如何にして人生の墓場へと突き進んでしまったのか~byクリス・レッドフィールド~ (とある一人の感染者)
しおりを挟む
如何にして人生の墓場へと突き進んでしまったのか~byクリス・レッドフィールド~
あって欲しかった未来。
それをどうにか見てみたかった。
いくつもの物語を読んでもハッピーエンドを迎えていない。
ならばその物語を私が紡ごう。
「結婚ですか………人生の幸福と言っても過言では無いですね」
俺ことクリス・レッドフィールド(44)はそう言ってインタビューをしてくる記者に答える。
BSAAのオリジナル・イレブンである俺へ家庭での生活や結婚観についてのインタビューが行われる事になって渋々受けているのだが………
正直に言おう。
隣の妻の視線が痛い。
44歳の俺に比べて年齢以上に若々しい肉体を持つ彼女は俺の腕をその豊満な胸で包み込みながら抱きついて離さない。
というか俺がインタビューに答える度に笑顔が深くなって………ダメだ、今夜は朝までコース確定だな………
もう44歳の自分には朝までコースキツくなってきたんだが………
「レッドフィールドさん、最後に良いですか?」
「何でしょうか?」
記者がそんな俺達を微笑ましい目で見つめながら最後だという質問をしてきた。
「奥様の………あのアンブレラの被害者である”リサ・トレヴァー”さんとご結婚され、8人の子宝に恵まれた貴方は………今幸せですか?」
記者からのそんな質問に妻の………リサの俺の腕に組んでいる力が少し強まり、強ばるのが感じられた。
恐らく不安に思っているんだろうが………
まったく………ンなもん答える言葉は一つだけに決まっているだろうが。
そうじゃなければこんなに長く一緒に暮らしてはいないし、8人も子供を作らないだろう。
俺にとって彼女は無くてはならない大切で最愛の女性なのだから。
だから妻の不安をかき消す様に俺は笑いながら答える。
「ええ、今の俺はとても幸せですよ」
次の瞬間、記者がまだいるというのにリサに顔を引き寄せられて熱烈でディープなキスをされたのだった。
それはちょっとしたボタンの掛け違い。
リサ・トレヴァーという女性は本来化け物として彼、本名クリストファー・レッドフィールド、後のゴリスと1998年の洋館事件において命を掛けた戦いに発展する筈だった。
しかし、そのきっかけとなる1967年の洋館完成、そしてその施設の機密情報の口封じであるトレヴァー一家監禁、その後のウィルス投与実験において、それは起きてしまった。
本来リサに投与する筈だったサンプルウィルスが研究員の不始末で死滅し(研究員は処理済み)、別のウィルスを投与する事となったのだ。
それはンディパヤ族に伝わる、太陽の階段にしか咲かない始祖の花から取れる始祖ウィルスの適性者を強化するという特性を、更に強めた危険な試作ウィルス。
元の原種よりも毒性が凶悪なまでに強く、適正のある者でなければ即死もありうる汎用性の無いウィルスだ。
そしてその投与実験の話を聞き付けたスペンサー卿、後の大企業アンブレラの総帥が実験の見学に来ていた。
投与後にリサのバイタルサインは不安定の一途を辿り、いつその命を散らしてもおかしくはなかった。
しかし、ある一定の時間が過ぎると安定し、それ以降の変化が現れない。
失敗か?そんな考えが研究員達やスペンサー卿の脳裏を過ぎった頃に、1人の研究員が皮膚組織のサンプルを取ろうとメスを入れた時にそれは発覚した。
「なんだ!?切った側から傷が塞がっていくぞ!?」
それは恐るべき回復力だった。
その驚愕の回復力に研究員はもちろん、見学に来ていたスペンサー卿すら驚いた。
そしてその事実はスペンサー卿の野望の基礎となる。
不老不死となって新人類を率いる神になると。
その為のきっかけがこのリサ・トレヴァーにはあるのだと。
スペンサー卿はリサ自身を使った実験の中止を決定する。
