アザルトリリィ Mechanized Heart (渚のグレイズ)
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序章-或いは出逢いの日-
とうとう手を出してしまったぞ♪
基本アニメに沿って進行する予定ですので、どうぞ御堪能下さいませ・・・・
半世紀程前から世界中に出没しているという、未知の生命体"ヒュージ"
対抗できるのは、同じく魔力で動く決戦兵器"
ここ──山梨は甲州のはずれに位地する私の屋敷は、
「
「いや─────いやよ!!お父様を置いていくなんて!!!」
「私は、もう・・・・だから」
瓦礫と炎に包まれて、たった一人の肉親であるお父様は私を突き放すように告げる。
「牧!紋瑪を、頼む・・・・」
「──────命に代えても!」
「止めて!離してよ!!お父様・・・・お父様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
執事の牧に抱えられ、崩壊しつつあった屋敷から、私は救い出された。お父様をその場に残して─────
―――――――――――†――――――――――
どれだけ歩いただろうか。
山奥に建っていただけあって、既に方角がわからない。
「───────申し訳ありません、お嬢様」
「・・・ううん、いいの。牧は悪くない」
「いいえ、そうではありません」
「え?」
てっきり、お父様を置いていった事についての謝罪かと思った私は、牧の言葉に耳を疑った。
「お嬢様、彼方の方角に行くと避難所の近辺に出ます。そうすれば防衛軍の方々に保護して貰えるはずです。どうかそこまでお逃げください。お一人でも、できますね?」
「え?あの・・・・牧は?」
「自分には、やるべき事がありますので」
「い・・・・嫌よ!お父様を亡くして・・・・その上牧までいなくなってしまったら・・・・!」
「大丈夫です。自分は、いなくなったり致しません」
「大丈夫じゃないっ!!!」
「────────」
牧の手を必死に掴んで、呼び止める。
「お父様だって、『大丈夫』って言って、なのに、あんな・・・・事に・・・・」
「・・・・・」
「いやよ、もう・・・・・私、これ以上誰かがいなくなるのなんて・・・・堪えきれない・・・・」
「───────お優しいお嬢様」
ぎゅ、と牧が私を優しく抱きしめる。
「私は、お嬢様が産まれた時から仕えておりますが、こんなに優しい娘に育ってくださり・・・・本当に、嬉しく思います」
「牧・・・・」
「だからこそ、私は貴女様をお守りしたいのです。大丈夫、何も今生の別れという訳ではございません。必ず、貴女様の下に帰ると約束します」
そう言って牧は、自分の耳飾りを外して、私の手に乗せた。
「お守りです。再会できた時まで、お嬢様が持っていてください」
「牧・・・・」
「では、行って参ります」
牧は笑って、走り去ってしまった。
私はただ、呆然と、彼女の後ろ姿を見送って、その場で泣き崩れるだけだった。
と、その時。
「ん・・・あれ?ねぇ!大丈夫?」
「─────え」
茂みの向こうから、二人の少女が現れた。どちらも私と同い年位に見える。
「どこか怪我してるの?立てる?」
片方の娘が私に手を差しのべてくる。
「─────えと、あの」
「よいしょっと」
「わっ、きゃ!?」
返答に困っていると、彼女は私の手を取って私を引っ張り起こしてくれた。
「怪我してる訳じゃないみたい、良かった~。それじゃ、避難所に行こう!」
「あ・・・・待っ・・・・」
「大丈夫」
茂みの向こうは畦道になっており、月が煌々と辺りを照らしていた。
私を安心させるように、少女は私に向かって笑いかけてくれる。その笑顔が、今の私には、とても目映く見えたのだった。
「リリィが守ってくれるよ」
森から出て、月明かりが照らす夜道。
そこで私は、美しい
それから二年の歳月が流れ、現在──────
「─────よし」
牧の耳飾りを身につけた私は、今日からリリィとなる。
「牧、お父様・・・・私は、
物語は、ここから始まる。
緋坏紋瑪─AKATUKI AYAME
スキラー数値50
使用CHARM『DC-22シャルルマーニュ』
保有レアスキル『Z』
赤目白髪で色白肌のアルビノ少女。
甲州撤退戦以前は髪を伸ばしていたが、リリィになる決心をしてからは、髪を切りショートヘアにしている。
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第一話 入学式-或いは再会の日-
これに限らず、アサルトリリィの楽曲は良いのがいっぱいだよね。皆さんはどれが好きですか?
二年前に出会った彼女の名前は一柳梨璃。
私と出会うより少し前にヒュージに襲われるも、駆けつけてくれた二人のリリィによって救われたのだそうだ。
以来、自分もリリィになりたいと思うようになり、現在。
「あ、紋瑪ちゃーん!」
「梨璃ちゃん!!」
駅の改札口から出てきた梨璃ちゃんを見つけた私は、真っ直ぐに飛び付いて抱きしめる。
「ちょ・・・!危ないよぉ~」
「だって、本当にまた会えるとは・・・・思ってもいなかったので・・・・・」
「むう・・・それって、私が落第するかもって思ってたってこと?」
「そうはおっしゃいますが梨璃ちゃん、補欠合格ですよね?首の皮一枚ってところでしたよね?」
「ぐふぅ!?正論が刺さるぅぅ・・・・」
そんな他愛ない会話をしつつ、梨璃ちゃんの腕に自分の腕を絡ませ、私達は学園への道を行く。
ここは、私立百合ヶ丘女学院。
鎌倉府に設置されたリリィ養成学校の名門校。
今日から私達はここの生徒なのだ。
校門前に到着した瞬間、梨璃ちゃんの歩みが止まった。
「梨璃ちゃん?」
「────────本当に、ここまで来れたんだ」
「・・・・ふふ。ええ、夢ではありませんよ」
「紋瑪ちゃん・・・」
「さぁ、参りましょう。いざ!HELLO New World!ですわ♪」
「あはは♪よくわかんないけど、いざ!」
これから始まる新しい生活に想いを馳せて、共に第一歩を踏み出───────
キキィ!
そうとしたら、目の前にリムジンが停車した。
なんて危ない・・・・もう一歩前に出ていたら梨璃ちゃんが轢かれていたかもしれないじゃないか!!何処のすっとこどっこいが運転してるんだ!!!と、文句を言うよりも先にリムジンから誰かが降りてきた。
「ドアぐらい自分で開けられます。今日からは、自分の面倒は自分で見なければならないのですから」
ウェーブのかかった赤い髪。同性ですら羨む抜群のプロポーション。
私は、彼女を知っている。が、別に知り合いという訳ではない。単に彼女が有名人だから知っているだけの事。
彼女の名は"楓・
フランスに本社を置く一流CHARMメーカー"グランギニョル"の総帥令嬢だ。
百合ヶ丘には、彼女もいるのか・・・・流石名門ね。
「あら?」
「ふぇ?」
「貴女達、もう帰ってよろしくてよ」
「え?・・・・・えぇ!?」
「あ゛?」
なんだぁ?こいつ・・・・
私の梨璃ちゃんになんて口の聞き様なんだ。
「そ・・・そんな!?でも私達、今来たばっかりで・・・・」
「でも私、付き人は必要ないと申し上げたのでしてよ?」
「つ・・・付き人!?────って紋瑪ちゃん!?顔!顔ぉ!!女の子がしちゃいけない顔になってるよ!?」
成る程、成る程・・・・この
「紋瑪ちゃん落ち着いて~~!」
「止めないで梨璃ちゃん・・・・この手の輩は一度しっかり
「大丈夫だってば!?必要ないからやらなくて良いから~~~!」
―――――――――――†――――――――――
その後、話し合いにて誤解を解いた私達は自己紹介を軽く済ませて、漸く百合ヶ丘の敷地へと足を踏み入れたのだった。
「あら?」
最初に
なにやら謎の人だかりができている。
「何でしょう?」
「大方、血の気の多いリリィが誰かに突っ掛かっているのでしょう」
「まぁ、リリィだなんだと言っても、
「そんな・・・・リリィ同士でCHARMを向け合うなんて・・・・!」
変わらず梨璃ちゃんは優しいなぁ~
それにしても、あの中心にいるのは何処のどちら様なんだろう?
そう思って中を伺おうとした矢先
「あれはまさか・・・白井夢結様では!?こうしてはいられません!ごきげんようー!」
「あ、楓さん!?」
「行っちゃいましたわねえ」
人だかりに突っ込んで行った楓さんなんて別にどーでも良いから、中心の人物を──────そういえばさっき楓さん、白井夢結様ー、とか言ってたっけ・・・・
白井夢結
百合ヶ丘においてその名を知らない者は居ないとされる有名なリリィ。
そして、二年前に梨璃ちゃんを助けた──────
「あの・・・・今のって楓・J・ヌーベルさんでは?」
「へ?」
いつの間にやら、梨璃ちゃんの隣にちっちゃい娘が居た。
「あの方は、有名なCHARMメーカー"グランギニョル"の総帥を父に持つ、ご自身も有能なリリィなんですよ!」
「へ、へえ・・・・」
「あっちの方は遠藤亜羅椰さん。中等部時代からその名を馳せる実力派!で、もう一方のお方は、どのレギオンにも属さない孤高のリリィ、白井夢結様!!」
「リリィに詳しいのですね。で、貴女は?」
「はっ!?も・・・・申し訳ありません、私、二川二水って言います」
「二川さんって言うんだー。よろしくね」
「ほ、補欠合格の私なんかがそんな!二水で良いですよー」
「二水ちゃんもなんだ。実は私も────」
「あ、知ってます。一柳梨璃さんですよね」
「り・・・・梨璃で良いよ・・・・・」
「それで、もう一人の方・・・が・・・・・」
そんな感じで自己紹介を済ませた二川さんが私の方を見ると、ぎょっとした顔で見つめてきた。
「あ・・・・あのあのあの、失礼ですが、緋坏紋瑪さんでは?」
「あら、私の事もご存じでしたか」
「勿論です!!!リリィとしては若輩ながらも今までに無い全く新しい戦術理論を打ち立てられて更にはエリアディフェンスに関する論文も提出なされていると」
「あーうん、もうその辺で終わりにしようね?ほら、鼻血も出ちゃってる」
興奮からか、鼻血を出してしまった二川さんに止血を行ってあげる。
「ありがとうございます。私、憧れのリリィの皆さんに会えたのが嬉しくて・・・・もう鼻血物ですよ!!」
「うんそうだね。実際出ちゃったしね」
そういえばさっきから素の口調で会話しちゃってるな・・・・まあ良いか。
「それにしても、そんなに沢山の情報、どうやって集めてるの?」
「防衛省発行の官報をチェックしていれば、このくらいは・・・・あれ?梨璃さん?」
「向こう」
「え?いつの間に!?」
私との会話中に、向こうの様子が変わったらしく、梨璃ちゃんは飛び込んで行ってしまった。
にしても、あの楓さんの懐に飛び込めるなんて・・・・流石梨璃ちゃんね!!
「ほう、なかなかすばしっこい奴じゃの」
「じゃの?」
更に増えた新しい声にそちらを見れば、二川さんと同じ身長の少女がそこにいた。
「じゃか、一歩間違えば斬られかねんぞ」
(み!?・・・・ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウスぅ!!!)
「心配ご無用よ。私がいる限り梨璃ちゃんには怪我なんてさせないから。それと二川さん、また鼻血出てる」
「相変わらずの自信っぷりじゃの!」
彼女はミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス。工廠科の学生でありながら、リリィとしての戦闘もこなせる戦うアーセナルだ。
「お久しぶりね、ミリアムちゃん。貴女がここに居ると言うことは─────」
「おう、百由様がお呼びじゃ」
「やっぱりかぁ・・・・梨璃ちゃんが心配だから、後にできない?せめて入学式が終わった後・・・・」
「その入学式前に、お主と話したいそうじゃ」
「あうぅ・・・・仕方ないかぁ」
渋々ミリアムちゃんについていく事を了承した私は、二川さんに梨璃ちゃんのことを任せ、工廠科へと足を向ける。
と、その時だった。
ゴーン!
ゴーン!!
ゴーン!!!
ヒュージ出現の警鐘が、学院中に鳴り響くのであった。
緋坏紋瑪──その2
身長161㎝体重は極秘事項。誰の目にも明らかなまな板体型だが、本人は『ナインペタンは希少価値よ!!』と言って誇らしげ。
従者であった牧の影響で、アニメ好き。特にロボットアニメが好き。
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第一話 入学式-そして初戦闘-
鶴紗ちゃんの誕生日メモリアストーリーの神琳と鶴紗ちゃんのやり取り、良いよね・・・・そしてそれを眺めてほっこりしてる雨嘉ちゃんェ・・・・(笑)
百合ヶ丘女学院工廠科の一角。そこには、私がお世話になっているアーセナルの方の
「ごきげんよう百由様。お久しぶりですわ」
真島百由
アーセナルでありながら、ヒュージ研究も行って降り、この一年間で提出したマギに関する論文は51本にもなるという超の着く天才。
私の身体はとある事情により、
大方今回は入学式前に済ませておきたいとか、そんな感じの要件なのだろう。
「はーいごきげんよう、ごめんねえ今ちょっと立て込んでて」
「聞きましたわ。標本にする予定だったヒュージを逃がしてしまったのだとか」
なんでも、周囲の環境に擬態し溶け込む能力があるそうな。カメレオンか何かかな?
「夢結様と、彼女の近くにいた新入生、あともう一人が討伐に出たとも聞いてます」
「らしいわねー」
会話しながらも衣服を手際よく脱いでいく。
そういえば、梨璃ちゃんは一人でちゃんと百合ヶ丘の制服を着られるのかな・・・・?
もし無理そうなら、明日からは私が朝イチで梨璃ちゃんのお部屋まで行って着替えを手伝ってあげても─────
「えーっと、楓・J・ヌーベルさんと・・・・一柳梨璃さんって子が、夢結と一緒に討伐に出たそうよ」
「へぇ、楓さんと梨璃ちゃんが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんですって?」
「楓さんって言ったら、グランギニョルの総帥の娘さんよねー。もう一人の子は・・・・聞いたことない名前ね?あやっち、知ってる?」
「百由様」
ずすいっと、百由様に詰め寄る。
「わぁおガチ恋距離。どしたのー?てか、相変わらず下着着けてないのね、あやっち」
「今、なんとおっしゃいましたか?」
「ガチ恋距離?」
「その前!!」
「楓さんって言ったらー」
「その前っ!!!」
「えーっと、楓・J・ヌーベルさんと、一柳梨璃さんって子が────ってちょっとちょっと!?上すっぽんぽんで何処行こうとしてるのよ!?!?」
「こんな事してる場合じゃねーのですわ!!!梨璃ちゃんの命の危険が危ないのですわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
夢結様に羽交い締めにされ、身動きが取れないぃぃぃ・・・・!
こんな事をしている間にも梨璃ちゃんが・・・・梨璃ちゃんがががが!!!!!!
「百由様おるかー・・・って紋瑪お主なんちゅー格好しとるんじゃ!?」
「ぐろっぴ良いところに!あやっちを止めて!!でなければ上着を着せて!!!」
「いやいや!?どっちもわしには難しいんじゃが!?」
「HA・NA・SE!」(ATM感)
「ええい!落ち着かんか紋瑪!!いったい何があったのじゃ?」
百由様と一緒に私を押さえつけるミリアムちゃんの一言を受け、状況を簡単に説明する。
「梨璃ちゃんが夢結様と楓さんと一緒に逃げたヒュージ追っかけてったのよ!」
「なんじゃ、そんな事かい。心配なぞ必要なかろうて」
「必要だから焦っているのよぉぉぉぉ!!!!!!」
「なぜじゃ?ヒュージ討伐に名乗り出るくらいじゃし、それなりに腕に覚えが────」
「梨璃ちゃんがCHARMとの契約すらしてない超が付く程のド素人だからよ!!!!!!」
「「・・・・・・・・へ?」」
二人が私を押さえる力が弱まった!今がチャンス!!
「待ってて梨璃ちゃん今参りますッッッ!!!!!!」
「あ、ちょっとあやっち!せめて制服を持ってってよ~!」
「そんな場合じゃないぞ百由様!!紋瑪の言う事が本当ならば、かなり危機的状況じゃぞ!?」
「いやまぁそうなんだけど・・・・あやっちが行くなら、大丈夫じゃない?」
「まじかぁ・・・・?」
百由様が投げ渡してくれた私の制服を小脇に抱えて、私は梨璃ちゃんのもとへと急ぐ。
―――――――――――†――――――――――
あー、もう!!なんで私のスキルは"鷹の目"じゃないのよ!!!こういう時こそ"鷹の目"が役に立つってのにぃ・・・・
今、私は切り通しと呼ばれる崖の辺りにいる。
ヒュージ脱走の報告から今現在までの経過時間を考えると、たぶんこの辺りにいるはず──────
「居た!ヒュージ!───────って、梨璃ちゃんが!?」
近くの縦穴からヒュージが現れ、梨璃ちゃんに襲い掛かろうとしている。梨璃ちゃんはまだヒュージに気付いていない。
とか言ってる間にヒュージの接近に気付いた他の二人が、CHARMを構えて梨璃ちゃんに警告してくれるが、時既に遅し。
「だったら私が間に合わせるっ!!!」
自分のCHARM"シャルルマーニュ"を構え、梨璃ちゃんとヒュージの間に障壁を展開。一先ずの危機は去った!
「梨璃ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
「ふぇ・・・?紋瑪ちゃ・・・・ってなんて格好してるの!?」
「貴女!人目が無いからといって、軽率にトップレス姿を晒すものではありませんわ!!」
「梨璃ちゃんが救えるのであれば、恥も外聞もくずかごにダンクシューッッッ!ですわ!!」
「言ってる意味がわかりませんわ!!!!!!」
「とにかく、今のうちに一度引いて、態勢を建て直します」
私と楓さんがぎゃーぎゃー言い合っている間に、夢結様がご自分の制服のボタンをちぎり、地面に投げた。瞬間、周囲が目映い光に包まれる。何の光ぃ!?──────いや知ってるけど。
熟練のリリィは身に付けている物にマギを通す事で、武器にする事ができると聞いたことがある。
流石は百合ヶ丘のエースたる夢結様、といったところか。
さて、私も撤退撤退~。
―――――――――――†――――――――――
「貴女、CHARMも使えない癖に、いったい何をなさるおつもりでしたの!?」
近場の隠れられそうな場所まで引いた私達。とりあえず私は腰に巻き付けていた制服を着るとして、その間に楓さんが梨璃ちゃんに壁ドンして詰め寄っていた。──────良いなぁ、私も梨璃ちゃんに壁ドンしたいなぁ。
「ご・・・・ごめんなさい・・・・」
「いいえ、一柳さんをそこまでの初心者と見抜けなかった私の責任です」
「夢結様それは・・・!だからって、自重すべきでしょう」
二人の言葉にしゅんとしてる梨璃ちゃん。ああ、可哀想可愛いなぁ・・・・
「今回ばかりは、私もお二人に同意見です」
「紋瑪ちゃん・・・・」
「・・・・心配、したんだよ?」
「ごめんなさい・・・・本当に」
制服を着た私は梨璃ちゃんの頭を撫でる。反省してくれたなら、何より。
「二人共、少しの間周囲の警戒を頼みます」
「はーい。了承しましたわー」
「それはよろしいのですが、夢結様は?」
「略式ですが、今此処でCHARMとの契約を行います」
なるほどそういう・・・・・それ、私がやってあげたかったなー。
「ところで貴女、さっきの、なかなか良いCHARM裁きでしたわよ」
「あらあら、グランギニョルの総帥令嬢様に褒められるなんて・・・・光栄ですわね」
「その調子で、私の引き立て役もお願いしますわ」
「どうせ私、攻撃よりも防御の方が得意ですし、お邪魔にならない程度にサポートしてあげます」
等と話している間に、件のヒュージが現れた。
今回は真上から。逃げも隠れもせずに堂々と襲撃してくるとは・・・・!
