。きっと君達ならできます。」

 

炭治郎「怒ってますか?」

 

しのぶ「!!」

 

炭治郎「なんだかいつも怒ってる匂いがしていて、ずっと笑顔だけど・・」

 

しのぶ「・・そうですね。私はいつも怒っているかもしれない。鬼に最愛の姉を惨殺された時から、鬼に大切な人を奪われた人々の涙を見る度に、絶望の叫びを聞く度に、私の中には怒りが蓄積され続け膨らんでいく。体の一番深いところにどうしようもない嫌悪感がある。他の柱もきっと似たようなものです。」

 

ブロリー(俺に打ち明けたときと全く同じ説明だ。だが俺のときとは違ってこれは本心だな。)

 

しのぶ「まぁ今回彼らも、禰豆子さんを見て直接気配を覚えたでしょうし、お館様の意向もあり誰も手出しすることはないと思いますが・・私の姉も君のように優しい人だった。鬼に同情していた。自分が死ぬ間際ですら鬼を哀れんでいました。私はそんなふうに思えなかった。人を殺しておいて可哀想?そんな馬鹿な話はないです。でもそれが姉の思いだったのなら私が継がなければ、鬼を斬らなくてすむ方法があるなら考え続けなければ、姉が好きだといってくれた笑顔を絶やすことなく。だけど少し・・疲れまして。」

 

ブロリー(炭治郎のように優しすぎるのがしのぶの姉なのか?)

炭治郎「・・・・」

 

しのぶ「鬼は嘘ばかり言う、自分の保身の為。理性もなくし、剥き出しの本能のまま人を殺す。炭治郎君、そしてブロリーさん。頑張ってくださいね。どうか禰豆子さんを守り抜いてね。自分の代わりに頑張ってくれていると思うと、私は安心する。気持ちが楽になる。」

 

しのぶは二人に伝えるとしたに降りていった。しのぶの言葉を聞いた二人はそれぞれ違う反応をした。

 

炭治郎「・・頑張ります。」

ブロリー「・・考えておこう。」

 

炭治郎「ブロリーさん、しのぶさんの夢を継がないんですか?」

 

ブロリー「・・なんとなくあのまま引き継ぐことに嫌な予感がしたからな。とりあえず考えておく。」

 

翌日、朝早起きした炭治郎は、三本の布団叩きを持ってなほ、すみ、きよの三人にお願い事をしていた。

 

炭治郎「なほちゃんきよちゃんすみちゃん、俺の修行の手伝いをしてほしい。俺が寝てる間全集中の呼吸をやめたら布団叩きでぶん殴ってくれないか?」

 

なほ・きよ・すみ「「「いいですよ!」」」

 

炭治郎「アリガトウ。」ペコ

 

その日から炭治郎は、寝てる間に全集中の呼吸をやめる度に三人から殴られる事を繰り返し、十日後にようやく無意識でも全集中常中ができるようになった。そしてカナヲが破裂させている瓢箪よりも一回り小さいものを破裂させようとしていた。

 

炭治郎「ヒュウウウ・・ブォ!」

 

なほ・すみ・きよ「「「頑張れ!!」」

 

ミシミシミシミシバン!

 

炭治郎「割れたー!!」

 

きよ「キャーッ!!」

すみ・なほ「「わーっ!」」

 

遂に炭治郎は大きい瓢箪を破裂させることに成功したのだ、そしてその勢いそのままに挑んだ全身訓練で、しっかりとカナヲのあとを追えていた。

 

炭治郎(追えてる!!ちゃんとあの子を追えてる!!ついて行けてる!!まだかなり気合を入れないとまだ一日中全集中の呼吸はできないけど、全集中の呼吸を長くできるようになればなるほど基礎体力が上がるんだ。俺の体は変わった!!早く刀を振りたいこの手で日輪刀を!!)ガシッ

 

カナヲ「!!」

 

全身訓練でカナヲに勝つことに成功し、反射訓練でも炭治郎の快進撃は続いた。カナヲの動きについていき、僅差で炭治郎が湯飲みを抜き取るものの、理性が臭い薬湯をかけたら可哀想と呼び掛け頭の上に湯飲みを置いた。

 

きよ「勝ったー!!」

 

すみ「勝ったのかな?」

 

きよ「かけるのも置くのも同じだよ!」

 

全ての訓練でカナヲに勝った炭治郎はなほ、すみ、きよの三人とはしゃぎながら喜んだ。そしてその様子を陰からこっそりと見る者の姿があった。

 

善逸・伊之助((やばい))

 

善逸と伊之助である。二人がサボってる中、炭治郎だけが毎日欠かさずに努力を重ねてカナヲに勝つ姿を見て置いていかれた事を実感していたのだ。次の日から、二人も訓練に再び参加し始めたが、善逸も伊之助も炭治郎に置いていかれた焦りのせいでうまく覚えられないと思っていた。

 

炭治郎「呼吸をこうフン、フンってやって肺を大きくするんだ。」

 

善逸・伊之助「・・・・」ブンブン

 

しかし、うまく覚えられない原因だけは別であり、炭治郎は人に教えるのが爆裂に下手だったのだ。それを見かねたしのぶは炭治郎に変わって説明を始めた。

 

しのぶ「炭治郎君が会得したのは全集中・常中という技です。全集中の呼吸を四六時中やり続けることにより、基礎体力が飛躍的に上がります。これはまぁ基本というか初歩的な技術なのでできて当然ですけれども、会得するには相当な努力が必要ですよね。もちろん、ブロリーさんもすでに会得済みですよ。」

 

しのぶは笑顔で伊之助の肩をポムポムと叩いて、励ましという名の煽りを入れた。

 

しのぶ「まぁできて当然ですけれども、仕方ないです。できないなら、しょうがないしょうがない。」ポム

 

ビキッビキビキッブチッ

 

伊之助「はあ゛ーん!?できてやるっつーの当然に!!舐めんじゃねぇよ乳もぎ取るぞコラ!!」

 

善逸には彼の手を自身の両手で包み込み、笑顔で応援していることを伝えた。

 

しのぶ「頑張ってください善逸君。一番応援してますよ。」

 

善逸「ハイッ!!」

 

伊之助も善逸も大奮起し、きつい鍛練にも積極的に取り組むようになった。そしてその九日後

 

伊之助「やってやったぞゴラ゛ァ!!」

 

善逸「俺は誰よりも応援された男!!」

 

伊之助も善逸も全集中常中を取得した。しのぶは炭治郎とは対称的に人に教えるのが非常に上手かったのだ。それにいい知らせはそれだけではなかった。

 

炭治郎「伊之助!!ブロリーさん!!もうすぐ打ち直してもらった日輪刀がくるって!」

 

伊之助「ほんとか!?」

 

炭治郎「うん今カラスに聞いた!!」

 

ブロリー「そうですかぁ。」

 

伊之助「ヤッフー!!」

 

炭治郎「急げ急げ!」

 

日輪刀が届く。それは鬼殺隊の隊員にとって体の負傷した部分が完治するのと同等の意味をもつ。そして再び任務に行ける為、二人は喜んでいるのだ。ブロリーの日輪刀は別に折れていないが、一応メンテナンスということで預けていたのだ。そして外に出ると、鋼鐵塚ともう一人鉄穴森という人物が蝶屋敷に向かってきているのが見えた。

 

炭治郎「鋼鐵塚さーん!おーい!ご無沙汰してまーす!元気でしたか!!・・!?」

 

鋼鐵塚は炭治郎の姿を確認すると、凄い勢いで走って向かってきたのだ・・両手に包丁を持ちながら。そして凄い殺気を感じた炭治郎は反射的に避ける。鋼鐵塚の包丁は空を切った。

 

炭治郎「ギャアア・・鋼鐵塚さん!?」

 

鋼鐵塚「よくも折ったな、俺の刀を・・!よくもよくもぉぉ!!」

 

炭治郎「すみません!!でも本当にあの・・俺も本当に死にそうだったし、相手も凄く強くって・・」

 

鋼鐵塚「違うな!関係あるもんか!お前が悪い!!全部お前のせい!お前が貧弱だから刀が折れたんだ!そうじゃなきゃ俺の刀が折れるもんか!!殺してやるー!!」

 

鋼鐵塚は包丁を振り回しながら炭治郎を追いかけ始めたが、その肩をブロリーが掴んだ。それを払うように鋼鐵塚は振り返る。

 

ブロリー「俺の日輪刀はどこだ?」

 

鋼鐵塚「お前はブロリーか。お前しっかり日輪刀を手入れしてないだろ!!所々錆ついてたぞ!さては一度も使ってないなお前!使わなくても刀が錆びるなんてありえねんだよ!今後はしっかりと手入れしろ!!」

 

ブロリー「済まなかった。善処する。」

 

炭治郎「すみませんブロリーさん。助かりました。」

 

鋼鐵塚「俺はお前を許してねぇよ炭治郎!!次はねぇからな!!」

 

ブロリーに八つ当たりの如くブロリーに怒鳴り散らし、少しスッキリしたのかその後炭治郎を追い回すことはなかった。蝶屋敷の客室に入ると、鉄穴森が口を開いた。

 

鉄穴森「まぁ鋼鐵塚さんは情熱的な人ですからね。人一倍刀を愛していらっしゃる。あ、私は鉄穴森と申します。伊之助殿の刀を打たせていただきました。戦いのお役に立てれば幸いです。」

 

伊之助「・・・・」ズズ

 

伊之助が刀を握ると、藍鼠色に変わった。刃こぼれが直り、とても美しい形をしていた。

 

鉄穴森「ああ綺麗ですね。藍鼠色が鈍く光る。渋い色だ。刀らしい良い色だ。」

 

炭治郎「よかったな、伊之助の刀はとても刃こぼれが酷かったから・・」

 

鉄穴森と炭治郎が話している間、鋼鐵塚はずっと炭治郎を殴っていた。そして伊之助は何を思ったのか、刀を持ったまま庭に出て石を探索し始めた。

 

鉄穴森「?伊之助殿?」

 

ぺっぺっスッ

 

伊之助「おらぁ!!」ガチーンガチーン!!

 

炭治郎・ブロリー「!!」

 

なんと伊之助はせっかく新品になった日輪刀を態と刃こぼれさせたのだ。これには普段は温厚な性格の鉄穴森も怒りの頂点に達していて飛びかからんとしていた。

 

伊之助「よし!」ボロボロ

 

鉄穴森「ぶっ殺してやるこのくそ餓鬼!!」

 

炭治郎「わーっ!!すみませんすみません!!」

 

その一方、一人病床にいる善逸は禰豆子の入った箱に寄り添って話しかけていた。

 

善逸「それでさぁ、走り込むのがほんとにしんどくってさぁ。水の中での息止め訓練では、伊之助が蛸みたいな動きしてるから吹き出しちゃって。でもさぁできなかったことできるようになるの嬉しいよね。炭治郎は俺をずっと励ましてくれたよ。いいお兄ちゃんだねぇ禰豆子ちゃん。」

 

カリカリ

 

箱を引っ掻くような音がして禰豆子が善逸の声に反応していた。

 

善逸「あっそうだ!今日の夜はこのお花が咲いてた所に連れていくよ~。」

 

そして、普段は怒らない鉄穴森がキレているところを見て、炭治郎への怒りが完全にどこかへ吹き飛んでしまった鋼鐵塚は、行き来たときとは真逆で、励ます立場になりながら帰っていったのだった。




蝶屋敷の休息マジで長い。やっと原作の六巻が終わりそうです。これからも頑張ります。それではまた次回。


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鬼舞辻無惨の怒り!無限城でのパワハラ会議!

第十五話です。今回は鬼たちの会議のため、ブロリー達は出てきません。それでもよろしい方は、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


ここは無限城と呼ばれる巨大な城の中である。鬼殺隊の本部が産屋敷の屋敷であるように、ここは鬼の始祖鬼舞辻無惨や十二鬼月を始めとした鬼たちの巣窟なのだ。そしてここに琵琶をならしている女の鬼がいた。彼女は鳴女と呼ばれており、琵琶を鳴らすことで無限城の空間を自在に操る血鬼術を持っていた。

 

ベベンベンベン

 

彼女が琵琶を鳴らすと鬼一体が召喚され、突然のことにその鬼は驚いていた。その間にも鳴女は更に琵琶を鳴らす。

 

ベベンベンベン

 

そして合計五体の鬼が同じ空間へと呼び出された。その鬼達には共通点があり、全員が十二鬼月の下弦の鬼なのだ。下弦の壱、魘夢・下弦の弐、轆轤・下弦の参、病葉・下弦の肆、零余子・下弦の陸、釜鵺と上弦の鬼はどこにもいなかった。そして五体の前に一人の女性が現れた。

 

釜鵺(何だこの女は?誰だ?)

 

釜鵺が突如現れた女に不信感を抱いていると、その女性は口を開いた。

 

無惨「頭を垂れてつくばえ、平伏せよ。」

 

「「!!」」ババッ

 

その女性の招待は、鬼の始祖鬼舞辻無惨であった。擬態しているため、誰一人として見抜けなかったのだ。

 

釜鵺(無惨様だ・・無惨様の声。わからなかった。姿も気配も以前と違う。凄まじい精度の擬態。)

 

零余子「も、申し訳ございません。お姿も気配も異なっていらしたので・・」

 

無惨「誰が喋って良いと言った?」

 

零余子「!!」ガタガタ

 

無惨「貴様共のくだらぬ意思で物を言うな。私に聞かれたことにのみ答えよ。累が殺された、下弦の伍だ。」

 

無惨は他の鬼達に一切の有無を言わさずに淡々と語り始める。自分の意思を押しつけるその様は、現代社会で言うパワハラというものである。そのまま淡々とそれまでの経緯を語り始める。

 

無惨「貴様共の足りぬ頭でも理解できるように私がハナから全て説明してやる、ありがたく思え。私は以前浅草で耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りと金の首飾りをつけた男に出会った。鬼狩りはともかく、男の方は私を凌ぐ程の強さを持っていた。私はあの男が鬼狩りであることを考慮して、十二鬼月の上弦下弦問わず全員にふんだんに血を分けてやった。私は優しいから貴様共にあの男を殺せと無謀なことは言わない。だが累は奴を傷つける所か、ダメージを負わせることすらかなわず一撃で殺された。あれだけ私が血を分けてやったにもかかわらずだ。

私が問いたいのは一つのみ、何故下弦の鬼はそれ程まで弱いのか。」

 

無惨は相当怒っているのか、顔中に血管が浮き出ていた。姿が見えなくても、怒っていることを威圧感と気配でわかる下弦の鬼は壱を除いて震えていた。

 

無惨「十二鬼月に数えられたからと言って終わりではない。そこから始まりだ。より人を喰らい、より強くなり、私の役に立つための始まり。百歩譲って金の首飾りの男のことは上弦ですら葬ることはほぼ不可能だ、だが傷つけることくらいは出来ると私は踏んでいる。しかし下弦はどうか?あの男所か鬼狩りの柱を葬ることすらままならない。何度入れ替わった?」

 

釜鵺(そんなことを俺たちに言われても・・)

 

無惨「"そんなことを俺たちに言われても"何だ?言ってみろ。」

 

釜鵺(!?思考が・・読めるのか?まずい・・)ギクッ

 

無惨「何がまずい?言ってみろ。」

 

無惨は左腕を巨大な肉の塊に変えると、そのまま釜鵺を掴んで締め上げる。本能的に死を感じた釜鵺は許しを求めた。

 

釜鵺「お許しくださいませ!鬼舞辻様どうか!どうかお慈悲を!申し訳ありません!申し訳ありません!申し訳・・」ぐちゃバリバリバリ

 

無惨の腕から伸びた肉壁が突如巨大な口に変わり、そのまま釜鵺は無惨に喰われ生涯を終えた。その光景を見ていた他の下弦の鬼達はみんな青ざめていた。

 

無惨「私よりも鬼がりの方が怖いか?」

零余子「!!」ギクッ

 

無惨が次に問いかけたのは零余子に対する鬼殺隊と遭遇したときにいつも逃げようとする姿勢だった。

 

無惨「お前はいつも鬼狩りの柱と遭遇した場合逃亡しようと思っているな。」

 

零余子「いいえ思ってません!!私は貴方様のために命をかけて戦います!」

 

無惨「・・・・お前は私の言うことを否定するのか?」グシャ

 

しかし必死の説得もむなしく失敗に終わり、無惨の理不尽な物言いで無様に殺された。

 

病葉(もうダメだぁ・・おしまいだぁ・・思考は読まれ、肯定しても否定しても殺される。にげるんだぁ・・勝てるわけがないYO・・)

 

無惨「何処へ行くつもりだ?まさか私から逃げられると思ってるわけではあるまいな?」

 

病葉「!!いいえ!貴方様の役に立つために鬼狩り共を葬る準備です!」

 

無惨「・・・・鳴女の血鬼術で出した一人用の襖でか?」グシャ

 

病葉は逃げようとするのを無惨に思考を読まれ、断末魔を上げる間もなく喰い殺された。

 

無惨「もはや、十二鬼月は上弦のみで良いと思っている。下弦の鬼は解体する。最期に何か言い残すことはあるか?」

 

無惨の声にいち早く反応したのは下弦の弐である轆轤である無惨の役に立つと必死に抗議をする。

 

轆轤「私はまだお役に立てます!もう少しだけ御猶予を戴けるならば、必ずお役に!」

 

無惨「具体的にどれ程の猶予を?お前はどのような役に立てる?今のお前の力でどれ程のことができる?」

 

轆轤「血を・・!!貴方様の血を分けて戴ければ!私は必ず"血に順応してみせます!より強力な鬼となり戦い・・ふおお!?」

 

ガシッ キーン ドゴーン!!

 

全て言い終わる前に無惨は轆轤の頸を掴んで無限城の壁に叩きつけた。壁にめり込んだ轆轤を中心に大きなクレーターができていた。そのまま更に締め上げながら、怒りで顔中に血管を浮かび上がらせ、無惨は口を開いた。

 

無惨「なぜ私がお前の指図で血を与えねばならんのだ?甚だ図々しい。身の程を弁えろ。」ビキビキ

 

轆轤「・・・・!違います!!違います!!私は!」

 

無惨「黙れ。何も違わない。私は何も間違えない。全ての決定権は私に有り、私の言うことは絶対である。お前の意思など知ったことではない、私の意思こそが全てだ。お前に拒否する権利はない。私が"正しい"と言ったことが"正しい"のだ。お前は私に指図した。死に値する。」

 

無惨はそのままもう片方の腕を、先ほどと同じように肉壁を作り、逃げることすらままならず喰い殺された。最後に残った下弦の壱、厭夢にも同様の事を聞く。

 

無惨「最期に言い残すことは?」

 

厭夢「そうですね。ほう・・私は夢見心地で御座います。貴方様直々に手を下して戴けること。他の鬼たちの断末魔を聞けて楽しかった。幸せでした。人の不幸や苦しみを見るのが大好きなので、夢に見るほど好きなので、私を最後まで残してくださってありがとう。」

 

無惨「・・・・」

 

ドギュ!!ドクンドクン

 

無惨はしばらく黙りこんだ後、肉壁となった自身の腕を鋭利な刃に変えて、厭夢の頸元に突き刺した。そしてそこから大量の血を入れたのだ。厭夢はあまりにも多すぎる無惨の血に苦しみの声を上げる。

 

厭夢「ガア ア゛ッ アア゛」

 

無惨「気に入った。私の血をふんだんに分けてやろう。ただしお前は血の量に耐えきれず死ぬかもしれない。だが"順応"出来たならば、さらなる強さを手に入れるだろう。そして私の役に立て。鬼狩りの柱を殺せ。そしてあの金の首飾りの男に重傷の一つくらい負わせてこい。耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りを殺せばもっと血を分けてやる。」

 

ベンベベンベン

 

鳴女が再び琵琶を鳴らすと、無限城にいた無惨はもとの場所に戻っていき、厭夢は動けなかった為、無理矢理夜の商店街に落とされた。厭夢の頭に無惨の記憶が流れ込み、市松模様の羽織を着た炭治郎と、そのとなりにいる金の首飾りをつけたサイヤ人、ブロリーの姿が映し出された。

 

厭夢「うふ、うふふ。柱と、この子供を殺してこの男に重傷を負わせればもっと血を戴ける・・夢心地だ・・!!」

 

まだ二人に遭遇すらしていない為、"捕らぬ狸の皮算用"ではあるが、この二人を葬ることを想像して止まらない厭夢は、ずっと倒れこんだままニヤニヤと物思いに耽っているのであった。




今回はかなり文字数が少なくなってしまいました。申し訳ありません。次回からはまた10000文字前後を目指して書いていきます。それではまた次回。


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全○百線鉄道の旅!今回は無限列車の旅!

第十六話です。ブロリー達が再び出てきます。こんな小説ですが最後まで読んでくれたら嬉しいです。


ここは蝶屋敷、炭治郎達は大分怪我が治り、しのぶに聴診器を当てられて定期検診をしていた。そして、任務に支障が出ないと判断され、長い機能回復訓練の期間が終わり、次の任務に向けて準備をしていた。

 

しのぶ「体の方はもう完全に治りましたね異常なしです。すみません。お見送りはできませんが、これからも頑張ってくださいね。」

 

炭治郎「はい!ありがとうございます!最後に一つ聞きたいことがあって・・」

しのぶ「何でしょう?」

 

炭治郎「ヒノカミ神楽って聞いたことありますか?」

 

しのぶ「ありません。」

 

炭治郎「!?えっあっじゃあ火の呼吸とか・・」

 

しのぶ「ありません。」キッパリ

 

柱に聞けばヒノカミ神楽のことが全集中の呼吸とどのような繋がりがあるか解るものだと思っていた炭治郎は、しのぶのキッパリとした答えに戸惑いを隠せず、最初から事情を説明することにした。そして、事の事情を理解したしのぶは顎に手を添えて考える仕草をする。

 

しのぶ「なるほど。なぜか竈門君のお父さんは火の呼吸を使っていた。火の呼吸の使い手に聞けば何かわかるかもしれないと、ふむふむ。『火の呼吸』はありませんが『炎の呼吸』はあります。」

 

炭治郎「??同じではないんですか?」

 

しのぶ「私も子細はわからなくて・・ごめんなさいね。ただその辺り呼び方についてが厳しいのですよ。『炎の呼吸』を『火の呼吸』と呼んではならない。詳しいことは炎柱の煉獄さんに訪ねてみるといいかもしれません。」

 

診察室から出ると、そこでブロリーが壁に寄りかかりながら

炭治郎のことを待っていた。

 

炭治郎「ブロリーさん!お待たせしました!」

 

ブロリー「体はなんと言われたんだ?」

 

炭治郎「もう任務に戻っても大丈夫みたいです。完治したと言われました!」

 

ブロリー「そうですかぁ。よかったです。」

 

炭治郎とブロリーは任務に行く前にお世話になった蝶屋敷の人たちに挨拶するために、まずは庭で洗濯物を取り込んでいるアオイの元へ向かった。

 

アオイ「そうですか!もう行かれる。短い間でしたが、同じ刻を共有できて良かったです。頑張ってください。お気をつけて!」テキパキ

 

炭治郎「忙しい中俺たちの面倒みてくれて本当にありがとう。おかげでまた戦いに行けるよ。」

 

アオイ「・・あなたたちに比べたら私なんて大したことはないのでお礼など結構です。選別でも運良く生き残っただけ、その後は鬼が恐ろしくて戦いに行けなかった。ただ家事をすることしか取り柄がない腰抜けなので。」

 

ブロリー「・・ムシケラを倒しに行くことだけが戦うことではない。」

アオイ「え?」

 

ブロリー「お前は鬼殺隊の奴らの怪我や病気を治すことができている。これは他の奴らではできないことだ。それに薬や美味い飯も出してくれる。お前がいるから他の奴らは支えられている。それは一緒に戦ってるのと同じことだ。」

 

アオイ「!」

 

炭治郎「ブロリーさんの言う通りだよ。俺を手助けしてくれたアオイさんはもう俺の一部だから。アオイさんの想いは俺が戦いの場に持っていくし。」

 

アオイ「!!」

 

炭治郎「また怪我したら頼むねーっ。」タッ

 

アオイとの挨拶を終えた二人は、次にカナヲのところへ来た。彼女は縁側に座っていた。

 

炭治郎「あっいたいた、カナヲ。俺たち出発するよ。色々ありがとう。」

 

カナヲ「・・・・」ニコニコ

 

炭治郎「君はすごいね。同期なのにもう"継子"で、俺たちも頑張るから。」

 

カナヲ「・・・・」ニコニコ

 

炭治郎「えーっと・・・・」

 

カナヲ「・・・・」ニコニコ

スッ ピン パシッ

 

カナヲは笑顔で終始無言だったが、懐からコインを一枚取り出すと弾き、手の甲の上で止めた。出た目は裏である。それを見たカナヲは口を開いた。

 

カナヲ「師範の指示に従っただけなので、お礼を言われる筋合いはないから。さようなら。」ニッコリ

 

炭治郎(喋ってくれた!)

 

ブロリー(金で喋るかどうかを決めたのか?)

 

炭治郎「今投げたのは何?」

カナヲ「さようなら。」

 

炭治郎「それ何?」

カナヲ「さよなら。」

 

炭治郎「お金?表と裏って書いてあるね。何で投げたの?」

 

カナヲ「指示されてないことはこれを投げて決める。今あなたと話すか話さないか決めた。"話さない"が表"話す"が裏だった、裏が出たから話した。さようなら。」

 

炭治郎「何で自分で決めないの?カナヲはどうしたかった?」

 

カナヲ「どうでもいいの。全部どうでもいいから、自分で決められないの。」

ブロリー「おい。」

 

ブロリーが唐突にカナヲを呼び、カナヲはブロリーの方へ振り返った。

 

カナヲ「破壊柱様?」

 

ブロリー「お前はさっき自分で決められないと言ったな?だが俺から見ると自分の意思で決めているではないか。」

 

カナヲ「?決めてませんよ。もう全部どうでもいいからこれに頼ったんです。」

 

ブロリー「それなら聞くがな、お前は話さないを表、話すが裏と決めてそれを投げた。表と裏でどうするか判断したのはお前の意思ではないのか?」

 

カナヲ「!」

 

ブロリー「それだけじゃない。もう一つ聞くが、お前は鬼殺隊に入るときすらもどうでもいいからそれを投げて決めたのか?」

 

カナヲ「いいえ違います。私はカナエ姉さんとしのぶ姉さんに拾われたんです。私を助けてくれた師範を悲しませ、カナエ姉さんを殺し、アオイやなほ・すみ・きよの家族を奪った鬼が許せなかった。私はアオイみたいに家事もできない。だからせめて鬼殺隊に入って師範の役に立ちたかった。・・・・ハッ!」

 

そこまで自分の経緯を話したところでカナヲはハッとする。自分の意思で物を決めていることに気づいたのだ。そして答えを聞いたブロリーは口元に笑みを浮かべる。

 

ブロリー「やっと気づいたようだな。そうだ、お前はしっかりと目的をもって自分で決められている。お前はもう自分の意思で動くことができるはずだ。」

 

炭治郎「そうだぞカナヲ!この世にどうでもいいことなんてきっと無いと思うよ。カナヲは心の声が小さいんだろうな。うーん、指示に従うことも大切なことだけど。それ貸してくれる?」

 

カナヲ「え?あっ・・うん。」

 

炭治郎「ありがとう!よし!投げて決めよう!」

 

カナヲ「何を?」

 

炭治郎「カナヲがこれから自分の心の声をよく聞くこと、表!!表にしよう!表が出たらカナヲは心のままに生きる!」ピン

 

炭治郎はカナヲから借りた銅貨を弾いたが、強くやり過ぎたため、大きく空中に舞い上がってしまった。

 

炭治郎「わー飛ばしすぎた!わっあれ!?どこ行った!?」

 

パシッ

 

炭治郎は銅貨を見失うも、なんとか再度見つけて取った。

 

炭治郎「とれたとれた!カナヲ!!」

 

カナヲ(どっちだろう。落ちた瞬間が背中で見えなかった。)

 

炭治郎が手をどけると、そこには表が上向きになった銅貨があった。

 

炭治郎「表だーーっ!!カナヲ頑張れ!!人は心が原動力だから心はどこまでも強くなれる!!」

 

カナヲ「・・・・」

 

炭治郎「じゃ、またいつか!行きましょうブロリーさん!」

 

ブロリー「はい・・」

 

炭治郎は去ろうとしたが、姿が見えなくなる直前にカナヲが声をかけた。

 

カナヲ「なっなんで表を出せたの?」(投げる手元は見てた。小細工はしてなかったはず・・)

 

炭治郎「偶然だよ。それに裏が出ても、何度でも投げ続けようと思ってたから。」ニカー

 

カナヲは炭治郎の答えを聞くと、彼らの姿が見えなくなったのを確認し、銅貨を握っている手を自身の胸に押し当てた。

 

カナヲ「!?!?」ハッ

 

そして自身の行動に驚いたカナヲは慌てて立ち上がろうとしたが、足がもつれて転んでしまった。屋敷の外では、なほ、すみ、きよの三人が、炭治郎達との別れを惜しんで号泣していた。炭治郎と善逸も泣いていたが、伊之助とブロリーは何故泣くのかがわからないでいた。

そして、蝶屋敷を後にした四人は、とある駅へとやって来ていた。公共の場にも関わらず、善逸の大声が駅舎に響いていた。

 

善逸「えーっ!!まだ指令来てなかったのかよ!!居て良かったじゃんしのぶさん家に!!」

 

炭治郎「いや・・治療終わったし一ヶ所に固まっているより・・」

 

善逸「あんな悲しい別れをしなくて良かっただろ!!」

 

炭治郎「いや・・指令が来たとき動きやすいように・・あと炎柱の・・」

 

善逸「バカバカバカァ!!」ボカボカ

 

善逸が一方的に炭治郎を罵っていると、なにかを見つけた伊之助が叫んだ。

 

伊之助「オイ!」

 

善逸「今忙しい!!」

 

伊之助「オイ!!オイッ!!」

 

善逸「何だようるさいな!」

 

伊之助「何だあの生き物はー!!」

 

伊之助が発見したのは、茶色の客車八両程を繋ぎ、先頭は黒い蒸気機関車が連結されている『無限列車』である。名前の通り、プレートに無限と書かれていた。汽車を見たことがない伊之助は盛大に勘違いをしていた。

 

伊之助「こいつはアレだぜ、この土地の主・・この土地を統べる者。この長さ、威圧感、間違いねぇ。今は眠ってるようだが油断するな!!まず俺が一番に攻めこむ!」

 

炭治郎「この土地の守り神かも知れないだろう?それから急に攻撃するのも良くない。」

 

善逸「いや汽車だよ知らねぇのかよ。」

 

ブロリー「炭治郎、これは乗り物だ。」

 

炭治郎「乗り物?乗り物って何ですか?」

 

ブロリー「人を乗せて遠くまで運ぶものだ。色々な種類があって楽に移動ができるんだ。」

 

炭治郎「へぇー。これは何て言う乗り物何ですか?」

 

善逸(良かった。ブロリーさんはちゃんとわかってくれてる。やっぱりブロリーさんがいると心強いな。)ホッ

 

ブロリー「これは二百人用のポッドだ。」

 

善逸「やっぱり全然わかってなーい!!ポッドでもボートでもねぇよ!!列車だよ!!この田舎者共が!!」

 

炭治郎「ん?列車?じゃあ鴉が言ってたのがこれか?」

善逸「鴉が?」

 

ブロリー「そうだ、鴉が言ってたんだ。無限列車とやらに乗れと。」

 

炭治郎やブロリーが話している中、伊之助は客車に頭突きをしていた。

 

伊之助「猪突猛進!!」ドーン!

 

善逸「やめろ恥ずかしい!!」

 

騒がしくしているうちに駅員が走ってきてしまい、四人は一時撤退を余儀無くされた。そして駅舎の裏へと逃げ込んだ四人は改めて鬼殺隊の認識をした。

 

善逸「政府公認の組織じゃないからな、俺たち鬼殺隊。堂々と刀持って歩けないんだよホントは。鬼がどうのこうの言ってもなかなか信じてもらえんし、混乱するだろ。」

 

炭治郎「一生懸命頑張ってるのに・・」

 

善逸「まぁ仕方ねぇよ。とりあえず刀は背中に隠そう。」

 

しかし伊之助とブロリーは服を着てないため、背中に隠そうとしても丸見えなのだ。そして背中に隠したつもりでドヤ顔を決めた伊之助に善逸は突っ込んだ。

 

善逸「丸見えだよ服着ろ馬鹿。」

 

炭治郎はメモを取り出し、任務の確認をしてそれを善逸達に説明する。

 

炭治郎「無限列車っていうのに乗れば煉獄さんと会えるはずなんだけど、すでに煉獄さんは乗り込んでるらしい。」

 

ブロリー「俺たちはそいつに会って共に任務とやらに向かうみたいだ。」

 

善逸「じゃあ切符買ってくるから静かにしてるんだぞ。」

 

炭治郎「わかった!ありがとう。」

 

そして善逸は無事に四人分の切符を買い、炭治郎達に渡すとホームから列車に乗り込んだ。伊之助ははじめて乗った列車に興奮を隠せずに騒いでいた。

 

伊之助「うおおおお!!腹の中だ!!主の腹の中だ!!戦いの始まりだ!!」

 

善逸「うるせーよ!柱だっけ?その煉獄さん。顔とかちゃんとわかるのか?」

 

炭治郎「うん、派手な髪の人だったし匂いも覚えているから。だいぶ近づいているよ。」

 

「うまい!」

 

炭治郎・善逸「!?」

ブロリー「へぁっ!?」

 

「うまい!うまい!うまい!」

 

大きな声がする方を見てみると、炎柱、煉獄杏寿郎が大量の駅弁を購入し、一口食べる度にうまいと連呼していた。

 

杏寿郎「うまい!うまい!うまい!」

 

善逸「あの人が炎柱?ただの食いしん坊じゃなくて?」

 

炭治郎「うん・・」

 

杏寿郎「うまい!」

 

炭治郎「あの・・すみません。」

 

杏寿郎「よもや!君は柱合裁判の時の溝口少年ではないか!」

 

炭治郎「!?俺は竈門ですよ!」

 

杏寿郎「そして君は新しく柱になったブロコリ青年ではないか!あのときの力は実に見事だった!我々鬼殺隊に大きな戦力が加わった!感謝したい!ブロコリ青年!」

 

炭治郎「彼はブロリーさんです!」

 

ブロリー「・・サイヤ人ですか?」

炭治郎「違いますよ!」

杏寿郎「うむ!俺もサイヤ人なら良かったが、残念なことに俺はただの人間だ!」ワハハ

 

杏寿郎が金髪だったこともあり、更に大食いのところを見たブロリーは彼をサイヤ人と勘違いをしていた。そして炭治郎達が話している横で、杏寿郎が出した大量の駅弁の入れ物を片付けるために、スチュワーデスがテキパキと働いていた。炭治郎は杏寿郎にヒノカミ神楽について聞いたが

 

杏寿郎「うむ!そういうことか!だが知らん!ヒノカミ神楽と言う言葉も初耳だ!君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたいが、この話はこれでお終いだな!!」

 

炭治郎「えっ!?ちょっともう少し・・」ギョギョ

 

杏寿郎「俺の継子になると良い!面倒を見てやろう!」

 

炭治郎「待ってください!そしてどこ見てるんですか!」

 

杏寿郎「炎の呼吸は歴史が古い!」

 

善逸(変な人だな。)

 

ブロリー(俺に刀をくれたあいつみたいにせっかちだな。)

 

その後の話し合いで、鬼殺隊の日輪刀の色と呼吸が関連していることが明らかになった。ヒノカミ神楽の情報は全くなかったものの、五つの基本の呼吸から他の呼吸が枝分かれしている情報を手に入れられたのはわずかながら収穫である。

 

杏寿郎「竈門少年!君の刀は何色だ!」

 

炭治郎「色は黒です。」

 

杏寿郎「黒刀か!それはきついな!」ワハハ

 

炭治郎「きついんですかね?」

 

杏寿郎「黒刀の剣士が柱になったのを見たことがない!さらにはどの系統を極めれば良いかもわからないと聞く!ブロリー青年!君の刀は何色だ!」

 

ブロリー「俺の刀は緑だ。」

 

杏寿郎「緑刀か!ならば君は風の呼吸を使っているのか!」

 

ブロリー「いや、破壊の呼吸だ。」

 

杏寿郎「破壊の呼吸!よもや!初めて聞く呼吸だ!型はどんなのがあるんだ!?」

 

ブロリー「柱合会議とやらで俺の力を見せたことがあるだろう?あれは気というものを使って攻撃する技だ。俺はその一撃一撃が強い。だから刀は普段使わない。」

 

話している間に発車時刻となり、汽笛の音が聞こえたと思うとゆっくりと車両が動き出した。

 

ガタンゴトン

 

善逸「おっ。」

伊之助「動き出した!」

 

杏寿郎「俺の所で鍛えてあげよう!もう安心だ!」

 

炭治郎(面倒見のいい人だな・・)

 

ブロリー(何に対しての安心なんだ?)

 

伊之助は初めての汽車に興奮して窓から身を乗りだしてはしゃいでいた。

 

ゴォオオオオオ

 

伊之助「うおおおお!!すげぇすげぇ速えええ!!」

 

善逸「危ない馬鹿この!!」

 

伊之助「俺外でて走るから!!どっちが速いか競争する!!」

 

善逸「馬鹿にも程があるだろ!!」

 

蒸気機関車と競争すると無謀なことを言い出した伊之助を咎める善逸、そこに杏寿郎が警告してきた。

 

杏寿郎「危険だぞ!いつ鬼が出てくるかわからないんだ!」

 

善逸「え?」ギギギ・・

 

その言葉に反応した善逸は、顔を真っ青にしながら壊れたゼンマイ人形のように首をギギギと動かして杏寿郎を見た。そして列車内での礼儀正しさはどこへやら、いつものように騒がしい善逸に戻っていた。

 

善逸「嘘でしょ!?鬼出るんですかこの汽車!!」

杏寿郎「出る!」キリッ

 

善逸「出んのかい嫌ァーーッ!!鬼の所に移動してるんじゃなくここに出るの嫌ァーーッ!!俺降りる!」

 

杏寿郎「短期間のうちにこの汽車で四十人以上の人が行方不明となっている!数名の剣士を送り込んだが全員消息を絶った!それブロリー青年!君は柱になりたてだ!柱の仕事はどういったものかわからないだろう!だから柱である俺との合同任務となったのだ!改めて俺は炎柱の煉獄杏寿郎だ!よろしく頼むぞ!ブロリー青年!」

 

ブロリー「俺は破壊柱のブロリーだ。今日は世話になるぞ、杏寿郎。」

 

善逸「はァーッ!!なるほどね!!降ります!!」

 

善逸が騒いでいるうちに、扉の奥から車掌が切符を切るためにやって来た。列車に初めて乗った炭治郎は、その行動がわからず、質問する。

 

車掌「切符・・拝見・・致します・・」

 

炭治郎「何ですか?」

 

杏寿郎「車掌さんが切符を確認して切り込みを入れてくれるんだ!」

 

このとき、炭治郎とブロリーだけが切符から漂ってくる異臭と気配に気づいた。

 

炭治郎(んっ?何だろう?嫌な匂いがする・・!!)

 

ブロリー(なんだぁ?切符とやらから変な気を感じる。一体なんなんだ?)

 

車掌「拝見しました・・・・」

 

そして去ろうとしたとき、杏寿郎が刀を持って立ち上がった。その視線の先には異形の鬼がいたのだ。

 

杏寿郎「車掌さん!危険だから下がっててくれ!火急のこと故帯刀は不問にしていただきたい!その巨躯を!!隠していたのは血鬼術か!気配もわかりづらかった。しかし!罪なき人に牙を剥こうものならば、この煉獄の赫き炎刀がお前を骨まで焼き尽くす!!」

 

他の乗客が悲鳴をあげているなか、杏寿郎は目にも止まらぬ速さで斬りかかる。

 

杏寿郎「炎の呼吸!壱の型!不知火!」ダン!ズバッ!

 

杏寿郎は一瞬で鬼の頚を跳ね、その剣捌きに憧れた炭治郎達が弟子入りを懇願した。

 

炭治郎「すげえや兄貴!!見事な剣術だぜ!おいらを弟子にしてくだせぇ!!」

 

杏寿郎「いいとも!!立派な剣士にしてやろう!」

 

善逸「おいらも!!」

伊之助「おいどんも!!」

 

杏寿郎「みんなまとめて面倒見てやる!!」

 

そしてかまぼこ隊は杏寿郎を祭っていた。しかし、その中に禰豆子とブロリーの姿だけはなかった。これは夢の中での話だったのだ。

そんな夢を見ながら深い眠りについている炭治郎達をよそに、ブロリーは窓の外の景色を見ていた。しばらく物思いに耽っていると、気になる会話が聞こえてきた。

 

車掌「言われた通り切符を切って眠らせました・・どうか早く私も眠らせてください・・死んだ妻と娘に会わせてください・・お願いします・・お願いします・・」

 

車掌が土下座をする先には"手だけの姿になった"下弦の壱、魘夢がいた。

 

魘夢「いいとも、よくやってくれたね。お眠り、家族に会えるいい夢を。」

 

魘夢のその声を聞くと、車掌は糸が切れたようにその場に倒れ眠り始めた。

 

「「あの・・私達は・・」」

 

そこには男女合わせて六人ほどの子供達が魘夢の指示を待っていた。魘夢は注意事項を話す。

 

魘夢「もう少ししたら眠りが深くなる、それまでここで待ってて。勘のいい鬼狩りは殺気や鬼の気配で目を覚ますときがある。近づいて縄を繋ぐ時も体に触らないよう気をつけること。俺はしばらく先頭車両から動けない、準備が整うまで頑張ってね。幸せな夢を見るために。」

 

「「はい・・」」

 

その光景を横目だけで見ていたブロリーは、このままの姿勢でいる判断をした。

 

ブロリー(こいつら・・どうやら操られてるわけではないようだ。夢を見るためにやっているのか?それにあの手だけのキモいやつはムシケラの体の一部のようだ。この二百人用のポッドには炭治郎達もいる。悟られると面倒になるな。ここはこのままの向きでいよう。)

 

その頃善逸は禰豆子と二人きりで桃園を走り回ってる夢を見ており、列車内にいる現実でもデレデレの顔になっていた。伊之助は狸になった炭治郎、鼠になった善逸、兎になった禰豆子と共に洞窟内にいる主を倒すための探検に出掛けている夢を見ていた。杏寿郎は父親に柱になったことを報告したが、父には下らないと一蹴されてしまった。その後に剣士になれなかった弟の千寿郎を励ましている夢を見た。そして炭治郎は実家のある雲取山におり、そこには死んだはずの禰豆子を除いた兄弟がいて炭治郎は思わず抱きついて泣いていた。列車内にいる現実でも涙を流していた。ブロリーはそもそも寝てないのでずっと窓の外の景色を見ていた。そこに魘夢に指示された六人の子供達が縄で腕を繋ごうとしていた。

 

「縄で繋ぐのは腕ですか?」

 

「そう、注意されたことを忘れないで。」

 

最終確認をして慎重に鬼殺隊の腕を縄で繋ぐ子供達、しかし彼らは知らない。ブロリーが寝てすらいないことを。そしてブロリーの腕を繋いだとき

 

バッ!

 

ブロリーは勢いよく自身の腕を繋いだ女の子に振り返った。当然女の子は困惑を隠しきれない。

 

「あっあんた・・なんで起きて・・なんで寝てないのよ!」

 

ブロリー「何しているんだぁ?この俺が切符とやらに仕掛けた術程度で眠るとでも思っていたのか?」

 

「・・じゃ・・邪魔しないでよ!」ブン!

 

ブロリー「!!」ヒョイ

 

ブロリーが眠ってないことを激昂した女の子は、手に持っていたアイスピックのようなもので刺そうとするが、ブロリーは楽々それを回避する。そして

 

ブロリー「チッ!」ドカッ

 

「!!ガハッ・・」

 

ブロリーは女の子を床に叩きつけて気絶させた。そしてそれと同時に列車の揺れで禰豆子が箱から放り出された。

 

禰豆子「ん!!」ドテッ

 

禰豆子は周囲を見回すと全員が深い眠りに入っており、善逸達の腕が縄で縛られていることに頭にクエスチョンマーク『?』を浮かべた。そして兄の炭治郎を見つけると頭を撫でて貰おうと市松模様の羽織をグイグイと引っ張るが

 

禰豆子「ムム。」グイグイ

 

炭治郎「起きないと・・夢だ・・起きないと・・」

 

炭治郎は魘されているばかりで一向に目覚めようとしない。その事に顔をしかめた禰豆子は炭治郎に頭突きをするが

 

禰豆子「ムーッ!」ごちん

 

炭治郎「うーん・・うーん・・」

 

禰豆子「ム・・うう・・」ぽろぽろ

 

炭治郎の頭は野生の猪を気絶させられるほど硬く、逆に自分の額を傷つけて血を流す結果になってしまい、禰豆子は痛さのあまり涙を流して泣き出した。それならばと最終手段として炭治郎に血鬼術を使って燃やした。

 

禰豆子「ムムーッ!」ボッ ゴウ

 

しかし、炭治郎は目覚めない。禰豆子は諦めたのか再び周囲を見回すと、ブロリーが起きていることに気づいてそっちへ向かった。

 

禰豆子「ムー♪」トテテテ

 

ブロリー「んん?禰豆子?お前は寝てないんだな。」

 

ブロリーの姿を見つけただけで満面の笑みを浮かべて甘え出す程の喜びようである。禰豆子が頭を差し出してくるのを見て、ブロリーはその欲求を察する。

 

ブロリー「撫でてほしいのか?」ナデナデ

 

禰豆子「ムー♪うー♪」

 

禰豆子は気持ちいいのか目をトロンとさせていた。しばらく撫で続けると、ブロリーは本題を切り出した。

 

ブロリー「禰豆子。ここには鬼がいる。炭治郎達が起きない理由は手を縛っている縄だと俺は思っている。だが何となくこれを無理矢理引きちぎってはいけない気がするんだ。だから禰豆子の術で縄を焼ききってくれるか?」

 

禰豆子「ムーッ」コクン

 

禰豆子はわかったと言うように頷くと、炭治郎達の腕を縛っていた縄を全て焼き切り始める。それを見たブロリーは頷くと、列車の天井を突き破った。

 

ブロリー「禰豆子、頼んだぞ。俺は前の方にいるムシケラを潰しに行く。デヤァッ!」バキン ガラガラ

 

列車の屋根の上までやって来ると、先頭車両に向かって低空飛行をする。魘夢の姿が見えるとブロリーは対峙する。

 

魘夢「あれぇ?眠ってないじゃないか。まだ俺は融合すら終わってないと言うのに、あいつら全然役に立ってないじゃん・・罰としてあいつらにはいい夢を見せない。お前も寝てたらいい夢を見れたのに、術にすらかかってないなんて本当にイラつくよね。」

 

ブロリー「フン!俺があの程度の術にまんまとかかるとでも思っていたのか?」

 

魘夢「へぇ、俺の術が通用しない、こんな屈辱は初めてだよ。お前は一息では殺さないよ。悪夢でじっくりと痛ぶってから確実に殺してあげるよ。」

 

炭治郎達が買った切符にはすでに魘夢の術が仕込まれていた。車掌が切符を切ることで始めて術が発動する。魘夢はこれが一番気づかれにくい方法だと思っていた、夢だと気づくまでそこは現実なのだから。なのにブロリーにはその術は効かなかった、これは魘夢のプライドを傷つけるには十分すぎることだったのだ。

 

ブロリー「お前は何もわかってないようだな、特別に一ついいことを教えてやる。」

 

魘夢「いいこと?それは何だい?」

 

ブロリー「雑魚がどうあがこうが無駄なのだ!」

 

魘夢「!本当にイラつく奴だねお前は・・!あれぇ?」(金の首飾りをつけているな。運がいいなぁ。早速来たんだ、俺のところに。夢みたいだ。これでもっと無惨様の血を戴ける。そしてもっと強くなれたら、上弦の鬼に入れ替わりの血戦を申し込めるぞ。)

 

ブロリー「フハハハハ!!血祭りにあげてやる!」バッ

 

魘夢「血鬼術・強制昏倒催眠の囁き。お眠りぃぃ!」

 

ブロリー「!!」ガクッ

 

魘夢の左手にある口から声を聞いた瞬間、ブロリーは力なく俯いて眠ってしまった。

 

魘夢「なるほど、切符の術は弱すぎて効かなかっただけで直接の術は効くんだね。お前は特別にトラウマを植え付けられるほどの強力な悪夢を見せてやるよ。そして廃人になったところで頚をあの御方に差し出すとするか。」

 

――――――――――

 

魘夢がブロリーに見せた悪夢、それは

 

悟空「うえーん!!うえええん!!うえええん!!うえーん!!」

 

ブロリー「・・う・・ひっく・・ぐす・・」

 

ブロリー(現実)「は?」

 

赤子の姿の孫悟空が大泣きしており、その泣き声に驚かされて泣いている自身が赤子だった時の姿だった。間近でその光景を見ているブロリーは、すっとんきょうな声を出すことしかできなかった。

魘夢は知らない。この後何故無惨がブロリーに恐れるのか思い知らされることと、この夢を見せたことを心底後悔するはめになることを・・




何か久しぶりに禰豆子とブロリーのイチャイチャシーンを書いた気がする・・話も何か無理矢理切り上げた感じになっちゃった。これからも頑張ります。それではまた次回。


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下弦と上弦!乗客を守れ!無限列車の戦い!

第十七話です。ブロリーの強さを引き出したかったので大分簡素化してしまいました。こんな小説でも最後まで読んで頂けると嬉しいです。


無限列車の屋根上に下弦の壱、魘夢によって眠らされたブロリーは自身のトラウマとも言える赤子の時の孫悟空に泣かされてる夢を見ていた。このときのブロリーは、眠らされたことをしっかりと覚えており、この夢も魘夢が見せていると自覚していた。

 

孫悟空「うえーん!!うえええん!!うえええん!!」

 

ブロリー「・・う・・ひっく・・ぐす・・」

 

ブロリー(現実)(俺にカカロットの夢を見せるとはいい度胸だ!!あのムシケラ絶対に許さん!血祭りにあげてやる!!ここが夢の中なら、カカロットや赤ん坊の俺もろとも破壊し尽くしすだけだぁ!!)「破壊の呼吸!捌の型!ブラスターメテオ!うおおおお!!」ピュンピュンピュンピュン! ドッカーンドッカーンドッカーン!

 

本来魘夢の夢は、自分の頚を斬ることによって目が覚めるのだが、実は方法はもう一つあったのだ。それは夢の中のもの全てを破壊することだった。全てがなくなることで初めて目が覚めるようになっていたのだ。これはブロリーだけが発見した新しい方法だった。

 

――――――――――

 

現実世界では、ブロリーを眠らせた魘夢が汽車との融合を進めていた。

 

魘夢(ようやく客車二両の融合ができたよ。こいつが術にかからなかったせいでだいぶ融合するのが遅れた!そのままトラウマの夢を見続けるといい。廃人になったところを切断してあの御方のところに持っていくから、もう少しの辛抱だよ、待っててね。)

 

魘夢はブロリーが寝たことに、勝利を確信して物思いに耽りながらうっとりと俯いて眠っている姿を見ていた。が、しかし

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

魘夢「!?」(あれぇ?何だ?空気が・・揺れてる!!)

 

一気に空気が揺れだしたことに魘夢は困惑する。そして

 

ブロリー「があああああああ!!カァカァロッットォォォォォーーー!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

ブロリーが『伝説のスーパーサイヤ人』に覚醒しながら雄叫びをあげて目を覚ましたのだ。そして、このときのブロリーの叫び声は山彦の如く響き渡り

 

「「!!?」」ガバッ

 

炭治郎「!!ブロリーさん!?」バッ

 

杏寿郎「!ブロリー青年!!」バッ

 

善逸・伊之助「!?」ガバッ

 

なんと魘夢の血鬼術を破って、乗客約二百人全員を眠りから目覚めさせたのだ。そしてブロリーは悪魔の白眼で魘夢を睨み、物凄い威圧感を出す。

 

ブロリー「よくも俺にカカロットの夢を見せたな!覚悟できてんだろうな?」

 

魘夢「!!・・あの方が"柱"に加えて首飾りの君を殺せって言った気持ち、凄くよくわかったよ。術をかけても一瞬で破る所とか、鬼じゃないくせにあの方よりも強いところとか。存在自体がもう邪魔な感じ。」

 

ブロリー「お前だけは簡単には死なさんぞ。」

 

魘夢「これ以上俺をイラつかせないでよ。もう一度眠ってて。血鬼術・強制昏倒催眠の囁き。お眠りぃぃ!」

 

ブロリー「それがどうした?破壊の呼吸!弐の型!イレイザーキャノン!」ポウ

 

魘夢「!!」ドッカーン!

 

『伝説のスーパーサイヤ人』になったブロリーに、魘夢の血鬼術は効かなくなっていた。そしてそのままブロリーの気弾は魘夢を呑み込み、そのまま爆発を起こした。

 

ブロリー「フハハハハ!!雑魚がいきがったところで無駄なのだ!!これにて一件落着「等と、その気になっていた君の姿はお笑いだったよ。」・・へぁっ!?」

 

声がした方向を見ると、気弾で破壊されたはずの魘夢がバラバラになりながらも、その体の肉の一つ一つは客車と繋がっていた。

 

魘夢「はぁ、まだたった二両とはいえ融合しといて良かったよ。この二両と融合してなかったら俺死んでたよ。」

 

ブロリー「何故お前が生きている!?」

 

魘夢「うふふふ。いいねいいね、そういう顔を見たかったんだよ。まだ前から二両しかできてないけど、俺はこの汽車と融合した!」

 

ブロリー「は?」

 

魘夢「つまりこの列車の乗客が、俺の体を更に強化するための餌ってことだ。お前にこの汽車の乗客達全員を、守りきれるかな?」ズズズズ

 

魘夢は挑発するようにブロリーに告げると、そのまま客車の中に溶けるように消えていった。

 

ブロリー「チッ!「ブロリーさん!」へぁっ!?」

 

自分のすぐ後ろから大声が聞こえ、ブロリーは驚いて後ろを振り返ると、そこには眠りから目覚めた炭治郎が日輪刀を構えて真後ろにいたのだ。

 

炭治郎「ブロリーさん!!鬼はどこに!?」

 

ブロリー「炭治郎!他のやつらは起きてるか?」

 

炭治郎「えっ!はっはい!さっきのブロリーさんの大声で他の人全員が目を覚ましました!」

 

ブロリー「ならば炭治郎!柱として命令をする!俺や善逸達で他のやつらをこの汽車の二両目よりも後ろに避難させる!お前は伊之助と二両目と三両目の車両を切り離せ!」

 

炭治郎「はい!ブロリーさん!行きましょう!」

 

ブロリー「はい・・」

 

ブロリーと炭治郎は先ほど開けた穴から再び車内に戻ると急いで二両目へと向かった。そして二両目へ着くと、通路を伊之助が凄い勢いで向かってきていた。

 

伊之助「うおおおおお!!ついて来やがれ子分共!!ウンガァアアア!!爆裂覚醒!猪突猛進!伊之助様のお通りじゃアアア!!」

 

伊之助の姿を見た炭治郎は一瞬安堵の笑みを浮かべるが、すぐに気を引き締めた表情をすると、すぐ様伊之助に指示を飛ばした。

 

炭治郎「伊之助!!この列車はまだ三両目から後ろは安全だ!!他の人たちを守るんだ!!この汽車の前から二両までが鬼になっている!!」

 

伊之助「!!やはりな・・俺の読み通りだったわけだ。俺が親分として申し分なかったという訳だ!!」

 

「うわあああ!!」「キャアアア!!」

 

炭治郎・伊之助・ブロリー「!!」

 

炭治郎が状況を伝えていると悲鳴が聞こえ、向くと魘夢の触手のような肉片が乗客達に襲いかかろうとしていた。

 

伊之助「全員伏せやがれえええ!!獣の呼吸!伍の牙!狂い裂き!!!」ジャキーン!

 

四方八方に斬りつける技で肉片を破壊して元に戻るための時間稼ぎができるようになった。

 

――――――――

 

一方一号車では、禰豆子がたった一人で乗客を魘夢から守っていたが、やがて限界が見えてくる。そして両腕を肉片に捕らえられてしまった。

 

禰豆子「ムッ!」

 

そのまま両足までもを捕らえられてしまい、その部分からミシミシと軋む音がする。

 

ミシミシ

禰豆子「ムッ!・・うう・・」

 

しかしそのとき、目を覚ました杏寿郎が屋根を突き破って一号車の車内に降りてきた。そしてそのまま禰豆子を締め上げていた肉片を切り落とした。

 

杏寿郎「うーん!うたた寝してブロリー青年に起こされるまでにこんな事態になっていようとは!!よもやよもやだ!柱として不甲斐なし!!穴があったら、入りたい!!」

 

そして杏寿郎の目に見えないほどに速い剣術に、一号車は一時肉片はなくなった。それを確認するとすぐさま二号車へと向かった。

 

杏寿郎「竈門少年!ブロリー青年!」

 

炭治郎・ブロリー「煉獄さん!/杏寿郎!」

 

杏寿郎「一号車ではかなり細かく斬擊を入れてきたので、鬼側も再生に時間がかかると思うが、余裕はない!!手短に話す!ブロリー青年から何か指示は聞いてるか!?」

 

炭治郎「はい!一号車と二号車の人たちを避難させたら二両目から後ろを切り離せと言われました。」

 

杏寿郎「うむ!ブロリー青年!柱としていい指示だ!竈門少年は俺と共に行動するように!この二両は俺と竈門少年が守る!黄色い少年は乗客の誘導を任せる!猪頭少年と竈門妹は黄色い少年の誘導が終わり次第、連結機を破壊するんだ!」

 

炭治郎「連結機?」

 

杏寿郎「車両と車両を繋ぐ金属だ!それを外すと切り離されるんだ!」

 

炭治郎「わかりました!ブロリーさん行きましょう!」

 

ブロリー「はい・・」

 

炭治郎とブロリーは杏寿郎の指示の通りに去っていき、杏寿郎が次々に湧いてくる肉片を切り刻んで、その隙に逃げ惑う乗客達を善逸の必死の呼び掛けでなんとか避難させていた。

そして

 

善逸「煉獄さん!全員の避難が終わりました!」

 

杏寿郎「うむ!では猪頭少年!竈門妹!頼んだぞ!」

 

魘夢『させないよ!』

 

まだ融合が完了していない三号車と二号車の連結機を破壊しようとしたとき、二号車から魘夢の肉片が連結機を守るように動く。しかし

 

禰豆子「ムーッ!」ザシュッ

 

伊之助「よくやったぞねず公!流石俺様の子分だ!獣の呼吸!肆の牙!切細裂き!!」ジャキーン!

 

ガシャン!ギギギ

 

禰豆子が連結機を守るように動いた肉片を切り刻み、伊之助ががら空きになった連結機を破壊して、二号車と三号車を切り離したのだ。

 

伊之助「よっしゃああああ!!ぶった斬ってやったぜぇぇぇ!!」

 

魘夢(やられた・・!!乗客二百人全員が避難させられた・・!汽車と一体化し、一度に大量の人間を喰う計画が台無しだ。この猪のせいだ!そしてあの娘、鬼じゃないかなんなんだ!鬼狩りに与する鬼なんて、どうして無惨様に殺されないんだ!融合を解いて早く逃げなければ殺される・・!なんなんだあの化け物は!?俺の術が全く効かなくなった!あのトラウマの夢を見せてからがケチのつき始めだ。こんなことになるならあんな悪夢なんて見せなければ良かった・・!!逃げるんだぁ・・勝てるわけがないYO・・)

 

炭治郎「煉獄さん!善逸から教えてもらったブレーキと言うのを早く・・!」

 

杏寿郎「これがブレーキか!これを回せばいいんだな!」グイ

 

魘夢が人間を喰えなかった為に逃げようとしている、その間に杏寿郎がブレーキをかけて汽車を止めた。魘夢は汽車との融合を解いて再び屋根の上に姿の現した。そして二号車にいる炭治郎達を恨めしそうにみながら去ろうとした。・・後ろからブロリーが迫っていることも知らずに。

 

魘夢「くそっ!次はこうはいかないよ。必ずお前達の息の根を止めてや・・ふおおお!?」

 

ブロリー「イェイ☆!」

 

ガシッ ヒューーン! ドゴーーン!

 

ブロリーは魘夢の頚にラリアットを決めると、そのまま近くにあった岩盤に叩きつけたのだ。その威力は、ブロリーが叩きつけた所を中心に大きなクレーターが出来るほど強いものだった。それだけではなく、グイグイと更に押し付けている。

 

ブロリー「もう終わりか?」グイッグイッ

 

魘夢「ぐっ・・くっ・・う・・」ズザー・・

 

ブロリー「終わったな。所詮、クズはクズなのだ・・!」

 

ブロリーに尋常ではないほどの攻撃を受けた魘夢は意識を保つことができずに、手を離されると力なく地面に落下し、そのまま気を失った。それを見たブロリーは魘夢をクズと一蹴した。そして

 

ブロリー「取って置きだ!破壊の呼吸!壱の型!ブラスターシェル!」ポウ ドッカーン!

 

魘夢「!!ギャアアアアア!!」デデーン☆

 

ブラスターシェルをもろに受けた魘夢は、あまりの衝撃に気絶から目を覚ましたものの、その直後に来た激痛に耐えられずに凄まじい断末魔をあげて飲み込まれていった。そしてブラスターシェルが爆発すると魘夢は完全に消滅し、死亡した。自身の勝利を確信すると、ブロリーは通常形態に戻った。そしてそこに列車を止めた炭治郎達がやって来る。炭治郎は重傷こそないものの所々怪我をしていた。

 

ブロリー「俺にカカロットの夢を見せた報いだな!惨めに死んでいったな。フハハハハハハハハハハ!!」

 

炭治郎「ブロリーさん!」

 

杏寿郎「ブロリー青年!」

 

伊之助「セロリー!」

 

ブロリー「炭治郎!杏寿郎!伊之助!」

 

杏寿郎「下弦の壱は倒したか?」

 

ブロリー「はい・・」

 

伊之助「そうか!倒したか!ガハハハハハ!!流石俺様のライバルだ!倒し甲斐があるぜぇ!」

 

杏寿郎「うむ!柱としての振る舞いは見事だった!そして全員全集中の常中ができるようだな!感心感心!」

 

炭治郎「煉獄さん・・」

 

杏寿郎「常中は柱への第一歩だからな!柱までは一万歩あるかもしれないがな!」

 

炭治郎「頑張ります・・」

 

杏寿郎「呼吸を極めれば様々なことができるようになる。なんでもできる訳ではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる。」

 

炭治郎「・・はい。」

 

炭治郎の返事に杏寿郎は満足そうに笑い、この任務の結果を炭治郎に伝えた。

 

杏寿郎「皆無事だ!怪我人もいない!ブロリー青年や竈門少年を始め、皆素晴らしい活躍をした!俺は君達を誇りに思う!後はもう・・」

 

ドオーーン!!

 

杏寿郎が今後の指示を出そうとしたとき、空から何かが降ってきて凄まじい轟音と共に砂埃が舞う。そして砂埃が収まると中から出てきたのは、白い体に青い模様が入った全身が筋肉質の男だった。その目には『上弦、参』とかかれていた。この男は十二鬼月の上弦の参、猗窩座である。突然の上弦の鬼の登場に炭治郎は動揺を隠せなかった。

 

炭治郎(上弦の・・参?どうして今ここに・・)

 

ブロリー「また一匹、ムシケラが死にに来たか。」

 

猗窩座は何も言わずに、いきなり炭治郎やブロリーへと襲いかかった。それを見た杏寿郎は咄嗟に呼吸を使って炭治郎達を庇う。

 

杏寿郎「炎の呼吸!弐の型!昇り炎天!」ガキーン!

 

猗窩座「!!」バッ

 

自身の左腕を真っ二つに斬られた猗窩座は、後ろに大きく跳んで杏寿郎と距離をとる。そして瞬く間に左腕の傷を再生させた。

 

猗窩座「いい刀だ。」ペロッ

 

ブロリー(あいつ手をなめた・・!気持ち悪リーです・・)

 

杏寿郎(再生が速い・・この圧迫感と凄まじい鬼気、これが上弦。)「何故手負いのものから狙うのか理解できない。」

 

猗窩座「話の邪魔になるかと思った、俺とお前の。」

 

杏寿郎「君と俺が話をする?初対面だが俺はすでに君のことが嫌いだ。」

 

猗窩座「そうか、俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫酸が走る。そいつら二人は弱い。」

 

杏寿郎「俺と君とでは物事の価値基準が違うようだ。」

 

猗窩座「そうか、では素晴らしい提案をしよう。お前も鬼にならないか?」

 

なんと猗窩座が提案した内容は鬼への勧誘だった。それに対して杏寿郎は拒否の意思を持って即答した。

 

杏寿郎「ならない。」

 

猗窩座「見れば解る、お前の強さ。その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い。」

 

杏寿郎「俺は炎柱の煉獄杏寿郎だ。」

 

猗窩座「俺は猗窩座。杏寿郎、何故お前が至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう。人間だからだ。老いると死ぬからだ。鬼になろう杏寿郎。そうすれば、百年でも二百年でも鍛練し続けられる。強くなれる。」

 

炭治郎(今まで会った鬼のなかで一番鬼舞辻の匂いが強い。俺も加勢しなければ・・)

 

杏寿郎「老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ死ぬからこそ、堪らなく愛おしく尊いのだ。強さというものは、肉体にたいしてのみ使う言葉ではない。少年や青年は弱くない、侮辱するな。何度でも言おう、俺と君とでは物事の価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうとも鬼にはならない。」

 

猗窩座「そうか・・術式展開!破壊殺・羅針!鬼にならないなら殺す。」ドン!

 

杏寿郎「壱の型!不知火!」ドン!

 

杏寿郎が鬼にならないと答えたのを最後に、戦いの火蓋が切っておとされた。目に見えない速度で二人の技がぶつかり合うと激しい衝撃波が発生し、伊之助もその気配をひしひしと感じていた。

 

猗窩座「今まで殺してきた柱たちに炎はいなかったな!そして俺の誘いに頷く者もなかった!何故だろうな?同じく武の道を極める者として理解しかねる!選ばれた者しか鬼にはなれないというのに!素晴らしき才能を持つ者が醜く衰えてゆく!俺は辛い!耐えられない!死んでくれ杏寿郎!若く強いまま!破壊殺・空式!」ドドドドド

 

杏寿郎「肆の型!盛炎のうねり!」ガガガガガ

 

炎がうねるような剣擊で猗窩座の血鬼術をなんとか相殺するも、杏寿郎が徐々に押されてきていることは明らかであった。

 

杏寿郎(虚空を拳で打つと攻撃がこちらまで来る!一瞬にも満たない速度!このまま距離を取って戦われると、頚を斬るのは厄介だ。ならば近づくまで!!)ドン!

 

猗窩座「この素晴らしい反応速度!この素晴らしい剣技も失われていくのだ杏寿郎!悲しくはないのか!!」

 

杏寿郎「誰もがそうだ!人間なら当然のことだ!」

 

その間に加勢しようと炭治郎が動こうとするが、杏寿郎が怒鳴り付けてそれを阻止した。

 

杏寿郎「動くな!!傷が開いたら支障が出るぞ!!待機命令!!」

 

炭治郎「!!」ビクッ

 

猗窩座「弱者にかまうな杏寿郎!!全力を出せ!!俺に集中しろ!!」

 

杏寿郎・猗窩座「炎の呼吸!伍の型!炎虎!!!/破壊殺・乱式!!!」

 

二人の技がぶつかり合って砂埃が消えると、鬼と人間の身体能力の差が現れてきていた。猗窩座は胸部の傷をすぐに修復させるが、杏寿郎は肋骨が折れ、左目がつぶれていた。そして息が上がっており見るからに辛そうだった。

 

ブロリー「・・!」ビキ

 

炭治郎(煉獄さん・・)

 

伊之助(すげぇ・・隙がねぇ入れねぇ、動きの早さについていけねぇ。あの二人の周囲は異次元だ。間合いに入れば"死"しか無いのを肌で感じる。助太刀に入った所で足手まといでしかないとわかるから動けねぇ。)

 

猗窩座「生身を削る思いで戦ったとしても全て無駄なんだよ、杏寿郎。お前が俺に喰らわせた素晴らしい斬擊も既に完治してしまった。だがお前はどうだ?潰れた左目、砕けた肋骨、傷ついた内臓、もう取り返しがつかない。鬼であれば瞬きする間に治る。そんなもの鬼ならばかすり傷だ。どう足掻いても人間では鬼に勝てない。」

 

炭治郎(手足に力が入らない・・ヒノカミ神楽を使うとこうなる、助けに入りたいのに・・!)

 

しかし、杏寿郎はそれでも笑いながら強い闘気を猗窩座に向ける。

 

杏寿郎「俺は俺の責務を全うする!!ここにいるものは誰も死なせない!!」ゴォ

 

猗窩座「素晴らしい闘気だ・・それほどの傷を負いながらその気迫!その精神力!一部の隙もない構え!やはりお前は鬼になれ杏寿郎!!俺と共に戦い続けよう!!」

 

杏寿郎・猗窩座「炎の呼吸!玖の型!/術式展開!破壊殺!」

 

ブロリー「はあああああぁぁぁぁ!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

猗窩座・杏寿郎・炭治郎「!?」

 

猗窩座と杏寿郎が互いに技をぶつけ合いそうになったとき、ブロリーが雄叫びをあげて空気を震わせた。辺り一面が緑色の世界になって周りにいる人は全員別世界へ来たように感じていた。炭治郎は勿論、杏寿郎と猗窩座も驚いて動きを止めた。そして緑色のエフェクトがブロリーのいる場所に収まっていくと、そこには再び覚醒したブロリーがいた。しかし、そのブロリーの姿を見た炭治郎は思わず声に出して驚いていた。

 

炭治郎「いつものブロリーさんと姿が違う!?」

 

炭治郎の言うように、今のブロリーは『スーパーサイヤ人』でも『伝説のスーパーサイヤ人』でもない形態になっていた。白眼は変わらないが緑がかった金髪から完全な緑髪になり、それは後ろに自身の腰まで伸びていた。そして眉毛がなく『伝説のスーパーサイヤ人』よりも禍々しい気を身に纏っていた。




皆さん、大変お待たせいたしました。ブロリーMADネタの登場です。簡単に死なせないと台詞を言ったのでベジータと同じ方法です笑。他にもMADネタを取り入れようか検討中です。今後もこの小説をよろしくお願いいたします。それではまた次回。


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猗窩座の悲しい過去!更なる進化!スーパーサイヤ人3!

第十八話です。今回から新しい形態が登場します。駄作ですが、最後まで読んでくれると嬉しいです。


ブロリーが新たに覚醒した、緑髪が腰にまで伸び、眉毛がなくなって更に禍々しい気を身に纏った姿。この姿が厳しい鍛練と杏寿郎が重傷を負わされた怒りと悲しみにより覚醒した『スーパーサイヤ人3』である。そして覚醒が終わると、猗窩座に視線を向ける

 

ブロリー「俺が化け物?違う、俺は悪魔だ!」

 

禰豆子「ムーッ!///」キラキラ✨

 

猗窩座「・・はははは!!ふはははははは!!なんだお前!目茶苦茶強そうじゃないか!いきなり変身したから吃驚したぞ!このままやっても杏寿郎ではもう相手にならない!お前が俺と戦え!」

 

猗窩座はそれまで弱いと思っていたブロリーが、突如として闘気が異常なほど高まったことに驚きと興奮を抑えられない。照準を杏寿郎からブロリーへと切り換える。ブロリーもまた、猗窩座に人差し指を向けた。

 

ブロリー「猗窩座といったな?杏寿郎に重傷を負わせたクズ、血祭りにあげてやる!」

 

猗窩座「そうだ!俺は猗窩座だ、お前の名をなんという?」

 

ブロリー「俺はブロリー、破壊柱だ!」

 

猗窩座「お前も柱だったのか!素晴らしい闘気だ!至高の領域に近い!さっきの無礼は詫びよう!すまなかったな!そしてお前も鬼になれ!鬼になって俺と永遠に戦い続けよう!」

 

ブロリー「断る!何故わざわざ弱体化しなければならないんだ?俺は俺の力で強くなるだけだぁ!」

 

猗窩座「そうか、鬼になることが弱体化すると抜かすか。鬼にならないなら殺す!」

 

ブロリー「さぁ来い!!ここがお前の死に場所だぁ!!」

 

猗窩座「術式展開!破壊殺・羅針!」ドン!

 

猗窩座が、人間なら胴体を貫いている程の澤見の力で攻撃し、ブロリーの顎に当てるが

 

バシィ!

 

ブロリー「・・・・」ニヤリ

 

ブロリーは少し上を向かされる形になっただけで、全くダメージが入っていないのだ。上弦の鬼の全力の攻撃を受けているにも関わらず傷一つついていないその光景は、猗窩座は勿論柱の杏寿郎、初めて別の形態を見た伊之助と善逸も混乱していた。

 

猗窩座「なっ!?・・チィ!!破壊殺・滅式!! 」バシィ! バシィ! バシィ!

 

ブロリー「なんなんだぁ?今のはぁ?」

 

杏寿郎「・・上弦の参の鬼の攻撃を受けてるのに傷一つつかないとはよもやよもやだ!もしかしたら百年ぶりの快挙を成し遂げるかもしれんな!!」

 

伊之助「善一!!権八郎!!俺もあれやりてぇ!!髪が後ろに長くなるやつ!!」

 

善逸「伊之助!あれはサイヤ人のブロリーさんにしかできないんだよ!あと俺は善逸だ!・・ところで炭治郎、あれなんだ・・?」

 

炭治郎「知らないよ・・俺も初めて見たよ、ブロリーさんのあの姿。」

 

禰豆子「んー!///」キラキラ✨

 

善逸「禰豆子ちゃーん・・ブロリーさんのあの姿が格好いいと思ってるの?」

 

禰豆子「ム!」コクッ

 

善逸の問いに禰豆子は力強く頷き、肯定の意を示した。その目は純粋に憧れと尊敬を表していた。一方ブロリーと猗窩座の戦いでは

 

ブロリー「フン!くだらん。」ドカッ!

 

猗窩座「!!ガハッ・・!」

ガッシャーン!

 

ブロリー「雑魚が、俺に敵うと思っていたのか?」

 

猗窩座「ぐうう・・」

 

今までずっと猗窩座の攻撃を受け続けるだけだったブロリーは、猗窩座に回し蹴りを一発入れた、それだけで猗窩座は吹っ飛ばされて機関車に叩きつけられたのだ。そして、ゆっくりと猗窩座は苦痛に顔を歪ませながら立ち上がった。『スーパーサイヤ人3』のブロリーは、たった一撃で猗窩座を満身創痍の状態にまで追い込んでしまったのだ。そして、猗窩座はこの状態になって悟った。

 

猗窩座(俺の全力の攻撃を受けてもビクともしない・・それどころか彼奴の蹴り一発でこの様だ・・!間違いなくこいつは、無惨様より強い・・!)

 

ブロリー「はあああぁぁぁ!!」ゴゴゴゴゴ

 

猗窩座「!!」

 

ブロリーはこの形態になって初めて気を高めた。只でさえ猗窩座とは天地ほどの差があるのに、更に気を高めて力を放出したのだ。猗窩座は強い者と戦うことが大好きで、鬼殺隊の柱を鬼に勧誘して戦友をつくろうとするほどの戦闘狂である。その猗窩座がブロリーとの実力差に戦意を喪失していた。

 

猗窩座(・・駄目だ・・!勝てない・・!どう足掻いてもこいつは俺では勝てる相手じゃない・・!それに、本能的にわかる・・蹴りを受けたところが全く再生しない・・!次に奴の攻撃を受けたら、確実に殺される・・!どうにかしてここを脱出しなければ・・!)「・・逃げるしかない!」バッ!

 

ビシュン!シュン!

 

ブロリー「どこへ行くんだぁ?」ギュピ

 

猗窩座「!!」

 

猗窩座は目の前の絶対的な実力差に逃げ出そうとしたが、『スーパーサイヤ人3』の形態はパワーは勿論、スピードも上弦の鬼とは比べられない程になっており、簡単に回り込まれてしまった。

 

ブロリー「今更怖じ気づいて逃げ出したとて、この俺が逃がすと思っていたのか?」

 

猗窩座「お前少ししつこいぞ、この化け物め・・!」

 

ブロリー「俺が化け物?違う、俺は悪魔だ!!ハハハハハハハハハハ!!」

 

猗窩座「ぬぅぅ・・こうなったらヤケクソだ!破壊殺・終式・青銀乱残光!」ドドドドド!

 

ブロリー「無駄だ!デヤァッ!!」ガッ!バシッ!

 

猗窩座の攻撃を受けるも全く通用しないブロリーは、そのままラリアットで遠くまで飛ばす。そして

 

ブロリー「全集中!破壊の呼吸!拾参の型!ギガンティックオメガ!」ゴォォォーーー!!

 

猗窩座「!!」

 

ブロリーは両手を体の前に持っていくと、そこから特大のレーザーのような気功波を放った。猗窩座はブロリーが放った技を前にして、本能的な死を感じていた。その時、猗窩座の脳裏に走馬灯が巡った。

―――猗窩座は元々、人間の頃は狛治という名を持ち、貧しい家庭で生まれた。体が弱く、闘病生活を送っていた彼の父親に薬を持って行くために盗みや暴行などの犯罪行為を繰り返していた。彼は何度も捕まり、奉行所に連れていかれて刑罰を受けていた。

 

「掏摸の入れ墨はもう両腕に三本線だ。次は手首を切り落とすぞ。」

 

狛治「ハハ、ハハハ!!斬るなら斬りやがれ!両手首斬られたって足がある!足で掏ってやるよ!どの道、次は捕まらねぇぜ!」

 

「わずか十一で犯罪を繰り返し、大の男ですら失神する百たたきを受けてこの威勢。お前は鬼子だ。」

 

鬼子とは親に似ていない、異様な姿で生まれた子供という縁起が悪いという意味だが、当時の狛治はその言葉を受け入れており、言われたところで痛くも痒くもなかった。そして狛治が再び捕まったと知らせを聞き、肉体的にも精神的にも弱っていた彼の父親は自殺してしまった。それが彼にとって何よりも苦痛だった。父親の為なら鞭で滅多うちにされても、骨を折られても耐えられた。

 

「反省しろ!!真面目に働け!!」

 

狛治(うるせえ黙れ糞が!金が足りねえんだ、高いんだよ薬は!)

 

ある日、大人七人を素手で倒したのを見た一人の成人男性が、狛治に拍手して笑いながら近づいていた。この男は慶蔵という武術の道場を経営している人で、その腕もなかなかのものだった。

 

慶蔵「おーおー、大したもんだ。子供が殺されそうだってんで呼ばれてきてみれば、大人七人を素手で伸しちまってる。お前筋がいいなあ、大人相手に武器も取らず勝つなんてよ、気持ちのいいやつだなあ。俺の道場に来ないか?門下生が誰もいなくてな。」

 

狛治「うるせえ糞爺!!ぶち殺すぞ!!」

 

慶蔵「その入れ墨、江戸の罪人だな?江戸で所払いの刑を喰らって、この地まで流れてきたわけか?」

 

狛治「だったら何だってんだ!!テメェに関係ねぇだろうが!!」

 

慶蔵「うむ!まずは、生まれ変われ少年!さぁ来い!!」

 

狛治「くたばれ糞爺!!」バッ!

 

勝負は一瞬でついた。狛治は慶蔵に一撃も入れることができないまま連続突きを喰らって失神した。そして勝負に負けたということで彼の門下生になると決めた。

 

慶蔵「いやー頑丈な奴だ、あれだけ殴ったのに半刻もせず目を覚ますとは!俺は慶蔵、素流という素手で戦う武術の道場をやってるんだがな、門下生が一人もいなくてな、便利屋のようなことをして日銭を稼いでいるんだ。お前にまずやってもらいたいのは病身の娘の看病だ。俺は仕事があるもんで任せたい。」

 

狛治「・・・・」

 

慶蔵「先日妻が看病疲れで入水自殺してしまって、大変なんだなぁこれが。」

 

狛治「!!・・・・」

 

慶蔵「本当に俺が不甲斐ないせいで妻にも娘にも苦労をかける。」

 

狛治「娘一人の家に罪人の俺を置いてっていいのかよ。」

 

慶蔵「罪人のお前は先刻ボコボコにしてやっつけたから大丈夫だ!」

 

そして慶蔵に案内されるまま娘の部屋の前についた。父親である慶蔵の紹介で部屋に入ると、そこには咳き込んでいるが、瞳孔が雪の結晶のような形のした色白の綺麗な女性がいた。彼女は小雪という名を持ち、非常に体が弱かった。

そこから狛治は小雪の看病をするために住み込みで生活していた。小雪は自分のせいで狛治の時間を奪っていると申し訳なさを感じていた。

 

小雪「いつもごめんね・・私のせいで鍛練もできないし遊びにも行けない・・」

 

狛治「遊びたいとは思わない昔から。空いた時間にそこらで鍛練しているので気になさらず。」

 

小雪「でも・・偶には気分転換に・・今夜は花火も上がるそうだから行ってきて・・」

 

狛治「そうですね。眩暈が治まっていたら背負って橋の手前まで行きましょうか。」

小雪「えっ?・・」

 

狛治「今日行けなくても来年も再来年も花火は上がるから、そのとき行けばいいですよ。」

 

小雪「・・・・」しくしく

 

狛治は当時、会話中によく泣く小雪のことを面倒に思っていた。泣かれるとどうも居心地が悪くなるのを感じていたのだ。

侍でも何でもない慶蔵が大きな土地と道場を持っているのは、老人が山賊に教われているのを助けたところ、老人は素流の技に感動し、継ぐ者がいなかった土地と道場を慶蔵に譲ったからだった。しかし、その土地と道場を自分達のものにしたかった奴等にとっては面白くなく、隣接した剣術道場は度々素流道場に嫌がらせをしていた。その影響で素流の道場に門下生が増えなかったが、狛治は小雪の看病と慶蔵との稽古で徐々に心を開いていった。

数年が経って狛治は十八、小雪は十六になった頃、狛治は素流道場の後継ぎと小雪との婚約で人生がやり直せるかもしれないと本気で思っていた。だがしかし、そんな幸せの日々は突然崩れた。

 

「誰かが井戸に毒を入れた・・!!慶蔵さんやお前とは直接やりあっても勝てないから、あいつら酷い真似を!惨たらしい・・あんまりだ!!小雪ちゃんまで殺された!!」

 

剣術道場の誰かが井戸に毒を入れて小雪と慶蔵は毒殺されたのだ。そして再び一人にされた狛治を止める者はもう誰もいなかった。慶蔵と小雪が毒殺されたあと、生き残った狛治は隣接する剣術道場を襲撃し、その道場の六十七名の剣士を殺害した。素手による頭部破壊や内臓破壊、殆んどの遺体は潰されて原型もなくひしゃげた上、体の一部が大きく欠損。顎や脳や目玉、手足、内臓が天井や壁に飛び散って張り付くなど、もはやグロいという言葉が可愛く感じるほどの地獄絵図だった。唯一生き残った女性も正気を失った。あまりにも荒唐無稽な内容に、この記録は三十年ほど経って作り話ということで廃棄された。その帰り道

 

狛治「・・・・」ゼェゼェ ボタボタ

 

無惨「鬼を配置した覚えのない場所で、鬼が出たとの大騒ぎ、わざわざ出向いてきてみれば、ただの人間とはな、なんともつまらぬ。」

 

狛治「どけ、殺す・・ぞ・・」ゴシャッ

 

狛治は全て言い終わる前に無惨に頭部を破壊され、傷口から大量の血を与えられたのだ。

 

無惨「十二体程強い鬼を造ろうと思っているんだ。お前は与えられるこの血の量に耐えられるかな?」

 

狛治「もう・・どうでもいい・・全て・・が・・」

 

全てがどうでもよく感じていた所を無惨につけこまれ、人間だった頃の記憶を消されて上弦の参、猗窩座が誕生したのだ。

―――猗窩座は人間だった頃の記憶を思いだし、自分を終わらそうとしているブロリーに心の奥底で秘かに感謝した。

 

猗窩座(勝負はついた、俺の負けだ、見事な力だ。・・ブロリーと言ったな、お前のお陰で俺は人間だったときの大事な記憶を思い出すことができた。あれほど俺の全力の攻撃を受けたのに無傷、更に俺に入れた一撃は致命傷を負わせた。完敗だ、俺がお前に勝つことなど無理な話だった。終わりだ、潔く地獄へ行きたい。最後に礼を言わせてくれ。)「・・ありがとうな。」ゴォォォーーー!!

 

炭治郎(!?猗窩座から感謝の匂いがする。)

 

炭治郎は猗窩座が感謝していることに驚いていた。そしてブロリーの技、『ギガンティックオメガ』に飲み込まれていった。猗窩座は薄れていく意識の中、自分の父と師範の慶蔵、そして恋人の小雪と会っていた。

 

猗窩座「親父・・もう平気か?苦しくねぇか?」

 

「大丈夫だ狛治。ありがとうなァ・・」

 

猗窩座「ごめん親父、ごめん・・俺やり直せなかった・・駄目だった・・」

 

慶蔵「お前がどんなふうになろうが、息子は息子、弟子は弟子。死んでも見捨てない。・・天国には、つれてってやれねぇが。」

 

猗窩座(師範・・)

 

小雪「狛治さんありがとう。もう充分です。もういいの、もういいのよ。」

 

小雪に優しく諭されると猗窩座はもとの姿、狛治の姿に戻っていた、そして小雪を強く抱き締めながら泣きじゃくった。

 

狛治「ごめん!ごめん!守れなくてごめん!大事なときそばにいなくてごめん!約束を、何一つ守れなかった・・!!許してくれ頼む!許してくれ・・!!」

 

小雪「私たちの事を思い出してくれて良かった。元の狛治さんに戻ってくれて良かった・・おかえりなさい、あなた・・」

 

狛治「ただいま親父、戻ったよ。師範、小雪さん。ただいま。」デデーン☆

 

小雪も狛治を強く抱き締め返し、泣きながら恋人の名前を呼んでいた。そして狛治と小雪の二人を緑色のエフェクトが包んでいった。そして『ギガンティックオメガ』は猗窩座を完全に飲み込むと、そのまま爆発を起こした。猗窩座は影も形もなくなり、彼が着ていた服だけが地面に残った。上弦の参の鬼を倒した瞬間だった。

 

―――

 

それを確認したブロリーは通常形態に戻り、杏寿郎や炭治郎の元へ戻った。

 

杏寿郎「凄い、凄いぞブロリー青年!上弦の参をたった二発の攻撃だけで倒してしまうとはな!よもやよもやだ!俺はそれに対して怪我を負っただけでなにも出来なかった!不甲斐なし!穴があったら入りたい!」

 

ブロリー「杏寿郎・・すまない。」

 

杏寿郎「?何故謝るんだ?」

 

ブロリー「俺がもう少し早くあのムシケラと対峙していたら、お前は怪我を負わずにすんだからだ。杏寿郎が怪我をしなくても勝てる戦いだったんだ。俺が遅れたからだ、本当にすまない・・」

 

杏寿郎「青年・・俺の左目のことは気にするな。柱ならば、己を犠牲にしてでも盾になろうとすることは当然だ。それに、君は柱になって最初の任務だ、仕方ない事もある。」

 

ブロリー「・・・・」

 

杏寿郎「俺は君に感謝しているんだ。あのまま俺が戦い続けていたら間違いなく俺は殺されていた。君が途中で変わってくれたから俺はこうやって今も生きることができる。君には本当に感謝してもしきれないんだ。礼を言わせてくれ。ありがとう!ブロリー青年!俺が怪我したことに負い目を感じているなら、その悔しさを忘れずに今後の任務に務めてくれ。それが今の君にできることだ。」

 

ブロリー「・・わかった。」

 

杏寿郎「それから竈門少年。」

 

炭治郎「はっはい。」

 

杏寿郎「俺は君の妹を信じる。鬼殺隊の一員として認める。汽車の中であの少女が、身を挺して人間を守るのを見た。命を懸けて鬼と戦い人を守る姿は、誰がなんと言おうと鬼殺隊の一員だ。」

 

炭治郎「はい・・!ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

炭治郎は義勇としのぶ以外の柱から禰豆子のことを認められたことに感涙していた。それを見て杏寿郎はフッと口元に笑みを浮かべると、伊之助や善逸にも目を向けた。

 

杏寿郎「竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、そしてブロリー青年、ちょうど隠たちが来たようだ。皆怪我がひどいから後は彼らに任せて我々は蝶屋敷へ向かおう!」

 

炭治郎・善逸・伊之助「はい!/おう!」

 

杏寿郎「その前にブロリー青年、お館様に報告させてもらうぞ!」

 

ブロリー「?何をだ?」

 

杏寿郎「君が上弦の鬼をたった一人で倒したことだ!これは実に鬼殺隊にとって百年ぶりの快挙なのだ!だからお館様に報告せねばならない!ということで、頼んだぞ!」

 

鎹鴉「マカセロ!」

 

鎹鴉が、伝言を伝えに産屋敷のところへと一直線に飛んでいった。そして、炭治郎達怪我がひどい者は隠に背負われ、なんともないブロリーだけが自力で帰った。

数日後、炭治郎達の怪我は蝶屋敷で治療され、杏寿郎以外はほぼ完治の状態にまで回復した。

 

しのぶ「うーん・・はい!もう大丈夫です。皆さんの怪我は治りましたよ。」

 

善逸「しのぶさん、ありがとうございます~。」デレデレ

 

炭治郎「ありがとうございます!あの・・煉獄さんは?」

 

しのぶ「・・煉獄さんは骨や内臓は大分よくなっていますが・・左目はもう・・」

 

炭治郎「・・そうですか・・」

 

もう左目は治らないと聞かされて暗い雰囲気になっていたが、それは本人の登場によってすぐに消えた。杏寿郎は左目に包帯を巻いていた。

 

杏寿郎「竈門少年!怪我は治ったのか?」

 

炭治郎「煉獄さん!はい、大分よくなりました!もうそろそろ任務にも戻れそうです!」

 

杏寿郎「うむ!順調に回復しているようで何よりだ!だが、未だに俺の左目のことを引きずっていることには感心しないな!」

 

炭治郎「えっ?何で知っているんですか?」

 

杏寿郎「君と胡蝶殿が俺の左目について話しているのをしっかりと聞いていたからだ!こっちは失ったが、まだ右目が残っている!それに俺も今は左目以外は完治している。それだけでも本当にありがたいことだ!」

 

しのぶ「それはそうと煉獄さん。貴方に重傷を追わせるほどの鬼とは一体なんだったのですか?十二鬼月ですか?」

 

杏寿郎「うむ!あれは「伝令!伝令!カァーカァー!!」!」

 

炭治郎「あっ、鎹鴉だ。何かあったのかな?」

 

善逸「ギャアアアーーー!!何何何!?また指令なの!?イヤアアーーー!!今度こそ俺死ぬ!!」

 

炭治郎「善逸!!少し落ち着け!鴉が指令しか伝えてくる訳じゃないんだ!」

 

杏寿郎が上弦の参の話をしようとしたとき、鎹鴉が伝令を伝えるために蝶屋敷の窓から入ってきた。

 

鎹鴉「明日緊急柱合会議ヲ開ク!柱ノ十名及ビ竈門炭治郎ハ鬼殺隊本部へ集マレ!繰リ返ス!明日緊急柱合会議ヲ開ク!柱ノ十名及ビ竈門炭治郎ハ鬼殺隊本部へ集マレ!カァーカァー!」

 

伝令を伝え終えた鎹鴉はそのまま再び飛び去っていった。そして杏寿郎やしのぶ達は再び話を切り出した。

 

杏寿郎「胡蝶殿!俺に重傷を追わせたのは上弦の参だ!」

 

しのぶ「!?・・上弦の・・参・・ぶっ・・無事で良かったです煉獄さん・・それと上弦の参はどうなったんですか?」

 

しのぶはいきなり出てきた上弦の鬼の情報に困惑を隠せないでいたが、それよりも上弦の鬼と戦ったと聞いて、杏寿郎が死なずに生還したことに心から安堵した。

 

杏寿郎「うむ!上弦の参はブロリー青年が滅殺した!柱合会議のときに使ったあの不思議な力と素手でな!青年が攻撃すれば上弦の参に致命傷を与え、しかも攻撃を生身で受けても無傷というあまりにも一方的な戦いぶりだった!」

 

しのぶ「!?・・そうですか・・彼が・・上弦の参を・・無傷で倒したんですね・・」(彼が上弦の参を・・彼なら・・姉の仇である上弦の弐も倒せますね・・鬼舞辻無惨をも凌ぐ力は本物だったんですね・・喜ばしいことなんでしょうけど・・やっぱり悔しい・・私にもその力が欲しかった・・!!そうすればこの手で上弦の弐をなぶり殺しにできたのに・・!!)

 

炭治郎(しのぶさんから嫉妬と歓喜が混ぜ合わさった複雑な感情の匂いがする・・今度ブロリーさんに相談しよう。)

 

杏寿郎はブロリーの強さを自分の事のように嬉しそうに語り、しのぶは上弦の鬼を倒したことへの喜びと圧倒的な力を持つブロリーへの嫉妬を募らせて、笑顔ながら青筋を浮かべて話を聞いていた。その後、炭治郎や杏寿郎達は機能回復訓練に参加し、ブロリーは蝶屋敷の外周で鍛練するのだった。そして何事もなく一日を終えた。

翌日、緊急柱合会議で呼ばれた炭治郎とブロリーは、鬼殺隊本部の産屋敷邸に一緒に向かい、今は屋敷の庭にいた。既に他の柱は集まっており、輝哉の到着を待っていた。

 

天元「煉獄、お前左目をド派手にやっちまってるじゃねぇか。任務でしくじったのか?」

 

煉獄「うむ!なかなか相手が強くてな!流石に無傷で帰ることは出来なかった!」

 

天元「そうか、お前は今後ハンディキャップを背負って戦うことになるんだから派手に気をつけろよ。」

 

煉獄「もとよりそのつもりだ!」

 

天元と杏寿郎が話し合ってる隣で実弥は日輪刀を抜き、炭治郎に矛先を向けていた。炭治郎の前には義勇としのぶとブロリーが庇うように立っていた。

 

しのぶ「不死川さん、何故炭治郎君に日輪刀を向けるのですか?」

 

実弥「何故だとォ!?何の前触れもなくいきなり柱合会議に呼ばれて竈門とその妹の鬼もいやがるゥ!その鬼が人を襲ったからって理由で呼ばれたとしか考えられねェ!どうせ人を喰ったんだろォ?鬼もろとも斬首だァ!」

 

義勇「不死川、(禰豆子が人を喰ったって証拠は)あるのか?」

 

しのぶ「言葉が足りませんよ冨岡さん、そんなんだから皆に嫌われるんですよ?」

 

義勇「俺は嫌われてない。」

 

ブロリー「禰豆子は人を喰っていない。ついこの間も無限列車とやらの任務で人を守るために戦っていたんだ。斬首される筋合いはないはずだが?」

 

実弥「んなこと信じられるかァ!それよりテメェは口出してんじゃねぇよォ!俺はテメェを柱と認めてねぇんだよォ!」

 

ブロリー「フン!貴様に認められようが認められなかろうが、耀哉からの名を受けた俺はもう破壊柱だ。認めたくなければ認めなければいい。俺も貴様に認められることなどハナから望んでないがな。」

 

実弥「・・いい度胸だぜェ。ちょっと面貸せやァ!サイヤ人よォ!」

 

義勇「不死川、(お館様の意思に)背くことになるぞ。」

 

実弥「テメェは黙ってろ!クソ冨岡ァ!!」

 

義勇「何故だ。」

 

実弥と三人の柱が言い争いをしていると、それに気がついた杏寿郎も一歩前に出た。

 

杏寿郎「不死川!竈門少年の妹は人を喰っていないし喰わない!竈門少女は立派な鬼殺隊の一員だ!」

 

実弥「煉獄ゥ!どういう風の吹き回しだァ?テメェが鬼の味方になるとはなァ!」

 

行冥「嗚呼・・鬼に絆された者が増えてしまった・・柱ともあろうものが・・なんと情けなく可哀想だ・・」ジャリジャリ

 

小芭内「信用しない、信用しない、鬼は人を喰らうものだ。煉獄の言ってることも俺は信じない。」

 

蜜璃「ブロリーさん、禰豆子ちゃんは人を喰っていないんですよね?」

 

ブロリー「そうだ、禰豆子は任務では下弦の壱とやらのムシケラから人間を守っていた。どれだけ自分が怪我をしようとな。」

 

杏寿郎「ブロリー青年の言うとおりだ!竈門少女は怪我をしようが鬼と戦っていたんだ!だから俺は竈門少女を信じることにした!君の師範として太鼓判を押そう甘露寺!」

 

蜜璃「師範・・私はお館様に言われた時からずっと禰豆子ちゃんを信用していたわ。人を喰っていないならもっと仲良くしたい!」

 

行冥「南無・・恋柱まで堕ちてしまったか・・なんとも滑稽で可哀想な姿だ・・」ジャリジャリ

 

実弥「甘露寺よォ・・一体全体どういうつもいだァ?テメェまで鬼を匿うつもりかァ?」

 

「「お館様のおなりです!」」

 

柱達が禰豆子のことで言い争いをしていると、かなたとくいなの掛け声により、耀哉が娘達に手を引かれて姿を現した。

 

耀哉「おはよう皆。今日は急に集まってもらって悪いね。顔ぶれが変わらないことを嬉しく思うよ。」

 

彼の登場により、他の柱達と炭治郎は地面に片膝をついて頭を垂れる。ブロリーだけは立ったままであり、実弥が無理矢理地面に押さえつけようとしたが、それに気づいてすぐさま避けて距離を取った。押さえつけられなかった実弥は悔しそうにギリッと歯軋りをする。

 

蜜璃「お館様におかれましても御壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます。」

 

耀哉「ありがとう蜜璃。」

 

実弥(チッ・・サイヤ人のせいでお館様へのご挨拶が出来なかった・・!)

 

実弥は耀哉に挨拶できなかったことを悔しく思っていたが、すぐさま気持ちを切り換えて質問を切り出した。

 

実弥「お館様。畏れながら本日はどのようなご用件で柱合会議を開いたのかについてご説明いただきたく存じますがよろしいでしょうか?」

 

耀哉「そうだね。今日柱合会議を開いたのは、ついこの間の無限列車の任務でブロリーが快挙を成し遂げたからなんだ。炭治郎を呼んだのはそのときの詳細を皆に伝えて貰うためだよ。」

 

蜜璃「快挙ですか?」

 

耀哉「そう。ブロリーは実に百十三年ぶりに、上弦の参を倒したんだよ。もちろん、杏寿郎の頑張りもあったけどね。」

 

柱「!?」

 

耀哉の告白に、現地で見ていた杏寿郎と事前に知っていたしのぶ以外の柱からは困惑を隠せないでいた。

 

耀哉「本当によくやった!杏寿郎、炭治郎、善逸、伊之助、そしてブロリー、本当にありがとう!」

 

耀哉は普段冷静沈着だが、ブロリー達が上弦の鬼を倒したことに興奮を隠しきれずに心底嬉しそうな表情をしていた。驚いていた柱達も徐々に冷静さを取り戻していた。

 

義勇「・・倒したか。」

 

蜜璃「ブロリーさん!本当に上弦を倒したんですね!素敵!キュンキュンしちゃう!」

 

無一郎「ふーん、ちょっと見直したよ。」

 

天元「上弦を倒したのか!よくやった!この天元様が派手に祝福するぞ!!」

 

小芭内「そうかそうか、上弦の参を倒したか。実にめでたいことだな、褒めてやる。ちょっとは認めてやってもいい。」ネチネチ

 

行冥「南無・・百年ぶりに歴史が動いた・・素晴らしいことだ・・よくやった。」ジャリジャリ

 

実弥「・・チッ」

 

柱はブロリーが上弦の参を倒したことを理解し、高圧的ではあるが少なからず認めたようだった。そして皆が認めたことに耀哉は安堵の息をついた。

 

耀哉(もしこの事で皆がブロリーの事を認めなかったときを考慮して炭治郎を呼んでおいたけど、どうやらその必要は無かったみたいだね。)「皆、百年もの間変わらなかった状況が今変わった!これは"兆し"だ!運命が大きく変わり始める!この波紋は広がってゆくだろう。周囲を巻き込んで大きく揺らし、やがてはあの男の元へ届く。皆、これからも鬼の惨殺を引き続き頼むよ。」

 

柱「「御意。」」

ブロリー「はい・・」

 

今回の柱合会議で柱達は、上弦の参が倒されたことで更にやってくるであろう脅威に向かってより一層気を引き締めるのだった。

―――一方その頃、無限城では猗窩座を除いた上弦達が集まっていた。上弦の壱・黒死牟、上弦の弐・童磨、上弦の肆・半天狗、上弦の伍・玉壺・上弦の陸・妓夫太郎&堕姫が同じ空間にいた。そして、最初に口を開いたのは上弦の弐である童磨だった。

 

童磨「あれぇ?猗窩座殿がいない。まだ来てないのかな?」

 

玉壺「ヒョッ、童磨殿・・お元気そうで何より、私はもしや貴方がやられたのではと心が踊ったのですが・・」

 

童磨「玉壺も酷いなー。俺は皆心配してたんだぜ。大切な仲間だからな。だぁれも欠けてほしくないんだ俺は。」

 

半天狗「恐ろしい恐ろしい・・しばらく会わぬ内に玉壺は数も数えられなくなっておる。呼ばれたのは百十三年振りじゃ・・割りきれぬ数字・・不吉な丁奇数!!恐ろしい恐ろしい・・」

 

童磨「そういえば琵琶の君。黒死牟殿はいないのかい?」

 

ベベン

鳴女「上弦の壱様は最初にお呼びしました。ずっとそこにいらっしゃいますよ。」

 

童磨が見渡すと、上弦の壱・黒死牟が和室の真ん中にたたずんでいた。

 

黒死牟「私は・・ここにいる・・無惨様が・・お見えだ・・」

 

黒死牟以外の上弦の鬼は、無惨の気配がする方向へ顔を向けると、そこには試験管に液体を入れる無惨の姿があった。

 

無惨「猗窩座が死んだ。上弦の月が欠けた。」

 

童磨「猗窩座殿・・死んでしまったのか・・悲しいな・・一番の友人だったのに・・うう・・友の責任は俺にもあります!どのようにお詫びいたしましょう。目玉をほじくりだしましょうか?それとも・・」

 

無惨「貴様の目玉など必要ない。ブロリーという金の首飾りをつけた男が鬼狩りの柱になってから、私はお前達の存在理由がわからなくなってきた。私の見立てでは猗窩座は少なくとも奴に重傷を与えられるほどの力はあると思っていた。だが奴は更なる進化を遂げた形態になって傷つけることすらかなわなかった。私はもうお前達に期待しない。これから死に物狂いでやった方がいい。私は上弦だからという理由でお前達を甘やかしすぎたようだ。下がれ。」

 

ベンベンベンベベン!

 

無惨の掛け声と共に上弦の鬼達はもといた場所へと無理矢理返されていった。そして、鳴女と無惨のみが残った無限城には静寂が訪れ、無惨は物思いに耽っていた。

 

無惨(おのれブロリーめ・・!なんなのだ・・!なんなのだあの姿は・・!何故更なる進化ができる!?私ですらそんなことは不可能だというのに・・!)

 

そう。部下達の前でこそ高圧的に振る舞っていたが、無惨はブロリーに対して段々と恐怖心を抱くようになっていた。そして無惨は猗窩座が殺られたときの記憶を見た。ブロリーのギガンティックオメガを喰らう直前のものである。

 

―――

 

猗窩座「くっ・・!」

 

ブロリー「破壊の呼吸!拾参の型!ギガンティックオメガ!」ゴォォォーーー!!」

 

猗窩座「!!」

 

―――

 

無惨「ギャアアアアア!!」バタッ

 

鳴女「無惨様!?無惨様ーーー!?」

 

猗窩座の最期の記憶を見た無惨は、ブロリーの最後の技の威力に本能的な死の恐怖を感じて失神した。そして無惨が倒れたのをすぐ近くで見ていた鳴女は動揺し、慌てて意識を失った無惨の介護をするのだった。




はい。今回からスーパーサイヤ人3の登場です。新しく使えるようになった技も出たので今までのと共にまとめておきます。

ブロリー

新形態、スーパーサイヤ人3

全集中の呼吸・・破壊の呼吸
壱~拾の型全て
拾壱の型「ギガンティックハンマー」
拾弐の型「ギガンティックスロー」
拾参の型「ギガンティックオメガ」

今までの呼吸と共に使えるので、技の種類が豊富になりました。今後もこの小説をよろしくお願いいたします。


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ブロリーの破壊屋敷完成!ヒノカミ神楽の秘密!

第十九話です。大変だった・・本当に大変だった・・携帯が壊れてデータ移行と復元にすごく時間がかかった・・久しぶりに投稿しておきながらこの始末☆の内容ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。


無限列車の任務から二ヶ月後、ブロリーの破壊屋敷が蝶屋敷のすぐ隣に完成し、本人を含めて初めて中の様子見ていた。屋敷の中を見るのはブロリー本人と炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助、義勇、杏寿郎、蜜璃、蝶屋敷の住人全員と産屋敷輝利哉と産屋敷かなたと大人数である。破壊屋敷の庭はとても広く、一周400mの陸上のトラックが5レーンあり、トラックの内側は炭治郎が"ヒノカミ神楽"を舞えるように周りに松明が置かれていた。更に破壊屋敷の内部は、ダンベルやウエイト、マシンなどが置かれていて鍛練に最も適した作りになっていた。内部を見たブロリーは満足そうに頷いた。

 

輝利哉「ブロリー様、屋敷の内部はこうなっております。要望にできるだけ添わせた形なのですがいかがでしょうか?」

 

ブロリー「いいなぁ、俺の要望通りの作りになっている。流石産屋敷と誉めてやりたいところだぁ!」

 

炭治郎「わぁ・・!!見たこと無いものが沢山ある・・!」

 

禰豆子「ムー!」

 

しのぶ「まぁ!これだけ沢山の機械があれば機能回復訓練よりも後のリハビリに使えそうですね。」

 

杏寿郎「うむ!いつでも自分を追い込める程の鍛練ができる環境が整っているな!素晴らしい作りだ!」

 

義勇「(いい屋敷だと俺は)思う。」

 

しのぶ「言葉が足りませんよ冨岡さん。そんなんだから皆に嫌われるんですよ。」

 

義勇「俺は嫌われてない。」

 

伊之助「うおおおぉぉぉ!!紋逸!あれは何て言うんだ!?」

 

善逸「紋逸じゃない善逸だ!あれはダンベルっていう鉄の塊だ。あとお前少し落ち着け!」

 

アオイ「伊之助さん!人の屋敷で騒がないでください!」

 

カナヲ「・・いい修行できる。」

 

それぞれが思いを口に出していたが、それでもブロリーの屋敷の評価は中々に高かったようだ。そして何を思ったのか炭治郎が唐突にブロリーの正面に立って真剣な表情になり

 

炭治郎「ブロリーさん。」

 

ブロリー「なんだぁ?」

 

炭治郎「俺を、竈門炭治郎を継子にしてください!」ドゲザー

 

ブロリー「へぁっ!?炭治郎!?いきなり何を言ってるんだ?」

 

なんと急に土下座をしたかと思えば、継子になることを懇願してきたのだ。突然のことにブロリーは思考が追い付かず、炭治郎が何を言っているのかわからなかった。

 

炭治郎「ブロリーさん!俺は貴方に憧れています!ブロリーさんは煉獄さんと共に下弦の壱から乗客二百人を守り抜き、柱として俺達に的確な指示を出し!上弦の参が相手でも圧倒するほどの強さ!もう非の打ち所がありません!俺はいつか貴方に少しでも近づけるように頑張って来ました!禰豆子を人間に戻せるようにと!だから、だからどうかお願いします!」

 

ブロリー「もういい。頭を上げろ炭治郎。」

 

ブロリーは炭治郎に顔を上げるように指示すると、炭治郎は恐る恐る顔を上げてブロリーと視線を合わせる。

 

ブロリー「お前の覚悟は確かに聞いた。炭治郎、俺はお前に感謝している。お前達に助けられてから俺はこの力を完全にコントロールできるようになったんだ。仲間の素晴らしさを教えてくれた、お前達には本当に感謝している。だから頼むのは俺の方だ。炭治郎、こんな俺だが、俺が師範になることをお前は認めてくれるか?」

 

炭治郎「!!はい!勿論です!俺の方こそ、弟子になるのを認めてくださいますか?」

 

ブロリー「聞くまでもない。この俺、"破壊柱ブロリーは竈門炭治郎を正式な継子として認めよう"。」

 

炭治郎は立ち上がると、師範と弟子という関係が生まれた証として固い握手を交わした。そしてその光景を見ていた他の人達は拍手喝采だった。

 

しのぶ「炭治郎君、継子の認定おめでとうございます!」

 

杏寿郎「よもや!竈門少年はブロリー青年の継子になってしまったか!俺の継子にならなかったことは残念だが、ブロリー青年なら竈門少年を良い剣士へと導けるだろう!将来が楽しみだ!」

 

蜜璃「炭治郎君おめでとう!ブロリーさんも自分の弟子を育てるなんて素敵!」キュン

 

義勇「炭治郎、お前は(俺に変わって正式に水柱になるべき人間)なのに・・」

 

しのぶ「言葉が足りませんよ冨岡さん。何を言ってるのかわからないです。」

 

義勇(心外だ!)

 

そしてこの日継子となった炭治郎とその師範であるブロリーは、ここにいる全員に破壊屋敷の完成を記念して料理を振る舞ったのだ。最も炭治郎は料理の火加減を主に務め、ブロリーは大量の料理が乗った皿を盆に移して運ぶ役目で料理そのものを作っていたのはアオイではあるが、それでも蝶屋敷とは違う場所で料理を作っていることに本人はとても楽しそうだった。

義勇やしのぶのように大好物から先に堪能するものもいれば、輝利哉やかなたのようにお上品に食べ始めるものもいた。

 

義勇「(鯖大根)うまい。」

 

炭治郎「よかったです口に合ったようで。料理は火加減です!」

 

しのぶ「生姜の佃煮美味しいです。」

 

アオイ「本当ですか!いつもとは違う厨房で料理を作るのも悪くないものですね。それに炭治郎さんと破壊柱様が手伝ってくれたお陰で大分早く作れました。」

 

伊之助「美味ええ!!」ガツガツ

 

善逸「箸を使えってば!」

 

義勇は大好物の鯖大根を口に入れて笑みを浮かべ、しのぶは大好物の生姜の佃煮を堪能していた。伊之助は相変わらず手掴みで料理を食べているためそれを善逸が咎めていた。だが、忘れてはいけない。今ここには大食いの三人衆がいることを。

 

蜜璃「ん~~!美味しい!!」

 

杏寿郎「うむ!美味い!!美味い!!わっしょい!!わっしょい!!」

 

杏寿郎と蜜璃は、鬼殺隊屈指の大食いであり、二人の目の前にある料理が次々と消えていき、白皿の山が築かれていくのだ。その光景に、炭治郎を始めとした二人のことを知らない人物は、驚きを隠せない。だが驚くことはこれだけではなかった。

 

ブロリー「美味いです。」

 

ブロリーの目の前にある料理も、次から次へと消えていき、白皿の山が築かれていった。そして彼が料理を食べるスピードは蜜璃や杏寿郎をも上回り、それに驚いた杏寿郎と蜜璃は一旦食事の手を止め、ブロリーに話しかけるのだった。

 

杏寿郎「よもや!ブロリー青年もなかなかの食欲をしているな!」

 

蜜璃「凄い!私以上に食べる人がいたなんて!」キュン

 

ブロリー「杏寿郎と蜜璃もいい食べっぷりではないか。流石と誉めてやりたい!」

 

蜜璃「えっと・・引いてる訳じゃないのですか?」

 

ブロリー「?何故引く必要がある?むしろここまで沢山食える仲間と出会えて俺が少し安心したくらいだ。それに沢山食えることはいいことだと俺は思っているぞ。」

 

杏寿郎「うむ!甘露寺!青年のいう通りだ!沢山食えるのはそれだけ体力があって元気な証だ!」

 

蜜璃「・・・・っ!」

 

杏寿郎とブロリーに称賛された蜜璃は、双眼から涙を流していた。それを見たブロリーは動揺し、思わず謝罪を口にしていた。

 

ブロリー「む、すまない。気に障った「違いますっ!」は?」

 

動揺したブロリーの謝罪を蜜璃は遮り、涙を流した本当の理由を口にした。

 

蜜璃「そんな事言われたの、師範以来で・・嬉しいのです!とても嬉しくて・・!」

 

ブロリー「師範?」

 

杏寿郎「そういえばブロリー青年には言ってなかったな!甘露寺は俺の継子だ!」

 

ブロリー「そうだったのか、なるほどな。」

 

蜜璃「・・うん、そうよね。・・ブロリーさんになら、別に話してもいいかな・・っ。」

 

蜜璃はナイフとフォークをテーブルに置くと自身の経緯について話し始める。ブロリーも食器をテーブルに置いて静かに聞き始める。

 

蜜璃「私は生まれつきの特異体質で他の一般女性よりも背が高いんです。そして成人男性の十倍近くの筋力と大食漢のせいで世間や他人から奇異の目で見られていたんです。髪の色も最初は黒だったんですけど、大好物の桜餅を食べすぎたせいでこんな色になってしまったの。これらのことが原因でお見合いでは化け物扱いされて破談になってしまったんです。その後は全てを偽るように生活していて人生に絶望していたの。でも鬼殺隊に出会えてありのままの自分で生きられるようになって救われたのです。」

 

蜜璃の経緯を聞いて、ブロリーは自分と経緯が似ていると思い、複雑そうな表情をしていた。

 

蜜璃「・・本当の鬼殺隊には鬼に大切な人を奪われて、人生を滅茶苦茶に壊された人が沢山いることは分かっているんです・・でも、私は鬼殺隊が存在していたおかげで今こうしてありのままの自分で生きられるんです。・・ごめんなさいっ。」

 

ブロリー「?何故謝る?鬼殺隊が存在しているおかげで蜜璃は今自分に正直に生きているんだろう?だったらそれでいいではないか。」

 

蜜璃「・・でも・・」

 

ブロリー「そんな事で蜜璃のことを悪く言う奴がいるなら、俺はそいつを血祭りにあげ尽くすだけだぁ!」

 

蜜璃「ありがとうございます・・嬉しいです・・でも血祭りはやめてあげてください、可哀想ですから。」

 

蜜璃は嬉しさを隠せず、泣きながらブロリーの言葉に苦笑する。その後は食事を終え、解散する流れになった。炭治郎と禰豆子、ブロリー以外が帰っていくのを見送った三人は、屋敷のなかに戻り、楽しく雑談をしていた。

 

炭治郎「ブロリーさん、驚きましたよ。あんなに沢山食べれたんですね!」

 

禰豆子「んー!」

 

ブロリー「サイヤ人は皆大食いだぞ。幻滅したか?」

 

炭治郎「はい?そんな訳ないじゃないですか。沢山食べられるってことはそれだけ体力があるって証拠だし、同時に元気な証です!むしろ尊敬します!!」

 

禰豆子「ムー!」キラキラ✨

 

ブロリー「そうですかぁ。」

 

ブロリーの継子になり、そのまま破壊屋敷で同棲することになった炭治郎と禰豆子は、夜の就寝の準備をした後、次の日に向けて疲れを取るために眠りにつくのだった。

 

――――

 

ブロリー、炭治郎、禰豆子が破壊屋敷に住むようになってから数日後、炎柱の杏寿郎が再び破壊屋敷を訪れていた。

 

杏寿郎「竈門少年!ブロリー青年!」

 

炭治郎・ブロリー「煉獄さん!/杏寿郎。」

 

杏寿郎「唐突ですまないが、今時間は空いてるか?」

 

炭治郎「どこかに行くんですか?」

 

杏寿郎「うむ!俺の生家である煉獄家に行こうかと思ってな。歴代の"炎柱"が残した手記があるはずだ。父はよくそれを読んでいたが・・俺は読まなかったから内容がわからない。君が言っていた"ヒノカミ神楽"について何か・・記されているかもしれない。だから真意を確かめようと思ってな。」

 

炭治郎「分かりました!今すぐ準備しますね!」

 

ブロリー「俺も行っていいのか?」

 

杏寿郎「うむ!青年にも来てもらえるとありがたい!」

 

ブロリー「わかった。」

 

炭治郎とブロリーは出かける準備を終えると、杏寿郎と共に煉獄家へと向かうのだった。そして煉獄家の前には、ほうきで掃き掃除をする杏寿郎にそっくりな人がいた。彼は煉獄千寿郎といい、杏寿郎の実の弟である。

 

杏寿郎「千寿郎!」

 

千寿郎「!兄上!おかえりなさい。左目は大丈夫ですか?」

 

杏寿郎「よもや!不甲斐ないことに失明してしまったのだ!だが俺は生きている!だから大丈夫だ!」

 

炭治郎「えっと・・彼は?」

 

杏寿郎「うむ!俺の弟、煉獄千寿郎だ!千寿郎!挨拶するんだ!」

 

杏寿郎に促されて千寿郎はブロリーと炭治郎に自己紹介をするのだった。

 

千寿郎「はじめまして、煉獄千寿郎です。」

 

炭治郎「俺は竈門炭治郎、よろしくね千寿郎君。」

 

ブロリー「ブロリーです。」

 

千寿郎「よろしくお願いします。兄上、本当に大丈夫ですか?」

 

杏寿郎「うむ!俺は生きているからな!大丈夫だ!」

 

?「やめろ!!何が大丈夫だ!!」

 

千寿郎・炭治郎「!!」

 

門から出てきたのは、体格の良い体に片手に酒瓶を持っている、杏寿郎と千寿郎の父親である、煉獄槇寿郎である。

 

槇寿郎「下らん!たいした才能もないのに剣士などなるからだ!だから失明するんだ!!下らない・・愚かな息子だ!!」

 

杏寿郎「むう・・かたじけない・・」

 

槇寿郎「だから言ったんだ!!俺もお前も大したものになれないと!人間の能力は生まれたときから決まってる。才能のあるものは極一部、あとは有象無象。なんの価値もない塵芥だ!!お前もそうだ、大した才能は無い。失明するのも当然だろう。」

 

槇寿郎のあまりにも酷い物言いに、炭治郎は全身の血管を浮かび上がらせて激怒した。

 

炭治郎「・・ちょっと!あまりにも酷い言い方だ!そんな風に言うのはやめてください!」

 

槇寿郎「何だお前は?出ていけ、うちの敷居を跨ぐな・・!!」

 

槇寿郎は、炭治郎が着けている花札のような耳飾りを目にして酒瓶を地面に落とした。バリンとガラスが割れる音が響き、酒瓶は粉々に飛び散った。

 

槇寿郎「・・お前・・そうかお前・・」

 

炭治郎「!?」

 

槇寿郎「"日の呼吸"の使い手だな!?そうだろう!!」

 

炭治郎「"日の呼吸"?何のことですか?」

 

杏寿郎(日の呼吸!?まさか途切れたとされるあの呼吸か!?)

 

炭治郎が聞き返すと同時に、槇寿郎は炭治郎に殴りかかるが、その前にブロリーが二人の間に割って入り、槇寿郎の腕を弾いた。

 

バシッ

ブロリー「炭治郎に手を出すな。」

 

槇寿郎「!!」

 

しかし、その時にブロリーが着けている金の首飾りが目に入り、槇寿郎は更に怒りで顔を歪ませる。

 

槇寿郎「!!貴様ァア!破壊の呼吸の使い手だな!そうだろう!!」

 

ブロリー「そうだが、それがどうした?」

 

ブロリーが煽るように答えると同時に、槇寿郎が今度はブロリーに向かって殴りかかるが、逆にブロリーに顔を掴まれると投げ飛ばされる。それを見て怒りが最高潮に達した炭治郎が大声で怒鳴る。

 

炭治郎「いい加減にしろ!この人でなし!さっきから一体何なんだあんたは!!もう治ることはない怪我を負った自分の子を侮辱して、ブロリーさんに殴りかかって、何がしたいんだ!」

 

槇寿郎「お前ら、俺たちのことを馬鹿にしているだろう。」

 

炭治郎「どうしてそうなるんだ!!何を言っているのかわからない!!言いがかりだ!!」

 

槇寿郎「お前が日の呼吸の使い手だからだ。その耳飾りを俺は知ってる、書いてあった!!」

 

炭治郎「!?」("日の呼吸"ってもしかしてヒノカミ神楽のことなのか?)

 

槇寿郎「そうだ"日の呼吸"は、あれは!!始まりの呼吸!一番初めに生まれた呼吸!最強の御技だった!そして全ての呼吸は"日の呼吸"の派生!全ての呼吸が"日の呼吸"の後追いに過ぎない!"日の呼吸"の猿真似をし劣化した呼吸だ!火も水も風も全てが!!」

 

炭治郎を睨み付けて日の呼吸のことを語る槇寿郎だが、今度はブロリーを睨むと破壊の呼吸について言い始めた。

 

槇寿郎「だが、"破壊の呼吸"だけは違った!お前が使う"ブラスターシェル"を始めとした呼吸は、"日の呼吸"の派生なのにも関わらず"日の呼吸"よりも強いと来た!"破壊の呼吸"が最強の御技だ!その首飾りが目印だ!そう書いてあった!"破壊の呼吸"の使い手だからって、調子に乗るなよ!若造が!」

 

ブロリー「調子になんか乗ってない。杏寿郎の左目が二度と使えなくなったことを未だに引きずっているからだ。」

 

杏寿郎「ブロリー青年・・」

 

千寿郎「ブロリーさん・・」

 

槇寿郎とブロリーが再び緊迫した空気を作り出すが、二人の間に炭治郎が割って入る。

 

炭治郎「ブロリーさんがあんたに何をしたと言うんだ!いい加減にしろ!!」

 

槇寿郎「こ・・の・・"日の呼吸"の使い手だからといって!調子に乗るな小僧!」

 

炭治郎「乗れるわけ無いだろうが!!俺が今自分が弱いせいでブロリーさんに迷惑しかかけていないことにどれだけ打ちのめされてると思ってんだ!この糞爺!!」

 

炭治郎と槇寿郎は殴り合いになるが、最後は炭治郎の回転しながらの頭突きで、槇寿郎を気絶させたのだった。煉獄家へと上がったものの、炭治郎は怒りに任せてやってしまったと顔を真っ青にしていた。しかし、そんな炭治郎を気遣ってなのか、千寿郎が飲み物をだしてくれた。

 

炭治郎(やっ・・やってしまった・・)ズウウウン

 

千寿郎「お茶です。どうぞ・・」

 

炭治郎「ああ・・ありがとう。煉獄さんすみません本当に・・父親を頭突いてしまって・・大丈夫ですか?」

 

杏寿郎「いや、あれは全体的に父上が悪いだろう!竈門少年もブロリー青年も気にしないでくれ!」

 

炭治郎「本当にすみません・・千寿郎君もごめんね・・大丈夫だった?」

 

ブロリー「はい・・」

 

千寿郎「大丈夫だと思います。目を覚ましたらお酒を買いに出かけていったので。ありがとうございます。」

 

炭治郎「えっ?」

 

千寿郎「すっきりしました。兄上を悪く言われても僕は、口答えすらできなかった。」

 

杏寿郎「うむ!竈門少年!俺からも礼を言わせてくれ!竈門少年が父上に渇を入れてくれたことを!ありがとう!」

 

千寿郎「ブロリーさんもありがとうございます。貴方のおかげで今もこうして兄上は生きています。あなたが任務で一緒ではなかったらどうなっていたか・・」

 

杏寿郎「ブロリー青年がいなかったら、俺は間違いなく上弦の参に殺されていただろうな!」

 

千寿郎「あっ兄上・・怖いことを言わないでください。」

 

ブロリー「だが、俺がもう少し早く動いたら杏寿郎は左目を失わずにすんだはずだ。すまない。」

 

杏寿郎「ブロリー青年!いつまでも俺の左目について引きずるのは感心しないな!俺も軽い任務ならこなせるのだ!いつまでも引きずられると俺までやりづらくなってしまう!精進してほしいものだ!」

 

ブロリー「む、そうか、俺もいつまでも後ろを見てる場合ではないな、俺はもっと精進するぞ!」

 

杏寿郎「その意気だ!ブロリー青年!」

 

ブロリーは無限列車の任務から杏寿郎の左目をことを引きずっていたのだ。その事にたいして杏寿郎はブロリーに渇を入れることによって束縛していた呪縛を解き放ったのだ。そして何かを思い出したかのように千寿郎が炭治郎に話しかけた。

 

千寿郎「そういえば炭治郎さん、父がよく見ていた書物には心当たりがあります。持ってきますので少々お待ちください。」

 

千寿郎が部屋を出でしばらくすると、一冊の書物を持ってやってきた。

 

千寿郎「これではないかと思うのですが・・炭治郎さんが知りたいことは書かれているでしょうか?」

 

炭治郎「ありがとうございます。」ペコ

 

炭治郎が受け取って書物を開く、他の三人も気になるのか覗き込むように見ていた。しかし、その書物はずたずたに破かれておりほとんど読めない状態だったのだ。

 

炭治郎「ずたずただ・・殆ど読めない・・」

 

杏寿郎「よもや!何て書いてあるか分からんな!」

 

ブロリー「ビリビリーです・・」

 

炭治郎「元々こうだったのかな?」

 

千寿郎「いいえ・・そんなはずはないです。"歴代炎柱の書"は大切に保管されているものですから。恐らく父が破いたのだと思います・・申し訳ありません。」

 

炭治郎「いいえ!千寿郎さんのせいではないです。どうかきになさらず。」

 

千寿郎「わざわざ足を運んでいただいたのに、"ヒノカミ神楽"や父の言っていた"日の呼吸"について結局なにも・・」

 

杏寿郎「竈門少年!」

 

炭治郎「はい!?煉獄さん?」

 

杏寿郎「"ヒノカミ神楽"というものは竈門少年は舞えるのだろうか?」

 

炭治郎「えっええ・・それなりには・・」

 

杏寿郎「ならばこの後ブロリー青年の屋敷に行った時に"ヒノカミ神楽"を舞ってみてはくれぬだろうか?ひとつだけ心当たりがあるんだ。」

 

炭治郎「心当たりですか?」

 

杏寿郎「うむ!実は俺も"日の呼吸"のいくつかの型には挑戦したことがあるんだ!全て失敗に終わったがな!」ワハハ

 

炭治郎「わっ分かりました。破壊屋敷に着いたらヒノカミ神楽を舞うことを約束します。」

 

杏寿郎「うむ!実にありがたい!千寿郎!」

 

千寿郎「はい。兄上。」

 

杏寿郎は炭治郎に許可を得ると千寿郎に向き直り、口元に笑みを浮かべる。

 

杏寿郎「竈門少年をここに連れてきたのは無駄なことではなかったぞ!日の呼吸かもしれない神楽を竈門少年が舞える!それがわかっただけでも充分収穫だ!それに千寿郎は剣士になるのを諦めてそれ以外で人の役に立てる道を選んだのだろう?俺は自分が正しいと思った道を進むことを咎めはしない!心のままに生きてほしい!」

 

炭治郎「俺もそう思います。千寿郎さんを悪く言う人がいたら俺が頭突きします。」

 

千寿郎「それはやめた方がいいです。」

 

ブロリー「ならば千寿郎を悪く言わない意思を見せない奴がいたら、俺が血祭りにあげるだけだぁ!」

 

千寿郎「ブロリーさん!余計駄目です!」

 

杏寿郎「ブロリー青年!流石にそれは隊律違反になってしまうぞ!やりすぎはよくない!」

 

炭治郎「ブロリーさん、殺したら駄目ですからね!?」

 

ブロリー「炭治郎がそこまで言うなら・・わかった。」

 

千寿郎「"歴代炎柱の書"は私が修復します。他の書も調べてみます。父にも・・聞いてみて、何かわかったら鴉を飛ばします。」

 

煉獄家の門の外へと出た三人を見送りに千寿郎も来ていた。そして、今日話し合えたことにとても満足しているようだった。

 

千寿郎「お話ができて良かった。お気をつけてお帰りください。」

 

炭治郎「いいえこちらこそ、ありがとうございました。」

 

杏寿郎「そうだ!千寿郎!父上に伝えてほしいことがあるんだがいいか?」

 

千寿郎「伝えてほしいこと・・ですか?」

 

杏寿郎「うむ!実は・・」

 

杏寿郎は千寿郎に近づくとそっと耳打ちをする。そして内容を理解した千寿郎は大きく強く頷いた。

 

千寿郎「分かりました!伝えておきます!」

 

杏寿郎「頼んだぞ!千寿郎!」

 

ブロリー「杏寿郎、千寿郎に何を言ったんだぁ?」

 

杏寿郎「むう!秘密だ!」

 

ブロリー「そうですかぁ。」

 

杏寿郎達が煉獄家を後にして姿が完全に見えなくなると、千寿郎は槇寿郎の部屋へと来ていた。

 

千寿郎「失礼します。お戻りでしたか・・あの・・先程の「うるさい!!」

 

槇寿郎「どうでもいい出ていけ!!」

 

千寿郎「で・・でも兄上の」

 

槇寿郎「くだらん!!どうせ俺への恨み言だろう!わかりきってる!!さっさと出ていけ!!」

 

千寿郎「・・・・分かりました。体を大切にして欲しい。兄上が去り際に言った言葉はそれだけです。失礼しました。」

 

それだけを言うと千寿郎は静かに襖を閉めた。それを聞いた槇寿郎は酒を飲もうとして瓶を持ち上げたものの再び下ろした。

 

槇寿郎「・・杏寿郎・・」

 

杏寿郎の純粋な言葉を聞き、その日を境に槇寿郎は酒に溺れる生活をしなくなった。

 

――――

 

一方、破壊屋敷へと着いたブロリー達は、早速炭治郎がヒノカミ神楽を舞うことになり、周りの松明に火をつけ、準備を完了させた。

 

炭治郎「では!竈門炭治郎参ります!」

 

そして炭治郎はヒノカミ神楽を舞った。他の人から見ると、その美しさに目を奪われるほどの完成度を誇っていた。そして、日の呼吸のいくつかの型を知っている杏寿郎は非常に驚いていた。

 

杏寿郎「!よもやよもやだ!」

 

ブロリー「杏寿郎?何がよもや何だ?」

 

杏寿郎「ブロリー青年!これは間違いなく日の呼吸だ!まさか竈門少年の家に神楽として引き継がれていたとはな!」

 

ブロリー「炭治郎が日の呼吸の使い手っていうのはそういうことだったのか。それで杏寿郎の親父は日の呼吸を使う炭治郎に嫉妬したって訳か?」

 

杏寿郎「恐らくな!父上は日の呼吸の存在を知ったことと母上を失ったことから酒に溺れるようになってしまった!本当なら長男の俺が更正させるべきだったのだが、君たちを巻き込んでしまった!本当にすまない!」

 

ブロリー「気にするな、いつかは杏寿郎の親父を更正できるといいなぁ・・」

 

炭治郎「煉獄さんにブロリーさん。何を話してるんですか?」

 

杏寿郎「よもや!?」

ブロリー「へぁっ!?」

 

いきなり第三者の声が聞こえ、杏寿郎とブロリーが驚きながら振り返ると、そこにはヒノカミ神楽を舞い終わった炭治郎が二人のすぐそばまで来ていたのだ。

 

炭治郎「煉獄さん、竈門炭治郎、舞い終わりました。」

 

杏寿郎「うむ!ご苦労だ!早速だが竈門少年!結論から言わせてもらうと君が舞った"ヒノカミ神楽"というのはやはり"日の呼吸"で間違いなかった!」

 

炭治郎「そうだったのですか!?」

 

杏寿郎「そうだ!君が舞った神楽の中に、俺が挑戦しようとした日の呼吸の型がいくつもあったんだ!そしてそれは竈門少年だけでなく代々受け継がれてきたものだな!」

 

炭治郎「はい、その通りです。」

 

杏寿郎「やはりな!"日の呼吸"を途絶えさせないように竈門家には"ヒノカミ神楽"として継承していたと俺は思う!」

 

炭治郎「すごいです煉獄さん!まさか一回俺の舞いを見ただけでそこまでわかるなんて!」

 

ブロリー「炭治郎のところに全て呼吸の始まりがあったとはな、流石竈門家と誉めてやりたいところだぁ!」

 

杏寿郎の驚異的な推理力により、ヒノカミ神楽が始まりにして最強だった日の呼吸であることがわかった炭治郎達、始まりの呼吸の使いということを自信に変え、新たなる任務に挑むのだった。




今回は戦闘はなしです。本当はこの話しを書こうかどうかすごく迷いましたが、この話しをいれないとヒノカミ神楽のことがわからないので思いきって書くことにしました。それではまた次回。


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危険な花街?超戦士が現れた遊女達は眠れない!