新世界の神となる上で自身の伴侶としてリサを使い、そしてその子供を自分の駒として使う為に。
当時まだ14歳であったリサは素晴らしいまでの美少女であり、スペンサー卿は彼女が適性者となった事とその美しい容姿から、その姿をステンドグラスで象る程に気に入ってしまったのだ。
成長すれば自身を慰めるに値するモノだと黒い欲望をぶつけるにはちょうど良かったし、たった14歳の小娘程度ならば丸め込むくらい簡単だとスペンサー卿は考えた。
もちろん採取した血液や細胞のサンプルを研究員達に研究する事を許可してだ。
しかし、リサ自身を使った投薬やウィルス実験を継続して行う研究だけに関しては、スペンサー卿は絶対に認めなかった。
せっかくの美貌も実験で損なわれてしまっては自分の伴侶として使えなくなってしまう。
新世界の神の伴侶として魅力的な相手を取っておくのは当然の事だ。
傲慢なまでのその考えにリサの未来は決まってしまった。
だが研究員達はスペンサー卿に直訴する事になる。
ウィルス研究が進まないと。
その為に一つの解決策としてリサのクローンを作り、そこから研究を進めていく事となる。
僅かに研究が遅れる事となってしまったが、そこは誤差の範囲内。
そのクローンもまたリサと名付けられ、度重なる実験において醜い化け物へと変貌を遂げてしまう事となった。
そして、スペンサー卿が神として転生する野望の実現までの間、彼女は後のタイラントに用いられる鎮静剤で眠らされ続ける事となる。
まぁそんな未来が訪れる事は無かったのだが。
口から直接管を通して流動食を流し込まれ続け、巨大なカプセルの中で培養液に入れられたリサは、そのまま1998年の洋館事件が起きるその日まで眠りにつく事になった。
外見年齢が16〜18くらいに少し成長して変わった以外は何も変化が無く。
研究員からは『スペンサー卿の肉人形』と陰口を叩かれながら。
そして時間は1998年まで過ぎ、洋館事件が発生する。
そこにやって来たのは後のBSAAのオリジナルイレブンとなるクリスとその仲間であるSTARSのアルファチームだ。
食人事件という奇妙な事件解決の為にラクーンシティのアークレイ山へ捜索に向かったブラボーチームが行方不明になり、彼等を捜索に来たクリス達は、犬のような化け物によって仲間を失いながらも森の中で異様な雰囲気を放つ洋館を発見する。
そう、そこはリサが眠っている洋館だ。
何も知らないクリス達アルファチームのメンバーと唯一何が起きたのか知っている、後のクリスの因縁の間柄となるアルバート・ウェスカーは洋館を探索していく。
そしてウェスカーは幹部だけが伝えられていたリサの情報を思い出して、連れて逃げる為に覚醒の準備を研究所内で進めておいた。
スペンサー卿のお気に入りで、眠りについたその日より、あまり外見年齢が変わらない不老不死となっていたリサのその価値は高く、その後のウィルス研究で役に立つと考えたからだ。
そして彼女があと少しで覚醒する………その瞬間に一人のお邪魔虫が現れた。
それは研究所まで捜索範囲を広げたクリスだった。
このままでは奴に見つかってしまう。
そう考えたウェスカーは一度その場を離れた。
このままBOWとSTARSの交戦記録を取る上で、行方不明扱いである自分が、今ここに居る事が知られてしまうのは得策では無いと判断したからだ。
それにクリスならば護衛対象がいた所で持ち前のスキルを使えば大抵のBOWには対処可能であるし、目覚めたリサはパニックを起こして面倒な事になるかもしれないとウェスカーは考えた。
そしてその考えは的中した。
クリス、培養液から救出した少女に顔面をビンタされる。
それはまさに起きるべくして起きた事故。
培養液に入っていたリサは全裸。
そしてリサは14歳の思春期と呼ばれるお年頃な年齢で眠りについたので、精神面では全く成長していないのである。
そんな彼女が目覚めたら全裸で、目の前に成人した男性が居たらどうなるのか?
