超サイヤ人 (桂ヒナギク)
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1.出発

 二十年前。

 彼女の名は、キャルロット。何を隠そう、カカロット、もとい(そん) 悟空(ごくう)の双子の妹なのだが、そのことを知る人物は誰一人として存在しなかった。そう、両親を除いては……。

 フリーザの手に寄って惑星ベジータが崩壊し、サイヤ人の赤ん坊である悟空を乗せたポッドの他に、もう一台のポッドが地球とは別の惑星へと向かって飛び出していく。

 向かった先は、水棲生物が暮らすアクア星。

 ポッドの落下地点に、クレーターが出来上がった。

 アクア星の天体観測員が、ポッドの確認に来る。

「見てくれ。赤ん坊だ」

「うん? 尻尾が生えてるぞ」

 天体観測院はポッドから赤ん坊を抱き上げる。

 赤ん坊は元気に鳴き声を上げていた。

 

 

 現在。

 天から降ってきた少女、キャルロットは、端正な顔立ちをした女性に成長していた。

 長閑なアクア星では、地球のように宇宙人に狙われることもなく、彼女は平和な時を過ごしていた。

 だが、それでもサイヤ人としての血が騒ぐのか、強さを求めて日々鍛錬(たんれん)に励んでいた。

「ウォタラやい。修行もそれぐらいにして、食事にでもしないかね?」

 ウォタラ、というのは、アクア星でのキャルロットの名前である。

「じいや」

 キャルロットは老人の方を振り返る。

 老人の名はスイミ。アクア星の長老である。

 刹那、二つの隕石かなにかが上空を通過する。

「あれは……」

 スイミが昔のことを思い出す。

「じいや?」

「あれはお前が乗ってきた宇宙船じゃないのか?」

 二つのポッドは平野に大きな音を立てて落下する。

 クレーターが出来上がった。

 ポッドから、尻尾を生やした男が二人現れた。

 キャルロットは現場へ向かった。

「お前がキャルロットだな?」

「キャルロット?」

「お前は俺たちと同じサイヤ人。共に来い」

「サイヤ人?」

「そうだ。お前は戦闘民族サイヤ人だ」

「俺たちはこれから地球という星を目指す。そこで、カカロットを倒す」

「カカロット?」

 キャルロットの脳裏に、声が()ぎる。

 大きくなったら、カカロットの助けになってやってくれ。

 そこへスイミがやってくる。

「お客人かね?」

「なんだ貴様は?」

「わしはこの星の長老じゃ」

「ほおう?」

「この女は俺たちと同じサイヤ人だ。連れて行きたい」

「よかったじゃないか、ウォタラよ」

「え?」

「この方たちはお前さんのお仲間。一緒に行ってあげなされ」

「でもじいやは育ての親。寂しいんじゃ?」

「いいんじゃよ。わしゃお前さんを仲間の元へ返したかったんじゃ」

「じいや……」

 キャルロットはスイミが保管していたポッドの元へやってくる。

「それじゃ、行ってくるね」

 キャルロットのポッドが飛び立った。

 今、三人を乗せたポッドが、地球を目指す。

 



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2.地球

「おい、キャルロット」

 キャルロットのポッドに、禿頭の乗る宇宙船から通信が入る。

「なに?」

「さっきお前の戦闘力を測ったんだがな、たったの一だぞ? そんなんでカカロットと戦えるのか?」

「その前にカカロットって誰?」

「ターレスってやつに聞いたんだがな、お前の双子の兄らしい。そしてその兄の兄、つまりお前の兄でもあるラディッツがカカロットに殺されたんだ。俺たちは裏切り者のカカロットを始末するために地球という星へ向かってるんだ」

「へえ。あ、そういえばあなたの名前は?」

「うん? まだ名乗ってなかったか。ナッパだ。もう一人の方はベジータって名だ」

「ナッパさんにベジータさん」

 そこへベジータが割って入る。

「おい、キャルロット!」

「うん?」

「その呼び方はやめろ! 虫唾(むしず)が走る!」

「ごめん。でもなんて呼べば?」

「同じサイヤ人なんだ。呼び捨てで構わん」

「そしたらナッパもナッパでいい?」

「構わないぜ」

 キャルロットの視界に、美しい惑星の姿が飛び込んできた。

「あれは?」

「どうやらあれが地球のようだぜ」

 三人のポッドが地球の市街地に着陸する。

 ポッドから出てくる三人。

「意外と軽いわね」

「アクアもここの五倍くらいはあったからな」

「ようし、ひと暴れするか」

 ナッパの技が、市街地を消し炭に変える。

「ちょ! カカロットを倒すんでしょ!? 地球は関係ないじゃん!」

「カカロットの悔しがる姿が見たいもんでよ」

 ピピ!

 ナッパが片目に装着しているスカウターを起動する。

「いるぞ。近くに大きな戦闘力を持ったやつらが」

「ようし、行くか」

 ベジータとナッパが飛び立つ。

「待ってよ!」

 キャルロットも舞空術で二人を追う。

 草原の一角に、悟空の息子の悟飯、ナメック星人のピッコロ、他数名が集まっていた。

「来るぞ!」

 と、ピッコロが言うと、一同は身構えた。

 そこに、三人のサイヤ人が降り立つ。

「待っていたぞ、サイヤ人ども」

 と、ピッコロ。

「ナメック星人か。お前だな? カカロットと組んでラディッツを殺したのは」

「ふん!」

「まあ、いい。いずれお前も同じ運命を辿るのだからな」

「あれ?」

 悟飯が伝え聞いていた人数と違うことに気づく。

「ピッコロさん、サイヤ人は二人でしたよね?」

「ああ、確かにそうだ」

「でも、三人いません?」

「どうでもいい。まとめてやっつけるだけだ」

「随分と威勢がいいのね」

「ふん。さっさとかかってこい」

「まあ、慌てるな。俺たちはカカロットを倒しに来たんだ。お前たちには興味はない」

「カカロット? 悟空のことか?」

「悟空? そいつがカカロットなんだな?」

「お父さんはお前たちになんかやられないもんね!」

「お前は……、そうか」

 ベジータは何かを思いつく。

「ナッパ。あのチビの相手をしてやれ。カカロットに会うまでの余興だ」

「いいぜ」

「気をつけろ悟飯!」

 ナッパは悟飯と戦うが、彼では敵にすらならなかった。

「悟飯!」

 死にかけの悟飯に、トドメを刺そうと光線を放つナッパ。

 ピッコロが、悟飯を庇い、光線技を身に受けた。

「うおわああああ!」

「ピッコロさーん!」

 倒れるピッコロ。

「に……逃げろ……悟飯……」

「ピッコロさん?」

 ピッコロは息絶えてしまった。

「ピッコロさん! ピッコロさん!」

「ピッコロ!」

 と、禿頭の地球人。

(禿頭が二人……)

 と、内心思うキャルロットだった。

 



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3.伝説の変身

「貴様、よくもやりやがったな!」

 ヤムチャという地球人がナッパに突進した。

 ブン!

 ヤムチャの拳がナッパの顔面にめり込むが、大して効いていないのか、微動だにしない。

「ふん」

 ナッパはヤムチャの手首を掴み、後方へ放り投げた。

「死ねええええ!」

 光線技がヤムチャにクリーンヒットし、大ダメージを受けた彼は地面に伏した。

 クリリンという鼻のない男が、悟飯に言う。

「悟飯、悟空が来るまで、なんとか時間を稼ぐぞ」

「で、でも僕、もうヘロヘロで戦えません」

 クリリンが気を悟飯に分け与えた。

「ありがとうございます!」

 悟飯は三人を()()ける。

「赦さないぞ、お前たち!」

「ふん。お前たちの相手はこいつらにしてもらおう」

 ナッパが地面にタネのようなものを撒いた。

 タネからサイバイマンが育つ。

「なんだこいつら?」

 悟飯とクリリン、そして天津飯という三つ目人が応戦。ボロボロになりながらもなんとか撃退に成功した。

「もうボロボロだな。そろそろあっちへ行くか?」

 と、ナッパ。

 ナッパの背後からチャオズという小さな男の子が張り付く。

「天さん、ごめんなさい」

「チャオズ、やめろ!」

 だが、チャオズは自爆してナッパを巻き込んだ。

 しかし、それでもナッパはかすり傷を負うだけで、ピンピンしていた。

「チャオズー!」

「びっくりさせやがって」

「チャオズの仇!」

 天津飯が気功砲を放つ。

「波ー!」

 だが反撃に遭い、天津飯も息絶える。

「そんな、天津飯まで!」

 そこへ、悟空が駆けつける。

「ピッコロ……、ヤムチャ……、天津飯。それにチャオズまで」

「お前がカカロットか。待ってろ。今、その二人が死ぬところを拝ませてやる」

「そんなこと、させねえぞ!」

 界王拳!——悟空は目にも留まらぬ速度で、襲い掛かろうとしたナッパを戦闘不能に陥れた。

「ぐ……」

 片手で持ち上げていたナッパを放り投げる。

「悟空、お前なにしたんだ?」

「界王拳だ」

「界王拳?」

 悟空が二人を見る。

「おめえたち、さっさと地球から出てけ」

 無言でベジータがナッパの手を掴む。

「べ、ベジータ……」

 ベジータはナッパを上空に放り投げると、光線を放って粉砕した。

「足手まといは必要ない」

「ベジータ……」

 と、キャルロット。

「やめだカカロット。今すぐ俺と戦え!」

「待ってベジータ」

「なんだ、キャルロット?」

「あんたじゃ、勝てないよ」

「戦闘力が一の貴様に言われる筋合いはない」

「一かどうか、見てればわかるわ」

「いいだろう」

 ベジータはスカウターでキャルロットの戦闘力を測る。

「カカロット、あんたの相手は私よ」

「オラ、女は殴りたくねえな」

「私は殴るよ」

 キャルロットが気を溜め始める。

「はああああ!」

 上がり始めたエネルギーはどんどん昇り、スカウターが計測不能となって木っ端微塵になる。

「なに!?」

「はああああ!」

 キャルロットの長い黒髪が、金色に変色し、同色のオーラをその身に纏う。

「なんだ、その変わりようは? まさか、超サイヤ人なのか!?」

 ベジータは驚き戸惑う。ちょっと前に会ったばかりの女が、こうもあっさりと超サイヤ人へと変身したのだから。

「かかってきな!」

「界王拳!」

 悟空がキャルロットの懐に飛び込んだ。

 キャルロットを拳で乱打する悟空。

 しかし、てんで効いていない様子のキャルロット。

「ふん」

 デコピンで悟空を吹っ飛ばす。

「うえああああ!」

 後方に吹っ飛ばされた悟空は、岩壁にめり込んだ。

「あ……」

 やりすぎた、そう思うキャルロットだった。

 




原作通りになんかやんないよ?


