彼と彼女は一心同体 (シロップシロップ)
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仮面を被った少女
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名前 宮里 優愛(みやざと ゆあ)
容姿
髪の色は銀髪で目は桃色になっている。
とても可愛らしい美少女。
いつも笑顔を張り付けてニコニコしている。
怒ると物凄く怖い。
何故だか何時も綾小路清隆を中心に置いて考え、行動している。
多重人格で不定期で入れ替わる時がある。
本人は、入れ替わった時から戻るまでの記憶はある。
綾小路清隆と幼馴染み。
↓
清隆の事を主人公は信頼している。
ホワイトルームで大きな過去と秘密を抱えている。
綾小路 清隆
宮里 優愛と幼馴染み。
↓
優愛の事を信頼している。
他にももう1人幼馴染みの様少女がいる。
高度育成高等学校生徒データベース
氏名 宮里 優愛
学力 B-
身体能力 C+
判断力 B-
協調性 B+
面接官からのコメント
学力・身体能力は少し平均点より高く、面接試験では好印象を獲得しているコミュニケーション力が高い生徒。普段ならBクラス配属とするが、いつ人格が変わるかわからない事と、理事長からの意向によりDクラス配属とする。
◎◎◎
突然だが、あることについて考えてほしい。
問い 人は平等かどうか。
きっと、殆どの人が平等ではないと答えると思う。僕も同じ考えだ。
この世の中は決して平等ではない。
偉い人はこの世の中は平等だと言って偽ることがある。
『人々が皆平等になれる用な社会を作ろう』そう言ってるが、それは絶対に叶えられないと僕は思う。何故なら、不平等だからこそ、この世の中は成り立っているのだから。
それに・・・本当に人々が平等なら、あの様な出来事も起きなかったはずだ。そして僕の用な人格も生まれなかった。あの娘も、きっとあの頃みたいに本当の笑顔で過ごせただろう。
・・・この世は不平等で理不尽だらけで出来ている。そうでなければならないのだ。
◎◎◎
4月、私と清隆は此れから通うことになる学校、高度育成高等学校の入学式に向かう為にバスに乗っていた。
窓からは満開に咲いた桜並木が見える。桜は満開になっていて、綺麗だなと思いながら私は目的地に着くのを待っていた。
「もうすぐ着くかな?学校楽しみだね!」
「そうだな」
隣に座っている私の幼なじみである少年、綾小路清隆にニコリと笑顔を向けると彼もまた無表情ながらも目を合わせてくれる。
友達何人作れるかなあ、沢山できるといいけど・・・。
そう緊張したがらも胸に期待を寄せていると、突如女性らしき声色の声がバス中に響いた。
「席を譲ってあげようって思わないの?」
「「!?」」
びっくりしたぁ・・・。
私は慌てて平常心を取り戻しながら辺りを見渡して状況を整理する。
どうやらスーツに身を包んだOL風の女性が、優先席に座っている一人の若者にお婆さんの為に席を譲って貰おうとしているみたいだった。
「そこの君、お婆さんが困っているのが見えないの?」
彼女の声はよく通り、乗客たちの視線が一斉に集まっていく。
そんな大注目の中、注意されている若者がニヤリと余裕のある笑みを浮かべながら足を組み直した。
「実にクレイジーな質問だね、レディー。何故この私が、老婆に席を譲らなければならないんだい? どこにも理由はないが。」
「君が座ってる席は優先席よ。お年寄りに席を譲るのは当然でしょう?」
「理解できないね。優先席はあくまで優先席であって法的な義務はどこにも存在しない。この席を譲るか否か。それは今現在この席を有している私が判断することなのだよ。若者だから席を譲る? 実にナンセンスな考え方だ。」
確かに今この世の中は、年寄りと若者が一般的に体力がないと認識されているけど・・・。
「私は健全な若者だ。確かに立つことに何の不自由も感じない。しかし、座っているときよりも体力を消耗することは明らかだ。意味も無く無益なことをするつもりにはなれないねぇ。それとも、チップを恵んでくれるとでも言うのかな?」
凄い理屈だけど、言ってることに間違えはないんだよなあ。もう少し言い方変えた方がいいと思うけど。そんなんじゃ逆ギレされちゃうんじゃないかな?
余裕のある表情でいる少年に対し、女性は顔を真っ赤にさせながら体を震わせ、怒りを露にしている。
「そ、それが目上の人に対する態度!?」
ほらやっぱり。
「目上? 君や老婆が私よりも長い人生を送っていることは一目瞭然だ。そこに疑問を挟む余地も無い。だが、目上とは立場が上の人間を指して用いる言葉だ。それに君にも問題がある。歳の差があるとしても生意気極まりない実にふてぶてしい態度ではないかな?」
「なっ・・・! あなたは高校生でしょう!? 大人の言うことを素直に聞きなさい!」
「も、もういいですから・・・」
あらら、これじゃあただ騒ぎを起こす為だけに話しかけたことになっちゃうね。見かねたお婆さんが逆に女性を宥めているよ。
これってお婆さんが辛そうにしているのは事実だし、此の場合は席を譲った方がいいのかな?
でも、あの少年やこのバスに座っている人達は全員、あの女性の話を聞いても動こうとしてないし・・・常識的に考えてどっちが正解なんだろ。そういうの私、疎いから分からないな・・・。
そう思いながら私はチラリと隣に座っている清隆を見た。
でも、このまま此の争いが続くと流石に気分が悪くなる。清隆に不快な思いはさせたくないし。早めに問題を解決するのが妥当でしょ。
でもどうしよ。あの少年にも少しは反省して欲しいし、もし出来るなら私も席に座りたいからねえ。
まあ、取り敢えず行ってきますか。
「清隆、ちょっとごめんね」
「え?」
私が席を立つと、清隆は珍しく目を見開いていた。
あーー。これは私が何か行動するとは思ってなかったのかな。まぁ分からなくはないけど。
私は少し笑いながらお婆さんがいる方向へと歩いて行った。
「お婆さん。もしよかったら私の席に座ってください。彼方に席が空いている所がありますから。」
私はそう言い、お礼を言うお婆さんを席までエスコートしていき、座らせた。
さてと次はー??
席を譲って貰おうとしていた女性に近づくと警戒心丸出しで若干私を睨み付けてくる。
わお、そんな睨まなくてもいいのに。まるで子供みたいだなあこの人。大人の格好してるのにね。
私は、まるで子供を慰める用な感じで語りかけた。
「お姉さん。お婆さんの為に席を譲って貰おうと頑張っていて本当に凄かったです。こんなにお婆さん思いの方見たことなくて大人の鏡だなあって思ってみてました。私も大人になったら貴方みたいになりたいです。ですが大声を上げたり威圧したり、押し付けてはいけませんよ・・・?折角すごいことをしてるのにその頑張りが無駄になってしまうと思うので・・・。」
すると女性は目からぼろぼろと滴を落とし、泣きだした。
「そ、そうね。わかったわ・・・。」
おおー、すごい泣いてる。仕方ないハンカチでもあげるかあ、帰ってくるかわかんないけど。
えーとじゃあ後は・・・。
私は優先席に座っている少年の方へ顔を向けた。
この人、めっちゃ興味あるんだよねえ。色んな意味で。
「其所の君も、確かに席を譲る事は法律にも指定されて無いし、若者が席を譲らないといけない事でもない。だけどせめて、席に置いてある君の荷物を退けて席をもう少しだけ積めれば、一人座れるんじゃないかな?」
すると、彼は余裕な表情で笑みを溢す。
「ふっ、今度は銀髪ガールか。どうやら今日は女性運が強いみたいだねぇ。しかし、銀髪ガールの考え方は実にナンセンスな考え方だ。積めて座れば狭いだろう。荷物も退けたら置く場所が無くなってしまう。何故この私がそんな無意味なことをしなければならないのだい?・・・美しくもなんともないじゃないか」
おー、なんて言うかこの人凄い。愉快というかなんていうか・・。それにしても美しい・・ね。
「美しいモノが好きなの?」
「あぁ、勿論さ。私は美しく為るために日々努力しているのだから。最も、しなくても私は美しいがねぇ」
なるほど、これは使える。
「そうなんだ。‥‥でも今の君は美しくないと思うよ」
「なに?」
「君の言っていることは確かに正しいのかもしれない。だけど、君の言う美しさは正しいことがすべてとは限らないんじゃないかな?」
「どういうことだね?」
驚いた表情から一転、こちらを興味深そうに見てくる。
「今回の場合は女性の言い分を聞き、間違っている点を指摘した上で、お婆さんの為に席を譲るべきだったと思う。それが一番美しい形だったと私は思うよ。少なくとも私には君が女性を強引に言いくるめ、車内の空気を最悪にした現状よりかは美しかったと思うな。」
「ハハハハハ!」
「!?」
私が言い終わると急に、少年は大きな声で笑い始めた。
・・・いきなり笑われるとは心外だな。今笑う要素なんて1つもなかったと思うんだけど。
「銀髪ガール、君は面白いな。まさか私に美しさを説いてくるとは。しかし銀髪ガールの言い分は一理ある。確かにその方が美しかった。」
すると彼は、荷物を退けて席を積めた。
「ここに座りたまえ、銀髪ガール。」
そう言って席を積めた事によってできた所をパンパンと手で叩く。
これは座っていい感じ?よかったよかった。意外とこの人いい人かも。
「ありがとう。じゃあ、有り難く座らせて貰うね」
隣に座ると此方を見てくる。
「そうだ、折角だから名乗っておこう。私の名前は高円寺六助。高円寺コンツェルンの一人息子にして、いずれはこの日本社会を背負って立つ人間となる男だ。・・・その服装を見るにどうやら君も私と同じ学校に通うようだねぇ。よろしく頼むよ。」
えーと、高円寺コンツェルン・・・?
