幼馴染と一緒に迷宮探索者になる (猫仔猫)
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プロローグ
第1話


スランプ気味なので気分転換にオリジナルを書いてみるテスト





20世紀末の1999年7月、大魔王は降ってこなかったが代わりに世界中に迷宮(ダンジョン)が誕生した。

迷宮内には魔物が住んでいて当時の人類の武器では討伐出来なかった。だが魔物への対抗策が新年と共に人類にもたされた。14歳以上の者にスキルという特殊能力が発現したのだ。

 

世界各国で迷宮の調査が進められると、地球上には存在しない鉱物や植物、魔物のドロップ品等の用途不明な品々等が発見された。それらの迷宮産の品は新たな産業の元となった――

 

それから300年以上が過ぎた今では、迷宮探索者は人気の職業の1つとなっている。

 

 

 

 

23XX年1月1日 日本時間00:00

 

《スキル『クラフト』を取得しました》

《スキル『投擲』を取得しました》

《スキル『ガチャ』を取得しました》

 

「クラフト、投擲、ガチャか。これじゃあ迷宮探索者(ダンジョン・エクスプローラー)は厳しいかなぁ?」

 

月見里(やまなし) 雪兎(ゆきと)。1月20日生まれの14歳、中学3年生。早生まれがゆえに幼馴染たちより1年遅れてのスキル取得であった。

 

 

……

…………

……

 

 

「おーい、雪兎は第一希望は三校だよな?」

 

俺の志望校を聞いて来たのは幼馴染の北里信也。身長180と背が高く、『大楯』『頑強』『生命力強化』のスキルを取得したからか、今年は筋トレに励んでいたので見た目が凄い事になっている。本当に中三かこいつ?

 

「あんたユキの誕生日忘れたの? まだスキル貰ってないんだから決められるわけないじゃん。ね~?」

 

横から口を挟んできたのは同じ幼馴染グループの東野涼子。身長165の(推定)Aカップ。真也とはしょっちゅう軽口を叩き合っているが、仲が悪いわけでなく好意の裏返しみたいに感じる。取得スキルは『槍』『敏捷強化』『器用強化』で、元旦早々に「探索者になっちゃうしかないよね!」と意味不明なメールを送ってきやがった。せめて理由なリスキルなりを書いておかないとわからんつーに。

 

「あー。一応……第三迷宮高校の探索科希望だけど、スキル次第なとこもあるからな」

 

国立第三迷宮高校、探索家の育成を目的にした高校。迷宮高校は公私合わせて全国で12存在し、三校は東京の八王子にある。うちは立川なので一番近いのが三校だ。

 

「ゆ~君。頑張って良いスキル貰って、一緒の高校に行こうね~っ」

 

そう言ってきたのは西宮明日香。身長175の(推定)Gカップ。スキルに『聖魔法』『魅力強化』『悪意察知』を取得したため、本人のいない所では乳神様と呼ばれていたりする。体育の着替えの時には同級生に拝まれたりもしているらしい(涼子談)

 

「ゆーはやればできる子だから」

 

両手で握り拳を作って応援をしてくれたのが南条ひかり。身長140で(推定)Dカップのトランジスタグラマー。幼馴染グループ5人揃うと一人だけ頭1つ分小さい。だけどスキルを『トラップマスター』『隠密』『索敵』『短剣』と斥候系スキルが充実した逸材だ。

 

「いやいや。頑張るとかやればできるとか、そんなもんじゃないだろ。……でも、俺もお前らと一緒に探索者やりたからな。攻撃魔法系のスキルが貰えれば良いなと思ってるよ」

 

 

……

…………

……

 

 

投擲はともかくクラフトにガチャか。クラフトって工芸品って意味だったっけ? じゃあ生産系スキルだよな。ガチャはガチャガチャだろ? 何系スキルよ、協会のサイトで調べてみるか。気になって寝られないだろうしな。

 

「探索者協会のサイトのスキル情報ページで『クラフト』で検索っと……」

 

スキル:『クラフト』

・総合生産技能であり『調合』『錬金』等の生産系スキルを行える。ただし、高性能な品を作成する事が出来ない。

・迷宮内で『採取』『採掘』等で素材を入手できる。またパーティメンバーも同様に行えるようになる。

・他の生産系スキルと同じように『鑑定』『アイテムボックス』の2スキルも付随する。

・極稀に『クラフトマン』のスキルへ進化するが、その条件は未だ不明。

 

 

「ひかりの『トラップマスター』みたいな統合スキルってやつか。ただ高性能品は作れないっぽいから職人でやっていくには厳しいな。次は『ガチャ』っと……」

 

スキル:『ガチャ』

・魔石を使用してガチャガチャを行う事が出来る。

・ガチャの内容は人其々である。スキルを使用していくとガチャの種類が増えるが、現在決まったパターンは発見されていない。

・『ポーションガチャ』『武器ガチャ』『防具ガチャ』等、複数のガチャが存在し『武具ガチャ』等の複合系も存在する。

・ガチャの詳細、抽選、結果を公開する事が出来る為、希少なガチャが発現した場合はイベントで人気。

 

 

うん、ガチャガチャだったね。だけど魔石を使用するって、メインの収入が無くなるって事じゃね? いや金を使うか、換金前に使うの違いか。

 

「ん~……取り敢えずガチャの内容は見ておくか、アクティブスキルは念じれば良いんだったか? 『ガチャ』っと……――うわっ」

 

いきなり目の前にスクリーンが表示されて吃驚してしまったけど……実際に見ると興奮してきた!

 

初回限定! 駆出し探索者応援無料10連ガチャ!

・駆出し探索者にお役立ちの品々に加えてスキルカードも! 

 (このガチャで当たったスキルカードは本人限定です)

・10連目はなんとスキルカード確定!

※このガチャは無料で使用する事が出来ます。

※このガチャは1回限定で、使用後は別のガチャに変更されます。

 

「おぉっ、無料!?」

 

しかもスキルカード1枚確定って、これはやるしか無いよな!

いや、公開出来るってあったし、みんなの前でやるか!!

 

やべー、楽しみで眠れないかもなっ。

 



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第2話

楽しみで眠れない? ハハッ、12時近くまで爆睡してましたが?

起きてリビングに行くと幼馴染たちが集合していた。

 

「ゆ~君。あけましておめでと~」

「ユキ、あけおめっ」

「ゆー寝坊すぎ。……おめでとう」

「おぅ、やっと起きて来たか。今年もよろしくなっ」

 

「あぁ、あけましておめでとう。今年もよろしく」

 

「ゆ~君。小父さんと小母さんにも挨拶だよ~」

 

みんなに挨拶をしたら明日香に背を押されて仏間に移動した。

仏壇には線香が8本立っているからみんなも拝んでくれたんだな。息子が一番遅くて済まないorz

 

 

仏壇で親父とお袋に拝んで居間に戻ると信也が話しかけて来た。

 

「おっ、親父さんたちに挨拶は済んだか」

「あぁ。貰ったスキル事とか、進路の事とか報告してきたよ」

「後で詳しく聞くから、まずは雑煮を食べる」

 

話しながらテーブルに着くと、ひかりと涼子が全員分の雑煮を持って来てくれた。

 

「じゃあ、雑煮くったら雪兎のスキル発表会だなっ」

「それは後だって。みんな手を合わせて」

「「「いただきますっ」」」

 

 

 

雑煮を食べ終わって食後のお茶をみんなに配る。そして元の席に戻って一度深呼吸した。

 

「それで俺が貰ったスキルなんだが――」

 

先ずは俺が貰った3つのスキル名をみんなに知らせた。投擲については特に説明は不要だろうから、クラフトとガチャについて俺が寝る前に協会のサイトで調べた情報を教える事にした。

 

「いいじゃん、いいじゃん。みんなで採取して、それでアイテム作って、ユキがそれを使ってサポートする。お金の節約にもなるしさっ」

「ん。ゆーがサポーターなら安心できる」

 

涼子とひかり的には問題無いようだ。

 

「でもさ、その採取の時間を戦闘に向けた方が良いように思うんだよな」

 

所詮低レベルのしか作れないなら、材料となる素材だって安く買えるだろうし。小遣い稼ぎでなく戦闘に使っていくなら、それなりの数が必要になるだろう。それを採取だけでってのは無理だと思うんだよ。

 

「攻略じゃなくて、狩猟生活なんだよ~?」

「親父たちも言ってるだろ、余裕のある生活と老後の貯えが出来ればそれで良いって。親父たちは週2日の、のんびり探索者だぞ」

 

俺の言葉を明日香と信也が否定した。

迷宮が出来て300年以上が経ち、未知の領域に踏み込むものは減っているし、積極的に深層に挑む者も多くはない。

協会としても自分の身の丈に合った場所で稼ぐのが推奨している。迷宮内で犠牲者を増やさずにすみ、安定した資源の供給にもなるからだ。

 

そして信也の言う親父たちというのは幼馴染グループの親の事だ。元々は同じ学校出身の男2女4と男3女3の2パーティだったらしいのだけど、協力している内にクランとして1つになったらしい。

 

過渡期には探索者の死亡率が高く、複数の男女が一緒に長時間過ごす事、更にはダンジョンハイテンションと呼ばれる現象もあり、日本では探索者の多夫多妻が認められる事になった。

その法は現在まで続いていて、俺たちの親も複数の関係を結んでいる人が居る。男5の女7だったからね。

 

「ん。それに妹たちも居る」

「そうそう。凍子が『水魔法』を貰ったって喜んでいたし、あの子が高校で良いパーティ組めなかったらうちらのパーティに引っ張って来れば良いし」

 

凍子は涼子の1つ下の異母姉妹だ。小さい頃は子供はまとめて育てられていたので、涼子だけでなく俺たちにとっても妹みたいなものだ。

 

「あー、凍子のやつは人見知りするからな。その可能性もあるか」

「それに~、高校で私たちと合う子が居たら誘っちゃえばいいしね~」

 

高校入学前からこんな風にパーティメンバーを決めているのは珍しいだろう。他にも居るとしたら同じようなクランの子とかだが、同い年に人数が揃っているの多くないだろう。

 

 

「それよりもガチャだよ、ガチャ! スキルカード1枚確定なんだろ? く~っ、楽しみだぜ!」

 

信也の興奮は分るよ。スキル貰った時はアレな感じだったけど、実際にガチャのスクリーン見たら興奮したもんな。

 

「何であんたが興奮しているのよ」

「信也はギャンブル狂の気がある」

「涼子ちゃん、信君の財布ちゃんと握るんだよ~?」

「何でアタシに言うわけ!?」

「ツッコミ乙」

「そんな事より早く見せてくれよ」

「そんな事って、あんたの事よ!!」

 

みんな楽しく話し始めたのでガチャスキルを発動する。目の前にスクリーンが現れたけれど、みんなは気付かないので見えていないのだろう。

どうすれば公開出来るのか? 取り敢えず念じてみるか

 

初回限定! 駆出し探索者応援無料10連ガチャ! <公開中>

・駆出し探索者にお役立ちの品々に加えてスキルカードも! 

 (このガチャで当たったスキルカードは本人限定です)

・10連目はなんとスキルカード確定!

※このガチャは無料で使用する事が出来ます。

※このガチャは1回限定で、使用後は別のガチャに変更されます。

 

スクリーンの色が変わって<公開中>の文字が点滅表示されたので、どうやら念じるだけで無事切り替えれたようだ。他の人に見えないスクリーンをタッチ操作とかじゃなくて良かったよ、端から見るとパントマイムだしな。

 

「おぉっ、これがガチャか!」

 

一番激しく反応したのはやはり信也だったが、他の3人も興味津々にスクリーンを見ている。

 

「無料なんだからやらなきゃ損よね」

「ん。駆出し用なら温存する意味無い」

 

みんなの視線が俺とスクリーンの間を行ったり来たりしている。これは早くやれと言う催促なんだろうな。

 

みんなの視線を受けながら、スクリーンの『ガチャ!』ボタンへと指を伸ばし――そしてすり抜けた……

 



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第3話

「ゆ~君。それは無いよ~」

 

明日香ががっかりだと言い、信也はテーブルに突っ伏し、涼子とひかりは首を横に振っている。

こんなにはっきり見えてるから、すり抜けるとは思わなかったんだよ!

 

もしかして公開した時と同じように念じれば良いのか? スクリーンのボタンを押すように念じて――これでどうだ!

 

ボタンを押すと念じたら突き出て来た件について。

 

これはボタンに対して念じたから、ボタンが有効化されたのか? だとしたら判り辛過ぎだろう!

 

「今度は押せそうじゃね?」

「ユキ、今度はがっかりさせないでよ?」

「ファイト」

 

今度はゆっくりとボタンに指を近づける。すると指先に触れる感触があった。

その事に安心して、一度深呼吸をしてみんなの方へ振り返る。

 

「今度はちゃんと押せそうだ。いくぞ?」

 

「いけいけっ!」

「良い物が当たりますように~」

「アタシまでドキドキしてきたわ」

 

ボタンをスクリーンの所まで押し込むとスクリーンの表示が切り替わり、画面の中央にカードが10枚並び回転し始めた。

 

そして左から順に回転が遅くなり……止まったカードが中央に拡大表示された。

 

そのカードには青い液体の入った小瓶が描かれていて<低級HP回復ポーション>の文字があった。

そのカードが縮小すると上部へ移動して、次のカードが拡大表示される。

 

9枚目まで終わった所で最後の1枚が虹色に変色して画面の中央に移動してきた。

これがスキルカード当たりの演出なのだろう。1枚しか出ないのは残念だったが、良いスキルが当たるようにと祈ってみる。

 

みんなが注目する中、カードの回転が止まる。

そのカードは六芒星の図柄の上に<生活魔法>の文字が書かれていた。

 

それを見た瞬間、後ろの女性陣が歓声を上げた。

 

「ユキ! 偉いっ!」

「やったぁ、ゆ~君大好き~っ」

「1パーティに1ゆーの時代来た」

 

生活魔法。生活という名だが実際には探索にあったら便利な魔法の詰め合わせで、戦闘時に使用しても殆ど意味が無い。

 

「なぁ、雪兎。あいつらは何であんなに喜んでるんだ? いや、あったら便利ってのは聞いているんだけどさ」

 

そんな喜ぶ3人を見て信也が聞いて来た。そしてそれが聞こえたのか喜ぶ理由を3人が語りだした――

 

「生活魔法の中の<清浄>。これが有るだけでだいぶ違うのよ。武具に付いた血脂や返り血を奇麗にしてくれるから戦闘後のメンテが段違いに楽になるの」

「それに汗なんかも綺麗にしてくれるからね~、着替えのできない迷宮内では大助かりだよね~」

「トイレの始末にも便利」

「他にも――」

 

まだ語っているが聞き捨てならなかったのが、ひかりが言った『トイレの始末』の一言だった。

もしかしてみんなの後始末をしなきゃいけなくなるのか!?

 

遠い目をしながら3人の話を聞き続けた。信也も目の光が薄れつつあるな……

 

「後はそうね、スライム。魔法を使えるメンバーが居ないと天敵になるけど、《乾燥》があれば倒せちゃうのよ!」

 

国民的某RPGと違って現実のスライムは脅威で、粘液の体だからか斬っても叩いても殆ど効果が無いらしい。

だから魔法で倒すらしいのだけど、魔法を使えるメンバーが居ないパーティがスライムのいる迷宮に行く時には、なんと吸水マットを持っていくらしい。

 

まぁ親父たちから聞いた話だけどね。

 

で、涼子が今言ったのは、攻撃魔法でなくても<乾燥>であればスライムを倒せるという事。どうやら俺たちより生活魔法について詳しく聞かされているっぽい。

汗だの体臭だのは男より女の方が気にするから、母親たちも娘達にしっかり教えていたのだろうな。

 

「だからゆ~君は、替えのきかない重要なサポーターになっちゃったんだよ~。そうじゃなくても、側に居てくれるだけで元気百倍だけどね~」

「私も戦闘ではほとんど役に立たないと思う。出来るのは罠や索敵。ゆーはそれがサポートなだけで私と一緒、自信持つ」

「そうそう。それに探索者をやってればスキルカードなんかまた手に入るって!」

 

何か考えていたら励まされていた。ガチャをやった後無言だったから、落ち込んでいたと思われたのかな?

 

「ありがと、迷宮でもみんなの役に立てそうで良かったよ」

 

スクリーン内のカードへもう一目をやると、スクリーンからカードが光りながら出てきて目の前に止まった。そのカードに手を触れると――

 

《スキル『生活魔法』を取得しました》

《<低級HP回復ポーション>をアイテムボックスに収納しました》

《<低級MP回復ポーション>をアイテムボックスに収納しました》

《<低級MP回復ポーション>をアイテムボックスに収納しました》

《<堅木の杖>をアイテムボックスに収納しました》

《<大兎のブーツ>をアイテムボックスに収納しました》

《<剥ぎ取りナイフ+1>をアイテムボックスに収納しました》

《<低級HP回復ポーション>をアイテムボックスに収納しました》

《<黒蜥蜴のマント>をアイテムボックスに収納しました》

《<低級MP回復ポーション>をアイテムボックスに収納しました》

 

スキルカードは使用されてアイテムはアイテムボックスに収納されていった。便利だから良いんだけどさ、他の人が触れたらどうなるんだろう?

 

「あっ、内容変わった」

 

スクリーンを見ると確かにガチャの内容が変わっていた。

 

低級素材ガチャ! <公開中>

・様々な生産で使える低級素材が提供されます 

・魔石ポイント5を消費して1回実行する事が出来ます

・10連で1回おまけが付きます

 

「素材ならユキのスキルで使用できるし良いじゃない」

「魔石ポイントってのが良く判んねーけど、どうせ学校で行く範囲の魔石なんか数百円だしな」

「ゆ~君が生産したのを売る方がもっと高く売れると思うよ~」

「ん、低級ポーションでもそれなりにする。ゆーは受験終わったら、母さんたちに習うと良いと思う」

 

スキルだけあってもレシピや作り方を知らないと作れないしな。

そして親たちのクランで生産スキル持ちなのが、たしかひかりの母親たちだ。

 

「確かひかりん家の小母さんたちが生産スキル持ちだったよな?」

「調合、錬金……あと料理?」

「まぁ、料理はスキル無いけどアタシたちがやるからさ」

「愛情たっぷりだよ~?」

 

こうして受験勉強が終わった後は生産の勉強と練習をする事になるのだった。

 

 

 



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迷宮高校
第4話


迷宮高校についての説明回





23XX年4月6日 日本時間07:30

 

真新しい国立第三迷宮高校の制服を身に纏い、家の戸締りをする。

全寮制で今度はいつ帰ってくるか判らないからな。一応叔母さんたちが掃除にしに来てくれるらしいけど、戸締りはしっかりしとかないと。

 

「ゆ~君おはよ~」

 

玄関の鍵が締まっているのを確認して振り向くと、何時の間にか明日香が門の所に立っていた。

同じく三校の制服姿だ。手には学生鞄を持ち、準備万端のようだ。

 

「あれ~、ゆ~君は手ぶらだけど大丈夫? 忘れ物とかない?」

「あぁ、書類とか筆記具なんかは全部アイテムボックスに突っ込んであるからね」

 

ちょっと調べたんだけど、アイテムボックスの容量は1辺スキルレベルx5メートルの立方体くらいらしい。

受験後に小母さんたちに教えられて調合と生産をやっていたから、おれのクラフトスキルのレベルは2に上がっている。つまり元の大きさから8倍になっていて、俺の部屋の物を全部収納しても余裕がありまくっているのだ。何なら家にある家具を全て収納する事も出来るだろう。

 

「ふぇ~、便利だね~。私も何か生産スキル覚えられないかな~」

「明日香の鞄も入れてやろうか?」

「ううん、いいよぅ。迷宮に入る時じゃなくて普段もお願いしちゃうと、ゆ~君を便利屋扱いしているみたくなっちゃうからね~」

 

並んで歩きだすと道の角から後の3人がやってきた。

勿論全員が三校の制服を着ている。幼馴染5人、揃って無事合格出来たんだよね。倍率は高かったけど、全ての迷宮高校は全寮制だから好きな地方の学校を受験する人も多い。同じ東京ならお台場にある一校の方が人気で、八王子にある三校は全国で見ても人気が低いんだ。

 

 

 

23XX年4月6日 日本時間08:10

 

「ん~、入学式の日なのに普通じゃね? 他の学校だと親が一緒に来て記念写真とか撮るらしいのに」

 

入学手続きの時の説明では9時までに受付を済ませて教室に来る事を書かれていたので、まだまだ時間があるしな。

 

「迷宮高校は普通の学校とは違うからでしょ。入学式であっても敷地内に入れないのよ」

「ん、敷地内には関係者しか入れない」

「ランクが低いと言っても敷地内に迷宮が3つもあれば、そりゃ立ち入りは禁止するよなぁ」

 

昔親父に話を聞いたんだけど、三校の敷地内にはFランク迷宮1つとEランク迷宮2つがあるらしい。

そりゃあ一般人を立ち入り禁止にするよねって話だ。受験や説明会も別会場だったし。

 

 

 

校門から入って正面の建物に行くと長机があり、スーツを着た人が数人いた。

話しかけるとここが受付の場所だった。手続きを行うを生徒カードを渡されて4階の教室に行くようにと言われた。

 

教室に入るとそこは体育館並みの広さの部屋に机が並べられていた。

机に上にはパソコンのモニターが置かれていて、黒板も見当たらない事からこれで授業が行われるのだと思う。

 

「好きな場所に座れと言われても、これは迷っちゃうね」

「15x20で300人」

 

中学校の教室なら窓際の後ろとかあるんだろうけど、前を除いた3方向全てに出入口が3箇所ずつあったのだ。

 

「教壇もないしモニターを使うならどこでも一緒だろうね。扉に近すぎない壁際で良いんじゃね?」

 

俺が提案すると異論はないようで、入ってきた扉から少し離れた場所に陣取る事にした。

 

「早く来てよかったね~。おかげでみんな固まって座れたしね~」

「母さんたちが早くいった方が良いと言ったのは、これが理由かも」

 

早くいった方が良いと言われて、理由を聞いても笑っているだけで教えて貰えなかったんだよな。その時は受付の時間が掛かるかと思っていたんだけど、こっちが本命だったようだ。

 

「後の方になると真ん中らへんしか残って無いんじゃね?」

 

俺たちと同じように早めに来た生徒が壁際の席から座って行くのを見て信也が言った。

知り合いで並んで座ったりして壁際2列目までは埋まって行くけど、それより内側は全然だもんな。

 

そしてその予想が当たり、10分前になると中央3列にしか空きは無くなっていた。

入ってくると、みんなの視線を受けながら教室の真ん中に歩いて行く事になるのだ。普通の広さならまだしも、この大きさだからなぁ……

 

 

そして9時なると前の壁にスーツを着た女性が映し出された。

 

「入学おめでとう、私は皆さんの担任となる高坂です。先ずは机の上にある箱型の装置にカードスロットがあるので、そこに生徒カードを差し込んでください」

 

高坂先生の指示通りにモニターの横に有った装置のカードスロットに生徒カードを差し込むと、モニターの電源が自動で入って前の壁に映し出されている映像と同じく、高坂先生の姿が映し出された。

 

「……はい。全員揃っている事を確認しました。通常授業の出席もこれで確認する事になります。カメラも付いていて、こちらからも皆さんの事を確認出来ますので、居眠りや内職も分かっちゃいますから気を付けるようにね」

 

まぁ300人なんて一々確認してられないけどね。という言葉が小さく聞こえた。たしかに授業を進めながら確認なんてしていられないよね。

 

「授業でも迷宮の探索をしますが、その際はパーティを組む事になります。皆さんが交流し易くする為に、迷宮高校では1学年1クラス、席は自由となっていますので、積極的に交流するように」

 

「次に授業についてですが8時半からHR。その後9時から50分授業、10分休憩を国語、英語、数学の3教科を行い、11時50分から1時20分までの1時間半は昼休み。それから迷宮座学もしくは実習となります。3時と4時から日替わりで化学や地理歴史といった授業が特別教室で行われますが、任意ですので受けたい人は授業予定を確認して受けてください。これは進級の判定には関わらないので、受けたくない人も安心してね」

 

「最後に今日の予定ですが、この後は9時半から入学式で、それから迷宮でステータスカードを作ってお終いです。では9時半まで10分程ありますから、トイレに行きたい人は今の内に行っておくように。あ、そうそう、生徒カードを挿したままならモニターで敷地内の地図を見る事が出来るから、寮の場所は確認しておくようにね。自分の部屋番号も確認しておかないと大変だから気を付けてね」

 

何か最後は慌ただしかったけど、ようは寮の場所と部屋番号を自分で調べておけって事だろう。

ざっと見た感じ男が7割くらいか? 200人としても3学年で600人か。相部屋だとしても300部屋。これは調べておかないと大変そうだ。

 

モニターの『校内図』をタップして表示すると校門の北に校舎があり、その北にはグラウンド。グランドの東側に男子寮、西側に女子寮がある。グラウンドの北に迷宮が3つ並んでいるようで、さらにその北には小さな建物が多く並んでいるが、これらには説明が書かれていなかった。

 

そして今日から住む事になる男子寮だが、第1から第6まで並び立っている。で地図の男子寮をタップすると、ポップアップで自分名前と『1―1020(第1男子寮10階20号室)』と表示された。10階……エレベーター朝とか込んでいて大変そうなんだが……10階が最上階なら嬉しいなぁ。

 

「おーい、雪兎は寮の部屋何処だった? 俺は1の0715だったぜ」

「俺は同じ1の1020だな。10階の20号室らしい」

「あたしは4の0101で1階の1号室ね。覗かれないか心配だよ」

「お前のなら覗いた方が残念がるかもしれないけどな」

 

信也が涼子と明日香の胸を見比べて言った。そして始まる口喧嘩。

涼子の胸とひかりの身長については弄ってはいけないというのに、それをよりにもよって明日香の胸と見比べるとはバカな奴め。

 

「ゆ~君、私は6の1020だったよ。お揃いだね~」

「ゆー、私は1の0310。何時でも遊びに来て良い」

「いや、普通は異性の寮への出入りは禁止だからね?」

「え~っ! そうなんだ~?」

 

何で男子寮と女子寮を離して建てているのかを考えなさい。

とは言っても、こいつらは俺とは違ってクランハウス暮らしだから、そのあたりの感覚がチョットずれているんだよな。

 

 

9時半になると入学式が始まった。

先程と同じく席に着いて、モニター画面に映された校長先生の話を聞く。

気を抜いて聞くだけだし、楽で良いねこれ。

 

校長先生の話を要約すると『普通の高校と違って職業訓練校みたいなものだから、やる気のない者は容赦なく置いて行かれる』『数年に一度は死亡者も出ているので、無理だと思った者は早めに転校を考えなさい』『真面目に頑張る生徒は応援するので、困った時、悩んだ時は先生方に相談するように』という事だ。

これを無駄に長話にするから校長先生の話は嫌になるんだよな。

 

 

 

 

 




ストックはここまであとは書けたら投稿


入学手続きの時に授業での迷宮内での死亡について説明が有り、本人と保護者の同意書を提出しています。

国英数については毎日授業が有るので12月までには終わるスケジュール。
授業時間数の規定は現実と違います。




暫定(東京以外は変更有るかも?)

一校:東京(お台場)
二校:奈良(生駒市)
三校:東京(八王子)
四校:北海道(札幌)
五校:長崎(平戸)
六校:静岡(浜松)
七校:岩手(盛岡)
八校:広島(広島)

私立①:茨木
私立②:長野
私立③:石川
私立④:沖縄



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第5話

前半説明、後半新キャラ登場。これで当面の主要キャラは登場になるはず。






入学式が終わるとモニターには再び高坂先生の姿が映し出された。

 

「はい、皆さんお疲れ様した。次は本日最後の予定であるステータスカードの取得をして貰いますが、その前に少し説明があるので聞いてください。

知っている人も多いでしょうが、全ての迷宮は入ると広間になっていてそこにはモニュメントが存在しています。このモニュメントは地域によってある程度決まっているようで、日本だと狛犬やお稲荷さんが多いです。沖縄だとシーサーだったりしますけどね。

このモニュメントに初めて触れると台座からステータスカードが排出されます。カードの説明は明日の授業で説明するのでここでは省きますが、それを持って事務課に行き探索者カードを発行して貰ってください。発行される探索者カードはこのような物です」

 

先生の言葉が途切れるとモニターにカードの絵が表示された。

名前にNo、そしてD.E.Pの3行でNoとD.E.Pの横には数字が書かれていた。

 

「名前は説明不要ですね、Noは探索者協会が管理している15桁の番号ですので覚える必要はありません。重要なのは最後のD.E.P。ダンジョン・エクスプローラー・ポイントの略ですが、単純にポイントと呼ばれる事の方が多いです。

迷宮内で獲得した魔石やドロップ品等を協会に売却する際に、お金でなく1ポイント10円換算で支払われる事になります。またこの際、売却額の10%が税金として引かれます。どんなに稼ごうがこれ以外の所得税を納める必要が無いので、これが探索者優遇制度の一つとなるわけですね。

カードに貯められたポイントは協会や協力店での支払いに使用でき、協会や銀行でお金と交換することも可能です」

 

両親の銀行貯金はほぼ0に近かったのに、遺産相続で大金が振り込まれてきた理由はこれか。

免許証と電子マネーカードが一緒になったものと考えれば良いのかな?

