厨二病だよ黒崎くん (きりたん)
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厨二病だよ黒崎くん

俺は空座第一高校に通う普通の高校生だ。

他の人と違うのは前世の記憶を持ってるって事くらい。

ちなみに自分で言うのもなんだが俺は人気者だと思う。第二の人生は強くてニューゲーム(頭脳は大人、身体は子供スタート)ってやつだ。

通学中に電柱の影に隠れてる女の子とか、道に突っ立ってるサラリーマンとか色々と声をかけられる事が多いんだ。

まぁ時間もないからちょこっと話してすぐ行っちゃうんだけど、向こうはもっと話したいらしい。

たまにヒソヒソとこっち向いて話してる人たちもいるけど、普通に声かけてくれればいいのにな?

そういえばたまにオレンジの髪した不良がこっち見てるけどカツアゲには注意しとこう。

まぁ学校自体が不良の多い学校だから俺みたいな普通の学生なんてただのカモでしかないんだろう。

この町は特徴的な人間が多い。ここ日本のはずなのに…

 

いつも通り学校で授業を受け帰り道、今日も電柱のところで女の子が立ってるから話してから帰る。もうここまでくると日課みたいなもんだな、うん。

 

 おにいちゃんはいつもたのしそうだね

「まぁねー、でも結構毎日同じような事しかしてないんだよ」

 でも由美うらやましいな

「由美ちゃん小学生くらいだよね?楽しいこといっぱいあるんじゃないの?」

 ううん、由美学校いってないから

 

知らなかった。いっつも同じ場所にいるから不思議だったけど学校に通わせてもらってないのか!?

義務教育を放棄するとはなんて親なんだ。ここ日本だぞ。

 

「おい」

(しかし俺が何かしたところで由美ちゃんが学校行けるようになるとは思えないし…)

「おい!そこのお前!」

(いや確か悩める子供相談室とか子供を愛でる会とかに相談すれば…ん?)

「電柱に向かって独り言言ってるお前だよ!」

 

俺は由美ちゃんと話してるから違うけど、電柱に向かって独り言ってどんな寂しいやつだよ。あんまり友達になりたくないけど顔みたろ。

周りを見渡してみるけど電柱に話してるやつなんてどこにもいない。

これはあれだ。見えてはいけないものが見えてる悪い薬とかやってるやつだ。

君子危うきに近寄らずって言葉もある。危ない人には近づかないようにしよう。

あ、由美ちゃんにもちゃんと注意しとかないと。

と思ったらたまにこっち見てるオレンジヤンキーがこっち来た。

 

「お前だよ!ったく何回声かけさせんだよ」

「うん?何を言ってるのかわからないが俺はお金持ってないから帰して」

「待て待て!そうじゃねぇ。…お前さ、なんで電柱に向かって話してたんだ?」

「何を言ってるんだい?俺はこの子と話してただけだよ」

「あー、いや、俺も見えるんだけどよ。なんつーか、そいつって普通は見えないんだ」

 

オレンジヤンキーはやっぱり悪い薬やってるみたいだ。

たぶん俺の顔はすっごく優しい表情をしていると思う。というか早く逃げたい。

とにかく刺激しないように気をつけてゆっくりと離れる。

あ、肩掴まれた。

 

「なんだその表情は。お前が何考えてんのか知らねーがそれは誤解だ」

「大丈夫。まだ俺たちは高校生だ。人生だってやり直せる。良薬口に苦しって言ってね。苦い薬がよく効くけど、気持ち良くなる薬ってのは身体に悪いんだよ。とにかく俺は帰るね。由美ちゃんもまたね」

 

なんとか逃げようとしたけどなぜか逃してくれないぞこいつ。しかもやけに違う違うって否定してるけど何が違うんだ?

あー、わかった!誰もこのオレンジヤンキーの話に付き合ってくれないからか!そりゃ誰だって近づきたくねーよ!なんだ見えるとか見えないって。

話聞くまで帰してくれない気がしたから聞くだけ聞いて開放してもらおう。

 

どうやら俺がよく話しているのは幽霊で普通の人間には見えないとか、それを見てる普通の人間からは何もないところででかい声で独り言喋ってるから気味悪がられてるとか、そんな内容だった。

なるほどね。理解した。ただの高校生なら騙されるかもしれないが、こちとら前世持ちだ。

このオレンジヤンキーの言いたいことはすぐにわかった。

 

「開放して欲しくば壺を買え」ということだ。もしくはお札とかか。

 

そういや前世でも霊が憑いているとか言ってお水買わされそうになったことあるわ。

とにかくそういうことだったのか。唆されてこんな事してるのか悪い薬欲しさなのか知らんが彼を救えるのは俺だけということか…

 

「ヤンキーくん、悪いことは言わない。今すぐ病院へ行くんだ。時間はかかるかもしれないがちゃんと治してくれる。そんな事をしても君のためにならないんだ。いいね?学校には俺からちゃんと伝えておく。元気になったらまた学校で会おう」

「だから違うんだって!ひとの話をちゃんと聞け!あと俺はヤンキーじゃねぇ!黒崎って名前があるし、なんなら家は病院だ!」

「ならちゃんと家の人に頼んで治療してもらうんだ。何も恥ずかしい事じゃない。今はわからないかもしれないが、将来この経験(黒歴史)が君の糧になってくれるかもしれないよ」

 

平和な島国育ちというのは良い事ではあるんだが危機感が欠如しているのは問題点かもしれないな。

とか思ってたらやっぱり違うとの事。どうやら自分も幽霊が見えるから幽霊と普通に話している俺を見て声をかけたらしい。

 

 

ただのヤンキーだと思ってたらスピリチュアルヤンキーだったとは。

 

 

悪いとは言わない。彼にも何か耐え難いトラウマがあって空想の世界しか逃げるところがなかったんだろう。

そう考えるとオレンジの髪は黄色信号から(危険)信号になる前という比喩か。

そうやって外部に近づかないでくれと示しながらもやはり1人は嫌だから誰かを求めてしまうんだな。

俺みたいに老若男女問わず話しかけられる人間ならば話しやすいと思って期待を込めていたのだろう。

その期待には応えてあげたいところだが黒崎くんだけに構っているわけにもいくまい。

ひとまず今日のところは納得いくまで話を聞いてあげて満足させてあげよう。

 

「あー、黒崎くん。君の話はちゃんと聞くから場所を変えないか?このままじゃ由美ちゃんもどうしていいかわからないし道端で話すような事でもないだろう?」

「あぁ、そうだな。お前がちゃんと話を聞いてりゃこんなに疲れることもなかったんだが」

「大丈夫。君の言いたい事(恥ずかしい妄想)はちゃんと聞いている。理解できているかと言われたら自信がないんだけどね」

「そりゃ突然(実は話してたのが幽霊だったとか)言われたら理解できねーよな。とにかく場所変えるか」

 

 

 

そこから黒崎くんの話に付き合う形で俺も前世の知識を披露することにした。

この世には幽霊が溢れていて、幽霊の事件は霊界探偵という存在が解決したりすることや霊界の他に魔界なんかもあって強大な勢力が覇権を争っていること、外国の秘境にはパッチ族という民族が代々偉大なる大精霊(グレートスピリッツ)を守っていることなどだ。

どうやら黒崎くんの琴線に触れることがあったのか「幽霊に追いかけられるんだがなんとかならないか?」と聞いてきた。

ちなみになんと答えたのかというと「すべては偉大なる大精霊(グレートスピリッツ)の導きによって決められる。君が幽霊に追いかけられるということは、近いうちに黒崎くんは霊と戦いに巻き込まれる可能性が高いね。今のうちに魂の力を使えるようになっておかないと苦労するよ」だ。

まぁシャーマンファイトなんてあるわけないんだが。

その日はそんな話をして別れ、帰り道でたまに会うお姉さんと話してから帰った。

このお姉さんはよく怪我する人みたいでいつも頭から血が出てる。病院を勧めても大丈夫としか言わないし困ったもんだ。ちなみに連絡先を聞いても教えてくれなかった。

 

 

 

しばらくして黒崎くんに会ったんだが、なぜかお礼を言われた。

なんでも死神と会って戦う力を手に入れたんだそうだ。そして今は死神代行として戦うことにしたらしい。戦う時に以前聞いていたいろんな技や戦い方が参考になったんだって。

 

 

俺は内心かなり焦った。黒崎くんはいよいよトリップしてしまったようだ。俺のせいで黒崎くんはますます現実逃避し始めてしまったんだから。

 

いや、いい方に考えろ俺!黒崎くんは自分なりのファンタジー小説を作ろうとしているのかもしれない。もしくは漫画家。

将来彼が考えたキャラクターたちがゲームになってるかもしれないんだ。

 

彼は悪霊にホロウという名前を付けてた。なるほど、hollowか。可愛さも含みながら敵役の名前にするならいい感じだな。ネーミングセンスは良さそうだ。

しかし死神の力ってのは少しばかり中二っぽくないか?いやこのくらいの年齢ならまだ闇とか大好きな年齢か。死神の代行っていうのはよくわからない設定だが、序盤は代行として成長していって死神になるとかそんな感じなのか?

