異世界かるてっと∞ (スラみん)
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仰天!異世界召喚!

始まりの街アクセル、その街の離れにある豪華な屋敷。

そこに住む4人の冒険者全員が居間のテーブルに集まっていた。

 

「なぁお前ら、大切な話がある」

「どうしたんですかカズマ?急に改まって」

「そうだぞカズマ、また王都のお城で引きこもりたいなんて言うんじゃないだろうな」

「ま、どうでもいいけど早くしてよねー、私ゼル帝にご飯あげなきゃいけないの」

 

「俺さ、冒険者引退しようと思うんだ」

 

・・・・・・・・・

 

カズマがそう言った途端、居間の空気が凍りついた。

 

「「「はぁ!?」」」

「急に何言ってるんですか貴方は!?」

「そうだ!そんな事許される訳がないだろう!?」

「ちょっとちょっと!魔王倒してくれないと、私天界に帰れないんですけど!?」

 

仲間達の焦った声を聞いたカズマは腕を組み、静かに言った。

 

「お前らは今まで俺が死んだ回数知ってるか?」

「えーっと、3回くらいでしょうか?」

「は?」

「5回くらいだろう?」

「は?」

「そんなの一々覚えてないわよ」

「はぁ?」

 

「いいか!?よく聞けよ!俺が死んだ回数はなぁ!39回だよ!!」

 

「「「!!」」」

 

「初めて殺されたのは冬将軍だった。

一瞬で痛みが走る間もなく殺されたよ。

その次はリザードランナーに頭を踏み潰された。

スライムに全身骨になるまでとかされた。

めぐみんの爆裂魔法に巻き込まれた。

コボルトに袋叩きにされた。

ゴーレムにペシャンコにされた。

めぐみんの爆裂魔法に巻き込まれた。

セレナの魔法で呪い殺された。

めぐみんの爆裂魔法に巻き込まれた。

ドラゴンに丸呑みにされた。

めぐみんの爆裂魔法に巻き込まれた。

めぐみんの爆裂魔法に巻き込まれた。

めぐみんの・・・・・・・・・

めぐみんの・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

めぐみんの、めぐみんの、めぐみんの、・・・・・・・・・」

「ちょっ、ちょっと待ってください!私が原因なの多くないですか!?」

「どうしためぐみん、やっと半分超えたところだぞ?」

「流石に私はそんなにカズマを殺してません!きっと何かの間違いです!」

 

めぐみんが大声で抗議した。

その様子を見ていたアクアはめぐみんに向かって真実を突きつけた。

 

「いいえ、多分あってると思うわよ。

3回クエストに行ったら1回はめぐみんの爆裂魔法でカズマ死んでるもの」

「た・・・・・・確かなんですか・・・・・・?」

私が何回カズマを蘇生したと思ってるのよ。大体カズマは全身の皮膚が焼け爛れて、四肢も吹っ飛んでるわよ」

 

アクアの言葉を聞き、めぐみんは焦ったように弁明した。

 

「ち、違うんです!大量のモンスターとか硬そうなモンスターを見たら爆裂魔法撃ちたくなるじゃないですか!?」

「まぁ、今回はめぐみんが悪い。

これから暫くは爆裂魔法を禁止にしよう、カズマもそれでいいだろ?」

「!!それだけはやめてください!」

「いいわけないだろ!俺は金輪際、ぜっ・た・い・に、冒険には行かないから・・・・・・いてっ、おいアクア!急に物を投げるなよ!」

「はぁ!?私じゃないんですけど!」

「じゃあ誰が・・・って、これは・・・・・・」

 

カズマが頭に投げられたと思った物体は、昔に見た記憶のある赤いボタンだった。

「これって、あのボタンよね・・・」

「えぇ、あのボタンですね」

「これは・・・・・・」

「とにかく、絶対押しちゃだめだぞ。絶対だからな」

「にゃあ♪」

 

ーーピンポーンーー

 

「「「「あ、」」」」

 

いつの間にかテーブルの上にいた飼い猫のちょむ助が、その前足でボタンを押した。

その途端、時空が歪み始める。

 

「おいぃぃぃい!なんて事してくれたんだこの猫は!」

「おい、めぐみん!しっかり見張ってないとダメじゃないか!?」

「私のせいだっていいたいんですか!?」

「またあの学校に行かされるのね、もう嫌ァァァ!」

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

「これで今日の授業を終わります。では」

 

教壇に立つ女の教師がそう言うと、周りの生徒はガヤガヤと立ち上がり、帰りだした。

どんどんと人が減っていくなか、4人の生徒だけがその場から動こうともせず、話していた。

 

「ふむ、今日も実につまらぬ授業だったな」

「確かに・・・・・・」

「なんだか、あんたに毒されてるみたいで嫌だけど、確かに簡単だったわね」

「まぁ、ボク達はアノス君直々に訓練受けてるんだし、そう思うのも仕方ないよ」

 

「?」

ーーパシッーー

 

アノスは何やら異変を察知したのか、頭上から落ちてくる物体を手で受け止めた。

よくよく見ると、それは赤いボタンのような何かであった。

 

「ボタン・・・?」

「あぁ、そうみたいだな。押すか?」

「何か罠みたいなものだったら、どうするのよ」

「ふん、罠だと言うのなら正面からうち破ればいい」

「はは、アノスくんらしいや」

 

 

ーーピンポーンーー

 

 

ボタンが押された途端、周囲の空間が歪みだした。

 

