ノリの良いスタンド使いの奇妙な幻想入り (仁堂六華)
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序章 目覚めるスタンド能力
①スタンド使い!空条 譲信 現る!!


もう、ジョジョが好きだから。
ただそれだけの想いでこの話を書くことに決めました。
知識には間違いなく自信ありありですが、ジョジョにしろ東方にしろ、万が一「うん?」と思うことがあれば、意見してくださると幸いです。



突然だが、俺が人生を幸せに生きる為に大切にしている事を教えようと思う。

 

全部で4つだ。4つある。

 

 

その1 毎日ちゃんと学校に通うこと

 

その2 “ジョジョの奇妙な冒険”を毎日20巻分は読むこと

 

その3 プラスマイナスゼロの普通の生活を心掛ける事

 

その4 特別な事や特殊な事には絶対に関わらない事

 

 

その4つだ。

特に、4番目はとても重要なことなんだ。

 

おっと、自己紹介が遅れて申し訳ない。

 

俺の名前は 空条(くうじょう) 譲信(じょうしん)

 

年齢17歳…自宅は◯◯県◯◯市◯◯町北部の住宅街にあり…結婚はしていない…というかまだ出来ない…仕事は学生なのでしておらず、町内の◯◯高校に通っていて、毎日遅くとも夜22:00までには帰宅する。

 

タバコはたまに吸う酒もたまに飲む程度…夜0:00には床につき、必ず5時間は睡眠をとるようにしている…寝る前にミルク飲んだりとかストレッチはしない…ほとんど朝から寝坊さ…疲労やストレスはまぁまぁ残るが、健康診断なんて受けなくても良いと言われるほど健康だ。

 

もうお気付きだと思うが姓がジョジョに登場するキャラクター…空条 承太郎のと同じなのだ。

そのせいか、親に勧められてジョジョを読んでからというもの…今ではすっかり虜になってしまった。

 

学校でも皆によく“ジョジョ”って呼ばれてしまうのは日常茶飯事。

おまけに不良やってるんで益々そう呼ばれちまうのよ。

一応、クラスの人気者で正義の意思もあるにはある。

精神力も相当強いと思うけど残念ながら…“黄金の精神”程立派な心は多分無いなぁ…。

 

で、何でそんな俺の自己紹介から始まってるのか?何で俺が主人公なのか?って疑問に思ってるだろぅ?

それはな、数週間前に俺の身にとんでもねぇ~ことが起こってしまった訳よ。

 

 

 

 

…………(数週間前)

 

 

譲信「モリ♪モリ♪モリ♪モリ♪杜王町レディオ~♪」

 

 

数週間前の朝6:00。

俺はいつも通りゴミを出しに収集場へ歌を歌いながら向かっていた。

その日は生ゴミを出しに行っていたので少し気分的によろしくなかった訳だ。

 

で、ちょっとだけ巫山戯てこうなったら良いな~ってノリでこう言った訳よ。

 

 

譲信「キラークイーン!第一の爆弾!ゴミ袋を爆弾に変えた!キラークイーンは既にゴミ袋に触れている……点火ァ!」

 

 

で、お決まりの親指で第一の爆弾のスイッチを入れる素振りをしてみたんだ。

そしたらな…

 

 

カチッ……………ボゴォォン!!

 

 

譲信「…………え!?」

 

 

何と、突然手に持っていたゴミ袋が爆発して木っ端微塵に吹っ飛んでしまったんだよ。

いきなり何だぁ!?と思ってると隣に何者かの気配を感じてさ、驚いてその方向を見るとよ……

 

 

譲信「嘘だろ!?…お前は………キラークイーン!?」

 

 

何とまぁ、驚いたことにジョジョの第4部のラスボスとして出てくる吉良吉影のスタンド…“殺しの女王(キラークイーン)”がそこに立っていたんだよ…。

 

しかも、俺が命令してみればその通りに色々動くし、完全に俺のスタンドになっちまってるみたいだったんだよ…。

ま、俺はバカだから疑問に思うよりも憧れのスタンド使いになれた事が嬉しくて、調子に乗ってキラークイーンと一緒にジョジョ立ちしてたら近所のおばさんに見られて…その日は赤っ恥のコキッ恥をかいた訳だ。

 

で、それから二日して分かった事だが、俺のキラークイーンは原作同様、他人には見えないしある程度の薄い壁は突き抜けられるといったスタンドルールがしっかり適用されていた。

 

いやぁ~…もう堪らんよ!!キラークイーンはカッケェし強ぇし、能力も便利なんだよ!!

出てくるゴミを次々と爆破させて処分すれば捨てる手間が省けるからな!

あ、ちなみに人にはこの事言ってないし、手の綺麗な女性も殺してませんよ?えぇ本当に。

 

そしてキラークイーン発現から4日後の事だ。

家で食器の片付けをしていたらよ、うっかり皿を手から滑らせて落っことしそうになっちまったんだ。

でさ、その時に何となく…そう本当に何となくこれもまたノリでこう言った訳よ。

 

 

譲信「あ…ヤベェ!ザ・ワールドォ!時よ止まれぇい!」

 

 

俺はジョジョにハマり過ぎたせいで、日常的に色々セリフを使ってしまうんだよ。

そしたらな…

 

 

ドォーーーーーーーーーーン!!

 

 

………ハイ。本当に時が止まりました。

で、気になって隣を見ます。

そうしましたらば…

 

 

譲信「……………マジで?」

 

 

えぇ…案の定…“世界(ザ・ワールド)”さんが佇んでいました。

ハハ…もう笑うしかねぇ…。

俺はDIO様のスタンドまで発現しちまったよ。

スタンドは一人一体までというルールは何処に行ったんだぁ?

 

等と考えつつ、頭の中でイメージするとその通りにザ・ワールドは止まった時の中を動き、落下途中の皿を掴んで見せた。

 

 

譲信「えーと………時は動き出す………で良いのか?」

 

 

すると、時は正常に動き始めた。

俺はバカだからさ、この時も疑問に思うよりもDIO様のスタンドを発現させられた喜びでテンションマックスになりつい叫んじまった。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYYYYY!!我が「知」と「力」のもとにひれ伏すがいいぞッ!」

 

 

母「うるさい!このオタクヤンキー!!」

 

 

そのせいで、キレた母親に尻を蹴られちまったがよぉ。

 

 

そしてその日の晩。

とあることが気になった俺は自分の部屋で試してみることにした。

 

 

譲信「……よし……行くぞ……!“星の白金(スタープラチナ)”!!」

 

 

ドドドドドド!

 

 

……えぇ。出たんですよ…スタープラチナが…最強のスタンドが出たんですよ。

他にも色々試してみた結果以下の事が分かりましたよ。

 

“俺は…全てのスタンドを扱う事ができる!”

 

はい出たチート。何故か特殊な事や特別な事には首を突っ込みたくなかった俺に、とんでもねぇチート能力が発現しちまった…。

 

まぁ…でも…スタンドだから…オッケー!!

 

てことでその日の夜はグッスリと眠りにつけました。

でも…考えてみてくれ。他にスタンド使いだとか超能力者だとか、そんな漫画みたいなキャラがいるような世界で生きてる訳でも無いのにさ、全部のスタンドが使えた所で一体何の意味があるんだよ?

 

そう、ぶっちゃけ俺は力を持て余していた。

“オーバーヘブン”も発現できて、燃費もかなり良いという上方修正も入っていたが、精々宿題を“真実を上書き”して楽して終わらす程度にしか使えてないのだよ。

 

しかし、そんな俺の元に面白そうな話が転がり込んで来やがった。

 

何でも、隣町の山奥で神隠しが相次いで起こっている…との事だ。

まさか…新手のスタンド使いか!?という期待を込めて、学校をサボり俺は電車に乗って隣町へ向かった。

そうして、今現在に至る。

 

 

 

 

……(現在)

 

 

譲信「フゥ…ハァ………ふぃ~~~!…爺さん婆さん達の話だと、この辺に古びた神社があって…その付近が神隠しの起こる場所らしいが……一体何処にあんだよぉ?」

 

 

譲信は現在、町の電気屋前にたむろしていた爺さんや婆さんから聞いた話を元に、古びた神社を山奥でひたすら探し続け、彷徨っていた。

 

早朝から探し始めてかれこれ数時間。

もう日が真上まで昇ってくるような時間帯だった。

今は9月だが、まだ夏の残暑が残り、汗をかなり掻いていた。

流石に体力に自身のある譲信にも、そろそろ限界は近付いていた。

 

 

譲信「こんな時は……エコーズACT2!!」

 

 

自分だけではもはや無理だと判断した譲信は、スタンドを発現させた。

エコーズACT2。

ジョジョ第4部に登場する広瀬 康一のスタンドだ。

尻尾の先に取り付けた文字を物や相手に投げつけたりする事ができ、その文字の効果音によって様々な効果が発動するという能力を持つ。

例えば、“ドヒュウウ”という風の吹く文字の場合、その文字からは、本当に風が吹いたりするのである。

 

しかし譲信はその能力を使う為にエコーズACT2を出した訳では無い。

譲信がエコーズACT2を出した理由はその射程距離にあった。

 

 

譲信「エコーズACT2…射程距離50m!!神社を探すには充分だぜ!!行けっ!!」

 

 

そう。エコーズは遠くまで行けるスタンドなのだ。

視界の限られている譲信にとって、50m先まで行けるエコーズACT2はとても頼りになるスタンドだ。

 

 

譲信「よし…行くか!」

 

 

そして、譲信は再び歩き始める。

 

それから数分。

エコーズACT2の活躍により、無事に譲信はその話に出てきたのと同じと思える古びた神社にまで辿り着く事が出来た。

 

 

譲信「やっとこさ……やっとこさ辿り着く事が出来たぜ!!…お疲れ様エコーズもう戻っていいぜ」

 

 

譲信がエコーズACT2の頭を撫でると、そのままエコーズACT2はスゥ…と消えていった。

 

 

譲信「さぁてと…スタンドでもいないか探してみるとしますか~」

 

 

もしかしたら自分以外のスタンド使いがいるかもしれない…と淡い期待を胸に早速譲信は神社を探索し始める。

とはいえ、それ程広い神社でも無いので探すのにそれ程時間もかかりはしない。

 

 

譲信「にしても神隠しかぁ~…もしガチにあんなら遭ってみてぇかもなぁ~…な~てな!ハハ」

 

 

独り言をブツブツ呟きながら進む譲信。

そしてしばらくして、譲信は何やら奇妙な物を見つけた。

 

 

譲信「こいつぁ………何だぁ!?」

 

 

空間にパックリと開いた隙間。

そしてそこからは無数の目が覗いており、滅茶苦茶に気持ち悪かった。

 

 

譲信「スタンド………には見えねぇなぁ…こんなスタンド無ぇもんなぁ~」

 

 

果たして触ろうか攻撃してみようかどうしようか悩んでいた譲信は、不意に一つの事を思い出す。

神隠し関連でネットで調べ物をしていた時に、掲示板に書かれていたとある内容を思い出していた。

 

 

譲信「無数の目玉…神隠しに遭いかけたという奴の書き込みにあったなぁ…そーいや……まさか…な」

 

 

ネットの掲示板に、無数の目玉を見たと言う書き込みがあった。

それとどうもこの謎の空間のような物は酷似している。

まさか隠しとはガチの話なのか!?と譲信はその目玉の空間を観察する。

 

 

譲信「ただ見るのでは無く、よく観る。ただ聞くのでは無く、よく聴く……だったよな。OK…よ~っく観察しねぇ~となぁ~…………ん?」

 

 

観察することに注意を取られていた譲信。

不意に足元に違和感を感じ、気になって視線を落としてみる。

すると、何と自分の足元にも目玉だらけの空間がいつの間にか開いていた。

 

 

譲信「オイオイオイオイ…まてまてまてまて!」

 

 

すぐに逃げだそうとするがしかし、もはや手遅れ。

譲信はその空間に吸いこまれるかのように落下していった。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!?」

 

 

譲信が落下していった後、その空間は独りでに閉じた。

 

 

???「今誰かいたような気がしたけれど………気のせいかしらね……?」

 

 

そして、何者かの影がその場所に現れたが、すぐに何処かへと消えていってしまった…。

辺りには風の吹く音と、木々のこすれ合う音しか聞こえなくなった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「いちち………ひ、酷い目にあった……やれやれだぜ…!」

 

 

それからすぐして、譲信は目玉だらけの空間から不意に何処かへ出てきたと思ったら、いきなり森の中に放っぽられ、尾てい骨を打ち、そのせいで痛むお尻をさすっていた。

 

 

譲信「えーっと…ここは…何処ぞの森に出ちまったみてぇだなぁ…くそぅ…ケータイも落としちまった」

 

 

何処に出てしまったのか、調べようにもスマホを落としてしまった為、現在地の確認をする事ができない。

 

 

譲信「とりあえず…歩くか。」

 

 

ガッカリはしたものの、すぐに気を取り直すと譲信は歩き始めた。

取り敢えず同じ方角へひたすら進めば何処かに出るだろうという考えである。

 

 

譲信「ったく………新手のスタンド攻撃か~?…にしては追撃がねぇよなぁ……おかしいなぁ…」

 

 

現状を全く把握できないまま、譲信は歩き続ける。

一応、いつ何者かに攻撃を仕掛けられても大丈夫なようにザ・ワールドを発現させている。

 

ザ・ワールド。

ジョジョ第3部のラスボスとして登場するDIOの持つスタンドであり、通常時のスタープラチナよりもパワーは上で、射程距離も10mと近距離パワー型にしては異常な性能を誇るスタンドだ。

スタンドは近距離型、遠距離型に別れ、近距離型は遠くに行けない分パワーに優れ、遠距離型はパワーこそ無いが代わりに遠くまで行けたり能力が優れていたりとする。

近距離型は精々本体から離れられる距離は2m位なのだが、そう考えるとザ・ワールドはまさに有り得ない程の性能なのだ。

おまけに、ザ・ワールドには『時を止める』という能力がある。

DIOが通常時は5秒。パワーアップした時は9秒も止めて見せた。

人によってはザ・ワールドが最強のスタンドだと意見が分かれたりする程だ。

 

しかし、この譲信は異常に精神力が強い。

スタンドとは精神が具現化したエネルギー。

つまり、精神力が強ければ強い程、スタンドは強力になる。

そのお陰か、譲信のザ・ワールドは何と最大15秒まで時を止められる。

おまけに、まだまだパワーを感じるらしく、どうやらまだ成長段階にあるらしい。

 

ちなみにだが、ザ・ワールドは3部と7部のSBRでの二種類が存在する。

違いを簡単に説明するなら3部ムキムキ、7部細マッチョである。

その為か譲信はその二種類のザ・ワールドを使い分ける事ができるが、どう見ても3部のザ・ワールドの方が絶対に強い為、7部は舐めプする時ぐらいにしか使わないのであろう。

ちなみに7部ザ・ワールドは5秒しか止められない。そこは原作と同じようである。

 

 

譲信「おっとと……ようやく森を抜けたみてぇだな」

 

 

そうこうしている内に、譲信は森を抜ける。

森を抜けると草原が続いており、さらに真っ直ぐに進み続けると、何やら花畑が見えてきた。

 

 

譲信「やれやれ…変わった場所に出ちまったな……ここは…ひまわり畑かぁ?」

 

 

そこに近付いて行くにつれ、数千はあるように見える程のひまわり畑が見えてきた。

そのあまりの迫力に、思わず譲信は圧倒される。

 

 

譲信「う~っわ!!スッゲぇ!!これ全部ひまわりなのかよ!?うわー…写真撮りてぇなぁ…!」

 

 

早く町に着きたい気持ちもあったが、少しは寄り道して良いかとそのひまわり畑の中を見て回ることにした。

人の手が加わっているようで、どのひまわりも綺麗に真っ直ぐ咲いていた。

 

 

譲信「なんつーか花に興味ねぇのに惹かれちまうなぁ~こりゃ」

 

 

その時、何処からドチャリ…という音が聞こえる。

 

 

譲信「ん?何だ?気になるんですけどぉ~?」

 

 

譲信は音のした方向へ向かって小走りで向かう。

もしかしたら、誰かが…このひまわり畑の管理人が作業でもしているのかもしれないと。

道でも教えて貰えたらなぁ~と思いながらそこへ向かう。

 

するとどうだろう、しばらく進んだ所に一人の女性が立っていた。

 

 

譲信「お、ラッキー♪おーい!そこのあんたー!!」

 

 

譲信の存在に気付いた女性は、ゆっくりと譲信の方へ振り向く。

その時、譲信の背筋にゾクリと寒気が走った。

 

異様だった。

その女性の右手に傘が握られていたのたが、何やら赤い液体と物体がこびりつき、赤い雫が滴っている。

そして、その女性の頬にも赤い液体がこびりついていた。

 

 

譲信「…!!」

 

 

何か…ヤバイ!

と、譲信は咄嗟にザ・ワールドを自身の前に移動させ構えさせる。

その譲信の咄嗟の判断は、大正解だった。

 

 

グワァァァン!!

 

 

譲信「何ィィィィィィ!?」

 

 

いきなり、有り得ない速度でその女性は譲信に飛びかかり、譲信を傘で殴りつけようとしたが、譲信はザ・ワールドを前に出していたお陰で、咄嗟の事だったがその一撃を防ぐ事ができた。

 

 

???「あら……何かに止められたわね……」

 

 

その女性は、無事だった譲信を見ながら忌々しそうに呟いた。

 

 

譲信「いやいや!!止められたわね…じゃぁねぇっすよぉ!?あんた何なんすかいきなり!?」

 

 

いきなり、攻撃を仕掛けられて譲信は混乱していた。

何か俺悪いことしたっけ?と疑問だった。

 

 

???「私はね、今大切な花を傷つけられてムシャクシャしてるのよ…あんたも()()らの仲間かしら?…まぁ違ってもここに来た時点で生かして帰すつもりは……無いけどね!」

 

 

言うなり、女性は素早く動き、傘を連続で譲信に向けて振るう。

 

 

譲信「うわぁぁ!?ちょっ!ザ・ワールド!!」

 

 

ザ・ワールド「フン!フン!フン!」

 

 

しかし、ザ・ワールドが難なくその全ての攻撃を弾いていく。

信じられない速度の女性だったが、まだまだザ・ワールドなら余裕で対処できた。

 

 

???「っ!!……見えない何かに防がれてるわね…!」

 

 

譲信「彼奴らって何だよ!?つーか落ち着けよぉ!!素数を数えて落ち着くんだよ!!」

 

 

堪らず譲信は女性に落ち着け!と声をかけるが、女性は譲信の言葉を聞いている素振りは無い。

というか…素数を数えろとは…一言余計だった気もするが…。

 

 

???「面倒臭いわね……人間の分際で私に手間をかけさせるなんて!」

 

 

頭に大分血が上っているのか、目をギラつかせながら女性は、今度は拳で直接殴りかかり始めた。

見えない壁のような何かごと、譲信を叩き潰そうと、拳のラッシュを仕掛ける。

 

 

そう…あろう事かジョジョ好きに、ラッシュを仕掛けてしまったのである。

譲信の中で…何かのスイッチが入ってしまった。

 

 

譲信「突き(ラッシュ)の速さ比べか?良いだろう!付き合ってやろうじゃぁないか!」

 

 

譲信&ザ・ワールド「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

 

???「何なのコイツ!?……くっ!!防がれる所か今度は…攻撃され始めて……!?」

 

 

ラッシュの速さ比べを制したのは…ザ・ワールドだった。

ザ・ワールドの右拳が、女性の腹部にヒットし女性は軽く後ろによろけてしまった。

 

 

???「あり…えない…この私が!?」

 

 

譲信「ノロい…ノロい…ザ・ワールドは最強のスタンドだ…スピードどパワーとてお前よりも上なのだ…!(やべぇ…ザ・ワールド強ぇ…!)」

 

 

完全に譲信は調子に乗り始めていた。

目の前のスーパーガールが何者かはともかく、ある程度はザ・ワールドと張り合える力の持ち主という事は理解できていた。

それに、まだ譲信とザ・ワールドは全く全力なんて出していない。

パワーもスピードもまだまだ本気ではないのだ。

まだまだ遊びの範囲内だった。

…というよりも、人に向けてザ・ワールドを本気で使うのには躊躇いがあった訳だが…。

 

 

???「フフフフ……フフフフフフ…!」

 

 

その時、突如女性は不気味に笑い出し始めた。

やっぱりヤベェ女なのか?と思わず譲信は引き気味になる。

 

 

譲信(えぇ……何が面白いんだよぉ……?)

 

 

???「久しぶりに楽しめそうなのが来たわね……フフフ♪…私ね……強い奴と戦うと…興奮しちゃうのよ!!」 

 

 

女性は、今度は不気味な笑顔で譲信に攻撃を仕掛ける。

先程よりも、明らかにパワーとスピードが増していたが、すぐにザ・ワールドはそのパワーとスピードにも対応してみせた。

まだまだこのスーパーガールはやる気満々だと理解した譲信は、引き続き調子に乗ることにした。

 

 

譲信「………なるほど…面白い!もう少しだけ遊んでやるとしよう…ザ・ワールド!」

 

 

ザ・ワールド「無駄無駄無駄ァ!!

 

 

譲信はザ・ワールドと女性の位置から7m程離れてから、ザ・ワールドを動かし始めた。

 

女性の攻撃を躱し、飛び上がり、手刀を振りかざす。

傘で防御態勢を取られたが、関係ない。

そのままパワーで無理矢理傘を手刀で切断し、もう片方の腕でパンチを繰り出す。

 

 

???「ぐっ!!」

 

 

これもガードされたが、問題はない。

ちゃんと反応されるように敢えてギリギリの速度で調節している為だ。

しかし、パワーはパワー。

ガードの上からでも結構なダメージはあったようだった。

 

 

譲信(なるほどなぁ~やっぱ俺の精神力の強さの影響をモロに受けてんなぁ~…原作よりもどうやらパワーは遥かに上みてぇだぞ)

 

 

訳あって精神力が異常に強い譲信。

その為か、僅か数秒の攻防でも分かるほどの原作との強さの違いが見てとれた。

 

 

???「やるじゃない……!!なら!…これはどうかしら?…フラワー…」

 

 

女性は何かを仕掛けようとしたが、そうはさせまいと譲信は女性よりも早くに、能力を発動させた。

 

 

譲信「世界(ザ・ワールド)!!止まれぃ時よ!!」

 

 

ドォーーーーーーーーーーン!!

 

 

世界の時が、停止した。

 

 

譲信「フン…!もう分かった…満足だ…ここらで遊びのサービス時間は終わりだ……“15秒前”!」

 

 

譲信は止まった時の中を移動し、女性とザ・ワールドのすぐ傍まで近付く。

 

 

譲信「尤も…貴様には“15秒”も使ってはやらんがな…ザ・ワールド!!やれぃ!!」

 

 

ザ・ワールド「無駄無駄ァ!!

 

 

譲信の命令を受けて、ザ・ワールドは女性の腹部にパンチ一発、首の裏に手刀を、顎に掠るようにパンチを当てる。

 

 

譲信「峰打ちだ…5秒経過!まだ余裕はあるが…“時は動き出す”!」

 

 

譲信が言い終わると同時に、時は動き始めた。

直後、女性は腹部と首の裏に衝撃を受け、脳も激しく揺らされた。

 

 

???「何………が……!!」

 

 

そして、女性はあっという間に意識を失ってしまった。

 

 

譲信「フフフ…ハハハハ!!やはり我が“世界(ザ・ワールド)”は最強のスタンド………って言ってる場合じゃねぇーよ!!やっべぇ!!やっちまったぁ!!」

 

 

全てが終わって、ようやく譲信は調子に乗ってやってしまったことを後悔し始めた。

よくよく考えれば、人様の土地に勝手に入り込んで、管理人を気絶させてしまった訳だ。

どう考えても、譲信に非がある。

 

 

譲信「やべぇ……どうするべ…………起きたら謝るしかねぇな…」

 

 

まだ名前も知らない。

周りをよく見ると、女性の家らしき家が建っていたので、取り敢えず中までその女性を運ぼうと、ザ・ワールドでその女性を持ち上げた。

 

 

譲信「もう…訳が分かんねぇわ……変な空間に…スーパーガールに…どうなってんだよ……?」

 

 

何とも奇妙な冒険が………あぁそういえば自分、スタンド使いだから奇妙な事に巻き込まれて当然か…と独り言納得しながら、譲信は女性が目覚めるまで待ち続けるのであった……

 

            

 

               TO BE CONTINUE……

 



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“第一部 幻想郷”
②空条 譲信、幻想郷を知る


今回も安定のジョジョネタを幾つかぶち込みました。
あなたは幾つ気付けるのか?
そして、東方でも有名な方々も何人かは登場します。
さぁ気付けますか?
と、いう楽しみ方もある内容になっております。



よう、俺だ…空条 譲信だ。

俺は今現在、目を覚ましたばかりのスーパーガールに向かって土下座している真っ最中だぜ。

 

 

譲信「調子に乗って…無茶苦茶やって…本当にすみませんでしたぁぁぁぁ!!」

 

 

あれから俺は勝手にこの家に入らせて貰い、スーパーガールが目を覚ますまでずっと正座したままの状態だった。

やっぱ総合的に見て俺の方に非があったからなぁ…当然、スーパーガールの傷は一応、“クレイジーダイヤモンド”で治しておいたから問題は無ぇ筈だ。

 

ちなみに、近くに2,3人のおっさんが血塗れの死にかけ状態で何故かぶっ倒れていた為、一応そのおっさん達もクレイジーダイヤモンドで治しておいてやった。

治るや否や、礼を言わずに逃げられちまったけどなぁ…。

で、今現在に至るんだが…

 

 

 

 

???「………思い出したわ…あなた、よくも好き放題やってくれたわねぇ…」

 

 

女性は目覚めてから一瞬、記憶が曖昧であったみたいだったが、すぐに全部思い出すと、光の無い視線と冷えた声を譲信に浴びせる。

 

 

譲信(マズい……やっぱりご立腹じゃぁねーか…!)

 

 

初見で容赦なく、人外染みた身体能力で襲いかかってくる鬼畜女がご立腹なのだ。

一手ミスるだけで、ヤバイことになると譲信は冷や汗を掻いていた。

 

 

???「…はぁー……。でもまぁ、今回は冷静さを欠いた私にも非があったわね…………悪かったわ巻き込んで」

 

 

ところが、予想に反して女性は軽く溜息をついた後、すぐに雰囲気が落ち着いた物にコロリと変わってしまった。

あまりの予想外な展開に思わず譲人は呆気に取られる。

 

 

???「…何よ?そんなバカみたいな顔して」

 

 

譲人「え?あ…いや……マジでもう許してくれるんすか?」

 

 

???「言ったでしょう?私にも非があったから今回は、お互い様よ」

 

 

譲信「ははぁ…」

 

 

気持ち悪いくらいにあっさりと許して貰えた事で、逆に何かあるんじゃぁないか…と譲信は疑心暗鬼になってしまう。

 

 

???「それに…あなた気に入ったわぁ…私を負かす事ができる奴なんて滅多にいないんだもの………あなた名前は?」

 

 

譲信「あぁ、空条 譲信て言います。皆からはジョジョって呼ばれてるっす。ヨロシクっす!えーと…あなたの名前は?」

 

 

幽香「風見 幽香よ。譲信、あなたは特別に幽香って呼んでも良いわ。よろしくね」

 

 

そう言って、幽香は握手の手を差し伸べてきたので、譲信はしっかりと握り返した。

ところが、幽香は譲信の手を握ったまま一向に離そうとしない。

 

 

譲信「あのォー…離してくんない?幽香さん……?」

 

 

しかし、幽香は譲信の言葉なんて耳に入ってない様子だった。

 

 

幽香「やっぱり思った通りだわ…譲信、あなた…『外来人』ね?」

 

 

譲信「いえ、日本人です。それより離してくんない?」

 

 

外来人=外国人だと思った譲信は、短く返事を返した後、再度離してくれと頼んでみる。

だが幽香は一向に手を離す気配が無かった。

 

 

幽香「見た所…自分の状況をイマイチ理解できてないようね?」

 

 

譲信「まぁ道が分からないから、聞こうと思ってここに立ち寄った訳だからなぁ…離してくんない?」

 

 

幽香「……本当に理解できてないわね…」

 

 

幽香はやれやれ…といった感じに首を横に振る。

対して譲信は離してくれという思いで一杯だった。

 

 

幽香「まず私達の今いるこの世界は…あなたの住んでいた世界とはまた別の世界よ。ここは、『幻想郷』と呼ばれる忘れ去られた者達の楽園よ」

 

 

譲信「………何だって?」

 

 

幻想郷?別世界?いきなり突拍子も無いことを言われて、譲信は理解に追いついていなかった。

だが、幽香の話はそれでも続いていく。

 

 

 

 

曰く、

 

 

ここは譲信の元いた世界とは隔離されたまた別の世界らしい。

 

 

この地は“幻想郷”と呼ばれ、忘れ去られた者達が行き着く楽園らしい。

 

 

この地には、人間を始め、妖怪や神やら何やら本の中でしかお目にかからることが無いような存在まで、普通に暮らしているらしい。

 

 

“幻想郷”は、大妖怪であり、賢者である八雲 紫によって管理されているらしい。

 

 

そして、かく言う幽香もまた妖怪と呼ばれる類らしかった。

 

 

 

 

譲信「はぁ!?そんな嘘が通じるとでも……、あぁ…確かにスタンド使いでも無けりゃあのパワーの説明なんて…付かねぇよなぁ~…」

 

 

人間では到底出せない身体能力、しかしスタンドの影なんて見えなかったし、幽香自身スタンドが見えていないようであった。

スタンドはスタンド使いでしか見ることも触ることもできない。

であるならば、幽香が妖怪だというのも、真実味があった。

 

 

幽香「理解したかしら?あなたはどういう事情か知らないけど…いつの間にか幻想入りしてきたという訳よ」

 

 

譲信「なるほど……これが…神隠しの正体……!!」

 

 

神隠しの正体…どのようにして人は消え、消え去った人は何処へ向かうのか、その答えを譲信は身をもってして見つける事ができた。

 

 

譲信「グレート…!まさに、スタンドも月までぶっ飛ぶ衝撃だぜ!」

 

 

軽い気持ちで神隠しの調査をしていたら、まさかの別世界と来た。

譲信はこれもスタンド使いであるからこそ、奇妙な展開になっているんだな、と一人納得していた。

 

 

幽香「まぁ座りなさいよ。お茶でもいかが?」

 

 

そんな時、幽香からお茶の誘いを受けた譲信は、喉も渇いていた為、お言葉に甘えることにした。

 

 

譲信「じゃあ遠慮なく…馳走になるぜ!」

 

 

そう言って譲信は、机一つ挟み幽香と向かい合って座った。

 

 

幽香「さてと、今度はあなたの事を教えて貰おうかしらね?あなた何か不思議な力を持っているでしょう?戦ったから分かるのよ。何か目に見えない…人型のような何かがあなたの側にいるという事を…ね」

 

 

譲信「ゴホッ!?ゴホッ!?」

 

 

幽香に尋ねられて、思わず譲信は咳き込んでしまった。

まさか、あれだけの戦闘で見えもしないのに、人型である事まで見抜かれてしまったとは…と。

流石にこれはもう隠し通すのには無理がある…と判断した譲信は、腹を決めて自身の持つスタンド能力について話すことにした。

 

 

譲信「あ~悪ィ。ちょいと驚いただけだぜ。まぁあんたの見立て通り、人には見えない人型の何かが俺の側にいるってぇのは正解だよ。それが俺の能力…側に現れて立つところからコイツは『幽波紋(スタンド)』と名付けられている。スタンドは俺の生命エネルギーが作り出すパワーある(ヴィジョン)なのさ。」

 

 

幽香「スタンド…ねぇ。初めて聞く名前ね」

 

 

譲信「スタンドとは…その人を守ってくれる守護霊のようなものであり…俺は例外だがひとりの人間に一体であり…スタンドを自由自在に操れる人間を“スタンド使い”と呼び、スタンドはスタンドでしか倒せない…それが、ルールだぜ」

 

 

他にも色々あるのだが、譲信としてはこれ以上は人に語りたくなかった。

ましてや、スタンドそれぞれが別々に持つ固有の能力については絶対に語りたくは無い。

他人に能力を知られてしまえばそれが弱点になる。スタンド使いにとって能力を知られるという事は死と同義なのだ。

 

 

幽香「成る程ね。“程度”の能力とはまた別の…異なった異能という訳ね。」

 

 

譲信「ん?“程度”の能力?そいつぁ何だぁ?」

 

 

ふと、幽香の口から零れた“程度”の能力。それは一体何なのか?気になった譲信は聞き返す。

 

 

幽香「あなたの世界に“スタンド”と呼ばれる能力があるように、この幻想郷にもまた能力の概念があるわ。この幻想郷ではその異能の力の事を“程度”の能力と呼ぶの。“程度”と言うのはそれしか出来ない…という皮肉が込められているわ。」

 

 

譲信「ははぁ~なるほどぉ…(ま、俺の世界じゃスタンド能力なんて漫画の中くらいしか無いんだけどなぁ…俺は例外だよ例外。)」

 

 

幽香「そして私もその“程度”と呼ばれる力を持っているのよ。私の能力は…“花を操る程度の能力”よ。だから私は花妖怪なんて呼ばれ方もするわね。もしかしたらあなたも“程度“の能力に目覚めるかもしれないわね」

 

 

譲信「程度…かぁ。スタンドとはまた違う訳だ…(いやいやいや…あんな怪力パワーの持ち主の能力が…“花を操る能力”だぁ!?どんなギャップだよ!!女の子らしい能力じゃぁねぇか…やべぇ……笑ったら殺されるぞ……!)」

 

 

譲信は、程度の能力の存在に大変驚いてはいたが、それよりも目の前のスーパーガールの持つギャップにツボり、笑いを耐えるのに必死だった。

笑ったら尻バッド所では無い、間違いなく殺される。

かなりハードな笑ってはいけないだった。

 

 

幽香「……何かイラッとするけれど…まぁ良いわ。それであなた…スタンド使いであるあなたは、これからどうするのかしら?」

 

 

さぁ?どうしたもんか…と少しの間、譲信は考えるがすぐにこれからの行動方針を立てる。

 

 

譲信「そうだなぁ……とりあえず元の世界に帰る方法でも捜しに行こうかな!」

 

 

幽香「そう…それなら博麗神社へ向かいなさい。そこへ行けば何とかなるわよ。」

 

 

譲信「博麗…神社?何だぁそりゃぁ?」

 

 

また神社かよぉ?とツッコミかけるがそこは譲信、グッと堪える。

 

 

幽香「幻想郷に迷い込んだ外来人が外に帰りたい時は、その神社にいる巫女に頼めば帰れるわよ。無事に辿り着けたら…の話だけど…譲信、あなたなら問題無いわね。」

 

 

そうして幽香は、譲信に博麗神社までの大まかな道筋を書いた紙を渡す。

幽香は花の世話があるので、道案内はしてあげられない…との事だった。

 

 

譲信「へぇ~こう行きゃぁ良いわけか。OK!サンキュな幽香さん!それと…お茶ゴチになりました!」

 

 

紙を受け取った譲信は、幽香に礼を告げると早速博麗神社へ向けて出発しようと外へ向かう。

 

 

幽香「まあもし、行き止まったらここに来ると良いわよ。あなたは気に入ったから…特別に歓迎してあげるわ譲信。」

 

 

譲信「幽香さん……!………あざっす!!」

 

 

最初は幽香のことを恐ろしいスーパーガールだと、思っていた譲信だったが、とても親切で良い人…良い妖怪なんだと今では思っていた。

さぞ、幻想郷でも皆から好かれてるんだろうな~…っとまで考えていた。

 

 

譲信「それじゃまたどこかで~!!」

 

 

後ろを振り返りつつ、手を振り続ける譲信に、幽香は姿が見えなくなるまでその背中を見届けた。

 

 

幽香「さて…と…まだ一匹……ゴミが潜んでいたわねぇ…?」

 

 

譲信を見届けた後、幽香は近くの花の隙間に向かって、傘を投げつける。

すると「ぎゃぁぁ!?」という悲鳴が聞こえ、肩に傘の突き刺さった一人の男が出てきた。

 

 

幽香「あなた…ゴミの分際で私の大切な花を傷つけて…死ぬ覚悟はできているわよねぇ?」

 

 

男「ひぃ!?ま、待ってください!!俺はただ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

男の言い訳など、花から聞く気が無かった幽香は男をその傘で、滅多刺しにする。

胸から腹部にかけて、幾つもの穴が空いた男は苦痛に歪んだ表情のまま絶命してしまった。

 

 

幽香「喜びなさい。最後にこの花畑の肥料になって死ねるのだから…ウフフフフフ♪」

 

 

ドチャッ!ドチャッ!という音が、しばらく太陽の花畑に響くこととなった。

果たして…最初に譲信に聞こえたドチャッ!という音は何だったのか…その真実を知るのは、風見幽香ただの一人である。

 

 

 

 

 

 

 

幽香と分かれた後、譲信は順調に進んでいた。

貰った地図には一先ず、人里と呼ばれる人間の集落に寄ると良い…と書いてあったのでまずはそこを目指して歩く。

まだ幽香との戦闘から一時間ちょっとしか経っていない為、日が暮れる様子も無く、結構のんびりとできていた。

 

 

譲信「近付いてくる~♪決戦の時ィ~♪打つべきピリオドは~~~スタープラチナァ~~~~~~ム♪」

 

 

そしてまた、森に入ってからは陽気に歌を歌いながらピクニック感覚で歩き続けていた。

 

しかし、そんな譲信を狙う…怪しい影が二つ…譲信に迫ってきていた。

 

 

譲信「…やれやれだぜ。何か来やがったな…」

 

 

さぁ今度はどんな事が起こるんだ?といった気持ちで譲信は立ち止まり、待つことにした。

 

やがて、木々の影からそいつらは現れた。

 

 

妖怪1「ニヘヘヘ…人間ガイルヨ!」

 

 

妖怪2「久しぶりのご馳走だぁ!」

 

 

譲信「これが幽香以外の妖怪か…?」

 

 

何やら人らしからぬ姿をしたバケモノが二匹、譲信の前に現れた。

てっきり妖怪といえど、皆幽香のような人間とさほど変わらない姿なんだと思っていた譲信は、少しだけ驚いていた。

 

 

妖怪1「ニッヘーー!」

 

 

驚いていたのも束の間、譲信に妖怪が一匹飛びかかる。

 

 

譲信「いきなりか!?ちょ待っ!!」

 

 

言い終わる前に服の襟と、首元を押さえつけられて、譲信は背中から木の幹に叩きつけられた。

 

 

譲信「……痛ってぇ!?」

 

 

流石妖怪、とんでもねぇ力してやがるな…と息を漏らしながら譲信は、そんな感想を抱いていた。

 

 

妖怪1「大人シクシテロヨ!ソウスレバ楽ニコロシテカラクッテヤル!」

 

 

譲信「……………」

 

 

妖怪2「だがもし暴れたり助けを求めたりしてみろよぉ…生きたまま食ってやるからなぁ…!」

 

 

譲信「……………」

 

 

押さえつけられている痛みに耐えながらも、譲信は無言でしばらく何かを考えていたが、やがて口を開いた。

 

 

譲信「痛てて…大人しくしていれば……本当に楽に殺してくれるのか……?」

 

 

妖怪1「アァソウダヨ!約束シテアゲルヨ!」

 

 

譲信「そう……か」

 

 

妖怪2「よし!分かったら大人しく…」

 

 

それで良い…と言わんばかりに二匹の妖怪はニタリと笑う。

が、同時に譲信もやったぜ!と言わんばかりにニタリと笑った。

 

 

譲信「だが断る!!

 

 

妖怪1、2「ナニィ!?」

 

 

譲信「この空条 譲信が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思っている奴にNO!…と断ってやる事だ!」

 

 

妖怪1「バ…バカニシヤガッテェ!!人間ノクセニィ!!ダッタラ望ミドオリ、生キタママクッテヤル!!」

 

 

譲信に舐められているんだと理解した妖怪は、怒りに身を任せ、まずは肩をかみ砕いてやろう…と、口を大きく開けた。

が、しかし…

 

 

ボン!!

 

 

何かが爆発するような音が聞こえ、気になった妖怪は思わず音のした方へと目をやる。

すると…

 

 

妖怪1「ナ…ナンダコリャァァァァァァァ!?」

 

 

何と、妖怪の譲信の襟を掴んでいた腕の手首から先が綺麗に無くなっていたのだ。

 

 

妖怪1「ウワァァァァァァァァァァァ!!?」

 

 

妖怪2「なんだとぉぉ!?」

 

 

痛みで妖怪は思わず、譲信から手を離し苦痛の叫び声を上げる。

 

 

譲信「キラークイーン…“第一の爆弾”!キラークイーンは既に俺の襟に触れていたぜ…!」

 

 

譲信は肩を払いながらそう呟くと、ゆっくりと二匹の妖怪の元まで近寄る。

 

 

譲信「幽香以外の他の妖怪はどんなものかと思ってみればこれか…ガッカリしたぜ本当に」

 

 

妖怪1「ク、クルナァ!!ヨルンジャネェ!!」

 

 

しかし、譲信は止まらない。

 

 

譲信「お前ら…覚悟して来てる妖怪…だよな?誰かを殺すって事は…逆に殺されるかもしれないって訳だ」

 

 

妖怪1、2「ヒ…ヒィィィィィィ!?」

 

 

使い回しのセリフだったが、それでも今の譲信には凄味があった。

そのせいで、普段はたかが人間と見くびる妖怪達も思わず、その人間である譲信に恐怖してしまう。

 

 

譲信「それじゃあ…木っ端微塵に消し飛ばしてやる!」

 

 

譲信は、尻餅をついて動けないでいる二匹の妖怪に向かって手を伸ばした。

 

 

妖怪1、2「ウワァァァァァァァァァァァ!?」

 

 

そして、その二匹の妖怪の頭から何やらディスクのような物を譲信は抜き取った。

 

 

譲信「ホワイトスネイク!…からのキラークイーン“第一の爆弾”!」

 

 

ボゴォン!!

 

 

そして、キラークイーンの能力を使いそのディスクを木っ端微塵に消し飛ばした。

 

 

譲信「ホワイトスネイクで記憶の一部をディスクとして抜き取ったぜ…そして、キラークイーン“第一の爆弾”は指先で触れた物質は何であろうと爆弾に変える事ができる……これで、俺のことは見ても無いし、知りもしないって訳だ」

 

 

お仕事完了♪と気絶している妖怪二匹をその場に放っておいたまま、譲信は再び歩き始めた。

 

誰にも見えていないが、キラークイーンとハイタッチをしながら…だった。

 

 

譲信「バタバタしたが…無事にこのイージーな状況を乗り越えられたぞ。…この空条 譲信、自分でも常に思うんだが強運で守られてるような気がする…そして細やかな「気配り」と大胆な「行動力」で対処すればけっこう幸せな人生を送れるような気がする……多分…いや気のせいかもな…ヘヘヘヘ…」

 

 

いや気のせいかよ!と心の中で自分で自分にツッコミを入れながら、譲信はニヤリと微笑む。

何せ、譲信は今非常に良い気分だった。

 

今まで持て余していたスタンドの力を、幸か不幸か偶然にもこの幻想郷に辿り着いてからというもの、こうも連続して満足に使う事が出来ているのだから。

ザ・ワールドの手加減ラッシュに時止め、キラークイーンの爆弾活用、ホワイトスネイクによる抜き取り。

そして、“だが断る”の決めゼリフ。

ジョジョファンなら誰もが憧れることを数時間の内にやってのけられているのだから、まさに!最高にハイな気分だった。

 

しかし、油断は禁物。

原作では浮かれたスタンド使い達は必ず痛い目に遭っている。

そうはならないようにと、空条の名に恥じぬように譲信は引き続き、用心することにした。

 

 

譲信「ふぅむ…しかし、警戒すると言ってもなぁ~危険を察知し尚かつ最も回避力に長けたスタンドだとどれが良いだろうかねぇ………あ!いたわ…最強の察知力と回避力が」

 

 

最も危険を事前に察知し、最も危険を回避することに優れているスタンド。

そんなスタンドをすぐに脳内ライブラリーから見つけ出した譲信は早速、力強くその名を呼んだ。

 

 

譲信「キング・クリムゾン!!」

 

 

譲信に名前を呼ばれて、そのスタンド…キング・クリムゾンは現れた。

深紅の体に白い網目の線が入ったデザインのスタンドだった。

 

 

譲信「キング・クリムゾン…十数秒先の未来を予知し、無敵の能力…“時飛ばし”によってあらゆる危険を完全に回避するスタンド!こいつぁ…無敵だぜ!」

 

 

おまけにキング・クリムゾンはパワーにも優れ、能力抜きにしても単純な戦闘力ならトップクラスのスタンドだ。

よっぽどな強敵でも現れない限りは完全に無双できるだろう。

 

 

譲信「さぁてと…早速見てみようかな未来予知(エピタフ)!」

 

 

譲信は被っていた帽子を深く被り、そのツバに十数秒先の光景を見る。

しかし、特に変わったことなど起きてはいなかった。

 

 

譲信「まぁそうだろうな。いきなり何かが起こるなんて考えにくいもんなぁ…ま、何もないのが一番だからな!良し良し…」

 

 

そうして譲信は時々、未来の光景を見ながらも、順調に人里へ向けて進んでいく。

特に何もなくやがて森を抜けて、それらしき家々が建ち並ぶ大きな集落のような物が遠くに見えてきた。

 

 

譲信「あれが人里だなOK!」

 

 

人里を確認した譲信は、歩くスピードを速めて早歩きで向かう。

やがて、人里の入り口に近付いて来た訳だが、入り口には番人みたいに警備のような人が数人立っていた。

関所みたいな感じなのだろうか?面倒臭いなと思った譲信は、手間を省くためにキング・クリムゾンの能力を発動させる。

 

 

譲信「深紅の王(キング・クリムゾン)!!我以外の全ての時間は消し飛ぶッ!!」

 

 

ドォーーーーーーーーーーン!!

 

 

瞬間、世界の全ての時間は消し飛ぶ。

 

 

譲信「キング・クリムゾン…消し飛んだ時の中では炎は炎自身が消えた事さえ認識しない。ま、要は『結果』だけだ!『結果』だけが残る!そして消し飛んだ時の中で対応でき動けるのは俺だけって訳さ!……ってことで人里、お邪魔しまーす!」

 

 

とはいえ、消し飛ばされる時間は今の譲信では精々、25秒程度だ。

そんなに呑気にしてもいられない為、急いで走って人里の中へと入っていく。

あまり長い時間消し飛ばしてしまうと、何人かの人間が違和感に気付いてしまうからだ。

 

 

譲信「ハァ…ハァ…ハァ…時よ…ハァ…再始動…しろっ!…ハァ…」

 

 

そして、時は再び正常に動き始めた。

 

 

譲信「ハァ…ハァ…思ったけど…これ…ザ・ワールドの時止めの方が違和感無くて良かったじゃあねーかよ…フゥー…」

 

 

幸い、特に誰も何かに気付いたりしている様子は無かったので、まぁ良しとするか…と判断した譲信はとりあえず人里を見て回ることにした。

 

親切にも幽香に譲信は財布の中の野口英世を数枚程、幻想郷の通過に換金して貰っていた為、ある程度は何かを購入することができた。

 

人里は江戸時代かそこらかの時代を連想させるような町の作りで、おまけに人々の服装も和服とかそういった感じだった。

その中で、譲信は3部の承太郎と同じ帽子に独自に改造した学ランを着ている。

明らかに目立ってしまっていて、勘の良い人からは外来人の兄ちゃんか…と思われていた。

 

しかし、気にしていてもしょうが無いと譲信は珍しい物を見るような人々の視線を無視し、まずは空いた小腹でも満たそうか…と近くの菓子屋らしき店に立ち寄る。

 

そしてしばらくカウンターにある商品を見て回った後、店主の男に欲しい物を言い、値段を尋ねる。

 

 

譲信「あー…オッチャン!この磯辺焼きと饅頭をそれぞれ3個ずつ、くれよ!」

 

 

店主「ハイよ、じゃあ3個ずつだから合計で2000円ね」

 

 

譲信「2000円……だとぉ~?」

 

 

幻想郷には常識に囚われてはいけないという言葉がある。

と、いうのは物の値段や価値が外の世界とはまた異なるのだ。

日常の値打ちを知らない初めての外来人はいったいいくらなのか見当つかず、一部の店からはすごくカモられてしまう。

しかし、幻想郷でも外の世界でもカモることは悪いことではない。

騙されて買ってしまったヤツがマヌケなのである!

 

 

譲信流~こういう時はこうしろ~方法

 

たとえば、この場合俺は全てお見通しだね!という態度をとり、

 

 

譲信「2000円?ハッハッハッ!!バカにすんじゃねーぜオッチャンよぉ~高ィ高ィーっ」

 

 

…と大声で笑おう。

すると

 

 

店主「じゃあいくらなら買うんだい?」

 

 

…と客に決めさせようと探ってくる。

 

 

譲信「3個ずつで500円にしろよ~」

 

 

自分でもこんなに安く言っちゃって悪いなぁ~というくらいの値を言う

すると

 

 

店主「カッハッハッハッ~!!」

 

 

本気~?常識あんの~と人を小バカにした態度で…

 

 

店主「そんな値で売っちまったらうちは赤字で潰れてしまうよーっギィーッ」

 

 

…と首をカッ切る真似をしてくる

しかし、ここで気負けしてはいけない

 

 

譲信「そ~かいじゃあ他の店で買おうかな」

 

 

帰る真似をしてみよう

 

 

店主「分かった!兄ちゃん特別だ!うちは外来人には優しい店だからな3個ずつで1700円にするよ」

 

 

…といって引き止めてくる。

 

 

譲信「600にしろよ~」

 

 

値段交渉開始ーッ!

 

 

店主「1600!」

 

 

譲信「700!」

 

 

店主「1400!」

 

 

譲信「900!」

 

 

店主「1200!」

 

 

譲信「1100!」

 

 

店主、譲信「1150」!!

 

 

譲信「買ったッ!」

 

 

やったーっ850円も安く買えたぞ!ざまーみろ!モーケタモーケタ!

…と思っていると

 

 

店主「(いつもは3個ずつだと700円で売ってるんだよぁ~)毎度有難うございました~!」

 

 

 

 

 

…というやり取りを終え、無事食べ物も購入でき店を出た譲信は、再び博麗神社を目指して歩き始める。

途中、やけにリアルな人形による人形劇だとか、謎に油揚げを異常な程袋一杯に詰めて歩いている、九本くらい尻尾を生やしたケモミミの女性だとか、何とも珍しい光景を見ながらも譲信は人里の外へ出る。

 

当然出る時は先程同様、キング・クリムゾンの能力を使ってバレないように出る訳だが、またザ・ワールドの時止めの方が楽だったじゃねーか!と、譲信は同じ事で後悔していた。

バカなのである。

 

 

これだけの濃い体験をしている訳だが、幻想入りしてからまだ3時間ちょっとしか実は経ってない。

これからもまだまだ、この調子で面白いことが起こりそうだと譲信はそんな予感がしていた。

なにせ、自分はスタンド使い。

スタンド使いは奇妙な事や面白い事に巻き込まれてなんぼなのである。

まぁ、楽しめれば良いか…と譲信は、深く考えることはやめたのだった…。

 

 

 

 

 

TO BE CONTENT…………




スタンド一つにつき、話は10は書けるくらいにアイデアが湧いてきます。
書いてて面白い。
自己満足度もバッチリなんですよね。
あとはまぁ…文章力。
まだまだ鍛え甲斐がありますね。


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③空条 譲信、巫女と賢者と魔女っ子に会う。

ジョジョ好きあるある。
じゃない→じゃあない…となる。
充電音か着信音をザ・ワールドの時止め効果音にしがち。
通話の着信音はとぉうるるるるるるん…だろぉ?
トマトとモッツァレラチーズのアレでてきたら、チーズだけ食べてから次にトマトと一緒に食べがち。

他にもこういうあるあるあるぞ!っていうの良ければ聞かせてくださいませ!



博麗神社。

 

幻想郷に迷い込んだ外来人がまず最初に目指す場所になる。

尤も、妖怪が潜む道を歩いて行かなければ辿り着く事が出来ない為、外来人が一人だけで博麗神社に向かうとすると、ほぼほぼの確率で腹を空かせた妖怪達にペロリとたいらげられてしまう。

 

当然だが、幻想郷の住人と言えど人里に住まう人間のような、何の力も持たない一般人はまず訪れる事は無い。

そのせいで、この博麗神社の賽銭箱は常に空っ風が吹き、この神社の巫女、博麗 霊夢 はたくましい生活を強いられているのだ。

お陰で知る人ぞ知る守銭奴なのである。

 

 

 

 

 

 

霊夢「肉が…魚が…食べたい……!」

 

 

脇の露出した変わった巫女服を着る少女。

そう、彼女こそがここ博麗神社の巫女、博麗 霊夢なのである。

霊夢は縁側で、日の光を浴びながら同じセリフを5分に一回ずつ呟きながら寝そべっていた。

空に浮かぶ雲の形が、魚やら肉やら何やらのご馳走に見えてしまい、今にも腹の虫が鳴きそうな状態であった。

 

霊夢はかれこれ、もう4ヵ月は肉や魚を口にしていない。

このままではマズい…と霊夢は結構本気で焦っていた。

 

 

霊夢「何とかしなければ今年中に飢え死によ!どんな手を使ってでも………なければいけない!!……って…ん?」

 

 

霊夢は行動を起こすべし!と、一人決意を語ろうとした時、ふと突然セリフがいつの間にか飛んでいる事に気付く。

不思議な事もあるなぁと思っていると、何やら神社の外から誰かが騒いでいる声が聞こえてきたので、何事かと霊夢は騒ぎのする方へ向かう。

 

 

霊夢「誰よ!人ン家の前で騒ぐ奴は!!」

 

 

空腹感から来る怒り。その全てをぶつけてやらんとばかりに霊夢は外に出る。

するとそこでは、霊夢の友人 霧雨 魔理沙と、全然見たことも無い、変な服に、髪の毛と一体化したような帽子を被った男が、大暴れしていた。

 

 

 

 

譲信「WRYYYYYYYY!!てめぇ降りてこいこの野郎ッ!!」

 

 

魔理沙「何だよ!いい加減しつこいぜ!」

 

 

譲信「お前は有罪だぁぁ!!キング・クリムゾン!!」

 

 

空を飛び、時々何か弾のような物を打つ魔理沙。

そしてその弾のような物をキング・クリムゾンの拳で弾き時々、時飛ばしで回避しながら、拾った石を魔理沙目掛けてキング・クリムゾンの投球で投げつける譲信。

何でこんな事になっているのか…それは数十分前に遡る。

 

 

 

 

(…数十分前)

 

 

博麗神社を目指し譲信は意気揚々と歩いていた。

しかし、人里から出てしばらくすると腹を空かせた妖怪達に襲われ始める。

 

 

譲信「KUAAAAA!!しつけぇ!!」

 

 

最初はキング・クリムゾンで殴るなり掴んで投げ飛ばすなりしていたが、時間経過と共に襲ってくる妖怪達の数がどんどん増えていく為、譲信はいい加減イライラしていた。

このまま増え続けられてはキング・クリムゾンだけでは捌くのに苦労する事になる…そう判断した譲信は一旦キング・クリムゾンを戻し、別のスタンド能力を発現させる。

 

 

譲信「スケアリー・モンスターズ!!

 

 

譲信は、スタンドでの攻撃では無く強化した自分自身で直接相手した方が手っ取り早いと考え、スケアリー・モンスターズで自身を恐竜化させ、襲ってくる妖怪達を片っ端から引き裂いていた。

 

 

譲信(これが恐竜の身体能力か!良いぞこいつはかなり有能だ!)

 

 

ところが、そこに偶然博麗神社に向かう途中だった魔理沙が通りかかる。

 

 

魔理沙「何だぜ!?あれは!」

 

 

恐竜化して暴れ回る譲信を見て、恐竜を見たことが無かった魔理沙は厄介な妖怪がいるもんだな、と思ってしまった。

 

 

魔理沙「アイツが人里の方まで降りてきたら面倒だな。よし、この魔理沙様が退治してやるんだぜ!」

 

 

人里の方まで降りてトラブルを起こされる前に、ここで退治なりしておくかと魔理沙は、譲信に向けてこの幻想郷では弾幕と呼ばれている無数の弾を放つ。

 

 

譲信(うおあっ!?)

 

 

突然の空からの攻撃を間一髪、譲信は恐竜の胴体視力と反射神経で回避する。

 

 

魔理沙「あちゃー避けられちまったぜ…」

 

 

譲信「いきなり何すんだてめぇ!!」

 

 

上を見上げりゃあ箒に乗った白黒の服を着て、魔法使いっぽい帽子を被った魔法少女がいるではないか。

譲信はまず最初は驚いたが、しかしすぐに怒りの感情が湧き上がり、恐竜化を解いてから魔理沙に怒鳴り散らす。

 

 

魔理沙「人間に化けたぜ!?コイツは結構厄介な妖怪だなッ!!」

 

 

譲信「あぁッ?誰が妖怪だとぉ~?俺ァ人間だ!」

 

 

魔理沙「嘘つけ!さっきのあの姿は人間じゃ無いんだぜ!!」

 

 

譲信「ぐっ……そういや恐竜化は一般人にも見えるんだったなぁ……!」

 

 

違うあれはスタンドだ!…と説明したとしても、今の状況じゃ信じて貰えないだろうし、まず通じるとは到底思えない。

とか考えているとまた弾幕が放たれ、慌てて譲信はキング・クリムゾンを出し、拳で弾かせる。

 

 

魔理沙「何だ?今度は空中で弾かれたんだぜ!?」

 

 

スタンド使いでは無い為、スタンドを見ることは出来ない魔理沙には、突如空中でいきなり弾かれた様に見えていた。

 

 

譲信「攻撃するってぇならよぉ~…俺も容赦しねーぜ!覚悟しなッ!!」

 

 

魔理沙「へぇ望む所だぜ!この魔理沙様が相手してやるんだぜ!!」

 

 

かくして、霧雨 魔理沙と空条 譲信の戦いの火蓋は切って落とされた。

博麗神社へと少しずつ向かいながらも、激しさを増していく戦いに、もはや譲信に近付ける妖怪はいなかった。

 

 

 

 

 

 

(……そして現在)

 

 

全ての弾幕を予知して弾き、回避する事が出来るが、空を飛べない為イマイチ決定打に欠ける譲信と、仕掛けられる攻撃こそ飛んでくる岩を回避するだけで済むものの、こちらの攻撃は全て無効とされ仕留めきれない魔理沙。

この二人の勝負は未だ両者ノーダメージのまま続いていた。

 

 

譲信「やるじゃあねぇかよ!」

 

 

魔理沙「お前こそな!」

 

 

そしていつの間にか、譲信と魔理沙はこの攻防を少し楽しんでいた。

しかし

 

 

霊夢「いい加減にしろーーー!!人ン家の前で暴れるなーーー!!」

 

 

霊夢からしてみれば敷地内で暴れ回られるなんて堪ったモンじゃない。

霊夢は二人に向かって弾幕を放つ。

 

 

譲信「ぬおっ!?」

 

 

魔理沙「うげっ!?」

 

 

譲信はキング・クリムゾンで弾幕を弾いたので良かったが、魔理沙は完全に意識を譲信に向けていた為、不意打ち気味にくらってしまい、ヒョロヒョロと地面に落ちていった。

 

 

譲信「何だぁ?いきなり!」

 

 

霊夢「それはこっちのセリフよ!家の敷地内で…よりにもよって神社で暴れ回るなんて…あんた達は何考えてんのよ!?」

 

 

譲信「何ィ~?」

 

 

霊夢に言われて譲信はあたりをキョロキョロと見回す。

鳥居に賽銭箱に鐘…それらを視界に入れようやくここが神社だと気付いたかのように、驚いた表情になる。

 

 

譲信・魔理沙「な…いつの間にッ!?」

 

 

霊夢「いや今まで気付かなかったの!?ちょっと魔理沙!?一体どうなってんのよ!?コイツは誰なのよ!?」

 

 

今まで気付かずに暴れていた事に驚き、呆れると共に状況を理解できず訳の分からない状態の霊夢は、魔理沙に詰め寄ると襟を掴み、魔理沙の頭を前後ろにゆっさゆっさと激しく振りながら尋ねる。

 

 

魔理沙「わわわわわわ分かったから!!話すから!!それをやめてくれぇ!!うぅ…気持ち悪くなってきたんだぜ…」

 

 

霊夢が手を離すと、「うげぇーっ!!」と足元をフラフラさせながらも魔理沙は霊夢に事情を説明し始めた。

その間、出番が無いと思った譲信はタバコを吸いながら時間を潰すことにした。

 

 

 

 

♢《魔理沙説明中…》

 

 

 

 

霊夢「成る程ね…要するに魔理沙はコイツを危ない妖怪だと思い、退治しようとしたら予想外に厄介で苦戦していたと…」

 

 

魔理沙「そうだぜ!」

 

 

霊夢「そしてあんたはれっきとした人間で、自分の身を守るために仕方なく戦っていたと…」

 

 

譲信「EXACTLY!!俺は正真正銘人間だ!俺には、空条 譲信という立派な名前がある!」

 

 

魔理沙「嘘をつくなよ!私はお前が化け物の姿になって大暴れしているのをこの目でしっかり見てるんだぜ!」

 

 

譲信「化け物じゃあねぇよ!恐竜知らねぇのか?それにさっきからあれはスタンドっていう能力で変身した姿だって言ってるだろ?」

 

 

魔理沙が譲らないのも無理はない。

それ程あの時、譲信は化け物らしい暴れっぷりをしていた訳なのだから。

面倒くさい言い合いでも始まりそうだと思った霊夢は、すぐに二人の間に入り仲裁する。

 

 

霊夢「はいはい話が進まないから落ち着きなさいよ!…それで…譲信…で良いかしら?」

 

 

譲信「OK、どうしたフレンズ?」

 

 

霊夢「あんたの言うその…スタンド?っていう能力は一体何なのよ?」

 

 

譲信「あぁそれだなぁ…」

 

 

霊夢に聞かれて譲信は幽香にしたのと同じようにスタンド能力についての説明を始めた。

 

 

 

 

♢《譲信説明中…》

 

 

 

 

霊夢「生命エネルギーの作り出す実体ある(ビジョン)…ねぇ…初めて聞くわねそれ…?」

 

 

説明を受けたものの、霊夢も魔理沙も半信半疑だった。

何せ、目に見えないのだから実は嘘でもついてるんじゃ無いかと思えて仕方がない。

 

 

魔理沙「本当に今ココにいるのぜ?そのスタンドっていうのは」

 

 

譲信「いるぜココにな」

 

 

そう言って譲信は自分の右隣を指さす。

確かにそこには、第7部SBRのTHE WORLD(ザ・ワールド)が佇んでいる…のだが、霊夢と魔理沙には勿論見えやしない。

スタンドはスタンドの才能がある者か、スタンド使いである者にしか見えないのだ。

 

 

魔理沙「う~ん…とか言われてもなぁ…何かそこにいるって証拠見せてくれよ?」

 

 

譲信「ふむ……よし良いだろう!」

 

 

魔理沙に言われ、譲信は心の中で念じTHE WORLD(ザ・ワールド)を魔理沙の目の前まで移動させる。

そして、魔理沙の額に向かって軽く、本当に軽くデコピンをくらわせた。

 

 

魔理沙「痛っ!?攻撃されたぁぁ!?」

 

 

霊夢「魔理沙!?」

 

 

譲信「はっ!間抜けがッ!THE WORLD(ザ・ワールド)の射程距離内だというのにそうやって油断しているからそうなるのだ…」

 

 

まだいきなり襲われた事への恨みが残っている譲信は、やってやったぜと言わんばかりにニヤリとしながら腰に手を当て、DIOのジョジョ立ちのポーズを決めていた。

 

 

魔理沙「や…やったなぁー!!」

 

 

怒った魔理沙は仕返ししてやろうと、箒片手に譲信に近付いていく。

 

 

譲信「ほう…向かって来るのか…逃げずにこの譲信に向かって来るのか…たかがデコピン一発で…言われた通りに証拠を見せたやっただけだと言うのになぁ…!!」

 

 

魔理沙「やられたらなら…やり返すまでなんだぜ!」

 

 

譲信「そうかそうか…ならば……死ぬしか無いなぁ!霧雨魔理沙ァ!!」

 

 

かかって来いよ言う風に譲信はニヤリとしながら両手を広げてドン!と構える。

目に見えないが、THE WORLD(ザ・ワールド)もニヤリとしながら構えていた。

 

 

霊夢「バカやってんじゃないわよ…」

 

 

しかし呆れて溜息をつきながらの霊夢にお祓い棒で頭を叩かれて、譲信はTHE WORLD(ザ・ワールド)を引っ込めてしまった。

 

 

譲信「何すんだよぉ!今丁度良い感じにノッてた所だったのに!」

 

 

霊夢「あんたこれ以上家で暴れてみなさいよ…絶対に外の世界に帰してあげないわよ?」

 

 

霊夢はニコリとしながらも青筋を浮かべて、優し~く譲信に警告する。

あ…これヤバめ…と思った譲信と魔理沙は、冷や汗を浮かべながらも、「わ…悪かったな!」と貼り付けたような笑顔で握手して仲直りしてみせた。

 

 

譲信「……ってちょい待ち。俺まだ外来人だって説明して無いけど何で分かったんだよ?」

 

 

霊夢「いや分かるわよ。妖怪でもなくて人間で、しかもスタンドなんて聞いたことも無い能力を持ってて、この神社を目指してるって言うなら間違いなく外来人でしょ」

 

 

譲信「む!…言われりゃあ確かにそうか!成る程ねン…そいで、俺はちゃんと元の世界に帰して貰えるんですかね?」

 

 

少しドキドキしながら、譲信は恐る恐る霊夢に聞いてみる。

 

 

霊夢「はぁ…面倒くさいけど仕事だからね。帰してあげるわよ」

 

 

譲信「OH!やったぜッ!!これで安心ってもんだ!」

 

 

無事に帰れると分かった譲信はホッとする。

 

 

霊夢「ちなみに聞くけど、あんたどうやってこの幻想郷に迷い込んだのよ?」

 

 

譲信「ん?あぁ…いや何、神隠しの噂を聞いて山奥の神社を調査してたらよ、変な目玉だらけの気持ち悪ィ空間に落っこちて…で、気が付けばこの幻想郷よ」

 

 

目玉だらけの気持ち悪い空間。

その言葉を聞いて何やら心当たりがあるのか、霊夢は一瞬だけ眉をピクリと動かすがすぐに正常に戻る。

 

 

霊夢「あぁそういうこと…理解したわ…完全に。………ったく…アイツは………!」

 

 

譲信「あいつ?」

 

 

呟くような霊夢の声に、何だ?と気になった譲信はその部分を聞き返す。

 

 

霊夢「何でも無いわよ。今から準備するからちょっとそこで待ってなさいよ」

 

 

譲信「あ…おう…。」

 

 

だが答えては貰えなかった為、気にはなったがまぁ帰れるし良いか…と譲信は忘れることにした。

 

 

譲信(ほんの少しの間だったが…こんなにスタンド能力を使う事ができたし、幻想郷っていう面白ぇ世界も知れたし、満足だぜ。今日はグッスリと眠れそうだ)

 

 

まだ名残惜しい気もするが、早く帰らないと家の者に心配をかける。

また今度、来れるなら来てやろうと譲信は幻想郷の美しい景色を見ながらそう考えていた。

 

 

???「あら?悪いけれど帰すことは出来ないわね」

 

 

ところが、この場でまた新たに別な誰かの声が聞こえる。

辺りを見回すがしかし誰の姿も見えない。

 

 

譲信「何だ…?空耳か?今確かに誰かの声が聞こえたよーな気がするんだがな…」

 

 

霊夢「はぁ…来たわね……さっさと出てきなさい紫!」

 

 

誰の声なのか、一発で分かった霊夢はその声の主の名を呼ぶ。

 

 

紫「は~い!呼ばれて登場、ゆかりんで~す!」

 

 

すると譲信の目の前の空間がパックリと裂け、そこから金髪で紫色の変わったドレスを着た女性が、上半身からひょっこりと現れた。

 

 

譲信「うぉぉ!?ビックリしたぁ!!」

 

 

驚く譲信、そして紫と呼ばれた女性の出てきた空間を見てさらに驚くことになる。

 

 

譲信「こ…これは…!!」

 

 

何と、その空間は譲信が落下していった空間と全く同じく目玉だらけの気持ち悪い空間だったのだ。

 

 

譲信「間違い無ぇ!!俺が落っこちた空間だ!!何者だお前は!!」

 

 

紫「あら、初めまして。あなたがこの幻想郷に迷い込んだ外来人ね?…私は賢者八雲 紫…この幻想郷を管理する大妖怪ですわ…以後お見知りおきを…」

 

 

譲信のことに気がついた紫は、優雅かつ胡散臭いといった雰囲気で自己紹介をする。

八雲 紫…賢者…大妖怪…幽香からちらりと聞いたことのある名前だったと思い出す。

 

 

譲信「マジでか…?あんたが管理人さん?…いきなりビッグな…」

 

 

突然現れた超大物に、驚きを隠せない譲信だったが、自己紹介させておいてこちらは自己紹介無しというのは失礼かと思い、譲信も慌てて自己紹介を始める。

 

 

譲信「どうも初めましてっス、俺の名前は空条 譲信。年齢17歳…自宅は◯◯県◯◯市◯◯町北部の住宅街にあり…結婚はしていない…とういうかまだ出来ない…仕事は学生なのでしておらず、市内の◯◯高校に通っており…毎日遅くとも夜22:00には帰宅する…タバコはたまに吸う…酒もたまに飲む程度…夜0:00には床につき、必ず5時間は睡眠をとるようにしている…寝る前に温かいミルクを飲んだり、軽いストレッチとかはしない…ほとんど朝から寝坊さ…疲労やストレスは溜まるが、健康診断なんて受けなくても良いと言われるほど健康だぜ」

 

 

そこまでしなくても良いという程の長ったらしい自己紹介を終える。

霊夢と魔理沙は変人でも見るような目で譲信の事を目を丸くして見ていた。

 

 

紫「これはご丁寧にどうも…フフフ」

 

 

だが紫は特にツッコむことも無く、胡散臭い笑みを浮かべ軽くうけ流していた。

 

 

譲信「1つ質問するけどあんたが俺を幻想郷に連れてきたのか?その…個性的な空間へ落っことしてよぉ…?」

 

 

紫「それは違うわ。あなたはただ偶然、たまたま私がスキマを開いた場所に立っていたせいで巻き込まれたに過ぎないわ…」

 

 

譲信「………………はぁ?」

 

 

紫「お陰で外来人が迷い込んだ事に気付くのに時間がかかってしまったわ。こんなこと本当…初めてよ」

 

 

譲信「何だとぉ~!?」

 

 

霊夢「まさか…紫……あんた何凡ミス犯してんのよぉ!」

 

 

紫「………テへ♪」

 

 

霊夢「テへ♪…じゃ無いわよッ!!」

 

 

譲信「あーいや良いんだ良いんだ…そこはどーでもな…問題はだぜ?問題はさっき聞こえた…『帰すことは出来ない』ってセリフだぜ。まさかとは思うけどよ……俺、帰れない系?」

 

 

恐る恐る紫に尋ねる譲信。

そんな譲信に紫はゆっくりと振り返る。

 

 

紫「えぇ本当に残念無念ながら…ね」

 

 

譲信「オォーーーーーーマイガッ!!何てこったッ!!パンナコッタ・デバンナカッタ・フーゴォォ!!」

 

 

帰れると思って良い気になってからの…帰れない通告による絶望。

今ならバイツァダストだって使えるくらいに譲信は絶望してしまっていた。

 

 

紫「帰してあげたいのは山々だけれど、今は時期が悪いのよ。結界を張り直したばかりであなたを外の世界へ帰すにはしばらく待って貰う必要があるわ。」

 

 

譲信「しばらくって……どんくらい?」

 

 

紫は顎に人差し指をやって「んー…」と少しの間考える素振りを見せる。

 

 

紫「まぁザッと1年くらいかしら♪」

 

 

譲信「何だってぇぇぇ!?1年!?1年だとぉ!?………終わったぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

そんなに待てる訳無ぇだろぉ!と譲信は頭を抱える。

頭を抱えるようなトラブルには巻き込まれたくなんて無かった譲信。

しかし、もうどうしようも無い。

帰れないと言われてしまえばもはやそれまで。

譲信が元の世界へ帰るには、この幻想郷で1年間は過ごしていくしかないのだ。

 

 

魔理沙「あー……まぁ元気出せよ。幻想郷は悪い所じゃ……無いんだぜ?」

 

 

霊夢「紫、あんたの力でそこんとこ何とかならないの?」

 

 

紫「本当に残念ながら…こればっかりは無理なのよ」

 

 

譲信は、近くの岩に腰掛けて、腕を組み深呼吸しながら何やら考える。

 

 

譲信「分かった…OKだ。つまり1年間、俺はどうにかしてこの幻想郷で生存しなければならんという事だ。」

 

 

さぁどうしたもんかと譲信は考える。

1年は結構長い。

その間、家も無い、履歴も無い、仕事の宛も無い、頼れる人間もいない、金も残り僅か…。

あまりにもハードな状況だった。

今こそ、スタンド能力をフル活用でもしない限り、生きていくとは不可能と言えよう。

 

 

紫「まぁ…私にも責任はあるし…ある程度なら面倒は見てあげるつもりだけれど?」

 

 

そんな申し出をする紫を見て、霊夢はおかしい…と疑問に思っていた。

例え、責任はあったとしても紫がわざわざ面倒を見る…等という申し出なんて普通はしないという事を霊夢は誰よりも理解している。

つまり、紫は何か企んでいる。と、考えられた。

まぁ十中八九、譲信の持つそのスタンドと呼ばれる力が原因なのだと思われるのだが。

 

しかし、譲信にとって有難い申し出である事に変わりはなかった。

 

 

譲信「んー……いや結構だ…。元はと言えば神隠しを面白半分で調べに来ていた俺にも非ってモンがある訳だからな。それに…折角だから自分の力で生きる道は築いて行きたいしな。」

 

 

と、いうのは譲信にとってただの建前だった。

本音はこうだ。

 

 

譲信(やけに親切すぎるってのが胡散臭ぇ…こういうのって絶対裏に何かある系だろぉ~…トップの立場の奴が直接誰かに親切する時ってのは何かあんだよ絶対にな……だから絶対に俺はその言葉には乗らねぇぜ…)

 

 

用心深く対処する。

これが結構大事なのだ。例え万に一つの可能性でも、危険な匂いがするなら、その手には乗らないこと。

それぐらいしないと、スタンド使いである以上、次々と面倒事に巻き込まれるだけなのだ。

 

 

紫「ふぅ~ん……まぁそれならそれで良いわ…好きになさい。それでも、幻想郷で暮らすからには覚えて貰うルールもあるから、その辺りは面倒見させて貰うわよ?」

 

 

譲信「あ~…確かにそりゃあ重要だ。その土地の習慣とか何も分からねぇんじゃ不便で仕方が無ぇからなぁ~……うし!そこんとこはヨロシクお願いするぜ紫さん!!」

 

 

紫「あ、私じゃなくて霊夢がね?」

 

 

霊夢「はぁ!?私がやるの!?結局いつものそれかッ!!」

 

 

とはいいつつ渋々ながらも霊夢は譲信に、幻想郷で暮らしていく上での大切な事や覚えなくてはいけない事を一からレクチャーしていく。

 

 

 

曰く、

 

 

“弾幕ごっこ”と呼ばれる決闘法がこの幻想郷にはあり、その弾幕ごっこで揉め事を解決したりする。簡単に言えばスタンド勝負より遥かに平和的だ。

その弾幕ごっこではスペルカードという物を使用する為、譲信にはまだ何も書かれていないスペルカードを5枚与えられる。

 

 

 

幻想郷ではたまに“異変”というものが起こり、まぁ何か奇妙な現象が起こった時は大抵が異変とあう事らしい。

新手のスタンド攻撃か!!等と勘違いしないように気を付けていかねばならない。

 

 

 

人里での争いは厳禁。

そのルールを破り、人里で暴れたり幻想郷の平和を乱す行為をした者は、幻想郷の全勢力に叩き潰される。

4部の吉良吉影の最後みたいになると考えれば良い。

 

 

 

他にも様々な説明を譲信は受ける。

 

 

譲信(やべぇ…キング・クリムゾンの時飛ばし、大勢に気付かれたらこれ異変だよな?ヤバくね?気を付けよう………まだバレてねーよな?)

 

 

霊夢「まぁいきなり全部覚えろは厳しいだろうから、少しずつ覚えて行きなさいよ?」

 

 

譲信「ウッス!」

 

 

内容に関してはこっそりと、星の白金(スタープラチナ)を使って高速メモをしていたので問題は無かった。

霊夢の説明が全部終わった所で、それまで静かにしていた紫が口を開く。

 

 

紫「ところであなた…何か“程度”能力に目覚めてるわね…」

 

 

譲信「え…?俺ぇ?」

 

 

紫「そう。何か目覚めてるわ。ちょっと失礼するわね。」

 

 

そう言って、紫は譲信の額に手をかざす。

すると、何やら良く分からないような分かったかも知れない…といったような何とも微妙な表情をする。

 

 

譲信「えーと……俺の能力って何なんすかね?」

 

 

堪らず気になった譲信は紫に尋ねる。

 

 

紫「それがねぇ~良く分からない能力なのよ。“ジョジョに関する道具しか創り出せない程度”の能力なのよねぇ…訳が分からないわ」

 

 

魔理沙「何だそりゃ?変な能力なんだぜ」

 

 

霊夢「あまり役に立たなそうな能力ねぇ…」

 

 

3人は理解できていないようだったが、譲信は一人だけその能力を完全に理解してしまった。

役に立たない?とんでもない!!譲信にとって最も相性の良い…良すぎる能力だった。

 

 

譲信「成る程!成る程!教えてくれてサンキュっす!」

 

 

譲信はそんな能力が宿っている事を知り、暗闇に光が射し込むような…実に晴れ晴れとした気分になっていた。

 

 

霊夢「まぁそれよりもよ譲信、あんたしばらく何処に泊まるつもりなのよ?宛はあるの?」

 

 

能力よりも、まずは寝泊まりする所を決めるのが重要だろうと思った霊夢は譲信に尋ねる。

 

 

紫「もし無いなら霊夢、泊めてあげなさいよ?」

 

 

霊夢「えぇ…まぁ…別に良いんだけど…」

 

 

まぁ仕方無いか…とばかりに霊夢は紫の言う事を受け入れる。

 

 

譲信「うーん……宛てかぁ……幻想郷に来て早々の俺にそんな場所ある訳が……………いや、あったなそーいや」

 

 

魔理沙「え!?あるのかよ?何処なんだぜ?」

 

 

思い出しように呟いた譲信に、予想外の答えに驚いて魔理沙は尋ねる。

霊夢も紫も、まさかあると言い出すとは思わなかったもので少し驚いていた。

 

 

譲信「いや実はな、スッゲー親切で優しい人……じゃなくて妖怪なんだけどな、『行き止まったらいつでも来い、歓迎する』って言ってくれた人がいるんだよ!」

 

 

霊夢「妖怪で!?そんな事ある?」

 

 

譲信「おうよ!で、その人は“太陽の花畑”って呼ばれる所に住んでいてな、確か名前が…」

 

 

紫「ま……まさ……か」

 

 

“太陽の花畑”そこまで聞いて、思い当たるが絶対有り得ない、何かの聞き間違いだろ!?といった表情にその場にいる3人はなる。

だが譲信はその有り得ない!!を言い放った。

 

 

譲信「風見 幽香っていう人なんだよ!」

 

 

霊夢・紫・魔理沙「………………」

 

 

嬉しそうに、自慢気に語る譲信。

しかし、その場の空気は何故か、完全に凍り付いてしまったのだった………

 

 

 

 

TO BE CONTINUE……………

 

 

 



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④空条 譲信は成長する

まず始めに、誤字報告ありがとうございました。
気を付けなければ…!




譲信&スタープラチナ「オラァッ!!

 

 

そろそろ夕方に差し掛かろうとしていた頃、譲信は森の中を再び彷徨っていた。

博麗神社で色々あった後、霊夢と魔理沙に別れを告げ、再度紫から手短に説明を受けて解散となったのだ。

 

現在譲信は幽香の家がある“太陽の花畑”を目指し、襲いかかってくる妖怪達を片っ端から星の白金(スタープラチナ)で殴り飛ばしていた。

 

 

譲信「ふぅ…行きよりは少なくて良かったぜ。……にしても幽香が実はヤベー妖怪として連中からビビられてるなんてなぁ…予想だにしなかったぜ」

 

 

神経質すぎじゃあねぇのか?と疑問にも思うのだが、全員が口を揃えて幽香は「ヤベー奴」だの、「あそこに泊まるなんて正気か!?」だの言うモンだから譲信は、段々と不安になってきていた。

 

確かにいきなりギラついた目をしながら、襲いかかってくるような奴…だとは思っていたりもしなくは無い。

が、譲信はそれでも幽香が別に言うほどヤベー奴には思えなかった。

 

 

譲信「怒らせなきゃあ良いだけだろぉ…?簡単!簡単!」

 

 

話を聞くに幽香が怒る時は、花を傷つけたりした場合らしい。

だったら花を傷つけたり粗末に扱ったりしなければ何の問題も無いという事だ。

…と気楽に譲信はそう考えていた。

 

 

譲信「それはそうと…今何時だ?」

 

 

譲信は左腕に巻いてある腕時計を見る。

時刻は既に午後16:30を指していた。

 

 

譲信「もうこんな時間か!急いだ方が良いなこりゃ…」

 

 

もたもたしていると日が暮れる。

霊夢曰く、日が暮れると妖怪達が活発に動き出すと言うもんだから譲信は急ぐことにした。

 

 

譲信「とは言ったけどもよ…!」

 

 

しかしそう簡単にはいかない。

さっきから何故か大量の妖怪達から襲われたり、落石や倒木や巨大な岩石の行き止まりだとか、様々なトラブルに巻き込まれている。

そして今も、ざっと10体近くの妖怪達に追いかけ回されているのだ。

 

 

譲信「なんでだ!?なんでこんなにトラブルにモテるんだ俺は!?くそぅ!!」

 

 

譲信&スタプラ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

 

 

飛びかかってくる妖怪達を纏めて、スタープラチナのラッシュでぶっ飛ばす。

一応威力は抑えめだがそれでも圧倒的なパワーの為、一発くらうだけで拳を受けた箇所は原型をとどめなくなる。

それを何十発もくらってしまえば、もはや生きてる方が奇跡だった。

 

 

譲信「気ン持ちィ~スカッとするぜぇぇぇ!!…けど、今は勘弁してくれぇ!!日が暮れちまう!!」

 

 

譲信はスタープラチナだけは完全にパワーの制御が出来ない。

いくら威力を控えめにしたとしても、それでも一発一発が殺人級の威力を誇る。

故にこういった相手にぐらいしか、スタープラチナは出せないのだ。

念願だったスタープラチナのオラオラのラッシュ。

しかし今は呑気に楽しんでいるヒマは無い。

急いで幽香の家に向かわなければ最悪、森の中で遭難してしまう可能性さえ有り得た。

そしてそんな譲信に、さらに追い打ちが掛かる。

 

 

譲信「おいおいおいおいおいおいおい…巫山戯んじゃあ無いぞッ!?」

 

 

なんと目の前に超巨大な岩石が置かれ、譲信の行く手を阻んでいた。

 

 

譲信「これで何度目だぁ?何で帰りにこんな目に遭わなきゃあならんのだ!……仕方ねぇ戻れ!スタープラチナ!」

 

 

イライラしながら、譲信は別のスタンドを出すために一旦スタープラチナを戻す。

そして

 

 

譲信「キラークイーン!!

 

 

譲信に呼ばれて、キラークイーンが現れる。

 

 

譲信「このクソッタレな岩石を爆弾に変えろッ!!」

 

 

キラークイーンは指先でそっと、目の前にある巨大な岩石に触れる。

 

 

譲信「木っ端微塵に消え去れ!第一の爆弾!!点火ァ!!」

 

 

カチッ………ボゴォォン!!

 

 

譲信が第一の爆弾のスイッチを入れると、激しい爆発音と共に岩石は木っ端微塵に消し飛ぶ。

ラッシュで破壊するよりも速く、綺麗に終わるのでこういう邪魔な障害物はキラークイーン“第一の爆弾”で消し去るのだ。

 

 

譲信「はい一丁上がり!しかしだな…これでこういう障害物に行く手を阻まれちまうのは何度目だぁ?」

 

 

そう、譲信はさっきからもう数え切れないくらいにありとあらゆる障害物に邪魔されたりしているのだ。

行き道は何とも無かったのに、いざ帰りともなるとこれだ。

心なしか襲ってくる妖怪達の頻度も増しているような気がしてならない。

 

 

譲信「とか言ってると……早速来たな…」

 

 

妖怪達「キエェェェェェ!!」

 

 

近くの茂みからまた、数台の妖怪達が譲信目掛けて突っ込んでくる。

 

 

譲信「よーしよし…良いところに来たな…いい加減邪魔するだけの奴等には働いてもらうぜ……スケアリーモンスターズ!!

 

 

キラークイーンを引っ込めてから、譲信は行きにも使用し、魔理沙とトラブルの原因にもなったスタンド能力を発現させる。

 

 

譲信「ウシャァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

半恐竜化した体で譲信は次々と妖怪達を切り裂く。

スケアリーモンスターズは自身の体を恐竜に変化させ、圧倒的な身体能力を得る強力な能力だ。

しかし、スケアリーモンスターズの本領発揮はここからだったのだ。

 

 

譲信「さぁ暴れ回って来い恐竜共!!」

 

 

恐竜達「ギャァァァァァァァス!!」

 

 

譲信に切り裂かれた妖怪達は、何と恐竜に姿を変えると譲信の命令を受けて走り出したのだ。

 

そう!スケアリーモンスターズの真の強さとは!何と攻撃し、傷をつけた相手を強制的に恐竜に変異させ、完全に支配下に置くことが出来るという点にあるのだ!

 

 

譲信「ニョホホホホ!これで少なくとも妖怪達の襲撃は心配しなくて済むぜ!俺の恐竜共が自動的に片付けてくれるからなぁ!」

 

 

そしてそのまま、譲信は半恐竜化状態で森の中を駆ける。

このまま順調に行けば、数十分で幽香の元に辿り着けるだろう。

しかしその時だった!

 

 

譲信「…何ッ!?俺の恐竜が…何者かにやられただと?」

 

 

突如として自分の支配下にあった恐竜が一体、何者かに殺された感覚が譲信に伝わる。

そして…

 

 

譲信「ム!?またやられた!!?」

 

 

続けて二体目も殺される。

そしてまた一体…また一体…と、どんどん数が減らされていく。

何か異常な事態が起こっている…少しマズい…と思った譲信はその場に立ち止まる。

 

 

譲信「フゥー…また何かのトラブルに巻き込まれているって訳か……俺の恐竜達をこのスピードで始末していってる辺り、結構な手練れっぽいぜ…!!」

 

 

その間もどんどん恐竜達は減らされていき、ついには譲信一人だけが残ってしまった。

 

 

譲信(さぁて……次は俺かぁ?…へ!来るなら来やがれ…返り討ちだ!!)

 

 

どこから敵が飛び出てきても良いよう、譲信は恐竜の感覚を極限まで研ぎ澄ませていた。

 

 

すると、どうだろう。

突如として、譲信の前方距離にして8mくらい前の場所で、空間がパックリと開く。

 

その開いた隙間からは、もはや見慣れた…目玉だらけの空間が見えた。

そしてそこから現れたのは…

 

 

譲信「え…紫さん!?何してんスか!?」

 

 

八雲 紫が、譲信の支配下だった恐竜の生首を持って現れたのだ。

紫は、その恐竜の生首を譲信の足元へと放り捨てる。

ドチャリ…と嫌な音が響く。

 

 

譲信「まさか…俺の恐竜をやったのって……紫さんが…?」

 

 

紫「恐竜?…ホホホ…笑わせるわね。ただの珍しいトカゲかと思ったわ…あら、失礼…フフフフ」

 

 

開いた扇子で口元を隠しながら、紫は不気味な静けさで静かに笑う。

 

 

譲信「トカゲだとぉ~?そりゃサイズはあれだけど…」

 

 

まぁ確かにスケアリーモンスターズは恐竜化とは言え、サイズは本物の恐竜とは程遠い。

なぜならベースとなる生き物の大きさに影響を受けるからだ。

 

 

譲信「って…んなことより、いきなりどうしたんすか?いきなりこんな酷いことを…俺、何か紫さんを怒らせることしちゃいました……?」

 

 

紫「心配しなくて良いわよ?私は別に怒ってる訳じゃ無いの。至って普通よ。」

 

 

譲信「はぁ…なるほどぉ?」

 

 

怒ってはいない。

まぁそれなら良かった…と一瞬ホッとする譲信。

しかし、何やら言いようの無い不気味さが残る。

 

 

紫「ただ悪いのだけど……死んでくれないかしら?」

 

 

譲信「……ッ!!」

 

 

瞬間、譲信に今まで感じたことも無かった何とも言えない寒気が襲いかかる。

 

その寒気の正体は殺気!

譲信は本能で紫から発せられる殺気を感じ取ったのだ。

 

間違いない、紫は本気だ!今の言葉は本気なのだ!

一瞬で理解した譲信は、このすこぶるヤバイ状況から切り抜ける為の一手を考える。

 

そして、一つの策が突如として譲信に舞い降りてきた。

これしかない!と、譲信はすぐさま実行に移す。

 

 

譲信「あ!!幽香さんだ!!」

 

 

紫「え?」

 

 

譲信は紫の後ろを指さしながらそう叫んだ。

思わず、紫は後ろを振り向く。

紫の注意は譲信から上手くそれた。

そして、その一瞬を譲信は逃さなかった!

 

 

譲信「逃げるんだよーーー!!」

 

 

全速力!!

恐竜の身体能力でその場から全速力で譲信は逃げ出した。

 

 

紫「…あ!!待ちなさいッ!!」

 

 

譲信「待てと言われて待つ奴はいませーん!!」

 

 

何で幻想郷のお偉いさんから命を狙われなけりゃあいかんのだ!

冗談じゃあねぇ!!

捕まったら厄介だとばかりに譲信は振り返りもせずただ走る。

 

 

紫「何処までいくのかしら?」

 

 

譲信「え?」

 

 

しかし、いつの間にか紫に横に並ばれてしまっていた。

いつの間に!?と驚き紫をよく見ると、何と近くに紫の空間…スキマが開き、ワープの要領で追いつかれていたのだ。

 

 

譲信「そんなのありかよ!?チィ…!ウシャァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

譲信は紫をはねのけようとしたが、それよりも早く体に衝撃と痛みが走る。

 

 

譲信「ぐぼぉあ!?」

 

 

見ると、真横からもスキマが開きそこから大量の弾幕が放たれていた。

 

 

譲信(くそぅ………)

 

 

回避はもう間に合わない。

スタンドの切り替えなんてしている暇は無かった。

 

 

ドドドドドドドドドン!!

 

 

譲信「ぐぅあぁぁぁぁぁぁぁ!!」 

 

 

攻撃を受けた譲信は、森の中の少し開けた場所まで吹っ飛ばされてしまう。

砂埃を上げて、腕から少し血を流す。

 

 

譲信「がっは………致命傷は免れたが………痛ってぇなぁ……」

 

 

譲信は恐竜の身体能力のお陰で間一髪、後ろに飛んだ事で致命傷を避ける事が出来たのだった。

 

 

紫「大した身体能力ね…間一髪で躱すなんて思わなかったわ」

 

 

そこへ、紫が開いたスキマから現れる。

 

 

紫「何がなんだか分からないって顔ね?せめてもの情けに…何故こんな目に合うのか…教えてあげましょうか?」

 

 

譲信「……へ!…納得できりゃあ良いがな………」

 

 

譲信は鈍い痛みが響き、まだ上手く立ち上がる事が出来なかった。

 

 

紫「空条 譲信、あなたは気付いていたかしら?…襲ってくる妖怪の数が尋常では無かった事…いくつもの障害物が行く手を妨害していた事…おかしいとは思わなくて?」

 

 

譲信「………そうかい。全部紫さんのイタズラだったってか…?笑えねーぜ……ったくよぉ~」

 

 

紫「イタズラでは無いわ…これは一種の試験よ。あなたが1年間、この幻想郷で暮らしていくに値するかどうか…のね」

 

 

片膝を突きながら、意地の悪い笑みを浮かべつつ譲信は口を開く。

 

 

譲信「あぁ成る程…様子を見る限りじゃあ…俺は不合格っぽいなぁ?……どーいう採点基準なんだ?こん畜生……!」

 

 

紫「恐竜化…無差別爆破…鬼と並ぶかそれ以上と思えるパワー……等を持った“見えない守護霊”…スタンド。人間の身でありながら、人知を越えた力を持つあなたは…この幻想郷にとって危険な存在でしかないのよ。人里の人間に悪影響を与え、仕舞いにはこの幻想郷のパワーバランスを崩しかねない…分かるわね?」

 

 

成る程そう来るか…と譲信は冷や汗を流す。

確かに譲信の持つスタンドの能力は他人からすればかなり危険だ。

幻想郷だけで無く外の世界であっても、人に知られてしまえば最悪、消されるか実験場送りになるだろう。

 

 

譲信「だからと言ってよぉ……一応あんたのミスでもあるんだろーが?」

 

 

紫「えぇ…だから責任をとって…情けをかけて…この私の手で直接、死なせてあげると言ってるのよ?」

 

 

譲信「おいおいおい…そりゃあお情けになってねぇわ……」

 

 

紫「それは残念ね?あなたには救いが無くて…まぁ恨むなら勝手になさい…」

 

 

紫は、冷たく譲信に言い放つ。

譲信を始末する。紫のその考えに譲信は迷いが無いように見えた。

 

 

譲信「OK……じゃあもうちょっとワンランク上の勝手をさせて貰うぜ!!覚悟しなッ…キラークイーン!!