 

「そして重要な事ですが、迷宮高校内での支払いは全てポイントで行われます。学食での食事――今日のお昼ご飯を食べるのにも必要ですからね。迷宮高校内では支払いのポイントが足りない場合は自動で借入……ポイントがマイナスになります。2月時点でもマイナスの場合は探索者として生活出来ていないとみなされて退学処分となりますので注意してください。

授業で迷宮に入るまではマイナス生活ですが、その後は放課後や休日にも迷宮に入る事が許可されますから、余程の事が無ければ年間でマイナスになる事は無いはずです」

 

探索者としての疑似生活で年間で赤字になったらアウトって事か。それにしても今日の昼ごはんでマイナスからの生活になるとはね。

小母さんたちから聞いた話だと生産物は売る事が出来るらしいから、俺は全然問題なさそうだけど……タンクをする事になるだろう信也と、メインアタッカーとなる涼子は装備代が掛かりそうだから協力してやらないとな。

 

「後、この絵ではポイントが書かれていますけど、実際には名前とNoしか記載されていません。ですので、他の人に見られても自分のポイントを知られる事は無いので安心してね」

 

他人に所持ポイントを知られる事は無いのか。まぁ普通に考えたら貯金額を見られるようなもんだし、流石にそれは無いよな。

 

「生徒カード、ステータスカード、探索者カードの3枚は迷宮高校の生活で必須です。再発行は不可で、無くしたら退学となりますから十分気を付けるように。

そうそう、事務もお昼になると休みに入りますからね。1時間半もあるけど300人も居るから時間がかかるので、早めにカードの発行を終わらせるように。毎年数人は初日のお昼を食べ損なってますが、今年は全員終わらせられると信じています。

最後に、荷物は寮の各部屋の前に置かれている筈ですから、今日中に部屋の中に入れてね。明日からは普通授業が始まるので8時半のHRに遅れずに来てください――以上で今日の説明は終わりになります。お疲れ様でした」

 

先生が〆の言葉を口にすると、モニターから先生の姿が消えてメニューが表示された。

 

 

「じゃあ、早速ステータスカード取りに行こうぜ!」

 

後ろの席に座っていた信也が話しかけて来た。周りの生徒たちも席から離れて我先にと教室を出始めている。

 

「まぁまて。迷宮の場所は式の前に確認したから知っているけど、事務課の場所は知っているのか?」

 

俺が聞くと真也は首を振った。だよなぁ……朝校舎前で受付してそのまま教室に来たんだし、式の前のあの時間で事務課の場所まで調べていないよな。女子たちに顔を向けると、3人とも同じように首を振っている。

 

「誰も知らないなら調べて確認してからの方が良いと思う。出遅れてしまうけど、その後さまようよりは良いだろう?」

 

「お、良い事言うねぇ」

「事前調査は探索者の基本だよねー?」

 

そう言ってメニューから地図を表示させると、言葉が聞こえていたのが少し離れた場所に居た二人組が話しかけて来た。

声の方を見るとポニーテールの少女二人組がこちらに手を振っていた。会釈で挨拶を返して、モニターに表示された地図で事務課の場所を探す。

 

「これは……毎年食事に有り付けられない生徒が出るのも仕方ないな」

 

校門から入って左側にある体育館の2階に事務課と購買が有った。

まさか職員室とは別の建物の、しかも2階なんてちょっと歩いて探すだけじゃわからないぞ。

 

「罠というか、態と分かり辛い場所に有る感じだよね」

 

背の低いショートカットの少女が前の方から俺たちの方に近寄って来ながら話しかけて来た。この少女も事務課の場所を確認していたのだろう。

背が低いと言ってもひかりより背が高いから150弱かな? だけど胸の大きさはひかりの勝ちのようで、ブレザーに隠れて判らないくらいの大きさしかないようだ。

 

「あっ、ボクは丹羽紅葉。知り合いが居なくてさ、良かったら一緒させて貰えないかな?」

 

「なら私たちも良いかな?」

「友達は早く増やしたいもんねー」

 

ポニテ少女たちも席から立つとこちらに歩いてくる。

片方の子は涼子より少し低いくらいだから160ちょっとで、もう片方の子はそれより少し低くて150後半ってところか? 二人とも制服の上からでも膨らみが分かるので、それなりにはありそうだ。脱いだら凄い! も有りそうな予感。

 

「横浜から来た小早川雛子だ、よろしく」

「雛ちゃんと同中の橘川恵。よろしくねー」

 

俺たちは3人の少女に立ち上がって応える。

友達と言えるほど仲良くなれるかは別として、300人のクラスメートが居るなかで早めに知り合いが増えるのは良い事だ。

先生は交流を持てるようにと言うけれど、グループが出来てしまうとどうしても固まってしまうだろう。俺たちも態々離れて座ろうなんて思わないし。

 

 

 

「へぇ~、5人は親が同じクランの幼馴染なんだ」

「良いなぁー。ボクの親は転勤族で幼馴染なんて言える子いなかったし」

 

お互いの事を話しながら歩き始めた所で、入り口の近くに男子と女子のペアらしき二人がこちらを見ているのに気付いた。女子の方は俺と同じか少し高い170前半はありそうなのに、男子の方は紅葉なみしかなく、同級生で無ければ姉弟かと勘違いしてしまったかもしれない。

教室から出ようとした所で目が合うと、向こうから話しかけて来た。

 

「少し宜しいでしょうか? わたくしの名前は真田美咲と申します。出来ましたらわたくし達も一緒させて頂けませんか?」

 

お辞儀に合わせて揺れる胸に視線が吸い寄せられる。うちの乳神様には及ばないが、それでも素晴らしいものをお持ちのようだ。

明日香の胸と美咲の胸を交互に見比べた信也が涼子に制裁を食らっているのを見ていると、男子の方が緊張した顔つきで一歩前に出て来た。

 

「こ、こんにちは。村上健一です、お願いします」

 

チラチラと涼子の顔を確認しているけど怖くないよー。理由もなく叩いたりしないからねー。

そんな健一の様子を見た涼子が優しい口調で自己紹介を始めた。相手の緊張を取るには良いのだろうけど、どうせすぐに元の口調に戻るんだろうな。

涼子の後は女子たちが自己紹介を始めたので俺と信也はそれが終わるのを待つ、そして信也の自己紹介が終わったので俺が口を開く。

 

「最後になったけど俺は月見里雪兎、よろしくな。で、美咲さんは少し前から俺たちの事を見ていたよね?」

「美咲と呼び捨てくださいませ。村上さんとは同じ学校出身なのですが、見ての通り身長が低いうえに気弱ですので、一人にしておくのも男子グループに放り込むのも心配でして……。かと言って女子グループに連れ込むのも問題が起きそうな気がしまして」

 

美咲の言葉に健一は身を縮めてシュンとしている。

怯えた小動物とか合法ショタというイメージがピッタリだな。確かに女子グループに連れ込んだ場合は玩具扱いになる可能性が有るな。

 

「そんな時に雪兎様たち、男子も女子も複数人居るグループを見つけたのです。紅葉さんや雛子さんたちも一緒された事から、わたくしたちも混ぜて頂けるでは無いかと思い、お声をかけさせて頂きました」

「ボクが話しかけたのも、男女混合ってのが大きいかな。もちろんちゃんと事務課の場所を調べていたっていうのが有ったからだけど」

「男子だけのとこだと勘違いされるし、女子だけだとそれこそ勘違いハーレム野郎が寄ってくるからな」

「女子が少ないうえに、学校から外出できるのは長期休みだけだからねー。恋愛対象がクラスメートになるのは仕方ないにしても、最初からそれ目的だと困るよねー」

 

話しかけて来た4人は混合グループに混じりかったようだ。理由はどうであれ、これから上手く付き合って協力していきたいな。

それにしても5人がグループに加わると、男3の女7か。クラスの男女比の逆だから、他の男子たちから嫉まれないか心配になるな。イケメン君が複数人の女子を囲ってハーレムパーティを作れば、そっちにヘイトが行くんだろうけど……

 

 

話しながら校舎から外に出ると向こう側に人だかりが出来ていた。地図で見た通りグラウンドの北側に迷宮が有るのだろう。東側から順に――男子寮寄りにDランク迷宮、中央にEランク迷宮、女子寮寄りにFランク迷宮だったはずだ。

 

「なんでEランクの迷宮の所に固まっているんだろうな? 俺たちはFランクの迷宮で良いよな?」

「むしろそれが正解?」

 

みんなに聞くとひかりが同意してくれたし、他のみんなも異は無いようなのでグラウンドを北西に向かって歩き出した。

 

「これも罠の1つかもね」

「その心は?」

 

グラウンドの中央まで来たところで紅葉が呟いたので、どうしてそう思ったのか聞いてみた。

 

「先生は迷宮のモニュメントに触れて。と言いましたが、どの迷宮でとは言ってないですよね?

それに迷宮前にはゲートがあって探索者カードが入れませんから、誰かの手引きが無いと入れない筈なのです」

「つまり、ゲートを開く為に誰かに――先生とかにお願いする必要が有るって事か?」

「1年生が入れるのはFランク迷宮だけ。そこに先生が居ると思う。だからゆーの選択は正しい」

 

各迷宮の間は離れているうえに、その間には木が植えられていて見通しが悪くなっていた。

これじゃEランク迷宮に行った人はFランク迷宮の前に先生が居ても気付かないかもな。

 

俺たちが迷宮の前に着いたタイミングで、ゲート前に高坂先生と8人のクラスメートらしき生徒が現れた。

 

「ステータスカードを貰った人は女子寮側から戻るようにね」

 

先生はグランドから見る事が出来ない女子寮の向こう側を指さして言うと、俺たちの方へ振り返った。

 

「う~ん、まだこんな人数しか来てないのかぁ……。仕方ないけど、入って入って」

 

そう言うとゲートにカードをかざし、開いたゲートを潜って行ってしまった。その先生を追いかけるようにみんなもゲートを潜っていく。

 

「雪兎様に話しかけて正解でした。これからもよろしくお願いいたしますね」

 

最後の方まで残っていた美咲が俺の腕を取り、耳元で囁くように言って進んで行った。

腕に残ったぽよんとした感触と耳が蕩けるような声に動けなくなってしまったが、明日香に手を取られて引っ張られたので門が締まる前に中に入る事が出来た。

 

あぶないあぶない。

 

 

 

 




生徒カード:学校
ステータスカード:迷宮
探索者カード:探索者協会(指定学校事務課で仮発行可能)

と発行元が分かれているのです。




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第6話

誤字報告ありがとうございます。

しばらくは亀進行ですよー





ちょっとした浮遊感を伴い迷宮の中に転移されると、既に信也や涼子のはカードの発行が終わっていて、自分のカードをじっくり見ているようだ。

今は丁度紅葉がお稲荷さんの頭に手を乗せるところだ。モニュメントは紅葉やひかりでも手の届く高さしかないので、神社なんかで見かけるのと比べると可愛く感じてしまうな。

 

紅葉の後はひかり、健一、雛子、恵、美咲と並んでいる順に撫でてはステータスカードを受け取って行く。

 

「先生、触れれば良いのですよね? なんかみんな撫でてますけど」

「はい、撫でる必要はありません。だけど、可愛いからか撫でる人が多いですね」

 

ならば俺は――顎の下をコショコショっとな!

 

「ゆ~君は何をしているのかな~?」

「キツネって猫の仲間じゃなかったっけ?」

「ざんね~ん。キツネさんは犬亜目で~す」

 

な、なんだってー!? 

俺は長い間勘違いをしていたというのか……

 

「ネコ科犬亜目だから、まるっきり外れじゃないわよ?」

「肉食動物は大抵ネコ科だし」

 

なんてふざけていたら、お稲荷さんの足元になるカード穴からカードが排出されていた。

カードを取って明日香と場所を変わると、明日香はお稲荷さんの鼻を指先で突つき始めた。

 

 

「はい、じゃあ迷宮から出ますよ」

 

明日香がカードを受け取ったのを確認すると、先生は手に持っていたバインダーに何かを書き込んで迷宮の入り口に向かって歩き出した。

入ってきた時と同じように浮遊感を伴い迷宮の外に転移される。どうやらゲートよりも遠くに送られるようで、出る時にはゲートにカードをかざす必要は無いようだ。

 

「はい、じゃあ女子寮側から戻って事務課に向かってね」

 

先生の指示に従い女子寮の方へ歩き出す前に見渡すと、数十人のクラスメートが居た。いや、数十人しかいないと言うべきか。

先生が中に居る時に来たら他の迷宮前と変わらないから、分からずに離れてしまった人も居るだろうしな。

 

「雪君、紅葉が罠って言ってたでしょ。これは先生――学校がそう仕組んでいる事なんだからさ」

「そうだよー。向こうから行けって事は、まだ来てない人には教えるなって事だよー?」

 

歩き出さない俺を見てポニテコンビの雛子と恵が戻ってきて俺の手を取り歩き始めた。

他のみんなも立ち止まって俺の事見ていた。どうやら心配かけてしまったようだな。

 

「あ、あの雪兎さん。ぼ、僕一人だったら、多分たどり着けませんでした。ですので、えっと……きっと大丈夫です」

「ふふっ、村上さん。それは励ましにもなっていませんよ。恐らくですが、もう少し時間が過ぎたら助け船が出るのではないでしょうか」

「先生が人数と時間を確認していたからな。言っていたように数人間に合わない程度に収めるんじゃないか?」

 

みんなに追いつくと待っていたみんなからも声を掛けられた。

 

「なんか心配かけてしまったみたいだな」

 

みんなにお礼を言って一緒に歩きだす。

女子寮の方を見ると木々の向こうに壁が見える。視線を少し上に向けると壁が途切れているから、建物の壁ではなく塀か何かだろう。

 

「涼子、どうやら寮の周りは塀に囲まれて入るっぽいぞ」

「えっ、本当に? ちょっと近くに行ってみてくる!」

 

走っていく涼子を見送って、残りのみんなは普通に歩き続ける。塀まで行って来るだけなら、すぐに追いついて来るだろう。次の目的地の場所は知っているはずだし。

 

「涼子さんはどうなされたのですか?」

「寮の部屋が1階で覗かれるのが心配だとか言ってたから、塀で部屋が見えないかを確認したかったんだと思う」

「そうなのですね。ですけどあのような建物の配置ですと、隣の寮の部屋から見えてしまうのではないでしょうか?」

 

美咲の視線の先、寮の方向を見ると確かに6つある建物の間隔はそんなに離れていない。

 

「確かにそうかもねー。それに日の当たりも悪そうでいやだなー」

「日の当たりが良いのは1と6の外側と各最上階くらい? 風の通しも悪そうだね」

 

俺は第1だけど、部屋の配置によっては内側の可能性もあるのか。

どうせ日中は学校に居るんだし、日当たり悪くても風通しは良い方が良いなぁ。

 

「ゆ~君、あんまり寮の方を見ちゃだめだよ~」

「ん、下着を干している部屋もあった。気を付けるべき」

 

明日香とひかりの指摘を受けて、慌てて寮から視線を外した。

知り合ったばかりの女子も居るし、勘違いされるのは勘弁だ。

 

 

「ただいま。3mくらいの塀で全部が囲まれていたから良かったよ」

 

涼子が戻ってきて見た事を教えてくれた。変わりに居ない間に話していた事を教えながら歩いて行く。

寮を越えると校舎があり、その先に体育館と2階に上がる階段が見えた。見えたといってもまだまだ遠いんだけどな。

 

「うん。こう歩いてくると、校舎に入っちゃうね、これ」

「場所を調べてなかったら、俺も入っていただろうな。雪兎に感謝だぜ」

 

紅葉が開いている校舎の入り口を見て言うと、信也もしみじみと言う。そして並んでいた健一もコクコクと頷いている。

紅葉と健一が同じくらいの身長だから、信也を挟んで並ぶと凸なんだよな。後ろから見ていると父親が子供二人を連れて歩ているように見えなくもない。

 

そして校舎も越えると体育館……という名の購買があった。

体育館の扉の先には棚があり、様々な品が置かれていたのだ。外から見えているだけでも武器防具に靴や服などもあった。

 

「体育館とはいったい……」

「そういえば体育の授業もありませんし、式も教室でしたね」

 

たしかに美咲の言うように体育館を使う事が無いように思えた。

1学年1クラスで保護者が参加しないなら、入学式も卒業式も教室で済んでしまうのか。それにモニターでやるなら始業式なんかも教室で済むしな。

迷宮高校に体育館不要説濃厚だ。

 

2階に上がり扉をの中に入ると、廊下に奥に先に来ていたクラスメート5人が居た。

手前が購買で奥が事務課のようで購買の前を通り彼らの方に進むと、中から男子が一人出てきて代わりに一人中に入って行った。

 

「一度に3人までだから、後は廊下に並んで待ってろだって」

 

先に来ていたうちの一人が教えてくれた。

ステータスカード発行の時に入り違いになった8人だろう。中に3人居るならピッタリだし。

 

「おー、ありがとう。じゃあ並ぶか」

「あっ、こっちは残り二人だから。そうそっちに並んでくれれば良いよ」

 

信也が先頭で俺が最後になるように並ぶ。

話しかけてくれた彼は良い人っぽいけど、後から来る人に女子が絡まれるかもしれないから、一応ね。

 

信也、健一が入って行き、先のグループの8人目が出て来たので紅葉が事務課の部屋に入っていく。

 

「ここで話していると迷惑だろうし、また後でゆっくり話そうぜー」

 

そう言うと彼らは外へと出て行った。

 

「リーダーっぽい人はまともだったけど、何人かはあれかな?」

「ねちっこい視線の人が居ましたねー」

 

涼子の感想に恵が同意すると、他のみんなも同意していった。

 

「美少女揃いだし、明日香と美咲にの胸に目が行ってしまうのは、男の悲しい性なんだよ」

「まぁこの二人の胸には女の私でも目が行っちゃうからね」

 

美少女揃いと言われたのが嬉しいのか、雛子が楽しそうにお道化て続いてくれた。

これでちょっと嫌な雰囲気だったのが解消された。今は女の中に男一人だから、そんな雰囲気は勘弁だよ。

 

 

順調に進んで行き、最後の俺が中に入る。

壁際に機械が3つ離れて置かれていて、そのうち2か所にひかりと明日香が事務員さんと一緒に居た。

残りの場所に事務員さんだけが居たのでそこに向かう。

 

「探索者カードの発行は此処で宜しいのでしょうか?」

「はい。生徒カードとステータスカードを出してくださいね」

 

言われた通りに2枚のカードを取り出して事務員さんに渡す。

 

「じゃあ、この機械の上に右手を開いて乗せてください」

 

機会に操作しながら言ってきたので、それに従って機械の上に描かれている手のマークに合わせて手を乗せる。

1分くらいそうしていると手を離していいと言われたので機械から手を離した。それから更に1分程経つと機械からカードが出て来た。

 

「カードに書かれている名前を確認してくださいね」

 

渡されたカードには間違いなく俺の名前が書かれていた。

仮とはいえ免許だ。探索者の第一歩かと思うと感慨深いものがあるな。

 

 

 

 

 

 



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第7話

探索者カードを受け取って事務課を出ると、後続はまだ来ておらず俺たちだけだった。

ひかりと明日香が出て行ってから誰も入って来てなかったからそんな気はしていたけどね。

 

そういえばアイテムボックスにパスケースが有ったはず……ってアイテムボックスに入れて置けば無くさないよな。

アイテムボックスからバタフライ型の4面カードケースを取り出して、3枚のカードを収納してそれをアイテムボックスへとしまった。

 

「アイテムボックス良いなー。カード落とさないか心配だよー」

「ね~、ゆ~君。カード預かってくれないかな~?」

「生徒カードは寮の部屋のロック解除に使うし、探索者カードは学食で使うだろ?」

「じゃあ、ステータスカードだけでもお願い~」

 

まぁステータスカードは日常生活で使わないだろうし、授業の時だけ渡せば大丈夫かな?

カードならアイテムボックスの容量もほとんど使わないし。

 

明日香からステータスカードを受け取ると、我も我もと渡してくる。

 

「なぁ、俺がみんなのステータスを知る事になるんだけど良いのか?」

「少なくとも卒業するまでは協力していくのですし、一緒に迷宮に入るのならお互いのスキルを教え合うのですから、何の問題もありませんわ。皆さまもそうでしょう?」

 

美咲の言葉にみんなが頷いたので、カードを受け取ってアイテムボックスにしまった。

 

「生徒カードと探索者カードはユキみたいにパスケースに纏めたいね」

「じゃあ購買で売ってないか見ていくか」

 

お昼まで時間が有るしパスケースが売っているなら欲しいという事で、みんなで購買を覗いて行く事になった。

2階ではノートや筆記用具それに財布やキーホルダー等といった小物が置かれていて、パスケースも置かれていた。

 

みんなパスケースの物色を始めたので、俺は購買の中を見て歩く。

……なんでエロ本やエロDVDがあるんですか? R18の品を高校の購買に置いて良いの? 今度一人で来た時にじっくりと吟味させて貰おう。

 

 

みんな首にかけれるリール付きのを買う事にしたみたいだ。お揃いでなんか羨ましいな。

ついでだからと1階の購買も見に行くと、武器防具にブーツやマントといった迷宮探索用品に、Tシャツや下着、靴下といった日用衣服、さらには木材、鉄鉱石等の生産材料まで売られていた。

 

とりあえず健一は女性用下着コーナーをチラチラ見るのは止めた方が良いと思う。信也はクランハウス住まいだから、女性の下着なんて見慣れているもんな。

俺もクランハウスによく出入りするから目にするしな。装着されていない下着はただの布だ。

 

 

見て回っている間に他のクラスメートも増えて来た。辿り着けた人が増えているようで何よりだな。

購買を一通り見て回ったので、少し早いけど学食へと移動する事になった。落ち着いてみんなで話せる場所が今のところ教室か学食かの2択だからな。

 

学食は校舎1階の半分を占めている。3学年の生徒と先生の合わせて千人近くが使用するならこの広さが必要なんだろうな。

食券の販売機が壁際にずらっと並んでいたので、みんな待たずに同時に買う事が出来た。

 

とんかつ定食30P、焼肉定食25P、ラーメン(ライス付き可)15P……

1日3食で40~100Pだな。最低でもそのくらいは稼いでいかなといけないって事だ。

 

野菜炒め定食(20P)の券を買って、定食レーンに移動する。

券を職員さんに渡すと野菜炒めの皿がレーンに置かれたのでトレイに乗せて横にズレる。そこにはライスが茶碗サイズから丼サイズまで色々置かれていた。

 

「新入生かい? ご飯はどれを選んでも値段は変わらないからから好きなのを選びな。後は味噌汁と好きな小鉢一個がセットだからな」

 

あぁ、ご飯の大盛り無料と似たようなもんか。なら遠慮なく丼サイズのを選ぶとしよう。

更にズレて味噌汁を取って、小鉢。冷奴にほうれん草の御浸し、納豆にきんぴらごぼうとあるの中から冷奴を取る。

学食とはいえ、これで200円だなんて凄いな!

 

 

早めの昼食を終えて駄弁っていると人が増えて来たので退散する事にした。

 

「じゃあ、朝食は7時半、夕食は20時って事で」

 

時間が合う場合は一緒しようって事になり時間を決めた。合わなかったら別で食べれば良いだけだしね。

今日の予定は寮の部屋の片付けだけになったのでこれで解散だ。男子寮と女子寮だとここから別方向になるからな。

 

信也と健一と3人で男子寮へと向かう。

校舎に近い方から順に第1~となっているので、第1男子寮の俺と信也は南方向に健一は第5男子寮らしく北方向にと別方向なので寮の門を抜けた所で別れる事になった。

 

「おっ、エレベータは4つだな」

 

寮の入り口を入るとすぐにエレベータが両側に向かい合って2基ずつの4基が有った。

7階で降りる信也と別れて最上階である10階まで行き、部屋番号を確認しながら廊下を歩いて行く。

折り返し出なくて両側共に入り口側から順に振られていたので一番奥だった。その奥に階段があったから角では無いけどね。1~10が北側11~20が南側だから、一番良い位置の部屋じゃないだろうか。

部屋の前には段ボールが1つ置かれていた。荷物は送ってないから何かと思ったら、教科書などの授業で使う物みたいだ。まぁこれもアイテムボックスに突っ込んでおくんだけどね。

 

生徒カードでロック解除して部屋に入るとワンルームマンションの部屋のようだった。

ミニキッチン冷蔵庫付きに3点ユニットバスと洗濯機、そしてクローゼット付きの6畳ほどの広さの部屋。その部屋にはベッドと机が添え置かれている。ベランダには固定された物干しもある。

 

部屋に生活魔法の<清浄>を使用して、布団をベッドに敷く。それから机の横にパソコンデスクとテレビ台を置き、テレビ、パソコン、プリンターの配線を行ったら終わりだ。他の物は必要になったらアイテムボックスから取り出せば良いからな。

 

机の上には『設備不備があったり、故障した場合には事務課に連絡をする事』と書かれていたメモがあった。

キッチンの水道、冷蔵庫、トイレ、シャワーと問題無い事を確認して、そのメモを机の引き出しにしまう。取っておく必要は無いかもしれないけど、一応ね。

 

 

夜まで暇になったし、後でスキルを教え合うってなったからまとめておこうか。

パソコンを起動してエクセルを開き、そこに書きこんでいく――

 

月見里(やまなし) 雪兎(ゆきと) クラフト 投擲 ガチャ 生活魔法

北里(きたざと) 信也(しんや) 大楯 頑強 生命力強化 -

東野(ひがしの) 涼子(りょうこ) 敏捷強化 器用強化 -

西宮(にしみや) 明日香(あすか) 聖魔法 魅力強化 悪意察知 -

南条(なんじょう) ひかり トラップマスター 隠密 索敵 短剣

丹羽(にわ) 紅葉(もみじ) 忍術 毛筆 - -

小早川(こばやかわ) 雛子(ひなこ) 片手剣 体術 ダンス -

橘川(きっかわ) (めぐみ) 風魔法 暗視 - -

真田(さなだ) 美咲(みさき) 片手斧 透明化 挑発

村上(むらかみ) 健一(けんいち) 付与術 隠れ身 - -

 

毛筆やダンスなんて迷宮とは関係ないスキルも有るんだな。透明化は男で貰った奴もいるのだろうか? スキルを使った犯罪は重罪になるらしいけど、透視とか透明化とか男のロマン()だよな。

健一の隠れ身はひかりの隠密と何が違うのだろうか? ネットにつなげられないから、スキル情報を調べられないのがなぁ……

 

今日知り合った5人だと美咲が飛び抜けている感じだな。挑発と盾でタンク出来る上に斧での攻撃も出来る。嗅覚が優れている魔物でなければ透明化も有効だろうし。

 

この10人だとタンク2、近接アタッカー2、斥候1、術アタッカー2、回復1、補助1、サポーター1か。……忍術は術アタッカーだよな? 妨害系の可能性もあるけど。

 

取り敢えず人数分印刷して、その後は購買に行くついでに校内探索と行きますかね。

 

 

 

 

 

さて、やってきました本日2度目の購買です。

まずはカーテンだな。流石にカーテンまでは持って来ていなかったからな。

 

購買のお姉さんにレースと遮光のセットをお願いして、ついでに生産物についても教えて貰おうかな。

 

「生産物の買取ですか? 基本的に探索者協会と同じ値段での売買になりますね。例えば低級HP回復ポーションの通常品質なら、買取り50ポイントですが10%の税金が引かれますので、実質45ポイントですね」

「えーっと、微薬草が20ポイントで2枚で低級HP回復を作れるから、一応はプラスなのか」

「あら、もう作れるんですか? プラスと言っても失敗しなければですからね。失敗したり低品質だと赤字ですよ」

「確かに。それだけでせこく稼ぐのは無理か」

「売れるまでに時間が掛かっても良いなら、委託販売だともう少し高く売れますよ。協会価格の8割くらいが相場ですけど、2月から3月にかけては3年生が在庫処分を行いますから、上がったり下がったりします」

「なるほど。委託販売の場合、手数料とかかかりますか? あと、ポイントは振り込みしてくれるのですか?」

「はい、手数料というか買取りと同じように税金の10%は引かれます。売却ポイントから10%引いた残りが振り込みになりますので、購買に来なくても反映されます」

 

カーテンの購入が終わった後、委託販売での売買の仕方を教えて貰った。

買う方は端末から委託販売ページを開き、希望する商品を申し込めば予約状態になるので、3日以内に購買に受け取りに来れば良いらしい。ただし委託販売からの購入ではマイナス不可と。

 

売る方は商品と生徒カードを事務課に持って行けば良いらしい。そうすれば委託販売の個人ページに商品が登録されるのでそこで値段の設定を行うと。

あと端末で特別取引相手を登録すると、その相手だけに販売したり値段を変えたりすることも可能になるらしい。知り合いには安くとか出来るって事だな、後でみんなの事を登録しておこう。

10%引かれるけどポイントを渡す事が可能になるんだし、みんなにも説明をして登録して貰わないと。

 

 

 

 



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第8話 迷宮座学:迷宮について

という名の説明回




23XX年4月7日 日本時間13:00

 

午後の授業は迷宮座学だから、お昼ご飯を食べ終えたら教室に戻ってきた。

勿論昨日のメンバー10人が固まっている。俺がステータスカードを預かっているから、授業で使う時に渡せない位置だと困るからね。

 

教室の左後ろの角で前にひかり・真也・涼子、中に美咲・俺・明日香、後ろに健一・紅葉・恵・雛子の順で座っている。

右を見ても左を見ても大きな胸が視界に入ってくるけど、俺だって健全な男だし意識しても仕方ないよな!

 

 

「――そんなわけで、みんなの事を特別取引相手として登録したいんだけど良いかな?」

 

探索者カードが発行されたからか、メニューに地図の他にも色々と追加されていたんだ。

そこの委託販売を選ぶと自分のトップ画面に遷移されて、そこで特別取引相手が登録できるようになっていた。

 

みんな否は無いようなので生徒カードと探索者カードの番号を教えて貰って登録していく。

5桁の生徒番号と15桁の探索者番号を9人分とか大変だ。

 

生産者で無くても委託販売で登録できるので、みんなも同じように登録するという。

登録したら相手にも登録されるので、グループでまとまって登録しあうなら後の人ほど楽になるんだよね。

というか、一番最後だと全員が登録してくれるから、自分で登録しなくて良いのか。……ずるい。

メモした紙は俺から明日香に、そこから時計の逆回りに渡されて行ったので、楽をしたのはポニテコンビだった。

 

無事授業前に登録が終わったし、お互いのスキルは教え合う事にみんな同意したので、昨日印刷した紙をみんなに配った。

それを見て他の人のスキルに驚いたり羨ましがったりしたけど、大きな声を出したりはしなかったので、他のクラスメートに知られる事は無かっただろう。

 

 

 

13:30になると前の壁と机の上のモニターに高坂先生の姿が映りだされた。

 

「はい、午後の授業を始めますよ。生徒カードを機械に挿してない人はすぐに挿すように。1分以内に挿さなかった人は欠席扱いですからね」

 

先生の言葉に戻りきれてなかった数人の生徒が急いで席に戻って行った。

機械の判定は厳しいからね、1分の猶予から1秒でも遅れたら完全にアウトだ。

 

「迷宮座学の1回目ですが、皆さんも知っている事が多いとは思いますが、きちんと聞いてくださいね。

まず迷宮には自然迷宮と人工迷宮の2種類があり、自然迷宮は1999年以降世界中に自然に発生した迷宮です。人工迷宮は迷宮で発見された魔法の品で作られた迷宮になります。

人工迷宮は魔物の反乱が起こらない、迷宮が成長しない、作成時に階層の形態を選べるなどの利点があります。各迷宮高校に存在する迷宮は全て人工迷宮です」

 

もし階層の形態の他に現れる魔物も選べるなら、個人の迷宮を持てれば競合者無しで良い値で売れるドロップ品を落とす敵を自由に狩れるって事か?

