クククッ、逃さねぇぜシェリー (きりりん)
しおりを挟む
クククッ、逃さねぇぜシェリー
俺は黒の組織の構成員。コードネームはない。
コードネームはないが俺には特殊な力がある。
そう、
気がつけば既に組織の一員だったわけだが、そこまで使い捨ての下っ端ってわけじゃないんだ。
今の俺の仕事はある研究者の女の監視だ。
そう、宮野志保であり、シェリーであり、いずれ灰原哀となる女だ。
俺の目的もこの女である。
今がまだ原作開始前であることを確信していた俺はジンからの信用を得るために必死で働いた。
ウォッカのように側付きになってしまうと本末転倒なので組織に忠実でありながらコードネーム候補になれるくらいに有能であることを示さなくてはならない。
そして俺の目的のためならば原作などどうなってもいい。
どこかの抑止力のように世界の修正があるのかどうかはわからないが、今のところ俺は組織の中でうまく立ち回っている。
まぁ組織の壊滅が目的でもなく、
黒の組織だからやってる事はブラックなんだけど、下っ端じゃなければ仕事量は意外とブラックって程でもない。
てか仕事内容がブラックだけど勤務状況はホワイトだった場合って灰の組織とかにならないのかな。
まぁそんな組織だけどがんばって働いた結果、ついに念願のシェリー監視任務につく事ができた。
ちなみにまだ姉である宮野明美は生きているし赤井秀一も潜入していない。
別にそれはどっちでも良かったんだけど、できれば早くシェリーに心を開いてもらわないといけないから姉が生きている時期のほうが簡単だもんな。
「はじめましてシェリー。今度から俺がジンに代わって君のところに来ることになった」
「…そう。用件がそれだけなら出ていってちょうだい」
「ふむ、俺じゃないほうが良かったのか?なんだったらジンに言って戻してもらうこともできると思うが?」
「やめて!あいつが来るくらいならあんたのほうがマシよ」
「あれ?ジンのほうがいいのかと思っちまったよ。ちなみに君に何かするとかないから安心してくれ」
「どういうつもり?あなたもただの監視でしょう?」
「あー、いや、組織の一員には変わりないんだが、俺は俺で目的があってな」
ちなみにシェリーは監視がジンじゃなくなってホッとしていた。
あんまりにもそっけないからジンに代わるぞ?って脅かしちゃったけど交代するつもりなんてまったくない。脅かしてごめんよ。
組織の一員だが別で目的があるって言えば、俺がただ組織に忠実な人間ではないと思ってくれるはずだ。
実際に俺は
ただ組織の目的と俺の目的は対立しないってだけだ。
そして俺はシェリーを
とりあえず彼女の好感度を稼ぐためにがんばりますか。
「シェリー、相談なんだがお前の姉はどこかに逃がすことはできないのか?」
「唐突な質問ね。それなら何度も私から言ったけど聞いてくれないわ」
「お前に対しての人質であることは理解しているんだろう?ならば目の前で人質をぶら下げられるほうの気持ちは理解しないのか?」
「危険だからここから逃げてって言っても私は大丈夫だからとしか言わないわね。あなたからも説得してくれないかしら」
「そうだな。お前の姉にここにいられると俺としてもあまり都合が良くない。一度話をしてみるか」
「ふふ、脅したりしないでよ?」
結構な頻度で俺がいるためシェリーとは普通に話ができるくらいにはなっている。
そしてシェリーの姉の心配をして逃したほうがいいとアドバイスするなど組織の人間では考えられない事だ。
こういった言動がシェリーの警戒心を薄れさせる事になる…と思う。
ちなみに俺にとっては宮野志保だろうが灰原哀だろうがどっちでもいいのだ。
まぁこうやって冗談交じりだったり姉の説得をできるかどうかは別としてやってみてくれと言われるのだから効果は出ているのだろう。
シェリーも研究自体はちゃんとやっているので特に虚偽報告とかする必要もないし、ジンから俺に代わったことで精神的にも余裕が出てきているので状況は良くなったと言える。
ちなみに俺は「
組織の中で「姉という人質を置いておくならまだ近くのほうがいい」というシェリーの気持ちはわかるが、このままだと宮野明美の死亡フラグを折る事ができない。
まぁ俺の目的の中に宮野明美の生存自体は関係がないので死んでもいいんだが…
「やぁ宮野明美さん。ちょっと話でもしないか?」
「あなたは…しほ、シェリーの監視役の人よね?私に何か用かしら?」
「まぁちょっとね。とりあえず向こうの喫茶スペースで話そう」
「で、私に用って何?シェリーの事なら私にはわからないわよ」
「あぁ、別にシェリーの話じゃない。君の話だね。シェリーが君を心配しているのは知っているだろう?君は比較的自由を許されている身ではあるが、それはシェリーのおかげとも言える」
「ええ、もちろんわかっているわ。シェリーがずっと研究している間も私は大学生活を満喫できてた。そして私自身が人質としてシェリーを縛っていることも承知しているわ」
「ならばなぜ状況を改善しようとしないんだ?俺にとっては重要な事ではないがお前次第でお前もシェリーも状況がかなり変わるというのに」
「確かにその通りね。ただあなたもわかっているでしょう?組織の手はそんなに短くない。どこに逃げてもあの子の負担にしかならないならまだ近くにいたほうがお互いに安心できるわ」
うーん、どうしたもんかな。これは逃げろって言ったところでまったく聞く気はなさそうだ。説得が成功するとはまったく思ってなかったけどさ。
結局その日はそのまま帰り、また監視という雑談して仲良くなる任務を続けていた。
ある日ジンから指示がありシェリーの監視を外れ別の任務につくことになった。
シェリーには「しばらく離れるがまた戻ってくる。何かあれば勝手な行動はせずに俺に言え」と伝えてある。
どこまで信用してくれるかわからないが今の俺にできることはこれくらいしかない。
任務自体は簡単なものだった。裏切り者の粛清だ。
黒の組織が世界中のいろんな企業やマフィアと結びついている以上、そこで裏切るやつってのは当然出てくる。
金が目的だったり別の組織に鞍替えしたり足を洗いたいから逃げるやつだっている。
厄介なのはFBIやCIAなどといった組織が潜入し裏切り工作なんかを仕掛けてくる場合だ。
今回はそんな中の1つの企業での権力争いが原因だったみたいで警察組織なんかは関係なさそうだった。
問題はその裏切り者が1人じゃなかったところだな。しかも各国に散らばって逃げたせいで追いかけるのに苦労した。
ちゃんと裏切り者は始末したがかなり時間がかかった。まぁかかった時間のほとんどは移動時間だったんだが…
「……俺だ」
「ジンか。指示のあった裏切り者は全員始末した。これよりアジトに戻る」
「わかった。だがその前にもう1つお前にやってもらいたい事がある。あの方からの指示で潜入させていた例の組織を傘下に収める話し合いをお前に任せる」
「了解だ。いつも通り
「そういうことだ。こっちは組織に
「わかった。話をつけて急いで戻る」
ジンに裏切り者を始末したこととアジトに戻ることを報告したんだが別の仕事を任された。
てか、やっぱ
これシェリー逃亡フラグじゃないよな?とにかく急いで用事終わらせて戻るか。
日本へと戻りすぐにシェリーの元へと向かおうかと思ったが、もしかしたらまだ間に合うかもしれないとジンとウォッカを探す。
いた!けど宮野明美撃たれる寸前じゃん!
あ、撃たれた。
ジンとウォッカが立ち去ってから急いで宮野明美に近づく。げっ!あのちっこいのコナンじゃないのか!?
やべー!早く逃げないと!
「…あなたは、帰ってきてたのね」
「とりあえず生かしてやる。この薬飲んでしばらく眠ってろ」
「志保のことお願いしてもいい…?」
「お前が心配することではない。さっさと寝ていろ」
少し離れた場所で応急処置をしてから宮野明美を背負って車へと乗せ、足のつかない医療設備がある場所へと向かう。
さて、思わぬ偶然で宮野明美を助けることができたがどうするかな。
ひとまず治療させ、昏睡状態ではあるが命に別状がない状態まで寝かせておくか。
起きて勝手な行動をされても厄介だ。こいつには「生きている」ってだけで十分だろう。
しかしもう
こうなったらやれるだけやってみるしかないな…
しばらくは新しい指示もないので宮野明美の様子を見ておき、容態が安定してきたので別の場所へと移送させる。
これで組織にも見つかることはないだろう。シェリーへの証拠として写メをパシャリ。
この俺に姉の看病させやがって。この借りは高くつくぞシェリーよ。
やっと一段落ついたのでアジトに行き、ちゃんと俺はここにいますよーとアピールしてから研究所へと向かう。
あれ?なんかバタバタしてる?ねぇ、シェリーは?消えた?どゆこと?
研究を中断したからお仕置きに閉じ込めたら消えた?なにそれこわい。
つまり灰原哀ちゃんに変身しちゃってるわけね。
おのれえええ
…落ち着け俺。まだチャンスはある。
つまり今シェリーはコナンと一緒にいる可能性が高いということか。
マジで主人公暗殺計画を立ててやろうかこんにゃろー。
しかしシェリーがいなくなった事によって組織内も少し慌ただしいな。
おかげで米花町に行く時間が取れない。
見つけた!江戸川コナンと灰原哀、そして少年探偵団が歩いている。
少年探偵団には見られたくないので別れるのを待つとするか。
本当は江戸川コナンにも見られたくないんだが、突然
「シェリー、探したぞ」
「!?あなた…どうして」
「どうしてと言われてもな。俺には俺の目的があると言ってなかったか?」
「おい!てめーどうしてその
「少し場所を変えよう。道端で大声で話すことではないだろう?なんなら君の家にするかい?
「!?なんでそれを…」
ククク、驚いているな。まぁ知っているのは阿笠博士だけのはずだもんな。
工藤新一の家へと移動し3人でソファへと座る。ちなみに対面にお子様2人だ。
「ククッ、そんなに警戒する必要はない。と言っても無理な注文かな」
「あぁ、てめーが組織の人間なんだったら警戒するなってほうが無理ってもんだ。答えてもらうぞ。どうして俺たちの事を知っているのかをな」
「悪いがその必要はないんだよ新一くん。俺は彼女を迎えに来ただけなんだからね」
「工藤くん、少し私に話させて。ねぇ、あなたなら姉の、いえお姉ちゃんが死んだ原因を知っているんじゃない?」
「…あぁ、知っているぞ」
「!やっぱり。お姉ちゃんはどうして殺されたの!?」
「悪いがそれはここでは教えられない。シェリーと二人きりならば話そう。だがそれは後にしてくれないかな」
「私を連れ戻してからってことかしら?」
「いや、連れ戻す気もないんだ。何度も言うが俺は俺の目的のために動いている。そしてあまりゆっくりしていられる時間はないんだ。できればすぐに移動したい」
「そんなことこの俺が許すわけねーだろうが。あんたにはここで洗いざらい吐いてもらうぜ」
「…君は理解しない子だね工藤新一。君は今、俺の慈悲で生きていられている事をまったくわかっていないようだ」
「は?おめー何言ってやがる」
「…毛利蘭」
「!?なんでそこで蘭が出てくる!?」
探偵なんてやってるから知らなければ気がすまないのか、それとも今なら自分のほうが有利だとでも勘違いしているのか、まぁ理解できないならば自分の状況を理解させるまでだ。
俺が黒の組織の一員であること、そして俺はジンの部下でもあること、そして毛利蘭や鈴木園子、小嶋元太たち少年探偵団、隣に住む阿笠博士、それらの名を告げればコナンの顔色は真っ青になっていった。
なにせ工藤新一であるということがバレている上に身近な人間も把握されているのだ。そしてそれを知っているのは自分を
悪いね探偵くん。もしかしたら他のコナン世界とかでは君に協力して組織壊滅を目指す
「ねぇ、あなたは私を組織に連れ戻す気はない。そしてわざわざそれを言いに来たってことは周りを巻き込むつもりもないって考えていいのかしら?」
「あぁ、それでいい」
「なら私を連れて行って。その代わり工藤くんの事も、周りにも何もしないって約束して」
「おい灰原!」
「それだけ約束してくれたら私はあなたの元に行くわ。お願い」
「約束しよう。そしてシェリー、いや宮野志保。君にも危害を加えないことも約束する」
「あなたの目的が何なのか知らないけど随分と優しいのね」
「交渉成立だ。但し、工藤新一。君の行動によっては周り全部失う事になるということを覚えておいてくれ。俺も忙しいんだ」
工藤新一は納得していないようだが、人質が多すぎて動きようがないだろう。
まぁシェリーを組織から奪うことになるから俺も下手な事は言えないんだけどな!
コナンから下手に俺の事が伝わったら俺も死ぬ。
灰原哀を連れて工藤邸を出てさっさと米花町を離れる。
さて、ここらで彼女に感動の対面はさせないけど嬉しいニュースを伝えてあげるとしよう。
「シェリー。良いニュースと若干良いニュースどっちから聞きたい?」
「なによそれ。どっちでも構わないわ」
「では若干良いニュースのほうから。君はこれから俺が匿う。組織には知られる心配はないから安心しろ。君の事を知っているのは俺だけだからな」
「…あなたは組織に忠実だと思ってたけど、自分の目的のためなら組織を裏切るというの?」
「別に裏切ってはいない。研究者のシェリーはもうどこにもいない。そして居場所を知るのが俺だけとなった以上、もうその存在は誰にも知られることがないだけだ」
「詭弁ね。まぁ私としてはそのほうが助かるからいいんだけど。それで良いニュースのほうは?」
「宮野明美は生きている。てか俺が助けておいた」
「なっ!…それは本当なのね?」
まぁ疑うよね。ちゃんと証拠もあるよ。ほら写メ見てごらん。お姉ちゃんだよ。
治療されベッドで眠っている姉の姿を写真とはいえ確認できたからか、その顔はとても嬉しそうな表情をしていた。
どこにいるのかとか容態はとか聞かれたけど場所は明かせない。そして命に別状はないとだけ教えておく。起こす予定がない事は言わないが。
そして姉が殺されそうになった原因が宮野明美自身であることもきちんと伝えていく。
赤井秀一(諸星大)というFBIの人間の当たり屋行為から始まりいいように利用され潜入の手伝いをし、それが判明して排除対象になってしまった事なんかを脚色しつつね。
実際組織からしてみたら宮野明美の行動はただの裏切り行為であり、粛清案件なのだからフォローのしようがないんだよな。
ちなみに俺がなんで宮野明美の治療や匿ったり、今も灰原哀を組織から匿ったりできるかというと、宮野明美が起こした10億円強奪事件のお金は俺がもらったからである。
本当ならばコナンに渡るはずだった鍵はコナンに会う前に宮野明美を回収したことで俺に渡った。
後は金の力でいろいろと根回しや買収などで隠れ家とか設備ゲット!しただけだ。
宮野明美が生きているのは自分で強奪してきたお金があったからなのでマッチポンプっぽいが結果的に良かったんじゃないかな。
「そろそろ教えてほしいんだけど。私はあなたに何をすればいいの?」
「ん?もうすぐ隠れ家に着くからそこでわかるんじゃないかな」
「あなたの行動はよくわからないのよね。私が目的に必要なんだろうなとは思ってるんだけど、身体目的じゃなさそうだしお姉ちゃんの生殺与奪まで握られて私が逆らえない事はわかってるんだから教えてくれないかしら」
まぁ俺には俺の目的があるとはずっと言ってたけど、それが何かなんて誰にも言ってないもんな。
身体目的っていうか、身体も入ってはいるんだけどそっちの意味じゃない。
しばらく車で走り続け、ある町の隠れ家に着いた俺たちは家の中に入る。
そのまま地下室へと入っていき、様々な機材を見た灰原哀は驚きの表情を浮かべた。
「…ここで何をするのかしら?」
「ククッ、これを見てわからないか?」
「…マイク、よね?」
「そうだ、ちょっとそこに立て。高さが足りないな。台になるものを…と。これでいい。マイクに向かってちょっとこれ読んでみてくれ」
「なにこれ…黄昏よりも昏きもの、なんなのこれ?」
「次こっち読んでみて」
「たぶん私は3人目…ねぇ、ほんとなんなの?」
「もうちょっと抑揚ない感じで!」
「…たぶん私は3人目」
「次これいってみよう!」
「おたるーだ、だいすきー…」
「違う違う、もっと元気よく天真爛漫な感じで!」
「いやよ!こんな恥ずかしい事言いたくないわ!」
「まぁライムは早すぎたか。とりあえずシェリーには?いや志保には?灰原哀ちゃんには?これをやってもらいます!」
「まさか、あなたの目的って…」
「そう!君にこれらのセリフを全部全力で演ってもらう。ちなみに拒否権はない」
「…うそでしょ」
「クククッ、(終わるまで)逃さねぇぜ。シェリー」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、まだ終わらねぇぜシェリー
オレの名前は江戸川コナン。
そしてその正体は高校生探偵・工藤新一だ。
あるとき、オレは毛利蘭と一緒に遊びに行ったんだが、そこで殺人事件が起こった。
無事に犯人を特定し事件は解決したんだが、そこには怪しげな黒服2人組がいた。
頭の中で探偵の勘が「何かある」と言ってたオレは蘭を置いてそいつらを尾行することにした。
そして怪しげな取引現場を見つけることができたんだが、その黒服のやつに見つかり証拠が残らないという薬を飲まされてしまう。
気を失っていたオレが意識を取り戻した時には、身体が小さくなり子供の姿になってしまっていた。
隣に住む阿笠博士の協力でなんとか蘭を誤魔化したオレは毛利探偵事務所に居候することになった。
下手にオレの正体がバレたりすれば周りも巻き込んでしまうかもしれないからだ。
毛利のおっちゃんを使い事件に関わっていけば、いずれはあの黒ずくめのやつらに辿り着
くとオレは踏んでいる。
待ってろよ黒ずくめのヤツら!このオレが必ず捕まえてみせる!
数多の事件を解決に導き、世間では「眠りの小五郎」とまで言われ毛利探偵事務所は有名になっていった。
まぁ本人は眠ってるから気がついたら解決してるわけだが、まったく気にしてないところがおっちゃんだな…
そんな感じでいろんな事件に首を突っ込んできたオレだが、ついに黒ずくめの手がかりを掴むことになる。
組織で研究していたという女、コードネーム・シェリー。ジンたちと同じくコードネームを持つ女だ。
どうやらオレの身体をこんなにした薬を研究していて、組織に殺されそうになったところを研究中の薬を飲んで逃げ出したらしい。
ついに
だが光明は見えた!灰原哀と名乗ることにした
まぁ組織の情報は同時にその組織の大きさが、オレが考えている以上だった事も教えてくれたんだが…
だからってこのままあいつらを野放しにしとくつもりはねぇ!
それからは灰原もオレと同じく小学校に通わされるようになった。
本人は嫌々なのが態度にも出ているがオレだって同じなんだから我慢してくれ…
不本意ながら少年探偵団なんてものに付き合うのも慣れてきた頃、オレたちはいつも通り学校から帰っていた。
それぞれの家に帰るため別れていき、今は灰原と2人帰り道を歩いている。
他に誰もいない2人だけになったとき、目の前に1人の男が現れた。
「シェリー、探したぞ」
「!?あなた…どうして」
「どうしてと言われてもな。俺には俺の目的があると言ってなかったか?」
こいつ…灰原の事をシェリーと呼んだ。その名前を出すのはあいつらだけだ!
黒のスーツに鋭い眼差し…下手に騒ぐと無事でいられるかわからねぇ。
とにかくオレたちの安全を確保しながらこの男から組織の情報を引き出せるか…?
「おい!てめーどうしてその
「少し場所を変えよう。道端で大声で話すことではないだろう?なんなら君の家にするかい?
「!?なんでそれを…」
まずいまずいまずいまずいまずい!まさかもう嗅ぎつけられるなんて!
灰原は真っ青な顔色をして震えている。そりゃそうだ。
どう考えても始末しに来たか連れ戻しに来たかの2つに1つだ。
今のオレにできるのは何なのか考えろ工藤新一!
オレの事まで知られてる以上、下手に逃げるよりもこの男が何を考えているのかを知る必要がある。
オレの家に連れていき、この男と対面するように座る。灰原もオレの横で座っている。
男は話に来ただけだから警戒するなと言うが、それで警戒しないヤツがいたら見てみたいもんだぜ。
そしてこの男は灰原の姉の死亡した原因すらも知っているという…
つまりこいつは組織の中でもかなり中核に近いところにいるんじゃねぇか?
だが姉の情報はオレのいるところでは話せないと焦らし、組織に連れ戻すのではなくこの男の元に連れていくのだということだ。
そんな危険な真似させるわけねーだろ!
組織に連れ戻されたら研究を続けさせられるか殺されるかだろう。
だが、この男は組織の目的に関係なく連れ去ろうとしている。
どっちも危険なことに変わりないが、下手したらこいつのほうが危ないかもしねぇ…
だが、ここでこの男の言葉にオレの頭は真っ白になった。
「…毛利蘭」
「!?なんでそこで蘭が出てくる!?」
なんで蘭の事を知ってるんだ!?
オレが高校生探偵として新聞なんかに出ていたとしても、蘭と一緒に映ったことも名前を出した事もねぇ。
そしてここからオレは自分が今どんな状況に置かれているのか思い知らされた…
「ククク、俺は君が気づいている通り、シェリーの所属していた組織の人間だ。更に君をそんな身体にした張本人であるジンの部下でもある」
「そして伝えておきたいのはそれだけじゃない」
「毛利探偵事務所の娘でクラスメートの毛利蘭、鈴木財閥のご令嬢でクラスメートの鈴木園子」
「江戸川コナンとして少年探偵団なんて遊びに付き合っている1年B組の吉田歩美・円谷光彦・小嶋元太」
「そして君が工藤新一であることを知っており協力している阿笠博士」
「ここまで言えば君ならば
もうやめてくれ。もう十分に理解
少しでも妙な事をすれば周りが巻き込まれる…
江戸川コナンとなってからも常に懸念していた事が現実になってしまった。
灰原からもオレをこんな身体にしたジンという男の事は聞いていた。
明確な裏切り者には当然の事ながら、疑わしいだけでも始末してしまうほど冷酷な男だと…
そしてそんな男の部下が今オレの眼の前にいる。
最悪の事態も想像できるこの状況で、それでも灰原は自分の身柄を条件にオレや周りの安全を懇願していた。
危害を加えないなんて信用できる言葉じゃない!やめろ灰原!
口に出して止めたいがオレの言葉1つが蘭や周りを危険に晒す可能性がある。
そう思うとオレはただ灰原と男が話すのを見ていることしかできなかった。
どれくらい時間が経ったのかわからない。1人となった室内で時計の秒針の音だけが響いている。
「新一ぃ~ここにおるのか~?」
気の抜けたような博士の呼び声で我に返ったオレはすぐに博士に伝える。
「博士!まずいことになった!オレたちの事がバレて灰原が連れていかれた!」
「なんじゃと!?どういうことじゃ新一!」
学校の帰り道で黒ずくめの男に見つかった事でここに連れてきて、今まであったやりとりを博士に伝えていく。
工藤新一の関係者や江戸川コナンの関係者を既に把握されていることも、その中に博士の名前があったこともだ。
どこに連れて行かれたのかもわからず、手がかりはない。いや、手がかりがあったとしても追うわけにはいかない。
こんなどっちつかずの自分にイライラし、つい壁を殴っちまったが悔しさが収まらねぇ。
今回、オレたちの事を見逃してもらえたのは間違いなく灰原のおかげとあの男が自分で言っていた慈悲だ。
誰も傷つくことも、いなくなる事もなく黒ずくめから逃れることができた。
だが、それは灰原も安全である事とイコールにならない。代わりに灰原がひどい目に遭っている事だって簡単に想像できる。
オレだって探偵としてそれなりに場数は踏んできている。
灰原を研究者として必要としなかったとしたら、考えられるのは女として利用されるだろう事は想像に難くない。
シェリーの時は大人だったんだろうけど、今は
だが世の中には幼女趣味のやつだっているだろうし、あの男がそうじゃないとは言えない。
灰原が恥ずかしい事をさせられているかもしれないと思うと、早く見つけなければという気持ちに駆られる。
オレの頭の中は悔しさと焦りでいっぱいになっていた。
「…ポカポカする」
「もうちょっと無感情の中にほんの少し芽生えた小さな感情を意識して!」
「……ポカポカする」
「いいよ!次はそれ以外に何も繋がりがない事を寂しく思いながらも大切にしている感じでこれいってみよう!」
「…絆だから」
「オッケー!いい感じだなシェリー」
「ねぇ、ほんと恥ずかしいんだけど」
「まぁシェリーとしては似合わないだろうが、なりきるって大事だと思うぞ」
「ほんとバカじゃないの?」
「もう少し無感情な感じで言ってみてくれ」
「…もうほんとなんなのよ」
「まぁもう少ししたらシェリーも慣れてくるさ(○波はいけるんだけどリ○レイはまだ無理かな~)あとこれにも目を通しておいてくれ」
何やら頭痛でもするのか頭を押さえているシェリーを見ながら俺はニヤニヤしているのだろう。
シェリーのキャラ的に恥ずかしいのは仕方ない。そのうち慣れる。いや慣れろ。
やってもらうのはまだまだたくさんあるが、これからはセリフだけじゃないんだぜシェリー。
俺は懐から取り出した1枚のA4の紙をシェリーへと渡す。
「誰かを傷つけて奪った恋なのに…あなたポエムを書く趣味でもあったの?」
「クク、これは歌詞だ」
「歌詞…もしかして」
「ご想像にお任せしよう!」
「…うそでしょ」
「とりあえず今日はここまでにして食事にしようか」
「何か食べたいものでもあるのかしら?」
「残り物でもいいけど買い出しにいくか」
「私も行くわ。あなた冷凍食品しか買ってこないじゃない」
シェリーを連れて近所のスーパーに買い物に出かける。
すっかりこの生活にも馴染んできたようで、恥ずかしい思いをする以外は特に不満もないらしい。
ちなみに仕事で飛び回る事が多いので外食が多い俺の食生活はシェリー的にはよろしくなかったらしく、自炊のできない俺の代わりにご飯を作ってくれたりする。
てか、研究所勤めだから栄養なんて最低限摂取できればいいのよ、みたいなイメージだったんだけど姉である宮野明美と一緒に作ったりしていたようだ。人は見かけによらな…いてっ、足を蹴らないでシェリー。
買い物かごは俺が持ち、野菜やら魚やら色々と放り込まれるのをただ見ながら後をついていく。
帰りの車の中でシェリーは俺に組織を抜けないのかと聞いてきた。
自分が嫌気が差して逃げてきたからか、今も組織で働く俺に疑問があったらしい。
実際抜けて追われる立場になるくらいなら、今のまま動いているほうが都合がいい事を伝え、シェリーとの約束のためにもこのままでいると告げておいた。
約束って何って…シェリーが江戸川コナンと周りに被害が及ばないようにしてくれって頼んだじゃん。あれってその時限定だったの?
一応まだ俺のやりたい事って残ってるからちゃんと気をつけてあげてるんだよ?
「まさか私を連れ去った後も気にかけてくれてるとは思ってなかったわ」
「あのままだと工藤新一はどこかで組織と対立する事になるだろうからね。下手に接触させてシェリーの名が出られても困る。それをフォローしようと思うなら今の立場が便利なのさ」
「随分と手厚い保護をしてくれるわね。あんなセリフのためにそこまで動くとは思わなかったわ」
「価値観は人それぞれってやつだ。それにセリフだけじゃなくて今度は歌も歌ってもらうぞ」
「それさえなかったらほんと良い人だったのにね…」
「クククッ、(他にもあるから)まだ終わらねぇぜシェリー」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、お前だけじゃないんだぜシェリー
「fly me to the moon ~ ♪
(やはり歌はいいね。リリンの生み出した文化の極みだよ)
(シェリーもこういう曲なら歌ってくれるようになったし、その内ポップな曲も歌ってくれそうだな)
Fill my heart with song ~ ♪
(俺としてはドラまたの曲も歌って欲しいんだけどな~)
(呪文の詠唱は断られちゃったからなぁ…
Fly me to the moon ~ ♪
(しかし英語の発音キレイだな~。やっぱり才女なだけある)
(本当はみんなにも聞かせてあげたいところなんだけど、どこに組織の耳や目があるかわからないからな)
(クククッ、しばらくは独り占めさせてもらうとしよう)
in other words I love you ~ ♪」
「素晴らしいよシェリー。君は歌も上手いんだね」
「褒めても何も出ないわよ。でもいい曲ねこれ」
「だろう?他にもいい曲はたくさんあるよ」
「あなたの事だから全部歌わせるんでしょう?ほどほどにしてよね」
「クク、もちろんわかっているよシェリー」
「じゃあそろそろ食事の支度をするから買い物に付き合ってちょうだい」
俺はシェリーを車に乗せていつものスーパーへと向かう。彼女も完全に今の生活に慣れたようだな。
まぁ若干の不自由はあるかもしれないが命を守るためだし、米花町にいるより俺の元にいるほうが間違いなく安全なのも理解してくれているので問題はない。
ただやはり自分の薬によって小さくなってしまった工藤新一の事が気にかかっているようだ。
シェリーの口から「工藤くん、大丈夫かしら…」と漏れる。独り言なのか?それともお前ちゃんと護ってやれよって事なのか?
まぁちょっと確かめたい事もあるし、一度米花町に行くのも悪くないか。
安心しろシェリー、今度米花町に行ってくることにするよ。ちゃんとシェリーの無事も伝えておくから安心するといい。
え?歌ったりしてるのは内緒にするの?別にいいけど了解したよ。
わかった。元気にしてるって言っておくね。
買い物から帰ってきてシェリーの作った食事を頂く。うん、美味しい!
シェリーはそんな量で大丈夫なのか心配になるくらい少食だけど、さすがに中身まで子供じゃないから「もっと食べなさい」とか言ったら逆に怒られそうだ。
そういえば組織から新しい指示が来てたんだった。シェリーにも伝えておかないと。
「シェリー、おそらくしばらくの間家を空ける事になる。その間は気をつけてくれ」
「そう…わかったわ。心配しなくても大人しくしているつもりよ」
「必要なものや欲しいものがあったら揃えておくから教えてくれ」
「あなたここに来てからも何度か組織の仕事で出かけてるじゃない。今回も元の身体に戻す方法を考えておくことにするから大丈夫よ」
まぁシェリーの言う通り、この隠れ家に来てからも何度か組織の仕事はしている。
シェリーがいなくなった事で多少の混乱はあったものの、それは一部だけで全体で見れば微々たるものだ。
それに海外なんかに行くことも多いから原作キャラたちに会うことも少ない。てか滅多に無い。
まぁ今回は組織の仕事と俺の目的を同時に果たせそうなので若干張り切っているのだが…
ククク、待ってろよ!
今俺は組織の指示で大阪へと来ている。今回の目的は後々のための目眩まし役。
目先の事件に集中させておいて本命は気づかれない内に…ってやつだ。
組織としては大阪府警なんかを釣っておければいいようだが、俺の考えは違う。
服部平次、こいつにも同時に大人しくしていてもらう予定だ。
ククク、うまくいくかな?
さて、予定通り殺人事件が発生し、警察官が集まってきた。そして俺の予想通り服部平次も何やら騒ぎながらも現場に立ち入ったようだ。
よし釣れた!