「舐められたものっねぇ!!」
小さな障壁を展開し、ヒュージの攻撃を最小限のマギで弾いていく。
これこそ、私が提唱するタンク役の新たな戦術。その名も『
相手の攻撃を先読みし、そこに必要最小限のマギで造った障壁を展開、タンク役の持久力を高める画期的な戦術である。
しかしこの戦術、本来想定している多対一の戦場では『ファンタズム』もしくは『この世の理』が無ければ役に立たない等と批評され、現状、あんまり見向きもされていない。二川さんは知ってたみたいだけど・・・・
「さあ!フィニッシュでっ!?急に視界が・・・・!?」
私の防護の合間を縫って楓さんが攻撃を仕掛け続ける。そしてトドメの一撃を与えようとした瞬間、ヒュージが煙幕を張った。
「ただの目眩ましかな・・・?それとも・・・・」
「どっちにしても、これじゃ私のカッコいいところを、夢結様にお見せできませんわ!!」
「楓さんは私の後ろに立ってて!!下手に動くと同士討ちする!!」
「くぅ・・・・おっしゃる通りで!」
目が見えないなら、気配を辿るだけ──────
「陰が見えたっ!10時の方角!!」
「決めますわ!」
私の指示に楓さんが飛び出す。
だけど、ちょっと待って。確か、そっちの方角って──────
「待ってください!」
「え?」
「不味い!?間に合え!!」
楓さんの進路を妨害するように、障壁を展開。それで楓さんの動きは止まった。
煙幕が晴れた時、障壁の向こうにいたのは
「ま・・・・間に合ってた・・・・良かった~~」
「ゆ・・・夢結様!?申し訳ありません・・・・」
「ごめんなさい楓さん・・・大丈夫でしたか?」
「はい、私は・・・・」
「あのヒュージ、私達の相討ちを狙ってた・・・・」
「まさか!?ヒュージがそんな知恵を・・・・」
夢結様の意見に同意する。あの動き方は間違いなく、同士討ちを狙ってのもの。まさか、煙幕はそのための?だとしたらあのカメレオン、相当小賢しいわね・・・
「一柳さんとそこの彼女にお礼を言うべきね。彼女達がいなければ、今頃貴女、私に真っ二つにされていたわよ」
自分の心配はしないのか・・・・
「くっ・・・!貴女、眼は良いのね」
「あはは、田舎育ちなもので・・・・」
「それと紋瑪さんも・・・・」
「私は、自分に出来る事をやったまでですんでー。ところで梨璃ちゃん、契約の方は──────」
聞こうとした瞬間、再び煙幕が立ち込める。
梨璃ちゃんと夢結様を巻き込んでの煙幕。ならば、ヒュージの狙いは─────
「ッ!」
私が障壁を張るよりも先に、夢結様が自身のCHARMでヒュージを切り払っていた。
そこから先は夢結様の
不意に、ガチャン!という音が隣から聞こえてきた。梨璃ちゃんのCHARMが起動した音だ。
楓さんにも聞こえていたらしく、梨璃ちゃんの隣を陣取った。うらやましい・・・・
「一撃でしてよ!それくらい、合わせられて?」
「っ!はい!!」
「なら、私が援護します!!」
二人の突撃を察知した夢結様が身を引く。
私の役割はただ一つ。
「梨璃ちゃんの初戦闘なんたから・・・・大人しくしやれァ!!!」
迎撃しようと展開していた触手のような物を、障壁でもって押さえ付ける。コースは開いた。
「「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」」
見事、二人の一撃はヒュージに致命的な打撃を与えた!
「やった・・・・倒したぁ~~!」
「いいえ、まだよ!」
しかしヒュージはしぶとかった。唯一残った一本の足を使い、梨璃ちゃん(あと楓さん)に飛び掛かってきた!
「はぁ!」
のだが、手負いのヒュージ如き、夢結様の敵ではない。あっさり両断され、ヒュージは漸く撃退された。
「楓さん!」
「ふぇ?」
梨璃ちゃんの叫びにそちらを見ると、楓さんの上方、崖が崩れ岩雪崩が起きていた。
それに気付いた梨璃ちゃんが近くの縦穴へ楓さんを突き飛ばしたのだ。
更にその上からヒュージの体液が!?
「梨璃さん!」
「梨璃ちゃん!」
夢結様が梨璃ちゃんに覆い被さり、私はその上に障壁を張る。今回私、障壁張ってばっかりじゃね?
とにかく、これにて脱走ヒュージの撃退任務は成功した。
梨璃ちゃんに怪我もなさそうだし、一件落着ね!
お疲れ様でした~♪
緋坏紋瑪─その3─
この戦いの後、しばらく百合ヶ丘にて『半裸の女』が怪異として噂されることになるが、それが自分の事で広めたのが二水であることを、紋瑪は知らない。
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第一話 入学式-ここから始まるMy Revolution-
そういうこと、あると思います。
校舎に戻った私達は、それぞれメディカルチェックを受ける事になった。
特に梨璃ちゃんと夢結様はヒュージの体液を被ったのだし、念入りにして貰わないと・・・・
「でもあやっちがバリアで守ったんでしょう?」
「確かにそうですが、念には念念念!ですわ!!些事を見過ごして大事になっては目も当てられませんもの!!!」
「そうねー」
ちなみに私はというと、さっき後回しにしたメディカルチェックを今やってもらっている最中である。
「よし!問題ナシ!!もー良いよー」
「ありがとうございますー」
百由様からOKサインが出たので、診察台から起きて着替える。
「あやっちも行くでしょ?夢結と一緒にヒュージを討伐してくれた子達のところ」
「勿論です。百由様が行かなくとも、私は行きました」
「ナチュラルに置いていく気だったかー・・・・」
―――――――――――†――――――――――
検疫室の前に到着した私達が見つけたものは、膝を抱えて踞る一人のリリィの姿だった。その髪の色には見劣りがある。
「・・・・楓さん?そんなところでなにしていらっしゃいますの?」
「──────────紋瑪さん」
「おっ、検疫終わってるじゃない~♪んじゃ、お先~」
「あ、はーい。ごきげんよう」
百由様が検疫室に入っていくのを見送り、私は楓さんの隣に立つ。
「─────────────」
「・・・・・・・・・・・・・」
はぁ・・・・梨璃ちゃん、大丈夫かなぁ?
あのあと、左腕を怪我していたことを知った時は、心臓が止まるような想いだったわ・・・・・
「───────紋瑪さんは」
「はい?」
梨璃ちゃんの心配をしていると、楓さんが話しかけてきた。
「紋瑪さんは、梨璃さんとは仲がよろしいので?」
「ええ、そりゃあもう!とは言っても二年前に出会ったばかりで、後は遠距離でしたけど」
「ふぅん・・・・・そうでしたか」
んー?なんだろう・・・・・楓さんからイヤ~な気配が────
と、その時、検疫室から梨璃ちゃんと夢結様が出てきた。百由様はいない。大方、検疫結果をまとめている最中だろう。
そんな事より梨璃ちゃんよ!!
「梨璃ちゃ─────」
しかし───────
「え?」
私が梨璃ちゃんに抱きつくよりも速く、
「え・・・・あの・・・・私、梨璃だよ?」
「存じておりますわ」
突然の事過ぎて頭の処理が追い付かない。これは一体どういうこのなの?
「信じて欲しいのですが、私、それほどはしたない女ではございませんのよ・・・・?」
あの女は何を言っている?というか、何をしている・・・・?
理解の追い付かない私に、見せつけるかの如く言い放たれた楓さんの次の一言が、私を漸く現実に引き戻した。
「申し訳ありません夢結様・・・・私、運命のお相手を見つけてしまいましたの」
う ん め い の お あ い て・・・・?
「楓さん・・・・・・・?どういうつもりですか・・・・・?」
「どうもこうもありませんわ。梨璃さんこそが、私の運命のお相手だった、というだけの事」
「夢結様の事をお慕いしていたのでは?」
「私、過去は振り返らない主義ですの」
「いっぺん、己の行いを省みてはいかが?」
「残念ですが、私に反省すべき点など、どこにもありませんわ」
「大した自信ですね────────
「まぁ怖~い。さ、梨璃さん♪あんな脳筋女は放っておいて、私達はまいりましょうか」
「え?え?えぇ???」
「ええい!!こンの尻軽女ァ!!!その汚い手を梨璃ちゃんから離せってんです!!!!」
こうなったら実力行使あるのみ!物理的にひっぺがす!!
「尻軽とは聞き捨てなりませんわ─────ちょっと何をなさるの!?」
「梨璃ちゃんから離れろ、と申しておるのです!!」
「はぁ!?そっちこそお退きなさいなモブ顔!!梨璃さんと私は、運命の赤い糸で繋がっているのですから!!!」
「モブ……!?ぽっと出のクセに言うに事欠いてェェ!!!」
「やりますの!?」
「やらいでかァ!!!」
「ふ・・・・二人とも、やめてぇ~~~~~!!」
私と楓さんに挟まれた梨璃ちゃんの悲鳴が、廊下中に響き渡った。
――――――――――♣♧♣―――――――――
「──────入学式、もう終わっちゃってるよね」
私を挟んでケンカする二人を仲裁した後、私達は入学式の会場である講堂の入口まで来ていた。
あれからだいぶ時間が経っちゃってるし、みんなもう居ないよね・・・・
そう思いながらも、扉を開けようとして──────
「・・・・楓さん、梨璃ちゃんの為に扉を開けてあげてください」
「貴女の指図は受けたくありませんが、梨璃さんの為なら、仕方ありませんわね」
右腕を楓さんが、左腕を紋瑪ちゃんが、それぞれ腕を組んでいるから、今私は歩くくらいしかできないでいる。まぁ、これで二人が仲良くしてくれるなら・・・・
「───────────え?」
楓さんが開けてくれた講堂の扉、その奥には──────
「居たぁーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?」
みんなが、居た。
多分新入生だけだろうけど、それでも、私達を待っててくれていた。
「梨璃さん!入学式はこれからですよ!」
「二水ちゃん!」
私達に気付いた二水ちゃんが、こちらに歩み寄ってくる。他にもたくさんの人が。
「今日一番の功労者のためにって、理事長代行が時間をずらしてくれたんくれたんです!」
そうだったんだぁ・・・・・
「おおー♪有名人ども!」
「あ、ミリアムちゃん」
「初陣でCHARMと契約してヒュージを倒したり、半裸でかっ飛び回ったりとは、やらかしおるわい!」
「わ、私は足を引っ張っただけですよ!」
「半裸でかっ飛ぶ?何の話?」
「ふむ?これには、そう書いてあるがのう?」
紋瑪ちゃんがミリアムちゃんと呼んだ人が、一枚の紙を取り出して見せてくれる。
「なんですの?それ?」
三人でそれを覗いてみると、こんな事が書かれていた
『新人リリィ、脱走したヒュージを見事撃退!!』
「わぁお♪梨璃ちゃん有名人~♪」
「私が刷りました!週刊リリィ新聞の号外です!!」
「わ・・・・私、別にそんな大したことできてないし、ヒュージを倒したのは夢結様で・・・・」
「そんな事ありませんわ!梨璃さんは立派でした!!」
萎縮する私に、楓さんが頬擦りしてくる。
「ああああああああああああああ!!!!!!まだあんだわァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
「まったくやかまぐぇ!?いい加減あったま来ましたわァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
そして始まる取っ組み合いの大喧嘩。
「ああ、また・・・・」
「え?何ですかこれ?どういう状況なんです?」
「私にもわかんない・・・・」
「良いぞ良いぞ~♪やれやれ~なのじゃ♪」
何はともあれ、私の新しい生活は、こうして幕を開けたのです。
そういえば、夢結様は・・・・?
「それで、どうしてあのお二人は喧嘩なさってるんですか?」
「ぽっと出のドロボウ猫のクセにぃぃぃぃ!!!」
「二年もありながら進展しなかった癖に!!!!」
「よくわかんないけど、私がどうとか・・・・」
「梨璃さんが!?まさか梨璃さんを巡っての三角関係!?」
「「貴女なんかに梨璃
「あ、次回は梨璃さんがシュッツエンゲルの契りを結びます!」
「「なんですって!?!?」」
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第二話 守護天使-そして轟く悲鳴-
翌朝────
防音素材で出来た衝立で区切られた、畳一畳分のスペースから出る。こういう狭い場所の方が寝る時とか落ち着くのよね~。まぁ、それだけが理由って訳じゃないのだけどね。
「ごきげんよう、紋瑪さん」
「ごきげんよう、楓さん。昨日はごめんなさいね、突然ルームメイトになりたいと言ったりして」
「ま、仕方ありませんわ。本当は梨璃さんとルームメイトになりたかったのですが・・・・貴女からの申し出を断って、梨璃さんに嫌われる訳にもいきませんですし」
「打算的~、おかげで助かったから文句はありませんけど」
今更だが、私は楓さんとルームメイトになった。彼女の部屋は寮の部屋三つをぶち抜いて一部屋にしている。彼女の実家が学院に多額の寄付金を支払ったらしく、それ故に許されているのだとか・・・・・少し横暴じゃね?
―――――――――――†――――――――――
朝食を済ませ、組分け表の確認をしに行こうとしたその時、私の第六感が梨璃ちゃんの(貞操の)危機を訴えた。
「キュピーンと来ましたわ!梨璃ちゃん今行きます!!」
梨璃ちゃんの匂いをかぎ分けて、たどり着いた先は化粧室。そこには楓さんと・・・・・誰だっけ?あら何とかさんが梨璃ちゃんを巡って静かに争っていた。やあねぇ、不毛な争いをしちゃって。
「梨璃ちゃん梨璃ちゃん」
「あ、紋瑪ちゃん」
「今のうちに、こっちへ」
「「そこ!!抜け駆けは
「ちっ・・・・・」
バレてしまっては仕方ない・・・・梨璃ちゃんを守る為、やぁぁぁってやるわ!!
―――――――――――†――――――――――
三つ巴の大乱闘は、騒ぎを聞き付けてやって来た教官によって止められた。三人共々こってり絞られ、現在。
逃げた梨璃ちゃんの捜索をしつつ、本来の目的である組分け表の確認をしに移動する。
「あ!緋坏さーん!」
「あら、二川さん。ごきげんよう」
「ご・・・・ごきげんよう!!」
頬を紅潮させて、二川さんが挨拶を返してくれる。この娘が相当なリリィオタクなのは昨日確認済みなのだけど、私、こんなに緊張される程の有名人って訳でもないような気がするんだけどなぁ・・・・
「緋坏さんも、組分けの確認ですか?」
「それもあるけど、梨璃ちゃん知らない?はぐれちゃって・・・・」
「梨璃さんですか?私は見かけておりませんが・・・・・あ、居ましたよ!向こうです!」
二川さんが指差した先、ちょっとしょんぼりした様子の梨璃ちゃんが歩いて来くのが確認できた。
「梨~璃ちゃ~ん!」
「・・・・・あ、紋瑪ちゃんと二水ちゃん」
「梨璃さん、ごきげんよう」
「ご・・・ごきげんよう」
慣れない
「組分け表はもう見ましたか?私達、同じクラスですよ!」
「ほんとに!?やった~♪」
「そ~んなに喜んで戴けるなんて、嬉しいですわ~♪」
げっ、出たわね楓さん。
「そこ、口に出てますわよ」
「あらやだいっけない。ま、これからしばらく、宜しくお願いしますね」
「「え?」」
・・・・ん?何、その反応?
「えっと・・・・非常に、申し辛いのですが・・・・・・」
「なぁに?」
「緋坏さん、クラス違いますよ・・・・?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?
「ま・・・・またまた~。そんなご冗談を」
「あら本当ですわ」
「えマジで?」
楓さんに指摘され、慌てて組分け表を確認する。
梨璃ちゃんは───────一年椿組。隣には楓さんの名前と二川さんの名前がある。五十音順だから当然ね。悔しいけど、こればっかりは仕方ない事だわ。
で、私の名前だけど・・・・・・・・・
「・・・・・・・・無い」
「・・・・無いね」
「はい、無いです」
「無いですわねえ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う
「嘘だそんな事ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・」
晴天の空に、私の嘆きの声が、響き渡った……
緋坏紋瑪─その4─
クラスは李組となった。
クラス名なんて読むのかな、これ。樹木の名前らしいけど・・・(無知)
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第二話 守護天使-ただのお茶会-
かえふみは良いぞ!!!
もゆミリも良いぞ!!!
「えっと・・・・落ち着いた?」
「────────────────うん。もう平気、ありがとう」
『嘆きのクラス分け事件』から数分が経過し、現在。
講義自体は明日からなので、私達は楓さんの提案に載っとり足湯場を訪れていた。
窓際から、楓さん、梨璃ちゃん、私、二川さん、の順に並んで足を湯に浸けている。じんわりとした温かさが足からからだ中をめぐって全身にしみわたっていく。
それにしても、めっちゃ落ち着くぅぅ~~・・・・
足湯って私、初めてなのよねぇぇ~~・・・・
「良いのかな・・・?朝からこんな・・・・」
「へいきへいき~~・・・・じゅぎょうはあしたからだし~~・・・・」
「貴女、ちょっと緩み過ぎでは?」
「あはは・・・・紋瑪ちゃんはおいといて、講義って明日からなの?」
「はい、理事長の方針だそうです。『学院はヒュージ迎撃の最前線であるのと引き換えに、リリィにとってのアジールでもあるべきだ』って・・・」
あじーる?・・・・あるぱ・・・・ロリマザコンに父性を求めた女・・・・・ウッアタマガ
「アジール?」
「聖域の事ですわ。何人にも支配されることなく、脅かされることのない常世。ま、いい大人達が私達のような小娘に頼っていることへの贖罪というところでしょう」
贖罪、ね・・・・・百合ヶ丘の理事長でなければ、御大層な
「でも、不思議ですねえ。同じクラスでも、私と梨璃さんみたいなド素人から、ヌーベルさんのように実績のあるリリィまで、経歴も技量もバラバラです」
二川さんが、自身のクラス名簿を書き写したメモを見ながら言った。
「ほほほ、よく調べているわね!私のこと"楓"って呼んでくださって宜しくてよ?」
「わぁ!本当ですか!?凄いです!グランギニョル総帥のご令嬢とお近づきになれるなんて!!」
「なんてことございませんわ~」
「二川さん、楽しそうねぇ」
「そりゃあもう!!『障壁の奇術師』である緋坏さんを始め、綺羅星の如く活躍するリリィの皆さんにこうして直接お会いすることができただけに飽きたらず、学友として共に学んでいけると思ったら、もう!!」
「あーうん。わかったから鼻血拭こうねー」
しかし、"障壁の奇術師"ねぇ。
私、そんな二つ名が付けられてたんだ。初めて知ったわ。
「えっと、ぎにょぎにょ・・・・って、何ですか?」
「「え?」」
突然発せられた梨璃ちゃんの爆弾発言に、楓さんと二川さんが驚愕の表情で梨璃ちゃん(と間にいた私)に詰め寄る。
「まさかご存知ないとか!?」
「昨日ご説明したじゃないですか!」
「まってー私つぶれちゃうー」
「むぎゅぅぅ・・・・」
―――――――――――†――――――――――
「グランギニョルは、フランスに本拠を置くCHARM開発のトップメーカーのひとつで、楓さんはそのメーカーを束ねる総帥のご令嬢なんです!」
二川さんの説明に合わせてジャキン!と音を立て、楓さんがご自慢のCHARMの鋒を梨璃ちゃんに向けつつ、ご高説を垂れ流す。・・・・・・楓さんでなければブン殴ってたところだ。
「いいえ、トップですわ!お父様の作るCHARMは世界一ですもの!!仰ってくだされば、何時でも梨璃さんにはキレッキレにチューニングした、カスタムメイドの最高級CHARMをご用意して差し上げますからお楽しみに♪」
「そういえば、私のシャルちゃんもグランギニョル製でしたわね」
「シャルちゃん?」
「緋坏さんのCHARM"シャルルマーニュ"の事でしょうか?」
「二川さん、良く分かったねー」
・・・・・・そういえば二川さん、私のこと名前で呼んでないなぁ。あ、私もか。
「せっかくだし、私のことも名前で呼んでよ。私も貴女のこと、"二水ちゃん"って呼ぶから、ね?」
「え!?よろしいんですか!?」
「ダメなら言わないわよー?」
「うわぁぁ!!嬉しいです!!!嬉し過ぎて私もうどうにかなっちゃいそうでぶふぅ!」
「うわぁ・・・・・」
興奮し過ぎた二川さん─────二水ちゃんが鼻血を噴射し、気絶した。
とりあえず急いで二水ちゃんを足湯場から連れ出して介抱してあげる事となった。
―――――――――――†――――――――――
復活した二水ちゃんを伴い、私達はラウンジにてお茶を飲んでいる。
「そういえば・・・・梨璃ちゃん、朝はあの後どちらに?」
「えっと、旧館の方まで・・・・」
「旧館というと・・・・もしかして、夢結様ですの?」
「はい・・・・」
なんでも、昨日のお礼を言いたくて夢結様に会いに行ったのだとか。
夢結様には会えたが、全然取り合ってもらえなかったと・・・・それであの時しょんぼりしていたのね。
「私、夢結様とシュッツエンゲルの契りを結んでもらいたくて・・・・」
「あら、ですがそれは普通、上級生からお声がかかって結ぶものですわよ」
「そうですわねー。ちょっとむつかしいかもしれませんわね」
「あれ?でも楓さんも、昨日夢結様に申し込んでいませんでしたっけ?」
「・・・・・ちょっと楓さん?」
「私、過去には囚われませんの」
「楓さんは、自分の行いをもう少し振り返るべきかと」
「お黙りモブ顔!」
カチンときたが、ここは我慢。ラウンジで暴れるのは流石に行儀が悪いどころの話じゃない。
気持ちを切り替える目的も含めて、シュッツエンゲル制度についておさらいしてみようかしら・・・・
ここ、百合ヶ丘に於いて交わされる義姉妹制度。
上級生"シュッツエンゲル"が、下級生たる"シルト"をリリィとしても、人間としても、立派になれるよう教え、導いていく・・・・という、と~~っても尊い伝統だ。
ここだけの話、もし梨璃ちゃんが百合ヶ丘に今年合格してなかったら、来年入学してきた梨璃ちゃんにシュッツエンゲルを申し込む予定でいたりした。
「それが夢結様、目も合わせてくれなくて・・・・」
「え?昨日は良い雰囲気だったって・・・・」
「待ちなさい二水ちゃん、それ何処情報?」
「ひぇ・・・!?紋瑪さん顔が怖いですぅ!?」
さぁ吐け直ぐ吐けソース元を洗いざらいィィ!!!!!!!!!
