普通にゲームしてたら、なんか空閑遊真のブラックトリガー拾いました。 (詠海だよ)
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普通にゲームしてたら、なんか空閑遊真のブラックトリガー拾いました。

なんだかとんでもない駄作ができてしまった


「……なんで?」

僕は混乱していた。もう一度言おう。混乱していた。(大事な事なので2回ry)

 

 

 

 

「なんで……ここに空閑遊真のブラックトリガーがあるんですかねぇ!?」

 

そう。目の前の宝箱に、大人気漫画『ワールドトリガー』の主人公の一人である空閑遊真の使うチート武器、黒い指輪型のブラックトリガーが入っていたのだ。

 

……え?見間違いに決まってんだろって?

いや……アイテム名見れば分かるよこれ…

 

だってアイテム名【空閑のブラックトリガー】だぞ?

隠してすらないじゃん。

 

こんなことが起こったのは40分ほど前。

 

このゲーム、【New World Online】内で明日行われる『第1回イベント』でいい成績を残すためにレベルを上げようと、ダンジョンに潜っていた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜約40分前〜

 

おっと、そういえば自己紹介をしてなかった。

僕の名前は天崎雪菜(あまさきせつな)。女子みたいな名前だが正真正銘男だ。

プレイヤーネームは名前の『(せつ)』の読み方を変えて《ユキ》。

使う武器はグローブ。殴るやつね。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

僕は、ここ三日間くらいずっとソロで潜っているダンジョン、【毒竜の迷宮】に来ていた。

道中はもう慣れたもので、あっさりと敵を倒して進んで行った。

 

 

 

 

 

 

ボス部屋に入り、ボスである毒竜と相対する。

 

そして───

 

 

「…行くぞ!」

叫び、毒竜に向けて走り出すと───

 

 

 

 

「は?」

なんと床が抜けた。

 

 

 

「えええええぇぇぇぇぇっっ!?」

もちろん重力には逆らえず、真っ逆さまに落ちていく。

 

 

そして10秒もせず、なんとか体勢を整えて着地。

 

「なんだったんだ…?なっ…!」

そして、目の前に飛び込んできたモンスターを見て驚愕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラ、ララ……ラービットォ!?」

そう。何故か『ワールドトリガー』に出てくる敵キャラ…それもまあまあ強いやつが居たのだ。

 

そこからはまぁ…思い出したくない。

30分も戦わされたし、もしものために買っておいたありったけの回復ポーションを全て使わされるという。

 

僕を破産させる気か!

 

死ぬほど苦労してラービットを倒し、少し休んでから、ラービットが倒れた場所に出現した宝箱を開けた所でさっきの場面に戻る。

 

 

 

 

そんで現在。【空閑のブラックトリガー】の効果を確かめている。

 

『空閑のブラックトリガー』

【STR+42】 【AGI+35】 【MP+54】

スキル【トリガー起動(オン)

 

ふむふむ。トリガー起動する前は指輪だけどこれも武器扱いなのね。

ていうか普通に強い。

このまま使ってもチートレベルだな…

 

では、トリガー起動に関しては…?

 

スキル【トリガー起動(オン)

MPを100消費し、HP、MP以外の全ステータスを3倍にする。

このスキルを発動している間は、攻撃を当てられてもHPが減少せず、代わりにMPが減少する。

このスキルは、MPが0になるか、自発的に『トリガーオフ』と発声することで解除される。

 

 

…大体分かってたけど、本当にトリオンをMPにしただけだな…

よし、装備してみよう。

指輪を嵌めると、再び音声が頭の中に響いた。

 

『スキル【印】を獲得しました』

 

まぁそうだよな。空閑といえば『お前、つまんないウソつくね』と印だもんな。

で、これも想像つくけど効果は、と…

 

 

スキル【印】

それぞれ『弾』印(バウンド)『強』印(ブースト)『盾』印(シールド)『鎖』印(チェイン)『錨』印(アンカー)『射』印(ボルト)『門』印(ゲート)『響』印(エコー)をMPを消費し使用出来る。

さらに、相手の攻撃をコピーし新しい印にして使うことも出来る。

尚、スキル【トリガー起動(オン)】を使用している時は同じ印を重ねて使用することが出来るが、その分MPも重ねて消費される。

 

…なるほどなるほど。

 

…やっぱチートだぁ…

ちなみに、別の印を重ねて使用することも出来る。

 

例えば原作で使ってたけど、『錨』印+『射』印(アンカー・プラス・ボルト)とか。

この組み合わせだと、『錨』印(アンカー)『射』印(ボルト)で飛ばすことが出来る。

 

ではちょっとやってみよう。

「【トリガー起動(オン)】!」

 

叫ぶと、黒色の魔力が全身を包む。

 

「……おお」

 

体が軽い。やっぱり高性能なんだなぁ。

まぁそりゃそうか…ブラックトリガーだしな。

 

 

さて、では早速壁に向かって。

 

『強』印(ブースト)…!」

 

実験という名目で拳を突き出すと…

 

 

ドゴォォン

 

拳が壁に当たった瞬間、洞窟が揺れた。

 

「…うっそーん…」

 

 

…威力おかしくない?

 

 

 

 


 

 

 

───これは少しだけ時を遡っての現実世界。

ゲームを運営する者達が不具合が出ないように管理している部屋でのこと。

その部屋の中は、今───

 

 

「…おい!ブラックトリガー取ってるやつが居るぞ!」

 

「ファッ!?あの鬼畜条件の!?」

 

大騒ぎであった。

 

「は?おいお前、ブラックトリガーの出現条件って何だ?鬼畜条件って何だ?オイオイオイブラックトリガーオイオイ」

 

「落ち着け!バ〇の炭酸抜きコーラ野郎みたいになるな!」

 

「オイオイオイオイブラックなトリガーオイオイ」

 

「だ、ダメだ…考えることを放棄してる…考えるのが怖いんだ…」

 

 

すると、課長が突然手を叩き。

「落ち着け。そしてよく聞け。いいか、あのアイテムの入手方法は───

 

 

 

 

 

 

どれでもいいからダンジョンを単独で100回攻略した後、もう一度ダンジョンに潜った時に出てくる【ラービット】を倒す。

……以上だ」

 

…………。

 

社員たちは全員黙り込み、呆然とした顔で課長を眺めた。

 

そして、わずか二秒後。

 

 

「「「「「バッッッカじゃねぇのぉ!?」」」」」

 

その日は、【New World Online】運営チームの悲鳴が一日中会社に響き渡っていたそうな。

 

 

 




最近ワールドトリガーにハマりまして。
え?じゃあ原作ワールドトリガー書けよって?
設定が難しいんじゃあい…


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第1回イベント①

うぇ〜い


そして、イベント当日。

 

あの後色々試して分かったことは、実際に使ってみると結構難しいこと。

『弾』印(バウンド)とかマジで難しい。壁に激突しそうになる。

 

あとは、原作でコピーしてた印は普通に使えるみたい。

『錨』印 +『射』印(アンカー・プラス・ボルト)とか結構好きだから嬉しい。

 

 

さて。それはさておき、今日は【New World Online】第1回イベントの日だ。

もう最初の広場にいるのだが、これまた賑わっている。

 

僕も始まるまでお茶でも飲んでいようかな…

 

そんなことを呑気に考えていると。

 

 

「お、ユキじゃないか!」

 

「ユキ〜」

 

「クロムにイズ、二人も参加すんの?」

 

僕に話しかけてきたのは、熟年夫婦の…

 

「「誰が熟年夫婦だって?」」

心読むなよ。

 

…前パーティ組んでたクロムと今の僕の装備を作ったイズ。

 

「…で、二人はどうすんの?僕の予想はクロムだけ参加でイズは観戦」

 

「当たり。俺は参加するぞ」

 

「私は戦闘に特化したビルド構成してないからね…出たら袋叩きにされちゃうし…」

あれで見るわ、とイズは空中に浮かんでいる巨大スクリーンを指さした。あれで面白いプレイヤーを中継するのである。それは、イズみたいな生産職の人や参加しなかった人が主に見ることになる。

 

「でも戦闘できない分いい装備を作れるってのはいいことでしょ」

 

「あら、ありがとう」

 

「まぁイズの作った武器もう使ってないけどね」

 

イズが無言で掴みかかってくる。

 

「服はまだ使ってるから許して…」

 

「そのコートは傑作だったんだから大事に使いなさいよ!」

 

そう。僕の着ているコートはイズの最高傑作だそうで、AGIに補正がかかり、さらに気配遮断(ハンディング)にボーナス値までつく逸品である。

 

「はいはい、大事に使いますよ」

 

「ったく、お前らは…」

ため息をつくクロム。

お前は僕の保護者か?

 

「それでは、第一回イベント!バトルロワイヤルを開始します!」

あっちこっちからうおおおおおといった怒号が響く。

ん、もう始まるのか。

じゃあ最後にステータスを確認しておこう。

 

 

 

ユキ

Lv41

HP 140/140

MP 312/312〈+54〉〈+20〉

【STR 70〈+42〉】

【VIT 5〈+25〉】

【AGI +90〈+32〉〈+35〉】

【DEX 0】

【INT 40】

装備

頭 【空欄】

体 【コートオブ・ナイトメア】

右手 【空欄】

左手 【空閑の黒トリガー:トリガー起動(オン)

足 【空欄】

靴 【ブラックレザーブーツ】

装飾品 【空欄】

【空欄】

【空欄】

 

スキル

【状態異常攻撃IV】【侵略者】【超加速】【印】【魔力拳】

【筋力強化・中】【体術Ⅴ】【拳の心得Ⅵ】

【体捌き】【気配遮断Ⅴ】【気配察知Ⅲ】

【しのび足I】【跳躍Ⅱ】

【毒耐性・大】【MP強化・中】

 

 

よし、OK。問題なし。

黒トリガー手に入れて初の対人戦だ…気張っていこう。

 

僕が気合いを入れるために自分の頬を叩いていると、大音量でアナウンスが流れはじめる。

 

「それでは、もう一度改めてルールを説明します!制限時間は三時間。ステージは新たに作られたイベント専用マップです!

倒したプレイヤーの数と倒された回数、それに被ダメージと与ダメージ。この四つの項目からポイントを算出し、順位を出します!さらに上位十名には記念品が贈られます!頑張って下さい!」

 

そう言い終わると、スクリーンに転移までのカウントダウンが表示される。

 

「ユキ、当たったら容赦しないぞ」

 

「こっちのセリフだよ」

 

クロムからの宣戦布告を受け止める。

実際、クロムは強い。

でも僕も前より強くなってる。

なにより。こんなチート武器を手に入れた以上、1ゲーマーとして負ける訳にはいかないのだ。

 

…ってわけなので、誰にも負けないように頑張ります。

 

そしてカウントがゼロになった瞬間、僕は光に包まれて転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

目を開けると、そこには一面の草原…いや、一面じゃないな。少し遠いが、南には森林が広がっている。

周りはパッと見渡した分には誰もいない。

 

まぁまぁ良い場所を引けたな。

この武器は複数対1も1対1もイケるものだ。

だが基本的に近づいて殴る蹴るなので、下手に遮蔽物がある場所よりいい。

 

 

「よし。とりあえず敵を探すか「【炎帝】ッ!」「【ホーリージャベリン】!」…ハァ…必要ない、か。【トリガー・起動(オン)】」

 

からの…

 

『盾』印(シールド)!」

緑色の障壁が火球と魔力で出来た槍を防ぐ。

 

…てか、おいおい…

 

2人ともトッププレイヤーじゃんか…

 

ミィにミザリー…こりゃ初っ端から引きが悪いな…

 

「…何だ?あのスキルは…見たことがないな」

 

「【魔力障壁】と似たスキルのようですね…」

 

「そうだな…マルクスは?」

 

「もう少しかかりそうだと」

 

「分かった。では二人で片付けよう」

 

「はい」

 

時間をかけすぎると三人目が来るのか…

ミィだけだったらやりようはあるのだが、ミザリーの後方支援がやっかいだな。

まずはミザリーから…か?

 

だが…『錨』印 +『射』印(アンカー・プラス・ボルト)で無力化しようにも、あれはMP使用料がまぁまぁ多いんだよな…

後のことを考えると、乱発は控えたい。

 

 

…ん?待てよ…面白いことを思いついた。

 

正面からぶつかれば、分が悪いのは僕。

だがそれは、ミザリーの援護がある場合の話だ。

ミザリーにミィを回復させないように、ミィを一撃で倒す。

そのために。

 

「…よし!」

 

ミィとミザリーに背を向け、僕から見て南にある森林地帯へと走り出した。

 

「なっ…!追いかけるぞ!」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

38名前:名無しの観戦者

お?早速好カード来た―!