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4.逮捕された?

 キャルロットは超サイヤ人状態を解除し、元の黒髪の可愛い女性に戻った。

「キャルロット、今のはどうやったんだ?」

 ベジータが疑問符を浮かべる。

「わかんない。ただ、戦闘力を上げてったらああなって」

「予定が変わった。惑星フリーザへ行くぞ。お前がいればフリーザなんぞ取るに足らん相手だ」

「フリーザ?」

 ベジータはポッドをリモコン操作で呼び出し、中に乗り込んだ。

「ちょっと待てよ。まだ勝負はついてねえじゃねえか……」

 と、悟空がやって来る。

「カカロット、俺の目的はお前よりフリーザという恐ろしい相手を倒すことだ。そうだ。お前に知恵を与えてやろう。ピッコロとかいうやつの出生地であるナメック星にでも行けば、ドラゴンボールで死んだやつが蘇るんじゃないか?」

 ハッチが閉まり、ポッドがゆっくり上昇する。

「待ってよ」

 キャルロットもリモコンでポッドを呼び、ベジータの後を追う。

 二人を乗せたポッドは、地球より遥か彼方に位置する、惑星フリーザへ向かって飛び立った。

「ねえ、ベジータ? フリーザって何者なの?」

「フリーザか。その名を聞くだけでも反吐(へど)が出るぜ」

「フリーザって強いの?」

「途轍もなくな。そうでなきゃフリーザ軍の軍長などできんだろう」

「へえ」

 ググググ。

「お腹なっちゃった」

「腹が減ったのか? どこかの星に寄って何か食べるか」

 二人は近くに見つけた惑星へポッドを着陸させる。

 ポッドを降り、辺りを散策する。

「クンカクンカ」

 キャルロットは美味しそうな香に気づく。

「ベジータ、あそこお店じゃない?」

 二人はレストランへ入った。

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」

 二人は適当に座る。

 ウエイターがお冷とお品書きを置く。

 メニューを開いてみるキャルロットだが、商品に金額が書かれていなかった。

「すいません、金額が書いてありませんが」

「申し訳ありません。リーズナブルな金額でご用意させていただいておりますので、お好きなだけお召し上がり下さい」

「じゃあありったけの料理持ってきて」

「かしこまりました」

 キャルロットたちの前に、大量の料理が運び込まれる。

 二人は料理を(むさぼ)り尽くし、店の全メニューが在庫切れになった。

「百那由他(なゆた)ガメッツになります」

「ガメッツ? 私たちこの星のお金ないんだけど?」

「なんですって? お客さんたち、無銭飲食ですか? いけませんなあ、そんなこと」

 ウエイターが通信端末を取り出し、警察を呼んだ。

「こいつら無銭飲食をしようとしてまして」

「それはいただけないな。署まで来い」

「だって、ベジータ。どうする?」

「行ってやろうじゃないか」

「何か企んでるね?」

「ふん」

 ニヤリと笑みを浮かべるベジータである。

 二人は警察に連れられ、署まで同行する。

 取調室に入れられる二人。

 



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5.そんなに弱くてよく用心棒と名乗れたものだ……

 取調室。

「金もないのになぜ店に入った?」

「腹が減ってたから」

「金がないなら食うんじゃない。それとも、無銭飲食が目的なのか?」

「いや、決してそんなことは。ていうか、那由他って高すぎだと思うわよ?」

「反省の色が見えないな。お前たちにはお仕置きをしてやる」

 ベジータが取調官に気弾をぶつけて消し炭に変えた。

「ちょっと何やってんのよ!?」

 そこへ、大勢の警察官が集まってくる。

「貴様、よくも!」

「捕らえろ!」

「あーあ、知らない」

 二人は目にも留まらぬ速度で警察官を薙ぎ倒し、署から脱出する。

 そしてその足でポッドの着地点まで向かうが。

「あれ?」

「ポッドはどこに行ったんだ?」

「あ!」

 キャルロットがポッドを乗せて移動するトラックを見つけた。

「追うぞ!」

 ベジータが飛び立つ。

 キャルロットもポッドを追い、どこかの宮殿へと辿り着く。

 宮殿の王室で、ゴウ・キヤーがお金を数えている。

 そこに慌てた様子の兵隊。

「キヤー様、大変です! 我が警察隊が壊滅しました!」

「なんですって?」

「警察隊が押さえた賊の写真です!」

 兵隊がキャルロットとベジータの写真を見せる。

「総力を上げて捕まえるんだ!」

「その必要はないわ!」

 と、そこにキャルロットとベジータが現れる。

「衛兵は何をしてるんだ!?」

「衛兵は全員殺させてもらった」

「なんですって!?」

「命が惜しくば俺たちの宇宙船を返すんだな」

 ゴウが逃げ出す。

「待て!」

 二人が追おうとすると、迷彩模様の体を持った男が現れた。

「なによあんた?」

「ゴウの用心棒をしているレジックだ」

「レジック先生、そんなやつやっつけておしまい!」

「ふん」

 レジックがキャルロットに襲いかかる。

 キャルロットはレジックの乱打を全てかわし、カウンターで怯ませる。

「貴様、サイヤ人か?」

「ご名答」

「貴様のパワーはその程度か? まだ力を隠しているのだろう? 本気でかかってこい」

「いいわ。見せてあげる」

 キャルロットは超サイヤ人に変身する。

 それを見ていたベジータは、ショックを受けていた。

 自分がエリートサイヤ人のはずが、何処の馬の骨とも知らぬ下級のサイヤ人が、超サイヤ人になってみせるのだから。

 自然と怒りが込み上げてくるベジータ。

 自分がナンバーワンだとばかり思っていたのに、一気にその座から引きずり下ろされたような気分だった。

 そうこうしているうちに、キャルロットの勝利で戦闘は終わっていた。

「大したことないわね。それでよく用心棒を買って出れたものね」

「くっ……!」

 レジックは去っていった。

「さて、ゴウとやら」

「ひえ!?」

 怯えて震えるゴウ・キヤー。

「宇宙船、返してくれるよね? それから、お金にがめついのも控えてほしいわね」

「はいいいい!」

 宇宙船を取り返した二人は、惑星フリーザを目指すのだった。

 



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6.フリーザの行方

 惑星フリーザに到着するキャルロットとベジータ。

「おい、フリーザ様はいるか?」

「フリーザ様なら今さっきナメック星へ向かわれた」

「なにい!?」

 あの話を通信機能で聞いていたのか、フリーザはナメック星へ発ったばかりだった。

「ぐずぐずしてはおれん! 行くぞキャルロット!」

 キャルロットとベジータはフリーザを追うべく、ナメック星へと急いだ。

 一方、一足先に、悟飯とクリリン、ブルマがナメック星に到着していた。

 悟空も後からブリーフ博士の作った宇宙船で向かうということだった。というのも、悟空は重力コントロール装置で修行をしたいからとのことで、三人が邪魔になるからだった。

「ブルマさんはここにいて下さい。洞窟もあるし、ここにいればなんか遭ったときに逃げ込めるので」

「そうね」

「うん?」

 悟飯がなにかに気づく。

「どうした、悟飯?」

「今、気が消えたんです」

「消えた? またまた。こんなところにベジータがいるってのか? ベジータはフリーザを倒すとか言って飛び立っただろ。こんなところにベジータがいるとは思えないけどな」

「違うんです。ベジータより、悪意に満ちた気が別の気を消したんです」

「ベジータよりやばいやつがいるのかよ」

「僕、ちょっと行ってみます」

「俺も行くよ」

 悟飯とクリリンが偵察に出る。

 崖の上から、集落を見下ろす二人。

 そこには、不思議な乗り物に乗った異星人ことフリーザと、側近のドドリアとザーボンがいる。そして、複数のナメック星人の死体の中に取り残されたデンデという少年が一人。

 ドドリアとザーボンに限っては、大きなドラゴンボールを抱えていた。

「大きいですね」

「ああ、あれがナメック星のドラゴンボール……。けど、あいつらはなんなんだ?」

「あいつですよ、クリリンさん。僕が感じた気は」

 二人は一同の様子に集中する。

「さて、ここのドラゴンボールも手に入ったことだし、最後にガキを消しましょうかね」

 デンデは怯えて震えている。

 フリーザが、指先に気を溜める。

「やめろー!」

「悟飯!?」

 悟飯がデンデを庇うように躍り出る。

 クリリンも後を追った。

「おや、なんですか? 君たちは」

「ここの人たちを殺ったのはお前だな?」

「いけすかない子たちですねえ。ドドリアさん、やっておしまいなさい」

 ドドリアが悟飯たちに迫る。

「逃げるぞ!」

 悟飯とクリリンがデンデを連れてその場を離れる。

「追うんですよ!」

 三人をドドリアが追う。

「やばい、追いつかれる!」

「二手に分かれましょう!」

「わかった! 俺はこいつを連れて逃げる!」

 悟飯とクリリンが分かれる。

 ドドリアは立ち止まり、どちらを追っていいかわからずに戸惑っている。

 その頃、悟空はブリーフ博士の宇宙船で修行をしていた。

 重力を少しずつ上げ、体に慣れさせていく。

 一方、キャルロットとベジータは、ナメック星に接近しつつあった。

 