「・・・・私、嫌われちゃったのかな」
「まぁ、元々気難しいことで有名なお方ですから?」
「い・・・・今の夢結様はシュッツエンゲルの契りどころかどのレギオンにも属さず、常にお一人でヒュージと闘っているそうです」
私の拘束を振り払い二水ちゃんが補足説明を行う。
やるじゃない・・・・
「・・・・・楓さん、私にCHARMの扱い方を教えてください!」
「梨璃さん!?」
「それは構いませんが・・・・」
「私、はやく一人前のリリィになりたいんです!そうすれば夢結様だって・・・・」
梨璃ちゃん・・・・そこまで夢結様のこと・・・・・!
「でも、明日から実習が・・・・」
「おだまりちびっこ!」
「ちびっこ!?」
ちびっこ・・・・確かに二水ちゃん、この中で一番小さいのよね。だからなのか、二水ちゃんはなんだか妹みたいに思う時があるのよねー。私、一人っ子だったけど。
「普通なら焦りは禁物、と申し上げるところですが、ここはヒュージ迎撃の最前線。初心者と経験者をまぜこぜにしているのは、リリィ同士が技を鍛え合う自主性もまた、期待されてのことでしょう。喜んで協力して差し上げますわ!」
「なるほどなるほどー。で?そのこころは?」
「手取り足取り合法的に・・・・ぐへへ♪」
「はいダウトー!」シパーン!!
「ぐほっ!?何をなさるの紋瑪さん!!」
「場所を気にして抑えていたけど、もう限界!梨璃ちゃんには私が教えてあげます!」
「貴女には荷が重いのではなくて?」
「じゃ、どっちが教えるにふさわしいか、勝負しませんか?」
「あ・・・・あのー・・・・」
「よろしくてよ!吠え面かかせてやりますわ!!」
「それはコッチのセリフですわァ!!!!!!」
緋坏紋瑪─その5─
肌が病的なまでに白い以外、特長のない顔立ちをしている。
故に楓から"モブ顔"と呼ばれている。
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第二話 守護天使-紋瑪VS楓-
なんでやろなー(棒)
ところで今、かえふみリアムの例の曲が頭ン中ループしてて超ヤベーイ・・・・なんスけど・・・・(笑)
リリィ!リリィ!GOGOリリィ!!×∞
訓練場には先客がいた。
「行くよ!楠美!」
「はいっ!天葉姉さま!!」
名前を呼び合い華麗なコンビネーションを魅せた二人に、思わず見惚れてしまう。
「はぁ~~・・・」
「すごいわね~・・・」
「二年生の天野天葉様と、一年生の江川楠美さん!お二人もシュッツエンゲルなんですよ!」
「え、もう!?」
「お二人とも、中等部時代からのお付き合いだそうで」
「なるほどー」
一人納得している合間にお二人は訓練場から退出。
さて、それでは・・・・
――――――――――♣♧♣―――――――――
「始める前に一つ、ルールを決めましょう」
「よろしくてよ。で、どのような?」
訓練場の真ん中で、互いに訓練用CHARMを構え向き合うと、紋瑪さんが一つの提案を持ちかけてきた。
「どちらかが、『参った!』という旨の発言をしたら、発言者の負け。それでどうです?」
「構いませんわ。言うのはそちらの方でしょうし」
「へぇ・・・・んじゃ、言わせてみてくださいなッ!!」
「っ!」
開戦の合図と言わんばかりに、私の四方に障壁を展開し閉じ込めようとする。
その前に障壁の隙間を縫って脱出。そのまま紋瑪さんに向かって突撃をかける。
「取った!」
「・・・・!」
大上段に構えたジョワユーズの一撃は、しかし
キィン!
と音を立てて障壁に阻まれた。
しかしこの程度の事は想定済み。
ステップからの斬激、フェイントをかけてのゼロ距離銃撃。
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
そんなリリィの基本戦闘術も、亀のように頑強な相手にはあまり通用しない。
「ほらほら~、もうちょい搦め手を使わないと私に勝てませんよー」
「そういった卑怯な手は嫌いです、のっ!」
方法が無い訳ではない。
彼女の戦闘術は『障壁による防御術』。
であれば、いずれはマギが枯渇し、障壁を展開できなくなる。
問題なのは、私よりも紋瑪さんの方がマギ保有量が多かった場合だが・・・・・
「レジスタ、使わないんですかー?」
「貴女こそ、ご自分のレアスキルを使わないので?」
「私、Zなんでー。使っちゃったらそれこそ、楓さん勝てなくなっちゃいますよー」
「言ってくれますわね!!」
この
――――――――――♣♧♣―――――――――
「ふぅむ、こりゃ紋瑪が勝つじゃろうな」
「じゃろ?」
いつの間にか、でっかい斧みたいなCHARMを持ったリリィが私たち達の背後にいた。
二人の戦いに夢中になっていて気付かなかった・・・・!
「この方は、ミリアム・ヒルデガルド・
「わぁ!?二水ちゃんまた鼻血!?」
「お主大丈夫か!?」
「ご
それは大丈夫じゃないような・・・・
「
「お・・・・おう・・・・そうじゃな。紋瑪の戦闘術は、このような
「つまり、楓さんが勝つためには紋瑪さんの障壁を突破できるだけの策が無ければ無理、と?」
「じゃな」
二水ちゃんとミリアムさんがよくわからない話をしているけど、要するに、このままじゃ楓さんは勝てないってことみたい。紋瑪ちゃん、そんなに強いんだ・・・・
「あーもう!貴女堅すぎですわ!!」
「それが取り柄ですんでー」
「少しくらい攻めに転じてもよろしいのではなくて!」
「とか言いつつ、私のマギ切れを狙ってるんでしょう?ま、無駄ですけどねー」
「くっ・・・!なんて姑息な!!」
「ふっふっふー。勝てば良かろうなーのでーす」
・・・・この場合、姑息なのってどっちなんだろ?
「仕方ありませんわね・・・・力業なんて、野蛮ではしたない行為ですが・・・・!」
「む」
十分な距離を取ってからの
でもそれ、さっきやって防がれていたような・・・・?
案の定、楓さんの突撃は障壁に阻まれ───────そうになった瞬間、CHARMをシューティングモードへ切り替えた!
「ほう!上手いの!!」
放たれた弾丸は障壁を撃ち破り、銃口が紋瑪ちゃんの眼前に突き付けられる。
「勝負あり!ですわ!!」
「────────────」
「さぁ、このまま負けを認めるなら・・・・紋瑪さん?」
「─────────────きひ」
紋瑪ちゃんの様子がおかしい。
負けちゃったのが悔しい・・・って感じじゃなくて、なんというか・・・・
「いかん!」
「え?ミリアムさ────」
私が何か言うよりも速く、ミリアムさんが二人の間に割り込む。
「ちょ・・・・何を!?」
「悪いがここまでじゃ!おい、紋瑪。落ち着け、大丈夫じゃ」
「────────はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ふう」
「呼吸はゆっくり・・・・もう、平気じゃな?」
「・・・・・うん。平気。ちょっと熱くなりすぎちゃった、かな」
「もう!いったいなんなんですの!?」
「楓さん」
「え?はい」
「今回は貴女の勝利です。おめでとうございます」
「え?」
「私をあそこまで追い詰めるなんて、流石です。参りました」
「はぁ・・・・なんでしょう・・・・腑に落ちない結果となってしまいましたわ・・・・」
「試合に勝って勝負に負けてますからねー」
「貴女がおっしゃること!?」
「なんじゃ、またおっ始めよったぞ」
「あはは・・・・」
何はともあれ、私の訓練は楓さんが見てくれることになりました。
緋坏紋瑪─その6─
固有ルーンはベルカナ・アルジズ
ベルカナは『母性・成長』
アルジズは『友情・保護』
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第二話 守護天使-気付いた小さな相違点-
まぁ、仕方ないね。
私と楓さんの一騎討ちは、楓さんの勝利で終わった。
楓さんが梨璃ちゃんに手解きしている様を怨めしく思いつつ、横から口を出していると、ミリアムちゃんから一つの提案が出た。
「CHARMについてもっと詳しく知りたいと言うなら、工廠科の百由様に聞くが良いぞ」
「百由様?」
「真島百由様。二年生のアーセナルで、ヒュージやマギの研究も行っているお方ですよー」
「紋瑪ちゃん、知ってるの?」
「以前からお世話になってるんです。確かにあの方なら、色々教えてくださるかもしれないですねー。んじゃ、私はこれで・・・」
ささっと踵を返して逃げる。
しかし、回り込まれてしまった。ミリアムちゃん意外と速ーい・・・・
「おう紋瑪。お主は強制じゃぞ。百由様に診てもらわねばならん」
「ですよねー・・・・」
「へ?どうしてですか?」
「あー、それはじゃな・・・・」
ミリアムちゃんがちらりと私の方を見る。言って良いか判断付かないなら、言わなければいいのに。
「私、心臓のある辺りにマギクリスタルコアが埋められてるんです。ペースメーカー代わりに、ね」
―――――――――――†――――――――――
昨日来たばっかりなのに・・・・よもやこんなにも早く、また
「百由様おるかー?」
百由様の研究室に入ると、炎の光が部屋中を照らしていた。
「わっ、まぶしい!」
「何の光ぃ!?」
「お主それほんと好きじゃな」
「いらっしゃーい。ごめんねー、今大事なところだから・・・」
どうやら新しいCHARMの刃を鋳造している様子。今は硬化処理の為の冷却中のようで、冷却水の中に刃が浸かっていく。
パッと見、ゆっくりと五つ数えれば引き上げても大丈夫そうだなー、と思っていたら百由様は三つで引き上げてしまった。
「あ、ダメ、早い」
「え?」
私の呟きに合わせるかの如く、パキンと音を立てて、刃の術式が割れた。
「あ・・・あぁ・・・私のこの一月の努力の結晶がぁぁぁぁ・・・・」
あーあ、悲しいなぁ。
「・・・・・えっと、どうしたの?」
梨璃ちゃんがきょとんとしている。可愛い。
・・・おっと、見惚れてないで説明してあげなくちゃ。
「百由様、よろしいですよね?」
「どーぞー・・・・・ううう、私の一ヶ月ぅぅ・・・・」
「ミリアムちゃん、顕微鏡スクリーンに繋いで」
「おう」
先程の刃を顕微鏡にかけ、スクリーンに写し出す。
「何ですか、これ?」
「CHARMの刃には、マギを制御する術式が刻みこまれているんですよー」
「リリィの身体から流れ込むマギがこの術式によって活性化し、ヒュージを支えるマギを断ち切るのじゃ」
「ヒュージのマギを・・・・」
「リリィに力を与えてくれるのがマギなら、ヒュージに力を与えているのもマギですからねー」
「ま、道理じゃな」
と、おもむろにミリアムちゃんが筒状の物を梨璃ちゃんに差し出す。
「ほれ、こんなのもあるぞ」
「これは?」
「CHARMの銃身じゃ、中を覗いてみぃ」
言われるがまま、梨璃ちゃんが銃身の中を覗き込む。じゃ、私は反対側から~・・・・あ、梨璃ちゃんの可愛いお目目が見えた♪
「何をしとるんじゃ」べし!
「いっっったい!目がぁぁぁぁぁ!!」
なんて事をするんだこの子は!私じゃなかったら銃身の中にお目目が転がり込んでいたわ!!
「だ・・・・大丈夫?」
「この程度平気じゃろ。続けるぞい」
ミリアムちゃん、私の扱いひどくない?
「よく見ぃ、ライフリングにも術式が刻みこまれておる」
「弾丸がここを通る際に、マギと一緒に術式が刻みこまれる仕組みなんですよー・・・・」
「へぇ。紋瑪ちゃんのは?」
「え?」
「紋瑪ちゃん、心臓にコアが埋まってるんだよね?」
「えーとまぁその心臓に埋まっているわけではないのですがまぁ概ねそのなんと申し上げますかえーと」
やべーですわ!このままだと、いらん事まで話してしまいそうですわー!!
「おおそうじゃ、百由様。さっき紋瑪の奴がの、
「ちょ!?ミリアムちゃん!」
「─────────────────ふぅん」
あ、ヤバい。百由様が静かにキレておられる。そりゃ
「あやっちー、大規模メンテするわよー。異論は認めないから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
――――――――――♣♧♣―――――――――
その後、紋瑪ちゃんはミリアムさんに別の部屋へと連れていかれた。ドナドナー・・・と歌いながら。
残った私達は、ラウンジまで戻ってきて百由様と共にお茶を飲んでいる。
「しっかし、よりによって夢結とシュッツエンゲルだなんてねえ」
「はい・・・・でも全然相手にしてもらえなくて・・・・」
ふと思い度したのは夢結様の扱うCHARM。二年前の時とは別のを使っていたような・・・・
「あの、夢結様が今使っているCHARMは・・・?」
「ブリューナクですわ」
楓さんが即座に答えてくれた。
「じゃあ、二年前に使っていたのは?」
「ダインスレイフね」
今度は百由様が答えてくださった。
「・・・・何故、夢結様はCHARMを持ち変えたんですか?」
「──────────なるほどね。それは本人に聞くしか無いでしょうね」
「百由様はご存じなんですか?」
「知ってるわ」
じゃあ・・・・!
「でも教えない」
「何故ですか?」
「本人が望んでないことを、
「あ・・・」
百由様に言われて気付く。そうだよね・・・・誰にだって、知って欲しくないこと、あるもんね・・・・
「リリィは税金も投入される公の存在だけど、その個人情報は本人がそれを望まなければ、一定期間非公開にされるの。個人の心理状態が戦力に直結する上、感じやすい十代の女子ともなれば、まぁ仕方ないかもね」
「あの方、感度高そうに見えませんけれど?」
「感じ過ぎるのよ・・・・感じ過ぎて、振り切れてしまった・・・・・」
そう語る百由様は、どこか、悲しげに見えた。
「おっと言い過ぎた。あとは本人の聞いてね、話してくれるならだけど」
それだけ告げると、百由様は研究室へと戻って行ったのだった。
緋坏紋瑪─その7─
“さる機関”によって、心臓のある辺りにマギクリスタルコアを埋められている。
これにより、アルビノ体質故の脆弱な肉体を強化し、常人レベルのものを獲得した。
しかしてその本来の目的は─────
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第二話 守護天使-Secret status-
生徒共有の大浴場は、学年毎に使用時間が決められている。今は、私達一年生が使用できる時間帯である。
「梨璃さん、どこか気になるところはありませんか?どこであろうとお流しいたしますよ・・・・ぐふふ♪」
「何処触ろうって魂胆ですかー?ぶん殴りますわよー?」
「なんて野蛮な・・・・!?別に疚しい事などございませんわ!」
「本当ですか?ずっと気になってましたけど、楓さんが梨璃さんを見る目、なんか邪です」
そうだそうだー。二水ちゃんはもっと言ってやれー
「まさか!こんな純粋な眼差しの私が!?」
「どの口が宣うか」
「手が滑りましたわー、なんて言って変なとこ触ろうとしてませんか?」
「くっ・・・余計なことを・・・!梨璃さんに変なところなどございません!どこでもOKですわ!!」
「それを決めるのは梨璃ちゃんでしょうが。つーか今余計なことって言いましたよね?」
「大げさだなぁ。大丈夫だよ、女の子同士なんだし」
「えっ!?よろしいんですの!」
「良かァねーですよ!頭ン中お花畑か!!」
「まったくじゃな」
おしゃべりしながら身体を洗っていると、後ろからミリアムちゃんが話しかけてきた。
「よいか梨璃、世の中にはいろんな奴がおる。どんな性癖も認められて然るべきなのは言うまでもないが、己の欲望を駄々漏れにするのは戒むべきことじゃ。紋瑪とそこのちびっこがのたまったのはそういうことじゃな」
「がびん!ちびっこにちびっこって言われたぁ!!」
まぁ二水ちゃんちっちゃいからね。さて、それじゃ
「梨璃ちゃん向こう向いてくださいな。背中流してあげます」
「ありがとう、紋瑪ちゃん」
「どさくさ紛れになにしてやがりますの!!!」
―――――――――――†――――――――――
人によっては長時間入浴する者もいるだろうけど、私はなるべく短く済ませたい人だ。別にお風呂が嫌いってワケじゃない。
ここのお湯には、リリィのマギを回復する効能がある。が、私は体内のコアのおかげで常人よりマギの回復が早いのだ。だからなのかはわからないけれど・・・・このお湯に浸かっていると、マギが過剰に回復してしまい、それが原因で酩酊状態になってしまう。
つまり簡単にいうと、逆上せやすい、ということだ。
「きゅう・・・・」
「まったくもう・・・・この程度で逆上せてしまうとは・・・・」
「ごめんね紋瑪ちゃん。つい、おしゃべりに夢中になって・・・」
「梨璃が気にすることではないぞ。自己管理ができぬ此奴が悪い」
ミリアムちゃんの言う通りなのだけど、ミリアムちゃんに言われるのはすごく納得がいかない・・・・
「と・・・・とりあえず、お部屋へ運びましょう!私も手伝います」
「お気持ちだけで結構ですわ二水さん。これも同室のよしみです、私が責任をもって部屋まで運びますわ」
「なんてカッコつけているけれど、梨璃ちゃんに良いとこ見せたいだけですよね?」
「貴女実は平気なのでは?」
―――――――――――†――――――――――
自室に戻る頃には、体調もだいぶ回復してきた。
「はい、お水ですわ」
「ゴクッ・・・ゴクッ・・・ゴクッ・・・ぷはー!ありがとうございますー。おかげで蘇りましたー」
「“生き返りました”の間違いでは?」
「細かいことは抜きでお願いしまーす」
ふぅ・・・・
「それにしても・・・・よもや私がぢごくのフルメンテを受けている間に、夢結様と契っちゃうとは・・・・梨璃ちゃんは行動力の化身ですねー」
「紋瑪さん、それは本気で仰っているんですの?」
「憧れの夢結様と添い遂げることができたんですよ?喜ぶべき事柄でしょう」
でも、気になる事はある。
『孤高のエース』と呼ばれてきたあの夢結様が、何故梨璃ちゃんとのシュッツエンゲルを受けたのか。
楓さんにひっぱたかれただけで、あっさりOKするなんて・・・・これは何かあるはず。
「調べてみる価値、あるかもね」
「何かおっしゃって?」
「いいえなにもー」
楓さんを軽くあしらって、マイスペースに入る。
「・・・・そういえば、その中ってどうなってますの?」
「え?あー、まぁ、別に良いか話しても」
楓さんを呼び寄せて、衝立の中を見せる。
「これは・・・・・カプセル?」
「はい。私のコアを定期的にメンテする為のマシンですー」
「・・・・本当に、体内に」
「ありますよー。おかげで今日も元気です。お風呂、逆上せやすくなっちゃいましたけどー」
「この衝立は、これを隠すためでしたのね」
「それもありますけどー・・・・本来の目的は、防音です」
「防音?」
「まぁちょっと・・・・」
カプセルの中に入ってマシンを起動させる。
ぎゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!