第二十話です。遊郭編が難しく、今まで以上の駄文になってしまいました。それでも大丈夫な方は最後まで読んでくれると嬉しいです。


ブロリー達が煉獄家へ行ってから二ヶ月後、更に無限列車の任務から四ヶ月後、炭治郎達は蝶屋敷の隣にある破壊屋敷で毎日鍛練をしながら鬼を狩っていた。ある時は、炭治郎、善逸、伊之助の三人は背中になほ、すみ、きよの三人をそれぞれ乗せて腕立てを五百回していた。善逸は悲鳴をあげ、炭治郎は汗だくになり、伊之助は雄叫びをあげる、そして五百回の腕立て伏せを終えてしのぶは煽るのだ。

 

しのぶ「あらあら~、五百回で終わりですか?ブロリーさんを見てください。」

 

炭治郎・善逸・伊之助「「えっ?/は?」」

 

その隣ではブロリーがしのぶを乗せた状態で地面を人差し指一本ずつで支えて腕立てを一万回していた。しかも弱音を吐かずに淡々とこなしているのだ。

 

しのぶ「ブロリーさんは一万回腕立て伏せをしてますよ?しかも人差し指だけで地面を支えているんです。手を全て地面につけて五百回なんて十分の一にも満たないじゃないですか。最低でも千回はやるべきだと思いますけどね、まぁできないならしょうがないですけどね。」

 

善逸「ギャアアーーーーッ!!死ぬ死ぬ死ぬ!五百回でもこんなにキツいのに千回なんて絶対に死ぬ!わかったよ!やるよー!」

 

炭治郎「そうか、俺は普段やってる鍛練ですらブロリーさんの十分の一にも届いてないんだ。これじゃあいつまで経っても差が縮まらない!もう千回追加だぁー!!」

 

伊之助「はあ゛ーーん!?力の差があるとは言えセロリーは俺の好敵手<ライバル>なんだよ!!ブロリーに一万回できて俺が五百回でくたばる訳がねぇんだよ!!千回でも二千回でもやってやるよ!!」

 

ブロリーの虎視眈々と鍛練に取り組む姿と、しのぶの煽りによってかまぼこ隊の三人が更に自主的に内容をハードにするという良い循環になっていた。

またある時はトラックでの走り込みで、ブロリーを先頭に他の三人が付いて走るという陸上の長距離選手の合宿のような鍛練を行ったときには伊之助からとんでもない提案が出されたのだ。

 

伊之助「最初に離された奴は罰として腕立て伏せ千回な!んで次に離された奴は腕立て五百回だ!最後まで離されなかった二人はなにも無しだ!」

 

ブロリー「ほう・・罰ゲーム形式か!面白い!」

 

炭治郎「いいぞ!皆で高め合えることは良いことだ!それに楽しそうだ!やろう!」

 

善逸「お前ら本気で言ってるの!?なに考えてるの!?どうせ最初に離されるのは俺だよ!!」

 

伊之助「ゴチャゴチャうるせーぞ善一!!腕立て伏せが嫌なら離されなければ良いんだ!!」

 

炭治郎「善逸、伊之助の言うとおりだぞ。そもそも走り込みは離されてはいけないんだ。それにこういう競争意識を持ってやったほうが成長すると思う。」

 

善逸「お前ら鬼かよ!?ああもうわかったよ!!やれば良いんだろやれば!!」

 

善逸は半分ヤケクソになりながらも伊之助の案に乗っかり、四人でトラックを走り始めた。もちろんブロリーが引っ張り、他の三人が風避けにして走るというスタイルを取っていた。それを破壊屋敷の縁側から眺めていたしのぶ達は微笑ましそうに見ていた。

 

しのぶ「まぁ!あんなに競争意識を持てるなんて微笑ましいですね。良いことです。」

 

カナヲ(炭治郎・・頑張ってる・・)

 

なほ・すみ・きよ「「「頑張れーー!!!」」」

 

なほ達の応援を受けて気合いが入った善逸はなんとか規定の時間まで食らい付くことが出来、結局誰も罰ゲームを受けることはなかった。それに生還した善逸は泣いて喜んだそうな。

また、伊之助と善逸は単独での任務も多数あったが、ブロリーの場合は"柱になることを条件に炭治郎と禰豆子と行動を共にする"という約束を耀哉はしっかりと守っているため、炭治郎の任務にはいつもブロリーが一緒にいた。それが羨ましいと善逸は感じていた。炭治郎は一人ではないことを実感し、今がとても幸せだと思っていた。

 

――――

 

ある日、そんな順調に任務をこなしている二人に事件が起きた。炭治郎とブロリーが任務を終えて破壊屋敷へと帰っている時だった。

 

炭治郎(疲れた。)テクテク

 

ブロリー(今日も雑魚だったな)ギュピギュピ

 

キャーッ、キャー、イヤーッ/

 

炭治郎「!?」

 

ブロリー「へぁっ!?」

 

破壊屋敷の隣にある蝶屋敷から騒ぎが聞こえてきたのだ。炭治郎とブロリーはただ事ではないと思い、駆け足で屋敷まで急いだ。

騒動の原因はアオイとなほが、音柱の宇髄天元に抱えられて連れ去られそうになっていたのだ。

 

アオイ「離してください!私っ・・この子はっ・・」

 

なほ「ひいいい」ガクガク

 

天元「うるせぇな、黙っとけ。」

 

きよ「やめてくださぁい。」

 

すみ「はなしてください~。」

 

カナヲ「・・・・」アセアセ

 

カナヲは冷や汗を流しながら家族であるアオイ達を助けるのか上官である天元のさせるままにするのか葛藤していた。そんな中アオイがカナヲに手を伸ばして助けを求める。

 

アオイ「カッカナヲ!!」

 

カナヲ(任務、上官、命令、しのぶ、アオイ、なほ、柱、命令、銅貨!銅貨を投げて決める。)

 

どちらを優先すべきか迷った末に出した答えは銅貨を投げて決めることだった。しかし、状況はそんなことをしている暇はないのと、前に炭治郎から"心のままに生きる"と言われたのを思い出し、取り出しかけた銅貨を再びしまった。

 

アオイ「カナヲ!」

 

なほ「カナヲさまーっ!」

 

カナヲが自分の心に従い導き出した答えは・・天元を止めてアオイ達を助けることだった。アオイの手となほの服を掴み、グイグイと引っ張る。

 

アオイ「カナヲ・・」

 

きよ「カナヲさま・・」

 

天元「地味に引っ張るんじゃねぇよ。お前は先刻指令がきてるだろうが。」

 

カナヲ「・・・・」ギュウウ

 

しかし、なにも言わずに二人から手を離さないカナヲに天元も我慢の限界に達したのか怒鳴った。

 

天元「何とか言えっての!!地味な奴だな!!」グワッ

 

きよ「キャーッ!!!」

 

天元の怒鳴り声を聞いて悲鳴をあげたきよは、すみと共に天元に引っ付いて身動きを取れなくしようとする。

 

きよ・すみ「「突撃ーー!!」」ガシッガシッ

 

天元「ちょっ・・!てめーら!!いい加減にしやがれ!!」

 

再び天元が怒鳴ると同時に炭治郎とブロリーが蝶屋敷の庭へと飛び込み、炭治郎が怒りを込めて叫ぶ。

 

炭治郎「女の子に何してるんだ!!手を放せ!!」

 

ブロリー「なんだぁ?これは?」

 

しかし、よくよく見てみると群がられてるのか捕まっているのか一見では全くわからない状況に炭治郎は困惑する。

 

炭治郎(いや・・群がられている?捕まっている?どっちだ?)

 

困惑する炭治郎にきよが助けを求める。それは今がどういう状況かすぐにわかることになる。

 

きよ「人さらいです~っ助けてくださぁい!」

 

天元「この馬鹿ガキ・・!」

 

きよ「キャーー!!」

 

きよの悲鳴を再び聞いて青筋を浮かべた炭治郎は、天元に頭突きをしようと頭を大きく振りかぶるが、天元は目に見えない早さで回避すると蝶屋敷の門の上へと移動する。その際にきよが振り落とされてしまったが、炭治郎が咄嗟にきよの下に入って受け止めたため、地面に叩きつけられることはなかった。

 

炭治郎「大丈夫!?」

 

きよ「はい~~っ。」

 

天元「愚か者、俺は"元忍の宇髄天元様だぞ。その界隈では派手に名を馳せた男。てめェの鼻くそみたいな頭突きを喰らうと思うか?あれ?」

 

天元は自身の身体が妙に軽いことに気づき、自分の腕を確認してみると、アオイもなほもいなくなっていたのだ。ならばその二人はどこへ行ったのかというと、答えはブロリーの腕の中だった。天元が飛び上がる一瞬にも満たない隙を突いて二人を奪還したのだ。アオイとなほはブロリーに優しく抱えられている。

 

ブロリー「アオイ、なほ、大丈夫ですかぁ?」

 

アオイ「ううぅ・・ありがとうございます、破壊柱様ぁ・・」

 

なほ「ありがとうございます!ブロリーさん!」

 

アオイとなほは安堵したのかブロリーに泣きながらお礼を言った。ブロリーはアオイとなほを丁寧に地面に下ろすと、炭治郎達と共に門の上にいる天元と向き合った。

 

天元「テメェコラ!!邪魔すんじゃねぇ!!ちょっと派手な変身が出来るからって調子乗るな!!」グワッ

 

ブロリー「うるさい!!この変態がぁ!!」

 

炭治郎「ブロリーさんの言うとおりだ!!この人さらいめ!!一体どういうつもりだ!!」ワー

 

きよ「そーよそーよ!」ワー

すみ「変態変態!!」ワー

 

天元「誰が変態だ!!ふざけるな!!てめーらコラ!!誰に口聞いてんだコラ!!俺は上官!!柱だぞこの野郎!!」

 

柱に限らず鬼殺隊という組織は、厳しい鍛練を乗り越えて強くなった者が出世していく組織なので上の者は優遇されるのだ。そのため、上下関係が非常に厳しい。それが柱にもなれば下の者から

嘲弄の言葉を言われれば怒るのも当然である。しかし現状が現状の為、炭治郎達はそんなことなど知ったことではない。

 

炭治郎「お前を柱とは認めない!!むん!!」

 

天元「むんじゃねーよ!!お前が認めないから何なんだよ!?こんの下っぱが脳味噌爆発してんのか!?俺は任務で女の隊員が要るからソイツら連れていくんだよ!!"継子"じゃねぇ奴は胡蝶の許可をとる必要もない!!」

 

きよ「なほちゃんは隊員じゃないです!!隊服着てないでしょ!!」

 

天元「じゃあいらね。隊員じゃねぇなら役に立ちそうもねぇな。」

 

炭治郎「何てこと言うんだこの人でなし!!」

 

ブロリー「なんて奴だ・・!!まるで悪魔だ・・!!」

 

天元「誰が悪魔だ誰が!!とりあえずソイツは任務に連れていく。一応隊員だしな。」

 

任務に連行されると聞いてアオイは鬼の恐怖を思い出し、冷や汗をかく。そしてその匂いを炭治郎は逃さなかった。

 

炭治郎「人には人の事情があるんだから無神経につつき回さないでいただきたい!!」

 

天元「ぬるい、ぬるいねぇ。このようなザマで地味にぐだぐだしてるから鬼殺隊は弱くなって行くんだろうな。」

 

炭治郎「アオイさんの変わりに俺達が行く!」

 

ブロリー「炭治郎が行くなら俺も行こう!ちょうど雑魚ムシケラしか殺していないから、もっと戦いたいと思っていたところだぁ!」

 

いつの間にか天元の両隣には伊之助と善逸がいて挟むように立っていた。

 

伊之助「今帰った所だが俺は力が有り余ってる。行ってやってもいいぜ!」

 

善逸「アアアオイちゃんを危険な目には合わせないぜ・・!たとえあんたが筋肉の化け物でも俺は一歩もひひひ引かないぜ・・!」

 

かまぼこ隊の三人が臨戦態勢に入ったことで天元との間に緊迫した空気が流れるが、それも一瞬のことだった。

 

天元「・・・・あっそォ、じゃあ一緒に来ていただこうかね。」

 

炭治郎「!?」(やけにアッサリ引き下がるな。)

 

天元「ただし絶対に俺に逆らうなよお前ら。」

 

炭治郎達が天元の任務を一緒にこなすことになり、アオイが鬼の元へ連れていかれる心配は無くなった。アオイはなほ、すみ、きよの三人とお互い抱き合って泣いていた。そして蝶屋敷を裏方で支えている四人は、"悪魔"と自称するブロリーのことを"神"と思うようになったらしい。

 

一方、天元と炭治郎達は任務先へと歩いていた。結局目的地がわからないことに痺れを切らした伊之助が天元に聞いた。

 

善逸(でけぇ・・ブロリーさんよりは劣るけどなかなかでけぇ・・)ブルブル

 

伊之助「で?どこ行くんだオッさん。」

 

天元「日本一色と欲に塗れたド派手な場所。」

 

天元が出す前置きに炭治郎、伊之助、ブロリーは全くわかっていないようだったが、善逸はわかったらしく、まさかと言わんばかりの顔をしていた。

 

天元「鬼の棲む"遊郭"だよ。」

 

鬼の棲むという発言に、興奮気味に顔を赤くしていた善逸は一瞬で真っ青になった。そして何を思ったのか天元は炭治郎達に振り返ると身振り手振りで捲し立てた。

 

天元「いいか?俺は神だ!お前らは塵だ!まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め!!ねじ込め!!俺が犬になれと言ったら犬になり、猿になれと言ったら猿になれ!!猫背で揉み手しながら俺の機嫌を常に伺い、全身全霊でへつらうのだ!そしてもう一度言う!俺は神だ!!」

 

善逸(やべぇ奴だ・・)

 

天元の話した内容は奴隷制度のような上下関係を徹底したものだった。しかし、自分を神と言ってる所を善逸は引いていた。そして炭治郎はなにかを聞きたいらしく、挙手する。

 

炭治郎「具体的には何を司る神ですか?」

 

善逸(とんでもねぇ奴だ・・)

 

天元「いい質問だ、お前は見込みがある。」

 

善逸(アホの質問だよ。見込み無しだろ。)

 

天元「派手を司る神・・祭りの神だ!」

 

善逸(アホだな。アホを司ってるな間違いなく。)

 

伊之助「俺は山の王だ、よろしくな祭りの神。」

 

ブロリー「俺が塵?違う、俺は悪魔だ。」

 

天元「何言ってんだお前ら・・気持ち悪い奴だな。」

 

伊之助「はあ゛ーーん!?」

 

ブロリー「しょんぼリーです・・」

 

炭治郎「ブロリーさんしっかり!」

 

善逸(いやアンタとどっこいどっこいだろ!!引くんだ!?)

 

善逸は天元の言動の一つ一つに突っ込みを入れたい気分であったが、相手は柱である天元、心で思うことに留めておいた。

 

天元「花街までの道のりの途中に藤の家があるから、そこで準備を整える。付いてこい。」フッ

 

炭治郎「え?」

 

善逸「消えた!!」

 

天元はいきなり四人の目の前から消えると、遥か遠くをもう走っていた。

 

善逸「はや!!もうあの距離胡麻粒みたいになっとる!!」

 

伊之助「これが祭りの神の力・・!!」ぬぬぬ!!

 

炭治郎「いや、あの人は柱の宇髄天元さんだよ。」

 

ブロリー「へははは!!流石祭りの神と誉めてやりたいところだぁ!!」

 

善逸「追わないと!追わないと!!」

 

先へ行ってしまった天元に何とか追い付き、藤の花の家紋の家にたどり着くと、五人は作戦会議をしていた。

 

天元「遊郭に潜入したらまず俺の嫁を探せ、俺も鬼の情報探るから。」

 

最初の天元の指示に、善逸は青筋を立てて猛抗議する。

 

善逸「とんでもねぇ話だ!!」

 

天元「あ゛あ?」

 

善逸「ふざけないでいただきたい!!自分の個人的な嫁探しに部下を使うとは!!」

 

天元「はぁ?何を勘違いしてやがる!」

 

善逸「いいや!言わせてもらおう!アンタみたいに奇妙寄天烈な奴はモテないでしょうとも!!だがしかし!!鬼殺隊員である俺たちをアンタ嫁が欲しいからって!!」

 

天元「馬ァ鹿かテメェ!!俺の嫁が遊郭に潜入して鬼の情報収集に励んでんだよ!!定期連絡が途絶えたから俺も行くんだっての!!」

 

善逸「・・そういう妄想をしてらっしゃるんでしょ?」

 

天元「クソガキが!!これが鴉経由で届いた手紙だ!!」べしべしべべし

 

善逸「ギャーーッ!!」

 

天元の元に届いた手紙を善逸に投げつけてひっくり返させられ、炭治郎は手紙の多さに驚愕していた。そして伊之助は出された煎餅を貪り食い、ブロリーは上品にお茶を啜っていた。

 

炭治郎「ずいぶん多いですね。かなり長い期間潜入されてるんですか?」

 

天元「三人いるからな、嫁。」さらり

 

さらりととんでもない爆弾発言をする天元、衝撃の事実に善逸は目を血走らせて文句を言った。

 

善逸「三人!?嫁・・さ・・三!?テメッ・・テメェ!!何で嫁三人もいんだよ!!ざっけんなよ!!」

 

天元「チッ!!」ドゴォ

 

善逸「おごぇっ!」

 

嫁のことで文句を言われた天元は、青筋を浮かべて善逸の鳩尾を思いっきり殴って気絶させた。

 

天元「何か文句あるか?」

 

そして血管を浮かび上がらせ、圧力で黙らせた。炭治郎は恐る恐る内容を聞く。

 

炭治郎「あの・・手紙で、来るときは極力目立たぬようにと何度も念押ししてあるんですが・・具体的にどうするんですか?」

 

天元「そりゃまぁ変装よ。不本意だが地味にな。お前らにはあることをして潜入してもらう。そんでブロリー、お前は俺と一緒に来い。鬼の情報を探るぞ。」

 

ブロリー「何で俺だけ別行動なんだぁ?」

 

天元「当たりめぇだろ。こいつらは女装して遊女として潜入してもらう。その点、お前は俺よりも背がでかいだろ、女装しても女としては違和感しかねぇんだよ。だからお前は俺と共に客として情報を探る、いいな?」

 

ブロリー「炭治郎達は女として動くが、俺とお前は男としてムシケラ共の居場所を探すってことか?」

 

天元「そうだ。俺の嫁は三人とも優秀な女忍者くの一だ。花街は鬼が潜む絶好の場所だと俺は思ってたが、俺が客として潜入した時、鬼の情報は掴めなかった。だから客よりももっと内側に入ってもらったわけだ。すでに怪しい店は三つに絞っているから、お前らはそこで俺の嫁を捜して情報を得る。"ときと屋"の「須磨」"荻本屋"の「まきを」"京極屋"の「雛鶴」だ。」

 

伊之助「嫁もう死んでんじゃねぇの?」

 

天元「チッ!!」ドゴォ

 

失礼なことを言った伊之助に、天元は再び鳩尾を思いっきり殴り、伊之助を気絶させた。誰でもこんなことを言われたら怒るのも当然である。

 

ブロリー「おい。」

 

天元「なんだ?」ゴゴゴゴ

 

ブロリー「嫁はカワイイか?」

 

ブロリーの質問に天元の先ほどまでの不機嫌さはどこへ行ったのやら、すっかり上機嫌になって高らかに答えた。

 

天元「フッ、考えるまでもない。可愛いに決まってんだろ!俺の嫁の右に出る女はこの世にはいないと言っても過言ではない!」

 

炭治郎「・・・・」

 

炭治郎からしてみれば妹の禰豆子も村一番の美人だったため、天元の発言に対抗したい気持ちでいっぱいだったが、今言うと善逸と伊之助の三の舞いになる未来が見えたので、炭治郎は心のなかで留めておくことにした。そして天元の手で三人の女装が終えたが、それはとてつもなく不細工だった。

 

天元「まぁこんなもんでいいだろ。」

 

善逸「え?・・不細工すぎやしないか・・?俺こんな格好で街歩きたくないんですけど・・」

 

天元「ごちゃごちゃうるせぇな。鬼に的を絞られないためなんだから我慢しろ。」

 

炭治郎「宇髄さんの言うとおりだぞ善逸。俺たちは鬼を斬りに来てるんだ。少しの辛抱だぞ。善逸なら出来る。」

 

善逸「だからってこんな格好はねぇだろうが!!ざっけんなよ!なんでお前ら平気なんだよ!?恥ずかしくねぇのかよ!?そもそもなんでブロリーさんは男前なんだよ!?一人だけ狡いだろうが!!」

 

天元「馬ァ鹿かテメェ!!こいつはこんなに背がでけぇんだから女装したところで女になりきれねぇんだよ!!だから俺と一緒に客として潜入するしか方法はねぇんだよ!!そんなこともいちいち言われないとわからねぇのか!脳味噌爆発してんのか!?」

 

伊之助「着物・・!邪魔・・!脱ぎ捨ててぇ・・」

 

伊之助は不細工にリメイクされた自身の顔よりも、縛り付けられているような感じる着物を破り捨てたい衝動に刈られていた。

 

炭治郎「伊之助・・着物が窮屈なのは皆一緒だ。俺だって動きづらい。でも今は、鬼を確実にあぶり出すためにひたすら我慢だ。」

 

伊之助「なんでそんなにチンチラするんだよ!!猪突猛進に捜し回って鬼をみつけしだい首を斬ればいいじゃねーか!!」

 

天元「テメェもか!!そんなんで嫁が見つかるんなら俺だってお前らをここに連れてきてねぇんだよ!!嫁達が見つからねぇからお前らを潜入調査させるんだよ!!わかったか!!」

 

善逸「・・外行きたくない・・」

伊之助「着物・・脱ぎ捨ててぇ・・!」

 

天元「何か言ったか?もう一度腹パン喰らいたいか?」

 

善逸・伊之助「「イイエ、ナンデモアリマセン・・」

 

天元「ったく。最初からそうしろっつーの。そういやお前らの名前聞いてなかったな。お前は名前何て言うんだ?」

 

炭治郎「俺は竈門炭治郎です!」

 

善逸「我妻善逸です。」

 

伊之助「俺様は山の王、嘴平伊之助様だ!」

 

天元が炭治郎を指差して名を聞くと炭治郎は元気に答え、それに合わせて善逸と伊之助も名前を教えていた。

 

天元「ふーん。炭治郎に善逸に伊之助ね。お前ら、それだと男の名前だから今から俺が考えた偽名を名乗れ。」

 

炭治郎「偽名・・ですか・・?」

 

天元「そうだ。お前らは女として遊郭に潜入するんだから名前も女っぽいヤツに変えるのは当然だろう?炭治郎が『炭子』、善逸が『善子』、伊之助が『いの子』と名乗れ。俺とブロリーも偽名で調査する。」

 

ブロリー「俺は何て偽名にするんだぁ?」

 

天元「ブロリーはド派手に上弦の参を倒しているからな。偽名は一文字も被らないもので行く。ブロリー、お前はこれから『ケール』と名乗れ。」

 

ブロリー「ケールか・・わかった。そういうお前は何て言う偽名にするんだぁ?」

 

天元「俺は天山とでも名乗っておく。偽名も決まったところで早速調査を開始するぞ。」

 

天元が先陣を切って、遊郭の潜入調査が始まろうとしていたが、またしても善逸と伊之助が待ったをかけた。

 

善逸「ちょっとおおお!!なんでそんなにまんま女の子にしたような偽名なの!?」

 

伊之助「待てやああああ!!いの子とはなんだ!!もっと格好いい名前なんかいっぱいあるだろうがああ!!」

 

天元「テメェらは馬鹿かぁ!!偽名なんざにこだわってんじゃねぇよ!!誰だって分かればいいんだよ!!本名のままの方が違和感あるだろうが!!」

 

伊之助と善逸が偽名がダサいと抗議して再び天元からの怒りを買うのだった。それでも尚抗議し続ける二人は、再び天元に腹を殴られて気絶するのだった。そして、女装した三人は花街の夫婦の元へ売られるために天元とブロリーと共に移動した。

 

妻「いやぁこりゃまた・・不細工な子達だね・・」

 

夫「ちょっとうちでは・・先日も新しい子入ったばかりだし悪いけど・・」

 

妻「・・まぁ一人ぐらいならいいけど。」

 

夫「!」

 

天元「じゃあ一人恃むわ、悪ィな奥さん。」

 

ケール(ブロリー)「すまないな。」

 

妻「じゃあ真ん中の子を貰おうかね、素直そうだし。」

 

炭子(炭治郎)「一生懸命働きます!」

 

炭治郎が最初に就職に内定し、花魁として潜入調査するために家の中へと入って行った。ちなみに妙に積極的に妻が炭子を引き取ったのは、天元とブロリーが色男だったからというのが最大の理由だったことは五人は知るよしも無かった。一方で売れ残った善子と伊子は天元に悪態を付かれていた。

 

天元「チッほんとにダメだなお前らは、二束三文でしか売れねぇじゃねぇか。」

 

善子(善逸)「俺アナタとは口利かないんで・・」

 

天元「女装させたからキレてんのか?何でも言うこと聞くって言っただろうが。」

 

善子(善逸)(女装なんてどうでもいいんじゃボケが・・オメーの面だよ普通に男前じゃねぇかふざけんなよ。)

 

善逸がキレていた理由は、天元とブロリーが女装をしないことだった。自分達だけがこういうことをしなければならないという理不尽さから天元に八つ当たりしていたのだ。そのとき、伊之助が何かを見つけてそれを指した。

 

猪子(伊之助)「オイ!なんかあの辺人間がうじゃうじゃ集まってんぞ!」

 

伊之助が見つけたもの、それは遊女の中でも最高位に君臨する花魁が客を迎えに行くために付き人に囲まれて移動する"花魁道中"である。

 

天元「あー、あれは"花魁道中"だな。一番位の高い花魁が客を迎えに行ってんだ。にしても派手だな。いくらかかってるんだ。」

 

善子(善逸)「嫁!?もしや嫁ですか!?あの美女が嫁なの!?あんまりだよ!!三人もいるの皆あんな美女すか!!」

 

天元「近い!!嫁じゃねぇよ!!こういう"番付"に名前が載るから分かるんだよ!!」

 

天元は手に持っていた紙ごと善逸を殴り付けた。伊之助とブロリーに関しては全く興味がなさそうでそれぞれの観点を口にしていた。

 

ケール(ブロリー)「ほう、なかなかにカワイイと誉めてやりたいところだが、禰豆子やしのぶに蜜璃には到底及ばんな。」

 

猪子(伊之助)「歩くの遅っ、山の中にいたらすぐ殺されるぜ。」ホジホジ

ジーッ

 

そんな伊之助を一人の女性がやがて目を血走らせながら凝視し、引き取る意思を固めた。この女は、荻本屋の遣手をしていて、何人もの女性を花魁へと育て上げた実績を持っていた。

 

「ちょいと旦那、この子うちで引き取らせて貰うよ。いいかい?「荻本屋」の遣手・・アタシの目に狂いはないのさ。」

 

天元「"荻本屋"さん!そりゃあありがたい!達者でな猪子ー!」

 

猪子(伊之助)「?」

 

"荻本屋"の遣手は、よく分かっていない伊之助を連れて帰っていき、天元は笑顔で伊之助を見送った。

 

善子(善逸)(やだ!アタイだけ余ってる!!)

 

その後、炭治郎を引き取った遣手は化粧を落とした途端に出てきた額の痔を見て激怒し、伊之助を引き取った荻本屋の遣手は化粧を落とした後の綺麗な素顔を見て喜び、何とか善逸を引き取った遣手は善逸の三味線の上手さに驚いていた。一方のブロリーは、天元と分かれて鬼の情報を探るために客として、様々な店を渡り歩いていた。ちなみにこの時ブロリーは、出来るだけ目立たず、尚且つ鬼の気配を少しでも探れるように、金髪碧眼の『スーパーサイヤ人』になっていた。

 

ケール(ブロリー)(おかしいな。天元って奴と分かれてから客として店には入っているが、何故か女共が俺のことを見ると手で顔を覆ったり、顔を背けられたり、挙げ句の果てには逃げ出す奴までいたな。ここの女共はそんなに俺に恐れをなしているのか?まあいい、次の店に入るか。)

 

ブロリーは遊郭の女性達とろくに話せないことを疑問に思いつつも、次の店に入るために扉を開くのだった。

 

ケール(ブロリー)「邪魔するぞ。」ガラガラ

 

遊女1「ようこそいらっしゃいまし・・!!?」ピシッ

 

遊女2「あんたどうしたの?急に硬直して顔を赤らめ・・て・・!!?」プイ

 

遊女3「何してるの?せっかく来てくれたお客様に早くおもてなしを・・して・・!!?」ダッ!

 

花魁「皆さんどうかしましたか?そこの殿方がどうかしま・・した・・か・・!!?」カァァァァ///

 

ケール(ブロリー)(またか・・また女共が逃げたり固まったりしているな。ここでもムシケラの情報は期待できそうにないな。)

 

どうやらブロリーは、女性達が逃げたりしていくのを自分が恐ろしいせいだと思っているようだが、実は全く違う理由なのである。

 

遊女1(何あの人!?物凄い色男じゃないの!!///)

 

遊女2(あの殿方、金色の髪に碧色の目をしてて綺麗ね。いけない!咄嗟に顔を背けてしまったわ!!///)

 

遊女3(ヤバイヤバイヤバイ!!あんな碧色で尚且つ鋭い視線を向けられたら・・!私正気でいられるかしら・・?///)

 

花魁(今まで相手してきた殿方の中で、間違いなく最も格好いいですわ!!///そこの殿方のためにも、粗相はしてはいけませんわ!!彼に気に入られたら私だけの殿方になってくださいますでしょうか?///)

 

ブロリーの『スーパーサイヤ人』の形態は、男性ですら羨む程のイケメンぶりである。そのため花街の異性の女性には大変好評であり、彼と目があった瞬間に落とされてしまうのだ。思考回路が一瞬にして真っ白になるため、女性達は本能的に逃げたり硬直したりしていたのだ。中には心のなかでブロリーと結ばれることを妄想して物思いに耽る遊女や花魁もいたのだが、本人はこの形態が人気なのを全く自覚してないのだ。

ブロリーが未だに鬼の情報を得るための会話すらろくに出来ないことに一途の不安を覚えるが、それでも炭治郎達は諦めずに鬼の情報を探るためにそれぞれの店で働くのだった。




イケブロを入れたらたちまち女性を虜にしてしまうのではないかと思い、スーパーサイヤ人になっていただきました。今はブロリーをどこの戦闘シーンに入れるかを非常に迷っております。それでも頑張っていきます!それではまた次回。


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遊郭の巣食う鬼!上弦の陸"堕姫"!

第二十一話です。ものすごく間が空いてしまってすみませんでした。これだけかかったのに出来は「この始末☆」の内容ですが、こんな小説でも最後まで読んで頂けると嬉しいです。


炭治郎達はそれぞれ、"ときと屋""荻本屋""京極屋"の三店に分かれてそれぞれの潜入調査をしていた。

 

炭治郎side

 

炭治郎は"ときと屋"にいるが、天元が施した不細工な化粧のせいで貰い手がおらず、雑用の仕事を淡々とこなしていた。

 

遊女「炭子ちゃん、ちょっとあれ運んでくれる?人手が足りてないみたいで・・」

 

炭子(炭治郎)「分かりました!鯉夏花魁の部屋ですね。すぐ運びます。」

 

遊女「炭子ちゃんよく働くねぇ、白粉をとったら額に傷があったもんだから昨日は女将さんが烈火の如く怒っていたけど・・」

 

炭子(炭治郎)「はい!働かせてもらえてよかったです。」

 

炭治郎は本来、遊郭に売られた女性として働いているはずである。しかし全集中常中をしているため、自分の背丈よりも高く積んである荷物二個分をそれぞれの手で持ち上げて運ぶという周りから見たら異常なことが起きていた。

 

遊女1「何か・・力・・強くない?」

 

遊女2「強っ。」

 

周りの遊女達が力強いことをひそひそと話しているが本人はそれに全く気づかず、荷物を鯉夏花魁の部屋に運んできた。そこでは、別の女性達が噂話しをしていた。彼女達は炭治郎よりも全然年下であるため、炭治郎も敬語は使わなかった。

 

遊女3「京極屋の女の人が窓から落ちて死んじゃったんだって、怖いね気をつけようね。」ひそひそ

 

遊女4「最近は"足抜け"していなくなる姐さんも多いしね、怖いね。」

 

炭子(炭治郎)「"足抜け"って何?」ヒョイ

 

遊女3「えーっ!炭ちゃん知らないのぉ?」

 

遊女4「すごい荷物だね!」

 

炭子(炭治郎)「鯉夏花魁への贈り物だよ。」

 

遊女3「"足抜け"っていうのはねぇ、借金を返さずにここから逃げることだよ。見つかったらひどいんだよ。」

 

炭子(炭治郎)「そうなんだ・・」

 

遊女4「好きな男の人と逃げきれる人もいるんだけどね。こないだだって須磨花魁が・・」

 

炭子(炭治郎)「!」(須磨!宇髄さんの奥さんだ・・)

 

?「噂話しはよしなさい。」

 

部屋の襖を開いて現れたのは一際美しい女性だった。彼女こそが鯉夏花魁である。

 

鯉夏「本当に逃げきれたかなんて・・誰にもわからないのよ。」

 

遊女3「はーい。」

 

鯉夏「運んでくれたのね、ありがとう。おいで。」

 

炭子(炭治郎)「はい。」

 

鯉夏花魁についていくと、荷物を運んだ礼として飴玉を数個プレゼントしたのだ。それを見ていた炭治郎よりも年下の遊女二人は羨ましがって鯉夏を囲んでいた。

 

遊女3「わっちも欲しい!」トテトテ

遊女4「花魁花魁。」トテトテ

 

鯉夏「だめよ、先刻食べたでしょう。」

 

炭治郎は、もらった飴玉よりも須磨の行方のほうが気になっているため鯉夏に質問していた。

 

炭子(炭治郎)「あの・・"須磨"花魁は足抜けしたんですか?」

 

鯉夏「!どうしてそんなことを聞くんだい?」

 

炭子(炭治郎)(警戒されてる。うまく聞かないと、須磨さんのことを・・)「ええと・・」

 

須磨のことを聞かれた鯉夏は、炭治郎を怪訝の表情で見る。それを見た炭治郎は警戒されていることに気づき、怪しまれないように咄嗟に嘘をついた。

 

炭子(炭治郎)「須磨花魁は私の・・私の・・姉なんです。」ギョン

 

鯉夏・遊女3・遊女4「!」ビクッ

 

しかし、正直者の炭治郎は嘘をつく時に普通の顔が出来ず、とても酷く歪んでしまうのだ。

 

鯉夏「姉さんに続いてあなたも遊郭に売られてきたの?」

 

炭子(炭治郎)「は・・はい、姉とはずっと手紙のやりとりをしていましたが、足抜けするような人ではないはずで・・」

 

鯉夏「そうだったの・・」

 

炭子(炭治郎)「・・・・」フウ

 

鯉夏「確かに私も須磨ちゃんが足抜けするとは思えなかった。しっかりした子だったもの。男の人にのぼせている素振りもなかったのに、だけど日記が見つかっていて・・それには足抜けするって書いてあったそうなの。捕まったという話しも聞かないから逃げきれていればいいんだけど・・」

 

炭子(炭治郎)("足抜け"・・これは鬼にとってかなり都合がいい。人がいなくなっても遊郭から逃亡したと思われるだけ。日記は恐らく偽装だ。どうか無事でいてほしい・・必ず助け出すから・・須磨さん・・!!)

 

鯉夏の話を聞いた炭治郎は、天元の嫁がまだ無事なことを祈りつつ、絶対に助けると決意するのだった。

 

伊之助side

 

一方"荻本屋"にいる伊之助は天元にされたメイクを落とし、着物を着て鬼の情報収集をしていた。廊下を歩いていると、遊女達が立ち話しているところを見つけた。

 

遊女「まきをさん、大丈夫かしらね?部屋に閉じ籠もって出てこないけど・・具合が悪いって言ったきりで病院にも行かないし、そろそろ女将さんに引きずり出されちゃうわよ。私今ご飯持っていってあげたのよ。とりあえず部屋の前に置いてきたけどさ。」

 

猪子(伊之助)("まきを"!宇髄の嫁だ。やっと名前を聞けたぜ。具合が悪い・・それだけで連絡が途切れるか?行ってみるか。さっきの女はこっちから来たな・・暑い!脱ぎたいぜ脱ぎたいぜ!!こんなもん着てたら感覚が鈍って仕方ねぇ!!)

 

伊之助は美女に間違えられるほど顔は整っているが、地声は成人男性のように低く、裏声も本当に裏返ってしまい、女性らしい声を出せなかった。その為、天元からは"お前は声が低いから絶対しゃべるなよ。裏声も下っ手クソだからすぐ男だってバレるぞマジで。"と釘を刺されていたのだ。伊之助にとって建物のなかで暮らしたり、着物を着る生活は拷問に近かった。喋れないと情報の収集にも難儀する。なかなか進展がなかったため、伊之助のストレスは溜まりにたまっていた。

一方、伊之助の見つける対象になっている天元の嫁の一人まきをは遊郭を巣食っている上弦の陸"堕姫"の血鬼術で尚且つ分身である帯に身動きを取れなくされ、拷問を受けていた。

 

堕姫(分身)「さぁさ、答えてごらん。お前は誰にこの手紙を出していたの?何だったかお前の名は。ああそうだ"まきを"だ。答えるんだよ"まきを"!」

 

まきを(情報を・・伝えなくては、他の二人とも連絡が取れなくなってる。何とか外へ・・早く・・あの人の所へ・・天元様・・)

 

堕姫(分身)「また誰か来るわね。"荻本屋"はお節介の多いこと。騒いだらお前の臓物を捻り潰すからね。」

 

まきを「ぐっ・・」ギシッ

 

伊之助の気配を感じ取った堕姫は、まきをを帯ごと天井裏へと連れていった。

 

猪子(伊之助)(妙だな、妙な感じだ。今はまずい状況なのか?わからねぇ・・あの部屋・・"まきを"の部屋。ぬめっとした気持ち悪ィ感じはするが・・)ダッ

 

伊之助は慎重に考えるよりも大胆に行動する方が得意だった。そのため、このときも慎重には考えず大胆に攻めこむことにした。だが、伊之助が扉を開くとそこはもうすでに窓がないのに風通しがいい傷だらけの部屋になっていた。

 

 

猪子(伊之助)(風・・窓も空いてねぇのに・・天井裏!!やっぱり鬼だ!!今は昼間だから上に逃げたな!)

 

天井裏から強い鬼の気配を感じた伊之助は、部屋の前にあった料理の乗った丼を思いっきり叩きつけた。

 

猪子(伊之助)「おいコラ!バレてんぞ!!」ゴン パリン

 

バタバタバタバタ ギシギシギシギシ

 

猪子(伊之助)「逃がさねえぞ!!」

 

触覚が優れている伊之助にとって、至近距離なら姿が見えなくてもどこにいるかは手に取るように分かることだった。天井裏を逃げる鬼を伊之助は追いかける。

 

猪子(伊之助)(どこに行く!?どこに逃げる!?天井から壁を伝って移動するか?よし、その瞬間に壁をぶん殴って引きずり出す!!)

 

バタバタバタバタ

 

伊之助は全速力で突き当たりまで来ると、壁を殴り壊そうと拳を振り上げる。しかし

 

「おおっ、可愛いのがいるじゃないか!」ヒョイ

 

猪子(伊之助)「!」ゴッ! バキッ!

 

「キャーッ!!」

「殴っちゃった・・!!」

 

目の前に男性客が現れ、その人を殴り飛ばす形で終わってしまったのだ。

 

猪子(伊之助)(クソッしくじった!!下に逃げてる!!)

 

すぐに切り替えるも鬼の逃げ足は速く、伊之助も懸命に追いかけはしたが見失ってしまった。

 

猪子(伊之助)「見失なったァァクソッタレぇぇ!!邪魔が入ったせいだ・・!!」ギリギリギリギリ

 

善逸side

 

京極屋で働く善逸は、廊下をてくてくと歩きながら物思いに耽っていた。

 

善子(善逸)(なんか俺自分を見失ってた・・俺は宇髄さんの奥さん"雛鶴"さんを捜すんだったよ。三味線と琴の腕を上げたってどうしようもないだろうよ。)

 

善逸は女装した三人のなかで一番不細工であり、この京極屋には雑用という条件付きで働かせてもらうことになったのだ。そして宇髄を見返そうと闇雲に三味線と琴の演奏をしたら、その腕を買われて今は雑用ではない働き手となっていたのだ。

 

善子(善逸)(でもなぁどうしよ。ずっと聞き耳立ててるんだけど雛鶴さんの情報ないぞ。死人が出てしまったからかな?皆くらいし口が重いな。)

 

「アレとってアレ!」

「もうお腹空いたわ。」

「帯がないのよ。」

「髪結いさん来た?」

「早くしなよ。」

「ひっく・・ひっく・・ぐすん・・」

 

善子(善逸)「!」(ひっくひっくぐすん!?)

 

話し声の中にひとつだけ聞こえる泣き声を、善逸は聞き逃さなかった。部屋の場所をすぐに特定し、その部屋の方へ向かった。

 

善子(善逸)「一大事だ、女の子が泣いてる。」

 

善逸が部屋を覗き込むと、そこには破れ外されている障子や床に転がっている湯飲み、鞄、座布団、肘掛けなど様々なものが散乱している中の真ん中で顔を覆って泣いている遊女の姿があった。

 

善子(善逸)「ちょっ・・めちゃくちゃなんだけどどうしたの?この部屋。」

 

「!」

 

女の子は善逸の声に反応して振り返る。善逸は女の子の顔を見るとさらに驚く。なぜなら女の子の顔は傷だらけだったのだ。

 

善子(善逸)「えっけっ喧嘩!?喧嘩した!?大丈夫!?」

 

女の子は善逸の姿を見ると先程よりも大きく泣き出してしまった。それを見た善逸は狼狽えて必死に慰めの言葉を掛けた。

 

善子(善逸)「ごめん!ごめんね!君を怒ったわけじゃ・・ないのよ!!ごめんね!何か困っているなら・・!」

 

そこに音もなく現れた一人の女性、眉をひそめ、顔中に血管を浮かび上がらせて不愉快そうに善逸を見下ろしていた。この女性は蕨姫花魁だが、それはあくまで表向きの名である。裏の名は堕姫という上弦の陸の十二鬼月である。"まきを"の方は帯の姿の分身であったがこっちは本体である。善逸は音で鬼だということを感知していた。堕姫は不愉快な表情を隠そうともせずに善逸に問いかける。

 

堕姫「アンタ人の部屋で何してんの?」

 

善子(善逸)(鬼の音だ!今後ろにいるのは鬼だ・・人間の"音"じゃない・・声をかけられる直前まで全く気づかなかった・・こんなことある?これ上・・上弦の鬼じゃないの?音やばいんだけど、静かすぎて逆に怖いんだけど・・)ドクンドクン

 

堕姫「オイ、耳が聞こえないのかい?」

 

鬼の音で全く反応を見せない善逸に、堕姫は自分の言葉を無視したと思い、さらに不快そうに眉をひそめていた。そこに助け船を出すかのように泣いてる女の子の同期と思われる別の女の子二人が怯えて震えながら堕姫に説明する。

 

「わ・・蕨姫花魁・・その人は昨日か一昨日に入ったばかりだから・・」ガタガタ ガタガタ

 

堕姫「は?だったら何なの?」

 

凄みを効かせて一蹴する堕姫に襖にしがみついていた女の子二人は、腰が抜けて床にへたりこんでしまった。それを気配で感じた善逸は、何とか勇気を振り絞って声を出した。

 

善子(善逸)「勝手に入ってすみません!部屋がめちゃくちゃだったし、あの子が泣いていたので・・」

 

堕姫「不細工だねお前、気色悪い・・死んだ方がいいんじゃない?何だいその頭の色!目立ちたいのかい?」

 

善子(善逸)「・・・」ボーゼン

 

堕姫の心ない言葉に、善逸はさっきまで出していた冷や汗とはまた違う汗を出して絶句していた。そして不意に堕姫がしゃがみこむ

 

「!」ビクッ

 

堕姫「部屋は確かにめちゃくちゃのままだね。片付けるように言ってたんだけど。」ギッ

 

「ギャア!」

 

堕姫は女の子の耳を掴むとそのまま無理矢理上へと引っ張り上げた。激痛が走る女の子は悲鳴を上げる。

 

堕姫「五月蝿い!!ギャアじゃないよ部屋を片付けな!」

 

「ごめんなさいごめんなさい・・!すぐにやります許してください・・!」ミチッ

 

涙を流して泣きながら謝る女の子だが、それでも堕姫は容赦せずに耳を離さない。女の子の耳から血が流れて来たとき、堕姫の腕を善逸が掴んだ。

 

堕姫「・・・・何?」

 

善子(善逸)「手、放してください!」

 

しかし、そのまま堕姫は鬼の力で振り払い、善逸はすごい勢いで反対側の部屋の壁に叩きつけられ、そのまま失神した。

 

堕姫「気安く触るんじゃないよ、のぼせ腐りやがってこのガキが!躾がいるようだねお前は。きつい躾が。」

 

「蕨姫花魁・・!!」バタバタ

 

善逸を投げ飛ばした直後に一人の男性が堕姫のもとへと慌ててやって来る。この男性は京極屋の店長である。店長は堕姫に土下座して頼み込む。

 

「この通りだ頼む!!勘弁してやってくれ!もうすぐ店の時間だ客が来る・・!!俺がきつく叱っておくからどうか今は・・どうか俺の顔を立ててくれ・・」バッ

 

堕姫は店長の土下座に気を良くしたのか、さっきまでの表情とはうってかわって穏やかな笑みを浮かべた。

 

堕姫「旦那さん、顔を上げておくれ。私の方こそご免なさいね。最近ちょっと気に触ることが多くって、入って来たばかりの子につらく当たりすぎたね。手当てしてやって頂戴。」

 

店長に微笑んでそう告げると再び不快そうな表情に戻り、女の子二人に指示を出す。

 

堕姫「仕度するからさっさと片付けな。」

 

「はっ・・はい・・!!」

「はい・・」

 

「人を呼べ!!早く片付けろ!蕨姫花魁の気に触ることをするんじゃねぇ!!」

 

堕姫と店長の指示に女の子や他の遊女達があわただしく行動しているなか、堕姫は善逸の方をじっと見ていた。

 

堕姫(あのガキ・・この感触からすると軽症だね。失神はしているけれども。受け身を取りやがった!一般人じゃない。鬼殺隊なんだろう、でも柱のような実力はない。)

 

堕姫は善逸が鬼殺隊の一員だと分かると、姿見に写った自分を見つけながら邪悪な笑みを浮かべた。

 

堕姫「ククッフフフッ・・少し時間がかかったけどうまく釣れてきたわね。どんどんいらっしゃい、皆殺して喰ってあげる。」

 

スパン!

 

?「いい加減にして頂戴。」

 

堕姫「あら?お三津じゃない。いい加減にしてって何を?」

 

堕姫の部屋の襖を開いて現れたのは、先ほど現れた"京極屋"店長の奥さんである"お三津"である。堕姫を咎めに来たのだ。

 

お三津「うちから怪我人や足抜け、自殺する子を出すのをだよ。自殺した子はアンタが虐め殺したもんだろう蕨姫。」

 

堕姫「酷いこと言うわね女将さん。私の味方をしてくれないの?私の癪に障るような子が悪いとは思わないの?それに私にはもうすぐ客人が来るから、説教なら終わってから聞くわよ。」

 

お三津「・・今まで随分目を瞑ってきたけど、度を越してるんだよアンタは・・庇いきれない。」

 

堕姫「しつこいわね。誰の稼ぎでこの店がこれだけ大きくなったと思ってんだ婆。」

 

お三津「・・・・ずっと昔、アタシがまだ子供の頃、聞いたことがあるのよ茶屋のお婆さんに。物忘れが酷くなってだけど、ある花魁の話をした・・ものすごい別嬪だったけどものすごい性悪で、お婆さんが子供の時と中年の時にそういう花魁を見たって、その花魁は"姫"って言葉を好んで使って・・気にくわないことがあると、首を傾けて下から睨めつけてくる独特の癖があったって、アンタ・・何者なんだい?アンタもしかして!人間じゃないっ・・!」

 

バッ

 

堕姫はお三津がいい終えると同時に、人間の目に見えないような速度で花街の上空へと連れ出したのだった。

 

ブロリーside

 

ブロリーはいくつもの遊郭を廻っていたが、鬼の情報どころかこの花街に住む人達とろくに会話できていないのだ。つい先ほどの店に入ったときもそうだった、『スーパーサイヤ人』の形態になっているブロリーが店に入っただけで皆逃げ出したり、顔を赤らめて呂律が回らない花魁もいたのだ。

 

ケール(ブロリー)(何なんだぁ?何故どいつもこいつも俺が話しかけようとしただけで逃げる?逃げ出さないやつも何故うまく話すことが出来なくなるんだ?イライラするな・・!本当はこの花街を破壊し尽くしてやりたいところだが、炭治郎達がいる手前、荒っぽいことは出来ぬぅ。仕方ない、善逸が働いている京極屋に行くか。・・んん?)

 

今ブロリーは、善逸が働いている店である"京極屋"の手前まで来ていたのだ。そこまで来てふと空を見上げると、上の方に浮いている人影が二つあった。お三津と堕姫である。堕姫から鬼の気配を感じたブロリーは、どのような行動に出るのか見ているのであった。

堕姫は蕨姫花魁の姿から、露出が激しい服装に身を包み、目に上弦と陸の文字が入っている本来の姿になると、鋭い爪が生えている手でお三津の体を掴んで宙に浮いていたのだ。

 

堕姫「そういうことはね、気づいたところで黙っておくのが"賢い生き方"というものなんだよ。今まで皆そうして生きてきた。お前は私が思っていたよりずっとずうっと頭が悪かったようだねぇ。残念だよ"お三津"。そんなに怯えなくとも大丈夫さ、干からびた年寄りの肉は不味いんだよ。醜悪で汚いものを私は絶対食べたりしない。お前はグシャッと転落死、さよならお三津。」

お三津「やめっ・・」

 

お三津の静止を無視した堕姫はそのまま手を離し、お三津の体は重力にしたがって真っ逆さまに落ちていった。それを見た堕姫はお三津の死を確信したのか家の屋根を伝って京極屋へと戻っていった。

 

ブロリー「!」バッ ガシッ ヒョイ

 

お三津「!」

 

しかし、結果としてお三津は死ぬことはなかった。その理由は、地面に叩きつけられる前にブロリーが宙に浮いて抱えて助け出したからだった。そしてゆっくりと地面に降りるとお三津もおろした。彼女は助かったと知るや否や地面にへたりこみ、泣きながらブロリーにお礼を言った。

 

ブロリー「大丈夫か?」

 

お三津「たっ・・助けてくださってありがとうございます!ありがとうございます!」ペコペコ

 

ブロリー「それだけ元気なら大丈夫のようだな。助けた代わりとは言わないが、ひとつ聞きたいことがある。」

 

お三津「はい・・!はい・・!アタシに知っていることであれば何でも答えます!」

 

ブロリー「それなら聞くが、お前を落としたやつは何者なんだ?あいつからは人間の気配がしなかったんだが?」

 

お三津「・・・アタシもつい先ほどまでは人間だと信じて疑いませんでした。でも、今殺されかけたことでそれは違うと分かりました・・蕨姫は人間ではありません・・!アタシが子供の時から花魁として京極屋にいる化け物です・・!」

 

ブロリー「そうか。そいつの特徴は分かるか?そしてそいつはどこへ行った?」

 

お三津「・・蕨姫は、普段は着物を着ていましたが・・化け物の姿になったら、露出が激しい花柄のタイツと服を着ていて・・確か上弦という文字と陸という文字が両目に刻まれていました・・蕨姫はおそらく京極屋に戻ったかと。」

 

ブロリー「そうか。お前の情報はなかなか有益なものだったぞ。感謝する。俺はもう行く。」

 

お三津「お礼を言うのはこちらの方です!助けていただいて本当にありがとうございました!ケールさん!」ペコ

 

ケール(ブロリー)「・・どこでその名を知った?」

 

お三津「様々なお店で噂になってますよ。金髪で緑色の目をした色男が色んな店で遊郭や花魁達を虜にしているって、助けられて一目みてから確信してましたよ!」

 

ケール(ブロリー)「・・ケールと言うのは偽名だ。俺の本当の名はブロリーだ。」ビュオオ

 

お三津「ブロリーさん・・本当にありがとうございました!」ペコ

 

お三津は何度もブロリーに向かって頭を下げ、ブロリーは堕姫が戻った京極屋の窓へと飛んでいったのだ。

一方、お三津を完全に殺したと思っている堕姫は、京極屋の自分の部屋へと戻っていた。

 

堕姫「!!」

 

無惨「調子はどうだ?」

 

堕姫「無惨様・・!!///」

 

そこには一人の男性客がいた。ズボンが白で上が黒のスーツ姿で白いハット帽を被っていた。この男は鬼の始祖である鬼舞辻無惨である。機嫌がいいのか穏やかな笑みを浮かべていた。

 

無惨「随分人間を喰ったようだな。猗窩座がやられてからこの四ヶ月あまりで以前よりもさらに力が増している。良いことだ。」

 

堕姫「はっ!」

 

無惨の言葉に堕姫はすぐに頭を垂れて平伏する。上弦の鬼も例外ではなく、無惨は絶対的な主なのである。

 

無惨「しかし、油断をするな。うまくことが進んでいる時程足は掬われやすい。」

 

堕姫「承知致しました。」

 

無惨「鬼殺隊でも手練れの者・・柱などはすぐに此方が鬼だと看破する。しかし此方からは柱程実力の有る者以外人間など、視ただけでは殆ど違いがわからない。血の種類や病気、遺伝子など人間に判らないことは判別できるが・・"堕姫"」

 

堕姫「はい・・!はい!無惨様!!///」

 

無惨「私はお前に期待してるんだ。お前は誰よりも美しい。そして強い柱を七人葬った、これからももっともっと強くなる、残酷になる、特別な鬼だ。」

 

堕姫「無惨様・・!///」

 

堕姫は無惨に両頬に手を添えられ、とても心地良さそうに目を細めていた。しかし、そのとき

 

「デヤァッ!!」ドカァッ! ガッシャーン!

 

無惨・堕姫「!!?」

 

無惨と堕姫が突然吹っ飛んだ襖に驚きその方を見ると、そこには『スーパーサイヤ人』ではなく『伝説のスーパーサイヤ人』の形態へと変身したブロリーの姿があった。無惨は大量の冷や汗をかき、堕姫は顔中に血管を浮かび上がらせて不快そうに睨み付けた。ブロリーは無惨にその白眼を向けた。

 

ブロリー「!・・鬼舞辻無惨。」

 

無惨「・・・堕姫。」

 

堕姫「はい、無惨様。」

 

無惨「奴を葬る役割をお前に託そう。もし、その男の頸を持って帰って来たならば、私が直々に極上の褒美をくれてやろう。」

 

その言葉に堕姫は一瞬目を見開き、そして笑みを浮かべ頬を赤らめて返事をする。

 

堕姫「はい・・!はい!無惨様!!///必ずや、御期待に答えて見せます!///」

 

無惨「私の期待を裏切ってくれるなよ?鳴女!」

 

ベベン

 

無惨が叫ぶと琵琶の音が鳴り、その後ろに襖が出現する。無惨はそこに入ると、襖が閉じる。無惨は京極屋から無限城へと帰ったのだ。

そしてその場に残った堕姫は、再び不快そうな鋭い視線をブロリーに飛ばした。

 

堕姫「お前・・!私とあの方の至福の一時を邪魔しやがって!覚悟は出来てるんだろうね?」ゴゴゴ

 

ブロリー「フン!覚悟などするまでもない。それにしても鬼舞辻無惨。あいつは俺の姿を見たらそそくさと姿を消したな。所詮奴は、この俺に恐れを成して逃げ出す臆病者なのだ。」

 

堕姫「!!あの方を侮辱するとは!万死に値する!」

 

無惨を侮辱された堕姫は血管を浮かび上がらせて怒り狂い、血鬼術の帯をゆらゆらと揺らして威嚇する。

 

ブロリー「本当のことだろう?それにお前もそんな格好で美しい女になったつもりか?その程度で禰豆子やしのぶ達と対等になったと思うなよ?醜女のクズめ。」

 

ブロリーの更なる煽りに堕姫は青筋をいくつも浮かべて睨み付けていた。

 

堕姫「・・・今まで鬼狩りの柱を七人葬ってきたけど、私をここまで本気で怒らせたのはお前が初めてだよ。相当死にたいようだね。いいわよ、お望み通り残酷に殺して喰ってあげる!」

 

ブロリー「さぁ来い!ここがお前の死に場所だぁ!」ゴゴゴゴゴ

 

遂に遊郭を巣食っている鬼を見つけたブロリー。鬼舞辻無惨には逃げられたものの、目の前の上弦の陸を相手に臨戦態勢をとるのだった。




遊郭編本当に難しい。ようやく書けました。ブロリー達が遊郭に来るのと、お三津の生存と無惨が遊郭に来るのを同日としました。次回は戦闘回になると思いますので頑張って書きたいと思います。それではまた次回。


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遊郭で燃え尽きろ!!熱戦!烈戦!超激戦!前編

第二十二話です。久しぶりに一万文字を超えました。相変わらず駄文ですが、最後まで読んでくださると嬉しいです。


ブロリーが堕姫と遭遇し、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。一方でとある家の屋根。炭治郎達は集まって情報交換をしていた。

 

猪子(伊之助)「だーかーら!俺んとこに鬼がいんだよ!こういう奴がいるんだって!こういうのが!!」グワッ

 

炭子(炭治郎)「いや・・うんそれはあの・・ちょっと待ってくれ。」

 

猪子(伊之助)「こうか!?これならわかるか!?」クキッ

 

炭子(炭治郎)「そろそろ宇髄さんと善逸定期連絡に来ると思うから・・」

 

猪子(伊之助)「こうなんだよ!俺にはわかってんだよ!」

 

炭子(炭治郎)「うんうん・・」

 

伊之助は炭治郎に荻本屋に鬼がいることを伝えようとしていたが、擬音があまりにも多いため炭治郎にはいまいち伝わってなかった。

 

天元「善逸は来ない。」

 

炭治郎・伊之助「「!!」」

 

そのとき、天元が目に光を映していない状態で音もなく現れた。急に姿を現したため、二人は驚いて肩を震わせた。

 

猪子(伊之助)(コイツ・・やる奴だぜ。音がしねぇ・・風が揺らぎすらしなかった・・)

 

炭子(炭治郎)「善逸が来ないってどういうことですか?」

 

伊之助は天元の気配もなく現れたことに警戒し、天元は炭治郎のには答えず、暗い表情のまま淡々と語った。

 

天元「お前達には悪いことをしたと思ってる。俺は嫁を助けたいが為にいくつもの判断を間違えた。善逸は今行方知れずだ。昨夜から連絡が途絶えてる。お前らはもう"花街"から出ろ、階級が低すぎる。ここにいる鬼が"上弦"だった場合対処できない。消息を絶った者は死んだと見なす。あとは俺一人で動く。」

 

炭子(炭治郎)「いいえ宇髄さん!俺たちは・・!!」

 

天元は炭治郎の"上弦の鬼だろうと戦う"と続くはずだった言葉を遮り、指示を出した。

 

天元「恥じるな、生きてる奴が勝ちなんだ。機会を見誤るんじゃない。」

 

天元がそう言ったのを最後にこの場から姿を消そうとしたとき、鎹鴉が飛んできて炭治郎達の周りを旋回する。

 

「カァー!!カァー!!破壊柱ブロリー!!上弦ノ陸、ソシテ鬼舞辻無惨ト遭遇!!ナオ鬼舞辻無惨ハ逃ゲタ模様!!現在上弦ノ陸ト交戦中!!音柱宇髄天元及ビ竈門炭治郎・嘴平伊之助ハ大至急援護二向カエー!!カァー!!カァー!!」

 

天元・炭治郎・伊之助「「「!!」」」

 

炭治郎達は鴉の鬼舞辻無惨と遭遇したという情報に驚いたが、上弦の鬼と戦っていると聞いてそれどころではなかった。

 

天元「・・やはり上弦の鬼だったか。俺の読み通りだ。お前ら、地味な報告会はここまでだ。援護に行くぞ。ブロリーはド派手に強えから殺られることはねぇだろうが、それでも向かうぞ。支度は急げよ?」フッ

 

天元はそれだけ言うと、再び音もなく姿を消した。そしてその場に残されてるのは二人だけになった。

 

猪子(伊之助)「俺達もすぐに行くぞ!」

 

炭子(炭治郎)「そうだな!でも少し待っててくれ!あと少しで俺のいる店も調べ終わるから。」

 

猪子(伊之助)「何でだよ!ブロッコリーの所に行くんだから今から動けっつーの!!頭悪ィなテメーはホントに!!」ムギュウ

 

炭子(炭治郎)「イタタタ!はなひてふれ!」

 

炭治郎の言葉に激昂した伊之助は、青筋をたてて炭治郎の頬を摘まみ引っ張った。炭治郎は痛みを感じながらもそれを否定した。そしてなんとか離してもらえた炭治郎は頬を擦りながら説明する。

 

炭子(炭治郎)「建物の中に通路があるんじゃないかと思うんだよ。」

 

猪子(伊之助)「通路?」

 

炭子(炭治郎)「そうだ、しかも店に出入りしてないということは、鬼は中で働いている者の可能性が高い。鬼が店で働いていたり、巧妙に人間のふりをしていればいるほど、人を殺すのには慎重になる。バレないように。」

 

猪子(伊之助)「そうか・・殺人の後始末には手間が掛かる。血痕は簡単に消せねぇしな。」

 

炭子(炭治郎)「それに今ブロリーさんが上弦の陸と戦っているのなら、善逸も宇髄さんの奥さんたちも、その通路のどこかに閉じ込められてるだけだと思う。まだ皆生きてるつもりで行動する。必ず助け出す。伊之助にもそのつもりで行動して欲しい。そして絶対に死なないで欲しい。それでいいか?」

 

猪子(伊之助)「・・・・お前が言ったことは全部な、今俺が言おうとしてたことだぜ!!」

 

炭治郎の出した案で合意した二人は、そのまま残りの店を調べるために一度解散するのだった。

 

炭治郎side

 

客人を向かえるために準備をしていた鯉夏花魁は、優しい笑みを浮かべながら遊女二人に声をかけた。

 

鯉夏「もう支度はいいから御飯を食べておいで。」

 

「「はーい。」」

 

御飯を食べることを許された遊女二人は、楽しそうに笑いあいながら小走りで部屋を出ていった。それと入れ替わるようにして部屋に入ってきたのは、元の鬼殺隊の格好をした炭治郎である。

 

炭治郎「鯉夏さん。不躾に申し訳ありません。俺は"ときと屋"を出ます。お世話になった間の食事代などを旦那さんに渡していただけませんか?」スッ

 

炭治郎はそう言うと、床にお金の入った封筒を差し出した。鯉夏は炭治郎の姿に驚く。

 

鯉夏「炭ちゃん・・その格好は・・」

 

炭治郎「訳あって女性の姿でしたが俺は男なんです。」

 

鯉夏「あっそれは知ってるわ。見ればわかるし・・声も。」

 

鯉夏は最初から炭治郎が男だということを見破っていたのだ。その事を今知って衝撃を受けた炭治郎は、すっとんきょうな声を出すことしかできなかった。

 

炭治郎「・・・・えっ?」

 

鯉夏「男の子だっていうのは最初からわかっていたの。何してるのかなって思ってはいたんだけど・・」

 

炭治郎(・・・・まさかバレていたとは・・)

 

心の中で既にバレていたことを相当気にしている炭治郎をよそに、鯉夏は話を続ける。

 

鯉夏「事情があるのよね?須磨ちゃんを心配してたのは本当よね?」

 

炭治郎「はい!それは勿論です!嘘ではありません!いなくなった人たちは必ず助け出します。」

 

鯉夏「・・・・鬼の仕業よね?」

 

炭治郎「!!知ってるんですか!?」

 

鯉夏「"京極屋"の女将さんが鬼に殺されかけたらしいの。それを金髪と金の首飾りを着けた色男が、地面に叩きつけられる直前で助け出したって噂になってるわ。」

 

炭治郎(ブロリーさんだ!)

 

鯉夏の話を聞いて、炭治郎はその特徴から女将さんを助けたのはブロリーであることをすぐに悟った。そしてやっぱりすごいと改めて実感した。

 

鯉夏「炭ちゃん、いなくなった人を助けるって言ってくれてありがとう。少し安心できたわ。私ね・・明日にはこの街を出ていくのよ。」

 

炭治郎「そうなんですか!!それは嬉しいことですね。」

 

鯉夏の朗報を聞いた炭治郎は、まるで自分の事のように喜び、純粋な笑みを浮かべた。

 

鯉夏「こんな私でも奥さんにしてくれる人がいて・・今本当に幸せなの。でも・・だからこそ残していく皆のことが心配でたまらなかった。嫌な感じのする出来事があっても私には調べる術すらない・・」

 

炭治郎「それは当然です。どうか気にしないで、笑顔でいてください。」

 

鯉夏は自分の無力さに嘆き、炭治郎は気にせず幸せになってほしいと励ました。

 

鯉夏「・・私はあなたにもいなくなってほしくないのよ、炭ちゃん。でもあなたは鬼狩り様・・仕事を妨げるわけにはいかないわ。私には何もできないけど、それでもあなたのご武運を祈ってるわ。頑張ってね。」ニコッ

 

炭治郎「はい!ありがとうございます!」ペコ

 

鯉夏の応援を受けた炭治郎は、一礼してから部屋を出ていったのだった。

 

伊之助side

 

一方、荻本屋で待っている伊之助は、炭治郎がなかなか来ないことに痺れを切らしていた。

 

伊之助「遅いぜ!!こっちは準備出来てるっつーのに来る気配がしねぇぜ!!惣一郎の馬鹿野郎が!!俺は動き出す!!猪突猛進をこの胸に!!」グッ ズギョム バキーン

 

伊之助は低く屈むと脅威の脚力を使った大跳躍で、天井を突き破って顔を出して叫ぶ。

 

伊之助「ねずみ共!!刀だ!!」

 

天井裏の奥から、刀を一本ずつ持ってきている二匹のマッチョなねずみが伊之助へと近づいてきた。このねずみ達は天元の使いで"忍獣ムキムキねずみ"である。特別な訓練を受けていて知能が高く、力も強いため一匹で刀一本を持ち上げられるのだ。伊之助は刀を取ると、頭に猪の被り物を被って動き出した。

 

伊之助「行くぜ鬼退治!!猪突猛進!!」

 

そのまま荻本屋の外へと行った。そこでちょうど炭治郎と合流して、ブロリーと堕姫が戦っている所へと移動した。

 

炭治郎「伊之助!」

 

伊之助「!権八郎遅えぞ!俺一人で動くところだったぜ!」

 

炭治郎「ごめん!今からブロリーさんの所へ行こう!」

 

伊之助「指図するな!だがわかった!」

 

しかし、一人の遊女が伊之助の本来の姿を怯えて震えながら見ていたことには全く気づかないのであった。

 

天元side

 

音柱の天元は、善逸と雛鶴が行方不明になった京極屋へ行き、店長の喉元に小刀を突きつけて愚問していた。

 

天元「善子と雛鶴はどうした?簡潔に答えろ。問い返すことは許さない。」チャキ

 

店長は逆らえば殺されると本能的に悟り、冷や汗を流しながら正直に二人の行方を教えた。

 

「・・善子は消えた・・雛鶴は病気になって切見世へ・・」

 

天元「・・心当たりのあることを全て話せ。怪しいのは誰だ?信用して言え、そいつは必ず俺が殺す。」

 

店長は自分の妻が先ほど助けられた情報を持っていたため、それを天元に伝えた。

 

「・・お三津が言っていた・・怪しいのは蕨姫という花魁だ。日の当たらない北側の部屋にいる・・!!」

 

天元は善逸と雛鶴と鬼の居場所を聞き出すと、風のごとく音もなく消え、北側の部屋へと移動した。しかし、そこは既にもぬけの殻であった。

 

天元(いない。ブロリーとド派手に戦っていやがるのか。雛鶴もまだ生きていれば鬼の情報を持っているはずだ。もしブロリーが鬼を倒せていなくても、夜明けには鬼もここに戻るはずだ。必ず俺の手でカタをつける。)

 

天元は鎹鴉からブロリーが上弦の陸と戦っていると聞かされているが、天元はブロリーのことを心配していなかった。それは勝とうが負けようががどうでもいいということではなく、ブロリーなら絶対に上弦の陸に勝てると確信しているからである。それほどまでに天元はブロリーのことを信用しているのだ。そして天元は、切見世と呼ばれる最下級の女郎屋へと到着し、雛鶴に解毒薬を飲ませるのだった。

 

雛鶴「天元様。私には構わずもう行ってくださいませ・・鬼が暴れています・・」

 

天元「本当に大丈夫だな?」

 

雛鶴「はい・・お役に立てず申し訳ありません。」

 

天元の妻の一人である雛鶴は、蕨姫花魁が鬼だと気づいていたが、堕姫も雛鶴の動きを怪しんでいたために、うまく身動きがとれなくなっていたのだ。わざと毒を飲み、病に罹ったふりをして"京極屋"から出ようとしたが、別れ際に蕨姫花魁に分身の帯を渡されたのだ。何か起きた場合、即座に雛鶴を始末できるように監視、及び殺害を目的とした行動であった。しかし、その帯は天元が持っていた小刀によって壁に刺され、雛鶴を救出したのだった。

 

天元「いいや、よくやってくれた。お前はもう何もしなくていい。解毒薬が効いたら吉原を出ろ。わかったな?」ギュッ

 

雛鶴「・・はい。」

 

雛鶴が了承の返事をすると天元は優しく、そしてキツく妻を抱き締めるのだった。そして天元が外に出ると、ちょうどそこへ炭治郎と伊之助が合流した。

 

炭治郎・伊之助「宇髄さん!/祭の神!今来たぜ!」

 

天元「!炭治郎!伊之助!お前らもブロリーの援護へド派手に向かうぞ!」

 

炭治郎・伊之助「はい!/おう!」

 

三人はブロリーが戦っている場所まで走っていくが、ふと天元と伊之助の足が止まる。

 

天元「!地面の下からも派手に鬼の気配がするぞ!」

 

伊之助「祭の神もか!今俺も同じ事を言おうとしたぜ!」

 

天元「伊之助もか!炭治郎!俺と伊之助はここから下へ行く!お前はブロリーの所へ向かえ!」

 

炭治郎「えっ!ですが・・!!」

 

天元「いいから行け!ブロリーは強えから殺られることはねぇだろうが、それでもあいつは今一人で戦っているんだぞ!万が一の事だってあるんだ!早くしろ!間に合わなくなっても知らんぞ!」

 

炭治郎「!はい!」ダッ

 

炭治郎は地上を走ってブロリーの援護へと向かい、それを見届けた天元は自分の包丁のような大きく鋭い日輪刀を振り上げると地面へと技を放った。

 

天元「音の呼吸!壱の型!轟!!!」ドォォォン!!

 

伊之助「グワハハハ猪突猛進!!誰も俺を止められねぇ!!」バッ

 

天元「あっ!伊之助テメェ待ちやがれ!!」バッ

 

地面に大きな穴を開けると下には広い空洞があり、中には沢山の人間を閉じ込めた帯が縦横無尽に広がっていた。

 

伊之助(人間柄の布?なんだこりゃ?いや、この感触・・・・生きてる人間だ。女の腹巻きの中に捕まえた人間を閉じ込めとくのか。それで好きな時に出して喰うんだ。)「ん?」

 

伊之助がふと隣をみると、そこには帯に閉じ込められながら鼻提灯を作って爆睡している善逸の姿があった。

 

伊之助「何してんだコイツ・・」

 

伊之助はそんな善逸を呆れた表情で見ていた。そして天元もやってくる。

 

天元「!まきを!!須磨!!今出すぞ!」バッ

 

天元は帯に閉じ込められてる二人の嫁を見つけて、体を傷つけないように切り離した。それだけでなく、縦横無尽に広がっていた帯も一瞬にして刻み、閉じ込められてた人を助け出した。

 

堕姫(分身)「お前たちは何をしてるんだよ?他所様の食糧庫に入りやがって汚いね。」

 

伊之助・天元「「!!」」

 

伊之助と天元が声のした方へ向くと、帯に目や口がついている堕姫の分身である帯がぐねぐねと動いていた。

 

伊之助(何だこの蚯蚓、キモッ!!蚯蚓ってどうやって倒すんだっけ?小便かけるんだっけ?)

 

伊之助は山で培った知識を思い出そうとするが、それは間違った方法である。堕姫の分身はふと天元の方を見ると、気配と先ほどの動きで柱だと察した。

 

堕姫(分身)(この気配!!柱!!)

 

そして帯から出されたことにより、元の人の姿に戻ったまきをと須磨は、天元の姿を見つけた。

 

まきを「天元様・・」

 

天元「まきを、須磨、遅れて悪かったな。こっからはド派手に行くぜ!!」

 

天元が来た安心感からか、須磨は泣き出し、まきをは呆然とするのだった。

そして帯を全て片付けた天元は二人の頭をポンポンと軽く叩いた。

 

天元「派手にやってたようだな。流石俺の女房だ。」

 

須磨は天元に誉められたことで更に声を出して大泣きするのであった。そこへ伊之助が青筋をたてながら天元に怒鳴り付けた。

 

伊之助「オイィィ!!祭りの神テメェ!!蚯蚓帯共が穴から散って逃げたぞ!!」

 

天元「うるっせぇぇ!!捕まってた奴ら皆助けたんだからいいだろうが!!まずは俺を崇め讃えろ!!話はそれからだ!!」

 

天元は家族との感動の再会を邪魔されたせいか、同じく青筋をたてて伊之助に怒鳴り返していた。そこへまきをが二人にドン引きしながらも天元に助言するのだった。

 

まきを「天元様、早く追わないと被害が拡大しますよ・・」

 

天元「野郎共追うぞ!ついて来い!さっさとしろ!」

 

天元は先刻自分で開けた大穴から飛び出すと、建物の屋根に飛び移り、とんでもない速さで駆けていった。

 

天元「どけどけェ!!宇髄様のお通りだ!!ワハハハハハ!!」

 

伊之助「くそォ!速ェ!!」

 

その速さについて行けない伊之助は、汗だくになりながらも天元との実力差に悔しさを覚えるのだった。

 

ブロリーside

 

堕姫と対峙しているブロリーは、一方的な力で堕姫を押していた。

 

ドガガガガガ!!

 

堕姫「ギャアアッ!!くっ・・調子に乗るんじゃないわよ!!不細工の分際で!!」

 

ブロリー「その程度のパワーで俺を倒せると思っていたのか?上弦の鬼だとわかって少しは楽しめそうだと思ったが、この程度の雑魚だったとは・・興ざめだ。」

 

堕姫「・・私を馬鹿にしたわね?お前は確実に殺す!!」ギュルギュルギュルギュル!!

 

それは驚きの光景だった。なんと、先程天元によって切り裂かれた分身の帯が、堕姫の本体の中へと入っていくのだ。

 

ブロリー(帯がムシケラの体の中に入っていってる!?気持ちわリーです・・)

 

全ての帯が入りきると、髪の色が黒から銀へと変わり、顔に花の模様ができていた。これが堕姫の真の姿なのである。

 

堕姫「花街を支配するために分裂していた私の体、ひとつに戻ったらその速度や力は比じゃないのよ。お前は私をここまで本気で怒らせたんだ。なぶり殺しにしないと気が済まないわ!」ゴゴゴゴゴ

 

ブロリー「フハハハハハハハハハ!!雑魚帯のパワーをいくら吸収したとて、この俺を超えることは出来ぬぅ!!」ゴゴゴゴゴ

 

堕姫とブロリーはお互いに力を高めあい、攻撃するべく地面を蹴った。

 

堕姫「血鬼術!八重帯斬り!」ピュンピュンピュン!!

 

堕姫は帯を何重にもクロスさせてブロリーを切り刻もうとするがそれでも傷をつけることは出来ずに帯が弾かれる。

 

ガキーンガキーンガキーン!

 

堕姫「!!」

 

ブロリー「破壊の呼吸!拾壱の型!ギガンティックハンマー!」ドゴォ!!

 

堕姫「ガァッ!?」

 

ブロリーは堕姫にラリアットを決めると、そのまま蹴り飛ばしてから顔面を掴んで地面に叩きつける。

 

バキッ ガシッ!

 

ブロリー「死ぬがいい!!」ズザザザー!!

 

堕姫「ギャアアッ!!」

 

そしてそのまま持ち上げると、ピクリとも動けない堕姫を空中に放り投げた。堕姫は受け身も取れずに地面に落下する。それと同時に炭治郎が到着した。

 

炭治郎「ブロリーさん!大丈夫ですか!?」

 

ブロリー「炭治郎、ようやく来たのか。待ちくたびれて先にムシケラを血祭りにあげていたところだぁ。」

 

炭治郎がブロリーの指差した方向を見ると、そこには満身創痍になりながらもなんとか立ち上がり、全身に傷を作りながらブロリー達を睨み付けている堕姫の姿があった。

 

堕姫「アンタ・・よくもやったわね!私の体に傷を作りやがって!万死に値する!」

 

ブロリー「クズがぁ・・まだ生きていたのか。大人しく殺されていれば痛い目に遭わずにすんだものを。」

 

堕姫は怒りでブロリーしか見えていないようであったが、炭治郎の姿が目に入ってから、少しだけ冷静さを取り戻していた。

 

堕姫「?もう一人鬼狩りの子がいるわね。そう、柱じゃない奴は要らないのよ、わかる?私は汚い年寄りと不細工を喰べないし。それに比べてあの力、そして闘気、アンタは柱のようね。結構な肉体美、いいね。喰べごたえがありそうね。よかった。あの方に喜んでいただけるわ・・」

 

炭治郎(なんて禍々しい匂いだ。喉の奥が痺れて痛い。でも伊之助たちの方に宇髄さんがいるのか?だったら安心だ・・)

 

「おい!!何をしてるんだお前たち!!」

 

炭治郎・ブロリー「「!!」」

 

突如として聞こえてきた大声に炭治郎たちがみてみると、一人の店の店長が出てた。炭治郎たちと堕姫の戦いの騒ぎで外へと出てしまっていたのだ。

 

「人の店の前で揉め事起こすんじゃねぇぞ!!」

 

堕姫「・・うるさいわね。」

 

炭治郎「だめだ!!下がってください!!建物から出るな!!!」

 

炭治郎が大声で注意喚起するも時すでに遅し、堕姫は建物ごと切り裂く帯の攻撃で店長の手首を切り落としたのだった。

 

「グッアアッ・・グアアアアッ・・アアッ・・」

 

店長が呻き声をあげると共に、堕姫の攻撃を受けた建物が大きな音をたてて崩れ落ちた。胴体が真っ二つになった花魁や首を切断された男性など、目を覆いたくなるような惨状に一瞬にしてなってしまったのだ。

 

「ギャアアアアッ!!」

「イヤアアアアッ!!」

 

花街のあちらこちらから絶叫が聞こえてくる。炭治郎はせめて後ろの男性だけでも助けようと、応急処置の方法を伝える。

 

炭治郎「落ち着いて、あ・・貴方は助かります。腕を・・紐で縛って・・」

 

「・・・・」

 

男性にそう言う炭治郎だったが、本人も斬られて血が噴き出しているだけではなく、そこから更に毒も入ってしまった為に大量の汗をかいていた。それを見た堕姫は口に弧を描き、その場から去ろうとしたが

 

炭治郎「!待て、許さ・・ないぞ・・こんなことをしておいて。」

 

堕姫「何?まだ何か言ってるの?もういいわよ不細工。醜い人間に生きてる価値なんて無いんだから、仲良くみんなで死に腐れろ。」

 

堕姫は心底うざそうに炭治郎を一蹴すると、再び種を返してどこかへ行こうとする。しかし

 

ブロリー「どこへ行くんだぁ?」ゴゴゴゴゴ

 

堕姫「!!・・チッ邪魔ね。」

 

ブロリー「炭治郎たちをこんな目に遇わせておいて、生きて帰れると思うなよ?」ゴゴゴゴゴ

 

ブロリーは『伝説のスーパーサイヤ人』の形態で青筋を浮かべていた。それもそのはずである。ブロリーが心の底から信頼できるはじめての仲間を毒付けにされたのだ。怒るのも当然である。

 

堕姫「うるさいわね。アンタが怒っているように私も怒っているのよ。私の体に付けた傷、未だに再生しないじゃない。アンタは柱で私と互角の実力があるようだけど、それでも私に勝つなんて無理な話よ。私にはまだ切り札があるのよ。」

 

堕姫の勝利宣言をブロリーは聞いていた。そして一度俯いたかと思うと、悪魔のように笑った。

 

ブロリー「・・フフフフフ!!フハハハハハハ!!フハハハハハハ!!」

 

堕姫「・・何が可笑しいの?」

 

いきなりブロリーに見下されるように笑われた堕姫は不快感を隠そうともせずに眉間に皺をよせて尋ねた。

 

ブロリー「フハハハハハハ!!貴様、何か勘違いをしていないかぁ?いつ俺がお前相手に全力を出してると言ったんだぁ?」

 

堕姫「・・見栄を張ってんじゃないわよ!!血鬼術!八重帯斬り!」ピュンピュンピュン!

 

ブロリー「雑魚が・・何をしても無駄だ。」バッ!

 

ブロリーは帯の合間を縫って血鬼術を綺麗に避けると、堕姫の鳩尾に拳を叩き込んでから顔面を蹴り飛ばした。そして攻撃を受けた堕姫は顔と腹を抑えて蹲った。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ドゴォ! バキッ!

 

堕姫「ギャアアッ!!」

 

ブロリー「フン、見栄を張るなって言って襲いかかってきたのは貴様だろう?どうした?この程度でもう終わりか?俺はまだ100の1も力を出してないぞ。」

 

堕姫「!!」

 

ブロリーの衝撃の事実に堕姫は戸惑いを隠せなかった。今の攻撃で、力を全く出してない上に自分には重すぎる程のダメージが入ったことを本能的に悟ったのだ。

 

堕姫(は?これで100の1未満?・・何なのよ・・何なのよ!!コイツのこの力は!!私の血鬼術を使った攻撃は全く効かないのに、コイツの力はほんの少しで私に致命傷を与える!こんなの反則よ!・・まっまさか・・こいつ・・こいつが・・!)

 

堕姫はブロリーが特徴的な見た目なのと、圧倒的すぎる力を前にしてとあることを思い出していた。それは約四ヶ月前に"猗窩座が殺されたことによって開かれた無限城での会議"だった。

自分達の主である鬼舞辻無惨が自分よりも圧倒的に強いと恐れ、徹底的に警戒している一人の鬼狩り、上裸で金の首飾りを着けている禍々しい気を常時放っている柱の一人、ブロリーという名を持つ鬼の気配に似ている鬼殺隊の隊員が現れてから、無惨が異様にピリつくようになったのだ。堕姫は今、無惨が最も危険視している者と対峙していたのだ。

 

堕姫「お前が・・あの方が言っていた鬼狩り、ブロリーか!?」

 

ブロリー「フフフ!正解だ、よく当てたと誉めてやりたいところだぁ!」

 

堕姫がブロリーの事を当てた直後、堕姫の頚元に迫る一本の足による蹴りが当たった。

 

バキッ!

 

堕姫「!ガァッ!」ゴトン!

 

炭治郎「禰豆子!お前・・!」

 

その正体は禰豆子だった。彼女もブロリーと同じように、兄である炭治郎を毒付けにされたことに怒っているのだ。

 

禰豆子「ヴーーーッ!!ヴーーーッ!!」

 

禰豆子は唸りながら堕姫がぶっ飛んで行った方を睨み付ける。しかし、堕姫も上弦である。瞬く間に禰豆子につけられた傷が瞬く間に再生していき、遂には"禰豆子に傷つけられた部分だけ"何事もなかったかのように無傷になっていた。

 

堕姫「よくもやったわね!アンタ・・そう、アンタ!アンタなのね!!あの方が言ってたのはアンタなのね!!」

 

堕姫は再び少し前の記憶を思い出していた。ブロリーが部屋を蹴破る前に無惨に頭を撫でられていた堕姫は、自分の支配を逃れたという理由で禰豆子の抹殺を命令していたのだ。

 

堕姫「ええ勿論。なぶり殺して差し上げます!お望みのままに・・!!」

 

禰豆子は立ち上がると、再び堕姫の顔面に蹴りをいれようとする。

 

堕姫(同じ手は何度も食わないわよ!!蹴るしか脳が無いのか!!)「雑魚鬼が!!」ザシュ!

 

禰豆子「!!」

 

炭治郎「禰豆子!!」

 

堕姫の帯が一瞬の後に禰豆子の胴体を真っ二つに切断してしまったのだ。それを見た炭治郎の怒りは限界点を超えた。

 

炭治郎「妹を傷つける奴は!!上弦だろうがなんだろうが許さない!!」ビキビキ

 

炭治郎は呼吸を止めて堕姫の右足を切断した。血涙を流しながら、表情を変えずに口を開く。

 

炭治郎「失われた命は回帰しない。二度と戻らない。生身の者は、鬼のようにはいかない。なぜ奪う?なぜ命を踏みつけにする?」

 

このときの堕姫は体に流れている鬼舞辻の細胞によって、炭治郎がかつての無惨の天敵、"継国縁壱"と重なって見えていた。

 

堕姫(これは私じゃない、私の記憶じゃない。細胞だ。無惨様の細胞の記憶・・)

 

炭治郎「人間だったろうお前も。かつては。痛みや苦しみにもがいて涙を流していたはずだ。」

 

ドゴォ

 

堕姫は炭治郎の話を無理矢理遮る為に地面を思いっきり殴り付けてクレーターを起こした。

 

堕姫「ごちゃごちゃごちゃごちゃ五月蝿いわね。昔のことなんか覚えちゃいないわ。私は今鬼なんだから関係ないわよ。鬼は老いない。食うために金も必要ない。病気にならない。死なない。何も失わない。そして美しく強い鬼は、何をしてもいいのよ・・!!」

 

炭治郎「わかった。もういい。」ゴゴゴゴゴ

 

炭治郎は般若のような形相を浮かべると、そのまま堕姫に向かっていった。

 

堕姫「血鬼術!八重帯斬り!」ピュンピュンピュン!

 

堕姫は先程さんざんブロリーに向けて使った血鬼術を今度は炭治郎に向かって放った。しかし

 

炭治郎「ヒノカミ神楽!灼骨炎陽!」ガガガガ!

 

炭治郎が帯を切り裂きながら堕姫との間合いに入って頚に刀を振るうが

 

堕姫「アンタなんかに私の頚が斬れるわけ無いでしょ・・!!!」

 

堕姫は胴体と頭を帯でくっつけることによって斬られることを防いでいたのだ。その事に気づいた炭治郎は一旦距離をとって再び堕姫に向かっていこうとするが

 

ブロリー「炭治郎!!息をしろ!!死ぬぞ!!」

 

炭治郎「!!」ゴホッゴホッゴホッ

 

炭治郎の命の危機を感じたブロリーは炭治郎に思いっきり叫び、その声で我に返った炭治郎は息を止めていた反動で咳き込んでいた。

 

ブロリー「炭治郎、よく頑張ったと誉めてやりたいところだぁ!今度は俺の番だ。」

 

ブロリーは気を高ぶらせて片手に気弾を作り、それを堕姫に投げつけようとするが

 

禰豆子「ム゛ーーーー!!!」ポーヒー ドカーン!

 

堕姫「きゃあっ!?」

 

ブロリー・炭治郎「「!!」」

 

ブロリーが緑色の気弾で攻撃する前に、ブロリーとは別の桃色の気弾が飛んできて堕姫に命中したのだ。ブロリー程の威力はないが、それでも彼以外から気弾が飛んでくるとは誰も予想できずに驚いていた。桃色の気弾が飛んできた方を見ると、そこには禰豆子が野球の投手のように何かを投げ終えたような構えをとっていた。そう、気弾を投げつけたのは禰豆子である。堕姫と炭治郎は信じられないものを見たような目で禰豆子を見ていた。そしてブロリーが三人の気持ちを代弁するかのように禰豆子に聞いた。

 

ブロリー「・・禰豆子、何故お前が、イレイザーキャノンを撃てるのだ?」

 

口枷をしているため喋れない禰豆子はそのままブロリーの隣に立って堕姫を睨み付けるのだった。




戦闘があまりにも長いので兄が出てくるのはもう少しあとになりそうです。そして禰豆子が新たな力に目覚めました。ブロリーとの接点が少しでもあればいいと思ってこうさせていただきました。それではまた次回。


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遊郭で燃え尽きろ!!熱戦!烈戦!超激戦!後編

第二十三話です。今回の話は疑音がかなり多く、意味不明な描写なことが多々あると思います。それでもいいという方は、最後まで読んでいただけると嬉しいです。


上弦の陸"堕姫"との戦闘中に禰豆子に起きた異変、それはブロリーの技を放ったことであった。ブロリー本人を始め、炭治郎も堕姫も信じられないものを見たような目で禰豆子を見ていた。そして炭治郎は疲労が限界に達して気を失った。それでも禰豆子の異変はそれだけでは終わらなかった。

 

禰豆子「ヴーーーッ!!ヴガアアア!!!」ミシミシミシ バキッ!

 

口に咥えていた竹の口枷を噛み砕き、己の体をも変化させると、そこには別人のような禰豆子がいた。体が大きくなり、その至る所に葉のような模様が浮かび上がり、更には額の左端から鋭利な角が生えていてより鬼化が進行していたのである。

 

禰豆子「グルルル!」ゴオオオオ

 

堕姫(何この圧迫・・威圧感、急に変わった。)

 

そのまま禰豆子は堕姫に回し蹴りを放って頚を狙う。しかし、堕姫は足が届くよりも早く膝から切断する。

 

堕姫(また蹴り・・馬鹿の一つ覚えね!!)ザシュ!

 

支えがなくなった禰豆子は一瞬よろめき、その隙を堕姫は見逃さない。

 

堕姫「次は頚よ!!」バッ!

 

禰豆子「!」ドゴォ!

 

堕姫「げぅっ・・!!」

 

だが、堕姫が確かに切断したはずの足が一瞬で再生して、そのまま堕姫の背中を貫いたのだ。そのため、帯で禰豆子の頚を切り落とすことは叶わなかった。

 

堕姫(何で切り落とした足が私の背中を貫通してるのよ!?一瞬で再生した!?そんな!!だったら私の再生速度を上回ってるじゃない!!)

 

堕姫は禰豆子の驚異的な成長ぶりに困惑を隠せなかった。そして堕姫を痛め付けている禰豆子は、その行為の楽しさと自分が有利な立場にいる優越感で口元に弧を描いていた。しかし、堕姫も上弦の陸の鬼である。このまま黙ってやられるわけではなかった。

 

堕姫「どけ!!このガキ!!」ババババ!!

 

禰豆子「!ヴヴ・・!」

 

なんと一瞬にして禰豆子の四肢を斬り付けて血を噴き出させたのだ。ところが、この攻撃は堕姫にとっては悪手だった。なんと禰豆子は、取り込もうとした堕姫の帯を斬られた四肢で掴み、そのまま大量の返り血を燃やして灼熱の炎が包んだのだ。

 

禰豆子(血鬼術!爆血!!)ボオオオオ!

 

堕姫「ギャアアッ!!」(燃えてる・・!!返り血が・・!!火・・火・・!)

 

堕姫には人間の頃に火に炙られた地獄のような経験があった。禰豆子の血鬼術で燃えている堕姫は頭を抱えて蹲っていた。その隙に禰豆子は再び再生して傷一つ無い体に戻った。そのまま堕姫を思いっきり蹴り飛ばした。

 

禰豆子「ガアアア!!」ドギャ!!

 

堕姫「・・!!」ドッガッシャーン!!

 

禰豆子「ヴヴーー!」ザッ ザッ ザッ

 

ブロリー「禰豆子・・」ギュピ ギュピ ギュピ

 

禰豆子が堕姫を蹴り飛ばした方向へ向かうと、彼女のことが心配なブロリーも後を追った。そして堕姫は壁を突き破って吹っ飛んでいったために、崩れ落ちた大穴から入った。

 

禰豆子「ハーッ・・ハーッ。・・!!」

 

遊女「・・・・」ポタポタ ガタガタ

 

その先にあったものは堕姫が花街全体に攻撃した際に、腕を負傷した遊女の姿だった。今の禰豆子は急速な進化を遂げていた為に、重度の飢餓状態に陥っていた。遊女の腕から滴る血を見た禰豆子は、鬼の本能の赴くままに彼女に襲いかかろうとした。

 

禰豆子「ガアアアアアッ!!」バッ

 

遊女「ギャアアッ!!」

 

ブロリー「させぬぅ!」ガシッ!

 

しかし、そんな禰豆子を間一髪の所で止めた人物がいた。禰豆子の後を追っていたブロリーである。後ろから羽交い締めにして口には己の日輪刀を咥えさせていた。それでも禰豆子はまだ暴れ狂っていた。

 

禰豆子「グアアアア!!ガゥアアアア!!」バタバタバタバタ

 

ブロリー「・・・・」グググ・・

 

ブロリーは伝説のスーパーサイヤ人である。いくら禰豆子が暴れようと、押さえつける腕や体はビクともしない。なおも暴れ続ける禰豆子に、ブロリーは堕姫と戦っているときでさえ出していなかったほどの凄まじい殺気を出した。

 

ブロリー「・・・・」ゴゴゴゴゴ

 

禰豆子「!!」ビクッ ガタガタ

 

ブロリーの殺気を感じ取った禰豆子は、本能的に命の危機を感じたのか途端に大人しくなり。更にその恐怖に体を震わせていた。涙目で見上げてくる禰豆子にブロリーは口を開いた。

 

ブロリー「禰豆子。お前がそこまで鬼になったのは炭治郎を守るためなのだろう?だが勘違いするな、炭治郎を守る為に他の奴を犠牲にしていいわけではない。お前が他の奴を喰い殺せば、そこらのムシケラ共と同じになるぞ。そうなると俺はお前を殺さなくてはならなくなるんだぞ?それだけではない。炭治郎も俺も義勇も鱗滝も死ぬことになるんだ。お前は俺たちを死なせたいのか?」

 

禰豆子「うう・・うう・・」うるうる ブンブン

 

禰豆子は涙目で凄い勢いで首を左右に振っている。炭治郎達を死なせたくないという意思の表れだった。それを見たブロリーは拘束を解いて禰豆子と向かい合い、更に言葉を続けた。

 

ブロリー「俺はお前が人間を喰わないと信じている。俺だけではない、炭治郎も義勇もしのぶも杏寿郎もそうだ。他の屑共は知らんが、少なくとも五人は信じているんだ。禰豆子が俺を助けてくれたときは本当に嬉しかったんだぞ?俺の力を見せても恐れずに受け入れてくれた禰豆子と炭治郎には本当に感謝していた。なのにお前も俺を裏切って、また俺を独りにするつもりなのか?」

 

禰豆子「うう・・うわーん!うわあああん!」ひしっ ギュウウ

 

禰豆子は大泣きしてブロリーに抱きついていた。まるでブロリーを絶対裏切らない、絶対独りにはしないというように強く優しく抱きついていた。ブロリーも禰豆子の腰に片手を廻して、もう片方の手で後頭部を撫でていた。

 

ブロリー「眠れ禰豆子。寝て回復するんだ。禰豆子なら出来る筈だ。今炭治郎も気づいたみたいだ、それに天元達の気配も近づいてきている。よく頑張ってくれた禰豆子。後は俺達でムシケラを血祭りにあげるから、禰豆子はゆっくり休め。」

 

禰豆子「うわあああん!うわあああん・・」ズズズ

 

ブロリーの言葉を聞いて、角を消して体を赤子サイズにまで小さくしていく禰豆子、そして

 

禰豆子「・・ZZZ」スウ スウ

 

小さく寝息をたててブロリーの腕の中で眠り始めた。禰豆子の寝顔をブロリーは小さく笑って眺めていた。そこへ炭治郎がブロリーの元へとやって来た。

 

炭治郎「ブロリーさん!禰豆子は!?」

 

ブロリー「戦いすぎて眠っている。」

 

炭治郎「禰豆子・・ごめんな・・戦わせてごめん・・痛かったろう・・苦しかったよな・・ごめんな・・もう傷つけさせないからな・・」

 

炭治郎は泣きながら、ブロリーの腕の中で眠っている禰豆子の頭を優しく撫でていた。だが、この甘い雰囲気を壊す声が響いた。

 

堕姫「よくもまあやってくれたわね。そう、血鬼術も使えるの。鬼だけ燃やす奇妙な血鬼術、しかもこれなかなか治らないわ。ものすごく癪に障る、ものすごくね。」ビキビキ

 

それは青筋を浮かべた堕姫であった。体の至る所を火傷しており、再生が追い付かずに肉が爛れていた。怒りの最高潮に達している堕姫は禰豆子達しか見えていない。しかし、この声に反応したブロリーも同じように青筋をたてていた。

 

ブロリー「・・炭治郎。少しの間禰豆子を頼む。」ポン

 

炭治郎「えっ?あっはい。」ポスッ

 

ブロリー「おいムシケラ・・!よくも禰豆子を散々な目に合わせてくれたな!それだけではなく禰豆子と炭治郎を安心させるのを邪魔しやがった・・!俺は今イライラしてるんだよ!」イライラ

 

堕姫「それがどうしたというの?全員まとめて殺・・えっ!?」ゴトン!

 

堕姫が最後まで言いきる前に首が地面に転がった。話を最後まで聞く必要がないとブロリーは判断し、全く攻撃の構えを取っていない隙だらけの頚を日輪刀で切り落としたのだ。それと同時に音柱の天元が来た。

 

天元「おっ!ブロリー、ド派手に鬼の頚を斬ったみたいだな。炭治郎もそして竈門禰豆子もよくやったみたいだ。」

 

炭治郎「宇髄さん!」

 

堕姫「えっ・・?何で・・頚・・それに・・柱・・!」

 

天元「お前、上弦の鬼じゃねぇだろ。ブロリーとの戦いぶりを派手に見てたけどよ、弱すぎなんだよ。俺が探ってたのはお前じゃない。」

 

そう言って天元やブロリー達はその場を去っていこうとする。しかし、堕姫はさせないと言わんばかりに叫び続ける。

 

堕姫「ちょっと待ちなさいよ!!どこ行く気!?よくも私の頚を斬ったわね!!ただじゃおかないから!!」

 

ブロリー「うるさい!!俺は炭治郎と禰豆子の事を見るのに忙しいんだよ!これ以上俺を苛立たせるな!」イライラ

 

炭治郎(えっ!?上弦の鬼じゃなかったのか!?)

 

天元「地味に気を鎮めろブロリー。お前もまぁだギャアギャア言ってんのか、もうお前に用はねえよ、地味に死にな。」はぁ

 

騒ぐ堕姫にブロリーは苛立ち、天元は呆れたように見ている。それでも堕姫はまだ喚きをやめない。

 

堕姫「ふざけんじゃないわよ!だいたいアンタさっき私が上弦じゃないとか言ったわね!?」

 

天元「だってお前上弦じゃねぇじゃん。」

 

堕姫「私は上弦の陸よ!!」

 

天元「だったら何で頚斬られてんだよ?脳味噌爆発してんのか?」

 

堕姫「私本当に強いのよ!今はまだ陸だけどこれからもっと強くなって・・!」

 

ブロリー「上弦だが何だか知らんが、お前が雑魚なことには変わりないだろう?」

 

炭治郎(ブロリーさんは上弦の鬼すらも雑魚扱いか、さすがだな)キラキラ✨

 

天元「派手によく言ったブロリー!今のお前は説得力ねえんだよ。」

 

堕姫「うわあああん!」ボロボロ

 

ブロリー・天元・炭治郎「「!?」」ギョッ

 

三人の全く相手にしてないような態度が傷ついたのか、堕姫は大泣きし始めたのだ。それを見たブロリーと天元は驚いてドン引きする。

 

堕姫「ほんとに私は上弦の陸だもん!数字だってもらったんだから!私凄いんだから!」

 

天元(ギャン泣きじゃねぇか嘘だろ!?いやいやいやそれよりコイツいつまで喋ってんだ?頚斬れてるのに体が崩れねぇぞ?)

 

炭治郎(そういえば何で灰になるような匂いがしないんだ!?頚を斬ってるのに!)

 

堕姫「死ねっ!!死ねっ!!みんな死ねっ!!わああああん!!頚斬られたぁ!!頚斬られちゃったぁぁ!!なんとかしてよぉぉ!!お兄ちゃああん!!」

 

「ううううん・・」

 

天元・炭治郎「「!!」」

 

ブロリー「また一匹、ムシケラが死にに来たか。」

 

堕姫が叫ぶと、体の方からもう一人上弦の鬼が出てきた。全身が痩せ細っている男の鬼である。堕姫の兄、妓夫太郎である。この上弦の陸は、兄妹の頚が繋がってない状態になって初めて倒せるというとても厄介な鬼である。上弦の気配に、天元は斬り付けようとするものの、人間の目には見えない速度で隅へと移動した。

 

妓夫太郎「泣いてたってしょうがねぇからなあぁ、頚くらい自分でくっつけろよなぁ。おめぇは本当に頭が足りねぇなぁ。」

 

堕姫「ひぐっ・・ひぐっ・・だってぇ・・」

 

天元(頚を斬り落としたのに死なない。背中から出てきたもう一体は何だ!?反射速度が比じゃねぇ。)

 

炭治郎(鬼が二人になった!?どういうことだ?そして帯鬼も死んでいない。どっちも上弦の陸なのか?分裂している?だとしたら・・本体は間違いなくこっちの男だ!匂いが違う、匂いの重みが!喉の奥が麻痺するようだ。

 

妓夫太郎は天元達には目もくれずに堕姫を慰めていた。それを絶好の機会と判断した天元は斬りかかる。しかし、妓夫太郎は毒を染み込ませている鎌で頚を狙う。反射的に避けた為、頚を跳ねられることはなかったが、頭に当たった為に負傷してしまう。

 

妓夫太郎「へぇ、やるなぁあ。攻撃止めたなぁあ。殺す気で斬ったけどなあ、いいなあお前。いいなあ。その顔いいなぁあ。」

 

天元「・・・・」

 

天元は頭上の宝石を斬られて、飾りがいくつか地面に落ちてしまった。無言のまま妓夫太郎を睨み付ける。

 

妓夫太郎「肌もいいなぁ、シミも痣も傷もねぇんだなあ。肉付きもいいなぁあ、俺は太れねぇんだよなぁ。上背もあるなぁあ。縦寸が六尺は優に超えてるなぁあ。女にさぞかし持て囃されるんだろうなぁあ。妬ましいなあぁ妬ましいなあぁ。死んでくれねぇかなぁあ。そりゃあもう苦しい死にかたでなぁあ。生きたまま生皮剥がされたり、腹をかっさばかれたり、それからなぁ。」

 

妓夫太郎の完全な逆恨みは天元にだけ向いていた。しかし、堕姫はブロリー達も殺してと駄々をこねた。

 

堕姫「お兄ちゃん!!コイツじゃなくてその近くの上裸の柱を優先的に殺してよぉ!!そいつ私のことを醜女って言ったのよぉ!!それだけじゃなくてそいつには私の攻撃が一切通用しないのぉ!!おまけに私にはほんの少しの力で追い詰めてくるのよぉ!!私一生懸命やってるのに、私のことをなぶっていじめたの!!皆でよってたかっていじめたのよぉ!!」

 

妓夫太郎「そうだなあそうだなあ、そりゃあ許せねぇなぁ。俺の可愛い妹を醜女って言った挙げ句、業と痛め付けていじめるような奴らは皆殺しだ。取り立てるぜ俺はなぁ。やられた分は必ず取り立てる。死ぬときグルグル巡らせろ。俺の名は妓夫太郎だからなああ。」

 

妓夫太郎と堕姫の言い分を聞いたブロリーは再び苛立っていた。禰豆子や炭治郎を斬り付けておきながら自分達は完全に被害者面しているからだ。妓夫太郎が毒鎌の攻撃をすると、ブロリーは天元の前に立ってバリアを張った。

 

妓夫太郎「血鬼術!飛び血鎌!」ブン

 

ブロリー「はあっ!!」ゴオオオオ ガキーンガキーン

 

天元「お前・・」

 

妓夫太郎「お前かぁ、上裸の柱って奴はあ。よくも俺の可愛い妹をいじめてくれたよなあ。堕姫からはお前を優先的に殺してって頼まれてるからなあ。俺は取り立てるぜえ。」

 

ブロリー「フン!そいつが醜女なのは事実だろう?それに俺は禰豆子をあんな目に遭わせた奴を許さなかっただけだぁ!お前達は弱い、興ざめだ。今殺してやるぞ!はああああぁぁぁぁ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

妓夫太郎・堕姫「「!?」」

 

ブロリーは一気に気を解放すると、『伝説のスーパーサイヤ人』形態から『スーパーサイヤ人3』へと覚醒した。先程とは全然違う威圧感と気の高さに二人は驚いて数歩後ずさり、そして確信した。

 

堕姫「この威圧感・・この気配・・間違いないわ・・アンタ・・アンタなのね・・!猗窩座様を殺したのは・・!!」

 

ブロリー「猗窩座?ああ、上弦の参のことかぁ?俺から言わせれば、彼奴も大したことなかったがな。」

 

妓夫太郎「そうかぁそうかぁ。お前があの方が言っていた猗窩座様を殺した鬼狩りかぁ。のこのことやって来たんだなぁ。俺の妹をいじめてた分と猗窩座様の分まで取り立てるぜ俺はなぁ。残酷に殺してやるしかねぇよなぁ。隣にいるもう一人の柱よりも残酷になぁ。今この場でなぁ。」

 

妓夫太郎は、猗窩座を殺したのがブロリーだとわかって速攻で攻撃を仕掛けようとするが、足にしがみついて止める存在がいた。それは

 

堕姫「お兄ちゃん!!」ガシィ!

 

妓夫太郎「!・・堕姫、邪魔をするなよなぁ。あいつはお前をいじめた挙げ句に猗窩座様を殺した鬼狩りだからなぁ。やられた分は取り立てねぇと俺の気が済まないんだよなぁ。」

 

なんと、上弦の陸にして妹である堕姫本人が止めていたのだ。妓夫太郎は止められる理由がわからずに動揺していた。

 

堕姫「お兄ちゃん・・!逃げよう?あいつは私達よりも全然階級が上の猗窩座様を無傷で殺した奴なのよ・・!上弦を相手に楽々殺せる化け物なのよ・・!私達に勝てる相手じゃないわ・・!」

 

堕姫が妓夫太郎を止めた理由。それは『スーパーサイヤ人3』になったブロリーの姿を見て完全に戦意を喪失したからであった。とんでもない威圧感や気配は、堕姫に本能的にブロリーの恐ろしさを知らしめたのだ。堕姫は妓夫太郎と逃げる為に、兄をとどまらせたのだ。一方、一度見たことのある炭治郎は目を輝かせ、天元は見たこともない変化に興奮していた。

 

炭治郎「猗窩座を倒したときと全く同じ姿だ!!」

 

天元「すげぇな!!ド派手な変身だ!!お館様の所で見せた物とは別の姿だが、それでもこっちの方が全然強そうな音がド派手にしてるんだな!!」

 

そしてちょうどそこへ伊之助と爆睡中の善逸が合流し、花街に来ている鬼殺隊の隊員が全員揃った。

 

伊之助「フハハハハ!!俺が来たぞコラァ!!御到着じゃボケェ!!手下もいるんだぜ!!頼りにしろ俺をォォ!!」

 

ブロリー「伊之助!」

 

炭治郎「伊之助!!善逸!!寝てるのか!?」

 

妓夫太郎「何だ?コイツら・・」

 

伊之助「カロリー!!また変身してるじゃねぇか!!俺を頼りにしろ!この伊之助様が大暴れしてやるよ!!ド派手にな!!」

 

伊之助は非常に影響を受けやすい男だった。ド派手の口癖は天元、そして笑い方は完全にブロリーのものになっていた。そして全員揃った事でブロリーは炭治郎に声をかける。

 

ブロリー「炭治郎、禰豆子を箱に戻しに行かなくていいのかぁ?」

 

炭治郎「!?ブロリーさん!!いいんですか!?」

 

ブロリー「構わん。天元も俺も伊之助も善逸もいるのだ。充分時間はある。」

 

炭治郎「ありがとうございます!師範!伊之助も善逸も少しの間だけ許してくれ!!」

 

伊之助「許す!!」

 

炭治郎「ありがとう!!」

 

ブロリーや伊之助から許可を貰った炭治郎は、禰豆子を箱に戻しに行った。一方堕姫に止められている妓夫太郎は、諭すように堕姫と視線を遭わせた。

 

妓夫太郎「はぁ・・堕姫。俺達は上弦の鬼だ。柱を前に敵前逃亡なんて許されないんだよなあ。俺達はあの方の邪魔になる存在の柱は殺さなくては行けないんだよなあ。例えそれがどれだけ化け物だったとしてもなぁ。それにお前はあの方から期待されたんだろぉ?だったらそれに答えるのが筋ってもんだよなぁ。」

 

堕姫「!!そう、よね。あの方が私に期待してくれているんだもの。私は上弦の鬼、堕姫よ!!」

 

妓夫太郎は優しく堕姫を引き離すと、天元達の前に立ちはだかった。堕姫も妓夫太郎の隣にならぶ。天元達もそれを見て再び刀を構える。

 

妓夫太郎「下っぱが何人来たところで幸せな未来なんて待ってねぇからなぁ。全員死ぬのにそうやって瞳をきらきらさすなよなぁ。」

 

明らかな強がりだが、妓夫太郎は勝機は自分たちにあると言うが、天元は上弦に高らかに声を張った。

 

天元「勝つぜ!俺達鬼殺隊は!」

 

堕姫「勝てないわよ!頼みの柱の一人が毒にやられてちゃあね!!」

 

炭治郎「!?」(毒・・!?)

 

天元の体が毒に犯されているとこの時初めて知った炭治郎、動揺を隠せなかった。しかし、天元はそんなことお構いなしと言わんばかりに言った。

 

天元「余裕で勝つわボケ雑魚がァ!!毒回ってるくらいの足枷あってトントンなんだよ!!人間様を舐めるんじゃねぇ!!こいつらは三人共優秀な俺の"継子"だ!逃げねぇ根性がある!」

 

伊之助「フハハ!まぁな!」

 

天元「それにこっちには上弦の参を無傷で殺したブロリーと言う最強の男がいんだよ!!こいつにかかればテメェらなんて一捻りだ!!そしてテメェらの倒し方は既に俺が看破した!同時に頚を斬ることだ!二人同時になそうだろ!!そうじゃなけりゃそれぞれに能力を分散させて弱くて敵前逃亡しようとした愚かな妹を取り込まねぇ理由がねぇ!!ハァーッハ!!チョロいぜお前ら!!」

 

伊之助「グワハハハ!!なるほどな簡単だぜ!!俺達が勝ったも同然だな!!」

 

妓夫太郎「その"簡単なこと"ができねぇで鬼狩り達は死んでったからなあ。柱もなあ。俺が十五で妹が七喰ってるからなあ。」

 

堕姫「そうよ!夜が開けるまで生きていた奴はいないわ!長い夜はいつも私たちを味方すらから!どいつもこいつも死になさいよ!!」

 

ブロリー「フハハハハハハ!!それならお前達が見る長い夜は今日が最後になるということだぁ!!お前達雑魚が集まったところで無駄なのだ!!」

 

妓夫太郎「・・お前は本当に腹が立つなあ。鬼殺隊最強だかなんだか知らねぇが、俺達を見下してるよなぁ。皆殺しにしねえと気が済まないんだよなぁ。」

 

ブロリー「皆殺し?いいアイディアだな。貴様ら炭治郎や禰豆子達を殺そうとするムシケラは皆殺しだ!醜女、まずお前から血祭りにあげてやる!」ビュオオ

 

ガッ ドゴォ!!

 

堕姫「ガッ・・!?ギャアア・・!!」

 

ブロリーは一瞬で堕姫に迫ると、そのままラリアットで堕姫の体を壁へと叩きつけた。そして大きなダメージを負った堕姫を崩れさせると妓夫太郎へと振り返った。

 

ブロリー「フフフ。ムシケラ!妹がカワイイか?フフフ!!」

 

妓夫太郎「堕姫・・!許せねぇなぁ。殺してやるしかねぇなぁ。血鬼術!円斬旋回・飛び血鎌!」ギャルルル!

 

妓夫太郎が放った斬撃がブロリーに全て命中し爆発を起こす。

 

ドッカーン!

 

天元「ブロリー!」

炭治郎「ブロリーさん!」

 

しかし、爆発によってできた煙の中から現れたのは無傷のブロリーだった。

 

ブロリー「なんなんだぁ?今のはぁ?」

 

妓夫太郎「!・・チッ!」

 

ブロリーに攻撃、さらには毒すら効いていないことに、妓夫太郎は忌々しげに舌打ちする。そしてゆらりと堕姫が体を起こす。そこへ追い討ちをかけるように善逸が斬りかかって、避けた堕姫が建物の外へ出た。

 

伊之助「蚯蚓女は俺と寝ぼけ丸に任せろ!!お前らはその蟷螂を倒せ!!わかったな!!」

 

炭治郎「気を付けろ!!」

 

伊之助「おうよ!!」

 

伊之助がすかさず炭治郎達に指示を出すが、そこへブロリーも炭治郎へと言った。

 

ブロリー「炭治郎、お前もあいつらと行け!」

 

炭治郎「ブロリーさん!ですが・・!」

 

ブロリー「ここには柱が二人いるんだ!俺は伊之助達の方が不安がある。だからお前も加勢してこい!」

 

天元「炭治郎、ブロリーの言うとおりだ!俺とブロリーがいるからこっちは百人力だ!お前があいつを相手にした方が勝機が高まるんだ。」

 

炭治郎「・・わかりました!ここはお願いします!」

 

ブロリー「ああ、上弦のムシケラを倒すこと、この俺が任されよう。」

 

炭治郎は柱二人に妓夫太郎の相手を任せると、伊之助と善逸に加勢するために去っていった。

 

妓夫太郎「妹はやらせねえよ。」

 

妓夫太郎は炭治郎が走っていった方向へと鬼の身体能力を駆使して追おうとするが

 

ブロリー「逃がすと思っているのか?お前の相手は俺だ。デヤァッ!!」ドガアアアア!!

 

妓夫太郎「ガアアアア!?」

 

妓夫太郎を地面に叩きつけてそのまま押し込んでいた。そしてそこへ屋根から現れたのは天元の妻の一人、雛鶴だった。

 

雛鶴「皆さん!!気をつけて!!」

 

大量のクナイが入っている箱から発射すると、まるで流星群のように妓夫太郎へと襲いかかる。このクナイには十二鬼月ではない鬼ならば半日もの間体を麻痺させられるほどの猛毒が塗られており、下弦の鬼すら動きを封じることが出きるのだ。しかし妓夫太郎には刺さるが、天元にも刺さってしまう。唯一ブロリーだけはクナイが当たっても頑丈すぎる体に弾かれていた。

 

雛鶴(お願い・・効いて・・ほんの僅かな間でいいの。そうしたら。誰かが必ず頚を斬れる!!)

 

毒が効いた妓夫太郎に天元は頚を斬ろうと飛び出す、しかし現実は非常であり、この毒は一瞬にして分解されてしまったのだ。

 

妓夫太郎「いやあ効いたぜ、この毒はなあ。」

 

天元「!」(畜生もう毒を分解しやがった!!)

 

妓夫太郎「血鬼術!円斬旋回・飛び血鎌!」ギュルルル!

 

天元「音の呼吸!肆の型!響斬無間!!」

 

妓夫太郎の血鬼術と天元の音の呼吸がぶつかり合って拮抗し、爆発を起こす。煙が晴れると、妓夫太郎の姿はどこにもなかった。

 

天元(消えた!!)「雛鶴!」

 

雛鶴「天元様、私に構わず鬼を探してくだ・・!?」ガッ

 

雛鶴の言葉が最後まで続くことはなかった。妓夫太郎が雛鶴の顎を鷲掴みにしたからだった。

 

妓夫太郎「よくもやってくれたなああ。俺はお前に構うからなああ。」

 

天元「雛鶴ーーっ!!!」

 

そのまま雛鶴の顎を砕こうと力を込めるが、すかさずブロリーが妓夫太郎を蹴り飛ばして引き離した。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ドガアッ!

 

妓夫太郎「ガアア!?」

 

ブロリー「何度言ったらわかる?お前の相手は俺だ。よそ見とは随分と余裕だな?ムシケラの分際で。」

 

妓夫太郎が吹っ飛んだ先に天元が刀を構えて待っていた。タイミングに合わせて刀を振った。

 

天元「ブロリー!感謝するぞ!」ブン

 

天元の太刀筋は一寸の狂いもなく妓夫太郎の頚を狙っていた。しかし、本人は素手で受け止めた。

 

妓夫太郎「お前らが俺の頚を斬るなんて、無理な話なんだよなあ。」

 

ブロリー「ああもう!めんどくせぇ!貴様らまとめて血祭りにあげてやる!」

 

執念深い妓夫太郎にブロリーは遂にしびれを切らして彼の体を掴むと、堕姫目掛けて思いっきり投げつけた。

 

天元「!!」

 

ブロリー「破壊の呼吸!拾弐の型!ギガンティックスロー!うおおおおらあああ!!」ビュ ヒューーン!

 

妓夫太郎「ぬうっ!?ぐあああ!!」ドッカーン!

 

堕姫「えっ!?お兄ちゃん!!こっちに来な・・ギャアア!!」ドッカーン!

 

炭治郎・伊之助「ブロリーさん!/ブロリー!」

 

ブロリーのギガンティックスローを食らった妓夫太郎の体が堕姫の体にぶつかると掴んだ際に入れられた気が爆発し、二人に大きなダメージを与えた。炭治郎と伊之助はブロリーの邪魔をしないようにすぐに引いて、入れ換わるようにブロリーが追い討ちをかけて二人の足をつかむと再び地面に叩きつけた。

 

ブロリー「ぬううう・・フン!!」ドゴォ!!

 

堕姫・妓夫太郎「ぐええっ!!/ぐっううう!!」

 

それだけではなく、ブロリーが二人の背中をそれぞれ片手で抑え込み、堕姫と妓夫太郎を身動きできなくすると炭治郎や天元達に叫ぶ。

 

ブロリー「貴様ら!!今だ!!」

 

炭治郎「はい!師範!ヒノカミ神楽!灼骨炎陽!」ザシュ!

 

伊之助「獣の呼吸!陸の牙!乱杭咬み!!」ザン!

 

ブロリーが止めている間に、炭治郎と伊之助が正確に刀を振る見事な連携で上弦の陸二人の頚を斬った。二つの頚は地面を転がっていたがやがてお互いが見えるように止まった。

 

須磨「斬った!?斬った!!斬った!!キャーッ!斬りましたよォ雛鶴さん!草葉の陰から見てください!」

 

まきを「アンタ意味わかって言ってんの!?馬鹿!!」バシッ!

 

須磨「痛い!!」

 

雛鶴「!?何か様子が変だわ。」

 

しかし、妓夫太郎が悪足掻きに円斬旋回を放とうとしていた。それに気づいた天元が炭治郎達に向かって叫んだ。

 

天元「まずい!!お前ら逃げろーーーっ!!!」

 

ギュル ギャギャギャギャギャギャ!!

 

その斬撃は今までのどの血鬼術よりも強力で、花街を全て破壊しかねない程の威力を誇っていた。しかし、その斬撃の前にブロリーが立ちはだかった。

 

ブロリー「させぬぅ!破壊の呼吸!拾参の型!ギガンティックオメガ!」ゴオオオオ!

 

ブロリーが放った気功波は妓夫太郎の斬撃を呑み込むと、空の彼方へと消えていった。花街はブロリーの手によって守られた瞬間だった。それを実感した炭治郎達は、ブロリー以外は毒と疲労で地面に倒れ込むのだった。

その後に炭治郎の元に赤子サイズになった禰豆子がやって来た。竹の口枷は壊れてしまったので、変わりにロープを口に巻いていた。

 

禰豆子「うー。」

 

炭治郎「禰豆子・・」

 

意識を取り戻した炭治郎は慌てて起き上がり、花街の様子を確認する。そしてブロリーが最後の斬撃を弾き飛ばしたお陰でそこまで大きい被害が出なかったことに心のそこから安心した。

 

炭治郎「よかった・・街が破壊されてない。師範が俺達を含めて全員助けてくれたんだな。」

 

炭治郎が安堵すると、そこへブロリーが『通常形態』に戻ってやって来た。

 

ブロリー「炭治郎!禰豆子!無事か!?」

 

炭治郎「師範!」

 

ブロリー「し、師範だとぉ!?」

 

炭治郎「あっすみません。俺は継子なので師範と呼んだ方がいいのかと、嫌ならすぐにブロリーさん呼びに戻します。」

 

ブロリー「・・好きに呼ぶがいい。」

 

炭治郎「!ありがとうございます!師範!」

 

炭治郎はブロリーに師範呼びを許可されて心底嬉しそうにしていたが、ブロリー本人も満更でもない表情をしていた。

 

禰豆子「ムー♪」ギュウウ

 

ブロリー「禰豆子もよく頑張ったと誉めてやりたいところだぁ!」ポンポン

 

禰豆子もブロリーに抱きついて甘えていた。ブロリーも鬼の本能を抑えた禰豆子を誉めて甘やかしていた。

 

炭治郎「他の皆は!!・・!?」

 

炭治郎は今になって動けることに驚いたのだった。

 

炭治郎(なんで俺は動けるんだ?毒を喰らったのに・・)

 

炭治郎が自身の体に困惑していると、遠くから善逸が自分を呼ぶ声が聞こえてくる。

 

善逸「たんじろ~~~。」

 

炭治郎「!!」

 

善逸「たぁぁんじろ~~~。」

 

炭治郎「善逸の声だ!!」

 

炭治郎が善逸の元へ向かおうとすると、ブロリーが二人を抱えて飛んでいった。

 

炭治郎「うわっ!?師範!?」

 

ブロリー「俺が連れていってやる。お前は無理をするな、これは上官命令だ。」

 

炭治郎「はい。お願いします。」

 

善逸の元へたどり着くと、全身から血を流して号泣している善逸が出てきた。この傷は堕姫によってつけられたものだった。

 

善逸「起きたら体中痛いよぉぉぉ!俺の両足、これ折れてんの何なの!?誰にやられたのこれ!?痛いよぉぉ!怖くて見れないい!」

 

炭治郎「無事か!!良かった!」

 

善逸「無事じゃねぇよぉぉ。」

 

炭治郎「そうだ!伊之助は!?」

 

善逸「伊之助はあそこにいるよぉぉ。」

 

善逸が指差した方向をみると、建物の隅に佇む伊之助の姿があった。

 

炭治郎「伊之助!!無事か!!」

 

伊之助「腹減った!なんか食わせろ!!」

 

伊之助は少しの外傷があるだけで毒に犯されたりなどはしておらず、元気に声をあげていた。そして天元のところには、須磨が号泣し、雛鶴は静かに涙を流し、まきをは動揺して言葉を失っていた。天元は五体満足だが、妓夫太郎にやられた毒で意識が朦朧としていた。

 

須磨「いやあああ死なないでぇ!死なないでくださぁぁい!天元様あ~~~!せっかく生き残ったのに!!せっかく勝ったのに!!やだぁやだぁ!!鬼の毒なんてどうしたらいいんですか!解毒薬が効かないよぉ!!ひどいです神様!ひどい!」

 

天元は最後の力を振り絞って遺言を残そうとしたのだが、それでも須磨の喚きは止まらなかった。

 

天元「最期に言い残すことがある・・俺は今までの人生「天元様死なせたらあたしもう神様に手を合わせません!絶対に許さないですから!!」

 

まきを「ちょっと黙んなさいよ!!天元様が喋ってるでしょうが!!」

 

天元の話の邪魔をされたまきをは、青筋を浮かべて須磨に食って掛かっていた。

 

雛鶴「どっちも静かにしてよ・・!」

 

天元「・・・・」

 

まきを「口に石詰めてやるこのバカ女!!」

 

須磨「うわあああ!!まきをさんがいじめるううう!!」

 

まきを「バカ!!黙れ!!」

 

須磨「おえッ゛本当に石入れたあ!!」

 

天元(嘘だろ?何も言い残せずに死ぬのか俺?毒で舌も回らなくなってきたんだが、どうしてくれんだ?言い残せる余裕あったのにマジかよ。)

 

くの一三人が騒いでいる中、ヒョコっと現れた禰豆子はそのまま天元の体に触ると、血鬼術で体を燃やした。

 

禰豆子「ム。」ヒョコ

 

まきを・雛鶴・須磨「「「!?」」」

 

ぺと ボォッ

 

まきを・雛鶴・須磨「「「!!!」」」

 

須磨「ギャアアアッ!!何するんですか!?誰ですかあなた!いくらなんでも早いです火葬が!まだ死んでないのにもう焼くなんて!お尻を叩きます!お姉さんは怒りました!!」

 

天元「ちょっと待て。こりゃ一体どういうことだ?毒が消えた。」

 

禰豆子の血鬼術の炎は天元の体を燃やしたのではなく、天元の体を犯していた毒を燃やしたのだった。天元が一命を取り留めたことに安心した嫁三人は泣いて抱きついたのだった。そこへブロリーと炭治郎が禰豆子に追い付いて事情を説明した。

 

炭治郎「禰豆子の血鬼術が毒を燃やして飛ばしたんだと思います。俺にもよくわからないのですが・・御無事で良かったです。」

 

ブロリー「流石禰豆子。よくやったと誉めてやりたいところだぁ!」

 

禰豆子「ムン!」フフン

 

天元「こんなこと有り得るのかよ、混乱するぜ・・それとお前動くなよ。傷が広がるぞ」

 

須磨「ありがとお゛お゛」

 

炭治郎「俺と師範は鬼の頚を探します。確認するまでは安心できない。」

 

ブロリーは炭治郎と禰豆子を両脇に抱えて飛び回っていた。そして炭治郎が匂いがする方向を指示する。

 

炭治郎「禰豆子、師範、向こうです!!鬼の血の匂いがする!血だまりか・・鬼の血・・」

 

炭治郎は刀を抜いて周囲を警戒した。やがて、誰も攻撃してこないとわかると、珠世に血を届けるために特殊な注射器で吸ったのだった。

 

炭治郎「・・・・」(よし、もう攻撃してこない。上弦の鬼の血を採れた・・!!)