「ほう、やはり罠だったか。

ガトム(転移)』、使えないか。

まぁいい、吸い込まれてみるのもまた一興だな」

「ちょっと!?諦めないでよ!」

「諦めてなどいない。ただ、流れに身を任せるだけだ」

「ははは」

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

今日は休日だと言うのに、アリエル王女に呼ばれていた為、俺は朝早くから起きていた。

なので今非常に眠い。

 

「ねぇルディ、アリエル様との約束の時間まであと少しだよ、お風呂でも入ってさっぱりしてきなよ」

「あぁ、シルフィ。

シルフィの可愛い顔を見ただけで、一瞬で目が覚めたよ」

 

俺はそう言ってシルフィの尻を撫でた。

小さくてすべすべしていて非常に可愛らしい。

 

「もう!昨日夜沢山したでしょ!ほら、早く風呂行ってくる!」

 

シルフィに叱られ俺は渋々、風呂に向かった。

脱衣場で服を脱ごうとすると、既に別の誰かの服が置かれている。

どうやら先客が居たようだ。

 

「おはようエリス。今日も朝練?」

「ルーデウス!?きょ、今日は休日なのに朝早いのね・・・」

「うん。アリエル王女に呼び出されちゃってね」

 

中に入るとエリスが体を洗っていた。

あぁ、なんと美しいんだろうか。まるで百獣を統べる王様のようだ。

え?これは褒めてないって?

馬鹿野郎、褒めてるんだよ。

 

「ル、ルーデウスがしたいなら、今からする?」

「・・・・・・する」

 

・・・・・・・・

 

俺とエリスが暫くしてから風呂を出ると、居間の方から食欲のそそる匂いがした。

その匂いを嗅いだエリスが真っ先に飛び出し、居間へと向かった。

空腹のエリスは恐ろしいな。

スタートの瞬間は俺にも見えなかったぞ。

 

「おはようございます、ルディ。遅かったじゃないですか」

 

そして、居間へ行くと、ロキシーとテーブルに並んだ料理が迎えてくれた。

既にシルフィとエリスもご飯を食べていた。

 

「おはようロキシー。リーリャさん達は?」

「リーリャさんとアイシャは2人で買い物に行きました。

ゼニスさんは庭の手入れをしていますよ」

「そうか、ロキシーは今日も学校?」

「はい。今日は2年生用にテストを作らないといけないんですよ」

 

相変わらず、ロキシーは働き者のいい先生だ。

 

「ねぇ、ルディ、これ何かな?」

「ん?何だこれ」

「ボタン・・・よね?」

「ボタンですね」

 

何だこの怪しげなボタンは。

というかいつからここにあった?

俺が居間に来た時は無かった・・・・・・気がする。

オルステッドの何か・・・・・・いや、それなら事前に通達がある筈。

となれば、ヒトガミの罠か!?

 

「とりあえず押してみましょ」

 

ーーピンポーンーー

 

こいつ、やりやがった。

そう思うと同時に、空間が歪んでいく。

空間が歪むという表現が正しいかは分からないが、兎に角それっぽい何かが起こっている。なんだかやばい気がする。

 

「ちょっ、エリス!?」

「何で当たり前のように押すんですか!?」

「え、だって、ボタンがあったら押したくなるでしょ」

 

なるけど、なるけどっ!

あー、もう!あとは無事を祈るしかないか

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

荒れ果てた荒野を1台の乗り物が疾走していた。

 

「ハジメさん!もう追いつかれますよ!?」

「ハジメ、諦めて戦お」

「あぁ、もう仕方ないか・・・」

 

乗り物は急停車し、その扉が開く。

すると中から3人の人影がありてきた。

 

「さて、俺たちの快適なドライブを邪魔したんだ。

このトカゲは木っ端微塵だな」

「ん、木っ端微塵に賛成」

「よーし!私もやりますよー!」

 

ハジメは、両手にドンナーを構え

ユエは手を前にだし

シアはぶんぶんと手に持ったハンマーを振り回した。

3人が眼前に捉えるのは巨大な火竜。

 

「よーし!私から切り込みますよー!イタッ!」

「おい、何やってる・・・って何だそれは?」

「ボタンみたい・・・」

 

シアの頭上から落ちてきたもの、それは謎の赤いボタンだった。

 

「見るからに怪しいな、とりあえず撃っとくか」

 

ーードパン!ドパン!ーー

 

荒野に響いた2発の銃声。

銃弾は確かに謎のボタンに直撃した筈だが、傷1つ着いた様子はない。

 

ーードパン!ーー

ーーピンポーンーー

 

「あ」

 

最後にもう1発と思い撃った銃弾が上手いことボタンを押した。

途端に空間が歪みだした。

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

「ふぁ〜」

「師匠、寝不足っすか?」

「うん、昨日ちょっとスキルの面白い使い方閃いちゃってね」

「ちゃんと寝ないとダメだぞ〜。私が膝枕してあげよっか?」

「いや、遠慮しとく。エイミーの膝よりも普通の枕の方が寝やすそうだし」

「もー!迷宮都市のアイドル、エイミーちゃんの膝はふかふかなんだよ!」

「エイミーちょっと痛いっす!」

 

無限の輪のクランハウス。

今日は週に2回定めた休みのため、クランハウスにいる人は少なかった。

オーリは買い出しに出かけ、ゼノは家で嫁と過ごし、アーミラはコリナを連れ街へ出て、ダリルはガルムと一緒に訓練だそうだ。

ディニエルは多分部屋で寝てるのだろう。

 

今クランハウスの居間にはツトムの他に、ハンナとハンナに羽繕いしているエイミーしかいなかった。

 

「ねぇ師匠、これ何すか?」

「何だろうね」

「いやせめてこっち見てから言ってくださいっすよ!?」

 