「煩っ!?ええい!やかましいですわ!!」
「そうなんですよー・・・・このマシン、騒音がひどくて・・・・」
マシンのスイッチを落とし、カプセルから出る。
「なるほど・・・・・確かに衝立が必要ですわね・・・・これは」
「ここまで小型化できたのは、良かったんですけどねー。ここまで騒音がひどくなるとは・・・・」
その分いろんな事ができるから、まぁ、コラテラルって事で・・・・
さて、じゃ・・・・ハッキングタ~~イム♪
この後、私は、衝撃的な事実を、知ることとなる・・・・
緋坏紋瑪─その8─
寮に置いた紋瑪のメンテマシンには、紋瑪のコアをメンテナンスする機能だけでなく、百合ヶ丘のデータサーバーへハッキングする機能も備わっている。
工廠科の工房にも同じものがある。というか、工房のものを小さくしたものがこれ。
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第三話 契りークラスメートはちゅうかぱないねー
ほんとはもっとカッコいいのをつけたい。
ラウンジにて、梨璃ちゃんと夢結様がお茶をしている。
仲睦まじく・・・・とまではいかないが、目を合わせてくれなかったらしい昨日よりは、だいぶ良い雰囲気だ。
「ぐぬぬぬ・・・・朝っぱらから公衆の面前であんな堂々とイチャイチャして・・・・!!」
「わー、楓さんがジェラってるー」
「私にはどこかぎこちなく見えますけど・・・・」
「まともに取り合ってくれるようになっただけマシでしょー。ところで二水ちゃん、さっきから執ってるそのメモは?」
「お二人のことを週刊リリィ新聞の連載記事にするんです!」
「・・・・貴女もなかなか容赦ないですわね」
「ここにも居たかー・・・・行動力の化身」
「それ、私も興味あるな」
にっこり笑顔の二水ちゃんに若干引いていると、横から見知らぬリリィが話しかけてきた。二水ちゃんが鼻血出しそうになっている事から、高名なリリィだと思われる。
「あの夢結を二日で落とすなんて、びっくりだ♪」
「そりゃ梨璃さんですもの、当然ですわ。で、貴女は?」
「私は吉村・
「それは失礼しましたわ、梅様」
「楓さん物怖じしないですねー。そういうとこだけは素直に尊敬です」
「なんだか、ものすごい引っ掛かる言い方ですわね・・・・」
「ほんと・・・・あの夢結が、な・・・・」
独り言のように呟く梅様に、私は昨晩調べた結果を思い出し、まだまだぎこちない二人を見つめるのだった。
―――――――――――†――――――――――
私達リリィは対ヒュージ戦における切り札だが、同時に普通のJKでもある。
なのでこのような座学の講義もちゃんとある。
国語数学理科社会
百合ヶ丘はリリィ養成学校として名門でもあるので、基礎学力のあまり高くない私は、一つたりとも単位を落とせないのだ・・・・!
そういえば、さっきヒュージ出現の警報が鳴ってたっけ。
何の音沙汰も無いから、さっさと倒してしまったんだろうな・・・・その方が、梨璃ちゃんが出撃しなくて済むから良いんだけど。
「───────つき」
梨璃ちゃんといえば、夢結様がシュッツエンゲルを結んだ理由についても気になる。
夢結様が孤高のエースとして活躍していた理由については調べられたのだが、それが何故梨璃ちゃんとは契ったのか・・・・まったくの不明だ。
「───────緋坏!」
夢結様程の方ならば、シュッツエンゲルを結びたがるリリィなんて、それこそ星の数程いるだろう・・・・・そんな中で、梨璃ちゃんを選んだ理由。結局私には、未だにそれがわからない。
「・・・・あの」つんつん
「ぅわっひゃあ!?」
びっくりしたー・・・・急に脇腹を突っつくのは誰じゃい!
「ほう・・・・良い返事だな、緋坏」
「────────────あ」
ドスの利いた声のした方向を見れば、そこには、仁王立ちで私を睨む教官の姿が・・・・
終わったかもしれない(諦観)
―――――――――――†――――――――――
教官どのにこってり絞られて、現在。私は机に突っ伏している。
「うぅぅ・・・しんどかったぁぁ・・・・」
「えと・・・大丈夫?」
「んー?」
隣からした声に顔を上げると、隣席の人が心配そうにこちらを見ていた。
「ごめんね・・・・私が、余計なことしたから・・・・」
「余計なこと?あー、さっきの・・・・・」
そっかー。さっき脇腹を突っついてきたのは彼女だったんだ。
「ボケーっとしてたのは私なんだから、別に謝る必要なんてないですよー。で、どちら様?」
「え・・・・えっと・・・・」
しばらくしどろもどろした後、微かに聞き取れる程度の声で彼女は名乗った。
「・・・・・・
「雨嘉さんですね・・・・・ん?王?アイスランドの王家?」
「う・・・うん・・・・・・」
「ワァオ、腕利き三姉妹の一人!有名人じゃないですか!」
アイスランドの王家三姉妹と言えば、リリィ界隈では名の知れた腕利きリリィである。
そんな方とこうして知り合えるとは・・・・二水ちゃんじゃないけど、興奮するなぁ。流石、百合ヶ丘だわ。
「あ・・・姉と妹はそうだけど、私は別に・・・・」
「ご謙遜。中等部時代から活躍なさっていたと聞いてますよー」
「二人ほどじゃないよ・・・・それに、百合ヶ丘には、私よりも凄いリリィなんて・・・いっぱい、いるし・・・・」
「まぁ、確かに楓さんみたいな凄腕が粒揃いですからねー、百合ヶ丘は」
「・・・・・」
「でも、だからって雨嘉さんがすごくないなんて事はないでしょう?欧州最強の一角と名高いヘイムスクラングラに通っていたんですよね」
「中等部まではね・・・・」
「・・・・・・・」
なんだろう・・・・・なんというか、自己評価が低いのかな?
百合ヶ丘に入れたってだけでも、リリィとしてのレベルは高いのになぁ。
「雨嘉さん、自分に自信が持てない人?」
「・・・・・ごめん」
「別に謝ることじゃないですよ?無いならこれから身に付けていけば良いんです。大事なのは、自信が無いことを理由にして、努力を怠ることですから」
「・・・・努力を、怠ること」
「・・・・ちょっと説教臭くなっちゃいましたね、すみません」
「う・・・ううん!言いたいことは、伝わったから・・・・だから、その・・・・・ありがとう」
「いえいえー、どういたしましてー」
と、そうしている内に予鈴が鳴った。次は射撃訓練だったっけ。私は免除されているから・・・・梨璃ちゃんの様子でも見に行こうかな?
「じゃね、雨嘉さん。さっきはありがと!ごきげんよ~」
「え?あれ?次の講義は?」
「あー、私免除されてるんですー」
「えぇ!?」
驚く雨嘉さんを残し、私は梨璃ちゃんを探し始めるのだった。
緋坏紋瑪─その9─
二年前の甲州撤退戦後、百合ヶ丘に保護された際、彼女は自らの出自の秘密を明かした。それが理由で、戦闘講義を一部免除されている。
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第三話 契りー放課後レッスンー
梨璃ちゃんを探して三千里(心理的にそのくらいって意味ね)。
渡り廊下を歩いていると、近くの茂みに誰かがいる気配がした。誰かしら?
「────────────あ」
「……………お前」
頭と左目に包帯を巻いた金髪赤目の少女が、猫と戯れていた。
よく見れば、猫に餌を与えようとしているが、猫の方は警戒していて、なかなか食べてくれない様子。
でも、そんなことはどうでもいい。重要なことじゃない。
「えと・・・・その・・・・ごきげん、よう・・・・」
「─────────────────」
彼女のことは知ってる。
安藤鶴紗。
私にとって、生まれて初めての、友達。そして──────
「──────────────」
「あ!待って!!」
「…………………………」
立ち去ろうとした鶴紗ちゃんを、思わず呼び止めてしまった。どうしよう・・・・何を話せば・・・・・
「あの・・・・その・・・・けが、したの・・・・?」
「……………………お前には、関係ない」
それに、と言って鶴紗ちゃんが包帯を解く。その下に、怪我の痕は何処にもなかった。良かった、ちゃんと治ってた。
「こんなの、
「────────そうだけど、でも、心配で」
「いらない。どうせ、うわべだけのクセに・・・・!」
「っ!」
ああ…………
私を睨む鶴紗ちゃんの瞳からは、猛烈な拒絶の意識を感じる。彼女はまだ、私を、許していないみたい…………
「────────ごめん、なさい」
「───────────────」
立ち去ろうとする鶴紗ちゃんを、今度は呼び止めない。
「─────────────一柳なら、訓練場にいる」
「・・・・え」
最後に一言、それだけ言って、鶴紗ちゃんは、何処かへと去って行ってしまった。
―――――――――――†――――――――――
「あら紋瑪さん、ごきげんよう」
「あ、紋瑪さん!!先程ぶりですー!」
「・・・・あ」
鶴紗ちゃんに言われた通り訓練場に行くと、楓さんと二水ちゃんがいた。ということは、梨璃ちゃんも・・・・
「・・・・紋瑪さん?どうかいたしまして?」
「え・・・・・あー、いや、別に何も・・・・ところで、梨璃ちゃんは────」
がきぃん・・・!
私の問いは、訓練場に響く金属音でもって答えられた。
梨璃ちゃんは夢結様に稽古をつけてもらっている最中だったようだ。・・・・これ、ほんとに稽古?
CHARMを構えて棒立ちの梨璃ちゃんに、夢結様が一方的にCHARMをぶつけているだけな様な・・・・
一応、梨璃ちゃんのCHARMに当ててはいるみたいだから、稽古と言われれば、そうかもなんだけど・・・・・
「─────────なんというか、夢結様ったら容赦ないですねー」
「まったくですわ。素人相手に・・・!」
「それでもめげない梨璃ちゃん可愛いですねー、がんばれー」
「え、止めないんですか?」
二水ちゃんが意外そうに声を上げる。
「夢結様が梨璃ちゃんを傷付けようとしてるなら止めますよ。でも、一応あんなでも訓練の体は為しているんで」
「紋瑪さんは意外とスパルタ・・・・と」メモメモ
「ちょっと二水ちゃん?」
今なんか、不名誉なレッテルを貼られた気が・・・・
――――――――――♣♧♣―――――――――
「あいたたた・・・・」
「お労わしや梨璃さん。全身痣だらけになられて・・・・ほら、ここも、ここもー・・・・あ~ら、こんなところまで♪」
「そこはちがいます~~~!?」
今、私は楓さんに背中を流してもらっている。
紋瑪ちゃんは、今日はさっさと上がって行ってしまった。昨日あんな事があったんだし、のぼせないようにってことかな?
それにしては、なんだか様子が変だった気が・・・・
「・・・・って楓さん!?そこは自分で洗えますから~!!」
「お気になさらず梨璃さん!私がそうしたいからやっているだけですわ~♪」
「楓さん、紋瑪さんがいないからって暴走しないでください。紋瑪さんを呼びますよ?」
「くっ・・・!ちびっこのくせに生意気な・・・・」
―――――――――――†――――――――――
「私にはやっぱり解せませんわ。そこまでして夢結様に拘ることないんじゃありません?」
「楓さんだって最初は・・・・」
洗い終えて、湯船に浸かっていると、楓さんにそういう風に言われた。でも・・・・
「こんなところで挫けてなんていられないよ・・・だって私、まだ夢結様のこと、何にも知らないんだから」
決意を胸に、自分に誓いを立てる。と、その時、別方向から誰かがやって来て声をかけてきた。
「あなたが夢結様のシルトね」
「まさか本当にモノにしちゃうとはね」
「おめでとう、梨璃さん」
えーっと、この人達は・・・・?
「アールヴヘイムの皆さん!!!」
アールヴヘイムって言ったら、今朝のヒュージを倒したレギオンだったよね。
あ、よく見たらこの人昨日の・・・えっと、亜羅椰さん、と樟美さん・・・だっけ。あともう一人は・・・・どちら様?
「丁度良いですわ。教えて頂けません?夢結様のこと」
「夢結様?うーん・・・そうは言っても中等部は校舎違うしねえ」
楓さんからの問いかけに、緑髪の方(田中壱さん、というらしい。後から二水ちゃんに聞いた)が首をかしげる。
「でも夢結様と言ったら・・・・・アレよね」
「・・・・・・・・」
亜羅椰さんが気になることを言った。アレって?
「・・・・・・甲州撤退戦」
亜羅椰さんの言葉を繋ぐように、樟美さんが呟く。
甲州・・・・?
「聞いたことあります。二年前、ヒュージの大攻勢に遭って、甲州の大部分が陥落した戦いのことですね。百合ヶ丘からも幾つかのレギオンが参加したものの大きな被害を出して、威勢を誇った先代アールヴヘイムが分裂するきっかけにもなったんです。先輩方に伺っても、この件には口が重くて・・・・」
「度胸あるわね、あなた・・・」
緑髪の方が二水ちゃんに感心の声をあげた。
「当時中等部の三年生だった夢結様も、特別に参加していたと・・・」
「なら知ってるでしょ?夢結様は、そこでご自分のシュッツエンゲルを亡くしてるって」
「え・・・・・」
亜羅椰さんの一言に、私は、頭を叩かれたような衝撃を受けたのだった。
甲州撤退戦
紋瑪、梨璃、夢結にとって転機となった戦い。
“威勢を誇った”と二水に紹介されているが、初代アールヴヘイムはこれが初陣だった。
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第三話 契りーレストア、襲来ー
『おや?キミの方から連絡をくれるなんて、どういった風の吹きまわしかな?』
『単刀直入に聞こう。安藤鶴紗への実験は、未だ継続中なのか?』
『安藤鶴紗・・・・戦犯の娘がどうしたというのかね?』
『質問への返答以外の発言を、私は認めていない』
『おっと失敬。何分、キミとの会話は久しぶりでね・・・・で、安藤の娘への実験、だったかね?』
『そうだ。続いているのか?』
『ふむ・・・・そういった情報は無いね。ああ、だが・・・・別の実験で彼女を使用した、との情報は上がってきているね』
『別の実験とはなんだ?』
『それに関する情報は無いね。どうしても知りたければ、キミ自身の力で調べたまえ。出来るだろう?』
『職務放棄と見なす発言・・・・貴官の代わりは幾らでもいるのだぞ?』
『誤解しないで欲しいが、我々の持つ情報は飽くまでごく一部でしかない。せいぜい、キミが知りたい情報への糸口を見つけられるか否か程度のね。それをキミに渡すのが、我々の任務だ。それ以上は規定外だよ』
『──────────チッ』
『・・・・まあ、このままキミに不機嫌な状態でいられるのは、此方としても不本意だからね。G.E.H.E.N.A.のデータサーバーへのアクセスキーを送信しておこう。それで許してくれないかい?』
『─────────────良いだろう。後は此方で調べる』
『では、良い成果を』
―――――――――――†――――――――――
翌日────
今日も今日とて梨璃ちゃんは夢結様に稽古という名のイジメを受けている。
「ふぁいとー♪ふぁいとー♪ふぁ⭐い⭐とー♪」
「気の抜ける応援じゃの・・・・」
今日はミリアムちゃんも見に来てる。周囲を見渡せば、昨日の先輩・・・確か梅様、だっけ?もいる。
それだけ梨璃ちゃんが、皆に注目されているということなんだろう。うむうむ、梨璃ちゃんが人気で私は嬉しいねぇ。
「紋瑪さんが見たこともない程のニッコニコ笑顔です!」
「どうせ、梨璃さんが注目の的となっていることに喜びを感じているだけですわ」
「あ、分かる~?分かっちゃいます~?」
「ええい!鬱陶しいから、その顔で近寄らないでくださいませ!」
暇だからと楓さんに絡みに行くと邪険にされた。ちぇー。
と、その時ふと梨璃ちゃんの方を見ると、CHARMが淡い輝きを放ち始めていた。
「───────ん、漸くね」
幾度も吹っ飛ばされて、漸く梨璃ちゃんのCHARMにマギが浸透し切ったようだ。これでもう吹っ飛ばされることはなくなった。
それどころか、夢結様の剣戟を梨璃ちゃんはCHARMで弾いてみせた。あの娘、天才かもしれない・・・!!
「夢結様がステップを崩されたとな!?」
「ようやくCHARMにマギが入りましたわね」
「これでやっと、只のイジメから訓練になるねー」
「只のイジメって・・・・」
しかし今日はここまでにするもよう。まあ、仕方ないね。
ヴーッ!ヴーッ!ヴーッ!
と、その時だった。
ヒュージ襲来を知らせる警報が鳴り響く。
「うわー・・・・よりによって今日来るかぁ・・・・」
「何がご不満ですの?」
「いや、だって、今日の当番って・・・・」
「・・・・ああ成程。これが梨璃さんの初陣となる訳ですわね」
「もう少し、訓練を積んでからにした方が良いと思うんですよねー、私は」
「仕方ありませんわ。リリィである以上、四の五の言ってられませんもの」
「そうなんですけどねー・・・・」
既に梨璃ちゃんは夢結様と共に訓練場から出て行った。
さて、私もぶー垂れてないで行くとしよう。
今日の当番は、レギオンに属してない私達フリーのリリィなんだから。
―――――――――――†――――――――――
楓さんと共に、迎撃ポイントへと降り立つ。二水ちゃんは今日は見学なので、校舎の屋上においてきた。
さてさて、ヒュージはまだ来てない様子・・・・今のうちに挨拶周りでも────
「あの・・・・緋坏さん」
「ん?あ、雨嘉さん・・・・と、どちら様?」
声をかけられたので振り返ると、雨嘉さんとどこかで見たことのあるリリィがいた。
「はじめまして、緋坏紋瑪さん・・・ですね?私は
「はじめまして、ごきげんよう。私の自己紹介は・・・・いりませんよね?会えて嬉しいですよー♪」
郭神琳
学校案内の表紙なんかも飾ったことのあるアイドルリリィ。
赤と金のオッドアイにブラウンの髪、そして整った凛々しい顔立ちを見れば、アイドルだなんだと呼ばれても不思議ではないと思えてくる。
「私もです。かの“南極戦役の生き残り”である緋坏鉱一郎氏のご息女と御一緒できるとは」
「え・・・・そうだったの?」
「いやー、まぁ・・・・ローターのおじ様や、
「御謙遜を。『キャバリアの緋坏』の異名は、私も存じ上げておりますよ」
「それだって、お父様の異名ですしー、私はまだまだ無名のぺーぺーですからねー。これからですよ、これから」
「そうですか・・・」
まさか、お父様のことを知っている人に会えるとはなぁ。
キャバリア
リリィの対ヒュージ戦闘用搭乗または騎乗兵器の総称で、
南極戦役では、その雛型とも言える機体で陰ながら活躍したのだと、お父様はよく話してくださった。
「緋坏さんって、そんな有名人だったんだ・・・・」
「お父様が、ですよー」
「そのお父さんは・・・・今は?」
「────────────二年前、ヒュージの襲撃に遭って、そのまま・・・」
「・・・・・・・・ごめん」
「気にしないでくださいなー。心優しい友人のおかげで、吹っ切れましたので」
その
「・・・・・・なんで楓さんが一緒にいるの」
「梨璃さんの居るところ、私有りですもの~♪当然ですわ!」
「そっすか。さて梨璃ちゃん、いよいよ実戦ですよ。心の準備は万端ですか?」
「う・・・うん!頑張る───」
「気張っているところ悪いけれど、貴女はここまでよ」
やる気満々の梨璃ちゃんに釘を刺すように、夢結様が遮った。
「え・・・・?」
「足手まといよ。ここで見てなさい」
それだけ梨璃ちゃんに言うと、夢結様は一人で行ってしまった。
「夢結様・・・・・」
「・・・・来いと言ったり、待てと言ったり」
「足手まといになるかもしれないからこそ、連れて行くべきだと思うんですけどねー・・・・やれやれ」
・・・・そろそろ上陸してくる頃合いか。
梨璃ちゃんには悪いけれど、私達も行かせてもらおう。
「楓さん、行きましょう」
「・・・・ごめんなさい梨璃さん、行ってきますわ」
「ううん!私の事は気にしないでください。お気をつけて!」
梨璃ちゃんに見送られ、私達も出撃する。
―――――――――――†――――――――――
今回のヒュージは、なんというか・・・・トゲ付きの甲羅でも背負ってるイメージ。
奴は浮遊機雷のようなモノをばら蒔いて攻撃してくる。ちょっとでも触れれば・・・・ドカン!
いくらリリィがマギの防御壁を纏っているといっても、至近距離であれの爆発を食らえば・・・・・その先は想像したくないなぁ。
それと、戦っているうちに気付いた。
「こいつ・・・・レストアード・・・・!?」
「レストア!?」
レストア───レストアード・ヒュージ、つまりは損傷を受けながらも生き延びたヒュージが、ヒュージネストに帰還し修復された個体。リリィから生き延びた経験がある分、通常の個体よりも数段手強いのだ。
しかし・・・・なんだろうか?
この、心臓が締め付けられるような感じの痛みは・・・・
「・・・・嫌な感じがする。楓さん、用心した方が良いです」
「レストアなら、尚更ですわね・・・・」
なんて言っていると、夢結様が機雷を利用して、ヒュージの外殻を爆破してみせた!