 

 

譲信はキラークイーンを発現させ、紫に攻撃を仕掛ける。

 

 

キラークイーン「しばっ!!」

 

 

顔面に拳を叩き込む!と、キラークイーンの右拳でストレートを放つ。

綺麗にヒットする!…筈だったのだが、紫が動いてしまった為、キラークイーンの右ストレートは空振りに終わる。

 

 

譲信(ならば…キックをお見舞いしてやれ!!)

 

 

キラークイーン「しばっ!!」

 

 

次にキラークイーンは、体制を立て直す時の動きを利用して、紫に向かって蹴りを放つ。

しかし、それも当たらない。

まるで、キラークイーンが見えているかのように、紫はその攻撃を躱してしまったのだ。

 

 

譲信「何ィィ!?まさか……見えているのか!?スタンドが!?」

 

 

有り得ない!!っと言った表情で譲信は紫に向かって叫んだ。

 

 

紫「そのスタンドと言うのが…猫のような亜人の姿をしているそれなら……答はYESよ!」

 

 

譲信「何故見える!?何故俺の…キラークイーンを見ることができるんだ!?」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドド…

 

 

紫「それが私の能力…“境界を操る程度”の能力よ」

 

 

譲信「境界……だとッ!?」

 

 

紫は、静かに自身の能力を譲信に教える。

 

 

紫「物事には必ず境界がある…生と死…夢と現実…私の能力はその境界を自由に操る事が出来る能力よ。あなたのスタンドに干渉できるか出来ないか…その境界をいじらせて貰ったわ…もうあなたのそのスタンドは…誰でも見ることが出来るし、触れる事も出来わよ」

 

 

譲信「な…何ィィィィィィィィィィィィ!?」

 

 

いきなり告げられた、能力の弱体化。

スタンド使いのアドバンテージを無くされてしまったのだ。

譲信は完全に舐めていた…油断していた。

相手がスタンド使いで無ければ、特に何の問題も無いのだと。

その考えが命取りだったのだ。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYY!?巫山戯んじゃあ無いぞッ!!いきなり人の能力を弱体化させやがって!!覚悟は出来てんだろうなぁ?あぁッ!?」

 

 

譲信の怒りは結構なくらいまで来ていた。

弱体化された…それもあるが、一番の理由はスタンドという芸術の一部を汚されてしまったからだ。

譲信はスタンド使いである以前に、一人のジョジョ好きだ。

当然、並々ならぬ拘りを持つのだ。

スタンドルールの勝手な改変。それは、一人のジョジョ好きの怒りに触れるのには充分だった。

 

 

紫「知らないわねぇ…私は幻想郷を守る為に一番と思った事をしてるまで…空条 譲信、あなたは幻想郷にとってで、私は幻想郷にとっての正義なのよ!」

 

 

だが紫にとってそんな事はどうでも良いこと。

一番大切なのは、いかにして幻想郷のバランスを保つかなのだ。

 

 

譲信「勝手な事を言いやがって!!キラークイーンッ!!」

 

 

紫から放たれる大量の弾幕。

それを、譲信はキラークイーンのラッシュで弾いていく。

 

 

キラークイーン「しばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばッ!!」

 

 

紫「成る程…そうやって弾いていた訳ね…ならこれはどうかしら?結界・客観結界!!

 

 

譲信「何ッ!?」

 

 

キラークイーンのラッシュを見ながらスタンドの使用方法を少し理解した紫は、これならどうだ…ただの弾幕とは全く違う、技を発動させる。

 

見るからに威力も速さも、結構ありそうな衝撃波が譲信目掛けて放たれる。

 

 

譲信「防げるか……!?…キラークイーンッ!!」

 

 

キラークイーン「しばばばっ!!」

 

 

さっきよりも速く!強く!意識したキラークイーンのラッシュで衝撃を相殺する。

 

 

譲信「!?キラークイーンッ!!後ろだぁ!!」

 

 

その時、譲信は紫の側にスキマが開いており、さらにキラークイーンの背後にスキマが開くのを確認し、慌てて命令を下す。

しかし、譲信のそれは一手遅れてしまっていた。

 

 

ドドォ!!

 

 

不意を突かれたキラークイーンの腹部と頭部にに数発、被弾してしまう。

そして、スタンドの受けたダメージは本体にもフィードバックされる…!

 

 

譲信「がっはぁっ!!?」

 

 

スタンドのボディとはいえ、弾幕ごっこ時とは違い今は、威力は殺人級にある紫の一撃。

真面に受け、譲信とキラークイーンは紫のすぐ側にある岩に叩きつけられるように、吹き飛ばされる。

 

 

ドゴッ!!

 

 

譲信「……………!!!!っぁ……!!」

 

 

キラークイーンを前方にやり何とか激突の衝撃は防げたが、すぐに紫の攻撃で受けたダメージが全身に回り、声にならない声を上げて、譲信は倒れ込む。

そして、キラークイーンもスゥ…と譲信の中に消えていく。

 

 

譲信「ゆ…油断しちまった……く……そ……動けねぇ……ぞ……」

 

 

譲信にはもはや、パワーのあるスタンドを動かす力は残っていなかった。

 

 

紫「いいえ…良くやった方よ。人間の身でありながら…この私に技を使わせたのだから…誇りなさい」

 

 

虫の息となった譲信に、紫はゆっくりと近付いていく。

 

 

譲信「……へ!…負けたのに…何を誇れって……?……畜生ォ……」

 

 

紫は本心から譲信の事は大した者だと評価していた。

脆弱な人間で、その若さで自分にここまでさせたのだから…と。

久しく見た勇ましい者に敬意を表して、紫は直接自分の手で譲信を終わらせようと思っていた。

そして、すぐ手を伸ばせば譲信に届く距離まで近付く。

それでも、譲信からはスタンドが出てくる気配は無かった。

 

 

紫「終わりよ空条 譲信。最後まで闘志の消えないその目は……悪くなかったわよ……さような……」

 

 

紫が言い終わる前に、譲信は紫の足首をガッ!!と掴む。

 

 

譲信「……………ゴホッ………」

 

 

紫「…………最後まで足搔くつもりなのね……でもそんなに弱っていて何ができるのかしら?」

 

 

紫は譲信の首を掴み持ち上げ、自分と同じ目線の高さまで持っていく。

 

 

譲信「……やれよ……だが俺はまだ負けてねぇからな………ゴホッ…!」

 

 

紫「勿体ないわね。身に余る力さえ持っていなければ、この幻想郷は歓迎してあげられたというのに。最後に言い残すことはあるかしら?」

 

 

譲信「……我が心と行動に一点の曇り無し…全てが正義だ…!」

 

 

譲信はこれが言いたかったぜ!と言わんばかりにニヤリと笑って答えた。

 

 

紫「さようなら」

 

 

譲信の言葉を聞き届けた紫は、短く別れを告げると、片手で譲信の腹を突き破った。

 

 

譲信「ぐはぁ……ッ!!?」

 

 

譲信は仰向けに地面に倒れ、その瞳には真っ赤な夕方の空が映った。

紫は腕を一振りし、譲信の血を払うと背を向けて、その場から立ち去っていく。

 

 

譲信(………痛ぇ……これが死ぬ痛みかぁ……やれやれ……ひでぇ一日だぜ……)

 

 

最後に譲信は左腕に巻いてある時計と立ち去る紫の背中をジッと見ていた。

 

 

紫(少し時間はかかったけど…後の事は藍に任せておけば良いわね…さて、帰ろうかしら)

 

 

そして紫は帰るために、スキマを()()た。

それを倒れている譲信はニヤリとして見ており、そして時計のツマミに触れながら擦れた声で呟いた。

 

 

譲信「……()()たな………バ~……カ…」

 

 

 

ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…

 

 

 

紫「…………え?」

 

 

紫は信じられない物を見た…というような顔をしていた。

何故なら、自身が帰るために開いた…絶対に誰もいるはずが無いスキマの中で、バイクに乗った謎のライダーがエンジンを吹かせていたのだから。

 

 

紫「な……何者ッ!?」

 

 

紫は驚愕し、すぐに身構えた。

そして、そんな紫の背後から声をかける者がいた。

 

 

譲信「人と言うのは…追い詰められてこそ初めて、成長する生き物ってのは本当なんだな…」

 

 

紫「空条…譲信……!?有り得ない……傷が…塞がって……!?」

 

 

何と紫の一撃をくらい、穴の空いていた腹部は元通り綺麗な状態に戻り、飛び散った血も綺麗に消え去っていた。

 

 

譲信「そう…俺はちょっぴり成長したぜ。ホワイトスネイクのディスクで他のスタンド能力を埋め込めば、同時に二体のスタンドを使役する事ができる………新たな発見だぜ」

 

 

譲信は腹をさすりながら、言葉を続ける。

そして、その譲信をよく見ると、何やら管のような物が巻き付いていた。

 

 

譲信「“マンダム”原作とは違い俺は…10秒…それよりも長くなければ短くもなく…キッカリ10秒だけ時を巻き戻せる…そういう能力だ。」

 

 

紫「時を…巻き戻した……?」

 

 

紫は自分の手を見る。

すると、さっきまでこびり付いていた譲信の血が綺麗に消え去り、自身の移動した距離も大きく変わっていた。

言われなければ気付けない、変化が起こっていたのだ。

目を見開き、驚きを隠せないでいる紫に、譲信は言葉を続ける。

 

 

譲信「オイオイ…余所見してて良いのかぁ?紫さんよぉ…俺の“ボーン・ディス・ウェイ”は既にロックオンしているんだぜ?」

 

 

紫「…はっ!?」

 

 

言われて気付いた紫は、しまった!!と攻撃を仕掛けにすぐに後ろを振り向く。

 

 

ドォン…ドォン…ドォォォォォォォン!!

 

 

しかし紫のその一手は遅れてしまっていた。

既にボーン・ディス・ウェイに急接近されていたのだ。

そして

 

 

紫「うぅ!?目…目に血が…凍って……開かない!?」

 

 

突如吹いた冷たい風に乗って、紫の目に付いた譲信の血。

その血は瞬間的に凍り、紫の閉じた瞼は開かなくなる。

そして目の見えなくなった紫を、ボーン・ディス・ウェイはバイクの突進で弾き飛ばした。

 

 

紫「きゃぁぁ!?」

 

 

弾き飛ばされ、完全に何処まで移動したのか分からなくなる紫。

すぐに目を擦って、血を払いボーン・ディス・ウェイのいる方向を確認する。

しかし、そこには既にボーン・ディス・ウェイはおらず、音も消え去り、完全にボーン・ディス・ウェイの気配は消え去っていた。

 

 

紫(危なかった……あのまま追撃されていたら確実にダメージを………!?)

 

 

安心したのも束の間、紫は背後に別の…更に嫌な気配を感じ、振り向く。

するとそこには…

 

 

譲信「やれやれ…わざわざここまで吹っ飛んで来てくれるたぁ…親切で痛み入るぜ………」

 

 

星の白金(スタープラチナ)を構え、鋭い目つきで見下す譲信が静かに立っていた。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

 

 

 

紫「空条………譲信……!!」

 

 

譲信「出しな…どれか1発だけ…てめーの一番自信のある技をな………出そうとしたと同時に…スタープラチナをてめーに叩き込む……西部劇のガンマン風に言うなら……抜きな!!どっちが早いか試そうぜ………って奴だぜ……」

 

 

紫「………………っ!!」

 

 

これが17歳の人間の子供が出せる気迫なのか!?と紫は思わず息を呑んだ。

 

…二人の間に一瞬の…沈黙の間が空く………。

 

そして……動く!!

 

 

 

紫「廃線・ぶらり「オラァッ!!」…っ!?」

 

 

 

技を発動させようとした紫の頬に、スタープラチナの拳がクリーンヒットする…!!

 

 

 

譲信&スタプラ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ…オォーラァァーッ!!!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァァーッ!!」

 

 

 

スタープラチナの超怒涛のラッシュが炸裂した!!

完全に意識を失った紫は遠方へとぶっ飛ばされる!!

 

 

譲信「俺はコケにされたり…理不尽に殺されちまいそうになりゃあ…女だろーが容赦しねぇーんだよ……やれやれだぜ………だが今回は手加減しておいてやったぜ……!」

 

 

 

僅か数分にしか満たなかった攻防。

それを制した勝者は、勝利の拳を上げる代わりに、静かに帽子のツバをつまみ、やれやれとため息をついた。

 

 

 

TO BE CONTINUE……………

 



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⑤JOJOの世界

スタンド・クイズコーナー(答えは後書きに)

ヒント①20世紀少年

ヒント②体に被ると、すべてのどんな攻撃エネルギーでも地表に逃がしてやりすごす事ができる。

ヒント③第7部


 

【挿絵表示】

↑《空条 譲信》

 

 

ここは…………。

 

どのくらい時間が経ったのだろうか。

気が付けば目は覚め、辺りはもう少しで完全に日が沈むだろうと思われるくらい、薄暗くなっていた。

 

 

紫「うっ……」

 

 

紫は起き上がろうとしたが、身体中に広がるあまりの痛みに、上手く体を動かす事が出来なかった。

腕や足が変な方向に曲がり、あちこちの骨は砕け、片方の目は見えなくなり、内蔵もいくつか破れているのかもしれない。

それでも辛うじて生きていられたのは、流石は大妖怪…並々ならぬ生命力の持ち主であった。

 

 

妖怪1「グルルルルルル…」

 

 

紫「………っ!!」

 

 

そんな虫の息となった自分を野良の妖怪が見下ろしていた。

 

 

紫(うご……けない………マズいわね………このままじゃコイツに食われてしまう……!)

 

 

急いで身を守ろうとしても、スタープラチナのラッシュをくらった体のダメージは凄まじく、紫はもはや指一本とて動かせなかった。

 

 

紫(こんな所で……大妖怪である私が…こんな低級妖怪に………!!)

 

 

紫はギリリ…と奥歯を噛み締める。

こんな屈辱的な最後を迎えることになろうとは…自分を喰らおうと口を開き、顔を寄せてくる妖怪を睨みつけていた。

 

このまま喰われるのか……そう思っていた。

ところが次の瞬間、その妖怪の顔は目の前で歪んだかと思うと、物凄い勢いで横に吹っ飛んでいった。

 

 

 

 

 

譲信「ちょいとでも囓れると思ったかぁ?マヌケがーッ!!貧弱ゥ貧弱ゥ…モンキーが人間に追いつけるかーッお前はこのJOJOにとっての…モンキーなんだよ野良妖怪がぁ~!!URYYYYYYYYYYY!!」

 

 

空条譲信!!

何と信じられないことにこの空条譲信は、自分の命を奪おうとした相手を守っていたのだ!!

譲信の操る“クレイジーダイヤモンド”の拳を妖怪はくらったのだ!!

 

何を考えれば命を奪おうとした相手を守ろうと思えるのか…譲信の行動の意味を理解できない紫は絞るように声を出す。

 

 

紫「な……ぜ?」

 

 

紫の声が耳に入った譲信は、紫の方を振り向く。

 

 

譲信「もう目が覚めたんスか?丸々一晩は覚悟してたんスけどね……いやー早く済んで良かったぜ~」

 

 

良かった良かった…と譲信は帽子を被り直しながら呟く。

 

 

紫「質問に…答えなさい……!何故私を……守っている……!?」

 

 

痛みに耐えながら、紫は口調を強くした。 

 

 

譲信「何故守ってたか……だと?……ん~…そこんとこだがな、俺にも良く分かんねぇんだわ…」

 

 

紫「………は?」

 

 

譲信「マジで分かんねぇんだよ…まぁ強いて言うなら…だ。“何も死ぬこたぁねぇ”…ってやつだぜ!俺のせいで動けなくなってる所を狙われて死なれちゃあ、こっちも寝覚めが悪ィ訳だしな~」

 

 

紫「あなた………バカなのかしら……?」

 

 

譲信「WRYY!?そりゃヒデェよ!!……ま確かにバカだけども…ストレートに言うこたぁ無ぇでしょ!!」

 

 

譲信は少しだけ怒った顔つきになり、拗ねたように怒る。

そんな譲信の様子を見て、何だかバカらしくなってきたとばかりに、紫は思わずクスリと笑ってしまった。

 

 

紫「痛たた……」

 

 

そのせいで痛みに響き、紫は顔を歪める。

 

 

譲信「……痛ぇのは承知の上で悪ィんだがよぉ~ちょいと無理して俺の質問に答えてくれ………紫さん、今も俺を殺そうと思うかい……?」

 

 

紫「……………いいえ……負けた上に…借りまで作ってしまって今更殺すなんて……そんなことは出来ないわよ………」

 

 

譲信「そーかい、じゃ問題は無ぇな…クレイジーダイヤモンド!!

 

 

譲信はクレイジーダイヤモンドで紫の額に手をかざす。

すると、みるみるうちに紫の傷は塞がり、ダメージも完全に消え、痛みも何処かへと消え去った。

 

 

紫「え……?これは…!あれだけの傷が一瞬で!?」

 

 

譲信「正直言って焦ったぜ…スタープラチナの加減がもう少しヘタクソだったら、確実に御陀仏だったもんなぁ~…俺のクレイジーダイヤモンドは生きてさえいればいくらでも治せるが、死なれちゃあどーしようも無ぇんだ」

 

 

譲信は結構焦っていたのだ。

感情の爆発で咄嗟にスタープラチナでラッシュを叩き込んでしまった為、死なれたんじゃあないかと不安を抱いていたのだった。

 

 

紫「………あなた…怒ってないの?」

 

 

譲信「怒る?何のことだ?」

 

 

そんな譲信に対し、紫はまだ拭えない疑問をぶつける。

 

 

紫「私は…あなたを殺そうとしたし、能力も勝手に改変したのよ?」

 

 

譲信「あぁー…」

 

 

譲信は、他人にも見えるようになった自分のスタンドをまじまじと眺めた。

 

 

譲信「まぁ動悸が動悸な訳だからな、正義に乗っ取ってやった行動だから仕方ねぇよ。それに、スタンドがスタンド使い以外にも見えたり干渉されたりすんのも、それはそれで面白ぇかもだしな。」

 

 

それに結局生きてる訳だ。

この譲信、結果さえ良ければ何でも良いというくらいに、お気楽な思考をしている。

何より、紫の方が自分よりずっと賢く、多くの物事を考え、そして思い物を背負っている。

絶対自分よりも立派だから…そんな理由もあったする。

 

 

紫「……あなたに対する考えを…改める必要があるわね……。良いでしょう…空条譲信!八雲 紫の名の元に、幻想郷は…あなたを受け入れますわ…」

 

 

譲信はイレギュラーな存在ではあるが、自分が考えていた程、害悪な存在では無い…と紫は考えを改めていた。

持ってる力こそ危険かもしれないが、それを正しく扱うだけの器でもある。

ならばたった1年くらいなら、受け入れても問題は無いだろうと、紫はそう判断を下した。

 

 

譲信「や…や…やったぁぁぁぁぁぁ!!マジ!?マジ!?しゃぁぁぁぁぁぁ!!これで1年安泰だぜぇぇ!!」

 

 

監禁でもされるかと覚悟していた譲信は思わぬ展開に、歓喜しガッツポーズを決めたり飛び跳ねたりしていた。

 

 

紫「それと…あなたに借りを作った手前…この幻想郷にいる間はいつでもあなたの力になりますわ」

 

 

譲信「おぉー!!それは心強い!じゃ、何かあったら遠慮無く言わせてもらうぜ!」

 

 

やはり、この空条譲信は幸運で守られている。

ピンチからチャンスを掴んでみせた!

譲信は無事にこのハードな状況を乗り越えることができたのだ。

 

 

譲信「うげぇ!?痛てて…はしゃぎすぎて傷が…!!」

 

 

その時譲信は脇腹を押さえて、少し前屈みになった。

 

 

紫「傷?私にしたみたいに、治せば良いんじゃなくて?」

 

 

譲信を見ると幾つかの出血が見られた為、早く治せば良いのに…と紫は意見を述べる。

しかし

 

 

譲信「そうしたいのは山々なんだがよぉ…俺のクレイジーダイヤモンドは…自分の傷は治せねーんだ…」

 

 

紫「…………!!」

 

 

そう…クレイジーダイヤモンドは自分の傷だけは治すことが出来ないのだ。

それがルール…スタンドは必ずしも万能では無いのだ。

 

 

譲信「ま、これぐらいの傷ならすぐ治るだろ。それよりも時間がそろそろヤベーから俺ァ行くぜ?」

 

 

日没までもう残り僅か、譲信は急いで幽香の家へ向かおうとする。

 

 

紫「待ちなさい」

 

 

譲信「?」

 

 

そんな譲信を紫は引き止める。

まだ何か用があるのだろうか?

だが紫は何も喋らずに、ただスキマを開いて何処かへと繋げようとしていた。

 

 

譲信「あのォー…紫さん?」

 

 

紫「出来たわ。“太陽の花畑”へと繋いでおいたから、ここを通ればあっという間よ。」

 

 

今からではいくら急いでも、太陽の花畑へ辿り着く前に日が暮れてしまう。

いくら譲信といえど、まだ幻想郷に慣れていない者では夜の森は危険だ。

自分のせいで時間を取らせた…という思いもあって紫は気を利かせて、スキマを開いたのだ。

 

 

譲信「そんなことも出来るんすか!?……凄ぇなぁ~…わざわざありがとうございますホント………でも俺、なんつーかこの目玉だらけの空間が…トラウマってぇ言うんすかね?あの落下しながら目玉に見つめられてるってぇ感覚がちと恐ろしくて…………抵抗あるなぁ…」

 

 

指先はスキマの中に入れたり出したりするが、それ以上は足を前に出すことが出来ず、譲信は躊躇っていた。

そんな譲信を見て紫は、やれやれ…とため息をついた。

 

 

紫「ハァ…譲信、ちょっとあそこにあるアレを御覧なさい」

 

 

譲信「んぇ?どれっス?」

 

 

紫が何処かへと指を指しているので、その方向をジーッと見つめる譲信。

見るだけじゃ分からないので、紫の視線と同じになる位置へと移動していく。

 

 

紫「そこじゃない…もう少し……そう!そこよ」

 

 

譲信「うぇ!?」

 

 

そして突如、背中をドン!と紫に押され譲信は前によろける。

驚いて後ろを向くと紫が妖しく微笑んでいた。

 

 

紫「一名様ご案内~♪」

 

 

譲信「え………うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 

そのままの勢いで、譲信はスキマの中へと転がるようにして入っていく。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

まだ心の準備が出来ていなかった譲信は、悲鳴を上げながらスキマの中へと消えていった…

 

 

紫「ホホホホ…さて、それじゃ私も帰ろうかしらね」

 

 

最後に満足した紫は、別のスキマを開くとそこから何処かへと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコンコン………

 

 

室内用の観葉植物を見ながら、お茶をすすり一息を吐いていた時、少しうるさめのノックが玄関から聞こえてきた。

 

 

うるさいわね…一体誰なのかしら?死にたいの?…と少し不快感を抱きながらも、「待ってなさい」と言ってから幽香は玄関に向かう。

 

 

ガチャリ…

 

 

譲信「あー…ども!!へへへ」

 

 

ドアを開けるとそこには昼間出会ったお気に入りの人間…空条 譲信が立っていた。

昼間と比べて服もボロボロ、体からも幾らか血を流していた。

 

 

幽香「あら譲信じゃないの!フフフフフ♪…すっかり素敵な姿になっちゃって…何があったのかしら?」

 

 

譲信「素敵ィ…?いや、まぁ色々あって……」 

 

 

幽香「ふぅん………まぁ後で事情は聞くとして……そんな様子でここに来たって事はどうやら、帰れなかったみたいね?」

 

 

幽香は譲信を足元から頭の先まで、興味深げに眺める。

 

 

譲信「そっす……行く当てが無いんで迷惑じゃ無ければ、一晩だけで良いんで泊めて貰えないでしょうかね……?」

 

 

両手を前で合わせて、譲信は幽香に頼み込む。

 

 

幽香「良いわよ。歓迎するわあがりなさい。面白い話が聞けそうだしね…フフフ♪」

 

 

譲信「あ、ありがとうございますッ!!」

 

 

あなたは神だ!!と心の底から感謝しながら譲信は幽香の家へ「お邪魔しま~す」と上がる。

昼間もそうだったが幽香の家はなんだか花畑のような良い香りがしていた。

 

 

幽香「まぁ座りなさいよ。色々聞かせて貰おうじゃない?」

 

 

譲信が恭しくしていると、幽香から声がかかったので、昼間と同じく机をはさみ、正面向かい合うように座る。

 

 

譲信「ふぃーやっと一息つけるっすよ~…」

 

 

幽香「それは良かった…で?どんな面白い事があったのかしら?」

 

 

前のめりになり、机に肘をつき、組んだ手の甲に顎を乗せ、薄らと微笑みながら幽香は譲信の目を見つめる。

 

 

譲信「それがなぁ?聞いてくれよぉー!今日はエラい目にあったぜ!!」

 

 

幻想郷で出来た最初の友達?である幽香にこれまでの愚痴をかねて数時間の内にあったことを、譲信は語り出した。

 

 

妖怪共に滅茶苦茶絡まれた事、

 

人里でカモられた事、

 

魔理沙と喧嘩になった事、

 

程度の能力に目覚めた事、

 

紫に殺されかけた事、

 

スタンドが見えるようになった事、

 

 

語り上手な譲信は、時々ユーモアを含ませながら話すため、長い話でも幽香は時々微笑したり、相槌を打ったりしながら楽しそうに聞いていた。

 

 

 

 

譲信「とまぁ、こんな事があったんだぜ」

 

 

幽香「随分とお楽しみだったようねぇ…それにしてもあのスキマ妖怪が……ふぅん」

 

 

想像通り…いやそれ以上に面白い話を聞けて、幽香はご機嫌だった。

 

 

譲信「お楽しみじゃあ無いぜぇ!こっちは必死だったぞ~冗談抜きで!不良でもオタクメインな俺にとっては恐怖モンよ!!」

 

 

幽香「ちょっと待って…オタク?」

 

 

突如として出てきた予想外な言葉に、幽香は譲信に聞き直す。

 

 

幽香「オタクってあの気持ちの悪い種族の?」

 

 

譲信「種族じゃねーよ!?それと!気持ち悪いってのも偏見だー!!人間は人間!それ以上は種族に分かれたりしねーよ!!」

 

 

幽香「へぇ……?」

 

 

人里の人間を見てみればオタクなんて皆似たような者だ。

幽香は知らず知らずの内にそういう考えを持っていた。

 

だが譲信はどう見ても不良…といような分かりやすい見た目をしている。

多少うるさいが、幽香の知るオタク共のような根暗だったり陰気だったりした気持ち悪い人種には見えない。

 

 

譲信「良いか!?俺は確かに不良のレッテルを貼られちゃあいるが、自他共に認めるジョジョオタだ!!ジョジョこそ俺の全て!!この服もリスペクトして改造してあるのだ!!」

 

 

幽香「ジョジョが何かは知らないけど…服まで影響を受けるなんて重症ねこれ」

 

 

特徴的だが、イカしてる帽子とイカす服を着ていると思っていたら、よく分からないそれに影響を受けているのだと来た。

あーこりゃオタクだ…と幽香は納得する。

 

 

譲信「何ィ!?」

 

 

そんな幽香の言葉を聞いて、譲信は信じられないと言った表情になる。

 

 

譲信「“ジョジョの奇妙な冒険”を知らないだとぉ!?そりゃヤベーよ!!人生8割損してるぜ!?」

 

 

人生8割がジョジョで出来ている譲信からしてみれば、信じられない事だった。

 

 

幽香「8割って…大袈裟すぎじゃ無い?口を開けばジョジョしか出てこないわねあなた……呆れた。そんなくだらない事に没頭するくらいなら、花の世話をしてみたらどう?結構充実するわよ?」

 

 

もっと実用性のあることをしたらどうだ、と言わんばかりに幽香は意見を述べる。

だが

 

 

譲信「あんた……今………何つった……?」

 

 

幽香「何よ……?」

 

 

突如として譲信の纏う雰囲気がガラリと変わる。

一瞬だけ髪の毛が逆立っているようにさえ見えた。

 

 

譲信「あんた…今くだらねーって言ったのか!!あぁッ!?俺ァ1%も何も知らないってぇのにその物を貶すやつぁ許さねぇ!!ましてやジョジョを!!てめーのやったことはそれだ…アァーッ!?」

 

 

ガタリと音を立てて譲信は立ち上がる。

 

 

幽香「えぇー……」

 

 

いつもなら、人間のくせに生意気な…と不快感を抱く筈なのだが、いきなりの展開もあるし、気迫だとか勢いだとか、キレてる理由も理由なので思わず譲信に押されてしまう。

普段の幽香を知る者からしてみれば、レアな光景だった。

 

 

譲信「てめーのやったことは法律にも触れねぇし、社会的にも圧倒的無罪だぜ…しかしな!!この空条譲信の前では有罪だ!!だから…俺が裁く!!ザ・ワールド・オーバーヘブン!!

 

 

譲信はかなりぷっつんきていた。

爆発的な精神パワー状態で、ザ・ワールド・オーバーヘブンを発現させる。

その為、現れるだけで圧倒的な威圧感が放たれる。

 

 

幽香「フフフ…フフフフフフ♪やろうって言うのね!?良いわよ!!もう…我慢出来るわけ無いもの!!楽しませて!?」

 

 

そんな威圧感を身に受けて、すっかり興奮してしまった幽香もガタリと音を立てて立ち上がる。

まさに、一子即発しそうな状況だった。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

そして譲信が叫ぶと、ザ・ワールド・オーバーヘブンは両腕を高く上に上げた。

構えなのだろうか、だが何かを仕掛けてくる!

そう思った幽香も身構える。

 

ついに、最高の戦いが始まる!!

…かのように思われた。

だがしかし!

 

 

 

ドサリ……

 

 

 

幽香「あら…?」

 

 

突如としてザ・ワールド・オーバーヘブンの手から机に、何かが落ちる。

一体何なのか…気になって幽香がそれを見てみるとなんと…

 

 

幽香「“ジョジョの奇妙な冒険”?」

 

 

何と、“ジョジョの奇妙な冒険”第一巻がそこにはあった。

 

 

続けて続けて、さらに漫画が机の上に積み上げられていく。

そして、あっという間に机の上は“ジョジョの奇妙な冒険”シリーズで一杯になった。

予想外な展開に幽香が目をパチパチさせていると、譲信が口を開く。

 

 

譲信「“第一部・ファントムブラッド”、“第二部・戦闘潮流”、“第三部・スターダストクルセイダーズ”、第四部・ダイヤモンドは砕けない”、“第五部・黄金の風”、“第六部・ストーンオーシャン”、“第七部・スティールボールラン”、“第八部・ジョジョリオン連載途中”!!ジョジョを貶すならばこれを全て読んでからにするんだなッ!!」

 

 

幽香「はぁ?何で私がそんな…」

 

 

人間の書いた書物…しかも子供が読むような漫画…幽香は自分が読むに値する程でも無いものだと断ろうとした。

しかし、そんな幽香の目に入ってきたのは、独特なポーズをとる魅力的なキャラクターの表紙。

引きつけられるようなデザインのスタンド。

 

読みたい!何だこれは!?この感覚は!?凄く読みたいぞ!?

幽香は思わず「一冊くらいなら…」と積み重なる漫画の山から適当に一つ取り上げる。

それは、“ジョジョの奇妙な冒険”の第三部にあたる27巻だった。

 

 

譲信「ほう…いきなり伝説の戦いを手に取るか…お目が高いぜ…!」

 

 

幽香「つまらなかったら破り捨ててやるわよ」

 

 

どうせお子様向けのくだらないお話しだろう…と軽い気持ちで幽香はページをめくり始めた。

 

 

ペラ…ペラ…ペラ…

 

 

最初はふーん…と言ったげなどうでもよさそうな表情で読み進める。

しかし、読んでいくに連れ幽香は食い入るように漫画を読み出す。

 

 

花京院の死亡…

 

瀕死のジョセフ…

 

何処ぞへと消えているポルナレフ…

 

承太郎とDIOの圧倒的精神力のぶつかり合い…

 

スタープラチナとザ・ワールドのラッシュ比べ…

 

そして時は止まる…

 

 

幽香は27巻を最後まで読み終える。

そして

 

 

幽香「28巻はッ!?」

 

 

譲信「ここだぜ」

 

 

幽香「よこしなさい!!」

 

 

譲信の手から引ったくるように奪い取ると、28巻をさっきよりも食い入るように読み始める。

 

 

幽香(面白い……これが外の世界の…漫画…!!こいつがオタクになる理由も…分からなくは無いわね!)

 

 

三部のラストの最終決戦。

脳に焼き付くような強烈なセリフが飛び交い、衝撃の決着が!

 

28巻を読み終えた幽香は、第一部の第一巻から手に取り、読み出す。

 

 

譲信「…気に入ったみたいっすね~」

 

 

幽香「!!……そ、そんな事無いわよ!!あんたが全部読めと言ったから読んでるだけで……別に気に入ってなんか無いわよ!!」

 

 

幽香は慌てたように顔を真っ赤にして怒鳴る。

繰り返し言うが、普段の幽香なら絶対に有り得ない光景なのである。

そんな幽香に譲信は静かに告げる。

 

 

譲信「それが…“ジョジョの奇妙な冒険”…俺の程度の能力でもあり、スタンド能力の全てでもあり……荒木マジックだ…!!」

 

 

幽香「……ッ!!」

 

 

荒木飛呂彦がどういった人間かは風見幽香は知らない。

しかし、これ程の漫画を描くなんてただ者ではない!

もう人間越えてるんじゃないか…とまで思えてくる程の衝撃があった。

 

 

譲信「ようこそ…ジョジョの世界へ」

 

 

譲信はニヤリと笑った。

 

 

幽香「ふぅ…今日中には読めそうにないからしばらく借りておいて良いかしら?」

 

 

譲信「いや上げますよそれ。プレゼントです」

 

 

幽香「……じゃあ遠慮なく…」

 

 

実は欲しいと思っていたので、願ったりだったりする。

面白い以外にもこれを読めば、譲信の能力を理解する事が出来るのでは無いか…とまで考えられるからだ。

 

 

幽香「それよりそろそろ晩御飯の準備よ。譲信、あなたは私が作ってる間に体を洗ってきなさい。汚れすぎよ」

 

 

譲信「りょーかいっす!」

 

 

明日の暇なときに読もう…と幽香は漫画を片付けてから料理に入る。

思えば誰かの為に作るなんて初めてかもしれない。

この自分がまさかこんな事をするとは……

まぁそれも悪くは無いか…と幽香はクスリと笑った。

 

その間に幽香に言われた通りに、譲信は体を浴室で奇麗に洗う。

スタンドを使って背中も丁寧にゴシゴシと。

 

 

譲信「思えば女の人の家に泊まるなんて初めてだぜ…いや妖怪かぁ…」

 

 

風呂から上がれば、美味しそうな料理が並べられていた。

良い匂いに、思わず腹が鳴ってしまう。

そんな譲信を見て、面白そうに幽香は笑っていた。

 

 

譲信「ぅ…ぅンマァァァァァァァァァァァァァイ!?」

 

 

幽香の作った料理は絶品だった。

腹ぺこと相まって、譲信はあっという間にペロリとたいらげてしまう。

 

食後は、幽香から幻想郷についてのあれやこれやら聞いたり、譲信が自分の世界でのあれやこれやらを話したりと、賑やかな時間が過ぎていく。

だが問題は就寝時に起きた。

 

 

譲信「ベッドが一つしか無いぃぃ!?」

 

 

幽香「えぇ。私は一人暮らしだから」

 

 

幽香は何てこと無いように答える。

 

 

譲信「俺…床で良いっすわ」

 

 

幽香「駄目よ。客人を床で寝かせる訳にいかないでしょ?」

 

 

譲信「だ…だからって幽香さんが床で寝るなんてもっと駄目だろぉ!?」

 

 

幽香「当たり前よ。私を床で寝かせようなんて言うなら殺すわよ?」

 

 

譲信「じゃあどうしろと……」

 

 

幽香「隣で寝れば良いじゃない」

 

 

譲信「あぁー…その手があったか……って、えぇ!?」

 

 

そこまで話しが進んだところで、譲信はビックリして声を上げる。

今……何と言った!?

隣で寝ろだと!?

なんか色々とマズいんじゃあ無いのか!?…と譲信は一瞬そこまで考える。

が、しかし

 

 

譲信(あ…幽香は妖怪だから問題ねーわな…)

 

 

人間の女性ならこれはアウトだっただろう。

しかし、幽香は妖怪。

見た目こそ人間の女性と変わらないが、生物としては全く違う別物だ……と考えて良いだろう…多分。

 

 

幽香を見てみれば本人も気にしてないようだし、全然セーフだ!と思った譲信はそうすることにした。

 

 

幽香「そうそう…変な所触ったら…分かってるわね?」

 

 

譲信「な…何にもしないっすよ……!!」

 

 

布団に入る前、幽香にそう言ってギロリと睨まれ、譲信は思わず震え上がる。

果たしてこれは妖怪としての恐ろしさなのか…女としての恐ろしさなのか…譲信には分からない。

 

何なら間にスタンドでも出そうかと提案しようと思ったが、流石にスタンドまで入れるスペースが無かった為、却下となった。

 

それに今日は滅茶苦茶疲れた。

おまけに明日から色々と忙しくなる。

 

 

譲信「幽香さん、おやすみなさいッス」

 

 

幽香「えぇおやすみ…」

 

 

直後、すぐに睡魔に襲われ眠りの世界へと入っていく。

今日は本当に色々あって疲れた。

でも久しぶりに楽しい一日だった。

俺もいよいよ奇妙な冒険をする事になりそうだ…

薄れ行く意識の中で、譲信は静かにニヤリと笑った。

 

 

 

TO BE CONTINUE…………

 

 




正解は  “20th センチュリー・ボーイ”でした。
分かった人は、ちゃんと読んでますね。

このシリーズやってこうと思います


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⑥無意識少女現る!

スタンドクイズ②(答えは後書き)


ヒント①ジョースター家

ヒント②念写

ヒント③第三部





起きなさい…!いつまで寝てるつもり?

誰かが俺を起こす声が聞こえてきた。

やかましぃッ!!俺は朝は弱ぇーんだ!!…と言いたいところだが、眠すぎて怒鳴る気力すら出ねぇ。

 

 

譲信「うぅーん?……後一時間だけぇ……」

 

 

そう言ったら、急に寒くなる。

どうやら掛け布団を剥がれたようだ。

今すぐ起きろ!ってぇ声が聞こえてくる。

 

 

譲信「待ってくれぇ……オフクロ…ムニャムニャ…」

 

 

幽香「誰があんたの母親よ…!!」

 

 

幽香の鳩尾パンチが譲信に奇麗にヒットした。

 

 

譲信「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 

幽香「朝食の用意が出来たからさっさと来なさい。」

 

 

顔面蒼白で汗ダラダラの譲信に短くそう告げると、幽香はさっさと行ってしまった。

幽香にとっては軽く小突く程度だったが、譲信にとっては人間の全力近いパンチをくらったようなダメージだ。

流石…妖怪……!!

痛みで眠気はとんだが、今度は命の危機的なあれで寝てしまいそうだった。

 

 

譲信「そーいやぁ…俺ぇ、幻想入りしてたんだっけ……はずかぴー……」

 

 

恥ずかしさでも顔が赤くならない程に、そりゃあもうダメージは凄かった。

しかし、数分後には痛みも何処かへと消え去り着替えと洗顔を済ませた譲信は、幽香と共に朝食をとっていた。

 

 

譲信「モグモグ………んめぇ!!元気でてくるぜ」

 

 

幽香「フフ♪気に入って貰えて良かったわ。マズいとか言ってたらあんたを肥料にしてたけれど。フフフフフ♪」」

 

 

譲信「ハ…ハハ…わ…笑えねぇっすよ……モグモグ」

 

 

幽香「それで…今日はこれからどうするつもりかしら?」

 

 

譲信「んー…まぁ、まずは人里で働き口やら住み処やら見つけようかと思ってるぜ。俺は人間だからよ、それに日常はできる限り普通で平凡な暮らしをしたいんだわ。」

 

 

幽香「なら丁度良いわね。今日は私も人里へ用事があるのよ。あんた一人じゃまた何かに絡まれそうだし、特別に一緒に行ってあげるわ」

 

 

譲信「モグモグ…そりゃ有難い!!モグ…雑魚妖怪なら兎も角よぉ~モグ…変な魔法使いとか、白黒の魔法使いとか、~なのぜ!口調の魔法使いとかに絡まれるのは怠ぃからなぁモグモグ………」

 

 

幽香「あんたが不注意なだけよ。もっとしっかりなさい。」

 

 

譲信「心配しすぎだぜぇ?これでもしっかり者よ!!」

 

 

幽香「心配なんてしてないわよ。ただ私に恥をかかせないで欲しいだけ…仮にも私に一勝してる奴が、その辺の雑魚にやられたんじゃ私の立場ってものが無いのよ…分かるわね?」

 

 

譲信「分かってるって♪要は負けなきゃあ良いんだろ?大丈夫だぜ。俺は戦ったとしても誰にも負けんからな!!」

 

 

幽香「ふぅ~ん?良いこと言うじゃない?…でも残念ながらあんたは次私と戦ったときには負けるから覚悟してなさい」

 

 

譲信「次もやるのかよぉ?」

 

 

幽香「当然でしょう?前回のは全く本気なんて出せてなかったから消化不足なのよ?」

 

 

譲信「へ~?でもそりゃ俺も同じだぜ?これっぽちも本気出せなかったなぁ~」

 

 

幽香「その割には結構ビビってたわよねぇ~?」 

 

 

譲信「幽香さんだって焦ってたくせに~」

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

 

二人の間に、オーラのようなものが現れ、景色が歪んだように見え出す。

煽り合いが成立するのは互いの実力を認め合ってる者同士。

幽香にとって譲信は数少ないライバルと言える存在だった。

譲信からして幽香とは、ただの喧嘩好きな女…レディースみたいな奴であった。

 

 

幽香「…今日は我慢してあげるわ…あんたの傷が完治した時楽しませてもら………あれ?何か…完治してない?」

 

 

譲信「お、気付きましたぁ?すごいっしょ?」

 

 

人間の再生能力だとあれだけの傷を完治するには一ヶ月はかかるはずだ。

しかし、一晩経つだけで譲信の傷は完全に奇麗に消えている。

そして幽香はふと、“ジョジョの奇妙な冒険”を整列させてある本棚に目をやる。

あそこに、何か答えがのってるのでは?……と。

幽香の視線の先に気付いた譲信は、ニヤリとして答える。

 

 

譲信「ヒントは第四部っすよ。」

 

 

幽香「第四部……ね」

 

 

正解を先に伝えておくと、譲信が回復に使ったスタンドはハーヴェストハイウェイスターだ。

ハーヴェストで大量の野良妖怪を誘導し、集め無力化し、一気に養分をハイウェイスターで吸いとる。

自動で作業させていたので、朝になればすっかり元通りだったという訳だ。

 

 

譲信「(異変扱いにならなきゃあ良いがな)ご馳走様でした」

 

 

幽香「お粗末様でした…」

 

 

食事を終えると譲信は後片付けは俺がやる、と食器洗いを引き受ける。

ついでに星の白金(スタープラチナ)の扱いにも慣れておきたい為、スタープラチナを出して作業する。

幽香はその間、第三部を読みつつ譲信の出しているスタープラチナをチラチラ見ていた。

 

 

譲信「やっぱ扱いが難しいぜ…かろうじて皿洗いぐらいなら問題はねぇが……やれやれだぜ」

 

 

最強のスタンドを使いこなすには、まだまだ修業が必要だった。

原作でもスタープラチナは最初、本体の言うことを聞かずに、射程距離無視して行動している。

というか、射程距離無視ってのは……ヤバイんじゃないの?…というのがジョジョラー達の議論で度々上がる議題になるのだ。

だがまぁ仕方がない。

スタープラチナは何だかんだ訳の分からないスタンドなのだ。

射程距離無視、ラスボスと同じ能力には目覚めるし、指も伸びる。

本当に訳が分からないのだ。

 

 

譲信「よし皿洗い完了…と。」

 

 

幽香「終わったのね?」

 

 

スタープラチナを引っ込めた譲信を見て、終わったと判断した幽香は、漫画にしおりを挟み本棚へ戻す。

 

 

幽香「終わったならさっさと準備なさい。人里へ行くわよ」

 

 

譲信「ウッス!」

 

 

言われて譲信は、スーツを出現させる。

譲信はジョジョ関連ならありとあらゆる物質を無制限に生成する事ができる程度の能力らしい。

何故分かるのか…というのは夢の中…デスサーティンの世界で色々と実験していたからだ。

お陰で発動のコツを掴め、ジョジョの作中で登場する服なら容易に作り出せる。

 

今日の譲信の服装は、ジョジョ第五部、ヒットマンチームのプロシュートの衣装だった。

 

 

幽香「悪くは無いわね」

 

 

譲信「そりゃそうっすよ!じゃ、いきましょーか!」

 

 

プロシュート兄貴のナイスファッション!

身に纏った譲信は、今日一日のやる気がムンムン湧いてきていた。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢《人里》♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

???「~♪」

 

 

大勢の人々が行き交う中を、一人の幼女が機嫌良くスキップしていた。

 

 

???「わぁー♪」

 

 

ふと、幼女の足が止まったかと思えば菓子屋の店頭に置いてある饅頭に目が釘付けになっている。

そして我慢出来なくなったのか、幼女は饅頭を一つ手に取って頰張る。

店主の男は目の前で、商品を勝手に食べられているのに、まるで何の反応も示していなかった。

 

 

???「おいしかった~エヘヘ♪」

 

 

幼女はペロリと饅頭をたいらげると、そのまま何事も無かったかのようにまた、人里をブラブラと見て回る。

途中で色々と、店先の物を勝手に取ったりするが、誰もが一切の何の反応も示さないのだ。

まるで、幼女が見えていないかのように。

 

 

 

数分歩き続けて、またお腹が空いてきたのか幼女は再び、食べ物は何処かに無いかなと辺りをキョロキョロ見回しながら探し始める。

 

 

???「あ!」

 

 

すると、どうだろう。

団子屋の店先でみたらし団子を頬張っている男がいた。

何やら幻想郷では珍しいデザインのピシッとした服装に、Pマークのネックレスをかけている。

 

だがそんな珍しい服装よりも幼女の目に入っていたのは、男のすぐ側に置いてあるみたらし団子の乗った皿だった。

まだ数本みたらし団子が残っている為、恐らく注文されたてのように見える。

 

お腹の空いていた幼女は男の隣まで駆け足で寄ると、皿からみたらし団子を一本勝手に取り、頬張る。

 

 

???「モグモグ…♪」

 

 

やがてみたらし団子を食べ終えた幼女は、満足したようにニコリと笑うと、また何処かへとブラつきに行こうとした。

ところが

 

 

???「きゃ!?」

 

 

譲信「ちょい待たんかーい!」

 

 

みたらし団子を食べていた男、空条譲信に腕を掴まれてしまった。

 

 

譲信「人の団子を勝手に食って礼も言わずに去るとは、良い御身分じゃあないかお嬢ちゃん?お母さんは何処にいるんだ?」

 

 

一部始終を狐につままれたかのような顔で見ていた譲信だったが、立ち去ろうとする姿を見せられて、すぐに逃がすまい!と気持ちを切り替える。

譲信に捕まった幼女は怯えるわけでもなく、むしろ何故かキラキラした目で譲信を見ていた。

 

 

???「すごいすごーい!お兄さん私のこと見えるんだー?」

 

 

譲信「あーン?質問を質問で返すなッ!って言いたい所だが…そりゃどーいう意味だよお嬢ちゃん?お兄さんをバカにしているのかな?」

 

 

譲信はバカなのは事実だが、幼女にバカにされるほどバカでは無い!というプライドくらいはまだある。

若干ムスッとしながらも譲信は幼女の腕から手を離す。

手を離された幼女は譲信の目の前まで移動する。

 

 

こいし「私は古明地 こいしっていうの!お兄さんの名前はー?」

 

 

譲信「空条 譲信だ。…それよりなぁ?俺はお嬢ちゃんが俺の団子を勝手に食った件についてお話ししたいんだがなぁ?」

 

 

こいし「私の姿はね、普通の人には見えないんだよ?お兄さんはどうして私のことを見れるの?」

 

 

こいしは、譲信の言葉なんて無視して一方的に話し掛けてくる。

こいつは無駄だ…と悟った譲信は仕方なく団子の件は水に流す形で、こいしの話に付き合うことにした。

 

 

譲信「知らね~よ。てかよぉ普通の人には見えねーって本当か~?嘘ついてないよな~?」

 

 

譲信にはこいしの姿は普通に見える為、どうしても怪しく思えて仕方なかった。

 

 

こいし「あーお兄さん信じてない!じゃあ証拠見せてあげるね!」

 

 

譲信「おーおー見してみろ~」

 

 

言うなりこいしは近くを歩いていた男の本へと駆けていく。

何をするんだぁ?と少し興味を持った譲信はこいしを観察する。

 

こいしは男の元まで来ると、男の胸ポケットに入っていたサイフを抜き取り、そのまま譲信の元まで帰ってきた。

 

 

こいし「ほらー盗ってきたよ!これで信じるでしょ?」

 

 

譲信「おー確かに目の前にいるのに何の反応も無かったな!よくサイフを盗ってきました偉い偉い………って偉くねぇよ!?なに盗ってきてんだぁ!?」

 

 

譲信がツッコミを入れるとこいしはきゃっ♪きゃっ♪と楽しそうに笑う。

 

 

譲信「今すぐ返して来なさい!」

 

 

こいし「やーだー!面倒くさ~い!」

 

 

言うことを聞かないこいしに譲信はやれやれ…とため息を漏らした。

 

 

譲信「しゃーねぇなぁ…ゴールド・エクスペリエンス!!

 

 

譲信はゴールド・エクスペリエンスにサイフを殴らせ、生命を与えサイフをハエに生まれ変わらせる。

ハエになったサイフはそのまま男の胸ポケットまでブーン…と飛んでいくと、また元のサイフに姿を変えた。

 

 

こいし「すごいすごーい!!何今のー?」

 

 

それを見たこいしは更に目をキラキラさせ譲信に近寄る。

 

 

譲信「何ってスタンドだよスタンド。それよりよぉ~…お嬢ちゃんって人から見えねーって事はよぉ~…何かの能力持ちの妖怪か何かかよぉ~?」

 

 

こいし「せいかーい!!私はさとり妖怪で、“無意識を操る程度”の能力を持ってるの!お兄さんよく分かったねー」

 

 

こいしは小さな手のひらでパチパチと手を叩く。

近くを通りかかる通行人には譲信が独りでに喋っているように見えていた為、自然と譲信を避けるようになっていた。

 

 

譲信「さとり妖怪~?やっぱ妖怪かよぉー……ったく!俺は普通の人間さんには絡んでもらえねぇのかぁー?……妖怪に絡まれるなら幽香と分かれなきゃあ良かったぜ…トホホホ」

 

 

人里に着くなり、後は好きにしろ…ということで幽香と離れて譲信は別行動をとっていた。

ある程度観光が終わって一息ついていた所に、このこいしは現れたという事だ。

 

 

こいし「トホホホー」

 

 

譲信「真似してんじゃあねーよ!」

 

 

こいし「キャハハハハ♪」

 

 

譲信「やれやれだぜ………」

 

 

ウンザリした譲信はさっさと勘定を払って店を出て行く。

が、しかし

 

 

譲信「WRYYY!?何でついてくんだぁ!?」

 

 

こいし「お兄さん面白いからー♪ウリィィィィ!」

 

 

こいしに後をピッタリとついてこられてしまっていた。

これなら見えないフリでもしておいた方が良かったじゃあないか、と譲信は今になって後悔し始めていた。

 

 

譲信「勘弁してくれよぉ…後ウリィィィ!じゃなくてWRYYYY!な?」

 

 

こいし「WRYYYYYYYY!!」

 

 

端から見れば幼女に変なことを教えてるヤベー奴にしか見えないが、幸いこいしは他人には見えない為、譲信が独りでに奇声を発しているようにしか見えなかった。

まぁ…それはそれでヤベー奴なので救いとは言えないが。

 

 

こいし「ねぇねぇー!お兄さん何して遊ぶ?」

 

 

譲信「遊ばねぇーよ!俺は忙しいんだよ~!」

 

 

こいし「へぇ~?何してるのー?」

 

 

譲信「スタンドを使って出来る商売は無いかってアイデア捜しをしてんの!今の所はハーヴェストを使っての小銭集めぐらいしか閃いて無いがよぉ~」

 

 

こいし「よく分かんなーい♪」

 

 

譲信「あぁそうかい。それじゃあお家に帰って遊んで…」

 

 

こいし「でも面白そうだからついてくー♪」

 

 

譲信「け…結局そうなるのね…?」ズッコケ

 

 

譲信は、ついてないぜー…といった表情でガックリと項垂れた。

それとは対照的にこいしは満面の笑顔を浮かべていた。

 

 

男1「知ってるか?人里の近くにまたあの大きな猿の妖怪が現れたらしいぜ?」

 

 

譲信「……ん?」

 

 

そんな時、譲信の耳に人里の住民達の会話が聞こえてきた。

内容的に何やら面白そうな話でも聞けそうだと、そっちに注意を向ける。

 

 

男2「あぁ知ってるよ。この前うっかり外に出て行ちまった奴がやられたって話だったよな?」

 

 

男1「そうそう…あの妖怪ってやけに凶暴だからさ。おまけに夜になると度々咆哮が聞こえてきて、眠れないって奴もいるらしいぜ?」

 

 

譲信(大きな猿の妖怪……か……困ってるみてーだな)

 

 

男2「困ったもんだ…博麗の巫女さんなら何とかしてくれるのかね?」

 

 

仕事の休憩時間なのだろうか…作業服っぽいのを着た二人が会話している所へ、また別に一人、同じ作業服を着た同僚の男がやってきた。

 

 

男二人の同僚「やめとけ!やめとけ!あの巫女は異変じゃないと付き合いが悪いんだ」

 

 

男1&2「ど、同僚!!」

 

 

譲信(な…何ィィィ!?)

 

 

男二人の同僚「異変じゃないけど妖怪を退治してくれ、って言っても聞いてるんだか聞いてないんだか…

『博麗 霊夢』17歳 独身。

巫女として異変解決の仕事はまじめでそつなく、こなすがそれ以外は今一つ情熱の無い巫女…

なんか幼さの残る顔をしながらお姉さんびた雰囲気をしているため、一部の界隈から人気があるが、幻想郷の賢者 八雲 紫からは大体毎日お小言をもらう癖に、里の人達からはお賽銭は全く貰えず、貧しい生活を強いられているんだぜ。

悪いやつじゃあないんだが…これといってやる気が無い…ぐーたらな巫女なのさ。」

 

 

男1「し…知りすぎだぜ同僚…」

 

 

譲信(成る程なぁ……霊夢ってそういうキャラなのか)

 

 

めっちゃくちゃ丁寧で分かりやすい紹介に、霊夢がどういう奴なのか完全に理解できた譲信。

というかアイツ同い年のくせに貧乏だったのか…と何だか同情の気持ちまで湧いてきていた。

 

 

譲信(いや…待てよ…!?)

 

 

ところがここで、空条譲信に天啓来たる!!

脳の中心に、ピンポイントで雷が落ちてきたような、衝撃的でナイスなアイデアが降りてきたのだ!!

 

 

譲信「(これは……)いけるぜ……!」

 

 

こいし「……?どこいくのー?」

 

 

譲信はニヤリ!と笑うとその男達の元へと走り寄っていく。

 

 

譲信「話は聞かせて貰ったぜ!!お困りのようだな。その妖怪…この空条譲信なら退治してやれるぜ!」

 

 

ジョルノジョバーナのジョジョ立ちで、譲信は現れる。

 

 

男1「な…何だ君は!?」

 

 

男2「おいまて…君、その話は本当かね?」

 

 

譲信「EXACTLY!!この空条譲信…やると言ったらやる男だぜ!」

 

 

いきなり現れて胡散臭い…しかしこの空条譲信には…やると言ったらやる…凄味がある!!

男達は譲信から溢れる凄味に押されてしまう。

 

 

譲信「だが…当然危険のまかなう事だ…タダという訳には行かねぇなぁ……」

 

 

男2「何だ…?まさか金を取るつもりか?言っとくが、出来るかどうかも怪しいやつには…」

 

 

譲信「まてまてまてまてまて…話はまだ続いてるじゃあないか…落ち着けって。」

 

 

金の話か!と食いかかる男に対して、譲信は手を前にストップ!とやり落ち着いて話を続ける。

 

 

譲信「実は俺、何でも屋を起業してましてね?(嘘)まだ出来たてで知名度もない訳なんだが…俺の仕事は基本後払い制で、やるといったら何でもやってのけるスタイルなんだ。でもまぁ、残念ながら実績も無いなら知名度も無い……そこで!今回は報酬を金の代わりに、俺の知名度を広げる事と、簡素な造りでも良い…仕事場に出来るような建物を紹介して欲しいんだ………勿論、俺があんた達の依頼を達成できた後……で良いが……どうだい?」

 

 

譲信は男達の顔色を窺う。

ぶっちゃけその場での閃きだったが、この機会を逃せば他に何があるのかも分からなかった為、譲信は賭に出たのだ。

 

 

男1「ど…どうする?確かにこの兄ちゃんならやってくれそうな…気がするが?」

 

 

男2「俺は任せようと思う。やれるなら…やるだけやって見せて貰おうじゃ無いか………おい兄ちゃん!安心しな!俺達は不動産屋で顔も少しは広い……兄ちゃんの望む報酬はきちんと用意してやれるぜ…だが依頼を達成できたら…の話だ……やれるかい?」

 

 

男は仕事人の目で譲信を睨む。

この男達は…信用できる!と思った譲信はまたニヤリ!と微笑んだ。

 

 

譲信「へへ…出来ねえ事は言わねーぜ!」

 

 

男2「なら依頼しよう何でも屋の兄ちゃん!大きな猿の妖怪を…退治してくれ!!」

 

 

譲信「OK!!任しときな!!」

 

 

譲信と男は固い握手を結ぶ。

何故だが二人とも、コイツとなら契約書では無く、心とこころの約束で充分だと、そう確信した。

 

 

譲信「さて…それじゃ早速行くとするか」

 

 

こいし「おー!♪」

 

 

譲信「………ついてくるのか……」

 

 

譲信は呆れながら、こいしを見ていた。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢《人里離れの森》♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

幽香「……で?今はその猿を探していると?」

 

 

譲信「EXACTLY…俺のこれからの収入が掛かっていると言っても過言じゃあないこの仕事…絶対に成功させなくちゃあいけないからな」

 

 

数時間後、森の中で帰り道に偶然通りかかった幽香にこれまでの事情を譲信はおおまかに説明していた。

ちなみに、こいしの姿は幽香にも見えていないようだったので話していない。

こいしはその間、大猿の妖怪を探して近くをウロウロしていた。

 

 

幽香「ふーん……好きにすれば良いけど…あまりやたらと力を振るわない事ね……あなたの言うスタンド能力…五部までざっと見た感じ…幻想郷でもかなり危険扱いされる力よ?あまり調子にのってるとまた、あのスキマ妖怪に何かされるわよ?」

 

 

譲信「心配無用っすよ!デカイことやらかす時は事前に許可貰うようにしようと思うからさ、まぁ上手いことやるぜ!」

 

 

幽香「上手いこと…ねぇ?」

 

 

果たしてコイツにそんな器用な事が出来るのだろうか?

全く信用出来ない譲信を幽香は怪しんだ目で見ていた。

 

 

幽香「ま、私はもう帰るから…後は上手くやりなさい。それじゃ」

 

 

譲信「おつかれ様っス幽香さん!ここまで有難うございましたー!!」

 

 

家へと向かって帰って行く幽香に向かって、譲信は大きく手を振って見送った。

世話になりっぱなしだったから、ある程度生活に慣れたらいつか幽香に恩返ししようと、譲信は考えていた。

 

 

譲信「さて…と。おーいこいしー!!何かそれっぽいの見つけたかー?」

 

 

こいし「ねぇ!ねぇ!これって何かなー?」

 

 

譲信がこいしに声をかけると、こいしが何やら見つけていたようなので譲信はすぐにこいしの元へと向かう。

 

 

譲信「これは…?」

 

 

そこには何やら果物の種のような物が散乱し、地面は不自然な形で土を被っていた。

 

 

譲信「んー……こいつは足跡を消した後と…食事の後か?……結構頭良さそうじゃん……」

 

 

そう言って譲信は上を見上げて何やら探し出始める。

 

 

こいし「何探してるのー?」

 

 

譲信「んー?いやなぁ…続いてる足跡の間隔と大きさからもしかしたら…とな…………あ!あった見て見てろ、こいし!」

 

 

こいし「何何ー?」

 

 

譲信が指差したそこは、不自然な形で折れた木の枝がブラブラと木にぶら下がっていた。

 

 

譲信「枝をかき分けた後だ。相当でけぇ奴だぜこりゃあ……しかしまだ大猿とは限らねぇ…もっとよく観察しねーとな。」

 

 

譲信は引き続き、注意深く観察を始める。

すると、近くの木の枝に毛が引っかかっているのを発見した。

 

 

譲信「毛……だな。これがあれば後は余裕で見つけられるぜ…」

 

 

こいし「そうなのー?あ、ひょっとしてお兄さんの能力の…えーと……スタンド!!スタンドを使うの?」

 

 

こいしはワクワクして譲信に尋ねる。

実はこいし、一回ゴールド・エクスペリエンスの姿を見て以来、スタンドには興味津々なのだ。

 

 

譲信「まぁな。だがチラッ……とだぞ。キング・ナッシング!!

 

 

すると、体全体がパズルビースで出来た人型のスタンドが現れる。

 

 

譲信「“キング・ナッシング”…遺留品さえあればそこから臭いを視ることが出来、追跡する事が出来る…そういう能力だ。俺がコイツを使う場合、少しだけのヒントでも辛うじて追跡する事が可能だぜ。さぁ…追うぜ?こいし!」

 

 

こいし「うん!スタンド面白~い♪」

 

 

譲信とこいしはキング・ナッシングの歩く後をついてく。

そして一つの洞穴の前まで辿り着いた所で、譲信はスタンド能力を解除した。

 

 

譲信「どうやら…ここにいるらしいぜ。お猿さんがな」

 

 

こいし「すぐ見つかったね?」

 

 

譲信「まぁな!…だがここからが本番だぜ?」

 

 

そう言うと、譲信は洞穴の中に向かって思いっきり叫ぶ。

 

 

譲信「お~い!!誰かいませーんかー?」

 

 

すると、奥から唸り声と共にノソリ…ノソリ…と重い足音が聞こえてくる。

そして唸り声の主は姿を現した。

 

巨体で毛深い体に長い手、二足歩行…間違いなく猿だった。

 

 

譲信「お~やっぱ猿だわ。」

 

 

猿の妖怪「オイラの睡眠の邪魔する奴ぁオマエかぁ!?ウキャァァァァ!!食ってやるぞ!?」

 

 

睡眠中だったのか、邪魔をされた大猿の妖怪は大変ご立腹だった。

洞穴の中をよく見ると、人の頭蓋骨のような物が転がっていた。

 

 

譲信「はいはい俺ですよぉ?俺は本日てめーを退治しに来ました空条譲信という者です。よろしくお願い申し上げます」

 

 

猿の妖怪「オイラを退治?オマエが?ウキャキャキャキャキャーッ!!寝言を言うなら寝てからにするダ!!」

 

 

譲信の見た目は普通の人間。

博麗の巫女でもない見ず知らずの人間が、わざわざ自分に食われにやって来たのだ…と思った大猿の妖怪は思いきり笑い飛ばす。

 

 

譲信「あぁこりゃ失礼。俺は昼間から寝るようなクソッタレなてめーとは違い、立派なので忙しくて寝る暇が無かったんですわ。いやー失敬、失敬。これじゃ寝言は言えねーぜ。ハハハハハ♪」

 

 

笑われたら笑い返す。

譲信は遠慮無く大猿の妖怪を煽った。

 

 

猿の妖怪「オマエ…オイラを舐めてるな……もう怒った!!食ってやる!!」

 

 

煽り耐性の無かった大猿の妖怪は怒って、その巨体で譲信に襲いかかろうとする。

しかし

 

 

キラークイーン「しばっ!!」

 

 

バキィッ!!

 

 

キラークイーンの拳が放たれる方が早く、大猿の妖怪はキラークイーンに殴り飛ばされ、洞穴の奥に吹っ飛んだ。

 

 

猿の妖怪「ギャアアア!?」

 

 

鼻先に貰ってしまった大猿の妖怪は鼻を押さえてのたうち回る。

 

 

猿の妖怪「痛ぇ!?痛ぇ!?オマエよくもこんな!!絶対殺してやるぅぅ!!」

 

 

痛みと怒り。

血を噴き出させて吠える大猿の妖怪に向かって譲信は落ち着いて静かに言い放つ。

 

 

譲信「“キラークイーン”は既にお前に触れている……“第一の爆弾”…点火ッ!!

 

 

カチッ…ボゴォォン!!

 

 

猿の妖怪「ふべぁきゃっ!?」

 

 

キラークイーンの爆破によって、大猿の妖怪は跡形も無く、木っ端微塵に消し飛んでしまった。

 

 

譲信「キラーンクイーンは触れた物なんでも爆弾に変える……なんであろうと……例えそれが生物であろうとな……」

 

 

こいし「わー!!お兄さん強ーい♪」

 

 

譲信「ちゃんと撮っているよな?こいし?」

 

 

こいし「撮ったよー!!」

 

 

こいしの手にはカメラが握られていた。

このカメラは譲信が能力で作り出した物で、元となったのは“ジョジョの奇妙な冒険”第三部にてジョセフが念写時に破壊していたあのカメラだ。

 

口だけでは退治したと言っても信用が無い…と思った譲信は、倒す瞬間をガメラに収めればOKと考えたのだ。

この男、実はかなり用意周到なのである。

 

 

譲信「上出来だぜ……これで俺は住み処と今後の稼ぎに期待できるぜ……こいし!美味いモンがたらふく食えるかもな…!!」

 

 

こいし「流石お兄さん!頭いいねー!!」

 

 

譲信「当たり前よ!!この空条譲信…何から何まで計算づくよー!!」

 

 

上機嫌な譲信とこいしの2人は、そのまま仲良く人里へと帰還する。

そして、証拠写真のお陰で依頼主の男からすぐに報酬として家を貰い、宣伝することも約束してもらった。

 

かくして、空条譲信は幻想入りしてから僅か一日で事業を立ちげ、家を手に入れ、助手?(こいし)を獲得したのである。

 

“JOJOの何でも屋”

という店名は、人里の中でちょびっとだけ知られるようになったのだった。

 

 

 

明るく楽しい職場環境!

 

頼りになる社長に、あのさとり妖怪の助手!

 

どんな依頼でも、やると言ったら必ずこなしましょう!

 

AM8:00~PM21:00までいつでもお待ちしております!

 

従業員も2名ほど募集中!

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUE…………

 




正解 ハーミットパープル


これは簡単でしたか?それとも遺がいと苦戦?
分かった人は、記憶力が良いかも…?


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始まる奇妙な冒険の予兆
⑦狐のお助け


スタンドクイズ③


ヒント①4って数字は縁起が悪い。

ヒント②暗殺向けである。

ヒント③ジョジョ第五部


特に何かが起きることなく、譲信が幻想入りしてから3日が経過した。

 

人里の端っこの方に店を構える“JOJOの何でも屋”。

あの大猿の妖怪を退治してみせた凄腕の何でも屋として、人里の間では少しだけ話題になっている。

 

現在の時刻はAM7:00。

“JOJOの何でも屋”の朝はここから始まる。

 

頼りになる社長と、素敵な助手は、自宅兼仕事場で寝泊まりしており、“JOJOの何でも屋”の一日は起きた瞬間から始まるのだ。

 

建物は二階建ての和風建築。

一階が仕事場、二階が生活空間だ。

“JOJOの何でも屋”の社長こと、空条譲信は二階の自身の寝室で目を覚ました。

 

 

 

 

 

譲信「う…うぅー………ん………っし!よく寝たぜ!」

 

 

布団から半身を起こすと、左腕に何かが絡みついてるようで重く、上手く動かせない。

そこへ目をやると、布団がモッコリと膨らんでおり、モゾモゾと動く。

譲信は、昨日もこんなことあったなぁ…とため息を吐いてから布団をめくった。

 

 

譲信「また勝手に入って来やがってぇ……起きろ、こいし!」

 

 

こいし「ムニャァ……?」

 

 

“JOJOの何でも屋”の唯一の従業員(勝手に住み着かれたのでそうなった)こと、古明地 こいしは、眠そうに目を擦り起床する。

 

 

こいし「お兄さんおはよ!」

 

 

譲信「おう、おはよーさん。…って、なんか犯罪犯してる気分になるが……あぁーもう面倒臭ぇ!起きるぞ!!」

 

 

こいし「うん!」

 

 

何故かこいしに気に入られ、付き纏われる事になっている譲信。

あまり付き纏われすぎると、自分が幼女を誘拐して、たぶらかしているように見えてくるので、何とも言えない焦りが心の中にあった。

 

特に、朝起きたら同じ布団で寝ていました…なんて第三者に見られようものなら、あらぬ誤解を生むだろう。

例え、こいしが“さとり妖怪”であったとしてもだ。

 

 

譲信「先に顔洗ってきな。俺は飯の準備するからよ!」

 

 

こいし「は~い♪」

 

 

こいしを洗顔やその他の支度にに向かわせ後、譲信は朝食の準備を始める。

と言っても作るのは、簡単なサラダ、焼き魚、味噌汁、そして白米くらいだ。

しかし一味違うのは、其れ等に全てパールジェムが紛れ込んでいる点だ。

パールジェムとは食べ物の中に紛れ込み、その食べ物と一緒に食べた人の体を健康体にする能力を持ったスタンドだ。

 

譲信は調理師では無い為、健康な食事というのがよく分かっていなかった。

故にまだ成長途中かもしれない、こいしの食事面での面倒を見るにはこのスタンドに頼らざるを得なかったのだ。

 

 

譲信「やれやれ…子供を育てるってのは……結構大変なんだな。まだ独身なのにこんなこと知りたくなかったぜ」

 

 

朝食の準備が完了し、新居なのでまだ机とかは無かった為、互いに好きな場所で食事を摂る。

譲信は柱にもたれ掛かるようにして座り、こいしはその譲信の掻くあぐらの上に座って朝食を摂るのだ。

 

お陰で譲信はかなり食べづらい。

早く机を買おう…とひそかに決心していた。

 

 

食事が済んで、着替えも終わったらいよいよ業務開始だ!!

AM7:40。

まずは朝のミーティングをしに一回の仕事場…事務所へと二人は降りる。

 

事務所は社長の個性を前面に出した感じにしたい!…という譲信の拘りにより、結構凄い造りになっていた。

 

玄関から入ると受付があり、その奥に長机とソファ、その少し奥に従業員用のデスク、そして一番奥に社長の机と椅子かある…ここまでは普通だ。

 

しかし、問題は色々と飾られすぎている点にある。

まず一番奥の壁に“黄金の精神”と書かれた額が飾られており、並ぶ本棚はジョジョの漫画全巻、画集、名言集、小説…などなどジョジョ関連の書物が一式揃えられている。

 

さらに並ぶショーケースの中には、大量のスタンドやキャラクターのフィギュアが飾られ、中には等身大サイズのスタンド模型すら飾られている。

 

そして壁にはいくつものジョジョのポスターやキャンパス絵が飾られているのだ。

おまけに隣の部屋…休憩室にはジョジョのゲームが一式揃えられている。

 

これらは全て、譲信の“程度”の能力と、“ザ・ワールド・オーバーヘブン”の能力を存分に使って生み出されている。

 

営業開始から事務所内にあるコンポからBGMがかかるのだが、その全てがジョジョのスタンドの元ネタとなった曲だ。

 

果たして事務所…といえるのかどうか…とにかくそんな一回の事務所で朝のミーティングが行われるのだ。

 

 

 

譲信「よーしまずは社歌でも元気良く歌いましょーッ!!」

 

 

こいし「いっくよー♪」

 

 

“JOJOの何でも屋”のミーティングはまず社歌から始まり、次に昨日の営業報告、次に何かしらの情報とそのリーク、次に今日何か依頼の予約があればそれを、次に社長からの一言(気分次第で無い)、最後に今日の目標を決めて解散となる。

 

これは譲信がこれで良いだろ!という感覚で決めた流れなのだ。

さぁそしてまずは、一番最初の社歌から始まるぞ!!

 

 

 

 

 ~ジョジョの何でも屋・社歌

 

 

 

譲信&こいし

「1. 朝日が~♪照らす~♪幻~想~郷♪

 

 新しい~♪夜明けの~♪誕生~祝いだ~♪

 

 奇妙な~♪一日~♪我ら~の出番~♪

 

 JOJOの奇妙な何でも屋~♪

 

 勝てば良かろうな~の~だ~♪

 

 賢者~とか♪巫女~とか♪お上は五月蝿いけ~ど♪

 

 レラレラレラレ♪レラレラレラレ♪

 

 我ら~は我ら~♪

 

 

 

 2. 日々の~♪努力で~♪強~くなる~♪

 

 最高~に♪ハイっ~て♪や~つ~だ~♪

 

 示せよ~♪我ら~の♪黄金の~精神~♪

 

 JOJOの奇妙な何でも屋~♪

 

 過程や~方法なぞどうでも良いのだ~♪

 

 賢者~とか♪巫女~とか♪お上は五月蝿いけ~ど♪

 

 やめとけ♪やめとけ♪やめとけ♪やめとけ♪

 

 我ら~は我ら~♪」

 

 

作詞作曲全て空条譲信。

二人仲良く元気に社歌を歌い終え、次の昨日の営業報告へと入る。

といっても、予め用意されているプリント一枚に書いてあることを、こいしが読めば良いだけなのだ。

 

 

こいし「えーと…昨日は、壊れた井戸の修理5件!迷子のペット探し2件!手強いゴミの処理3件!…で~、47万の収入があったよー♪」

 

 

譲信「フムフム、結構♪結構♪やはり、予想通りスタンドを使った商売は儲かるじゃないか♪」

 

 

次に続く情報伝達と、予約はまだある訳が無いので今回は飛ばされ、社長からの一言と目標決めになる。

 

 

譲信「今日も忙しくなれば良いよな。今日の目標はとりあえず慣れる事だ!もっと段取りを良くしたいからな!頑張って行こーぜ!」

 

 

こいし「はーい!」

 

 

譲信「かいさーん!!」

 

 

AM8:00ついに“JOJOの何でも屋”営業開始である!!

さぁ今日は一体どんなお客様が来るのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢《それからAM9:30に》♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「朝早くはまだ来ねぇなぁー…」

 

 

こいし「お兄さん誰もこないねー?」

 

 

譲信「だなぁ~」

 

 

譲信とこいしは、“ジョジョの奇妙な冒険”を読みながら暇を潰していた。

人里で多少知られるようになっているとは言え、まだまだ有名では無いので客足はそう多くない。

とりあえず何かドデカイ仕事を成功させて、もっと名前を広げたいなー…と譲信は考えていた。

 

 

こいし「ねぇねぇーどうしてスタープラチナは止まった時の中を動けているの?」

 

 

そんな時、ジョジョの第三部を読んでいたこいしが譲信に向かって尋ねる。

 

 

譲信「スタープラチナの速度が光の速度を越えて、そのあまりの超スピードにまるで周りの世界が止まったかのようになるからだぜ。要は相対的に時を止めてると思えば良いぞー」

 

 

こいし「へぇー!よく分かんない♪」

 

 

譲信「全巻読めば分かるから大丈夫だー」

 

 

譲信はタバコを吹かしながら、こいしの質問に答える。

吸い終え、少しボーッとしていると事務所の玄関の扉が開く音が聞こえてきた。

 

 

???「失礼…今は営業中か?」

 

 

譲信「いらっしゃいませー!!どうぞ、そこのソファにお座りくださいませー!!」

 

 

こいし「いらっしゃーい♪」

 

 

お客は一瞬、ジョジョまみれの事務所内の様子を見てビクッとしたが、後は気にせずに言われた通りに事務所内のソファに腰掛ける。

 

 

譲信「ようこそ、本日はお越しくださり誠にありがとうございます。私、“JOJOの何でも屋”の社長…空条 譲信と言う者です。本日はどういったご用件で?」

 

 

そう言われて、9本くらいのモフモフした尻尾を生やし、帽子でケモミミのようなものを隠している客は、違う、違う、というように手を前で左右に振る。

 

 

???「あぁすまない。私は客としてきた訳じゃ無いんだ。だから、そう畏まらなくて良いぞ?」

 

 

譲信「は…はぁ…?じゃああんたは一体?」

 

 

藍「コホン…私の名前は八雲 藍。大妖怪八雲 紫様の式をしている者だ。紫様から聞いていないか?」

 

 

譲信「いやぁ…初耳ですわ。そんで…紫さんの式?…式ってのが良く分かんねーけど…そんな人がどうしてここに?」

 

 

藍「特殊な力を持った外来人が、人里で面白そうな商売を始めたから見てきてくれ…と紫様に命令されてここまで来たんだ。ちなみに、式というのは“部下”と考えて貰って良いぞ。」

 

 

譲信「監視っすかぁ~…なーんか厳しいっすねー紫さんは」

 

 

譲信はやれやれ…と頭を後ろに組んでもたれかける。

 

 

藍「まぁそう言うな。監視はただの建前だ。」

 

 

譲信「ん?どういうことっすか?」

 

 

藍「紫様は本当は、お前のことを気にかけておられる。よって私がここに来た本当の理由はお前の手伝いをする為だ。」

 

 

譲信「俺の手伝いぃ!?」

 

 

譲信は驚いて素っ頓狂な声を出してしまう。

 

 

藍「いきなりですまないが、これも命令でな…私も紫様がここまですることに正直驚きを隠せないでいるのだが…一体何があったんだ?」

 

 

自分の主人がわざわざ外来人の人間にここまで気をかけた所なんて今まで一度とて見たことは無い。

藍は紫からは外来人に負かされたとしか、聞いておらず具体的な事は分からない。

故に一体何があったらこんな事になるのか?藍は全く見当つかずにいた。

 

 

譲信「まぁ~ちょっとした揉め事があって、その後に色々と話ししてみたら、そうなった……?的な?……俺も良く分かんねぇ~なぁ…」

 

 

藍「適当すぎないかその説明!?…まぁ良い。それで、今は仕事中で良いのか?」

 

 

譲信「あぁ営業中だぜ。従業員1名とな!こいし~!」

 

 

こいし「な~に?」

 

 

譲信に呼ばれて、こいしが譲信の座るソファの後ろの影からヒョッコリと現れる。

今は能力が解除されている為、誰にでもこいしの姿を見ることが出来る。

 

 

藍「む?君はさとり妖怪の妹か?何でこんな所にいるんだ?」

 

 

こいし「お兄さんの助手だから♪」

 

 

藍「じょ…助手ぅ!?」

 

 

藍は従業員が妖怪だったことにおもわず驚いてしまう。

 

 

譲信「何か勝手についてこられてよーそうなったんだわ。それより…あんたこいしの事を知ってんのか?……姉がいるみたいな事が聞こえたんだが…」

 

 

藍「ん?知らずに雇っているのか?こいつは地底に住む、さとり妖怪姉妹でその妹なんだ。」

 

 

譲信「妹ぉ!?こいしお前…ねーちゃんがいるのかよぉ!?」

 

 

こいし「そうだよ!」

 

 

てっきり独り身で行く当てが無いんだと思っていた譲信は、驚きを隠せない。

 

 

譲信「家族がいるならそう言えよなぁ~…てか、いるならちゃんと家へ帰れよ~」

 

 

譲信がそう言った途端、さっきまで明るかったこいしの表情が少し暗くなり、こいしは俯いてしまう。

そして、呟くように言う。

 

 

こいし「今は…帰りたくないの…」

 

 

譲信「……………」

 

 

雰囲気の変わったこいしを見て、譲信はやれやれ…とため息を漏らした。

 

 

譲信「わ~ったよ。お前に帰られちまったら一人営業でしんどくなるからなぁー…ま、ここに居たいなら好きにすりゃ良いぜ。ただ、働かざる者食うべからずだ。ちゃんと俺の助手はしてもらうぜ?」

 

 

途端にこいしは顔をパッと上げて、はにかむと譲信に飛びつく。

 

 

こいし「お兄さんありがとう!!」

 

 

譲信「世話のかかる妖怪だなぁハハハ♪」

 

 

譲信はこいしの頭を軽くポンポンとする。

なんとなく家族との間に事情でもあるのだろう…と思った譲信だったが敢えて問い詰めることは無かった。

話したくない内容なのかもしれない。

もしかしたら虐待かもしれない。

ならば自分から話してくれるまでは、せいぜい住み込みの従業員として、面倒を見ることにしたのだ。

 

それに人手が足りないのも事実で仕事上、生半可な人間を採用することも出来ない。

どちらかというと、従業員は妖怪ぐらいにタフネスでストロングな人材で無いといけないのだ。

 

 

藍「あー…コホン!えーと、私がいること忘れていないか?」

 

 

自分は空気になってるんじゃないか…と不安に思った藍は軽く咳払いをする。

それに譲信はそうだったな…とハッとして気付いた。

 

 

譲信「おっとと、そうだった!そんでだな…あー、俺の助けをしてくれるって話しで良かったっけ?」

 

 

藍「あぁ。お前はまだ幻想郷に来て3日しか経っていない。不自由することも多いだろうし、商売なんて17歳の外来人だけでは困難になるだろう?だから紫様の命の元、この八雲 藍が力を貸そういう話しだ。まぁずっとは無理だから、しばらくの間にはなるがな。」

 

 

譲信「ははぁ~成る程、そりゃ確かに心強い!」

 

 

正直な所、藍の言う通り幻想郷での暮らしにも、何でも屋の商売にも大きく不安がある。

紫の式である藍が助けをしてくれるというなら、とても心強い。

相談できる優秀な相手が身近にいるといないとでは大違いなのだ。

藍は間違いなく、優秀なのだろう。

何せ、この幻想郷の賢者の式をしているのだ。

優秀で無い筈が無い。

 

 

譲信「しかしだな…スタンド使いってのは嫌でも災難に巻き込まれる体質でな?俺はそれを逆手に取るつもりでこの商売をしている訳で、正直どんなトンデモ依頼がいつ来るかもわかんねーんだ。もしかしたら藍さんも巻き込まれるかもしれないけどよ…良いのかい?」

 

 

スタンド使いとスタンド使いは惹かれ合う…というのはスタンド使いの中では逃れようも無い運命なのだ。

だがそれを除いたとしても、スタンド使いは結構な頻度で災難に巻き込まれる。

 

厄災を引きつける体質なのか…とにかくそういう運命の中にあるのだ。

そしてそれは、周りにいる者をも巻き込み、時には影響さえ与える。

譲信はこいしは兎も角、従業員でも無いただのヘルプで来ている藍を巻き込むような真似だけはしたくないのだ。

 

 

藍「なに、心配無い。自分で言うのも何だが…私は紫様の式だ。つまり、それ相応の実力と頭脳があると自負している。譲信くんが心配する程やわでは無いさ。それに、なるべく私も巻き込まれない用に気を付けるつもりだ。そこは上手く立ち回ってサポートさせてもらおう。」

 

 

譲信「そこまで言うなら…じゃあよろしくお願いしますよ?藍さん」

 

 

自分よりも知識も経験も上な藍が、そう言うならそれを信じるのが一番だろう。

そう思った譲信は、藍に握手の右腕を差し出す。

 

 

藍「あぁ…短い間にはなるが、何かあったら遠慮無く頼ってくれ」

 

 

そして藍は、譲信からの握手をしっかりと握手で返す。

藍の力強い握手に譲信は、こりゃ頼りになりそうだ…と満足げに微笑む。

そして、チラリと横目で藍のモコモコモフモフした尻尾を見る。

 

 

譲信「なぁところでよぉ~?藍さん、一つ聞きたい事があるんだ…何、とてもつまらない事なんだが…どぉーしても気になってしょーがねぇんだよ…良いかな?」

 

 

藍「む、どうした?何か困り事か?」

 

 

早速、何やら尋ねてこようとしている譲信に、何かあったのだろうか…と藍は思わず真剣な表情になる。

 

 

譲信「いや、そうじゃあ無いんだ。ただよぉ、その尻尾を見て気になったんだよ…そんなにたくさんの大きな尻尾が後ろに生えてるならさぁ…寝る時は一体どうしてるのかなぁ?…なんて考えてしまってよ」

 

 

それを聞いて思わず、藍の中で静かに張ってあった緊張の糸がプッツリと盛大に切れてしまった。

 

 

藍「な、何だぁその疑問は!?うーん…確かに外来人っぽいならではの疑問……なのか?」

 

 

藍は自身の自慢の尻尾に目をやる。

確かに、外の世界にはこのように尻尾を生えている者なんていないだろう。

それなら、まず最初に疑問に思ったとしても仕方ない事なのだろう…と藍は考えた。

 

 

藍「ふっ…全く……別に特別な事なんて無いぞ?仰向けにならないように、横向けで寝るだけだからな。私はそれに慣れてるからずっとそうしている」

 

 

譲信「なぁーるほどぉ!!ハーッハハハハ♪いやーずっと疑問だったからようやくスッキリしたぜ!!♪」

 

 

正直、藍からしてみれば物凄~くどうでも良い事だっただけに、ここまで気分良くなられて不思議な気分だった。

 

 

藍「じゃあ私からも一つ、今後のためにも気になってることを聞いて良いか?」

 

 

譲信「ん?なんスか?」

 

 

藍「その…この部屋の有様は何なんだ…!?」

 

 

ついには、耐え切れなくなったといった表情で藍はツッコむように言った。

もうさっきから所狭しと並べられているジョジョグッズに藍は集中力を欠かれかけていた。

 

見たことも無い、強烈な個性を強調しているそれらにどうしても、ついつい目が行ってしまう。

 

 

譲信「何って“ジョジョの奇妙な冒険”だぜ!まさか、知らねーの!?」

 

 

藍「あ、あぁ…すまないが…」

 

 

譲信「駄目だなぁ~人生8割損してるぜ?だから読むことをオススメするぜ!俺の能力を知ってもらう良い機会だからな!」

 

 

藍「能力を知る?その本とかに譲信くんの能力について書かれているのか?」

 

 

譲信「ちと違うが…まぁそう考えて貰って良いぜ!」

 

 

藍「………!!」

 

 

そこまで聞いて藍はピカーン!と閃く。

ここにある本一式、自身の主の元まで持っていけば良いのでは無いか?と。

丁度、紫は譲信の持つ能力…スタンドについて知りたがっている。

もしかしたらこれらの書物(漫画)が役に立つのでは無いかと。

 

 

藍「すまないが…ここにある書物全て、こちらで預からせて貰えないか?」

 

 

譲信「え"!?何でぇ!?」

 

 

いきなり藍からそうお願いされた譲信は、当然戸惑う。

何せ、自身の宝物を預かられそうになっているのだから。

 

 

藍「譲信くんのスタンドという力は、非常に危ないんだ。幻想郷のバランスを崩しかねない。そんな力について記されている書物なんて、人目の付く所にあってはならないんだ。だから、私達の所で1年間、君が帰るまで預からせて貰いたいのだが…構わないか?」

 

 

譲信「URYY……」

 

 

ものっすごく納得の出来る説明だった。

というよりこれは、完全に自分の注意力が足りていなかった。

幸いまだ人目に付いてなかったから良かったものの、もしこれが広まっていたりしたら、間違いなく自分はまた紫に襲われるだろう。

いや、間違いなく前よりも本気で…そう暗殺で仕留めに来る筈だ。

譲信は思わずヒヤリとする。

 

 

譲信「拒否権無いすからね…どうぞ、持ってってください…」

 

 

しかし、やはり1年間ジョジョを読めないのは辛い。

これもまた試練なのだ…!!と、譲信は自分に言い聞かせることにした。

藍にとっては上手い具合に、譲信の能力の資料みたいな物を手に入れることが出来たので、徳が大きかった。

 

 

こいし「えー!?もうこれ読めないの!?」

 

 

譲信「らしいぜ~残念だったなこいし」

 

 

こいし「えぇー…」

 

 

藍「まぁこの際だ。代わりに幻想郷の娯楽を楽しんでみるのも良いんじゃないか?」

 

 

譲信「…そうだな!!せっかの幻想暮らしなんだ。満喫しなきゃあ勿体無ぇよな!!」

 

 

譲信はそれも面白そうだ、と思った。

 

 

藍「では後でこれらは預からせて貰うとして…今は何かする事は無いのか?何でも良いぞ?」

 

 

譲信「いやぁ~正直、依頼が入らねぇとうちは暇なんだよ。だから今は何もする事ねーぜ」

 

 

藍「む…それはいかんな…そうだ!だったらポスターとかを作って、人目の付く所に張って宣伝するというのはどうだろうか?」

 

 

藍からそう言われて、譲信は突然目を見開いて立ち上がった。

 

 

譲信「…!!っ確かに!その手があったか!こいし!こいし!」

 

 

こいし「どうしたの?」

 

 

譲信「今からうちの店の広告ポスターを作る!!アイデア出すぞ!!」

 

 

こいし「良いよ!!面白そう!!♪」

 

 

譲信とこいしは早速、机の上に紙を広げてアイデアを出していく。

譲信もこいしもその作業をとても楽しそうにしている。

それを見ていて藍は自然と微笑んでいた。

 

 

藍(紫様が負けたと聞いて、どれ程危険な奴なのかとある程度の覚悟を決めてはいたが…成る程、これなら紫様がここまで気にかける理由がよく分かる。とても素直で心の優しい…正直な良い子だ。)

 

 

藍は独りでにうんうん、と頷く。

そんな時だ

 

 

 

 

ガラガラガラガラ…

 

 

 

 

 

突如、玄関のドアが開く音が聞こえてくる。

すぐに譲信は、作業を中断してから駆けだして入り口にいる客の元へと向かう。

 

 

譲信「いらっしゃいませー!!ようこそ“JOJOの何でも屋”へ!!」

 

 

???「君がここの社長の空条譲信…か?」

 

 

譲信「はい。自分、“JOJOの何でも屋”社長、空条譲信と申す者です。ささっ、奥のソファまでどうぞ!」

 

 

???「いや、それには及ばない。ここで話しをさせてくれ。」

 

 

譲信「おや?分かりました。では、本日はどういったご用件でこちらに?」

 

 

???「あぁ、その前に名を名乗っておこうと思う…」

 

 

事務所に入ってきた女性はドアをちゃんと閉めてから、自身の名を名乗る。

 

 

 

慧音「私は人里の寺子屋で教師をしている…上白沢 慧音という者だ。今回は妖怪退治の実績を見込んで、依頼をしにきた」

 

 

譲信「おや、先生ですか!これはどうもご丁寧に…それで、依頼の内容というのは?」

 

 

譲信と慧音が話す元へ、こいしと藍も奥から現れて、二人の話しを聞く。

そして、慧音は口を開いた。

 

 

 

慧音「私の教え子の一人が昨日から…行方不明となった…見つけ出すのに手を貸して欲しい…!」

 

 

 

慧音は、譲信達に向かって頭を下げた…。

 

 

 

 

TO BE CONTINUE…………

 

 





答え セックス・ピストルズ

このスタンド知らずして、五部を語ることはできません!
すぐに分かった人は、やはり流石ッ!!
そこに痺れる憧れるー!!


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⑧追跡!!ムーディーブルース!!

最初に、誤字報告有難う御座いました!!