 

「いいかい黒崎くん。敵との戦いは常に初見だ。そして敵は毎回違う力を持っている。そんな相手に簡単に勝てるなんてことはありえない。だから負けそうになって膝を折ってしまいそうな状況になっても、決して諦めずに()()()()に問いかけるんだ。そして内なる自分に打ち勝った時、秘められた力を開放して勝つんだ」

「あぁ、わかってる。今の俺はまだ戦う力を手に入れたに過ぎねぇ。だが、俺がみんなもこの町も護りきってやるさ」

「その意気だよ黒崎くん。(主人公に自分を投影しているのはどうかと思うが)君が諦めなければきっと守れるさ。ただ(主人公の俺ツエーーはあんまり好きじゃないから)仲間の存在を忘れてはいけないよ。仲間とは共に戦う者であって君が守る者ではないんだからね。信頼し背中を預けるってのは君にとっても仲間にとっても大事なことさ」

「…そっか、そうだよな。確かに仲間(ルキアたち)を信じるってのは大事だな。ありがとよ。俺はいつの間にか1人で全部護ろうとしてた」

「それは仕方ないことなんだよ。(キャラは複数動かすより主人公だけのほうが楽だからね)でも1人で全部を守れるなんて不可能(駄作)だ。(設定を考えるのは)難しいかもしれないけどぜひ頑張ってほしい」

「そうだな。確かに(仲間にも傷ついてほしくないなんて)難しい事かもしれないけど俺1人で全部なんて不可能だもんな。ちゃんと(仲間と戦うって事を)考えてみるわ」

「急ぐ必要なんてないさ。時間をかけてもいいから(設定を)考えてみるといいよ」

 

どうやら黒崎くんは日本刀で戦う設定にしているようなので、参考にと某流浪人の漫画の技なんかを教えてあげた。

いずれは地球上のみんなから元気をもらって最後の一太刀とかも教えてあげよう。

 

たぶん今は近接戦闘メインで戦う設定なんだろうけど、絶対に中盤くらいからは能力ものとか霊力の強さがーとかになるはずだ。

どうしても次から次へと強い敵を出そうと思ったら腕力だけじゃ無理だしね。死神設定なんだから○○を司るとかやりそうだし。

まぁこれは黒崎くんの(考えた)物語だから俺があんまり口出しするのは無粋ってやつだ。

助言を請われた時にだけアドバイスしてればいいや。

後日また黒崎くんに会った。なんでもちゃんと仲間を信頼して一緒に戦うことにしたらしい。

 

「そっか、そのほうがいいよ。(戦隊モノとかもそうだけど)5人くらいは必要だと思ってたんだ」

「あぁ、(俺、ルキア、チャド、井上、石田、こうなることがわかってたのか…)あんまり巻き込みたくなかったんだが、この前言われたことを考えて仲間を信じることにした」

「アドバイスが役に立ったなら嬉しいよ。んで、今日はどうしたんだい?」

「あぁ、またちょっと相談なんだけどよ」

 

黒崎くんの相談というのは仲間の能力についてだった。1人は右腕を変化させて戦うパワーファイターで、もう1人は怪我を治療したりするヒーラーのようだ。

なんでもこの後死神の世界に連れ去られた仲間を助けに行くことになって、自分含めパワーアップが必要になったらしい。

奪われた仲間を助けに行く展開か。

 

 

うん、やはり黒崎くんは王道的中二だったようだ。

 

 

修行回ならば四大行とか教えてもいいか?いや、焦るな俺。もし黒崎くんが俺のアドバイスをそのまま取り入れていたら物語の繋がりとかおかしくならないか?

確か霊力を使う死神設定だったのに念とか出てきたらおかしいよな。

まぁそのへんは追々教えてやるか。

 

「そうだね。話を聞いた感じだと2人とも力に目覚めてまだ間もない(設定)だろう?まずは基礎能力を高めていくほうがいいんじゃないかな?」

「やっぱりそうだよな。いつもみたいに(ぶっ飛んだ)意見とか発想とかないのか?」

「うーん、霊力ってさ。イメージなんだよね(たぶん)。発想力とも言える。そしてそのイメージした通りの形を思い通りに操ることができたら、それだけで戦いの中での選択肢は広がると思うんだ。パワーファイターの子なら大砲にするとか、腕自体を大きな剣や槌にするとか、鞭にして変則的に戦うのもありだね。ヒーラーの子なら戦うよりもまず自分が攻撃を食らわない事が大前提じゃないかな?(黒崎くんが考えた設定がわからないから)詳しく教えてもらったりすればまた違う意見も出るかもしれないけどね」

「いや、こうやって色々(霊力や戦い方の)話を聞いてもらってるだけで十分だ。」

「そうかい?(他の人に話したらイタイ子扱いだろうから)俺でよかったら話を聞くくらいいつでも構わないよ」

 

そこからしばらく黒崎くんに出会わなかった。学校も休んでるみたいだ。

おそらく執筆活動に集中しているんだろう。でも欠席は良くないぞ。

なぜか今まで会っていた由美ちゃんや他の人たちも会わなかったんだが、由美ちゃんはちゃんと学校に通えるようになったのか心配である。

 

そんな事を考えてたら黒崎くんがやってきた。元々彼にはいつも仲の良い友だちがいるから俺から話しかけることは少ない。いや俺は俺でちゃんと友だちがいるぞ。

俺と話す時は基本妄想物語の事だしクラスメートの前で話していい内容ではないからそんなに話すことがないだけだ。

だが彼の様子がおかしい。いつもみたいに妄想を話している時の雰囲気ではなく気落ちしているような…表面上は隠してるつもりだろうが俺にはお見通しだ。

 

そして俺には黒崎くんが落ち込んでいる理由だってちゃんと理解している。

 

 

 

 

そう、スランプだ!

 

 

 

 

いやぁこればっかりは仕方ない事なんだよな。どれだけ妄想力が高くても必ずぶち当たる壁だ。

ここでその壁(スランプ)をぶち破れるかどうかで彼の今後が変わるだろう。

こちらに気づいていないようだし、たまには俺のほうから声をかけてみるか。

 

「やぁ黒崎くん。随分と暗い表情をしているけど何かあったのかい?」

「あぁ、ちょっとな。いや、お前ならいいか。この後時間あるか?」

「もちろんだよ。その空元気というか気落ちしてるのを隠してますみたいな態度の理由も気になるしね」

「気づかれてたのかよ…他のみんなも気づいてたのか?」

「さてね。気づいている人も何人かいそうだけど、俺はすぐにわかったよ」

 

放課後の教室で黒崎くんと2人だけで話を聞く。クラスメートの井上さん(だっけ?)などは心配そうに待とうとしていたが黒崎くんが大丈夫だからと帰らせていた。

まぁ今からする話は誰にも聞かせたくはないだろう。下手するとゴミを見るような目で見られかねない。

 

黒崎くんから話を聞き、要約すると俺(主人公)が敵と戦いボスに対して自分の持つ力を全て使って倒した。それによって黒崎くん(主人公)は今まで使えた霊力を使えなくなった。自分だけ戦う事ができなくなり仲間に任せっぱなしになっているのが悔しい。ということだった。

 

なんだ、スランプかと思ったらめっちゃ脳内物語進んでるじゃん。

 

この展開で考えられるのは2パターンある。主人公交代パターンか、主人公の力復活パターンだ。

つまり今は主人公が力を取り戻すまでの仲間パートなのだ。

だけど黒崎くんは自分が主人公になりきってるから展開が思いつかないのだろう。

 

「黒崎くん、君の話はよくわかった。だけど諦めちゃいけない。そして焦ってもいけない。これは次(の展開)のために必要な時間なんだ。黒崎くん(主人公)自身が前に出たいって気持ちは大事だけど、今は一緒に戦う仲間たちがこの後も一緒に戦っていくための時間(修行回)だと思うんだ。」

「なんだよそりゃ?藍染よりも強い敵が現れるっていうのか?」

「そうだね。(愛染?愛染明王か?死神設定だから敵は仏とかそういう感じなのかな?)俺は愛染で終わりだとは思わない。(仏教的な意味で)」

「そっか、なんでそう思うのかはわかんねーけど、今までお前のアドバイスは役に立ってるしそうなのかもしれねぇな」

「そしてもう1つアドバイスだ。こういう状況(展開)の時は焦れながらもその時を待つんだ。そうすれば仲間や今まで戦ってきた好敵手(ライバル)たちが力をくれるもんさ」

 

感情移入も大事だが主人公になりきってしまっては良い物語など浮かばないだろうに。

いや、黒崎くんの事(厨二病患者)だからそういう妄想をしたほうが思いついたりするのかもしれないな。

主人公が復活した後の敵なんかについて考えているのかもしれない、気落ちしていた表情から考える表情になった黒崎くんと学校を離れ、雑談しながら帰っていった。

 

 

 

 

後日また黒崎くんから話をきいた。

なんでも新しい力に目覚めたんだけど、その力を奪われてしまい最後には敵対したり共に戦った死神たちの協力を得て力を取り戻したらしい。

うんうん、悩んだ甲斐があったね黒崎くん。

仲間たちもしっかり成長し一緒に戦っていたみたいだし、スランプを乗り越えられて良かった良かった。

 

「色々と焦ったりもしたけどさ。お前と話してたら仲間たちと協力する事とか、やっぱ大事だったんだなって改めて思えたわ」

「それならよかったよ。無事に(スランプ)を乗り越えられたようだしね。でも大事なのはこの後だと思うんだ。聞いてる話でいくと、この後に集大成とも言える敵が出てくると思うんだよね。今まで培ってきた絆や黒崎くん(主人公)が持つ力、それに今まで戦ってきたライバルたちの力を全部使っても勝てないかもしれないと思わせるような敵がね」

「それが前に言ってた藍染よりも強い敵ってやつか。今までもそうだったけど、お前には未来が見えてるのか?」

「(妄想物語の)未来か…それは俺にはわからないけど、きっと黒崎くん(主人公)ならやってくれると信じてるよ」

「そっか、俺も誰がきてもみんなを護ってみせるさ」

「あはは、信じてるよ。君ならば必ず(この妄想を)終わらせて(卒業して)くれるって」

「あぁ!任せとけ!」

 

今までずっと黒崎くんの妄想を聞いていて、起承転結で言えば今は「転」の段階だ。

 

主人公が死神の力を得て戦い始めて、その力を失って仲間パートも出てきたし、次は最後に仲間やライバルたちと共闘してラスボスを倒して終幕だ。

長かったような短かったような気がする黒崎くんの妄想物語だけど、ここまできたら最後まで見届けたい気持ちもある。

 

そして将来大人になった彼にこの物語を聞かせてあげて悶え苦しむ様子をニヤニヤと見てみたい。

ここまで付き合ったんだからそれくらい許されるだろう?