 

 

39名前:名無しの観戦者

【炎帝】ミィと【聖女】ミザリー vs【魔力拳】ユキか!

 

 

40名前:名無しの観戦者

謎の渾名付いてんの草

 

 

41名前:名無しの観戦者

でもこれは…ミィとミザリー有利じゃね?

 

 

 

 

 

 

よし、追ってきてるな。基本の速度は俺の方が早いから、逃げられるかもって焦ってくれるとありがたい。

そんでもって───

 

「速いな…!【フレアアクセル】!」

 

よし。加速系のスキルを使ってくるならやりやすいな。

 

「【炎槍】!【爆炎】!」

 

炎の槍がもの凄い速度で迫ってくる。

 

「…ッ!」

何とか身を逸らし槍を躱すが、すぐに火球の追撃が来る。

咄嗟にシールドを起動する!

 

『盾』印(シールド)!」

危な!

森林地帯まであと100メートルくらいか…!急げ!

 

「森林地帯に入るぞ!隠れるつもりだろうが、木を燃やして視界をクリアに出来る分、こちらが有利だ!」

 

「わかりました!」

 

森林地帯の入り口まであと10m。

よし、着いたな!

 

でも僕が森に入ることは無い。

なぜなら、ここから一番近い木だけを利用するから。

 

よし、勝負は一瞬。

 

『弾』印(バウンド)

「心得た」

 

木に『弾』印(バウンド)を仕掛ける。

そして体を反転させ、両足で思いっきり木を蹴った!

 

「…うっ!」

すると次の瞬間、僕の体はまっすぐミィに向かって、弾丸のように打ち出される!

 

「…!?まっ…!」

ミィとの彼我の距離は10mもない。

ミザリーは20mほどか。ミザリーは遠いな。

だけど、まずはミィを確実に倒すために。

右の拳を固く握る。

 

『強』印(ブースト)二重(ダブル)ッ!」

 

───僕が放った一撃は、ミィの体に風穴を開け、HPを吹き飛ばした。

 

 

───だけど、まだだ。

ミザリーが残っている。

 

 

『弾』印(バウンド)の勢いを止めるために両足でブレーキをかける。

 

「ミィが…やられた…!?」

 

距離は10mほど。ミィがやられて呆然としている。チャンスだ。

 

「【超加速】!ふっ!」

 

「しまっ…!」

 

スキル【超加速】の勢いを乗せた蹴りの勢いは十分だったようで、ミザリーのHPは一撃で消し飛んだ。

 

「ふぅ…」

一息つく。

 

まぁ…あれだ。

黒トリガーでの初陣は無事勝利…

 

 

 

 

で終わるわけねーだろ!

 

え?さっき『弾』印(バウンド)使った時左腕から

『心得た』って聞こえたんですけど!

 

「気になるんだよー!」

 

気になるので左腕をブンブン振り回す。

あと、その様子がモニターに映っていたことは後々知ることになる。

 

「……ハァ」

一分ほど回し続けただろうか。

疲れた…

 

「…あの、なんかいるなら出てきてくれる?」

そう左腕に問いかけると、黒い炊飯器のような物体が出てきて宙に浮き、あまつさえ喋り始めた。

 

『こんにちは、ユキ。私はこの武器に搭載されている自立型モンスターだ。名前はまだない』

 

完全にレプリカ先生ですね本当にありがとうございました




ステータス数値は多分これで合ってる!
なんか間違ってたらごめんなさい!


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第1回イベント②

1回間違えて投稿しちゃいました。


あれから一時間とちょっと。

残り時間はあと一時間となっていた。残り一時間で全ての順位が決定するのだ。

そんな緊張状態の中。

大音量でアナウンスが鳴り響いた。

 

「現在の一位はペインさん、二位はドレッドさん、三位はメイプルさんです!これから一時間上位三名を倒した際、得点の三割が譲渡されます!三人の位置はマップに表示されています!それでは最後まで頑張って下さい!」

 

「三人がマップに表示されたな。頼むぞレプリカ」

 

『了解だ』

 

結局、黒トリガーから出てきたレプリカ先生はそのまま『レプリカ』と名前を付けた。

 

いい名前が思いつかなかったんだよ…

 

さて、それはさておき。

 

上位三名がマップに表示された。

僕がこれから上位3位に入るには、この三人の誰かを倒さなくてはいけない。

 

「誰を狙うか…」

 

『私はメイプルがいいと思うが、決めるのは私ではない。ユキ自身だ』

 

名セリフ頂きました―。

 

さて、どうする?

オールラウンダーのペインか、スピード特化のドレッドか、防御特化のメイプルか。

 

 

「…よし、決めたぞ。メイプルとドレッド、同時に狙う」

 

『了解した』

 

 

 

 

 

 

 

走る。

走る。

とにかく走る。

まずはメイプルの所まで。

 

時間がないのだ。

この作戦は博打とも言える。

メイプルに近づけなければ普通に死んで終わりだ。

メイプルは盾で触れたものを魔力にして吸収することが出来る。

普通にやるんじゃダメだ。

 

チャンスは1回だけ。

 

メイプルが視界に入る。

 

「レプリカ、ドレッドの位置は?」

 

『メイプルから見て5時の方向、1km程だ』

 

「…OK」

 

森から出てきたプレイヤーたちがメイプルを囲む。

僕は集団に紛れず、茂みに隠れる。

…まだだ。

 

「いっくよー!【毒竜(ヒドラ)】!」

短刀を抜き放ちメイプルが叫ぶと、毒竜が顕現する。

まだ。

隙を見逃すな。1回逃したらもうチャンスは来ない。

 

毒竜が吐いた毒がプレイヤーたちを飲み込んでいく。

 

まだ。

 

そしてメイプルは辺りを見回し、敵を排除し終わったと感じたのか、短刀をしまい息をつく。

 

…今!行け!

 

「…ッ!」

 

全力でメイプルに向かって走る。

 

「う…うわぁっ!」

メイプルはすぐにこっちに気づいた。

だが今から短刀は間に合わないと判断したのか、盾を突き出してくる。

 

 

少し見たから分かる。

 

この盾に付与されているスキルは──名前は分からないが──恐らくクールタイムが存在しない。

 

つまり、僕がこのまま盾を殴ったら僕が死ぬということだ。

 

 

───当たったら死ぬ?

 

───ならば対処は簡単だ。

 

 

 

 

───当たらなければいい(・・・・・・・・・)

 

 

「【超加速】」

加速した僕は、ジャンプしてメイプルを飛び越えた。

そして後ろからメイプルを羽交い締めの要領で掴む。

 

「えっ、えぇ!?」

 

攻撃されると思ったのか、驚きの声を上げるメイプル。

 

『強』印(ブースト)七重(セプタ)!」

 

僕の狙いは今メイプルを倒すことじゃない。

ドレッドとの戦いに巻き込んでまとめて倒すのが狙いだ。

つまり。

わざわざ羽交い締めにして、STRを最大まで上げたのは―――

 

「………っせ─────

 

 

 

 

───のっ!

 

投げて、ドレッドの所までメイプルを飛ばすためだ。

 

「うえぇぇぇっ!?」

 

ついでに少しでもダメージが入ればいいが、期待しないでおこう。

 

さっき大ぶりの両手剣を頭で弾き返してる場面を見てしまったからな。

 

さて、僕も急いで向かおう。

 

『弾』印(バウンド)二重(ダブル)!」

 

『心得た』

 

地面に『弾』印(バウンド)を仕掛け、跳び、メイプルが着地した場所へ向かう。

 

『弾』印(バウンド)を多重印にしたおかげか、距離は難なく縮まり、上空からドレッド、メイプル、そしてその2人を狙うプレイヤーたちを発見した。

 

「よし」

 

準備は完璧に整った。

 

『錨』印 (アンカー)(プラス)『射』印(ボルト)四重(クアドラ)ッ!」

 

黒い魔力塊がそれぞれプレイヤーに向かっていき、着弾。

そして着弾した瞬間───

 

「うっ…!なんだこれ…重い!」

 

着弾した場所に重しが引っ付く!

 

 

鉛弾(レッドバレット)

 

直接的な攻撃力を無くす代わりに着弾すると約100kg相当の六角柱の重しとなり敵にくっつくことで機動力を奪う、オプショントリガー。

通常弾(アステロイド)追尾弾(ハウンド)に効果を付与し使うものだ。

 

そして、空閑遊真がA級7位三輪隊の隊長である三輪からコピーしたトリガーは鉛弾(レッドバレット)だけではなく、鉛弾(レッドバレット)の効果を乗せる対象である通常弾(アステロイド)もコピーしてある。

 

鉛弾(レッドバレット)『錨』印(アンカー)に。

 

通常弾(アステロイド)『射』印(ボルト)に。

 

まぁ結局何が言いたいのかというと、だ。

『錨』印(アンカー)と組み合わせずに『射』印(ボルト)を使ったら?

答えは簡単。

 

 

攻撃用の───通常弾(アステロイド)が使える。

 

 

『射』印(ボルト)五重(クインティ)

 

緑色の魔力で出来た弾丸が打ち出される。

通常弾(アステロイド)は、追尾弾(ハウンド)のような特殊性がない代わりに、威力が高いという物だ。

ちゃんと当たればメイプル以外は問題なく削りきれる。

 

しかし鉛弾(レッドバレット)が引っ付いているため、回避能力の高いドレッドも回避できない!

 

「ったく…空から女の子が落ちてくるわ、空から魔法が降ってくるわ…災難すぎるぜ…」

 

そう言ってドレッドが光になり消える。

 

メイプル以外のプレイヤーの消滅を見届けながら、着地する。

 

「うう…重い…いきなり投げ飛ばされたりするし…」

メイプルは鉛弾(レッドバレット)が付いている状態で蹲っていた。

メイプルの体力を見ると、まだ半分も残っていた。

結構受けてたと思うんだけど…凄いな。

 

「うっ…毒竜(ヒドラ)!」

僕がいる事を感じ取ったのか、倒れながらも攻撃魔法を使ってくる。

 

だが。

 

「悪いね。『盾』印(シールド)

 

『盾』印(シールド)が無くても、毒竜の迷宮を周回してた影響でもう僕の毒耐性は《大》まで上がってる。

その魔法じゃ、僕は倒せない。

 

『強』印(ブースト)三重(トリプル)

 

毒竜(ヒドラ)を無力化しメイプルに近づいた僕は、強化した拳を倒れているメイプルに叩きつけた。

 

「かはっ…」

 

そして、消滅する寸前のメイプルに。

 

「通りすがりの黒トリガー使い、ユキだ。名乗っておいてなんだけど、別に覚えなくて良いよ」

 

そう言い放ち、もう一度拳を振り下ろした。

 




セリフ一つだけで退場させられる男、ドレッド
自分で書いたとはいえドレッドが不遇すぎて泣ける…

最後のはちょっと格好つけさせてみたかっただけなんです!ゲーム内だし別にいっかとか思ってすいませんでしたぁ!


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ウソダドンドコドーン

なんか気分が乗ったので連続投稿。


352名前:名無しの観戦者

うおおおおぉ!?

 

353名前:名無しの観戦者

かっけえぇぇぇ

 

354名前:名無しの観戦者

おい、こいつこんなに強かったか?

 

355名前:名無しの観戦者

2位のドレッドと3位のメイプルどっちも倒したからポイントが…

 

356名前:名無しの観戦者

マジかこいつ

ペイン抜いて暫定1位だぞ!?

 

357名前:名無しの観戦者

そんなことより決めゼリフかっこよスギィ!

 

358名前:名無しの観戦者

ダークホースやでぇ…

 

359名前:名無しの観戦者

大剣頭で受け止める歩く要塞をぶっ殺すとか…STRどんだけ高いんだよ

 

360名前:名無しの観戦者

こいつ一対一最強じゃね?