スタンドクイズ④


ヒント①新月の時を待つ

ヒント②緑色の赤ちゃん

ヒント③パンチは必ず一発だけだ








日の差し込まない、暗い地下のような部屋。

畳の上で何かが擦れる音と、壁に何かが打ち付けられる音がする。

唯一の光源は蝋燭の明かりだけであり、その僅かな明かりは一人の男と、縄で拘束され猿ぐつわで声も出せない、一人の少年を照らし出していた。

 

 

???「まだだ……まだ完全では無い………あと少し…あと少しなのだ……それまでは誰にも知られるなんてあってはならなかった筈なのだ……」

 

 

謎の男は、拳を壁に打ち付けながら身動きが取れず、怯えている少年を睨みつける。

 

 

少年「ゥー!?ウゥーー!?」

 

 

???「なのに…お前は見てしまった……!だからこうしてここへ連れてきたのだ………決して俺のことは誰にも、悟られてはならないからだ…!」

 

 

少年「ウウウウウウウウ!!」

 

 

少年は必死に拘束を解こうと力を込めるが、全くビクともしない。

 

 

???「可哀想だが……直にお前は殺さなければならない……尤も俺の夢のためだ…同情なんてのは…これっぽちも無いがな……」

 

 

少年は怯え、涙目で男を見る。

その目は子供が必死で許しを乞うときのそれだった。

謎の男は、そんな少年の許しを乞う心の声を否定するかのように、首を横に振る。

 

 

???「全ては夢の為だ……我が夢は人間の夢……下克上………幻想郷の“人間社会化”計画……人間以外の知的生命は……絶やさねばならない………!!お前の死はその為の礎となるだろう……」

 

 

そう言い終えると男は、蝋燭の火をフッと息を吐いて消した。

部屋には完全なる静寂と暗闇が訪れた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「失礼、落ち着いてもう一度……今何と?」

 

 

慧音「あぁ…私の教え子が昨日から一人、行方不明となっているのだ…年は7歳になる丸刈りの男の子だ」

 

 

“JOJOの何でも屋”では現在、依頼人である里の寺子屋の教師、上白沢慧音から譲信は事情を伺っていた。

慧音は最初「入り口で話すから良い」、と言っていたが譲信が「座って落ち着いて、分かりやすく話してくれ」と言ったので現在はソファに向かい合って座っている。

 

一つのソファには左からこいし、譲信、藍の順に座り、もう片方に慧音が座っている形になる。

 

 

藍「昨日から行方不明…?もしやうっかり里の外に出てしまい、運悪く妖怪に食べられた…とは考えられないか?」

 

 

慧音「何故八雲紫の式がここにいるかは気になるが……そについては、既に調べがついている」

 

 

譲信「……と、言うと?」

 

 

慧音「あらゆる関係者から話しを聞いたが、誰一人としてその子が外に出る瞬間を目撃していなければ、人里の端の方に近付いたという証言すら出てこなかった。それに、あの子は良く出来た子で私達の言いつけを破って外に出る…なんて事は決してしないと断言できる」

 

 

譲信「ふむふむ……」

 

 

常に人通りの多い人里では、誰が何処で何をしていたか…というのは簡単に証言が取れる。

そんな中で何一つとして目撃証言が無かったという事は、その子供はまだ人里内にいる可能性が高いという事だ。

しかし、人里内で迷子であるとしても一日経っても迷ったままというのは考え辛い。

ましてや慧音曰く、自警団や数十人の大人が全力で捜している状況で見つからない…等と言うのは実に奇妙な事だ。

 

 

譲信「…となると、考えられるのは誘拐…か」

 

 

慧音「あぁ。私もその線で考えている」

 

 

藍「なっ…誘拐だと…!?」

 

 

藍は信じられん…と言った顔つきになる。

これまで人里で誘拐事件など起こった試しが無い。

そもそも、人間が人間を誘拐とは考えにくいし、妖怪が人里内で人間を誘拐する…というのも、とても考えられない。

 

 

譲信「誘拐された瞬間は誰も見てないんだよな?」

 

 

慧音「あぁ…誰も見てないと言っている」

 

 

譲信「……と、すると犯人は何かしらの能力持ちだの、その手のプロ…である可能性があるな。じゃなきゃあ目撃ゼロの完璧な犯行なんて出来ねーよ」

 

 

慧音「むぅ……やはりそう思うか」

 

 

藍「ちょっと待ってくれないか?能力持ちとなると…やはり犯人は妖怪である可能性が高いという事になるが……」

 

 

この幻想郷で能力持ちの人間など、ほんの一握りしかいないし、誰がどの能力なのか…と八雲側は全て把握している。

つまり、このような事態を引き起こせるのは妖怪以外に有り得ないのだ。

…というのが藍の考えであった。

 

 

慧音「そうたな…考えたくはないが、人里内で妖怪が動いているのかもしれない…事態はかなり深刻になるな」

 

 

本来人里内で事を起こすような妖怪はいない。

何故なら、ペナルティの巫女や賢者及び多数勢力による粛清を恐れているからだ。

それでも犯行に及ぶということは、正体を探られないという自信がある…もしくは、知られても問題ない程の強者か…いずれにしろ、かなりマズい状況に変わりはない。

 

 

譲信「とまぁ…事情は分かりました。それでつまりは人手が足りないので、うちに依頼しに来た…という事ですね?」

 

 

慧音「あぁ。博麗の巫女にも応援を頼むつもりだが、生憎今は博麗神社まで向かえる人員がいなくてだな…そんな時に“JOJOの何でも屋(ココ)”を紹介されて来た訳だ。」

 

 

譲信「なるほど。では改めて確認しますが…今回の依頼の内容は“行方不明の少年の発見”…で良いですね?」

 

 

慧音「そうだ。引き受けて貰えるか?」

 

 

譲信「勿論です。ただうちは後払い制で、依頼達成までにかかった労力分に見合うだけの金額を頂戴しますが…よろしいですか?」

 

 

慧音「無事に見つけ出してくれるのであれば…幾らでも払うと、事情があってここまで来れない親御さんがそう言っている。そして私も、それを望んでいる。」

 

 

慧音は迷うことなく、真っ直ぐとした目で譲信を見つめそう言った。

ただ少年を助けたい…という、思いがひしひしと伝わって来た。

 

 

譲信「良いでしょう!“JOJOの何でも屋”…その依頼、引き受けました!必ず成し遂げてみせましょう!」

 

 

譲信は、慧音や親御さんの気持ちに応えようと、立ち上がる。

やると言ったからにはやる…譲信は必ず達成してみせると、覚悟を決めた。

 

 

譲信「では慧音さんは引き続き、自警団の方々と連携を取って捜索を続行してください。我々は我々で独自に動かせて貰います。それと、追加で何か分かったらこちらから連絡しますが、そちらでも何か見つかればその時はお願いしますよ?」

 

 

慧音「あぁ分かった。じゃあ私は先に戻るが…どうか、くれぐれもよろしく頼む…!!」

 

 

慧音は、事務所から出て行くとき再度、譲信達に向かって頭を下げる。

 

 

譲信「任せてください!」

 

 

譲信は、胸をドン!と叩いてそう応えた。

 

慧音がいなくなった後、譲信は大きく深呼吸をする。

 

 

譲信「さて、という訳だ。こいし、藍さん。デカイ仕事になるんで、気を引き締めて行こう!」

 

 

こいし「頑張るよ!」

 

 

藍「仕事まで手伝えとは言われてないが…事が事だ…良いだろう協力しよう」

 

 

本来藍の役目は、あくまで私生活と、経営についてのアドバイザー及び仕事の監視であって、依頼事態に力を貸すことは範囲外だ。

しかし事が事で、もしかしたら幻想郷全体に関わる問題なのかもしれないので、今回ばかりは全面的に譲信に協力する事にしたのである。

 

こいしはようやく面白そうな事が起こったと、やる気満々になっていた。

 

 

譲信「まず俺達は、人里の内側を徹底的に調べていこうと思う。」

 

 

譲信は、店の扉に“仕事中につき只今不在”と書かれた看板を下げながら言う。

 

 

こいし「どうして?まずは人里の外じゃないの?」

 

 

譲信「普通に考えりゃそうなるだろうが、今回は聞いた限り色々と奇妙だ。なんせ、目撃証言が一定の範囲でプッツリと途切れてしまってるからな…そこは俺も慧音さん達と同様に、人里内で起きた失踪と判断するぜ」

 

 

こいし「へぇ~」

 

 

藍「しかし…調べると言っても既に聴き取り調査は、入念に行われているようだが…?」

 

 

譲信「いいや、聴き取り調査はしないぜ。俺が調べてーのは造りだ。」

 

 

藍「造り?」

 

 

譲信「そう。何処にどの様な建物が建ち、どの様に道が作られているのか…それを知りたい。」

 

 

こいし「えー?どうしてそんなこと知りたいの?」

 

 

譲信は歩きながら、二人に説明しだす。

 

 

譲信「ぶっちゃけ行方不明の少年を見つける算段は既に出来上がっているんだよ…ただ問題は、犯人の誘拐時に使ったルートを把握しておかないと不利になる点だ。」

 

 

こいし「?、?、?えーと…?」

 

 

こいしは何がどういうとことか、分からない…と言った顔だったが、藍は何かに気付いた様子だった。

 

 

藍「なるほど…もし万が一、犯人が子供を人質に逃走を図った場合、そのルートを把握しておかないと追うに追えなくなるということか…誰にも見つからずに連れ去る事が出来るルートなら、もしかすると逃走時にもそこを通る可能性があると…そういう事だな?」

 

 

譲信「EXACTLY♪流石理解が早い!それに、他にも使われそうなルートを見つけられるかもしれないからな。勿論、一番は逃げられずにその場で全てを完了させる事だが、何せ相手は能力者なんだ…万が一を想定しておいて損はねーぜ?」

 

 

こいし「なるほど!流石お兄さん♪そこに痺れる憧れる~♪」

 

 

譲信「お?俺に対してジョジョネタを使ってくるとは…やるじゃあねーか!!こいし!!」

 

 

譲信はニカッと笑ってこいしの頭を軽く撫でる。

譲信に撫でられて、こいしは嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 

 

藍「やれやれ…巫山戯てる場合じゃ無いだろう……さて、調べるなら三手に分かれて作業を行った方が早いが…どうする?」

 

 

譲信「そうっすね。そうしましょうか。一応地図を参考にしながらも、細かい事は書き込んでいってくれよな。そんじゃ、作業開始!終わった奴からここで待機しててくれ!」

 

 

こいし「はーい♪」

 

 

藍「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「やはり…探られ始めている…か」

 

 

暗闇で、謎の男が扉をうっすらと開け外の様子を伺う。

 

 

???「急がねばな…小僧を殺すのは……まだ早い。こいつは、いざという時の切り札だ……この俺の準備が整うまでは………まだ耐えねばならん……!」

 

 

少年「……………。」

 

 

部屋に横たわる少年は、絶望に染まった生気を失った瞳で虚空を眺めている。

何もかも諦めた…そのような目だった。

 

 

???「八雲紫や…博麗霊夢はまだ動いていない……状況はまだこの俺に味方してくれている…」

 

 

謎の男は、何かの本をペラペラと捲り始める。

 

 

???「俺が“程度”の能力に目覚めてから既に1ヵ月…だいぶと馴染んできたし…成長もしている。そして、何処へ向かうべきなのかも…ハッキリと分かる……後もう少しだ…」

 

 

謎の男の本を捲る仕草が、幻想郷の地図が描かれているページでピタリと止まった。

 

 

???「思ったよりも広かったな幻想郷……お陰で…予定よりも遥かに時間が掛かってしまった……しかし…もはや時間はどうでも良いのだ……最終段階に入ってる現在…問題は別にある…」

 

 

謎の男は部屋の隅に置いてあった物を取る。

それは、変わったデザインの矢だった。

 

 

???「この矢だ…謎のパワーを秘めたこの矢……八雲紫ですら存在さえしらないこの矢………これについて俺は知る必要がある……どこの文献にも載っていないが…一つだけ俺が理解したこと……それは………この矢は、貫いた者を“程度”の能力に目覚めさせる力を持つということ……」

 

 

謎の男は矢を再び元の位置に置き直すと、扉を閉める。

 

 

???「これから俺は…王になるのだ……この矢を完全に支配して……な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「ふむふむ…探せばこんだけあったかぁ…」

 

 

一方その頃、譲信達はさっさと付近の地理を調べ終え、合流し寺子屋を借りて情報整理を行っていた。

 

 

藍「改めて人里を調べてみると…以外にも今まで気付いて無かった場所もあるのだな…」

 

 

譲信「こんだけまとまりゃあ充分だぜ」

 

 

藍はいつも訪れて理解していたと思っていただけに、人里についての理解がまだ足りなかったと密かに反省していた。

妖怪の感覚ではあっという間でも、人間にとってはそれなりの年月になる時間の流れは、常に人里の造りを少しずつだが、変えていっている。

そこは、妖怪ならではの盲点だったという訳だ。

 

 

こいし「でも、どうやってその子を見つける訳?」

 

 

次はいよいよ、子供の捜索に入るわけだが、一体どうやって見つけようというのか…譲信は何を考えているのかこいしは気になっていた。

 

 

譲信「今回はかなり楽な捜索だ。写真もあれば、日時もハッキリしているし、とても助かる」

 

 

そう言って譲信は自身の傍らにスタンドを出現させた。

こいしは「わー!」と喜びに近い声を上げ、藍は初めて見るスタンドを興味深そうに眺めていた。

 

 

譲信「“ムーディーブルース”リプレイならお手の物だぜ!」

 

 

そう言って譲信は早速、ムーディーブルースの能力を発動させる。

すると、ムーディーブルースの額にあるメモリーが遡り初め、ムーディーブルースの姿が段々と写真に写っている行方不明の子供の姿に変わっていく。

 

 

藍「な!?変身した!?」

 

 

譲信「ただ変身しただけじゃあねぇぜ…コイツはリプレイするスタンドだ。昨日、このガキんちょに何があったのか…それを今からムーディーブルースが実際にリプレイで見せてくれるぜ」

 

 

こいし「そっか!それを辿っていけば見つけられるんだね!」

 

 

譲信「そういう事だ♪」

 

 

藍「す…すごいな……!紫様が戦ったスタンドもそうだが…これもまた非常に優秀な能力を持っているな」

 

 

譲信「まぁな!とはいえ、弱点もある。リプレイ中は、リプレイしか出来ねーから戦う事が出来ねーし、そもそも戦闘向けのスタンドじゃあねーから結構、扱い辛ぇんだぜ」

 

 

シュゴォーーーーーーーー

 

 

譲信が説明している内に、ムーディーブルースは指定の時間帯にまで到達した。

 

 

譲信「よし、じゃあ始めるぜ…昨日の授業が終わった所からスタートだ。」

 

 

ムーディーブルースが変身している少年は、授業が終わると、誰かと話してからすぐに、何処かへ向かって小走りで去って行く。

 

 

こいし「どっか行っちゃうよ!?」

 

 

譲信「追いかけるぜッ!!」

 

 

譲信、こいし、藍の三人組は小走りでムーディーブルースの後を追う。

 

 

藍「何処かへ急いで向かってるようだぞ?」

 

 

譲信「漏れそうなんじゃあねぇのか?」

 

 

こいし「お兄さん下品だよ?」

 

 

譲信「冗談じゃよ冗談!というかこいしくん…そろそろお兄さんの事は社長と呼んでくれても良いんじゃあないのかね?」

 

 

こいし「お兄さんの方が絶対に良いよ♪」

 

 

譲信「俺は社長って呼ばれたいんだがなぁ……」

 

 

藍「そんなことは今どうでも良いだろう………全く、もっと気を引き締めてだな…」

 

 

譲信「ム!待ったッ!!ガキんちょが止まったぞ!」

 

 

笑顔を向け喋るこいしと、何やら小言を言おうとした藍。

二人を止めて、譲信はムーディーブルースを観察し始める。

 

 

譲信「何かを見つけたようだ…裏道に入っていくぜ」

 

 

藍「おや…一体どうしたのだろうか?」

 

 

こいし「追っちゃえー♪」

 

 

こいしが楽しそうに小走りで、ムーディーブルースの後を追っていく。

譲信と藍も遅れるものか、と小走りでそれを追う。

 

 

譲信「待ちなッ!俺が先頭だろ!」

 

 

やがて、再びムーディーブルースの動きは止まった。

しかし、少年の様子が可笑しい。

何かに目が釘付けになり、怯えた表情になっている。

これは…明らかに何か異常な事が起こっている。

 

 

こいし「ねぇ、一体この子どうしたのかな?」

 

 

譲信「さぁなー…ムーディーブルースが再生出来るのはあくまで、対象となった一人だけだ。それ以外は再生できねぇなぁ…」

 

 

藍「予測しかできないという事か…」

 

 

その時、ムーディーブルースが今度は元来た道を全速力で駆け出し始めた。

 

 

藍「む!今度は何だ…!?何かから…逃げている?」

 

 

譲信「おいおい…マジか…!!」

 

 

ところが、突如ムーディーブルースの身体が宙に浮き、そのまま動かなくなる。

 

 

こいし「あれ?浮いてるよ?もしかして故障かな?」

 

 

譲信「いいや…違うな…よく見ろ」

 

 

譲信はすぐに何かに気付き、ムーディーブルースの手首と足首を指差す。

こいしと藍はムーディーブルースの手首と足首をじっくりと見る。

すると

 

 

藍「これは!何かに締め付けられているのか!!」

 

 

ムーディーブルースの手首と足首には、何かに締め付けられているような跡がくっきりと浮かんでいた。

 

 

譲信「あぁ…何かに押さえつけられてんだぜ。おそらく…犯人の仕業…そしてここからだ………ッ!!」

 

 

おそらく少年が連れ去られたのはこのタイミング。

そう睨んだ譲信は更に注意深くムーディーブルースを観察し始める。

しかし実に不思議な事が次の瞬間、起こった。

 

 

ズブン………!

 

 

譲信&藍「何ッ!?」

 

 

何と、突如ムーディーブルースの身体が地面に沈んで消えてしまったのだ。

一体何が…誰も全く理解出来ずにいた。

 

 

藍「何なんだこれは!!何があったというんだ!?」

 

 

譲信「分かんねぇ…分かんねぇがこれでハッキリした。ここで犯行は起こった…そして犯人は能力者…これで間違いない!後は…謎を解きてぇが…そこまで悠長してる時間はねぇ…このまま追うぜッ!!」

 

 

こいし「お兄さん、位置が分かるの?」

 

 

譲信「勿論!俺のスタンドだからな…ムーディーブルースは今そこを真っ直ぐ北に移動している。しっかりと俺に付いて来なッ!!」

 

 

譲信達は、譲信を先頭に追跡を再開する。

ムーディーブルースの位置が分かるのは、譲信だけなので今は譲信だけが頼りだ。

 

 

藍「相当厄介な事になってそうだな!場合によっては…八雲側(こちら)で対処する案件になるぞ?」

 

 

譲信「俺の仕事はあくまで、ガキんちょの救出!犯人退治やりたきゃあ…お好きにどうぞッ!!」

 

 

藍が念の為に一応の確認を取るが、譲信は迷うことなくスッパリと答える。

譲信に仕事の迷いなどは無い。

 

 

譲信「おっと……どうやら目的の場所はあそこだな…よしッ!!」

 

 

こいし「見つけたの?」

 

 

譲信「おう!気を引き締めろよ?こっからだぜッ!!」

 

 

藍「うむ!分かった!」

 

 

こいしの表情は特に変わることはなかったが、譲信と藍の表情は、僅かに引き締まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン…………

 

 

「ごめんくださーい回覧板でーす」という声が、扉の向こうからノックと共に聞こえてくる。

 

 

???「はい。今行きます。」

 

 

謎の男は、玄関先まで向かう。

しかし、扉を開ける寸前でその動きはピタリと止まった。

 

 

???(おかしい……回覧板……?確かついこの前に来たばかりだぞ……それに…いつものババァの声では無いな………これはまさか……!!)

 

 

「御留守番ですかー?」という声が続けて玄関先から聞こえてくる。

謎の男は、嫌な汗を掻き始めていた。

 

何やら意を決した謎の男は、地面に手をつける。

そして

 

 

???「追跡者共よ……先手必勝……死ねッ!!」

 

 

地面を変形させ、大量の尖った突起物を玄関先にいる者目がけて放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「いませんかー?」

 

 

譲信は玄関先で声を上げていた。

突撃するよりも、普通を装って油断して出て来た所をねらえば、穏便に済ませられると思った譲信は、既に作戦を実行していた。

そしてムーディーブルースはとっくに解除されている。

 

しかし、何やら様子がおかしい。

中から人の動く気配はするが、これといって動きがないのだ。

もしや、いきなり勘づかれたか?と少し不安になってくる。

 

 

こいし「留守なのかな?」

 

 

譲信「おかしいなぁ~…」

 

 

藍「待て………中から何か…聞こえないか?」

 

 

譲信&こいし「え?」

 

 

何かの音に気付く藍。

藍に言われて耳を澄ませる譲信とこいし。

すると、何やら地響きに似たような音が聞こえてくる。

 

 

こいし「何だろう~?」

 

 

気になったこいしが、扉を開けようと近付こうとしたその時

 

 

ドドドドドォォォォ!!!!

 

 

尖った幾層もの岩盤が、ドアを突き破り地面から生えるかのように突き出て、譲信達目掛けて襲い掛かってきた。

 

 

譲信&こいし&藍「!!?」

 

 

突然の出来事、三人とも気付いた時には既に手遅れ…どう動いたとしても躱せない所まで、岩盤は迫って来ていた。

 

 

藍(か、躱せない…!!間に合わない……!!譲信くん達が危ない……!!)

 

 

せめて譲信にあたる一撃だけは何とかして防がなければと、藍は咄嗟に残された時間で譲信をはねのけようとした。

妖怪である自分とこいしなら、まともにくらってもこの程度なら死にはしない。

そう判断しての事だった。

しかし!その時、譲信は短く叫んだ。

 

 

 

譲信「スタープラチナ・ザ・ワールド!!

 

 

 

ドォーーーーーーーーーーーン!!

 

 

 

瞬間、世界から色が消え…譲信以外の全てが静止した。

 

 

譲信「やれやれ…ギリッギリだが間に合ったぜ…!!“時は止まった”…5秒前!!」

 

 

譲信はスタープラチナを操り、眼前まで迫っている岩盤をラッシュで砕く。

 

 

スタプラ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァッ!!」

 

 

その間に譲信は急いで、こいしと藍を抱えて安全地帯まで移動する。

そこで譲信はやれやれ…と短くため息を吐いた。

 

 

譲信「時は動き出す……」

 

 

丁度5秒が経過し、世界の時は再び動き出す。

 

 

こいし「あれぇ!?」

 

 

藍「なっ…!?」

 

 

いきなり移動している自分達を見て、こいしと藍は何が起こったのか…まるで訳が分からないといった顔になっていた。

藍に関してはまるで、狐につままれたような顔である。

九尾だけに…。

 

 

譲信「ちゃんと社長に感謝しろよー!!ギリッギリだったがなぁ…!!」

 

 

藍(何をされたんだ…?気付けば一瞬で?……瞬間移動だとか、超スピードだとか、そんなチャチな物じゃない……何かもっとこう…恐ろしい物の片鱗を感じたぞ……!)

 

 

こいし「わー!お兄さんすごーい♪」

 

 

譲信「それよりも…中に入るぜ!!」

 

 

驚き考えに浸っていた藍と、笑顔で譲信の事を褒めているこいしに声をかけると、譲信はスタープラチナで家の壁をぶち壊し、中へと入っていく。

 

 

譲信「出て来やがれ!!」

 

 

しかし中には既に誰の気配も無く、ただ裏口側の壁にも穴が開いていた。

 

 

藍「く…っ逃げられたか!!」

 

 

譲信「ちぃ…!!」

 

 

慌てて譲信達が外に出てみると、子供を脇に抱えて地面を物凄いスピードで滑りながら逃げていく男の姿が目に入る。

かなりの速度だ。

目測でも時速70kmはあるんじゃあないか…と想えるくらいだった。

 

 

こいし「逃げちゃうよ!?」

 

 

こいしは少し慌てて、譲信の方を見る。

 

 

譲信「野郎……しかし!逃がす訳にはいかんな…!!当然ここは追うぜッ!!」

 

 

譲信は、すぐさま最近使い慣れてきた“程度”の能力を発動させる。

すると、譲信達の目の前に一台のバイクが現れたのだ!!

何処かで見慣れたこのバイク。

そう!!このバイクはジョジョ第四部にて、岸部露伴が乗っていたバイクなのである!!

譲信の能力はジョジョ関連の物ならなんでも生み出せるのだ!!それが例え、バイクであろうと!!

 

 

ドルン…ドルン…ドルン…ドルン…!!

 

 

譲信「乗りなッ!!ぶっ飛ばすからしっかり掴んでなよ!!」

 

 

こいし「うん♪」

 

 

藍「わ、分かったッ!!」

 

 

こいしと藍の二人が後ろに乗ったと同時に、譲信はエンジン全開で走り出す。

 

 

ドォォォォォォォォォォォォォォン!!

 

 

こいし「わぁぁぁぁぁ!!♪」

 

 

藍「こ、これは速い…!!これなら見失わない!!」

 

 

譲信「待ちやがれぇッ!!」

 

 

譲信は真横にTHE WORLD(ザ・ワールド)を携えて謎の男に迫る!!

 

 

 

???「なんだあれは……!?くそっ……何者だあいつは…?予定が狂った……マズいぞ…非常にマズい……」

 

 

 

少年「ンー!?ンーー!!ンーー!!」

 

 

???「仕方あるまい……奴等は直接今…始末しなければいけない…!!追って来るなら来い……“飛んで火に入る夏の虫”だ……貴様らは虫だということを教えてやる…ッ!!」

 

 

逃げる謎の男と、それを追う空条譲信。

直線上にいる二人の視線は、互いの意思で殴り合うかのようにぶつかり合った…!!

 

 

 

TO BE CONTINUE……………




正解 C-MOON

第六部の代表的なスタンドでした。
第六部もしかしたらアニメ化か!?
噂されていますね。ホントーにアニメ化なると良いなぁ…


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⑨怒りのスタープラチナを叩き込め!!

スタンドクイズ⑤

①東方家

②毎日が夏休み

③ジョジョリオン


男はこの幻想郷の人里で生まれた。

特に裕福でも無ければ、貧しくも無く、平凡な父母家庭で、平凡な少年時代を送った。

成人になってからは、大工として働き、父と母が死んでからも真面目に働いていた。

 

しかし男は決して友人を作らず、職場でも必要最低限の会話だけし、飲みに誘われても全て断っていた。

男は孤独だった。

だがそれは男自らが望んだ事であり、微塵も悲しいとは思ってもいなかった。

 

しかし、男は物心付いた時からずっと不満を感じていた。

何故、世界は…幻想郷は広いのに自分達人間は人里という狭い範囲でしか暮らしていけないのか。

何故、妖怪にあれやこれや勝手に決められて、支配された奴隷のような立場で一生を終えなければならないのか…と。

 

男は悔しかった。

幼い頃から怒りを覚えていた。

同じ人間でありながら、力もあるというのに博麗の巫女は現状を打開するでもなく、人間の不自由さ…立場の弱さを何とも思っていない。

博麗の巫女…それは男には八雲紫に良いように奉られてるだけの存在にしか見えてなかった。

それにも怒りを感じるが、何より怒りを感じていたのは力の無い不甲斐ない自分自身にだった。

 

そんな不満を抱えながら男が30歳を越えた頃、男は運命に導かれるように、ある日謎のパワーを持った矢に貫かれたのだ。

骨董市で安く買い、戸棚に飾ってあった矢が落下し、偶然その時戸棚の下で本を読んでいた男の脳天に突き刺さった。

 

普通に考えれば死ぬ。

男も、この時ばかりは自分は死んだもの…とばかりに思っていた。

しかし…男は死ななかった。

気が付けば、傷はすっかり塞がっていた。

 

そして、男は気付く…自身の中に漲るパワーが宿っているという事に。

男は一瞬で理解した。

それが“程度”の能力である事…矢に貫かれたからこそ、手に入った力である事を。

 

自分の中にもっと意識を傾ければ、一体何が出来る能力なのか…すぐに分かった。

“大地と同化できる程度”の能力…男が手に入れた力はそれだった。

 

そして男は決意した。

この力を使って自分は革命を起こし、勝利して幻想郷を人間だけの、自由な世界に作り変えてやると…。

矢に選ばれた自分は特別…王にだってなれて当然…と男はそう迷い無く認識していた。

 

それから男は考えた。

どうすれば、人外達を相手に勝利を掴む事が出来るのか…と。

そして男は一つの計画を思いつく。

能力を使い、自分自身が幻想郷の大地その物になってしまえば良いのだと。

どれだけ力をもった強者だろうと、所詮はこの大地からの恩恵を受けなければ生きていけない。

ならば、その大地を支配してしまえば自分は神に等しい存在になる…と男は考えた。

 

しかし、それには相当な時間が掛かる。

少なくとも、10年は覚悟しなければならない。

だが構わない。

男には自由の為なら全てを捧げる覚悟がとっくにあった。

自分は王となる…男は今まで過ごしてきた日々を捨て去るかのように名前を捨て、代わりに自身を“改”と名乗ることにした。

そしてその日から男の計画の歯車は回り始める…。

 

 

それから9年と少しが経過した。

全てが順調だった。

しかし、あと少しの所で事件は起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

改『だいぶとこの大地に馴染んできたな…あと少しで完全に支配できるぞ…』

 

 

改は半身だけ大地と同化させ、感覚を確認していた。

誰も通りがからない、人気の無い裏路地…ところが

 

 

少年『ひぃ!?お…おっちゃん何してるんだ……!?』

 

 

改『!!?』

 

 

何と見ず知らずの子供に、その姿を見られてしまった。

何ということだ…改は冷や汗を掻き始める。

どうすれば良いのかと。

 

 

改『これ……は……だな……ッ!!』

 

 

少年『お…俺!何も見てないから!見てないから!!』

 

 

改『ま…待てッ!!』

 

 

何か見てはいけない物を見てしまった…そう思った生年は全速力で元きた道を引き返す。

改の静止の声を無視して…。

改は更に焦った。

 

 

改(マズい……このまま逃がせば…俺の事を言いふらされる危険性が…いや…子供の事だ…絶対に言いふらす……!!そうなれば…全てが台無しになる……!!どうする……!?どうする……!?)

 

 

その間も少年は走り続ける。

人通りに出られてしまえば、もう取り返しが付かなくなる。

やるしかない…!!

改は意を決して少年に向かって、能力を使用する。

 

 

改『うおぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 

すると地面がうねり、そこから手の形をした岩が四本飛び出る。

 

 

少年『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

 

その岩は、少年の手首と足首をガッチリと掴んで拘束し、少年の身体は宙に貼り付けのような状態になる。

そして次の瞬間、少年は地中深くに引きずり込まれていったのだ…。

 

 

少年『助けてッ!!誰かッ!!慧音せん……せ……』

 

 

改『殺しはしない……まだな………全てが整うまでは………小僧……お前には生きててもらうぞ……!』

 

 

そして、改もそのまま地中の中深くへと潜って消えたいった…。

これが昨日に起こった誘拐事件の真相だった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢《そして現在》♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「待ちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

地面を操り、滑りながら猛スピードで逃走を図る改と、それを岸部露伴のバイクで追いかける譲信。

そして、譲信の後ろにはこいしと藍が乗っている。

 

 

藍「あの男…子供を人質に……ッ!!」

 

 

藍は強く拳を握る。

弾幕で改を攻撃できるならそうしたいが、改はそれを防ぐために少年を人質に脇に抱えて移動している。

その為、下手に改を攻撃してしまえば、少年まで傷つくことになるのだ。

 

 

譲信「焦っちゃあいけねぇ…チャンスは絶対に来るぜ…!!それまでは見失わねぇように追うしかねぇッ!!」

 

 

譲信は更にアクセルを全開にする。

こいしはバイクから落ちてしまわないように、譲信の服に思いっきりしがみつく。

 

 

改「く……っ!!何だあの乗り物は……!?この速度に付いてこれるなんて……奴は一体……!?……くそっ!!それよりも何とかして逃げ切らなければ…!!」

 

 

逃げるだけでは、追いつかれる。

そう思った改は後ろから迫る譲信達に、能力を使って攻撃を仕掛ける。

 

 

改「プレゼントだ…!!岩ニードルの礫でもくらって死ねッ!!」

 

 

ヒュゴォォッ!!

 

 

改は地面から鋭く尖ったニードルを複数、瞬時に生成しそれを譲信達に向かって散弾銃のように発射する。

ここは人里。

下手に弾幕を打って相殺を図れば、周りに確実に被害が及び、下手をすれば死人が出る。

かといって、まともに躱せるほど欠伸が出そうな速度でニードルの散弾銃が迫っている訳でもなく、かなりマズい。

 

 

こいし「来るよッ!?どうするのお兄さん!?」

 

 

譲信「騒ぐなッ!!問題ねぇぜ!!THE WORLD(ザ・ワールド)!!(時よ止まれ)」

 

 

 

ドォーーーーーーーーーン!!

 

 

 

世界の時は停止する…!!

 

 

譲信「俺だけの時間だぜ……5秒前…!!」

 

 

七部のザ・ワールド。

今までは舐めプぐらいでしか使わないと思っていた譲信だったが、実は三部ザ・ワールドよりも優れている点が一つあった。

それは停止時間が短い代わりに、再時間停止までのクールタイムが圧倒的に短いという点だ。

今の状況のように連続して止めたいような時には、非常に便利な使い分けが出来るのだ。

 

 

譲信「しかし…距離までは詰めれそうにねぇな……仕方ねぇ……ザ・ワールド!!」

 

 

譲信はザ・ワールドの拳でニードルを弾かせつつ、安全なルートを通って攻撃を突破する。

 

 

譲信「時は動き出す!!

 

 

改の放った攻撃はそのまま誰に当たる事も無く、地面に突き刺った。

 

 

改「何だと!?」

 

 

一瞬で移動し、攻撃を躱した譲信達に改は驚きを隠せないでいた。

だが驚いているのは、別に改だけではない。

 

 

藍「…まただ!!これは一体…!?」

 

 

こいし「あれぇ~?何か移動してる?」

 

 

藍とこいしも、改と同様に驚いていた。

 

 

譲信「そう驚くなよ。こいしはもう知ってるかもだが…これがTHE WORLD(ザ・ワールド)だ。時を止める…そういう能力がある!」

 

 

藍「“時を止める”だとっ!?本当に何なんだスタンドというのは……何でもありじゃないか……」

 

 

次から次へと色々な能力を使っていく譲信に、藍はもう警戒するのも疲れた…とため息を吐く。

というか、時まで止めるなんてされたら、もう何しても勝てる訳ないだろっ!!と、諦めの気持ちが強かった。

 

こういのはやはり、主人に何とかして貰うのが一番だと、藍はスタンドについて…考えるのをやめた。

 

 

こいし「全然気付かなかったよ!」

 

 

譲信「そりゃあそうだろうさ。同じ時間干渉系能力者か、能力干渉無効化の能力者でもない限り、まず止まった時の中を認識する事は不可能だからな。それよりも………また来るぜッ!!」

 

 

藍&こいし「え?」

 

 

譲信は前を睨む。

すると、今度は巨大な岩の球体が迫ってきていた。

 

 

譲信「こいつは七部のザ・ワールドのパワーじゃ少ししんどいか……かといって下手に砕くと周りへの被害がある……か……」

 

 

藍「どうするつもりだ?…言っておくが粉砕はするんじゃないぞ?」

 

 

譲信「分かってるて!!依然問題無し…スタープラチナ・ザ・ワールド!!

 

 

 

ドォーーーーーーーーーン!!

 

 

 

譲信は、今度はスタープラチナで時を停止させた。

 

 

譲信「砕いても駄目ってなら…俺は砕かねぇぜ~?」

 

 

譲信はスタープラチナを動かす。

スタープラチナは巨大な岩石ボールを掴むと、それを持ち上げる。

そして、それを譲信達の後方の地面にめり込ませるように落とす。

 

 

スタプラ「オラァッ!!」

 

 

ズズーンッ!!

 

 

譲信「よし!こうすれば砕けず、さらにはこれ以上転がらないから被害が広がる心配はねぇ…時は動き出す

 

 

そして世界の時は再び動き出した。

 

 

藍「!!……なるほど考えたな」

 

 

譲信「まぁな…やれやれ…パワーが無けりゃあ詰んでたぜ…」

 

 

譲信はすかさず、ザ・ワールドにスタンドを切り替える。

同じ5秒でもザ・ワールドの方がクールタイムは短いのだ。

 

 

藍「しかし…奴は一体何処へ向かっているんだ…?さっきから直線にしか進んでいないが…」

 

 

譲信「そういや…確かにそうだな」

 

 

こいし「この方向って、特に何も無いよね?」

 

 

藍「あ、あぁ…曲がり角も狭くなって、このスピードだと真っ直ぐにしか進めなくなるが……」

 

 

何故改は直線にしか逃げていないのか…その疑問に三人とも頭を悩ませる。

 

 

譲信「もしかすると…外に向かってんのか?」

 

 

その時、譲信は口を開いた。

 

 

藍「外……か。確かに、それしか考えられないな」

 

 

譲信「あぁ。俺らに見つかった以上、野郎はもう人里内にいることは出来ねぇ……それに、奴の能力…見た感じ人里の外で使った方が強いんじゃねーか?」

 

 

藍「自分のフィールドに私達を誘い込んで…始末しようという訳か。随分と甘く見られたものだな…」

 

 

譲信「俺としてはそれで助かるがな…逃げ続けられるよりかは、ケリをつけやすくて助かるぜ」

 

 

これ以上攻撃をしても無駄だと思ったのか、改からの攻撃はもう無かった。

ただ真っ直ぐ逃げ続ける改を譲信達は追う。

 

 

 

改「良いぞ…付いてこい……ハナから人里の中で仕留めれるとは思ってはないからな……ケリをつけるのは…外だ…!!」

 

 

譲信達の予想通り改は人里の外に向かっていた。

 

 

改「あの中の誰かは既に、俺の能力に勘づき始めているだろう……しかし奴等は俺を追うしかない……それで良い…」

 

 

静かに殺気の籠もった瞳で、改は三人を睨みつける。

 

 

 

譲信「奴が外に出て、俺達と対面してやり合う状況になった時の作戦を伝えておくぜ……こいし!お前に懸かっているからよく聞いてくれ…」

 

 

こいし「?」

 

 

譲信は走りながら、作戦を藍とこいしの二人に伝える。

それは、空条譲信が人生で初のちゃんとした策であり、渾身の策であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「おーい霊~夢~!!」

 

 

その頃、博麗神社には普通の魔法使いこと、霧雨魔理沙が霊夢を訪ねに訪れていた。

 

 

霊夢「何よ魔理沙?今、神社の掃き掃除で忙しいんだけど?」

 

 

霊夢は面倒くさそうに、肩を叩きながら振り返る。

 

 

魔理沙「掃除なんてしてる場合じゃないぜ!今人里内で異変が起きてるんだぜ!!」

 

 

霊夢「はぁ!?人里内で異変?」

 

 

魔理沙「おう!何でも子供が行方不明になったり、地面が盛り上がったり、飛び出たりでもう散々な事になってるらしいぜ!!」

 

 

霊夢「何処のバカよ!!人里内でそんな巫山戯た真似をするのは…!!」

 

 

人里内で暴れるのは御法度。

ましてや異変となると、絶対に許されるべき事では無い。

博麗の巫女として、そんな巫山戯た輩には夢想封印をたっぷり叩き込んでボコボコにしてやらねばならない!

霊夢は掃除そっちのけで、すぐに宙へ浮かび上がる。

 

 

霊夢「行くわよ魔理沙!!そんなバカな奴はフルボッコよ!!」

 

 

魔理沙「そうこなくっちゃな!!行くんだぜ!!」

 

 

霊夢と魔理沙は異変解決に向け、人里に向かって全速力で飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォ………………!!

 

 

譲信「やっぱこうなったか!!」

 

 

譲信達は、改を追ってついに人里の外へと飛び出していた。

そして、改はそんな譲信達を待ち伏せるかのように、少し出た所で立っていた。

 

 

改「よく俺を追って来たな…八雲の式まで引き連れて…随分と御大層なもんだ…」

 

 

少年「ンー!!ンーー!!」

 

 

ふん縛られている少年は、必死な顔で譲信達に助けを求めていた。

 

 

譲信「悪いことは言わねーよ。すぐにそこのガキんちょを引き渡しな…そうすりゃオメーを痛めつけるなんてことはしねーよ」

 

 

まずは交渉。

下手な争いを避けるために、譲信は改と話し合いで事を収めようとしていた。

しかし

 

 

改「それはNO!だ…ここに来たからにはお前達を皆殺しにする事は既に決定している。」

 

 

藍「ほう…?私を前にそんな言葉が吐けるとは…相当自惚れが過ぎないか?」

 

 

交渉は不可能。

そう判断した藍は、遠慮無く殺気を放つ。

藍の放った殺気は凄まじく、思わず譲信もブルッとしてしまった。

改の手も僅かに震える。

 

 

藍「口ほどにも無いな…この程度の殺気で怖じ気づくとは…」

 

 

改「………そうだな。八雲の式よ……確かに俺は今、震えが止まらない…見るがいい…止めようと思って必死に言い聞かせても、この手の震えはちっとも収まってくれない……しかし、これが良いのだ。今感じるこの恐怖こそが、俺を更なる高みへと導いてくれる試練となる…」

 

 

改は震える手を押さえながら、藍を睨み続ける。

 

 

譲信「聞くが………何でお前、その子を誘拐しちまったんだ?」

 

 

そんな改に、藍の隣に立っている譲信が訪ねる。

 

 

改「ふむ……俺の夢は、人外共を絶滅させ、この幻想郷を人間だけの自由な楽園に作り変える事だ……この小僧はその計画の障害となり得る…だから連れ去り、手元に置いておくことにしたのだ…なに…殺しはしない…まだな……」

 

 

藍「人間だけの楽園…だと!?巫山戯るなッ!!そんな事が許されると思っているのか!!自惚れるのも大概にしろッ!!」

 

 

改が語った身勝手な計画に、藍は一気に怒りの頂点に達する。

青筋を浮かべ、尻尾の毛を逆立てさせ、恐ろしい殺気と威圧を放った。

 

 

改「怖い怖い……巫山戯るな……?自惚れる……?それは、俺の台詞だよ……生まれた時から探究心を押さえつけられ、自由を奪われてきた俺は…今お前が言った台詞をお前にそっくりそのまま返してやるよ…巫山戯るな!自惚れるのも大概にしろ…!……とね」

 

 

改は震えながらも、口調や態度は全く変わらずに藍に向かって言い放つ。

 

 

藍「貴様ァ………!!」

 

 

既に怒りの限界に達していた藍。

そんな藍を譲信は何とか押しとどめる。

 

 

譲信「我慢してるのはお前だけじゃあ無ぇだろ…幽香さんも、紫さんも、藍さんも、人里のおっちゃんらも、みんなそれぞれ譲り合って、時には我慢しあって…それでも何処かで手を取り合って生きている。短ぇ間だが、俺はこの目で見てたから…それだけはハッキリ分かんだよ。綺麗事を言うつもりは無ぇ…お前の意見もそりゃ確かに一部の正論だ…尊重されて良いと思うぜ?でもな、そんな極端なやり方は、認められねぇ…俺は同じ人として恥ずかしいぜ…スッパリ言ってやるがお前は…俺より幻想郷を知らねぇ!!

 

 

藍「譲信……」

 

 

改「…小僧……」

 

 

譲信は幻想郷に来てから、僅か3日。

それでも色んな妖怪や人に出会ってきた中で、少しだけ大切な事を学んだ。

時には喧嘩をふっかけられ、時には殺されかけ、時には優しくされ、時にはカモられ、時には懐かれ、時には助けられ…人間も妖怪も大差ない。

それぞれが今日を懸命に生きている。

それが幻想郷なのだ…と譲信は解釈していたのだ。

 

 

改「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ!!お前のようなチッポケなクソガキに何が分かるッ!!この俺に説教してるんじゃ無いぞ!!」

 

 

改は逆上し、一気に感情を爆発させて譲信に向かって怒鳴る。

しかし譲信は涼しい顔でそれを受け止めていた。

 

 

譲信「だ~か~ら!テメーは何も見えちゃいねぇんだよ…今もだ。気付かねぇのか~?もうテメーの隣にガキんちょはいねぇぜ?」

 

 

改「なん………だとッ!?」

 

 

改は慌てて横を見る。

すると、いつの間にか子供の姿は消えていた。

 

 

改「何処へ行ったぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

譲信はしてやったり…とニヤリと笑った。

 

 

譲信「よくやったこいし!」

 

 

こいし「いえーい♪」

 

 

いつの間にか、譲信の隣に子供を担いだこいしが立っていた。

そう!!譲信の立てた作戦とは!!

譲信と藍で改の気を引いてる隙に、能力で姿を消したこいしが、少年を助け出す。

シンプルかつ、最善な揺動作戦だった。

 

 

藍「これで貴様は人質を失った!観念するんだな!もうこれで終わりだ!!」

 

 

改「ぐっ…………!!」

 

 

改は藍の言うとおり、最後の切り札さえ失ってしまった。

もう後が無かった。

 

 

改「あぁ…人質も無くなったか………俺は今追い詰められているのか……直に正体もバレる……だが……計画だけは終わらせんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

 

そう叫んだ改は、両腕を地面に突っ込む。

すると、改の身体はみるみる地面と同化していく。

まるで、超巨大なゴーレムのようだった。

 

 

改「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!今の俺は“陸”だ!!お前ら全員ただの虫ィ!!キメ細かな大根おろしのようにすり潰して圧死させてくれるッ!!」

 

 

改は胸部と頭部だけを露出させ、後は全て大陸と同化させていた。

超巨大なゴーレム体となった改は目視だけでも80mはあった。

いくら藍といえど、このサイズの岩の塊を相手にするとなると、相当苦労することになる。

 

 

藍「なんてヤツだ!!こんな執念の塊のような人間は見たことが無いッ!!」

 

 

こいし「わ~!!おっきいな~!!」

 

 

譲信「こいし!藍さんは、そのガキんちょを連れ人里へ向かって全速力で逃げてくれ!!」

 

 

譲信はすぐに、二人に向かって指示を出す。

 

 

藍「譲信!お前はどうするつもりだ!?」

 

 

譲信「どうするも何も…誰かが足止めしなきゃあいけねーでしょ?野郎は俺に対しキレてんだから俺がやりますよ!!」

 

 

譲信は訳ない…といった表情で答える。

藍は譲信の襟を掴んで声を荒げた。

 

 

藍「駄目だ!!私がやる!!お前を助けてやることが私の受けた命令だ!!」

 

 

藍にとって紫の命令は絶対だ。

もし譲信をここで死なせてしまっては、主の期待に応えられなかった事になる。

 

 

譲信「……藍さん………この空条譲信には…夢がある!!正しいと信じる夢がッ!!そしてこれは…俺が乗り越えなければいけない試練なんだ…!!野郎は敵ながら…覚悟を決めた“夢追う者”だ……俺も覚悟を決めなければいけない…!!真の夢を叶える為には…魂を賭けなければ試練に打ち勝つことはできない!!これは俺の闘いだ!!だから俺がやるんだッ!!あんたには譲れねぇッ!!ハッキリ言う!!引っ込んでなッ!!お呼びじゃあねぇんだぜ!!」

 

 

今の譲信には、とても高校生の出す物とは思えない“凄味”があった。

藍は思わず、襟から手を離してしまう。

 

 

譲信「それで良いんだぜ!」

 

 

もう藍は何も言わず、その場から立ち去ろうとする。

そして最後に去り際に譲信の方を振り向いた。

 

 

藍「お前に死なれては…私が怒られるんだ…分かってるな?」

 

 

譲信「要は負けなきゃあ良いんだぜ?余裕余裕♪…数学の試験より遥かに単純で楽ちんだぜッ!!」

 

 

譲信は、ニヤリとして悪戯っぽく笑って答えた。

それを聞いて藍も、緊張の糸が解けたようにフッ…と笑う。

 

 

藍「それなら良い…」

 

 

そう言い残して、藍もこの場から去って行った。

そして残ったのは譲信と、改の二人だけになった。

 

 

ドドドドドドドドド……

 

 

譲信「とまぁ…映画のラストシーンみたいな別れ方をした訳だが…別にテメー相手は苦戦する事はねぇ。テメーはただデケェだけだからな」

 

 

改「減らず口叩いてんじゃ無ぇぞ!?俺はそーいうガキが一番嫌いなんだよ!!見てて…ムシャクシャするからなぁ……それが今のお前だ!!ぶっ殺してやる!!」

 

 

改は、超巨大な岩の拳を譲信目掛けて振り下ろす。

 

 

譲信「フン…もう時は止めねぇ…決着は時が止まるよりも早くにつくからな………!」

 

 

改「だから減らず口を叩いてんじゃあ無ぇぞぉぉぉぉ!!」

 

 

ゴォォォォォォォォォォォォォォ!!

 

 

くらえば即死!!

時を止めなければ絶対に避けられない広範囲の破壊力!!

しかしこの空条譲信は!!あろうことかもう決して時を止めよう…などと考えていなかった!!

それだけではない!!

ここから一歩も動かない所か、今からスタンドを出して何かしようとさえ、考えていなかったのだ!!

しかし、まるで空条譲信は勝ったような笑みを浮かべている!!

一体何が起ころうと言うのかッ!!

それはもう起こってからでないと誰にも知ることは出来ないッ!!

 

 

譲信「ところで…“ぶっ殺す”って台詞だがよ……そいつはダセぇぜ…。良いか?そういうのはな、そこら辺のナンパストリートや仲良しクラブで“ぶっ殺す”“ぶっ殺す”って大口叩いて仲間と心を慰めあってるような負け犬共の台詞だぜ。……ぶっ殺すと心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!覚えとけ!!………そして俺の作戦は既に完了している…」

 

 

改「何言ってやがぁんだぁぁ~!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………コッチヲミロ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

改「んあ?」

 

 

改が何かの声が聞こえた方を見ると、そこには緑色の玩具のようなドクロ型の戦車が、胸元の岩盤にめり込んでいた。

そして

 

 

コッチヲミロ…

 

 

オイ、コッチヲミロッテイッテンダゼ…

 

 

と、呟いていた。

 

 

改「何なんだコレはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

改は、いつの間にかそこにいる謎の何かに、怒り紛れの発狂をする。

そんな改の様子を為たから面白そうに譲信は眺めていた。

 

 

譲信「キラークイーン…“第二の爆弾 シアーハートアタック”…!!そいつは目立ちたがり屋なんだ…しっかり見てやれよ?刺激的なモノをくれるぜ………」

 

 

 

シアハ「コッチヲミロォ!!

 

 

改「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

カチッ…ボゴォォン!!

 

 

 

凄まじい爆発が起こり、改が吹き飛ばされ超巨大ゴーレムの身体はボロボロと崩れ去る。

崩れ落ちる破片の中に、ボロボロになったまるで、ボロ雑巾の改の姿が混じっていた。

 

改を吹き飛ばしたシアーハートアタックは、キラークイーンの手甲に再び収納された。

それを確認して、譲信はゆっくりと改に近寄る。

 

 

改「ガッフ……バカ……な……」

 

 

改は奇跡的に意識を保っていた。

それについては、譲信は少しだけ驚いた。

 

 

譲信「さて…これからお前には星の白金(スタープラチナ)のラッシュを叩き込もうと思う…ハッキリ言うがちっともカワイソーだとは思わねぇ…遠慮無く俺はやるぜ?」

 

 

死刑宣告。

それを聞いた改はすぐに青ざめて慌てふためく。

 

 

改「ま、待ってく……くださいッ!!俺が…俺が…間違ってた!!認めるよ!!もうしない!!ちゃんと自首だってする!!謝罪だって迷惑かけた人全員にする!!だからもう苦しいのは勘弁してくださいッ!!」

 

 

痛む体に鞭打って、改は譲信に土下座をする。

額から血が出るほど、地面にこすりつけて土下座する改に譲信は驚いていた。

 

 

譲信「お…おい待ちなッ!!テメー何勝手な事を…!!」

 

 

改「お願いします!!許してください!!許してください!!」

 

 

改は何度も頭を地面に打ち付けて許しを必死に乞う。

 

 

譲信「あ…あーもう!!分かった!!スタプラの処刑は勘弁してやるよ!!俺が悪者みたいじゃあねぇか!!…ったく…ほれさっさと自首に行くぞ!!」

 

 

改「あ…ありがとうございます!!ありがとうございます!!」

 

 

改は再び、何度も頭を地面に打ちつける。

譲信はもはや呆れて、逃げるように人里に向かって歩き出した。

改に…背を…向けてしまった…。

 

 

改(バカがぁ~…これだからガキは詰めが甘ぇんだ……クククククク………これで終わりだ……!!最後に勝つのはこの俺なんだッ!!)

 

 

改は懐に忍ばせておいたナイフを抜き取り、譲信に向かって襲いかかる。

 

 

譲信「な!?や…野郎っ!?なんてゲスな!!」

 

 

改「ハーハハハハハハハッ!!これで俺の勝ちだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

夢想封印!!

 

 

 

改「ぐぅおおおおおおおおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

しかし、突如飛んできた攻撃に改は吹き飛ばされる。

何が起こったのか…改は全く理解出来てなかった。

 

 

譲信「聞き覚えのある声だ……やれやれ…」

 

 

譲信は、声のした報へと振り返る。

そこには

 

 

霊夢「まったく…そいつが今回の異変の主犯格だったという訳ね?」

 

 

魔理沙「あちゃー……一足遅れたんだぜ…!」

 

 

霊夢と魔理沙が宙に浮かんでいた。

 

 

譲信「よう。お二人さん元気ぃ~?」

 

 

譲信はお気楽な雰囲気で二人に語りかける。

しかし、どこかぎこちなかった。

 

 

魔理沙「よ!結構頑張ってたみたいだな!」

 

 

譲信「まぁな♪」

 

 

霊夢「何であんたがいるかはともかく…問題はコイツね…人の背後を襲おうなんて良い度胸してるじゃない?」

 

 

霊夢は地に降り立つと、改にトドメを刺そうとゆっくりと近付いていく。

 

 

改「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!冗談なんですよ!!本当に軽い冗談!!本気でそんなことする訳無いじゃないですか~!!ね?ね?怒ってませんよね?」

 

 

霊夢「あんたねぇ………!」

 

 

なんて性格の腐った男だろうか。

手加減なんてしてやるもんか!と霊夢は札を構える。

しかしその時、譲信が霊夢の肩を掴んで霊夢の動きを止めた。

 

 

霊夢「ちょっと?何止めてんのよ?まだこんなクズ男に情けをかける気?」

 

 

しかし、魔理沙だけは見てしまっていた。

一瞬だけ物凄い青筋を浮かべ、完全にぷっつんしていた譲信の表情を。

それは、般若顔負けな程恐ろしい物だった。

 

 

改「ほ、ほら!!譲信さんは分かってくれますよね?ね?流石は譲信さん!!ハ…ハハハ…ハハ!!」

 

 

譲信「………………もうテメーには何も言う事はねぇ…」

 

 

ゆっくりと譲信の背後から星の白金(スタープラチナ)が現れる。

結末を理解した魔理沙は「オウ…」と両手で顔を覆い、霊夢も流石に見てられないと顔を背けた。

 

 

譲信「とてもアワれすぎて………」

 

 

 

       何も言えねぇ

 

 

 

スタプラ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァッ!!」

 

 

 

改「ぐばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 

 

 

 

 

“大陸と同化する男”…改。

空条譲信の裁きの怒りにより…再起不能(リタイア)

 

誘拐された少年は無事人里の両親の元まで帰る事が出来た。

今回、博麗の巫女は出番無し。

ヘソを曲げて不機嫌なまま帰っていった。

その後、改の姿を見た者はいない。

 

 

 

TO BE CONTINUE…………

 




答え スピードキング

これは答え辛い問題だったのでは?
勿論、分かった人は流石ジョジョラーです!


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番外 誰かが書き残した日記

何故、このような回が出て来たのか。
それは読む人の解釈次第です。
重要なのか無意味なのかお巫山戯なのか一発ネタなのか…全て解釈次第なのです。

短いので箸休め程度にどうぞ!


 

その日記はこの世界の何処かに存在する。

その日記は誰が何のために、何を思い書き残したのかは不明である。

その日記は決して真実しか語らない。

その日記は凡人には理解出来ない。

 

 

その日記には天国への行き方と、その先にある何かを…書き記さている。

その日記の内容は以下の通りである。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢《謎の日記》♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

私は天国はあると…その存在を信じている。

しかし私の思う天国とは、皆が思うような死後の楽園の事では無い。

私の思う天国とは精神が行き着く場所の事だ。

 

私は…天国に到達する事は出来た。

しかし、その先にある絶対の領域へは辿り着けなかったのだ。

私にはその資格が無かった。

私が筆を執るこの時代には…残念ながらその資格を持った者はいなかった。

 

私がどうしても辿り着きたかった絶対の領域とは、世界でただ一人が立つことの許される頂であり、そこに立つ者はどんな害悪や脅威からも完全に解放され、私でも想像さえつかない程の、幸福を得るだろう。

 

その頂へは…天国の力だけでは辿り着けない。

天国の力ではいずれ限界が来るだろう…私ももう間もなく滅びる…数千も時代が経つ頃には、私の全てはこの日記を残して消え去っているだろう。

 

だから私はいずれ資格ある者が現れた時に、その者に私の夢を託すために…この頂へ達する方法を書き記しておく。

 

 

 

 

必要なものは“全てのスタンド”である

 

全てのスタンドを始めから制する選ばれし者が、絶対の領域へ踏み入る資格を持つ。

 

 

必要なものは“信頼できる友”である

 

絶対の領域へ向かうのに必要な友とは“自身の幸福”よりも、“友への献身”を喜んで選ぶ事のできる、“献身の心”を持った者である。

 

 

必要なものは“極罪”を犯した36名以上の魂である

 

 

罪人の魂の持つ力は、天国へ到達した者に更なる力を与えてくれる。

 

 

必要なものは“14の言葉”である

 

 

「らせん階段」 「カブト虫」 「廃墟の街」

「イチジクのタルト」 「カブト虫」

 

「ドロローサヘの道」 「カブト虫」 「特異点」

「ジェット」 「天使(エンジェル)」

 

「紫陽花」 「カブト虫」 「特異点」 「秘密の皇帝」

 

 

必要なものは“勇気”である

 

 

朽ちていくその者の“スタンド達”と“天国の力”は、36の罪人の魂を集めて吸収。

そこから“新しい一つ”を生み出すであろう。

その者は一度自身の命を捨てる“勇気”を持つのだ。

 

 

必要なものは“黄金の精神”である

 

 

かの者達との因縁。絶やさねばならなかった血統。

私には無かった意思。

それが絶対の領域へ向かう為に必要な“靴”となる。

 

 

最後に必要なものは“場所”である

 

 

北緯28度24分 西経80度36分へ行き、次の“新月”の時を待て…

それが“絶対の領域の時”であろう。

 

 

 

可能ならば私自身が辿り着きたかったその場所で…

選ばれた者は…どんな景色を観るのだろうか…

ただ一つ言えることは、もう決してその者は何者も恐れる必要は無いという事だ…

望む全てが手の中にあることだろう…

 

 

私の名は…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ページはここまでだった…

果たして日記に書き記されてる絶対の領域とは…一体何なのか。

それを知る者は、そこに辿り着けた者だけである。

 

この日記はまた今日も世界の何処かで、誰にも見つからずにひっそりと眠っている…。

 

 

 

 



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⑩空条譲信の酷ぇ一日

今日はクイズはお休み。
考えるのが面倒だからとかじゃあ無いんですッ!!
決して!!そう、決して!!
サボってなどいませんともッ!!


“JOJOの何でも屋”。

一連の騒動の後日、その活躍ぶりから一気に人里中にその名は知れ渡り、今や知らぬ者はいないと言うほどに有名になった。

 

超巨大な岩の巨人をたった一人で倒し、子供を無傷で救出した凄腕の社長、空条譲信。

スタンドという不思議な力を操り、人間でありながら妖怪を軽く凌ぐほどの力を持つこの男は、本人の真っ直ぐな性格も相まって人々からは憧れの対象とまでなっている。

そして、一連の騒動は人里内にとある影響を与えていた……

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢《人里寺子屋》♢♢♢♢♢♢

 

 

少女A「け、慧音先生!!大変です!!またA君とB君が喧嘩してます!!」

 

 

慧音「何?また喧嘩してるのか?全く…AとBは何処だ?」

 

 

少女A「こっちです!!先生早く!!」

 

 

少女に手を引かれ、慧音はやれやれとため息を吐きながら現場へ向かう。

そこでは、確かに二人の少年が殴り合いの喧嘩をしていた。

………しかし、何処かいつもと違っておかしかった。

 

 

 

少年A「おいB!!いつもいつも俺の邪魔ばかりして!!もういい加減許さねーからなぁ!!WRYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

少年B「それは僕の台詞だ!!このスカタン野郎がぁーッ!!

 

 

互いに罵り合いながら、遠慮無く殴り合う。

 

 

少年B「なんだなんだぁ?そんな欠伸が出ちまいそうなスットロイパンチは!!そんなんで喧嘩が続くかぁ?続・くぅ・かぁ?貧弱貧弱ゥ!!」

 

 

少年A「つべこべ言わずにかかって来なッ!!俺はやるといったらやる男だぜ!!お前のようなゲロ以下の臭いがプンプンする奴は!!ぶちのめす!!オラオラァ!!」

 

 

そんな一部始終を見てしまっては慧音は黙っていられない。

 

 

慧音「何をしてる!!いい加減にしないかーッ!!」

 

 

慌てて慧音は二人を引き離す。

これ以上喧嘩が続くと大怪我しかねなかったからだ。

 

 

少年A「こ、このぉB!!お前は絶対許さねーぞ!!ぶっ殺してやる!!」

 

 

慧音「友達に向かって何てことを言うんだ!!馬鹿者!!」

 

 

少年B「ぶっ殺すぅ?だから君はマンモーニなんだよぉ!!ぶっ壊すと心の中で思ったなら!!その時スデに行動は終わっているんだ!!」

 

 

慧音「マン……モーニ?なんだそれは!?そんな言葉何処で覚えた!?」

 

 

少年A「やかましい!!お前が言えた台詞かぁ!!自分を棚に上げるとは!!こいつはめちゃ許せんよなぁ!!」

 

 

慧音「お前たち…いい加減に………しろぉぉ!!」

 

 

慧音の頭突きが二人に奇麗に入り、あまりの痛さに二人は悶絶してしまう。

……そう、“JOJOの何でも屋”は良くも悪くも人里に影響を与えていたのだ……。

 

 

そんな空条譲信の経営する何でも屋は祝日…土日は休みなのである。

そう、一連の騒動があったのは水曜日。

それから3日が経って、騒ぎも落ち着くこととなった土曜の今日は、“JOJOの何でも屋”は休みなのである。

 

一応は助手であるこいしは、依頼の無い休日はとても暇になるので、無意識のまま何処かへと、面白い事を探しに姿を消してしまった。

おそらく月曜までは就寝時に戻ってくるか来ないか…である。

 

一方、社長である譲信は優雅に休日を満喫している………訳でも無く譲信は現在、八雲紫に呼び出されマヨヒガまで八雲藍に連れて来られていた。

 

 

譲信「こうなるんじゃあ無いかと思ってましたハイ」

 

 

人里内でスタンドを使って暴れて、さらにはスタンド能力の全てが描かれている漫画の没収。

勝手に何でも屋を開いただけでなく、異変レベルの騒ぎにまで関わってしまったのだ。

スタンド能力について、なるべく伏せておこうと考えてる八雲紫にとって、今の状況はまさによろしくない…というのが譲信の考えであり、こうして呼び出されるのも予測していた。

 

最悪ぶっ殺される、良くて説教、監禁、半殺し。

そんなことを冷や汗を掻きながら考えていると、譲信はとうとう紫の待つ部屋の前まで来ていた。

目の前にある襖一枚の向こう側に紫はいる。

一体どんな恐ろしい表情をして自分を待ち構えているのか…開けるなり弾幕でも飛んでくるのでは無いか…。

 

 

藍「紫様、連れてきました。」

 

 

紫「入っていいわよ」

 

 

藍「失礼します……」

 

 

譲信「………………ゴクリッ」

 

 

今日の譲信の服装は、すかしたブランド物のスーツに、センスの良いネクタイ。

そして、ポケットの中には何故かダサい爪切りが入っている。

そう、ジョジョ第四部、吉良吉影の通勤時の服装である。

自分の中で一番常識的で偉い人の家に行くときに着るようなジョジョの服装…となるとこれしか出てこなかったのだ。

突然の呼び出しだったので、服を買う時間もなく致し方無かった…。

 

 

ススゥーーー…

 

 

藍によって襖が静かに開けられる。

譲信は覚悟を決めた。

 

 

譲信「こ、この度は!!ゆ、紫さん…様の!!ご意志に背くような勝手な行動をし、多大なるご迷惑をお掛けしてしまいッ!!誠に申し訳ございませんでしたッ!!」

 

 

襖が開くなり、譲信はその場で高速土下座。

紫がどんな顔をしてるかなんて恐ろしくて見ることすら出来ない。

ゴンッ!!と頭を床に打ち付ける音が響く。

 

譲信の必殺、いきなり土下座!!

この必殺技はかつて、校長室にあったツボを割ってしまった時の謝罪時に生み出され、それ以降追い詰められた時、ここぞという時に譲信が繰り出す、洗練された必殺なのであるッ!!

 

そんな必殺技が繰り出され、この場は一気にシン…と静まりかえる。

いきなりの譲信の全力土下座に、譲信の隣にいた藍は目を丸くして床に頭を打ち付けたままの譲信を見ていた。

 

 

譲信「………………………?」

 

 

しかし、それ以上は誰の、何の反応も無い。

おかしい…何故何も言われないのか…されないのか…すごく不気味な感覚に譲信は襲われる。

もしかしたら、これ自分が思ってるよりもかなりヤバイ状況になってるんじゃあないか…と思わず息が止まりそうになる。

 

 

ドキッ…ドキッ…ドキッ…ドキッ…ドキッ…

 

 

だがやがてその静寂は破られた。

 

 

 

紫「…………フフフフフフ…」

 

 

 

意外ッ!!

何とそれは八雲紫の笑い声だったッ!!

あまりの予想外な展開に思わず譲信は、岩のように固まってしまうッ!!

そして、続く藍も紫に釣られてクスクスと笑っていた。

 

 

譲信「え………?」

 

 

俺は夢を見ているのか?と状況を現実のものと理解できていない譲信に、藍はやれやれ…と軽く頭を振る。

 

 

藍「ハハハ…何してるんだ譲信…紫様は別に怒ってなどいない。そんなことでお前を呼んだ訳じゃないぞ?」

 

 

譲信「へぇ……?」

 

 

紫「フフ♪藍の言う通りよ。私はちっとも怒ってないし、説教をするつもりもありませんわ…」

 

 

譲信「???????」

 

 

余計に理解が出来なくなり、ぽかーんとした顔で硬直している譲信。

 

 

紫「フフ…あー面白い。譲信、良く来たわね…まぁ、まずはこっちに来て座りなさいな。」

 

 

譲信「は…はぁ…」

 

 

そんな譲信に、紫は笑いながら手招きする。

譲信は頭の中にハテナを浮かべながらも紫と対面する形で座布団に座った。

 

 

紫「藍~。お茶を入れてきて頂戴~。」

 

 

藍「分かりました。少々お待ちくださいませ紫様。」

 

 

譲信「………」

 

 

お茶を入れに藍が去った事で、部屋の中には譲信と紫の二人だけが残った。

何だか気まずい。

譲信からしてみれば、紫は一度ぶん殴った相手でもあり現在進行形で怒らせてるかもしれない相手でもある。

どちらにしろ、あまり良い印象を与えているとは思えず、このように歓迎されては逆に来る恐ろしさという物があった。

 

 

譲信「えーと……あのぉ……紫さん?本当に怒ってないんですか………?」

 

 

紫「あらどうして疑うのかしら?私が怒ってるように見える?」

 

 

譲信「…………いえ、見えないですね……」

 

 

紫「フフ…そうねぇ…どうして怒ってないのか不思議で仕方ないようだから教えてあげるわ」

 

 

譲信「……まさか怒りを通り越して笑っちまうから…怒る必要が無いとかそういう系ですか…?」

 

 

紫「何よそれ?私が危ない奴みたいじゃない…全く酷いわぁ…あなたの中でゆかりんはどんなイメージなのかしら…失礼しちゃうわね!」

 

 

譲信(いきなり殺しに掛かってきて俺の腹をぶち破った危ねぇ奴です…)

 

 

ぷんすかと怒った風に言う紫に対し、心の中で口には出せないような返しを譲信は叫んでいた。

ヤンキー要素を除けば、かなり痛いオタク要素しか残っていない譲信は元々、休日に出掛けたりとか目上の人と話したりするのは苦手だ。

不得意では無いが苦手な譲信にとって今の状況はかな~り辛い。

叶うなら今すぐ家に帰って、一日中EOHをしたいくらいだった。

 

 

紫「簡単な事よ。あなたを受け入れると決めた以上、幻想郷であなたの力の事をいつまでも隠し通すのは不可能よ。いずれ近い内には知れ渡る事も承知の上…今回の件でその時期が早まっただけに過ぎないわ…。それに人里内で暴れたと言っても、藍から被害を最小限に抑える為に能力を行使していたと、報告を受けているわ。それにちゃんと子供を無傷で救出したし、人里の外でちゃんと犯人を無力化した……つまり怒る必要が無い所か、むしろ褒め称えられる事をあなたは成し遂げたのよ。」

 

 

譲信「はぁ…そりゃあどうも有り難う御座います……てことは今日は褒める為に俺を呼んだんですか?」

 

 

紫「それもそうだけど…それだけで呼んだわけじゃないわ」

 

 

と、そこへ藍がお茶を二人分運んできた。

紫の前と譲信の前にお茶の入った湯呑みを置く。

譲信はその時に軽く頭を下げ、短く「どうも」と礼を告げる。

そしてそのまま藍は退室していき、どうやら話しは紫と譲信の二人だけで行われるようだった。

 

 

譲信「あー…それで俺をわざわざ呼んだ目的って何すか?」

 

 

譲信は軽くお茶を啜ってから紫に尋ねる。

紫はお茶を少し飲んでひと息吐いてから喋り出した。

 

 

紫「譲信、あなたについて聞いておきたい事と、これからのあなたについての話し合いをするために呼んだのよ。何せあなたはこれまでの外来人とは比較にならない程の特例だもの」

 

 

譲信「なるほど…そりゃ確かに大事な話しですね~」

 

 

そう言ってからまた譲信はお茶を啜る。

 

 

譲信「じゃあ早速だけど始めちゃいますよ。俺に聞きたいことってのは何すか?」

 

 

早く済ませてさっさと帰りたい譲信は早速本題へと入った。

 

 

紫「せっかちねぇ…まぁ良いわ。まず聞きたいことはあなたの能力について…コレだけじゃちょっと信用しきれないのよ」

 

 

そう言って紫は一冊の本を取り出した。

それは先日、譲信と幽香から回収した漫画“ジョジョの奇妙な冒険”だった。

 

 

譲信「はぁ…それで一体何が分からないので?」

 

 

紫「まずはこの漫画に描かれている“キングクリムゾン”の能力について…同様にあなたの持つキングクリムゾンの能力で時間が消し飛んだと思われる現象時、消し飛んだ時間分を計算してみた結果…あなたは約15~22秒間もの時間を消し飛ばしてるわ。しかし、原作ではそこまでの時間は消し飛ばせない…つまりあなたが能力を使うと原作とは僅かな差があるという事なんだけど…どうかしら?まずはそこを確認したいのよ」

 

 

譲信「あ~…」

 

 

確かにそれについては言い忘れていたなぁ…と譲信は思い出すように声を漏らした。

 

 

譲信「スタンドとは精神力に大きく影響を受けるんすよ。で、俺はどうやら思い当たる節多く、精神力がバカに強いんすよね。だから俺がスタンドを使うとステータスも能力も大幅に上方修正が入ってるんすよ。変わらないのは射程距離くらいじゃあないかなぁ~…」

 

 

紫「精神力……なる程ねぇ…私達に例えると妖力の大小による違い…という訳ね。」

 

 

まず第一に、どうして二次元の能力が現実に現れる事となっているのかという疑問はあるが、譲信に聞いた所でそれは分からないので、それについては尋ねる事はしない。

ちなみに、譲信のショボい脳みそで出されている考察は、元々スタンドとかはガチに存在している能力だった…という物だ。

実はジョジョの作者、荒木飛呂彦は年齢の割には見た目に大した変化なく、ファンの間では究極生命体だからだの、波紋使いだからだの、スタンド使ってだからだの言われている。

譲信の考察ではそれらが全てガチの話しで、何かの理由があって自分に奇跡的に能力が発現した…という考えだ。

 

 

紫「じゃあ質問は次で最後になるけど…これが重要よ。あなたはジョジョに関連する道具以外にも、無関係なソファ、本棚、額縁、机を生成してるわよね?でも作中にはそんな事の出来るスタンドは登場していない…つまり、作中には描かれていない…スタンド能力が別に存在している…と、私は考えているんだけど……どうかしら?」

 

 

紫がそう言った瞬間、譲信の纏う雰囲気が一気に変化する。

まさか、僅かな情報でそこまでの考察を立てられてしまうとは思ってもみなかったからだ。

そして、こうなってはもはや隠し通すのはほぼ不可能だということも譲信は気付いてる。

しかし、そう簡単に言う訳にもいかない。

 

原作には登場しないその能力…。

下手をすれば自分の待遇が180度変わってしまう程に危険なスタンドなのだ。

可能ならば、ここでしらばっくれてやり過ごしたい…と、譲信は緊張で嫌な汗を掻き始める。

そんな譲信の様子を見て紫はやはり、といった表情をしながらも、優しい声色で話し掛ける。

 

 

紫「良い?譲信。その能力についてあなたが語りたくないのは、その危険性故に私がそれを知ればあなたを殺すかも知れない……と、そう考えてるから……そうでしょう?」

 

 

譲信「さ、さぁ?どうでしょうね!?」

 

 

紫「フフ…分かりやすい反応をどうも有り難う♪…安心なさい。例えあなたがどんな能力を持っていようとも…私はあなたに危害を加えるつもりなんて無いわ。良く聞きなさい譲信。私は既にあなたの事を信用しているのよ…あなたが気付いていないだけで…あなたは既に私の信用を勝ち取っているの。だからこうして、あなたに直接聞いているの…あなたの口からその答えを聞きたいのよ。譲信この幻想郷にいる間は、あなたも幻想郷の一員…私はあなたの味方よ。」

 

 

譲信「………………」

 

 

譲信は驚いて目を大きくしていた。

まさか、そんな言葉が紫から出てくるとは思っていなかったからである。

てっきりガチガチの敵対視をされているとばかりに思っていただけにかなり意外であった。

 

 

譲信「へっ…♪分かりましたよ。こんなオタクには勿体なすぎる言葉…今、心で理解できたぜ…!!俺も紫さんを信用してこの能力を教えるよ…ザ・ワールド・オーバーヘブン!!

 

 

譲信が名前を呼ぶと、そのスタンドは現れた。

現れるだけで、とてつもない威圧感を放つそのスタンドは他のスタンドとは比べ物にもならない程の、パワーを感じさせる。

 

 

紫「オーバー……ヘブン?」

 

 

譲信「第六部でプッチ神父が天国の力で自身のスタンド能力を完成させたのは…読んでますよね?」

 

 

紫「ざっくりとだけれど、内容は覚えているわ…でもそれは確か、メイド・イン・ヘブンだったんじゃなくて?」

 

 

譲信「その通りです。プッチ神父はDIOの残した言葉を元に天国へ辿り着いた……ならば、DIO自身が天国へ行くとどうなるのか……」

 

 

紫「あら?…でもそれって…」

 

 

譲信「そう。原作では既にDIOは敗北して死亡している。しかし、荒木飛呂彦が監修したゲーム…アイズオブヘブンではDIOは天国へ到達し、自身のスタンドを生まれ変わらせて…ザ・ワールド・オーバーヘブンの力を獲得したんですよ。」

 

 

紫は、目の前に佇むザ・ワールド・オーバーヘブンをまじまじと眺める。

 

 

紫「これがそうだと言うのね。ボディの色が逆…一度世界を捨て去り、新たな世界へと生まれ変わったと言うことね……」

 

 

譲信「ええ。そして全く別の能力を手に入れた。絶対的な能力を…ね。」

 

 

紫「どんな能力なのかしら?」

 

 

譲信「真実の上書きですよ。DIOと…今の所有者である俺の望む真実を上書きして手に入れるそういう能力です。何者もその真実の力からは逃れられません。」

 

 

紫「し、真実の上書きぃ!!?」

 

 

紫は驚きのあまり大きな声を上げてしまった。

てっきり万物創造とか、そういう能力だと思っていただけに、驚きは大きい。

真実の上書きなんて、この強者達の集う幻想郷の中でも間違いなく断トツで危険な能力だ。

予想外な事態の大きさに流石の紫も言葉が出てこない。

 

 

紫「ちょっと!?譲信!?あなたそんな力を今までホイホイ使ってたの!?何考えてるのよっ!!自重しなさいッ!!」

 

 

そして次に出て来たのは怒りの感情だった。

そんな何でもありな能力をホイホイ使われては堪ったモンじゃない

 

 

譲信「えぇ!?はぁ…ま、そうっすね…ハイスンマセンでした。以後気を付けます…」

 

 

紫「絶っ対に無闇矢鱈とその能力だけは使わないで頂戴!!良いわね!?」

 

 

譲信「あー元からそのつもりっすよ。よほどの事が無い限りは使いませんよ。私生活の不便をちょっと楽にするぐらいにしか……」

 

 

紫「それも禁止よ!!欲しい物があるならちゃんとお金を稼いで手に入れなさい!!あの霊夢でもそうしてるわよ?」

 

 

譲信「は…はぁ…ごもっともで…」

 

 

紫「全く……あなたがおバカなのが唯一の救いよ……………………!?」

 

 

と、その時妖怪の賢者とまで呼ばれる頭脳がとんでもない閃きを紫に与えた!!

その閃きは紫にとって、何よりも大事な事なのである。

それはもう物凄い眼力で譲信の事を見るほどに。

 

 

紫「譲信!!あなたのその力、確かに望む真実が手に入るのよね!?」

 

 

机をバン!と叩いて紫は譲信に詰め寄る。

 

 

譲信「えぇ…そうですが…?」

 

 

それを聞くや、紫は少し頬を赤らめながら事情を語り出した。

 

 

紫「実はねぇ…?最近、ちょっと甘い物を食べ過ぎちゃって…ちょっと体重が増えちゃったのよ……みんなのアイドルであるゆかりんの体重が増えた事を皆が知ったら、皆とても悲しんじゃうのよ…?」

 

 

譲信「はぁ……」

 

 

紫「だからその真実を上書きする力でね?サクッと元通りのナイスバディにしちゃって欲しいな~って♪…良いでしょう?出来るわよね?」

 

 

譲信「え?でも無闇矢鱈と使うなってさっき…」

 

 

紫「あらぁ?私がこうしてわざわざ頼んでる事が…無闇矢鱈な事だとでも言いたいのかしら?……拒否権があると思ってるのしらぁ~?」

 

 

それはそれは物凄く怖い笑顔で紫は詰め寄ってくる。

殺気だとか闘気だとかそんな次元の恐怖では無い。

若さと美貌に執着する一種女の狂気さがそこにはあった。

正直、今まで出会ってきた何者よりも恐ろしい。

 

 

譲信「あわわわ……(やっぱり話すんじゃなかったぁーッ!!)えーと…こういう時は………助けて藍しゃまー!!

 

 

紫「ちょっ!?」

 

 

瞬間、部屋の襖がバーン!と開き、そこから藍が現れる。

藍は紫を冷たい目で見ていた。

 

 

バァァァァァァァァァンッ!!

 

 

紫「ら…藍~?どうしたのかし…ら…?」

 

 

藍「話しは全て聞かせて貰ってました……譲信、紫様の言葉を聞かなくても良いぞ………そして…紫様……」

 

 

紫「…………………ゴクリッ」

 

 

ドドドドドドドドドドド…

 

 

藍「今日から晩御飯はサラダだけです。あと昼間はゴロゴロしてないで10kmは走ってもらいます。拒否権は……ありませんよ?」

 

 

紫「ら、藍ンンンンンンンンンン!?」

 

 

譲信(良かった……すげーまともなこと言ってくれてるよ藍しゃま!!まじサンキュ!!今度油揚げ買えるだけ買ってきます!!)

 

 

しかし、ただではこの八雲紫、折れることは決して無い。

落ち込んだのも束の間、物凄い勢いで譲信の方をふりむくと、思いっきり飛びかかる。

これは執念の成せる技であった。

 

 

紫「何としても上書きしてもらうわよッ!!こればかりは譲れないのよッ!!」

 

 

藍「紫様ッ!?逃げろ譲信!!御乱心だぁーッ!!」

 

 

威厳だって捨てよう。

プライドだって捨てよう。

ただし、美貌だけは自分の物としなければならないッ!!

目の前にその可能性があるのだ。滅多に見られない八雲紫の本気の姿がこの場にはあった。

譲信は、仕方ないと言った感じで短く言葉を発した。

それは………魔法の言葉となった。

 

 

譲信「スタープラ……

 

 

紫「スミマセンでした!それだけは勘弁してください!スタープラチナだけは嫌なんです」

 

 

アッというまにさっきまでの勢いは消え去り、それはもう立派な土下座が出来上がっていた。

紫は、一度スタープラチナのラッシュを受けて以来、実はトラウマになっていたのだ。

世にも珍しいスタープラチナ恐怖症である。

 

 

藍「譲信………」

 

 

譲信「………………はい。」

 

 

藍「すまないが………今日はもう帰ってくれると助かる………今からオハナシしなくちゃいけないんだ……」

 

 

譲信「………了解です。お邪魔しました………」

 

 

紫「またいつでもいらっしゃいな。歓迎するわよ」

 

 

藍「紫様ぁ~?それ以上何か言うと…私がどうなるか知りませんよぉ?」

 

 

紫「ら、藍ッ!?ねぇ?やめて…?怖いわ………ちょっ!!…まっ…!!」

 

 

それ以上は聞き取れない。

閉じた襖の向こうで時々、紫の悲鳴が上がるが、藍の怒鳴り声でほとんど聞き取れなかった。

ここにいるのはマズいと悟った譲信はその場を静かに去って行く。

 

 

譲信「空条 譲信はクールに去るぜ………」

 

 

あまり格好は付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢《人里》♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「………な~んて事があってだなぁ…ったく、今日はえれぇ目にあったぜ…!」

 

 

ミスティア「アハハ…それは災難でしたね」

 

 

日も暮れかける頃、譲信はここ最近見つけた店で、店主のミスティアに愚痴りながら酒を飲んでいた。

ミスティアと仲良くなったのは異変を解決した日だった。

解決祝いと犯人不在で宴会出来ないという事で、ミスティアの経営する店で小規模な酒盛りをした際に、譲信の十八番の語り上手とノリですっかりと仲良くなった。

 

そして今日も譲信は時々燃料(酒)を補給しながら、八雲邸であった事を面白おかしく愚痴っていた。

これが結構面白いので、ミスティアはクスクスと笑いながら聞いていた。

 

 

ガラガラガラ…

 

 

と、そこへ一人の来客があった。

 

 

ミスティア「いらっしゃいませー!…って、慧音先生じゃないですか!ご無沙汰してます!」

 

 

慧音「お邪魔するよミスティア。……む!君は…………ようやく見つけたぞ!」

 

 

慧音は少し酒に酔っている譲信の元へとズンズン寄っていく。

譲信は酔っているので、ぶっきらぼうに返事を返す。

 

 

譲信「あ~?なーんですかぁ~?今日は定休日なんで依頼は平日に……」

 

 

慧音「安心しろ譲信。一瞬で済ませてやる」

 

 

慧音は、貼り付けたような無理矢理な笑顔を譲信に向けた。

 

 

譲信「………え?」

 

 

慧音「ふんっ…!!」

 

 

 

ゴッツゥーーーン!!

 

 

 

慧音の渾身の頭突きが、譲信に奇麗に入った。

 

 

ミスティア「………まぁ」

 

 

譲信「あっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

あまりの痛さに譲信は椅子から転げ落ち、床を転がり回る。

 

 

慧音「異変解決に関しては感謝するが…同時に君のお陰で里中の子供達に過去に見ないほどの悪影響が及んでいる。これに懲りたらもう少し自重するんだなッ」

 

 

そう言い残して、慧音はミスティアに軽く一礼した後、店を出て行った。

 

 

譲信「なんで…俺ばかりこんな目に……今日はなんて日だ……!!」

 

 

譲信は誰にも気付かれずひっそりと、ホロリ…と涙を流したのだった。

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 

 



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紅霧異変
⑪赤い霧


スタンドクイズ


ヒント①二重人格

ヒント②この小説の作中にも登場

ヒント③第五部



よう、俺だ。空条譲信だ。

賢明なる読者の諸君。そして我が同胞たるジョジョラー達よ。

実に久しぶりに、俺がナレーションを入れようと思う。

やりたかぁ無ぇが…これでも主人公なんでな。

 

紫さん家で色々あった日からしばらくが経った訳だ。

今はもう日が暮れてきた頃になる。

そろそろ寝ようかいな~…と思ってよ、就寝前の一服をしに外へ出てみたら…で~らとんでも無い事が起こってやがった。

 

なななんと!!赤い霧が辺り一面に立ちこめ、そりゃあもうすんごい事になっている。

そのせいか、体調が悪くなったみてぇーで、顔色のよろしくない人がチラホラ見える。

こりゃあかな~りマズイ…と、俺はすぐさま家へ戻り、固く戸を閉ざした。

巻き込まれたくなかったからな。

新手のスタンド攻撃だとか、そんなんじゃあない。

これは…

 

 

譲信「異変だぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

俺にとって初めての…長い夜の幕が開けた。

 

 

 

 

 

 

~紅霧異変~始動。

 

 

 

 

 

 

空条譲信は現在、家の中に閉じこもっていた。

タイミング悪く今日は定休日なので、こいしは不在。

つまり、頼れる存在なんてのは誰一人としておらず、こういう時どうしたら良いのか譲信はちっとも分からなかった。

どうせ誰かが何とかしてくれるでしょ……と、祈りながら立て籠もることを決め込んでいた。

 

 

???「はぁ~い♪お邪魔するわよ~…………いたいた…やっぱりここに居たわね」

 

 

と、そんな時何処からともなく侵入者が現れる。

譲信はマジカー…と思いながら声のした方向へ振り向いた。

 

 

譲信「……こんな時に何の用すか?紫さん」

 

 

八雲紫。

幻想郷の賢者がこの非常事態に一体何の用でわざわざ自分の元へ来たのか?譲信は嫌な予感がしてならなかった。

あの時の件(前話参照)については、式神の藍にキツく言われてるようなので、心配は無いだろう。

だからこそ、嫌な予感がするのだ。

 

 

紫「あらあら、決まってるじゃない?ここは“何でも屋”なのでしょう?だったらここに来る目的なんて…仕事の依頼でしかないでしょう?」

 

 

紫は何を当たり前な…と言いたげな胡散臭さい笑みを浮かべながら、勝手に部屋の明かりを付けた。

 

 

譲信「すんませんけど…今日は定休日なんすよ。なので日を改めてからに…」

 

 

紫「駄目よ」

 

 

譲信が言い終わる前に、紫はキッパリと言い放った。

 

 

紫「前回はまぁ…私のせいで話せなかった“あなたの今後について”…に関わってくることなの。だから臨時営業でもして私の依頼を引き受けなさいな…勿論、報酬は見合うだけの額を用意するわよ」

 

 

逃げ場がない…。

そんな言い方をされたら仕方ないじゃあないか…と、譲信は諦めて、紫の方へ真っ直ぐ向き直る。

 

 

譲信「恨むぜあんた……んでその依頼とは?」

 

 

紫は扇子をパチンッ!と閉じてから話し始める。

 

 

紫「もう気付いてると思うけれど…今起こってるこの現象…これは“異変”よ。」

 

 

譲信「やっぱりかぁ~」

 

 

紫「そう…今霊夢達が異変解決に向けて動き出してるわ。それで依頼というのが、あなたも異変解決に向けて動いて欲しいのよ。その御自慢の…“無敵のスタンド達”で霊夢達のサポートをお願いするわ」

 

 

譲信「…な、何ィィィ!!?」

 

 

紫「それがまず第一にしてもらいたい事…そして、異変解決後、主犯格達がまだ幻想郷に対して害をなす存在であるのかどうか…その調査をお願いしたいの。具体的なやり方までは指定しないからそこはやりやすいようにやって頂戴」

 

 

譲信「はぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

あまりのとんでもない依頼内容に、譲信は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

これまでこなしてきた仕事とは比較にならない程、難度と危険性が高かった。

 

 

譲信「いやいやいや!!冗談じゃあないぜ!?何でそんなえげつねー仕事をしなくっちゃあならないんだ!!?」

 

 

紫「それがあなたを幻想郷に住まう者の一員として、受け入れる為の妥協案よ。要するに未知なる異能を受け入れる代わりに、その力を使って幻想郷の為に貢献して欲しいという事よ」

 

 

譲信「ぐっ……!?」

 

 

続けてまた、逃れようのない事を言われる。

そんな言い方をまたされては、拒否権なんてもはやなかった。

出来る…とか出来ない…とかそんなんじゃあ無い。

譲信はもう“やるしか”なかった。

幸い、報酬は出るのだ…そこは唯一の救いと思うしかない。

 

 

譲信「……分かりましたよ!やりますよ!やりゃあ良いんだろ!やってやるよ!!上等だぜ!!」

 

 

ヤケクソだと言わんばかりに譲信は依頼を引き受けた。

 

 

紫「フフフ…良い返事ね。それじゃあ早速、ここへ向かって頂戴。ここが今回の異変の元凶よ。そこを目指していけば霊夢達と合流できるわ」

 

 

そう言い紫は譲信にポケットサイズに折りたためる地図を手渡す。

その地図には向かうべき場所に丸印が記されていた。

 

 

譲信「なるほどOKだ!」

 

 

紫「じゃあ後は任せたわよ」

 

 

そう言い残して紫は、スキマの中へと消えていった。

スキマが閉じ、部屋には譲信だけが取り残され、残った譲信は窓を開き外の様子を眺める。

 

 

譲信「………とは言ってもなぁ…こんな気味の悪い環境に長時間晒されちまうと、本体はノーマル人間の俺の体が持つとは思えねーし………こうなったらアレをやるしかねぇーなぁ~」

 

 

そう言うと譲信は程度の能力を使い、服装を一瞬で変える。

黄色い服装…上半身黒タイツ…そして、ハートをあしらった装飾が所々…そして上にはマント。

そう、これは第三部DIOの服装だった。

そして、譲信の手には石でできた奇妙な仮面があったのだ!!

そうこれは“石仮面”!!

 

 

譲信「俺は人間を辞めるぞジョジョォォーーッ!!」

 

 

譲信は“石仮面”を顔にはめ、自分の手を短い刃物で切り、そこから出てくる血を石仮面の表面に垂らす。

すると

 

 

ビシッ!!ビシッ!!ビシィッ!!

 

 

何と!!仮面から生えたいくつもの杭が譲信の頭に深く突き刺さる!!

そして!!

 

 

譲信「URYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!

 

 

 

ギュォォォォォォォォォ!!

 

 

 

譲信の体は光り出した!!

そして石仮面は砕けて、床へと散らばる!!

譲信はゆっくと目を開いた。

 

 

譲信「…………ハッハッハ♪こりゃあ良いぞ!!実に良い気分だ!!歌でも一つ歌いたいような…良い気分だぁ♪」

 

 

紅く鋭くそして冷たさを秘めた深紅の瞳。

怪しい色気を感じさせる透き通るような白い肌。

そして、先程とは比べ物にならないくらいに盛り上がった、人間とは思えない程の筋肉質な肉体。

 

そう!!譲信は石仮面の力を使い、吸血鬼へと生まれ変わったのだ!!

これで、霧の影響力による体調不良は心配しなくても良い!!

 

 

譲信「とはいえ…能力で創り出した物では効果はそう長くは続かないなぁ……感覚で分かる…恐らくは12時間で元の人間に戻るな」

 

 

譲信の能力で創り出された物は決して、本物では無い。

その為、肉体強化は時間制で解除されてしまうのだ。

しかし、その間は人知を超越した力と、更に強靭で安定した精神を獲得することが出来る!!