今のうちに設定集とか作ってもらっておくか。でもそんなの保管してたら俺がイタイやつだよな。

 

高校生活も今年が最後なんだ。黒崎くんよ、ぜひともこの壮大な妄想に決着をつけてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

彼の妄想力を侮っていたよ…

 

最初は死神とか仏とか日本が舞台なのかと思ってたのに途中からやけに西洋名になるなと思ってたんだ。

ホロウなんかは可愛げのある名前だなくらいだったけど、アランカル(?)とかクインシー(?)とかどっから出てきたんだ?って名前がすらすら出てきてた。

おかしいだろ!愛染明王が最初のボスだったんだから次に出てくるのは菩薩とかそんな感じにならないと繋がらなくね!?

 

 

…いや、そうじゃない。これはきっと俺の考え方が固まってしまってるのが問題なんだ。

 

 

死神が主人公だからと言って神仏を敵にするのが浅いってことなのか!

確かに地球人だと思ってたらサイヤ人だったりナメック星人だったりしてたもんな。

ハオ様だって今の俺を見たらきっと「ちっちぇえな」って言うよな。

 

オーケー大丈夫だ。さぁ黒崎くん続きを聞かせてくれ。

 

 

え?ラスボスは未来を改変する力?…まぁいいけど風呂敷広げすぎて大丈夫?

 

死神の力にホロウの力とクインシーの力を合わせて戦った?

 

まぁ単純に力が増大したよりも説得力はある…か?

 

かつて倒した愛染も共に戦った?なるほどボスも仲間になるパターンのやつね。

 

それでも苦戦していたけど、最後は能力を無効化させるアイテムを使って倒したってことね。

 

あれか、ひかりのたまみたいなやつか。闇を払うみたいな。

 

「(脳内では)随分と激戦だったみたいだね。でもまぁ最後は(妄想物語を)終わらせることができて良かったよ」

「あぁ、まさか本当に藍染よりも強いやつが出てくるなんて思わなかったな…俺1人だけだったら絶対に勝てなかった。正直もう1回戦ったら今度は勝てないかもしれねーな。それくらいの相手だった」

「うん、(主人公)1人では勝てないだろうね。(俺ツエーー好きな)黒崎くんとしては単独撃破したかったんだろうけど、それじゃあダメなんだ(人気が出ない)よ。あぁでも、もし次(作)があるなら無双するのも面白いかもしれないね」

「…なるほどな。次(現世や尸魂界を脅かす)敵が現れるようなら俺1人で倒せるくらいに強くなればいいんだよな」

「そうそう、君の物語(妄想)はまだこれからだろう?俺ができるのはアドバイス(設定の助言)だけなんだけど、黒崎くんには期待してるよ」

「あぁ、俺が護ってやるさ!」

 

 

 

 

 

 

次に黒崎くんの物語(妄想)を聞かせてもらうのが楽しみだ。

 



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がんばれルキアちゃん

一護のやつが変わった。

 

 

 

 

私、朽木ルキアにとって黒崎一護はたまたま助けた人間でしかなかった。

だがその時に不甲斐なくも力をすべて奪われてしまい、死神としての活動ができなくなってしまった。

緊急の措置としてしばらくの間一護に死神の代行として活動してもらうことにしたのだが…

 

最初は見慣れない虚相手に戸惑っていた。

いきなり戦うことになった平和な国の若者が見知らぬ怪物相手にして怯まないはずがない。

当然の事だし、私の力が戻るまでの事だからと見守っていたのだ。

あれはいつだったか、死神代行として活動してしばらくした頃に一護から不思議な事を聞かれた。

 

「なぁルキア、あの世には幽霊がいっぱいいるんだろ?霊界探偵ってのがいるって聞いたんだが、そいつってどこ行ったら会えるんだ?」

「は?霊界探偵だと?私は今のところ聞いた事も会った事もないな。護廷の隊長たちなら何か知っているのかもしれんが、末端の私では聞いた事のない存在だ」

「そっか、霊丸ってやつを教えてもらいたかったんだが、自分でやってみるっきゃねーな」

 

何やら一護と同じく霊を見ることのできる知人から教えてもらったらしいが、霊界には事件を解決する探偵なんかもいるらしい。

 

まさか死神である私が現世の青年に教えてもらうとは!朽木ルキア一生の不覚!

 

私とて朽木家に属するまでは真央霊術院に通っていたというのに、まさかそんな存在がいたことすら気づかなかった。

いや、今まで聞いたことがなく現世だからこそ知ることができたと思えば、もしかしたら表の組織ではないのかもしれないな。

一護の様子を見るに、騙しているとかそんな雰囲気は感じられない。

 

ということは、その霊を見ることのできる知人が以前にその霊界探偵という者に助けられたのだろう。

私も会ってみたいが霊の事件が起きる時に現れるらしい。

虚なんかは現世滞在中の死神が解決するから、おそらく虚の関係しない事件の解決を担当しているのだろう。

 

そしてその日から一護の修行が変わった。

 

霊力を指先に集める練習をしていたり、斬魄刀ではなぜか抜刀術をよく練習していた。

目指すところは人間に9つある急所を同時に攻撃できるようになることらしい。

「九頭龍閃」という名前らしいんだが、それもその知人に教えてもらった技のようだ。

 

その知人は何者なのだろうか?

 

斬拳走鬼は知らないようだが、何か別の戦い方を知っているような感じがする。

現世の人間ならば剣術は知っていてもおかしくないが、霊力を操ったり集めたりなどは知らないものだ。

しかも遠い外国の秘境には偉大なる大精霊(グレートスピリッツ)なる存在がいることも教えられたらしい。

そして今のうちに霊力を扱った戦い方を学んでおかないとこれからの戦いを乗り越えることはできないと言われたそうだ。

 

確かに今の一護では弱い虚相手ならともかく、大虚なんて出てきてしまえば勝てないだろう。

一護の他に茶渡、井上、石田と共に戦う仲間が増えていき、お互いに切磋琢磨しながら腕を上げていった。

どうやら一護は知人から助言をもらっているようで、自分の中の魂に語りかけ打ち勝てと言われたのだと。

 

本当によく知っている。

 

自身の分身でもある斬魄刀に語りかけ屈服させることこそ死神の力を上げる方法だ。

それをわかっていて、具体的にではなく抽象的に語ることで考えることを促す。

これで一護がまた少し賢くなってくれれば知人の目的は達成されるのだろう。

 

 

 

 

 

 

どうやら一護たちの成長を見れるのはここまでのようだ。

尸魂界から迎えが来ることはわかっていたが、まさか兄様まで来るとは…

すまない一護、ここでお別れのようだ。

 

 

 

 

 

 

あのたわけものめ、何が「生きたいって言え!!」だ。

死神なんだからとっくに死んでおるわ。

 

というか一護よ。お前、月牙天衝という名前はどうした?

「月牙天衝…魔王半月剣!」って何が変わったのかよくわからんぞ。

え?出した衝撃が三日月から半月になれば力も強くなるのか?

でもそれだと満月になったら丸い衝撃波が飛んで行かないか?

本当は月の力を蓄える剣があるけど持ってないから再現したと?

この前まで使ってた抜刀術はどうしたのだ。

 

 

 

 

 

一護の考える事は私には難しすぎる。

 

 

 

共に戦う仲間たちですら理解できているのか怪しいものだ。

だがおかげで魂魄すらも消滅するという事態は逃れられたので良しとしよう。

藍染惣右介が黒幕だと判明し、虚圏に逃げられはしたが挽回のチャンスは残った。

 

一護たちは現世へと帰るらしいが、その前に戦っていた者たちは「あの剣術はなんだ?」と質問していた。

そして帰るまでの少しの時間で死神たちに「飛天御剣流」という剣術を説明して帰っていった。

 

待て一護よ!あとはルキアに教えてあるじゃないわ!この馬鹿者!

私は別に教えてもらっておらん!ええい、私は知らんのだ!

あれ卯ノ花隊長?いえ私は本当に何も知らないのです!

更木隊長がやられた技?飛び上がって打ち下ろして…

あぁ、それはおそらく龍翔閃からの龍槌閃でその後に龍巻閃、最後に龍巣閃ではないでしょうか?いえ、私は本当に使えないのです!

 

 

 

 

 

井上が拐われたと聞き虚圏に向かい、今は亡き海燕殿に扮した破面も倒すことができ、一護も現世へと向かった。

後は藍染を倒してくれるのを信じるだけだ。

 

しかし一護が知人から教えてもらったという「永遠を揺蕩い舞い散る魂(エターナルフォースブリザード)」というのはすごい威力だ。

私の袖白雪とも相性が良く、とても満足のゆく結果が出た。

 

問題は後述詠唱だけだ。なぜ後から「相手は死ぬ」って言わねばならんのだ?

 

 

 

 

 

どうやら一護は無事に藍染を倒し、封印することができたようだ。

そして一護たちもお咎めなしとなった。よかった。

一護はその力を全て使い果たし、もう死神として戦う事はできないという。

それでいい。現世で生きているのだからこれからは人間として暮らしてほしい。

 

だが最後に浦原に奇妙な事を言われた。

 

「朽木ルキアさん、あなた黒崎サンに何を教えていたんスか?」

「ん?なんのことだ?」

「黒崎サンが藍染惣右介に言ってたっすよ。これを見てください」

 

そこには一護と藍染の最後の戦いが映っていた。

どうやら浦原は一護が勝てばいいが、負けた場合に藍染の対策を練るために録画していたらしい。

そこには黒い霊圧を吹き出し藍染と対している一護がいた。

 

 

 

 ふぅ、どうやら俺もついに()()ができるようになったらしいな

 

 ほう?ただの霊圧にしか見えないが、それで私を楽しませてくれるのかい?