魔物の設定が無理でも、高ランクの薬草が採取できるような形態を選べるだけでも余裕で生活出来るよな。

 

「迷宮にはAからFの6ランクが存在し、ランクにより迷宮の深さや魔物の強さが決まっています。例えば同じゴブリンでもFランク迷宮に現れるゴブリンより、Eランク迷宮に現れるゴブリンの方が強いという事です。

またランクにより迷宮の大きさは決まっていて、Fランクで10階層、Eランクで20階層、Dランクで40階層。以降ランクが上がるごとに20階層ずつ増えていきます。

学校では1年生はFランク、2年生はEランク、3年生はDランクの迷宮にしか入れません。ですので卒業できればDランク迷宮までなら活動できるでしょう」

 

20階層ずつ増えるって事は、Aランク迷宮だと100階層か!?

日本だと最も深くまで行った記録が70階層くらいだったはず。ならBランクの最後まで行けてないのか……

 

「迷宮では5階層毎に中ボスと呼ばれる特殊な魔物が居て、その中ボスの奥の部屋には転移陣があり、そこから入り口の広間に戻って来る事が可能となっています。

そして最深層にはラスボスと呼ばれる魔物が存在し、ラスボスの奥の部屋にはダンジョンコアが存在します。このダンジョンコアを壊す事で迷宮の成長を止める代わりに魔物の氾濫を無くす事が出来ます。日本ではCランク以下の迷宮は殆ど壊されていますね」

 

Cランクの60階層を攻略できるのも限られた人だけなんだろうな。

まぁ俺には攻略なんて無理な話だろう、戦闘で使えるのが投擲だけだもんな。

 

「昨日も話しましたが全ての迷宮は入ると広間がありモニュメントが存在しています。基本この広間には魔物は入って来ませんが、例外は自然迷宮で氾濫が起こると魔物がこの広間を通り外へと出て行きます。

とはいえ広間に魔物が入って来てもすぐに氾濫するという事は無く、その時点で迷宮の魔物を多く倒せば氾濫は未然に防げます。

その事から未攻略の迷宮の広間には協会の職員が常駐していて、広間に魔物が現れた時には協会に連絡が行き、魔物の討伐が緊急依頼として発せられます」

 

緊急依頼と言ってもBランク迷宮とかだろ?

10年20年やってれば奥の方でなければ倒せるようになるのかねぇ?

 

「次にモニュメントについてですが、初めて触れた場合にはステータスカードが発行されます。これは皆さんも昨日体験しましたね。

ステータスカードを持っている人が触れた場合には、その迷宮で一度使用をした事のある転移陣への転移が行えます。選べないだけで全ての転移陣は表示されますので、これでランクが分かるという事ですね」

 

そんな事でランク判定されていたんだな。転移陣が5、10、15と有ったらEランクって事か。まぁ新しく出現した迷宮とかじゃないと役に立たない知識だけど。

 

「そして全ての迷宮は現地時間の日曜0時に作り変えが始まり、8時に作り替え終了。そこから翌日曜0時までの160時間が迷宮の活動時間となります。

作り変え開始の時に迷宮の中に居ると強制で外に転移させられますが、転移されるのは体だけで持ち物、装備品、来ている服全て無くなります。

……簡単に言うなら素っ裸で迷宮から追い出されるという事です。土曜の探索は余裕を持って帰るようにする事、女性がパーティに居る場合は特に注意してね。仮眠なんてしてたら最悪だからね!

この迷宮の作り変えでは迷宮内部の通路が変わったり、宝箱が新しく置かれたりします。それとモニュメントが死亡した探索者のステータスカードを銜えています。それを見つけた場合は探索者協会まで持って行くようにしてください」

 

うへぇ、宝箱は魅力だけどそんなの見つけたくないよな。

学校の休みに合わせていたのかもしれないけど、親父たちが迷宮に行く時は月曜から金曜のどっかだったしな。

 

「最後に迷宮の階層の形態についてですが、洞窟型、迷宮型、自然型の3種類に分類されます。

洞窟型は自然の洞窟や鉱山みたいなトンネル形式で、行き止まりに宝箱が有ったり鉱石を掘れたりするのが特徴です。

迷宮型は床や壁が人工的で、トラップや隠し部屋が多く、宝箱の中身が洞窟型より高ランクなのが特徴です。

自然型は草原、森林、湖畔、海岸など自然環境で、調合や錬金の素材が多く取れる事が特徴です。道が無い為に宝箱を見つけ辛いですが、そのおかげで週末まで見つからずに残っている事もありますね。

1階層毎に形態は変わりますので、自分のそしてパーティに合った狩場を見つける事が大事になります」

 

うちにはトラップマスターのひかりが居るし迷宮型でも問題なさそうだよな。個人的には自然型も良いけど、生産スキルは俺しか持ってないし。パーティメンバーに採取系スキルの効果が有ると言っても、そんなに多く採取に付き合わせれらないよな。

 

 

 

その後に質問の時間があって1回目の座学は終了となった。

機械についているボタンを押すとマイクが出てくるのには笑いそうになったけどな。何処のクイズ番組だよ。

 

授業が終わったがみんなここで駄弁るらしい。

部活も無いし遊びにも行けない。スマホは圏外とくれば駄弁るしかないか。

 

俺はクラフトのスキル上げしたいし、購買で微薬草を買ってこようかな。

委託販売だと少し安いのがあるけど、ポイントマイナスだから委託を購入できないんだよな。

多少失敗しても入学前に作ったのがあるから、それも売れば大赤字にはならないだろう。

 

 

というわけで買ってきました、微薬草100枚。マイナス2000ポイント追加でーす。

現金じゃないから高く感じないけど、実際には2万円なんだよな……

 

みんなが駄弁っている横で錬金開始でーす。

調合の方が高品質のが出来やすいんだけど、磨り潰したり火にかけたり面倒なんじゃ! それに器具も買わなきゃいけないし、ポイントがががが……

 

低級HP回復ポーションは微薬草x2に水100ml。水は2L入るペットボトルが10本アイテムボックスにあるから余裕で間に合う。

机の上に微薬草2枚とペットボトルを並べて置いて、<錬金>と念じる。

 

材料が光の玉に包まれたかと思うと、机の上には蓋つきの試験管に入った低級HP回復ポーションと水の減ったペットボトルが残る。

試験管がころげ落ちないように素早く手に取り<鑑定>を行う。

 

『低級HP回復ポーション』

 

うん、高品質は付かなかったけど低品質も付いていない。

 

「一瞬で別の物に変わるなんて不思議ですわね。それに試験管は何処から出て来たのでしょうか?」

「スキルなんてみんな不思議じゃん。気にするだけ無駄だと思うよ」

 

美咲なんて透明化を持っているじゃん。カメレオンだって吃驚もんだよ、そのスキルは。

 




次回座学2ステータスとスキルについて

で説明回は終わるはず……



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第9話 迷宮座学:ステータスとスキルについて

という名の説明回(2回目)





23XX年4月8日 日本時間13:30

 

「はい、迷宮座学の2回目。今日はステータスとスキルについてになります」

 

授業開始のベルが鳴り終わると映し出された高坂先生は早速授業を開始した。

授業2日目にして出席の注意は無くなっているけど1分の猶予は有るので、席に着いてなかった人は焦って戻っている。朝のHRでこれからはいちいち注意しないと言っていたしな。

 

「では皆さん自分のステータスカードを見てください」

 

ステータスカードを机の上に置いて見る。

 

月見里 雪兎

HP : 0 / 150

MP : 60 / 60

力  : 3

耐久 : 2

敏捷 : 2

器用 : 5

知  : 3

精神 : 3

魅  : 5

 

スキル

クラフトⅡ  投擲  ガチャ  生活魔法

 

「上から順番に説明していきますが、名前は良いですよね。

HP、ゲームとかと違い迷宮内での強度――身を守ってくれるバリアの点数だと思ってください。迷宮の外では現在値が0になり、迷宮に入ると現在値が増加します。減った状態は維持されますので、入りなおしても前回出た時の現在値にまでしか増加しませんから注意してください。

HPが有る内はどんなに魔物に攻撃されても怪我をする事はありませんし、0になったからと言っても死ぬわけではありません。ただ0の時に攻撃を受けると怪我をしたり、最悪致命傷を受ける事もあります。

HPを回復させる方法としては回復魔法やポーションがありますが、バリアの現在値を回復するだけで怪我を治せたりは出来ません。そしてバリアの回復となりますので、ポーションは飲む必要が無く、かけるだけでも効果があります。

最大値については基礎値100にスキル補正となりますので、HPが増えるスキル持ち、スキルの数が多い人、スキルレベルが高い人は最大値も高くなります」

 

現在値0はそういう意味だったのか。

HPが有る内は怪我をしないというなら、痛みで動けないとか――

 

「そうそう。怪我をしないと言っても衝撃を全て吸収してくれるわけでは無いので、攻撃されたら痛いですし、大型の魔物にぶつかられたら拭き飛ばされたりもします」

 

痛みを我慢すれば良いんですね!

 

 

「次にMPですが、ゲームなどでよくある魔法を使うのに必要となる魔力ですね。

HPと違い迷宮の外でも現在値が存在し、自然に回復もして行きます。

そして外でも現在値が存在するという事は魔法も使えるわけですが、魔法を使った犯罪は殆どが終身刑となりますので、魔法スキル持ちの人はくれぐれも使用には注意してください。

最大値は基礎値50にHPと同じようにスキル補正ですね」

 

俺は60だから生活魔法で+10されているのか。生活魔法ってスキルレベル上がるのかなぁ?

 

「次に各ステータスですが、スキルの補正値のみ表示されます。

例えば筋力トレーニングで腕力が上がってもステータスには反映されないという事です。

腕力、脚力……肉体の力全てを1つのステータスとして表示できないという事なんでしょうね。

ですが補正値は全てに適用されるらしく、補正値が上がれば腕力脚力共に上昇する事が検証の結果分かっています」

 

目に見える数値だけでは判断できないって事だよな。

絶対値の表示じゃなくて良かったよ。知や魅が低かったら凹みそうだし。

 

「ステータスの影響ですが、力は主に近接攻撃の補正。耐久は物理攻撃の耐性。敏捷は反射神経、瞬発力の向上。器用は遠距離物理攻撃、生産、採取スキルの補正。知は攻撃魔法、補助魔法の補正。精神は攻撃魔法、妨害魔法の耐性。魅は回復魔法やスキルの補正となっています」

 

まって、早い早い。一気に言い過ぎで書くの追い付かない。

ゲームや漫画でよくある設定と違うのは、敏捷が一瞬の速さって事か。早く走り続けるとかでは無いと。

後は魅力が回復魔法やスキルの補正になるって事だな。……リハビリとかでも美人に介護して貰った方がやる気出るしな!

そういえば俺の魅力補正が5もあるんだが、いったいどのスキルが5も上げているんだ? もしかして……ガチャだったりするのか!?

 

 

「次にスキルですが、皆さんも知っているように14歳になった次の年明けにスキルが発現します。

2~3個の人が殆どですが、1つしか発現しない人や4つ以上発現する人も居ます。知られている限りですと、過去には6つ発現した人も居たようです。

このスキル全てが迷宮探索の役に立つわけではなく、一般生活にも役立たないスキルもありますので、貰ったスキルを一度も使わないなんて事もあり得ます」

 

紅葉の毛筆や雛子のダンスとか、本人が好きじゃないと使われ無さそうだもんな。

ちなみに身体能力アップ系のスキル持ちはスポーツの大会には参加できないらしい。小さい頃からプロ目指して、14歳でスキル貰って夢が砕けるとか、切なすぎるよね。

 

「スキルには複数のスキル使える複合スキルや、似たような名前なのに別の効果を持つスキル。逆に全然違う名前なのに同じ効果を持つスキルなどが存在します。

自分のスキルを正しく把握する事は重要ですので、今日の授業が終わったらメニューにスキル情報が増えますから調べておくと良いですよ」

 

あぁ、この授業が終われば調べられるようになるのか。

夏休みに帰省した時じゃないと調べられないかと思ったよ。

 

「スキルは使用していると成長してアーツと呼ばれる技を覚えたり、使える魔法が増えたりします。

アーツにはスキルと同じ効果を持つものもありますが、スキルの方が効果が高いとされています。

例えば盾系や重鎧系のスキルでは挑発のアーツを覚えますが、スキルの挑発の方が成功率も持続時間も良いです」

 

クーリングタイムが有るし、両方使えるようになる美咲は優秀なタンクになりそうだよな。

耐えるだけなら信也の方が上なんだろうけどな。既にHP200を超えているし。

 

「さて、迷宮探索に重要となるスキルですが、増やす方法は2つあります。

1つは迷宮内で活動する事。とは言っても、どうしたら増えるのかは迷宮が発生してから300年以上経っても解明されていません。増えるタイミング、スキルの種類どちらも一貫性が無く、増えたらラッキーくらいと思ってください。

もう1つは迷宮の宝箱や魔物からドロップするスキルカードを使用する事。協会でカードの売買もしてますので、出易いカードなんかは簡単に手に入ります。

希少なカードが出た場合はパーティ内で揉めたりもするようですが、これはどうもしようがありませんからね」

 

役割がハッキリしている固定パーティならそんな揉め無さそうだけど、高値で売れるなら換金して分配して欲しいとかもあるだろうしな。

アイテムボックスのスキルカードとか引退した後だって一生便利に使えるんだし、誰もが欲しがるだろう。欲しがるよな?

 

 

「それでは最後にスキルの人体への影響について。

スキルの総合計が上がると体が迷宮の影響を受けやすくなると言われています。

これによる人体への影響は大きいので2つ、細かいのは個人差があり過ぎて把握できないほどです。

1つは老化防止。年齢を重ねても若々しい肉体を保持できる事です。現在我が国のトップ探索者は80歳を過ぎてますが、肉体年齢は30代という診断結果が出ています。危険な職業なのに女性の数が多いのはこれが影響していますね。それに、夜も未だ現役だそうで……」

 

クランの小父さんや小母さんもみんな見た目若いもんな。

ちなみに俺の初恋は明日香の母親でした。小学生の頃クランハウスに泊まりに行った夜に、小父さん小母さんたちの乱交を見てしまい涙を流したのは哀しい思い出だ。

今はもう吹っ切れているけどね、小学生の頃の話だし!

 

「んんっ。もう1つはダンジョンハイテンション、またはダンジョンズハイと呼ばれる現象。迷宮内に一定時間滞在すると、出て来た時に欲求や衝動が増大する事です。

スキルの合計レベルが高いほど短い探索時間でダンジョンハイテンションが発生するようになりますが、8時間以内ならほぼ発生しませんし、発生しても我慢できるくらいで済むそうです。逆に24時間以上滞在した場合はどんなに合計レベルが低くても発生する事になります。

大抵の人は食欲か性欲が増大するのですが、稀に破壊衝動に駆られる人が居ます。破壊衝動に駆られた人は、残念ですが8時間以内の探索しかできない限定探索者となります。

ですので、1学期の終わりには破壊衝動が発生する体質かを調べるために迷宮内キャンプがありますからね」

 

そういや親父とお袋は迷宮に行った日の夜はめっちゃ食べてたな。

遺伝するなら俺も食欲タイプなんだろうけど、どうなんだろう?

 

「初期時には性欲が増大した時にパーティ内で発散する事が多かった為、これがきっかけで探索者の多夫多妻を認める事となり、現在の探索者の特権の1つともなっています。

また現在でも女性だけのパーティを出待ちする輩がいます。分かっていても欲求に抗えないから、法で多夫多妻を認めるまでになっているんだからね。特に女子は特定の相手を見つけるなりしておかないと、体目当ての男にいいようにされちゃうからね!」

 

教室内がざわついたな。

それにしても女子を見る男子の多い事よ。気持ちは分からなくも無いが、今のタイミングはなぁ……

悪意察知のスキルが仕事をしてるのか、明日香が腕で胸を隠して身を縮めてしまったし。

 

「ゆ~君。お願い……」

 

明日香が身を縮めたまま腕に引っ付いて来た。すると逆側から美咲も同じようにくっ付いて来た。

 

「雪兎様、わたくしもお願いします」

 

両手に花かつ腕にボイン。嬉しい。嬉しいんだけどさ、周りの男どもの視線が憎しみを持って俺に向かって来るんですけどぉ!?

 

「そして寮が一人部屋なのはこのダンジョンハイテンションが影響しています。

購買では特別に18歳未満でもアダルト品を買えるようになっているので、迷宮から出た後は一人で発散しなさいという事ですね」

 

その間も先生の話は進んでいた。

一昨日見掛けたエロ本とかはその為に置かれていたのか。なら堂々と買えるわけだ。

 

 

「はい。じゃあ今日の授業で質問のある人はボタンを押してください」

 

とりあえず聞いておきたいからボタンをポチッとな。

 

順番に質問とその回答が行われて俺の番になった。

 

「ダンジョンハイテンションですが遺伝するのでしょうか? 例えば両親が共に食欲増大だった場合、子供も食欲増大になるとかありますか?」

「完全に個人の資質と考えられています。同じ場合もあるでしょうけど、それはたまたま同じだったという事でしょうね」

 

そっか、遺伝じゃないのか。遺伝するなら破壊衝動の可能性は低いと少し安心できたんだけどな。

俺の質問が終わると次の人の質問が始まった。誰かは判らないけど、女子の声だ。

 

「高校に居る間に特定の相手を決めた場合はどうなるのでしょうか? 寮に連れ込んだり訪問したりは出来ませんよね?」

「それは1学期の終わりの頃、キャンプが終わったら話す内容だったのだけど……せっかくですし今話しちゃいましょうか。

学校の迷宮の北側に小さな建物が多く建てられています。そこはパーティ棟と呼ばれていて、学校に固定パーティ届を提出した人たちに賃貸料はかかりますけど貸し出しを行っています。後は……購買でアダルト品と同じように避妊具も売っていますね。これが学校側からできる回答です」

 

腕にくっ付いたままの二人の顔が上がった。

明日香の好意は気付いているけど、まさか美咲もなのか? 会って3日目だし、そんな好かれるような事はしてないよな。でも女の子だし、好きじゃない男にくっ付いたりしないか……

 

 

 

 

 

 




次回初迷宮……の予定



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第10話 初迷宮探索

23XX年4月9日 日本時間08:30 HR

 

「皆さんおはようございます。今日の午後は座学では無く、迷宮に入りますよ。おめでと~」

 

朝のHRで突然に午後の授業は迷宮に入ると言ってきましたよ。

教室内は喜びより戸惑いの方が多いぞ。

 

「本当なら後1回座学やってからなんだけど、今日迷宮で実地しておかないと迷宮への入場許可出ないからね。明日明後日の土日に何もできないのは暇でしょ?」

 

外出出来れば別だけど、出来ないからな。

迷宮に入れないと借金しながら生産するくらいしかやる事が無い。生産スキル無い人に比べたらましだけどね。

 

「ですので、13:30に運動着に着替えてFランク迷宮の前に集合です。探索者カードだけは忘れないように」

 

昼になったら学食でご飯食べて、寮に戻って着替えてFランク迷宮前に移動か。

何気に初めて運動着を着るな。体育も掃除も無いから、やっと出番が来たようだ。

 

ちなみに掃除は生活魔法持ちの先生が夕方見回りついでに<清浄>をかけているらしい。すっごい便利!

 

 

 

23XX年4月9日 日本時間13:30 三校Fランク迷宮前

 

明日香と美咲という巨乳美少女二人が俺の側に居るからか、男子からの視線が痛い。信也の方がでかくて目立つ筈なのになぁ……

 

4日目ともなると少しづつグループが出来始めている。男女混合グループはまだ少ないけどね。

で、少ない混合グループの1つが俺たちだ。そして女子の数が多いからか、男子グループから距離を取った女子グループが近くに集まってくるんだ。

そうすると、大きな女子グループの中に男二人混じっているように見えるじゃん? そうなると嫉みの視線が増えるんだよ!

 

健一? 健一は背が低いから女子の中に埋没しているよ、ずるい。

 

 

時間になると迷宮前に集まった生徒たちを掻き分けて高坂先生が迷宮前にやってきた。

何時ものスーツ姿でなく運動着姿なのでスポーツウーマンって感じだ。手持っている木刀を見なければだけど。

 

「今日はFランク迷宮の1階層での活動になります。

この学校のFランク迷宮1階層は自然型ですので、この大人数でも同時に活動できますからね。

では中に入りますから、探索者カードをゲートにかざして付いて来てください」

 

先生が先頭でゲートを起動して中に入ると、近くに居た人から順番に続いて行く。

少し離れた場所に居たので、男子が入り終わった後に女子を引き連れるような感じになってしまった。

 

ゲートに探索者カードをかざし迷宮の中に入る。

広間の奥の通路を進むとその先は草原だった。遠くには森林や湖らしき物まで見える。

 

少し先に先生とクラスメートたちの姿が見えたのでそこへと移動した。

 

最後尾の生徒が到着すると先生が説明を始める。

 

「ここで出現する魔物は大兎――ビックラビットだけです。あそこにも居ますね。敵対行動を取らない限り襲ってはこないので、落ち着いて行動するように。

今日は皆さん素手ですけど、スキルでステータス補正が1でもあるなら頭を掴んで首をコキっとやれば倒せます。見た目は可愛くても魔物ですから、殺せないようでは探索者として不合格です。ダメだった人は転校する事を考えてくださいね」

 

厳しい言い方だけど仕方無いよな。

それにしても首をひねって殺すのかぁ……。確かにスキル不要で誰でもできるんだろうけどさ。

 

「魔物を倒すと光の粒子となり迷宮に吸収され、ドロップ品だけが残されます。

ビッグラビットはお肉と毛皮、そして魔石ですね。これらは購買で買い取りを行ってますから、ポイントを貯めて自分のスキルに合った装備を整えるように。2階層以降は素手だときびしいですからね。

この後は自由に戦ってください。ただし、HPが50未満になったら帰るように。先生は15時までここに居ますから、質問や困った事が有ったら来るように。じゃあ、行動開始!」

 

先生の号令で元気な者は我先にと駆け出していく。

グループでまとまって動く者や人の少ない方へ行く者など様々だ。

 

 

「うんで俺たちはどうするよ?」

「襲ってこないなら一緒に動いて順番にやってみりゃ良いんじゃね? 失敗しても人数いりゃ捕まえられるだろうし」

「ん。初めてだからその方が落ち着いて出来そう」

「じゃあ、人の少ない方に行こう。取り合いになったら面倒だし」

 

俺たちが行動方針を決めると、側に残っていた女子グループの子が話しかけて来た。

なんでも最初は誰かがやる所を見せて欲しいらしい。まぁいきなり首を折れと言われても困るよね。

 

こうして俺たち10人と女子グループ8名の計18名は固まって移動を開始するのだった。

 

 

まぁ歩き回るまでも無く、すぐに見つける事が出来る。生えている草より体の方が大きいから、隠れてないんだよ。

 

「俺から行くか? 真也先に行く?」

「どうすっか。どっちでも構わないけど、初めてだしどう動くか見てみね?」

「じゃあ俺が前から、信也が後ろから近づいてみるか。襲ってこなくても逃げるかもしれないしな」

「OK、それで行ってみよう」

 

挟み込むように前後から距離を詰めると、大兎はぴょんと後ろに跳ねた。

そしてそれを信也が空中でキャッチして抱きかかえた。

 

「なぁ、そこから首折れる?」

「両手塞がっているから無理!」

「だよなぁ……。健一! 真也が抱えているからやっちゃえ」

 

俺が健一を呼ぶと、ひかりと紅葉に背中を押されてこっちへとやってきた。

 

「ぼ、僕がやるんですか……?」

「だって、一番無理そうなんだもん。押さえているのならやれるべ?」

 

健一が聞いて来たので答えると、女子たちの方から「あぁ~」とか「確かに無理っぽいかも」なんて言葉が聞こえて来た。

 

「で、でもどうやれば良いか分かりませんよぅ」

 

攻撃系でないにしても、こんなんでよく探索者になろうとしたな。

結局俺がやる事になったので、みんなが見やすいように集まって貰う。

 

頭と口を押さえて一気に180度回転させる。

すると数秒の後に大兎の体が光り始めた。

 

光が消えた後の信也の手にはラップに包まれた肉と魔石が残っていた。

 

「掴んでいた毛皮がどんどん違った感触になって行くの、何とも言えない変な感触だったぞ」

 

そんな報告は要らん!

 

「肉、思ってたより大きい」

「んだな、2kg有りそうな感じだ」

 

光が肉に興味を示すと、信也は腕を上下させて重さ確認してた。1年半以上鉄アレイで筋トレしていたからな。

 

「でもさ、先生の言うコキっとは違う感じじゃない?」

 

たしかに今のやり方だと体を固定していないと無理そうだ。

近くに1匹沸いたので後ろから近寄って行き、耳を掴んで持ち上げた。

 

「さて、ここからだよな」

 

俺の言葉にみんなが頷く。

片手で首を捻れればいいのだけど、大兎だけあって首も太い。

 

どうコキっとすれば良いのか。……いや、ひとりでも体を固定できれば良いのか。

脚の間に大兎の体を持って行き、両膝で大兎の体を挟む。左手で頭を押さえて右手を耳から放して顎を掴む。

 

そして、勢いよく頭を引っ張り上げながら時計の逆方向に捻る。

大兎の体が暴れるけど、膝から逃れてしまっても両手で頭を持っていれば自重で首にダメージが行くだろう。

それにいくら大きくても、突進で無ければ動かした足が当たっても駄々っ子パンチと大差ないからな。

 

大兎は光の粒子となり、俺の足元に肉と毛皮を残して消えた。

 

それを確認した信也は俺に持っていた魔石と肉を押し付け、近場に居た大兎を捕まえに行った。

信也が同じように仕留めて見せると、それを見た他のメンバーも行動を開始した。

 

 

 

1時間も経たないうちに全員が大兎を仕留める事が出来た。

うちのメンバーだと明日香と恵、そして健一が手こずっていたし、女子グループの何人かも同じように失敗していた。魔法使い系は力に補正入っていないからなぁ。

 

まぁ後は時間とHPが許す限り自由行動だ。

これからは1つに固まり続ける必要もないだろうという事で、バラけて行動する事になった。ただし、女子はある程度固まるようだけどね。

 

俺は草原に生えている微薬草や石を採集しながら森林の方へと向かう。適当な木の枝や蔦が欲しいからな。

 

 

 

 




補足
大兎ならステータス補正無しでも殺せます。
ただ自然迷宮では1階層からゴブリンなのどのアクティブな魔物が出ますので、迷宮出現当時はステータス補正が無いと勝てませんでした。


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第11話 初迷宮で生産

森の入り口で小振りの枝を折ったり、蔦植物を採集していると明日香と美咲がやってきた。二人の手には肉や毛皮が山盛りだ。

やっぱりアイテムボックス持ちでないとすぐにアイテムで手が埋まるよな。

 

「ゆ~君、持ちきれないよ~」

 

明日香の持っていた毛皮4枚を取り錬金で大兎の革x4にして、それを使用して大兎の革(特大)を作る。

そして採集していた蔦を縄にして、ボストンバッグもどきを作り上げた。下半分が革、上半分と持ち手部分が縄網仕様だ。下半分が革だからきちんと入れれば魔石が落ちる事も無いだろう。

 

美咲の分も同じ物を作るが、その間に二人にはみんなの所に見せに行って、欲しければ毛皮4枚持ってくるようにと伝えて貰う。

先程の女子グループ8人も近場に居たら、ついでに見せてても良いと言っておく。一緒に行動していたし、敢えて教えずに入学早々嫌なグループとは思われたくないしな。

 

バッグを作り終わっても二人はまだ戻ってきていないので、後から作ろうと思っていた物を作ってしまう事にした。

木の枝と石、蔦を使用して美咲の石斧、石からひかりの石のナイフを作る。ついでに石釘も何本か作っておく。涼子の槍と雛子の木剣は枝からじゃなくきちんとした木材から作ってやりたい。

本来錬金だけでは武器を作れないし、鍛冶や木工だと加工する道具が必要なんだけど、錬金と生産スキルを両方持っていると錬金で作れるようになる。調合と錬金のポーションと同じだな。錬金だけだと素材の加工や変換がメインだからね。

ちなみに錬金のスキルカードはアイテムボックスが付かないので他の生産スキルカードより出易いらしく、小母さん――ひかりのお母さんたちは調合と錬金、料理と錬金を持っているらしい。

 

美咲用に作った石斧だけど、これで伐採出来るんじゃないか?

石斧で木を伐りつけるとスキルのおかげか、かなりの伐り込みが入った。反対側から石斧を振るうと見事に木が傾きだした。本当なら危険だけど、木に手を当てて倒れる前にアイテムボックスに回収する。

 

木を元に丸太、木材、板材と作っていく。小母さん曰く、錬金で木から丸太を作る時に乾燥されるからすぐに素材として使えるらしい。

 

まだ戻って来ないので、ついでに3本ばかり木を伐った。これで木を使う物は大体作れるだろう。

木材、石、蔦を使用して涼子の石槍。木材から木剣を2本、雛子と信也用だな。板材から盾と大楯。恵と健一用に杖。……これで一通りは出来ただろうか?