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7.ナメック星

 ナメック星。

 ドドリアを撒いた悟飯は、茂みに身を潜めていた。

 ドドリアが悟飯を探しながら通り過ぎていく。

 悟飯は急いでブルマの元へ戻った。

 そこには、クリリンとデンデもいた。

「撒いたのか」

「はい、なんとか」

 そこへ、小さな気が二つ迫ってくる。

「………!?」

「ブルマさん、隠れて!」

「え?」

 四人は洞窟の中に隠れる。

 そこにフリーザ軍の一味がやってくる。

「確かにこの辺で高い数値が出たんだけどなあ」

「スカウターの故障なんじゃねえか?」

「だったらいいけどよ。正直、びびっちまったぜ」

 悟飯が小声で言う。

「あいつらなら僕たちでも倒せそうですよ」

「やるか」

 悟飯とクリリンが一味の前に飛び出す。

「なんだお前たち?」

 悟飯とクリリンは一味に襲いかかり、あっという間に倒してしまう。

 一方、ナメック星の僻地(へきち)に、キャルロットとベジータのポッドが着陸していた。

 気を探るキャルロット。

(大きな気が三つ。一つは移動してる?)

「なにしてる?」

「うん? 戦闘力を探ってたの」

「戦闘力を探る?」

「集中すれば気配だけで居場所がわかるわよ」

「なんだと?」

「……? 何か来る」

 刹那、目を血張らせたドドリアが現れた。

「誰かと思えばベジータ!」

 振り返るベジータ。

「ほおう。ドドリアさんじゃないか。何しにきた?」

「ベジータ、お前は地球で裏切り者を始末するはずだったはずだ」

「予定が変わったんだ」

「予定? そうか、フリーザ様をやっつけるとか、片腹痛いわ」

 イラついたベジータは気弾を放った。

「うわ!?」

 慌ててかわすドドリア。

「何をするんだベジータ!?」

「ふん。ガタガタ言ってる場合か? こっちには超サイヤ人がいるんだ」

 ベジータはそう言って、キャルロットを見る。

「私?」

「キャルロットは超サイヤ人に変身できるんだ。ドドリア、貴様など一溜まりもないはずだ」

「待って。戦う理由がないんだけど?」

「残念だったなベジータ。そこの可愛い(おなご)は戦う気がないようだぞ」

「まあ、お前など俺の手でも十分だがな」

「なにを!?」

 ドドリアがベジータに攻撃をしかけた。

 ベジータは攻撃をかわし、カウンターで怯ませ、追い討ちの乱打を浴びせる。

 殺られる、そう思ったドドリアは逃げ出そうとする。

「逃がすか!」

「ま、待てベジータ! そうだ! いいことを教えてやる!」

「ほおう?」

「お前たちサイヤ人の惑星ベジータは隕石の衝突で滅んだんじゃない。フリーザ様自らが破壊したんだ」

「なにい!?」

 怒り狂ったベジータが光線でドドリアを消し炭に変える。

「うわああああ!」

 悲鳴を上げながら最期を迎えるドドリアである。

 



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8.特戦隊

 フリーザの横で、ザーボンのスカウターに表示されていたドドリアの戦闘力が消滅した。

「フリーザ様、ドドリアがやられたようです」

「ベジータですか? 放っておきなさい」

「それが……」

「なんですか? 言いなさい」

「はい。ベジータは超サイヤ人を味方につけたようです」

「超サイヤ人ですか。そんな都市伝説、私は信じませんがね」

「しかし、警戒は必要かと」

「ザーボンさん」

「はい?」

「ドドリアさんの仇を取るんです」

「仇、ですか?」

「ええ。せめてもの手向けと思いましてね」

「わかりました」

 ザーボンはドラゴンボールを置き、キャルロットたちのいるところへ移動した。

「来ると思っていたよ、ザーボン」

「ふん。サイヤ人風情(ふぜい)がなにを言う?」

「貴様もドドリアと同じ道を辿らせてやろう」

「威勢だけはいいんだな、ベジータ」

「ふん。威勢だけではないところを見せてやる」

 キャルロットはブルマたちのいる洞窟へと気を探りながら目指す。

 一方、悟飯とクリリンは接近してくるキャルロットの気を察知していた。

「この気は……?」

「悟空のに似てるな」

 その気の持ち主が姿を現す。

「サイヤ人の女だ!」

 身構える二人。

「待って。戦意はないわ」

 姿勢を正す二人。

「あなたたちに折り入ってお願いがあるんだ。ドラゴンボール探しを手伝ってくれないかしら?」

「だ、誰がお前らなんかに!」

「クリリンさん、この人そんなに悪い人じゃないです。僕にはわかるんです」

「だけどよ……」

 遠くで、ザーボンの気が消滅した。

「クリリンさん、大きな気が一つ消えましたよ」

「きっとベジータがやったんだわ」

「ベジータが来てるのか!?」

「フリーザってのを追ってね」

「フリーザって……」

 悟飯とクリリンがそれぞれ乗り物に乗った異星人を思い浮かべた。

「あいつがフリーザなのか?」

「だとしても僕たちには足元にも及びませんよ。だったらまだドラゴンボールを回収していた方がいいんじゃないですか?」

「だな。俺、ブルマさんからレーダー借りてくるよ」

 クリリンは洞窟へと入っていった。

「ねえ、お姉さん」

「うん?」

「お姉さん、少しお父さんに似てる気がします」

「妹だしね」

「え? じゃあ僕は甥っ子か」

 クリリンが戻ってくる。

「レーダー借りてきたぞ」

 ドラゴンレーダーをチェックするクリリン。

「あっち……は?」

「あっちはあいつらがいた場所じゃないですか?」

「そ、そうだった! つーことは、このまとまってるのはあとでどうにかして回収しよう。今はあっちだ」

 三人はレーダーが表示する場所へ移動した。

 三手にわかれてドラゴンボールを探す。

「あった!」

 キャルロットがドラゴンボールを見つけた。

「あと四つ」

 三人は次の場所へ向かい、五つのドラゴンボールを全て見つけ出した。

 そこへ、ベジータがやってくる。

「あ、ベジータ。ちょうど五つ集まったところだよ。あと二つはたぶんフリーザのところにあるかも」

「ではその五つもフリーザ様に献上させてもらおう」

「……?」

 違和感を覚えるキャルロット。

「隊長!」

 そこへ白髪を生やした赤い体の男、ジースが現れる。

 更に続々とギニュー特戦隊のメンバーが集まってくる。

「お前、ベジータじゃないね」

「その通り! 俺様は、ギニュー特戦隊隊長のギニュー様だ! ベジータの体は俺様がいただいた!」

 そこへ、二本の角が生えた紫色の男がボロボロの姿で現れる。

「ギニュー……返せ……!」

「ベジータなの!?」

「ああ、この俺がベジータだ」

 キャルロットはベジータの姿をしたギニューを見る。

「俺様はドラゴンボールを持っていく。お前たちはこいつらの相手をしていろ!」

 ギニューは超能力でドラゴンボールを自分の周りに浮かせ、フリーザの宇宙船へと運搬する。

 残った特戦隊のメンバーが、キャルロットと戦闘を始めた。

 



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9.フリーザ

「なんだこいつ!? 俺たち四人が束になっても勝てないだなんて!」

 ギニュー特戦隊のジース、グルド、バータ、リクームは怯え始めていた。

「なに? もう終わりなの?」

 四人相手に圧勝したキャルロットが拍子抜けしている。

「この人、強いですね、クリリンさん?」

 グルドがギニューに通信を入れた。

「ギニュー隊長! 戻ってきて下さい!」

 そして、ギニューが戻ってくる。

「なるほど貴様強そうだな」

 キャルロットとギニューが浮かび上がる。

 二人の戦闘が始まった。

 ボボーン。

 ババーン。

 目にも留まらぬ動きで壮絶な戦いを繰り広げる二人。

「俺は嬉しいぞ。貴様のような強い体の持ち主に会えたのだからな」

「キャルロット、やつの技に気をつけるんだ!」

 と、下方でギニューの姿をしたベジータが叫ぶ。

「あんた、どうやってベジータと?」

「いいだろう。見せてやる」

 ギニューは両手を横に広げる。

「チェーンジ!」

 不思議な光線が放たれる。

「しめた!」

 ベジータ自らが光線を浴びに躍り出た。

 光線はベジータに当たり、二人の精神が入れ替わった。

「ベジータ、貴様!」

 元の体に戻ったギニューは、「今回は特別に見逃してやる」と、どこかへと去っていく。

「隊長、待って下さい!」

 特戦隊の四人が後を追った。

 五人が向かったのは、フリーザの元だった。

「それで? 尻尾巻いて逃げ帰ってきたということですか」

 眉間に青筋を立てるフリーザ。

「いいでしょう。そのサイヤ人には私自らがお仕置きをして差し上げることにしましょう」

 フリーザはスカウターを頼りに、キャルロットの元へ向かう。

 キャルロットはフリーザの気配に気づいた。

(これがフリーザ……)