何やらハンナが騒いでいるが、ツトムは書類から目を離さない。

するとエイミーがちょんちょんとツトムの肩を叩いた。

それでようやくツトムが振り返ると何やら見慣れぬボタンをエイミーが手に持っていた。

 

「え、何そのボタン?」

「だから言ってるじゃないっすか!?」

「ねぇツトム、これなんだと思う?」

「うーん・・・・・・とりあえず押したらろくな事にならなそうなのは分かる」

 

エイミーが手に持つボタンを見て、ツトムはそう思った。

この前、王都のスタンピートが終わったばかりでようやく明日から光と闇階層へ行けるのだ。

それを邪魔されてはツトムとしてはたまったもんじゃなかった。

 

「とりあえず押してみるっすよ!」

 

ーーピンポーンーー

 

「「あ!?」」

 

ハンナが当たり前のようにボタンを押した。

その途端空間が歪み出す。

 

「ちょっ!ほんとになんて事してくれたんだ!?」

「だってボタンなんか見たら押したくなるじゃないっすか!」

「この前王都から帰ってきたばかりなんだ、何も面倒事起こさないでくれよ」

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

今日も平和だなー。

そんな事を思いながらぼーっとしていると、シオンから少し物騒な報告を受けた。

 

「リムル様、ここ最近テンペストに不埒者の潜入が増えております」

「そうか・・・・・・ソウエイ」

「お呼びですか!」

 

俺が呼びかけると直ぐに現れてくれる。

もう慣れてしまったが、ほんと凄いやつだなソウエイは。

 

「シオンによると、ココ最近不埒者が街に入ってきているらしい」

「その事でしたら、つい先程、テンペストの侵略を目論んでいた輩をまとめて捕縛しておきました」

「そ、そうか」

 

すげぇ!何だこのイケメンは!?

まさか既に捕まえてあったなんて。

 

「リムル様!ミリム様が早く遊んでくれと、お呼びになっておりますよ」

「ベニマル!お前が遊んでやれ」

「そ、そんな!?」

「こらー!リムル!今日は私と遊ぶのだ!」

 

ミリムが来た。

少し遅れてシュナも入ってきた。

何やらシュナは見慣れないボタンを手に持っているようだ。

 

「シュナ、その手に持っている物はなんだ?」

「街を歩いていると、突然頭上から落ちてきたんですが・・・・・・リムル様もご存じじゃないんですか?」

「うーん、何だろうな?」

 

シエル、何だか分かるか?

《主様、申し訳ございません。私にも、分かりかねます》

マジか・・・・・・シエルでも分からないなんて。

押さない方がいいよな・・・・・・?

《はい。押さない事を推奨致します。》

だよなぁー

《主様、魔王ミリムが押してしまう可能性が、》

「取り敢えず押してみるのだ!」

 

ーーピンポーンーー

 

「「「「「あ!?」」」」」

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

獣王国パシオンのとある宿

そこに3人の冒険者が滞在していた。

 

「なぁヒイロ、」

「断る」

「おい!?まだ何も言ってないだろ!?」

「おっさんの言う事だ。どうせくだらないことだろ?」

「実はさ、またアクアハウンドの肉が手に入ったんだが・・・」

「何故早く言わないんだ、さっさと料理しろ」

「おい・・・・・・・・・」

「ははは・・・・・・日色さんらしいね」

 

昔に食べたアクアハウンドの肉の味を覚えていた日色は、料理を始めたアノールドを見ながら期待に胸を踊らせていた。

 

「それにしても、アクアハウンドの肉なんて久々に食べますね」

「そうだな。思えばあれがお前らを助けてやった理由だったっけか」

「懐かしいですね」

 

日色とミュアはアクアハウンドが焼けていくのを見ながら、そんな事を思い出した。

日色は別に運命の出会いなど信じないが、この2人と出会ったのは本当に運が良かったと思う。

 

(いや、ミュアはともかく、おっさんはいらないか)

「おいヒイロ、今なんか失礼な事思わなかったか?」

「気のせいだろ」

「そうか、ならいいんだが」

 

突然アノールドにそう言われギョッとした。

改めて獣人の勘はバカにならないなと思う日色だった。

それから今読んでいる本が読み終わったので、新しい本を取り出そうと鞄を漁ると、中になにやら見慣れない物を見つけた。

 

「おいおっさん、勝手に人の鞄に物を入れるな」

「はぁ?俺じゃねぇよ!」

「だったらこれは何なんだ?」

「ボタン・・・・・・みたいですね」

 

ひとまず日色は鞄からボタンを取り出すと、床に置いた。

どこからどう見てもボタンだ。

 

「押しても良いんでしょうか?」

「分からん。だが、押さない方が良いとは思うがな」

「何なんだ一体、ボタンなんてあったら押したくなるじゃねぇか」

「取り敢えず放置だ。今はボタンよりも肉だろ」

「そうだったな!ようやく焼きあがったぜ!」

 

日色達の前に、焼く前の何倍も大きく膨れ上がった肉が現れる。

その肉は食欲を唆られる香ばしい匂いを放っていた。

 

「さて、食べるとするか」

 

日色がそう言って、椅子に腰掛けた瞬間だった。

 

 

ーーピンポーンーー

 

 

「は?」

 

いつの間にか椅子の上に乗っていたボタンを日色が座った勢いで押してしまったのだ。

途端、空間が歪みだした。

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

ーーズシン、ズシンーー

 