しっかり推理がんばれよ西の名探偵くん。俺もちゃんと応援しているからな。
そして向かったその先にはまた別の事件が起きていた。女の子が複数の暴漢に襲われているのだ。
女の子も腕に自信があるのか立ち回っているが多勢に無勢の状況となっていた。
俺はそこに割って入り、次は俺が相手になるぞと睨んでみせる。
そのまま逃げていった男たちを見送り、女の子のほうを振り返ってみると怪我もなさそうだった。
「君、大丈夫だったかい?」
「はい、危なかったんでほんま助かりました」
「怪我は…なさそうだね。何もなかったようで良かったよ」
襲われていた女の子を連れて人通りの多い場所へと移動し、女の子のほうもやっと気が楽になったようだ。
自動販売機で飲み物を買って渡してあげる。これで落ち着いて話をすることもできるだろう。
「アタシは遠山和葉言います。さっき助けてくれてほんまありがとうございました!」
「いえいえ、礼には及びません。無事で何よりでしたよ」
「いえほんまに助かりました。なんかお礼させてください」
「うーん、お礼をさせる気なんてないんですが、それなら少しこのあたりを案内してくれませんか?実は大阪には来たばっかりで詳しくないんですよ」
「そんなんでええんですか?」
彼女、遠山和葉に大阪の町を案内してもらいながら雑談を交わしていく。
彼女生来の人懐っこさからか、襲われているところを助けてもらった事もあるのか、このお店があのお店がといろいろと教えてもらった。
ククク、すまないね和葉ちゃん。あの暴漢たちは俺の指示だったんだ。
実は劇団「黒の組織」さんの下部組織の人たちに演じてもらってたんだよ。
そんな事は知らない和葉ちゃんに案内してもらい、今は喫茶店でお話中だ。
「和葉ちゃん、今日の事は内緒でお願いしますね。私はあなたのお父さんの商売敵みたいなものなので見つかると面倒なんですよ」
「商売敵っていうと…(そういえばよく家で「検察の人間め、勝手に好き勝手やりおって!」って言うてたな。つまりこの人は検察の人なんか)ふふ、わかりました。内緒にしときますね」
「ええ、助かります。見つかったら
そこから話を聞いていけば幼馴染の事に話題は移っていった。
大丈夫だよ和葉ちゃん。その幼馴染の彼だってちょっと素直になれないだけさ。
お互いに素直になれないから反発しているように見えるだけで惹かれ合っているのは間違いないよ。
押してもダメなら引いてみなって言うでしょ?和葉ちゃん可愛いんだから小さな事で噛み付いてちゃダメだよ。
心配ならお兄さんが相談乗るよ?なるほど恋敵ってやつだね。じゃあこうしてみるのもいいんじゃないかな。
そうだね。きっとうまくいくさ。お兄さんのお墨付きだよ。
さて、そろそろいい時間だ。
おそらく今回の事件はもう解決されている頃合いだろう。まぁ後数件は事件が起きる予定なんだけどね。
「そろそろお暇したいところなんですが、実はあなたの声が昔よく聞いた女性によく似てましてね。彼女は承認欲求は強いですが、称賛されるだけの実力を持った才女でした。そんな彼女とは中学生の時に出会ったんですが、気弱だった
「その人は今は…?」
「もう会えないんです…そこでお願いなんですが、彼女がよく言っていた言葉をあなたに言ってもらえませんか?」
「えっ?私にですか?(もう亡くなられてはるんか…それでもその彼女さんの声が聞きたかったんやろうな…)まぁそれでお礼になるんならやりますけど…」
「ぜひ!ちなみにセリフはこれで…」
「えっ、これでいいんですか。じゃあ…あんたばか?」
「もっと力強く!」
「あんたバカ!」
「最後はちょっと伸ばすように」
「あんたバカぁ!」
「そのまま疑問形も少し含んだ調子で」
「あんたバカぁ!?」
「ありがとうございます!まるで
「はぁはぁ、なかなか気の強い彼女さんなんですねぇ、アタシのほうが疲れたんですが…」
「フフフ、もう会えない
「えぇ…?まぁ危ないとこを助けてもらった上に相談にも乗ってもらったし、これくらい別にええですよ」
目的を達成した俺はその報告を行い家に帰る準備をしていく。
長かったようで短かったがとても濃密な時間を過ごせたな。
少しだけ私情で動いたが全体的に見ればこの行動は組織にとってもプラスに働くはずだ。
何せ和葉ちゃんの父親は大阪府警の刑事部長だ。
そして服部平次は事件を解決している間に幼馴染が危険な目に遭った。
これを聞けば迂闊に単独行動はできまい。
更に和葉ちゃんの俺に対する警戒心も(たぶん)ないだろう。
次に和葉ちゃんに会うときは番犬付きかもしれないが、まぁその時はその時だ。
「ただいまシェリー、いい子にしていたかい?」
「その子供に接するみたいな態度やめてくれないかしら…おかえりなさい」
「ちょっとした冗談だ。何もなかったみたいで良かったよ」
「組織の動きを知っているあなたがいるんだから問題なんて起きないわ。あなたは良いことでもあったのかしらね?ニヤニヤしているわよ」
「あぁ、
「そう、良かったわね。今日はもうアレはなしで休みましょ」
「あぁ、わかった」
今回の仕事に満足している俺は大人しくシェリーの言う事を聞くことにした。
まぁ無理をさせるつもりもないし、シェリーとしてもわざわざ恥ずかしい思いをしたくないというのもあるんだろう。
というか、最近そこまで恥ずかしがってる感じじゃないんだけどな…
特に綾○レイは普通に言ってくれる。
それは置いといて、今は原作だとどれくらい進んでるんだろうか?
前にシェリーにも言っていたが一度原作主人公サイドの確認をしてみるのもいいかもしれないな。
新聞やニュースで「眠りの小五郎」の話題が出ていることから、事件を解決したりしていることは確かだ。
あとあの
釘は刺したつもりだし、例えバーボンやライに話されても俺の事は知らないはずなんだが、念には念を入れて行動しておかないとな。
それとは別に俺個人としてもどうしても確認してみたいこともある。
というか、こっちが本命と言っても過言ではないくらいだ!
それは…
「ご飯できたわよ」
「わかった。いつもすまないねぇ」
「…あなたよくそれで組織でやっていけてるわね」
「ククッ、組織でこんな事言っていたらすぐに殺されてるだろうな」
「それだけ気を許してくれてるって前向きに捉えることにするわ」
「それはお互い様さ。それと今度米花町に様子を見に行ってくることにする」
「そう、あなたの事だから心配はしてないけど、工藤くんをあんまりいじめないでね」
「あぁ、(どうしても)気になる事もあるからな。ついでに少しお話するだけさ」
「クククッ、(ターゲットは)
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、知ってしまったんだぜシェリー
「おまえさんを待つ~ ♪ その人はきっと ~ ♪
(ほんとコレいい曲だよな~)
路上に捨てくされ、やるせなさ ~ ♪
(マタムネとの別れ思い出してきた…泣きそう)
寂しい重い謎、かかえ夜 ~ ♪
(まだシェリーが残っててアンナさんの高さはちょっと足りないけどそれでもいい…)
愛は出会い・別れ・透けた布キレ ~ ♪
(やっぱりこういう切ない感じの曲はシェリーもちゃんと歌ってくれるな)
慕情にもならぬ、この詩も ~ ♪
(十六夜と悩んだんだけどどっちも泣けるんだよな…)
恐山ル・ヴォワール ~ ♪
恐山オー・ル・ヴォワール ~ ♪」
「やっぱりいいねシェリー。君は研究者にしておくのはもったいないよ」
「あなたしれっと私の本業を向いてないって言ってない?」
「いや、そんなことはないんだが…」
「あなたの趣味だから付き合ってるけど、他の誰かに聞かれるとか恥ずかしくて死ねるわよ?」
「心配しなくても誰にも聞かせたりしないさ。後はもうちょっとテンション上げてセリフ言ってくれると嬉しいんだが…」
「…無茶言わないでよ」
シェリーも結構吹っ切れてきたのかリ○=イ○バースとかは難しいけどそれなりに対応してくれるようになってきた。
てか呪文の詠唱なら別に今でもいけると思うんだけどな~
言ったらジト目で見られるから
ちなみにシェリーは歌うこと自体はそんなに嫌いじゃないことを知っている。
何かしてるときに、無意識なのかもしれないが「Fly me to the moon ~♪」って歌ってるのを見たことがある。ちなみに鼻歌バージョンもあるんだぜ。
そして俺はそれを指摘したりせずに聞きながら悦るのだ。
「さて、じゃあ締めのセリフいってみようか」
「…ほんとに言わせるつもり?まだそんな時間じゃないわよ」
「いいじゃないか。聞きたいんだから。さっ、いってみよう」
「…………おやすみ、byebye」
「最高だシェリー」
まったく最高だ。
今日も今日とてシェリーに癒やされながら隠れ家にいるわけだが、決して組織の仕事をしていないわけではない。
ただライこと赤井秀一は組織を逃亡しているのは間違いないんだが、喫茶ポアロにバーボンこと安室透がいるのかなんかは見てみないとわからない。
今のところ何も行動を起こす予定はないが、この2人はシェリーこと宮野志保と結構関係があるから悩みどころなんだよな。
正確には宮野明美やその母親の宮野エレーナだったりするわけだが、こいつらからしてみれば唯一残されている
ククク、お前らにシェリーはやらんけどな!
「ちょっと?」
「うん?どうした?」
「何を考えているのか知らないけど、米花町に行くのならついでに工藤くんの血液をもらってきてちょうだい」
「あぁ、研究に使うのか」
「ええ、わたしだけじゃなくてサンプルは多いほうがいいわ」
「了解した。ただ素直に渡してくれるのかどうかが心配だな」
「そこは普通にわたしが研究してるからで理解してくれると思うわよ?」
まぁ工藤新一も元の身体に戻るのは賛成だろうし、確かにそのまま言えば協力してくれるかもしれないな。
…そういえばシェリーに
ただなんで知ってるのかって聞かれると答えられないんだよな…
コナンってなんでパイカル飲んだんだっけな…あー風邪引いて服部に飲まされたんだったか。
こうなったらコナンに水ぶっかけて風邪引かせてから俺がパイカル飲ませるか?
それか服部連れてきて偶然冷水がコナンに降ってくるように仕向けるか?
俺が普通にパイカル持っていって「飲め」って言っても絶対飲んでくれないよな。
まぁ急ぐわけでもないしその内教える機会もあるだろ。
俺はシェリーに伝えていた通り米花町へとやってきている。
今回の俺の目的はいくつかある。
まず
これについては
ポアロも確認して安室透がいるのかどうかも見ておかないと…
さすがに朝だからまだ通勤通学の人たちが多いな。
まぁ狙って来てるから当たり前なんだが…
そしてまず1つめの布石を打ちますか。
ねぇ君、実はお兄さん今日から始まる仮面ヤイバーの映画のチケット持ってるんだけどさ
お兄さんはもう見ないから君もらってくれないかい?
お友達の分?もちろんあるよ。はい、4枚あげるね。
早速今日見に行くのかい?はは、気をつけてね。あぁそれじゃあね。
これでよしっと。
ふむ、どうやら今はまだ安室透はポアロにいないようだ。
俺が組織内でバーボンの事を嗅ぎ回るのは悪手だからこればっかりは仕方ないな。
とはいえ、ポアロにいないのならば普通に利用できるということでもある。
後は
…マジでどうすればいいのか考えつかん。普通に声かけたら怪しい人だしなぁ。
よし、少し遠回りだがこれでいくか。
あーもしもし、毛利探偵事務所さんですか?実はちょっと依頼したいことがあるんですが…
えぇ、はいそうです。では今日の○○時にお伺いしますね。よろしくどうぞー
ククク、これで2つ目の布石は打った。
毛利探偵事務所に行けばターゲットに会えるんだが、当然そこには江戸川コナンも住んでいるため帰ってくる可能性はある。
だが、1つ目の布石を打ったことでコナンは少年探偵団と一緒に仮面ヤイバーの映画を見に行くはずだ。
「こんにちは。先程お電話にて依頼した者ですが」
「あぁ、あなたが依頼人の方ですな。私が名探偵の毛利小五郎でございます!」
「あなたの名声はこちらもよく聞いております。今日はよろしくお願いします」
「それで、依頼内容のほうを伺いたいのですが…」
ククク、依頼内容はこうだ。
俺はフリーのライターをやっていて、今回は民間人と政界人や著名人などとの感覚の差がどれくらいあるのかを調べることにした。
だが自分では一般人からのアンケートなどはできるが、有名人などにはアポを取ることもできない。
だから
と、言っても日本全国を巡る必要はなく、今日行ける範囲のお知り合いの方数名に
アンケート内容はこちらで用意してあるので回答してもらいながら雑談してきてくれればいい。
俺はその間米花町内で路上アンケートなどを行っていく。時間は夜になる前くらいまで。
というものだ。
当然街角アンケートなどやらない。毛利小五郎を追い出すことが目的だ。
後は高校生が帰宅する時間を狙って戻ってくるとしよう。
ついでに米花町を見て回ってみようかな。こんな機会めったにないし。
ふむ、これがトロピカルランドか。なんでジンはこんな所を取引場所にしたんだろうな。
ほう、これが米花商店街か。普通の商店街だな。
東都タワーたけーな。そろそろ(事件で)このタワー折れてもおかしくなくね?
そろそろいい時間だな。毛利探偵事務所に戻ろうっと。
少し待つだろうがこればっかりは仕方ないよな。
毛利探偵事務所へと戻り、中には誰もいないため当然鍵がかかっている。
しばらく待てば、そこに家に帰ってきたターゲットが姿を現した。
「あれ?お客さんですか?」
「うん?今日毛利探偵に依頼したんですが、私のほうが思ったより早く終わったので伺ってみたんです。どうやらまだ毛利探偵はお戻りになっていないようですね」
「そうだったんですね。中に入ってお待ちになりますか?」
「うーん、どうしようかなぁ。ちなみにあなたは毛利探偵のご家族の方ですか?」
「あっ!私、毛利小五郎の娘の毛利蘭と申します。自己紹介が遅れてすいません」
「いえいえ、しかしこんな可愛い娘さんと2人で待ってると毛利探偵も心配でしょうから、良かったら下の喫茶店に少しだけ付き合ってくれませんか?」
この探偵事務所でもいいんだが2人っきりは警戒される恐れもあるからな。
心配いらないよーって意味も込めてポアロに誘う。
何せポアロは毛利蘭にとって自宅の下にあるし、よく利用しているから店員も顔見知りで安心できる場所のはずだ。
可愛いと言われた事に照れながらも、やはりポアロなら安心できるのか付き合ってくれるみたいだな。
ポアロのドアを開けると来客を告げるベルが鳴り、2人でカウンターへと座った。
ちなみに今回米花町に来た俺の真の目的は「毛利蘭の
あれが髪の毛なのか実は骨もあるのかずっと気になってたんだよな。
もしかしたら鬼丸くんの生まれ変わり説も俺の中では有力だったりする。
もしそうならば黒の組織どころか、ラスボス確定のバトルパート突入だがな。
そこからは雑談を交わしながら俺はチャンスを窺っていく。
蘭さんって呼んでもいい?そう、ありがとう。
蘭さんは高校生なの?へぇ、帝丹高校なんだ。あそこって有名な高校生探偵の子いなかったっけ?
えっ?知り合いだったんだ。でも最近事件の解決のために休んでる?
そっか、心配だよね。蘭さんを見てると仲良かったんだろうなってよくわかるよ。
さりげなく「トイレに行く」と席を立ち、戻ってきた時に毛利蘭の
「蘭さん、髪の毛に糸くずが付いてますよ」
「えっ、…取れました?」
「まだですね、ちょっといいですか」
「蘭ねえちゃん!!」
「あら、コナンくん。そんなに慌ててどうしたの?」
ちっ、
てかこのヒロインのどこがいいんだ?いや、いい子なのはわかってるんだけどさ。
可愛いし性格もいいし一途なのも知ってるから魅力のある子だとは思うよ?
たださ、「もしかして新一かもしれない。新一なの?」からの
「やっぱり違うコナンくんだわ。そんなはずないよね」って言いながら
「でもやっぱり…新一?」とかループする電波女だぞ?……電波?
…そうか!謎はすべて解けた!
この角は電波塔だったのか!!
触れられたら困るから
てことはあの電波塔は受信だけじゃなく発信までできるってことか!?
そしてその発信された電波を
道理で都合よく「らぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」って登場するもんだなと思ってたんだよ。
あんまりにもタイミングいいから疑問だったがやっと謎が解けてスッキリしたぜ。
まぁその江戸川コナンは今もずっと顔色真っ青の状態ながらもこっちを睨んできているわけなんだが…
これシェリーのおつかい達成するの難しくないか?
とりあえず2人だけになる機会を作らないといけないな。
と思ったら江戸川コナンのほうから小学生モードの話し方で「ねぇ蘭ねーちゃん。ボクもこのお兄さんとお話したいな~」とか言ってくれた。
ナイスタイミングだコナンくん。だが声が少し震えているぞ?もっと演りきれ!
もう
江戸川コナンと毛利蘭と一緒にポアロを出て毛利探偵事務所へと入る。
毛利蘭は学校の課題があるから「コナンくん。お兄さんに迷惑かけちゃダメだよ?」と言い残して自室へと戻っていった。
「おい!灰原は無事なんだろうな!?」
「ククッ、まぁ落ち着きたまえ新一くん。君に教えてやる義理はないが教えておいてやろう。あの時も言ったが危害を加えたりなどしていないさ。無論元気にしているとも。まぁ…少々恥ずかしい思いをさせていることは自覚しているがね」
「(やっぱりこいつ灰原を…!)やめろ!それ以上灰原をひどい目にあわせるんじゃねぇ!」
「そう言われてもな…だが最近では彼女も(歌うのが)気持ちよくなってきたみたいだぞ?」
「(やっぱり
「趣味嗜好など人それぞれだろう。君に(声豚の)文句を言われる筋合いはない」
「…なっ!?(くそっ!どうすりゃいいんだ!?)」
まぁシェリーからしたらひどい目にあってるって言えるのかな?
ただ最初からそんなに嫌がってはいないぞ?照れてるだけで。
あと腐った趣味は頂けないぞ工藤新一。
子供ボディで意中の相手と1つ屋根の下生活を満喫している君も人のことを言えないだろうに。
…むしろそっちの方がひどくね?
正体が判明した時に「事件を解決するためって嘘を言いながら実は女子高生と暮らしてた」って客観的に見たら結構なやべーヤツだってわかってるか?
まぁとりあえずさっさと終わらせて帰るか。
「そうそう、少し頼みたいことがあってね。わざわざそのために君と話す機会を作ったんだよ。実は君の血液が欲しいんだ。シェリーのしていた研究は知っているだろう?それに必要だって(シェリーから)頼まれてね」
「(こいつも組織と一緒で灰原の研究を利用するつもりか!そして組織とは別の研究者に頼まれて灰原以外の
「嫌なら嫌で構わないさ。(シェリーにはお使いもできないのかって呆れられそうだけど)その時はシェリーの血液だけで調べることになるんじゃないかな?」
「…オレが研究に必要なだけ渡す。だから灰原の血液は使わないって約束してくれ」
「(シェリーは自分の血液と比較して調べるって言ってたから)それは無理だ」
「(つまりオレが拒否すれば灰原が弄ばれるだけじゃなくオレが血液を渡さなかった分まで実験体に…)…わかった」
「クク、協力感謝するよ。…これでよし。そうそう、毛利探偵には依頼人は急なアポが入ったから後日受け取りに来ると言っていたとでも伝えておいてくれ」
ふむ、思ったよりも拒んだりごねたりしなかったな。
シェリーから頼まれていた血液も採取することができたし、ちゃんと恥ずかしいから言うなって言われてた事についても誤魔化しておいた。
だがさすが名探偵だけあって何か気づいたっぽいな。
ヒントも何もなかったはずなのに探偵の勘ってやつか?大したもんだ。
感心しながら俺は毛利探偵事務所を出て米花町を去っていく。
「クククッ、(ついにLANねーちゃんの秘密を)知ってしまったんだぜシェリー」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、終わりだ…シェリー(番外編)
お礼になるかわかりませんが返信の代わりとして、感想にあった蝶ネクタイ型変声機をオリ主くんが(コナンくんごと)利用することにしたら?という番外編を用意しました。
俺は毛利探偵事務所でシェリーに
シェリーは元気にしているという事もちゃんと伝えて安心させてやり、歌ってるのは恥ずかしいから言うなと釘を刺されているので誤魔化して伝えていく。
これでコナンのとって懸念事項だった灰原哀は無事という事がわかり、協力しやすい心境になったはずだ。
「そう言われてもな…だが最近では彼女も(歌うのが)気持ちよくなってきたみたいだぞ?」
「(やっぱり
「他人の趣味嗜好など人それぞれだろうが。君に(声豚の)文句を言われる筋合いはない」
江戸川コナンは確かサッカーが得意なんだったか…ちっリア充め。お前なんてLANねーちゃんが生体エネルギー吸われてお婆ちゃんになった後に「ずっとずっと好きだからな」とか言ってろ。そしてそれを俺に聞かせろ。
「そうそう、少し頼みたいことがあってね。わざわざそのために君と話す機会を作ったんだよ。実は君の血液が欲しいんだ。シェリーのしていた研究は知っているだろう?それに必要だって(シェリーから)頼まれてね」
「(こいつも組織と一緒で灰原の研究を利用するつもりか!そして組織とは別の研究者に頼まれて灰原以外の
「嫌なら嫌で構わないさ。(シェリーにはお使いもできないのかって呆れられそうだけど)その時はシェリーの血液だけで調べることになるんじゃないかな?」
「(灰原は家族を全員失って孤独の身。もうこれ以上辛い目にあわせるわけにはいかねぇ)…オレが身代わりになる。オレが(人体実験でも)なんでもやる!だから灰原を解放してくれ!」
「(ふむ、彼にはあの
「(いろんな事をさせられる、か…五体満足でいられる可能性は低いだろうし、それどころかもう戻ってこれねぇだろうな…すまねぇ蘭、みんな)…わかった」
「クク、それじゃあ行こうか。シェリーの驚く顔が目に浮かぶようだ」
さすがに居場所を知られるのはマズいのでGPSで居場所がわかるものは置いてこさせ、江戸川コナンを連れて毛利探偵事務所を出た俺はそのままシェリーの待っている隠れ家へと向かう。
元々俺と江戸川コナンは接点がないし話したのもシェリーがいた時と今回だけだから何を話していいのかわからない。
しかしなんでこんな「今から処刑台に向かいます」みたいな覚悟を決めたような雰囲気出してるんだ?
もしかして何かシェリーに顔向けできないような事でもしてたのか?
コナンくんよ、言っておくがシェリーを怒らせるような真似はしてくれるなよ。
傍からに見たらお姉ちゃんぶってる子供が弟みたいな子供を叱ってるだけでニヤニヤしてしまう光景なんだろうが、それがこっちに飛び火してきたら鎮めるの大変なんだぞ。
「ただいまシェリー。お客さんを連れてきたぞ」
「おかえりなさい、って工藤くん!?あなたどうして…」
「灰原、あの時1人で行かせてしまって悪かった。今まで1人で辛い思いをしていたことはこいつに聞いてる。灰原だけ犠牲になって、オレはそれを知ってるのに自分だけ安全なところにいるのがどうしても許せなかったんだ」
(ねぇ、工藤くん何か勘違いしてないかしら?あなた何を言ったの?)
(うーん、シェリーは元気だけど少々恥ずかしい思いしてるかも?みたいな感じだな)
(頭痛くなってきた…それでどうして工藤くんはあんな事になってるのよ…)
「俺に聞かれてもわからないんだが…おい工藤新一。本当にシェリーの身代わりになってなんでもするんだな?」
「あぁ、約束は守る。オレが灰原の代わりになる。だから灰原を解放しろ!」
「じゃあ約束通りシェリーは解放してやろう。ところでシェリー、解放するって言ってもどうする?」
「あなたのところ以外に安全な隠れ場所なんてないじゃないの。お姉ちゃんの事もあるし、ここなら研究できる設備とかも整ってるし…私も工藤くんと一緒にここにいるから、あなたの趣味から解放してくれれば十分よ」
「つまり住人が1人増えただけだな」
なぜか自分に酔ってるようで1人だけ温度の違うコナンも連れて地下室へと移動することにした。
地下に設備を作ったのは近所迷惑にならないようにと、下手に騒音等を含め噂などで情報が飛んでいかないためだ。
この世界ではほんの少しの情報から答えを導き出すアンサートーカーみたいなやつらが多いからな。
対策できるものはきちんと対策しておくことでいらないリスクを減らすことができる。
さぁ刮目せよ
(地下室か…ここに灰原は監禁されてたんだな。すまねぇ灰原、もっと早くオレが身代わりになっていれば…ってなんで灰原は監禁どころか普通に上にいたんだ?)
(なんだここは?マイクやらスピーカーやら…スタジオか?)
「なぁ灰原。もしかして恥ずかしい事させられてたって…これのことか?」
「ええ、そういうことになるわね」
「アハハ、オレの心配はなんだったんだよ…」
「ねぇ工藤くん。あなた何を想像してたのかしら?」
「い、いや、なんでもねーよ」
「ふーん………へんたい」
やめろシェリー!その言葉はなぜか俺にも突き刺さる!
新一くん!気を確かに持つんだ!傷は浅いぞ!
「なんてね。安心なさい、工藤くんが考えてた事は何もおかしくないわ。あの状況ならそう考えるのが普通だもの。この人が特殊すぎるのよ」
「あぁ、こんなの誰にもわからねーよ…」
「さすがの探偵さんでもこれは推理できなかったものね」
「これが推理できたやつは探偵じゃなくてエスパーだっつーの…」
よくわからんが誤解が解けたならよかったじゃないか。
とにかく君にやってもらうのはこれだ!君が何を想像してたのかは聞かないから大人しくこっちへ来なさい
ごほん、気を取り直して。さてコナンくん。もう君は逃げられないよ。マイクの前に立ってまずは「江戸川コナン…探偵さ」って言ってみよう
「は?なんでそんなことを…」
なんでもするって言ってただろう?ここに証拠の録音が…『オレがなんでもやる!』クククッ、約束は守らないとな?
「くっ、…江戸川コナン、探偵さ…これでいいんだろ」
次はそれと同じ感じでこれ読んで
「…
次はこれだ。これは圧倒的な力を持った存在が足元でどんぐりの背比べしてるやつらを見て嘲笑うような感じで
「ちっちぇえな…なんだこれ?」
よし、じゃあ次だ。これは遠くにいる両親に対して、1人離れて宅配を営みながら生活している少女が伝えるような感じで
「落ち込むこともあるけれど、私この町が好きです…そりゃ灰原が恥ずかしがるわけだぜ」
次は工藤新一の声にして元気よく仲間と旅に出るのを誘う感じでこれだ
「5人揃ったら行こうぜグランドライン!…ってどこだよそれ」
次は必殺技っぽくこれ
「風の傷!…どんな技かわかんねーよ!」
次シェリーの声に変声機を調整しろ、そしてこれを読め
「火中天津甘栗拳」
もっと必殺技っぽく鋭い感じで!
「火中天津甘栗拳!…だからさっきから必殺技の名前おかしくねーか?」
次はシェリーが恥ずかしがって言ってくれなかったこれだ
「小樽ー大好きー…北海道が好きなのか?」
もっと甘ったるい感じで元気よく!
「くそっ、おたるぅーだぁーいすきぃー!」(ちょっと!私の声で変なこと言わせないでよね!)
無感情なまるで人形のような感じでこれ
「私が死んでも代わりはいるもの」
信用はしてるけどもあんまりにも考えなしの行動をしちゃう相棒に対してツッコミみたいな感じで
「ガウリイの脳みそミジンコ!脳みそウジ虫!…相棒に言う言葉かこれ」
そのまま正義の味方が悪いやつに対して断言する感じでこれだ
「悪人に人権はない!…いや犯罪者でも人権はあるぞ」
ちょっとだみ声っぽい感じで自己紹介っぽくこれ
「ぼくバカボンって言うんだ…なんつー名前付けてんだよ」
遠山和葉の声のチャンネルはわかるな?それに変えて次はこれだ。しっかり腹から声出して叫べ
「こんちくしょーーーー!!…ってわざわざ声変える必要あるのか?」
うむいい感じだ。次は戦場で心酔する人のために戦いたいという気持ちを込めてこれ
「私は
「なぁ、ちょっとだけ休ませてくれねーか?『オレがなんでもやる!』わーったよ!なんでもきやがれ!」
本当は言うキャラが反対なんだが面白そうだから赤井秀一の声でこれとこれだ
「エゴというものだよそれは」「
安室透わかるな?その声に合わせてこっちだ
「このアムロ・レイが粛正してやるんだ、シャア!」「忌まわしい記憶と共に、行けアクシズ!」
次は円谷光彦にしてこれだ。自己紹介してる感じでやるんだぞ?
「ぴ、ぴかちゅーーーーー…どういうことだよ」
次は身体から電気を放出して攻撃するような感じで!
「ピカーー…ピカチューーー!!」
一時期光彦くんの声がちょっと変わったことがあっただろ?その声で大人っぽく甘ったるく誘うような感じでこれ
「てーんち!阿重霞なんて放っておいてこっちで飲もうぜ~」
葉坂皆代さんて覚えてるか?そうそうヘアサロンHASACAのひとだ。その人の声で好きな人を横取りされてヒステリーっぽくこれ
「キィーーー!天地様に近づかないでくれますかしら!?」
「うむ、なかなか慣れてきたじゃないか」
「はぁはぁ、なぁ、頼むからちょっとだけ休ませてくれ…」
「仕方ない、休憩にしようか」
どうやら少しばかり疲れてきたみたいだな。少し休憩させてあげよう。
本当はまだまだ演らせたいものがあるんだが…クククッ、後のお楽しみにしようか。
ひとまず地下室を出てリビングへと向かい、シェリーが飲み物を準備してくれる。
しかし意外と蝶ネクタイ型変声機も悪くないものだ。
俺としてはやはり本物に言ってもらうのが一番いいことに変わりないのだが、本物が協力してくれるとは限らないからな。特に赤井秀一とか安室透とか、あと他にも。
かの英雄王だって本物志向で、
「なぁ、灰原はあいつに匿われてるってことでいいのか?監禁されてるとかじゃなくて」
「そうよ。彼は私とお姉ちゃんを助けてくれたの。今はあんなんだけど組織の人間。当然組織の動きもある程度把握しているわ。だから彼の元にいるのが一番私にとって安全なのよ」
「つまりオレは…」
「自分からネギ背負って飛び込んできた鴨ってやつじゃない?」
「マジかよ…」
「だからって彼の不利益になることはやめておくことね。さっきも言ったけど彼は組織の人間。そして最初に出会った時に工藤くんも思い知ったと思うけど、組織の誰よりも早く私を探し出し、工藤くんの正体を見破っただけじゃなく、周囲の親しい人間まで把握していた。下手に逆らっても良い事にはならないわよ」
「…あぁ、それは思い知らされたからよく理解してるさ」
「一応フォローしておくけど、アレさえなかったら有能な組織の一員なのよ」
「それオレからすればフォローになってねーぞ。まぁアレがあるからオレたちは生きてられるんだろうけどな。しかし
聞こえているぞ子供たちめ。わかっていて話しているんだろうけど。
もし俺が
恐らく普通に組織の一員として犯罪者やってただろうな。今もだけど。
だが俺がいるおかげで助かってる事もあるんだからコレくらい許容範囲だろう。
休憩も終わり続きを行うために地下室へと戻っていく。
「さて次は歌にいってみようか」
「オレあんま得意じゃねーんだけど…」
声は変えなくていいからこれ歌ってみてくれ
「あいじゃすとりずーむえもぉしょーん ~ ♪」
くっ、わかってはいたがこれほどとは…ならこれならいけるんじゃないか?よし、声を遠山和葉に合わせろ。そしてこっちだ
「ゾンビーぞーーさん、かーなーたーからやってきーたーよーぞーーさん ~ ♪」
「シェリー!コナンに歌の手本を見せてやれ!」
「いやよ!私の代役が工藤くんなんだから私はもうやらなくていいはずよ」
「ならば薬を…音痴を治す薬を作ってくれ!」
「そんなの作ってる暇があったら元に戻る薬を研究するに決まってるでしょ!」
「クククッ、もちろんタダでとは言わん。報酬は「
「ちょっと!なんでそんなの知っててすぐに教えなかったのよ!」
「おい!その話詳しく聞かせてくれ!それがあれば元の姿に戻れるのか!?」
落ち着けお子様どもよ。子供たちが群がってきても微笑ましいだけだ。
それに俺にとってはまずコナンの音痴をなんとかするのが大事なんだ!
お前たちは元の姿に戻りたかったら羞恥心を捨てて俺に協力しろ!
何?元に戻る薬を作るより工藤くんの音痴を治すほうが難しい?諦めたら
蘭に会いたい?それなら尚更俺に協力すべきだ!じゃないと
さぁ、(セリフを)叫べ!(歌を)謡え!(いろんな声で)俺を満足させてみろ!
クククッ、(
まだ続くため、短編にしていていいかわからなくなったので、カテゴリを短編から連載へと変更しました。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、計画は順調だぜシェリー
無事にシェリーからの任務を達成し、江戸川コナンの血液を手に入れた俺は隠れ家へと戻ろうとしていた。
そこに組織からの仕事の連絡が入り、先にそっちを優先せざるを得ない状況になってしまった。
どうやら仕事の内容は
ジンのやつめ、赤井秀一が潜入していた事でかなり過敏になっているようだな。
…なんなら次に米花町に行った時にいたら教えてあげようかな?
いや、どうせなら味方だと思ってたコナンの裏切りに見えるようにして発覚させるか。
そして最後に俺が「坊やだからさ」って言う。いいかもしれない。
できれば赤井秀一には「裏切ったな、
まぁ実際にやれるかどうかはわからないんだけど…
そういえば今ってスコッチいるのかな。
コードネーム持ちと接する機会がまったくないからどうなっているのかがまったくわからない。
俺の仕事はあくまでもコードネーム持ちよりも下のやつらが裏切っていないか、情報を流したりしていないかの確認だ。
それでも周りは気づいていないのだから、周囲からしたらすぐに当たりをつける俺のほうがおかしく見えているのかもしれないな。
研究者だったら明らかにキョロキョロとしていたり、中には震えているやつだっていたんだぜ。
最初は組織への恐怖で失敗したら粛清されるからって理由で震えてるのかと思ってたんだが、ある日情報が漏れているって聞いて確かめてみたらそいつが流してたんだ。
これをいくつか繰り返したおかげで俺に対する組織やジンたちからの信用が上がったから良かったんだけどさ。
いくつか施設や企業などを回り、怪しい人間がいないかどうかを見渡しながら確認していく。
どうやら今のところ裏切り者っぽいやつは見当たらないな~
ひとまずジンに報告しておくか。
「……俺だ」
「報告だ。今のところ
「いや、他は別のやつにやらせている。…それならお前は研究所のやつらのケツを蹴り飛ばして来い。先にウォッカを行かせてある」
「あぁ、シェリーがいなくなって研究が滞ってるのか。了解だ。今から向かう」
シェリーがいなくなって研究の進み方が遅くなっているのは知っていたが、そこまでめちゃくちゃ遅くなっていたわけじゃなかったと思うんだがな。
ジンからしたらシェリーの研究速度が基準だから、今はそれよりも遅いから苛立ってるのか。
ククク、だがまぁ丁度いい。ウォッカと一緒に研究者にお説教してくるとしますか。
まったくシェリーは一体どこにいったんだろうな?