答えは簡単である。
リサはクリスを強姦魔と勘違いした。
鎮静剤の影響で力が入っていなかったから痛みは殆ど無かったとはいえ、強姦魔と間違われたクリスの心には、核弾頭クラスのダメージを与えたのだが。
そして、近くにあった白衣を彼女に渡し、ようやく誤解が解けた所でクリスはリサに自分は警察の特殊部隊で助けに来たと説明する。
その時のリサの心中は歓喜一色だった。
警察が自分を助けに来てくれた。
そして、リサの中でその英雄(ヒーロー)へと格上げされたクリスに勘違いとはいえ、ビンタしてしまった事を、鎮静剤の影響で上手く動かない身体を動かし改めて謝罪する。
しかし、そんな弱々しいリサの姿を見たクリスは元々強かった正義感が更に高まり、優しく抱きしめながら
「もう大丈夫だ、俺が絶対に君をここから助け出してみせる」
耳元でそう宣言した。
リサはそんな男らしいクリスの言葉に一瞬で恋に落ちた。
まぁこんな極限状態で助けに来たイケメンポリスであるクリスの言動が、まだまだ大人とは言いえない少女の精神しか持ち合わせていない彼女の乙女回路をフル稼働させてしまったのは仕方の無い事だろう。
状況的に見てもリサは悪の組織の研究所に囚われたお姫様で、クリスは剣や槍の代わりに、銃器で武装した騎士様(ナイト様)に見えない事もない。
もうこの人に身も心も委ねてしまっても良いのかもしれない。
そんな甘い………砂糖とガムシロップに練乳を混ぜた様な甘ったるさにリサは酔いしれてしまった。
それもこれも正義感に目覚めたクリスが悪いのだ。
そして迎えるエンディング。
タイラントを讃えて腹を貫かれるウェスカーと、家族を人質に取られて裏切ったかに見えたが助けに来たバリー。
そしてその一連の出来事からタイラントとのヘリポートでの対決までは、クリスがリサを守護騎士(ガーディアン)のように護り続けた事とウェスカーからリサの真実を語られた事以外は全く史実と同じである。
そんなクリスに好感度が上がりに上がり続けるリサ。
無自覚なイケメンクリスは、ウェスカーによってもたらされる驚愕の真実を
「それがどうした!!彼女は………リサはお前達の身勝手でこんな目に遭ったんだ!!俺が………そんな理不尽から護ってみせる!!」
正義感溢れる言葉で、いたいけな少女の心をロケットランチャーで撃ち抜いてそのまま過貫通を起こしてしまう。
そして洋館からヘリで脱出。
そのヘリの中でリサはクリスから離れず、その腕に眠っていた間に成長した胸を押し付けて頬擦りまでしていた。
クリスはそんな彼女の仕草に困惑しつつも余程怖かったのだろうと勘違いし、昔妹のクレアにしてあげたように頭を撫で続けた。
ちなみにそれを見ていたブラボーチームの唯一の生き残りであるレベッカ・チェンバーズとアルファチームのジル・バレンタインは後にこう語っている。
「クリスってロリコンだったんだなって思いました」
「そのまま檻にぶち込んでやろうかこのロリコンって思ったわ」
かなり不名誉な事を思われているとは知らずにヘリはラクーンシティへと戻っていく。
歳のせいか疲れて既に眠っていたバリーはそんな変な空気を知らなかったようだが。
そして戻ってきた彼等の頭を悩ませたのは、洋館事件の被害者であるリサの処遇だ。
あんな研究所に居たリサを表には出せないし、かと言ってリサに頼れる親類縁者がいる訳では無い。
アンブレラだってリサが生きていると知れば取り返しに来るだろう。
そもそもトレヴァー一家が監禁されて既に31年が経過しているのである。
行方不明者扱いというよりも、既に鬼籍扱いだ。
さすがに今更生きていたと言っても外見年齢が一致しないので元々ダメであるのだが。
そこでジルやレベッカが彼女を自分の家に引き取ると言った。
しかし、乙女回路フル稼働中のリサがそれを拒否。
バリーも妻や子供達を避難させる為の遠方の家に送ろうかと誘いを掛けたが、それも拒否された。
「私、クリスさんと一緒が良い。クリスさんじゃないと嫌」
そこに居たSTARSメンバー全員がクリスに対してロリコン疑惑の目を向けた。
クリスはそんな視線を向ける仲間達に絶望した。
しかし、リサ自身がそう言って聞かず、クリスの側から離れようともしないので、渋々クリスの家に匿う事に。
もちろんジルやレベッカがほぼ毎日のようにクリス宅へと通い、リサの様子を確認する事を条件として。
だが毎日のようにクリスの家に行くジルとレベッカが、警察署の中では女を取っかえ引っ変えする二股野郎という不名誉な称号を、クリスに付けるきっかけになったのは言うまでもない。
だがそんなクリスにも救いがあった。
毎日天使のような笑顔で接してくれるリサだ。
おはようからおやすみまで優しく接してくれるリサにクリスは癒された。
リサも毎日大変そうで疲れていても変わらず接してくれるクリスの一面を知り、ますます惚れ込んだ。
これが後の騒動の引き金になるなんて誰が想像した事だろうか?