「ホッホッホ、あなたが最強のサイヤ人ですか」

「あんたがフリーザ? 思ったより弱そうね」

「そう言っていられるのも今のうちですよ」

 キャルロットはフリーザの懐に潜った。

「……!?」

 驚くフリーザをよそに、拳をその鳩尾にめり込ませる。

「ぐお!」

 フリーザは体をくの字に曲げて痛そうな顔をする。

「は!」

 キャルロットがフリーザの側頭部に蹴りを入れ、その体を真横へ吹っ飛ばした。

 吹っ飛ばされたフリーザが岩壁にめり込む。

「ふっふっふ、いいでしょう。私の本気を見せてあげます」

 フリーザは別の姿に変身した。

 フリーザ第二形態。

「へえ。あんたも変身できるの?」

「なに?」

 キャルロットは気を溜める。

「はああああ……!」

 黒髪が逆立ち、金色に染まり始める。

「なに!?」

 キャルロットは超サイヤ人へと変貌した。

「待っていたぞ!」

 ギニューが現れる。

「これはこれはギニューさん」

「きええええ!」

 離れたところからグルドが超能力でキャルロットの動きを封じる。

「な!?」

「チェーンジ!」

 不思議な光線を浴びたキャルロットが、ギニューと入れ替わってしまう。

「だ、ダメだ。もうおしまいだ……」

 怯えてプルプル震え始めるベジータ。

「え?」

「貴様の最強の体はもらった!」

 だが。

「うん?」

 超サイヤ人だったキャルロットの髪が元の黒色に戻ってしまった。

「どうやら、力を使いこなせないみたいね」

 戸惑っているギニューの懐に潜り、拳を乱打した。

「ぐお!」

 削られていくギニューの体力。

「おのれー!」

 ギニューが光線を放った。その矛先はベジータ。

「……!」

 キャルロットは光線に飛び込んだ。

 二人の体が元に戻る。

「くそ! 今度こそ!」

 ギニューがベジータの体と入れ替わろうとする。

「させないよ!」

 キャルロットは地面のカエルを掴み取ると、ベジータの前に投げ飛ばした。

「な!?」

 ギニューはカエルと入れ替わってしまった。

「ゲロゲロ!」

 ギニューになったカエルがどこかへと飛んでいく。

「おい、私のことは無視か?」

 振り返るキャルロット。

 目の前には先ほどより大きな体のフリーザがいた。

「ふん!」

 キャルロットを殴り飛ばし、先回りして拳を乱打する。

「ぐあ! があ!」

 怯むキャルロット。

「くたばれ! この死に損ないが!」

 キャルロットはフリーザの渾身の一撃をかわす。

「なに!?」

 距離を取り、超サイヤ人へと変身する。

「波ー!」

 キャルロットがフリーザに光線を放った。

 光線はフリーザに当たって爆発を起こす。

 砂塵が消えると、傷だらけではあるが、大してダメージを受けていないフリーザが立っていた。

「貴様の力はその程度か?」

 フリーザは更なる変身を始める。

 



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10.フリーザの最期

 フリーザが第三形態に変身する。

「フッフッフ、こうなってしまえば、お前はもうおしまいだ。本気を出す前に倒してあげますよ」

「本気?」

「ええ」

「本気のあなたと戦ってみたいわね」

 フリーザが猛スピードでキャルロットに迫る。

 キャルロットはフリーザの攻撃をいなし、カウンターを浴びせる。

「ぐ!」

 怯むフリーザ。

 追い討ちの蹴り。

「うおわ!」

 フリーザはバランスを崩して倒れる。

 キャルロットは地面に伏したフリーザを蹴り転がす。

「あなた、やりますね。少々(かん)に障りますよ!」

 フリーザは眉間に青筋を立てながら最終形態に変身する。

「あなたには本気を見せてあげます。後悔しても知りませんからね」

 フリーザがキャルロットの懐に潜る。

 キャルロットはフリーザに拳を腹部にねじ込まれ、くの字に折れ曲がって吹っ飛ぶ。

 岩壁にめり込むキャルロット。

「やっとまともになったわね」

「なんですって?」

 キャルロットは一瞬でフリーザの懐に潜り、拳を腹部にお見舞いする。

「ぐおえ!」

 吐血するフリーザ。

 キャルロットはフリーザを乱打し、遠くへ吹っ飛ばして光線を放った。

 フリーザは間一髪のところで光線をかわした。

「貴様、いったい何者だ!?」

「ただのサイヤ人、らしい」

「貴様、(スーパー)サイヤ人なのか?」

「フリーザ、今のあんたじゃ私には勝てないわ。早々にこの星を去りなさい?」

「うるさい! 黙れ! こんな星、貴様もろとも破壊してやる!」

 フリーザが特大の気弾を作り、地面に向かって投げつけた。

 気弾は地面にぶつかると、そのままめりめりとめり込んで地上に大穴を開けた。

 すると、大地が揺れ、地中からマグマが噴出し始める。

「ベジータ、他の人たちを連れてこの星から逃げて!」

「お前はどうするんだ?」

「私は、フリーザを倒してからなんとかするわ」

「わかった。勝てよ」

 ベジータは悟飯たちを見る。

「お前たち、ここはやつに任せて、この星を出るぞ!」

「あ……ああ……」

「だけど、この星の人たち全員を脱出させるのなんて無理ですよ」

「バカが! ドラゴンボールがあるだろう?」

「そうか! 神龍(シェンロン)でナメック星人たちを地球に移動させればいいんだ!」

「それじゃあ、僕が神龍を呼びます」

 デンデがドラゴンボールの元へ飛び立つ。

「そんなことは許しませんよ!」

 フリーザがデンデに気弾を投げようとするが、キャルロットに回り込まれてしまう。

「いいでしょう。あなたを殺して、この星ごとみなさんに消えてもらいましょう」

「死ぬのは、あんただけよ!」

 キャルロットはフリーザを下方に叩きつける。

「ぐわ!」

 フリーザはマグマに突っ込む直前で急停止した。

 そして、キャルロットの懐に潜って拳を乱打する。

 キャルロットは涼しい顔をしていた。

「おのれ、おのれ、おのれええええ!」

 フリーザの渾身の一撃をキャルロットは右手で掴んで受け止める。

「往生際が悪いぞ」

 その時、空が暗くなり、遠くに神龍が現れる。

「しまった!」

 フリーザは神龍の元へ向かう。

「行かせない!」

 キャルロットはフリーザを追う。

 フリーザは神龍の元に辿り着く。

「この私を不老不死にしろ!」

 神龍は反応しない。

「なぜだ!?」

「タッカラプトポッポルンガプピリットパロ!」

 デンデの呪文のような一言で、キャルロットとフリーザを残した全員が、神龍ごと地球へ瞬間移動してしまう。

「おのれー!」

 フリーザはキャルロットの方を振り向く。

「こうなったら、貴様だけでも消してやる! 今見せてやるぞ……一〇〇%の力を!」

 フリーザが力を溜め、筋肉を膨張させた。

「いくぞ!」

 フリーザの怒涛の攻撃がキャルロットを襲う。

 キャルロットは傷つき、ボロボロになりながらもなんとか攻撃を耐えていた。

「はあ……はあ……はあ……はあ……!」

 疲弊するフリーザ。

「し、しぶとい奴め……」

 フリーザは気円斬を放つ。

 キャルロットは気円斬をかわす。

 だが気円斬はブーメランのように戻ってきてキャルロットの背後に迫る。

 キャルロットはフリーザの背後に一瞬で移動する。

「わかっているさ」

 フリーザとキャルロットがジャンプで気円斬をかわす。

 キャルロットはフリーザの前方に回り込んだ。

「あんた、もう諦めな」

 フリーザの背後に気円斬が迫る。

「伏せて!」

「ふん! その手には……!?」

 フリーザの上半身と下半身が気円斬で真っ二つになる。

「ぐお!」

 地に伏すフリーザ。

「たす……け……助けて……くれ」

「ふざけないで! あんたはそうやって命乞いしたものを何人殺してきたの!?」

 キャルロットはフリーザにエネルギーを分け与えた。

「私のエネルギーを分けてあげたわ。あんたならそれで助かるはず。あとは勝手にしな」

 キャルロットはポッドの元へ飛び立つ。

「ゆ……赦さん。お前は、この俺に、殺されるべきなんだああああ!」

 フリーザの光線がキャルロットに迫る。

「馬鹿者!」

 キャルロットの反撃がフリーザを襲う。

「やばい……!」

 キャルロットはポッドに急いだ。

 