 

 

 

 

「終了!結果、順位が大きく変わったため、上位10名のプレイヤーを表示します!」

 

1位:ユキ

 

2位:ペイン

 

3位:ドラグ

 

4位:カスミ

 

5位:メイプル

 

6位:ミィ

 

7位:クロム

 

8位:シン

 

9位:マルクス

 

10位:フレデリカ

 

 

 

 

「…ん?終わりか。あー、疲れた」

 

地面に倒れ込んで大きく息を吐く。

 

『これから表彰式があるようだぞ』

 

「マジか。コメント考えとかなきゃな…」

 

『気楽に行こう』

 

目の前が白く染まったかと思うと、そこは最初の広場だった。

一位から三位までが壇上に登るように言われたので登壇する。

 

「では、まずは1位のユキさん!一言お願いします!」

 

「え?あ、はい。えー、初めての対人戦でしたがなかなか上手く戦えましたね。良かったです」

 

評論家みたいなコメントをし、記念品を受け取り前に向き直ると、クロムとイズが手を振っていた。

一応手を振り返す。

 

そして2位のペイン、3位のドラグもコメントを言い終わり、壇上から降りる。

 

すると、早速クロムとイズに絡まれる。

「1位とかやるなぁお前。すげぇ強くなったじゃないか!」

 

「私製作のコート着て〜優勝とか〜やってくれるじゃな〜い!」

 

「イズ…なんか酔ってない?」

 

通常、VRゲーム内で飲酒しても、直接アルコールを摂取しているわけではないので基本的には泥酔はしない。

 

「はは…場の雰囲気とかで酔ったみたいだな…」

 

まぁそれも例外があり、場に飲まれて気分だけ酔うこともたまにあるらしい。

 

「それはそれとして。1位おめでとう、ユキ」

 

「クロムも7位だったじゃん。おめでとう」

 

「はは、ありがとう。…おっと、そうだ…メイプルちゃんからお前宛に伝言があるぞ」

 

「メイプル?…あぁ、5位の」

 

あのクッソ硬い人か。

伝言か…なんだろ。

 

「『あなたを倒せるようになるために頑張ります』とさ。…お前、メイプルちゃんどんな倒し方したんだよ」

 

「え?重し付けて動けなくしてから殴りまくった」

 

「おぉぅ…ひっでぇ…」

 

「手加減するわけにもいかないだろ?」

 

その後、30分ほど二人と話してから宿屋に向かい、ログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「よし…行ってきまーす!」

制服を着て学校へ向かう。

ここ数日で日差しも強くなってきた……もう夏になりかけているのだ。ふざけやがって。

 

僕の家は学校までまぁまぁ遠い。歩いて35分程度だ。

学校に着くころには汗だくになるかと予想していたが、幸運にも今日は風が冷たく、涼しかった。

 

「ハァ…今日はバレーあったっけ」

 

今日の時間割を思い出しながら校門をくぐり、教室に向かい自分の席に着く。

 

教室にはもう人が多く居た。

皆友達との雑談に興じている。

その中でも特に楽しそうなのが隣の席の二人。

 

「何その化物キャラ!さっすが楓、普通のプレイから脱線してるよ」

 

「えっ…そうなの!?」

 

「うん、っていうかもう脱線した先で手に入れたものが強過ぎ。あー…これは楓に追いつくの大変そうだなぁ…」

 

朝から元気だな―、白峯さんと本条…さ…

 

…………ん?

 

何だこの違和感は…

 

思わず隣の席から本条さんの顔を覗き込む。

 

ん───…

 

どっかで見たことあるような…

いや、クラスメイトだから当然なんだけどね?

なんか…

 

 

…………あ。分かった。

 

 

「…あ、あの―…ど、ど…どうかしたの…?」

 

「…あ。ごめんごめん、なんでもない」

やべ。もはやガチ恋距離と言っても過言じゃないレベルに近付いちまった…

 

「い…いえいえ」

 

顔を真っ赤にしている本条さん。

それを見て、僕は一人空(天井)を仰ぎこう考えた。

 

 

 

 

こ の 子 メ イ プ ル じ ゃ な い で す か ヤ ダ ―

 

 

ふざけるなァァァッ!罠だ!これは罠だ!僕を陥れるために仕組んだ罠だ!

 

「なになに〜?楓、天崎くんとデキてんの〜?スミに置けないな〜楓〜」

 

「そ、そんなんじゃないよ!」

 

なんか話しているが、放っておこう。

今僕はそれどころじゃない。

 

向こうは気づいていない…よな?

 

あっち(ゲーム)では眼鏡かけてないし…

 

いや気づかれたくない。めんどくさいし。

 

 

「よし!決めた!私は…『回避盾』になる!」

 

「回避…盾?」

 

「うん!敵の攻撃を引きつけて回避することで攻撃を無力化するんだ」

 

「おおおお!格好良い!」

 

話を再開した白峯さんと本条さん。

どうやら白峯さんも【New World Online】を始めるらしい。

 

やめてくれ!鈍い本条さんならともかく、鋭い白峯さんを追加するんじゃない!

 

「楓を倒したプレイヤー、なんて名前だっけ?」

 

「えっと、【通りすがりの黒トリガー使い・ユキ】って言ってたよ」

 

「よーし、じゃあ!そいつを二人で完封して倒そう!」

 

「お、おー!」

 

………え?

 

────ウソダドンドコドーン!!!




主人公くんの見た目は【Fate Apocrypha】のカウレスくんみたいな感じ。

ゲーム内では眼鏡なし。


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イズには大量の恨みと少しの感謝を

2月25日

日間ランキング(加点式・透明) 1位

実験ピックアップ1 70位


まさかランキング乗るとは…ありがとうございます!


「…なぁ、レプリカ。昨日のイベントでボコボコにしたやつが現実世界で自分と同じクラスだったんだけどどうすればいいかな…?」

 

『そうだな…』

 

その後。

ログインした僕は、悲しみのあまりレプリカに相談した。

ちなみに今は地底湖で釣りをしている。

イズから素材を取ってきて、との依頼だ。

イズには恩もあるし、ちゃんと礼も用意するらしいから受けたのだ。

 

『相手は、ユキだと気付いていないのか?』

 

「…恐らく」

 

『ならば下手に刺激しないのが一番だろう。気付いていないならそのまま放っておけば良い』

 

「まぁ、それもそうか…」

 

ならばやはり放っておいてなるべく関わらないようにしよう。

 

 

「おおおお!すっごい速かった!」

 

おいちょっと待て。なんか知ってる声が…

 

「ふふふ…崇めたまえ〜!」

 

「ははーっ!サリー様〜!」

 

馬鹿野郎ォォォ!メイプルッ!何故よりにもよって貴様がここに来る!

嘘だッ!嘘だと言ってくれ!

 

 

「──【気配遮断】」

 

僕は思わず壁に張り付いて【気配遮断】のスキルを使った。

イズ特製のコートのおかげで【気配遮断】のスキルレベルが上がっているからか、メイプルと──サリーと言うらしいが…あれは白峯さんか?

ともかく。二人は僕に気づくことはなく、さっきまで僕が居たところに座り、釣りを始めた。

 

それを見てため息を吐き───

 

「【トリガー・起動(オン)】【超加速】」

 

超速で逃げ出した。

 

「…?メイプル、何か言った?」

 

「?何も言ってないよ?」

 

僕はある意味ボス以上の恐怖から脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イズコラァァァァッ!!」

そして扉を叩き割る勢いでイズの店に突入!

 

「ギャアァァァァッ!…って何よユキ。素材の採取を頼んだはずだけど…」

 

「メイプルが来たんだよ!僕はメイプルと遭遇したくないって言っただろ!?」

 

「あぁ、メイプルちゃん。そういえば地底湖勧めたわね。それはそれとして、素材は?」

 

「あぁ、メイプルちゃん。じゃないわー!お前には説明したじゃないか!リアルの同級生とゲームで関わりたくないんだよ!」

 

そう。こいつとクロムだけには相談したのだ。僕とメイプルをあんまり会わせないようにしてくれって。

なのにこの始末。信用を返せ。

 

「でも遅かれ早かれいつかバレるでしょう?ならさっさとバレた方が良いじゃない。…それはそうと、素材は?」

 

「そういう問題じゃない。メイプルとその友達は僕を倒すーとか言って息巻いてんだぞ?PKされそうだから会わないに越した事は無いってこと」

 

「私はちゃんと話した方が良いと思うけどね…レプリカ先生もそう思うでしょ?……ていうか、素材は?」

 

『それを決めるのは私ではない。ユキ自身だ』

 

「まぁそうよね…ていうか素材は!?」

 

ちょっと何言ってるのか分かんない。

 

 

 

 

結局。取れた分の素材はちゃんとイズに渡して、今僕は二階層に繋がるダンジョンに来ている。

 

またイズからの依頼だ。

まぁ、ダンジョン攻略が依頼ではなくイズの新作武器(片手剣)の試運転ではあるが。

これまた自信の逸品だとか。

僕もMP切れた時用に剣とか持ってても良いかも。

 

そうして歩いていると、イノシシ型のモンスターが前から現れ、突進してくる。

 

「…さて」

腰から剣を抜き放つと、薄い水色の金属が鈍く光る。

 

「…おぉ、軽いな」

僕のビルド構成は好みからAGIに寄っている。

 

これぐらいの軽さだと使いやすくて良い。

 

そして、さっき素材集めの報酬としてイズに貰った、剣専用スキル【雷切】のスクロール。

これはもうスキルにしてある。

使わないだろコレとか思っていたが、結構速く使い時が来た。

 

「【雷切】!」

スキル名を叫ぶと、緑色の矢印が視界に映る。

なるほど、動きの軌道を先に設定するのか。

とりあえずイノシシの鼻っ面に向けておき、右足を一歩踏み出す。

 

「…!」

すると。

動きがありえない程加速し、気付いた時にはもうイノシシは消滅していた。

 

「おぉ」

凄いな。スキルもそうだけど、剣。

軽いけど切れ味抜群だ。現に、スキルを使ったとはいえイノシシを一発で倒した。

…うん。これはイズが自信持つのも納得だ。

 

再び奥へと進んでいく。

ダンジョンはそこまで深くないみたいだ。十回ほどモンスターとの戦いを挟んだだけで、ボス部屋っぽい大扉に到達することが出来た。

 

「さてと…行くか」

その大扉を開けて中に入る。

 

天井の高い広い部屋で奥行きがあり、一番奥には大樹がそびえ立っていた。

部屋に入って少しすると、背後で扉が閉まる音がする。

 

そして───

 

 

 

───大樹がメキメキと音を立てて変形し、巨大な鹿になってゆく。

樹木が変形して出来た角には青々とした木の葉が茂り、赤く煌めく林檎が実っている。

 

鹿は一度体を震わせると、こちらを睥睨し、咆哮を上げた。

 

 

そして僕は、その咆哮に応えるように笑みを浮かべ───

 

「──戦闘開始だ。サポート頼むぞ、レプリカ」

 

『了解だ』

 

 

 

 

 

 

まずは小手調べ。

相手のHPがどんくらいか調べる。

 

『射』印(ボルト)

数発通常弾(アステロイド)が鹿へ飛んでいくが、鹿の目の前で緑に輝く障壁に阻まれて消失した。

 

「おお、マジか」

 

『恐らくあの魔法陣だろう。攻撃が無効化されたが…どうする?』

 

「…いいや、放っとこう。こっちは物理攻撃主体だしな」

 

 

 

鹿が地面を踏み鳴らすと、巨大な蔓が次々に地面を突き破り現れ、襲いかかってくる。

 

それを剣で斬り、攻撃が止んだ瞬間に走る。

 

『弾』印(バウンド)!」

 

『承知した』

 

『弾』印(バウンド)によってすっ飛んだ僕は、鹿の顔面を勢いのままに思い切り蹴り飛ばした!

 

すると衝撃により鹿の体が傾き、弱点であろう首が僕に晒される。

 

「【雷切】ッ!」

 

横一文字の一閃。

首をスキルで斬ったことにより鹿のHPが一気に減る。

 

「おお、めっちゃ減るな」

 

残り4割。

 

鹿が起き上がる。

 

 

いや…起き上がろうとした(・・・・・・・・・)

僕の戦いでのモットーは【完封】。相手に何もさせないのがベストだと思っている。

 

「だから…『鎖』印(チェイン)二重(ダブル)

 

相手に休む隙を与えない戦法が多いんだよね、僕。

 

鹿の近くに待機させておいたレプリカから鎖が放たれ、鹿が縛られる。

これでもう鹿は動けない。

詰みだ。

 

『強』印(ブースト)

 

STRを上げ、剣を急所に突き刺す。

 

そのまま数秒待つと、鹿は光となって消えた。

 

「ふぅ…」

 

『戦闘終了だ』

 

「…帰るか」

 

思えば、2層行ってもやることないわ。

 

 

 

 

 

 

そして、第一層に帰ってきた僕は早速イズの店へGO。

 

「イズ」

 

「あ、ユキ。もう終わったの…剣はどうだった?」

 

「かなりいいね。…イズ、この剣売ってくれない?」

 

「200万」

 

「うぐ…まぁいいだろ」

 

200万ゴールドをイズに渡し、剣のステータスを見る。

 

 

宵月(よいづき)・Ⅶ】

【STR+75】

【AGI+38】

 

 

…いやいやいや、強過ぎだろ!