 

ニャーゴ

 

声がした方をみると、珠世の使い猫である茶々丸が姿を現していた。

 

炭治郎「珠世さんの所へ、頼んだぞ。」なでなで

 

茶々丸の背中の箱に血を入れると、そそくさと姿を消した。そして再びブロリーが二人を抱えて飛び回った。

 

炭治郎「人がいないな。まきをさん達が皆を逃がしてくれたんだな。良かった・・!師範こっちに、こっちに行って下さい。鬼の匂いが強くなってきました。」

 

ブロリー「よし、こっちだな。」ビュオオ

 

ブロリーが炭治郎が言うとおりに進むと、なにやら言い争う声が聞こえてきた。

 

炭治郎「!?」

 

近づいてみると、堕姫と妓夫太郎が喧嘩してお互いに罵り合っていた。

 

堕姫「なんで助けてくれなかったの!?」

 

妓夫太郎「俺は柱を相手にしてたんだぞ!!」

 

堕姫「だから何よ!!そもそもあの時に私の言うことにしたがって素直に逃げれば良かったのよ!!」

 

妓夫太郎「俺達が逃げきれたところであの方に殺されて終わりだろうが!!俺は耳に飾りをつけたガキから先に始末しようと思ったんだ!そもそもお前はなにもしてなかったんだから上裸の柱の動きを止めるくらいしておけよ!」

 

堕姫「じゃあそういうふうに私を操作すれば良かったじゃない!それなのになにもしなかったじゃん!それに猗窩座様を無傷で殺した化け物に殺されるよりもあの方に殺される方が本望じゃない!」

 

炭治郎(まだ生きてる・・しかも言い争ってるぞ。だけど少しずつ肉体が崩れていってるな。)

 

ブロリー(まだ生きていたのか。死に損ない共め。だが最期がこんなのでいいのか?)

 

妓夫太郎「うるせぇんだよ!!仮にも上弦だって名乗るんならなぁ!手負いの下っぱ二匹くらい一人で倒せ馬鹿!!」

 

堕姫「・・アンタみたいな醜い奴が私の兄妹なわけないわ!!アンタなんかとはきっと血も繋がってないわよ!だって全然似てないもの!!この役立たず!!強いことしかいいところがないのに何も無いのに!負けたらもう何の価値もないわ!出来損ないの醜い奴よ!!」

 

妓夫太郎「ふざけんじゃねぇぞ!!お前一人だったらとっくに死んでる!どれだけ俺に助けられた!?出来損ないはお前だろうが!弱くて何の取り柄も無い!お前みたいな奴を今まで庇ってきたことが心底悔やまれるぜ!お前さえいなけりゃ俺の人生はもっと違ってた!お前さえいなけりゃなあ!!何で俺がお前の尻拭いばっかりしなけりゃならねぇんだ!!お前なんか生まれてこなけりゃ良かったんだ!!」

 

二人の兄妹であることすら否定するような発言に心を痛めた炭治郎は、そっと妓夫太郎の口を塞いで静かに仲裁をするのだった。




やっと戦闘が終わりました。原作にそって書こうとしたら堕姫と妓夫太郎が思った以上に粘るので、ブロリーが本気を出さずになぶっているイメージにしてみました。次回は二人の過去になると思います。それではまた次回。


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堕姫と妓夫太郎の壮絶な過去!産屋敷耀哉復活!

第二十四話です。三週間もかかってしまい申し訳ありませんでした。原作にはない完全なオリジナルストーリーが紛れているので相変わらず駄文になっています。それでも大丈夫な方は、最後まで読んでいただけると嬉しいです。


堕姫と妓夫太郎の家族であることすら否定するような罵り合いに心を痛めた炭治郎は、そっと妓夫太郎の口を塞いで悲しそうな表情で仲裁した。

 

炭治郎「嘘だよ、本当はそんなこと思ってないよ。全部嘘だよ。仲良くしよう、この世でたった二人の兄妹なんだから。君たちのしたことは誰も許してくれない。殺してきたたくさんの人に恨まれ憎まれ罵倒される。味方してくれる人なんていない。だからせめて二人だけは、お互いを罵り合ったら駄目だ。」

 

炭治郎の優しく怒る言葉を聞いた堕姫は、大声で泣いて当たっていた。

 

堕姫「うわあああん!うるさいんだよぉ!!私たちに説教すんじゃないわよ!糞ガキが!向こう行けぇ!どっか行けぇ!!悔しいよう!悔しいよう!何とかしてよぉお兄ちゃあん!!死にたくないよぉ!お兄ちゃん・・!!」ボロボロ

 

堕姫は妓夫太郎よりも先に灰になって亡くなったのだった。それを見た妓夫太郎は今まで忘れていた妹の本当の名を言った。

 

妓夫太郎「梅!!」(そうだ。俺の妹の名前は"梅"だった。"堕姫"じゃねぇ。酷い名前だ。いや・・梅も酷かったなぁ、お前の名前は。)

 

堕姫が人間だった時の名前、梅を思い出した妓夫太郎は、人間時代の記憶が次々と蘇って来るのだった。

 

―――"梅"という名前は、二人の母親を死に至らしめた病名からつけられたものだった。二人は遊郭で働いていた遊女から生まれた。"羅生門河岸"という遊郭の最下層で生まれたために、ろくに稼げていなかった彼らの母親にとっては、飯代がかかるだけの迷惑な存在程度にしか思われず、妓夫太郎は日々殺されるのではと思うほどの虐待を受け続けてきていた。家に居場所などなく、外に出ても「ムシケラ」「ボンクラ」「のろまの腑抜け」「役立たず」と罵倒を浴びせられ、醜い声や容貌を嘲られ汚いと石を投げつけられていた。それは当時幼かった妓夫太郎の心を抉るには十分すぎることだった。入浴することも出来ず、ご飯を食べることも許されず、垢まみれフケまみれで異臭を放ち、沢山の蚤に住み着かれていた。そして空腹になったら鼠や虫しか食べるものがなく、栄養が不十分でなんとか食い繋いでいる状態であった。美貌が全ての価値基準である遊郭では殊更忌み嫌われ、怪物と呼ばれていた。そんな妓夫太郎の遊び道具は、遊郭の客が忘れて帰った鎌のみという残酷な人生を歩んできていたのだ。しかし、自分をも嫌っていた妓夫太郎であったが、そんな彼が変わり始めたのは妹の梅が生まれてきてからだった。梅は幼少期から大人がたじろぐほど綺麗で美しい顔をしていた。そのため、彼女は当然と言わんばかりに遊郭に売りに出された。妓夫太郎は、自分が喧嘩に強いことに気づいて取り立ての仕事を始めていた。誰もが彼を気味悪がって恐れていたが、妹の梅がいただけでその劣等感は吹き飛ばされていた。しかし二人にとって光が見えた矢先に、またしても辛い現実が襲いかかった。

二人が十三の年になったとき、梅が遊郭の客である侍の目玉を簪で突いて失明させたのだ。その報復として梅は縛り上げられて生きたまま焼かれた。

 

梅「ギャアア!!熱い゛熱い゛熱い゛ィィィ!!」

 

その痛みや苦しみは、子供に限らず大人でも"地獄"の二文字では片付けきれないほどの苦痛であった。妓夫太郎が仕事から帰ると、梅は既に丸焦げになって虫の息だった。梅を抱き抱えて妓夫太郎は叫んだ。

 

妓夫太郎「わあああああ!!やめろやめろやめろ!!俺から取り立てるな!!何も与えなかったくせに取り立てやがるのか!!許さねえ!!許さねえ!!元に戻せ!!俺の妹を!!でなけりゃ神も仏もみんな殺してやる!!」

 

ザン!

 

当時は血の気が多い武士が普通に存在していた時代である。そのためほとんどの大人が子供の煽りにすら耐性を持たずに、痛め付けたり、最悪斬り殺す者すらいた。このときの妓夫太郎も例に漏れず、叫んだところを背後から武士に刀で斬られた。

 

妓夫太郎「・・!!」ドッ

 

侍「こいつで間違いないか?」

 

遊女「はい!そうでございます。感謝致します。厄介払いができて良かった。本当に凶暴でねぇ。取り立て先で大怪我させたり最近ではもう歯止めが効かなくて・・梅のことは残念でしたけど、可愛い子を見つけたらまた紹介しますので。あの、お金の方を・・」

 

侍「まぁ待て。止めを刺してからだ。」ジャキ

 

遊女と侍の言葉を聞いて、怒りが最高点に達した妓夫太郎は、侍が止めを刺す前に鎌を掴んで顔を斬りつけた。

 

ビュウ ザシュ!

 

侍「ギャッ!!」

 

妓夫太郎「お前、いい着物だなぁ。清潔で肌艶もいい。たらふく飯を食って綺麗な布団で寝てんだなぁ。生まれた時からそうなんだろう?雨風凌げる家で暮らして・・いいなあ、いいいなああああ!!そんな奴が目玉一個失くしたぐらいでピーピーギャアギャアと、騒ぐんじゃねぇ!!」ズシャア!

 

持っている二本の鎌で、侍の体を真っ二つにしてその勢いのまま遊女の頚を跳ねた。今まで痛め付けたことはあったものの、殺したのはこれが初めてだった。更に追い討ちをかけるように、新雪が降り始めた。服にも乏しい二人にとっては、体力と体温を奪う絶望の雪だった。妓夫太郎は完全に自分の運命を呪っていた。誰だって助けてくれない。どんな時も自分達には一切の容赦がない。そんな現実に怒りを燃やしながら、遂に妓夫太郎は力尽きて地面へと倒れてしまった。

 

妓夫太郎(どうしてだ?"禍福は糾える縄のごとし"だろ?いいことも悪いことも代わる代わる来いよ・・)

 

童磨「どうしたどうした?可哀想に。」

 

そこへ現れたのは、金色の髪と血を被ったような模様が頭頂部にあり、宗教の服を着ていて虹色の瞳に"上弦、陸"二文字が入った十二鬼月である。彼は当時上弦の陸ながら、現上弦の弐である万世極楽教の教祖である鬼"童磨"だった。その両手には既に事切れた女性の頚と片足を持って、感情がない笑みを浮かべて立っていた。

 

童磨「俺は優しいから放っておけないぜ。その娘、まもなく死ぬだろう?お前らに血をやるよ、二人共だ。"あの方"に選ばれれば鬼となれる。命というのは尊いものだ、大切にしなければ。さぁ、お前らは鬼となり俺のように、十二鬼月・・上弦へと上がって来れるかな?」

 

人間の時の梅と妓夫太郎を助けたのは、人間ではなく人喰い鬼だったのだ。妓夫太郎に鬼になったことに対して後悔はなかった。それどころか、来世というものがあったのなら、再び鬼になって幸せそうな人間を襲って奪って取り立てようと考えていた。ただ、彼は妹を巻き込んでしまったことに罪悪感を覚えていた。彼女の元々の性格は周りに染まりやすい素直なものだったのだ。"もっといい店にいたなら真っ当な花魁に""普通の親元に生まれていたのなら普通の娘に""良家に生まれていたなら上品な娘に"なっていたのではないかと妹の梅の事だけが、唯一の心残りだった。

気がつくと、辺り一面暗闇の所に妓夫太郎は立っていた。

 

妓夫太郎「!」(なんだぁ?ここは?地獄か?)

 

梅「お兄ちゃあん!!」

 

妓夫太郎の名前を呼んだのは上弦の鬼の堕姫の姿ではなく着物を着た人間の姿になった梅だった。それを見た妓夫太郎は、妹は自分とは別の場所に行く事を確信し、心の中で安堵していた。

 

梅「嫌だ!ここ嫌い!どこなの?出たいよ!何とかして!」

 

妓夫太郎「お前その姿・・・・」スッ

 

梅「!そっちが出口?」

 

妓夫太郎「お前はもう俺についてくるんじゃねぇ。」

 

梅「なっなんで?待ってよ私・・」

妓夫太郎「ついて来るんじゃねぇ!!」

 

梅「!」ビクッ

 

妓夫太郎が梅を拒絶した理由は、自分は妹の分の罪も背負って地獄へ行って、妹には自分とは違って天国で過ごして欲しいと思っていたからなのだが、そんな兄の思いを知らない梅は、拒絶した理由を先程の口喧嘩で怒ったからだと勘違いして目に涙を浮かべた。

 

梅「さっきの事怒ったの?謝るから許してよぉ!お兄ちゃんのこと醜いなんて思ってないよォ!!悔しかったの!負けて悔しかったの!私のせいで負けたって認めたくなかったの!ごめんなさい!うまく立ち回れなくって・・私がもっとちゃんと役に立ってたら負けなかったのに!いつも足引っ張ってごめんなさい!ねぇお兄ちゃん!」

 

妓夫太郎「・・そんなことは心底どうでもいい。お前とはもう兄妹でも何でもない。俺はこっちに行くからお前は反対の明るい方へ行け。」

 

その妓夫太郎の言葉に、梅は自分に幸せになって欲しいと思われていることを実感する。しかし、梅は駆け出して妓夫太郎の背中に飛び付いた。

 

ガバッ

 

妓夫太郎「!おい!!」

 

梅「嫌だ!嫌だ!離れない!!絶対離れないから!!ずっと一緒にいるんだから!!何回生まれ変わっても私はお兄ちゃんの妹になる絶対に!!私を嫌わないで!!叱らないで!!一人にしないで!!置いてったら許さないわよ!わぁぁあん!ずっと一緒にいるんだもん!ひどいひどい!約束したの覚えてないの!?忘れちゃったのォ!!?」

 

梅と妓夫太郎が交わした約束、それは二人がまだ人間だった頃。雪が降りしきる中、家がない二人は藁で覆って寒さを凌いでいるときに妓夫太郎が言った言葉である。

 

妓夫太郎「俺達は二人なら最強だ。寒いのも腹ペコなのも全然へっちゃら、約束する。ずっと一緒だ、絶対離れない。ほらもう何も怖くないだろ?」

 

当時生まれてから自分達へ降りかかる厳しい現実に耐えきれず、泣いていた梅にとって、このときの妓夫太郎の言葉は他の何よりも自分を救ってくれるものだった。この言葉をずっと覚えていたのだ。そしてそれを思い出した妓夫太郎は、泣きじゃくる梅の足を抱えて背負うと、地獄の業の炎が燃え盛る方へ歩いていくのだった。

 

―――

 

現実世界では完全に灰になった二人を見て、炭治郎と禰豆子とブロリーは同時に空を見上げた。

 

炭治郎「仲直りできたかな?」

 

ブロリー「さぁな。奴らのその後を見ていないのだからわかるはずがないだろう。だが、鬼だった時から彼奴らの兄妹の絆は本物だったからな。黄泉でもうまくやっている気はする、それで良いのではないか?」

 

禰豆子「ム!」コクリ

 

炭治郎「師範・・はい、そうですよね。彼等なら仲直りもできますよね。終わったな・・疲れた・・」

 

一方その頃、三人の嫁に囲まれて倒れこんでいるのを、蛇柱、伊黒小芭内がネチネチと言葉攻めしていた。

 

小芭内「ふぅんそうか、ふぅん。陸ね、一番下だ上弦の。陸とは言え上弦を倒したわけだ、実にめでたいことだな、陸だがな。褒めてやってもいい。」ネチネチ

 

雛鶴「・・・・」

 

須磨「・・・・」ムカムカ

 

まきを「・・・・」イライラ

 

天元「いや、お前から褒められても別に・・」

 

須磨「そうですよ!!」ギャワーッ

 

まきを「随分遅かったですね?」ネチ

 

須磨「おっおっ遅いんですよ!そもそも来るのが!!おっそいの!!」

 

須磨が小芭内に食って掛かった時、小芭内の相棒である蛇の鏑丸が威嚇した。

 

鏑丸「シャーッ」

 

須磨「ギャアアッ!!!」ギュウ

天元「イデデデ!」

 

雛鶴「こら!」

 

小芭内「その程度の傷で倒れこんでてどうする?たかが上弦の陸との戦いで、そんなかすり傷程度で倒れこむな。お前が復帰するまでの間に誰が穴埋めをするんだ?まさかこのまま引退するとは言わないよな?」ネチネチ

 

天元「引退はしねえよ。俺は五体満足だ、少し休めばまた柱として復帰するに決まってるだろ。」

 

小芭内「ふん、続けるのならばいい。ただでさえ若手が育たず死にすぎてるから、柱は煉獄が抜けたあと空席のまま。」

 

天元「いいや。若手は育ってるぜ確実にな。お前の大嫌いな若手がな。」

 

小芭内「・・おいまさか、生き残ったのか?この戦いで奴が、竈門炭治郎が。」

 

小芭内は炭治郎が生き残ったことに驚き、若手が生き残って良かったような大嫌いな奴が生き残って残念なような複雑な表情を浮かべていた。

一方、鬼殺隊の本部産屋敷邸には既にブロリーや天元達が上弦の鬼を倒した朗報が来ていた。亭主である耀哉は鬼舞辻の呪いの影響で、体の至るところに火傷の跡のような爛れが広がっていた。呪いが進行していて、今は寝たきりの状態になっている。それでも布団から身を乗り出すように、鎹鴉の報告に釘付けになっていた。

 

耀哉「そうか!またブロリー達は上弦をやってくれたんだね!よくやった天元!ブロリー!炭治郎!禰豆子!善逸!伊之助・・!」ゴホッ ゲホゲホッ ビジャ

 

六人の名前を呼んで祝言を言った直後に、激しく咳き込んで吐血した。そんな耀哉を妻である"産屋敷あまね"は慌てて手ぬぐいを彼の口に当てて血を拭き取る。

 

あまね「耀哉様!」ふきふき

 

耀哉「あまね!」

 

あまね「はい。」

 

耀哉「今運命は大きく変わっている!ブロリーが我が鬼殺隊に入ってから、全てがいい方向へと流れている!一年も経たないうちに上弦を二体も倒した、更に彼はまだ負傷していなければ引退もしていない!上弦よりも強い鬼狩りが現れたんだ!わかるか?これは完全に"流れ"に乗っている。この"流れ"は止まることはないだろう。周囲を巻き込んででも進み、やがてはあの男の元へ届く。鬼舞辻無惨!お前は必ず私たちが、私たちの代で倒す!我が一族唯一の汚点であるお前は・・!!」ゴホッゴホッ ガハッ!!

 

再び咳き込んで吐血した耀哉に、息子の"産屋敷輝利哉"を始め、かなた達も心配して周りに集まってくる。

 

輝利哉「父上!!」

かなた「父上!」

 

あまね「お前たち、湯を沸かしなさい!それから薬と手拭いを!早く!!」

 

あまねは息子達に的確に素早く指示を出して、苦しそうに息をしている耀哉の症状を少しでもやわらげるために薬を飲ませるのだった。

数刻後、薬の効果で咳は収まったものの、それでも相当苦しいのか布団に寝たきりの状態の耀哉がいた。先程の興奮もいくらか落ち着き、今はおしとやかな産屋敷邸の当主の姿がそこにはあった。

 

耀哉「・・あまね。薬のお陰で少し楽になったよ・・心配をかけて済まないね・・」

 

あまね「いいえ。私はあなた様と共に歩む道がどんなに険しい獣道だったとしても、ついていくと決めましたので。あなた様の病の治療をすることは苦ではありませんよ。」

 

耀哉「ありがとうあまね。そう言ってくれて嬉しいよ。・・本当はすぐにでも緊急柱合会議を開きたいところなんだけど、生憎私はこの有り様だ。四ヶ月程前までのように自力で立ち上がることも、娘達に手を引かれてでも歩くことすらできなくなってしまったようだ・・だからせめてでも、私が寝たきりだったとしても、彼と・・ブロリーと話し合いをしたいんだ。」

 

あまね「話し合い・・ですか?」

 

耀哉「そうだ。彼が勤める任務には、死傷者が限りなく少ないんだ。それだけすごい活躍をしているんだ。その日頃の感謝の気持ちを伝えたい。歴代最強の隊士である彼にね。」

 

あまね「わかりました。近々ブロリー様をこの産屋敷邸へとお招きしますよう手配しておきます。」

 

耀哉「本当に何から何まで済まないね、あまね。輝利哉とかなたも心配かけたね。」

 

輝利哉・かなた「「父上・・」」

 

布団に入ったまま耀哉は息子達に優しい笑顔を向けるが、輝利哉とかなたは不安の表情を浮かべて父親を弱々しく呼ぶのだった。

そして遊郭の任務から数日経ったある日、ブロリーの住む破壊屋敷へ産屋敷の鎹鴉が飛んできて窓辺に止まり、伝達を口にした。

 

鎹鴉「カァーッカァーッ!破壊柱ブロリー!至急オ館様ノ所へ急行セヨ!繰リ返ス!破壊柱ブロリー!オ館様ノ所へ行ケ!カァーッ!カァーッ!」

 

炭治郎「!?しっ師範!!お館様から呼び出されるって何かしたんですか!?」

 

ブロリー「炭治郎、お前は少し失礼ではないか?何故俺が呼び出されることが何かをやらかした事を前提になるんだぁ?」

 

炭治郎「あっすみません!ですが、何の前触れもなくいきなりお館様に呼び出されるって何かしたんじゃないかって思ってしまいますよ!?」

 

ブロリー「知らん。俺は耀哉とは杏寿郎やお前達と共に行った無限列車以来顔を合わせていないぞ。そこまで大した理由ではないと思うがな。別に行かなくてもいいだろう。」

 

炭治郎「いや、駄目ですよ!お館様からの呼び出しですよ!?行かないとそれこそ不死川さんから何をされるか分かりませんよ。」

 

ブロリー「どうでもいいだろう。クズから何をされたとしても返り討ちにすればいいだけだぁ!」

 

炭治郎「・・クズ・・ふふっ・・師範、クズはやめてあげてください。」

 

ブロリー「あいつはクズだろう?罪もない禰豆子を刺したんだ、クズと呼ばずに何て呼ぶ?それより俺にとって用は無いのだから、行かなくては駄目か?」

 

炭治郎「駄目です!お願いですから早く行って下さい!」グイグイ

 

ブロリー「わかったから押すな、炭治郎。」

 

炭治郎は、遊郭の任務が終わってから数日で目を覚まし、今ではブロリーと共に鍛練に励んでいた。そして鎹鴉により呼び出されて、行くことを渋るブロリーに炭治郎が急かして背中を押していた。そしてようやく出発するのだった。普通の剣士や柱は、産屋敷邸に行くときは隠に耳栓や目隠しをされておぶられて行くのだが、ブロリーの場合は炭治郎が柱合裁判にかけられたときにこっそり空から道順をみていたので、覚えてしまったのだ。そのため、鎹鴉の飛んでいく後を着けるように飛んでいくことが移動手段となっていた。

数刻後、産屋敷邸にたどり着いたブロリーは庭に来ると、閉まっている襖の奥に声をかけた。

 

ブロリー「耀哉、鴉に呼ばれて着たぞ。誰かいないのか?」

 

ブロリーの声に反応した輝利哉が、襖を開けて出てくると挨拶する。

 

輝利哉「ブロリー様、本日はご多忙の中足を運んでくださってありがとうございます。お館様が部屋でお待ちです。どうぞ御上がりください。」

 

ブロリー「わかった、邪魔するぞ。」

 

ブロリーは縁側に上がると、輝利哉に着いていく。そして耀哉の待っている部屋の前に着くと振り返り、ブロリーに向き合った。

 

輝利哉「こちらでお館様がお待ちしています。どうぞお入りください。」

 

輝利哉は部屋の襖を丁寧に両手で開けると、ブロリーが入ったのを確認してから自分も入り、再度丁寧に襖を閉めた。ブロリーが部屋で見たもの、それは妻のあまねと、娘である"ひなき、にちか、くいな、かなた"に囲まれて布団で横になっている耀哉の姿だった。ブロリーを連れてきた輝利哉が耀哉に報告する。

 

輝利哉「父上、ブロリー様をお連れしました。」

 

耀哉「ご苦労だったね輝利哉。ブロリー、今日は来てくれてありがとう。わざわざ来てくれたのにこんな格好ですまないね。」

 

ブロリー「構わん。だが耀哉が俺を呼ぶとは珍しいな。何かあったのか?」

 

耀哉「特別なことはないよ。ただ君に感謝の気持ちを伝えたかったんだ。上弦を二体も倒したのにまだ引退していない私の子供は初めてなんだ。それに君が鬼殺隊に入ってから、他の剣士や一般人の死傷者が大幅に減ったんだ。君は既に沢山の人の命を助けているんだ。だからブロリー、鬼殺隊に入ってくれて本当にありがとう。君は私の誇りだ。」

 

ブロリー「そうか、俺も耀哉が禰豆子を認めてくれたお陰であの時は禰豆子が殺されずにすんだ、もし殺されていたら俺はこの星を破壊し尽くしていて取り返しがつかないことをしていただろう。だから礼を言うのは俺の方だ。感謝する。」

 

耀哉「そう言ってくれると私も禰豆子を容認した甲斐があったものだよ。君がしてくれたことと比べたら、私のしたことは大したことな・・!」ゲホッゲホッ ゴホッガハッ

 

ブロリー「!?おい!大丈夫か!?」

 

あまね「耀哉様!!」

 

輝利哉・かなた「「父上!!」」

 

ひなき・にちか・くいな「「「お館様!!」」」

 

鬼舞辻の呪いによって咳が再発した耀哉の周りをブロリーを含める七人が取り囲んだ。

 

耀哉「ゴホッゴホッ。・・すまないねブロリー。見苦しいところを見せたね。もう大丈夫だから離れていいよ。」

 

ブロリー「・・耀哉、前から気になっていたんだが、その焼けた跡のような皮膚の爛れはなんなんだ?初めてあったときよりもそれが広がっているように見えるが?」

 

耀哉「そうか・・ブロリーにはまだ言ってなかったね。これは私たち一族の生まれつきの病なんだ。産屋敷の血を引く男性のみがかかる鬼舞辻による呪いだよ。それのせいで今の私たちは二十五までしか生きられない病弱な体なんだ。」

 

ブロリー「それは苦しいのか?」

 

耀哉「そうだね・・柱や他の剣士達の前では気丈に振る舞ってるけど、本当はとても辛くて苦しいんだ・・何時からか目も全く見えなくなってしまってね・・今私が見ているのは完全な暗闇だ・・私はあと長くても一年もたないだろう・・」

 

あまね「耀哉様・・」

 

輝利哉「父上・・」

 

ひなき・にちか・くいな・かなた「「「「・・・・ッ」」」」

 

その言葉に、あまねをはじめとする耀哉と本当に血の繋がっている子供達は辛そうな顔をする。

 

ブロリー「鬼舞辻無惨とやらのムシケラのせいでお前達も散々な目に合ってきたんだな。ならば・・今、楽にしてやる!」バッ

 

耀哉「えっ?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

ブロリーは掌を耀哉に向けると、自分の溢れ出る気を送り込む。緑色の気が耀哉の体を包み込んだ。すると、呪いによって爛れた部分がみるみると修復していくのだ。これには側で見ているあまね達も驚きを隠せない。

 

ポワワワワワワ

 

輝利哉「の・・呪いが・・!!」

 

ひなき「治っていく・・!!」

 

にちか「す・・凄い・・!!」

 

くいな「凄い・・綺麗な肌に・・!!」

 

かなた「戻っていってる・・!!」

 

あまね「治る・・?治るの・・!?」

 

耀哉(あぁ・・暖かい・・まるで・・母上に抱かれているような・・)

 

ブロリーが気を与え終えると、爛れたような部分が完全に消滅し、目を瞑っていた耀哉が目を開ける。今までの耀哉は、呪いの影響で目が見えず、開けていても瞑っていても、視界にあるのは暗闇だけだった。しかし今の耀哉は、状況を理解すると目から涙を流した。

 

耀哉「見える・・!目が見える・・!少しも辛くない・・!苦しくもない・・!」

 

あまね「まさか・・!耀哉様・・!」

 

耀哉は、再び目に光を取り戻して目が見えるようになったのだ。あまねもそれを察したのか、耀哉の顔を覗き込む。それに気づいた耀哉も体を布団から起こすとあまねや子供達が座っている方へ顔を向ける、そして涙を流したまま微笑んだ。

 

耀哉「あぁ・・!あまね・・!まさかもう一度我が妻の顔が見れる日が来るとは・・!輝利哉、ひなき、にちか、くいな、かなた・・私の目が見えなくなっている間に随分と大きくなったんだね・・」

 

あまね「耀哉様・・!」ポロポロ

 

輝利哉「父上・・!」グスッ ポロポロ

 

かなた「父上~・・!」ひっく グスン

 

ひなき「お館様・・!」ポロポロ

 

にちか「お館様・・!」ひっく グスッ

 

くいな「お館様~・・!」グスッ ポロポロ

 

自分達の父の目が見えるようになり、鬼舞辻の呪い苦から完全に解放されたことを実感した息子や娘達は目から大粒の涙を流して号泣し、耀哉に抱きついた。そのままブロリーそっちのけで産屋敷一家は互いに抱き締めて号泣した。

数分後、ブロリーの目の前で泣いていたことに気づいて我に返り、全員が顔を真っ赤に染めて俯いていた。家族を代表するかのように耀哉が謝罪した。

 

耀哉「ブロリー、目の前で見苦しい事をしてしまってすまなかった・・///でも君のお陰で私はまた妻や息子達の顔を見ることができたんだ。感謝してもしきれない。本当にありがとう、ブロリー。」

 

あまね「ブロリー様、耀哉様の呪いを治してくださってありがとうございます!」ペコリ

 

輝利哉・ひなき・にちか・くいな・にちか「「「「「ありがとうございます!!」」」」」ペコリ

 

妻であるあまねの感謝の言葉を筆頭に、子供達も続いてブロリーに礼を言った。しかし、それまで目の前の暖かい光景に無意識に緩んだ顔をしていたブロリーだったが"治した"という発言に反応し、再び引き締まった表情を浮かべて耀哉を指差した。そして忠告する。

 

ブロリー「貴様ら勘違いするな。俺は治していないからな。」

 

ひなき「!?でッですが、お館様から呪いが消えましたよ!」

 

ブロリー「それは呪いの苦しみから少しの間解放しただけに過ぎない。おい耀哉、その呪いが出始めたのはいつ頃だ?」

 

耀哉「えっと・・確か私がちょうど二十歳になったとき、つまり今から約三年前ぐらいだね。」

 

ブロリー「そうか。ならば今から約二十年経つとさっきまでの状態に戻るからな。俺は医者ではないから治すことは出来ない。それはただのその場しのぎ程度だ。」

 

あまね・ひなき「「・・・・っ」」

 

ブロリーに完全に治ってないと言われて、二十年後には再び先程の状態に戻ってしまうとわかり、あまねとひなきは悲しそうに顔を俯かせた。それでも耀哉はブロリーに微笑んでいた。

 

耀哉「治ってなかったとしても私がブロリーに感謝することには変わり無いよ。本来なら私はもうじき黄泉の国へと逝くところだったんだ。延命だとしても、それはつまり鬼舞辻を倒すために与えられた時間が倍以上に増えたってことだからね。それにもう見ることはないと思っていた家族の事を視力を取り戻して再び見ることができたんだ。これ程嬉しいことはない。これ以上何かを求めてしまうと、天罰が下ってしまうよ。」

 

あまね・ひなき「「!!」」ペコリ

 

耀哉の言葉を聞いて心を動かされたあまねとひなきは、再びブロリーに向けて頭を下げた。

 

ブロリー「解ったならばいい。それにこれは二十年経った後でも再びやればまた寿命が伸びるからな。だが、俺は今後こんなことは絶対にしない。」

 

あまね・輝利哉・ひなき・にちか・くいな・かなた「「「「「「っ!!」」」」」」

 

耀哉「・・どうしてだいブロリー?理由を聞いても?」

 

ブロリー「なぜなら俺が二十年経つ前に鬼舞辻というムシケラを殺すんだからな。」

 

あまね「・・なるほど、そういうことですか。」

 

輝利哉「母上?」

 

あまね「つまりそれまでに鬼舞辻を倒すから、次に耀哉様にかかっている鬼舞辻の呪いをまた戻す必要はないと彼は言ってるのよ。」

 

ブロリー「そういうことだ。」

 

あまねの推測にブロリーは肯定し、その理由を聞いた耀哉は嬉しそうに微笑んだ。

 

耀哉「そうか・・そうか・・こんなに強くて優しい隊士を獲得できて、私は幸せ者だよ。本当にありがとうブロリー。」

 

ブロリー「ふん、お互い様だろう?」

 

耀哉「そうだね、ブロリー。」

 

自身の気の力によって耀哉の寿命を延命させたブロリー。お礼としてそのまま産屋敷一家に最上級のおもてなしをされて、日が暮れるまで話し合いに花を咲かせるのだった。




やっと遊郭編終わりました。原作でもかなり長かったので大変でした笑。次からも頑張りますので応援よろしくお願いします。それではまた次回。


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鬼殺隊陣営と鬼陣営!それぞれの思惑!

第二十五話です。最近鬼滅の刃とブロリー小説のネタ版を書きたくなってきました。それでも惑わされずに頑張りたいと思います。こんな小説ですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。


ブロリーが産屋敷家を訪れてから数日後、炭治郎とブロリーは真剣を持って模擬戦をしていた。最もブロリーは何も持たずに素手ではあるが、『スーパーサイヤ人』の形態になって応戦していた。

 

炭治郎「ヒノカミ神楽!灼骨炎陽!」ゴオオオオ

 

ブロリー「ふん!まだまだだ!」ガキィン!

 

ゴォ! シュタ

 

刀と腕がぶつかり合って周囲に衝撃波が生じ、両者は一度距離を取ってから再び炭治郎が仕掛ける。

 

炭治郎「全集中!水の呼吸!壱の型!水面斬り!」シイイイ

 

ブロリー「甘い!遅すぎる!」ガッ ポン

 

ブロリーは腕を刀に交差させずに受け流す、すると勢い余った炭治郎は背中を敵に向けるという致命的な隙を見せてしまう。その隙を見逃す程ブロリーは甘くなかった。

 

ブロリー「背中ががら空きだ炭治郎!破壊の呼吸!漆の型!オメガブラスター!」ポウ ゴオオオオ

 

炭治郎「!しまった!!(回避は間に合わない!迎え撃つしかない!)むん!」ヒュッ

 

ブロリーの気弾を迎え撃つために咄嗟に刀を振るったが、炭治郎は姿勢を崩したまま無理矢理の体制だった。その為

 

ガッ バキン! ドカーン!

 

炭治郎「なっ!?があああぁぁぁぁぁぁっっっ!?!?」

 

炭治郎の刀が折れてしまい、ブロリーの気弾を諸に喰らったのだ。このときは炭治郎の相手が鬼ではなくて本当に良かったと言えるだろう。相手がブロリーだから、体が大きく吹っ飛ぶ程度の威力に抑えてくれたものの、相手が同じ能力を持つ別の鬼だったなら、今頃炭治郎の体は今までの鬼のように跡形もなく消し去られていたのだから。ブロリーは炭治郎の方を見て声を上げた。

 

ブロリー「ここまでだ!炭治郎!大分パワーもスピードも上がってきた!だが、その程度で上弦のムシケラを倒せると思っているのか?もっと精進しろ!」

 

炭治郎「はい!師範!(あぁ・・刀を折ってしまった・・鐵鋼塚さん怒るだろうな・・)」

 

炭治郎は、那田蜘蛛山の時に続いて刀を再び折ってしまったことに罪悪感と申し訳無さに駈られていた。それを知らないブロリーが炭治郎に渇を入れたと同時に、鎹鴉が破壊屋敷邸の上空を旋回して伝令を伝えた。

 

鎹鴉「カァーッ!カァーッ!緊急柱合会議ヲ開ク!破壊柱ブロリー!直チニ産屋敷邸二向カエー!繰リ返ス!緊急柱合会議ヲ開ク!破壊柱ブロリー!直チニ産屋敷邸二向カエー!」

 

ブロリー「今からか?」

 

鎹鴉「ソウ!今カラダー!」

 

ブロリー「全く耀哉の奴、今度はなんなんだぁ?何の用なんだぁ?」

 

炭治郎「師範!お館様の所へ行くんですか?」

 

ブロリー「そうだ、あまり乗り気ではないがな。」

 

炭治郎「気をつけて行って下さいね!」

 

ブロリー「止めないのか?」

 

炭治郎「俺が止めたところで意味があると思いますか?」

 

ブロリー「・・無いな。」

 

炭治郎「ですよね。」

 

ブロリー「では行ってくる。」

 

ブロリーが破壊屋敷を出ると、丁度隣に建っている蝶屋敷からしのぶが出てくるところを目撃した。

 

ブロリー「しのぶ!」

 

しのぶ「!ブロリーさん。貴方もこれからお館様の所へ向かうのですか?」

 

ブロリー「そうだ。」

 

しのぶ「そうでしたか、では一緒に向かいましょう。皆さんお願いしますね。」

 

隠「「はい!」」

 

しのぶがブロリーと共に産屋敷邸に向かうことを決めると、既に屋敷の外で用意していた隠達に、目隠しと耳栓を渡された。

 

しのぶ「いつものやつですね。」

 

ブロリー「何故そんなものをするんだ?」

 

しのぶ「!ブロリーさんはいつも目隠しと耳栓をしていないのですか!?」

 

隠1「蟲柱様。破壊柱様はお館様の所へ行かれる際は空を飛んでいくので我々隠は必要無いとのことです。これはお館様公認でございます。」

 

隠2「破壊柱様。本来であればお館様の御屋敷の居場所が鬼共に見つかったり情報が漏れるのを防ぐため、このように目隠しと耳栓をしなければならないのですよ。ですが貴方はお館様公認でこれらを免除して自分で行くことを許されているのです。」

 

しのぶとブロリーがお互いに目隠しや耳栓をしていることとしていないことに驚き、隠達が耀哉が認めてブロリーが特別に許されている事を説明し、ブロリーは納得したものの、しのぶは更に混乱した。

 

しのぶ「どっ、どういうことですか?何故貴方はそんな事が許されているのですか?というより何故お館様の御屋敷の場所が分かるのですか?他の柱達でさえも知らないと言うのに。」

 

ブロリー「お前達が炭治郎を裁判とやらにかけたときに俺はこいつら(隠)の後を着いていってたんだ。そのときに道を覚えてな。そのときの事をこいつらに言ったんだ。」

 

隠1「そして我々がこのことをお館様にお伝えしたら、道を知っている者に無理に伏せることはないとの結論でこうなりました。」

 

しのぶは隠の説明を受けて全てを理解すると、呆れたような目をしてため息をついてブロリーを責めた。

 

しのぶ「・・はぁ、ブロリーさん、駄目じゃないですかぁ。もし鬼に情報が漏れたらどう責任を取るつもりなんですか?そういうこともきちんと考えてから行動してくださいよ。でないと冨岡みたいに嫌われちゃいますよ。只でさえ不死川さんと伊黒さんから嫌われてるんですから。」

 

ブロリー「今後は善処しよう。ムシケラに情報を迫られたら返り討ちにすればいいだけだ。それとクズと雑魚から嫌われても俺は別に痛くも痒くも無いがな。」

 

しのぶ「・・お言葉ですが、そのクズと雑魚と言うのは誰の事を言ってるんですか?まさか私の事を言ってるわけではありませんよね?」

 

ブロリー「今しのぶが言った二人の奴らだ。しのぶのことはクズとも雑魚とも思ってないから安心しろ。」

 

しのぶ「・・ふふっ・・クズと雑魚・・ぷくく・・」プルプル

 

しのぶはブロリーの暴言に最初は自分の事を言ってるのではと青筋を立てたが、ブロリーが実弥と小芭内のことを言ってると分かると、体を震わせて必死に笑いを堪えた。そこへ段々と痺れを切らしてきた隠達が柱の二人に声をかける。

 

隠「あのー・・お二人共、そろそろ移動なさってもよろしいでしょうか?」

 

しのぶ「あら?ふふっ、ごめんなさいね。彼との話し合いに夢中になってしまいました。今日はお願いしますね。」

 

隠「はい!ではお乗りください。」

 

しのぶは目隠しと耳栓を付けて隠に背負われ、ブロリーはそのまま走り出す隠の後を付いていった。

数分後、産屋敷邸へとたどり着いた二人は、そのまま庭まで一緒に歩いていき、既に他の柱達は到着していた。

 

しのぶ「あら?私達が最後でしょうか?」

 

杏寿郎「うむ!君達が最後だが気にするな!俺も今さっき着いたばかりだからな!ブロリー青年!久しいな!竈門少年は元気にしているか?」

 

ブロリー「杏寿郎か。炭治郎は元気に鍛練してる、今日も俺と組手をしたからな。お前と列車とやらの任務に行ったときから見違えるほどに強くなっているな。」

 

杏寿郎「そうか!それは実に喜ばしいことだ!俺の継子にならなかったことは些か残念であったが、若手が更に強くなっているなら問題ないだろう!ブロリー青年!これからも竈門少年のことを頼んだぞ!」

 

ブロリー「言われる間でもない。炭治郎は強くなるために俺に指導されることを選んだ。ならば俺もそれに答えない訳には行かんからな。」

 

杏寿郎とブロリーが向かい合って話し合っている時、ふといつもは静かであまり喋らない霞柱、時透無一郎が口を開いた。

 

無一郎「ねぇ、僕達なんで今日お館様に呼ばれたの?誰か知ってる人いる?」

 

行冥「南無・・私は何も聞かされてない・・」

 

実弥「・・知らねェ。」

 

小芭内「・・・・」

 

蜜璃「私も・・わかりません。」

 

義勇「・・・・(知らない)」

 

無一郎の疑問に誰も答えられない中、天元が自分を親指で指して高らかに言った。

 

天元「そんなの、この俺様とブロリーをド派手に祝言するために決まってるだろ!何を隠そう俺達は上弦の鬼を倒したんだからな!」

 

「「「「「「「っ!」」」」」」」

 

天元の突然の爆弾発言に他の柱達は全員ハッとするが、当の本人であるブロリーは興味が無さそうにしており、事情を知っている小芭内はまたネチネチと言葉責めをした。

 

小芭内「ふん、たかが上弦の陸ごときでいちいちこんなことをすると思うか?そもそも百年ぶりに上弦を倒したのは煉獄とサイヤ人の無限列車での任務だろう?そのときにも呼ばれたのに四ヶ月後に階級が下の上弦を倒しただけで呼ばれると思うか?俺はそう思わないし信じない。」ネチネチ

 

天元「いや、あのなぁ。上弦は一筋縄では行かねぇよ。少しは俺を讃えてもいいんじゃないか?」

 

小芭内に正論を突きつけられた天元は少し弱々しくなりながらも弁解した。そこへかなたとくいなが当主が来たことを告げた。

 

くいな・かなた「「お館様のおなりです!」」

 

その声と共に、耀哉が屋敷の奥から歩いて出てきた。ブロリーを除く九人は片膝をついて頭を垂れる。当のブロリーは立ったままであった、それに青筋を浮かべた実弥と小芭内が地面に押さえつけようとするも、ブロリーは易々と避けた。

 

ブロリー「!!」ヒョイ

 

実弥「・・チッ!」

 

小芭内「・・ふん。」

 

天元「・・お前らいい加減学習しろ。そいつを押さえようとしたって無駄だっつーの。」

 

そして耀哉がこの場に姿を現したが、ブロリー以外の柱達に衝撃が走った。

 

耀哉「やぁ、待たせて悪かったね。私の可愛い剣士(子供)達。」

 

「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

 

それは耀哉が妻であるあまねや実子の輝利哉の介助を必要とせずに一人で歩いていることだった。それだけではなく、目元にまで表れていた鬼舞辻の呪いの爛れも今では綺麗に消え去り、目に光を取り戻していることが一目見ただけで分かるほどに復活した耀哉の姿があったからだ。歓喜と戸惑いと動揺が混ざり合って混乱している九人の柱達、皆の気持ちを代弁するかのように実弥が疑問をぶつけた。それに続いて皆もそれぞれの思いを口にした。

 

実弥「おっ、お館様・・!それは一体・・!?」

 

蜜璃「呪いが・・消えている・・!?」

 

杏寿郎「よもや!何があったのだお館様!!」

 

天元「お館様がド派手に元気になってるだと!?」

 

義勇「・・・・!?(呪いが無くなっている!?一体どういうことだ!?だが、お館様が元気を取り戻したのはいいことだ。誰かがこのようなことをしてくれたのだろうか?)」

 

無一郎「お館様・・!?・・治ったのですか・・!?」

 

小芭内「有り得ない有り得ない・・!!胡蝶でさえ治せないんだぞ!?嬉しい限りだろうが信じられない・・!俺は信用しない・・!!」

 

行冥「南無・・どういうことだ?誰かがこのようなことをしたのだろうか・・?南無阿弥陀仏・・」

 

混乱している柱の中でも一番それが顕著に現れていたのはしのぶだった。彼女は薬学を特化して研究しているため、鬼殺隊では唯一医療も出来る柱で、蝶屋敷も病院の役割を果たしており、鬼殺隊にとっては無くてはならない場所と存在になっていた。そんな彼女ですら今までどんな薬物でも退行すらさせることができなかったのだ。その鬼舞辻の呪いを、何者かがこんなに綺麗に消し去ったのだから混乱することにも無理はなかった。

 

しのぶ「おっ、お館様・・!治っ・・えっ・・?どうやったんですか・・?」

 

柱達の狼狽えぶりを見て耀哉は口に人差し指を当てて静かにのジェスチャーをする。静かになった柱達を見て、耀哉は自分を回復させた人をゆっくり分かりやすいように優しく教えた。

 

耀哉「私の病を退行させてくれたのはブロリーだよ。実は三日程前にブロリーだけをこの屋敷に呼んだんだ。そのときに私に気を分け与えてくれてね。ただ、今のまま放っておくと二十年後にまた病に犯されるらしいから本人は治したとは認めてないけどね。それでも今は君達の顔も見れるし今は全く痛くも苦しくもない、それが本当に嬉しいんだ。」

 

耀哉は口調こそいつも通りおっとりと話しているが、表情にはしっかりと表れていてブロリーのことを見て微笑んでいた。柱の九人は"心の底から感謝している眼差しで見つめるもの"、"責め立てようとするもの"などに分かれていた。そして個々の思いを言った。

 

義勇「ブロリー・・感謝する。」

 

無一郎「・・ありがとう、お館様を助けてくれて。」

 

杏寿郎「うむ!お館様を助けてくれた!実によくやってくれた!感謝を伝えよう!ありがとう!ブロリー青年!」

 

天元「ド派手によくやった!!もう打つ手がなかった呪いをここまで綺麗に消した。これは俺も派手に感謝しなければいけないな。」

 

蜜璃「ブロリーさん!お館様を呪いから解き放ってくださってありがとうございます!強くて格好よくて優しいなんて素敵!キュンキュンしちゃう!」キュン

 

五人はその場でブロリーのことを誉めたり讃えたりしていた。その中で、行冥がふとブロリーの前に移動すると、涙を流したが口元は笑みが浮かんでいた。

 

行冥「ブロリー、君を認めよう。上弦を倒すだけでなくお館様まで救ってくれた。君はもう鬼殺隊に無くてはならない存在だ。優しいサイヤ人だったのだな、鬼だと疑ってしまってすまなかった。」

 

行冥はなんと、ブロリーを認めて謝ったのだ。それに対してブロリーも彼なりに柔軟な対応を見せた。

 

ブロリー「鬼と疑われたことは一度だけではない。そんなことはいちいち気にしていない。認められたことはありがたいがな。」

 

行冥「そうか。今後も鬼殺隊に尽力するんだぞ。」

 

ブロリー「炭治郎と禰豆子がいる限りはそうするつもりだ。」

 

六人がブロリーに対して好印象になったが、柱の一人であるしのぶはそれどころでは無くなっていた。自分のいくら効力の強い薬でも、耀哉にかかった鬼舞辻の呪いは変化する兆しすら見せなかったというのに、ブロリーが気を分け与えただけでここまでの回復ぶりを見せたというのだ。その事実を耀哉から教えられたしのぶは、ブロリーのことを望羨と嫉妬で恨めしそうに見ていた。

 

しのぶ「・・お館様を助けてくださってありがとうございますね・・!」

 

ブロリー「!」

 

しのぶのドスの効いた声にブロリーが反応して見てみると、いつもの笑顔の鉄仮面が消えて目付きは鋭くなっていてブロリーを睨み付けていた。

 

ブロリー「どうしたんだしのぶ?何か思い詰めることでもしているのかぁ?溜めすぎるのはよくないぞ。」

 

しのぶ「!」

 

ブロリーがこのように言うのは、しのぶが思い詰めている元凶が自分だと分かっていないからであり、本人に一切の悪気はないのだ。しのぶもその事は分かっているため、このように返されてしまっては怒りすらこみ上げてこない。しのぶはため息をついてブロリーに対してはっきりと言った。

 

しのぶ「はぁ・・何故貴方はこんな普通では絶対に有り得ないことが出来るんですか?サイヤ人の体はやはり根本的な造りが違うんですかね?貴方が柱でなければ是非解剖して調べあげたい程忌々しさすら感じますよブロリーさん・・!」

 

ブロリー「そんな悲観することはないだろう。俺には薬や手当ての知恵など全くないからな。お前がいなければこの組織が機能しないことくらい目に見えて分かる。」

 

しのぶ「・・ふん!そんなこと言ったって私の機嫌は直りませんし、何も出ませんからね・・!///」

 

ブロリーに褒められても不機嫌なのは治まらないと言うしのぶだが、表情と満更でもないのか顔が真っ赤に染まっていることで完全に上機嫌になっていることは目に見えてわかった。しかし、残りの二人の柱は逆にブロリーを責め立てた。

 

小芭内「ふん!それが出来るなら何故最初にお館様に出会った段階でそれをしなかった?それにその力でもしお館様が逆に悪化していたらどう責任をとるつもりだった?やはりお前のことは信用できない、俺は信じない。」ネチネチ

 

実弥「伊黒の言う通りだァ・・!症状を戻せるならなんでさっさと出会った時に治さずに今更なんだァ?お館様が苦しんでいるのを眺めるのがそんなに楽しかったのかァ!?アァ!?」

 

ブロリー「出会ったときにしなかったのは耀哉をまだ信用していなかったからだ。今になって信じれると思ったからやったまでだ。それに耀哉の症状を戻すことはおろか、しのぶのように知識や技術がないような奴らに責められる筋合いはない。」

 

実弥「テメェ・・!!」

小芭内「貴様・・!!」

 

実弥と小芭内はブロリーの言葉に青筋を立ててすぐにでも斬りかかれるように刀に手を掛ける。しかし、抜刀する前に耀哉がカリスマのある声で止めた。

 

耀哉「実弥、小芭内、止めなさい。」

 

実弥「お館様!しかしコイツは・・!!」

 

耀哉「誰でも出会ったばかりで信用しあうと言うのは流石に無理があると思うよ。君達だってそうだろう?でも今となっては私の事を信用してくれて、鬼舞辻の呪いの症状も戻してくれた。そのお陰で本来ならもう妻も実子も君達のことも見ることができなくなっていたのを再び見ることが出来るようになった。それだけで私はとても嬉しいんだよ。それに・・」

 

優しく微笑みながら止めていた耀哉だったが、突如としてスッと笑みを無くすと、少し眼光を鋭くして途端に怒りの表情を出す。ブロリーを除く九人の柱は、威圧感のある眼光に蛇に睨まれた蛙のような錯覚を起こして体をビクリと震わせた。

 

「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」ビクッ

 

耀哉「ブロリーはもう私達産屋敷一家を救ってくれた恩人だ。そんな彼を悪くいうのなら、いくら君達でも許さないよ?」ゴゴゴゴゴ

 

ブロリーは知らないが、他の柱からしてみれば鬼舞辻の呪いが治まって爛れが完全に消えている今の怒っている耀哉は、いつもよりも声にも張りがあり、普段の何倍にも恐ろしく感じていた。もう既に信頼度で言えばブロリーは既に他の柱達よりも耀哉に信頼されているのだ。上弦を二体倒しただけでなく自分達の呪いの苦しみからも解き放ってくれた、そんな功労者を罵られるのは耀哉にとってはとても許せることではなかったのだ。だが、そんな彼を止めたのは他でもないブロリーだった。

 

ブロリー「もういい。そこまでしなくていい、耀哉。」

 

耀哉「ブロリー・・だけど・・」

 

ブロリー「俺はただ耀哉を信じれるようになったから症状を戻しただけだ。大したことはしていない。そこまで感謝されることでもないからソイツらを責めることはしなくていい。」

 

耀哉「それは違うよブロリー。」

 

大したことはしていないと断言したブロリーに対して耀哉ははっきりとそして優しく否定した。

 

耀哉「君がそう思っていたとしても、私達にとっての恩人だということには変わり無いんだ。人からの感謝の気持ちは素直に受け取っておくべきだよ。」ニコッ

 

ブロリー「・・わかった。」

 

耀哉の満面の笑みで優しくそう言うと、ブロリーも流石に大人しく受け入れた。ブロリーへは満面の笑みを浮かべていた耀哉だが、再び他の柱を見るときはいつも通りの優しそうな顔つきに戻った。

 

耀哉「ブロリーの言おうとしたことも分かるよ。今のは流石に私も大人げなかった。見苦しい所を見せてしまって、すまなかったね。でも、私達一家は皆感謝していて家族のように思っていることもまた事実だ。彼への悪口は私達への誹謗中傷と捉えるからそのつもりでいるように。特に実弥と小芭内はブロリーに対して当たりが強いからよく気をつけるように。いいね?」

 

実弥「ぎっ、御意・・!」

 

小芭内「・・御意・・!」

 

実弥と小芭内は耀哉から完全に目をつけられたことを理解して、今のブロリーよりも信頼されていないことを実感してショックを受けていた。他の柱達も耀哉のブロリーへの信頼は一際高いことを理解して、義勇と蜜璃以外は先程のしのぶと同じように心の中で嫉妬を覚えていた。そんな心情を知らない耀哉は、話題を変えた。

 

耀哉「大分話が逸れてしまったね。今日君達を呼んだのは天元とブロリー達が上弦の鬼を倒したからなんだ。しかも隊員たちも軽症で済んで遊郭も完全に守りきったんだ。天元、ブロリー実によくやってくれた!皆!私達は今、無限列車での任務から完全に流れに乗っている。これを崩さないように鬼を倒すことにより一層力を入れてほしい。期待しているよ。私の可愛い剣士(子供)達。」

 

「「「「「「「「「御意。」」」」」」」」」

ブロリー「はい・・」

 

耀哉は立て続けに無傷で上弦を倒したことが心底嬉しいのか、満面の笑みを浮かべて更に剣士達の奮起を促した。そして期待していると言われたブロリー以外の柱はより多くの鬼を殺そうと燃えるのだった。

――――一方別の場所、無限城では再び上弦の鬼が集められていた。まさか一年も経たない内にまた呼ばれるとは思っていなかったのか、皆がそれぞれの思いを口にしていた。

 

玉壺「ヒョッ・・まさか一年も経たずに再び無惨様に呼ばれることになるとは・・また誰かがやられたのですかな?私は心が踊った・・ゴホンゴホン!心配で胸が苦しゅうございます。ヒョッ」

 

半天狗「ヒィィィィ!怖ろしい怖ろしい。玉壺の言うことが本当なら、またしてもあの御方の怒りを買ってしまうことになる。御許しください。怖ろしい怖ろしい。」

 

童磨「玉壺も半天狗殿もあまり物騒なことを言わないの。俺はそうならないと信じてるからね。黒死牟殿もそう思わないかい?」

 

黒死牟「童磨・・口を慎め・・無惨様が・・御見えだ・・」

 

「「「!!」」」

 

黒死牟の言葉に全員が反応を示し、無惨の気配がする方に一斉に向いた。

 

無惨「妓夫太郎が死んだ。またもや上弦の月が欠けた。」

 

童磨「誠にございますか!それは申し訳ありませぬ!妓夫太郎は俺が紹介した者ゆえ・・」ニカー

 

童磨は張り付けたような胡散臭い笑みを浮かべて無惨にお詫びを申し出た。

 

童磨「どのようにお詫び致しましょう?目玉をほじくり出しましょうか?それとも・・」わくわく

 

無惨「何度も言わせるな、貴様の目玉など必要ない。妓夫太郎は負けると思っていた。案の定堕姫が足手まといだった。奴が妓夫太郎の動きを止めて逃げようとした。それをしなければブロリーはともかく他の柱は・・いや、もうどうでもいい。私の望みを叶えるためには私自身が動かなければならないとさえ思ってきた。」

 

童磨「またそのように悲しいことをおっしゃいなさる。俺が貴方様の期待に答えなかったときがあったでしょうか?」

 

無惨「産屋敷一族を未だに葬っていない。"青い彼岸花"はどうした?何故何百年も見つけられぬ?私は上弦すらも解体したいと思っている程だ。」ビキキ

 

半天狗「ヒィィィッ!御許しくださいませどうかどうか・・!」

 

黒死牟「返す・・言葉も・・ない・・産屋敷・・巧妙に・・姿を・・隠している・・」

 

童磨「俺は探知探索が不得意だからなぁ。如何したものか・・」

 

三体が実力不足に嘆いているなか、玉壺は得意気に違うとアピールした。

 

玉壺「無惨様!!私は違います!貴方様の望みに一歩近づくための情報を私は掴みました!ほんの今しがた・・!」

 

玉壺は最後まで言いきる前に無惨によって頚を斬られて強制的に黙らされた。その速さは一瞬にも満たない速度で、他の上弦の鬼でさえも目で追うことが出来なかった。そして玉壺の斬られた頚は無惨の掌の上にあった。

 

無惨「私が嫌いなものは"変化"、或いは"退化"だ。状況の変化、肉体の変化、感情の変化、あらゆる変化は殆どの場合"劣化"だ。衰えなのだ。私が好きなものは"不変"もしくは"進化"。完璧な状態で永遠に変わらないこと、それが更に良くなってそのまま衰えないこと。」

 

玉壺(無惨様の手が私の頭に!いい・・とてもいい・・!)

 

無惨「一年も経たずに立て続けに上弦を殺されて、私は不快の絶頂だ。まだ確定していない情報を嬉々として伝えようとするな。」

 

顔中に血管を浮かび上がらせた無惨が、そのまま玉壺の頭を離して重力にしたがって落ちた。

 

無惨「前回呼んだときは大目に見てやったが、やはりそのやり方だと駄目だとわかった。もっと死ぬ気でやったほうがいい。玉壺、情報が確定したら半天狗と共に其処へ向かえ。」

 

半天狗「ヒィィ、承知致しました・・!!」

 

玉壺「・・・・!!」(そんな・・!!私が掴んだ情報なのに・・御無体な・・でもそこがいい・・。)

 

童磨「玉壺殿!」タッ

玉壺「!!」

 

童磨「情報とは何のことだ?俺も一緒に行きたい!」

 

玉壺「いや・・それは・・」

 

童磨「教えてくれないか?頼む!この通りだ。」

 

無惨「童磨、貴様には何も命じていない。失せろ。」

 

童磨「無惨様!俺も一緒に行っては駄目ですか?」

 

無惨「何度も言わせるな。貴様には何も命じていない。黒死牟。」

 

ザン!

 

無惨が上弦の壱の名を呼ぶと同時に、黒死牟が童磨の顔から半分上を刀で跳ねた。それを見届けた無惨はそそくさと姿を消した。

 

黒死牟「童磨・・度が過ぎるぞ・・無惨様の手を・・煩わせるな・・」

 

童磨「黒死牟殿・・どうしてもかい?」

 

黒死牟「当たり前だ・・そうした勝手なことを起こすと・・やがては序列の乱れ・・ひいては従属関係に皹が入る・・私はそれを・・憂いているのだ・・」

 

童磨「あー、なるほどね。」パチン

 

黒死牟「童磨・・私の言いたいことは・・わかったか・・」

 

童磨「うん!わかったよ。」

 

黒死牟「そうか・・わかったのなら・・いい・・」

 

それだけを確認すると、黒死牟も目に見えない速さで姿を消した。

 

童磨「さよなら黒死牟殿、さよなら!」

 

童磨が黒死牟に律儀に挨拶している間に玉壺は鳴女に指示を出した。

 

玉壺「私と半天狗を同じ場所へ飛ばしてくだされ!」

 

半天狗「ヒィィ!」

 

童磨「待ってくれ!じゃあ俺も・・・・」

 

ベベンベン!

 

童磨が最後まで言いきる前に鳴女が琵琶を鳴らして二体を送り出し、童磨だけが取り残される。

 

童磨「・・・・」ポツーン

 

無限城には童磨と鳴女の二体のみとなり、童磨は鳴女を誘う。

 

童磨「琵琶の君!この後良かったら俺と一緒に・・」

鳴女「お断りします。」

 

ベベン!

 

鳴女は童磨の話を最後まで聞かずに琵琶を鳴らして、童磨を元いた場所"万世極楽教"へと強制送還させた。自室のベッドに座った童磨は張り付けたような表情でむくれた。

 

童磨「もう、誰も彼も連れないなぁ・・」

 

信者(男)「教祖様。信者の方が御見えになりました。」

 

童磨「あぁ本当かい?悪いね。じゃあこれを被ってと・・」

 

宗教の帽子を被って信者を向かえ入れる準備を整えると、頬杖をついて扉を見据えた。

 

童磨「さぁいらっしゃい。今日はどんな子が来るのかな?」

 

童磨は物心ついたときからさせられていた教祖の仕事に、今日も無感情で取り組むのだった。

――――鬼の始祖である鬼舞辻無惨は、人間の子供に擬態して大きな屋敷の養子として部屋で本を読んでいた。そしてその顔はほくそ笑んでいた。

 

無惨(玉壺が掴んだ情報が確定の物ならば、そこを壊滅させてほぼ確実に鬼狩り共を弱らすことが出来る。半天狗を行かせるのはブロリーがそこに来ることを読んだ上でだ。)「ふん!私は何を恐れていたのだろうか?上弦の一体が駄目なら複数ぶつければ良いではないか。鬼狩り共には少しは感謝せねばな。数で対抗すればいいと教えてくれたのだからな。いくら化け物でも上弦二体は手に追えんだろう。ブロリーもこれでおしまいだ!ふははは!」

 

無惨はブロリーが玉壺と半天狗に殺られて頚を自分に差し出してるところを想像して笑っていた。そこへ屋敷の飯使いが無惨を呼びに来た。

 

「お坊っちゃま、御食事の準備ができました。」

 

無惨はその言葉に反応して読んでいた本を本棚に戻すと、子供らしい無邪気な笑みで返した。

 

無惨「すぐに向かいます!」

 

このときの無惨は、この采配すらも間違っており、更にブロリーに対して恐れる羽目になることをまだ知らない。




読み返してみて前回とあまり変わってないような気がして絶望しています泣。次回は刀鍛治の里に入れると思います。駄文小説ですが頑張りたいと思います。それではまた次回。


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刀を求めて刀鍛治の里!炭治郎、恋柱・甘露寺蜜璃と出会う!

第二十六話です。大分遅いですが、明けましておめでとうございます。今年度も『伝説のスーパー鬼殺隊員』をよろしくお願いします。最後まで読んでいただけると嬉しいです。


とある日、ブロリーや炭治郎達は破壊屋敷の隣にある蝶屋敷へと来ていた。炭治郎は仰向けでベッドに寝ており、ブロリーは俯き、しのぶは青筋を立てて般若の形相をしていた。炭治郎が刀を折ってしまった後、再び刀が届くまでに体術の鍛練をしていたのだが、ブロリーにとって体術戦は最も得意とする戦闘方法であるためについ熱を込めて厳しく指導した結果、炭治郎に大怪我をさせてしまった。そして今ブロリーはしのぶにお叱りを受けているのだ。

 

しのぶ「ブロリーさん?自分が何をしたか分かってるんですか?」ゴゴゴゴゴ

 

ブロリー「・・・・」

 

しのぶ「継子を鍛えるのは構いませんが、厳しくしすぎて大怪我をさせたとなれば一歩間違えれば隊律違反ですよ?そこのところしっかり分かってるんですか?」ゴゴゴゴゴ

 

ブロリー「・・深く反省している。」

 

しのぶ「それに蝶屋敷は本来なら鬼との戦いで負傷した隊員を治す為の役割をしてるんですよ?今日は偶々空いてたから炭治郎君のことを診れましたけど、混んでたら優先順位は一番後ろなんですよ。それでこの怪我は後少し遅ければ取り返しのつかないことになってたんですよ?もしも混んでたらどうするつもりだったんですか?」ゴゴゴゴゴ

 

ブロリー「・・すまない。」

 

しのぶ「私ではなく炭治郎君に謝ってください!本人も丁度目覚めたようですので私は治療薬と痛み止めを作ってきます。次からこんなことは無いようにしてくださいね?ブロリーさん。」

 

ブロリー「気をつけよう。」

 

最後にブロリーに念を押すと、しのぶは薬を作りに自室へと向かった。そしてしのぶの姿が見えなくなると、ブロリーは横になっている炭治郎のすぐ隣に来た。

 

ブロリー「炭治郎、すまなかった。」

 

炭治郎「大丈夫ですよ師範。高笑いして襲いかかってくるのは怖かったですが、師範が上弦の鬼と戦ったときになっていた姿になる前から威圧に飲み込まれていた俺はまだまだだと分かりましたから。師範、刀が戻ったらまた俺と鍛練してください。」

 

ブロリー「俺が言えたことではないが、まずはその怪我を治して身体機能が元に戻ってからだな。」

 

炭治郎「!・・はい。」

 

ガッシャーン! パリーン!

 

不意に鈍器が割れる音が聞こえてきてそっちを二人が見ると、目を覚ました炭治郎を見て目を見開いて固まっているカナヲがいた。どうやら持っていた皿を落として割ってしまったようだ。カナヲはそのまま割れ物そっちのけですぐにブロリーの隣に来て炭治郎を覗き込んでいた。

 

カナヲ「・・大丈夫?上弦の鬼との戦いの後、三日間意識が戻らなかったのよ。」

 

炭治郎「そうか・・そうなのか・・」

 

カナヲ「目が覚めて良かった・・」

 

カナヲは炭治郎の意識が戻ったことに心の底から安堵して目に涙を浮かべていた。ブロリーも再び謝った。

 

ブロリー「炭治郎、本当にすまない・・」

 

炭治郎「もういいですよ師範。大丈夫です。」

 

次に病床へと入ってきたのは"後藤"という名を持つ隠の一人である。柱合会議の際に炭治郎を怒鳴って起こした者である。彼はお盆に当時高級菓子のカステラを乗せて、食べたい衝動を必死に抑えていた。まだ炭治郎が意識が戻っていないと思われてるための贈り物だ、鼻がいい炭治郎の側に置けば目を覚ますかもと思い奮発したのだ。そんな後藤は病床に入ると、割れて散乱している花瓶を見て顔をしかめた。

 

後藤(片付けろや・・まぁ階級上だから言えんけどな・・俺二十三だけど。)カチャカチャ

 

後藤は、カナヲがなんでもやりっ放しで全然喋らないのは子供の時から鬼殺をやらせているせいだと思っているが、実は全く違う理由である。両親から虐待を受け続けた末に、心を守るために感情を無くしてしまったのだ。今となっては炭治郎達のお陰で徐々に感情を取り戻しつつある。後藤はしっかりと立場をわきまえて優しく丁寧な言葉遣いでカステラを置いた。

 

後藤「あのー、これカステラここに置いとくんで、暫くしたら下げてください。傷みそうだったら食べちゃっていいので。」

 

炭治郎「あ、ありがとうございます。」

 

後藤「意識戻ってんじゃねーか!!もっと騒げやアアア!!!」

 

炭治郎とそこそこの縁がある後藤は、心の奥底で物凄く心配していたのだ。遂に我慢できなくなった後藤はカナヲにおもいっきり怒鳴った。

 

後藤「オメーは本っ当にボーッとしてんな!!人を呼べっつーの!!!意識戻りましたってよ馬鹿野郎が!!みんな心配してんだからよ!!上とか下とか関係ねーからな今だけは!!」

 

カナヲ「ごっごめんなさい!」ペコペコペコ

 

カナヲは今回は自分に非があるとはっきりわかったために素直に謝ることにした。後藤は扉から半身を覗かせると、腹式呼吸を使って他の住人達を呼んだ。

 

後藤「きよちゃんすみちゃんなほちゃーん!!アオイちゃーん!!炭治郎意識戻ったぜえええ!!」

 

後藤の叫びにトテトテと駆けつけてきた三人は、炭治郎の状態を確認すると、揃って泣き出した。

 

きよ「よかったです~~。」

 

なほ「あんぱんあげます~~。」

 

すみ「カステラおちてる~~。」

 

そしてそこへ物凄く響いてくる大きな足音。

ドドドドドド!

部屋に入ってきたのは、白いシーツが全身に絡まったアオイである。

 

バーン

きよ「キャー!!お化けーっ!!!」

 

アオイ「ぶは~~っ!」バサッ

すみ「なーんだ、洗濯物が絡まったアオイさんかあ。」

 

アオイ「意識が戻って良かった~~!!!あたしの変わりに行ってくれたからみんな・・ウオオオン!!」ウオオオン!

 

アオイはそのまま炭治郎が寝ているベッドのシーツに顔を埋めて号泣した。因みに何故ブロリーの事を責めないのかというと、しのぶの計らいにより炭治郎の怪我は鬼との戦闘で負ったものと説明されているからだ。幸い炭治郎もそこは、しのぶのブロリーへの説教を間近で聞いていたためにわざわざ訂正するような野暮なことはしなかった。

 

炭治郎「ありがとう、他のみんなは?大丈夫ですか?」

 

後藤「黄色い頭の奴は今任務に行ってるぜ。相当嫌がってわめき散らしながら出たらしい。」

 

炭治郎「そうか、伊之助は?」

 

アオイ「伊之助さんはかなり元気そうだったの。"上弦の鬼を倒したぜぇぇ!"って叫んで暴れまわってて・・さっき任務が来てたと思う。」

 

炭治郎「そうか、じゃあ・・天井に張りついている伊之助は俺の幻覚なんだな・・」

 

炭治郎の言葉に全員が上を見上げると、昆虫の如く天井に張りついている伊之助がいた。

 

後藤「うわーッ!!!」

なほ「キャアアッ」

ブロリー「へぁっ!?」

 

伊之助「グワハハハ!!!よくぞ気づいた炭八郎!!」

 

炭治郎「俺、仰向けだから。」

 

伊之助は炭治郎に気づかれるとそのままベッドの上へ着地する。すみやアオイは反射的にカナヲやきよの後ろに隠れて防御態勢をとった。

 

伊之助「俺は鬼との戦いで気絶しなかった男!!」

 

炭治郎「良かった。伊之助は凄いなー。」

 

伊之助「へへっうふふっもっと褒めろ!!そしてお前は軟弱だ!!心配させんじゃねぇ!!」

 

すみ「伊之助さんが普通じゃないんですよ!しのぶ様も言ってたでしょ!」

 

すみが伊之助に注意している間にきよが何かを思い出したかのように本棚をガサゴソとあさり、やがて一冊の本をもって戻って来た。

 

きよ「そうだ、炭治郎さん見てください。この本。」

 

炭治郎「?」

 

きよが持ってきたのは動物図鑑であり、丁度四足歩行で歩く動物のページが開かれていた。

 

きよ「"ミツアナグマ"っていう外国のイタチです!!分厚い皮膚は鎧なんですよ。獅子に咬まれても平気なの。毒が効かないから毒蛇でも食べちゃうし。」

 

炭治郎「かわいい」

 

ブロリー(獣・・・焼いたら旨そうだな。)

 

きよの熱心の説明に、それぞれが様々な感想を心の内に秘めて聞いていた。

 

きよ「伊之助さんはこれと同じだってしのぶ様が。」

 

炭治郎「ふふ・・」

 

伊之助「・・・・」カチン

 

後藤「適当だな、胡蝶様も。」

 

アオイ「彼について考えるのが面倒くさくなったのでは?おりて!」

 

伊之助「つまり俺は不死身ってことだ!!」ワハハ

 

後藤「いや違うだろ、馬鹿じゃねーの。」

 

伊之助「誰が馬鹿だコノヤロー!!」ムキイイイ!

後藤「イデデデ!!」

なほ「キャーやめてください~~!」

 

伊之助が掴みかかっている間に炭治郎が再び寝るが、それに気づいているのはカナヲとブロリーだけであって、他の人たちはまだ騒いでいた。

 

アオイ「あなたは毒も効きづらいけど薬も効きづらいから気をつけなさいって!しのぶ様にも言われたでしょ!!すぐ忘れるんだから!!」

 

伊之助「うるせーな!引っ張んじゃねーよチビ!!」

 

カナヲ「し、静かにして・・静かに・・」

 

アオイ「何ですって!!たいして変わらないじゃないのよ!!」

 

カナヲ「炭治郎寝たから静かにして!」

 

ブロリー「カナヲの言うとおり、静かにした方がいいんじゃないか?」

 

カナヲが大声を出してようやく炭治郎が寝たことに気づいた伊之助達である。

 

伊之助「!あー!!またコイツ昏睡した!!」

 

アオイ「縁起の悪いこと言うんじゃないわよ!静かにしてください!」

 

きよ「カナヲさん。重湯作りに行きましょう。」

 

カナヲ「うん。早くたくさん食べて元気になるといいね。」

 

怪我はそんなに重くなかったことが幸いして、炭治郎は次の日には完治していた。ここで炭治郎があることに気づいた。

 

炭治郎「あっそうだ!俺が眠ってる間に刀届いてない?折ってしまったやつなんだけど。」

 

すみ「うっ!刀ですか?刀・・」ギクッ

 

炭治郎が刀があるかどうかを聞いた途端に、冷や汗を垂らす三人娘達、きよが代表するように伝えた。

 

きよ「鋼鐵塚さんからお手紙はきてます・・ご・・ご覧になりますか・・?」

 

きよが鋼鐵塚の手紙を渡すと、そこには"お前にやる刀は無い、許さない、呪う、にくい、憎い"とまるで呪文のように書かれており、炭治郎は顔を真っ青にした。

 

炭治郎「これは・・まずいぞ・・」

きよ「ですよね・・三日間あったんですけど届いてなくて・・」

 

炭治郎「う、うーん・・やっぱり二度目だからなぁ・・やっぱり許してくれないよなぁ・・」

 

すみ「刀の破損はよくあることなんですけど・・鋼鐵塚さんはちょっと気難しい方ですね・・」うーん

 

すみは首をかしげてどうすればいいの悩んでいた。そんな中、きよがかぶき揚げを食べながら炭治郎に提案した。

 

きよ「里の方に行ってみてはどうですか?直接会ってお話した方がよいかと。」バリボリバリボリ

 

炭治郎「里って?」

 

きよ「刀鍛治の皆さんの里です。」

 

炭治郎「えっ行っていいの?」

 

きよ「お館様の許可が降りれば恐らく可能かと。」

 

ブロリー「ほう、ならば炭治郎がそこへ行くのであれば俺も行こう。ちょうど刀を整備したいと思っていたところだぁ。」

 

炭治郎とブロリーが鎹鴉を使って耀哉に刀鍛治の里へ行きたいと申請を出せばこれがあっさりと通ったため、翌日には出発することになった。

翌日、蝶屋敷の前には女の隠の人と男の隠の人が迎えに来ていた。炭治郎は、隊服へと衣替えしてブロリーはいつもの服装だった。

 

隠(女)「はじめまして。お館様より許可が出ましたので私がご案内します。」

 

隠(男)「同じく私もご案内します。」

 

炭治郎「はじめまして!竈門炭治郎です。よろしくお願いします!」ペコー

 

ブロリー「ブロリーだ。今日は頼むぞ。」

 

隠(女)(男)「「案内役の事情で名乗ることはできませんが、よろしくお願いします。」」

 

隠(女)「ではこれを。」スッ

 

女の隠が取り出したのは目隠しと耳栓であった。ブロリーはしのぶと共に産屋敷邸に行く際に見たことがあるが、炭治郎は全く知らないため、頭にクエスチョンマークを浮かべていた。

 

炭治郎「これは・・?」

 

隠(男)「目隠しと耳栓です。」

 

隠(女)「里の場所は隠されているので私たちを含めて誰も知りません。それとあなたは私が背負っていきます。」

 

炭治郎「えっ?」

 

隠(男)「さらに鼻が利くというあなたには鼻栓を。」ぶぎゅ

 

炭治郎「わー!」

 

里の場所は鬼に襲撃されるのを防ぐために柱でさえも知らないところにある。一定の距離で次の隠へと引き渡す。いわゆる陸上の駅伝のようなものである。炭治郎が襷役で背負って行く隠がランナー役といえば分かりやすいだろう。そして隠し達も頻繁に道順を変えるため、一人でたどり着くことが不可能なのだ。その事を手短に炭治郎達に伝えて、ブロリーにも同じように目隠しと耳栓をして背負おうとするが。

 

隠(男)「うっ・・むっ無理・・」ドシャア

 

隠(女)「あんたしっかりしなさいよ!その方は破壊柱様よ!あんたが尻餅ついて何かあったらどうするの!?」

 

隠(男)「そんな事言われたって破壊柱様大きいし重いんだよ。流石にこの人は俺一人で運べないよ・・!」

 

隠(女)「弱音吐いてんじゃないわよ。私達二人しかいないんだからあんたが運べないならどうするのよ?」

 

ブロリーの身長があまりにも高くて背負われても地面に足がついてしまい、かといって足がつかないように意識しすぎると彼の全体量がのし掛かるために全く動けず、運べない事態に陥ったのだ。隠が途方に暮れていると、それを見透かしたかのように産屋敷の鎹鴉が伝令を伝えにやって来た。

 

鎹鴉「カァーッ!カァーッ!伝令!伝令!案内担当ノ隠達二告グ!破壊柱ブロリーヲ運ベナイ場合ハ目隠シト耳栓ヲ外シテ自力デ動クヨウニ伝エロ!カァーッ!カァーッ!」

 

隠「「!!」」

 

伝令を聞いた隠達はブロリーの目隠しと耳栓を外して、詳細を伝えた。

 

隠(女)「申し訳ありません破壊柱様。お館様よりあなたは自分で向かうように言われまして、それでもよろしいでしょうか?」

 

ブロリー「・・まぁ仕方あるまい。それよりも貴様・・」ギロッ

 

隠(男)「!!」ビクッ

 

ブロリーは急にギロリと男の隠を睨み付けて怒りの感情をあらわにして威圧ある声で言った。

 

ブロリー「誰がでかくて重いだと?貴様は俺が太ってるとでも言いたいのか?」ゴゴゴゴゴ

 

隠(男)「ひぃっ!!すっすみませんでした!!」ドゲザー

 

ブロリーが放つ殺気と重圧に耐えきれなくなった男の隠は思わず土下座して詫びるのだった。それを見たブロリーは、興ざめしたようにそっぽを向いた。

 

ブロリー「次は気をつけろ。」

 

隠(男)「はっはい!」

 

改めてブロリーは自力で刀鍛治の里に向かうために、走り出す二人の隠のピッタリ後ろについて低空飛行していった。別の隠へと移る際に、炭治郎が「ありがとうございました!お疲れ様です!よろしくお願いします!」と言うので隠達は皆ホッコリしていた。それを何度か繰り返した後に、刀鍛治の里へと到着した。

 

隠(女)「外しますよ。」スポッ ジャリッ シュルシュル

 

炭治郎「!わーーー!!!すごい建物ですね!!しかもこの匂い!!近くに温泉があるようだ!」

 

隠(女)「ありますよ。」

 

ブロリー「炭治郎、温泉ってなんだ?」

 

「「「えぇーーっ!!?」」」

 

ブロリー「それになんだ?この卵が腐ったような異臭は?」

 

ブロリーは産まれて一度も温泉を見たことも聞いたこともなかったので、里全体に行き渡っている硫黄の匂いに思わず鼻を隠していた。そして温泉を知らないブロリーに対して炭治郎達も驚きを隠せなかった。炭治郎は戸惑いながらもブロリーに温泉の説明をした。

 

炭治郎「えっと。温泉というのはマグマで温められたお湯が地面から直接湧いているんですよ。それとこの匂いは硫黄ですね。」

 

ブロリー「硫黄?」

 

炭治郎「はい。硫黄というのは、火山の近くで取れる結晶で色々な医薬品使われてるんですよ。」

 

ブロリー「ほう・・温泉とやらは身体にいいってことだな。それは飲み物なのか?」

 

炭治郎「違いますよ。入って暖まったり身体を洗ったりするんです。温泉は簡単に言えば自然に湧いているお風呂です。」

 

ブロリー「なるほどな。自然に湧く風呂か。」

 

炭治郎とブロリーが温泉について色々と問答しているとしびれを切らしてきた隠達が話題を出した。

 

隠(女)「あのー、そろそろ本題に入っても?あちらを左へ曲がった先が長の家です。一番に挨拶を。」

 

炭治郎「はい!」

 

隠(女)(男)「「私達はこれで失礼します。」」ペコ

 

ブロリー「ご苦労だったな。」

 

炭治郎「ありがとうございました!!」

 

ありがとうございました・・!!

 

炭治郎が隠達に言った感謝の言葉は、やまびこになって刀鍛治の里中に響き渡った。それを聞いた一人の温泉に浸かる女性の柱がいた。恋柱の甘露寺蜜璃である。

 

蜜璃「ん?感謝のやまびこが聞こえた。誰か来たのかしら?何だかドキドキしちゃう。」

 

彼女が今入っている温泉の効能は、"切り傷・やけど・いぼ痔・切れ痔・便秘・痛風・糖尿病・高血圧・貧血・慢性胆のう炎・筋肉痛・関節痛・性格の歪み・思いやりの欠如・鼻炎・へその痒み・失恋の痛み"など、肉体的にも精神的にも癒される極上の温泉で人気が高い。彼女自身もよく愛用する温泉である。

一方炭治郎達は鍛治の里の長が住む家に着いていた。早速中へ上がった炭治郎とブロリーは、挨拶をしていた。一番前の座布団に座っている小柄な老人が、この鍛治の里の長である鉄地河原鉄珍である。

 

鉄珍「どうもコンニチハ。ワシこの里の長の鉄地河原鉄珍、よろぴく。里で一番小さくて一番偉いのワシ、まあ畳におでこつくくらいに頭下げたってや。」

 

炭治郎「竈門炭治郎です!よろしくお願いします!」ペコーッ ゴン!

 

ブロリー「へぁっ!?俺はブロリー、破壊柱だ。よろしく頼む。」

 

鉄珍の言葉を鵜呑みにした炭治郎は、畳に勢いよく頭を打ち付けてブロリーを驚かせていた。ブロリー自身も頭を下げることはしなかったが、最低限の自己紹介はしていた。

 

鉄珍「柱の方でしたか。それとそっちの子もまあええ子やな。おいで、かりんとうをあげよう。」

 

炭治郎「ありがとうございます!」ボリッ

 

ブロリー「うまいです。」ボリッ

 

鉄珍「蛍なんやけどな今行方不明になっててな、ワシらも捜してるから堪忍してや。」

 

炭治郎「蛍?」ボリッ

鉄珍「そうや鋼鐵塚蛍。」

 

炭治郎「可愛い名前ですね!」ボリッ

鉄珍「ワシが名付け親。」

 

ブロリー(全く、何処へ行ってるのやら。)ボリッ

 

鉄珍「可愛すぎ言うて本人から罵倒されたわ。」

 

炭治郎「それは悲しい。」

 

鉄珍「あの子は小さい時からあんなふうや。すーぐ癇癪起こしてどっか行きよる。すまんの。」はー

 

炭治郎「いえいえそんな!俺が刀を折ったりすぐ刃こぼれさせたりするからで・・」

 

鉄珍「いや、違う。折れるような鈍を作ったあの子が悪いのや。」ビリビリ

 

炭治郎「・・・・ッ」

 

炭治郎は鉄珍から感じる怒りの匂いに、かりんとうを食べる手を止めて冷や汗を垂らしていた。そして鉄穴森が拳を振り回しながら炭治郎とブロリーに意気込む。

 

鉄穴森「見つけ次第取り押さえて連れて参りますので、ご安心ください。」ブンブン

 

炭治郎「えっ!?あまり乱暴は・・」

 

ブロリー(ここにいる奴らは血の気が多いのばかりだな。)

 

鉄珍「君もまだ鬼狩りに行ける程万全の状態ではないと聞いてる。それまでに蛍が刀を打たない場合、別の者を君の刀鍛治にする。うちの温泉は弱った体によく効くから、まあゆっくり過ごしてや。」

 

鉄珍の家を後にした炭治郎とブロリーは、温泉を目指してひょっとこの面を着けた里の住人に案内されていた。

 

炭治郎(喧嘩にならないといいな。)

 

「この坂の上が温泉です。私は下でお食事の準備をしておきますので。」

 

炭治郎「はい。」

 

二人が坂を登っていると、反対から蜜璃が涙目になって坂をすごい勢いで駆け下りてきていた。

 

蜜璃「あーーっ!!!炭治郎君にブロリーさんだ!!炭治郎くーん!!ブロリーさーん!!」ダダダダダ

 

炭治郎「あっ気をつけてください!!乳房が零れ出そうです!!」

 

ブロリー「蜜璃カワイイ!!」

 

蜜璃「うわーん!!」ギュウ

 

ブロリー「へぁっ!?ぬう!危ない危ない。」グググ

 

蜜璃は坂を駆け下りた勢いそのままに、泣きながらブロリーに抱きついた。ブロリーが足に力を入れて耐えてなかったら二人とも回転しながら転げ落ちていたと思うほどの衝撃が二人を襲った。

 

蜜璃「聞いてよ聞いてよ~!」わーん

 

炭治郎「危ない!!」

 

蜜璃「私今そこで無視されたの~。挨拶したのに無視されたの~。」

 

炭治郎・ブロリー「誰にですか?/誰だぁ?」

 

蜜璃「わかんないの~!!!だから名前聞いたのに無視なの~。酷いと思わない?私柱なのに~。」わー バタバタ

 

ブロリー「それは悲しいな。」ポンポン

 

蜜璃「お風呂上がりのいい気分がもう全部台無し!!」めそ!めそ!めそ!

 

ブロリーの腹部で顔を覆って号泣している蜜璃に、炭治郎はとっさに晩御飯の話題をして気をまぎらわせそうとした。

 

炭治郎「もうすぐ晩御飯ができるみたいですよ。松茸ご飯だそうです。」

 

ブロリー「そういやそんな事を言ってたな。」

 

蜜璃「えーーっ!!!ほんとォ!?」パアア

 

蜜璃はご飯ができると聞いて、さっきまでの表情とは一変して心底嬉しそうに微笑み、鼻歌を歌いながら坂を下っていった。

 

炭治郎(食いしん坊。)

 

ブロリー(蜜璃の食欲は俺達サイヤ人みたいに多いからな。)

 

蜜璃とは反対に炭治郎とブロリーは引き続き坂を登り、遂に温泉に到着した。

 

炭治郎(わー広い!!)

 

ブロリー「広いです・・俺達の貸しきリーです・・まず身体から洗ってから入ろう。」

 

炭治郎「はい。・・あいた。」びちっ

 

炭治郎が元気に返事すると同時に彼の後頭部に何かが当たり、手を出して受け止めてみると、それは誰かの前歯だった。

 

炭治郎「!!」(歯の落とし物!)

 

ブロリー「炭治郎・・そんなもん拾うな。」

 

飛んできた方を見ると、誰かが温泉に浸かっていた。側面の刈られた髪をしていて、体格がかなりよくなっている炭治郎の同期。実弥の実の弟である"不死川玄弥"である。

 

ブロリー(どっかで見たなあいつ・・)

 

炭治郎(側面の刈られた頭、すみちゃんが教えてくれた名前・・)「不死川玄弥!!」

 

玄弥「!死ね!」

 

玄弥に怒鳴られた炭治郎は服を脱ぎ捨てて温泉に入ると、そのまま泳いで玄弥の目の前で顔を出した。

 

ザブン スイー

 

ブロリー「泳ぐな炭治郎。」

 

炭治郎「久しぶり!!元気でやってた!?風柱と名字一緒だね!!」

 

玄弥「話しかけんじゃねぇ!!」ドブン!

 

玄弥は怒鳴りながら炭治郎をお湯に沈めると、そのままでて坂を下って行ってしまった。取り残された炭治郎は呟いた。

 

炭治郎「裸のつき合いで仲良くなれると思ったんだけど、人間関係って難しいな。」

 

ブロリー「炭治郎、俺も入るぞ。」

 

ブロリーもいつも履いているズボンを脱いで金の首飾りを取ったとき、ブロリーの体を見た炭治郎が驚いて叫んだ。

 

炭治郎「えーーッ!!し・・師範!そっそれっそれは!?」ワナワナ

 

炭治郎が見て驚いたもの、それはブロリーの後ろにあった。彼の尾てい骨付近から伸びている赤茶色の細長い尻尾だった。

 

ブロリー「なんだ?どうかしたのか?」

 

炭治郎「どうかしたのかじゃありませんよ!師範の後ろに何かついてるんですよ!尻尾みたいな赤茶色の物が!」

 

ブロリー「?これか?尻尾だが?」

 

炭治郎「なっ何故生えてるんですか!?」

 

ブロリー「サイヤ人は皆生えてるぞ。」

炭治郎「ゑゑゑっ!?」

 

ブロリー「サイヤ人は戦闘民族という宇宙人だ。前にも言っただろう。地球の人間とは違うんだ。」

 

ここまで言われてようやくブロリーがサイヤ人だったことを思い出した炭治郎。そしてようやく納得した。

 

炭治郎「そ・・そうですよね。師範はサイヤ人でしたね。やっと思い出しました!でも種族が違っても俺の師範ってことには変わりありません!」

 

ブロリー「わかればいい。少ししたら温泉から出て腹ごしらえでもするか。」

 

炭治郎「はい!」

 

禰豆子「ムー♪」スイー

 

炭治郎とブロリーと禰豆子は、温泉に入って身も心もリフレッシュして坂を下って戻った。建物の中で再び蜜璃と合流した三人は、松茸ご飯を始めとする晩御飯を食べていた。ブロリーと蜜璃の周りには空になった食器が山のように連なっていて、炭治郎は二人の食欲に素直に尊敬した。

 

炭治郎「師範も甘露寺さんもすごいですね。」

 

蜜璃「そうかな?今日はそんなに食べてないけど///」

 

ブロリー「そうだな。まだ腹七分と言ったところか。」

 

炭治郎「俺もいっぱい食べて強くなります!!あっそうだ、甘露寺さんが温泉で会ったのは不死川玄弥という俺の同期でしたよ。」

 

蜜璃「えっ!!そうだったの~~・・不死川さんの弟でしょ?でも不死川さん弟いないって言ってたの。仲悪いのかしら・・切ないわね。」

 

炭治郎「そうなんですか・・どうしてだろう・・」

 

ご飯を食べ終わった蜜璃は、禰豆子と戯れながら炭治郎と話をするという器用なことをしていた。

 

蜜璃「私のうちは五人姉弟だけど仲良しだからよくわからなくて、不死川兄弟怖って思ったわ~~。」こちょこちょ

 

禰豆子「んー♪」キャッキャッ

 

炭治郎「玄弥はまだ来ないですね、本人と少しでも話せるといいんですが。」

 

禰豆子「ムー♪」ぎゅー

 

蜜璃「あの子来ないみたいよ。全然食事しないって里の人が話してた。何か持ってきてるのかしら?」

 

ブロリー「だとしたら何故わざわざ食い物を持ってくるんだ?ここの飯は普通に旨いんだが。」

 

蜜璃「ブロリーさんもそう思いますよね!ここのご飯は美味しいのですよ!なのに食べないつもりなのかしら?もったいないわ。」

 

炭治郎「・・大丈夫かな?後で握り飯でも持っていこう。」

 

蜜璃「そうね!そうしましょう。」

 

食事を終えた四人は、建物の縁側を歩いて玄弥が使う予定である部屋に向かった。不意に炭治郎は蜜璃が鬼殺隊に入った理由が気になって聞いていた。

 

炭治郎「甘露寺さんは何故鬼殺隊に入ったんですか?」

 

蜜璃「え?私?恥ずかしいな~。えーどうしよう聞いちゃう?あのね・・」もじもじ

 

蜜璃は恥ずかしいのか、顔を真っ赤に染めて両頬に手を当ててもじもじしながらその答えを言った。

 

蜜璃「添い遂げる殿方を見つけるためなの!!」キャーーッ

 

炭治郎「・・・。」ポカーン

 

炭治郎は自分の想像よりも遥か斜め上を行く答えを聞いて、驚きすぎて硬直していた。

 

蜜璃「やっぱり自分よりも強い人がいいでしょ?女の子なら。守ってほしいもの!わかる?この気持ち。男性には難しいかな?ほら、柱の人は強いでしょ?でもなかなか会えないからね、自分も柱にならないとね。だから私すごい頑張ったのね。」

 

ブロリー「いいと思うぞ。」

 

蜜璃「ブロリーさん!」

 

ブロリー「女らしいいい理由だと俺は思うぞ。どんな理由でもそれを貫いて達成するために鬼殺隊を続けて柱になることは、生半可なことでは出来ない。蜜璃がその目的に本気で取り組んでいる証ではないか。肉体的ではなくて気持ちが強いんだな。俺はその気持ちを否定はしないぞ。」

 

蜜璃「うわぁ///ありがとうございます///そんな風に誉められてのは初めてです///私ももっと本気で頑張ってみますね!」

 

ブロリー「あぁ。」

 

蜜璃「ブロリーさんは何故鬼殺隊に入ったんですか?」

 

ブロリー「俺か?俺は傷だらけで死にかけて気を失っていたところを炭治郎と禰豆子に助けられたんだ。その時に理由を聞いて、私利私欲の目的はなくて純粋に俺を助けたいということが分かったんだ。炭治郎と禰豆子に恩を返すために禰豆子を人間に戻す炭治郎の理由に全力で協力する。それが俺の理由だ、いや、理由というより使命だな。」

 

蜜璃「炭治郎君とブロリーさんはお互いを慕い合っているんですね!素敵!」キュン

 

話し合っている内に玄弥が使う予定の部屋に到着したが、そこにはやはり玄弥の姿はなかった。そこへ隠の人が、蜜璃の武器がもうすぐ出来上がることを知らせにやって来た。

 

蜜璃「玄弥君いないわねー。」

炭治郎「うーん・・」

 

隠「甘露寺様。間もなく刀が研ぎ終わるそうです。最後の調整で工房の方へ来ていただきたく・・」

 

蜜璃「あらー。もう行かなきゃいけないみたい。」

 

炭治郎「気になさらず!お見送りします。」

 

ブロリー「俺も見送ろう。」

 

蜜璃「いいのよ。多分深夜発つことになるから。」

 

炭治郎「いや、でも・・そうですか・・うーん・・」

 

蜜璃「炭治郎君、今度また生きて会えるかわからないけど、頑張りましょうね。あなたは上弦の鬼と戦って生き残った。これはすごい経験よ。実際に体感して得たものはこれ以上ない程の価値がある。五年分十年分の修行に匹敵する。今の炭治郎君は前よりももっとずっと強くなってる。甘露寺蜜璃は竈門兄妹を応援してるよ~~。」ニコーッ

 

蜜璃の笑顔は純粋に禰豆子と炭治郎を全力で応援しているとわかり、二人は自然と笑みを浮かべた。

 

炭治郎「ありがとうございます。でもまだまだです俺は。宇髄さんと師範に"勝たせてもらった"だけですから。もっともっと頑張ります。鬼舞辻無惨に勝つために!」

 

蜜璃は、炭治郎の謙虚な姿勢と強い気持ちを感じ取って笑顔を浮かべた。そして今度はブロリーの方を向くと、その笑顔が満面のものになった。

 

蜜璃「それからブロリーさん。貴方にも改めてずっとお礼が言いたかったんです。お館様を苦しい呪いから解き放って本当にありがとうございます!」

 

ブロリー「俺は大したことはしていない。鬼舞辻無惨のせいで散々な目にあってたらしいからな。まああいつらが嬉しそうだったからそれでよかったがな。」

 

蜜璃「それでも私も本当に嬉しいの!それとブロリーさん。貴方と私ってなんか似てますね。恥ずかしいけど・・沢山食べるところだったり、力が強いことだったり。」

 

ブロリー「あぁ、似ているな。」

 

蜜璃「でもその反面貴方は優しい。私、貴方をかなり意識していますから!また生きて会えるかわかりませんけどお互い頑張りましょうね!」

 

ブロリー「蜜璃、次は確実に会えるぞ。」

 

蜜璃「?どうしてですか?」

 

ブロリー「俺はムシケラごときには殺されない。炭治郎や禰豆子、もちろんお前達も含めて全員死なせない。蜜璃が危なかったら俺が助けてやる。」

 

蜜璃「!ありがとうございます///本当に素敵!///」

 

ブロリーとの話が終わると、再び炭治郎の方を向いてもじもじし出した。

 

蜜璃「炭治郎君は長く滞在する許可が出てるのよね?」

 

炭治郎「あっハイ、一応は・・」

 

蜜璃は炭治郎の真横まで来ると、ひっそりと耳打ちした。

 

蜜璃「この里には強くなるための秘密の武器があるらしいの。探してみてね。」ヒソヒソ

 

蜜璃「じゃあね!」

 

それだけ言うと蜜璃は隠についていってその場を去っていった。残された炭治郎は可愛い女性に耳打ちされたことを理解して鼻血を吹き出すのだった。

刀鍛治の里にたどり着いた炭治郎と禰豆子とブロリー。ゆっくりしてもよいと言われても感覚を鈍らせないために体に刺激をいれる程度の鍛練はしようと、心に決めるのだった。




今回からは刀鍛治の里編です。主はここから先の展開が上手く妄想できてないので、今後は更にゆっくり投稿になると思います。迷惑をかけますが、どうかよろしくお願いします。それではまた次回。


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霞柱・時透無一郎登場!炭治郎命がけの修行!

第二十七話です。なんとか三週間間が空くより前に投稿できて安心している主です。相変わらずこんな小説ですが、最後まで読んでくれると嬉しいです。


刀鍛治の里に到着したその翌日、炭治郎とブロリーは蜜璃が言っていた秘密の武器を探しに木々が覆い茂る林へと来ていた。

 

炭治郎「甘露寺さんの言ってた武器って何ですかね?」

 

禰豆子「うー。」

 

ブロリー「やはり刀ではないか?俺は必要ないが、お前達はムシケラ共を倒すには必須の物だろう。日輪刀を探し出すと考えるのが普通だと思うが。」

 

炭治郎「師範もそう思いますか?俺も刀じゃないかなと思ってたんです。埋まってたりするんですかね?宝探しみたいでわくわくしますね。」

 

ブロリー「そうだな。たまにはこういう事も悪くない。今日は武器を見つけ出す。ついてこい、お前達!」

 

炭治郎/禰豆子「はい!/ムー!」

 

だが、炭治郎達の目的はそれだけではない。鋼鐵塚を探し出すことも視野にいれなければいけないのだ。炭治郎は得意の鼻で匂いを嗅ごうともしたが、体力が万全ではないのと温泉の硫黄の匂いが強いためあまり機能しないのだ。

 

炭治郎「すごくいいところだけど温泉の匂いが強いなぁ。うーん。体力が万全じゃないのも鼻が利きにくい原因だ。鋼鐵塚さんを早く見つけたいんだが・・」

 

ブロリー「ここに住んでいる奴らでも見つけるのに手こずっているんだ。里の形も把握していない俺達が見つけるのは容易ではないだろう。」

 

炭治郎「ですよね・・ん?」

 

炭治郎が見つけたものは、ひょっとこの面を着けた刀鍛治の里の子供"小鉄"と鬼殺隊の霞柱である"時透無一郎"の二人だ。どうやら揉め事をしているようだった。

 

炭治郎「あれ?確か柱の・・何て言ってたっけしのぶさん・・そうだ。霞柱、時透無一郎だったはず。」

 

小鉄「どっか行けよ!!何があっても鍵は渡さない!使い方も絶対教えねぇからな!!」ギャー

 

炭治郎(何だろう?もしかして揉めてるのかな?どうしよう・・盗み聞きは良くない。だけど揉め事だったら仲裁しないと!)

 

ブロリー「なにしてんだ?あの餓鬼と小僧は?」

 

一方的に捲し立てられている無一郎はゆっくりと右手をあげると、そのまま手刀を小鉄の首にぶつけて転ばせる。そのまま小鉄の胸倉を掴むと、締め上げた。

 

無一郎「・・・・」グググ

 

小鉄「ぐ・・うぐ・・」

 

それを見た炭治郎は思わず飛び出し、ブロリーも後を追って飛んでいく。

 

炭治郎「やめろーっ!!何してるんだ!!手を放せ!!」ガシィ

 

無一郎「声がとてもうるさい・・誰?」

 

炭治郎「子供相手に何してるんだ・・!!手を・・ぐっ」(びくともしない!!)

 

炭治郎は無一郎の片手を全く動かせないことに驚きを隠せない。無一郎の体は炭治郎よりも小さく、筋肉量も炭治郎より少ないのだ。なのにも関わらず炭治郎が全力で手を放させようとしているのに、本人は涼しい顔でうざそうにしていた。

 

無一郎「君が手を放しなよ。」グッ

 

無一郎が空いているもう片方の手で炭治郎の鳩尾に肘をいれようとしたが、その前にブロリーが無一郎の腕を掴んで止める。

 

ブロリー「やめろ。何炭治郎に手を出そうとしているんだ小僧?」

 

炭治郎「!師範!」(見えなかった・・!この子の肘の動きが・・!師範が止めてくれなかったら、俺は鳩尾を討たれて悶絶していた・・!)

 

無一郎「貴方は確か・・お館様を助けてくれた人・・誰だっけ?思い出せないや・・同じ柱だってことは覚えてるけど・・」

 

ブロリー「ブロリー、破壊柱だ。手を退かせ。」バッ

 

ブロリーは無一郎の肘を乱暴に払う。無一郎は炭治郎を見ると、光が灯ってない目で蔑んだ。

 

無一郎「君、すごく弱いね。よく鬼殺隊に入れたな・・貴方もよくこんな人を継子にしたね。」

 

ブロリー「何だと?」

 

無一郎「その人、僕の肘の動きを目で追うことすら出来てなかったよ。貴方が止めていなかったら今頃地面に蹲って悶絶してたよ?この程度の動きにもついてこれないような人をなんで継子にしたの?継子ならもう少し有能な人にした方がいいと思う。」

 

ブロリー「炭治郎を侮辱するな小僧。助太刀こそはしたが、上弦の頚を斬ったのは炭治郎だ。耀哉から聞いたぞ、上弦を倒したのは百年ぶりだとな。俺は炭治郎を弟子にしたことに後悔はない。上弦と遭遇してすらいない分際で分かったように言うな。」

 

炭治郎は無一郎に言われたことに抗議しようとしたが、その前にブロリーが無一郎に言ったことが嬉しかったらしくて純粋な笑みを浮かべた。しかし、無一郎は耀哉が呼び捨てにされたことに怒りを覚えていた。

 

無一郎「・・貴方お館様に慕う気あるの?なんでお館様を呼び捨てにしてんの?鬼殺隊の最高司令のお館様に忠誠を誓うのは当然のことだよ。そんなこともわからないの?」

 

ブロリー「そんな下らんことわかる必要もない。それに呼び捨ては耀哉公認だ。お前如きに指図される筋合いはない。」

 

無一郎「・・・・!」

 

無一郎は自分の手を見るとそこには小鉄の羽織のみ残っており、本人は炭治郎によって少し離れたところに引き離されたことがわかった。

 

炭治郎「大丈夫?」

 

無一郎(とられた・・)

 

小鉄「はっはなせよ!」ドンッ

 

炭治郎「目が回っているだろう?危ないよ。」

 

小鉄「あっち行け!!」

 

小鉄は炭治郎を突き飛ばしてから暴れ、何かを守るように震えながら断固として拒否の意思を示した。

 

小鉄「だ、誰にも鍵は渡さない。拷問されたって絶対に!"あれ"はもう次で壊れる!!」

 

無一郎「拷問の訓練受けてるの?大人だってほとんど耐えられないのに君は無理だよ。度を超えて頭が悪い子みたいだね。壊れるから何?また作ったら?君がくだらないことをぐだぐだぐだぐだ言ってる間に、何人死ぬと思ってるわけ?」

 

無一郎は炭治郎と小鉄を見下すかのように冷たい視線でそう言いはなった。無一郎は人にあまり配慮しない合理主義なのだ。

 

炭治郎「!?」

 

無一郎「柱の邪魔をするって言うのはそういうことだよ。柱の時間と君たちの時間は全く価値が違う。少し考えればわかるよね?刀鍛治は戦えない、人の命を救えない、武器を作るしか脳がないから。ほら、鍵。自分の立場を弁えて行動しなよ。赤ん坊じゃないんだから。」

 

パァン

 

無一郎は手を差し出し、小鉄は恐怖で震えていた。炭治郎は、そんな無一郎の手を叩いた。

 

小鉄「!!」

 

無一郎「何してるの?」

 

炭治郎「こう・・なんかこう・・すごく嫌!!何だろう、配慮かなぁ!?配慮が欠けていて残酷です!!」

 

無一郎「この程度が残酷?君・・「正しいです!!」

 

炭治郎は無一郎の言葉を遮ってから自身の言葉だけでは伝えきれずに、身振り手振り動かして言った。

 

炭治郎「あなたの言ってることは概ね正しいんだろうけど!間違ってないんだろうけど!刀鍛治は重要で大事な仕事です!剣士とは別の凄い技術を持った人たちだ!だって実際刀を打ってもらえなかったら俺達何もできないですよね?剣士と刀鍛治はお互いがお互いを必要としています!戦っているのはどちらも同じです!俺達はそれぞれの場所で日々戦って・・「悪いけど。」

 

今度は無一郎が炭治郎の言葉を遮り、心底うざそうに顔をしかめた。

 

無一郎「くだらない話に付き合ってる暇ないんだよね。」ガシッ

 

無一郎は炭治郎の頚目掛けて手刀を当てようとしたが、その前にブロリーが再び無一郎の腕を掴んで止めた。

 

無一郎「・・貴方まで何してるの?」

 

ブロリー「お前こそ何してる?炭治郎に手を出すなと言っただろう。言葉の意味すらわからないのか小僧。」

 

無一郎「貴方も柱でしょ?その子達に時間をかける暇があるなら一体でも鬼を狩ったらどうなの?」

 

ブロリー「それは貴様にも全く同じことが言えるのではないか、こんなところで何してる?」

 

無一郎「人形で修行するために来たんだよ。なのにその子がぐだぐだくだらないことを言ってるから時間の無駄になってるの。」

 

ブロリー「要は修行がしたいんだろう?ならば俺が相手になってやる。」

 

炭治郎「!!?師範!?」

 

無一郎「・・どういうこと?」

 

ブロリーの唐突な修行の相手宣言は、炭治郎だけではなく無一郎本人までもを驚かせたらしい。実際に無一郎は少し目を開いて考えが追い付いていないようだった。

 

ブロリー「人形よりも意思を持った俺と戦う方がいい修行になるだろう。俺はムシケラにも刀ではなく素手で戦うからな。お前も組手として戦えば時間の無駄にはならないのではないか?」

 

無一郎「・・わかった。いいよそれで。でも真剣で貴方を殺す気でいくし、一瞬で終わるから。」

 

ブロリー「フフフ!そうこなくっちゃ面白くない。」

 

炭治郎「師範!駄目ですよ!隊員同士の斬り合いは隊律違反です!どうか考え直してください!」

 

ブロリー「炭治郎、これは柱同士の修行だ。隊律違反ではない。安心しろ。」

 

無一郎「いつまで君は僕の邪魔をすれば気が済むの?そろそろいい加減にしてよ。」

 

ブロリーと無一郎は、歩いて木々を抜けて少し開けたところへ来ると、片方は日輪刀を構えてもう片方は拳を握りしめて臨戦態勢を取った。

一方の炭治郎はブロリー達を心配そうに見ていたが、とりあえず目の前の小鉄も心配だったためそっちを優先することにした。

 

炭治郎「大丈夫だった?なんか俺事情も知らないでゴチャゴチャ言っちゃったけどよかったのかな・・」

 

小鉄「いえそんな!嬉しかったです!見ず知らずの俺を庇ってくれて・・ありがとうございました。」ペコス

 

炭治郎「いやいや、役に立てず・・そうだ、結局人形の鍵ってなんのことだったの?」

 

小鉄「からくり人形です。」

 

炭治郎「んっ?からくり人形?」

 

小鉄「はい、俺の先祖が作ったもので百八つの動きができます。」

 

炭治郎「へぇー!!すごいね!!」わー!!

 

小鉄「人間を凌駕する力があるので戦闘訓練に利用してるんです。」

 

炭治郎「そうか、彼は訓練のためにそれを・・」

 

小鉄「はい・・だけど老朽化が進んで壊れそうなんです。」

 

ガキィン!

 

二人が話し合っていると金属の衝突音が響いた。

 

炭治郎「わぁ!師範!?」

 

小鉄「さっきの人達がもう・・こっちです。」

 

二人が音のする方へ行くとそこには真剣で斬りかかっている無一郎と、素手で『スーパーサイヤ人』形態になっているブロリーが高笑いしながら組手を行っていた。

 

ブロリー「フハハハハハ!!」ドカドカドカドカ

 

無一郎「・・っ・・」ギャギャギャギャ

 

無一郎は柱なのでブロリーに斬りかかるスピードも反射神経も常人を凌駕する程の才能の持ち主なのだが、一方のブロリーはかつて宇宙を破壊してきた"伝説のスーパーサイヤ人"である。既に上弦の鬼を二体も倒していて、耀哉からも鬼殺隊歴代最強の隊士と太鼓判を押されているのだ。そんなブロリーに柱がたった一人で挑めば、結果は火を見るよりも明らかである。今無一郎は完全にブロリーに圧されていたのだ。でも炭治郎はなんとかブロリーの動きについていけている無一郎を感心していた。

 

炭治郎「あの人・・凄いなぁ。俺とそんなに年も違わないのに柱で・・才能があって・・」

 

「ソリャア当然ヨ!!アノ子ハ"日ノ呼吸"ノ使イ手ノ子孫ダカラネ!」

 

炭治郎「!?」

 

炭治郎達が突然の声に驚いて後ろを振り返ると、一羽の雌の鎹鴉が大威張りで得意気に語っていた。

 

鎹鴉「アノ子ハ天才ナノヨ!!アンタ達トハ次元ガ違ウノヨ!ホホホホ!!!」

 

炭治郎「時透君の鴉かい?日の呼吸って"始まりの呼吸"の・・あの子はそんなにすごい人なのか・・でも日の呼吸じゃないんだね使うの・・それと今師範に圧されてるけど・・」

 

鎹鴉「!!ウルサイワヨ!!黙ンナサイヨ!!アンタノ師範ガオカシイノヨ!!目ン玉ホジクルワヨ!!」グイーッ

炭治郎「ア゛ーーッ!」

 

日の呼吸を無一郎が使えないと言うことは鎹鴉にとって禁句だったのか、思いっきり炭治郎の頬を摘まんで引っ張った。そんなことをしている内に、ブロリーと無一郎の組手に決着がつきそうになっていた。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ガッ

 

無一郎「っ!」ズザザーッ

 

ブロリーがラリアットを決めて無一郎は後ろに吹き飛ばされるが、すぐさま体制を再び整えて呼吸を使おうとする。

 

無一郎「霞の呼吸・・「遅い!」!!」

 

無一郎が呼吸の構えをとるも、既に視界からブロリーは消えていた。そして真後ろから声が聞こえて無一郎は本能的に距離をとろうとする。

 

ブロリー「フン!」ドン!

 

無一郎「!!・・」バタッ

 

しかし、無一郎が動くよりもブロリーが手刀を決める方が早かった。もろに受けた無一郎はそのまま地面に倒れて気絶した。それを確認したブロリーは無一郎を抱えて炭治郎達の元へと移動した。

 

炭治郎「師範!終わったんですか?」

 

ブロリー「あぁ、終わった。中々楽しい時間だったぞ。気絶はさせたが傷つけたわけではないから隊律違反にはならないだろう。」

 

炭治郎「そうですか・・時透君!起きて!時透君!」ゆさゆさ

 

無一郎「・・・・」パチッ

 

炭治郎が無一郎の肩を揺すると無一郎が目を覚ましてゆっくりと起き上がった。少しぼんやりとしていたがやがて歩きだし、炭治郎達がつけていくと小鉄が言っていたからくり人形があった。

 

炭治郎「あれって・・!?」

 

無一郎はそのからくり人形が持っていた刀を取ると、自分の腰部分に刺した。そしてそのままブロリーの前へと行った。

 

炭治郎「えっ?」

 

小鉄「・・・・!」

 

無一郎「貴方との組手いい修行になったよ。また修行したくなったら声かけるから戦ってね。」

 

ブロリー「いいだろう。いつでも相手になってやる。」

 

炭治郎「えっと修行は?」

 

無一郎「終わった・・いい修行だったよ。誰だっけ・・?あ、そうか。俺の刀折れちゃったからこの刀貰って行くね。」

 

小鉄「・・!!」ザッ

 

炭治郎「あっ、待って!うわっ!!」ガシャッ

 

無一郎は折れた刀を炭治郎に投げつけた。

 

無一郎「それ処分しといて。」スタスタ

 

それだけを言うと無一郎は去っていき、彼の肩に止まった雌の鎹鴉は炭治郎を見下していた。

 

炭治郎(悪意の匂いがしない・・わざとやってるわけじゃないんだろうな・・でもなぁ・・)

 

炭治郎とブロリーは無一郎の背中が見えなくなるまで見送り、今度は小鉄を探しに林を駆けた。

 

炭治郎(いた!)

 

ブロリー(炭治郎はあいつを探してたのか。)

 

小鉄がいたのはからくり人形の前だった。刀を抜き取られた手を見ていたのだ。炭治郎は話題を変えるために小鉄に聞いた。

 

炭治郎「これは?」

 

小鉄「・・これが俺の祖先が作った戦闘用からくり人形"縁壱零式"です。」

 

炭治郎(知ってる俺・・見覚えがあるあの顔。)「手が・・六本あるのはなんで?」

 

小鉄「腕ですか?父の話によると・・あの人形の原型となったのは実在した剣士だったらしいんですけど。腕を六本にしなければ、その剣士の動きを再現できなかったからだそうです。」

 

炭治郎「その剣士って誰?どこで何してた人?」

 

小鉄「すみません。俺もあまり詳しくは・・戦国の世の話なので。」

 

炭治郎「せっ戦国!?そんな・・三百年以上昔なんだ?そんな長い間壊れてないのあの人形?」

 

小鉄「凄い技術で今の俺達も追いつかないんです。壊れてしまったらもう直せない・・親父が急に死んじゃって兄弟もいない。俺がちゃんとやらなきゃいけないのに、刀にもからくりにも才能ないから・・俺のせいで・・」

 

炭治郎「それであんなに・・そうか、そうか・・」

 

ブロリー「ふざけるな!何が才能がないだ!何が俺のせいだ!実行する前から決めつけてどうする!なら技術をあげろ!」

 

炭治郎「!し、師範!?」

 

小鉄「そんな事言われても・・自分で自分が駄目な奴だってわかるもん。」

 

ブロリー「そんな理由で貴様は諦めるのか?言い訳をして逃げるつもりか?実行しないまま決めつけてどうする!生き物はやろうと思えばなんだって出来るんだ!」

 

小鉄「でも・・俺の技術ではどんなに頑張っても祖先の技術には追いつかない・・」

 

ブロリー「お前一人が駄目なら他の奴らと協力すればいいだろう!幸い俺も炭治郎も新しい刀が出来上がるまではここにいる!いくらでも手伝ってやる!」

 

炭治郎「師範・・そうだよ俺達に出来ることがあれば手伝うよ、人形のこと。諦めちゃ駄目だ!君には未来がある。十年後二十年後の自分のためにも今頑張らないと。今できないこともいつか出来るようになるから。」

 

小鉄「・・っ!」

 

炭治郎「それに自分にできなくても必ず他の誰かが引き継いでくれる。次に繋ぐための努力をしなきゃ駄目だ。君にできなくても君の子供や孫なら出来るかもしれないだろう?俺は鬼舞辻無惨を倒したいと思っているけれど、鬼になった妹を助けたいと思っているけれど。」

 

小鉄「!!」

 

炭治郎「志半ばで死ぬかもしれない。」

 

小鉄「・・・・」

 

炭治郎「でも必ず誰かがやり遂げてくれると信じてる。俺達が・・繋いで貰った命で上弦の鬼を倒したように、俺達が繋いだ命が必ず鬼舞辻を倒してくれるはず。だから、一緒に頑張ろう!!」

 

小鉄「・・うんっ・・!」グスッ

 

小鉄は炭治郎とブロリーの渇と励ましで心を打たれ、涙を流しながらうなずいた。

 

小鉄「俺、決心つけるよ。もし人形が壊れたとしても、里のみんなで協力してまた作って見せるよ。」

 

ブロリー「その意気だ。フハハハハハ!!」

 

炭治郎「そういえばまだ自己紹介してなかったね。俺炭治郎。こっちは俺の師範のブロリーさん。」

 

ブロリー「ブロリー、破壊柱だ。」

 

小鉄「俺小鉄です。柱の方だったんですか!?・・でも貴方はあの澄ました顔の糞ガキと違って優しいですね。」

 

ブロリー「澄ました顔の糞ガキ?」

 

炭治郎「師範、多分時透君のことだと思います。」

 

小鉄「はい!先程はありがとうございました!あの糞ガキをコテンパンにしてくれて。あれ、かなりスッキリしました!」

 

ブロリー「そういうつもりでやった訳ではないのだがな。だが、あれでも俺の全力には程遠い。奴もまだまだってことだ。フハハハハハ!!」

 

炭治郎「師範が相手だったら誰も勝てないと思います。」

 

小鉄「炭治郎さん!」

 

炭治郎「?」

 

小鉄「炭治郎さんもこれで修行してブロリーさん並みに強くなってください。そして奴にこう言うんです。その程度か?ゴミカスが、髪長すぎなんだよ切れ昆布頭、チビ、不細工の短足、切腹しろ恥知らず。」キュピーン

 

ブロリー「物騒だなコイツ・・」

 

炭治郎「いや・・!!小鉄さん!?それはちょっと・・!!」

 

小鉄「打ち首、獄門の方がいいですかね?」

 

炭治郎「いや違う!そこまでは言えない!!」

 

小鉄「言うんです!!」

炭治郎「いや!!」

 

ブロリー(この餓鬼・・一昔の俺と同じように恨みを根に持つ奴だったか・・)

 

小鉄の言葉通りに炭治郎は縁壱零式を使って修行を始めたのだが、このからくり人形は柱以上の動きが出来るのだ。そのため

 

ギュルルルル ブオン ドゴッ!

 

炭治郎「わあああああ!!!」グッハ!!

 

柱でもなければ体力も万全でもない炭治郎が到底叶うはずがなく、縁壱零式の回転に吹き飛ばされて地面を転がった。

 

小鉄「炭治郎さん!」

 

炭治郎「死んでしまう!!腕六本はきつい!!」

 

小鉄「立ってください!この程度で死んでるようじゃカスですよ!頑張ってください!もう一度言います!顔あげて!!」

 

小鉄は動けない炭治郎の隊服を無理矢理引っ張って立たせようとする。ついでに性格が変わったように刺々しい言葉を放つようになった。

 

小鉄「癖で動いてるんですよ炭治郎さんアナタ。相手の動きを見てから判断して動いてるんじゃないんだ。だから駄目なんですよわかります?要は基礎がなってない、よく生きてこられましたね鬼殺隊で。ギリギリですよ全てが。俺はアナタの弱いところを徹底的に叩きますから俺の言ったことが出来るようになるまで食べ物あげませんから。」

 

炭治郎「はい・・」

 

ブロリー(なんて奴だ・・!まるで悪魔だ・・だが、悪魔は俺だぁ!!)

 

小鉄は元々毒舌である。父を亡くしたためにションボリして毒舌も鳴りを潜めていたが、時透襲来によって完全復活したのだ。さらに小鉄は分析が十八番である。しかし、優れた分析力のせいで自分の技術力の低さを正確に捉えてしまい絶望していた。つまり雲取山で義勇が炭治郎に叱責したように、怒りを突き動かす原動力に変えたのだ。

 

小鉄「からくりには、首の後ろの鍵を回す以外でも動きの型を変えられるんです。」

 

炭治郎「ほー?」

 

ブロリー「なんなんだぁそれは?」

 

小鉄「寄木細工の秘密箱ってご存じです?」

 

炭治郎「ああ知ってる。妹の花子が持ってたなぁ。」

 

小鉄が懐から取り出した小さい箱は炭治郎にとっては懐かしく馴染み深い物であったが、ブロリーにとっては初めてみるものだったので性能から何からまでさっぱりわかっていなかった。

 

ブロリー「なんだ?その小さい物は?」

 

炭治郎「これは小さい箱の中に様々な細工がしてあって正しい手順で動かさないと決して開けられない箱なんです。」

 

ブロリー「ほう。」

 

小鉄「それと同じでこの人形の場合。手首と指を回す数によって回数を決められるから、刀鍛治が剣士の弱点をつく動きを組んで戦わせる。そうでないと本当に意味のある訓練にならないんですよ。拷問の訓練を受けてなくてもな、嫌いな奴には死んでも教えねぇよ。」ヒヒヒヒヒ

 

つまりからくりは持ち主と二人三脚であり、無一郎が使おうが使わなかろうが、どっちにしても時間の無駄だったのだ。設定を終えたからくり人形を前にしたブロリーが突然言った。

 

ブロリー「今からコイツと俺が戦おう。」

 

炭治郎・小鉄「「師範!?/ブロリーさん!?」」

 

ブロリー「炭治郎が修行をしているところを見て俺もやりたくなった。」

 

小鉄「駄目ですよ!貴方のような実力者が戦ってしまったら、からくり人形が間違いなく壊れます!」

 

ブロリー「お前はさっき強い決意を、これが壊れたら再び直す目標を立てていなかったか?」

 

小鉄「・・・・」

 

ブロリー「・・だが、今ここで壊して炭治郎の修行の妨げになることも喜ばしくないな。だから俺は攻撃しないでひたすら避け続ける。それならいいだろう?」

 

小鉄「・・まあそれなら。」

 

ブロリー「フフフ!そう来なくっちゃ面白くない。さぁ来い!ここがお前の死に場所だぁ!!」

 

ギュルルルルル!ブオンブオン ヒョイヒョイ

 

ブロリーは縁壱零式の六本もある腕をものともせずに、腕を組んだままものすごい早さで避けていた。これにはブロリーの実力を知る炭治郎も、縁壱零式の持ち主である小鉄も驚きを隠せない。

 

小鉄「すごい!こんなに至近距離でからくりの攻撃を避け続けられる人なんて見たことないよ!」

 

炭治郎「やっぱり師範は流石だなぁ。俺が手も足もでないからくり人形を相手にまだ余裕すらありそう。このまま攻撃に転じたらそのまま人形が壊れてしまいそうだ。」

 

ブロリー「その程度のスピードで俺を斬れると思っているのか?」

 

その後もブロリーは淡々と飄々と避け続け、結局一時間の間に一撃も喰らうことなく修行を終えた。

 

ブロリー「こんなものか。次は炭治郎の番だな。」

 

炭治郎「はい!頑張ります!」

 

ブロリーが試しに縁壱零式で訓練してから炭治郎に変わったが、やはりブロリー並みの動きは出来ず、更には小鉄の素人の指導によって食べ物一口水一滴すら飲めない状態で一日を終えた。

次の日、徹夜で指導され続ける炭治郎の元に昨晩ぐっすりと寝たブロリーが来ていた。ブロリーはかなりやつれている炭治郎を見て様子が可笑しいと思った。

 

小鉄「炭治郎さん全然駄目です!言われたことが出来てません!」

 

炭治郎「あああああ・・!」

 

ブロリー「・・おい。」

 

小鉄「あっブロリーさん!おはようございます!」

 

炭治郎「おっおはようございます・・」

 

ブロリー「・・小鉄、これは一体どういうことだ?」

 

小鉄「昨日からずっと炭治郎さんをからくり人形で修行してるんですよ。でも炭治郎さん動きが悪くなってるんです。」

 

炭治郎「水を・・」

小鉄「ダメ!!」

炭治郎「水だけ・・」

小鉄「ダメ!!」

 

ブロリー「・・おい小鉄。貴様まさか水すら炭治郎に飲ませてないわけではあるまいな?」

 

小鉄「飲ませてません!炭治郎さんが言われたことが出来るようになるまで飯抜きです!」

 

ブロリー「・・炭治郎、柱命令だ。水だけ飲んで寝ろ。」

 

炭治郎「師範・・!?」グイッ ゴクゴク

 

ブロリーは炭治郎の口に持ってきていた湯呑みを押し付けると、中に入った水を飲ませた。

 

小鉄「えっ!?ちょ・・何を勝手なことしてるんですか!甘やかしてしまっては強くなりません!」

 

ブロリー「甘やかしではない。これは修行ではなく拷問だ。こんなことをしていたら炭治郎が死ぬ。これ以上体に負荷をかけても今までの動きを忘れてかえって弱くなるだけだ。炭治郎の修行を厳しくすることには別に構わないが、拷問することは許さん。強くなるならまず体力を万全にしろ。もう一度言う、これは柱命令だ。今すぐ寝ろ。」

 

それだけ言うとブロリーは屋敷の中に去っていった。残された二人はお互いなにも言えない気まずい空気になってしまった。先に沈黙を破ったのは小鉄だった。

 

小鉄「あの・・炭治郎さんごめんなさい!俺、人に指導したこと無くて何も知らなくて・・!」

 

炭治郎「いいよ、小鉄君は悪くないよ。未熟な俺が悪いんだ。俺が弱いのがいけないんだから・・」

 

柱の命令は、一般隊士如きでは絶対に逆らえない。炭治郎はブロリーと小鉄に罪悪感を感じながら屋敷に戻って朝方ながら布団の中に入って意識を落としたのだった。

その後、炭治郎は悪夢を見ていた。自身が霊体になって三途の川を渡りかけている夢である。炭治郎の体は絶食による栄養不足と不眠、長時間に渡る激しい訓練のせいで死ぬ間際と勘違いを起こした影響である。夢の中の炭治郎は霊体であるにも関わらず非常に重く感じ、ついに川の中へと落ちてしまった。川の中は暗く重かったが、なにやら温かい。人の手に揉まれているような心地よさがあった。水底に何か光るものがあり、炭治郎はそれを取りに行って掴むと、意識が急浮上した。そして炭治郎は目を覚ました。

 

炭治郎「っ!!」パチッ

 

視界に入ってきたのはこの時代の主に屋敷にある木製の部屋で、見慣れた光景に炭治郎は安堵した。

 

炭治郎「夢か・・危うく禰豆子達を置いていくところだったよ・・でもこの感覚、夢の中のものと全く一緒だ。今なら・・!」

 

炭治郎は布団から起き上がって屋敷を飛び出すと、縁壱零式がある場所まで駆けていった。そこには既にブロリーが縁壱零式を使って小鉄とのマンツーマンの修行を受けていた。

 

小鉄「その調子ですブロリーさん!」

 

ブロリー「フハハハハハ!!」ヒョイヒョイ

 

ちょうどこちらも修行を終えたらしく、引き上げようとしたときに炭治郎と目があった。

 

小鉄「あっ炭治郎さん!」

 

炭治郎「師範!!」

 

ブロリー「炭治郎、何しにきた?」

 

炭治郎「今から縁壱零式で修行させてください!」

 

ブロリー「駄目だ。今のお前はろくに喰っていなければ寝てもいない。修行したところでいらぬ怪我をするだけだ。」

 

炭治郎「お願いします!今なら何かわかる気がするんです!今までと違う感覚があるんです!なのでお願いします!少しだけでいいので!」ペコーッ

 

ブロリー「・・チッ!わかった。だが、少しの間だけだぞ?これで怪我をしたら一月の間俺との鍛練を禁止にする。」

 

炭治郎「!・・わかりました。ありがとうございます!」

 

ブロリーは炭治郎の熱意に折れて、縁壱零式で修行することを許可したのだった。生まれて初めての弟子なので妙に甘いのである。そして許可を貰った炭治郎は、早速刀を借りて斬りかかっていた。

 

炭治郎(やっぱり匂いが違う!隙の糸とは違う匂い。)

 

"左側頭部 首 右胸 左脇腹 右腿 右肩"

 

炭治郎(来る!!)ヒョイッ パガッ

 

炭治郎は、死の淵から回復したことで動作予知能力を修得したのだ。そのお陰で縁壱零式の狙っている位置が手に取るようにわかり、対策がとれるようになっていた。そして弱々しいながら一撃を入れることが出来たのだ。この別人のような動きには、ブロリーも小鉄も驚きを隠せない。

 

ブロリー「!?なんなんだあれは!?炭治郎なのか!?」

 

小鉄「炭治郎さん!すごい!まるで別人みたいだ!一撃入りましたね!ショボすぎて人形びくともしてないですけど!食べ物あげましょう!!」

 

炭治郎「おにぎりと梅干し!!お茶は高級玉露で!!」ゼイハア

 

地面に倒れて動けない炭治郎に小鉄がリクエスト通りの物を持ってくると、炭治郎は涙を流しながらかぶりついていた。満腹になってその日の修行を終えた炭治郎は、ブロリーに夢の中のことから日中に至るまでの全てを話した。

 

炭治郎「~~ということがあったんです。」

 

ブロリー「・・炭治郎、死の淵から回復してその力を手に入れたってことは、お前本当はサイヤ人なのではないか?」

 

炭治郎「?俺は人間ですよ!どうしてですか?」

 

ブロリー「サイヤ人は死の淵からよみがえると戦闘力が何倍も増える。今の炭治郎はそれと全く同じだ。」

 

炭治郎「俺は人間です。」

 

ブロリー「サイヤ人だろう。」

 

炭治郎「人間です。」

 

全てを聞いたブロリーは、サイヤ人と全く同じ成長のしかたをした炭治郎をサイヤ人だと思ったが、本人は断固とそれを否定し続けた。この口論は次の食事の時間になるまで続いたのだった。




原作でも動作予知能力を得た炭治郎を見て"これサイヤ人じゃん"と主は本当に思いました笑。そのためにこのような小ネタもいれてみました。それではまた次回。


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上弦の鬼襲来!玉壺と半天狗!