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11.乗っ取られたキャルロット

 ポッドに乗り込んだキャルロットは、消滅寸前のナメック星を脱出した。

 宇宙空間に飛び出した刹那、ナメック星が完全に消滅した。

 悟空が乗った宇宙船とすれ違う。

 悟空は宇宙船の中からナメック星を見ながら言う。

「星が消えちまった」

 一方、キャルロットの乗るポッドは。

「ん?」

 キャルロットはポッドの燃料の残りを確認した。

 燃料は残り少なく、途中で入れる必要があった。

 ポッドは近くの星に着陸した。

 燃料を入手し、ポッドに給油する。

 そこへ、灰色の赤ん坊が現れる。

「お前、すごいパワーを秘めている」

「ん?」

 キャルロットが振り返った瞬間、赤ん坊が飛びかかってきた。

 赤ん坊はジェル状になり、キャルロットの体内に侵入しようとする。

「ぐ! なんだ!?」

 キャルロットは苦痛に顔を歪めながら、赤ん坊の侵入を許してしまった。

 ニヤリと笑みを浮かべるキャルロット。

 キャルロットに侵入したのは、ツフル人が作った寄生生物ベビーだった。

「この体は私のものよ!」

「なに!?」

 キャルロットは宙に舞い上がり、超サイヤ人となって気でベビーを体外へ押し出した。

 ベビーが地面に転がる。

 不敵に微笑むベビー。

「う!?」

 一瞬、キャルロットの瞳が赤く染まった気がした。

 キャルロットは地上に降りる。

「お前、名はなんという?」

「キャルロットです、ベビー様」

「ではキャルロット、お前のサイヤパワー、全て俺によこせ」

「はい」

 キャルロットは自身のエネルギーのほぼ全てをベビーに与えた。

 ベビーはすくすくと成長し、少年くらいの大きさになった。

「キャルロット、俺も地球とやらに連れて行け」

「ですが、このポッドは一人用です」

「ではもう一度、お前の体を貸してもらおうか」

 ベビーはジェル状になりキャルロットの中に入り込んだ。

 キャルロットはポッドに乗り飛び立った。

 宇宙にポッドが飛び出すと、フリーザの宇宙船が近くに見えた。

(フリーザ……)

 フリーザの宇宙船からビームが放たれ、ポッドが破壊される。

「なっ!」

 粉砕されたポッドから、星の引力で地上へと落下していくキャルロット。

 ベビーはキャルロットの体から飛び出し、フリーザの宇宙船に潜入した。

 地上に落下するキャルロット。

 そこに、医師が現れる。

「おやおや、怪我をしてるではありませんか」

「ここは?」

「ここは惑星ピタル。医療が盛んな星であります」

「治療してくれるの? でも、お金ないですよ」

「構いませんよ。あなたは宇宙の帝王と呼ばれた悪名高いフリーザを倒されたので、特別サービスです」

「なぜそのことを知って?」

「先程、受け入れ要請があったのですよ。亡くなられたようですがね」

「そうなんですね。それより、手当を」

「ついてきて下さい」

 キャルロットは医師について行く。

 通されたのは病院の診察室。

 そこで医師の治療を受けるキャルロット。

「ねえ、この星は定期便ってある?」

「もちろんですとも。ここから少し離れたところに、空港がございます」

「ありがとう」

 治療を終え、病院を出るキャルロット。向かう先は空港だ。

 空港に着き、宇宙船に乗り込む。

 宇宙船はピタルを発った。

 



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12.悟空帰る。地球はみんなオラの敵

 地球にフリーザの宇宙船が着陸した。

 コルド大王とメカフリーザが降りてくる。

「フリーザよ、ここがサイヤ人の仲間が住んでいる星か?」

「そうだよ、パパ」

「ふん。そのサイヤ人が戻ってくる前にそいつらを消してしまうか」

 二人の背後にベビーが現れる。

「そんなことはさせない」

「誰だ!?」

 振り返るコルド大王とフリーザ。

「なんだ貴様は?」

「俺はツフル人だ。お前たちにこの星の人間どもを消されては困るのだよ」

「それはなぜだ?」

「なぜ? この星のものどもを奴隷にするからだ。無論、お前たちも例外ではないぞ」

「貴様、この私をコルド大王と知っての狼藉(ろうぜき)か?」

「ふん」

 ベビーがジェル状になってコルド大王に飛びかかった。

「ぬお!?」

「パパ!」

 ベビーがコルド大王に浸透する。

「うわ!」

 コルド大王はバランスを崩して倒れた。

「大丈夫? パパ」

「……………………」

 コルド大王は無言で立ち上がる。

「大したことないな」

 コルド大王の首がちぎれ、ベビーが飛び出してくる。

「貴様!」

「さて、お前はどうだ?」

 ベビーがフリーザに侵入した。

「ぐ!?」

「こいつもか」

 前屈したフリーザの背中からベビーがニュルッと出てくる。

 倒れるフリーザ。

(やはり狙うはサイヤ人)

 ベビーは気を探った。

(西の都に強い気を感じる)

 ベビーは西の都に移動した。

 そこではベジータたちが休息を取っていた。

「ん?」

 ベジータが邪悪な気に気づく。

「気をつけろ、お前たち!」

 ベビーがベジータの前に降りてくる。

「何者だ!?」

「お前、サイヤ人だな?」

「なに?」

「お前の体、いただくぞ」

「なにを言って?」

 ベビーはベジータに侵入する。

「ベジータ!」

 クリリンの声に振り返るベジータ。

「お前も俺のシモベになれ」

 ベジータの体からベビーが飛び出し、次はクリリンへと寄生する。

 ベビーは地球にいるものに次々と寄生を繰り返し、ついには全員を下僕へと変えてしまった。

 そんなカオスと化した地球に、悟空を乗せた宇宙船が帰還した。

「あり? なんでみんな迎えてくれねえんだ?」

「出迎えてほしかったのか、カカロット?」

 と、ベジータが現れる。

「ベジータ! なんでおめえがここに?」

「ナメック星の神龍で移動してきたんだ。それより」

 ベジータが徐に悟空へ歩み寄る。

「ふん!」

 ベジータの拳が悟空の腹部にねじ込まれた。

「ぐおえ!」

(一瞬だが、ベジータの中に別の気を感じた)

 悟空は体勢を整え、ベジータの方を向いた。

「おめえ、ベジータじゃねえな」

「ふ、お見通しか」

 ベジータの中からベビーが現れる。

「お前の方が強そうだ。その体、いただくぞ」

「何?」

 ベビーがジェル状なる瞬間、悟空が気弾でベビーを攻撃した。

「ぐわ!」

 バラバラになって飛び散るベビーの細胞。

 ベビーの細胞は一箇所に集まり、元の姿に戻る。

「お前を手下にするのはやめだ」

 ベビーが悟空に接近し、攻撃をする。

 悟空は攻撃をガードし、隙あらば反撃してベビーを怯ませた。

 そこへ、クリリンと悟飯がやってくる。

「お父さーん! 手伝いにきましたー!」

「来るんじゃない! 悟飯、クリリン!」

 ベビーの横に着地する悟飯とクリリン。

 クリリンが悟空に気弾を放つ。

 悟空は迫る気弾を弾いた。

「誰を、とは言わなかったな」

「クリリン、どういうつもりだよ?」

「この二人は俺に従ってくれるそうだ。そうだよな?」

「「はい」」

「なんだと?」

「二人とも、悟空を殺せ」

「「はい!」」

 悟飯とクリリンが悟空へと迫る。

 悟空は気合で二人を吹っ飛ばして気絶させた。

 ベジータが起き上がり、ベビーの元へ移動する。

「ベジータ、おめえもなんか?」

「ふん!」

 ベジータが悟空に気弾を放った。

 悟空は気弾を弾く。

「ベジータ、やつを殺せ」

「かしこまりました、ベビー様」

 ベジータが悟空へと迫る。

 



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13.怒涛の反撃

 悟空とベジータの戦いが始まった。

 差は歴然だった。

 ナメック星へ向かう宇宙船の中で修行をしていた悟空は、ベジータの上をいっていたのだ。

「ぐ……!」

 圧倒的なパワーで追い詰められるベジータ。

「なにをしている、ベジータ?」

「申し訳ありません、ベビー様。カカロットがあまりにも強いので」

「ほおう?」

「ベビーっちゅうんか、おめえ。みんなを元に戻せ!」

「それはできない相談だ。俺の卵は絶対に取り除けない」

「卵だ?」

「俺は一度入った相手には必ず卵を産み付けている。その卵が孵り、脳まで達すれば、そいつは俺の思い通りに動く」

「いやな能力だな」

「全くその通りね」

 と、キャルロットが現れる。

「遅いぞ、キャルロット!」

「申し訳ございません」

 キャルロットはベビーの背後に降りると、不意打ちの回し蹴りを浴びせた。

「ぐお!?」

 吹っ飛んでいくベビー。

「全く。正直焦ったわ。界王神様とキビトさんがいなかったらどうなってたか」

 ことは三十分前。

 地球に到着したキャルロットは、ベビーの元へ向かうつもりだったが、界王神を名乗る者とその付き人であるキビトに囲まれ、行手を阻まれたのだ。

「なに、あなたたち?」

 界王神は小瓶に入った不思議な液体、超神水(ちょうしんすい)をキャルロットにふっかける。

「ぎゃ!」

 苦痛に顔を歪めたキャルロットの体から禍々しい霧のようなものが抜け出して消滅した。

「あ? 動ける!?」

「キャルロットさんですね。あなたのことは界王神界から拝見させてもらっていました」

「界王神界?」

「神の世界ですよ」

「……?」

 疑問符を浮かべるキャルロット。

「おっと、こうしてはおれません。あの邪悪なベビーを倒して下さい」

「ヘビー?」

「それは重量! ヘビーじゃなくて、ベビーです!」

「わかってるわよ。あいつには一泡吹かせたいからね」

「再び洗脳されないよう気をつけて下さい」

「大丈夫!」

 キャルロットはベビーの元へ飛んだ。

「あの子で大丈夫でしょうか?」

「キャルロットさんなら大丈夫でしょう」

 というわけで、現在。

「正気か貴様?」

「あんたに操られて生きて行くぐらいなら、死んだ方がマシよ」

「ほおう。そうかね。じゃあお望み通り殺してやる」

 ベビーがキャルロット目掛けて突進してきた。

 キャルロットはベビーの攻撃をかわす。

「死ぬのは、あんたの方だけどね!」

 キャルロットの光線がベビーを襲う。

 ベビーは光線を潜ってキャルロットの肉体を狙う。

 キャルロットはジェル状になったベビーをかわす。

「くっ! その肉体、俺によこすのだ!」

「いやーだよ!」

「きいいいい!」

 怒り狂ったベビーが気弾を連射する。

 キャルロットは迫り来る無数の気弾をかわし、反撃のチャンスを窺う。

(どうするか)