その為か、落ち着いた状態ですこし振る舞おうとすれば、DIOと似たような口調に、自然となってしまう。

吸血本能はあるものの、元の精神力も強力だった為、ちゃんと自制が効き、譲信は吸血鬼化してもちゃんと自我を保つ事が出来ていた。

 

 

譲信「さて…いつまでも浸ってる訳にはいかんな…早速行くとしようじゃあないか…」

 

 

譲信は金色のオーラに包まれたかと思うと、暗闇の夜空にふわりと浮かび上がった。

そしてマントを翻す。

 

 

譲信「ようし…吸血鬼となった今なら…結構楽にスタンドパワーで舞空術が使えるな………フフフフ…折角だ…今日は久々にロールプレイでもやってみようじゃあないか………楽しみだ……!!」

 

 

ニヤリと笑って、譲信は目的の場所へ向かって飛んでいく。

それは、初めて空を飛んだ者とは思えない程に優雅で、そしてとても速かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「おい霊夢、本当にこっちで合ってるのぜ?」

 

 

霊夢「巫女の勘をあなどらない事ね魔理沙。間違いないわよ」

 

 

霊夢と魔理沙は異変解決に向けて、既に動いていた。

霊夢の“巫女の勘”を頼りにその場所へと向かう。

“たかが勘”と、霊夢の事を侮ってはいけない。

霊夢の言う“巫女の勘”とは能力の類いじゃあないか!と言われる程に良く当たり、正確なのだ。

これまでの異変もその“勘”もあったからこそ、解決に導いて来れたと言えよう。

絶対的な信頼がそこにはあった。

 

 

魔理沙「なぁところでよ、この前の異変で紫達が言ってた“矢”って実は譲信の奴の能力と少し似てるらしいぜ?」

 

 

霊夢「あ~程度の能力を引き出す矢のこと?でもそれとあいつの能力とで何の関係があるのよ?」

 

 

魔理沙「それがな?何でも譲信の持つスタンド能力を身につける方法の一つに、矢に貫かれるっていう方法があるらしくてさ、それと酷似してるって前に譲信が言ってたんだぜ!」

 

 

霊夢「うわー…なんか痛そうねそれ……てか何でそんな物騒な方法で能力が身につくのよ…全く…」

 

 

魔理沙「同感なんだぜ。しかも、能力に目覚めなかったら死ぬらしいらな。流石に私はそこまでして欲しいとは思わないんだぜ」

 

 

霊夢「私だって思わないわよ。てか死ぬって何よ…余計に物騒すぎるわ!」

 

 

わざわざ矢をぶっ刺して生きるか死ぬかの運試しをしてまで、能力を身につけたいという気持ちは二人には到底理解できなかった。

それくらいならまだ無能力でも、何とかやっていける方法を探していく方が遥かにマシだ。

 

 

霊夢「まぁ、他にもあったら見つけ次第すぐ壊せって言われてるから、その時は遠慮なくやっちゃいなさいよ」

 

 

魔理沙「おう!分かったんだぜ!」

 

 

“程度”の能力を引き出す矢の存在は非常に危険だ。

出所を探りたいのは山々だが、何せかなりの年代物であることが判明しており、探ることは不可能。

仕方なく、紫は矢を破壊して幻想郷から消し去ることが優先と判断したのだった。

 

 

霊夢「…ん?」

 

 

とそんな時、湖に差し掛かった所でふと霊夢は何者かが自分達に接近してくる事に気付く。

空中で立ち止まると、その何者かは霊夢達の目の前まで来て止まった。

 

 

???「やい!!お前ら勝手にアタイの縄張りに入ってきたな!!フホーシンニューってやつだぞ!!」

 

 

魔理沙「な…何だぜお前は?」

 

 

???「や、やめようよ~チルノちゃ~ん…この人達絶対に強いよ~……?」

 

 

と、そんな時またもう一人別の者が現れる。

 

 

チルノ「ダイジョーブ大ちゃん!!なんたってアタイは幻想郷さいきょーだからね!!こんな奴らあっというまにやっつけてやるんだから!!」

 

 

大妖精「えぇ…ねぇ、やめるなら今のうちなんだよ?チルノちゃん?」

 

 

 

霊夢「こいつらは…妖精ね」

 

 

魔理沙「へぇ~面白ぇ!!よし!ここは魔理沙様が相手してやる!!おい霊夢、手を出すなよ?」

 

 

霊夢「はいはい。さっさと終わらせなさいよ」

 

 

チルノ「な、なにおう!!サイキョーのアタイを前にして余裕とは生意気だぞ!!こうなったらアタイの恐ろしさ、とくと見せてやる!!」

 

 

魔理沙「おうおう!見せてみろ!!」

 

 

魔理沙とチルノが対峙し、大妖精と霊夢はそれぞれ少し離れた場所へ移動する。

お互いの準備は整っていた…そして………最初に動いたのは…チルノだった!!

 

 

 

チルノ「くらえ!!氷符・アイシクルフォール!!

 

 

魔理沙「むっ!!」

 

 

初手からいきなり、氷の強力な攻撃が魔理沙目掛けて襲う!!

魔理沙は、その場から全く動けなかった。

 

 

チルノ「ハハハー!!どうだ思い知ったかー!!」

 

 

いや違った!!魔理沙は動けなかったのではない。

動く必要が無かったのだ。

 

 

魔理沙「おいおい…これは何かのお巫山戯か何かぜ?」

 

 

確かに強力な技であったことには変わりない。

まともにくらえば、一溜まりも無いだろう。

…………チルノの正面にだけガラ空きになってさえいなければ…。

 

 

チルノ「あっ……れぇ?何で当たらないんだー!?」

 

 

魔理沙「……本気かよ!?」

 

 

おまけにチルノはそれに気付いていない。

魔理沙と霊夢は一瞬で確信した。

あぁ…コイツ馬鹿なんだ…と。

魔理沙は、ハァ~…とやる気の無いため息を吐いてから、動いた。

 

 

魔理沙「やれやれ…彗星・ブレイジングスター!!…くらって田舎へ帰りな…だぜ!」

 

 

チルノ「う…うゎぁぁぁぁチクショーーーー!!」ピチューン

 

 

大妖精「チ、チルノちゃーーーーーーーん!!!?」

 

 

吹き飛ばされて何処かへと吹っ飛んでいくチルノ。

そして大妖精もそれを追い、二人は仲良く何処かへと消えていった。

 

 

 

霊夢「……とんだ茶番だったわね魔理沙」

 

 

魔理沙「ある意味、恐れいったんだぜ…!」

 

 

 

改めてチルノの⑨さに舌を巻いてから、霊夢達は再び進み出す。

そして、すぐにソレは見えてきた。

 

 

霊夢「…どうやらすぐそこまで辿り着けていたみたいね…あそこが、この赤い霧を出している場所よ!」

 

 

魔理沙「あれが…!!」

 

 

赤い霧の出所…そこには真っ赤な外装の巨大な洋館が建っていた。

正直建築のセンスを疑うくらいに目がチカチカするが、とにかくそこが今回の異変の元凶とみて間違いなかった。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………

 

 

霊夢「趣味が悪いわね~…どんな奴が住んでんだか」

 

 

霊夢と魔理沙は、その洋館の手前まで降りてくる。

丁度そこは洋館の門前だった。

 

 

魔理沙「降りてみて見ると、結構でっけーんだな~」

 

 

霊夢「ん…待って魔理沙!あそこに誰かいる!」

 

 

門に近付こうとする魔理沙を、何者かの存在に気付いた霊夢が引き止める。

よく目を凝らすと、門の隣に誰かが経っていた。

 

 

魔理沙「ありゃ門番か!まぁこれだけデカい家なんだ、門番の一人や二人はいておかしくないんだぜ!」

 

 

しかし、もっとよく観察してその門番を見てみると何やら様子が変だった。

中国服を身に纏い、変な帽子を被った女性…しかし、さっきからずっと俯いたままだ。

 

 

魔理沙「…………ありゃ?もしかしてアイツ…寝てないか?」

 

 

霊夢「まさかそんな…門番が寝てる訳が…………本当に寝てるわね…!!」

 

 

何とまぁ驚いたことに、門番は寝ていたのだ!!

何というガバガバな警備なのだろうか!!

これではどうぞ侵入してください。と、言ってるも同然だった。

霊夢と魔理沙の二人は呆れつつも、半笑いしながらさっさと洋館の中に入ろうと進み始める。

 

しかし、ふと二人は背後に何者かの気配を感じ、一瞬立ち止まった。

ゾクリッ………!!

瞬間、今まで感じた事のない嫌な寒気が身体中を駆け巡る。

何か…ヤバイ!!二人は一気に戦闘態勢に入り振り返る。

…しかし、後ろには誰もいなかった…。

 

 

霊夢&魔理沙「…………!?」

 

 

???「……何処を見ている?俺は前にいるのだが……」

 

 

霊夢&魔理沙「えっ…!?」

 

 

二人が声のした方向、再び前を向くとそこにいたのは…

 

 

譲信「クククク…その反応…中々に良い見世物じゃあないか…!」

 

 

バァーーーーーン!!

 

 

腰に手を当て、妖しく微笑んでいる空条譲信が立っていた。

 

 

霊夢「はぁ!?あんた何でここにいるのよ!?」

 

 

本当なら居るはずの無い、予想外な人物の登場に霊夢も魔理沙も驚きを隠せない。

 

 

譲信「なに…難しい話しじゃあ無い。俺はただ…八雲紫の依頼を受け…お前達の手助けをしに来ただけに過ぎん………何も不思議に思う事は無いのだ」

 

 

霊夢「紫の……?またアイツは…一体何を考えているんだか………」

 

 

魔理沙「…それよりもよ、譲信お前…何か雰囲気とか変わってないか…?あと何か喋り方も…」

 

 

譲信「当然だ。訳あって今から約12時間の間、俺の体と精神は吸血鬼となっている。そりゃあ多少雰囲気は変わるさ」

 

 

霊夢「は?吸血鬼!?どういうことよ!?」

 

 

譲信「……能力だ」

 

 

霊夢「あ………うん。理解。」

 

 

この時、霊夢は譲信の持つ能力のいずれかで、自身の体を改造したんだ…と悟った。

 

 

譲信「さて…それで、あそこにいる駄目門番を無視して…中へ侵入しよう…というつもりだったようだが…」

 

 

譲信は手に、ナイフを一本出現させる。

 

 

 

譲信「残念ながらその作戦は無駄…無駄だ……無駄無駄無駄無駄無駄ァァ!!

 

 

ヒュンッ!!

 

 

譲信はそのナイフを、眠っている門番に目掛けて投げた。

吸血鬼の体で投げられたナイフはかなりの速度で飛んでいく。

しかし!!そのナイフを門番は、素手でつかみ取ってみせた。

 

 

霊夢&魔理沙「なにっ!?」

 

 

譲信「フン…やはりな。寝たフリをしていたな貴様…そうやって二人のように油断して門に近付いた敵を、我がナイフを掴んだ時のような素早いスピードで瞬時に撃退する………ハッ!味な真似を…しかしどうやらこのJOJOの目を誤魔化すことは出来んかったようだなぁ?」

 

 

門番は、ゆっくりと顔を上げた。

 

 

???「ありゃりゃ…バレていましたか~…結構自信があったんですけどねぇー…」

 

 

譲信「…まぁ確かに人間くらいなら簡単に騙されるだろうなぁ…しかし!生憎このJOJOは今晩は人間を超越した存在だ……!そんなまるでネズミが虎を演じるような大根芝居で…このJOJOの目を欺くことはできんッ!!」

 

 

???「いやぁ…これは手厳しい。結構な事を言ってくれるじゃないですか」

 

 

魔理沙(ま、まじかぁー…迂闊に近付いてたらエライメにあってたんだぜ……)

 

 

魔理沙は冷や汗を掻いていた。

もし、あのまま近付いていたら絶対にマズイことになっていたと。

譲信の投げたあんな速い投げナイフを、ノールックで、しかも片手で掴むようなヤツに不意を付かれては、人間である魔理沙にそれを防ぐことは出来ない。

やられないにしても、相当な怪我を負うこと間違い無しだった。

 

 

譲信「おい霊夢、それとマリちゃん」

 

 

その時、門番と対峙しながら譲信が口を開いた。

 

 

霊夢「何よ?」

 

 

魔理沙「何だぜ?てか、いつから私のことマリちゃん呼びになったんだぜ?」

 

 

魔理沙のツッコミを譲信は無視しながら、言葉を続ける。

 

 

譲信「この門番の相手はこの空条譲信が引き受ける…お前達はさっさと中に入って親玉を叩け」

 

 

霊夢「…………任せても大丈夫なのね?」

 

 

譲信「女に気遣われる程ヤワな人生を送ってなどいない…さっさと行け。二度は言わせるなよ…」

 

 

霊夢「そのデカい態度は気に入らないけど…分かったわ。任せるわね!」

 

 

魔理沙「早く追いついてこいよ!譲信!!」

 

 

霊夢と魔理沙は、譲信の言葉を受け浮かび上がるとそのまま洋館の中へと入っていった。

残された譲信と門番は、互いに相手を見据え合ったまま微動だにしていなかった。

 

 

???「あちゃー…これじゃ後で咲夜さんに怒られちゃいますねぇ………」

 

 

譲信「フン…だったら必死になってあの二人を止めれば良かったじゃあないか…」

 

 

???「冗談言わないでくださいよ…」

 

 

門番は、半笑いしながら首を横に振る。

 

 

???「それが出来たらとっくにやっています…あなた何者なんですか?……さっきから私の中で…警報が鳴り止まないんですよ…あなたから少しでも意識を逸らしてしまうと…マズイことになると…」

 

 

譲信は軽くフン…と鼻を鳴らした。

 

 

譲信「…人に何かを尋ねる時は…まずは自分から名乗るのが礼儀じゃあ無いのかね?私はそう言いたい…」

 

 

美鈴「私としたことが…これは失礼しました。私の名前は紅 美鈴見ての通り、この紅魔館で門番をしています」

 

 

そう名乗って美鈴は、礼儀正しくお辞儀をした。

 

 

譲信「紅魔館……フム。……俺の名前は空条譲信だ。人里で“JOJOの何でも屋”を経営している社長だ。そして全てのスタンドを操るスタンド使いでもある…まぁ、それはどうでも言い事だったな…言っても分からんからなぁ…」

 

 

譲信はニヤリと笑って、尖った犬歯を覗かせた。

 

 

美鈴「驚きましたよ…!!あなた吸血鬼だったんですか…実は私の仕える主も吸血鬼なんですよ……成る程…道理で強い気を感じる訳ですね」

 

 

譲信「ほう…。ここの主は吸血鬼なのか…フフフ。なら丁度良い…この空条譲信の吸血鬼としての力と、どっちが優れているのか…試せる楽しみがあると言うもの…」

 

 

美鈴「それはお嬢様の方ですね。あなたでは残念ながらお嬢様の足元にも及びませんよ。なぜなら、あなたはここで私に負けるからです」

 

 

瞬間、譲信からは笑みが消え鋭く何処までも冷えた目で美鈴を威圧する。

しかし、そんな威圧を受けても美鈴は震え一つ起こしてはいなかった。

 

 

譲信「フン……フフフフッ……大した忠誠心だな紅美鈴とやら…そういう芯の通っている奴にはコケにされた所で、そこまで不快な気分にはならないから不思議だ…。しかし、俺は結構今の自分には自信があってなぁ…」

 

 

譲信はユラリ…と少し揺れたかと思うと、静かに歩み始める。

美鈴はすぐに身構えた。

 

 

譲信「よぅし決めた…!美鈴、お前今このJOJOをここで倒すとか言ったよなぁ?言ったからにはそれなりに腕は確かだと期待しても良いんだよなぁ?折角だ…オタクの吸血鬼のお嬢様とやらと殺り遭う前に…お前でウォーミングアップでもさせて貰うぞぉッ!!」

 

 

美鈴「受けて立ちますよ!!紅美鈴、その慢心へし折らさせて頂きます!!」

 

 

譲信は美鈴に向かって猛スピードで一気に接近し、あっという間に距離を詰めた。

 

 

美鈴(は、速い!!)

 

 

譲信「やれるものなら…それを見せて貰おうでは無いかッ!!WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!

 

 

譲信は右パンチを美鈴の脇腹目掛けて打ち込む。

 

 

美鈴(確かに…速いのはそうですが…!!)

 

 

しかし次の瞬間、美鈴は譲信の攻撃を躱し、強力な掌底を譲信の胸に打ち込んだ!!

そして一気に距離をとる。

 

 

譲信「むぐっ…!?ブフッ…!!」

 

 

美鈴「動きがまるで素人ですね。これならいくら速くても余裕で対応できますし、このようにカウンターを打ちこむことさえ容易です」

 

 

譲信「ふぅむ…やはり接近戦闘の達人……侮れんなぁ」

 

 

美鈴「どうしました?もう良いんですか?期待外れも良いところですよ?」

 

 

美鈴は譲信に対し、掛かってこいよ…と言わんばかりに人差し指をクイクイとして挑発する。

 

 

譲信「フフッ…フフフフフフ……フハハハハッ!!」

 

 

ところが、譲信は挑発に乗るでも逆上するでもなく、愉快に笑い出した。

 

 

美鈴「……何が可笑しいんですか?」

 

 

美鈴は少し不快に感じ、譲信をキッ!と睨んだ。

譲信は尚も、ニヤニヤしながら口を開いた。

 

 

譲信「ククク…なぁ美鈴……貴様、焦っているなぁ?どうやら本当に…このJOJOの事が怖くて怖くて仕方ないらしいなぁ?」

 

 

美鈴「っ!!…何を言ってるんですか?」

 

 

譲信「何を言ってるか……だと?オイオイオイ…それは俺の言う台詞じゃあないか……まだほんの小手調べ…貴様の「その程度ですか?」という台詞は…野球で例えるなら、試合前に軽くキャッチボールをしている投手に向かって、「もう全力なんですか?」…と、言ってるようなもの……同様にこのJOJOがこれっぽっちも実力を出してない事くらい…貴様程に腕の立つ武闘家ならすぐに気付く筈だがなぁ?………まぁ尤も…貴様が平常心であったなら…の話しだがな…」

 

 

美鈴「…………っ」

 

 

譲信「貴様は焦っているのだ…予想外なパワーとスピードを見せたこのJOJOに対して、コイツを早くここで倒さねばと、焦ってしまっているのだ」

 

 

美鈴「……っ適当な事を言わないで貰えますか!?あまり適当な事を仰るなら…本気で怒りますよ?」

 

 

美鈴は、譲信の放つ妖しい色気と、心を直接握ってくるような妖しい言葉に抗うように、声を荒げ自信に活を入れた。

しかし、譲信はさらに妖しい笑みを浮かべる。

 

 

譲信「どうした…動揺しているぞ紅美鈴?動揺する…それはつまり恐怖しているという事ではないのかね?」

 

 

美鈴「そんな事は…万が一にも有り得ません!!紅魔館の誇り高き門番であるこの私が!!あなた如きに恐怖するなど有り得ません!!」

 

 

譲信の言葉に惑わされてはいけない!!…と、美鈴は心を強く保つように自信に言い聞かせた。

 

 

譲信「ならば、今から俺は実力を出し始めるから…遠慮無く掛かって来るが良い……どうした?ん?恐れ一つ無いのだろう?それなら遠慮する必要は無いよなぁ?」

 

 

 

ドドドドドドドドドドドド…

 

 

 

美鈴「良いでしょう…!!後悔した所で…知りませんからね!!」

 

 

美鈴は力強く地面を蹴り、譲信に向かって凄い速さで近付いて行く。

 

 

譲信「フッ……俺に後悔させなければ…後悔するのは貴様自身じゃあないか…尤も俺に後悔させられるなら…させてみろという話しだがなぁ?」

 

 

美鈴「笑止!!」

 

 

パァァァンッ!!

 

 

美鈴の鋭く強烈な拳が炸裂し、譲信はその一撃を右手で受け止めた。

中々に重い一撃で、少し地面を抉って譲信は後ろに下がる。

 

 

美鈴「かかりましたね!!このままその腕を貰い…」

 

 

美鈴は譲信の腕をそのままへし折ろうとするが、その前に譲信の動きの方が速かった。

 

 

譲信「フン!かかったのは貴様だ…!やはり心理戦はド素人ぉ…貧弱貧弱ゥ…少し心を揺さぶれば簡単に釣れてくれたなぁッ!!WRYYYYYYYYYYY!!

 

 

パッキィィィィーーーーーン…

 

 

美鈴「なっ!?そんな!?」

 

 

何と譲信に掴まれてる美鈴の腕の部分が、凍結して固まってしまった。

 

 

譲信「“気化冷凍法”…惜しかったなぁ~紅美鈴!も~っ少し冷静な状態で仕掛けられていたら、この程度の罠は防げたかもしれないのになぁ~?」

 

 

美鈴「く………うっ!!」

 

 

譲信に蹴り飛ばされて、美鈴はまた大きく譲信から離れてしまった。

凍ってしまった左腕はしばらく使い物になりそうに無かった。

 

 

美鈴「ふぅ…………どうやら…私はあなたをみくびっていた様ですね…始めから本気を出しておけばこうはならなかった……感謝しますよ…お陰で自分の弱さを知ることが出来たんですから…そして、そんなあなたに敬意を表して…ここからは私の本気であなたを…倒させて頂きます!!」

 

 

美鈴の纏う気配が変わった。

美鈴の言うようにここからは本気の闘いになる。

 

 

譲信「良いぞ…そうでなくっちゃあつまらんよなぁ?ここからが…第二ラウンドだ…!!」

 

 

赤い月夜に照らされて、二人の姿が夜の闇に浮き上がる。

凄まじい闘気を放っている武闘家と…そして、不気味で妖しい気配を放っている吸血鬼の、それぞれ二人の瞳が静かに火花を散らしているようだった…。

 

 

TO BE CONTINUE…………

 

 

 




答え キング・クリムゾン


皆大好きボスのスタンドです。
辛いときは、今日もディアボロは何処かで死んでいる…と思いましょう!
元気をくれます!!


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⑫決着!!吸血鬼VS門番

まず始めに、誤字報告有難うございました


スタンドパラメータ(譲信使用時)

世界(ザ・ワールド)《三部》

能力:時を15秒程止める

パワー 測定不能(本気が出せない 推定A以上)
スピード 測定不能(本気が出せない 推定A以上)
成長性 A(まだまだ時止め時間は上がりそうである)
持続力 A
精密動作性 B
射程距離 C




霊夢と魔理沙が紅魔館へ入ってから既に4分程時間が経過していた。

紅魔理門前で、美鈴と格闘戦を繰り広げている譲信は現在、まるで空中に固定されたかのようにピタリと動きが止まったまま動けないでいた。

 

しかし、これは決して対峙する美鈴による仕業では無い。

何故なら美鈴もまた同様に動かず静止していた。

しかし、譲信と決定的に違ったのは自分が動けないということを、認識していなかった点だ。

そう、譲信だけが動けないという事を認識できていた。

そして譲信は既にこの現象が何か…という事を既に理解していた。

 

 

譲信(これは……時が止まっている…!!う…動けん……ッ!!)

 

 

譲信以外の何者かの仕業だろうか…世界の時は止まっていた。

そして、時間停止が起こってから既に1分…譲信は1分の間中ずっと、動かせる頭だけを必死に動かしていた。

 

 

譲信(既に1分…俺の世界(ザ・ワールド)よりも長く時を止めていられる奴が存在するというのか…!!……霊夢達が館に侵入してから起こったこの現象…間違いなく能力者はあの館の中にいるな……チィ……)

 

 

その気になれば譲信はスタンド能力で時を止め返し、そのまま止まった時の中で美鈴を倒すと事など容易だった。

しかし、それをしないのには二つの理由があった。

一つは、相手に自分が“時を止める”能力を持っていることを悟られないようにするため。

そしてもう一つが、本来ならスペルカードを使えば良いのに、自分に合わせて格闘だけで勝負を受けている美鈴に対する、礼儀の為だった。

 

 

譲信(む!この感覚は……フゥム…時が動き出すな)

 

 

瞬間、世界は色を取り戻し同時に譲信の体も自由を取り戻した。

 

 

美鈴「ハァ…ハァ…どうしました?…掛かって来ないんですか?」

 

 

譲信「………………。まぁ…良い……。おい紅美鈴、悪いが急用が出来た…よって遊びのサービス時間はここまでだ。カタを付けさせて貰うぞ」

 

 

譲信(これワンチャン霊夢達ピンチなんじゃねーの?あいつら時止まったら動けねーし…早く終わらせて助太刀に行かねーとなぁ)

 

 

霊夢達の身が心配になった譲信は、急いで美鈴との戦闘を終わらせて助太刀に行こうと考えていた。

 

 

美鈴「…カタを付ける…ですか…………。あまり浮かれていると…痛い目を見ますよ?」

 

 

美鈴は一呼吸し、構える。

また若干、美鈴の雰囲気に変化が見られた。

 

 

譲信(まぁ…カタを付けるっ!!…とは言ったけれどなぁ~…このネーチャンやたらと俺の攻撃避けるの上手いし、すぐに距離取るし…左腕凍ってるのにたまにそっちの手でも殴ってくるし……あーもう!!こっちは初心者吸血鬼なんだから、もうちょい慣れるまでは合わせてくれても良いだろ!!)

 

 

譲信「ハッ!…負け惜しみまでは聞いてやる義理もない。終わらせてやろう…紅美鈴!!WRYYYYYYYY!!」

 

 

美鈴「はぁッ!!」

 

 

譲信の鋭い拳の一撃が美鈴に向かって放たれる。

 

 

パッシィィーーーン!!

 

 

しかし、美鈴はその一撃を躱さずに何と正面から、受け止めた!!

 

 

譲信「何ッ!?」

 

 

さっきまでは受けるのも一苦労のようだった美鈴の、明らかな変化にここに来て始めて譲信は、驚くこととなった。

 

 

美鈴「言ったでしょう!!痛い目を見ますよと!!」

 

 

そのせいで、次にカウンターで放たれた美鈴の一撃を譲信は躱す事が出来なかった。

 

 

バギィィッ!!

 

 

譲信「ぬぐぅぅッ!?」

 

 

美鈴の拳は譲信の脇腹にめり込み、譲信はそのまま紅魔館の塀にまで吹き飛ばされた。

 

 

ドドォォォォーーーーン!!

 

 

美鈴(な…なんとか…一撃…ようやく当てれましたね……。しかし…ここまで力を上げても…辛うじてとは……彼はまだ意識はあるようですし警戒もするでしょう……ここからが正念場ですね…!!)

 

 

パラ…

 

 

パラ…

 

 

ガラガラ…

 

 

吹き飛ばされた譲信は、脇腹の傷を修復しながら崩れた壁からはい出てきた。

 

 

譲信「ぐぬぬぬぅ……いつの間に左腕の凍結を解除したのだ………それだけじゃあ無い…奴の周りに漂う虹色のオーラ………一体アレは何だ?」

 

 

美鈴の雰囲気が変わった正体…それは美鈴の周りに漂う虹色のオーラのような物であった。

 

 

譲信「波紋……では無いらしいなぁ…。となるとそれは……何かしらの能力…。フゥム…自強化系か?」

 

 

秒で傷を回復させた譲信はゆっくりと美鈴に近付いて行く。

 

 

美鈴「えぇ。私の力は“気を操る程度”の能力です。気の流れを操り、私は自身の身体能力を強化する事が出来るんですよ」

 

 

譲信「成る程……能力か。基礎スペックではこのJOJOに勝つことは無理と…成る程なぁ~」

 

 

譲信はニヤニヤしながら煽るように美鈴に言葉を投げかけていく。

しかし、美鈴は特に気にした素振りを見せたりはしなかった。

 

 

美鈴「えぇ…悔しいですが、それは認めますよ。今の私では、能力無しであなたに勝つことは出来ない…!」

 

 

譲信「………フン。」

 

 

譲信(え、何?この人めっちゃ素直で良い人じゃん!?自分の弱点素直に受け入れてるし、煽られても冷静だし、忠誠心高いし…能力教えてくれたし…。えぇ…俺が悪者に見えてきたんだけど…)

 

 

譲信「まぁ良い…やれることは全てやって貰わねば俺の心に後味の良くない物が残るからなぁぁ!!もっともっと必死になって親の仇でも取るつもりで掛かって来るが良いぞぉッ!!」

 

 

美鈴「望む所です!言っておきますが、弾幕ごっこではないこの勝負で…私をここまで本気にさせて、命の保証は出来ませんよ!?」

 

 

譲信「そういうのはなぁ!!このJOJOに血反吐を吐かせて!!地面を這いずり回らせてから言うんだなぁ!!つまり一生貴様にはそんな戯れ言を言う機会は無いということよぉッ!!」

 

 

美鈴が譲信に接近し、再び両者の拳が交えられる。

但し、今度は互いのパワーとスピードが同等になっており、激しい打ち合いになる。

しかし先程と比べて、完全に攻めに入った美鈴の猛虎に、譲信はかなりの苦労を強いられていた。

 

 

譲信「URYYYYYYYY!!」

 

 

美鈴「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

譲信は圧倒的身体能力で、美鈴は技術と能力で、互いに攻撃を受け止め捌いて打ちこみ合う。

…しかし、技術面において美鈴に劣っていた譲信はやはり、美鈴に一手上を行かれてしまった。

 

 

ドンッ!!

 

 

譲信「ぐぼぉァッ!?これは……この威力はぁぁッ!?」

 

 

 

 

突如、桁違いの威力を持った美鈴の正拳を腹部にくらい、譲信は思わずよろける。

 

 

譲信「ぬぅ……グッ!!ウリィヤァァァァァァ!!」

 

 

しかし吸血鬼化しているお陰で痛みに対してだいぶと耐性が付いており、譲信はすぐに反撃に鋭いパンチを美鈴の頬に叩き込んだ。

…ところが

 

 

譲信「な…何ィィィィィィ!!?」

 

 

美鈴「無駄ですッ!!」

 

 

なんと美鈴は攻撃を受けた瞬間、体を思いっきり捻り、何回転かした後、何事も無かったかのように譲信の前に立ち、再び攻撃を仕掛けてきたのだ。

まるでダメージが入っていないようだった。

 

 

譲信「ぬぅぅぅぅ!!そんなノロマなスピードのパンチなぞこのJOJOに効くものかぁッ!!」

 

 

心なしか、突きの速度が衰えた美鈴の拳を無視して、譲信は再び美鈴を凍らせるべく、防御を解いて攻撃を仕掛けようとする。

しかしその時、譲信の中で何かが嫌な感覚に陥った。

 

 

譲信「何か………異常だコレはッ!!?」

 

 

美鈴「むっ!?」

 

 

バッゴォォーン!!

 

 

咄嗟に回避に移った譲信は間一髪で美鈴の一撃をヨケル事に成功。

しかし驚いた事に、美鈴の外れた拳が譲信の背後にあった壁に当たった瞬間、なんと壁は跡形も無く吹き飛んでしまったのだ。

 

 

譲信「……………!!!!」

 

 

どれ程の威力の攻撃だったのかすぐに分かり、くらっていたらどうなっていたのだろうと、譲信は僅かに冷や汗を掻いていた。

 

 

美鈴「くっ……!!まさか躱すなんて…やはり侮れませんね!!」

 

 

すかさず、追撃を仕掛けようとした美鈴だったが既に譲信に距離を取られてしまった為、攻撃を仕掛けられずにいた。

 

 

譲信「……………俺のパンチを受けたが、その威力を受け流してダメージを無効とし……一瞬の脱力から見せたその破壊力………まさか…消力(シャオリー)か!?」

 

 

美鈴「!!……どうやらご存知みたいですね…えぇその通りですよ」

 

 

消力(シャオリー)…古代中国より受け継がれてきた、最高難度の技の一つ。

完全なる脱力による、相手の全ての打撃の無効化と、コンクリート板ですら容易く崩してみせる破壊力を兼ね備えた技術。

攻めの消力(シャオリー)と守りの消力(シャオリー)という二つの呼ばれ方がある…という事を昔、譲信は漫画で読んだ事があった。

 

 

譲信(しかし…本当に現実に存在する技だったとは…思わなかったぜ……!!こりゃあ…マズイな…こっからは俺の打撃は一切通用しないという訳だ……!!)

 

 

譲信「チィ……味な真似を…想像以上に結構粘るじゃあないか…仕方ないな…そこまでされては、この俺も奥の手を使わざるを得ないじゃあないか…!!なぁ?紅美鈴よ」

 

 

美鈴「ほう?まだ何かあると言うのですか?…是非とも見てみたい所ですが…今回は遠慮しておきます。あなたが何かをする前に…叩く!!」

 

 

美鈴はすぐに動いた。

これ以上、譲信に何かをさせる前にカタを付ける!と。

実際に、気を限界まで高めている為そう長く持つ訳でもなく、美鈴は次の一撃で完全にトドメを刺すつもりでいた。

 

 

譲信「良いだろう!!どっちが素早いか一つ試してみようではないかッ!!貴様とて、次で決着を付けるつもりなんだろう?そのつもりなら………………チィ…また………“止まった”か……!!」

 

 

美鈴「…?何の話しかは存じませんが……注意を逸らすなんて随分と余裕じゃないですかッ!?」

 

 

一瞬何かに気を取られて注意が逸れた譲信の、その僅かなスキを美鈴が逃す筈が無かった。

完全に脱力した状態で、渾身の一撃を譲信目掛けて放つ。

生半可な技では効果が期待できない以上、最速最短最高の一撃が放たれた!!

 

 

譲信「間抜けがぁッ!!俺は気など逸らしてはいないッ!!ハナから俺は貴様の間合いに入り、御自慢の一撃を受けるつもりだったわッ!!多少、覚悟を決めなければならないが…これがこのJOJOの勝つ算段よッ!!」

 

 

美鈴「なっ!?」

 

 

バギィィッ!!!!

 

 

譲信「ぬぅぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

なんと譲信は、美鈴の一撃を左足でまず受け止め、威力を減少させる。

しかしまだ勢いがある。

それを今度は左腕全体で受け止め、更には気化冷凍法によって自身の潰れかけた左腕を凍結させ固め、完全に威力を相殺した。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」

 

 

美鈴「なんて無茶苦茶な…!!!?…ハッ!?」

 

 

狂気の守りに、衝撃をくらっていた美鈴だったが、すぐに異変に気付いた。

何故か譲信が片目を閉じ、開いた片方の目に何やら力を集中させているように見えた。

 

 

譲信「1点集中…よって!!威力と速度は2倍!!くらえぃッ!!空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)!!

 

 

ドンッ!!

 

 

そして、譲信の開いた瞳から光線のような物が高速で発射され、それは美鈴の手の甲と肩を貫いた!!

 

 

美鈴「うっぐ!?」

 

 

予想だにしなかった一撃に、躱せる筈もなかった美鈴は体制を大きく崩してしまった。

そして今度は譲信が、その隙を見逃しはしなかった。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYY!!痛みに思わず力んだ瞬間こそ、消力(シャオリー)の弱点よッ!!」

 

 

ドコッ!!ドコッ!!ドコッ!!

 

 

譲信の強力な突きの数発をまともにくらい、美鈴は壁まで吹き飛ばされた。

 

 

ドッゴォーーン!!

 

 

美鈴「かっ………は………………」

 

 

美鈴は深刻なダメージを受け、吐血し崩れ落ちてくる瓦礫を受け、身動き一つ取らなくなる。

やがて徐々に気のオーラも消えていき、完全に美鈴はうごかなくなった。

 

譲信はズタズタになった足と腕を再生させると、急いで紅魔館の中へと急いで向かおうとする。

しかし、数十歩進んだ所でピタリ…と動きを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(美鈴side)

 

 

美鈴「かっ………は………………」

 

 

譲信の連続突きをまともにくらって吹き飛ばされた美鈴は想像以上のダメージに動きがまともに取れなかった。

 

 

美鈴(くっ………!!まさか……あんな隠し技があったなんて………!!……これじゃあまともに動けませんね………良くてあと数発……叩き込める位にしか……体力も残ってませんか……!!)

 

 

ガラガラ………と、崩れ落ちてくる瓦礫を身に浴びながら、美鈴は考えていた。

 

 

美鈴(このまま起き上がっても…もうまともに彼と打ち合う力は無いでしょう………仕方ないですね…こういう手は余り使いたくありませんが…門番としての勤めも果たさなくてはいけない………ここは……気を失ったフリをして…油断して近付いて来た瞬間に全てを賭けましょう……!!)

 

 

美鈴は能力を解除し、いつでも動けるよう脱力の状態に入った。

僅かではあるが内側でのみ気を貯め、少しだけ体の重みを軽減していた。

 

 

美鈴(よし……これで向こうは私が気を失ったと…勘違いする筈です……!!)

 

 

美鈴はただジッとしているだけだった。

美鈴の予想通り、傷を修復させた譲信はやや急ぎ足で館の中へと向かおうとする。

 

 

美鈴(よし…!!来るッ!!あと……少し!!)

 

 

しかし、不意に譲信はピタリとその場で止まってしまった。

そして、美鈴の様子をジッと観察していた。

 

 

美鈴(何故急に……!?バレた……?でもまさか…そんな有り得ない…!!)

 

 

バレてしまった場合、もはや勝ち目は無くなる。

美鈴は緊張で思わず心拍数が高くなっていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「フウム……何か引っ掛かるな……確かに、骨を完全に砕いた感触はあった…おそらく、もはや動けない程の大ダメージで間違い無い…。しかし、気を失ったにしろ…死んだにしろ…少々、呆気なさすぎる………」

 

 

美鈴(…………ゴクッ……!!)

 

 

譲信「もしかすると…寝たフリ同様、気を失ったフリをして、この俺を間合いまで誘い込み…不意を付こうとしてるんじゃあないのか……と、思うのは考えすぎだろうか…?………いいや…可能性は1%でもあるなら…完全に0%になるまで叩き潰すのが、安全策という物よ……」

 

 

美鈴(マ…マズ……イ!!)

 

 

譲信「しかし…完全なトドメを刺そうにも…一度はこのJOJOとまともかそれ以上に殴り合える程のパワーを見せた相手に…迂闊に近付くというのは賢い者のする事では無い……例え、もうそんな力が何処にも残って無かったとしても……だ」

 

 

チャキッ………

 

 

美鈴(あれは………?まさか……!!何て事をこの人は思い付くんですか…!!?)

 

 

美鈴は、譲信が構えた物を見て思わず戦慄してしまった。

なんとそれは、大量のナイフだった。

 

 

譲信「よってッ!!ちょいと残酷な処刑法を思い付いたッ!!意識がまだあるなら内心青ざめている頃だろう紅美鈴!!意識があるにしろ、無いにしろ…フフフフ……どうせ動けないならどんなトドメ方でも大差あるまい……いやむしろ…こっちの方が楽ではないか……」

 

 

美鈴(私でもこんな事はしない……!!何て恐ろしい人を相手にしてしまったんでしょうか……あぁ…どうすれば……)

 

 

譲信「さぁどれ…答え合わせと逝こうか~!!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!

 

 

美鈴(耐えるしか無い…ッ!!)

 

 

ヒュンヒュン…ビシッビシッビシィッ!!

 

 

譲信の投げたナイフの雨は、美鈴の足や腕、脇腹などに、何十本も突き刺さった。

果たして美鈴は……

 

 

美鈴(い…痛ぃぃ………!!うぅ……でも…見ましたかッ!?耐えて見せましたよッ!!流石私!!今だけは自分を褒めてあげたいです!!)

 

 

無事だった。

奇跡的に急所への命中は外れ、痛みはあるものの、妖怪でなら何とか耐えられる程度の物だったので問題は無かった。

 

 

美鈴(こ…これで…!!ようやく彼も私への疑いは晴れた筈………)

 

 

美鈴は気になって譲信の方へ目をやる。

しかし、譲信は何故かさらに疑心の目で美鈴を見ていた。

 

 

美鈴(馬鹿な………!!完璧に無反応を貫けていた筈……!!)

 

 

譲信「………確かに無反応だ……脈拍、呼吸…共に何の変化も無し……フフフフ……お陰で尚更貴様が!!くだらん一芝居を打っているという確信を得てきたぞ!!」

 

 

美鈴(……う、嘘…!?何で!?)

 

 

譲信「急所は敢えて全て外してある…狙ったのは主に神経が密集しているような…そういう箇所だ…。いくら気絶しているとはいえ…敏感な箇所にナイフが刺さったりすれば…いくら妖怪でも何の反応も示さない筈が無いだろう……つまりこの場合は…何の反応も無かった事が逆に怪しいという物……!!」

 

 

美鈴(それじゃ………まさか……!!)

 

 

譲信「フフフフ……ハハハハハハハハハハハハハハハッ!!つまりはどのみち、気絶なんてしてないという結果だけが最後に残るという訳だ!!もう起きているんだろう?紅美鈴…最初からか途中からか…そんな事はハナからどうでも良い事よ……嫌でも嫌でも!!貴様は意識を持ったまま、このJOJOのトドメの一撃を受けるのだからなぁぁッ!!」

 

 

譲信は、金色のオーラを纏って不気味に笑いながら美鈴に急接近する。

これからトドメを刺されるというのに不気味な程の安心感を感じさせる譲信の雰囲気に、美鈴は軽く恐怖を感じてしまっていた。

 

しかし美鈴は自分の気を奮い立たせる。

どうせ、もう譲信に全て読まれているならと、最後の一勝負に出た。

 

 

美鈴「わざわざ間合いにまで入ってくれるとは有難いですね!!お陰で手間が省けましたよ!!」

 

 

譲信「ククク…間抜けがぁ!!今までのじゃれ合いなぞ!!只のお遊びの出血大サービスに過ぎんわッ!!俺は既に充分満足なのだ!!門番を見れば大体この館の傭兵共がどの程度の実力かも容易に想像が付くわッ!!よって!!もうお遊びの時間は終わりだ…紅美鈴!!数分とは言え、このJOJOの足止めという大役成し遂げた自分を誇りに思いながら精々、華々しく散るが良いぞぉッ!!世界(ザ・ワールド)(時よ止まれ)!!」

 

 

 

ドォーーーーーーーーン!!

 

 

 

世界の時は停止した…。

譲信の隣には、金色のボディに圧倒的なパワーを感じさせる世界(ザ・ワールド)が佇んでいた。

 

 

譲信「世界(ザ・ワールド)時は止まった…。卑怯……等とは言えまい…既に貴様とて、充分能力を遠慮無しに使っていたからなぁ~…これくらいやってもバチなんてこのJOJOには当たりはしないのだ……さて……時間だくたばれ…!!」

 

 

譲信&世界(ザ・ワールド)「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」

 

 

譲信は、幽香の時よりも少しだけ威力を抑えたラッシュを美鈴に叩き込んだ。

 

 

譲信「さて…ここまで3秒。もう良い…もう止める必要は無い……時は動き出す

 

 

時が動き出したと同時に、美鈴は物凄い勢いで吹き飛び、森の中へと消えていった。

今度こそ意識は完全に失われていた。

 

 

譲信「ただの峰打ちだ。この程度でくたばる様であるなら門番は辞めた方が懸命だ…尤もお前になら…そんな心配する方が野暮という物なのだろうがなぁ……」

 

 

 

 

吸血鬼:譲信 VS 紅魔館門番:紅美鈴

 

 

譲信の勝利により、紅美鈴リタイア。

森の中で気絶中。

譲信の計らいにより、命には全くの別条は無し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信(うへー…こりゃあ酷い…。こっちも随分と派手にやった物だなぁ~…)

 

 

譲信が紅魔館に入ると、早速ボロッボロになった館内の姿が視界に入ってきた。

そして、少し離れた所ではボロボロになったメイド服の銀髪少女が気絶して倒れている。

近くにはナイフとお札のような物が散らかっていた。

 

 

譲信(こりゃぁ……霊夢とやり合ったぽいな……ハイご愁傷様です…俺より容赦ねーや……あーあ。おっかねぇ~なあの巫女さんはよォー)

 

 

起きられたら厄介だし…と譲信はそのまま奥の方へと進んでいく。

館内は外から見たのと違って、かなり広く迷いやすい作りになっていた。

ドアもいくつもあるし、廊下は果てが見えないくらいに長い。

もはや勘で進むしかなかった。

 

途中で何人かのメイド達とエンカウントするが、皆吸血鬼となった譲信から放たれるオーラが恐ろしく、すぐに何処かへと消えていってしまった。

 

 

譲信「フン…情け無い…侵入者相手に逃げてどうすると言うのだ………しかしまぁ…こっちは楽なんで別に構わないがな」

 

 

譲信はそう気楽な事を呟きながら、適当にブラブラと館内を彷徨く。

目的は霊夢か魔理沙との合流、もしくは親玉の発見だが、現実はそうも上手くいかない。

 

気が付けば何故か、入り組んだ迷路のような地下に譲信は訪れていた。

 

 

譲信「…………むぅ」

 

 

軽く探索するつもりで足を踏み入れたのは良いものの、すっかり出口を見失い、焦ってさらに彷徨うこと数十分。

もはや完全に譲信は迷子になってしまっていた。

これなら誰か館の者を縛ってでも同行させておけば良かったと後悔していた。

 

 

譲信(しかし…こうも不気味な地下空間だとオバケでも出て来そうだよなぁ……あぁ嫌だ嫌だ…余計な事は考えないでおこう~っと)

 

 

一つだけ分かるのは、絶対ここには霊夢と魔理沙はいないという事だけだ。

というより、誰かがこのフロアを訪れている感じが全くしない。

あるのは精々、なんとも見えない不気味な気配だけだ。

 

 

だがそうこうしている内に、ようやく1つの扉の前まで辿り着くことが出来た。

もしかしたら出口なのかもしれない。

 

 

譲信(た…助かったぜー…何も無いのが何気に一番キツいからなぁ~…)

 

 

異常な程に、鎖だの何だの色々と頑丈に固められ、中から嫌な気配が漂ってくる扉だが、もしかしたら出口なのかもしれない。

譲信は扉を引こうとしてみたが、ビクともしない。

ならばと今度は押してもみるがビクともしなかった。

 

 

譲信「チィ…面倒くさい事を……キング・クリムゾン……!!」

 

 

譲信はキング・クリムゾンを発現させ、頑丈な扉を数発のラッシュで破壊させる。

最後には譲信の蹴りで、完全に掛かっていた全てのロックは破壊された。

 

 

バキィーーーーン!!

 

 

譲信「どれ…では進むとしよう」

 

 

ギギギギギギギギギギギギギ…

 

 

やや重みのある扉を譲信はゆっくりと開けて、中へと入る。

そこはどうやら何かの部屋の様だった。

暗くてよく見えないが、変なガラクタや千切れた縫いぐるみの欠片、何かの赤黒い物体、骨っぽい何か…等気味の悪い物があちこちに散らばっていた。

 

 

譲信(俺が思う一つだけ確かな事…それはかなりヤバイ部屋に来てしまったという事だけだ……。うわぁー…そりゃそうだよな…あんだけ頑丈に閉めてるんだもの…くそう………)

 

 

 

 

???「……………………誰?」

 

 

譲信「…!?」ビクッ!!

 

 

その時、ゆっくりと部屋を出て行こうとしてた譲信の後ろで誰かの声が聞こえてきた。

驚いた譲信はすぐさま声のした方へと振り返る。

 

 

???「あなたはだ~れ?」

 

 

譲信「………何だと……!!」

 

 

するとそこに居たのは、金色の綺麗な髪に、赤い瞳、そして宝石のような物がついた翼を生やした、可愛らしい見た目の幼女だった………。

 

 

TO BE CONTINUE…………

 

 

 




スタンドパラメータ(譲信使用時)

星の白金(スタープラチナ《ザ・ワールド》)

能力:精密な動きと豪快なパワーの二面性を持つ。
   そして時を5秒ほど止められる

パワー 測定不能(本気が出せない 推定A以上)
スピード 測定不能(本気が出せない 推定A以上)
成長性 A
持続力 A
精密動作 測定不能(色々とまだ余裕 推定A以上)
射程距離 E


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⑬狂気!!フランドール・スカーレット

スタンドパラメータ(譲信使用時)

キング・クリムゾン

能力 十数秒先の未来を予知し、時を25秒までの間消し飛ばす事が出来る

パワー A (Aよりちょっと上かもしれない)
スピード A
成長性 C
精密動作性B
持続力A
射程距離E



???「あなたはだ~れ?」

 

暗闇の部屋の中で、突如譲信の背後から声をかけてきた者は、その部屋には似つかわしくない年頃の幼女だった。

しかし、その容姿は少し異様だった。

赤石瞳。宝石のような物がついた翼。尖った犬歯。

そしてまさにその幼女から放たれる気配こそ、譲信がずっと感じていた不気味さの正体だった。

 

 

譲信「…ッ!!」

 

 

譲信はサッとマントを翻す。

すると、部屋の中に置かれていた蝋燭の全てに灯がともり、部屋の中は保安球のように少し明るくなった。

お陰である程度、部屋の様子を確認する事が出来た。

シングルベッド。

棚と収納。そして本棚。

千切れた縫いぐるみや、まだ新しい綺麗な縫いぐるみ。

割れた何かの破片、千切れた鎖。

赤黒い何かの塊。飛び散った血の跡のような物。

人骨にしか見えない生き物の頭蓋骨。

人一人分の生活色のある部屋の中に、散らばる不気味な物の数々。

 

 

???「ねぇ無視しないでよ?」

 

 

譲信は自分に話し掛けてくる幼女に目をやる。

明らかに異常だった。

見た目こそ可愛らしい姿だが、こんな頑丈に施錠された不気味な部屋に、灯りも点けずに居たとなると、絶対に普通じゃあない。

間違いなく…何かがヤバイ。

譲信は一刻も早くここから退出すべく、適当に幼女と刺激しないように話を合わせて出て行こうと考えた。

 

 

譲信「……空条譲信だ…。君の名前は?」

 

 

フラン「私フラン!フランドール・スカーレットよ。フランって呼んで♪」

 

 

そういってフランと名乗った少女はニコリと笑った。

しかしそんな事で譲信の気が抜ける事は無い。

絶えず警戒したまま、話を続ける。

 

 

譲信「フム…ではフラン。君はこんな所で何をしていたのかな?…もしや、ここの門番が言っていたお嬢様とやらは…君の事かね?見た所…君も吸血鬼のようだが?」

 

 

フラン「門番?あ、めーりんの事か!ううん、お嬢様はフランの事じゃないよ。皆がお嬢様って呼ぶのはフランのお姉様の事だよ!」

 

 

譲信「ほう…姉がいるのか。そしてその姉がお嬢様…成る程。つまり君も吸血鬼である事には変わりなしと…」

 

 

譲信は考えていた。

もしやその姉が妹のフランを自分達侵入者に襲われる事を心配して、わざわざこんな地下の鍵の掛かった部屋へ閉じ込めていたのではないか…と。

しかし、それには幾つか腑に落ちない点も多い。

まずは、異常な程に鍵を掛けた理由について。

そして、何故こんな不気味な部屋に従者の一人も付けずにたったの一人だけにしたのか…。

何より、何故このフランと名乗る幼女はこうも不気味なのか…と。

 

 

譲信「しかし、どうしてこんな不気味な部屋にたったの一人でいるのだ?フランよ…君の姉が君をここへやっているのかね?」

 

 

譲信がそう尋ねると、フランの様子が僅かに変化した。

さらに、異様な雰囲気が立ち込める。

 

 

フラン「そうだよ。お姉様がフランをずっと…ここへ閉じ込めているの…500年もの間ずっとね…」

 

 

譲信「500年…!?何故だ?」

 

 

フラン「フランはね、なんでもかんでも壊しちゃう力を持ってるの。だからお姉様や皆はフランの事を恐れて、外へ出さないようにずっとここへ閉じ込めてるの。でも毎日食事は出して貰えるし、たまにだけど“玩具”も持ってきてくれるんだよ!」

 

 

玩具…その単語が出て来た瞬間、何故か譲信の背筋に冷たい感覚が走った。

よく分からないが結構ヤバイ。

そう判断した譲信はすぐに引き返そうとするが、その時何故かドアが独りでにバタン…!!と閉まってしまった。

 

 

譲信「…………ッ!!(オイオイ…これは死亡フラグぽくねぇ~かぁ~?)」

 

 

フラン「フフフ…お兄さんはフランの新しい玩具なんでしょ?今までの玩具は壊れやすくてすぐ駄目になっちゃってたけど……お兄さんは丈夫そうだからダイジョウブだよね!?」

 

 

譲信は慌てて再び、フランの方へと振り向く。

フランはついさっきまでと比べて完全に凶変していた。

 

 

譲信「何の話だ…?理解できるように…」

 

 

フラン「アハハハ♪簡単ニハコワレナイデネ!?」

 

 

譲信が言い終わる前に、フランは物凄いスピードで飛びかかってきた。

しかし、美鈴戦ですっかり速い動きには慣れていた譲信は難なくその突進を躱す。

 

 

ドゴォン!!

 

 

フランはそのまま壁へと突っ込んでいった。

 

 

譲信「チィ…いくらこの体でも…当たっていたら少々重そうだな…全く、いきなり何をしてくれるのだ…!!」

 

 

フラン「アハハハハハハ!!ヤッパリ避ケタ!!コレナラマダマダ楽シメルヨネ!?」

 

 

フランはすぐに壁から出て来た。

頭から壁に突っ込んだというのに全くのケロッとした状態だった。

 

 

譲信「ハッ!…中華女の次はロリ吸血鬼の子守でも俺にしろと言う訳か…!!こっちはさっさと霊夢らの手助けに行かねばならんというのに…面倒事ばかり起こりおって……!!WRYYYYYYYYYYY!!」

 

 

フラン「アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

譲信の拳と、フランの拳がぶつかり合った。

 

 

ドゴォォッ!!

 

 

譲信「何ィィ!?パワーが互角だとッ!?」

 

 

フラン「アハハハ!!今ノデ潰レナカッタ玩具ハ初メテダヨ!?モットモットフランヲ楽シマセテネ!!」

 

 

譲信「ぬぅぅッ!!」

 

 

信じられないことに譲信とフランのパワーは互角だった。

そして、スピードも互角。

譲信は素早く次の一撃を繰り出すも、フランも同時に次の一撃を繰り出し、また拳同士がぶつかり合う。

そして、気化冷凍法でフランを凍結させる暇の無いくらいの速度のラッシュの打ち合いなった。

 

 

譲信「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァッ!!WRYYYYYYY!!」

 

 

フラン「アハハハハハハ!!モット♪モットダヨ!!」

 

 

しかしこれではいつまで経っても勝負は付かない。

譲信は近くにあった木片をフランに向かって蹴り飛ばすと、素早くフランから距離を取った。

 

 

フラン「モウ辞メチャウノ!?ツマンナイヨ!!」

 

 

譲信「やかましいッ!!こっちは貴様と違って暇じゃあ無いのだ!!なるべく速く、このJOJOは楽をして決着を付けたいと言うのが分からんのかぁッ!!」

 

 

譲信は遠距離戦闘に切り替えた。

近くに落ちてる物や砕いた壁の欠片、とにかくそこらにある物を手当たり次第手に取っては、全力でフランに向かって投げつける。

 

しかし、そんな物は当然フランには何のダメージにもならない。

適当に腕で弾かれるだけでこれでは勝負が付かない。

 

 

譲信「チィ……しかし…ここまで移動できれば問題ない…!!」

 

 

フラン「何言ッテルノ!?早クコッチニキテ遊ボウヨ!?」

 

 

譲信「普通に断るッ!!

 

 

譲信は扉の近くまで移動しており、言い終わると同時に扉を蹴破った。

そしてそのまま、部屋の外へと全速力で逃げ出す。

 

 

譲信「フハハハ!!間抜けがぁ~ッ!!これがジョセフの血を吸うための我が逃走経路だッ!!フランッ!!お前はこのJOJOとの知恵比べに負けたのだぁぁーッ!!」

 

 

フラン「キャハハハハハハ!!次ハ鬼ゴッコナンダネ!?絶対ニ逃ガサナイヨ!!」

 

 

逃げる譲信をまたフランも、全速力で追いかける。

しかし、地の利は当然フランにあるわけで、元々迷子になっている譲信には逃げ切る事の出来る可能性は限りなく低い。

だが、譲信の目的は逃げ切る事では無かった。

 

 

譲信(ケッ!!ハナからお嬢ちゃん…お前から逃げ切れるなんざ思っちゃあいねーよ!!それにこの空条譲信…売られた喧嘩は絶対に買うスタイルなんでな…しかし、あの部屋でやり合うにはフィールドが狭すぎる…だからある程度開けた場所に出るまでは鬼ごっこに付き合って貰うぜッ!!)

 

 

フラン「何処マデ逃ゲラレルカナ!?アハハ!!何処ニ行ッテモ無駄ダヨ!!」

 

 

譲信「少しは落ち着いたらどうかね?マドモアゼル…安心しろよ…貴様の望み通り、この空条譲信が直々に貴様を再起不能にまで叩きのめしてやるのだからなぁ~ッ!!」

 

 

 

 

やがて、譲信はある程度開けた通路にまで出てくることが出来た。

広さにしては一暴れするのに申し分ない。

譲信はここを決闘の場に決めた。

そして、後からすぐにフランも追いついた。

 

 

フラン「モウ諦メチャッタノ!?ジャアソロソロ遊ボ!!」

 

 

譲信「あぁそうだな。しかし、楽しむのはこの空条譲信一人だけで充分だ!!貴様は精々、ハナの垂れたクソガキ共に蹴られるサッカーボールの気持ちでも味わうんだなッ!!」

 

 

譲信はフランに向かって、駆け出す。

 

 

フラン「ソレハモウフラン飽キチャッタ!!ダカラ今度ハ、コレデ遊ボウヨ!!」

 

 

譲信「………ん?」

 

 

フランが何かを仕掛けようとしている事を勘付いた譲信は、警戒してその場にピタリ…と立ち止まってしまった。

 

 

フラン「禁忌“クランベリートラップ”!!

 

 

譲信(んんんん!?)

 

 

フランが唱えると、突如広場の両脇に魔法陣が現れた。

そして、そこから無数の弾幕が放たれ、それらは譲信に向かって襲いかかる。

 

 

譲信「ほう……(げええええええええええー!?なんじゃこりゃあぁぁぁ!?ふっざけんなよぉ!!)…面白い…」

 

 

とにかく、躱すしかない。

譲信は、吸血鬼の胴体視力を駆使してひたすら回避しまくる。

中々に面倒だが、躱せないほど難しい作業では無かった。

 

 

譲信「フン!弾の数こそ中々だが、まだまだ隙だらけだ…これなら汗を掻くことも無いな」

 

 

フラン「ソウナノ?ジャア次ノイクヨ!!禁忌“レーヴァティン”!!

 

 

すると、今度はフランの片手に炎で出来た剣のような物が現れた。

かなりの温度を持ってるらしく、剣先と接している地面がチリチリと焦げている。

 

 

フラン「アハハハ!!マダ壊レナイヨネ!?」

 

 

そしてフランはその剣で譲信を切り裂かんと、譲信に向かって突っ込んでくる。

 

 

譲信「どいつもこいつも人に向かって弾を投げつけおって…!!おい!!貴様ばかり調子に乗って技を使ってるんじゃあないぞッ!!」

 

 

まともに喰らえば譲信の吸血鬼の体といえど、再生が困難になるほどのダメージとなるだろう。

しかし、譲信は迷わずにフランに向かって迫っていく。

 

 

譲信「マジシャンズ・レッド!!シルバー・チャリオッツ!!…チャリオッツの剣先にマジ赤の炎を纏う!!」

 

 

ギィィィィィィィン!!

 

 

フランのレーヴァティンと、譲信の操るチャリオッツの炎の剣が、ぶつかり合う音が響き渡る。

 

 

フラン「ナァニソレ?ソンナコトモデキルンダネ!!」

 

 

譲信「流石にそんな物とスタンド無しでもやり合えると思うほど、この俺は自惚れてはいない…!!」

 

 

チャリオッツとフランの剣の打ち合いが始まる。

何回もの激しい金属音が、不気味な地下空間に五月蝿く響き渡る。

 

 

フラン「アハハハ!!アハハハハハハ!!壊レチャエ!!壊レチャエ!!」

 

 

譲信「おいおい…屋敷暮らしの金持ちのお嬢さんなら…そんなに楽しそうに暴れるんじゃあない。お里が知れるとはこの事を言うのだッ間抜けが!!」

 

 

フラン「ドウシテソンナイジワル言ウノ!?」

 

 

譲信「それくらい貴様の少ない脳みそでじっくり考えてみろッ!!長生きするだけしか能の無いクソガキには無理難題かも知れんがなぁッ!!」

 

 

フラン「酷イ…酷イヨ!!ソンナコト言ウ奴ナンカ…壊レチャエ!!ミンナミンナ、オ姉様モ壊レチャエバ良インダ!!」

 

 

半ギレ状態の譲信の意地の悪い煽りを受けて、突如狂気さが増したフラン。

重みの増したレーヴァティンの一振りに、チャリオッツと譲信は軽く後方へ吹っ飛ぶ。

 

 

譲信「ぬぅぅぅ!?コイツ…いきなり強くなったぞ!?チィ…チャリオッツのパワーでは限界という訳かッ!!」

 

 

チャリオッツの剣先をよく見ると、僅かに曲がっており凄まじい力が加わっていた事がよく分かる。

ちょっとヤバイな…と譲信は少し焦り始めていた。

 

 

フラン「モウ壊レチャエ!!禁忌“フォーオブアカインド”!!

 

 

譲信「…………ッ!?」

 

 

瞬間、譲信はさらに焦ることになった。

何と、フランが4人に分身したのだ。

1:1でもかなりキツいと言うのに1:4になってしまっては相当ヤバイ。

しかし、フランはそんな譲信の事など元からお構いなしだった。

 

 

フラン1「アハハ!!アナタガ悪インダヨ?」

 

 

フラン2「フランノコトヲイジメルカラ!!」

 

 

フラン3「ダカラ壊レテ!!」

 

 

フラン4「居ナクナッチャエ!!」

 

 

フラン達「アハハハハハハハハハ!!!」

 

 

譲信「……ヤバイぞコレ…」

 

 

フラン達は、譲信に向かって攻撃を仕掛けていく。

譲信には策を考える暇など与えられはしなかった。

 

 

フラン1「禁忌“レーヴァティン”!!

 

 

フラン2「禁忌“カゴメカゴメ”!!

 

 

フラン3「禁忌“クランベリートラップ”!!

 

 

フラン4「禁弾“カタディオプトリック”!!

 

 

フラン達は一斉に別々に技を発動する。

譲信を取り囲んで、完全に袋叩きにするつもりだ。

 

 

譲信「フン!…こんな小細工…世界(ザ・ワールド)の前では無力…ッ!?」

 

 

フラン1「ナニモサセナイヨ!?アハハハ!!」

 

 

譲信「ちょ!?タンマタンマ!!」

 

 

時を止めようとした譲信だったが、レーヴァティンを振り回す一人のフランに接近され、止めている暇が無かった。

チャリオッツとマジ赤を発現させたままの状態だったので、世界(ザ・ワールド)を発動させるには、一旦スタンドを引っ込めなくてはならない。

しかしそれをしてしまっては、確実にフランのレーヴァティンの一撃を受けることになる。

それだけは避けなくてはならなかった。

 

 

ドドドドドドォ!!

 

 

譲信「ぬぅぐぅぅぅ!?」

 

 

目の前のフランに意識を取られすぎたせいで、譲信は数十発もの被弾をしてしまう。

 

 

ジュァァッ!!

 

 

そしてさらにフランのレーヴァティンに左腕を切り飛ばされてしまった。

 

 

譲信「ぐっ…!!」

 

 

フラン1「アハハハ!!イイ顔スルネ!!モットシテアゲルネ!!」

 

 

フラン2、3「コッチノフラン達モ忘レチャ駄目ダヨ!!」

 

 

バギィ!!

 

 

譲信「がっは………ッ!!」

 

 

そして背後から強烈な二人のフランの打撃をまともに受けてしまう譲信。

数本の骨が一度に砕ける嫌な感触があった。

 

 

譲信「ゼェー…ゼェー…ゴフッ…舐めるなよ………数の暴力にこの俺がッ…空条譲信がくたばると思うなよクソカス共がぁぁーッWRYYYYYYYYYYYY!!

 

 

倒れそうになった体を譲信は片足で無理矢理支える。

意地でもここでやられるつもりなど譲信には無かった。

 

 

フラン1「アハハハ!!ナニソレ!?モウ壊レチャッテモイインダヨ!!」

 

 

フラン1はレーヴァティンを譲信の腹に突き刺す。

しかし!譲信はそのままレーヴァティンをさらに腹に食い込ませることで、一気にフラン1との距離を詰めた。

 

 

フラン1「アッ……ガ!?」

 

 

そしてフラン1の口を無理矢理手で開け、顎の骨を砕く。

 

 

ボキッ!!

 

 

フラン1「ァァァァァァァ!!イガァイィヨ!!」

 

 

譲信「ゴッハ……ガフッ…ゼェー…まずはゼェー…貴様からだ!!空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)!!

 

 

譲信の両目から発射された光線は、フランの口内へと放たれそしてそのまま、脳天を貫通して突き破る。

 

 

譲信「グッフ……後3…!!」

 

 

フラン2「ガッ!?」

 

 

続けてすぐに、譲信は腹部に刺さっていたレーヴァティンの柄の部分を全力で叩き、そのまま自身の後方へとレーヴァティンを吹き飛ばし、フラン2の脳天を貫かせた。

そしてフラン2を天井へと蹴り上げ、レーヴァティンごと上へと突き刺した。

 

 

譲信「あと2ィ……!!星の白金(スタープラチナ)!!

 

 

フラン3「ッ!?」

 

 

フラン3は咄嗟に頭をガードした。

しかし、スタープラチナのパワーの前にそれは意味を成さない。

譲信は遠慮の無い一撃で、ガードの上からフランの頭をスタープラチナのパンチで粉々に砕き割った。

 

 

フラン「アハハ!!倒シチャッタノ!?頑張ルンダネ!!」

 

 

譲信「ハァ…ハァ…残るは本体…か…!!(いやだ~…もう…身体中のあちこちが痛いんだけどぉー?…てか、腕一本ねーし!!な~にが『遊ぼ!』だよこの大バカタレがッ!!)」

 

 

譲信は最後に残ったフランを睨んだ。

 

 

譲信「……………ぁぁ?」

 

 

譲信がフランを睨んだ時、既にフランは何故か譲信に向けて手を開いていた。

手のひらをこちらに向けて今度は何を仕掛けていくるつもりなのか…と、譲信は身構えた。

 

 

フラン「モウ飽キチャッタ。コレ以上ヤッテモツマンナイカラ…壊レロ!!キュットシテー…」

 

 

譲信「……ッ!!」

 

 

何かとんでもない事が起こる、と感覚で分かった譲信は残った片腕でガードの体制をとった。

 

 

フラン「ドカ~ン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチャアッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………フランが何かを握りつぶしたその瞬間、譲信の体は粉々の肉片になって飛び散った。

あたり一面、譲信の肉塊と血の海で真っ赤に染まる。

それはまるで、床に大きな赤いバラが咲いたようであった。

 

 

譲信(バ………カ………な…………俺は…………………死………………ぬ……のか……ここ……で………?……)

 

 

フラン「アハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

フランの狂気に満ちた笑い声が地下に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

パリン…………!!

 

 

つい先日、買ったばかりだった皿が突然割れてしまった。

幽香は忌々しそうに、割れた皿の片付けを始める。

 

 

幽香「まだ買ったばかりなのに割れるなんて…ナマクラでも掴まされたのかしら……?あの店主…今度あったらただじゃおかないわよ……」

 

 

割れた皿の破片を集めていた幽香はふと、何かに気付いた。

 

 

幽香「そういえばこのお皿の模様…あの子供…そう、確か譲信がやけに気に入ってたわね…」

 

 

繊細に美しく描かれた赤いバラの模様。

あの日の朝食の時に、譲信がこの皿を気に入って譲ってくれないか…と交渉を持ちかけてきた事があった。

当然、幽香はそれを断った。

そんな一部始終を幽香は思い出していた。

 

 

幽香「………………。」

 

 

その時、何故か幽香の中で嫌な予感がした。

そもそも、幽香が購入している店の皿は丈夫で長持ちする事で人気がある皿なのだ。

そんな皿が、購入して僅か1年もしてない内に突然割れるなんておかしい事なのだ。

 

 

幽香「胸騒ぎがするわね……まさか譲信…あの子……今回の異変に関わっているんじゃないでしょうね…!!」

 

 

寄りにもよって譲信が気に入っていた皿…それが割れるなんて不吉その物。

何か譲信に良からぬ事でも起こっているのではないか…と、幽香はついついそう考えてしまっていた。

 

 

幽香「………どうしてこの私が、わざわざあの子を心配しなくちゃいけないのよ…あんなヘンテコで…好き勝手やって…その場のノリだけで生きてるような…お子ちゃまなのに…バカらしくなってきたわ…」

 

 

幽香はため息をつくと、割れた皿の破片を袋に一纏めにして部屋の隅に置く。

そして、飲みかけだった紅茶を人啜りした。

 

 

幽香(尤も、あの子なら例え何があっても…そう簡単にはくたばらないでしょうね。なんなら…殺しても死なないような気がするわ…それくらい何か力に溢れた瞳をしていたもの…)

 

 

好きな物を熱弁する時、強敵である自分と戦った時、笑った時、常に譲信はパワフルだった。

あそこまで生を謳歌してるような人間には、中々お目にはかかれない。

そして、そういう人間ほどしぶとく生き残るのだと幽香は長い人生の中でそれを知っていたのだ。

 

それよりも今度会った時、起業の祝いに役に立つ品でも何か渡してやろうか…と幽香は考えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「アハハハハハハ!!!」

 

 

譲信(…………ヤベェな…意識があるのは…頭の約四分の一程度じゃあねぇか………しかも……数秒もすれば意識が飛んじまいそうだぜ……)

 

 

譲信は片目と頭の四分の一くらいの塊になってもまだ、かろうじて意識を保っていた。

吸血鬼化してるなら、生首だけになっても生存していることが可能なくらいに生命力は高くなるので、ある程度は生き長らえることは出来る。

しかし、それでも流石に今の状態にまでなると、もはや数秒の命だった。

 

 

譲信(何か…考えろ…ッ!!何か…何か……ッ!!)

 

 

その時、譲信は視界の先に落ちている自身の切り飛ばされた左腕を見つけた。

距離にして10mちょっと。

そしてその左腕には、腕時計がしっかりと巻かれていた。

 

譲信は考えていた。

なんとかして、あそこにある時計のつまみを逆回転させる事が出来たなら…時を巻き戻す事ができるのでは無いか…と。

しかし、今の譲信には手足どころか、喋る事も聞くことも出来ない、肉の塊だ。

精々、見ることと考えることしか出来ない。

 

 

譲信(マ…マズイ……いよいよ…意識が……ッ!!)

 

 

そうしてる内にとうとう、意識の限界にまで譲信は来てしまっていた。

眼から自然と血が流れ出てくる。

 

 

譲信(く…くそ………眼から…血が………………血?…………液体……………ッ!!そうか……!!その手があったか………!!…確かにこの方法なら…つまみを回す分くらいの力は出せる!!あの位置に腕があるのは本当に奇跡だ…しかし…この距離だと…結構、博打になっちまうな……)

 

 

譲信は一瞬だけ迷った。

しかし他に方法もなく、ほっとけばどうせ死ぬ身だ。

それなら博打でも何でも試すには充分だった。

覚悟を決めた譲信は、ゆっくりとその瞳を開いた。

 

 

譲信(最後の一撃になるか…逆転の一撃になるか……そいつは運命の女神様次第ってやつだぜ……やってやるよ……運命の女神様くらい…俺の女にしてやるよ!!この空条譲信ならそれは……出来るッ!!……いくぜ………空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)…!!

 

 

ドギューーン!!

 

 

譲信の眼から最後の絞り出すような、体液の光線が発射された。

 

 

譲信(あ……た……れぇ!!!!)

 

 

 

ガキィィーーン!!

 

 

 

フラン「アハハハハハハ!!」

 

 

………ところが、その一撃はフランに弾かれて大きく外れてしまった。

光線はつまみに当たる事はなく、弾き飛ばされ天井にヒビを入れただけだった。

 

 

フラン「アハハハ!!何モサセテアゲナイヨ!?デモヨク生キテキタヨネ!?コンナニナッテモ生キテタ玩具ナンテ始メテダヨ!!デモフランネ、シツコイノモ好キジャナイノ!!…ダカラ……今度コソ壊レチャエ!!」

 

 

狂気に満ちた笑みを浮かべながら、フランは手のひらを肉塊となった譲信に向けた。

もう既に、譲信にはもう一発光線を放つ力は残されていなかった。

…もう何もする事なんて出来なかった。

………………だが、それで良かったのだ。

 

 

譲信(………依然問題無し……やれやれ…間に合ったな…)

 

 

天井に空いたヒビは、さっき譲信がフラン2を蹴り上げた時に同時に天井に突き刺していたレーヴァティンが刺さっていた箇所に隙間を開けた。

 

隙間が開いて固定が緩んだそのレーヴァティンはゆっくりと落下していく。

そして、そのレーヴァティンの先端が腕時計のつまみを擦り、逆回転させたのだッ!!

 

 

譲信(…本当にあの位置に左腕が落ちてたのは…幸運だったぜ…!!やれやれ…マンダム!!時は10秒キッチリ…巻き戻される…!!)

 

 

 

 

 

ドォーーーーーーーーーン!!

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

フラン「アレ!?何ガ起コッタノ!?アレ!?アレ!?」

 

 

気が付けば、フランは先程立っていた場所とは全く違う位置に立っていた。

そして、あたり一面に立ちこめていた譲信の血の臭いは、すっかりと消えていた。

 

 

そして状況が読み込めず混乱しているフランに、背後から声が掛かった…。

 

 

 

譲信「運試し…に勝ったのは俺の方だったな…。お前が俺の行動に気付いてくれるという方に賭けたお陰で…無事にこの通り、時を巻き戻せた…間抜けが……お前は知恵比べの次に、運勝負でもこのJOJOに負けたのだ…!!」

 

 

譲信はニヤリと笑いながら、拾った左腕を元通りにくっつけ、フランに近寄っていく。

 

 

フラン「オカシイナ~?確カニ壊シタノニ……ジャア…モウイチド壊レチャエ!!」

 

 

フランは、レーヴァティンを発現させると譲信に向かって迫っていく。

対する譲信も、臆することなく迫るフランに向かって迫っていく。

 

 

譲信「大間抜けがぁッ!!二度もこの空条譲信が油断してやるとは思うなよッ!!その気になった空条譲信の恐ろしさを…真の闘争とやらを見せてやるッ!!」

 

 

 

 

狂気の吸血鬼 VS 不死身の吸血鬼

 

誰にも知られることの無い二人だけの死闘。

その第2ラウンドが今…始まった……!!

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 




スタンドパラメータ(譲信使用時)

キラークイーン(バイツァダスト含)

能力 ①触れた物何でも爆弾に変える
   ②温度の高い物から標的にしていく自動追尾型の
    爆弾戦車を放つ。(最大射出可能数6)
   ③譲信がどうしようもなく絶望した時、人に取り憑かせて発動。譲信の正体を知った者を爆殺して時を一時間巻き戻し、更には能力を解除しない限り、何もしなくても一度爆殺された者はその運命からは逃れられない。

パワー A (B)
スピード B (B)
成長性 A (A)
精密動作B (B)
持続力 A (A)
射程距離 E (A)



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⑭THE WONDER OF U~星が導く奇跡の愛~前編

スタンドパラメータ(譲信使用時)

クレイジー・ダイヤモンド

能力 触れた物はなんでも元通りに直す(治す)事のできる能力

パワー A(譲信が怒るとAを越える)
スピード A(譲信が怒るとAを越える)
成長性 C
持続力 A
精密動作性 B
射程距離 E



 

空条譲信には、悪いクセがある。

譲信は誰かと戦う時、必ず手加減してしまうのだ。

しかし、それは決して相手を侮辱しているからするのではない。

譲信が手加減をする理由…それは必要以上に相手を傷つけないようにする為だ。

 

紫や魔理沙に美鈴。

これまでに戦ってきた三名には苦戦していたのに、人里での異変での対・誘拐犯戦で一切の苦戦をしていなかったのは、遠慮する必要のない悪だったからだ。

確かに、上に挙げた三名と比較すると実力が劣っていたのもあるだろう。

しかし、手段を選ばなくなった譲信でなければ秒殺なんてまず有り得ないのだ。

 

ここまで言えばもうお分かりだろう…。

手段を選ばなくなった譲信…つまりマジになった譲信を相手にするという意味が、一体どれ程恐ろしい事なのかと。

対峙した者に待つのは、想像を絶する苦痛なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして今が、その時なのである………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館の地下で繰り広げられる吸血鬼同士の闘争。

ただし、一方は12時間限定のなんちゃって吸血鬼なのである。

そのなんちゃって吸血鬼である譲信は、一度死にかけた事で既にマジになっていた。

そのせいで、今まで演じていたDIO様風のロールはすっかりと無くなっていた…。

 

 

 

 

 

 

譲信「………ワンダー・オブ・ユー…………

 

 

フラン「アハハハ!!今度ハナァニ!?」

 

 

譲信の隣に現れたスタンドは、黒いスーツに帽子を被った、紳士のような見た目のスタンドだった。

杖を突いており、細身の体型からは一切のパワーを感じさせない。

 

 

譲信「……一つ忠告しておくと…それ以上はもう何もしない事だな…」

 

 

フラン「アハハハハハハハハハ!!ナニシテモ無駄ダヨ!!」

 

 

狂気に満ちたフランは、譲信の忠告を無視してどんどん譲信に向かって近付いてくる。

…しかし、依然として譲信はWOUを発現させてからは、ずっとそこに立っているだけだった。

 

 

フラン「アハハハ!!今度ハ燃エチャエ!!」

 

 

フランは譲信に向かって、そう叫ぶと切り裂く為にレーヴァティンを振り上げた。

 

 

譲信「あーあ…。俺は忠告はしたからな?…そりゃあ……お前の自己責任だ……」

 

 

フラン「………!?」

 

 

ブシャアッ!!

 

 

突如聞こえてきた何かが潰れたような音。

フランはその音が聞こえてきた足元へ目をやる。

 

そこではなんと、フランの両足が瓦礫にぶつかってぐちゃぐちゃに潰れてしまっていた。

…そしてそれだけでは無い。

レーヴァティンを握るフランの片手は焼けただれ、激しく出血しながら骨を露出させていたのだ。

 

 

フラン「痛イ!?痛イヨ!?ナンデ!?」

 

 

たかが、瓦礫。

ただ自分で創り出しただけの武器。

それだけの物で何故、ここまで重傷を負ってしまったのか、フランは訳が分からなかった。

 

 

譲信「へぇ~…そうなったか~!!何か起こるのは分かってるんだが、何が起こるかはやっぱ…分かんね~もんだぜ」

 

 

その一部始終を譲信はそこそこ興味深く観察していた。

フランは足が使い物にならなくなったので、地面に倒れこんでしまう。

同時にフランの落としたレーヴァティンは、地面に浅く突き刺さった。

 

 

譲信「ワンダー・オブ・ユー…俺の姿を見ようとしたり、俺を追いかけたり、俺に攻撃を仕掛けようとした全ての者は…この世の有りと有らゆる厄災に見舞われる。そして、じわじわと死に至らしめる…もう一度だけ忠告する…これ以上は一切何もするなよ」

 

 

譲信はもう一度だけフランに忠告するも、フランは全く譲信の言葉を聞いていなかった。

ただの壊れ行くだけの玩具にここまでされて、さらにフランの心は狂ってしまっていた。

 

 

フラン「壊レロ!!壊レロ!!壊レチャエ!!」

 

 

フランはまだ動かせる手のひらを譲信に向け、先程と同じように譲信を“破壊”しようとする。

フランの持つ能力は“ありとあらゆる物を破壊する程度”の能力であり、その破壊方法は全ての者が持つ“目”と呼ばれる弱点みたいな物を手のひらに移動させて握りつぶす…といったものだ。

そして、今のフランの手の中には譲信の“目”が既に移動されていた。

 

 

フラン「キュットシテドカーン!!」

 

 

フランは“目”を握りつぶそうとした。

…ところがその時、地面に浅く突き刺さっていたレーヴァティンが倒れ、“目”を握りつぶそうとしたフランの片腕を切断してしまった…。

 

 

ザグゥゥッ!!

 

 

フラン「痛イ!?痛イ!!痛イ!!痛イ!!痛イ!!痛イ!!!!」

 

 

譲信「やれやれ…言ったそばから…」

 

 

痛みに叫ぶフランに、天井から小さな破片がパラパラと降ってくる。

そして

 

 

ドスッドスッドスッドスッ…!!

 

 

それらの破片は、フランの背中に幾つもの穴を空けた。

 

 

フラン「ァ…………!!ガッ………!!」

 

 

フランの体から一気に力が抜け、痛みに叫ぶ声すらなくなり、辺りは僅かなフランの呻き声しか聞こえなくなってしまった。

譲信はそんなフランを静かに見下ろしていた。

 

 

譲信「俺は2回も忠告したんだ…こうなったらもう自業自得…仕方ないじゃあないか…エ?どうなんだ?」

 

 

フラン「……………………ゥゥ…」

 

 

譲信はWOUを解除した。

だからといってフランのダメージが消えるわけでもなく、フランは倒れたままだった。

僅か数秒。

決着はあっという間についてしまった。

 

 

譲信「吸血鬼ならそれでもまだ…“その程度の傷”なんだろ?やれやれ…治癒するまでに何秒掛かるのかは見物だが…生憎と俺も殺されかけた身だ。そうなると…だ。やれる内にやらなきゃあならんよなぁ?」

 

 

譲信はキラークイーンを出すとゆっくりフランに近付いていく。

 

 

譲信「お前の能力は確か、なんでもかんでも破壊する…で良かったか?…そう言ってたもんなぁ?…実は俺のキラークイーンも似たような能力でな…俺のキラークイーンは指先で触れたモノは何であろうと爆弾に変える事ができる。そして、爆弾に変えたモノは好きな時に爆破する事が出来る。……分かるか?」

 

 

フラン「ァ…………ァ…………」

 

 

フランにはイマイチ、譲信の言おうとしている事が理解できていなかった。

そんなフランに対し、譲信は分かりやすいように語り続ける。

 

 

譲信「つまり、キラークイーンに触れられてしまったらもうどうしようも無いという事なんだよ…どれくらいどうしようも無いかと言うと…借金で首が回らないヤツが“闇金融”から金借りちゃったのと同じくらい…もうどうしようも無いって事だ…。で、俺が今どうして…キラークイーンを出してお前に近付いてるかと言うとだなぁ………ま、俺が言わずとももう分かるだろ?」

 

 

そして刻一刻と迫る死に気付いたフランは、必死に逃れる術を模索するも、譲信の言うようにもはやどうしようも無かった。

生まれて初めて、狩られる側に立たされたフランはついに耐えきれなくなってしまった。

 

 

フラン「やだやだやだやだやだ!!やめて!!来ないで!!フラン死にたくないよ!!」

 

 

譲信「………ぁぁ?」

 

 

フランはついには泣きだしてしまった…。

見た目相応な反応を見せるフランにもはや、先程までの狂気さはなく、これまた明らかな変化に譲信は思わず面食らってしまった。

逆に譲信の中には軽く罪悪感まで湧いてきてしまっていた。

 

 

フラン「うゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!やだ!!やだ!!やだ!!」

 

 

動かせる羽の部分だけ必死にバタバタとさせながら号泣するフラン。

予想外の反応に譲信は戸惑っていた…。

 

 

譲信「お、おい…!!てめ…ッ!!…あーーー!!くっそ!!分かったから落ち着け!!泣き止め!!素数でも数えて落ち着けぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

そして譲信の叫び声が地下に響き渡った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《キング・クリムゾン!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「グスッ…グスッ………」

 

 

数分後、クレイジーダイヤモンドでフランの傷を治して何とか落ち着かせる事に譲信は成功していた。

 

 

譲信「あー…落ち着いたようだな?」

 

 

フラン「………」コクリ。

 

 

フランはただ無言で頷く。

もはや譲信にはフランをこれ以上どうこうしようという気持ちはすっかり無くなっていた。

 

 

譲信「ふぅー…さて、何から話せば良いもんかねぇ…」

 

 

譲信は困った苦笑いを浮かべて頭を掻いた。

そんな譲信をフランはまだ涙目のまま恐る恐る見ている。

何とも言えない空気だった。

 

 

譲信「謝罪とかはまぁ~いらねぇわ……てことで、とりあえず事情でも聞かせてくれや…何か訳アリなんだろ?」

 

 

譲信は適当な大きさの瓦礫に腰掛け、煙草を一本吹かしはじめた。

 

 

フラン「…ウン……分かった………。フランはね、さっきも言ったけどなんでも壊しちゃう“ありとあらゆる物を破壊する程度”の能力を持っているの」

 

 

譲信「おう。それで?」

 

 

フラン「そしてあなたも気付いてると思うけど、フランには狂気が宿っていてね、発作のように出て来てしまうの。…それで、狂気に飲まれてしまったらフラン…何もかも区別が付かなくなって…みーんな壊しちゃうの。………そのせいでフランのお父様とお母様は……」

 

 

譲信「ゴホッ!?ゴホッ!?………えっ!?(は?え?殺しちゃったの!?)」

 

 

譲信は驚愕した。

予想だにしない衝撃的なカミングアウトに、のんびりと煙草を吹かしながら構えてなんていられなかった。

フランは実の父親と母親を手に掛けた……それも自分の意思じゃ無かったのに自分の手で殺してしまったのだ。

一体どれ程の罪悪感と悲しみがあるのだろうか。

譲信には全く見当が付かない。

 

 

フラン「そのせいでお姉様はフランの事を恐れて、私を地下に閉じ込めた。495年前からずっとフランはここで…独りで生きてきたの……」

 

 

フランはとても悲しそうに、呟くように言った…。

 

 

譲信「………ッ!!(重すぎるぜ……そんな話しされてよぉ…俺にどうしろってんだよ…!!)」

 

 

フラン「……あなたももう分かったでしょう?フランがどれだけ危険なのか……分かったらフランがフランで居られる内にここから出て行った方が良いよ…」

 

 

譲信「……………」

 

 

フラン「もし、この事がお姉様にバレても大丈夫だよ…どうせフランの事なんて…どうでも良いのよ皆……血の繋がりがあるから直接手を掛けたくないってだけで…心の中では皆、フランの事なんて居なくなった方が良いって…思ってるに違いないもの…。だからフランをこんな場所にずっと……」

 

 

譲信「……………」

 

 

フラン「…………ねぇ?どうしてさっきから黙ってるの?……言っておくけど同情なんかいらないからね?」

 

 

…途中から譲信はただ、フランの言葉をずっと黙って聞いていた。

一言一句決して聞き漏らさないように。

そして、静かに拳を握り締めていた…。

 

 

 

譲信「………だあーーーーもうッ!!辛気臭ぇな!!」

 

 

そして突如、譲信は何かが吹っ切れたかのように叫んだ。

 

 

フラン「……え?」

 

 

突然叫んだ譲信に驚いて、フランはヒョイと顔を上げた。

 

 

譲信「同情すんなだとッ?さっさと帰れだとッ?…ざけんな!!ンな話しをよぉ!そんな泣きそうな目ぇしながら聞かされて…同情せずにほっといて帰れる奴なんかいねぇよッ!!」

 

 

譲信はさらに言葉を続けた。

 

 

譲信「大体なぁ!!そんな重たい話しなんて話せと言われてそう簡単に話す奴はいねぇんだよ!!良いか?そういう話をする時ってのはなぁ…そいつに助けて欲しいからするんだ!!……そうだろ?フラン…お前、助けて欲しいんだろ!?」

 

 

譲信はフランの目を真っ直ぐ見つめた。

そのフランの目からは涙が静かに零れてくる…。

 

 

フラン「……ッ癖に……どうせ出来ない癖に適当な事言わないでよッ!!あなたに何が分かるって言うの!?何が出来るって言うの!?適当な言葉でフランの事を慰めようって思ってるだけなんでしょ!?そうなんでしょ!?」

 

 

下を向いて、大声で叫ぶフラン。

しかし、そんなフランの頬を譲信は両手で掴んで、顔を持ち上げ強引に、フランと自分の目を合わさせた。

 

 

譲信「やかましいッ!!質問を質問で返すんじゃあないぞッ!!疑問文には疑問文で答えたら0点な事くらい分かるだろッ!!エェッ!?フラン、俺はな!!“助けて欲しい”のか“助けて欲しくない”のどっちなのかを聞いてんだぜッ!!さっさと言いなッ!!」

 

 

フラン「…………ッ!!…………シイヨ……」

 

 

譲信「あン?聞こえねーよ。ハッキリ言え!!」

 

 

フラン「ッー!!助けて欲しいよッ!!うぅっ………助けて………助けてよッ!!」

 

 

フランは両目から大粒の涙を流してそう叫んだ。

それは……フランの495年もの間、閉じていた…心からの本音だった。

ずっと孤独で絶えず自身に宿る狂気に怯えるそんな毎日から、フランはずっと誰かに救い出して貰いたかったのだ。

 

 

譲信「…………ヘッ………!!グレート…ちゃんと言えたじゃあねぇかよ…!!なぁフラン!!」

 

 

譲信はニヤリと笑って、フランの頭を優しく撫でた。

譲信はフランの心からの本音の言葉をしっかりと心で受け止めていた。

 

 

譲信(実の親を手に掛けた奴の気持ちってのは…フランの言うとおり…俺には死んでも分からねぇよ。…しかしな!!だからといってそれが助けようとしない理由にはならねぇんだよ…!!俺は誰だ?…そう!!空条譲信様だ!!スタンド使いの空条譲信様だ!!やれば出来る…!!なんだってな…!!)

 

 

だからこそ、譲信は力強く言葉を発した。

 

 

譲信「助けてやるよッ!!頼まれたからにはもう断れねーぜ!!俺はやると言ったらやる男だぜ…任しときな!!」

 

 

フラン「……本当に?……フランのこと…助けてくれるの……?」

 

 

譲信「当然だ!!だからなぁ~フラン…泣いてんじゃあねぇよ。笑え笑え!!とりあえず笑っとけば悪いモンはどっか行っちまうからよ!!ヘッ♪」

 

 

譲信はニカッとはにかんで見せた。

 

 

フラン「うん……っ!!うん……っ!!……分かった……!!」

 

 

フランは、涙で濡れた目をゴシゴシと拭う。

もう泣かないようにと、歯を食いしばった。

 

 

譲信「だ~から…ホレホレホレ!!今は笑えッ!!」

 

 

そんなフランのほっぺたを譲信は引っ張って無理矢理笑顔を作らせる。

 

 

フラン「んにゃあ!?くすぐったいよ!?分かったからひゃめてー!!」

 

 

フランはジタバタと暴れて、譲信の手から逃れる。

そして、少し拗ねたような目で譲信の事を睨んでいたがやがて、譲信に釣られて自然と笑顔になった。

 

 

譲信「ハッハッハ♪少しは気持ちが楽になったろ?」

 

 

フラン「あ…れ?…うん!!本当だ!!」

 

 

譲信「そういうことだ…んじゃ行くぜ!!そのお姉様とやらに会いに…な!!」

 

 

フラン「う……うん!!」

 

 

譲信は歩き出し、フランも慌てて譲信に付いていく。

自然と気持ちが楽になっていたフランは、今は狂気の事をすこしだけ恐れなくなっていた。

 

 

譲信(……フランを見ていて、一つだけ分かるのはお姉様とやらは適切な対応が出来ていなかったという事だ。フランが狂気だと言うのは、その能力に対する恐れから来る感情が引き起こす…一種のパニック症みたいな物で間違いねぇな……だから笑えば気が紛れちまう…。だがお姉様とやらは、フランの狂気が生まれつきの物だとでも勘違いしたのか、誤ってフランを独り閉じ込めてしまった…それが致命的なミスだな。お陰で散々こじれにこじれて、本物の狂気が出来上がっちまった……やれやれ……こりゃ一筋縄じゃあいかねぇな……フランは助ける…霊夢達も助けて異変解決に貢献する……両方やらなくっちゃあいけないのが…出来る男の辛い所だぜ…)

 

 

譲信「なぁフラン」

 

 

フラン「………なぁに?」

 

 

譲信「これだけは言っておく。俺が出来ることは精々、お前を導いてやる事くらいだ。結局、一番最後はフラン…お前が決めなくっちゃあいけない。成長しなくては栄光は掴めないんだ…分かるか?」

 

 

フラン「……………うん」

 

 

譲信「勇気を持ちな。俺がいるじゃあねぇか。背中ならいくらでも押してやるよ…だからドンと構えてな!!」

 

 

フラン「うん!!」

 

 

譲信とフランは互いに顔を合わせて、力強く頷き合った。

ここに二人の確かな絆が生まれた。

その時、ふと譲信は何かに気付いて立ち止まった。

フランも譲信の異変に気付き、譲信の顔を見上げる。

 

 

フラン「どうしたの?」

 

 

譲信「………そういや俺、迷子だったわ…先頭行ってくんね?」

 

 

フラン「………………え?」

 

 

フランはなんだか不安になってきてしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、紅魔館敷地内での空中では激しい戦いが繰り広げられていた。

誰もが近付く隙も無いほどの攻防。

そのうちの一人は博麗霊夢。

そしてもう一人がこの異変の首謀者であり、この紅魔館の主でもある、レミリア・スカーレットだった。

 

絶えず弾幕が飛び交い、両者とも一歩も譲らない。

戦いが始まってはや数十分。未だ互いにダメージを受けてはいなかった。

 

 

レミリア「中々やるわね。美鈴と咲夜を倒して来ただけあって、随分と楽しませてくれるじゃない!」

 

 

レミリアは片手に槍を持ち弾幕の間をかいくぐり、霊夢に一気に接近する。

 

 

霊夢「博麗の巫女を随分と舐めてくれるわね。あんたのようなお子ちゃまにやられるほどヤワじゃないのよ!」

 

 

霊夢は難なくレミリアの槍の一閃を上へ上がって躱すと同時に、そう言い放つ。

レミリアは深紅の瞳を妖しく光らせて、霊夢の方を見上げた。

 

 

レミリア「あんたなんかより私の方が何百歳も年上よ!その身にしっかりと刻みこんであげるわ…紅魔館の主…レミリア・スカーレットの恐ろしさをね……!!」

 

 

霊夢「慢心もここまで来れば大したもんね…知るのはあんたの方よ!幻想郷支配なんてくだらない野望は…すぐに打ち砕いてあげるわ!!」

 

 

レミリア「フフ…………やってみろッ!!」

 

 

夜の王に相応しい程の圧を放ちながら、レミリアは再び霊夢へと迫る。

 

 

 

“マスター・スパーク”!!