第二十八話です。この『伝説の超鬼殺隊員』は連載を初めて無事に一周年を向かえることが出来ました!これも普段楽しみにしてくださる皆様のお陰です!完結を目指してめげずに頑張っていきたいと思います。これからも応援よろしくお願いいたします!それでは本編どうぞ。


炭治郎が縁壱零式に一撃を入れることが出来てから数日後。見違えるかのような成長を遂げた炭治郎は、ブロリーと小鉄が見ている前で縁壱零式と互角以上の戦いぶりを繰り広げていた。

 

炭治郎(よし!!よし!!わかるぞ動きが!!前よりもずっとよくわかる!!体力も戻ってついていけてる!!)

 

ブロリー「ほう、やはり強くなったな炭治郎。流石俺の弟子と誉めてやりたいところだぁ!」

 

縁壱零式の攻撃を掻い潜って上空へと飛び上がった炭治郎は、隙が出来た人形の頚を狙って刀を振るのだが。

 

炭治郎(よし!!入る!!渾身の一撃・・あっ・・でも、壊れたら・・)

 

優しさがここでも出て、わずかコンマ数秒の時間帯だが戸惑った炭治郎に小鉄の激励が入った。

 

小鉄「斬ってー!!!壊れてもいい!!絶対俺が直すから!!」

 

その声を聞いた炭治郎は、刀を振り抜いて縁壱零式に渾身の一撃を入れた。しかし、無理な体制で入れた為に受け身が取れずに地面に尾てい骨を打ち付けてうずくまった。

 

ドスン

炭治郎「アイダッ!」ズキズキ

 

ブロリー「炭治郎!」ダッ

 

小鉄「大丈夫ですか!!」

 

炭治郎「いててて・・ごめん、借りた刀折れちゃった。」

 

小鉄「いいんですよそんなの!・・あっ!?」

 

炭治郎「!?」

ブロリー「なんだぁ?」

 

縁壱零式が音を立てて崩れだし、中から古くて丈夫そうな年期の入った刀が出てきたのだ。

 

炭治郎「なんか出た!!小鉄君なんか出た!!何コレ!」

 

小鉄「いやいやいや!わからないです俺も!なんでしょうかこれ!!少なくとも三百年以上前の刀ですよね!」

 

炭治郎「そうだよねこれ・・やばいねどうする!?」はぁっはぁっ

 

小鉄「興奮が治まりませんね!!」はぁっはぁっ

 

炭治郎と小鉄の二人は相当興奮しているのか、顔が真っ赤に染まって息が荒くなっていた

 

ブロリー「何を言ってる?これはからくり人形から炭治郎へのプレゼントだ!ハーーッハハハハハ!!!」

 

炭治郎「ぷれぜんと?」

 

ブロリー「贈り物って意味だ。」

 

小鉄「そうですよ!これ炭治郎さん貰っていいんじゃないでしょうか!もももも貰ってください是非!!」

 

炭治郎「ややややや駄目でしょ!?今まで蓄積された剣戟があって偶々俺の時に人形壊れただけだろうしそんな!!」

 

小鉄「炭治郎さんちょうど刀が打って貰えず困ってたでしょ?いいですよ!持ち主の俺が言うんだし!」

 

炭治郎「そんなそんな君そんな!」

 

小鉄「戦国の世の時代の鉄はすごく質がいいんです!貰っちゃいなよ!」

 

炭治郎「いいの!?いいの!?」

 

一人冷静でいるブロリーとは異なり、興奮が抑えきれずに遂には組体操まで始めてしまう始末の二人。少し刀を見てみることにした。

 

小鉄「ちょっと抜いてみます!?」

 

炭治郎「そうだね!見たいよね!」

 

いざ柄と鞘を掴んで抜いてみると・・・・中からは錆びだらけの古い刃が出てきた。

 

炭治郎・小鉄((錆びてる・・・・))

 

ブロリー「なんだ?錆びてるではないか。所詮ボロはボロなのだ・・」

 

ブロリーも少し期待していたのか、批判的な口調とは裏腹にトーンは落ちぎみだったことで、かなり落ち込んでいることがわかった。

 

小鉄「いや当然ですよね三百年とか・・誰も手入れしてないし知らなかったし・・すみません、ぬか喜びさせて・・」

 

炭治郎「大丈夫!!全然気にしてないよ。」ダバーッ

 

ブロリー「炭治郎・・すごい量の涙だぞ?」

 

口ではそう言ってるが、炭治郎の瞳から光が消えて涙が滝のごとく流れてるのを見て、小鉄は更に慌てた。

 

小鉄「うわあああ炭治郎さん!!炭治郎さ・・ごめんね!!」

 

ズンズンズン

 

小鉄「!?」

炭治郎「何だ?」

 

茂みから現れたのは最後に会った時とはうって変わり、筋骨隆々になった鋼鐵塚である。

 

炭治郎「うわあああ!!誰!?鋼鐵塚さん!?」

 

鋼鐵塚「話は聞かせてもらった・・後は・・任せろ・・」コオオオオ

 

小鉄「何を任せるの!?」

 

まるで全集中の呼吸みたいな呼吸音をならして刀を持っていこうとする為、三人は揉めた。

 

炭治郎「放してください!ちょっ・・何で持っていこうとするんです!?」

 

鋼鐵塚「俺に・・任せろ・・」

炭治郎「いやこれ小鉄君のですから!!」

鋼鐵塚「任せるんだ・・」

 

小鉄「説明してくださいよ鋼鐵塚さん!」

鋼鐵塚「任せろ・・」

小鉄「いや・・!!だから何を!?」

 

鋼鐵塚の短気な性格がここでも出て、二人を力ずくで強引に振り払った。

 

鋼鐵塚「俺に任せろって言ってるだろうが!!」ブオン ギュルルル

 

炭治郎「うわあああ大人のすることじゃない!!」

 

ブロリー(二人を振り払ったな。こいつ一人で下弦のムシケラ程度なら倒せるんじゃないか?)

 

二人が乱闘している横で呑気にそんなことを思うブロリー。すると鉄穴森が現れて鋼鐵塚の脇をくすぐった。

 

鉄穴森「少年達よ、鋼鐵塚さんの急所は脇です。ここを狙うのです。」コチョコチョ

 

鋼鐵塚「ひゃひゃひゃひゃひゃ!」グターッ

 

くすぐりに耐えきれなかった鋼鐵塚は地面に倒れたが、四人はそれを無視して会話を続けた。

 

炭治郎「あっ鉄穴森さん!!ご無沙汰してます!」

 

ブロリー「久しぶリーです・・」

 

鉄穴森「お久しぶり炭治郎君、ブロリーさん。鋼鐵塚さんはくすぐられるとしばしグッタリしますので、私から説明しましょ。鋼鐵塚さんを許してやってくださいね。山籠もりで修行していたんですよ。」コクコク

 

炭治郎「修行?」

 

ブロリー「何を鍛えていたんだぁ?」

 

鉄穴森「研磨術を磨いていたんですよ。特に炭治郎君、君を死なせないようもっと強い刀を作るために、素直に言わないけどね。」

 

鋼鐵塚が意識を失ってる間小鉄は小石をぶつけていたが、炭治郎と鉄穴森は夢中で話し合いをしており、ブロリーは小鉄の行動に気づいていたが特に咎めることも止めることもなく静観していた。

 

炭治郎「俺のため・・」ホワワーン

 

鉄穴森「君はずっと鋼鐵塚さんに刀をお願いしてるでしょう?嬉しかったんだと思いますよ。この人剣士さんに嫌われて担当外れることが多かったから。」

 

炭治郎「そうなんですか?」

 

小鉄「人づきあい下手すぎなんですよねこの方。だから未だに嫁の来手もないんですよね。」ズバッ

 

ブロリー「こいつは俺より年上だろう?だがなんだか餓鬼っぽいと言うか、本能の赴くままに動いてると言うか、そんな感じだな。」

 

小鉄「あっブロリーさんもそう思いますか?俺もそう思います。」

 

話し合いをしているうちに、鋼鐵塚が目を覚まして地面から跳ねて飛び起きた。

 

鉄穴森「あっ復活しましたね。」

 

鋼鐵塚「この錆びた刀は俺が預かる。鋼鐵塚家に伝わる日輪刀研磨術で見事磨き上げてしんぜよう。」

 

小鉄「じゃあ始めからそう言えばいいじゃないですか一言。信頼関係もないのに任せろ任せろって、バカの一つ覚えみたいに・・」ハァ・・

 

鋼鐵塚「チィッ!」ギリギリギリギリ

 

小鉄「わきわき!わきです!」

 

小鉄の毒舌にぶちギレた鋼鐵塚はそのまま小鉄の首を締め上げ、他の二人がそれを慌てて止めるのだった。

翌日の夜、今現在屋敷には炭治郎とブロリーがいてお菓子を食べながら雑談をしていた。

 

炭治郎「師範、鋼鐵塚さん大丈夫だと思いますか?」

 

ブロリー「あの体を見ただろう?簡単にくたばる程柔ではないと言いたいところだが、俺に未来予知は出来ないからな。こればかりはわからんとしか言いようがないな。」

 

炭治郎「そうですよね。刀の研磨が終わるまで三日三晩かかるらしいので研ぎ終わるのは明後日になると言ってましたが。すごく過酷みたいですよ?死んじゃった人もいるって・・心配ですよね。」

 

ブロリー「確かあいつからは絶対に覗きに来るなと言われてたな。たが、どうしても心配で気になると言うのなら見に行ってもいいのではないか?」

 

炭治郎「できれば俺もそうしたいんですけど・・やっぱり言われたことは守らないといけないと思いますし・・玄弥はどう思う?」

 

玄弥「いや知るかよ!!ってかなんでお前らここにいるんだよ!!出てけ!友達みたいな顔して喋ってんじゃねーよ!!」

 

炭治郎「えっ!?俺達友達じゃないの?」

 

玄弥「違うに決まってんだろうが!!てめぇは俺の腕を折ったんだからな!!忘れたとは言わせねぇ!!」

 

炭治郎「あれは女の子を殴った玄弥が全面的に悪いし仕方ないよ。」

 

玄弥「下の名前で呼ぶんじゃねぇ!!!」

 

ブロリー「不死川玄弥と言ったか?そう言えばまだ俺のことを言ってなかったな。俺はブロリー、破壊柱だ。」

 

玄弥「・・破壊柱様・・初めまして・・不死川玄弥と言います。」

 

ブロリー「そんなにかしこまらなくてもいいだろう。あの時は炭治郎が済まなかった。許してやってはくれないか?」

 

炭治郎「えっ!?師範!?なんで俺が悪い事をしたことになってるんですか!?」

 

ブロリー「炭治郎、少し黙ってろ。」バッ

炭治郎「ムグーッ」フガフガ

 

ブロリーの言ったことに炭治郎がすかさず抗議の声をあげようとするが、ブロリーに口を塞がれてフガフガと息をするしかできなかった。

 

玄弥「いえ。あの時は少し俺も熱くなりすぎました。騒ぎを起こしてしまってすみませんでした。」

 

ブロリー「そんな律儀にしなくてもいい。炭治郎に接するようにすれば大丈夫だ。」

 

玄弥(いや出来るわけないだろ!俺だってアンタに対してこんな態度したくねーよ!でもここは階級重視の組織なんだよ!そもそもなんでアンタこんなに短い期間で柱になってんだよ!羨ましすぎるんだよ!俺も早く柱になって兄貴に謝りたいのに!)

 

ブロリーは言いたいことを全部いい終えたのか、炭治郎の口を放した。すると炭治郎はすかさず煎餅を差し出した。

 

炭治郎「このお煎餅おいしいよ。食べる?」

 

玄弥「クソが!!いらねーっての消えろ!!」バリン

 

玄弥は炭治郎が差し出した煎餅を叩き割った。その時、炭治郎があることに気づいた。

 

炭治郎「あれ・・?歯が。抜けてなかったっけ前歯・・温泉で。」

 

炭治郎の指摘に途端に静止した玄弥は、しばらく黙り込んだ後やがて重そうに口を動かした。

 

玄弥「お前の見間違いだろ。」

 

炭治郎「見間違いじゃないよ。歯とってあるから。」ホラ

 

ブロリー「へぁっ!?」

 

玄弥「何でとってんだよ!気持ち悪ィ奴だなテメェは!!」

 

本当に炭治郎の掌には玄弥の前歯が乗っていた。それを見たブロリーと玄弥は気色悪そうに顔をしかめた。

 

炭治郎「いや、だって落とし物だし返そうかと。」

 

ブロリー「炭治郎・・それは流石に気持ち悪いぞ・・」

 

玄弥「破壊柱様の言うとおりだろ!正気じゃねぇだろ!捨てろや!!」キッショ!!

 

炭治郎の不可解な行動に、一刻も早く視界から排除したくなった玄弥は炭治郎を無理矢理追い出した。

 

玄弥「出てけ!!」

 

炭治郎が部屋の外へ閉め出されたのを見て、ブロリーも部屋から出たのだった。

 

炭治郎「なんであんなにずっと怒ってるんだろう?やっぱりお腹空いてるのかなあ?」

 

ブロリー「それだけは違うと思うぞ。」

 

炭治郎の盛大な勘違いをブロリーは指摘するのだった。

その頃、一人のひょっとこの面をつけた刀鍛治の里の住人が、温泉から出て坂を下って来ていた。

 

「ちょっとのんびり長湯しすぎたな。明日も早朝から作業だってのに・・ん?」

 

坂の先で見つけたもの、それは花柄の模様が入った壺である。しかし道のど真ん中に置いてあった為、それをどかそうと手を伸ばす。

 

「壺?あぶねぇなあ。誰だ?こんなところに壺なんか置いて・・」

 

ギュルン!

 

その時、頭から壺に引きずり込まれ、バキバキと骨が砕ける音が響き渡った。住人の体が完全に壺の中に収まるとゴトゴトと壺が揺れ、やがて原形を留めていない肉塊が出てきた。さっきの住人である。ひょっとこの面と着物でかろうじて身元がわかるほどに悲惨なものになっていた。そして壺から出てきた鬼、それは上弦の伍・玉壺である。

 

玉壺「不味い不味い、やはり山の中の刀鍛治の肉など喰えたものではないわ。だがそれもまたいい・・しかしここを潰せば鬼狩り共をヒョッ、確実に弱体化させられる。」

 

そしてもう一体、屋敷の屋根の上でガタガタと震える老人鬼の姿があった。上弦の肆・半天狗である。

 

半天狗「急がねば・・急がねば・・玉壺のおかげで里は見つかった。けれどもあの御方はお怒りじゃ・・早う早う皆殺しにせねば・・あの御方に楯突く者共を・・!!」

 

半天狗も玉壺も、刀鍛治の里を潰すべく行動を始めるのだった。

一方屋敷中では、熟睡中の炭治郎達三人に、近づく影があった。無一郎である。ブロリーは誰かが来た気配を感じて起き上がったが炭治郎と禰豆子は寝たままであった。

 

ブロリー「無一郎か・・何のようだ?」

 

無一郎「鉄穴森っていう刀鍛治知らない?」

 

ブロリー「鉄穴森か・・悪いがどこにいるかは知らんな。」

 

無一郎「そう・・」

 

無一郎は眠ってる炭治郎を見ると鼻をつまんだ。突然のことに驚いた炭治郎は飛び起きた。

 

ふぎゅ

炭治郎「んがっ。」

 

無一郎「鉄穴森っていう刀鍛治知らない?」

 

炭治郎「わあ時透君。今俺の鼻つまんだ?」

 

無一郎「つまんだ。反応が鈍すぎると思う。この人でさえ僕の気配に気づいて目を覚ましたのに。」

 

炭治郎「いやいや!敵意があれば気づきますよそんな。」やだもう

 

無一郎「まあ敵意を持って鼻はつままないけど。」

 

炭治郎「鉄穴森は僕の新しい刀鍛治。鋼鐵塚はどこにいるの?」

 

炭治郎「一緒に探そうか?」

 

ブロリー「炭治郎達が行くなら俺も行こう。」

 

無一郎「・・・・なんでそんなに人を構うの?君達には君達のやるべきことがあるんじゃないの?」

 

炭治郎「人のためにすることは結局、巡り巡って自分のためにもなっているものだし、俺達も行こうと思ってたからちょうどいいんだよ。」

 

ブロリー「俺も昔はお前と同じ考えだったが、炭治郎や禰豆子が教えてくれたのだ。自分のことをするために人のためになることをしろとな。」

 

無一郎「えっ?」

 

無一郎は理解できないと言わんばかりに炭治郎達に聞いていたが、返ってきた答えを聞いて両目を少し見開いて驚いた。

 

無一郎「何?今なんて言ったの?今、今・・」

 

炭治郎「へっ?ちょうどいいよって。」

 

その時、今まで眠っていた禰豆子が目を覚まして勢い良く飛び起き、額が炭治郎の顎にぶつかった。

 

禰豆子「ムー!」ガバッ ゴッ

 

炭治郎「イデッ!」

 

禰豆子はしばらく両腕を伸ばしてから振り回し元気だとアピールしていたが、ブロリーに気づくとそのまま抱きついた。

 

禰豆子「ムーんー♪」ギュッ

 

ブロリー「フハハハ!禰豆子おはようです。」ポンポン

 

炭治郎「禰豆子!!起きたかー。一緒に鋼鐵塚さんとこ行こう。」いてて

 

無一郎「・・・・その子何かすごく変な生き物だな。」

 

炭治郎「えっ!変ですか?」

 

無一郎「うん、すごく変だよ。なんだろう?うまく言えない。僕は前にもその子と会ってる?前もそうだったのかな?何だろう?」

 

無一郎は腕を組んで首をかしげて考えた。そんな無一郎を見た禰豆子も真似して腕を組んで首をかしげていた。

 

炭治郎(あっしまった。珠世さんの猫戻ってるかな?また禰豆子の血の変化を調べてもらってるんだった。時透君がいる前じゃ出てこないよな・・)

 

ブロリー(禰豆子、真似事は楽しいか?それよりも向こうから誰かが来ているな、何処のどいつだ?)

 

無一郎と炭治郎とブロリーはこの時、襖の奥から誰かが来ている気配を感じた。三人同時に襖の方を見る。

 

炭治郎「んっ?誰か来てます?」

無一郎「そうだね。」

 

そして襖がゆっくりと開き中に入ってきたのは・・・・匍匐前進している半天狗だった。

 

半天狗「ヒィィィィィ・・」ぬらり

 

この時、三人にとって衝撃的だったのはその気配のとぼけ方の巧さだった。炭治郎は元より無一郎とブロリーでさえ目視するまで鬼と見抜けなかったのだ。裏返っているのか目に数字があるのか確認できなかったが、上弦の鬼であることには間違いない。この間瞬き一度にも満たない時間で無一郎と炭治郎は刀を抜き、ブロリーは金髪碧眼の『スーパーサイヤ人』形態になって拳に力を込めて戦闘体勢に入った。誰よりも早く動いたのは、霞柱の無一郎だった。

 

無一郎「霞の呼吸・肆の型。移流斬り。」フッ

 

半天狗「ヒィィィ!!」ドタバタ

 

無一郎が目に見えないほどの速さで半天狗に斬りかかるが、半天狗は更に早く天井にしがみついてガタガタと震えていた。

 

炭治郎・ブロリー「「!!」」

 

無一郎(速い・・仕留められなかった。)

 

半天狗「やめてくれえ・・いぢめないでくれぇ・・痛いぃいい。」

 

炭治郎(気後れするな!!大勢人を殺している鬼だ!!そうでなきゃ柱の攻撃を避けられない!)

 

炭治郎が持っている刀は鋼鐵塚が打った刀である。体力も回復しているため、呼び出しがあればすぐに行けるように準備していたようだ。

 

炭治郎「ヒノカミ神楽!陽華突!」ドン!

 

半天狗「ヒィィィ!」ドタン

 

しかし半天狗は炭治郎の攻撃さえも避けて今度は床に落ちる。それを待っていたかのようにブロリーが半天狗を殴り飛ばした。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ドゴォ!

 

半天狗「ギャアアッ!」

 

ブロリーに殴り飛ばされた先に禰豆子がいて続けざまに腹を蹴り飛ばされて床を転がった。

 

禰豆子「ん゛ーっ!!」ドゴッ

 

半天狗「ギャアアッ!」

 

禰豆子が蹴ったときの姿はかつて遊郭で暴走しかけたときのものであったため、それに慌てた炭治郎が叫んだ。

 

炭治郎「禰豆子!!その姿になるな!!」

 

ザン!!

 

炭治郎が禰豆子を気にしているうちに、無一郎が半天狗の頚を斬った。

 

半天狗「ヒィィィ斬られたああ。」

 

炭治郎「きっ・・」(斬った!!頚を!!速い・・!!でも。)

 

ブロリー(コイツが上弦のムシケラならこの程度で死ぬはずがない!何か起こるはずだ。)

 

遊郭で上弦と戦ったことがある炭治郎とブロリーは、上弦の鬼はただ頚を斬っただけでは倒せないとわかっており、何か起こることを懸念していた。そしてそれは現実のものとなった。

 

炭治郎「時透君油断しないで!!」

 

無一郎「!」

 

半天狗の頚を斬ったものの頭と体は灰になることはなく、逆に再生したのだ。頭からは体が生え、体からは頭が生えたのだ。そして手に持っている物も異なり、片方の鬼の手には大きな紅葉のような扇・もう片方の鬼は錫杖を持っていた。

 

炭治郎(分裂!!一方には頭が生えもう一方には体ができた・・!!)「後ろは俺が!!」

 

無一郎が扇を持つ半天狗、炭治郎が錫杖を持つ半天狗に斬りかかる。

 

フオッ ビュオオオオ!! バギャン!!

 

ブロリー「へぁっ!?炭治郎!禰豆子!無一郎!」ガシッ

 

扇を持つ鬼・"可楽"が軽く振っただけでものすごい爆風がふき、屋敷の壁を破壊してそこから炭治郎達三人は投げ出されそうになった。しかしこの爆風を受けても微動だにしなかったブロリーが、右手で炭治郎の手首を掴んでいる禰豆子の反対の手を掴み、左手で無一郎の腕を掴んでいた為に吹き飛ばされるのを阻止することが出来た。

 

可楽「カカカッ!楽しいのう。豆粒が飛びそうになるのを抑えよった。なぁ積怒。」

 

可楽は喜怒哀楽のうち楽の感情を持つ半天狗の分身だった。"積怒"と呼ばれた錫杖を持つ鬼は、怒の感情を持つ同じ分身だ。可楽に話を振られた積怒は、ビキビキと血管を浮かび上がらせて答える。

 

積怒「何も楽しくはない。儂はただひたすら腹立たしい。可楽・・お前と混ざっていたことも。」

 

可楽「そうかい。離れられてよかったのう。」

 

炭治郎(また頚を同時に斬らなきゃ駄目なのか!?)チャキ

 

炭治郎が刀を構え直すと、積怒は錫杖を地面について雷を放った。しかしブロリーが三人の前に飛び出す。

 

ブロリー「はぁっ!!」ゴオオオオ

 

炭治郎「師範!」

 

無一郎「!・・ブロリー・・さん・・」

 

ブロリーは即座にバリアを張って三人を雷攻撃から守った。その時、炭治郎は屋根の上に玄弥がいるのを見つけた。その手には銃が握られていて積怒と可楽の頚に狙いを定めて連射した。

 

ドドン!

 

炭治郎「!?」

 

銃弾は積怒の頚を撥ね飛ばすが、可楽の頚は撥ね飛ばされずに掠れて肉を少し抉る形で終わった。

 

炭治郎(何だあの武器は・・!!銃か!?日輪刀と同じ匂いがする。)

 

玄弥(一匹仕留め損ねた!)

 

可楽「おおおお!!これは楽しい!面白い!初めて喰らった感触の攻撃だ。」

 

可楽は頚を狙われてるのに心底愉快そうに銃に撃たれたことに感服していた。玄弥が止めに斬りはなそうと日輪刀を抜いて斬りかかるが、違和感に気づいた炭治郎が止めようとした。

 

炭治郎「玄弥駄目だ!!どんなに強い鬼でもこの鬼は倒せない!!斬ったら斬っただけ分裂する!若返ってる!!強くなるんだ!!頚を斬らせるのはわざとだ!!」

 

炭治郎の言葉通り、可楽や積怒はわざと玄弥に頚を斬らせていた。その二体からも更に分裂して再生していた。普通急所を狙えばいくら鬼とはいえども死に物狂いで意地でもそこを守ろうとする。しかし半天狗は、頚を守るどころかわざと頚を見せつけるように大きな隙をさらしているのだ。

 

炭治郎(この鬼は頚を斬られることに頓着していない!つまり頚は急所じゃない!!四体に分裂・・再生が早い!!どこが一番早く治る?急所は必ずあるはずだ探せ!!見極めろ!!何か・・)グンッ

 

禰豆子「うーー!!!」バッ

 

炭治郎は何かに引っ張られ、空を飛んだ。禰豆子がさせないと手を伸ばすが届かなかった。炭治郎を引っ張ったもの、それは分裂した翼を持つ鬼、喜の感情を持つ"空喜"である。鳥のような鋭い足が炭治郎の足首を掴んで飛んでいたのだ。

 

空喜「カカカッ!喜ばしいのう、分かれるのは久方振りじゃ!」

 

炭治郎(この鬼は飛んでる!!能力が四人とも違うんだ!)

 

空喜は高度をどんどん上げていくが、更に早くブロリーが先回りして腕組みして待ち構えていた。

 

ブロリー「行かせると思っていたのか?デヤァッ!!」ドゴォ!

 

空喜「ぬぉっ!?」

 

両腕を組んで勢い良く振り下ろして空喜の背中に直撃する。その衝撃で炭治郎を離してしまうが、ブロリーが炭治郎を抱えて救出した。

 

炭治郎「うわぁ!?」

 

ブロリー「フン!」ガシッ

 

炭治郎「!師範!ありがとうございます!」

 

空喜「ふふんやるのう。これはなかなか喜ばしいぞ。」

 

ブロリー「喜ばしい、確かにそうかもな。お前は上弦の肆だ今まで雑魚鬼ばかりだったから少しは楽しめそうだ。」

 

空喜「そうかい。ならば存分に楽しむがよい。血鬼術・狂鳴!」キイイイイン

 

空喜は口から超音波のようなものをブロリーに向かって放つ。それを見たブロリーはニヤリと口角を上げた。

 

ブロリー「無駄だ。破壊の呼吸・玖の型。スローイングブラスター!」ポウ ドーン

 

空中で二つの技がぶつかり合って爆発し、煙が周りを覆った。その隙に炭治郎が叫んだ。

 

炭治郎「禰豆子!俺は大丈夫だ!玄弥を手助けする・・!?」

 

ブロリー「何ィ!」

 

炭治郎は叫んでいる途中で言葉を失った。その原因は禰豆子達がいるところにあった。空喜と共に出てきた十文字槍を持つもう一体の鬼、哀の感情を持つ"哀絶"がその武器で玄弥の腹を貫いていたからである。

 

哀絶「哀しい程弱い。」ザシュ!

 

玄弥「ガッハッ・・」ゴボッ

 

炭治郎「玄弥ーーっ!!!禰豆子助けろ!!玄弥を助けろ!!頼む!!急げ!!」

 

禰豆子「うーーっ!!」(血鬼術・イレイザーキャノン!)ポーヒー ドカーン

 

禰豆子は遊郭で上弦の陸と戦った際に修得したピンク色のイレイザーキャノンを哀絶にぶつけるが、ブロリー程の威力はないため哀絶を少しよろけさせる形で終わってしまった。しかし、それでも玄弥と引き離すことはできた。

 

哀絶「ぬぅ・・娘よ、邪魔をするな。哀しくなる。」

 

積怒「何をしているのだ馬鹿者が!腹立たしい!儂がやるどけ!」ザン!

 

禰豆子「う゛ーーっ!?」バリバリバリバリ

 

炭治郎「禰豆子!!やめろーーっ!!」

 

積怒の持つ錫杖が禰豆子を突き刺すと、雷が起きて禰豆子の体が感電する。それを見た炭治郎はビキリと青筋を立てて地面に降りたブロリーから降りると斬りかかる。

 

炭治郎「ヒノカミ神楽!円舞!」ガキン

 

積怒「チィッ!小賢しい・・!腹立たしい腹立たしい・・!」ガキン

 

積怒の錫杖と炭治郎の日輪刀が交差して激しい火花を散らす。お互いに動けない状態で二人の下腹部にブロリーが突撃し、そして積怒をラリアットで引き離した。

 

ブロリー「フン!」ガッ バッ

 

積怒「ぬぉ!?次から次へと邪魔者が・・!腹立たしい・・!」

 

ブロリー「クズがぁ・・!」

 

ブロリーは禰豆子が雷で攻撃されたことに怒り、両手に握り拳を体に引き寄せて更に気を高めた。

 

ブロリー「はあああぁぁぁ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

そしてブロリーの体から緑色の光が出て、周囲が緑色のエフェクトに包まれるとやがてブロリーの元に戻った。ブロリーは悪魔の白眼と緑がかった金髪に膨れ上がった筋肉の『伝説のスーパーサイヤ人』に覚醒して四体の半天狗を睨み付ける。

 

ブロリー「禰豆子を殺そうとしたクズ共がぁ・・!貴様ら全員血祭りに上げてやる!」

 

ブロリーは四体に指差すと力強く言い、臨戦態勢をとるのだった。




おそらく今後は原作大幅カットになってしまうと思います。それでも大丈夫な方は応援してくださると嬉しいです。それではまた次回。


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上弦の鬼大暴れ!住民を守れ!刀鍛治の里の戦い!

第二十九話です。まず三週間待たせてしまって申し訳ございませんでした。そしてキリのよいところで終わらすために15000文字オーバーの長文になってしまいました。駄文ですけどそれでも読んでくださる神のような方はゆっくりしてください。それでは本編どうぞ。


上弦の肆・半天狗と上弦の伍・玉壺が刀鍛治の里を襲い、ブロリーが『伝説のスーパーサイヤ人』に覚醒した。その姿を見て半天狗の分身はそれぞれの思いを言うのだった。

 

ブロリー「貴様ら全員!血祭りに上げてやる!」

 

空喜「カカカッ!喜ばしいのう、姿が変わったのう。儂らを楽しませてくれるのじゃろう?これは喜ばしいのう。」

 

可楽「カカカッ!楽しいのう楽しいのう。気配までもが大きく変わっておるのう。儂らを失望させてくれるまい。たのしみじゃ。」

 

積怒「何が喜ばしい!?何が楽しい!?儂らの手間が増えただけではないか!手煩わせおって腹立たしい!」

 

哀絶「そう怒鳴るな積怒、哀しくなる。只でさえあの御方はお怒りじゃ、仲間割れして自滅することはすごく哀しい。」

 

四体がそれぞれ思ったことを言ってるうちに、ブロリーはもう目と鼻の先まで来ていた。そして半天狗達を殴り飛ばした。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ドゴォ!バキッ!ドガッ!バコッ!

 

空喜「ぬぉ!?」

積怒「ぐぉぉ!?」

哀絶「ぬぅ・・!」

可楽「おぉ!?」

 

殴り飛ばされた四体は屋敷の中から追い出されて、それぞれ別の方向へと吹き飛び、森の中へと落ちていった。

 

ブロリー「うおおおおおお!!」ビュオオオオ!

 

ブロリーもまた追い討ちをかけるべく森の中へと飛び込んでいった。炭治郎達は屋敷の中に取り残され、呆然としていたがすぐに我に返った。

 

炭治郎「やっぱり師範は凄いなぁ。」

 

無一郎「何してるの?早く追いかけるよ。」

 

炭治郎「!そうだね時透君!玄弥も!」

 

玄弥「・・図に乗るなよ・・!あいつらを倒すのは俺だ・・!」

 

玄弥はそれだけ言うと、誰よりも早く屋敷を飛び出して森の中へと消えていった。それに続くように炭治郎と無一郎、禰豆子も続いた。

 

無一郎side

 

森の中へと来た四人は、ブロリーと半天狗達のところへ急いで向かうために駆けていた。その途中、無一郎がなにかに気づいた。

 

無一郎(ん?)

 

小鉄「うわあああ!?」

 

「ギョギョッ」

 

それは刀をもって逃げ惑う小鉄と、それに襲いかかる魚介類型の化け物だった。これはもう一体の上弦の鬼、玉壺の血鬼術によって生み出されたものであった。

 

無一郎(子供・・刀鍛治として技術も未熟なはず、助ける優先順位は低い。気配からしてあれは本体ではなく術で生み出されたもの、ここで足を止める理由はない。里全体が襲われているならまず里長、技術や能力の高い者を優先して守らなければ。)

 

無一郎は無視してブロリーの方へと行こうとしたが、その時脳裏に甦ったのは、炭治郎とブロリーに言われた言葉だった。

 

炭治郎『人のためにすることは、巡り巡って自分のために』

 

ブロリー『昔はお前と同じ考えだったが、炭治郎と禰豆子がそう教えてくれたのだ』

 

無一郎「・・君たち先に行っててくれない?僕はあっちを相手にする。」

 

炭治郎「時透君!わかった!」ダッ

 

それを思い出した無一郎は炭治郎達に指示すると、小鉄に迫っていた魚介類型の化け物の腕を切り落として立ちふさがった。

 

無一路「邪魔になるからさっさと逃げてくれない?」

 

無一郎に言われた通り小鉄はすぐに近くの物陰に潜んで息を殺し、気配を消した。無一郎は魚介類型の化け物の頚らしきところをいとも容易く斬った。しかし、体は崩れずに再生した。

 

無一郎(頚と思わしき場所を斬っても体が崩れず再生。じゃあこっちか。)

 

それでも無一郎は既に頚以外で弱点らしきところを見抜いていた。それは化け物の背中にある大きな壺である。ここを破壊することで倒せると踏んだのだ。

 

バカッ!

 

「ヒィィィ!」ボロ・・

 

無一郎の読み通り背中の壺を破壊すると、化け物は断末魔の叫びを上げて灰になっていった。

 

無一郎(壺から力を得ていた・・やはり血鬼術で作られたもの。)「!!」

 

無一郎が冷静に状況を分析していると、小鉄が物陰から飛び出して無一郎に抱きついて号泣した。

 

小鉄「うわあああ!ありがとう~!!死んだと思った!俺死んだと・・怖かったうわあああ!昆布頭とか言って悪かったよう!ごめんなさい~~!!」わっ

 

無一郎「昆布頭って僕のこと?」

 

小鉄「わああん!すみませぇん!嫌いだったんです!」

 

無一郎は自分が悪口を言われていたことに気づいたが、特に思うことはないのかすぐさま他の戦場へと行こうとした。しかし、今度は小鉄が無一郎の前に立ちふさがって土下座した。

 

小鉄「待って!!鉄穴森さんも襲われているんです!鋼鐵塚さんが不眠不休の研磨をしてるから・・どうか助けてください!少しでも手を止めてしまうともう駄目なんですどうか・・!!」べたっ

 

無一郎「・・・・いや僕は・・っ!」ズキン

 

なにかを言おうとした無一郎を突然頭痛が襲い、かつての記憶が甦ってきた。それは耀哉達産屋敷一族に鬼から保護されたときの記憶だった。

 

耀哉『混乱しているだろうが、今はとにかく生きることだけ考えなさい。生きてさえいればどうにかなる。失った記憶は必ず戻る。心配いらない。きっかけを見落とさないことだ。ささいなことが始まりとなり、君の頭の中の霞を鮮やかに晴らしてくれるよ。』

 

無一郎「・・・・」ガバッ

 

小鉄「!何を・・」

 

ビュン

 

小鉄を肩にかついだ無一郎はそのまま全集中の呼吸を使って駆けた。普段の走る速度よりも何倍も早いスピードに思わず小鉄は叫んだ。

 

小鉄「うわああ!ちょちょ・・!!もうちょっとゆっくりで!!あともうちょっとだけ!!」

 

無一郎「喋ってると舌を噛むから。」

 

小鉄「ヒィィィ!」

 

小鉄の懇願に、無一郎は一切耳を傾けずにそのままの速度で走り抜けていった。

 

無一郎(これは正しいのかな?こんなことしてたら里全体を守れないんじゃ・・・・いやできる。僕はお館様に認められた。鬼殺隊霞柱!時透無一郎だから!)

 

無一郎は内心で強い覚悟と気持ちをもって進むのだった。

 

炭治郎side

 

一方でブロリーの元へとやってきた炭治郎達は、ちょうどブロリーが半天狗達を地面に叩きつけたり、双方の頭を掴んで打ち付け合わせているところを見た。

 

ブロリー「ガアアアア!!」ドゴォ! ドゴォ!

 

哀絶「ぐうう・・!」

 

積怒「ぐぉぉ!」

 

ブロリー「はあああ!!」ガシッ ガシッ ドガッ!

 

空喜「ぬぉ!?」

 

可楽「がぁっ!?」

 

ブロリー「もう終わりか?」

 

四体の半天狗達は、ブロリーの攻撃で体が斬られるわけでもないために分身を増やすことが出来ない。それに加え、ブロリーには血鬼術による攻撃が一切効かないために苦戦を強いられていた。

 

積怒「攻撃が効かないとは腹立たしい・・!」

 

可楽「!・・カカカッ!コイツの相手よりもあの小僧共を痛ぶる方が楽しそうだのう。お前と戦っていてもつまらん、もういいぞ。」バッ

 

空喜「可楽!一人だけ狡いぞ!儂も参加するぞ!」バッ

 

哀絶「む?さっき刺した小僧もまだ生きておったか。死ねぬとは哀しいのう。今止めをさしてやろう。」バッ

 

なんと半天狗達は炭治郎達を見つけると、標的をそちらへと切り替えたのだ。しかし、ブロリーがそんなことを許すはずもなくすぐさま間に割ってはいる。

 

ブロリー「どこへ行くんだぁ?お前達の相手は俺だぁ!破壊の呼吸・捌の型!ブラスターメテオ!うおおおおおお!!」ピュン ピュン ピュン ピュン

 

空喜「ぬぉ!?チッ!」

 

積怒「ぬぅ・・!小賢しい・・!」

 

哀絶「!・・邪魔をするな、哀しくなる。」

 

可楽「カカカッ!まだ遊び足りないと言うのか。楽しくなるのう。」

 

ブロリーはあえて"ブラスターメテオ"を半天狗達に当てずに周りを狙うことで身動きを取れなくしたのだ。そうしている間にも炭治郎達が合流した。

 

炭治郎「師範!」

 

禰豆子「ムー。」

 

ブロリー「炭治郎!禰豆子!来たか。玄弥も無事だったみたいだな。」

 

玄弥「・・ええ、お陰さまで。だがな破壊柱さんよ!そしてテメェら!図に乗るなよ?上弦を倒すのは俺だ。」

 

ブロリー「は?」

 

炭治郎「玄弥?一体どうしたと言うんだ?」

 

炭治郎が聞くと、玄弥は血走った目で炭治郎の肩を掴み、一気に言いはなった。

 

炭治郎「うわっ!?」ガシッ

 

玄弥「上弦の参を倒したのは破壊柱さんの力だ!だが、上弦の陸を倒したのはお前の力じゃない!だからお前は柱になっていない!」

 

炭治郎「あっ!うんそうだよ。俺は柱じゃない。」

 

玄弥「お前達なんかよりも先に俺が倒す・・破壊柱さんにもすぐに追い付いてやる!!上弦を倒して柱になるのは俺だ!!!」

 

炭治郎(焦りの匂い・・そうか・・玄弥は師範が次々と残している功績に焦りを感じていたんだな。師範の事情を知っているのは俺だけだ。そうだよな・・玄弥や他の同期達からすれば"なんでこんなにも差があるんだ"と思ってしまうよな・・焦るのも無理はない・・よし!)

 

可楽「カカカッ!儂らの前で仲間割れとは面白いのう!今が皆殺しにする絶好の機会じゃ!」フッ

 

今が好機と踏んだ半天狗達は可楽を筆頭にして、それぞれ突風、雷、狂鳴、槍の攻撃を炭治郎達に浴びせようとした。しかし

 

炭治郎「!しまった!」

 

玄弥「・・ッ!」

 

ブロリー「させると思っているのか?はぁっ!」ゴォォォォ

 

ブロリーはすぐに一歩前に出るとバリアを張り、半天狗達からの攻撃を防いだのだ。炭治郎は玄弥の思いを理解すると早口ではっきりと伝えた。

 

炭治郎「なるほど!!そうかわかった!!俺と禰豆子と師範で援護する!!四人で頑張ろう!!」

 

炭治郎は玄弥を思いやってそう言ったが、当の本人はそれどころではなくなっていた。自分が感情のままに炭治郎に言ったことによって、今ブロリーがいなければ全員殺されていたと理解して行動を後悔していたのだ。

 

玄弥(・・俺のせいだ・・破壊柱さんがいなければ全員殺されていた・・こんなんじゃ柱になれない・・兄貴に謝れない・・)

 

ブロリー「玄弥!」

 

玄弥「!」

 

ブロリー「お前が何に焦っているのかは知らんが、今はムシケラを倒すことだけを考えろ。焦ったり後悔するのはその後だ。」

 

玄弥「!はい!」

 

ブロリーの言葉で気持ちを切り替えた玄弥は、先ほど刺された哀絶に向かっていった。玄弥は哀絶、炭治郎と禰豆子は空喜、ブロリーは可楽と積怒を相手した。

 

ブロリー「デヤァッ!!」バコッ バコッ

 

積怒「ぐあああ!!この・・!!」

 

可楽「がぁっ!?チッ・・!!」

 

可楽と積怒はブロリーに再び殴り飛ばされて、無一郎達がいる方へと吹き飛んでいったのだった。

 

無一郎side

 

無一郎は最初に魚介類型の化け物を倒してから、その後も複数の化け物と遭遇し、全て無傷で突破していた。そして小鉄を連れて鉄穴森の所へと来たのだった。

 

ザン!

 

「ギィィィ・・」バラ・・

 

鉄穴森「おおっ時任殿!これはありがたい!瞬きする間に斬っている!」

 

小鉄「鉄穴森さん!!」

 

鉄穴森「小鉄少年!!無事で良かった!正直もう死んでると思いましたよ。」

 

小鉄「!」ピタッ

 

小鉄は駆けよって鉄穴森に抱きつこうとしたが、鉄穴森の毒舌にショックを受けてガチガチに固まったのだった。そんな小鉄の心情など知らない無一郎は刀の用意を急かした。

 

無一郎「あなたが鉄穴森という人?俺の刀用意してる?早くだして。」

 

鉄穴森「おやっ!これは酷い刃こぼれだ!」

 

無一郎「だから里に来てるんだよ。」

 

鉄穴森「なるほどなるほど!では刀をお渡ししましょう。」

 

無一郎はやけに物分かりがいい新しい鍛治に少し困惑していた。少し黙ったあとそれを指摘した。

 

無一郎「・・・随分話が早いね。」

 

小鉄「良かったですね、感謝したらいいですよ。」

 

鉄穴森「炭治郎君とブロリー殿に頼まれていたんですよ、あなたの刀のことを。そしてあなたをわかってやってほしいと。」

 

無一郎「炭治郎・・そしてブロリーさん・・二人が・・」

 

鉄穴森「だから私はあなたを最初に担当していた刀鍛治を調べて・・あっそうだ!鋼鐵塚さん!!」

 

現在三人は鋼鐵塚が作業していると思われる小屋のすぐそばのところにいるのだ。鉄穴森が振り替えると、魚介類型の化け物は居らずにほっと息を吐いた。

 

鉄穴森「良かった!!魚の化け物はいない!!あの小屋で作業してたんです!中には時透殿の刀もあります!!それを持ってすぐに里長の所へ向かってください!!」

 

無一郎「いや駄目だ。」

 

無一郎は小屋に向かって走ろうとした鉄穴森の首根っこを掴み、もう片方の刀を持った手で小鉄を制する。

 

鉄穴森「げぅっ!?」

 

小鉄「いってぇ腹立つ!!」

 

無一郎「来てる。」

 

「ヒョッ。」ガサッ

 

無一郎が何かが潜んでいる気配を見つけて制すると、小屋の近くの茂みに置いてあった壺から玉壺が現れる。

 

玉壺「よくぞ気づいたなあ、さては貴様柱ではないか。そんなにこのあばら屋が大切かえ?こそこそと何をしているのだろうな?ヒョッヒョッ。」

 

鉄穴森(うーわキッショ!!)ゾワゾワッ

 

小鉄(キッショ!!うへー絶対独身だよ)

 

小鉄と鉄穴森は玉壺の見た目の気持ち悪さに吐き気と嫌悪感を持った。しかし、上弦とかかれているためにそれを口にすることはなく黙っていた。

 

玉壺「ヒョヒョッ、初めまして私は玉壺と申す者。殺す前に・・」

 

ドガァ! ドゴォ!

 

玉壺「ヒョッ!?」

 

無一郎「!!」

小鉄「!」

鉄穴森「!?」

 

玉壺が何かを言おうとする前に、四人のすぐ近くの木に何かがぶつかった大きな音がした。それはブロリーが吹き飛ばした可楽と積怒だった。

 

積怒「ぬぅ・・あの御方が言ってたように、実に腹立たしい。」

 

可楽「カカカッ!こんなに追い詰められたのは初めてじゃ!戦いが楽しいのう!」

 

玉壺「ヒョッ、これは積怒殿と可楽殿じゃありませんか。吹き飛ばされたのですか?私は胸が高鳴・・ゲフン、心配でなりませぬ。」

 

積怒「うるさい玉壺!儂らは飛ばされてなどない!」

 

可楽「あえて喰らってやるのもまた楽しいのう。」

 

可楽と積怒はまるで手加減したような物言いだったが決してそんなことはなく、全力で戦ったもののブロリーのほんの少しの力だけでここまで飛ばされたのだ。その証拠に可楽は楽しそうにしていたが、その表情は少しひきつっていた。積怒も声を荒げて否定しているところが何よりの証拠となっていた。そして二体を飛ばしてきたブロリーも姿を表した。

 

ブロリー「フハハハハハ!!無一郎と小鉄達もいたのか。みんな無事みたいで何よリーです。」

 

無一郎「・・誰だっけ?」

 

ブロリー「・・ブロリーです。」

 

鉄穴森「おおっ!ブロリー殿!助かりました。」

 

小鉄「凄い!姿を変えられたんですね!」

 

無一郎は柱合裁判でブロリーが『伝説のスーパーサイヤ人』になったことなどすっかり忘れていたので、ブロリーを忘れた訳ではなく、今の姿を見て本当に誰かわからなくなっていたのだ。

 

玉壺「まぁ可楽殿と積怒殿がそうおっしゃるならそういうことにしておきましょう。さてと、新たな方も現れたことですしもう一度自己紹介から参りましょう。初めまして、私は玉壺と申す者。殺す前に少々よろしいか?」

 

積怒「チッ!また始まった!コイツは話し出すと長いのだ!無駄な時間を使うことになるのは実に腹立たしい!」

 

可楽「まぁまぁ積怒、こういったこともまたよかろう。どうせこやつらは皆殺しにするのじゃ。多少は付き合ってやるのもまた楽しいものじゃ。」

 

玉壺「今宵四方のお客様には是非とも私の作品を見ていただきたい!」

 

無一郎「作品?何を言ってるのかな。」

 

玉壺「ではまずこちら!"鍛人の断末魔"で御座います!!」パンパン

 

玉壺が手を叩くと、もうひとつあった壺の中から刀鍛治の住人五人がぐちゃぐちゃに混ざり合った状態で出てきた。すでに事切れていることが虚ろな目ですぐにわかるほどである。それを玉壺は得意気に説明し始めた。

 

鉄穴森・小鉄「「!!」」

 

玉壺「御覧ください!まずはこの手!刀鍛治特有の分厚い豆だらけの汚い手を、あえて!私は前面に押し出しております。」

 

鉄穴森「金剛寺殿・・鉄尾さん・・鉄池さん・・鋼太郎・・」ブルブル

 

小鉄「あああ・・鉄広叔父さん・・!!」

 

そしてこの五人は残酷なことに小鉄と鉄穴森にとって親しい人たちでもあった。大切な人を殺された悲しみで体を震わせたり、涙を流して泣いているのを見た玉壺は更に得意気になった。

 

玉壺「そう!おっしゃる通り!!この作品は五人の刀鍛治を贅沢に!!ふんだんに使っているのですよ!それほど感動していただけるとは!!更に刀を刺すことにより"鍛人らしさ"を強調しております。このひょっとこの面も無情感や不条理を表現するために残しました。こちらも勿論あえて・・意図してです!そして極めつけはこれ!!このように刀を捻っていただくと・・」グッ

 

「ギャアアア!!」

 

小鉄「うわああやめろーーっ!!」

 

鉄穴森「・・!!」

 

鍛治の住人の断末魔を聞いて思わず飛び出しそうになった小鉄を鉄穴森は必死に止めた。

 

玉壺「どうですか?素晴らしいでしょう!断末魔を再現できるのです!!」

 

ブロリー「クズがぁ・・!」

 

無一郎「おい、いい加減にしろよクソ野郎が。」ヒュン

 

無一郎は素早い動きで玉壺の頚を狙うが、玉壺は壺の中に引っ込むと今度は屋敷の屋根の上に置いてある壺から出てくる。

 

玉壺「まだ作品の説明は終わってない!最後までちゃんと聞かれよ!」

 

無一郎(壺から壺へ移動できる・・なるほど。)

 

ブロリー「貴様の話など聞く価値はない!」バギャァ!

 

ブロリーは玉壺へ拳を振るった。玉壺は再び壺の中に消えるが、拳は綺麗に壺を割ったのだ。そう、ブロリーは最初から壺を狙ったのだ。壺を割られた玉壺は激昂した。

 

玉壺「よくも割りましたねぇ私の壺を・・芸術を!!審美眼のない猿めが!!脳まで筋肉で出来てるような貴様らには、私の作品を理解する力はないのだろう!それもまたよし!!」スッ

 

無一郎(これだけ逃げるってことはさっきの分裂鬼とは違ってコイツは頚を斬れば死ぬんだ。)

 

玉壺は片手に持っている壺の中から数匹の金魚を出した。彼の血鬼術である。

 

無一郎(金魚?)

ブロリー(魚か?)

 

玉壺「血鬼術・千本針・魚殺!!!」ブワッ

 

無一郎「!!」バッ

 

金魚は口を膨らませると、そこから何千本もの毒針を吐き出したのだ。その攻撃に反応した無一郎は回転移動することで間一髪避けた。そしてもう一体の金魚は小鉄と鉄穴森とブロリーがいるところへ攻撃したのだ。

 

小鉄「わああ!」

鉄穴森「小鉄少年!」バッ

 

無一郎「!!」(しまった!)

 

ブロリー「・・・・」ニヤリ

 

小鉄を鉄穴森が庇うように抱え込み、少し距離が離れている無一郎も焦った顔を浮かべるが、小鉄達のそばにいるブロリーは不適に笑った。そして

 

ブロリー「うぉぉぉおおおお!!」ゴォォォォ

 

なんとブロリーは避ける素振りすら見せずに真っ正面から突っ込んでいったのだ。これには無一郎も玉壺も驚きを隠せない。

 

無一郎「!!何やってるの・・!」

 

玉壺「ヒョッ!?真っ正面から突っ込んで来た!?この者は相当頭が弱いと見ました、こんな自殺行為をするなんて。その度胸を敬して貴方で最高傑作を作ってあげましょう。滑稽に刺さるがいいですよ。」

 

ブロリーの行為を見た玉壺は自身の勝利を確信したのかもうすでに作品のことを考えていた。しかし

 

ヒュンヒュンヒュン! ガチンガチンガチン!

 

玉壺「ヒョッ!?」

 

無一郎「!!刺さってない?針が弾かれてる・・!?」

 

ブロリー「とっておきだ!破壊の呼吸・壱の型!ブラスターシェル!」ゴォ デデーン☆デデーン☆デデーン☆

 

ブロリーの体には毒針が刺さらずに弾かれて、そのまま"ブラスターシェル"で金魚を全て倒してしまったのだ。

 

ブロリー「その程度の攻撃では俺は倒せない。勝った気でいたお前の姿は笑い物だったぞ。それより小鉄と貴様!いつまでそこにいるつもりだ?死にたいのか?命が惜しかったらさっさと隠れてろ。」

 

無一郎「・・うん。ブロリーさんの言うとおりだよ。邪魔だから隠れておいて。」

 

小鉄「はい!時透さん、ブロリーさん!ありがとうございます!」

 

小鉄はお礼を言いながら鉄穴森に担がれて森の奥の方へと消えていった。

 

可楽「カカカッ!玉壺の攻撃も全く効かないとはお前は本当にただ者ではないのう。」

 

玉壺「ヒョッ、これは私としたことが。貴方達が柱だと言うことをすっかりと忘れていましたよ。ですが刀鍛治二人を逃がしたことは滑稽ですねぇ。本当に滑稽。つまらない命を救ってつまらない場所で命を落とす。」

 

無一郎「・・っ!」ズキン

 

無一郎は玉壺が言った言葉がどこかで聞いたことがあり、霞がかった記憶の一部が晴れそうになるがそれでも思い出せない。なお玉壺は柱を見下すことを言う。

 

玉壺「しかし、こんなのでも一応は柱ですからねぇ。どんな作品にしようか心が踊る。」

 

無一郎「うるさい。つまらないのは君のお喋りだろ。」ドン

 

無一郎はハイライトがない目で玉壺を睨み、これ以上御託を聞く意味はないと判断して頚を斬ろうとする。しかし

 

玉壺「血鬼術・"水獄鉢"!」 ズッ ドパッ

 

無一郎「!!」ゴボゴボ トプン トプン

 

玉壺の血鬼術で壺の形をした水の塊を作り出すと、そこに無一郎を閉じ込めてしまったのだ。今の無一郎は呼吸を使うどころか普通に息をすることも出来ないため、一刻も早く脱出しなければ危険である。

 

玉壺「窒息死とは乙なものだ美しい。そして頚に刃を当てられてヒヤリとする感じ、これはとてもいい・・」

 

積怒「拝見してないでさっさと止めを刺してしまえ!!」

 

刀で水獄鉢を斬ろうとするが、水中では動きが鈍る上に今の無一郎は息も出来ない状態である。つまり斬ることは出来ずに"ぐに"と形を変えるだけだったのだ。

 

無一郎(駄目だ・・斬れない・・)

 

玉壺「鬼狩りの最大の武器である呼吸を止めた。もがき苦しんで歪む顔を想像するとたまらない。ヒョヒョッ。」

 

ブロリー「うぉぉぉおおお!」ドボンッ

 

玉壺「ヒョッ!?」

 

無一郎「!」

 

ブロリー「がぁぁぁあああ!」ゴォ バッシャーン!

 

そんな中ブロリーは自ら水獄鉢の中に飛び込み、そこからバリアを無理矢理張ることで水獄鉢を破壊したのだ。玉壺は驚きを隠せず、無一郎は急に呼吸ができるようになったものだから激しく咳き込んでいた。

 

無一郎「ゲホッ!ゴホッ!ゴホッ!」

 

ブロリー「無一郎、大丈夫か?」トントン

 

無一郎「やめっ・・俺は・・大丈夫だから・・」グイッ

 

ブロリーに助けられた無一郎は背中を優しく叩いてくる手を弱々しく退けると再び刀を構えた。

 

玉壺「やれやれ、里を壊滅させれば鬼狩り共には大打撃、鬼狩りを弱体化させれば産屋敷の頚もすぐそこだと言うのに。手こずらせてくれますねぇ。」

 

無一郎「お館様を殺すことが目的なの?だったら君には尚更死んでもらわないとね。」

 

無一郎とブロリーと玉壺と半天狗二体は再びぶつかり合おうとした。

 

?side

 

その頃、里から少し外れた森林を一人の女性が鎹鴉に案内されながら駆けていた。恋柱の蜜璃である。

 

蜜璃「急がなきゃ急がなきゃ!里のみんなが危ないわ。でも私の担当してる地区から刀匠さんたちの里、凄い近かったのね!びっくり!!よーし頑張るぞォ!!」

 

蜜璃は今、刀鍛治の里に鬼が出たとの情報が入り、急いで援護に向かっていたのだった。気合い十分の蜜璃の視界に入ってきたのは、里の住宅を襲う巨大な魚介類型の化け物の姿だった。

 

「ギョッギョッ。」

 

「ギャッ!!!」

「鉄五郎ー!!!」

「うわああ!」

「気をつけろ!この化け物は爪が刃物みたいに鋭いぞ!!」

「一旦建物の中へ逃げろ!

「駄目だ!!下がれっ下がれ!」

 

里の住民達はここで作ったあらゆる武器を取り出して、化け物を相手に徹底抗戦していた。しかし鬼殺隊の人でもない住民と鬼の分身とでは天と地ほどの差があり、あっという間に劣勢に追い込まれていた。しかし、そこへ蜜璃が到着した。化け物を斬りながら謝罪した。

 

蜜璃「遅れてごめんなさい!!みんなすぐ倒しますから!!」ザン

 

「うおおお!柱が来たぞ!凄ぇ!!」

「速・・」

「強・・」

「可愛いから忘れてたけど強いんだよな、柱って・・」

 

住宅は混乱に包まれていたが、柱が一人登場しただけでたちまち歓喜のざわめきに変わった。蜜璃は魚介類型の化け物を倒してから里長の元へと向かった。

 

「お・・長・・」

 

鉄珍の住む部屋では別の巨大な魚介類型の化け物が、鉄珍を今にも握りつぶそうと片手で掴みあげていた。長を守ろうとしていた隊員と住民も殺されかけていた。

 

鉄珍「ゴフッ・・」

 

(里を常駐で警護していた鬼殺隊員があっけなくやられてしまった・・里で最も優れた技術を持つ長を死なせるわけにはいかない・・!大きすぎるこの化け物・・攻撃がまるで効かん。異常に動きも速い。)

 

しかし、意識が朦朧としていた住民の前に、蜜璃が現れた。今までののほほんとした表情とは違い、キッと引き締まっていた。

 

蜜璃「動かない方がいいですよ!たぶん貴方は内蔵が傷ついてるから。」

 

「かっ・・甘露寺殿・・!!」(何だこの刀は、長が・・鉄珍様が打ったものか?噂には聞いていたが何と奇妙な・・)

 

「モ゛ォオオオオオオ!」ドタドタ

 

魚介類型の化け物は、蜜璃に襲いかかるべく突進してくる。しかし、蜜璃は呼吸を使って一気に叩き斬った。

 

蜜璃「恋の呼吸!壱の型!初恋のわななき!!!」ザンザンザン

 

「モ゛?」

 

蜜璃「私、いたずらに人を傷つける奴にはキュンとしないの。」

 

蜜璃が冷たい視線でそう言い放つと同時に、化け物は無残にも崩れて灰になったのだった。しかし、空中で支えを失った鉄珍が真っ逆さまに落下してくる。

 

「ああっ・・」

 

蜜璃「鉄珍様!!」ドスン

 

鉄珍の体が地面に叩きつけられる前に蜜璃が抱え込むことで、衝撃を和らげたのだった。

 

蜜璃「大丈夫ですか鉄珍様!!しっかり・・!!」

鉄珍「う・・」

蜜璃「鉄珍様!聞こえますか!?」

 

鉄珍「若くて可愛い娘に抱きしめられて何だかんだで幸せ・・ゴフッ」

 

蜜璃「やだもう鉄珍様ったら!」

 

蜜璃の活躍により、鉄珍を助けることができた。しかし、里の危機はまだ去っていない。蜜璃は次の戦場へ向かっていった。

 

炭治郎side

 

炭治郎達は哀絶と空喜を相手にして苦戦を強いられていた。空喜が空を飛びつつ狂鳴を打ってくるために炭治郎と禰豆子は防御しつつカウンターという戦い方になっていたのだ。なんとか攻撃を喰らわずにすんでいる炭治郎は玄弥の心配もしていた。

 

炭治郎(禰豆子!玄弥!)

 

空喜「他人の心配とは余裕があるのう。」ギャイイイ

 

炭治郎「!」バッ

 

空喜は再び炭治郎を空中へ連れ去ろうと滑空するが、炭治郎は寸前のところで身を交わした。

 

空喜「チッ!」

 

炭治郎は自身を掴み損なって体制を崩した空喜を見て今が好機と見て急いで玄弥の元へと向かった。

 

炭治郎「玄弥!」

 

炭治郎は玄弥を見つけたときには既に、玄弥は哀絶の頚を斬っていた。しかし、本人の様子はおかしかった。

 

炭治郎(玄弥!!無事だった!・・!?玄弥か!?なんだあの姿はまるで・・)

 

玄弥は哀絶の体の一部を食べたことで鬼化していたのだった。玄弥は炭治郎を見て再び突っかかろうとしたが、ブロリーに言われたことを思い出して踏みとどまった。炭治郎は戦ってる間にひとつの疑問を覚えた。

 

炭治郎(一体斬った事でわかった。恐らく鬼は四体同時に斬ったところで妓夫太郎達のようには倒せないんだ!!この喜怒哀楽鬼への攻撃は殆ど意味がない。ずっと気になっていたことがある。頚が急所じゃないなんてことがあるのか?違和感の正体、一瞬だけ感じたあの匂い、そうあれは、五体目の匂いだ!!)

 

炭治郎は戦ってる最中に五体目の半天狗、つまり本体の存在に気づいていたのだ。それを知った炭治郎は玄弥に伝えた。

 

炭治郎「玄弥!五体目の鬼がいるはずなんだ!探すから時間を稼いでくれ!!」

 

玄弥(こいつの言うことを聞くのは癪だ!だけど破壊柱様の言うとおり、今は戦いに集中しないと・・!)「チッ・・見つけたらさっさと教えろよ・・!」

 

炭治郎「わかった!あと禰豆子だけは斬らないよう気をつけてくれ!俺の妹だから!」

 

禰豆子「ム!」

 

炭治郎(探れ!!集中しろ!!どこだ!?団扇の鬼が風を使ったお陰で温泉の硫黄の匂いが飛んでいる。)

 

そして炭治郎は草むらに隠れる本体の匂いに気づいて玄弥に叫んだ。

 

炭治郎「玄弥ーっ!!!北東に真っ直ぐだ!!五体目は低い位置に身を隠している!向かってくれ!!援護する!!」

 

玄弥(北東!!)バッ

 

玄弥は本体を探すために炭治郎達と別れて北東に進んでいった。しかし、哀絶は玄弥の行く手を阻もうとする。

 

哀絶「行かせはしない。」バッ

 

炭治郎「お前も行かせない!ヒノカミ神楽!円舞!」ザン!

 

哀絶「ぐ・・あ・・」

 

炭治郎「玄弥ーっ!!右側だ!南に移動してる!探してくれ!!」

 

玄弥(探してる!!探してるんだよずっと!術か!?また何かの術で見えねぇのか!?くそっ!!くそっ!!くそっ!!どこだ!!長引けば長引く程こっちが消耗してしまう!)

 

炭治郎「西だ!もっと右!!近くにいる!低い!!玄弥!!」

 

玄弥(どこだっ!!ど・・!?)

 

そして玄弥は本体を見つけたのだ。ネズミ一匹程度の大きさしかないとにかく小さい本体を。

 

半天狗「ヒィィ」

 

玄弥(ちっさ!!)ドンドン

 

本体を見つけた玄弥はすぐさま銃で撃つが半天狗は背を向けて逃げだしているため当たらない。

 

半天狗「ヒィィィ」

 

玄弥(小さすぎだろ、本体こいつか!?こいつが!?くそったれが見つけられるかこんなもん普通!野ネズミ程度の大きさじゃねえか。あの四体が強力すぎんだよあんなのをこんなチビが操ってんのか!?あの四体を相手しながらこのネズミ捕り、クソ面倒くせえ!今まで鬼殺隊の人間がやられてきた構図が見えたぜ。ふざけんな小賢しい!!忿懣やる方ねぇ!!)ギャガッ

 

半天狗「ギャッ!」

 

玄弥は心のなかで半天狗本体に対する悪態をつきながら、鬼の力を使って半天狗の頚を斬ろうとする。しかし

 

半天狗「ヒィィィ」パキン

 

玄弥「!?」(きっ・・斬れねぇ!!馬鹿なっ!!こんな・・指一本の太さしかねえ頚だぞ!)ドンドン

 

玄弥の日輪刀の方が音を立てて折れたのだった。玄弥はその事実に動揺したが、それならばと銃で撃つが、それすらも意味をなさない。

 

半天狗「ヒィィィ」

 

玄弥(効かねぇ!!)

 

銃も日輪刀も効かない、そんな状況に玄弥は動揺するが、空喜と哀絶を禰豆子と共に相手に戦っている炭治郎達は彼に渇を入れた。

 

炭治郎「玄弥ーっ!!!諦めるな!!もう一度狙え!!もう一度頚を斬るんだ!絶対諦めるな!!次は斬れる!!俺が守るから!!頚を斬ることだけ考えろ!!柱になるんじゃないのか!!不死川玄弥!!」

 

ヒュードゴォ! ドガッ!

 

可楽「ぐぅ!」

積怒「ぐぉぉ!」

 

炭治郎/玄弥「「!?」」

 

炭治郎が言い終えると同時に、何かが近くの壁にめり込んで大きなクレーターを作った。それは可楽と積怒である。無一郎と共に戦っていたブロリーが二人をここまでぶっ飛ばして来たのだ。

 

玉壺「ヒョッ。」

 

当然そのすぐ近くにいた玉壺も壺の中から現れ、ブロリーと無一郎も炭治郎達と合流した。

 

ブロリー「炭治郎!」

 

炭治郎「師範!時透君!」

 

無一郎「・・炭治郎だっけ?君の師範強いね。」

 

炭治郎「あぁ、師範はとてつもなく強いぞ!」

 

玄弥「破壊柱様!霞柱様!」

 

ブロリー「玄弥か。」

 

無一郎「・・誰?」

 

無一郎は玄弥とは合っていなかったため、このような反応になるのは仕方のないことだった。そしてそこに蜜璃までもが合流した。

 

蜜璃「皆!遅くなってごめんね!大丈夫!」

 

炭治郎「甘露寺さん!」

 

玄弥「恋柱様!」

 

無一郎「甘露寺さん。」

 

ブロリー「蜜璃?なんでここにいるんだ?」

 

蜜璃「里を守るためです!皆で頑張りましょう!」

 

今現在、鬼殺隊の戦力は柱三人に加えて三人の剣士と禰豆子を合わせて合計七人である。それを理解した鬼側の積怒は錫杖を放棄して両手を掲げた。

 

積怒「・・ならば。」ゆらぁ

 

そこからは一瞬の瞬きも許されないほどの短時間で、積怒は可楽と空喜を肉が捻りつぶれるように吸収してすぐさま哀絶の元へ移動、抗議しようと口を開けた哀絶だが声を出すことなく吸収された。全ての分身を吸収した積怒は姿を変えた。より若返り、子供のような姿になった。しかし、その気配は今までのどの分身よりも禍々しくて押し潰されそうな強大な威圧感を放っていた。この姿は、分身の究極体である"憎珀天"である。

 

憎珀天「弱き者をいたぶろうとする鬼畜。不快、不愉快極まれり。極悪人共めが。」

 

半天狗「ひいいい。」ガタガタブルブル

 

炭治郎(子供?なんて威圧感なんだ・・息がつまる・・心臓が痛い。)

 

玄弥(あれは何だ?分身じゃねーのに更に若くなった。子供だ。本体だと思われる爺を抜いた状態での合体。)

 

無一郎(また姿が変わった・・それだけじゃない。今ここには上弦の伍もいるんだ。やるしかない・・)

 

蜜璃「キャーッ!すごいお化けなあにあれ!!」

 

ブロリー「何だぁ?その姿は?それで俺に勝てるつもりか?」

 

憎珀天は"憎しみ"の感情を持つ鬼である。背中にある太鼓のようなものを鳴らして木の根で本体を囲うように動かした。

 

炭治郎「!待て!」

 

憎狛天「何ぞ?貴様、儂のすることに何か不満でもあるのか。のう、悪人共めが。」ずん

 

炭治郎「!!」

 

玄弥(重い。声が、威圧が手足に力が入らなくなる、立ってられねぇ。)

 

押し潰されそうな威圧感に耐えながら炭治郎は静かに聞いた。

 

炭治郎「・・どうして俺たちが悪人・・なんだ?」

 

憎珀天「"弱き者"ををいたぶるからよ。のう、先程貴様らは掌に乗るような"小さく弱き者"に斬りかかろうとした。何という極悪非道。これはもう鬼畜の所業だ。」

 

半天狗の言い分は炭治郎を怒らせるのには充分だった。半天狗からは沢山の人間を食い殺した腐った匂いが強いからである。殺しておきながら自分は被害者面、その態度にキレたのだった。

 

炭治郎「小さく弱き者?誰がだ?ふざけるな。お前達のこの匂い、血の匂い!!喰った人間の数は百や二百じゃないだろう!!その人たちがお前に何をした?その全員が命をもって償わなければならないことをしたのか!?大勢の人を殺して喰っておいて被害者面するのはやめろ!!捻じ曲がった性根だ!絶対に許さない!悪鬼め・・!!お前の頚は俺が斬る!!」

 

蜜璃「炭治郎君の言葉、すごく心に来たわ!私すごくキュンとしちゃった!君たちはおいたが過ぎるわよ!」

 

憎珀天「黙れあばずれが、儂に命令して良いのはこの世で御一方のみぞ。」

 

蜜璃(あばずれ!?あばっ・・あっ・・私!?私のこと!?信じられないなんて言葉使うのかしら!?私の弟とそんなに変わらないじゃない!!でも鬼だと実年齢と見た目は違うわよね?それにしても酷いわ!)ガーン ブルブル

 

憎珀天の言葉にショックを受けた蜜璃はブルブルと震えていた。そんな中、無一郎が憎狛天に狙いを定めるが

 

玉壺「お前の相手は私だぞ小僧。血鬼術・蛸壺地獄!!」

 

無一郎「!霞の呼吸!伍の型!霞雲の海!」フッ ザン!ザン!

 

玉壺が現れて無一郎に不意討ちする、無一郎はそれに気づくと咄嗟に呼吸を使って反応し、蛸の足のようなものを全て切り刻んだ。玉壺と無一郎が戦い始めて、炭治郎や蜜璃も憎狛天と半天狗を倒そうと動いた。

 

憎狛天「狂鳴雷殺!」バリバリ

 

炭治郎「甘露寺さん!!」

 

蜜璃「恋の呼吸!参の型!恋猫しぐれ!」ガキンガキン

 

蜜璃は体の柔らかさと刀の柔らかさも相まって憎狛天の攻撃自体を斬った。その後も立て続けの攻撃を全て相殺していった。

 

憎珀天(この速さでもついてくるか、ならば術で埋め尽くす。)「血鬼術・無間業樹!」

 

憎珀天の広範囲の攻撃に蜜璃は青くなるが、それでも受け止めんと言わんばかりに呼吸で相殺する。

 

蜜璃(キャー!!広範囲の術!!受けきれるかしら!?)「恋の呼吸・伍の型!揺らめく恋情・乱れ爪!」ガチンガチン

 

炭治郎(速い!!でも駄目だ・・「か・・甘露寺さん!そいつは本体じゃない!!頚を斬っても死なない!!」

 

蜜璃(えっ!!やだホントに!?判断間違えちゃっ・・)

 

憎珀天「狂圧鳴波!!!」ドオオオン!

 

炭治郎の情報を受けて動揺した蜜璃は憎狛天の攻撃をもろに受けてしまい、全身が傷だらけになって意識を失った。しかし、それをみた憎狛天はとても驚いていた。

 

憎狛天(信じがたし!!この娘、今の攻撃を喰らって尚肉の形を保っているとは!!喰らう直前に全身の筋肉を硬直させた?しかしそれで耐えられる代物ではないぞ、解せぬ。いやそうかこの娘、図体に見合わぬ筋肉・・特異体質。これはよい。質の良い肉は強さに直結する。しかしまずは頭蓋と脳味噌を殴り潰しておくとするか。)ブン

 

憎狛天は蜜璃の命を絶ってから喰らおうと拳を振り上げる。しかし、蜜璃をブロリーが助け出した。そのときに抱えられた衝撃で蜜璃も意識を取り戻した。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ガシッ ビシュン!

 

憎狛天「!!・・邪魔をするな貴様!」

 

蜜璃「・・っ!」ハッ

 

ブロリー「蜜璃、大丈夫か?」

 

蜜璃「ブロリーさん・・ごめんなさい。私判断を間違えちゃった・・」(やだ、私意識を失って・・気がついたらブロリーさんに抱えられて・・///助けてくれた///素敵!キュンキュンが止まらないわ!///)キュンキュン

 

ブロリーは蜜璃の全身を見て傷だらけなのに気がついた。そして炭治郎や禰豆子も傷だらけで出血までしていることにも気がついた。それを見たブロリーはゆらりと上弦の鬼二体と向き合うと威圧感を放ちながら青筋を立てた。

 

ブロリー(炭治郎・・禰豆子・・蜜璃・・クズ共がぁ、今殺してやるぞ!)「はああああぁぁぁぁ!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

蜜璃・玄弥「「!!?」」

 

炭治郎「これは・・まさか・・!」

禰豆子「ムー!ムムー!///」

 

無一郎「!?」

玉壺「ヒョッ!?」

 

ブロリーは雄叫びをあげて空気を震わせた。周りの空間が全て緑色に包まれ、やがてエフェクトはブロリーの元へと収まっていった。これを初めて見る蜜璃と玄弥と無一郎、それだけでなく鬼の玉壺と憎狛天でさえも驚いていた。無一郎と玉壺は戦いを止める程である。しかし、一度見たことがある炭治郎と禰豆子はこの後どうなるのか予想がついていた。そしてその予想は当たることになる。

 

炭治郎「やっぱり!!今まで見たことのない師範の姿になった!!」

禰豆子「んー!///ムー!///」

 

興奮が抑えられない炭治郎と禰豆子。空間が元の色合いに戻ると再び覚醒を遂げたブロリーがいた。『スーパーサイヤ人』『伝説のスーパーサイヤ人』『スーパーサイヤ人3』とは全く別の姿になっていたのだ。悪魔の白眼はそのままに、今までの"緑がかった金髪"や"緑髪"でもなく完全な"黒髪"になっており、その長さは頚もとまでと短くなっていた。そして黒い眉毛が復活していてブロリーを覆うようにあふれでる気は金色へと変わっていた。その姿の最大の特徴は体である。頭、顔、頚、胸筋周り以外の全身が"猫のようにしなやかな赤い体毛"に覆われていることだった。この姿になったブロリーは

 

ブロリー「俺の餌食になるがいい!!」

 

と獲物を狙うような目で玉壺と半天狗を見るのだった。




これからも失踪しないように頑張っていきたいと思います。それではまた次回。


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無一郎の無は○○の無!遂に覚醒!スーパーサイヤ人4!

第三十話です。まずはお詫びをさせてください。四週間待たせてしまってすみませんでした!!そして駄文ですが、最後まで読んでくださると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


刀鍛治の里にて上弦の鬼との交戦中、蜜璃、禰豆子、炭治郎を負傷させられたことへの怒りで覚醒を果たしたブロリー。黒髪で金色のオーラを纏い身体にしなやかな赤い体毛が生えていた。この姿は『スーパーサイヤ人』の力と"大猿"のパワーが融合した姿、『スーパーサイヤ人4』である。あまりにも大きな変身に周りにいる柱達は驚きを隠せなかった。

 

ブロリー「俺の餌食になるがいい!!」

 

炭治郎「新しい姿の師範だ!」

禰豆子「んー!///ムムー!///」キラキラ✨

 

玄弥「破壊柱様・・?」

 

蜜璃「ブ・・ブロリーさん・・なの?」

 

無一郎(姿が・・変わった?どういうことなの?・・でもこの後ろ姿・・何かを思い出せそうな気がする・・)「・・っ!」ズキッ

 

炭治郎と禰豆子は興奮し、他の者は戸惑っていた。そしてそれは対峙している上弦の鬼も同じことであった。

 

玉壺「全身筋肉質なのに加えて綺麗な赤い体毛・・それに合わせるかのような黒髪と目立つ金の頚飾り・・良い、実に良い!今の貴方には私の作品の材料になる栄誉を与えて差し上げましょう!」

 

半天狗「ヒィィィ・・恐ろしい恐ろしい・・喜怒哀楽でも儂を守るのに間一髪だったのに・・更に強くなりよった・・きっと奴は善良な儂をいたぶるつもりじゃ・・いじめるつもりなんじゃ・・もうダメじゃ・・おしまいじゃ・・恐ろしい恐ろしい・・」ガタガタブルブル

 

憎狛天「!小さく弱き者をいたぶろうとするばかりか、更に強くなって恐れさせるとは、殺してやるぞ極悪人め!」

 

ブロリー「俺が悪者・・?違う、俺はもっと恐ろしい悪魔だ!フハハハハハハ!!」

 

炭治郎「師範は人のために信じられない力を出せるんだ!何が極悪人だ!いい加減にしろ!」

 

無一郎「!!」ハッ

 

憎狛天と玉壺がそれぞれの血鬼術を使おうと身構える。それを見たブロリーと炭治郎も拳と刀を構えて臨戦態勢をとった。そして無一郎は炭治郎の怒鳴り声を聞いて過去の記憶を全てを思い出すのであった。

 

――――

 

無一郎は元々四人家族で景信山という所に住んでいた。父親が杣人で木を切る仕事をしていて息子である無一郎も手伝いをしていたのだ。しかし、その幸せは十歳になった頃に突然崩れ去った。母親は風邪をこじらせて肺炎になって亡くなり、それを治そうと薬草を取りに行った父親も崖から転落して亡くなってしまったのだ。それ以来、無一郎は双子の兄である"時透有一郎"と二人きりになった。そんなある日、背中に大量の薪を背負った有一郎が言った。

 

有一郎「"情けは人のため鳴らず"、誰かのために何かしてもろくなことにならない。」

 

無一郎「違うよ。人のためにする事は巡り巡って自分のためになるって意味だよ。父さんがそう言ってた。」

 

無一郎は父親からの教えを覚えていて有一郎が言ったことをやんわりと否定するが、有一郎は心底どうでもいいと言うように吐き捨てた。

 

有一郎「人のために何かしようとして死んだ人間の言うことなんてあてにならない。」

 

無一郎「何でそんなこと言うの?父さんは母さんのために・・」

 

有一郎「あんな状態になってて薬草なんかで治るはずないだろ、馬鹿の極みだね。」

 

無一郎「兄さんひどいよ・・」

 

有一郎の言葉は当時は純粋で気が弱くて素直な少年の心を傷つけるのには充分だった。現に無一郎は目に涙を浮かべていた。それにも気づかずに有一郎は続けた。

 

有一郎「嵐の中を外に出なけりゃ死んだのは母さん一人で済んだのに。」

 

無一郎「そんな言い方するなよ!!あんまりだよ!!」

 

有一郎「俺は事実しか言ってない。うるさいから大声出すな、猪が来るぞ。無一郎の無は"無能の無"、こんな会話意味がない。結局過去は変わらない。無一郎の無は"無意味の無"。」

 

無一郎「・・・・」シュン・・

 

有一郎は両親が亡くなってから全てにおいて突き放すようになっていた。そこからの二人暮らしは息が詰まるようだった。どちらかが口を開けば必ず口論になり、その後重い雰囲気が時透家を支配していたのである。

季節巡ったある日、時透家に一人の女性が訪れた。"産屋敷あまね"である。無一郎が最初は彼女の事を白樺の木の精だと思うほど、美しく見えたのである。そこで剣士の子孫だということを教えられたが有一郎が暴言を吐いて追い返した。

 

無一郎「すごいね!僕たち剣士の子孫なんだって!しかも一番最初の呼吸っていうのを使う凄い人の子孫で」

有一郎「知ったことじゃない。さっさと米を研げよ。」

 

無一郎「ねぇ、剣士になろうよ。鬼に苦しめられてる人たちを助けてあげようよ。僕たちならきっと・・」

 

ドンドンドンドン!!

 

無一郎の提案を聞いた有一郎は額にビキリと青筋を浮かべると、切っていた大根を更に荒っぽく切り刻んで怒鳴り付けた。

 

有一郎「お前に何ができるって言うんだよ!米も一人で炊けないような奴が剣士になる?人を助ける?馬鹿も休み休み言えよ!!本当にお前は父さんと母さんにそっくりだな!!楽観的すぎるんだよ!どういう頭してるんだ!具合が悪いのを言わないで働いて体を壊した母さんも!嵐の中薬草なんか採りに行った父さんも!あんなに止めたのに・・!!母さんにも休んでって何度も言ったのに!!人を助けるなんてことはな!選ばれた人間にしかできないんだ!先祖が剣士だったからって子供の俺たちに何ができる?教えてやろうか?俺たちにできること!犬死にと無駄死にだよ!父さんと母さんの子供だからな!結局はあの女に利用されるだけだ!!何か企んでるに決まってる!この話はこれで終わりだ!いいな!!さっさと晩飯の支度をしろ!!」

 

無一郎「・・・・」

 

無一郎は目に涙を浮かべて無言になっていた。そしてそれきり、二人は口を利かなくなった。一度だけあまねに有一郎が水をかけようとして喧嘩したときだけ口論という名の話し合いをしたきり再び口を利かなくなった。

それから更に一年が経ったある日の夏のよる。時透家に追い討ちをかけるかのような出来事が再び起こった。日常の雰囲気と夏の暑さで有一郎も無一郎もイライラしていた。扉を開けたまま寝ていたら鬼が入ってきたのだ。

 

ザシュッ

 

有一郎「ぐあぁ・・!」

 

無一郎「兄さん!」

 

「うるせぇうるせぇ騒ぐな。どうせお前らみたいな貧乏な木こりは何の役にも立たねぇだろ。いてもいなくても変わらないような、つまらねぇ命なんだからよ。」

 

無一郎「っ!」ブチッ

 

このときの無一郎は生まれてから一度も感じたことのない激しい怒りの感情に支配された。感情と生存本能の赴くままに斧、鎌、ハンマー、木材などの身近にあった武器を使って鬼を血祭りにあげていたのだ。そしてふと我に返ると鬼は死にかけていた。頭が潰れても死ねずに苦しんでいた。間もなく朝日が昇り、鬼は灰になって消えた。無一郎は鉛のように重い体を引きずって家に入った。中にはもうすぐで息絶えそうな有一郎が倒れていた。

 

無一郎(兄さん・・生きてる・・兄さん・・)

 

有一郎「・・神・・様・・仏・・様・・どうか・・どうか弟だけは・・助けてください・・弟は・・俺とは違う・・心の・・優しい・・子です・・人の・・役に・・立ちたいというのを・・俺が・・邪魔した・・悪いのは・・俺だけです・・バチを当てるなら・・俺だけに・・してください・・わかっていたんだ・・本当は・・無一郎の・・無は・・"無限の無"なんだ・・」

 

有一郎は無一郎に対して冷たい言い方しかできないことに罪悪感を持っていたのだ。彼は全く無一郎の事を嫌っていなかった。むしろ、たった一人の大事な弟だったからこそ手酷く厳しくしてでも、邪魔をしてでも守りたいと常に思っていた。とても弟思いの優しい兄だったのだ。その真相に気づいた無一郎は傷だらけの体で静かに涙を流したのだった。

 

―――

 

それらの事をこの一瞬で思い出すことができた無一郎は、ブロリー達と上弦二体が動き出す前にシュタッと前に立った。そしてブロリーと炭治郎を見ると満面の笑みを浮かべた。

 

ブロリー・炭治郎「「無一郎?/時透君?」」

 

無一郎「・・ブロリーさん、炭治郎。ありがとう!君たちのお陰で僕は大切な記憶を思い出すことができた。感謝しているよ。」

 

炭治郎「時透君・・!」

 

無一郎「さてと、次はもうやられないから。お前のくだらない壺遊びにいつまでも付き合ってられないし。」

 

玉壺「・・・・舐めるなよ小僧。」ビキリ

 

無一郎とブロリーが玉壺の方を向いているため、必然的に残った炭治郎、蜜璃、玄弥、禰豆子が半天狗へと向き合う形になった。

 

ブロリーside

 

ブロリーは今、無一郎と玉壺の罵りあいを聞いていた。その内容は『スーパーサイヤ人4』になったブロリーの事である。当の本人はただ呆れるだけだったが。

 

無一郎「いや別に舐めてる訳じゃないよ、事実を言ってるだけで。どうせ君は僕たちに殺されるんだし、だってブロリーさんの姿が変わったでしょ?それに雰囲気も空気も重くなったし、なんだろうあの姿?それとも君には理解することもできなかったのかな?」

 

玉壺「その口の利き方が舐めていると言ってるんだ糞餓鬼め、たかが十年やそこらしか生きてもいない分際で。」イライラ

 

無一郎「そう言われても君には尊敬できる所が一つもないからなぁ。見た目もしゃべり方も気色が悪いし。」

 

玉壺「私のこの美しさ、気品・・優雅さを理解できないのはお前が無教養の貧乏人だからだ。便所虫に本を見せても読めないのと同じ。」

 

無一郎「君の方が便所に住んでいそうだけど。」

 

炭治郎(と、時透君・・!そんなに挑発したら・・)

 

玉壺「黙れ便所虫。貴様らのような連中の手足の短いちんちくりんの刃は私には届かない。」

 

無一郎「いや、そもそも君の方が手足短いし、それにブロリーさんは里に被害が出ないようにあえて手加減して戦っているんだよ。」

 

無一郎は理解していたのだ。ブロリーが最初から全力なんて出していないことを、その上で上弦の鬼を追い込んでいることを。その事から既に無一郎は自分達の勝利を確信しているのだ。

 

無一郎「ああもしかして自分に対して言ってる独り言だった?邪魔してごめんね。」

 

玉壺「ヒョヒョッ。安い挑発だのう。この程度で玉壺様が取り乱すとでも?勝ちたくて必死なようだな、見苦しいことだ。」

 

無一郎「うーんうーん。」

 

玉壺「ヒョッヒョ、何だ?」

 

無一郎「気になっちゃって・・ねぇブロリーさん。あの壺を見てどう思う?少なくとも僕には歪んでて左右対称に見えないんだけど。」

 

ブロリー「そもそもあんなものに価値などあるのか?歪んでいようがそうではなかろうが俺には塵にしか見えんな。所詮ガラクタはガラクタなのだ。」

 

玉壺「それは貴様らの目玉が腐っているからだろうがアアアア!!!私の壺のオオ!!どこが歪んでいてガラクタなんだアアア!!!」ブチブチブチッ

 

無一郎とブロリーの煽りに怒り狂った玉壺は、ブロリーに攻撃が効かないことも忘れて再び血鬼術を使った。

 

玉壺「血鬼術・一万滑空粘魚!!一万匹の刺客がお前らを骨まで喰らいつくす!!私の作品の一部にしてやろう!!!」

 

玉壺は壺から一万匹の鋭い牙が生えた魚を出して無一郎とブロリーに向けて放った。

 

無一郎「霞の呼吸・陸の型・月の霞消。」フウウウ

 

それを見た無一郎は、回転をかけて向かってくる魚を捌いていった。ブロリーも腕組みしているだけで立ったままだが、魚が持っている牙はその体に刺さることなく弾き返されて"次々と地面にボトボト"と落ちていった。

 

玉壺(斬りおった!この速度と攻撃範囲!!それにもう片方には粘魚の牙すら刺さっていないではないか!!こんなことが・・こんなことがあってたまるか!)

 

玉壺は血鬼術が二人に効かないとわかると木の上へと一瞬で登ったのだった。そして今までの皮が剥がれて身体中が魚の鱗に覆われて手には水掻きが生え、足は魚の尻尾の形をした姿になった。つまり"脱皮"したのである。

 

玉壺「お前達には私の真の姿を見せてやる。この姿を見せるのはお前達で三人目と四人目。」

 

無一郎「はいはい、結構いるね。」

 

玉壺「黙れ、私が本気を出した時生きていられた者はいない。」

 

無一郎「すごいねー。(棒)」

 

玉壺「口を閉じてろ馬鹿餓鬼が!!この透き通るような鱗は金剛石よりも尚硬く強い。私が壺の中で練り上げた、この完全なる美しき姿に平伏すがいい。」

 

無一郎「・・・・」

 

ブロリー「キモッ。」

 

玉壺「誰がキモいんだ!!お前はなんとか言ったらどうなんだこの木偶の坊共めが!!本当に人の神経を逆撫でする奴らだな!!」

 

無一郎「いや、だってさっき黙ってろって言われたし・・それにそんな吃驚もしなかったし・・ブロリーさんの言うように気持ち悪いし・・」

 

ドドドドドド ビチビチビチ

 

無一郎が言い終わると同時に、玉壺はブロリーに向かって"神の手"を振り下ろした。ブロリーは上半身を捻るだけで避けたが拳が地面に当たるとグニャリと歪んでから大量の魚に変化したのだ。

 

ブロリー(また魚か?)

 

玉壺「どうだね?私のこの神の手の威力。拳で触れたものは全て愛くるしい鮮魚となる。そしてこの速さ!!この体の柔らかくも強靭なバネ、さらには鱗の波打ちにより、縦横無尽自由自在よ。震えているな?恐ろしいか?先程の攻撃も本気ではない。恐ろしさのあまり動けなかったようだな。」

 

ブロリーは自身を狙ってきたために玉壺の言葉が無一郎ではなく自分に向けられているものだと理解した。そしてニヤリと笑うと言い放った。

 

ブロリー「やっと俺と戦う気になったようだがその程度のパワーで俺を倒せると思っていたのか?」

 

"完成体"になった玉壺と"スーパーサイヤ人4"になったブロリーが同時に動き出した。

 

玉壺「私の華麗なる本気を見るが良い!!血鬼術・陣殺魚鱗!」ギャガガガガ!!

 

玉壺は全身の鱗を使って高速で縦横無尽に飛び回り、神の手と併用して拳を振りだそうとする。

 

玉壺「さあどうかね。私のこの理に反した動き!鱗によって自在だ!予測は不可能!私は自然の理に反するのが大好きなのだ!お前はどのように料理してやろうか!その綺麗な赤い体毛のある体はそのままに、醜い頭をもぎ取り美しい魚の頭をつけてやろう!これでおしまいだ!」ドゴォ

 

無一郎「!あっ・・!」

 

ブロリーの体に玉壺の"神の手"による拳が当てられる、無一郎はこの時ブロリーは敗北したと思い片手で口を塞いだ。しかし

 

ブロリー「・・・・」

 

玉壺「!何故だ!?何故鮮魚にならない!?」

 

ブロリーの体は魚に変わる気配すら感じなかったのだ。それに上弦の伍の攻撃を受けても微動だにしないことに今度こそ動揺が隠せなくなった。

 

ブロリー「ムシケラが・・何をしても無駄なのだ。今度は俺の番だ。破壊の呼吸・拾伍の型!ギガンティッククラスター!」ポウ

ギュイーン ゴゴゴゴゴゴ

 

玉壺「なっ!?ぐっうう・・」ゴゴゴゴゴゴ

 

ブロリーが出したのは横に長い楕円形の気弾だったのだ。超至近距離から攻撃を受けた玉壺は、ブロリーが放った技"ギガンティッククラスター"に簡単に飲み込まれて意識が急速に遠のいていくのがわかった。

 

玉壺(くそオオオ!!あってはならぬことだ!!人間の分際でこの玉壺様をよくもォ!!おぞましい下等生物めが!!百人の命より私の方が価値がある!選ばれし優れた生物なのだ!!弱く!生まれたらただ老いぼれるだけのつまらぬくだらぬ命を私が高尚な作品にしてやったというのに!この私が・・こんな形で・・)「・・この下等な蛆虫ども・・!ギャアアアア!!」ドッカーン

デデーン☆

 

玉壺は最期に負けたことを実感して、恨めしそうにブロリーへと怨み言を向けながら、気弾が爆発して跡形もなく消されたのであった。それをブロリーは興味もないのか見向きもしないまま言った。

 

ブロリー「終わったな・・所詮、クズはクズなのだ・・」ビュオオ

 

それだけを言い残してブロリーは炭治郎達の気がある方に飛び去って行くのだった。無一郎は上弦の伍である玉壺をたった一撃で倒したことを称賛していた。

 

無一郎(流石だね、ブロリーさん。僕が苦戦した上弦をたった一撃で倒しちゃった。早く僕もブロリーさんみたいに上弦程度を軽く倒せるようになりたいな。)

 

無一郎は物思いに耽りながら、少ししてブロリーが飛んでいった後をゆっくりと追いかけていくのだった。

 

炭治郎side

 

ブロリーや無一郎と少し離れたところで上弦の肆と戦っている炭治郎達は、柱である蜜璃が憎狛天の足止めをして炭治郎と玄弥が逃げ回る半天狗の頚を切ろうと追いかけていた。

 

ギャギャギャギャ!

 

蜜璃「みんな私が守るからね。仲間は絶対に死なせないから!鬼殺隊は私の大切な居場所なんだから!上弦だろうがなんだろうが関係ないわよ!私悪い奴には絶対負けない!覚悟しなさいよ本気を出すから!こっちは私が何とかするから!」

 

玄弥「炭治郎!本体の入ってる玉は何処だ!?わかるか!?」

 

炭治郎「わかる!!こっちだ!」

 

憎狛天は半天狗本体に近づけないことと血鬼術の無間業樹でだした木でできた石竜子をやれないことにイライラしていた。

 

憎狛天(!!童共が!不愉快極まれり!!この小娘のせいで童共の方へ石竜子をやれぬ!!憎たらしい!!だがしかし、永遠ではない。必ず体力が続かなくなる!!人間は必ず!!)

 

一方の炭治郎達は半天狗本体が隠れているうねる大樹へと登っていた。

 

炭治郎「ぐあああ!!振り落とされるな!!頑張れ頑張れ!!木の・・アレ!!ヘビトカゲ竜みたいなのがこっちへ来ない内に!!甘露寺さんが止めてくれてる内に!!」

 

禰豆子「ううう!!」

 

玄弥(こんな状態じゃ刀も振れねぇ!なら・・!!これしかねぇ!!)ガブッ バリボリバリボリ

 

玄弥は大樹に歯を立てるとそのまま食い千切り食べ始めたのだ。それを見た炭治郎は驚きを隠せなかった。

 

炭治郎(うわああ噛んでる!?凄い硬い歯だ!)「でもお腹壊さないか!玄弥大丈夫なのか!」

 

玄弥は鬼を喰うことによって一時的に鬼の体質になれる。強い鬼を喰えばそれだけ再生力も上がり筋肉も上がる。身体能力が低く、呼吸も使えない玄弥の唯一の鬼を倒す方法である。玄弥は特異体質だった。優れた咬合力と特殊な消化器官により短時間の鬼化を可能とした鬼殺隊唯一の逸材である。そのまま食い千切って伐採された大樹は倒れ、半天狗が隠れている玉も地面に落ちた。

 

炭治郎「ヒノカミ神楽!炎舞!」コオオオ

 

玉は炭治郎によって叩き割られ、すぐさま再生しようとするのを禰豆子と玄弥が抑えて塞がないようにする。

 

禰豆子「ううう!!」ガッ

 

玄弥「やれ!!」ガッ

 

しかし、玉の中は既にもぬけの殻になっていた。半天狗が再び逃げ出したのだ。炭治郎は急いで探す。

 

炭治郎(また逃げた!!どこだ!!どこだ!!近い・・)

 

半天狗「ヒィィィ!」ダッ

 

炭治郎「!貴様ァァァ!!逃げるなアア!!責任から逃げるなアア!!お前が今まで犯した罪!悪業!その全ての責任は必ず取らせる!絶対に逃がさない!!」

 

半天狗「!」

 

炭治郎の叫びを聞いた半天狗は、かつて人間時代に侍に言われたことを思い出していた。そして裏返っているはずの目が恨めしそうに炭治郎を見ていたのだ。半天狗は盲目のふりをしていたのだった。

 

半天狗(儂は生まれてから一度たりとも嘘など吐いたことがない。善良な弱者だ。此程可哀想なのに誰も同情しない。)

 

その時、玄弥が木を持ち上げてぶん投げた。半天狗の足止めをするためだ。

 

玄弥「がアアアア!!クソがァァァ!いい加減死んどけお前っ・・空気を読めえええ!!」ブオン

 

炭治郎(木・・ぶん投げたー!!)

 

半天狗「ギャアア!!」ドゴゴゴ

 

半天狗は尚も逃げ出して炭治郎達と距離を取ろうとするしかし、徐々に追い込まれてきていた。

 

蜜璃side

 

蜜璃は憎狛天とその血鬼術で作られた石竜子と戦っているが、人間一人と分身のようなものとはいえ複数の相手には到底太刀打ちできずに、全身が傷だらけになりながら泣き叫んだ。

 

蜜璃「ぎゃあああああ~~!!!もう無理!!ごめんなさい!私殺されちゃう~!!」

 

ブロリー「させると思っていたのか?」ヒュン バッ

 

蜜璃「・・!ブロリーさん~!!」

 

ブロリーは突如として現れ、殺られそうになっていた蜜璃をお姫様抱っこで助け出して憎狛天と石竜子から少し離れたところに下ろした。

 

ブロリー「俺が蜜璃を殺させるとでも思っていたのか?お前はもう大丈夫だ。今までよく頑張ったな、流石蜜璃と褒めてやりたいところだぁ!」

 

蜜璃「うう~・・!ありがとうございます~・・!!」

 

憎狛天「チィッ・・またしても邪魔が入りおった憎たらしい!お前もまとめて皆殺しにしてやる!血鬼術・無間業樹!」グオングオン

 

憎狛天は再び木でできた石竜子をブロリーに向かって放つが、それを見たブロリーは避けようともせずに正面から突っ込んでいく。

 

ブロリー「うおおおおお!!」ビュオオオ

 

蜜璃「!キャアアアアア!!駄目えええええ!!」

 

蜜璃は石竜子に突っ込んでいったブロリーが殺られてしまうことを想像して悲鳴を上げた、しかしそれは杞憂で終わった。ブロリーの体は鬼程度の攻撃は一切通用しないからだ。

 

ガンガン ガキン ガキン

 

蜜璃「!うっ嘘・・あの鬼の攻撃が、効いてないの・・?」

 

蜜璃はブロリーに憎狛天の攻撃が全く効いてないことに驚き、片手で口元を塞いで目を見開いていた。そしてブロリーは石竜子数体を回し蹴り一発で吹き飛ばすと、目に見えない速さで憎狛天へと迫る。

 

ブロリー「殺されるのは貴様らの方だ。破壊の呼吸・拾肆の型!ギガンティッククロー!」ガシッ ブオン

 

憎狛天「ぬおおお!?」ヒューン

 

憎狛天は炭治郎と半天狗本体がいる方へと飛ばされていった。ブロリーは炭治郎達のもとへと向かう前に蜜璃に言った。

 

ブロリー「蜜璃、その様子だと動くこともやっとだろう。少し休んでからゆっくりと来るがいい。」

 

蜜璃「!はい!」(キャッ///ブロリーさんに助けてもらっちゃった///)

 

蜜璃からの返事を聞いたブロリーは再び炭治郎達のもとへと飛んでいったのだった。

 

炭治郎side

 

炭治郎達はいまだに高速で逃げる半天狗を追いかけていた。その卑劣さに玄弥は青筋を立てて怒りを表していた。

 

玄弥「足速ェェ!!何なんだアイツクソがァァァ!!追いつけねええ!!」

 

半天狗「ヒィィィ!!」

 

炭治郎(はっ・・速い!!くそっ!!延々と逃げ続ける気だな!夜が明ける前に甘露寺さんが潰れるまで!そんなことさせない!!俺たちがお前を勝たせない!)

 

炭治郎が絶対に頚を斬ると半天狗に憎悪を向けたとき、半天狗の横から憎狛天が飛ばされてきたのだ。憎狛天は木を何本か折ってようやく制止することができた。

 

憎狛天「ぬおおお!?」バキッバキッバキッ

 

半天狗「ヒィ!?」

 

炭治郎「なっ!?」

 

玄弥「分身!?何故だ!」

 

上弦の鬼である分身が飛ばされてきた、それはつまり鬼以上の攻撃でなければ絶対にできないことである。それができるのは一人しかいない。

 

炭治郎「師範!甘露寺さんは・・?」

 

ブロリー「炭治郎、よく頑張ったな!蜜璃なら俺がムシケラを無理矢理引き離したから休んでいる!」

 

玄弥「!良かった・・恋柱様生きていた・・」

 

禰豆子「ムムー!」

 

ブロリーは炭治郎達が全員生きていることを確認すると、後は鬼を殺すだけだと考えて、向き直った。

 

ブロリー「ムシケラ共。今、楽にしてやるぞ。」ゴゴゴゴゴゴ

 

憎狛天「ぬぅ・・!憎たらしい・・!」

 

半天狗「・・お前達はああ、儂がああ、可哀想だとは思わんのかアアアア!!弱い者いじめをォするなあああ!!」ムクムクムク ドォン

 

半天狗は突如として体を大きくすると咆哮を上げた。その舌には"恨"の字があって炭治郎は驚いて目を見開いていたが、ブロリーは冷静に見破っていた。

 

炭治郎(舌に"恨み"の文字!?本体は"怯え"だったはず・・舌の文字が違う!!)

 

ブロリー(体を大きくした。だからアイツは偽物だな。だが俺にはわかる。アイツの胸の中に本物がいる気配がする。小さくなって隠れようったってそうはいかんぞ。)

 

そして半天狗の言い分を聞いた玄弥は怒り、顔中に血管を浮かべていた。

 

玄弥「テメェの理屈は全てクソなんだよ!ボケ野郎がァアア!!」

 

ブロリー「ふん思わんな。貴様らまとめて血祭りに上げてやる!これで終わりだ!破壊の呼吸・拾陸の型!ギガンティックデストラクション!」ゴオオオオオ!!

 

ブロリーは両手を目の前に持ってくると、そのまま特大のレーザーのようなものを射った。それは半天狗と憎狛天をいとも簡単に飲み込んで大爆発を起こした。

 

憎狛天「ぐおおお!?」ドッカーン! デデーン☆

 

半天狗「ギャアアアア!!」ドッカーン! デデーン☆

 

ブロリーが射った『スーパーサイヤ人4』での大技"ギガンティックデストラクション"は半天狗の本体を含めて分身二体ごと跡形もなく消し去ったのだ。そして興味が失せたのか、炭治郎達の方へと向き直った。

 

ブロリー「炭治郎、終わったな。」

 

炭治郎「!・・はい!師範!」

 

玄弥(破壊柱様・・ブロリーさん・・やっぱり凄い。これが鬼殺隊史上最強といわれる人の力なのか。)

 

炭治郎と玄弥がブロリーに対して微笑みを浮かべていると、禰豆子がブロリーに飛び付いた。

 

禰豆子「ムムー!んー!」ギュウウ

 

ブロリー「フハハハハハハハ!!禰豆子もよく頑張ったな。ほらっ褒美だ。」ポンポン

 

禰豆子が頬を赤らめて抱きつかれているブロリーは、禰豆子の頭をポンポンと撫でていた。しかし、このときの四人は夜明けが来ていることに気づかずにいた。ブロリーが慌てたように言った。

 

ブロリー「!炭治郎まずい!夜明けだ!」

 

炭治郎「!師範!禰豆子をつれて早く日陰へ・・!」

 

ブロリー「わかっている・・!・・!?」

 

禰豆子「ううう!!」イヤイヤ

 

時間を忘れていた四人は夜明けが来ていることに気づくのに遅れ、急いで木陰に移動しようとするが、禰豆子本人はここから動くことをよしとしなかった。そして遂に禰豆子が日の光を浴びてしまった。

 

禰豆子「ギャッ!?」ジュウ・・

 

炭治郎・ブロリー「「禰豆子・・!」」

 

玄弥「・・っ!」

 

禰豆子から煙が上がって三人は灰になって消えてしまうことを想像した。しかし煙は一瞬で止むと、火傷の跡のようなものも治り、日の光を浴びながら笑顔を向ける禰豆子がブロリーの腕の中にいた。

 

禰豆子「お、お、おはよう。」

 

炭治郎「禰豆子・・良かった大丈夫か?お前・・人間に・・」

 

禰豆子「よ、よかった、だい・・だいじょうぶ。よかったねえ、ねえ。」

 

ブロリー「禰豆子、天才か!?まさか太陽まで克服してしまうとはな、人間に戻ったわけではないみたいだが、とりあえずは良かったな。」

 

禰豆子「えへへ///ブロリー、おにたおした、ひとまもった、つよいねぇ///かっこいいねぇ///ねぇ///」ギュウウ

 

禰豆子はブロリーを再びギュウウと抱き締めて頬を赤らめていた。そして禰豆子の手がブロリーの体毛に触れたときに禰豆子が言い放った。

 

フサッ

 

禰豆子「!ねっねこ!」

 

ブロリー「猫?」

 

炭治郎「?禰豆子、猫なんてどこにもいないぞ。」

 

禰豆子「ブロリー、からだ、ねこ、さわって、ねこ、みたい。」

 

炭治郎「師範の体が猫っぽい?」

 

禰豆子があまりにも気持ち良さそうにブロリーの体毛を撫で回しているため、炭治郎も釣られてブロリーの体に触れた。

 

フサッ

 

炭治郎「!本当だ!師範の体毛、猫みたいだ!猫の毛を触ってるみたい!」

 

玄弥「!・・・・」ウズウズ

 

玄弥はもともと犬や猫が好きであるために、炭治郎と禰豆子がブロリーの体毛に触れているのを見て、ものすごく触りたい衝動に駆られてウズウズしていた。そして遂に我慢できなくなってブロリーの体に触った。

 

フサッ

 

玄弥「!本当に猫みたいだ・・」(ヤベェ・・この感触、癖になりそうだ・・)

 

ブロリーも満更でもない表情をしていて、炭治郎達のされるがままになっていた。特に咎めもしなかったが、ブロリーは無一郎と蜜璃が向かってきているのに気づいた。

 

ブロリー「お前達、無一郎と蜜璃も来たみたいだ。」

 

炭治郎「時透君と甘露寺さんが!?」

 

無一郎「炭治郎、大丈夫?」

 

炭治郎「時透君、良かった無事で・・」

 

無一郎「炭治郎、ブロリーさん、ありがとう。君達のお陰で大切なものを取り戻した。」

 

無一郎に笑顔で感謝されたことに、思わず炭治郎とブロリーはお互いの顔を見合わせて頭に"クエスチョンマーク"を浮かべた。

 

炭治郎「え・・そんな、なにもしてないよ俺・・」

 

ブロリー「炭治郎に同じだ。俺もなにもしていない。」

 

無一郎「それにしても禰豆子はどうなってるの?」

 

炭治郎「いやそれが・・「みんなあああああ!!」ガバア

 

炭治郎が禰豆子について無一郎に説明しようとしたとき、蜜璃が凄い勢いで走ってきて、炭治郎達全員を一気に抱き締めた。玄弥は真っ赤になり、無一郎は苦しそうにしていて炭治郎と禰豆子は笑みを浮かべていた。

 

蜜璃「うわああああ!勝った勝ったぁ!みんなで勝ったよ!凄いよおお!!生きてるよおお!良かったああ!」

 

禰豆子「よかったねぇ。」

 

蜜璃「!禰豆子ちゃん?太陽を克服したの?」

 

炭治郎「はい!どうやらそうみたいで、さっきからずっと太陽を気にしないで師範にくっつきっぱなしなんです。」

 

禰豆子「ブロリー、からだ、ねこ。」

 

蜜璃「ブロリーさんの体が猫ちゃん?どう言うこと?」

 

炭治郎「それは師範の体に触ってみたらわかりますよ。触ってみてください。」

 

蜜璃「ええ、わかったわ。」

 

フサッ

 

蜜璃「!本当に猫ちゃん撫でてるみたい!」

 

無一郎「ブロリーさん、僕も触っていい?」

 

ブロリー「触るがいい。」

 

フサッ

 

無一郎「!!かなり好きかも!」

 

その後も里の被害を最小限に止めた炭治郎達は、隠の人達が到着するまで『スーパーサイヤ人4』のブロリーの体毛を満足するまで堪能するのだった。




今回で遂に出ましたね。"スーパーサイヤ人4"これになったことによってブロリーが新たに使えるようになった技をまとめておきます。

ブロリー

新形態、スーパーサイヤ人4

全集中の呼吸・・破壊の呼吸
壱から拾参の型全て
拾肆の型「ギガンティッククロー」
拾伍の型「ギガンティッククラスター」
拾陸の型「ギガンティックデストラクション」

ブロリーは全力の五百分の一も力をだしてません。更に新しい姿になったことで技の種類が更に増えました。それではまた次回。


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禰豆子の太陽の克服!鬼殺隊の戦力の底上げへ!

第三十一話です。おそらくここから原作の展開とは大きく離れていくと思います。それでも大丈夫な方は最後まで読んでくださると嬉しいです。


炭治郎やブロリーが半天狗と玉壺の上弦二体を倒し、刀鍛治の里にいた者達は被害が最小限に抑えられて喜びを分かち合っていた。一方その頃、とある屋敷では、一人の少年が自室の本を大量に地面に落として散らかしていた。擬態している鬼の始祖"鬼舞辻無惨"は、半天狗の視界を通して太陽を克服した禰豆子を見たことで大興奮していた。そこへこの屋敷の奥さんとメイドが部屋に入ってきた。

 

「あら俊國どうしたの?こんなに散らかして。」

 

無惨「ついに太陽を克服する者が現れた・・!!よくやった半天狗!!」

 

「まぁ随分楽しそうね。読んだ本のお話かしらっ・・」パガッ ドシャ

 

「え?」

 

無惨は部屋に入ってきた奥さんの頚を撥ね飛ばし、隣にいるメイドは何が起きたのかが理解できずにただ狼狽えていた。

 

「えっ?奥様?首が・・どうしたんですか?どっ・・ええ?」

 

無惨「これでもう青い彼岸花を探す必要もない。クククッ。永かった・・!!しかしこの為、この為に千年増やしたくもない同類を増やし続けたのだ!十二鬼月の中にすら現れなかった稀有な体質!選ばれし鬼!あの娘を喰って取り込めば私も太陽を克服できる!!」メキメキ バーン

 

擬態を解いて子供の姿から成人男性の姿になるところを一部始終メイドは見ていて人間ではない化物が奥さんを殺したとわかると、悲鳴を上げて逃げ出そうとした。

 

「キャアアア!!人殺し!!化け物!!化け物!!旦那様ァー!!」グシャッ

 

無惨はメイドの上半身も撥ね飛ばして一瞬で命を奪った。禰豆子が太陽を克服したことで興奮が覚め止まないが、ふと何かを思い出してそれまで続いた興奮も治まった。それは、ブロリーが『スーパーサイヤ人4』に覚醒することが可能となったことである。

 

無惨(ブロリー・・!奴は半天狗と玉壺との戦いで更なる進化を果たした・・!何故だ・・!何故奴は十二鬼月と戦う度に違う姿へと進化するのだ・・!もはや私を軽くねじ伏せる力を持っているではないか!それだけではない。奴は手加減しているではないか!更に奴は常にあの娘のそばにいる。つまり迂闊に近寄ると殺される・・!だからといって奴らがあの逃れ者の女狐と手を組んでいることは朱沙丸を通して知っている。ブロリーが寿命で死ぬまで立てこもることも考えたが、それまでにあの娘が人間に戻って私が太陽を克服できない可能性が極めて高い!どうすれば・・!どうすれば・・!)

 

今の無惨は禰豆子を捕まえたいが、ブロリーには決して会いたくないのだ。ブロリーとの遭遇は自身の死を意味する。だが、太陽を克服するためには禰豆子を喰って取り込む必要がある。しかし、その禰豆子は、無惨にとって忌々しい『日の呼吸』を使う炭治郎と自身を遥かに上回る強さを誇るブロリーを倒さなければならない。更に上弦の鬼は既に四体もブロリーに殺られていて、今残っているのは上弦の弐・童磨と上弦の壱・黒死牟のみとなってしまった。そして相手の鬼殺隊の柱は誰一人として殺せていないのも現状で、明らかに鬼陣営が劣勢に追い込まれていた。無惨が半天狗と玉壺の視界を通して戦闘を見ていてもブロリーが手加減して戦っているのは解るため、残り二体の上弦と共に無惨がブロリーと戦ったとしてもおそらく・・いや、絶対に勝ち目など無いだろう。つまり無惨はある意味詰んでいる状況なのである。だからといって禰豆子を諦める選択肢はなかった。千年かかってようやく見つけた太陽を克服した鬼なのだ。禰豆子の次に克服する者に照準を合わせるとなると更に気が遠くなるほどの年月がかかる上に必ず現れる保証もないのだ。太陽の克服を自身が行うことは非常に難しいことを理解した無惨は頭をかかえた。

 

無惨(まずブロリーについて考えるのは後にする。これ以上奴のことで悩むと知恵熱が出そうだ・・他の鬼狩りの柱共は特に警戒する必要はなさそうだが、今の十二鬼月の数があまりにも少なすぎる・・!まずは上弦の補充をしなくては。)

 

ひとまずブロリーのことについて考えることを止めた無惨は、その他の柱を滅殺することを目的として欠けた十二鬼月の補充に動くのだった。

 

―――

 

一方でその後何事もなく無事に隠達と合流したブロリー達は、刀鍛治の住人達の移転と亡くなった者達の埋葬、更に里全体の移動に取り組んでいた。一度鬼に襲撃された以上、この日の夜にも再び襲撃を受ける可能性が非常に高いからだ。鬼は里の復興を待ってくれるはずがなく、人が命を落としてもこの世の巡りは止まらないのだから。失った者達を悼む時間はなかった。

鍛治の里から帰って来てから数日後、炭治郎は重症だったこともあり蝶屋敷に入院していて。今はおむすびを頬張りながら隠の後藤と対談していた。

 

炭治郎「そうなんですね。もう拠点を移して・・」

 

後藤「"空里"っていうのをいくつか作ってんのよ。何かあったらすぐに移れるように。つーかお前また七日も意識がなかったのにそんなに食って大丈夫か?」

 

炭治郎「はい!甘露寺さんも師範もいっぱい食べると言ってたんで!」

 

後藤「あの人達はちょっと原理の外側にいる感じだけどな。恋さんと霞さん二日眠ってその後三日でほぼ全快だったって?」

 

炭治郎「はい、尊敬します。師範に至ってはどこも怪我してなかったので数時間休んだだけで完全に全快だったらしいです。」

 

後藤「・・あの人は人間じゃねぇ、サイヤ人だからな。上弦二体と戦って無傷で勝ったんだろ?ヤベェよ・・」(お前も段々と近づいてんだよ・・段々とな・・)

 

上弦二体を倒したことは喜ばしいのだが、人間離れしているもの達に段々と近づいている炭治郎についていけなくなりそうで後藤は頭をかかえた。

 

後藤「・・まぁ早く元気になるならいいけどよ。みんな生きてて良かったな。」

 

炭治郎「はい?」

 

後藤「あっ、これ一番聞きたかったんだわ。妹がえらいことになってるらしいけど大丈夫なのか?」

 

炭治郎「あっはい!太陽の下をトコトコ歩いてますね。」

 

後藤「やばくね?それマジでやばくねぇか?今後どうなるんだよ。どういう状態なんだ?妹はよ。」

 

炭治郎「今調べてもらっているんですけどわからなくて、人間に戻りかけているのか鬼として進化しているのか・・」

 

後藤「胡蝶様が調べてくれてんの?」

 

炭治郎「いや珠世さんが・・!!」ゲホッゲホッゲホッ

 

鬼である珠世の名前をうっかりと出してしまった炭治郎は盛大にむせて咳き込んだ。後藤は誰だと思ったが、炭治郎が急に咳き込んだのでそれどころではなくなった。

 

後藤「おいおい!!やっぱ食い過ぎだろうが!病み上がりなんだから控えろよ!!」

 

炭治郎「ハー、ハー」(あぶなかった・・)

 

後藤「っていうかチビ三人と妹はどこにいんだよ?アオイちゃんもいねぇしよ。」

 

炭治郎「今は重体の隊士もいないらしいので、ずっと禰豆子と遊んでくれてるんですよ。そのおかげで少しずつしゃべれるようになってきて、あっでも師範のことは最初からわかってたみたいです。」

 

後藤「ああ、そうなのか平和だな。ただあの黄色い頭の奴が来たらえらいことになるんじゃねえの?」

 

炭治郎「えっ?」

 

この後藤の懸念は現在進行形で的中していることを二人は知るよしもなかった。

蝶屋敷の庭では今善逸が禰豆子を見て顔を真っ赤にして発狂していたのだった。

 

善逸「ギャィィアアアアアア!!!!」

 

アオイ/きよ「うるさいっ・・!/・・っ!」

 

禰豆子「お、おかえり!」

 

善逸「可愛いすぎて死にそう!!」

 

アオイ「どうぞご自由に!!」

 

善逸「どうしたの禰豆子ちゃん喋ってるじゃない!俺のため?俺のためかな?俺のために頑張ったんだね!とても嬉しいよ!俺たちついに結婚かな!?」

 

きよ(耳が・・)

 

アオイ「あっち行ってください!!」

 

善逸「月明かりの下の禰豆子ちゃんも素敵だったけど太陽の下の禰豆子ちゃんもたまらなく素敵だよ!素晴らしいよ!結婚したら毎日寿司とうなぎ食べさせてあげるから!安心して嫁いでおいで!!」

 

禰豆子「おかえりいのすけ。」

 

アオイ「!・・プフッ・・」

 

アオイは間違えられた善逸に吹き出した。伊之助は蝶屋敷へ来たときからひらすら禰豆子に自分の名前を覚えさせたのである。その事もあいまって名前を間違えられた善逸はこの場にいない伊之助に向かって物凄い殺意を向けた。

 

善逸「あいつどこにいる?ちょっと殺してくるわ・・!」

 

アオイ「物騒なこと言わないで!!」

 

隊律違反紛いなことを言い出した善逸にアオイは釘を刺すのだった。

そしてこの日、産屋敷邸では現役の柱九名での緊急柱合会議が開かれていた。

 

天元「ブロリー!お前またしてもド派手に上弦を倒したらしいな!しかも二体!」

 

ブロリー「あぁ。鍛治の里とやらに俺の刀を整備するために行ったら襲ってきたからな。軽く血祭りに上げたがな。」

 

実弥「ケッ!羨ましい限りだぜぇ。俺なんてそこら辺の雑魚鬼くらいしか殺ってねぇってのによォ。なんで俺は上弦に遭遇しねぇのかねぇ。」

 

小芭内「こればかりはな。遭わないものはとんとない。甘露寺と時透、その後体の方はどうだ?」

 

蜜璃「あっうん!ありがとう随分よくなったよ。」(キャッ!!心配してくれてる!!)