 

 あぁ、その溢れ出る黒い霊圧ですべてを焼き払うという…邪王炎殺剣

 

 私にはただの霊圧にしか見えないがね。まぁいい。その邪王炎殺剣とやらの力でこの私を倒してみせるがいい

 

 ならば始める前に言っておく。己の力に溺れる者は、より大きな力の持ち主の前には必ず敗れ、己が不明を悔いるはめとなる。人それを…必滅という!

 

 この私が敗れると言いたいのかい?面白い言葉だ。誰の言葉だい?

 

 てめぇに教えてやる名前はねぇ!

 

 

 

そこからは映らないほどの速度で戦っているのであろう光景が映っていた。そして場面は最後の一護のすべてを賭けた最後の一撃になる。

 

 

 

 邪眼の力を舐めるなよおおおお!!!!!!

 

 

 

ふむ、一護に邪眼などあっただろうか?その前にあんな口上述べる男だったか?藍染に最後の一撃を加える場面を見ながら私はそんなことを考えていた。

 

「今見て頂いたのが最後の戦いの場面っス。邪王炎殺剣てのが何かわかりませんが、黒崎サンはこれを教えてもらったと言ってました。黒崎サンに戦いを教えたのはあなたしかいないので、どういった技なのか聞きたかったんでス」

「いや、これは私ではない。一護の現世の知人が戦い方に詳しいらしくいろいろと助言をもらっていたようだ」

「ふむふむ、ならばいずれ現世でお会いすることもあるでしょう。それでは」

 

どうやら浦原はそれだけ聞きたかったようだった。

 

 

これで平和になった尸魂界だが、知らないところで違う問題が発生していたのだ。

 

 

今、尸魂界では飛天御剣流や邪王炎殺剣を自分たちも使いたいという動きがあるのだ。

そして護廷十三隊の十二番隊が一護に興味を持っている。

どうやら一護にある邪眼がその力の源として藍染をも超える力を出したと考えているようだ。

邪王炎殺剣も邪眼の持つ力によって出されたものではないかとかなんとか。

 

 

あのたわけものめ、ちゃんと責任とるのだぞ…

 

 

そこからわけのわからん技の研究をしている以外は平和だった尸魂界に浦原がやってきた。

聞けば一護の力を取り戻すために協力してほしいとの事だった。

迷う必要などなく刀に霊力を込める。それを一護に託す役目を私は仰せつかった。

現世時間でなら久しぶりに会った一護は一皮むけたような感じだな。

何やら敵の策略で親しいものたちをも奪われたようだが、私が来るのを待っていたかのようだった。

 

「久しぶりだなルキア。来てくれるのを待ってたぜ!」

「うん?一護よ。お前は私がここに来る事がわかっていたのか?」

「あぁ、焦るかもしれないが待てってアドバイスもらっててよ!待っていれば必ず仲間が力をくれるって信じて(わかって)いればこれくらいなんともねぇ!」

 

あんなに最初は焦ったり驚いたり忙しかった一護が成長したものだ…

これが人間の持つ成長の力というものか。つい物思いに耽ってしまった。

一護は力を取り戻し、初代死神代行の事件は幕を閉じた。

 

 

ほう?斬撃(月牙天衝)を飛ばしてから瞬歩で追いついて更に斬撃(月牙天衝)を重ねることで破壊力が何倍にもなる「月牙ストラッシュクロス」だと?

まさしく一護のために考えられたかのような技だな。

というか、それ相手粉々にならないか?

 

 

後から聞いてみれば、知人からどうやらこうなる事がわかっていて、今は壁にぶち当たっているから乗り越えろって激励と一緒に教えられたらしい。

ふふ、良い知人を持っていて羨ましい限りだ。

だが、どうやらそんな良いアドバイスばかりでもないらしい。

 

曰く、次は総力を結集して挑まねば勝てない敵が現れるとの事。

 

まるでこれから起こると確信しているかのような様子だ。

直接その知人に話を聞きたいと頼んだ事があるのだが、一護は「あいつは俺に任せると、信じてると言ってた。だったらそれに応えて全部護ってやるだけだ」と、どうやら巻き込まないようにしているようだ。

ならば私も死神として守れるように腕を磨こうではないか。

 

 

 

 

 

 

始まりは突然だった。まさか滅却師が生き残っていて襲って来るとは…

 

最初こそ不覚を取ってしまい手傷を負ってしまったが、卍解が使えないのならば他の戦い方をすればよいというだけだ。

私の卍解は自身を絶対零度にし、周囲をもすべて凍らせることができる。

しかし一護から聞いたところによれば「本当に凍るとは、時すらも止めてしまうもの。そして凍った時の中で敵を砕くものこそ、真に凍らせる者」という事らしい。

 

私もまだまだ卍解程度で満足するわけにはいかない!

 

 

 

 

 

護廷十三隊も隊長含め入れ替わり等で人が変わったが無事乗り切れた。

最後の最後まで一護に頼ることになってしまったのが悔しいな。

しかし大したやつだ。最後の戦い、私は見送るしかできなかったが、共に戦っていた者たちには何か響くものがあったのだろう。

 

 

 

 どんな夜にも必ず終わりは来る。闇が解け、朝が世界に満ちるもの。人それを…黎明という!

 

 

 

だから尸魂界で今こんな口上を述べてから剣を合わせるのが流行だなんて何かの間違いだと思いたい…

 

馬鹿者!誰だそんな事言ったやつは!え?一護がユーハバッハとの戦いの最後に言ってた?

 

 

 

本当に責任取れよあのたわけものめ!

 

 

 

 

 

 

 



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突き抜ける織姫ちゃん

 

 

 

 

あたしには気になる男の子がいます。

 

 

 

オレンジの髪をした活発な男の子。名前は黒崎一護くん。

引っ込み思案な私にはその明るさが眩しく思えて(髪の色の事じゃないよ!)いつかは仲良くなれるといいな、なんて思ってました。

そこからは徐々に仲良くなれて、普通にお話したりするようになれたのは嬉しいな。

 

そんな彼が変わったんです。見た目じゃなくて空気というか、雰囲気みたいなものが。

 

その時は変わった様子を見ても聞くことはできなかったんだけど、それを知ることになるのに時間はかかりませんでした。

そして黒崎くんの事を知る機会とあたしが力に目覚める機会は一緒にやってきました。

きっかけは虚となってしまった兄に襲われた時でした。

最後にはお兄ちゃんともお別れすることになっちゃって悲しかったけど、この力であたしがみんなを守れるようにがんばる事にしました。

 

 

だから安心して見ててね、お兄ちゃん!

 

 

ちゃんと自分の力を使えるようになったのは、たつきちゃんを助ける時でした。

そこから茶渡くんと一緒に浦原さんから死神や虚というものを知らされて、茶渡くんと一緒に夜一さんに相手をしてもらい特訓したりしていました。

 

でも夜一さんはとっても強いんです。黒崎くんのように刀を使うわけではなく、素手で戦うのが得意なんだと言っていました。

しかもとっても素早くて、本気を出されると見えないので手加減してくれても敵わないくらいでした。

でもこのまま続けていてもこれじゃダメだと思ったのか、夜一さんは目の前で動かずにただ構えるだけの姿勢になっていました。

 

 

手を斜め上と斜め下に広げた姿勢で待ち構えている夜一さん。なにかあるのかと警戒していると、夜一さんから声をかけられました。

 

「ふむ、このまま特訓してやってもよいが、少し儂の遊びに付き合ってもらおう」

 

「遊び…ですか?」

 

「うむ。一護からな、この構えから3つの動作を同時に行うという返しの奥義を教えてもらったのじゃ。力よりもスピードが不可欠らしくて、儂ならできるかと問われたのでせっかくだからお前たちで試すことにした」

 

「黒崎くんから…」

 

「なんでも、名を「天地魔闘の構え」というらしいんじゃが、武器を持たず徒手でしか使えないらしくてな。聞いてみれば儂にピッタリではないか」

 

本来は持ち前のスピードを生かして相手をかき回すらしいんだけど、当然相手だってそんなことはわかっているだろうから、何か対策はないかと考えていたらしいんです。

そこに黒崎くんが「こういう奥義を聞いたんだけど、オレじゃ戦い方が違いすぎて使えねぇし、もしかしたら夜一さん使えるんじゃないか?」ということでした。

ちなみにこの奥義の解号(?)は「天よ叫べ!地よ唸れ!さぁ刮目せよ!」らしいです。

夜一さんがどんな相手を想定しているのかわからないけど、見えないくらい早い夜一さんでも更に先を目指してるなんて、あたしの先はまだまだ長そうです。

 

 

というか、黒崎くんはどこでそんな奥義なんて聞いてきたんだろう?

夜一さんが知らないくらいだから浦原さんだって知らないだろうし、やっぱり朽木さんなのかな…

あたしはまだ黒崎くんの隣で一緒に戦うところまで辿り着けていないから、奥義なんてすごいものを教えることのできる朽木さんがちょっぴり羨ましいです。

 

 

 

 

 

朽木さんが拐われてしまいました。…正確に言うなら連れ戻されたのかな。

 

 

 

黒崎くんは尸魂界っていうところに乗り込んで助けるって言ってるので、まだ非力なあたしだけど頑張って一緒に朽木さんを助けたいと思います。

 

でも、連れ去られたお姫様(朽木さん)を助けに行くなんて、思っちゃダメなんだろうけどちょっと羨ましいと思っちゃう自分もいます。

 

浦原さんから今のままじゃダメだって言われちゃったのでとにかくもっと強くならないとね!

 

そこからたまにですが、黒崎くんが独り言を呟くようになりました。

聞いてみても「いや、大丈夫だ。これはオレが考えないといけないことだから」と具体的な事は教えてくれませんでした。

親友のたつきちゃんにも相談したんだけど、返ってきた答えは「見守ってあげなさい」とか「そのうち元に戻るよ」とかでした。

 

朽木さんじゃないから頼りないかもしれないけどあたしにも相談とかしてくれないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

黒崎くんが剣の特訓をしています。

 

 

 

 

「『月を見るたび思い出せ!』…いや『オレがこの技(抜刀術)を使う以上、お前の死は絶対だ…!』のほうがいいか…」

 

あれは何をしてるところなんだろう?