 

 

 

レミリア「ッ!?」

 

 

その時、何者かの手によって横からレミリアに向けて凄まじいエネルギーを持った光線が放たれた。

 

 

レミリア「……これくらいッ!!」

 

 

レミリアは手に持っていた槍を凄まじい速度で投げる。

とてつもない破壊力を持ったその一投は、迫っていた光線を相殺してみせた。

 

レミリアはすぐさま霊夢から距離をとり、突如戦いに乱入してきた者へと視線を向けた。

 

 

 

魔理沙「へぇ!私のマスパを相殺するなんて面白い奴だな!!」

 

 

霊夢「あんたねぇ…余計な手出しはいらないんだけど?」

 

 

現れたのは“普通の魔法使い”や“白黒の魔法使い”こと霧雨魔理沙だった。

 

 

魔理沙「そうツレないこと言うなって!!こんな面白そうな戦いを黙って見てろって言う方が無理な話なんだぜ!!私も混ぜてくれよ!!」

 

 

魔理沙は霊夢の隣まで来てから、ニヤッと笑った。

何処かで誰かと戦っていたのか、多少服がボロついていた。

 

 

霊夢「……はぁ。どうせ何言ってもやるんだから…もう勝手にしなさいよ。けれど、私の足引っ張ったら承知しないわよ!!」

 

 

魔理沙の事を良く知る霊夢は、何を言っても意味なしと仕方なくため息をついた。

 

 

魔理沙「おいおい誰に物を言ってるんだ?逆だぜ。霊夢が私の足引っ張らないようにするんだぜ!!」

 

 

霊夢「……へぇ。言うじゃないの……じゃあ、そこまで言うからには遠慮なんていらないわね…行くわよ魔理沙!!」

 

 

魔理沙「おう!!」

 

 

霊夢と魔理沙はほぼ同時に、弾幕を発射した。

 

 

レミリア「たかが一人増えた程度で調子に乗らないことね…!!二人まとめて潰してあげるわ!!」

 

 

対するレミリアもついに本気を出したのか、先程よりも多く、密度も濃い弾幕を一気に放つ。

 

 

ゴオォォッ!!

 

 

辺り一面に激しい轟音が響き渡った。

地上でも凄まじ風圧が起きており、激しく砂埃が巻き起こる。

 

 

 

レミリア「“スカーレットシュート”!!

 

 

魔理沙「“スターダストレヴァリエ”!!

 

 

霊夢「“二重結界”!!

 

 

 

ドォォォォォーーン!!

 

 

三人の攻撃がぶつかり合う事で、紅魔館内にも激しい揺れが走った。

常人が見ただけでちびるような激しい攻防が繰り広げられる。

 

 

魔理沙「うぉぉぉぉりゃ!!」

 

 

レミリア「甘いッ!!神槍・グングニル!!

 

 

レミリアは片手に再び槍を出現させると、その槍を一閃し魔理沙の弾幕を弾き飛ばす。

 

 

魔理沙「うぉッ!?」

 

 

レミリア「はぁッ!!」

 

 

レミリアは槍を構えると、霊夢に向かって先程よりもさらに速い速度で突進攻撃を仕掛ける。

 

 

霊夢「くっ!!」

 

 

霊夢はレミリアの槍の突進攻撃を上手く躱して、横へと飛び退く。

そのままレミリアは勢い止まらず直線に進んでいき、槍の先端が時計台に突き刺さった。

 

 

ビシィィッ!!

 

 

すると時計台に一気に亀裂が走り、槍の刺さった場所から上の部分が、音を立てて崩れ落ちる。

一体どれ程の破壊力が秘められているのか、霊夢と魔理沙は目視で理解できた。

 

 

魔理沙「あれだけはまともにくらえないんだぜ…!!」

 

 

霊夢「そうね…魔理沙、気を付けなさい!」

 

 

レミリアは塔が崩れた事で現れた赤い月を背後に、翼を広げ深紅の瞳をギラつかせる。

そして、不気味な笑みを浮かべていた…。

 

 

レミリア「見える……運命が見える……ハッキリとね…。貴方達二人は私に敗れ、無様に地面に這いつくばるという結果が見えるわ………楽しみね。すぐに…そうしてあげるわよッ!!」

 

 

レミリアはさらに凄まじ圧を周囲に放つ。

紅魔館周辺の生物は全て、レミリアを恐れ遠くへと逃げ散っていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺のキング・クリムゾンのエピタフで見た十数秒先の未来では…お前が下だ…ッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「ッ!!?」

 

 

突如背後から声が聞こえ、レミリアはすぐさま振り向く。

……そこには、深紅の体に白い網目模様の入った恐ろしさを感じさせる、亜人のような者がいた。

 

 

ボギィッ!!

 

 

そしてその亜人はレミリアが振り向くと同時に、レミリアの脳天に拳を振り下ろし、レミリアを地面へと叩きつけた。

 

 

ドゴオッ…!!

 

 

 

レミリア「カハッ…!?(……何故?背後に立たれていたのに……気づけなかった……!?)」

 

 

地面へと倒れ込んでいるレミリアは、思考を回転させながら立ち上がろうとするも、頭へのダメージが思ったより大きかったらしく、もう少し再生が進むまでは動けそうになかった。

 

 

 

魔理沙「な…何だぜ!?いきなりなんだ!?」

 

 

霊夢「……………追いついて来たわけね……」

 

 

霊夢が睨む先にいるのはレミリアを叩き落とした亜人…。

そして、その空中に佇む亜人の背後から現れたのは他でもない…空条譲信だった。

 

 

 

譲信「キング・クリムゾン…約5秒程度、時を消し飛ばした。そして未来を予知し、確実なる一撃を叩き込ませて貰ったぜ…」

 

 

いつの間にか着替えを済ませていた譲信の服装は、第六部の空条承太郎の衣装だった。

 

 

魔理沙「譲信!?いつの間にそこにいたんだぜ!?気付かったんだぜ……」

 

 

霊夢「ハァ…まさかあんたまで参加する…とか言わないでしょうね?…流石に3対1は、今下で転がっているアイツが可哀想に思えてくるんだけど…?」

 

 

そう言って霊夢は地面に這いつくばっているレミリアを指差した。

譲信も霊夢の見る方向に合わせて、レミリアを見下ろす。

 

 

譲信「……なぁ、お二人さんよ。悪いんだが…数分だけあそこの嬢ちゃんを俺に貸してくれや……ちょいと野暮用が出来ちまっていてなぁ……どうしてもなんだよ…」

 

 

そう言いながら譲信は、レミリアの隣へと降り立った。

 

 

霊夢「はぁ?何言ってんのよ…?私はさっさと終わらせて帰りたいんだけど……?」

 

 

魔理沙「そうだぜ!!せっかく盛り上がってた所なのにわざわざ止める必要もないだろ?後にしてくれよ」

 

 

譲信はレミリアをキング・クリムゾンに持ち上げさせながら霊夢と魔理沙の方を見上げる。

そして、ゆっくりと口を開いた。

 

 

譲信「駄目だね…悪いが…断るッ!!」

 

 

言い終わると同時に、譲信はレミリアを館の中へ向かってキング・クリムゾンに投げさせる。

 

 

魔理沙「あぁー!?…………あれ?」

 

 

そして時を消し飛ばし、二人の目の前から何処かへと消えていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「くっ…………なんの真似だ……?お前は一体……何者だ…?」

 

 

時が消し飛ばされた後、レミリアは壁を突き破って紅魔館内のとある一室にまで移動しており、その目の前には譲信が立っていて、二人は視線をぶつけ合いながら対峙していた。

やがて、譲信は別のスタンドを出しながら妖しい笑みで口を開いた。

 

 

譲信「ちょっとこの空条譲信さんと遊ぼうか…?」

 

 

 

 

TO BE CONTINUE…………

 




スタンドパラメータ(譲信使用時)

ザ・ハンド

能力 右手で触れた物はなんであれ空間ごと削り取る一撃必殺の能力

パワー A
スピード B
成長性 E
持続力 A
精密動作性 C
射程距離 E


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⑮THE WONDER OF U~星が導く奇跡の愛~中編

最近、感想を貰えるようになって大変嬉しく思っております。
モチベーションが、希望とやる気が、ムンムン湧いてきております!!
相変わらず誤字が多いですが…(笑)温かい目で応援して貰えると幸いです!!(なるべく気を付ける!!)



 

レミリア『明日、私達は異変を起こすわ』

 

 

幻想郷を赤い霧が覆う前日の夜。

レミリアはフランに会いに、紅魔館地下の一室に訪れていた。

何年ぶりかの対面だというのに、顔を合わせて開口一番の言葉がそれだった。

…それでもフランは、久しぶりに姉に会いに来て貰えて、それだけで嬉しかったのだ。

例え、愛されてなかったとしてもフランは今だけは構いはしなかった。

 

 

フラン『お姉様!!』

 

 

側に駆け寄ろうとするフランを、レミリアは片手を前に出して“これ以上来るな”と制した。

 

 

レミリア『だからフラン。あなたは大人しくここにいて頂戴…絶対にここから外へは出て来ないで。…話は以上よ…それじゃ…』

 

 

そう言ってからレミリアは部屋を出て行こうとする。

フランは慌てた。

 

 

フラン『待って!?お姉様!?どうして!?異変を起こすならフランも手伝うよ!?ねぇ、待ってよお姉様!!』

 

 

すると、レミリアは動きを止めゆっくりとフランの方へ振り返る。

 

 

レミリア『駄目よ…あなたは駄目なのよフラン』

 

 

フラン『どうして!?どうしていつもフランだけ駄目なの!?』

 

 

大声でまくし立てるフランを、レミリアは少しだけキッ…!!と睨んで威圧してみせた。

 

 

レミリア『フランあなた…私がどうしてこんな事を言うのか…本気で分からないと言ってるの…?』

 

 

フラン『…………ッ』

 

 

分かっていた。

フランは分かっていたのだ。

自分の中に宿る狂気…実の両親を手にかけてしまった恐ろしい能力。

自分はそのどちらもコントロールする事が出来ない。

爆弾でも扱うかのような皆の自分への扱いをフランはよく理解していた。

 

…それでも認めたくはなかった。

だが、こうもハッキリと面と向かって言い切られてしまえばどうしようもない。

突きつけられた事実に、何も言い返す事も出来ずフランは黙って俯いた。

 

 

レミリア『……分かったら大人しくしてなさい…後で咲夜には食事を運ばせるわ……余計な事を言って咲夜を困らせないように…良いわね』

 

 

フラン『ま、待ってお姉様!!もう少しだけ…ガチャンッ!!……あ……』

 

 

フランが何かを言い終わる前に、レミリアは扉を閉めて出て行ってしまった…。

 

 

フラン『……………お姉様…』

 

 

取り残されたフランはそう呟きながら、クマの縫いぐるみを抱きしめる。

その縫いぐるみは、すぐに弾け飛び中身の綿やらが一面に飛びちった………。

 

 

 

 

 

 

 

フランの部屋から出て行ったレミリアは一人、静かに階段を上っていく。

 

 

レミリア(あの子は私を恨むんでしょうね……けれどフラン…これは全てあなたの為にやってる事なのよ…。幻想郷を支配すればようやく、あなたを…自由にさせてあげられる……フラン…待っていて頂戴)

 

 

レミリアは覚悟を決め、そして次の日に宣言通りに異変を起こした。

赤い霧で幻想郷を覆い、まずは自分達吸血鬼の弱点である日光を遮断しようと考えた。

だがその影響は予想よりも大きく、幻想郷の外の世界にまで及ぼうとさえしていた。

 

その為博麗の巫女、博麗霊夢が動くことになった。

しかしそうなる事くらいレミリアはちゃんと折り込み済みだった。

霊夢が一筋縄ではいかない敵になるであろう事も理解した上で、覚悟を決めてレミリアは異変を引き起こしていたのだ。

 

予想外だった事といえば、今まさに自分と1対1で対峙している全くのイレギュラーな存在がいた事だ。

特徴的な個性的な芸術的なネタ的なファッション。

そして、その男の側には守護霊のような何かがいる。

博麗の巫女は当然厄介だが、この男もまたそれと近いくらいに厄介な存在であると、レミリアは予感していた。

 

だが、だからといってここで引き下がる程レミリアの覚悟は安くない。

何が出て来ようが、全て倒すと決めたのだ。

ならば、どんな奴が出て来た所でやることは変わらない。

とても単純…戦って倒す!勝利して支配する!

レミリアが今求めるのはそれだけだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「ちょいとこの空条譲信と遊んでくれよ」

 

 

譲信は両手を上着のポケットに突っ込み、ニヤついて言葉を発した。

 

 

レミリア「生憎だけど、お前なんかと遊んでやる程…暇な時間は持て余してないのよ……忠告よ。死にたくなかったらそこを……どけ…」

 

 

レミリアは譲信に向けて、グングニルを構える。

断れば…殺す…と、レミリアの目はそう言っていた。

 

 

譲信「……レミリア・スカーレット……」

 

 

レミリア「!!」

 

 

譲信は呟くように言ったが、レミリアはその言葉を聞き逃さなかった。

 

 

譲信「まさか親玉が、見た目ロリな吸血鬼だったのは心底、驚いてるぜ…。スタンドも月までぶっ飛ぶ衝撃だよマジで…。ま!中身は何百年も生きてるオバハンなんだろ?ケケッ♪」

 

 

譲信は小バカにしたように笑った。

瞬間、レミリアからは恐ろしいくらいに殺気が溢れ出し、譲信の頬を高速の弾幕が一つ掠っていった…。

 

 

譲信「どれ…やる気にはなったか?見え透いた挑発だってのは分かっていても、何処ぞの主ともなりゃあ…聞き捨てにする訳にはいかねぇよなぁ~?いやぁ大変だねぇ当主を務めんのも一苦労ってやつだ」

 

 

レミリア「随分と舐めた口をきいてくれるわね…。お前が何者なのかはもうどうでもよくなった………今、私の気持ちは一つだけよ……」

 

 

譲信「………へぇ?……で、何だよ?」

 

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドドドド…

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「殺す…蹂躙よ…!!」

 

 

譲信「…………グッド♪OK…OPEN THE GAME!!」

 

 

レミリアと譲信は、ほぼ同じタイミングで同じスピードで互いに駆けだした。

そして1秒もせずに、互いに近接攻撃の射程距離内に入る。

 

 

ザンッ!!

 

 

レミリアは槍の一突きを、譲信はスタンドの手刀を上手い具合に振り下ろして、槍の軌道を逸らす。

そして、譲信自らパンチを一発繰り出すもレミリアの片手に受け止められてしまう。

 

 

譲信(ふぅ…コイツの能力…攻撃パターン…弾幕の種類…そして各弾幕の特徴…大体の情報は頭に叩き込んであるからやりやすいが……やっぱメンドクセーなぁ…けどまぁ、やるしかねぇか)

 

 

 

ギリギリギリ……

 

 

 

互いに力を込めることで、軋む音が聞こえてくる。

 

 

レミリア「チッ……言うだけあって実力はそれなりにあるようね…!!」

 

 

譲信「やれやれ…そりゃ今の俺は本気ではないが手加減もしてねーからな。時間も少ねぇからいつものお約束…お遊びのサービス時間は今回は端折らせて貰うぜ…」

 

 

譲信は空いていたもう一つの腕で、レミリアに向かって拳を突き出す。

敏感にその動きを察知したレミリアはすぐさま、後方へと下がり、譲信に向けて無数の弾幕を放った。

 

 

ゴォッ…!!

 

 

譲信「ほう…これはまた綺麗なモンだな!…でも見蕩れてたら俺が怪我しちまうんだよなぁ~…綺麗なバラには棘があるとか言うやつだぜ…!!」

 

 

譲信は迫る弾幕に対し、呑気に構えていた。

弾幕が近付くと譲信は左腕にブロックのようなものを出現させる。

 

 

レミリア「!!」

 

 

すると、譲信とレミリアの足元に何やら網目のような物が一瞬で張り巡らされた。

 

 

譲信「“チョコレート・ディスコ”!!…お楽しみの時間だぜ」

 

 

譲信は左腕についたブロックを操作して、組み合わせる。

すると譲信に迫っていたレミリアの弾幕は突如、レミリアの背後に瞬間移動した。

 

 

レミリア「何っ!?」

 

 

驚いたものの、レミリアはすぐに反応しグングニルで迫る弾幕を弾いたり、動き回って回避したりする。

 

 

レミリア(この網目…この能力は………奴のフィールド内にある物の位置を自由に瞬間移動させる能力か!?)

 

 

譲信「“チョコレート・ディスコ”…俺のエリア内にある物を自由に瞬間移動させる能力。それしか言わないぜ」

 

 

レミリア「それがどうした!!」

 

 

ならばとレミリアはグングニルを構え譲信に迫る。

遠距離攻撃が無駄になるなら近接攻撃で仕留めれば良いだけの事…レミリアにとっては別に迷う事の程でも無かったのだ。

 

 

譲信(…よし!)

 

 

だが、それこそが譲信の狙いだった。

スタンド能力は基本的に、射程距離という物が存在し、強いスタンドになればなるほど、射程距離は基本的に短くなる。

 

つまり、接近戦でないとあまり強みを生かせないのだ。

その点、チョコレート・ディスコは相手の遠距離攻撃封殺には持って来いの能力だった。

 

この方法なら相手は嫌でも近接戦闘に切り替えなければならなくなる。

そして、近接戦闘はまさに全てのスタンドを操れる譲信にとっての独壇場だったのだ。

 

 

レミリア「くらえっ!!スピア・ザ・グングニル!!

 

 

ゴウ…ッ

 

 

譲信「ザ・ハンド!!空間ごと削り取るぜ!!」

 

 

譲信は発現させていたもう一体のスタンド…ザ・ハンドの右手で迫るグングニルに振りかぶる。

 

 

ガオンッ!!

 

 

すると、グングニルの先端部分が綺麗に削り取られ何処かへと消えていってしまった。

 

 

レミリア「グ…グングニルがッ!?マズイ…!!近づきすぎた!!この距離は…!!」

 

 

レミリアは咄嗟に蹴りを繰り出す。

譲信は腕でしっかりガードしてその一撃を防いだが、その反動によってレミリアは再び距離を取られてしまった。

しかし、譲信は焦ることは無い。

 

 

譲信「逃がす訳にはいかんな!!ザ・ハンド!!

 

 

ガオンッ!!

 

 

譲信は再び空間を削り取った。

すると…

 

 

レミリア「…え?」

 

 

レミリアは突然、譲信の目の前に移動したのだ。

 

 

譲信「空間を削り取って瞬間移動!!そしてぇ…!!」

 

 

レミリア「ッ!!」

 

 

パシィィッ…!!

 

 

譲信はレミリアに向けてパンチを放つも、レミリアにその一撃を受け止められてしまい、更には腕を掴まれてしまった。

 

 

レミリア「ふ…!!吸血鬼の身体能力を舐めない事ね!!このままこの腕をへし折ってやろう…!!」

 

 

譲信「かかったなアホゥがッ!!“気化冷凍法”!!

 

 

パッキィィィーーーン………

 

 

譲信の腕をへし折ろうとしたレミリア。

しかし、譲信は即時に気化冷凍法によってレミリアの腕を逆に凍結させた。

 

 

レミリア「なっ!?しまった…!!」

 

 

譲信「貧弱貧弱ゥ…吸血鬼を舐めてたのはお前の方だったなぁ~間抜けがぁッ!!WRYYYYYYYYYYY!!」

 

 

譲信はザ・ハンドを引っ込め、すぐに別のスタンドを発現させる。

そのスタンドは…

 

 

譲信「世界(ザ・ワールド)”!!

 

 

世界(ザ・ワールド)「無駄ァッ!!」

 

 

バキィィッ!!

 

 

レミリア「くあっ!?」

 

 

世界(ザ・ワールド)”の拳の一撃をまともにくらって、レミリアは大きく後方へと吹っ飛ばされる。

 

 

ドゴォォーン……

 

 

そのまま部屋の壁を突き抜けて、隣の部屋へと吹き飛んでしまった。

 

 

レミリア「う……うぅー……」

 

 

どうやら“世界(ザ・ワールド)”のパンチが相当痛かったようで、レミリアは殴られた頭の部分を抑えてうずくまっていた。

 

 

譲信「ふぅ…やっぱりすげ~パワーだな。(もう少し抑えねぇとマズイか…)」

 

 

譲信は空いた壁の穴をまたいで通る。

 

 

レミリア「やって……くれたわね……!!殺してやる……!!」

 

 

グラッ……

 

 

レミリア「……は?」

 

 

立ち上がろうとしたレミリアだったが、足に力が入らず再び倒れ込んでしまう。

そしてすぐにレミリアに異変が襲いかかった。

 

 

レミリア「あ…足に力が入らない……!!ず…頭痛がする…は…吐き気も……!?バカな……この私が……たった一撃だけで…ここまで気分が悪いなんて………ッ!!」

 

 

譲信「へぇ?そりゃあ…なんとまぁお気の毒に。けどな、どうせ数秒もありゃあ治るんだろ?だから悪いがよ、俺は待ってやらねぇ事にしたぜ……」

 

 

レミリア「…………?」

 

 

瞬間に譲信はレミリアの視界からパッ…と消えた。

一瞬驚いたレミリアだったが、すぐに自身に大きな影が被さり、瞬間上を見上げる。

 

すると、いつの間にか天井に大きく穴が空いており、そこから何かが落下してきていた。

やがて、重力に従いそれは近付いて来ることによってハッキリと見えてきた。

レミリアは思わず目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「ロードローラーだッ!!」

 

 

驚愕!!

なんと譲信が時を止めて、レミリアに喰らわせようとしたのはロードローラーによるプレスだった。

 

 

レミリア「う…うぁぁぁぁッ!!」

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

ズシンッ……!!

 

 

ロードローラーがレミリアに落ちてくるも、レミリアはグングニルに力を流し込み、突き刺すことで上手く受け止めた。

だが何故か思ったようにロードローラーには深く突き刺さらなかった。

 

 

レミリア「ぐっ………何故壊れない…!?」

 

 

譲信「妖力的なアレを大量に流し込んで創造してあるからだ!!やれやれ…世界一頑丈なロードローラーをくらいなッ!!」

 

 

レミリア(はやく…脱出しなければ…!!)

 

 

レミリアは急いでロードローラーから這い出ようとするが、譲信は上からロードローラーを拳で叩き、さらに圧をかけることでその動きを制限させた。

 

 

譲信「もう遅いッ!!脱出不可能よッ!!」

 

 

レミリア「ぐっ…う……!!」

 

 

譲信はまたロードローラーに拳を叩き込み、遠慮無く圧を掛けていく。

レミリアもそうはさせまいと、凍結から力尽くで解放させたもう一つの手で、突き上げるようにパンチをロードローラーに叩き込んだ。

 

 

譲信「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

 

譲信は肘でラッシュをロードローラーに叩き込む。

相当頑丈なロードローラーも表面がどんどん変形し始めていた。

 

 

レミリア「舐めるなぁぁぁぁぁ!!はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」

 

 

レミリアも負けじとラッシュを叩き込む。

レミリアの方もロードローラーの表面が変形し始めていた。

 

 

譲信「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

 

ドコッドコッドコッドコッドコッドコッ!!

 

 

だがやはり上の方が圧倒的に有利で、レミリアの奮闘虚しくロードローラーはどんどん沈んでいく。

 

 

レミリア「ぐっ………うぅぅッ!!」

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYY!!ぶっ潰れよぉぉッ!!」

 

 

バゴォォン!!

 

 

譲信は強烈なパンチを最後に叩き込む。

レミリアも全力近い一撃を叩き込み、ロードローラーは上と下からの強烈な圧により、どんどん形が歪んでいく…。

 

部品が弾け、ヒビが入り、あちこちから軋む音が聞こえてくる。

そして…

 

 

譲信&レミリア「ッ!?

 

 

 

ドガァァァァァァン!!

 

 

 

ついにロードローラーは爆発し、凄まじい爆風が一面に吹き渡る。

強烈な爆炎は辺り一帯何もかもを飲み込んだ。

 

 

 

ゴゴゴォォォォ………

 

 

 

 

 

 

シュタッ………

 

 

 

僅かに服を焦がしながらも、大した怪我も無かった譲信は爆煙が立ちこめる中、静かに降り立った。

 

 

譲信(驚いたモンだぜ……俺が誰かの為にわざわざここまでやるなんて…思いもしなかった……。ちょっと前までの俺は…極力喧嘩は避けて、休日は引きこもって、ゲーム三昧な、どうしよーもねぇクソッタレなヤンキーで…オタクだった…)

 

 

そんな譲信の頭の中にこびり付いて離れなかったのは、あの時のフランの、本音を吐き出した時の泣き顔だった。

 

 

譲信(………やれやれだぜ。あそこで逃げ出して異変を解決した所で…胸糞悪ィだけだ…。俺は胸糞悪ィのは死んでも嫌なんだよ。……そうだな。今俺がこうして戦ってるのは…道化を演じてるのは…自分の為だ。格好いいと思える自分を演じる為…ただのそれだけだ。だから…俺は善人でもお人好しでもねぇ……決して、あの嬢ちゃんの為だとか…そんなんじゃあねぇんだ…。俺は人のために自分を傷つけてまで頑張れるような…そんな人間じゃあねぇ…。それだけは…認めねぇ…!!)

 

 

譲信(やれやれ……柄にもなく、くだらねぇ事を考えちまったなぁ俺。………でもなんか嫌だな。)

 

 

譲信(俺は…スタンド能力なんて持ってなかったら…果たしてここまで堂々としていられただろうか……?………結局能力のお陰で…。能力が無いと自分の胸すら張れねぇのかも……いや、確実にそうなってたな……。……くそっ!!嫌になってくるぜ!!)

 

 

譲信(……所詮、俺の使うスタンド能力も俺自身の力じゃあねぇ…。ただのパチもんだ。………だから素直に俺は喜べねぇのかもな。元の自分が…クソすぎてよぉ……!!)

 

 

譲信(だからこそ俺は…これは試練だと!!そう受け取った!!試練は克服して…必ず…俺の中の畜生な俺を殺すッ!!)

 

 

ゴウッ…!!

 

 

譲信「!!」

 

 

その時、譲信の目の前に突然グングニルが突きつけられた。

煙が晴れていくと、そこにはレミリアが所々、ボロボロになりながらも立っていた。

 

 

レミリア「ハァ…ハァ……流石に焦ったわよ…!」

 

 

譲信「おいおい…タフだなぁ…。流石にもう決着付いたとは思ったんだけどよぉ………」

 

 

レミリア「この程度でこの私がやられるとでも?多少はダメージを負ったけれど…でもただそれだけよ…!!」

 

 

それより…とレミリアは続ける。

 

 

レミリア「この距離で私の次の攻撃をお前は躱せるかしら?……無理ね。お前は今、追い詰められてしまっている」

 

 

譲信「はたしてそうかな?実は追い詰められてるのはお嬢ちゃん…お前の方かもしれねーぜ?」

 

 

譲信は笑みを浮かべながら、レミリアを軽く挑発した。

謎に溢れる譲信の自信が気に入らなかったレミリアは、譲信が言い終わると同時に、右の胸にグングニルを突き刺した!!

 

 

グサッ…!!

 

 

譲信「……っ!!……ゴフッ!?」

 

 

防ぐ間もなかった譲信はまともにその一突きを受け、わずかに吐血する。

 

 

レミリア「確かにお前には手を焼かされたが…その程度の実力者ならこの幻想郷にはいくらでもいる……そしてそのどれもがこのレミリア・スカーレットの足元には及ばない……所詮お前も半端者の一部に過ぎないというわけだ。お陰で余計な時間を食わされた…だから今度はこちらが楽しませて貰う番よ」

 

 

譲信「バ~カ♪依然として楽しいのは俺だけだ!!」

 

 

譲信はレミリアのグングニルを片手で掴んだ。

そして上着を引き裂くようにして脱ぐと、レミリアに向かって投げつける。

そのせいで、レミリアの視界は遮られてしまった。

 

 

譲信「どうだこの目眩ましはッ!!WRYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

チャンスとばかりに、譲信はレミリアに向かって手刀を振りかざした。

しかし

 

 

ボゴォォンッ!!

 

 

レミリアはグングニルの先に力を集中させ、譲信の上半身を粉々に吹き飛ばしてしまった。

 

 

レミリア「確かにそうね…。あまりにもくだらなさすぎて……全く楽しめなかったわ。お前の敗北はただ一つ。浮かれて身の丈に合わない事をしてしまった……それだけだ」

 

 

レミリアは自身に被さった上着を床に放り捨てると、静かに言い放った。

脳組織ごと吹き飛ばされてしまった譲信の体はもはや、再生する事はできない。

残った下半身だけが無惨にも横たわり、譲信は完全に死亡していた……。

 

 

レミリア「終わったわね。とんだ茶番だったわ……さて次は…あの巫女と魔法使いを倒して…私の勝利ね」

 

 

惨めな敗者になど何の興味もない。

レミリアはグングニルにこびり付いていた譲信の血を、一振りして払うと外に向かって歩き出す。

そこそこ体力は消耗したが、そこまで問題では無かった。

 

紅魔館の主、レミリア・スカーレットとの一戦。

空条譲信は敗北した。

そして、死亡したのだ…。

紫からの依頼、フランとの約束、外の世界で帰りを待つ家族。

何もかもを残して、譲信の命はつきた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズバァァッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………筈だった。

 

 

レミリア「え!?」

 

 

不意にレミリアはグングニルを持っていた右腕に激痛を感じ、そこへ目を向ける。

するとレミリアの右腕は肩の部分から先が無くなっており、切り離された右腕は血を吹き出しながら宙を舞っていた…。

 

 

レミリア「な…何故!?いきなり…!?」

 

 

 

 

 

 

譲信「Dirty deeds done dirt cheep(いともたやすく行われるえげつない行為)

 

 

混乱するレミリアの背後から静かに語りかけてきたのは、他ならぬさっきトドメを刺した筈の譲信だった。

 

 

レミリア「…………ッ!?」

 

 

驚いてレミリアが振り返ると、譲信はレミリアが投げ捨てた上着の下から這い出てきていた。

 

 

譲信「“D4C”…同じ場所に隣の世界を存在させられるスタンド能力だ。お前が今、トドメを刺した“俺”はさっきすり替わっておいた平行世界の俺だぜ」

 

 

レミリア「何を…言っている……!?」

 

 

いきなりスタンド能力だとか言われてもレミリアには、譲信が何を言っているのか、さっぱり理解できなかった。

 

 

譲信「理解しなくて結構。それより何だったか……そうそう!!俺最初に言ったよな?今回はお約束のお遊びのサービスタイムは無しだ…ってな」

 

 

譲信「だから俺はこれから遠慮なくお前に攻撃を仕掛ける…と、宣言させて貰う」

 

 

譲信は片手を失っているレミリアにゆっくりと近付いていく。

弾幕は無駄、片手を失った。グングニルも落とした。逃げ切れる筈もない。

レミリアは王手をかけられていた。

 

 

レミリア「……勝ち誇るのはまだ早いわよ……例え弾幕や武器が無くとも、吸血鬼は最強の存在なのよッ!!」

 

 

レミリアはそう叫ぶと、自身を奮い立たせて譲信に向かって迫っていく。

音すらも置き去りにしたかのような、圧倒的な速度で一気に距離を詰めた。

 

 

譲信「じゃあやっぱりお前の負けじゃねーか。あと数時間は俺もその吸血鬼なんだからよ」

 

 

譲信はレミリアの攻撃を、D4Cに全て捌かせていた。

打撃戦闘になるとやはりスタンドの方が圧倒的に有利なのだ。

 

 

譲信「魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)…これにて決着だ」

 

 

譲信は別のスタンドを発現させた。

 

 

レミリア(マ……ズイ………)

 

 

譲信「くらいなッ!!クロスファイヤーハリケーン!!

 

 

 

ボブシュゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

 

 

レミリアに灼熱の業火が遅いかかった!!

 

 

レミリア「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 

 

先程のロードローラーの爆発なんかと比べ物にならない程の衝撃がレミリアを襲った。

 

 

譲信「死にはしないから安心しな。隣の世界で練習済みだからよ」

 

 

 

 

 

強烈な一撃をくらってしまったレミリアは、大きな火傷を負い、ダメージが重く動けなくなっていた。

 

 

 

 

 

レミリア「あ………う……うぅー………あ……」

 

 

ようやく戦闘が終わり、譲信は軽くため息をついた。

 

 

譲信「やれやれ…まさか一日に“二人”も吸血鬼の相手をしなきゃあならんとは…くたびれたぜ」

 

 

レミリア「な………なん……だと……!?」

 

 

レミリアは譲信の放った言葉の中で、“二人”という部分を聞き逃しはしなかった。

 

 

レミリア「ど…ういう……事だ!?……まさか……フランと……あの子と戦ったと言うのか……!?」

 

 

譲信「聞こえてたのか?」

 

 

譲信は倒れて動けないでいるレミリアと目を合わした。

 

 

譲信「そうだぜ。中々におっかねぇ妹さんをお持ちじゃあねぇか。死ぬかと思ったぜ?実質死んだようなモンだがよぉ」

 

 

シャレにはならねぇシャレだとばかりに、譲信はニヤッと笑って答えた。

 

 

レミリア「あり…えない…!!あの子と戦ったのにどうして………無傷でここにいる!?……フランは……あの子を一体どうしたんだ!?」

 

 

フランと戦ったというのに、何故無傷でここまで再び上がってこれたのか…そして、あの狂気に取り憑かれたフランが何故姿を見せないのか…レミリアは疑問で仕方がなかった。

 

 

譲信「……ほう。意外にも妹さんが心配なのか?……で、それを聞いて何か得でもあるのか?」

 

 

レミリア「答えろッ!!私の妹に何をした!!」

 

 

その時、譲信の顔に突然影が差し、赤い瞳が不気味に光った。

レミリアは嫌な汗を掻き始めた。

とても嫌な予感がしていたのだ。

そして、譲信はゆっくりと口を開いた。

 

 

譲信「………さっき殺した。お前のせいだよ…お前のせいで…あいつがそれを望んだんだ」

 

 

レミリア「………………………え………?」

 

 

レミリアは譲信が言ったことをしばらく、理解できずにいた………

 

 

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 

 

 

 




番外編。
何か作ってみようかと思ってはいるのですが、これといって中々アイデアが出て来ませんね。
ジョジョらしい奇妙な短編ストーリーでも書こうかとは考えております。
閃き次第、投稿する予定です!!


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⑯THE WONDER OF U~星が導く奇跡の愛~後編

そろそろ異変も終わりを迎えます。


譲信「俺がさっき殺した」

 

 

 

レミリア「……………え?」

 

 

理解できなかった。

する訳にはいかなかった。

聞き間違いであって欲しかった。

この世でたった一人の血の繋がった妹。

レミリアは、フランの死を信じたくなかった。

 

 

レミリア「嘘よ…………嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ!!あの子がそう簡単に死ぬ訳がないっ!!」

 

 

しかし、譲信は取り乱すレミリアに向かって無情に言い放つ。

 

 

譲信「それがそんな訳あるんだよ。見ての通り俺はお前と戦って、結構スマートに勝てるぐらいの実力者だぜ?それにお前の妹自身、自ら死を望んだんだ…簡単に殺せたよ……」

 

 

レミリア「そ……そんなこと………そんなこと…!!」

 

 

これ以上何も聞きたくない…と耳を塞ぎたくてもレミリアには片腕しかないので、嫌でも譲信の声が聞こえてくる。

 

 

譲信「それもこれも全部お前のせいだぜ。お前が妹さんの心を限界まで追い詰めたんだ。そこんとこについては……心当たりあるんじゃあないのか?」

 

 

レミリア「……ッ!!」

 

 

心当たりは……ある。

レミリアの瞳から、涙が溢れ出した。

ずっと目をそらし続けていた事だった。

フランの為…フランの為…そう自分に言い聞かせても、心の何処かではいつも“自分の為”…という気持ちが一番強かった。

 

結局の所、レミリアはただフランの事が恐ろしかったのだ。

その恐怖が本来なら見える筈の物を見えなくさせ、しなくても良いような、苦しくて辛い思いをフランには500年近くさせてきてしまったのだ。

 

その間、レミリアは何もしてこなかった。

やっと行動を起こそうとしたのが、今回の異変だった。

何もしてこなかった…と言っても本当に何もしてなかった訳ではない。

しかし、ただ形だけの…何の成果も得られる筈も無いような…そんな明らかに的外れな努力など、何もしてなかったのと同等なのだ。

 

おまけに、レミリアにはその自覚があった。

あった上で、散々何もかもを後回しにした結果………手遅れになった。

もう、レミリアがどれだけ手を伸ばそうとも届かない所にフランはいる。

レミリアはこれまでの全てを、自身の全ての罪を、妹を失ってようやく…理解する事が出来た。

ようやく、真実と向き合うことが出来た。

 

 

譲信「図星だな。やれやれ…」

 

 

レミリア「………だからと言って……………」

 

 

レミリアが、何かを呟いた。

譲信はその僅かな声量を耳に捉えた。

 

 

譲信「………ん?」

 

 

レミリア「だからと言ってッ!!何故お前だ!!何故無関係なお前が……!!何故、フランをッ!!………なんで……なんで……そう簡単に……フランのことを……!!」

 

 

少なくとも、譲信が言う内容からだとフランの最後には狂気に取り憑かれた様子は無かった。

狂気さえ無ければフランは心の優しい子だ。

そんなフランを頼まれたからといって、そう簡単に殺せてしまうよな…譲信の行為をレミリアは理解できなかった。

 

その時、この男は何を考えていたのか…レミリアはそれだけは聞いておきたかったのだ。

今にもはち切れんばかりの怒りと、憎しみと、悲しみを、何とか抑えつけていた。

 

レミリアに訪ねられた譲信はゆっくりと、レミリアの方へと近付いていく。

そして淡々と語り出した。

 

 

 

譲信「………蚊っているよなぁ?鬱陶しく飛び回って…生き物の血を吸っていくだけしか能の無い虫ケラだ……」

 

 

レミリア「……………?」

 

 

譲信「あの虫ケラが側に寄ってきたとき、別に何もされてなくても、皆何も考えずに殺すだろ?」

 

 

レミリア「……お………お前ぇ………!?」

 

 

譲信の言っている言葉が、段々と分かってきた。

……レミリアの片腕が、わなわな…と震え出す。

 

 

譲信「ならば、同じく血を吸って空を飛び回るような…蚊と同類の吸血鬼の一匹殺す程度…わざわざ何かを考えてやる必要があるだろうか?おまけに頼まれたから殺すんだ………もはや何かを考える必要も無いだろ?」

 

 

譲信「ま、それでも最後には泣き喚いていたさ…全く……。夜の支配者だとか…高潔なる種族だとか…自称するくせに、それらの誇りもヘッタクレも無い……実に憐れでマヌケな最期だったぞ……お前もお前の妹も……己が試練に負けた…只の“負け犬”だ」

 

 

レミリア「ッ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

瞬間、レミリアの中で何かが爆発した。

動けなかったボロボロの体が、まるで自然に反応するかのように動き出し、レミリアの一瞬の意識が追いついた頃には、レミリアは譲信の横っ面に拳をめり込ませていた。

 

 

譲信「ぶぐっ!?」

 

 

ボッグォォォォォン!!

 

 

譲信の数本の歯が砕け散り、譲信は壁数十枚先の部屋まで吹き飛ばされてしまった。

レミリアの譲信を殴った腕は、限界越えの威力を出してしまった為、骨が折れてしまっていた。

 

 

レミリア「ハァー…ハァー…ハァー…ハァー………ッう………許さない………絶対にお前だけは許さないッ!!」

 

 

レミリアの千切れた片腕は、小さな数匹の蝙蝠に姿を変えるとレミリアの切断された腕の断面に集まり、再び腕を元の形に戻して再生させた。

 

折れた骨も瞬時に治し、アドレナリン全快の溢れ出す妖力で大気を震わせながら、譲信の吹き飛んだ部屋までズンズン進んでいく。

 

 

譲信「ゴッフ…………マジか………今のは見えなかったぞ……URYYY……痛みに強くなっててもこりゃあ…死ぬほど痛ぇなぁ…!!」

 

 

譲信はぐちゃぐちゃになった顎の部分を再生させながら、立ち上がる。

体中の骨もバキバキに折れてるらしく、吸血鬼の体中を持ってしても耐え難い激痛が走っていた。

少し体に力を入れるだけでも、吐血してしまう。

 

 

ズン……!!

 

 

 

譲信「ッ!?」

 

 

気が付くと、譲信の眼前にレミリアが立っていた。

グングニルを片手に恐ろしいほどの殺気が溢れかえっていた。

 

 

レミリア「確かに私はフランを苦しめてきた……しかし!!お前のようなクズに…我が妹の命を奪わる事だけは絶対に許されて良い筈がない!!……フランへのせめてもの…報いとして……お前を殺すッ!!」

 

 

譲信「三流が!!そういうのはな、行動が終わってから言うんだよ間抜けがッ!!…しかし、随分と勝手な物言いじゃあないか?今のテメーがあいつの事を…“妹”なんて呼び方をする資格はあんのかよ?エェ!?」

 

 

ドスッ!!

 

 

譲信「ぐぁっ!?」

 

 

譲信の喉に、レミリアのグングニルが突き刺さった。

 

 

レミリア「黙れ…!!そんな事は言われなくても分かっている…!!誰から見ても私は…あの子の姉は失格だ……それでも!!私はあの子の事を心から…世界中の誰よりも愛している!!失ってからしか気付けないような…こんな最低な姉でも…それだけは変わらぬ真実よっ!!」

 

 

譲信は、レミリアの言葉を青筋を浮かべながら聞いていた。

レミリアの言葉を聞いた譲信は怒り爆発寸前だった。

 

 

譲信「…………おい……」

 

 

レミリア「お前……喋るなと……ッ!!」

 

 

バギィィッ!!

 

 

グングニルを一閃して譲信の首を刎ねようとしたレミリアだったが、それよりも早く譲信は世界(ザ・ワールド)を発現させ、その驚異的な握力でグングニルの真ん中辺りをにぎりつぶした。

 

 

譲信「勝手な事言ってんじゃあねーぞアァッ!?愛してるだと!?真実だと!?たった一人の妹を傷つけた野郎がそんな綺麗な言葉使ってんじゃあねーよ!!今までにも後ろめたく思ってたなら何で“ごめんなさい”の一言くらい言えねーんだ!?何で妹にばかり責任押しつけて謝らせてんだ!?クソッタレ外道が!!それを今更になって綺麗なお言葉で誤魔化そうたって誰も納得しねーよボケッ!!阿呆なガキでも口ではなんとも言えるんだよ!!テメーは阿呆なガキなのか!?エェッ!?」

 

 

レミリア「………お前が……部外者が口を挟むな!!これは…赤の他人が出しゃばるなぁッ!!」

 

 

レミリアはグングニルを投げ捨てて、パンチを繰り出す。

ガードを取った譲信だが、それでも腕を吹っ飛ばされ腹を貫かれる。

それでも、勢いは止まらない。

 

 

譲信「その赤の他人にとやかく言われなきゃあ向き合えなかった間抜けが、一丁前なセリフ使ってんじゃあねーぜ!!レミリア・スカーレット!!テメーが今すべきは言葉のお飾りじゃあねーだろ!!テメーの言う愛ってのが本当に真実なら…行動で示せ!!…俺の“星の白金(スタープラチナ)”に勝ってみろや!!」

 

 

言うなり、譲信は“星の白金(スタープラチナ)”を出してレミリアにパンチを放つ。

 

 

スタプラ「オラッ!!」

 

 

バキィッ!!

 

 

レミリア「くぁッ!?」

 

 

レミリアはガードの上からでも重い一撃により、数メートル飛ばされるが、何とか踏みとどまった。

今ので、確実にスタープラチナとやらは自分より高いパワーとスピードを持っている……そうレミリアは分かっていても依然、その目には闘志が宿っていた。

 

 

レミリア「言われなくても…お前はこの私の手で絶対に殺す!!お前がどう足搔こうともその運命だけはこのレミリア・スカーレットが変えさせない!!」

 

 

レミリアは再びグングニルを構えると、限界をとっくに越えている体からでは信じられない程のスピードで譲信に迫る。

 

 

譲信「良い覇気じゃあねぇか………かかって来な!!

 

 

譲信もスタープラチナを構え、レミリアに迫る!!

 

 

レミリア「貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

譲信&スタプラ「オラァァァッ!!」

 

 

スタープラチナの拳と、グングニルがぶつかり合う。

凄まじいパワー同士のぶつかり合いに、大気はビリビリと震えて止まない。

 

 

レミリア「負けるかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

レミリアは更に、力を限界まで込める。

譲信の腕の骨がへし折れるか、レミリアのグングニルがへし折れるか…それが勝敗の分かれ目だった…。

そして、数秒もしない内に決着が着いた…。

 

 

 

 

バッキィィィ…ンッ!!

 

 

 

 

勝ったのは…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「悲しいかな……足搔いても足搔いても能力には限界があり…一時の感情じゃあ壁は越えられねぇ…そーいうドラマは漫画だけだぜ………」

 

 

 

レミリア「う…………ぐっ………!!」

 

 

 

折れたのは…レミリアのグングニルだった。

レミリアは、埋まらなかったスタープラチナとの圧倒的なパワーの差に、生まれて始めて屈辱で涙を見せ、奥歯を噛み締めた。

 

 

 

譲信「それでも現実は糞じゃあねぇ…本物の覚悟ってのは…必ずそれらを越えた先に道を照らし出してくれる…レミリア…テメーの覚悟は……本物だった…!!」

 

 

だが…!!と、譲信はレミリアの眼前にまで一気に踏み込む。

 

 

 

レミリア「ッ!?」

 

 

 

譲信「勝負は勝負…そこはキッチリしなきゃあならねぇな……!!」

 

 

 

 

 

譲信&スタプラ「オラオラオラオラオラッ!!」

 

 

譲信はレミリアに向けて、スタープラチナのラッシュを叩き込もうとした!!

 

……しかし!!その時だった…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???待って!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、二人の間に何者かがレミリアを庇うように割って入ったのだ。

その者の姿を見てレミリアは目を丸くして固まり、譲信は少し呆気に取られてから…優しく微笑んだ。

 

 

 

 

譲信「やれやれ…………もう充分…伝わってるみてぇだな……………フラン!!」

 

 

 

そこへ現れたのは、譲信が殺したと言ってた筈のフランドール・スカーレットだった!!

 

 

 

レミリア「フ……フラン………!?フランなの…!?何が………どうなって……!?」

 

 

 

驚きでアワアワ…としているレミリアにフランは振り返る。

 

 

 

フラン「お姉様………ご免なさい……騙してしまって……フランね、お姉様の事が信じられなくて…だからこの人の提案でお姉様を試すような事してしまって………こんなに酷い怪我を負わせるような事をしてしまって………本当にごめ……!!」

 

 

 

謝ろうとしたフランだったが、レミリアは咄嗟にそんなフランを抱きしめた。

 

 

 

 

フラン「え?……お姉様!?」

 

 

 

レミリア「謝るのは私の方よ……!!今更…許して貰えるなんて思ってない……けど…フラン!…今まで…本当に…本当に………独り苦しい思いをさせて…ごめんなさい!!」

 

 

 

フラン「そ…そんなことないよ!!フランが…フランが悪い子だったから…だからお姉様は何も悪くない…!!悪くないもん!!」

 

 

 

レミリア「違うわフラン…!!私よ…あなたと向き合おうとしなかった私が……!!」

 

 

 

レミリアとフランは、大粒の涙を互いにこぼし合いながら、抱きしめ合った。

数百年もつもりに積もった想いとすれ違いは…この瞬間、ようやく…本当にようやく…解かれたのだ。

 

レミリアもフランも二人の今の姿を見た者は吸血鬼なんて思えないほど、子供のように泣いていた。

喜び、悲しみ、…複雑な感情の中一つだけ確実だったのは、確かに分かり合えた…という事だった。

 

 

 

そんな二人の様子を少し離れた場所に腰を降ろしながら譲信は、優しく微笑みながら眺めていた。

傷はなんとか治癒でき、色々とボロボロだったが今だけはそんな事…微塵も気にしてなんていなかったのだ。

 

 

 

譲信「やれやれ……“愛”だな。なんて素晴らしい姉妹愛なんだろぉなぁ…………ハハ…(一時は感情任せでどうなるかと思ったが……なんとかなって良かった良かった……本当に…良かったな…フラン…!!)」

 

 

譲信は煙草を吸おうと胸ポケットから箱を取り出すが、自身の血のせいで湿気っており、使い物にはならなかった。

譲信は軽くため息をついて、へっ…!と笑ってから再び箱を胸ポケットに戻した。

 

 

譲信(愛…………か。)

 

 

そして再びレミリアとフランを見た事で、譲信の脳裏にある光景が突如浮かんできた。

 

 

 

(譲信回想)

 

 

『おい…お前……いつになったら譲信に本当の事を話すんだ?もう譲信は15だぞ?来年は高校生だ…いい加減伝えるべきじゃないか?』

 

 

『そうね…分かっているわ。……でも、やっぱりあの子をいざ前にすると…どうしても言い出せなくって……あの子の笑顔が消えるかもしれないのが……怖いの……』

 

 

二人が1階の居間で父と母が何やら話し合っている。

水を取りに2階から降りてきた譲信だったが、いつもと雰囲気が違う二人の会話に、思わず階段で立ち止まり聴き耳を立てていた。

 

 

譲信(なんの話だぁ……?まさか……小遣い減らされるとかじゃあないっスよねぇ……!?)

 

 

 

父『何を言ってるんだ…あの時二人で決めたじゃないか…!譲信が高校生になってから真実を語ろうって……!』

 

 

母『分かってる…!けど、けど…言い出しづらいじゃない……私達が…あの子の“本当の親”じゃないなんて…!』

 

 

 

 

譲信(…………)

 

 

あぁ…そのことかよ……と譲信は階段で座り込んだ。

 

 

 

譲信(無理すんなよな…ったく。……んなこたぁ保育所ん頃に知ったってんだよ………)

 

 

 

譲信はたまたま偶然、親戚の集まりの時に祖父と父が立ち話してるのを聞いていてしまっていた。

 

なんでも、譲信の実の父親は譲信の生まれる前に他界…母親はギャンブル依存症で譲信の面倒なんて全く見ておらず、譲信の世話をしていたのはいつも、当時14才の姉だった。

 

譲信が3才になる頃に、母親は急性アルコール中毒で死亡。

それから姉は祖父と祖母の家へ預けられ、譲信の面倒までは見きれなかった祖父と祖母は、最初は断ろうとしてた家へ謝礼1000万と共に譲信をその家の養子にさせたのだ。

 

それが今、譲信が住んでいるこの家だった。

最初は両親とも、1000万の為に仕方なく面倒を見てるだけだったが、小学校高学年になってようやく義母は実の母親のように愛してくれるようになった。

 

結局、義父は未だに愛してくれてなんていないがそれでも、色々な物は買ってくれたりするし、学費も払ってくれる為、譲信は気付いてないフリをして生きていた。

 

真実を知ったその時は、譲信は戸惑い、傷つき、自殺さえしようと考えていた。

流石に思い止まりはしたものの、しばらくの人生は何もかもがつまらなく、ただ空っぽの笑顔を振りまくだけの機械だった。

 

……そんな時に出会ったのが“ジョジョの奇妙な冒険”だった。

自分と同じ“空条”という名の主人公が、どんな敵があいてでも、たくましく道を切り開く姿……そして、いくつもの心に残る“言葉達”に衝撃を受け、同時に真っ暗だった人生に僅かな光が差し込むのを感じた。

 

……譲信は不良のままではあったが、オタクというステータスが追加されてからは、大人しくなった。

以前の譲信は荒れにあれていた。

町のちょっとした裏世界では、知らぬ者がいない程のヤバイ不良だった。

だが!!

ジョジョに出会えたお陰で譲信は今の譲信である事が出来たのだ。

 

皆のように愛や優しさは注がれた事の無かった譲信だったが、ジョジョから大切な事を全て学び、人の痛みを人一倍理解できる心を持つことが出来た。

言わば、譲信にとってジョジョとは、親代わり…の一部みたいな物だったのだ。

 

 

だから、譲信は少しだけレミリアとフランが羨ましく見えた。

自分にも姉はいたが、あまり大事にされていたようには思えなかった。

だから、血の繋がってる存在一人にでも愛されている者は羨ましくて仕方なく、どれ程満たされる物だろうか…と興味もあった。

 

 

だがそれは叶わない夢。

無駄じゃあないか…と譲信は珍しく過去を思い出していた自分を嘲笑うかのように首をふった。

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「………お?」

 

 

ふと気が付けば、譲信の前にフランとフランに支えられてレミリアが立っていた。

まさか二人がかりで攻撃してくる系じゃないか?……と譲信は少しだけ身構えた。

が、そんな心配は杞憂に終わった。

 

 

 

フラン「あの………ありがとう………!!フランのお願い……叶えてくれて………」

 

 

 

レミリア「…………気に食わないけど………感謝するわ……事実…あなたのお陰で……フランとこうして分かり合える事ができた…………有り難う……」

 

 

 

譲信は礼を言った二人を見て、また優しく微笑んだ。

 

 

 

 

譲信「別に俺はなんもしちゃいねーよ。ただ暴れ回ってただけだぜ?……ま、そんでも感謝してくれるってんだから…素直に受け取らせて貰うぜ!それと……レミリア」

 

 

 

レミリア「何よ……?」

 

 

 

譲信はレミリアの額にそっと触れた。

 

 

 

 

 

譲信「“クレイジーダイヤモンド”

 

 

 

レミリア「!!?」

 

 

 

譲信がそう呟くと、レミリアの体中の傷はすぐに塞がり回復した。

 

 

 

譲信「ここに来て数回思ったが、女の子をボコるってのはマジで罪悪感がぱねぇんだわ……その、ごめんな?…でさ、出来ればもうあんまし悪さしないでくれねーか?流石にもう戦いたくねーぜ…俺の心がもたねぇ」

 

 

 

レミリア「言われなくてもそのつもりよ。今回異変を起こしたのはフランの為だった…。けど、それはもう必要無くなったわ…だから心配しないで頂戴」

 

 

フラン「大丈夫だよ!フランももう大丈夫!!」

 

 

レミリアはそっぽ向いて、フランはニパッ!と笑って答えた。

こりゃあ姉妹で対照的かね…と譲信は思いつつ笑った。

 

 

譲信「そっか…そいつは良かった。やれやれ…どうやらお節介を焼いた価値はあったぜ!」

 

 

譲信はそう言って二人の頭をポンポン…する。

フランは嬉しそうに、レミリアは不服そうだったが、特に嫌がる事もなかった。

 

 

譲信「さて!!万事解決した所で!!最後の一仕事だぜ!!」

 

 

 

譲信は空いた壁の穴の先を指差した。

 

 

 

譲信「お外で待ってる巫女と魔法使いとの決着がまだだろ?よく分からんが、とりあえず幻想郷じゃあ異変を起こした奴ぁ巫女さんとドンパチやり合やぁ良いらしいな?……てことで……だ。ほれほれ行ってきな!!」

 

 

譲信はレミリアの背中を軽く押した。

 

 

レミリア「そうだったわね……フ……。じゃあ軽く捻り潰してくるわ…」

 

 

フラン「ま…待って!!」

 

 

外で待つ霊夢と魔理沙の元へと向かおうとするレミリアを、フランが止めた。

 

 

フラン「お姉様……フランも…フランもお姉様と一緒に戦いたい!!」

 

 

力強い目で、フランはそう叫んだ。

 

 

譲信「…………と、御自慢の妹さんは言ってるが?」

 

 

 

 

少し不安そうなフラン。

そんなフランを見てレミリアは、フフ…と笑って答えた。

 

 

レミリア「えぇ。一緒に生きましょうフラン!!私達が揃えば敵なしよ!!」

 

 

フラン「お姉様!!」

 

 

 

 

 

譲信「やれやれ…こりゃあ二人には悪いことしたなぁ~…敵戦力アップしちまったぜ…おまけにボスを回復までさせちまった……へへへ♪…紫さんにバレたら説教されちまうかもな~」

 

 

 

フラン「……え?……怒られちゃうの……?」

 

 

 

そんな譲信の呟きを聞いて、フランは心配そうに譲信の方を見る。

そんなフランに対し、譲信は笑って答えた。

 

 

 

譲信「な~に問題ねーって!!フランは姉ちゃんと一緒に心ゆくまで暴れてきな!!俺は俺で言い訳通るぐらいの働きはしとくからよ!!」

 

 

 

フラン「うん♪」

 

 

レミリア「行くわよっフラン!」

 

 

フラン「は~い!!お姉様!!」

 

 

レミリアとフランは共に飛び上がり、外へと向かう。

その後をゆっくりと譲信も付いていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「出て来たわね………」

 

 

魔理沙「お~?ようやくかぁ…!!まぁまぁ待たされたんだぜ………て、あれ?増えてる?」

 

 

霊夢「…………あの譲信……何してくれてんのよ…敵が増えてるじゃない………」

 

 

 

 

霊夢と魔理沙の元まで、館から出て来たレミリアとフランは浮かび上がった。

 

 

 

 

レミリア「改めて名乗らせて貰うわ……紅魔館当主…レミリア・スカーレット…」

 

 

フラン「私はお姉様の妹のフランドール・スカーレットだよ!!」

 

 

レミリアとフランは赤い目をギラリ…と光らせて、それぞれの手に武器を出す。

レミリアのグングニル。

フランのレーヴァティン。

二人は妖しく微笑みながら、武器を構えた。

 

 

 

レミリア「私達の力の前にひれ伏すが良いッ!!」

 

 

フラン「絶対に負けないんだからね!!」

 

 

 

 

 

霊夢「上等よ!!二人纏めて仲良くピチュッてあげるわよ!!」

 

 

魔理沙「面白くなってきたぜ!!」

 

 

レミリアとフランチーム。

そして霊夢と魔理沙チームの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを下から眺める者が数名いた。

 

 

???「あ…あれは……妹様!?何故お外に…!?」

 

 

美鈴「…おや?咲夜さんもやられちゃったんですね!」

 

 

咲夜「美鈴…私の時よりかは優しい敵に相手して貰ったようね?」

 

 

美鈴「アハハ…やっぱり分かりますか~…。初めてですよー…本気出したのに気遣われるなんて…」

 

 

???「あんた達なんかまだマシな方よ……」

 

 

美鈴「え!?パチュリー様!?ここまで出てくるなんて珍しいですね?」

 

 

パチェ「フランとレミィの気配を感じてね…何事かと思って出てみたら……一体どうなってるのよ?」

 

 

咲夜「私めも今さっきここに来たばかりでして…何とも…」

 

 

霊夢、魔理沙、譲信。

各侵入者と戦った紅魔館メンバーが最後の戦いを見届けに集結していた。

いずれも相当な実力者達だった。

 

 

 

 

譲信「…それについては俺がお節介を焼いたせいだな」

 

 

 

美鈴、咲夜、パチェ「!?」

 

 

そんな三人にようやくこの場においついた譲信が呑気に話し掛けた。

 

 

美鈴「じょ、譲信さん!?」

 

 

咲夜「美鈴と戦ったのは…コイツね」 

 

 

パチュリー「最後の侵入者ね…」

 

 

三人それぞれ、違った反応を見せた。

 

 

譲信「さーて…俺の場合はツレが…あんたらの場合は親分達が戦ってるから…ボーッとしてるのは何とまぁ…後ろめたくはないかぁ?」

 

 

譲信「ま、答えはどーでも良いわ。諸事情により俺は戦わないと後が無くてなぁ…」

 

 

譲信が構えると、美鈴、咲夜、パチュリーもそれぞれ戦闘態勢に入った。

これ以上暴れられたら迷惑だと、譲信がその気なら三人で同時に叩き潰す気でいた。

しかし、譲信は逆に嬉しそうに叫ぶのだった…。

 

 

 

譲信「……良いぜ!!今夜はお祭りだ!!3人纏めてかかって来なッ!!遊ぼーぜ!!」

 

 

 

それぞれの最終決戦が始まった。

 

 

TO BE CONTINUE…………

 

 




次回で異変は終わるのかな?
多分終わります。


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⑰霧は晴れ新しい夜明けが来る

ジョジョウエハース。
これは買わざるを得ない!!
と、いうことで今週末は箱買い決定ですな!!



なんだかんだあって、バタバタしたが、俺は無事にベリッシモ・ハードな状況を乗り越える事が出来たぜ。

しかし、まだ異変は終わっちゃあいねぇんだな。

スカーレット姉妹ちゃん達にお節介焼いて、仲直りさせてもまだ俺には仕事が残ってるんだよ。

と、いうよりは元々しなくっちゃあいけない仕事…だったんだがな。

 

やれやれだぜ……出来る男は忙しいもんだ。

とはいえ、今までの出来事に比べたら多分お茶の子さいさいな楽な仕事って訳よ!!

むしろ、一暴れしてスッキリするかー!!……てな気分でもいる訳だ。

…………うん。

言われなくても分かってるぜ………確実にテンションがイカれて来てるな俺ェ……。

 

だが、やるしかない!!

じゃないと紫さんや霊夢に何されるか知れたモンじゃあない。

それだけは何としても阻止しなくっちゃあな……。

あぁ恐ろしい恐ろしい…。

女ってのはいつの時代で何処の世界でもトコトン恐ろしい生き物だぜぇ………。

 

………てな心情で俺は今、紅魔館の戦闘員さん3名と対峙してる訳だ。

読者の諸君、そして賢明なる我が同胞…ジョジョラーの皆様よ……頼むから同情して欲しい。

贅沢を言うなら助けてちょ。

もーいやだ!!

もーたくさんだぞ!?

 

確かに、俺ァスタンド能力が使えた事に調子に乗ったせいで、こんなおっかねぇー世界で過ごすことになってる訳だ。

しかしだな、なんでこうも揉め事の最先端って場所でバケモン達を相手にしなきゃあならねぇ?

な~んで俺の依頼主がこの世界の賢者やってる妖怪さんなんだぁ?

 

しかも断れねー理由をご丁寧に貼り付けられて駆り出されて……普通に考えりゃあ死んでるようなダメージも負いながら…ヒーローの真似事をするよーな事になっちまって……。

あぁ文句を上げりゃあキリがねぇな!!

あぁ…今日はもう帰ってラスサバやりてぇー……。

八雲さん達に没収されたんだっけ……ハハハ…オタク殺しめ………。

 

…………てな訳で申し訳ないがこの不満全て、今から戦う3名にぶつけさせて頂きます。

何の恨みもないが…仕方ねぇ。

今夜もグッスリスリスリと熟睡できるように…ストレス発散じゃーッ!!

 

 

 

さぁて読者の諸君、そして賢明なる我が同胞…ジョジョラーの皆様よ、諸君らはこのような小説を読んでてたまに、こう思った事はないか?

主人公無双だとか、最強だとか、チートだとか、書いてる割には、ボロボロに苦戦するし勝てない敵もいるじゃあねーか!!………てな。

一度は思っただろ?

そして中にはスッキリできない……後味が悪い……て思うジョジョラーの英雄達もいた筈だ……。

 

我が同胞達が悔しさに涙を流し、歯を食いしばったかと思うと…俺も自然と悲しくって…ついつい俯いてしまうぜ……。

 

だが…安心しろッ!!

この空条譲信がやると言ったからには…今夜は真の無双ってやつを見せてやるぜ!!

基本俺は手を抜いてわざわざ苦戦する…“更木剣八スタイル”だが…今みたいにストレスが溜まった時は別だ!!

俺の中で手加減という慈悲は完全に消え去るんだぜ…!!

 

そして、その精神力はスタンドパワーを大きく高めてくれるッ!!

何より俺は今は、吸血鬼なんだ……むしろ無双しなきゃあおかしいだろ?

……と、いうわけだ。長くなったが俺のちょいとした語りは以上だぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「さぁ…という訳で!あなた方3人には今から、この空条譲信の殺人未遂とストレスを溜めた…そして異変なんて起こして多くの人に迷惑を掛けた…という容疑により、地獄を見て貰おうと思います。覚悟の準備をしておいてください」

 

 

美鈴「え!?殺人未遂!?いやいやいや…私は別にそこまで………ただ無力化しようとしただけでして……」

 

 

パチェ「……あなたに会うのは初めてなんだけど……?」

 

 

咲夜「私も同じくこれで初対面です…」

 

 

しかし、譲信はキッパリと言い放った。

 

 

譲信「連帯責任です。お二方、恨むなら紅美鈴さんを恨んでください。俺は彼女に殺されかけました」

 

 

美鈴「えぇーーー!?」

 

 

パチュリーと咲夜の二人は、なんというか…冷めた目で美鈴の事を見ていた。

 

 

パチェ「美鈴…………」

 

 

咲夜「美鈴……後で覚悟してなさい…………」

 

 

美鈴「さ、咲夜さん!?そ……そんなぁ………パチュリー様まで…………うぅ………酷いですよぉ……」

 

 

後で咲夜にお仕置きされる事が確定し、美鈴は明らかに気を落としていた。

なによりショックだったのが、パチュリーにまで冷めた眼差しで見られてしまった事だったのだが…。

 

しかし状況が状況。

流石は門番をしているだけあって、すぐに美鈴は気を引き締め直し、譲信に対して戦闘の態勢に入る。

 

続くパチュリー、咲夜の二人も同じく戦闘態勢に入った。

みな先の戦いでのダメージはそれなりにあるものの、ギリギリ動かせる範囲で体を何とか行使していた。

 

 

譲信「さて…と。おっ始めるとしようか~……これが最後の戦いだぜ!!」

 

 

譲信は気合をたっぷりと入れ、声を張り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜「美鈴、パチュリー様。ここは私一人で充分です。すぐに終わらせますので、下がっていてください。」

 

 

まず最初に前に出たのはナイフを構えた咲夜だった。

パチュリーは静かに、美鈴は何か言いたげだったが、抑えて後ろへ下がった。

 

 

譲信「まずはテメーからだな。確か館の入ってすぐの場所で寝てたお方じゃあないか。……成る程ねぇ~この3人の中じゃ一番体力は回復できてそうだな……寝てたしな!」

 

 

咲夜「随分と御大層な口をきいてくれるわね………何様のつもりでいるのかしら?」

 

 

譲信「アーン?決まってるだろ?無理難題や不可能を可能にするのが趣味な空条譲信様だ!!そーいうテメーは何モンよ?」

 

 

咲夜「……紅魔館メイド長…十六夜 咲夜よ。貴方を倒す者の名だからよく覚えておきなさい」

 

 

譲信「ふうん……咲夜……ね。まーた女をシバかなきゃあならねぇのはなんか腹が立つが…相手にとって不足はね~ぽいなぁ!!」

 

 

咲夜「この私に対して女だからと思って手を抜くと…痛い目を見るだけじゃ済みませんよ?」

 

 

譲信「じゃあさっさと掛かって来いッ!!リクエスト通り手は抜いてやらねーからよ!!」

 

 

咲夜「へぇ?…フフッ……では遠慮なく……」

 

 

幻世『ザ・ワールド』!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜の世界………世界の時は停止した…。

空で戦っているレミリア、フラン、霊夢、魔理沙、地上で対峙する美鈴、パチュリー、皆の全ての動きは止まっている。

…その中を自由に動けるのはただ一人。

 

 

咲夜「これが私の能力…“時間と空間を操る程度”の能力よ……尤も、時間の止まっている貴方にいくら説明した所で…見ることも聞くことも…ましてや何かを感じることさえ出来ないその状態では…何を言っても無駄な事だったわね」

 

 

咲夜は譲信の傍まで、ゆっくりと近付いていく。

 

 

咲夜「いつもなら…少し遊んであげれるけれど、残念ながらこれ以上暴れられると紅魔館の修繕費用がバカにならないのよ。だから悪いけれど…死なない程度に不可避の攻撃を仕掛けさせて貰うわ……」

 

 

幻符『殺人ドール』!!

 

 

譲信の周りに大量のナイフが空中にばら撒かれた。

至近距離での発動により、当たるか当たらないかのギリギリの位置でピタリと止まる。

 

 

咲夜「ふぅ……。少し可哀想だけれど…これで大人しくして頂戴……。“そして時は動き出す…”

 

 

 

 

 

ドォーーーーーーーン!!

 

 

 

 

 

 

咲夜「……………………………?」

 

 

………咲夜は能力を解除した。

それは確かな事だ。

いくら酒に酔っていたとしても、失敗する事なんて事はまず有り得ない。

能力を解除してしまえば、必ず世界の時は正常に、元通りに動き出すのだ。

 

 

 

…………それがどうだろう。

咲夜が能力を絶対になんの狂いも無く解除したはずの今、相変わらず世界の時は止まったままだった。

 

 

咲夜「……ッ!?時が動き出さない!?どうなって……と、取り敢えず……もう一度……!!」

 

 

いきなり壊れて動かなくなったテレビを治す為に、ひたすらテレビのあちこちを叩く時に近い心情で咲夜は、もう一度能力の発動…解除をしようとした。

その時…

 

 

 

譲信「これが“世界(ザ・ワールド)”!!」

 

 

咲夜「!?」ビクゥッ!!

 

 

信じられない…!!といった目で咲夜は、止まった時の中で確かに声を発した譲信の方を振り返った。

しかし、現実は止まった時の中を動けるのは咲夜一人だけでは無かったのだ。

 

譲信は隣には、黄金の筋肉ボディをしたパワーを感じさせる人型の何か…が佇んでおり、ソイツは譲信の周りに散らばっていたナイフを全て拳で、軽く弾き飛ばしていた。

 

 

咲夜「まさか………まさか……!!」

 

 

譲信「そう…俺が時を止めた。所謂、時止め返し……だぜ」

 

 

今度は譲信が、ゆっくりと咲夜の方へと歩み寄る。

 

 

譲信「やれやれ…テメーら3人の中に、“時止め”が出来る奴がいると予測して世界(ザ・ワールド)を密かに出しておいて正解だったな。……しかし驚いたぜ。技名が同じ“ザ・ワールド”でおまけにナイフ攻撃と来たもんだ………一瞬、やらかしてるんじゃあないかと思ったぜ」

 

 

咲夜「最近時が短い間…止まることがあると思ったら…それは貴方の仕業だった……という訳ね」

 

 

譲信と咲夜は、互いに5m程離れた位置に立っていた。

 

 

咲夜(今の私じゃ体力的に…体術戦を挑むのは敗北を意味する……それなら適度な距離を維持したまま、遠距離攻撃に専念した方が良いわね。幸い、相手は飛び道具を持ってない……時を止められる時間も残り僅かと見たわ………慎重に進めれば……勝てるッ!!)

 

 

咲夜「…貴方が時を止められる時間は残り僅か…そして貴方は飛び道具の一切を持ってない……そして何より、弾幕戦を不得意としてるようね……つまり……遠距離戦に持ち込めば私が有利ということよ…」

 

 

確かに咲夜の言うとおり、譲信は残り僅かな時間しか時を止めてられない。

そもそもがそう長くは止めていられないのだ。

遠距離戦も不得手…そもそも弾幕が撃てないのだ。

が、そう単純な話かと言えばそういう訳でも無かった。

 

 

譲信「へぇ?確かに完璧な作戦じゃあねぇか………たーだーし、実現不可能という点に目を瞑ればなぁッ!!」

 

 

咲夜「ッ!?」

 

 

咲夜は知らない。

充分に距離を取ったつもりでも、5mじゃあまだまだ甘かった事を。

 

 

譲信「最後に教えてやる!!世界(ザ・ワールド)の射程距離は“10m”だ!!射程距離内なら状況次第じゃあ瞬間移動も可能なんだぜ!!」

 

 

咲夜「し…しまっ…!?」

 

 

気付いた頃にはもう手遅れだった。

咲夜のすぐ傍に“世界(ザ・ワールド)”が現れ、拳を握り締めていた。

 

 

 

譲信&世界「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

 

シュッ…………!!

 

 

 

“世界”の拳が、咲夜の顎を掠めた。

身体能力は普通の人間である咲夜に、“世界”の動きを見きれるほどの胴体視力は無い。

 

 

咲夜「……か………………」

 

 

脳を激しく揺らされた咲夜の視界は、グラグラと揺れ動き出す。

そして、何故か地面が起き上がってきて………………

 

 

バタリ………

 

 

咲夜は意識を失って倒れた。

 

 

譲信「“時は動き出す……”!!

 

 

それと同時に、時は動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美鈴「ッは!!さ、咲夜さん!?」

 

 

パチェ「咲夜ッ!!」

 

 

二人からすれば、一瞬でその場に倒れて動かなくなった咲夜。

一体何が起こっているのか、理解し難かった。

 

 

譲信「さ~て…次はどなたですか~?」

 

 

 

 

 

 

美鈴「くっ……………咲夜さんの仇!!」

 

 

パチェ「待ちなさいッ!!」

 

 

譲信に飛び掛かろうとする美鈴を、パチュリーは止めた。

 

 

美鈴「パチュリー様?」

 

 

パチェ「貴女は一度彼に敗北している……それなのに1対1で挑むのは愚策よ……それに、“時を止めていた”咲夜が負けたという事は………彼の能力は咲夜と同じ、“時を止める能力”!!」

 

 

美鈴「ッ!!……だから……あの時!!」

 

 

美鈴の頭の中で、門前の死闘…最後に一瞬で自分の全身を襲った打撃の記憶が蘇る。

 

 

パチェ「ただし…どうやら停止時間は短いようね……だから、やられたのは咲夜だけ。私達は無事なのよ。つまり…彼の能力には射程距離があり、それさえ見切って距離を保っておけば……やられる心配はないわ」

 

 

美鈴「な………成る程……流石ですパチュリー様!!」

 

 

 

譲信「ほう~………?理解していたのか俺の能力を?………偉いねェ……しかしな、だから何だと言うんだ?分かった所でどうにかなるのか~ッ!!」

 

 

譲信は“世界”と共に、素早く二人に向かって駆け出す。

 

 

譲信「適度な距離ィ~?…ンなモン取らせる訳ねーだろ!!俺の射程距離から常に出ていられるのは精々…神か仏くらいだぜ!!」

 

 

 

美鈴「パチュリー様!!」

 

 

パチェ「離れてなさい美鈴!!私の方が間違いなく有利よ!!」

 

 

『ウィンターエレメント』!!

 

 

譲信「!?」

 

 

突如、譲信の足元から、勢いよく水が吹き出し譲信を上へと吹き飛ばそうとする。

 

 

譲信「成る程、俺を吹き飛ばしてまず体勢を崩そうと………しかし!!クラフトワーク!!

 

 

譲信は二体目のスタンドを発現させ、吹き出した水を殴りつける。

すると、クラフトワークの能力…“固定”により水はその場に固定され、再び譲信は前方のパチュリーに向かって駆け出した。

 

 

譲信「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

 

が、パチュリーの真の狙いは譲信の体勢を崩すことでは無かった。

むしろ何かしらの方法で阻止される事など、予測済みだったのだ。

 

 

パチェ「こっちが本命よ!!残りの魔力残量が僅かだからこれが最後の一撃…!!これを躱せれば貴方の勝ちよッ!!くらいなさい!!」

 

 

日符『ロイヤルフレア』!!

 

 

譲信「何ィッーーーーーーーー!?」

 

 

巨大な火の玉が現れ、広範囲に爆発攻撃を撒き散らす。

発動までに溜が少々必要となるが、パチュリーは譲信が『ウィンターエレメント』に気を取られている隙に発動可能にさせておいたのだ。

 

 

レミリア「ちょっとパチュリー!?当たりかけたんだけど!?少しは遠慮しなさい!!」

 

 

そして、その広範囲高火力攻撃は上で戦っているレミリア達にもギリギリで当たりそうだったのだ。

 

 

パチュ「悪いけどそれは無理よレミィ…!!遠慮したらこっちがやられるのよ!!」

 

 

パチュリーは譲信を沈めるためならある程度の犠牲は止む無しと考えていた。

何故ならパチュリーは、今回の異変で最も厄介な相手は譲信だとそう考えていたのだ。

 

レミリアとフランの和解…それに一枚噛んでたということは、少なくとも二人の内一人とは1戦を交えた筈だ。

なのにボロボロなのは服だけ、おまけに疲労してるとは言え、自分達3人を前にハッタリではないこの余裕。

底知れないエネルギーの持ち主と考えていた。

 

故に譲信と戦うという事は、レミリアやフランと戦う事と同等…遠慮なんて出来る訳が無かった。

 

 

譲信「確かにこいつは回避なんて時を止めなきゃあ厳しいな!!だがそりゃあ回避しようと思うからだ!!ここは………受けきるぜ!!20th センチュリーボーイ!!

 

 

譲信は足を踏みしめ、パチュリーに向かって飛び出すと同時に、“21th センチュリーボーイ”を身に纏った。

このスタンドを身に纏っている間は、何者もこの譲信を倒すことは出来ない。

すべての破壊エネルギーは周りへと逃がしてしまう、無敵の防御スタンドなのだ。

 

ただし、使用中は身動きを取ることは出来ない。

しかし、既にパチュリーに向かって飛んでいく、働いている力は消える事は無い。

 

 

ドンッ!!

 

 

パチェ「むきゅうっ!!?」

 

 

そのまま攻撃を切り抜け、パチュリーに軽いタックルをかました。

 

 

譲信「WRYYYYYY!!まだやるかぁぁ!?」

 

 

パチェ「む………むきゅー魔力切れぇ………………降参よ……」

 

 

もともと普段引き籠もって出歩く事も無かったパチュリー。

相当無理をしてた為、魔力切れも相まってもはや身動きとれずここでリタイアである。

 

 

譲信「さぁ残りは……エト……中国人!!テメーだなッ!!」

 

 

美鈴「紅美鈴です!!名前忘れないでくださいよッ!!」

 

 

譲信「あ……悪ィ」

 

 

普通に名前を忘れた事を申し訳なく思いつつ、譲信は美鈴と向き合う。

 

 

譲信「テメーにとっちゃあこれはリベンジマッチだな…!!さっきは胸を貸した戦いだったが…今回は始めから潰す気で行かせて貰うぜ!!」

 

 

美鈴「ふうぅー…………。いくら勝ち目が無くとも……今出せる全力を懸けて戦うまでです!!」

 

 

譲信「よっしゃいくぜ!!特に背負うモンのねぇ戦いはやっぱ……拳でやらねぇとなぁ!!世界(ザ・ワールド)!!

 

 

譲信は“世界”を前に出し、美鈴に向かって駆け出す。

美鈴は気を整え、ある程度体が軽くなったのを確認してから、譲信と“世界”に向かって駆け出した。

 

 

美鈴「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

譲信&世界「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

ドッゴォォォン!!

 

 

“世界”と美鈴の拳がぶつかり合った!!

 

 

美鈴(ぐうぅ……!?つ…強いッ!!この人よりも遥かに上のパワー……!!)

 

 

譲信「貧弱貧弱ゥ!!どいつもこいつもぉ!!幽香さんの方がまだまだパワーがあったぜ!!」

 

 

美鈴「え"!?

 

 

譲信「え?」

 

 

譲信の言葉を聞いて、美鈴は嘘お!?と絶対言ってるような顔になる。

 

 

美鈴「幽香………て……あの風見幽香……?」

 

 

譲信「あぁ?あー…そうだけど?」

 

 

美鈴「戦ったんですか……?」

 

 

譲信「まぁ成り行きでな」

 

 

美鈴「ちなみに……どちらが勝ったので?」

 

 

譲信「…………俺だけど?それがどうしたんだ?」

 

 

美鈴「……………………………」

 

 

譲信が何気なく返した言葉のせいで、美鈴は一気に顔色が悪くなってしまった。

そりゃこんなに強い訳だ…とんでもない奴を相手にしてしまったモンだと、美鈴は冷や汗を掻いていた。

 

当然、そんな美鈴の明らかな変化に譲信も何となく気付く。

 

 

譲信「なぁ、霊夢達の反応もそうだったがよ……幽香さんて………そんなにヤバイの?」

 

 

美鈴「あ…当たり前ですよ!!あの人に勝ったとか……貴方もヤバイ人ですからねッ!?」

 

 

譲信「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

譲信は未だに幽香がヤバイなんて信じられはしなかった。

思い返してみよう…初めてあった時どんな感じだったのか。

返り血まみれ…“世界”とのラッシュ比べ…興奮して笑顔で殴りかかってくる……。

 

あ、確かにヤベーな。と、譲信は今更になって気付いた。

戦ってない時は大人しいが、戦いになると凶変するバーサーカなのだと、ようやく気付く事が出来たのだ。

 

 

譲信「ふぅ……だがそれがどーしたよ!!だからと言って…引き下がる程、美鈴さんは臆病なんですかぁ!?」

 

 

美鈴「確かに…愚問でしたね!!何者だろうと…私は引きません!!」

 

 

譲信「グレート!!」

 

 

譲信の“世界”と美鈴は一旦拳を互いに離す。

そして

 

 

譲信「パワーとスピード比べと行こうじゃあねぇか!!」

 

 

世界「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

 

美鈴「セヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

“世界”と美鈴とのラッシュ合戦が始まった。

幻想郷でも上位なパワー同士のぶつかり合いに、凄まじい風圧が起こり、“世界”の後ろにいる譲信は風で飛ばされないように帽子を押さえていた。

 

 

世界「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

 

世界WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!

 

 

 

シュシュシュッ……

 

 

バギィィィッ!!

 

 

美鈴「むぐっ……!!」

 

 

僅かに少し、スピードで遅れを取った美鈴はその隙間を突かれ、“世界”の拳を一発顔面に受けてしまった。

そして、そのまま殴り飛ばされ紅魔館の壁を盛大にぶち抜き、湖の方まで吹っ飛んで行った。

 

 

 

 

 

譲信「ふぅーーーー…………これで俺のノルマは達成……だよな……(そうであってくれ…!!)」

 

 

戦闘が終わり、譲信は一息だけ吐いた。

それから片手で顔を隠し、もう片方の手で紅魔館の入り口付近に落ちてる瓦礫を指差した。

 

 

譲信「さて……と。貴様見ているなッ!!

 

 

すると、どうだろう……

 

 

???「ひぃぃ!?」

 

 

何者かがそこから飛び出した。

 

 

譲信「やれやれ……最後の戦闘員かぁ?」

 

 

譲信は“世界”を構えその者にゆっくりと近付いていく。

 

 

???「ちちち…違います!!わ…私はパチュリー様達みたいに戦う気はありません!!」

 

 

譲信「へぇ……」

 

 

小悪魔「私は小悪魔…パチュリー様の使い魔です。皆さんからはこあって呼ばれてます……」

 

 

小悪魔と名乗った何となく悪魔らしい見た目の女の子は、“世界”にビクビク怯えながらも自己紹介を済ませた。

 

 

譲信「そうか……そういう事なら…じゃあとりあえずお前は館の中へ入っておきな……」

 

 

そういって譲信は上を指差した。

 

 

小悪魔「……へ?」

 

 

 

 

 

 

 

そこでは

 

 

魔理沙「彗星『ブレイジングスター』!!

 

 

フラン「禁忌『クランベリートラップ』!!

 

 

ドドドドドォォォォ!!!!

 

 

激しい激戦が繰り広げられていた。

 

 

小悪魔「アワワワワ…は、はいぃぃぃ!!」

 

 

 

 

命の危険を感じた小悪魔は大慌てで咲夜とパチュリーを抱えて、館の中へと入っていった。

 

 

譲信「上も上でド派手にやりやがって………しかし…そろそろ決着が着きそうだな……やれやれ……見届けるか(立場的に応援しなきゃあいけないのは霊夢達だが…何となく姉妹ちゃん達を応援したくなるんだよなぁー……)」

 

 

譲信は呑気に考えながら、時々富んでくる流れ弾を弾きつつ、観戦する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「禁忌『フォーオブアカインド』!!

 

 

 

魔理沙「魔砲『ファイナルスパーク』!!

 

 

 

レミリア「『紅色の幻想郷』!!

 

 

 

霊夢「神技『八方龍殺陣』!!

 

 

 

ゴゴォォォォォォォォォォォォ!!

 

 

 

レミリア「くうぅぅぅ………ッ!!」

 

 

フラン「うぅ……お姉様!!」

 

 

 

霊夢と魔理沙の二人に押され、同時に後方へと飛ばされたレミリアとフラン。

互いを心配して一瞬、意識が霊夢と魔理沙からそれぞれ逸れてしまった。

 

そこへ、決着を着けるべくチャンスとみた霊夢と魔理沙が畳み掛ける!!

 

 

 

 

恋符『マスタースパァァァーク』!!

 

 

霊符『夢想…封印ッッ!!』

 

 

強力なエネルギー砲と、七色の大きな弾幕が二人に向かって放たれた!!

 

 

 

 

ドッッゴォォォォォォォ!!

 

 

 

 

レミリア「かっは…………!!」

 

 

フラン「う…うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

トドメの一撃………!!

霊夢と魔理沙、二人の全力の一撃を真面に受け、レミリアとフランは大ダメージを負ってしまった…。

 

激しい衝撃が二人の体を襲い、二人は地面へと向かって落下していく。

決着は着いた!!

激闘の末に勝利を収めたのは、霊夢と魔理沙、だった。

 

レミリアとフランはもはや、羽を動かし飛ぶ力は残っておらず、そのまま地面へとどんどん向かっていく。

 

 

レミリア「フ…………ラン…!!」

 

 

フラン「お姉……様…!!」

 

 

二人は互いに、一方だけでも激突の衝撃を和らげようと手を伸ばす………が、届かない。

レミリアとフランは瞳を合わせてから、そして…静かに瞳を閉じた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボフッ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、二人に待っていたのは硬い地面にぶつかった時の衝撃では無かった。

柔らかく、そして暖かな感触だった。

 

 

レミリア&フラン「…?」

 

 

一体何が起きたのか……二人が気になって目を開けると…。

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「ふぅー…お疲れさん!全部は見ててやれなかったが…それでも格好良かったぜ!!…頑張ったな…!」

 

 

譲信だった。

二人が落ちる所を時を止めて、無事に譲信は受け止めていたのだ。

 

 

レミリア「……別に…良かったのに…全く」

 

 

フラン「……エヘヘ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「あーあ…余計な事を。どうせ死なない吸血鬼なんだから、それくらいほっときなさいよ……」

 

 

魔理沙「へへっ!譲信らしくて良いじゃねぇか!!私はアイツはあれくらいが丁度良いと思うんだぜ」

 

 

霊夢「………まぁそれもそうね。少しアイツには掻き回されたけど…案外悪くは無かったわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

………こうして、二人の吸血鬼姉妹の何百年もの時が積み重なって、出来たすれ違いが引き起こした異変は終わった…。

 

 

博麗の巫女と普通の魔法使いとの激闘の末に、二人は敗北し幻想郷は無事に夜明けを取り戻す事が出来たのだ。

短いようで長かった夜は終わり、こうして異変は解決され、無事に幕を閉じた。

 

 

しかし、それには一人の男の魂を懸けた奮闘があった事を忘れてはいけない……。

その男の名前は空条譲信。

“JOJOの何でも屋”の社長を務める、外来人である。

 

 

 

 

 

 

 

~紅霧異変・終幕~

 

 

 

 

TO BE CONTINUE……………

 




4月までになんとか投稿が間に合って、ホッとしております。
丁度、異変も解決して良い感じに気分は晴れやかになっている作者です。
歌でもひとつ歌いたいような…


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GREAT DAYS
⑱ようやく始まる物語り…


今回はちょいと解釈が複雑な話になるかな…?と思います。
何か疑問に思う事があれば答えられる範囲でお答えしますよ!!
それでは今回の話もお楽しみください!!
(誤字は多分無い……多分……ね)


紅霧異変。

そう呼ばれる事となった、レミリア・スカーレット首謀の今回の異変は、博麗霊夢、霧雨魔理沙、空条譲信、3人の活躍により、無事に解決された。

 

幻想郷に、いつもと変わりない今日がやってくる。

そんな中、譲信は不思議な体験をしていた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「………ぬぅんん?」

 

 

譲信は目を覚ます。

何も無い真っ暗闇な空間。

と、思いきやすぐに空間は揺れ、気付けば一瞬で遥か上空へと移動した。

 

 

譲信「おう…!」

 

 

不思議と、宙に浮いてるのに足の裏には硬い感触があって、落下する事は無い。

普段なら恐怖を感じる状況だが、そんな物は一切感じていなかった。

 

……成る程これは夢だ。

そう一瞬で譲信は理解した。

こういうのを明晰夢…と言ったかな?等とのんびり考えてみる。

 

 

???「やぁ。やっとココへ来てくれたね譲信くん。君がここへ来るのを僕達はずっと…待っていたよ」

 

 

譲信「ッ!?」バッ!!

 

 

そんな時、突如背後から何者かに名を呼ばれ、驚いた譲信はすぐに振り返る。

 

 

譲信「は……?え…………嘘……!!」

 

 

譲信はそこにいた者を見て、何者なのかを一瞬で理解し、驚愕で固まってしまった。

そう、そこにいたのは……

 

 

 

 

 

 

ジョナサン「初めまして…僕の名前はジョナサン・ジョースター…と言っても…僕も君も、互いの事は互いによく知ってるよね」

 

 

 

 

ジョナサン・ジョースター。

ジョジョの全てはここから始まった…第一部、ファントムブラッドの主人公。

ジョジョ好きなら知らないなんて有り得ない…そんな人物が、そこにはいた。

 

 

 

譲信「ゆゆ………ゆ……夢だよな?うん…夢だ。夢だから驚く程でもねーかぁ…。しかし、明晰夢で見るジョナサンはすげーガタイが良いもんだぜぇ……」

 

 

譲信はジョナサンに近付いて、まじまじと観察する。

そんな譲信をジョナサンは見下ろすようにして笑って見ていた。

 

 

ジョナサン「ハハハ…ありがとう。だけど、ここは夢であって夢では無いんだよ。…ここは、君の精神の深層にある場所……そして僕は、本来なら君の世界には存在しない筈の、本物のジョナサン・ジョースターなんだよ」

 

 

譲信「んえ!?」

 

 

言われて譲信は気付く。

確かにここは夢とは違う。

自分に意識を向けてみれば、それはハッキリと分かった。

実に不思議な事だが、ジョナサンの言ってる事が何もかも真実なのだと……ハッキリと理解できるし、確信できる。

何より、ここではデスサーティンが発動出来ないのだ。

決して夢なんかじゃあない。

 

 

譲信「ま……まじで……本物のジョナサン!?」

 

 

 

ジョナサン「うん!分かってくれたようだね。じゃあ早速君が今疑問に思ってる事を軽く説明させて貰うよ」

 

 

ジョナサンは軽く咳払いをしてから、語り出した。

 

 

ジョナサン「ここは君の精神の深層部。分かりやすく言うなら、君の能力の源…となる場所であり、誰にも侵害される事の無い唯一の場所でもあるんだ。そして、ここでは僕達のこれまでの数々の足跡…“黄金の記憶”が現実の物となる場所なんだよ」

 

 

譲信「黄金の……記憶?」

 

 

ジョナサン「そう。今ここにいる僕や、君が扱うスタンド能力なんかもそう。全ては君に宿る不思議な精神の力が、本来なら存在しえない僕達を存在させているんだ。でも本物とは少し違う。僕達の存在は君を仲介してるからこそあるのであって、つまりは本物であって本物では無いんだ」

 

 

 

譲信「………?あー…よく分かんね」

 

 

 

ジョナサン「ハハ…複雑で何かゴメンね?でも大丈夫、肝心なのはそこじゃあない。肝心なのは、君がここへようやく来ることが出来た…という事なんだ」

 

 

 

譲信「ふぅん?」

 

 

 

ジョナサン「君は一つ、自身に課せられた試練を乗り越える事で、気付いてないだろうけど大幅に成長したんだよ。君の精神はより強く、ハッキリとした物となり、この場所を見つけ、たどり着く事が可能となったんだ」

 

 

譲信「…俺の全ての源となる場所か!」

 

 

ジョナサン「そう!僕は…僕達はここでずっと君を待っていたんだ。君に直接会って、君に託したい物があったんだよ!」

 

 

譲信「僕達………?」

 

 

譲信はジョナサンの言った“僕達”という言葉に疑問を覚えた。

まるで、ジョナサン以外にも複数の誰かがいるような…そんな物言いに、突っかかざるを得なかった。

 

 

???「フン……ジョナサン。そういうのは、最初に言っておくべきだぞ……」

 

 

譲信「ッ!!?」

 

 

 

 

その時また何者かの声が聞こえてきた。

ジョナサンのすぐ隣で、モヤモヤと浮いていた雲が晴れていくと同時にそこから、声の主が現れた。

 

 

その者の姿を見て、譲信はまたもや固まってしまう。

 

 

ジョナサン「あ、いけない…!ゴメン、ゴメン、すっかり忘れてたよ………」

 

 

 

譲信「おいおいおいおいおい………マジで!?マジで!?こんなアツい展開あるのかぁッ!?……だって……アンタは間違いねぇ…………」

 

 

 

ジョナサン&譲信「DIO(ディオ)!!