 

無一郎「僕も・・まだ本調子じゃないですけど・・」

 

行冥「これ以上柱が欠ければ鬼殺隊が危うい・・死なずに上弦二体を倒したのは尊いことだ。」

 

しのぶ「今回のお二人ですが傷の治りが異常に早い、何かあったんですか?」

 

義勇「その件も含めてお館様からお話があるだろう。」

 

義勇が言い終わったちょうどいいタイミングで襖が開き、耀哉をはじめとした産屋敷一家が総出で出てきた。

 

耀哉「みんな、今日は急に来てもらって済まないね。顔ぶれが変わらず柱合会議が開かれることを嬉しく思うよ。」

 

ババッ

 

耀哉が姿を見せた途端、八名の柱は正座をしてから両手を畳について頭を下げた。そんな中でブロリーのみは胡座をかいたまま耀哉達の方へ顔を向けるだけだった。それを横目で見た実弥や小芭内は額に青筋を浮かべた。

 

実弥「テメェ・・!お館様に失礼な姿勢をとるのいい加減やめろやァ・・!!」

 

小芭内「全く不死川の言うとおりだ、いい加減身の程をわきまえたらどうだ?正座をして地面に頭がつくくらい下げろ。」ネチネチ

 

天元「・・お前らもいい加減学習しろ。お館様はブロリーを派手に許容してる。お館様がお決めになったことなら俺らは従うだけだろ。」

 

無一郎「ブロリーさんはこれでいいの、許されるほどの実績を残してるんだから。不死川さん達こそ余計なことは言わないでくれないかな?お館様が話せないし時間の無駄だから。」

 

実弥「んだとォ!?」

 

柱同士で喧嘩が始まりそうになったとき、行冥がバチンと両手を思いっきり合わせた。

 

「「「「!!」」」」

 

行冥「不死川、伊黒、気持ちはわかるが今はお館様の話が優先だ。ブロリーもあまりに出過ぎた真似は控えることだ。」

 

ブロリー「普通にしているつもりなんだがな。」

 

柱の中でもリーダー的存在である行冥の一声で対立していた四人は静かになった。そしてそれを見計らった行冥は耀哉に挨拶を行った。

 

行冥「お館様が望むのであれば我々はいつでも駆けつけましょう。お館様が一日でも長くその命の灯火燃やしてくださることを祈り申し上げる・・」

 

耀哉「ありがとう行冥。今日の会議の内容はみんな既に聞いたと思うけど、禰豆子が太陽を克服した。日の光を克服した鬼が現れた以上、鬼舞辻無惨は目の色を変えてそれを狙ってくると確信しているんだ。自分も太陽を克服するためにね。大規模な総力戦が近づいている。上弦の肆・伍との戦いでブロリーが全く別の姿になって倒したと聞いている。ブロリー本人は勿論蜜璃、無一郎も当時のことを説明してもらいたいと思っている。」

 

耀哉はブロリーの『スーパーサイヤ人4』にとても興味があるようで刀鍛治の里にいた柱三人から詳しく聞こうとしていた。

 

耀哉「鎹鴉からの報告によると前見せてもらった姿とは異なって"黒髪"と"猫みたいにしなやかな赤い体毛"が身体に生えてる姿だと上がっている。どうやってその姿になったのか、そしてその強さはどれ程のものだったのか説明してもらえるかい?蜜璃、無一郎、ブロリー。」

 

蜜璃「はっはい!!確かにあの時の姿は凄く強かったです!えーっとえーっと・・ゴオオオオってなりました!バッてしてゴォーって。変身したらポヒーポヒーって投げてドッカーンって上弦の鬼を倒してました!」

 

産屋敷「「「「「「「・・・・」」」」」」」ポカーン

 

柱「「「「「・・・・」」」」」ポカーン

 

蜜璃も炭治郎と同じように説明に擬音を使うため、人に教えたり説明するのが猛烈に下手だった。うまく説明できておらずみんな呆然としていた。小芭内は頭を抱え、実弥は青筋をたてていた。

 

蜜璃「・・申し訳ありません。穴があったら入りたいです。」

 

ブロリー「・・蜜璃、気にするな。直接俺がやって見せればいい話だ。」

 

耀哉「そうだね。それが一番だ。お願いね。」

 

ブロリー「はい・・」

 

ブロリーは立ち上がると歩いて部屋から出ようとした。それに実弥が青筋を立てて止めようとした。

 

実弥「おい待てやァ。どこへ行くつもりだァ?まだお館様達が退出してねぇだろうが。ここでやれやァ。」

 

ブロリー「いいのか?あれは変身するときに空気を大きく揺らすものだ、下手したらこの部屋が壊れるぞ。それでもいいのか?」

 

実弥「!・・チッ!だったらさっさとしろォ。」

 

ブロリーの今の言葉は脅したつもりは本人に全くないのだが、主である耀哉に失礼な態勢を常にとっていて気にくわない相手であるため、実弥は煽られたように感じ不服ながら渋々了承したのだった。産屋敷邸の庭で『スーパーサイヤ人4』になったブロリーはすぐさまもとの部屋に戻っていった。再び襖を開くと、他の柱の人たちは皆興味津々そうにブロリーを見た。

 

蜜璃「!これこれ!この姿!上弦の肆と伍を倒したのはこの姿のブロリーさんです!」

 

無一郎(猫・・やっぱりこの感触好き・・)フサッ モフモフ

 

蜜璃は助けられたこの姿にキュンとして無一郎は早速猫の感触を楽しんでいた。

 

行冥(南無・・猫・・)

 

実弥(・・チッ・・)

 

天元「ド派手な姿じゃねぇか!」

 

義勇「・・・・」(猫・・)

 

しのぶ「・・ッ」ジリッ

 

ブロリーの『スーパーサイヤ人4』の姿を目の当たりにして行冥は真っ先に猫を想像し、実弥はこの姿を少し愛くるしいと感じた自分に腹が立ち内心で舌打ちした。天元は今までのよりも派手な姿に興奮と感心で一杯になり、義勇はただ猫っぽいと思うだけであった。体毛のある動物が苦手なしのぶは顔を強張らせると少しだけ距離を開けた。

 

耀哉「そうか。それが上弦二体を倒した時の姿なんだね。猫みたいで愛くるしいね。」

 

輝利哉・かなた・にちか・くいな・ひなき(((((可愛い///)))))

 

あまね(ブロリー様・・愛くるしくて尊くて素敵です!///)

 

その姿は産屋敷一家にも評価され、耀哉は微笑み、あまねや子供達は顔が赤くなり、今すぐ無一郎のように楽しみたい衝動を必死に耐えていた。

 

耀哉「ブロリー、その姿になることができたきっかけと力の強大さは覚えているかい?もし覚えてるなら言ってほしいかな。」

 

ブロリー「きっかけは覚えている。上弦のムシケラ共に蜜璃と無一郎と炭治郎と禰豆子が殺されそうになったことに対する怒りと悲しみだな。からくり人形の訓練の成果もあっただろうが、体の気を冥一杯解放したらこの姿になったんだ。それと同時に本能的にも感じた。今までもそうだったが、"全力を出すとこの星が粉々になる"とな。だからムシケラを血祭りにあげたときは力の千分の一も出していない。」

 

しのぶ「!?全く力を出していないのに上弦を倒したってことですか?」

 

天元「だろうな!俺と上弦を倒したときもお前はまだまだ余裕がありそうな感じだったからな!それに感情で変身するたぁド派手じゃねぇか。ブロリーの快進撃は止まらなそうだな。」

 

実弥「チッ、感情だと?そんな簡単なことでいいのかよォ。」

 

義勇「(ブロリーの心情を知らずに)簡単と言ってしまえる簡単な頭で羨ましい。」

 

実弥「何だと?」

 

義勇「何も。」

 

ブロリーが上弦の鬼を相手にゼロに限りなく近い程でしか戦っていないとの情報に、しのぶは驚きを隠せず天元は感心していた。そしてブロリーからきっかけと強さを聞くことができた耀哉は満足そうに笑顔を向けた。

 

耀哉「そうかい。ありがとうブロリー。皆、私はブロリーがここまで強く柱までもを守れるようになってくれたことが凄く嬉しいんだ。でもその反面、このままでは不味いとも思っているんだ。」

 

無一郎「?何故ですか?ブロリーさんや僕たちが上弦の鬼を倒して行けば確実に鬼舞辻を倒せると思います。」

 

蜜璃「私も同じです。このまま行けば残りの上弦と鬼舞辻は倒せるかと。」

 

耀哉「・・確かに今のブロリーがいれば確実に鬼舞辻を倒せると私は確信している。でも鬼舞辻が禰豆子を狙って総力戦になるとも思っているんだ。どれだけ強くてもブロリーは一人しかいないんだ。ブロリー頼りの戦いをしてしまって連戦が続けばもしかしたらやられてしまうかもしれない。そうなってしまうと一気に戦力が落ちてしまう。可能性は限りなく低いが少しでも不安材料は排除しておきたいんだ。皆生きて帰るのが一番だからね。あまね、後は頼めるかい?」

 

あまね「はい耀哉様。皆様には更なる戦力強化をしていただきたいと思っております。幸い今は鬼の出現もぴったりと収まっています。そこで下の階級の者達を柱様の手で鍛え上げていただきたいのです。ご多忙な中こんなことを頼むのは断腸の思いです。ですが犠牲者をできる限り減らしたいのです。どうかお願いします。」ペコッ

 

輝利哉・かなた・くいな・にちか・ひなき「「「「「お願いします。」」」」」ペコッ

 

耀哉「私からもお願いするよ。方法はみんなに任せるから、鬼舞辻との決戦に備えて戦力強化を計りたいんだ。だからどうかお願いします。」ペコッ

 

産屋敷一家は戦力強化を狙って柱達に稽古をつけてほしいとお願いしたのだ。そして丁寧に頭を下げた。これに慌てたのは柱達である。普段心の底から尊敬しているお館様が自分達に頭を下げたのだから、柱を代表して行冥があくまで冷静に言った。

 

行冥「頭をお上げくださいお館様。私たちは既にお館様に忠誠を誓っております。そのようなことであれば反対せずに受け入れる次第でございます。」

 

行冥が頭を下げると他の柱達も同じくといわんばかりに頭を下げた。

 

耀哉「ありがとう皆。それではさっきも言ったと思うけど、方法はみんなに任せるね。鬼殺隊がより良い方向に行くように祈ってるよ。お願いね。」

 

「「「「「「「「御意。」」」」」」」

 

ブロリー「ところで耀哉、いい加減にもとに戻ってもいいか?」

 

耀哉「あぁわざわざ済まないねブロリー、もう戻っても大丈夫だよ。」

 

耀哉の許可を得たブロリーは"通常形態"に戻った。すると、楽しんでいた無一郎やブロリーに視線が釘付けだった輝利哉達は心の中で残念そうにした。

 

無一郎「あっ・・」

 

輝利哉・かなた・くいな・にちか・ひなき(((((あっ・・戻っちゃった・・)))))

 

蜜璃(むぅ、残念・・終わったら私も堪能しようと思ったのに・・)

 

ブロリー以外の柱はみんな返事して、それに満足したように耀哉とその家族は退出した。そして柱のみが残されると、早々に義勇が立ち上がった。

 

義勇「あまね殿も退出されたので失礼する。」スッ

 

実弥「おい待てェ失礼すんじゃねぇ。それぞれ今後の立ち回りも決めねぇとならねぇだろうが。」

 

義勇「八人で話し合うといい。(柱ではない)俺には関係ない。」

 

小芭内「関係ないとはどう言うことだ、貴様には柱としての自覚が足りぬ。それとも何か?自分だけ早々に鍛練を始めるつもりなのか?会議にも参加せず。」ネチネチ

 

小芭内の言ってることにも無反応の義勇は部屋を去ろうとした。蜜璃は冷や汗をかいて実弥は血管を顔中に浮かび上がらせた。

 

実弥「テメェ!待ちやがれェ!」

 

しのぶ「冨岡さん、理由を説明してください。さすがに言葉が足りませんよ。」

 

ブロリー「どこへ行くんだぁ?」

 

義勇「・・・・(柱ではない)俺はお前たちとは違う。」

 

実弥「気に喰わねぇぜ・・前にも同じこと言ったなァ冨岡。俺たちを見下してんのかァ?」バッ

 

とうとう我慢できずに勢いよく立ち上がった実弥に、蜜璃は慌てて止めようとする。

 

蜜璃「けっ喧嘩は駄目だよっ。冷静に・・」

 

実弥「待ちやがれェ!!」

 

蜜璃「キャーッ!!ダメダメ!!」

 

蜜璃の制止も目に入っていない実弥は義勇に掴みかかろうとした。その時、行冥が両手をバチン!と鳴らした。その時の衝撃波は、周囲の空気を揺らすほど重いものだった。そして行冥はある提案をした。

 

行冥「座れ。話を進める。ひとつ提案がある。」

 

行冥が出した提案。それは順番に柱の屋敷を回ってそれぞれ別の項目を鍛えるというものであった。名付けて『柱稽古』というものが鬼殺隊で行われようとしていた。

場所は変わって蝶屋敷、入院している炭治郎のもとに鋼鐵塚が三百年前の刀を研ぎ終えて持ってきたのである。

 

炭治郎「あー!!鋼鐵塚さん!!研磨が過酷と聞いていたんですけど大丈夫ですか!良かった!!」

 

鋼鐵塚「ハァーハァーハァーフゥーハァー・・」

 

炭治郎「大丈夫じゃない感じですか!?」

 

鋼鐵塚は物凄く息が荒く、とても疲れているようだった。これだけで研磨がどれ程辛くてきつかったのかがよくわかるくらいであった。そして鋼鐵塚は無言で炭治郎に日輪刀を差し出した。

 

炭治郎「あっ刀・・ありがとうございます。」

 

あまりにも辛そうにしている鋼鐵塚を見かねた後藤が、椅子を差し出した。

 

後藤「座ってください。大丈夫スか?」

 

鋼鐵塚「ハァハァフゥフゥ・・」ストン

 

炭治郎「刀身と刃を見てもいいですか?」

 

鋼鐵塚「・・早く・・しろ・・」

 

炭治郎「わっわかりました・・」

 

静かな圧を放って急かす鋼鐵塚に冷や汗を滴しながら急いで鞘から抜いた。すると、それは以前よりも漆黒の深さがより濃いものになっていた。あまりにも美しい刀に炭治郎は思わず息を飲んだ。

 

炭治郎「凄い・・漆黒の深さが違う・・」

 

鋼鐵塚「鉄も質がいいし、前の持ち主が相当強い剣士だったんだろう。」フゥフゥ

 

炭治郎「滅の文字・・」

 

炭治郎が見つけたのは鍔と刀身の間にある"滅"という文字だった。普通鬼殺隊の日輪刀は、柱の刀には"悪鬼滅殺"の文字が入っていて、それ以外の階級の者は何も掛かれていないのだ。ちなみにブロリーの日輪刀は、炭治郎が初めて折って新しいものを申請した際に"ブロリーが柱になった"との情報が既にあったので新しく"悪鬼滅殺"の文字が入れられたのである。しかし皮肉なことに、またもやブロリーは一度も刀を使っていないため、本人や炭治郎達、更には他の柱も知らないのだ。そしてこのときもブロリーは柱合会議に出ていてこの場にはいないのだ。この"滅"の文字を知っているのは、炭治郎と鋼鐵塚のみなのである。炭治郎が気にしたことに鋼鐵塚は説明を始めた。

 

鋼鐵塚「この刀の後から階級制度が始まり、柱だけが悪鬼滅殺の文字を刻むようになったそうだ。」

 

炭治郎「そうなんですね、凄い刀だ・・」プルプル

 

炭治郎は今持っている日輪刀のすごさを理解すると、緊張して小刻みに震えていた。そして鋼鐵塚は急に尋常ではない程の殺気を炭治郎にぶつけた。

 

鋼鐵塚「そんなことよりもだ炭治郎。お前はこれで俺の刀がダメにされたのは何度目だと思っている!そんなお前を見かねて俺はこの刀を研磨術でここまで磨いてやったんだ!今もまだ筋肉痛が酷くてずっと涙が出てるんだよ!痛くて痛くてたまらないんだよ!!」

 

炭治郎「すみません!!」

 

殺気を放ちながら炭治郎の頬を引っ張る鋼鐵塚に後藤が思わず助け船を出した。

 

後藤「でもコイツは怪我で体の酷さは負けてないっスよ。身体中の骨折れまくってるしコイツ。」

 

鋼鐵塚「・・・・ブチ殺すぞ・・!!」

後藤「話通じねぇな!!」

 

鋼鐵塚「いいか炭治郎、お前は今後死ぬまで俺にみたらし団子を持ってくるんだ。いいなわかったな?」

 

炭治郎「は・・はい持っていきます。」イデデデ

 

炭治郎の返事を聞いた鋼鐵塚はフラフラと力なく動いて蝶屋敷を後にした。

 

炭治郎「ありがとうございました!お大事に!」

 

後藤「噂には聞いてたけどスゲェ人だな。」

 

炭治郎「今日はかなり穏やかでしたよ。相当辛いみたいです。」

 

後藤「マジかよ・・」

 

玄弥「さっきからうるせぇんだよ。」

 

そして今この場には炭治郎が寝ているベッドの隣で玄弥も寝ていた。なのにさっきから騒がしい炭治郎達をジト目で睨み付けていたのだ。

 

炭治郎「あ、ごめん玄弥。もう済んだから。騒がしくして悪かったよ。」

 

炭治郎が玄弥に謝罪した瞬間、伊之助が蝶屋敷の窓を突き破って病室に入ってきた。

 

伊之助「うおおお!!」バリーン ガシャガシャ

 

炭治郎「ああーー!!伊之助・・!!何してるんだ!窓割って・・」

 

後藤「お前馬鹿かよ!胡蝶様に殺されるぞ!」

伊之助「ウリィィィィ!!」

後藤「黙れっ!」

 

玄弥(部屋を別にしてほしい・・)

 

伊之助「強化強化強化!!合同強化訓練が始まるぞ!!強い奴らが集まって稽古つけて・・何たらかんたら言ってたぜ!」

 

炭治郎「?何なんだそれ?」

 

伊之助「わっかんねぇ!!」いばり

 

炭治郎「なるほど・・」

 

ちなみにこの後、しのぶによって伊之助が雷を落とされたのは言うまでもない。そして伊之助が言っていたのは"柱稽古"のことである。遂に始まったのだ。何故このような提案が行冥から出されたのか。それは基本的に柱は継子以外には稽古をつけなかったのだ。理由は単純、忙しいのである。警備担当地区の見回りや鬼の情報収集、更には自身の剣技向上などやることが多かったのだ。しかし禰豆子が太陽を克服して以来、今までの鬼との戦闘の日々がまるで嘘のようにピタリと納まったのだ。来るべき戦いに備えるための鬼殺隊全体での戦力の底上げが始まったのだった。




今回はブロリーの出番がかなり少なくなってしまいました。次回はもっと多くの出番が来るように頑張ります。それではまた次回。


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思いの激突!しのぶVSブロリー!

第三十二話です。今回は原作にはない展開が含まれています。それでも大丈夫な方は本編へどうぞ。


柱稽古が始まり、鬼殺隊全体の底上げが始まった。その事について話し合っている善逸と炭治郎だったが、そのテンションは天と地だった。

 

善逸「~~らしいよ・・」

 

炭治郎「そうなんだ!凄いな。」

 

善逸「何も凄くねぇわ最悪だよ地獄じゃん・・誰なんだよ考えた奴、死んでくれよ。」

 

炭治郎「こらっ・・自分よりも格上の相手の人と手合わせしてもらえるって上達の近道なんだぞ。自分よりも強い人と対峙するとそれをグングン吸収して強くなれるんだから。」熱弁!

 

しかし、炭治郎の熱弁が善逸の逆鱗に触れたのか、顔中の血管を浮かべながら炭治郎の額を噛った。

 

善逸「そんな前向きなこと言うんであれば俺とお前の仲も今日これまでだな!!お前はいいだろうよまだ骨折治ってねぇからぬくぬくぬくぬく寝とけばいいんだからよ!!俺はもう行かなきゃならねぇんだぞわかるかこの気持ち!!」ゴリィ

 

炭治郎「いたたた・・!ごめんごめん。あっ、でも善逸」

善逸「俺に話しかけるんじゃねぇ・・!!」

 

炭治郎「いやいや待ってくれ。俺も師範や善逸の呼吸のコツを使って鬼と戦うこともあるんだ。その度に呼吸を教えてくれた善逸には感謝してるんだよ。勿論善逸みたいな速さではなかったんだけど、本当にありがとう。人と人の繋がりが窮地を救ってくれることもあるから、柱稽古で学んだことは全部きっと良い未来に繋がっていくと思うよ。」

 

善逸「・・馬鹿野郎お前っ・・そんなことで俺の機嫌が直ると思うなよ!!」ニッコニコォ

 

炭治郎(あっご機嫌だよかった。)ホッ

 

善逸は口ではまだ不機嫌みたいに言っているが、その顔は満面の笑みを浮かべていてすっかり機嫌が直っていることがわかった。ちょうどその時、炭治郎の鎹鴉が物凄い勢いで飛んできて炭治郎の額に嘴を思いっきり刺した。

 

鎹鴉「カアアアアッ!!」グッサー

 

炭治郎「ギャアアッうわぁ血が出た。急に何するんだよ酷いな!」

 

鎹鴉「カーーッオ館様カラノ手紙ダ!!至急読ムノダ!!」

 

炭治郎「手紙?俺に?わざわざ?えー何だろう?」

 

耀哉直筆の手紙を鎹鴉から受け取った炭治郎は、開封して中身を読み上げるのだった。

一方、既に始まっている柱稽古では大半の隊士が天元のところで指導を受けていた。

 

天元「遅い遅い遅い遅い!何してんのお前ら!?意味わかんねぇんだけど!!まず基礎体力が無さすぎるわ!!走るとかいう単純なことがさ!こんなに遅かったら上弦に勝つなんて夢のまた夢よ!?」

 

天元が鬼の形相で竹刀を構えて質が悪い隊士達に呆れ返っていた。まず基礎体力の向上をここで行うのだ。

 

天元「ハイハイハイ地面舐めなくていいから!まだ休憩じゃねぇんだよもう一本走れ!!」

 

殆どが今天元のしごきを受けているが、その後は蜜璃による地獄の柔軟、無一郎による高速移動の稽古、小芭内による太刀筋の矯正、実弥による無限打ち込み稽古、行冥による筋肉強化訓練、そして最後はブロリーによる上弦と同等かそれ以上の鬼と遭遇を想定した実戦訓練である。柱にしてみても次から次へとかかってくる隊士を相手することでさらなる体力向上が見込めるのだ。その過程で得た情報は隊士全体に伝達、共有で力を上げているのだ。しかしただ一人、義勇を除いて。

炭治郎side

 

耀哉からの手紙を読んだ炭治郎は義勇の住んでいる水屋敷へと来ていた。

 

炭治郎「ごめんくださーい、冨岡さーん、こんにちはー、すみませーん、義勇さーん俺ですー、竈門炭治郎ですー、こんにちはー、じゃあ入りますー。」

 

義勇(入ります?いや・・帰りますだな聞き間違いだ・・)

 

しかし、扉から炭治郎がヒョコっと顔をだし、普段表情が変わらないことで有名だった義勇が物凄く驚いた表情をしたのだった。そして炭治郎はにこやかに、義勇は無表情で事の経緯を話していた。

 

炭治郎「~~ていう感じでみんなで稽古してるんですけど。」

 

義勇「知ってる。」(近い。)

 

炭治郎「あっ知ってたんですね、よかった。俺あと七日で復帰許可が出るから稽古つけてもらっていいですか?」

 

義勇「つけない。」

 

炭治郎「どうしてですか?じんわり怒っている匂いがするんですけど何に怒ってるんですか?」

 

義勇は炭治郎の依頼を一蹴する。それと炭治郎は義勇から怒りの匂いを感じ取って何故怒っているのかも聞いた。

 

義勇「お前が水の呼吸を極めなかったことを怒ってる。お前は水柱にならなければならなかった。」

 

炭治郎「それは申し訳なかったです。でも鱗滝さんとも話したんですけど、使っている呼吸を変えたり新しい呼吸を派生させるのは珍しいことじゃないそうなので、特に水の呼吸は技が基礎に沿ったものだから派生した呼吸も多いって。」

 

義勇「そんなことを言ってるんじゃない。水柱が不在の今、一刻も早く誰かが水柱にならなければならない。」

 

炭治郎「?水柱が不在??義勇さんがいるじゃないですか?」

 

義勇「俺は水柱じゃない。帰れ。」

 

炭治郎は義勇の発言を理解することはできなかった。しかし耀哉の手紙の内容を思い出した。"炭治郎、怪我の具合はどうだい?義勇と話がしたいんだけど、今の私はとても手が離せそうにないんだ。今はとても大事な時だから、みんなで一丸となって頑張りたいと思っているんだ。義勇と話をしてやってくれないだろうか?どうしても独りで後ろを向いてしまう義勇が、前を向けるように根気強く話をしてやってくれないか?"と耀哉は炭治郎に期待を寄せていた。

 

炭治郎「はい!!」グッ

 

しかし、炭治郎は根気強く話し合うという言葉を額面通りに受け取った。その結果、昼夜問わずに義勇の背中を追いかけるようになった。

 

炭治郎「義勇さん、どうしましたか?義勇さん。」

 

義勇「・・!」

 

それは端から見ればストーカーそのものであり、場所までつけ回るのだ。あるときでは一日中水屋敷に居座ったり、厠までついてくることもあった。これには本心では他の仲間達と仲良くしたいと思っている義勇ですら、鬱陶しさのあまり微かに苛立ちを覚えるほどであった。

 

義勇(・・これは一生続くのだろうか?話したらつきまとうのをやめてくれるのだろうか?)

 

炭治郎が義勇の後を雛鳥のようについて回る。それが四日続き、根負けした義勇は話すことを決めた。

 

義勇「はー・・俺は最終選別を突破していない。」

 

炭治郎「えっ?最終選別って藤の花の山のですか?」

 

義勇「そうだ。あの年に俺は、俺と同じく鬼に身内を殺された少年・・錆兎という宍色の髪の少年と共に選別を受けた。」

 

炭治郎「・・!」

 

炭治郎はとても驚いた。かつてブロリーと共に狭霧山で稽古をつけてもらったことがあるからだ。選別で対峙した手鬼の情報により錆兎は故人になっていたことが明らかになったが、まさか義勇と同い年だとは思わなかったのだ。

 

義勇「十三歳だった。同じ年で天涯孤独、すぐに仲良くなった。錆兎は正義感が強く心の優しい少年だった。あの年の選別で死んだのは錆兎一人だけだ。彼があの山の鬼を殆ど一人で倒してしまったんだ。錆兎以外の全員が選別に受かった。俺は最初に襲いかかって来た鬼に怪我を負わされて朦朧としていた。その時も錆兎が助けてくれた。錆兎は俺を別の少年に預けて、助けを呼ぶ声の方へ行ってしまった。気がついた時には選別が終わっていた。俺は確かに七日間生き延びて選別に受かったが、一体の鬼も倒さず助けられただけの人間が、果たして選別を通ったと言えるだろうか?俺は水柱になっていい人間じゃない。そもそも柱達と対等に肩を並べていい人間ですらない。俺は彼らとは違う、本来なら鬼殺隊に俺の居場所はない。」

 

義勇は実弥やしのぶ、その他の柱達の決して見下してなどいなかった。それどころか自分の手の届かない存在だと思っていたのだ。今の自分は後継の水柱が現れるまでの仮の柱だと自分を卑下していた。自分は柱に相応しくないと思っている義勇は柱合会議にも消極的でこの稽古にも参加しようとしなかった。それがわかった炭治郎は涙を浮かべた。

 

義勇「自分の師範に稽古をつけてもらえ。それが一番いい。俺には教えることなどない。・・ブロリーならお前を始めとして他の隊士達もいい方向へ導ける。もう俺に構うな、時間の無駄だ。」

 

それだけを言うと、義勇は今度こそ去ろうとした。炭治郎は義勇の残されたものの気持ちが痛いほどよくわかるため、共感して涙を流していた。

 

炭治郎(きっと、義勇さんは自分が死ねば良かったと思っているんだなぁ。痛いほどよくわかる。自分よりも生きていて欲しかった大事な人が自分よりも早く死んでしまったり、それこそ自分を守って死んだりしたらえぐられるように辛い。"錆兎"狭霧山で俺に稽古をつけてくれた少年。不思議な体験だった。もう死んでしまったはずの彼らが、俺を助けてくれた。そうか錆兎は、義勇さんと一緒に選別を受けたのか。生きていたら義勇さんと同じくらいの年になる人。凄いなぁ凄いなぁ。選別の時みんなを助けたんだ。師範を彷彿とさせるなぁ。俺にはできなかった、自分を守るのが精一杯で。錆兎が生きていたらきっと凄い剣士になっていただろうなぁ。それもあって義勇さんは自分が死んだら良かったと思っているんだ。わかる、だって俺も同じことを思った。)

 

炭治郎は今は亡き家族のことを思い出していた。あのときのことをふと思い出しては後悔の繰り返しだったからだ。"あのときしっかり帰っていれば自分が死ぬだけで済んだんじゃないか"と。しかし、炭治郎はかつて自分が刀鍛治の里に住んでいる少年、小鉄に言ったことを思い出した。"志半ばで死ぬかもしれない。でも必ず誰かがやりとげてくれると信じてる。俺たちが繋いだ命が必ず鬼舞辻を倒してくれるはず"と繋いでいき、引き継ぐことでいつか目標を達成できると説得していたことを。

 

炭治郎(でもどんなに惨めでも恥ずかしくても生きていかなくちゃならない。本人は認めてないけど柱になるまで義勇さんが、どれだけ自分を叱咤して叩き上げてきたのか、どれだけ苦しい思いをしてきたことか。義勇さんのことを何も知らない俺が、とやかく言えることじゃない。だけど・・だけど・・どうしても一つだけ聞きたいことがある。)「ぎ、義勇さん!義勇さんは・・義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」

 

義勇「!!」パアン

 

義勇は突如として左頬を張り飛ばされた衝撃を覚えた、いや思い出したのだ。錆兎と友達になったときに言われたことを。

―――それはまだ左近次のところに錆兎と指導を受け始めた頃。最愛の姉を殺された義勇は未だに立ち直れておらず、"姉の代わりに自分が死ねば良かった"と言った義勇に激情した錆兎が殴り飛ばしたのだった。

 

パアン ドッ

 

義勇「さ・・錆兎・・」

 

錆兎「自分が死ねば良かったなんて、二度と言うなよ。もし言ったらお前とはそれまでだ。友達をやめる。翌日に祝言を挙げるはずだったお前の姉も、そんなことは承知の上で鬼からお前を隠して守っているんだ。他の誰でもないお前が・・お前の姉を冒涜するな。お前は絶対死ぬんじゃない。姉が繋いでくれた命を、託された未来をお前も繋ぐんだ、義勇。」

 

―――

 

この出来事は義勇にとって立ち直るきっかけになった大切なことだった。今の今まで思い出せなかったことを後悔していた。思いだしたくなかったのだ。そうしてしまうと悲しすぎて何もできなくなるから。だが、このときの義勇は炭治郎の言葉で本当に大切なことを思い出すことが出来たのだ。

 

義勇(蔦子姉さん、錆兎、未熟でごめん・・)

 

炭治郎(どうしよう、酷いこと言っちゃったかな?義勇さん既に大分ションボリ状態だったようだし、追い討ちかけてしまったのかな?そうだ早食い勝負をするのはどうだろう。俺が勝ったら元気だして稽古しませんか?みたいな。俺はまだ復帰許可おりてないから手合わせ的なことはできないし、義勇さん寡黙だけど早食いならしゃべる必要ないし名案だな!)

 

義勇は錆兎のやり取りを思い出して、託されたものを繋いでいく決心をした。炭治郎を振り替えると、大分スッキリした表情で稽古に参加すると伝えようとしたが

 

義勇「炭治郎、遅れてしまったが俺も稽古に参加」

炭治郎「義勇さん、ざるそば早食い勝負をしませんか?」

 

義勇(何故だ?)

 

このときの義勇は炭治郎が勝手に屋敷に入ってきたときよりも驚いた表情をした。しかし二人は本当にざるそばを食べに行ったのだった。

義勇も加わって本格的に柱稽古が進み始めた。しかしその一方でしのぶはある行動を起こそうとしていた。しのぶは仏壇の前で本来の勝ち気な表情をしていた。

 

しのぶ(落ちついて、大丈夫よ。姉さん私を落ちつかせて。感情の制御ができないのは未熟者。未熟者です。)「ふー、ふうう。」

 

しかし深く深呼吸をするといつも通りの笑顔を顔に張り付けた。そこへカナヲが報告に来ていた。

 

カナヲ「師範、お戻りでしたか。私はこれから風柱様の稽古に行って参ります。」

 

しのぶ「そう。」

 

カナヲ「師範の稽古は岩柱様の後でよろしいですか?」

 

しのぶ「私は今回の柱稽古には参加できません。」

 

カナヲ「え・・ど・・どうして・・」

 

しのぶ「カナヲ、こっちへ。」

 

しのぶはカナヲを部屋に招き入れたが、表情は以前として厳しいままだった。

 

カナヲ「あの・・あの、私もっと師範と稽古したいです。」もじもじ

 

カナヲが伝えたのは自分の気持ちだった。炭治郎の助言で心の声を聞くようになり、素直になってきたのだ。これを聞いたしのぶは、心の底からの笑みを浮かべた。

 

しのぶ「・・カナヲも随分自分の気持ちを素直に言えるようになりましたね。・・いい兆しです。やはり良い頃合いだわ。」

 

カナヲ「?」

 

しのぶ「私の姉、カナエを殺した、その鬼の殺し方について話しておきましょう。」

 

今、しのぶはカナヲに玉砕覚悟の作戦を伝えようとしているのだった。

 

ブロリーside

 

炭治郎が義勇について回っている一方で、ブロリーは蝶屋敷へと来ていた。本来は実戦稽古を担当するはずなのだが、最後に回されたため未だに暇だというのと、どれ程の力で戦えばいいのかよくわかっていないこともあってしのぶに聞きに来たのだ。

 

ブロリー(実戦訓練をしろと言われても勝手がわからん。しのぶに聞きに行くか。)

 

アオイ「あっ破壊柱様、どのようなご用で?」

 

ブロリー「稽古について確認したいことがあるからな。しのぶはどこにいるかわかるか?」

 

アオイ「しのぶ様なら今自分の部屋にいるかと思われます。」

 

ブロリー「そうか。感謝する。」

 

アオイから居場所を聞いたブロリーはしのぶとカナヲがいる部屋へと近づいていくと、中から話し声が聞こえてきた。

 

しのぶ「もし姉を殺した上弦の弐と巡り合い、私とカナヲの二人で戦うことが出来たなら、まず第一の条件として、私は鬼に喰われて死ななければなりません。」

 

ブロリー(は?)

 

カナヲ「どうしてですか?一緒に戦えばきっとか、勝て・・」

 

しのぶ「そのような甘い考えは今すぐこの場で捨てなさい。」

 

カナヲ「!」ビクッ

 

ブロリー(何ぃ!?・・何故わざわざ死ぬ必要がある?)

 

しのぶ「上弦の強さは少なくとも柱三人分に匹敵します。しかし、姉からの情報によればその上弦の弐、女を喰うことに異様な執着があり意地汚ならしい。身体能力が高く、優秀な肉体を持つ"柱"加えて"女"であればまず間違いなく喰うでしょう。」

 

カナヲ(嫌だ、嫌だ・・)

 

しのぶ「現在私の体は、血液・内臓爪の先に至るまで高濃度の藤の花の毒が回っている状態です。」

 

カナヲ「じゃあ私も・・」

 

しのぶ「無理ですね、まず間に合わない。この状態になるまで一年以上、藤の花の毒を摂取し続けなければならない。しかもこの試みの最初の被験者が私です。今後どのような副作用が出るのか、そしてまた上弦や鬼舞辻に通用するのか全くわからない。私の刀で一度に打ち込める毒の量はせいぜい五十ミリ、しかし、今の私を喰った場合にその鬼が喰らう毒の量は、私の全体重三十七キロ分、致死量のおよそ七百倍です。それでも確実に殺せる保証はありません。少なくてもお館様は無理だと判断している。」

 

カナヲ「それなら・・どうして・・」

 

しのぶ「それにこれはブロリーさんのためでもあるのです。確実に鬼舞辻をブロリーさんの手で葬るためには上弦との戦いで怪我を負わせるわけにはいきません。これは最小限にまでリスクを抑えた戦いなのです。だから仮に毒が効き始めたとしても、油断なりません。やはり確実なのは頚の切断、必ず私が鬼を弱らせるから、カナヲが頚を斬って止めを刺してね。」

 

ブロリー「・・!」ビキッ

 

しのぶは悲しそうにカナヲに伝え、カナヲは大量の冷や汗をかいていた。そして部屋の外ではブロリーがしのぶが自分のために死ぬと言ったことに怒り、青筋を浮かべて部屋に入った。

 

ブロリー「おい。」ゴゴゴ

 

しのぶ「!ブロリーさん?」

 

カナヲ「!破壊柱様?」

 

しのぶとカナヲはブロリーがいて話をずっときいていたことに気づいておらず、驚いた表情をしていた。

 

ブロリー「何が喰われて死ななければならないだ!何が俺のためだ!」

 

しのぶ「!・・全部聞いていたんですね、ならば話は早いです。貴方が出来るだけ鬼舞辻との戦いに備えられるようにこの方法で戦います。わかってください。」

 

ブロリー「わからんな!俺のための犠牲などいらん!俺は残りの上弦も鬼舞辻も全て倒す!」

 

しのぶはブロリーのその言葉を聞くと、いつもの笑顔が消えて鋭い顔つきになってブロリーを睨み付けた。

 

しのぶ「ブロリーさん!何を言ってるんですか!確かに貴方なら鬼舞辻を倒せます!ですが上弦と戦ったあとすぐに鬼舞辻と戦うようなことになれば、貴方が殺される可能性も零ではないんですよ!」

 

ブロリー「殺される可能性があるだと?それがどうした?そんなことを恐れて戦ったことなど一度もない!それに俺が連戦で上弦に怪我させられて鬼舞辻に殺されたのなら、俺がその程度の実力だったというだけだ。」

 

しのぶ「なっ!?」

 

ブロリーは残りの全ての鬼を倒す気でいるのだ。それどころか自分が死ぬ可能性が少しでもあることに"それは弱い自分が悪い"と言わんばかりに言いはなったのだ。これに驚いたしのぶは意味を理解すると青筋を浮かべて怒り狂った。

 

しのぶ「ふざけないでください!!どうして自分の命を軽視するんですか!?貴方を大切に思ってる人は沢山いるのに!!」

 

しのぶは怒りをぶつけてブロリーを怒鳴り付けた。しかし、ブロリーはそれすらも鼻で笑った。

 

ブロリー「フン!カナヲに無駄死にの作戦を伝えてそれを行おうとしている今のしのぶには言われたくないな。」

 

しのぶ「!・・無駄死に・・ですって!!?」ギリッ

 

しのぶは自分の作戦を"無駄死に"と言われたことに青筋を立ててブロリーを強く睨み付けた。最もブロリーは腕を組んで余裕の表情をしていたが。

 

ブロリー「本当の事だろう?死ぬ必要がないのにわざわざ犠牲になることを無駄死にと言わずになんと言う?それからお前が俺のためだと言うなら、上弦の弐を生きたまま倒して鬼舞辻とやらのムシケラと戦う方がよっぽど俺のためになるぞ。お前がやろうとしているのはただ逃げているだけだ。」

 

しのぶ「!!!」バッ

 

ヒョイ

 

それだけではなく、ブロリーは逃げているだけと一蹴して言いはなった。それを聞いたしのぶは遂に我慢できなくなってブロリーに平手打ちしようと飛びかかった。しかし、ブロリーは軽く上半身を捻って避ける。

 

しのぶ「・・ふざけ・・ないで・・ふざけないで!!ふざけるなー!!私の策が"逃げ"?"無駄死に"?取り消してください!取り消しなさい!!ブロリーさん!!」

 

カナヲ「!」オロオロ

 

ブロリー「取り消せ?出来ぬぅ!!貴様の姉、カナエと言ったか?そいつが貴様自身がやろうとしていることを許すとでも思っていたのか?少なくとも俺が身内なら破壊してでも止めるがな!」

 

それを聞いたしのぶは思わず日輪刀を抜いてブロリーに矛先を向けた。そして鬼と戦うときのような呼吸までもを使い始めたのだ。

 

しのぶ「蟲の呼吸!蝶ノ舞・戯れ!」ヒュオオ

 

ブロリー「!フン!」ガシッ

 

カナヲ「!」ビクッ

 

しのぶは藤の花の毒がたっぷりと染み込んだ日輪刀で本気でブロリーを毒殺するつもりで刺しにかかる。ブロリーには毒も通用しないしそもそも日輪刀も刺さらない。まず今行っている稽古をしているわけでもないのに真剣を隊員に向けている。もはや隊律違反そのものだが、今のしのぶにはそれすら認識する余裕もないほど冷静さを失っていた。カナヲがオロオロと狼狽えているがそれはブロリーの目にもしのぶの目にも入らない。そして最愛の姉のことを言われたしのぶは怒りで更に顔を歪めた。

 

しのぶ「うるさい・・うるさい!!貴方に姉さんの何がわかると言うのですか!!姉さんの思いも笑顔も何も知らない癖に!全てわかったように抜かさないでください!!」

 

ブロリー「俺はしのぶから姉については何も教えられてないからな、知らなくて当然だろう?知っていたら逆に怪しまれるな。」

 

しのぶはカナエの事を知らなくて当然と言い放つブロリーに血が出そうな程唇を噛んで大声で叫んで語った。

 

しのぶ「・・ならば教えてあげますよ!!よろしいですか!カナエ姉さんは誰にでも優しくて美しくてとても強い人だった!!鬼殺隊に入って直ぐに遭遇した下弦の鬼をたった一人で返り討ちにした!その功績もあって普通なら五年はかかる柱の地位にわずか二ヶ月で上り詰めた。『歴代最強の女柱』『鬼殺隊最強の女性』とすら言われていた!当時の私は悲鳴嶼さんを除いて姉さんよりも強いやつなんていないと思ってた!鬼舞辻を倒してこの戦いを終わらせるのは姉さんだと信じて疑わなかった!なのに・・なのに・・!ぅ・・ぐ・・う゛あああぁぁぁーーっ!!」

 

しのぶは当時の残酷な光景を思い出したのか日輪刀を落としてその場に崩れ落ちて泣き叫んだ。ブロリーはそんなしのぶに少し胸の内が締め付けられる感覚になり、カナヲも顔を俯かせて肩を震わせていた。

 

しのぶ「う・・ひぐ・・それでも柱数人分に匹敵すると言われている上弦の弐には敵わなかった!私は急いで現場に駆け付けたけど姉さんは既に息を引き取る寸前だった!もうどうあがいても助からない状態だったの!そして私の腕の中で亡くなった!その時に私は決意したんです!必ず私の手で仇を取るって!死ぬ間際に私に鬼殺隊を辞めてほしいと言ったカナエ姉さんの思いに初めて背いたの!でも非力な私じゃ上弦はおろか雑魚鬼の頚すら斬ることが出来ない!だから・・この方法しかないの!この・・方法しか・・私は仇を・・討てない・・!私が・・この体を・・全てを投げ打ってでも・・仇を取ると・・誓ったのに・・なのに・・なのに・・!!」

 

しのぶはギリッとブロリーを睨み付ける。その瞳には、今までブロリーに対して隠されてきた嫉妬や渇望、羨望に染まっていた。そして今までの気持ちをぶつけるように泣き叫んだ。

 

しのぶ「貴方が鬼殺隊に入ってしまった・・!不思議な力で次から次へと上弦を倒し、私の薬剤では治療は愚か退行すらさせることも出来なかった鬼舞辻の呪いを消し去った貴方が、羨ましくて妬ましくて憎くて仕方なかった・・!貴方があのとき来てくれれば・・!姉さんは助かったかもしれない・・!貴方がもっと早く鬼殺隊に入っていれば・・!もっと沢山の命を救えたかもしれない・・!そう考えると貴方が悪くなくても憎かった・・!"どうしてあのとき来てくれなかったの"ってずっと思ってた・・!上弦を倒す貴方を見て、私は貴方が上弦の弐をも簡単に殺せると確信した!私はやっと覚悟を決められたのに・・!一年間ずっと苦労してきたのに・・!これ以上私を追い詰めないでください・・私の手で仇を討ちたいの・・姉さんの元に逝きたいんです・・」ポロポロ

 

しのぶは最初こそブロリーに嫉妬や渇望の感情をぶつけていたが、後半になるとやがて勢い衰えて弱々しく涙を流していた。ブロリーは今まで黙って静かに話を聞いていたが、最後の方に出てきたのが本心だと気づいた。そしてようやくブロリーは口を開いた。

 

ブロリー「・・それがしのぶの本心か。お前が姉に会いたいのとなんとしても上弦の弐を殺したいという思いは理解した。だがそれでも俺は納得することは出来んな。お前は今ここにいるカナヲやアオイ達を置いて死ぬつもりなのか?」

 

しのぶ「!」ハッ

 

ブロリーの言葉にしのぶはハッとして周りを見回した。すると最初はこの場にはブロリーとしのぶを除くとカナヲしか居なかったのに、今ではアオイ、なほ、すみ、きよの全ての蝶屋敷の住人が泣きながらブロリーとしのぶの口論を静観していた。血の繋がりはなくてもしのぶにとってはかけがえのない妹達である。

 

しのぶ「みんな・・」

 

ブロリー「お前は姉が殺されて死んだのが悲しくなかったのか?」

 

しのぶ「!・・そんなわけ!

ブロリー「そんなわけないのなら何故その時の悲しみをまたカナヲやアオイ達に味わわせようとしているんだぁ?お前だけじゃなくカナヲやアオイ達も悲しんだはずだ。」

 

しのぶ「・・!!」

 

ブロリーに悲しくないのかと聞かれ、しのぶはすぐさま反論しようとした。しかし、更にブロリーに正論をいわれて何も言い返せなくなった。ブロリーが作り出した合間を見てアオイ達も声をあげた。

 

アオイ「死なないでくださいしのぶ様!私たちにとって貴女は命の恩人です!だから死なないでください!」

しのぶ「アオイ・・」

 

きよ「家族が死ぬのはもう見たくないです!」

なほ「お願いします考え直して!」

すみ「大切な人が死ぬのはもう嫌です!死なないで!」

しのぶ「きよ、すみ、なほ・・」

 

しのぶは大切な家族から死なないでと懇願されることに動揺して決意が大きく揺れていた。それを見計らったブロリーはこっそりカナヲに耳打ちする。

 

ブロリー「カナヲ、お前の気持ちも伝えてやれ」ボソッ

カナヲ「!」コクコク

 

カナヲは凄い勢いで頷いて一歩前に出た。その表情は強い気持ちでうっすら涙目になっていた。

 

カナヲ「師範!」

 

しのぶ「!っ!?」

 

カナヲがしのぶを呼び、しのぶがそちらへと顔を向ける。するとそこには"今までに見たことがない程の強い感情が表情に出ているカナヲ"がいた。普段感情が出にくいカナヲがこれほど表情豊かになっている。それにしのぶは驚いた。

 

カナヲ「ごめんなさい師範!ですが私は先ほどの師範の策には乗りたくないです!師範に死んでほしくないので!」

 

カナヲの強い気持ちを聞いたしのぶの心は遂に折れ、真剣を落として崩れ落ちて弱々しく泣いた。

 

しのぶ「うぅ・・う゛あああぁぁっ・・それなら・・ひぐ・・私は・・どうすれば・・いいの・・?もう・・何が正しいのか・・わかんないよぉ・・」

 

その様子はまるで母親を探す迷子の子供のようであった。弱々しく泣くしのぶにこの場の空気は重くなる。しかし、この空気を破ったのはブロリーだった。

 

ブロリー「しのぶ、わからないのなら俺を頼ればいいだろう。この俺を誰だと思っている?『伝説のスーパーサイヤ人』ブロリーです。気が済むまで俺に感情も気持ちもぶつけてこい!俺がお前を導いてやる!」

 

しのぶ「うぅ・・う゛あああぁぁーーっ!!ブロリーさん!ブロリーさん!う゛あああぁぁーっ!!」ガバッ

 

しのぶはブロリーに駆け寄って抱き着くとそのまま号泣した。それにつられてカナヲやアオイ達も同じように涙を流して泣いているのだった。

ブロリーとしのぶの一頓着から数刻後、破壊柱のブロリーと蟲柱のしのぶは縁側に腰を掛けていた。

 

しのぶ「ブロリーさん。さっきはすみませんでした・・私は感情のまま貴方に刀を向けてしまい隊律違反を起こしてしまいました・・柱として恥ずかしい限りです・・私も未熟者ですね・・」

 

ブロリー「気にすることはない。俺も普段なら見れないしのぶが見れて案外楽しかったぞ。それに感情や気持ちをぶつけてこいと言っただろ?俺の前くらい未熟でいろ。」

 

しのぶ「未熟でいろ?どうしてですか?」

 

ブロリー「その方が本心のしのぶが見れるだろう?導くと言ったからにはしのぶの本心を良い方へと導きたいと思ってるからな?」

 

ブロリーの言葉にしのぶは再び涙を流した。それにブロリーは狼狽えた。

 

しのぶ「・・」ポロポロ

 

ブロリー「!大丈夫か!?どこか

しのぶ「違うの!嬉しい・・!とっても嬉しいの・・!」

 

今のしのぶの涙は歓喜の涙だったのだ。そしてそのまましのぶはブロリーに密着して体を預けて寄りかかった。

 

ブロリー「何してるんだぁ?」

 

しのぶ「良いじゃないですか。」ギュー

 

ブロリー「・・・・」ポワワワワワ

 

しのぶ「!何を・・!」

 

ブロリーは抱き着いているしのぶに自身の気を送り込んだのだ。しのぶの体を流れていた藤の花の毒はきれいさっぱり失くなったのだった。

 

ブロリー「俺の気でお前の毒を解毒した。いつどうなるかわからない恐怖などと戦う必要などないからな。」

 

しのぶ「!・・もう、本当になんでもありですね・・///」

 

ブロリーのもはやなんでも出来る気に呆れ返るしのぶだが、しのぶはブロリーの体を抱き締める。その時しのぶは自分の心の変化に気づいた。ブロリーに全く嫉妬も渇望もしなくなっていたのだ。それに変わりに浮き上がって来たのはたったひとつの感情だった。ブロリーを見るとくっつきたくなり、離れるとかなり寂しい気持ちになる。それが"恋心"だと気づくのに時間はかからなかった。

 

しのぶ(・・ブロリーさんを見ると胸が高鳴る///鼓動も早くなってる///・・ずっとブロリーさんのそばにいたい・・///これが恋心なのね///私はブロリーさんのことが好き・・///)

 

しかし、自覚はしているがとりあえず今は何故蝶屋敷に来たのかを疑問に思っているため、そちらを優先的に聞くようにした。

 

しのぶ「そういえば今日ブロリーさんは何故蝶屋敷に来ていたのですか?」

 

ブロリー「!あぁそうだ。しのぶに聞こうと思っていたのだ。実戦稽古といっても何をやってやれば良いのだ?指導のやり方を聞きに来たんだが。」

 

しのぶ「その事ですか。いつも炭治郎君とやっている通りの戦い方をすれば良いんですよ。規則としてはそうですね、貴方の頚に刀が当てられたら合格で稽古終了というのはどうでしょう?」

 

ブロリー「なるほど、実際のムシケラ共も頚が弱点だからな。よしそれで行こう。感謝するぞしのぶ。それとしのぶは何を稽古するんだ?」

 

しのぶ「そうですねぇ。遅れてしまいましたが、私は貴方のひとつ前にしてもらっておさらい稽古をしたいと思います。物事の復習は大事ですからね。私のあとにブロリーさんのもとへ行かせます。」

 

ブロリー「いいだろう。そうこなくっちゃ面白くない。フフフ!」

 

そしてブロリーが蝶屋敷へと来た当初の目的は達成したのだが、それでもしのぶは"じーっと"ブロリーの方を顔を赤らめながら見つめていた。それを見たブロリーは疑問をぶつけた。

 

ブロリー「どうしたんだぁしのぶ?俺の方をずっと見て、なにかついているのか?」

 

しのぶ「!・・もう!鈍いですねぇ!こうなったら強行手段です!」

 

しのぶが照れ顔で叫ぶと、ブロリーの真横にたってなんとそのままブロリーの頬に口付けた。

 

ブロリー「・・へぁっ!?しのぶ!?」

 

しのぶ「その・・私は貴方が好きです!///ブロリーさん!///」

 

しのぶはブロリーに告白し、ストレートに好意をぶつけられたブロリーは人生で一度もこんな経験などしたことなかったので、生まれて初めて"混乱"というものを覚えたのだった。




ということで今回はしのぶさんの救済話でした。葛藤する女性を助け出すブロリーが見たかったので書いてしまいました。後悔はありません。それではまた次回。


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雨降って地固まる?ブロリーとしのぶの仲!

第三十三話です。今回は原作から離れているためかなり短めです。それでも大丈夫な方は最後まで読んでくださると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


ブロリーはしのぶに告白されて人生で一番混乱していた。今まで異性に好意をぶつけられたことなど一度もなかったのだから。口付けされた頬を無意識に抑えて、明らかに動揺しているのがよく分かる。そんなブロリーの反応にしのぶは笑みを浮かべた。

 

しのぶ「ふふっ♪私の本心ですよ。未熟のままで良いと言ったのはブロリーさんですよ?責任は取ってくださいね♪」

ブロリー「ぬう・・!」

 

上機嫌なしのぶは笑顔でブロリーに抱き着いている。ブロリーはどういう対応をして良いのかわからず、たじたじになっていた。

 

ブロリー(しのぶ、何か吹っ切れたか?禰豆子と同じ事をしているのは良いが、俺はどうすれば良いのだ?とりあえず禰豆子と同じように撫でてやるか。)

 

ブロリーが考え付いた答えは、禰豆子が甘えてくるときにいつもしている頭を撫でるという事だった。紫の蝶の髪飾りが着いた頭に自身の大きな手を乗せるとそのまま撫で回した。しのぶの目がトロンと潤み、頬を赤らめ更に頭を突き出した。

 

しのぶ「えへへ///ブロリーさん、とても気持ちいいです///もっと撫でてください///すごく落ちつきます///」

 

ブロリー「・・カワイイ!」

 

ブロリーは自身に甘えてくるしのぶを愛おしく感じ始めていた。しかし、二人の甘い空気は長く続かなかった。壁から覗くような形で禰豆子が現れたのだ。

 

ヒョコ

禰豆子「ぶ、ブロリー?」

 

ブロリー「んん?禰豆子か?」

 

しのぶ「あら?禰豆子さん、どうしたのですか?」

 

禰豆子は今のブロリーに抱き着いているしのぶを目の当たりにする。そしてすごい勢いでブロリーの側に来ると、しのぶと反対側に腰を下ろした。

 

禰豆子「ブロリー、わたしも」ギュー

 

ブロリー「!」

しのぶ「あ゛?」ビキッ

 

そのまま禰豆子はしのぶの反対側からブロリーに抱き着いたのだ。突然の行動にブロリーは驚き、しのぶは至福の一時を邪魔されたと実感して額に青筋を浮かべる。

 

しのぶ「禰豆子さん?何してるんですか?ブロリーさんが迷惑そうにしてますよ?手を離してはくださいませんか?そして出来ればそのままここから立ち去ってくれても構いませんよ?」ゴゴゴゴゴゴ

 

禰豆子「やぁっ!」ギュー

 

しのぶ「まぁ!・・聞き分けの無いお嬢さんですね・・!そんな子は嫌いですよ・・!少しお仕置きが必要みたいですね・・!ちょうど新しい毒を試したいと思ってたところなんですよ。ブロリーさんも迷惑ですよね?今すぐその娘を力ずくで引き剥がしてくだされば、私が別室に連れてって実験台にしましょう・・!」

 

ブロリー「気を鎮めろしのぶ。俺は別に禰豆子の事を迷惑だとは思ってない。実験台だかなんだか知らないが、そういうのにするのはやめろ。禰豆子がこうして甘えてくるのはカワイイとすら思ってるからな」

 

しのぶ「!・・そうですか・・!」ぎりっ

 

ブロリー「勿論しのぶ、お前もな」

 

しのぶ「えっ?」

 

ブロリー「しのぶが甘えてくるのもカワイイと思ったからな、しのぶは自分の思いに素直になれば良い。来たかったら禰豆子は気にせずに俺に飛び込んでこい。二人まとめて受けとめてやる」

禰豆子「しのぶもおいで。」パアアア

 

しのぶ「ブロリーさん、禰豆子さん・・はい///」ギュー

 

しのぶは最初、ブロリーを禰豆子に取られたと思い込み悔しさのあまり歯軋りをしたが、二人からはしのぶも受けとめると言われて彼女の機嫌は一瞬で直った。そして頬を赤らめつつ二人の腕の中に飛び込んだ。

 

ブロリー(・・この感覚はなんなのだ?しのぶと禰豆子をこうしていると全身が柔らかい布団に包まれている時と似たような感覚がする。嬉しい時と似ているが微妙に違う気もする・・本当になんなのだ?)

 

ブロリーはしのぶと禰豆子を甘やかしているときに感じている気持ちの高ぶりの正体に気づけずに困惑していた。

 

禰豆子「ブロリー?」

 

禰豆子が難しい顔をしているブロリーに気付き、見上げて首をかしげる。

 

しのぶ「・・ブロリーさん?隠し事は無しですよ?一人で抱え込まないで相談してください」

 

しのぶもそんなブロリーに気付いて笑顔を消し、少し眉を潜めてブロリーに言われたことと同じようなことを返した。当の本人は何故バレたのかと驚いた。

 

ブロリー「!何故俺が抱え込んでいるとわかったんだぁ?」

 

しのぶ「・・はぁ、そんなに難しそうな顔をされていたら一目見てわかりますよ。ブロリーさんはどうやら隠し事は苦手なようですね。ふふっ♪」

 

ブロリー「フハハハハハ!そうかもしれないな」

 

しのぶ「それはそうと、どうしたんですかブロリーさん?」

 

ブロリー「・・言っても良いのか?」

 

しのぶ「勿論ですよ。貴方が私を受けとめてくれると言うのなら、私も貴方を受けとめるべきなのです。そうしないと貴方にばかり負担をかけてしまいますから」ニコニコ

 

しのぶはブロリーから離れると体を密着させて満面の笑みを向ける。禰豆子もしのぶと反対側に腰を下ろすと体をブロリーに密着させる。それを見て決心したブロリーは打ち解けることにした。

 

ブロリー「・・しのぶと禰豆子がこうしてくると、全身が柔らかい布団みたいなものに包まれているような感じがするんだ。嬉しいという感情と似ているが違う気もする。一体何なのだ?これは?」

 

しのぶ(告白の返事ではないのね・・残念なようなホッとしたような・・複雑な気持ちね。)「・・ブロリーさん、それは不快だと思ってますか?」

 

ブロリー「思っていない。むしろ悪くない感覚とすら思っている。」

 

しのぶはブロリーがそういったことで今のブロリーの感情を確信する。

 

しのぶ「ブロリーさん。それは"幸せ"というのですよ。私で幸せになってくれるなんて少し照れますね///」ニコッ

 

禰豆子「ブロリー、しあわせ、いいこと。」二ッ

 

ブロリー「幸せ・・そうか、これが幸せというものなのか。へははは!なるほどな。禰豆子、しのぶ、礼を言うぞ。お陰で解決した。」

 

ブロリーは疑問が解消したことに満足して、禰豆子としのぶに感謝した。彼は破壊や殺戮していた時とは違う本当の意味の幸せを初めて感じることが出来たのだ。スッキリした表情のブロリーを見て、しのぶも禰豆子も笑みを浮かべた。

 

しのぶ「さて、ブロリーさん。そろそろ食事の時間ですよ!行きましょうか。」

 

ブロリー「はい・・」

 

三人は食事を取るために移動した。そして部屋に入ると既にアオイが人数分の白米を注ぎ終わっていた。

 

アオイ「あっ、しのぶ様、破壊柱様、御食事の用意が出来ました。」

 

しのぶ「いつもご苦労様です。アオイ。」

 

しのぶはアオイに労いの言葉を掛けて自分の席に着いた。ブロリーもしのぶを見て空いているところに座った。その後、カナヲやすみ、きよ、なほの三人も全員来たため全員で食べ始めた。最初こそそれぞれ飯を口にしていたが、やがてしのぶや他の蝶屋敷の住人が箸を止めてブロリーを凝視していた。それに気づいたブロリーも手を止めた。

 

ブロリー「?どうしたんだぁ?何故全員俺を見てるんだぁ?」

 

しのぶ「いえ・・ブロリーさんって上品に召し上がるのだと思いまして。」

 

アオイ「はい、正直驚きました。」

 

カナヲ「意外です。」

 

ブロリー「貴様ら失礼ではないか?俺がそこまで行儀悪く飯を食うと思っていたのか?」

 

しのぶ「ごめんなさいね、お行儀良い印象が全く湧かなくて・・」

 

ブロリー(心外だ。)

 

しのぶ達がブロリーを凝視していたのは、ブロリーがあまりにも上品に食べていることが理由だった。いつも柱として動いているしのぶからしてみれば、伊之助と同じように上裸で、鬼殺隊本部の産屋敷邸に足を運べば耀哉に忠誠も誓っておらずに敬語も使わない普段の印象から見れば、今の目の前の光景は彼女にとっては目を疑うほど驚くものだった。しかし当のブロリー本人は全て悪気があるわけではないため少し落ちこんだのであった。

食事を終えると、しのぶが本当に藤の花の毒が解毒できたのかどうかを調べるために自分の部屋に戻り、カナヲは次の稽古先である実弥の屋敷へと向かった。なほ、すみ、きよの三人は禰豆子と遊んでいて、今はブロリーとアオイが二人きりになっていた。

 

アオイ「あ、あの、破壊柱様。」

 

ブロリー「んん?何だ?」

 

アオイ「しのぶ様の暴走を止めてくださってありがとうございました!すみません、本当はもっと早くお礼を言いたかったのですが・・」

 

ブロリー「何だその事か。別に気にしなくても良いのだがな。まぁ説得できて良かったものだ。それに一度生死の境を彷徨ったことがある俺だから何故そう簡単に死ぬ選択が出来るのかが信じられなかったんだ。しのぶはかつての俺とは違って心許せるお前達がいるからな。尚更止めなければと思ったんだ。」

 

ブロリーが淡々としのぶを止めた経緯を話したが、アオイは情報量が多い上にあまりにも信じられないような話に頭がついていけなくなっていた。ついブロリーの話を遮って待ったをかけた。

 

アオイ「すみません破壊柱様。あまりにも情報量が多いです。えっと、生死の境を彷徨ったことがあるってそれって死にかけたってことですか!?」

 

ブロリー「そうだと言ってるだろう?何をそんなに驚くことがある?」

 

アオイ「驚きますよ!だって上弦の鬼四体と戦ったと聞きましたがその全ての戦いで無傷だったみたいじゃないですか!上弦を軽く倒せる貴方が重傷を負うほどの出来事って・・!」

 

ブロリー(そういえば炭治郎と禰豆子以外には俺の過去を話していなかったな。)「・・まぁ色々あったんだ。」

 

ブロリーは少しはぐらかして伝えるが、アオイはその事が気になって仕方ないという表情をしていた。そのときのブロリーはとても悲しそうな顔をしていたからだ。アオイはあまり踏み込んではいけないと思いつつブロリーに言った。

 

アオイ「あの、破壊柱様!差し支えなければ貴方に何があったのか教えてもらえないでしょうか?」

 

ブロリーは少し考えてからアオイの方を見て頷いた。隠すことでもないと思ったブロリーは迷わずに話すことに決めたようだ。

 

ブロリー「いいだろう。別に隠すことでもないからな。」

 

ブロリーは出会ったばかりの頃の炭治郎と禰豆子を思い出しながらゆっくりと語っていき、アオイはしっかり聞く姿勢になっていた。そして二人がいる部屋の襖の外側にはしのぶも聞き耳立てているのだった。

 

しのぶside

 

しのぶは採血して自分の血液を調べていた。そしてブロリーが嘘を言っていないと確信した。

 

しのぶ(私の研究が弾き出した結果によると、本当に藤の花の毒が消えてるみたいね。体もだいぶ楽になった感覚もあるし。ブロリーさんのあの力、鬼は殺せて多くの人を助けられる。ブロリーさんのことが好きになってからだいぶ負の感情も落ちついたけど、やっぱり羨ましいな。)「本当になんでもありなんですね・・」

 

そして研究結果をブロリーに伝えて再びお礼を言うためにアオイとブロリーがいる部屋に戻ったのだが、そこでちょうどブロリーとアオイの話し声が聞こえた。

 

アオイ「あの、破壊柱様!差し支えなければ貴方に何があったのか教えてもらえないでしょうか?」

 

ブロリー「いいだろう。別に隠すことでもないからな。」

 

しのぶ(ブロリーさんの過去?)

 

しのぶは襖に手をかけていたが、過去話の方が気になったのか無意識に離していた。そしてブロリーはアオイにそういってから一呼吸置くとゆっくりと自分の過去を語り始めた。

 

ブロリー「赤ん坊の頃から俺はこの力を持っていて他の誰よりも強かった。そしてその力を恐れた王家の奴はそれだけが理由で俺を殺そうとした。」

 

アオイ「え・・」

 

しのぶ(そんなことで!?どうして命を狙われなきゃいけないの!?)

 

ブロリー「それだけじゃない、他の場所に移動してもサイヤ人という理由だけで受け入れられずに拒まれて逆に命を狙われた。」

 

アオイ「・・!」

 

しのぶ(なんてこと・・!)

 

ブロリーはかつて炭治郎と禰豆子に話したことがあるためか、数年前よりはだいぶ穏やかに話しているが、それでもしのぶとアオイは一目見てわかる程動揺していた。

 

ブロリー「それでも親父だけは俺のことを殺さないと信じてた。俺の力が暴走して破壊行為をしてしまっても叱るだけでなにもしなかった。そんな親父を信用してたんだ。だがある日。親父は俺に制御装置を無理矢理着けてきて俺を言いなりにしたんだ!」

 

アオイ「・・っ・・」

 

しのぶ(酷い・・酷すぎる・・!)

 

ブロリー「自由を奪われた!その時から俺は思った全てを破壊してしまおうと!そうすれば俺が恐れるものはなにもなくなる。そう思ったんだ。そしてチャンスはやって来た、赤ん坊の頃俺を泣かせたカカロットという奴がな。俺はそいつに対する恨みで親父のコントロールから解放された!もう怖いものなどはなかった。俺を操ってた親父をも殺したんだからな!」

 

アオイ「!?お父様を・・?」

 

しのぶ(自分の・・父親を・・?)

 

ブロリー「最早あんなのは親父じゃない。だが、恨みの対象のカカロットと戦ってたときに奴が仲間の力を吸収したあとに形勢が変わった。俺は戦いに破れたんだ。そして生死の境を彷徨った。そしてカカロットに復讐しようと移動したが今度はその息子らに殺されたはずだった。だが気づいたら洞窟にいて炭治郎と禰豆子に出会ったんだ。」

 

しのぶ(炭治郎君と禰豆子さんに?)

 

ブロリー「二人だけは違った。俺を拒むわけでも利用するわけでもなく、ただただ優しく受け入れてくれた。そこから俺は炭治郎と禰豆子に恩返しをするために鬼殺隊に入ったんだ。」

 

アオイ「・・・・」

 

しのぶ(そうなんですね・・ブロリーさんはとてつもなく強力な力を得る代わりに平穏な生活を失った・・そんなに悲惨な目に遭っていたというのに・・私は彼の気も知らないでなんてことを・・!)

 

しのぶはブロリーの過去を聞いて今すぐに過去に戻って自分を殴り倒したい衝動に刈られた。嫉妬や羨望の感情をぶつけて逆恨みしていたことを後悔したのだ。しかしどんなに悔やんでも過ぎてしまったものは戻せない。しのぶは様々な感情が沸き上がって双眼に涙を浮かべると襖を勢いよく開いた。

 

スパァン!

 

アオイ「!」ビクッ

ブロリー「へぁっ!?」

 

襖の音に驚いたアオイとブロリーは思わずしのぶがいる方を振り返る。しかし、しのぶはそんなことは微塵も気にせずにズンズンと椅子に座っているブロリーに近付くと、彼の顔を自分の胸元に押し付けた。

 

ブロリー「!?」

 

アオイ「しのぶ様!?」

 

しのぶ「ブロリーさん!そんなに悲しいことをどうしてもっと早く言ってくださらなかったのですか!?一人で抱え込まないでください!貴方が私の支えになると言ってくださったように、私も貴方の支えになりたいの!だからもっと私を頼ってください・・う・・うう・・」

 

ブロリー「しのぶ。その気持ちは凄く嬉しいのだが何故泣いているのだ?」

 

しのぶ「後悔です・・」

ブロリー「後悔ってなんだ?」

 

しのぶ「っ・・ブロリーさんごめんなさい!私なにも知らないのに貴方に向かってあんなに酷いことを・・!」

 

ブロリー「気にしなくて良い。もう俺はあんな事とはもう決別したんだ。俺はもうなにも気にしていないからしのぶも気にするな。」

 

しのぶ「貴方が気にしなくても私が気にするんです!」

 

しのぶはなにがなんでも自分を許せないという姿勢にブロリーは少し考えると、しのぶの胸元を抜け出して逆に彼女の両肩をつかんだ。

 

ブロリー「・・さっきしのぶは俺の支えになりたいと言ったな?気が済まないというのならこれから行動で示してくれれば良い。それがしのぶに出来ることだ。さっきの言葉は嬉しかったぞ。」

 

しのぶ「ブロリーさん・・はい///」

 

しのぶはブロリーの言葉を聞いてようやく笑顔になり、元気を取り戻した。ブロリーとしのぶの仲がまた一段と深まったのだ。

それから更に少し時間が経ち、ブロリーは自分の屋敷へ戻ることにした。しかししのぶは凄く寂しそうにしている。

 

しのぶ「ブロリーさん・・もう行ってしまうのですか?もう少しゆっくりしていっても・・」

 

ブロリー「済まないな。そろそろ俺の屋敷にも修行しに他の奴らが来そうだからな。・・そんな顔をしなくてもまたすぐ会える。それにしのぶからも来れば良いだろう?」

 

しのぶ「・・はい。」

 

ブロリー「それからしのぶ。稽古が終わったらじっくりと可愛がってやる。」

 

しのぶ「!?///えっ!?///」ボッ

 

ブロリー「お前が俺を好きな意思が変わらなければ、俺はその気持ちに答えるだけだぁ!」

 

しのぶ「!・・はい!///」パァァァ

 

しのぶはブロリーの言葉が相当嬉しかったのか、目が輝いて顔を真っ赤にしながら笑って答えた。そしてしのぶは蟲柱として、ブロリーは破壊柱として屋敷に戻ってそれぞれもうすぐ来るであろう隊員達を稽古するために準備に取りかかるのだった。




前回できっかけを着くって今回で一気に距離を縮まらせるようにしてみました。キャラ崩壊がすごいと思います。次回は本格的に炭治郎が始動します。それではまた次回。


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珠世合流!対鬼舞辻用劇薬を作れ!

皆さん、大っっっっ変お待たせいたしました!ネタがなかなか思い浮かばず二ヶ月もかかってしまいました。その結果がこの始末☆の内容ですがそれでも大丈夫な方は最後まで読んでいただけると嬉しいです。では本編どうぞ。


鬼殺隊の隊員が柱稽古に参加している一方で、一羽の鎹鴉が二人の鬼のもとへと向かった。それは産屋敷直々の鴉である。そしてその二人の鬼というのは珠世と愈史朗の事である。耀哉直々の伝言を伝えに来たのだ。珠世は現在、ブロリーから提供してもらった血を研究していてその成果がちょうど出たところである。

 

珠世(・・!これは!?フ・・フフフ・・ブロリーさんの体はやはり不思議なんですね。もし今のブロリーさんと鬼舞辻が遭遇することがあれば・・その時があの臆病者の最期よ!それと前から研究していた分裂を防ぐ薬が今のところ順調に進んでいる!引導を渡せる準備がもうすぐ整う!アハハハハ!)

 

愈史朗「珠世様、何か良いことがありましたか?物凄く微笑んでいましたが。」(嗜虐的な笑みを浮かべる珠世様も美しい。)

 

珠世「・・彼は、ブロリーさんはとても凄い方なのですね。愈史朗。彼の体質についてわかりました。」

 

愈史朗「体質、ですか?」

 

珠世「彼の体質はどんなに強力な鬼の血鬼術も通用しないものだったのです。それにあの時私と愈史朗を鬼舞辻の刺客から守ってくれた際に見せたあの不思議な力、あれは鬼舞辻の細胞を根本から破壊し尽くし、再生力を著しく低下させることができます。つまりどんな鬼でもブロリーさんの攻撃を食らえば簡単に倒せることになります。愈史朗も見たでしょう?茶々丸の視覚を通してブロリーさんが上弦を既に四体も倒しているところを。」

 

愈史朗「はい!上弦の血鬼術が効いていなかったことも存じております!」(熱心に語る珠世様も美しい。)

 

珠世「その事から推測すると、おそらくブロリーさんは残りの上弦や鬼舞辻ですら敵ではないのです!そして私が研究を続けている分裂を防ぐ薬。これの研究が今のところ順調に進んでいます!次にブロリーさんと鬼舞辻が遭遇することがあれば、その時があの臆病者の最期よ!引導を渡せる準備が整う!アハハハハハハ!!」

 

愈史朗「た、珠世様・・!」(狂ったように笑う珠世様も美しい。)

 

珠世はブロリーの力が鬼舞辻を凌ぐものだと確信して、自身の悲願がもうすぐそばに迫っていることに歓喜して狂ったように笑っていたのだ。そこへこの屋敷の窓辺に一羽の鎹鴉が停まった。この鎹鴉は産屋敷の刺客であり、この度耀哉が禰豆子の件を含めて協力を仰げると判断して捜索を依頼したのだ。そしてようやく珠世と愈史朗の二人を見つけ出して接触を試みたのである。

 

鎹鴉「こんばんは珠世さん。物騒ですよ、夜に窓を開け放っておくのは。でも今日は本当に月が美しい夜だ。初めまして、吾輩は産屋敷耀哉の使いの者です。」

 

珠世「!」

 

愈史朗「鬼狩りの当主の・・!」

 

二人は代々鬼殺隊の当主は産屋敷家が担っていることを知っていたので、鬼である自分達への突然の訪問に警戒を隠さない。それでも産屋敷の鎹鴉はお構いなしに続けた。

 

鎹鴉「いやあしかし隠れるのが御上手ですな。貴女を見つけるのにずいぶんと時間がかかってしまいました。」

 

珠世「・・・・どうしてここが・・わかったのですか?」

 

鎹鴉「人間の人脈ですね。貴女が買ったこの家の元の持ち主を特定しました。それから昼間の内に愈史朗君の視覚を把握。」

 

愈史朗(!・・着けられていたのか!)

 

鎹鴉「吾輩は訓練を受けているとはいえただの鴉。そもそもそこまで警戒されない。貴女方に危害を加えるつもりはないので安心してほしい。」

 

愈史朗「俺たち鬼が鬼狩りの刺客の言うことを信じると思ってるのか!?」

 

珠世「愈史朗、よしなさい。・・では何の御用でしょうか?」

 

珠世は威嚇の如くきつく当たる愈史朗を咎めこそはするものの、それでも警戒心は全く緩まない。

 

鎹鴉「ふむ。不信感でいっぱいの様子、無理もない。吾輩が炭治郎のように貴女から信用を得るのは難しいですねやはり・・」

 

珠世(どういった腹積もりなの?産屋敷・・何か騙そうとしている?)

 

愈史朗「おい鴉!あまりそこに長居すると鬼舞辻の刺客に見つかるかもしれないだろ!用件だけ伝えてとっとと消えろ。」

 

鎹鴉「・・確かにそれは不味い。では用件を話しましょうか。鬼殺隊にも鬼の体と薬学に精通している子がいるのですよ。禰豆子の変貌も含めて一緒に調べていただきたい。鬼舞辻無惨を倒すために協力しませんか?産屋敷邸にいらしてください。」

 

珠世(鬼である私を鬼殺隊の本拠地へ・・!?)ドクン

 

珠世は産屋敷の使いの鴉から突然の申し出を受けて脂汗をかいていた。そして愈史朗が珠世に否定の意思を示して止めようとする。

 

愈史朗「珠世様!そのような危険な誘いに乗るのはやめましょう!奴らは見境なく鬼を倒そうとする連中です!珠世様の身にも危害を加えるに決まっています!信用に値しません!我々は我々で行動しましょう!それが妥当です!」

 

珠世「・・・・」

 

珠世は目を瞑ってしばらく考えるような素振りを見せていた。そして何かを決意するように目を開くと産屋敷の鎹鴉に伝える。

 

珠世「・・わかりました。伺いましょう。」

 

愈史朗「珠世様・・!」

 

愈史朗は産屋敷邸に行くことを決意したことに絶望の表情を浮かべた。珠世はそれに気づいていたがそれでも覚悟を決めた目をしていた。

 

鎹鴉「ありがとうございます。では早速この朗報を本部へと持って帰ってから改めてお迎えに参ります。」

 

珠世「待ってください!」

 

鎹鴉は早速この屋敷を飛び立とうとしたがその前に珠世が引き留める。

 

鎹鴉「?どうかしましたか珠世さん?」

 

珠世「・・一つだけ条件をつけていただきたいのです。」

 

鎹鴉「条件?」

 

珠世「はい・・炭治郎さんもしくはブロリーさんがそちらにいますね。その二人を護衛につけていただきたいのです。」

 

鎹鴉「・・わかりました。検討しましょう。」

 

それだけを言い残すと産屋敷の鎹鴉は今度こそ飛び去って行った。二人きりになったところで愈史朗が抗議の声をあげた。

 

愈史朗「珠世様!何故あのような決断をしたのですか!?さっきも言いましたよね?奴らは見境なく鬼だとわかれば殺そうとする連中です!危険極まりない!どうかお考え直しください!」

 

珠世「・・愈史朗、私は鬼舞辻との戦いが起こればそこで道連れになっても良いと思っているほどの覚悟を持っています。しかし、実際に戦闘になれば今の私たちには戦う術を一切持っていない。結局の所は鬼殺隊を頼るしかないのです。いずれはこうなることは薄々感じていましたから。それに未だに炭治郎さんが禰豆子さんの血を提供できている。これはつまり鬼殺隊に認められていることになると確信できませんか?」

 

愈史朗「!・・それは・・」

 

珠世「安心しなさい愈史朗。もし仮に産屋敷が炭治郎さんとブロリーさんが護衛につくことを拒否した場合はこの話はなかったことにしますから。」

 

愈史朗「・・わかりました。」

 

愈史朗は珠世の覚悟と交渉が決裂した場合も考えて行動したことに安堵して"珠世様の指示に従おう。"と心に決めたのだった。

場所が変わって産屋敷邸。今ここには柱の二人と一人の隊員が庭で耀哉の到着を待機していた。その三人とは、しのぶ、ブロリー、炭治郎の三人である。炭治郎は怪我が完治してこれから柱稽古を受けようとした時に鎹鴉に呼び出され、しのぶとブロリーはこれから自分達の所へ来るであろう隊員を待っているときに呼び出されて今に至るのだ。

 

しのぶ「炭治郎君にブロリーさん。何故私たちは呼び出されたのでしょうか?」

 

炭治郎「俺にはさっぱりわからないですね。師範は何かご存知ですか?」

 

ブロリー「知るわけ無いだろう。柱とやらが俺としのぶしかいないのは他の奴らには言ってはいけないってことなのか?」

 

しのぶ「・・そうですね。その可能性が高いでしょう。もしかしたら何かの指令なのかもしれません。」

 

ひなき・にちか「「お館様のおなりです!」」

 

三人が自分達の呼ばれた理由を考察していると、ひなきとにちかが耀哉が来たことを伝える。襖のおくからは耀哉がブロリーによって症状が一時的に完治して活気溢れた足取りでゆっくりと歩いて来た。そして耀哉が姿を現すとしのぶと炭治郎は膝をついて頭を垂れた。相変わらずブロリーは立ったままだった。

 

耀哉「おはよう、しのぶ、炭治郎、ブロリー、今日は突然呼び出して済まなかった。そして集まってくれてありがとう。」

 

しのぶ「お館様の命とあらば何処へいようと迅速に駆けつけます。」

 

耀哉「ありがとうしのぶ。」

 

ブロリー「耀哉、何故今日俺たちを呼んだんだぁ?三人しかいないということは口外してはいけないようなことなのかぁ?」

 

耀哉「そうだね。今日君たちを呼んだのは"あること"をしてほしいからなんだ。」

 

炭治郎「"あること"ですか?」

 

耀哉「珠世さんという鬼の護衛になってここへ連れてきて欲しいんだ。」

 

しのぶ「なっ・・!(鬼を・・!?)」

 

炭治郎・ブロリー「「珠世さん!/珠世!」」

 

しのぶ「!!・・炭治郎君、ブロリーさん、その鬼をご存知なのですか?」

 

炭治郎「はい!珠世さんは禰豆子と同じで人を喰わない方で少量の血だけで生活してるんです。そして人を助けるために医療をしています。」

 

ブロリー「それに鬼舞辻とやらを抹殺したいとも言ってたな。」

 

しのぶ「人を喰わずに助ける・・?医療に精通している鬼・・?えっええ!?」

 

しのぶはブロリーと炭治郎から出された情報があまりにも多くて処理が追い付かず、混乱して目を回し始める。それに気づいたブロリーがしのぶの背中を擦った。

 

ブロリー「しのぶ、深呼吸をしろ。落ち着け。」

 

しのぶ「そっそうですね。スーッフーッスーッフーッ・・すみませんお館様、見苦しいところをお見せしてしまいました。」

 

耀哉「気にしてないよしのぶ。私の方こそいきなり驚かせるようなことを言ってしまって済まなかった。珠世さんのことはさっき炭治郎とブロリーが言ったことが事実だ。炭治郎とブロリーは珠世さんの護衛になった後に、しのぶには鬼を倒すための薬を珠世さんと共同開発して欲しいんだ。」

 

炭治郎「俺と師範が護衛ですか?」

 

耀哉「そう、炭治郎とブロリーは珠世さんと遭遇したことがある上に禰豆子を人間に戻すために仲良くしてもらってると聞いたよ。だからこそ珠世さんも信頼しているであろう炭治郎とブロリーに護衛を頼みたいんだ。」

 

ブロリー「・・いいだろう。その護衛とやらをやってやろうではないか。禰豆子と炭治郎の為になるなら安いものだ。」

 

しのぶ「!?ブロリーさん!?」

 

しのぶは耀哉の依頼を承諾したブロリーに驚いて抗議の声をあげた。

 

しのぶ「そんなに簡単に決めてもいいのですか?相手は鬼なんですよ?鬼は平気で嘘をつくんです!闇雲に決めるのは危険です!もっと慎重に選択してからでも!」

 

ブロリー「しのぶ、お前がどれほどムシケラ共を憎んでいるのかはあの時わかったつもりだ。本当は嫌なんだろ?それを知っている耀哉が鬼の珠世との協力を仰いだ。それはしのぶが凄く期待されているということだ。俺もだがな。」

 

しのぶ「・・お館様とブロリーさんが、期待してくれてる・・」

 

ブロリー「それにしのぶは鬼は平気で嘘をつくと言ったな。そんなことは俺もわかっている。俺も最初は警戒した。だが珠世だけは違った。炭治郎と俺を信用して協力してくれることを約束してくれた。もし珠世が裏切ったり何か危害を加えることがあれば俺が血祭りにあげるだけだぁ!」

 

しのぶ「・・わかりました。ブロリーさんがそこまで太鼓判を押すなら私も信用することにします。それにブロリーさんがいれば安心ですから。」ニコッ

 

ブロリー「フフフ!そう来なくっちゃ面白くない。」(珠世が裏切らないと確信しているからこの事が言えたのだがな。)」

 

耀哉「結論は出たかな?その様子だと認めてくれるみたいだね。」

 

しのぶ「はい、私はお館様のご意見のままに珠世さんと薬の共同開発をします。」

 

耀哉「ありがとうしのぶ。そう言ってくれて私も安心したよ。では、炭治郎、しのぶ、ブロリー、珠世さんの護衛と薬の開発をお願いね。」

 

炭治郎・しのぶ「「御意。」」

ブロリー「はい・・」

 

三人は耀哉からの依頼を承諾した上でその日はお開きになるのだった。

その日の夜、ブロリーと炭治郎はしのぶがいる蝶屋敷へとやってきた。理由は鎹鴉から珠世達は今日来るということを伝えられて護衛の役割を果たすために来たのだ。三人は庭で合流して、挨拶を済ませていた。

 

しのぶ「炭治郎君、ブロリーさん、本日はよろしくお願いします。」

 

ブロリー「しのぶもな。」

 

炭治郎「はい!よろしくお願いします!」

 

三人は色々と話し合いながら時を過ごしていたが、ブロリーがしのぶの笑顔が今までと同じ仮面のものだと気づいた。

 

ブロリー「しのぶ、無理していないか?」

 

しのぶ「!!・・やっぱり敵いませんね。ブロリーさんには。」

 

ブロリーに指摘されたしのぶは一度俯くと、再び顔を上げる。そこには不安に支配された表情を浮かべたしのぶがいた。

 

しのぶ「・・ブロリーさん・・私・・不安なんです・・姉の夢である鬼と仲良くすること・・禰豆子さん以外でそれが叶いそうな存在がもう目の前にいるのに・・私の鬼に対する憎悪と方向性の行き違いとかでお館様や貴方の期待を裏切ってしまうことが・・本当に怖くて・・私・・本当に珠世さんと薬の共同開発・・出来るのでしょうか・・?」

 

ブロリー「しのぶ、耀哉も俺もしのぶなら大丈夫だと思って任せているのだ。お前が持つ薬学の知識はこの鬼殺隊の誰と比べても飛び抜けて凄いものだ。しのぶにしか出来ないことだ。だから耀哉はお前にこの事を任せたのだ。もし憎悪が勝って暴走したなら俺が止めてやる。もし方向性が違えば俺が正してやる。だからお前は協力して薬を作ることだけを考えれば良い。俺がお前を導いてやる。」

 

しのぶ「ブロリーさん・・!・・はい!ありがとうございます!」

 

しのぶはブロリーに支えてもらっていると実感し、先程までの不安の表情はなくなり、自信に満ちた顔つきに変わった。

 

炭治郎「あっ、師範、来たみたいですよ。」

 

するとそこにずっと門から外を見ていた炭治郎が声をかける。それにつられてブロリーもしのぶも門の先を見た。遠くから紺の着物を着た色白の女性と目付きが鋭い男性が向かってくるのがわかった。そして蝶屋敷の門の前までやってくると、まず炭治郎が二人に挨拶をした。

 

炭治郎「珠世さん!愈史朗さん!お久しぶりです。ご無沙汰してます。」

 

珠世「はい、お久しぶりですね。炭治郎さん。」ニコッ

 

愈史朗「フン。こんな形で再会するとは思わなかったな。」

 

ブロリー「久しいな。元気そうでいいなぁ。」

 

珠世「!・・ブロリーさん!」ギュウウ

 

ブロリー「へぁっ!?」

 

しのぶ・愈史朗「「!!?」」

 

なんと珠世は、炭治郎の挨拶の後にブロリーに気づいていきなり満面の笑みを浮かべて抱きついたのだ。当然そんなことをされると思ってなかったブロリーは驚いて固まった。そしてブロリーと珠世をそれぞれ心から思っているしのぶと愈史朗は、一瞬何が起こったのか理解できずに頭が真っ白になって固まったが、やがて状況を理解すると怒りでドス黒いオーラを放った。

 

愈史朗「サイヤ人、何をしている?珠世様から離れろ・・!」ゴゴゴゴゴ

 

しのぶ「ブロリーさんに何してる?鬼、今すぐ離れないと毒を打ち込むわ・・!」ゴゴゴゴゴ

 

愈史朗がものすごい殺気を放ち、しのぶに至っては日輪刀を構える始末である。これはまずいと思ったのか炭治郎がしのぶを止めようとする。

 

炭治郎「しのぶさん、駄目です!珠世さんと愈史朗さんに手を出しては行けません!日輪刀をしまってください!」

 

しのぶ「・・炭治郎君、邪魔をしないでください。少しでも鬼を信用しようと思った私が愚かでした。それにこの鬼はよほどの自殺志願者か愚か者と見ました。」

 

愈史朗「貴様・・珠世様を侮辱する気か?珠世様に到底及ばない醜女の分際で。」

 

しのぶ「・・いいでしょう。あの雌鬼の前に貴男から倒してあげましょう。」

 

愈史朗としのぶの殺気同士がぶつかり合い、お互いに目線で火花を散らす。どちらかが少しでも動けばすぐさま果たし合いになりそうな雰囲気に炭治郎が二人の間に割って入った。

 

炭治郎「しのぶさん!愈史朗さんも落ち着いてください!こんなことをしても何も解決しませんよ!」

 

しのぶと愈史朗の間に入ったことで二人の殺気が同時に炭治郎へと向いた。炭治郎は般若に囲まれてるような感覚に恐怖を覚えながらも、震えそうになる体を必死に抑えて二人を止める。

 

炭治郎(怖い・・でも止めないと!)「しのぶさん!お館様の期待を自分で裏切るつもりなんですか!?」

 

しのぶ「!」

 

炭治郎「愈史朗さんもこんなことをして珠世さんの信頼を失くす気ですか!?」

 

愈史朗「!」

 

炭治郎の叫びが届いたのか、二人から殺気が無くなっていく。そして静寂を破ったのはしのぶだった。

 

しのぶ「・・そうですね。熱くなりすぎたみたいです。少し頭を冷やします。・・ごめんなさいね。えっと愈史朗さんでしたっけ?」

 

愈史朗「はぁ・・俺も頭に血が昇りすぎてたようだ。悪かったな鬼狩りの柱。」

 

二人は口では謝罪しているもののそれは心が全くこもっていないものだとはっきりとわかった。炭治郎はそれを指摘しようかとも思ったが、鬼を憎むしのぶと珠世以外の全てと関わることを嫌う愈史朗、すぐさま再燃することが目に見えたためやめることにした。そして炭治郎は切り替えて珠世とブロリーに視線を向けた。

 

炭治郎「珠世さん、師範に何してるんですか?師範が物凄く困惑した匂いがしてます。一度離れてください。」

 

珠世「あっ!?そっそうですね!///」

 

炭治郎の指摘に我に返った珠世は慌ててブロリーから離れると、顔を真っ赤に染めて恥ずかしがった。

 

珠世「すっすみません///私ったら///彼の血から得た研究成果で舞い上がってしまって///ついつい抱きついてしまって///・・ごめんなさいブロリーさん///驚かせてしまって・・///」

 

ブロリー「・・少し驚いたが、それくらいの事では俺は怒らん。気にしなくていい。」

 

珠世がブロリーに慌てて謝罪していると、スタスタとやってきたしのぶが怒りを必死に抑えるために笑顔の仮面を張りつけながら挨拶する。

 

しのぶ「・・初めまして珠世さん。私は鬼殺隊蟲柱の胡蝶しのぶです。この度貴女と薬の共同開発をするようお館様の指示により、協力させていただく者です。よろしくお願いします。」ペコッ

 

珠世「初めまして。私は珠世といいます。今回の協力を承りました医療に精通する鬼です。よろしくお願いします。」ペコッ

 

愈史朗「・・愈史朗だ。俺は本来この事には反対だったのだが、珠世様の決意のもと来てやったのだ。少しは感謝しろよお前ら。」

 

珠世「愈史朗!よしなさい!」

 

しのぶ「・・・・」ゴゴゴゴゴ

 

ブロリー「しのぶ、言われたことをいちいち気にしなくていいぞ。ああは言ってるが根はいいやつだ。気楽に構えたらいい。」

 

しのぶ「わかりました。確かにそうですね。気にしてたら疲れてしまいます。ブロリーさん、ありがとうございます。」

 

しのぶは珠世以上に自分を気遣ってくれていることに気づいて、彼女の怒りは何処かへと飛んでしまい、今は上機嫌になっていた。

 

しのぶ「では珠世さん。蝶屋敷を案内します。ついてきてください。」

 

珠世「はい、よろしくお願いします。」ペコッ

 

しのぶ、ブロリー、珠世、愈史朗、そして炭治郎の順で屋敷の中を入っていく。ブロリーと炭治郎が二人を挟むようにして移動しているのは護衛の役割があるからである。途中、アオイやカナヲ、なほ、すみ、きよの全員に会ったがその都度しのぶが説明をして禰豆子と同様に安全な鬼と理解させていった。そして沢山の試験管や資料が置いてある部屋に到着した。

 

しのぶ「こちらが今回貴女と共同作業をするための部屋になります。医療に精通していると聞いたので大丈夫だと思いますが、いじる際は気をつけてくださいね。」

 

珠世「わかりました。何から何までありがとうございます。」

 

珠世は部屋のものの使用許可を出してくれたしのぶに感謝して再度お礼を言った。そして早速薬の開発に取りかかったもののなかなか成果が出ずに苦しんでいた。そんな中、珠世がしのぶに声をかけた。

 

珠世「・・しのぶさん、少し気分転換をしましょう。」

 

しのぶ「気分転換・・ですか?」

 

珠世「はい、行き詰まったところを焦っても、何も変わりません。少し落ち着いてからまた再開しましょう。」

 

しのぶ「・・確かに一理ありますね。わかりました。気分転換でもしましょう。アオイ、この方達を客室まで案内してあげてください。ブロリーさんと炭治郎君もこちらへ。珠世さん、愈史朗さん、貴女方もどうぞ。」

 

アオイ「かしこまりました。こちらです。」

 

アオイはブロリー、珠世、愈史朗、炭治郎、しのぶの五人を客室まで案内すると、慣れた手付きで五人分の粗茶を用意した。

 

アオイ「粗茶ですが。」

 

珠世「ありがとうございます。」

 

珠世は出してもらった緑茶を躊躇無く飲んだ。それを見たしのぶは驚いて声をかけた。

 

しのぶ「!珠世さん、お茶飲めるんですか?」

 

珠世「はい、飲めます。そういえば話していませんでしたね。私は鬼舞辻の呪いを外した後に体を随分弄って少量の人の血のみで生きていけるようにしました。そのときに人が飲む飲み物なら飲めるようになったのです。」

 

ブロリー「フハハハ!茶を飲めるように変えるとはな、流石珠世と褒めてやりたいところだぁ!」

 

珠世「!ありがとうございますブロリーさん。///」ニコッ

 

愈史朗「!」(照れている珠世様は滅多に見られないぞ!ブロリー!礼を言うぞ!)

 

ブロリーに褒められた珠世は心底嬉しそうに微笑み、顔を朱らめて礼を言った。それを見た愈史朗はいいものを見たような表情をして心の中でブロリーに礼を言った。

 

しのぶ(珠世さん・・ブロリーさんと話しているとき、凄く微笑んでいる・・ブロリーさんとの関係はなんなの?まさか・・恋人・・?いいえ、ブロリーさんに限ってそれはないはず・・けれどもしかしたら・・!)

 

しのぶはブロリーと珠世が談笑しているのを見て面白いはずもなく、ずっと二人の関係性について考えていた。そして少し時間が経ってしのぶは決意した。

 

しのぶ(本人に聞いてみましょう。それが一番手っ取り早い。それに確信を持てる答えを得られる。そうとわかれば早速行動よ。)「皆さん、少し珠世さんと愈史朗さんでお話がしたいので少し席を外してもらってよろしいですか?」

 

ブロリー「一人で大丈夫か?」

 

しのぶ「大丈夫です!少し聞きたいことがあるだけなので。」ニコッ

 

ブロリー「・・わかった。いくぞ炭治郎。」

 

炭治郎「師範、ですが・・!」

 

ブロリー「しのぶが大丈夫だと言ってるなら大丈夫だろう。しのぶは柱だから相応の実力もある。問題はない。それとも炭治郎はしのぶが信じれないとでも言うのか?」

 

炭治郎「!・・いいえ、俺はしのぶさんを信じてます。禰豆子のことも受け入れてくれましたし。」

 

ブロリー「フハハハ!よく言った炭治郎!いくぞ!」

 

炭治郎「はい!師範!」

 

ブロリーと炭治郎が部屋から出ていくのを見届けたしのぶは心の中でブロリーに感謝しながら二人に向き合った。

 

しのぶ(ブロリーさん、ありがとうございます。)

 

愈史朗「なんだ貴様。俺と珠世様だけここに残したのはどういう了見だ?俺達を鬼だからという理由で殺すつもりか?まともに上弦を倒せない分際で!」

 

珠世「愈史朗!よしなさい!」

 

愈史朗「珠世様!しかし・・!」

 

珠世「しのぶさん、私たちを呼び止めた理由は別の理由でしょう?何か聞きたいことがあるのではないですか?答えられる範囲ならお答えさせていただきますので、何なりとお聞きください。」

 

しのぶ「わかりました。では単刀直入にお聞きいたします。ブロリーさんとはどのような関係なのですか?」

 

珠世「・・・・はい?」

 

珠世は想像とは全然違う質問に、その意味が理解できずに聞き返した。それでもしのぶは真剣な表情で続けた。

 

珠世「えっと・・どういうことでしょうか?」

 

しのぶ「お館様からお聞きしたのですが、貴方と炭治郎君、そしてブロリーさんとは随分仲良くさせてもらっているみたいですが少々気になりまして、ですのでお答えください。ブロリーさんとはどのような関係なのですか?」

 

珠世「・・素敵な方で、鬼舞辻を倒すための良き理解者であり協力者ですね。」

 

しのぶ「それだけですか?」

 

珠世「それだけとは?」

 

しのぶ「許嫁や恋人などの関係ではないのですか?」

 

珠世「・・えっ///ええっ!?///」

 

愈史朗「なんだと貴様!ふざけるな!珠世様があのサイヤ人にそんな思いを抱いているわけ無いだろーー!!!」

 

しのぶのストレートな発言に珠世は顔を真っ赤にして狼狽え、愈史朗もしのぶの言葉を信じたくないあまり声をあげて抗議した。

 

珠世「愈史朗!止めなさい!・・しのぶさん、私とブロリーさんは恋人でもなんでもありません。ただ本当に協力しているだけです。」

 

珠世はブロリーとの恋人関係を否定した。それを聞いたしのぶは笑顔ながら青筋を立てて殺気を放った。

 

しのぶ「じゃあ何故貴女はさっきブロリーさんに抱きついたんですか?それに貴女も心底嬉しそうな顔をしていましたよ。ただの協力者ならあんなことをしなくても良かったのでは?」ゴゴゴゴゴ

 

珠世「・・確かにあれは自分でもやりすぎたと思って反省しています・・彼の力があれば鬼舞辻を倒せると確信してつい舞い上がってしまいました・・ご気分を損ねたのなら謝ります。すみませんでした。」ペコッ

 

珠世はさっきブロリーに抱きついたことは流石に反省しており、しのぶに心からの謝罪をした。それを聞いたしのぶは引っ掛かっていたものが取れたようなスッキリとした表情をした。そして珠世に告げた。

 

しのぶ「私もブロリーさんの恋人ではありませんが、いつか必ず彼の心を鷲掴みにします!」

 

珠世「!・・ふふっ頑張ってくださいね。」

 

しのぶの宣言を聞いた珠世は、本気なのを感じとって笑顔で応援しようと決めたのだった。そこからはトントン拍子で薬の開発が進み、護衛の役目を終えたブロリーは屋敷に戻り、炭治郎は天元の元に稽古をしに行くのだった。




なかなか原作が進みません笑。恐らく次回は炭治郎視点になるかと思います。自分も久々に投稿できたことを嬉しく思います。それではまた次回。


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切磋琢磨せよ!本格化する柱稽古!前編

第三十五話です。皆さんお待たせしました。今回はブロリーは出てきません泣。原作通りの駄作ですがそれでも大丈夫な方は最後まで読んでくださると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


珠世が合流して劇薬の共同開発が順調に行われているなか、護衛の役目を終えた炭治郎は怪我が完治したこともあり、天元の元に向かった。

 

炭治郎「天元さん!」

 

天元「よォよォ!久しいな、お前また上弦と戦ったんだってな。五体満足とは運の強ェ奴だ。ここでなまった体を存分に叩き起こしな。」

 

炭治郎「はい!頑張ります!」

 

須磨「あらーー!!!おひさ!」

 

まきを「やっと来たのか!」

 

雛鶴「沢山食べてね。」

 

隊員の指導は天元が行い、嫁三人はおにぎり等を用意していて炭治郎のことも大歓迎ムードだったのだ。

炭治郎は鬼殺隊の中では数少ない全集中・常中が出来ている隊士である。そのため体力を取り戻すのも他の隊員に比べて格段に早く、ものの十日程度で次の柱の元へ行く許可を得たのだった。

 

天元「炭治郎!」

 

炭治郎「はい!」

 

天元「お前体力も戻ってきたじゃねえか。十日程で取り戻すとは大したもんだ、次の柱の所行ってもいいぞ!それとブロリーにもよろしく伝えといてくれ!」

 

炭治郎「はい!ありがとうございます!師範にも伝えときますね!」

 

天元に許可を貰った炭治郎は、無一郎が住む霞屋敷へと向かうのだった。

霞屋敷へとついた炭治郎は、無一郎とはあまりいい思い出がないために再会に不安を抱えていた。

 

炭治郎(時透君、上弦を相手に共闘した仲だけど結局和解できないままだったなぁ・・この柱稽古うまく行くといいけど。)

 

炭治郎は刀鍛冶の里での出来事を思い出していた。まだ無一郎とは仲直りできてないと思っていたのだ。しかし、炭治郎の心配は杞憂に終わることになる。

 

無一郎「あっ、炭治郎!怪我が治ったんだね!」ニコッ

 

なんと無一郎は満面の笑みで炭治郎に抱きついて迎え入れたのだ。最初の印象とは全く違う無一郎に炭治郎は驚いた。

 

炭治郎「とっ時透君!どっどうしたの?急にこんなことをして・・」

 

無一郎「・・炭治郎、もしかして前に僕が言ったこと忘れちゃった?君のおかげで僕は大切な記憶を思い出すことが出来たんだ。だから本当に感謝してるんだよ。」ニコ

 

炭治郎「でも、俺はなにもしてないよ?」

 

無一郎「それでも炭治郎のおかげなのには変わりないよ。本当にありがとう!怪我も治ってまた炭治郎にあえて嬉しいんだ!次は僕のところで稽古するんだよね?」

 

炭治郎「時透君・・!うん!天元さんから次の柱に行く許可が出たんだ!」

 

無一郎「そうなんだね!ここでは僕が高速移動と打ち込みの訓練をするから、頑張ろうね!」ニコニコ

 

炭治郎「わかった!よろしくね!」

 

炭治郎は無一郎とのわだかまりがなくなったのだと実感し、安心して稽古を受けれることに安堵した。無一郎の高速移動の打ち込み稽古は周りが見守るなか一対一での訓練だった。ほとんどが無一郎になす術もなくやられていきその度に無一郎は冷たく吐き捨てる。

 

「ぐぇっ!」ドサッ

 

無一郎「ねぇ、こんな簡単なことも出来ないの?まず基礎が出来てないよ。素振り千回でもやれば少しは動きがマシになるんじゃない?さっさと素振りに取り掛かりなよ。」

 

無一郎は昔の剣士の血を引いてる上に血の滲む程の努力を積み重ねて短期間での柱の座を獲得した隊士である。そのため、鬼殺隊にいるのに努力しない人の気持ちを知らないのだ。本来なら鬼殺隊にいる時点で努力しないのは間違いなのでこの機会に徹底的に指導しているのだ。そして迎えた炭治郎の番、炭治郎は他の隊士では出来なかったスピードで無一郎の動きに食らいついていた。

 

無一郎「そうそう!炭治郎、さっきより速くなってるよ!筋肉の弛緩と緊張の切り替えを滑らかにするんだ!そうそう!そうしたら体力も長く保つから!」

 

炭治郎は無一郎の的確なアドバイスをしっかりと物にしていき、五日経つ頃には無一郎が指導するものは全て会得していた。

 

無一郎「足腰の動きも連動しててばっちりだね。次の柱の所に行っていいよ炭治郎。」ニコッ

 

炭治郎「えっ!?もういいの!?」

 

無一郎「いいよ。」ニッコー

 

炭治郎「五日しか経ってないよ。」

 

無一郎「だって炭治郎言ったことちゃんとできてるもん。」ニコ

 

炭治郎「ええ~~。」アセアセ

 

「じゃ・・じゃあ俺達も・・もう二週間もいるので・・」

 

無一郎「何言ってるの?君たちは駄目だよ。素振りが終わったなら打ち込み台が壊れるまで打ち込み稽古しなよ。」

 

無一郎は炭治郎には満面の笑みで話すが、それ以外の隊士達が次の柱へ行こうとした瞬間に前のような冷たい表情に戻ってばっさりと一蹴したのだ。そして無一郎はそっと炭治郎に耳打ちした。

 

無一郎「炭治郎、ブロリーさんにも"助けてくれてありがとう"って伝えてほしいな。それともう一度あの姿のブロリーさんに触りたいな。」♪

 

炭治郎「うん、わかった。伝えとくよ。」

 

無一郎は刀鍛冶の里で『スーパーサイヤ人4』の毛並みを思い出して再び笑顔になった。相当気に入ったようで次に触れるのを凄く楽しみにしているようだ。他の隊士との落差が凄いその光景に、炭治郎は残される隊士達に罪悪感を覚えつつ霞屋敷を後にするのだった。

次の目的地は蜜璃が住んでいる甘露寺邸である。刀鍛冶の里では随分と世話になった上に上弦を相手に共闘した仲だと言うこともあり、炭治郎は再会を楽しみにしていた。

 

蜜璃「炭治郎君久しぶりー!おいでませ我が家へ!」

 

炭治郎「ご無沙汰してます!お元気そうでよかった!」ペコーッ

 

蜜璃「炭治郎君もね!」

 

炭治郎「養蜂してらっしゃるんですか?蜂蜜のいい香りがします。」クンクン

 

鼻の良い炭治郎は蜂蜜の匂いを感じとり、蜜璃に聞いた。

 

蜜璃「あっ!!わかっちゃった?そうなのよー!素蜜をねぇ、パンに乗っけて食べると超絶美味しいのよ~~。バターもたっぷり塗ってね!三時には紅茶もいれて。パンケーキ作るからお楽しみに!」

 

炭治郎(ばたー?こうちゃ?ぱんけぇき?」??

 

炭治郎は山育ちなため、大正時代の高級品だったパンケーキや紅茶等は見たことも聞いたこともなかったのだ。結果として普通なら大喜びするこの場面でも炭治郎はピンと来なかったようで頭にずっと?を浮かべていた。そして訓練が始まると言うことで、炭治郎は現代でいう女子新体操選手が着るようなレオタードを着ていた。

 

炭治郎「えっと甘露寺さん?どうして俺はこのような服を着ているのでしょうか?」

 

蜜璃「えーっとね。ここでは柔軟性を鍛えるの。そのためには少し素肌が見える服がちょうど良いの。」

 

炭治郎「なっなるほど・・」

 

蜜璃「それに何よりその格好が可愛いから!同じ柱だから出来なかったけど、本当はブロリーさんにも着てほしかったなぁ。」

 

炭治郎「うっ!」(少し気持ち悪いかも・・)

 

蜜璃がそう言うので、炭治郎は自分の師範でもあるブロリーがレオタードを着てるところをつい想像してしまい、気持ち悪いと思ってしまったのはここだけの話である。炭治郎をはじめとして他の隊士達もレオタードを着て音楽に合わせて踊ることもしばしばであった。しかし、やはり稽古は過酷なもので開脚すると蜜璃が力技で無理矢理ほぐすというのがほとんどだった。無理矢理ほぐされた隊士達は断末魔のような悲鳴を上げる。炭治郎も例外ではなく、体を密着させてほぐしてくる蜜璃に炭治郎は歯を食い縛って耐えた。しかしそれを数日間繰り返すことにより、炭治郎は見違えるほど体が柔らかくなった。今ではY字バランスを余裕で出来るほどである。

 

炭治郎「はい!」ピーン

 

蜜璃「うんうん!炭治郎君、凄く体が柔らかくなったね!これなら絶対に戦いにも生かせるし安心ね。次の柱の所へ行っても良いわよ。」

 

炭治郎「えっ!良いんですか?」

 

蜜璃「うん!いいよ!」

 

蜜璃に許可を貰った炭治郎はレオタードから鬼殺隊の隊服に着替えると、荷物をまとめて背負った。そのときに蜜璃に話しかけられる。

 

蜜璃「炭治郎君、次の柱の所でも頑張ってね。」

 

炭治郎「はい!ありがとうございます!あっそれとパンケーキご馳走さまでした!」

 

炭治郎は初めてパンケーキを食べたときそのとてつもない蜂蜜の甘さと今まで感じたことのない柔らかい食感に頬が落ちたことを鮮明に覚えていた。

 

蜜璃「炭治郎君!今度は生きて会えるか分からないけど。もしまた会えるようなことがあったらそのときはまたパンケーキ食べようね。」

 

炭治郎「はい!そのときはよろしくお願いします!」

 

炭治郎は笑顔の蜜璃に見送られながら次の場所である蛇屋敷邸に向かったのだった。

蛇屋敷の前で小芭内は蛇の鏑丸と共に炭治郎を待ち構えていた。

 

小芭内「竈門炭治郎。俺はお前を待っていた。」

 

炭治郎「よろしくお願いしま「黙れ殺すぞ。」ええっ!?」

 

炭治郎は最初迎え入れられていると思ったが、小芭内の様子を見るにどうやら違う目的で待ち構えていたようである。

 

小芭内「甘露寺からお前の話は聞いた。随分とまあ楽しく稽古をつけてもらったようだな。俺は甘露寺のように甘くないからな。」

 

炭治郎(しょっぱなからとてつもなくきらわれている!)

 

炭治郎は出会い頭から嫌われていることを実感し、ショックを受けていた。そして小芭内に連れて来られた場所は床、天井、壁、支柱に縛り付けられた沢山の隊士達がいるところだった。

 

小芭内「お前にはこの障害物を避けつつ太刀を振るってもらう。」

 

炭治郎(処刑場?)「この・・括られている人たちは何か罪を犯しましたか?」

 

小芭内「・・まあそうだな。弱い罪、覚えない罪、手間取らせる罪、イラつかせる罪というところだ。」

 

炭治郎(もうえらいこっちゃ・・)

 

小芭内の理不尽な物言いに炭治郎はこの世の終わりを悟ったような表情を浮かべた。そこからは本当に世にも恐ろしい訓練が始まった。稽古で使うのは木刀だが、それでも括られている隊士に当たれば大怪我は免れない。その間を縫って小芭内の攻撃が来るのだ。小芭内が使う呼吸は『蛇の呼吸』、つまり蛇の如くうねるような太刀筋で炭治郎を翻弄しているのだ。

 

ドゴッ

 

炭治郎「ぐああっ!」

小芭内「のろい。」

 

更には炭治郎が小芭内を狙って狭い隙間に向かって木刀を振ったとき、仲間の必死な心の声が聞こえてくる。

 

「(頼む!頼む!!頼む!!頼む!!頼む!!頼むううう!!頼む当てないでくれ!!)」

 

心優しい炭治郎は、そんな仲間の心の声を聞いて精神をすり減らされる。今までに無いほどの緊張で手が震えていた。なんとか小芭内の攻撃に食らいつこうとするものの、それでも炭治郎はまだこの訓練を始めてまだ初日である。太刀筋がぶれて括られた隊士に当たることもしばしばであった。それでも四日経つと正確な太刀筋で打ち込めるようになってきた。小芭内の攻撃を避けつつ、炭治郎からも攻撃できるようになったのだ。そして

 

ヒュッ ビリッ

 

小芭内「!・・合格だ、竈門炭治郎。次の柱の所へ行け。」

 

炭治郎は遂に一撃当てることに成功したのだ。小芭内が着ている羽織の裾を切って次へ進む許可を得たのだ。しかし、それでも小芭内は炭治郎のことを良く思っていないらしい。

 

小芭内「じゃあな。あのサイヤ人もろともさっさと死ねゴミカス。馴れ馴れしく甘露寺と喋るな。」

 

炭治郎「ありがとうございました・・」(なんで?それに師範のことまで・・)

 

炭治郎は最後の最後まで小芭内に嫌われていることを実感し、悲しんでいた。

次の場所は因縁もある実弥がいる風屋敷である。炭治郎は鎹鴉を肩に乗せて道案内をされていた。

 

炭治郎「えーと、不死川さんの道場こっちだっけ?」

 

鎹鴉「違ウ!!ソコノ角ヲ右ダ鳥頭!!」

 

炭治郎は方向が一向に覚えられず、鎹鴉にも呆れられるほど同じ事を聞いているのだ。そしてようやく後少しで風屋敷に着こうとしていて角を曲がったとき、いきなり目の前に亡霊のような何かが現れた。

 

炭治郎「うわあああああ!!」

善逸「ギャアアアア!!」

 

炭治郎「ああああ善逸!?」

 

亡霊のような何かの正体は善逸だった。あまりにも生気を失った表情をしていたため、本人に見えなかったのだ。一方善逸も目の前の炭治郎に気づくと、涙を流して助けを求めた。

 

善逸「にににに逃がしてくれェェ!!炭治郎炭治郎何卒!!」

 

炭治郎「逃げる?何から?」

 

善逸「もう足が立たないんだ!無理なんよ!ややややっとここまで逃げてきたんだ!塀を這ってきたんだ!気配を消してヤモリのように!命にかかわる!殺されるっ!!」

 

炭治郎は善逸が何を言ってるのかは理解が出来なかった。頭にいくつもの?を浮かべた。しかし、背後から音もなく追ってきた実弥が善逸の頭を鷲掴みにする。

 

ガシッ

善逸「!」

 

実弥「選べェ、訓練に戻るか俺に殺されるかァ。」ゴゴゴゴゴ

 

善逸「ギャアアアアアアアア!!勘弁してくれェェェェ!!」

炭治郎「おちついて。」

 

善逸「ギャッ・・ギャモッ、ギャアアアア!!」

 

実弥「うるさい!」ドビス

善逸「げぅっ」ちーん

 

実弥「運べ。」

 

炭治郎「あ、はい。」(ごめんな善逸、一緒に頑張ろうな。)ヨイショ

 

実弥の目に見えないほどの速さの手刀を受けた善逸は気絶した。そして炭治郎が善逸を背負って運び、実弥の後をついていったのだ。炭治郎は久しぶりに会ったということで挨拶していた。

 

炭治郎「ご無沙汰しています。今日から訓練に参加させてもらいます。よろしくお願いします!」

 

実弥「調子乗んなよォ。俺はテメェもあのサイヤ人も認めてねえからなァ。」

 

炭治郎「全然大丈夫です!俺も貴方を認めてないので!禰豆子刺したんで!それに師範も特に貴方に認めて貰う必要なんか無いと言ってたので!」キリッ スタスタスタ

 

実弥「・・いい度胸だぜ・・上等だコラァ・・!」

 

炭治郎の無自覚の煽りに青筋を立てた実弥は、後ろ姿の炭治郎を睨み付けて屋敷に行った。そして屋敷について訓練場に行った炭治郎は思わず自分の目を疑った。そこには大量の隊士がみんな吐血して倒れていたからである。唖然とする炭治郎に実弥は木刀を投げつけて渡した。

 

ドカッ

炭治郎「うわっ!」

 

実弥「テメェはそれで俺に打ち込んでこいやァ。失神するまで容赦しねぇからなァ。」

 

炭治郎「!っはい!」

 

訓練の説明をされた炭治郎は早速実弥との稽古に励んだ。稽古の内容は至って単純。とにかく木刀で実弥に向かって斬りかかっていくだけである。しかし吐血して失神するまで一切休憩がないために今まで受けた稽古の中で最も過酷なものだということが分かり、炭治郎は善逸が逃げ出した理由が良く分かって同情したのだ。因みに善逸は目を覚ますと再び実弥の屋敷の中にいたことに気づき、炭治郎を親の敵の如く責めた。

 

善逸「バカヤロォォォン!!なんで連れ戻すんだよォォォ!!」ポカポカポカポカ

 

炭治郎「イデデデ!」(ごめんね。)

 

更に禰豆子やブロリーの件もあって実弥は炭治郎に対しては特に当たりが強く、他の隊士達と炭治郎が相手をするのでは明らかに違う動きになっていた。一般隊士の炭治郎が柱に敵うはずもなく、たった一日で炭治郎の顔が原型も分からないほどコブだらけになっていたのだ。そして初日の訓練が終わり、屋敷の廊下を移動していた。

 

炭治郎(初日でこれはまずい・・ボコボコのゲロまみれ・・心折れそうだな。)

 

玄弥「待ってくれよ兄貴!」

 

炭治郎「!!」(玄弥の声。)クンクン

 

その時玄弥の声が廊下に響き、炭治郎は匂いを頼りに実弥と玄弥がいるところまで向かって、二人の視界に入らないように死角に立った。

 

玄弥「話したいことがあるんだ・・」

 

実弥「しつけぇんだよ。俺には弟なんていねェ。いい加減にしねぇとぶち殺すぞォ。」ビキビキビキ

 

玄弥「・・・・」

 

実弥「馴れ馴れしく話しかけてんじゃアねぇぞォ。それからテメェは見たところ何の才覚もねぇから鬼殺隊辞めろォ。呼吸も使えないような奴が剣士を名乗ってんじゃねぇ。」

 

玄弥「・・・・そんな・・」

 

玄弥は実弥に弟ではないと突き放されたことと、鬼殺隊を辞めるように冷たく言われたことにショックを受けていた。それを陰から見ている炭治郎は見守ることしか出来なかった。

 

炭治郎「・・・」

 

玄弥「まっ・・待ってくれよ兄貴!ずっと俺は兄貴に謝りたくて!」

 

炭治郎(頑張れ玄弥!玄弥負けるな!)

 

実弥「心底どうでもいいわ。失せろォ。」

 

炭治郎は玄弥への態度に怒りと呆れが入り交じった表情をしていた。玄弥は相手にもされないことに心にダメージを負っていた。

 

玄弥「そんな・・俺・・鬼を喰ってまで・・戦ってきたんだぜ・・」

 

実弥「!?」

 

玄弥が思わず言ったことは、実弥の逆鱗に触れるのには充分すぎることだった。実弥は尋常ではない殺気を放ちながら聞き返した。

 

実弥「何だとォ?今何つったテメェ・・鬼をォ?喰っただとォ?」ビリビリビリビリ ドッ

 

炭治郎「玄弥!」ダッ ドゴン

 

実弥は突如目に見えない速度で玄弥に目潰しを仕掛ける。危ないと判断した炭治郎は飛び出して玄弥を抱えて襖を突き破って外に出た。

 

善逸「うわああああ!!」

 

「戻ってきた!戻ってきた!血も涙もない男が!」

「伏せろ!失神したふりだ!」

 

善逸「あれっ?炭治郎か?」(えええー!!殺されるぞ炭治郎。何してんだ、建物ぶっ壊して・・)

 

炭治郎「やめてください!」

 

善逸「!?」(何だこの捻じ曲がった禍々しい音は・・)

 

炭治郎が建物内に向かって叫んでいるところを見た善逸は、聞こえてきた異音に屋敷の方を見ると姿を見せた実弥に納得した。

 

善逸(うわあああ!!おっさんが暴れてんのね!!稽古場じゃないところでもボコられるのかよ!!)

 

炭治郎「どういうつもりですか!!玄弥を殺す気か!」

 

実弥「殺しゃしねえよォ。殺すのは簡単だが隊律違反だしよォ。再起不能にすんだよォ。ただしなァ、今すぐ鬼殺隊を辞めるなら許してやる。」

 

実弥の言葉に堪忍袋の尾が切れた炭治郎は、青筋を浮かべて実弥に叫んだ。

 

炭治郎「ふざけんな!!貴方にそこまでする権利ないだろ!辞めることを強要するな!さっき弟なんかいないって言っただろうが!!玄弥が何を選択したって口出しするな!才があろうが無かろうが命を懸けて鬼と戦うと決めてんだ!兄貴じゃないって言うんなら絶対に俺は玄弥の邪魔をさせない!再起不能になんかさせるもんか!」

 

実弥「そうかよォ!じゃあまずテメェから再起不能だ!」

 

実弥は尋常ではない速さで炭治郎の鳩尾に拳を入れたように見えた。あまりの衝撃に炭治郎の体が浮き上がるほどであった。

 

善逸「うっわ・・炭治郎・・!!」

 

実弥(!!コイツ!!止めやがった!!)

 

しかし、炭治郎は止めていたのだ。それだけではなく、動揺して動きを止めた実弥に回し蹴りを頚に叩き込んだのだ。

 

炭治郎「ふんがぁ!」ドゴォ!

 

実弥「!!」

 

善逸(うおああああーー!!一発入れたァァ!!)

 

炭治郎「善逸ーっ!!!玄弥を逃がしてくれ!頼む!!」

 

善逸(ちょっ・・バッバカお前・・!名前呼ぶなバカ!!もっとうまいこと合図できるだろ!!)

 

玄弥「炭治郎!!」

 

炭治郎に一発入れられたことに更に怒り狂った実弥もはや炭治郎の姿しか見えていなかった。炭治郎に蹴りをいれようとするも避けられた。

 

炭治郎(!かすっただけで耳が切れる蹴り!!)

 

実弥「いい度胸ォしてるぜテメェはァ。死にてェようだからお望み通りに殺してやるよォ。」ゴゴゴゴゴ

 

玄弥「待ってくれ兄貴!炭治郎は関係ない!うわっ!」

 

玄弥が実弥を止めようとする前に、善逸が玄弥の腕を掴んで走り出す。

 

玄弥「誰だお前放せよ!」

 

善逸「揉めてる人間は散らすといいんだ!距離を取る!アレお前の兄貴かよ!?完全に異常者じゃん!気の毒に・・」

 

玄弥「俺の兄貴を侮辱すんな!!」ボゴォ

 

善逸「俺味方なのに!!」

 

実弥を侮辱された玄弥は善逸を殴ったのだった。その後の風屋敷は滅茶苦茶であり、夕方近くまで乱闘は続いた。上からも正式な叱りを受けて、炭治郎、善逸、玄弥の三人は修業の中断と実弥との接近禁止令が出されたのだった。仕方なく三人は次の場所である行冥の修業場に向かうのだった。

 

炭治郎「こんなことするつもりじゃなかったんだけどな・・修業の成果出てないなぁ。」

 

善逸「いや出てるよ。風のオッサンとやりあえたじゃんか、すげえよ。」

 

炭治郎「そうかなぁ。」

 

善逸「つーかまだ山奥なの!?岩柱の家馬鹿じゃないの!?」

 

炭治郎「もうそろそろじゃないかな?」

 

玄弥は一足先に行冥の元へ向かっていたため、今この場にいるのは炭治郎と善逸の二人きりである。しばらくあるいているうちに滝が見えてきた。

 

炭治郎「滝だ!!人がいる・・」

 

しかし、炭治郎と善逸はその滝に近づくと絶句して内心で悲鳴を上げた。隊士のみんなが死にそうな顔で滝行をしていたのだ。そしてみんなが念仏を唱えていた。

 

ドドドドドドド

 

炭治郎・善逸((うわあああ!!))

 

行冥「心頭・・滅却すれば・・火もまた涼し・・ようこそ・・我が修業場へ・・」

 

炭治郎・善逸((うわあああああ!!))

 

そして行冥の姿を見た二人は再び内心で悲鳴を上げた。行冥は丸太に岩を左右に二つずつぶら下げたものを空気椅子状態で滝に打たれていたからだ。そして滝から上がった行冥は新しくきた炭治郎と善逸に説明をする。

 

行冥「最も重要なのは体の中心・・足腰である。強靭な足腰で体を安定させることは正確な攻撃と崩れぬ防御へと繋がる。まず滝に打たれる修業をしてもらい・・丸太三本を担ぐ修業・・最後にこの岩を一町先まで押して運ぶ修業・・私の修業はこの三つのみの簡単なもの・・下から火で炙るのは危険なため・・無しとする・・」

 

行冥の今までで一番きつそうな内容の修業に善逸は目を見開いたまま気を失う。

 

炭治郎「すみません。善逸が気絶しました。」

 

行冥「川につけなさい。」

 

善逸「ギャアアアッ!!つべてぇぇぇぇ!!」

 

川の冷水につけられたことで一気に意識が覚醒した善逸は、凄い勢いで川から脱出しようと試みる。

 

善逸「真冬の川より冷たいんですけど死ぬわ!!何この川の水!異常だよ死ぬわ!!吐きそう!うわー何か内蔵がやばい!!悲鳴あげてる!死ぬって言ってる!!」

 

炭治郎「善逸!」

 

炭治郎は善逸が意識を取り戻したことにとりあえず安堵したものの、自身も川の水の冷たさで顔色が悪くなっていた。そして陸に上がった善逸もガタガタと震えていた。

 

善逸「ヒエッ・・ヒャーッ!だっ駄目だ上がっても・・手遅れ!!凍死する!!」

 

善逸が目の前に見たものは沢山の隊士が岩に張り付いている光景だった。あまりの衝撃に善逸はギョっとする。

 

村田「岩に・・くっつけ・・あったかいぞ・・」

 

死にそうな顔で岩にくっついているのは、那田蜘蛛山で一緒に戦った先輩隊士の村田であった。その村田の助言通りに善逸は岩にくっついた。

 

ビターン

善逸「!」(あ・・あったけぇ!!岩ってこんなにあったけぇんだ・・!!お袋の腕の中に抱かれているようだ・・)

 

善逸は岩の暖かさに感動し、岩に抱きついたままグズりはじめた。一方の炭治郎は川の冷たさに体を震わせるも滝へと向かった。

 

炭治郎(ううう冷たい!これはきついな。滝修業、過酷だ・・伊之助も頑張ってるんだ俺も・・ん?念仏が聞こえなくなった?)「あれっ伊之助!?」

 

伊之助「」ちーん

 

炭治郎「あっやばい!!やばい!!」

 

炭治郎が焦った理由、それは伊之助の意識を失ったまま滝に打たれ続けて心臓が止まっていたからである。急いで滝から引きずり出すと心肺蘇生をする。その後で自分も滝に打たれた。

 

ドドドドドド

炭治郎「がああっ!!南無・・阿弥陀仏!」

 

炭治郎は滝に打たれている間念仏を唱えていた。これは意識があることを周りに伝えるためなのだそうだ。一刻の間滝に打たれて抜け出すと、炭治郎の体はすっかり冷えきって全身が震えていた。

 

炭治郎「滝に打たれるだけなのに本当にきついですね。高い位置から落ちてくる水があんなに重いなんて・・体の力を抜いたら首が折れそうだし。」ガチガチガチガチ

 

村田「いやいや・・お前もあの猪もすげぇよ。初日滝修業できるようになるの夕方だったぜ。なかなか水に慣れなくて・・とりあえず一刻滝に打たれ続けられるようになったから、俺はこれから丸太の訓練だ・・」ガチガチ

 

炭治郎「す、すごいですね村田さん・・」ガチガチ

 

村田「と、十日いるからな・・」ガチガチ

 

ここでの昼食は川で取れた新鮮な魚である。火に炙ってから棒で串刺しにして食べるというものだ。そこでは復活した伊之助達が魚を食べていた。

 

伊之助「アイツすげえよ。玉ジャリジャリ親父。」ガジガジ

 

炭治郎「岩柱の悲鳴嶼さんな、変なアダ名をつけちゃだめだよ。」

 

伊之助「初めてあったときからビビっときたぜ、間違いねぇアイツ、鬼殺隊で二番目に強え。」ボリボリ

炭治郎「骨も食べるのか伊之助。」

 

炭治郎「あーやっぱりそうか。」

 

村田「ちょっと待て、あの人が鬼殺隊二番目なら一番強いのは誰なんだ?」

 

伊之助「んなもん決まってんだろ。ブロッコリーだよ。」

 

炭治郎「ブロリーさんな。やっぱりか、師範は凄いよな。」

 

村田「そういえばお前、破壊柱様の継子なんだって?すげえよなあの人も、俺より後に鬼殺隊に入ったのにもう柱なのか。」

 

炭治郎「師範は最初の柱合会議で柱に任命されましたよ。何でも鬼殺隊に入って一月で柱になったとか。」

 

村田「マジかよ!アイツ化け物じゃねえか!」

 

炭治郎「師範もそうだけど悲鳴嶼さんも匂いが全然違うんだよな。」

 

村田(やっぱちょっと・・短期間で階級上がる奴らの話はついていけんわ。あと炭治郎の焼いた魚うま!)

 

善逸「俺は信じないぜ、あのオッサンはきっと自分もあんな岩一町も動かせねぇよ。若手をいびって楽しんでんだよ。」

 

炭治郎「いやいや、悲鳴嶼さんはあれよりもまだ大きい岩を押してるそうだから。」

 

善逸「お前は何で言われたことをすぐ信じるの?騙されてんだよ。」

 

炭治郎「いやいや・・善逸も耳がいいんだから嘘ついてるかついてないかくらいわかるだろ?」

 

善逸と炭治郎が話しているとき、ちょうど後ろを大岩を押している行冥が通過した。

 

行冥「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。」ズズズズズズ

 

炭治郎「あっちょうど通ってるな。凄いなぁ悲鳴嶼さん。多分師範も軽くこなすんだろうなぁ。俺もあんなふうになれるかなぁ!?」

 

善逸「なれてたまるか!!バカかお前はコンニチハ頭大丈夫デスカ!!」ボカボカボカ

炭治郎「イデデデデデ。」

 

善逸「あのオッサンとブロリーさんが異常なの!!オッサン達そもそも熊みたいにデカいだろうが!」

 

炭治郎「いや・・でも。」

 

善逸「黙れ!!巨人と小人じゃ生まれついての隔たりがあんのよわかるだろ!」

 

炭治郎の言葉で切れた善逸はシバき倒していた。そしてそれを見向きもしてない伊之助は猪の頭を被って訓練に戻ろうとしていた。

 

伊之助「腹も膨れたし、丸太担いで岩押してくるわ。」ゴゴゴゴゴ

 

善逸「うわーもう前向きな奴ばっか!!俺の居場所ないわ!!」

 

炭治郎「まあまあ。」

 

炭治郎は過酷な修業内容をめげずに挑み、なんとか滝修業と丸太を担ぐことに成功した。そして残るは岩押しだけである。しかし、これが一番大変であり岩はびくともせず逆に足の方が下がってしまったのだ。

 

炭治郎「ぐおおおおおおお・・!!」(足の方が下がってしまう!!ぐあああ押し負けてる!!)

 

伊之助「ぬ゛うううううう・・!!」

 

炭治郎と伊之助は岩押しに何度も挑んでいた。しかし、それでも岩は動くことはなかった。この訓練はやめたければ山を下りて次の柱の所へ行っても良いものだった。しかし、禰豆子を元に戻すためにそのような選択肢は炭治郎には無かった。同じく、負けず嫌いの伊之助も途中棄権という選択肢は最初から無い。結局この日も岩は動かず、炭治郎と伊之助は岩に寄りかかっていた。

 

炭治郎「・・悲鳴嶼さんの訓練でここまできついならこの後の人達の稽古、特に師範のやつはどれ程過酷なんだろう・・」はぁ

 

伊之助「んなこと知るかよ。まず岩動かさねえと話にならねぇだろ、後どれくらいかかるんだ・・」はぁ

 

炭治郎と伊之助はこのあと待っているであろうブロリーのことを思い出し、それと同時にここ以上の過酷さだと思って途方に暮れるのだった。




次回はブロリーを必ず出したいと思います。ブロリーがどのような稽古をするのかただいま一生懸命に制作しております。それではまた次回。


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切磋琢磨せよ!本格化する柱稽古!後編

第三十六話です。今回はどうしてもブロリーを出したかったこともあり、14000文字以上の長い話になってしまいました。退屈だとは思いますが、最後まで読んで頂けると嬉しいです。では本別どうぞ。


行冥のところで訓練を行っている炭治郎を中心に鬼殺隊全体での柱稽古は順調に進んでいた。その一方で、しのぶと珠世が共同で作っている対鬼舞辻用の薬も最終段階を向かえていた。もうしのぶがいなくてもアオイや珠世達で作れる目処が立ったのだ。そこで珠世がしのぶに声をかけた。

 

珠世「しのぶさん。炭治郎さんからお聞きしましたが、今柱稽古というものを行っているんですか?」

 

しのぶ「はい。これから起こるかもしれない戦いに向けて少しでも鬼殺隊の戦力の底上げになるようにしているんです。」

 

珠世「そうでしたか・・しのぶさんもそろそろ柱稽古に参加した方がよろしいかと思います。」

 

しのぶ「・・はい?」

 

珠世の突然の発言に、しのぶは驚いて思わず珠世の方を見た。そこへ珠世に付け加えるようにアオイが言った。

 

アオイ「私もそれが良いと思います。もう薬も最終段階に入っていますし、後は私や珠世さん達でできます。ですので私たちのことは構わずに柱の役割を優先してください。珠世さん達は禰豆子さんと同じように良い方と気付きましたから大丈夫です。・・それに柱稽古が早く終われば破壊柱様にもまた会えますよ。」

 

しのぶ「なっ!?///」ボッ

 

アオイの言葉にしのぶは一瞬で顔を真っ赤にして狼狽えた。そこに更に愈史朗が付け加えた。

 

愈史朗「貴様は柱だろう?最終決戦も近い、鬼狩りの戦力強化も大事だが何より貴様自身が死なないように鍛えておけ。・・あのサイヤ人と幸せになるんだろう。」

 

しのぶ「・・っ///・・っ///・・///」シュー

 

全身から湯気が出そうな程顔が火照ったしのぶは、遂に両手で顔を覆ってしまった。

 

アオイ「しのぶ様。先程も言いましたが、珠世さん達は優しくて良い方です。私は戦いには行けませんが、支えることはできます。必ず成功させますのでどうか行って下さいお願いします!」

 

しのぶ「アオイ・・分かりました。珠世さん、愈史朗さん、アオイのことをよろしくお願いします。」

 

三人に後押しされたしのぶは、自分も柱稽古に参加する決意をして稽古を行う準備に取りかかるのだった。

 

―――

 

一方で炭治郎は、行冥の訓練である岩押しに今も苦戦していた。そして昼食の休憩では、炭治郎が握り飯を作ってみんなに振る舞っていた。

 

村田「俺、今回の訓練で気づいたわ。今の柱達がほとんど継子いない理由。」もぐもぐ

 

炭治郎「何ですか?」にぎにぎ

 

「俺も何となくわかったわ。」もぐもぐ

「しんどすぎてみんな逃げちゃうんだろ。」もぐもぐ

「それとかあの金髪みたいにさ、柱との違いに打ちのめされて心折れたりさ。」もぐもぐ

 

村田「こういうのを当然のようにこなしてきてんだから、柱ってやっぱすげぇわ。」

 

炭治郎「そうですね・・」パッパッにぎにぎ

 

「ていうかお前めっちゃ米炊くの上手くない?」

村田「魚焼くのも上手いしよ。」

 

炭治郎「俺炭焼き小屋の息子なんで!料理は火加減!」どやっ

「なるほど!」

 

炭治郎の作る握り飯や魚は程よい食感と味を引き出すような焼き方をするのでとっても美味なのだ。この事からこの柱稽古で炭治郎は"お袋"というアダ名がつけられたのだった。休憩を終えた後は再び岩押しの訓練をするのだが一向に成果が出ず、そのまま六日が経過した。

 

炭治郎(今日も駄目だった・・どうする?鬼だっていつまで大人しくしているかわからないぞ。早くしないと・・単純に筋力が足りないのかな?それともまた別に呼吸法がある?)