 

「黒崎くん、今は何をしているの?」

 

「あぁ、井上か。今のは(自分を)高めるための言葉だな。戦う前にこれがあるのとないのとじゃ大違いだしな」

 

「なるほど!(自分の力を)高めるための言葉だったんだね。そういえば私も(刀の力を開放する解号だっけ?)聞いたことがあるよ」

 

「それだな。なかなか(自分のテンションを)高める言葉に行き着かなくてな。ちょっと(あいつに教えてもらった言葉を)考えてた」

 

「そっか。(解号を考えるのって)結構難しいんだね。早く(斬魄刀の力を)開放できるようになるといいね」

 

「だな!(カッコイイ決めセリフを言って)ルキアを助けるためにも精進あるのみだ!」

 

 

黒崎くんは自分の刀を日本刀の形で使う時と、大きな刀にして使う時とで戦い方を変えているみたいです。

日本刀の時は抜刀術?っていう鞘から抜き放つ戦い方をよくしています。

これも教えてもらったんですが、この戦い方は抜刀斎って人の戦い方らしいです。

抜刀術を極めた事で大勢の敵が相手でも1人で打ち破る事ができるすごい人なんだって。

 

 

 

あたしも負けないように、隣で一緒に戦えるようにがんばらないと!

 

 

 

なんと!黒崎くんからあたしの戦い方についてもアドバイスをもらいました。

なんでも、いつも黒崎くんにアドバイスをしてくれる人みたいで、自分では考えつかないような技や特訓などを教えてもらっているそうです。

 

 

そっか、アドバイスもらってるのは朽木さんじゃなかったんだ…

それを聞いたあたしはちょっとだけ安心しちゃいました。

でもそうなると一体誰なんだろう?黒崎くんに戦い方や技を教えられる人って他にいたかな?

 

 

余計な心配をしている間に話は続き、そんなアドバイスをくれる知人さんにあたしの戦い方のアドバイスももらってくれたらしいんです!

 

その知人さんが言うには「事象を拒絶できるんだったら最後は虚構だね、現実を虚構にする事ができればすべてを()()()()()()にできるんだよ」との事らしいです。

 

現実を虚構ってどうすればいいんだろう?でもあたしの力はそれに近いかもと言っていたので努力あるのみよ!がんばれあたし!

 

 

 

 

 

 

 

 

尸魂界では瀞霊廷に突入するときに黒崎くんとはぐれてしまい、石田くんと一緒に行動していました。

そこから剣八さんややちるちゃんと一緒に行動して、石田くんや茶渡くんを助けたりもしました。

最後は藍染さんっていう死神さんたちが裏切って朽木さんから何かを取り出していました。

 

大怪我していた黒崎くんを治療して治すことはできたけど、やっぱりまだあたしにできるのは「拒絶」までです。

 

 

 

どうやったら「現実を虚構にする」ことができるんだろう…

 

 

 

あたしたちが瀞霊廷に乗り込んだことは藍染さんたちのおかげ(?)で不問となりました。

帰る前に黒崎くんは赤い髪の大きな男の人たちから「あの技や戦い方はどういうものなのか?」と聞かれていました。

どうやらこの尸魂界というところでも見たことのない剣術のようです。

 

そんな技や戦い方を知っている黒崎くんを見るとあたしまで嬉しくなってきちゃうな。

でも、黒崎くんは面倒になったのか「後は全部ルキアが知ってるからルキアに聞いてくれ!」と言って帰ろうとしました。

 

やっぱり朽木さんとは名前で呼び合っているし、戦い方も同じ刀を使うから通じるものがあるのかな…

あの「飛天御剣流」ってあたしにも使えないかな?

 

 

 

あ、朽木さんが綺麗な女の人に詳しく聞かれてる。笑顔なのになんか怖い…

朽木さんは知らないって言ってるけど、あたし知ってるんだよ。

黒崎くんから朽木さんもいろいろとアドバイスもらってるのを…

 

 

 

黒崎くんは知人さんから教えてもらった事ばっかりだって言ってるけど、朽木さんじゃなくて浦原さんたちでもなかったらもう誰も思いつかない。

もしかしたら黒崎くんはすごい家柄で、実は代々剣術や武術を磨いてきたやんごとない身分なのかもしれない。

それに剣術の技とかだけじゃなくてあたしや夜一さんにもアドバイスできるくらい色んな事を知っているんだから、知識だって長生きしてる死神さんたちよりあるのかも!

 

 

 

そんなすごい黒崎くんの隣って実はすっごく遠いんじゃないかな…

 

 

 

 

 

 

現世に戻ってきてしばらくして、破面っていう人たちが襲ってきました。

おっきい人からの攻撃は避けることができたのですが、避けられた事によって怒り出したのかすごい攻撃の嵐に襲われてしまいました。

なんとか茶渡くんが耐えていてくれたのですが、耐えきれず負傷してしまい、気を取られたあたしも同じく怪我をさせられてしまいました。

すぐに治療して命に別状はなかったのですが、その結果浦原さんから戦いに向いてないと言われちゃいました…

 

 

でもまだあたしは諦めないもん!

 

 

ずっと目標にしてきた「虚構」の手応えはちょっとだけあるんだから、きっとあたしも力になれるはず!

 

朽木さんから一緒に特訓しないかと誘われたので渡りに船と二つ返事で了承しました。

あたしには使える武器もないし、盾舜六花での戦い方がメインだけど「能力は使い方次第」だって言ってたしまだまだこれからだもんね。

 

そしていつも通り特訓が終わって送ってもらってたんだけど、そこで敵に襲われてしまいました。

送ってくれていた死神さんを人質にされ、虚圏というところに一緒に来いとの事でした。

あたしは一緒に行くという選択肢しかなかったのですが、ここで破面の人から「1人だけ別れを告げさせてやる」との言葉を聞いて閃いたんです。

 

 

 

そう!今度はあたしが囚われのお姫様ポジションだということに!

 

 

 

前に連れ去られた朽木さんをちょっと羨ましいって思ってたのを神様が見てて「今度は織姫の番だよ」って言ってくれてるのかもしれないです。

 

 

ありがとう神様!

 

 

あたしは現世で黒崎くんの元へ向かい、眠る彼の怪我を治療して別れを告げます。

 

 

「ふふ、今度はあたしがお姫様だからね。ちゃんと迎えに来てね」

 

 

ちゃんとあたしがいたことをわかってもらう為に髪の毛を数本落としておいて、ついでによく使っていた香水も振りかけておきます。

これであたしがここにいて、連れ去られたことはすぐにわかるでしょう。

 

ちゃんと証拠を残した後に破面の彼、ウルキオラくんと一緒に虚圏に向かいました。

藍染さんにご挨拶して、力が見たいというのでグリムジョーさんを治していきます。

なんか小さな女の子がいじめてきましたが、確かに囚われのお姫様が元気いっぱいだったらおかしいもんね!

 

ちょっとくらい弱ってるほうが再会した時にムードが出るって、この子たちよく知ってるね!

 

あれ?グリムジョーさん?え、治療のお礼に助けてくれるの?

でもあたし黒崎くん(王子様)を待たなきゃいけないんだけど…

えっ、黒崎くんのところに連れて行ってくるんだ。

ちょっと思ってたシチュエーションと違うけど、あんまり待たせるのも悪いから行ったほうがいいよね?

 

グリムジョーさんは黒崎くんと万全で戦いたいからあたしに治療させたかったみたいです。

あたしはちゃんと助けに来てくれた黒崎くん(王子様)の戦いを見守り、その後も戦いは続きましたが黒崎くんは変身してウルキオラくんを打ち倒しました。

 

 

 

 

「黒崎くん…その、大丈夫?」

 

「あぁ、どうやらオレの中に封印されていた()が暴れだしたらしい。あいつから聞いてはいたがまさかこれの事とはな…」

 

「どういうこと?黒崎くんは全部わかってたの?」

 

「あぁ、何が起こったのかは覚えてねぇし、オレも前に聞いただけの話だったんだがな。コレは左腕とか片目とかによく封印されてるらしい。いや、オレの場合はいるのも知ってたし魂に封じられていたみたいだが、時々暴れて封印を解こうとしたり、宿主(オレ)が弱ってると表に出てくるらしいんだ」

 

 

黒崎くんはさっきの状態になる事がわかってたんだ…

そんな大きな力を封印されてるなんて、あたしにもそんな力があったらよかったのに。

その力があるのは黒崎くんだけで、あたしや茶渡くんとかにも封印された力はないみたい。

でもどうして左腕とか片目なんだろう?何か理由でもあるのかな。

 

治療が終わった黒崎くんはすぐに現世へと向かうそうです。

藍染さんがそっちにいるから倒さないとたつきちゃんたちが危ないそうです。

 

藍染さん(悪の大王)を倒してお姫様救出(ハッピーエンド)だと思ってたあたしの計画(妄想)は崩れちゃったけど…

 

 

 

ふふ、世界を救うために戦うなんて物語の勇者みたいだよね。

 

 

 

 

黒崎くんはみんなの期待を背負って無事藍染さんを倒してくれました。

 

お疲れさま、黒崎くん。

 

 

全身全霊の一撃、すごかったよ。あたしは見てないけど。

でもわかるの。世界の命運を賭けた藍染さんとの死闘、きっと黒崎くん以外の誰にもできない事だよね。

 

浦原さんも言ってたよ。黒崎くんが邪眼の力を開放して倒したんだって。

それが黒崎くんの言ってた封印されている力なのかな?