 

草原の方を見るとみんなが纏まってやって来た。順番で来た方が待ちが少なくなるだろうに……

 

 

「なぁ、雪兎。お前のアイテムボックスにしまって貰うのじゃダメなのか?」

「誰から何を何個預かったなんて覚えていられないし、明日明後日はどうするつもりだ? ずっと一緒に付き合えってか?」

 

着いて早々の信也の疑問に答えてやる。

パーティでの行動なら売却時に均等割りすれば良いけど、1階層の内は個別行動になるだろうしな。

 

「うっ、そうだよな……」

「毛皮4枚使うから売ったポイントで良いバッグを買えるかもしれないけど、迷宮素材を使っているからか<重量軽減・小>の効果が付いているし、今日は有った方が良いと思うぞ」

 

美咲の分を作った後に鑑定して見たら<重量軽減・小>が付いていたんだよな。作った武器とかには<耐久値上昇・小>とか<追加ダメージ+1>が付いていた。

耐久値はステータスでなく武器の耐久っぽいけど、俺の鑑定では耐久値を見れなかった。

 

美咲のバッグに預かっていた魔石と肉を入れて渡し、石斧と木の盾も渡す。

 

「スキルは使わないと上がらないしな」

「嬉しいのですけど、今日は素手では無いのですか?」

「先生は魔物を倒せないとダメ、大兎なら素手でも倒せるって言っていたけど、武器や道具を使ってはダメとは言ってなかったはず。それにみんな一回は素手で倒しているんだし、後は自由行動だから問題ないでしょ」

 

美咲は今日はずっと素手だと思っていたんだな。

もしかしたら先生もそのつもりだったかもしれないけど、自由行動でやれることをやってるだけだし大丈夫だろ。

 

順番にバッグを作ってやり、装備も押し付ける。

 

「真也は武器スキル無いから木剣な。使ってみてダメそうなら斧や槍を作ってやるから」

 

受け取った信也は左手に木の大楯を持ち、右肩にバッグをかけ手に木剣を持ち草原に戻って行った。

 

「う~ん。片手ならあれで良いけど、両手だと背負う方が良いか?」

「1階層のうちはこれで十分ですよ。入れるのに背負いなおすのも大変ですから」

 

信也の後ろ姿を見ながら呟いたのが聞こえたのか、美咲が答えた。

みんなも否は無いようなので同じバッグを作っては、武器も一緒に渡していく。

 

「紅葉には石釘な。大きめに作ってあるから棒手裏剣の代わりになると思う。ダメなら諦めて木の小刀か、購買で買うかだな」

「う~ん、とりあえずこれでやってみるね」

 

「健一には杖を作ってみたけど、付与術だからなぁ。大兎を倒すのは今の方法と変わらないだろう」

「で、ですよね。でも自分に付与をすれば、す、少しは楽になるになるんじゃないかな……」

 

「恵にも杖な。俺らの中で唯一の攻撃魔法使いだから、期待してる」

「ありがとー。恵ちゃんちょ―パワーアーップだよ♪」

 

俺たちのグループに渡し終えると、涼子とひかり、紅葉と健一、雛子と恵のペアで草原に戻って行った。

明日香と美咲はここに残るそうだ。明日香は戦闘で上がるスキルがないけど、美咲は斧も楯もあげれるんだけどなぁ……。まぁたった数時間だし、初日から張り切り過ぎる必要もないか。

 

 

「じゃあ、みんなの分も作って行こうか」

「はい。助かります」

 

女子グループに話しかけると、リーダーというか中心人物になってしまっている子が答えてくれた。

ちょっと行動力ある子の近くにちょっと消極的な子が集まって出来てしまった、いわば寄せ集めというか流れで一緒に居るみたいな集団だ。これがちゃんとしたグループになるかは、これから次第って感じか。

 

順番にバッグを作りながら、希望の武器を聞いて作っていく。

槍と剣が多かったけど杖の子も居たし、珍しいところでは小刀二刀流。カッコいいよね、中二病心が擽られる!

 

最後の子は何と錬金と革細工持ちの子で、作り方を教えて欲しいとお願いされた。

両親は一般人だし生産持ちの大人が近くに居なかったので、生産スキルでどんな事が出来るのか知らないらしい。

俺も小母さんたちに聞いていなきゃ知らないままだっただろうしな。学校では生産について何時教えてくれるのだろうか?

 

材料の調達からという事で、この錬金と革細工持ちの子――朝倉市華ちゃんと蔓を取りに行く事になったのだけど、そこにもう一人斧スキル持ちの後藤巴ちゃんも同行したいと言う。

話を聞くと伐採スキルも持っているらしく、それなら手間でも無いので一緒に行く事にした。

 

女子グループの他の6人は揃って草原に向かい俺と市華ちゃんに巴ちゃん、それに明日香と美咲の5人で森の中に入る。他に女子が居た方が二人も安心だろう。

 

移動しながら微薬草や微魔草を教え、みんなで摘んで行く。戦闘スキルを上げるなら大兎を狩った方が良いと思うけど、狩るだけが金策じゃないからね。

 

 

「蔦は木の根元の方を切って、そこを掴んでアイテムボックスに回収すると、どんなに木に絡んでいても平気だからね」

「これは楽で良いですね。全部外さないといけないのかと思ってました」

 

蔦を採集して見せると、市華ちゃんは喜んで回収し始めた。

 

「一度切り込みを入れて、逆の方から同じ高さで伐りつける。木が揺らいだら倒れる前に触れてアイテムボックスに回収するか、巻き込まれないように伐り込みと別の方に逃げる事」

「そっか、アイテムボックスがあると倒れるまで待たなくても良いんですね!」

 

巴ちゃんも俺たちと少し離れた場所で伐採を始めた。俺たちの方に倒れないように、きちんと考えてやってくれているのが素晴らしい。

生産、採取系持ちはアイテムボックスが付いて来るから……って、市華ちゃんが最後だったから巴ちゃんにもバッグを作ったような……でも今は伐った木をアイテムボックスに入れているよな??

 

 

「雪兎様、少しお伺いしたい事が有るのですが宜しいでしょうか?」

 

二人が離れて採集を始めた所で美咲が聞きたい事が有ると言うので、俺が答えられる事ならと美咲の話を聞く。

 

「わたくしたちは装備を作って頂きましたけど、明日香さんに無いのはどうしてなのでしょうか?」

「あぁ、明日香にはこれをあげようと思ってね。渡しそびれていたんだ」

 

アイテムボックスから<堅木の杖>を取り出して明日香に渡す。

 

「この杖って、あの時のだよね~?」

 

初回のガチャ産だ。持っていても俺は使わないしな。

 

「ゆ~君の手作りのが嬉しいけど~、ある意味ゆ~君の初めてを貰っちゃったぁ」

「ゆ、雪兎様の初めて……」

 

はい、そこ。変な想像をしない。視線を下げない! まだ新品だよっ!

そんな目の前で意識されると、俺だって意識しちゃうだろ! 二人の胸を意識しておっきくなったら困るんだよ、一緒に採取している今日初めてあった子も居るんだからさ。

 

「あ、あぅぅ……。そ、そうでした、もう1つ。雪兎様が倒した2匹は2つもドロップ品がありましたけど、わたくしたちは倒しても1つしか落とさなかったのです。何か違いが有るのでしょうか?」

「それはコレのせいかな」

 

アイテムボックスからナイフを取り出して見せる。

<堅木の杖>と同じ初回ガチャで出た<剥ぎ取りナイフ+1>だ。剥ぎ取りナイフの効果はドロップ数の増加で、+1だと確実に一個増えるらしい。

このナイフの名前と効果を二人に教える。

 

「パーティならともかく、個別行動の時に誰か一人に貸すわけにもいかないからな」

「大兎ですと単純に倍になりますものね」

「ゆ~君はそれ作れないの~?」

「鉄にオーククラスの革と魔石があればだけど、多分プラスは付かないぞ。運が良ければ増えるかもって効果だし」

 

クラフトだと低ランク品しか作れないからなぁ。スキルレベルが上がれば高品質で+1とか付くかもしれないけど……

 

「購買で材料を買うにしても高そうですわね」

「元を取るのにどれくらいかかるかだよな」

「無くても2~3年生は進級できるんだし~、大丈夫だよね~」

 

全員の平均がマイナスでなければ、委託販売を利用してポイントを渡すという手もあるしな。

 

 

 

 

 



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第12話 迷宮で生産指南

市華ちゃんと巴ちゃんが採集を止めて戻って来た。

早速市華ちゃんに錬金を使用した材料の加工を教える事になった。

 

「俺が教わったのは錬金はイメージって事。皮は鞣されて革になる。加工法は知らなくても材料と加工品を知っていれば、材料を揃えて頭の中で完成品をイメージしてスキルを使うと――こんなふうに変換できる。蔦から縄も――同じだよ」

 

やって見せれば後は本人のイメージだからな。

市華ちゃんは「な、なるほど」と呟いて錬金での加工に挑戦を始めた。

目の前に材料と加工品の両方が有ったから、初回から無事成功する事が出来た。

 

次いで革2枚を並べて1枚にする方法、逆に1枚から複数に分割する方を教える。

巴ちゃんが伐って来た木を材料に、丸田から木材。木材から板材、そして大きな1枚板へと変換させて見せる。購買で一番高かったのが大きな板だったし、巴ちゃんは加工できないから喜んでもらえるだろう。

 

……可愛いからって、点数稼ぎをしたわけじゃないからね?

 

 

市華ちゃんが4枚の革から大きな革を作れたので、バッグを作って見せる。

材料が革と縄だから革細工スキルで作れるだろう。

 

出来上がったバッグを見本に市華ちゃんが挑戦する。

一発で成功したかと思いきや、持ち上げたら上の網の部分と下の革の部分がつながっていなかった。

 

上の網の部分と下の革の部分、それぞれは上手く出来ていたのにね。これで失敗しても材料が無くならない事が判明したから、多少気楽に出来るだろう。

 

「革と縄の接合部分が上手くイメージ出来なかったんだろうね」

 

近くに落ちていた石と小枝を拾い上げて、市華ちゃんに見せる。

 

「木の幹から枝が生えているように、石から枝が生える――」

 

手の上には石の真ん中から木の枝が生えている奇妙な物になった。

この場に居た4人とも驚いてくれたので、ちょっと嬉しかったりもする。

 

「まぁぶっちゃけると、素材をそのままで石鎚を作るとこうなるんだ。深く考えないで、こういう物だ。革と縄はつながっているんだ、そうイメージして一か所やってみて。現物も有るんだしね」

「は、はいっ。もう一回やってみます」

 

市華ちゃんは俺が作ったバッグの革と縄の接合部をよく観察して、未完成の自分のバッグの革と縄を合わせる。そしてその一か所を手で押さえた。

 

押さえた場所が小さく光ると、その部分の革と縄がきちんと接合していた。

錬金の一部変換という技術だね、作ったものに追加したり修理する時に使われる。よく使われるのは靴の踵の修復だね。

 

それから一か所ずつ接合していき、時間はかかったけど無事バッグを完成させる事が出来た。

 

「大変でしたけど、作れました。ありがとうございます」

「おめでとう」

「おめでと~」

「頑張りましたわね」

 

喜ぶ市華ちゃんにみんなが祝いの言葉を送っていた。

 

「無事できたようで良かったよ。でも市華ちゃんに作り方を教えるなら、もっと革を増やして全部革で覆った方が良かったかも。ゴメンな」

 

革の枚数が少なかったら下半分だけのバッグにしたんだけど、教えるなら協力して貰って皮を集めてやれば良かったんだよな。

 

「も~、ゆ~君。喜んでいるのにそんな事は言っちゃだめだよ~」

「みんなとお揃いのバッグですし、別の素材を接合出来るなんて事も教えて貰えましたから。これで良かったと思ってますよ」

 

まぁ市華ちゃんが喜んでるなら良いか。

 

 

「雪兎様はこの後も採集を続けられるのですか?」

「今度は湖の方でかな」

「それならお供いたしますね」

「私も一緒に行く~」

「よかったら近くで勉強させて欲しいな」

「採集できる物も教えて欲しいです」

 

どうやら全員ついてくるようだ。可愛い子に囲まれるのは悪い気はしないから勿論OKだ。

明日香や美咲と比べるのはあれだけど、市華ちゃんも巴ちゃんも十分可愛い。普通の学校ならクラスならトップ、学年でも上位に入るだろう。

 

 

採取をしながら森林を湖の方へと抜け、出口の方角を確認しながら湖の畔までやって来た。

 

「湖の近くは微魔草が多いな」

 

草原は微薬草、湖畔は微魔草、森林は両方って感じか。

 

「ここだけのっては無さそう~?」

「知っておくのは良い事ですよ」

 

2階層以降に行く時には明日香と恵と健一の3人にMPポーションを持たせたいし、採集しやすい場所が有るのは助かる。

 

湖の水を鑑定するときれいな水だ。

魔物は水を飲んだり体を洗ったりしないんだろうな。そして水の中に普通の生物が居ないのなら、それらの排泄物も無いと。

 

水際から少し離れた場所に砂の場所があったので、そこで焚火を始める。

木材を分割して簡単に乾燥した薪を作れるからな。<生活魔法>の<着火>で薪に火をつけて、後は火が大きくなるようにすれば良いだけだ。

 

順調に燃え出したので、焚火の近くに木材から作った椅子を置く。……後で草と革でクッション作ろうかなぁ。

もちろん一緒に居る4人にも椅子を作ってあげる。俺だけ座っているのも居心地が悪いしね。

 

大兎の肉を取り出し、肉の表面を覆っている謎の透明な包装を剥がす。それから一口サイズのブロックに分割した。

使っていない薪をさらに分割し串を作ると、ブロック肉を串に刺していく。

そう、焼き鳥だ。兎も1羽2羽って数えるし、焼き鳥で良いだろう?

 

火に当たらないように串を砂に挿せば、後は焼けるのを待つだけだ。

 

 

「なんでお肉焼き始めたの~?」

 

俺の作業が止まった所で明日香が聞いて来た。文句があるのではなく、純粋に興味が有るだけだろう。

他の3人も肉と俺を事を交互に見ているので知りたいんだろうな。

 

「先生が1学期の終わりに24時間キャンプをすると言っていたよね。その時の食事はどうなると思う?」

「もしかして現地調達なのでしょうか?」

 

俺の言葉に美咲が驚いた声を出した。

 

「大兎から肉が取れて湖の水も問題無く飲める。そこから考えると、ね」

「だから味見しておくんだね~」

 

うんうん頷く明日香を横目に見ながら串の向きを変えていく。ドロップ品だから寄生虫の心配も無く生食できるらしいけど、せめてレアでお願いします! 個人的にはステーキならミディアムが好みです!!

 

 

 

パチパチと弾ける火の音に焼ける肉の匂いがする。

 

「私、兎の肉なんて初めてです」

「食堂の焼肉定食や肉うどんに使っているのは、この大ウサギの肉ですよ。私にも1本貰えますか?」

「先生!?」

 

衝撃の事実だ。確か入学式の日に焼肉定食を食べたような気がする……

 

「時間ですので先生は戻ります。残っている人も少なくなってますから、あなた達もあまり遅くならないようにね」

 

俺が串肉を渡すと先生は帰るという事を教えてくれた。

何時の間にか15時になっていたらしい。1時間半も経っていたんだな。

 

「知らない間に兎さんのお肉食べてたんだ……」

 

串肉を食べながら去って行く先生を見送っていると、市華ちゃんが呟いたのが聞こえた。

うん、唐突にネタバレされちゃったし、そりゃあテンションも下がるよね。

 

みんなに焼けた串肉を渡して、残りはアイテムボックスに入れる。

4人の視線が集まる中串肉を食べる。十分に咀嚼して味を確認するの忘れない。

 

「生の部分があっても血生臭くないどころか肉の味が美味しく感じられるね。好みによっては塩があった方が良いかもしれないけど、そのままでも十分かな」

 

親父たちが持って帰って来ていた肉よりは味が劣るけど、じゅうぶん美味しい。流石豚や鶏よりも高い魔物肉だ。

俺の感想を聞いて4人が食べだす。……って、明日香も普段から魔物肉食べているよな!?

 

「脂っこくなくて食べやすいですねっ!」

「こんなお肉を自分で取って食べられるなら、探索者を目指して正解だったよね」

「癖も無いですし、お刺身でも美味しく頂けそうですわ」

「ゆ~君の初めての手料理だよ~」

 

どうやら明日香を除いた3人も大丈夫のようだ。だけどキャンプの日に3食これだけだと厳しいと思うから、塩くらいは持ち込めると良いな。

後、明日香。これを手料理というのか? これが手料理なら焼肉やBBQも手料理になってしまうぞ!

 




補足:アイテムボックスについて
単独スキルのアイテムボックスと生産・採取系に付加されている2種類が存在
違いは単独スキルの大きさは1辺レベルx10M、付加はレベルx5Mの立方体
単独スキルは容積の7割以上使用で成長度アップ
付加スキルの方は元の生産・採取系レベルが適用

単独スキル持ちは意図的に成長させないと育たないので、大抵は3~4レベル止まり。
豪雪地帯の人は雪かき代わりに使用して成長していたり、海辺に住む人は海水を入れて育てたりする人もいる。


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第13話 素材ガチャをやってみた

初の週末はみんなで大兎の乱獲をした。

 

みんなでと言っても迷宮の中ではバラバラだったけどね。

ポイント稼ぎに効率よく倒す人と、スキルの成長を目標にスキルを使って倒す人と其々だから仕方ないね。

 

俺は大兎を狩りつつ採集だ。そして拾った石を湖に向かって投げたりもした。

投擲スキルも育てたいけど、大兎に投げて襲って来られても対処が難しいから、今はこんなやり方しかできないんだ。

 

そうそう、大兎の肉は塩を振っても醤油を塗って焼いても美味かった。

アイテムボックスがあれば液体の醤油でも気軽に持ち歩けるのが良いよね。

 

 

肉と木材は帰りに購買で売った。嵩張るし委託販売でそんなに売れるもんでは無いだろうし。

採集してきた微薬草と微魔草は夜にポーションを作成するのに使った。作った物で標準品はの内半分はグループのメンバーに安く、残りの半分は8掛けで委託販売に出す予定だ。低品質は自分で使って、高品質はいざという時の為に取っておく事にした。

 

取っておいた大兎の皮だけど、初回ガチャで<大兎のブーツ>が出たのを思い出したんだ。思い出したというか、アイテムボックスに入っていたのを見て気付いたんだけどね。

敏捷が微ながら付いていたから、みんなにも有った方が良いよね。という事で作ってみた。

無事9個標準品質のが出来たので、これもグループメンバーに安く販売だ。ポイントが貯まったら買ってくれるだろう。

 

 

そして魔石。この魔石をどうやって魔石ポイントにするのかと悩んでいたら、魔石をガチャのスクリーンに触れさせれば良いとスキル情報に載っていた。正月に調べた時には気付かなかったんだよね……

 

さっそくこの三日で貯めた大兎の魔石をガチャのスクリーンに触れさせていく。

一個で2ポイントで228ポイント。魔石を落とさない事も有ったから150匹以上は倒していたのか。剥ぎ取りナイフ+1が無かったらもっと少なかったんだろうなぁ。

 

低級素材ガチャ! 

・様々な生産で使える低級素材が提供されます 

・魔石ポイント5を消費して1回実行する事が出来ます

・10連で1回おまけが付きます

 

所有魔石ポイント:228

 

10連でおまけが付くから40連で44回分か。

問題は何が出るかだよな。一応何でも使える筈なんだけど、他の素材が足りなくて使えないとかだとアイテムボックスの肥やしだからな。

でもやらなきゃスキルが成長しないしな。

 

 

 

ガチャと念じて突き出て来たボタンを押す。

スクリーンの表示が切り替わって画面の中央にカードが10枚並び回転し、止まっていく。

10枚のカードが順番に拡大表示された後スクリーンに並べられて表示されると、最後に1枚のカードが横から飛んで来て画面中央に止まった。

 

その演出要る? 初めから11枚並べて回転させればいいじゃん!

 

初回ガチャの時と同じようにスクリーンから出て来たカードに触れる――

 

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<鉄塊1kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<大鶏の羽毛5kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<小麦1kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<丸太>をアイテムボックスに収納しました》

《<蒸留水1ℓ>をアイテムボックスに収納しました》

 

う~ん……。まぁ微薬草と微魔草は良い、偶数個で出てくれたし。

鉄塊は所謂アイアンインゴットだよな? 1kgがどんな大きさか分からんし、標準がどの位かも知らんけど。

 

「羽毛5kgって、どのくらい量が有るんだよ! ダウンジャケット1つに250g使ったとしても20個も作れちゃうよ!!

それに小麦。お前はせめて小麦粉で出て来いよ! 製粉からしろってのかよ!

そしておまけが蒸留水かよ。初級の生産なら普通の水で十分だろ、何に使うんだよ!」

 

思わず途中から声に出してツッコミを入れてしまったよ。

これを後3回もするのか? するしか無いよな、しなきゃ成長しないもんな。

 

《<銅塊1kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<米5kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<大兎の皮>をアイテムボックスに収納しました》

《<黒蜥蜴の皮>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<砂鉄1kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<蒸留水1ℓ>をアイテムボックスに収納しました》

 

銅はそのままだから良いとして、米の品種は何でしょうかね、有名どころだったりしませんか?

黒蜥蜴の皮はマントの材料になりますよね、そのマントガチャで当たりました!

砂鉄って……たたら吹きでもしろって言うんですか? 無茶言うなや!

そしておまけはまた蒸留水か~い!!

 

30連目だ、おら~!

 

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<鉄塊1kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<大鶏の卵10個>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<黒蜥蜴の皮>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<大鶏の卵10個>をアイテムボックスに収納しました》

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<蒸留水1ℓ>をアイテムボックスに収納しました》

 

いや……もうおまけ要らなくね?? 最後の40連目いっちゃって~。

 

《<大鶏の羽毛5kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微魔草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<塩10kg>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<微薬草>をアイテムボックスに収納しました》

《<胡椒100g>をアイテムボックスに収納しました》

 

おぉっ! ついにおまけが変わったよ! 胡椒100g!! 胡椒は金と同じ価値が……って大航海時代か~い!!

まぁ一回の料理にそんなに使うもんでもないしな。しかし塩さんとの差よ……

そしてまたもや羽毛。みんなの羽毛布団でも作れってか?

40連目は微薬草ラッシュだったし、なんだかなぁ……

 

いや低級素材ガチャでSレア高級素材とか出されても困るか。

 



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第14話 迷宮座学:装備について

23XX年4月12日 日本時間13:30

 

「今日は先週先送りにした装備と生産についての授業になります」

 

授業開始のベルが鳴り終わるとすぐに授業が開始される。

今日の迷宮座学は装備と生産か。生産と言っても数が多いから基本的な事だけだろうな。

 

「まず装備についてですが、ゲームにありがちな職業やスキルで装備できる物が決まる事は有りません。誰だって剣を振り回せますし、鎧だって装備できます。

ではスキルとは何か? という事になりますが、アーツが使えるようになる事。スキルに合う装備を使用する場合は重量を軽く感じさせてくれたり、疲労を激減してくれる事が大きいです。

重鎧のスキルがある人は何十キロもあるフルプレートを着ながら歩き続ける事が出来ますし、大剣スキルがある人は十キロ以上もあるグレートソードを長時間振り回しても、腕が疲れて握力が落ちるなんて事もありません。たとえ女性の細腕であってもです」

 

 

竹刀でも長時間振ってれば腕がパンパンになるんだから、普通に考えればそれより重い武器なんて長時間での探索になんて使えないよな。それに鎧だって重ければ腰や膝の負担になるし、歩くだけでも疲れていくもんな。

それを可能にするのがスキルって事か。

 

「スキルの効果はそれだけではありません。

武器系のスキルでは合う武器の使い方が理解できるようになり、ダメージ増加ボーナスが付くと言われています。

使い方の理解というのは、スキルレベル1で剣道初段相当に扱えるようになるみたいです。スキルの低いうちは武器での防御もままなりませんので注意してください」

 

つまり武器スキルだけだと体を動かしての回避には影響しないから、正面からの殴り合いの可能性が高いと。

そしてスキルが上がるとパリーなんかも上手くなるから被弾が減るという事かな?

 

「防具系のスキルの場合はダメージ減少ボーナスが付き、衝撃も和らぎます。

盾は上手く受ければダメージを無効化しますが、盾スキルを持っている場合は、さらに盾での受け流しで相手の態勢を崩す事が出来たり、盾での攻撃でダメージを与える事が出来るようになります」

 

スキルの無い重鎧よりスキルに合う軽鎧の方がダメージを減らせるって事だな。

うちのメンバーは防具スキル持ち居ないんだよなぁ。盾なら二人居るんだけど。

 

「次に防具の装備箇所についてですが、上半身・下半身・手・足・頭部、首の6ヵ所で、それぞれで一番高い防御力が適用されます。鎧下に胸当てローブと上半身に3つ重ねても、一番防御力の高い物しか反映されないという事ですね。

そして防具の防御力というのはバリアの硬さで、どこに攻撃を受けても変わりません。これはゲームなどでよくある仕様ですね。初めの内は高価で高防御力の物を1つ買うより、全部の装備箇所を買い揃えていく事を勧めます」

 

重ね着無効だけど一番外でなく一番防御力が高いのが有効なら、迷宮内に寒い階層とかがあるなら防寒具を羽織る事が可能って事だよな。

鎧の下に着込むと、階層を移動する時に鎧とかも脱いで着替えないといけなくなるし。

 

「この内手と頭部の2ヵ所は特殊で、アクセサリーとのトレードオフになります。手は防具ならグローブや籠手、アクセサリーなら指輪と腕輪。頭部は防具なら帽子や兜、アクセサリーならイヤーカフやメガネ等になり、同時に装備した場合は防具が優先されます。

手の場合は指輪を各指に1つずつで最大10個、腕輪を左右で2個付けられますし、頭部も複数のイヤーカフを付けれますから、装備の充実するベテランになるほど防具ではなくアクセサリーを身に付けていますね。

そして首はアクセサリー専用ヵ所で、ネックレスやスカーフ、マフラー等が装備として認識されます。鎧が首を覆っていても装備可能です」

 

後衛ならアクセサリーかな? 防御力アップのアクセサリーがあれば前衛でもアクセサリーの方が良いだろうけど……

そもそもがそんなに良いアクセサリーを入手出来るかもあるしな。俺のクラフトでどんな物が作れるかも不明だからな。教わったのは調合と錬金に、三校のFランク迷宮で取れる素材で作れる物で小母さんたちが覚えていたものだけだし。

 

 

「次は生産について。装備に関する事でもあるから、生産スキルが無くてもきちんと聞いておくように。

物を作るには材料と作り方が重要になります。材料は迷宮産か地球産か、作り方はスキルで作るか技術や機械で作るか。

迷宮産の鉄と地球産の鉄、物を作った際に耐久度などに差が現れます。科学調査では同じ成分なのになのです。

また地球産の鉄を使用して武器を作成する時にはスキルを使用した場合の方が、鍛造や鋳造で作った物より良い物が出来ます」

 

つまり『迷宮産の材料をスキルで加工する』>『地球産の材料をスキルで加工する』=『迷宮産の材料を地球の技術で加工する』>『地球産の材料を地球の技術で加工する』って事だよな? 2番目と3番目はどっちが上か判らないけど。

そういや迷宮産の材料で銃器や弓を作っても効かないのだろうか? 銃器はともかく弓と矢は作れそうだよな。でも投擲スキルは有っても射撃スキルって調べても出てこないんだよなぁ。

 

「そして重要なのが、地球上に存在しない素材はスキルでしか装備品の武具は作成できない。という事です。

形だけは同じ物が作れても、スキルの対象として認識されないんですね。先程話した効果が出ないので鎧は重く、武器も思ったように振れないと。

まぁ装備品でなければ……インテリアなどは機械で作られていますけどね」

 

鉄は機械を使用して大量に剣を作れるけど、ミスリルでは模造品にしかならないという事か。剣の形をした何かで力任せに振るう事は出来ても、魔物を倒すには使えないと。

そもそもが硬さと魔物に対する攻撃力防御力が比例するわけじゃないしな。

 

 

「良い迷宮素材になるほど希少になります。例えばドランゴンを倒した場合、丸ごと素材にできれば皮から皮鎧が沢山作れる作れたでしょうし、骨から剣や槍もたくさん作れたでしょう。しかし残念ながら現実として、ドロップ品として残るのは鱗に牙や爪などが数点です。

ですので、少ない材料で良い物を作れるかが生産者の腕の見せ所になるわけです」

 

某狩りゲーでは装備作るのにマラソンするしな。

あれはある意味現実的だったことか……。リアルでも狩りマラソンすることになるのか? いや、普通に売っている物を買えば良いんだよな。

 

「小さくて高防御力。そういう意味でいえばビキニアーマーなんかはある意味理にかなっているわけです。

私も迷宮に入る時は装備しています。鎧のスキルが無くても問題無いくらいの重さしかありませんし、便利ですよ」

 

まさかのビキニアーマー愛用者!?

高坂先生のビキニアーマー姿……もちろん赤色ですよね!!

 

「もちろんその上に服を着ていますけどね」

 

お、おぅ……ここで重ね着の正しい使い方が来るとは……

普通に考えればそうだよなぁ。ビキニアーマーならその上に服を着ても問題無くて、お腹や太股を出したままにする必要もないんだもんな。

 

そして落ち込む男子の多さと冷ややかな女子の視線の多さよ。

俺も両側と斜め前から冷たい視線を受けてますけどね。ハハハッ……

 

 

「はい。生産と装備品の基礎知識はこのくらいになります。生産スキルの使用方法や作成物については授業で触れません。

各生産については生産技能を持っている先生が持ち回りで、15時から1階の特別教室で教えてくださいます。

メニューの特別教室使用予定に、何時どの生産の先生なのか載っていますので、必要な人・興味のある人は利用してください」

 

やっぱり授業ではやらないのか。

全員が生産できるわけじゃないし、生産スキル毎にやり方も違うもんな。

 

毎日だとポイントが稼げなくなりそうだし、汎用性の高い錬金の時にはなるべく利用して、他は数回利用してみる感じかな?

 

「明日からは基本実地での自習になります。GW明けから2階層での授業になりますので、それまでは1階層で活動してください。

ポイントを稼ぐのに集中しても、スキルを成長させるのに費やしても良し。

探索者は全てが自己責任ですからね、その為に今から考えて活動してください。困った事が有れば相談にはのりますが、決めるのはあなた方自身ですからね」

 

要はGW明けには2階層に行くから、それまでに最低限の装備とスキルに慣れておけって事だよな。

午後の授業時間に迷宮に行けるのなら、生産の特別教室と両立出来そうか。

 

 

 

授業の最後の質問タイム。

今日の授業で1つ聞いておきたい事が有ったんだ。

 

「マントは何処の装備枠なのでしょうか?」

 

場所的に上半身装備? でもマントに防御力ってあるのか?

他の装備に負けるなら付けるだけ無駄なんだよな。でも実際にはマントを付けている人は多いんだ。

かといって首のアクセサリー枠だとしたら、クランの小父さん小母さんたちがネックレスとマントの両方をしている意味が分からない。

 

「そうですね、マントは特殊枠でしょうか。首や胸元で留めるタイプや、鎧に付けるタイプがありますからね。

詳しくは2年生の授業でとなりますから、今は装備として使う必要は無いとだけ覚えていてください」

 

1年生の内は装備としては不要で、2年生になったら教えてくれると。

Eランク迷宮では必要、もしくは有った方が良いって事なのか? そして装備としてってことは他の事では使うのかな??