恐らくクリスやリサも自分達では想像もしていなかっただろう。
そしてアンブレラの悪事を暴く証拠を揃える為にクリスとバリーは長期休暇と偽ってラクーンシティから離れた。
クリスはリサが居たので陸路からの移動となってしまったのだが。
しかし、リサはクリスとの長距離移動が物語の逃避行に見えてとても幸せだったようだ。
とあるセーフハウスで一息ついたクリスとリサ。
互いに共同生活していただけはあってもはやその仲は家族と言っても過言では無いだろう。
恋人になりたいリサと妹のように接するクリスの溝は深そうに見えたのだが、とある出来事がきっかけで事態は急展開を迎える事となる。
ラクーンシティ崩壊の大規模なバイオハザードである。
ジルがラクーンシティでアンブレラの証拠集めをしていたのを知っていたバリーは、ヘリを調達して直ぐに救助に向かった。
彼はSTARSの仲間だけでなく、ケンドー銃砲店にいる親友や警察署に居るであろう同僚達を助けようと必死だった。
その時に一度会いに行った遠方に避難していた家族に会い、妻のケニーに求められてハッスルする為に持っていた濃縮バイアグラのタブレット入りケースをセーフハウスに忘れて。
しかもそのケースはクリスが最近になって使い始めた、試作品であるグリーンハーブをタブレットにした物を入れたケースと全く一緒の物である。
ここで起きてしまった更なる不運はそれを見つけたリサがクリスの物だと思い、普段から彼がケースを置いている場所へと置いておいたのだ。
ここまで来るともはや運命としか言いようがない。
そうとは知らないクリスは深夜まで行っていたアンブレラの証拠の書類作成に疲れて、疲労を紛らわす為にそのケースから複数のタブレットを取り出して一気に飲み込んだ。
そして、その効果は直ぐに現れた。
クリス発情である。
クリスは普段とは違い、直ぐに元気になれたと喜んだのも束の間、ある一点がとんでもなく元気になり過ぎた。
それにいつも接しているリサを見ていると………凄まじくムラムラして堪らない。
いつも妹のように可愛がっていたリサがとても魅力的に見える。
それはクリスの精神を大いに蝕んだ。
家族、しかも庇護の対象である彼女に対して自分はなんて不誠実な感情を抱いてしまっているのだろうか?
自室のベットに座り、そんな悶々とした悩みに苦しむクリスを不思議に思ったリサは彼を何が苦しめているのか聞こうといつもの調子で、そう、いつものようにクリスの腕に抱き擦り寄ってしまった。
その結果………
リサはクリスにベットへと押し倒された。
しかし、そこまで及んで尚、クリスの強靭な精神力は振り切れてはいなかった。
血走りつつある目と粗くなる呼吸を抑えきれなくなりながらも彼はリサに
「すまないリサ………俺は………ぐぅっ………」
そう言って頭を振りながら身体を離そうとする。
そこでリサは初めてクリスに女性として見られている事に気が付いた。
具体的に気が付いた理由は、クリスの男性の象徴が自分の下腹部に当たっていたからだ。
だが彼女はクリスが強引に事に及ぼうとして思い直し、自分の事を思い謝って離れようとしてくれているのだと直ぐに気が付いた。
リサとしては憧れで初恋の自分を護ってくれる自分だけのヒーロー(クリス)が自分を求めてくれている。
そう考えたからこそ、絶賛クリスに片想い中の恋する乙女なリサが次の行動に移すのはとても簡単だった。
離れようとするクリスに恥ずかしさで赤くなりながらも、抱きついて耳元で囁くように想いを伝える。
「私………クリスさん、ううん、クリスになら………良いよ?」
そう囁いた瞬間、クリスの最後の一線がハンターに首狩りをされたかのようにぶち切られた。
その日、セーフハウスのクリスの寝室では艶やかな嬌声と興奮状態のゴリラ声が響き渡る事となる。
そしてようやく興奮が収まり正気に戻ったクリスの目前には、自分の半身が出したと思われる粘液に塗れて幸せそうな表情………というにはあまりにも淫靡な表情のリサがうわ言のように
「もっとぉ…クリスのをもっとちょうだぁい……」
若干舌っ足らずな声色でそう言っていた。
自身の起こしたあまりの事態に、クリスは頭を抱えて警察に自首しようと考える。
だが、そこに待ったをかけた者がいた。
もちろんそれはリサである。
あれだけ自分を求めていたクリスが、いきなり警察に自首すると言い出した時には驚きを隠せなかった。
自分だけのヒーローが自分(リサ)を求めた事が罪になる。
そんな事は認めないし、認めさせたくない。
自分にはこの人だけしか居ないのに、世間はそれすら認めてくれないのか?