これは200万取るのも納得だ。

 

「それにしても…」

 

『どうしかしたのか、イズ』

 

「何で剣?あんた、剣のスキルなんて取ってないでしょ?」

 

「MPが切れた時用に副装備として使うためにね」

 

「あらそう」

 

「また世話になるよ、じゃあ」

 

『ではな、イズ』

 

「またねー」

 

そうやりとりし、イズの店から出て宿屋へ向かう。

 

それにしても良い装備を手に入れた。

メイプルと会わせられかけた恨みはあるが、少しだけ感謝しておこう。

 

「割合にすると恨み8、感謝2だな」

 

『何の割合だ?』




メイプルの恨みは深い!

ギルドォ!どうしよォ!
って事でアンケート。


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多数対1

早足に行きます。
それはそうと、最近ブルーアーカイブにハマっています。
推しはシロコとマシロとイオリです。
カワイイ。

それはそうと、書きたい小説が多すぎて泣きたい。
設定だけ考えてるやつが5つあるんですよね。

怪物事変に、ぐらんぶるに、戦闘員、派遣します!に、幼馴染が絶対に負けないラブコメ。そしてワールドトリガー。

泣いちゃう。


あれから一週間と少し。

僕は第二層の町にいた。

 

今日は第二回イベントの日ということで、気合いは十分。戦闘体が破壊された時の対処法も考えてきた。

ここで、運営からのアナウンスが入る。

 

「今回のイベントは探索型です!目玉は転移先のフィールドに散らばる三百枚の銀のメダルです!これを十枚集めることで金のメダルに、金のメダルはイベント終了後スキルや装備品に交換出来ます!」

 

そうアナウンスが流れステータス画面が勝手に開き表示されたのは、金のメダルと銀のメダル。

 

「ふむ。…レプリカ、あのメダル解析してマップに映せない?」

 

『可能だ』

 

「さすが」

レプリカの有能さに舌を巻く。

 

「…今回は楽そうだな」

 

『そうでもないだろう』

 

…?なぜに?

 

「ふむ…その心は?」

 

『あの金のメダルに見覚えはないか?』

 

そういえば…あれは確か…

 

「あ、そうそう。第1回イベントの景品だ」

 

『そうだ』

 

なるほど。そりゃ、あれを持ってたら狙われるのは必然だ。

これ一個だけでスキルか武器と交換出来るわけだしね。

 

「よし、じゃあ油断せずに行こうか」

 

『了解だ』

 

そして次の瞬間、僕とレプリカの体は光となり、第二層の町から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ。この感覚嫌いだなぁ…」

 

かなり気持ち悪いワープの感覚に文句を垂れながら周りを見回すと、苔むし、古びた石レンガで出来た廃墟が視界の正面に広がっていた。

 

「ふむ。なんか雰囲気あるな」

 

『探索しよう。マップを表示する』

 

「了解」

 

廃墟の方に足を踏み入れる。

ボロボロになった建造物の中を片っ端から探索していくと、銀のメダルが1枚見つかった。

 

「よし。レプリカ、これ解析してくれ」

 

『了解だ』

 

1枚見つかればこっちのもんだ。

レプリカが解析すればマップに銀メダルの場所を映すことも出来るわけだからな。

だから、探索はさして問題ない。

問題は僕が金のメダルを持っているということだ。

間違いなく狙われる。

 

つまり、僕が気にするべき点は襲撃だ。

やられるなどあってはならない。

 

まぁやられても報復しに行くことは出来るんだけどね、マップに映るから。

 

『解析完了。マップに表示する』

 

インベントリからマップを開くと、マップには赤い点と青い点が表示されていた。

 

「どっちが金かは…聞くまでもないか」

赤い点が圧倒的に多い。

それに対して、青い点は数えることが出来るほど少ない。

つまり金のメダルが青い点か。

あれ?金のメダル…

 

「なんか近づいてきてんだけど」

 

『先手を取るぞ』

 

「意外と好戦的だねレプリカ。でも流石に隠れるよ、複数は無理だ」

 

そう。近づいてきている光点は3つ。

つまり、前回のイベント10位以内に入ったプレイヤーが3人もいるのだ。

 

3人。この数から推測するに、恐らくだがペイン、ドラグ、ドレッド、フレデリカだろう。

 

…4人じゃないかって?いや、ドレッドは僕が倒したから10位以内に入っていない。

 

だから金メダルの反応が3つというのは辻褄が合う。

 

…さすがにあの4人と正面切ってやれば勝敗は五分五分ってところだろう。

 

リスクが高い。その分勝ったら金のメダルが3枚手に入るけど、正直そこまで魅力的じゃない。

 

つまり、戦う意味がない。

 

お、見えた。やっぱりペインにドレッドにドラグにフレデリカだ。

 

よし、このまま隠れよう。

 

「【気配遮断】」

 

さて、隠れきれるか…

 

「うーん、さっきちらっと見えたんだけどなー」

 

金髪の魔法使い、フレデリカがぼやく。

 

「奇襲を再警戒しよう」

 

「流石に4人いたら出てこねぇんじゃねぇの?」

 

…なんだ、見つかってたのか。

そして今は見失ってる、と。

 

「よーし、奇襲しよう」

 

『さきほど隠れると言っていなかったか?』

 

さっき、このまま隠れようと言ったな、あれは嘘だ。

客観的に自分の立場を見てみた結果だ。

少なくとも1対4。相手はこちらを補足していない。僕の隠れてる場所は草むら。

草むら…

 

………。

 

 

逃げようとしたら音でバレるじゃん、バカなの僕?

 

という訳で、バレるくらいなら自分から仕掛けて誰かを削った方がいいと思った。

 

「ここから飛び出して殴るか、『射』印(ボルト)でちまちま行くか…」

 

『誰から狙う?』

 

「うーん、そうだな…」

 

言うまでもなくこちらは突撃しか出来ない。

だが、だからこそ。どう突撃するか決める。

 

 

そして1分後。

作戦を立て終わった。

 

「よし、行くぞ」

 

『了解だ』

 

ふぅ…よし。

行くぞ、決めろ!

 

『弾』印(バウンド)

 

設置した印に、レプリカに持ってきてもらった大きめの石ころを乗せる。

 

すると石ころは物凄い速度ですっ飛んでいき、狙った通りペインのご尊顔に直撃した!

 

「ぐっ…!」

 

「なんだ!?」

 

戸惑う4人。ここで間髪入れずに─────

 

『弾』印(バウンド)ッ!」

 

突っ込む!

 

狙いはまだ衝撃から立ち直っていないペイン。

 

『強』印(ブースト)三重(トリプル)!」

 

突き出した拳がペインを貫く。

入った!

 

「「「ペイン!」」」

 

「ぐっ…まだだ!」

 

いや入ってねぇ!何故か体力1で耐えてやがる!

 

「チッ、スキルか!」

 

すぐさま後ろへ飛び退く。

だがドレッド、フレデリカの攻撃が襲い来る。

 

「【超加速】!」

 

「【多重炎弾】!」

 

「【重突進】!」

 

迫り来るドレッド、ドラグと火球。

 

『盾』印(シールド)二重(ダブル)『弾』印(バウンド)!」

 

ドレッド、ドラグの斬撃を防ぎつつ、飛び上がる。

 

「…!何か来るぞ、フレデリカ!」

 

「分かってる!【多重障壁】!」

 

4人を水色の障壁が覆う。

それと同時に、僕は─────

 

 

 

 

────勝ちを確信した。

 

『錨』印(アンカー)『射』印(ボルト)五重(クインティ)!」

 

だって、シールド効かないからね。

 

黒い弾丸が打ち出される。

シールドに頼って回避しようとしなかった4人には───

 

「うぅっ、何これぇ!」

 

「あーあ、結局前回イベントの二の舞かよ」

 

────大量の重しがひっついていた。

 

「僕の勝ち」

 

そう言って、4人に『射』印(ボルト)を放ち、撃破した。




第4回イベントでまた掘り下げるから許して、集う聖剣が好きな人たち…


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衝撃の出会い

待ってる人いないかもだけど、お待たせ。
急に展開進みます。すみません。


「……ふぅ。上手くいったな」

 

メダルを回収しながら溜息をつく。

今回は初見殺しが上手くハマったからすんなり勝てたが、次回はこうも行かないだろう。

新しい策を考えなきゃな。

 

『これからどうする?もうメダルは十分なほど集まったが…』

 

「そうだな。金メダル4枚も取ったら十分だろ」

 

むしろ4枚も持って歩き回ったら危険だ。何かの拍子にポックリ逝ったら悲しすぎる。

 

「レプリカ、海とか川とか近くにないか?」

 

『川は少し遠いが、海は近いな。南にまっすぐ15分ほど歩けば海だ』

 

「よし、行くぞ」

 

『…?海に行って何をする気だ?』

 

そんなの決まってるじゃないか。

 

 

「遊ぶんだよ」

 

結局暇になったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

「ぷー…なかなか釣れないな…」

 

『待つのも釣りの醍醐味らしい。気長に待とう』

 

というわけで、海で釣りだ。

 

せっかくだし自分で釣った食材で料理でもしようかと思ったのだが、釣れない。

始めてからもう30分たったが、成果は小ぶりの魚が五匹だけだ。

場所が悪いのか?

 

 

「はぁ…結局暇なことに変わりはないか……うおっ!?」

 

暇を嘆いていると、突然ものすごい力で竿が引かれる。

 

「ぐおお………!これは大物だぞ…!レプリカ、頼む!」

 

『了解だ。強印(ブースト)

 

印によって強化されたSTRで竿を思いっきり引く。

 

「うおりゃあぁぁぁっ!」

 

……それ(・・)を釣り上げた僕は、仰天した。

 

魚がデカかったから?ノン。そもそも魚ですらなかった。

 

ではバカデカいゴミを釣ったから?ノン。ていうか 、VR空間の海にゴミって捨ててあるのか?

 

 

 

オホン。ともあれ、だ。僕が驚いた理由は───

 

 

 

釣り上げたやつが人間だったからである。

 

 

それも、見てくれが完全に某アニマルフォレストの村人だったからだ。

 

「な…!?」

 

べちゃりと地面に叩きつけられた村人は、すぐに起き上がると。

 

「いやー、助かった。キミが助けてくれなかったら絶対溺死してたわ。どうもあざっす。…って、前回イベント1位のユキちんじゃん!」

 

「…ユキちん!?」

 

思わず絶句する。お、おいおい…このネーミングセンス、まさかコイツ…

 

 

 

リア友(ヤツ)か!?

 

…僕のリア友に、僕のことを『せっちん』と呼んでくるやつがいる。

声もヤツに似ている。こ、これは…

 

 

「ワイはソンチョー、よろしく!」

 

「あっ、あぁ…僕はユキだ。よろしく」

 

握手の為に手を差し出すと、すぐさま手を取りブンブン振りまわしてきた。なぜか一人称が《ワイ》だが、このノリはヤツだ!

 

「ん?んー…」

 

「…どうした?」

 

「なんかキミの声、聞いた事あるんだよ」

 

「…前回イベントの中継で聞いたんじゃないか?」

 

「…ワイ、前回イベント見てないんだけど」

 

「なんでさ」

 

さてはお前、途中の映像全部すっとばして結果だけ見たな?

 

「むーん………」

 

顎に手を当ててじっくりとこちらを観察してくる。

見てくれが村人だからちっとも知的には見えないが。

 

 

 

「……まぁいっか」

 

いいのかよ。適当だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは何故かコイツも一緒に、たまにくるプレイヤーを瞬殺しながら釣りをしていた。

 

もう4日たった。暇だ。

 

「あ゛ー…なぁユキちん…」

 

「なんだよ」

 

僕とソンチョーはすっかり打ち解けた。

まぁ、釣りしたり料理したりしかしてないけど。

 

「ひま………」

 

「それね。なんか面白いこと起こんないかなぁ…」

 

そうなんとなくぼやく。

正直さっさとイベント終わって欲しい。

 

「あ、そーいやさ」

 

「およ?」

 

ソンチョーに聞きたいことがあったんだった。

 

「お前メダル集めなくて良いの?」

 

「…………………………………あっ」

 

はい、お疲れ様でーす。忘れてましたねコイツ。

アホが、と口に出してソンチョーをイジっていると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー…今度は海かぁ…本当このフィールドは広いなぁ」

 

「色々あって面白いね!」

 

「……!ユキちん!なんかメイプルっぽい声が!」

 

…………………………は???????