よく分かんないけど偉い人の息子さんなのかな。
なるほど。だからあんな発想が。お偉いさんは一体どんな教育をしてるんだか。
ちょっとクレイジーな発想してるかもだけど彼の考えは少し興味深い。親交を深められると良いな。
「私の名前は宮里 優愛だよ。よろしくね高円寺くん。」
「あぁ。では私は、宮里ガールと呼ぶとしよう。」
ええ、そこは普通に呼んで欲しいんだけどな・・。まぁ、銀髪ガールよりはマシだしいいか。なんか変な風に呼ばれるのはちょっと落ち着かないけど。
それから少し会話をしているとバスが到着した。
私はバスから降りる。因みに高円寺くんは着いた瞬間笑いながら先に降りていった。折角だから一緒に行きたかったんだけど・・・仕方ないか。
「おっきい・・・。」
私は想像以上に学校が大きいことに驚いた。
凄いお金がかかってそう・・。これが国が運営する学校。流石としか言いようがないな。
あ、そうだ。清隆は・・・。
「あの、ちょっといいかな?」
後ろから可愛らしい声が聞こえ、振り替えるとそこには金髪の美少女が立っていた。
・・・確かこの子、バスで立っていた子、だよね。見覚えがある。
「えーと、私?」
「うん、そうだよ!さっきはお婆さんに席を譲ってくれてありがとう!私じゃ、席を譲れなかったから・・・。」
そう言って笑顔で嬉しそうに話す少女。
その姿はまるで自分の様に喜ぶ彼女の姿は、天使と言っていい程とても可愛らしかった。
レベルめっちゃ高いなーーこの子。こんなかわいい子が実際にいるなんて。ちょっと感動。
「もっと早く席を譲るべきだったかなって思ってたんだけど・・・。」
「そんなことないよ!お婆さん、凄く嬉しそうにしてたもん!」
うんうん。この子はあれだ、癒し系だ。おとぎ話に出てくる子みたい。優しすぎる。ほんとに現実?きっとこの世の中でこんなに優しい子滅多にいないと思う。絶滅危惧種に匹敵しそう。
「ありがとう。」
お礼を言うと、あ、と閃いたように私の手を握る。
「そうだ!折角だし一緒に行かない?」
おお、びっくりしたボディタッチ。かわいい・・・。思わず変な声だすとこだった。それにしても一緒に行こうだなんて嬉しすぎる。もしかしたら友達になれるかもしれない。あ、でも清隆は・・・。
清隆を探すと、彼も誰か別の少女と話をしているみたいだった。
清隆が私以外の人と会話してる・・・!!すごいなんか新鮮すぎる。まぁ高校通うんだしそれは当たり前かあ。でもやばい笑っちゃう。おもしろい。
まあ清隆も別の少女と話ししてるから彼女と行ってもいいか。
邪魔しちゃ悪いしね。
「いいよ、一緒に行こ!」
「ありがとうっ。あ、私は櫛田 桔梗だよ!よろしくね優愛ちゃん!・・・で名前合ってる?」
あ、もしかして高円寺くんと話してた時に聞いたのかな。
「うん。そうだよ、よろしくね!えっと・・・」
名前何て言う風に呼べばいいかなあー。
そう思ってると、何を考えてるのかが彼女に伝わったようで「もしよかったら下の名前で呼んで欲しいな」と言ってきた。
すごい助かる。
「ありがとう。じゃあ、桔梗ちゃんって呼ぶね。」
すると、彼女はニコリと笑いながら可愛らしく頷いた。
◎◎◎
それから私は桔梗ちゃんと他愛ないお話しをしながら校舎の中に入っていった。
すると、少し歩いた所にクラス分けの掲示板があるのを発見する。
「あ、彼処にクラス分けの掲示板があるよ。一緒に見に行こ!」
彼女は私の手を取って掲示板に張ってある紙の文字が見える位置に着くと立ち止まって彼女は自分の名前を探していった。
自分で名前を見つけ出す方式かあ。やばいなんかちょっと緊張してきた。えーと私は・・・。
すると、桔梗ちゃんは自分のクラスが分かったようでバッ!と私の方に振り返った。
「私Dクラスだったよ!優愛ちゃんは?」
おお、振り向いた姿もかわいいねえ。
「えっと・・私は・・あ、私もDクラスだったよ。同じクラスだね」
桔梗ちゃんの下に私の名前があることを確認した。
因みに清隆の名前も探したら私と同じDクラスだった。よかっためっちゃ安心。知り合いが同じクラスってめっちゃ安心するなあ。感謝しないと。
そう私が思っていると、桔梗ちゃんは私の言葉を聞いて嬉しそうな顔した。
「本当!?嬉しいっ!それじゃあ、教室に向かお!」
無邪気な笑顔で言ってくる彼女に対して、私も笑顔で頷き、Dクラスへと向かった。
ガラガラ
教室に入り、黒板に磁石で張り付けてある座席表を見た。
「えっと・・席は・・あ、離れちゃったね・・。」
「ほんとだ、そう簡単に偶然は続かないかあ・・。」
座席表は、桔梗ちゃんは右から2列目の席で私の席は窓側の後ろから2番目の席だった。
うーん、こればっかりはしょうがないか。席は軽く見たところランダムで配置されてるみたいだし。
「席離れてもいっぱい話して仲良くしようね!」
「もちろんだよ!」
そうして一旦別れを告げ、私は自分の席に座った。
机の横のフックに鞄を引っ掛けてってとーー。
よし、おっけ、できた。
それにしても、桔梗ちゃんと仲良くなれてよかったな。めっちゃかわいかったし。早くに友達作れるなんてこれはでかいぞ。だけど・・・うーん、私の思い過ごしかなあ、桔梗ちゃんの笑顔、何か違和感が合ったような・・。
まぁ、そんなに気にしなくてもいいか。
特に危害を加えるような感じじゃなさそうだったし。そう思って私はふと息をつくと、何処からか声がする。
『本当にそう思うのか?お前と居て楽しくなかったからじゃないのか?無理やり笑わせてたんだろう。お前はやはりーーーーーなんだな。』
私は咄嗟に頭を抑える。
違うんだ。何処からか声がするんじゃない。私の中で何時も聞こえる。それが、別の人格からなのか、過去の自分が言っているのか分からない。いつも無視をしているが大抵は頭に残ってしまう。
『お前は何時も自己中心的だな。何時もヘラヘラヘラヘラして愛想を振り撒く。あんなことがあったのに。そんなだからーーーが起こるんだ。そんなことをしていたら彼を守れない。自覚しろ、出ないとお前の願いどころかーーーも出来ない。』
あぁ。わかってるよ。ちゃんと自分のやるべき事を全うするさ・・・。
どうでしたか?もしよければ参考にしたいので感想と評価をつけてくださると嬉しいです!
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心の叫び
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「どうした?そんな顔をして」
後ろを振り向くと清隆が私の後ろの席に座っていた。
私はその事実にしまった、と思いながら急いで外れてしまった笑顔を再び張り付け答えた。
「う、ううん。何でもないよ!それより清隆って私の後ろの席だったんだね。びっくりしたよ。」
まあ、清隆が後ろの席だってことはさっき座席表見た時に確認済みだったけどいつの間に後ろ来てたんだ・・・。
全然気づかなかった。危ない危ない。
「あぁ、俺も優愛と席が近くて安心したぞ。」
んー、そう思ってくれるの嬉しい。
・・・でも口調が何時もと違うねえ。
いつもとキャラ変えに来てるのかな。
私は清隆の目を覗き込む。すると、誰かがこちらに向かってくる気配がした。
「あら、嫌な偶然ね。」
清隆と校門で話していた少女がこちらに歩いてきて清隆の隣の席で止まり、座った。
・・・あの子、清隆の隣の席なんだ・・なんか羨ましい。
じーっと彼女の席を見つめてると清隆が口を開いた。
「そうだな。・・・まぁ、隣の席同士今日からよろしく。俺は綾小路清隆だ。お前は?」
「拒否しても構わないかしら。」
「隣の席なのに名前が分からないの居心地悪くないか?」
「私はそうは思わないけど。」
清隆が会話を試みようと話しかけているが、見事なまでに上手くいかず苦戦している。
・・・清隆が手こずってるところを見るの、久しぶりな気がする。めずらし。
なんかなあーー。どうしよ、清隆が苦戦しているとはいえ、なんかこの会話聞いていて面白い。
・・・このままこの2人の会話を聞いてても良いけどこのまま黙っているのも変だよねえ。清隆も助けてほしーって目してチラチラこっちみてるし。
「あ、私は宮里優愛。清隆の幼馴染みなんだ、よろしくね。」
タイミングを見計らって、笑顔で彼女の方を見ながら話しかけると、向こうは何故か驚いたような顔をした。
・・・あれ、私なんかした?
「あら、貴女・・・バスであの男を説得した人ね。」
えーと、あの男っていうのはもしかしなくても高円寺君のことだよね。
てゆーかさっきから話しかけるまで目が合わないなーって思ってたけどもしかして今まで私の存在気づいてなかった??
相当人に興味がないのかなあこの子。
「たぶんそうだと思う。私の顔覚えててくれたんだー!ありがとう。嬉しいな。」
「別に覚えた訳じゃないわよ。あのバスの中にいた人なら普通印象にのこるわ。」
「そうかな?」
そんなに目立ってたのかあ。なんか恥ずかしい。
「ええ。よくあんなことが出来たわね。逆に尊敬するわ。」
んー、これは褒めてるのか貶してるのかーー。まあ取り敢えずお礼言っとくか。
「ありがとう。」
「あら、どこかの誰かさんと違ってこの子は良い人そうね。」
「おい、どこかの誰かって誰だよ。」
「貴方に決まってるでしょう。それはそうと、貴方に幼馴染みがいたなんて意外ね。」
「おいおい、俺をなんだと思ってるんだ?」
「さぁ?自分で考えたらどうかしら。」
この人、清隆に対して辛辣すぎ・・。もしかして門の前でなんかあった?
てゆかこの人の名前なんだっけ・・・。座席表に書いてあった気がするけどーー、こういうのは本人から教えてもらいたいよねえ。
「ねぇ、清隆の言う通りもしよかったら名前教えてくれないかなー?何て呼べばいいか分からないからさ。」
「・・はぁ、堀北鈴音よ。」
お、名前教えてくれた。よっしゃあ。それにしても綺麗な名前。
「そっか、よろしくね堀北さん。」
てゆーか清隆不思議な顔してる。なんだろ。
「なぁ、なんで優愛には簡単に教えるんだ?俺が言っても教えてくれなかったよな?」
「別に、何て呼べばいいか分からないと言っていたから教えただけよ。変な呼び方で呼ばれたくはないもの。」
「そうか?・・だが俺には教えてくれかった。酷いと思うぞ。」
「彼女はバスの時場を沈めてくれたからお礼に教えてあげたのよ。貴方に教える義理はないでしょう。」
「あはは」
ガラガラ
すると教室のドアが開き、ポニーテールをしている女性が入ってきた。
「席に着け」
担任の先生かな。
担任の先生らしき人に言われ、席を立って談笑していた人達が各自それぞれの席に座って行く。
全員座り終わった事を確認すると担任の先生らしき人が口を開いた。
「えー新入生諸君。私はDクラスを担任することになった茶柱左枝だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。」
へぇ、この学校はクラス替えないのか。・・・あれ、でも学校って普通クラス替えあるよね?