いつかあたしにも教えてね。

 

 

 

 

そこからは黒崎くんも力が使えないから普通の高校生として暮らしていました。

あたしは黒崎くんの代わりにみんなを守れるように特訓しながら石田くんや茶渡くんとたまに現れる虚退治とかしていました。

黒崎くんは表面上は元気にいつも通りって感じだったんだけど、やっぱり死神の力がなくなったからか、どこか落ち込んでいるような感じでした。

 

ある時、いつも通り学校が終わり黒崎くんと帰ろうかと思っていたところに、1人の男子生徒が黒崎くんに話しかけていました。

あたしはほとんど話したことないし、黒崎くんと話してるところも見たことがないと思うんだけど、黒崎くんはそんな彼に何か相談するようでした。

 

 

 

なんで!?相談するならあたしがいるよ!落ち込んでるならあたしが慰めてあげるよ!?

 

 

 

できれば一緒に話を聞いてみたかったのでチラチラと様子を伺いながら待っていたのですが、黒崎くんから「わりぃ井上、先に帰っててくれ」と言われてしまいました。

どうもあたしがいたら話しにくいようだったので大人しく家に帰ります。

 

あの男の子は誰だったんだろう?そんなに黒崎くんと仲良かったっけ?

思い返してみても話してるところを思い出せないから接点が見当たらないんだよね。

 

「黒崎くん最近変わったね。前までは気落ちしてたけど、今は違って見えるよ」

「あぁ、ちょっと話を聞いてもらってな。今は焦らずに仲間を信じて待つ時なんだってよ。それに藍染を倒して終わりってわけでもなさそうだし、何も考えずに焦るんじゃなくて自分にできることを考えるようにしたんだ」

「そっか、それってあの男の子に相談したの?」

「そうだな。あいつには色々と世話になってるよ」

 

うーん、やっぱり男の子同士のほうが話しやすいのかな?

でも茶渡くんや石田くんにはそういう相談してないから、たまたまなのかな?

あたしにもいつか相談してね!

 

 

 

 

 

黒崎くんが力を取り戻そうと、銀城さんっていう人と修行をしているそうです。

あたしにも修行の際の治療をしてほしいと言ってきました。

そこから何度かお手伝いをして、気がついたらケーキ屋さんでアルバイトをしていました。

 

何が起きたのかよくわからないけど、黒崎くんや浦原さんたちが活躍したとの事でした。

朽木さんたちも助けに来てくれたようです。

黒崎くんは「仲間や好敵手(ライバル)たちがいてくれたから今のオレがここにいるんだ」って爽やかに笑っています。

できればその仲間の中にあたしも入りたかったけど、悔やんでいても仕方ありません。

 

次こそはあたしもみんなの力になれるように頑張ればいいんだから!

 

 

 

 

 

 

ユーハバッハさんとの戦いは熾烈なものでした。戦いのきっかけはネルちゃんが助けを求めてきたから。

滅却師という石田くんと同じ種族(?)の人たちが虚圏を襲撃してきたらしいです。

そこから滅却師たちとの戦いが始まりました。

最後は陛下と呼ばれているユーハバッハさんとの戦いです。

いつもなら見守るだけだけど、あたしは今黒崎くんの隣で一緒に戦ってる!

 

 

 

未来の改変?ならあたしは改変された未来を()()()()()()にしてあげるわ!

できるかわからないけどね!

 

 

そう、知らないなら教えてあげる。

黒崎くん(王子様)あたし(お姫様)が一緒に戦うと「石破ラブラブ月牙天衝」っていう最終奥義を使えるんだからね!

 

 

 

え?最後はみんなの力をもらって(集めて)倒したい?そうだよね。

じゃあ、あたしは今度こそちゃんと見守っているね!

言ってくれたらいつでも最終奥義撃てるように準備だけしておくからね!

 

 

 

あ、石田くんがなんか鏃をユーハバッハさんに刺したみたい。

 

黒崎くんの声が聞こえる。

 

 

 

 どんな夜にも必ず終わりは来る。闇が解け、朝が世界に満ちるもの。人それを…黎明という!

 

 

 

それが黒崎くんの完成された解号ってやつなんだね!

 

 

 

無事ユーハバッハさんも倒したし、これでまた世界を救っちゃったね!

 

 

 

 



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新属性だよ黒崎くん

 

 

黒崎くんと出会ってからいろいろと彼の妄想に付き合ってきた俺だが、今まで予想だにしていなかった、そしてまさか現実で目の当たりにするとは思わなかった出来事に遭遇してしまった。

 

あれは黒崎くんと初めて話して、いろいろと設定のアドバイスをしてあげてから少し経ったくらいだったかな?

いつも通りに通学途中にいろんな人たちと話したりしながら登校してたんだけど、そこに今までに会ったことのない人がいたんだ。

 

なんていうのかな。和服というか、着物の上に羽織を着たような格好で刀まで持ってた。

アレはたぶん中身は模造刀か竹光とかなんだろうけど、よくあれで通報とかされないもんだ。

いや、考えてみたらここ日本だけど日本じゃないというか、NIPPONみたいなところだからアリっちゃアリなのかな?

 

「君が黒崎一護に色々と吹き込んでいる少年だね。…ふむ、見るからに脆弱な霊圧の人間で取るに足らない存在だが、君のおかげで黒崎一護が私の想定していた成長から逸脱してきている部分もあるようだ」

 

「えーと、初めましてですよね?俺に何かご用ですか?」

 

「いやなに、観察していた黒崎一護に想定外の変化が生まれているようなのでね。その原因たる君を見に来たと言った感じかな。最初は排除しようかとも思っていたんだが、これから先、彼がどのような変化と成長を見せてくれるか楽しみになってね。君にも私の目的の礎(王鍵の創造材料)となってもらうわけだし、今回は何もせず退くとしよう」

 

「黒崎くんの変化?俺が原因?目的?よくわからないです」

 

「君はそのままでいいさ。せいぜい私を退屈させないように楽しませてくれ」

 

 

その人は会話にならない会話っぽいものをしたと思ったら、勝手に満足して帰っていったんだ。

だが俺にはそれだけのヒントがあれば正解に辿り着くなんて造作もない。

今の人は俺をただの高校生だと思って理解できないと勝手に思い込んで答えを言わなかったんだろう。

 

 

 

だが!舐めてもらっちゃ困るぜ!こちとらおそらくあんたよりも合計人生時間は長いんだ。

 

 

 

そして人生経験とは蓄積された知識のことでもある!

 

 

黒崎くんと話すようになってから、俺も学校では黒崎くんの事を背景ではなく人物として見るようになった。

彼はよく色黒の男の子や茶髪の女の子と仲良くしているようだった。

あと眼鏡かけた子も嫌味っぽい感じの小言みたいな事を言ってるのを見たこともあったな。

 

そして今の人の言葉…そこまでヒントが散りばめられていれば答えは1つだ。

 

 

 

そう、黒崎くんは狙われていたんだ!

 

 

 

それならば今の人が明確な答えを言わないのも頷ける話だ。

 

つまり筋書きはこうだ。

 

黒崎くんは昔は大人しい物静かな少年だったんだろう。そして黒髪。

しかし大人しい子であったが故にいじめられる事になってしまったんだ。

そしてそこでいじめていた相手から守っていたのが色黒の子だったんだろうな。

大人しく控えめな黒崎くんを守っているうちに、色黒の子も段々と黒崎くんの事が気になっていったんだろう。

もしかしたら着物の人もその頃から黒崎くんと知り合いなのかもしれない。

そしてそんな黒崎くんを守っているうちに、庇護欲から段々と独占欲に変わっていったんだ。

だがきっと黒崎くんはそんな事に一切気づかずに彼らにだけ無垢な笑顔を振りまいていたに違いない。

そうやって日々を過ごしてきた黒崎くんだったが、鳴りを潜めたはずのいじめはまだ終わっていなかったんだろう。

色黒の子たちが気づかないところで傷つく黒崎くん。

そんな彼を救ったのは眼鏡の彼だったんだ。

きっと彼は、ただ守るだけじゃ黒崎くんのためにならないと、断腸の思いで涙をのんで黒崎くんにきつく当たりながらも彼の成長を促していったんだろうな。

そしてそれを知った色黒の子や着物の人もまた、ただ黒崎くんを守るだけではなく彼のためにいじめられない方法を教えたりしたのかもしれない。

その結果、黒崎くんは髪をオレンジ色に染めたことで周囲が見て不良になったと思われるようにしたんだ。

だが髪を染めたからと言って本質まで変わるわけじゃない。

だから彼らは黒崎くんの周囲でいつも一緒にいるようにしているのだろう。

クラスメートの2人はそれでいいかもしれないが、着物の人は違う。

彼はおそらく時代劇の役者か何かなのだろう。

いつも黒崎くんの近くにいられないからこそ、もしかしたら誰かに頼んで見守らせておき、黒崎くんが1人の時に問題が起こらないようにしていたのかもしれない。

そしてそんな警戒網の中で、黒崎くんが接触したのが俺だったわけだ。

今までまったく交流のなかった俺と黒崎くんだから、着物の人も慌てて確かめに来たのだろう。

もしかしたらみんなで結託して黒崎くんがそっちへと目覚めるように仕向けていたのかもしれないな。

そして着物の人が最後に言った「私を楽しませてくれ」ってのは、そんな揺れる黒崎くんを見るのも楽しいってことだ。

 

だが、心配は無用だ着物の人。誰もいないから聞こえないわけだがあえて言わせてもらおう。

 

 

俺は他人事なんであればボーイズ・ラブにも理解がある!自分ではごめんだが。

 

 

答えが出てしまえば簡単な事だ。

着物の人が言ってた排除しようとしていたというのは、俺がノーマルだから勝手にその倫理観を刷り込まれると困ると思って慌てて来たんだろうな。

想定していた成長からの逸脱や変化というのも、「男の子同士が好きになる事は普通の事だよ」って価値観を植え付けているところに「やっぱりこれおかしいんじゃ?」と思わせられると困るって事だ。ただ、それはそれで楽しみの1つにしてるっぽい感じでもあったが。

だが、着物の人の目的の礎になってもらうって言ってたから、おそらく俺も含めて外堀を埋めてしまおうとしているんだろうな。

 

考えてみれば色黒の子も着物の人も眼鏡の子もみんな「攻め」って感じがする。

対して黒崎くんはどうだ?髪の色を変えようが妄想癖があろうが根本は変わらない。

そして俺の前世での知識を披露したら、すぐさまそれに対するように死神とかなんとかを妄想して作り出し語って聞かせてきた。

おそらくは昔から1人で想像しながら過ごしてきた産物だろう。

その時点で彼が大人しい頃と変わっていない事は明らかだ。

ならばやはり黒崎くんは「受け」なのだろう。

 

 

 

…え?まさか黒崎くんが俺に話しかけてきたのって、まさか違うよね?