 

 

 

 

 



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閑話 真田美咲①

もうGWも終わり、三校に入学してから一月が過ぎるのですね。

やっと雪兎様に会う事が出来るのですね。たった5日会えなかっただけですのに、こんなふうに感じてしまうなんて思ってもいませんでした。

 

初めてお会いしたのは入学の日。

知り合いは同じ中学から進学した村上さんだけ。殆どの人が一校を受験しましたからね。

 

……

…………

……

 

早めに知り合いを増やしかったわたくしたちは、我先にとステータスカードを取る為に教室を出て行くクラスメートを観察していました。

知り合いを増やしたいとは言っても見定めは大事。自慢ではありませんが顔もスタイルもかなりの物だと自負しておりますので、下心のみで近づいてくる殿方はお断りです。

 

村上さんが居なければ女性グループでも良かったのですけれどね。

背が低く気弱な性格ですので、この大人数のクラスの中に入っていけなかったのは判りますけど、同じ中学出身だからと言ってそれだけで寄って来られましてもねぇ。

村上さんと一緒に居るとカップルだと思われてしまうかもしれません。それはわたくしも勘弁ですので、どうにかしないといけません。わたくしは頼りがいのある殿方が好みですし、村上さんは背の高い女性は苦手。お互い恋愛対象外ですからね。

 

 

そんな教室で目に付いたのは目的地を調べている方々でした。

その中でも男女混合グループがあり、更に数名の女子を加えてわたくしたちの居る方へやって来ました。

男女混合グループで今日あったばかりの人も加わっているようですので、わたくしたちも混ぜて貰えるかもしれません。

 

背の高い殿方が先頭で行動していますが、このグループの中心は後から来る殿方でしょうか。

わたくしと同じくらいの身長で、赤みがかった髪色に薄い青の瞳。今どきダブルやクォーターは珍しくありませんが、その容姿に魅かれてしまいました。わたくしは面食いではないと思っていたのですけど……

 

話しかけて一緒に行動させて欲しいとお願いすると快諾して頂け、それから一緒に行動を一緒する間にどんどん魅かれていきました。

 

一緒に行動している限りでは雪兎様に懸想しているのは明日香さん。涼子さんやひかりさんは家族のような感じでしょうか? 聞くと親が同じクランで、生まれた時から一緒にいる時間が多かったらしいですし。

紅葉さん、雛子さん、恵さんは知り合ったばかりで、まだそのような感情は無いようです。

 

わたくしは雪兎様だけを様付けで呼んでいたのでバレバレだったみたいです。

 

そして明日香さんと相談の結果、翌日からは二人で雪兎さんを挟んで行動する事になりました。

明日香さんは多夫多妻の家で育ったからか、多妻に理解があるので助かります。

 

……

…………

……

 

雪兎様の事を思うと手が下着の中に伸びてしまいますが、今は我慢です。お楽しみは夕食の後ですから。

 

 

 

透明化スキルがⅢに育って、厚くなければ壁を抜けれるようになったんですよ。

透明化のスキルを発動して裸で男子寮の雪兎様の部屋に……って想像するだけで、濡れてきちゃうんです。

 

 

授業でダンジョンズハイの話の時や先生のビキニアーマーの話の時に、わたくしたちの胸をこっそり見てましたものね。興味は持っていただけているはず。

自慢の体を見て欲しいのです、はしたないわたくしを見て欲しいのです……

 

 

 

 

あぁ、手が止まらない……

 

 

 

 

あぁっ……はやく3人でパーティ棟の家を借りて一つにつながりたいの……

 

 

 




えせお嬢様、変態風味


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第15話 暫定パーティ

23XX年5月6日 日本時間14:00

 

「――というわけで、来週からは2階層に進む事になりますからパーティ登録をして貰います。パーティを組んだら事務課に届け出てくださいね。

おさらいになりますが、パーティは最大6名。ユニオンは最大4パーティですから、考えて組むように。

もちろん自信のある人はソロでも構いません。全て事故責任ですからね」

 

先生の話に教室内がざわつく。

遂にと言うか漸くと言うか、来週から2階層に進む事になるからだ。

そしてその為にパーティを組む必要があるから、入学してからの一ヶ月の間で組む相手が見つかってない人は心穏やかでないだろう。

 

「Fランク迷宮の2階層は洞窟型で魔物はゴブリンです。徘徊していて遭遇したら襲ってきますからね。

そして洞窟型なので、300人近い人数を同時に授業で連れていけません。パーティ単位で数組ずつの授業になりますので、自分たちのパーティが何階層の授業になるかはメニューから確認するように」

 

ゴブリン。ゲームなどでもお馴染みの有名な魔物だ。魔物の中では弱い部類らしいけど、探索者になるための篩の1つらしい。

ちなみに3階層はゾンビで4階層はスケルトン、そして5階層はホムンクルスと人型のオンパレードだ。大兎は殺せても人型の魔物を倒すのに心や体が拒絶する人もいるらしく、毎年何人かはこれで脱落していくと……

この一ヶ月で既に10人以上が転校していったし、脱落者が少ない事を祈るよ。

 

「2階層での授業が終わったパーティは、授業時間外であれば3階層以降に進んでも構いません。全員が2階層の授業が終わったら、授業時間でも好きに探索できるようになります。

そして5階層のボスを倒して転移陣を使用できるようになったパーティは、6階層で罠の授業を受けて貰います。

この罠の授業が進級条件の1つになりますから、遅くても2月までには5階層をクリアするようにね」

 

全員が2階層の授業を受けるまでは授業時間内は2階層の探索は不可と。授業を受けるパーティがゴブリンに遭遇しなくなってしまう可能性があるから仕方ないのか。

階層のタイプと魔物の情報は調べてあるし、無理せず油断せず進めて行けば大丈夫なはず。

 

「そうそう、パーティはあくまで暫定と考えておいた方が良いですよ。

この先の戦闘に耐えれずに転校していく人もいるし、ダンジョンハイテンションが衝動型の人は活動制限が付いてしまいますからね。

ですから固定を作るのはキャンプ授業の終わった1学期末以降になるでしょう。それまでは色んな人とパーティを組んでみてくださいね」

 

 

 

23XX年5月6日 日本時間14:30

 

「じゃあ、早速パーティ登録に行くかっ」

 

授業が終わるのと同時に信也がやって来た。

早めに登録しておくことにみんな賛成だったので、教室を出て迷宮へと向かう。

 

「でもアタシたち10人だよ、どうするの」

「暫定で授業受けるだけだし、探索する時はユニオン組めばいいから5:5(ゴー、ゴー)で登録すれば良いんじゃね?」

 

移動しながらどうパーティを組むかの話になる。

10人だからどうやっても最低でも2組にはなるんだよね。

 

「こっちはユーがリーダー、向こうは美咲がリーダー」

「暫定だしね」

「どうせユニオンで一緒に行動するんだしー、それで良いんじゃないかなー?」

 

ひかりが俺と美咲がリーダーと言うと、雛子と恵のポニテコンビが頷き、他のメンバーから否は出なかった。

 

俺は採取とかで別行動も多くなると思うから他の人がリーダーでと言ってみたが、2階層の授業は一緒に受けるから問題ないと言われてしまった。

 

それにゲームとは違って1パーティで探索する必要もなく、4パーティまでならユニオンを組めるからガチガチ編成にする必要もないからという事らしい。

パーティの影響は全体魔法の範囲くらいかな。攻撃系の魔法はユニオンを組んでいればフレンドリーファイアを食らわないし、明日香の聖魔法の回復は単体と範囲内の継続回復だ。健一の全体付与はパーティ単位だから、アイツが一番大変かもしれない。

あぁ、俺の採取系スキルの影響もあったか……。まぁそんなに気にする事じゃないか。

 

 

 

迷宮に入りモニュメントに触れて「パーティ」と念じると目の前にスクリーンが現れた。ガチャと同じような謎スクリーンだが、そのスクリーンには『編成可能なメンバーが存在しません』と表示されている。

そしてモニュメントから手を離すとスクリーンが消える。

 

どうやら迷宮の機能はモニュメントに触れていないと使用出来ないようだ。

 

「俺一人だけ触れていてもパーティを組めないみたいだから、みんな一緒に触れて貰えるかな」

 

俺の言葉でみんながモニュメントに触れる。

10人で囲んでいるのを傍から見たらどんな感じなんだろうか。一般人からだと変な宗教のように見えたりしないよな?

 

みんなが触れた状態で再度念じると、スクリーン内の左側の列には俺の名前だけがあり、みんなの名前が右側の列に並んでいた。

どうやら触れた状態でってのは間違ってないようだ。並んだ名前の中から信也を選ぶと、名前が左の列に移動された。それから明日香、涼子、ひかりの名前も選ぶ。

 

「これで編成できたと思う」

「でしたらわたくしの方もやってみますわね――多分これで出来たと思うのですけど」

 

アイテムボックスからステータスカードを取り出している間に美咲の方も編成が終わったようだ。

みんなに預かっていたステータスカードを返して自分のカードをを確認すると、裏面にパーティ5人の名前が表示されていた。その中でも俺の名前だけが赤い。

 

「俺の名前が赤いんだけど、自分の名前だからかな? それとも編成をしたリーダーだからかな?」

「私のでもゆ~君の名前が赤いから、リーダーの名前だと思うよ~」

 

隣にいた明日香に聞くと、明日香のカードでも俺の名前が赤いらしい。どうやらリーダーの名前が色付きになるようだ。

 

「雪兎様、ユニオンも組んでみましょう」

 

美咲が俺の腕を取ってモニュメントの方に誘導する。

腕に当たる柔らかい感触に内心ドキドキしながらも、モニュメントに腕を伸ばす。

 

二人でモニュメントに触れて、頭でユニオンと念じる。

するとパーティの時と同じようにスクリーンが表示される。左に俺の名前があり右に美咲の名前が有るのも同じだ。美咲の名前を選ぶと左側に移動されたのを確認して手を離した。

 

「美咲の方のみんなの名前が表示されたね」

「名前の大きさが小さくなった」

「青色だね~」

 

授業では教わらなかったけどユニオンのメンバーもカードに表示されるようだ。

リーダーの美咲の名前が濃い青で、他のメンバーが薄い青色で表示されている。そして表示された名前が増えたからか、文字が小さくなっている。最大24人の名前が表示されるのだとしたら、手の平サイズのカードでは文字が小さくなっても仕方ないよな。

 

カードを確認していたら他のクラスメートがやって来た。

迷宮の初回授業の時に一緒した女子グループの8名に、クラスでも目立つ金髪女子4人の合わせて12人だ。

 

この金髪女子グループは欧州系の血が濃いミックスらしいけど、数代前から日本生まれの日本育ちなので他国語はさっぱりらしい。

そんな彼女らとは迷宮で採取していた時に、誰かが作った罠に引っかかっていたのを助けて親しくなったんだ。森の中で4人揃って逆さ吊りになっていた時は、何かの修行かと思ってしまったよ。

 

罠を作った方も森の奥なら人が来ないと思ってやったんだろうけどさ、土曜日でなければ命の危険だったし、土曜日でもそのままだったら夜中に裸で放り出されたあげく、ダンジョンハイテンションが発症していた可能性があるんだよ。

俺も他人事じゃないから、作った後には壊すか罠が有ると分かりやすくして欲しいところだ。

 

 

で、話を聞くとこの12人で暫定2パーティを作るようだ。空きを作るとうざい男子が寄ってくるから、3パーティでなく2つにしてしまうとの事。

女子の多い混合グループを組んだ俺に言われたくないだろうけど、一ヶ月も経ったんだし少し落ち着いて欲しいな。

 

迷宮を出て事務課にパーティの届けを出しに行く。

その途中でクラスメートたちとすれ違う。その中に仲良くなった人が居れば、手を上げて挨拶もする。

 

俺は瞳の色が青いからか、避けられがちで友人は多くなかった。これが女子だったら人気なるんだからやってられない。

この学校でも目が合うと避けられる方が多いけど、そんな俺にだって男友達は少しは出来たんだよね。

 

 

 

 



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第16話 Fランク迷宮2階層

23XX年5月10日 日本時間13:20

 

「いや~、やっと2階層に進めるんだな」

「ゴブリンだからって油断は無しよ?」

 

授業開始前の時間だけど俺たちは迷宮入り口の広間に居る。この場に居る4パーティ22人が2階授業の初回メンバーだ。

どうやらパーティ登録順だったようで、見知った顔ばかりだからちょっと安心感がある。

 

「ゆ、雪兎くん、本当にこれで行くの……?」

 

そう尋ねてくる健一は体操服の上にポーションが沢山付いたベストを着ている。

前面にゴム製の(視力検査のCのような)切れ目の有る環っかが縦に並んでいて、そこにポーションをセットしているんだ。

 

「そっちのパーティには回復魔法もアイテムボックスも無いんだから、美咲がダメージ食らったら詰むぞ?」

 

一応他のメンバーにもポーションは渡してあるけど、戦闘中に使う余裕が有るのは付与術の健一だからな。

とは言ってもFランク迷宮の2階ならそんなに強くないだろうし、今日は4パーティ合同授業だからそうそう使うような事にはならないと思うけど。

 

「両手が塞がっていない人なら便利そうですよね」

「バッグに入れていたら戦闘中に使えないしね、ポーションホルダーは必要かも」

 

女子パーティのメンバーも健一の装備に興味があるようだ。

一般的なポーションホルダーはベルト型で2~4本セット出来るくらいなので、今の健一のように10本は無理だ。

アイテムボックス持ちでも慣れていないとピンチの時に咄嗟に取り出して使えないだろうから、ポーションホルダーは有った方が良いと思う。俺も4本のベルトタイプを装備しているけど、戦闘が終わればアイテムボックスから補充できるから、健一のように多くは無くても良いはずだ。こっちのパーティには回復できる明日香も居るし。

 

ちなみにこの装備は購買で買ったものだ。ゴムが手に入れば自分でも作れたと思うけど、残念ながらゴムが手に入らなかったんだよな。

流石に輪ゴムやそこらの品で使われているゴムからなんて、無理過ぎるから仕方が無い。

 

 

 

授業開始時間が近づくにつれて、広間を通り過ぎて行くクラスメートが増えていく。

そして高坂先生がやってくると、俺たちの方に歩いてくる。

 

「月見里君、パーティメンバーは揃ってますか?」

「はい、揃ってます」

 

先生の確認にきちんと答える。

手元の紙には全員の名前が書かれていると思うけど、確認するのはパーティリーダーだけのようだ。

 

「次、真田さん。パーティメンバーは揃ってますか?」

 

 

「はい、全パーティ揃っているようですので2階層に向かいます。先生の後についてくるように」

 

先生の後に続いて1階層の草原を歩いて行く。

目の前に先生がいるから無駄話も出来ず、何時の間にか2列になって歩いていたから、まるで行進しているようだった。

 

 

「あそこに見える岩が今週の2階層に続く階段になります」

 

15分ほど歩いて見えた平べったい岩を指さして先生が言った。

そこそこ大きな岩だったようで、岩の上部に穴があってそこに階段があった。

 

地上部に壁や建物が無いから、数世紀前の2DRPGゲームの下り階段みたいだ。

1階層は大兎だけの自然階層だからあんまり迷宮って感じはしなかったけど、この階段を見ると本当に迷宮なんだって思えるね。

 

「2階層ではパーティ単位で戦闘をして貰います。一回戦ったら先頭を行くパーティを交代ね。

今回は先生が後ろに居ますから挟撃は気にしなくても良いですが、先頭パーティでないからと言っ気は抜かないように」

 

先ずは俺たちのパーティからという事で、決めてあった順に階段を下りていく。

先頭は索敵スキルのあるひかりとタンクの信也。次に涼子と明日香で最後尾が俺だ。

戦闘になれば信也が一歩前に出て、受けている間に涼子とひかりが攻撃する。明日香と俺が周囲を警戒しながら回復したり、投擲したりする手筈になっている。

 

挟撃された場合は俺が足止めしつつ、涼子かひかりが下がってくると。

魔物が弱いうちはこれで良いだろうけど、魔物が強くなったらサブタンクがいないと厳しいんじゃないかな?

 

狭い場所だと簡単に入れ替わりも出来ないだろうし、ゲームとは違うのだよ、ゲームとは!

 

 

階段を下り終わると、情報通りに洞窟が続いている。

何故か壁には松明があり照らされているので、明かりを持つ必要は無い。酸欠になる事も無いようなので、迷宮の謎の一つとされているらしい。

 

緩やかなカーブとなっている洞窟を進んで行くと、身長1mちょっとの緑色の肌をした生物がいた。

皺だらけの醜い顔に毛のない頭、少し尖った耳とイメージ通りのゴブリンだ! 腰布一枚だけで他に何も身に着けていないのはFランク迷宮の2階層だからだろう。

 

そのゴブリンは俺たちに気付くと走り寄ってきて素手で殴りかかって来た。

 

信也が盾でゴブリンパンチを受け止めると、その横から涼子が首に向かって槍を突き出した。

その槍がゴブリンの首に突き刺さり、青色の血液が飛び散った。

 

「うへぇ」

 

その血を見た信也が情けない声を上げる。

迷宮の動画で見る事はあるけど、実際に目にするとね。思わず声を出した信也の気持ちがよく判るよ。

 

「虫の仲間?」

「蛸とかも青かったきがするよ~?」

 

その一方でひかりと明日香は暢気な会話をしていた。

そして涼子は気にもせずに追い打ちで口の中に槍先を突き込んでいた……

 

「はい、終わり。あっけなかったね」

 

うん。うちは女性陣の方が精神的強いようだ。

 

 

「はい、先頭交代。問題なさそうだけど、次は他の人も戦闘に参加するようにね」

 

どろっぷした魔石を拾うと先生から交代の声が掛かった。

一匹相手じゃ仕方ないけど、今回は信也と涼子しか戦闘に参加しなかったからね。

 

ちなみに腰に着けていた布も残ったけど、誰も拾う事は無かった。

 

 

 

 

 

 




バックアタックとか挟撃とか、リアルだとどうしようもないですよね。



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第17話

23XX年5月30日 日本時間21:00

 

2階層の授業が終わり、自由に2階層以降に行けるようになって3週間が過ぎた。

週に3日程パーティを組んでゴブリン相手に連携の確認をし、他の日は1階層で採集をしたりした。2階層に週3しか行かなかったのは、ゴブリンのドロップが不味くポイントが稼げないからだ。ソロなら魔石ドロップだけでも良いんだろうけど、パーティを組むと5分の1になってしまうからね。

 

そして今日3階層に行ってみたんだけど……

 

出てくる魔物は調べてあった通りにゾンビだった。

腐敗臭は酷いし、攻撃をしてもされても変な汁が飛び散る。物理的に倒すには頭を破壊しなきゃいけないから、短剣なんかでは厳しいと散々だった。浄化するにも明日香の聖魔法もまだゾンビを一撃で倒せるほど育ってはいない。

 

美咲のパーティは攻撃手段が斧に剣、忍術に風魔法なのでこっちより楽みたいだったけどね。

 

 

なので、これから3階層対策のアイテムを作る事にした。

先ずは臭い対策にマスク。頭部防具扱いになるらしいけど、現状誰も頭部防具なんて持ってないから問題はない。

市販のマスクに消臭剤から消臭成分を抽出して付与する。錬金術の先生から効果だけを他のアイテム移す方法を教えて貰ったからそれで行ける筈。

スキルが低いと迷宮産のには無理みたいだけど、今回はどちらも市販品だからね。

 

50枚入りのマスクと業務用強力消臭剤を机の上に置く。

消臭剤も購買で普通に売ってた。アイテムボックスも生活魔法も無い人は消臭剤で臭いを消さないと、臭いのついた武具を自分の部屋の置く事になるんだ。

 

「えっと、元の方にある効果を掴んで先の物全体に馴染ませるような感じで……?」

 

錬金スキルを発動すると消臭剤独特の臭いは無くなっていた。

あれも謎なんだよね。スプレーをシュっとした時は臭いがあるのに、すぐに他の臭いと一緒に消えちゃうんだもん。

 

それはさて置き、マスクを鑑定すると<不織布マスク(臭い遮断効果:30日)>と表示された。

30日の期限付きだけど成功したようだ。アイテムボックスに入れていたら期限減らずに済むのかな? どっちにしろアイテムボックスで保管するから、使う時にもう一回鑑定して見ればわかるか。

 

 

次は攻撃用アイテムだな。アンデッドに効果のある浄化水。

材料は水に薬草に塩。材料のランクが低いと効果も低いらしいけど、今ある手持ちの物――ガチャで出た蒸留水に微薬草と塩。微薬草はともかく蒸留水と塩は余りまくっているからね!

聖魔法で作った水、上のランクの薬草、祈祷した塩を使えば高位アンデッドにも効果的な物になるらしいけど、Fランク迷宮のアンデッドならこれを数個当てれば倒せるんじゃないかな?

 

「回復効果でアンデッドにダメージって、ゲームあるあるだよね~」

 

流石に薬草やHP回復ポーションでは意味ないらしいけどね。まぁHP回復ポーションはバリア点数を回復するだけで、傷とか治すわけじゃないからなー。

 

そういやHP回復ポーションって薬草と水が材料だから、それに塩を加えるだけなんだな……

 

その事に気づいてしまい、何とも言えない気持ちになってしまった。

 

 

そして出来上がったのは<低級浄化水+>。プラスが付いているのは蒸留水のおかげだろうか?

スキルで水系の薬品を作ると容器も自動で出来るのは良いよね。使った後も残らず消えるから、破片で怪我をする事も無いし。

 

これを投げつける時には俺の投擲スキルが役立つ。

とは言ってもアイテムだから追加ダメージは無く、コントロールが良くなるくらいなんだよな。

 

 

3階層のスケルトンにもこれは有効だとしても、涼子の槍じゃスケルトンは大変だよね。

ついでに装備も作っておこうか。みんなまだ上の装備を買えるほどポイントに余裕が有るわけじゃないしね。

 

「えっと、鉄に0.5%の炭素を混ぜて鋼にする。それに魔石の粉末を混ぜて魔力鋼にする……」

 

これも錬金の先生に教えて貰ったもので、ノートに書き留めてあった。

鉄塊はガチャで出たのがある。ガチャ産だけに99.999%の純度があるらしい。残りの0.001%は何なのかは鑑定でも不明だ。

炭素は木材を木炭にすれば良いんだよな? 魔石はガチャに使っているから無いんだよなぁ……。明日からは使わずにちょっと溜めて行こうか。

 

「0.5%って、重さじゃなくて容積の割合だよね? 先ずは鉄塊を立方体にする所からしないといけないのかぁ……」

 

なんて思ったけど、99.5%の鋼って念じて錬金したら出来ちゃいました。

いや~、やっぱ錬金って便利!

 

魔力鋼は後で作るとしても、鋼の武器を作ろうか。EランクやDランクの中盤までなら鋼で十分すぎるって言ってたしな。

でも、どんなのが良いか聞いてから作った方が良いか? スケルトン相手だと素槍より片鎌や十文字とかのが有効そうだし。

 

そうすると防具かな? ゾンビ液で服も汚れるし。いや、戦闘後に清浄はかけるんだけどね。

大兎の革でブーツと小手にベストは作ってある。ズボンは革製だと動き辛くなるから、どうするかなんだよね。鎧系スキル持ってないと防具は大変だ。

そういえば、小父さん小母さんたちはどうしているんだろう? 先生みたいにビキニアーマーを装備していたりするのだろうか……

 

 

あぁ……やってしまった……あの人のビキニアーマー姿を想像して、してしまうなんて……

 

と、とりあえず残っていた消臭スプレーを使っておこう。誰も来る予定は無いけど、一応ね?

 

 

 

 



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第18話 Fランク迷宮5階層

6月に入り俺たちは順調に成長を続けていた。

3階層のゾンビはみんな嫌がったので、早めに4階層に移動してスケルトン相手に戦闘訓練をしている。

 

スケルトンは棍棒か剣に盾を持っていて、今までのゴブリンやゾンビとは強さの桁が違った。それに2~4体で居るから集団戦闘の訓練にもなる。

問題は4階層までの移動時間と、必ず3階層のゾンビエリアを通らないといけないって事だった。

 

日曜日の内にひかりが4階層までの道を調べてくれているので、最短距離で移動できているのが救いか。

ひかり曰く『索敵と隠密マジパナイ!』らしい。ゾンビまでは1体で居る事が多いし、余裕で倒せるのだろうけど無茶はしないで欲しい。

 

 

そしてみんなのスキルが4~6まで成長したので、そろそろ5階層を見てみようかという事になった。

俺も浄化水を投げまくってるから、投擲スキルも6まで上がったしね。スケルトンも魔石の他にはたまに持っていた物を落とすだけだから、大赤字なんだけどね。まぁ、ポイントでスキルレベルを上げていると思えば……

 

 

 

5階層へ続く階段を下りていくと、そこは3~4階層と同じく迷宮型の階層だった。

 

「罠は6階層からって話だったけど、ここも迷宮型なんだ」

「訓練用に作った人工迷宮だから、魔物に合わせて階層を選んだんじゃないかな」

 

1階層の大兎は自然階層のノンアクティブを選択しただけとしても、2~5階層のは魔物ありきだと思うんだよな。

 

探索者としてやっていけない者を篩にかける為の魔物配置。

現に2~3階層で既に20人以上が脱落して転校していった。そして生産の先生に聞いた、例年一番脱落者が多いらしい5階層。

完全に人と同じ見た目のホムンクルスで、切れば赤い血も出るし内臓もある。高位の魔物には人と同じ姿をしているのも多いからなんだろうけど……

 

ちなみに毎年50人前後は1学期の内に転校していくらしい。1年の1学期なら普通の高校に転校しても間に合うからね。迷宮高校は主要3教科しかやらないし、しかも実業高校並みだから遅くなればなるほど普通科への転校は難しくなる。

入学式で校長先生も言ってたもんな。『無理だと思った者は早めに転校を考えなさい』って。

 

 

「この先に何かいる」

 

何度か角を曲がって進んだ先にある分かれ道で、先頭を歩いていたひかりが止まって言った。何かが索敵に引っかかったのだろう。

 

「俺らより先に来ているパーティなんてないだろうし、魔物だよな」

 

信也が盾と剣を構えなおして光の横まで進み出た。それを見て涼子も前へと出て行った。

後には美咲のパーティが居るから、今は前だけ見てても平気だろう。

 

「初めての魔物だから出し惜しみは無くいくぜ」

 

信也は角に出て大楯のアーツ<範囲挑発>を使用すると、更に前に出て行った。その場所だと攻撃しづらくなってしまうからな。これも連携訓練の成果だ。

 

「うへぇ」

 

その信也が情けない声を上げた。

何事かと急いで角に行って魔物の姿を確認したら――

 

1.素っ裸の婆、鉈を持っている。

2.腰巻だけのおばさん、包丁を持っている。

3.同じく腰巻だけの青年の女性、両手槍持ち。

4.貫頭衣、二つ折りの布の穴から頭を出している所謂奴隷着の幼女。畳針みたいな長い針持ち。

 

四世帯家族ですか? ってそうじゃない。

一番激しく動いて信也に襲い掛かっているのは婆で、動きに合わせて皺だらけの萎びた乳房が揺れるのが目に入ってしまう。これが信也の情けない声の原因だろう。

おばさんのは少し垂れ気味だがその大きさが母性を感じさせるし、青年女性のは張りが有って形も良い。これは男だったら目が奪われてしまうかも……強敵だなっ!

 

おばさんにはひかりが、青年女性には涼子が攻撃を仕掛けていった。

小刀VS包丁、槍VS槍だから力量差がそのまま出るだろう、これは援護すべきか幼女を牽制すべきか……

 

と思ったが、挑発が効いているみたいで攻撃は全て信也に向かっていった。

横から槍で突かれようが、小刀で切られようが狂ったように信也を襲い続けている女性たち。

 

ある意味修羅場ですね!!

 

明日香が信也の回復を始めたので、俺は婆に向かって苦無を投げる。ホムンクルスはアンデッドじゃないから、紅葉用のと一緒に作った自分用の苦無を投げる。

 

それがたまたま鉈を振りかぶってジャンプした婆の喉に当たり、後ろに倒れていった。

おぇぇっ……倒れていく婆の股座がばっちり見えてしまった……。せ、せめて青年女性のだったらよかったのにっ。

 

 

「後っ!」

 

小刀で攻撃していたひかりが突然振り向いて大声で叫ぶ。

 

「こっちで受けます!」

 

美咲が大声で答えると、来た方に戻って行った。

角だから後ろ戦闘は見えない。見えるのは恵が魔法で攻撃しているのと、紅葉が忍術を使っている所だけだ。

 

 

「キャーッ」

 

誰かの叫び声で後振り向くと、吹き飛ばされたゲロ塗れの健一が壁にぶち当たる姿が目に入った。

 

「明日香はこのままこっちの回復をっ」

 

前の様子を見つつ後下がる。健一は壁に当たった衝撃でHP回復ポーションの瓶が割れて、その中身が掛かっているからバリアは回復してるだろう。

なら危険なのは回復できない美咲と、一緒に前に出ている雛子の二人だ。

 

恵と紅葉の後ろ側に移動すると来た方の通路が見える。

そこでは美咲が2体の男性型ホムンクルスの攻撃を受けている姿があり、その横で雛子が1対1で老人男性と伐り合っている。

 

恵と紅葉の邪魔にならない位置取りをして、前の二人の背中にHP回復ポーションを投げる。

 

「あぁ、もう。雛っ、そいつの動きを止めるから早く倒しちゃって――<金縛りの術!>」

「ありがと! 食らいなさい<十文字斬り!>」

 

雛子がやり合っていた魔物を倒して美咲の援護に入ると、そこからは攻勢になった。

美咲も攻撃を受けながら手斧で反撃していたからな。

 

そして恵の魔法で1体倒すと、美咲が残った1体の首を撥ねて戦闘が終わった。

 

 

 

 

 




戦闘シーンがあっさりとしてますが、ジャンル日常なのでお察しください。


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第19話 リタイア

恵と紅葉にMP回復ポーションを渡して、ドロップ品を拾っていた美咲と雛子にHP回復ポーションをかけた。

 

「ひゃん。雪兎様、ビックリしてしまいましたわ」

「雪兎くん、運動着の胸にかけても透けて見えやしないよ?」

 

かけようとした瞬間に動かれて、たまたま胸にかかっただけだからね? 狙って胸にかけたわけじゃないからね?

それにほら、ポーションはすぐに乾くからねっ!