たぶん今頃どこかの隠れ家で優雅にお茶でも飲みながら読書したりしてるんだろうけど…
研究所に向かってみたら研究員たちがいつも通り働いていた。
これで急げって言うのも可哀想な気がするんだが、ジンから急かさせて来いって言われてるから一応伝えておくか。
研究所に入ったら既にウォッカが来ていて、俺が来るのを待ってから研究員たちに発破をかけようとしていたようだ。
「兄貴からお前を寄越したってのは聞いてたからな。シェリーがいねぇからって
「あぁ、それは聞いてる。ところでウォッカはどういう風に急がせるつもりだったんだ?」
「そんなもん、さっさと結果だしやがれ!って一喝してやりゃいいだろうが」
「こいつらはいつも接してる下っ端共とは違うんだ。それだと逆にビビっちまって効率が悪くなるかもしれない。大体ジンが急かせようとしたら怒鳴ったりしないぞ。たぶんイライラしながらガン飛ばしてるだけで勝手に急いでくれる事になるだろうな」
「あれは兄貴にしかできねぇぞ。それともお前できんのか?」
「いや、それは俺にだってできないさ。だからここは適材適所で協力してやろうぜ。俺がこいつらに今の状況と急いだほうがいいって事を伝えていく。そしてそれが終わってからウォッカが一言二言話してくれるだけでいい。そうすれば十分に効果が出て勝手に急いでくれるさ」
「お前そういうの得意だもんな。兄貴もそれは褒めてたぜ。んで、俺はどうすりゃいいんだ?」
「ククッ、そうだな。まずは黙って見てるだけでいい。そして俺が話し終わってから……とか……とでも言ってくれ。なるべく静かに、そして威圧するんじゃなく突き放す感じでだ」
「よくわからねぇが、お前が言うんならやってやる。ちゃんと兄貴の期待に応えてみせろよ」
「あぁ、これも全部
みんな聞いてくれ。ジンからの指示でもっと研究速度を上げろって言ってたよ。
別に遅いからってコロコロされたりしないと思うけど、ジンって結構短気だから気をつけてね。
え?シェリーの行方?いやぁ、閉じ込めたら消えちゃったって言われたら俺にはわからないなー
でもたぶん死んでる可能性のほうが高いんじゃない?てか生きてる可能性ってあるの?
あー、ラットが小さくなってるって報告が出てたっけ。でもいないものは仕方ない。
藁にもすがりたい気持ちはわかるけど今はできることを頑張ってね!
俺には応援しかできないけど、君たちも研究が前に進まないと困るでしょ?
ね、ウォッカ?
「問題ない。もうすぐ予備が届く」
「おまえたちには失望した、もう会うこともあるまい」
ウォッカの言葉は「別の研究者を連れてくるからお前たちはもう必要ない」と取られてもおかしくない言葉だ。そして必要ないってことは…コロコロを想像しちゃうよね。
研究員さんたちはお顔が白くなってたよ。まぁ狙ってやってたんだけどさ。
ちなみにちゃんとフォローとして最後に「今はまだ大丈夫だよー」って言ってある。
そして俺の目的も達成したぜ!ナイスだ
どうにかして研究を進めるためにシェリーの事を聞いてくる研究者もいたが、死んでいる可能性が高い事を告げておく。
やっぱり実験例の中に小さくなったラットの情報は流れてたのか。
だからジンも灰原哀をシェリーじゃないかって思ってたんだっけな。
まぁ研究者の中では色々と噂になっていたようだな。
俺は監視としてだが、そこそこ研究員とも話しながら研究所にいたおかげで情報を聞くことができた。
曰く、宮野明美が裏切ってシェリーを連れて逃げただの、シェリーが宮野明美にサンプルを投与して死なせただの、いなくなった時期が結構近いのもあって2人を関連付けるのが多かった。
中には実験薬で幼児化して逃げたなんて核心に迫ったのもあったが、そんなバカな!って誤魔化しておいた。
まぁみんながもうシェリーと会うことはないんだから頑張って成果出してくれればいいよ。
そしてここで研究している成果や研究データは俺がちゃんとシェリーにフィードバックしておくからね。
「よくやったな。これで兄貴にもいい報告ができそうだぜ」
「最近はネズミが入り込んだりも重なってジンも苛ついてたんだろう。これで少しは組織全体が落ち着いてくれたらいいんだがな」
「まったくだ。兄貴もずっとピリピリしてるから俺も気が気じゃねぇぜ」
「ククッ、ご愁傷さまだなマダオ」
「あん?なんか言ったか?」
「いや、そういやぁ最近聞いたんだが、どこぞの敵対組織が何人か
「今のところ聞いてねぇな。だが一応兄貴の耳には入れておく。他には何かあるか?」
「それくらいだな。どうせだからこっちも飼うってのもアリかと思っただけさ。相手のペットを返り討ちにするペット。殺して散らせるから「やちる」なんて名前はどうだ?」
「なんだやちるって。まだ飼うとも決まってねぇのに名前付けてんじゃねぇよ。さっさと帰りやがれ」
「ウォッカ、さっき研究員どもに言ったみたいな感じで帰れって言ってみてくれ」
「はぁ?…さっさと帰れ」
「あぁ、ウォッカ絶対そっちのほうがいいぞ。威厳みたいなものが出てて仕事しやすくなると思うぜ。じゃあな」
ちなみに今日も米花町では事件があったようだ。
眠りの小五郎大活躍!っていうニュースが流れていた。
探偵が事件を解決してそれが大々的に報道されるってすごい世界だよな。
それを目障りに思ったのか、確か組織でも毛利小五郎を暗殺しようとする動きがあったはずだ。
それがこの世界でも実現するのか、そしてそれがいつなのかはまだわからないけどその時が来たら俺にも何かしら指示があるだろうしわかるだろう。
研究所を出た俺はそのまま隠れ家へと向かうことにした。
「ただいまシェリー」
「あら、おかえりなさい。随分と遅かったのね?」
「あぁ、米花町に行った後に指示が来てな。そっちに回っていたから遅くなった」
「そう、それで工藤くんには会えたの?」
「もちろんだ。その話をする前にこれを渡しておこう。江戸川コナンの血液だ」
「ありがとう。それじゃ飲み物でも用意するから座って待ってて」
戻ってきた俺はシェリーに迎えられ、米花町であった事などを話していくためにソファへと向かう。シェリーが飲み物を入れてくれるようだ。
工藤新一を気にするのも、きっとシェリーが一緒に過ごしたのは少しの間とはいえ、小さくなった者同士という共通点があるのと自分の作った薬ってのが大きいんだろうな。
こっちでも眠りの小五郎の情報は流れてくるし元気にしている事自体はわかっているんだろうけど、直接見た人間から聞いたほうが確実だ。
きちんと詳細を話してあげることにしよう。
新一くん待ってる間に蘭ちゃんの角の確認してたんだけどさ。
え?角の確認て何ってあのとんがったやつだよ!あれ電波塔だったよ!
いや熱とかないからね?ほんとなんだってば。
あと新一くんも変わらず元気にしてたよー。
シェリーの事心配してたから元気にしてるって伝えておいたからね。
大丈夫。ちゃんとシェリーが歌ってた事とかは内緒にしといたから!
血液もお願いしたらすんなりOKしてくれたよ。
たぶんシェリーが研究してることを推理したんじゃないかな?
なぜか初っ端からシェリーにジト目で見られたが、俺は何も偽っていない。
いや確かに俺の予想というか推理なだけではあるが、かなり信憑性が高いと思うんだ。
後はしつこいようだが鬼丸くん説。こっちは冗談だが。
本当だったとしたらコナンくんが雷神剣持って戦わなくちゃいけなくなる。
江戸川コナンはシェリーの事を心配していた事と、ちゃんと元気にしていると伝えて研究に必要だから血液を提供してほしいと言ったら素直に承諾してくれた事も伝えた。
今回米花町に行ったことで少年探偵団とも些細な縁を作ることができたし、毛利親子とも接触することができた。
これでコナンには「シェリーが無事で元気な事」を、シェリーには「コナンが無事で協力的だった事」を伝えることができたし、お互いに安心しただろう。
「シェリー、今日の夕食はハンバーグにしないか?」
「リクエストなんて珍しいわね。それじゃあ買い出しに行くから付き合ってちょうだい」
「了解だ。少し休憩してから出かけるとしようか」
シェリーが入れてくれた紅茶を飲みながらゆっくりし、簡単に準備してから一緒に出かける。
いくらなんでも買い出しとか日常生活で黒ずくめの格好なんてしない。
俺もシェリーもラフな格好で一般人として普通に買い物を楽しむだけだ。
スーパーに着けば、いつも通りに買い物かごを持ってシェリーの後を着いていく。
お、ここパイカル売ってるじゃん!何気に品揃えいいなこのスーパー。
ならいずれシェリーに伝える機会ができた時にはここで買って渡すことにしよう。
でも研究するのはいいけど完全に
隠れ家に戻った俺たちは買ってきた物を仕舞っていく。
シェリーは俺のリクエスト通りハンバーグを作ってくれている。
残念ながら今日は鼻歌気分ではなかったようだ…
ククク、だがまさかハンバーグが布石だとは思うまい!
「できたわよ。これそっちに持っていってくれるかしら」
「あぁ、わかった。シェリーはこっちを頼む」
「それじゃ頂きましょ」
「待ってくれシェリー。その前にこれを言ってくれないか?イメージは人間たちの集団の力を削ぐために育てていた子供を利用しやすくするために優しく妖しく言い聞かせるような感じで」
「なにその妙に具体的な注文は…ってあなたまさかこのために!?」
「ククッ、いや、たまにはハンバーグもいいなと思っただけさ。さぁ早くしないと冷めてしまう」
「…キリオ、今日はあなたの好きなハンバーグよ」
「最高だ。それじゃ頂くとしよう」
「あなたのその執念だけはすごいと思うわ…」
こんなに美味しいハンバーグは初めてだぜ!
実際のところ
明日からまた取引やらいろいろとやらないといけないんだから、シェリーには俺を鼓舞してもらわないとね。
クククッ、(俺の
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、種まきの時間なんだぜシェリー
今日の俺は組織の指示もなく、ひとまずは今後に繋げるためにいくつか小さい布石を打っていく予定だ。
いくらなんでも四六時中シェリーに
だからそういう時は俺も静かに本を眺めたりテレビを見たりしていることが多い。
まぁそういうとき大体は原作知識を思い出して次はどこに行こうかとか考えてるんだが…
本音で言えば個人的に毛利小五郎と2人でゆっくり話したいところではあるんだが、本人はいいとしても周りが厄介すぎる。
何せコナン側とは敵対関係の立場にいる以上「遊びに来たよ!」というわけにもいかないし。
今のところ、毛利小五郎にとっては「前に依頼してきたやつ」だろうし、娘の蘭にとっても「依頼人の方でお父さんを待ってる間に喫茶店でお話した人」くらいだろう。
一応次に毛利探偵事務所を訪れても問題のないように「前回急用で帰ってしまったため、依頼していたアンケート結果を受け取りに来た」という大義名分は残してきてある。
どうせだからお土産に牛丼を持っていくか?毛利小五郎のあのノリなら牛丼一筋300年ワンチャンいけるか?
だが娘の蘭ちゃんもいたら牛丼とかお土産としては相応しくないよな。かと言って蘭ちゃんにコンパクトとか渡したら
それなら…みかんなら大丈夫か?あと風車とか。
もういっその事また大阪に行って今度は服部平次を狙うか?
いや、ヤツもまた西の名探偵と呼ばれる男だ。普通の会話の中から何かを感づく可能性は否定できない。
あいつを狙うくらいならまだ和葉ちゃんのほうがいい。
できればシェリーを一緒に連れて行って和葉ちゃんと会わせたい。
その時は和葉ちゃんに「この子の事はファーストって呼んであげて」って言うけどな。
あれ?これならいけるんじゃないか?案外うまくいきそうな気がしてきた。
姪っ子に大阪でのお土産話を聞かせてあげたら「私も行きたい!」って言われて連れてきたんだけど、知り合いなんていないから、以前案内してもらった和葉ちゃんにまた案内お願いできないかなって言ったらやってくれる気がする。
しかも今度は俺だけじゃなくて小さい女の子もいる事だし面倒見も良いだろうから断らないだろう。たぶん。
あとは男の人怖がるから俺以外懐かないとか言っとけば服部平次を呼ばれることもないだろう。
ククッ、我ながら名案すぎる!後は実行するために下ごしらえをしていくだけだ!
そんなことを真面目に考えていたらシェリーにジト目で「またくだらない事考えてるわね」って言われた。
なぜか最近シェリーは俺の考えている事がわかる気がする。だが俺にはシェリーの考えている事がまったくわからない。…不公平だ。
ちなみに最近のシェリーは研究一色ではなく、多少は気分転換にゆっくりすることも増えてきている。
なお、俺の目的はシェリーの気分転換にはなっていなかったようだ…
シェリーも読書をしていたりテレビを観ていたりと、やっている事自体は俺と同じなんだがなんとなく全然違う気がする。
読書も研究書だったり推理小説だったりその時の気分で読むものを変えているのかな?
さすがに組織の研究所から紙媒体を持ち出すのはリスクが高すぎるのでやっていない。
それにシェリーがいなくなった事でそこまで頻繁に研究所に出入りすることもなくなったってものあるしな。
元の姿に戻る方法だってシェリー自身と江戸川コナンの血液だけで研究がそこまで進むわけでもないし、組織のほうの研究データだって同じだ。
何せシェリーがいなくなった事で研究のスピードが遅くなってジンが苛ついてたくらいなんだから、その成果データって言っても大したものではないんだろう。
そのあたりは俺ではまったくわからないからノータッチなんだけどな。
「シェリー。今日は組織の指示もないし、なんなら米花町に顔でも出しに行くか?」
「…突然ね。何か私を連れていく理由でもあるの?」
「いや、どちらかというとシェリーの気分転換、くらいの理由だな」
「…それならやめておくわ。どこに誰の目があるかもわからないもの。下手に動き回って私とあなたが一緒にいるところを組織に見つかってごらんなさい。一緒にいた子供は誰だなんてなったら目も当てられないわよ」
「それもそうだな。それじゃあ俺はちょっと用事を済ませてくる。会う予定はないが、もし工藤新一に会ったら何か伝えておくか?」
「そうね…研究も進んでないし特にないけど、工藤くんのほうが見つかる可能性高そうだし、私のほうは心配いらないって言っておいて」
確かにそれもそうか。下手に一緒にいるところを見られたらあれは誰だってなるよな。
俺だってジンが子供を連れてたら全力で調査すると思う。あり得ない光景だけどさ。
ライとバーボンが仲良く爆笑しながら酒を酌み交わしてるくらいあり得ない。
シェリーからの伝言を一応預かり、一度自室に戻って準備をしていく。
準備といってもクローゼットからシャツやジャケットを取り出して、ちょっとクシャクシャにしてからカバンに入れるだけなんだが…
あと話のネタのためにちょっとコレも借りて…と。コレは絶対にバレないようにしなければ…
その後シェリーに出かけてくると声をかけてから隠れ家を出て米花町へと移動していく。
さて、目的地の米花町に行く前にひとまず存在するのか確認したい人物がおり米花市役所に到着したんだが、その目当ての人物がどこにいるかわからないんだよな。
部署とか何も情報がないし、誰かに聞くにしても用事もないから聞けずにキョロキョロしてるだけだ。
適当に用事を作って聞いても、「それならあちらの部署です」とか言われたらそれで終わっちゃうし、名前だけを手がかりに探すのは大変だな…
まぁ会えなかったらまた来ればいいだけなんだけど、あんまりにも何度も何度も用もなく市役所うろつくのもおかしな話だ。
まぁ今回はその人物に運良く会えたらちょっと話したいだけなんだが。
その後仲良くなれたら「んもっふ!」とか「
いきなり初対面の人にそんなことを言ったらおかしい人だけど、だからこそファーストコンタクトは今のうちに行っておきたいものだ。
結局、その人物は休みなのか外出してるのか、米花市役所内では見つけることができなかった。
…ククッ、まぁいい。こっちはできたら顔合わせしておきたかった程度だ。
まだまだチャンスはいくらでもある!だからうがいして待ってろ村上さん!
市役所を少し残念な気持ちで出ていき、気分を入れ替えて米花町に向かう。
何せ次の人物は間違いなくそこにいるはずだ。外出している可能性も低い。
よし!目的地に近づくにつれ段々と期待が膨らんできた!
だが落ち着け俺。シェリーの時とは状況が違う。まずは仲良くなるところからだ。
到着したぜサンサンクリーニング!
クリーニングを出すだけなのにワクワクするのなんて生まれてはじめてだ。
だが、もし目当ての人物がいなかったらどうしよう…いやきっといるはずだ!
用意してきたカバンを片手に持っていざ入店!
「いらっしゃいませ~」
「すいませんクリーニングお願いしたいんですが…」
「ではこちらのカゴにお入れください。あとこれに記入お願いしますね」
ではこのシャツ数枚とジャケットをお願いしますね。
あとこれもいいですか?姪っ子の服なんですが汚しちゃって…
えーと、石川さんも小さいお子さんがいらっしゃるんですか?
そんな風には見えないですね~。いえいえお若いですよー。
ふふ、ほんと小さい子供って大変ですよね~。
えっ?まだ2歳なんですか?それはもっと大変でしょうね~。
2歳ってもう話したりできるんですか?へー可愛いですね~。
ですよねー。機会があればお友達になれたらいいですね。
記入は…と。これでいいですかね?
はい、明日は用事があるので数日以内に受け取りにきますね。
いえいえ、お子さん…春香ちゃんでしたっけ?そのうちお会いしたいもんです。
ええ、その時はぜひ!仲良くなってくれるといいですよねー。
「ふふ、つい長話しちゃってごめんなさいね」
「いえいえ、こちらも姪っ子ですが子供と一緒に暮らしてる身ですから、茂子さんのアドバイスは参考になりますよ」
「でも聞く限りそちらのお子さんはとても大人しい子のようですし、よくお手伝いのするいい子ですね」
「ええ、私も
「あら、お客様ったらお上手ですね」
いや、ほんとに楽しい時間だ。これで「すべては必然なのよ」とか
それにこれはこれで運命ゼロのホムンクルスお母さんと話してると思えば感慨深いものがあるのだ。
茂子さんの娘はイ○ヤじゃなくてル○ズだけど。
あー、春香ちゃんが2歳じゃなくてもうちょっと成長してたらなー。具体的にはあと10年くらい。
…ここだけ切り取って考えると危ないやつだな。やめとこう。
後は服を勝手に持ち出してクリーニングに出した事をシェリーにバレなければ完璧だ。
…シェリーも名探偵ほどじゃないだろうけど、結構勘が鋭いから念のために今のうちに言い訳考えとこ。一応、あくまで念のため。
サンサンクリーニングでの楽しい会話が終わり、後日受け取りに来ることを告げて出てきた。
今日の用事終わっちゃったし、この後どうしようかと考えていたところにウォッカから連絡が入った。
どうやら先日伝えた他の組織が襲撃者を用意しているかもっていう情報で、もっと何か詳しい事は知らないのかということだ。
そうは言われても本当に噂程度の話でしかないので、もっと他に詳しい情報をよこせと言われても困る。
そういうのはどちらかというとベルモットとかの担当だと思うんだが、あーベルモットに聞く事もできないってことなのかな。
俺もベルモットには会いたいんだが、実際問題としてそれはかなり難しいところだ。
今の俺の立場でベルモットと接触なんてしようものなら、ジンにいらぬ疑いをかけられる可能性が非常に高い。
それならまだ今のところは現状維持を優先してチャンスを窺ったほうが賢いやり方だろうな。
ウォッカにはそのまま「噂程度に流れていたのを聞いただけだ」と伝えておき、またどこかで同じような話があるようなら報告すると言っておいた。
ちなみにウォッカは前に俺が
ジンといる時など普段の時はあまり使わないが、傘下の組織や企業とのやり取り等ではゲ○ドウスタイルは役に立っているということだ。
なお、俺が提案した襲撃者へのカウンター・やちるについては何も触れられなかった事から無かったことにされている模様。
だがそうか、ウォッカの役に立ってくれたのならば良かった。俺の私欲でアドバイスした甲斐もあるってものだ。
ウォッカよ。是非次に俺と会うときはまた聞かせてくれ。ジンがいないところでな。
ウォッカとの電話を終えて今日の用が全部終わった俺は米花町を後にしようとしながら今後の事を考えていた。
ククッ、さて次のターゲットは誰にするかな…
たまにはシェリーに1日中付き合ってもらうのも悪くないな。
そうそう、そういえば阿笠博士になんとかうまいこと言って超小型超高性能録音機とか作ってもらえないかな?
隠れ家は設備が整ってるからいいんだけど、持ち歩く市販の録音機ってちょっと音悪いんだよなー
おかげで和葉ちゃんにもう1回「あんたバカぁ!?」を言ってもらわないといけないんだよ。
さすがにもう知り合いになれたから茶番をやる必要はないだろうけど、普通に頼むにしてもちょっと敷居が高いよなこれ。
もちろんウォッカにもだ。あの研究所の時が大成功に終わっただけに音質が悪かったのが悔やまれるぜ…
もう1回研究所で同じ事やってくれっていっても難しいだろうな。同じ状況ってことはその時にはもう研究者が始末される段階だろう。
とにかく一刻も早く外での録音環境を整えないとマズいな。どうするか…
あっ、いいこと思いついた!何も難しく考える必要なかったんだ!
普通にコナンくんに頼めばいいじゃん!
今の俺は黒の組織の一員として敵対の立場というか、コナンに敵視されてはいるんだろうけれど、シェリーを保護してるって点では味方とは言えないけど消極的中立くらいの印象のはずだ。
そしてそんな俺からの頼みならコナンも決して無碍にはせず阿笠博士に頼んでくれるはずだ。
もしかしたら
全部希望的観測でしかないが比較的現実味のある予測だと我ながら思う。
ならば次の目的は決まった!
待ってろ江戸川コナン!
クククッ、(
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、心の準備はできたか?シェリー
せっかく和葉ちゃんやウォッカからうまいこと名セリフを引き出した俺だったが、持参していた録音機の音質的な問題で振り出しに戻ってしまった。
どうにかならないかと頭を捻った結果、かつて黒幕疑惑がものすごい勢いで出ていた阿笠博士に頼めばいいことを閃き、阿笠博士に頼むのをコナンくんに頼めばいいことを思いついた。
コナンくんの俺の印象も悪くないはずだしこれで超小型超高性能録音機がゲットできるって寸法だ。
あれだけ数々の便利アイテムでコナンを支援してきた阿笠博士ならば間違いなく理想の録音機を作ってくれるはず。
こちらが注文するのはとにかく音質だから、今まで作ってきたキック力増強シューズやら蝶ネクタイ型変声機に比べたら楽勝だろう。
ククッ、待ってろ阿笠博士!そして超超高音質の録音機をお願いします!
早速俺は阿笠博士の住む米花町2丁目へとやってきた。
場所は以前シェリーを迎えに来た時に工藤新一宅にお邪魔したからよく覚えている。
わざわざ帝丹小学校で待ち伏せしたり毛利探偵事務所で帰ってくるのを待つくらいなら、直接阿笠博士のところで待たせてもらえばいい。
それなら阿笠博士からコナンに直接連絡をしてもらえるだろうし、コナンだってダッシュで来てくれるはずだ。
阿笠博士は俺の事を知らないだろうからなんて説明しようかな…
知り合いだとちょっと弱いな。以前事件で知り合って近くに来たとかでいいか。
さっそく阿笠博士の家のインターホンを鳴らし出てくるのを待つ。
「はいはい、どなたかな?」
「こちら阿笠博士のご自宅ですよね?以前コナンくんにお世話になりまして、近くに寄ったもので少しお話できればと思い寄らせて頂きました。コナンくんからは阿笠博士の事を聞いていたので、是非一度阿笠博士とも話してみたかったのでこちらにお邪魔しました」
「ほお~なるほど、しんい…コナンくんのお知り合いでしたか。どうぞどうぞお上がりください。年寄りの一人暮らしなもので少々散らかっておりますが」
「いえいえ、コナンくんからは高名な発明家だと聞いております。是非いろいろとお話を聞かせてください。」
無事に阿笠博士の家に招いてもらえたので後はコナンが帰ってくるのを待つだけだな。
阿笠博士にコナンの連絡先を知らないから俺が来ていることを伝えてもらうのと、学校の帰りに直接こちらに来てもらえるように頼んだ。
だが、どうやら今日は学校が終わってから阿笠博士の家に少年探偵団が遊びに来る予定だったらしく、コナンだけでなく他の探偵団の子供たちも一緒にこちらに来るそうだ。
うーん、できればコナンだけ来てくれて話ができれば手っ取り早く終わったんだけどなぁ。
まぁ子供たちと出かけると言っても夕方過ぎくらいまでだし、他の子たちが帰ってからコナンと阿笠博士と話をすればいいか。
そう思い直して阿笠博士とお茶を飲みながら世間話に花を咲かせ時間が過ぎるのを待っていた。
なるほどー、話に聞いていた通りいろいろと便利なアイテムを作っておられるんですねー。
いやぁ、謙遜なさらずとも他にはない画期的なものばかりだと思いますよ。
私にはそこまでの閃きとか技術がないので羨ましいです。いや、ほんとに。
なるほど東都大学の工学部卒業なんですね。いえいえ十分にすごいと思いますよ。
仰るとおり確かに天才発明家ですね!あはは、変な発明品とはひどいことを言いますねその子たちも。
そんな話で盛り上がっていたところにパタパタと軽い足音が聞こえてきた。どうやらコナンwith少年探偵団が登場したようだ。
ククッ、コナンの「なんでお前がここにいるんだ…」って表情が楽しみだな。
「博士ー!遊びにきたぞー!」なんて声が聞こえてきて博士が出迎えに行き、子供たちを連れて部屋へと入ってきた。
「なっ!?」
「ククッ、やぁ、久しぶりだねコナンくん。あの時は助かったよ」
どうやらコナンくんへのドッキリは大成功のようだな。めっちゃ驚いてくれて俺も嬉しいよ。
少年探偵団の子供たちは俺の事を知らないから誰なの?ってなってるが、そのうちの1人が俺を思い出してくれたようだ。
「あっ!兄ちゃん前に仮面ヤイバーの映画のチケットくれた兄ちゃんだ!」
「え?そうなの?」
「この人が元太くんにボクたちの分までチケットくれたお兄さんだったんですね」
「そういう君は確かに私がチケットをあげた子だね。映画は楽しめたかい?」
「ああ!もらった日は光彦が用事があって行けなかったけど、次の日みんなで観に行ってめっちゃ面白かったぞ!」
「そうか、それなら良かったよ。お兄さんじゃあ、もうあんまり楽しめなくてね。君たちが楽しんでくれたならあげた甲斐もあるってものだ」
どうやらコナンの帰宅を遅らせるために打った布石は機能していなかったらしい。
ま、まぁ、こうやって少年探偵団にいい人認定されてるから無駄じゃなかったし、俺の考えていた通りに事が運んでいるから想定通りだ。
子供たちはお礼を言ったあとに、今日はカードゲームをするとかなんとか言いながら席についてワイワイとやっている。
どうしたコナンくん。君もしっかりと小学生ライフを満喫しなさい。
そういえばコナンって少年探偵団の時は
大人たちや他人に対しては徹底してるくせに、身近なお友達にはやらなかったら違和感しかないと思うんだがいいのか?
一切子供モードで話さないシェリーも隠れる気があるのかと問いたいが、君のはそれはそれで隠す気あるのかと思ってたんだ。
しかも大人でも犯人の前だと「江戸川コナン…探偵さ」とか決めセリフ言ってるけど正体バレたいのかバレたくないのかどっちなんだ。
しまった。子供たちがいて暇だからって無駄な事考えてしまった。
どうやら子供たちはゲームをしながら、突然いなくなったシェリーの事を心配しているようだ。
「哀ちゃん元気にしてるかな~?」等と聞こえてくる。大丈夫だよ。シェリーはめっちゃ元気にしてるよ。
なんでコナンはそれ聞いてこっち見るんだよ?
てかお前もっとゲームに集中しろ。さっきからこっち見すぎだぞ。
心配しなくても阿笠博士とのんびり話しながら帰るの待つから今はお友達と遊んでろ。
おや?ゲームが一段落したからか、光彦くんから杯戸町のフランス料理店で殺人事件があったという話が飛び出した。
すげーな少年探偵団。カードゲームの合間の話にその話題チョイスはすげーとしか言えねぇよ…
なんでもエスカルゴを扱うお店で女性オーナーが殺されたらしい。
コナンも毛利探偵から話を聞いていたとかで、更に詳細な情報を話していった。
店で仮眠していたオーナーが誰も居ないと勘違いした空き巣に見つかって殺されたらしい。
犯人の顔を見てしまったのが運の尽きだったってのが警察の見解なんだそうだ。
だからお前たち話題がおかしいって気づけ!
顔見られて運の尽きだったら、俺の顔見たコナンなんてとっくに死んでるわ!
あ、俺は別にコナンの前で犯罪してないから関係ないか。
しかし歩美ちゃんは何やら様子がおかしいがみんなは気づかないのか?
これも俺だけしか気づかない違和感みたいなやつなのか?
最後は阿笠博士が「子供たちがそんな殺人事件の話なんてするもんじゃない」って宥めてたけど、阿笠博士もっと早く言ってあげるべきだと俺は思うぞ。
その後しばらくしてお開きとなり、少年探偵団の子供たちは家に帰っていった。
ここに残っているのは俺と阿笠博士とコナンだけだ。
しかし随分と長居してしまったな。阿笠博士には申し訳ないことをした。
せめて今からする話し合いだけは早く終わらせるように努力しよう。
あ、後いくつか聞いておきたかったんだ。
「ククッ、お友達とのゲームは楽しかったかい?コナンくん」
「くっ、一体何の用で博士の家にいやがったんだ。てめーに要求された
「あぁ、確かに受け取って渡してあるとも。今日は別件で少し話があってね。その話には毛利探偵事務所よりもこちらのほうが都合がいいからここで待たせてもらったんだよ」
「…おっちゃんの所よりも博士の家のほうが都合がいい?どういうことだ」
「その前に2つほど確認なんだが。まず1つ目。今君の家に誰か住んでいるかい?」
「は?
よし、今はまだ沖矢昴、いや赤井秀一は工藤邸には住んでいないようだな。
この世界が時系列まで同じとは限らないし、俺が存在していて、更にシェリーを連れ出した事からも変化が起きている可能性は高い。
一応そのあたりは注意しながら立ち回ってはいるが、どこまでその波紋が広がっているのかなんて想像もできないしな。
いっその事工藤邸に盗聴器でも仕掛けておくか?
「そうか、なるほど理解した。それでは2つ目だ。君、まさかと思うが俺たちの事を誰かに話したりしていないよな?」
「!?」
「おいコナンくん。一体どういうことじゃ?」
おいコナン。お前誰に話したんだ。もう答えなくてもその顔見たら答えわかっちゃったぞ…
てか君犯人を追い詰める時は自信満々で言葉巧みだけど、逆に追い詰められるのは慣れてないからか随分と顔に出てるぞ。
まったく…俺を見習え。どんな時でも平常心で余裕を持たないと黒の組織ではやっていけないんだからな。
ただの質問にそんな顔してたら即刻裏切り者疑いの烙印押されちゃうぞ?
他のコードネームのやつらがスルーするのか疑わしいと思うのかはわからんが、ジンの場合は確実に怪しむし裏切り者疑いをかけるはずだ。
そこまでならまだいい。最悪は疑いで殺しにかかるのがジンだからな。気をつけろよ?
あと阿笠博士がこの流れを理解できずに戸惑っているな。
だがあなたへの俺からのお願い事はもうすぐコナンくん経由で届きますのでもうちょっと待っててください。
「…他の誰にも言ってない。ただ…阿笠博士には伝えた。元々灰原を匿ってもらってたからな」
「なるほど。つまりここにいる人間以外は誰も知らないということだな?」
「あぁ、それは間違いねー」
「ククッ、ならば良しとしようじゃないか。阿笠博士、俺がシェリーを
「なんじゃと!?お前さんが哀くんをか!?」
あれ?コナンからシェリーを連れて行ったって聞いてたんじゃないのか?