この学校は普通の学校じゃない、ってことなのかな。
・・・まぁ、これで清隆と3年間同じクラスになれるって事だから嬉しいけど。
「今から一時間後に体育館にて入学式が行われるが、その前にこの学校における特殊なルールについて説明しよう。今から資料を配布する。」
そう言って先生は資料を配布してくれたので私は資料を受け取り、中を確認した。
資料には、学校の敷地内にある建設されているショッピングセンターや、レストラン、カフェ、コンビニエンスストア、ボーリング場やカラオケ店など、色々な施設の事や、寮の事等について分かりやすく簡潔に書かれてあった。
すごいなあ。絶対これいろんな施設に莫大な資金がかかってる。
「今から、個別端末を配布する。この個別端末には全ての施設を利用したり、売店などで商品を購入するするためのクレジットカードのようなものが内蔵されている。ただしポイントを消費することになるので注意が必要だ。学校内で買えないものはない。学校の施設にあるものなら、なんでも購入可能だ。」
面白いこと言ったな。何でも買えるのか・・・。じゃあ、つまり物ではない何かの権利みたいなものも買うことが出来るのかな。ってなんか変な妄想しちゃうなあ。まぁ、でももし買えるとしたら結構な額になりそうだけど。
「それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。お前たち全員、平等に10万ポイントが至急されているはずだ。なお、ポイントは1ポイントにつき1円の価値がある。それ以上の説明は不要だろう。」
茶柱先生がそう言った瞬間教室がざわつき、皆端末を操作して本当にそんな高額なポイントが支給されているのか確認をしていた。
私も皆につられて端末を操作して確認する。
うわ、本当に支給されてる。すごすぎる。けど10万・・・。なんでこんな大金を入学してきたばかりの生徒たちに支給するんだろ。これじゃあ生活してく内に金銭感覚がバクっちゃうよ。
「支給額に驚いたか?この学校は実力で生徒を測る。入学を果たした時点で、お前たちにはそれだけの価値と可能性がある。それはお前たちに対する評価の表れだ。遠慮なく使え。ただし、ポイントは卒業後には全て学校側が回収する。現金化などは不可能だから貯め込んでいても得にはならんぞ。ポイントはどのように使おうがお前たちの自由だ。仮に必要ないと言うのであれば誰かに譲渡することも問題は無い。だがカツアゲのような真似はするなよ?学校はその手の問題には厳粛に対処する。」
んー、カツアゲか。それは確かにダメだよね。だけど何か・・・引っ掛かるなあ。先生のこと言い方だと何故か沢山ポイントを使えと誘導されている気がするし。
それに・・・この学校は実力で生徒を測るって言うこの言葉。なんだかなあ・・。嫌な想像をしちゃう。
「何か質問はあるか?」
そう言いながら、茶柱先生は教室を一周見渡した。
・・・色々聞きたいことはあるけど後ででいっか。今はあんまりそういう風に目立ちたくないし。
「質問は無いようだな、これで説明を終わる。では、よい学生ライフを送ってくれたまえ。くれぐれも入学式に遅れないように。」
そう言って、茶柱先生が退出した。
ふうー、何か凄い学校に来ちゃったな。この学校、怪しさ満々すぎ。
そういえばさあ・・・ずっと思ってたんだけど何かやな気配する。
否、あの場所に居るような感覚。
・・さっきからずっと見られてる?いや、視られてるって言った方がいいかな。色々あって辺りを観察する余裕はなかったけど、改めて教室を観察すると天井に沢山の防犯カメラが設置してある。
うーん。・・・なんかもうこの学校凄すぎて一周まわって驚かなくなってきた。
なんで教室に防犯カメラ何てあるのかなあ。これが普通?・・・では無いよね。きっと。私達じゃあるまいし。
そう思っていると好青年と言える男子生徒が声を発した。
「皆、少し聞いて貰ってもいいかな?」
どうしたんだろ。
「僕らは今日から同じクラスで過ごす仲間だ。今から自発的に自己紹介でもして一日でも早く皆が仲良く出来ればと思うんだ。入学式までまだ時間もあるし、どうかな?」
「さんせー! 私たち、まだ皆の名前全然わかんないし。」
自己紹介・・・か。
他の何人かの生徒が賛成すると、それまで迷っていた生徒たちが次々に賛同した。
まぁ、クラスの皆について知れるから良い・・・かな。引っ掛かった事は後で考えよう。
「じゃあ言い出した僕から。僕は平田洋介。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きかな。気軽に洋介って呼んでほしい。よろしく。」
平田くん・・ね。話し方からもだけど見た目通り良い人そう。自己紹介しようって言い出したのも彼だし、クラスのリーダー的存在になりそうだなあ。
てゆうかスポーツ全般が趣味ってすごい。勉強も得意そうだし・・・名前つけるとしたら完璧イケメン?
流石難関校と言われてるだけのことはある。凄い人が集まってるなあ。
続いて、1人の男子生徒が立ち上がった。
「俺は山内春樹。小学では卓球で全国に、中学では野球でインターハイまでいったけど、怪我で今はリハビリ中だ。よろしくぅ~。」
えーと。・・・中学にインターハイ何てあったっけ。私の記憶違いなのかもしれないけど確かなかったはず・・・。
考えられるのは彼はお調子者みたいなタイプ・・・で周りを盛り上げようとしてるのかな。盛り上がってるところか若干シラケてるような気がするけど・・・。
でも思いついても中々できない気がするから度胸凄いな。
「じゃあ次は私だねっ」
山内くんの自己紹介が終わった後、そう元気良く立ち上がったのは先程バスを降りた時に仲良くなった桔梗ちゃんだった。
「私は櫛田桔梗って言います、中学からの友達でこの学校に進学してるのは1人もいないので今は一人ぼっちです。あ、でも今日朝に一人、友達が出来たかな。」
そう言い、桔梗ちゃんは私の方を見た。
「みんなの顔と名前を早く覚えて友達になりたいなって思ってます。私の最初の目標は、ここにいる全員と仲良くなることです。皆の自己紹介が終わったら、ぜひ私と連絡先を交換してください。」
おー。クラスメイト皆がキラキラした顔で見てる。
しかもすごい目標・・・桔梗ちゃん、流石だなあ。
「それから放課後や休日は色んな人とたくさん遊んで、たくさん思い出を作りたいので、どんどん誘ってください。ちょっと長くなりましたが、以上で自己紹介を終わりますっ。」
んー、桔梗ちゃん絶対クラスの人気者になりそう。
もうオーラが違う。周りがキラキラキラキラーって輝いてみえる。しかもめっちゃかわいいしコミュニケーション力めっちゃ高いだろうし・・・。やばいなあ。
「じゃあ次──」
「俺らはガキかよ。自己紹介なんて必要ねぇ、やりたい奴だけやってろ。」
平田くんが次の生徒を指名しようとした時、赤髪の男が喧嘩腰で平田くんを睨みながら食って掛かった。
「僕に強制する権利はない。でもクラスで仲良くしようとすることは決して悪いことじゃないと思うよ。もし不愉快な思いをさせたのなら謝るよ。」
謝罪する平田くんの姿を見て、一部の女子は赤髪の男を睨みつけた。
「自己紹介くらいいいじゃない」
「そうよそうよ」
すでに平田くんの人気度高い・・・。流石と言うべき、か。
「うっせぇ、こっちは別に仲良しごっこしに来たんじゃねぇんだよ」
そう言って赤髪の男子が教室出て行った。
なんかすごい微妙な雰囲気になったけど・・・これ続けるのかなあ。どうすんだろ。
「じゃ、じゃあ、次自己紹介してくれる人いたらお願いできるかな。もちろん、無理強いはしないよ。」
「じゃあ俺がやるぜっ!名前は池寛治。好きなものは女の子で、嫌いなものはイケメンだ。彼女は随時募集中なんでよろしく! もちろん可愛い子か美人希望!」
するとその瞬間空気がシーンとか固まった。
え、ええええこの自己紹介、何というか・・・。うん、この流れでそういえる人滅多にいないだろうな。うん。なんて言えばいいんだろ。
周りを見渡してみると彼に向かってほとんどの女子が軽蔑の目を向けていた。
「スゴーイ、イケクンカッコイー」
「マジマジ? 俺も自分で悪くねぇかなって思ってるけどさ、へへへ。」
今のはたぶん冗談で言ってたと思う。気づこう池くん。
あ、でも本人は喜んでるしもしかしたら気づかない方が幸せだったりする?ありえそう。
そして、平田くんが次に指名したのは今朝方バスに乗っていた人物だった。
「あの、自己紹介をお願いできるかな?」
おー、高円寺くん。ファイト。・・・嫌な予感するけどお偉いさんの息子さんなら池くんみたいな自己紹介しないよね?空気を元に戻せるような普通な自己紹介よろしくお願いします。
彼は短く微笑むと机の上に両足を乗せ、その体勢のまま自己紹介を始めた。
「私の名前は高円寺六助。高円寺コンツェルンの一人息子にして、いずれはこの日本社会を背負う男だ。以後お見知りおきを、小さなレディーたち。」
・・・うん。彼にあんまり期待してなかった。個性的すぎる。女の子向けの自己紹介してどうすんだよ・・・。ここには男子もいるぞ。男子には興味ないのかな。
「それから言っておこう。私が不愉快と感じる行為を行った者は、容赦なく制裁を加えることになるだろう。嫌ならば十分配慮したまえ。」
わあ・・・もうなんかやだ。今物騒な言葉が聞こえなかった?え、気の所為?だよね、私もそう思いたい。
「えーっと、高円寺君。不愉快と感じる行為っていうのはどんなことかな?」
平田くん聞き返してる・・・。私の幻聴じゃなかったか。
「言葉通りの意味だよ。強いてあげるとするならば、私は醜いものが嫌いだ。そのようなものを目にしたら・・・果たしてどうなってしまうやら。」
「あ、ありがとう。気をつけるようにするよ。」
皆引いてんじゃん高円寺くん!!