 

「………嘘だろ」

 

嘘だと言ってくれ。

面白いこと起こんないかなとか言ったけどこれは全く面白くない。ナメてんのか、潰すぞ。

たしかに暇ではなくなるけどコイツらが来るくらいなら暇の方が5000万倍いい。

 

そして悲しきかな、ここは隠れる場所がない。

 

「!!………ユキさん!」

 

メイプルがこちらを見つけて臨戦態勢に入る。オイやめろ、入るな。

 

「あれがユキさん…か。って、何かもう一人いるけど…」

 

お前もだよ。嬉々として武器構えやがって。

 

「ユキちん、どうする」

 

……落ち着け。

落ち着け、落ち着け。

まずは現況を整理。

 

相手はメイプルとサリー。

 

メイプルに関してはスキルが追加されていなければ毒耐性があるから最悪ゴリ押せる。

しかしそんなことは問題じゃない。

メイプルの最警戒ポイント。余計な場面で無駄に勘がいい。

僕が気にしているのは、自分が天崎雪菜(・・・・)だということがバレるかもしれないということ。

別にバレても何もないじゃないかって?バカを言うな。

 

何も思われてないなら良い。

だが僕はメイプルに…恨まれて?いや、違うな。……『倒したい』と思われている。

 

それが現実世界で響いて接し方が変わるのは面倒極まる。

 

 

次にサリー。

 

いや、戦いたくない。

やだよ。だって明らかに手練れって感じだし。あと洞察力もあるし。

 

でもな……見た限り装備は短剣。ステは恐らくAGI特化。そうなるとソンチョーよりは僕の方が相性いいだろうし…

 

 

「ソンチョー」

 

「なんだ」

 

互いにいつでも動けるような体勢をとりながら、小声で会話する。

 

「毒耐性の数値は」

 

「大」

 

「OK。僕が分断する。メイプルの相手は任せた」

 

「りょ」

 

短い会話だが、十分。

 

「あとは…レプリカ、子機を」

 

『了解だ』

 

レプリカの体からかなりミニサイズのレプリカが現れる。

ご存知、ミニレプリカだ。

通信、援護などなど。色々できる。

 

「危なくなったら呼べよ」

 

「そっちこそ」

 

半笑いで軽口を叩く。

 

 

そして。

大きく息を吸い、吐く。

 

「来るよ、メイプル」

 

「うん!」

 

 

『強』印(ブースト)四重(クアドラ)

 

僕が地面を蹴った、その瞬間。戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「メイプル!こっち!」

 

「わかった!【カバームーブ】!」

 

即座に横移動したサリーの指示で【カバームーブ】を使用し、サリーの下へと瞬間移動するメイプル。

だがユキにとって、それは読めていた。

 

「レプリカ!」

 

『弾』印(バウンド)

 

レプリカが設置した『弾』印(バウンド)による方向転換でなおもメイプルに迫り、渾身の蹴りを放つ。

 

「くっ…!【カバー】!」

 

「う…おおッ!」

 

しかし咄嗟に大盾を突き出したメイプルによって防がれる蹴り。

しかし、ユキにとっては防がれても防がれなくても、どちらでもよかった。

 

ユキはすぐに後方へ離脱。【毒竜(ヒドラ)】の範囲内ではあるが、どうでもいい。

 

「ナイスメイプル!」

 

「こっちの番だよ…!【毒…」

 

「────動くな」

 

そうユキが言い放つと、複数の鎖がメイプルに巻き付き、動きを止めた。

 

「なっ…なにこれ!?」

 

『鎖』印(チェイン)

魔力で出来た鎖で相手の動きを制限する、遊真のブラックトリガーに搭載されている機能の1つ。

 

(蹴りはこれが狙いだったか!)

 

サリーは遅まきながらユキの狙いに気づいた。

 

『強』印(ブースト)!」

 

ユキはメイプルが繋がっている鎖を思い切り引っ張り、手に持った鎖ごとメイプルを放り投げた!

 

「行け!」

 

「任せろ!」

 

メイプルがすっ飛んでいった方向に向けてソンチョーが猛ダッシュ。

メイプルはソンチョーに任せて、ユキは。

 

 

「…さて」

 

「あなたと戦ってみたいと思ってましたよ。あなたの戦いを見た時から、ずっと」

 

「そいつはどうも」

 

僕は戦いたくなかったよ、と心の中で毒づきながらもも構えるユキ。

 

『強』印(ブースト)二重(ダブル)

 

飛び蹴りを放つ。当たったと思ったユキだったが、サリーだったものは空気に溶けて消えてしまった。

 

「…!いいね、コレ

 

「最初はみーんな同じ反応するんですよ」

 

「はっ、抜かせ」

 

「なっ…!」

 

着地した瞬間に、振り向かず右腕で鋭い肘打ち。

こんな対応をしてきた人物をサリーは初めて見た。

 

なんとか短剣をクロスさせ防御し、後ろに飛び退くサリー。

しかし。ユキが放ったのはただの肘打ちではない。

 

「うっ…重っ!」

 

サリーが左手に持っている方の短剣に、大きい重しがついていた。

 

『錨』印(アンカー)

『射』印(ボルト)と併用しない場合は直接触れなければいけないが、逆に言えばこういう近接戦にも対応できる便利な印だ。

 

 

左手の剣をストレージにしまいながら、サリーは心の中で分析を始める。

 

(たった一合で手数を減らされたし、初見で【蜃気楼】に対応してきた…やっぱり相当強い…!)

 

『射』印(ボルト)三重(トリプル)!」

 

息つく暇もなく、サリーに向けて緑色の弾丸が放たれる。

 

「ッ!」

 

それをなんとか回避するサリー。

だが、紙一重の回避の中で一瞬。隙ができた。

たかが一瞬。されど一瞬。その一瞬の隙を、ユキは見逃さない。

 

『強』印(ブースト)二重(ダブル)!」

 

サリーの体の中心、胸の部分に拳を突き出すユキ。

サリーの装備は防御に特化していない。

ユキの拳が直撃すれば確実にサリーは死ぬだろう。

 

だが、サリーには。

 

 

もはや人間技ではないレベルの回避がある。

 

「!?」

 

「まだですよ…!」

 

なんとサリーはユキの拳を後ろに倒れて躱した。

崩れた体勢からの回避。尋常じゃない技量だ。

 

「ちっ…」

 

確実に倒したと考えていたユキは右腕に反撃を食らった。

 

右腕をプラプラ振ってみると、まだちゃんと動いた。

 

「女の子の胸を触ろうとするなんて、いけないんですよ?」

 

「ほざくな。お前の胸なんぞミリ単位も興味ないね」

 

(ハァ…さて、どうしたもんか)

 

サリーの異次元の回避力。流石にあそこまでやるとはユキも考えていなかった。

 

『ユキ』

 

「どうした、レプリカ」

 

『ソンチョーがピンチだ。攻撃が通らない』

 

「了解、っと…『強』印(ブースト)七重(セプタ)

 

レプリカから経由してソンチョーを強化するユキ。

 

(まぁ、素の状態でメイプルにダメージ入るわけないよな)

 

「よそ見してないでください、よ!」

 

「おっと」

 

サリーの斬撃を躱し、後ろに大きく飛んで間合いを取る。

しばしの膠着。その間にユキは思案する。

 

「さて、どうしよう」

 

『相手から近づいてきてはくれるが、回避力が凄まじいな。…もう一度作戦を練ろう。この相手は、意識の外から攻めなくては勝てない』

 

「そうだな。でも都合のいい障害物なんてないし…」

 

『いっそソンチョーに加勢するか?』

 

「それもありだな。でもな…」

 

なおも思案する。

なにが最善か、見極めるために。ユキは考える。

 

(メイプル一人なら時間はかかるが倒せる。でもサリーがいたら【カバームーブ】を使ってくるよな。

つまり、このままの状態でソンチョーに加勢はダメだ。となると…)

 

「……レプリカ、子機を残してソンチョーの所に行け。メイプルを片付けろ」

 

『心得た』

 

小さい声でユキが指示をすると、レプリカは子機を出してから、ユキの下を離れていった。

 

「あれ、ミニになった。レプリカは?」

 

「察しろ」

 

サリーの問いかけに面倒くさそうに答えるユキ。

サリーはユキのその態度に辟易したかのように顔を顰める。

 

「あなたっておしゃべり嫌いですか?」

 

「相手による」

 

「そうですか、それは良かったです。あと、なんかあなたの声スゴい聞いたことがあるような気がするんですけど…」

 

「全くもって心当たりがない。勘違いじゃないか?」

 

分かっていると思うが嘘である。

正直に言ってユキの中には心当たりしかない。

 

「まぁいいですけど。現実世界がどーのとかは今関係ありませんし…ね!【超加速】!」

 

サリーが仕掛ける。

 

加速し接近するサリーに対し、ユキは『盾』印(シールド)を展開。

 

下がりながら防御。攻撃は無理には仕掛けない。

 

 

「あっれ、レプリカ本体がいなくなった途端に消極的ですね!」

 

「これも戦略。悪いけど付き合ってもらうよ、アイツがメイプルを倒すまで。この泥試合に!」

 

「アハハッ、申し訳ないですけどね。長引かせる気はないですよ!」

 

「やってみろよ。口ではどうとでも言える」

 

互いの表情は一見対照的だったが、()は同じだった。

 

サリーは、燃えるような熱に浮かされた笑顔を顔に浮かべた。

 

ユキは、冷静さの奥に静かに燃えるような炎を持った表情を浮かべた。

 

 

 

「じゃあ遠慮なく───【ダブルスラッシュ】!」

 

「【超加速】」

 

ユキは冷静に、サリーの二刀から放たれる斬撃を加速して躱す。

すると、ミニレプリカが彼に話しかける。

 

『分かっていると思うが、正面からでは分が悪いぞ』

 

「分かってる。…仕込みは…まぁ万全とは行かないけど。勝つぞ」

 

 

ユキの言う───泥試合が、始まった。




伏線(笑)は張った。お粗末すぎて見てらんねぇ。
次はソンチョー視点かな?


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読み合いの果ては

ワートリの原作を絶対に遵守して欲しい人はソンチョーの戦闘シーンが終わったらブラウザバックしてください。





言いましたからね?


ワイの戦い方は、まんまスマブラの村人だ。

あぁ、いや。ゲームの中じゃ冗談めかして『ワイ』なんて言ってるけど、本来の一人称は『俺』だ。

 

話を戻そう。俺の戦い方は手数の多さを生かす戦法。

正直言ってメイプルとは相性が悪い。

いや、そもそもメイプルと相性のいいやつなんていんのか?

あぁ、ユキちん?アイツは例外。

 

ユキちん、なぁ……

俺の友人に異常なほど似ている男。

恐らく本人だけど、ゲーム内でリアルの話をするのもね。

……ま、いっか。考えるのやめ。今は戦いのこと考えよ。

 

 

改めて。俺は恐らくあの青色の短剣使いとも相性が悪い。

どう見てもスピード特化って感じだったからな……

 

走るのをやめ、木の影に隠れる。

メイプルがいた。

 

「いったた……また投げられたよ……」

 

ムクリと起き上がるメイプル。

 

まずは小手調べだ。

俺は一番よく使う武器、パチンコを実体化して狙いをつける。

 

ギリギリ、と多少だが音が鳴る。

それを聞いたのか、メイプルがこちらに気付いた。

 

「…!さっきの人!」

 

耳いいな。

でももう遅い。

 

「食らえ」

 

バンッ、と小さめの鉄球が射出される。

鉄球は、狙い違わず振り向いたメイプルの額に直撃した。

普通ならこれで即死だけど……どうだ?

 

「うっ…ちょっと痛かった…でも、前よりは全然!」

 

……んのアマ。

予想はしてたが、三割も削れちゃいねぇ。弱点にぶち当ててコレかよ、嫌になるわ。

 

今は不意打ちだから当てれただけだ。

さすがに広範囲攻撃を躱しながら、しかも鉄球を警戒された状態では額に当てることはできねー…!

 

「火力が足りねぇな、これじゃ詰む」

 

「【毒竜(ヒドラ)】!」

 

毒竜をダッシュで回避してから、パチンコをもう1発放つ。

 

だが、さすがに警戒されていた。

しっかりと白い盾で防御される。

防がれた鉄球はごとりと地面に落ちた。

 

 

……?待てよ。吸収されない。しかも、白い盾?