「なんて無茶苦茶な・・・・」
「──────────────」
爆煙の向こうに、複数の光が見える。
あの輝きを、私はよく知っている。
あれは──────────
「───────────────」
「紋瑪さん!?大丈夫ですか!?顔色が何時にも増して悪いですわよ!!」
「・・・・・よけいな・・・・・・おせわ・・・・・・です」
「とりあえず、一度引きますわよ!」
楓さんに背負われ、私は後ろへ下がった。
キャバリアの緋坏
紋瑪の父、緋坏鉱一郎の異名。
キャバリアの雛型とも言える機体“ガリアーノ”を駆り、南極戦役を生き抜いたことから付けられた。
ガリアーノの設計図は、後に公表されキャバリアとして量産された。
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第三話 契りー月光の狂気ー
夢結様が・・・みんなが、戦っている。なのに私は、遠くから見ているだけ・・・・
「ふーん、レストアね」
「最近は出現率が上がっていると聞くのぅ」
「ふぁ!?百由様!と、ミリアムさん?どうしてここに・・・」
いつの間にか、隣に百由様とミリアムさんがいた。
「工廠科とはいえ、私達もリリィなの。これでも結構戦えるのよー?」
「今日は当番と違うがの」
そういえば、二水ちゃんがそんな事言ってたっけ・・・戦うアーセナルがどうたらこうたら。
「で、損傷を受けながらも生き延びたヒュージが、ネストに戻って修復された個体。私達はそれをレストアード──レストアと呼んでいるのよ。何度かの戦闘を生き抜いているから手強いの」
「はぁ・・・」
話している間にも戦闘は続いている。
夢結様がレストアヒュージの爆弾攻撃を掻い潜り、甲羅のトゲに一撃を加えようとしている。
「すごい・・・・」
「じゃが、ちょっと危なっかしぃのう」
「なまじテクニックが抜群だから、突っ込み過ぎるのよね」
けれど夢結様の一撃は、ヒュージの装甲を砕くことはできなかった。
一度は引いた夢結様だったけど、再び突撃。ヒュージがばら蒔いた爆弾を用いて、今度こそ、甲羅を破砕してみせたのだった。
やっぱり、すごい・・・!
と、爆煙の向こうから光が見えた。それも一つじゃない、幾つもの光が。
あれって・・・・CHARM?でもなんで・・・・
「マジか・・・」
「え・・・あの・・・どういうことですか?」
「──────CHARMはリリィにとって身体の一部。それを手放すとしたら・・・・」
「っ!?」
百由様の言わんとしている事に気付いて、背筋が凍った。つまり、あのヒュージは、あれだけの数のリリィを─────
瞬間、夢結様の様子が一変した。
艶やかな黒髪も、真っ白に染まって・・・・戦っている、というよりも、暴れている、というような感じで・・・・
「夢結様・・・!?」
「ルナティックトランサーじゃ・・・!」
「それって確か・・・・夢結様のレアスキル」
「ルナティックトランサーは、マギの力を暴走させ、ヒュージに近しいエネルギーを人の身に宿す、正に狂気と紙一重のレアスキルよ」
「じゃが、何故今発動したのじゃ?夢結様はアレを封印しておったと聞くが・・・」
「主を失ったCHARMの群れが、夢結に思い起こさせたのよ・・・・」
「それって・・・・」
「百由様丁度良いところに!お話中のところ、すみませんわ!」
「わっ!?楓さん─────って、紋瑪ちゃん!?」
そこに、顔色が真っ青になった紋瑪ちゃんを背負った楓さんが跳んできた。いったい何が・・・
「うわっちゃー。こっちも
「言うとる場合じゃないぞ百由様!コアの出力が低下し始めておる・・・・このままじゃと不味いぞ!!」
「わかってるわよ!あー、こんな事ならちゃんとした工具持ってくれば良かった!!!」
紋瑪ちゃん・・・・
百由様とミリアムさんが紋瑪ちゃんの処置を行っている。
「・・・・アは、梨璃・・・ちゃん・・・・ひどい・・・顔・・・してます・・・よ・・・・?」
「顔色悪いのは貴女の方でしてよ!」
「大人しくしておれ!」
「紋瑪ちゃん・・・・!」
私には、何もできない。だから、せめて・・・・手を握っててあげようと思う。少しでも、安心させてあげたいから。
「────────────ふう」
「・・・・ん?なんじゃ?コアが安定し始めておる」
「─────────────────これって」
「・・・・んー。なんか、わからない、です・・・けど。身体、楽に、なりましたねー・・・」
「紋瑪ちゃん、大丈夫なの?」
「はい・・・・んー、たぶん、大丈夫、です」
「はぁ、まったく・・・・人騒がせも大概にしていただきたいですわね」
「いやー・・・ごめんなさい、です」
えっと、とりあえずなんとかなった・・・・のかな?
「のう、百由様・・・・これはいったい」
「・・・・なんだか、面白そうな事が起きたわね。とりあえず、あやっちはもう平気よ。あとは・・・・」
百由様の視線の先、そこでは、未だ夢結様が暴れ回っている。
「さっきの話の続きだけど・・・・夢結は、中等部時代に自分のシュッツエンゲルを亡くしているの」
「あ・・・・」
「・・・・・川添美鈴様、ですね」
「紋瑪ちゃん知ってるの?」
「先日、調べさせていただきましたので・・・・」
そうだったんだ・・・・
「やっぱりあのハッキングはあやっちの仕業ね!!あの後、色々大変だったのよー!!」
「はっはっはー」
「笑い事ではないわい!」
えぇ・・・・
「んで、その時、夢結様はルナティックトランサーを発動させていたそうで・・・・それが理由で、美鈴様殺害の容疑がかけられていたそうです」
「そんな!?」
「・・・・実際、美鈴様の遺体には夢結のCHARMによるものと思われる刀傷がついていたらしいわ。結局、証拠不十分で疑いは晴れたけど、夢結自身、記憶が曖昧な状態で・・・・・それからずっと自分を苛み続けているのよ」
「──────感じ過ぎて、降りきれてしまった。とは、そういうことでしたか」
・・・・・そんな事が、あったなんて。
なら、今の私にできることは・・・・
「私、行ってきます!」
「梨璃ちゃん!?」
「ダメよ!今の夢結は危険すぎる!!」
紋瑪ちゃんと百由様が私を止める。けど、私は行かなくちゃいけない。
私は、夢結様のシルトなんだから・・・!
「百由様、ありがとうございます。私、夢結様のこと・・・少しだけですけど、わかってきた気がします!」
百由様にお礼を告げて、私は夢結様のもとへと向かう。
ルナティックトランサー
夢結のルナティックトランサーは通常と違い、発動すると完全暴走状態に陥る。(昔はそうはならなかったとか・・・媒体によって詳細は異なる)
この状態になると、マギの力が完全に暴走し“神宿り”と呼ばれる現象に似た状態になる。(髪の色が変わるのはこれのせい)
つまり、ルナトラ持ちが全員、髪の毛が白くなるワケではない。
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第三話 契りーEdel Lilyー
それが苦手な方々はリターンバック推奨です。
あと、どうでもいい話を一つ。
この前ラスバレでガチャ引いたんですよ。そしたらグラン・エプレの確定演出が出て、⭐五二枚抜きしたんですよ。
二水ちゃんと紅巴ちゃんでした。
二水ちゃん、君いつの間に神庭に転校したん?(笑)
「百由様、ありがとうございます。私、夢結様のこと・・・少しだけですけど、わかってきた気がします!」
百由様にお礼を告げて、梨璃ちゃんが戦場へと発って行った。
追い掛けたいけど、コアの出力は低下したまま。普通に生活する分には問題ないけれど戦闘は不可能な状態だ。
「仕方ないですねー・・・・・百由様、ここは“アンヘルス”を使います!」
「ちょ・・・!?待ってあやっちアレはまだ未完成で────」
こうしている間にも、梨璃ちゃんは夢結様のために無茶をしているんだ・・・・躊躇っている暇なんか無い!
私は覚悟を決めて、シャルちゃんを振り上げた。
「なんじゃ?紋瑪は何をしようとしとるんじゃ?」
「
私の呼び声に応えるように、シャルちゃんが輝き、アンヘルスを呼ぶ。
すると、校舎の裏側から、一発のロケットが発射。真っ直ぐに此方へ向かって翔んで来る。
「何事ですの!?」
「うっそ!?もう装填済み!?みんな急いで退避退避ー!!!!!」
「なんじゃなんじゃ!?いったい何をしたんじゃ紋瑪の奴は!?!?」
ロケットは私の直上で分解。
「な・・・・な・・・・なんじゃあれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「貴女、さっきからそれしか言ってませんわね・・・・」
――――――――――♣♧♣―――――――――
「夢結様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
暴走する夢結様を助けるべく、私は戦場のど真ん中を突っ切って行く。
飛び交う爆弾は、触れたら爆発してしまうから回避。
もう少しで夢結様に手が届く───────
「っ!」
「え、あれ・・・あわわわわっ!?」
と、その時夢結様が私に向かって攻撃してきた。
それを咄嗟に、自分のCHARMで受け止める。
なんで────と思ったけど、よくよく考えてみれば、こんな危ないところを突っ切って来る人なんて、普通はいないよね・・・・敵だと勘違いされても仕方ないよ・・・・
「ご・・・ごめんなさい」
夢結様の言い付けを守らなかったこと、夢結様の邪魔をしてしまったこと、諸々への謝罪を行う。
すると、声が頭の中に直接聞こえてきた。この声・・・・夢結様?
『───────見ないで』
「・・・・・え」
瞬間、夢結様が私を突飛ばし、別の方向へCHARMを振るった。
どうやら、ヒュージの腕が私達へと攻撃を仕掛けてきたみたいだ。
夢結様が、私を助けてくださった・・・・!
それは良いけど、私このまま何処へ飛んでくの~~~!?
「よっと!大丈夫ですか、梨璃ちゃん」
「─────ふぇ?紋瑪ちゃん?」
空中で私をキャッチしてくれたのは、紋瑪ちゃんだった。
・・・・・え?あれ?
「えぇぇぇ!?私、飛んで・・・・!?」
「むふー♪これぞ、私と百由様が学院に内緒で共同制作した新型キャバリア!そのプロトタイプです!!!」
渾身のドヤ顔で、背中の大きな凧みたいな物を指差しながら、紋瑪ちゃんが説明してくれる。
「き・・・・キャバリア?」
「コクピットは無くて吹きさらしだし、燃料には百由様考案のマギバッテリーを使っているけど燃費が尋常じゃないし、その上武装は
「ふ・・・・普段よりテンション高いね・・・・(汗)」
そうこうしている内に、紋瑪ちゃんは戦場から少し離れた場所に私を降ろしてくれた。
「ご無事ですか梨璃さん!!」
「まったく、バカかお前は!」
楓さんや、百由様、他のリリィの皆さんもそこにいた。紋瑪ちゃんが運んでくれたんだと思う。
「んで、梨璃ちゃん。
いつになく、真面目な表情で、紋瑪ちゃんが問いかけてくる。
「──────私、今さっき、夢結様を感じました」
「はい?」
「何を仰いますの?」
「マギだわ・・・・CHARMを通じて梨璃さんのマギと夢結のマギが触れ合って─────」
「そんなCHARMの使い方、聞いたことありませんわ」
「じゃが、あり得る話じゃ。のう、紋瑪」
「────────そーですね」
なんだが、むつかしい話をしている。
けれど、あの時聞こえた声が、夢結様の本心なのだとしたら・・・・
「梨璃ちゃん」
いつの間にか、キャバリアから降りた紋瑪ちゃんが私の腕を掴んでいた。
「いくら契りを交わした相手だからといって、むざむざ死にに行く必要は何処にもありません。これでもし、梨璃ちゃんが美鈴様と同じ目に合いでもしたら・・・・今度こそ、夢結様は心を完全に閉ざしてしまうと思います。それに・・・・・私だって」
「──────────」
紋瑪ちゃんの言いたいことは、わかる。けれど、私は────
「二年前・・・・甲州撤退戦の時、私、夢結様に助けてもらったんです。紋瑪ちゃんは、知ってるよね」
「………………」
「だから今度は、私が夢結様を助けたいんです!!!」
みんなの顔を見ながら、私は言い切った。
きっと他のリリィからしたら、小さな理由だと思う。それでも、私は夢結様を助けたいんだ。だから─────
「──────────はぁ~~・・・・」
紋瑪ちゃんは、何かを言おうとして口を開けて、しばらくしてから、大きくため息を吐き出した。
「ホンっっっっト、梨璃ちゃんは無鉄砲なんですから!」
「うぅ・・・・ごめんね」
「でも」
「?」
私の腕から手を離して、紋瑪ちゃんは笑って言った。
「そういうところが、梨璃ちゃんらしいです」
「紋瑪ちゃん・・・・」
「ささ、乗ってください!夢結様の下まで飛んで行きますよー!!」
「うん!ありがとう・・・・って、何処に乗るの?」
「私が抱えていきます!!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」
「ちょ・・・・本気かお主ら!?」
「よーし・・・・口閉じててくださいねー!舌噛んじゃっても責任とりませんから!!」
えぇ!?と驚く間に、キャバリアが離陸。夢結様の下へ向かって翔んで行く。
「あーもう!後でお背中流させていただきますわよ!」
「参りますか?雨嘉さん」
「う、うん・・・!」
「私もCHARM持ってくれば良かったかな?」
「うぅぅ・・・・ええい!わしも行けば良いんじゃろがぁ!!!」
私達の後を追いかけるように、他のリリィ達も戦場へと向かう。
待っててください、夢結様!
――――――――――♧♣♧―――――――――
さて、大見得切って梨璃ちゃんと一緒に来たのは良いけど、どうしよう?
マギバッテリーの残量は、残り20%くらい。活動限界までおよそ五分といったところ。
そんな状況で、暴れん坊夢結様のとこまで行くの?この空中地雷原を?
「────────────無理ゲーじゃね?」
「紋瑪ちゃん・・・・?」
・・・・・まあ、やれるだけやるけどね!
「しっかり掴まっててくださいね!」
「うん!」
アンヘルスのスラスターを吹かし、レストアヒュージに向かって突撃。爆弾は機銃で蹴散らす。
と、その時。撃ち漏らした爆弾が機体に当たる直前で、
「あれ?・・・・まさか」
直ぐ様、背部カメラの映像を確認する。
映像に映っていたのは、
「あれだけの距離から、爆弾だけを・・・・しかも、弾き飛ばすように弾を当てた・・・・?」
雨嘉さん、やっぱりすごい人じゃん。
よく見れば雨嘉さんだけじゃなく、楓さんやミリアムちゃん、神琳さんに・・・あの方は確か・・・梅様、だっけ。とにかくこの場にいたリリィ全員が、梨璃ちゃんのために道を切り開いてくれている。
「・・・・なら、私も私の仕事をしなくっちゃ!行くよ梨璃ちゃん!夢結様の真上まで飛ばすから、後はよろしく!!」
返事も聞かずにスロットル全開!
みるみる内に距離は縮まっていき、とうとう夢結様の真上まで、本当に来られた。
「よーし、それじゃあ行ってらっしゃ~い!」
「わわっ!?い・・・行って来まーーす!」
梨璃ちゃんを放り投げ、私の仕事はこれでおしまい。
丁度エネルギーもすっからかんだ。
「・・・・さて、何処に落ちよう?」
呑気にそんな事を考えながら、私は地面へと墜落していった
――――――――――♣♧♣―――――――――
落ちる。
落ちる。
どんどん落ちて、夢結様のもとへ・・・!
「夢結様!」
私の声に振り返った夢結様は、見ていられないくらいにボロボロで、思わず私は
「私に!身嗜みはいつでもきちんとしなさいって、言ってたじゃないですか!!」
そんな事を言ってた。いやいや、そうじゃなくて。
「夢結様!私を見てください!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
再び、私と夢結様のCHARMが交わる。けど今回は、その中心に目映い光の球体が出来上がっていた。これは・・・・?(後で聞いたところ、これは“マギスフィア”と言うらしい)
不思議な現象を目の当たりにして、動揺していると、また、頭の中に夢結様の声が聞こえてきた。
『がっかりしたでしょう、梨璃・・・・?これが私よ・・・・憎しみに呑まれた、醜く浅ましい、只の化け物よ・・・・』
違う、と言ってあげたかった。
けれども今の私じゃ、きっと説得力はない。だから───!
「それでも!
「っ!」
私は、私が想っていることを言うことにした。
どんなに夢結様がご自分を嫌っていようとも、それでも、私が夢結様を“お姉様だ”と想い続けているかぎり、私のお姉様は夢結様だけなんだ、と。
「お姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「梨璃・・・・・梨璃ぃ!!!」
CHARMから手を離して、夢結様に────お姉様に抱き付く。
お姉様が私を抱き止め、私もお姉様を抱き締める。
お姉様・・・・あったかい・・・・
お姉様の温もりを感じていると、後ろから、何かを弾くような音が聞こえてきた。
そうだった、ここはまだあのヒュージの上・・・・
「飛ぶわよ、梨璃!」
「はいっ、お姉様!」
飛ぶ、とはどういう意味かわからないけれど、お姉様と一緒なら、なんだって出来る気がする!!
促されるまま、自分のCHARMを握る。途端に私達の身体が宙へ浮かんだ。
「私達・・・・空を飛んでる・・・・」
「マギの流れに乗っているのよ」
マギってすごい!流石です、お姉様!!
「梨璃、止めを!」
「はいっ!」
重なりあった私達のCHARMを、ヒュージに向かって突き出す。
「「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
私達の一撃は、見事、ヒュージを消滅させてみせたのだった!!
「お姉様・・・・」
「梨璃・・・・・ありがとう」
「そんな・・・・私、無我夢中で・・・・」
「だから、なのかしら・・・・ねぇ、梨璃?」
「はい」
「これからも、よろしくね」
「っ!・・・・・はいっ、お姉様!!」
そうして、私とお姉様は、しばらく抱き締め合っていた………
「あのー、私の心配はー?」
「え?あれ?紋瑪ちゃん!?なんで泥だらけなの!?」
「胴体着陸したのはよかったんですよ・・・・私めっちゃ地面に引き摺られて・・・・おかげでこんなですよ・・・・」
「・・・・えっと・・・・そう、なんだ(汗)」
「・・・・普通、地面に擦れれば、その程度では済まないと思うのだけれど(汗)」
アンヘルス
紋瑪と百由が共同で開発した、新型キャバリアのプロトタイプ。
以降二人が開発していく(予定)キャバリアシリーズの零号機でもある。
その機体コンセプトは、『リリィでは無い者達が、ヒュージと対等に戦えるだけの機体』であり、スキラー数値の低い者、マギ非適合者などが扱えるように設計されている。
―――――――――――†――――――――――
モデルは『NieR:Automata』に登場する飛行ユニット。これをエイとかマンタとかに寄せたデザイン。
梨璃ちゃんは初見時、凧だと思ったもよう。
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第四話 レギオンーHAN⭐SEI⭐KAIー
・・・と見せかけておいて、最初は前回の続きというか、後始末的な、そんなお話。
「さて・・・・紋瑪君、百由君。君達が呼ばれた理由は・・・・分かっているね?」
ここは理事長室。
この百合ヶ丘女学院を牛耳る理事長“高松
そんな理事長代行に、私と百由様は呼び出されて、ここにいる。
「百由様百由様、これは・・・・アレの件でしょうか?」
「そうねー・・・アレの件ね」
「あーあ・・・・とうとうバレてしまいましたかー・・・・」
「あんなに派手に暴れておいて今更だけどねー」
「学院の保有キャバリアを、全部
「そうそう────って待ってあやっち、私それ知らないんだけど!?」
「え?違うんですか?・・・・・じゃあ、何?」
「昨日のことよ!昨日アレを使ったでしょ!!!」
「アレ・・・・ああ!アンヘルスのことでしたか!」
なんだーそっちのことだったかー。
私はてっきりキャバリアをバラバラにしたことがバレたのかと思っちゃったよ~~。まぁでも、ちゃんと全部元に戻したし、言わなきゃバレないよねー。
「緋坏さん、もう言ってます」
「そうだった!!!」
―――――――――――†――――――――――
「まったく・・・・・とんだ問題児ですね、貴女は」
頭を抱えてため息を吐いたこの方は、百合ヶ丘の生徒会三役の『
「いや~えへへ~♪」
「あやっち、誰も褒めてないわよ」
うぉっほん!