 

雛子の視線から逃れるように顔をそむけると、少し前の壁際に吐瀉物があるのに気が付いた。

そうだ、健一はっ!?

 

振り向くと、倒れたまま自分の体を抱きしめ震えている健一と、それを心配そうに見ているみんなの姿があった。

 

「お~い、健一。大丈夫か~?」

 

信也の声にも健一は震えるだけだ。

 

「今日はここまででかな?」

「元々様子見だったしねー」

 

健一の方に寄っていくと、紅葉と恵が小さな声で話しているのが聞こえた。

同じパーティなのに結構ドライなのね。って、入学からの流れで暫定パーティ組んでるだけで、そんなに親しいわけじゃないからか。

健一も内気なうえに背の高い女性は怖いからって、自分から話しかけたりして無かったからなぁ……。その怖がりがなかったらショタ枠で人気になっていただろうにな。

 

健一の側に着いて生活魔法の<清浄>で吐瀉物の付いた運動着を奇麗にしてあげる。

 

「今日はもう帰ろうな」

 

手を貸して立ち上がらせるも、脚がプルプル震えていて一人で歩けそうもない。

そして俺や信也では背が違い過ぎるので肩を貸す事も出来ない。

 

「信也、健一を負ぶってくれ。ひかりと美咲が先頭で、次に紅葉と恵。魔物が居たら遠距離攻撃をしてくれ。

最後尾に涼子と雛子、念の為に後ろに気を配ってくれ」

 

信也の盾と剣を預かってアイテムボックスに入れて、使ったポーションと浄化水を幾つか取り出す。

帰りの4~3階層はアンデッドだからな。最短ルートを通ればそんなに多くは要らないだろう。

 

信也が健一を負ぶったのを見て、ひかりと美咲が4階層への会談に向かって足早で歩き出す。

5階層に入ってそんなに距離を歩いていなかったから、幸いホムンクルスに会う事は無く4階層に戻れた。

 

4階層で一度戦闘になったけど他のクラスメートのパーティが居た事も有って、以降は戦う事無く外に出る事が出来た。

 

 

 

 

「なぁ、あいつ大丈夫かな?」

 

寮の健一の部屋まで運んで、自分たちの部屋に戻る時に信也が話しかけて来た。

 

「安全な場所で休んで落ち着いてくれれば良いんだけど、最悪はリタイアだろうなぁ……」

 

二か月以上一緒に行動してきた仲間だしリタイアして欲しくは無いんだけど、元々が探索者向きの性格じゃないからな。

むしろ迷宮高校に進学してきたのが不思議なくらいだったし。

 

 

何時もの夕食の時間、食堂に健一は現れなかった。そして翌日の朝食にも……

 

「村上さんは大丈夫なのでしょうか?」

 

昼食後にお茶を飲んで寛いでいたら、美咲が独り言のようにボソッと発した。

 

「これで3食抜きになるのかな? 部屋にお菓子とか有ったとしても厳しいよね」

「会うのが気まずくて時間ずらしてるだけなら良いんだけどねー」

「明日には元に戻っていると良いね」

 

美咲パーティの残りの3人も会話に参加していく。

たしかに時間をずらしていなければ3食抜きになるのか。部屋の小さい冷蔵庫に食事なりそうな物を入れているとも思えないしな。

 

「それより今週は?」

「ちょ、それよりって……。5階層でも戦えるけど、連戦になると厳しいよな?」

 

ひかりの雑な話題転換に、信也が昨日の戦闘から5階層での連戦は厳しそうだと言う。

 

「もいでやりたくなったわね」

「だからおっぱいを刺しまくってたんだね~」

「違うわよ、心臓を狙っていただけなんだからね!?」

 

防具がなければ心臓狙いは間違ってないのかもしれないけど、本当にそれだけだろうか?

 

「女型は美咲たちに任せた方が良い?」

「男型は逆に下がぶらぶらのがいたよ?」

「あー、思わずあそこに魔法うっちゃったよー」

 

あそこに風魔法だと!? 俺が行った時に1体腹から下が血まみれのが居たが、まさか恵にちょん切られていたとは……

思わず股間を押さえてしまったよ。

 

「雪兎様のならともかく、あんな物を見せられても困りますわ」

「雪兎くんのなら良いんだ?」

「もちろんですわっ!」「もちろんだよ~!!」

 

左右から同時に声が上がった。そして両頬に手を当てたり、身じろいだりして妄想の世界に旅立ってしまった。

 

「いやー、愛されてるねぇ」

「色ボケともいう」

「で、ユキは二人の事はどう思ってるのよ」

 

「う~ん。泊りの授業が終わって、破壊衝動でなかったら……かな?」

 

自分と相手のタイプが一致してるにこした事は無いけど、限定となってしまう破壊衝動タイプだと一緒にパーティは組めないだろうしな。

 

「ユキは女子の間で人気だから、泊り授業の後大変かもね?」

「パーティ組めなくてもユニオン希望くるだろうからねー」

「金髪ちゃんたちは間違いなく来るよね」

 

金髪ちゃんたちって……。紅葉はあの子らと交流ないから名前を知らないのかな?

って、俺がそんなに人気有るの? まともに話すのってこのメンバーと、初めの迷宮授業で一緒した女子グループの一部、あとはそのミックス組の4人だけなんだけどな……?

いやこのクラス男子の中だと女子の知り合いが多い方になるのか。女子とまともに交流できている男子が少なすぎるんだよ。

 

 

 

そして夕食にも健一が来なかったので部屋を訪ねてみると、部屋のドアに付けられている筈のネームプレートが外されていた……

 

 

 

 



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第20話

23XX年6月21日(月) 日本時間08:15

 

「――クラス名簿からも名前が消えているね」

 

端末からクラス名簿に健一の名前が無い事が確認出来てしまった。

 

「命がけの仕事なんだし、仕方ないのかな?」

「辞めていったのは彼だだけじゃないしねー」

 

たしかに恵たちの言う通りだ。クラス名簿に載っている人数は260人ちょいで、1割以上が脱落しているんだ。

健一だけじゃないんだ。だけどね……土曜日の夕方に帰ってきて、夕飯に顔を出さなかった時に部屋を訪ねてみれば結果は変わったのだろうか?

 

そんな後悔に近い考えが頭に過った所に紅葉の声が聞こえて来た。

 

「昨日私たち話合ったんだけど、それで健一君がダメになったらこっちのパーティを解散しようかって話になったんだ」

 

その言葉にうつむき気味だった顔を上げて、紅葉の顔を見た。

 

「誰かが破壊衝動の可能性もあるじゃないですか。そうするとさらにメンバー減ってしまいますよね?」

「他のパーティでも空き出来てるところが有るから、臨時的に参加して交流しておこうかってね」

「このまま9人だと5階層攻略は厳しいだろうしねー」

「色んな人と組むのも勉強になると思うから、それに――」

 

美咲パーティの4人が話すのを聞いていく。

下手の募集するよりは自分たちが別れて募集している所に参加して、泊り授業の後のパーティ作成に備えたいというみたいだ。

たしかに2か月半以上固まっていてクラスメートとの交流は少ないから、良い機会なのかもしれないな。

 

「期末試験までの2週間、そこから泊り授業までの数日だけどね」

 

紅葉がそう言って話を締めた。

 

 

 

23XX年6月21日 日本時間13:00

 

先生から健一のステータスカードを受け取った美咲は、他のメンバーを連れて迷宮に行きパーティを解散してきたらしい。

俺のステータスカードからもユニオンメンバーの名前が消えていたので、その事が確認できた。

 

教室に戻って来た紅葉、雛子、恵の3人は掲示板の前で話をしている。

何時の間にか教室の掲示板に、パーティ参加者募集なんかの紙が貼られるようになっていたんだよね。その募集の紙を見て、どこに参加するか考えているんだろう。

 

「俺たちはどうするか、4階層でスケか?」

「それかバラけて個人訓練かよね」

「先週生産の先生に聞いたんだけど、スキルは迷宮内で特訓すれば成長し易いらしい」

 

俺たちのパーティはこれからどうするかという話になったんだけど、生産の先生に聞いた事を話した。

外でスキルを使うより中で使った方がスキルが成長しやすいという事だ。

その話を聞いてから生産は1階層でやるようにした。そのおかげか入学前にクラフトⅡになって、それから上がっていなかったのが数日でⅢにあがったんだ。もっとその話を聞きたかったよ。

 

「特訓か。頑強に生命力強化ってどうすりゃ良いんだ?」

「ひたすらゴブリンにボコられる」

「HP回復ポーションを大量に持ち込めば、両方鍛えられそうね」

 

信也の疑問にひかりが恐ろしい回答をして、涼子が納得と言った感じで頷いた。

確かに殴られ続ける事で頑強が上がって、短時間にダメージと回復を繰り返せば生命力も上がりそうだけどさっ!

 

「私は敏捷と器用なんだけど……」

「反復横跳びをしながら刺繍」

「それ無理よね!?」

「同時にやる必要は無いんじゃないかな~?」

 

何故同時やらせようとするのか? それに反復横跳びや刺繍じゃなくても、横ステップしながら槍で木を突くとかでも良いんじゃないかな?

 

「明日香はゆーの前で裸になれば良い」

「ん~。ゆ~君だけなら良いけど、他の男子にも見られそうだし~」

「それ魅力なの? 魅了とか誘惑系じゃないの?」

 

明日香の裸か。みんなとは小さい頃一緒にお風呂に入っていたけど、今とは全然違ったんだよな……特に胸が成長しまくったしな。

涼子の言うように誘惑だろう、魅力は上がらないと思う。でも、男を知った女は魅力や色気が増すって言うしな……

いやいやいや。迷宮の中でなんてありえないだろう。

 

「明日香さん抜け駆けはいけませんよ。雪兎様、お望みでしたらわたくしも一緒にお願い致しますわ」

「本当に美咲はブレないわねぇ」

「愛故に。ですわ」

 

運動着に着替えて戻ってきた美咲の言葉に涼子が呆れる。常識枠と言うかツッコみ役だからな、頑張れ。

 

「わたくしは雪兎様のパーティに加えて頂きたかったのですが、しばらくは一人で修行する事にしましたわ」

「無茶はしないでくれよ?」

「はい。一人でしたら透明化を使って逃げられますから、心配無用ですわ」

 

美咲は盾も攻撃もあるし、透明化を使えば低ランクの魔物には見つからないだろうから、ソロでも問題なさそうだ。

 

「ゆ~君はどうするの?」

「俺は生産しながら……ガチャでもやってみようかなと。もしかしたら迷宮内でガチャする事が成長する条件かもしれないしね」

 

そろそろガチャも成長して欲しい。

いや、低ランク素材ガチャも凄く役には立っているんだよ。ここのFランク迷宮じゃ手に入らない素材とかも出るからね。

 

「うんじゃ、俺らはしばらくバラけで自己鍛錬に励むって事で良いか?」

 

信也の確認に誰も否を唱えなかったので、泊り授業までは各自で行動する事になった。

 

 

 

 

 

 

 



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第21話 スキル成長

さて、しばらくは1階層で大兎狩りだな。2階層のゴブリンでも良いのだろうけど、投擲だよりで時間かかるし大赤字になるからな。

大兎の肉は安いけど売れるし、皮も錬金で大きな皮にすれば普通に売るより高値で買って貰えるから、ポイント的にも美味しい。

俺だけでなく1年生の金策のメインは1階層のままだ。まぁ2~5階層のドロップが不味いという話でもある。4階層と5階層では持っている装備が残る事もあるけど、所詮Fランク迷宮の低階層装備なので需要が無く買取価格は安いからなぁ……

 

 

大兎を狩りつつ、夕方前に間食で大兎の肉を串焼きにして食べるようになった。狩りの合間には採取した微薬草や微魔草と湖の水でポーションを作ったりもしている。これもクラフトスキルの成長の為だ。

 

そして魔石ポイントを貯めてガチャも行う。

使わない物が増えていくけど、クラフトスキルがⅢに成長したからアイテムボックスの容量に余裕がある。15x15x15って小さなビル並みの大きさがあるよね。

 

 

そして期末試験直前に生活魔法とガチャのスキルがⅡへと成長した。期末試験の勉強は良いのかって? たった3教科で内容もまだ難しくなってないから、夜に復習していれば問題無いと思う。

これで俺のスキルはガチャⅡ、クラフトⅢ、投擲Ⅳ、生活魔法Ⅱとなったわけだ。

 

それはさて置き、成長して追加されたガチャがこれだ。

 

1回限定使い魔ガチャ! 

・希少な使い魔が入手できるチャンス! 

・魔石ポイント1000を消費して1回実行する事が出来ます

※このガチャは1回限定で、使用後は別のガチャに変更されます。

 

所有魔石ポイント:30

 

Fランク迷宮の1~5階層の魔石一個で2ポイントだから500個か……

泊り授業のある金曜までには貯まるかな? 泊り授業の間にも狩れるだろうし、遅くても泊り授業が終わるまでには貯まるだろう。

 

 

 

23XX年7月5日(月) 日本時間08:20

 

「それで使い魔の情報を調べてるって事なのね。テスト前に余裕よね」

「普段の授業を真面目に聞いていれば、そんなに焦る事は無いだろ?」

 

HR前の時間で端末を使って調べていたら、涼子に呆れられた。そんな涼子は教科書片手に悪あがき中だ。

普通科のように10以上あるとかならともかく、迷宮高校の3教科だし内容も易しいはずだぞ?

 

真面目に聞いていなかった人は知らん。

悪あがき組は信也、涼子、紅葉の3人。紅葉は迷宮の事だと良く調べ物をしているから、勉強が苦手なのはちょっと意外だったんだよな。

中間でも同じ目に合っていたというのに、学習しない奴らめ。

 

 

そんな3人を横目に使い魔の情報を見る。これもスキルとかと同じく、探索者協会のサイトデータを連携して校内の端末から見れるようになっているものだ。

 

・使い魔には動物型と魔物型の2タイプ

・特殊の方法での入手の他、使役スキルによる契約で使い魔にする事が可能(すべての生物、魔物を使い魔にする事が可能だと考えられている)

・使い魔は契約者と結びつく精霊的存在となる(地球上の動物でも)ので、食事は不要となる

・契約後には普段は精霊界と呼ばれる場所で眠っており、契約者の召喚にてこの世界に顕現する

・使い魔は契約者と生死を共にする(契約者の死亡時に使い魔も死ぬ。使い魔が死亡した場合は精霊界で傷が癒されるまで眠り続ける)

・現在日本の法律では人間を使い魔にする事は重罪である

・男性には女型魔物(悪魔、吸血鬼等)、女性には動物型(犬、猫等)が人気である

 

使役スキル怖っ! 人間まで使い魔にできちゃうとかないわぁ……

動物は使い魔にしても迷宮内では役に立たないだろうからペット枠かな、餌などの世話も不要だし愛でるだけなら最高か?

 

ガチャの説明には希少なってあるから、高ランク迷宮に居るような魔物を期待しても良いんだよね?

ドラゴンや幻獣系って事もあり得るんだろ? まだまだポイント足りないけど、期待が高まってきた。

 

 

「皆さんおはようございます」

 

まだ見ぬ使い魔に思いを馳せていたら先生の挨拶があった。HRの時間になったんだな。

 

「知っての通り、今日の午前は期末試験になります。中間試験とは違い、40点以下の場合は夏休みに補習と追試がありますから頑張るように。今日のHRは以上になります」

 

短っ! たった二言でHRを終わりにしちゃったよ。

その方が最後の悪あがき組には良いんだろうけどさ。赤点は補修有りだから大変だ。

 

 

5分前になると先生が3人やってくる。1年生の授業をしている先生方だ。

試験問題と解答用紙が裏返しで配られていく。250以上の席に配るのだから大変だよな。

 

「中間試験と同じく解答時間は45分になります。質問がある場合は手を上げるように。では始め」

 

試験が始まると担当教科の先生が教室の前の壁に立って、他の二人は教室の中を巡回している。これは中間試験の時と一緒だな。

歩いている先生に気が散るけど、広い教室だとこうしないと見張りにならないんだろうな。

 

 

試験開始から30分もすれば一通り解き終わる。この時点で1割は空欄なんだけどね。

解らないものに時間を割き過ぎて、残りを解くのに時間が足りないとかするのは間抜けすぎるから、確実に分かるのを先にやっておくのだ。

で、もう一度頭から見直しと飛ばした問題に再度取り掛かる。

 

そして最後空欄を適当に埋める。特に選択問題の場合は書いておけば当たる可能性があるから、埋めない手はない。

 

これで8割前後は当たるだろうし、配分が偏ったとしても70点以上にはなるだろうし問題ないな。

 

 

1時間目の国語が終わり、2時間目の数学、3時間目の英語と進んで行く。

そして――

 

 

「「「終わったぁぁぁ!!」」」

 

終了時間になり先生が解答用紙は回収し始めると、教室のあちこちで歓声が上がった。

先生が近くに居るのにガッツ有るなこいつら。

 

 

 

 



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第22話 泊り授業①

23XX年7月9日(金) 日本時間13:30

 

「既に伝えていますが、これから迷宮での泊り授業になります。明日の14時過ぎまで24時間以上迷宮の中に居る事になりますので、忘れ物が無いように準備をして迷宮に向かってください。

足りない物があったからと言って、取りに戻ったり購買に買いに行ったりは出来ませんからね」

 

ついに泊り授業の日がやって来た。この授業が終わると自分の衝動タイプが分かるんだよな。

個人的に一番ましなのが食欲なんだよな、アイテムボックスに食べ物を貯め込んで置けるから。

 

「そうそう。今回はソロで活動して貰いますので、迷宮に入ったらパーティを解散して行動する事。

迷宮に入ったら1階層の草原の入り口付近で待機しておくように。以上、行動開始」

 

細かい説明は中に入ってからって事か。じゃあ、俺たちも行動開始しますかね。

 

「ゆ~君、みんなバラバラだってぇ~」

 

情けない声を出しながら明日香が寄って来た。

 

「一応水を2ℓと携帯食は準備したけど大丈夫かなぁ?」

「携帯トイレやエチケット袋にマントかブランケットも有った方が良いと思うわ」

「袋を止めるテープも有った方が良いかも」

「急いで購買に行って来るね~」

 

食べれば出るのが自然の摂理だ。24時間も有れば数回は出るだろうしなぁ……

1階層なら穴を掘って埋めてしまえば良いんだけど、2階層以降はそうもいかないもんな。

俺には生活魔法もアイテムボックスもあるから、後始末はどうとでもなる。問題は何処でするかだけだ。

 

みんなは部屋に荷物を取りに行ったり購買に買いに行ったりしたので、先に迷宮前に行っておくとするかな。

 

 

暑い日差しの中、校庭を突っ切って迷宮に向かう。

体育も無いのになんで校庭が有るんだろう? 戦闘訓練とかで使用する事も無いようだし謎だ。

 

 

迷宮の前には帽子をかぶった白ワンピ姿の先生が居た。

いや白ワンピに赤のビキニアーマーが透けて見えるのですが……。まるで下着が透けているようですごくっちぃです。

 

「んっ、一人なのね。他のメンバーはどうしました?」

「まだ準備中です」

「そう、なら全員揃うまで外で待機」

「はい。……それよりその服はわざとですか?」

「そうよ。初衝動前に性を刺激すれば性衝動の確率が上って、破壊衝動の確率が減るとかいうくだらない統計のせいでね。おかげで1年の迷宮授業の担当は、ソロの若い女性探索者で食欲タイプの者がやる羽目になっているの。1%なんて誤差じゃない」

 

あぁ、通りで普通の先生らしくないと思った。教職を取りながら探索者になったんじゃなくて、探索者が先生をやらされていたんだ。

 

 

「食欲タイプなんですね」

「性欲タイプだと泊り授業の後で生徒に跨ってしまうかもしれないからね。

自己責任だから絶対にダメという事も無いわよ、性欲タイプの生徒に襲われる事もあるし。

まぁ、合意の上なら問題はない。……あなたのようないい男なら、性欲の発散を手伝っても良いわよ?」

「えっと、冗談……ですよね?」

「えぇ冗談よ、半分はね。はい、そこの日陰で大人しく待っている事。後さっきの話は他の子には内緒ね」

 

手を振られて木陰に追いやられてしまった。

ぐぬぬぬ、思春期の純情を弄ぶなんて酷い! 普段より優しい口調だったからドキドキしたのに!

こうなったらみんなが来るまで、透けてる姿を堪能してやる!!

 

やってくる男子は先生の体に視線を奪われ、女子はビキニアーマー事態に興味を引かれている。

男子の性を刺激しているのは確かだけど、女子の方は微妙じゃね? まぁどうしたら女性の性を刺激できるかなんて知らんけど。

 

 

「雪兎はこんなとこで何してんの?」

「あぁメンバーが揃うまで待ってろってさ。パーティを解散しなきゃいけないからだと思うけど」

「なるほどね。じゃあ俺もだな」

 

クラスメートが迷宮に入っていくのを信也と二人で眺めていると、ようやく3人がやって来た。

 

「お待たせ~」

「荷物の整理に時間かかった」

「これ以上大きな鞄だと、移動が大変だもんね」

「ゆーはズルい」

 

ズルいって言われてもな。スキルのおかげだし、その代わりにみんなより戦闘力低いじゃないか。

 

「早くマジックバッグ作れるようになってね」

 

低ランクで作れるのは容量+100%以下らしいから、大したことないんだよ。

そんな物でもまだ作れないんだけどさ。

 

「時間間際だし、さっさと入ってしまおう」

 

先生に全員揃った事を伝えて迷宮に入り、そして広間にあるモニュメントに触れてパーティの解散を行った。

うーん。一人で行動していた事も多いけど、こうして解散するとちょっと寂しく感じるな。

 

通路を抜けて草原エリアに入ると、先生に言われた通りに近くにみんないた。

座って駄弁っていたり、大兎を狩っていたり、大兎を愛でていたりと様々だけどね。

 

なので俺たちも入り口からあまり離れていない場所に陣取って駄弁る事にした。

そして駄弁っていると数人のクラスメートと一緒に先生がやって来た。彼らが一番最後だったのだろう。

 

 

「はい、全員揃いましたので、今から24時間は外に出る事は出来ません」

 

先生はそう言うと、持っていた鞄から大きな衝立を取り出して通路を塞いでしまった。

マジックバッグだ。あの大きさの衝立が入るなんて容量+数百%の高ランク品に違いない。先生はかなり稼いでいたんだろうなぁ。

 

「ここからは他の人に迷惑をかけない限り何をするも自由です。

魔物を倒して過ごしても良いし、ずっと寝ていても構いません。ただ2階層以降で寝るのはやめておいた方が良いでしょうね。

先生はここに居ますが、見張りですので頼ってきたりしないように。明日のこの時間になったら、ここに集まる事」

 

迷宮内で24時間過ごすのが目的だから、ノルマみたいなものは無いという事か。

で、襲ってくる魔物が居る2階層以降で寝るのはお勧めしないと。何人かで一緒したとしても、パーティを組んでないと寝ぼけてフレンドリーファイアされる可能性があるしな。

 

「はいっ、質問です。食事はどうすれば良いですか」

「食堂があるように見えますか? 携帯食を忘れたとしても一日くらいなら食べなくても平気でしょう」

 

24時間出れないって言われていたんだし、学校が準備するとも言われなかったもんな。

幸い大兎が肉を落とすんだし、それを食べれば良いんだ。

 

 

 

 



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第23話 泊り授業②

先生の話が終わると、各々が行動を開始した。

その場で腰を下ろしたり、2階層に向かっていったり、大兎を狩り始めたり様々だ。

 

今週の1階層は中央から南、西、北西にかけて草原で2階層への階段は西にある。東から南東に湖があり、北から北東にかけて森林が広がっている。

 

「俺たちは4階層に行って来るわ」

「あぁ、無理はしないようにな」

 

信也、涼子、ひかりの3人が西に向かって行った。

4階層のスケルトン相手に戦闘か、24時間も有るんだし無理はしないで欲しい。まぁひかりの索敵もあるし大丈夫だとは思うけど。

 

「雪兎様はどうなされるのですか?」

「まずは湖沿いに森の方に移動だね」

 

森の中の方が生産材料を多く採れるし、森の中まで行けば人が少ないだろうし。

あと少しで魔石ポイントが貯まってガチャも出来そうだし、今日の目標の1つにしよう。

 

「わたくしも御一緒させて頂いても良いでしょうか?」

「ゆ~君、私も一緒~」

 

美咲と明日香は俺についてくるようだ。

この二人なら問題無いし、一緒に居ないと男子が寄ってきて可哀そうだしな。

 

大兎を狩りながら湖に向かって行くと、楽しそうに話しているグループが居た。俺らと同じく数少ない男女混合グループのようで、男子十人に女子二人だった。

進む方向が同じだから、彼らも湖を目指しているのだろう。

 

 

湖に着くと前を進んでいたグループの一人が、人より大きい布で囲われた物を取り出した。アイテムボックスか生産スキル持ちが居るんだな。

その中に女子二人が入っていくと、残った男子たちは近くに荷物を置いて服を脱ぎだした。

 

「あの方々は何をなさっているのでしょう?」

 

俺の陰に隠れて男たちが視界に入らないようにした美咲が俺に聞いて来た。

 

「ズボンの下に水着を着ていたみたいだ」

「あの中に入った女の子も着替えているのかな~?」

 

水着姿になった男子は水際に移動したけど、チラチラと女子の入った更衣室もどきの方を見ている。

あの様子からしてそうなんだろうな。近くで女子が水着に着替えてると思うと気になるのは仕方ないよ。

 

彼らに近寄らないように湖に近寄って、小石や砂を採取して北の方へ向かうとしよう。

楽しそうなんだし邪魔しても悪いからね。

 

明日香と美咲に小石を集めて貰って、砂を採取していると後ろから男たちの歓声が聞こえた。

気になったので見てみるとビキニ姿の二人の女子が居た。……ってあの二人は市華ちゃんと巴ちゃんじゃないか。

 

裁縫と錬金スキルを持っている市華ちゃんなら、あのくらいの更衣室もどきは作れるよな。

始めは女子グループに居たあの二人が男子と組んでいるのか。う~ん、それがあの二人の選択なら口を出す事では無いけど、十人に二人なんて大変そうだよな。まぁ全員とそういう関係になるとは限らないけどさ。

 

 

採取を終えて森の方に歩きだすと二人に腕を取られた。二人とも胸が大きいから両腕が幸せです!

 

「ゆ~君には私たちが居るからね」

 

二人ともこの授業の後の事を意識しているんだろう。

二人に好意は有るけど、まだLoveにはなってないと思う。だけどこの二人が他の男と考えるとイヤなんだよな。

 

「雪兎様、深く考えなくても良いのです。多夫多妻で完全な両想いなんてそうそうありませんので、少しでも好きと感じているであれば、わたくし達を受け入れてくださいませ」

 

そう言うと更に体を寄せて来た。

俺の腕を完全に胸に抱え込んでしまっていて、ちょっと歩きづらくなってしまった。

 

まぁ、美少女二人に流されるのも悪くないか。こうされても止めてない時点で認めているようなものだしな……

明日香と美咲はお互いに認め合っているみたいだし、悪いようにはならないと思うし。

 

 

 

森の中に入ると並んで歩けなくなるので、腕を開放して貰えた。

蔦や微薬草なんかを採取して進み、目的としていた場所に着いた。

 

ここは今週探索していた時に見つけた場所で、森の中にちょっとしたスペースがあって、そこにある塚から水が湧き池が出来ているんだ。

 

「わぁ、なんか童話とかでありそうな場所だね~」

「えぇ、おとぎ話の中に迷い込んでしまったように感じますわ」

 

二人がその景色に感動しているが、空気を読まずに近くの木の伐採を始める。

なんだかんだで此処に来るまで1時間以上かかっているから、明日まで過ごす場所を作ってしまいたい。

 

伐採した木を加工して板材にする。それを使用して5mx3mx2mのいわゆる豆腐ハウスを作る。迷宮内なら屋根を斜めにする必要もないしね。

それにこのサイズなら2階層以降の通路に置く事も出来る。一定以上の物がある場所では魔物が湧かないらしいから、行き止まりに置けば比較的安全な場所が出来るだろう。

中で暮らすわけでは無いので、床に羽毛で作ったマットを敷いて雑魚寝できるようにする。……羽毛布団とも言うが気にしないでおこう。

 

それから1mx1mx2mの小屋を作り横に配置する。中には洋風の便座を設置、漏れたりしないように防水にした革を付けている。

俺が生活魔法で清浄しないと汚物の処理が出来ないのがネックだが、二人に野外でさせるよりは良いかな。

 

そして5mx5mの板の間を作り、中央に採取した石と砂で地火炉を作る。

木材から木炭を作って地火炉に置き、火を着ければ完成だ。

 

 

後は大兎が近くに湧いたら狩れば良い。

肉も手に入るし水も汲める。寝床にトイレとこれで問題無いだろう。

 

「なんかちょっとしたキャンプ場って感じだね~」

「流石は雪兎様ですわ。予想以上に快適に過ごせそうで嬉しいです」

 

サバイバルが一転キャンプに早変わり。これが何でも作れるクラフトの強みだよな。

 

アイテムボックスに入れていた薬缶に湧き水を汲んで、地火炉の金網に乗せて湯を沸かす。

アイテムボックス内にも水は有るけど、迷宮産の物を使った方がクラフトの成長に良いだろうからね。

 

 

 

 

23XX年7月9日(金) 日本時間20:00

 

空というか天井が赤く染まり、そして暗くなっていく……

外の時間より遅いけど迷宮内の自然階層にも昼夜が有るんだな。こんな遅くまで迷宮内に居る事は無かったから初めてだ。

 

パチパチと炭の焼ける音を聞きながら、肉が焼けるのを3人寄り添って眺めている。

なんかスローライフって感じで良いよな。

 

 

そんな感傷に浸っている所に――

 

「ユキト~ォ、やっと見つけたデース」

 

情けない声を出しながら寄ってくる人影があった。

 

 

 

 



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第24話 泊り授業③

やってきたのは綺麗な金髪を編み込みハーフアップにしている、イギリス系美少女のソフィーだった。

板の間に辿り着くとバッグの中からビニール袋を取り出して見せた。

 

その袋の中身はクッキー。多少は形が残っている物も有るけど、大半は粉々になっている。

 

「外にぶら下げてたから、誰かに嫌がらせされたと思うのヨ」

 

悲しそうな表情だ。瞳に浮かぶのは悲しみの涙か悔し涙か……

 

「まぁ、酷いですわね。ソフィーさん上がっていらして。雪兎様いいですわよね?」

 

美咲の言葉に頷くと、ソフィー靴を脱いでいそいそと地火炉の側に寄って来た。

 

「他のみんなはどうしたの~?」

「今日はみんなバラバラよネ? ユキトたちは一緒だけど良いノ?」

「パーティをばらけただけで、一緒に行動してはダメと言われてないよ。先生は『何をするも自由』って言ってたじゃない。他にも固まって動いている人たちは居たし」

「Oh……」

 

串焼きを追加で焼きつつソフィーに話を聞くと、先生の話が終わってすぐに何時ものメンバーはバラバラに行動を開始したらしい。

 

その後森の入り口で採取をしていたのだけど、荷物は木の根元に置いていたらしく、ある程度採取して戻ったらクッキーが粉々になっていたと。

 

重さや大きさ的観点から見て、1階層で取れる中では微魔草が一番優れているから、それ狙いで採取していたのかな?