両親も友人も全てを失って、強大で恐ろしい組織から狙われた状態の自分を護ってくれると言ってくれたヒーローが、警察に捕まるなんて事実はリサにとって到底認められなかった。
だから彼女は決意した。
彼、クリス・レッドフィールドを、骨抜きにしてしまおうと。
そこからの行動は実に早かった。
自首しようとするクリスを泣き落としで引き止め、懇願するように傍にいて欲しいと縋り着いた。
そして思い留まったクリスに昼間はいつものように振る舞い笑顔と、彼と過ごした中で彼の心を擽られるような妹らしい仕草を見せる事で罪悪感のある彼を癒し、夜になるとクリスの寝室に忍び込んで逆夜這いを仕掛けた。
もちろん通常の精神状態のクリスであれば夜這いなど跳ね除けれたのだろうが、リサには秘策があった。
あのバイアグラタブレットである。
あのタブレット入りケースを密かに回収していたのだ。
ケースが2つある事に気が付いたリサは中身が違っている事に気が付き、逆にそれをそれを活用。
夜になる前に密かにクリスの持っているケースとすり替えて置いたのだ。
グリーンハーブのタブレットとバイアグラのタブレットをすり替えられている事に気が付かないクリスは、夜這いに来た魅力的な女性であるリサの積極的な姿勢と、その仕草にやられて抱いてしまう。
もはやそれは依存と言ってもいい。
しかもリサは誘い受けという高等テクニックを、無自覚に発動させてクリスを自身に溺れさせていった。
罪悪感と性欲の2つに追い込まれていったクリスが、昼間のリサから受ける癒しと夜の快楽がどれ程の深みへと誘われていったのか。
リサは同居生活で身に付けた甘え方や無自覚にクリスの男心を擽る仕草でグズグズに溶かしきってしまっていたのだ。
考えてもみて欲しい。
クレアという妹を持つ兄であるクリスに、妹のように甘えながらも自分の事を男として見て求めてくるリサ。
庇護欲と征服欲というクリスの男としての本能とも呼べるその2つを揺さぶられているのだ。
クリス特攻とも呼べるその攻勢に、彼が耐えられる筈が無かった。
そしてバリーとジルがアンブレラの追っ手から撒く為に時間を掛けて、ラクーンシティからこのセーフハウスに戻ってくるまでの約3ヶ月間、こんな爛れた生活が続けられる事になってしまう。
その間にクリスは日常的に行われる爛れた生活の営みに、それが普通の事であると認識してしまい、そしてこんな自分を受け入れてくれるリサに惹かれていってしまうのは、銃の引き金を引けば弾が出るくらい当たり前に感じてしまっていた。
バリーとジルがセーフハウスに戻って来た時、ハウス内で椅子に座る笑顔のクリスの膝の上に対面で座る蠱惑的な笑みのリサを見た瞬間、2人は頭を抱えて天を仰いだ。
恐れていた事が起きてしまったのだと。
しかもよく見ればリサのお腹は少し膨れている。
まさに事案が発生していた。
とりあえず2人を離したバリーとジルは個別で取り調べを行った。
バリーはクリスを、ジルはリサをである。
そして発覚したバリーのやらかし案件。
とりあえずジルはバリーとクリスを1発ずつ張り倒した。
ちなみに妊娠した推定の時期はあの最初の日である事は、その後の定期検診で分かっている。
しかし、出来てしまったものはしょうがない。
リサ本人も産むつもりだし、クリスも彼女との仲を隠す気すらなかった。
だが、状況がまだそれを許さない。
この頃まだアンブレラが健在であり、バイオハザードが起きたとはいえ、証拠が全て核の炎で吹き飛んだ後でもあったからだ。
アンブレラという巨大な傘が破れ落ちるまでの間は、リサとその子供を隠さなければならない。
見つかればどうなるのかは、想像にもしたくない凄惨な未来が待っているだろう。
そこでクリスは、リサとこれから産まれてくる子供の為に奮起する事になる。
打倒アンブレラを掲げて今以上に躍起になって証拠集めや筋トレによる肉体改造を始めたのだ。
その傍には常にリサが、献身的と言っても過言では無い程の支えがあったのだが。
幸せな未来を紡ぐ為に全力全開で突き進むクリスと、それを支えるリサを見続けた仲間のバリーは、あの当時を振り返ってこう語る。
「あの時の2人は未来を勝ち取る為に必死だった。でもそんな中でも2人のお熱っぷりには少し口の中が甘ったるかったけどな」
そう言って苦笑するバリーだが、バイアグラの件は妻ケニーにも知られて右目に青タンを作ったらしいが。
因果応報である。
そして2003年、遂にその時は訪れる。
アンブレラの終焉である。
クリス達の活動が遂に実を結び、巨大企業アンブレラがBOWやウィルスの開発、販売に関与していた証拠を手に入れて追い詰める事に成功したのだ。