「ねぇ、高遠くん、なんかあの巨大な物体こっちに向かってきてない?」

「巨大な物体ていうか、ゴーレムだね」

「そっかー、ゴーレムかー」

「うん。なんかこっちガン見して、クラウンチングスタートの構えとってるね」

「そうだねー。」

『お主、そうとう小僧に毒されてきとるの』

 

遠くに見えるゴーレムがクラウチングスタートのポーズからこちらに向かって全力疾走してくる。

 

「死ね」

 

夜霧がそう言った途端、ゴーレムは突然力が抜けたように静止した。そして、そのまま慣性の法則に従って前方に向かって猛スピードで転がった。

 

「って、うわぁぁあ!こっち来てるうぅぅ!!」

 

知千香が女の子とは思えないような叫びを上げ、夜霧を担ぎ全力疾走する。

そして、先程まで自分達がいた所がゴーレムが滑ってきたことで、抉れて草木1本残らない地面と化していた。

 

「ありがとう壇ノ浦さん」

「もう!殺す時はその後の事も考えてよ!」

「別に、運動エネルギーを殺せば、走らなくても良かったけどね」

「じゃあ、最初からやれやぁ!」

『お主、自分が女だと忘れとらんか?』

 

夜霧達が漫才をしていると、ゴーレムの方から何か、部品のような物が転がってきた。

 

「ん?何これ?」

「さぁ?あのゴーレムについてたボタンじゃない?」

「自爆装置とかかな?まぁ、あそこにいても邪魔だし、押しとこうかな」

 

 

ーーピンポーンーー

 

 

知千香がボタンを押した瞬間、辺りの空間が歪みだした。

 

「え!?自爆装置じゃなかったの!?」

「あーあ、壇ノ浦さんやっちゃったね」

「これ私のせい!?高遠君、この空間を殺したり出来ないの?」

「空間なんて殺せるわけないじゃん」

「いや、今まで散々訳わかんないもの殺しといて!?」

『あー、ま、何とかなるじゃろ』

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

今日アレルとライナは実家に子供を任せ、剣の都市へと戻ってきていた。

理由は、ライナが今の自分の腕を試したいと言ったからだ。

 

「何だか久しぶりだな!」

「あぁ、確かにこの空気は懐かしい」

 

血の気の多い強者が闊歩する剣の都市特有のピリついた空気を懐かしみながら、2人は一先ず懐かしきドラゴンファングのホームへとやってきた。

 

「だから剣の振りがなってねぇんだよ!

いいか?両手で振ることを意識するな。2つの片手で振るイメージだ!」

「「「はい!」」」

 

ホームに入り先ず目に入ったのはここのギルドマスターが新人に教育をしている光景だった。

 

「あ!アレルさんじゃないですか!?

やっぱりライナと離婚して私と結婚する気になりましたか!

結婚式はいつにしましょう?

式場は立派な教会で盛大にあげましょうね!」

「おいリリア!誰と誰が離婚するだ!」

「何ですか、ライナもいたんですか・・・・・・」

「お、おい!露骨に嫌そうな顔をするな!」

 

(この女の顔を見るのも随分と久しぶりだな。まぁ、別に見れなくても問題ないのだが)

 

「今回は何しに迷宮都市に来たんですか?」

「ライナが自分の力を試したいんだそうだ」

「いい歳した女が何言ってんですか」

「お、おい!いい歳した女とか言うなよ!」

「そんな事より、いつ突っ込もうかと思ってたんですが、アレルさん、その頭に乗せてるボタンは何ですか?」

「ボタン・・・・・・?あ、ほんとだ」

 

リリアにそう言われて、アレルは自分の頭を探ると、確かに頭の上に何だかよく分からないボタンが置かれていた。

何故今まで気が付かなかったのだろうか。

 

「今まで気が付かなかったんですか?」

「あぁ、全く気が付かなかった。それにしてもこのボタン、どうしたものか」

「押してみたらいいじゃないですか」

「ちょっと待て!それで罠だったらどうするんだ!」

「罠なら次は、剣神より上のリビングアーマーと戦えるかもしれないな」

 

ーーピンポーンーー

 

アレルが流れるようにボタンを押すと、空間が歪みだした。

 

「おぉ、やっぱり罠だったか。よし、俺をリビングアーマーの所まで連れて行け」

「剣神より上!?そんなのがいたとして、アレルさんでも勝てるんですか!?」

「分からんが、自分より弱い奴とやっても意味がないだろう」

「何を悠長な事を言っているのだ!」

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

ここは森の奥にある古びた古城。

そこでは、シャドウガーデンの七陰の内、第5席から第1席までが勢揃いしていた。

 

「何だか同窓会みたいな感じでいいね。

と言っても2人来れなかったみたいだけど」

 

「ーーッ!申し訳ございません!

あの2人は別の任務で遠くに出ているもので・・・・・・」

 

いや、別に良いんだけどね。

 

急いで謝ってきたガンマをシドはあっさりと許した。

 

「それで今日は何で集められたですか?」

 

「さぁ?僕は何も聞いてないんだけど」

 

実際、シドは今回アルファから「七陰を集めるから貴方も来て。」と言われたから暇だったから足を運んだのだ。

 

「今回はこれについて皆の意見を聞きたくて集めたの」

 

アルファがそう言って取り出したのは赤いボタンだった。

 

「知ってると思うけど、最近教団のアジトでこれが頻繁に発見されてるのよ」

 

ふむ、知らなかった。

 

「このボタンについて、私は教団の下っ端を捉えて拷問したのですが、そんな物知らないの一点張りでした」

 

「ふむ」

 

「このボタンなら私が研究しています。硬度、質感、質量、を計測した結果、少なくともこの世界で現在発見されている物質のどれとも一致しませんでした」

 

「ふむ」

 

置いてけぼり感は否めないが、僕はイプシロンとガンマの話しを黙って聞いて適当に相槌を打っていた。

つまりはこのボタン・・・・・・未知ってことか。

 

「取り敢えず押してみればいいんじゃない?」

 

「「「「「ーーッ!」」」」」

 

5人が固まってしまった。僕何かおかしな事言ったかな?