 

 

 

周りの誰にも言えなかった妄想を嬉々として話してるけど、俺にそっちの気はないよ?

てかちょっと知らない相手が近づいただけで飛んできたり、いつも一緒にいるような重い気持ちの人たちに気疲れして、たまには羽を広げて目一杯妄想話がしたかっただけだよね?

 

あぁ、そういうことか。そうやって黒崎くんが話してるのを、矢印を飛ばしてると勘違いしたのか。

そりゃ黒崎くんも疲れて妄想に浸りたくもなるよね。

茶髪の女の子がどういう立ち位置なのか知らないけど、もしかしたら黒崎くんはその女の子に癒やしを求めたりしてるのかな?

 

いや違う!たぶんだが茶髪の女の子はそんな黒崎くんを見て楽しんでいるのかもしれない!

勝手な推測だがたまに黒崎くんを見る目がキラキラしてる感じがしてたし、あれは色黒の子との絡みや、心配だけど素直に言えなくてついついきつく当たっちゃう眼鏡の子のツンデレ具合を想像してキラキラしてたんだ!

 

そう考えれば着物の人が飛んできたのも、黒崎くんが急に俺に話しかけてきたのも、黒崎くんの周りに色黒の子や茶髪の女の子がいるのも全部辻褄が合う!

 

 

 

どうしよう…なんかすっごく重い事実を知ってしまったようだ。

だからと言って黒崎くんがせっかく楽しめる俺との話(妄想トーク)を終わらせてしまうのは彼に申し訳ない。

偶然ながらもこんな重い事実を知ってしまった以上、俺にできることは今まで通り黒崎くんの話に付き合ってあげるだけだ。

だがすまない着物の人。俺からそっち系の話を黒崎くんにする気はない。

だから俺を使って外堀を埋められるとは思わないでくれ。

 

 

そして今更な事なんだが着物の人から言われて1つわかった事がある。

 

 

黒崎くんの名前が黒崎苺だったんだよ…

 

 

男の子にその名前はさ、そりゃ子供の頃からいじめられても仕方ないよ。

てか親御さんもうちょっと考えられなかったんですか…

マタニティハイでそのままのテンションで名前決めちゃったとかそんな感じだったんだろうなぁ。

父親のほうも止めなかったって事はお母さんのテンションに飲まれたか、同じ感性をしているのかどちらかだろう。

 

俺が言う事でもないけど、小さいうちは良くても大人になった時にその名前で呼ばれるって事もちゃんと考えてあげないとダメだよね。

だってもうお店で苺が売ってたら「おい、お前()が売ってるぞ」ってバカにされるの目に見えてるじゃん…

 

てことは黒崎くんの性格はなるべくしてなったって事か。

妄想も死神設定とかだし、もしかしたら結構な闇を抱えているのかもしれないな。

てか彼もしかして生まれてからずっと不憫な人生送ってないか?

 

黒崎くんはただの厨二病患者だと思ってたけど、もうちょっと優しくしてあげたほうがいいのかもしれない。

 

 

「おい、こんなところで何してんだよ?」

 

「やぁおはよう黒崎くん。何、改めて(黒崎くんに関する)衝撃の事実を知ってしまった事にね。少しばかり動揺してしまってたみたいだ」

 

「あー、(実はお前が話してたのはほとんど幽霊だったって事が)衝撃だったのは仕方ねぇよ。俺だっていきなり(実は幽霊だったなんて)言われたら衝撃だろうからなぁ。信じられねぇ気持ちはわかるぜ」

 

「まぁそうだよね。ってか黒崎くんも(矢印向けられる)当事者なのに結構普通に過ごしてるよね。そのあたり気になったりしないの?」

 

「そうは言われても(幽霊がいる事は)昔から知ってたからなぁ。今更って感じもするし。別に何かされるわけじゃないからいいんじゃないかと思ってるな。それに今はお前も話を聞いてくれてるからな」

 

「(昔から気づいていたのか…そして嫌悪している様子もない。黒崎くんまさか満更でもないのか!?)俺にできるのは話を聞くくらいなんだけどね。申し訳ないけど(修羅場に)関わるのはお断りするよ。(ボーイズ・ラブの中に飛び込んで)うまく立ち回れる自信がまったくなくてさ」

 

「(まぁこの霊圧じゃあ戦えねぇもんな)それは俺の役目だ。お前は何も心配する必要なんてねぇさ。ちゃんと(戦う)覚悟はできてる」

 

「そっか…そこまで(修羅場の)覚悟ができてるのなら俺はただ黒崎くんを応援するだけだね」

 

「あぁ、俺に任せとけ。何かあった(虚に襲われた)時はすぐに俺が駆けつけてやるよ」

 

「そうだね。何かあった(嫉妬で襲われた)時はよろしく頼むよ。ほんとにね」

 

 

 

ただ、2人で歩きながらも俺は思う。

 

まさか一緒に登校しただけで着物の人に嫉妬で嫌がらせとかされないよね?

 

後は色黒の子と眼鏡の子に見つかりませんように…

 

そして茶髪の女の子には勝手に脳内カップリングされませんように…

 

 

 

俺は黒崎くんと話しながらも、内心ではそんな事を考えながら、そして厨二病発症だけじゃなくボーイズ・ラブまで発生していた黒崎くんの人生の平穏を願い、一緒に通学路を歩いていった。

 

 

 

 

 



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目を覚ませ市丸くん

 

 

 

 

 

 

「藍染隊長まで気にする人間ねぇ…ちょ~っとボクも拝見させてもらおかな」

 

 

 

 

 

着物の人がやってきて黒崎くんに関する新しい事実を発見してからしばらく…

 

黒崎くんとは表面上ただのクラスメイトでしかないという風に頑張って過ごしていた。表面上も何も実際ただのクラスメイトなんだけどさ…

ただ茶髪の女の子のカップリング妄想に参加させられてもたまらないし、色黒の子や眼鏡の子から勝手にライバル視されても困る。

別に彼らの趣味嗜好をとやかく言う権利はないけど、そこに俺が勝手に参戦させられてるなんて勘弁してほしいだけだ。

 

だがボーイズラブの神様は平穏な生活などさせてくれないつもりらしい。

 

今日もいつも通り由美ちゃんや顔見知りのみんなと軽く話しながら登校していただけなのに、この前の人とは別の着物の人が目の前にいる。

何も聞かなくてもわかるよ。どう考えてもこの前の人の知り合いでしょ…

 

 

「君がウチの上司が気にしとった子やね。ほんま普通の子にしか見えへんねんけどなぁ」

 

「俺に何か用事ですか?」

 

「ああ、君がボクの上司と話してるのを見とってな。ちょっとボクも話してみたいな~おもてやってきたんや」

 

 

ああ…あの着物の人の部下なんだ。てかこの人の喋り方で確信したわ。

ただのコスプレの人なのかと思ってたけど、この人たちは役者さんだったんだね。

目の前の細目の人の喋り方は京都弁っぽい感じだから、太秦あたりの時代劇俳優さんとかなんだろう。

 

羽織の背中に『誠』とでも書いてくれてたら新選組モノってすぐわかるんだけど、どうやらこの人たちは違うみたいだな。

しかし上司の人はもう帰ったのに、なんで次は部下の人がやってくるんだ?

 

「あなたの上司の人はもう帰りましたよ?」

 

「それはわかっとるよ。ちゃんと確認してから来とるからね」

 

「それなら俺じゃなくて黒崎くんのほうに行けばいいのでは?」

 

「そんな邪険にせんでもええやん。ちょっとあの人とどんな話をしたか知りとうてな」

 

うん?黒崎くんじゃなくて俺のところで上司の人が何を話したか聞きたい…

 

マジカ…つまりこの人は上司狙いだったのかよ!?しかも俺とのちょっとした会話内容ですら知りたいとかガチすぎんだろ!男のヤンデレとか誰得なんだよ。

 

…ちなみにこの場合どっちが攻めでどっちが受けになるんだろ?黒崎くんが受けだから、上司さんは攻めになるわけで、そうするとこの人は受けってことか。

受けのヤンデレなんて聞いたことないが、このNIPPONではそれが普通なんだろうか?

 

なんで朝っぱらからそんなヘビーな事態に巻き込まれなきゃいけないんだ…

 

つまり上司の人は黒崎くんを狙ってて、部下の人は上司を狙ってるのか。見事に矢印が交差しない関係だなぁ。

こういう人には嘘を言わずに正直に話しておくに限る。下手に隠し事なんかすればちょっとした疑いだけで刺されかねないからな。

 

「話したのは黒崎くんの事を少しだけですよ。(黒崎くんの事を好きすぎて)ほんの少し話しただけのクラスメイトである俺の事まで確認しにきたみたいですね」

 

「なるほどなぁ。ちなみにキミは黒崎クンのこと、どない思ってんのか聞かせてくれへん?」

 

おいおい、まさか俺と黒崎くんをくっつけたら自分が上司と…っていう考えしてるんじゃないだろうな?

