世は20xx年。近いうちに起こるかも知れない出来事であると同時に、遠い未来、別の地で起こることかも知れない。
「みーんなどうせ死ぬんだったら自分で死に方選べば良いだろうがよ!」
初めに言おう。この国はすでに腐敗し終わっている。先程の発言はこの国の大統領が発した言葉である。
とある新聞記者によると全人類のおよそ7割近くが自殺について「前向きに捉えている」と答え、記者の前に飛び降り自殺して来た者もいたと言う。
その記者もまた、自殺で死んでいった。
嗚呼、人とは儚き者よ。脆いくせに質より量を重視し、まともな人間が生まれて来ず、ただただ死を迎えることが確定し、逃げる事を諦めた愚かで賢い人間よ。
「みんな騙されるな!今こそ人が一致団結し、この危機を乗り越える時なのだ!」
このような者が現代では「戯言を垂れている現実逃避をしている人間」と認識されるのも無理はない。
この時代は環境破壊が目に見えて進み、人類に残された緑は陸地でたったの3%。
なぜこのような地球になる前に人は気が付かなかったのか?否。断じて気が付かなかったわけではない。
現実から目を背け、ニュースに報道されている出来事を真実と信じ、ニュースで悪と報道されれば叩き、正義と報道されれば崇む。
記事を作り上げる人間ももはや「人類は死ぬ」と認識している為にそれに関する事を毎日載せる。
「人類滅亡まで後○ヶ月」などもはや恒例行事と化した。
人に腐敗する理由などはない。
ただ腐るから腐る。人がなんとなく生きるような物である。
生きたいと思っていた奴に恥ずかしくないのか。などの言葉は現代聞けないだろう。
そんな事を言っても何も変わらないからである。何も変わらず、ただじっとして終わりを待つ。
さながらつまらない映画を見て「せっかくだから終わりまで見る」等とほざくゴミの様。
実際にゴミであるから仕方ない。
「人類は皆平等である!その証拠に死が今一刻と迫って来ている!これは平等の証だ!」
「あの爺さんすげえぞ!すげえ理にかなってること言ってる!」
「これが本当の平等!貧困都市の子供も大都市の子供も皆平等に死ぬ…まさに平等ね!」
そう言うわけだ。人間なにかを正しいと思わなければ生きていけないのだ。それがたとえ無茶苦茶で、崩れかかっている、まともな人間なら信じない様な正義であれどそれ以上に崩れている自分から見れば正義と信じれるのだろう。愚かだ。愚かで賢い。人とは面白い物だ。
空に一つ大きなキノコ雲が出た。おおよその予想はつく。大都市に何かが落ちたのだろう。世界は終わりが近い。国の一つが世界を滅ぼしたところで問題にはならない。どうせ死ぬ命だからと救急車も来ない。軍も出ない。
なぜ人はこうなったのだろうか?
そもそも人とはなんなのか?
「わーおすっごい騒ぎだぎゃっ!?」
今人が死んだ。無理もない。この世界では今や安全地域はないのだ。それ故に死亡者の中で自殺者が半数以上を占め、殺人で死んだヒトなど塵の数にもならない。
ヒトはヒトを裏切る。だからこそヒトは美しく生き、醜く歩み続ける。
「父さん!逃げようよ!ここにいちゃ死んじゃうよ!」
「…」
おや、あれは既に死んでいるオトウサンを片手に叫んでいるヒトではないか。可哀想に。
ヒトが死んだかどうかを確認するヒトさえもいなくなってしまい死んだかどうかもわからないとは。いや、今の叫んでいたヒトには良いのかも知れない。
人生とは酷な物だが、地球とはまだマシだった残酷な星だと言うことだ。
オトウサンの死因を伝えておこう。
ストレスだ。ストレスの原因はなんだと思う?
簡単だ。今、原因が居ただろう。オトウサンにとってはカゾクでさえも、ストレスに感じれたのだろう。
叫んでいるヒトが聞いたらどうなることやら。
「お人形さんから綿が出ちゃった…直してお母さん」
「あらあら…でももう糸がないわね…」
「なんで…?直せないの…?」
しかし、横を見れば真実を答えれずに困るオカアサンがいる。この場合、どちらが幸せなのだろうか?
真実を知っておきながら喋れないオカアサンと、ムカつくヒトのせいで死んだオトウサン。
この場合幸せなのはオカアサンだろう。幸せな時間があったのだ。オカアサンが1番、幸せだったに違いない。
おや、後一日で世界が終わる様だ。いや、もうとっくに終わっているのかも知れないな。
人によって狂気は違うが、少なくともこれが私たちの世界での日常だ。
微笑ましく、美しい、ヒトがいて、みんながのほほんと暮らしている。なにも変わりがないだろう?
どうした。これが日常だ。君が望んだ、欲しかった日常はもう二度と手に入らない。
「だから、それをやったら世界は終わるって」
「だったら今ここで私を殺せ!」
決死が固まっているフリをしたセイジカも
「…ようやくみんなと平等になれる…」
幸せを最後に感じるホームレスも
魚も
虫も
肉食動物も
何もかもが一度に死ぬ。それが分かっているこの世界が、我々の日常だ
君にとっての日常は…なんだろうね?
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