これにより製薬会社アンブレラは全ての罪を明らかにされて倒産。
それを見届けたクリスとリサは結婚する事となる。
ちなみにこの時リサはすでに第3子と第4子の双子を身篭っており、大きなお腹を収めるウエディングドレスを選ぶのに苦労したらしい。
補足だが、クリスの妹であるクレアは、ベロニカ事件で南極からクリスに救出され同乗したジェット機の中でリサとその子供の事を知らされて、実際に会った際に外見年齢が自分と変わらない彼女の事を見た瞬間、兄のクリスの肩を叩いて
「………兄さん、自首しようか?」
と言ったのは仕方の無い事だろう。
その時のクリスはやはり絶望した表情を浮かべていたらしい。
まぁ結婚式で一番2人を祝福したのは彼女なのだが。
そんなこんなで皆に認められて祝福された2人は、その後も仲睦まじく過ごして最終的には8人の子宝に恵まれる事となる。
その間に起きた出来事や事件がクリスを苦しめたり、傍で支えるリサを不安にさせたりする事があったが、夫婦仲は円満だったようだ。
そして2017年の現在、2人は今日も仲睦まじく暮らしている。
BSAAの仕事で会えない事もあるが、クリスは愛する妻の下へ必ず帰って来るのだ。
決してバイオテロに負けないという強い意志を持って………
ジルクリの方はごめんなさい。
でも公式でも引っ付いて居ないのが悪いんや………
もちろんジルクリ好きです。
ですがこんな悲劇的で救いの無いのヒロインを助けたかったのです。
確かに原作では戦うしかなかった。
だからこの物語の中では幸せな未来を紡いであげたかった。
どうかこれ以降、彼女に救いのある2次作品が増えますように
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
華麗なるゴリスの日常 [前編]
それはifの物語
こんな幸せな物語もある。
そんなお話。
朝7∶00 起床
「………ゔぉ………あ………」
「おはよう、あなた♡」
ツヤツヤとしている妻に起こされる若干干乾びたクリス(45歳)。
それもその筈、昨夜というかほんの4時間ほど前まで絞りに絞られて、ラスボス前に残弾が尽きてリセットを考えるレベルにまで追い詰められた男の姿がそこにはあった。
ゲームのライフ表示にすれば真っ赤な心電図が映ることだろう。
そんな満身創痍になりながらも、夜の営みを頑張ってくれた夫の頬へ、愛おしそうに優しくキスをするリサ。
そして若々しい裸身の上にお気に入りである前日までクリスが着ていたワイシャツをそのまま羽織り、鼻歌を歌いながら寝室を後にする。
一人ベットに残されたクリスは、プルプルと震える腕を横にあるランプシェードの付いた棚に伸ばし、その上に置いてあったタブレットケースを掴み取った。
「…………ゴクリッ………死ぬかと思った」
そこからグリーンハーブのタブレットを十数個取り出し、そのまま飲み込むと、ようやく落ち着く。
ここ数年でこのタブレットのお世話になる回数や量が増え続けているのが目下の悩みである。
しかし、その原因である行為は止められない。
何故なら彼女が悲しむからだ。
「というより一服盛られるからなぁ………」
あの時に本当に淫魔という存在が居るという事を実感したクリスは、二度と彼女からのお誘いを断るという愚行をするまいと心に誓ったのだ。
下手するとバディのジルを失ったと勘違いし、ウェスカーを追いかけながら戦ったアフリカでの日々よりキツく感じてしまう。
それにあまり彼女を一人にしてはいけない。
長期に渡って家を空けるなんて、バイオハザードが発生したアンブレラの研究所より状況が酷くなる。
クリスの銃から弾を撃たせに撃たせ、バイアグラや食事と言う名のドーピングによるガンパウダー製造からの弾の生産までを一週間続けられたあの日々………
「…………………忘れよう」
頭を振ってベットから出るクリスは、思い出しそうになる日々を振り払うかのように無心でクローゼットからジーンズとTシャツ出し、それを着て寝室を後にした。
8∶00 朝食
「はい、どうぞ」
「いつもありがとうリサ」
「ふふ♪どう致しまして♪」
そんないつものやり取りをしつつ始まる朝食。
今日はカリカリに焼いたベーコンとスクランブルエッグ、そしてサラダというシンプルな物だ。
そこにバターを塗った程良い焦げ目の付きのトーストも追加でやってきた。
飲み物もリサが愛情を込めてブレンドしてくれた特製コーヒー。
こんな幸せがあっていいのか悩むクリスだが、目の前の食事に集中する。
愛しい妻が心を込めて作ってくれた食事なのだ、それに対して他の事を考えながら食べるだなんて失礼な事はしたくない。