あー、連れて行った事は聞いてるけど人相とかは聞いてなかったってことかな。
まぁこれなら俺の頼みも聞いてもらいやすくなったって事だ。
実は超小型で超高性能で超高音質な録音機が欲しくてさ。
阿笠博士って発明得意でしょ?さっきも言ってたもんね。
だから俺にもそれを作ってほしいんだ。なんで悩んでるの?
ほらコナンくん、君からもしっかりお願いしておくれ。
うん?博士は変な発明品しか作らないからそんなの無理?
御冗談を。君が使っている便利グッズを俺が知らないとでも?
あぁ、わかってくれたようで何よりだよ。
できればネクタイピンとかそういう感じのほうが好ましいかな?
あと周囲の雑音はとにかく除去するようにお願いね。
とにかく音質重視だからそこを徹底してくれたら多少は目を瞑るよ。
わかってると思うけど
それじゃあ頼んだよ。できるまでは米花町にいるからなるべく早いほうがいいな。
よし!これで阿笠博士から録音機を作ってもらうことができる。
ありがとうコナンくん。君からの説得が功を奏したようだよ。
俺がコナンくんを説得し、コナンくんが阿笠博士を説得するという見事な連携プレーだった。
後は完成するまでの間を米花町で心待ちにして過ごすだけだ。
あーそうだ。効果があるかどうかはわからないが、一応これ言っとくか。
「素直に俺の要望を聞いてくれて嬉しいよ。ところで、君はシェリーから組織の事は概要だけでも教えてもらっているのかい?」
「(何が素直にだ!灰原を連れ去った上にオレの周り全部人質にしておいてよく言いやがる)…あぁ、てめーらの組織が世界中に手を伸ばしている犯罪者組織だってのは知ってるぜ」
「その通りだ。細かい事はシェリーも知らないだろうから、少しだけ教えてあげよう。今、君が言った通り俺たちは世界中のあらゆるところまでその手を伸ばしている。そしてその手は当然ながら警察なども例外ではない」
「な…なんだって!?」
「ククッ、なぜ不思議に思うんだい?我々を捕まえようとしている機関に組織の手を忍ばせるのは至極普通の事ではないかい?FBIやCIA、MI6など…あぁ、もちろん日本の警察組織だってそうなんだよ。君がいたずらに動き回ってその正体が露見してしまえば、せっかく俺が君と君の周りを見なかったことにしてあげている事が無駄になってしまうかもしれないね」
「…1つ教えてくれ。なんでそれをオレにわざわざ伝えたんだ?」
「そうだな…俺の依頼で阿笠博士に録音機を作成してもらうだろう?だからそのお礼代わりの情報料みたいなものだと思ってくれていい」
まぁ実際はただの「裏切ったな、
だが、これでコナンは例え赤井秀一や安室透なんかがFBIや公安だからといっても組織側のスパイなんじゃないかって多少は疑いを持つはずだ。
そしてあいつらの疑いは簡単に晴れはしない。なにせ組織のコードネームを持っているのは間違いないのだからな…
ククッ、そしてこれでシェリーと一緒に和葉ちゃんに会いに行っても問題がなくなった。
シェリーだってたまには外の空気を吸って気分転換したい時があるはずだ。
少年探偵団にいたときだってめっちゃ外出してたんだから、俺と一緒に大阪に行く事だってお願いしたら一緒に行ってくれるだろう。
あっ、ウォッカのサングラスをもらってきてシェリーに持たせて「…絆だから」をやってもらうか!
俺がウォッカにサングラスをあげて、今使ってるやつを回収するか…
いや、うまいこと立ち回ってウォッカのサングラスがヒビが入って使えなくなる状況に持っていくほうが望ましいな。
どうやったらそんな状況を作れるのか皆目見当もつかないがなるようになるだろう。
数日後に阿笠博士の元へと行き、録音機の進捗を確かめてみたがまだ完成していなかった。
まぁかなりこだわりの一品になるはずだから多少時間がかかっても仕方ないな。
それに阿笠博士だって自称天才の発明家だ。中途半端な出来栄えで妥協するはずもない。
進捗の確認が終わり、まだしばらく米花町にいることになったので、ホテルに籠もりながらなんとかシェリーを連れ出す合理的な言い訳を考えておく事にした。
さすがに警察関係者の身内に会いに行くってのはマズいだろうし、観光しに行くなんて言ったら呆れられるのが目に見えてる。
いや、もう普通に「組織の人間に見られる可能性が少ないし、シェリーもちょっとは人と関わっておいたほうがいい」とかなんとか言ってがんばってみるしかないか。
後はお願いすればきっとわかってくれるだろ。
もはや何の解決にもなっていない気もする案で納得した俺は、更に数日後再度阿笠博士の家に行き念願の録音機を手に入れた!
どうやら要望通りネクタイピン型の録音機で、とにかく音質とノイズキャンセル機能に特化した仕上がりになっているらしい。
うむ、パーフェクトだ阿笠博士!
本当は今ここで録音機を試すとかの名目で阿笠博士にお願いして色々と言ってもらいたいものだが、どう見ても目の前の阿笠博士は警戒心バリバリすぎていい結果にはならなさそうだ。
…コナンのやつ俺のことなんて言ったんだ。
だがこれならば俺のこれからの仕事に対する意欲も倍増するってものだ。
今回の米花町はいろいろと収穫があってとても有意義だったよ。
村上雅也さんに会えなかったのと石川春香ちゃんが2歳なのは残念だったけど、それでもまだ石川茂子さんに会いに行く口実は既に作ってある。
そうか!シェリーに勝手に服持ち出したのがバレたら旅行に行くからおめかしするためにクリーニングに出したって言えばいいのか!
それなら怒られないで済むし言い訳としても完璧だ。
それじゃあ後は隠れ家に戻ってタイミングよくシェリーに提案してみるとしようかな。
クククッ、(外でも録音される事になる)心の準備はできたか?シェリー
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、そう簡単にはいかないなシェリー
「ただいまシェリー。遅くなってすまなかったな」
「おかえりなさい。随分と用事に時間がかかったのね」
「あぁ、ちょっと頼んでいた物が手に入るまでに時間がかかってね。そっちは…いつも通りだったようだな」
「ええ、特に何もなくいつも通りよ」
組織の指示があって海外に行ったりするよりは短期間ではあるが、少しばかり隠れ家を留守にしてしまっていたので心配していたが、いつも通りだったようだ。
あっ!シェリーからの伝言をコナンに伝えるの忘れてた。
…まぁいいか。恐らくだがそのうちまた会うことになるだろう。
シェリーが近くにいない以上コナンが工藤新一だとバレる可能性も高くはないはずだ。
まぁコナンが組織のコードネーム持ちなんかの目の前で堂々と推理を披露したりすれば話は変わってくるんだが。
一応警察なんかにもスパイがいるって言っておいたから立ち回りなんかはさすがに気をつけるだろう。と思いたい。
それに今回録音機を作ってもらう際に、コナンから俺たちの事は阿笠博士にしか伝えていないことは聞いているので、これ以上の情報の流出がなければシェリーの事を知られる可能性はほぼないに等しい。
後はシェリーの様子を見計らって大阪に遊びに行こうって言うだけだ。
慎重に言葉を選べ俺!ここが分水嶺なんだ!
なにせ和葉ちゃんに会いに行って組織に見つからず、事件にも巻きこまれず、何も問題がなかったら次もまた誘いやすくなる。
だが何かしら問題が起こってしまったらシェリーは危険を回避するために隠れ家に引きこもってしまうかもしれない。
そうなったらもう直接の掛け合いを見るためには誘拐してきたりするしかなくなる。
ねぇシェリー。この隠れ家に来てから買い物くらいしか出かけてないじゃん?
どうせだからたまには遠出とかしてみない?まぁ旅行とかしてみない?
あぁ、組織のほうは今国外で活動してるから大丈夫だよ。
今すぐってわけじゃないんだけど、たまにはシェリーも遊びに行く事も必要だと思うんだ。
場所はもう決めてあるよ!この前任務で大阪行ったら食べ物がいろいろあって美味しかったから、ぜひシェリーにも食べさせたいなって思ってたんだよ。
行くよね?あーよかった。こっちで全部準備するから安心してね!
「ククッ、シェリーの了承も得たし後は日時の設定だけだな」
「どうして突然旅行なんて言い出したのか知らないけど、あまり籠もりっきりも良くないしね。米花町にいた時だって出かけてたんだし、たまにはいいんじゃないかしら」
「そんなに頻繁に旅行したりしないさ。ただ、今は日本が若干手薄になっているから丁度いいと思ってね」
「そういう情報が手に入るっていうのがあなたの強みよね。そういうことなら私から言うことはないわ」
ククッ、作戦は見事に成功だ。実際にウォッカに流した情報から組織の警戒は欧米へと向いている。
決して日本がノーマークって意味ではないが、ピンポイントで大阪で鉢合わせする可能性は皆無と言っていいだろう。
これは決してシェリーを連れ出すためにウォッカに偽情報を流したわけではない。
実際に手に入れた情報で組織の目が逸れたのをシェリーお出かけの好機とみただけだ。
つまり組織は実際に襲撃などに備えることができ、シェリーは組織の目を警戒せずに旅行ができる。
win-winの関係ってやつだな。更に和葉ちゃんと会って目的が達成できれば俺も勝者だ。
win-win-winってもう最高だな。コナンでは決して導き出すことのできない結果だ。
そう思っていた時期がありました…
ジンから呼ばれ襲撃者の対策に俺も参加しないといけなくなった…
どうやら噂程度だぞって言ってた内容を調査して疑わしい組織をいくつかピックアップしたらしい。
そして一番怪しいところがもうすぐ幹部を集めて会合を開くらしいので、俺にそこを確認しろって事だった。
簡単に言えば「お前が仕入れてきた情報なんだからお前も当然働け」って事だったよ。
こればっかりは仕方ない。割り切ってお仕事がんばるとしよう。
とはいえ、今回は襲撃を計画しているかもっていう程度なので、実際に襲ってきた襲撃者と争ったりこちらから襲撃を仕掛けるといった内容ではない。
あくまでもそういう噂がある組織を監視する程度の任務だ。
そして俺は単独で監視するのかと思ってたんだが、キャンティとコルンも一緒に行動することになるらしい。
と言っても2人とも狙撃手なのでそれぞれ別の場所に配置に着くことになるんだが。
この2人の仕事はあくまでも襲撃情報に確信が持てた段階だ。
ただ、疑わしいのに放っておくということをしないのは、ジンの判断なのか組織の判断なのかわからん。
ククッ、まさかここで
これはシェリーを連れて和葉ちゃんに会いに行けない俺に対する別のご褒美か?
コルンは比較的無口なほうだから難しいが、キャンティならばいろいろと話せそうだ。
お互いジンの部下でもあるし、接点はほとんどないが嫌われているってこともないだろうしな。
「アンタがジンの言ってた襲撃情報を持ってきた張本人かい?」
「あぁ、一応再度言っておくが襲撃者を飼っているという情報だ。確実に襲撃を計画しているとはまだ言えない段階だな」
「そんな事はどうだっていいさ。敵対するってんならあたいが撃ち抜いてわからせてやるよ」
「どちらにしても傘下でも協力者でもないんだ。殺るなら好きにしろ。ただし、その時はちゃんと殺った事を自分でジンに言えよ」
「ちっ、いけ好かない男だねアンタ」
えっ?何も確認せずに狙撃して俺に後始末させるつもりだったの?
キャンティよ、いくらなんでもそれはないだろ。
敵対って言ったって現在黒の組織と抗争してるならともかく、火種をこっちから積極的に撒きに行ってどうするんだ。
そんな事をするような犯罪組織だったらとっくに世界中の警察組織に潰されてるだろうに。
まぁきっとキャンティなりの仕事に対する意欲が高い事をアピールした冗談だと解釈しておこう。お仕事に積極的なのは良い事だもんね。
今回の敵対組織はこちらと積極的に争いに来てるわけじゃない。ただ水面下で不穏な動きがあることを事前に察知することができたからその確認だ。
そして何もなければキャンティと話せた!で終わる話だし、実際に敵対行動を取る確証が得られたのならばその計画を頓挫させればいい。
下手に争いになって労力を割くよりも、反抗的な考えを持つトップや幹部に思い直してもらい、傘下に入らせることができれば最良の結果とすることができる。
組織としては無駄な抗争を避けた上に敵対組織を改心させ傘下に収める事ができ、キャンティやコルンに対しては敵対組織の幹部たちに逆らわないほうがいいよーって理解してもらうために狙撃の機会を与えることができる。
俺はキャンティやコルンと顔つなぎをすることができたので、後はがんばって好感度を上げていく作業に移れる。
本当は潜入任務として誰かに潜り込んでほしかったんだが、そこまで根回しする時間もなかったからこうなったんだろう。
幹部たちが今日の夜から集まって会合を開くことは既にわかっているので、後は集まって俺たちに関係のない話をして終わるのか、襲撃を仄めかす言質を取ることができるのかはその時次第だ。
「一応盗聴の用意はしてある。後は目的の人物たちが集まってくるのを待つだけだ。それまではコーヒーでも飲んで待っているとしよう」
「……」
「…アンタ、
「別に特別扱いはされていないと思うが?ただ使い勝手が良いの間違いだろう」
「どうだか。まぁあたいらの邪魔をしなけりゃいいし、他のヤツらよりかはマシだと思っておいてやるよ」
「俺は今のところ他のコードネーム持ちと関わったことがない。ウォッカ以外だとキャンティとコルンだけだ。だから他のヤツらってのがどんなやつなのかわからんから何とも言えんな」
「ハッ、どいつもこいつも一癖も二癖もあるようなヤツらばかりさ」
この反応だけじゃ既にベルモットを嫌っているのかどうか判断がつかないな。
でも下手に名前を出して逆撫でするわけにもいかないし、とりあえず余計な事は言わないほうがいいだろう。
お、標的たちが集まりだしたな。キャンティとコルンもそれぞれの待機場所へと戻っていったので俺も同じく移動し盗聴器から聞こえてくる会話を確認していく。
あーなるほど。最近勢力拡大が難しくなってきてるんだね。
でも他のところと手を組んでまでっていう人と、利害が一致するならっていう人で意見がまとまってない感じかな?
これなら意固地になってる人をどうにかすれば傘下に収めるのはそんなに難しくなさそうだなぁ。
今のところ襲撃だとかそういう話も出てこないし、一部の幹部が独断で空回りしちゃってる感じっぽいな。
うちの手の者がどうこう言ってるってことはそういうことなんだろう。
これだけじゃ言質も何もあったもんじゃないから確証に至れないな。
お、もう今回の話し合いはお終いみたいだ。そろそろ解散かな?
会合場所から出てきた顔を見るに、ガンガンいこうぜって感じの幹部は2人いた。
こいつらがいなければ残りは中立と穏健派なんだろう。
ひとまず待機していたキャンティとコルンと合流し、まずはジンへ今回の監視の報告を入れる。
「……俺だ」
「報告だ。今日の会合では襲撃の話は出なかった。おそらく総意じゃない。そしてどうやらこの組織はタカ派の2名を抑えれば後は簡単に懐柔できそうだ。ウォッカか誰か潜入させてから来月の会合の際にでも目の前で始末してやれば楽に傘下に収めることができると判断した」
「…わかった。そっちには俺から指示を出しておく。報告はそれだけか」
「あぁ、あと標的の2人はキャンティとコルンにやらせてやってくれ。今日は餌にありつけなくてな」
「そういうことか。わかった」
これで任務完了だ。キャンティとコルンに出番は用意してやれなかったけど、ちゃんとジンに来月には出番あげてねって伝えておいたし、まぁいい感じの結末になったんじゃないだろうか。
後は日本に戻ったらいつ旅行しようかなって考えてたんだが、キャンティが何か言いたそうにこっちを見ているな。何か用なのか?
「なんでアタイらを推薦したんだい?アンタ一体何を考えてる?」
「うん?今日何もせず待ってただけで終わったからな。この組織を傘下に収めるための標的も知れたし、後はキャンティとコルン、そして潜入する懐柔役の仕事だからさ」
「ちっ、まぁいい。このアタイがしっかりと殺ってやるさ」
「おそらくまた会うこともあるだろう。その時はその腕をしっかりと見せてもらうとするさ。コルンもな」
「…あぁ」
「次はその目にしかと見せてやるよ」
俺はキャンティ・コルンとも別れ、日本に戻るために空港へと向かいながらも今回の事を考えていた。
確かに任務としてはまぁ成功したと言ってもいいんだが、俺の目的としては成功とは言い難い。
いや組織としてはプラスになったし悪い印象ではなかったと思うんだが、キャンティの好感度で考えるとマイナスではないんだろうが、どれくらいプラスになったのか全然わからん。
あのキャンティに女神様になってもらうためには、一体どれほどの好感度を稼げばいいんだ?
先が長すぎて気が遠くなりそうだな…まぁ諦めるなんて選択肢はないんだが。
まぁ今回もまた次に繋がる第一歩だったと考えておこう。
この任務自体は想定外の出来事ではあったが、俺にとっても決して悪いものではなかった。
自分から下手に動くことなくウォッカとキャンティやコルンと会えたのは僥倖だ。
まぁここまではいいとして、もしベルモットやバーボン、スコッチにキールなんかと会う事になるのであれば気をつけないとな。
会わないという事もできないことはないだろうが、それはもったいないし少し言葉に気をつければ大丈夫だろう。
とにかく今はシェリーと大阪に遊びに行くほうを優先して…
あ!クリーニング取りに行くの忘れてた!
すぐに隠れ家に戻るんじゃなくて、1回米花町に寄ってクリーニング受け取ってからだ。
危ない危ない…数日以内に取りに来ますって言っといて遅れるわけにはいかない。
1回下がった好感度を上げるのは大変だからな。
いくらこっちがお客さんで遅れた理由が仕事だったって言っても、俺に別の目的がある以上はいい印象を持ってもらわないと…
クククッ、(女神様の好感度を上げるのは)そう簡単にはいかないなシェリー
俺たちの冒険はこれからだ!
(ストックなくなりました)
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、まだ続くんだぜシェリー
先日シェリーとの
出していたクリーニングを取りに行くのを思い出した俺は、急いで米花町にあるサンサンクリーニングへと向かっていた。
ちゃんと石川茂子さんがいることを確認してから店内へと入り、少しばかり遅れた事を謝りながらクリーニングされた衣服を受け取って世間話なんかをして
いやー遅れちゃってごめんなさいね。ちょっとばっかりお仕事が入っちゃって出張してたもんで…
これくらい全然問題ない?それは良かった。あ、これお土産なんですけど是非貰ってください。
珍しい欧米のお菓子なんですよ。Oh米花!なんちゃって…面白くないですよねゴメンナサイ。
茂子さんと春香ちゃんのお口に合うかわかりませんけど召し上がってくださいな。
そういえば春香ちゃんは元気ですか?そうですかそれはそれは良い事ですねー。
「今度米花町に来る時にはぜひ
「ええ。うちの子もちょうど歩き回るようになったので、きっとお姉ちゃんができて喜ぶと思います」
「それはそれは元気でいいですね。まだ会った事はありませんが、将来は活発な子になりそうで茂子さんもとても楽しみでしょうね。私も
「ふふ、今はとても手がかかる子ですけどね」
石川茂子さんとの会話を楽しんだ俺は、そのまま米花町を出てシェリーが待つ隠れ家へと戻る。
ちゃんとクリーニング出した言い訳もあるし、大阪での様々なシミュレーションも完璧だ。
「ククッ、お待たせシェリー。任務も終わったから観光旅行に行こうじゃないか」
「あら、おかえりなさい。あなた帰ってきたばかりじゃないの。少しくらいゆっくりしたら?」
「…そういえばそうだな。
その晩に和葉ちゃんへと「前回案内してもらった事を姪っ子ちゃんに話したらすっごい羨ましがられて、俺も大きな仕事は終わってしばらく休みだから連れていく事になったんだけど、良かったら和葉ちゃんまた案内してくれないかな?」という内容のメールを送り「いつ来てもらってもええですよ!」という返事をもらっている。
人見知りな女の子だからちょっと男の人とか苦手なんだよねーってのもちゃんと伝えてあるから、これならばきっと西の名探偵を連れてくることはないだろう。
なんで和葉ちゃんの連絡先を知っているのかって?そりゃ前回
数日後、シェリーを連れて遂に大阪へとやってきた!
ちなみにちゃんとクリーニングした服を着てもらっている。
渡した時に「そんなに楽しみだったの?」と呆れられたが楽しみなものは仕方ない。
「そうそうシェリー。実は案内を頼んだ子がいるんだが、一応周りに気をつけるために人見知りだって紹介するけど構わないかい?」
「別にいいわよ。元々そんなお喋りじゃないわ」
「ククッ、それもそうだね」
そうして待ち合わせの場所へと向かい、俺は和葉ちゃんがやってくるのを今か今かと待ちわびていた。
まぁ待ち合わせ時間の20分前だからまだ早いんだが…と思ったら和葉ちゃんもやってきた。
どうやら早めに来て待っててくれるつもりだったようだが、俺たちのほうが更に早く着いてしまったらしい。
「やぁ和葉ちゃん、少しばかり久しぶりだね」
「ええ、お兄さんもお元気そうですね。その子がメールに書いとった姪っ子ちゃんですか?」
「そうなんだ、紹介するね、この子は……ファーストと呼んであげて」
「ファースト!?あだ名かなんかですか?」
「あー違う違う。ファー(↑)ストじゃなくてファー(↓)ストでよろしく。さんはい」
「ファーストちゃん?」
「いや、ちゃんはいらないよ。これはあれだよ、ミドルネームなんだ」
(ちょっと?ミドルネームって何の事かしら?)
(いや、この子は工藤新一とも関わりのある子なんだ。何がきっかけで名前を出されるかもしれないだろ?だからシェリーも灰原哀も教えたくなかったんだよ)
(だからってなんでファーストなのよ)
(え、えーと、下手に固有名詞出すよりもこのほうが他人が聞いてもわからないだろうなーって思ったんだけど…)
(…ふーん。まぁ聞いても詳しくは教えてくれないだろうし、あなたの事だからどうせくだらない事なんでしょ)
和葉ちゃんのほうは特に疑ったりはしてないみたいだな。最初は野球で言う時の発音で「ファースト」だったが、ちゃんと直してくれた。
しかし危なかった。和葉ちゃんに対する言い訳は用意してたけど、シェリーに対する言い訳を準備するの忘れてた。
おかげでシェリーからジト目を頂いてしまった。決してご褒美ではない。ご褒美はこれからなんだから。
しかし、見透かされるように「ふーん」とか言われるとドキッとするのは何でなんだろうな?考えても答えは出ないから後にしよう。
「ついでに和葉ちゃん、申し訳ないんだけどファーストはまだちょっと方言の聞き取りが難しくてね。できれば標準語のイントネーションで話してくれると(俺が)嬉しいんだけど…」
「うっ、ちょっと自信ないけどがんばってみますね」
「あと、この子はちょっと人見知りなところがあるから口数が少ないかもだけど許してあげてね」
「ふふ、それくらいでいちいち怒ったりしませんよ。それじゃ行こ、ファースト。おいしいところいっぱい案内してあげるね」
キタ!!面倒見のいい優しいアスカと無口なレイの再現キタ!!!
手を繋いで一緒に歩いていく様子はまるで姉妹のようだ。俺も入りたいけど我慢だ。レイとアスカの会話に
和葉ちゃんが俺に案内してくれた時のように、「あのお店が…」「このお店はな…」と教えてくれたり、教えてくれたお店に入ってみたりと町を周っていった。
「そういえばファーストは大阪に来るんは初めてなん…なの?」
「ええ、そうよ」
「そっか、じゃあいっぱい美味しいもの食べて帰ってな…ね?」
「…別に無理しなくてもいいのよ?あの人の言う事は適当に流しておく事をお勧めするわ」
ひどいなシェリー。俺はいつでも真剣そのものだぞ?
しかしこうして平和な町を散策するのも悪くないな。組織絡みの事件なんかは今日は起こらないし、とても平穏な1日って感じだ。
ぐるっと町を一回りしてから和葉ちゃんのお勧めのお店でお昼ごはんを3人で食べて、これからどこに行こうかなんて話をしながら休憩していた時に思わぬ人物と遭遇してしまった。
「お?和葉やんけ。こんなとこで何しとんねん?」
「平次?アンタこそなんでこんなとこにおんねん」
「俺はアレや。家で寝とくもの何やから、ちょっと買い物がてら飯食いに出とったんや」
「ふーん。まぁええわ。アタシはこの子らの観光の案内してるから、邪魔せんとってな」
「ほー、観光か。それやったら俺も一緒に行ったるわ」
まさかの服部平次のご登場だ。…こいつも何かセンサー付いてるのか?なんで今会うんだよ。
しかもなんでその会話の流れで合流することになるんだ?重ねて言うが今日は事件なんて起こらないんだぞ?
しかし服部平次か…まぁいい。自分のネビュラチェーンで首を締めに来たようだな。
ククッ、その意気や良し!俺がその心意気をしっかりと
その前にちゃんと挨拶しとかないとね。
やぁ、君が和葉ちゃんの言っていた幼馴染の服部平次くんで合っているかな?
俺は前に関東から仕事でこっちに来てね。ちょっとした縁で和葉ちゃんと知り合って大阪を案内してもらった事があったんだ。
それで今日は姪っ子も連れて、また観光の案内をお願いしたんだよ。
え?工藤新一を知ってるかって?工藤新一くん
へー、最近とんと噂を聞かなくなったからわざわざ会いに行こうとしてるの?でもどこに?
あー、毛利小五郎に会いに行くんだね。確かに入れ替わるように有名になってるもんね。
それならお土産は大阪名物とかがいいと思うよ。あそこ君たちと同い年くらいの女の子と小学生の男の子がいるからね。
なんで知ってるのかって、そりゃ有名だもん。みんな知ってるよ?
ククッ、これでパイカルフラグが立たなくなったはずだ。
別に知られて困るわけじゃないんだけど、一時的にでも元に戻れるってわかって下手に組織の事を調べようとされても面倒なだけだ。
ちゃんと俺がタイミングを見計らってシェリーに伝えるからコナンくんは少し我慢してなさい。
そのまま合流した服部平次と軽く世間話をしてから町を案内してもらい、ちょっと休憩がてらということでゲームセンターで遊んでいこうということになった。
なぜかそこで服部くんと和葉ちゃんがスコアを競うようになってしまい、2人ともヒートアップしていろんなゲームで戦っているようだ。
お前ら観光案内の事忘れてるだろ…これがもしシェリーじゃなくて年相応の女の子だったら案内失格だぞ。
「あの2人はまったく…シェリーは楽しんでいるかい?」
「ええ、それなりには気分転換させてもらってるわね」
「ククッ、それならよかったよ。ついでにお土産でも買って帰ろうか」
「2人で大阪に来てるのにお土産買っても私たちが食べる事になるわよ?」
「それもそうだな…食べたくなったらまた来ればいいだけか」
シェリーとそんな話をしている間に、どうやらゲームで戦っていた2人はいい勝負をしているらしい。
なかなか決着がつかないので最後に大声を出して点数を競うゲームで勝敗を決めることにしたようだ。
これなら…アレいけるか?
和葉「平次のアホーーーーーーーー!!!!」
先に叫ぶのは和葉ちゃん、マイクに向かって叫んだのがそれなのか。
和葉ちゃんの高い声も相まっていい点数出てるけど、君確か幼馴染の事で俺に相談してたよね?
俺がしたアドバイスとか全部頭から抜けてない?もしかしてあれって雑談程度の認識だったの?
…まぁいい。とりあえずせっかくの機会だしこっちを優先だ。
ククッ、服部くん。ちょっといいかな?次は君の番?あぁ、そんなに時間はかからないよ。
実は外国にも大声を出すイベントがあるのは知っているかい?
そうそう、このゲームと同じようなものだね。今思い出したんだが、実はある国ではそれで町興しをしようとしたところがあってね。
しかもその時に町の特産品の人参の名前を叫ばせることで話題にさせようとしたことがあったんだ。
そこで人参、つまりキャロットと叫ぶはずだったんだが、緊張してしまったのか………と叫んだ人がいてね。
しかもその人がその日一番の大声だったから、盛り上がってそれ以降はみんなそう叫ぶようになったという話があるんだよ。
何が言いたいのかと言うと、つまり君もそれを挑戦してみたらどうかと思ってね。
なんで俺がって?ククッ、和葉ちゃんに負けたくないんだろう?ものは試しだと思わないかい?
もしそれで君が負けても俺が和葉ちゃんを嗜めておくから心配いらないよ。
「なんで俺がそんなん付き合わなアカンのかわからんけどまぁええ。せっかく大阪に観光来てくれたヤツの言う事くらい聞いたるわ」
「ククッ、君の魂の叫びを期待しているよ」
「ほないくで………カカロットォォォォ!」
「もっと感情を込めて!」
「カカロットォォォ!!!」
「そのまま、よくも俺のブルマを!って言ってみて!」
「よくも……アホ言うな!そんな事言えるか!」
…残念。そういえばブルマって名前だと知らなかったら変態だなコレ。
危うく服部くんの好感度を下げてしまうところだった。ごめんよ服部くん。
そしてそれを提案した俺の好感度も下がるところだったよ。気をつけろよ俺。
大声勝負は和葉ちゃん勝利のようだ。やはり野菜王子がNo1になるにはまだまだ時間がかかるようだな。
さて、和葉ちゃんが調子に乗って服部くんに勝ち誇る前に話しかけておこう。それが俺から
ねぇ和葉ちゃん、前に君が相談してくれた幼馴染って彼の事なんでしょ?
言わなくてもわかってるよ。和葉ちゃん、男の子はあれくらいの年はまだ気恥ずかしさとかあってね。
女の子のほうがリードしてあげるくらいが丁度いいんだよ?
ここに遊園地のチケットが2枚あるから2人で行っておいでよ。
一緒にゲーセンとかで遊ぶのもいいけど、やっぱりデートとかで雰囲気作りとかって大事だと思わない?え?2人だと恥ずかしい?
なんで君は俺の前だと可愛い女の子になれるのに、彼の前だとそんなに意地張っちゃうんだい?
…じゃあこうしよう。俺たち明日もこっちにいるから、その時に一緒に行こうよ。約束だよ?
それじゃ白熱して勝負してたからもういい時間だし、気を取り直して夕ご飯食べに行こうか。
あぁ、気にしなくていいよ。君たちの仲の良さはとても伝わってきたからね。
ちょっと休憩のつもりのゲームセンターで(主に2人が)盛り上がってしまったので、4人で最後にまた別の美味しいところを案内してもらって夕食を取る。
思わぬ
今日はもう遅くなってしまったが、まだまだお楽しみは続くのさ!
そう、服部平次が特殊召喚されたならば丁度いい!つまり、まだ俺の
和葉ちゃん、服部くん、俺たち明日も大阪で遊ぶつもりなんだけどさ。
本当はホテルにでも泊まろうと思ってたんだけど、良かったら服部くんの家に泊めてくれないかい?
お店で美味しいところに行くのもいいけど、その地域の家庭料理とかも食べてみたくてね。
ついでに和葉ちゃんも一緒に泊まってお泊り会しようよ。他所では聞けない地元の話とか聞いてみたくてさ。
服部くんのお父さんが出張でお母さんしかいない?それはこうつご…いやなんでもないよ?
ほらほら和葉ちゃんも幼馴染なんだから問題ないでしょ?ついでに明日遊園地も行こうよ。
それじゃあ服部くんの家に行こうか。いやー楽しみだなー!
「シェリー、そんなわけで彼に泊めてもらうことにしたが構わないかい?」
「ええ、けれど随分と愉快な2人みたいね。…それであの2人があなたの今回の目的だったわけ?」
「目的というほどの事はないさ。今回のメインはシェリーとの旅行を楽しむ事だからな」
「ふーん、いつも何かを企んでるようにしか見えないのだけれどね」
クククッ、(今回の大阪旅行は)まだ続くんだぜシェリー
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、お前の番なんだぜシェリー
シェリーと一緒に大阪観光に行き和葉ちゃんに案内してもらっていたところに、まさかの服部平次登場によって4人で行動していた俺たち。
だがそれならばいい機会だと思いつき、服部平次の家に泊めてもらう事に成功した。
このチャンスを逃すと次はいつになるかわからないから、どうしても今回の偶然を活かしてやりたかったんだ。
ククッ、さぁ蛞蝓姫よ!俺の前で優雅に参上してくれ!
そのまま4人で服部家へと移動していく。どうやらゲーセンでの失態に気付いた和葉ちゃんはシェリーにいろいろと話しかけてくれている。そうだそれを見たかったんだ。
しばらくして着いたけど家デケーな。さすが大阪府警本部長といったところか?