で、その隙を誰かに狙われてしまったと。

 

「きっとソフィーちゃん狙いの子がやったんだよ~」

「あぁそうか。珍しく一人で行動しているし、食事を分けてあげるとか言ってお近付きになろうとしたって事か」

「そうなると他の3人も心配ですわね」

 

ソフィーみたいに隙を見せなければ、声をかけられる程度で済むと思うけどね。授業中だし、入り口の所には先生も居るし。

ちなみに迷宮高校ではいじめは無い。命がけで迷宮に入るのだから、報復で事故を装って殺されてしまうかもしれないのだ。大人しくひ弱そうな子でもスキル補正で力があったりするし、人型の魔物を倒しているから人間相手であっても身を守る為に力を振るうのを躊躇ったりはしないだろう。

 

 

串焼きを食べて淹れたお茶を飲む。葉ではなく粉のお茶だけどね。

まったりしていると、ソフィーがソワソワしながら明日香と美咲に話かけた。

 

「アノ、ふたりはトイレどうしてるノ?」

「そっちの小さい方がトイレだよ~?」

「流石に水洗ではありませんから、雪兎様にお願いしないといけないのですけどね」

「エッ、ユキトにキレイにして貰うノ!? そ、それはユキトに舐めて貰うとかカシラ? ……イヤン、そのまま初めてを体験しちゃうのですネ」

 

ソフィーは両手を頬に当てて体をクネクネと動かし始めた。

いや、そんな事はないからね? そもそも舐めてキレイにするとかありえないから! それから二人も期待するような目でこっちを見ない!!

 

「生活魔法でキレイにするだけだよ」

「Oh……ワタシの勘違いでしたカ」

 

ソフィーはそう言うと、トボトボとトイレに入っていった。

 

 

 

出てきたソフィーとトイレに生活魔法の<清浄>を使用してキレイにする。

小屋に使用すれば全部キレイにしてくれるから、中に入る必要は無い。わざわざ臭いを嗅ぎたいとも思わないしね。

 

「そういえばみんな夜はどうするんだろうね」

「女子は先生の近くで寝るんじゃないかな~?」

「ワタシもそうするつもりだったデス」

 

パーティなら交代で夜番をしてとなるんだろうけど、今日は違うからな。

中にはグループでそうやっている所もありそうだけど、先生の近くが一番安全か。

 

 

22時、ちょっと早いけど寝る事にした。今出来る事は明日でも出来るからさ、わざわざ暗い中でする事は無いもんね。

 

「暗くなってから森の中をここまでくるようなやつはいないと思うし、夜番無しでも良いかな」

 

もし誰か来ても扉の内側に閂を付けておけば開けれないだろうしな。

紐で囲って、近付く者がその紐に触れたら音が鳴る仕掛けも出来なくは無いけど、ここは大兎さんが無邪気に跳ね回っているから、役に立たなさそうなんだよね。

 

トイレに行く時だけ気をつけて貰えば良いって事で。

そもそもがこの迷宮に居るのはクラスメートだけだし、何かある可能性は限りなく低いし。

 

 

板の間はアイテムボックスにしまう。トイレは誰か夜中に起きるかもしれないのでそのままにするけど、キレイにしてあげる事は出来ないので、そこは各自で何とかして欲しい。

 

「火が無くなると真っ暗だね~」

「外と違って月や星明りが無いからね」

 

小屋の中に入ると、そこも真っ暗だ。

うん、灯りなんて魔道具を作らなきゃ油のランプや蝋燭だしね。現時点でそんな物を作れる材料はない。

 

閂をかけて、靴を脱いで、羽毛マットにダイブ!

ふっかふかだぁ~~~~!!

 

明日香とソフィーも続いてダイブしてきたけど、美咲は膝を着いてお淑やかに横になったようだ。流石はお嬢様だな。話す内容は全然お嬢様っぽくないけどね。

 

なんて思ったけど、ゴロゴロ転がって寄ってくるのは全然お嬢様じゃないね!

 

「雪兎様、雪兎様! 服は脱いだ方がよろしいですか?」

「何もしないから着てなさい」

「仕方がありませんわね、今日の所は大人しくしておいてあげますわ」

 

「ゆ~君はいい加減ママのことを諦めた方が良いと思うよ~?」

「まぁ、雪兎様は明日香さんのお母様の事がお好きだったのですか?」

「ワタシ知ってますヨ、人妻スキーとか言うのですよネ? デモ、不健全デス」

 

いや、初恋は小学生の頃に終わっているから。それから特定の誰かに恋心を抱いていないってだけだよ。

それに人妻だから好きになったわけじゃないから、そこは勘違いしないで欲しい。

 

「だからゆ~君が私たちを受け入れてくれるように、二人とも協力してね~」

 

そういうのは俺の聞いてないとこでやってね。

 

吾輩は疲れた、もう寝るぞ。

 

 

 




何か書いているうちにソフィーが「金剛デース」とか言いそうにかんじてきたのだが……


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第25話 泊り授業④使い魔ガチャ

目が覚めると跨られていた……という事は無かったのでちょっと安心。

まあ、両腕と左足には抱き着かれていたけどね。

 

腕を解いてスマホで時間を確認すると朝の6時だった。眠りについた時間も早かったしこんな物だろう。

脚の抱き着いているのも外してスマホの明かりを頼りに外に出ると、外は十分なくらいに明るくなっていた。

 

トイレをキレイにして、沸いていた大兎を狩り、板の間を出すスペースを確保する。

大兎を狩ってスペースを確保できたので、昨日と同じ場所に板の間をアイテムボックスから取り出して配置した。

 

串焼きの準備――今回は塩胡椒――をして、昨日から今日にかけて狩った大兎の魔石をガチャの魔石ポイントに変換していく。

 

1回限定使い魔ガチャ! 

・希少な使い魔が入手できるチャンス! 

・魔石ポイント1000を消費して1回実行する事が出来ます

※このガチャは1回限定で、使用後は別のガチャに変更されます。

 

所有魔石ポイント:1008

 

「やっと千ポイント貯まったか。これで使い魔ガチャをやる事が出来るな」

「まぁ、使い魔ですの?」

「私は猫ちゃんが良いな~」

「羨ましいですネ」

 

後には起きてきた3人が居た。

ビックリするから小屋から出て来た時に声を掛けて欲しかった――えっ、声掛けたって? 気が付かなかったよ、俺の方が悪いな、ゴメン。

 

ガチャをしてしまいたい気もするけど、3人とも起きて来たなら先に小屋をしまうとしよう。

 

小屋に生活魔法の清浄をかけてキレイにしてからアイテムボックスにしまう。

それから地火炉に炭を置いて火を着けて金網を乗せ、作って置いた串肉を焼き始める。

 

すると湧き水に顔を洗いに行っていた3人が小走りで戻って来た。

 

「ゆ~君、まだやってないよね~?」

 

どうやら見たくて急いで戻って来たようだ。

仕方が無いのでガチャの画面を見えるように変更して、ガチャを実行する。

 

美咲とソフィーはガチャの画面を始めて見るからか、目を輝かせて画面に見入っている。

いや、画面の中央で回っているカードが金色に光っているから、輝やいているように見えただけだな。

 

カードの回転がゆっくりになると、目の前の床に金色に光る魔法陣が現れた。

そして光の柱が立ち、その中に人型の何かが見える。

 

 

光が治まると、そこには和服――しかも花魁風――の女の子が居た。キツネ耳に同じ色の髪が背中の中ほどまで伸びている。うん、キツネの獣人かな?

背の高さは小学生の低学年くらいだろうか、だが背の高さのわりにスタイルが良い。大人を4分の3スケールに縮小した感じで、顔つきやスタイルからして子供では無さそうな気がする。

 

「妾は妖狐じゃ、(ぬし)様よろしくしてたもれ」

「ヨーコっていうのか、よろしくな」

 

《使い魔:ヨーコを取得しました》

《使い魔を取得したことによりスキル『使役』を獲得しました》

 

おっ。使役スキルも貰えるなんてお得だ。スキルレベルが上がれば使い魔を増やす事が出来るもんな。

 

「主様……妖狐は種族名で名前では無いのだが?」

「えっ!? てっきりキツネ獣人で名前がヨーコなのかと……じゃあ、別の名前の方が良いよな」

「もう遅いのじゃ。魂にヨーコという名が結びついてしまっておる」

 

あぁ、ヨーコを取得しましたって脳内アナウンスがあったもんな。なんてこったい。

 

「ゆ~君、どんまいだよ~。私は明日香っていうの~。ゆ~君将来のお嫁さんだよ、ヨーコチャンよろしくね~」

「おぉ、主様の番か! ならば付き合いは長くなるであろうからよろしゅうの」

「番ではなく群ですのよ。わたくしは美咲と申します、ヨーコさんよろしくお願いしますわね」

「ワタシはソフィーデース、よろしくネ」

「ほう、確かに雄1に雌3なら群れじゃの。美咲もソフィーもよろしゅうの」

 

はっ! あまりの事に思考が止まってしまった。しかも、その間に勝手に話が進んでしまっているし……

 

「まだだからな。それよりもヨーコはどんな事が出来るのか教えてくれないか?」

「うむ。まだ格が低いからの、妖術の狐火と錬金術くらいじゃ。後は閨房術かの。

格が上がれば使える妖術も増えるし、眷族も召喚できるようになるの。

九尾まで格が上がれば、上級魔族やドラゴンにも劣らなくなるのじゃ!」

 

それは凄い! がそこまで格を上げる事が出来るのだろうか?

というか、どうやったら格が上がるのかもわからんからな。後でゆっくり話をして聞かせて貰う事にしよう。

そして閨房術は聞かなかったことにする!

 

「なるほど、これからよろしくな。そう言えば、使い魔って食事するのか? ちょっと調べた時には不要みたいなことが書いてあったんだけど」

「使い魔というか迷宮内に居るものは食事は不要じゃの。かと言って食べれんわけでは無い。言わば嗜好品みたいなものじゃ」

「そっか、じゃあ大兎の肉だけど食べてみるか? みんなも朝ご飯にしよう」

 

みんなで地火炉の側に移動して肉を焼き、朝食をとる、

嗜好品みたいなものと言っていたし、塩胡椒付きでも平気かな。ダメならなにも付けてないのを焼いてあげよう。

 

「塩とか付いているけど平気か?」

「うむ。妖狐は古の時代は人と共に暮らしておったらしいからの、人の食するものは殆ど平気なはずじゃ」

 

それは良かった。焼けた串焼きを取ってあげると、嬉しそうに咀嚼して食べているので大丈夫だろう。

追加で焼きつつ、3人にも取って渡す。料理の判定がどこまでなのか分からないから、網から取る所まではしてあげている。

 

 

 

食事が終わった所でガチャがどうなったか見ていない事に気が付いた。

使い魔ガチャが別のに変わっている筈なんだよな。

 

魔道具入り低級素材ガチャ! 

・様々な生産で使える低級素材が提供されます 

・低確率で低ランクの魔道具が当選します

・魔石ポイント10を消費して1回実行する事が出来ます

・10連で1回おまけが付きます

 

所有魔石ポイント:8

 

う~ん、低確率で魔道具が当たるのか。だけど、消費ポイントが2倍になっているのか。

問題はこの低確率が何%なのかなんだよな。数%あるのか、それとも1%未満なのか……

 

 

 

 




たぶん0.1%とかそんな感じ


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第26話 泊り授業⑤

「ヨーコちゃん張り切っているね~」

 

朝食後に近くに沸いた大兎を美咲が狩って、ドロップした肉を持って帰って来たのを見たヨーコが大兎を狩り始めてしまったのだ。

みんな手伝いながら和んでいるから良いんだけどね。

 

美咲とソフィーが大兎を見つけては挑発して態々板の間の近くまで引っ張ってきているし、明日香はその二人とヨーコを回復しているから、一応3人のスキル上げにもなっているしな。

ソフィーの戦闘スキルは格闘と重鎧らしい。将来はプレートメイルで格闘……実は聖闘士だったりするのだろうか?

 

ちなみに数世紀を経てもリメイクされ続けている作品は多い。20世紀末の作品群は日本サブカルの原点として愛され続けているのだ。3Dでの戦闘シーンは迫力が凄いし、某サッカーの必殺シュートや某野球の魔球もだ。

 

 

俺はヨーコが持ってきた肉を焼き、皮を革にしてと生産をしている。

ドロップ品を持ってきては、焼き串一本食べて戻って行くのを繰り返している。ドロップ品が肉だと嬉しそうな笑顔で持ってくる姿は可愛い。肩が丸出しで太股から開けていなければだが。

太腿から裾にかけてはだけているのは、尻尾があるから後ろ側に引っ張られているせいだとは言っているけど、本当かどうか怪しいと思っている。格が上がって尻尾が増えたらそうなるかもしれないけど、今はまだ1本だからな。

食事は嗜好品と言っていたが、まさか底無しだとは思わなかったよ。ま、美味しそうに食べてくれいるから良いんだけどね。

 

 

 

そんな風に午前を過ごし、醤油をつけて焼いた肉でお昼ご飯を済まし、この場所を後にする。

1時間半も有れば森を抜ける必要があっても、入り口まで戻るのは余裕だろう。

 

その道中の森の中でもヨーコは張り切っていたけど、移動中に肉は焼けないからね? そんなショボーンとしないでくれよ。代わりにアイテムボックスに入っている焼いてある物を上げるからさ。

 

なんかもう完全に餌付けされた狐だよね。

 

 

「ヨーコ、森の終わりでいったん帰還させるからね」

「主様の命なら勿論従うが、理由を聞いても良いかの?」

「今は学校の授業中でね、この先には250人近いクラスメートが居るんだ。そこにヨーコを連れて行ったら、見世物になってしまうからだな」

「む、それはごめんじゃの」

 

説明すると腕を組んでうんうん頷いている。組んだ腕で胸が持ち上げられ胸の谷間が強調されてしまっている。

比率からすると大きいのだろうけど、両脇にはそれ以上の持ち主が二人居るからな。ソフィーもカップ的には同じくらいはあるだろうし。

 

「後で仲間には紹介するからさ」

「戻っている間は眠りにつくから、体感では一瞬だしの」

 

そうして森が終わり、草原になる所でヨーコを帰還させた。

薄れゆく姿で『呼ぶ時には違った食事を所望するのじゃ』と言っていたので、購買でお菓子を買っておく事にしよう。食堂でお稲荷さんを買ってアイテムボックスにしまっておく手も有るな。

 

 

既に集まり始めているのか、入り口の方に人が多く見える。迷宮には地平線の位置が低いから距離が有ってもみえる。とはいっても、こっからはそんなに離れてないけどさ。

この森の端から歩いて10分ちょっとはかかるだろうけど、14時には十分間に合うな。

 

歩いて行くと徐々に人影が大きくなり、誰なのか判別がつくようになっていく。

集団の端の方は入り口から100m程だろうか。先生の声が聞こえれば良いのだし、後から来た者が近くまで寄っていくのもな……

 

という事で集団の端に板の間を出して、お茶を飲みながら時間を待つ。周りのクラスメートが胡散臭い目で見ているが気にしない。

知り合いはやって来て、板の間の端に腰をかけたりしている。地べたに座るよりはマシだろうし、ベンチ代わりにされても困らないしな。

 

 

「はい、皆さん時間です。24時間授業お疲れさまでした」

 

14時を過ぎると先生の声が聞こえて来たので耳を傾ける。

 

「これから迷宮の外に出ますが、一度に出ると問題が起きる可能性が高いですので、順番に外に出て貰います。

まずは女子からになります。女子の皆さんは広間に移動してください」

 

出るのは順番で、しかも女子からか。まあ、一度に出て破壊衝動を生じた者が大乱闘なんて目も当てられないし、男女一緒で性欲タイプが一緒に盛りだしたら大変なのもあるよな。

 

「それで先に行きますわね。出来れば雪兎様と一緒が良かったのですが、仕方ありませんものね」

「ゆ~君がどんなタイプでも離れないんだからね~」

「ユキトと同じタイプな事を祈ってるデース」

 

一緒にいた女子3人も当然対象なので、荷物を持って入り口へ続く広間に移動していった。

入れ替わるように信也がやって来た。一緒に行動していた涼子とひかりも行って、信也も一人になったのだろう。

 

「お疲れさん、どうだったよ」

「森の奥で生産しながらまったり、そっちは?」

「夜までスケ狩り、戻ってきて同じような奴らと一緒に階段付近で夜を過ごして、朝飯食ったらまたスケ狩りに行ってだな。昼前に戻ってきて、ここで飯食って駄弁ってた」

 

向こうは順調に戦闘訓練をしていたようだ。

哀しいのは現実には経験値であがるレベルなんて無いという事だ。スキルの成長は有るけど、必ずしも戦闘が必須というわけでは無いからな。

そしてスキルも魔物相手に使った方が成長し易いという事も無い。大兎を相手にしていた雛子の剣より、木に叩きつけていた美咲の盾の方が早くスキルが成長したらしいのだ。

 

「涼子やひかりとは進展なしか、あの二人は明日香みたいに好き好きアピールしないから仕方ないか」

「家族感が強すぎてな。恋人とかすっ飛ばしてしまいそうだ。そういうお前はまだ明日香を受け入れてねーし」

「正直そろそろ年貢の納め時かなとは思っている。迷宮を出れば衝動タイプも分かってしまうしな」

 

そうするとクラスメートからの嫉妬が酷くなるわけだが、今更か。

クラスの2大強乳を侍らせているくせに、物足りず金髪美女たちをも誑かしたと陰で言われているらしいからな。

 

 

「次は男子だけど、そこにらに居る人移動。奥でお茶飲んでいる人はむかつくから最後よ!」

 

30分程して戻って来た先生は、近場に居た男子グループを指さして移動するように言うと、最後に俺の方を指さして最後だと告げていった。

 

「おぃ、俺も最後かよ!?」

「一緒に居たのが運の尽き。嫌だったら今の内に違う場所に移動しとけば?」

「もう遅いかもしれないけど、そうしとくわ。後1時間以上も居たくねぇしな」

 

女子だけで30分かかるなら、男子の最後なら1時間以上後になるのか。

はぁ……横になってしまおうかな。

 

 

 

 



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第27話 泊り授業の終わりに

微エロ? 注意



「……くん。……なし君。月見里雪兎君」

 

誰かに体を揺らされて意識が目覚めていく。

瞼を開けると高坂先生が足で俺の体を揺さぶっていた。いったいどんな状況だというのだ。

 

「先生……?」

「やっと起きましたか、もう4時過ぎですよ。他の生徒はとっくに全員外に出終わっています。

先生は仕事中だというのにお茶を飲んでいるし、罰として最後に回したら優雅に昼寝なんてしているなんてね」

 

先生は見下ろしながら足の爪先を俺の脇腹に押し付けてグリグリとしてくる。

板の間に上がる時に靴は脱いでいるっぽく、素足なのが救いか。

 

「先生も外に出ると衝動が襲ってきますから、迷宮から出る事も出来ずに君が目覚めるまで待つはめになりました。

何度縛って放置しようと思ったか……。今日は土曜日ですから日が変わると裸で外に放り出されますからね。

ですが、夜中に裸で暴れられたりしても困るので諦めました。対応するのは私ですから……」

 

先生の話を聞きながら上半身を起こすと、今度は爪先で顎を持ち上げられた。

片足立ちでその体制を維持しているなんて凄いバランスだ。

 

「そんな君には罰を、私には褒美が必要だと思いませんか?」

「そ、そうですね」

 

ここで『それが先生の仕事では?』と聞き返す勇気は俺にはなかった。

この授業前に、先生の仕事をやらされているってのを聞いてしまったからなぁ。

 

「普通の先生方は通いなのに迷宮科目担当の私たちは生徒と一緒に寮生活。

3年の任期で婚期を逃す可能性があるうえに、碌に外出も出来ないから彼氏を作れもしない。

……女にだって性欲は有るし、人肌だって恋しいの。分かる? 分かるよね!?」

 

先生の口調がどんどん荒くなっていく。

ストレスが溜まっていたのかもしれないけど、それを俺にぶつけるのはどうかと思います。

 

「そ・こ・で、月見里君には迷宮から出たら罰を受けて貰います。

君が食欲衝動なら、私と一緒に食事をして私の分も料金を払う事。食欲衝動二人分の料金ってそれなりになるわよ」

 

両親の食べっぷりを思い出す限りでは二人で10人前くらいか?

でも学食なら安いし、数百ポイントくらいで済むだろう。

 

「性欲衝動なら私の食事が終わるまで我慢する事。そしてその後に私の性欲発散に付き合う事。我慢と童貞を奪われるのが罰だけど、良いおもいも出来るからお得よね?」

 

我慢したあげくに搾り取られろと? 衝動の強さが想像できないけど、これはかなり厳しいのでは?

しかも未経験だとバレているし! 初めては好きな人となんて言うつもりは無いが、罰で初体験って……

 

「ど、童貞ちゃうわ」

「はいはい、童貞乙。鑑定スキルの派生に特殊鑑定ってスキルが有るの。これは色んな情報が見えてね、身長体重の他にも女ならスリーサイズ、男なら勃起サイズが見えちゃうし、体験人数もね。

顔も好みだし、白人の血が入っているからかサイズもかなり大きいし、興味があったのよねぇ。

そうそう、今日君の側に居た3人は体験人数0だったわよ。良かったわね」

 

そんな情報は要らねーYO!

てかエッチした相手が増えるとバレるのかよ。先生と付き合ったら浮気とか即行でバレるわけだな。食欲タイプでソロなら多夫多妻を狙っているわけじゃなさそうだし。

 

「で、破壊衝動なら私と格闘模擬戦。空腹状態だから手加減は少なめになるけど、罰だから良いわよね」

 

良くないです! 

低ランク迷宮とはいえソロ活動している探索者のステータス補正に勝てるわけないじゃないか。

回復魔法もポーションも怪我には効かないんですから、手加減は必須でしょう!!

 

「拒否権は?」

「ありません」

 

「逃げたら?」

「進級できないかもね」

 

「バレたら問題になりませんか?」

「むしろ辞めさせて欲しいくらいですね。給料と手当を含めても迷宮での稼ぎには及びませんから」

 

ぐぬぬ……

本職じゃないから強い。それに探索者の衝動に関しては法である程度守られているしな。

唯一グレーなのが生徒に奢らせる事くらいか。性交に関しては探索者どうしで問題無し、模擬戦は破壊衝動に対する対応で問題無しと。詰んだな……

 

「観念したようなので外に出ましょうか。月見里君の衝動タイプは何なのでしょうね~♪」

 

先生は板の間の端で靴を履いて降りると、俺の事を待っている。

諦めて行動する事にしよう。もたもたして先生の機嫌をこれ以上悪くしても良い事は無いからな。特に衝動タイプだった場合は……ガクガクブルブル。

 

板の間を片付けて入り口の広間へと移動すると、そこで先生がテニスボールを渡してきた。

 

「外に出た時にそれを強く握りしめていたら破壊衝動。お腹の音が鳴ったら食欲衝動。勃起したら性欲衝動よ。

サービスして生足太腿を見せてあげたんだし、くだらない統計が正しいなら性欲衝動の確率が上がっている筈なのよね……

いっその事、泊り授業の時にアドルドビデオ鑑賞会でもさせれば良いのに」

 

性を刺激して性欲タイプが増えるなら、そっちの方が有効そうだよね。

それよりも昼ご飯を禁止して、出る時に焼けた肉の臭いを嗅がせて食欲を刺激させれば、食欲タイプが増えるんじゃないかと思うのだけど。

 

「さあ、出ますよ」

 

逃げられないように腕を掴まれて入り口へと連れていかれ――

 

 

『ぐぅぅぅっ』

 

外に出るなり先生のお腹の音が聞こえて、俺は息子が大きくなり始めた。

 

 

 

「これは凄い……ズボンから完全に出ちゃってるし」

 

ズボンの上から撫で上げ、上着の裾の中に手を入れてそんな事を言ってきた。

先生の手の刺激が凄いのですけどぉ!!

 

「ふふっ、続きは後でよ」

 

腕を組まれると校舎とは逆の方へと連れていかれる。

こっちは確か――

 

「パーティ棟よ。寮に居ると生徒が訪ねて来るから、一人で集中したい時用に先生も1つ借りてるの」

 

 

先生の借りている小屋に入ると、先生は早速北地の準備を始めた。

2つの電子レンジがフル稼働し、大量のパンに解凍された冷凍食品、漬物などが机の上に所狭しと置かれていく。

 

準備が終わるとテーブルに向かい合って座り、先生の食事が終わるのを待つ。

食べても良いとは言われたけど、全然食欲は無い。

 

 

 

先生の食事が終わってから少しの時間の後、ベッドに連れていかれた。

 

「よく我慢したわね。でも、初めは先生がするから動かないのよ」

 

ベッドに寝かされて上着をまくられ、ズボンを脱がされる。

そして先生の口で一回出した後、裸になった先生に跨がれ――童貞を卒業した。

 

 

 

 

「流石性欲衝動型ね。先生もう駄目……」

 

先生の中に十数回目の放出したところで先生はダウンしてしまった。

壁掛け時計を見ると10時過ぎ、4時間以上も先生としまくっていた事になるのか。

 

2回目からは俺が主導で動いて疲れたし、このまま一緒に寝ちゃおうかな。明日は日曜だし良いよね……

 

 

 

 




予定調和の性欲衝動型、だってハーレムもので将来は多妻予定だからね。

そしてDTはヒロインでは無い先生に奪われる(笑)



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第28話

23XX年7月11日(日) 日本時間12:50

 

昼食を取り終えた俺たちは解放されている教室に集まっている。

 

「――と、先生から聞いた感じだと、刺激された衝動に成る確率が上がるっぽいんだよね」

「食事を抜いたり不満が強いと食欲に、性的刺激を感じてれば性欲、戦闘に物足りなさを感じりゃ破壊って事か」

「先生のあの格好にもそんな意味があったんだね~」

「いまさら言われてもねぇ……」

 

そこで昨日先生から聞いた事をみんなに話していた。そしてその反応がこれだ。

うん、今更ながら二日目の食事を抜かして、お腹を空かしたままにすれば良かったと少し後悔している所だ。

 

「で、ゆーは性的刺激を受けたの?」

「先生のビキニアーマーに、湖で水着姿になった男女、それに明日香・美咲・ソフィーと寝床が一緒だったしね。

食事は肉だけだったけど塩胡椒や醤油で味付けしたし、戦闘はあんまり積極的じゃないから、結果性的刺激が一番って事なんじゃないかな」

 

確率が上がるだけで確実ってわけじゃないけど、一番刺激が強かったのは性的刺激だったのは間違いないか。

あとみんなには言わなけど、先生の行動や言われたの罰の内容も影響しているかもな。

 

「明日香と美咲も性欲だし、話を聞くと納得よね」

「雪兎様と初めての添い寝でしたもの、そのまま初夜「はい、そこまで。分かってるから。言わなくて良いから」」

「えぇ~!?」

 

美咲の話を涼子が止めた。

少し不満気だがスルーして信也たちの話を聞こう。あっちは3人揃って食欲だったらしいし。

 

「信也たちは食事に不満だったのか?」

「持ち込める量に限りがあった上に、4階まで行ってたから兎を狩る時間が足りなくてな」

「階段付近は同じような人たちが多くて、戻ってきても近くに兎居なかったしね」

「狩れても焼く手段が無かったけど」

「「あぁ~」」

 

ひかりの言葉に何人かが頷いた。確かに生活魔法持ちか、着火具を持っていないと火を起こせないしな。

それに焼く為の薪も必要だ。狩りに行っていたなら準備できないだろうな。

 

「雛子と恵は性欲で、紅葉は破壊だったっけ?」

「ソロでゴブリンしてたからね……」

「私たちは夜に先生や側に居た子たちとエッチな話題で盛り上がっちゃったからかな」

「そう考えると、先生の具体的な体験談や仕草も狙ってやってたのかなー?」

 

先生何やってんの!? 絶対にわざとだよね。

この二人だけじゃなく、先生の側で夜を過ごした女子は性欲タイプが多そうだな。

 

「あ~あ、私だけ破壊衝動か」

「そっか、別になっちゃうんだっけ」

「残念」

 

限定探索者用の授業があるし、半日以上かかる10階層への挑戦は学校では禁止されるんだっけか。だから他の衝動タイプの人とパーティは組めないと。

卒業後は協会主催で10階層、15階層突破ツアーがあるらしいから、そうすれば十分稼げるらしいけど……

 

「うん、でもなっちゃったものは仕方ないしね」

「別れちゃうけど、委託の取引相手はそのままにしておくからさ」

「ありがとう。別パーティでも一緒する事は有ると思うし、卒業まではよろしくって事で」

 

2年や3年になっても5階層までは一緒する可能性はあるか。

そしてこの後説明会があるからと紅葉は教室から出て行った。その後ろ姿をみんなで見送る。仕方が無いとはいえ残念だ。

 

残った8人でこれからのパーティについて話す事になった。

 

「じゃあ後はパーティをどうするかだな」

「8人だと4:4?」

「あ、私たちは地方から来て卒業後は戻る子たちと組もうかなと思うんだ」

「地元に戻る子ってさー、ここで相手を見つける気無い子多いしねー」

 

ひかりが半分に分かれるかと聞いた所で、ポニテコンビが別のパーティを組むことを考えていると言ってきた。

確かに地方から来ている子で卒業後に地元に戻るなら、卒業時に解散する事を前提としたパーティの方が良いのか。

 

「そういう子集めてパーティ作るからさ、ユニオン組んでね?」

「じゃあ、私たちも他の子たちと話にいってくるねー。早い方が良いと思うしー」

 

二人は同じように教室に居る女子グループの方へ移動していった。

するとこの場に6人残る事になる。

 

「あ、じゃあこの6人でパーティかな?」

「ん~、ソフィーちゃんも絶対にゆ~君と組みたがると思うよ~?」

「トラブルがあったとはいえ、雪兎様を探して森の奥まで来ましたものね」

「アタシあんま話したこと無いんだけど、確か4人組だったよね?」

「そうですわね。とはいえ、今後も4人かは分かりかねますが」

「そっか、そうだよね」

「じゃ、とりあえず3:3で」

 

俺としてはこの6人で組んで、ソフィー達は別パーティでユニオンを組めばいいと思うのだが、そうはならなかったようだ。

この場で決めてしまう必要もないという事で、結果ひかりが言った3にんずつの暫定2パーティを作る事になった。

何でかと言うと――

 

「それじゃあ、パーティを組んでパーティ棟を借りに行きましょうか」

「数に限りがあるみたいだしな、確保はしておくべきだろ」

 

アイテムボックス持ちでないと装備品で部屋が狭くなるし、パーティ棟には複数人で入れるサイズの風呂があるから、性欲タイプでない人たちのパーティでも借りているそうだ。

寮は3点ユニットバスだからシャワーのみの人も多い。今朝は久しぶりにお風呂に入れて良かった。

 

パーティ棟は約100戸で、各学年で40くらい使っているとなると、1年生が使えるのは20くらい。

先輩方の少人数パーティでも使っていればもっと少なくなるし、迷宮科目担当の先生も借りているからな。使うなら早めに確保しておくのが良い。

 

 

 

迷宮でパーティを組んで事務課でパーティの申請を行い、同時にパーティ棟の申請を行う。

 

「月額3000ポイントで、月末に翌月分を払えない場合は使用が出来なくなります。

引き落としは代表者でも、均等割でも構いません。よろしいですか?」

 

事務の人にパーティ棟の説明を受けている。

月額3000ポイントという事は3万円か。6人パーティだと一人頭5千円、今は3人だから1万円。普通に安いよな?