 

玄弥「お前大丈夫か?」じー

 

地面に仰向けに倒れている炭治郎を覗き込んだのは玄弥である。風屋敷以来の顔合わせになった炭治郎は慌てて飛び起きる?

 

炭治郎「あっ玄弥!!大丈夫だったのか?あの後連絡とれなくなったから心配してた!」

 

玄弥「謹慎してたんだよ、悲鳴嶼さんに叱られてさ。兄貴と接触するなって言われたのにあんなことになって。悪かったな巻き込んで。・・庇ってくれてありがとよ。」

 

炭治郎「いや、そんな・・///」

 

刀鍛冶の里で上弦の鬼相手に奮闘してからそれなりに話すようになった二人。風屋敷での一頓着をきっかけに二人は真に仲良くなったのだ。

 

玄弥「岩の訓練してたんだな、俺もやってるよ。」

 

炭治郎「いやあでも全然動かなくて、玄弥は動かせた?」

 

玄弥「動かせるよ。」

炭治郎「えー!」

 

玄弥「お前ら"反復動作"はやってんの?」

 

炭治郎「?」

 

聞きなれない単語に炭治郎は笑顔のままフリーズして頭に沢山の?を浮かべた。それを見た玄弥は察してため息をついた。

 

玄弥「やってねぇのか・・悲鳴嶼さんも教えるの上手くねぇからな。良く見て盗まねぇと駄目だぞ。」

 

炭治郎「へあー・・」

 

玄弥「集中を極限まで高めるために予め決めておいた動作をするんだ。俺の場合は念仏唱える。」

 

炭治郎「悲鳴嶼さんもやってる!」

 

玄弥「そうそう。南無南無言ってるだろ。」

 

行冥(南無)

 

玄弥と炭治郎が楽しそうに話し合っているのを、行冥は遠くから木の影に隠れながら見守っていたのだった。

 

―――一方、無限城では琵琶を持つ女の鬼、鳴女が琵琶を鳴らして鬼殺隊の隊士の行方を気付かれないように血鬼術を駆使して結果を無惨に伝えていた。

 

べべんべん

 

鳴女「また一人見つけました。これで六割程の鬼狩り共の居所を把握。しかしまだ太陽を克服した娘は見つかりません。」

 

無惨「鳴女、お前は私が思った以上に成長した。素晴らしい。」

 

鳴女「光栄でございます。」

 

無惨は手に持っている地図で産屋敷の居場所を鳴き女に探らせていたのだ。そしてまだ探って無いところを指差した。

 

無惨「後はそうだな・・この辺り。」

 

鳴女「承知しました。」

 

無惨「禰豆子も産屋敷も、もうすぐ見つかる。」

 

無惨は今までブロリーを最大限に警戒していたが、今となってはかなりの余裕がある。無惨はある方法をすればブロリーも脅威にならないと踏んだのだ。

 

無惨(どうやらこの世に神とやらがいるのならそれは私を味方したようだな。禰豆子を捕らえた後、無限城で喰らって太陽を克服し、他の鬼狩りは皆殺しにして後はブロリーが寿命で死ぬまでここに居続ける。こうすればブロリーも私の脅威ではない。フフフ、産屋敷の居場所を見つかるときが来るのが実に楽しみだ。)

 

鳴女(無惨様・・なにかを確信して余裕の笑みを浮かべる姿も麗しゅうございます。)

 

禰豆子を喰らった後にブロリーが亡くなるまで引きこもり続ける。それが無惨の考えた勝利の方程式だった。そしてほくそ笑む無惨を見ている鳴女は目にある"参"の数字を覗かせながら探索を続けるのだった。

 

―――場所は行冥の岩屋敷。炭治郎は玄弥に教えてもらった反復動作を意識しつつ今日も岩押に挑んでいた。全集中の呼吸とは違うため、呼吸が使えない玄弥でもこれは出来るのだ。炭治郎は大切な家族の顔を思い浮かべることで集中力を高める。

 

炭治郎「ぐああああああ!!」グッ

 

雄叫びをあげながら力を込める炭治郎。始めのうちは出来なかったものの、反復動作から全力を出すことを何度も繰り返しているうちに体が覚えたのだ。そして

 

炭治郎「ぐぬああああ!!」ズズズズズズ

 

遂に炭治郎は岩を動かすことに成功したのだ。それを見ていた善逸と伊之助は叫んだ。

 

善逸「いったァァァ!!炭治郎いったァァ!!バケモノオオ!」

 

伊之助「くそォ!負けたぜ・・!!」

 

しかし、動かせた炭治郎本人はまだまだ力を緩めない。この訓練は一町先まで岩を押し続けることなのだ。集中力を切らさずに更に押し続ける。

 

炭治郎(まっ・・まだだ!!一瞬でも気を抜くと脱力して押し負ける!一秒でも長く岩を押し続けるんだ!)

 

そして負けず嫌いの伊之助も炭治郎が岩を押したことに奮い立たされ、岩に力を込める。

 

伊之助「天ぷら!天ぷら!猪突ゥ!猛進!!ウガアアア!!」ズズズズズズ

 

善逸(伊之助も岩動いちゃった最悪・・!!あと俺だけじゃん最悪・・!!)

 

炭治郎に続いて伊之助も岩を動かせるようになり、善逸は自分だけ出来ていないことへの焦りが生まれていた。その時、善逸の雀が手紙を持って慌てたようすでやってきた。

 

雀「チュンチュンチュン!」

 

善逸「えっ?何?手紙・・?」

 

善逸に送られてきた手紙、その内容はあまりにも残酷なものだった。善逸の師匠である桑島慈悟郎が腹を斬って亡くなったというのだ。その理由として善逸の兄弟子である獪岳が鬼になったことに責任を負ったのだ。たった一人で介錯もつけずに心臓や脳などの急所を傷つけるわけでもなく、失血死するまで延々と苦しみ続ける死に方をしたのだ。

 

善逸「う・・うわあああああ!!」

 

それを知った善逸は泣き叫んだ。気が狂ったように額を岩に打ち付けたりもした。幸い炭治郎と伊之助の姿は既に無く、周りにも誰もいなかった。一通り暴れた後でも善逸を支配するものは、桑島が亡くなった悲しみと獪岳への憎しみだけだった。そしてこのときから善逸の目付きが変わったのだった。

一方の炭治郎は岩を一町押し終わってあまりの疲労に地面に横たわっていた。

 

炭治郎「はーっはーっはぁっはぁっ」(一町動かせた!!これで悲鳴嶼さんの訓練は終わりだ!)ヒィヒィ

 

炭治郎は呼吸が荒い上に顔色も非常に悪くなっていた。それだけではなく、意識も霞始めていた。

 

炭治郎(あれっ?だっ・・脱水状態だ!!急激に・・滝のように汗をかいて水を飲んでなかったから・・善逸・・!伊之助・・村田さん・・ここで死にそうだ・・誰か・・)

 

そんな炭治郎の所に来たのは善逸でも伊之助でも村田でもなく、行冥だった。涙を流しながら大きな水筒に入っている水を炭治郎の口に垂れ流していた。

 

炭治郎(あっ・・悲鳴嶼さん・・助かった・・)ドボボボボ

 

行冥「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・」

炭治郎(えっ俺死んじゃった・・?)「あっ・・ありがとうございます。」ガバッ

 

炭治郎がしっかりと水分を取ったのだが、それでもまだ行冥は炭治郎の口に水を流していた。

 

行冥「岩の訓練も達成した。それに加え里での正しき行動。私は君を認める・・」タプタプタプ

 

炭治郎「里?ガフッゴブッ水、水大丈夫です。」

 

行冥「君は刀鍛冶の里で死者を出すまいと里の人間の命を優先して守った。」

 

炭治郎「あ・・それは・・」

 

行冥「恥じることはない。君は剣士の鏡だ。自分の正しき行動を誇ると良い・・」

 

行冥が刀鍛冶の里で炭治郎の行動を称賛しているが、炭治郎はそれを否定した。

 

炭治郎「いいえ違います。俺をそのように導いてくれたのは師範です。俺は何度も判断を間違えそうになって危うく里の人が死ぬところでした。認められては困ります。」

 

行冥(子供というのは純粋で無垢で弱く、すぐ嘘をつき残酷なことを平気でする我欲の塊だ。しかしやはりこの子供は違う・・)

 

炭治郎「いつもどんな時も間違いの無い道を進みたいと思っていますが、先のことは分かりません。いつだって誰かが助けてくれて俺は、結果間違わずに済んでるだけです。あのときも本当に危なかったんだ。だから簡単に俺のことを認めないでください。水ありがとうございます。訓練も今日までありがとうございました。勉強になりました。」

 

行冥「疑いは晴れた。誰がなんと言おうと私は君を認める、竈門炭治郎。」

 

炭治郎「ええっ?わからない・・どうしてですか?」

 

自分はまだまだだと思っていた炭治郎に行冥は認めると言ったのだ。それに炭治郎は驚き、理由を聞いた。すると行冥は自分の生い立ちを語り始める。

 

行冥「私は昔、寺で身寄りの無い子供達を育てていた。皆、血の繋がりこそ無かったが仲睦まじくお互いに助け合い、家族のように暮らしていた。私はずっとそのようにして生きていくつもりだった。ところがある夜、言いつけを守らず日が暮れても寺に戻らなかった子供が鬼と遭遇し、自分が助かるために寺にいた私と八人の子供を鬼に喰わせると言ったのだ。」

 

炭治郎「・・・・っ!」

 

行冥が住んでいた寺で子供の一人、今は善逸の兄弟子でありながら鬼に堕ちた剣士、獪岳は鬼と取引して行冥達を売ったのだ。そのときのことを思い出しているのか、行冥の顔は血管が浮き上がっていた。

 

行冥「私の住んでいた地域では、鬼の脅威が根強く残っており、夜は必ず藤の花の香炉を焚いていた。その子供は香炉の火を消して始末し、寺の中に鬼を招き入れた。すぐに四人殺された。残った四人を何とか守ろうとしたが、三人の子供は私の言うことを聞かなかった。当時の私は食べるものも少なく痩せ細っており、気も弱かった。大きな声を出したこともなかった。更には目も見えぬような大人は何の役にも立たないという、あの子達なりの判断だろう。」

 

炭治郎(!!悲鳴嶼さん目が・・!?)

 

行冥が普段から白眼なのはブロリーのような激しいパワーの影響なのではなく、盲目で目が見えないからである。寺に住んでいたときも鬼殺隊に入ったあとも、全て様々な気配を察して生きてきたのだ。それを知った炭治郎は悲しそうな顔をする。行冥は更に続けた。

 

行冥「私の言うことを聞いてくれたのは一番年下の沙代だけだった。沙代だけが私の後ろに隠れた。他の三人は私をあてにせず逃げ・・暗闇の中で喉を掻き切られて死んだ。私は何としても沙代だけは守らればと思い戦った。生き物を殴る感触は地獄のようだった。あの気色の悪さを私は一生忘れない。生まれて初めて全身の力を込め振るった拳は自分でも恐ろしい威力だった。鬼に襲われなければ死ぬまで私は自分が強いということを知らなかった。私は夜が明けるまで鬼の頭を殴り潰し続けた。私はあの夜山ほどのものを失い傷つき、命を懸けて沙代を守ったが、駆けつけてきた者達にあの子はこう言った。"あの人は化け物、みんなあの人がみんな殺した"」

 

炭治郎「そんな・・」

 

沙代はあの人と言っているが、それは行冥のことではなく、襲ってきた鬼のことを言っていた。しかし鬼は朝日で消滅している上に、本人は事件のショックでまともに言葉を話せなかったので行冥の容疑を晴らすことが出来なかったのだ。そしてそれを行冥は知らないのだ。この衝撃の事実を伝えられた炭治郎は言葉を失った。

 

行冥「恐ろしい目にあい混乱したのだろう。まだ四つの子供だ無理もないこと・・しかし私はそれでも沙代にだけは労ってほしかった。私の為に戦ってくれてありがとうと言ってほしかった。その一言があれば私は救われた。しかし子供はいつも自分のことで手一杯だ。鬼の屍は塵となって消え、子供達の亡骸だけが残った。私は殺人の罪で投獄された。お館様が助けてくださらなければ私は処刑されていた。それから私は本当に疑り深くなったように思う。君のことも勿論疑ってた。普段善良な人間であっても土壇場で本性が出る。しかし君は逃げず、目を逸らさず、嘘をつかず素直でひたむきだった。簡単なことのようだが、どんな状況でもそうあれる者は少ない・・君は特別な子供。大勢の人間を心の目で見てきた私が言うのだからこれは絶対だ。未来に不安があるのは誰しも同じ。君が道を間違えぬようこれからは私も手助けしよう。」

 

炭治郎「・・頑張ります・・ううっ・・ありがとうございます・・」

 

行冥の悲惨な過去を聞いた炭治郎は悲しさのあまり泣き出した。行冥は炭治郎の頭を優しく撫でた。

 

行冥「私の訓練は完了した・・よくやり遂げたな・・」

 

行冥の訓練を終えた炭治郎はその後、玄弥と伊之助の三人で鍋を囲ってご飯を食べていた。

 

玄弥「悲鳴嶼さんも何だかんだでいい人だからな。才能ないから俺のこと継子にしないって言ってたけど、俺が鬼喰いしているのを察して弟子にしてくれたし。体の状態を診てもらえって胡蝶さん紹介してくれて。」

 

炭治郎「あーそうだったのか!」

 

玄弥「胡蝶さんには滅茶苦茶嫌な顔されたよ。会うたび説教でさ。お前も割りと頭固そうだから色々言われると思ってた。でも結局ごちゃごちゃ言われなかったな。」ズズ

 

炭治郎「いやぁ呼吸使えなかったら俺も同じようにしてたかもしれないし、でも体は大丈夫か?しのぶさんもきっと玄弥の体を心配してのことだから。」

 

玄弥「そうかねぇ。」

炭治郎「そうだよ!」

 

そして炭治郎は行冥の訓練を終えた為、次は義勇の所に行く予定なのである。一緒に行こうと玄弥を誘った。

 

炭治郎「これ食べたら義勇さんの所行くけど玄弥も来るのか?」

 

玄弥「いやいや行けねぇよ。岩を一町も動かせてねぇし。」

 

伊之助「俺はあともう少しだぜ!!」

 

玄弥「呼吸使えねぇからな俺。」

 

伊之助「ハハハハ!お前呼吸使えねぇのか!雑魚が!!」

 

\ギャーッギャーッ/

 

伊之助が玄弥を嘲笑ってぶちギレた玄弥はそのまま伊之助と乱闘になったのだった。そして結果は伊之助を封じる形で炭治郎が背中の上に乗って止めたのだった。

 

炭治郎「一緒に行けるなら道すがら話そうと思ってたんだけど。」

 

伊之助「どけ!」うがああああああ

 

玄弥「何を?」

 

炭治郎「風柱の・・お兄さんのことなんだけどあの人はさ―――」

 

炭治郎はその続きを玄弥に伝えると、玄弥は安心したような笑顔を見せるのだった。そして次の柱である義勇の元へ向かう前に善逸に会いに行った。すると、今までとは全く雰囲気が違う善逸が岩に腰を掛けていた。

 

炭治郎「あっ善逸!ここにいたのか。岩動いたか?」

 

善逸「いや、まだだ。」

 

炭治郎「そうか・・俺次の訓練に行くんだけど・・大丈夫か?善逸・・ここ暫く喋らないし心配で・・」

 

善逸「そうか、よかったな。頑張れよ。俺はやるべきこと、やらなくちゃいけないことがはっきりしただけだ。」

 

炭治郎「何かあったのか?俺に出来ることがあれば何でも・・」

 

善逸「炭治郎は炭治郎のやるべきことをやれ。」

 

炭治郎「でも・・でも・・心配だよ・・」

 

善逸のことを心配する炭治郎。それは善逸自身も音で分かっていた。しかし、それでも善逸の決意は変わらない。

 

善逸「お前は本当に良い奴だよな。ありがとう、だけど・・これは絶対に俺がやらなきゃダメなんだ。」

 

善逸の決意、それは鬼に堕ちた獪岳を自分の手で倒すことである。桑島が自害する原因になった獪岳に強い怒りと憎しみが、善逸を奮い立たせているのだった。

竹林を一人で歩く炭治郎は、善逸の変わりように心配していた。

 

 

炭治郎(善逸大丈夫かなぁ?それに禰豆子。ずっと預けたままでいいんだろうか?寂しがってないかな?)

 

考え事をしているうちに、炭治郎は目的地である義勇の屋敷に到着した。

 

炭治郎(あっ!建物があるぞ。着いた!)

 

しかし、炭治郎が実際に中に入ると、ものすごく緊迫した空気が漂っていて、他の隊士達も顔が青ざめていた。その理由は、実弥が木刀を持ってものすごい殺気を義勇に向けていたのである。

 

炭治郎(えっ?何だ?この空気は?)

 

そして次の瞬間、実弥と義勇がぶつかり合った。実弥は目に見えない速さで義勇に斬りかかった。そして義勇の持つ木刀にヒビを入れた。

 

実弥「風の呼吸、壱の型、塵旋風・削ぎ。」ビシッ

 

炭治郎(はっ・・速っ!!でも見える!!動きを追えるぞ・・!!)

 

実弥「オラオラァどうしたァ!!テメェは俺たちとは違うんじゃあねぇのかよォ!!」

 

炭治郎(あっそれはそう言う意味じゃ・・)

 

実弥の勘違いに気づいた炭治郎は、悲しそうに眉をひそめるのだった。他の隊士も固唾を飲んで見守るなか、義勇は実弥の足元を狙う。

 

義勇「水の呼吸、肆の型、打ち潮。」

 

しかし、義勇の技を難なく避けた実弥はがら空きになった義勇の背中を空中から狙う。しかし、義勇もすぐさま振り向き、更に技を出した。

 

実弥「遅ェんだよォォ!!風の呼吸!伍の型―」

義勇「水の呼吸、漆の型―」

 

義勇「雫波紋突き。」バキッ

実弥「木枯らし颪!」バキッ

 

柱の技による木刀の消耗は非常に激しく、二人が持つ木刀は同時に折れて継続できなくなった。それを見た実弥は関節を鳴らし始めた。

 

実弥「よォし、じゃあ次は素手で殺し合うかァ!」ボキボキ

 

炭治郎「待った待った待ったァ!!ちょっと待ってくださいよ!殺し合ったらいけませんよ!」

 

木刀を持って戦うことはまだ稽古として誤魔化せるが、素手での乱闘はただの隊律違反となる。木刀を失ってもなお続けようとする実弥に炭治郎が止めに入った。

 

実弥「うるせェんだよテメェはァ、そもそも接触禁止だろうがァ。さっきから盗み見しやがってこのカスがァ。」

 

炭治郎「おはぎの取り合いですか?もしそうなら俺が腹一杯になるまで作りますから・・」

 

実弥「ふざけてやがるなァァ・・」

 

炭治郎が少しずれたことを言うのは素であり、決してふざけているわけではないのだがそんなことを知らない実弥は額に青筋を浮かべる。

 

炭治郎「え?いやいや真面目です!!不死川さんおはぎ大好きですよね?不死川さんちで稽古してもらっていた時、ずっとほのかに餅米とあんこの匂いしてたし、戻ってくるたび抹茶とおはぎの良い香りがしたので・・てっきり・・」

 

実弥「・・・・」

 

義勇「不死川は・・おはぎが好きなのか・・」

 

炭治郎「おいしいですよね!おはぎ。こしあんですか?つぶあんですか?俺もお婆ちゃんのおはぎが大好きで・・」

 

ボギャッッ!!

 

炭治郎は実弥にアッパーを決められ地面に叩きつけられて気絶した。炭治郎の推測は当たっており、実弥はおはぎが好物であった。しかし、それがばれたことによる照れ隠しなのかそれとも純粋に腹を立てたのか、実弥は炭治郎を気絶させることで黙らせる選択をしたのだった。少し時間が経ち、炭治郎が目を覚ますと、義勇の姿と周りの隊士の姿が目に入った。

 

炭治郎「あれっ?義勇さん!」

 

義勇「不死川は怒ってどこかへ行ってしまった。」

 

炭治郎「そうですか・・どうして喧嘩してたんですか?」

 

義勇「喧嘩ではなく柱稽古の一環で、柱は柱同士で手合わせしているんだ。」

 

炭治郎「そうだったんですか・・あっどうりで木刀だったし・・そうかそうか!邪魔してすみません。」

 

義勇「いや、そんなことはない、俺はうまく喋れなかったし不死川はずっと怒っていたから、でも不死川の好物が分かってよかった。今度から懐におはぎを忍ばせておいて、不死川に会うときあげようと思う。」

 

炭治郎「あー!それはいいですね!」

 

義勇「そうしたらきっと仲良くなれると思う。」ムフフ

 

炭治郎「俺もそうします!」

 

(((((やめろ!喧嘩になるから!)))))

 

そのやり取りを一部始終見ていた他の隊士達は、その後どうなるかしっかりと考えて心の中で総突っ込みを入れたのだった。そして炭治郎は義勇の屋敷に来ている他の隊士達と訓練を開始した。炭治郎は義勇から説明を受けていた。

 

義勇「これから(稽古を)始める。俺は(見えないところから奇襲を)仕掛ける。お前は(気配を集中させて攻撃を)迎え撃て。俺に(一発)入れたら合格だ。」

 

(((((分かりませんよ水柱様ぁ!!)))))

 

それだけいうと義勇は竹林の中に姿を消してしまった。他の隊士は義勇の言葉不足に頭を?で一杯にしていた。それを分かりやすく炭治郎は説明した。

 

炭治郎「えっと多分この稽古は気配を察知する稽古だと思います。どこからか攻撃を仕掛けてくる義勇さんを察知して戦って義勇さんに一発入れられたら合格なんだと思います。」

 

「なるほど!そう言うことか。」

「竈門、助かったよ。お前がいなかったら一生理解できなかった。」

 

炭治郎から本当の理由をしっかりと理解した上で、炭治郎よりも先に来ていた。先輩隊士達は竹林の奥へと向かった。しかし一人、また一人と満身創痍の状態で帰ってくる。

 

炭治郎「どっ・・どうしたんですか!?」

 

「みっ水柱様・・強すぎる・・」ガクッ

「あんなの・・対応・・出来ねぇよ・・」バタッ

 

次から次へと地面に倒れる隊士を見て炭治郎も不安になった。そしていよいよ炭治郎の番になった。竹林へと入っていくと、炭治郎の鼻が微かに人の匂いを感じ取った。

 

炭治郎(!義勇さんの匂い!そうか、この稽古は俺が鬼殺隊に入る前に鱗滝さんのところで二年間していた訓練と似たものなんだ。俺は鼻が利く。でも義勇さんは強い。あの時よりも更に気を引き締めて呼吸と鼻を使うんだ。)

 

炭治郎は懐かしさを覚えたが、あの時は罠でこっちは対人なのだ。つまり動きが一定ではなく、読めないのだ。だからこそ炭治郎はあの時よりも更に警戒して足を進めた。そして

 

ヒュッ ガッ

 

突如襲ってきた剣激に、炭治郎は素早く反応して攻撃を木刀で受け止めた。

 

義勇「・・見事だ。」

 

炭治郎「ありがとうございますっ!」

 

ガガガガガガッ!!

 

そこからは壮絶な打ち合いになった。しかし、義勇は心の中で炭治郎を称賛していた。

 

義勇(炭治郎、よく反応した。他の隊士はこの動きにも対応できなかった。だがお前だけは止めた。それだけじゃない。お前のその実力、柱に匹敵している。二年前は俺の前で蹲るだけだったお前がここまで強くなったのか。やはりお前は俺に変わって柱になるべきだ。)

 

一方の炭治郎は、押されながらもなお食らいついていて改めて義勇の凄さを実感していた。

 

炭治郎(予想を遥かに越えて強い!錆兎の話を聞いたとき、義勇さんはどれだけ血反吐を吐くくらいの努力をしてきたかが分かった気がした。貴方は自分では水柱ではないと言っていますが、その実力、そして錆兎の思いを継いでいくために訓練に参加した貴方は立派な水柱です!)

 

お互いを心で称賛して、二人の攻防は更に激しさを増す。そして遂に決着がついた。

 

ヒュッ ビリッ

 

義勇「!」

 

炭治郎の一撃が、義勇の袖の裾を切ったのだ。自身の服が切られた義勇は少し目を見開いて驚いた。そして動きを止めた。それを見た炭治郎も動きを止める。

 

炭治郎「はぁ・・はぁ・・義勇さん・・?」

 

義勇「炭治郎、合格だ。次の柱のところへ行け。」

 

炭治郎「ええっ!?もうですか?まだ初日ですよ?」

 

義勇「俺は一撃入れたら合格だと言った。お前は俺に一撃を入れた。条件は満たした。以上だ。」

 

炭治郎「わっ分かりました。」

 

こうして炭治郎は異例の初日合格という偉業を成し遂げたのだ。義勇の屋敷から出ると、次は蝶屋敷に向かって歩き始める。

竹林を抜けて暫く歩き続けると、負傷した際に度々世話になった蝶屋敷が見えてくる。

 

炭治郎(あっ!屋敷だ!そういえば珠世さんと愈史朗さん、アオイさん達とうまくやってるかなぁ?)

 

ブロリーと共に二人の護衛にもついた炭治郎は、屋敷の人達と珠世達がうまくやっていけてるのかどうか不安になった。そんなことを考えながら、蝶屋敷の玄関を見つめる炭治郎の耳元に囁き声が聞こえてきた。

 

しのぶ「もしもし。炭治郎君、人の家を眺めて何してるんですか?」

 

炭治郎「うわぁ!し、しのぶさん!びっくりしました。」

 

しのぶ「ふふっ、素晴らしい反応ありがとうございます。それよりここで何してるんですか?」

 

炭治郎「あっえっと、次の稽古を受けに来ました。」

 

しのぶ「あらあら、そうでしたか。ですが炭治郎君、稽古する場所はここではありませんよ。ついて来てください。」

 

そう言って歩きだすしのぶの後をついていくと、暫くしていくつもの木刀がぶつかり合う音が聞こえてくる。蝶屋敷から少し離れたところにある広場だった。そこを見ると、他の隊士が木刀を持って手合わせしていた。

 

炭治郎「しのぶさん、これは?」

 

しのぶ「炭治郎君、これが私の訓練です。今までの訓練を思い出して意識しながら他の隊員と手合わせするおさらい稽古です。二人一組で手合わせしていただいて終わったら次の人と組みます。五人相手に連続で勝利すれば合格です。」

 

しのぶの稽古は今まで受けてきたことを復習するための訓練だった。高速移動や太刀筋をしっかりしながら対人で打ち込み合うことでより早く五連勝することができ、最後の稽古であるブロリーのところへ行けるというものである。この日の炭治郎は、義勇のところから続けて来たことで前の訓練の疲労と移動の疲労が重なってうまく動くことが出来ず、常に三連勝はするが四人目でつまづいてしまうのだった。しかし、それでも炭治郎は全集中・常中を習得している。一日休めば体の疲労は抜け、いつものようなキレがでてあっという間に四連勝したのだった。

 

炭治郎「ふぅ・・あと一人・・」

 

しのぶ「炭治郎君。」

 

炭治郎「はい?」

 

最後の相手を探しているとき、しのぶから名前を呼ばれた。しのぶの方を見てみると、手に木刀を持って笑顔で立っていた。

 

しのぶ「炭治郎君、君は全集中常中を習得できています。それ故私の目からは大して苦戦することもなく四人撃破したように見えました。現に今の貴方とは誰も組手したがっていません。なので炭治郎君、君の最後の相手は私です。」

 

しのぶはそうはっきり告げると、持っている木刀を構える。

 

しのぶ「来てください炭治郎君!ブロリーさんの継子の力、私に見せてください!」

 

炭治郎(柱と手合わせして貰える・・これは強くなるチャンス!)「わかりました。挑むところですしのぶさん!」

 

両者は同時に動き出すと、木刀同士がぶつかり合う。他の隊士達も一切の動きを止めて、炭治郎としのぶの勝負に釘付けになる。しのぶは自慢のスピードを最大限に生かし、突き技で攻撃してくるがそれでも炭治郎にはなかなか当たらない。その理由は、炭治郎は刀鍛治の里でからくり人形縁壱零式を使った修行で匂いで相手の動きを予測する。動作予知能力を習得したからであった。つまり、しのぶの動きが手に取るように分かり、予知してから対処しているのだ。これにはしのぶも驚愕していた。

 

しのぶ(私の突き技が全く当たらない!それに動きも技の力強さも格段に練り上げられてる!これが炭治郎君が、普段からブロリーさんに訓練し合えている成果なのね!素晴らしいわ!君の師範のブロリーさんは私に生きる決意をさせてくれた。危うくカナヲやアオイ達を再び悲しませるところだった。それに気づかせてくれたブロリーさんには本当に感謝しているの。だからその恩を返すことも含めて私は貴方を鍛えるわ炭治郎君!)

 

一方の炭治郎も、しのぶの速い動きに翻弄されながらもまだ一撃も貰ってないところを見ると食らいついていけてることが見て取れる。炭治郎はしのぶの実力に驚いていた。

 

炭治郎(目で追うのがやっとな程の速さ!それに突きによる攻撃が重い!刀鍛治の里で習得した"動作予知"がなければしのぶさんの速すぎる突き技でとっくに倒されていた!しのぶさんも義勇さんみたいに血反吐を吐く程の努力をしてきたことを感じる。蝶屋敷に預かってくれたばかりの頃は貴方からはずっと怒りの匂いと藤の花の匂いがしていた。でも今は大分怒りの匂いが柔らいで藤の花の匂いも全くしない。変わりに喜びと嬉しさに満ち溢れた匂いがする。貴方はいつも師範を目で追っている。師範との間に何があったのかは分かりませんが、師範を慕っているのは俺も同じです!だから貴方の出す試練を合格して師範の所へ行きます!)

 

他の隊士が固唾を飲んで見守るなか、炭治郎としのぶは共にお互いを称賛してこの手合わせを楽しんでいた。そして長く拮抗した手合わせは遂に決着がついた。

 

ヒュッ!ビシッ

 

しのぶ「!!」

 

炭治郎の一撃がしのぶの隊服の裾を切ったのだ。それを見たしのぶは羽織が切られなかったことへの安堵の息を吐いて炭治郎に笑顔で向き直る。

 

しのぶ「お見事です。今の君の実力は柱にも匹敵するでしょう。動きや判断力も申し分ありません。次の柱の所へ行っても大丈夫ですよ。」

 

炭治郎「えっ!良いんですか?まだ二日しか立ってませんよ。」

 

しのぶ「貴方は私の稽古を全て合格しました。なので大丈夫ですよ。」

 

炭治郎「わっ分かりました!ありがとうございます!」

 

炭治郎はしのぶから合格を貰ってブロリーのところへ向かう準備を始めた。他の隊士達はしのぶと炭治郎の手合わせを見てしばらく呆然としていた。しかし、それに気づいたしのぶが手を叩いた。

 

しのぶ「皆さん何してるんですか?休憩するにしても長すぎですよ?はい、早く再開してくださいね。」パンパン

 

しのぶの声に我に返った隊士達は再び手合わせを始めるのだった。準備を済ませた炭治郎がブロリーのところへ向かおうとするとしのぶが声をかけてきた。

 

しのぶ「炭治郎君。」

 

炭治郎「はい。」

 

しのぶ「ブロリーさんによろしくお願いします。」

 

炭治郎「!はい!」

 

炭治郎の元気よい返事にしのぶは満足気に頷くと、他の隊士達を指導するために戻ったのだった。

破壊屋敷は蝶屋敷のすぐ近くにある為、歩いて五分も経たずに到着した。しかし、蝶屋敷での雰囲気とは全く異なるものだった。まだ玄関前なのに無数の爆発音と悲鳴と高笑いが聞こえてくるのだ。

 

ドカーン!

 

\うわぁぁぁぁ!ぎゃぁぁぁぁ!/

\フハハハハ!/

 

炭治郎(師範・・もうえらいこっちゃ・・)

 

普段からブロリーのことを見ている炭治郎は聞こえてくる音だけでどんなことが行われているのか想像ができて重い足を動かして進んだ。ブロリーがいる庭に来ると、他の隊士達がみんな満身創痍になって気絶しており、中心には『伝説のスーパーサイヤ人』になったブロリーが立っていた。しかし、一人だけ満身創痍になりながらも気力で立って木刀を構える後ろ姿があった。その姿は炭治郎にも見覚えのある背中で思わず炭治郎は名を呼んだ。

 

炭治郎「カナヲ!」

 

カナヲ「!炭治郎・・くっ・・」ドサッ

 

それはカナヲだった。しかし、もう気力で立っていたのかカナヲは炭治郎に気づくと同時に地面に崩れ落ちた。それを見た炭治郎はカナヲに駆け寄った。

 

炭治郎「カナヲ!大丈夫か!?師範!どうしてこんなことを!」

 

カナヲ「いいの・・炭治郎・・これが・・破壊柱様の・・稽古だから・・」ハァハァ

 

炭治郎「えっ?稽古?」

 

ブロリー「炭治郎か。ようやく来たようだな。今までの柱を突破するとは流石俺の継子と誉めてやりたいところだぁ!ここに来たということは俺の修行を受けに来たのか。」

 

炭治郎「はい!ようやく来れました!・・それにしても師範、どうして他の人達は地面に伸びているんですか?」

 

ブロリー「これが俺の修行だ。ここではムシケラを見つけたことを考えての実戦訓練だ。俺の首に刀を当てれば合格だ。」

 

カナヲ「炭治郎・・それに・・今までの・・柱の方達の・・稽古は・・全部一対一・・だったけど・・ここでは・・何人がかりでも・・挑んで・・いいみたい・・私もあの人達と・・一緒に挑んだけど・・破壊柱様・・強すぎるの・・」ハァハァ

 

ブロリーの稽古の内容とカナヲの追加の説明を受けて、炭治郎はカナヲを含めた隊士十数人を同時に相手しながらも全て返り討ちにしたことがわかった。そして炭治郎はブロリーを尊敬した。

 

炭治郎(師範、やっぱりすごい・・!この人数を同時に相手して無傷で返り討ちにしてしまうなんて・・!)

 

ブロリー「炭治郎、次はお前の番だ。さぁ来い!」

 

炭治郎「わかりました!カナヲ、まだ行けるか?」

 

カナヲ「うん。少し休憩したからもう大丈夫。」すくっ

 

カナヲは立ち上がると再びブロリーに向けて木刀を構えた。炭治郎もカナヲの隣に並んで木刀の構える。それを見たブロリーも全身に力を込めて二人と対峙した。そして三人は同時に飛び出し、ぶつかり合った。最後の柱、ブロリーの稽古が今始まったのだった。




行冥のくだりが思った以上に長いうえに、義勇としのぶの稽古をいれるのは大変でした泣。ブロリーの稽古の途中で終わったので次の話ではより細かく書きたいなと思っています。まだまだ頑張ります。それではまた次回。


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耀哉の秘策!鬼舞辻無惨襲来!

第三十七話です。お待たせしました。今回で柱稽古編は終わりです。駄文ですが最後まで読んでくださると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


炭治郎が遂に最後の柱、ブロリーによる実戦稽古が始まり、先に対峙していたカナヲと合流し、共に協力しながら『伝説のスーパーサイヤ人』形態のブロリーと戦っていた。

 

ガガガガガガ!ガキン!

 

炭治郎「水の呼吸!弐の型!水車!」

カナヲ「花の呼吸、肆の型、紅花衣。」

 

ブロリー「ぬうう!」ガン ガン

 

炭治郎とカナヲは体を回転させて斬りつける技を使ってブロリーの頚元を狙うが両腕についた籠手で受け止められる。技が通用しなかったと解釈した二人はブロリーから即座に距離を取り、再び別の技を出した。

 

カナヲ「花の呼吸、伍の型、徒の芍薬。」

炭治郎「ヒノカミ神楽!輝輝恩光!」

 

ブロリー「フン!こんなもの!」ガシッ! ガッ!

 

次は間合いを詰めて目に見えない速さで斬りつけようとするが、今度はブロリーに二本の木刀を捕まれる。そして

 

ブロリー「デヤァッ!!」ドゴォ!ブオン!

 

ブロリーは片方の木刀を引き寄せて炭治郎に膝蹴りを入れ、その勢いで体の向きを反対にするとカナヲにラリアットを決めた。

 

炭治郎「がぁぁぁぁあああ!!?」

カナヲ「きゃぁぁぁあああ!!?」

 

受け身を取ることも出来なかった二人はそのまま地面を転がった。あくまでこれは稽古である為、ブロリーによる直接攻撃で致命傷を負うことは無いものの、何度も地面や壁に叩きつけられていては体が傷ついて悲鳴を上げる。今の炭治郎とカナヲは立っているのもやっとであるくらいの満身創痍になっていた。

 

ブロリー「フフフ!どうした、もう終わりか?この程度で上弦のムシケラを倒せるとでも思っているのか?」

 

カナヲ「はぁ・・はぁ・・やっぱり強い・・!」

炭治郎「はぁ・・はぁ・・師範は流石だ・・!」

 

ブロリー(だが、お前達もここまでついてくるとはな、流石だと誉めてやりたい!)

 

カナヲと炭治郎は柱の中でも飛び抜けて強いブロリーの実力に驚愕していた。一方のブロリーも自身の力の100分の1も出していないとはいえ、他の隊員は少しカウンターしただけで気絶したのに対してここまでついてくる炭治郎とカナヲに感心していた。

 

カナヲ「破壊柱様・・少しの手加減をお願いします・・」

 

ブロリー「手加減ってなんだ?」

 

炭治郎「知らないんですか!?」

 

ブロリー「俺はまだ100分の1の力も出してないが更にどうやって加減しろというんだぁ?」

 

カナヲ「う・・嘘・・これで・・100分の1・・!?」

 

炭治郎(やっぱり師範は手加減してくれていたんだ・・!俺は師範が全然力を出してないのにそれにすら着いていけないのか!)

 

カナヲは既にブロリーがかなり力を抑えて戦っていたことを知って絶望し、炭治郎は自分を叱責していた。そんな後ろ向きな思考になっている二人にブロリーは問いかけた。

 

ブロリー「炭治郎にカナヲ、お前達の上弦のムシケラや鬼舞辻を倒したいという思いはその程度か?」

 

炭治郎・カナヲ「「!!」」

 

ブロリーの問いかけに二人は鬼殺隊に入った原点を振り返った。カナヲは自分を引き取ってくれたカナエを殺し、蝶屋敷の住人達を苦しめた鬼を許せずに自分の意思で鬼殺隊に入ったことを。炭治郎は鬼になった禰豆子を人間に戻すため、そして大切な家族の仇を取るために鬼殺隊に入ったことを思い出したのだ。

 

カナヲ「・・私は・・師範やアオイ達を悲しませたり苦しめる鬼が許せない・・!カナエ姉さんの仇は上弦の弐・・!絶対にしのぶ姉さんと共に倒す・・!その思いはこんなものじゃない・・!」すくっ

 

炭治郎「俺は、禰豆子を絶対に人間に戻すんだ・・!周りの人から何て言われようと絶対に諦めない・・!俺なら出来る!」すくっ

 

二人はさっきとはうって変わってやる気と覚悟に満ち溢れている表情になった。満身創痍になりながらもそれが気にならないほどの強さをブロリーは二人から感じ取った。

 

炭治郎「師範!俺はまだやれます!」

 

カナヲ「破壊柱様!続きをお願いします!」

 

ブロリー「フハハハハ!その意気だ!」

 

二人とブロリーは再びぶつかり合おうとしたが、それは突如聞こえてきた声に遮られた。

 

伊之助「フハハハ!!半々羽織としのぶんとこの稽古を終わらせて今到着したぜェ!!」

 

炭治郎「伊之助!」

 

それは義勇としのぶの所での稽古を終えた伊之助である。行冥の所で炭治郎に先越された伊之助は悔しさで闘争心を奮い立たせてすぐに合格を貰ったのだ。そして伊之助も炭治郎と同じように五感の一つが優れていて全集中・常中をも習得している。その為、義勇としのぶの稽古を短時間で合格したのだ。

 

伊之助「権八朗とハナヲもいたのか!ここではどんなことをやるんだ!俺様に教えろ!」

 

カナヲ(ハナヲじゃなくてカナヲなんだけど・・)

 

炭治郎「ここでは師範との実戦稽古をするんだ!師範の頚に木刀を当てれば合格みたいなんだ!」

 

伊之助「グワハハハハ!!なるほどな簡単だぜ!セロリーは一人なのに対して俺達は三人だ!合格してくれって言ってるようなもんだぜェ!」

 

ブロリー「伊之助も戦うのか?」

 

伊之助「おうよ!ブロリー!今日こそ決着をつけてやる!今度こそお前を倒す!」

 

ブロリー「フフフ!そう来なくっちゃ面白くない。」

 

伊之助の大胆な宣戦布告にブロリーも不敵な笑みを浮かべて答えた。そして伊之助の隣に炭治郎とカナヲが並んだ。

 

炭治郎「伊之助!俺も一緒に師範と戦うぞ!」

 

カナヲ「私も行く・・!」

 

伊之助「おう!」

 

ブロリー「フハハハハ!そうだ!かかってくるがいい!」

 

炭治郎達三人は同時に動きだし、今度はブロリーを取り囲むように移動すると斬りかかった。

 

炭治郎「水の呼吸!壱の型!水面斬り!」

カナヲ「花の呼吸、陸の型、渦桃。」

伊之助「獣の呼吸!捌の牙!爆裂猛進!」

 

ブロリー「フン!無駄だ!」ガキッ ガン ガン

 

しかし、一人増えたことで自身の力の出力を少しだけ上げたブロリーは最初に斬りかかって来た炭治郎の攻撃を止めるとそのまま受け流し、カナヲと伊之助の攻撃を両腕で止めた。

 

カナヲ「!」グイッ

伊之助「!オラァ!」グルン

 

そのままブロリーはカナヲと伊之助の木刀を掴んで再び投げ飛ばそうと試みる。だが、カナヲは"同じ手は喰らわない"と言わんばかりに木刀でブロリーの腕を突き放すと即座に距離を取った。伊之助にも蹴りを入れようとするが、いち早くそれを察知した伊之助は体を回転させてブロリーと距離を取った。

 

ブロリー(ほう、今度は喰らわなかったか。学んでいるようだな。面白い!)

 

カナヲ(くっ・・今度は違う方法で攻めたけど、やっぱり通用しなかった。破壊柱様の稽古はやっぱり一筋縄では行かないわ・・)

 

伊之助(がぁぁぁぁ!!やっぱ強ええええ!!違うやり方で当てようとしたのに何で効かねぇんだ!腹立つぜ!)

 

ブロリー(ん?炭治郎はどこへ行った?・・!)「はぁ!」ゴォ

 

ブロリーがカナヲと伊之助と戦っている途中で炭治郎の姿がないことに気がつく。その時、自身の後ろから何かが向かってくる気配を感じて素手での防御は間に合わないと判断し、バリアを張った。その正体は炭治郎である。ブロリーがカナヲと伊之助に集中している間に気付かれないように背後に回り込んでいたのだ。バリアを張ったことで炭治郎の攻撃は防がれた。それに気づいて素早く距離を取った炭治郎は悔しそうな顔をして、ブロリーは素手だけでなく力を使わせたことに感心した。

 

ブロリー「フハハハハ!!炭治郎!今のは危なかったぞ!誉めてやろう!」

 

炭治郎「!やっぱり師範は凄い。完全に気配を消したつもりだったのに・・」

 

ブロリー「こんな方法を思いつくとは流石俺の継子だ。だが、炭治郎があと少しで俺を倒せそうだからって、何度も同じ手を喰らうと思うなよ!」バッ ドゴゴゴゴゴォ

 

「「「「「ぎゃぁぁぁぁ!」」」」」

 

ブロリーが炭治郎について誉めていると、地面に倒れていた隊士数人が立ち上がった。炭治郎の取った方法を見て、今の背中ががら空きのブロリーを打ち取れると考えたのだ。しかし、ブロリーは既に後ろの隊士達が起き上がったことも自分を狙っていることも見抜いていたのだ。なので振り向き際に拳を振り抜いて隊士達を再び地面へと叩きつけた。

 

ブロリー「フヒヒヒヒ!この俺を甘く見たな!」

 

伊之助「どこ見てんだ!お前の相手は俺達だ!」

 

炭治郎「行きますよ!師範!」

 

カナヲ「今度こそは合格を貰います。破壊柱様!」

 

ブロリー「いいだろう!俺を失望させるなよ!」

 

炭治郎達はブロリーに向かっていったものの、結局この日は誰もブロリーの頚に木刀を当てることが出来ずに全員失敗に終わったのだった。

翌日。夜の間に玄弥と善逸も合流し、遂に新人五感組が揃ったのだった。

 

炭治郎「よし!今日も師範と実戦稽古だ!」

 

カナヲ「うん・・!今日こそは・・!」

 

伊之助「よっしゃああ!やってやるぜェ!」

 

玄弥「破壊柱さんは本来俺らの同期なんだ!絶対にここで追い付く!」

 

善逸「ブロリーさん。行きます!」

 

ブロリー「玄弥と善逸も加わったのか。善逸は少し変わったか?」

 

善逸「いいえ、俺は俺のやるべき事をはっきりさせただけです。そのためにもブロリーさんの稽古に参加します。」

 

ブロリー「よくわからないがお前が戦う意思を見せていることはわかった。気に入ったぞ。さぁ来い!」

 

ブロリーには善逸が何故ここまで雰囲気が変わったのかを気づくはずもないが、以前とは違って善逸がやる気に満ち溢れていることに喜ぶのだった。更に二人増えたが、ブロリーは『伝説のスーパーサイヤ人』である。力の出力を少し上げただけで簡単に五人を手も足も出ない状態にまで持っていることが出来るのだ。

 

ブロリー「ぐぎぃぃぃぃ!」ドゴォ ドカッ

 

炭治郎「ぐぁぁぁぁ!?」

カナヲ「ぐ・・うぅ・・」

 

ブロリー「デヤァッ!」ドカッ バコッ

 

善逸「うわぁぁぁ!?」

伊之助「がぁぁぁぁ!」

 

ブロリー「フン!」ブオン

 

玄弥「あぁぁぁぁ!」

 

ブロリーは炭治郎とカナヲに裏拳と蹴りを捩じ込み、善逸と伊之助の片方を蹴り上げて片方を地面に叩きつけ、玄弥にラリアットを決めた。いくら力を抑えているとはいえ、ブロリーの攻撃をまともに喰らっている五人は既に険しい顔をしていて肩で息をしていた。

 

ブロリー「その程度か?本当の戦いでムシケラ共が今の俺のように待ってくれてると思うのか?お前達はこの程度で倒れる程雑魚ではない筈だ。」

 

炭治郎(!そうだ!本当の鬼が待ってくれる筈もない!本物の鬼と対峙しているつもりでやらないと!)「師範!まだ動けます!」

 

カナヲ(!破壊柱様のお陰でしのぶ姉さんの捨て身の策を止めることが出来た。でもその分、生きたまま勝つというのは更に難易度が上がった。全員で生きる為にも私がやらなきゃ!)「私も終わってません・・!」

 

善逸(!俺はあいつを・・!獪岳を殺すためにブロリーさんの所にまで稽古に来たんだ!絶対に諦めない!)「俺は俺のやるべき事をやるために動く!」

 

伊之助(!ここで絶対にアイツに追い付くと決めたんだ!この程度でへこたれてる場合じゃねぇ!)「全然余裕だゴラァ!」

 

玄弥(!兄貴に認めて貰うためにも絶対に合格する!そしていつか兄貴に謝るんだ!)「まだまだ行ける!」

 

ブロリー「そうだ!もっと気を高まらせろ!フハハハハ!」

 

ブロリーに渇を入れられた五人は再び闘志を燃やして稽古に挑んだ、それは日が暮れるまで続くのだった。そして日が沈み、辺りが少し暗くなり始めた頃。

 

ブロリー「・・!」

 

ブロリーは何かの気を感じて思わず動きを止めた。炭治郎達はそれを見逃さずに木刀を振り抜いた。

 

バシイイイッ

 

ブロリー「ぬぅっ・・!」

 

炭治郎・カナヲ「「あっ!!」」

 

善逸・伊之助・玄弥「「「!!」」」

 

五本の木刀は見事にブロリーの頚を捉えていた。それを見た炭治郎達は目を輝かせ、ブロリーは悔しさもあったがそれ以上に五人が合格した嬉しさも混じったような表情になって告げた。

 

ブロリー「・・合格だ。よくやったと誉めてやりたい!」

 

伊之助「よっしゃああ!!勝ったぜえええ!!」

 

玄弥「よし!!これで更にまた強くなれた!!」

 

善逸「ひぃぃぃ!もう疲れたぁぁぁぁ!」

 

伊之助・玄弥・善逸の三人は合格した余韻に浸っていたが、長い間ブロリーと一緒にいる炭治郎と視力がずば抜けて良いカナヲは、ブロリーが動きを止めた事に疑問を感じていた。

 

炭治郎(最後の最後、師範の動きが止まったように見えた・・何かあったのかな?)

 

カナヲ(破壊柱様・・何で最後の最後に止まったのかな?何かに気づいた表情をしていた・・)

 

ブロリー「・・・」ポワワワワ

 

ブロリーは満身創痍になっている五人に自身の気を分け与えると、傷ついた五人の体はたちまち治った。

 

カナヲ(!何これ!すごい!)

 

伊之助「流石俺様の好敵手だぜ!」

 

玄弥(刀鍛冶の里の時に見せたあの力は、傷を癒すことも出来るのか・・!)

 

そして全員が元気になったのを確認したブロリーは、突如空中に浮いてそのままどこかへ飛んで行こうとした。

 

炭治郎「!師範!どこに行くんですか?」

 

ブロリー「俺は少し用が出来た。俺の訓練はこれで終わりだ。」

 

ビュオオオオ

 

ブロリーはそれだけ言い残すとものすごい速さでどこかへ飛んでいってしまった。その方向には、なんと鬼殺隊の本部である産屋敷邸がある方だったのだ。

 

―――

 

場所は変わって産屋敷邸。完全に日が沈み、月が綺麗に輝く夜。産屋敷耀哉は妻のあまねと並んで縁側に立っていた。そして一人の訪問者と向かい合っていたのだ。

 

耀哉「・・やあ、来たのかい。・・初めましてだね、鬼舞辻無惨。」

 

無惨「・・呪いが解けているのか。産屋敷。」

 

その相手は鬼舞辻無惨であった。鳴女の血鬼術で産屋敷邸の場所を突き止めた無惨は、自らの足を運んで息の根を止めに来たのだ。そして耀哉が元気そうに立っているのを見て無惨は不快感を隠そうともせずに顔をしかめていた。

 

あまね(この男性が・・鬼舞辻無惨・・!)

 

耀哉「ついに私の元へ来た・・今、目の前に・・鬼舞辻無惨・・我が一族が、鬼殺隊が、千年追い続けた鬼・・」

 

耀哉は顔の表情では優しく微笑んでいるように見えるが、目が笑っていない。その内心では激しい憎悪と嫌悪感に包まれていた。

 

耀哉「見た目だと、二十代半ばから後半に見えるね。でも鬼特有の紅梅色の瞳と瞳孔が縦長だね。・・君は必ず来ると思っていた。君は私に、産屋敷一族に酷く腹を立てていただろうから・・私だけは君が、君自身が殺しに来ると思っていた。」

 

無惨「私は心底興醒めしたよ、産屋敷。身の程も弁えず千年にも渡り、私の邪魔ばかりしてきた一族の長がこのザマとは。私の呪い苦からは解放されたかもしれないが、それでもお前の体は病弱で醜い。そこら中にいる人間の男の方がまだマシだ。」

 

耀哉「そうだろうね・・私は、半年も前には・・医者から数日で死ぬと言われていた。それでも私は以前より元気になって生きている。医者は腰を抜かしていた。元気になれたのはブロリーのお陰だ。それと君を倒したいという一心も一緒にね。無惨。」

 

無惨「・・あの男か。その儚い夢も今宵潰えたな。お前はこれから私が殺す。」

 

耀哉「・・君は知らないかもしれないが、君と私は同じ血筋なんだよ。君が生まれたのは、千年以上も前の事だろうから私と君の血はもう近くないけれど・・」

 

無惨「何の感情も湧かないな。お前は何が言いたいのだ?」

 

無惨は心底わからないといった顔をする。しかし、それでも耀哉はゆっくりと続ける。

 

耀哉「君のような怪物を一族から出してしまったせいで、私の一族は呪われていた。生まれてくる子供達は病弱ですぐに死んでしまう・・一族がいよいよ絶えかけたとき、神主から助言を受けた。"同じ血筋から鬼が出ている。その者を倒すために心血を注ぎなさい。そうすれば一族は絶えない"と。代々神職の一族から妻を貰い、子供も死にづらくなったがそれでも我が一族の誰も、三十年と生きられない・・」

 

耀哉は自分の祖先達の事を思い出して悲しそうな顔をするが、そんなことは関係ないとばかりに無惨は告げた。

 

無惨「迷言もここに極まれりだな、反吐が出る。あの男がせっかく貴様を呪いから解放したようだが、その病は頭には回ったままなのか?そんな事柄には何の因果関係もなし。なぜなら、私には何の天罰も下っていない。何百何千という人間を殺しても私は許されている。この千年、神も仏も見たことがない。」

 

耀哉「・・君はそのようにものを考えるんだね。だが、私には私の考え方がある。無惨、君の夢は何だい?この千年間、君は一体どんな夢を見てるいるのかな?」

 

無惨「・・・・」(・・奇妙な感覚だ。あれ程目障りだった鬼殺隊の元凶を目の前にして憎しみが湧かない。むしろ、この奇妙な懐かしさ、安堵感・・気色が悪い。)

 

無惨が庭を見ると、耀哉の娘であるにちかとひなきが歌を歌いながら紙風船で遊んでいた。今の産屋敷邸にはこの四人しかおらず、その事を気配で読み取っている無惨は気味悪く感じていた。

 

無惨(そしてこの屋敷には四人しか人間がいない。産屋敷と妻、子供二人だけ、護衛も何もない・・)

 

耀哉「当てようか?無惨。君の心が私にはわかるよ。君は永遠を夢見ている。不滅を夢見ている。」

 

無惨「!・・その通りだ。そしてそれは間もなく叶う。禰豆子を手に入れさえすれば。」

 

耀哉「君の夢は叶わないよ、無惨。」

 

無惨「禰豆子の隠し場所に随分と自信があるようだな。しかし、お前と違い私にはたっぷりと時間がある。」

 

耀哉「君は思い違いをしている。」

 

無惨「なんだと?」

 

耀哉「私は永遠が何か、知っている。永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり、不滅なんだよ。」

 

無惨「下らぬ・・お前の話には辟易する。」

 

耀哉の言葉に、無惨は強い不快感を露にした。しかし、耀哉は構わずに続けた。

 

耀哉「この千年間、鬼殺隊は無くならなかった。可哀想な子供達は大勢死んだが、決してなくならなかった。その事実は今君が下らないと言った。人の想いが不滅であることを証明している。大切な人の命を理不尽に奪った者を許さないという想いは永遠だ。君は誰にも許されていない。この千年間一度も。そして君はね、無惨。何度も何度も虎の尾を踏み、龍の逆鱗に触れている。その結果、ブロリーという破壊の悪魔を敵に回した。本来ならば一生眠ってた筈の彼らを君は起こした。彼らはずっと君を睨んでるよ。絶対に逃がすまいと。私を殺した所で鬼殺隊は痛くも痒くもない。私自身はそれほど重要じゃないんだよ。この人の想いと繋がりが君には理解できないだろうね無惨。なぜなら君達は、"君が死ねば全ての鬼が滅ぶんだろう?"だからこそブロリーを最大限に警戒している。」

 

無惨「黙れ。」ゴゴゴゴゴ

 

耀哉の推測は当たっていた。無惨が死ねば全ての鬼が滅び、ブロリーが無惨よりも強いことを確信していた。図星を突かれた無惨は殺気を露にした。

 

耀哉「空気が揺らいだね。図星だったのかな?」

 

無惨「黙れ!」ゴゴゴゴゴ

 

耀哉「うん、もういいよ。ずっと君に言いたかったことは言えた。最期にひとつだけいいかい?私自身はそれほど重要でないと言ったが、私の死が無意味は訳ではない。私は幸運なことに鬼殺隊、特に柱の子たちから慕って貰っている。つまり、私が死ねば今まで以上に鬼殺隊の士気があがる。」

 

無惨は一瞬で産屋敷との間合いを詰めると、鬼特有の鋭い爪に変化させた手を耀哉の頚元にかけようとした。

 

無惨「話は終わりだな?」

 

耀哉「ああ、こんなに話を聞いてくれるとは思わなかったな。ありがとう、無惨。」

 

耀哉は、産屋敷邸全体に仕掛けた爆薬を爆発させようとしていたのだった。

 

―――

 

ブロリーは、産屋敷邸の方角から妙な気配を感じて自分の屋敷を飛び出し、今は産屋敷邸の上空に佇んでいた。

 

ブロリー(俺が感じた変な気はここからだ。ここは耀哉の屋敷だな。・・んん?耀哉とあまね、それと庭で遊んでいる娘二人の他に誰かいるな。)

 

縁側に立っている耀哉とあまね、そして庭で遊ぶにちかとひなきの他に、無惨がいるのを見つけたのだ。それに対してブロリーは違和感を感じていた。

 

ブロリー(鬼舞辻無惨か、何故ここにいる?いや、そんなことよりもムシケラが屋敷にいるというのに義勇もしのぶも杏寿郎も天元もいないな。どういうことだ?耀哉ははっきり言って体が弱い。目に字が書いてあるムシケラはおろか、ただの雑魚にも勝てないだろう。珠世と愈史郎を呼んだときも俺と炭治郎が護衛とやらになった位だ。・・そう言えば前にしのぶが言ってたな。耀哉の屋敷は俺以外は知らないと。それを考えるとこれは当然の事なのか?だが、それにしても誰一人護衛とやらをつけないのはおかしい。)

 

ブロリーが違和感を拭うために様々なことを考えているうちに、無惨が耀哉との距離を一瞬で詰めたのを見た。

 

ブロリー(ん?無惨が耀哉との距離を詰めたな。あいつ、耀哉を殺すつもりだな?今からでも間に合うが、俺が感じたのは無惨の気配ではない。一体なんなんだぁ?・・!!あいつ、耀哉!)「チィッ!!」バビュンッ!

 

ブロリーは自分の屋敷にいたときに感じた気配と無惨の気配は、別物だと理解していた。ブロリーが感じてた気配は、産屋敷邸全体から出ていたのだ。そしてそれはブロリー自身にとても身に覚えがあるものだった。かつて自分が南の銀河を破壊し尽くしているとき、気弾を星に当てる度にそこが爆発を起こすのだ。それを何度も繰り返してきたブロリーは、産屋敷邸全体に仕掛けられた爆薬がもう爆発するのを感じ取っていたのだ。それと同時に、その場を離れようともしない耀哉とあまね、にちか、ひなきの四人が、無惨を爆発に巻き込んでもろとも死のうと考えていたことを察したのだ。それを止めるためにブロリーは急降下して産屋敷邸に飛び込んだ。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ガバッ

 

にちか・ひなき「「!?」」

 

ドゴォッ!!

 

無惨「ぐぅ!?・・!ブロリー・・!」

 

耀哉「えっ・・?ブロリー?」

 

あまね「!?」

 

ブロリーはひなきとにちかを両脇に抱えると、縁側に上がっていた無惨を庭へと蹴り飛ばし、耀哉とあまねに覆い被さるように上がり込んだ。そして

 

 

ドオオオオン!!!

 

 

産屋敷邸全体に爆薬による大きな爆発音が響き渡ったのだった。

 

―――

 

時は少し遡り、ブロリーがまだ産屋敷邸の上空にいたとき、他の柱達は冷や汗をかきながら全速力で産屋敷邸へと向かっていた。彼らは鎹鴉からの報告を受けて鬼が襲撃したという情報を得たのだ。

 

鎹鴉「緊急招集ーーッ!!緊急招集ーーッ!!産屋敷邸襲撃ッ・・産屋敷邸襲撃ィ!!」

 

実弥(お館様・・!!)

 

小芭内(早く・・!!早く!!)

 

天元(お館様・・!どうか無事でいてくれ・・!!)

 

蜜璃(お館様!!)

 

無一郎(・・ッ!)

 

しのぶ(お館様・・!)

 

義勇(・・・!)

 

炭治郎(間に合えっ・・!!!)

 

柱達や炭治郎の思いは皆、耀哉の無事を祈って襲撃した鬼を殺すことだった。柱の中の誰よりも耀哉を慕っている実弥は、間に合うと自分に言い聞かせて、速度を落とすこと無く森を走り抜けていた。

 

実弥(お館様!お館様!見えた!!屋敷だ!!大丈夫!間に合う!間に合っ・・)

 

ドオオオオン!!!

 

しかし、実弥をはじめとした他の柱達が森を抜けて産屋敷邸全体が見えたときに、無情にも屋敷は大爆発を起こしたのだ。

 

実弥(!!!ッ)

 

無一郎(!!)

 

蜜璃「キャアッ!!?」

 

小芭内(ッ!!)

 

しのぶ(・・ッお館様・・!)

 

天元「ッ・・あ・・ああッ・・!!」

 

義勇(・・・・ッ)

 

炭治郎(爆薬・・!!大量の・・!!肉の焼けつく匂い!!)

 

柱達は間に合わなかったことと耀哉を助けられなかったことに絶望するが、その気持ちを押し殺して足を止めることはなかった。産屋敷邸が炎に包まれ、無惨も体の至るところが欠損していた。

 

無惨「ぐっ!産ッ屋敷ィィッ!!」

 

しかし、無惨は鬼の始祖である。その再生速度は他の鬼の比ではなく、もう既にほぼほぼ完治の状態にまでなろうとしていた。そして無惨はブロリーが耀哉と共に爆発に巻き込まれたのを確認したのだ。

 

無惨(何か仕掛けてくるとは思っていた、しかしこれ程とは。爆薬の中にも細かい撒菱のような物が入って殺傷力が上げられている、一秒でも私の再生を遅らせるために。つまりまだ何かある、産屋敷はこの後まだ何かするつもりだ。人の気配が集結しつつある。恐らくは柱。だがこれではない、もっと別の何か。自分自分を囮に使ったのだあの腹黒は。私への怒りと憎しみが蝮のように、真っ黒な腹の中で蜷局を巻いていた。あれだけの殺意をあの若さで見事に隠し抜いたのは驚嘆に値する。妻と子供は承知の上だったのか?)

 

無惨は耀哉の執念と常識を逸した行動に驚きと不快感を露にしたが、ブロリーも巻き込まれたことを確認して笑った。

 

無惨(だが、想定外の形とは言えあの男が、ブロリーがこの爆発に巻き込まれた!奴は私より強いとは言えど、決して不死身ではない。あの力は脅威だが、私の体をここまで欠損させた爆発に巻き込まれれば生きて帰ることはまずない。後は禰豆子を探して取り込むだけだ。産屋敷にしてはよくやったな。私の手間をわざわざ省いてくれたのだからな。)

 

ブロリーが死んだと確信をもった無惨は、上機嫌になりながらも周りへの警戒を怠ること無く見渡していた。そして無惨の回りにふよふよと浮かぶ肉の塊がいくつも現れた。

 

無惨(肉の種子、血鬼術!!)

 

ビシイ!

 

そして肉の塊は大きくて太い棘の大木のようになり、体中を貫通したことで無惨は身動きが取れなくなった。

 

無惨(固定された!誰の血鬼術だこれは?肉の中でも棘が細かく枝分かれして抜けない。いや、問題ない。大した量じゃない。吸収すれば良い。)

 

ズグン

 

無惨が肉の種子を吸収しようとしたとき、自身の腹部に重い衝撃を感じた。見てみると、珠世が拳を腹に突き入れていたのだ。

 

無惨「珠世!!なぜお前がここに・・」

 

珠世「この棘の血鬼術は貴方が浅草で鬼にした人のものですよ!」

 

無惨は珠世の服に沢山の札が着いているのを見つけた。それは愈史郎の目眩ましようの血鬼術であった。

 

無惨(目眩ましの血鬼術で近づいたな。・・目的は?何をした?何のためにこの女は・・)

 

珠世「吸収しましたね無惨、私の拳を。拳の中に何が入っていたと思いますか?鬼を人に戻す薬ですよ!どうですか?効いてきましたか?」

 

無惨「そんなものができるはずは・・!」

 

珠世「完成したのですよ!状況が随分変わった!私の力だけでは無理でしたが!」

 

無惨「・・お前も大概しつこい女だな珠世、逆恨みも甚だしい!お前の夫と子供を殺したのは誰だ?私か?違うだろう、他ならぬお前自身だ!お前が食い殺した!」

 

珠世「そんなことがわかっていれば、私は鬼になどならなかった!!病で死にたくないと言ったのは!!子供が大人になるのを見届けたかったからだ!!」

 

珠世は人間の時は不治の病で命は長くないと医者に言われたのだ。自身の息子の成長を見たかった珠世は、無惨の口車に乗ってしまったのだ。そして鬼になった珠世は、理性を失わせる飢餓状態に耐えられずに夫と息子を喰い殺してしまったのだ。その時のことを思い出しているのか、珠世は涙を流しながら無惨に怒鳴る。しかし、無惨は気にも止めずに楽しそうに続けた。

 

無惨「その後も大勢の人間を殺していたが、あれは私の見た幻か?楽しそうに人間を喰っていたように見えたがな!」

 

珠世「そうだ!自暴自棄になって大勢殺した!その罪を償うためにも、私はここでお前と死ぬ!!悲鳴嶼さんお願いします!!」

 

行冥「南無!阿弥陀仏!」ゴシャァ

 

珠世の叫び声と共に、行冥が棘のついた大きな鉄球を当てて無惨の顔面を破壊した。しかし、無惨の再生速度は他の鬼の比ではなく、瞬く間に顔が再生した。

 

行冥(・・やはり!!お館様の読み通り。無惨、この男は頚を斬っても死なない!!!更にこの肉体の再生速度、音からして今まで対峙した鬼の比ではない。お館様による爆破と協力者による弱体化があってもこれ程の余力を残した状態。夜明けまで、この化け物を日の差す場に拘束し続けなければならない。)

 

無惨「黒血枳棘。」

 

行冥「!岩の呼吸、参の型。岩躯の膚。」

 

無惨は行冥に自身の血鬼術である棘の鞭を使った。それに対して行冥は鉄球を自身の周りに振り回す技で相殺する。その時に、他の柱達もちょうど集結する。

 

実弥「テメェかァアア!!お館様にィイ!何しやがったァアーーー!!!」

 

行冥(柱達が集結!お館様の采配、見事・・!)

 

蜜璃「お館様ァ!!」

 

小芭内「お館様!」

 

続々と集まってきた柱達に行冥は情報を共有するべく叫んだ。

 

行冥「無惨だ!!鬼舞辻無惨だ!!奴は頚を斬っても死なない!!」

 

実弥(!!!!コイツがァ!!!)

 

蜜璃(あれが・・!!)

 

小芭内(あの男が!!)

 

天元(これが・・!!)

 

義勇(奴が・・!!)

 

しのぶ(鬼舞辻!?)

 

炭治郎「無惨!!」

 

無惨がいることを確認した柱達は、無惨の体を刻もうとそれぞれの型で日輪刀を構える。

 

無一郎「霞の呼吸、肆の型!」

しのぶ「蟲の呼吸、蝶の舞!」

小芭内「蛇の呼吸、壱の型!」

蜜璃「恋の呼吸、伍の型!」

義勇「水の呼吸、参の型!」

実弥「風の呼吸、漆の型!」

天元「音の呼吸、壱の型!」

炭治郎「ヒノカミ神楽、陽華突!」

 

無惨「黒血枳棘!」

 

しかし、無惨の血鬼術で全ての技が相殺された。そして無惨は言い放った。

 

無惨「これで私を追い詰めたつもりか!?産屋敷共々爆破されてブロリーが死んだ今、貴様らがこれから行くのは地獄だ!!」

 

その言葉に動揺したのは炭治郎としのぶだった。しのぶは顔を真っ青にして崩れ落ちそうになるのを必死に堪える。炭治郎は目に涙を貯めるも無惨に叫ぶ。

 

しのぶ「!!・・そ・・そんな・・」

 

炭治郎「ッ!・・例え師範が亡くなっても、お前の頚に刃を振るう!絶対に逃がさない!」

 

無惨「ブロリーさえ死ねば貴様らなど脅威ではない!ここで

「と思っていたのか!」

 

無惨の声を遮って突如響いた声、それは炭治郎やしのぶ、そして他の柱達にも馴染みがあるブロリーの声だった。無惨や柱達が声が聞こえた方に顔を向けると、黒煙が徐々に晴れていき、そこからはひなきとにちかを両脇に抱えて、バリアを張っている『伝説のスーパーサイヤ人』状態のブロリーがいた。そしてバリアの中には耀哉とあまねも傷一つ無い状態で守られていた。

 

ブロリー「この俺が屋敷の爆発くらいで死ぬと思っているのか?」

 

しのぶ「!ブロリーさん・・!良かった・・!」

 

炭治郎「!師範!無事だったんですね!良かったです!」

 

実弥(!お館様!無事だった!)

 

天元「ブロリー!ド派手によくやった!」

 

無一郎(ブロリーさん!すごい・・!)

 

無惨「!チィ!!どこまでもしぶとい忌々しい男が!鳴女!」

 

べべンベン!

 

無惨が鳴き女の名前を呼ぶと、柱と炭治郎、そして無惨の足元に血鬼術による襖が現れて開き、皆が重力にしたがって落ち始める。

 

無惨「目障りな鬼狩り共!!今宵皆殺しにしてやろう!!」

 

炭治郎「地獄に行くのはお前だ無惨!!絶対に逃がさない!必ず倒す!!」

 

無惨「やってみろ!できるものなら!竈門炭治郎!!」

 

ブロリー「炭治郎!しのぶ!」ダッ

 

無惨「ブロリー!貴様は来るな!!」

 

べべンベン

 

ブロリーは炭治郎達が別の場所に行くと分かり、すぐさま自分も飛び込もうとしたが、無惨に睨まれると同時に襖が閉じて入ることができなかった。そして集結した柱ではブロリーのみ、産屋敷邸へと取り残されたのだった。




最後にブロリーは置いていかれました。この小説ですが、今後も頑張って書きたいと思います。最後まで読んでくださりありがとうございました。それではまた次回。


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産屋敷一家の思い!突入!無限城!

第三十八話です。今回から一話ずつの文字数が少なくなる予定です。それでも大丈夫な方は最後まで読んでくださると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


産屋敷邸に無惨が襲撃し、柱を始めとした殆どの隊士は鳴女の血鬼術で無限城へと落とされた中、ブロリーだけは無惨に阻まれて無限城へと行くことが出来なかったのだ。襖が消えた空間をブロリーが見つめていると、後ろから耀哉が声をかけた。

 

耀哉「ブロリー。」

 

ブロリー「なんだ?」

 

耀哉「どうして助けてくれたんだい?」

 

耀哉の質問にブロリーはゆっくりと振り返った。そこにはいつも通りの優しい笑みを浮かべている耀哉がいた。

 

ブロリー「・・感心しないな耀哉。俺がせっかくムシケラの呪いから解放したと言うのに、妻と娘共々死のうとするとはな。」

 

耀哉「ごめんね。こうするしか無惨に一撃でも報いる方法が思いつかなかったんだ。・・君だけがここに取り残されてしまったのは私の責任だ、申し訳ない・・」

 

耀哉はブロリーに対して深々と頭を下げた。ブロリーを炭治郎達の助太刀させることが出来なかったのを悔いていたのだ。だが、ブロリーは"そんなことはどうでも良い"と言わんばかりにため息をついた。

 

ブロリー「・・はぁ、俺よりも娘二人に謝罪するんだな。」

 

耀哉「え?」

 

ブロリー「お前達を屋敷の爆発から助けたとき、娘二人は俺に強くしがみついて震えていた。そいつらはまだ成長しきっていない子供だ。屋敷の爆発で死にそうになったんだ、相当怖かったんだろうな。」

 

耀哉がにちかとひなきに顔を向けると、二人は涙を流しながらぶるぶると震えていた。そして自分の気持ちを正直に伝えた。

 

にちか「・・申し訳ありません父上・・鬼舞辻無惨を倒すための作戦だと・・覚悟を決めていましたが・・やっぱり死ぬのは怖くて・・グス・・ブロリー様に助けられてからその気持ちがより強くなって・・うぅ・・ごめんなさい・・!ごめんなさい・・!」ポロポロ

 

ひなき「・・すみません父上・・長女だからと気持ちを抑えていたんですが・・私もとても怖くて・・ブロリー様に助けられ・・つい安心してしまいました・・グス・・父上と母上の側を離れないと決めたのに・・グス・・申し訳ありません・・!」ポロポロ

 

にちかとひなきは命が助かった安心感と、産屋敷一族の一員としての覚悟を全うできなかったことに色々な感情がごちゃ混ぜになって、顔を覆って大泣きしてしまった。娘の本当の気持ちを知った耀哉とあまねはそんな二人に寄り添って優しく抱き締めた。

 

あまね「謝ることはないわ、貴女達は正直に打ち明けてくれた。よく頑張ったわね。もう大丈夫よ。」

 

耀哉「ひなき、にちか、そこまで怖い思いをしていたんだね。娘の思いにも気づけないなんて、私は父親失格だね・・だから私の方だ。怖い思いをさせてしまって申し訳ない・・」

 

ひなき「父上・・!」ポロポロ

ひなき「母上・・!」ポロポロ

 

ひなきとにちかは両親に抱き着いて落ち着くまで泣き続けた。耀哉とあまねも二人が落ち着くまで頭を撫でたり、背中を優しく叩いたりしたのだった。

少し時間が経って炎の手が届かないところへと移動したブロリー、耀哉、あまね、ひなき、にちかの五人は、改めて深々と頭を下げた。

 

耀哉「ブロリー、私の家族を助けてくれてありがとう。心からお礼を言うよ。」ペコ

 

あまね「ブロリー様、娘と夫を救ってくださってありがとうございました。」ペコ

 

ひなき・にちか「「ありがとうございました。」」

 

ブロリー「・・お前達が無事も確認できた。俺は炭治郎達のところへ行く。」

 

耀哉達のお礼をブロリーは軽く流して炭治郎達のところへ向かうと言ったのだ。これには耀哉もひどく驚いた。

 

耀哉「!・・ブロリー、それはいいけどどのようにして行くんだい?皆を飲み込んだあの襖は恐らく鬼の異能だ、それも異空間に繋げられるかなり強力なものだ。その鬼にもう一度襖を出してもらわないと行けないんじゃないかい?」

 

ブロリー「・・俺には考えがある。耀哉、ムシケラにできて俺に出来ないと思っているのか?俺は炭治郎達のところへ行ける確信を持っている。」

 

耀哉「・・そうだね。今まで君は不可能を可能に変えてきたんだ、ブロリーならやってくれそうな気がしてきた。お願いしてもいいかい?」

 

ブロリー「受けてやろう。それよりお前達はこれからどうするんだ?はっきり言ってここにはもう住めないぞ。」

 

耀哉「そうだね。今はとりあえず、杏寿郎に槇寿郎、左近次が輝利哉の護衛についてるからそこに行こうと思っているよ。」

 

ブロリー「杏寿郎に鱗滝がいるところか、ならば問題ないな。・・お前の息子はそこで何をしてるんだ?」

 

耀哉「輝利哉は私に変わって隊士達を采配して、今まで通り鬼の斬殺に尽力しているよ。でもブロリーには自由に動いてもらおうと思ってるんだ。君は鬼殺隊の誰よりも強いからね。君の意思に任せた方が安心だと思ってね。」

 

ブロリー「・・嘘だな。」

耀哉「え?」

 

ブロリー「本当は俺を使いたいんだろう?ようやく鬼舞辻無惨を見つけたんだ。これはお前達にとって最大のチャンスじゃないのか?お前達にとって無惨を倒すのは長年の目標で執念だ、そう簡単に方針を変えるとは思えん。」

 

ブロリーは、かつて自分を負かした孫悟空やその息子の孫悟飯、ベジータ、トランクス、ピッコロのことを思い出した。執念でどれだけ傷だらけにしても立ち上がってくる彼らに、ブロリーは何故立ち上がれるんだとばかり思っていた。しかし、別世界に来て鬼殺隊に入ってから悟空達の強さの理由がわかった。仲間が致命傷を負うと、怒りと憎しみが体を突き動かしてとんでもない力を発揮するのだ。それはブロリーも幾度も経験していた。炭治郎達が鬼に殺されそうになったときは、とてつもない怒りで、形態が次々と覚醒していったのだ。呪いをかけられて千年もの間短命に苦しめられた産屋敷一族が、無惨に対する怒りや憎しみが尋常ではないと想像するのは容易いことだった。ブロリーの推測を聞いた耀哉は諦めたように息を吐いた。

 

耀哉「はぁ、ブロリーには敵わないね。本当は君も私や輝利哉の采配に組み込みたいんだ。でも君は自分よりも弱い者に指示されるのは嫌いみたいだからね。私を呪いから解放してくれたり、爆薬を仕掛けた屋敷から守ってくれたりはしているけど、慕ってはいないみたいだから私に色々指示されるのは嫌かなと思ってね。君は君の意思で動いて貰いたいんだ。」

 

耀哉の気持ちと言葉を聞いたブロリーは、腕を組んで考える仕草をした。耀哉の言うとおりで、ブロリーは誰かに命令されて動くことは大嫌いなのだ。炭治郎や禰豆子、義勇、しのぶの言うことを素直に聞くのは、ブロリー自身が彼らを信頼して認めているからである。私利私欲のためではなく、周りの人やブロリー自身のためにもなることが多かった為、言うことを聞いたのだ。耀哉の呪いを解放したり救ったりはしているものの、ブロリーは他の柱のように忠誠を誓っているわけでも慕ってるわけでもなかった。なので禰豆子の件については感謝こそしているものの、自分が身分が低いとは全く思ってないのだ。柱合会議のときも頭を下げたりせずに堂々と振る舞っているのは、その思いの表れだった。しかし、今までで見ても耀哉の采配には外れはない。炭治郎の任務を共にこなしているブロリーだが、彼らは血鬼術を使う一筋縄では行かない鬼と必ず当たっていた。それも考えたブロリーは、何かを決意した表情になる。

 

ブロリー(・・確かにコイツの言うとおりだ、俺は雑魚から命令されるのは嫌いだ。勿論耀哉も例外ではない、ムシケラと戦わない耀哉から命令されるなど嫌だからな。だが、耀哉は外したことは一度もないな。・・よし決めた。)

 

ブロリー「おい耀哉!光栄に思え。俺と一緒にムシケラ共をぶっ潰させてやる。」

 

耀哉「!」

 

ブロリー「貴様の指示はなかなか的確で使えるものだ・・特別に、俺に命令することを許してやろう!俺に酷い目に合わせられたくなければ的確な方へ導け!ハハハハ!!フハハハハハ!!」

 

耀哉「ブロリー・・本当に良いのかい?本当にこんな私が君に指示を出しても良いのかい?」

 

ブロリー「二言などはない。貴様を信用しているから指示通り動いてやると言ってるのだ。」

 

ブロリーは今この時、耀哉の采配の上手さを認めて指示を出すことを許可したのだ。それに耀哉は感極まって涙が出そうになるのを必死に堪えていた。

 

耀哉「ありがとう・・ありがとうブロリー。私の可愛い剣士達をお願いね。」

 

ブロリー「承知した。」ビュオオオ

 

ブロリーは強気な笑みを浮かべると、炭治郎達の気を頼りに空を猛スピードで飛んでいった。ブロリーの姿が見えなくなるまで上を向いて見送った耀哉は、やがて家族の方へと向き直った。

 

耀哉「さてと。あまね、ひなき、にちか、私達も輝利哉のところへ向かおうか。」

 

あまね「はい、貴方。」

 

ひなき・にちか「「はい、父上。」」

 

耀哉達は息子である輝利哉とくいな、かなたが隊士を采配している新たに拠点にした屋敷に向かって歩き始めたのだ。最後尾を歩く耀哉が他の柱達と共に異空間へ落ちた無惨へと告げた。

 

耀哉「鬼舞辻無惨、お前を絶対に逃がさない。君は"千年の間、神も仏も見たことがない、人を殺しても許される"とそう言ったね。決してそんな事はないんだよ。今まで君や十二鬼月、その他の鬼達が罪の無い人の命を奪ってきた。千年経った今、破壊の悪魔のブロリーが鬼殺隊へと入った。彼は君達鬼よりも断然強い、確実に血祭りにあげられるよ。今までのツケが回ってきたね。異空間をも越えられるブロリーは、君を絶望に追い詰めるだろう。さぁ死の恐怖を味わいながら、ブロリーに八つ裂きにされるといいよ。」

 

耀哉はブロリーを自分達の采配に組み込むことが出来るようになり、悲願の達成を確信した。その表情は、柱達でさえ見たことがないような自信に満ち溢れているのだった。

 

―――

 

場所が変わり、炭治郎達は襖に落とされた先の場所、無限城に入っていた。落下中の炭治郎は、どこか掴める物があるかどうか必死に周りを見回していた。

 

炭治郎(何だここは・・!!上下左右めちゃくちゃだ!敵の血鬼術で造られた場所なのか!?前後の状況はわからないが、珠世さんが無惨を抑え込んでた!だけどそれもいつまで保つかわからない!一刻も早く無惨の所へ行き、倒さなければ!!一刻も早く!!いや、それよりも前に俺が底に叩きつけられて死ぬ!技を出して軌道を変え、建物のどこかを掴むんだ!!・・!!体制が悪い・・!!落下の圧で踏ん張りがきかない!)

 

しかし炭治郎自身は体制を変えることが出来ず、万事休すかと思われたそのとき、義勇が炭治郎の羽織を掴んで落下を止めた。そして充分勢いを殺した所で手を離した。

 

炭治郎「ぎっ・・!?」ドサッ

 

義勇「大丈夫か?」

 

炭治郎「はい!ありがとうございます!助かりまし・・水の呼吸、壱の型!水面斬り!」ザン

 

ところが、一安心する暇はなかった。義勇に助けられた炭治郎の後ろに、人間の姿とは大きくかけ離れた異形の鬼がすぐ背後まで迫っていたのだ。しかし、炭治郎は今まで幾度も修羅場を潜り抜けてきた階級の高い鬼殺隊の剣士である。十二鬼月でもなければ血鬼術も使えない鬼など、最早敵ではなかった。振り向き様に呼吸を使うことですぐさま鬼の頚を斬った。

 

義勇「炭治郎!!」

 

炭治郎「!!」

 

だが、襖の更に奥から沢山の異形の鬼が押し寄せてきたのだ。炭治郎はすぐに構えて技を出し、それを見た義勇も炭治郎に合わせる形で技を出した。

 

炭治郎「水の呼吸!陸の型!ねじれ渦!」

義勇「水の呼吸、参の型、流流舞い。」

 

バラバラ

 

その場の鬼は全て片付け、炭治郎は改めて義勇の凄さに驚いていた。しかし、沢山の鬼をたった二人で無傷で撃破するという明らかに凄いことをしたのに、義勇は相変わらず無表情で炭治郎は義勇の気持ちがわかることはなかった。

 

炭治郎(・・義勇さんが凄い・・俺の僅かな動きで何の技を出すか把握、その後に自分も技を出してお互いが斬り合わないように動く・・この人ヤバい・・どういう気持ちの顔これ?)

 

義勇「行くぞ。」てちてち

 

炭治郎「はい!」

 

そして二人は、一刻も早く無惨の所へ行くためにその場を後にするのだった。

別の場所では蜜璃と小芭内が沢山の異形の鬼と対峙していた。

 

小芭内「蛇の呼吸、伍の型、蜿蜿長蛇。」ザン

 

小芭内は大蛇のうねりを連想させるような太刀筋で、異形の鬼の頚を一気に跳ねた。

 

小芭内「甘露寺に近づくな、塵共。」

 

蜜璃(キャーーッ!!!伊黒さん素敵!!)キュン

 

一方の蜜璃は小芭内に胸をときめかせていた。そして二人は安否の確認をした。

 

小芭内「怪我は?」

蜜璃「ないです!」

小芭内「行くぞ。」

蜜璃「はい!」キャーッ

 

更に別の場所では、足を止めている暇はないと言わんばかりに異形の鬼の頚を斬りつつ走り去る柱が二人いた。行冥と無一郎である。二人は鬼殺隊の柱の中でも上位の強さを誇る剣士である。数字を持たない鬼程度なら瞬殺できるのだ。そのため、斬りながら進むという効率良く移動ができていた。

 

無一郎「凄い量の鬼ですね。」

 

行冥「下弦程度の力を持たされているようだな。これで私達を消耗させるつもりなのだ・・」

 

無一郎「・・お館様は?」

 

行冥「案ずるな、ここに落とされる前にブロリーによって救い出された。あまね様とにちか様、ひなき様もご無事だ。だが、その結果我々は彼を抜いた状態で鬼舞辻無惨を始めとした鬼と戦わなくてはならない。」

 

無一郎「そんな・・お館様はブロリーさん抜きで戦うことになると想定していましたか・・?」

 

行冥「その可能性は限りなく低いだろう。お館様は爆発したあの屋敷ごと逝くと私に伝えていた。彼によって助け出されたときもお館様は驚きの声をあげていた。恐らく助けられるとは思ってもいなかっただろう。」

 

無一郎「・・そっか。ブロリーさんはまた助けてくれたんですね。鬼殺隊の支柱はブロリーさんに間違いありません。僕たちも負けてはいられません。」

 

行冥「私も今はそう思っている。出会った時に不死川を殺そうとしたのはいただけないが、彼は幾度に渡ってお館様を始め、沢山の隊士や一般人を救ってきた。上弦をも圧倒するその強さは、今となっては鬼殺隊に無くてはならない精神支柱だ。私は彼が鬼殺隊に入ってくれたことに心から感謝している。」

 

無一郎「僕もです。・・お館様は僕が鬼に襲われて生死の境をさ迷っていた時、ずっと励ましてくださった。今際の際の隊士たちには同じくそうしていた・・父のように。」

 

行冥「ああ、知っている。」

 

無一郎「無惨は兄を殺しただけでは飽きたらず、僕たちの父まで奪おうとした。あいつ・・無惨・・!!絶対に許さない・・!嬲り殺しにしてやる!地獄を見せてやる!」

 

行冥「安心しろ・・皆同じ思いだ。」

 

行冥と無一郎はこの無限城のどこかにいる無惨に尋常ではないほどの殺気を飛ばした。そして残りの鬼を倒すために走り去って行った。

そして別の所で実弥は、落とされた先の場所で座り込んで呆然としていた。

 

実弥(お館様・・あのサイヤ人が助けてご無事だった・・だが、アイツが来るのがもう少し遅かったらお館様は・・)

 

もしブロリーが来るのが遅かったらと最悪の事態を考え込んでしまったのだ、しかし、そんな中でも鬼は待つことはなく、全く動こうとしない実弥に襲いかかった。だが、実弥は少し呼吸を使って刀を振り上げただけで異形の鬼の頚を跳ねたのだ。そしてゆらりと立ち上がると、嗜虐心を剥き出しにした笑みを浮かべた。

 

実弥「今回は礼を言っとくぜェ、サイヤ人よォ!次から次へと出てくる塵共、かかってこいやァ!皆殺しにしてやる。」ゆら・・

 

実弥は耀哉を守ったブロリーに感謝しつつ、異形の鬼に向かっていった。伊之助や善逸、玄弥は合流こそしてないものの、無限城内の廊下を走り回って鬼を探していた。

 

伊之助「猪突猛進!!なんか突然わけわからん所に来たが、バカスカ鬼が出てくるもんで!修行の成果を試すのに丁度いいぜぇぇ!!」

 

玄弥(何なんだここは・・鬼の根城か?他のみんなは?兄貴・・兄貴も無事でいてくれ・・)

 

善逸(音が聞こえた・・アイツが近くにいるかもしれない。)「許さない・・アイツを・・絶対に許さない!」

 

善逸は、かつての兄弟子に強い嫌悪と憎悪の感情を抱きながら無限城を進むのだった。その姿は、弱音を吐いているいつもの姿とは全く違う別人を思わせるような変わりぶりであった。

一方のしのぶは同じく無限城内を進んではいるが、彼女は鬼とは一体も遭遇しておらず、不信に思っていた。

 

しのぶ(血の匂いがする。ここは何処?)

 

しのぶは強く香る血の匂いを頼りに廊下を進んでいき、やがて一つの扉の前まで来るとそこで立ち止まった。そこが匂いの源だとわかったからである。そして扉に手を掛けて開けると、そこは水辺にいくつもの桟橋が架かっている空間だった。桟橋の上には若い女性の死体が沢山転がっていて、中央に立つ白い髪をした男性の後ろ姿があった。静かな部屋に禍々しい咀嚼音のみが響いていた。

 

童磨「ん?あれぇ来たの?わあ女の子だね!若くて美味しそうだなあ、後で鳴女ちゃんにありがとうって言わなくちゃ。」

 

男がゆっくりと振り返る。虹色の目に上弦と弐の文字が刻まれている鬼、童磨は鬼殺隊の柱で女性のしのぶが来たことに喜んだ演技をしていた。しのぶは自身の姉であるカナエから死の間際に聞いた鬼の特徴と一致している童磨に対して憎悪の感情をあらわにするのだった。

 

―――

 

場所が変わって、産屋敷邸から空を飛んでいるブロリーは、炭治郎やしのぶの気を頼りに移動していた。

 

ブロリー(炭治郎・・しのぶ・・絶対に見つける!)

 

ブロリーは空を猛スピードで飛び続け、やがて炭治郎達の気を最も感じられる場所を見つけた。

 

ブロリー(!ここか!この辺りから炭治郎達の強い気を感じる。)

 

気を強く感じる場所へと降り立つ。そこはかつてブロリーが炭治郎と禰豆子に出会った洞窟の目の前であった。ブロリーにとっては今の充実した人生を送ることが出来たきっかけになった場所で忘れるはずもなかった。ブロリーは物思いに耽り始めた。

 

ブロリー(・・ここは炭治郎と禰豆子に出会った洞窟か。俺は最初警戒していたな。俺を利用しようとするのなら殺そうと考えてたくらいには、信用はしていなかったな。だが、その後に鱗滝のところへ行ってからは、俺の過去を話したら利用することも拒むこともなく受け入れてくれたな。俺が鬼殺隊に入ってムシケラを狩り尽くしているのもここから始まったんだな・・これが懐かしいというやつか。)

 

ブロリーは炭治郎と禰豆子と出会った洞窟に懐かしさを覚えていてつい笑みがこぼれていたが、ここへ来た目的は思い出を振り返ることではなく、無限城へと消えた炭治郎達を探すためである。

 

ブロリー(だが、こんなことをしている暇はない。しのぶ達のところへ行くにはどこかのムシケラのように空間を破る必要がある。俺の力はそれには優れていない。でも俺には理解できる。俺の力は空間を破れる。強い力がぶつかればしのぶ達のところへ行ける!)

 

ブロリーは今、『スーパーサイヤ人4』にまでなれる実力を持っている。その力を持つ彼は、強すぎる力は空間をも食い破ると理解していたのだ。しかし、それには自分と同等の実力を持つ者と戦う必要がある。上弦の鬼すら簡単に倒してしまうブロリーは、他の者と力をぶつけ合うのは限りなく不可能に近い。彼が力をぶつけようというなら、相手は消しとんでしまうのだから。ならばどうすればいいか?答えは単純だ。自分の力同士をぶつけ合えば空間を破れるのだ。これを実行することに、ブロリーは一切の躊躇はなかった。

 

ブロリー「破壊の呼吸、漆の型!オメガブラスター!」ポーヒー

 

掌に収まるほどの緑の気弾がブロリーの手から離れると、押し潰されそうなほど重く禍々しい気配を纏って空中を漂い始めた。ここへ来て初めて全力で技を射ったのだ。そして気弾を見たブロリーは、素早く回り込んで続けざまに別の技を使った。

 

ブロリー「破壊の呼吸、玖の型!スローイングブラスター!」ポウ

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ ミシミシ バリバリバリバリ!

 

ブロリーが放った二つの技はぶつかり合って拮抗する。その二つ共ブロリーが初めて射った全力である。爆発を起こす前に空間の方が耐えられず、拮抗した箇所を中心にひびが入り、ガラスが砕けるように背景が割れた。それは色んな色が混じりあった別次元の空間だった。この空間が出た後、ブロリーは炭治郎やしのぶ達の気を更に鮮明に感じた。

 

ブロリー(!炭治郎やしのぶ達は近い。あっちだな!)

 

そして異空間の中を猛スピードで飛ぶブロリー。しばらくすると、しのぶ達の気を一番鮮明に感じるところにたどり着く。

 

ブロリー(炭治郎としのぶの気を一番感じるのはここだ!)「はぁぁぁあああ!!」ゴオオオオオオ

 

そこで『伝説のスーパーサイヤ人』形態のまま気を一気に高めると、再び空間がひび入って砕け散り、風景が元に戻る。しかし、先ほどの洞窟ではなく、壁、床、天井が全てバラバラになった場所に変わっていた。紛れもない"無限城"である。ブロリーは自力で空間を超えて無限城へと入ることが出来たのだ。

 

ブロリー「そこら中にムシケラの気配がするな、それに炭治郎やしのぶ達はここにいる。ここがムシケラ共の巣窟といったところか。」

 

ブロリーは宙に浮いて佇んでいる。彼が推測していると、炭治郎と義勇が対峙したときよりも遥かに多い数の異形の鬼達が下から同時に襲いかかろうとした。それを見たブロリーは不敵な笑みを浮かべた。

 

ブロリー「フフフ!破壊の呼吸、参の型!プラネットゲイザー!」ポウ ドオオオオ

 

ブロリーが地面に技を放つとそこから巨大な緑の気柱が上がり、異形の鬼達を全て飲み込んだ。

 

「うわあぁぁぁ!!」「ぎゃあぁぁぁ!!」「ああぁぁあ!!」

 

気柱に飲まれた鬼達は、体ごと消滅させられて断末魔の叫びをあげる。それを聞いたブロリーは心底愉快だと言わんばかりに高笑いした。

 

ブロリー「フハハハハハハハ!!お前達が人喰いをやめる意思を見せなければ、俺はこの城を破壊し尽くすだけだぁ!!」

 

地面に技を放ったことで床に大穴が空き、ブロリーはそこからしのぶの気を鮮明に感じ取った。

 

ブロリー(下からしのぶの気を感じるな。それにムシケラの気配もするな。)「しのぶの近くにいるムシケラ、まずお前から血祭りにあげてやる!」

 

無限城に入ったブロリーは、下からの気配がするところへ行こうと急降下した。最終決戦への火蓋が今、切られようとしていた。




遂にブロリーが無限城へと侵入しました。今後は原作をかなりねじ曲げることになりそうです。なんとか支離滅裂な内容にならないように頑張ります。それではまた次回。


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亡き姉の仇を取れ!しのぶVS童磨!

今回から無限城編です。支離滅裂で低クオリティすが、それでも大丈夫な方は最後まで読んでいただけると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


―――時は少し遡り、しのぶは姉の仇である童磨と対峙して、カナエが亡くなる直前に言われたことを思い出していた。

 

カナエ「しのぶ、鬼殺隊を辞めなさい・・あなたは頑張っているけれど、本当に頑張っているけれど、多分しのぶは・・・・普通の女の子の幸せを手に入れて、お婆さんになるまで生きて欲しいのよ・・もう・・十分だから・・」

 

カナエは当時、しのぶの幸せを願って鬼殺隊を辞めるように諭していた。しかし、しのぶは涙を流しながらカナエの言うことを拒んだ。

 

しのぶ「嫌だ!絶対辞めない!姉さんの仇は必ずとる!言って!!どんな鬼なの!どいつにやられたの・・!!カナエ姉さん言ってよ!!お願い!!こんなことされて私普通になんて生きていけない !!姉さん!!」

 

しのぶの必死の声掛けに根負けしたカナエは、しのぶと同様に涙を流しながら鬼の特徴をポツリポツリと呟き始めた。

 

カナエ「・・・・頭から血をかぶったような鬼だった・・にこにこと屈託なく笑う、穏やかに優しく喋る・・その鬼の使う武器は・・鋭い対の扇・・」

 

カナエはしのぶに鬼の特徴を伝えて静かに息を引き取ったのだった。その時からしのぶは童磨に復讐することだけを思って生きてきたのだ。しかしブロリーによってその思いは覆され、生きたまま仇をとる決意をして今に至るのだ。

―――しのぶの心情など知らない童磨は笑顔を浮かべて教祖帽を取って挨拶した。

 

童磨「やあやあ初めまして、俺の名前は童磨。いい夜だねぇ。」

 

しのぶ「・・・・」

 

しのぶは童磨を睨み付けながら沈黙を貫く。そんな中、童磨の足元に広がる沢山の女性の死体の中から一人、まだ生きている女性がしのぶに向かって手を伸ばした。

 

「た・・たす・・助けて・・助けて・・!!」

 

童磨「しー!今、話してるだろうに・・」

 

その女性に向かって氷の血鬼術を纏わせた鉄扇を振るうが、その攻撃が女性に届くよりも速くしのぶは助け出した。そして姉のように優しく聞いた。

 

シュタッ トッ

 

しのぶ「大丈夫ですか?」

 

童磨「わあ!速いねぇ、柱なのかな?」

 

「はっ・・はっ・・」ゴフッ ドシャア

 

しかし、女性が何かを言おうとしたその時、童磨の攻撃が女性だけを切り裂いて血を吹き出しながら地面に落ちた。

 

童磨「あ、大丈夫!そこにそのまま置いといて、後でちゃんと喰べるから。よいしょ。」

 

童磨はゆっくりと立ち上がると、両手に持っている金色の鉄扇を広げた。

 

童磨「俺は"万世極楽教"の教祖なんだ。信者の皆と幸せになるのが俺の勤め、その子も残さず奇麗に食べるよ。」

 

しのぶ(こいつが・・姉さんを殺した鬼・・)「・・皆の幸せ?惚けたことを。この人は嫌がって助けを求めていた。」

 

女性を殺しておいて"皆との幸せ"という童磨に、しのぶは不快感を隠そうともせずに睨み付ける。しかし、童磨は自分の心得を続ける。

 

童磨「だから救ってあげただろ?その子はもう苦しくないし、辛くもないし怯えることもない。誰もが死ぬのが怖がるから、だから俺が喰べてあげてる。俺と共に生きていくんだ、永遠の時を。俺は信者たちの想いを、血を、肉を、しっかりと受け止めて救済し、高みへと導いている。」

 

しのぶ「正気とは思えませんね。貴方、頭大丈夫ですか?本当に吐き気がする。」

 

童磨「えーっ、初対面なのに随分刺々しいなあ、あっそうか。可哀そうに、何か辛いことがあったんだね・・聞いてあげよう、話してごらん。」

 

童磨はしのぶが言葉の毒を吐いている理由を辛いことがあったと推測して教祖としての優しい表情で語りかける。しかし、しのぶはカナエを殺した張本人に対して遂にキレて、憎悪と嫌悪の感情をむき出しにする。

 

しのぶ「辛いも何もあるものか!私の姉を殺したのはお前だな!?この羽織に見覚えはないか!?」

 

童磨「ん?」

 

しのぶはカナエがかつて着ていた羽織を掴んで童磨を睨み付けながら見せつける。童磨は一瞬ポカンとするも、すぐに四年前の出来事を思い出して笑みを浮かべた。

 

童磨「ああ!花の呼吸を使ってた女の子かな?優しくて可愛い子だったなあ、朝日が昇って喰べ損ねた子だよ。覚えてる。ちゃんと喰べてあげたかっ・・」

 

ザシュッ!

 

童磨が全て言い終わる前にしのぶは独特な形状の刀を目に突き刺すと、そのまま呼吸を使って刀を押し込んだ。

 

しのぶ「蟲の呼吸、蜂牙の舞"真靡き"」ブシッ

 

童磨「おっと。」

 

童磨は素手で刀を止めようとしたが、間に合わずに目に突き刺さる。しかし、まるで痛みを感じていないかのように笑う。

 

童磨「凄い突きだね、手で止められなかった。血鬼術・蓮葉氷。」ビュオオ

 

上弦の弐、童磨が使う血鬼術は氷である。鉄扇を振ると冷気がでて花の形をした氷像が表れる。しのぶはバク転しながら距離をとって氷像自体に当たる事はなかったが、冷気に触ってしまい腕が少し凍りついた。

 

パキパキ

 

しのぶ(!冷たい!!肺を裂くような冷たい空気!)

 

童磨「うーん、速いねぇ速いねぇ。だけど不憫だなあ、突き技じゃあ鬼を殺せない。頚だよ、やっぱり頚を斬らなきゃ。」

 

上弦の鬼は再生速度も凄まじく、しのぶが突き刺した目はあっという間に再生していく。童磨は自分の鉄扇で頬を軽く叩いて滴り落ちる自分の血を舐めた。しのぶは刀を鞘に収めながら聞いた。

 

しのぶ「突きでは殺せませんが毒ならどうです?」キリキリ バチン

 

ドクン

 

童磨「ぐっ!」

 

しのぶ(上弦にこの毒が通用するかどうか、今わかる。姉さん、お願い・・姉さん。)

 

童磨は顔色が悪くなっていき、しのぶの作った強力な毒に立っていられずに手を地面について吐血した。

 

童磨「ガハッ!これは・・累君の山で使った毒より強力だね・・調合を・・鬼ごとに・・変えてると・・あの方も仰ってたなぁ・・ゲホッグッ!」ドクン ドクン

 

しのぶ「!」(やはり、情報は共有されていた・・毒は諸刃の剣。)

 

しかし童磨はある程度吐血していたが、やがて血が止まるとみるみる顔色が治っていった。毒が分解されたのだ。童磨はそれを実感して笑った。

 

童磨「あれぇ?毒、分解できちゃったみたいだなあ。ごめんねえ、せっかく使ってくれたのに!その刀、鞘にしまう時の音が特殊だね。そこで毒の調合を変えているのかな?うわーっ!!楽しい!!毒を喰らうのって面白いね!癖になりそう!次の調合なら効くと思う?やってみようよ!」

 

しのぶは毒が分解されたとわかると顔をしかめたが、すぐに切り替えて再び刀を毒に染めた。

 

しのぶ「・・・・そうですね、いいですよ。まぁ、このあたりまでは想定内ですから。」

 

その後、しのぶは柱の中ではブロリーに次いで二番目に速いスピードを生かし、複数回にわたって毒を打ち込むが、童磨はすぐに回復していく。更に、気づかないうちにしのぶは呼吸を使う度に童磨の血鬼術の氷を吸ってしまい、既に息切れを起こしていた。

 

童磨「うーん、五回目。これも駄目だね、効かないや。どんどん効かなくなってくるね。あと何回毒を調合できるのかな?ああ、息がもう続かない?汗が凄いなぁ、大丈夫?」

 

しのぶ「はぁ・・はぁ・・」(これが・・上弦の強さ・・悉く毒が効かない・・耐性がつくまでの早さが異常だ。)

 

童磨「肺胞が壊死してるからね、辛いよね。さっき俺の血鬼術吸っちゃったからな。」パキパキ

 

童磨の血鬼術は、凍てついた血を霧状にして扇で空気中に散布したのだ。目に見えないため、呼吸を使うこと自体に危険が伴うのだ。しかし、鬼と戦う以上は呼吸は絶対必須である。カナエから童磨の情報を貰っていたしのぶは、肺が壊死することは覚悟の上だった。

 

しのぶ(連撃で大量の毒を打ち込む。)チャキッ

 

しのぶは刀を再び構えると、一瞬のうちに六連撃突く技を使い、すぐ様距離を取った。

 

しのぶ「蟲の呼吸、蜻蛉の舞、複眼六角。」ドドドドド ブシャッ

 

童磨「いやあ君本当に速いね!今まで会った柱の中で一番かも。」バツン

 

童磨の腹部からはしのぶが突き刺したことにより、血が吹き出したが、童磨以上の量の血がしのぶの上半身から吹き出した。しのぶは左の肺をザックリと斬られたのだ。

 

しのぶ(斬ら・・れた・・!!)ドッ

 

しのぶは失血と肺の激痛でたまらずその場に蹲った。それを見ていた童磨はケラケラと笑った。

 

童磨「毒じゃなく頚を斬れたら良かったのにね。それだけ速かったら勝てたかも。あー無理かあ!君小さいから!」アハハ

 

童磨が最後に放った言葉はしのぶの心を抉るには十分すぎた。彼女は背の低さにコンプレックスを抱いていたのだ。筋力が足りなくて鬼の頚を跳ねることができず、常に周りを見ては劣等感と自己嫌悪に悩まされていた。それを姉の仇であり、毒をも簡単に分解できる上弦に指摘されたのだ。しのぶの双眼からは涙が溢れていた。

 

しのぶ(なんで私の手はこんなに小さいのかなぁ・・?なんでもっと身長が伸びなかったのかなぁ・・?あとほんの少しでも体が大きかったら鬼の頚を斬って倒せたのかなぁ・・?手が、足が、長ければ長いだけ筋肉の量も多いわけだから有利なのに。姉さんは華奢だったけど私より上背があった。悲鳴嶼さんいいなあ、あの人が助けに来てくれたら皆安心するよね。ブロリーさんもいいなあ、羨ましいなあ。彼は刀を使わなくても彼自身が持つ力で鬼を簡単に倒せる。彼が高笑いすれば鬼殺隊を含めた皆を安心させる。姉さんがあの時、言おうとした言葉を私は知ってる。"多分しのぶはあの鬼に負ける"そう言おうとしてやめてくれたんだよね・・)ポロ

 

しのぶが心を折られて後ろ向きなことを思っていると、目の前に本来いるはずのない姉、カナエの幻が厳しい表情と言葉でいい放った。

 

カナエ「(しっかりしなさい。泣くことは許しません。立ちなさい。)」

 

しのぶ(姉さん・・立てない・・失血で。左の肺もざっくり斬られて息もできないの・・)

 

カナエ「(関係ありません、立ちなさい。蟲柱、胡蝶しのぶ。そして破壊柱、ブロリーを愛した女性。)」

 

しのぶ(!どうしてそれを・・!)

 

カナエ「(私はしのぶの全てを見ていたのよ、彼に思いを持っていることなんて簡単にわかるわ。それよりも上弦の弐を倒すと決めたなら倒しなさい。勝つと決めたのなら勝ちなさい。必ず生きて勝つと、彼ともカナヲとも約束したんでしょう?)

 

しのぶ(ブロリーさん・・カナヲ・・)

 

今まで厳しい表情と言葉で淡々と述べていたカナエだったが、急に悲しそうな顔つきになるとしのぶの肩に手を添える。

 

カナエ「(しのぶならちゃんとやれるわ。頑張って・・)」

 

カナエの幻が見えない童磨は、蹲って動こうとしないしのぶにゆっくりと近づいて行った。

 

童磨「ごめんごめん。半端に斬ったから苦しいよね。」スタスタ ジャキン

 

童磨が鉄扇を広げてしのぶの頚に狙いを定めようとしたとき、急に空間全体が激しく揺れだした。童磨としのぶが乗っている橋が軋みだし、下の水が波打った。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ガタガタガタガタガタ

 

童磨「!地震かな?うわー、すごく揺れてるねぇ。でもおかしいなあ、ここは鳴女ちゃんの血鬼術で作られた異空間だから地震なんて起こるはずがないんだけどなぁ。」アハハ

 

しのぶ(揺れ・・てる・・地震、では無さそう・・何が起きているの・・?)

 

突如空間を襲った地震のようなもの。それは地面が揺れているのではなく、空気が揺れているのだ。呑気に笑う童磨と戸惑うしのぶ、そして幻でありながらこの揺れを感じ取ったカナエは、しのぶに向けてにっこりと笑顔を浮かべた。

 

カナエ「(しのぶ、どうやら貴女の思い人が来てくれたみたいね。彼となら絶対に倒せるわ、頑張って。姉さんはずっとしのぶを応援してるわ。)」

 

カナエはしのぶに最後に微笑むとゆっくりと消えていった。その間に揺れは更に大きくなり、気配もより感じられるものになった。童磨は気配がする上へと顔を向けた。

 

童磨「うーん。何かが近づいて来てるみたいだね。すごい気配だ。」

 

童磨は揺れているなか、天井を見上げて呟いた。それを聞いていたしのぶもゆっくりと顔を上へ向ける。

 

しのぶ(!・・来る・・!)

 

ドゴォ!! バラバラ

 

しのぶ「きゃっ!?」

 

童磨「危ないなぁ。」バッ

 

天井が突如轟音をたてて大穴が空き、破片があたりに降り注いで水に落ちていった。しのぶは咄嗟に頭を抱えて蹲り、童磨は隙間を見極めて破片をよける。しのぶに破片が当たることはなく、童磨がいた場所には破片の一部が降っていた。そのため、しのぶと童磨の距離は再び開いた。天井を突き破って現れたのは『伝説のスーパーサイヤ人』形態に覚醒しているブロリーだった。

 

しのぶ「!?・・ブロリーさん!」

 

童磨「うわあ、体が大きいね。しかも空を飛んでるね。」

 

ブロリー「しのぶ・・!ムシケラ・・!うがあああぁぁああ!」ドゴォ

 

童磨「おっと!」

 

ブロリーはしのぶではなく、童磨に真っ直ぐ狙いを定めると両腕を大きく振り上げてから勢い良く振り下ろした。しかし、童磨は当たる前に素早く避けてしのぶ達と更に距離を取った。

 

童磨「いきなり殴ろうとしてくるなんて酷いなぁ。俺は今からその子を救済しなきゃいけないんだから邪魔しないでおくれよ。」

 

童磨は笑いながらブロリーに言ったが、ブロリーは童磨を無視してしのぶのそばに行って話しかけていた。

 

ブロリー「しのぶ、大丈夫か?」

 

しのぶ「ブロリーさん・・遅い・・ですよ・・」はぁ はぁ

 

ブロリー「・・済まない。あのあと少し耀哉達と話していてな、来るのが少し遅れたな。」

 

しのぶ「お館・・様と・・あのあと・・どうなった・・んですか・・?」

 

ブロリー「耀哉達は息子のところに行って安全なところから采配したり見守ったりするようだ。」

 

しのぶ「そうです・・か・・お館・・様が・・無事で・・良かった・・」

 

しのぶは息が絶え絶えになりながらも、鬼殺隊当主である耀哉が無事なことに安堵した。ブロリーがしのぶの方を向いているので背中が童磨から見てがら空きだった。それを見た童磨は思った。

 

童磨(ああ、彼も頭の良さは絶望的みたいだね。鬼を相手に背中を向けてるなんて"どうぞ攻撃してください"と言ってるようなものじゃないか。お話するときは警戒して常に身構えてなきゃ。そうでないと簡単にやられちゃうよ。あまりにも可哀想だから、君は特別に俺が救ってやろう。)

 

童磨は普通の人からは目に見えない速さでブロリーの背後に迫り、頚目掛けて鉄扇を振るった。しかし

 

ヒュ ガキン

 

しのぶ「!ブロリーさん・・!」

 

ブロリー「・・何なんだぁ?今のはぁ?」

 

鉄扇はブロリーの頚を斬り離すことはなく、鉄のかん高い音をたてて塞き止められた。それを見た童磨は再びブロリーから少し距離を取る。そしてブロリーはゆっくりと振り返って童磨を見た。

 

童磨「・・へぇ、累君や堕姫の血鬼術では傷つけられない訳だ。君がブロリー殿だね。君の事はあの方から聞いてるよ。初めまして、俺の名前は童磨、上弦の弐だよ。」

 

ブロリー「・・ブロリーです・・」

 

しのぶ「くっ・・ふぅ・・」ヨロヨロ

 

童磨の自己紹介にブロリーが返している間にしのぶがなんとかよろめきながらも立ち上がる。それを見た童磨は心配するかのように声をかけた。

 

童磨「え?立つの?君、確かしのぶちゃんだっけ?立っちゃうの?えー・・君本当に人間なの?」

 

ブロリー「しのぶはれっきとした人間だ。貴様らムシケラと一緒にするな。」

 

童磨「えー。君、初対面なのに酷いこと言うなぁ。俺はしのぶちゃんのことを心配して言ってるんだぜ。」

 

しのぶは震える体を無理矢理動かして、なんとかブロリーの隣に並んで吐血しながらも童磨を睨み付ける。それを見たブロリーは心配になったのか、顔をしかめながら聞いた。

 

ブロリー「しのぶ、動いて平気なのか?血を吐いてるではないか。無理はするな。」

 

しのぶ「いいえ・・!上弦の・・弐・・あいつは・・姉の・・仇です・・!私が・・倒さなきゃ・・いけないんです・・」ゴフッ ゴロゴロ

 

しのぶはブロリーの言葉を拒んで刀を構える。しかし、体はもう既に限界に達していて吐血して肺にも血が流れ込み、異物が入る音が鳴った。童磨は鉄扇を持った手を口元に持っていって焦るかのように声をかけた。

 

童磨「あっほら~!肺に血が入ってゴロゴロ音がしてる。想像を絶する痛みだろう。俺がすぐに首をストンと落としてあげるから無理しないで!君はもう助からないよ、意地を張らずに。」

 

童磨は最後に笑顔で諦めるように促したが、それに反応したのは本人ではなくブロリーの方だった。

 

ブロリー「ほう?俺の目の前でしのぶを殺すつもりか?ムシケラの分際で。」

 

童磨「勘違いしないでおくれよブロリー殿、俺はしのぶちゃんを救ってやりたいと思ってるんだぜ。」

 

ブロリー「救う?貴様がしのぶを攻撃したのに何を言ってるのだお前は?傷つけたのに救う等とよく言えたものだ。」

 

童磨「だから俺がすぐに首を斬り落としてあげれば、しのぶちゃんはもう痛くて苦しい思いをしなくていいんだ。勝てもしない上弦との戦いを強いられることもない。俺は皆と幸せになるように勤めている。その子を喰べてあげれば俺と共に永遠を生きられるんだ。だからこそ救済してあげたいんだよ。」

 

ブロリー「・・下らんな。」

 

ブロリーは童磨が語った心得を一言で一蹴した。童磨は首をかしげながらブロリーに聞いた。

 

童磨「下らない?どこが下らないんだい?」

 

ブロリー「貴様の言ったこと全てだ。死ねば楽になることは否定しないでやる。だが、周りに転がっている女達は何故怯えきった表情で死んでいるんだぁ?貴様に喰われて救われるなら安心するはずだ。この沢山の死体にはそれが一切ない。貴様に喰われることなんぞ誰も望んでいないからだ。お前がしていることは救いでも救済でもない、ムシケラの本能の赴くまま女を喰っただけだ。それを救済と偽ってるのを下らんと言ったんだ。」

 

しのぶ(ブロリーさん、よく言ってくれました!)

 

童磨「・・君はどうやら思った以上に頭がいいみたいだ。そこまでの推理力、すごいね。君とは仲良くできそうだ。ブロリー殿、俺と友達にならないかい?」

 

童磨はブロリーに正論を突きつけられて無表情ながらも若干の不快感を感じていたが、やがて笑顔になると友人に勧誘する。しかし、ブロリーは再び童磨を無視してしのぶと向き合っていた。

 

ブロリー「しのぶ・・肺を斬られているのか?」

 

しのぶ「はい・・不甲斐ない・・ことに・・彼奴の・・血鬼術を・・吸って・・しまって・・息があまり・・できない・・です・・」ゴホッ

 

ブロリー「そうか。ならば、今楽にしてやる。」ポワワワワワ

 

ブロリーはしのぶに掌を向けると、自身の気をしのぶに流し込んだ。するとしのぶの体の傷はみるみる治っていき、ある程度は回復した。しのぶはブロリーに満面の笑顔を向けた。

 

しのぶ「ありがとうございます、ブロリーさん///」

 

ブロリー「フハハハハ!治ったようで良かったYO。」

 

童磨「うわぁ!すごいね!本当に傷が治っちゃった!あの方が言ってた不思議な力って本当だったんだね!」

 

いつの間にかすぐ近くまで来ていた童磨が、しのぶの傷が治っていく光景を目の当たりにして驚きの声をあげた。咄嗟にブロリーはしのぶを隠すように前に立った。

 

童磨「鬼ではないのに異脳の力が使える人間・・ねぇブロリー殿、鬼になる気はないかい?鬼になって俺と友達になろう!」

 

しのぶ(こいつ・・なに言ってるの・・?)

 

ブロリー「断る。何故俺が貴様らと同じものに成り下がらなければならんのだ。」

 

童磨「即答だね。もう少し考え直してみなよ、今鬼になるならしのぶちゃんはブロリー殿が喰べてもいいよ、君自身でその子を救済してあげるんだ。」ニコニコ

 

ブチッ

 

童磨はブロリーに鬼になってしのぶを喰い殺すように促した。この時、ブロリーの中の何が切れた。ブロリーは幾度となく他の惑星を破壊してその住人達を殺戮してきたが、そのときは星に対して何とも思っていなかった。しかし、今のブロリーは別の世界で出会った炭治郎と禰豆子を初め、鬼殺隊の人間達を仲間と思うようになって積極的に助けたり、周りに被害が出ないように力加減をしたりして気をつけてきていた。特にしのぶからは告白されたことで無意識のうちに彼女を一番と言っても過言ではない程大切に思っていたのだ。しのぶのことを大切に思っているブロリーにとって、童磨が放った言葉は見事に地雷を踏み抜いた。完全にキレたのだ。

 

ブロリー「・・誰がしのぶを喰うだと?俺は貴様らムシケラと同じものにはならんと言ったはずだ。しのぶは炭治郎や禰豆子と同じように俺の過去を聞いても拒まず利用もせずに受け入れてくれた。俺にとってしのぶはとても大切な奴だ。それを貴様は俺に喰い殺すように言った。お前だけは簡単には死なさんぞ。」ゴゴゴゴゴ

 

童磨「おぉ、怖い怖い。そんなに殺気を出さないでおくれよ。でもえらい!君はしのぶちゃんのために頑張るんだね!どう足掻いてもしのぶちゃんの実力じゃあ上弦の鬼には勝てずに喰われるのに、そんな彼女を庇いながら戦おうとする君の愚かさ!俺はとても感動したよ!気が変わった。俺は男は本来食べないんだけど、君もしのぶちゃんも喰べてあげる!二人は俺が喰べるのにふさわしいからね!君達揃って極楽に導いてあげるね。」ポロポロ

 

ブロリーが殺気を飛ばすのに対して、童磨は涙を流して感動するふりをしていた。そして童磨は鉄扇を再び広げると、ブロリーに向けて振るった。

 

童磨「血鬼術・冬ざれ氷柱。」ドドドドド

 

ブロリー「!はぁ!」ゴォ!

 

鉄扇からは鋭く尖った沢山の氷柱がブロリーとしのぶの二人を目掛けて鋭くとんだ。ブロリーは後ろにしのぶがいることをしっかりと理解して"避けるのは簡単だがしのぶが危ない"と判断してバリアを張ることで防いだ。

 

童磨「すごいね!力を自分の周りに出すことで防ぐことも出来るんだ!じゃあこれならどうかな?血鬼術・蔓蓮華。」シュルシュル パキパキ

 

すると今度は氷で出来た蔓で二人を縛り上げようと凄い勢いで伸ばしていく、それを見たブロリーは不敵な笑みを浮かべた。

 

ブロリー「無駄だ!破壊の呼吸、肆の型、ダブルイレイザーキャノン!」ポーヒー ポウ ポウ

 

ブロリーの技は童磨の血鬼術をいとも容易く相殺してから爆発する。そして煙が晴れると、しのぶの前に立っているブロリーが童磨に鋭い眼光を向けて青筋を立てた。

 

ブロリー(しのぶを殺そうとしたクズ。まずお前から血祭りにあげてやる。)「はああああぁぁぁぁ!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

しのぶ「ッ!!」

 

童磨「うわぁ、また揺れてる。」

 

ブロリーが雄叫びをあげ、空間そのものが再び震え出す。橋が軋みだして水が波打って荒れ始める。しのぶはその光景に驚き、童磨はなにも思ってないのかのほほんと言葉を放った。そして空間全体が緑色に覆われ、やがてエフェクトはブロリーの元へと収束していった。空間が元に戻って揺れが収まると、しのぶと童磨はブロリーの姿を見て目を丸くした。

 

しのぶ「!?ブロリー・・さん・・ですか・・!?」

 

童磨「姿が、変わったね。」

 

それもそのはずである。そこには気配が全く違う姿のブロリーがいたのだから。パッと見ただけで言えば『スーパーサイヤ人4』となんの変わりもないのだ。黒髪で"猫のようなしなやかな赤い体毛"もそのままである。しかし、腕や足を始めとした全身の筋肉がそれまでの『スーパーサイヤ人4』の時よりも倍近くにまで膨れ上がり、全身の血管が浮き上がっていた。そして腹部にも"傷跡のような模様が"刻まれており、ブロリーから溢れでる気も桁違いに増えていたのだ。そして

 

ブロリー「絶望を教えてやろう!!」

 

この姿に覚醒したブロリーは、童磨に対して嗜虐的な笑みを浮かべ、全身から溢れ出る金色の気を更に高めるのだった。




今回は今までのなかで一番書きたかった描写を書けました!その結果がこの始末☆です。次回からは本格的な戦闘回になると思います。次も無事に投稿出来るよう頑張りたいとおもいます。それではまた次回。


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執念で仇を取れ!怒りの覚醒!スーパーサイヤ人4フルパワー!

第四十話です。待たせてしまって申し訳ありません。相変わらずの駄文ですが、最後まで読んでくださると嬉しいです。では本編どうぞ


上弦の弐、童磨との戦闘中に新たな姿に覚醒したブロリー。見た目は『スーパーサイヤ人4』そのままだが、全身の筋肉が膨れ上がって血管が浮き上がっている。更に全身から溢れ出る気も桁違いに増えた姿。この姿は"スーパーサイヤ人4"の力を限界まで引き出した『スーパーサイヤ人4フルパワー』である。しのぶは新たなブロリーの姿に驚きを隠せなかった。

 

しのぶ「ブロリー・・さん・・なのですか・・?」

 

ブロリー「絶望を教えてやろう!」

 

ブロリーが見据えていたのはしのぶではなく童磨であった。凄まじい程強大な気を放つブロリーに、童磨は手を叩いて笑った。

 

童磨「うわあ!凄い凄い!姿が変わったね!全身に生えている赤い体毛、暖かそうだね。あの方が言ってたことは本当だったんだね!」パチパチ

 

ブロリー「クズがぁ・・血祭りにあげてやる!」

 

童磨「・・君は頑なにその子を守ろうとしているけど、どうしてそこまで拘るんだい?」

 

ブロリー「言われないと分からないのか?しのぶがとても大事だからだ。それに耀哉とも誰一人として死なせないと約束したんだ。しのぶは死なせずにお前を倒す!」

 

しのぶ「!・・ブロリーさん・・///」

 

童磨「へぇ、愛ってやつだね。君達は固い絆で結ばれてるんだね。やっぱり俺は君達の事が気に入っちゃったよ!一人でやれば誰の気遣いもしなくて良いのに、それをするなんてとても滑稽で愚かだ。君から先に救済してあげよう。」パキパキ

 

ブロリー「・・・・」ゴゴゴゴ

 

童磨が笑顔で言い終えたと同時に、周囲に氷と冷気が漂い出す。それを見たブロリーも気を高めて臨戦態勢に入った。するとそのとき

 

カナヲ「師範!!」

 

しのぶの継子であるカナヲが焦燥の表情を浮かべてブロリー達がいる部屋へと飛び込んできた。ブロリーも構えを解いてカナヲの方へと顔を向けた。

 

しのぶ「!カナヲ。」

 

童磨「わぁ、また女の子だ。今日はご馳走だなぁ。」

 

カナヲ「!上弦の・・弐・・!?」

 

童磨「うん、俺は童磨、上弦の弐だぜ、良い夜だね。」

 

童磨は呑気に自己紹介するが、カナヲは既にしのぶの元へと駆け寄っていた。

 

カナヲ「師範、ご無事ですか!?」

 

しのぶ「私は大丈夫ですよ。一度肺を斬られてしまいましたがブロリーさんが治してくださいましたから。」

 

カナヲ「破壊柱様・・!?」

 

カナヲはブロリーを見て『スーパーサイヤ人4フルパワー』の姿になっていることに驚いていた。今まで炭治郎やブロリーとカナヲは、一度も同じ任務をこなしたことが無いのだ。その為、カナヲはブロリーが『伝説のスーパーサイヤ人』を始めとした様々な形態に成れることを知らないのだ。しのぶはカナヲが声も出せない程驚いていることを見抜いたのか、丁寧に説明を始めた。

 

カナヲ(あれが破壊柱様!?いやっ・・え?蝶屋敷の時と全然姿が違う?え・・ええっ!?)パクパク

 

しのぶ「・・カナヲ。信じられないとは思いますが、目の前にいる方は正真正銘ブロリーさんです。私が鬼にやられたのを見てその姿に変身した所を見ていましたから。致命傷も彼が治してくださいました♪」

 

しのぶはカナヲを安堵させるためとブロリーに治されたことがよっぽど嬉しかったのか、カナヲに笑顔を向けた。カナヲはしのぶの言ったことを信じることにしたらしく、ブロリーの元へと駆け寄り、笑顔で礼を述べた。

 

カナヲ「破壊柱様、師範を助けてくださいまして、ありがとうございました。」

 

ブロリー「・・そういうのはそこにいるムシケラを倒してからだ。しのぶは今、傷はほとんど俺が治したが万全ではない。ゆえに庇わなければならない。カナヲ、動けるか?」

 

カナヲ「はい、動けます。破壊柱様、共闘をお願いします。」

 

カナヲは童磨を睨みながら刀を抜いた。童磨はようやく自分に視線が向いたのを見て再び笑顔になった。

 

童磨「もう、皆して俺をほったらかしにするなんて酷いなぁ。少し暇だったよ。えーと何だっけ?あっそうだそうだ、そっちの女の子に名前を聞いたんだよね。」

 

カナヲ「私は・・栗花落カナヲ。胡蝶カナエと胡蝶しのぶの妹だ・・」

 

しのぶ(!?カナヲが自ら名乗った!?それに私と姉さんの妹って・・カナヲはずっと姉として見てくれてたのね!嬉しいわカナヲ!)

 

しのぶは自分の意思で童磨に名乗りあげたことにとても驚いたが、それと同時に今までも姉だと慕ってくれていたと分かったことがとても嬉しく思っていた。そしてそれを聞いた童磨は、顎に人差し指を当てて沢山のクエスチョンマークを浮かべた。

 

童磨「??えっホント?肉質を感じからして血縁ぽくないけど、若い女の子はだいたい美味しいからいいよ何でも!」ニカーッ

 

カナヲとしのぶの関係には全く興味がないのか、童磨はどうでも良いと言わんばかりに笑顔になった。そして何かを思い出したかのように語り始めた。

 

童磨「女の子といえば・・そうそう猗窩座殿が負けたのも仕方ないよね。猗窩座殿って絶対女を喰わなかったからさあ。俺言ったんだよ!女は腹の中で赤ん坊を育てられるくらい栄養分を持ってるんだから。女を沢山食べた方が早く強くなれるって。」

 

しのぶ(!姉さんの言ってた通り、女を喰うことに異常な程の執着がある!)ギリッ

 

しのぶは姉からの情報が本当だと分かって、その執着ぶりに壮絶な嫌悪感を覚えて歯を軋ませた。童磨は気づいていないのか更に続けた。

 

童磨「だけど猗窩座殿って女を喰わない上に殺さないんだよ!それを結局あの方も許してたし、ずるいよねぇ。猗窩座殿は生かされてた、特別扱いだよ。でも・・死んでしまうなんて・・悲しい・・一番の友人だったのに・・確かブロリー殿、君が猗窩座殿を殺したんだよね。許せないなあ。猗窩座殿の仇は取らせてもらうよ。」

 

童磨は涙を流しながらブロリーに鉄扇を構える。カナヲはその様子を見て言いはなった。

 

カナヲ「もう嘘ばっかり吐かなくていいから。」

 

童磨「何?」

 

カナヲ「貴方の口から出る言葉は全部、でまかせだってわかってる。怒ってもいなければ悲しくもないんでしょ?少しも。貴方の顔色全然変わってない。"一番の友人"が死んだのに、顔から血の気が引いてないし逆に怒りで頬が紅潮するわけでもない。」

 

カナヲの指摘に童磨は涙を引っ込める。カナヲの指摘に続くようにしてしのぶも言葉を放った。

 

しのぶ「カナヲの言うとおりですよ。それに"一番の友人"が死んだのならその仇のブロリーさんに意識が向くはずなのに、お前はずっと私やカナヲを喰らうことしか考えていない。猗窩座という鬼のことも友人ともなんとも思ってない。何も感じていない。ただそれだけです。お前は一体何のために生まれてきたんですか?」

 

二人から図星を突かれた童磨は完全に無表情になると、鉄扇を閉じながら不快感と殺気を露にした。

 

童磨「・・今まで随分な数の女の子とお喋りしてきたけど、君達みたいな意地の悪い子は初めてだよ。何でそんな酷いこと言うのかな?」ビリビリ

 

しかし、しのぶにとっては"最愛の姉"、カナヲにとっては"虐待されて売り飛ばされたところに引き取って大切に優しく育ててくれた大事な家族"を殺された二人にとってはそんな殺気などもろともせずに更に冷たく返した。

 

しのぶ「お前が私の姉を殺したからだ。視界にいれることすら煩わしい!さっさと地獄に落ちろ!」ギリッ

 

カナヲ「貴方、本当に生きてる意味ないから早く死んだ方がいいよ。」ニコッ

 

童磨は目に見えない速度で鉄扇を広げて斬りかかった。しかし、唯一目で追えたブロリーだけがいち早く反応して鉄扇を掴んで動きを止めた。

 

ガシッ

 

童磨「・・邪魔しないでおくれよ、ブロリー殿。一刻も早く後ろの子達を救ってあげなきゃいけないんだから。」ビリビリ

 

ブロリー「救うだと?さっき言ったことをもう忘れたのか?貴様はムシケラの本能の赴くままに女を喰ってるだけだ。フン!」ドゴォ!