玄関先で1人の女性が俺たちを出迎えてくれた。
「平次から突然連絡があって驚きましたが、ようこそおいでくださいました。私は平次の母の静華でございます。あんまり大層なおもてなしはできませんが、ゆっくりしていってくださいね」
「こちらこそ突然押しかけてしまって申し訳ありません。せっかくの大阪旅行なので、家庭料理の味も食べてみたいと平次くんに少しわがままを言ってしまいまして…」
「いえいえ、今日は主人も出張でおりませんから、お客さんがいてくれたほうが賑やかでいいですわ。ささ、中にお入りくださいね」
「ありがとうございます。あぁ、この子が一緒に来た姪っ子でして、少し人見知りのため口数は少ない子ですが許してあげてくださいね」
服部くんの母・静華さんが出迎えてくれた。シェリーがいることで子供連れに見える上に愛息子も一緒にいるという警戒させない要素てんこ盛りだ。
俺1人でも静華さんと会うチャンスはいくらでも作れるが、きっかけが作為的になってしまうためこの機会があって助かったぜ。
ちなみに最初の広田雅美ボイスは静華さんボイスなのだが、その時はきっと変装と一緒に声も変えていたのだろう。
一旦部屋に案内してもらい、シェリーと共に荷物を置いておく。
「ククッ、和風の屋敷というのも良いものだなシェリー」
「あなたがわざわざホテルをキャンセルしてまでここに来た理由はわからないけど、あんまり変な事はしないでよね」
「あぁ、別に大した理由なんてないよ。ちょっと和葉ちゃんへのおせっかいなだけさ」
「ふーん、恋の応援なんて珍しい事をするものね。あなたの事だから他にも何かあるんでしょうけれど」
「俺の今回の主目的はシェリーの気分転換であり、これについてはできるなら和葉ちゃんと平次くんを少し進展させてあげようかって程度だったんだ。前に来た時に幼馴染との仲を相談されててね。観光案内のちょっとしたお礼のつもりだったのさ」
「…呆れた。あなたそんな事までしようとしてたわけ?大体、もし彼のほうと偶然出会わなかったらどうするつもりだったのよ?」
「その時は普通に恋バナ聞いてあげてアドバイスして終わりだな。まぁシェリーもせっかくだし静華さんと話してみるといいさ」
シェリーから少々疑われはしたが、俺の目的が「大阪府警本部長の妻の声」なんて知っているはずがないもんな。
それにさっき言った和葉ちゃんの応援も間違ってはいない。2人で行くのが恥ずかしいって言うから一緒に行ってあげるわけだし、そのために少しだけ五代目火影に会うのに利用させてもらっただけだ。
そして応接間へと集まってお茶を出してもらったので、飲みながら雑談に花を咲かせる俺たち。
というか、平次くんと和葉ちゃんが勝手に掛け合いしてたりするから、自動的に俺とシェリーと静華さんになる。というかまた勝負事みたいなので優劣を決めるらしい。
安心しろシェリー。ここにみんなで集まる前に静華さんに少しお願いをしておいたから。
ちなみに静華さんに説明したのは…
静華さん少しいいですか?実はうちの姪っ子ちゃんなんですが、帰国子女なもんで日本語を話せるんですが方言は少々聞き取りにくいみたいなんですね。
ええ、そうです。標準語のほうで話してもらえると助かります。
実はあの子少々甘える事を知らない育ち方をしちゃったもので、静華さんさえ良ければ少し構ってあげてください。
ええ、よろしくお願いします。きっと寂しがり屋さんなので、お姉ちゃんみたいに接してもらえると嬉しいです。
え?いえいえ、本当にお若いですよ。…まさか忍術とか使えませんよね?
こんな感じで俺の作り話をシェリーのバックストーリーにしてある。
これならシェリーをダシにして
服部平次?彼は恐らくもうすぐ江戸川コナンに会いに行くだろうから、あまり接点を増やして話題に出されても困るからね。
ちなみにシェリーがちょっとでも小学生女子の演技をやってくれるなら、今女の子に流行りのアニメだとか言って静華さんに優雅なセーラー服美少女戦士とかやってもらえるんだがなぁ。
しかし目を瞑って聞いていると世話焼きの綱手姫の会話に聞こえてくるんだからすごいもんだ。
「お嬢ちゃんはまだ小さいんだから遠慮しないでいいんだからね?」
「…うん」
「ほんと女の子は可愛いわね。うちの息子にも可愛げがあったら良かったのに。私もこんな可愛い娘が欲しかったわ」
「…静華さんも十分綺麗よ」
「ふふ、とても嬉しいわ。私ももういいおばさんだからね」
シェリーのやつ、どう対応していいのかわからず戸惑っているな。どこのド○クエのメ○ゴーストだよ。なんかまごまごしてるぞ。
もしかしてこれがシェリーの子供演技なのか?どうせならコナンを見習え。あいつはたまに高校生であることを忘れていると思えるくらいになりきってるんだぞ。
滅多に見れないものを見れたのはいいけど、せっかくだから阿笠博士の録音機に録画機能も付けてもらうべきだったか?
静華さんは夕食の準備に出ていってしまったのでシェリーと2人、未だに白熱している和葉ちゃんと服部くんを眺めている。
これは恐らく遊園地に行ったくらいじゃ進展しないだろうな。仲はめちゃくちゃ良いんだが。
…そういえばライバル的な女の子がいるとか和葉ちゃんが言ってたような。かるたの女王だったか?それは静華さんだったっけな。
確か俺の記憶じゃ
でも蛞蝓姫とカツユのコンビは再現してみたいな。同時には無理だが個別にならなんとかなるか?
どうやら今日の夕食は静華さんの得意なてっちりのようだ。というかわざわざ用意してくれたのか。
白熱した勝負を繰り広げていた2人もやっと落ち着いたみたいだし、まぁゲームとかで勝負してるんだから可愛いものだ。
これが肉体言語とかになったら…それならそれでもっと野菜王子出せるか?
まぁあり得ないし2人は今みたいにカードゲームなり人生ゲームなりで戦っていてくれ。ただし俺も参加する時はイカサマしてでも負けてもらうがな。服部くん、お前にNo1はまだ早い。
てっちりも堪能し、後片付けは和葉ちゃんも手伝うようだ。シェリーも手伝おうかとしてたみたいだがお客さんだからとやんわり断られていたので一緒にいる。
「なぁ、聞きたかってんけどな。和葉とはどこで知り合うたんや?」
「あぁ、俺が仕事で大阪に来ていた時に、たまたまチンピラ数人に絡まれている女の子を助けてね。それが和葉ちゃんだったんだよ」
「ほー、そういうことか。けど、それでようそこまで仲良うなったもんやな?」
「お礼をしたいと言われても何も思い浮かばなくて、そのままこの町の案内をお願いしてね。それで姪っ子がいるから一緒に来た時は案内頼んでいいかな?ってお願いしてたんだよ」
「なるほどな。確かにあいつやったら面倒見ええから小さい子とかとも仲良うなれるもんな。そっちの子がおってくれたから、うちのおかんが喜んどったな」
「喜んでくれてたのなら連れてきて良かったよ。この子も今は俺と二人暮らしだから、もしかしたら寂しい思いをしている事があるのかもしれないしね」
「はは、おかんのあの様子やと娘でも出来た気でおるんちゃうかな」
そうか、それは良かったよ。もしかしたらまた大阪に来る時はシェリーも一緒に行くって言ってくれるかもしれないしね。
ただ服部くんよ。もしかしたら義理の娘になるかもしれない子が今、静華さんと一緒に仲良く洗い物とかやってるぞ?まぁ俺にとってはどっちでもいいからそこはノータッチだ。
食後の休憩も終わりお風呂も頂いて今は、服部くんと和葉ちゃんとシェリーと4人で部屋で雑談している。
内容は明日の予定だな。明日は遊園地に行くって決まってる予定があるから、何時に出発してとかそんな話だ。
服部くんはてっきり「遊園地なんて行って何がおもろいねん」とか言うのかと思ってたんだが、シェリーがいるからかそういう事は言わなかった。そこには気づかえるのか。
まぁ現地に着いたら別行動をするつもりだし、和葉ちゃんにはそう言ってあるので和葉ちゃんも気合が入っているのかもしれない。
「突然の来訪にも関わらずもてなして頂いてありがとうございました」
「いえいえ、私も楽しかったですよ。ぜひまた大阪に来られた時は遊びにいらしてくださいね」
「その時はまたこの子と一緒に寄らせていただきますね」
一泊した翌日、見送りをしてくれた静華さんにお礼を言い、ちゃんと「また来ます」と伝えておく。
社交辞令?俺は言った事を守る男なんだ。まぁさすがに服部くんや和葉ちゃんと一緒に来るつもりだが。
ただ服部くんの親父がちょっとネックなんだよな…引き離すのは簡単だけど、この世界の主要キャラの親父連中は勘が鋭いからな。
毛利小五郎?あれはコナンが腹話術するための
遊園地では予定通りに2人ずつに別れたわけなんだが、当然シェリーは遊園地を楽しむような性格ではない。
なのでいくつかアトラクションを周ってベンチでゆっくりしていた。
あ、2人が戻ってきた。なんか様子がおかしいな。和葉ちゃんがぐったりしてる。
「2人ともおかえり。ところでどうして和葉ちゃんはそんなに青い顔をしているんだい?」
「あー、あれや。コーヒーカップ乗ってな、はしゃいで回しまくったら酔うてもうたらしいわ。ほんま世話の焼けるやつやで」
「うぅ…」
これは…もしかしたらチャンスかもしれない!
さぁ和葉ちゃん!今の気分をちゃんと言葉にして俺に聞かせてくれ!
「和葉ちゃん大丈夫かい?気分はどうかな?」
「うぅ…だいじょぶです。ちょっと休んどったらマシになりますんで」
「大丈夫そうには見えないな。服部くんは和葉ちゃんに何か冷たいものでも買ってきてあげてくれないかい?和葉ちゃん、今の気分はどうかな?」
「う~…気持ち悪い」
「もっと無感情に目の前に賢者モードの相手がいると思って言ってみて」
「なんなんそれ…?あ”ー…気持ち悪い」
「ありがとう。あ、飲み物買ってきてくれたよ。和葉ちゃんはちょっと大人しく座って休んでいようね」
ありがとう和葉ちゃん!まさかコレが聞けるとは思わなかったよ。
たまには遊園地ってのもいいものだね。シェリーもおしぼりもらってきてくれたんだ。
和葉ちゃんもこんなだし、少しみんなで休憩にしようかな。
そこからは和葉ちゃんが元気になるまでのんびりして、元通りになってからは4人で園内のアトラクションを巡っていった。
そして日も落ちてきたので帰り支度を整え、和葉ちゃんと服部くんに見送られながら大阪を後にする。
「2人ともいろいろとありがとうね。服部くんには家に泊めてもらって、美味しいご飯をまで馳走してもらって楽しかったよ。静華さんにもまた遊びに伺いますって伝えておいてくれるかい?」
「いつでも遊びに来てええで。そっちのちっこい子がおったらおかんも喜ぶわ」
「アタシらもほんま楽しかったです。ファーストもまた遊びにきてな」
「…そうね、その時はまたこの人に連れてきてもらうわ」
特にお土産なんかは買わなかったので荷物なんて少ないものだ。
今回は新幹線を利用したのだが、空席も多い車内なので混雑もせずゆったりしたものだった。
なかなか実りある大阪旅行だったな。シェリーも俺も楽しめた旅行になったんじゃないだろうか。
「気になってたのだけれど、今日わざわざ遊園地に行った目的はあの2人をくっつける事だったわけ?」
「いや、あの様子じゃくっつかないだろうな。遊園地に行ったのは本当に和葉ちゃんへの応援みたいなものだ。昨日も言ったが2人で行ってきなってチケット渡したんだけど恥ずかしがってしまってね。後は、たまにはシェリーも童心に帰るのも悪くないだろう?」
「童心に帰るのはこの身体になった事だけで十分だわ。中身まで戻ってしまったら研究も何もできないじゃないの」
「それはそうなんだが…たまにはこういう日があっても良いだろう?」
「そうね。たまにならいいんじゃないかしら。あなたもそういう時くらい影で動いてないで、ゆっくりすればいいんじゃないかしら?」
クククッ、(心配はありがたいが、次は)お前の番なんだぜシェリー
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、予想外だったぜシェリー
大阪から戻ってきてゆっくりした時間を過ごしていた俺たちだったが、朝起きた時にシェリーの様子がおかしい事に気付いた
「シェリー、いつもと様子が違うんだが、体調でも悪いのか?」
「…ええ、どうやら少し熱っぽいみたい。風邪でも引いたのかしら」
「前から気になっていたんだが、子供の身体になったって事は免疫機能とかも子供の身体相当になってしまうのか?」
「どうやらそうみたいね。すっかり油断してたわ」
「なら今日は寝ているといい。俺が全部やっておこう」
シェリーは子供あるあるの楽しみすぎて体調崩すか、帰ってきてから体調崩すかのジンクスの後者に当てはまってしまったようだ。
俺もそんな事を気にせずに過ごしていたのですっかり油断していた。もし悪化するようなら念のため闇医者にでも診せておくか。
しかし看病なんてやった記憶もないからどうやったらいいのかまったくわからん。
一応一般的なのは知っているので額を冷やして寝かせておいて、その間に風邪薬とか買いに行っておこうかな。
いつも行くスーパーに行き子供用風邪薬やレトルトのおかゆ、カットフルーツ盛り合わせなどそれっぽいものをカゴに入れていき購入して隠れ家へと戻る。
…風邪で弱っているということは、もしかしてレアな気弱シェリーとか見れるかもしれんな。
レトルトのおかゆを温め、フルーツと風邪薬を持ってシェリーの部屋へと入っていく。
「シェリー、薬やらいろいろ買ってきたぞ。とりあえずレトルトだがおかゆも温めてみた」
「あなたにおかゆが作れるとは思ってないから安心して。重いものを食べる食欲もないからレトルトでも用意してくれたのならありがたいわ」
「食後のフルーツもあるからな。さてシェリー…あーん」
「…そんな事しなくても自分で食べられるわ」
「いや、もしかしたら身体が小さくなったことによる症状かもしれないじゃないか。そんなに遠慮しなくて大丈夫だ。さぁ…あーん」
「…………」
「なぜあーんって言ってくれないんだ?黙って口を開けられても…ちゃんと食べさせるけどさ」
シェリーは風邪引いてもシェリーだったよ。
でもちゃんとおかゆもフルーツも食べてくれたし、薬も飲んだから後は寝てるだけで大丈夫だろう。
じっと見られていたら落ち着かないと言うので部屋を出ていかされた。
おかしいな?体調悪くなって寝てると寂しい気持ちになるから「そばにいて」フラグだと思ってたのに、なんかいろいろと予想外な事ばかり起こるな。
翌日にはシェリーもある程度楽になってきたようで、わざわざ医者に行く必要もないそうだった。
とはいえ一応子供の身体だから安静にはさせているし、中身はシェリーなので本を読んだりして過ごしていた感じだな。
その日の晩に、珍しく和葉ちゃんから連絡がきた。
内容はこの前大阪に行った時の話や「また遊びに来てな~」といった事だったが、本題は別にあったようだ。
やはり本題は服部平次についてのようで、どうやら「近いうちに工藤に会いに東京まで行ってくるわ」ということだった。
なんでそれを俺に言うの?別に会いに行ってもいいんじゃないの?
だが和葉ちゃんは用事があって一緒に行けないらしく、それでも1人で行くというので工藤という女に会いに行くんだと思っているようだった。
そういえば和葉ちゃんって最初は工藤ってだけしか聞いてないから女の子だと思ってたんだっけ。
どうせわかる事なんだし、勘違いだったって恥ずかしい思いするより先に教えてあげたほうがいいよな。
そう思って「和葉ちゃん、服部くんが言っている工藤っていうのは東の名探偵って言われてる工藤新一くんの事だよ。女の子じゃないよ」って言ったんだけど全然信じてくれない。
「アタシの女の勘が怪しいって言うてんねん」とか言われても、君のその勘ちょっとズレてるよ?
しかも俺がしばらく休みだって事も伝えてたから、近くにいるならちょうどいいと思い連絡してきたようだ。
「つまり和葉ちゃんが行けないから、代わりに俺が服部くんを見張ってればいいってこと?」
「そんなずっと一緒におれとかちゃうねん。平次が変な女に騙さ…変な事件に巻き込まれへんか見といてくれたらええねん。お兄さん今暇やろ?今度ちゃんとお礼するから、な?」
「うーん、そこまでお願いされたら仕方ないねー。他ならぬ和葉ちゃんのお願いだし。お礼になんでもしてくれるっていうことだし、服部くんと一緒にいることはできないけど見守るくらいはしようかな?」
「アハハ、なんでもは無理やけどお手柔らかに頼んます」
ククッ、なぁにそんなに難しいお願いじゃないさ。すべて俺に任せておいてくれ。
しかし服部平次と江戸川コナンの初対面か。服部平次はどんなお土産持っていくんだろ?
ちゃんと
…そういえば服部平次の初対面の時ってコナンも風邪引いてなかったっけ?たまたまタイミングが重なっただけなのかな?
シェリーの体調もすっかり良くなりいつも通りになってきている。やっぱりただの風邪だったみたいだな。
「もう大丈夫そうだなシェリー」
「ええ、心配しなくても平気よ。免疫機能も子供になるみたいだし、これからは少し気をつける事にするわ」
「それがわかっただけでも良かったんじゃないか?むしろもうちょっと子供っぽいシェリーが見られるかと期待していたんだがな」
「それは残念だったわね。というかあなた、そんな事を期待してたわけ?」
「そんなはずないじゃないか。あぁそうそう、看病のお礼なんていらないよ?ちょっとマイクに向かってくれたらそれでいいからね」
「…あなたへのお礼は高いのか安いのかわからないわね」
シェリーは本当にもうすっかり元通りになっている。いつも通りのジト目だ。良かった良かった。
てか別にちょっとくらい期待してもいいじゃん。
看病してるときに「私が死んでも代わりはいるもの」って言ってもらおうとか考えたけど言わなかったし。それはさすがに不謹慎すぎる。
まぁお礼にマイクに向かってくれれば看病なんて大した労力じゃない。シェリーもどうやらお礼なら付き合ってくれるみたいだし。
ククッ、それじゃあさっさと和葉ちゃんのお願いを終わらせてくるか。ついでに忘れてたシェリーの伝言もちゃんと伝えておかないとな。
「シェリー、少しばかり用事を片付けてくるよ。米花町だからちゃんとシェリーが元気だって言っておくからね」
「余計な事は言わなくてもいいわよ。彼だって子供の身体だって事をちゃんと弁えてるでしょうしね」
和葉ちゃんから服部くんが米花町へ行く日を聞いて、俺もそれに合わせて米花町へと向かう。
というか、別に見張る必要とかもないし一緒にいるわけじゃないしどうしようかな。
あーでもお土産は見たいな。ついでだし俺も眺めるくらいはするかな。
お、服部くん到着したみたいだ。やっぱりコナンは風邪引いてるみたいだな。ってお土産がコテコテの大阪土産かよ。
おいおい、結局パイカル持ってきてるじゃん。外せないのかそれ。それともこれが世界の修正力だとでもいうのか?
てことは江戸川コナンが工藤新一であることを知ってしまうというわけか。
…眺めて終わりにしようと思ってたけど少しばかり予定変更するか。
とはいえ服部平次とここで会うのは少し都合が悪いな。恐らくこの後事件に巻き込まれるだろうから、さっさと事件を解決してもらってからコナンくんとちょっとお話しようかな。
やはり事件は起こったようだ。まぁ組織絡みの事件じゃないからそこはどうでもいいや。
直接話してるのを聞いたわけじゃないが、これでまた1人江戸川コナンが工藤新一である事を知る人間が増えてしまったというわけだ。
まぁ服部平次が黒の組織と関わることはないだろうし、その時は俺の出番だろうから問題もないだろう。
「ククッ、江戸川コナンくん。元気だったかい?」
「お前は!?何の用だ!オレは何も言っちゃいねーぞ!」
「そう突っかかることもあるまい。少しばかり君と話をしたくてね」
「…話だと?」
いやなに、君が今日会った西の名探偵くんは巻き込まないほうがいいよ。
彼にも君と同じように大事な人がいるからね。まぁ全部把握してるんだけどさ。
なんで今日会ったばかりの人間を知っているのか?それは言えないな。
君だって東の名探偵と呼ばれていたんだろう?お得意の推理でもしてみたらどうだい?
あぁそうそう、もしかしたら近いうちに君たちと少しばかり一緒に行動するかもしれなくてね。
君は口が軽いから前もって教えてあげようかと思って来たんだよ。
あと…嬉しかったかい?一時的にでも元の姿に戻ることができてさ。
ククッ、シェリーにもいい土産話ができたよ。
「灰原は無事なんだろうな!?」
「クククッ、もちろん無事だとも。まぁ少し前までは元気ではなかったんだがね」
「なっ…灰原に何しやがった!?」
「なに、(大人と同じ免疫だと思って)俺も大丈夫だと油断してしまってね。(風邪の)ウィルスに負けてしまったようなんだ。今は(風邪)薬で…おっと余計な事は言うなと釘を刺されているんだった。忘れてくれたまえ」
「ウィルスだと…!?(しかも何かの薬物の人体実験に利用されているってことか!?)…命に別条はないんだろうな!?」
「(風邪で死ぬとか今どきあるのか?こじらせて肺炎とか昭和の話だろ?)心配しなくても死なせたりはしないさ」
「(灰原を色んな薬の実験に使って…)まさか使い潰すつもりか!?」
「(喉をか?)まさか使い潰すなんてとんでもない。ククッ、ちゃんと大切にするつもりだ」
シェリーには余計な事を言うなと言われていたのに、つい風邪を引いてしまった事を話しそうになってしまった。
しかしコナンくん心配性すぎるだろ。やっぱり自分も風邪引いたもんだから気持ちがわかるのかもしれないな。
そして弱ってるコナンくんはきっと寂しくて蘭ちゃんと一緒に寝たりしたんだな?羨ましい。
俺なんてずっとシェリーの看病しようと思ったのに、寝るから邪魔だって追い出されたんだぞ。
って違うそうじゃない。あと忘れてた伝言もちゃんと伝えておこう。
「そうそう、忘れていたよ。シェリーからの伝言だ。
私の事は心配しないで
だそうだ。ちゃんと伝えたぞ」
なんでコナンくんそんな絶望みたいな顔してるんだ?さっきから真っ青だったが、今はこの世の終わりみたいな表情になってるぞ?
あー…バレてないはずの
そりゃ中身は男子高校生だもんな。だが心配するな。男の情けだ。さすがにそれは俺もシェリーには言わんよ。
あれだろ?両親が海外にいて一人暮らしで寂しかったのが、今は幼馴染の女の子が近くにいてくれるからつい気が緩んじゃったとかそんなんだろ?
さて用事も終わったしさっさと帰ろうっと。そういえば和葉ちゃんにもちゃんと報告しとかないといけないな。
毛利探偵事務所に行って、一緒に事件解決してそのまま帰ったよ…っと。メール送信。
これで和葉ちゃんも安心だろう。なんで俺が探偵の真似みたいなことやってるんだ?
「ただいまシェリー」
「おかえりなさい、今回はすぐに終わったのね」
「まぁ用事は探偵ごっこみたいなものだったからね。良い土産話というか情報もあるし、名探偵くんの意外な一面も見られたし有意義だったと思うよ」
「ふーん、まぁいいわ。スーパーまで行くのに車出してちょうだい」
シェリーもさすがに意外な一面が「風邪引いて寂しくなって幼馴染の女子高生と一緒に寝てた」とかわからないだろう。
工藤新一も男のプライドとかあるだろうから、それはもちろんシェリーには言わないさ。
だがバレたくないという弱みには間違いないだろう?だから場合によっては手札としてチラつかせるくらいはするかもしれないがな。
クククッ、(今回は風邪だったり探偵ごっこだったり)予想外だったぜシェリー
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、俺には関係ないんだぜシェリー
和葉ちゃんの依頼を受けて米花町に行き、服部平次をちょこっと見守ってからコナンくんとお話して帰ってきた俺はシェリーとリビングで紅茶を飲んでいた。
以前の看病のお礼をシェリーが早くしたいと言うんだが、俺はそこまで急いでいないためのんびりしているわけだ。
実際は「あなたにこれ以上借りを作ると何をやらされるかわからないから、今以上に積み重なる前にさっさと返してしまいたい」という事なのだが、そんな事をわざわざ考えなくてもいいものを…シェリーは律儀な性格だな。
別に俺は貸し借りなんて気にしていないし、これからも長い付き合いになるんだ。
いくらなんでも今の段階でシェリーに
まぁ今のシェリーがあまり嫌がらずに演ってくれるとしたら、レイかアンナさんとかくらいか?
俺としては爆裂するハンターのボンテージ妹とか聞きたいところなんだがなぁ…
あと聞きたい歌が山ほどある。ただポップな曲が多いから今はまだタイミングを見計らっているだけだ。
あんまり貸し借りとか言ってそれを要求するとなんかシェリーの好感度とか下がりそうだし、結構普段の会話でもそれなりに満足してる俺としては無茶な要求をしてジト目で呆れられるリスクは避けたいところだ。大阪でも楽しませてもらったしな。
このあたりについては注意しながら演ってもらっているつもりだ。シェリーはあくまでも
そういうわけでマイクに向かいたいシェリーと、別に急がなくてもいいんじゃない?な俺でいつもと反対という不思議な状況になっている。
「シェリー、別に貸し借りなんて気にする必要はないぞ。無理に演らせても
「…珍しいわね。あなたがそんな事を言うなんて。何を求めてるのかわからないけど、あんまり変な事はさせないでよ?」
「そこまで変な事ではないだろう?シェリーの事は大切にしているつもりだぞ。ただ焦る必要がないから気長に
「確かに大切にはされてるんだろうけれど…あなたの場合、後からその分が一気に来そうで怖いのよね」
「ククッ、ひどい言われようだな。あぁそうそう、話は変わるが米花町での土産話なんだが…」
まったくシェリーは俺をなんだと思ってるんだ?
もちろん私欲と重なる部分が多いからこそでもあるのは否定しないが…
それは置いておいて、シェリーに米花町に行った時に以前伝え忘れていた伝言を伝えた事と、江戸川コナンが一時的に元の姿に戻る現象が見られた事を報告しておく。
コナンが元に戻った事を言っておかないと、後で「なんで知ってて言わなかったのよ」とか怒られる可能性が非常に高いからだ。
どうやら一時的にでも元の姿に戻ったというのは驚きだったみたいで、その状況を結構詳しく聞いてきた。
ただ、俺はそのシーンを見てたわけじゃないんだよな…知ってはいるんだけど。
なので服部平次が毛利探偵事務所へ行き、その時渡した大阪土産の何かの中に元に戻るための成分が偶然入っていたんじゃないか、という事だけ伝えておいた。
なんでそんな事を知っているのかと聞かれたが、和葉ちゃんが心配して様子を見ておいてくれと頼まれた事を正直に話したので問題はない。そう考えると和葉ちゃんの女の勘グッジョブ!
後はその土産が何だったのかを服部平次にでも聞けば辻褄も合うだろう。「お土産が被らないようにしたいんだけど、何を持っていったの?」とか聞けば教えてくれそうだ。
シェリーもやはり何を渡したのかは気になるみたいで「そのお土産が何だったのか教えてもらえないかしら?」と言ってきた。
ただ、俺は和葉ちゃんの連絡先は知ってても服部平次の連絡先は知らない。和葉ちゃんから聞いてもらってもいいが、それを
なので「焦って聞いても服部平次が何かに勘付かれても困るので、俺から近いうちに聞き出しておく」ということで話は終わった。
既に面識のある俺だから疑われたりはしないと思うが、万が一にでも「
あれ?服部平次ってその時に江戸川コナン=工藤新一って気づくんだっけ?なんかちょっとズレてた気がするけど、一応知っている前提で動いておくか。
まぁ答えのパイカルはいつも行っているスーパーにある事は前に確認してあるし、情報だけ聞く事ができたら手に入れるのは簡単なものだ。
「…と、まぁ米花町ではそんな感じだったよ」
「確かにいいお土産話だったわね。それにしても組織の一員のあなたが探偵ごっことはね」
「諜報員ならあり得るのかもしれないが、俺には向かない仕事だとつくづく思ったよ」
「…そういえば組織には情報を扱うコードネームもいたわね。あなた、そっちのほうとは面識はないわけ?」
「ないな。俺が会った事があるのはジン、ウォッカ、キャンティ、コルンくらいのものだ。潜入という意味ではウォッカが当てはまるんだろうが、その他は会った事もないし誰がいるのかも知らんな」
情報を取り扱うって言ったらベルモットとバーボンあたりか?まだあいつら相手に立ち回る用意ができてないから今はまだ勘弁してほしいところだ。
バーボンはまだ臨機応変で何とかなるかもしれないが、さすがにベルモットは無理だな。
俺としては黒の組織を壊滅させる気がないので、なるべくなら拮抗した状況を作っておきたい。
ククッ、そうすれば俺も長く楽しめるからな。
ただ、そのためにこの前ウォッカに提案したのになかった事にされたのがなぁ…
今考えるとなんか腹立ってきた。ウォッカめ、剣8のくせに俺が考えた「やちる」に反応しないとは何事だ。
むしろ兄貴と慕うジンを見習え。あいつは戦闘狂じゃないけどすぐ殺そうとするんだぞ!もういっそ卍解の修行してこい。
「…あなた、また変な事考えてるでしょ?」
「うん?そんなことはないぞ。組織のコードネーム持ちについて考えていただけだ」
「…本当にそれだけなのかしら?ロクでもない事考えてそうな気がしたんだけど…」
「ククッ、今も所属している俺が言うのもなんだが、組織がやっている事なんて全部ロクでもない事だと思うぞ?」
「それもそうね」
納得するのが早いな。間違ってないから別にいいんだが。
しかし本当に拮抗させるにはどうしたもんかな…やっぱり
こっちがある程度実力主義なのに対して、向こうは年功序列なども昇進材料になってくるだろうし、今のうちから入り込ませておけばある程度操作できる地位までいけるかもしれないな。
よしそれでいこうそうしよう!
一旦部屋に戻り1人になってからジンへと連絡を入れ、今考えていた各組織に潜入させようプランを説明していく。
ジン?俺だよ!実はライの潜入の件があったから考えてたんだけどさ。
こっちからも逆に警察機関に工作員を潜入させておかない?そんな有能なヤツじゃなくていいからさ。
裏切らないような忠誠心の高いヤツか、人質なり弱み持ってるヤツなら使えると思うんだよね。
警察機関はある程度時間が経てば昇進したりするからさ。潜り込ませて放っておけば勝手にいい地位まで上がってる可能性だってあるじゃん。
直接組織の人間じゃなくてもさ、傘下から選んで潜り込ませといてもいいと思うよ。
もし警察に正体がバレてもその傘下の仕業だと思ってくれるだろうしね。
俺?無理無理。そんな事してたら動けなくなっちゃうもん。長期間に渡る潜入になるだろうからコードネーム持ちとかじゃないほうがいいと思うよ。
「傘下や下っ端を使うか…なるほどな」
「ククッ、悪い案じゃないと思うんだがな。これならライのような潜入にも対抗できるかもしれん」
「…いいだろう。俺からこの件は伝えておく。あと別件だ。裏切り者の赤井秀一が日本にいる可能性が浮上した。お前も網を張っておけ」
「ほう、了解だ。後で赤井秀一の詳細なデータを送っておいてくれ」
一応俺は赤井秀一を知らないからな。写真なりもらわないと探し様がない…という形にしておかないと「どうして赤井秀一を知っている?」とか言われないようしておかないとね。
まぁ俺たちは米花町にいるわけじゃないから、探すと言っても早々見つかるもんでもない。
仮に見つかったとしても知らせるだけになるだろう。わざわざ接触したりはしないつもりだ。
ただ、この世界でも偽装死があるのであれば、少しだけ関わっておきたいという気持ちもある。
もしその時を俺が知る事ができたらという程度だがな。
それよりも会っておく人たちがたくさんいるから、それはそれとして今は置いておこう。
これで俺の案がうまくいけば、CIAやMI6なんかだけじゃなく日本の警察にも組織の手が入り込む事ができる。
そうすれば組織としても多大なメリットが得られると共に、俺個人に対してもかなりのメリットになるわけだ。できれば各都道府県に配置してほしいもんだな。
問題があるかもしれないとすれば、その潜入したヤツらを統括するのがジンじゃない可能性があることくらいか。
これでバーボンとか、最悪ベルモットなんかになってしまったら手が出せないかもしれない。
そこはもうジンに頑張ってもらおう。言い出しっぺなんだからお前が管理しやがれ。それか潜入担当のウォッカに丸投げしろ!そしたら俺が裏からみんなの都合のいいように差配してやるから!
ジンに提案まではしたし、後は俺がどうこうする問題でもないためシェリーがいるリビングへと戻っていく。さてさてどうなるかな?