 

 

 

見間違う筈も無い。

ハートをあしらった装飾…黒い全身タイツ…黄色い服装……。

間違いようもない。

ディオ・ブランドー!!またの名をDIO!!

悪のカリスマと呼ばれし男がそこにいた!!

 

 

 

DIO「フン……貴様が空条譲信か……チィ…忌々しい。あの承太郎と同じ名を持つ者が、このDIOの“世界”を扱うとは……全くもって忌々しいぞ……!!」

 

 

 

ジョナサン「全く…いい加減、僕の子孫の事を悪く言うのは止してくれないか?ディオ…確かに良い思い出が無かったのかもしれないけど、今は住む世界も事情も全く違うじゃあないか。いつまでも引き摺ってちゃあ先に進まないよ?」

 

 

 

DIO「ム!!お前に言われずともそれくらいは分かっているジョナサン!!いくらお前といえどもこのDIOに説教するなんて事は許さんぞぉッ!!」

 

 

 

譲信「ほえー……………」

 

 

 

譲信はジョナサンに怒鳴りつけるDIOをジーッと眺めていた。

 

 

 

DIO「ムゥ…?何を見ているのだ…譲信。何故このDIOをそんな間抜けなツラでずっと見ている…?」

 

 

 

そんな譲信にDIOは腕を組みながら声を掛ける。

 

 

 

譲信「スゲェー…本物のDIO様だ…!!」

 

 

 

DIO「…!!………ほほう……………」

 

 

 

本物のDIOに会えたことに実はかなり感激していた譲信。

自分よりDIOの登場で喜ばれてると気付いたジョナサンは少しがっかりし、自分の登場で喜んでいると気付いたDIOは少し機嫌を良くしながら譲信に近付く。

 

 

 

DIO「どれ……譲信……ひつとこのDIOに忠誠を誓ってみないか…?お前はこのDIO程では無いが…“世界”やその他のスタンドの扱いは充分に優れている。どうだね?…君のその才能を…このDIOの為に使ってみる気は無いか…?」

 

 

 

譲信「お……おぉ……!!」

 

 

 

本物のカリスマ。

それを身近で感じる事が出来た譲信はさらに感激する。

一人のジョジョラーが味わうには余りにも素晴らしすぎる、サービスに人生最大に近い喜びを感じていた。

しかし、ジョナサンはあまり良い気にはなっていなかった。

 

 

 

ジョナサン「譲信くん。ディオはね、君が来るまでは上半身裸でその辺に寝そべってグータラしていたよ。君が思うほどのカリスマじゃあないんだよ」

 

 

 

DIO「WRYYYYYYYYYY!?ジョナサーーーン!!」

 

 

 

DIOは顔を真っ赤にして怒りながらジョナサンに詰め寄る。

 

 

 

DIO「おいジョナサン!!お前はこのDIOに一体何の恨みがあると言うのだッ!?何故このDIOの印象を悪くするような事を言うッ!?」

 

 

 

ジョナサン「心当たりならたくさんあるだろう?それに、今の君がいつまでもそんなカリスマ続けられる訳が無いじゃあないか……素直になりなよ」

 

 

 

ジョナサンはニッコリと笑いながらDIOの肩をポンポン…と叩いた。

DIOは………さらに不機嫌になった。

 

 

 

DIO「WRYYYYYYYYYYYYYYY!!もう怒ったぞッ!!もうどうなっても知らないからなッ!!」

 

 

ジョナサン「どうなるんだい?」

 

 

DIO「ハッ!!しばらく再起不能になってもらうぞォ!!世界(ザ・ワールド)時よ止まれぃッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シィィィーーーーーン……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DIO「…………ハッ!?」

 

 

ジョナサン「やっぱり忘れてたんだ……ここじゃあ君のスタンド“世界”は使えないんだよ………対して“波紋”は技術だから僕は“波紋”を使う事ができる……」

 

 

 

ジョナサンは波紋エネルギーはバチバチと鳴らせながら、分かりやすくDIOに拳を突き出した。

 

 

 

DIO「WRYYYYYYYYYY!?よ…よせ!!ジョナサン!!このDIOが…このDIOが消滅してしまっても良いと言うのかーッ!?」

 

 

ジョナサン「君が素直に謝るなら考えてあげなくもないけど?」

 

 

 

DIO「何だとッ!?このDIOが謝るだとぉッ!?何故このDIOが謝らなければ……!!」

 

 

ジョナサン「じゃあ……残念だけど………波紋疾走(はもんオーバードライブ)!!

 

 

 

DIO「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!?巫山戯るんじゃあ無いぞッ!!」

 

 

DIOは波紋なんてくらったら一溜まりも無いとばかりに、全力で走って逃げ出す。

しかし、何かのスイッチが入ったジョナサンは逃がすまい…とそのDIOを追う。

 

 

 

譲信「ど………どーなってやがんだ………?……ジョナサンに……DIOだと………?」

 

 

 

譲信は追いかけっこみたいな事をしているジョナサンとDIOを、目をパチクリさせながら見ていた。

 

 

 

ジョナサン「ディオォォォォォォ!!君に追いつくまでッ!!追いかけるのを辞めないッ!!」

 

 

 

DIO「ジョナサン!!こっちに来るんじゃあないぞぉぉぉぉッ!!………ム!待てィジョナサン!!本題を忘れているぞッ!!」

 

 

 

ジョナサン「あ!…そうだったね」

 

 

 

DIOが譲信の方を指差すと、思い出したようにジョナサンは立ち止まり、譲信の元まで駆け足で戻る。

 

 

 

 

譲信「原作崩壊……原作崩壊……原作崩壊……原作崩壊……因縁……血統……運命……宿命……」

 

 

 

ジョナサン&DIO(うわぁ……)

 

 

 

すっかり頭がパンクしてしまい、何やら呪文のように唱えている譲信を見て、ジョナサンもDIOも立ち止まってしまっていた。

 

が、DIOに無理矢理背中を押され譲信の前に飛び出てしまったジョナサンは、意を決して譲信に語り掛ける。

 

 

 

ジョナサン「あーえと……ゴホン!譲信くん。それで…さっき僕が言ってた“君に託したい物”についてなんだけどね……?」

 

 

 

譲信「うぉぉ!?え?……あ……うん。何だ?」

 

 

 

ジョナサンに話し掛けられて、ようやく我に返った譲信。

無事に話しが続けられると分かったジョナサンは、ホッ…とため息をついてから話し出す。

 

何やら、とても大事な事を言われそうな雰囲気なので譲信も気を引き締める。

 

 

 

ジョナサン「大切な事だからよく聞くんだよ……今から僕達は君に、“魂の権利”と“力の記憶”を託そうと思う」

 

 

 

譲信「魂の…権利?…力の記憶……?」

 

 

 

ジョナサン「そう。“魂の権利”とは、僕とDIO、僕達二人の魂の所有権を完全に君の物とする事だ。そして“力の記憶”とは、僕達二人と、ここに来れなかった者達全員の力を君一人分の力に換える事だ。つまり、分かりやすく言うと、僕達の目的は君をパワーアップさせる事なんだよ」

 

 

 

譲信「はぁ!?なんで俺にわざわざそんな事を?…何か得でもあるのか?」

 

 

 

DIO「得ならあるさ」

 

 

 

譲信「え!?」

 

 

 

DIO「お前が強くなれば強くなるほど、それだけ私達の存在もこの世界での本物に近付いて行く。本物に到達する事が出来たなら、私達は晴れて自由な存在へと成れるのだ。精神体から実体へとな……一先ずお前に“魂の権利”をくれてやるのは、その方がより自由に動けるから…ただそれだけだ」

 

 

 

ジョナサン「まぁ僕としては、君にもう全て託して消えてしまっても良いんだけれど…流石に今の君のままじゃ負担がすごく大きいからね…取り敢えずはしばらくの間、守護霊みたいに君を見守ったり、手助けしたりしようと思ってるよ」

 

 

 

譲信「あぁ…成る程ね」

 

 

 

ジョナサン「さぁ最後に選ぶのは君だ。君の答えを聞かせてくれないかい?」

 

 

 

ジョナサンとDIOに見つめられ、譲信は決めなければならなかった。

面倒事は多分増えるかもしれない。

しかし、譲信はそう長く悩む事は無かった。

 

 

 

譲信「良いぜ。有難く受け取るわ。迷った時には取り敢えず…YESな方を選んどけば、まぁまぁ良いことがあるもんだしな」

 

 

 

堂々と、胸を張って、実に爽やかな笑みを浮かべて譲信は言い切った。

その心には一切の迷い無く、青天の青空のように澄み渡っていた。

 

 

 

DIO「ハン……もう少し時間をかけると思っていたが……面白い奴め………フム。気に入ったぞ…!!このDIOの力全て、持っていくが良いッ!!」

 

 

 

ジョナサン「ありがとう!!僕達の全て…受け取ってくれ…!!譲信くん…今度は君が、物語を紡ぐ番だよ!!」

 

 

 

ジョナサンとDIOと譲信の手が重なり、そこから光が溢れ出す。

それは一気に空間全体を覆うほど眩しくなり、光の中にジョナサンとDIOも飲まれていく。

 

 

 

譲信「俺もいよいよ奇妙な主人公か……面白れぇ!!生涯現役、全うしてやらぁ!!」

 

 

 

最後に、譲信の気合いにたっぷり満ちた咆哮が、空間に広がった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「………………がっ!?」

 

 

 

譲信は目を覚ます。

しかしそこは、自宅兼事務所でもある部屋の天井とは全く違う場所だった。

目が痛くなるくらいの真っ赤な内装。

お世辞にも趣味が良いとは言えない。

 

 

そして、体が何故か重く、鈍い痛みが走っている。

自分の体に目を向けると、何故か全身包帯グルグル巻きだった。

 

 

譲信「え………………!?」

 

 

 

一体何があったのか……確か異変の時には傷は全て再生していたし、こんなボロボロになってる筈が無い……。

取り敢えず譲信は記憶を漁ってみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……………今朝……………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「ふぁ~………明け方帰りだったから全然眠れなかったぜぇ………」

 

 

今朝の8:00。

今日は休業ということで、少し遅めに起きるが、異変解決でのゴタゴタがあり結局眠れたのは今朝の4:50分頃だったのでかなりの寝不足だった。

 

 

本当はもっと寝ていたかったが、譲信にはまだやらねばならない仕事があった。

そう…霊夢達は異変解決だけが仕事だったが、譲信はその後の、異変を起こした側の調査を行い、紫に報告書を作成して渡さなければならない…という面倒臭い仕事が残っていたのだ。

 

 

譲信「誰かいるかぁー?こいし助手ー?藍しゃまー?」

 

 

譲信は能力を使い、一瞬で着替えを済ませ、下の階に降りる。

誰かいないか…と声をかけるものの、誰も居ない。

こいしは休業日は何処ぞへと消え、藍は今日は来ない…そういう感じだった。

 

 

譲信「……誰もいねぇーな。やれやれ…何を食うか…」

 

 

吸血鬼化は既に解除され、普通の人間に戻っている為、人並みに腹は空く。

家中を漁った結果、見つかったのはリンゴ一個だけだった。

 

 

譲信「リンゴ♪リンゴォ♪ロードアゲイン♪男の世界へよ~うっこそ♪」

 

 

譲信はリンゴにむしゃぶりつきながら、変な歌を歌って外へ出る。

鍵をしっかり掛けて、いざ出発!!

目指すは紅魔館だ!!

 

 

 

 

………ここまでは普通だった。

特に人里の中でなんて、何の問題も起こる筈が無いのだ。

譲信は記憶を少し“キングクリムゾン”して飛ばしてみる。

 

 

 

 

 