 

「間取りは2LDKで風呂トイレ別。エアコン完備。冷蔵庫とキッチンの棚も備え付けられています。

テーブルやベッドなどは各自で準備してください、ポイントはかかりますがレンタルも可能です。

染みや汚れが酷い場合は買い取りになってしまいますけどね」

 

エアコンと冷蔵庫が有るだけでも十分だろう。

他の家具はレンタル可能で、汚れが酷い場合は買い取りになると。……あぁ、性欲タイプの人が居るとベッドのマットレスとか染みが凄そうだね。

 



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第29話

説明を受けた後、俺たちはなるべく迷宮に近い位置の部屋を借りた。

パーティ棟から見ると迷宮も校舎も同じ方向だから、なるべく近い方が楽だからね。

 

中に入ると広めの玄関があり、小さな廊下の右側にトイレの扉、左側に風呂場への扉、そして正面にリビングがあった。

玄関には靴箱の他に大きな棚も有る。これは装備なんかを置いておく場所だろうか?

リビングに入ると正面と左側に個室への扉、右側はキッチンとなっていた。

 

「話に聞いていた通り、棚と冷蔵庫しかないね」

 

先生の所にあった電子レンジとかは持ち込みか。先生は食欲タイプだから食事方面の物が充実しているのは当たり前だな。

 

「基本的に食事は食堂でしょうけど、最低限の食器などは必要ですよね」

「お茶とか~、夜食とかするだろうしね~」

 

購買にはまともに料理するような肉や野菜は置いていないから、食事はやっぱ食堂になるよな。

間食用の菓子パンとか冷凍食品は置いてあるんだけどな。レンジでチンするたこ焼きとかお世話になってます。

 

「とりあえずテーブルと椅子は俺が作れるから良いけど、ポッドやレンジは買わないといけないか」

「卒業してからも使えるんだから良いんじゃないかな~?」

 

そうなんだけど、家にも有るんだよな……

 

「そうか、夏休みに帰省したら家から持ってくればいいのか」

「良いのですか? お家で使っている人は困りませんか?」

「あー、美咲には言ってなかったけど両親亡くなっていて、一人暮らしなんだよ」

 

俺の言葉を聞いた美咲が申し訳なさそう顔をしたけど、もう4年以上前の事だしな。

頭をポンポンと叩いて、大丈夫だと知らせてあげる。

 

「さ、個室の方も見てみようか」

 

二人を促して正面の個室の扉を開けた。

広さは6畳より広いくらい、目測だけど9畳くらいかな。

 

「寮の部屋より広いね~」

「2部屋ですから、この部屋を3人で使うとなると狭いくらいでは無くて?」

「基本的に寝る為だけの部屋だろうしね。私物は寮の部屋に置いていれば良いのだし」

 

()()()()()と強調して言うと、二人はススっと距離を詰めて来た。

 

「んふふ~、一緒だよね~?」

「ここでイヤは有りませんわよね?」

 

二人の柔らかい感触が伝わってくる。

昨日初体験をしてしまったからか、いつもより意識してしまう。

 

「うん……破壊衝動じゃなかったしね。二人の気持ちは嬉しいから。……ただ、まだ好意で好きまで行ってないのは許して欲しい」

「ゆっくりと好きになってくれれば良いんだよ~?」

「そうですわ。普通の恋愛でも両想いから始まる事なんて稀ですもの」

 

好きな人より好いてくれる人か。

この二人の真っ直ぐな感情を受けて行けば、きっと好きになれると思う。

それにあの気持ち良さを知ってしまったらね……

 

 

「ベッドは好きな大きさで作れるけど、マットレスはそうはいかないからどうするか」

「それならベッドではなく、一昨日のような大きな布団で良いのではありませんか?」

「さんせ~い。ゆ~君なら材料があれば、この部屋いっぱいの大きさの布団も作るもんね~」

 

羽毛はまだまだあるし、革も大兎を狩ればいくらでも手に入るから大丈夫だろう。

 

「これから色々と揃えていかないとな。二人で必要そうな物を纏めてくれないか」

 

こういう生活観点では女性の方が鋭いだろうし、一人暮らしならともかく、ここは任せてしまった方が良いだろう。

作れそうな物は作る、家に有って持って来ても良い物は持ってくる。それでも足りない物は買えば良いか。

市販品であれば購買に注文すれば取り寄せて貰えるし。

 

となればポイント稼がないとな。

単価は安いけどポーションの需要は無くならない。HPが自然回復しないから魔法かポーションに頼るしかないもんな。勿論先輩やクラスメートも作成しているけど、余剰分は探索者協会に売られていくみたいだし。

肉は食堂で消費できない分は近場のスーパーに売られるし、木材は日本全国消費されるからこちらも安定して売れる。

 

逆に低ランクのドロップ装備は供給過多で安値安定だ。早々壊れるものではない上に、需要が少なすぎるからだ。

溶かして再加工するにもコストがかかり、鉱石を買った方が安上がりだったりする。

だから2階層以降で戦闘しているクラスメートは魔石しか拾って帰ってこない。嵩張るうえに安くしか売れないドロップ装備を持って歩きたくないんだろうね。

 

そんな事情でポイント稼ぎはみんな未だに1階層でやっている。6階層以降にいければ変わってくるのかな?

 

 

という事で、クラフトとガチャの成長を期待して、今まで通り森で生産だな。

ヨーコを呼び出して大兎を狩らせれば肉や魔石も手に入るしね。

 

「じゃあ夕飯まで迷宮に行って来るよ」

「夜はここだよね?」

 

二人に話しかけると、珍しく語尾を伸ばさずに明日香が聞いて来た。

年の離れたクランの弟妹をあやしている内に癖になったとか言っていたっけか。

 

「うん。お風呂もあるし、寮で寝る必要もないからね」

 

そう答えると、明日香は美咲と手を取り合って喜んでいた。

そんな二人を見ながら出ようとすると、美咲が小走りに寄って来た。

 

「いってらっしゃいませ、あ・な・た。……一度言ってみたかったんですの」

 

そう言うと美咲は顔を真っ赤にして、逃げるように個室へと逃げ込んでいった。

恥ずかしいのならやらなきゃいいのに。と思うのは女心に鈍いからだろうか?

 

 

 

 

借りた家を出て迷宮に向かうと――

 

「ハーイ、ユキト。待ってたわよ」

 

1階層の草原の入り口付近でソフィーに捕まった……

 



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第30話

ソフィーの方へ振り返ると、誰かが背中に抱き着いて来た。柔らかい感触があるので女子だろう。

まあ、こんな事をしてくる男子の知り合いはいないんだけどね……

 

「ユキトさん捕まえました、逃がしませんよ?」

「この声はレオナかな?」

「ゲナウ! 正解だよ!」

 

腕ごと抱きしめたいたのを離して、俺の前に移動してきたのはドイツ系美少女のレオナ。

160cm程の身長で、背中の中ほどまで伸びている金髪。程好いサイズの胸――B後半からCくらい――に細い腰。少し釣り目気味な目が年齢のわりに大人っぽさを演出しているが、知り合いには甘えがちな性格だ。

 

 

「二人だけかな?」

「あー、あの二人は……」

「袂を分かったデース」

「衝動型が違ったから、別行動する事になったんだよ」

 

普段は4人で居たから聞いてみたが、衝動タイプが違ったから分かれてしまったのか。

俺らのとこもそうなっちゃったし、他もそうなっていても不思議じゃないか。

 

「きっとココに来ると思って待ってたネ」

「ボクたちはユキトの事が好きだからね、あっちの二人より早く会いたかったんだ」

「待っていた理由は分かったけど、衝動タイプが違ったらどうするんだ?」

「ワタシはそれでも一緒に居たいヨ!」

 

この二人と違っていて、残りの二人と同じだったらどうなるんだ?

いや、逆でも結局4人とも来るん事になるんじゃないだろうか……

 

「あー、ちなみに俺は性欲タイ――」

「Yes! ワタシたちも同じ性欲型ネ!」

 

うん。最後まで言わせて貰えなかったけど、二人も性欲タイプなんだな。

ソフィーは夜から一緒だったからそんな気はしてたけどね。食事も3食ちゃんと食べさせたし。

 

「そうだ、ユキトさんはまだパーティ組んでませんよね?」

「いや、明日香と美咲で3人パーティだな。信也と涼子とひかりでもう1つ作ってるし」

「Oh……出遅れましたか。でも3人ならワタシたち二人も入れますネ」

「うんうん。運命の女神はボクたちに微笑んだんだ」

「一応明日香と美咲にも聞かないといけないけど、多分大丈夫かな」

 

あの二人もソフィーも一緒に居たがるだろうって言ってたから、こうなるの事は予想出来ていたのだろう。

レオナも一緒だけど、4人全員が来てパーティ人数の上限を超えなかったからセーフかな?

 

「俺がサポーターで明日香が聖魔法で回復。美咲が盾と斧でタンク兼アタッカー。

で、ソフィーが重鎧と格闘でタンク兼アタッカー。レオナは攻撃魔法だったか」

「うん、黒魔法と結界だね。四属性使えるなんて貴重なんだから、ボクの事大事にしてよね」

 

魔法系だとは聞いていたけど、四属性使えちゃうのか。魔法の複合系スキルは凄いな。

この二人が加わると前衛2、魔法系アタッカー、回復とバランス良いよな。MP回復ポーションを俺が潤沢に提供できれば、魔法系の二人はガス欠にならないだろうし。

そうすると残り1枠はシーフ系かな? いや向こうのパーティとユニオン組む前提なら不要か。

 

お昼の後に話したように焦って決める必要もないか……

 

「大丈夫だと思うけど、明日香と美咲に確認しに行くか」

 

そんなに時間は経っていないから、まだ二人は借りた部屋で話しているだろう。

 

 

二人に腕を取られながらパーティ棟に向かう。

幸いな事に入り口の広間で誰ともすれ違わなかったので、こっち方面に来ればクラスメートに見られる事は無い。

 

「あの、こっちってたしかパーティ用の家ですよね?」

「さっき借りたばっかりだけどね」

 

手前から3番目の並びにある、女子寮側の端の建物がうちのパーティが借りた部屋だ。

俺は私物を全部アイテムボックスに入れれるから、部屋に戻ることがあるだろう女子の利便性を考えての場所だ。

男子? 他の性欲タイプの男が入る事をあの二人が許すわけないじゃん。

 

鍵を開けて中に入ると玄関には二人の靴がある。やっぱり二人はまだここに居たようだ。

リビングに向かうと二人が床に座って話をしていた。

 

 

「あれ、ゆ~君どうしたの?」

「ハーイ、アスカ、ミサキ」

 

開きぱなっしのドアからリビング入った俺に気付いた明日香が首を傾げたけど、すかさずソフィーが顔を見せたので、納得という感じで頷いた。

 

「もう連れて来たんですの?」

「ううん、ボクたちがユキトを捕まえたんだよ♪」

「まぁ、レオナさんもですのね」

「草原の入り口で待ち構えてたんだ。で、ソフィーとレオナは俺たちと同じ衝動タイプで、後の二人は別タイプで別れたんだと」

 

ここに居た二人に連れてきた二人の事を説明すると、パーティに加わることに賛成してくれた。

一緒に連れて来たから、ソフィーだけ受け入れるという選択肢は無くなったようだ。

それにレオナが貴重な魔法の使い手ってのも大きかった。パーティの構成が良いにこした事は無いのは、二人もよく判っているからな。

 

後はこの四人が仲良くやってくれると信じるしかない。

 

 

「話も決まったし、二人をパーティに入れて事務課で追加申請してこないとな」

 

迷宮に行ってパーティに加えて、事務課に行ってパーティメンバーと部屋の使用者の追加申請をしないといけない。

使用料は俺がまとめて払う事にしてあるから、人数が増えても面倒は無いな。

 

「それが終わりましたら、お二人もこの家に必要そうな物の相談に加わってくださいませ」

「あぁそうだ、先にこれは出しておこうか」

 

アイテムボックスからクッションを4つ取り出して床に置く。板の間の地火炉の周りに置いてたやつだ。

女の子がリビングの床に直座りなのは、ちょっとかわいそうだからな。

 

布団を作るついでにクッションも追加で作らないとな。

 

 

 

ソフィーとレオナを連れて迷宮に行き、それから事務課へ向かう。

流石に今回は見つからないなんて事は無く、クラスメートの男子から嫉妬の視線を受ける。だけど、いつも四人で居たのに今は二人しかいない事に気づき、いやらしい笑みをするヤツもいた。

 

後の二人がまともな人とパーティ組めることを祈っておこうか。

 

 

 

 

 



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第31話

23XX年7月16日(金) 日本時間8:30

 

「みなさんおはようございます。今日は1学期最終日で終業式だけです。

明日からは夏休みとなりますが、期末試験で赤点を取った人は来週に補習と追試がありますから忘れないように予定を確認する事。

夏休み中は帰省したり外出したり出来るようになりますが、探索者カードは学校限定の物なので校外では使えませんから気を付けるように。

この後9時から式が始まり、終わったらそのまま解散になります。良い夏休みを……問題を起こさないようにね」

 

相変わらず最低限の連絡だけで終わる。

普通の学校と違って担任との距離が遠いからか、クラスメートの一部では不評だ。

俺は無駄に長話をされるよりは良いと思うし、それに高坂先生は強制依頼で先生をやらされているだけで、生徒の事を大切にとか考えていないのを知ってるからな。

 

 

「雪兎も家に帰るよな?」

「ん~、盆に墓参りするくらいしか戻らないよ」

 

式までの空いた時間に信也が聞いて来たので、帰省の予定を答えた。

家には誰も居ないし、クランハウスの方にも顔を出すけどそんなに長い時間居るわけじゃないし。

それに1駅だから日帰りでも全然問題無いんだよね。

 

そういうわけで、夏休み中でも迷宮の1階層で過ごす時間が多いだろう。

 

「え~、じゃあ私も残ろうかな~?」

「明日香はダメよ。下の子たちが待っているし、ママたちから色々聞かないといけないんだから」

 

明日香の希望は涼子に却下されたようだ。

クランハウスの下の子はまだ小学生だし、明日香が抜けると涼子やひかりの負担が増えるから仕方ないよな。

 

明日香は家に帰るとして、後の3人はどうするのかな?

 

 

 

23XX年7月16日(金) 日本時間12:00

 

終業式の後の借りた部屋で5人、裸でくっつきながら横になっていた。

4人とも早ければ今日、遅くても明日には家に帰るからと、こんな事になっている。

 

借りた初日の夜に全員同意の上でこういう関係になったから、問題は無いのだけどね。

 

 

「わたくしはお盆明けには戻って来る予定ですわ。神奈川ですから遠くもありませんし」

 

左腕を抱きしめている美咲が、何時ここに戻って来るのかという俺の質問に答えた。

 

そうか、美咲は盆明けに戻って来るのか。となると17日かな?

それでも今日帰るから30日以上にはなるんだよな。

 

「ワタシは7月中は旅行で8月には戻ってきますヨ」

「ボクの家は8月の頭から10日間海外に行くんだ。だから、その2~3日後には戻って来れると思う」

 

ソフィーとレオナの家はお盆関係なしなのか。って、欧州の家系で仏教徒じゃないし、当たり前か。

 

戻ってくるのは明日香が8月末、美咲が盆明け、ソフィーが8月頭、レオナが盆前って感じか。

ソフィーの帰りが早いから、思ったより一人で居る日は少なさそうだ。

 

 

ちなみに右腕が明日香で左腕が美咲、右脚がソフィーで左脚がレオナらしい。……合体ロボか何かかな?

泊り授業の晩の態勢にレオナが増えただけとはいえば、たいしたことが無いように思えるけど、両手足を固定されると大変なんだよ。

 

 

 

その後みんなでお風呂入って遅めの食事をとると、美咲が家に帰るので校門まで見送った。

それから少しすると明日香の帰る時間だ。一緒に帰る信也、涼子、ひかりの事も一緒に見送る事になる。

 

「じゃあ、先に帰ってるからな」

「忘れずに帰ってくるのよ?」

「待ってるから」

「早く帰ってきても良いんだからね~?」

 

家が近場の生徒達が帰るのが多い時間帯だったらしく、クラスメートの他にも先輩方にも見られる中の見送りになってしまった。

ソフィーやレオナの金髪は目立つから視線が集まるのは仕方ないけど、俺に殺気を投げるのは止めてください! 2年や3年にも欧州系の美少女が居るの知ってるんですよ!

 

 

残ったソフィーとレオナは明日の午前に出る予定なので、今日の残り時間となる晩御飯までの時間は迷宮に行く事にした。

ぶっちゃけ他にする事も無いんだよね、遊ぶなら夜でも良いわけだし。持ち込んだゲームも3か月以上遊んで飽きたからね。

せっかく外出できる夏休みなんだし、明日は新しいゲームでも買いに行こうかな。

 

3人で迷宮に入って、何時もの如く1階層の森へと向かう。

手頃な場所の木を伐ってスペースを作り、板の間を配置する。そこで俺が生産をして、他のみんなが近くでスキル上げをするのが最近の過ごし方だ。

 

ソフィーはおしゃべりしながら近くに沸いた大兎を狩り、レオナは適当な目標に魔法を打ち続ける。

レオナのMPが切れたら微魔草を採取して、低級MP回復ポーションを作って飲ます。

パーティメンバーにも採取の効果を及ぼすから、二人が摘んでくる微魔草の品質低下も無いからありがたい。

 

それにしても、今日は美咲が居ないから安心して作業ができるな。

美咲はたまに透明化の訓練とか言って、透明になった上に裸になって胸を顔に押し付けて来たりするようになってしまった。

関係を持ってからは、積極的どころか完全に肉食系お嬢様だ。

 

 

「ユキトー! ワタシ、オーラを出せるようになっちゃったヨ!」

 

声のする方を見ると、ソフィーの右手が金色っぽい何かに包まれていた。

あれがソフィーの言うオーラだろうか?

 

そのソフィーは俺と目が合うと、近くにあった木の幹を殴った。

 

すると『ゴォォォン!』と凄い音が鳴って、殴った場所が抉れるように凹んでいた。

恐らく格闘のアーツなんだろうけど、軽く小突いたような拳であんなになるなんてな。

 

「Oh……MPが半分になっちゃいました」

 

どうやら消費が激しいようだ。必殺技か何かかな?

固定値でも割合でも連発できるようなものではないという事か。後衛と違って前衛はポーション飲む余裕なんて無いだろうし。

HP回復ポーションと違って、MP回復ポーションは飲まないといけないのがネックなんだよな。飲み過ぎるとトイレも近くなるし。

 

 

そしてヨーコはいつも通りに大兎を狩っては、俺の所にドロップ品を持って来てくれている。

御褒美は焼いた肉ではなく、学食で買ったお稲荷さんだ。アイテムボックスにしまってあるから、作り立てのままだしね。

 

大量に注文したので変な目で見られてしまったけど、ヨーコが喜んでいるからそのくらいはね。

 



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第32話 夏休み

これからしばらく下の話が多くなります。

あとハーレムが加速します。





夏休みの初日、ソフィーとレオナは家に帰省していった。

これから暫らくは一人になるけど、やる事は大して変わらない。ただ8時間以上迷宮に居る事と衝動が起きる可能性があるので、そこは気を付けないといけない。

俺の場合は性欲衝動だから、一人で処理をすれば良いのだけれどね。

 

なので午前は駅前に買い物に行ったり購買に行ったりして、買い物の時間に当てる事にした。

服や娯楽品は勿論だけど、生産の材料になりそうな物とかも色々買った。

特に便利に使えそうなのがゴム板だ。武器や盾の持つ部分に薄くでも使えば、鋼や木に皮を巻いただけのよりは持ちやすくなるんじゃないかな? それに家具の底に付ければ床への傷防止にもなるし。

 

 

そして探索者協会の売店で見つけたスライムパウダー。

何でも水と混ぜてスライム粘膜を作れるらしい。これは一度加工すると数百倍もの水分を吸収する優れもので、防具の内側に付ける事で汗対策になる。

 

これ、防臭と一緒に下着の股間部に付ければ、小水対策になるのではないだろうか?

 

 

という考えにいたり、購買で取り寄せて貰った。

限定の為、校外ではポイント使えないから購買経由で買うしかないんだよね。

 

購入したスライムパウダーとゾンビ対策に購入してあった防臭剤の液体を使用してスライム粘膜を作った。

粉末と水を混ぜるだけなので生産技能は不要だけど、一度作った後は錬金を使用した方がキレイに作れた。

手作業だとダマになったり、粉末と液体の分量が悪いのか品質が悪かった。だけど錬金を使用すると、ベストな割合で消費してくれるからね。

そして薄く分割したり、型に沿ってキレイに切り取る事も出来る。

 

手作業で作った奴で吸収するかを試すと、無事水を吸収していった。コーヒーに対しても試すと、臭いまで無くなっていったので成功だ!

問題はどうやって装備なんかに試すかなんだけど、普通の下着に付けてしまうと洗濯が出来なくなる事に気が付いた。

 

 

その日の夕食時、食堂で高坂先生と出会った。

 

「あら、月見里君は帰省していないのね?」

「えぇ、墓参りに行くので盆の間だけですね。先生は帰省しないんですか?」

「あぁ、そうだったわね。先生たちは交代で休みになるので、私は8月以降ね」

 

詳しく聞くと、迷宮科目担当の先生――探索者3人――はバラけて夏休みを取るらしく、高坂先生は8月1日からだそうだ。

迷宮科目担当の3人が担任だから仕方ないのかな?

 

あっ、先生はビキニアーマーを装備していたよな!

洗濯機で洗うのではなく拭いて手入れする物だし、試させて貰えないかな?

 

とはいえ人の多い食堂では話せないので、食事が終わったら先生の借りている部屋に行く事になった。

 

 

 

 

「――というわけなんですよね。一応コーヒーを吸収させて臭わない事は確認できたんですけど」

 

先生の部屋のリビングでお茶を飲みながら、スライムパッドの説明をする。

 

「そうね、男の場合は出る場所が動いてしまうものね。だけど、上手くいったら君はブリーフを履く事になるのかしら? それとも、水着のブーメランかな?」

 

説明を聞いた高坂先生はニヤニヤしている。

 

「君の頼みだし、報酬を貰えるなら喜んで協力するわよ」

 

そう言って立ち上がると、俺の事を背後から抱きしめて「勿論報酬はわかってるよね?」と耳元で囁き、手を下に滑らせていった。

 

「そうね……月に2回くらい、性欲の高まった時にしてくれれば良いわ。勿論、卒業までの間ずっとよ」

 

俺にとっての初めての女性(ひと)だし、治まった時には衝動の無い時にちゃんと……なんて思ったりもしたけど、今はあの4人と関係を持ってしまっているしな。

 

そんな俺の心声が聞こえたのか、更に話を続けてくる。

 

「あなたも私も探索者で、お互いに多夫多妻の資格が有るの。だから浮気でも不倫でも無いし、肉体関係になっても誰も文句は言えないわ」

「それじゃあ俺と先生が……その、結婚する事になるんじゃ?」

「あら、そういう前提でも最後に結ばれないって事は多いのよ。……それとも、本当に先生と一緒になりたいのかしら? ふふ、そうなら嬉しいけど……それは卒業してからの話ね」

 

この話の間中、ずっと息子を撫でられ続けられていたから、したくて仕方が無い。

先生に上手い様に誘導されているような気もするけど、逆らおうという気にはならないんだよな。

 

「先生……俺、もう……」

「そう言う事で良いのよね? なら、ベッドに行きましょうか」

 

こうして先生に協力して貰う代わりに、卒業まで先生と肉体関係を持ち続ける事が決まったのだった。

 

 

 

 

 

「やっぱり、良いわ。先生、あなたのじゃないと満足できなくなっちゃいそうよ」

 

先生の中に何回も出した後、つながったまま胸に顔を埋めて横になっていると、頭を撫でられる。

それがとても心地良い。年上ゆえの包容力なのだろうか? それとも他のクラスメートには見せない一面を見せられているからだろうか?

 

体の力が抜けて、眠くなってきた……

 

 

 

 

翌日目が覚めた後、二人で迷宮に来た。何故こうなったかのは寝ぼけいたからかよく覚えていないけど、ここも先生に誘導されてしまったのだろう。

早朝の朝食前という事もあって人も居ないけど、念の為にと森の奥に行く。

 

そして板の間を出して、生産の準備をする。

 

「へぇ、これがスライム粘膜なのね」

 

アイテムボックスから消臭スライム粘膜を取り出すと、先生は指先で突いたりしながらそれを見ていた。

 

「約束だから協力するけど、先生のビキニアーマー。これでも結構高価なのよ。だからその前に他ので試してみましょう」

 

先生はそう言うと鞄から小さな袋に入ったものを取り出した。

袋の中から取り出して長方形っぽい形に展開すると、俺に見せて来た。

 

「これ見た事は無い? パンティライナーって言うんだけど」

 

先生はそれの説明と、実際に装着するまでを目の前で見せてくれた。

目の前で脱いだそれを見せられるとドキドキするよね。

 

「この形に合わせて出来るだけ薄くしたのを付けるとして、問題はどのくらい吸ってくれるのかと、吸った後の重さや感触がどうかわるかよね。吸い切れずに溢れたり、動きづらかったら意味が無いもの」

 

確か1回で数百㎖、一日で1~2ℓくらいだっけ?

仮眠時に交換できるにしても、そのくらいは吸収できないと意味が無いって事か。

作った時に水やコーヒーで試した時は、膨らんだり重くなったりとは感じなかったけど、そのくらいの量を吸収したらどうなるかだよね。

 

物に合わせた形で1mmの厚さの物を作り、まずはコレでどのくらい吸収できるか試してみることにした。

 

結果5ℓもの水を吸収できたので第一段階はOK。二日は持つ計算だけど、二日もあれば交換するタイミングは有るだろうし、小だけでは済まなくなるだろうしね。

同じ形に作った物と比較してみたけど、ほぼ同じだったのでこれもOK。実際には少しだけ膨らんでいたけど、mm以下なので気にならないだろうという結論だ。

 

 

錬金スキルを使用して、先生のパンツに付けられたパンティライナーにスライム粘膜を融合させた。

それを先生は手に取ると、脚を通して履いていく。あのスカートの中はさっきまでノーパンだったんだよね……

 

「吸い付くように肌にぴったりくっ付くのね。動きも阻害しないし、鎧の一番内側に付けるだけでも、鎧下とか不要になって良いんじゃないかしら?」

 

先生は脚を動かしたり開いたり閉じたりして感触を確かめて言った。

 

「汗対策で防具の内側に付けたりはしているそうですよ」

「なら金属鎧の背中とか手とかなのかしら? ビキニアーマーや皮鎧ではそんな話を聞いたこと無いし」

 

先生でも聞いた事が無いなら、それこそ一部でしか使われていないのか。

こんなに性能が良いのに勿体ない。

 

「そ、それじゃあ、本番いくわよ……」

 

先生はそう宣言すると、スカートをパンツが見えるくらいまでまくり軽く足を開いた。

少し顔を顰めた次の瞬間「んっ」という言葉と共に顔の力みが消えた。

 

少し時間が経ったところで先生は閉じていた目を開き、自分の股と俺の顔を見た。

 

「漏れてないわよね……?」

 

その言葉を確認するために、先生の股間部を観察して指を触れてみる。

うん、指先が濡れる感触も無いし全く漏れていない。

 

「それじゃあ動きに問題ないかも確認するわね」

 

そう言って歩いたりしゃがんだり更には脚を振り上げたりと、する前より激しい動きしている。

 

「うん。重さも気にならないし、動いてズレる事も無いから大丈夫みたい」

 

これで実験は終わりで、後はビキニアーマーにといったところで先生からストップがかかった。

 

なんでも装備に付けるより、パンティライナーに付けた方が良いのではないかという事だ。

その方が普通の下着でも使えるから生徒にも売れるだろうし、継続的な需要が見込めるだろうと。

更に装備に付けてしまうと、吸収した水分が乾くのにどのくらいかかるのか不明な事。水分を除いたものがどうなるのか不明で、清潔面で不安が残ると。

 

たしかに脱いだ後に触らせて貰ったけど、先生の股間もスライム粘膜もツルツルサラサラで全て吸収されているっぽいんだよな。まあ、コーヒーも全て吸収したもんな、当たり前か。

確かに水は蒸発するとしても、他の成分はどうなるんだろうな。スライム粘膜の中に蓄積されていくのだろうか?

現在使われている鎧ではどうなんだろうか? 拭いてキレイにすれば良いだけなのか? 下手に雑菌が繁殖なんてしたら大変だ。特に大切な部分に接するわけだし……

 

 

 

 



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