あ、シェリーったら紅茶入れ直してくれるのね。ありがとう。
ここから先は幹部連中なりあの方なりが判断して決めればいい事だが、できればうまくいってほしいという気持ちはある。
そのためにわざわざ自分から潜入したりなんてする気はまったくないが。
一応それをした場合のほうが赤井秀一や安室透、いや降谷零と関わったりしやすい事は理解しているんだ。
そして各地にいる警部たちとも怪しまれずに接する事ができるのも大きなメリットではある。
だがそれと引き換えに、自由に動く事ができなくなるというあまりにも大きすぎるデメリットがあるので選ぶ理由にはならない。
「わざわざ部屋に戻っていたって事は組織の連絡だったのかしら?」
「ああ、ちょっと思いついた事があってな。少しジンに伝えていただけだ」
「…あなたあのジンとよく普通に話せるわね。私だったら無理よ」
「シェリーはそうだろうな。他のヤツもそうだが、不審な点などがあれば見ればわかるものだ。俺は裏切るつもりもないし、他の
「まぁ疑われてないっていうのは、あなたが今もそうやって生きていられているのが何よりの証拠よね」
実際疑われるような事は一切やってないからなぁ。見つかったら困る致命的なのはあるけど。
その致命的な2つであるうちの1つ、宮野明美は完全隔離だし、もう1つのシェリーもこうやって俺が匿っている以上見つかる事はない。
この隠れ家だって誰にも言ってないから見つかる事もないだろう。
その上で組織の傘下増やしたり裏切り者の粛正したりしてるから、それなりには組織の役に立ってるはずだ。裏切り者認定できるはずもない。できたらそいつはエスパーだ。
更に今回ジンに話した内容は悪くない提案のはずだし、バーボンに知られて逆に情報が警察関連に回される事さえ気をつけておけば俺大勝利だ。
もういっそバーボンも組織から弾き出すか?…いや、まだだな。「気づかれぬように未来を見据えて打ってこそ布石だ」と、どこかのバスケ部の未来が見える眼を持つ赤い主将も言っていた。
ならば俺もそれに習っていくとしようか。
クククッ、(原作?そんなもの)俺には関係ないんだぜシェリー
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、一苦労だなシェリー
俺は今、日売テレビに来ている。いつも生放送されているテレビ番組「日本まる見え探偵局」で、今回のゲストとして毛利小五郎が呼ばれているのだ。
前回の放送時に告知されていた事でそれを知った俺は米花町へと向かい、毛利小五郎たちと話しているうちに付き添いに入れてもらったというわけだ。
本来ならば付き添いはコナンくんと蘭ちゃんだけなんだが、せっかく知ったこの機会を俺が逃すなどあり得ない。
本当はシェリーも連れて来てあげたかったものだが、状況的に掛け合いが見れるわけではないからな。
本人はそれよりも早くパイカルの事を聞いてこいって感じだ。ちょっとくらい待っててくれ。
ちなみに、どうやって付き添いになったのかと言うと、前日のうちに毛利探偵事務所に行ってきただけだ。その時の様子は…
どうも、毛利探偵。以前依頼させて頂いたアンケートを受け取りに来たんですが…
あぁどうも、ありがとうございます。蘭さんこんにちは。相変わらず可愛いですね。
コナンくんもこんにちは。うん?どうしてここにいるのかって?前に毛利探偵に依頼していたアンケートを受け取れなかったからね。それで今日時間があったから来たんだよ。
そういえば聞きましたよ毛利探偵。明日テレビの生放送に出演されるとか。
さすが名探偵ですねー。これでまた更に有名になっちゃいますねー。
テレビ局なんて行ったことないから羨ましいなー。え?いいんですか?
蘭さんとコナンくんも構わないかな?大丈夫、
コナンくん怖い顔してるね。さては俺が蘭さんと一緒にいるからヤキモチかい?
それじゃ明日また来ますね。楽しみにしてますよー。
と、いうわけでみんな俺が一緒に行くことを快諾してくれたわけだ。
テレビ局なんて行く機会がないからワクワクするな。事件が起きるかもしれないけど、そこは
その時は俺は周りの動揺しているみんなを落ち着かせたりしていることにするよ。
もし事件が起きなかったら、それはそれで結構な事だ。その場合はちょっと番組プロデューサーとお話したりするだけだな。
うまいこと煽ててあげれば気分良くなってくれるだろう。ダメならダメで構わない。
ククッ、つまりどっちにしても俺にとってはとても楽しめる1日なのである。
そして翌日に再度毛利探偵事務所へと向かい、3人と合流して日売テレビに来ているというわけだ。
番組が終わるまでの間は特にやることもないので、蘭ちゃんとコナンくんと一緒に眺めているだけだった。
本来ならばこの番組のほうが目を引くはずなんだろうが、俺からすればこれは前座に過ぎない。
というわけでコナンくん、いくら俺が組織の人間だからって別に俺を警戒する必要はないぞ。ちゃんと何もしないって言ったじゃないか。
疑うのも探偵の性分みたいなものなのかな?まぁ君がそうしたいなら好きにすればいいと思うよ。
…あぁ、なるほど、そういうことか。
君は俺が蘭ちゃんに余計な事を言わないか警戒していたのか。確かに風邪引いて蘭ちゃんに添い寝してもらった事が俺にバレてしまったから、もしかしたら俺の口から工藤新一がそれをしていた事がバレることを恐れているんだね。
大丈夫だ名探偵よ。俺は「お約束」とか「様式美」には理解がある人間だ。
ヒーローの変身シーンには敵は黙って待つように、敵が過去を語り出したらヒーローも黙って聞くように、そういう時に無粋な真似などしない。
だから「工藤新一=江戸川コナン」ということも、わざわざ俺から明かしたりはしないさ。
ただ俺は思うわけだ。仮に然るべきタイミングで蘭ちゃんに「工藤新一=江戸川コナン」であることを伝えたとしても、決して感動的なシーンにはならないと。
例えば俺が組織の力まで使って協力してあげたとして、蘭ちゃんを人質にして工藤新一の姿でそれを助けさせたとして、その後に苦しみながらコナンの姿に戻ったとしてもさ。
どこかのタキシード着た仮面つけた人とセーラー服美少女戦士なんかは、普段は仲が悪くても正体わかって距離が近づいていったけどさ。
いくら良いように考えてもコナンの場合「新一はずっと私を近くで見守ってくれてた…トゥンク」とはならないだろう。
そこまでいったら蘭ちゃんの脳内はお花畑通り越してホラーだ。俺では理解できない領域にあると思う。
そしてコナンのほうも、今まで一緒に生活してきてたのがバレたということだから「すまないな蘭、実は俺が生きているとバレるわけにはいかないから、おっちゃんを利用するために毛利探偵事務所にいたんだ」とか言えないだろう。思いっきり打算すぎて好感度マイナス間違いなしだ。
かといって「お前の事が心配だから、心苦しかったが遠くにいると言って、本当は近くで見守ってたんだ」とか言ったらそれはそれで怖い。ストーカーここに極まるって感じがする。
「あの…ずっと何か考え事してるみたいですけど、どうかしましたか?」
「ん?あぁ、ちょっと収録を見ていただけですよ。テレビの現場なんて見る機会がないから、どこを見ても珍しいものだらけですからね」
「確かにそうですよね。お父さん、変な事言わなければいいんですけど…」
「そこは信じるしかないでしょうねぇ。蘭さんが代わりに出るわけにもいかないでしょ?テレビ映えするのは蘭さんのほうなんですけどね」
「うぅ、あんまりそういう事言われると恥ずかしいんでやめてくださいよぉ」
蘭ちゃんに声をかけられるまで思いっきり思考が違うところに飛んで行ってしまった。
危なかったな…だがなんとか誤魔化せたようだ。
あとそこそこの時間無駄な事を考えてしまっていたようで、番組もどうやらもうすぐ終わるようだな。
やっぱり事件が起こってしまった。毛利小五郎が出演した「日本まる見え探偵局」を担当する諏訪プロデューサーが銃で頭を撃ち抜かれているところを発見されたみたいだ。
もったいない人を亡くしてしまったものだな…せめて最後は野菜の人に負けて自爆する人造人間のような叫びを聞きたかったよ。
まぁ犯人はわかっているけど、そこは名探偵にお任せしておいてと。
俺は当初の予定通りに動揺している人を落ち着かせてあげることにしよう。
「大丈夫ですか?大変な事になってしまいましたね」
「ええ、あの…あなたは?」
「あぁ、私は毛利探偵の付き添いで観覧させて頂いておりました。永井さん、震えているようですが気を強く持ってください」
「ええ、でもどうして諏訪プロデューサーが…」
「そうだ、私がいいおまじないを知っているんです。こういう時は自分に言い聞かせるように繰り返すんです。逃げちゃダメだ…とね」
「逃げちゃダメだ…?」
「そうです。それを小さな声でいいんです。何度も言ってみてください。特に15~6才の少年のような気持ちで声を低くして言うと(俺に対して)効果が高いですよ。さぁ、言ってみてください」
「…逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」
「そうです。この言葉はきっとあなたにとって勇気をもらえる特別な言葉になると思います。犯人は毛利探偵が突き止めてくれますので、どうかその時を待っていてください。あなたなら必ずこんなアクシデントも乗り越えられます」
ククッ、
どうやら事件は
てか、推理ショーとか生で放送するのはテレビ局の勝手だからいいけど、目暮警部が犯人を庇う立場になってて問題ないのか?
これ完全に警察が引き立て役になってるぞ。そして警察が解決できなかった事件を探偵が解決することによって毛利探偵スゲーまではいいが、下手すれば警視庁無能ってレッテル貼られたりしないのかな?
テレビ局にいるからってわざわざ犯人を追い詰めるために放送まで使ってくれてるおかげで、こっちはその状況を見ている事ができるので大変俺に優しい状況となっているな。
「蘭さん、コナンくんが映ってますけどいいんですか?」
「え?あっ、コナンくんったら。また勝手にお父さんに着いていったのね」
「なかなか活発な男の子ですね。蘭さんも大変なんじゃないですか?」
「えーと、アハハ。でも活発なのっていいことですよね…」
コナンくん事件に夢中になるのはいいが、俺と蘭ちゃんを一緒に置いといていいのか?
いくらテレビ局内で、人も多いからって少々危機感が足りないぞ。
これも実は俺への信頼の表れなのか?「オレが事件を解決している間、蘭の事は任せたぜ!」みたいな感じなのかな。
もしかしてコナンくんって蘭ちゃんにはストーカーで俺にはツンデレなのか?属性盛りすぎだろ。
事件は解決したが番組プロデューサーが殺害され犯人であるタレントさんも逮捕で、これから大変だろうがそこは俺の関知するところではない。
もうここにいる必要もないし、それじゃあ毛利探偵事務所に向かうとするか。と思ったら永井さんに話しかけられた。
「あの、先程はありがとうございました」
「いえいえ、少しでもお役に立てたのなら嬉しい限りですよ」
「これから番組がどうなるのかわからないですけど、教えてもらった言葉を忘れずに頑張ってみますね」
「ええ、ぜひ忘れないでください。これからも永井さんを応援していますよ。私はテレビ関係者ではありませんので難しいかもしれませんが、また会える時を楽しみにしていますね」
どうやら番組アシスタントの永井亜矢子さんは落ち込んではいないようだ。
わざわざお礼まで言ってくれるとは…これは思ったより好感触か?
まぁ今ここで連絡先を聞いたりするような事はしないが、次の機会を作ってやれば話し相手くらいならいけるかもしれない。
なんとか大阪まで連れて行って
…待てよ?外部太陽系三戦士いけるなコレ。
一堂に会する事は無理でもそれぞれならやれそうだな。やっぱり連絡先聞いておくか?
結局連絡先の交換などはせずにそのままテレビ局を出てきたわけだが…
てかコナンくん事件を解決してから俺を見て「しまった!」って顔してるから、俺が蘭ちゃんと一緒にいた事忘れてたな?
まぁ俺の用事も終わったし、コナンも何も言わなかったから俺も忘れてやろう。
もしこれで「蘭ねーちゃん何か変な事されなかった?」とか聞いたりした日には、俺の脳内ストーリー「コナンは新一!?真実を知る蘭」を実演するところだったぞ。
さて、今日のイベントは終わったしさっさと帰ろう。これ以上俺が蘭ちゃんたちと一緒にいたらコナンくんの胃に穴が空いてしまうかもしれない。
いやー今日は大変な1日でしたねー。でも毛利探偵の名推理が見れたのは嬉しかったですよ!
何も覚えてない?いやいや、あなたがいるから事件は解決できてるんだからいいじゃないですか。
それじゃあ私はこのへんで失礼しますねー。また近いうちにでも探偵事務所のほうにお邪魔しますんで。
コナンくん、蘭さんが心配していたよ?好奇心旺盛なのもいいけど、あんまり心配かけちゃダメだよ。
それじゃあまたね!
少々急ぎ足みたいになってしまったが、別れの挨拶をして米花町を出ていく。
収穫はあったし、永井亜矢子の感触も悪くなかった。あの様子なら次は毛利小五郎、というかコナン抜きで会いに行っても良さそうな感じだな。
ククッ、俺のチルドレンコレクションにまた1つ追加されたわけだ。
「ただいまシェリー」
「おかえりなさい。見たわよテレビ、まさか全国放送で事件を解決するなんてね」
「まぁこれくらいならいいんじゃないか?見られたところで問題はないさ」
「あら、随分と楽観的なのね。組織の誰が見ているかもわからないのに」
「今のところ組織で工藤新一が江戸川コナンだと知っているのは俺だけだ。工藤新一が自ら墓穴を掘らない限り、その状況が続く事は間違いない。もちろんあの事件の解決を江戸川コナンが行っていたら、また話は変わってきていたかもしれないがな」
コナンが実際にテレビに映っていたのはほんの少しだけだ。ジンは殺したと思っているから、もう工藤新一の顔も覚えていないだろう。
ウォッカは覚えているかもしれないが、もし放送を見ていたとしても工藤新一と江戸川コナンを繋げるような考えはないだろうしな。だってマダオだし。
シェリーは万が一の事も考えているようだが、例えどんな名探偵や推理好きだったとしても、今の状況で工藤新一と江戸川コナンを結びつけるのは、それこそバーボンやベルモットでも現時点では不可能だ。
そういう説明をしたらシェリーも安心してくれたようだな。コナンのやつめ、蘭ちゃんだけでなくシェリーにまでいらん心配させやがって。
まぁ蘭ちゃんは保護者的な心配で、シェリーは正体バレ的な心配なんだが。
しかしうまい具合に
新世紀な汎用人型決戦兵器シリーズに走ってみるか?
それともセーラー服な美少女戦士シリーズってのも悪くないか?
ってどっちもキールがいるじゃん。しかもかなり主要なところに。
まぁいいさ、これからも俺のやる事は何も変わらないのだから…
クククッ、(魅力的な標的が多すぎて選ぶだけでも)一苦労だなシェリー
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、フェアじゃないとなシェリー
組織から指令がきた。それ自体はいつもの事だから別に構わないんだが、今回は俺が日本にいるから丁度よかったそうだ。
丁度いいも何も、基本的に言われたら海外だろうと行ってるから関係なくね?
連絡してきたジンに詳細を聞かないと全然わからんな。
「…それで?俺は今回はどこの裏切り者を粛正すればいいんだ?」
「今回は組織の情報が漏れる前の口封じだ。標的の手が後ろに回る前に始末する。ピスコが殺る予定なんだが、お前が日本にいることを思い出してな」
「俺が代わりに標的を殺ればいいってことか。了解だ。詳細な情報をくれ」
「いや、お前にはピスコのフォローをさせるつもりだ。俺も今日本に来ているからあとで合流しろ」
ピスコが殺す予定って事は、これって確か最後はピスコが殺されるやつか。
それが俺がいることでピスコへのフォローが俺に来ちゃったわけね…
確かピスコはシェリーの正体に気付いたヤツだったな。まぁ今回ピスコはシェリーに会う事はないんだが。
…そういやベルモットは来てるのかな?まぁ俺の事は知られてないだろうから、ここはもう全力スルーの方向でいくとしよう。
しかしピスコのフォローをするとなると、コナンやらとも遭遇する可能性が高いよなぁ。
これはどう動いたら俺にとって都合がいいんだ?何もしなければたぶん標的が死んでピスコも死んで原作通りになるだろう。
ならばピスコが生きていたら…コナンの正体がバレる可能性があるのか?
今のコナンって組織の事をまだ調べてるのか?俺があれだけ口止めして余計な事はするなって「忠告」したのに?
いや、思ったより簡単そうだな。俺がコナンを足止めしつつピスコの代わりに標的を始末すればいいだけか。
そうすればコナンの事をピスコに勘付かれる可能性もなくなり、組織の幹部が減る事もなくなり、パワーバランスが大きく傾く事もなくなる。俺にしかわからない事だが、本来は組織にとってマイナスのはずのものが消えるんだから実質プラスになってるってわけだな。
まだジンに提案した各国スパイ大作戦が始まってないだけに、潜入者じゃないコードネームであるピスコを失うのは俺的によろしくない。
そうと決まれば善は急げだ。さっさと行って準備しないとな。
「シェリー、任務が入った。長くはならないが、今回は念のため外に出ないようにしておいてくれ」
「あら、そこまで言うほどの何かがあるのかしら?」
「ああ、この近くではないがジンが日本に来ている。それにピスコやら他の
「っ!…わかったわ。あなたの言う通りこの隠れ家で大人しくしておくことにするわね」
「そう不安になる事もないさ。終わったらシェリーの好きなものでも食べに行くとしよう。確かケーキや甘いものが好きだったよな」
まぁこれは本当に念のためでしかないんだがな。元々シェリーは一人で外に出かける事自体が少ない。てか、俺がいない時に出かけてる時なんてあるのか?
まさかシェリーに限って、コナンもいないのに勝手に隠れ家を飛び出して、ピスコやジンの前に姿を現すような迂闊な真似はしないだろう。
高校生探偵に対抗して、研究者探偵シェリーか。わざわざピスコの前に行って犯行を暴いたあげく「私は
そしてまだジンはトラウマなのか。名前聞いただけでビクッってなるって相当だな。何をやったらそこまでになるんだ?
まぁいい、とりあえずジンと合流して詳しい話を聞いておかないとな。
と、まぁジンと合流しに向かうわけだが、ここでちょっと2ヶ所ほど寄り道してから行く。
1つは組織の研究所で今回使う物を調達しておくわけだ。ピスコの代わりに俺が殺すなんて言っても、俺にシャンデリアを撃ち落とすような射撃の腕なんてない。
ピスコは公衆の面前で事故死を装いたかったんだろう。そしてどこを見ても目を引く大物たちに紛れておけば気づかれないと思ったんだろうが、大物たちがいるって事は当然記念にと撮影する事だって十分に考えられただろうに…
そんなピスコの凡ミスを
研究所で物を受け取った俺はそのまま移動し、もう1ヶ所でとある人物と接触した。
そして研究所で受け取った物を渡して、それを確認した後に合流ポイントへと向かった。
ジンと合流して詳細を聞いてみたところ、やはり標的は政治家・呑口重彦だそうだ。
収賄容疑で逮捕直前のため、下手に組織の情報が漏れたりする前に口封じに始末する算段らしい。
俺はピスコにも正体を明かさずに近くにいて、何かあればフォローする担当のようだ。
ちゃんと用意されていた招待状も受け取り、正装に着替えて時間が来たら会場へと入っていく。
今開催されているのは「映画監督・酒巻昭を偲ぶ会」だ。
ここに集まっているのはかなりの大物ばかりだな。映画会の巨匠は伊達じゃないということか。
あー…やっぱりコナンいるな。まぁ今の俺は変装してるからバレないとは思うが…
ベルモットみたいな完璧な変装じゃなくても、服装や小物でもかなり雰囲気は変わる。
直接話したりと接触すれば探偵の勘に引っかかるかもしれないが、今のコナンには組織センサーであるシェリーはいない。まぁチョロチョロと調査するなら足止めはするけど。
コナンは今は放っておくとして、まず俺が動くのはピスコ…いや大手自動車メーカー会長である桝山憲三のほうだ。
「失礼します。桝山会長、この手紙を桝山会長に渡すように言われたのですが…」
「私に手紙?ふむ、受け取ろう。ご苦労だったな」
さて、手紙を見てピスコは何やらキョロキョロしているが、なんて書いてあったんだろうな?
まぁ書いたのも渡したのも俺なんだけどさ。別に大した内容は書いてない。
どうやら偲ぶ会は歓談から亡くなった巨匠のスライドショーへと移るみたいだな。
…ということは、そろそろか。
本来はここでシャンデリアがガシャーンってなって呑口重彦は事故死するはずなんだが、今回は何も落ちてこない。
俺も離れた場所でのんびりと流れている映像を眺めているだけだ。
そして映像が終わり、会場の照明が戻った時、呑口重彦はその場に倒れていた。
最初は何事かと思い呑口に話しかけたりしていた人たちも、呑口が死んでいる事がわかり会場に悲鳴が響き渡る。
さて、次はこっちをフォローしてあげるとしますか。
「やぁコナンくん。こんなところで会うとか奇遇だね」
「なっ!…なんでこんなところに」
「それはこっちのセリフだよ。子供の君がいるほうがどちらかというと不自然だろう?」
「まさか…呑口議員を殺したのもお前らなのか」
「ククッ、証拠もなく疑うのは探偵の性なのかな?ただ、今回は君に大人しくしておいてもらおうと思って声をかけたのさ」
「なんだと…?」
本来なら好き勝手に捜査したり危険に首を突っ込んだりしていくんだろうが、俺がいる以上それをさせるわけにはいかない。
いや、捜査するとかくらいなら別に構わないんだが、それで調子に乗って「江戸川コナン…探偵さ」とかやられるわけにはいかんのだよ。
下手すればジンやピスコが見てる前で「お前らもあの男の仲間なのか!?灰原を返せ!」とか言い出されたらたまったもんじゃない。
なので万が一を考えて今回の件には一切関わらせないのが確実なのだ。
そしてコナンくんも俺がいる事で何かを察してくれたみたいだ。ちなみにコナンくんに今回の犯人はわからんと思うよ。
警察も来て捜査されたりしたが、最後は原因不明の心臓発作による急死とかで終わるんじゃないかな。
「てめーら、一体何考えてやがる!」
「随分な言い草だな。君のためにわざわざ止めてあげたというのに」
「…それはどういう意味だ?」
「なに、シェリーが君たちの事を心配していたのは知っているだろう?だから
「…つまり今回の件はお前ら黒ずくめが関わってるってことか」
「調査をさせるわけにはいかないが、今あるヒントで推理するのは自由だ。なんなら次に会う時に答え合わせにも付き合ってあげよう。ヒントは既にあるだろう?なにせ……ジンに盗聴器を仕掛けるくらいなのだからね」
驚いているところ悪いなコナンくん。これが俺にできる精一杯の譲歩だ。まぁ毛利小五郎経由などで遺体の解剖の結果を知るくらいは構わないさ。
この会場にいた全員に聞き取りとかされるとピスコに当たるからストップをかけただけだ。
それに今ある情報だけで推理しても構わないって言ってあるし、答え合わせだって付き合ってあげるんだから破格の条件だろう。
ほんとよくジンのポルシェに気付いたな。本来ならシェリーが気付いてそこから始まるはずだったのに、この世界ではシェリーがいない分直接ジンを見つけるとかのズレが起きてるのか?
まぁいい、あとはジンに終わった事を伝えて任務終了だ。
「ジン、何もしていないがこれで一応任務完了だな」
「標的が勝手に死ぬとはな。…まぁいい」
「ちなみにこの前話した
「恐らく実行される事になるだろう。俺からあの方に出した話だから、そっちはウォッカが纏める事になるだろうな」
「ククッ、それは僥倖。他の知らないヤツに任せたくなかったんで丁度良かった」
「ああ、そういうことだ。お前にもそっちのフォローもしてもらうぞ」
「了解。本格的に動く時は教えてくれ」
これでピスコは生きていて、コナンは見つからず、組織としても俺としてもコナンとしても最良の結果を生み出せたんじゃないだろうか。
ベルモットがいたのかどうかはわからんが、会わなかったのだから特に言うこともない。
そして各国スパイ大作戦はウォッカが音頭を取るのか。これも朗報だな。
少しばかりたくさんウォッカにはアドバイスしてあげることにしよう。
わざわざアピールする必要もなかったからジンにも言わなかったが、今回の事件の黒幕は俺だ。
研究所から研究中の薬、証拠が残らないという試作品の濃度を上げたものをカプセルに入れて事前に呑口重彦に飲ませただけだ。間違っても子供にならないように、確実に失敗の薬をな。
カプセルの溶ける時間を計算して飲ませておけばあとは勝手に薬が仕事をしてくれる。
今回の偲ぶ会のタイムスケジュールはわかっていたから、スライドショーを上映する時間にある程度合わせていただけだ。
まぁ上映時間とズレてたとしても、呑口重彦が突然倒れるだけなんだがな。
そう考えたら別に暗い中で倒れる必要なかったな。ピスコの犯行を知ってたから、俺もそこに引っ張られてしまったようだ。
「ただいまシェリー。終わったぞ」
「…おかえりなさい。もう大丈夫なの?」
「ああ、もう大丈夫だ。どうやら少し怖かったようだな。顔色が悪いぞ?」
「いくらあなたに匿われてるからって、暢気にしているわけにはいかないもの」
「そうか。一応伝えておくが、あの名探偵のボウヤも首を突っ込みそうだったから止めておいたよ」
「彼、自分が殺されるかもしれないって可能性を考えないのかしら?」
「さてな。それはそうと、約束していた食事にでも出かけようじゃないか。ケーキバイキングにでも行くか?」
「…そうね、あまり悪い方向にばかり考えても仕方ないものね。それじゃ準備するわ」
どうやら
言っても理解できないだろうから仕方ない事だが、それでもマシなほうだぞシェリー。
無鉄砲な探偵に付き合って閉じ込められたり、その結果ジンに見つかったりするより大人しく隠れ家にいるほうが断然いいだろう。
こういう時は日常を実感することで恐怖が薄れたりするものさ。
ということで、シェリーと一緒にケーキバイキングにやってきたわけだ。
俺1人ならば来れない場所ではあるが、今の俺には
こういうところは女性客が多いからね。
まぁその
シェリーが今まで心細かった分、今度は俺に味わえってことか?
クククッ、(勢力バランスも俺たちも)フェアじゃないとなシェリー
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クククッ、まだまだ先のようだぜシェリー
今日は日曜日だ。世間的には休日なんだろうが、基本的に俺にはあまり関係がない。
まぁ黒の組織が日曜日定休とかだったらビックリだよな。「あいつを始末してこい」「残業代出るんですか?」とか会話のある犯罪組織とか嫌だ。
俺の場合は直の上司があのジンなせいもあって指令が来たら即行動を心がけている。その分結構好き勝手させてもらってるので他のヤツはどうか知らんが俺は動きやすいと思っている。
前回ピスコを助けた事で無駄に組織としての力を落とすような事にはならなかったし、俺としてはひとまず安心といったところだ。
まぁ俺の事をピスコは知らないんだけどさ。今はまだそれでいい。
これから先俺の目的のためにも、ピスコの表の立場・大手自動車メーカー会長というのは切り捨てるにはもったいないからな。
これでピスコが生存したことでアイリッシュとジンの確執フラグも折れたし、いざという時はしっかり働いてくれる事だろう。
ジンや他の面々が日本にいたことで少々気負っていたシェリーも今じゃすっかり元通りだ。
相変わらず読書したり紅茶飲んでたりと姿はちっちゃいのにしっかり才女といった感じだな。
そんなシェリーだが、今は研究を一時中断してのんびりと過ごしている。
というか「工藤くんが元の姿に戻ったっていうそれを持ってきてもらってから研究したほうが効率がいいから」という事で、つまり俺待ちという事だな。
せっつかれてるわけでもないので、そのうち大阪に行って服部平次と話してみようとは思っているがいつになるやら…
何せ今俺がいるのは大阪の服部のところじゃなく東京の喫茶店なのだから。
別に組織の仕事というわけではない。そう、いつもの俺の目的のためだ。
ただこれがまた難易度が高くてどうしたもんかと考えている状況だ。いや、接触したりするのは簡単なんだが…
一応いつもの如く二兎を追いながら1匹得られればいいというプランで行くつもりではあるんだが、
「お待たせしました。遅くなってごめんなさい」
「いえいえ、むしろ日曜日なのに呼び出してこちらこそ申し訳ありません。どうにも他の日が都合つかなかったもので…」
「大丈夫です。私は事務所で一番下っ端ですから。ちゃんとお仕事取ってこないと叱られちゃいますしね」
待ち合わせ場所にしたのはオフィス街の近くにある喫茶店だ。日曜日ということもありオフィス街に人はそんなに多くはない。この喫茶店も俺たちだけしかいない。
目の前にいるのは
今の俺は「デザインの依頼をしたいが、打ち合わせする時間が取れないので日曜日でも構わないか?」という事を事前に連絡し、その結果一番年下の森由紀子が来たということだ。
これ自体は予想通りだな。まずは架空のお仕事の話でもしながら好感度を上げるところから始めるとするか。
それじゃ森さん今日はよろしくお願いしますねー。あんまり堅苦しくしなくていいですよ。
緊張しててもいい仕事はできないですしね。リラックスしてリラックス。
その調子でいきましょ。実は依頼したいのは………といった感じなんですよー。
まぁ急いでないので気長に良いものを作ってもらえれば構わないですんで。
話は変わりますが森さんは…あぁ由紀子でいい?それじゃ由紀子さんと呼びますねー。
由紀子さんは日曜日なのにお仕事してて良かったんですか?デートとかしなくて。
え?別れちゃったんですか?可愛いのにもったいない。あー、なるほど。同僚の方と…
今はすっかり仲良し?そうでしたか。あら?来週がその彼の誕生日なんですか?
うーん。事前に接触して段々と仲良くなる計画だったが、これは来週犯行に及ぶということか。
ここで森由紀子に手を貸すのは簡単だが、あんまりコナンにこんな事件まで組織が関わってると思われたくないな。なんかせっかく上げたコナンの好感度が下がりそうだ。
だが、だからといってここで手を引いてもいいのか俺?否、そんな事はあり得ない。
かの聖帝様のように俺も「退かぬ・媚びぬ・省みぬ」の精神でやってやるぜ。
最悪
他に聞きたいセリフはいくらでもあるんだからな。
俺から見たら森由紀子が未練を残しているのは一目瞭然だ。恐らく表面上仲が良くても、その彼氏を奪っていった女に対する憎しみは降り積もっているのだろう。
しかしその奪った女を殺したところで、森由紀子がまた彼女に戻るなんて都合のいいことになるのか?
結局のところ同じ事を繰り返すだけになる気がするんだが…これも一種のヤンデレか?
最後はちょっと誰かと話しただけで「あの女が私の彼氏に色目を使った」とか言って殺すところまで想像できたぞ。
今二十歳だって言ってたし、周りが見えないくらい熱中しちゃったからなのかな?
まぁ人の恋愛模様なんぞどうでもいいんだが。一応良いように表現すれば一途ってことになるだろう。
…でも蘭ちゃんも一途だよな?やっぱり最後はこうなるんだろうか?
蘭ちゃんが「新一!あの女誰なのよ!?」とか言ってハイキックかますのが、ものすごくリアルにイメージできたぞ。
事件の度に飛び出していく新一、その時に女性と話したということで最後は蘭による嫉妬制裁という黄金パターンか。需要あるのかそれ。
でも蘭ちゃん乙女なところもあるからな。今が待ち続ける女的な感じだしどうなんだろ?
ちょっとだけ「工藤新一は女性と一緒に暮らしている」みたいな噂を流して様子を見てみるか?