日々の幸せに対しての感謝の祈りを捧げて食事を開始する。
フォークで刺したベーコンを齧ると滴る油が更なる食欲を唆ってきた。
そこにスクランブルエッグも一緒に食べると、卵のほんのりとした甘さが口に広がってなんとも言えないハーモニーを奏でてくれる。
口の中を空にしてサラダを口にすれば、それまで口の中に存在していた油っぽさが消えていくのが分かり、リサが最近手作りしているドレッシングソースのあっさりとした風味と香りが鼻を抜けて楽しませてくれる。
それはまるでグリーン、レッド、ブルーのハーブが組み合わさった最強のハーブを口にした時の清々しい心地良さを感じた時のようだ。
アレに勝るとも劣らないこの料理を作ってくれたリサには本当に感謝しかない。
「今日も美味しいよリサ。本当に君の作る料理を食べられる俺は幸せ者だよ」
「もう、そんな嬉しい事を言って………おかわりもあるからしっかり食べていってね?」
「ああ、頂くよ」
互いに笑みを浮かべながら進む食事。
朝からどこぞの警察署内にバラ撒かれる神経ガスのように、室内を覆う甘ったるい空間を形成する二人なのだが………これが毎日の出来事なのである。
成人して独り暮らしを自ら始めた、もしくは学校の寮に住むと言い出した子供達に二人は首を傾げていたのだが、これはムービー中に襲われるNPCの末路より簡単に想像できた事だろう。
想像しても欲しい。
朝から甘ったるい空気を吸わされ続ける子供達を。
相当ウンザリする事だろう。
それこそウスタナクやネメシスに何処までも追い続けられる位にはウンザリする事この上ない。
しかもこのゴリスとリサはその事に気が付いていないというのが致命的だろうか。
そんな感じで過ぎる朝食の時間は、まさにリア充爆発しろと言いたくなる空間であった。
9∶00 出勤
「それじゃ行ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃい………ちゅっ」
「んっ………今日も定時で帰ってくる」
「うん、待ってる」
玄関から出て人目も気にせず互いに絡みつくように抱き合いながら、行ってきますのキスをリサにかまして出勤するゴリス。
周りの通勤通学で歩く人達はまるでドレインディモスに無理矢理口を開かれて、パラサイト状態にさせられたかのような表情を浮かべて足早にその場を後にする。
だがこのリア充、その事に全く気が付いていない。
そんな一騒動を起こしつつもここからBSAAの支部まで車で出勤する。
そして車に乗り込んだ瞬間、ゴリスの、いや、クリスの雰囲気が変わった。
それはBSAAとしてのクリス。
日夜バイオテロと戦う男としての姿。
愛する家族を守る為に絶対にテロを許さない最強の主人公へと切り替わる。
「………」
ムッツリとした表情を浮かべながら今日の会議での議題や、今後のテロで使用されるであろうBOWについて考える。
そこに一切の妥協はない。
苦手だった書類作成等も乗り越えて、家族の為ならば何処までも強くなれる父親の姿がそこにはあった。
こんなクリスに憧れて入隊したBSAAの隊員は数多く居る。
愛を知ったクリスの力強さ、そして何者にも曲げられない鉄の意志に惹かれた男達と共に今日もまたバイオテロを未然に防ぎ、潰していく。
部下からの信頼も厚く、日々をバイオテロ撲滅に捧げるクリス。
そんなクリスは知らない事だが、女性隊員から色んな意味で熱烈な視線を向けられている事はBSAAの公然の秘密である。
「………バイオテロを無くしてみせる」
車内でハンドルを壊さない程度に強く握るクリス。
妻の為に戦う、愛する人の為に強くなれる男という者は、どの時代においてもモテるらしい。
まぁ、その男の視界には妻しか映っていないので、女性隊員からの熱を持った視線に気が付いていないのだが。
このモードに入ったクリスに何人の女性が熱を感じ、そして涙を流したのか………
同僚で、バイオテロの被害者となり、金髪へとイメチェンした現在リハビリ中のジル・バレンタインはこう語った。
「確かに頼れる人よ彼は………仕事もこっちからするとやり過ぎって思える位にね。でも自慢の愛妻弁当をニコニコしながら開いて食べるからなんだか毒気を抜かれるわ」
ちなみに苦笑いを浮かべて肩を竦めながらそう言う彼女は、現在彼氏募集中である。
本人は何故かモテないのだと話すそうなのだが、同僚のクリスからすると
「周りからはオリジナルイレブンということもあって、高嶺の花のような印象を与えているのかもしれないな……ああ、これはジルには言わないでくれよ?」
という事らしい。
流石は任務中で長年バディを組んでいただけはある。
相棒の事は分かるようだ。