と、理事長代行が咳払いを一つ。それだけで、部屋の空気が一変した。
「学院側の許可無くあのような兵器を造ったことに関しては、今回は不問とする。が、今後も造り続けるつもりでいるのならば・・・・此方とて、厳正に処分せねばなるまい」
「ぎくり・・・・造るつもりでいることがバレていらっしゃる・・・・」
「君達のことだ。あれで終わりではあるまい?」
「えぇ、まぁ・・・・」
「本気?呼び出しまでくらっておきながら、続けるつもりだったの・・・・?」
「あやっちはそういう娘ですからねー」
「何を他人事のように言っているのよ。貴女もでしょう?」
「あやっちに誘われちゃったら、断れないですからー」
おぉ・・・史房様がドン引きしていらっしゃる。
「だが、このままにしておくにも惜しい技術である事は、認めざるを得ない。そこでだ。紋瑪君には、新しくレギオンを結成してもらおうと思う」
「レギオン・・・・ですか?」
レギオンとは、各ガーデン内で結成されるリリィの戦闘単位のこと。百合ヶ丘ではノインヴェルト戦術の関係上、九人一組で結成される。
それを・・・私が?
「現存するいずれかのレギオンに所属してくれても構わぬが・・・・どうせなら、新しく専任のレギオンを結成してみては如何かね?」
「つまり・・・・私のアンヘルスシリーズ(予定)を試験運用するレギオン、ということですか?」
左様。と理事長代行が頷く。
「無論、結果報告はしてもらう。此方に直接ではなく、そうじゃな・・・・百由君を通じての報告としようかの」
「わ・・・・私ですか・・・・」
「今回の件への罰則じゃよ。今後、紋瑪君達の成果を報告書に纏め、我々に提出する。という形が理想じゃの」
「うへぇ・・・・私の仕事が増えたぁぁ・・・・」
「はは、ドーンマイ♪百由様」
「誰のせいだと・・・・」
「私“達”でしょう?」
「そうだった・・・・・悪乗りしちゃった私も原因だった・・・・・」
ガックリと肩を落とす百由様の背中を叩く。
「話は纏まったかね?」
「はい!不肖、緋坏紋瑪。アンヘルスシリーズ(予定)の制式量産化目指して頑張ります!!」
「別にそこまでやれとは言ってませんが・・・・」
話はこれで終了。
理事長室から退室した私は、早速メンバー集めのために走り出す。
一先ず、梨璃ちゃん達を誘おうかな?
余談
理事長代行は、紋瑪がアンヘルスを製作した理由が、己の趣味だから、ということを知っている。
なので製作理由は聞かなかった。
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第四話 レギオンー仲間を求めてー
梨璃ちゃんを探してラウンジに到着。さて、どこかな~・・・・あれ、なんだろう?あの人だかり・・・・って、なんか爆発したァ!?あれ夢結様じゃん!なにしてんの?あの人・・・・
―――――――――――†――――――――――
「なるほどー・・・・ユリさんですかー・・・・」
「ええ・・・・まったく、二水さんにも困ったものだわ・・・・」
夢結様大爆発の理由は、二水ちゃん発行の“週刊リリィ新聞”にあった。確か・・・梨璃ちゃんと夢結様のシュッツエンゲル記念特別号だとかなんとかって、二水ちゃんが言ってたっけ・・・・
にしてもこの紙面・・・・書き方に悪意が感じられる・・・・(笑)
新聞の真ん中にはドデカく、
と書かれており、なんとなく“ユ×リ”と読めなくもない。たぶん、狙ってやったんだろうなぁ。あの娘、行動力の化身だし。
「それで、紋瑪さんは何か用があったのではなくて?」
「あー、そうでしたそうでした!梨璃ちゃん!」
「ふぇ?」
「一緒にレギオン、作りませんか?」
「え・・・・レギオン?」
きょとんとしてる梨璃ちゃんは可愛いなぁ♪・・・・じゃなかった。
いきなりそんなこと言われても、さすがに戸惑うよねー・・・・
「って、なんだっけ?」
「「ズゴーッ!?」」
ん?なんか後ろから誰かがズッコケる音が─────
「二水ちゃん!?」
「あ・・・あはは、ごきげんよう」
いつの間に居たのか、二水ちゃんが背後でズッコケていた。いや本当いつの間に?
「二水さん、説明をお願いします」
「はっ!?はいぃ!!レギオンとは、基本的に九人一組で結成されるリリィの戦闘単位のことです!」
「ところで二水さん」
「は・・・・はい・・・・」
「お祝い、ありがとうございます」
「ひぃ!?ど・・・・どういたしましてぇぇ・・・・」
うわぁ・・・・夢結様お怒りのご様子。お祝いってか、お
「まぁ、それはそれとして・・・・良いんですか夢結様?梨璃ちゃんもらっちゃっても」
「別に貴女にあげる訳ではないわ。貴女のレギオン結成を手伝わせるだけよ」
「でも、どうして私が・・・・?」
「梨璃。貴女、今朝からずっと緩みっぱなしよ。昨日の今日で、気が抜けるのも理解できるけれど、もうすぐ授業が始まるというのにも関わらず、予習もせず私の顔ばかり眺めて・・・・そんな有り様では、リリィとして示しがつかないわ」
あぁ、夢結様に叱られてしゅん、としてる梨璃ちゃんも可愛いなぁ♪・・・・・って、そんな場合じゃなかった。さっきもやったな、この下り。
「それで、何故私のお手伝いを?」
「少しはリリィらしいことを経験して貰おうと思って・・・・迷惑だったかしら?」
「いえいえ全然これっぽっちも。というか私、最初から梨璃ちゃんを誘う予定でいたので、ついでに加わってくれるなら私は大助かりですー」
「そう。なら、私もついでに加えなさい。梨璃に手伝わせてばかりというのもシュッツエンゲルとして申し訳ないもの」
「それはとても嬉しいですねー!・・・・あ」
妙案を思い付いた♪
「では夢結様?せっかくなんで、レギオンの仮リーダーお願いしまーす♪」
「っ!?!?!?」
「えっ!お姉様が!?」
私の一言に、夢結様は動揺し飲みかけの紅茶を吹きそうになり、梨璃ちゃんは瞳を輝かせて私を見つめる。
「そう!これから梨璃ちゃんは(私もなんだけど)夢結様のレギオンを結成すべく尽力するのです!!!」
「紋瑪さん!?貴女、何を・・・・・」
「わかったよ紋瑪ちゃん!!!私、精一杯頑張る!!!なんたってお姉様のレギオンを作るんだもん!!!!!!」
梨璃ちゃんが私の手を取って、一緒に「えいえいおー!」と繋いだ右手を高く掲げる。
ふっふっふ・・・・計画通り・・・!(渾身のキラ顔)
夢結様をダシにすれば、梨璃ちゃんは一生懸命に頑張ってくれるし、そのまま夢結様をレギオンリーダーにしちゃえば、私は工廠科に入り浸る日々を送れる!まさに一石二鳥!!
梨璃ちゃんを騙しているようで、なんだか申し訳ない気持ちはちょっとあるけれど・・・・梨璃ちゃん楽しそうだし、問題ないよね♪
「わ・・・私もお手伝いさせて下さい!」
「二水ちゃん!心強いよー」
「ありがとう、一緒に頑張ろうね!」
「では早速勧誘です!」
「いざ行かん、メンバー集め!」
「わわっ!?待ってよ二人とも~~~~!?」
背後から夢結様の、「謀ったわね紋瑪さん~~~~!」という声を聞き流しつつ、私達はラウンジを後にするのだった。
緋坏紋瑪─その10─
入学して僅か5日でレギオンを結成しろと御達しの出た紋瑪。
原作アニメよりもだいぶ展開が早くて、作者ですらちょっと引いてる。
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第四話 レギオンー仲間を求めて②ー
まぁ、別にいいか(おい)
さてと、まずは・・・・・
「どこからあたる?」
「ではまず、同じクラスの人からいきましょうか!」
「同じクラスっていうと・・・・椿組の?」
「李組からにしますか?」
「うーん・・・・いずれは同じクラスの人も誘いたいけど、とりあえず今は二水ちゃんに任せるよー」
「ではまず椿組からですね!」
「えーっと・・・あ、あの人!」
梨璃ちゃんの指差した先にいたのは・・・・・
「・・・・・鶴紗、ちゃん」
「はい。安藤鶴紗さんですね!紋瑪さん、ご存知だったんですか」
「・・・・・・・」
「紋瑪さん?」
鶴紗ちゃんは、私をちらりと横目で見ると、さっさと立ち去って行ってしまった。
「あ、ちょっと待っ・・・」
「梨璃ちゃん」
「ふぇ?」
追いかけようとする梨璃ちゃんを止める。今はまだ、あの娘と話す勇気がない。だから、てきとうな理由を言って、後回しにして貰おう。
「向こうは・・・・忙しそうだし、誘うのは、今度に、しましょう?ね?」
「う、うん・・・・良いけど・・・・」
「・・・・どうしたんでしょう?」
・・・・・私、卑怯だなぁ。
――――――――――♣♧♣―――――――――
「うん・・・・うん・・・・大丈夫。それじゃ」
電話を切る。
「お母様ですか?」
「・・・うん」
いつの間にか姿が見えなくなっていた、同室の神琳が話しかけてきた。
気を使ってくれてた、のかな・・・?
「ご実家のアイスランドは、今は夜の11時といったところかしら?」
「うん。心配して、毎日電話をくれるんだけど・・・・」
「大切に想われているのね」
「ううん。私は姉や妹に比べて出来が悪いから・・・・だから、心配、なんだと・・・・思う」
「・・・・・・」
神琳は時々、私に不満そうな顔を向ける。
やっぱり・・・・私みたいなヘボリリィなんかと一緒だから・・・・
―――――――――――†――――――――――
自作の苔テラリウムを眺めていると、心が落ち着く。
今ではこの時間だけが、私の癒し。以前いた場所には、気心知れた仲の娘もいたけれど・・・・
そういえば・・・・
「神琳はレギオンに入るの?」
「ええ。貴女もせっかく留学してきたのだから交流すると良いわ」
「・・・・・・」
私なんかが交流したって・・・・
「ところでこれ、読みました?」
そう言って差し出してきたのは、一冊の新聞。
「週刊リリィ新聞・・・?こんなの読むんだ・・・・」
ちょっと意外。神琳はこういうの、興味ないと思ってた。
記事には昨日レストアヒュージを倒した二人が写っていた。ユリさん・・・?
「雨嘉さんも見たでしょう?昨日の戦い」
「・・・・うん」
あ、違う。梨璃さんと夢結様か。
「技量もバラバラで息も合ってない。なのに、不思議な迫力があって────」
「・・・・うん」
へぇ・・・・あの二人、シュッツエンゲルだったんだ。
「・・・私の話、退屈?」
「うん・・・・・へぁ!?そ・・・・そんなことないよ!」
新聞読むのに夢中で上の空だった。気を悪くさせちゃった・・・・よね・・・・
「構いませんよ・・・・それにしても、あの緋坏さん。気になるわ」
「え?・・・・緋坏さん?」
「確か、雨嘉さんは同じクラスでしたね?」
「うん」
「どんな方ですか?」
「どうって・・・・」
まだ、数回しか話したことないんだけど・・・・
「・・・・なんというか、自分に素直なひと・・・・って感じ、かな」
「ふぅん・・・・なるほど。あの翼のようなものについては?」
「・・・聞いてない。私も、昨日初めてみた」
「機密事項・・・だったのかしら?それにお目にかかれるだなんて、光栄でしたわね」
「・・・・・うん。そうだね」
この時、私達は知らなかった。
あれが緋坏さんと百由様が、学院にも無断で造っていたものだった、ということを・・・・
「汐里さんの件は残念でしたねー」
「もう既に他のレギオンに加入済みだったとは・・・・情報収集不足でした・・・・」
「仕方ないよ二水ちゃん。次、頑張ろっ!」
「誰にだって失敗はあるよー。大事なのは、それを次へ活かせるかどうか、よ」
「梨璃さん・・・紋瑪さん・・・はい!頑張ります!!」
「で、次は?」
「そうですね・・・・・・この方はどうでしょうか?」
あ、まだ四話は続きます。
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第四話 レギオンー仲間を求めて③ー
亜羅椰ちゃん、ネタにしてごめーんネ♪
それと、3/27は佐々木藍ちゃんと江川樟美ちゃんの誕生日でした。おめでとう!!!(すごい今更感)
結局二人目もダメだった。
まあ、最初からそんなにうまくいくワケがないよねー。
「さあさあ!気を取り直して次にいきましょー」
「はいっ。ではお次は─────」
そこへ、聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。
「貴女達、レギオンのメンバーを探してるんですってね」
「え?あ・・・は、はい」
振り返ると、そこに居たのはアールブヘイムの方々。
「あ!壱さん樟美さん、ごきげんよう」
「天葉様も、ごきげんようですー」
「ええ、ごきげんよう」
「ごきげんよう、梨璃」
う わ で た
「うっ・・・亜羅椰さん・・・も、アールブヘイムでしたよね・・・確か」
「何ですか梨璃ちゃんにちょっかい出す気ですか場合によっては筋力に物を言わせることもやぶさめじゃねーですよ」
「ま、怖ーい。あとやぶさめじゃなくて、吝か、よ」
「うっせーです!余計なお世話です!えーと・・・・」
「・・・・・?」
「・・・えーと」
「・・・・・・」
「・・・・・・えーっとぉ」
なんて名前だったっけ?今さっき梨璃ちゃんが言ってたけど、ちゃんと聞いてなかったわー・・・・
「・・・・・まさか貴女、私の名前・・・」
「えー、いや、覚えてますですよー、ハイ」
「目が泳いでるけど・・・・」
「ぐぅ・・・!」
まさか樟美さんに突っ込まれるとは・・・・
「えーと確か・・・・遠藤!」
「名字をしかも呼び捨て!?せめて名前で呼びなさい!!」
「名前・・・遠藤・・・遠藤・・・・」
遠藤・・・・何さんだったっけ・・・・“あ”から始まるんだったよね、確か。
梨璃ちゃんが心配そうにこちらを見ている。が、ここで梨璃ちゃんの力を借りるのは情けない。自力で思い出してみせますとも!
「遠藤・・・・あ・・・・あら・・・・」
「あと一文字なんだから、さっさと思いだしなさい!」
「急かさないで下さいよー。あら・・・あら・・・あら・・・」
「アラハバキ!」
「亜羅椰よ!!!」
「あー、そうそう!亜羅椰さん!」
「なによアラハバキって!?聞いたことないんだけど!?っていうか“あら”しか合ってないじゃない!あと一文字って言ったのに何で三文字に増えてんのよ!!!」
「でも、遠藤アラハバキって名前・・・・カッコいいと思いません?」
「思 わ な い わ よ !!!!」
亜羅椰さんとそんな漫才を繰り広げる裏では、アールブヘイムのお歴々がお腹を抱えて大爆笑していた。そんなに面白いこと言ったかなぁ、私?
「あ・・・あの亜羅椰が・・・・手玉に・・・とられ・・・あー!お腹痛い!!」
「笑いごとじゃないわよ!!」
「あら、なんだか随分と楽しそうですわね」
再び背後からの声に振り返れば、楓さんが梨璃ちゃんに抱き着いていた。
「ちょっと楓さん梨璃ちゃんになに抱き着いてんスか場合によっては関節技の刑に処することも辞さねーですよ」
「私と亜羅椰さんとで扱いが違いませんこと!?」
「そうよ楓。
「馬鹿ってなんスか馬鹿って」
「ご心配なく。私と梨璃さんは同じレギオンですから、貞操の危機から御守りするのは当然ですわ!」
「むしろ楓さんがいた方が危機的状況なんですけどねー」
「お黙りモブ顔!」
「ンだと尻軽!!!」
「け・・・・ケンカはダメですってばぁ~~~~!!!」
―――――――――――†――――――――――
「さっきの皆さんは中等部時代からアールブヘイムへの引き合いがあったそうですよ」
「へぇぇぇ・・・・」
「紋瑪ちゃんがまた蕩けてる・・・」
ここは足湯場。あの後、楓さんが梨璃ちゃんを引っ張って行ってしまったので、慌てて追いかけてきて、今はここにいる。
「とりあえず楓さんゲットです」
「ちょっと二水さん、リアクション薄すぎません!?」
「そ・・・そんなことないよ。とにかく、これで五人だね」
「へ?四人では?」
「ふぇぇ・・・・?」
「は?」
二水ちゃんが指折り数える。
「夢結様と、梨璃さんと、紋瑪さんと、楓さん」
「二水ちゃんは?」
梨璃ちゃんからの指摘に、一瞬、きょとんとする二水ちゃんだったが、言われたことの意味を理解すると、驚愕の表情を見せた。
「え!?わ、私も・・・!?」
「貴女だって、卑しくも百合ヶ丘のリリィでしょうに」
「というかぁぁぁ、今更、いなくなられてもぉぉぉ、困るのよねぇぇぇ・・・・」
「ふぁぁぁ・・・!光栄です!幸せです!私が綺羅星の如きリリィの皆さんと同じレギオンに入れるなんて・・・・!!!」
二水ちゃんってば、泣いて喜んでる。
そんなに嬉しかったのかな・・・・?次に造る機体は、二水ちゃん専用機にしよう。名前は・・・・ラファエルとかどうかな?
「あと四人だよ、二水ちゃん。頑張ろうね!」
「はいっ!!」
「ふふ・・・・ちびっこゲッ~~ト♪」
「それぇ・・・意趣返し、ですかぁぁぁ・・・?」
「貴女はどうして私にばかり辛辣なんですの!?」
「まったく・・・・とんでもない連中だったわ!」
「にしても、なんで楓・J・ヌーベルみたいな凄腕が、あんなド素人と?」
「所詮、下心だけの繋がりでしょ」
「アラハバキちゃんが・・・ぷふっそれ言う?」
「食うぞ樟美ィ!!!!!!!」
「きゃー」
「ふふっ・・・く・・・食わないの・・・ぷぷぷ」
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第四話 レギオンー仲間を求めて④ー
三度目のヘルヴォルイベント!藍ちゃんの水兵服かわいいかよぉ・・・・!!
さて、あれから数人を訪ねて回ったが・・・・何の成果も、得られませんでしたーー!
というわけで、今日はこの辺でお開きとなった。お疲れ様でしたー♪
そして、翌日─────
「二水ちゃん、楓さん、紋瑪ちゃんも、みんなありがとう」
「いえいえ、どういたしましてー・・・で、どうしたんですか?急に」
「昨日、閑さんに聞いたの・・・・」
どうやら梨璃ちゃんは、楓さんが八つのレギオンから誘いを受けていたことを知ったらしい。二水ちゃんだって、“鷹の目”のレアスキルを持っているから欲しがるレギオンは多い、ということも・・・・
「それに・・・・紋瑪ちゃん、本当は工廠科に入る予定だったんでしょ?」
「あら?そうだったんですの?」
ありゃ、それも知られてしまったかぁ・・・・伊東閑さん、だっけ。侮れないわね。
「・・・・・だとしても、私は梨璃ちゃんと一緒が良かったので、これで良いんです」
「・・・・梨璃さんだって、頑張っているのはご自身の為ばかりではないんでしょう?」
「私は、お姉様のために・・・・」
「なら、それと一緒ですわ」
「おー、楓さんが良いこと言ってる・・・・明日はきっと雨ですよ、二水ちゃん」
「え?そこで私に振るんです!?」
「あ~や~め~さ~ん~!!!」
「やべやべやべ♪」
「みんな・・・・ありがとう!」
鬼のような形相で追いかけてくる楓さんから逃亡しつつ、梨璃ちゃんの笑顔に、笑って答えるのだった。
―――――――――――†――――――――――
「私を、一柳さんのレギオンに?」
「はい!・・・って、お姉様のレギオンなんですけど・・・・」
今日の一人目は郭神琳さん。二水ちゃん情報によると、台北市からの留学生だとか・・・・・あそこって確か、今は陥落指定都市だったような・・・・
「そう・・・・とても光栄だわ」
「えっと・・・・それはつまり?」
「謹んで申し出を受け入れます」
その一言に、私と梨璃ちゃんは大いに喜んだ。
「ほ・・・・ほんとですか!?ありがとうございます!あ、私のことは梨璃って呼んで下さい!」
「はい、梨璃さん」
さて、これであと三人!ここまで椿組の人しかいないし、そろそろ李組からも引き入れたいなぁ・・・・どこかに丁度良い人、いないかなぁ・・・・
「じぃーーーーー・・・・・」
「・・・・・えぇっと・・・なに、かな?」
「紋瑪ちゃんが熱視線をそこの人に向けてる・・・・どちら様?」
「紋瑪さんと同じクラスの王雨嘉さん。ご実家はアイスランドのレイキャビクで、お姉様と妹さんも優秀なリリィです!」
「あ・・・姉と妹は優秀だけど、私は別に・・・・」
「えーっと、紋瑪ちゃんも誘いたそうにしてるし・・・・どうですか?神琳さんと一緒に」
「え・・・私、そんな物欲しそうな顔、してます?」
「してますわね」
「してますよ」
うむむ・・・・楓さんはともかく、二水ちゃんにまでそう言われるとは・・・・
「私が、レギオンに・・・・?」
「ここまで椿組の人しかいないんで、ここらで同じクラスの人にも入って欲しいなーって・・・・どうです?」
こうなっては仕方ない、欲望に忠実にいこう。ということでプッシュしていく。雨嘉さんとはクラスで数回ほど会話した程度の仲だが、こうやって誘えば、きっと──────そんな私の思惑は、意外なところから挫かれた。
「自信が無いならお止めになっては?」
「え?」
神琳さんが、そんな発言をしたのだった。
「うん・・・・やめとく」
「えぇ!?」
「素直ですこと」
それを受けて、雨嘉さんはあっさりと引き下がる。
「な・・・なんでですか!?」
「神琳がそう言うなら・・・きっと、そうだから・・・・」
「あの、お二人は知り合って長いんですか?」
「いいえ、先月に初めて」
「だったら、どうして・・・・」
「私はリリィになるため、そしてリリィであるために、血の滲むような努力をしてきたつもりです──────だから、というのは理由になりませんか?」
「私は─────」
「ならねーです」
「ぅえっ!?紋瑪ちゃん!?」
黙って聞いてれば・・・・好き勝手なこと言いやがって・・・・!