 

第一回イベントの時は黒い盾を使ってたって聞いたが……

 

あの黒い盾は何もかもを吸収し、魔力に変える。

なぜ盾を変えた?黒い盾の方が圧倒的に強いはずだ。変えるメリットとデメリットが釣り合わない。

 

 

………ただの予想だけど…恐らくは、回数制限(・・・・)

第一回イベントの後に下方修正でも来たのかな。

 

それなら辻褄があう。

 

メイプルは黒い盾にチートスキルを付与している。

そしてそのスキルは回数制限がある。

白い盾を使っているのは、あのチートスキルを温存しておくため。

なるほど、理解はできた。

だが………気に食わねぇ。

 

 

コイツは、俺を素の状態で倒してからユキにチートスキルを使う気なんだ。

俺のことなど眼中にないと言わんばかりに。

 

 

ふざけんな。

俺なんか出し惜しみした状態で勝てるってか?

 

 

舐めんな。

お前はユキに勝てない。いや、挑むことすらできない。

なぜなら。

 

 

 

お前は俺が潰す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走り出す。止まっていると毒竜が飛んでくるから。

時間が経つほどにこちらは不利になる。

なぜなら、毒竜によって吐き出される毒がどんどん地面に広がっていくからだ。

 

毒耐性を持ってはいるが、これだけ多いと時間の問題だ。

短期決戦。即キメる。

 

「レプリカ、俺が合図するからそのタイミングでユキに最大の『強』印(ブースト)頼んでくれ!」

 

『了解だ』

 

「行く……ぞッ!」

 

あるものに跨る。

ハニワロケットだ。

 

高速でメイプルにまっすぐ向かう。

しかしメイプルもそれを悠々と見逃すほどバカではない。

 

「【パラライズシャウト】!」

 

麻痺攻撃。予想はしていた。

 

メイプルが主に使うスキル、【毒竜】。

 

一層のダンジョンにて、麻痺攻撃、毒攻撃を繰り返す強敵。その名は毒竜。

同じだ。偶然ではないだろう。

そのことから、メイプルが麻痺攻撃を使うことは予想していた。

だから、麻痺でも毒でも。確実に倒す方法を選んだ。

 

このゲームには、【麻痺耐性】というスキルが存在する。

【麻痺耐性】は、スキルレベルを上げて【麻痺無効】にするまでは、いわゆる死にスキルだ。

それの効果は、麻痺の回りを遅らせること。これだけ聞くと便利だと思うかもしれないが、秒数が問題だ。

小で1秒。中で3秒。大で5秒。

ゴミスキルにも程がある。

普段なら、の話だが。

今のような一瞬の判断が生死を分ける時は、役に立つ。

 

俺の麻痺耐性は大。リミットは5秒。

 

1。

 

「今!」

 

ハニワロケットが爆発。地面に足をつけるまでの間に、武器を実体化する。

 

2。

 

『強』印(ブースト)七重(セプタ)

 

体に恐ろしい程の力が宿る。

 

 

3。

 

武器を振りかぶる。斧だ。木の伐採用の斧だが、七重の『強』印が掛けられているのだ。破壊力は十分。

 

 

4。

 

メイプルが異変に気付き、盾を構えようとするが、もう遅い。

 

 

5。

 

「うらあぁっ!」

 

遅延が機能する最後の一瞬に、全霊の力を持ってメイプルを両断した。

 

 

 

「うああぁぁっ!」

 

「ぐうっ…」

 

体が痺れる。麻痺だ。

だが、メイプルは仕留めた。

 

「はぁ、はぁっ…!?」

 

「あ…危なかった…」

 

足音。そして声を聞いて確信する。

メイプルはまだ生きていた。

 

なぜ。確実に削ったはず。何らかのスキル…………はっ!

 

【不屈の守護者】か!

 

1日1回、致命傷をHP1で耐えるスキル。

スキル獲得条件がHPを削られている前提だったから取ってないと勝手に思ってた!

 

「ち…くしょう」

 

結局勝てずか。俺は全力じゃないメイプルにも負けたのだ。

 

……ユキ、後は頑張れ。

 

 

「【デッドリーブレス】!」

 

毒霧が迫る。いかに毒耐性を持っていたとしても、この中に居たら死ぬ。

毒無効を取ろう。

次は勝つ。

 

そして、毒霧が俺の目の前5m程に来た。

目を閉じる。

 

 

『───『盾』印(シールド)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は、少し走って森林に踏み込んでいた。

 

サリーにはまだ追いつかれていない。

AGIの差だ。

 

とりあえず木の陰で作戦会議。

 

「レプリカ、解析は完了したな?」

 

『ああ。いつでも使用可能だ』

 

よし。

 

「サリー倒すぞ」

 

『了解だ』

 

準備をしなければ。

すぐに。出来るだけ早く。

 

 

 

「────『蜃』印(ミラージュ)

 

 

 

 

 

サリーは走る。走る。

ユキに追いつくために。

 

森林の中に入ったユキだが、待ち伏せしている可能性が高いとサリーは考える。

 

だから、真っ直ぐは行かない。

少し時間はかかるが、回り込んで後ろを叩く。

 

「…!みーっけ」

 

森林に入りしばらく走ると、やはり待ち伏せしているのか、木陰に隠れて屈んでいるユキを発見した。

 

サリーには気づいていないようだ。

自分が来た道をじっと見ている。

 

 

それを見て、サリーは速攻で仕掛ける。

サリーが右手の剣を振る。

 

「楽しかったですよ。でも、後方にはお気をつけて」

 

ユキの首が撥ねられる。

終わったはず……だった。

 

「な……!?」

 

サリーが初めて、大きな驚きを見せる。

 

ユキだったものは、サリーに斬られた瞬間に───

 

 

───空気に溶けて消えてしまったのだから。

 

 

 

『強』印(ブースト)

 

 

瞬間、サリーの背中に衝撃が走る。

 

上───木の上から飛び降り、強化した一撃を食らわせたユキの顔が、サリーに少し見えた。

 

 

「はは……私も例に漏れなかったみたいですね」

 

「ああ。お前も【そんな反応】だったぞ」

 

 

悔しげに言葉を絞り出してから、サリーは消滅した。




はい、オリジナル印ー!

まんま蜃気楼です。
説明が欲しかったら言ってください。記載します。


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えっ……えっ???

くっそ悩みまくった。


サリーが消滅した場所に落っこちた銀メダル7枚を即回収してまた走る。

 

「現況は!?」

 

 

『ソンチョーは麻痺。メイプルはポーションで体力を全回復させた』

 

思わず舌打ち。

 

最悪にも程がある。

レプリカがメイプルからの攻撃を防いでいるそうだが、時間の問題。

……クソっ、サリーとの戦いでMPだいぶ使っちまった!

ていうか『蜃』印(ミラージュ)1回でごっそり持ってかれた!

 

MP足んない状態でメイプルと戦って勝てるか?否。『強』印(ブースト)無かったらダメージ全く入らん。

 

となれば…!

 

「逃げるぞ!時間稼いでくれ!」

 

『了解だ。だが長くは持たないぞ』

 

「策はある!」

 

もったいないけど、背に腹はかえられない。今できる最善手はこれしかないんだ。

いかに僕でも、MPが足りない状態でメイプルに勝てるほど甘くはない。ならば意識を別の場所に向けさせて、逃げるしかないわけだ。

 

『そこを右折したらすぐだ!』

 

 

「了解!」

 

 

指示通り右折すると、地面に蹲るソンチョーを『盾』印(シールド)で守っているレプリカが目に映った。

 

さぁいくぞ…!失敗したらこの状態でメイプル、最悪ならサリーとも戦うことになるが……

 

 

「メイプル!」

 

大声を出して、メイプルの意識を僕に向けさせる。

 

 

「ユキ…さん!」

 

油断なく大盾を構えるメイプル。そこに向かって僕は───。

 

 

 

 

「うおりゃぁ───!」

 

僕が持ってる銀のメダル12枚───全部をブン投げた。

 

 

「あっえっ、ちょっ、ななななんで!?」

 

よし、意味が分かんなくてテンパってる!今だ!

 

恐らくメイプル───この場合は本条さんかな。

本条さんはゲーム初心者である。多分。

これはゲーム初心者の大体に共通して言えることだが、ゲーム初心者は予想外の行動に弱い。

 

僕はあわあわしているメイプルを見ながら、ソンチョーを担いで全力撤退した。

 

 

「ちょ、ちょっとぉ!逃げるの─!?」

逃げます。また逢う日まで。

できればもう会いたくないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

焚き火を遠い目で眺める僕とソンチョー。

もうメイプル&サリー襲撃からゲーム内時間で数日たち、イベントも終了間際だ。

 

「このっ…!出てこい卑怯者が!【炎帝】!」

「落ち着いてください、ミィ!ちょっとー!」

「もうMPポーションもほとんど無いんだよ!?落ち着いて!」

 

 

「……なぁユキちん、そういえばなんだけどさ」

 

「……なんだよ」

 

「銀メダル……全部投げる必要あった?」

 

「………………………ないな」

 

「ユキちんって結構アホだよな」

 

「返す言葉もない」

 

 

「【炎帝】!【炎帝】!【炎槍】!【爆炎】!」

「「ミィさーん!?」」

 

よく考えなくても、一二枚投げときゃいいだけだったわ。あの時の自分を殴りたい。

 

…………あぁごめん、気になるよね。なんで僕とソンチョーがこんな灰みたいになってるか。

 

 

………メイプルから逃げた後の話なんだけどね。

 

メイプルたちと戦ったのが5日目。

で、6日目に起こったことなんだけど───

 

 

 

_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_

> ペイン御一行にずっと追い回されてた  <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

 

 

 

 

僕たち……というか僕は金メダル4枚持ってるし、その3枚がペイン御一行のだから仕方ないんだけどさ。

 

 

怖いんだよ勢いが。特にフレデリカ……バーサーカーになってたし。

 

 

 

で、今。7日目ね。

 

炎帝の国とかいうクソデカギルドに遭遇。ミィがなぜかすっごい敵意を向けてきたから逃げた。

 

 

逃げてる途中で坂から転がり落ちて気絶したソンチョーを抱えて入った洞窟で、どうしたもんかなと疲れで半ば機能しなくなった頭で悩んでいると、ちょうどいいところに破壊不能(イモータル)一歩手前の岩があったのでそれを『強』印(ブースト)でよっこいしょと運んで立てこもった。

 

ちなみにここは、最初っからここに居れば良かったと思うほどの快適環境である。

まぁ、嫌なことが一つだけ。

 

 

ミィがうるさい。早く帰れよ。

 

 

「そろそろ終わりかねぇ」

 

「そうだなぁ…ユキちん、今回のイベントの総評は?」

 

「……女は怖い」

「それだ」

 

 

「出てこい臆病者どもが!!!」

 

「「だが断る」」

 

 

イベント終了の時がきた。

フィールド全体にアナウンスが鳴り響き今から五分後に元のフィールドに転移することになる。

 

 

「じゃ、またねユキちん」

 

「うん。またな」

 

「また明日ー!」

 

「え?」

 

次の瞬間、僕は光に包まれて転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。僕はいつも通りの時間に学校に行こうと、家を出たのだが。

 

 

「あぁ………暑い……」

 

 

歩き始めて20分。だいぶ参っていた。

今は6月……だいぶ暑くなってくる時期だ。

(備考 僕はだいぶ暑がりである)

 

 

やっぱりこの季節の外はクソ。早く冷房の効いた部屋でグダりたい……。

 

 

そんな、夏嫌いの人なら一度は考えたことがあるようなことを呪詛のように延々と考えていると………

 

 

「「おはよぉー!」」

 

 

後ろからバカみたいにデカい声で2つの挨拶を食らった。

 

 

「……うーい」

 

「んもう、返事に覇気がないなぁ」

 

「全くだよ!せっちんは夏になるといつもこんな感じだよねぇ」

 

「………僕は確かに元気ないけどさぁ…お前らは元気すぎる」

 

この2人は僕の……まぁ、幼なじみってヤツ。

幼稚園、小学校、中学校ときてついには高校まで同じになってしまった。

 

最初に僕に文句を言ったのが、朝乃唯(あさのゆい)。女。

僕のことを『せつなん』と呼ぶ。女子みたいに聞こえるからやめて欲しいんだけどやめてくれない。

性格は……そうだなぁ。……明るいムードメーカー的な?

まぁただのアホだけど。物事を楽観視してるだけだよ。

 

追記 モテる(これ重要)

 

「今なんか褒められた気がする!」

 

「気のせいじゃない?」

 

「そうかなぁ」

 

勘も鋭いらしい。初めて知った。

 

で、もう1人が倉田(くらた)(きょう)。男。

おっと、下の名前の読み方は『ひびき』じゃないぞ。

『きょう』だ。初見間違える人は結構多い。

 

性格はバカ。あとお調子者。

僕のことを『せっちん』と呼ぶ。

 

そして癪だが高身長。具体的に言うと180くらいあるな……。

……僕?170……。まぁ普通だね。

あと顔が良い。くっそうらやmゲフンゲフン。

 

追記 モテる(これ重要)

 

 

…………ん?僕はモテませんけど何か?