そんな蛇足は置いておき、クリスはBSAA支部へと到着する。
支部内に入るとすぐに建物内に居る隊員達から挨拶を受けた。
それに軽く手を振って返すと自身のオフィスへと向かい、昨日までに纏められたレポートに目を通していく。
どうやらこのレポートは、あのネオアンブレラ事件から昇進し、精鋭部隊の隊長となったピアーズと副隊長のフィンからの物らしい。
「……頼もしくなったものだな」
二人の活躍を記したレポートに頬を緩ませながらもしっかりと読み込んでいく。
思い返せば運命の分かれ道だったと思う。
あのネオアンブレラによる大規模バイオテロの始まりと言っても過言ではないリドニアの事件で、間一髪で落ちてくる鉄格子の外へと新人だったフィンを引き込んだクリス。
ちょうど監視していた重要参考人のエイダ・ウォンを見失い、クリスに報告しようと近寄った瞬間に、第六感が働いたクリスはフィンの襟首をタイラントが掴みあげるように握り締めて自分の後ろへと投げ捨てた為に生き残れたのだ。
その時にフィンは水平方向に5m程飛んで恐ろしい思いをしたらしい。
しかもクリスの馬鹿力で投げられた影響で足の骨に罅が入ってしまい身動きが取れず、そんなフィンを庇ったクリスがナパドゥに壁に叩きつけられ、何発も殴られて負傷し記憶喪失となってしまった。
そんな足手まとい二人を庇いながら救い出したピアーズは本当の英雄である。
そんなこんなで迎えた最終決戦。
海底プラントでのハオスとの激闘の最中、怪我から復帰して後詰めとして応援に来たフィンのC4爆弾による蛹の破壊や、応援物資として持ち込んだロケランなどによりネオアンブレラの切り札であるハオスは沈黙。
念には念を入れてリサを不老不死の呪縛から解き放つ為に開発したワクチンの失敗作である、始祖ウイルス系統の遺伝子を持つウイルスを死滅させるワクチンを投与して事件を終息へと導いた。
そんな二人にクリスは後を任せて前線から身を引いたのだが、二人は今も精鋭部隊を率いて活躍している。
こんなに誇らしい気持ちになれるのは、やはりあの時に頑張ったからだろう。
クリスは二人の活躍に今後も期待しながら、次のレポートを読み始めた。
12:00 昼食
「………ん?もうこんな時間か」
様々なレポートを読みながら、各地で起こるバイオテロの脅威に対しての対策を考えつつ書類の作成をしていると、ちょうど昼食の時間だ。
そろそろリサが持たせてくれたお弁当を味わう楽しみな時間がやってきた。
鞄から大きなランチBOXを取り出すクリス。
その目は何が入っているのか楽しみでしょうがないと言っている。
「今日は………おお!!」
今日のお弁当は分厚いハンバーグを挟んだハンバーガーが3個に、保温性のある容器に入ったチキンスープ。
そして今日も頑張ってねと書かれた愛する妻からのキスマーク付きのメッセージカードだ。
メッセージカードのキスマークに軽くキスしたクリスは、早速ハンバーガーを手に取った。
手に持つとズッシリとした重みを感じるハンバーガーは、冷えても美味しく食べられるように工夫されたリサの愛が籠もった一品。
そんな妻へ感謝の思いを込めて大きく開けた口で思い切り齧り付いた。
「……………あぁ………最高だ」
唇に付いたリサ手作りケチャップを、リッカーの様に舐めて口に含みながら何度も頷くクリス。
一口では足りないと何度も何度も齧り付いていると、あっという間に一つ目を食べきってしまった。
だがクリスは止まらない。
飢餓状態になったゾンビのようにすぐさま2個目も平らげてしまい、3個目も程なくして彼の胃袋へと収まってしまった。
後に残るのはチキンスープのみ。
チキンスープはアメリカのお袋の味と言われる家庭料理だ。
「うん、旨い」
容器の蓋を取って、一口飲めばクリスの頬がまた緩む。
この光景をもし宿敵ウェスカーが見ていたら、その場でサムライエッジを抜き、無言で全弾ブチ込むレベルであった程の緩み具合だ。
しかし、今のクリスの幸せな一時を邪魔する者は居ない。
愛する妻の愛情がたっっっっっっっぷり詰まった愛妻弁当を堪能したクリスは、とても幸せな気分の余韻に浸る。
「…………午後からも頑張れそうだ」
オフィスの窓から見える外を見ながらクリスはそう呟いた。
愛する家族を守る為に、午後からの職務もまた全力で取り組もう。
そう心に決めるクリスの顔は…………ウーズよりも弛んでいた。
後編へ続く…………
アフターストーリーが遅くなり、申し訳ないです。
私の矮小な想像力ではここまで時間が掛かってしまいました。
後編はもう少し時間がかかりますが、もうしばらくお待ち下さい。
目次 感想へのリンク しおりを挟む