噂は所詮噂だし、
…そうじゃない。蘭ちゃんがヤンデレかどうか確認してどうすんだ。
喫茶店での話は軽い仕事の依頼の打ち合わせを行い、そこからは森由紀子の好感度を上げる事に集中していたのでそこそこの時間を費やしてしまった。
まぁ今回は初対面だったし、事件なんかの最中でもないからこんなものだろう。
「せっかくの休日にお時間頂いてありがとうございました」
「いえ、私もただ家にいるより仕事をしていたほうが気が紛れますから…」
「ククッ、あまり悲観的に考えないほうがいいですよ。また数日後に来ますから、友達と話すように今は軽く挨拶しましょう」
「…そうですね。話を聞いてもらってありがとうございました」
「もっと軽くいきましょう。そうだなぁ…アデュー!とか言ってみてください」
「え?バイバイとかじゃなくてですか?」
「ええ、なんとなくそっちのほうが良いと思ったんですよ。さぁ、言ってみてください」
「えっと、あでゅー」
「いいですね。それでは名前を呼ぶみたいにもう一度」
「アデュー!」
「うんうん、いい感じです。それでは次回も楽しみにしていますよ」
ククッ、とりあえず覇王大系な竜騎士の名前を呼んでもらうことができたぜ。
問題はあの平和主義お嬢様のほうだが、こっちは次に会う時になんとかするしかないな。
ただ言ってもらうのがなかなか難易度が高いんだよなぁ。まぁどっかの五歳児を演ってもらうよりもマシなほうか。
これ以上ここにいても仕方ないし、仕切り直しということで一旦隠れ家に戻るとしようかな。
俺も次に向けてセリフを言わせるためのストーリーを考えなくてはな。
サンサンクリーニングの時みたいにちょっとずつ顔合わせしながら雑談しつつ、好感度を上げていこうと思ってただけだったからそこまで考えてなかったんだ。
こうも猶予がないとなると、せめて
幸いにも数日は考える時間があるからその間にと思いながら隠れ家に戻っていった俺だったが、そんな事を考えている暇がなくなってしまった。
ウォッカから連絡が入り、以前ジンに提案していた各国スパイ大作戦の件で相談があるとの事だった。
どうやらまとめ役はジンが言っていた通りウォッカが担当することになるのだが、その補佐を立案した俺にやれということだ。
人選については大まかに決まっているらしく、そして潜入させた後はしばらく放っておく事になるため、最後の調整と指示などを俺に任せるということだった。
仕方ない。少々予定が狂ってしまったが、それならそれでやりようはある。
森由紀子のほうには予定が入ってしまったため次回の打ち合わせの延期の連絡をし、シェリーに少しばかり国外へ出ると伝え、すぐさま指定の場所へと向かい集まった面子の様子を見ていく。
なるほど。ほとんどは傘下の人間を使うというわけか。だがそれだけだと少し不安が残るな。
人選は問題ないだろうが、万が一の事を考えて配置などを少し入れ替えたりしながら調整し、表向きの伝手などを利用しながら各国警察組織などへとスパイたちを送り出していった。
「ウォッカ、少々配置をいじったりはしたが後はヤツらの働き次第だ」
「そうか、これで兄貴にもいい報告ができるってもんだ」
「そうそう、この件はウォッカやジンあたりで情報は止めておいてくれよ。ライっていう前例があるからな。あまり
「そこまでしなくても大丈夫な気はするがな。まぁ兄貴には伝えておく」
せっかくここまで来たんだ。バーボンたちに情報が流れたら目も当てられん。
言われた仕事は終わったので日本へと帰ろうと思ったら、なぜかジンから直接連絡がきた。
ウォッカの報告では何か足りなかったのか?
「ジンか、さっきウォッカに報告したばかりなんだが…」
「ああ、それは聞いた。わざわざ配置をいじったらしいがなぜだ?」
「1つの組織に数人ずつ潜り込ませるからな。その地域の傘下のやつらばかりなら芋づる式になりかねん。だから最悪そいつが捕まっても他のヤツに目が行かないようにするためだ」
「俺とウォッカ以外に言うなと言ったのはなぜだ」
「ライの件があったからな。俺は他の幹部連中を知らん。ならばわざわざ広めてやる必要がないだけだ。ジンが必要だと思うのならその時に伝えれば問題ないだろう」
「…お前は俺より用心深いからな。まぁいい。あの方には伝えるが、お前の言う通り他のヤツに教えてやる義理はねぇな」
「どこに
どうやらジンは俺がウォッカにした報告だけでは足りなくて直接聞きたかったようだな。
まぁ配置を入れ替えたりした事の確認は前置きで、本命はなぜ幹部にも黙っていろと言ったのかってところか。
俺の思惑はバーボンたちスパイに知られたくないってだけなんだが、ピンポイントで教えるなって言うほうが怪しいからな。
それなら誰にも教えるなっていうほうが用心深いジンには合っているだろう。俺もジンと同じく用心深い認定されてしまったが。
慎重に動いてるのは確かだし、いろいろと暗躍してたりもするから間違ってはいないしな。
しかし結構時間を使ってしまった。もう環状線事件は起こった後だろうな。
俺はまだ日本に戻ってからも今やったように日本の警察関係に潜り込ませるスパイへ指示を出さないといけないし、もうしばらくは自由に動けそうもない。
日本でのスパイ潜入させる件についてはピスコの力も借りたようだ。このあたりはウォッカがやり取りしてたから詳しい事は聞いていない。
ただ、ピスコにもスパイを潜り込ませるという事は伝えていないらしい。少し探りたいことがあるからという程度で伝手を使って根回ししたようだ。
ピスコのほうも、主に潜入を担当するウォッカからの話だし特に疑う事もなかったんだろう。
子分肌だったウォッカが威厳を持ち出したというか、幹部に相応しい振る舞いになりつつあるということは俺の耳にも入っている。
良かったな
これで俺の組織の仕事は終わった。次は俺の目的のほうで仕事の疲れを吹き飛ばすとしよう。
環状線の電車内で殺人事件があった事を確認した後に警視庁へと向かい、目暮警部に事情を説明して森由紀子に面会を頼んでみた。
理由は「彼女自身に仕事を頼んでおり、それを引き継いでもらうにもその旨を伝えてからにしておきたい」という適当な理由だ。
「由紀子さん、まさかこんなところで会うことになるとは思いませんでしたよ」
「…ごめんなさい。いろいろ話を聞いてもらったりしたのに、結局私は清美が許せなかったんです」
「いつの世も痴情のもつれというのはあるものです。なかなか平和な世の中にはならないものですねぇ。あなたさえ良ければ、私があなたの望む平和をご用意しましょうか?」
「なっ!?」
「なに、あなたのような方が一時の感情で突き進んでしまうのも仕方ない事です。ならば求めるものが手の中にあればあなたもこんな事にはならなかったはずですよね。差し上げますよ、あなたの平和を」
「バカにして…平和は誰かから与えられるものではありません!私は自分で掴んでみせます!」
「おや、それは失礼しました。ならば私は応援するだけにしておきますね。もちろん協力できる事は多いと思いますのでいつでも仰ってください」
「あの…失礼な事を言ってすみませんでした。つい興奮しちゃって。せっかく頂いた依頼も…」
「元々気長にとお願いしていたものです。由紀子さんが出てこられてからでも構いません。その間の慰み程度にでも考えておいてください」
ククッ、任務完了。
つい脳内でTwo-Mixが流れてしまった。決してコナンではない。コナンではないんだ。
さすがに留置所をシェルターに見立てて「シェルターは完璧なんだな!?」とかEndless Waltzやりたかったけど無理だった。ツインバスターライフルとか持ってないしな。
あと俺が自爆するといろいろと大変な事になりかねない。
面会も終わったし、このまま次の標的へと移るとしよう。もう接触するための布石は打たれている。
クククッ、(
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
17話
そのため、黒の組織の流れをある程度先に進めてしまってからご都合主義のコナン時空でサブキャラたちを出していこうと思います。
「なっ……なんなのよこれ…?」
私は今1冊のノートを見ている。それも隠れ家にある彼の部屋に忍び込んで…
この隠れ家に来て彼と一緒に過ごすことが多くなったけれど、未だに彼の
私が彼に言われてやったことなんて『地下にある録音設備で指定された言葉を言う』だけしかない。
他には歌を指定されたこともあるけれど、あれはおそらく気分転換させようとかいう類のものだろう。
今までずっと研究所生活であまり最近の流行りとかには詳しくないからか聞いたことのない曲だったけど、気に入ったから誰の曲か聞いても教えてくれなかったのは理由がわからなかった。
それはいいとして、私に教えてくれないってことは言えないような目的…もちろん組織の人間でもあるから真っ当な目的ではないだろうことは覚悟しているつもり。
そしてそれを知ることで阻止することはできなくても少しでも遅らせることでもできれば…と思い色々と考えていたけどまったく予想もできなかった。そのため、私は彼の留守を狙って思い切った行動に出ることにした。
それは…『彼の部屋に無断で侵入し何か手がかりを探す』ということだ。
この隠れ家には部屋ごとに鍵なんて付いていない。当然私に充てがわれた部屋も鍵なんてないけれど、私はほとんどこの隠れ家で過ごしているからあまり関係がない。
ただ彼の場合は違う。組織からの命令で海外に行ったりもするのに、部屋に入られることがあるとは思わないのかしら?信用されてると思えたらいいけど、もしかして試されてるの…?
こっそり部屋に入ってみたけれど、初めて見た彼の部屋の中はあまり物が多くなかった。そのわりには服とか散らばっていたけれど…脱ぎ散らかしているわけじゃないみたいだけど、どうしてこういうところは雑だったりするのかしら?そういえば食事とかもあまり気を使ってなかったわね。とりあえず散らばっている服は気になったので畳んでおいて…
机の上にはパソコンが1台置いてある。この中を見れば有用な情報が手に入るかもしれない。ただパスワードはかかっているだろうし、下手な事をしてそれが見つかるわけにもいかない、
なので別の何かがないかと机の引き出しを開けたら、1冊のノートだけが入っていた。
気になってそのノートの中を見てみれば、そこにはびっしりと人名が書き連ねられていた。その名前を見る限り国籍も性別も様々なようだ。中には仮名のようなものもあり、もしかしたら彼にしかわからないようにしているのかもしれない。
何よりも恐ろしいのは、その名前の横にチェックマークが付けられている名前と付けられていない名前があるということ。
最初のほうの名前の横にはチェックマークが並んでいる。つまりそれは、この人物がもう存在しないだろうという事がわかってしまうから嫌な気分になる。
そこから次に彼が狙おうとしているだろうと予測できる人物の名前は…『野原しんのすけAを呼ぶ5才児』と書かれている。どうして5才の子供が…と思ってしまうが、彼は裏切り者だけでなく敵対組織への対応もしているらしい。そして名前の後ろに書かれていたAを呼ぶという部分…このAという人物をおびき寄せるためだけに5才の子供を利用しようという企みなんだろうということが伺える。
沈鬱な気分になりながらそんなノートをパラパラとめくっていったら、名前ではない単語を見つけることができた。きっとこのキーワードは彼の計画名それ自体か、本来の目的に近づくための計画名と思われる。
やっと得ることができた手がかりに胸を撫で下ろし、ふと彼の事を考える。
彼とは私の監視役として研究所に来た時に初めて会ったけれど、元々その噂だけは聞いていた。
それでいて情報の取り扱いにも精通しており、本来なら殲滅する予定だったはずの敵対組織を傘下に収めて利用するといった事までやってのけるそうだ。
彼はその情報によってなのか裏切り者を見つけることに秀でているらしく、それまでまったく裏切るような素振りもなかった相手に突然裏切り者の烙印を押すらしいのだ。
その後実際に調べてみると情報の横流しなどの証拠が出てくるから組織内の監視としても信用されているとの事だった。
これも噂程度だけど、一度は幹部として誘いがあったにも関わらずそれを蹴ってジンの部下として動いているという変わり者という話も聞いたことがある。
嘘か本当かはわからないけれど『裏切り者を粛清する時は喜々として手を下す』とか『どれだけの事をしたのかわからせるために家族を目の前で殺してから本人を絶望させて、それを見て笑っている』などといった話も聞いたことがある。
そういった噂があるからなのか、研究者たちの間で『決して近づいてはいけない』人物と思われていたようだった。
私がそれを聞いた時は少々疑いはしたものの、嘘だとも言い切れなかった。何せあのジンが部下として大事な場面は任せるほどだとも言われていたからだ。
そんな彼が私の監視として来たときはジンの代わりとして納得できる人材としか思わなかった。他の研究者たちからは同情の視線が少し鬱陶しかったけれど、話してみると意外とまともだったというのが最初の印象だったわ。ちょっとそっけない態度をしたくらいでジンと代わろうとしたのは彼なりの意趣返しだったんでしょうね。
彼はお姉ちゃんの事を気遣ったりしていたけれど、その時は私を懐柔しようとしているとしか思わなかったから当たり障りのない返事しかしていなかった。
あまり下手な事を言ってお姉ちゃんに被害が及ぶような事だけは避けたかったから…ジンの部下なんて信用できるはずもないし。
その後彼が別の任務でいない間に諸々あって私が子供の体になって組織から逃亡し、工藤くんと一緒にいるところに現れた時は殺される事を覚悟したわ。
お姉ちゃんも死んだと聞かされ、組織から逃げ出した私を追いかけてきたんだろうけど、彼の恐ろしいところは工藤くんの正体まで見破っていたことだった。
組織にとって裏切り者である私、そして組織の試作薬で小さくなった工藤くんの事も知っている以上その場で始末されるのかと思っていたけれど、工藤くんの家で彼から出てきた言葉は私にとって信じられないものだった。
もし逆らったらと考えると私には大人しくついていくしか選択肢がなかった…せめてもの抵抗として、態度や言葉遣いだけは研究所にいたときと同じようにしていただけ。そのはずなのにそこからお姉ちゃんの生存を聞かされ、更には私を匿ってくれるとまで言い出した時は自分の耳を信じられなかったくらいだったわ。
隠れ家に連れてこられて最初にしたことがマイクに向かわされて、こんなことが彼の目的なのかと呆れたりもしていたけれど、よく考えてみればそんなはずはないと思い直した。指定された言葉によっては「嫌」って言ったらすぐに諦めてくれたし拘っているようにも思えなかったから。
この声を録る行為が何の意味があるのかはまだわからないけど、恐らく何かに利用しているんでしょうね。
それでも米花町に用がある時は工藤くんに私の無事を伝えてきてくれたり伝言があれば伝えてくれたりしてくれるのがよくわからなかった。
組織の人間として考えれば私を人質として工藤くんたちを黙らせるか消せばいいし、私はお姉ちゃんの名前を出されるだけで逆らえなくなるのだから。
そんな私の考えなんて知ってか知らずか、彼は組織で研究を続けているデータなども持ってきてくれるし、私がそれで研究していようがしていなかろうが気にもしていなさそうな感じさえする。
だからこそ余計にわからなくなってしまうのよね。組織の連中のように研究成果が欲しいようにも見えない。地下室での変な行動を抜きにすると私がしていることって、ご飯作ってお茶淹れて家事して…これって家政婦?まさかね…
私は研究者であって探偵でもなんでもないからこういうの得意じゃないのよ。推理するのではなくトライアンドエラーで答えを導き出すタイプだし…
そんな彼の情報を頭の中で整理していた私は今の自分のうかつな行動を後悔した。彼がなぜ私に対して友好的に接しているのかは未だに答えどころかヒントすらわからないけれど、勝手に部屋に忍び込んでターゲットリストだろうノートを見てしまった。
ターゲットの名前を見たくらいじゃ何も問題ないかもしれないけれど、今の私の立場は彼の気分次第で天国にも地獄にもなるという事を思い出したから…
頭の中では『彼ならこれくらいでは怒らないだろう』という気持ちがあるけれど『もしかしたら…』という気持ちもありぐるぐると回っている。
とにかく落ち着かなきゃ…ノートを元に戻して彼の部屋を飛び出し、自分の部屋に戻ってこれからどうするかを考える。とはいえ、私にある選択肢は『正直に話す』か『黙っている』しかない。
彼が隠れ家を出てからどれくらいで戻ってくるのかはマチマチでわからないけれど、それまでにどうするか決めておかないと…
それでもそのノートの中に知っている名前がなかった事を不幸中の幸いだと、ほんの少し安心してしまった私は嫌な女かもしれないわね。
結局数日経っても答えは出せず、ついに彼が帰ってきてしまった。
「ただいまシェリー。少し話があるんだが構わないか?」
「何よ突然。何かあったのかしら?」
「いいや、俺もそろそろ組織とは別に動き出そうと思ってね。それでシェリーにも協力してもらおうと思っているんだ」
「内容によるわね…と言いたいところだけど、私に選択肢なんて無いのはわかってるわ」
やっぱり今まで私にさせていた事はブラフだったということね。そして組織とは別で動く…それが組織と敵対するような話なのかわからない。でも私が拒否したら誰かにしわ寄せがいく可能性がある以上、できるだけ私も関与して少しでも把握しておいたほうが得策ね。
でも本当はいつも通りに接しながらも、すぐに室内に入ったことを告げるつもりだったのに先を越されてしまった。
「あの…それでね」
「シェリー、話はリビングで紅茶でも飲みながらゆっくりするとしよう。ひとまず着替えてくるよ」
そう言って部屋へと向かっていく姿を見ながら、焦りすぎだと自分を戒める。そのままキッチンに向かいお湯を沸かしていたら、戻ってきた彼から言われた言葉で心臓が止まるかと思った。
「シェリー、部屋を片付けてくれたのか?散らかしていて悪かったね」
「っ!?そ、そうよ。勝手に入ったのは謝るわ。ごめんなさい」
「いや、構わないさ。脱ぎ散らかすわけじゃないんだが、どうにも面倒でね」
「それでね…あの、机の中にあったノートも勝手に見ちゃったの。本当にごめんなさい」
「ああ、アレを見たのか。見たところでシェリーには意味がわからなかっただろう?」
「ええ…それでね、あのノートに書かれている名前の人は…
「(そもそもキャラ名だから)存在していないな。いや、俺の心の中では生きていると言うべきか。それがどうしたんだ?」
「いえ、何でもないわ。変なことを聞いてごめんなさい」
どうして部屋に入ったのがわかったのかと思ったら、そういえば散らかっている服を見てつい畳んじゃったような…私ったら何やってるのよ!?
ただ、どうやら部屋に勝手に入った事もノートを勝手に見た事も怒ってはいないようね。それでもやっぱりというか、あのノートに名前が書かれていてチェックを付けられた人物はもうこの世にいないということは彼の返事でわかってしまった…
それにしても心の中では生きているなんて、本当の彼は命を消してしまう事を悔やみながら組織に従っているとでもいうの?彼の表情からは気持ちを読み取ることができないのは、私がそういった事に長けていないからなのか彼が一枚上手だからなのか…
そこから彼が動き出すという話を聞いたけれど、まだ今は具体的に動き出すわけではないため詳細は教えてもらえなかった。
もしかしたら何も聞かずに大人しくしているのが一番みんなにとって良い事なのかもしれないけれど、後から聞かされて後悔するくらいなら最初から関わっていたほうがマシなはず…
そんな事を伝えたら、私の心の中を見透かしたように彼から放たれた言葉を聞いて心臓が飛び跳ねたような気がした。
「ククッ、シェリーは家族想いだな。そんなシェリーにこの
『傷つく事は恐くない、だけどけして強くない。ただ何もしないままで、悔やんだりはしたくない』
子供の体になっても自分の身を挺して姉を守ろうとするシェリーにとって、そして今もそうやって何とか動こうとしているシェリーにとって響くところのある良いフレーズだと思わないか?」
しかも聞けば私にゆかりのある人の言葉らしい。まるで私の事をよく知っているかのような言葉ね。でも私に関係する人なんてそう多くないはず…そういえば彼がいつから組織にいるのかも知らないわ。
もしかしたらお姉ちゃんだけじゃなく私の両親とも交流があった可能性があるということ…?それなら私とお姉ちゃんを助けて匿っている事にも説明がつくかもしれない。もちろん都合の良い解釈だろうとはわかっているけれど。
結局その言葉を誰が言っていたのかまでは教えてくれなかったけど、その言葉の通り何もしないで「あの時こうしていれば…」なんて思いたくないものね。
それにヒントはもう手に入った。あのノートに書かれていたのはその名称だけだけれど、少なくとも場所は間違いないだろう。
決して彼と敵対したいわけじゃないし私は探偵ではないけれど、教えてくれないのならばこうやって少しずつ手がかりを見つけていって最後はたどり着いてみせるわ。
彼の立てている計画が誰にどんな被害を齎すのかわからないけれども、私にも関わらせるということはその時期が来たら教えてくれるはず。その時は私もその場所にいる可能性が高いってことよね。
工藤くんや阿笠博士たちには話すわけにはいかない…話したらあの小さな探偵はきっと首を突っ込んでくる。彼が私との約束で工藤くんたちに組織の危険がないようにしてくれている以上、余計な事を言って危険に晒すような事はできないわ。
そう、彼のノートにはこう書かれていた。
『東都ブギーナイト計画』と…………
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
18話
「この度はご迷惑をおかけして誠に申し訳ありませんでした」
「いえいえ、お気になさらず。こんな事が起こるなんて誰にもわからない事ですから仕方がないですよ」
「…そう言っていただけると助かります」
前回森由紀子が逮捕されてしまったわけだが、俺が依頼していた仕事が消えたわけじゃない。元々森由紀子個人に頼んだのではなく、所属するデザイン事務所に依頼をして担当したのが森由紀子だっただけなんだから。
つまりデザイン事務所的には仕事の依頼を受けたにも関わらず、その担当者が同僚である橋本清美を殺害したことで逮捕されてしまったという面目丸つぶれな状況になってしまったわけだ。
しかも俺は仕事を依頼したてのご新規さん、新しい顧客に対してマイナスイメージを持たれてしまっているというところから平身低頭で謝っている状態だ。
まぁ俺は別に不祥事なんてまったく思ってないわけだが…どちらかと言うと予定通りだ。
何せ今森由紀子の代わりとして目の前で謝っているのは同じデザイン事務所に所属し先輩でもあった河合静香だ。
だが決して凡骨
白衣を着て汎用人型決戦兵器の研究してると思いきやさらしを巻いて一心不乱に太鼓を叩いていたり、海に嫌われるという悪魔的な実を食べて手足を咲かせたりといろいろやっている人のほうだ。
「いろいろと大変だとは思いますが、依頼を取りやめるつもりはありませんよ。ですのでもう謝るのは止めにしましょう?河合さんが引き継いでいただけるようですし、これからよろしくお願いしますね」
「本当にありがとうございます。清美だけじゃなく由紀子までいなくなってしまって、これからどうしたらいいのか…」
「そう心配することもありませんよ。あなたは何もしていないのだから、胸を張って仕事に打ち込めばいいんです」
どうやら森由紀子の事件がまだ尾を引いているようだな。まぁ考えてみれば同僚が2人突然いなくなったわけだし当然か。
しかも殺人事件だもんな。このあたりはあんまり描かれてないところだから知らなかったが何事もなかったかのように過ごしてたらおかしいか。
森由紀子の事件の直後にあまり怪しまれる行動をするわけにもいかないので、今日のところは引き継ぎの顔つなぎだけの予定だ。
サンサンクリーニングのア○リスフィールお母さんのように少しずつ好感度を上げていけばそのうち楽しめるようになるだろう。
「それでは今日のところはこれで失礼しますね。由紀子さんの事は大変でしょうが、元々期限なんてあってないようなものなので落ち着いてからでも連絡をください」
「わかりました。これからよろしくお願いします」
さて、これで森由紀子の一連の顔つなぎはできたことだし、これからどうするかな…
いい加減パイカルの事をシェリーに伝えないといけないような気もするが、どうすれば都合がいいか悩むところだ。
一応前もって和葉ちゃんに「今度東京で毛利探偵事務所に顔出そうと思うんだけど、服部くんと被ってもいけないからお土産何渡したか聞きたいんだ」ってことで服部平次のアドレスをゲットしてある。
それだけだと言い訳として弱かったのでシェリーと一緒にまた遊びに行ってもいいか聞くためという名目も付け加えてあるが…
そんな事を考えながらシェリーが待つ隠れ家へ戻ろうと思っていたら、ウォッカから電話がかかってきた。
用件は「お前が考えた計画の第一段階が無事に終わったぞ」ということだった。つまり世界中スパイ大作戦がついに本格的に動き出したということでもある。
クククッ、それじゃあいよいよ俺も本気で動き出すとしようか…
そのためにはシェリーにも協力してもらう必要がある。今まではただ匿ってきただけだが、ここからはシェリーの協力なしでは難しい部分もあるからだ。
本人の意向も考慮するがきっとシェリーなら喜んで協力してくれるはずだ。今まで積み重ねてきた好感度はきっとそれなりの高さにあると信じている!
「ただいまシェリー。少し話があるんだが構わないか?」
「何よ突然。何かあったのかしら?」
「いいや、俺もそろそろ組織とは別に動き出そうと思ってね。それでシェリーにも協力してもらおうと思っているんだ」
「内容によるわね…と言いたいところだけど、私に選択肢なんて無いのはわかってるわ」
隠れ家に戻ってきて早々にシェリーに協力を持ちかけただけなのに、中身を聞くこともなく協力してくれるようだ。ただなんで「選択肢がない」って言葉が出てくるのかわからんな。
もしかして断ったらマズイ事になるとでも思ってるのかな?もしそうならいらない心配だと思うんだが…
シェリーのほうも何か言いたそうだし話は着替えてリビングで寛ぎながらでもいいだろう。部屋に戻り着替えようとして、服が畳まれていることに気がついた。
あれ、シェリーもしかして部屋の掃除とかしてくれてたのかな?もしかしてさっき何かを言いたそうにしてたのはそれか…「あなた服くらいちゃんと畳みなさいよ」とかそういう類の事な気がするな。
リビングでシェリーの淹れてくれた紅茶を飲みながらお礼を言ったら謝られた。どうやら机に入れてあったノートを見たらしい。
別にアレを見られたところで何も問題ない。何せ俺にしかわからない名前だからな。
書いてある内容も『惣流アスカラングレー』とか『碇ゲンドウ』とか『ベジータ』とか書いてあるだけだ。録音に成功したらチェックマーク付けて、これから接触するであろうターゲットの名前を見てはどう立ち回るか考えたりするだけのリストでしかない。
まぁそれはそれとして、ひとまずシェリーには動き出す準備というか近い内にそういう動きをするということだけ伝えておく。
「先程言った動き出すという話だが、そう難しい事じゃない。それにすぐに何かをするわけじゃなく、今はまだそのための準備と言ったところだ」
「あなたが善意で私とお姉ちゃんを助けたわけじゃないことはわかっていたわ。地下にある
「いや、あれは俺にとっては重要な設備なんだぞ?むしろあそこが心臓部と言っても良いくらいだ」
「ふーん…」
シェリーの中ではあのセリフたちはカモフラージュ扱いになってたのか…というか、シェリーは何か勘違いをしているような気がするな。
確かに元々シェリーを狙っていたんだろうと言われればそれまでなんだが…シェリーが言うような善意100%で助けたわけじゃないのはそうだけど、その結果姉も無事で本人も狙われるような危険がなくて良い環境だと思うんだが。
「シェリー、どうやら誤解があるようだが別に無理に協力しろとは言っていないぞ。嫌ならそれでも構わない」
「そうやって表向きは甘やかすのね…あなたがいない間に自分の立場を考えてみたのだけど、改めて私はあなたに逆らえるような立場じゃないって思ったのよ」
「うん?」
「今はとても丁重に扱ってくれてることは理解しているわ。ついそれに甘えてしまっていたけれど、私が何かあなたの気分を害するような事をしてしまうとお姉ちゃんまで危険になる可能性があるのよね。だからといって何もせずに大人しくしていて、後から聞かされるくらいなら最初から聞いていたほうがいくらかマシというものよ」
「ククッ、シェリーは家族想いだな。そんなシェリーにこの
『傷つく事は恐くない、だけどけして強くない。ただ何もしないままで、悔やんだりはしたくない』
子供の体になっても自分の身を挺して姉を守ろうとするシェリーにとって、そして今もそうやって何とか動こうとしているシェリーにとって響くところのある良いフレーズだと思わないか?」
「そうね…それでこれは誰の言葉なの?」
「クククッ、シェリーにとってとてもゆかりのあるひとさ」
「私にゆかりのある…?(お姉ちゃん?いえ、違うわね。でもそうすると…まさか)」
何やら考え事をしているようだが、giveでaなreasonの中でもここはとても良いフレーズだろう?
シェリーのように直感ではなく理論で行動するタイプの人間ってのは何かしら動くために理由が必要なものだ。そしてそんなシェリーにピッタリだと思ってたんだよ。シェリーにゆかりがあるひとってのも嘘じゃないしな!
それはそれとして、俺は俺でこれからの事を考えないといけない。何せここから先の立ち回りはいろいろと慎重に動いていかないといけないからだ。
組織の人間として指令をこなしつつ、潜入しているスパイ幹部たちに気取られないように綿密な計画を立てる。まぁ現時点では面識もないから気取られるも何もないんだが…そしてそうやってスパイたちが何も知らない間に俺は俺の目的を達成していく。
そのための最後のピースになるのがシェリー、いや
シェリー本人はどうやら協力してくれる気のようだし成功は約束されたようなものだな。やはり日頃から積み重ねてきた好感度は伊達ではないようだ。
しかし逆らうとお姉ちゃんが危険になるとかそういう理屈っぽい言い訳が必要なところは研究者気質って感じがするな。
本当は宮野明美を普通に助けてあげればいいだけなんだろうけど、それをするにはリスクが大きすぎる。何せ妹が組織にいるにも関わらず
そして俺はそこにほんのちょこっとだけ
しかも俺の頭の中にはすでにいくつかの計画が浮かんでおり、これからの事を考えると楽しみで仕方がない。
「ねぇ、お茶を飲みながらニヤニヤしないでくれない?」
「ああ、すまないな。ちょっとこれからの事を考えていただけだ」
「これからの事…
「そうか?
「…そんな事ばかり考えていたらいつか痛い目を見るわよ」
ただこれから始まるであろう大規模な計画が無事達成できた時のことを考えてニヤニヤしてしまっただけなのに、なぜシェリーはそんな複雑な表情をしているんだろう。
痛い目を見るなんて心配して言ってくれるのは嬉しいが、既に第一段階は終わっているし第二段階もすぐだ。まだ伝えるわけにはいかないが第二段階が完了したら心配の種が杞憂であることを教えてあげるとしよう。そうすればシェリーも安心してくれるに違いない。そう考えるとこれからの事についてもやる気が出てくるってものだ。
シェリーとの話を終え、部屋に戻った俺は各員へ指示を出していく。この各員とは組織の構成員ではなく各国の警察組織に潜入しているスパイたちや傘下に収めた外部組織の事だ。
いくら潜入させたとはいえ今はまだ末端だろうし、時間をかけるよりもさっさと手柄を立てさせてある程度の地位まで上げてやったほうが効率が良いというわけだ。連中の手柄になる要素なんて周りを見れば山のようにあるわけだし、ただ敵対組織を潰すのではなく傘下に収めていった努力の甲斐もあるというもんだぜ。そいつらに黒い服装を指定してあるメモを持たせて取引をするよう指示し、スパイのほうにはその取引場所や日時の情報を流してやる。それだけでスパイは評価され警察は犯罪を取り締まることができる。捕まるのは傘下の組織構成員だし黒の組織の情報は持ってないから何も出てこない。そしてこの計画の肝はある単語の書かれたメモを持たせて逮捕させることにある。
「クククッ、下準備は順調だな。これで閣下の…おっと、これはまだ早いな…」
順調に進んでいく第二段階に満足していた俺は、このとき部屋の外で盗み聞きしていたシェリーに気付くことができなかった。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
19話
『新一!いますぐワシの家に来てくれ!あ、あの男がまた来とるんじゃ!』
「なっ!?わかった!今すぐ行く!」
くそっ!まさかまたあの男が来るなんて…予想外にも程があるぜ。
あの男はある日突然オレたちの前に現れ、オレを含む周囲の人間を人質として灰原を組織とは別のどこかへと連れ去った。そしてその灰原を実験台にしたり幼女趣味でひどい目に遭わせ、更にはオレの周辺環境を全部把握し人質として下手に動けないようにしてきた。そんな男がまた博士のところにやってきているらしい。
阿笠博士からの連絡を受けて、急いで博士の家へと向かいながら頭を働かせる。
最後にあの男に会ったのは灰原が所属していた黒の組織の幹部であるジンを偶然見つけて追跡したときだ。到着した先では『映画監督・酒巻昭を偲ぶ会』が催されており、そこで政治家である呑口重彦が突然倒れそのまま死亡するという事件が起きた。
当然殺人事件を疑い聞き込みなどをしようとしていた矢先に、まるでオレがいることがわかっていたかのようにあの男が目の前に現れたんだ。
そしてあの男は「
そうじゃなければ今頃とっくに邪魔者として殺されていた可能性のほうが高い。まだ数えるほどしか相対したことはないが、一応取引などの約束は守るタイプということなのかもしれない。もちろんあいつの言葉を鵜呑みにすることはできないし、警戒だけはしておく必要があるが。
ただでさえ灰原はオレや博士たちを人質にされてしまっているから逃げるどころか何をされても拒むことすらできない状態だ。そしてオレも灰原が連れて行かれ、更に蘭たちも実質的に人質にされていると言ってもいい状態で、口惜しいが灰原の行方を探すことすら満足にできない。
まさかあの時言っていた「答え合わせ」のために来たわけじゃねーだろう。だが逆に考えればこれはチャンスでもある。今すぐは難しくてもなんとか灰原を助け出すための糸口を見つけねーと…
大急ぎで阿笠博士の家へと到着したオレは勝手知ったるとばかりに中へと入っていく。そこには博士の電話の話の通りあの男が悠々と座って待っていた。
「いつぞや以来だな工藤新一くん。そういえばこの前の『答え』は出せたかい?」
「……くっ、結局突発性の心臓発作として処理された」
「ククッ、そうか。彼はきっと心臓が弱かったんだろう。次は呑口議員を偲ぶ会が行われるかもしれないな」
ふざけるな!あれからおっちゃん経由で目暮警部に聞いても心臓発作で事件性はないって事だった…だがこいつらが関わっている以上そんなことは有り得ないんだ。それにわざわざ『答え合わせ』なんて言っていた以上オレにこの事件を解いてみろって事で間違ってないはずだ。
今だってそうだ。答えは出せたかなんて聞くってことは、こいつに止められるまでの間に得た情報で推理してみろって事だろう。
犯人がこいつらだって確信はある…だがその確信に至るまでのピースが足りない。こいつがあの時邪魔しなければピースは揃っていたかもしれないのに、それを邪魔しておいて答え合わせなんてなめやがって!