告白したことなし。されたことなし。とどのつまり、人を好いたこともないし人に好かれたこともないってこと。

 

へっ別にいいもんね!!!!!

 

響や唯みたいに顔がいいわけじゃないから割り切ってるさ!バーカ!

 

 

「せっちん、今日体育あるけど大丈夫?死なない?」

 

「八割で死ぬ。死んだら僕のパソコンの検索履歴消しといてくれ」

 

「え、なになに〜?せつなんエッチなことでも調べたの〜?」

 

「うん。唯も見られたら恥ずかしい履歴の一つや二つあるでしょ?」

 

「えぇ!?ないよそんなの!」

 

「どうだか」

 

「くぅ……」

 

唯が顔を赤面させてそっぽを向く。

 

 

え……あんの?恥ずかしい履歴。

てっきり女の子にはそんなもんないかと。

 

……うん?つまり、唯は……

 

 

 

「せっちん、唯はむっつりってことでおk?」

 

「なるほどそれだ」

 

「違うよ!?せつなんはなんで納得してんの!」

 

「はいはいすまんすまん」

 

そうして話しているうちに学校に着いた。

僕達は3人とも同じクラスだ。ちなみに席も近い。

 

ん?……あれ?本条さんに、白峯さん、唯、響………。

 

こう考えると、僕の周り………

 

 

……顔が良い人ばっかりなんですけど?嫉妬するわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛あ゛死゛ぬ゛……」

 

「せっちん死にかけてんねぇ」

 

退屈な授業を消化し、放課後になったが……今僕は図書室にいる。

僕は委員会があるのですぐには帰れないのだ。なんで僕委員会入ったんだろう。

 

……で、僕がこんな風になってる原因は……今日の6時間目。まぁ、さっきの授業なんだけど……外でサッカーをやった。

 

 

こんな暑い日に外で運動とか正気の沙汰じゃない。

なんでお前らは平気なんだ……?

 

 

「やっぱダメだ、最近嫌な事しか起きない……」

 

「体育そんなに嫌?」

 

「嫌だね。今日はもう委員会サボって帰りたい……」

 

「そんなんだめだよせっちん!もしかしたら今日、委員会の時間に告白とかされるかもしれないよ!?」

 

そんなことが起こると思っているならお前はだいぶ頭がおかしい…!

 

「はぁ……ま、先帰っといてくれ」

 

ちなみに僕は図書委員。メイプ……じゃない、本条さんもだ。

 

「りょーかい。唯、行こー!」

 

「ほいさー!せつなん、委員会頑張ってー!」

 

「はいはい」

 

別に頑張ることなんてない。ただ雑に置かれた本を整理するだけの簡単なお仕事だ。

 

ただ一点だけ心配なのが……本条さん(メイプル)に僕がユキだと気付かれていないかどうか。

 

今日の担当は僕と本条さん。気付いてたらここで指摘される可能性もあるのだ。言い訳を考えておかねば……

 

まぁ本条さんは勉強とかとは別の面で頭悪そうだし、気付かれてないとは思うんだけど。

 

 

 

「………天崎くん、ちょっと大切なお話があるんだけど聞いてくれる?」

はい速攻フラグ回収しました!気付かれてるなこれは!

 

「な……なに?」

 

どう言い訳する?他人の空似?いや、リアルを詮索は良くないって逆ギレ?印象悪くなりそうだな、不採用。すっとぼけるのもまぁあり。

 

よし、すっとぼけよう。『そんなゲーム知りませんけど?』って言おう。

 

 

「え、えっと…」

 

「?」

 

なぜか本条さんは口をモゴモゴさせてから、大きく息を吸い込んで───

 

 

 

 

 

 

 

 

「す……好きです!付き合ってください!」

…………………………………えっ………えっ???

 

 

 




つ……疲れた。文章が雑ですみません。
そしてかなりの間隔が空いてしまったことも謝罪します。


唯と響はまた出てきますよ。


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色々とどうしよう

掲示板回です。
あと、いつの間にかUAが1万超えてました。
ありがとうございます。


『す……好きです!付き合ってください!』

 

フラッシュバックする、あの言葉。

 

「───────」

 

結局あの後、本条さんは逃げるように帰ってしまった。僕はずっと固まってた。

 

『…ん?ユキちん寝た?早くない?』

 

『うっそ、せつなん落ちた?あの完徹余裕の昼夜逆転人間が?』

 

「……ん、やべ。ぼーっとしてた。あと別に昼夜逆転はしてない」

 

今は夜の九時。いつも通り僕と響と唯でグループ通話をしながら勉強をしていたのだが、ずっと黙っていたからか寝ていたと疑われてしまった。

 

『眠いの?』

 

眠くはない。あいにくバッチリ目が開いてる。だか今日はこいつらと喋る気分じゃない。悪いが抜けさせてもらおう。

 

「ああ。今日はもう寝るわ」

 

『おやすみぃ』

 

『おやすみ。……そんなに体育疲れた?』

 

「多分体育のせいじゃないから安心しろ」

 

 

通話を切り、ベッドに寝転ぶ。

 

「はぁ………」

 

思わず溜息を漏らし、目を閉じる。

しかし寝られない。

頭の中がごちゃごちゃだ。

 

 

 

「……てかなんで僕なんだ?」

 

顔?いやいや、贔屓目に見てもイケメンではないな僕。

メガネ好きとか?……まぁありえなくもない。

性格?……うーん。最近なんか良いことしたっけ……。

 

はぁ…どうしよ。

僕が『ユキ』だとバレる訳にはいかないし……ん?待てよ。

 

「なんでバレちゃいけないんだっけ」

 

えーと…なんだったかな。メイプルとサリーにやべーほど殺意を向けられてるからだっけか。

あれ?サリーは違うんだっけ。あれ?あれれ?

 

「はぁ……」

 

考えても結論出ないな……

ゲームでもするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

542名前:名無しの大盾使い

みんな、ギルドには入ったか?

 

 

543名前:名無しの大斧使い

え、まだ

 

 

 

544名前:名無しの槍使い

俺は入った

てか友人と一緒に設立した

 

 

 

545名前:名無しの大盾使い

俺もまだ

 

 

 

546名前:名無しの大剣使い

え544すげぇな

ちなオレは集う聖剣

 

 

 

547名前:名無しの魔法使い

設立したんかい

ちなおれは炎帝の国

 

 

 

548名前:名無しの槍使い

意外とこのスレ精鋭ぞろいよな

 

 

 

549名前:名無しの大剣使い

それな

 

 

 

550名前:名無しの大盾使い

それはさておき

イベント上位勢がどこのギルド入るか気にならないか?

 

 

 

551名前:名無しの大剣使い

えー

まだ名の知れ渡ってるギルドが集う聖剣と炎帝の国ぐらいしかないからなぁ

てかお前もイベント上位勢やん

 

 

 

552名前:名無しの弓使い

今北産業

 

 

 

553名前:名無しの槍使い

3行説明めんどいからログ見て弓使いニキ

 

 

 

554名前:名無しの弓使い

OK把握

あと私はニキじゃないよ

 

 

 

555名前:名無しの槍使い

おっとこいつは失礼した

 

 

 

556名前:名無しの弓使い

いいってことよ(`・ω・)b

で、上位勢のギルドだったよね

 

 

 

 

557名前:名無しの大盾使い

ああ

なんか気になってな

 

 

 

558名前:名無しの魔法使い

クロムは大盾使いだからな

早いとこパーティ組んだ方がいい

 

 

 

559名前:名無しの槍使い

いっそのことウチ来ない?

【thunder storm】っていうギルドなんだが

 

 

 

560名前:名無しの大盾使い

かっこいいな名前

 

 

 

561名前:名無しの槍使い

だろ?俺とギルドリーダーとその相棒で考えた

 

 

 

562名前:名無しの大盾使い

まぁとりあえずパス

またあとでなその話は

 

 

 

563名前:名無しの弓使い

話戻すよ?

まず、ユッキーは即決しないと思う。

長年の付き合いだから信用してくれていいよ。

メイプルちゃんは自分でギルド作りそう(ただの勘ねこれ)

 

 

 

564名前:名無しの大剣使い

ほほうなるほどぉってちょい待て

えユッキーって誰?

てか長年の付き合いってところkwsk

 

 

 

565名前:名無しの魔法使い

ちょいちょい、待て大剣使い

人のプライベート詮索するのはよくない

それはそうと長年の付き合いについてkwsk

 

 

 

566名前:名無しの大盾使い

おまいう。

 

 

 

567名前:名無しの弓使い

ユッキーはユキのあだ名。

多分だけどリアルの幼なじみ

 

 

 

568名前:名無しの槍使い

マジですか。ユキは気付いてないの?

 

 

 

569名前:名無しの弓使い

まぁ、ゲーム内では会ったことないから。

ていうかまた話逸れてる!

 

 

 

570名前:名無しの大剣使い

すいません許してください、なんでもしますから!

 

 

 

571名前:名無しの弓使い

ん?今なんでもするって言ったよね?

 

 

 

572名前:名無しの大盾使い

や め な さ い

 

 

 

573名前:名無しの槍使い

淫夢ネタはやめちくり〜

 

 

 

574名前:名無しの魔法使い

ていうか、ユキの取り合い発生しそうだな。ギルド間で

だってユキ取ったら正直そのギルド安泰だし

 

 

 

575名前:名無しの大盾使い

え?

 

 

 

576名前:名無しの弓使い

え?

 

 

 

577名前:名無しの大剣使い

え?

 

 

 

578名前:名無しの槍使い

え?

 

 

 

579名前:名無しの魔法使い

……え?なんかおかしいこと言った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ユキだ!ユキがいたぞ!」

 

「第一回イベント一位のユキだよね?よかったらうちのギルドに…!」

 

「いやウチに!ユキさんがいたらギルドは安泰だ!」

 

第二層、街の中心にて。天崎雪菜、心の一句。

 

ざけんなや ギルド勧誘(かんゆう) ウザってぇ

 

『これはすごいな』

 

レプリカさん、他人事みたいに言わないでもらえます?

………どうしてこうなった。いや、想像ついてたけどさ。

3歩歩いたら勧誘される。大人気かよ僕。

 

……ギルドか……。何も考えて無かったな。

 

ゆっくり考えたい所だけど……コイツらを追っ払わないと落ち着けなさそうだ。

 

 

「あー………よく聞けぇ!」

 

僕が急に声を張ったことで、広場はとても静かになった。

 

「僕を勧誘したいギルドは、ギルドの中で実力がある5人を連れてこい。そいつらと僕が勝負して僕が負けたらそのギルドに入る」

 

ざわざわと広場が再びうるさくなる。

その隙に僕は喫茶店に入ってティータイムと洒落込もう。全然ティータイムって時間じゃないけど。

 

「ちょっと待ってくれ!それは今でも良いのか!?」

 

中肉中背の男が仲間らしき奴らを引き連れて喫茶店まで入ってきて、僕の座った席の対面に座った。

精鋭集めんの早すぎません?もしかして予想してた?怖っ。

 

 

「いいよ。やろうか」

 

「……本当に5対1でいいのか?」

 

「もちろん」

 

「じゃあ遠慮なく。【決闘】だ」

 

【決闘】とはルールを定めて行うPvP。

ルールはある程度までなら自由に変えられる。それで5対1バトルをするということだろう。

 

僕の目の前にデュエル申し込みメッセージが出現した。もちろん受諾。オプションは全損決着モード。文字通り、どちらかのHPが全損で決着だ。

すると視界が明るくなり、気持ち悪い転移の感覚に体が包まれた。

 

 

目を開けると、そこは真っ平らな闘技場だった。

僕と相手ギルドの距離は15mほど。そしてそのちょうど真ん中あたりに、決闘開始のカウントダウンが刻まれ始める。

 

 

「さて」

 

『作戦は?』

 

「まずはリーダーを潰して連携を乱す」

 

『了解だ』

 

相手も同じように作戦会議をしている。

だが、カウントダウンが迫っていることに気づいたらしく、すぐこちらに向き直り各々の武器を構える。

 

そして、カウントダウンがゼロに────

 

 

 

 

「【トリガー起動(オン)】からの『強』印(ブースト)

 

 

───なった瞬間、走り出す。

 

「ちょっ、早っ…!」

 

予想外の速度に驚いている敵リーダーが突き出してくる槍は側面を叩いて弾き、驚愕に染まったご尊顔を蹴飛ばす。

敵リーダーはフィールドの端の壁まで吹っ飛びながら消滅した。

 

 

「なっ、嘘!リスタが!」

 

あの人リスタっていうのか、まぁどうでもいいが。

 

「『射』印(ボルト)

 

次。すぐさま放った『射』印(ボルト)はリーダーが瞬殺されて狼狽えている後衛の支援職の奴に直撃し、そいつも消滅。

 

「このっ!【狙い撃ち】!」

 

「おらぁっ!【パワーアタック】!」

 

上からハンマーを持ったガチムチ。横からスピードのある矢。いい連携だ。

 

「『弾』印(バウンド)

 

「ぶげらぁっ!?」

 

上から振り下ろされるハンマーを『弾』印(バウンド)でまっすぐ弾き返した。その結果、自分のハンマーが自分の顔に直撃したってわけだ。痛そう。

そして即座にガチムチの体を掴んで体を反転させる。ガチムチを盾にするためだ。

 

「いってぇェェェェ!?あふん」

 

「ご、ごめん!」

 

ガチムチは僕の盾になり矢を受けた瞬間に消滅した。

次。死角からこちらを伺っている短剣使いへ振り向きざまにプレゼントだ。

 

 

「───ほいっ!」

 

「え」

 

みんな大好き槍投げだよ!