「取り押さえろ、ベジータ」

「はい!」

 ベジータがキャルロットを取り押さえる。

「しまった!」

 ベビーがニヤリと笑み浮かべ、ジェル状になって接近してきた。

 焦った表情を見せるキャルロット。

「なんちゃって。対策済みです」

 ジェル状のベビーが、キャルロットに侵入する刹那、何かに弾かれて吹っ飛んだ。

「なんだ? なにが起きた?」

「気のバリアよ。あんたに入られる瞬間に張らせてもらったのよ」

 キャルロットはベジータをベビーに向かって放り投げた。

 ベビーはベジータをかわす。

 キャルロットは静かに気を溜め、超サイヤ人に変身した。

「さて、反撃といきますか」

 キャルロットはベビーの懐に潜った。

 



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14.ベビー昇天。未来からの訪問者現る

 ベビーの腹部に拳が埋まり、くの字に曲がって吹っ飛んでいく。

「ぐ!」

 岩壁にめり込むベビー。

(その体、まさに俺に相応しい肉体だ)

 ベビーは再びキャルロットを乗っ取ろうと、そのチャンスを窺う。

「かかってこないの?」

 キャルロットは、ベビー目掛けて光線を放った。

 ベビーは光線を潜ってキャルロットに接近する。

「だから上げないって」

 キャルロットはジェル状になったベビーをかわした。

「おのれええええ!」

 無数の気弾がキャルロットを襲う。

 キャルロットは無数の気弾をかわしながらベビーに接近して拳を腹部に埋めた。

「ぐおえ!」

 ベビーはくの字に折れ曲がる。

 キャルロットはベビーを下方に叩き落とす。

 ベビーは地面に墜落すると、フリーザの宇宙船を目指す。

(あんなやつ俺の手には負えん)

 宇宙船に乗り込んだベビーは操縦室のパネルを操作する。

 ベビーを乗せた宇宙船が、宇宙へと飛び立つ。

 キャルロットは光線を放った。

「気が、気が、サイヤ人の気が襲ってくるうううう!」

 ベビーを乗せた宇宙船は、キャルロットの光線によって太陽へと落下していく。

「うわああああ!」

 ベビーは悲鳴を上げながら、太陽へと吸い込まれて消滅するのだった。

 主人を失い、放心する下僕たち。

 界王神が、ベビーに洗脳された人々を、超神水で元に戻す。

 キビトがベビーを倒したキャルロットの元へやってくる。

「キャルロットさん、あなたのおかげで宇宙は救われました」

「まさか、ツフル人があんな邪悪な生命体を生み出していたなんて」

 と、界王神が現れる。

「誰だおめえ?」

 と、悟空。

「貴様、界王神様に向かってなんたる口の利き方だ?」

「構いませんよ、キビト」

「はい」

「それにしても、十五年でしょうか。あなたは立派に大きくなられた」

「そういえば、そんなに経ってるのね。久しぶりだね、二人とも」

「なあ、そいつら知り合いなんか?」

 キャルロットが悟空を見る。

「この方達は神様よ」

「神様だ?」

「うん。あの世に界王星ってのがあるんだけど。そこに住む界王様より偉い方々なのよ」

「なんだって? こんなちんちくりんがあの界王様よりねえ」

 界王神の額に青筋が浮かぶ。

「ちんちくりん?」

「貴様、無礼だぞ!」

「全くです。こんな常識のない地球人がいるなんて」

「オラ、サイヤ人だ」

「い?」

「一応、これでも私の兄なんだけど」

「キャルロットさんのお兄様でしたか。これは失礼しました」

「そう(かしこ)まられてもオラどうしたらいいかわかんねえぞ」

「それじゃあ、我々はこれで」

 界王神とキビトは姿を消した。

 そこに、青髪(せいはつ)の青年が現れる。

「こんにちは」

 振り返るキャルロットたち。

「誰?」

「あなたが悟空さん、ですね?」

「オラ?」

「はい。ちょっと、僕と一緒にこちらへ」

 青年と悟空は皆から離れたところへ移動する。

「悟空さん、すみませんが、超サイヤ人になってもらえませんか?」

「超サイヤ人? なんだそれ?」

「あれ? フリーザを倒したの、あなたですよね?」

「フリーザ? オラ、そんなやつ知らねえぞ」

「え?」

 困った顔をする青年。

(伝え聞いている歴史と全然違うな)

「驚かず聞いて下さい。今から三年後、人造人間が現れ、地球がメチャクチャになります。あなたにはそれを阻止してもらいたいんです」

「人造人間?」

「レッドリボン軍が二人の人間をマシンに改造して放つのが、十七号と十八号です。実は俺は未来から来たのですが、俺のいた時代はそいつらのせいでメチャメチャになってしまい……」

「未来から?」

「ええ。あ、このことは他言は無用です。俺という存在が消えかねない。とにかく、やつらを倒してほしいんです」

 青年は懐からホイポイカプセルを取り出す。

「おめえ、これをどこで?」

「ああ。俺はあそこにいるベジータさんの息子なんです」

「ベジータの息子?」

「はい。母親はブルマって言います」

「なんだって?」

「悟空さん、近い将来、あなたはウイルス性の心臓病で倒れます。これはその薬です。症状が出たらこれを飲んで下さい」

 青年が悟空にホイポイカプセルから薬を出して渡した。

「俺はトランクス。三年後にまた来ます」

 トランクスと名乗る青年はそう言って去っていった。

 



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15.覚醒せよ!超サイヤ人!

 キャルロットはパオズ山の悟空の家にやってきた。

「おう。来たか、キャルロット」

「兄さん、超サイヤ人になりたいの?」

「ああ。オラ、もっともっと強くなって、地球を守りてえ」

「そっか。じゃあ、特訓だね」

「それじゃあ、天界の精神と時の部屋行くか」

「天界? それどこにあるの?」

「あっちの方だ」

 キャルロットは気を探る。

(強い戦闘力を二つ感じる。一つはデンデか)

「兄さん、私に掴まって」

「掴まってってどうすんだ?」

「瞬間移動よ」

「瞬間移動?」

「ベビーに操られてる時、ヤードラット星ってところで教わったわ」

 悟空がキャルロットの肩に手を置く。

 キャルロットは額に指を当てて意識を集中し、悟空と共に天界へと瞬間移動した。

「うわあ!?」

 いきなり眼前に出現した二人にデンデが驚いて尻餅をついた。

「キャルロットさん! と、こっちは?」

「オラとは初めてだったな。孫 悟空ってんだ。キャルロットの兄ちゃんだ」

「もしかして、悟飯さんの?」

「ああ、そうだ」

 悟空の肯定の後、キャルロットが口を開く。

「私たち、精神と時の部屋? ってのを使いたいんだ」

「精神と時の部屋ですか。どうぞ、ご自由に使って下さい」

「ありがとな」

 と、悟空。

 キャルロットと悟空は精神と時の部屋へと入った。

「……!?」

「重いだろ?」

「そうね」

「最初入った時、オラもそうだった」

「まあ、動けなくはないわね。慣れれば普通に動けるかも」

 キャルロットは果てしなく続く白銀世界の中で体を鳴らすために入口の周辺をマラソンで数周する。

「こんなところか」

 キャルロットと悟空は向き合う。

 そして、本気の戦いを始めた。

 互いに乱打し合い、隙を突かれたキャルロットの顔に悟空の拳がめり込む。

「ぐわ!」

 吹っ飛んで地面に転がるキャルロット。

「今のはちょっと効いたわ」

「なあ、おめえ超サイヤ人になってくれねえか?」

「いいの? 火傷じゃ済まないかもよ」

「超サイヤ人に界王拳で対抗してみる」

「……そう」

 キャルロットは静かに気を溜め、超サイヤ人に変身する。

「界王拳!」

 悟空は界王拳を発動し、目にも留まらぬ速さでキャルロットの懐に潜って拳を突き出す。

 が、キャルロットは微動だせず、反撃して悟空を吹っ飛ばした。

「うえあ!」

 悟空が地面に転がる。

「強えな。流石、超サイヤ人。だけんど……」

 立ち上がる悟空。

「一〇〇倍だ——っ!」

 悟空はパワーをアップさせてキャルロットを攻撃する。

 キャルロットは涼しい顔で、悟空の攻撃を耐える。

「ほれ」

 ワンパンで悟空を吹っ飛ばした。

 地面に転がる悟空。

「くそ! 全く歯が立たねえ!」

「超サイヤ人には怒りが必要よ。大切な者が殺されたところを思い浮かべて」

 悟空は、親友のクリリンが、何者かに殺される瞬間をイメージした。

 プチン!