「それで何の用があってここに来た!?」
「ああ、ちょっと阿笠博士に作ってもらいたいものがあるんだが、そのついでに君とも少し話しておきたい事があってね」
この男の話を聞きながら何度も何度も考えたこの男についてわかっている事を頭の中で並べていく。
黒の組織の人間でありながら自分の目的のために灰原を連れ去っている。こいつ自身が持つ独自の情報網で灰原の居場所どころか、初めて会った時にはオレの正体まで既に知っていた。そしておそらく組織とは別で灰原が研究していたものを進めている。それだけでは飽き足らず連れ去っただけでなく利用しつくすと言わんばかりに灰原を弄んでいたり薬物の実験台にすら利用したりしている。だがその反面、灰原との約束だからとオレが組織に近づく事を止めたりもする。
今までの会話などからの予想も入ってるが、これだけじゃこの男の目的がまったく見えてこねー。最初はオレの身体を小さくしやがった黒の組織を追っていたが、今じゃこの男の目的を阻止することが組織を追う事に対しても近道なんじゃないかとも思えてくる……だが今この男の要求を突っぱねるには危険が大きすぎるのも事実だ。既にオレの周りの人間と接点を持たれており、
……この男はオレとも話をするために待っていたと言っていた。ならば会話の中で少しでもヒントになるような言葉を引き出すだけだ。焦らずよく考えろ工藤新一、必ずどこかにヒントはあるはずだ!
「それで……オレに話しておきたい事ってのは何なんだ?」
「ククッ、そう警戒する必要はないさ。そうだな……これは俺と君が実は似た者同士だったということに気づいたからなんだ。きっとこの話を聞けばきっと君も理解してくれるだろう」
「似た者同士だと?そんなわけがねーだろうが!」
「まぁ話を聞きたまえ。確かに一見すれば我々に接点はないように思えるかもしれない…だが、よく考えてみてほしい……だんだんと認めたくない事実が見えてくるんじゃないかい?」
オレとこの男の接点だと…?決して
「ああ、気に入らねーが確かに共通点はあるな。で、
「理解できたようで何よりだ。俺と君には方向性の違いはあれども、その本質は同じようなもの……つまり我々はその点においてわかりあえるという事だと思わないか?」
「思わねーな。どこまでいっても
まさかオレを懐柔して犯罪者の道に引きずり込むつもりなのか!?何がわかりあえるだ!つまりはオレに犯罪行為をさせようとしているって事じゃねーか!灰原を目の前で連れ去り、周り全部を人質にしておいて何を言ってやがる!
「ふむ……認めたくないのか存外頑固だな。確かに君はそう思っているかもしれないが、俺からすれば大して変わらないと言っておこう……そしてそれはシェリーも例外ではない。何せ彼女もまた同じような状況だからね。無論望んだわけではないんだが……」
「あたりめーだ!灰原を
確かに探偵なんてやってれば事件は身近にあるものだ。それは間違いねーが、事件を解決する探偵が犯罪者になるなんて物語の中だけで十分だ。そして灰原だって黒の組織にいた事は事実かもしれねーが、決して望んでそこにいたわけじゃねーことくらいわかってる。傍から見れば灰原も犯罪の片棒を担いだと言われても仕方ないかもしれない……だが、それでも喜々として灰原を利用してるオメーが言っていい言葉じゃねーんだ!
「確かに君の言う通りシェリーがそういう扱いを受けるのは不本意だろう。だが何を言ったところで
「くっ……灰原が
「何を言っている?アレはシェリーの自業自得だろう……まぁ今はそんな話をしたいわけじゃない。工藤新一くん、君なら自分の置かれた状況を理解できると思っていたんだが、それでもまだ認められないのかな?」
自分の置かれた状況だと?そんなもんオメーと初めて会った時から理解しているに決まってんだろ!わざわざ蘭や園子、元太たちの名前を出してきておいて今更何を言ってやがる。だがここで弱気になるわけにはいかねー……ほんの少しでもこの男に付け入る隙きを与えてしまえば取り返しのつかない事になっちまう。
「……ああ、何を言われようと(犯罪を)認めるわけにはいかねー。オレは胸を張って
「やはり相容れないか…残念だが仕方がないな。それでは話はここらへんにして、ここへ来た本題に入ろうか」
どうやらオレにあった話したい事というのはここまでみたいだ。正直、オレが言うことを聞かなかったら蘭たちに何かされる事も警戒していたが杞憂に終わってくれたみてーだな。そこまで必要とはしていなくて、都合の良い手駒にできたら……くらいの気持ちだったってことか?
だが次にこの男が要求してきたのは『風邪と同じような症状を引き起こす』薬という使いみちのわからないものを阿笠博士に作らせることだった。
どう転ぼうとろくな事ではない事には間違いない。それにそんなものをわざわざ阿笠博士に作らせる意味もわからない……こいつには組織の研究者もいるだろうし、独自のルートでもそういった研究者を抱えているはずだ。確かに以前、この男は高性能のネクタイピン型録音機なんてものを博士に作らせている。だが今回は薬だ。それを作らせようとしているのが引っかかる。
いや待て……さっきのオレを手駒にしようとしていた会話を思い出せ。オレとこの男にある『
まさか……!そういえば以前もこいつは灰原を薬漬けにして実験台にしていると言っていた……ってことは……
「おい!その薬を灰原に使うんじゃねーだろうな!?」
「ほう?よくわかっているじゃないか。その通り、この薬はシェリーに使用するものだ」
くそっ…やっぱりか!オレがこいつの手駒となればそのまま命令すればいい、そして断ったとしても次は直接薬を作るように言われた博士のほうに
「それならオレが代わりにやってやる!だからもうこれ以上アイツに手を出すな!」
「残念ながら君ではシェリーの代わり足り得ないな」
どういうことだ…オレじゃダメで灰原ならいいっていう基準がわからねー。オレも灰原も、二人とも灰原の作った薬で小さくなってることは同じだ。性別、年齢…違うものはもちろんあるが、推理しようにも判断材料が圧倒的に足りていない。
こいつがオレをも取り込もうとしていた事から、何かに利用しようとしているのは確実だろう。灰原もオレたちを人質とされている以外に、こいつの犯罪の片棒を担がされる事で罪の意識を植え付けられているのも間違いないはず。オレや博士にやろうとしている事を灰原にやっていないなんて楽観的な希望は持たないほうがいいだろう。
灰原についてはそうやって丁寧に反抗心を折っていき、更には実験台とする事でまさしく余すことなく利用しようとしているといったところか……風邪に似た症状ってのを悪用するのであれば、現時点で既に何かしらの薬物を投与されているが抵抗しているであろう灰原を更に肉体的にも精神的にも弱らせて更に懐柔しようとしているってのだって考えられる。利用しようとするのであれば強制的にさせるよりも協力的にさせたほうが良いってのは疑うまでもない話だ。今までこの男から直接聞いている話をまとめれば、灰原はその知識を利用され、実験台として利用され、女としても利用されている……
まさしく骨までしゃぶり尽くすような悪魔の所業だ。
本当ならばそんな灰原を更に追い詰めるような薬を作るなんて話は断る以外の選択肢なんて有り得ない。だけど…悔しくて腸が煮えくり返るような気分だが、今のオレじゃあこの男に対する抵抗手段がないのも事実……オレが身代わりになるって言ってもこの男はそれを良しとはしない。この差はなんだ?そこがわかれば小さな光が見えてくるかもしれねー。
「てめーらが何を企んでるのかオレにはまだわからねー…だが、灰原を自由にする気がないって事だけはわかった」
「クククッ、シェリーは今も自由にしているさ…
『
だがそうだな…これは仮定の話なんだが、シェリーと蘭ちゃんだったら君はどちらを選ぶ?」
ついに本性を出しやがったか!やっぱりこいつは灰原を利用しつくし、下手しなくても生かしておくつもりすらないってことか!それどころか灰原を蘭を天秤にかけてきやがった…!このどちらを選ぶってのが命を含んでいることくらい確認するまでもねーし、そんな質問に対する答えなんて1つしかない。
「どっちかなんて選べるわけねーだろ!」
「ほう、君は随分と強欲だねぇ…」
何が強欲だ!こいつは人の命をなんだと思っていやがるんだ!?この男の質問は間違いなく『灰原を助けたければ蘭を差し出せ』ということだ。ここでどちらを選択しても後々こいつのいいように利用されるだけ……ただでさえ灰原を犠牲にして平和を享受しているような状況なのに、これ以上追い詰めるような真似をするわけにはいかねー。
「さて、これ以上余計な話をする必要はないだろう。そろそろこちらの要求に答えてもらおうか。なに、これがうまく進めば近い内に君の喜ぶ物を用意してあげるとも」
だが身代わりすら断られた以上、せめて阿笠博士に「この男の要求してきた薬を作ってやってくれ」と頼む事で、オレの責任において薬を作ってもらうしか今のオレにできることはなかった。これは博士のせいじゃねー、オレの責任だ。
薬はその日には完成させられないという事で、後日オレが学校に行っている間に渡したらしい。
オレには1つ確信に近い予感があった。それはあの男がまたオレの前に現れるだろうってことだ。それならそれでこっちだって黙って言いなりになってるつもりはねー。例え少しずつの歩みだろうと、最後は絶対に灰原を救い出してみせる!だから……それまで無事でいてくれ……
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
20話
あれから少し時間が経ち計画の第二段階が無事に成功し、スパイたちからの報告を受け思った通りの結果に満足していたところにウォッカから連絡が入った。内容は「世界中の傘下にしたヤツらが次々に逮捕されてるらしいんだが何か知らないか?」という事だったので、それは俺の采配でそうなってる事を伝えてやる。
「お前なんでわざわざ情報を流した?兄貴が怒っても知らねぇぞ」
「ククッ、トカゲの尻尾を差し出して
「それならそれをなんで言わねぇんだ?」
「これはただの仕込み段階だからな。わざと捕まえさせているのも何の情報も持っていない傘下の人間だ。わざわざ報告するまでもない事だと思ったんだが、ウォッカは何を気にしているんだ?」
「例の研究がうまく進んでねぇから兄貴がお冠なんだよ。そこに傘下とはいえ各国で逮捕者が出てるなんて聞けばピリピリしても仕方ねぇだろうが」
「そりゃ悪かったな。だがその心配は無用だと伝えておいてくれ。計画通りだと思ってくれて構わん」
「わかった。兄貴には伝えとくが、これからはちゃんと言っておけよ」
ふむ、研究がうまく進んでなくてジンがピリピリしてるのか。むしろイライラピリピリしてない時ってあるのか?まぁ傘下の組織構成員たちが各国で次々に逮捕されればイラッとしても仕方ないか。その原因俺だけど…すまないウォッカ。
しかし研究の進捗はあまり良くないようだな。こっちもシェリーが急かされてないから研究はしててもそこまで進展があるわけじゃないし…そろそろ材料を投下してあげようか。
教えてもらった服部平次のアドレスに『何をお土産として持っていったのか』を聞く内容のメールを送り、しばらくして返ってきた返事を見てからシェリーに声をかけ一人でスーパーにパイカルを買いに行く。
パイカルを購入してしまえば後は状況を整えるだけ…なんだが、どうやってシェリーに風邪を引いてもらおうか。こんな事ならこの前風邪気味になったときにパイカル飲ませるべきだったか…もったいない事をしたのかもしれないな。
風邪と同じような症状にするために思いつくのは、大量の冷水をかける…ただの幼児虐待だ。寒いところに放置する…ただの(以下略)。直接「風邪引いてくれ」って言う…意味がわからんよな。ジンの名前を出してみる…シェリーがただ青ざめて震えるだけだが、ある意味似た症状か?うーん…なかなかいいアイデアが思いつかない。
もし俺が「風邪引いてからパイカル飲んだら一時的に元の姿に戻れる」って言ったところで何の確証があって言ってるんだってなるのは目に見えてるし、こういうのは実体験があったほうがすぐに信じられる。ただ口で説明したところで理解してもらえないのは簡単に予測できるだけに難しいな。
この際風邪と同じ症状を引き起こす薬を阿笠博士に頼んで作ってもらうか?実際に作ってたんだからできないって事はないだろう。すでに一度超小型録音機を作ってもらってるわけだし、今回もきっとコナンくんは博士の背中を押してくれるだろう。
そしてコナンといえば、俺には予てより疑問に思うことがあった。
それは工藤新一がコナンとして活動するための地盤の事だ。なぜ毛利探偵事務所なのか……仕方がなかっただとか、状況的に都合が良かったとか、そういう
幼馴染の毛利蘭の父親がたまたま探偵事務所をしていたとしても、毛利小五郎が元刑事であり目暮警部たちと知己であったとしても、工藤優作と工藤有希子という両親までいるのならば他にもっと選択肢はあったはずなんだ。まして彼自身高校生探偵として新聞に掲載されるほどの活躍を見せている。それはコナンとなって事件解決する際に電話で目暮警部に指示を出したりできるほどの影響力だ。
そんな毛利探偵事務所や阿笠博士など周りを利用しているにも関わらず、確実に有利になるであろう両親などの力には頼らず、まるで自分の力だけで黒の組織をなんとかしようとしているかのような矛盾した行動だ。本人に聞ければ一番なんだろうけど、ここは近くにいる才女に意見を聞いてみるのもいいのかもしれない。もしかしたら俺の考えつかない理由を思いついてくれるかもしれないしな。
「なぁシェリー、ちょっと疑問があるんだが構わないか?」
「なによ?私が答えられる事なら答えるわよ」
「工藤新一なんだが、彼はなぜ毛利探偵事務所を拠点としたと思う?」
「…探偵事務所という場所が、事件を追いかけるのに都合が良かったという事ではないの?」
「本当に
「確かにそうね。他には思いつかないけれど…案外大事な幼馴染の近くにいたいとか、そんな単純な理由かもしれないわよ?」
なるほどなるほど。俺の視点だとどうしても物語的の進展という要素も含めて考えてしまうが、それを除けばシェリーの言っている事も案外的外れではないのかもしれないな。
そしてこのシェリーの冗談めかした仮説を表現するに相応しい単語は俺の知識の中にあった。これまでのコナンの行動の中にヒントは散りばめられていたわけだ。ククッ、まさか俺が探偵まがいの推理をするとは思ってもみなかったが、どうやら俺にも探偵としての素質が備わっていたらしい。あえて言おう……謎はすべて解けた!!
工藤新一の性癖は『おねショタ』だったんだ!!
もちろんこれは推理だから逆の可能性もある。もしかしたら『おねショタ』じゃなくて『ショタおね』のほうなのかもしれない。さすがにこればっかりは俺にもわからないし、蘭ねーちゃんが攻めなのか受けなのかはきっとコナンにしかわからない事だろう。そして必然にも小さくなった工藤新一は、隠して胸に秘めていたはずの
後付の理由にはなるが彼の家には無数の本が貯蔵されており、その中に性的表現が含まれている本だってあるだろう。そして工藤新一の父親は小説家でもある工藤優作だ。つまり新一にも架空の物語を考える才能が受け継がれているかもしれないし、工藤有希子のメイクの腕は『描く』という才能として受け継がれているのかもしれない。
それらが結果として、中途半端に新一の存在を匂わせるだけ匂わせておいて『会う事もできず寂しさの募る蘭ちゃんを眺める』という行為に繋がってしまったんだな。そしてそんな蘭ちゃんを励ますのはショタとなった工藤新一だ。しかしマッチポンプもここまでくれば大したもんだ。
最終的な結末は蘭ねーちゃんに「コナンくん、何も怖くないからね……」って優しく攻められる展開なのか、それとも「ごめんね新一……私もう……」って受け入れるほうの展開なのか……考えたらキリがないが…たぶんそういった展開を楽しんだ後に工藤新一に戻り、蘭ちゃんの後ろめたさを利用して二度楽しむというわけだな。
つまり工藤新一は俺とは方向性は違えど好物のためなら突き進める同類かもしれない。いや同類に違いない!シェリーの何気ない意見によって答えを得た俺は、後はそれを確信へと至らせるべく行動するだけだ。
一応阿笠博士にシェリーのための薬を作成してもらうっていう
待っている間に阿笠博士と少々世間話をしていたら、息が切れるほどに急いで来てくれたらしいコナンくんがやってきた。すぐに本題を出すのもアレなので、この前会った時の事を聞いてみたが、やはり警察の結論は予想通り心臓発作になったみたいだな。よかったよかった。
「それで……オレに話しておきたい事ってのは何なんだ?」
「ククッ、そう警戒する必要はないさ。そうだな……これは俺と君が実は似た者同士だったということに気づいたからなんだが、きっとこの話を聞けばきっと君も理解してくれるだろう」
「似た者同士だと?そんなわけがねーだろうが!」
「まぁ話を聞きたまえ。確かに一見すれば我々に接点はないように思えるかもしれない…だが、よく考えてみてほしい。
コナンくんは随分とこちらを警戒しているようだ。やはり黒の組織の一員でジンの部下というところが引っかかっているんだろう。これが実は組織に潜入しているスパイだったみたいな立場なら変わってくるんだろうけど、残念ながら俺は正真正銘の組織の人間だからな。だが今日は組織の人間として来たわけじゃない。ちょっと君の嗜好を確認するだけの簡単な世間話だから気軽にしていてくれ。
「ああ、気に入らねーが確かに共通点はあるな。で、
「(自分の性癖を)理解できたようで何よりだ。
「思わねーな。どこまでいってもオレとオメーは交わることはねーし、オレはオメーらと違って犯罪を犯すつもりはねー!」
コナンの言う犯罪を犯すつもりはない……つまりこれは『ショタだけど本当は高校生だから合法だ』ということか!やるな工藤新一…自分の状況を利用することでその性癖を満たすだけでは飽き足らず、合法的におねショタを成立させていたとは……マッチポンプなところまでは読んでいたが、まさか合法ショタという抜け穴まで用意しているとは恐るべし。
流石に高校生探偵であり本編の主人公だ。こちらが言いたい事をきちんと理解し、穴がないように自分の状況を利用した理論武装までしていやがる。だが交わることはないとは随分な言い方じゃないか?俺は『おねショタ』だろうと『ショタおね』だろうと理解があるつもりだが、彼にとっては自分の性癖こそ至高で他は邪道とでも言うつもりか。やはり他の嗜好を受け入れられないのは若さ故という事かもしれないな。
「ふむ……(おねショタ以外の性癖を)認めたくないのか存外頑固だな。確かに君は
「あたりめーだ!灰原をオメーらと一緒にするんじゃねー!」
「確かに君の言う通りシェリーが
俺はシェリーをロリBBA枠だとは思ってないけどさ。客観的に見たら成人女性が小学1年生の女児の見た目してるんだぜ?本人に言ったら激怒するだろうから言わないけど……これはもうどう考えてもロリBBAだろ?いくら本人は成人女性だからといって、もし俺があの姿のシェリーに手を出したらどう考えても犯罪だ……いや出さないけどさ。そういう意味では確かに俺とコナンは相容れないのかもしれない…俺には無理だもん。
「くっ……灰原がそうなったのはオメーらが原因だろうが!」
「何を言っている?
「……ああ、何を言われようと認めるわけにはいかねー。オレは胸を張ってあいつらといるためにも堕ちるわけにはいかねーんだ」
認めてしまうと堕ちるとまで言うのか……蘭ちゃんをショタ好きに堕とすのではなく、工藤新一でありながら
きっと蘭ちゃんはノーマルだと思うんだ。なのに工藤新一の性癖のせいで曇らされて、着々とそこへと向かう道を歩かされている。それを悪いとは言わない。俺も様々な手段を用いているし、お前が言うなと言われても仕方ないのは自覚している。だからこそ共通点があるという事を伝えたかったんだが、彼の
「やはり相容れないか…残念だが仕方がないな。それでは話はここらへんにして、ここへ来た本題に入ろうか」
そこまで貫くのならば同好の士を得るのは諦めるしかない。これ以上は得るものもないだろうし、さっさと阿笠博士に薬を作ってもらってシェリーの待つ隠れ家に戻ろう。作って欲しい薬について説明し、どれくらいで作成できるのかを合わせて確認していたらコナンくんから当たり前の質問が飛んできた。
「おい!まさかその薬を灰原に使うんじゃねーだろうな!?」
「ほう?よくわかっているじゃないか。その通り、この薬はシェリーに使用するものだ」
「それならオレが代わりにやってやる!だからもうこれ以上アイツに手を出すな!」
「(代わりにやるって、もう免疫できてるから無理じゃね?)残念ながら君ではシェリーの代わり足り得ないな」
「てめーらが何を企んでるのかオレにはまだわからねー…だが、灰原を自由にする気がないって事だけはわかった」
自由にする…か。そう言われると前世にあった
「クククッ、シェリーは今も自由にしているさ…
『
だがそうだな…これは仮定の話なんだが、
まぁ実際は研究したり紅茶飲んだり読書したりとそれなりに自由にしています。外出に関してだけはさすがに好きにさせるわけにはいかないけど、そこはシェリーも納得の上だから問題ない。
しかしここで俺の脳内では『なんでコナンは、今も隠れ家で元気にしているシェリーを返せだのなんだの騒ぐんだ?』という疑問が湧いた。俺はきちんとシェリーを保護していると伝えているし、シェリーの研究の手伝いとしてコナンから血液をもらったりとお使いもしている。つまりコナンのこのセリフはシェリーの身を案じて
「どっちかなんて選べるわけねーだろ!」
「ほう、(まさか両方味わいたいとは)君は随分と強欲だねぇ…」
やっぱりと言うべきか、まさかと言うべきか……コナンは蘭ちゃんだけではなく、シェリーまで狙っていやがるのか……
こいつの本性は蘭ちゃんが本命であるにも関わらず、ただ結ばれるのでは満たされないからと
確かにこいつが言った通り俺たちはわかりあう事も交わることもないだろう。あとシェリーをコナンに近づけるのは違う意味で危険だという事がわかった。顔を見せてやるくらいならシェリーの気分転換になるかもだしいいんじゃね?と思っていたが前言撤回だ。無闇に近づかせるなんてもってのほかだったわ。それがわかっただけでも収穫だったし、そろそろ切り上げてさっさと帰るとしよう。
薬についてはコナンくんからもお願いしてくれたので無事に阿笠博士から風邪と同じ症状を引き起こす薬を手に入れることができた。コナンくんがあそこまで
戻ってきてすぐにリビングで寛いでいるシェリーに風邪薬とパイカルを渡し、効果を確かめるために服用することを勧めてみた。
「ただいまシェリー」
「おかえりなさい。欲しいものは手に入ったのかしら?」
「ククッ、勿論だとも。そして今日はシェリーにお土産がある。まずはこの薬を飲んでみてくれ」
「なによこれ?なんの薬?」
「なに、少しばかり風邪のような症状になる薬だ。そしてこっちは見ての通り酒だな。わざわざシェリーのために用意したんだ。早速試してみてくれ」
「風邪のような症状?しかもお酒まで…酔わせて薬の効きを早めるという事?わざわざこんな薬を飲ませるなんてどういうつもり?」
「日頃研究を頑張っているシェリーへの労いだ。さぁグイっといってみよう!」
「ねぇ、せめてきちんと説明してくれないかしら」
「百聞は一見に如かずと言うだろう?自分で体験してみないとわからない事もあるということさ」
というか風邪になる薬だって説明したのになんで説明しろって言うんだ?それに元の姿に戻るってのは説明するよりも体験させて驚かせたいよな。薬とお酒飲まされて最後には身体が伸びるわけだから考えただけでも「それなんて拷問?」って感じがしないでもないが……シェリーの顔色が悪いのはこれから何が起こるかなんとなくでも感じるものがあるのかもしれない。子供は勘が鋭いとか言うし、これから辛い思いをするっていうことはなんとなくでも感じてるんだろう。もしくは女の勘のほうか?
だがここで大事なことを1つ思い出してしまった。確か工藤新一が小さくなるとき、服は小さくならなかったはずだ。そして体が小さくなっても服が大きいならまだいい。
もし今シェリーが元の大きさに戻ったら…悪役が爆発四散する世界の世紀末な救世主みたいに着てる服がビリビリ破れないか?あれ?そういえば最初にパイカルで元に戻った工藤新一って制服になってなかったっけ。シェリーも元に戻ったらなぜかちょうどいいサイズの白衣とか着てるんだろうか?
もしそれならいいが、どう考えても服が破れるよね。いろいろ見えちゃうかもしれないよね。
…さすがにそれはダメだろ。だが大人用の女性服なんて隠れ家に用意してないぞ。
「シェリー、やっぱりストップだ」
「…なによ?ちゃんと言われた通り飲むから待ってて」
「悪いが少し足りない物を思い出したから先に買い物に行こう」
「あなたが早く飲めって言ったんでしょう?そんなの後でいいわよ」
あ、渡していた薬を飲んじゃった。自分から飲んじゃったなら仕方ない。しばらくしたらシェリーの顔に赤みが増し風邪の症状が出始めてきたようだった。さすがにリビングにいるのもどうかと思ったのでシェリーを抱っこして部屋まで運んでやり、ベッドに寝かせてからついでにパイカルを飲ませてみた。
どれくらいで作用し始めるのかわからないけど、このままだとシェリーが変身(?)するところを見ることになってしまう。貴重なシェリーの変身シーンを眺めていたいという気持ちはあるんだが、後から「…へんたい」とか言われたくないので出ていくほうがいいだろう。
……いや待て俺。これはチャンスじゃないのか?最近は
クククッ、どうやら俺はいつの間にか日和ってしまっていたようだ。
初心を思い出したからにはここで退くという選択肢など存在しない。さぁシェリーよ、俺に変身シーンを魅せてくれ!苦しむシェリーを眺めてニヤニヤするというのは客観的に見たら少々趣味が悪いが、一応ベッドに寝かせてあるしちゃんと
あ、せっかくだし元の姿に戻るシーンを録画しておくのも良いな。ちょっと地下室で録画機材を持ってくるか。
地下室へと向かい、ゴソゴソと探してお目当ての三脚とカメラを持ってシェリーの部屋に戻った俺は目の前の光景にショックを隠せなかった…
「…なによ?
「ああ、すまなかった。シェリーのその姿を見るのは久しぶりだからな」
一時的だろうけど今目の前にいるのは宮野志保だ。布団から顔だけ出してジト目で俺を見ている宮野志保だ。つまり俺はせっかく録画しようと思ってた変身シーンを見逃すという失態をやらかしてしまったわけだ。今度阿笠博士のところに行ったら超小型高性能カメラも作ってもらう事にしよう。
つい凝視してしまったわけだが、別に厭らしい意味じゃない。それはそれとして俺の頭の中では「どうやったら薬の効果とはいえ伸び縮みするんだろ?」という疑問が浮かんでいるだけだ。
もしかしてアポトキシンってのはゴムゴムのギアサード効果なのか?それとも中国的な場所の山奥にあるゴム人間が溺れて死んだと伝えられている伝説的な泉の効果とかだったりするのか?こればっかりは結果を知っててもマジでわからんな。
「あなた、
「…以前工藤新一が元の姿に戻ったことは伝えただろう?とはいえ俺も全部を把握しているわけじゃないから、限りなくその状況を再現することでシェリーでも同じ事が起こらないかと思ったわけだ。当時の江戸川コナンと同じ体調にするために薬で風邪の症状を引き起こし、大阪からの土産として渡されたであろうこの酒を服用させてみたというわけさ」
「そういうことは先に言ってくれないかしら……」
「だが口でどれだけ言っても信じられないだろう?俺も研究者じゃないから科学的な見解で説明できない以上、もし言ったとしても『風邪を引いてこのお酒飲めば一時的に元の姿に戻れるかも』とかその程度になる。そんな話を聞かされてもシェリーだって信じなかったはずだ」
一時的にとはいえ元の姿に戻る方法を知っていたのは事実だが、シェリーに説明したように俺に言えるのは何の根拠もなく方法だけを伝えるという事しかできない。荒唐無稽な言葉を聞いてそれを信じるなんてできるはずもないし、俺だって原作知識がなければ信じなかっただろう。
だがこれでシェリーは実体験をもって信じることができるし、これからの研究も捗ることになるだろうから悪い話ではなかったはずだ。
「…ねぇ、1つお願いがあるんだけど」
「どうした?」
「その、服がね。
「だから先に買い物に行こうと言ったのに…サイズも趣味も合うかわからんが適当に買ってくるから待っててくれ」
男1人で成人女性の服を買うということが、子供服を買うのとは全然違うってことをシェリーはわかってるんだろうか?いや服ならまだいい。下着とかどうすればいいんだ…いつぞやのケーキバイキングで取り残されるのより精神的にキツイってことをちゃんと理解しておいてもらわないと困るな。
とりあえず急いで店へ向かいそれっぽいサイズの女性服一式をいくつか見繕って購入し、隠れ家へと戻ってきてシェリーに渡して着替えるのを待っておく。何せ測ったわけでもなく見たわけでもない以上、少々大きめとかならまだいいが小さかったら買い直さないといけない。
「……ねぇ、服を着たいんだけど」
「ああ、サイズが合うかどうかわからないが着てみてくれ。とりあえず今は急場を凌げればそれでいいし、それだけじゃ足りないだろうから後でまた一緒に行って買い足せばいいだろう」
「そうじゃなくて、服を着たいから部屋を出てほしいんだけど…」
薬の効果なのか恥ずかしいのかわからないが、相変わらず布団から顔だけ出して少し赤くなっているシェリーにそう言われて気づいた。
サイズが合うかどうかを心配していたが、それ以前に着替えるところに居合わせるほうが問題だったか。リビングにいることを伝えて部屋を出て、インスタントコーヒーを淹れながら待つことしばらく…まぁサイズピッタリとは言わないが出かけても問題なさそうな感じの格好のシェリーが戻ってきた。
「待たせたわね。それで、どうして突然
「ああ、シェリーの研究も
「確かにそう言ってたけど…つまり、あなたはこの研究を早く進めろって言いたいの?」
「そういうことだ。どちらにしてもシェリーも工藤新一も元の姿に戻るには研究を進めるしかあるまい?そしてその研究過程は俺にとってもいろいろと使い道があるんでな」
「ねぇ……もし私がそれを断ったとしたら、お姉ちゃんを殺すとでも言うつもり?」
シェリーはたまにこういう試すような言い方をするよな。研究者の話し方としては仮定を出して得られた答えから次を考えるってのは間違ってないんだが、組織でもそれをやってたとなるとなぁ…
俺としては別に構わないが、ジンとかにもこの言い方をしてたんだとしたら名前を出すだけであの怯え方も当然かもしれん。シェリーが今みたいな聞き方をしたら、たぶんジンなら「そんなに姉の死体を持ってきて欲しいのなら今すぐ用意してやる」とか返しそう…シェリーもそれ聞いて焦って撤回してより怖がるようになりそう…予想なのに明確にイメージできるわ。
とにかくそんな話し方をする必要はないって事は言っておいたほうがいいかもしれないな。
「シェリー、そう試すような言い方をする必要はない。シェリーをこの隠れ家に連れてきてから、今現在に至るまで何もしていないのだから答えなんてわかっているだろう?」
「…それもそうね。確かに元の姿に戻るために研究することに文句はないわ。ただ、1つだけお願いがあるの。あなたの言う通りに研究を進めるし偽りなく報告する代わりに、これを悪用しないって約束してくれないかしら。私は薬の研究をしていたのであって、毒を作ってるつもりはなかったのよ」
「ふむ……まぁいいだろう。俺はシェリーの研究成果を悪用しないと約束しよう」
元の姿に戻る事を実体験したから、これで研究が捗るだろうと思っていたら悪用するなと条件を出してきた。俺はシェリーがこの隠れ家に来てから研究した事によるレポートなどは外部に流したりしていない。逆に組織の研究施設での研究成果などは俺がこっそり持って帰ってシェリーに渡したりしている。つまりシェリーからしてみれば、俺に悪用しないと約束させれば大丈夫だという考えなんだろう。
今まではシェリーの俺に対する好感度なども考えていたしこれからもその方針は変わらないが、これから始まる計画のためにはこの研究レポートを隠れ家で眠らせておくわけにはいかないんだ。揚げ足を取るような話だが、あくまでも俺は『悪用しない』だけで『流用しない』とは言っていない。研究結果がとある組織とかに流れていくかもしれないし、そこから色々と利用されるかもしれないが…まぁバレなきゃ大丈夫だろ。
ひとまず話し合いも一段落し、シェリーにパイカルと阿笠博士に作ってもらった薬を渡しておく。俺が欲しいのは進んでいる過程であって完成された成果ではない。組織の研究者たちが出せていない内容であればそれでいい。
そんな考えをしていたら組織の連絡用の携帯が鳴った。ウォッカがまた何か用事でかけてきたのかと思ったが、電話してきたのはジンだった。そして開口一番思わぬ名前を聞くこととなった…
「どうやらベルモットがテメェに興味を持ったようだ」
目次 感想へのリンク しおりを挟む