 

なんなんだこの人たちは…俺はドが付くくらいノーマルだぞ。黒崎くんと話してるのだって、9割くらいは妄想の話に付き合ってるだけだ。

たまにアイデアが思い浮かばないことがあるみたいだからアドバイスというか、前世での漫画知識を披露することはあるがそれだけだぞ。

 

「黒崎くんの事ですか…普通にクラスメイトだと思ってますよ。そんなに話すことも多くないし、たまに彼の(妄想物語の)話を聞いたりアドバイスしたりする程度の関係ですから」

 

「(やっぱりキミが黒崎クンに何か吹き込んでるみたいやな)それならボクにもちょっとアドバイスもらわれへんかなぁ?」

 

「そうは言われても俺は(ボーイズラブの感情なんて)詳しくないですからね…それでも言わせてもらうなら、上司さんを狙うのは止めたほうがいいと思います」

 

「!?(コイツ…まさかボクが藍染隊長の命を狙ってるのを知っとる言うんか?)へぇ?ボクがあの人の事を狙ってるなんて、そんなわけないやんか」

 

「言わなくてもわかりますよ。(わざわざ京都からやってきて、ほんのちょっと話しただけの俺にまで何を話したのか聞きに来るくらいだし)正直なところ不毛だとは思いますけど、本気だけは伝わってきますからね」

 

「…不毛とは随分な言い方やな。ボクがあの人に敵わへんのはようわかってるよ」

 

敵わないのはわかってる?もしかして元々は上司さんとこの人は付き合ってて、上司さんが目移りしたとかなのか!?

 

有り得そうな話だな。恐らくだが上司さんは黒崎くん育成計画の傍ら、つまみ食い程度のつもりでこの人に手を出したんだろうけど、残念ながらその相手が悪かったってことだ。

まさかヤンデレ属性持ちだとは思ってなかった上司さんは、最初こそそれすらも楽しんでいたんだろうけど徐々に興味を失って飽きてきたんだろう。

 

あと考えられるのは、たぶんだが幕末とか時代劇の作中ってのは確か女人禁制とか普通にあった時代だよな。役作りのつもりが本気になってしまい…ってパターンってことか?

もしくは俺は見た記憶がないが、この人たちが演じてるのが()()()()映画だったっていうのも考えられるかもしれない。

 

もし配役に入り込みすぎて元の自分と役がわからなくなってるってだけならまだチャンスはある。

 

きっとこの人だって話せば元に戻ってくれるはずだ。いやもしも本気なんだったら本人たちの気持ちの問題だから同性愛をどうこう言うつもりなんてないんだけど、できればそういうのは俺の関係ないところでやっていてもらいたい。

 

それにこのままだと黒崎くんを中心にして刃傷沙汰になりかねないしな。

 

気持ちだけは平和的に話し合いでどうにかなることではないってわかってるつもりだし、もうすでに色黒の子や眼鏡の子と上司さんで泥沼一歩手前くらいまで来てそうなのに、そこにあなたまで入ったら茶髪の子のご飯が更に進んでしまう。

ならば俺に火の粉が飛んでくる前に少しでも燃料は減らしておかないといけない。

 

「わかってるなら言わせてもらいますが、あなたの言う通り、あなたじゃあ上司さんには敵いません。あの人は俺が話しただけでも下準備は念入りにして(黒崎くんの性癖が)自分好みになる過程も楽しむタイプでしょうけど、あなたは(ヤンデレだろうから上司さんの心を)取り戻したいと思ったらそれしか考えず周りが見えなくなってるっぽいですし」

 

「(()()()()()()…ねぇ)ほんまようわかっとるみたいやね。でも…そこまで知られてるのはちょぉっと都合悪いなぁ…」

 

なんかこの人の雰囲気が変わったような…やべぇ、ヤンデレ状態の人に諦めろってのはやっぱり地雷だったのか!?

そういや前世でもゲーム内でヤンデレキャラに刺されてバッドエンドなんてよくあったわ…これはマズイ気がする。もう説得とかしてる場合じゃない。

 

「おっと、話は最後まで聞いてください。あなたは(上司さんの心を自分の元に)取り戻したいんでしょうけど、求めてばかりではいけません。あなたの大切な人(上司さん)はあなたに何を求めていますか?自分が求められているものは何かを考えることも必要だと思います」

 

「(乱菊がボクに)何を求めているか…?」

 

「ええ、そうです。あなたの(上司さんに対する)独りよがりな求愛ではなく、相手(上司さん)があなたに何を求めているのかを考えてみれば、きっと今までとは違う視点で見えてくるものもあると思いますよ」

 

「…独りよがりなんはようわかっとるけど、それを求愛と言われたんは初めてやなぁ。キミには(乱菊の魂を取り戻す事が)求愛に見えとるいうことか」

 

見えるも何も、ヤンデレの行動原理って「相手の全部が欲しい」みたいな感じじゃなかったっけ?

あと髪の毛とか食べさせて自分と相手が混ざり合う的な狂気的な愛情の事を指すもんだと思ってたんだけど、やっぱり自分では気づかないものなのかな?

 

なんか嫌な予感がして、思わずアドバイス的な言い方をしてしまったが許してくれ。俺だって男同士の痴情のもつれで刺されてバッドエンドなんて嫌なんだ。

それにこれは悪いアドバイスではないはず。この人が刃物振り回して「あなたを殺してボクの死ぬ!」とかやりだす前に少しでも考えてくれればいいんだから。

 

もしそれでも刃傷沙汰になるなら撮影所のほうでやってください。俺はそれを見てご飯が進むような人間ではありませんので。

 

「黒崎クンがキミにいろいろと相談するわけやね。ボクもちょっと(キミに対する)認識を変える必要があるみたいや」

 

「それほどではありませんよ。それに俺にはあなたたち(同性愛者)の事を理解できているなんて間違っても言えませんからね。黒崎くんには少々同情してしまう部分もありますが、俺にそれを解決するような方法があるわけでもないですし」

 

「黒崎クンの事もわかっとるわけか…ちなみにどこまで知っとるん?」

 

「どこまでと言われても難しいですが、彼が難儀な星の下に生まれてしまったなぁ…程度ですよ。彼の半生を考えると、言ってはなんですが俺では耐えられなかったでしょう」

 

「(難儀な星の下に、半生を考えるとねぇ…つまり藍染隊長の計画もお見通しっちゅうことか)キミが彼にアドバイスを送るのはそういう理由からっちゅうことか」

 

いや最初はそんな理由を知らなかったから、どちらかと言うと話に付き合うだけ付き合って早く帰りたかっただけだったはずだ。

ただ彼の境遇というか、同性愛者になるべく育てられたような人生を知ってしまい、哀れみのような気持ちがあることは否定しない。

そこで唯一の逃げ場である妄想世界まで否定してしまっては、黒崎くんはもう考える自由すらなくなってしまうと思うとね。

 

しかしノーマルな人間の少ない世界だなぁ。もしかしてこの世界にはMARINERAとかあるんじゃないだろうな…

俺みたいなマトモな人間には住みにくい世界とかやめてくれよ。

 

 

 

「キミと話せて良かったわ。まさか独りよがりの求愛言われるとは思わんかったなぁ。ちょっと(乱菊が何を求めてるのか)考えてみることにするわ」

 

「ええ、そのほうがいいでしょう。相手のためを思うのは大切な事ですが、必要なのはそれを相手が望んでいるのかということだと思います。あなたの大事な人(上司さん)はきっと(ヤンデレバッドエンドなんて)望んでないと思いますよ」

 

どこまで俺の気持ちが通じたのかわからないが、この人も少しは落ち着いて俺の話を聞いて考えてくれるみたいだ。

できればこのまま健全な世界で役者として大いに活躍してもらいたいものだ。上司の人だって本命が黒崎くんだろうから、この人がノーマルに戻ったとしても喜びこそすれ怒りはしないだろう。

 

着物の部下の人の表情を見るに、どうやら少しは違った考え方(男女が恋愛すること)があることを理解してくれたみたいだ。

俺も学校へ行く途中だし時間があまりない事を察してくれたのか「それじゃボクはもう行くわ。キミとはまた話してみたいなぁ」と言って京都へ帰っていった。

次に会う時は舞妓さんでも芸妓さんでもいいから、仲の良い女の人ができたとかそういう話を聞けるといいな。

 

 

しかし俺もよく巻き込まれるもんだな…元々声をかけられやすいってのはあるんだろうけど、黒崎くんと関わってから増えたような気がする。これもある意味人気者なのかもしれないけど、でもみんな話をするだけで一緒に何かをすることはないんだよな。

 

通学路でよく会うケガしてるお姉さんだって未だに連絡先を教えてくれないし、由美ちゃんだって電柱のところで話すことはあるけど気分転換にと遊びに誘っても来てくれない。

 

声をかけてくるくらいなんだから嫌われてるわけでもないはずだし、恥ずかしいってこともないと思うんだけど理由がまったくわからん。かと言ってあんまりしつこく誘ったりするのも事案になりそうだからやるわけにはいかない。

 

 

「おい、あんまりチンタラ歩いてると遅刻しちまうぞ?」

 

「やぁ黒崎くん。君もヘビーな星の下に生まれてるよね」

 

「なんだよいきなり。確かにいろいろとあるけど、やる(護る)ことは変わらねぇからな。お前も(そんな小さな霊圧で)何かしようとするなよ?俺が護ってやるからさ」

 

「(やる?願わくばそれがヤるじゃないことを祈ってるよ)大丈夫だよ。間違っても(君たちの入り乱れる矢印に)首を突っ込もうなんて思ってないさ。これでも自分の身の程はわかってるつもりだよ」

 

 

この時、俺はわかってる気でいただけだと後で思い知らされることになる。

 

 

 

しばらくして京都からあんなにたくさんの役者さんたちが相談に来るなんて思わなかったんだ。

 

 

 

 







これにて原作時間軸での話は終了です。

あとは書くとしても原作後の後日談的な感じになると思います。









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