 

~~~~キングクリムゾン!!~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「雨のようなエメラルド砂漠に降れば~♪愚者名乗る勇者♪見せる蜃気楼♪闇の~気配を~波紋の茨~♪復活の為~♪選ばぬ手段~♪無垢な生き血を~求め彷徨う~♪歴史に打つ楔スタープラチナ~~~ム♪」

 

 

 

 

 

今日も上々に歌なんかを歌って、譲信は人里の外を呑気に歩いていた。

この時間帯は妖怪が少ないのか、夕方ほど襲われる事は無かった。

 

 

譲信「しっかし、また紅魔館に行かなきゃいけね~のか~………全員の傷と壊した物全部、綺麗に直したとは言え……やっぱりこう間もなくまた訪れるってのは……なーんか気が引けるぜ……訪ねて来て、嫌な顔された瞬間俺は多分一生外に出れねーぞ………」

 

 

何より、今更になって笑いながら襲い掛かって来たフランの顔が頭から離れなくなり、しっかりと譲信の脳裏に焼き付いた恐怖映像みたいになっていた。

なんか夢でもフランにレーヴァティン振り回しながら追いかけられてたような………そんな気がしてならない。

 

 

譲信「よーく考えりゃあオバケ屋敷よりもたちが悪い場所じゃあねぇか……おっかねぇロリ吸血鬼二名…90%DIO様メイド…カンフー中国製門番…むきゅむきゅヴォルデモート…戦力外ミニデビル…その他モブ枠……オバケよりも怖ぇーよ」

 

 

譲信は重くなっちゃった足を引き摺るようにして、だらだらと紅魔館に向かう。

しかし、時は残酷。

なんとまぁ呆気なく…アッという間に紅魔館すぐ前の湖まで来てしまっていた。

 

 

この湖はたしか、氷の妖精…チルノとかいう奴の縄張りだった…という事を譲信は思い出した。

そこで譲信は考えた。

 

 

譲信(ワンチャンここでよ……縄張りに勝手に入られてブチ切れたチルノって奴に本気で戦ったふりして…わざと負けて大袈裟に重傷負っとけば……サボれるんじゃね?俺天才かよ…!!)

 

 

そうと分かれば話が早い。

譲信はデン!!と構えてわざわざ目立つような場所に立った!!

 

 

譲信「さぁ来いッ!!この俺を倒しに来いッ!!」

 

 

 

 

5分後………

 

 

 

 

 

 

15分後………

 

 

 

 

 

 

30分後………

 

 

 

 

 

 

 

 

来ないッ!!

圧倒的来ないッ!!

いくら待っても泣いても怒っても、チルノなんて奴は現れる事が無かった!!

 

 

譲信「何故だ!?何故なんだ!?」

 

 

それもその筈だ…この時チルノは友達の大妖精達と共に、人里の寺子屋で授業を受けていたのだから………。

しかし…そんな事を譲信は知るはずも無い。

あと少し待てば出てくるだろう……なんて淡い期待を込めながら来るはずの内容チルノを待ち続ける。

 

 

 

……やがて、譲信を呼び止める存在が現れた。

しかし、それはチルノなんかじゃあ無かった。

 

 

 

 

 

咲夜「あら?……貴方は確か空条譲信さん…でしたか?」

 

 

譲信「……え?」

 

 

 

現れてしまった。

ついに現れてしまったのだ。

紅魔館メンバーの一人、十六夜咲夜に。

 

紅魔館のメイド長、十六夜咲夜。

異変では油断した所を譲信に瞬殺され、紅魔館メンバーでは最も軽症で済んだ人物である。

ちなみに重傷1位は紅美鈴である。ハッキリわかんだね。

そして2位は意外にもパチュリー・ノーレッジである。

と言ってもほとんどが持病の悪化…による物だったが。

 

 

咲夜「こんな所で何を…?もしや、紅魔館に何か忘れ物ですか?」

 

 

譲信「あー…えっとですね」

 

 

譲信は咄嗟に適当に誤魔化してしまおう…と考えたが、どうせ無駄だろう…とすぐに諦める事にした。

見つかってしまったからには覚悟を決めなければならない。

譲信は意を決して事情を話すことにした。

 

 

譲信「実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(説明中…キングクリムゾン!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜「成る程…賢者からの依頼で私達紅魔館の住人の調査……ですか」

 

 

咲夜は納得したように顎に手を当てて頷く。

 

 

譲信「ほんと異変直後に押しかける形になってすまねぇ…断れるなら俺も断ったんだが……俺も立場的にヤバくてよ……マジですまねぇ!!」

 

 

譲信は申し訳なさそうに頭を深々と下げた。

そんな譲信の行動に、思わず咲夜は慌てる。

 

 

咲夜「え!?ちょ、ちょっと!!頭を上げてください!!譲信さんが謝る事ではありませんよ!!異変を起こしたのは私達なんですから…これも仕方ない事です。それに…あの後、お嬢様も妹様ももう一度、貴方に会いたかった…と仰られていましたから、きっと歓迎なされる筈ですよ」

 

 

譲信「あー……嫌じゃないんすか?俺が来るの」

 

 

心配そうに訪ねる譲信に咲夜は微笑んで答えた。

 

 

咲夜「そんな事ありませんよ……誰も嫌だとは言わないと思いますよ」

 

 

譲信(……………ホッ……)

 

 

その言葉を聞いて、譲信はようやく安心した。

嫌がられさえしなければ、後は適当に上手くやれば簡単な仕事だ。

思ったより無難に行けそうだ…と。

 

 

咲夜「では行きましょうか。お嬢様から許可を頂だかなければいけないので、少し門前で待って貰う事にはなりますが……」

 

 

譲信「あーOKOK。全然大丈夫だぜ。適当に待たせて貰うわ」

 

 

譲信は咲夜と共に、紅魔館の門前まで向かった。

 

 

 

 

 

美鈴「Zzzz………」

 

 

 

そこでは、美鈴がとても気持ち良さそうに眠っていた。

異変の時とは違い…どうやらガチ寝だった。

 

 

 

譲信「……すげー……職務怠慢だ……」

 

 

咲夜「……ふぅ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜は無言で、寝ている美鈴の頭にナイフを突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美鈴「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?さ……咲夜さんッ!?と……譲信さんッ!?」

 

 

譲信「ど……ども……(え?この人仲間にナイフ刺したよ!?うーわ……怖………)」

 

 

譲信と咲夜は同時に怯えた目で咲夜の事を見る。

どちらも似たような恐怖を咲夜に抱いていた。

 

 

咲夜「それでは……少々お待ちください。譲信さん」

 

 

譲信「ア………ハイ」

 

 

笑顔で話し掛けてきた咲夜に、ぎこちない返事を譲信は返す。

すると、咲夜は時を止め紅魔館の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信(あれ?ここまで別に怪我するような事起こって無くね?……なんか記憶ももうちょいで終わりそうな気がするし………あれぇ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信はちょっとだけ時を進めてみた。

レミリアから許可出たようで、咲夜に紅魔館の中へと通して貰う。

痛みに涙する美鈴の顔が地味に忘れられない。

 

記憶ももうすぐで終わりそうだった……。

 

 

 

 

 

 

咲夜「ようこそ紅魔館へお越しくださいました……それではどうぞ中へ……」

 

 

譲信「お邪魔しまーす……」

 

 

咲夜によって紅魔館の扉が開かれていく……。

そんな時、扉の向こう側から何やらドタドタドタ…という、何かがこちらに向かって来るような足音が聞こえた。

 

 

譲信(ん?)

 

 

そして扉が開かれると同時に………飛び出たのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「お兄様ーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランだった…。そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッゴォォォ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「ぐぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランの全力タックルを腹に真面に受けてしまった。

繰り返すが、今の譲信は普通の人間だ。

そんな奴が子供といえども、吸血鬼の全力タックルをくらえばどうなるのか………お分かりだろう…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグァァァァァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信は派手にぶっ飛び、紅魔館の門まで吹っ飛ばされ、門をぶち抜く。

距離にして80~200m…それくらいの距離まで吹っとんだ。

 

もはや意識は無い。

全身複雑骨折。

命なんてあったら奇跡。

 

 

咲夜「い…妹様!?じょ……じょじょじょ…譲信さん!?」

 

 

美鈴「譲信さぁぁぁぁん!?」

 

 

フラン「い………いやぁぁ………お兄様ぁぁぁ!?」

 

 

譲信(うそぉん………フラン………お前……)

 

 

最後に薄れ行く意識の中、三人の悲鳴のような声を聞きながら、譲信は瞳を閉じた。

そして冒頭での精神世界へ行き着き、目を覚まして、今に至る……。

ここは…紅魔館の何処ぞの一室だった……。

 

 

 

 

 

譲信は全て…思い出した………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!もうお家に帰りたぁぁぁい!!ラスサバやっていたぁぁぁいぃぃぃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信の叫び声が紅魔館に大変よく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……………ここは人里から少し離れた外の何処か)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪1「ハァ…ハァ…ハァ…有り得ねぇ…!!有り得ねぇ…!!なんなんだよぉぉ……あの人間はなんなんだよぉぉ!!」

 

 

1匹の妖怪が何者からか逃げていた。

その何者かの正体は、妖怪の台詞からして人間のようだった。

 

 

 

妖怪1「おかしいと思ったんだよぉぉ…人間が一人で人里の外を歩き回るなんて……普通ならおかしい事だったのによぉぉぉ………ちくしょぉぉぉ…!!」

 

 

 

数分前、この妖怪は人里の外を出歩く人間を見つけた。

久しぶりのご馳走だ!!

と、大喜びで飛びかかった。

しかし……突如男の背後から現れた何者かに殴られ、酷い怪我を負ったが、何とか体が動き、命からがらその場から逃げ出した。

 

しかし、その人間かなり執念深いのか、背後の何者かと共に何処までも、何処までも、妖怪を追いかけてきた。

そして誰の目も届かないような森の中まで来てようやく、妖怪は逃げ切れたと…一息ついていた……。

しかし………

 

 

 

 

 

 

 

 

???「やっと見つけたよ……ふぅー……随分と手間をかけさせてくれたじゃあないか……」

 

 

 

妖怪1「ひ……ひぃぃ……!?何なんだよ……何でそんなに俺のことを追いかけてくるんだよぉぉ!?」

 

 

 

妖怪は怯えて、男から距離を取ろうとするが、恐怖で体が思うように動かない。

 

 

 

???「何で?……決まっているだろ?…君は私を殺そうとした……一度自分を殺そうとした相手を……みすみす見逃すような善人がそうそう居るだろうか……?いいや、居ないね……」

 

 

男はゆっくりと妖怪の回りを歩き出す。

 

 

???「この幻想郷に生まれて数十年…私は常に心の平穏を願い、勝ち負けにこだわったり、頭をかかえるようなトラブルには関わらないようにしてきた……激しい喜びもなければ、その代わり深い絶望もいらない……植物のように平穏に生活する事が私の唯一の願いなのだよ…分かるかね?」

 

 

妖怪1「あ……あ…………」

 

 

???「つまり一度私を殺そうとした君の存在は私にとって大きな“トラブル”という訳だ…。また襲われるかもしれない…という恐怖に怯えながら過ごすのは…平穏な暮らしとは程遠い事なのだよ……」

 

 

妖怪の周りを一周してから、男は再び妖怪の少し離れた正面の場所に立った。

 

 

???「だから今から君を始末させて貰う…。今夜も安心して布団の中でグッスリと眠れるように……ね」

 

 

 

 

ドドドドドドド……

 

 

 

 

 

妖怪1「よ、寄るなぁぁぁ!!来るなぁぁぁぁ!!俺に近寄んじゃねぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

妖怪は必死に大声で叫んだ。

しかし、男は特に表情を変えたりする事は無かった……。

 

 

 

???「近付く……?そんな事言われなくてもしないさ……君は既に始末されているのだから…」

 

 

 

妖怪1「……え?」

 

 

 

そう言い残すと男は背を向けて元来た道を引き返し始めた。

呆気に取られる妖怪……しかし次の瞬間…

 

 

 

 

カチッ…ドッグォォォン!!

 

 

 

 

???「私がわざわざここまで来たのは……この目で直接君の死を確認する為…ただそれだけさ…」

 

 

 

 

妖怪の体は木っ端微塵に消し飛んでしまった。

断末魔の悲鳴を上げるような暇も無いほどの、一瞬の出来事だった……。

 

 

 

 

 

???「尤も……この幻想郷に生まれた時点で……平穏な暮らしとは随分と程遠いんだがね………お陰で毎日……深い絶望を抱くハメになっているよ……だが私は諦めないぞ……必ず平穏に暮らしてみせる……必ず……ね………」

 

 

 

男は片手に持っていた矢を握りしめ、そう呟いた……。

 

 

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 

 

 

 

 

 




うちの近所のTSUTAYA…何故かジョジョの漫画、6部だけ置かれてないんですよね……。
予約しないと購入出来ないんですよ(笑)
かなり面倒臭いです(笑)


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番外編 高木創也の奇妙な高校生活①

閃いて始めることにした番外編です。
短めの文章ですので、長文苦手な方でも気楽に読んでいただければ幸いです!!


……そして第六部ストーンオーシャンアニメ化決定ィィィ!!!
最高にハイってやつだぁぁぁぁ!!


譲信&ザ・ワールド

 

【挿絵表示】

 

 

 

僕がこの町に引っ越して来たのは今年の2月。

高校受験が無事に終わって、◯◯高校に今年の4月から通う事になった僕。

丁度僕のお婆ちゃんが◯◯町に住んでいたから、お婆ちゃん家に僕だけ引っ越した方が電車代も浮いて両親は助かる。

 

つまり僕は今、お婆ちゃん家でお婆ちゃんとの二人暮らしをしている訳だ。

あ、そういえば僕の自己紹介がまだだったね。

僕の名前は“高木(たかぎ) 創也(そうや)”。

何処にでもいるような普通の新高校1年生。

 

運動はあまり得意じゃないけど、人並み程度には出来る。

趣味は……うーん……漫画とアニメ鑑賞かな…?

ハハ…実はオタク発症しててね……。

こんな僕だから友達や、ましてや彼女なんて出来る訳がない……そう思いながら迎えた初日。

まさか、僕の身にあんな事が起こるなんて、この時は全く想像しておらず、僕はまだ慣れない道を歩いていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

不良1「おらドケ邪魔だ!!道の真ん中歩いてんじゃねーぞ!!」

 

 

不良2「おいオメー何コッチ見てんだよ?俺らに何か言いたい事でもあんのか?」

 

 

創也「い……いえ…!!そのような事は……」

 

 

登校初日、創也は同じ学校の制服を着た不良高校生2人のうち1人に絡まれてしまっていた。

 

 

創也(知らなかった……まさか僕の通う学校は地域の不良達が通う場所だったなんて……)

 

 

創也はその辺については、あまり調べずに進学してしまった事を、今更ながら後悔していた。

ひ弱でオタクな自分なんてイジメの良い標的になるかもしれない…それだけは何とかしたかった。

 

 

創也「お、同じ学校の制服を着ておられたので…気になってつい……」

 

 

不良2「あー?…あぁ、お前も◯◯高校か」

 

 

不良1「おーそうか、それなら俺ら仲良くしねーとなぁ?」

 

 

そう言って不良1は創也の肩に腕を回した。

 

 

創也「あ…はい…!!僕は高木創也って言います!!よろしくお願いします!!」

 

 

不良1「ヨロシク~…ところでさ、俺らちと今日の昼飯代が無くて困ってんだよね?」

 

 

創也「…………え?」

 

 

不良1は創也の下げていた鞄に手を掛けた。

そして不良2もニヤニヤしながら創也に話し掛ける。

 

 

不良2「俺ら今日から友達じゃん?だから金貸してくれよ」

 

 

創也「え………いやでも……」

 

 

不良1「良いから貸せって!!」

 

 

不良1は嫌がる創也から無理矢理鞄をひったくると、鞄を開けて逆さまにし、中に入ってた物を地面に全てぶちまけた。

 

 

創也「…あ!!」

 

 

不良1「アン?何だこりゃ?」

 

 

しかし、中から出て来た物は不良達が求めていた財布では無かった。

水筒、教科書、筆記用具、お弁当の入った袋、そして“ジョジョの奇妙な冒険”数十冊だった。

 

 

不良2「こいつ財布持ってねーじゃん…それに何の漫画だ?…ジョジョの奇妙な冒険…?…はぁ?くだらねぇ!!」

 

 

 

グシャッ!!

 

 

 

不良2は創也の漫画を踏みつけて、ぐしゃぐしゃにした。

 

 

創也「そ…そんな!?僕のジョジョが!!」

 

 

不良1「ハハハ!!ひっでぇ~♪やめろよー」

 

 

そう言いながら不良1も漫画を不良2と同様に踏みつけてぐしゃぐしゃにした。

 

 

創也「やめて……やめてくれ…!!」

 

 

創也は涙を浮かべながら不良達の足にしがみつくが、軽く蹴り飛ばされ尻餅をついた。

周りの学生達はそんな一部始終を見ていながらも、巻き込まれたくない一心で創也の事を、見て見ぬふりをしていた。

 

 

不良1「何だよ?あ?文句あんのか?おい」

 

 

創也「う………うぅ……」

 

 

不良1「文句あんのかって聞いてんだよぉ!?何がう……だこの野郎!!」

 

 

創也は不良1に殴られ、胸倉を掴まれてしまった。

初日から不良達にイジメられて、創也は涙を止められなかった。

 

 

不良2「ハハハ!!そいつ泣いてるぜ?よーし、漫画全部オジャンにしてやろうじゃんか!!」

 

 

グシャッ!!グシャッ!!

 

 

不良2は笑い声を上げながら次々と漫画を踏みつけていく。

酷い光景だった。

それでも誰も彼もが見て見ぬふりをする。

創也は悔しくて悲しくて、奥歯を噛み締めた。

 

 

 

「おいテメー…」

 

 

不良2「アァ?」

 

 

その時不良2の肩を誰かが掴んだ。

妙に怒気の籠もった声に、不良2は振り返る。

その瞬間

 

 

 

バキィ!!

 

 

 

不良2「ぶげぇッ!?」

 

 

不良2は突如現れた別の不良に殴り飛ばされた。

盛大に鼻血をぶちまけて、地面を転がる。

 

 

「舐めた真似してんじゃねーぞ!?その漫画はそいつの物だろうが!!それに……テメーら……よりにもよって……ジョジョをそんな汚ぇ足でグシャグシャにしやがってぇ………」

 

 

不良2「ぶぐっ……!?」

 

 

謎の不良は、不良2の頭を思い切り踏みつけて、気絶させた。

 

 

「テメーら二人まとめて処刑だゴルァ!!」

 

 

不良1「う……うわぁぁぁ!?」

 

 

 

 

謎の不良は不良1にも殴り掛かった。

そして数分後…

 

 

 

 

 

不良1、2「…………」チーン

 

 

二人とも仲良くボコボコにされ、並んで気絶して倒れていた。

謎の不良は未だ尻餅をついたまま、唖然としている創也に手を差し伸べた。

 

 

「大丈夫か?お前、殴られてたけど…まだ痛むか?」

 

 

創也「大丈夫……あの………助けてくれて…ありがとうございます……!!」

 

 

「礼なんていらねー…気にすんな!!それと…俺とお前は同じ高1だろ?だから敬語なんか使わなくて良いって!!」

 

 

創也「あ……う、うん」

 

 

「…にしてもこりゃヒデェーなぁ…もう読めたモンじゃあないぜ…」

 

 

謎の不良は、グシャグシャにされた漫画を手に取ってみるが、漫画は相当ボロボロになっていた。

創也はそんな謎の不良を観察する。

 

金髪、赤っぽい瞳、改造された制服。

創也の制服の面影があるので、恐らく同じ学校通いだろう。

不良だが、どうやら悪い奴には見えなかった。

 

 

「これは……四部だな。お!!…お前、もしかしてジョジョ好きか!?」

 

 

謎の不良は突如、創也に迫る。

 

 

創也「え…うん、そうだよ。ジョジョは面白いからね。僕の一番好きな漫画さ」

 

 

キョドリながらも、創也は答えた。

すると、謎の不良はみるみる楽しそうな笑顔になっていく。

そして

 

 

「おぉマジか!!俺もなんだよな!!俺もジョジョ好きでよ、ハハハ!!こりゃあ良い!!初日から仲間発見だぜ!!」

 

 

そう言って創也の肩に腕を回した。

 

 

「創也だっけ?お前、何部が好きなんだ?」

 

 

創也「僕はやっぱり5部かな。そういう君は?……というか君の名前は?」

 

 

「そうそう…名乗り遅れて悪かったな……」

 

 

不良は一旦、創也から離れて向き直った。

 

 

 

譲信「俺は空条 譲信!!三部の主人公と同じ姓を持つジョジョラーだぜ!!当然、俺が好きなのは三部だ!!」

 

 

よろしくなッ!!

 

 

 

 

 

そう自己紹介した彼…空条譲信。

そう、この日僕は彼と出会った。

漫画の主人公と同じ姓を持ち、そして何処か不思議な雰囲気を放つ不良の彼と、何処にでもいるようなオタクの僕。

 

実に奇妙な出会いだった。

そしてこれは、これから始まる僕達の奇妙な高校生活の始まりでもあったんだ。

一生忘れることのない思い出……それを僕はこれから、ここに記して行こうと思っているよ…!!

 

 

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 

 

 

 



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⑲紅魔館調査…その①一番恐いのはフランちゃん

投稿少し遅くなっちゃいました。
申し訳ない。
休みが明け、忙しくなったのと、なろうでまた新しい作品を出すために執筆中なのです…。
しかし、その間も感想をたくさんの人に貰えて、めちゃくちゃ嬉しく思っております!!

リアルは頑張る。なろうも頑張る。この作品も頑張る。
どれもやらなくっちゃあならないのが幹部(なんのだよ?笑)の辛い所です…!!





空条譲信は、ようやく意識を取り戻し、全てを思い出した。

そして、譲信は叫び声を上げた。

 

 

譲信「いででででででーーー!?」

 

 

譲信は全身を駆け巡る激痛に、目に薄らと涙を浮かべた。

 

 

咲夜「譲信さん!?」

 

 

そこへ咲夜が慌てた様子で部屋の中へ入ってくる。

 

 

譲信「あが……が………ひ……ひでぇー目に合ったぜ…」

 

 

一先ず一命は取り留め、命に別状は無い譲信の様子を見て咲夜はホッ…と胸を撫で下ろした。

 

 

咲夜「ホッ………手当が間に合って本当に良かったです……。譲信さん、何があったか覚えていますか?」

 

 

譲信「覚えてるも何も……今さっき全部思い出したぜ………痛つつ………で、フラン。いつまでそこに隠れてんだよ?」

 

 

譲信がそう言うと、フランが少し震えながら隠れていた咲夜の後ろから出て来た。

譲信は自力では起き上がれない為、スタンドの力を借りて、体を無理矢理起こし、フランと目を合わせようとする。

しかし、フランは俯いたまま譲信と目を合わせようとはしなかった。

 

 

譲信「……フラン?」

 

 

フラン「……………ッ!!」

 

 

フランの足元に水滴が落ちる。

フランが顔を上げると、その瞳からは大粒の涙が溢れ出ていた。

 

 

フラン「ごめんなさい!!ごめんなさい!!フランのせいで…フランのせいで大怪我させて……本当にごめんなさい!!……うわぁぁぁん……!!」

 

 

咲夜「妹様……!!……譲信さん…お願いします。どうか妹様の事を許しては頂けないでしょうか……?」

 

 

フランと咲夜は、必死に譲信に頭を下げる。

特にフランに限っては、もう見てもられないくらいに、震え、泣きながら頭を下げていた。

 

そんな二人の様子を見て、譲信はしばらく呆気に取られていたが、やがて短くため息を漏らすとベッドから静かに降りた。

………そう、降りたのである。

 

 

譲信「おいおいおいおい……お二人さんよぉ。大怪我ぁ?そりゃあ一体何の事だぁ?訳が分かんね~な~」

 

 

咲夜「で……ですから、妹様のせいで………て、え!?」

 

 

フラン「……………ッ!?え!?」

 

 

咲夜とフランは同時に驚く。

何と、全身傷まみれ、包帯まみれ、複雑骨折で動ける筈が無かった譲信が元のピンピンした姿で目の前に立っていたからだ。

 

二人は目を見開いてしばらくそこに固まってしまう。

 

 

譲信「良いか~?俺は怪我なんてしてねぇ…それが今の“真実”だ。…それにだフラン。お前は泣くより少しは喜んだらどうなんだ?」

 

 

フラン「……え?」

 

 

譲信が一体何を言ってるのか理解出来ない……。

そんなフランの頭を譲信は優しく撫でた。

 

 

譲信「考えてみろよ~。お前は幻想郷に来て、数々の強敵達とやりあって未だ無敗のこの空条譲信様に初めて勝つことが出来た存在って訳だぜ?だから笑っとけ♪その方が俺も張り合いが出るってもんだ!!」

 

 

そう言うと譲信は愉快そうにカッカッ♪と笑った。

微塵も怒ってるような素振りも気にしてるような素振りも無かった。

 

 

フラン「お兄様………」

 

 

その時フランは静な声で呟いた。

 

 

譲信「………アン?」

 

 

そして譲信は辺りをキョロキョロと見回す。

 

 

譲信「フラン、お前には兄貴もいたのか?そのお兄様って奴は何処にいるんだよ?異変の時には見掛けなかったから挨拶ぐらいしとかねーとな」

 

 

咲夜「あ……あのー…譲信さん。その……妹様がお呼びになっているのは……」

 

 

咲夜が何かを言い終わる前に、フランは譲信に飛びついた。

ただし、今度は譲信は吹き飛ぶことなく、ちゃんと力加減も調整されていた。

 

 

譲信「………!!?」

 

 

フラン「お兄様ーーー!!」

 

 

譲信「………。……えぇぇぇぇーーーーー!?

 

 

フランは譲信に飛び付き、お腹辺りに顔を埋め、すりすりしてくる。

流石に譲信にも分かった。

 

 

譲信「俺の事かよぉぉッ!?」

 

 

フラン「そうだよ?…エヘヘー…お兄様~♪」

 

 

譲信「何で……!?何で……!?」

 

 

助けを求めに咲夜の方を見るも、咲夜に視線を逸らされ、譲信は軽く絶望した。

 

 

フラン「だってお兄様はフランとお姉様の事を助けてくれたし、今もフランの事を笑って許してくれたし、強いし、カッコイイし……だからお兄様はフランのお兄様なんだよ♪」

 

 

譲信「お………う……(いやいや理解不能!!理解不能!!何だよこの状況は!?マズイぞ……これじゃあロリコンって勘違いされる率が高いぞ!?何とかして…フランを引き剥がさねば…!!)」

 

 

譲信「フ…フラン……落ち着こうな!!」

 

 

譲信はフランの両肩を掴んで、引き離そうとする。

ところが

 

 

フラン「え………?嫌なの………!?」

 

 

フランは今にも泣きそうな顔で譲信の事を見上げた。

 

 

譲信「ア……スイマセン……ツヅケテクダサイ……(無理……流石にこれ以上は泣かせられねぇ……落ち着け…落ち着くのはお前だ譲信……たかが子供じゃあないか!!…そう、普段通りやましい心の無い俺でいれば、何も問題は無いのだ!!)」

 

 

譲信は必死に自分に言い訳を言い聞かせるが、そんな事で状況は変わりはしない。

フランを引き剥がそうとした結果、更にフランにホールドされてしまう形となった……。

 

そんな時だ。

譲信の頭の中で、中々の年層のとある男の顔が浮かび上がってきた。

え……誰だ……?

と、譲信が戸惑う中…頭の中に現れた男は、譲信に言葉を送る。

 

 

『何?フランが離してくれない…?それは無理矢理引き剥がそうとするからだよ………逆に考えるんだ。抱きつかれても別に良いさと………』

 

 

譲信(え…………マジで言ってんの?)

 

 

それだけ言い残して、譲信の頭の中から男は消えていった……。

譲信はフランを見下ろす。

……相変わらず抱きついたままだ。

 

 

譲信(………やるしかない……)

 

 

普通の人間ならば、いきなり幼女に抱きつかれ、周りに勘違いを生みかねない状況ならば、すぐさま全力でその幼女を引き剥がそうとするだろう。

 

しかし!!この空条譲信は違った!!

なんと、この空条譲信は逆にフランをさらに引き寄せたのだ!!

頭の中に出てきた男の言葉を信じたのだ!!

 

 

フラン「え…え…?お兄様…?」

 

 

するとどうだろう…フランの顔はみるみる赤くなり、譲信をがっちりホールドしていたその力は一瞬、完全に抜けて譲信は自由が効くようになった。

その一瞬をこの空条譲信は見逃さない!!

 

 

譲信「世界(ザ・ワールド)”!!止めろぉぉッ!!時を止めるんだぁぁぁッ!!

 

 

 

ドォーーーーーーーーーン!!

 

 

 

譲信は“世界”の能力を使い、瞬時に時を止めた。

そして、無事にフランの拘束から抜け出し、止まったこの世界を認識出来ている咲夜の隣まで移動する。

 

 

譲信「………よくも見捨ててくれたな。ド~モアリガト~スバラシイココロガケデスネ~…」

 

 

と、言いながら譲信は明らかに恨みの感情が籠もった目で咲夜を見つめた。

 

 

咲夜「申し訳ありません……私めの立場上、嫌がる妹様を無理矢理引き剥がす事は出来ませんので……」

 

 

咲夜は本当に申し訳なさそうに譲信に頭を下げていた。

そんな咲夜の謝罪を受けて、譲信は少し拗ねたように咲夜に声をかける。

 

 

譲信「別にもう良いですよーだ。…あと8秒しかない。俺は今から遠くに逃げるから、時が動き始めたらフランのお世話はよろしく頼んだぜ~」

 

 

言うなり譲信は駆け出して部屋から出て行く。

 

 

咲夜「え!?待ってください!!そんな事したら妹様がぁーー!!」

 

 

咲夜は譲信を呼び止めるべく、必死に叫ぶが譲信は知らんぷりをしたまま走り続けた。

何せ時間が短いのだ。

相手はフランだ。

下手に中途半端な距離ではすぐに追いついてきて、今度こそ絶対に離してはくれないだろう。

譲信も譲信で命懸けの逃走だったのだ。

 

 

譲信「うおぉぉぉぉぉぉ!!後2秒!!どうするぅぅぅぅぅ!!」

 

 

その時、角を曲がった所で扉が見えた。

時間ももう無い。

譲信はそこの部屋に隠れて何とかやり過ごそう…と考え、その部屋の中に飛び込んだ。

 

 

譲信「ハァー…ハァー…時は…時は動き出す……!!」

 

 

それと同時に時は動き出した。

 

 

譲信「へ……へへへ……逃げおおせてやったぞ……!!」

 

 

レミリア「うー……うぅーん……ムニャムニャ……しゃくやぁ…?」

 

 

譲信「ッ!?」

 

 

譲信はその場に固まった。

今、聞こえた声は……聞き間違いでなければレミリア・スカーレットだ。

 

しかし……何だ?

やけにムニャムニャしたような眠たくなる声は。

 

譲信は部屋の様子をゆっくり観察する。

カーテンが閉まっており、薄暗い部屋。

机や椅子……等があり、それと………大きなベッドがあった……。

 

そして、そのベッドの上で半身をムクリと起こしたレミリアと譲信は、しっかりと目が合ってしまった……。

 

 

譲信「…………」

 

 

レミリア「…………」パチクリ…

 

 

譲信「…………」

 

 

レミリア「…………」オメメパチパチ……

 

 

譲信「…………」

 

 

レミリア「…………」ジー…

 

 

譲信「…お……お邪魔してまぁ~……す……」

 

 

 

 

 

レミリア「さ…………」

 

 

譲信「さ…?」

 

 

レミリア「さくやぁぁ!!さ…ムグ!?ムググー…!?」

 

 

大声で咲夜を呼ぼうとしたレミリアの口を、譲信はすぐさま手で塞いだ。

今現在、譲信は非常に焦っており、冷や汗が出ていた…。

 

 

譲信「シーッ!!やめろ!!やめてくれ!!今は誰も呼ばないでくれ…!!あんたの妹に見つかったらヤベーんだよぉ……………」

 

 

レミリア「ムググ…モゴモゴ……ウー☆!!」

 

 

少し苦しいのか、レミリアは譲信の手をペチペチと叩きだす。

 

 

譲信「ア……悪ィ。じゃあ手を離すけど……叫ばねーな?」

 

 

レミリア「ウー!!ウー!!」

 

 

レミリアはコクコクと頷いた。

譲信はならよし!とレミリアの口を塞いでいた手を離した。

 

 

レミリア「プハッ…!!一体何があったのよ…!?…というか貴方…大怪我してベッドに運ばれていたんじゃ……?」

 

 

譲信「手短に説明するッ!!」

 

 

いきなり部屋に現れ、いきなり口を塞いできた、不審すぎる譲信に向かって怒るレミリアを、譲信は宥める事もせずに理由を説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(譲信説明中……長いぞッ!!キングクリムゾン!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「……つまりはフランが貴方に、相当迷惑を掛けている…という事ね……はぁ……」

 

 

譲信「EXACTLY!!」

 

 

一連のフランとのやり取りを聞いて、レミリアはため息をついた。

自分が寝ていた…たった数時間の間に、よくもまぁややこしい状況になったもんだと呆れていたのだ。

 

 

レミリア「色々とフランが迷惑を掛けたようで…悪かったわね。私からフランにはきつく言っておくわ。それより、本当に怪我は大丈夫なのよね?」

 

 

譲信「勿論!!このとぉ~りピンピンしてるぜ~!!」

 

 

譲信は両手を大袈裟に広げて無傷を主張してみせた。

 

 

レミリア「どうやら本当に治っているようね……流石に驚いたわ」

 

 

あれだけの怪我を一瞬で治せてしまう能力にも驚きだったが、レミリアが何より最も驚いていたのは、全身の骨がほぼ砕け、内蔵もいくらか破裂した状態でも生きていた、譲信の人間とは思えぬ底知れない生命力だった。

 

 

レミリア「そうね……貴方、しばらくここから出られないのでしょう?」

 

 

譲信「ん?まぁな。次フランに見つかったら…ちょっと怖ぇし…」

 

 

レミリア「それなら少し私と話でもして、時間を潰すのはどうかしら?紅魔館の主との1対1の対談よ?調査をする貴方にとっては絶好の機会だと思うのだけれど?」

 

 

レミリアは椅子に腰掛けた。

椅子はもう一つ、レミリアの正面にある。

互いに腰掛けてゆっくり話そう…という訳だ。

 

 

譲信「良いぜ。その提案…乗った!!」

 

 

そして譲信はその椅子に腰掛けた。

 

 

レミリア「予め言っておくわね。ここでの会話は二人だけの秘密よ。誰に何かを聞かれても、決して口外しないこと…互いにね……良いわね?」

 

 

譲信「オフレコってやつだなぁ?別に構いはしね~が…一体何の話をするつもりだぁ?」

 

 

 

 

 

レミリア「貴方…外来人よね?幻想郷に来てからどのくらいが経っているのかしら?」

 

 

譲信「ん~…そうだなぁ……一週間は経ってんじゃあないか?」

 

 

レミリア「へえ……そう……まだ1週間なのね」

 

 

レミリアは何かに納得したように、頷きながら呟いた。

譲信が外来人というのは、異変時の口振りや振る舞い、そして幻想郷の住人とは違う戦闘方法から、レミリアは予測がついていた。

というより、ほぼ確信していた。

譲信はあまりにも異質すぎたからだ。

 

 

譲信「それを聞いて何か意味あんの?」

 

 

レミリア「あら…?貴方は少し、自分の立場を客観的に見て、何か疑問に思ったりはしないのかしら?」

 

 

譲信「疑問~~?」

 

 

レミリアにそう言われて譲信は数秒考える。

そして答えがすぐに出て来た。

 

 

譲信「そうだ…言われりゃあかなり不思議な事じゃあないか…!!」

 

 

レミリア「分かったようね。そうよ…貴方は日も浅いのに…「何故か幼女に懐かれる!!」………は?」

 

 

譲信「何故か幼女に懐かれるんだよな!!」

 

 

譲信は大真面目に答えていた。

真面目な顔で答える譲信を見て、レミリアは呆れて口をポカーン…と開いていた。

 

 

譲信「こいしにフラン…特に何かしてやってる訳じゃあないのによぉ、やたら俺に付いて回りやがるからなぁ~……ホ~ント疑問で仕方がねーよ。それに俺はロリコンじゃあねぇ……どっちかと言うと年上の、大人びた雰囲気の人が好みだ!!ただし、熟女も好みじゃあねぇ…。あくまでお姉さん系じゃなきゃあ俺は認めねぇ!!良いか…?男ってのはなぁ~格好つけたがる生き物だ。けどよ、だからこそ何処かで癒される場所を求めているんだよ。それが俺の場合はだな、」

 

 

レミリア「違うわよッ!!」

 

 

絶対長くなる。

興味も無い事を延々と語り出そうとする譲信に向かって、レミリアは叫んだ。

 

 

譲信「違うのかよぉ!?」

 

 

レミリア「どう考えても違うでしょ!?」

 

 

譲信「あぁ~?じゃあなんだってんだよ?」

 

 

レミリアは短くはぁ…と、ため息をついた。

 

 

レミリア「幻想郷に来て僅か数週間程度の外来人が何故、幻想郷の賢者八雲紫から異変解決に携わる仕事を直々に任されているのか………疑問にはならないかしら?」

 

 

譲信「……」ギクリ…

 

 

レミリアの言葉を聞いた譲信は固まってしまった。

しかしレミリアは構わずに言葉を続ける。

 

 

レミリア「そして何故、系統の違う複数の能力を有しているのか……何故、ただの能力持ちの人間であるのにかも関わらず、妖怪相手に“弾幕勝負”ではなく“真剣勝負”で挑むのか……ね」

 

 

普通の人間であるなら、例えどんなに優れた能力を持っていようとも大物妖怪相手に“真剣勝負”なんて挑みはしない。

あくまで“弾幕勝負”、命の危険を脅かすことの無い範疇に収める筈だ。

それが幻想郷というものだ。

 

しかし、この空条譲信という男は違った。

妖怪だろうが何だろうが、相手が何者であれ“真剣真剣”を挑んでいたのだ。

そしてその戦い方も、幻想郷の住人とはまた違った異質さがあり、例えるなら…幻想郷の住人は“あくまで勝敗を平和的に”決めるための戦いに対し、譲信のは“生き残る為の手段を選ばない”…本当の殺し合いに近い物だと…、レミリアにはそう見えていた。

 

 

レミリア「……貴方。一時は八雲紫に殺されそうになったのでしょう?」

 

 

譲信「ッ!?」

 

 

譲信は口には出さなかったが、表情は分かりやすく、何故その事を知っている!?と、言ってるのが見てとれた。

 

 

レミリア「……やはりね。という事は………成る程ね、確信に変わったわ。貴方のその奇妙な能力は……“程度”の能力とは全くの別物の能力……そうでしょう?」

 

 

どうだ?と言わんばかりにレミリアは譲信の目を見つめた。

丁度部屋が薄暗かったので、譲信にはレミリアの深紅の瞳が妖しく光って見えていた。

 

 

 

 

譲信「………全く…やれやれだぜ。ポンコツな奴だと思ってたら、実は結構勘の良い奴だったんだなぁ。……理解したぜ。トボけた所で無駄だってのが今、ハッキリとな」

 

 

譲信は降参だと言わんばかりに、わざとらしく両手を上げてから頭の後ろに組んだ。

 

 

レミリア「思ったより随分潔い良いのね?てっきりもう少し追い詰めないと認めないとばかり思っていたわよ」

 

 

譲信「無駄な事は嫌いなタチなんでな。それに、諄いのは男のする事じゃあねぇ。何より今更、バレても特に問題はねぇよ。…こんくらいの事はあの人…紫さんなら折り込み済みだろうよ。だからこそ俺をこの立場に立たせたんだ。……俺の意見は聞かずにな♪」

 

 

レミリア「という事は、いくつかは質問に答えてくれる……と受け取って良いのかしら?その能力は一体、どういった物なのか…ね。“程度”の能力とはまた異なった異能……実に興味深いわ」

 

 

レミリアは少しだけ身を乗り出す。

譲信は相変わらず、砕けた態度のままレミリアの目を見つめた。

そして口を開いた。

 

 

譲信「良いぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「ただし、タイマン張って俺に勝てるなら…だ。」

 

 

 

レミリア「…………へぇ?」

 

 

瞬間、部屋の空気が変わった。

レミリアからピリピリした気配が漂う。

しかし、強者からの威圧にはすっかり耐性がついてしまっていた譲信は、今更それにビビるような事は無かった。

 

 

譲信「俺も学んだのよ。ベラベラと人に手札を教えるのは賢い者のする事じゃあないってな。それに紫さんも仕方無い事とは言え、あまり幻想郷に俺の能力についての情報は広げたく無いだろうよ。…つーわけで、俺は俺に勝てる恐ぇ奴にしか秘密は話さねー事にしたぜ」

 

 

また雰囲気が変わる。

更にレミリアの機嫌が悪くなったようにも見えた。

 

 

レミリア「つまり貴方は………私じゃ貴方には勝てないと……そう言いたいのかしら……?」

 

 

レミリアは睨みを効かせてそう言った。

それでも譲信は微塵も動じたりはしない。

明らかにレミリアの事を自分よりは強くないだろうと、余裕を持っている態度だった。

しかし、レミリアに言われて次に譲信が放った言葉は意外な物だった。

 

 

譲信「そうは言いたくねーな。奴に勝てるとか、勝てないとか、それを決めるのは敵じゃあねぇ。自分自身だ。闘争心がある限りは牙ってのはいくらでも磨きようはあるだろうよ。レミさんよ、あんたはどう思ってんだ?あんたの本心はまだ、俺に勝てる…と言ってくれちゃあいるのか?」

 

 

レミリア「……」

 

 

レミリアは威圧を解き、少しだけ考える。

そしてすぐに口を開いた。

 

 

レミリア「…いずれは貴方を越えてやるわよ…貴方がまだこの世にいる内にね」

 

 

譲信「ならなんとかなるかもな。ただし的外れな努力はするなよ?」

 

 

レミリア「?」

 

 

譲信「単純にパワーを鍛える。能力を更にコントロールしたり、覚醒させたりする……なんて事をしてる内はロクな成長なんて出来ねーぜ?俺達は戦闘の天才じゃあ無い。恵まれた身体だとか、頭だとか、そんなモノ持っちゃあいない“ただの強い奴”なだけだ。そういう奴は一度負けたらマンガの主人公のするような努力なんかじゃあ絶対に強くはなれねぇ。インフレだとかで負けが付き纏うだけだ」

 

 

譲信「じゃあどういった努力をすれば良いのか?簡単だ。まずは自分が嫌となる程、ネガティブになっちまう程、負けた姿を思い出せ。そして考えろ。敵の何が強かったのかを。敵の何が一番マシだったのかを。その二つが分かったら次はその中間辺りのそこそこ厄介だった箇所を思い出せ。……そここそが、敵が一番不得意とする部分だ」

 

 

譲信「一番強ぇ箇所は相変わらず強ぇままだし、一番弱ぇ箇所は何かしらの対策は絶対にしやがるし、克服だってするもんだ。だが、真ん中の箇所ってのはどうやっても鍛えようがねぇ。ほらここに咲夜ってメイドがいるよな?あいつは時を止めるって一番強ぇ長所がある。だが素手の攻撃がめっちゃ弱ぇ…そういう短所があるが、そこはナイフって便利な武器でカバーしてる訳だ。その中間に位置するのは、咲夜本体が同じく止まった時の中を動けるような敵と行う体術戦だ。咲夜は身体が人間だからどれだけ足搔こうと吸血鬼であるあんたら姉妹や妖怪門番には遠く及ばねぇ。ある程度達すれば鍛えようがねーのよ。つまり、そこを突かれちまったらめっぽう弱いって訳だ」

 

 

譲信「同様に、これと同じ三パターンを持ってる奴は、強ければ強いほどに多い。そしてその箇所だけを狙うなら別に強くなんてならなくても、ある程度の策略や、知恵や、手札を増やしたりすれば、すぐに優位に立つことが出来るぜ。ガチに強ぇ奴ってのはそれを理解して、いかに自分のそれを隠し、いかに敵の本質を見抜いてそこを突けるような機転を効かせられるか……それが実戦で出来てしまう奴だ」

 

 

レミリア「……えと……な、成る程ね!!」

 

 

長い説明に少し理解が遅れたレミリアだったが、身内の従者を例にあげた分かりやすい説明の箇所から、譲信の言ってることを大体理解していた。

 

レミリアは改めて思う。

譲信は戦闘慣れし過ぎじゃないのかと。

言うのは簡単。

理解も簡単。 

とても理屈が通っているやり方だ。

しかし行うには中々に難度が高い。

だが、これまでの譲信戦を振り返ると…成る程。確かに、相手の微妙な箇所を突き、ある程度の機転も効かせている。

 

一体、何をどれだけ経験すれば僅か数十年のキャリアでここまでの域に達することが出来るのか…レミリアは今度は譲信自身に興味が湧き始めていた。

 

 

譲信「さーて、理解はして貰った所で…今度は俺から話を始めるとするか」

 

 

一つ話に区切りがついた所で、唐突に今度は譲信が切り出した。

 

 

レミリア「そうね。良いわよ。答えられる範囲でならなんでも答えてあげるわ」

 

 

レミリアは少々慌てて姿勢を戻し、余裕ある威厳に満ちた態度で構えた。

 

 

譲信「すっごく単純な疑問だ。しかし、考えれば考える程に分からなくなって来る……俺は、俺という人間の想像力の限界に、ちょっとした敗北感まで感じたぜ…」

 

 

レミリア「へぇ?…一体何が疑問なのかしら?貴方がそれ程に悩む何か……逆にこっちが不思議になってくるわね……」

 

 

譲信「これは…あんたら吸血鬼でしか答えられないような……そんな物だと判断した。教えて欲しい…気になって夜も眠れやしねぇからな」

 

 

レミリア「言ってみなさい」

 

 

譲信のあまりの真剣な眼差しに、レミリアもまた真剣な気持ちで向き合った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「服着る時、そのデカイ翼邪魔だよな?どうやってその問題解決してんの?」

 

 

 

 

レミリア「………………は」

 

 

 

譲信「………は?」

 

 

 

レミリア「はぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

レミリアの呆れから来る叫び声が響いた。

 

 

 

譲信「ちょ…!?うるせぇーー!!フランに見つかったらどうすんだぁ!?」

 

 

レミリア「知らないわよッ!!それより何よそのくっだらない疑問は!?真面目に構えて損したじゃない!?このバカ!!」

 

 

一瞬でも真剣になった自分が馬鹿らしく思え、レミリアは少しだけ不機嫌になってしまっていた。

というか段々腹が立ち始めている。

実は弄ばれているんじゃないかと……。

 

 

譲信「誰がバカだと!?つーかくだらないだと!?うるせー!!こういう微妙な疑問が案外頭にはこびり付くモンなんだよ間抜けがッ!!」

 

 

レミリア「間抜けですってッ!?誰に向かって口を聞いてるつもりよ!!」

 

 

譲信「お前だよレミべえ!!このアンポンタン!!ポンコツ姉ちゃん!!」

 

 

レミリアにバカと言われて、想像以上に腹が立っているのが今の譲信だった。

 

 

レミリア「レミべえ!?気安く巫山戯た呼び方してんじゃないわよ!!この………ロリコン!!」

 

 

 

譲信「ロリコンじゃあねーって言ってんだろうが!!このシスコン野郎ーッ!!」

 

 

レミリア「言ったわね!?じゃあこっちも最終手段よ!!」

 

 

譲信「何だぁ?タイマンでも張ろうってかぁ?」

 

 

譲信は拳を構えた。

が、レミリアは譲信に向かう事はせずに、部屋のドアに近付いた。

そして…

 

 

 

 

 

レミリア「フラーーーン!!譲信なら私の部屋にいるわよーーッ!!」

 

 

 

そう叫んだ。

瞬間、譲信の顔が真っ青になった。

 

 

 

譲信「バ……バカ!!お前…!!それはヒキョーだぞ!?」

 

 

 

レミリア「卑怯……?フフフフフ…実に人間臭い考え方をするのね……つくづく愚かだわ……」

 

 

譲信「何ィ!?」

 

 

レミリア「課程や方法なんてどうでも良いのよ……最終的に……勝てば良いのよッ!!」

 

 

譲信「や……野郎ッ!!」

 

 

 

レミリア「フフフフフ!!さぁフラン、ここへいらっしゃい!!貴女が探している男はここよッ!!」

 

 

譲信「やめろぉぉぉぉ!!」

 

 

譲信はレミリアを止めるべく、レミリアに向かって走り出す。

しかしレミリアは勝ち誇った笑みを浮かべていた。

 

 

レミリア「もう手遅れよ!!フランはすぐにここへ来るッ!!そして惨めな姿を晒すが良いわ譲信!!あなたの負__バァァン!!ぶっ!?」

 

 

譲信「ッ!?」

 

 

 

レミリアが煽り終わる前に、レミリアの背後にあったドアが恐ろしい速さで、物凄い音を立てて開き、ドアに直撃したレミリアは壁にめり込むようにして吹き飛ばされた。

そして………

 

 

 

 

 

あは…♪

 

 

 

 

 

 

ゾクゥ…………ッ!!

 

 

 

 

 

 

今一番、譲信が聞きたくなかった声が聞こえてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「…………フ……フランさん……?」ガクガク……

 

 

譲信はマズイ状況に、震えが止まらなかった。

 

 

フラン「あはは♪…お兄~様ぁ~…や~っと見つけたヨ」

 

 

譲信「お……おう……あ……あははは……」

 

 

フラン「ナンデニゲタノ?フランノコト嫌イジャナイッテ言ッタヨネ?」

 

 

フランの目から…光が消えていた………。

なんとまぁー……恐ろしい光景だった。

 

 

譲信「ゆ……許して……」

 

 

フラン「許ス…?アハハ♪別ニフランハ怒ッテイナイヨ?ナンデニゲタノッテ聞イテルダケダヨォ…?」

 

 

譲信「ひ………ひぃぃぃ………!!」

 

 

今すぐにでも逃げ出したいが、恐怖で譲信は体が動かない。

心なしか…今幻想郷で唯一、譲信を恐怖で追い詰められる存在がフランとなっていた……。

 

 

フラン「あ……そっか!!そういう事だったんだね!!」

 

 

譲信「……え?」

 

 

フラン「お兄様は照れてたんだね♪恥ずかしがり屋さんだったんだぁ♪」

 

 

譲信「いや……そういう訳でも……」

 

 

フラン「違ウノ!?

 

 

譲信「…………その通りです……」

 

 

フラン「あはは♪やっぱりそうなんだね♪」

 

 

下手な返事なんて出来ない。

ここでフランのご機嫌を損ねたらマズイ事になる。

……あそこでくたばってる奴みたいになる……と、譲信は視線を、壁に埋まって動かなくなったレミリアに向けた。

 

 

譲信(この役立たずぅ……姉なら妹くらい制御しやがれ……自分で呼んどいて秒殺されてんじゃあないぞ…!!このポンコツレミべえ!!)

 

 

フラン「お兄様!!」

 

 

譲信「は、はいぃ!?」

 

 

フラン「大丈夫だよ♪恥ずかしがらなくても良いんだよ♪……震えてるの………?大丈夫……すぐに落ち着くからね♪」

 

 

フランはゆっくり……ジリジリと譲信の方へ近付いて行く……。

譲信は後ずさりし、すぐに壁際まで追い詰められた。

 

 

譲信「あ……あ………あ………」

 

 

譲信の足は情け無いくらいにガクガクと震えている。

 

 

フラン「お兄様………モウ逃ガサナイヨ!?

 

 

フランは、譲信に満面の笑みでそう言った…………。

 

 

 

         

 

 

       

 

 

                

 

 

 

譲信「い…嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!誰か…誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇッ!!誰かぁぁぁぁぁ……………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信の悲痛な叫び声と、フランの笑い声が紅魔館に響き渡った……………。

 

 

 

TO BE CONTINUE………

 




オリジナルスタンド…そろそろ出してみようかな?
なんて思っております。
もし感想欄に、何かオリジナルスタンドの案を載せて貰えたりするなら、どんどん採用していこうかな?とかも思っております…!!(いや頑張れよ自分で《笑》)



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⑳人里バトルロワイヤル…その①吉良吉影

三名の方から早速スタンド案を頂き、マジ感謝の気持ちで一杯です!!
頂いた案は物語に登場させていこうと思っています!!
そして今回の話では早速、頂いたオリジナルスタンドの内の一つが登場します!!
それでは……どうぞッ!!


人里でつい最近話題沸騰中の“JOJOの何でも屋”。

今日は休業中で、社長である空条譲信は関係者以外には内密に、紅魔館調査の依頼を遂行中。

 

そんな“JOJOの何でも屋”の事務所である一軒家の近くに、そこそこの大きさで、そこそこの知名度のお店が建っていた。

 

その店は“縁”という名の工芸品店で、色々な職人の焼いた皿や壺などを売っている。

売れ行きはそれなりに良く、質の良い品である事から、人間は勿論、妖怪からも贔屓にされている店だ。

 

現在人里は昼の13:00。

他店と同じように、この店も昼休憩の時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性A「ねぇ吉良くん、私達とお昼…一緒にどう?」

 

 

“縁”で働く従業員の女性達。

主に接客を担当するのが彼女達だ。

今は昼休憩なので彼女達は何処かの店で昼食を取るつもりなのだろう。

その内の一人が、“吉良”という名の後輩を自分達の昼食に誘っていた。

 

“吉良”と呼ばれた青年はゆっくりと振り返る。

177~184くらいの高身長で、落ち着きのある大人びた雰囲気を放っている。

そこそこ彫りの深い顔つきで、青っぽい瞳に金髪。

最近人里で流行りの『すぅつ』と呼ばれる服装で、外来人から見れば一般のサラリーマンとほぼ見分けがつかない。

 

とても「美しい手」をしていて、女性から持てる顔つきをしている。

だが何処か平凡…そんな青年だった。

 

 

吉良「すみませんAさん…折角のお誘いは有難いのですが……この後、大切な友人との約束がありまして…申し訳ないのですがまた次の機会にお願いします」

 

 

女性A「そ、そう…それなら仕方ないね…!!また今度ね吉良くん!!」

 

 

吉良「はい…それでは失礼します」

 

 

静かに話す声と態度の吉良に、少し戸惑いながらも返事を返す女性A。

そんな女性Aに対し、吉良は用は済んだと分かると、さっさと何処かへと歩いて行ってしまう。

 

 

女性A「…………」

 

 

女性Aは静かに去って行く吉良の背中をボーッと見ていた。

 

 

店長「やめとけ!やめとけ!あいつは付き合いが悪いんだ」

 

 

女性陣「あ、店長さん!!」

 

 

そこへ“縁”の店長が、店の奥側から現れ、女性陣達に向かって話し出した。

 

 

店長「どこかに行こうぜっ…て誘っても楽しいんだか楽しくないんだか…」

 

店長「吉良吉影(きらよしかげ) 18歳独身仕事はまじめでそつなくこなす新入りだが、今ひとつ情熱の無い男…」

 

店長「なんかエリートっぽい気品漂う顔と物腰をしているため、女性従業員にはモテるが、店側からは書類の配達とか使いっ走りばかりさせられているんだぜ」

 

店長「悪いやつじゃあないんだが…これといって特徴のない……影のうすい男さ」

 

店長「……そう言えばあいつ…なんか最近雰囲気がちょっと変わったよな……休日に骨董市で古くさい観賞用の矢を買った時期くらいから……だったかな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザワ ザワ ザワ ザワ ワイ ワイ

ガヤ ガヤ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時間帯は人里のどこも結構人通りが多くなる。

特にいくつもの定食屋が並ぶ大通りは、大変混雑するのだ。

 

吉良は事前に家で、サンドイッチや弁当を作っている為、そんな人混みに混じってストレスを感じる事も無く、人気の少なく眺めの非常に良いお気に入りの場所に、静かに腰を降ろした。

 

先輩Aに友人との約束で断った吉良だったが、あれは誘いを断る為のその場しのぎの大嘘だ。

そもそも吉良吉影はなるべく孤独を好む男であり、友人はいない。

他人とは友情など芽生えない適度な距離を心掛けて、吉良は常日頃から接しているのだ。

 

 

吉良「ふぅー……全く鬱陶しい連中だ…。あんな騒がしくて品の欠いた連中らと休憩時間も同じ空間にいると、溜める必要も無い疲労とストレスを溜める事になるじゃあないか………全く……ただでさえ私は疲れているというのに」

 

 

吉良は本当に疲れているようで、短くも深いため息を一つ吐いた。

それから持参した、魚のフライを挟んだサンドイッチを取り出し、それを頬張りながら美しい景色を眺める。

そして時々、自分の美しい手も眺める。

この時間が吉良にとっては仕事中一番の至福だった。

 

 

吉良「美しい地だ…幻想郷。こんな素晴らしい地が他にあるかな………まるでピクニックに来てる気分だ……」

 

 

それから吉良は何を思ったのか、おもむろに胸ポケットから尖った物を取り出す。

よく見ると、それは矢の矢じり…みたいな物だった。

 

 

吉良「それにしてもまた随分と奇妙な物を手に入れてしまったな………まぁこの矢のお陰で、多少は理想的な平穏に近付けたような気はしなくも無いが………何か変なトラブルに巻き込まれそうな…嫌な予感もするな……コイツの存在はなるべく……いや…絶対に他人には知られてはいけない…」

 

 

吉良は静かに矢を見つめていた。

それから視線はすぐに、自身の美しい手に移る。

吉良は、今度は自身の美しい手をじっと静かに眺め出す。

 

 

吉良「………美しい……また一つスケッチでもするかな」

 

 

そう呟くと吉良は一旦矢じりを地面に置き、胸ポケットからまた新たに鉛筆とメモ帳を取り出し、早速自身の左手のスケッチを始める。

 

このように吉良は週に五回は自身の手のスケッチを行う、自身の手に酔いしれる極度な手フェチだった。

吉良が最も美しく思う究極形の手の形が、自身の手であるため、吉良は他人の手には全く目もくれない。

しかし、そのせいで吉良は他人には全く興味を示さなくなってしまっていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉良「ふぅ~……今日もまた、一段と美しく書けたぞ。フフフ…今度また新たに、スケッチを持って行って、模型でも作って貰うとしようかな……」

 

 

 

数分後、無事に手のスケッチを終えた吉良は満足そうに呟くと、メモ帳と鉛筆を胸ポケットに戻す。

それから矢じりも仕舞おうと思って、矢じりを拾うため、さっき置いた場所に視線を向けた。

しかし

 

 

 

吉良「……何ッ!?無いッ!?確かにここに置いたはず………何故……無くなっているんだッ!?」

 

 

 

確かに置いておいた筈のその場所から、矢じりは消えていた。

焦った吉良は慌てて辺りを見回す。

何か何処かに落ちてないか…と必死に探し回る。

そして

 

 

吉良「あれは……………ッ!!」

 

 

吉良は見つけた。

遠くの方に、野良犬が矢じりを咥えて走って行く姿を。

野良犬と吉良は一瞬目が合ったが、野良犬は別に吉良を気に留める事もなく、何処ぞへと走り去っていく。

 

 

吉良「しまった………夢中になりすぎて……クソ犬の接近に気付かなかったとは…………!!」

 

 

吉良は自身の痛恨のミスに少しだけむかっ腹が立ったが、すぐに気持ちを切り替える。

怒ったり後悔するのは後回しだ。

今は、何とかして野良犬から矢じりを取り戻さなくてはならない。

それが今、第一に優先させるべき事だった。

 

 

吉良「くっ………追わなくては……!!犬は足が速いからな……一度見失ったらもうどうしようもなくなる…!!」

 

 

吉良は逃がすまい、見失うまい、と全速力で犬を追いかける。

途中、すれ違う人からは犬を追いかける変な奴…みたいな目で見られるが、今はそんなことに構ってはいられない。

 

 

吉良(クソッタレが……こんな赤っ恥のこきっ恥を掻かされるとは……!!しかし、今はそれ所じゃあない……何せ、あの矢はマズイ……もし、どこかのどいつかが、あの矢に貫かれたのなら……マズイことになる…!!あの矢の存在を知られ過ぎると……私の平穏な生活は脅かされてしまう…!!)

 

 

吉良は時計を確認する。

休憩時間終了まで残り10分。

今から10分以内に、犬に追いつき矢を取り戻さなくてはならない。

かなりハードな状況だった。

 

 

吉良(最悪…可愛そうだが、クソ犬を殺す事も視野に入れておかなければならないな。全く……何故ただ“平穏な生活”を望む私が、こんな苦労をしなければならないのだ……!!)

 

 

女性A「あれ?吉良くん?…どうしたの?そんなに汗だくになって走って……」

 

 

吉良「!!」

 

 

そんな時、吉良が心の中で愚痴を溢しながら曲がり角から飛び出した先で、先程吉良を昼食に誘った女性従業員のAがいた。

 

 

吉良「何でも…無いですよ。………ちょっと…食後に走りたくなっただけですので………」

 

 

面倒なタイミングでAと会った事を忌々しく感じながらも、吉良は何とか平常を装って答えていく。

 

 

女性A「ふぅん……。まぁ別に良いんだけどね」

 

 

吉良「……では私はこれで……。失礼します…」

 

 

さっさと話を済ませ、吉良は再び野良犬を追いかけに走り出す。

……しかし、ここで問題が発生した。

 

 

吉良「し……しまった……!!見失った……………クソッタレが……あの女……いつも私の邪魔ばかり……!!」

 

 

だが絶望するにはまだ早い。

吉良は注意深く辺りを観察し始める。

ここは大通りで人通りも少しは空いてきた時間帯だ。

 

いくら走る野良犬といえど、数秒で見失うには逃げる場所は限られる。

数秒で吉良の視界から消えるには、狭い店も店の間の通路を通っていくしかないのだ。

 

 

吉良(通路の入り口近くの何処かに、クソ犬の足跡といった、僅かな痕跡でもあるならまだ何とかなるが……)

 

 

すると吉良は見つけた。

通路の入り口側の壁に、鋭い刃物のような物で一直線に真横に続く傷跡を。

 

 

吉良(これは……そうか。あのクソ犬…ここを曲がる時に少しだけ矢を壁に引っ掛けたのか……ということはこの先に逃げたようだな…!!)

 

 

やはり注意深く行動をすれば、チャンスはある…と、吉良は自分を奮い立たせながら、通路の奥に向かって走っていく。

中々に狭く、通るのはキツいが通れない事もなく、吉良はどんどん進んでいく。

 

 

鬱陶しい蜘蛛の巣を払い、落ちているガラス片やゴミに注意しながら進んでいくと、何やら人の声が聞こえてきた。

 

 

吉良(何だ……?)

 

 

よく耳を澄ますと、それは子供の声だった。

そして、近くで一瞬犬の鳴き声も聞こえたような…そんな気がした。

吉良はその場所へ、足音を立てないように気を付けながら、近付いていく。

 

 

 

 

少年「よしよし、エライぞペロ!!まさか矢なんて拾ってくるとは思ってなかったけど……これは結構高値で売れそうだね!!」

 

 

ボロボロで貧しい身なりをした少年がそう言うと、近くにいる吉良が追いかけていた野良犬がワン!!と一声吠えた。

そして、その少年の手にはしっかりと矢が握られていた。

 

 

吉良(何て事だ……野良犬かと思いきやあのクソ犬……あの小僧の所有物だったのか。……しかも、あの小僧…犬を使ってひったくりに近いことをやっているとは……)

 

 

吉良は考える。

もし、このまま少年の前まで出て行って、「その矢は私の物だ。返してくれ」と言った場合、どうなるかを。

 

 

吉良(そう簡単には返してくれそうにもないな……金銭の要求はされそうだし、無理矢理取ろうとすれば逃げられる可能性が高い………それなら多少の高額の出費を覚悟しなければならないか………まぁ別にそれは構わないのだが………)

 

 

吉良にとって問題は、取り返す際に必要になりそうな金額の問題とかでは無かった。

吉良にとって最も問題だった事は…

 

 

吉良(いずれにせよ…あの小僧に顔を見せなくてはならなくなる……あの小僧に、その矢の所有者が私であることを知られてしまうじゃあないか……)

 

 

そう…吉良にとって最も問題だった事は、その矢の所有者が、例え一人の子供だったとしても他人に自分だとバレてしまう事だった。

何せ、あの矢は色々と厄介な存在なのだ。

所有しているだけで、面倒事に巻き込まれてもおかしくない程に。

平穏を望む吉良にとって、面倒事とはどうしても避けたい物だった。

 

 

吉良(………作戦変更だ……。あの小僧とクソ犬にバレないように接近し…あの矢を奪い返す…!!)

 

 

吉良は物陰に隠れて、そのチャンスを窺うことにした。

 

 

 

 

少年「さぁペロ、家へ帰ろ!!」

 

 

ペロ「ワン!!」

 

 

そんなすぐ近くにいる吉良の存在に気付く事無く、少年はペロという名の犬と共に、家へ帰ろうとする。

 

 

 

吉良(良い気になりやがって……それは私の物だというのに…!!…………………………ん?)

 

 

 

吉良がイライラし始めたその時、吉良は少年と犬の傍へ、何者かが近付いて来ている事に気付く。

吉良に遅れて、少年も犬もその存在に気付いた。

その者に向かって警戒をする犬を見て、吉良は近付いて来る者は少なくともこの二人の知る者では無い…という事を推測していた。

 

 

 

???「こんにちは。ワンちゃんと少年」

 

 

姿を表したのは男だった。

見た目からして年齢は20代後半…そしてその男は、不気味な程、落ち着いた様子で少年に向かって挨拶してきた。

 

 

少年「だ、誰ですかあなたは!!」

 

 

いきなりこんな場所に現れて、話し掛けてきた男に少年も警戒心を露わにする。

 

 

???「おいおい…そんなに警戒しないでくれないか?挨拶ぐらい返してくれたって良いじゃあないか………おじさんの名前はね、緑山(みどりやま) 鈴久(りんく)と言うんだ……ま、君とは初対面の初めましてさんだよ」

 

 

少年「…………?」

 

 

少年は緑山と名乗った男の真意を掴めずに、訳の分からないといった顔をしていた。

隣では更に警戒心を高めた犬が唸っている。

 

 

緑山「おいおいおいおいおい……名乗り返してもくれないのか……。まぁ別に良いんだが……それよりもひとつお願いがあるんだよ」

 

 

吉良(………何だあの男は………)

 

 

少年「お願い……?」

 

 

吉良もまた緑山の事を警戒して用心深く観察していた。

 

 

緑山「そう……。おじさんはね、君の持ってるその矢が欲しくてたまらないんだ……譲ってくれないかなぁ?」

 

 

緑山は少年が持っている矢を指差しながらそう言った。

 

 

少年「え!?」

 

 

吉良(な……何だとぉ!?緑山鈴久という男…奴は一体何者だ!?何故あの矢を欲しがるッ!?)

 

 

予期しなかった状況に、吉良は焦り出す。

もしここで、少年が緑山に矢を譲ってしまった場合、取り返すのに更に難易度が上がってしまう。

そもそも、あの矢を欲しがるなんてどう考えてもおかしい…緑山の手に矢が渡るのはマズイ事になると、吉良は直感でそう思った。

 

 

緑山「さぁ譲ってくれよ…それは元々君の物じゃあないだろう?分かったならおじさんに譲ってくれよ……」

 

 

緑山は手のひらを向けながら、ゆっくりと少年に近付いていく。

 

 

吉良(やめろ……!!絶対に渡すんじゃあないぞ小僧ッ!!その矢は私の物だッ!!)

 

 

少年の背後の物陰に吉良、少年の前方に不気味な緑山…今この状況で、少年は二人から矢を巡って狙われていたのだ。

 

 

 

 

 

 

少年「こ…お断りします!!これは……僕とペロの物だ!!これ以上近付かないでください!!どうなっても……知りませんよッ!?」

 

 

少年は、緑山に矢を渡そうとはしなかった。

 

 

吉良(お前とクソ犬の物じゃあ無いッ!!私の物だと言っているだろ!!……しかし、それで良い……今はな……!!)

 

 

緑山「ほう……?渡す気は無いのか………で?……これ以上近付いたら……どうなるって……?」

 

 

緑山はそれでも止まること無くゆっくりと、少年に近付いて来る。

少年は僅かに後ずさりした。

 

 

少年「ッ…………あなたが悪いんですよ………ペロッ!!」

 

 

ペロ「グルルルルルァ!!」

 

 

 

 

ガリィィッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年に名を呼ばれて、ペロは緑山の右腕に思いっきり噛みついた!!

 

 

 

緑山「うぐぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

 

余りの痛みに、緑山は顔をしかめた。

ペロは僅かに妖怪の血も混じっている雑種の大型犬なので、振りほどこうとしても、手を振り回す事も出来ない。

 

 

少年「やれぇぇ!!ペロ!!」

 

 

緑山「こ……こいつぅぅッ!!離せぇッ!!」

 

 

緑山はペロを引き離そうと拳を数発打ちこむ。

が、しかしペロは妖怪の血が混じった雑種である為、体も実はそれなりに頑丈…緑山の拳では大してダメージなどは無かった。

そして、さらに噛む力を強めた。

 

 

吉良(あのクソ犬……あの男の腕を噛み千切るつもりか……!)

 

 

緑山「マ……マズィィ!!コイツ……本気で俺の腕を!?おいガキィ!!今すぐやめさせろぉぉッ!!」

 

 

緑山は、少年に向かって怒鳴りつけた。

だが少年は動じない。

 

 

少年「嫌だ!!今ペロが離したらあんたは僕に襲いかかってくる!!あんたはそういう悪い人間なんだ!!僕には分かる!!だから…あんたには痛い目にあってもらうからなッ!!」

 

 

ペロが噛みつく緑山の右腕が、ミキミキ…と嫌な音を立て始めていた。

 

 

緑山「巫山戯るなぁ………!!てめぇらぁ!!もう許さないぞぉッ!!皆殺しにしてから矢は手に入れてやるッ!!まずは犬から死ねぇッ!!」

 

 

 

 

ボグァァッ!!

 

 

 

緑山がそう叫んだ瞬間、ペロは真上に吹っ飛んだ。

顎の形が砕け、変形し、胸部から骨をはみ出させながら宙を舞った。

 

 

吉良(ッ!?)

 

 

少年「ペ…………ペロォォォ!!!?」

 

 

地面に叩きつけられたペロだったが、まだ辛うじて息はあった。

妖怪の血が混じっているだけあって、生命力がとても高かったのだ。

その間に吉良は、何が起こったのかと、緑山の方を見る。

すると、緑山の傍には何やら、人型の何かがいつの間にか立っていた。

 

 

吉良(あ……れは……まさか…!!)

 

 

フードを被って緑色の服を着ており、腰には剣が携えられている。

そして、何かパワーのような物を感じさせるオーラがあった。

吉良はその人型の何かについて、思い当たる心当たりがあった……。

 

 

緑山「“スピリッツ”!!俺はコイツをそう名付けて呼んでいる…!!コイツは俺の意思で自由に現れ、そして俺の指示通りに動いてくれるッ!!」

 

 

緑山がそう言うと、“スピリッツ”は腰から剣を抜き、ペロの脳天に剣を突き刺した!!

 

 

 

ザグゥッ!!

 

 

 

少年「ペロォォォォォォ!!!!」

 

 

少年の悲痛な叫び声が響く。

ペロは脳組織を貫かれ、即死だった。

 

 

緑山「ハァ…ハァ…右腕のお返しだ……。さてクソガキ君……次はお前の番だよ」

 

 

言うなり緑山は少年に向かって歩み出す。

 

 

少年「ひ…ひぃぃ!?嫌だ…矢なら…矢ならあげますから!!許してください!!」

 

 

少年はこのままだと殺される…と思い必死に命乞いをした。

だが

 

 

緑山「おいおいおいおい…それは都合が良すぎないか?おじさんはちゃんとさっき言っただろう…?もう許さないと……皆殺しにしてから矢は奪うと……なぁ!!」

 

 

バキッ!!

 

 

少年「あぐっ!?」

 

 

言うなり、緑山は自分の足で少年の顎を蹴り飛ばした。

少年は血を吹きながら仰向けに倒れる。

 

 

吉良(………………)

 

 

そして緑山はスピリッツに少年の腹部を踏みつけさせ、少年を逃げられないようにした。

 

 

緑山「あの矢は特別なんだ……貫かれた者は、死ぬ奴もいるが…選ばれた者なら“程度の能力”に目覚める事が出来る…。矢に貫かれた者は傍に何かしらの守護霊…みたいな存在を出現させる、“程度の能力”を扱う。守護霊は個人個人で持つ能力は異なるし、強さも様々だよ」

 

緑山「だが、いずれも力は絶大だ。その気になればこの幻想郷なんて支配出来てしまうかもしれない!!俺は考えた…なら矢を支配し、最強の軍団を創ってしまえば良いと……俺は矢をずっと……ずっと探し回っていたんだ……そして見つけた……ようやくな……しかし……困ったことに矢を持っていたクソガキは、俺に譲ってはくれなかった……それどころか犬をけしかけ、俺の腕を引きちぎろうとした…!!」

 

 

ガスッ!!ガスッ!!ゴスッ!!

 

 

緑山は少年の顔を複数回踏みつけた。

 

 

少年「う…………が………」

 

 

前歯が折れ、鼻の骨も折れ、鼻血が止まらなくなっていた。

そして少年の手から滑り落ちた矢は、物陰に潜む吉良の足元まで滑って来ていた。

 

 

吉良(………………)

 

 

緑山は今、激情し少年にしか目がいっていない。

このまま吉良が黙って矢を拾い、この場から去って行けば元通りの平穏な生活は訪れるのだ。

 

しかし、吉良は矢を拾ってもその場を去ることはせず、ただ無言で立ち尽くしていた……。

 

 

 

緑山「………ふぅ…。少し大人気なかったかな……まぁ良いか。スッキリした。満足だ。よし、じゃあクソガキ君。宣言通り今からお前を殺す」

 

 

少年「ひぃ………!?」

 

 

緑山の操るスピリッツは、片手に何やら火を噴く大きな物体を出現させた。

そして緑山は狂った笑みを浮かべた……。

 

 

緑山「この火炎放射器で全身をローストしてなぁぁぁぁッ!!」

 

 

少年「い………いやだぁぁぁぁぁぁ………!!」

 

 

少年は泣き叫ぶ。

全力で手足を動かして、逃げだそうとするも、スピリッツの足に押さえつけられ動けない。

今にも…少年は火炎放射器で焼き殺されそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑山「誰だッ!?」

 

 

突如聞こえた物音に緑山は即座に反応し、また新たにスピリッツの片手にアサルトライフルを出現させ、その方向に銃口を向けた。

 

……その先にいたのは……吉良吉影だった。

 

 

 

 

 

 

吉良「その辺にしておいたらどうかね……?相手はまだ子供じゃあないか……大人が情け無いだろう?」

 

 

 

緑山「何だとぉッ!!」

 

 

 

その間も、吉良は緑山と少年の傍へとゆっくり近付いて来る。

緑山はそんな吉良を見て、不気味に思い、近くの壁を射撃で撃ち抜いてから叫んだ。

 

 

 

緑山「止まれぇッ!!それ以上少しでも動いたら今度はお前のドタマにぶち込むぞッ!!お前…異常に不気味な奴だ…それ以上寄るなよ……得体の知れない……けがらわしい気分がする……絶対に動くんじゃあねぇぞッ!!」

 

 

 

吉良「…………」ピタリ…

 

 

 

緑山は突如現れた謎の男に警戒心全開だった。

わざわざこんな場所で、こんな状況に姿を現し、しかも片手には矢が握られている。

普通の人間…とは到底思えなかった。

緑山に怒鳴られ、吉良は静かに語り始めた。

 

 

 

吉良「私の名は“吉良吉影”年齢18歳。自宅は人里北東部の離れの一軒家で…結婚はしていない……」

 

吉良「仕事は工芸品店“縁”の従業員で毎日遅くとも夜8時までには帰宅する」

 

 

緑山「?…?」

 

 

少年「?……?……?」

 

 

吉良「煙草は吸わない…酒は嗜む程度」

 

吉良「夜11時には床につき必ず8時間は睡眠をとるようにしている……」

 

吉良「寝る前にあたたかいミルクを飲み、20分程の軽いストレッチで体をほぐしてから床につくとほとんど朝まで熟睡さ……」

 

吉良「赤ん坊のように疲労やストレスを残さずに朝目を覚ませるんだ……健康診断でも異常無しと言われたよ」

 

 

 

いきなり意味不明な事を淡々と話し出す吉良に言いようのない不気味さを感じた緑山は、声を荒げる。

 

 

緑山「お……おお…お…お前何言ってんだ!?いきなり……何の話をしてんだ!?」

 

 

しかし、吉良は止めることは無かった。

 

 

 

吉良「私は常に心の平穏を願って生きている人間ということを説明しているのだよ……」

 

吉良「勝ち負けにこだわったり頭をかかえるようなトラブルとか夜も眠れないといったをつくらない…」

 

吉良「……というのが私の社会に対する姿勢であり、それが自分の幸福だということを知っている……」

 

吉良「もっとも……戦ったとしても私は誰にも負けんがね」

 

 

緑山「………ッ!!」

 

 

吉良の後ろに…うっすらと徐々に…人型の影が現れ始める……。

 

 

吉良「つまり緑山鈴久…私の矢を狙う君は、私の睡眠を妨げるトラブルでありという訳さ……これ以上、厄介な事になる前に…君を始末させてもらう……」

 

 

そして、黒い影を描いていた吉良の背後に立つ人型の輪郭が、ハッキリと見え始めた…。

緑山はそいつを睨む。

 

 

緑山「まさか…お前も俺と同じ……ッ!!」

 

 

吉良「KILLER(キラー) QUEEN(クイーン)……と私はこいつを名付けて呼んでいる」

 

 

 

  

 

 

              

 

   

 

            

 

 

 

 

 

吉良と緑山の二人の間に、凄まじ殺気のぶつかり合いが起こり、まるで空間が歪んでいるように見えた…。

 

 

緑山「俺の“スピリッツ”を舐めるなよ……クソガキ君は後回しだ……まずは……お前からだ……!!」

 

 

吉良「悪いがこの世界から消えてくれ……私が今夜も安心してグッスリと眠れるようにね……」

 

 

 

 

見る者が震え上がる…そんな狂気的な二人がそこにはいた………。

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 

 

 

 

 




程度型スタンドパラメータ

キラークイーン (吉良吉影使用時)

能力:現在は非公開。


パワー:A
スピード:A
精密動作性:B
成長性:A
持続力:A
射程距離:B


ついに現れた待望のあの男…の生まれ変わり。
その能力は未だ謎に包まれている。




~そして~
今回登場したのは風見フウさんから頂いたオリジナルスタンド案でした。
ありがとうございます!!



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21紅魔館調査…その②厳守!!図書館マナー!!

この章(GREAT DAYS)では、譲信サイドと吉良サイドを話ごとに切り替えていきながら、進行させてみようかな…と思ってます!!
今回は譲信サイドです!!
それでは…どうぞ!!


譲信「ぐっ……が……ががが………ッ!!」

 

 

フラン「♪」

 

 

譲信は現在、フランに紅魔館を案内して貰っていた。

なんでもフランが自分が案内する!!、と立候補した為である。

 

レミリアも咲夜も、フランの勢いに押されてそれをついつい了承してしまった訳だ。

……それが譲信にとっての地獄の始まりだった…。

 

譲信はフランに背中から抱きつかれているので、フランをおんぶしながら歩いている。

端から見れば、まるで仲の良い兄妹みたいな光景だったが、実際は違う。

 

 

ミシッ…ミキミキミキ………

 

 

フランの抱きつくパワーが凄いため、譲信のあばら骨は悲鳴を上げていた。

……あの後、意識を取り戻したレミリアにやり過ぎだと、色々説教された事で大人しくはなったフランだったが、それでもまだ譲信にとっては恐ろしい子だった。

 

 

譲信「フラン………もうちょっとだけ……遠慮してくれ……!!……アカン…これじゃ俺が死ぬゥ…」

 

 

フラン「エヘヘ~お兄様~……」

 

 

譲信「………駄目だこりゃ…聞こえてねぇ……」

 

 

譲信が絞り出すような声で、フランに話し掛けるもすっかり譲信に懐いてしがみついてるフランには、全く何も聞こえてなかった。

 

スタンドで無理矢理引き剥がしても良いのだが、それをやるとフランが機嫌を悪くしてしまう可能性もある為、譲信には出来そうに無かった。

 

 

フラン「♪……あ、お兄様!!ここだよっ!!」

 

 

譲信「……ぁぁ……ここかぁ……」グッタリ

 

 

そうこうしている内に、フランと譲信は目的の場所に辿り着いた。

譲信とフランがいる場所は大きく立派な扉の前で、その扉の中が目的の場所であった。

譲信の代わりに扉を開くためにフランは一旦、譲信の背中から離れた。

 

お陰で、ようやく地獄から解放され譲信は肺一杯に空気を吸いこむことが出来た。

幸い、あばら骨は折れておらず、譲信はホッ…と一安心した。

 

 

フラン「入るよっパチュリー!!」

 

 

キィィィィィィィ…!!

 

 

フランが扉を開いていくと、徐々に部屋の中が見えてくる。

その部屋の光景を見て、譲信は思わず目を見開いた。

 

 

譲信「おおおっ!!」

 

 

まずとんでもなく広い部屋。

その部屋には遥か天井までそびえ立つ本棚が、数え切れない程に立ち並び、その本棚の中にはビッシリと何百、何千、何万、いや…それよりももっと、数え切れない程の本が敷き詰められている。

 

奥にもまだ続いてるようで、見えてるだけでもこの量なのに、一体どれだけの本があるのか…譲信はそんな光景に圧倒されていたのだ。

 

 

譲信「す………すっげぇー……今まで見たどの書店よりも…どの図書館よりも……すっげぇー……!!」

 

 

フラン「お兄様ーっこっちだよ!!」

 

 

あまりの光景に立ち尽くす譲信の手を、フランは小さな手で握り、譲信を部屋の中へと引っ張って行く。

少し部屋を進むと、何やら少し大きめな机があり、その前には誰かが座っていた。

そこに座っていた者は、フランと譲信に気付くと二人に声を掛けた。

 

 

パチェ「あら、フランじゃない。それと……あなたは確か異変の時にいた人ね」

 

 

譲信「そう言うあんたは…確かメイドさんの次に戦った相手…」

 

 

お互い充分に面識はあるが、あまりよくは知らなかった。

 

 

フラン「紹介するねお兄様!!今座っているのがパチュリーだよっ!!」

 

 

パチェ「パチュリー・ノーレッジよ。この大図書館の主であり、自他共に認める大魔法使いよ」

 

 

譲信「空条譲信だ。人里で何でも屋の社長をやっている“外来人”だぜ。よろしくな!!」

 

 

パチェ「えぇ。よろしく」

 

 

譲信とパチュリーは互いに自己紹介を済ませ、握手した。

 

 

小悪魔「パチュリー様~言われた本持ってきましたよ~」

 

 

その時、部屋の奥から数冊の本を抱えた小悪魔がやって来た。

 

 

パチェ「丁度良い所に来たわねコア。紹介するわ…この子は私の使い魔の小悪魔よ。コアって呼んでいるわ」

 

 

小悪魔「あれぇ?確か異変の時にいた人じゃないですか!」

 

 

譲信「空条譲信だ。あの時は名乗ってやれんで済まなかったな。ま、以後よろしく!!」

 

 

小悪魔「はい!!よろしくお願いします!!」

 

 

譲信は小悪魔とも握手をして自己紹介を済ませた。

これで譲信は一通り、紅魔館の住人との挨拶は済ませた事になる。

 

 

パチェ「事情はレミィから聞いているわ。紅魔館の調査で来ているのよね?」

 

 

譲信「まぁそうなるが…実際には既に“問題なし”って報告するつもりだぜ。まぁ、報告するまでにある程度日数空けなきゃだから、本当は遊びに来てるようなもんだな」

 

 

パチェ「ふぅん……思ったより適当なのね。まぁこれ以上、問題を起こす気がレミィに無いのは事実だから、あなたのその判断は間違いでは無いわよ」

 

 

譲信「だろ?俺は人を見る目は確かなんだぜ?」

 

 

譲信はそう言うと、ニカッと笑って見せた。

パチュリーはそんな譲信と、隣で譲信の腕にしがみついているフランを交互に見て、何やら納得したような表情になった。

 

 

パチェ「………そのようね。フランと仲良くやってるくらいだもの…自惚れで無いのは確かよ」

 

 

譲信「へへ♪まぁな。…ところで一つ良いか?」

 

 

パチェ「何かしら?」

 

 

譲信「俺は後一時間後…まぁ20:00くらいになったら帰るつもりなんだが…それまでここの本を読ませて貰っても良いか?」

 

 

それを聞いて、パチュリーは少しだけ驚いたような表情になった。

 

 

パチェ「破いたり勝手に盗ったりしないのなら、別に構わないわよ?…けど意外ね…あなたからは本を読むようなイメージなんてなかったから…」

 

 

譲信の言葉遣い、態度、服装や性格、そして戦闘時のイメージからパチュリーは、少なくとも譲信は本を好んで読むような人間では無いと思っていたのだ。

だが、それはあながち間違いでも無い。

 

 

 

譲信「まぁどっちかつーと、俺は漫画派だからなぁ~。けど異世界の書物って結構興味あんだよね。しかも魔法使いが読むような本だぜ?ちょっとくらいは読んでみてーじゃあねぇか」

 

 

譲信とてまだまだ子供なのだ。

異世界の物なら何でも面白そうに見えて仕方がない。

特に、本なんて物はまさにロマンスの塊みたいな物だった。

 

 

パチェ「成る程ね…好奇心旺盛なのね。分かったわ。それならコアにどういったジャンルの本が読みたいか言って御覧なさい。いくつかオススメの本を持ってきてくれるわよ」

 

 

小悪魔「任せてください!!これでも本のチョイスには自信があるんですよ!!」

 

 

小悪魔は自信満々に言った。

だが、譲信は首を横に振った。

 

 

譲信「折角の気遣いは有難いが…それには及ばねぇぜ。俺ぁ自分の足で探して、手に取って、目で見て、そして読みたいって思った本を読みてーんだ。だから悪ぃなコアちゃんよ」

 

 

小悪魔「いえいえ!それもまた良いと思います!………って…コアちゃんッ!?」

 

 

小悪魔の顔がみるみる赤くなっていく。

 

 

譲信「あ…やっぱちと馴れ馴れしいのは嫌か?小悪魔さん…って読んだ方が良いか…?」

 

 

そんな小悪魔の様子を見て、ひょっとして嫌がられてるのかと、譲信は不安になった。

 

 

小悪魔「あ!!そういうのじゃないんです!!ただちょっと…そういう呼ばれ方をするのは初めてだったのでつい驚いてしまっただけですよ」

 

 

慌てて小悪魔は、譲信の誤解を解いた。

 

 

譲信「そうかじゃ、今後はコアちゃんって呼ぶわ。ハッハッハ♪」

 

 

譲信は愉快そうに笑った。

そんな譲信をフランは少し、ムッ…としながら見上げていた。

自分をそっちのけで楽しそうにする譲信を見て、フランは少しだけやきもちを焼いていたのだ。

およそ500歳の吸血鬼とはいえ、フランもまだまだ心は子供なのである。

 

 

譲信「じゃ、何か良い本見つけたらこっちに持ってきて読ませて貰うわ。てことで、本探しの冒険のはじまりだぜ~」

 

 

フラン「あ!お兄様待ってよー!!」

 

 

そんなフランの様子には全く気付かない譲信は、さっさと本を探しに奥へと入って行く。

そんな譲信をフランは慌てて追いかけて行く。

図書館内では走るなという、パチュリーの声は聞こえてないようであった。

 

 

パチェ「はぁ……あの子ったら、よっぽどあの譲信がお気に入りのようね」

 

 

小悪魔「良いことじゃないですか。妹様はあんなに楽しそうじゃないですか」

 

 

パチェ「そうね。……それにしても本当に驚きよ…ただの人間である譲信が、私達ではずっと出来なかったこと…フランとレミィの本心を理解し、二人の間にあった溝を埋めた……しかもたった一晩でそれをやってのけた。………本当に……人の本心を見る目が鋭い男ね」

 

 

パチュリーは譲信の事をかなり高く評価していた。

大抵の者は譲信の持つ、妖怪をも圧倒する力に目が眩んで盲目になってしまうが、パチュリーはしっかりと譲信の本当の“強さ”を見抜いていた。

 

異変の時も、譲信を一番の強敵だと判断したのはパチュリーだった。

パチュリーの思う譲信の一番の強さとは、“見抜く”という点だった。

 

相手の心は元より、相手の思考、策略、目的、何より自信の現状さえも正確に、正しく見抜き更には行動する事が出来るのが譲信だ。

 

見た目や性格からは一目では分からないが、空条譲信という男は、実は意外にクールで度胸もあり、尚かつ冷静で、“凄すぎる判断力と洞察力”を兼ね備えた男………だという事をパチュリーもまた譲信の事を見抜いていたのだ。

 

そこまで深く考察されているとはつゆ知らず、譲信は本を探し回っていた。

 

 

 

譲信「ん~……どれもイマイチ、読みたいとは思えね~なぁ……つーか、大半が読めない字ばっかりだぜ…」

 

 

フラン「お兄様、フランも何か本を探してくるね!」

 

 

譲信「おう。見つけたら先戻って読んでな。俺もすぐ戻るからよ」

 

 

フラン「は~い♪」

 

 

元気よく返事を返し、フランは本を探しに何処かへと行ってしまった。

残された譲信は本を探し、本棚を見て回る。

 

 

譲信「それにしてもとんでもなく広い図書館だぜ……流石大図書館……名前通りじゃあねーか!」

 

 

結構高い位置にある本は取り辛いので、精々背伸びすれば届くような範囲で譲信は本を探す。

すると、本と本との間に挟まれて、少し飛び出ている本を見つけた。

 

 

譲信「お、仲間ハズレにされてる本見っけ!」

 

 

綺麗にびっしり揃えられている本の中で、こういった飛び出てる本というのは結構目立つ。

黒色のカバーに、よく読めないが赤色の文字で何やらタイトル等が綴られている。

 

何となく、中身が気になった譲信はその本を手に取ってみた。

肌触りからして、動物の皮だとかそれに近い物が表紙には使われているようだった。

そして、ズッシリ重たい。

 

 

譲信「おぉー!!こりゃあすげー高そうな本だ。大事に扱わねーとな…乱暴にしちゃすぐに傷みそうだ」

 

 

うっかり傷でも付けたら大変だと、注意しながら譲信は本の題名を読んでみる。

 

 

譲信「“名を問いし者”…?ミステリー系かな?」

 

 

少しだけ面白そうだと思った譲信は、大体の内容を確認する為に本を開いてみた。

 

 

 

 

 

 

すると

 

 

 

 

 

 

 

 

ボシュウウウウ!!

 

 

 

 

 

 

 

譲信「うぅぉぉぉぉぉぉッ!?」

 

 

 

何と、開いた本のページが急に膨らんだかと思うと、何やら人の顔の形に盛り上がり、黒い煙が吹き出し始める。

譲信は驚いて、本を床に落とした。

 

 

その間にも、ページが膨らみ続け、黒い煙が吹き出し続ける。

膨らみは大きくなると共に、人の頭、体、足、などを形成し始める。

 

 

譲信「な……なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁ!?」

 

 

そして、膨らみの形が完全に整った次の瞬間…

 

 

 

 

 

 

ボン…!!

 

 

 

 

 

黒い煙ごと、とても静かな軽い爆発を起こした。

 

 

譲信「コホッ…!な……なんだってんだ………?」

 

 

 

 

譲信はせき込みながらも、黒い煙の中に目を凝らす。

すると、何者かの影が見えてくる。

煙が晴れていくと共に、段々とはっきりとその者の姿が見えてきた。

 

真っ黒な体。何本もの角が生えた頭。大きなコウモリのような翼。先端が尖った尻尾。両手と両足に大きな鉤爪。真っ赤で大きな1つだけの目。背筋がゾッ…とするような眼力…。

まるで…絵に描いたような悪魔だった……。

 

 

 

 

 

???「封印が……封印が解けたぞぉッ!!グギャギャギャギャギャ!!久しぶりのシャバだぁッ!!」

 

 

そして???は愉快そうに喋り出した。

当然、譲信は驚き、その場で固まってしまう…。

 

 

譲信「何だコイツは……?本から出て来たのか!?」

 

 

???「あぁ~~?オメェー何も知らねぇで俺の封印を解いたのかぁ~?」

 

 

訳も分からず、呆気に取られる譲信に、???は気付いて話し掛けてきた。

 

 

譲信「な…何ィィィ……?」

 

 

???「俺はずっと昔に、この本に封印されていた悪魔だぜ……グギャギャギャ………オメーのお陰だ。オメーのお陰で俺はやっとこさ、自由に慣れたんだぜぇ~~。グギャギャギャ………!!」

 

 

???は不気味に笑いながら、譲信の横に回り込む。

 

 

???「俺は人間の魂を食うことが大好きなんだ。…というよりかは、人間を前にしては魂を食わずにはいられないという性を背負っている……それはオメーに対しても今まさに、そうなんだぜぇ~?」

 

 

そう言うと、???は裂けた頬でニタリ…と笑い、舌なめずりをした…。

 

 

 

譲信「ッ!!コイツ……!!ヤバイ!!“スタープラチナ”!!

 

 

スタプラ「オラオラオラオラオラッ!!」

 

 

 

命の危険を感じた譲信は、やられる前にやってやる!!と、???に向かってスタープラチナのオラオラのラッシュを撃ち込んだ。

……しかし

 

 

 

???「グギャギャギャ………ギャギャギャ…!!効かねぇなぁ~~~全然効かねぇ~~!!」

 

 

譲信「な…何ィィィィィィーーーーー!?」

 

 

 

???には譲信の攻撃は全く効いて無かった。

拳は確かに当たってはいるが、まるで何か手応えが無かったのだ。

 

 

 

???「見た事もねぇ能力だなぁ~パワーも凄そうだ……でも無駄だぜぇ~!!悪魔が眠ってる本を開いたって事は!!悪魔に魅入られたってのと同じ事なんだぜ!!」

 

 

???「今の俺はオメーであり、オメーは俺でもあるんだぜ!!つまり!!オメーが俺に対し行った攻撃はどんな能力を使っていようが絶対に無効化され、オメーがオメー自身に対し、能力で何かして俺を引き剥がそうとしても、オメーは俺でもある訳だから何の意味もねぇ!!……そして万が一、俺が死ぬことになろーとも、その時はオメーも道連れになるんだぜぇ!!」

 

 

 

譲信「な…なな…何だってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

 

 

???「オメーが開いたんだからなッ!!オメーが自分で、自分の意思で本を開いたんだからなぁぁぁッ!!グギャギャギャ………!!」

 

 

ここに来て、幻想郷に来て、初めて譲信は本気でヤバイと感じ始めていた。

何せ、攻撃が全く効かないのだ。

 

敵は自分であり、自分は敵でもある。

つまり、例え“真実の上書き”を持ってしても、同じ“真実の上書き”を持つ自分に対し、行うようなものでも何の意味もなさいのだ。

 

自分やこの悪魔に対する全ての行動は無へと変換されるのだ!!

つまり、全くもって為す術が無かった!!

 

 

譲信(ヤ…ヤバいぞ……ヤバイィィ!!すごくヤバイ!!何か…何か手は無いのか……!?)

 

 

譲信は頭を必死に回転させるが、何の名案も浮かんでこない。

幾多のピンチを切り抜けてきた譲信でも、この状況ばかりはもうお手上げだったのだ……。

 

 

???「全ての決定権はもう俺にある。今からオメーの魂を抜き取って食らうのは…ハナタレガキの尻に鉛玉をぶっ放すよりも容易いんだ……だが!!それは俺のやり方じゃあねぇ」

 

 

譲信「どういう……事だ!?」

 

 

???「俺は“名を問う者”だ!!獲物には必ず、一つの質問を与える……それは、俺の名前は何か?という単純な質問だ!!正解すりゃあ勿論助かるが…外せばもう絶対に逃げられねぇ…蚊に刺されりゃあ痒くなっちまうのと同じくらい、確実に俺に魂を食われるのさ」

 

 

言うなり???は、譲信の首元を片手で掴んだ!!

凄い締め付けで、思わず譲信の口から空気が漏れる。

 

 

譲信「がっ……!!」

 

 

???「これは悪魔の契約!!一度契約すりゃあもう絶対だ!!契約しなけりゃあ苦労するかもだが…自力で助かる道はあるのかもしれねぇ…断った瞬間このまま喉を握り潰すがなぁ!!さぁ…決めるのはテメーだ!!制限時間は今から30分!!19:40分までだ!!それまでに俺の名前を当てられたらオメーの勝ちだ!!さぁやるのか!!やらねぇのか!!さっさと答えろッ!!」

 

 

譲信は決断を迫られていた。

普通に考えてこの勝負…引き受けてしまえば勝てる訳が無い。

会ったことも聞いたこともない奴の名前なんて、まず当てられる訳が無い。

 

だが、断ればこのまま喉は潰される。

そもそも、どれだけ足搔こうとも、この悪魔に対して全ての行動を無へと変換されるのだ……。

実に、悪魔らしい嫌な手を使ってきやがる……と譲信は怒りで拳を握り締めていた。

そしてその怒りが、譲信に決断させた…!!

 

 

譲信「やる……ぜ!!受けて立つ……ぜ!!やるしか……ねーんだからなぁッ!!」

 

 

譲信は言い切った。

しっかりと。

それを聞いた???はニヤリ…と笑うと、譲信を乱暴に離した。

 

 

???「返事は聞かせて貰った。これで悪魔の契約は結ばれた……今から30分間、オレはオメーの魂を食らう事は出来ねぇ。しかし…30分経ってもオメーが正解を当てられなかった場合は………即座にオメーを殺すッ!!」

 

 

譲信「ッ……!!あぁ……上等だテメー……だがしかし、俺も覚悟はしてんだぜ……テメーも覚悟をしとけよな……」

 

 

???「あぁ…?」

 

 

譲信「俺が勝った場合、俺はすぐさまテメーをぶちのめす!!テメーがくたばるまで、ラッシュを叩き込んでやるからなッ!!その覚悟をしておきやがれッ!!」

 

 

譲信は???を思いっきし睨みつけながら、そう言った。

 

 

???「バカがぁッ!!減らず口を叩いてんじゃねぇぞッ!!オメーはバカ丸出しだ!!普通に考えて!!この勝負に勝てる訳がねぇだろぉぉがぁぁッ!!勝負を受けた時点で!!オメーの死は確定したんだよこのマヌケッ!!」

 

 

譲信「ほざきやがれ……!!勝つのは……俺だッ!!」

 

 

そう言うと、譲信は歩き出した。

その顔は、一切の恐怖が無く、覚悟に満ちあふれていた。

 

 

???「ほう?面白い……この勝負に今まで勝てた奴はいなかった……しかし、オメーはこれまでの人間共とは一味違うな……良いだろう……見させて貰おうじゃあねぇか……オメーが絶望に嘆く瞬間をなぁ~~~!!」

 

 

挑発的な???を無視して譲信は歩き続ける。

この圧倒的不利な状況でも譲信は諦めるつもりなど、さらさら無かった。

必ず、何処かにヒントはあるはずだと、信じていた。

 

 

フラン「あれ……?お兄様何してるの…?」

 

 

譲信「フランッ!?」

 

 

???「……ほ~~う…」

 

 

その時、ばったり偶然、譲信は曲がり角で出会い頭にフランと会ってしまった。

譲信が状況の説明に悩んでいると、フランはすぐに???の存在に気付く。

 

 

???「…」ニタァ~…

 

 

瞬間、フランの背筋に冷たい物が走った。

何か、物凄く嫌な予感がする。

例えば、現在進行形で譲信に良からぬ事が起こっているのではないか……と。

もしそうだとしたなら、この???をフランは絶対に許すつもりは無かった。

 

 

フラン「お兄様から離れろッ!!」

 

 

フランは、手のひらを???に向けて握りつぶそうとした。

それをいち早く察知した譲信は慌てて、フランの能力発動を止めた。

 

 

譲信「待てフランッ!!やめろッ!!こいつを殺せば俺も死んじまんうんだ!!だからやめてくれッ!!」

 

 

フラン「そうなの……!?」

 

 

フランは慌てて能力を消した。

もう少し遅れていれば、この???と共に譲信は死んでいた。

 

 

譲信「コイツはこの図書館にあった本に封印されていた悪魔だ。色々あって俺は30分以内にコイツの名前を当てられなけりゃあ殺される…。名前を当てる以外他にはどうしようもねぇんだ……」

 

 

???「グギャギャギャ!!違うねぇ~あと20分だ!!あと20分だぜえ~~?」

 

 

譲信「!!……もう10分……か……」

 

 

気が付けば10分。

思ったよりも早く過ぎていく時に、譲信は焦りを感じ始めていた。

そんな時、フランが口を開いた。

 

 

フラン「ねぇお兄様、それならパチュリーに聞いてみたらどうかな?この大図書館の事ならパチュリーは何でも知ってる筈だよ!だから多分、その悪魔の名前の事も知っているんじゃないかな?」

 

 

 

フランの発言を聞いて、???の表情は一瞬固まり、譲信は思わずニヤケた。

まだ譲信は完全に天から見離されてはいなかったのだ!

 

 

 

???「……何だと?」

 

 

譲信「そうか……その手があったか!!」

 

 

そうと分かれば話は早い。

譲信はパチュリーの元までダッシュで駆け出した。

 

 

???「むぅ!!」

 

 

フラン「あ、待ってよー!!」

 

 

その譲信の後をフランと???もまた、走って追う。

図書館内は走ってはいけないのだが…しかしそんなことは皆お構いなしだった。

 

 

譲信「おいパッチェさんよ!!ちょっと良いか?」

 

 

譲信&フラン&???「ッ!?」

 

 

パチュリーのいた場所へすぐさま辿り着いた譲信は、一目散にパチュリーに声を掛ける。

ところが…

 

 

小悪魔「あ!!譲信さんに妹様!!パチュリー様は丁度先程、持病の喘息を拗らせられたので今は部屋で休んでおられるのですが……」

 

 

そこにはパチュリーはおらず、小悪魔が一人で机の上の書類や本の片付けをしていた。

パチュリーは体が弱いという事は、フランから聞いてはいたものの、まさかこのタイミングでダウンしているとは、誰も予想だにしていなかった。

 

 

 

譲信「な……な…何だってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

 

 

譲信の叫び声が響き渡る。

譲信の顔は青ざめ、今度は???がニヤリと笑った。

 

 

???「グギャギャギャ!!こりゃあ良いッ!!パチュリーとかいう野郎はしばらくはまともに会話も出来ねぇ状態らしいじゃあねぇか!!つまりオメーはまた振り出しに戻ったって訳だ!!制限時間残り10分という土壇場でなぁッ!!」

 

 

 

譲信「や…野郎ッ!!クソッタレぇッ!!」

 

 

 

世界「WRYYYYYYYYYYY!!」

 

 

 

焦った譲信は世界(ザ・ワールド)を発現させると???に向かってラッシュを放つ。

だが

 

 

???「だから効かねぇって言ってるだろこの間抜けがぁッ!!」

 

 

悪魔の呪縛に縛られ、さらには悪魔の契約をしている譲信の攻撃など???には通用する筈も無かった。

 

 

フラン「お兄様!!」

 

 

 

小悪魔「えぇ!?どういう状況なんですかこれ!?」

 

 

 

譲信「クソッ…クソッ……!!やめろぉぉぉぉッ!!」

 

 

 

???「こうなったのは全部オメーが悪いんだろうがッ!!諦めるんだなぁッ!!そして!!更なる絶望だ!!」

 

 

譲信「ッ!?」

 

 

???は、そう言うと右の手のひらをフランへ、左の手のひらを小悪魔へ向けた。

すると

 

 

フラン「ふえぇ……」バタリ…

 

 

小悪魔「はれぇぇ………」バタリ…

 

 

 

何と、フランと小悪魔はその場へ眠るようにして静かに倒れ込んでしまった。

 

 

 

譲信「な………何てこった……!!」

 

 

???「グギャギャギャ………!!コイツらには眠って貰ったぜ!!コイツらは俺が術を解かねぇ限り、一時間は目覚めねーぞ?さぁどうするよ?オメーは自力で俺の名前を言い当てられるのかぁ~?」

 

 

譲信「ざけんじゃあねーぞッ!!」

 

 

譲信は扉に向かって走り出す。

紅魔館内の何処かに、レミリアと咲夜がいる。

事情を説明すれば恐らく力になってくれる筈だ。

そう考えた譲信はすぐさま、大図書館から出ようとする。

しかし

 

 

 

ガチャッガチャガチャッ…!!

 

 

 

譲信「嘘……だろ…!?」

 

 

 

扉は全く開かなかった。

ドアノブをいくら回しても、ビクリとも動かない。

 

 

 

???「言い忘れていたがこの図書館だけ隔離空間に閉じ込めてある。つまり外へ出て助けを求めるなんて事は出来ねーのさ!!オメーを軸として創造してある空間だからオメーがどう足搔こうとも無駄だぜ!!」

 

 

 

譲信「何ィィィィィィィィィィィィィィィィッ!?」

 

 

 

試しに扉に“世界”のパンチを一発ぶち込んで見るが、まるで手応えが無い。

???が言うように譲信が足搔いた所で全くの無駄であった。

フランや小悪魔も眠らせており、一時間はどうしようとも起きる事は無いらしい…。

かといって、譲信一人では何かが出来る筈も無い……。

 

 

 

譲信「うおぉぉぉぉぉぉッ!!何なんだぁぁ!?テメーの名前はよぉぉぉッ!?」

 

 

???「だから当ててみろって言ってんだろーがッ!!あと7分!!さぁどうする!?」

 

 

気が付けばもう7分前。

まだ数十分もあると思っていたらアッという間に数分前に追い詰められてしまった。

もうこれ以上、時間を無駄にする訳にはいかない…!!

 

 

譲信「テメーの名前は“デーモン”かッ!?」

 

 

???「違う」

 

 

譲信「じゃあ“サターン”かッ!?」

 

 

???「違う」

 

 

譲信「なら“デビルマン”か!?“太郎”か!?“死神”か!?はたまた“ウリエル”か!?」

 

 

???「違う違う違う違うッ!!どれも違うッ!!下手な鉄砲数撃ちゃあ当たるってかぁ~!?呆れたぜ…もうオメーには何も打つ手は無ぇ~って訳だなぁッ!!グギャギャギャギャギャ!!」

 

 

譲信「ぐ……うぅぅ………マズイ……マズイぞ……非常に……マズイぞ……!!ほ…本気で……もう何も策が……出て来ねぇ……!!」

 

 

譲信は腕時計をチラリ…と見る。

するとどうだ、もう残り時間が3分しか残っていないではないか…。

体中から汗が噴き出す。

あと3分以内に、正解を言い当てなければ殺される。

しかし、当てずっぽうで名前を言っていった所で、勝機はない…。

何か奇跡でも起こらない限り、譲信に勝ち目は無い。

 

 

 

譲信「ハァー…ハァー…ハァー………ハァー………」

 

 

 

???「グギャギャギャ…オメーはもう終わりだぜ……オメーは将棋やチェスで言うような詰み(チェックメイト)に既にハマっちまっているのさ……!!」

 

 

 

譲信「ぐ………!!(何か…何かヒントは……無いのかよッ!?)」

 

 

 

???「時間切れまであと10秒前!!さぁどうした!?えぇ!?もう何もねーんだろぉぉ!?」

 

 

 

必死に頭を回転させ、辺りを見回し、僅かにでもヒントになりそうな物を探す譲信だったが、何も見つからない…閃かない。

???のカウントダウンだけが進んでいく。

 

 

 

???「8……7……6……5……」

 

 

 

譲信「待て!!待ってくれッ!!まだ待ってくれッ!!」

 

 

 

???「いいや待てないねッ!!それが悪魔の契約だッ!!」

 

 

 

 

 

???「3」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「2」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「1」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………0…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「……………ぁ……」

 

 

 

…………ついに、譲信は正解を言い当てられないまま、30分を迎えてしまった……。

 

 

 

???「グギャ……グギャギャ……」

 

 

 

 

???「グギャギャギャギャ!!オメーの負けだぜッ!!時間切れ勝負ありだッ!!これで!!オメーの死は確実の物となったぁぁッ!!」

 

 

 

譲信「う……うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

悪魔の契約は絶対だ…。

勝負に負けたということは、絶対に逃れられない死が決まったということだ……。

???は不気味な笑みで譲信を見下ろした……。

 

 

 

 

???「死ねぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

 

???は手を振り上げた。

 

 

 

譲信「うぉぉぉぉッ!!本当にテメーに名前なんてあったのかよぉッ!?なんて名前だったんだよぉぉぉぉッ!!」

 

 

 

そんな???に対し、譲信は怒鳴りつける。

譲信の言葉をきいて、???は更に不気味に微笑んだ……。

 

 

 

???「冥土の土産に教えてやるよ……正解は……俺の名前は“アンノウン”だ……!!グギャギャギャギャ…!!」

 

 

 

譲信「アンノウン……テメーの名前は……アンノウン…!!」

 

 

 

アンノウン「その通りだ!!じゃあな負け犬…死ねぇッ!!

 

 

 

アンノウンは譲信の首を切り裂いてやろうと、手刀を振り下ろそうとした。

しかし、その直前に譲信は叫んだ。

そして…それは悲鳴や断末魔では決してなかった…!!

 

 

 

譲信「……俺の勝ちだぜ…アンノウン…!!

 

 

 

アンノウン「………あぁ……?」

 

 

 

譲信はハッキリとそう言い切った。

しっかりと自身の確信に満ちあふれた表情で。

その言葉を聞いたアンノウンは、ピタリと動きを止めた…。

 

 

 

アンノウン「この期に及んで………負け惜しみを言ってんじゃあねーぞぉぉッ!?負けたのはオメーなんだよッ!!19:40分までに正解を出せなかったクズがオメーなんだよぉぉぉッ!!この間抜けぇぇぇぇッ!!」

 

 

 

アンノウンはそう怒鳴りながら、譲信の胸倉を掴んだ。

しかし、譲信の表情が変わるような事は無かった。

そして、ただ一言だけ譲信は口を開いた…。

 

 

 

譲信「本当にそう思うなら…テメーの目で実際に時計を見てみるんだな……!!」

 

 

 

アンノウン「何ィ………?」

 

 

 

譲信に言われて、アンノウンは図書館内に掛けてあった時計に視線をやった。

すると

 

 

 

アンノウン「な……何ィィィィィィィィィッ!!!?」

 

 

 

譲信「……ニヤリ」

 

 

 

そこにあった真実は、勝ち誇っていたアンノウンを一気に青ざめさせた。

そこにあった真実とは……

 

 

 

アンノウン「19:39分55秒だとぉぉぉぉぉッ!?バカなッ!?俺が5秒も時間を数え間違える筈がねぇッ!!何が……何がどうなってんだぁぁぁッ!!!!?」

 

 

 

1秒とて狂いも無く数えていたアンノウン。

それ故に、この異常事態が全く理解出来ていなかった。

そんなアンノウンに対し、状態は自身の胸倉を掴むアンノウンの腕を掴み返して、そして睨みつけ言った…。

 

 

 

譲信「悪いな…“マンダム”時間を10秒キッチリ巻き戻す…そういう能力がある。テメーの口からテメーの名前を聞いた瞬間、時を巻き戻した。お陰で、俺は19:40分以内に正解を答える事が出来た。これは、テメーに対しても俺に対しても何かを起こすって能力じゃあねぇ…“世界に対して”働く能力だ…。だから問題なく発動出来た……つまり……テメーの負けだッ!!

 

 

 

アンノウン「ふ……巫山戯るなぁッ!!そんな汚ぇ手が通用すると思ってんのかぁぁッ!?反則だぁぁ!!」

 

 

 

 

アンノウンは怒りで怒鳴り散らす。

しかし、依然として譲信は余裕のペースを崩さない。

 

 

 

 

譲信「通用するぜ……“悪魔の契約”は絶対なんだろ?」

 

 

 

アンノウン「ハッ!!」

 

 

 

言われてアンノウンは気付いた。

譲信の精神を縛っていた鎖はいつの間にか消え、自分と譲信の間にあった理不尽な繋がりも消え去っていた…。

 

これはつまり、“悪魔の契約”が果たされたという何よりの証拠であり、そこには“反則”だとか“卑怯”だとかいう言葉は存在せず、あるのは“絶対的な勝敗”ただ一つであった。

 

譲信の言うように、この勝負は譲信の勝利で、アンノウンの敗北である事に何の問題も無かったのだ…。

 

 

 

譲信「テメーが言ったんだからな…テメーの名前と…“悪魔の契約”は絶対だって事を…テメーが自分で言ったんだからなぁッ!!

 

 

 

呪縛から解放された譲信は、背後に2体のスタンドを発現させると、ユラリと立ち上がった…。

精神力の馬力がかなり上がっているのか、金色のオーラを纏っている…。

譲信の赤っぽい瞳が、まるで深紅のようにギラギラと光り、アンノウンを見下ろした。

 

 

 

譲信「そして俺も言ったな……自分で言った……。俺が勝ったらテメーをぶちのめすと……確かに言ったよなぁッ!!」

 

 

 

 

アンノウン「こ……この野郎……さっきまでビビってやがったクセにぃぃ……!!」

 

 

 

 

譲信「覚悟は良いか……?俺は始めっからできていた……

 

 

 

 

コケにされ、見下されたアンノウンはついに激怒し、鉤爪を光らせ、譲信に飛び掛かった!!

 

 

 

アンノウン「ほざけぇッ!!上級悪魔である俺がッ!!オメーのようなガキを殺すのに!!わざわざ呪縛なんかいらねぇんだよぉッ!!くたば___!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に喧嘩売ったのはテメーだぜ……そして俺はやられたら億倍返しするタイプなんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタプラ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

世界「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

スタプラ&世界「オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラァァァァァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

アンノウン「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

“スタープラチナ”と“世界”のダブルラッシュを受けたアンノウンは断末魔の悲鳴を上げながら、黒い煙を吹き出し、爆散して消えた。

 

そして、アンノウンを封じ込めていた本も、ひび割れるようにして、粉々になって消えた………。

 

 

 

 

 

 

譲信「あまり俺を怒らせんじゃあねぇよ……柄にもなく熱くなっちまったじゃあねーか……」

 

 

 

 

 

譲信はそう呟くと煙草を取り出し、火を点けて、フー…と煙を吐いた…。

そうすることで、逆立っていた髪も無事元通りに収まり、譲信の爆発しかけていた精神も元通りに治まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチェ「ふぅ…やっと薬が効いたわね…。譲信、フラン、良い本はもう見つけられたかし…………ら………?」

 

 

 

 

 

 

 

譲信「……………あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度そのタイミングで、だいぶ体調が落ち着いたパチュリーが扉を開けて戻ってきた。

そして、図書館内で煙草を咥えている譲信と目が合った。

 

そして、パチュリーの手が握り拳を作ったかと思うと、プルプルと震えだした。

そして……

 

 

 

 

パチェ「図書館内で煙草を吸ってんじゃないわよッ!!大切な本が燃えたらどうするのッ!!原則禁煙よッ!!」

 

 

 

 

 

大声で叫んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「や………やれやれだぜ………」

 

 

 

 

 

 

譲信はついうっかり…しまったとばかりに、そう呟くと、慌てて煙草の火を消した…。 

 

この日、譲信は帰るまでパチュリーに頭を下げ続けることになってしまったのだ……。

 

ちなみに、一時間後目を覚ましたフランと小悪魔は、一部始終をすっかり忘れており、この奇妙で密かに行われていた激闘を知るのは、譲信ただ一人だけとなった……。

 

 

 

 

TO BE CONTINUE…………

 




こういう奇妙な話を書いてみたかった!!
というのが今回の話でした。
さて次回は吉良サイドの話になります!!
次回も是非お楽しみに!!
(出来れば今週中に出したい……!!)


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22人里バトルロワイヤル…その②UNDER PRESSURE

吉良吉影とは何者か…?

違う世界線、性格も背負う性も運命もまるで違うが、皆が知るあの吉良吉影と同一の人物で間違いない…。

故にキラークイーンを引き出す事が出来たのだ。

何かも変わっても“平穏な生活”を求める執念だけは変わることが無かった。そこに痺れる憧れるぅ!!


人里内にある建物と建物の間の人気の無い狭い通路。

そこでは、二人の男が殺気全開で対峙していた。

 

 

吉良「君を始末させて貰う………」

 

 

鈴久「甘く見ないで貰おうか…!」

 

 

吉良吉影と緑山鈴久。

スタンドのような“程度”の能力を扱う二人は、互いにスタンドのような“能力”を発現させ、睨み合っていた。

 

近くにいた少年は、死んだ飼い犬を抱きかかえて、その場から逃げ出していた。

……今、この場にいるのは完全に吉良と鈴久だけだった。

 

 

 

 

 

鈴久「ふっ!!」

 

 

バッ…!!

 

 

先に動いたのは鈴久だった。

スピリッツの能力を使い、自身の左手にデザートイーグルを発現させると、銃口を吉良に構え躊躇なく引き金を引いた。

 

 

 

ガァーーーーーン!!

 

 

 

 

吉良「ッ!」

 

 

バシッ!!

 

 

 

吉良は飛んできたデザートイーグルの弾丸を、キラークイーンの拳で弾き飛ばした。

 

 

吉良「中々面白い能力を使うじゃあないか…」

 

 

吉良は別に焦る事も、攻撃に出ることも無く、かといって余裕のドヤ顔でもなく、勤務中と変わらない、至って自然な態度のままだった。

 

 

鈴久「やはり拳銃じゃあ大した効果は無かったな……しかし、お前が近距離パワー型だというのは分かった……充分だ。そうと分かればやり方は決まっている」

 

 

吉良「近距離……パワー型…?……ふむ」

 

 

 

鈴久はデザートイーグルを地面に投げ捨てた。

そしてすぐに、スピリッツに別の武器を生成させる。

 

 

 

鈴久「お前のスタンドは中々に素早くパワーもありそうだ…!!しかし、やはり俺の能力の前では限界があるものよ…!!クククク……」

 

 

吉良「……ム!!」

 

 

スピリッツの両肩に、巨大な機関銃が生成された。

そして、その銃口はしっかりと吉良の方へ向けられている。

鈴久はニヤリと笑った。

 

 

鈴久「ブァカ者がァァァァァァ!!スピリッツの能力は世界一ィィィィィィ!!俺の能力は有りと有らゆる武器を無制限に生成する事が出来るのだぁぁぁ!!」

 

 

 

鈴久「くらえッ!!吉良吉影!!1分間に600発の鉄甲弾を発射可能!!厚さ30mmの鉄板を貫通できる銃機関砲だ!!一発一発の弾丸がお前を削り取るぞ!!」

 

 

 

 

ドバババババババババッ!!

 

 

 

 

スピリッツの両肩に装着された機関銃から、とんでもない量の弾が雨のように発射される。

流石のこの状況に、吉良も慌てた。

 

 

吉良「防げッ!!キラークイーン!!

 

 

キラークイーン「ウリィィィヤァァァァ!!」

 

 

 

ガガガッガガガガガガガッ!!

 

 

 

負けじとキラークイーンも脅威のラッシュのスピードで弾を弾いていく。

しかし、流石に全部の弾を弾ききるにはこの狭く暗い通路では、難易度が高かった。

 

 

 

吉良「ぐうぅぅッ!?」

 

 

 

跳弾が数十発、吉良の肩や足に穴を空けてしまった。

そこから、血が噴き出す。

 

 

 

鈴久「ハハハハハハッ!!やはりお前の負けに変わりは無いようだなぁッ!!ハハハハハハッ!!」

 

 

 

鈴久は銃激を一旦やめ、吉良の状態を確認する。

キラークイーンこそ、被弾によるダメージは無かったが、その背後に立つ吉良には、跳弾によるダメージがいくつも見られ、左腕はまるで蜂の巣のようになっていた…。

 

 

 

吉良「ぐっ………痛い……な……何て痛さだ……!!」

 

 

 

鈴久「トドメだくらえッ!!スピリッツ!!

 

 

 

スピリッツ「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 

 

鈴久はトドメに、吉良に向かってスピリッツのラッシュを仕掛けようとした。

しかし、その時吉良は静かに呟いた……。

 

 

 

吉良「キラークイーン…“第四の爆弾 アンダープレッシャー”!!

 

 

 

カチッ……ドッグォォォン!!

 

 

 

ギュドォーーーーーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

鈴久「な、何ィーー!?」

 

 

 

キラークイーンがスイッチを入れた瞬間、吉良が爆発し、その爆風で世界が歪んだかと思ったら、何と吉良が無傷の状態で立っていた。

 

この一瞬の間に起こった奇妙な現象に、理解が追いつかなかった鈴久は思わず、スピリッツの攻撃の手を止めてしまった。

 

そして、その隙を吉良が見逃す筈も無かった。

 

 

吉良「キラークイーン…“第二の爆弾 シアーハートアタック”!!

 

 

バシュッ!!

 

 

シアハ「コッチヲミロォ~~~!!」

 

 

キラークイーンの右の手甲から発射された小型の爆弾戦車“シアーハートアタック”。

発射されたシアーハートアタックは、真っ直ぐに鈴久とスピリッツの方へと飛ばされてくる。

 

 

鈴久「なんだこれはぁぁ!?スピリッツ!!」

 

 

スピリッツ「WHOOO!!」

 

 

 

スピリッツは迫ってくるシアーハートを、剣で切り裂いてやろうと自身の剣を振り下ろした。

次の瞬間…

 

 

 

バッキィィィィィン!!

 

 

 

凄まじい音を立てて、スピリッツの剣はポッキリと折れてしまった。

シアーハートアタックはというと、全くの無傷なままだった。

 

 

鈴久「はぁぁぁぁ!?なんだこりゃ!!硬すぎるだろッ!!ええぃ……クソったれ!!」

 

 

鈴久は今度はスピリッツに、ビームサーベルのような高熱のエネルギーブレードを創造させると、シアーハートアタックをそれで斬りつけた。

 

 

バチバチバチバチ…!!

 

 

激しい火花を散らし、シアーハートアタックを削ろうとするが、それでもシアーハートアタックには傷一つ付いていない。

しかし、これでシアーハートアタックのこれ以上の接近は防げる。

一安心した鈴久だったが、次の瞬間……

 

 

 

カチッ……ドッグォォォン!!

 

 

 

鈴久「ぐぶぅぅ!?」

 

 

突如シアーハートアタックが爆発し、ダメージこそは軽症なものの、鈴久とスピリッツは後方へと吹き飛ばされた。

 

 

 

鈴久「また爆発か!?コイツの能力は…爆発系の能力か!!」

 

 

キラークイーンの能力についての考察をしながら、鈴久は素早く次の攻撃へと行動を移す。

 

 

シアハ「今ノ爆発ハ人間ジャネェ…!!」

 

 

 

鈴久「うるさいぞッ!!」

 

 

スピリッツ「ウオォォォォォォォォォォォ!!」

 

 

ガンガンガンガンガン!!

 

 

迫り来るシアーハートアタックをスピリッツのラッシュで殴り飛ばし、鈴久は吉良の方へと向かっていく。

異常な頑丈さを誇るシアーハートアタックを相手にするより、吉良本体を叩くのが懸命だと鈴久は考えた。

 

 

吉良「来るか…賢明だな。私も同じ状況ならそうする。それが最善だからだ」

 

 

鈴久「少し違うね…」ニヤリ

 

 

吉良「!」

 

 

鈴久は吉良にそれほど近付かず、微妙な距離の所で立ち止まった。

そして

 

 

鈴久「スピリッツ!!対軍艦用のハズーカ砲をぶち込め!!」

 

 

吉良「何だとッ!」

 

 

鈴久はスピリッツにバズーカ砲を創造させ、吉良の方へと向けた…。

吉良を見る鈴久の目に、躊躇いの文字など無かった。

 

 

ドオォォォォォッ!!

 

 

バズーカが発射された!

 

 

 

吉良「……ッ!!」

 

 

 

 

ドグァァァァァァァン!!

 

 

 

 

 

ど派手な爆発音と、それに比例する爆発の衝撃が一気に広がる。

両側の建物の壁を吹き飛ばし、狭かった通路が一気に広ける。

大通りからは怯える人々の悲鳴が聞こた。

 

 

鈴久「…………」

 

 

 

鈴久は吉良がさっきまで立っていた場所に積み重なっている瓦礫を黙って見ていた。

スピリッツだけを近付けて、スタンドを介して観察していたのだ。

 

 

 

鈴久「確かに着弾はした……と思う。確実にな。……しかし、なんかこう……手応えが無かったな。もしかすると……生きているのかもしれない…!!」

 

 

 

スタンドの嗅覚を使い、辺りの臭いを嗅ぎ分ける。

焦げ臭いにおいはするが、肉の焼けるような臭いはしない。

瓦礫を観察してても、肉片だとか飛び血だとか、それらしい物も見られない。

 

もっと用心深く観察しようとした鈴久だったが、その時遠くから人の近付く気配がした。

 

 

 

鈴久「ちっ……もう誰か来たのか。流石に派手にやりすぎたなぁ……博麗の巫女にバレる前にズラかるとしよう……」

 

 

見つかれば面倒なのは間違いない。

鈴久はまだ立ちこめる砂埃の中へと消えていった。

 

 

 

 

男性A「何だ!?これは…何が起きてんだ!?」

 

 

男性B「おいこっちに来てくれ!!爆発事故だ!!怪我人がいるかもしれない!!」

 

 

 

すぐに数人の住民が現場に駆けつけたが、そこには既に鈴久と吉良の姿は無かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴久「何とか撒けたようだな。あぁーくそっ!折角矢を見つけたというのに…予想外の邪魔が入って苦労したぞ……!!」

 

 

通路を通って別の大通りへと出た鈴久は、すぐさま人混みの中へと紛れ込んだ。

 

 

鈴久「だが…お陰で矢が手に入った…!!」

 

 

鈴久は右手に持つ矢に視線を移した。

戦闘中、吉良の隙を突いて鈴久は矢を奪いとることに成功していたのだ。

 

吉良が本当に死んだかどうかは確認してないので定かでは無いが、当初の目的は矢を手に入れることであり、それさえ達成出来た今、鈴久にとってその他の事などどうでも良かったのだ。

 

と、そんな時鈴久の肩と通行人の一人の男の肩がぶつかった。

ドン!という軽い音がして、通行人の男は僅かによろけた。

 

 

通行人A「おいてめー!!何処見て歩いてやがんだ!!ちゃんと前見ろボケッ!!」

 

 

鈴久「…………」

 

 

通行人の男は、無視して立ち去ろうとする鈴久の肩を掴んで、引き止めた。

 

 

通行人A「無視してんじゃねぇ!!てめーのせいで危うく怪我しちまう所だったんだぞ!!」

 

 

肩を掴む手に力を込めた男の方へ、鈴久はようやく振り向いた。

 

 

鈴久「アホゥがぁぁぁぁぁぁーーッ!!」

 

 

ゴキィィッ!!

 

 

通行人A「ぶべぇぇぇッ!!?」

 

 

鈴久は男のアゴへ、瞬間的にスピリッツの肘をぶつけエルボーをくらわせる。

真面にその一撃を受けた男は、派手に血を吹き、歯を何本か吹っ飛ばされて、地面に倒れた。

 

 

鈴久「これから俺は帰宅するんだよ。家へ帰ろうとする人間の邪魔をするんじゃあないッ!何より今日の俺は少しイラついてるんだよ!そうなったのはお前が無駄にイキってる阿呆だからだ!!」

 

 

通行人A「ひ…ひぃぃ……あんまりだ……!!」

 

 

鈴久はそう言い残すと、口を抑えてうずくまる男を放ってさっさと歩き出した。

すぐに角を曲がり、鈴久の姿はアッという間に見えなくなった。

 

 

 

 

 

鈴久「ったく…今日はやたらとムカつく事が多いな。いてて……犬に噛まれた傷が痛む!」

 

 

傷口を消毒する為に、鈴久は一旦帰宅する。

角を曲がったつきあたりが鈴久の家であり、鈴久はすぐさま自室へと向かった。

 

 

鈴久「よかった……それ程酷い傷では無いみたいだ。とりあえずガーゼを……」

 

 

消毒液とガーゼを探すため、鈴久は窓側にあるタンスを開ける。

タンスの中を見ると、丁度矢を一本仕舞う事が出来るようなスペースが空いていた為、鈴久はそこへ矢を置こうと、ポケットに入れていた矢を左手に持った。

その時

 

 

 

 

 

 

 

吉良「ここが君の家か」

 

 

鈴久「!?」

 

 

突如聞こえてきた吉良の声に反応して、鈴久はスピリッツを出すと窓の方へ振り返る。

そこには吉良が窓際に腰掛けて、静かに鈴久の事を見つめていた。

 

 

鈴久「そんなバカな…!!」

 

 

鈴久は驚いていた。

吉良が生きていた事にも充分驚きではあったが、何より鈴久が驚いたのは、吉良が全くの無傷だったという点だった。

 

 

吉良「ふぅー……いや本当に恐れ入ったよ。君の能力はただの武器創造で大した脅威では無いと思っていたが…違った。スタンドのガードだけでは防ぎきれない火力を無限に放つ事が出来るとはね」

 

吉良「一度腕は蜂の巣にされたし、一度両足も吹き飛んだ…おまけにサイフまで何処かに落として来てしまった……初めてだよ…ここまで追い詰められたのは。まったく……大した奴だ」

 

 

鈴久「一度は……だと?」

 

 

鈴久は吉良の意味ありげな台詞を復唱した。

確かに、吉良は鈴久の攻撃を真面に受けてはいた。

しかし、吉良の謎の能力によってその怪我は一瞬で消えた…。

爆発がヒントだとは睨んでいても、鈴久は未だ吉良の能力を完全には理解出来ずにいた。

 

 

吉良「ところで……その矢。君の左手に持っている矢をとりあえず私の方に返してくれないかね?……それは君が持っていると非常にマズイことになるんだ……」

 

 

吉良は返せ…と言わんばかりに片手を差し出した。

が、鈴久が吉良の言うことを素直に聞く訳が無かった。

 

 

鈴久「ほざけッ!!ファンネル!!」

 

 

 

ドドドドドドォォ!!

 

 

 

スピリッツの能力で生み出した複数のファンネルを、鈴久は吉良に向けて一斉に放つ。

 

 

吉良「今度は自動追尾弾かね?」

 

 

キラークイーン「しばっ!!」

 

 

 

が、そもそも狭い室内というのもあって、複数のファンネルは一瞬でキラークイーンのラッシュによって叩き落とされる。

しかし、鈴久は別にそれでも構わなかった。

 

 

 

スピリッツ「UUOOOOOOO!!」

 

 

 

吉良「ム!!」

 

 

ファンネルに気を取られていた吉良とキラークイーンに向かって、スピリッツは剣を突き刺そうとした。

 

 

ガッ!!

 

 

間一髪、キラークイーンで突きを止める事は出来たが、それでも剣先が浅く吉良の首に刺さっていた。

吉良の首から静かに、少し血が流れ出てくる。

 

 

鈴久「ハ…ハハハ…動くなよ。動くとブスリ……だぜ?家まで追ってこられた事に関しては冷や汗を掻いたが…しかしお前はバカだな。背後から黙って襲いかかっていれば勝機は充分にあったというのになぁ~!!」

 

 

刃を掴むキラークイーンの手にダメージがあるのか、少し吉良の手のひらからも血が出てきていた。

 

 

吉良「フム…僅かに霊力を込められている剣……か。君の能力は“あらゆる武器を生み出し扱う”……か。成る程、ようやく正しく理解出来たよ。それに関しては私はすごく満足だ」

 

 

しかしそんな状況でも吉良は微塵も、慌てたり焦ったりせず、心から平常心でいるように見えた。

 

 

鈴久(こいつ……なんだ?この不気味なまでの余裕は……?)

 

 

吉良「所で…私はさっき『君がその矢を持っていると非常にマズイ事になる』と言ったがね、少し言葉が足りなかったと思うんだ。だから訂正させて貰うよ…正しくは『君がその矢を持っていると“君が”非常にマズイ事になる』んだ…」

 

 

鈴久「何を…言っている…?」

 

 