なんだろう。彼、友達作る気とかないのかな。
それにしてもそこまで言うってことは彼自身かなり強いってことだよねえ。バスの時も思ったけど・・・この体格といい軸といい、絶対強い人の体してる。流石にどれぐらいとかは殺ってみないとわかんないけど。
まぁ、でもそんな悪い人じゃないでしょ。
あ、でも彼に危害を加えるような事をしたら容赦はしないけどね。
「それじゃあ次はそこの君、お願いしてもいいかな?」
そして、次に平田くんが指名したのは私だった。
来た、私の番。最初は結構大事だから頑張らないと。
平田くんが私を指名した瞬間から、私の中にある熱い血がドキドキと脈を打ち、心臓が激しく鼓動し始める。
緊張をしていると言われたらそうなのかもしれない。ただ、私が緊張している理由は他にある。あの事実を言って良いのか。言うべきなのか。
そう思っていると、突如桔梗ちゃんの声が私の脳に響いた。
「優愛ちゃん頑張れ~」
次の番が私だと知ってからか、私にエールを送ってくれた。
その言葉を聞いて私は、1度落ち着いてから結論を出す。
ふぅ、・・・不安なことはあるけど・・・いずれバレるだろうし、先に言っておいた方がいいよね。皆に迷惑をかけてしまうと思うし。
・・・それにきっと大丈夫。当たって砕けろってよく言うしね。
頑張ろう。皆がどう反応するかは分からないけどやってみるか。
そう思いながら私は立ち上がり、口を開いた。
「桔梗ちゃんありがとう。‥‥えっと私の名前は宮里優愛です。趣味は料理をすること、かな。私も皆さんと仲良くなりたいので気軽に話しかけてくれると嬉しいです。これからよろしくお願いします。」
私は皆の方を見ながらできるだけハキハキとそう言った。
すると、皆好印象を私に持ってくれたみたいで、拍手してくれた。
‥‥‥ふぅ、後‥‥あの事も言わないとな。……よし、
「後‥‥あの実は私、解離性同一性障害、えと、分かりやすくいうと多重人格なんです。」
そう私が言った瞬間、皆がざわめきだした。
やっぱり最初はそんな反応するよね。多重人格の人とかそうそういないと思うし。
そう思いながら私は言葉を続ける。
「だから稀に皆に酷いこと言ってしまったり、私の様子が少し可笑しくなったりするかも知れませんが、気にしないで普通に接してくれると嬉しいです。」
そして、私は言いたいことを最後まで言い切るとペコリとお辞儀をし、皆の方を見た。
すると、平田くんが素早く私に声をかけてくれた。
「分かったよ。花里さん、教えてくれてありがとう。ちなみになんだけど、人格がいつ変わるかとかは分かるかな?」
良い質問だな。でも・・・。
私は申し訳ない気持ちで平田くんの質問に答えた。
「ごめん、分からないんだ。不定期に交代されるから‥‥。でも、記憶はあるからどんな事をしちゃったのかとかは一応分かる、かな。」
「そっか、わかったよ花里さん。不安だと思うけど1人で抱え込まないで僕達に相談してね。改めてこれからよろしく!」
「よろしくー」
平田くんの言葉に続き、クラスの皆がそう言ってくれた。
皆優しい…。ありがとう。
そう、感謝の気持ちを込めながら私はもう一度お辞儀をして席に座った。
すると、平田くんは最後に私の後ろの席に座っている清隆を指名した。
「じゃあ最後は後の君、お願いしてもいいかな?」
そう言われると清隆は静かに席を立った。
清隆ってどんな自己紹介をするのかな。なんか少し楽しみ。
「えー‥‥‥えっと、綾小路清隆です。得意なことは特にありませんが、皆と仲良くなれるよう頑張りますので、えー、よろしくお願いします。」
・・・緊張してるのかな?いつもの清隆とちょっと違うから何か面白い。
「うん、仲良くできるよう頑張ろうね。これからよろしく」
平田くんが清隆をフォローしてくれた。
そして私はいち早く清隆に拍手をすると、他の何人かの人達も同じように拍手をし、Dクラスの自己紹介が終わった―――
◎◎◎
ふぅ、皆と仲良くできるといいな。もう、あんな後悔はしたくないから・・。。だからこの3年間、思いっきり楽しみたいな。
そう願うと急に心臓が熱くなる。
ドクンッ
『ねぇねぇ、そんなこと言ってるけどさ~、この教室にいる奴ら全員無能だよね。あ、一部の人は当然違うけど~。無能なやつと仲良くなりたいだなんて本当、お前の頭お花畑だよね。理解できないなー。まぁ、せいぜい頑張って彼を守ることだよねー。あの男達から。お前の私情はその後だよ。』
私の中でまた、さっきの声とは違う口調で別の声が聞こえて来る。
(ッ皆無能何かじゃないよ。いい人だよ。馬鹿にしないで。)
『お前がそんなこと言う資格があんの?』
ッ・・・
私はスカートを握りしめながらある感情を抑えて耐えたるしかなかった―――
どうでしたか?見てくださりありがとうございます!
近い内にもう1話投稿できるように頑張ります。
もう1つの作品も投稿しないとな‥‥。
次回も見てくださると嬉しいです!
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思わぬ誤算
入学式も何事もなく終わり、教室に再び戻りその後各自解散となった。
私は荷物をまとめて帰る支度をしていると清隆に声をかけられた。
「なぁ、優愛はこれからどうするんだ?」
「う~ん‥‥私、少し調べたいこととやりたいことがあるから今日はそれをしようと思ってるよ。だから‥‥それが終わったら後で清隆の部屋に行ってもいいかな?そこで色々お話ししよ」
「わかった。じゃあ、俺はコンビニにでも行って日用品を買うことにしよう」
あ、私も後で日用品とか買いに行かないとな。
「うん。わかった!気をつけてね」
「あぁ。」
あ、そうだ。折角だしコンビニに行くなら清隆に少しお願いしたいことがあるんだよね。
「後、清隆あのさコンビニに行くなら少し見てきて欲しい物があるんだけど‥‥いいかな?」
「構わないが‥‥。何か欲しいものでもあるのか?」
「そうじゃなくて、えっとね、―――――――」
私は清隆だけに聞こえるように耳打ちする
「‥‥なるほどな。分かった、探してみる」
よかった。 それじゃあこの事は清隆に任せとくか。
「ありがとう!それじゃあお願いね。それが合ったら電話してくれると嬉しいな」
「あぁ、分かった。じゃあな」
「うん。また後で」
清隆が教室から出ていくのを私は手を振りながら見送った。
それじゃあ私もそろそろ行こうかな。そう思っていた時、桔梗ちゃんが声をかけてきた。
「優愛ちゃんっ、もしよかったら連絡先交換しない?」
片手に自分の端末を持ち、ニコニコしながら話しかけてくる。
特に断る理由は無いし‥‥良いかな。それに個人的には凄く嬉しいしね。
「いいよ!交換しよう」
私は自分のバックから今日貰った端末を取り出し、桔梗ちゃんに渡そうとすると、今度は金髪の髪をポニーテールでまとめている少女が話しかけてきた。
「あ、私も連絡先交換してもいいー?」
確かあの子は‥‥軽井沢さんだよね。
「あ、それなら私もしてもいいかな?」
「私もー」
軽井沢さんに続いてその場に居た女子がそう言い、私達に近づいてくる。
…これは嬉しい誤算だな。
そう思いながら私は皆に笑顔を向けた。
「いいよ。皆でしよう」
「ありがとー」
そして、この場に居た女子と連絡先を交換した。
「ねーねー、宮里さん。これから私達平田くん達と遊びに行くんだけど宮里さんもくるー?」
連絡先を交換し終わると軽井沢さんが遊びに誘ってくれた。
嬉しいな。‥‥でも清隆にも言ったけどやりたいことがあるんだよね。
「すごく嬉しいんだけどごめんね。この後予定があるから‥‥また今度でも良いかな?」
「そっかー、それじゃまた今度遊ぼー」
「うん、ありがとう!」
そう言うと軽井沢さんは女子を引き連れて教室を出ていった。
軽井沢さんも人気だな。まぁ可愛いし、リーダー気質がありそうだからな。
そう思いながら私は桔梗ちゃんに話しかけた。
「桔梗ちゃんもバイバイ」
「うんっ、今度一緒に遊んだりしようね!後、それから‥‥その、自己紹介のことについて何だけど…何か困ったことがあったら何時でも相談してね…?」
自己紹介のこと…あぁ、多重人格の事についてのことかな?
私はその事についての話題が出るとは思わず、驚いて桔梗ちゃんを見ると、彼女は優しく微笑んだ。
…心配、してくれてるのかな?
そう思うと、心がなんだかぽかぽかしてくる。
このぽかぽかする?感情は良くわからないけど、でもしていてそれは決して悪くない居心地だった。
それに、私を心配してそんな言葉をかけてくれたのは今までで2人しかいなかったから純粋に凄く嬉しい。
そして、今の心配してくれている桔梗ちゃんを見るとあるもう1人の少女が私の脳裏に浮かび上がる。
彼女もまた、私を心配してくれた1人だ。そして少女は私に色んなことを教えてくれた人でもある。
会いたいな。…いや、きっとその人に会える。今日、その手がかりを見つけたから。
そう思いながら私は精一杯の気持ちを込めて桔梗ちゃんにお礼を言った。
「うん、そうするよ。ありがとう桔梗ちゃん」
「うんっ、それじゃあまた明日!バイバイっ」
そして彼女は私に手を振ってくる。
それにつられて私も手を振って教室を出て歩き出した。
ふぅ、桔梗ちゃんは優しい子だな。でも…やっぱりなんか違和感を感じるような…。まぁ、気のせい、だよねきっと。
それにもしなんかあったとしても、こうやって話しかけて相談に乗るよって言ってくれた事実は変わらないしね。
っと、桔梗ちゃんの話しはここまでにしておこう。
私が今すること…したいことはあの子を探すことだ。
私がもう一度会いたいと思っているあの子、その子を今日見かけた気がするんだよね。
だから、今日はその子を探して会いたいなって思ってるんだけど…取り敢えず向かうか。
そう思いながら私は歩みを進め、ある場所で立ち止まった。
――――1年Aクラス。
彼女を見かけたと思ったのは入学式でだ。Aクラスの列に彼女が居た様な気がしたんだよね。
特徴的な容姿だったから違ってはないと思うけど…
そう思いながら私はAクラスを覗いた。
えーと、お、まだ結構人が残ってるみたいだね。
あ、でも、人が集まっている所が2ヵ所ある。
各々の真ん中に居る人は…皆に囲まれていてわからないな。
…どうしよ、
そう思いながらAクラスの外側でうろうろしていると、1つの輪の中の中心に居たと思われる人物がこちらに向かって歩き、私の前で歩みを止めた。
「…Aクラスになにか用でもあるのか?」
…話しかけられちゃったな。
どうしよ、私の用件を言うべきかな?言ったら一発でわかると思うけど…、でもな…
そう思いながら、私は自分の中で結論を出して口を開いた。
言うか言わないか。その答えは勿論―――
「…えっと、特に用があるって訳じゃないんだけど…ほら、他のクラスの教室の中ってどうなってるのかな~と思って。…不快にさせちゃってたらごめんね」
『言わない』だ。
何故なら、例えば彼に私がここであの子は居るか、と訪ねるとしよう。
そしてもし、その子が居たとしたら私とあの子は必然的に知り合いということになってしまう。
それを彼女が望むかわからない。
それに今むやみに何か言うのは得策じゃない。
…でも、それだとあの子が居るかわからないから上手く彼に情報を流して貰えるように誘導しないといけないけどね。
すると、彼は納得した様子を見せた。
「否、まず不快では無いから安心して欲しい。しかしなるほど。確かにその考えに一理あるな。それで、何か違ったことはあるか?」
「ううん、見た感じ中は同じ感じかな。…あ、折角だし自己紹介しとくね。私は1年Dクラスの宮里優愛。よろしくね」
「あぁ、俺は葛城康平だ。よろしく頼む。だが…そうか、まぁ教室の中が同じなことは公平で良いことだな」
「そうだね。…あ、そういえば葛城くん、さっき沢山の生徒に囲まれてたね。もうそんなに友達が出来たの?凄いな~」
「あぁ、だがあまり大したことはない。クラスメイトが皆良い人物なだけだ」
「そっか、あ、…でも、そういえば葛城くんの他にももう1つのいっぱい人が集まってるところがあるけど…」
「あぁ、それは坂柳だ。」
…!!