 

「危険ではありませんか?」

 

「まぁ、もし危険だったとしても何とか切り抜けられると思うけど・・・・・・」

 

(ーーッ!そういう事ですか、私達が愚かでした。

危険な物だと1歩引いて対応していては何時までも収穫は得られない。

こういう時の為に今まで力を蓄えてきていたのだと・・・・・・シャドウ様はそう仰っているのか。

何たる失態・・・・ここは私がボタンを押して取り返さねば!)

 

「分かりました!では!私ベータが押させていただきます!」

 

「デルタが押すです!」

 

ーーピンポーンーー

 

ベータの指がボタンに触れようというタイミングで、デルタが横取りした。

何故か悔しそうなベータを横目に

空間がぐにゃぐにゃと歪み出した。

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

ーーピンポーンーー

 

ーーピンポーンーー

 

ーーピンポーンーー

 

ーーピンポーンーー

 

ーーピンポーンーー

 

ーーピンポーンーー

 

またどこか違う世界で、音が鳴り響く。




何作品かボタン押すシーン飛ばしちゃった!
てへぺろ


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集結!1年A組!

「この見覚えのある校庭、校舎、フェンス!

やっぱりここあの学校じゃねぇかぁ!」

「やっぱり私があのぼたんを押したのが行けなかったのかしら?」

「そそそそんなことないさ!ボタン在ったら押してしまうのが人情ってもんだろ!?だから押してしまったエミリアたんはなんにも悪くない。ドゥーユーアンダスタン?」

「あ、あんだすたん?」

 

どこからどう見ても日本の学校の校庭。

そこのド真ん中にスバルとエミリアは立っていた。

人の気配がしない場所だと思っていたが、突然スバルに声を掛けるものがいた。

 

「お!スバルじゃないか!」

「おー!カズマ!やっぱりお前らも召喚されてきたのか!」

「そーなんだよ。こいつの飼ってる猫がさ、ボタンを押した・・・・・・って?めぐみんは?ダクネスもいねぇ!」

 

カズマが辺りを確認しても、スバル、エミリア、アクア以外の人影は見当たらなかった。

 

「私は知らないわよ。気がついた時からいなかったわ」

「そう言えばこっちもレムとラムとベア子がいねぇ!」

「今回の召喚は前回とは違うってことか・・・・・・」

「何だかよく分からないけど、きっと皆無事だとおもうの」

 

『今からHRがある!全員教室へ向かえ!』

 

いつの間にか朝礼台に立っていた藍色の髪に鎧を着込んだ犬人が、マイクを使ってスバル達へと呼びかけた。

 

そして、4人は教室の席へ着いた。

 

「はぁ〜またここに来ちまったな」

「そうだなぁ、前回も帰るのに色々苦労したからなぁ」

「でも、私また皆で学校生活できるのすごーく楽しみ」

「私は今すぐ帰りたいわ、ゼル帝元気にしてるかしら」

 

ーーガラガラーー

 

「めぐみん・・・・・・!っじゃなかったか・・・・・・」

 

カズマがめぐみんだと思い声を掛けたのは白い制服のような物に身を包んだ2人組だった。

 

「めぐみんとやらが何かは知らぬが、俺で悪かったな、許せ。」

「・・・・・・・・・」

 

(うわー、すっごい上からの人来たよ!それよりも隣の子無口でめっちゃ可愛ええ!)

 

「何だかこいつから凄く嫌な気配感じるんですけど。

私の真なる眼はお見通しよ!貴方もしかしなくても魔族ね!」

「ちょぉぉぉい!お前!見ず知らずの人に失礼だろ!」

「ふむ。そうだが?だとしたらどうする?」

 

白服の男がアクアを睨み、威圧する。

その瞬間、こいつはやばい。

関わってはいけない人種だと、カズマの本能が理解した。

 

「いや、ほんとこのアホが失礼しましたー!」

「ちょっとカズマ何すんのよ!どいて!今からこいつを退治するの!」

「いやいや、お前はアンデッドならともかく、普通の魔族に有効打ないだろ!いいから!ここは大人しく謝っとけ!」

 

無理やりアクアの頭を下げさせるカズマを見て、白服の男、アノスは場違いにも笑い声をあげた。

 

「はっはっはっ!別に構わんぞ。俺は魔族だからな、人間に恨まれるのは性と言うやつだ」

「いや、ほんとすみませんね。このアホには俺から言い聞かせておきますんで」

「今アホって言った!?しかもさっきのも入れて2回も言った!謝って!カズマさん私にアホって言ったこと謝って!」

 

ーーガラガラーー

 

「え?何この雰囲気・・・・・・」

 

今度入ってきたのは3人の子供であった。

ブラウン髪の男の子の両腕を赤髪と白髪の少女がしっかりと抱きしめていた。

 

「ほんと不思議よね!ルーデウスが昔みたいに可愛いわ」

「悪かったね、さっきまでの俺は可愛くなくて」

「そんなことないよ、さっきまでのルディも可愛いよ?」

「いやいや、シルフィやエリスの方が可愛いよ」

(何だこのハーレム野郎は!)