 

童磨「ぐっ!?」

 

ブロリーの膝蹴りが童磨の鳩尾に直撃して遠くまで弾き飛ばされる。童磨は初めて本当に苦しそうに顔を歪めて蹲った。しかし、すぐに立ち上がると鉄扇を振るって攻撃してくる。

 

童磨「血鬼術・散り蓮華。」ブワッ

 

ブロリー「はぁ!」ゴォ

 

童磨の広範囲に渡る血鬼術が三人に襲いかかる。それをブロリーはバリアを張って防ぐ。するとそのとき、ブロリーが開けた天井の穴のすぐ隣から同じように穴が空いた。

 

ボコーン

 

伊之助「どぉありゃアアアア!!!天空より出てし伊之助様のお通りじゃあアアア!!」

 

しのぶ・カナヲ・童磨「「「!?」」」

 

ブロリー(次から次へと・・いい加減ムシケラを血祭りにあげたいんだが・・)

 

しのぶ達三人が驚いているなか、ブロリーは一人で戦闘衝動を抑えていた。天井から現れたのは伊之助で、着地すると指で輪を作って童磨を覗いた。

 

伊之助「はっはぁーっ!!勝負勝負ゥ!!んんー?んんんー?弐!!テメェ上弦の弐だなバレてるぜ!!テメェが上から二番目だってことを俺は知ってる!ハハハーア!!テメェを倒せば俺は柱だぜ!!」

 

童磨「別に上弦の弐だってことは隠してないけど・・面白い子が来たなァ。」

 

伊之助「俺が柱になったら呼び名は野獣柱・・いや猪柱か!?どっちが良いと思う!?おい・・ぬおっ!!」

 

伊之助が声を張りながら振り返って目に止まったのはブロリーである。『スーパーサイヤ人4フルパワー』の形態を初めて見たからだ。

 

伊之助「ブロリー!おまっ・・なんだその姿は!!赤い体毛だらけで本当の獣みたいじゃねーか!!それにずっと強え感覚がビリビリ感じるしよ!!お前ばかり狡いぞ!!俺もなりてぇ!!なり方教えろォ!!」

 

伊之助が興奮してブロリーに詰め寄るのをしのぶが間に割って入って止めた。そしてため息をついてから言った。

 

しのぶ「はぁ、伊之助君・・ブロリーさんが今なっている姿はサイヤ人である彼にしか出来ないものなんですよ・・それに今は上弦の弐と対峙しているんでしょう?柱になりたいのならまずは彼奴を倒すことが優先ですよ。」

 

伊之助「それもそうか!テメェ!上弦の弐!待たせたな!勝負だぁ!」

 

伊之助はしのぶの言うことに納得して、童磨に刃こぼれしている二本の刀を向けた。童磨は困ったように笑った。

 

童磨「ありゃ・・これは困ったな。流石に4対1じゃあ部が悪いからね。ここは人員を増やして公平にしよう!」

 

カナヲ(公平にする・・?)

 

しのぶ(何をするつもりなの・・?)

 

童磨が"我ながら名案だ"と言わんばかりに笑顔で鉄扇を広げた。カナヲとしのぶは何をしようとしているか分からずに怪訝の表情を浮かべる。そして童磨は鉄扇から氷で出来た童磨とそっくりな人形を出した。

 

童磨「血鬼術・結晶の御子。」シャリン シャリン シャリリリン

 

それは童磨本人の膝元あたりまでの大きさしかないとても小さな氷人形だった。それを十三体も出現させたのだ。

 

カナヲ(!氷の人形?)

 

しのぶ(こんなに沢山だして何をするつもりなの?)

 

伊之助「ハハハ!なんだそのショボいちびは?」

 

「「「血鬼術・散り蓮華」」」ブワワッ

 

伊之助「ぬアアア!?」ジャキン

 

カナヲ「・・!」(この威力・・!)

 

しのぶ「くっ・・」

 

伊之助は『結晶の御子』をバカにして笑っていたが、それから出された他の血鬼術の威力に慌てて刀を振って相殺した。カナヲも伊之助と同じように刀で相殺して、しのぶはなんとか回避する。しかし、三人に向かって行った『結晶の御子』は三体だけである。よって残りの十体は全てブロリーに向かって行ったのだ。

 

「「「「「「「「「「蓮葉氷」」」」」」」」」」ビュオオ

 

ブロリー「ぬう!」

 

童磨「この子達はね、俺と同じくらいの強さの技出せるんだ。」

 

しのぶ「!そんな・・そんなのを沢山ブロリーさんに・・!」

 

童磨「ブロリー殿はとっても強いってあの方から伝えられてたからね。少しでも苦しまないように早く救ってあげるためさ。わかっておくれ。」

 

童磨は笑顔で残酷なことを告げて、それを聞いたしのぶは絶望で青ざめた。だが、そのとき

 

ドオオオン! バリンバリン バラバラ

 

物凄い衝撃と共に、大量の氷の破片が辺りに飛び散ったのだ。四人が顔を向けると、無傷のブロリーが腕を組んだまま立っていた。

 

ブロリー「なんなんだぁ?今のはぁ?俺を氷で出来た雑魚程度で倒せると思っていたのか?」

 

ブロリーは『結晶の御子』十体を一瞬で粉々に破壊し尽くしてしまったのだ。これらは一体が上弦の弐である童磨自身と同等の戦闘力を誇るものである。それが十体も出すことは童磨十人分と戦うことを意味する。上弦の鬼は、柱が複数人でなんとか勝てるくらい強いのである。それが十体分戦わなくてはならないのは鬼殺隊の柱では到底太刀打ちできない絶望的な状態であった。しかし、ブロリーは今『スーパーサイヤ人4フルパワー』の姿になっている。そして童磨十人分を一瞬で倒したことになるのだ。あまりにも強すぎる力に童磨も目を見開いていた。

 

童磨「まさか御子達がこんなに一瞬でやられるとは思わなかったよ。」

 

しのぶ(ブロリーさん///・・!)ガキン!

 

「蔓蓮華」ヒュンヒュン ギャギャ

 

しのぶはそんな現状を見て再びブロリーに惚れ直しそうになったが感心している暇はなく、自分達に向かってきている残り三体の御子に意識を向けた。

 

「「冬ざれ氷柱。」」ドドドドド

 

伊之助「くそが!!本体でもねぇ奴の攻撃で押されまくって近づけねぇ!」

 

カナヲ「!ど、どうすれば・・!」

 

『結晶の御子』三体をそれぞれ相手しているが、やはり童磨自身と同等の力があるために、苦戦を強いられていた。そのとき

 

ブロリー「破壊の呼吸、拾漆の型、ギガンティックブロー。」ドゴゴォ バラバラバラバラ

 

ブロリーの片手に気を溜めて殴りかかる技で、残りの御子を粉砕したのだ。それを見た伊之助が声を荒げる。

 

伊之助「おい!邪魔すんじゃねぇよ!この伊之助様はそこいらの有象無象とは違う・・んだ・・!」

 

カナヲ「伊之助!」

しのぶ「伊之助君!」

 

童磨は目に見えない速度で伊之助の猪の被り物を取ったのだ。童磨は興味深そうに被り物を弄んだ。

 

童磨「ああ、やっぱりこれ被り物かあ。んー、かなり年期が入ってるね、この猪の皮。目はどういう加工してるの?」

 

伊之助「・・テメェ、返しやがれ・・!」

 

伊之助は命の次に大事な猪の被り物を取られて殺気を向ける。童磨は伊之助に視線を向けると不気味な笑みを浮かべた。

 

童磨「あれー?何か見覚えあるぞぉ、君の顔。俺たち何処かで会ったよね?」

 

伊之助「テメェみたいな蛆虫と会った覚えはねぇ!汚い手で俺の毛皮に触るな!」

 

童磨「いやあるよ。俺は君を知っている。」

 

伊之助「ねえっつってんだろうが!!糞が!!」

 

伊之助は童磨の言葉にキレて青筋を立てて怒鳴り付けた。それをしのぶとカナヲが止める。

 

カナヲ「伊之助、冷静に。アイツは適当なことを言ってるだけだから。」

 

しのぶ「そうですよ伊之助君。あんな嘘に過剰反応しなくても大丈夫ですよ。」

 

童磨「適当?嘘?心外だなぁ。俺は真面目だけが取り柄なのに。それに記憶力も良いんだ。人間の時の事だって良く覚えてるし。あっそうそう、ブロリー殿には邪魔されたくないからもう一度御子達と戦ってもらうよ。」シャリン シャリン シャリン

 

童磨は少しでも時間を稼ぐためにブロリーにさっきよりも多い『結晶の御子』二十体出して襲わせた。

 

「「「「「「「「「「寒烈の白姫」」」」」」」」」」ビュオオオ

 

「「「「「「「「「「凍て曇」」」」」」」」」」ビュオオ

 

ブロリー「!チッ!」

 

御子達が出した血鬼術はどちらも少しでも当たれば全身が凍りつくような強力な冷気と氷を纏ったものであった。しのぶ達とブロリーの間に巨大な氷の壁が出来たのだった。童磨自身は再びしのぶ達に向き合った。

 

童磨「さてと。」ズブブ

 

童磨は自分のこめかみに指をつきたしたのだ。それを見たしのぶ達は気持ち悪さを通り越してドン引きしていた。

 

伊之助「うえーっ!!何してんだキッショオ!!」

 

カナヲ・しのぶ((気持ち悪・・))

 

童磨「何って記憶を探ってんだよ。あー!これだこれだ、十五年前かな?わりと最近だね。十七・八くらいの女の子が赤ん坊抱いてきたなぁ。旦那が殴るんだって、毎日。姑にも毎日いじめられてね。俺がつくった極楽教はそういう可愛そうな人を保護してあげていたからね。自分には親も兄弟もいなくて頼れる所も行く所もない。最初見たとき顔が原型もわからないほど腫れてた、酷いことするよねぇ。殴られたせいで片方失明してたけど、手当てしたら元に戻ったよ。綺麗な子で印象に残ってる。同じ顔だよ君と。もっと華奢だし、柔らかな表情だけど、これ君のお母さんでしょ?うんうん!間違いないぞ。」

 

伊之助「俺に母親なんかいねぇ!!俺を育ててくれたのは猪だ!!関係ねぇ!!」

 

童磨「君は猪から産まれたの?人間なんだから人間から産まれているでしょう。」

 

伊之助「うるせぇんだよ!!返せそれぇぇ!!」

 

伊之助は遂に我慢できなくなって童磨に向かって飛び出した。それでも童磨は余裕の構えを見せる。

 

童磨「まあ人の話は最後まで聞きなよ。こんな巡り合わせ奇跡でしょ。」バツッ

 

伊之助「獣の呼吸!陸の牙!・・ガハッ」

 

伊之助が呼吸を使う前に鉄扇で胸を切り裂かれる。更に追い討ちをかけようとした童磨にしのぶとカナヲが向かった。

 

カナヲ「花の呼吸、陸の型、渦桃!」ガキン

 

しのぶ「蟲の呼吸、蝶の舞、戯れ!」パリン パリン

 

童磨とその血鬼術を相殺することで追撃を免れた三人。三人は水の中に落ちたが、致命傷は負っていなかった。

 

童磨「君のお母さん。名前は琴葉だったかな?喰うつもりはなかったんだよ。心の綺麗な人が傍にいると心地良いだろう?琴葉は頭が残念で良くなかった。でも美しかったし歌は上手だった。君を抱いて良く歌ってたよ。どうしてだか子守唄よりも指切りの歌をさ。"ゆーびきーりげーんまん"ってそればっかり君にね。」

 

童磨の歌詞を聞いたとき、伊之助は全てを思い出した。自分を優しい表情で見る一人の女性の姿。それは伊之助の母親だったのだ。炭治郎達とあって那田蜘蛛山の任務で見た走馬灯。それは自分を崖から落とす母だった。しかし、このときに言われた台詞も伊之助は鮮明に思い出していた。何度も謝罪しながら泣いて落とす琴葉。それは童磨から逃がすためだった。

 

童磨「寿命が尽きるまで手元に置いて喰べないつもりだったけど、琴葉は頭が鈍い分感覚が鋭かったみたいで信者を喰ってるのがバレちゃった。説明しても俺の善行を理解してくれなくて。まあ罵る罵る。"酷い嘘つき"ってずーっとそれで俺の寺院を飛び出していっちゃったから。骨まで残さず食べてあげたよ!家に戻っても旦那に殴られるし、一人じゃ何も出来ないから親子揃って野垂れ死に。不幸だよねぇ琴葉。幸せな時ってあったのかな?何の意味もない人生だった。」

 

伊之助(殺された・・母親・・俺の・・)ビキッ

 

カナヲ「いい加減にしろ!!下衆が!!」

 

しのぶ「お前は私の姉だけでなく伊之助のお母さんまで殺したのか!!本当虫酸が走る!」

 

童磨の語りに遂に怒りが限界点を越えた二人、童磨に尋常ではないほどの殺気を向けるが、なによりもゆっくり立ち上がった伊之助が一番凶悪な気配を放っていた。

 

伊之助「本当に奇跡だぜ。この巡り合わせは・・俺の母親と仲間の大事な人を殺した鬼が目の前にいるなんてなァア!!」ビキビキッ

 

伊之助は全身に血管が浮き上がるほど強い怒りと憎しみに支配されていた。二本の日輪刀を童磨に向けた。

 

伊之助「謝意を述べるぜ!思い出させてくれたこと!ただ頚を斬るだけじゃあ足りねぇ!テメェには地獄を見せてやる!!」

 

三人が童磨に強い怒りと憎しみを向け、再びぶつかろうとしたそのときだった。

 

ピシピシピシッ!ドゴォ!

 

伊之助・カナヲ・しのぶ「「「!」」」

 

童磨「え?うわあああ!?があっ!?」

 

ガシッ ヒューン ドゴゴォ!

 

氷の壁を破って飛んできたブロリーが、そのまま童磨の頚を鷲掴みにすると部屋の壁にクレーターができるほどの衝撃で叩きつけたのだ。

 

ブロリー「貴様・・!伊之助やしのぶ達との話に興味がでて攻撃もせずに待っていたら・・!なんなんだぁ?今の恨みしか湧かないような話はぁ?」

 

童磨「ゲホッゲホッ・・ブロリー殿、いきなり危ないじゃないか。気をつけておくれよ。」

 

ブロリー「御託はもういい。ムシケラが、お前だけは簡単には死なさんぞ!」

 

童磨「もう、わかったよ。君を封じればあの方も大喜びだろうからね。君とは本気で戦わないとね!血鬼術・結晶の御子。」シャリンシャリンシャリンシャリン

 

今度は童磨は結晶の御子を五十体も出したのだ。そして本人も加わって襲いかかろうとする。しかしブロリーはもう飽きたと言わんばかりに吐き捨てた。

 

ブロリー「お遊びは終わりだぁ!破壊の呼吸、捌の型、ブラスターメテオ!うおおおおお!」ピュンピュンピュン

 

ドカーンドカーンドカーンドゴォ

 

童磨「ぎゃあっ!?」

 

ブロリーは周囲に気弾を打つ技で御子を全て破壊すると、どさくさに紛れて童磨に蹴りを入れたのだ。ブロリーの攻撃で童磨は傷の再生が出来なくなっていた。この時、童磨の心にはある感情が芽生えていた。

 

童磨(嘘だろ・・五十体は俺が出せる最大の数だよ・・なのに・・こんな一瞬で・・それに・・傷が再生しない・・!?)カタカタ

 

童磨は少し体が震えていた。それはしのぶにも確認でき、伊之助とカナヲに声をかけた。

 

しのぶ(アイツ・・震えてる?そういうことね)「伊之助君、カナヲ、ブロリーさんに任せましょう。」

 

カナヲ・伊之助「「師範?/しのぶ?」」

 

しのぶ「その方が良いと思いました。それと二人とも、良く目に焼き付けておくんですよ。例え地獄に落ちてしまっても、ここまで爽快な殺戮劇は見られませんよ。」フフフ・・

 

カナヲ・伊之助「「はい!/おう!」」

 

しのぶは今までで一番黒い笑みを浮かべていた。それを見た伊之助とカナヲも察したのか素直に従うことにしたのだ。そして童磨も自身が震えていることに初めて気づいた。

 

童磨(あれ・・?どうして俺はこんなに震えてるのかな?何かブロリー殿が凄く怖く・・ん?怖い?そうか・・これが・・恐怖の感情なのか・・!)ガタガタガタガタ

 

童磨は、蹴り一発で本来の鬼の力を失わせたブロリーに恐怖を感じていたのだ。そしてそれを自覚してからは更に震えが大きくなって顔からは血の気が引いて真っ青になっていた。

 

ブロリー「一回蹴っただけでもう終わりか?」ゴゴゴゴゴ

 

童磨「ば・・化け物・・!!」ガタガタガタガタ

 

ブロリー「俺が化け物?違う、俺は悪魔だ!フハハハハハハ!」

 

童磨「う、うわあああああ!!!血鬼術!霧氷・睡蓮菩薩・・!!」ゴゴゴゴゴ

 

童磨は最後の切り札とも言える一番の大技を使った。それは二十メートルは優に越えるであろう巨大な菩薩だった。

 

カナヲ・伊之助「「!!!」」」

 

しのぶ「この大技・・!まだこんな余力が・・!!」

 

ドゴォン!!

 

菩薩は両腕を合わせててブロリーを潰そうと勢い良く振り下ろした。その際に出た冷気と埃でブロリーの姿が完全に見えなくなる。

 

カナヲ「破壊柱様!!」

伊之助「ブロリー!!」

しのぶ「そっ・・そんな・・」

 

それを見た三人は最悪の事態を想像してしまい、しのぶは青ざめて口を片手で抑えていた。しかし、煙が晴れていくとそこには無傷で片手で受け止めているブロリーがいた。

 

ブロリー「無駄だ。こんな石ころ・・!破壊の呼吸、拾陸の型、ギガンティックデストラクション!」ゴォォォォ ドッカーン バラバラ

 

童磨「わぁっ!?」

 

ブロリーはそのまま片手で菩薩を払い除けると、レーザーのような気功波を打って木っ端微塵に破壊し尽くしたのだ。その際の衝撃で童磨自身も吹っ飛ばされて仰向けになった。そして

 

ブロリー「破壊の呼吸、拾捌の型、ギガンティックスタンプ。」ビュオオ ドゴォ

 

童磨「ぎゃあああ!!」ゴポッ

 

ブロリーは仰向けになった童磨の腹を高い位置から降下して踏みつけたのだ。あまりの衝撃に童磨の体は耐えられず吐血し、腹を抑えて蹲った。そして息もかなり細々としたものになるほど弱っていた。

 

童磨「う・・うぅ・・」ガクガク ヒューヒュー

 

しのぶ「凄い・・!上弦の弐がもう虫の息に・・!」

 

カナヲ「仇・・取れる!」

 

しのぶ達は目を輝かせたが、ブロリーは一度しのぶ達を見ると腕を組んで童磨に言った。

 

ブロリー「これくらいにしといてやる。よく考えたら禰豆子もしのぶも無事だったな。」

 

そう言うと、ブロリーはしのぶ達の所へと戻ってくる。その際に『スーパーサイヤ人4フルパワー』の形態も解いてしまったのだ。もう戦うつもりはないという表れだった。

 

しのぶ「ちょっ・・!?ブロリーさん!?何してるんですか!?早く止めを刺してください!!」

 

カナヲ「破壊柱様!!そいつはしのぶ姉さんや伊之助の大事な人を奪っただけでなく、沢山の罪の無い人を喰い殺してきた下衆です!!慈悲するようなやつじゃありません!!」

 

伊之助「何してんだブロリー!!見逃すつもりかよ!!俺達の気持ちが治まらねぇんだよ!!」

 

しのぶ達はブロリーに必死に叫ぶ。それでもブロリーは再度変身したり、機微を返すことはなく、戻ってきた。そしてしのぶにそっと耳打ちした。

 

ブロリー「しのぶ・・」ボソボソ

 

しのぶ「!ありがとうございます!」

 

そしてその内容を受け取ったしのぶは満面の笑みを浮かべて頭を下げた。そしてカナヲと伊之助に声をかけた。

 

しのぶ「カナヲ、伊之助君、行きますよ。」

 

カナヲ「師範?」

 

伊之助「何言ってんだ?しのぶ・・」

 

意図がわかってない二人に、しのぶが笑顔を向けたまま説明を始めた。

 

しのぶ「ブロリーさんは私達に譲ってくれたんです、止めを刺すことを!」

 

ブロリー「お前達が今まで抱え込んできた感情を思う存分ぶつけてやれば良いYO。」

 

『通常形態』に戻ったブロリーが少し笑って告げた。カナヲと伊之助も意図を完全に理解してブロリーに感謝した。

 

カナヲ「破壊柱様・・!ありがとうございます!」ペコッ

 

伊之助「謝意を述べるぜ!ブロリー!」

 

しのぶ「さぁ、引導を渡しましょう、二人とも。」

 

カナヲ・伊之助「「はい!/おう!」」

 

三人は黒い笑みを浮かべながらゆっくりと近づいていった。そして

 

しのぶ「蟲の呼吸、蜻蛉の舞、複眼六角。」

カナヲ「花の呼吸、伍の型、徒の芍薬。」ザシュ

伊之助「獣の呼吸、参の牙、喰い裂き。」ザシュ

 

三人はそれぞれ呼吸を使い、しのぶの毒を打ち込んだ後にカナヲと伊之助が二人で合わせるように同時に頚を斬ったのだ。

 

童磨(あれ?頚斬られちゃった?えー、こんなの俺があまりにも可哀想だ。恐怖の感情を植えつけられて、絶対に勝てない中一思いじゃなくてじわりじわりと痛め付けてきた。こんなに人に尽くして世の中に貢献してきたのに、こんなのあんまりじゃないか。体も崩れ始めた。でもダメだ、あんなに怖かったはずなのにいざ死ぬとなるとやっぱり何も感じないや。)ボロボロ

 

童磨の体が崩れていってるなか、しのぶが童磨の頚を拾い上げる。そして安堵の表情を浮かべて話しかけた。

 

しのぶ「ああ、やっと死ぬんですね!良かった。」

 

童磨「・・君はしのぶちゃんだったかな?」ボロボロ

 

しのぶ「覚えなくて良いですよ。気色悪いので名前呼ばないでください。」

 

童磨「君達が助けてくれたんだね。」ボロボロ

 

しのぶ「助けた?何のことですか?」

 

童磨「俺ね、ブロリー殿のことを凄く怖いと思ったんだ。俺の攻撃は通用しないし、あっちは致命傷の技を使ってくるからね。この恐怖の時間がずっと続くんじゃないかって思うと怖かった。それをしのぶちゃん達が頚を斬ってくれて解放してくれたからね。」ボロボロ

 

しのぶ「自惚れないでください。私達は貴方をさっさと殺したかったから頚を跳ねただけです。助けたつもりは毛頭もありません。」

 

童磨「わぁ、これが照れ隠しってやつなのかな?可愛いねしのぶちゃん。そうだ、ブロリー殿に恐怖を覚えたことがきっかけで他の感情もわかりそうな気がするんだ。しのぶちゃん、今から君も死んで俺と一緒に地獄へ行かないかい?」ボロボロ

 

しのぶ「とっととくたばれ、二度とその面見せるな糞野郎。」

 

しのぶは吐き捨てると地面に乱暴に頚を落として踏みつけた。そして童磨が完全に消滅すると、ブロリー達のところへと戻った。

 

カナヲ「師範!やりましたね!」

 

しのぶ「ええ!これで姉さんも安らかに眠れるわ!」

 

伊之助「仇は討ったぜ!ワーハハハハ!!」

 

ブロリー「お前達、流石だと誉めてやりたいところだぁ!俺は次のムシケラと戦いに行く!しのぶ達は少し休んだ後にゆっくり来るがいい。」ビュオオ

 

しのぶ・カナヲ「「わかりました。/はい!」」

 

しのぶ達の執念と、ブロリーの圧倒的な力で仇を討つことに成功した四人。ブロリーはその場から飛び立つと、空を飛んで気配を感じる方へと向かったのだった。




遂にスーパーサイヤ人4フルパワーに覚醒しました。これで更に技が使えるようになったのでまとめておきます。

ブロリー

新形態、スーパーサイヤ人4フルパワー

使える呼吸・・破壊の呼吸

使える技・・壱から拾陸の型全て
拾漆の型「ギガンティックブロー」
拾捌の型「ギガンティックスタンプ」
拾玖の型「ギガンティックジェノサイド」

遂に童磨を倒しました。更に技が増えてより強くなりました。ブロリーの活躍を期待してくれると嬉しいです。それではまた次回。


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無一郎VS上弦の壱"黒死牟"!明かされる衝撃の事実!

第四十一話です。皆さん、大変お待たせしました。黒死牟戦の原作改変がかなり難しかったです。ここまで遅れてしまったことをお詫びします。相変わらず駄文です。それでも大丈夫な方は最後まで読んでくれたら嬉しいです。それでは本編どうぞ。


しのぶ達と共に上弦の弐、童磨を倒したブロリー。その朗報は、愈史郎の血鬼術の目を胸元に貼った鴉によって伝えられていた。

 

鎹鴉「カァァ!ブロリー!!シノブ!!カナヲ!!伊之助!!四名二ヨリ!!上弦ノ弐撃破!!撃破ァァァ!!尚、コノ戦イデ死者ハ零名!!死者零名ィィ!!」

 

炭治郎「師範は?伊之助とカナヲとしのぶさんは無事なのか?」

 

鎹鴉「全員無傷!!全員無傷!!カァァ!!」

 

炭治郎(凄い・・凄い!!これは凄いことだ!誰一人死者を出すことなく勝ち星を上げている!確実に無惨に近づいてきている!!)

 

炭治郎はブロリー達の活躍を聞きつつ、自分達もこれから来る戦いに更に気を引き締めて進むのだった。

―――その頃二人で行動していた蜜璃と小芭内は、入り組んだ沢山ある襖の中央に座る鬼の姿を発見した。

 

蜜璃「あーーっ!!見つけた!伊黒さんあっち!上弦の参だわ!」

 

蜜璃達が見つけた鬼は、長い髪に一つ目で琵琶を持っている"鳴女"である。ブロリーの快進撃の活躍で上弦を次々と倒された無惨は、黒死牟、童磨に次いで参の称号を与えたのだ。目の文字を確認した小芭内は顔をしかめた。

 

小芭内(上弦の参・・!煉獄とあのサイヤ人が倒したはず・・!もう補充されているのか・・!)

 

蜜璃(私より年下のしのぶちゃんが頑張って倒したのよ。私も頑張らなくちゃ!!)トン!

 

小芭内「!」

 

蜜璃は、壁を蹴って鳴女との距離を一気に詰めるが、剣撃が届く前に琵琶を鳴らした。

 

ベン ゴンッ ヒュー

 

すると空中に襖が出現し、それに刀を弾かれた蜜璃は真っ逆さまに落ちていく。

 

鳴女「・・・・」

 

蜜璃(はっ・・恥ずかしいわ恥ずかしいわ!!ちょっと焦っちゃって力みすぎちゃった、私何してるのかしら!!)

 

柱として失態した恥ずかしさのあまり、受け身を取ることも忘れて只重力に従って落ちていった。小芭内が助けるものの、気まずさでお互いに顔を背けた。

 

小芭内「甘露寺・・相手の能力がわからないうちはよく見てよく考えて冷静にいこう・・」

 

蜜璃「・・はい・・///」

 

ベン

 

しかし、鳴女も隙だらけの敵を見逃すほど甘くはなく、すぐさま二人の足元に血鬼術で襖を開ける。二人は足場を奪われるが、すぐに淵を掴むとそこを足場にして体制を整える。

 

ベベン ゴォ ドゴォン

 

今度は鳴女は無限城の壁や床を突出させて潰そうとするが、小芭内は素早く避けて距離を取った。

 

蜜璃「伊黒さん!!ひゃっ」ガク~ン

 

小芭内に気を取られていた蜜璃は、突き出た床に猛スピードで天井まで上昇させられる。

 

蜜璃「きゃああああ!!!わーっ!潰されるぅ!!んんーっ!!」ズババ!

 

ドゴォン

 

蜜璃「ギャーッ!建物自体を手足のように動かせるのね!なるほどね!ちょっと吃驚したけど大丈夫よフフン!」ドキドキ

 

それでもなんとか呼吸を駆使して、床を刻むことで脱出する。そして壁を駆け上ると、鳴女に刀を振り下ろす。

 

蜜璃「覚悟ーっ!!」

 

ベベン

 

蜜璃「私同じ手は喰らわないですからぁ!!ヤァッ!」ぐるん

 

ベン ピシャッ ペッ

 

蜜璃「・・・・キーッ!!」

 

しかし、蜜璃は避けた先に襖を出されて再び落下していった。そして鳴き女の頚を小芭内が狙った。

 

小芭内「蛇の呼吸、弐の型、狭頭の毒牙。」

 

ベン ギュン

 

小芭内「!チッ!」(血鬼術の殺傷力はそれ程でもないが、煩わしさと厄介さは随一だな!!これは癪に障る長丁場になりそうだ。)

 

蜜璃「もー!!すっごい下まで落ちちゃった!!もー!!」キーッ

 

蜜璃と小芭内は、上弦の参"鳴女"に苦戦を強いられていた。

―――一方、鬼を斬りながら移動を続けている行冥と無一郎は、無惨の居場所を探していた。

 

行冥「鬼舞辻の居場所が近い!油断するな!」

 

無一郎「はい!」

 

ミシッ

 

移動している途中で、行冥のすぐとなりの壁が軋んだ。そしてそのまま鳴女の血鬼術で無一郎がぶつけられて押し出されてしまった。

 

行冥「時透!」

 

無一郎「俺に構わず進んでください!・・!!」

 

ドゴォ!

 

無一郎を押した壁がそのまま向かい側の壁に激突するが、無一郎はなんとか抜け出してそのまま落下して着地する。そこは黒くて太い柱が何本も建ち、至るところに木製の壁がある空間だった。

 

無一郎(ここは・・?)

 

黒死牟「来たか・・鬼狩り・・」

 

無一郎「!!」

 

そこにいたのは髪を後ろに縛り、腰に刀を添えている侍の姿をした鬼だった。目が六つあり、真ん中の目に上弦と壱の文字が刻まれてる鬼、黒死牟は自身の刀に手を掛けた。

 

黒死牟「ん・・?お前は・・なにやら・・懐かしい・・気配だ・・」

 

無一郎(上弦の壱・・!!!これが・・上弦の壱・・他の上弦とは比べ物にならない。重厚な様。威厳すらある。そして刀、歪だが・・刀を持っている。この男もしや鬼狩りだったのか?しかも相当な使い手の・・)ブルブル

 

無一郎は自分の刀に手を掛けるが、その手が震えていることに気づいた。

 

無一郎「!!」(怖気が止まらない・・体が戦闘を拒否している・・こんなことは生まれて初めてだ・・)

 

無一郎が黒死牟の威圧感に気圧されていると、黒死牟が不意に名前を聞いた。

 

黒死牟「お前・・名は・・何という・・」

 

無一郎「!・・時透・・無一郎。」

 

無一郎が名前を答えると、黒死牟が納得したように頷いた。黒死牟は、筋肉や骨が透けて見える境地"透き通る世界"を修得しているため、筋肉や骨の質を見てすぐに理解したのだ。

 

黒死牟「成る程・・そうか・・絶えたのだな・・"継国"の名は・・」

 

無一郎「・・継国?誰のことだ?」

 

黒死牟「何百年も・・経っているのだ・・詮方無き・・こと・・私が・・人間であった時代の名は・・継国巌勝・・お前は・・私が・・継国家に残してきた・・子供の末裔・・つまりは・・私の子孫だ・・」

 

無一郎「!?」(子孫・・!?僕が!?こいつの!?まさか・・信じられない。じゃあこの男は始まりの呼吸の剣士!?落ちつけ!!取り乱すな関係ない。落ちつけ!!)

 

黒死牟から言われた衝撃の事実に無一郎は動揺するが、ひとつ深呼吸をすると落ちつきを取り戻した。それを見た黒死牟は、顎に手を添えて感心したように言った。

 

黒死牟「うむ・・精神力も・・申し分・・ないようだ・・ほんの一瞬で・・動揺を・・鎮めた・・」

 

無一郎は刀を抜くと、呼吸を使って斬りかかった。

 

無一郎「霞の呼吸、弐の型、八重霞!!」

 

しかし、目の前にいたはずの黒死牟が突然消えて、刀には何の手応えも感じなかった。そして無一郎の背後に横を向いた状態で立っていた。

 

黒死牟「なかなかに良き技だ・・霞か・・成る程・・悪くない・・」

 

無一郎「伍の型、霞雲の海。」

 

無一郎は再び斬りかかるが、それでも黒死牟に刃はは届かず空を斬る。

 

黒死牟「無一郎・・年の頃は十四あたりか・・その若さでそこまで練り上げられた剣技・・私に怯みはしたものの・・それを押さえ込み斬りかかる胆力・・流石は我が末裔・・血は随分薄くなっているだろうが・・瑣末なこと・・たとえ名が途絶えようとも・・私の細胞は増えて残っていた・・」

 

無一郎「おちょくっているのかな?たとえ末裔であったとしても何百年も経ってたら、お前の血も細胞も俺の中にはひとかけらも残ってないよ。」

 

無一郎は黒死牟の血も細胞も全くないと言うと、もう話すことはないと言わんばかりに刀を構えた。

 

無一郎「霞の呼吸、漆の型、朧。」

 

黒死牟(初見の技だ。霞の型の使い手はこのような技を使ったことはない。独特の緩急、動きが読みづらい撹乱も兼ねた技。実に良き技。流麗で美しい。無一郎が編み出した技なのだろう。)「此方も抜かねば・・無作法というもの・・」

 

黒死牟は胸の内で無一郎の技を称賛すると、一度俯いて刀を抜くと同時に呼吸を使った。

 

黒死牟「月の呼吸、壱の型、闇月・宵の宮。」ザン!

 

無一郎「ッ!」ビシャッ

 

黒死牟の技が当たって、無一郎の左手は手首から先が斬り飛ばされてしまったのだ。そして傷口から大量の血が噴き出した。

 

無一郎(月の・・呼吸・・!?鬼となっても呼吸による剣技は使えるのか。異次元の速さだ。)ぐる ギュッ

 

しかし、無一郎はすぐさま肘部分に自身の髪できつく縛って止血する。そのまま次の技に移った。黒死牟はこれらの動きを素早くこなした無一郎に感心していた。

 

黒死牟(素晴らしい・・腕を失ってすぐに止血、そこからさらに攻撃をしようという気概。)

 

無一郎「霞の呼吸、移流斬り・・」

 

スッ ドスッ!

 

無一郎「ぐっ・・!」

 

無一郎の刀身が黒死牟の頚に届くよりも前に、黒死牟はそれを指で挟んで取ると無一郎の右肩ごと柱に突き刺した。釘で打たれたかの如く宙吊りになった無一郎を黒死牟は見上げた。

 

黒死牟「我が末裔よ。あの方にお前を、鬼として使って戴こう。己が細胞の末裔とは・・思いの外しみじみと・・感慨深きもの・・」

 

無一郎「・・ッ・・」

 

黒死牟「そう・・案ずることはない・・腕ならば・・鬼となったらまた生える・・まともに戦える上弦は最早私一人のみ・・あの御方もお前を・・認めてくださるはず・・止血は・・しておこう・・人間は脆い・・」

 

黒死牟は無一郎の左腕を包帯で縛って止血した。そしてそれを壁の影から狙う一人の鬼殺隊員の姿があった。鬼喰いの剣士、玄弥である。銃口を黒死牟に向けている。

 

黒死牟「しかし仮に・・失血死したとしても・・あの御方に認められず・・死んだとしても・・死とはそれ即ち宿命・・故に・・お前はそれまでの男であったということ・・・・そうは思わないか?お前も・・」

 

玄弥「ッ!!」

 

ズッ ゴトン

 

しかし、玄弥が発泡する前に黒死牟がすぐ後ろまで回り込んでいた。玄弥の銃を構えている腕が音もなく地面に落ちた。

 

無一郎「玄弥ーっ!!」

 

玄弥の絶体絶命のピンチに無一郎は助太刀に向かおうと肩に刺さっている自身の日輪刀を抜こうと足に力を込めながら呼吸を使う。しかし、刀は壁に鍔あたりまで深く刺さっているため、うまく力が入らない状態ではびくともしなかった。玄弥はそれなら日輪刀を使おうとするが、もう片方の腕も斬り落とされて血が噴き出した。

 

ドシャッ

 

玄弥「ぐぁっ・・!!」

 

黒死牟「ふむ・・鬼喰いをしていたのはお前だったか・・」ドン ドシャッ

 

黒死牟は更に胴を斬ったが、それでも玄弥はまだ息があった。無一郎は焦るが、それでも刀は全く動かない。

 

無一郎「・・!!」(抜けない・・!!くそっ!!抜けない!!)

 

黒死牟「・・ほう、まだ絶命しない・・胴を両断されても尚・・三百年以上前・・お前と同じく鬼喰いをしている剣士がいた・・その剣士は胴の切断で絶命したが・・お前の場合は首か・・?貴様のような鬼擬き・・生かしておく理由はない・・」チャッ

 

黒死牟が玄弥に止めを刺そうとしたとき、二人の頭上から呼吸音が聞こえてくる。

 

実弥「風の呼吸、肆の型、昇上砂塵嵐!」ヒュオオ

 

実弥が風の呼吸で間合いに入ったのだ。黒死牟は大きく後ろに跳んで距離を取った。

 

黒死牟「風の柱か・・」

 

実弥「その通りだぜ。テメェの頚をォ、捻じ斬る風だァ!」

 

玄弥「兄貴・・」

 

実弥「・・テメェは本当に、どうしようもねぇ弟だぜぇ。何のために俺がァ、母親を殺してまでお前を守ったと思ってやがる!」

 

玄弥は、柱稽古の時に炭治郎に言われた言葉を思い出していた。"怒りの匂いはしたけど、憎しみの匂いは少しもしなかったんだ。だから怯えなくても大丈夫だよ。実弥さんは玄弥のことがずっと変わらず大好きだから。"といわれて、心底安心したのは記憶に新しかった。回想の炭治郎を肯定するかのように実弥は言った。

 

実弥「テメェはどっかで所帯持って、家族増やして爺になるまで生きてりゃあ良かったんだよ。お袋にしてやれなかった分も、弟や妹にしてやれなかった分も、お前が、お前の女房や子供を幸せにすりゃあ良かっただろうが。そこには絶対に俺が、鬼なんか来させねぇから・・」

 

実弥は玄弥に幸せになってほしかったのだ。家族を持って笑いながら過ごす未来を送ってほしい、危険な鬼殺隊の任務は自分一人で充分だと。柱稽古で対立したときも、呼吸が使えずに鬼を喰って戦ってきた玄弥を再起不能にすることで強制的に危険な仕事をする鬼殺隊を追い出そうとした兄なりの行動だったのだ。その真意に気づいた玄弥は涙を流した。

 

玄弥「ごめん兄ちゃん・・ごめん・・」

 

黒死牟「ほう・・兄弟で・・鬼狩りとは・・懐かしや・・」

 

最愛の弟を切り刻まれた実弥は、顔中に血管を浮かび上がらせて憎悪感丸出しで叫んだ。

 

実弥「よくも俺の弟を刻みやがったなァ!!糞目玉野郎ォオ!!許さねェ許さねェ!!許さねエエ!!」

 

実弥と黒死牟は同時に動き、黒死牟が刀を振るが実弥は足元をくぐった。

 

玄弥(下!!足元をくぐる・・)

 

実弥「壱の型、塵旋風・削ぎ!!」ゴオオオ ガキィ

 

無一郎と玄弥では見ることすらできなかった黒死牟の刀身を、実弥はつばぜり合いすることで止めたのだ。

 

無一郎(刀身を・・見せた!!)

 

実弥「はァア!こりゃあまた!気色の悪ィ刀だぜェ!なァオイ!!」

 

黒死牟「月の呼吸、伍の型、月魄災渦。」

 

黒死牟は刀を振らずに斬撃を出したのだ。実弥は間一髪で後ろに大きく跳んで距離を取った。

 

実弥「風の呼吸、参の型、晴嵐風樹!」ガキン

 

黒死牟「やりおる・・肉体的にも技の・・全盛と見た・・」

 

実弥(鳥肌が止まらねぇ、こいつの技。一振りの斬撃の周りに不規則で細かな刃がついてる!それは常に長さ大きさが変化する!定型じゃない。時透がやられる筈だ!避けたつもりの攻撃が変則的で歪。長い経験で培われた感覚が無けりゃ無理だ!さらにこの速さ!!しかもコイツ呼吸を使ってやがる!再生力、身体力が異常に高い鬼が呼吸を使い、さらに攻撃力を高めているとは。)「おもしれぇ・・!!おもしれぇぜ!!殺し甲斐のある鬼だ!!!風の呼吸、弐の型、爪々・科戸風!」ギャゴ!

 

実弥は斬りかかるが黒死牟は難なくそれを受け流して、風の呼吸と月の呼吸がぶつかり合う。表情には出さないが、黒死牟は感心していた。

 

黒死牟(ほう・・まだ・・ついてくる・・私の技に・・懐かしい・・感覚だ・・高揚する・・)

 

実弥「ッ!」(瞬きもできねぇ!!ほんの少し切先の振りをしくじっただけで即死だ!!)

 

黒死牟「古くは・・戦国の・・世だった・・私は・・このように・・そうだ・・風の柱とも・・剣技を・・高め合った・・月の呼吸、陸の型、常夜孤月・無間。」ヒュッ ガガガガ!

 

無一郎「不死川さん・・!」

 

玄弥(兄貴・・兄貴!!どうなった!?どうなっている!?どこにいる!?くそっ!!見えない!!柱と壁で・・)

 

実弥は左肩から右の腰まで切り裂かれて、傷口と口から血が噴き出した。

 

黒死牟「ふむ・・随分堪えたが・・ここまで・・動けば・・臓物が・・まろび出ずる・・!」ドクン

 

黒死牟は、体に違和感を覚えた。実弥の血の匂いを嗅いでから、気分が高揚するような感覚になったのだ。それは実弥の体質に秘密があった。

 

黒死牟(脈拍が上がっている・・何だ・・?)

 

実弥「フフッフフフッ。猫に木天蓼、鬼には稀血。」

 

実弥の攻撃に、黒死牟は思うように動けなくなっていた。それを見た実弥は、手応えを感じたのか笑った。

 

実弥「オイオイどうしたァ?千鳥足になってるぜぇ!上弦にも効くみてェだなァ!この血は!!俺の血の匂いで鬼は酩酊する!稀血の中でもさらに稀少な血だぜ!存分に味わえ!!」

 

実弥は稀少な稀血の持ち主だった。その効果は、鬼を酔わすことができるというものであった。実弥は自分の血を利用する戦法を行ってきたので全身に深い傷跡があるのだ。

 

実弥「風の呼吸、陸の型、黒風烟嵐。」

 

黒死牟(この小僧、この傷でまだ動くか。今までの柱なら勝負はついた。しかし、奴は自ら出血を止めた。血を凝固させているのか?呼吸で?筋肉を引き絞り、臓物が飛び出るのを止めている?)「どちらにせよ、人間に出来て良い芸当ではない・・初見なり・・面白い・・微酔う感覚も何時振りか・・愉快・・さらには稀血・・」

 

黒死牟は実弥の風を踏みつけると、そのまま頚を切り落とそうとする。しかし、実弥は玄弥が持っていた銃で受け止めるとそのまま発泡した。

 

実弥(畜生かすり傷すら・・っ!)

 

そのまま黒死牟が押しきろうとするが、そこへ鎖が刀を押し返した。行冥が来たのだ。

 

黒死牟「次々と・・降って湧く・・」

 

行冥「我ら鬼殺隊は百世不磨、鬼をこの世から屠り去るまで・・」

 

行冥は大きな斧と、棘のついた鉄球が鎖で繋がっているものを武器にして振り回して戦うのだ。そして傷を負った実弥に対して待避するように指示を出した。

 

行冥「不死川、腹の傷は今すぐ縫え。その間は私が引き受ける。」

 

実弥「!!はい、すみません。」

 

黒死牟は行冥の肉体を"透き通る世界"で見ると、肉体が出来上がっているのがわかって気持ちが高ぶっていることを実感した。

 

黒死牟(素晴らしい・・極限まで練り上げられた肉体の完成形・・これ程の剣士を拝むのは・・それこそ三百年振りか・・)

 

行冥が振り回す棘鉄球は周りの空気をも巻き込んで勢いをつけると、そのまま黒死牟に投げ飛ばした。黒死牟は棘鉄球を避けるが、すぐ後ろから斧も飛んできていた。

 

黒死牟(手斧まで投擲するのか。両手共武器を離すとは・・)

 

行冥「岩の呼吸、弐の型、天面砕き。」ドゴン

 

鎖を踏んで勢い良く棘鉄球を振り下ろす技を黒死牟は軽く避ける。さらに頚もとに鎖が巻き付こうとするが、それを刀で受け止めた。

 

黒死牟(この鎖は斬れぬ!!鎖、斧、鉄球、全ての鉄の純度が極めて高い武器。私の肉から造られたこの刀では、斬る前に焼け落ちてしまうだろう。これ程太陽光を吸い込んだ鉄は、刀匠の技術が最盛期たる戦国の世にも発見されていなかった。しかしそれも・・間合いの内側に入れば良いだけ・・)

 

黒死牟は、間合いの内側に入るために一気に距離を詰めて刀を構える。

 

黒死牟「月の呼吸、弐の型―

行冥「岩の呼吸、肆の型―

 

「「流紋岩・速征。/珠華ノ弄月。」」

 

行冥と黒死牟はお互い斬り、斬られるが、鬼である黒死牟はすぐに再生し、逆に行冥は顔を斬られて出血していた。

 

黒死牟「斬られた所で・・すぐに再生するのだ・・攻撃は・・無意味・・哀れな・・人間よ・・」

 

無一郎が、自身に柱ごと刺さっている刀を激痛に耐えながらゆっくりと抜いた。

 

ギギギギ ドシャ

 

無一郎「ハーッ・・ハーッ・・くっ・・」(状況が悪すぎる、これだけの傷を負わされては役に立てない。俺は宇髄さんほど体格に恵まれてないから数時間で失血死する。せめて上弦の壱だけでも倒さなければ、まだ生きて戦える人の負担を少しでも減らせ。死ぬなら役に立ってから死ね!!)

 

無一郎は心の中で自分にそう言い聞かせると、地面に落ちた刀を拾って玄弥の元へと駆け寄った。

 

無一郎「玄弥!」

 

玄弥「時透さん!すまねぇが胴体を・・強く押し付けてもらえるか?」

 

無一郎「玄弥!生きてるの!?体繋がる?」

 

玄弥「厳しいかもな・・兄貴を・・死なせたくないのに・・」

 

無一郎「・・わかった・・一緒に最期まで戦おう・・」

 

無一郎と玄弥が自らの犠牲を覚悟に最期まで戦う決意をしたその時だった。

 

ドゴォン

 

ブロリー「フハハハハハ!!」

 

空間の天井を突き破ってブロリーが入ってきたのだ。そして着地すると同時に『伝説のスーパーサイヤ人』へと覚醒した。

 

ブロリー「はぁぁぁあああ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

ブロリーが入ってきたことは、行冥にも黒死牟にも戦いの途中で理解できた。

 

黒死牟「また一人・・降ってきたか・・」

 

行冥「ブロリー、来てくれたのか。」

 

しかしブロリーは行冥と黒死牟には目もくれず、一直線に玄弥と無一郎のところへと行った。

 

無一郎「ブロリーさん!」

 

ブロリー「無一郎お前・・腕が失くなってるではないか!玄弥も体が斬られて血だらけじゃないか!」

 

玄弥「破壊柱様・・やられてしまった・・銅を斬られた、再生するのは厳しいかも・・」

 

無一郎「俺も左腕を失っちゃった・・後数時間で失血死する・・俺に時間は残されてない・・」

 

無一郎と玄弥の言葉を聞いたブロリーは、顔をしかめてから掌を二人に向けた。

 

ブロリー「死にそうなのか、だったら治すだけだ。」ポワワワワ

 

ブロリーの掌から出る緑色の気は二人を包み込む、その中で傷が急速に再生して治っていった。

 

玄弥「!体がくっついた!傷もねぇ!どこも痛くねぇ!どうなってんだ!?」

 

無一郎「す、すごい・・!これがお館様の呪いをも治癒したブロリーさんの力・・腕も再生してる!それに気に包まれてるときはなんか気持ちよかった。」

 

無一郎と玄弥は、自分の体を見回して完全に治ったことに驚きと戸惑いを感じていた。二人が治ったのを見てブロリーは振り返って黒死牟を見据えた。

 

ブロリー「あとはあいつを血祭りにあげるだけだぁ!」

 

玄弥「待ってくれ!ブロリーさん!」

 

玄弥が飛んでいこうとしたブロリーの赤い腰布を掴んで止めた。止められたブロリーは怪訝な表情をして玄弥を見下ろした。

 

ブロリー「玄弥か、何だ?」

 

玄弥「兄貴を・・治してほしいんだ。」

 

ブロリー「兄貴?」

 

無一郎「あそこにいる不死川さん、玄弥とは兄弟なんだ。さっき上弦の壱に前を切り裂かれてたからすごい負傷している。だから貴方の力で治してほしい。」

 

ブロリー「何!?そうだったのか!そういうことなら良いだろう!」ビュオオ

 

ブロリーは飛んで実弥の元へと行き、無一郎と玄弥もあとに続いた。目の前にブロリーが立つと実弥は顔をしかめた。

 

実弥「!サイヤ人・・!何しに来たァ!」

 

ブロリー「ムシケラを血祭りにあげに来た。ついでにお前に気を分けて治そうと思っただけだ。」

 

実弥「あぁ!?俺はテメェを鬼殺隊の隊員って認めたことは一度もねェ!!お館様を助けられたからって調子乗んなァ!!テメェの施しなんて受けねぇよォ!!」

 

玄弥「兄貴・・俺が破壊柱様に治してくれって頼んだんだ。どうか受けてほしい・・」

 

無一郎「不死川さん、今はそんなこと言ってる場合じゃないよ。上弦の壱も鬼舞辻無惨も倒さなきゃいけないんだから。早く無惨を倒しに行くためにも治せる時に治さなきゃ。」

 

実弥「・・チッ。サイヤ人、さっさとやれェ!」

 

玄弥と無一郎に説得された実弥は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてブロリーの気による治療を受けた。

 

ポワワワワ

 

実弥(チッ、本当に鬼みてぇに再生しやがる!それにこの温度、認めるのは本当に癪だが・・心地良い。)

 

実弥は、ブロリーの気による心地よさに複雑な気持ちになった。そして実弥を癒し終えたブロリーは、行冥の前に立って黒死牟の前に立ちはだかった。

 

行冥「!ブロリー。」

 

黒死牟「鬼ではないにもかかわらず・・自分の意思で空を飛び・・傷を再生させる力を分け与える・・俄には信じ難し・・」

 

ブロリー「お前は無一郎の腕を斬りとばして、玄弥の体を切り刻んだ。そのせいで無一郎達は死にかけたんだ。上弦の弐の次はお前を血祭りにあげてやる!」

 

実弥(!コイツも玄弥のことを心配して・・!)

 

ブロリー「はぁぁぁああああ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

ブロリーは童磨との戦いでもなった、赤い体毛に黒髪、更には全身に浮き上がった血管が特徴の『スーパーサイヤ人4フルパワー』になると空中に浮き上がって気を放出するのだった。




獪岳戦を入れるのを忘れてました泣黒死牟の戦いが終わったら書く予定です。それではまた次回。


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黒死牟の衝撃の過去!日の呼吸を超える破壊の呼吸!

第四十二話です。この度この"伝説のスーパー鬼殺隊員"は連載二周年を迎えました。皆様のおかげです。本当にありがとうございます。これからもこの小説の応援いただけると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


黒死牟との戦いで『スーパーサイヤ人4フルパワー』の姿になったブロリーは気を放出した。そのブロリーと対峙している黒死牟は"透き通る世界"でブロリーの肉体構造を見た。

 

黒死牟(なんだこいつは?肉体だけなら岩の柱を上回る。非の打ち所がない素晴らしい完成形だ。だが、こいつの周りには緑の得体の知れない気配が常時放たれている。初見なり、面白い。)「お前は・・あの方が・・警戒なされていた・・鬼狩りか・・名は・・何という・・」

 

ブロリー「ブロリーです。」

 

黒死牟「そうか・・月の呼吸、壱の型、闇月・宵の宮。」ガキン

 

黒死牟はブロリーの名前を聞くと、呼吸でブロリーに斬りかかった。しかし、ブロリーも腕を出して金の籠手に刀が当たってつばぜり合いになった。

 

黒死牟「見事な・・反射神経だ・・」

 

ブロリー「フフフ!かかってきた割には随分軽かったぞ。これが本気ではないだろう?」

 

黒死牟「無論・・今のはただの・・挨拶代わりだ・・」

 

ブロリー「そう来なくっちゃ面白くない。」

 

お互いに距離を取って離れると、黒死牟は再び斬り込もうと構える。ブロリーも拳を握って力を込めると不敵に笑う。次の瞬間、二人の姿が消える。

 

ガガガガガガ

 

激しい攻防が始まったのだ。実弥達は姿は勿論、残像すら残らない程の俊敏な動きで全く見ることが出来ない。視界に捉えることが出来るのは、ぶつかり合ったときに散る火花だけであった。凄く激しい戦いを見た実弥達は、息を飲んで冷や汗を垂らしながら見ていた。

 

実弥(見えねぇ!サイヤ人も鬼も速すぎて見えねぇ!さっきまで俺と戦っていた時に鬼は手加減していたというのが丸分かりだ!腹立たしいが加勢できねぇ!)

 

無一郎(今の俺達だとブロリーさんにとって足手まといにしかならないことが嫌でもわからされる。悔しい・・!柱なのに何も出来ないなんて・・!悔しい・・!)

 

玄弥「兄貴!時透さん!何してんだ!早くブロリーさんに加勢しねぇと!」

 

無一郎「!玄弥!駄目!」グイッ

 

ブロリーと黒死牟の猛攻に飛び込もうとした玄弥の腕を無一郎が掴んで止めた。

 

玄弥「!時透さん、何で止めるんだ?」

 

無一郎「玄弥、俺達は加勢しないんじゃない、出来ないんだ。今行ってもブロリーさんの邪魔になるだけ、それどころか良くて無駄死に悪くて全滅されかねないんだよ。」

 

無一郎は心底悔しそうに顔を歪めて拳の握りしめてワナワナと震えていた。震える無一郎を見た玄弥は彼の心情を察して引き下がった。

 

玄弥(時透さん、本当は悔しいんだ・・本当は今すぐにでもブロリーさんに加勢したいんだ。)

 

ブロリーと黒死牟の猛攻はやがてお互いに距離を取って収まる。そこには疲弊している黒死牟と、全く息を乱してないブロリーがいた。

 

黒死牟「何故お前は・・私の剣撃が・・一切・・効かんのだ?再生している・・訳ではない・・刃が・・お前の体を・・通らぬ。」

 

ブロリー「そんな刀で俺を倒せると思っていたのか?」

 

無一郎(!猛攻が止まった!隙を突くなら今だ!)「霞の呼吸、弐の型、八重霞!」

 

実弥「風の呼吸、壱の型、塵旋風・削ぎ!」

 

行冥「岩の呼吸、壱の型、蛇紋岩・双極。」

 

無一郎達が黒死牟の動きが止まったのを見てチャンスと言わんばかりに斬りかかる。黒死牟はよけるが、着物が裂かれて上半身を露出した。

 

行冥「まだだっ!!畳み掛けろ!!頚を!頚を斬るまでは!!」

 

黒死牟「そうだ、その通り。」バッ

 

ビチャッ

 

行冥、実弥、無一郎、玄弥の四人の全身から再び血が噴き出した。黒死牟との距離は随分離れていてとても刀が届く範囲ではないのにも関わらず攻撃が届いた。そのことに行冥は動揺した。

 

行冥(馬鹿な・・斬られただと!?この間合いで攻撃が届くのか!奴は一体何をした!!)

 

黒死牟が構えていたのは、一本のとても長い刀にいくつもの刃がついている凶器だった。

 

黒死牟「着物を裂かれた程度では・・赤子でも死なぬ・・貴様らは痣が出ていない・・ブロリーさえ倒せば・・後は容易く済みそうだ・・月の呼吸、漆の型、厄鏡・月映え。」ドドド ガキン

 

ブロリーに向かって斬撃を放って当たるが、切断するどころかかすり傷一つすらブロリーの体にはつかない。それでも黒死牟は次々と呼吸を使って攻撃した。

 

黒死牟「月の呼吸、捌の型、月龍輪尾。」

 

刀が大きくなったことで攻撃範囲が倍以上に伸びて、実弥達は避けることに精一杯だった。ブロリーに向けられた広範囲の技を避け続け、気づけばブロリーの位置より後ろにいた。

 

実弥(頚を狙えねぇ近づけねぇ!!速すぎてやべぇ!!攻撃を避けることだけに渾身の力を使ってる!!そしてブロリーの後ろにまで下がっちまった!!)

 

黒死牟「月の呼吸、玖の型、降り月・連面。」

黒死牟「月の呼吸、拾の型、穿面斬・蘿月。」

 

黒死牟の技は全てブロリーに当たるが、それでもやはり効いている様子は全くない。現にブロリーは涼しそうな表情をしていたからである。黒死牟は段々と苛立ちが募っていった。

 

黒死牟「・・有り得ぬ・・何故刀が通らぬのだ・・並みの人間ならば・・とっくに跡形もなく・・切り刻まれてるはず・・」

 

ブロリー「とっておきはもう終わりか?じゃあ今度は俺の番だなぁ。」

 

黒死牟「お前は・・何なんだ?お前は・・一体・・何者なのだ・・」

 

ブロリー「俺はサイヤ人だ。」

 

二人は同時に動き出して、それぞれ刀と腕がつばぜり合う。攻防は激しさを増して行き、再び二人の姿が見えなくなく程の猛攻になっていた。

 

黒死牟「月の呼吸、拾陸の型、月虹・片割れ月。」

 

ブロリー「フン!こんなもの!」ビュオオ

 

上弦の壱程の強力な攻撃であっても『スーパーサイヤ人4フルパワー』に覚醒したブロリーには、当たったとしても痛くも痒くもない。だからこそブロリーは、黒死牟の技を避けることなく真っ正面から突っ込んだのだ。

 

ブロリー「デヤァッ!!」ドゴォ!

 

黒死牟「!ぬぅぅ!」

 

そして間合いに入って黒死牟の腹を蹴り飛ばしたのた。吹っ飛んだ黒死牟は体制を整えるが、蹴られた腹を片手で抑えていた。

 

黒死牟(なんだこれは?腹を蹴られただけだと言うのに細胞が内側から粉々に破壊されるような激痛が。しかも治まる気配も再生する気配もない。体術の一撃でも致命的な攻撃になる。童磨が怯えるはずだ。こいつは鬼にとって脅威だ。)

 

ブロリーによる攻撃を少しでも受けると上弦の鬼であっても致命傷になる。それを理解した黒死牟は焦った。

―――この時の黒死牟は、ある出来事を思い出していた。それは遡ること四百年前

 

黒死牟(鳩尾から旋毛まで突き抜けるような焦燥!生命が脅かされ体の芯が凍りつく!平静が足下から瓦解する感覚、忌むべきそして懐かしき感覚!四百年前のあの日赤い月の夜、私は信じられぬものを見た。)

 

黒死牟が見たもの、それは老いさらばえた弟の姿があったからである。その名は"継国縁壱"、黒死牟が人間だったとき"継国巌勝"の双子の弟である。この時代の鬼殺隊の殆どの剣士は"痣"というものが出ていた。それは更に剣術を極めた者だけが辿り着ける物であった。全集中の呼吸と組み合わせれば上弦の鬼にも匹敵するほどの力を誇れるが、これは寿命の前借であった。痣が出たものは二十五歳までに亡くなってしまうのだ。しかし、目の前に現れた縁壱は違った。痣があるにも関わらず、八十歳を超えても生きていたのだ。黒死牟は六つある目を見開いて驚いた。

 

黒死牟「・・有り得ぬ、何故生きている?皆死ぬはずだ、二十五になる前に。何故お前は・・何故お前だけが・・」

 

縁壱「お労しや、兄上。」

 

かつて双子だった二人だが、最後に会ってからもう既に六十年以上の月日が流れていた。その間、人間だったときも鬼になってからも縁壱が感情を表したところを黒死牟は一度も見たことがなかった。そんな弟が涙を流して憐れまれて自身に込み上げる感情があった。しかし

 

縁壱「参る。」ズァア

 

縁壱が刀に手を掛けた瞬間に威圧感で空気の重さが増した。黒死牟も同じように刀に手をかけるが鞘から抜くよりも前に頚から血が噴き出した。かつては鬼舞辻無惨を後一歩のところまで追い詰めたこともある縁壱。老いても全盛期と変わらない強さを縁壱は持っていた。黒死牟は間一髪生き延びたものの、焦燥と敗北感で憎悪の感情を向けていた。

 

黒死牟(何故いつもお前だけが特別なのだ!何故いつもお前だけがこの世の理の外にいる!神々の寵愛を一身に受けて生きている!お前が憎い、殺したい!)

 

この時の黒死牟には次の一撃で自分は確実に頚を斬り落とされると、心のどこかでそんな確信を持っていた。しかし、刀を構えて俯いたまま二度と動くことはなかった。寿命が来てしまい、直立したまま亡くなっていたのだ。

 

黒死牟(縁壱、お前はまたしても私の前に現れ、理さえ超越した存在であると見せつけた上、寿命で死亡し勝ち逃げた。誰も・・あの方でも、お前に勝つことは出来なかった。誰一人として縁壱に傷をつけることすら叶わなかった。何故だ?何故いつもお前は私に惨めな思いをさせるのだ?憎い、憎い!!)ズバッ ドシャ

 

あともう一息あれば自分は負けていた。それを理解した黒死牟は、死体となった縁壱の肉体を切り刻んだ。

―――そんな出来事があってから、黒死牟は"もう誰にも負けない""このような醜い姿になってでも勝ち続ける"そう決心して今に至るのだ。しかし、縁壱と最後に会ってから実に四百年、今度はその縁壱を圧倒的に凌ぐブロリーという隊士が現れたのだ。今の黒死牟は顔中の血管を浮かび上がらせて、ブロリーを敵意と憎悪の混じった表情で睨み付けた。

 

黒死牟「全てのしがらみから・・縁壱から・・解放されたというのに・・!今度は・・お前が・・!私に惨めな思いをさせるのか・・!」

 

ブロリー「縁壱?誰だそれはぁ?」ビュオオ ガキン

 

ブロリーは一直線に飛んで黒死牟を殴り飛ばそうとするが、黒死牟は刀で受け止めると押し返そうと力を込めた。しかしパワーではブロリーの方が上であるため、彼が少し力を込めただけで刀が折れて攻撃を諸に食らった。

 

ブロリー「フン!」ドゴォ!

 

黒死牟「ッ!ぐぬぅ!」

 

ブロリーの拳は黒死牟の胸部に当たり、そのまま弾き飛ばされる。致命傷となる攻撃を複数回受けた黒死牟は、あることに気づいた。

 

黒死牟(刀の討伐は、人間にも鬼にも効く。縁壱でさえ鬼の攻撃は避けていた。なのにこいつは喰らってもまるで効いてない。痣も透き通る世界も修得してない奴なんかに私が追い詰められてる。縁壱以上に神々の寵愛を一身に受けて生きている。縁壱以上にこの世の理の外にいる。何故お前はそこまでのことが出来るのだ!?何故無一郎と鬼擬きを治癒できる不思議な力を使うことが出来るのだ!?何故異次元の強さを誇れるのだ!?これならば縁壱の方がまだマシではないか!)

 

黒死牟がブロリーに対して抱いた感情、それは骨まで焼き尽くされるほどの嫉妬心であった。ブロリーは痣を出していないので二十五までに死ぬこともない。透き通る世界を修得していなくてもそれを上回るスピードで追い詰めることが出来る。更には空をも飛ぶことが出来て気で傷や病を治すことも出来る。これらの人間離れした技を使えるブロリーは、縁壱以上の化け物だと黒死牟に実感させたのだ。

 

黒死牟「っ・・化け物め・・!」

 

ブロリー「俺が化け物?違う、俺は悪魔だ!フハハハハハ!!」

 

ブロリーは自分で訂正して高笑いしていると、黒死牟が次の技で斬りかかる。

 

黒死牟「月の呼吸、拾肆の型、兇変・天満繊月。」

 

ブロリー「無駄なことを、今楽にしてやる。破壊の呼吸、拾捌の型、ギガンティックスタンプ!」ガッ ドゴォ!

 

黒死牟「!ぐぅ!」グシャッ

 

黒死牟の攻撃を喰らうがやはり傷をつけることすら叶わず、ブロリー自身もまるで意に介しておらずに膝蹴りを決めると、そのまま動物を踏み砕いた。この時の黒死牟は、人間時代に言われた縁壱の言葉が走馬灯のように思い出していた。

―――当時の黒死牟もとい"月の呼吸"の使い手巌勝と"始まりの呼吸"の使い手である縁壱は、鬼殺隊の柱の中でも格別の強さをもつ2トップであった。水の呼吸や風の呼吸等の後継者はいたが、月の呼吸と日の呼吸の後継者がいまだに現れてなかった。巌勝は同等の実力をもつ若手が育たないことを危惧していたのだ。縁壱にそのことを言った。

 

巌勝「後継をどうするつもりだ?我らに匹敵する実力者がいない。呼吸の継承が絶望的だ。極めた技が途絶えてしまうぞ。」

 

縁壱「兄上、私たちはそれ程大そうなものではない。長い長い人の歴史のほんの一欠片。私たちの才覚を凌ぐ者が、今この瞬間にも産声を上げている。彼らがまた同じ場所まで辿り着くだろう。何の心配もいらぬ。私たちは、いつでも安心して人生の幕を引けば良い。浮き立つような気持ちになりませぬか?兄上、これから生まれてくる子供たちが、私たちを超えて更なる高みへと登りつめてゆきます。」

 

縁壱はこれからの未来を心底楽しみにして、安心したかのように微笑んでいた。だが、巌勝はそれを面白く思っていなかった。

―――黒死牟は当時言われたことを度々思い出しても未だに共感出来てなかった。

 

黒死牟(縁壱、お前はこの事を言ってたのか?お前の才覚を凌ぐ者はこのブロリーだとでも言うのか?)

 

縁壱の言っていたことが本当だったとしても、黒死牟は浮き立つような気持ちにはならなかった。それどころかそれを想像すると吐き気と憎悪が込み上げた。

 

黒死牟(縁壱、お前が笑うときいつも俺は、気味が悪くて仕方がなかった。それぞれの呼吸の後継がいないという話をしていた時もお前は、突如奇妙な楽観視をし始めて、笑った。"特別なのは自分たちの世代だけなのだ"と慢心していた私は、気味の悪さと苛立ちで吐き気がした。何が面白いと言うのだ。人間が傷を再生させて強靭な肉体を持ち、更には致命傷となる攻撃をされる。そんな未来を想像して何が面白い。己が負けることなど考えただけで腸が煮え返る。)

 

黒死牟は、鬼殺隊最強の剣士は縁壱だと思っていた。そしてその至高の剣士がいなくなり、自分は誰にも負けるわけにはいかないと鬼になってでも呼吸を極める道を選んだのだ。

 

黒死牟(俺はもう二度と敗北しない。そうだ、例え頚を砕かれようとも。体は崩れていない、まだ再生できる、まだ死なぬ。そして私は頚の切断からの死を克服する。)メキメキ

 

そして黒死牟は、強い執念でブロリーに潰された頭を再生して克服してしまったのだった。それは、口元に沢山の牙がついて額からは鋭利な角が飛び出し、身体中から刺のような刃が生えている完全に人間離れした姿だった。

 

実弥「頭を再生しやがったあの野郎!!糞が!!畜生がァァ!!」

 

無一郎「・・ッ!」

 

玄弥「そんな・・もうどうすることも出来ないのか・・?」

 

行冥「・・・・」(私はブロリーが勝つと信じるぞ。)

 

黒死牟(克服した・・これでどんな攻撃も無意味・・太陽の光以外は・・これで私は・・誰にも負けることはない・・)

 

実弥達は頚を再生されたことを忌々しそうに叫び、黒死牟も克服に成功して"誰にも負けることはない"と強い自信を覗かせた。しかし、黒死牟の姿を見たブロリーは嘲笑った。

 

ブロリー「なんだお前、その姿は?更にムシケラっぽい見た目になったな。そんなので俺を倒すつもりか?」

 

黒死牟「私は・・何者にも・・負けない・・一番強い侍に・・なる・・」

 

ブロリー「自分自身の姿を確認してから言うんだな。」ジャキン

 

ブロリーは鞘から自分の刀を抜くと、光沢がある緑色の部分を黒死牟に見せた。刀に映った自分の姿を見た黒死牟は絶句した。

 

黒死牟(何だこの、醜い姿は・・侍の姿か?これが・・これが本当に俺の望みだったのか?こんな醜い姿になってまで・・)

 

黒死牟は膝をついて肩を震わせながら今までの自分の信念を思い返していた。

 

黒死牟(頚を落とされ、徹底的に追い詰められて、それでも負けを認めぬ醜さ、""生き恥""。こんなことの為に私は何百年も生きてきたのか?負けたくなかったのか?醜い化け物になっても・・強くなりたかったのか?人を喰らっても・・死にたくなかったのか?こんな惨めな生き物に成り下がってまで・・違う私は・・私はただ・・縁壱、お前になりたかったのだ。)

 

黒死牟は自分自身の本当の思いに気づいて人間時代だったときの記憶が一気に流れてくるのだった。

―――黒死牟もとい"継国巌勝"が生まれたのは戦国時代のことであった。当時は双子で生まれると跡目争いの原因とされるため不吉とされていた。弟である"継国縁壱"は、生まれつき痣もあって父親が"弟を殺す"と言った。それを聞いた母親が烈火のごとく怒り狂って手がつけられなくなり、十歳に寺へ出家させる手筈となった。巌勝から見た縁壱は、常に母親の左脇にぴたりとくっついていた。それを見た巌勝は可哀想だと思ったのだ。父親の目を盗んで縁壱の部屋に遊びに行き、笛を作って渡したこともあった。縁壱は全く笑わず、全くしゃべらないので耳も聞こえないのだと思われていた。ある日、巌勝が庭で素振りをしていると、縁壱は松の木の陰に立っていた。

 

縁壱「兄上の夢はこの国で一番強い侍になることですか?俺も兄上のようになりたいです。俺はこの国で二番目に強い侍になります。」

 

突然口を開いたかと思えば、流暢に話しかけられて巌勝は手から木刀を落とすほど驚いた。そして"自分も侍になる"と言って笑った縁壱を、巌勝は"十になったら寺へ追いやられる。侍ではなく僧侶になると決まっている。それをわかっていないのか?"と思い、表情には出さないが気味悪がっていた。それどころか"母親を見てすぐにしがみつきに行くような者がなれるはずもない"とすら思っていた。しかし、縁壱はその日以降教えてほしいとうろちょろするようになった。そして巌勝に剣技を教えていた父親の輩下が戯れに竹刀を持たせた。持ち方と構え方を軽く伝えただけで"打ち込んでみよ"と構えたのだ。

 

スゥゥウウ ガガガガガ

 

だが、戯れだったはずなのに巌勝がどれだけ頑張っても一撃を入れられなかった輩下を、縁壱はいとも簡単に打ち取ってしまったのだ。輩下は骨などには異常はなかったものの、打ち込まれた箇所が拳程の大きさに腫れ上がっていたのだった。縁壱はその後、侍になりたいとは言わなくなった。彼にとって人を打ち付ける感触がとても不快なものだったからだ。しかし、兄である巌勝は縁壱の強さの秘密をどうしても知りたくて食い下がって問い詰めた。すると

 

縁壱「打ち込んでくる前に肺が大きく動く。骨の向きや筋肉の収縮、血の流れをよく見れば良い。」

 

この時の巌勝は、縁壱が何を言ってるのかさっぱり理解出来ていなかった。生き物の体が透けて見えていると理解するまで時間がかかった。生まれつきの痣と同じように生まれつきの特別な視覚、そしてそれに即応できる身体能力を持っている。巌勝が今まで哀れんでいた者は、自分よりも遥かに優れていた。

 

縁壱「剣の話をするよりも俺は、兄上と双六や凧揚げがしたいです。」

 

縁壱は、剣技よりも他の遊びをする方が好きだった。しかし、巌勝は剣技を極めたいと思っていた。巌勝もかなりの才能を持った逸材であった。父親から才覚が認められていて努力すればそれに応じて力をつけていく。縁壱は更に優れていたのだ。しかし、神々に寵愛を受ける程の才能を持っていても本人にその気がなければ意味はない。縁壱にとって剣の話はとてもつまらなそうだったのだ。

その日の夜、巌勝は"父の輩下は縁壱のことを報告するはず""家を継ぐのは縁壱だ""自分は物置同然の部屋へ閉じ込められて三年後に寺に追われる""侍になる夢は叶わない"そんな不安で一睡も出来てなかった。そんな時、縁壱が部屋の前で自分を呼んだ。

 

縁壱「兄上。」

 

巌勝「・・何だ?」

 

縁壱「母上が身罷られました。」

 

巌勝「何だと?何故突然そのような、何があった?」

 

突然二人の母親が亡くなったのだ。巌勝にとってもそれは衝撃的なことであり、詳細を縁壱に聞くが縁壱は答えなかった。

 

縁壱「申し訳ありません。仔細は側務めの"いと"にお聞きください。俺はこのまま寺へ発ちます。」

 

巌勝「発つ?今からか?」

 

縁壱「はい、別れの挨拶だけさせていただきたく。この笛を。」

 

巌勝「笛?」

 

縁壱が懐から取り出したのは、かつて縁壱が閉じ込められてた時に巌勝が作って渡した小さな笛であった。縁壱はそれを宝物のように大切に扱って笑っていた。

 

縁壱「いただいたこの笛を兄上だと思い、どれだけ離れていても挫けず、日々精進致します。」

 

巌勝「・・・・」

 

縁壱は満足したように笑って頭を深々と下げたが、巌勝は言葉こそ返さなかったが、縁壱とは全く違う思いを抱いていた。この笛は正確に調節して作ったわけではないため、吹いても外れた音しか出ず、本人はがらくた程度にしか思っていなかった。とっくに捨てられてるものだと思ったそれを、笑いながら大切にする。そんな縁壱を見て、巌勝は気味が悪いと思っていた。

そしてそのまま荷物も殆ど持たずに早々に屋敷を去っていったのだ。巌勝はその後、母親の日記を見た。そこには縁壱は自分が跡継ぎになると気づいていて予定よりも早く家を発つことにしたこと、母親自身の病も死期も左半身の不自由に気づいていたことが書かれていた。縁壱は母親にしがみついていたのではなく、弱っていた母親を支えていたのだ。それに気づいた巌勝は、全身が焼き付くす程の嫉妬心を覚え、縁壱を心の底から憎悪したのだ。

 

巌勝(頼むから死んでくれ。お前のような者は生まれてさえ来ないでくれ。お前が存在しているとこの世の理が狂うのだ。)

 

巌勝はその後縁壱を全力で嫌悪するようになった。父が縁壱を連れ戻そうとしたときも、叶うならば全力で抗議したかった。しかし、寺へ来てみれば縁壱はそこへ来ておらず、忽然と消息を絶った。何が起きたのかは理解できなかったが、願いが叶ったことに安堵していた。

縁壱が影も形も無くなってから実に十年。成人になった巌勝は、充実した日々を送っていた。妻をもらい子供も生まれ、のどやかでどこか退屈した毎日だった。しかし、野営していた所を鬼に襲われて仲間が全滅し、絶体絶命の時に鬼の頚が跳ねられる。鬼を倒したのは長く顔も見ていない縁壱だった。幼少期とは比べ物にならない程に剣の技術は極められ、人外の者も容易く倒した。呆然としている巌勝に縁壱は声をかけた。

 

縁壱「申し訳ございません。兄上。」

 

縁壱は自分の到着が遅れて巌勝の配下が死んだことを詫びた。強くて非の打ち所がない人格者となっていたのだ。鬼を狩る組織があると知った巌勝は、縁壱の技術と強さをどうしても自分の力としたいと思い、妻と子供を捨てて鬼殺隊に入る道を選んだ。縁壱は誰にでも呼吸を教えて派生のものが次々と出来上がった。しかし、誰一人として縁壱と同じ"日の呼吸"が使えるものは現れなかった。巌勝が使える"月の呼吸"も"日の呼吸"の派生のものだった。そして巌勝にも痣が出る。それでも"日の呼吸"を使えることはなかった。"もっと鍛練を重ねれば縁壱に追いつけるのだろうか?"悔しい思いでいっぱいだったとき、痣者が次々と亡くなったのだ。"寿命の前借りに過ぎない、未来も時間も残されてない"その事実に巌勝は絶望していた。そんな時、巌勝は無惨と出会った。

 

無惨「ならば鬼になれば良いではないか。鬼となれば無限の時を生きられる。お前は技を極めたい、私は呼吸とやらを使える剣士を鬼にしてみたい、どうだ?お前は選ぶことが出来るのだ。他の剣士とは違う。」

 

無惨の提案は巌勝が心底願って欲していたものを与えた。そして黒死牟という鬼としての名を使うようになり、今に至るのだ。

―――縁壱の実力に追いつくという目的はいつか、どれだけやられても再生して敗北を認めないというものに変わっていた。往生際が悪い今の自分は恥を晒しているということに気づいた黒死牟は、消え入りそうな声でブロリーに言った。

 

黒死牟「頼む・・私を・・残酷に・・殺してくれ・・これ以上・・生き恥を・・晒したく・・ないのだ・・」

 

ブロリー「それは別に良いが、何故残酷な死に方を求めるんだぁ?」

 

黒死牟「今までの・・私自身に・・対する・・けじめ・・そして・・せめて・・お前には・・どうしても・・敵わなかったと・・名誉ある・・死が・・欲しいのだ・・」

 

ブロリー「良いだろう。破壊の呼吸、拾玖の型、ギガンティックジェノサイド!」ポゥ グッ ドゴォ!! デデーン

 

ブロリーは左手に緑色の気を貯めて握り締めると、そのまま黒死牟を殴り飛ばした。その衝撃で黒死牟の肉体は粉砕され、飛び散った肉片は灰になっていった。

黒死牟は気がつくと辺りが真っ暗な空間へと立っていた。しかし、生気を体に感じることはなかった。その点から黒死牟は理解した。

 

黒死牟(体に生気を感じない。そうか、ブロリーはやってくれたのだな。結局、私は何も手に入れることが出来なかった。妻も子も捨て、人間であることを捨て、侍であることも捨てたというのに、ここまでしても駄目なのか?道を極めたものが行き着く場所は同じだとお前は言った。しかし私は辿り着けなかった、お前と同じ世界を見ることが出来なかった。日の呼吸の型を知る剣士も、お前の死後あの方と私で徹底的に殺し尽くした。それなのに何故お前の呼吸は残っている?何故私は何も残せない?何故私は何者にもなれない?何故私とお前はこれ程違う?私は一体何の為に生まれてきたのだ・・教えてくれ、縁壱。)

 

黒死牟は、今までの人生と鬼生で全てにおいて縁壱よりも劣っていたと振り返って打ちのめされていた。そんな時、背後から聞き覚えのある声がした。

 

縁壱「兄上。」

 

その声に反応して黒死牟はゆっくりと振り返る。そこにはかつて見るだけで吐き気と苛立ちを感じた実の弟、縁壱の姿だった。しかし、もう死んだからなのか憎かったはずなのに今はもうなんとも思わなくなっていた。

 

黒死牟「縁壱・・」

 

縁壱「兄上、私はずっと貴方を待っておりました。鬼になった兄上の頚を切り損ねてから後悔と未練でずっと心痛しておりました。ブロリー殿のおかげで、ようやく兄上をお迎えにあがれました。」

 

黒死牟「縁壱、教えてくれ。かつてあの方をも追い詰めたお前は奴に、ブロリーに勝てるか?」

 

縁壱「・・おそらく、いえ、絶対に倒せないでしょう。ずっと見守っていましたが、彼は鬼の血鬼術に加え、日輪刀ですらそもそもとして効きませぬ。透き通る世界で行動を先読みしても彼自身が持つ速さがそれを上回ります。私では瞬く間に手も足も出ずにやられることでしょう。ブロリー殿が鬼ではないことに、心底安堵しております。」

 

縁壱は安心した表情で淡々とブロリーについて評価していた。自分では絶対に倒せないと言いきった縁壱。それだけでなく鬼ではないことをホッと胸を撫で下ろしている様子に、黒死牟は驚いたのか、六つある目を全て見開いていた。

 

黒死牟(縁壱・・まさかお前がそこまで弱気な発言をするとはな。あの方をも追い詰め、この世の理の外にいると見せつけたお前が敗北宣言をするとはな。お前も、人間だったということか。)

 

縁壱が不安に思っていたところを見て、黒死牟は自身に乗っていた重りのようなものがストンと落ちたような感じがして気が随分と楽になったことを実感した。そして黒死牟は、炎が燃え盛っている方へ向けてゆっくりと歩きだした。その時に、鬼の姿から人間の姿へと戻っていた。

 

縁壱「兄上、どちらへ行かれるのですか?」

 

巌勝「私は醜い生き物に成り下がって沢山の人を喰らって殺してきた。お前と同じ方向へは行けぬ。」

 

縁壱「兄上・・お供します。」

 

縁壱は巌勝と共に地獄へ行くと言い出して音もなく一瞬で巌勝の横に並んだ。それを見た巌勝は驚愕の顔で縁壱を見た。

 

巌勝「何を馬鹿なことを・・!」

 

縁壱「兄上が鬼となって沢山の人々を喰らったことの一因は私にもあります。私が鬼舞辻を惨殺できなかったから、兄上を倒せずに私が寿命尽きてしまったから。兄上の大罪を増やしてしまった。なのでこれは私なりのけじめです。」

 

巌勝「縁壱・・好きにしろ。」

 

縁壱「!ありがとうございます。兄上、全ての罪を償い終えてまた来世でも兄弟になったのなら、兄上と双六や凧揚げがしたいです。」

 

巌勝「・・兄弟で生まれ変わったのなら、考えておこう。」

 

巌勝と縁壱は並んで炎の方へと歩いていき、やがて包まれて消えていくのだった。

―――現実世界では、ブロリーが黒死牟を倒したと確信するや否や玄弥たちに囲まれた。無一郎に至っては後ろから飛び付いていた。

 

玄弥「破壊柱様、また助けられちまったな。」

 

行冥「南無・・死人を出さずに上弦の壱を倒した、実に素晴らしいことだ。この快挙は君でしか成し遂げられなかった。本当によくやった。」

 

無一郎「ブロリーさーん!助けてくれてありがとう!」

 

ブロリー「お前達も俺が来るまでよく耐えたと誉めてやりたいところだぁ!」

 

そんな中、実弥が最後にブロリーに声をかけた。それに反応してブロリーはゆっくりと振り返る。

 

実弥「おい、サイヤ人。」

 

ブロリー「なんだぁ?」

 

実弥「・・お前が玄弥の傷を治して助けてくれたんだろォ?・・その事については感謝してるぜぇ。だから・・ありがとな!!ブロリー!!お前を認める!」

 

実弥は恥ずかしいのか顔を真っ赤にしながら吐き捨てるように礼を述べた。行冥や無一郎は、今まで散々ブロリーのことを毛嫌いしていた実弥の感謝の言葉には、声もでないほど驚いていた。

 

ブロリー「フフフ!そうか。お前の兄弟を助けられたことはよかったな。仲良くしてやれよ。」

 

実弥「言われるまでもねェ。」

 

実弥とブロリーはお互いに拳同士で軽く突いて健闘を称えあった。そしてブロリーは、まだ残っている鬼の元へ向かって飛んでいったのだった。




今回は黒死牟が少し救われるような感じで終わらせてみました。次回は獪岳編や鳴女編を書く予定です。今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。それではまた次回。


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上弦の鬼全滅へ!師匠の敵を取れ!無限城の戦い!

第四十三話です。今回の話は短めです。駄文ですが最後まで読んでくださると嬉しいです。


ブロリーが黒死牟と戦い終えた時、ちょうど善逸はある畳の部屋へと来ていた。人よりも聴覚に優れた善逸は、姿は見えないもののすぐそこに仇がいることを聴覚と気配で感じていた。

 

善逸「いるんだろ、出て来い。そこにいるのはわかってる。」

 

善逸の声に反応するように鬼特有の鋭く尖った爪を持つ手がゆっくりと襖を開けた。

 

獪岳「口の利き方がなってねえぞ、兄弟子に向かって。少しマシになったようだが、相変わらず貧相な風体をしてやがる。久しぶりだなァ善逸。」

 

現れたのは、痣が浮かび上がって目に"上弦陸"の文字が書かれた鬼だった。彼がかつて善逸の兄弟子であった"獪岳"である。獪岳は善逸を見下す口調で圧をかけたが、善逸はそんなことでは怯まずに冷たく言いはなった。

 

善逸「獪岳、鬼になったお前を、俺はもう兄弟子と思わない。」

 

獪岳「変わってねぇなあ。チビでみすぼらしい。軟弱なまんまでよ。柱にはなれたのかよ?壱の型以外使えるようになったか?なあおい善逸。」

 

善逸「適当な穴埋めで上弦の下っぱに入れたのが随分嬉しいようだな。」

 

獪岳「へぇ、ハハッ!!言うようになったじゃねぇかお前・・」

 

善逸「何で鬼になんかなったんだ?」

 

獪岳「ははっお前には・・「雷の呼吸の継承権を持った奴が何で鬼になった!」

 

"関係ない"と言おうとした獪岳を遮って善逸が顔中に血管を浮かび上がらせて叫んだ。

 

善逸「アンタが鬼になったせいで爺ちゃんは腹切って死んだ!!!爺ちゃんは一人で腹を切ったんだ!!介錯もつけずに!!腹を切ったとき、誰かに首を落として貰えなきゃ!!長い時間苦しんで死ぬことになる!!爺ちゃんは自分で喉も心臓も突かず死んだ!!雷の呼吸の使い手から!鬼を出したからだぞ!!」

 

善逸の言葉を嘲笑うように獪岳は大声で返した。

 

獪岳「知ったことじゃねぇよ!だからなんだ?悲しめ?悔い改めろってか?俺は俺を評価しない奴なんぞ相手にしない!俺は常に!!どんな時も!!正しく俺を評価する者につく!爺が苦しんで死んだなら清々するぜ!あれだけ俺が尽くしてやったのに俺を後継にせず!テメェみたいなカスと共同で後継だと抜かしやがったクソ爺だ!元柱だろうが耄碌した爺に用はないからな!ハハハハ!」

 

善逸は一切表情を変えていないが、獪岳への怒りで握り拳がワナワナと震えていた。そして善逸は自虐するように笑うと獪岳を指差した。

 

善逸「・・フッははっ、爺ちゃんは耄碌してねぇよ。俺がカスならアンタはクズだ!壱の型しか使えない俺と!壱の型だけ使えないアンタ!後継に恵まれなかった爺ちゃんが気の毒でならねぇよ!」

 

獪岳「テメェと俺を一緒にすんじゃねぇ!!!雷の呼吸、肆の型、遠雷。」

 

善逸と一緒にされた獪岳は逆鱗に触れたかの如く怒り狂い、抜刀して斬りかかった。血鬼術で周囲に黒い稲妻が走る。しかし、善逸は、柱傾向と日々の努力で獪岳以上のスピードを出せるようになっていた。善逸は構えたまま獪岳の首筋を斬って失血させる。

 

善逸「おせーんだよ、クズ。」

ドバッ

 

獪岳「!!」(斬られた!!速い・・コイツ!!動きがまるで別人だ!!)

 

獪岳は鬼としての急所に一撃を入れられた影響か、鬼になった経緯を走馬灯のように思い出した。

―――獪岳はかつて任務中に黒死牟と遭遇していた。その時に獪岳は、命乞いをして鬼になる道へと進んだ。当時の獪岳では黒死牟に到底太刀打ち出来ずに地面へと膝まついていた。黒死牟としても炭治郎やブロリーの活躍で上弦の鬼が次々と倒されていることを考えて戦力を増やすために"鬼になるなら命は助けてやる"と提案し、獪岳は二つ返事で受け入れたのだ。

 

黒死牟「鬼となり・・さらなる強さが・・欲しいか・・お前も・・あの方に・・認められれば・・我らの・・仲間と・・なるだろう・・強い剣士程・・鬼となるには時間がかかる・・私は丸三日かかった・・呼吸が使える者を鬼とする場合・・あの方からの血も・・多く頂戴せねばならぬ・・」ぼとぼと

 

黒死牟は自身に流れている無惨の血を手から垂れ流し、獪岳は一滴も溢さないように緊張と恐怖で震える手で血を溜めていく。獪岳は生きるためなら手段は問わないことをしていた。それ故、恐怖で震えてはいるが、鬼になることに全く躊躇いはなかったのだ。

 

黒死牟「そして稀に・・鬼とならぬ体質の者も・・・・存在するが・・お前は・・どうだろうな・・有り難き血だ・・一滴たりとて零すこと罷り成らぬ・・零した時には・・お前の首と胴は泣き別れだ。」ゴゴゴ

 

更なる黒死牟の殺気を感じた獪岳は、言われた通り一滴も零さないように慎重に飲んで鬼となり、今に至るのだ。

―――黒死牟の殺気と比べた獪岳は善逸のことを甘く見ていたが、その善逸に危うく頚を落とされかけた。そのことに憎悪の感情を募らせた。

 

獪岳(我妻善逸、こいつはカスだ。いつもベソベソと泣いていた。何の矜持も根性もない。こんなカスと二人で後継だと抜かしやがった糞爺!!)

 

獪岳は自分だけが特別でないと気が済まない性格だった。それ故に、善逸と共に分け隔てなく大切にしていた桑島慈悟郎に対して不満を募らせていき、やがて鬼になってからは殺意と嫌悪へと変わっていた。そのことを表すかのように獪岳は叫んだ。

 

獪岳「死んで当然なんだよオオ!!爺もテメェもォオ!!雷の呼吸、弐の型、稲魂。」

 

一息で瞬きする間に五連撃打つ技で切り込むが、善逸も応戦してなんとか頬をかするだけに止めた。

 

善逸「大勢人を喰ったな!もう善悪の区別もつかなくなったんだな?」

 

獪岳「善悪の区別はついてるぜ!!俺を正しく評価し、認める者は"善"!!低く評価し、認めない者が"悪"だ!!参の型、聚蚊成雷!」

 

今度は回転しながらの波状攻撃で確実に善逸を傷つけていく。そして追い討ちをかけるように次の技を放った。

 

獪岳「伍の型、熱界雷!」

 

獪岳の技をもろに食らった善逸は、自分の体の中で少しずつ肉や皮膚が裂けていくのを感じた。しかし、それでもまだ意識は失ってなかった。

 

獪岳「どうだ!?血鬼術で強化された俺の刀の切れ味は!!皮膚を!!肉を!!罅割って焼く斬撃だ!!雷の呼吸、陸の型、電轟雷轟!」

 

最後の技を受けた善逸は、真逆さまに落下し始めた。それを見て勝利を確信したかのように、獪岳は高らかに言いはなった。

 

獪岳「喰らった斬撃はお前の体で罅割れ続ける!目に体に焼きつけろ!俺の力を!鬼になり雷の呼吸を超えた!!俺は特別だ!お前とは違う!お前らとは違うんだ!!」

 

落下していく善逸は獪岳と過ごした日々を思い出していた。お世辞にも仲が良かったとは言えなかった。獪岳の態度で嫌われていることを理解することは難しくなく、常に善逸のことを見下していた。そして鬼殺隊入隊後も、獪岳の陰口を言っている隊士を殴るなどしたが、それでも獪岳の態度が改まることは遂になかった。

 

善逸(獪岳が俺のことを嫌っていたのは十分わかっていたし、俺だって獪岳が嫌いだった。でも尊敬してたよ、心から。アンタは努力してたしひたむきだった。いつも俺はアンタの背中を見てた。特別だったよアンタは。爺ちゃんや俺にとって特別で大切な人だったよ。だけどそれじゃ足りなかったんだな。どんな時もアンタからは不満の音がしてた。心の中の幸せを入れる箱に穴が空いてるんだ。どんどん幸せが零れていく。その穴に早く気づいて塞がなきゃ、満たされることはない。爺ちゃんごめん、俺たちの道は分かたれた。ごめん、兄貴!)

 

善逸は最後の力を振り絞って空中で一回転すると、壁に足をつけて力を込める。

 

獪岳「!?」(まだ余力が―・・)

 

善逸「雷の呼吸、漆の型、火雷神!」ザン!

 

そして壁を一気に蹴ると、目に見えぬ速さで雷の残像を思わせる動きで獪岳の頚を斬った。

 

獪岳(みっ・・見えなかった!!何だ!?今の技!速すぎる!俺の知らない型だ!何を使った!?)「畜生!!畜生!!やっぱりあの爺、贔屓しやがったな!!お前にだけ教えて俺に教えなかった!」

 

獪岳は自分が知らない善逸の技を、師匠である桑島慈悟郎が善逸にだけ教えたものだと決めつけて癇癪を起こしていた。しかし、善逸も共に落下しながら否定する。

 

善逸「違う、爺ちゃんはそんな人じゃない。これは俺の型だよ。俺が考えた俺だけの型。この技で、いつかアンタと肩を並べて戦いたかった・・」

 

自分で考えた新しい型だと告白するが、それは獪岳を更に混乱させて憎ませるだけだった。獪岳は血走った目で善逸を睨み付ける。

 

獪岳(七つめの技だと?六つしか型がない雷の呼吸から、七つめを編み出した?アイツが?壱の型しか使えない奴が?俺よりも劣っていたカスが?・・・・耐えられない耐えられない!!そんな事実は受け入れられない!!あんな奴に俺が?俺が負けるのか?頭が変になりそうだ。いや、違う。負けじゃない。あのカスも落下して死ぬ。もう体力は残ってないはず。アイツも俺と死ぬんだ。)

 

獪岳が徐々に灰になりながら善逸との勝負は相討ちになると確信した時、無限城内の襖の一角を突き破って『伝説のスーパーサイヤ人』形態のブロリーが現れる。

 

ブロリー「フハハハハハハ!!」ガシッ

 

善逸「!ブロリーさん!」

 

獪岳「!?」

 

ブロリー「もう終わっていたようだな、流石善逸と誉めてやりたいところだぁ。だが、お前も相当な怪我を負っているな。今回だけだからな。」ポワワワワワ

 

ブロリーはもう余力が残ってない善逸を抱えると、そのまま掌を向けて気を送り込んで回復させた。朦朧としていた意識がはっきりとした善逸は真剣な顔でブロリーに言った。

 

善逸「ブロリーさん。俺をしたまで連れてってくれませんか?アイツをちゃんと倒せたのかを確認したい。」

 

ブロリー「いいだろう。」ビュオオ

 

善逸の頼みを承諾して一番下へと向かう。そして地面に来ると、半分以上が灰になっている獪岳が驚きと混乱の表情で二人を見た。

 

善逸「良かった。アンタから灰になって消えていく音がする。俺はちゃんと蹴りをつけられたんだな。」

 

獪岳「!おいソイツは・・!上弦を次々と倒してる・・!」

 

善逸「アンタも鬼殺隊にいたときには聞いたことあるだろ?彼はブロリーさん。鬼殺隊最強の破壊柱だ。」

 

ブロリー「鬼殺隊にいた?どう言うことだ?」

 

善逸「鬼になって裏切ったんですよコイツは。そのせいで孤児だった俺を引き取ってくれた爺ちゃんは腹を切って死んだんだ・・」

 

ブロリー「そうか、頑張ったな。」

 

獪岳もかつては鬼殺隊に身を置いていた為、ブロリーのことは知っていたのだ。そして上弦の鬼を倒していく快進撃を見せていることも分かっていた。そのブロリーは緊張の糸が切れて悲しそうな表情をしてる善逸を慰めていた。獪岳はブロリーに大声で呼ぶ。

 

獪岳「おっおい!破壊柱!」

 

ブロリー「ん?何だぁ?」

 

獪岳「さっきのやつ見てたぞ、あの力で俺を助けてくれよ!」

 

善逸「お前・・何言ってんだ?」

 

獪岳「カスは黙ってろ!あの力は再生させられるんだろ?だったらそれで俺を回復させろよ!悪い話じゃないはずだ。俺はまた鬼殺隊に戻って鬼を倒す、そっちにとっても戦力が増える。鬼になった俺は血鬼術と呼吸を組み合わせて強化されて特別に強いんだ。悪くないだろう!?だから俺を回復させろよ!」

 

ブロリー「・・・・」

 

獪岳が必死に言う内容にブロリーは無表情のまま聞いていたが、やがて背を向けると力強く言い放った。

 

ブロリー「裏切り者は無視。」

 

獪岳「ハァッ☆って違う!何でだよ!いいから助けろよ!!」

 

ブロリー「何故鬼になって裏切ったお前を助けなければいけないんだ?善逸は大事な仲間だから助けたがお前はもはや敵だ。鬼殺隊に戻ったところで何のメリットもない。俺に助ける理由はない。それにさっきからお前、俺の力を利用しようとしている魂胆が丸見えだ。俺は自分の私利私欲の為に他の奴を利用したり操ったり裏切ったりする奴が一番嫌いなんだ。お前はその全てに当てはまる。見るのも不愉快な位にはな、一人で惨めにくたばるが良い!」

 

獪岳「~~」ボロボロ

 

ブロリーが吐き捨てるように良い終えると同時に、獪岳は完全に灰になって消えた。その直前に何か叫んでいるようだったが、口元が消えていたので二人には何を言ってるのかは理解できなかった。ブロリーは善逸に向かって言った。

 

ブロリー「善逸、すぐ近くに沢山の人間がいる気配がする。多分鬼殺隊だろう。一人で行けないなら合流することだ。俺は先に行く。」ビュオオ

 

善逸「!わかりました。ありがとうございます。」

 

そしてブロリーはすぐ近くにいる次の鬼を目指して飛んで移動するのだった。

 

―――一方で小芭内と蜜璃は鳴女を相手に苦戦を強いられていた。無限城そのものを動かす血鬼術で、全く近づくことが出来ないのだ。

 

小芭内(時透や不死川達、それにサイヤ人も上弦の壱を倒している!それに比べて俺はどうだ?一体何をしている?あの琵琶女の血鬼術・・殺傷能力が高いわけではないが、延々と鼬ごっこをさせられる。頚を狙えない、決着がつかない。柱二人がこの女の為に足止めを喰らっている。何とか現状を打破しなければ。他の柱たちと合流したくともどの道阻まれる。)

 

蜜璃(お城そのものを動かす血鬼術のせいで全く近づけないわ。飛び出てくる壁や床を避けるので精一杯だわ。どうすれば良いの!?)

 

蜜璃も小芭内もこの状況を突破する方法を見つけられずに詰んでいた。しかし、そんな時に黒死牟を倒して獪岳を倒した善逸を救済した『伝説のスーパーサイヤ人』形態のブロリーが下から飛んでやって来たのだ。

 

ブロリー「こんなすぐ近くに別のムシケラがいたとはな、俺は運が良いなぁ。」

 

蜜璃・小芭内「ブロリーさん!/サイヤ人・・!」

 

ブロリーの到着に蜜璃は心底安堵した表情を浮かべ、小芭内は苦虫を噛み潰したような表情をした。

 

小芭内(コイツに譲るのは非常に癪だが、背に腹は変えられんな。)

 

蜜璃(やったやった!良かった良かった!ブロリーさんが来てくれたわ!これなら百人力ね!)

 

ブロリー「ん?蜜璃達もいたのか。」

 

蜜璃「ブロリーさん。あの女の人は琵琶でこのお城そのものを手足のように動かせる血鬼術を持ってます。さっきから翻弄されて全く近づけないんです。」

 

ブロリー「そうか、良い情報をくれたこと、感謝するぞ蜜璃。」ポン

 

蜜璃「きゃっ///」

 

有益な情報を提供した蜜璃に礼を言ったブロリーは、彼女の頭を軽く数回叩いた。それに蜜璃は顔を赤らめて照れた様子を見せた。

 

小芭内(このサイヤ人・・っ!誰の許可を得て甘露寺の頭を撫でてるっ・・。本当なら今すぐ失せさせたいが、あの琵琶女を倒すためにも無下には出来ないっ。)

 

そして小芭内は蜜璃とふれあうブロリーに嫉妬して顔中に血管が浮かび上がる程睨みつけていたが、ブロリー本人が小芭内の殺気に気づくことはなかった。ブロリーは臨戦態勢をとって鳴女へと一直線に飛んだ。

 

鳴女「!」(この鬼狩りは・・っ!無惨様が最も警戒してた異脳の力を使う柱の・・っ!産屋敷邸があったところで撒いたと仰ってたはず・・っ!どうしてここにいるっ!?どうやって入って来たっ!?それよりも無惨様が復活するまで私が何とか足止めしなければっ!)べべんべん

 

鳴女は自身の血鬼術を経由したわけでもないのに無限城内にいるブロリーの姿を見て動揺していた。だがすぐに切り替えて無惨が復活するまでの足止め、あわよくば殺そうと手にある琵琶を高速で鳴らし始める。ブロリーを狙って床や壁が飛び出して襲いかかってくる。だが、ブロリーは腕を組んで余裕そうに見極めて楽々と避けていた。

 

ブロリー「ほう、なかなか面白い。確かにこれを続けていたら埒が明かないな。」ビュオオ

 

組んでいる腕をほどいて更に近づく。しかしその時、左右の壁が飛び出してブロリーを挟んで圧迫しようと猛スピードで迫ってくる。

 

ブロリー「フン!こんなもの!」ガガッ バキバキ

 

しかし、ブロリーは壁を腕で受け止めると、そのまま力で無理矢理押し返す。ブロリーの力と鳴女の血鬼術の圧迫で負荷に堪えられなくなった壁は大きな音をたてて崩れた。そしてブロリーは鳴女との距離を一気に詰めた。

 

鳴女「!」(効いてないの!?こんな一気に・・っ!どうすれば・・っ!?・・一か八かやるしかない。)べんべんべべん

 

突如鳴女は琵琶を鳴らすと自身を取り囲むように襖を出した。ブロリーはそのすぐ手前で止まり、地面に降りた。

 

ブロリー「・・何してるんだぁ?」

 

鳴女「お前から身を守る為に隙間なく血鬼術を出した。私は確かにお前には勝てないがこうすれば殺られることもない。このままあの方のためにお前を足止めする。」(この襖は私の術で琵琶を鳴らさない限り開かないようになっている。これで手出しは出来ないはず。)

 

ブロリー「一人用の襖の塊でか?」ガシッ

 

鳴女「!何を・・!?」

 

ブロリーは両手で塊になってる襖を掴むと、雄叫びをあげて自分の頭上へと持ち上げた。

 

ブロリー「うぉぉおおおああああ!!!」バキバキ ぼこぼこ

 

そして腕力で襖の塊を潰すと赤い血が滴り落ちる。鳴女が襖ごと圧迫されて潰されているのだ。鳴女は自身の骨が折れていく激痛を感じた。

 

鳴女「ううううっ。がっ!ああああ!!・・自分の血鬼術ごと殺されるとは・・これも上弦の鬼の定めなの・・?」バキバキ グチャッ

 

鳴女は急速に薄れゆく意識のなか、最後に十二鬼月になったことへの皮肉を口にして完全に押し潰された。

 

ブロリー「がぁぁああ!うぉぉああ!うぉぉらあっ!!」ビシュッ ヒューン ドカーン デデーン☆

 

そしてブロリーはスクラップになった襖の塊を投げ飛ばすと、気弾を当てて木っ端微塵に粉砕したのだった。鳴女を倒したブロリーは蜜璃と小芭内へと振り返る。

 

ブロリー「この俺が襖程度の防御で止まると思っているのか?」

 

蜜璃「ブロリーさん!流石です!凄いです!」

 

小芭内「・・そうだな、よくやった。」

 

ブロリー「お前達もよく粘ったな。流石柱と誉めてやりたい。」

 

蜜璃「きゃ///ブロリーさんに誉めてもらっちゃった///えい!」ぎゅっ

 

ブロリー「!!」

 

蜜璃はブロリーに誉めてもらえた嬉しさでブロリーに抱きついた。本人もこの世界に来てから女性に抱きつかれるのは慣れたのか、表情こそ変わるものの驚きの声をあげることはなくなった。

 

小芭内「おい貴様!甘露寺に触るな!」

 

ブロリー「俺に言うな。」

 

小芭内「お前のような奴が甘露寺に近づくだけで彼女が穢れるんだ。汚い体で彼女に触るなど言語道断だ。本来は万死に値するがお前は柱だから特別に見逃してやる。鬼を倒したんだったらさっきと失せろ。」ネチネチ

 

蜜璃「ちょっと伊黒さん!いくらなんでもその言い方はひどいですよ!ブロリーさんは穢れてなんかいません!汚くもないです!それ以上ブロリーさんを悪く言うのは許しません!」

 

ブロリーを猛批判していた小芭内に、怒った蜜璃がブロリーを庇うように前に出て言い返したのだ。これには小芭内も驚いて目を見開いた。

 

小芭内「!?甘露寺・・これは君のためを思って・・」

 

蜜璃「私のためだと言うのなら何でブロリーさんを追い払おうとするんですか!?琵琶の女の人を相手に苦戦していた私たちを助けてくれたじゃないですか!私はブロリーさんにどこかに行ってなんて全く思ってません!それなのにどうしてそんなにひどいこと言うんですか!?私、恩を仇で返すような人にはキュンとしません!見損ないましたよ伊黒さん。」

 

小芭内「・・ッ・・ッ・・」(俺は甘露寺に・・嫌われ・・たのか・・っ?)

 

小芭内は蜜璃に散々言われたことと、最後に冷たく見損なったと言われたショックでうつむいて肩を震わせた。それを見かねたブロリーは蜜璃に言った。

 

ブロリー「蜜璃、そこまでしなくても良い。俺は全く気にしてない。」

 

蜜璃「ブロリーさん!ですが・・!」

 

ブロリー「俺は気にしてない。それにまだムシケラを倒してないんだ。こんなことしてる場合ではないだろう。」

 

蜜璃・小芭内「!!」

 

ブロリー「鬼舞辻無惨というムシケラを血祭りにあげるために俺たちはこんな城まで来たんだ。他のことはそれからだ。だからまずは言い合いは終わりだ」

 

蜜璃「・・そうですね。鬼舞辻を倒すためにここまで来たんだから!」

 

小芭内「・・一理あるな。同意する。・・まぁ一応感謝はしてやる。」

 

ブロリー「目的を倒しに行くぞ。」

 

蜜璃「はい!」

 

ブロリーは蜜璃を優しく降ろすと、最後の無惨の気配がする方へと向かった。蜜璃はブロリーのすぐ横を並走して少し離れて小芭内が二人の後ろをついていった。

 

小芭内(甘露寺はサイヤ人にあんなに信頼を寄せてるのか。お館様の命をも救い出せる。・・お前は及第点だ。)

 

小芭内は内心でブロリーを評価して、蜜璃の幸せを秘かに祈るのだった。




お待たせしました。ブロリーMADといえばこのネタというものをようやく入れることができました。次は無惨戦になると思います。また話も短くなると思いますが、ご了承くださると嬉しいです。それではまた次回。


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最後の戦いへ!千年の因縁に終止符を打て!

第四十四話です。アニメで刀鍛冶の里編が始まる前に何とか投稿できました。原作とは展開がかなり違っていますが、それでも大丈夫な方は読んでくださると嬉しいです。


ブロリーが鳴女を倒す少し前、炭治郎は義勇と共に無惨のところを目指して走っていた。

 

炭治郎(前を向いてひた走れ、最期の最期まで戦い抜く、これまでの沢山の隊員達がしてきたように、俺もそうする。迷いはない。俺は受け継ぐことができなかった者だった。千寿郎君からの手紙でわかった。十三の型があるはずのヒノカミ神楽を俺は十二までしか知らない。だけどそれでも俺は必ず無惨を倒す。皆のためにも俺は・・俺たちは・・)

 

しばらく走っていると、高さのある空間に大きな肉塊が佇んでいるのを発見した。

 

義勇「!炭治郎!」

 

炭治郎「!間違いありません!無惨です!この肉塊の中に無惨がいます!」

 

無惨が隠れている肉塊を見つけた炭治郎達、しかし、その中に徐々に取り込まれていく見知った女性の後ろ姿があった。

 

珠世(恐らくこの肉の繭のようなものの中で、人間に戻る薬を分解しているのね。いずれ私も取り込まれる・・お願い誰か早く来て・・お願い・・!!)

 

炭治郎「珠世さん!!」

 

珠世「!炭治郎さん・・!」

 

炭治郎「水の呼吸、弐の型、水車!!」ザン

 

炭治郎は刀の軌道を意識して呼吸を使うことで、珠世の体と無惨の肉塊を綺麗に切り離すことに成功したのだ。そして珠世の欠損した体を抱えて床へと寝かせた。

 

炭治郎「珠世さん、助けられて良かったです。」

 

珠世「炭治郎さんどうして助けたんですか?私よりも無惨を倒して欲しかったのに・・」

 

炭治郎「珠世さんがあのままだったら死んでしまいますので、まずは貴女を優先しました。」

 

珠世「ッ!私は既に鬼になって何百年も生きてきました!それに無惨の支配下になったときは夫と子供を自分の手で殺してしまった!そしてそのことに自暴自棄になって罪の無い人達を沢山喰い殺してしまった!その罪を償う為にも私は無惨を道連れにする道を選んだのに・・!!」

 

炭治郎は珠世の叫びを静かに聞いていた。その表情はとても悲しそうなものだった。そして珠世が言い終えると炭治郎もゆっくりと口を開いた。

 

炭治郎「珠世さん、少なくとも俺から見た貴女は他の鬼とは全然違います。他の鬼は自分の為に平気で人を喰ったりいたぶって殺しています。でも貴女は自分のしたことを後悔して充分罪を償っていました。それに珠世さんの医療技術は素晴らしいです。だからこれからは生きて病に犯されてる人を助けるんです。」

 

珠世「・・ですが、私は・・」

 

炭治郎「珠世さんが死んでしまったら、愈史郎さんが独りになってしまいます。孤独はとても辛くて悲しいものなんですよ。それに師範も絶対に貴女が死ぬことを許しません。師範は実力行使してでも貴女を止めると思います。」

 

珠世「ブロリーさんが・・」

 

炭治郎「はい!なので無惨との戦いには皆で生きて勝ちましょう!」

 

珠世「炭治郎さん、はい、そうしましょう!」

 

珠世が生きる決意をした時、隊員に扮装した愈史郎が険しい形相をして凄い勢いで駆けつけてきた。

 

愈史郎「珠世様!ご無事でしたか!」

 

珠世「はい、今は体が欠損していますが私は鬼です。再生できます。」

 

愈史郎「炭治郎、お前が珠世様を救ってくれたんだろ?礼を言うぞ。」

 

炭治郎「はい、無惨にも絶対に勝ちましょう!」

 

愈史郎「無論だ。」

 

そこへ炭治郎と共に移動していた義勇も駆けつけてきた。義勇は珠世と愈史郎を見ると、刀に手を掛ける。それを察知した炭治郎が義勇の前に立った。

 

義勇「・・何故庇う?そいつらは鬼だ。」

 

炭治郎「珠世さん達は鬼ですけど人を喰いません!それにお館様とも協力関係を結んでいます!勝手に手を出すことは隊律違反になりますよ!」

 

炭治郎の言葉に義勇は目を見開き、刀から手を離した。このときは炭治郎と最初に出会ったときに禰豆子を殺さずにおいたことを思い出したのだ。そして珠世達の方を向くと険しい顔をして聞いた。

 

義勇「お前達はもう人を喰わないか?」

 

愈史郎「俺たちが人間の血肉に涎を垂らしているとでも思ってんのか?やはり産屋敷のような奴を信用したのは間違いだったな。お前のような見境無い奴に常に狙われるからな。」

 

珠世「愈史郎!よしなさい!・・鬼殺隊の柱の方、私達は人肉を一切食べないことを約束します。それに炭治郎さんと約束したのです。罪を償う為にも生きて病気の人を助けると。」

 

珠世の強い決意を聞いた義勇はしばらく黙って考える素振りを見せると、やがて口を開いた。

 

義勇「炭治郎が信じるなら俺は信じる。」

 

義勇は二人の鬼を信じる意思を見せたのだ。それを聞いた炭治郎は安心したように笑顔になった。しかし、その時だった。この無限城では今ある異変が起きていた。ブロリーが支配人である鳴女を倒したのだ。その事で支配人がいなくなったことで無限城自体が大きく揺れはじめて崩壊しだしたのだ。その揺れは全体に伝わっていた。

 

ゴゴゴゴゴゴ

 

ブロリー「ん?地震か?」

 

小芭内「違う!この軋みと揺れ!城が崩壊する!外に出られないと無惨以外全員死ぬ!!」

 

ガコン!

 

蜜璃(建物が上昇する・・!!)

 

しのぶ「カナヲ!伊之助君!身を屈めなさい!でないと天井と床に挟まれて潰されます!」

 

伊之助/カナヲ「!!」

 

伊之助とカナヲはしのぶの指示通りにして次の衝撃に備えていた。

 

ドン!ドゴン!!

 

そして無限城内にある全ての床が天井を突き抜けて肉塊の無惨や柱達は全員外へと弾き出された。その場所は商店街のど真ん中だった。そして無惨が入った肉塊は隊員のすぐそばの場所へと落下した。そこは柱達とは少し離れた場所である。更にブロリーは他の柱とは違う所の床にいたため、無惨や他の隊員達とは柱よりも更に離れた場所へと出たのだった。

―――一方で別のとある屋敷では愈史郎の血鬼術の符をつけた新しい鬼殺隊の当主となった産屋敷輝利哉、更にその妹のくいなとかなたが隊員達を采配していた。ブロリーによって父や母が助けられたことは知らずに悲しみを押し殺しながら動いていた。

 

くいな「!珠世さんが炭治郎様によって無惨から切り離されました!しかしブロリー様によって城を司る鬼が殺されたことで全員地上へと弾き出されました!」

 

輝利哉「!?なんだって!場所はどこだ!?」

 

くいな「市街地です!!想定の場所から大きくずれています!」

 

輝利哉(そうか、ブロリーさんがやってくれたのか!地上に出せた!凄いことだ、無惨は劣勢!!)「夜明けまでの時間は!?」

 

輝利哉に言われて懐中時計を確認したかなたは絶望し青ざめた顔をして、大量の冷や汗をかきながら弱々しく告げた。

 

かなた「あと・・六時間半です・・!!」

 

輝利哉(まだ・・そんなに・・)

 

くいな「近くには沢山の剣士達がいます、少しでも回復を遅られられれば・・!」

 

輝利哉(幸い他の剣士達はすぐそばにいる、だったら無惨を留めさせていれば・・だけど無惨はもうすぐ復活する・・っ!)

 

輝利哉は無惨が復活することも考えてから何かに気づいたような顔をしてくいなに慌てて止めるように叫んだ。

 

輝利哉「駄目だ待て!行くな!止まれ!」

 

くいな「えっ?」

 

輝利哉「無惨の所へ行かせるな!!柱が加わるまで待機命令だ!!回復の為の食糧にされる!」

 

くいな「!!」

 

輝利哉は無惨のところから退くように指示を出した。

―――しかし、輝利哉の必死の采配も虚しく、隊員達は無惨が入っている肉塊を囲っていた。

 

「無惨だ!」

 

「地上に放り出されたことでここまで来たんだ!」

 

「待て!!ちょっと待て!!待機命令が出てる!!」

 

「待機なんてしてる場合じゃないだろ!!柱が来るまで少しでも何か役にー・・」

 

ズォォ

 

隊員達がどう攻めるか言っているとき、肉塊から上空数十メートルの場所まで飛び上がる影があった。無惨である。白い髪になって手足の至るところから鋭い牙と口を持った無惨は、見えない速さで手足を無知のように振って飛び回った。

 

ガガガガガガ グシャグシャ

 

そして無惨が動きを止めると、そこには沢山の隊員達の遺体が出ていた。どれも至るところが欠損しており、喰いちぎられているのがわかった。無事に生き延びたのは指示に従って素早く離れた数十人だけだった。

 

無惨「殆ど死んだぞ。千年以上生きていると喰い物が旨いという感覚も無くなってくるが、餓えていた今の食事は実に美味だった・・私の為にわざわざ食糧を運んできたこと、誉めてやろう産屋敷。後継ぎとなった息子か娘・・どちらが指揮を執っているのかは知らぬが、実に優秀だな。私の前で跪き、頭を垂れるのならば鬼にしてやってもいい。ちょうど私は殆どの部下を失った所だ。もういい、誰も彼も役には立たなかった。鬼狩りは今夜潰す。私がこれから皆殺しにする。」ぐちゃぐちゃ

 

無惨は沢山の隊員を喰ったことで珠世の薬を回復して鬼殺隊の死人が沢山出てしまったのだった。

―――輝利哉は采配ミスで沢山の死人を出したことで絶望した顔で自己嫌悪に陥っていた。

 

輝利哉(間に合わなかった・・僕のせいだ・・僕が采配をしくじった・・そのせいで大勢の人が虐殺される・・みんなが何百年も今日この日のために・・無惨を倒すためにしてきたことが全て・・何もかも僕のせいで無駄に・・)

 

バシィ!!

 

輝利哉「・・ッ!」ドッ

 

突然輝利哉の左の頬に強い衝撃が襲った。輝利哉はあまりの強さに崩れ落ちた。頬を抑えながら見上げるとくいなが右腕を振り抜いた格好をしていた。輝利哉はくいなにビンタされたのだった。くいなは同じように青ざめながらも強い口調で輝利哉に叫んだ。

 

くいな「しっかりなさいませお館様!!早く次の御指示を!!戦いはまだ終わっていません!!」

 

輝利哉はくいなの言葉にハッとした。そしてすぐに手元の紙に目を向けた。

 

輝利哉(そうだ、お館様・・父上もお爺様もみんなみんな、同じ重圧と苦しみに耐えてきたんだ。)「無惨の位置を捕捉し続けろ。鴉はとにかく"目"を撒け。攻撃の間合いが途轍もなく広い。奴との距離を決して詰めるな。柱を直ちに集結させる。他の隊員も全て、一刻も早く戦力を一処に集めるんだ。かなた、くいな、ありがとう。」

 

輝利哉はくいなのお陰で目が覚めたと思い、礼を述べた。かなたは終始オロオロしてたが、涙を流していた。くいなも兄を叩いたことに自己嫌悪を覚えていたが、切り替えて涙を流しながら采配の続きをするのだった。

―――無惨はその場にいた殆どの隊員を喰い殺し、その直後に義勇と炭治郎が到着した。炭治郎と義勇は鬼によって殺された家族のことを思い出し、憎悪で刀を握る力が強くなった。それを見た無惨は飽きたと言わんばかりに告げた。

 

無惨「しつこい。お前たちは本当にしつこい。飽き飽きする、心底うんざりした。口を開けば親の仇子の仇兄弟の仇と馬鹿の一つ覚え、お前たちは生き残ったのだからそれで充分だろう。身内が殺されたから何だと言うのか、自分は幸運だったと思い元の生活を続ければ済むこと。」

 

炭治郎「お前何を言ってるんだ?」

 

無惨「私に殺されることは大災に遭ったのと同じだと思え。何も難しく考える必要はない。」

 

炭治郎「・・・・」

 

無惨「雨や風が山の噴火が大地の揺れが、どれだけ人を殺そうとも天変地異に復讐しようという者はいない。死んだ人間が生き返ることはないのだ。いつまでもそんなことに拘っていないで、日銭を稼いで静かに暮らせば良いだろう。殆どの人間がそうしている。何故お前たちはそうしない?理由はひとつ、鬼狩りは異常者の集まりだからだ。異常者の相手は疲れた。いい加減終わりにしたいのは私の方だ。」

 

無惨の言い分に炭治郎の怒りは許容を超えて逆に無表情になる。そして今まで出したこともないような冷たい声で言った。

 

炭治郎「無惨、お前は存在してはいけない生き物だ。」(生き物に対してこれ程冷たい気持ちになったのは、腹の底まで厭悪が渦を巻いたのは初めてだ、鬼舞辻無惨。)

 

無惨は腕を鞭のような刃物に変えると、炭治郎達へと見えない速さで振った。

 

義勇「!凪!」ガン!

 

義勇は自身の間合いに入ったものを全て切り刻む技で相殺を試みるが、無惨の方が速くて腕に沢山の傷がついた。

 

義勇(腕が!!刃物のような切れ味で伸縮する。速い!!)

 

炭治郎(間合いがとんでもないぞ・・!!目で追えてない、感覚だけで何とか避けてる。抜けろ!!抜けろ!!)グン!ダン!

 

炭治郎は無惨との間合いを抜けることに成功するが、死角から来た攻撃で顔を切られて床に叩きつけられた。

 

炭治郎「あ・・?」(喰らって・・)

 

隙を見逃さない無惨は炭治郎に止めを刺そうとするが、義勇が間一髪で炭治郎を抱えて間合いを飛び出した。

 

義勇「間合いを詰めるな!!斬り込まなくていい!!無惨の力は上弦の比ではない!!」(遮蔽物が無い!!扉も・・まずい。)ガガガ

 

義勇が相殺することだけに意識し始めたことに気づいた無惨は、義勇の狙いを当てた。

 

無惨「時間稼ぎ・・夜明けまでか?夜明けまで私をこの場に留めるつもりか?やれるものなら!やってみろ!!」

 

無惨は再び炭治郎達に刃のついた腕を振るう、それを義勇が相殺しようと呼吸を使おうとするが、その前にしなやかな桃色の刀が目の前に現れた。

 

蜜璃「やめなさいよー!!恋の呼吸、陸の型、猫足恋風。」

 

蜜璃が無惨の技を相殺したのだ。そして炭治郎達の前には小芭内が立った。更にはしのぶと伊之助とカナヲも合流した。

 

小芭内「足手纏いの厄介者、お前はもう引っ込んでいろ。」

 

しのぶ「炭治郎君、お待たせしました。」

 

伊之助「紋治郎!お前顔やられてるじゃねーか!」

 

カナヲ「炭治郎、大丈夫?」

 

炭治郎「伊黒さん・・良かった・・無事だった・・甘露寺さんも・・しのぶさん・・伊之助・・カナヲ・・」ボロリ

 

小芭内は涙を流して安心する炭治郎に呆れながら言った。

 

小芭内「!・・・・他人よりも自分の心配をしたらどうだ。」

 

しのぶ「そうですよ、私たちは無傷ですが貴方は重症です。少し休んでてください。」

 

義勇「・・・・」

 

しのぶ「冨岡さんは何とか言ったらどうなんですか?」

 

無惨「ふん!鬼狩りの柱共が集まったか、私としても好都合だ!余計な手間をかけずに一度で皆殺しに出来るからな!」

 

無惨は再び管と腕を振るう、四人の柱は間合いを詰めて無惨に攻撃を仕掛ける。

 

小芭内「蛇の呼吸、参の型―」

蜜璃「恋の呼吸、弐の型―」

義勇「水の呼吸、捌の型―」

しのぶ「蟲の呼吸、蝶の舞―」

 

それぞれの呼吸で四人の技が無惨の頚に当たって肉に刃が入った。しかし、手応えはあるのに無惨から血は全く出なかった。

 

小芭内(肉に刃が入る!!頚を斬っても死なないが、攻撃は有効!体をバラバラにして少しでも弱体化させれば・・!?)

 

蜜璃「えっ!?えっ!?あれっ?斬ったのに斬れてない!?」

 

義勇(違う!斬った!!確実に!!ただこの化物が斬られた瞬間から再生している!!)

 

しのぶ(私の毒も即座に分解されましたね・・上弦の弐との戦いで毒が効かないことは想定済みですが、まさか切断自体が不可能とは・・!)

 

間合いを詰めた柱は無惨の攻撃範囲内にいた。それを理解して見逃さない無惨は一番近くにいた蜜璃に向かって振るう、しかし、無惨の攻撃が柱達に当たることはなかった。無惨の腕や管を棘のついた鉄球が弾き返したのだ。行冥である。黒死牟との戦いを得て合流したのだ。

 

行冥「遅れてすまない。」ブンブン

 

無惨(黒死牟を倒した鬼狩り・・)

 

そして無惨が行冥に気を取られていると、背後から縦一直線に亀裂が入った。実弥である。それを気づいた無惨は振り向き様に攻撃を仕掛けるが、実弥は懐から液体の入った瓶を複数取り出すと無惨に向かって投げる。液体が無惨にかかると実弥はすかさずマッチで火をつける。するとたちまち無惨の体を炎が包み込んだ。

 

ボッ ゴウ

無惨「!小賢しい真似を!」

 

実弥「テメェにはこれくらいが似合いだぜぇ、ブチ殺してやる!この塵屑野郎。」

 

柱が更に集結するものの、無惨の速度は更に上がって柱達は食らいつくのが精一杯になっていた。

 

ドガガガガガガ!!

 

行冥(速度がまた上がった!!圧される・・!!)

 

小芭内(悲鳴嶼さんの盾にもなれない!すぐに俺も動けなくなる・・くそっ!!)