その名前を聞いた瞬間、抑えきれない感情が胸に込み上げてきて、思わずにやけるのを抑えるのに必死だった
「…へぇ、その坂柳さん?も人気なんだね!どういう子なの?」
「あぁ、…足にハンデを抱えているため松葉杖を使っているんだが優秀そうで良い人物だぞ」
ビンゴ。
「へぇ~」
私は不自然にならないようにそう言い、再びAクラスを覗くと、先程葛城くんが言っていたと思われる人物が見え、目があった
…よかった。居た。
嬉しいな。やっぱり私の見間違えじゃなかったんだ。
私は自然と素の状態でも口角が上がっているのを感じた。
そして女子生徒は私と目があった瞬間、一瞬目を見開いて驚いていたがすぐ不適な笑みを浮かべ、その後すぐに荷物を持って教室から出ていった。
そして、人気のないところまで進んで行く彼女を見て私も葛城くんに別れを告げその後に着いていく。
すると、少女は私達以外誰も居ないことを確認すると立ち止まって振り返り、こう言った
「お久しぶりですね優愛。3年と218日ぶりですかね」
その言葉を聞いた瞬間私は思わず、また出会えた事が嬉しすぎて彼女に抱きつきた
「久しぶり有栖!また会えて嬉しいよっ」
そこには3年と218日ぶりに会った私の親友、坂柳有栖がそこに居た。
「あの優愛さん?危ないですので勢いよく抱きつかないでほしいのですが」
困ったようにしているが、それでも彼女は優しい目で私を見てくれていた。
「大丈夫だよ、危なくないように抱きついてるから!」
また会えた、嬉しいな。嬉しいよ。もう二度と、会えないと思ってたら、だから物凄く嬉しい。
私は、彼女とまた出会う事が出来たこと、そして会話をしているという事実と、私が心の底から嬉しいと思えてる事実がとにかく嬉しくて私は有栖を強く抱き締めた。
「ちょっ、先程よりも強くなってません?はぁ、優愛さんは相変わらずですね。それよりも立ち話も何ですし何処かに移動しましょうか」
「うん!」
有栖に言われて一緒に歩き出してから少しだった頃、甘いするお店に連れてこられた。
「ここは...」
「カフェ、というところですよ」
カフェ…!ここが…。…嬉しいな。凄く嬉しい。わくわくする。
そう思いながら、私は胸を踊らせて有栖と一緒にお店の中に入った。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
店員さんに言われて、有栖は素早く答える。
「2人です。個室でお願いできますか?」
「分かりました。こちらへどうぞ」
そう言って店員さんは私達を案内してくれた。
案内された場所は、さっき有栖がお願いした通り個室になっていた。
「このお店は希望があれば個室にしてもらえるみたいなんですよ。ある人から聞きました。それに、個室なので他人に聞かれたくないお話もできるんですよね」
ふふっ、と、不適な笑みを浮かべる彼女。
へぇ、まだ入学したばっかりなのにこんなこと知ってるなんて凄いな~、有栖が言ってたある人…少し気になるところだけど有栖に情報を教えてくれた人なんだからきっといい人なんだろうな。
そう思っていると、有栖がメニューを開いて私に見せてくれた。
「取りあえず注文しましょうか。優愛さんはどれにしますか?」
メニューを除くと色々な食べ物らしきものが沢山乗っていた。
いっぱいあるけど…文字だけじゃ分からないな。
『ぷりんあらもーど』とか『ぷぁふぇ』とかなんか書いてあるけどどんなやつだろ?美味しいのかな?
…でも取り敢えず、私が知ってるこのショートケーキにしようかな。知らないものを食べるより知ってるものを食べる方がよっぽど良いよね。
…まぁ、ショートケーキは知ってるけど食べたこと無いからどんな味かはわからないけど。
「う~んじゃあショートケーキとホットコーヒーにしようかな」
「そうですか、では私はフルーツタルトと優愛さんと同じホットコーヒーにします」
そう言うと有栖は店員さんを呼んで注文をしてくれた。
「ありがとう」
「いえいえ、お気になさらず。‥‥それより体調はもう大丈夫なんですか?」
体調、か。
「うん、何とか。前よりは結構良くなってきたよ。今は頑張ればちゃんと寝れるようにもなったしね」
すると、有栖は何故か少し悲しい表情をした
「‥‥そうですか。それは良かったです。ですが、くれぐれ気を付けてくださいよ?後、人格の方は大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。最近は全然人格交代しなくなったしね」
まぁ、変わりに少し不可解な事は起こるようになったけど、それを言ったら有栖心配しちゃうからな。
すると、有栖は少し安堵したようにそう言った。
「そうですか、それは良かったです」
…一見、ほっとした様に見えるけど私にとっては少しだけ悲しんでいるような、心配しているような、そんな表情に見えた。
…有栖はやっぱり凄いな。そして優しいよ。
私が今こうなってるのは有栖のせいじゃないのに。だからそんなに心配しなくていいのに。
そう思っていると、有栖は話を切り替えるように私に話しかけた。
「それと、優愛さんこの学校にこられたんですね。また貴女と生活をおくれられるなんて嬉しい限りです」
私もだよ。
「ありがとう。私もすっごく嬉しい!もう有栖と会えると思ってなかったから嬉しいな」
「ふふっそうですね。貴女が元気そうで本当に良かったです」
優しく微笑みながらそう言う彼女。
そんな彼女を見ていると、私は有栖に彼の話がしたくなった。
「あ、後ね私だけじゃなくて有栖が気になってた清隆もこの学校に来てるんだよ」
すると、彼女は少しだけ目を見開いて驚いた。が、その後すぐに不適な笑みを浮かべてこう言った
「そうなんですか。ですがまぁ、優愛さんがこの学校に来ているのなら、当然彼も来ますか。ふふっ、嬉しいですね。貴女と彼がいるならこの学校生活も楽しくなりそうです。いつか、貴女と彼と勝負できる日を楽しみにしていますね?」
笑っているが獲物を刈るような目で彼女は私を見つめた
なんか有栖らしいな。
「うん、その時はよろしくね?あ、有栖がこの学校にいること清隆にも知らせとこうか?有栖も早めに清隆と会いたいでしょ?」
「いえ、彼に知らせるのはもう少し待ってください。彼とは優愛さんと違って直接的な面識はありませんし、もう少し様子を見てから私から話しかけますので彼にはまだ秘密にしといてください」
「うん、分かった!」
私がそう返事をした時、室内にノックの音が響き渡った。そして、店員さんが注文してくれたものを持ってきてくれた。
「ケーキとコーヒーを持って来ました。」
そう言って、テーブルに並べてくれる。
「それでは、後ゆっくりどうぞ」
そう言って店員さんは個室から立ち去った。
運ばれて来たショートケーキは苺のいい香りがして、見た目からもふんわりしっとりしているように見える。
美味しそう!!!
「来ましたね。ひとまず食べましょうか」
「そうだね。‥‥それじゃ、いただきます!」
初めて食べるショートケーキ‥‥!どんな味がするんだろう!楽しみだな。
期待を込めながら私はフォークを持ってショートケーキを一口食べた
パクっ
「ん~これ美味しい!」
しっとりと焼き上げられたスポンジケーキと口当たりなめらかなホイップクリーム、それに真っ赤に熟れたイチゴの甘酸っぱさ。絶妙にバランスがとれててすっごく美味しい。
「ふふっ優愛さんはとても美味しそうに食べますね」
「そうかな?でも、ケーキ食べるの念願だったから凄く嬉しいよ!」
「....そうですか。」
「うん!‥‥あれ?有栖は食べないの?」
有栖のケーキを見ると、まだ一口も食べておらず運ばれて来た時のままの状態だった。
不思議に思っていると有栖はフォークを持った。
「優愛さんがあまりにも美味しそうに食べるものですから見惚れていたんですよ。では、私もいただきますね」
そう言い有栖は一口フルーツタルトを食べた。
有栖のケーキも美味しそうだな。
「どうどう?美味しい?」
「とても美味しいです」
微笑みながらそう言う有栖。
私は良かったなと思いつつ、私もケーキを食べていった。
「美味しいな。久しぶりにこんな美味しいもの食べたかも!あんまりこういう食べ物彼処じゃ食べなかったから嬉しいな。…今度清隆と一緒に来ようかな」
「ふふっ、気に入ったようですね。良かったです。私のフルーツタルトも一口食べますか?」
「食べる!」
パクっ
「ん~、美味しい!!ケーキ美味しいな~」
「それは良かったです」
「私のもあげる!はいっ」
パクっ
「ん、美味しいですね」
「だよね!」
そうして、私達は美味しくケーキをいただき、完食した
ケーキって本当に美味しかったんだな~。また食べに来よう!