 

カズマはアノスの事なんて忘れて入ってきたルーデウスと呼ばれる男を睨みつけた。

 

「何よアンタ、私のルーデウスに何か用?」

「い、いや、なんでもないです・・・・・・」

「そう。ならいいわ」

 

カズマは自分より少し年下位の赤髪の女の子に凄まれ、呆気なく引き下がった。

 

「ルーデウス!?」

 

突然スバルが立ち上がって声を上げた。

 

「?」

「い、いや、何でもない。悪かったな騒いじまって」

「いや、別にそれは良いんだけど。

それよりも君達ここはどこか分かる?」

「えーっとな、ここは・・・・・・」

 

ーーガラガラーー

 

「ねぇ、高遠君、ここって・・・・・・」

「学校だね」

「いや、それは見たら分かるけど!?

私達、日本に帰ってきたのかな?」

「さぁ?あの人達に聞けば分かるんじゃない?」

 

今度は入ってきたのは日本人の高校生の男女だった。

何故高校生と分かるのかというと、制服を着ていたからだ。

 

(制服を着ているのに、日本に帰ってきた?恐らく、前回の法則に則れば、全員別々の異世界から召喚されている筈・・・・・・それに、前回は4つの世界だったと言うのに、これで5つ目。

今回は多いんだな)

 

カズマが2人の高校生を見ながら考察する。

 

ーーガラガラーー

 

「・・・・・・」

 

また扉が開き、人が入ってきた。

また、2人の男女だ。

だが、カズマには今回の2人には見覚えがあった。

 

「アンタ、確か、尚文とラフタリアさんだったか?

今回は同じクラスなんだな」

「・・・・・・誰だ?」

 

「尚文様、前回転移した時にもいたお方ですよ。確か、カスマさんとかいう名前で・・・・・・」

「カズマだよ!あんた可愛い見た目して、エグい記憶違いしてるな・・・・・・」

「も、申し訳ございません!」

 

「それで、カズマとやら、どうすれば帰れる?」

「そんなのこっちが知りたいくらいだよ・・・・・・」

 

カズマが困ったように答えると再び扉が開いた。

 

ーーガラガラーー

 

「おいお前ら、ここは何処だ?

見たところ日本の学校のようだが、学校の外に全く人の気配が感じない」

(うわ、こりゃまた凄い人が来たな・・・・・・)

 

次に入ってきたのは白髪に眼帯、黒いコートを着て、左腕にはゴッツイ義手を付けた男だった。

よく見ると後ろに2人の女性を連れている。

ただ、1人は女性というよりか少女といった感じだが。

 

「なるほど、読めてきたぞ。

お前らはそれぞれ別の世界から来たのだな?

誰が何の目的で連れてきたかは知らんが、先程校庭でHRが始まると言っていた。だからそれまでは大人しく待っているとしよう」

 

アノスはそう言って隣に連れたミーシャと共に、適当な席へ座った。

そしてアノスに続き渋々とだったが、他の者達も静かに席に着いた。

 

ーーガラガラーー

 

「いやぁ、なんか良くわかんないっすけど生きててよかったっすねー」

「いや、変な場所に転移してるじゃん。明日からダンジョンどうすんの」

「まぁまぁ、全くツトムはダンジョン脳なんだからー。たまにはダンジョンの事なんて忘れて私と過ごそ!ね!」

「嫌だよ。せっかく王都から帰ってきたばかりなのに・・・・・・何?この空気」

 

ーーガラガラーー

 

「リビングアーマーはどこにいる?」

「いや、そもそもそんなのいないんですって」

「それにしてもここは何処なのだ?」

「まるで、魔術学院だな・・・・・・」

「いや、この空気は何ですか・・・・・・?」

 

ーーガラガラーー

 

「なぁ日色、ここがお前が元いた世界なのか?」

「分からん。かなり似てはいるが、微妙に違う気がする」

「日色さんが元いた世界ってこんな感じなんですね」

「いや、この空気なんだよ」

 

ーーガラガラーー

 

ーーテクテクテクーー

ーーガラガラーー

ーースタッーー

 

(うん、新しい学校に入学をして、誰とも話さずに着席。

実にモブらしいね、75点ってところかな)

 

ーーガラガラーー

 

(おいおい、まだ来るのか!?前回から増えすぎだろ!

一体次はどんな奴が入ってくるんだ?)

 

ポヨポヨ、

 

「って!まさかのスライムかよ!」

 

「「「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」」」

 

突然叫んだカズマに全員の視線が集まった。

その視線の恥ずかしさで悶絶しそうになるのを耐えながらカズマはそそくさと頭を下げて、謝った。

 

「い、いや、何でもないです。すみませんでした。はい。」

 

ポヨポヨッ!

 

入ってきたスライムは少し笑ったように見えたが、そのまま空いてる席へと着いた。

 

 

ーー▽▽ーー

 

 

学校には大抵、校長室という物がある。

その校長室の扉の向こうで、赤い髪を持った神竜人が邪悪な笑みを浮かべていた。

 

「さぁ、学園生活の始まりだな」

 



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緊迫!自己紹介!

学園生活のきまり

・よく学ぶ

・よくあそぶ

・ぼうりょく禁止

・みんななかよく

 

「以上が学園生活における約束事です。

君たちは共に学ぶ仲間ですからね、仲良くするように」

 

青髪の少女が教卓に立ち、そう言った。

すると、我慢ならないというようにルーデウスが手を上げて発言した。

 

「ロキシー!」

「先生ですよ、ルーデウス君」

「ならロキシー先生!何やってんのこれ?」

「学園生活ですよ、ルーデウス君」

 

ーードンッ!ーー

 

突然机が吹き飛んだ。

どうやらハジメが蹴り飛ばしたらしい。

 

「ロキシーとかいったか?こんなくだらない事やってられるか。

さっさと元の世界に還しやがれ」

「あぁん?てめぇロキシー先生になんて口聞いてんだぁ?」

「ルーデウスだったかクソガキ、お前らが俺をここに連れてきたのか?