さっき弾いたリーダーの槍だ。さりげなく拾っておいた。

眉間を狙ったけど少しズレて首に刺さったがまぁいい。どっちでも即死だ。

 

 

「う……。クソッ!」

 

諦めずに矢を放つ弓使い。

でももう終わりだ。

すぐさま身を逸らし回避。そしてそこからスキルを行使。

 

「【超加速】」

 

加速の勢いを余さず乗せた蹴りは、弓使いのHPを残さず刈り取った。

 

 

「うし」

 

You Winner! という表示が目の前に流れる。

なんの感傷もなくそれを眺めていると、またもや気持ち悪い転移の感覚に体が包まれた。

 

 

「ふぅ……よし、次」

 

僕はレプリカと共にこれからの連戦を想像し、ウンザリした。

 

 

 

 

 

 

600名前:名無しの弓使い

ねむい

 

 

 

601名前:名無しの大剣使い

寝ろ

 

 

 

602名前:名無しの大盾使い

みんな、最新情報だ

ユキについての

 

 

 

603名前:名無しの槍使い

今北産業

 

 

 

604名前:名無しの弓使い

わたしがねむい

名無しの大盾使いが最新情報もってきた

我らがユッキーに関することらしい

 

 

605名前:名無しの槍使い

有能。一行目はいらんけど

 

 

 

606名前:名無しの魔法使い

そう言うなよ。で、なんだよ最新情報って

 

 

 

607名前:名無しの大盾使い

簡単に言うと

ユキが勧誘されすぎてキレたらしい

だから、勧誘に来たギルドの精鋭5人と戦ってユキが負けたらそのギルドに入るって

 

 

 

608名前:名無しの槍使い

な、なんだってー!

 

 

 

609名前:名無しの大剣使い

な、なんだってー!

 

 

 

610名前:名無しの魔法使い

な、なんだってー!

 

 

 

 

611名前:名無しの大斧使い

な、なんだってー!

 

 

 

612名前:名無しの弓使い

君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると決まって同じ反応をする。

わけがわからないよ

 

 

 

613名前:名無しの大斧使い

キュウべえはやめよう?

 

 

 

 

614名前:名無しの大剣使い

み ん な の ト ラ ウ マ

 

 

 

615:名前:名無しの大盾使い

ていうか斧使い来てたのか

 

 

 

616名前:名無しの大斧使い

おう。

 

 

 

617名前:名無しの魔法使い

まぁ斧使いは置いといて

 

 

 

618名前:名無しの大斧使い

えっ?

 

 

 

619名前:名無しの魔法使い

いくらユキでも5対1で勝てるか?

 

 

 

620名前:名無しの大盾使い

既に負けたギルドが多数あるらしい

 

 

 

621名前:名無しの槍使い

おっふ

ユキさんやっぱやべーっス(白目)

 

 

 

622名前:名無しの大剣使い

槍使いのギルドは挑戦しないのか?

 

 

 

623名前:名無しの槍使い

うーむ。まぁユキにはそう簡単に勝てないだろうし、ゆっくりみんなと相談して決める

 

 

 

624名前:名無しの弓使い

どうも、新入りです

 

 

625名前:名無しの大盾使い

お?いらっしゃい

 

 

 

626名前:名無しの弓使い

ありゃ

どっちかわかんなくなっちゃうなコレ

コテハン変えるね

 

 

 

627名前:名無しの大剣使い

頼んだ

 

 

 

628名前:マリモ

よしOK

 

 

 

629名前:名無しの槍使い

マリモ?

 

 

 

630名前:マリモ

わたしのプレイヤーネームですが何か?

 

 

 

631名前:名無しの大斧使い

なぜにマリモ?

 

 

 

632名前:マリモ

ユキがスマホゲームでマリモ育ててたからなんとなく

 

 

 

633名前:名無しの弓使い

え、なんか意外…

 

 

 




マリモって誰なんでしょうね(すっとぼけ)

ちなみにあの後、響と唯は雪菜がいないとつまらん、と言って通話を切りました。


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ユキ虐

やべっ防振り2期もうすぐじゃねぇか!と焦って書きましたね。
だいぶ書き方が前と違いますが、お楽しみいただけたら幸いです。


つ……疲れた。

 

ユキは日の暮れた草原にてぐったりと寝転がっていた。

 

あの後も、おおよそ1時間にわたり数々のギルドと対戦したユキ。流石にここまで自分を欲しがるギルドが多いとは思っていなかった。

連戦に次ぐ連戦。まだ対戦希望のギルドはいたが、ユキは逃げ出した。

 

「ハァ……」

 

目を閉じ、思考に耽る。ユキにとって今はギルドだのなんだの言っている余裕はないのだ。

人生で初めて告白されたユキはどう対応すれば良いのかわからない。

 

 

別に嫌だったわけではなかった。むしろ嬉しい。

だが、別に本条楓という存在を特別に思っているわけでもない。そんな状態で付き合ってしまっていいのか?

そもそも、ゲーム内で確執のある相手だ。険悪な雰囲気にならないだろうか。

天崎雪菜が『ユキ』だということを知ってなお好きだというのなら、恐ろしく切り替えが早いかストックホルム症候群かの2択になる。

 

「あ゛ぁ゛〜」

 

溜息を吐いた。自分の浅い知恵では浅い考えしか出てこない。どうすべきか…と目を開くと。

 

 

「何してるんです?」

 

「……」

 

なんでおんねんコイツは。ユキは顔を顰めるのを堪えつつ、いつのまにかいたサリーを見据えた。

そもそもここはマップの端であり、人が寄り付かないような場所のはずだが……。

 

「なぜここに?」

 

「さっき見かけたのでつけてきました」

 

「…………」

 

…………???

 

何を言っているんだ…?

ユキは至って一般的な感性を所持しているという自負があり、ゲーム内とはいえ犯罪スレスレの行為を堂々と報告してくる目の前の女の精神が理解出来なかった。

控えめに言って精神を患っているし、倫理観を犬の小便ほどにしか思っていないのが露呈している。

 

正直、こんな危ない人間と関わり合いになりたくはないが、一度構成した人間関係は簡単に振り解けるものではない。ユキは諦めた。

 

 

「……な、なるほど。それで、わざわざ僕を付け回した理由は?」

 

「ギルドの件です。なんかあなたに勝ったギルドがあなたを貰えるらしいですね」

 

 

なんてことを…!ユキは数時間前の自分を憎んだ。

なぜサリーがギルドを作ると考えなかったのか。サリーがいるとなればメイプルもいるだろう。気まずいなんてものじゃない。

仮に……仮にだが。ユキがそのギルドに入ることになった時、『ユキ』の正体はバレるだろうか?隠せる気がしない。すぐにボロが出そうだ。

 

「面白そうなので、ウチもやります。第三回イベントの後日でどうですか?」

 

な、何だ……?

もう日程の話を始めている。おかしい。こいつは今自分がお願いする立場だと分かっているのか?拒否権はないのか?多くの疑問が脳内を駆け巡った。涙が出そうになる。

 

 

「……………………わかった」

 

「よっし!じゃ、日程の詳細は追って連絡します!さよならー」

 

サリーがその場で光の粒子になって消えていく。ログアウトだ。そのままログインしないことを切に願う。

 

 

取り残されたユキは、現実を直視できないのか天を仰ぎ白目を剥いた。

 

「………寝るか」

 

ログアウトした。

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

「………………」

 

「どうしたのそんな目ぇかっぴらいて」

 

昼休みの教室。唯はクスリでもキメたかのような目をしている雪菜に問いかけた。

雪菜は眼鏡を外してレンズを拭きながら、苦しげに言う。

 

「ちょっと今やってるゲームで面倒なのに絡まれてさ…」

 

雪菜はゲームで面倒な人に絡まれると酷く興奮して目がガンギマリになるらしい。字面だけなら精神異常者の域に突入している。

 

「えー!チーター?煽り厨?暴言厨?マルチプレイなのに一人で突貫して死ぬヘタクソ?」

 

なぜか唯が息を荒くして尋ねてくる。唯は特定のゲームで害悪プレイヤーをボコボコにするのが大好きという少し異常な趣味を持っていた。

 

「違う。強い人が僕に粘着してくんの」

 

「ほえー」

 

唯は興味ありげに獰猛な笑みを浮かべた。悪いことを考えている顔だ。まあいい、放っておこう。雪菜はバックの中から弁当を取り出し、右隣の席で寝ている響の頭に叩きつけた。

 

「ぐえぇ!?」

 

「ほら、弁当食べに行くよ」

 

「はいはい…」

 

三人で中庭へと向かう。晴れている時、特に用事が無ければこの三人で食事をする。今日は快晴だ。

 

 

「お?」

 

しかし今回は先客がいた。

中庭の隅の椅子に男子生徒がいる。一人の女子生徒と仲睦まじく話している様子だ。

雪菜はそれを凝視しながら少し遠くの椅子に座った。二人から冷たい視線が向けられる。

 

「もう、ただの友達かもしれないでしょ?そんな親の仇みたいな目で見なくても…」

 

「せっちんすげー顔してるー」

 

そうだ。ただの友人かもしれない。自分や響だって唯とはよく喋る。勝手に恋人認定したらかわいそうだ。雪菜は思い直した。

ため息を吐き、先程買ったジュースに口をつける。

 

次の瞬間、男子生徒と女子生徒はそれはそれは熱い抱擁をしてキスまでした。舌を絡ませるほうのだ。

 

メキョっと雪菜の手に握られているペットボトルがあり得ない音を立ててへし折れた。全く予備動作がない。ボトルが自分から死んだようにしか見えなかった。

ジュースが大量に顔にかかり大変なことになっているが全く気にした様子はなく、目の前の畜生どもをどう排除するかで思考が埋め尽くされていることが理解できる。

響と唯はビビり散らかした。こいつの前で恋人とイチャつかんとこ……と誓った。

 

 

「なんなんだろうね……恋って」

 

雪菜が急に落ち着いて意味の分からないことをしみじみと呟く。急に怒り、急に落ち着く。まるで賢者タイムだ。

もう何もかも考えることが面倒になったので、雪菜は自分の悩みを相談することにした。

 

 

「二人にさ………相談があるんだ」

 

唐突に始まる相談。響と唯は親友の情緒の不安定さにドン引きした。

 

「これは友達の話なんだけど」

 

雪菜の話だ。二人は顔を見合わせた。

 

「ソイツはクラスで密かに人気な可愛い女の子に告白されたそうなんだ。でもソイツはその子とあるゲーム内で因縁を持っていると。今は身バレしていないけど、いつバレるか分からないし、そもそも好きって感情は抱いていないんだけど、どうすればいいと思う?」

 

「じゃあいいんじゃないかな、断って」

 

唯があっさりと言った。

 

「別に好きじゃないんでしょ?」

 

「うーん、俺はそう思わないかなぁ」

 

響も意見を挟む。

 

「付き合ったら好きになるかもしれんし。ゲーム内の因縁は……まぁ後で考えるかなぁ」

 

『メイプル』と『ユキ』の関係はとりあえず忘れて言うならばそれは確かにそうだ。どちらも筋が通っている。雪菜は眼鏡を外して眉間を揉みながら考え始めた。

 

 

 

僕は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アンケートやります。参考にさせていただきます。
さ……『参考』だからな!必ずしもそうなるってわけじゃあないですよ!?


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