「来てよかったですね」
「そうだね」
来て良かった、そう、本心で思うと同時に私の胸にとてつもない罪悪感が押し寄せてくる。
そして、私の心臓が、脳が、全神経が言ってくる。私はこんなことをしていい権利なんてあるのだろうか、と。
過去のある出来事がフラッシュバックする
思い出すだけで、胸が張り裂けそうな気持ちになる。罪悪感で埋め尽くされてしまう。いや、違う。私よりももっとあの子、いや、あの子達の方がもっと何百倍も苦しいはずだ。
私は無意識にスカートを握りしめた。
すると、そんな私を見ていた有栖が不信に思ったのか心配そうに声をかける。
「優愛さん?大丈夫ですか?」
「!‥うん大丈夫だよ」
「そうですか?」
「うん、ちょっとぼーとしちゃっただけだから。全然大丈夫だよ」
「‥‥そうですか、分かりました。ですが、1人で沢山抱え込みすぎないで下さいね」
真剣な表情で私を見つめる有栖。
…私はそれに取り敢えず頷いた。
「約束ですよ。…ところで、突然ですが優愛さんはこの学校の仕組み、Sシステムについてどう思いますか?」
「どう思うか…?」
「はい、先程担任の先生からこの学校について説明を聞かされましたが何か可笑しいと思いませんでしたか?」
あー、そうだね
「それは私も思ったかな。この学校には何かあるよね。有栖はもうSシステムのこと全て理解したの?」
「いえ、気づいた事は幾つかありますが流石に全部とまではまだいっていませんかね。そこで、折角ですので優愛さんと一緒に考えてみたいと思いまして」
「勿論いいよ」
私もSシステムの事ちゃんと知りたいと思ってたしね。それに有栖は心強いし。
「そうですか、それはよかったです。それでは、まず支給されるポイントのことですが、優愛さんはどうお考えですか?」
「そうだね、先生は毎月10万ポイント支給されるかのように話してたけど‥‥毎月10万ポイント貰えるとは先生言ってと思うな。だから、毎月10万ポイントは貰えないと思う。‥‥先生は『実力で生徒を測る』って言ってたから‥‥入学した時点での私達の評価が10万ポイントっていうだけの事だと思うよ」
これは先生の説明を思い返して思ったこと。
「ふふふっ、はい。そうですね私もそう思います。流石優愛さんです」
不適な笑みを浮かべて楽しそうにしている有栖。
私はお礼を言って話を続ける。
「ありがとう‥‥それで、つまりこれからの学校生活で私達の評価が決まって、その評価に合ったポイント額に変動すると思うな。だから、授業態度や生活態度、後はテスト何かを気をつければいいと思う。」
授業態度や生活態度で決まるなら‥‥防犯カメラが大量に設置されてるのにも納得がいく。テストは‥‥実力で生徒を測るならテストの点数も入ると思ったから、かな。
「はい、恐らくそうでしょう。」
「だけど‥‥問題は個人ごとに変動されるかクラス単位ごとに変動されるかなんだけど…」
「私はクラス単位で変動されると思います。流石に個人ごとだと学校側も計算するのが大変だと思いますし現実的ではありませんから」
「うん。そうだね。私も同じ考えかな」
「ですが疑問があります。では、ポイントがクラス単位なのは何故なのでしょうか。クラス、という部分が少し気になります。また、先生が言っていました。『この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない』と。それは何故でしょうか?普通の学校は学年が一つ上がるに連れてクラス替えがあります。では何故それが無いのか。それはクラス替えが出来ない理由がある、と言うことだと私は思います。」
「そうだね。学年ごとのクラス替えが無く、ポイントの変動がクラス単位‥‥ということは、各クラスそれぞれチームとなって何かを争おうとしてるのかな?」
「そうですね。争う、ということならば何かの利益を争う形になるということでしょうか」
「…あ!もしかして、この学校って入学すれば希望する進学先や就職先がほぼ100%入ることができるんだったよね。なら例えばそれが争いに勝ったクラスしか適応されないってことなんじゃないかな?」
「それはありえますね。‥‥ですがまだ今のところは情報が足りないですね」
「う~ん、そうだよね」
情報、情報か‥‥ん?あ、そうだ
「有栖、それならさ、いっそのこと先輩に情報を買おうよ」
先生はこの学校に買えないものは無いって言ってたからポイントを払えば教えて貰えるはず。
「なるほど買う、ですか。良いと思いますよ。‥‥ですが、先輩にですか?先生方の方が沢山情報を持っているかもしれないですよ?」
それは‥‥
「‥‥先生に情報を買うと目をつけられそうなんだよね。取りあえず私は今のところは目立ちたくないからできれば先生に情報を買うのは避けたいかな。でも、有栖が先生に情報を買いたいならそれで良いよ」
私としては‥‥目立つと自由に動けなくなりそうだからあまりに目立ちたくはないんだよね。
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。確かに初日に先生から情報を買うと先生方の中で有名になってしまいますからね。優愛さんの言う通り先輩に情報を買いましょうか。‥‥ですが、誰にしますか?」
有栖に感謝だな。でも、そうだね誰に買おう‥‥買ってくれる人がいると良いんだけど‥‥
「‥‥先輩に情報を買うにしても、買ってくれなかったり、高い金額で買われるのは避けたいから‥ポイントに余裕がない人がいいよね」
ポイントに余裕がない生徒なら買ってくれる可能性がある。
「そうですね」
ポイントに余裕がない人‥‥。私、先輩に知り合いの人居ないんだよね。
すると、突然私の端末が震えだした。
ブルルッブルルッ
…これは電話かな?
誰からだろう。そう思いながら画面を見ると大きく綾小路清隆と書かれていた。
「清隆から電話だ」
おお。清隆から電話が来たってことはあれがコンビニにあったって事かな。それなら清隆のいるコンビニにポイントに余裕がない生徒が来る可能性がある。
よし、確認してみるか。
「有栖ちょっとごめんね」
「えぇ。構いませんよ」
有栖の言葉を聞いて私は電話に出た
ピッ
「もしもし清隆?」
『あぁ。俺だ。あったぞ優愛が探していた無料商品』
「本当!?良かった、ありがとう清隆。因みにどんなものがある?」
『あぁ、色々あるぞ。歯ブラシに石鹸、シャンプーや野菜とかだな。特に不良品とかじゃなくて実際に使えそうなやつだ。だが、質は落ちてるやつだと思うが』
なるほどね。
「分かった、ありがとう。後さその商品を買おうとしてる生徒そばにいる?」
居たらその生徒と交渉したいんだけど‥‥
『あー、今は居ないと思うが‥‥あ、居たぞ。今商品を見てる』
お!
「本当!?その人何年生か分かる?」
『見た目的に俺たちの先輩だと思うぞ。』
「よしっ!じゃあその先輩捕まえて!」
『は?捕まえる?』
「うん!捕獲して!」
『あ、あぁ』
「すぐそこに行くから!その先輩足止めしといてね。えっと清隆がいるコンビニの場所ってどの辺?」
『学校から一番近いコンビニだと思うが。…足止めするのか?俺が?本当に?』
「うん、お願い。急いででそっちに向かうからそれまでお願い」
そう言い切って私は電話を切ると、有栖が口を開いた。
「今の会話で何となく分かりましたが、優愛さんは先輩に情報を買うために綾小路くんのもとに行くのですよね?ならば私はここで待機していてもよろしいでしょうか。」
今の話聞こえてたんだ。流石有栖だな。
「全然いいよ。ごめんね有栖。あ、じゃあ連絡先交換しよ!先輩と交渉する時は会話が聞こえるように有栖に電話をかけた状態でするから」
「分かりました。お願いします」
そして私達は素早く連絡先を交換した。
「あの、先輩との交渉が終わったら先ほどの綾小路くんとの会話も含めてお話しして貰えますか?」
「うん!勿論だよ。ごめんね、すぐ行ってすぐ戻ってくるから」
私は荷物を持って全速力でコンビニへと向かうのだった
どうでしたか?最後まで見てくださりありがとうございます!
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大嫌いな言葉
最後まで見てくださると嬉しいです!
それではどうぞ~
風を切るように、地面を蹴り上げて走りまくった。蹴って蹴って蹴って――――
もっとだ。もっと蹴るんだ。
速く、急いで走ろ。彼を待たせている。死ぬ気で、全力で走れ。
あぁ、この感触。前にもあったな。
ずっと地面を蹴って走ってると清隆がいると思われるコンビニが見えてきた。
走って走ってある感情を圧し殺して、コンビニに入っていく。
カランカラン
ドアを開けるとベルが鳴り、冷たい風が全身に当たる。
走ったせいで熱くなった体が、だんだん涼しくなっていく。
「清隆と、」
清隆を発見して近づくと、そこには清隆の他にもう2人、顔をしかめてる先輩らしき人と、それから黒髪の少女がいた。
あの、黒髪の子……確か、堀北さんだよね。
堀北さんもコンビニに来てたんだ…
そう思って3人の方を見ていると皆とそれぞれ目が合い、清隆は私が来たことに安心したのかほっとした。
「お、やっと来たか」
「あら、綾小路くんが言ってた人って宮里さんだったのね」
堀北さんは私が来ることは想定外だったのか少し驚いていた。
この様子だと、清隆が少し堀北さんに事情を話して先輩の足止めを手伝ってくれてたのかな。
堀北さんがそんなことをしてくれるタイプとは思わなかったから少し意外だけど、感謝しないとな。
私はこの時堀北さんに対して少し好感を持った。
「ごめん、遅くなった。えーとその人が無料商品を買おうとしてた先輩?」
「あぁ。そうだ」
清隆が頷きながら肯定する。
清隆の言葉を聞いた私は素早く端末を出し、出来るだけ自然な感じを装って有栖と通話した状態にセットした。
これでよしっ、と
「おい、お前ら一体何のようだ。早く帰りたいんだが」
しびれを切らした先輩は、怒った口調で言ってくる。
怒られても無理ないか……結構足止めして貰ったと思うし。少し申し訳ない…
「すみません、ですが先輩に少しご相談がありまして――」
そう言って私は先輩だけに聞こえるように耳打ちをした。
「この学校の情報について売って欲しいんです」
そう言うと先輩は驚いた顔をし、そして少し興味を持ったように顔色を変えた。
「……場所を変えようか」
私はその言葉に笑顔でうなずき、防犯カメラの無い人気の無いところに移動した。
その時に清隆と堀北さんも静かについて来て行方を見守っている。
「…いくら出せるんだ?」
先輩は私の目を見て真剣な顔で聞いてくる。
…今後のことを考えると2万ポイントが限界かな。
「そうですね……2万ポイントでお願いできますか?」
「少なすぎるな。どうせお前たち今日ポイント貰ったばっかりだろ。ちょうどこの場に3人いる、どうせ同じクラスなんだろ?」
「そうですね」
私がそう肯定すると先輩はああやっぱり、という顔をしながらニヤリと笑った。
「それなら1人4万払え」
ハ?