 悟空の髪質に変化が起こる。

 毛根から段々を黄金に染まり始め、最終的には超サイヤ人へと変貌した。

「やったよ兄さん! それが超サイヤ人だよ!」

「力が満ち溢れてくる……、これが超サイヤ人……!?」

「そのまま行くよ!」

 キャルロットが悟空に迫る。

 悟空はキャルロットの攻撃をかわし、その顔面のぶん殴って吹っ飛ばし、追撃の乱打を浴びせ、かめはめ波を放った。

「……!?」

 悟空の暴走に気づいたキャルロットは光線をかわし、連続エネルギー弾をぶっ放して彼の体力を減らしていく。

「兄さん、目を覚まして!」

 キャルロットが巨大なエネルギーボールを作り出して悟空に投げ飛ばした。

「ぐわ!」

 爆煙に包まれた悟空は超化が解けて地面に倒れた。

 



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16.セル登場

 ベッドの上で目を覚ます悟空。

「あれ? オラ、いったい……」

「あ……、気がついた? 兄さん、超サイヤ人の力に負けて暴走してたんだよ」

「すまねえ」

「変身の仕方はわかったよね?」

「ああ。だけんど、理性を保てないんじゃあなあ」

「超サイヤ人は興奮しやすいからね。興奮状態を抑えられれば保てるかもね」

 キャルロットは入り口へと向かう。

「後はあなた一人でなんとかするのよ」

「ああ」

 キャルロットは精神と時の部屋を出た。

 そこへポポがやってくる。

「ちょうどよかった。今、呼びに行こうと思ってた」

「なに?」

「北の都、とんでもないことになっている」

「まさか、人造人間が?」

「すぐに行ってくれ」

「わかった!」

 キャルロットは気を探る。

「気を探っても無駄。人造人間、気を持たない」

 舌打ちしたキャルロットが天界を飛び出し、空路で北の都へ。

 しかし、キャルロットが北の都に着いた時には、もうすでに荒れ果てていた。

 地上に三人の人影が見える。

 キャルロットは物陰に隠れながら三人の人影に接近した。

「誰だ?」

 と、黒髪の男が言う。

(気づかれたか)

 仕方なく姿を見せるキャルロット。

 金髪の女は言った。

「孫 悟空ではないようね」

「キャルロット。(スーパー)サイヤ人だ」

「超? なんだかよくわかんないけど、あの世へ送ってやろう」

 男が高速で接近してきた。

 キャルロットはギリギリのとこでかわし、反撃する。

「ぐ!」

 (うなじ)にキックを当てて吹っ飛ばすキャルロット。

「やるなあ、お前」

 男が接近し、拳をキャルロットの腹部に埋めた。

「ぐえ!」

 キャルロットがくの字に折れ曲がると、そこに上部からの追撃が。

「ぐお!」

 キャルロットは地面に叩きつけられた。

「このまま押し切ろうと思ったけど、やっぱ無理か」

 立ち上がったキャルロットを気を溜める。

「はああああ!」

 黄金のオーラを纏い、稲妻を放ち、超サイヤ人に変身するキャルロット。

 刹那、姿が消え、次の瞬間には男の腹部に風穴が開いていた。

「ぐ!」

「十七号!」

「貴様……」

 と、黄緑色の服を着た男が、キャルロットの顔面を掴み、地面に叩きつけた。

「ぐ!」

「十六号、悪いんだけど、私にやらせてよ」

「いいだろう」

 金髪の女がキャルロットの前に立つ。

 立ち上がるキャルロット。

「あんた、強いんだね」

 目にも留まらぬ速度で接近戦を始める二人。

 攻撃音だけが辺りに木霊(こだま)する。

 やがて、動きを止めた二人が出現する。

 キャルロットの方はボロボロだった。

「あんた、降参しなよ。命までは取らないから」

「へ! 私はあんたたちを全員やっつけるまで、絶対に引き下がらないわ」

「そう。じゃあ、死にな!」

 刹那、十七号が悲鳴を上げた。

 悲鳴のした先を見ると、緑色の怪物が十七号を拘束していた。

「誰?」

「感謝するぞ、そこのサイヤ人」

 怪物は尖った尻尾の先を展開し、そこから十七号を吸い込んでしまう。

 姿を変える怪物。

「十七号!?」

「ふはははは! 十八号、お前も俺の一部となるのだ!」

 怪物が金髪の女、もとい十八号に接近し、尻尾で吸い込もうとするが。

「危ない!」

 キャルロットが十八号を突き飛ばして庇った。

 怪物の尻尾がキャルロットの頭に覆いかぶさった。

「違う! お前じゃない!」

 キャルロットから尻尾を離し、その体を吹っ飛ばした。

 地面に転がるキャルロット。

「お前、何者なのよ?」

「私の名はセル。今日のところは退散するが、十八号、私は必ずお前を手に入れてみせる」

 緑の怪物セルはそう言って、飛び立ってしまった。

「十七号のことは残念だったけど、あんたのおかげで助かったよ」

 じゃあね——と、十八号は十六号を連れて去っていく。

 そこへ、ベジータが現れる。

「おい、今ここで妙な戦闘力を感じたが……」

「セルとか言ってたね。逃げたけど」

「そいつは強いのか?」

「知らない」

「まあいい。どんなやつが現れようと、俺が倒してやる」

「随分と自信過剰なのね」

「フン! ほざいてろ」

 ベジータは去っていった。その表情は、自信に満ち溢れていたという。

 



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17.キャルロットが心臓病?超サイヤ人になったベジータ!

 西の都。

 ドクターゲロと人造人間十九号が暴れている。

 辺りは荒廃していた。

 そこへ、クリリンやピッコロたちが様子を見に集まってくる。

 すると、キャルロットが姿を現し、超サイヤ人となって十九号と戦い始めた。

 最初はキャルロットの優勢だったが、十九号のエネルギー吸収で追い詰められ、ついには超化が解ける。

 更に、胸の苦しみが襲い掛かり、息が上がってしまう。

 悟飯は気づいた。

「キャルロットさん、心臓病なんじゃ!?」

「待て。やつの話では悟空がかかるんじゃなかったのか!?」

 キャルロットは倒れ、その隙にエネルギーを吸われる。

 辛そうな表情のキャルロット。

 そこに何者かが現れ、十九号を蹴り飛ばした。

 現れたのはベジータだった。

「キャルロットはやらせん」

 ベジータは超サイヤ人に変身した。

「……!」

 驚くキャルロット。

「ベジータ、あんた……」

「超サイヤ人は極限まで鍛え上げ、怒ることで変身が可能であるとわかってな」

 十九号を乱打するベジータ。

 敵はボロボロになり、怯え始めた。

「ガラクタ人形も恐怖を感じるのだな」

 ベジータが宙に浮き上がり、手の平を突き出した。

 この場から逃げたい一心で走り去ろうとする十九号だが。

「くらうがいい。こいつが超ベジータの、ビッグバンアタックだあ!」

 ベジータの究極奥義が十九号を襲う。

「ぎょええええ!」

 十九号の胴体が倒れ、頭がもぎ取れた。

「十九号!」

「ふん!」

 ベジータが十九号の頭を踏み潰して粉砕した。

「お……おお……おのれ!」

 逃げ出すドクターゲロ。

 そこへみんながやってくる。

「悟飯、キャルロットに薬を飲ませるんだ。カカロットの家で保管しているんだろう?」

「はい!」

 悟飯がキャルロットをパオズ山へ運ぶ。

 ベッドに寝かされるキャルロット。

「キャルロットさん、これを」

 キャルロットは黙って薬を飲んだ。

「これで治るといいけど」

「悟飯ちゃん、この子一体誰なんだべか」

「お父さんの妹ですよ、お母さん」

「悟空さは何人家族なんだべか?」

 月日は流れ、一週間後には、キャルロットもすっかり元気になっていた。

 彼女が寝込んでいる間、セルは十八号の吸収に成功していた。

 セルは荒野地帯に武舞台を作成し、セルゲームの開催を宣言した。

 自分と戦うものを募り、誰も勝てるものがいなかった場合は、地球を破壊すると言っていた。

 キャルロットは寝込んでいて鈍った体を鍛え直すため、セルゲームに参加することに決めるのだった。

 また、悟空もセルと戦ってみたいらしく、セルゲームに参加することにしたのだが。

 