 

 

ガヒュン

しのぶ「くっ・・」(まずいわね・・無惨の攻撃を喰らってしまった・・上弦の弐とは比べ物にならないくらい速い・・!!失血量も凄い・・動けなくなるのは時間の問題ね・・)

 

蜜璃(見えない!!全然見えない!!勘で運良く避けれてるだけ、私が一番に潰れる・・少しも役に立ててないのに・・!!捨て身で突っ込むしかない!それでも無惨の攻撃を止められるかわからないけど・・えっ引っ張られ・・)ガヒュン

 

蜜璃は無惨の攻撃を受けて壁に叩きつけられた。その衝撃で体の至るところから出血する。そして力なく地面へと崩れ落ちる。

 

小芭内「・・!!」

 

小芭内はすぐに蜜璃の元へと駆け寄ると抱えて壁の奥へと移動するそして近くにいた隠に手当てを依頼した。

 

小芭内「手当てを頼む!」

「はい!」

 

蜜璃「待って、私まだ、戦える。今度は足を引っ張らないようにするから。」

 

小芭内「もういい、十分やった。」

 

蜜璃「駄目よ、全然役に立ってない。このままじゃ死ねない。」ハァ ハァ

 

小芭内「あとは頼む。」ダン

 

蜜璃「待って!!私も行く!!伊黒さん!伊黒さん嫌だ!死なないで!!もう誰にも死んでほしくないよォ!!」

 

蜜璃が泣き叫ぶのを聞きながらも小芭内は足を止めることなく戦場へと向かった。そして入れ違うようにして蜜璃の隣に隠が来た。背中には同じようにいろんな所から出血しているしのぶが背負われていた。

 

蜜璃「しのぶちゃん!」

 

しのぶ「甘露寺さん・・すみません。無惨の攻撃を受けてしまいました。柱がこんな醜態・・恥ずかしいかぎりです・・」

 

蜜璃「そんなこと無いわ!私なんて一撃無惨に入れることも出来なかったんだから!私よりも凄いよ!」

 

しのぶ「ありがとうございます・・」

 

蜜璃「そういえばお城の中にいたときはブロリーさんもいたんだけど今はどこにも見当たらないの。しのぶちゃんブロリーさんがどこに行ったのか知らない?」

 

しのぶ「いえ、見てません。私も上弦の弐を倒すまでは彼と一緒にいましたからそのまま他の隊員への手助けに行ったっきりです。」

 

蜜璃「そう・・ブロリーさんどこに行っちゃったんだろう?」

 

しのぶ「・・ッ・・」

 

しのぶは最悪の事態を想像してしまい、顔を青ざめさせていた。それに気づいた蜜璃はしのぶの背中を優しく擦って慰めた。

 

蜜璃「大丈夫、ブロリーさんは鬼よりも圧倒的に強いわ。絶対にこっちへ向かってきてくれてるはずよ。」

 

しのぶ「ですが・・!万が一のことを考えると・・ッ。」

 

蜜璃「信じようよ、ブロリーさんは簡単にやられないって私は信じてるの。だからしのぶちゃんもブロリーさんがまだ生きてるって信じようよ。」

 

しのぶ「・・そうですね。」

 

しのぶは両手を自分の胸の前で握りしめると只ひたすらにブロリーの無事を祈った。蜜璃もブロリーが無事であることを祈る。

 

しのぶ(ブロリーさん、お願いします・・どうか無事でいてください・・この世に神様がいるなら、後生のお願いですから・・これ以上私から大切な者を奪わないで・・)

 

蜜璃(ブロリーさん、お願いします。私は貴方が無惨なんて軽く倒せるくらいには強いって確信してます。お願い、早く来て・・もう誰にも死んでほしくないの・・みんなを助けて・・)

 

蜜璃もしのぶも必死に祈るとその祈りが通じたのか、聞き馴染みのある高笑いが聞こえてきた。

 

ビュオオ!!

ブロリー「フハハハハ!!やっと合流したぞ!」

 

『伝説のスーパーサイヤ人』の形態になっているブロリーが空を飛んで来たのだ。ブロリーは力を使うときはサイヤ人の本能としての楽しさから悪魔のような高笑いをするのだが、今となってその高笑いは鬼殺隊にとっては安心感をえる物へと変わっていた。ブロリーの姿を見た二人は安心した表情をした。

 

しのぶ「!ブロリーさん!無事でよかったです・・!」

 

蜜璃「ブロリーさん!私たちの祈りが通じたのね!」

 

ブロリー「んん?しのぶと蜜璃・・貴様ら凄い怪我じゃないか!何があったんだ!?」

 

しのぶ「私も甘露寺さんもやられてしまいました・・鬼舞辻無惨に・・」

 

ブロリー「・・ほぅ?」ピキッ

 

ブロリーは無惨にやられたことを聞いて額に青筋を浮かべた。誰が見ても分かるほどの圧を出しながらしのぶに聞いた。

 

ブロリー「そのムシケラは今どこにいる?」ゴゴゴ

 

しのぶ「えっ・・えっと・・あちらの方で皆さんが戦ってます・・」

 

しのぶは建物の壁が終わるところを指差した。そこからは確かに刀がぶつかる音が聞こえてきていた。

 

ブロリー「そうか、了解した。お前たちは怪我を回復させてから来い。」ビュオオ

 

ブロリーは無惨がいる方角へと凄いスピードで飛んでいった。取り残されたしのぶは少し体が震えていた。

 

しのぶ(こ、恐かった・・あれは間違いなくブロリーさん物凄く怒ってましたね・・怒るとあんなに恐ろしかったんですね・・力的な意味でも他の意味でも怒らせてはいけませんね。でも、私の為にあそこまで憤慨してくれて嬉しい///)

 

しのぶはブロリーの怒りに対して確かに恐怖を感じていたが、その中に喜びもあることをしっかりと噛み締めるのだった。そして無惨との激闘が繰り広げられている前戦ではブロリーが到着していた。

 

ブロリー「フハハハハ!!真打ち登場だ!」

 

炭治郎「師範!」

 

実弥「やっと来たか!遅ぇおでましだぜェ!」

 

小芭内「遅い遅い、今まで何してたんだ。」

 

行冥「ブロリーが来てくれたことは非常にありがたい!」

 

義勇「よく来た。」

 

無一郎「ブロリーさん!来てくれたんだ!」

 

何人かは皮肉を込めた言葉を言ったものもいるが、全員がブロリーの到着に喜んでいた。しかし、敵である無惨だけは違った。

 

無惨「!ブロリー・・!」ドン!

 

炭治郎「!!」(走って逃げた・・!?)

 

そしてあろうことか無惨はブロリーの姿を確認した途端に背を向けて逃げ始めたのだ。

 

炭治郎「師範!皆さん!無惨が逃げた!!師範の姿を見て無惨が逃げた!!」

 

小芭内「!?」(逃亡・・!!そうだ当然だ、無惨は誇りを持った侍でもなければ、感情で行動する人間でもない。)

 

実弥(ブロリーの姿を見た途端だとォ!やはり無惨はブロリーに相当怯えてるようだな。)

 

義勇(まずいな、負傷させられてる上に無惨もブロリーを撒くことに全力を出している。距離が遠ざかる・・!)

 

行冥(無惨は生きることだけに固執している生命体だ。少しでも命が脅かされれば逃亡することにも一切の抵抗がない。)

 

炭治郎(ああっ・・!!くそっ!!どんどん遠ざかる、追いつけない!そんな・・そんな!!負けるのか?こんな負け方あんまりだ!みんなの命が無駄になってしまう・・!!)

 

必死に逃げる無惨を炭治郎達は全力で追いかけるが、その距離は詰まることはなく、逆に引き離されてしまう。そのことに柱達や炭治郎は焦りを感じるが、当のブロリー本人は追いかけておらずにある箇所を見つめていた。

 

ブロリー「・・・・」

 

それは逃げる際に無惨に踏みつけられた喰い殺された同じ鬼殺隊員の亡殻だった。その中には柱稽古の際に仲良くなった者もいたのだ。しのぶや蜜璃に炭治郎達も傷つけられた上に、仲良くなった仲間の遺体を見たブロリーは心のそこから怒りと憎悪と力が沸いてくるのを感じた。そして次の瞬間ブロリーは咆哮をあげた。そして物凄い気と圧力は炭治郎達のところへあっという間に到達した。

 

ブロリー「うぉぉおおああああ!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「「「「「「!!?」」」」」」」

 

無惨「ッ!?」

 

炭治郎達は無惨を追いかけることに必死でブロリーの咆哮に驚くものの振り返らない。そして無惨はブロリーの咆哮を聞いて更に逃げる速度をあげた。しかし、そんなブロリーの様子を見ているものがいた、それは何とか戦前まで戻ってきたしのぶと蜜璃だった。

 

しのぶ「!!」(ブロリーさん何を・・?)

 

蜜璃(この感じ・・もしかして・・!)

 

ブロリーが気を高めると、大気が地震如く揺れて地面や瓦礫から出た石が圧力で浮かび上がる。しのぶや蜜璃にはこの揺れは馴染みがあった。その為、対して驚かずにそのままブロリーの様子を見る。

 

ブロリー「ぬぅぅうううう!!!」キィィィン ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

そして、ブロリーを包む気は緑色のものから赤いものへと変わると、悪魔の白眼はそのままに"頭、顔、頚、胸筋周り"以外の全身がしなやかな赤い体毛に覆われていた。一見しただけだと『スーパーサイヤ人4』に瓜二つだが、違うところは赤い体毛が光沢がかったものになり、眉毛や髪までもが赤くなっているところだった。更に『スーパーサイヤ人4フルパワー』とは比べ物にならないくらいに非常に強く禍々しい"赤い気"が溢れでる姿へと変わったのだった。

 

ブロリー「うがぁぁぁああああ!!!」

 

無惨「・・ッ!」(まずい・・早く撒かなければ・・!殺される・・ブロリーに殺される・・!!)プルプル ビュン

 

この姿になったブロリーの雄叫びは無惨にまで届いた。このときの無惨は逃げながらも生まれてはじめて心の底から震え上がっていた。恐ろしさと絶望で青白い顔が更に真っ青になっていたのだった。




今回も読んでくださり、ありがとうございました。次回では戦いは終わりになると思います。最強形態になったブロリーの活躍を頑張って書きます。また駄文になると思いますが、何とか頑張ります。それではまた次回。


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最終決戦!鬼舞辻無惨!最強の覚醒!超フルパワーサイヤ人4・限界突破!

第四十五話です。鬼との戦闘描写は今回で最後です。大変遅れてしまい申し訳ありません。原作とだいぶ展開が違いますがそれでも大丈夫な方は最後まで読んでくださると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


鬼舞辻無惨との決戦で、しのぶや蜜璃が傷つけられ、沢山の仲間を殺されたことへの憎しみと悲しみで新たな姿に覚醒したブロリー、『スーパーサイヤ人4』の姿はそのままに、髪や眉毛までもが炭治郎の髪色と同じ赤くなった姿、更には"スーパーサイヤ人4フルパワー"を遥かに上回る程の強大な赤い気が全身から溢れている。この姿は"スーパーサイヤ人4"の力の限界を超えた現時点でブロリーがなれる最強の形態、『超フルパワーサイヤ人4・限界突破』である。黒幕が逃げたしたということもあって炭治郎達は見ることはできなかったが、しっかりと見ていたしのぶと蜜璃はブロリーの姿に歓喜していた。

 

しのぶ(ブロリーさん///凄いです///)

 

蜜璃(ブロリーさん!また猫ちゃんみたいな毛を生やしちゃって、可愛いくて強くて格好いい!素敵///)キュン

 

そして姿は見えなくてもブロリーが覚醒したことを匂いと気配で感じ取った炭治郎も心に余裕が生まれていた。

 

炭治郎(師範の姿が変わったことがわかった!それにこの気配は今までの比じゃないぞ!とんでもなく強い気配に変わった!師範が加わってくれるなら心強いぞ!)

 

余裕が生まれる鬼殺隊に対して、無惨は逆に追い詰められていた。只でさえ青白かった顔が更に真っ青になり、全身から冷や汗が噴き出していた。表には出ていないが、内心では心底震え上がっていたのだ。

 

無惨(奴が・・あの男を遥かに超える異常な化け物が来た・・!本当の化け物はブロリーだ!私ではない!!そいつがこの場に来たんだ・・!戦いは終わりだ。わざわざ危険を冒す必要はない。早く逃げなければ・・!撒かなければ殺される・・!)

 

ブロリー「がああああああ!!」バビュン!

 

そして『超フルパワーサイヤ人4・限界突破』になったブロリーは、無惨を圧倒的に凌ぐスピードで追いかけ始めたのだった。

―――一方、鬼殺隊の指揮を取っている輝利哉達は、無惨が逃げ出したところからブロリーが覚醒したところまでの一部始終を見ていた。

 

くいな「!無惨が逃げました!ブロリー様が前戦に合流した途端に無惨が逃げ出しました!」

 

輝利哉(やはり無惨にとってブロリーさんは脅威なんだ!でなければ夜明けまで十分時間があるなか逃げないはずだ。全く戦闘にならずに逃亡するということはそれだけ無惨とブロリーさんの強さは天地の差だということ。無惨、絶対に逃がさない。)「無惨のことは誰か追いかけているのか?」

 

かなた「九人の柱全員と炭治郎様達が必死に追いかけてます!」

 

輝利哉「!?ブロリーさんは!?」

 

かなた「他の剣士達の亡き殻を見つめてます!それ・・か・・ら?!!ブロリー様が咆哮をあげて姿が変わりました!!」

 

輝利哉「!?」(ブロリーさん、一体、どうしたと言うんだ?)

 

くいな「ブロリー様が無惨を凄い速さで追っています!」

 

輝利哉(ブロリーさん、貴方に一体何が起ってるの?)

 

輝利哉は慣れない采配と、ブロリーの覚醒に混乱していた。そんな中、ブロリーによって助けられた耀哉達が合流した。

 

耀哉「ブロリーはまた強い姿になったみたいだね。あの速度だと無惨にもすぐに追いつくだろうね。」

 

輝利哉・くいな・かなた「「「!?」」」

 

耀哉の声に反応した三人は一斉に勢い良く振り返った。そこには耀哉と妻のあまね、そして姉のにちかとひなきがいた。その姿を確認した三人は今采配中だということを忘れて、目に涙を浮かべて駆け寄った。

 

輝利哉(父上・・幻になってでも僕達を応援しに来てくれたんだ・・!)

 

くいな(姉上・・私たちを鼓舞しに来てくれたのですね・・!)

 

かなた(母上・・嬉しい・・!亡くなってもずっと見守ってくれてる・・)

 

そしてもう一度姿を確認できた喜びで三人は思わず飛びついた。その時、既に幻だと思ってすり抜けるとわかっていた輝利哉達は、肉体があって受け止められたことに気づいた。

 

輝利哉「ち、父上!?肉体がある!!??いっ生きてるぅぅぅ!!!???」

 

くいな・かなた「「ゑゑゑゑゑゑゑゑ!!!???」」

 

輝利哉は父である耀哉からは屋敷の爆薬と共に運命を共にすると聞かされていたので、今この場に耀哉が来たことに目を見開いて驚いた。くいなとかなたに関しては危うく転倒しそうになる程の衝撃だった。

 

あまね「どうやら驚かせてしまったようね。」

 

にちか「勝手に殺さないで、私たちは生きてるわよ。」

 

ひなき「このように五体満足で傷一つついてないわよ。」

 

母親であるあまねと姉のにちかとひなきが微笑みながらしっかり生きているということを告げて輝利哉達は更に目を見開いた。

 

輝利哉「ど、どのようにして無事だったんですか・・?」

 

輝利哉が三人を代表して心底困惑したように聞いた。それには耀哉が微笑みながら答えた。

 

耀哉「うん、正直言うと手筈通りあのまま屋敷の爆薬で犠牲になるはずだったんだけどね。爆発の直前にブロリーが飛び込んできてね、緑の結界のようなものを瞬時に張って私たちを助けてくれたんだ。」

 

かなた「ブロリー様が・・!」

 

耀哉「それを見たときは私の采配が失敗してしまったと思ったよ。でもブロリーは自力で空間をこじ開けて他の上弦を次々と倒したみたいだね。彼は私たち一族の、いや、鬼殺隊にとっての希望であり、誇りでしかないよ。」

 

耀哉は感慨深そうにブロリーを称賛して感謝の思いを露にしていた。屋敷の爆発からブロリーによって助けられたことを聞かされた輝利哉達はブロリーに感謝を込めた。

 

輝利哉(ブロリーさん、私たちの家族を救ってくださってありがとうございます。貴方は私たちにとって本当の守り神です。)

 

くいな(ブロリー様、父上と母上、そして姉上を救ってくださってありがとうございました。貴方は本当に大恩人です。)

 

かなた(ブロリー様、本当にありがとうございます。本当に感謝してもしきれません。素敵です///)

 

輝利哉とくいなはブロリーに最高級の感謝の言葉を心に思っていた。かなたに関しては、幾度も産屋敷一家を救済したブロリーを思って頬を赤らめるほどだった。そんな時、耀哉が我に返す言葉を放った。

 

耀哉「輝利哉、くいな、かなた、ブロリーに感謝するのは良いけど今は無惨と決戦の最中なんだ。他にやるべきことがあると思うよ。」

 

輝利哉「!そうでした。采配しなくては!」

 

耀哉が言った言葉で輝利哉達は素早く元の位置に戻ると、采配の続きを始めた。

 

耀哉「決戦の様子はどうなってるかな?」

 

輝利哉「ブロリーさんが逃げる無惨を凄い速さで追っています!」

 

くいな「既に不死川様達を追い抜いてもうまもなく無惨に追いつこうとしています!」

 

耀哉「そう。」(無惨もあと少しの命のようだね。千年の因縁に決着をつけるときが来たようだね。感謝深さもあるけど、最後まで何が起きるかわからないからね。気を抜かずに行こう。)

 

耀哉は悲願が達成できる興奮で起きている胸の高鳴りを必死に抑えて冷静に振る舞うのだった。

―――そして輝利哉達が采配しているところの別室では、人間に戻る薬を投薬して寝ていた禰豆子が目を覚ました。彼女は父親である竈門炭十郎の幻に語られたのだ。

 

炭十郎「(禰豆子起きろ。炭治郎と彼を迎えに行くんだ。)」

 

すくっと立ち上がった禰豆子にずっとそばにいた左近次は驚きながらも声をかけた。

 

左近次「・・禰豆子?どうした?」

 

禰豆子「・・・・」バキャッ ダッ

 

そして次の瞬間、禰豆子は襖を蹴破って物凄い勢いで走り始めたのだ。戸を蹴破る音は外で見張っている天元と杏寿郎にも聞こえていた。

 

天元「!?あっ!?竈門禰豆子!どこ行ってんだ!」

 

須磨「あーっ!!大変!!戸をブチ破ってるわ!!」

 

杏寿郎「お館様!!竈門少女が飛び出しました!如何致しますか!」

 

輝利哉(何故だ?どうしたんだ?どうすればいい?わからない、まさか無惨に操られている?違うそんなはずはない。もしや薬が効いて人間に戻った?いや・・だとすれば左近次が捕らえているはず。追わなければ・・!!)「今すぐ禰豆子さんを・・!」

 

耀哉「追わなくて良いよ。」

 

輝利哉「え?」

 

耀哉「禰豆子は好きにさせなさい、大丈夫だから。そう確信しているんだ。」

 

輝利哉「ですがもし禰豆子さんが鬼に捕まるようなことがあれば取り返しがつきません!」

 

輝利哉は禰豆子が無惨に捕まって太陽を克服されるという最悪のシナリオが頭の隅にあった為に抗議するように聞き返した。くいなとかなたも賛同するように何度も頷いた。それでも耀哉は落ち着いた口調で言った。

 

耀哉「今前戦にはブロリーがいるんだ。ブロリーは禰豆子のことをよく可愛がっているし、禰豆子はブロリーに懐いている。そんな禰豆子が無惨に捕まえられるなんてどうしても思えないんだ。初めて私がブロリーと出会ったとき"禰豆子にもしものことがあればこの星を破壊し尽くす"とはっきり言われたからね。なにがなんでも禰豆子のことはブロリーが守ると思っている。」

 

耀哉はブロリーと禰豆子の関係をよく理解していて、無惨の手に禰豆子が渡ることはないと判断したのだ。ブロリーの強さを理解して信頼しているからこそできる大胆な采配なのだ。輝利哉達も父がブロリーを誰よりも信頼していることは知っていたので、それ以上追言することはなく、禰豆子が捕まらないことを祈りながら采配を続けるのだった。

―――屋敷を飛び出した禰豆子は必死で追いかけてくる左近次をぐんぐん引き離し、炭治郎やブロリーがいる商店街に向かって走っていた。

 

左近次(速すぎる!!最早儂では追いつけぬ!!)

 

禰豆子「ハァッ・・ハァッ・・」ザンッ

 

そしてなんと、すぐ目の前の断崖絶壁を飛び降りたのだ。このことに左近次は更に衝撃を受けた。

 

左近次「・・!!」(この高さを飛ぶとは・・!!人間に戻る薬が効いてないのか・・!?)

 

左近次を完全に撒いた禰豆子は森を抜けて一本道に入った。しかし、ここへきて脈が上がって走るスピードもかなり落ちていた。そして禰豆子の鬼だったときの猫のような縦長の瞳孔は元の人間の丸い瞳へと戻っていた。決戦の地、商店街に近づくにつれて禰豆子も人間に戻っていってるのだ。それと同時に、鬼舞辻無惨が竈門家を襲いにきたところから様々な人物と出会って今に至る記憶が一気に流れ込んできたのだ。それに耐えれずに禰豆子は頭を抱えて地面に蹲った。

 

禰豆子「うっ!ううっ!!ううう!」

 

禰豆子は鬼になっていた間の記憶を忘れることはなかった。様々な出会いを思い出すなか、一際強く思い出す二人の人物がいた。

 

炭治郎「(兄ちゃんが守る、何があっても。お前だけは―)」

 

ブロリー「(俺はお前達に、救われた恩を返す。―)」

 

それは実の兄である炭治郎と旅に出てすぐに出会ったブロリーの姿だった。それを思い出した禰豆子は涙を流しながら勢い良く立ち上がった。

 

禰豆子「私は、竈門禰豆子!!鬼に家族を殺された・・」

 

そして禰豆子の脳裏にはブロリーの姿が特に強く映っていた。幾度も自分達兄妹の危機、仲間の危機から救いだし、鬼を倒す度に高笑いをして、『スーパーサイヤ人3』や『スーパーサイヤ人4』等、幾つもの姿を見てきた。人間に戻った禰豆子はそんなブロリーに対して走りながらも顔を赤らめていた。

 

禰豆子「ハァッ・・ハァッ・・///」(わ、私って///鬼になってたときにブロリーさんに沢山あんなことを///はっ恥ずかしい///それでも元に戻れても、やっぱり私、ブロリーさんのことが・・す、好き///)

 

禰豆子は鬼だったときにブロリーに抱きついて甘えていたことの記憶まで思い出して顔を両手で覆って悶絶していた。しかし、それでもブロリーへの好意は失うことはなく、それを隠すかのように走るスピードを上げたのだった。

―――そして前戦では無惨がひたすら逃げ続けていた。無惨は表情には出さないものの内心では失神しそうな程震え上がって怯えていた。

 

無惨(夜明けまではまだ時間はある。だが、化け物がいるここに長居することはない。鳴女がいない今、一刻も速く奴を撒く。そしてブロリーが寿命死んだら、改めて禰豆子を見つけて喰えば良い。殺される前に速く逃げなくては・・!)

 

無惨は柱でさえも追い付けないほどのスピードで市街地を駆け抜けて行く。それを炭治郎達は歯を喰い縛って必死で追いかけて行く。

 

炭治郎(ああああ!!くそっ!どんどん遠ざかる!このまま負けるのか!?こんな負け方あんまりだ!)

 

実弥(くそがああァァ!!逃がしちまう!!黒幕を倒さなきゃなんねぇのに!!)

 

義勇(速い!鬼舞辻は生に執着している。少しでも命が危険に脅かされれば逃げることにも抵抗はないのか。)

 

小芭内(俺は何をしている?何故鬼舞辻に逃げ道を与えるような醜態を晒した。肉の盾になってでも止めるべきだった、戦いに重点を置きすぎた。)

 

無一郎(兄さんも沢山の人たちを殺しておいて自分は逃げるつもり?絶対に逃がしちゃいけないのに・・)

 

今動ける柱と炭治郎の全員が無惨に引き離されることに苛立ちを感じながら追いかけていると、炭治郎達の上空を見覚えのある影が物凄い勢いで通過していった。

 

バビュン!

 

炭治郎「・・え?今のは・・!」

 

無一郎「・・!ブロリーさん!」

 

無一郎の指摘通り、炭治郎達をあっという間に追い越して行ったのは『超フルパワーサイヤ人4・限界突破』の形態になったブロリーだった。そのまま無惨にも軽く追いつくと、無惨の前に回り込んで腹部に強烈な一撃を入れた。

 

ブロリー「ど こ へ 行 く ん だ ぁ!!??」ドッッゴォォォ!!

 

無惨「!?ぎっ・・!ぎぃゃああ"あ"あ"ぁぁぁ!!」

 

無惨は遥か後方へと飛ばされて、最初に戦っていた地点まで戻されていた。その場所でブロリーは無惨の顔面を掴むと、地面が深く抉れるほどの強い力で押し込んだ。

 

ブロリー「デャァアアッ!!!」ガシッ ドッゴォ!

 

無惨「あ"あ"あ"あ"ああぁぁ!!!」

 

そして地面から無惨を鷲掴みにして無理矢理放り投げると、地面に片手をついて無惨を蹴り上げ、顔を掴んで近くにあった壁に岩盤の如く叩きつけた。

 

無惨「ふぉぉ!?」

 

ブロリー「イェイ!」キーン ドゴォ!

 

無惨「がああぁぁっ・・!!!」

 

それは大きなクレーターが出来る程の衝撃だった。無惨の顔から手を離すと無惨は吐血して力なく地面に滑り落ちた。

 

しのぶ「うわぁ、すごい光景ですね。」(ブロリーさん///お館様や珠世さんから無惨を倒せると太鼓判を押されていましたが、まさか本当にここまで圧倒してしまうとは、素敵です///)

 

蜜璃「すごいね、私たちが手も足も出なかった無惨を相手にここまで一方的にやっちゃうなんて。」

 

ブロリーが無惨を血祭りに上げている光景は、しのぶと蜜璃が手当てを受けている位置からもしっかりと見ることができて、二人は改めてブロリーの実力に驚いていた。そして別の建物の陰からは、炭治郎に助け出されて再生が完了した珠世としっかりと手当てをしていた愈史郎がブロリーの戦いぶりを見ていた。珠世は無惨の断末魔が響き渡る度に、頬を赤らめて笑顔になっていき、"今度こそ無惨を倒せる"という期待に胸を膨らませていた。

 

珠世(無惨が苦しむ光景、なんて爽快なんでしょう。彼は、ブロリーさんは間違いなく無惨を滅ぼしてくれる。何故なら、無惨に私の体の大半を吸収させて施した薬の効果は―)

 

愈史郎(!こんなに期待の眼差しで戦況を食い入るように見る珠世様は見たことがない!このような珠世様も美しい!ブロリー、珠世様の新しい一面を見せてくれたこと、礼を言うぞ!)

 

ブロリーに散々痛め付けられた無惨は、ブロリーをギリッと睨み付けながら管をブロリーに振った。

 

ガキン

 

ブロリー「・・・・」

 

ブワッ ビキッ

 

ブロリーには当然のように効果はないが、その反動を使って無惨は距離を取った。そして左の二の腕付近からボコリと肉体が膨れ上がる。無惨は縁壱と対峙した時のように分裂して逃げようとしたのだ。しかしある程度大きくなると、突如として元に戻っていった。これには無惨も驚きと困惑を隠せていなかった。

 

無惨(!?分裂できない!!あの女狐の薬か!)

 

無惨は再びブロリーから逃げようと種を返す。しかし、そうはさせまいとブロリーが再び無惨の前に回り込んだ。

 

ブロリー「な ん な ん だ ぁ!?い ま の は ぁ!?」ドッゴォ!

 

無惨「ぐええええええっ!!!?」

 

そして無惨の顔面を掴むと地面に押し込み、無惨からは空気が漏れたような呻き声が出た。それを見ていた珠世は、口元に笑みを浮かべながら回想した。

 

珠世(薬の種類は二つです。人間返りに分裂阻害、本当ならもっと他の効果を生む薬も作るべきだったんでしょうけど、炭治郎さんやしのぶさん達を信じて逃げられないように細工してみたんですよ。何より、お前がブロリーさんを縁壱様以上に警戒していることはわかっていた。だからブロリーさんからは絶対に逃れられないまま終わりを迎えるように薬を作った。さぁ、お前の大嫌いな死がすぐ其処まで来たぞ。死の恐怖を味わいながら、ブロリーさんに八つ裂きにされなさい。フフフ・・)

 

愈史郎(黒い笑みを浮かべる珠世様もまた美しい!無惨を倒して全てを終わらせたあとに見られる顔はきっと一番美しいぞ。)

 

珠世はそれはそれは黒い笑みを浮かべて戦況を見ていた。愈史郎も決戦が終わった後の珠世の表情を非常に楽しみにしていた。―――また、しのぶと蜜璃のところには、カナヲも既に来ていた。

 

しのぶ(やはり凄いですね、ブロリーさんは///)

 

カナヲ「師範!」

 

しのぶ「!カナヲ!無事でしたか。良かったです。」

 

カナヲ「今はどんな状況でしょうか?」

 

しのぶ「ブロリーさんが鬼舞辻を徹底的に弄んでいるところです。」

 

カナヲ「・・破壊柱様はどのようにしてあのような強靭な肉体と力を手に入れたんでしょうか。正直に言って羨ましいです。」

 

しのぶ「・・それを言ったら私だって羨ましいですよ。鬼舞辻を始めとする鬼を苦戦することなく倒してしまうんですから。全ての鬼を滅ぼしたいと思っている私からすれば、彼の持つ力は羨望や嫉妬の対象になります。姉さんの仇の鬼を殺すことを第一に考えていた頃の私は本当に彼に嫉妬と憎悪を感じていました。」

 

しのぶはかつて自身の肉体に毒を溜め込んでいたことを思い出して自虐気味に語っていた。しかし、ブロリーのことを思い浮かべると自然に笑みがこぼれて顔を赤らめた。

 

しのぶ「ですが、彼は私を導いてくださいました。そのお陰で今では羨ましいとは思っても憎いとか恨めしいとかは全く思ってません。むしろブロリーさんが鬼を弄んでいる時の高笑いを聞くと安心感が生まれるんですよ。」

 

カナヲ(師範・・破壊柱様の話をするとき本当に楽しそう。破壊柱様、いいえ、ブロリー義兄さん、あの時師範を止めてくださって本当にありがとうございます!)

 

カナヲはしのぶの幸せに満ちた表情を見て、自分も幸福に満ちていた。そのことにカナヲは心の中でブロリーに感謝を込めたのだった。

―――そしてブロリーはずっと無惨を痛めつけていた。戦うにしても全く血鬼術が効かず、ブロリーによる攻撃は鬼に致命傷を与える。更に無惨よりも遥かにスピードもあるため、逃げようにもすぐに追い付かれて余計に攻撃される。そんな悪循環に陥っていた。つまり、無惨に助かる道はもう残されていないのだ。ブロリーが再び無惨の顔面を掴んで持ち上げたとき、無惨が叫んだ。

 

無惨「ぎゃっ・・!!何なんだ!!何故この私がお前にこんな目に合わせられなければならんのだ!!お前と私はなんの関係も無いだろう!!身内が鬼に殺されたわけでも何でもない!私はお前に殺される筋合いは無い!!」

 

満身創痍になった無惨は怯えながらも恨めしさを込めてブロリーを睨み付けて叫ぶ。ブロリーは『超フルパワーサイヤ人4・限界突破』の形態で無表情で聞いていた。

 

無惨「私に殺されることは天災に遭ったのと同じだ!だがお前が私を殺すことは違う!!お前はあの男を遥かに超える化け物だ!!この世ごと破壊できる程の不釣り合いな生き物だ!!お前は存在してはいけないんだ!!」

 

ブロリー「・・・・」

 

ブロリーは無惨を掴んだまま力を込めることも緩めることもなくその状態のまま直立不動だった。その言葉に反応したのは回復を終えたしのぶと珠世だった。建物の陰から飛び出してきたのだ。そして炭治郎も無惨の言い分を聞いて顔中に血管が浮かび上がっていた。

 

珠世・しのぶ「「ッ!!」」ダッ

 

蜜璃「!しのぶちゃん!」

 

炭治郎「・・お前が、それを言うのか無惨!!」

 

ブロリー「炭治郎?」

 

炭治郎「師範はこの世の物とは思えないくらいの強い力を持ってるけど、それはもう自分の意思で制御出来るんだ!周りに被害がでないように常に気を遣って鬼を倒してきたんだ!なにも知らないお前が師範の存在価値を決めつけるな!!」

 

しのぶ「炭治郎君の言うとおりですね。甚だ不愉快です!」ドスッ

 

無惨「!!」

 

ブロリー「しのぶ?」

 

しのぶ「ブロリーさんは確かに前にいた所では星ごと壊していると聞きました。ですが今はそれをしっかり反省してこの世界で人々を鬼から助けることで償っているんです。さも当然のように次から次へと人を喰い殺す鬼よりかはよっぽど素晴らしい方ですよ。私達からすれば存在してはいけないのは貴方達鬼の方ですよ。」

 

珠世「全く、前々から臆病者だとは思ってましたがまさかここまでとは。鬼の始祖も堕ちたものですね。」

 

ブロリー「珠世?」

 

珠世「ブロリーさんは貴方と違って力による支配と恐怖で縛りつけて無理矢理従えているわけではありません。周りの方達がブロリーさんを心から尊敬して慕っているんですよ。貴方は常に孤独でした。心から信用できる者など誰一人としていなかった。」

 

珠世の言葉に無惨はジロリと睨むと、馬鹿馬鹿しいといわんばかりに鼻で笑った。

 

無惨「フン、下らん。私には十二鬼月がいた。私は独りではない。十二鬼月でお前達異常者を皆殺しに出来たはずだ。なのにこの化け物のせいで全て無駄になったんだ!」

 

珠世「そのように思っている時点で、お前達鬼とブロリーさんには決定的な違いがあるんですよ。お前は十二鬼月を始めとした鬼達をただの奴隷で道具のようにしか思ってなかった。名前を口にしただけで死ぬような呪いをかけるほどですから、心から信用することなど出来なかった。ブロリーさんは悩める人を救い、鬼の脅威から心身共に助け出した。その結果、ブロリーさんは沢山の"仲間"を得ることが出来たんですよ。」

 

しのぶ「その通りですね。今のブロリーさんは私達にとってかけがえの無い大事な仲間で、私にとっては大事な殿方です。鬼舞辻には永遠に理解出来ないことでしょうね。」

 

しのぶ達の無惨への反論を聞いたらブロリーは、口元に笑みを浮かべると無惨を掴んでいる手に更に力を込めて再び壁に叩きつけた。

 

ブロリー「しのぶ、炭治郎、珠世、ありがットォォォ!!!」ドッゴォ!!

 

無惨「ぎゃあ"あ"あ"ああ!!」

 

無惨は珠世達との口論で時間を稼いだが、ブロリーの攻撃を受けた全身は回復する気配を全く見せることはなかった。つまり今の無惨は全く再生できていないのだ。そして無惨が力なく地面に倒れたのを見てブロリーは笑った。

 

ブロリー「フフフフフ!よく頑張ったがとうとう終わりの時が来たようだな!」

 

止めを指すといわんばかりのブロリーだが、珠世が不安そうにブロリーに聞いた。

 

珠世「ですがブロリーさん、どうするんですか?無惨を一番確実に倒すにはやはり日の光ですけど、まだ夜明けには六時間もありますよ?」

 

珠世はかつて縁壱によってあと一歩の所まで追い詰められた無惨が逃げ延びた所を間近でずっと見ていたことがあった。そのことに強いトラウマを感じていた為、今回も"もしかしたら失敗してしまうのではないか"と不安になっていたのだ。珠世が無惨に投じた薬も永続効果ではないのだ。時間が経つにつれて無惨も肉体で薬を分解出来るほどの耐性を持ってしまう。そして薬が分解されたら今度こそ無惨は分裂してでも逃げ出すだろう。無惨程の鬼にもなれば、六時間というのは薬を分解するには十分すぎる程の時間なのだ。そのことを珠世は懸念していたのだ。しかし、ブロリーはそんな事関係ないとばかりに自信を込めて言った。

 

ブロリー「フハハハハハ!!心配することはない!わざわざ夜明けまで待たん!」

 

しのぶ「え?それってどういうことですか?」

 

しのぶはブロリーの"夜明まで待たない"と言ったことに疑問を持った。珠世や炭治郎達も分かっておらずに頭に?を浮かべた。

 

ブロリー「見ていろ。これでくたばるがいい!デヤァッ!!」ガシッ ブオン! ドゴォ!

 

無惨「!あ"あ"ああっ!!」

 

ブロリーは無惨を乱暴に掴んで空中へと浮かせると、腹部に回し蹴りを決めて更に吹っ飛ばした。そして

 

ブロリー「破壊の呼吸、弐拾の型、ギガンティックカラミティ!!」ポウ ゴォォォ

 

無惨「!!ぎぃ"ぃ"や"あ"あ"あ"ああっっ!!!」

 

ブロリーは左手を後ろへ持っていくと、緑の気弾を無惨に押し込んだ。すると、無惨の全身と同等だった大きさの気弾が更に何十倍、何百倍もの大きさまで膨れ上がり、無惨はブロリーの技『ギガンティックカラミティ』に飲み込まれ、それごと空の彼方へと吹き飛ばされていった。

―――無惨は暗い夜の空をブロリーの技ごと上昇しながら飛んでいき、そのままオゾン層を超えて遂には宇宙空間にまで到達していた。

 

無惨(い・・息ができない・・!まさ・・かここ・・宇・・宙!?)「ぎゃ・・!?」ゴゥ!

 

無惨が息苦しさに悶えていると、無惨の全身が燃え始めて激痛を感じた。振り返ると後ろには、全てを焼き尽くす真っ赤な恒星、太陽が背後に迫っていた。ブロリーの技は太陽に向かって一直線に飛んでいたのだ。無惨は宇宙で息が出来ず、更に熱さと鬼の体質で太陽の光が弱点なこともあり、この世の物とは思えない程の苦しみを味わっていた。

 

無惨「・・ッ・・ッ」(あ"あ"あ"あ"!!熱・・い!!痛・・い!!苦じ・・い・・う"う"う"・・)

 

苦しみのあまり声を出すことすらできなくなっていた。太陽が間近に迫ってきて更に熱さと息苦しさが増していき、無惨はいよいよ己の死を悟り始めた。

 

無惨(私が・・死ぬ・・?い・・嫌・・嫌だ・・死にたく・・ない・・!死に・・たく・・な・・い・・・だが・・この・・まま・・死んだ・・ら・・楽に・・なれ・・る・・)

 

宇宙空間での苦しみは無惨に確実にトラウマを与えていた。そして遂には何よりも嫌いだった死が苦しみから逃れる唯一の方法だと思い、無惨は完全に抵抗を諦めていた。急速に意識が薄れていく中、無惨は最期に自分をこんな目に合わせたブロリーを心の中で恨んだ。

 

無惨(おの・・れ・・ブロ・・リー・・)ドッカーン!

 

無惨の肉体が太陽によって完全に焼き尽くされて灰になっていった。そして無惨を押していたブロリーの技も太陽に直撃して消えていった。こうして人間と鬼による千年に渡る戦いは幕を閉じ、鬼の始祖である鬼舞辻無惨は完全に死亡したのだった。

―――一方、ブロリー達は無惨がどうなったのかは全く理解出来ていなかった。しのぶや珠世達は無惨がブロリーによって空の彼方へと消えていった方向をずっと眺めているだけだった。

 

珠世(ブロリーさんが無惨を・・!ど、どうなったの?)

 

しのぶ(まだ夜は明けない。鬼舞辻がどうなったのかもわからない。今はブロリーさんを信じて報告を待ちましょう。)

 

炭治郎(師範、無惨は?どうなった?わからない。何が起こってもいいように構えておかないと。)

 

鬼殺隊の隊員や炭治郎、しのぶに他の柱達も緊張した面持ちで場が静まり返る。そんな中、一話の鎹烏が決戦の舞台となった市街地を飛び回りながら報告しに来た。

 

鎹烏「カァァァ!!死亡!!鬼舞辻無惨死亡!!ブロリーノ技ヲ喰ラッタ鬼舞辻無惨!!太陽二叩キツケラレテ死亡ヲ確認!!カァァァ!!」

 

それは鬼殺隊にとっては一番聞きたかった悲願であり、朗報だった。更に

 

「無惨死亡ー!!」

 

「鬼舞辻無惨ヲ撃破!!カァ!」

 

他の鎹烏達も市街地を飛び回りながら無惨を倒したという朗報を伝えた。その鎹烏達にはみんな愈史郎の目がついていた烏だった。嘘をつかないことで有名な鎹烏が何羽も同じことを言い始めた。それは信憑性を持たせることには十分であった。

 

ブロリー「フフフ!フハハハハハ!!イェイ!」

 

隊員達/隠達「「「「「「「「や、やったぁぁぁ!!」」」」」」」」

 

義勇「やったのか・・!」(錆兎、やったぞ!!)

 

無一郎「やった・・!やったんだ・・!!」

 

行冥「鬼殺隊の・・お館様の悲願をついぞ果たした・・実にめでたいことだ、南無阿弥陀仏。」

 

蜜璃「やったわ伊黒さん!無惨を倒しました!」ぴょんぴょん

 

小芭内「そうだな甘露寺、よく頑張ったな。」

 

実弥「もうあの醜い奴らを視界に入れずにすむんだなァ。鬼共はざまぁ見ろって所だなァ。」

 

義勇は亡き親友に心で全て終わったことを伝え、無一郎は無邪気に喜び、行冥は両手を合わせながら感動の涙を流していた。蜜璃は小芭内と手を取り合って跳び跳ねて喜び、小芭内も満更ではない表情をしていた。実弥は自分の刀を見つめて勝ち誇った顔をしていた。そしてブロリーに至っては、両手の拳を力強く握りしめて高笑いしていた。そこへしのぶと炭治郎が駆け寄ってくる。

 

炭治郎「師範!無惨を倒したんですね!」

 

しのぶ「ブロリーさん!全て終わったんですね。」(姉さん、鬼との戦いが終わったわよ。)

 

ブロリー「フハハハ!そうだな。流石炭治郎としのぶと誉めてやりたいところだぁ!」

 

しのぶ「誉めたいのは私の方ですよ。貴方がいなければ皆生きて勝つなんてことは出来ませんでした。全てブロリーさんのお陰です。本当にありがとうございました。」

 

ブロリー「俺からも礼が言いたい。ムシケラに言い返してくれたこと凄く嬉しかったからな。あれのお陰で俺は自信を持って殺すことが出来た。珠世にしのぶに炭治郎、礼を言う。」

 

ブロリーに感謝された炭治郎はニッコリ笑い、しのぶと珠世は顔を赤らめて照れていた。商店街はまだ夜のままだが、鬼舞辻無惨を倒す千年にも及ぶ悲願を果たした鬼殺隊は喜びと明るさに満ち溢れているのだった。




無事に無惨を血祭りにあげました。その後の物語は次回にします。そろそろこの物語の終わりも近づいて来ましたが、最後まで書こうと思います。それではまた次回。


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鬼を全滅させたその後!しのぶと禰豆子の白熱バトル!

第四十六話です。皆さん大変お待たせしました。無惨を倒した後の展開を書くのは想像以上に難しかったです。駄文ですが最後まで読んでくださると嬉しいです。


ブロリーが鬼舞辻無惨を倒したことで、商店街は鬼殺隊員や関係者達の歓喜で溢れていた。そんな中、珠世はしのぶとブロリーの前にやってきて深々と頭を下げた。

 

珠世「しのぶさん、ブロリーさん、貴方達がいなければ鬼舞辻を倒すことは出来ませんでした。尽力してくださったこと、心から感謝します。本当になんとお礼をすればいいのか・・」

 

しのぶ「珠世さん、私は一刻も早く鬼を全て駆逐したくてお館様の指示に従っただけです。それにお礼を言うのは此方の方ですよ。珠世さん達の協力がなければ、我々鬼殺隊は敗北していた可能性が高いんです。鬼なのを覚悟に協力してくださったことに本当に感謝しています。」

 

ブロリー「確かに俺はムシケラを血祭りにあげて殺した。だが、その土台を作ったのは他でもないお前達だ、珠世としのぶが分裂させぬ薬を作ってくれたから俺は心置きなく殺れたのだ。俺からも礼を言うぞ。」

 

しのぶも珠世に向かって共に鬼の劇薬を作ってくれたことに感謝を述べて頭を下げた。ブロリーもしのぶと珠世の功績を認めて礼を言ったのだった。そして珠世は微笑んだあとに大量の涙を流して泣き始めた。それにしのぶは激しく動揺した。

 

しのぶ「た、珠世さん!?どうなさいましたか!?まさかどこか具合でも悪いのですか!?」

 

珠世「違うんです・・ッ・・嬉しいんです・・ッ・・ッ本当に嬉しくて・・本当に・・あの男を・・倒せたんですね・・!」ポロポロ

 

しのぶの動揺を珠世は制した。確かに珠世は泣いていたが、口元は笑っていた。鬼舞辻を倒すという何百年にも渡る悲願が叶って嬉しいのだ。これは歓喜の涙だったのだ。そんな珠世の思いを聞いたしのぶも微笑む。しかし、突如現れた殺気にしのぶは珠世の前に出て臨戦態勢に入る。見ると実弥が鬼の形相で刀に手をかけていた。

 

しのぶ「不死川さん、どうしてそんなに殺気むき出しなんですか?それに今にも斬りかからんとしてますけど人に刀を向けるのは隊律違反ではないでしょうか。」

 

実弥「どうしたもこうしたもあるかァ!まずテメェが後ろの鬼をかばってること自体が隊律違反だろうがァ!」

 

ブロリー「珠世は耀哉も認めている鬼だ。それにもう人間を喰っていない。だから斬り殺す筋合いはない。」

 

ブロリーの耀哉も認めているという発言に反応した実弥は、苦虫を噛み潰したような表情で刀から手を離した。

 

実弥「ケッ!そうかよォ、竈門禰豆子と同じだと言いてぇんだろォ?勝手にしろやァ。ただし!人間を襲う素振りを少しでも見せたら即刻斬首だからなァ。」

 

実弥は耀哉が認めているとわかった時点で、自身の稀血でも禰豆子の二の舞になると察してそれ以上食らい付くことはなかった。これには珠世はもちろんしのぶも内心で安堵した。だがそれでも実弥はその場から去ることはなかった。続けてしのぶやブロリーに向かって別のことを言ったのだ。

 

実弥「そんなことより、どうやって鬼舞辻が死んだことを確認できたんだァ?俺達や鴉は勿論ブロリーも実際宇宙まで行って確かめたわけではない。なのにどうやって奴を殺したことを確信したんだァ?まさか虚偽の情報を伝えたわけじゃ無いだろうなァ!?」

 

実弥の疑問は最もだった。自身も鴉により伝えられた鬼殺隊にとっての悲願に最初は喜んでいたが、冷静になってから誰も宇宙に行ったわけではないのに確信してるのはおかしいと違和感に気づいたのだ。しかし、それにはしのぶが笑顔で答えた。

 

しのぶ「それについては私から説明します。ブロリーさんが無惨に罵られて私は我慢できずに毒を打ち込んだんです。その際に愈史郎さんという方の視覚の札を張り付けたんです。これをつけると同じ札をつけてる別の方と視覚の共有が出来るんです。なので無惨の体についた札を通して同じく札を付けていた鴉が確認できたということです。」

 

実弥「・・そうかァ。」

 

しのぶが説明すると実弥は納得した表情で今度こそ戻っていった。それと入れ替わるように炭治郎がブロリーの前にやって来た。

 

炭治郎「師範!」

 

ブロリー「炭治郎。ムシケラは殺しといたぞ。」

 

炭治郎「はい!師範がいなかったらあのまま無惨に逃げられていました。助太刀してくださって本当にありがとうございました!」ペコー

 

炭治郎も無惨を倒すのに協力してくれたブロリーに対して頭を下げた。ちょうどそのときだった。

 

禰豆子「お兄ちゃん!ブロリーさん!」

 

炭治郎・ブロリー「「!!」」

 

禰豆子が商店街に合流して勢いよく二人に抱きついたのだ。

 

ブロリー「?・・まさかとは思うが、禰豆子か?」

 

禰豆子「はい!竈門禰豆子です!」

 

炭治郎「禰豆子!良かった!人間に戻れたんだな!」

 

禰豆子「うん!それと貴女達はしのぶさんに珠世さんですね。薬のおかげで人に戻ることが出来ました。本当にありがとうございます。」

 

しのぶ「禰豆子さん、お礼を言うのは私の方ですよ。炭治郎君やブロリーさんの協力がなければ無惨も上弦の鬼も倒すことは出来ませんでした。ブロリーさん、炭治郎君も、ありがとうございました。」

 

珠世「禰豆子さん、良かったです。人に戻ることが出来て。お礼なんて結構ですよ。私も何度も炭治郎さんやブロリーさんに助けられてきました。ささやかなお返しだと思っていただけたら幸いです。」

 

禰豆子「はい!本当にありがとうございました!・・それと、ブロリーさん・・///その・・///」

 

ブロリー「?どうした?」

 

禰豆子「私・・///鬼だったときの記憶がありまして・・///ブロリーさんに凄く甘えさせて貰ったのを覚えてるんです・・///それが心地よかったことが忘れられないんです・・///だから・・///その・・!!」

ブロリー「こうか?」ナデナデ

 

ブロリーは禰豆子が求めているものを察して全て言いきる前に彼女の頭を撫でた。

 

禰豆子「はぁぁぁ///やっぱりブロリーさんに撫でられるの気持ちいいです・・///」

 

禰豆子はブロリーに頭を撫でられて心底心地よさそうに目を細める。珠世はそれを見て微笑み、しのぶは震えていた。

 

珠世「あらあら。禰豆子さん本当に嬉しいんですね。」

 

しのぶ「・・・・」ワナワナ

 

しのぶの視線は禰豆子に向いていて鋭い眼光になっていた。そしてとうとう我慢できなくなってブロリーに飛び付いた。

 

ギュム

ブロリー「!!しのぶ?」

 

しのぶ「ブロリーさん、私だって頑張ったんですよ?禰豆子さんだけ甘やかすのはずるいですよ・・」

 

拗ねたように細々と言うしのぶに、ブロリーはしのぶの体をもう片方の腕で抱えあげた。

 

ブロリー「しのぶ、お前も生き生きした顔をするようになったな。」

 

しのぶ「はい。お陰さまで、姉の仇を取ることが出来たうえに鬼舞辻を倒して鬼のいない世界を実現できましたから。私個人としての悲願もようやく達成出来ましたから充実感で満ち溢れてます。」

 

ブロリー「そうか、流石蟲柱と誉めてやりたい!」

 

しのぶは意気揚々とブロリーと話し、先ほどまでの機嫌の悪さはすっかり戻ったのだが、今度は禰豆子が拗ねたようにブロリーに引っ付いた。

 

ギュム

ブロリー「!!禰豆子?」

 

禰豆子「ブロリーさん、私も鬼になってたときから頑張りましたよ。なのでしのぶさんみたいにしてください。」

 

ブロリーは撫でていた手を止めて、そのまま禰豆子のことも抱えあげる。ブロリーの腕の中でしのぶと禰豆子の双方は視線が合うとお互いに笑顔になった。

 

しのぶ「禰豆子さん?」ゴゴゴゴゴ

禰豆子「何でしょうか?」ゴゴゴゴゴ

 

しかし、笑顔でも目が全く笑っておらず、むしろ般若の幻覚が見えそうな程の圧が二人からは出ていた。それを見かねた炭治郎はブロリーの体も心配して声をかけた。

 

炭治郎「禰豆子、しのぶさんも師範に迷惑をかけるようなことはしては・・」

しのぶ・禰豆子「「何か言いましたか炭治郎君?/何か言ったお兄ちゃん?」」ゴゴゴゴゴゴ

 

炭治郎「ひっ!?」

 

しかし、注意しようとしたが逆に二人から圧をかけられる事態になってしまい、炭治郎は萎縮してしまったのだった。ブロリーはそれをフォローするかのように言った。

 

ブロリー「炭治郎、俺は迷惑だとは全く思ってない。気にしなくても平気だ。」

 

炭治郎「そ、そうですか。」(禰豆子にもこんな一面があったのか・・それにしてもしのぶさんと禰豆子の圧に全く動じない師範は凄いなぁ。俺も見習わないと。)

 

炭治郎は全く動じないブロリーに感心して自分もあのようになりたいと強く思うのだった。

 

ブロリー「お前達もここで争うなよ?」

 

しのぶ「ブロリーさんまで何か言うんですか?」ゴゴゴ

禰豆子「今は少し静かにして貰えますか?」ゴゴゴ

 

ブロリー「今すぐやめないなら落とすぞ?」

 

しのぶ・禰豆子「「!!?は、はい・・」」

 

しのぶと禰豆子の対立は続くかに思われたが、ブロリーの圧力はあまりにも効果的で一気に二人同時に圧が消えた。

 

しのぶ「禰豆子さん、まずは全て終わらせてこう出来ることの喜びを噛みしめませんか?」

 

禰豆子「そうですね、そうしましょう。」

 

そして今は対立をやめたのだった。その後隠たちや他の隊員により、滅茶苦茶になった商店街の修復作業や後処理に勤しんでいるのを後目に、鬼との戦いが終わったあとということもあって蝶屋敷へと足を運ぶのだった。

そして蝶屋敷へついたあと、ブロリーはすぐに自分の屋敷に帰ろうとしたのをしのぶがブロリーの腰布を掴んで引き留めた。

 

しのぶ「ブロリーさん、どこへ行くんですか?」

 

ブロリー「俺の屋敷だ。俺はどこも怪我なんぞしていない。治療の必要などないからな。」

 

しのぶ「いいえ、駄目です。貴方は全ての鬼と直接戦ったんですから、万が一の事があっては大変ですから念のためにここで泊まっていってください。」

 

ブロリー「俺に万が一のことなど起こるか。それにもしその万が一とやらが起きたらここに来るから問題はない。」

 

しのぶ「事が起きてからでは遅いんですよ。貴方は医学や薬学に関しては素人なんですから私に身を委ねてください。・・お願いですから・・!」

 

ブロリー「・・はぁ、わかった、泊まってやるからそんな表情するな。」

 

しのぶ「!はい!」

 

しのぶの悲しげな視線に折れたブロリーは蝶屋敷に泊まることを了承した。それを聞いたしのぶはパアァと表情を明るくして満足したように笑顔で頷いた。そしてその日一日はしのぶ達と共に他の隊員の治療を手伝ったりして過ごしたのだった。

 

ブロリー「しのぶ。」

 

しのぶ「はい何でしょう?」

 

ブロリー「お前、俺に万が一のことがあっては大変とか言っときながらなにもしてないな。まさか俺と一緒に居たいから帰さなかったわけではないよな?」

 

しのぶ「!」ギクッ

 

しのぶはブロリーに図星を突かれて笑顔のまま石のように固く固まってしまった。ブロリーはそれで全てを察したのかため息をついた。

 

ブロリー「・・そうだろうと思った。だが、約束は約束だからな、今日は泊まっていってやるとする。」

 

しのぶ「・・ありがとうございます。それとごめんなさい。部屋には案内しますので。」

 

しのぶに部屋まで案内されたブロリーは、彼女が退室するとすぐに布団に入った。ブロリーは本当に体に怪我は負ってはいなかったものの、夜通し戦っていた影響なのか、疲れていつも以上に早い時間に眠りにつこうとしたのだ。しかし、ブロリーが横になっている部屋に一人誰かが入ってきた。

 

ブロリー「誰だ?」

 

禰豆子「あっすみません。起こしてしまいましたか?」

 

ブロリー「禰豆子か。今から寝ようとしてたところだ。気にしなくて良い。それで、お前は別室に行っただろう。何か用か?」

 

禰豆子「えっと・・///その・・///私が鬼だったときにしてくれたように一緒に寝させてくださいませんか?」

 

ブロリー「寝たいのか?それくらいなら全然構わん。」

 

禰豆子「わぁ!ありがとうございます!」

 

禰豆子はブロリーから許可を貰うと満面の笑みを浮かべて同じ布団へと入ってきた。体格はブロリーの方が断然大きい為、ブロリーは顔を真下へ向けて禰豆子を見下ろす。

 

ブロリー「お前はせっかく人間に戻ったんだ。兄妹の炭治郎の所に行かなくて良いのか?」

 

禰豆子「うーん。なんだかブロリーさんと一緒に居たい気持ちだったんです。」

 

ブロリー「そうか。」(・・まぁ炭治郎には善逸と伊之助もいるからな。1人じゃないのなら問題無いだろう。)

 

禰豆子「ブロリーさん、私は最終決戦の時はずっと鱗滝さんの所で過ごしていて何も出来ませんでした。なので最終決戦の戦い振りを教えてくださいませんか?」

 

しのぶ「はい、それはそれはもう凄かったですよ。鬼の攻撃を受けても傷一つ追わずに次々と姿を変えていって鬼達を粉砕していったんですから。倒すを通り越して最早無双でしたよ。」

 

ブロリー「へァッ!?」

禰豆子「きゃっ!?」

 

禰豆子の質問に答える第三者の声。二人が聞こえてきた方向に驚きながら顔を向けると、すぐ横にしのぶが仁王立ちしていたのだ。笑顔ながら目が全く笑っていなかった。

 

しのぶ「禰豆子さん?私は別室に案内したはずですよね?何故ここにいるんですか?」

 

禰豆子「ブロリーさんと寝たかったからです!」

 

ブロリー「俺も許可した。」

 

しのぶ「・・そうですか、わかりました。私からも許しましょう。た・だ・し!何も邪な事が起こらないか監視させていただきます。」

 

禰豆子「そんな・・!横暴です!」

 

しのぶ「横暴?どこがですか?私はただ万が一のことが起こらないようにしようとしてるんですよ。それのどこが横暴なんです?」

 

禰豆子「うう・・ッ」

 

ブロリー「・・しのぶ、禰豆子に嫉妬してるのか?」

 

しのぶ「!ななな何を、そそそそんなわけ無いじゃないですか。私がブロリーさんと一緒に寝れる禰豆子さんにししし嫉妬なんて。」

 

禰豆子(めっちゃ動揺してる・・)

 

ブロリー「お前も来い。そんなに羨ましそうにしてる奴はほっとけない。何より俺はお前達といると楽しい。」

 

しのぶ「!・・わかりました。では、お邪魔します・・」

 

しのぶは顔を赤らめてしどろもどろになりながらも、どこか満更でもない様子で禰豆子とは反対側の布団に潜った。

 

しのぶ「すみません、狭くないですか?」

 

ブロリー「そんなことは全く気にしてない。どこでも寝られれば同じだ。それにお前が近くにいた方が俺にとっても負荷にならない。いつでもいて良いぞ。」

 

しのぶ「ありがとうございます。ではおやすみなさいブロリーさん。」

 

ブロリー「ああ。」

 

ブロリーの言葉にしのぶは顔を赤らめながら満面の笑みを浮かべた。そして安心したように眠りに落ちていった。そのタイミングを見計らったように禰豆子もブロリーに言った。

 

ブロリー「寝たか。」

 

禰豆子「ブロリーさん、私も貴方の事が好きです。ですけどしのぶさんと争う気は全く無いんです。ブロリーさんにしのぶさんも含めて愛される中に私もいれば満足なんです。でもしのぶさんとずっと敵対してばかりいる・・私はどうしたら良いんですか?」

 

ブロリー「禰豆子、お前も戦ってたんだな。それはしのぶに直接伝えれば良い、しのぶがどうするかは全く予測できないが今のままでは確実に関係改善は難しいからな。俺も全力で援護してやる。俺は禰豆子に助けられた恩を返すだけだぁ。」

 

禰豆子「!ありがとうございます。ブロリーさんが味方になってくれるなら心強いです。急にしのぶさんと話し合いする時が来るのが楽しみになってきました。」

 

禰豆子「ありがとうございます。ブロリーさん。お休みなさい。良い夢を。」

 

ブロリーと後日の約束を結んだ禰豆子は安堵して目を閉じた。そしてブロリーに寝る挨拶をすると眠りに落ちていった。ブロリーも二人が寝たことを確認すると自分も夢の世界へと行くのだった。

 

―――――――――

 

気が付くとブロリーは暗闇の中に一人立っていた。一緒に寝たはずの禰豆子としのぶの姿はなく、見回しても二人の気配はおろか人っ子一人の気すら感じることは出来なかった。そのことにブロリーは怪訝な表情を浮かべた。

 

ブロリー(ここはどこだ?俺はしのぶや禰豆子と一緒に寝たはずだ。だが誰一人として気を感じない。どうなっている?)

 

?「よう、ブロリー!随分久しぶりだなぁ!」

 

ブロリー(!?なんだと?何故貴様がここにいる。)

 

ブロリーにとって聞き覚えのあるかつての宿敵の声に顔を歪めながらゆっくりと振り返った。

 

?「ブロリー、オラ驚ぇだぞ!しばらく見ねぇ間に随分良い奴になってたからよぉ。」

 

呑気に話し掛ける一人の男、その人物は青いタンクトップの上に橙色の胴着を見に纏っていて尖った特徴的な髪型をしていた。突如現れた因縁の相手にブロリーは顔をしかめるのだった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。更に他の柱の充実した日々を送る描写は次回書こうと思います。これからも頑張ります。それではまた次回。


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宿敵!孫悟空現る!そして故人達との出会い!

第四十七話です。大変お待たせしてしまいまして申し訳ありません。今回も駄文ですが最後まで読んでくださると嬉しいです。


ブロリーにとって見覚えのある宿敵の姿に顔をしかめる。しかし、青いタンクトップのうえに橙色の胴着を着た宿敵"孫悟空"はそんなことを気にも止めずに近寄ってきた。

 

悟空「ブロリー、オラ驚ぇたぞ。しばらく見ねぇ間に随分良い奴になったんだなぁ。」

 

ブロリー「・・カカロット。何故ここにいる?」

 

ブロリーは殺気を放ちながらもあくまで冷静に問いかける。

 

悟空「いやぁ、オラも新惑星ベジータでおめえと戦ってから少しして死んじまってな、何回か地獄に行ってみたんだけどどこ探してもおめえがいねぇもんだから界王神様に頼んでここから色んな世界を見て探してたんだ。」

 

ブロリー「・・で?何しに来たんだカカロット。俺に血祭りにあげられに来たのか?仮にそうなら望み通りにしてやるが。」

 

悟空「タンマタンマ。戦いに来たんじゃねぇ。ここの世界のあの世におめえに会いたいっちゅう奴らがいるから連れてきたんだ。」

 

ブロリー「俺に会いたい奴らだと?」

 

ブロリーが悟空に聞き返したそのとき、"ブロリー!"と自身を呼ぶ声が聞こえた。そっちを向くと、かつて狭霧山で炭治郎と共に稽古を付けて貰った錆兎と真菰が笑顔でやってきた。

 

ブロリー「錆兎に真菰か。」

 

真菰「!覚えててくれたの!?」

 

ブロリー「お前達のお陰で俺も炭治郎も鬼殺隊に入れたんだ。忘れるわけないだろ。錆兎から出会ってすぐに斬りかかられたこともな。」

 

錆兎「ッ!それは忘れててほしかったな。そんなことよりもだ!お前の勇姿見たぞ!実に男らしかった!見事だ!それと炭治郎に義勇を立ち直らせてくれた感謝を伝えてほしい。俺はもう未練はない。」

 

真菰「そうだね。私も炭治郎と貴方が気になってずっと見てたけど、凄いね。結局全部の鬼を倒しちゃうんだもん。鬼と戦うことがなくなって私ももう未練はないよ。ありがとう、ブロリー。」

 

ブロリー「義勇に会わなくて良いのか?」

 

錆兎「・・やめとく、まだここにいたくなるかもしれないからな。」

 

ブロリー「そうか。」

 

錆兎「お前もしっかり生きろよ。達者でな。」

 

真菰「元気でね、ブロリー。」

 

ブロリー「お前らもな。」

 

二人は種を返すとそのまま暗闇の中へと消えていった。再び悟空と二人きりになり、ブロリーは悟空に聞いた。

 

ブロリー「カカロット、俺に会いたいって奴はあの二人か?もういないなら俺はもう行くぞ。」

 

悟空「待て、もっといるぞ。だからもう少し待ってくれ。」

 

悟空がそう言い終えると同時に、奥から髪が長い男子が歩いてきた。その容姿は無一郎にそっくりであった。

 

ブロリー「!無一郎か?」

 

?「それは俺の弟の名前だ。俺は時透有一郎。無一郎の双子の兄だ。」

 

姿を見せたのは有一郎であった。しかし、先程の錆兎と真菰とは違い、有一郎は少し距離を置いて立ち止まった。目付きは鋭く、ブロリーを明らかに警戒している様子が見てとれた。

 

有一郎「まず俺の弟を幾度の危機から救ってくれたことには礼を言う。だがあんたにとって無一郎を助けても何の利益にもないはずだ。今の無一郎はあんたに絆されてる。そしてあんたは自分の危険を省みないで人助けして、何が目的なんだ?」

 

生前はあまねに水をかけようとする暴君も見せた有一郎だが、ブロリーには無一郎を助けられた恩もあるためか、当時とはかなり穏やかだった。

 

ブロリー「目的だと?そんなものは無い。無一郎とは刀鍛治の里で大事な仲間になった。やられそうになっている仲間を助けるのは当然のことだろう。」

 

ブロリーはさも当然かのように言い放った。それを聞いた有一郎は表情が柔らかいものへと変わった。

 

有一郎「・・そうか。それがあんたの答えなんだな。・・無一郎をよろしく頼む。あいつは俺が縛り付けていた・・きついことを言って突き放して・・純粋無垢だったあいつを何事にも関わらないようにしてきた。そうすることで無一郎を守れると思ってたんだ・・だけど、あいつが記憶喪失になってたとき、その態度と振る舞いを見て俺は後悔した・・俺があいつにしてきたことと同じことをしていたから・・俺が無一郎を変えてしまったと思ったんだ・・」

 

ブロリー「・・・・」

 

有一郎「あいつはあんたに凄い懐いてる・・正直言って無一郎が羨ましかった・・俺にとっても心強かった・・だから、俺が兄としてしてやれなかった分あいつにしてやってほしい。どうかこの通りだ。」

 

有一郎はブロリーに深々と頭を下げて無一郎を支えることを懇願した。しかし、ブロリーはその頼みを断った。

 

ブロリー「断る。」

 

有一郎「ッ!」

 

ブロリー「俺がいなくても無一郎は無事にやっていけるからな。無一郎には既に炭治郎も禰豆子も玄弥もいる。それに鬼殺隊の柱として支えてきたんだ。貴様が思ってるほど無一郎は弱くない。無一郎も独り立ちできる頃だろう。無駄な世話を焼いて仲が拗れる未来が見える。無一郎の人生は無一郎の物だ。俺に口出しする筋合いなど無いからな。だから無一郎なら大丈夫だ。」

 

有一郎「・・ふっ。そう言われたら俺も何も言えないな。でもあんたがそう言うなら大丈夫な気がしてきた。・・もし来世というものがあるなら今度こそ無一郎と良い兄弟になってやるぜ。」

 

ブロリー「フハハハハ!!その意気だ!」

 

ブロリーと笑いあった有一郎は最後にブロリーに微笑むと暗闇の中に姿を消した。

それと入れ違うように四人の子供達が駆け寄ってきた。

 

?「あっ実弥兄ちゃんと玄弥兄ちゃんを助けてくれた人だ!」

?「わ~。」

?「格好いい!」

?「凄い!」

 

その四人の子は二人はブロリーの手前で止まったが、もう二人は勢いそのままにブロリーに飛び付いた。それぞれ男女二人ずつであった。突然のことにブロリーは目を少し開いて驚いた。

 

ブロリー「!?」(なんだ?こいつらは?顔は玄弥達に似てるが、まさかあいつらの兄弟か?)

 

その兄弟達は不死川弘、不死川就也、不死川寿美、不死川貞子であり、ブロリーの予想通り、実弥と玄弥の兄弟達であったその奥から、小柄な女性が姿を表した。彼女は不死川志津、実弥達の母親である。ブロリーと志津の視線が合うと、志津は悲しそうな表情をしながらも会釈した。

 

志津「初めまして、私は不死川志津、その子達の母親です。貴方がブロリーさんで合ってますね?」

 

ブロリー「そうだ、それに玄弥と実弥の親でもあるな。ここにいる全員が顔が何となく似ている。」

 

志津「!その通りです。貴方にはとても返し切れないほどの多大な恩を受けてしまいました。あの子達、実弥と玄弥の仲を改善してくれただけじゃなく、玄弥を何度も助けてくれたこと、本当にありがとうございました。貴方には感謝してもしきれません。」ペコ

 

そう言うと志津は深々と頭を下げた。しかし、ブロリーには一つ不可解な点があった。

 

ブロリー「・・お前が今言ったことに嘘は感じられなかったが、何故貴様は悲しげな表情をしてるんだ?」

 

ブロリーが問うと志津は大量の涙を流してから顔を覆って泣き始めた。それを見て四人の兄弟達は母親の元へと駆け戻っていき、ブロリーも突然のことに駆け寄った。

 

「「「「母ちゃん!!」」」」

 

ブロリー「!どうしたんだ?」

 

志津「・・私は大丈夫です・・話しますから・・」

 

志津は目元を拭うとポツリポツリと話し始めた。

 

志津「本当は私は実弥と玄弥は勿論この子達にも顔向け出来ないんです・・私は鬼になってこの子達を喰い殺してしまった・・ッ・・自分の子に手を掛けたんです・・」

 

ブロリー「!そうなのか。」(鬼になると身内ですら喰い殺すとは聞いていたがまさかここまでだとはな。)

 

志津「・・知らない男にいきなり何かを体に入れられたと思ったら・・ものすごい苦痛と空腹感が襲ってきたんです・・意識も朦朧として・・あのときはただ空腹を満たすことしか考えられなかった・・そして実弥に止められて日に当たってもうすぐ死ぬときに・・苦痛と空腹感が消えて正気を取り戻したんです・・そのときに自分がしたことを思い出して絶望と後悔しながら死んだんです・・」

 

ブロリー「・・・・」

 

志津「・・私は地獄に落ちるべきです。自分の子に手を掛けるような私には親を名乗る資格も無いんです・・だから・・」

弘「嫌だよ!」

 

志津の言葉を遮るように弘が叫んだ。突然のことにブロリーと志津はそちらに顔を向けた。

 

弘「俺母ちゃんと一緒に居たいよ!母ちゃんが地獄に行くんなら俺も着いていく!」

就也「俺も一緒に行く!殺されたことなんてちっとも気にしてないよ!」

寿美「私も!せっかくまた会えたのに離れるなんて嫌だ!」

貞子「私もずっと一緒に居たい!」

 

志津「ッ!駄目よ!」

 

子供達は誰一人として母親の元を離れないという選択をしたが、志津は口元を引き締めると強く否定したのだ。

 

志津「お願い、わかって・・!これは私のけじめなの!私は罪を償わなくてはいけないの!こんな人殺しのことなんて忘れて貴方達に幸せになってほしいの!」

 

頑なに離れる意思を貫く志津に対してブロリーが睨んだ。

 

ブロリー「・・貴様。そいつらの意思に従え。」

 

「「「「「ッ!」」」」」

 

ブロリーは子供達の意見を尊重したのだ。納得出来ない志津はブロリーに反対した。

 

志津「なんで・・どうして一緒にしようとするんですか?何度も言うますが私はこの子達を喰い殺してしまったんです!だから私には・・

ブロリー「そんなことは何度も聞いたからわかっている!だがお前は自ら地獄に落ちることで逃げようとしてるだけだ!」

 

志津「・・私の・・しようとしている方法が・・逃げ・・?」

 

ブロリー「そうだ。お前が受ける罰を何故お前自身が決められるんだ?そんなのは罪の意識から逃れたいために自分を満足させようとしているだけに過ぎない!お前に償える方法は殺した分息子と娘達に尽くしてやることだぁ!異論など認めない!」

 

ブロリーの言葉は志津の心に深く突き刺さった。再び目から涙を溢れさせて消えそうな声で問う。

 

志津「・・私は・・この子達と一緒にいていいのですか・・?また・・笑い合える家族に・・なってもいいのですか・・?」

 

ブロリー「そいつらはお前とまた家族になることを望んでいる。だったらそれに従うのが一番だ。これに反対する奴がいるなら俺が力ずくでねじ伏せてやる!」

 

志津「う・・うあああぁぁぁ・・!!弘・・!就也・・!寿美・・!貞子・・!本当に・・ごめんなさい・・!」

 

遂に折れた志津は四人の子供達を抱き締めて号泣しながら謝罪した。子供達も母親である志津の体を無言で泣きながら抱き締め返した。ブロリーは"してやったり"としたドヤ顔でその光景を見つめているのだった。しばらくして志津がブロリーの方を見た後に子供達を促した。

 

志津「貴方達は先に行ってて、私は彼にお礼をしなくてはいけませんから。」

 

「「「「はーい!」」」」

 

元気よく返事するとそのまま暗闇の中へと駆けて行ったのだった。そして残った志津はブロリーに向き直ると微笑んで頭を下げた。

 

志津「ブロリーさん。この度は本当にありがとうございました。貴方にお礼するはずだったのに逆私の方が助けられてしまいましたね。面目ないです。」

 

ブロリー「気にするな。俺が好きでやったことだ。礼なんて必要無いからな。フハハ!」

 

志津(この方、最初は実弥のことを殺そうとした最悪の人だと思ってたけど・・玄弥は勿論、実弥が敬愛していたお館様?という人も助けてくれて。あの子達自身だけじゃなくて大切なものまでも守ってくれたとても心優しい方だったのね。彼ならきっと良い旦那様になれるわ。この人と結ばれる人はさぞかし幸せでしょうね。)「ふふっ・・頑張ってくださいね。」

 

ブロリー「?」

 

志津は将来ブロリーの嫁になるであろう女性に微笑ましく思った。そしてブロリーを応援すると心に決めたのだが、本人は何のことだか理解できずに頭上に?を浮かべるのだった。そうしているうちに志津は暗闇の中へと姿を消した。"今の奴とはここで終わりだ"と悟ったが、もう慣れたため悟空に追言することはなかった。

次に現れたのは不死川家と同じように四人の子供とそれを連れた母親らしき人が歩いてきたのだ。

 

ブロリー(また子供を連れた奴か?)「誰だ?」

 

?「私は竈門葵枝。この子達、そして炭治郎と禰豆子の母です。」

 

ブロリー「炭治郎と禰豆子のお袋・・?まさかその子供は?」

 

葵枝「はい。この子達は竹雄に茂、花子に六太です。察しの通り、炭治郎と禰豆子の兄弟ですよ。」

 

葵枝は優しく微笑むと兄弟達を紹介した。それと同時に下の弟達がブロリーへと駆け寄ってくる。そして身長差故に足に飛び付いた。

 

茂「この兄ちゃんすげぇ筋肉だ!」

 

六太「お兄ちゃん凄い格好いい!」

 

さっきの子供と全く同じ行動に、ブロリーはもう驚くことなく引っ付いた二人を見下ろしていた。

 

花子「こら!茂に六太!このお兄さん困ってるでしょ!離れなさい!」

 

茂「なんだよ!お兄ちゃんそんなこと言ってないだろ!それに花子姉ちゃんだって会うの楽しみにしてたじゃん!そわそわしてて隠しきれてないよ。」

 

花子「なっ///!?」

 

花子は竹雄を咎めようとしたが、逆に図星を突かれてしまい顔を真っ赤にして恥ずかしがった。

 

ブロリー「お前も来て良いぞ。」

 

花子「!わっわかりました。では遠慮なく・・///」

 

ブロリーは引っ付いた二人を片腕で抱き上げると、もう片腕で花子も抱き上げるた。

 

六太「わぁ~!高~い!」

 

茂「わぁ!すげぇ!」

 

花子「うう・・恥ずかしい・・///」

 

抱っこされている兄弟達を微笑ましく見ている葵枝は、笑顔で竹雄に聞く。

 

葵枝「竹雄、貴方は行かないの?」

 

竹雄「行きたい気持ちはあるけどそれだとお兄さんが大変になっちゃうから我慢する。俺は次男だから。」

 

ブロリー(炭治郎みたいなことを言うんだな。)

 

葵枝「すっかりお兄ちゃんになったわね。さてと。」

 

葵枝もブロリーの目の前まで近寄ってくる。そして頭を深々と下げた。

 

葵枝「改めましてブロリーさん。沢山の危機から炭治郎と禰豆子を今までずっと守ってくださったこと、本当にありがとうございました。」

 

ブロリー「いや、礼を言うのはこっちだ。俺は炭治郎と禰豆子に救われた。そして一緒に過ごすうちに俺は変わることが出来た。今まで沢山の星の民族共を見てきたが、炭治郎と禰豆子程の素晴らしい人間は今まで見たことがない。」

 

葵枝「うふふ。貴方はお世辞を言うのも上手なんですね。そう言われると嬉しいです。」

 

ブロリー「本心なんだがな。」

 

葵枝「私としましても貴方程強くて逞しく心優しい殿方は他にいません。禰豆子の事、これからもよろしくお願いします。」

 

ブロリー「勿論だ。了解した。」

 

ブロリーの即答を聞けて満足したのか、葵枝は笑顔になると子供達に戻るように促した。

 

葵枝「そろそろ行くわよ。」

 

花子「!わ、わかった!で、ではまた!」

 

茂「えー、もう行くのか。お兄ちゃんまたね。」

 

六太「はーい!お兄ちゃんバイバイ。」

 

ブロリーはしたに下ろすと子供達は手を降って葵枝の元へと戻り、そのまま奥へと消えていった。その時、悟空がブロリーに声をかけた。

 

悟空「ブロリー。次が最後の奴だぞ。」

 

ブロリー「うるさい!」

 

ブロリーが悟空を一蹴するとそれと同時に奥から一人の女性が歩いてきた。その人はしのぶが着ている羽織と同じ物を着ており、桃色の蝶の耳飾りを付けていて、少し上背があり、優しそうな笑顔を常に浮かべていた。そしてブロリーの前まで来ると元気に挨拶した。

 

?「貴方がブロリーさんですね。初めまして、私は鬼殺隊の元花柱にして胡蝶しのぶの姉、胡蝶カナエです。よろしくお願いします。」

 

ブロリー「ブロリー、破壊柱だ。」

 

ブロリーの紹介を聞き終えたカナエは微笑んだ。そして早速と言わんばかりに本題に入った。カナエは膝を折るとそのまま膝まづき、他の柱が耀哉にしている姿勢と全く同じ姿勢をブロリーにしたのだ。

 

カナエ「まずはしのぶの事、本当にありがとうございました。貴方のお陰であの子は復讐に執着せずに生きる意思を固めることができました。それに貴方と共に行動している竈門炭治郎君、彼のお陰でカナヲは固く閉ざしていた心を開いて感情豊かになってくれました。貴方達には本当に感謝してもしきれません。」

 

ブロリー「頭を上げろ。俺はしのぶの"死ぬために生きる"ことが気に食わなかっただけだ。」

 

ブロリーは素っ気なく返したつもりだったが、これが返ってカナエの好感度を上げたのだった。カナエは再び立ち上がると顔を赤らめてブロリーを見つめていた。

 

カナエ(凄いわ。謙遜出来る人なのね。上弦や鬼舞辻を余裕で倒せる程の実力を持っているのに決して過信したり傲慢になったりしないわ。それに自分の大事なものを守るために力を振るうことを当然と思ってる。なんて心優しい人なの///。)

 

ブロリー「?俺に何か付いてるか?」

 

カナエ「!いいえ、ただちょっと素敵だなと思いました。」

 

ブロリー「なんだ?口説いてるのか?」

 

カナエ「!・・ッ・・///」

 

ブロリー「フハハハハ!!お前面白いなぁ。」

 

カナエ「か、からかわないでください!///」

 

カナエは顔を真っ赤に赤らめて恥ずかしがったが、やがて何かを思い出すように話題を切り替えた。

 

カナエ「そういえばしのぶの事ですけど。あの子の事、貴方に任せたいのですがよろしいですか。しのぶは貴方に想いを寄せてます。」

 

ブロリー「勿論だ。俺はしのぶの気持ちには答えると約束したからな。」

 

カナエ「その答えを聞けて安心しました。しのぶの事、泣かせたら許しませんからね。何度でも夢に出てたっぷりと報復しますから。」

 

ブロリー「フハハハハ!!報復だと?されてみたいものだな。まぁお前がそんな意思を抱くときは永遠に来ないがな。」

 

カナエ「ふふっ。しのぶの事、よろしくお願いします。」

 

カナエは最後にそう言うとそのまま行こうとする。しかし、ふと振り返ると悲しそうな顔でブロリーを見た。

 

ブロリー「どうした?」

 

カナエ「・・貴方に一つお願いがあります・・」

 

カナエはそう言って生前から使用していた全集中の呼吸で一気に距離を詰めると、そのままブロリーに飛び付いた。そして両眼から涙を流して泣いていた。

 

ブロリー「!?」

 

カナエ「もし・・もしも来世というものがあるなら・・今度は私のことを・・お嫁さんにしてほしいです・・ずっとここからしのぶの事を見守っていたとき、炭治郎君や鬼の禰豆子ちゃんと貴方をを見ました・・私の夢であった鬼と仲良くすることを実現している、特に禰豆子ちゃんが貴方に甘える姿はとても可愛らしかった。禰豆子ちゃんと仲良くしながら他の仲間を救出して悪鬼をねじ伏せる。そしていつの間にかしのぶ達を心身共に救ってくれた貴方にしか目が行かなくなっていた。私も想いを寄せてたんです・・しのぶの為にも諦めなきゃ行けないことはわかってます・・でも心の何処かでそれを拒否する自分がいる・・もし私が生きてたなら貴方と結ばれるのは自分だったかもしれないなんて都合の良い妄想もしてました・・」

 

ブロリー「・・・・」

 

カナエ「でも今回こういう形で貴方に会うことが出来て改めて確認できました・・私は貴方の事を好いています・・お願いします・・今世ではしのぶに譲るから・・来世こそは私も幸せになりたい・・!だから・・だから・・!」

 

ブロリー「良いだろう。約束してやる。」

 

カナエ「ほ、ほんと・・?」

 

ブロリー「俺もお前と会って少ししか経ってないが、お前はしのぶや炭治郎達に勝るとも劣らないほど良い奴だということがわかった。だったらそれに答えるだけだ!カナエにとって幸せが俺の嫁になることなら喜んで嫁にしてやろう。」

 

カナエ「ブロリーさん・・!嬉しい・・!ありがとうございます・・!」

 

カナエは嬉しさで更に強く抱きついた。そしてしばらくするとカナエはブロリーから距離を取った。そして奥へと種を返した。

 

カナエ「ブロリーさん。また来世にお会いしましょう。」

 

ブロリー「そうだな。いつまでも見つかんなかったら探すからな。」

 

カナエ「!はい!///」

 

最後に元気よく返事するとそのままカナエは姿を消した。それと同時に悟空が現れる。

 

悟空「ブロリー。会いたい奴らと話せてたのしかったか?」

 

ブロリー「貴様が俺の前に現れたせいで良い雰囲気が全て台無しになったがな。」

 

悟空「まぁそう言うなよ。オラもおめぇに会えて嬉しいんだぜ?」

 

ブロリー「俺は二度と貴様の顔など見たくなかったがな。」

 

悟空「えぇ・・オラ嫌われてんなぁ・・それよりおめぇこれからどうすんだ?確か明日夜までにこっちに戻らねぇと二度と戻れなくなるって界王神様が言ってたぞ。明日までに決めておけよ。じゃあな。」ビシュ

 

悟空はブロリーに重要なことだけ伝えると人差し指を額に当てて瞬間移動で姿を消した。残されたブロリーには苛立ちが残った。

 

ブロリー「言いたいことだけ言いやがって・・!元の世界に戻るかどうかだと?そんな答えはもう既に決まってる!」

 

ブロリーがそう一人で決意すると、夢の中のブロリーは再び意識が睡魔と共に落ちていく感覚に包まれたのだった。




今回は夢でブロリーがかつて鬼殺隊や鬼と関わった故人と出会う話を書いてみました。今回大変遅れてしまいましたが、失踪だけはしないように頑張りますそれではまた次回。


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鬼殺隊最後の日!始まる最後の柱合会議!

第四十八話です。皆さん本当に長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。描きたい戦闘がもう終わってしまったのでなかなか進めるのが難しかったです。今回もクオリティが低いですがそれでも大丈夫な方は読んでくださると嬉しいです。それでは本編どうぞ。


意識が浮上して夢想世界から現実世界へと戻ってきたブロリーは、閉じていた目をゆっくりと開けた。既に襖からは明るい陽光が差し込んでいて朝方を迎えていた。鬼がこの世からいなくなり、安心して眠れる夜を取り戻すことが出来て本来なら気持ちの良い朝なのだが、ブロリーは夢で宿敵に勝ち逃げされたような台詞を言われたために気分はそれほどよくなかった。

 

ブロリー(カカロット・・ッ、言いたいことだけ言いやがってッ!これだから彼奴は殺してやりたいほど嫌いなのだ!)

 

そして孫悟空に言われたことを振り払うように勢いよく飛び起きようとしたが、ふと両脇を見て禰豆子としのぶがまだ寝てるのが確認できた。そのため少し体制を整えるだけの動きをして飛び起きることはなかった。

 

ブロリー(そういえば昨夜はしのぶ達と寝ると約束したんだったな。ムシケラ共がいなくなった世界か・・退屈になりそうだな。)

 

ブロリーは鬼舞辻無惨をはじめとした全ての鬼を倒したことまで思いだし、自分の大切な人が安心して暮らせる環境になって嬉しい反面、強敵がいなくなって力を振るえなくなった寂しさも入り雑じって複雑な心境だった。体制を変えて今ブロリーは禰豆子に背中を向ける形となり、目の前にはしのぶがすやすやと寝ていた。

 

しのぶ「すぅ・・」スースー

 

ブロリー「んん?」

 

しのぶの寝息を怪しいと感じたブロリーは人差し指でしのぶの頬を突いた。

 

つん

しのぶ「んん・・!」

 

しのぶの反応を見て彼女が起きている事を確信したブロリーはため息をついた。

 

ブロリー「しのぶ、起きているんだろう、業とらしい寝息をたてるな。」

 

ブロリーが指摘するとしのぶも目を開けていたずらっ子のような笑みを浮かべた。

 

しのぶ「あらあら、バレてしまいましたか。このまま押し通せると思ったんですがねぇ・・残念残念。」

 

ブロリー「俺をあんな演技で騙せると思っていたのか?」

 

しのぶ「感情の制御には自信があったんですけどねぇ。それよりもおはようございます、ブロリーさん。」

 

ブロリー「あぁ、起きた。」

 

しのぶと話していると後ろから何かがブロリーにしがみついた。

 

ギュム

ブロリー「!」

 

禰豆子「ブロリーさん・・朝からしのぶさんにばかり構うのは狡いですよ・・」

 

後ろを見ると禰豆子がむくれながらブロリーにしがみついていた。

 

ブロリー「禰豆子も起きたか。」

 

禰豆子「はい、ブロリーさんおはようございます。それにしのぶさんも!」

 

しのぶ「ええ、おはようございます。それにしても朝っぱらからくっつきすぎなんじゃないですかねぇ?貴女達二人きりではないことを少しは自覚したらどうなんですか?」

 

禰豆子「しのぶさんこそ寝たふりしてブロリーさんの気を引こうとしてたじゃないですか。なのでお互い様ですよ。それに今貴女もブロリーさんにくっついてるじゃないですか。」

 

禰豆子の指摘通り、しのぶもブロリーに前からしがみついていた。しのぶの内心では禰豆子に遅れを取ったことを悔しさと嫉妬で行動に出たのだ。

 

しのぶ「先に手を出した方に言われたくないんですよ。それにブロリーさんとは屋敷が隣同士なので頻繁に会う上に同じ柱です。ブロリーさんのことは何でも知ってると言っても過言ではありません。なので私の行為はブロリーさんにとって許容範囲なので許されてるんですよ。なので早く離れたらどうです?」

 

ブロリー(過言だろう。俺がいつ"良い"と言った・・)

 

禰豆子「それを言うなら、私はお兄ちゃんと一緒に鬼殺隊にいる人達の誰よりも早くブロリーさんと出会っていますよ。一緒に過ごした時間が違うんです。私の方がブロリーさんのことを理解してますしされてるんです。なので私の行為もブロリーさんに許容されていますよ。ですから離れるかどうかは私が決めます。」

 

二人の口論は徐々にヒートアップしていき、威圧感に青筋まで浮かべながら激しさを増していった。

 

しのぶ「禰豆子さん、私は柱ですよ?その気になれば上官命令を出すことも出来ますよ。長いこと鬼殺隊にいる禰豆子さんは柱の命令がどれくらいの権力を持つのかご存じですよね?私の気が変わらないうちに行動することが身のためですよ。」ゴゴゴ

 

禰豆子「お言葉ですがしのぶさん。鬼だったときの私はあくまで"鬼殺隊に保護される"という名目だったので鬼殺隊には最初から"入ってない"んですよ。なので私にはその権力は通用しませんよ。」ゴゴゴ

 

そのときブロリーが体を動かして起き上がった。あまりに突然だった為、引っ付いていた二人は布団の上を少し転がった。

 

しのぶ「きゃっ!」

禰豆子「わっ!」

 

立ち上がったブロリーは二人を見下ろして全く違う話題を口にした。

 

ブロリー「腹減ったから飯食いに行くぞ、着いてこい。」

 

ブロリーに言われて二人はハッとした。起きてから相当時間が経っていたのか、確かに空腹感を感じるようになっていたのだ。その為、ブロリーの言ったことに異を感じなかった二人は二つ返事で了承した。

 

禰豆子「わかりました。」

 

しのぶ「はい、そうしましょう。」

 

三人は部屋を出て食卓までやってくると、既にアオイが起きていて自分の分の朝食を食べていた。こちらに気づくと手を止めて挨拶した。

 

アオイ「しのぶ様、破壊柱様に禰豆子さんまでおはようございます。あまりにも起きるのが遅かったのでご飯終わったら起こしに行こうとしてました。」

 

しのぶ「え?私達そんなに起きるの遅かったんですか?」

 

アオイ「今は8時後半ですよ。もう炭治郎さんも善逸さんも伊之助さんもみんな食べ終わってしまいましたよ。残りはお三方だけです。」

 

しのぶ「起こしてくれてもよかったんですけど。」

 

アオイ「私もご飯出来た時に起こしに行こうとしました。ですが炭治郎さんから"疲れているだろうから目が覚めるまで寝かせてあげてくれないか"って頼まれたんですよ。まぁ私もその時の炭治郎さんの言葉には二つ返事で頷きましたけど。」

 

禰豆子(お兄ちゃん・・そんなに私達のことを思ってくれるなんて・・)

 

しのぶ「炭治郎君がそんなことを・・わかりました。粋な計らいありがとうございます。それとアオイ、さっき8時後半と言いました?」

 

アオイ「はい、もうまもなく9時になります。」

 

しのぶ「!ブロリーさん!急いで朝食を食べますよ!」

 

ブロリー「何を焦っているんだぁ?」

 

しのぶ「本日10時よりお館様の変わりのお屋敷で柱合会議が開かれるんですよ!急がないと遅刻してしまいます!」

 

ブロリー「ヘァッ!?」

 

全集中の呼吸が使えるとは言え、蝶屋敷から産屋敷邸まではそれなりに距離がある。加えてブロリーを除く柱達は耀哉に絶対の忠誠心があるため、最低でも10分前には産屋敷邸の変わりとなる屋敷についてなければならないという暗黙の了解が柱達の間に存在するのだ。それに朝食を済ませて出発するだけなら普通に間に合う時間だが、身支度も済ませねばならないとなれば話は別である。二人はまだ寝間着の姿なのだ。更にしのぶは女性である。身だしなみを整えずに向かうとなると他の柱から非難の声が上がるのが容易に想像でき、なにより敬愛する耀哉にも思い人であるブロリーに公の場で晒すのも抵抗があるためしのぶは焦ったのだ。

 

しのぶ「ご馳走さまでした!失礼します!」

 

しのぶは急いで朝食を食べ終えるとすぐに着替えに行った。因みにブロリーが焦っている理由は耀哉に対する忠誠心は無いが、柱という役割について時間は厳守だということを学んだからである。

 

ブロリー「俺も食い終わった。アオイ、後頼んでいいか?」

 

アオイ「わかりました。お気を付けて行ってらっしゃいませ。」

 

ブロリーも食べ終えると着替えに行ったのだった。

数分後、ブロリーがいつもの白いズボンに赤い腰布に加え金の首飾りや腕輪を嵌めて自身の日輪刀を装備してしのぶが来るのを待っていた。

 

ブロリー「しのぶ、遅くないか?」

 

しのぶ「後少し待ってください。」

 

ブロリー「ぬぅ・・」(俺は急ぐ必要あったのか?)

 

ブロリーが扉一枚を隔てて待っていると、しのぶがいつもの上下鬼殺隊の隊服に蝶を模範した羽織に日輪刀を腰に刺したいつもの姿で部屋から出てきた。

 

しのぶ「お待たせしました!ブロリーさん、行きましょうか。」

 

ブロリー「はい・・」

 

蝶屋敷を出ると、何を思ったのかブロリーはいきなりしのぶに足払いするとしのぶの体が空中に浮いた一瞬で肩と膝を抱えた。いわゆるお姫様抱っこである。

 

しのぶ「きゃっ!?えっ!?ブロリーさん?」

 

ブロリー「しっかり掴まってろ。」

 

いきなりお姫様抱っこされて動揺するしのぶをよそにそのまま真上へ浮かび上がった。

 

しのぶ「うわわっ!す、凄い・・!浮いてる・・!」

 

ブロリー「この方が走っていくより早く着く。それにしのぶも食ったばかりだからこの方が気持ち悪くならん。」

 

しのぶ「!」(ブロリーさん・・!こんなときでも私のことを気遣ってくれてるなんて・・!)

 

時間がない状況でも気を遣ってくれるブロリーにしのぶは赤面すると安定するためにブロリーにしがみついた。

 

しのぶ「・・ありがとうございます・・!///よろしくお願いしますぅ。///」

 

ブロリー「・・しのぶ、くっつきすぎじゃないか?」

 

しのぶ「こうしないと落ちないか不安なんです!///早く行きますよ!///」

 

恥ずかしさを誤魔化すように捲し立てたしのぶだが、その顔は湯気が錯覚で見えるのではないかと言う程赤く熱を持っており、隠しきれてないのが見てとれた。それを見てブロリーは面白く思ったが、顔に出さずにそのまま空を飛んでいった。

――――

しのぶを抱えたまま飛んでいるブロリーはしたに目的地である産屋敷を視界に捉えるとそこに向かって下降した。そして地面が砂利だった為、足を摩る形で着地したブロリーを中心に一面に砂埃が舞い上がったのだった。

 

ドシャアアア!

しのぶ「!ゴホッゴホッ!ちょっ、ブロリーさん!もう少し丁寧に着地してくださいまし!思いっきり砂埃吸っちゃったじゃないですか。」

 

ブロリー「善処しよう。それより着いたぞ。」

 

しのぶ「ありがとうございます。」

 

砂埃が落ち着いて視界がはっきりしてくると、既にブロリーとしのぶ以外の柱は着いていて皆が二人に視線を向けていた。

 

天元「ブロリー!胡蝶を抱えて砂埃あげながら着地するとは派手な登場じゃねーか!」

 

杏寿郎「うむ!危うく鬼かと勘違いして斬りかかるところだった!もう少し普通に来てくれればありがたい!」

 

行冥「南無・・ブロリー、鬼を全て倒して舞い上がる気持ちはわかるが、時と場所を考えることだ。」

 

蜜璃(勢いよく着地したブロリーさん格好いいわ///しのぶちゃんもブロリーさんに抱えられてされるがままになってるの可愛くて素敵///)キュン

 

無一郎「ブロリーさん!やっと来てくれた!」

 

義勇「ブロリー・・胡蝶・・来たのか。」

 

実弥「おいブロリー!時間に余裕を持たねェからこんな着きかたになったんじゃねェかァ?お館様のお屋敷でなんてことしてんだお前はァ!」

 

小芭内「不死川の言うとおりだ。お館様のお屋敷でこんなに荒らしてどう責任を取るつもりだ?」

 

ブロリー「遅刻しそうになったから急いできたらこうなった。」

 

しのぶ「皆さんそんなにブロリーさんを責めないであげてください。私も寝坊してしまったので、ですがなんとか間に合ったので良いじゃないですか。」

 

実弥「ったく!今後気を付けろ。」

 

「「お館様のおなりです。」」

 

実弥がブロリーに一蹴した時、耀哉が妻と子供達と一緒に襖の奥から歩いてきた。柱達は片膝を地面に付けて頭を垂れるが、ブロリーだけは相変わらず立ったままである。

 

耀哉「皆おはよう、今日は良い天気だね。顔ぶれが変わらずに最後の柱合会議を向かえることが出来るのを嬉しく思うよ。」

 

柱達は耀哉の言葉に反応した。今お館様は最後の柱合会議と言ったのだ。つまり柱としてお館様に挨拶できるのは今回で最後、ブロリーを除く柱達は誰もが自分が挨拶をしようと口を開いた。

 

「「「「「「「「「おや/おやか/お館」」」」」」」」」

 

柱達「・・・・」

 

見事に被ってしまい、全員が口を閉じた。一拍置いてから再び挨拶をしようと口を開く。

 

「「「「「「「「「おや/おやか/お館」」」」」」」」」

 

柱達「・・・・」

 

再び被ってしまいまたもや口を閉じる。最後だから誰もが譲るつもりがないのだ。とはいえ流石にこのまま同じことの繰り返しとなるわけにはいかない。直接言ってるわけでも視線を向けてるわけでもないが、皆が"譲れよ"という気配を出していた。そして次の三回目。

 

「「「「「「「「「おや/おやか/お館」」」」」」」」」

 

柱様「・・・・」

 

また被ってしまった。しかし、皆が口を閉じたその直後だった。

 

ブロリー「耀哉、随分と元気になったようだな?フハハハ!良いことだ。これからも元気に過ごせると良いなぁ。」

 

耀哉「ありがとうブロリー。」

 

ブロリーがタイミングを突いて耀哉の元気な姿を称賛したのだ。そして耀哉もブロリーの言葉を普段の柱の挨拶と変わらないと判断してブロリーに微笑んでお礼を言った。しかし、あまりにも杜撰な言葉遣いに他の柱達は勢いよくブロリーを見てショックを受けた表情をしていた。

 

天元(ブロリー、お前・・派手にそれはないだろ・・)

 

蜜璃(最後のお館様の挨拶が・・そんな・・)

 

しのぶ(ブロリーさん、なんて事を・・ですが、また被ることはなくなったのは良いことですね。)

 

無一郎(お館様のご挨拶・・僕が言いたかった・・)

 

行冥(嗚呼・・なんということだ。こんな形でご挨拶が終わってしまうとは・・)

 

実弥(クソッまたしても言い損ねた・・)

 

小芭内(貴様・・どう責任を取ってくれる・・!)

 

しかし、他の柱からはそんなことを思われているとは微塵も思っていないブロリーは視線にすら気づかないでいた。そして耀哉もまた話題を切り換えた。

 

耀哉「ブロリーが仕切ってくれたから、これから最後の柱合会議を始めようと思う。」

 

「「「「「「「「「御意。」」」」」」」」」

 

耀哉「でもその前に、君達に紹介したい方々がいるんだ。入っておいで。」

 

耀哉の言葉で耀哉の隣に現れた二人の影、それはブロリーとしのぶがよく知る珠世と愈史郎だった。

 

ブロリー「珠世か。」

しのぶ「愈史郎さん・・」

 

珠世「!」ニコッ ひらひら

 

珠世はブロリーに気がつくと笑顔で手を振った。愈史郎は笑顔を向けられて手まで振られているブロリーに射殺さんと言わんばかりの視線を送っていた。

 

愈史郎「・・・・チッ!」ゴゴゴゴゴゴ

しのぶ「・・・・ッ!」ゴゴゴゴゴゴ

 

そしてしのぶもブロリーを睨み付けている愈史郎に対して鋭く睨んでいた。他の柱達は禰豆子の件で人を襲わない鬼もいると証明されてる上に、実弥に至っては最終決戦直後に二人に遭遇してブロリーとしのぶによって説明済みな為、誰一人取り乱さずに静観していた。

 

耀哉「鬼舞辻との戦いに協力してくれた珠世さんと愈史郎さんだ。」

 

珠世「初めまして・・珠世と申します・・」

 

ブロリー(緊張してるのか?)

 

愈史郎「・・愈史郎だ・・」

 

しのぶ(機嫌が悪そうですねぇ。私もですけど。)

 

しばらく沈黙が辺りを支配していたが、やがて行冥が代弁するように聞いた。

 

行冥「お館様、鬼舞辻を倒すために協力してくれた良鬼ならば私は認めるつもりででございます。ですが、どのような件で彼らをお呼びしたのでしょうか?」

 

耀哉「そうだね。そこの説明をしようと思う。これから二人は人として生きていくから二人の気配を見つけても決して危害は加えないでほしいと思っている。」

 

実弥「・・お館様、一つお約束していただきたいことがございます。」

 

耀哉「実弥、何かな?」

 

実弥「その鬼共が今後人を襲うようなことがあれば即刻の斬首を願います。」

 

愈史郎「俺達が血肉に飢えて理性の無い行動でも起こすと思ってるのか?お前の方が人を殺めそうではないか。」

 

実弥「あ゛あ゛!!?喧嘩売ってんのかテメェ!今すぐにでも頚を斬っても良いんだぞ!?」

 

珠世「愈史郎!!やめなさい!!」

 

耀哉「実弥、感情に任せて抜刀してはいけないよ。」

 

愈史郎「はい!すみません珠世様!」

 

実弥「・・申し訳ありませんお館様、頭に血がのぼりました。」

 

しのぶ(愈史郎さん、絶対に珠世さんにだけ言ってますよね。)

 

天元(不死川、派手にお館様のみに謝罪したな。)

 

耀哉「鬼舞辻無惨との戦いで協力してくれたこと、更に何百年にも綿って人を食して無いこと、充分証明されてるね。だから危害は決して加えないように、いいね。」

 

「「「「「「「「「御意。」」」」」」」」

 

耀哉の言葉に他の柱達は肯定の意を示した。しかし、何故かブロリーだけは反対した。

 

ブロリー「断る。」

 

しのぶ「え?」

 

耀哉「ブロリー・・?」

 

珠世「えっ・・ブロリーさん・・」

 

愈史郎「ッ!ブロリー!貴様!」

 

しのぶと耀哉は心底驚いた表情をした。それもそのはずである。ブロリーは炭治郎達と浅草で珠世達と遭遇して禰豆子同様信用していたのだ。耀哉もそのことを知ってたから蝶屋敷に迎えにいく際に彼女達の護衛にブロリーを任せたほどである。それなのにそのブロリーが反対したのだ。愈史郎はブロリーに殺気を剥き出しにして珠世に至ってはショックのあまり涙目になって悲しそうな顔をしていたのだ。

 

ブロリー「勘違いするな。俺は珠世と愈史郎が"鬼"として生きるのを反対したんだ。珠世。」

 

珠世「はっはい。何でしょう?」

 

ブロリー「お前が作った薬で禰豆子を人間に戻すことに成功しただろう。ならばそれをお前達も使えば人間に戻れるんじゃないか?鬼舞辻とやらのムシケラはもう殺した。目的は果たしたはずだ、もう人間に戻って普通に暮らしても良いだろう。」

 

珠世/愈史郎「「!!」」

 

ブロリーは珠世達がこれからも"鬼"として生きていくのに反対しただけであり、"人間"としてなら生きていくことには全く反対してないのだ。だからブロリーは禰豆子に投薬した薬を使って珠世達を人間に戻す提案をしたのだ。これに珠世は最初花が咲いたかのような笑顔を見せたがすぐに暗く落ち込んだ。

 

珠世「ブロリーさん・・私はかつて鬼舞辻の支配下にありました。その時に罪なき人を沢山喰ってしまったのです・・そんな私が人間に戻って普通に暮らせるなんてこと・・あってはならないのです・・気持ちは嬉しいのですが・・私は鬼のまま生きて償わなければ・・」

 

珠世は悲しそうな表情をしながらも決意を固めた目で言った。しかし、ブロリーはそれを聞いて鼻で笑った。

 

ブロリー「フン!くだらん。償いだと?そんなものはとっくのとうに終わってるだろう。」

 

珠世「えっ?」

 

ブロリー「お前は俺達と協力して人を喰うムシケラ共を全滅させた。それがどれだけ他の人間を救うことになるのかわかってるのか?」

 

珠世「それは・・」

 

ブロリー「数えきれぬ程の人間の安心な暮らしをお前は果たした。お前自身がムシケラだった時の事など知らんが償う罪などそれで充分だ!」

 

珠世「・・私は・・人間に戻って良いのですか・・?日の下で生きる・・普通の生活をしても良いのですか・・?」

 

珠世は目に涙を浮かべながら消え入りそうな声でブロリーに聞く。そしてブロリーは笑って答えた。

 

ブロリー「ヘハハハ!当然だ。貴様の生活に反対したするやつがいたら俺が直々にそいつの息の根を止めてやる!」

 

珠世「・・ブロリーさん・・ありがとう・・ありがとう・・ぐすっ・・うぅ・・」

 

愈史郎「・・貴様、珠世様を諭してくれたのはありがたいが、人間の息の根を止めたらお前まで鬼と同等になるぞ。」

 

ブロリー「フハハハ!気にするな、俺は悪魔だ!」

 

耀哉「ブロリー。」

ブロリー「んん?」

 

今までずっと静観していた耀哉がブロリーに諭すように口を開いた。

 

耀哉「愈史郎さんの言うとおり、君が一般人を殺すことは如何なる理由でも許されないことだよ。それに君には言葉で諭せる説得力がある。いざというときには誰にも負けない君自身の力で止めることも出来る。何も殺すことまではしなくて良いんだよ。君なら出来ると私は確信している。お願いできるかい?ブロリー。」

 

ブロリー「はい・・」

 

耀哉「ブロリーが言った珠世さん達が人間に戻る案、私は賛成だ。皆はどんな意見か聞かせてくれるかい?」

 

義勇「俺は賛成です。」

 

杏寿郎「うむ!人間に戻れば人を襲わなくなるだろう!全力で賛成する!」

 

天元「俺も派手に賛成する。どんな形であれ、鬼殺隊に協力してくれた恩はド派手に返さないとな。」

 

行冥「南無・・私は以前に出会ってその時から認めていた。私もできる限りのことは手助けしよう。」

 

蜜璃「勿論賛成です!人に戻れたら珠世さんとも友達になりたいから!」

 

無一郎「炭治郎が既にこの人達のことを認めてたんでしょ?だったら僕が反対する理由が無いよ。」

 

小芭内「大嫌いな鬼を視界に入れることがないならそれに越したことはない。」

 

実弥「反対してもブロリーによって無駄になるだけです。」

 

しのぶ「鬼として永遠に罪を償い続けろというわけではありません。勿論賛成です。」

 

耀哉「決まりだね。珠世さんはどうしたい?」

 

珠世「・・私は・・人間に戻りたいです・・」

 

愈史郎「珠世様が戻るなら俺も人間に戻ろう。」

 

しのぶ「ではお二人は私の屋敷に引き取りましょう。薬作りもお手伝いさせていただきます。」

 

珠世「しのぶさん・・ありがとうございます。またよろしくお願いします。」

 

人間に戻ることが決定した珠世と愈史郎は隠と輝利哉やかなた達に案内されて日傘をさして蝶屋敷に向かったのだった。

 

耀哉「さて、これから鬼殺隊として最後の柱合会議を始める。皆上がってくれるかい?」

 

「「「「「「「「「御意。」」」」」」」」」

 

ブロリー「はい・・」

 

珠世達を見送った耀哉達と柱達は、柱合会議に入るために仮の産屋敷邸に上がり込むのだった。




柱合会議の内容も書こうと思ったのですが、思った以上に文字数が多かったので二段階にわけて書こうと思います。そして重大発表です。次回、この『伝説の超鬼殺隊員』は最終回となります。どのような結末にするかを頑張って考察します。それではまた次回。


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エピローグ~未来へ向けて

第四十九話です。今回でこの"伝説の超鬼殺隊員"は最終回となります。皆様本っっ当にお待たせしてしまいまして申し訳ございませんでした。最後はやはりハッピーエンドが良かったので時間をかけて考えた結果、二ヶ月近くも間が空いてしまうという大失態をおかしてしまいました。本当に申し訳ございません。駄文でも大丈夫な方はゆっくりしていってください。それでは本編どうぞ。


産屋敷邸に上がり込んでからは、正座する産屋敷一家と相対する形で同じく正座する柱の姿があった。(ブロリーだけは胡座をかいていた。)

 

耀哉「皆、改めて今日は朝早くから集まってくれてありがとう。さっきも言った通り、今日で最後の柱合会議を始めよう。また顔ぶれが変わらずに揃えたことを嬉しく思うよ。義勇、実弥、天元、無一郎、蜜璃、小芭内、行冥、しのぶ、それと裏方でずっと護衛してくれた杏寿郎に、とんでもない活躍と偉業を成し遂げてくれたブロリー。本当によくやってくれた。」

 

「「「「「「「「「御意。」」」」」」」」」

 

ブロリー「はい・・」

 

耀哉「千年の中で失ったものはあまりにも多すぎたね・・でも私達は鬼を滅ぼすことが出来た。本日で鬼殺隊は解散する。」

 

くいな「長きに渡り身命を賭して」

かなた「世の為、人の為に戦って戴き尽くして戴いたこと」

 

「「「「「「「産屋敷家一族一同、心より感謝申し上げます。」」」」」」」

 

耀哉を始めとした産屋敷一家は柱達に深々と土下座して感謝の意を述べた。それに柱は慌てた。

 

義勇「顔を上げてくださいませ!!」

 

実弥「礼など必要御座いません!鬼殺隊が鬼殺隊で在れたのは産屋敷家の尽力が第一!」

 

杏寿郎「うむ!お館様を始めあまね様やご子息様方が尽くしてくださったので我々は柱として前線で戦うことができました!」

 

天元「産屋敷家の人柄があったからこそ俺は貴方に付いていこうと思えたのです!」

 

無一郎「お館様にあまね様は鬼に兄を殺されて瀕死状態だった僕を救ってくださいました。感謝するのは僕の方です!」

 

小芭内「俺も他でもないお館様だからこそ信用して忠実でいようと思えました。」

 

蜜璃「自分自身の本来の姿でいてもいいって当時一番欲しかった言葉をお館様はくださいました!そこから本気で慕うようになったのです!」

 

しのぶ「妹のカナヲと出会えたのも鬼殺隊という組織に属していたからです。お館様には感謝してもしきれない恩があります。」

 

行冥「我ら鬼殺隊が千年の間不滅だったのは産屋敷家の努力の賜物です。御先祖様方も鬼を滅ぼせたことをさぞ誇りに思っていることでしょう。」

 

ブロリー「流石産屋敷家と褒めてやりたいところだぁ!」

 

柱達に謙遜な感謝の意を示された耀哉は目頭の奥が熱くなるのを感じながら優しく穏やかにお礼を言った。

 

耀哉「皆・・ありがとう・・本当にありがとう・・」

 

そして耀哉の後ろではあまね、ひなき、にちか、輝利哉、くいな、かなたが嗚咽を漏らさずに静かに泣いていた。それを柱達は微笑ましそうに見るのだった。そして最後の柱合会議が終わっていよいよ解散となった時、ブロリーがふと耀哉達の方を見ると、寂しそうに此方を見つめる子供達の姿があった。

 

ブロリー「どうしたんだ?」

 

ブロリーの疑問に耀哉とあまねも気づいたのか自分の子供達へと顔を向けた。

 

耀哉「ひなき、にちか、輝利哉、くいな、かなた、どうしたんだい?」

 

輝利哉「!すっすみません。もう皆様に会えなくなるのは寂しいと感じていまして・・」

 

輝利哉が他の四人の気持ちも共に代弁するように胸の内を明かすと少し俯いた。ブロリーを始め、他の柱達も聞き耳を立てていた。

 

耀哉「確かにそうだね、世代を超えて剣士達と築き上げたものは深い。こういうお別れは寂しいものだ。でも彼らには彼らの生活がある。今まで散々私達の方がお世話になったんだ。これ以上迷惑をかけてはいけないよ。」

 

実弥「迷惑などとんでもない!呼んでくださればいつでも駆けつけます!」

 

杏寿郎「不死川の言う通りです!我らは皆お館様を心よりお慕いしております!」

 

実弥と杏寿郎が迷惑ではないとはっきりと言いきり、他の柱達も同調するように頷きながら強い眼差しを向けた。

 

ブロリー「会いたいなら呼ぶがいい。気が向いたら行ってやる。」

 

輝利哉「!ブロリー様・・!ありがとうございます!」

 

輝利哉が頭を下げると同時に他の四人がブロリーに飛び付いた。

 

ブロリー「ぬぅ!?」

 

ひなき「ブロリー様、あの時は本当にありがとうございました。」

 

ブロリー「何のことだぁ?」

 

ひなきが一番の年上として代表してブロリーに感謝の意を述べたが、ブロリー本人は何の事かはわかっていなかった。しかし、ひなきは引っ付いたままにっこりと微笑んでその理由を述べた。

 

ひなき「鬼舞辻無惨が襲撃してきたときに私達を助けて下さったことです。あなた様が戦場に向かった後、私達は輝利哉達と合流して生きて鬼舞辻を倒そうと合意しました。今となっては生きてて本当に良かったと思っています。」

 

にちか「私も鬼舞辻を倒すには屋敷と共に爆撃で死ななければならないと思っていました。しかし、あなた様のお陰で今もこうして生き長らえることが出来ています。本当にありがとうございました。」

 

ブロリー「ふん。」ヒョイ

 

ブロリーは二人の言葉を聞き終えると四人まとめて抱き上げて肩や腕に乗せた。

 

ひなき「きゃっ!///」

 

にちか「ひゃっ///」

 

くいな「わっ!///」

 

かなた「うわわっ///」

 

突如抱き上げられた四人は目を見開いて驚き、そしてすぐさま自分達の状況を理解して恥ずかしさと嬉しさで顔を赤らめていた。

 

ブロリー「お前達が自ら死のうとしていたことが気に食わなかっただけだ。」

 

ブロリーは当時の事を思いだし淡々と告げるが、四人には聞く余裕がなくて顔を赤くして俯くだけだった。それを輝利哉は羨ましいような免れて安堵したような複雑な心境に陥っていた。そして不意に抱き上げられているにちかと目が合った。

 

にちか「・・!」

 

輝利哉「?」

 

にちか「あっあの、ブロリー様。私達は五人で兄妹です。なので輝利哉も一緒に抱き上げて下さいませんか?」

 

輝利哉「ゑゑ!?」

 

ブロリー「いいなぁ・・」

 

悪戯の笑みを浮かべたにちかが提案して悪魔のような笑みを浮かべたブロリーはゆっくりと輝利哉に向かって歩いた。

 

輝利哉「えっとブロリー様・・流石に姉上達四人を抱えて更に私もとなると難しいと思いますので私のことはお構い無く・・」

 

ブロリー「まだいけるぞ。」

 

輝利哉は後退りしながらブロリーを説得しようとするがブロリーに一蹴されてしまう。更に

 

ひなき「遠慮することはないわよ輝利哉。」

 

にちか「ブロリー様がいいと仰っているのですよ。一緒に抱き上げられましょう。」

 

くいな「こっちへ来て下さい兄上。」

 

かなた「観念してください兄上。」

 

四人の姉妹からも抱えられながら道連れにする気満々なので、輝利哉の顔は青ざめていた。そして壁にまで追い詰められてしまい、それ以上後ろに下がれなくなった。

 

輝利哉「ち、父上・・母上・・お、お助けください・・」

 

あまね「諦めなさい輝利哉。」

 

耀哉「今の私では力添えは出来ないかな。」

 

輝利哉「そ、そんな・・」(終わった・・)

 

輝利哉は最後の手段として両親に助けを求めたが、それすらも失敗に終わり、項垂れる他なかった。

 

ヒョイ

輝利哉「!」

 

ブロリー「フフフ!逃がすと思っていたのか?」

 

輝利哉(もう・・好きにしてください・・)

 

遂にブロリーに捕まった輝利哉は全てを諦めた遠い目をして考えるのをやめた。半場ヤケクソになりながらブロリーの抱っこを堪能するのだった。

 

蜜璃(お館様のご子息様が皆ブロリーさんの腕の中で小さくなってるわ!かっ可愛すぎる~///)

 

実弥(くそっ、お館様のご子息様を全員抱けるなんてなァ!羨ましすぎるだろォ。)

 

しのぶ(いけないいけない、相手はお館様のご子息様なのよ。嫉妬なんて駄目、胡蝶しのぶ冷静になりなさい。感情の制御が出来ないものは未熟者です。)

 

柱が各々別の思いでブロリーと輝利哉達のやり取りを見ている中、気のすむまで抱き上げ続けたブロリーが五人を下ろすと全ての柱達は今度こそ本当に解散したのだった。尚、今回のことは五人も楽しかったらしく、次はいつ来てくれるのだろうかと指折り数えながら楽しみに待つようになったようだ。

 

―――――

 

場所は変わって再び蝶屋敷、ここには最終決戦での傷と疲弊を完全に癒してから本当に解散しようということになり、屋敷の中には柱合会議に参加した柱の面々と炭治郎達が再び合流していた。

 

天元「炭治郎!明日には静養終えて家に帰るんだって?」

 

須磨「先に私達のうちにも遊びに来てくださいよぉ!!」

 

まきを「馬鹿デカイんだよアンタ声が!!」スパン!

 

須磨「いやあっ!まきをさんがぶったあ!!天元様見ましたあ!?今ぶたれたの!」

天元「ちょっと見てなかったわ。」

須磨「ぼんくら!!」

 

雛鶴「落ち着いたら遊びに来てね。これうちの住所とお土産のお菓子。」

 

炭治郎「わー、ありがとうございます!」

 

最初に天元が炭治郎の元にやって来てその入れ違いに、次は師匠であるブロリーが入ってきた。

 

ブロリー「炭治郎。」

 

炭治郎「あっ師範!」

 

禰豆子「ブロリーさん!」

 

ブロリー「明日帰るんだな?」

 

炭治郎「はい!」

 

ブロリー「そうか。俺はお前に恩を返せたか。」

 

炭治郎「・・それはもう、充分すぎるほど受けとりました。逆に俺が貴方に更に何かしなきゃと思うくらいに。そう言えば師範は今後どうするんですか?」

 

ブロリー「炭治郎、俺はもうお前の師範じゃない。普通に呼べ。」

 

炭治郎「はい!これからは師範の事を義兄さんと呼びますね。」

 

ブロリー「・・へぁ!?」

 

炭治郎「話は全て聞きましたよ。しのぶさんと禰豆子と結婚なさるんですよね?俺、師範になら安心して禰豆子を出せますから。」

 

禰豆子「ブロリーさん・・ふ、ふつつか者ですが末永くよろしくお願いします。///」

 

ブロリー「・・俺はお前を幸せにするだけだぁ!///」

 

炭治郎「良かったな禰豆子。本来なら俺が義兄になるのですが年齢的に師範の方が上なのと今までの思いを込めて義兄さんと呼びます。改めてよろしくお願いします。義兄さん。」

 

ブロリー「・・じゃあ次は炭治郎だな。」

 

炭治郎「?」

 

ブロリー「カナヲを嫁にするんだろう?師範であるこの俺が見抜けないと思ったか?」

 

炭治郎「!?・・///」

 

禰豆子「あはは!お兄ちゃん顔真っ赤ー!」

 

ブロリー「ふん、軽い仕返しだ。」

 

ブロリーに思わぬカウンター攻撃を食らった炭治郎は顔を真っ赤にさせて俯き、禰豆子とブロリーはそれを意地の悪い目で見ていた。

 

実弥「ブロリー、自分の弟子いじめてんじゃねぇよォ・・」

 

玄弥「破壊柱さん、炭治郎!」

 

炭治郎「玄弥!不死川さん!」

 

実弥「・・お前の妹を刺しちまったり、玄弥との問題に巻き込んだりしちまったな・・色々と悪かったな・・」

 

炭治郎「もう良いです。ですが一つだけ約束してください。」

 

実弥「約束だァ?」

 

炭治郎「はい!もう鬼はこの世にいません。なので今までの分玄弥を弟として、そして家族として仲良くいつまでも暮らしていってください。それが俺との約束です。」

 

実弥「・・フッ、当たり前だァ。お前との約束、死ぬまで守り通してやらァ。」

 

玄弥「兄貴・・」

 

実弥「玄弥、お前悲鳴嶼さんのところでやってたみたいだなァ。良く頑張ったなァ。お前は俺の自慢の弟だァ。」

 

玄弥「兄貴・・俺もごめん。あの時、何も知らなくて兄貴を罵っちゃった・・」

 

実弥「そんなことはもう気にしてねェ。じゃあ帰るぞォ。」

 

玄弥「!うん!」

 

実弥「お前らも元気でなァ。」

 

炭治郎「はい!いつまでもお元気で!」

 

実弥と玄弥は炭治郎に別れを告げるとそのまま二人で仲良く風屋敷へと帰っていった。その後も義勇や左近次にあってお互い抱き締め合ったり、煉獄一家と健闘を讃え合ったりして最後にしのぶが部屋に入ってきた。

 

しのぶ「炭治郎君。」

 

炭治郎「!しのぶさん!」

 

しのぶ「カナヲから話は聞きましたよ。何でも告白して無事了承が得られたそうですね。」

 

炭治郎「!・・は、はい・・」

 

しのぶ「炭治郎君にならカナヲを安心して任せられます。幸せにして上げてくださいね?」

 

炭治郎「勿論です!」

 

ブロリー「しのぶ。これからどうするんだぁ?俺としのぶと禰豆子は結婚するんだろう?ここか俺の屋敷が空くことになるが。」

 

しのぶ「そうですねぇ。まず私と禰豆子さんとブロリーさんの式をあげることを最優先にしましょう。それとブロリーさんは破壊屋敷入ります?」

 

ブロリー「いらん。炭治郎は実家に行く上に伊之助と善逸も着いていくと聞いたからな。俺も屋敷に未練はない。」

 

しのぶ「それならばあの土地を譲っていただけませんか?あの広大な土地は魅力的なんですよ。それに中の近代的な鍛練材料も使えそうです。」

 

ブロリー「別に構わないがどうするつもりだ?」

 

しのぶ「せっかく鬼を殺す為に色々な薬学を頭に入れたので、なんとなくこのまま忘れてしまうのは勿体ない気がしました。なのでそのままこの屋敷を改修工事して総合病院を建てて働こうかなと思っていまして。」

 

ブロリー「いいなぁ。」

 

禰豆子「賛成です!」

 

鬼殺隊全隊員の悲願である鬼舞辻無惨を倒すという願いは、千年の時を得て遂に叶った。ブロリーはしのぶと禰豆子と共に残りの人生を歩み、元のドラゴンボールの世界には戻らないことを決意した。それぞれのやるべき事、今後の事を考えて明るい未来へと進んでいくのだった。

 

―――――

 

それから数年の月日が建ち、今となってはかつて本当に鬼がいたのかと疑うほどに朝も夜も活気があって賑わっていた。かつて蝶屋敷と破壊屋敷があった場所には大きな十階建てほどの建物が建っていて入り口のプレートには『胡蝶総合病院』と堂々と書いてあった。あのあと、産屋敷家の協力もあり、大きな総合病院へと改修することに成功したのだ。この病院の院長は勿論しのぶであり、診察との二刀流を果たしていた。

 

しのぶ「次の方、どうぞ~。・・・・ふむふむ、風邪ですね。でしたら此方のお薬を出しておきますね~。」

 

しのぶはあれから診察の資格の修得にも成功して笑顔で患者を向かえていた。鬼がいなくなった今、しのぶはこの仕事がある生活を心の底から楽しんでおり、笑顔の鉄仮面ではなく本物の笑顔が常時咲き誇っていた。この笑顔のしのぶに惹かれる男性患者は多く、今までに沢山の男性から告白やナンパに誘われたりしているが、しのぶの気持ちは変わらずブロリー一筋なため、全ての誘いが撃沈しているという。

―――――場所は変わってここは受付である。ここには禰豆子がいて経営係と看護婦の仕事を掛け持ちしていた。

 

禰豆子「お待たせしました。本日のお会計は此方になります。・・・・はい、此方が商品です。ありがとうございました。お大事に~。」

 

禰豆子は鬼になる前も戻ったあとも面倒見が良くてしっかり者だったので、重要な経営費の管理と看護婦としてしのぶの手助けを行っていた。禰豆子もまたしのぶに負けず劣らず美人なので、同様に告白しようとするものが多いが、彼女もブロリー以外の男とは全く結ばれる気がない。此方はしのぶと異なり、経営の仕事を盾にしたりその場から姿を消すなどうまく場をかわしていた。その為、心に傷を負う者は此方の方が遥かに少なく、未だにチャンスがあると思っている男性患者が後を絶たないようだ。

―――――そして再び場所が代わり、ここは緊急治療室である。ここにいるのは二人の恋人のブロリーである。彼は主に重度の急患の対応を担っていて、事故によって担架で運ばれてきた患者を抱えて病室まで低空飛行して飛ばしていた。その後、緊急治療を終えたブロリーは軽く叱責だったり慰めだったりと軽いメンタルケアをして立ち直らせている。

 

ブロリー「何故こんな無茶をした。死んだら周りの奴らが悲しむだろう。もっと体を大事にしろ。何があったかは知らんが少なくともお前は一人じゃない。だから無茶だけはするな。」

 

ブロリーの言葉に感化して泣く患者は多く、"次見てもらうときは彼が良い"というリピーターが後を絶たない。更にあれから手術の免許を修得したブロリーはしのぶと共に様々な対応を行うのだ。また、病院の技術力を駆使しても助からない程の危篤患者の場合は自身が持つ気を分け与えて病を癒して治していたのだ。その甲斐もあり、なんとこの病院で治療が力及ばずに患者が亡くなったという事例は一度もなく、それだけブロリーが凄い技術を手に入れたということなのだ。そして急患の依頼がない場合は雑用をこなしていて、消耗品の補充や思い機材の運搬など、日々病院がより良いものになるように尽力していた。彼もまたこの仕事にやりがいを感じているのか、常に口角をあげていたのだった。

―――――時間が経って午後の五時、営業時間が終わった総合病院は賑やかな雰囲気が終わって落ち着いた雰囲気になっていた。しのぶ達三人はこの病院の一角に自分達の住居があるため、実質実家のようなものだった。そこにブロリーからの呼び出しがあって三人は今ブロリーの部屋に集まっていた。

 

しのぶ「ブロリーさん。どうかしましたか?私も禰豆子さんも何故呼び出されたのか理解できてなくて混乱してるんですが。」

 

禰豆子「しのぶさんに同じです。何故呼び出されたのですか?」

 

ブロリー「・・贈り物を受け取ってほしくてな。」

 

そう言ってブロリーが差し出したのは二つの球体型の小さな箱だった。しのぶと禰豆子はそれを聞いて目を輝かせて一つずつ受け取ったのだ。

 

しのぶ「ありがとうございます。ところで今開けても?」

 

ブロリー「構わない。」

 

禰豆子「へ~、なんだろう?」

 

二人が開封して中を見てみると、そこに入っていたのはそれぞれ紫色の簪と桃色の簪だった。これを見た二人は目を丸くして驚愕する。

 

禰豆子「!これって・・!」

 

しのぶ「ブロリーさん、本気ですか?」

 

男性が女性に簪を贈る、それは求婚や告白を意味するのだ。つまりブロリーは二人を嫁に迎える決心をつけて簪を送ったのだ。

 

ブロリー「俺には選べん。どちらかを選ぶとどちらかが不幸になる。炭治郎達と出会うまで散々な目に合っていた俺が大事さを知った今、そんなことをしたら俺自身を俺が許せない。だからしのぶと禰豆子にとっては我が儘なことかもしれんが俺にはこの選択しか出来なかった。・・すまない。」

 

ブロリーの言葉を聞いたしのぶと禰豆子はお互い顔を合わせるとニッコリとブロリーに微笑んだ。

 

しのぶ「実は私達もブロリーさんのいないところでじっくり時間をかけて話し合っていました。そしてお互い本気だとわかってブロリーさんの決断に全て委ねようという結論になりました。なので非は何もありませんよ。」

 

禰豆子「しのぶさんは最初渋っていましたけど、でもどちらを選んでも恨みっこなし、そして二人選ぶなら二人でブロリーさんを支えようと言ってくれました。なのでブロリーさんが謝る必要はありませんし、むしろ私達二人を選んでくれてとても感謝しています。」

 

二人の言葉にブロリーは安心したような表情を浮かべ、二人に高らかに宣言した。

 

ブロリー「俺は今、二人を幸せにするには力が足りない。だが、ここからだ。絶対に他の誰よりも良い最高の夫になってやる!俺にして良かったと思わせる!だからこんな俺でも良いというのなら、俺の嫁になれ。」

 

しのぶ・禰豆子「「はい、喜んで!」」

 

しのぶ「ずっとそう言ってくれるのを待ってましたよブロリーさん、いえ、貴方。」

 

禰豆子「これからは三人で幸せになりましょう。貴方、しのぶさん。」

 

二人は同時にブロリーに飛び込み、それを難なく受け止めて抱き締め返す。病院内にある住居は幸せの雰囲気に包まれていた。

こうして三人は無事に結婚した。これから彼らには幸せな日々が続くことだろう。例えどんなことが起きようと三人の心は既にひとつだ。それは過去も今も、そしてこれから先も永遠に変わらないだろう。一夫多妻性が認められているこの時代、二人の嫁を取ったブロリーに何も変わらないという幸せな時間がいつまでも続きますように―――。

 




これにて"伝説の超鬼殺隊員"は完結となります。初投稿してからおよそ三年。ここまで失踪せずにやってこれたのは、感想やお気に入り登録してくださった皆様のお陰です。応援や続きの期待コメありがとうございました。最後になりますが、最後まで見てくださった皆様には心より感謝申し上げます。

今までありがとうございました!!


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