こうなったら力ずくでも・・・・・・」

 

ハジメがドンナーを抜き、ルーデウスへ構える。

対するルーデウスはアクアハーティアをハジメに向かって構えた。

 

「「駄目ですよ!校則違反になりますから!」」

 

突然扉から入ってきた黒髪に小柄な女性とロキシーが声を揃えて言った。

 

「なッ!愛子先生!?」

「駄目ですよ南雲君、入学早々指導を受けたいんですか?」

「なんで先生が、ここに・・・・・・?」

「何故って先生は先生だからです。

そして南雲君は生徒ですよ。

諦めて学園生活を送ってください」

「ちっ!」

 

ハジメは諦めて、机をもとの位置に戻し、着席した。

 

「ハジメ、相変わらず愛子にあまい・・・・・・」

「そうですね、私もそれくらい甘やかしてくれたらいいのに・・・・・・」

「うるさい・・・・・・」

 

「貴方もですよルーデウス君!

私の事で怒ってくれたのは嬉しいですが、それで指導になってしまっては私は悲しいです」

「す、すみません」

「ねぇロキシー、どうして私達は若返ってるの?」

「先生ですよエリス。

若返ってるのは、『やっぱりルーデウスといったら子供の姿だよね』だそうです」

「なるほど、納得ね」

 

(いや、誰の言葉だよ!?)

 

心の中でそう叫ぶカズマであった。

 

「はいはーい!ロキシー先生!」

「何ですかスバル君」

「今回、アインズとかターニャとかはいねぇの?」

「あぁ、彼らでしたら、『今回は人多いし、大所帯の彼らはやめとこう』だそうですよ」

「すっごいメタ発言!いいのかよ、そんな適当で!」

 

何ともツッコミどころが多いが、一旦落ちついてきたのでロキシーが喋りだした。

 

「それでは、先ずは最初ですし、皆さんには自己紹介をしていただきます」

「なんか凄い学校っぽいのきたよ!?」

 

誰もがそう思った事を知千香が代弁した。

 

「先ずはルーデウス君からよろしくお願いします」

 

「ルーデウス・グレイラットです。

何だかよくわかんない事になってますが、何卒よろしくお願いします」

 

「エリス・グレイラットよ

こっちのルーデウスの妻、よろしく」

 

「シルフィエット・グレイラットです。

エリスと同じく、ルディの妻です。よろしくお願いします」

 

(2人も妻がいるとは・・・・・・すげぇ羨ましいなチクショウ)

 

「次は俺がしよう。

暴虐の魔王、アノス・ヴォルディゴードだ。よろしく」

 

「ミーシャ・ネクロン・・・・・・よろしく」

 

(最初から只者じゃないと思っていたが、まさか魔王とは・・・・・・

さっき謝っておいて良かった)

 

「スぅー、

俺の名前はナツキスバル!

無知蒙昧にして、天下不滅の無一文!よろしくな!」

 

「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」

 

(ジャージだ・・・・・・)

(ジャージだな・・・・・・)

(ジャージだ、見たの久しぶりだなー)

(この人絶対日本人だよ・・・・・・)

(絶対日本人だ・・・・・・)

 

因みに上からルーデウス、ハジメ、シド、知千香、ツトムである。

 

「私はエミリアです。よろしくお願いします」

「僕は精霊のパックだよー。

リア、あ、この子の事だけどー。リアを虐めたら許さないからねー」

 

(相変わらずエミリアさんは可愛いなー)

(精霊か・・・・・・リーレイアのウンディーネ達とはまた違うのかな?)

 

「それじゃあ次は、京谷さん、どうぞー」

 

「あ、僕か、どうもキョウタニ・ツトムです。

ジョブは白魔道士です、よろしくお願いします」

 

「どうもー!迷宮都市のアイドル、エイミーちゃんでーす!

よろしくね!」

 

「あ、自分はハンナって言うっす!

師匠の弟子っす!よろしくお願いするっす!」

 

(ほ〜、エイミーさんすげぇ可愛いな!

てか、ハンナさんの胸でけぇ〜。おっと、警戒されてしまった)

 

ハンナに引くような目で見られたカズマはぷいっと目を逸らした。

 

「次は・・・・・岡村君、よろしくお願いします」

 

「俺か・・・・・・岡村日色だ」

 

「おいそれだけかよ!?

まぁいい、俺はアーノルドだ。

日色は無愛想だが悪いやつじゃねぇ、仲良くしてやってくれ」

 

「えっと・・・ミュアです。よろしくお願いします」

 

(まぁ、悪い奴らじゃなさそうだな)

 

「それでは次は・・・・・・」

 

「俺がやるよ」

 

突然声が上がった。

その方向を見ても、ポヨポヨとした水色の物体しかない。

 

「俺はリムル=テンペスト。

見ての通りスライムだが、悪いスライムじゃないから安心してくれ」

 

(スライムが喋った!?てか、今のセリフって、絶対こいつ元日本人だよ!

転生したらスライムだった件ってか!?)