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18.キャルロットよ、死んでしまうとは情けない

 武舞台。

「誰かと思えば貴様か、キャルロット」

「セル、ここがあんたの墓場よ」

「面白い。やってみるか」

 両者の姿が消える。

 目にも留まらぬ速度でお互いの拳がぶつかり合う。

「ぐお!」

 怯むセル。

「もっと本気を出しなさいよ」

「ふん。いいだろう」

 再び二人の姿が消える。

「うが!」

 キャルロットがセルに押され始める。

「どうした? お得意の超サイヤ人にはならないのか?」

「ノーマルで倒そうと思ったけど、無理があったみたいね」

「私も甘く見られたものだな」

「はああああ!」

 気を解放し、超サイヤ人に変身するキャルロット。

「そうでなくちゃな」

 一瞬の出来事だった。

 セルの腹部に、キャルロットの拳が埋まる。

「ぐおえ!」

 セルはくの字に折れ曲がり、よろめく。

「ふん!」

 キャルロットの追撃が、セルを地面に叩きつける。

「ぐは!」

 吐血するセル。

「お、おのれえ!」

 セルは立ち上がり、キャルロットに足払いをかけようとするが、飛び上がってかわされる。

 キャルロットは空へ舞い上がり、光線を撃とうと構えた。

 そこにセルに似た複数の青い小さなソレが現れる。

 セルジュニアだった。

 セルジュニアがキャルロットに飛びついた。

 まとわりつかれ、身動きが取れないキャルロット。

「フハハハハ!」

 セルが笑い声を上げると、セルジュニアたちに異変が起こった。

「な!?」

 次の瞬間、セルジュニアたちが爆発を起こし、気がつくとキャルロットは見知らぬ世界にいた。

 角を生やしたメガネの男が、火の玉のようなものを案内している。

「どこ?」

「来てしまったか、キャルロット」

 赤い顔の大男が、キャルロットに声をかける。

「誰?」

「わしはこのあの世を管理する閻魔大王(えんまだいおう)だ」

「あの世?」

「お前はセルジュニアの爆発に巻き込まれ死んだのだ」

「ちょっと待って。私が死んだ?」

「お前さんは天国行きじゃ」

 そこへ年老いたナメック星人が現れる。

「お待ち下さい、閻魔大王様。彼女には界王の元へ行かせるのが相応しいかと」

「誰だお前は?」

「地球の神です」

「界王の元へか……」

「界王に稽古をつけてもらって、地球へ行かせるのです。セルを倒せるのは最早、キャルロットしかいないかと」

「しかし、そんなことしてる合間に地球は滅びてしまうやもしれんぞ?」

「その場合はナメック星のドラゴンボールで……」

「よしわかった。そこまで言うのであればよかろう」

 キャルロットを見つめる閻魔大王。

「キャルロット、お前の行き先は界王の元に変わった。あの蛇の道の尻尾を目指していくがよい」

「はあ。……?」

「くれぐれも、黄色い雲の下には落ちるなよ」

 キャルロットは蛇の道を進み出した。

(これ、走る必要ないよね)

 キャルロットは舞空術で尻尾に向かってひとっ飛びする。

「お?」

 尻尾はすぐに見えてきた。

「ここが尻尾だけど、こんなとこに界王様がいるのかしら?」

 頭上に界王星があるのに気づく。

「界王星?」

 キャルロットは飛び上がった。

 界王星に着地するキャルロット。

「うん? 誰じゃ?」

 黒服を着た男がキャルロットに訊ねる。

「あなたが、界王様?」

「そうじゃ。いかにもわしが界王じゃ。で? お前さん、何用でここへ来なさった?」

「稽古をつけてほしいんです」

「それは武術の稽古か?」

「よくお分かりで」

「よかろう。お前さんに稽古をつけてやろう」

 かくて、キャルロットの稽古が始まった。

 



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19.帰ってきたキャルロット セルの消滅

 キャルロットが死んで一日が経とうとしていた。

 セルの暴挙は、悟空たちが必死に食い止めている。

「キャルロット、お前さん、フリーザを倒したそうじゃな?」

「ええ、まあ」

「どうれ。超サイヤ人というのを見せてはくれんか?」

「超サイヤ人ね。いいよ」

 キャルロットが気を開放すると、髪が金色に輝き始めた。

(こ、こいつは凄い。悟空に教えた界王拳、重ねたらどうなるかの)

「お主、界王拳に興味はないか?」

「界王拳?」

「そうじゃ。悟空にも教えたんじゃがな、超サイヤ人に界王拳を乗せたらどうなるのかと思っての」

「それでセルを?」

「倒せるはずじゃ、セルだけに」

 界王は笑い出した。

「界王様、寒いですよ」

 更に半日、キャルロットは界王のトレーニングを受け、界王拳を習得した。

「おーい」

 水晶玉に乗った老婆が現れる。

「占いオババじゃ」

「お主を一日だけ地上に下ろしてやる」

「その間にセルを倒してこい」

 キャルロットは占いオババと共に地球に降り立つ。

「私が案内できるのはここまでじゃ」

「構わないわ」

「その状態でもう一度死ぬと消滅してしまうからのう。絶対に死ぬんじゃないぞ」

「わかった」

 キャルロットはそう答えると、セルの元へと飛び立った。

「うん?」

 セルはキャルロットの戦闘力に気づく。

「生きていたのか!?」

「いや、死んでるわ。けど、本当に死ぬのはあんたを倒してからよ!」

「この私を倒す、だと? 笑わせるな」

 キャルロットが辺りを見渡すと、多くのものが地に()していた。

「はああああ!」

 キャルロットは気を解放して超サイヤ人に変身する。

 刹那、キャルロットの姿が消え、セルの腹部に彼女の拳が埋まった。

「ぐえ!」

 くの字に折れ曲がり、吹っ飛んでいくセル。

「絶望というものを味わわせてあげるわ」

 界王拳発動。

 キャルロットは吹っ飛ぶセルを追尾し、上部から殴り落とし、地上に先回りして落下してきたセルの背中を片手で受け止めた。

「ぐは!」

 吐血するセル。

「ふん!」

 キャルロットはセルを放り投げた。

 セルは身動きが取れないでいた。

 キャルロットはセルに向けて手の平を突き出した。

「や、やめて……くれ……」

 キャルロットは無言を回答に、セルに向かって気功波を放った。

「ぐおおおお!」

 セルは悲鳴を上げながら消滅した。

 同時に、17号と18号が投げ出される。

「う……」

 17号がキャルロットを見る。

「あんたが俺たちを?」

 続いて18号も顔を上げた。

「へえ。強いんだね、あんた」

「おい、その輪っかはなんだ?」

 17号はキャルロットの頭の輪を見て言った。

「私、死んじゃったのよ」

「そうか」

「それじゃ、行くわね」

 キャルロットはそう言うと、占いオババの元へ向かう。

「無事にセルを倒したようじゃな」

「界王拳使ったら一瞬だった」

「全く、サイヤ人には驚かされるわい。さて、戻るとするかのう」

 キャルロットは占いオババと共にあの世に戻るのであった。

 



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20.あの世一武道会

 キャルロットがセルを倒し、十年の歳月が経っていた。

 悟空の息子、悟飯が、サタンシティーのオレンジスターハイスクールに通っていた。

 今日は高校の初登校日。学校へ向かう途中、街中で銀行強盗と警察官隊の抗争を目撃した。

「あれは……」

 悟飯は物陰に着地して隠れて様子を(うかが)う。

「ちょっとあなたたち!」

 端正な顔立ちをしたツインテールの女の子が強盗の前に躍り出た。

(なんだあの子? 危ないじゃないか。助けなきゃ)

 そう思った刹那、女の子は強盗を一瞬で叩きのめした。

「い……!?」

 悟飯は驚いた。

「ご協力感謝します!」

 警察官隊が敬礼をした。

 女の子は去っていった。

 悟飯は舞空術で高校に向かう。

 一方、キャルロットは、あの世一武道会会場の最終ステージでパイクーハンと戦っていた。

 お互いの拳がぶつかり合い、なかなか勝負がつかないでいる。

「なかなかやるわね」

「お前もな」

「けど、まだ本気じゃないんだからね」

「なに?」

 キャルロットは気を溜めた。

「はああああ!」

 気が解放され、超サイヤ人へと変貌する。

「な、なんだその姿は?」

「超サイヤ人よ」

「超サイヤ人?」

「知らなくても結構。あんたは負けて、私が優勝なんだから」

 キャルロットはそういうと、一瞬でパイクーハンの懐に潜り込んで拳を腹部に捩じ込んだ。

「ぐおえ!」

 パイクーハンは吐血して落下した。

「とどめよ!」

 キャルロットが武舞台に倒れるパイクーハン目掛けて気功波(きこうは)を放った。

 パイクーハンは咄嗟に気功波をかわして背後を取る。

(な!?)

 キャルロットはパイクーハンの回し蹴りをダックでかわし、振り返って蹴りを側頭部に叩き込む。

 パイクーハンは勢いよく吹っ飛ぶが、場外ギリギリのところで舞空術を使って静止した。

 だが、界王拳を発動したキャルロットが一瞬でパイクーハンの眼前に出現した。

「なに!?」

 パイクーハンはパンチをかわして飛び上がった。

 不発に終わったキャルロットは振り返り、パイクーハンを()()ける。

(超サイヤ人界王拳を見切られるなんて!)

 キャルロットは瞬間移動でパイクーハンの背後に回り込んだ。

「消えた?」

 キャルロットは両手を組んでパイクーハンを叩き落とした。

「うわああああ!」

 パイクーハンは場外目掛けて落下していく。

(やばい! 立て直せない!)

 パイクーハンは場外に激突し、キャルロットに敗れた。

「場外! 優勝はキャルロット選手です!」

 と、審判。

 キャルロットはパイクーハンの前にゆっくりと降り立って手を差し伸べた。

 パイクーハンはキャルロットの手を取って立ち上がる。

「負けたのは悔しいが楽しかった。またやろう」

「そうね」

 キャルロットは優勝賞金を受け取ると、観戦していた界王と共に界王星へと戻った。

 



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