「血の滲むような努力をしてきたァ?ンなもん、誰だってそうでしょうが。この百合ヶ丘のリリィなら、誰だって!!私だって、梨璃ちゃんだって、楓さんだって、二水ちゃんだって、あの亜羅椰さんだって!!!──────多分だけど」
「・・・・紋瑪ちゃん」
「そして何より・・・・雨嘉さんだって、そうでしょ?」
「・・・・私、は」
「ロクに知りもしないクセに他人を否定するよーな・・・・そういう奴が、私はね・・・・・大ッッッッッッッッッッッッッッッッ嫌いなのよ!!!!!!!」
一頻り言いきったあと、我に返った私の目の前には、呆然としている神琳さんがいた。
あちゃぁ・・・・これはやらかしたパターンだわー
でも後悔はない。なので反省もしないっ!
「えーっと・・・私は、才能も経験も、神琳さんみたいな自信もありません。でも・・・ううん、だからこそ、確かめないと分からないと思うんです!紋瑪ちゃんが言いたかったのは、そういうことだと思います・・・・・たぶん」
梨璃ちゃん・・・・!なんて良い娘なの・・・・!ぶっちゃけそこまで考えてなかったんだけどね!
「紋瑪さんのあの顔、絶対勢い任せにして、やらかした顔ですわね」
「やっぱり楓さんもそう思いますか・・・・」
「ちょっとそこ?」
「ふっ・・・・ふふふ♪」
気がつくと、神琳さんは笑っていた。
「何が可笑しいんです?」
「あははは!・・・・はー・・・失礼。雨嘉さんの言う通り、『自分に素直な方』な様で・・・・」
「雨嘉さんまでそんな風に私のこと・・・・」
「事実ですわね」
「事実ですよね」
「チッキショーめぇ!!!」
「・・・・ごめんなさい、どうぞ続きを」
「はい」
とうとう梨璃ちゃんまで突っ込みを放棄した!?
「それで、緋坏さんと梨璃さんは、雨嘉さんの実力の程を知りたいというのですね?」
「え・・・いえ、別に、私、そんな偉そうなことは・・・・」
「どっちかというと、貴女に見せつけてやりたいと思っとります」
「紋瑪ちゃんはさぁ・・・・!」
半泣きになってる梨璃ちゃんは可愛いなぁ♪
「・・・・・どうして」
「先日の戦いの時、雨嘉さんは私の撃ち漏らした爆弾を、狙撃で弾き飛ばしてみせました」
「あれは・・・・・」
「それだけのことができるのに、さっきの一言程度で諦めるなんて、もったいないと思います。自信がないのは別に構いません。ンなもんは後から身につければ良い。少なくとも私は、貴女を高く評価してます」
「・・・・・・・」
「さて、ここで質問でーす。貴女を否定する
「─────────」
雨嘉さんが、ちらりと神琳さんを見る。
「・・・・・雨嘉さんのお好きなように」
「─────────私、は」
やっべぇ三角関係だコレぇ!?
神雨引き入れるだけの話だったはずなのに・・・・どうしてこうなった?
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第四話 レギオンー神琳VS雨嘉 前編ー
ここは、屋外訓練場。有事の際にはヒュージ迎撃にも使用される場所だ。
私は今、自身のレアスキル“天の秤目”で遠く離れた神琳の指す指先を狙っている。そこは丁度、神琳の眉間に当たる場所。
そこに向かって、私のCHARM“アステリオン”の総弾数10発分を寸分の狂いもなく命中させられたなら、この試練は合格。
「雨嘉ちゃん!あんなスカした女、コテンパンにノしちゃいなさい!!」
「ダメだよ危ないよぉぉ!?!?」
後ろでは、緋坏さんと一柳さんが、正反対のことを言い合っている。
あの二人、本当に仲良いなぁ・・・・
そう思いつつ、ここまでに至った経緯を思い出す。
―――――――――――†――――――――――
「わ・・・・私、は」
正直、嬉しかった。
緋坏さんが、私のことを私個人として、ちゃんと評価してくれていると分かって。
でも、緋坏さんが神琳のことを嫌っているのは・・・・少し、心が痛む。
神琳だってきっと、悪気があって言っているわけではないはず。
だから・・・・
「─────私、やってみる・・・・ううん、やらせて欲しい」
「え?それって・・・・」
「よっしゃ!それじゃあ─────」
「でも、一つだけ」
「ん?」
「神琳とも、仲良くして欲しい」
「はい、それは勿論」
「神琳だって、悪気があって──────え?」
今、緋坏さん、あっさり頷いた?
「同じレギオンの仲間になるんです。仲違いなんかしてたら、居辛いじゃないですかー」
「え・・・えぇ・・・?」
そんな理由で?
「ふふふ・・・♪確かに、大事なことですね。では、証明する方法は私にお任せいただけますか?」
―――――――――――†――――――――――
「私の姉も妹も、今もアイスランドに残ってヒュージと戦っているの。一人だけ故郷を離れるよう言い渡されて・・・・私は必要とされてないんだって思った」
神琳の提案でやって来たのがここ、屋外訓練場。
私と一緒に来たのは一柳さんと緋坏さん。
「ごめんなさい。百合ヶ丘は世界的にもトップクラスのガーデンよ。ただ、故郷を守りたいっていう気持ちは特別、っていうか・・・・」
「うん。それ、分かるよ」
一柳さんが笑顔で答える。と、その時。私の携帯が鳴る。神琳からだ。
神琳はここには居ない。そういえばさっき、一柳さんに何かお願いしてたみたいだけど、何だったのかな・・・・?
『雨嘉さん、こちらがわかる?』
「え・・・・あ、うん」
視界を巡らせ、神琳を探す。
居た。
遠く離れた廃ビルの上から電話をかけている。その隣にも誰かいる。誰だろう?
『そこから私をお撃ちなさい』
「・・・・え」
唐突に、神琳からとんでもない事を言われ、理解するのに少し間が空いた。
『訓練弾なら大丈夫よ』
「そんなわけ・・・」
『総弾数10発、きちんと狙えたら、私からはもう何も申しません』
それだけ告げて、神琳は通話を切ってしまった。
「・・・・どうして」
戸惑う私のところに、一柳さんがやってきて訪ねる。
「雨嘉さん、猫好きなの?」
「え?う・・・うん」
なんで今、そんなことを・・・・?と思っていると、一柳さんは、私の携帯に付いてる猫のストラップを指して言った。
「この子、可愛いね♪」
「!・・・・・うん」
この子に、気付いてくれた・・・!
私は、昔から感情表現が苦手で困るとすぐに黙ってしまう。そのせいか、いつも“怒っている”と勘違いされてきた。
このストラップは、そんな私の、精一杯のアピールだ。私だって、普通にみんなとおしゃべりがしたい。みたいな・・・
一柳さんは、そんな思いの籠ったこの子に、気付いてくれた。
そんな一柳さんとなら・・・ううん。
「これ、持っててくれる?」
「え・・・?うん」
梨璃に携帯を預けて、私は愛機“アステリオン”をシューティングモードに切り替えて構えると、レアスキルを発動させる。
「・・・・なるほどー、『天の秤目』ですか。指定した地点との相対距離をcm単位で把握できるレアスキル。遠く離れた場所のものでも、目測で寸分の狂いもなく把握できるそうです」
「へぇ・・・・!それで、目標は何?」
「神琳」
梨璃からの問いに静かに答え、遠く離れた神琳の指す指先を狙る。そこは丁度、神琳の眉間に当たる場所。
「へっ!?」
「おおっ!遂に反抗期突入だね♪」
「なんでそんな楽しそうなの!?」
「雨嘉ちゃん!あんなスカした女、コテンパンにノしちゃいなさい!!」
「ダメだよ危ないよぉぉ!?!?」
一呼吸、心を落ち着かせ・・・・引き金に、指をかける。
「これは、貴女達がくれたチャンス・・・・・だから私も貴女達を信じてみる・・・・!」
一瞬生じた静寂の瞬間、私は、引き金を引いた。
「・・・・始まりましたわね」
「始まっちゃいましたね・・・・!!どうなるんでしょうか・・・・」
「ま、ここまで来てしまったからには、成るようにしかならないでしょう」
「そうですけどぉぉ・・・・」
「ぜはー・・・ぜはー・・・お・・・お主ら、ここにおったのか・・・!」
「・・・・ミリアムさん?」
「あら、ちびっこ2号。どうかしまして?」
「に・・・2号?」
「私1号!?」
「で、何か御用でして?」
「用事があるから、こうやって走って来たんじゃろがい!」
「はぁ・・・・それはお疲れ様でした・・・・」
「用があるのでしたら、手短にお願いしますわ」
「・・・・・文句しか無いが、まぁ、ええわい。実はの───」
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第四話 レギオンー神琳VS雨嘉 後編ー
天葉様実装おめでとう!!!!!!
で、楠美ちゃんはまだですかー?
『雨嘉さんのレギオン加入試験に立ち会ってください!!』
そんな連絡がシルトである梨璃から届いたのが、つい先程。
どうやら、梨璃のレギオンメンバー集めはかなり順調に進んでいるようだ。
なんというか・・・・シュッツエンゲルとして喜ばしいような・・・・当初の予定と外れて残念なような・・・・
とにかく、頼まれたのだから務めを果たすべきね。
・・・・で、何処に行けば良いのかしら?
―――――――――――†――――――――――
二水さんと連絡を取り、どうにか場所を聞き出した私は、試験会場である屋外訓練場までやって来た。
「雨嘉さん、こちらがわかる?」
指定の場所には一人のリリィがいた。確か・・・郭神琳さん・・・だったかしら?二水さんの話によると、彼女も梨璃のレギオンのメンバーとなったらしいけど・・・・
「そこから私をお撃ちなさい」
なるほど、それがこの試験の内容なのね。
目を凝らして対岸の廃ビルを見れば、その屋上に三人の人影が見える。恐らく、あの中の一人が件の雨嘉さんなのだろう。
「訓練弾なら大丈夫よ。総弾数10発、きちんと狙えたら、私からはもう何も申しません」
それだけ告げて、神琳さんは電話を切ってしまった。
「大丈夫、貴女ならできるわ」
「・・・直に言ってあげたら如何?」
通話を切った後の携帯に向かって喋る彼女を見て、思わず話しかけてしまった。が、特に気にする様子もなく、神琳さんは私に返事を返した。
「お立ち会い御苦労様です、夢結様」
「お構い無く、梨璃に頼まれましたから」
必要最低限の挨拶を済ませ、私達は押し黙る。
長く続くかの如き沈黙。それを破ったのは、神琳さんの独り言だった。
「撃ちなさい雨嘉さん。撃って、貴女が一流のリリィであることを証明なさい」
それに応えるように、向こうから訓練弾が飛来してきた。直撃コースだ。
正確に、神琳さんを狙って放たれた弾丸は──────
「ふっ・・・・!」
神琳さんの振るったCHARMに弾かれ、彼女に命中することはなかった。
「雨嘉さんとの距離は約1㎞。アステリオンの弾丸の初速は毎秒1,800mだから、瞬きするくらいの時間はあります。狙いが正確なら、かわせます」
「なるほど、正確ね・・・・いつものCHARMは使わないのね」
今更だが、彼女は普段使用している自身のCHARM“
「対等の条件にしておきたいので」
・・・・対等、ね。そう想っているということは、神琳さんは今の雨嘉さんを下に見ている、という風に思えるわね。
なんて考えている間に、六発目の弾丸が弾かれた。
あと、四発。
と、その時だった。
「・・・!風が───」
海から強風が吹く。これでは弾が逸れてしまう。
私なら、ここは一度やり過ごして機会を伺うだろう。
しかし、雨嘉さんは撃った。
風速と方向を計算し、先の六発とまったく同じ場所に、見事七発目を命中させてみせた。
続けて八発目・・・・命中。九発目・・・・命中。
いよいよ最後の十発目となった。
ここで更に風向きが変わる。
それでも彼女は、諦めることも、やり過ごすこともなく、撃った。
瞬間、神琳さんが徐にアステリオンから媽祖聖札へと持ち替え、訓練弾を弾き返した。
まるで巻き戻しされるかのように、訓練弾は雨嘉さんのもとへと飛んで行き・・・・雨嘉さんは自身のCHARMで、それを防いでみせたのだった。
想定外の事態は起きたが・・・ともかく、彼女は見事、十発の訓練弾を当ててみせた。
「お見事でした、雨嘉さん。貴女が優秀なリリィであることは、これで誰の目にも明らかだわ」
雨嘉さんへ電話する神琳さん。その表情は、どこか憑き物でも落ちたかのように、すっきりしていた。
「ありがとうございました、夢結様」
「いえ。貴女も見事だったわ」
お礼を言う彼女に、世辞ではなく、心からの称賛を贈る。
「・・・・私、雨嘉さんが妬ましかったんです。エリートの家に産まれ、才能にも恵まれて・・・・・なのに本人は自信を持てなくて悩んでいるなんて・・・・何なのよこの子はって、腹も立ちませんか?」
「・・・・ずっと、腹を立てていたの?」
「はい。でもこれでスッキリしました」
・・・・・なんと、言うか
「私が言うのもなんだけど・・・・貴女もなかなか面倒な人ね」
「よく言われます♪」
そう言って、神琳さんはにこやかに笑ってみせたのだった。
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第四話 レギオンー神琳VS雨嘉 その後ー
雨嘉ちゃんは、見事十発の訓練弾を神琳さんに命中させてみせた。
神琳さんがラストの十発目を弾き返すなんて芸当をしてみせたのには驚いたが・・・・それを防いでみせた雨嘉ちゃんにもびっくりだ。
「・・・・・じゅっぱつ」
「やってのけたねぇ♪」
と、その時。梨璃ちゃんの持つ雨嘉ちゃんの携帯が鳴り出した。無論、相手は神琳さん。
『お見事でした。雨嘉さん』
「・・・・神琳」
『貴女が優秀なリリィであることは、これで誰の目にも明らかだわ』
彼女からの称賛の言葉に、私と梨璃ちゃんは喜びはしゃぐ。
「うーっ、やった~~♪」
「イエーイ!」
梨璃ちゃんと一緒に一頻りはしゃぎ終わったところで、雨嘉ちゃんが話しかけてきた。
「ありがとう、紋瑪、梨璃」
「私は背中を押しただけ。これは雨嘉ちゃんの頑張りの結果だよ」
「そうだよ!──────あれ?なんで私も?」
疑問符を浮かべる梨璃ちゃんに、雨嘉ちゃんは自分の携帯に付いてる猫のストラップを見せて言う。
「梨璃がこの子を褒めてくれて、私、貴女のレギオンに入りたいって思えたから・・・」
「それが、ありがとう?」
「うん」
「・・・・そっかー!」
そうして二人は笑いあっていた。
うん、可愛いなぁ二人とも♪
―――――――――――†――――――――――
「神琳・・・・今日は、ありがとう・・・・」
「・・・どういたしまして」
あれから書類手続きを終え、現在はお風呂の時間。
「・・・・・・・で、ごめん」
「?」
「聞いたんだ。神琳の故郷は、ヒュージに飲み込まれたって・・・」
そういえば・・・神琳さんの故郷“台湾”は陥落指定都市に認定されていたっけ・・・・
「・・・・ええ。私は故郷を知りません」
「無神経だった、私・・・・」
「そんなこと気にしてたの?ふふふ」
「・・・・」
「せっかく背中を預けられる仲間に出会えたんです。貴女に喜んでもらえたなら、私も嬉しいのよ?」
「うん。ここに来られて、良かった」
「・・・・・・・で、なんで私は二人に挟まれてんの?正直、肩身が狭いんだけど」
そう。
私は今、雨嘉ちゃんと神琳さんに両側をがっちりホールドされ、身動きが取れない状態にある。
事の発端は入浴前、神琳さんが「せっかく同じレギオンの仲間となったんですから、親睦を深めましょう♪」と言って迫ってきたこと。
「別に今じゃなくても・・・」という私を無視し、雨嘉ちゃんと共に左右から私をホールドすると、あっという間に私の衣服をひんむいてお風呂へ連行したのだ。
神琳さんの剥ぎ取りテクはとても鮮やかで、かの楓さんですら唖然としていたのが印象に残っている。
「─────って、ンなのどーでもいいのよ!?私、いろいろあって逆上せやすいから早めに上がりたいんだけど!?」
「まぁまぁ、良いじゃないですか、少しくらい♪」
「良くないのォ!!!雨嘉ちゃん助け───」
「・・・ごめん、神琳がどうしてもって言うから」
「味方がいないぃぃぃぃ・・・・!」
おのれ・・・・友情とは、かくも脆いものなのか・・・!
「あはは・・・とにかく、これであと二人だね♪」
「あぁ・・・・そっか。そうでしたねー」
梨璃ちゃんに言われ、思い返す。ここまでで集まったメンバーは、私、梨璃ちゃん、夢結様、二水ちゃん、楓さん、神琳さん、雨嘉ちゃん、の七人。
レギオン結成の最低人数は九人なので、あと二人だ。
さて、お次は誰を勧誘しようかなぁ?
・・・・・・なんか、誰か誘い忘れてる気がする。誰だっけ?
「──────────お主ら、誰か忘れておらんかの?」
「・・・・・・・・・あ」
私の背後に仁王立ちして話しかけてきたのは、ミリアムちゃん。
「そういえば・・・・なんか忘れてたわ」
「忘れてたんかい!!普通真っ先にワシのとこ来るじゃろがい!!!」
「えー?だって、ミリアムちゃんはCHARM、私はキャバリア、それぞれ専行が別じゃない」
「それはそうじゃが・・・・」
その時、梨璃ちゃんがとんでもないことを言ってしまう。
「CHARMもキャバリア?ていうのも、リリィの扱うものだよね?何が違うの?」
「違うのだッッッ!!!!!!!!!」
「わっ!?」
「いくら梨璃ちゃんでも言っていいことと悪いことってのがあってだね──────」
「あわわ(汗)」
「おう、こうなっては紋瑪は止まらぬぞー」
「あ・・・あはは(汗)」
「ふふふ♪楽しそうなレギオンになりそうですわね」
その後私は、逆上せるまでキャバリアについて語り続けたのだった。
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第五話
ミリアムさんも加入してくれて、残りあと一人!