ブチブチッ
この人が意味不明な言葉を言った瞬間、私のナカで何かがちぎれた。
そして―――
ドクンッ
『選手交代ですよ』
久しぶりに変な感触に襲われ、誰かに体を乗っ取られるのを感じた―――
◎◎◎
綾小路視点
コンビニに来て居た俺は、優愛に通話で先輩の足止めをするように頼まれ通話を切られた時流石に動揺した。
…俺が初対面の人に話しかけられるのか?しかも足止めだぞ?…話しかけても会話が続くか不安しかないんだが。
そう思っていると、偶然コンビニに来て居る堀北を見つけた。そこで俺は堀北に少し事情を話して何とか手伝ってもらい、優愛がくるまで先輩を足止めしていた。
…まぁ、ずっと堀北に睨まれていたが見なかったことにしておこう。
そして、そんなこんなでなんとかあの人を足止めしていると、優愛がコンビニに現れ、少々切れぎみになっている先輩に耳打ちをし、優愛とあの人は人気の無いところまで移動をした。
その後に続いて俺と堀北も優愛の後に着いていった。
すると、人気の無いところに着くなり年上だと思われるあの人の声が聞こえる。
「…いくら出せるんだ?」
俺は兎も角、堀北にはほぼなにも知らされてない為この会話で何を言っているのかは分からない。しかし、大人しく堀北は黙って聞いていた。
…少しは空気は読めるみたいだな。
それにしてもいくらだせるか、か。優愛のことだ、きっと何か取引でもしてるんだろうな。
…後で聞いてみるか。
「そうですね……2万ポイントでお願いできますか?」
優愛がそう言うと、あの人は納得出来ない様子を示した。
「少なすぎるな。どうせお前たち今日ポイント貰ったばっかりだろ。ちょうどこの場に3人いる、どうせ同じクラスなんだろ?」
「そうですね」
優愛がニコリと微笑みながらそう言うと、あの人はああやっぱり、という顔をしながらニヤリと笑った。
…なにか嫌な予感がするな。
「それなら1人4万払え」
そうあの人が言った瞬間、明らかに優愛の様子が可笑しくなった。
上品に笑いながら、冷ました表情をし、あの人を見た。否、睨んだと言った方が正しいか。
「ふふふっ、そうですか。貴方はその様な態度をおとりになるのですね。今の会話はなかったことにしてください。もう貴方にご用はありません」
先程と口調が違っている。そして、この表情―――
やはり、人格が入れ替わっている、か。
…最悪の状況になったな。だがーーーー、交代した人格が
そう思いながら俺は彼女を見つめた。
…だが、決して油断はできない。いざとなった時に動けるように注意しておくか。
…無理するなよ、優愛。
すると、優愛はその場を立ち去ろうとして足を進めた時、あの人は驚いた表情をしながら慌てて優愛を引き留めた。
「ま、まて。……仕方ない、わかった2万ポイントでいい」
「…何をおっしゃっているのですか?」
そう言って振り返った彼女はとても冷たく、恐ろしい顔をしていた。あの人に向けた眼には途轍もない殺気が含まれており、今にも人を殺してしまいそうな程だった。
先ほどまで笑顔で明るかった彼女が、こんなにも冷たく、人を塵のように見る目はとても同一人物だとは思えない、誰が見てもそう思ってしまう。
「ヒッ!」
優愛の顔を見たあの人は、叫び声をあげながら体を震せていた。
そして堀北の方をちらっと見てみると、堀北も平常心を装うとしていたが体が若干震えていた。
まぁ、無理もないだろうな。普通に生活に生活してきた人は、こんな殺気を浴びたことは無いだろうからな。
「僕は貴方のような人が嫌いなんですよ。貴方は今、
冷淡に彼女はそう言い、殺気を込めてあの人を少し睨んだ
「ッッ、ひ、」
震え上がっているあの人に優愛は近づいて、ふふふっと、上品に冷たく笑った。
「ですが、僕は
……貴方は苦しみながら死ぬのと絶望しながら死ぬの、どちらがよろしいですか?」
その瞬間、途轍もない殺気が先輩に向けられた
「ッッッッ!っ、しにたく、ない、っ、です、ッ」
俺はその時、あの先輩がよく言葉を発せられたなと感心した。
あれ程の殺気…普通の一般人が浴びたら声は発せられないだろうに。生存本能というやつか。流石だな。
すると彼女は再び冷たく笑った
「ふふっ、そうですか。きちんと自分の声で自分の気持ちを正直にお話ししてくれた貴方の度胸に少し感心しました。それに免じて今回は見逃しましょう。……ですが、 もう僕たちの地雷は踏まないでくださいね?」
最後の言葉を強調して優は去ろうとするが、何かを思い出したように振り返った
「あぁ、そうでした、怒りで肝心なことを忘れていました。先程話した件ですが、もしよろしければこの学校の仕組みについて教えていただけませんか?勿論、話していただけるのなら2万ポイントお支払いたします」
「ッッ!は、い」
「ふふっ、ありがとうございます」
優愛がお礼を言うと、先輩は学校の仕組みについて話し出した――
どうでしたか?今回はここまでです。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
投稿の更新遅くなりましたが、近い内にもう1つの作品を含めて何話か投稿できるように頑張っていきたいと思います。
もしよければ、評価などつけてくださると嬉しいです!
次回もお楽しみに!
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君のために
最後まで読んでくれると嬉しいです!
それでは、どうぞ~
懐かしい感触と居心地…ここは…そうか、私、人格交代されちゃったんだっけ、
私の体は、何も動かそうとしていないのにも関わらず口を開いて私の声で喋りだした
「なるほど、つまり先輩がおっしゃった事をまとめると、授業態度が悪かったり問題行動などを起こすとクラスポイントと言うものが減り、クラス全体で毎月貰えるポイントも減ることになる。そして、クラスポイントを増やすためにはテストで高得点を出すか特別試験というもので良い成績を残さなければならない、と言うことですか」
これは、学校の仕組について、だよね。
早く戻りたい…けど、そう簡単には戻れない…
待たないといけない、お願いだから人を傷つけるような事はしないで―――
そう思ってると先輩が口を開いた
「あ、あぁ。あと、この学校のクラスは優秀な生徒ほどAクラスに、ダメな生徒、不良品ほどDクラスに配属されている…そして、希望の就職、進学先が叶う恩恵を受けるためには、Aクラスに上がらないといけない」
Aクラスにならないと希望の就職、進学先が叶う恩恵を受けることが出来ないなんて…。残酷すぎるよ…。そんなの、Aクラスで卒業できない人は不幸になっちゃうじゃん…
そう思い悲しんでいる私とは正反対に、別の人格である彼女は不適な笑みを浮かべ、歓喜している様子を見せた。
「ふふっ、そうですか!それは実に素敵なシツテムですね!嬉しい限りです。…ですが、そうですねぇ、いくつか質問があるのですがよろしいですか?」
なにか質問があったのかとても楽しそうにそう言う彼女
「あ、ぁ」
「まず1つ目ですが、先ほどクラスポイントを増やすにはテストで高得点を出さなければならない、とおっしゃっていましたが低得点、たとえばそうですね、赤点などを取ってしまうとどうなるのでしょうか」
「!……1科目でも赤点を取ると退学になる」
退学…に、なるのか。可哀想だよ
「そうなのですか、ふふっ、それはさぞかし大変でしょうね!それでは、攻略法などはあるのでしょうか」
「それは…最初にやる中間テストでは過去に出題された問題と同じ問題がテストに出るから過去問を使って覚えればいい…」
「なるほど、わかりました。教えていただきありがとうございます。それでは、ポイントを振り込みますので連絡先を交換してもよろしいですか?」
そう言うと、彼は頷き慌てて連絡先を交換した。
そして、彼女は端末を操作しポイントを振り込む
「情報のご提供、ありがとうございます。とてもとても有意義な時間でした。…そしてお願いがあるのですが、もしまた何かあればご相談に乗ってくださいますよね?もちろん、ポイントはお支払します」
そう、強制的な言い方で言う彼女。
肯定の言葉しか望んでいない
(強制的みたいにしちゃダメだよ、あの先輩の意思を聞いてよ)
言葉を止めたくても勝手に言葉が口から出てきてしまう現状に対して、私は目をつぶる事しか出来なかった
「あ、あぁ。わかった…」
「ふふっ、ありがとうございます。…あぁ、そういえぱまだお名前をお伺いしてませんでしたよね。私は1年Dクラスの宮里優愛といいます。以後お見知りおきを」
「おれ、は3年Dクラスの藤沢孝太郎、だ。…お前Dクラスだったんだな…」
「はい、そうですが何か問題でも?」
冷たく言い放つ彼女
「ッ!い、いや、なんでもない、じゃあな、せ、せいぜい頑張れよ…」
そう言って彼は素早く走りながら帰ってしまった
終わった…
すると、急に視界が真っ暗になり、再び不思議な感触に包まれて行く――――
「優愛、大丈夫か?」
バタンっ
「おいっ、優愛、しっかりしろ!」
「だ、大丈夫かしら、宮里さん!」
意識を失う前に、誰かが駆け寄ってきてそんなことを言ってくれた気がした―――
〇〇〇
その頃、4人の人格が集ってある話をしていた――
『ふふ、彼は使い道がありそうですね』
先程話していた女王のような口調で話す人格。
『それよりもさー、学校のSシステムだっけ?
だいたいわかったけどこれからどうすんのー?』
ギャルっぽい口調で話す人格
『おい、アイツに一発殴らせろ』
怒り狂ったようにドスの効いた口調で話す人格
『ねぇねぇ、みんな落ち着いてよ~っ、そのSシステム?の事とかはあの娘がやってくれると思うからさ、取り敢えず体、あの娘に返してあげなよっ…あの娘のためにっ』
優しそうに、そして明るい口調で話す人格
その者達があの娘の知らない話をする
『ええ、返しましたよきちんと。今は眠っていますが、すぐ覚めるでしょう』
『へー、じゃ、アイツはこの会話聞いてないってことかー』
『えぇ』
『俺はあの藤沢ってやつをぶっ殺す。早く交代させろよ』
『わわわっ、落ち着いてよ、そんな簡単に殺しちゃダメだよ~、もっとじっくりゆっくりと殺らなきゃ、苦しんで貰えないよっ?』
『おう、お前も珠には良いこと言うじゃねぇか』
『はぁ、ま、アタシはどーでもいいけどー?大丈夫なわけ?アイツ』
『ご心配はいりませんよ。彼と、有栖に任せていれば大丈夫でしょう』
『そ、ならいいけど』
『おお~、皆あの娘のこと心配してるんだね~、それ、本人に言った方が良いんじゃないかな?
きっと喜ぶよっ』
『言えない理由、貴女が一番理解しているのではないでしょうか?』
『ううう、ま、まぁ、そうだね』
『この会話もそろそろ終わりにしますよ。もうすぐあの娘が起きる』
『確かに。アイツに聞かれたら色々面倒だし?