鈴久は左手に持つ矢に視線を向ける。

しかし、別に何か変わった事が起こってる訳でも無く、鈴久には吉良の言っている言葉の意味がイマイチ理解出来ていなかった。

 

 

吉良「私のキラークイーンにもちょっとした特殊能力があるという事を説明しているのだよ。君の考察通り、私のキラークイーンの主な能力は爆弾とその爆発だ……だが、その爆弾や爆発にも幾つか種類があってね、全部説明するのは少し面倒だから省くが…」

 

吉良「何種類かある内の爆弾の一つに、“第一の爆弾”という物がある。…第一の爆弾…それはキラークイーンが触れた物は何でも爆弾に変える事が出来るという能力だ…」

 

 

鈴久「………は?」

 

 

吉良「本当に何だって爆弾に変えられるのさ…なんであろうと…そう…例えそれが“矢”だとしてもね……」

 

 

キラークイーンが空いている片方の手で、何かのスイッチを入れるような動作をする。

……鈴久はようやく理解した。

 

 

 

鈴久「ス…スピリッツゥゥゥッ!!俺の……俺の左腕を切り落とせぇぇぇぇぇッ!!

 

 

 

スピリッツ「ウオァッ!!」

 

 

 

ズバァァンッ!!

 

 

 

鈴久はスピリッツに自分の左腕を矢を握ったまま、手刀で切断させた。

その次の瞬間!

 

 

 

カチッ……ドッグォォン!!

 

 

 

何と、鈴久の切断された左腕が爆発したのだ!!

 

 

 

鈴久「ぐぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!痛ぇぇぇぇぇぇッ!!く…くっそぉぉッ!!こ、こんな…こんな事があって堪るかぁぁぁ…ッ!!」

 

 

切断面にガーゼを当て、痛みに耐えながら鈴久は吉良を睨んだ。

吉良は相変わらず焦りもしなければ、優越に浸った余裕の表情でも無い、普通の顔だった。

 

 

吉良「……咄嗟に腕を切り飛ばして爆発から逃れたか…。つくづく大した奴だ…」

 

 

鈴久「お前ぇぇ……吉良吉影ぇぇ!!本気で俺を怒らせたなッ!!」

 

 

吉良「そんな事はどうでも良い。私はさっさと君を始末出来ればそれで充分なのだ」

 

 

鈴久「そうはならねぇって言ってんだよ!!」

 

 

鈴久はありったけのスタンドパワーを全開にして、スピリッツの能力を発動させる。

 

 

鈴久「ビームマグナム!!メガキャノン!!サテライトレーザー!!ヒートホーク!!ビームジャベリン!!ミニチュアローズ!!」

 

鈴久「人類最高峰の火力による一斉砲火だッ!!もう堅気や巫女などどうでも良い!!ここまでコケにされて…遠慮なんてする訳がねぇだろぉぉぉッ!!」

 

 

鈴久はスピリッツと自分が一度に出せるだけ…放てるだけのありったけの高火力の武器を創造した。

 

 

吉良「これは……!!正気じゃあないな!!」

 

 

流石の吉良も、驚きを隠しきれないほどの激情に駆られた鈴久の狂行、もはやブレーキは効かない。

 

 

鈴久「人里くらいは軽く吹き飛ぶ広範囲の破壊力だ!!防げるものなら防いでみるが良いッ!!スピリッツ!!

 

 

スピリッツ「ウゥオォォォォォォォォォォォ!!」

 

 

 

 

ドッギュオォォォォォォッ!!

 

 

 

全ての兵器が一斉に火を噴く!!

吉良目掛けて、人里を完全に崩壊させる天災級の破壊エネルギーが放たれた!!

キラークイーンがいくらパワータイプのスタンドとはいえ、この威力の攻撃を物理的に防ぐ事は不可能だ。

勝った………鈴久はそう確信していた……。

 

 

 

吉良「キラークイーン“第四の爆弾 アンダープレッシャー”!!

 

 

ドッグギュオォーーーーーーン!!

 

 

 

吉良は第四の爆弾を点火した。

世界が揺れ動くような感覚…。

その次の瞬間、何と吉良に迫っていた破壊のエネルギーは何処かへと消え去り、スピリッツによって創造されていた武器も何処かへと消え去っていた。

 

 

鈴久「な………な…何が………起こったぁぁッ!?」

 

 

またもや起こった奇妙な現象に、鈴久は驚愕していた。

完全に着いたと思った一撃は、吉良の謎の能力によって消し去られた。

何が起こったのか……理解出来なかった。

 

 

吉良「キラークイーン“第四の爆弾 アンダープレッシャー”は……一定の時間を爆破して消し去る能力…」

 

 

鈴久「ッ!!」

 

 

吉良「私のキラークイーンは既に、“第三の爆弾”で時間に干渉済み…第四の爆弾は時間に“触れる”事によって発動する能力だ」

 

吉良「消し去られた時間内で起こった事は最初から無かった事になり、消え去った事象が要因で起こった時間外の全ての事象さえも、綺麗さっぱり消えて無くなるそれが…キラークイーン“第四の爆弾”だよ」

 

 

鈴久「バ……カな……!!」

 

 

吉良の口から語られた真実は、鈴久を一気に絶望に突き落とした。

どれだけ、パワーのある攻撃でさえも、消し去られてしまう事実。

それは鈴久の今まで気付き上げてきた“自信”を大きく崩してしまった……。

 

その瞬間、スピリッツから感じられた圧倒的パワーは消え去り、スピリッツの下半身は透けるようにして消え、上半身しか発現しない状態となった。

 

 

鈴久「な…何ィーー!?スピリッツ!?どうしたッ!?」

 

 

突然のスピリッツの弱体化に、原因の分からない鈴久はさらに取り乱す。

だが、よく考えてみれば分かることだ。

いくら“程度”の能力とは言えベースはスタンド…であるならば、当然そのパワーの源は精神力から来ている。

 

スピリッツは強力なスタンド故に、圧倒的精神力の強さによってその強さは保たれているのだ。

しかし、今の鈴久の精神状態は吉良に最高の一撃を無条件に消し去られるという事実に直面して、ズタボロ状態。

弱りきった精神はモロにスタンドに影響を与えるのだ。

 

そうとは知らない鈴久は、先程から続く訳の分からない現象に頭がおかしくなりかけていた。

 

 

吉良「どうやら……勝敗がハッキリ見えてきたじゃあないか。あと少しで私は目的を達成出来そうだ」

 

 

鈴久「う……ぐぐ……!!」

 

 

鈴久(能力…能力だ…!!この場で奴を凌ぐ事の出来る兵器を生み出せ……!!何か無いのか…!!)

 

 

鈴久は吉良のアンダープレッシャーを上回る事の出来る兵器を必死で考える。

何か手は残されているはずだ。

武器なら何だって生み出すことの出来る能力を持つ自分なら、まだ何かあると鈴久はまだ諦めていなかった。

 

 

吉良「ところで……君と戦闘を始めてから既に数分は経っている……業務開始までもう4分しか残っていない」

 

 

鈴久「……?」

 

 

吉良「帰りに掛かる時間を入れると、あと1分半以内に君を始末しなくては…私は遅刻してしまうのだよ」

 

吉良「遅刻する事は社会人として、とてもだらしのない事だ。決められたルールや時間も守れないような人間は、仕事もまともに出来ないと周りから判断され、肩身は狭くなり、仕事も減り、稼ぎも少なくなる」

 

吉良「それはつまり…私の求める“平穏な生活”からは遠ざかるという事を意味する……。それではいけないのだよ。分かるかね?」

 

 

鈴久「何が言いてぇんだ……ブツブツとよぉ~…!!」

 

 

 

 

その時、吉良の隣に立っていたキラークイーンが、鈴久の方へとゆっくり歩き出した。

 

 

 

 

吉良「私が言いたい事はとても簡単だよ。“平穏な生活”を送れるようにするため、今から君を1分半以内に始末する……という事さ」

 

 

鈴久「俺を始末するだと……!?…やれるものなら……やってみやがれぇぇ!!」

 

 

鈴久も弱ったスピリッツを前に出し、応戦する。

 

 

スピリッツ「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

フォトンブレード。

ブレードに触れた物質は問答無用で全て破壊するという、切り札を鈴久は生み出した。

一触れさえ…一触れさえ出来れば勝てる!

鈴久はそれに全ての望みを掛けた。

 

 

キラークイーン「URYYYYY!!」

 

 

スピリッツ「フンッ!!」

 

 

キラークイーンの右ストレートを躱し、スピリッツはキラークイーンに向けてフォトンブレードを突き刺す。

が、キラークイーンもまたスピリッツの一撃を回避した。

 

 

鈴久(いけるッ!!)

 

 

吉良「チッ…」

 

 

スピリッツの連続突きを、キラークイーンは躱しながらパンチを繰り出す。

一発だけ肩にくらわせ、鈴久の肩の骨が砕ける音が聞こえたが、それ以降攻撃を当てることは出来なかった。

 

 

吉良(当てる攻撃では無く…こちらの動きを確実に制限する為の攻撃か……手間取らせてくれるじゃあないか)

 

 

しかし、現時点でのスペックではやはり、キラークイーンが圧倒している。

スピリッツはアッという間に壁際まで追い詰められた。

 

 

鈴久「く……!!」

 

 

吉良「これで最後だ。木っ端微塵に消し飛べッ!!」

 

 

キラークイーン「ウリィィィィヤァァァァァァ!!」

 

 

キラークイーンはトドメの一撃を、スピリッツにくらわせようとした。

だがその時、鈴久はニヤリと笑った。

 

 

鈴久「かかったなッ!!バカめッ!!」

 

 

吉良「ッ!?」

 

 

不意にキラークイーンの動きがピタリ…と止まった。

吉良がよく目を凝らすと、部屋中の至る所から伸ばされている透明なワイヤーがキラークイーンをいつの間にかグルグル巻きにしていた。

 

 

吉良「しまッ…!!」

 

 

鈴久「くたばれぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

 

ゴゥアァッ!!

 

 

 

スピリッツがその隙をついて、キラークイーンの胴にフォトンブレードを突き刺した!!

するとどうだろう。

突き刺された部分からキラークイーンの体全体にヒビが入り、体がどんどん砕け散っていく。

 

 

吉良「バ……バ……カな……こんな所で…!!?」

 

 

アンダープレッシャーのスイッチを押し、時壊しを発動させようとした吉良だったが、その前にキラークイーンの両腕が崩壊し、能力は発動出来なくなった……。

 

 

吉良「ぬぅがぁぁぁぁぁぁぁ……………ッ!!」

 

 

 

バッギャァァァァァァン!!

 

 

 

そして、吉良の体は完全に砕け散り、原子レベルにまで粉微塵となって消えた………。

そしてこれ以上、何の爆発も起きることなく、吉良の反撃も無い。

その場に静寂が訪れる…。

 

 

鈴久「フ………フフ……フハハ……」

 

 

鈴久「フハハハハハハハハハハハッ!!

 

 

最後に立っていた鈴久は、笑い声を上げ、静寂を切り裂いた。

すると、どんどんスピリッツに再び、パワーが漲り始める!!

 

 

鈴久「勝った!!勝ったぞッ!!俺の勝利だ!!ざまぁみやがれぇぇぇッ!!」

 

 

吉良に勝利した。

その事実が再び、鈴久のスピリッツにパワーを取り戻させたのだ!!

 

 

鈴久「これで矢は完全に俺の物だ…!!俺が支配者なのだ!!」

 

 

鈴久「…ん?」

 

 

鈴久は切り落とされ床に転がっている自分の左腕を見るが、その手に矢は握られていなかった。

 

 

 

鈴久「落ちた衝撃で何処かへと滑っていったか……?」

 

 

 

あまり広くは無い部屋なので、探すのにそう時間は掛からないだろう。

さっさと見つけて怪我の治療をしようと、鈴久は矢を探すために、部屋の中を歩き出した。

瞬間…

 

 

 

カチッ……ボゴッボゴォッ!!

 

 

鈴久「あばぎゃ!?」

 

 

鈴久の体がボコボコに膨らみ始める。

そして何が起きたか、鈴久が理解も出来ない内に…

 

 

ドッグォォォォン!!

 

 

鈴久の体は爆発し、木っ端微塵となって消えた………。

 

 

 

シュウゥゥゥゥ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《午後13:30分》

 

 

 

 

店長「えーみなさん!!それでは午後の営業も頑張って行きましょう!!」

 

 

 

一同「はい!!」

 

 

 

店長「ではそれぞれ持ち場へ戻って仕事を開始してください」

 

 

 

休憩が終わり、“縁”の従業員達は、それぞれの持ち場につき、仕事を始める。

人気店なだけあって午後も客足は多く、店は繁盛していた。

店長も接客に出ているが、それでも中々に忙しくなっていた。

 

 

 

店長「おっとそうだ…この書類を今からいつもの相手に届けて来てくれないか?丁度今、頼めるのが君だけなんだ…頼まれてくれるか?吉良くん

 

 

店長に声をかけられた吉良は、ゆっくりと振り向いた。

 

 

吉良「えぇ。分かりました。いつもの場所ですね。それでは……早速向かいます」

 

 

店長「うん。頼んだよ!」

 

 

吉良「はい。お任せを…店長」

 

 

 

 

 

 

書類を受け取った吉良は、届け先へ向かって、歩き始める。

途中で、緑山鈴久の家の前を通り過ぎる時、吉良は誰にも聞こえない声で、呟いた。

 

 

 

 

 

吉良「中々に手強い相手だったが…君は最後の最後で求めてしまった……それが敗北なのだよ……緑山鈴久。……まぁお陰で、こうして矢は無事に私の元へと帰ってきてくれたのだ……だから別に構わないのだがね……」

 

 

 

 

吉良の胸ポケットには、元通り矢が入っていた……。

 

 

緑山鈴久……キラークイーンによる物かも不明な謎の爆発により死亡…。

程度のスタンド、スピリッツと共にリタイア…!!

 

 

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キラークイーン(吉良使用時)

公開可能となった能力説明!!

1,触れた物はなんでも爆弾に変える第一の爆弾。

2,無敵の自動追尾爆弾戦車シアーハートアタック。数は12機まで出せる。1機だけ射程が50m以内となるが、熱感知ではなく、確実に対象を狙って爆発する。
そして硬い。この世の何よりも。
譲信が操った場合のスタープラチナの八割以上本気のパンチでも破壊は出来ない。
つまり、超新星爆発にすら耐えうる耐久力を持つと言っても過言では無いが、正直そこまで硬くても強みはあんまりないだろう。

3,キラークイーンを一般人にとりつかせ、吉良の正体を調べたり攻撃しようとしたり、不利に立つような行為を行う者を、問答無用で必ず爆破させ、時を一時間程巻き戻す。(バイツァダスト)正直無敵。防ぐ術無し。ただし、取り憑かれた一般人の前で無ければ吉良に攻撃可能。
一般人が瞳を閉じてても可能。かなり使い勝手は悪い無敵の爆弾。

4,時を爆破して破壊…消し去り、その間にあった事象やそれが要因で引き起こされる全ての事象は始めから無かった事になる。例:怪我をしても、その原因となった攻撃が行われるタイミングの時間を爆破すれば、怪我も無かったように消え去る。(アンダープレッシャー)

5,???…まだ不明。判明しているのは、死んだ筈の吉良が生きており、吉良を殺した者を爆破し逆に殺している。



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23人里バトルロワイヤル…その③出陣

プロフィール

名前 吉良吉影(18)

誕生日 1月30日

血液型 A型

出身地 幻想郷

利き腕 右

性格 誰に対しても物腰柔らかな態度で警戒心を与えない。そして高い知能と才能を持っているが自分の能力以下の職務に就いている。平穏な生活こそが彼の願い。物事の境界はキチッとしておきたい性格らしく、曖昧なのは好まない。本人に自覚は無いが、殺人だとか虐待だとかいう外道な人間に激しい不快感を覚え、困ってる人間がいるとたまに、考えるよりも先に助けてしまう。

趣味 自分の手のスケッチと手の石膏や彫刻を眺めること。

好きなもの ミステリー小説と推理小説 ブランド物のスーツ 

女性への態度 好みのタイプは無く女性からは結構モテる。しかし、本人が興味あるのは手の形だけで、しかも自分の手が一番だと思ってるナルシストな為、一生異性に好意を抱く事は無いだろう。

能力 キラークイーン 自身の身を守る為、平穏な暮らしを守る為なら遠慮なくその能力を使い、殺人さえ厭わない。


チュン…チュン…チュン…

 

 

朝日が昇り、鳥のさえずりが朝のハーモニーを奏でている人里。

現在時刻は朝の5:30。

人々はこの時間帯に起きだして朝の支度を始める。

そして、譲信もまたこの時間に起床していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラ…

 

 

 

譲信「あー……ガチ眠ぃ~だりぃ~…」

 

 

本日も譲信は紅魔館へ向かうため、慣れない早起きをして朝の支度を済ませてから紅魔館へ赴こうとしていた。

眠たい目を擦り、大きな欠伸を一つかまして、首の骨を軽く鳴らすと、両手をポケットに突っ込んで譲信は歩き始めた。

 

 

譲信は高校生だが、朝練はおろか部活の経験すら無い。

つまり朝の早起きは全然慣れてないのだ。

運動部、文化部の両方ともに、譲信は全く興味が無かった。

かと言って譲信が運動音痴かと言われれば実はそうでも無い。

 

譲信の握力は78~86kgあり、50m走は6秒、調子良いときは5秒、ハンドボールに関してはヤンキー全盛期の頃は90m投げれたらしく、体育のあらゆる競技において1位を勝ち取っている。

 

喧嘩でも1対50の大喧嘩で50人の武器持ちを相手に、無傷で勝つなど、スタンド能力無くしても実は異常な強さを譲信は持っていたりするのだ。

 

譲信のヤンキー全盛期…中学の時は“鬼神”の異名が付けられた程だった。

今ではお調子者で、心優しい性格の譲信だが、高校生に上がる少し前までは、ガチガチの不良だった。

 

学校の番長として君臨するも、不登校。

県内の族を単独で6つ壊滅させ、町内全てのヤンキー高の番長達は病院送りに。

極めつけは国内でも有名な半グレ集団と単独で戦争を起こし、勝利。

 

半グレ集団を壊滅させ、その半グレ集団と繋がっていたヤクザ事務所も壊滅させた。

そして中学2年の時に一度、酒に酔ってウザ絡みしてきた現役のプロボクサーを半殺しにし、警察沙汰になっている。

 

当時の譲信の性格は、喧嘩っ早く、情け容赦なく、一般人、女、子供、年寄り、相手選ばずに少しだけでもウザく感じたら遠慮なく、死にかけになるまで殴り倒すような荒々しい性格だった。

 

今、譲信が丸くなっているのはジョジョの奇妙な冒険に心打たれたからであり、まさに奇跡だったのだ。

 

 

 

 

譲信「あ~あ……メンドクセー。あ~あ腹減ったなぁー…気が付けば懐は空っぽ…事務所の金は勝手に使ったら藍しゃまにシバかれるし……はぁ~……」

 

 

ことあるごとに調子に乗って、酒を飲んだくれていた譲信は、気が付けば自分のサイフの中身をすっかり空っぽにしてしまっていた。

だからと言って、そんな自身の怠惰を理由に事務所の経費を削り取ってしまえば、現在資金のやりくりを無償で代行してくれている藍に叱られてしまう。

 

だから金欠により、まともに朝食を摂る金さえ譲信にはもう無かったのだ。

元気を無くした譲信は大きくため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

紫「あら?朝から暗いため息を吐くのは良くないわよ?」

 

 

譲信「あ~ン?」

 

 

そんな譲信の背後から声を掛けたのは、スキマから身を乗り出して、面白そうに胡散臭い笑みで譲信の事を見ていた紫だった。

まだ朝早いので、付近には譲信と紫の姿しか無かった。

 

 

譲信「あれまぁ…紫さんじゃあないですか~。俺のため息なんてどーでも良いでしょぉー…ほっといてくださいよ。それより、こんな早朝に一体何の用すか?」

 

 

紫「前に伝え忘れた事があったから来たのよ」

 

 

紫が軽く指を空でなぞると、譲信の隣にもスキマが開いた。

 

 

紫「それと…昨日から何も食べてないのでしょう?よければうちで朝食を食べていかない?」

 

 

瞬間、譲信の表情はパーッと明るくなって輝いた。

 

 

譲信「マジすか!?良いんすか!?是非!!お言葉に甘えちゃいますよ俺はッ!!」

 

 

言うなり譲信は意気揚々と、スキマの中に飛び込んで行く。

 

 

紫「行動が早いわね……思ってたよりも空腹だったのかしら」

 

 

飯と聞いて明らかに態度の豹変した譲信に、紫は思わず呆れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

譲信「ちょいといきなりシートゥーレイ!」

 

 

譲信が飛び込んだスキマから出ると、そこは前に訪れた事のある八雲邸の一室だった。

しかし、前と違ってそこには譲信とは初対面の猫耳の少女がいた。

 

 

譲信「お?」

 

 

???「だ、誰にゃ!?」

 

 

いきなりスキマから現れ、自身の真っ正面に立っている謎の人物を前に、当然その少女は警戒心を抱く。

 

 

譲信「なんだぁ~?この猫のお嬢ちゃんはよー?」

 

 

紫「この子は橙。藍の式であり大切な私の家族よ」

 

 

譲信「藍しゃまの?へぇー」

 

 

後ろのスキマから現れた紫の説明を受け、譲信は橙の事をまじまじと観察していた。

 

 

橙「紫しゃま!この人は誰なんですか?」

 

 

紫「ここにいる彼が以前私達が話していた空条譲信よ。橙、挨拶なさい」

 

 

橙「この人が…!!はい紫しゃま!!初めまして譲信しゃま!八雲 橙です!」

 

 

橙は礼儀正しく、ペコリとお辞儀をした。

 

 

譲信「空条譲信だ。シクヨロだぜ……ところでなんで“しゃま”付けで呼んだ?」

 

 

橙「えと…紫しゃまと藍しゃまとは対等な友人の様な関係のようだったので…呼び捨ては失礼かと…」

 

 

譲信「はぁ?対等?…………ぷ……ハッハッハッ!!」

 

 

橙「?」

 

 

尋ねられて答えた橙の言葉を聞くと、譲信は愉快そうに笑い出した。

 

 

譲信「そいつぁ勘弁してくれや!対等?ンな訳あるかよ♪俺ぁ下だよ下。紫さんや藍しゃまには面倒見て貰いっぱなしでまだ何一つ礼も返せてねぇ。二人にはいつも世話になりっぱなしで頭が上がんね~よ」

 

 

そう言うと譲信は橙の頭を軽く撫でる。

 

 

橙「にゃっ!?」

 

 

譲信「ま、つーわけで別に俺に対して敬意を払う必要はね~ぜ。な?紫さん!」

 

 

紫「ふ~ん?…ま、あなたがそれで良いのなら構わないのだけれどね」

 

 

紫は何やら少し、興味深そうに譲信の言葉を聞いていた。

 

 

紫「まぁ取り敢えず…まずは朝御飯よ。そろそろ藍が持ってきてくれるから二人とも席に着きましょう」

 

 

橙「はい!」

 

 

譲信「うぃ~っす」

 

 

橙と譲信と紫がそれぞれ、席に着いたところで襖が開き、藍が朝食を運んできた。

 

 

藍「お待たせしました。……ん?譲信……?」

 

 

譲信「あ、お邪魔してまーす」

 

 

譲信の姿を見つけると、藍は少しだけ驚いた。

紫から、客人が来るので朝食を4人分用意しておくようにと言われていた藍だったが、それがまさか譲信とは思いもしなかったようであった。

 

 

譲信「クンクン……。すげー美味そうな匂いがするぜッ!!」

 

 

紫「フフフ…さ、皆でいただきましょう!」

 

 

すぐに、全員の前に朝食が置かれる。

高級ホテルで出される朝食よりも、煌めいて、そしてとても良い匂いがしていた。

 

 

一同「いただきます!」

 

 

腹の虫が鳴き止まなかった譲信は、合唱と共に口いっぱいに白米と、焼き魚を頬張った。

そして、味噌汁を人啜りした。

 

 

藍「どうだ?口に合うか……?」

 

 

俯いて、プルプル震える譲信を見て、まさか口に合わなかったのでは…と少し不安になりながら、藍は譲信に尋ねた。

橙も少し不安そうに譲信の顔を覗き込む中、紫だけは薄ら笑いを浮かべながら、味噌汁を飲んでいた。

ほんの少しの間の静寂……しかしそれはすぐに過ぎ去った。

 

 

 

譲信「ンまぁぁぁぁぁぁぁぁいッ!!

 

 

藍・橙「!!」ビクリ

 

 

突然涙を流しながら叫んだ譲信に、藍と橙はビックリしてしまった。

これ幸いか二人とも、口には何も入れてなかったので喉に詰まらせたりとか、そのような大事には至らなかった。

 

 

譲信「この米粒の一つ一つが際立ってふっくらしていやがる!!釜炊きっつぅんですか~?現代の日本じゃあ炊飯器で炊いた米しか食えやしねぇ~から初めて食ったぜ!!ディ・モールト!!ディ・モールト・デリシャァァス!!」

 

 

藍「ディ……ディ・モールト…?」

 

 

譲信「そしてこの焼き魚!!良い感じに油が落ちていて、朝の胃には優しい絶妙な焼き加減!!なおかつふっくらしていて魚本来の旨みが存分に感じられる!!ガスコンロだとかで焼き魚を調理しているような現代日本じゃあ決して味わえねぇ昔ながらってやつの美味さだぜ!!」

 

 

譲信「絶妙な加減と言やぁこの味噌汁も!!とても良い濃さだ!!しかも丁寧にダシを取ってるからか、体の芯に染み渡るような温もりまで感じるッ!!美味い!!うンまぁぁぁいなのだぁぁぁぁッ!!」

 

 

藍「そ…そんなに泣くほど喜んで貰えるとは…名利に尽きるな!」

 

 

泣くほど自身の手料理を気に入ってくれた譲信を見て、藍は心から嬉しく思い、自然と笑みがこぼれていた。

 

 

譲信「う……美味すぎで涙が出て来たぜ……。こんな素晴らしい朝飯なんだ…心まで清らかになっちまったのかな……涙が止まらねーぜ…!!」

 

 

紫「あらあら…お味噌汁の中に涙が入ったら折角の“絶妙な加減”が台無しになるわよ?」

 

 

譲信「ううぅ……そうだな……。ぐすっ……。気を付けないとな…ぐすっ…」

 

 

橙(大袈裟な人だにゃぁ……)

 

 

藍「フフ…さぁ冷めないうちに食べてくれ譲信」

 

 

紫「たまにはこういうのも賑やかで良いわねぇ~」

 

 

泣きながら食べてる譲信を、紫、藍、橙、のそれぞれ三人は面白そうに見ながら、朝食を食べていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同「ごちそう様でした」

 

 

 

やがて朝食を食べ終えると、藍と橙は4人分の食器を洗いに運んでいく。

譲信も手伝おうとしたが、紫に引き止められ、室内は紫と譲信の2人だけになった。

 

 

譲信「ふー…食ったぁー…。満足満足♪」

 

 

紫「フフ…それは良かった。誘った甲斐があったわ」

 

 

譲信「マジ感謝っすよー。……えとそれで、俺に話……があるんすよね?そっちが本命の用みたいですし」

 

 

紫「えぇ」

 

 

譲信は珍しく、背筋をぴんと伸ばして座り、しっかりと話を聞く姿勢になる。

譲信の聞く準備が整ったのを見て、紫は話し始めた。

 

 

紫「今夜、博麗神社で宴会が開かれるのよ。幻想郷では異変が解決すると異変を起こした側が主催で宴会を開く文化があるの」

 

 

譲信「ほう?宴会か…」

 

 

紫「その宴会には異変に関わった人物は勿論、色んな権力者達が集まるわ。当然私も出席するわよ」

 

 

紫「そこで譲信…あなたにはその宴会に出席して貰いたいの。幻想郷の権力者達が集まるこの貴重な機会に、あなたの事を知ってもらいたいのよ。幻想郷で過ごす以上、“スタンド”という強大な力を持つあなたの存在はいずれ皆に知れ渡る…その時にあらぬトラブルを避けるために必要な事なのよ」

 

 

譲信「うぅ~ん成る程。確かにそりゃあ大事な事っすね」

 

 

譲信は改めて思い出す。

この幻想郷で強者と呼ばれる連中は、少なからず戦闘好きが多いということを。

紫の言うとおり、譲信の存在を認知されていないと間違いなく争いに巻き込まれたりするだろう。

 

 

譲信「了解っす!そんじゃあ今夜のその宴会とやらに出席しますよ。ついでに商売の宣伝にもなるだろうしなぁ~」

 

 

紫「えぇそうして頂戴。必ずよ」

 

 

紫は一応念を押しておいた。

譲信なら人との約束を、ましてや自分との約束をすっぽかすような人間とは紫は思っていないが、それでも念を押すあたり、つまりはそれほど重要な事だったのだ。

 

 

譲信「んーと…それで話は終わりで?」

 

 

紫「いいえ…あともう一つだけ話はあるわ」

 

 

そう言うと紫はスキマを開き、机の上に何かを置いた。

譲信はその何かを覗き込むようにして見た。

それは矢だった。

 

 

譲信「何だこりゃ?矢?……何で矢がいきなり出てくるんだ?」

 

 

紫「矢と言えば……ジョジョラーのあなたはまず何を連想するかしら?」

 

 

古くさく、デザインがクソださい矢を見て不思議に思う譲信に対し、まず紫は尋ねた。

紫の問いに、少し驚きながらも譲信は答える。

 

 

譲信「そりゃあ決まってんでしょ!スタンドの矢!!レクイエム!!考えるよりも早く出てくる言葉だぜ!!」

 

 

紫「そうね。ありがとう…予想通りの回答ね」

 

 

譲信「いやそんな事はどぉーでも良いんですよ。俺が聞きたいのはですね?何でいきなり矢なんか出てくるんだって事ですよ」

 

 

すると、紫の顔はいつになく、真剣な物となった。

紫から放たれるその静かなる重みに、思わず譲信は生唾を飲み込んだ。

 

 

紫「この矢は先日…人里で異変を起こした男の家から回収した物よ。スタンドの矢は矢で貫いた才能ある者からスタンド能力を引き出す……でもこの矢は矢で貫いた才能ある者から……“程度の能力”を引き出すのよ」

 

 

譲信「ッ!?」

 

 

紫「そう…あの男はこの矢に貫かれた事によって、あのような強大な程度の能力を手に入れた…。そして、最悪な事にこの矢は他にも複数人里内…幻想郷内に存在しており、既に能力者を何人も目覚めさせているの」

 

 

紫「さらに最近分かった事で言うと…人里内では数名の能力者達がこの矢を巡って、密かに殺し合いを行っている事も判明しているのよ……そしてもっと更に言えば、矢で目覚めさせた程度の能力は、スタンド能力と酷使しており傍に立って現れる守護霊…という共通化があるの……そしてそのどれもが強力…」

 

 

譲信「ま…待ってくれよ?確かにそりゃあヤベー話なのは分かるぜ?…でもそーいうのは霊夢とかにする話じゃあないのか?何で俺に話すんだよ?」

 

 

紫「霊夢には既に話してあるし、動いて貰っているわ。私が貴方にもこの話をしたのは他でもない…さっきも言った通りこの矢と矢で引き起こされる現象は全て、“スタンド”と酷使している……つまり、私よりも誰よりも遥かにスタンドについて詳しいスペシャリストである貴方が必要になってくるのよ」

 

 

紫「不確定要素の多いこの事態には、幾つもの能力を持ち、臨機応変な対応が出来る存在が必要…この幻想郷において、一番適しているのは間違いなく譲信、貴方よ」

 

 

譲信「紫さんにそこまで評価されてんのは正直嬉しいのもあるけどよ……そんな危ない事に俺は首を突っ込みたくねーんだよなぁ……」

 

 

いくら譲信とは言えど、そんな明らかにヤバそうな事に首を突っ込むことはどうしても避けたい事だった。

ただでさえ、異変解決等で手一杯だったのだ。

 

 

紫「……………既に一般人の犠牲者が出ているわ…それもまだ……10歳にも満たなかった子供よ」

 

 

譲信「何だと………?」

 

 

しかし紫のその言葉を聞いた瞬間、譲信の目は変わった。

 

 

紫「……譲信。この異常事態に…私達には貴方の力が必要なのよ。確かに、幻想郷には精々、1年しか滞在しない貴方にとってこれは…どうでも良い話かもしれない…命をわざわざ危険に晒す必要も無い……だからこれは私の我が儘なお願いになるわ……譲信。貴方の力を私達にどうか貸して頂戴…!」

 

 

譲信「な……えっ…ちょ!?」

 

 

藍・橙「紫様(しゃま)!?」

 

 

紫は、譲信に対して頭を下げた。

丁度そのタイミングで藍と橙が部屋に戻って来てしまい、藍も橙も譲信も目を丸くして固まった。

 

 

譲信「な…何言ってんすか!!頭を上げてくださいよッ!!俺は紫さん達には世話になりっぱなしで礼も返せてねぇ…それなのに紫さんに頭下げられたら俺にいつ、恩返しさせろって言うんすか!!」

 

 

譲信は慌てて、紫に頭を上げさせた。

 

 

紫「譲信…」

 

 

譲信「確かにこれは、普通の異変とは違って異質な物だってのは素人の俺でも分かりますよ!!命の危険だってある……それでも!!俺にはてめぇの命を懸けるだけの借りがある!!紫さん達から…幻想郷から受けた恩は命を懸ける程…!!この地球に匹敵するくらいに大きい物なんですよ!!」

 

譲信「それに子供が犠牲になってるのに黙ってるのはカッコ悪い奴のする事だ…!!だから俺は喜んで…力にならせて頂きますッ!!それが俺に出来る唯一の恩返し…紫さん!!この空条譲信を…遠慮なくこき使ってくださいっす!!」

 

 

譲信は心からの叫びを伝えると、紫に対し頭を下げた。

譲信はこの幻想郷に来てから、ずっと考えていたのだ。

スタンド能力に目覚めたのも、幻想入りしたのも、何かの運命に導かれての事だったとしたら…自身の持つスタンドの力は、きっと幻想郷の為に捧げる物じゃあないのか……と。

 

少なくとも、受けた恩はとてつもなく大きい。

売られた喧嘩は全て買う…やられたら数億倍返し…そして、受けた恩は必ず倍にして返す……それが譲信の貫く仁義。

故に自身の命を懸ける事に何の迷いも無かった。

むしろ、呼吸をするのと同じように、当たり前のことのように受け入れられた。

それが“正しいこと”だという確信を得ていたのだ。

 

 

紫「譲信、貴方は……格好つけすぎよ。まだ20にも満たない人の子が、簡単に命を懸ける…なんて言わないの……。でも……ありがとう。貴方のその気持ち、とても嬉しく思うわ」

 

 

紫は、頭を下げている譲信の頭を軽くポンポンと撫でた。

 

 

譲信「ヘッヘ…ちと格好良すぎましたか俺?でも本気っすよ。ロクでもねーような人間の俺でも、仁義の1つや2つはあるんすよ!」

 

 

藍(全く……どうりで紫様が気に入る人間な訳だ…。)

 

 

譲信はニヤリと笑って、紫の目を見て言った。

曇り無い真っ直ぐなその目は、紫が久しく見た人間の目だった。

 

 

譲信「……まぁーとは言ったけど…力を貸すって言っても俺は何をすりゃあ良いの全然分からねー…。なぁ紫さん?」

 

 

話が一旦纏まった所で、思い出したように譲信は頭をポリポリと掻きながら呟いた。 

 

 

紫「今から説明するわ。貴方にしてもらいたい事は二つ…矢の回収と矢による能力者の発見、場合によっては無力化をお願いするわ。それ以外の矢の調査や捜索については、私と藍、そして霊夢に任せて頂戴」

 

 

譲信「あ、りょーかい!」

 

 

藍「情報は定期的に私が事務所を訪れる際に共有する手筈だ。分かってると思うが、他言無用で頼むぞ」

 

 

そう言いながら藍は橙の頭を膝枕しながら撫でていた。

 

 

譲信「勿論っす!」

 

 

紫「それで…早速なのだけれど既に1つ、矢の在処が判明しているの。その回収をお願いしたいのだけれど…1つ問題があってね…」

 

 

譲信「問題…?」

 

 

紫「その矢は現在、能力者が所持しているのよ。もしかすると戦闘になる可能性さえある……何より人里内での争いは色々と厄介事を招くわ…」

 

 

譲信「ぬぬぬ………」

 

 

紫の言うとおり、訳ありとは言え人里内での戦闘は御法度。

しかも、事情が事情なだけに理由を説明する事もできず、最悪の場合譲信が異変の主犯として処理される可能性さえあった。

迂闊には動けないのだ。

…しかし、紫には既に1つの打開案があった。

 

 

紫「そこで提案よ。私も直接同行するわ。私と共に行動した結果であれば、事は上手く収めやすいし、何より相手も賢者を相手にするとなると穏便に済ませようとする可能性が高い…。例え戦闘になっても私と貴方が組めば素早く沈静化出来るわ。…どうかしら?」

 

 

賢者が直接出向く…それが意味する事は色々と大きい。

メリット、デメリットの狭間ギリギリだった。

しかしそれを決断したのはやはり、それほど矢と能力者が未知数な存在だった為であった。

 

 

譲信「こっちもそれは願ったり叶ったりすよ!!紫さんも来てくれるならまさに、鬼に金棒!!是非お願いします!!」

 

 

そう言う譲信の内心は結構ハッピーだった。

マジで心強い味方が来てくれる…!!と神にまで感謝していたのだ。

 

 

紫「なら決まりね。早速向かいましょう。人が少ない朝の内にね…。藍、留守は任せたわ」

 

 

藍「お任せください。譲信、紫様、お気を付けて」

 

 

紫がスキマを開くと、まずは譲信が勢いよく飛び込む。

その後を紫がゆっくりとスキマに入ると、スキマの入り口は綺麗に閉じた。

藍と橙はそんな2人の背中を黙って見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲信「よし行くぜッ!!」

 

 

スキマの先に繋がっていのは、人里内の何処かにある建物との間の狭い通路だった。

スキマから出た譲信は、通路を駆け出し大通りへ飛び出した。

その時

 

 

ドンッ!!

 

 

譲信「ぬおぉっ!?」

 

 

男「むぅ!!」

 

 

一般人の男性と出会い頭にぶつかってしまった。

 

 

譲信「す…すみません!!」

 

 

譲信は慌てて男性に向かって頭を下げた。

 

 

男「全く……君、もう少し気を付けたまえ…ちゃんと前を見て歩くように」

 

 

譲信「はい!本当すみませんした!!」

 

 

幸い、怪我は無かったようで男性は服を整えると再び何処かへと歩き出した。

 

 

紫「はぁ……気を付けない」

 

 

譲信「う……うぃっ……す」

 

 

紫にため息を吐きながら、軽く頭にポコンとチョップを入れられ、譲信はすっかり落ち込んでしまった。

 

 

紫「しっかりなさい……。さぁ行くわよ」

 

 

譲信「そっすね……!!よっしゃ!!」

 

 

しかしすぐに気を取り直すと、譲信は頬を叩き気合いを入れ直して歩き出した。

必ず成し遂げる……譲信はそんな力強い瞳をしていた……。

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 




プロフィール

名前 空条譲信(17)

誕生日 7月10日

血液型 O型

出身地 京都

利き腕 右

性格 お調子者で面白い事が好きだが、面倒事には巻き込まれたくない。それでも困ってる人は見捨てておけず、多少強引にでもお節介を焼く。誰に対しても平等に優しく、時に厳しく接する為、兄貴分として皆からは慕われている。

趣味 ジョジョ ゲーム アニメ マンガ 筋トレ 

好きな物 モフモフモコモコしたもの ニャンコ コーラ 幽香の家にあったお皿 煙草(ラーク)


女性への態度 好みのタイプは年上お姉さん系 誰かに甘える事も出来ずに育ってきた為、密かに甘えられる存在を求めている。本人に自覚は無いが、実は結構モテている。基本的に女性だからと言って特別優しくしたりとかはしない。

能力 全スタンドマスター そしてジョジョに関する物は何でも作り出せる能力 と思ってるが実際はジョジョの全てを身に宿すのが能力である。本人が成長しない限り、能力に先は無い。



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24人里バトルロワイヤル…その④平穏の終わり

最近、投稿ペースが落ちたし、返信もすぐ返せなくって申し訳無かったです!
ようやく忙しかった連休が終わったので、頑張って行こうと思いますッ!!

体に鞭打ってやろうじゃあないかッ!!(笑)
目指せ!世界一ィィィィィィ!!



 

『裁いてもらうがいいわッ!!吉良吉影!!』

 

 

『何ィィィィィィィィ!!わ…わ私は……私はどこに……連れて行かれるんだ……?』

 

 

『さぁ……?でも…“安心”なんてない所よ…少なくとも…………』

 

 

 

『う…うわぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉良「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

チュンチュンチュン…

 

 

午前5:45分。

吉良は悪夢から飛び起きるように起床。

まったくもって最悪の目覚めだった。

 

 

吉良「ハァー…ハァー…ハァー………夢か……」

 

 

 

嫌な汗を全身に掻いており、体調も少し悪い。

あまりにもリアリティのある悪夢に、吉良は数分は布団から起き上がれずにいた。

 

 

吉良「クソッタレが……最近、こんな夢ばかりだ」

 

 

大夫落ち着いてきてから一言、吉良は忌々しげにそう呟いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~人里バトルロワイヤル4~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉良吉影の朝は早い。

毎朝5:45分に起床し、6:00までに着替えや準備を済ませ、朝食を摂る。

 

今日の朝食は卵二つ分の目玉焼きと、こんがり焼きたての食パン一枚に、ベーコンとチーズ。

そして、淹れ立ての珈琲だ。

 

嫌な夢を見た吉良だったが、自身の手の石膏に囲まれて朝食を食べているうちに、マイナスな気分は何処かへと吹き飛んだ。

 

6:10分。

朝食が終わり、後片付けが住むと20分程の軽いヨガに近いストレッチを済ませ、スムージーをコップ一杯飲み干すと、6:30分いよいよ出勤だ。

 

今日の幻想郷は快晴で、風も心地良く、なんだか元気が湧いてくる。

 

 

 

吉良「良い朝だ。こんなに気持ちの良い朝を迎えられるなんて幸せだな。フフ…実に良い気分だ」

 

 

吉良はご機嫌になりながら、職場へ向かって歩く。

大通りに差し掛かり、開店準備中の店舗を眺めながら、大通りを抜けようとした。

と、その時。

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

青年「ぬおぉっ!?」

 

 

吉良「むぅ!!」

 

 

突如、狭い横の通路から飛び出してきた変わった服装をした青年とぶつかってしまった。

仰向けに倒れそうになった吉良だったが、日頃のストレッチのお陰で柔らかくなっていた体を上手く使い、なんとか踏ん張る事が出来た。

 

 

青年「す…すみません!!」

 

 

青年はすぐさま、吉良に頭を下げて謝った。

 

 

吉良「全く……君、もう少し前を見て歩くように…気を付けたまえ…」

 

 

青年「はい!本当すみませんした!!」

 

 

青年は再び頭を下げて謝ると、何処かへと去って行った。

 

 

吉良(フン…全く…なんだか最近ツイてないな…)

 

 

吉良は少しだけ、疲れたように首を一振りしてから歩き出した。

何せ、最近の吉良はやたらとツキが悪い。

矢を盗まれかけ、サイフを無くし、怪我をしたり死にかけたり…兎に角、平穏とは程遠いトラブルにばかり巻き込まれていた。

 

このままじゃあいけない…気を引き締め直さねば…と、吉良は自分に言い聞かせた。

 

 

吉良(こういう時こそ、しっかりしなくては…平穏な生活の為には、注意深く…石橋を叩いて渡るのと同じくらいに慎重に行動するのだ吉良吉影…!!)

 

 

???「あ、吉良くん!!おはよう!!」

 

 

吉良「!…おはようございます……。桜先輩…」

 

 

そんな吉良の後ろから、元気よく声を掛けてきたのは吉良と同じく“縁”で働く、女性の従業員だった。

桜先輩…吉良にそう呼ばれた女性は、吉良より5つ年上の先輩で、かなりの美人だった。

店一番の美貌で、彼女目当てに店を訪れる客がいる程だった。

 

 

桜「吉良くん朝早いんだね!私、いつもは30分くらい遅くに家を出るから、今日は一番乗りだと思ったんだけどな~…」

 

 

桜は少しだけ、残念そうな声でそう言った。

 

 

吉良「そうですか…。しかし、どうしてまた今日はいつもより30分も早くに出勤を?」

 

 

桜「なんだか早起きしちゃって…特にする事も無かったからね~…あ、そうだ!」

 

 

吉良「…?」

 

 

何かを思いついたらしい桜を見て、吉良は何だか嫌な予感がした。

 

 

桜「まだ1時間くらいは余裕あるから、一緒に寄り道していかない?ねーね、良いでしょ?吉良くん!」

 

 

吉良「………」

 

 

吉良は一瞬、心の中で凄く迷った。

本心はすぐにでも断りたい。

誰かと何かをするなんてコリゴリだ…おまけに、桜は店一番の美人でしかも目立つ。

そんな彼女と共に行動すれば変に目立つし、タチの悪い男の仕事仲間からは妬まれるかもしれない。

 

妬みは、面倒事の原因になりやすい。

わざわざトラブルが引き起こされそうな事を吉良は望まないのだ。

しかし、断るにしても桜には何だかんだ面倒を見て貰ってる……事になってる先輩であり、普通に断るには少し厳しい…。

かと言って何かの理由を付けて断ろうにも、嘘でも付けられるような理由が今は用意出来ない…。

 

だから吉良は、仕方なく答えた。

 

 

吉良「分かり…………ました……」

 

 

桜「やった!!吉良くんはいつも誘っても中々来ないからね。やっと誘って来てくれた!!フフフ♪」

 

 

桜は嬉しそうに笑うと、吉良の隣に並び歩き出した。

だが対照的に、吉良は表情には出さなかったがとても不機嫌だった。

 

 

吉良(クソッタレ……この女……。叶うなら今すぐ爆破して最初から何も無かったかのように、綺麗さっぱり消し飛ばしてから、この優雅な朝を満喫したい……!!だが…それをすれば平穏な生活は終わり……追われる立場になってしまう………)

 

 

桜「朝は本当に静かだよね~。お店もまだ開いてないから、人も少なくて落ち着くね!」

 

 

吉良「そうですね…」

 

 

そんな吉良の内心なんて気付かない桜は、呑気に吉良に話し掛ける。

吉良は感情をグッ…と堪え、ありきたりな返事ばかり返していた。

 

 

桜「それにしても…昨日は吉良くん大変だったね」

 

 

吉良「昨日……?特にいつも通りでしたが…はて…」

 

 

突然、昨日の話をされたのでおおまかに思い出すものの、これといって苦労したような記憶が吉良には無い。

そもそも、吉良の立場上苦労することはよっぽどの事が無い限り、無いのだが。

 

 

桜「お昼休憩の時だよ!ほら、覚えてるでしょ?…大切な大切な…矢をワンちゃんに盗られて、そのせいで緑山鈴久って人と戦う羽目になったよね~…」

 

 

吉良「……ッ!!」

 

 

吉良は驚いた顔つきで、その場にピタリ…と立ち止まった。

桜は少し吉良の前を歩いてから立ち止まり、吉良の方へ振り向いた。

 

 

桜「キラー…クイーン?だったかな…。カッコ良かったよ♪とっても強いんだね吉良くんは♪私も頑張らなきゃ!!って思っちゃった!」

 

 

吉良「何の……一体何の話を…?」

 

 

吉良の心臓の鼓動が、どんどん早くなっていく。

吉良の視線はずっと桜に釘付けになっていた。

桜は少し申し訳なさそうな顔になる。

 

 

桜「ゴメンね……吉良くん。“私も”なの……。吉良くんはね、私の初恋の人だっんだぁ……だから本当に…………ゴメンね…?」

 

 

 

 

 

桜「今から………殺し合わなくちゃあいけないの……」

 

 

桜の瞳は、ドス黒い何かに染まっていた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉良「ッ!!“キラークイーン”!!

 

 

反射的に吉良はキラークイーンを発現させる。

桜はそれを待っていたかのように、ただ静かに吉良を見つめていた。

 

 

桜「出したね…キラークイーン。………私ね、子供の頃からずっと……夢があったの。“鉄の首飾りを外して、自由に生きる”ように……大袈裟な例えだけど…兎に角何者にも縛られず自由にこの世界で生きたいのよ」

 

桜「その為なら私は…この力を躊躇いも無く使える!私は吉良くん…あなたを倒して矢を手に入れて………夢を叶えるッ!!」

 

 

 

桜の隣にも、何かが現れる。

それは、長いリボンが束になってマネキンの形になった、人型の程度の能力によるスタンドだった。

吉良はまたトラブルに巻き込まれたのか…と自分のツキの悪さを呪った。

 

 

 

吉良「この吉良吉影……何故こうもトラブルに巻き込まれるのだ……ただ平穏な生活を送ることだけが願いだと言うのにッ!!」

 

 

桜「うん………ゴメンね!」

 

 

先に仕掛けたのは桜だった。

言い終わると同時に吉良に向かって突っ込んでいく。

 

 

吉良「くっ…!!」

 

 

リボンの人型がどんどん解けていき、それは桜の体にどんどん巻き付いていく。

まるで鎧を纏うかのように、オシャレをするかのように、色鮮やかなドレスへと形を変えていく。

 

 

吉良「“シアーハートアタック”!!

 

 

バシュウッ!!

 

 

桜「!!」

 

 

吉良はシアーハートアタックを2機射出した。

2機のシアーハートアタックは、真っ直ぐ桜目掛けて飛んでいく。

 

 

吉良(よし…着弾…今だッ!!)

 

 

ところが、2機のシアーハートアタックはそのまま桜の体をすり抜け、地面にめり込んだ。

 

 

吉良「なッ!?」

 

 

桜「ガードがガラ空きよ!!」

 

 

驚く吉良の隙をつき、間合いに入った桜はアッパーを繰り出した。

 

 

吉良「甘いぞッ!!」

 

 

バシッ!!

 

 

だが難なくキラークイーンのガードでその攻撃を受け止めた。

 

 

桜「ッ……強いね……私のより遥かにパワーは上。でも……それじゃあ意味ないんだよッ!!」

 

 

瞬間、キラークイーンのガードをすり抜け、桜のスタンドを纏った拳はキラークイーンの顔に命中した。

 

 

ゴッ!!

 

 

吉良「ぬぅぁぁッ!?」

 

 

スタンドが受けたダメージは本体にもフィードバックされる。

吉良は後ろに少し、吹き飛ばされた。

口の中を切ったようで、軽く血の香りがした。

 

 

吉良「ぐ……ぬぅ……なんだ…?すり抜けたぞ……この能力はまさか……!!」

 

 

桜「えぇそうよ……分かりやすいから種明かししておいてあげる…」

 

 

ユラリと立ち上がる吉良に対し、リボンを纏いながらゆっくり近付く桜は答えた。

 

 

桜「“ファッションモンスター”私はこの能力をそう名付けて呼んでいるの…。見ての通り能力は、リボンを纏った場所は任意のタイミングで無敵の透明化に出来る。パワーこそそんなに無いけど、この能力の前にそんな物は必要ないわ!」

 

 

吉良「ふうむ…確かに見ての通りの能力じゃあないか!」

 

 

シアーハートアタックの追撃を透化で難なく躱しながら、再び桜はキラークイーンに接近した。

 

 

桜「二択あげる。抵抗するか、諦めて安楽死するか…さぁどっち?」 

 

 

桜は拳を構える。

吉良の答えは言葉ではなく、行動ですぐに示された。

 

 

キラークイーン「ウリィィィヤァァァァァァァ!!」

 

 

キラークイーンのラッシュが放たれるが、それも透化で躱され、更にはキラークイーンをもすり抜けて吉良の前に迫る。

桜はスタンドを無視し、吉良本体を速攻で叩こうとしていた。

 

 

桜「じゃあちょっと苦しんで頂戴!!サヨナラ!!」

 

 

桜の拳が吉良に向かって繰り出された。

だが吉良はポーカーフェイスのままで、表情は何一つ変化させていなかった。

 

 

吉良「ギリギリだったが…君の能力の弱点は既に理解した。これは…わざわざ“第二”以降の爆弾を使うまでも無かったよ……全く、とんだ無駄骨だった」

 

 

吉良は焦ることなく、その一撃を腹部で受け止めるつもりだった。

 

 

桜「弱点は無いわよッ!!私でさえ弱点は見つけられないのだから!!」

 

 

ドゴォッ!!

 

 

吉良「ぐっ…ふ…!!」

 

 

そして吉良の腹に拳が真面にめり込み、鈍い音が鳴った…。

 

 

桜「勝ったッ!!フフ…どう?勝ったわよッ!!」

 

 

だが、吉良は倒れなかったしキラークイーンが消えることも無かった。

 

 

吉良「弱点が自分でも見つからない……?あ~……それは単に君がド低能なだけだよ…」

 

 

 

 

カチッ…ボゴボゴボゴォォッ!!

 

 

 

瞬間、吉良を殴った方の桜の腕がどんどん膨らんでいき、そして…

 

 

 

ドッグォォォン!!

 

 

 

爆発して吹っ飛んだ…!!

 

 

 

桜「ひ……ぃ……きぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

桜は吹き飛んだ腕を押さえて、その場に倒れる。

冷たい目で、吉良はそんな桜を見下ろしていた。

 

 

吉良「私の服を接触爆弾に変えておいた……。君の能力は確かに無敵だ……。しかし、聞くが…何も触れることの出来ない無敵がどうやって相手を殴って攻撃するのだね?……答えは簡単。殴る瞬間、拳の部分だけ無意識に実体化するのだよ……そうと分かれば後は容易い。たった一回の瞬きほどの一瞬の時間だろうと、私の能力は触れるだけで一巻の終わり……だからね」

 

 

説明しながら吉良は、ひび割れた瓦二枚の入った通勤カバンを腹部から取り出した。

これでほとんどの衝撃を吉良は和らげていたのだ。

 

 

吉良「キラークイーン“第一の爆弾”…気に入って貰えたようで何よりだ…」

 

 

桜「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!酷い…許さない…許さない……!!糞野郎!!」

 

 

桜は激痛に顔を歪ませ、呪詛の言葉を吐き続けていた。

 

 

吉良「醜い女だ……手の形も酷い……こんな奴を先輩呼ばわりしていたとは………自分が情け無くなってきたよ……」

 

 

桜「うぅ………痛い………私の腕が……」

 

 

吉良「口の中を切ってしまっている……しばらく食事が辛いことになるじゃあないか………。何だろう…ちょっとした敗北感まで感じてきたよ…」

 

 

桜「助けてぇぇぇ!!誰かぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

桜は腕を押さえ、声を上げる。

が、誰も助けになんて来なかった。

ただ吉良の機嫌を更に悪くしただけだった。

 

 

バキィッ!!

 

 

桜「ひぎぃぃぃぁ!?」

 

 

無事だった桜のもう片方の手を、キラークイーンに踏ませ骨を粉々に砕いた。

 

 

吉良「おっと~……妙な叫び声をあげるんじゃあないぞ……。君の幸せな脳内じゃあ私が地面に這いつくばっていたのだろう……?そーいうのはね…自分も同じ事される覚悟を決めてから挑む物だよ……」

 

 

桜「ひぃぃぃぃぃ………ゆるして吉良……くん…!!」

 

 

桜は許しを涙を流しながら乞うが、そんなことで吉良が許すはずもない。

 

 

吉良「ダメダメダメダメダメ…。君は死ななくてはならないんだ。じゃなきゃあ朝からここまで散々な目に遭わされた私の気が晴れないのだよ……この怒りの収まりが付かないんだ……それは“平穏”じゃあないのだよ。分かるかね?ン?」

 

 

桜「あ……ぐ……!?」

 

 

吉良は桜の頭を踏みつけ、グリグリと煙草の吸い殻を潰すのと同じように踏みにじる。

 

 

吉良「これから君を殴り殺すからな。スタンドではなく、私の手で直接な…。あぁー、そうそうポケットティッシュ持ってるかね?ハンカチでも良いが…?」

 

 

桜「何を……言ってるの…!?分からない……異常よ吉良くん……!?」

 

 

ようやく痛みに慣れが出て来た桜は、頭が少し落ち着き吉良の異常な発言とその態度に恐怖の感情を抱く。

だが、その余計な行動のせいで吉良の機嫌をまた更に悪くしてしまった。

 

 

吉良「質問を質問で返すなッ!!疑問文には疑問文で答えろと学校で教わっているのかッ!?私はポケットティッシュかハンカチは持ってるのか、と聞いているのだッ!!」

 

 

吉良は人指し指を桜の額にグリグリと当てながら怒鳴る。

 

 

桜「ひ、ひぃぃぃぃ!?持ってない持ってない!!さっき落としたのぉぉぉぉぉ!!」

 

 

桜は泣きそうになりながら、必死に声を絞り出した。

 

 

吉良「はぁ……。なら私のを使いたまえ」

 

 

トサッ…

 

 

桜「…………?」

 

 

吉良は桜の目の前に、自分のポケットに入っていたポケットティッシュを放り投げた。

一体その質問と行動に何の意味があるのか、さっぱり分からなかった桜は、疑問の眼差しでそのポケットティッシュを見つめていた。

 

が、その次の瞬間

 

 

 

バッキィィッ!!

 

 

 

桜「ぶっ!!?」

 

 

桜の鼻先に物凄い衝撃が走った。

それが吉良に殴られたせいだと桜が気付くのに、数秒時間が掛かってしまった。

 

 

吉良「鼻血がいっぱい出るだろう?それを拭くために使うんだ…」

 

 

桜は鼻を押さえる。

そこから物凄い勢いで血が噴き出しており、痛みも物凄い。

涙が自然と出て来る程に痛かった。

 

 

吉良「いくら相手が女だからといって、私を殺そうとした相手に容赦してやる程、私はご立派な人間じゃあないのだよ。とはいえ、君にやられた分の仕返しは既に終わっているし、それだけで言えば私はもう満足している」

 

 

桜「な………なら…なぜ……」

 

 

吉良「ン~?あぁ~悪いが今やらせて貰ってるのはただの八つ当たりだよ。最近、とことんツキが無くて晴らしようのないストレスが溜まっていたんだ………。それを君をいたぶることによって、少しでも晴らそうと言っているのだよ」

 

 

吉良は無情にそう言った。

その目には罪悪感さえなければ、高揚感さえ無い、まるで桜をいたぶることを呼吸と同じように考えているような……そんな目だった。

 

 

桜「そ……そんな………!!」

 

 

吉良「…鼻血を拭いたらどうかね?鼻が詰まると、脳の働きが鈍るそうだ……」

 

 

続けて吉良はもう一発、パンチをお見舞いしようとする。

しかし、桜だってただ殴られるだけでは終われない。

 

 

桜「巫山戯ないで!!私だってまだ戦う力はあるのよ!!“ファッションモンスター”!!」

 

 

桜は再びリボンのスタンドを纏い、無敵の透明化になる。

これでは吉良の攻撃は全く効かない。

しかし、吉良はこれっぽっちも焦りはしなかった。

 

 

 

カチッ…ドッグギュオォーーーン!!

 

 

 

ブゥゥーーー……ン

 

 

 

 

桜「え!?」

 

 

空間が歪んだかのような爆発が起こったその後、気が付くと桜は能力を解除しており、無防備な状態となっていた。

そこに、吉良のパンチが再び顔面にお見舞される。

 

 

バキィッ!!

 

 

桜「あぐぁっ!!?」

 

 

吉良「“第四の爆弾…アンダープレッシャー”!!君はもう詰みなのだよ…!!」

 

 

 

そして吉良は複数発、桜に拳を叩き込んだ。

 

 

バキッ!!ゴッ!!ゴキッ!!バキッ!!

 

 

辺りに骨が砕けるような嫌な音が響く。

 

 

桜「あぁぁあ!!ぐぐぅ…………ぅぅ……!!」

 

 

桜の呻き声と悲鳴がただその苦しみを色濃く物語る。

 

 

 

………やがて殴り終えてスッキリしたのか、満足そうな表情で吉良は疲れた手首を鳴らした。

 

 

吉良「ふぅー……。スッキリした。よし、じゃあ今から君を爆破して木っ端微塵に消し飛ばすからなぁ~」

 

 

桜「ぐ………あ…………う……!!」

 

 

血塗れでもまだ辛うじて意識のある桜は、虚ろな瞳で吉良のことを見つめていた。

 

 

吉良「キラークイーン。彼女を爆破しろ!」

 

 

吉良はキラークイーンに命令し、桜を爆破しようとする。

だがその時、桜は口を開いた。

 

 

 

桜「き……吉良くん…のことは…既に………能力者達……に……し、知れ渡っている……よ…。だか……ら……もう……逃げられない……わよ……!!もう……平穏じゃ……いられない…のよ……吉良……吉影…!!」

 

 

 

吉良「な……何ィィィィィィ!?今、何て言った貴様ッ!!」

 

 

それが桜の最後の言葉になった。

 

 

 

カチッ……ドッグォォン!!

 

 

 

吉良「ぬぅぅ……!!……消し飛んだか…」

 

 

 

全てを聞き出す前に、キラークイーンによって桜を爆破してしまった。

これでスッキリ出来ると思っていた吉良の胸の中に、不満によるモヤモヤが曇り始めていた。

 

 

吉良「くっ…!!私のことが…知れ渡っている……だと?…平穏な……暮らしが送れない……だと……?」

 

 

最後に桜が言い残した言葉は吉良を深く絶望させていた。

一体何故、目立たないように行動していた自分が…寄りにも寄ってただ平穏を求めるだけの自分が狙われるのか…吉良には分からなかった。

 

 

吉良「こんな酷いことが……この吉良吉影にあって良いはずが無い…ッ!!」

 

 

吉良は自身の胸ポケットに入れてある矢に視線を移した。

 

 

吉良「……この矢が私をここまで不幸に導いた…。クソッタレ……この矢さえ私の元に来なければ、平穏な生活は送れていたというのに……!!」

 

吉良「……だが今はここで道草食ってる場合じゃあ無いな…。ふぅむ……私のことが知れ渡っているとなると…職場へ向かうのは非常にマズイ。……事が収まるまでは取っておいた有給を使うとしよう……」

 

 

考えをまとめると吉良は自宅へと戻るため、元来た道を引き返す。

再び大通りへと出ると丁度朝の通勤ラッシュだった為、吉良の姿は人混みの中へとかき消されていった。

 

吉良吉影は平穏な生活を諦めることは絶対に無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

“縁”従業員の桜 スタンド名:ファッションモンスター

 

吉良のスタンド、キラークイーンの能力により木っ端微塵に消し飛ばされ再起不能。

証拠や痕跡は跡形も無く消え去った為、誰も桜の死の真相へ辿り着くことは無い。

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 

 

 

 

 

 




次回、いよいよお待ちかねの譲信VS刺客の回となります!!
ちょっと長めになるかも?しれませんが、是非ともお楽しみに!!

譲信や吉良、オリキャラや今回出たし、これからも登場する予定の作者オリスタについての質問などは、遠慮なくいつでもどうぞ!!


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25人里バトルロワイヤル…その⑤公正なる死闘

スタンドパラメータ

スタンド名:ファッションモンスター

能力:スタンドを纏った部分を絶対無敵の透化。


パワー:E
スピード:C
成長性:E
精密動作性:E
射程距離:E
持続力:B



ここにバケツ一杯分の水があるとする。

バケツの中では水が表面にはり、覗き込んだ者の顔を映し出す。

では、ここに墨汁を一つ垂らしてみるとどうなるだろうか?

 

答えは考えるのにそうそう難しい事では無い。

垂らした場所から水の表面には波紋が広がり、中心から外側に向かって水は徐々に黒く濁っていく。

 

幻想郷をこのバケツ一杯分の水と表現するなら、程度の能力を目覚めさせる矢とはまさに、このたった一滴の墨汁なのだ。

ほんのちっぽけなたった一つの存在が、徐々に徐々にこの幻想郷を侵食していく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「ここよ。ここに矢が一本あるわ…」

 

 

譲信「へぇ………え、マジ?」

 

 

紫の後を着いていって譲信が辿り着いた場所は、大きな屋敷の門前だった。

頑丈そうな分厚い木製の門が、高々と紫と譲信を見下ろすように閉まっている。

 

 

譲信「やれやれこいつぁ予想外だぜ…」

 

 

譲信は門に近付くと軽く叩く。

 

 

譲信「早朝にすいませぇ~ん!!誰かいませんかー!?」

 

 

そして大声で人を呼んでみるが、何の反応も無く、まるで中には誰もいないかのような嫌な静けさが返ってきた。

 

 

紫「……反応が無いわね」

 

 

譲信「留守なんすかね?」

 

 

紫「それなら都合が良いわ。中の人間達とはなるべく出会わないに越した事は無いものね」

 

 

そう言うと紫はスキマを開き、門の先にある中庭へと繋げる。

 

 

紫「さぁ行くわよ。この屋敷の何処かに矢は確実にある……。それと一応警戒しておきなさい…何かの罠がある可能性も高いわ」

 

 

譲信「うっす!」

 

 

紫と譲信がスキマを越えると、2人は整えられた広い庭へと降り立った。

松やら何やら、これぞ日本庭園!!とでも言うような立派に整えられた庭だった。

 

 

譲信「へぇ~。滅茶苦茶金持ちの家じゃあないか。こんな所に矢があるのか~…」

 

 

関心しながら譲信は呟く。

 

 

紫「ここは人里でも有力な商人の家よ。家族構成は姉、弟の2人で、数十人の使用人がここで働いているわ」

 

 

譲信「ふぅん。姉弟かぁ…しかし、数十人の使用人が働いている割にはやけに静かだよなぁ」

 

 

紫「そうね……朝から誰もいないと言うのもおかしな話ね…。………何かあると考えた方が良いわ」

 

 

譲信と紫は互いに視線を合わせる。

口調こそは普段と変わらない2人だったが、互いに目は本気になっていた。

しばらく2人は無言だった…そして最初に譲信から口を開いた。

 

 

譲信「…それでも行くしかないんすよね?霊夢じゃあなくて俺を連れてきたあたり……その気なんでしょ?」

 

 

紫「えぇ…。何があろうと矢の回収は絶対よ…放置しておく事は出来ないわ」

 

 

紫が今回、霊夢ではなく譲信を共に連れてきたのには理由があった。

今回の矢の回収は急を要する物であり、何が待ち構えているのかも皆目見当付かない…そして何があろうと、どんな手段を使おうと矢を回収する事が紫の目的である為に霊夢は連れてこれないのだ。

 

状況によっては残虐な手を使うことも紫は視野に入れており、そこに博麗の巫女を巻き込んでは博麗の巫女の信用が危うくなるのだ。

 

だが何より紫が譲信を選んだ一番の理由…それは譲信が現状では霊夢より戦力になると判断したからだった。

 

霊夢はまだスタンド…について理解は浅く、スタンドに類似している能力を相手にするには少々経験が不足している。

何より相手は人間…能力を持った人間とは能力を持った妖怪とはまた違う戦い方をする。

それらの戦法は紫でも能力によっては時に対応が厳しくなる。

 

つまりはそのどれにも対応でき、かつ強みを生かせるような人材が必要だった。

そして、それに一番対応しているのは現状では空条譲信という存在だけだったのだ。

 

それと同時に譲信と紫の二人は組み合わせの相性が良い。

“境界”と“全スタンド”…この二つの能力は万能と言っても良く、状況によっていくらでも攻守を切り替えられ、互いに援護もしやすいのだ。

 

そして紫には“高い頭脳”と“圧倒的な経験”による強みがあり、譲信にも“凄すぎる判断力”と“高い洞察力、観察力、思考力”がある。

二人はまさに鬼に金棒と言っても良い組み合わせだったのだ。

 

 

譲信「決まりっすね。俺も既に覚悟は出来てるんで、ちゃっちゃっと終わらせましょうか!」

 

 

紫「えぇ。手早く済ませましょう」

 

 

譲信と紫は屋敷の縁側なら内部へと侵入する。

いくつもの障子と長い廊下が繋がっており、何のヒントも無く矢を探すには随分と骨が折れそうだった。

 

 

紫「二手に分かれましょう。私は西側、貴方は東側よ。何かあったらどんな方法でも良いから互いに合図を送ること……良いわね?」

 

 

譲信「了解!紫さんも気を付けて!」

 

 

紫「心配無用よ。さ、行動を始めるわよ」

 

 

紫と譲信はそれぞれ東西に分かれて、屋敷内の捜索を開始した。

紫はスキマで短距離をショートカットしながら、譲信は5秒ずつ時を止めながら、矢を探し始める。

 

互いに最大限の警戒と隠密行動を心掛け、足音一つにも神経を研ぎ澄ませる。

だが紫と譲信の予想通り、屋敷内は既に敵の懐の中となっていたのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(屋敷“西”側)

 

 

 

紫(人の気配が無い……あまりにも静かすぎるわね……)

 

 

譲信と分かれた紫は屋敷西側の渡り廊下を移動していた。

西側はどうやら、風呂場や調理場、洗濯場などのエリアなようで、部屋の数が少ない。

 

矢があるとすれば譲信の向かった東側である可能性が高かったが、それでも紫は片っ端から念入りに捜索を行っていた。

 

 

ススゥー……

 

 

紫は障子を一枚開けて、廊下を渡りきった先にあった一室へと入る。

90畳程あるとても広い部屋で、あまり物とかは置かれておらず、見渡しが良かった。

 

 

紫(…………)

 

 

部屋の中心まで歩いて行き、そこで紫は立ち止まった。

短く息を吐き、目に鋭い光が走り、途端に紫からは威圧感が放たれる。

 

その威圧感は一瞬、まるでこの部屋をまるごと揺らしたかと錯覚するほどに重みがあった…。

 

 

紫「……こっそりと人の背後に立ちたいのならもう少し殺気を抑えなさいな…。出て来なさい」

 

 

そう言うと紫は一発だけ弾幕を天井に向けて放った。

 

 

 

ガタンッ!!

 

 

紫「……!」

 

 

と、同時に天井から何か黒い物体が落ちてきた。

が、落ちてきたそれは物じゃないことに紫はすぐに気付く。

物体に見えた黒い何かは、ゆっくりと動き出し、やがて四本の棒が見えたかと思えば、うち2本で直立する。

 

どう見てもそれは人間の手と足であった。

そしてよく見れば、その物体に見えたのは黒い衣装を身に纏った人間である事が分かる。

………しかし、その姿はまるで……

 

 

 

 

 

 

 

紫「何が出てくるかと思えば…その姿………まるで“忍者”ね…」

 

 

???「………」

 

 

黒い頭巾の忍び装束。そして明王のような鬼の仮面。

そして背中に1本の小刀。

巻物や本などでよく見る、まるで大衆のイメージ通りの忍者だった。

 

 

紫「何か言ったらどうかしら?……私が何者で、何故ここに来たのか…を知っているからこそ、“奇襲”をかけようとしていたのでしょう?」

 

 

紫は目を細めて、鋭い殺気を放った。

………が、目の前に立つ忍者は全く微動だにせずにいた。

 

 

紫(……私の殺気を受けてこの余裕………中々の実力は持っていそうね……)

 

 

人間だかと言って、油断したり下に見るつもりは今の紫には無い。

むしろ、そこらの妖怪と対峙するよりも遥かに警戒をしていた。

何しろ一度、人間であり見下していた譲信には痛い目に合わされている。

本気の戦闘では無かったにしろ、それでも遥かに予想を越える痛手に紫は“油断大敵”という言葉を痛感していたのだ。

……そして八雲紫に同じ過ちは絶対に無い。

 

 

???「……我が潜伏を見破るとはお見事…。流石は幻想郷の賢者。感服しました」

 

 

その時、忍者の男はいきなり話し始めた。

 

 

紫「あら…フフフ。中々口が達者なようね…」

 

 

???「いえ本心です…。我は元々、貴女のことを尊敬していました…。故に我が潜伏も見破られる事は当然と思っておりましたとも……が、失礼を承知で貴女を試すような行為を行った事については謝罪させて頂きます」

 

 

忍者は片膝をつくと、紫に向かって頭を垂れた。

 

 

紫「なら貴方は今、自分がどのように振る舞うべきか当然心得ているわよね…?矢の在処について…私の質問に答えてくれるかしら?」

 

 

???「それは出来ません」

 

 

紫「……ほう?」

 

 

キッパリと言い切った忍者に、紫は冷えた視線を送る。

 

 

???「この屋敷の主より、我は貴女の足止め、そして討伐を任されております故…我が今からすべき行動は貴女の殺害……そのただ一つだけに御座います」

 

 

忍者は立ち上がると、再び直立して紫と対峙した。

 

 

???「しかし…先程も申し上げた通り我は貴女の事は尊敬している……。よってここはフェアに行きましょう。文句の出る隙の無い…公正な戦いを行うために…」

 

 

紫「……フェアですって?」

 

 

紫の聞き返しに、忍者はゆっくりと頷いた。

 

 

飛山「我の名前は“飛山(ひざん) 蒼紅(そうく)”。能力名は“ニンジャリバンバン”…この身に纏っている黒い忍び装束が能力であり、分身、火遁、水遁、風遁、の4つを扱える……そんな能力」

 

飛山「フェアというのは互いの能力を理解しあった上で、殺し合う事……公正さは人の精神を神聖な高みに導き、勝利した時必ず成長させてくれる」

 

 

紫「…随分と高尚なのね。何が貴方をそこまで駆り立てるのかしら?」

 

 

飛山「何が…ですか……。そうですね…八雲紫殿、貴女には理解して頂けるか分かりませんが…これが“飛山蒼紅の生き様”なのです」

 

 

紫「生き様……ねぇ…」

 

 

飛山「ご存知のとおり、我々人間の一生は短い。だからこそ人間はその短い人生を満たすため、少しでも色濃くし、長く感じるようにしたがる。絶えず未知への挑戦だとか、敢えて苦痛を我が身に課すだとか、家族を作り共に過ごす…だとか、それらは全て短い人生をより良くする為」

 

飛山「そして、人は最終的に何かを残したがるのです。次の世代に受け継いでいく為…または自分の存在を大きくこの世に残し、死への不安を取り除く為に。…我もまた同様にこの世に自分の存在を残したい。“生き様”を残すことは“自分自身”を残す事と同義と我は考えています。それこそが我が自分の一生を最も良くする物だと信じてやまぬ全て…真理。誰にも侵すことの出来ない“神域”!!」

 

 

飛山は迷い無く、悟りを開いたような澄みきった瞳で熱弁した。

…それを紫は関心したように、静に聞いていた。

 

 

紫「…成る程ね。私は貴方のような人間は嫌いでは無いわ。貴方の語る“人生論”…それもまたある種の真理。…けれど私にも背負う物はたくさんある…。そして私にも“八雲紫としての生き様”はあるのよ。………つまり、今この場において……私達のどちらが“死ぬ”事になるのは避けられない運命…という事ね」

 

 

飛山「……ご理解頂けたようで何より。そしてここからは……一手ミスった方が死ぬ…!!八雲紫殿、そのお命頂戴します…!!」

 

 

飛山は背中に携えていた小刀を抜き、刀身を露わにする。

冴えきった光を放っており、中々の切れ味があるだろうという事が分かった。

 

 

紫「その一手が貴方遅いわよ」

 

 

飛山「!!」

 

 

紫は即座に大量の弾幕を放つ。

躱せる隙間が見当たらない程の高出力の攻撃に、飛山は後退する。

 

 

飛山「ぬ!壁際…!!」 

 

 

しかし、すぐに壁際まで追い詰められた飛山は逃げ道を無くしてしまった。

だが焦ることは無く、飛山は素早く片手で何かの印を結んだ。

 

 

飛山「火遁:滅牙怖零阿(めがふれあ)

 

 

ゴウゥッ!!

 

 

瞬間、飛山の周りから火炎が巻き上がり、その火炎はまるで暴れ狂う竜の形となって紫の放った弾幕の雨に突っ込んでいく。

 

 

紫「それが忍術という訳ね…!!」

 

 

ドッグォォォーン!!

 

 

二人の攻撃がぶつかり合った瞬間、激しい爆発が起こり、部屋の襖が吹っ飛んでいく。

衝撃に飛ばされ、飛山は破れた壁の穴から隣の部屋へと後退する。

そして休む間もなくまた印を結び、攻撃を仕掛ける。

 

 

飛山「水遁:大樽撃鋭舞(だいだるうぇいぶ)!!

 

 

ズグァァァァッ!!

 

 

すると今度は飛山の周りに激流が現れ、それは高速旋回し巨大な水のチェンソーとなって広範囲に飛び散る。

壁や床を粉々に粉砕する水の力は一瞬で、辺り一帯を更地に変えた。

 

 

飛山「……気配が……消えた……!?」

 

 

ところが、攻撃が終わると手応え所か逆に紫の気配が完全に消えてしまっており、飛山は困惑する。

が、おちおち困惑しているほど猶予は飛山には与えられなかった。

 

 

紫「ここよ」

 

 

飛山「!!」

 

 

背後に開いたスキマから紫が現れ、咄嗟に飛山は飛び退く。

 

 

紫「そうすると思ったわ。これで詰みよ」

 

 

飛山「ッ!!こ…これはまさか…!!」

 

 

しかし、後ろにはまた別のスキマが更に開かれており、スキマに捕まった飛山はその場に固定される。

…そして

 

 

ズドドドドドォッ!!

 

 

飛山「ぬぅぐぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

再び放たれた大量の弾幕は今度こそ、飛山に命中した!

 

 

紫「一手ミスったようね…では御機嫌よう…」

 

 

全弾命中し、ボロ雑巾のようになった飛山を紫は無情の目で見下ろしていた。

だがまだ決着は着いていなかった…!!

 

 

ボン…

 

 

紫「ッ!!」

 

 

何と突然、飛山が煙となって消えたのだ。

完全に仕留めたと思ってた紫は慌てて辺りを警戒する。

 

 

飛山「忍法:幻実分身の術!!残念ながらそれは分身ですよ…!!」

 

 

紫「……さっきので既にすり替わっていたという訳ね…!!」

 

 

紫の頭上から現れた飛山は既に印を結び終わっていた。

 

 

飛山「風遁:裂空戯之逆鱗(れっくうざのげきりん)!!

 

 

紫「結界!!」

 

 

バチィィィッ!!

 

 

 

のたうち回る風の暴龍を纏った飛山の突撃を紫は結界で防いだ。

博麗の大結界を張ることの出来る紫であれば、自分一人を守るための結界ならいくらでも容易く張ることが出来るのだ。

 

 

飛山「天晴れ紫殿!!我の不意打ちを防ぐとは!!」

 

 

紫「フフフ…その称賛は素直に受け取らせて貰うわ。尤も…貴方に褒められた所でこれっぽっちも嬉しくなんか無いのだけれどね…」

 

 

飛山「これは手厳しい。…しかしこの状況、有利なのは我だと言うことをお忘れ無く…!!」

 

 

紫「…へぇ?」

 

 

飛山「我の能力は元々、近距離パワータイプ……つまりこの状況は我にとって最も真価を発揮できる独壇場なのですよ!!」

 

 

そう言うと飛山は小刀で結界に連続斬りを仕掛けた。

 

 

飛山「SEYYYAAAAAAAAAAAA!!

 

 

 

ギィン!!ギギギギギギンッ!!

 

 

 

するとどうだ、僅かではあるが紫の結界は少しずつ削られていく。

 

 

紫「私が大人しく攻撃をさせるとでも思っているのかしら?」

 

 

だが当然、紫がそれを大人しくさせる訳が無い。

 

 

紫「無駄よ無駄!!そうそう…やっぱりこいう時に使うセリフよね。さてと…邪魔だから離れなさい」

 

 

 

紫は結界の外側に張り付いている飛山に向けて弾幕を放った。

だが……

 

 

飛山「いつから分身は一人だけだと錯覚していた?」

 

 

紫「……まさか!?」

 

 

瞬間、天井から数十体もの飛山の分身が現れた。

そして彼等は一斉に紫の結界に向かって物理攻撃や忍術で破壊を試みる。

 

 

ドゴドゴドゴォォォォォォ!!

 

 

紫は弾幕で対抗するが、分身達の連携が上手く、一体とて中々削ることが出来なかった。

 

 

紫(さて…少し考えなくちゃいけなくなったわね。本体を見つけさえすれば容易いけれどこの数の分身達の中から、バカ正直に探し出すのは時間も掛かるし、何より敵の思うつぼね。…けれどスタンドには必ず決定的な弱点がある。この程度の能力もスタンドと酷似しているという事は必ず何処かに弱点がある…という事…。それを見極めさえすれば良い……)

 

 

紫は結界が破られるまでの僅かな時間を、全て飛山の観察に使うことにした。

境界を操り無効化するにはまず、本体を見つけないと意味が無い。

分身に能力を使った所で、所詮分身なのだから蚊ほどの意味も無い。

 

 

紫(……うん?…何か……変ね)

 

 

その時、紫は何かの違和感に気付いた。

結界にはヒビが入り、もう決壊寸前だったが、その違和感についての疑問が、紫を非常に冷静な思考へと誘っていた。

 

 

紫(ワンパターン過ぎる……何があっても、同じ忍術、同じ物理攻撃しか使わない)

 

 

弾幕を対処していた彼等の姿を見て紫が感じた疑問。

それは余りにも無駄な動きが多く、ワンパターンだった事だ。

 

例えば近距離組は弾幕を忍術で相殺した方が効率が良いのに、刀と動き回った躱す事しかしない。

対して忍術組は躱せば良い程度の弾幕にもド派手な忍術をかましていたのだ。

 

あまりにも効率が悪く、とてもワンパターンだった。

 

 

紫(まさか…分身は決められた一定の役割しか行う事が出来ない…!?となると本体とは……多彩な動きの出来る一体のみ…!!そして…彼自身が言っていた“近距離パワータイプ”……“近距離”という事は射程距離がそんなに無いという事…つまり、分身を維持するには余り遠くにはいられない……間違いなくこの中にいるわね…!!)

 

 

再度紫は分身達を見渡す。

 

 

 

 

 

 

すると……居た。

一体だけ、忍術や体術を多彩に扱っている本体と思わしき一体が。

 

 

飛山「これで終わりだぁぁぁぁ!!」

 

 

紫「えぇ…そのようね…!」

 

 

結界が砕けたと同時に、紫はその本体と思わしき一体へと能力を発動した。

 

 

 

 

 

バリィィン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「…………」

 

 

飛山「…………」

 

 

 

 

 

 

分身達は消え、二発の弾幕が飛山の左腕を吹き飛ばし、脇腹に穴を空けた。

 

 

 

 

飛山「ごぼ………っ」ドサリ…

 

 

 

飛山はその場に柱を背にして倒れた。

境界を操られ、飛山の全ての能力と、体の動きは紫に支配されたのだ。

 

 

 

飛山「み……見事……だ…。どうやら……弱点は見抜いたよう……ですね……!」

 

 

 

吐血しながら、飛山は擦れた声で紫に称賛の言葉を贈る。

飛山はこれ以上は戦いにならないと敗北を認めた。

 

 

 

紫「被害は最小限に…かつなるべく目立たずに…。そのようにせざるを得ない状況を作り、私への勝率を上げたのは良かったわ…。それでも格の差は埋まらなかった…それがこの結果よ」

 

 

紫はもはや虫の息となった飛山の前まで歩いて行く。

 

 

飛山「………どうやら……そのようですね……。我の負け……完全なる敗北です……」

 

 

飛山は自身の前に立ち、静に見下ろす紫を見上げる。

なんと華麗で優雅な方だろうか…そんな思いを飛山は抱いた。

まさに幻想郷の賢者たる者に相応しき風格と。

 

 

飛山「さぁ……トドメを……」

 

 

そして飛山は目を瞑った。

紫にトドメを刺されて死ねるなら本望だと。

……だが紫はすぐにトドメを刺そうとはしなかった。

 

 

紫「……貴方は殺すには惜しい。それほどにこの私が関心する人間性を持ち、尚かつ貴方からは微塵も悪意を感じなかったわ……“武人”と呼ぶに値する人間よ貴方は」

 

 

飛山「…………ゴフ…」

 

 

紫「生きなさい。貴方には生きる資格がある。これからその力は生き延びて、幻想郷の一員として使いなさい」

 

 

 

紫は飛山蒼紅という人間を高く評価していた。

悪意が無く、常に高見を目指す高尚な人間…飛山ならこの幻想郷の能力を持った実力者として新たに受け入れても良いと、そう判断していた。

 

 

 

飛山「…………やはりまだ…理解してはおられなかったか……」

 

 

だが飛山は、紫の言葉を受け入れずに薄笑いを浮かべてそう呟いた。

 

 

紫「……どういう事かしら」

 

 

飛山「我が目指す高見へと続く道は……もう我には無い……。たった一度…されど一度の敗北……それはこの飛山蒼紅にとっての“生涯の終わり”を意味する……」

 

 

紫「自分の命は惜しくないのかしら…?私がまだ貴方は生きても良いと…そう言ってるのよ?」

 

 

紫は愚か者でも見るかのように呆れながら飛山に尋ねる。

たった一度の敗北に何故そこまで諦めがつくのか…解しがたかった。

 

 

飛山「…それがこの飛山蒼紅の語る“神域”。残したかった“生き様”……だ。生き様を賭けた闘いの果ての……敗者に……未来は不要…。ハァ……我はこの屋敷の主様には……確かに忠誠を誓っているし……最後まで味方よ……。だが……我には忠義よりも通したい我が儘があるのだ………たかが使用人の身なりでおこがましいとしても………それでも最後までそれは守り抜きたい………。お分かりか……?八雲紫殿………それでも我は…愚者に見えるか……?」

 

 

紫は静に目を閉じて、やがてゆっくりと目を開けた。

 

 

紫「………いいえ。それが貴方の望む物なら私がとやかく言う筋合いは無いわね……ただ、それでも気に入らないわ。私の折角の好意を無下にすると貴方は言ってるのよ…?」

 

 

飛山「……ハハ…。確かに……だが…もう愚かと思われないのは……良かった……」

 

 

紫「私は貴方の息の根は完全に止めない……果てたいのなら…己でその喉を裂いて逝きなさい」

 

 

そう言うと紫はその場から立ち去ろうと、飛山に背を向けて歩き出す。

飛山は立ち去る紫の背中を一瞬だけ、悲しげに眺めていた。

だが、すぐに飛山の目は覚悟を決めた目になった。

そして、片手の小刀を手に取り、紫にそれを投げ付けようとする。

 

 

飛山「ならば死ぬのは貴女です!!貴女が死なねば我は生きては行けぬ!!」

 

 

紫「……そう…本当に残念よ…!!」

 

 

 

ゴシャァァァァッ!!

 

 

 

飛山「がっ………は……!?」

 

 

飛山が小刀を投げる直前、紫は弾幕の一撃を飛山に向けて放った。

……その一撃には少しの手加減も無く、完全に飛山を殺す為の一撃だった…。

 

大量に飛び散る自身の血液が、飛山にはスローモーションのように見えていた。

……そして、確実にこれで自分の命は終わりを向かえたのだと理解した飛山は、ようやく満足したように笑みを浮かべた。

 

 

 

飛山「まっこと天晴れ……我が一生…。これまでの生き様に……悔いは無し……!

 

 

 

 

 

 

 

そして……飛山は静かに息を引き取った……。

 

 

 

 

 

 

紫「馬鹿みたいに、理想だけに生きる人間……。面白い男だったわね……そして、そんな貴方を愚かだとは思わないわ………さようなら飛山蒼紅」

 

 

紫はただ静かに部屋から立ち去る。

余計な言葉は何も必要無い。

飛山の最後の死に顔は、とても清らかな笑みを浮かべていた…………。

 

 

 

 

 

飛山蒼紅 スタンド名:ニンジャリバンバン

 

~死亡~ 八雲紫との死闘の果てに、最後は八雲紫の手によって死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「さて……西側は何も無いようね……。東側へ行くとしましょうか……」

 

 

 

飛山の最期を看取った紫は東側へ向かって歩き出した。

……と、その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「何っ!?」

 

 

 

東側から突然、誰かの叫び声が聞こえてきた。

屋敷中に響き渡ったかもしれないと、そう思えるほどの叫び声だ。

……そしてその声に紫は聞き覚えがある。

 

 

 

紫「この声は……譲信!?」

 

 

 

紫は急いでスキマを開き、声のした東側へと移動する。

最悪の事態を覚悟しながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(屋敷内 東側)

 

 

 

 

 

譲信「……ッゥ……ァァ…ッ……グゥァ……!!」

 

 

 

その頃の東側はまさに地獄絵図だった。

血塗れの床の上に譲信が、顔を押さえて呻き声を上げながらうずくまっていた。

 

…そして、その譲信の前には謎の女が立って譲信を見下ろしていたのだ。

…そしてその女の右手が血塗れだった……。

 

 

???「フフフフ…人の家に早朝から不法侵入するだなんて悪い子ね……。そんな子には……罰が必要だわぁ…」

 

 

 

譲信「ゥゥゥ………ァァ……ッッッッ!!」

 

 

 

女はゆっくりと握りしめていた右の手のひらを開く。

そこからは、溜まっていた譲信の物と思わしき血液が雫となって床にこぼれ落ちた……。

 

 

そして……その手のひらの上には……何かが乗っていた…。

 

 

少しずつ開かれていき、そしてやがて、その何かはハッキリと見えてくる……。

 

 

そこにあった何か……それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二つの眼球だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 




スタンドパラメータ

スタンド名:ニンジャリバンバン

能力:分身、火遁、水遁、風遁の4つの忍術を使う。

パワー:A
スピード:A
成長性:E
精密動作性:B
射程距離:E
持続力:B


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26人里バトルロワイヤル…その⑥グレートな漢比べ

GREAT DAYS編もいよいよ終盤です!


紫が西側で飛山と戦闘を行っている時、譲信は東側にて矢を捜索していた。

 

 

ドォーーーーーーン!!

 

 

譲信「THE WORLD(ザ・ワールド)!!俺だけの時間だ!!」

 

 

五秒前。

譲信は“THE WORLD”の能力を使い、時たま五秒間だけ時間を止め移動していた。

これは万が一、行き先に敵が潜伏していた場合や敵の奇襲を警戒しての行動である。

 

“THE WORLD”は“世界”と違い、5秒間だけしか時を止められないがその分、再発動までの時間がとても短い。

クールタイムはおよそ3秒。

3秒の間を空ければいくらでも時は止められるのだ。

 

ちなみにスタープラチナ・ザ・ワールドは停止時間は5秒が限界でクールタイムも同じく5秒。

 

“世界”は現在停止時間17秒まで実は成長しており、クールタイムは7秒。

ただし“世界”は特殊で、クールタイムは5秒にも縮める事が出来るが、それを繰り返すと1秒ずつ停止時間が短くなる為、やはり7秒が限界という訳だ。

 

 

譲信「さて…今晩は宴会があるからなぁ。酒やらご馳走やらたっぷり堪能してぇし、さっさと矢を見つけてズラかりたい所だが……」

 

 

譲信は部屋の中にあった木箱を開けてみる。

だが残念ながらそう簡単に矢は見つからない。

中に入っていたのは何かのシリーズ物の書物数冊だった。

 

 

譲信「チッ…ま、そうだよな。……時は動きだす

 

 

そこで丁度5秒が経過し、止まっていた時は動き出した。

 

 

譲信「いきなり見つかるようなら、わざわざ俺が来る事は無いんだ。やれやれだぜ…こりゃ骨が折れそうだ」

 

 

そして譲信は隣の部屋へと繋がっている襖を開け、隣の部屋へと移動する。

今度の部屋は何かの鎧や刀や日本人形などが置いてある部屋だった。

少し奥を見ると、金ピカの巨大な観音像まで置いてあり譲信は苦笑いする。

 

 

譲信「いや観音像て……趣味悪すぎだろ!インテリアでこんなの買う奴ぁただの馬鹿じゃあないか」

 

 

特に箱やら押し入れやらは見当たらない部屋だったので、譲信はまた別の襖を開け、隣の部屋へと移動する。

 

 

譲信「………これまた何も無ぇな…」

 

 

しかし、譲信が目にしたのは何も置かれてないただ広いだけの空間だった。

 

 

譲信「この家の主は部屋を持て余してんのか~?だったらここまで広くする必要も無かったろうに…。やれやれ…金持ちはどいつもこいつも無駄が好きだなぁ~」

 

 

呆れたように文句をぶつくさと言いながら譲信は部屋を徘徊する。

念の為、隠し部屋みたいな物でも無いか確認する為だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時譲信の背後の襖が開き何者かが室内に入ってきた。

 

 

???「決して無駄が好きなんじゃあない。単に先代の時は大所帯だっただけのことだ」

 

 

譲信「……あン?」

 

 

突然入ってきた刈り上げの男は、譲信の呟いた文句に対して返答を返した。

家の中に見知らぬ者がいる事に関しては、特に何も感じてないようなそんな態度だった。

 

 

譲信「へぇ……そうかい。そりゃあ決めつけたこと言って悪かったなぁ。……んで?テメーは何モンだ?」

 

 

???「この家の主だよ。と、言ってもこの家の主は俺と姉上の二人になるんだがな」

 

 

譲信「………出やがったか」

 

 

六道「俺の名前は“美山六道(みやまろくどう)”だ。…まぁそう言うことでヨロシク。……ま、そんなことは置いておいて……。お前の目的は“矢”だろ?お前…何て名前なんだ?」

 

 

六道は襖を閉めると、譲信の元までゆっくりと歩いて近付いてくる。

 

 

譲信「俺ァ空条譲信て言うモンだ。テメーの言うとおり、矢を探しに不法侵入させて貰ったモンよ。さて、それが分かってんなら話は早え~な。矢を渡してくれねーか?」

 

 

譲信はよこせと言うように、手を前に出した。

そこで、六道はその場で立ち止まる。

 

 

六道「ん。駄目に決まってるだろ?悪いことは言わん…死にたくないなら帰ってくれ。まだ姉上に見つかってない内にだけ選べる選択肢だぞ?後悔を残さない方を選んでくれ」   

 

 

譲信「ちゃんと選んでるから俺ァ逃げずにテメーと呑気に駄弁ってるんだろーがよ…。悪いな、帰れと言われて帰れるほど俺は身軽じゃあないんだぜ。……俺だって本心は帰りてーよ?でもそうはいかねぇ~んだわ」

 

 

譲信は全く困ったという表情を浮かべて、後ろ頭を軽くかいた。

 

 

六道「……そりゃあご愁傷様ってやつだな。さぞ災難だろう…心中お察しするよ。……が、同情はするが俺のする事が変わることは無い。俺の警告を無視したお前には………悪いが今から死んで貰う。恨むなら俺以外を好きなだけ恨んでくれ」

 

 

六道が指を『パチン!』と鳴らすと、部屋の左、右、後方の襖が開き、そこから一人ずつ屋敷の人間が現れる。

 

 

譲信「……!」

 

 

いずれも目が常人のそれとは異なり、何かしらの覇気が感じられ、只者ではないことが譲信には感じ取れた。

そして計4人に囲まれた譲信は、身動きが取るに取れない。

 

 

譲信「……こりゃあ酷いな。4:1じゃあねぇかよ」

 

 

六道「うちの使用人兼、戦闘員達だ。悪いが………侵入者は確実に仕留めさせて貰う」

 

 

ドッギュウゥゥゥーーン!!

 

 

瞬間に、譲信と六道と六道の部下3人は、ほぼ同じタイミングでスタンドを発現させ、戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

譲信「“スタープラチナ”!!

 

 

六道「“チューチュートレイン”!!

 

 

使用人A「“クリエイションパール”!!

 

 

使用人B「“7・デッドリーシンズ”!!

 

 

使用人C「“スターライトパレード”!!

 

 

 

 

 

六道「かかれッ!!」

 

 

使用人ABC「了解!!」

 

 

六道の命令で使用人達は一斉に譲信に向かって襲いかかる!!

 

 

譲信(やれやれ…!!こいつぁマズイぜ)

 

 

使用人A「これでもくらいやがれッ!!」

 

 

譲信「ッ!!」

 

 

一番最初に攻撃を仕掛けたのはAだった。

巨大なモーニングスターの刺鉄球を何処からか生み出すと、それを譲信に向けて投げつける。

 

譲信は迫る刺鉄球の前にスタープラチナを移動させ、スタープラチナの拳で対処を試みる。

 

 

スタプラ「オラオラオラ!!」

 

 

スタープラチナのパンチに刺鉄球は『バキィン!!』という音を立てて粉々に割れた。

だが、一息吐く間も譲信には与えられない。

 

 

使用人C「“流星弾”!!

 

 

次にCのスタンドの手のひらから幾つもの星礫が発射され、それが譲信に迫っていた。

 

 

譲信「アァ?エメスプと似たような事しやがるな!!」

 

 

スタプラ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

 

だが、依然問題なく譲信はスタープラチナのラッシュでその攻撃を全て弾いた。

 

 

使用人C「な…!?弾きやがった!!こいつ…強いぞ!!」

 

 

使用人B「狼狽えるな!!連携を取れば問題ない!!」

 

 

譲信(まずはこいつらの能力の把握だな。それまでは守りに専念するぜ)

 

 

六道「A!B!お前達で潰しにかかれ!!」

 

 

使用人AB「は!!」

 

 

六道の指示により、AとBの二人が同時に譲信に攻撃を仕掛ける。

 

 

使用人A「ふんっ!!」

 

 

Aは“クリエイションパール”の能力を使い、手榴弾を生み出し譲信に投げ付けた。

その間にBは追撃の準備をする。

 

 

譲信「はぁ!?手榴弾!?……やれやれだぜ……“スタープラチナ・ザ・ワールド”!!

 

 

ドォーーーーーーン!!

 

 

手榴弾が爆発する直前に、譲信は時を止めた。

 

 

譲信「……はぁ。こんな能力を手に入れて改めて考えた結果…いつも思うんだ。時が止まっているのに5秒と数えるのは実に矛盾しているじゃあないかとな。…別にセリフをパクりたいとかそんなんじゃあねぇ…本心から、実に奇妙に思うよ………てことで、さぁ“5秒前”だぜ」

 

 

譲信は爆発寸前の手榴弾を手に取ると、それをCに向かって投げ付ける。

手榴弾はCの肌に一度触れてから、ピタリと空中に静止した。

 

 

譲信「敵の攻撃や自分のミスってのは時に、前向きに利用しなくっちゃあな。こーやって簡単な作業一つでアッという間にチェックメイトをかけられるんだからよ。…時が動き出すと、間違いなくテメーは死ぬが……罪悪感は少ししかねぇ。……だってやらなきゃあ俺が死ぬんだからなぁ………仕方ねぇっちゃあ仕方ねぇわけよ」

 

譲信「俺は何も分からねぇ。なんでスタンド能力を得たのか、なんで俺は期待されてんのか…一切分からねぇ。でもまぁ、持ってしまったモンは仕方が無い。これもまた試練だ。今克服すべきは“命を賭けて戦う覚悟”を決めることだ。……命を賭けられん奴に命を奪う資格はねぇ……時が動き出した時、それはもう止められん……。俺も覚悟を決めなくっちゃあな……」

 

 

譲信はスタープラチナを見る。

スタープラチナの瞳は気のせいか、譲信に向かって肯定し頷いているような……そんな感じがした。

 

 

譲信「ありがとうよ………時は動き出す…!!

 

 

時間は正常に動き出した。

全ての停止していた動きが再び、開始される。

 

 

使用人C「は!?…バ…バカなぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

 

当然、Cの元へと投げ付けられた手榴弾も活動を始める……。

 

 

 

ドッグォォォーーーン!!

 

 

 

激しい爆発音と共に、Cは吹っ飛ばされ部屋も滅茶苦茶になった。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYY!!

 

 

そして追撃の準備をしていたBに向かってパンチを一発放ち、後方へと吹っ飛ばす。

 

 

使用人B「うぐぅぅぅ!?」

 

 

使用人A「B!!」

 

 

六道「今……何が起こった…!!」

 

 

AとBは一旦六道の元まで後退した。

 

 

使用人A「弟様!!今何が起こったか見えましたかッ!?」

 

 

六道「いいや……理解出来なかった。しかし、理解できないならこれから理解すれば良い。その為の俺の能力なのだからな」

 

 

六道はチューチュートレインの能力を発動させる。

 

 

譲信「!!」

 

 

そして譲信は驚きの光景を目にした。

なんと、六道のチューチュートレインが変形を始め、譲信のスタープラチナと同じ姿に変身したのだ。

そして、更に驚きは連続する…

 

 

 

六道「スタープラチナ・ザ・ワールド!!

 

 

譲信「!?」

 

 

ドォーーーーーーン!!

 

 

何と、譲信と同じように時を停止させたのだ。

停止能力を発動させていなかった譲信は、止まった時の認識は出来るが、動く事は叶わない……。

 

 

六道「これは………そうか成る程。“時を止めた”のか……」

 

 

譲信(や……野郎…!!マジかよ……コイツ……俺の能力を…“コピー”しやがった!!)

 

 

六道「ふぅむ。恐ろしい能力だな……。まともにやり合っては…対抗する術は無かったろう……。本当に運が良かったと言うべきだな」

 

 

そして六道が譲信の能力を把握した所で、時は再び動き始めた。

 

 

六道「5秒……停止時間は5秒か。せいぜい一人仕留めるのが限界といった時間だな」

 

 

使用人A「奴の能力は分かりましたか!?」

 

 

六道「あぁ分かったぞ。奴の能力は“時を5秒程止める”という能力だ。だから迂闊には近付くなよ」

 

 

使用人B「時を止める!?そんな馬鹿げた能力が……了解です」

 

 

譲信「…チッ。こりゃあ厄介だな。俺もふんどしを締め直さなきゃあ…ってやつだぜ」

 

 

予想外の方法で能力を暴かれた譲信は気を引き締める。

本来であれば、気付かれる筈も無い能力。

しかし、今はその正体と停止時間が短いという欠点までバレてしまった。

もはや迂闊に使用する事は出来なくなったのだ。

 

 

譲信「だが…時を止めずともいくらでもやりようはあるんだぜ!?」

 

 

使用人B「受けて立とう!!」

 

 

スタープラチナを構え迫る譲信に、Bが立ちはだかった。

 

 

使用人B「“7・デッドリーシンズ”!!

 

 

譲信&スタプラ「オラァァァァァァ!!」

 

 

スタープラチナのパンチと、7・デッドリーシンズの細い腕のパンチがぶつかり合う。

そして

 

 

バッチュィィーーーン!!

 

 

譲信「ぬぅ!?」

 

 

スタープラチナのパンチは弾かれて、その反動が譲信の腕にも伝わってきた。

軽く痺れるような感覚が走る。

 

 

使用人B「7・デッドリーシンズの能力は“反撃”だ。物理、能力、そのどちらかを任意で相手にはじき返す事が出来る。そして、その威力は倍以上になる」

 

 

譲信「つまり…要は“カウンター”って訳か…!!テメーもまたメンドクセー野郎だなッ!!」

 

 

使用人A「近付きすぎるなよ!!時を止められて攻撃されたらカウンターもヘッタクレもないからな!!“クリエイションパール”!!

 

 

Aのスタンド“クリエイションパール”の手から創造された硝酸が譲信の頭上にまで広がる。

 

 

譲信「うぉぉッ!?」

 

 

間一髪、譲信の体に降り注ぐ前に、譲信は硝酸の雨を回避する事が出来た。

 

 

使用人A「俺の能力は“万物創造”!!0から1を生み出すことの出来る能力だ。限界はないぞ」

 

 

譲信「テメーのは何となく察しが付いてたぜ!!」

 

 

AとBは後退して譲信のスタープラチナの射程距離外へと移動した。

 

 

譲信(さて…どうすっかなぁ。六道って奴は動く気配が無いな……今はこの二人のアタッカーを何とか倒さねーといけね~訳だ…。まともに殴り合うにしても、奴らのスタンドのパワーがもし近距離パワー型だったとしたら怪我するかもだしな……ここは、トリッキーな戦法を使うか!!)

 

 

譲信の準備が整ったのと同時に、どうやらAとBも準備が整ったようで、再び攻撃に出る。

…そして、譲信はスタープラチナを引っ込めて別のスタンドを発現させた。

 

 

譲信「“ソフト&ウェット”!!

 

 

使用人A「別のが出てきた!?」

 

 

使用人B「大丈夫だ!!なんであろうと俺が全てをはじき返す!!」

 

 

六道(複数所持……か!?……コイツ俺達と少し違うぽいぞ…!!)

 

 

ソフト&ウェットから放たれた複数のしゃぼん玉がAとBにどんどん近付いてくる。

当然、AとBがそれに触れるというような失態は犯さない。

 

 

使用人A「遅いなぁ。躱すのに苦労はしないぞ!!」

 

 

使用人B「さぁ能力を見せてみろよ?これで終わりじゃあないのだろ?」

 

 

Bが先頭に立ち、譲信に攻撃を仕掛けようもスタンドの拳を振り下ろす。

その時、しゃぼん玉の一つが地面に触れてそして割れた。

 

 

譲信「気を付けろ?今、地面から摩擦を“奪った”」

 

 

使用人AB「ッ!?」

 

 

次の瞬間、AとBは思いっきし足を滑らせ盛大に転けた。

『ドシン!!』という音と共に、床をつるつる滑り二人は壁に激突する。

『ゴン…!!』という鈍い音がした。

『う…!?』という二人の呻き声が続けて聞こえる。

 

 

使用人A「うぬぁぁぁぁ!!クリエイションパール!!」

 

 

Aはクリエイションパールで生み出した幾つもの針をスタンドに投げさせて、部屋に漂う全てのしゃぼん玉を割った。

 

 

パパパパパァァァン!!

 

 

その隙に、譲信は二人の少し近くまで移動していた。

 

 

譲信「悪いが…もう俺はテメーらには手加減してねーぜ!!“メタリカ”!!

 

 

譲信はメタリカでトドメの能力を発動させる。

その瞬間

 

 

ブシャァァッ!!

 

 

使用人AB「うあぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

二人の体中から大量のカミソリやはさみが飛び出し、大量の血が飛び散る。

一瞬の大量出血により、二人の意識はアッという間に途切れた…。

 

 

譲信「…はぁ…ラストはテメーだな。六道さんよ」

 

 

六道「………」

 

 

そして譲信はすぐさま、六道の方へ視線を向け、構える。

その間も六道はただ、使用人達が殺されていくサマを黙って観察していた。

 

 

譲信「……本当は殺りたく無かったぜ……。だが……もうそんな甘っちょろいことは言ってらんねー運命に巻き込まれたと…俺はそう考え、覚悟を決めた。悪いな…大事なお仲間を殺っちまってよ」

 

 

六道「そうか……だがな、別にお前を恨んではないさ。殺そうとしたなら、逆に殺されたって文句は言えまいよ。それにそいつらは戦闘経験なんて全く無かった…負けて当然…一々驚くほどのことでも無い」

 

 

譲信「…!仲間に対して言う台詞かよ…!?」

 

 

六道「仲間……?…違う。そいつらはただの使用人。プライベートで会話すらロクにしたこともないな。名前も忘れたし、年さえ分からん。俺がこの世で信頼するのは姉上だけだ…それ以外に仲間意識なんて無い」

 

 

譲信「そうかよ。まぁ別に…他人の事だからどうとでも良いことだが…まぁ…ちょっとだけ納得し難いだけだからな」

 

 

六道「勝手にしろ…それより駄弁る余裕なんてあるのか?」

 

 

譲信「ねぇな…!!」

 

 

言い終えると同時に譲信は六道に向かって突撃する。

譲信はスタープラチナを発現させ、六道を殴りつけようとした。

ところが

 

 

六道「“ソフト&ウェット”!!

 

 

何と六道のチューチュートレインが今度はソフト&ウェットに姿を変えた。

そして

 

 

ツルッ!!

 

 

譲信の足元の地面の摩擦が、急に消えて譲信は足を滑らせた。

 

 

譲信「な…何ィィィィィィィィィ!?」

 

 

そのまま譲信はツルツル滑って壁に激突した。

 

 

ドンッ!!

 

 

譲信「か……はっ…!?」

 

 

六道「俺の能力“チューチュートレイン”は、射程距離内で現在から5分以内前に誰かが取った行動を完璧にコピーする能力。敵の能力を理解できるし、対抗も出来る」

 

 

譲信「ッ!!」

 

 

次に譲信の体に異変が起きる。

右手の甲が破け、そこからカミソリの先端が顔を覗かせていた。

 

 

譲信「まさか“メタリカ”まで!?マズイ!!スタープラチナ・ザ・ワールド!!

 

 

ドォーーーーーーン!!

 

 

全身からカミソリが吹き出す前に譲信は時を止める。

そして這いずりながらも、何とかメタリカの射程距離外へと抜けることに成功した。

 

 

譲信「時は…動き出すッ!!」

 

 

そして時は再び刻み始める……。

 

 

六道「ム!逃げられたか…しかし時を止めたな?フン…これで俺の手札には再び、時止めが入ったな」

 

 

譲信「チッ…!!野郎……(下手に能力を使えば野郎の手数を増やすことになる……やり辛ぇったらありゃしねぇぜ…!!)」

 

 

譲信は、これから考えながら能力を使っていかなくてはならなくなった。

なるべく最小限の能力で、六道には挑まなくてはならない。

 

 

譲信(もしくは……野郎が認識出来ないように能力を使う………か、野郎がコピーしても意味ないような使い方をするか…)

 

 

六道「さぁどうした?掛かってこないのか?」

 

 

譲信「シャラップ!!今からそっち行ってぶちのめしてやんよ!!」

 

 

譲信は六道の挑発に敢えて乗り、スタープラチナを構えて走って向かっていく。

チマチマ駆け引きをやって長引かせては不利だと判断し、尚かつ良い名案も浮かばなかった譲信はゴリ押すことにした。

 

 

譲信&スタプラ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァッ!!」

 

 

六道「バカめ!!俺の話を聞いていたのか?“チューチュートレイン・スタープラチナ”!!

 

 

六道&チタプラ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァッ!!」

 

 

 

 

バゴォッバゴバゴガンガァン!!

 

 

 

 

スタープラチナ同士のラッシュのぶつかり合い。

全く同じパワーでのぶつかり合いに、凄まじい風圧が起こり、周りの襖を軽く吹き飛ばしてしまう。

 

 

六道「そんなんで決着が着くわけないだろう!?無駄な時間だけが過ぎていくじゃあないかッ!!」

 

 

譲信「あぁん?本当にそう思ってんのか!?」

 

 

六道「……何ッ!?」

 

 

ここで六道は気付いた。

譲信の目には何かの覚悟が宿っているように見え、何かを仕掛けてくるつもりだという事に……。

 

 

 

譲信「テメーの言うように、俺はこーいう所じゃあバカだからなッ!!ゴリ押すしか脳は無ぇッ!!しかしな!!それはテメーも覚悟を決めなきゃあなんねぇって事だぜ!?」

 

 

六道「覚悟……だと……?」

 

 

譲信「行くぜ…ここからは……漢比べだ!!

 

 

スタプラ「オラァァァァッ!!」

 

 

譲信のスタープラチナはラッシュの打ち合いを中断し、ガードを捨て、六道のスタープラチナの腹部に拳を叩き込んだ。

 

 

ボッゴォォン!!

 

 

六道「ぐぶぁぁぁぁッ!?」

 

 

そんな物をくらった六道は当然、激しく吐血するがチューチュートレインのコピー能力によりその場に固定されている為、吹っ飛ぶことは無い。

そして、チューチュートレイン・スタープラチナに攻撃がヒットしたという事は、その攻撃がコピーされると当然…。

 

 

ボッゴォォン!!

 

 

譲信のスタープラチナの腹部にも拳がめり込む…。

 

 

譲信「がっ………はぁ……!!!!」

 

 

譲信もまた激しく吐血する。

だが、後方へは決して気合で吹き飛ばない。

 

 

六道「がっ…ふ…!?ハァー……ハァー……お前まさか……どちらかがくたばるまで…!?」

 

 

譲信「ハァー……ハァー……ハァー……ゴボッ…!!効いたぜ…ペッ!!テメーの思ってる通り…いや少し違うな……。テメーがぶっ倒れるまで俺は拳を叩き込むぜッ!!」

 

 

六道の顔は瞬間青ざめる。

これから始まる戦いは、想像を絶する苦痛を伴う物と悟った。

 

 

六道「よ……よせ……!!」

 

 

だがもはや譲信は止まらない。

 

 

譲信&スタプラ「オラララオラオラオラァァッ!!」

 

 

チタプラ「オラララオラオラオラァァッ!!」

 

 

数十発ものラッシュが譲信と六道の互いの全身に叩き込まれる。

 

 

ボゴボゴボゴホゴボッシャァァ!!

 

 

骨と肉が潰れるような音が聞こえる。

 

 

譲信「ぐ………あぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

六道「ぎゃぃあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

今まで味わったことの無い激痛が互いの全身に駆け巡り、どちらも意識が吹っ飛びそうになった。

 

 

譲信「グ…グレート…!!」

 

 

六道「や……やめ……ろ……」

 

 

だが、まだ二人は意識を保っている。

そして、スタンドも互いにまだ動かせていた…。

 

 

譲信「行く……ぞ……」

 

 

スタプラ「オラァァァァッ!!」

 

 

チタプラ「オラァァァァッ!!」

 

 

互いのスタープラチナの拳が交差し、双方の顔面に真横から強烈な一撃が叩き込まれる。

 

 

バキィィィィッ!!

 

 

顎の骨にヒビが入り、奥歯が砕け、目玉が飛び出るような衝撃が二人に同じように襲いかかった。

 

 

譲信「………ッ!!!!」

 

 

六道「………ッ!!!!」

 

 

まさかこんな破られ方でチューチュートレインを攻略されるとは……と、六道は痛みに耐えながら思う。

……こんなイカれた奴なんかと戦わなければ良かったと、六道の心はへし折られた。

 

弱りきった精神ではもはやスタンド能力を維持させることは出来ない。

六道のチューチュートレインの能力は解除された。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

霞む六道の視界には自分に向かって直接拳を叩き込もうと、腕を振りかぶる譲信の姿が映った。

 

 

六道(成る程…本体が直接本体を殴りに来る分に関しては…コピー出来ないな……。すまない姉上…俺はここまでです…)

 

 

バキィィィィッ!!

 

 

譲信の拳が顔面に叩き込まれ、意識を失った六道は後ろへ吹っ飛んでピクリとも動かなくなった。

 

 

譲信「ハァー……ハァー……ハァー……ハァー……ハァー…………まだ2,3発耐えられていたら……俺がくたばってた所だった…やれやれだぜ……!!」

 

 

足元は互いの血で濡れて赤く染まっており、紅魔館の床みたいだなと譲信は思った。

そして、立っているのも限界に感じた譲信は体を休める為にそのまま床に、仰向けになって倒れた。

 

 

譲信「あぁー…!!しんど…。紫さんがこっち来るまで休憩だよ…全く!!」

 

 

???「私の弟をあんな風に倒すなんて…やるわね坊や」

 

 

仰向けになって譲信が瞳を開くと、会った事の無い女性が譲信の顔を覗き込んでいた。

そしてその女性は優しくほほ笑みながらも、どこか冷酷な冷たい瞳をしていた…。

 

 

譲信「……ッ!?」

 

 

驚いた譲信は慌てて起き上がろうとするが、思ったよりダメージが重く、素早く体を動かすことが出来なかった。

女性はそんな譲信の両目の中に、微笑みながら左右の指を突っ込む。

 

 

譲信「うぐぅぅぉぉぉぉぉ!?」

 

 

譲信は急いで女性の手を引き剥がそうとするが、まるで人間とは思えないような凄まじい力でびくともしない。

そうしている内に、女性の指は譲信の両眼球をしっかりと掴んだ。

……そして

 

 

 

メリメリメリメリ……

 

 

 

譲信の両眼球を引っ張り始め、嫌な音が鳴り始める。

『ブチブチ…』と筋肉が引き剥がされていく音が譲信の耳元で聞こえ、血が溢れてくるのが分かる。

そして、これまでに味わった事の無い地獄の苦痛に譲信は気が狂いそうになっていた。

 

 

譲信「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁッ!!」

 

 

譲信はすぐにスタープラチナを発現させ、女性を殴り飛ばしてでも引き剥がそうとするが、時は既に遅かった。

 

 

ブチンッ!!

 

 

完全に両目をくり抜かれ、視界が真っ暗になった譲信はその痛みに思わず悲鳴を上げた…。

 

 

譲信「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

???「フフ…♡嬉しそうねぇ…」

 

 

余りの痛みに血の涙を流しながら、譲信は両目を抑えながらのたうち回る。

そんな譲信の苦痛に悶える姿を笑いながら見ている女性はまさに異常そのものだった。

 

 

譲信「ァァ………ッッぐ……………ゥゥゥ…!!」

 

 

そして譲信はその場にうずくまり、もはや声にならない呻き声を上げながら、痛みと恐怖に必死に耐えていた…。

 

 

???「早朝から人様の家に無断で忍び込むような…坊やみたいな非行少年には…お・し・お・きが必要ね♪」

 

 

譲信からくり抜いた眼球の一つを舌先でコロコロと転がしながら女性はそう言った。

譲信にはその光景は見えていなかったが、見えていたら間違いなく恐怖で体が硬直してしまっていただろう…。

 

 

紫「譲信!」

 

 

???「あらぁ……?」

 

 

譲信「!!」

 

 

その時、部屋の片隅にスキマが開きそこから譲信の悲鳴を聞いて駆けつけた紫が現れた。

 

 

紫「……ッ!」

 

 

地獄のような有様を見て、何が起こっているのか紫は一瞬で理解した。

 

 

???「これはこれは幻想郷の賢者様まで…。事前に言ってくださればおもてなしが出来たでしょうに…」

 

 

そして紫は女性の胸ポケットに、矢が仕舞われているのに気付いた。

…ということは、この女性がこの屋敷の姉方の主だと紫は推察する。

 

 

紫「……思ってたよりもマズイ事態ね…」

 

 

女性は矢を紫に見せびらかすようにして手に取った。

 

 

???「この矢が欲しいのでしょう…?でも残念ながら、これはお渡し出来ないのよ……それでも欲しいなら……私に殺されてから諦めてくださいまし?」

 

 

紫「随分と舐めた態度ね貴女……。別に無理してその矢は渡して貰う必要は無いのよ?…貴女を始末してから回収するだけですもの……」

 

 

女性から放たれる異様な殺気を感じた紫はすぐに戦闘態勢に入るが、内心は別のことを考えていた。

 

 

紫(何とかして譲信をここから逃がさないと……あの出血はマズイわね……数分以内に止血しないと……死ぬ…!!)

 

 

譲信「………………………ッ!!」

 

 

紫は譲信を守るようにして譲信の正面に立つ。

女性はただ、不気味な笑みを浮かべながら譲信からくり抜いた二つの眼球を握りつぶした………。

 

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 

 

 

 




スタンドパラメータ

①チューチュートレイン

能力:射程距離内で起こったスタンドや能力によるどんな行動も5分以内であれば完璧にコピーする能力。

パワー C
スピード E
成長性 E
精密動作性E
持続力A
射程距離B


②7・デッドリーシンズ

能力:自身に向けられた有りと有らゆる物理攻撃や能力攻撃のどちらかを任意で、倍以上にして相手に弾き返すカウンター能力。

パワー A
スピード B
成長性 E
精密動作性 C
持続力 B
射程距離 E


③スターライトパレード

能力:まるで流星のような小型の星屑を手のひらから発射する能力。

パワー B
スピード C
成長性 B
精密動作性 B
持続力 B
射程距離 B



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27人里バトルロワイヤル

えー…まずは……あれからすぐ次話出すとか言っといて、出すのが今更になってしまい、申し訳ありませんでした!!
別にコロナでくたばった訳じゃあないのでご安心ください!

実は……つい最近までエジプトにいる「時間を止める」能力を持ったスタンド使いをやっつけに行ってただけですので……。
無事に勝ってきたのでもう大丈夫です(^^)(大嘘)

まぁ、リアルが忙しいっていうのはガチなので、ちまちまと投稿させていただけたらなぁ~…と思っております。




始まりは、ほんのささいな偶然だった。

物置部屋から見つけ出した、買った覚えのない奇妙な形の矢。

 

ソレは真っ直ぐに女性の体目掛けて飛んできて、そして突き刺さった。

女性が躓いて、近くの板に手を突いた結果、板が起き上がりテコの原理で矢が飛んできたのだ。

 

………それからだ。

女性が“この”能力を身につけたのは。

欲求を全て満たしてくれるこの“力”。

女性はこの力を…幻想波紋(スタンド)と名付けた。

それを目覚めさせてくれた“矢”は誰にも譲るわけにはいかない。

例え、幻想郷の賢者と敵対することになろうとも……。

 

これは試練だ。

矢を本当に支配する為の。

……しかし、この女性に限ってはそんな事なんて考えてもいない。

ただ、目の前に立つ敵を……自身が快楽で満たされるまでいたぶり、そして殺す。

生粋のサディストである。

それだけを女性は考えていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狂花「知ってると思うけど…私の名前は“美山(みやま) 狂花(きょうか)”。能力名は……“エボル”よ。フフフフフ♡」

 

 

今にも八つ裂きにして、苦痛に呻く二人の声を聞きながら、体中をかきむしって血みどろになり、快楽に浸りたいと狂花は、目を見開き息を荒くしながら甘く微笑んだ。

 

 

紫「これはいやね………狂ってるわ…」

 

 

譲信「…………」

 

 

そんな狂花には流石の紫も少し引き気味になる。

強い弱い以前に、とにかく関わりたくないし、できれば戦いたく無い……紫はそんな気持ちだった。

ボクサーの世界チャンピオンでも、常にパンツ一丁でロクに風呂に入っていない中年とは、できれば殴り合いたくないのと同じなので当然の感覚だと言える。

 

 

紫(まずは……譲信を何とかして離脱させないとね…。治療も早急にしなければいけない…)

 

紫「譲信……私が合図したら右へ飛びなさい……そこへスキマを開くわ……。貴方は逃げるのよ……良いわね?」

 

 

紫は譲信にだけ聞こえるように小声で譲信に話し掛けた。

………しかし

 

 

譲信「…………」

 

 

譲信は紫の言葉が聞こえていないのか、全くの無言だった。

痛みには慣れたのか、呻き声は上げなかったがただ無言で、血を流し続ける譲信を見て紫は「もしや死んだのでは?」と焦りを感じた。

 

 

紫「譲信?聞こえてるの?……ちょっと?……ねぇ譲信くん?譲信さん?……えーと、生きてる……?」

 

 

狂花「♪~~~?」

 

 

そんな紫の様子を、離れた場所から狂花は興味深そうに見ていた。

………しかし、いつまでも狂花が眺めている訳は無い。

 

 

狂花「フフ…来ないなら……私から攻めるわよ!?そーいうプレーがお好みかしらぁ~!?」

 

 

紫「っ!」

 

 

迫り来る狂花にすぐに気付き、応戦しようと紫は前に出る。

……が、その紫の横から誰かが物凄い勢いで飛び出した。

……その者は…………

 

 

 

 

紫「譲信ッ!?」

 

 

 

そう、空条譲信だった。

瞑った瞼から血を流しながら、迫り来る狂花の方へと向かっていく。

 

 

狂花「まだ動けるのぉ~~?」

 

 

狂花は満面の狂った笑みを浮かべた。

 

 

譲信「てめぇ…………誰の目ン玉を………引っこ抜いてくれてんだぁゴルァァァ!!

 

 

 

 

譲信はブチ切れていた。

目が見えないクセに、スタープラチナを出して怒りのパンチを繰り出す。

しかし当然それは狂花に躱される。

 

 

 

狂花「アハハ♪バ~~~カ♪」

 

 

譲信「………!!!!!」ビキビキビキ…

 

 

嘲笑う狂花に、青筋を浮かべる譲信。

そのせいで、瞼から更に勢い良く血が飛び散った。

 

 

狂花「や~~~ん怖ぁ~~いの♪」

 

 

バキィッ!!

 

 

譲信「ぐぅぅ……!!?」

 

 

スタンドを身に纏った狂花に蹴り飛ばされ、譲信は紫の隣まで吹き飛ばされた。

 

 

紫「譲信!?あなたね!!!!」

 

 

言いたいことはゴマンとあった紫。

折角逃がそうとしたのに、そんな怪我で立ち向かっていく譲信の馬鹿さ加減には呆れていた。

 

 

譲信「……スンマセン。ちと頭に血が上りすぎたぜ…。こいつぁ…やっぱクセだな……。でもまぁ…結構出血したお陰で上りすぎた血を抜くことは出来た……ぜ?」

 

 

軽口を叩ける辺り、血の気が多い若者ならいくら血を出しても無駄ということなのだろう。

 

 

紫「それは良かったわね!!お陰で私にとっては面倒な状況のままよ!!」

 

 

紫は譲信の首根っこを掴んで後ろへ飛ぶ。

丁度飛んだタイミングで、狂花が先程まで紫と譲信のいた場所に拳を叩き込み、床にデカイ風穴を開けた。

 

 

譲信「見えないから分からねぇが……どうやら助けてくれたみてーだな。ありがとさん。ついでに、拳サイズの物を……紙でも石ころでもいいから持ってきてくんねーかなぁ?」

 

 

紫「はぁ?何言ってるのよ…私は今あの人間の相手で忙しいのよ!そのくらいのサイズなら自分の靴で我慢しなさい!」

 

 

そう言うと、紫は譲信を投げ飛ばしてから狂花の拳を躱し、弾幕を撃ち込む。

狂花にはガードされるが、その隙に紫は後退した。

 

 

一方紫に投げ飛ばされた譲信は…

 

 

譲信「………あぁ、確かにそうだ…!!」

 

 

一人納得していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「後手に回るのは好きじゃないのよ。特に……貴女のような…醜い人間を相手にするなら尚更ね…!!」

 

 

 

境符「二次元と三次元の境界」!!

 

 

 

紫が発生させた衝撃波は壁を伝って走り、狂花へと向かってくる。

 

 

狂花「あらぁ~~?もしかして私のこと……舐めてるの?」

 

 

だが、スタンドを纏った狂花は余裕の表情で衝撃波を拳で弾いていく。

 

 

紫「………その台詞……そっくり返すわよ…」

 

 

ドゴン!!

 

 

狂花「!?」

 

 

スタンドを纏って胴体視力が格段に上がっている狂花が、衝撃波を見誤る事などまず無い。

……しかし、どういう訳か狂花は紫の放った衝撃波を被弾してしまった。

 

 

紫「光の屈折……。境界を操って少しいじらせて貰ったわ。つまり、実際に見えている物は既に終わった物なのよ」

 

 

狂花「…………へぇ?」

 

 

紫「例えると、夜空に浮かぶ星の光は距離によっては何年も前に放たれた物がようやく地球に到達して見えるようになっている光……。それと同じことよ」

 

 

狂花「………うんすごい。けど…だから何?だ・か・ら・何なのかなぁ~~~~!?」

 

 

狂花の姿が突然パッ…と消えた。

 

 

紫「ッ!?」

 

 

狂花「こ・こ♪」

 

 

いつの間にか狂花は紫の背後に立っていた。

そして、エボルの拳で紫を殴り飛ばそうとする。

 

 

ズウウ…

 

 

が、突如開いたスキマに吸いこまれると、別のスキマが狂花の頭の後ろに出現し、そこからエボルの拳が現れ狂花の後頭部を殴りつけた。

 

 

狂花「痛っ!?……何よもぉーーー!!!!」

 

 

 

 

紫(さっきから全くダメージが入っていない………。あの纏っているスタンド……かなり硬いわね)

 

 

紫はすぐに狂花から距離を取る。

接近戦に持ち込めば間違いなく狂花の方が上手。

そう判断している紫は決して狂花に接近戦は持ち込ませない。

だが、その瞬間

 

 

狂花「でも…結果ラッキー♪」

 

 

バキィッ!!

 

 

紫「………くっ!?」

 

 

何と、紫の正面にスキマが開きそこから飛び出たエボルの拳に紫は殴り飛ばされた。

 

 

紫「何故私の……!?」

 

 

何と、紫と同じスキマの能力を狂花は使って見せたのだ。

 

 

狂花「私は見てれば大抵の能力はコピーできちゃうのよ…!!便利よね?」

 

 

そのままスキマに飛び込み、紫と距離を一気に詰めようと狂花は動く。

 

紫が体勢を立て直す頃には既に狂花は距離2m以内にまで近付いていた。

 

 

紫「速い…!!」

 

 

狂花「さぁ~もう一発♪」

 

 

ガッアァーーーン!!

 

 

強烈な打撃音が響く。

咄嗟のガードで視界を覆っていた紫だったが、いつまで待っても衝撃は伝わって来なかった。

 

 

紫「………?」

 

 

紫はゆっくりと目を開く。

………そこで見えた物は………

 

 

 

 

 

 

 

 

狂花「………ふ……………っ」

 

 

譲信「ンの野郎ォ……」

 

 

間一髪、紫と狂花の間に入り狂花の腕を押さえ込んでいる譲信の姿だった。

スタープラチナで狂花の纏っているエボルの両腕を掴み、軋む音を鳴らしながら押さえ込んでいる。

 

 

紫「な……!?」

 

 

もはや譲信は戦闘不能と思っていた紫はその光景を見て大変驚いた。

 

 

狂花「………?」

 

 

狂花もまさか目の見えない奴に、自分が捕まるとは思ってもみなかったようだ。

 

 

譲信「舐めやがって…確かに死ぬほど痛ぇが……何も問題はねーんだぜ!!」

 

 

気合でどうにかなるんだよー!!っと譲信は叫んだ。

見ると譲信の片足に履いていた靴が消えていた。

片っぽ裸足という不格好な姿に紫は少々の疑問を感じていた。

 

 

 

狂花「舐める……?フフ…舐めるというのはね………目が見えないクセに、格上を格下と見くびって立ち塞がる…坊やの事を言うのよぉぉ!!」

 

 

狂花はいとも容易くスタープラチナの拘束を弾くと、譲信の顔面向けてパンチを繰り出す。

 

 

紫「譲信!!」

 

 

この距離からでは狂花から譲信に向けられた攻撃を無効化するには時間が足りない。

その一撃をくらえば譲信は確実にあの世行きだ。

 

 

譲信「……」ギラン

 

 

その時、譲信は目を見開いた。

するとなんと、その両目には無くなった筈の譲信の目玉がちゃんと入っていた。

 

 

狂花「何ィィィィィィィィィ!!?」

 

 

譲信「“ゴールド・エクスペリエンス”!!痛みは消えねぇが……人体の欠損した部分はこうやって修復可能なんだよ!!間抜けがぁッ!!」

 

 

譲信はスタープラチナで狂花を拘束したまま、“世界”を発現させて拳を叩き込もうとした。

 

 

譲信「WRYYYYYYYYYYYYY!!」

 

 

スカッ……

 

 

譲信・紫「!?」

 

 

だが、瞬時に狂花の姿は消え譲信の背後に狂花は立っていた。

 

 

狂花「詰めが甘かったわねぇ?アハ……アハハ!!」

 

 

譲信「後ろかッ!?」

 

 

狂花「死んじゃえ~~!!」

 

 

慌てて振り向こうとする譲信に向かって、狂花は素早く手刀を振りかざし、譲信を真っ二つにしようとした。

しかし、

 

 

ドォーーーーーーン!!

 

 

譲信「世界(ザ・ワールド)…時は止まった…。17秒前!!」

 

 

間一髪、譲信が発動させた“世界”の能力の方が早かった。

 

 

譲信「ヤバいな………。取り敢えず危険は回避できたが………まだ視力が完全じゃあねぇ。完全に馴染むまではまだ…景色がボヤけすぎて敵味方の区別が出来ないじゃあないか!!」

 

 

譲信は狂花が立っている位置に向かって、ラッシュを叩き込む!!と世界を動かした。

 

 

譲信「無駄無駄無駄無駄む………!?

 

 

 

だが、その時。

“世界”の片腕が狂花に当たる直前で、何かに捉えられたかのようにピタリと止まった。

 

 

譲信「何…………だ?」

 

 

引っ張っても、押しても世界の片腕は固定されたまま、動かなくなった。

そしてわずかに、鈍い痛みが伝わってくるのを譲信は感じていた。

 

そうしてたじろいでいる内に、時止めの限界を迎える。

 

 

譲信「やっべ…!!」

 

 

狂花「!やったぁ……引っ掛かっちゃったね?」

 

 

譲信「ぬうぐ!?」

 

 

すると譲信はどんどん何かに吸いこまれていくではないか。

これは……そう………これはまるで……

 

 

譲信「ブラックホール……とでも言うのかこりゃ!?」

 

 

狂花「あたり~!」

 

 

狂った笑みを浮かべ、狂花は譲信に向かって飛びかかる。

まともに狂花の一発を貰うのは譲信にとって死を意味する。

 

 

譲信「キングクリムゾン!!

 

 

瞬間、世界の時間は消し飛ぶ。

ブラックホールの拘束から抜け出た譲信の体を狂花はすり抜けていく。

しかし、狂花はそのことを認識出来ていない。

今、キングクリムゾンの能力が発動された世界を認識できるのは譲信ただ一人だけである。

 

 

譲信「時よ…再始動しろッ!!」

 

 

譲信は時を再始動させ、背を向ける狂花にキングクリムゾンの手刀を叩き込む。

が…

 

 

ガァン!!

 

 

譲信「か……硬い!?」

 

 

予想外のガード力に、譲信は思わず顔をしかめた。

その隙に、狂花は瞬間移動し譲信から距離を取る。

 

 

譲信(瞬間移動…ブラックホール…キングクリムゾンのパワーに耐える守りに…推定スタープラチナぐらいはあるであろうパワー………。やれやれだぜ……マジにヘビーな野郎だなおい。こいつと闘うのは…“危険が危なすぎる”ぜ)

 

 

狂花(瞬間移動……では無いようね……。ブラックホールに捕まったのを見るに………多分、時間停止………そして………さっきのはすり抜け?かしら?複数の能力を持ってるようね)

 

 

紫(おかしい……“境界”による無力化が効かない。譲信同様、スタンド使いには“境界”の力に対して何かの耐性でもあるのかしら?)

 

 

三者三様、それぞれが互いに考察を脳内では行っていた。

 

 

譲信(…………とりあえず……まずは瞬間移動を何とかしねーとな。

 

こういうピンチの中での慣れない頭脳戦。

だがしかし、すでに譲信の作戦は始まっていたのだった。

 

              TO BE CONTINUE……

 

 

 




一旦、オリスタなどの募集は〆ようと思います。
たくさんの案、まことにありがとうございました!
えー…主がしばらくエジプトで吸血鬼のスタンド使いと闘っている間に(また大嘘)、たくさんの感想や質問やらがきていましたので、時間あるときに、ゆっくりと返信や閲覧をしていきたいと思っております!


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