・・・・・・と、なったのは良いけれど
「あと一人なのに・・・・なかなか見つからないね」
「そうですね・・・・・」
時が経つのは早いもので、四月も終わり、もう五月。なのに、あれから誰も来てくれなくなってしまった・・・・
「もう今の時期になると、実力派のリリィは大抵他のレギオンに入っているか、フリーでやっていくか、決めてますから・・・・」
「個別にあたっても迷惑がられるから机を用意したけど・・・・誰も見向きもしてくれないしね・・・・」
用意した机には、紋瑪ちゃんお手製のポスターが貼られている。
昔、弟が見ていたロボットアニメに、磁石で動くロボットがあったけれど、それっぽいものが描かれている。ヒュージっぽいものを相手に格闘技を決めている絵。煽り文は「次の相手はどいつだ!?」・・・・誘ってないよね?これ。
「“
「いないんじゃないかな・・・・」
「ですよね・・・・」
・・・・なんで紋瑪ちゃん、こんなの描いたんだろう。あと二水ちゃん、疑問に思うところ、たぶんそこじゃない。
―――――――――――†――――――――――
結局今日も誰も来ないまま、一日が終わろうとしている。
そろそろいい時間なので、仕方がないから机をしまおうとした、その時だった。
「おい!」
「わっ!?え!?・・・・あ、鶴紗さんどうかしま───」
「アイツが何処へ行ったか知らないか!?」
「へ?」
慌てた様子の鶴紗さんがやってきて、誰かさんの行方を聞いてきた。
「あのー・・・アイツって?」
二水ちゃんがおずおずと訪ねる。
「アイツは─────」
「紋瑪さん、のことですわよね・・・・?」
「楓さん・・・」
いつになく険しい表情で答えてくれたのは、楓さんだった。
今日一日、見かけなかったけれど、どこにいたんだろ・・・見かけなかったといえば、紋瑪ちゃんもそうだ。
「言われてみれば・・・・紋瑪さん、今日一日お見かけしませんでしたね。楓さんは、何かご存じなんですか?」
「ええ。紋瑪さんは今朝から、校外へ出掛けております。お帰りがいつになるのかは・・・・わからない、と仰ってましたわ」
「っ!!」
「そうなんですか・・・・だから、朝から紋瑪ちゃん、見なかったんですね・・・・鶴紗さん?」
「──────────アイツは、何処に行った?」
「行き先は聞いておりません。が、ここに貴女宛の手紙を預かってます」
「見せろ!」
ひったくるように楓さんから手紙を受け取った鶴紗さんは、一心不乱に読みふける。
「あの・・・楓さん。紋瑪ちゃんと鶴紗さんって、知り合いなんですか?」
「さぁ?私はただ、紋瑪さんに頼まれただけですから」
なんて話していたら、急に鶴紗さんが手紙を放り投げてどこかへ走り去ってしまった。
「え、鶴紗さん!?急にどうしたんだろう・・・・?」
「────────なるほど、そういうことでしたか」
「楓さん?」
「梨璃さんもお読みになった方が良いと思いますわ」
楓さんから、鶴紗さん宛ての手紙を受け取り、私はその内容を読み始めた。
─鋼傑ビーク─
古代の謎技術の結晶“超電磁蹄鉄”を動力に動くスーパーなロボット“鋼傑ビーク”と、世界征服を目論む悪の軍勢“アリマ群人”の戦いを描いたロボットアニメーション。
必殺技は、磁力で引き寄せた相手にチョークスリーパーを決める「ビークブレイカー」。相手は首がもげて死ぬ。
現在放送中の第二期は一期から五十年後のお話で、古代文明の守護獣“
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第五話
「本気ですか?」
「はい」
紋瑪は、理事長代行と史房に対して、ある提案をしていた。
「G.E.H.E.N.A.からの依頼・・・・こんなものに答えようだなんて・・・・正気とは思えません」
「正気でいられないようなことだからこそ、受けるんですよ」
「・・・・“上の連中”から、何か言われたのかね?」
少し、言い淀んだあと、紋瑪は口を開いた
「G.E.H.E.N.A.は、この実験で“リジェネレーター”持ちを使い潰すつもりです」
「なんですって!?」
「理事長代行、行かせてください。私には、
「むぅ・・・・」
悩みつつも、理事長代行が下した決断は────
この手紙を読んでいるってことは、私がG.E.H.E.N.A.からの実験参加依頼を受けたってことで、それを理事長代行が許可してくれたってことね。
本来なら貴女がこの実験に参加する予定だったんだけど、私が無理矢理横取りしちゃいました♪
これは、私なりの罪滅ぼし。
彼女の全てを奪い、貴女を殺そうとした、私なりの・・・・
別にあの時の事を、こんな程度で許してもらおうとは思ってなんかいないし、私の事は一生恨み続けてくれても構わない。
こんなものは、結局只の自己満足でしかないのだから。
うーん・・・・いざ、こういうのを書こうと思うと、なかなかむつかしいわね・・・・
とにかく私が言いたいのは、鶴紗ちゃんは気にしないで!ってこと。
私のことが心配だからって、追っかけてきちゃ、ダメだよ?
それじゃあ、さよなら。元気でね。
追伸.
もし、私が帰ってこなかったら、鶴紗ちゃん私の代わりに梨璃ちゃんのレギオンに入ってあげてください。
勝手とは思うけど、よろしくね。
「そんな・・・・こんなのって・・・・っ!」
「あ!?梨璃さん!」
手紙を読んだ私は、鶴紗さんを追いかける。
「鶴紗さん!」
「────────一柳」
校門から出て行こうとしている鶴紗さんは、見知らぬ赤い上着を着ていた。
「・・・・・・何か用?私、急いでいるんだけど」
「鶴紗さん、私も連れて行ってください!」
「・・・・・止めた方が良い。自分から死にに行くようなものだから」
「それでもっ!!」
「あら、シュッツエンゲルである私にすら、挨拶もしないで何処へ行くというの?」
「お姉様・・・・」
背後からお姉様と、その後ろから二水ちゃんもやって来た。たぶん二水ちゃんがお姉様を呼んできたんだろう。
「二水さんから話は聞いたわ・・・・紋瑪さんの手紙も」
「ならっ!」
「だからこそ、よ」
「・・・・え?」
「紋瑪さんは、貴女を巻き込みたくなかったから、黙って出て行ったはずよ」
「それは・・・・」
「鶴紗さんも、よ。貴女にこの手紙を遺したのは、貴女に来て欲しくないから。それくらい、貴女だって分かっているはずよ」
「──────────」
お姉様の正論に、私も鶴紗さんも押し黙る。
「───────────白井様の言うことは、分かります」
「鶴紗さん・・・?」
決意を込めた瞳で、鶴紗さんはお姉様を見据える。
「それでも私は、“彩芽”との約束を果たさなくちゃいけないんです」
「紋瑪ちゃんとの・・・・?」
と、その時。校門前にリムジンが停車し、中から白衣の男性が現れた。
「安藤の娘だな?」
「ああ・・・・あんたが迎えか?」
「そうだ・・・・後ろの連中は?」
「関係無い」
「そうか。ならば乗れ」
男性に促され、鶴紗さんはリムジンに乗る。
「一柳。悪いけど、あんたのレギオンには参加できそうにない。他の人を探すべきだと思う」
それだけ告げて、鶴紗さんを乗せたリムジンは行ってしまったのだった。
「梨璃・・・・」
「梨璃さん・・・」
私の肩にお姉様が手を乗せ、二水ちゃんが隣から心配そうに覗きこんでくる。
「───────────だからって」
「梨璃?」
「だからって、諦めきれないよ・・・・!紋瑪ちゃんのことも、鶴紗さんのことも!!」
だから、私──────
「私、二人を連れ戻しに行きます!!!」
─
■■月■■日
今日、新しい
なんでも先天性色素欠乏症である為、こっちに回されたのだとか・・・・連中は良いよな、贅沢に税金を使えるんだから。
しかし文句を言った処で金が増えるわけでもなければ、目の前の結果が覆るわけでもない。
端的に言えば、“コレ”は欠陥品だ。
今行っている適合検査の結果は“0%”
クソの役にも立たない生ゴミ、ということだ。
しかしこのまま“コレ”を生かしておけるほど、我々も裕福ではない。
可哀想だが、“コレ”には明日、適合手術を受けてもらう。
しかしこれだけ低い数値ならば、発狂することなく即死できるだろう。“コレ”にとっては、それが唯一の救いだな。此方としても、発狂してぶちまけた汚物の消毒をしなくて済む。
何はともあれ、全ては明日だ。
あーあ、”G.E.H.E.N.A.に入社できれば勝ち組“って噂は、ありゃウソだったみたいだなぁ・・・・・
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第五話
ここは横浜港のコンテナ置き場。
私達は新型CHARMの実証実験の為、現在ヒュージと交戦中だ─────私以外が。
「はぁ・・・・めんどくさ・・・・」
私はこうして、後方で
正直言って、こんなポンコツで戦おうとするのは自殺行為だと思う。
渡された試作品は、攻撃力こそ高いが、防御力は紙っペラも良いとこのロクでもない代物。そして相手はラージ級が複数体。
こんなん持たされてアレと戦えとか、死刑宣告もいいところじゃん。かったる・・・・・百合ヶ丘帰って鋼傑ビークの続きが視たい。
・・・・・・今更、どの面下げて帰るってのよ。
G.E.H.E.N.A.は私が、私だけが扱える
でも、フルに
そうなるって分かってて、それでも、私はここに来た。それなのに、試験放って帰れるわけがない。
「─────────仕方ないわね」
気付けば戦況はヒュージ側有利な状況に。今も一人のリリィが倒れ、そこへ向かってヒュージが攻撃を仕掛けようとしている。
私は与えられた試作CHARMを、そのヒュージへと投擲し、迎撃してみせれと、倒れたリリィの傍まで来る。
「あ・・・・あなた、今更何を─────」
「うっさい邪魔」
「あっ!?」
へばってるリリィを蹴り飛ばして選手交代。
さて・・・やってやろーじゃないのよ、クソッタレ。
「一体に付き、一撃。それ以上は不要よ」
そう宣言し、私は迫り来るヒュージの群れと相対する。
――――――――――♣♧♣―――――――――
私は今、何を見せられているのだろうか・・・・
今回の実証実験に同行してきた彼女は、同じリリィなのか疑いたくなる程やる気を感じられなかった。
実際、先程まで彼女は後方で何もせず、ただ見ていただけだった。
なのに───────
「なに・・・・なんなの、これ・・・・?本当に、私達と同じリリィなの・・・・?」
あの時と同じ言葉を、あの時とは真逆の意味を以て、呟いた。それほどまでに彼女の動きは、常軌を逸していた。
「大丈夫!?」
「あ・・・・先輩」
そこに、先輩がやってきて私を引っ張り起こしてくれた。
「先輩、あのリリィは・・・」
「───────ハウンド・グリント」
「!?それって・・・・」
ハウンド・グリント
かつてG.E.H.E.N.A.にあったと言われている、狂化リリィ専門の懲罰部隊。
狂化リリィが完全にヒュージ化する前に処理できるだけの技量を持った、強化リリィの集団だったのだが、数年前に部隊長が消息を絶った為に解散したと聞いていたけれど・・・・
「彼女、が・・・・」
「中でも、“ムニン”というコードネームを持ったリリィは、その異様な迄に白い肌と髪から別名『神の使い』とも、呼ばれたそうよ」
「異様な迄に白い肌と髪・・・・まさか」
彼女の方向を見た時、既にラージ級ヒュージは全滅していた。
山と積まれたヒュージの死骸の頂上で、彼女は少し眠そうにあくびをしている。
表情一つ変えてない彼女に、背筋が凍りついた・・・・・
─
■■月■■日
あの欠陥品・・・・適合手術に成功しやがった!
しかもここに来た当初よりも知識レベルが格段に上がってやがる・・・・まさか、主任の探してた“適合者”って奴か?
今だって、どんどん知識を会得していってる。その内追い付かれかねんぞ・・・・
だが、精神の方はまだまだガキだ。いや、だからこその成長速度なのか?
どちらにしても、こいつのお陰で俺は職を失わずに済んだっつーワケだな。
一時はどうなることかと思ったが・・・・こいつに感謝だな
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第五話
あと鶴紗ちゃんの新衣装のリボンかわいいよね。とても善き。
今回から新オリキャラが登場します。所謂一つのゲスト出演というやつです。
ここは、実証実験部隊が使用させて貰っている寄宿舎。その食堂。
先程まで戦闘していたリリィ達が各々好きな食事を取っている。
白飯に思い思いのおかず。パンに何かしら挟んでサンドイッチ。等々、色とりどりだ。
そして私はと言えば──────
ぢぅぅぅぅぅ~~~~・・・と、アルミパウチに入ったゼリー飲料を啜っている。これが私のご飯。
訳あって私は、固形物を食せない。その為、こういった流動食を与えられている。
不便は無い。早ければ10秒足らずで済ませられるのだから。
「とか言いつつ、『味気も素っ気も無ェ』って顔だな」
「───────こんなんに味気なんて求めてないから」
いつの間にか対面に人が座っていた。別に誰が来ようが私にとってはどうでもいいことだ。
相手が、コイツでなければ・・・
「なんであんた此処にいるのよ」
「なァに、見知った顔が湿気たツラで不味そうなモン啜ってっからちょっとチョッカイ出したくなったのさ」
「そういう意味じゃない」
「だろうな」
コイツ・・・・・
銀色に近い灰色の髪を三つ編みにして後ろで一つに纏めた、身長180cmの男みたいな女。着ているコートは昔と変わらず、革製の黒いベルトをふんだんにあしらった赤いフロックコートを、前を閉めずにラフに着こなしている。その下に見えるのはエレンスゲ女学園の制服だ。
彼女は昔の私の仲間、マリッツァ・テール。
ジャンクフードとキャラメルチョコサンデーしか食べない超の付く偏食家である。
と、そこへ件のキャラメルチョコサンデーを持った職員がやってきて、彼女の前に置いていった。
「─────またキャラメルチョコサンデー?ホンっト、好きね」
「やらねーぞ」
「いらない。てか、私食えないから」
「だったな・・・・・よし、これをやる」
差し出されたのは今私が飲み終わったアルミパウチと同じ容器。また飲めと?
「ウチの奴に料理得意なのが居てな・・・・そいつに作って貰った“キャラメルチョコサンデー味のミルクセーキ”だ」
「マジかよ・・・・・・ん?今なんて?」
「“キャラメルチョコサンデー味のミルクセーキ”」
「そこじゃない。その前」
「ウチの奴に料理得意なのが居て・・・・」
「え?ヘルヴォルに料理得意なメンバー!?嘘でしょ?」
「なら飲んでみろよ。腰抜かすなよ?」
いたずらっ子の笑みを浮かべて、テールが笑う。・・・・こういう時のテールは嘘を言わない。嘘は言わないが、騙しはする。
なので、恐る恐る渡されたパウチの中身を飲んでみる。
「・・・・・っ!?」
「・・・・・・ふ」
「・・・・・・・・マジかよ」
「だから言っただろ?」
はっきり言おう。めちゃくちゃ美味しいわこれ。一口飲んだら止まらなくなって、一瞬で全部飲んでしまったわ・・・・
「信じられない・・・・あのヘルヴォルが、こんな女子力の高そうなことを・・・・」
「ロジックエラー起こすなよ」
「ごめん既に起きてる」
「ポンコツ野郎め」
「うっさい。エレンスゲのヘルヴォルと言ったら、頭でっかちの尻すぼみ連中が徒党を組んで偉ぶってるだけの集団のはずよ」
「間違っちゃいねぇな」
「そんな奴らが・・・・こんな・・・・こんな美味しいもの・・・・・あり得ないわ・・・!」
「はっはっはっはァ!その顔!それが見たかったんだ!」
ホント、コイツはさぁ・・・・
「────────まぁ、こんなに美味しいもの貰えちゃったし、私を茶化した事については不問とするわ」
「へいへい、ありがたいこった」
「で?本題は何よ」
「何が?」
「惚けない。あんたの事だから、それだけでこんなところ来ないでしょ」
「まァな」
「目的は何?G.E.H.E.N.A.の連中は、私達に何をさせたいの?」
「お前の知っている通り、だ」
「───────────────そう、やっぱり“
だろうとは思っていたけれど・・・・本当に縫砡の全容を知りたがっているなんて・・・・
「以前の時、痛い目を見たのを忘れたのかしら」
「喉元過ぎればなんとやら・・・・ってことだろ」
「アレは人類には扱えないわ。少なくとも、普通の人間には・・・」
「そうだな。
「──────────ん?」
ふと、周囲が騒がしくなってきた。何かあったのかな?
「なんだ?」
「なんだろね?」
どうやら寄宿舎の外にリムジンが停車しているらしい。そこから追加の人員が出てきた、とも。
気になるので、ちょっと覗いてみる。
「────────────え」
「ほう」
リムジンから降りてきたのは・・・・・
「あ!紋瑪ちゃん!!」
「・・・・・見つけた」
「嘘でしょ・・・・」
赤いコートを纏った、梨璃ちゃんと、鶴紗ちゃんだった。
「ほう・・・こりゃ、面白そうな展開だな」
「なんで楽しそうなのよ・・・・マジふぁっく」
「久しぶりに聞いたな、それ」
「ふぁっく」
マリッツァ・テール─MARIZA・TEAR
エレンスゲ女学園 序列0位『ヘルヴォル特別構成員』
使用CHARM
『改・第一世代近接型CHARM
『改・第一世代拳銃型CHARM
身長180cmの大柄なリリィ。
革製の黒いベルトをふんだんにあしらった赤いフロックコートを、前を閉めずにラフに着こなしている。
ジャンクフードとキャラメルチョコサンデーが大好物で毎日それしか食べていない。
『日ノ出町の惨劇』と呼ばれる戦闘において活躍した事から、“日ノ出町の英雄”と呼ばれている。
紋瑪と同じく“縫砡”の所有者。
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第五話
そして、ついに天葉様実装まで秒読み段階となりましたな!!!
つべの自己紹介動画、とても善きかな・・・(昇天)
私を見つけた梨璃ちゃんと鶴紗ちゃんは、真っ直ぐにこちらに向かって歩み寄って来る。
「帰ろう、紋瑪ちゃん!こんなところに居ちゃダメだよ!!」
「っ・・・・」
「─────────」
私の手を取って訴えてくる梨璃ちゃん。その後ろで鶴紗ちゃんが、私をじっ・・・と睨み付けてくる。
「・・・・ここじゃ、話しづらいから」
ここで注目の的になるのはダメだ。とりあえず私の部屋に二人を連れ込むことにした。
「・・・・ここなら、誰にも聞かれませんね。さて、梨璃ちゃん、鶴紗ちゃん。なんで態々警告したのに来ちゃったんですか?───────なんて、聞かなくても大体分かりますけれど、というか言ってましたね、さっき」
「私、紋瑪ちゃんを連れ戻しに来たんだ」
「そうですね、そう言ってましたもんね・・・・・」
真っ直ぐに此方を見詰めてくる梨璃ちゃんの眼差しから、顔を背けたくなる。けれど、言わなくちゃ。
「今すぐ百合ヶ丘に帰ってください。鶴紗ちゃんも」
「そんな・・・!?」
「────────言うと思った」
「言うに決まってます。特に鶴紗ちゃん。この実験は、貴女のようなリリィを対象に行う実証実験なんです。連中は、ここにいるリリィ全員を使い潰すつもりなんです。だから────」
「それなら、尚更紋瑪ちゃんだって危ないよ!」
「私なら平気です。全員を守りながらだって戦えます」
「そういうことじゃ─────」
「いい加減にしろっ!!!」
「っ!?」
「鶴紗さん・・・・?」
唐突に怒鳴った鶴紗ちゃんに、私と梨璃ちゃんは押し黙る。
「お前はまたそうやって、自分一人だけでやろうとして・・・・!!そのせいで
「────────今は、あの時とは、違うよ」
「何が違うっていうんだよ!!」
「あの・・・鶴紗さん、もうその辺で────」
と、その時。部屋の扉をノックする音が聞こえた。
入り口の方を見れば、テールの奴がドアにもたれ掛かっている。
「エキサイトしてるとこ悪いんだが・・・・時間だぜ」
「─────────分かった、行くわ」
「紋瑪ちゃん!」
「ああ、それと一つ。そこの二人も、追加メンバーとして正式に登録されたからな。一緒に来い」
ああ、やっぱりこうなった・・・・・まぁ、予想はしていたけれど、ね。
「・・・紋瑪ちゃん。私、頑張るから!」
「梨璃ちゃん・・・・」
それだけ言って、梨璃ちゃんは鶴紗ちゃんと一緒に行ってしまった。
「・・・・・フッ」
「なによ」
「なァに・・・・前にも似たようなやり取りがあったなァ、と思っただけさ」
「・・・・・・うっさい」
テールを一発殴って*1、私も梨璃ちゃん達の後を追う。
─
■■月■■日
本日付けでこの部署は廃止となった。
といっても解散するって訳じゃない。新しく、“ブーステッドスキル”の研究が追加されるのに合わせて、この部署を一新する事となったそうだ。
なんで態々一度廃止するのかっていうと、どうやら上の連中は適合者をリーダーに、保有者連中で戦闘部隊でも作ろうとしているようだ。
確かに保有者は、適合者に比べればアレの性能を十分の一も発揮できない。が、それでもそんじょそこらのリリィなんかよりも、かなり戦闘能力が高い。
実験に失敗した際の処理やら、施設の防衛。そういう事に、その部隊を使うつもりらしい。
部隊名は『ハウンド・グリント』
“閃光の猟犬”だと。何が閃光なのやら・・・・・
そうそう、その適合者のチビだが・・・・暇だからと話し相手になってやってたら、なんか懐かれた。
俺のことを『パパ』と呼んで、暇さえあれば俺の側にべったりだ。
あー、まったく・・・・・煩わしいったらありゃしねぇ・・・
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