いんじゃない?』
『ああ?俺はまだ納得してな、』『ストップ!!そこまでっ、もうその事はもう掘り返しちゃダメだよ、そうしないと皆、憎悪で腸が煮え返りかえそうになって暴走しちゃうからさっ
たとえばそう、前みたいに。それは君も避けたいでしょっ?』
『チッ』
『それじゃ~、動向を見守るってことでっ』
そう言い、会話が終了した
そして、ある人格が思案する
皆あの娘のこと心配してたな~。でも、それはそれぞれの人格全員があの娘の事大好きだから当たり前だよね。
あの娘の事は、皆大好きで大好きで仕方ない。大切な存在―――
…特にあの人格は、人一倍あの娘のこと心配して、尽くしてる。
でも、それは仕方ないよね。
何故ならあの人格は―――
―――でも、気にする事はない。する必要がない。何故なら、ユア達の目的は、全てあの娘の為にやってることなんだから。
だから、どんな悲惨なことになっても許してねっ?
―――――
どうでしたか?もしよろしければ感想などを書いてくださると嬉しいです!
最後まで読んでくださりありがとうございました!
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心の管理
それでは、どうぞ~
「ーーー大変なことになりましたね」
私、坂柳有栖は優愛さんからの電話を聞いてそう思い、急いでカフェを出た。
優愛さんからの電話によって、学校のSシステムの事について大体理解することが出来ました。だけれど、それ以前に私は優愛さんの様子が可笑しいことに気が気ではありません。
優愛さん…私の予想が正しければ彼女は今ーーーーーーー人格が入れ替わってしまっているのでしょう。
ーー電話越しでもわかる彼女のあのオーラと声。
きっと間違いないです。
その時、電話に音声が聞こえてくる。
『ふふっ、ありがとうございます。…あぁ、そういえぱまだお名前をお伺いしてませんでしたよね。私は1年Dクラスの宮里優愛といいます。以後お見知りおきを』
その言葉に私は思わず立ち止まってしまう。
優愛さん…無理、しないでくださいよ。
『おれ、は3年Dクラスの藤沢孝太郎、だ。…お前Dクラスだったんだな…』
ひどく怯えた様な声で言うと、優愛さんは冷たく言い放つ。
『はい、そうですが何か問題でも?』
『ッ!い、いや、なんでもない、じゃあな、せ、せいぜい頑張れよ…』
声を震わせながらそう言うと、足を動かして去って行った音がする。
どうやら話が終ったようですね。
そう思っていると、突然綾小路くんの心配した声が響いた。
『優愛、大丈夫か?』
そう言った瞬間、バタンッと、誰が倒れた音が電話を通して伝わって来る。
ッ優愛さんーーー!!
『おいっ、優愛、しっかりしろ!』
『だ、大丈夫かしら、宮里さん!』
そして、驚いたのも束の間で綾小路くんの声と、もう1人の少女の叫び声を聞いて私は耳に当てていた端末を下ろした。
…ッ、どうしましょうか。これは完全に私の失態ですね。優愛さんの状態ををもっと考慮した方が良かったです…
私は思わず端末を強く握りしめた。
優愛さん…、ごめんなさい。
優愛さんの元へ一刻も早く向かいたい所ですが私はまだ、彼ーーー綾小路くんに会うわけには行きません。その理由は、先ほど優愛さんにも言った事とあともう1つ理由があります。
…先ほど優愛さんと会話した中で、私は少し嘘をついてしまいました。
ですが、
あの方もそう易々と優愛さんにあの理由の内容を言うはずはありませんし。
兎に角、今まだ会えないのです。優愛さんの元に行けば綾小路くんに会うことになってしまいますから。
…ですが、倒れた優愛さんの状態を踏まえて、まず精神的な問題などがありますがーーー
…本当なら私が優愛の側に居たいのですが、仕方ありません。今回は綾小路くんに任せましょう。彼なら何とかしてくれるはずです。綾小路くんは信用出来ますし、きっと大丈夫でしょう。
近いうちにまた優愛さんと接触して謝罪しなければなりませんね。
優愛さんに嘘をつくのは辛いことですが、これも優愛さんの為です。
…ごめんなさい、優愛さん。そして、どうか無理だけはしないでください。でないと、前みたいに貴女が壊れてしまいますから。
申し訳ない気持ちでそう思いながら私は、足を進め自分に今出来る事をするためにある場所に向かった―――
◎◎◎
ーーーー溺れる
身体が重たい…息が苦しい…
熱い、痛い、熱い、苦しい、痛い、熱い、痛い、苦しい、苦しい…
嗚呼、そっか、戻ったのか…
この身体に戻れたってことはーーーーなるほど。私をまだ信用してくれてるって事かな。
そう思いながら私は、ゆっくりと瞼を開けた。
すると目を開いた瞬間、清隆の顔がドアップで私の視界に写った。
「清隆…!?」
「!目が覚めたか。具合は平気か?優愛」
何時も無表情に見える清隆だけど今は何処か、心配、安堵、そんな表情を浮かべていた。
…清隆ってこんな顔してくれるんだ、
嬉しい気持ちを込み上げながら私は、上半身を起き上がらせて清隆の方に体ごと向けた。すると、清隆は私が座っているベッドに彼も座って私と向かい合うような形にさせられる。
そして、私の顎をクイッと持ち上げて目を合わさられた。
えっ…?
突然の出来事に頭が追いつかない。
すると、清隆は先ほどの質問を急かすように言ってくる。
「具合は大丈夫か…?」
「う、うん、大丈夫だよ。えっと、ここは…」
清隆の言葉を聞いて思わず早口で言ってしまった。
そして私は取り敢えず今の状況確認しておきたいと思い、そんな事を言ってみる。
でも、言ってから気づいた。清隆の事だから今取ったその行動はたぶん、私の目を見て話したかったんだと思う。
その方が相手の思っている感情とかが読み取りやすいしね。
「俺の部屋だ。突然倒れたからな、ここまで運んできた」
「そっかぁ、ありがとう。迷惑かけちゃったね…」
申し訳ない…私、結局何時も清隆に頼ってばっかりだ。
そう思い、申し訳ない気持ちで清隆の目を見る。
「………人格、入れ替わっていたな。」
「うん…」
私はその言葉に反応して右手を強く握りしめた。すると、突然私の手の上に清隆の左手が重なる。そして、優しく私の握りしめた右手を開いていく。
開かれた右手を見ると、手が爪に食い込んで跡が出来ていた。
…強く握ったつもりは無かったのにな。
「安心しろ、現場に居たのは堀北とあの先輩だけだ。あの先輩はほっといても問題ない。堀北には、ちゃんと口止めしてあるから心配はない。今日は…といってももう夕方だが、ゆっくり休め。今日は俺の部屋に泊まっていくか?」
その優しい清隆言葉に私は無意識に頷く。
「…お願いしてもいいかな?今は…1人で居たくないから…」
どうやら、自分ではあまり気づいていなかったけど結構体と精神に負担がかかってしまったようだ。当然か、現に今まで倒れてたんだから。
それに…皆に大変なことしちゃったな。あの先輩にも酷いことしちゃったしそれに、有栖と会えなくなっちゃったし、…清隆にも迷惑かけちゃったしね。
今の私の気分はきっと、辛くて、とても苦しくて、叫びだしそうな、そんな気分なんだ。
「構わない。」
私の状態を察してか、清隆はすんなりと了承してくれた。
「ありがとう…」
そう告げると、清隆は私の顎に供えていた手を離してそのまま上にあげ、私の頭の上にぽんっと手を乗せた。そしてそのまま私の頭を優しく撫でてくれる。
清隆の撫で方は何処か気持ちよく、思わず頬を緩めてしまった。
「…なぁ、優愛」
「なに?」
清隆の目を見つめて、私は微笑む。
「無理するなよ」
まさかそんな言葉を私なんかにかけてくれるとは思わなかった。
…心配、してくれてたのかな?
「無事でよかった」
そして清隆が私の体を抱き寄せ、気づいたら私は清隆の胸の中にいた。
ぎゅっと、腕に力をこめられる。
私はーー出来るだけ、清隆の気持ちに答えたい。最後まで、絶対に清隆の側にいて、私は彼を守るんだ。
…そう改めて誓いながら私は今出来る精一杯の気持ちをこめてお礼を言った。
「ありがとう」
すると、彼は腕を解いて私の目をじっくりと見つめた。
「…そう言えば、だが。今日、あの先輩が話してた事なんだが…」
ああ、そう言えば清隆に言ってなかった。事情を知らせないで無理やりあの人の足止めをしてくれたんだったよね。
清隆が多分、今一番気にかかっている事はその事なはずだ。
「あぁ、学校のSシステムについてだよ」
まあ、実のところ私もその事はまだ気になってるんだけどね。
「あの人の話で色々分かったな。」
「うん。…清隆はこれからどうするの?あの…藤沢先輩の話が本当ならこの先荒れるよ?」
これからの事を聞きたい、清隆はこれからどうするんだろう。そんな思いを言葉にする。…でもまぁ、清隆の事だ。大体の返答の予想はできるけど。
「…俺は別になにもしない。目立ちたくないからな。それに、平穏な日々が…世間で言う高校生活ってやつを送れたらそれで良い」
無表情で、当然のごとく清隆は言う。
まぁ、本来の目的は清隆の言う通りそれだからね。どんなイレギュラーな事が起こっても私達には特に何ら問題もない。
だから…当然と言えば当然か。
清隆の返答を予想していた私は笑顔を作る。
「そうだね。まあぶっちゃけ、私達にはAクラスに上がる理由も無いしね。Aクラスで卒業すれば得られる特権も私達には意味のない事だし」
「あぁ。…だがその代わり、俺は普通の生活を満喫したい。」
「うん!清隆がそう言うなら私もそうしようかな。それに、高校生活って結構興味が沸くから凄く楽しみ。」
そう言い、気持ちを踊らせていると清隆の声が耳に響く。
「…なぁ、よかったらだが今度どっか行かないか?色々行きたい所もあるし、それに初めて体験することは優愛と一緒に体験したいしな。」
嬉しいこと言うな。
「勿論言いよ!私でよければどんなところでもお供するよ」
「ありがとな」
「うん!!あ、でも私はまだ清隆がDクラスに振り分けられたって事が納得いかないけどね」
清隆は凄いのに、Dクラスって不良品の集まる場所って言われてるんだよね。納得がいかない。
「テストだって本気でやってないし、手を抜いてわざと間違えたからな。当然な結果だ。…それよりも俺は、お前の方がどうしてDクラスなのかが疑問に思うな。」
そんなの決まってるよ。
「それは私が不良品だからに決まってるじゃん」
「そんな事はあり得ないと思うけどな」
…清隆は優しいな。でも、どんな理由であれ私が不良品であることには変わりはない。自覚だってしているのだから。
「ほら、多重人格の事だってあるしさ」
「…まぁ、そう言うことにしておく。」
「本当、なんだけどな~」
こうして、私は色々離しながら清隆の部屋で一夜を明かすのであった。
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