 

「やっぱりこっちの姿の方がいいかな?」

 

リムルがそう言うと、リムルの水色の体がうねうねと変形し、人の姿になった。

 

(人の姿にもなれるのか・・・・・・てかこいつ男だよな?男なのか?まぁ、スライムなんだから無性か・・・・・・)

 

「それでは次、南雲君お願いします」

 

「チッ、南雲ハジメだ。お前らと仲良くする気はない。以上」

「駄目ですよ南雲君!ここは学校です。みんなと仲良くしないと行けません」

「そんなのやりたい奴だけでやってろ」

「そんなんじゃ元の世界に帰れませんよ?」

「ーーッ! 冗談だろ・・・・・・」

 

「ユエ・・・・・・ハジメの恋人、よろしく」

 

「シアです!ハジメさんの恋・・・愛人です!よろしくお願いします!」

 

(こいつもハーレム野郎かよ!)

 

「あはは・・・・・・じゃあ次、岩谷君お願いします」

 

「チッ、岩谷尚文だ。よろしく」

「駄目ですよ尚文様、無愛想だと友達ができません」

「・・・・・・」

 

「もう!ラフタリアです。

どうぞよろしくお願いします」

 

(ラフタリアさんも苦労してるんだな・・・・・・)

 

「次、シド君お願いします」

 

「は、はいぃ!

し、シド・カゲノーです・・・・・・

よ、よ、よ、よよろしくお願いしましゅ!」

 

(噛んだな)

(噛んだわね)

(噛みましたね)

(てかあんなやついたっけ?)

(あの人にすっごい親近感湧くわー)

 

因みに上から日色、エリス、シア、スバル、カズマである。

対する、シドはというと、

 

(よし、完璧だ!

よ、よ、よ、よ、よよの部分をリズミカルに刻み、

最後にトドメに噛む!我ながら完璧なモブだった!

変な世界に転移しちゃったけど、僕はモブを演じないとね)

 

随分上機嫌であった。

 

「次は、アレルさんいきましょうか」

 

「了解した、俺はアレルだ。どうぞよろしく」

 

「私はライナだ。アレルのつ、妻をやっている!」

「普段そんなこと言わないだろ。エリスさん達に感化されたな」

「う、うるさい!」

 

「私はリリアといいます。

アレルさんの愛人です!どうぞよろし」

「おい、お前は違うだろ」

「そんなぁ、照れなくても良いんですよ!」

 

アレルは無言で、リリアの頭を鷲掴みにした。

そしてそのまま手の力を入れていく。

 

「いただだだだ!!脳みそでちゃいますって!

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

 

(アレルさん、おっかねぇ・・・・・・)

 

「つ、次!高遠君お願いします!」

 

「ほら起きて、高遠君の番だよ」

「・・・・・・ん?もうそんな順番か。

高遠夜霧です。よろしくお願いします」

 

「だ、壇ノ浦知千香です。

よろしくお願いします!」

 

(なんというか、普通の高校生だな・・・・・・

話を聞く感じ、ハジメさんとか日色さんも高校生みたいだけど、この2人はちゃんと高校生だ・・・・・・制服だし)

 

カズマが夜霧と知千香の自己紹介を聞いてそう思っていると、隣に座っていたアクアが大きく手を挙げて発言を始めた。

 

「はいはいはーい!次は私の番ね!

えー、コホン。

私は全知全能にして水のめが「はーい、こいつアクア。俺カズマ。よろしく」

へ?」

 

アクアがよく分からない事を言い始めたのを横からカズマが割り込んで終わらせた。それを聞いたアクアが素っ頓狂な声を上げる。

 

「ちょっとちょっと!カズマ!私の輝かしい自己紹介をまたサラッと流したわね!」

「だってお前の自己紹介長いし」

「どうしてカズマはいつも私に冷たいの!?

私今回こそはしっかり自己紹介しようと思ってたのに!

ねぇ謝って!私の自己紹介を流したことを謝って!」

 

「え〜っと、アクアさん、進めてもいいですか?」

「うちのバカがすみませんロキシー先生。どうぞ進めてください」

「また私にバカっていったわね!今度という今度は・・・・・・」

「うるさーい!タダでさえ登場人物が多いんだ!お前がうだうだ言ってると話が進まないだろ!」

 

まったくその通りである。

 

「それでは改めまして、A組担任を務めます、

ロキシー・ミグルディア・グレイラットです。

魔族なのでこんなちっこい見た目ですが、皆さんよりは年上なので、よろしくお願いします」

 

実際は、年齢不詳のアクアを除けば、肉体年齢だとユエが一番年上でその次にエミリアなのだが、そんな事はロキシーの知るよしではない。

 

「そして私はA組の副担任をやります、畑山愛子です。

私もこんなにちっこいですが、ちゃんと大人なので敬意を払ってくださいね!」

「少しいいか?」

 

突然手を挙げたのはアノスだった。

 

「どうしましたかアノス君」

「さっきからA組と言っているが、他にもクラスがあるのか?」

 

(そういえば、前回は隣にクラスがあって、そこにクリスとかいたな)

 

「ええ、ありますよ。

恐らく今頃隣のクラスでもここと同じように自己紹介が行われている筈です」

 

 

そう、召喚されたのはここにいる29人だけではない。

隣のクラスでもまた一段と濃い面子が顔を合わせているのだった。

 




書いた後に思った。
愛子先生ってこんなキャラだっけ?

次回
集結!1年B組!
デュエルスタンバイ!


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集結!1年B組!

B組回ですが、基本的にこの作品はA組メインなので、B組の人は一部を除いてあんまり出てこないので、こんな人達もいるよ程度に思っていただければいいです。

てゆうか、B組作ってめっちゃ後悔した。素直にめぐみんA組にしとくんだった・・・・・・

それと影の実力者になりたくてのアニメ化が決まりましたね!
ダイパリメイクも発表され新劇エヴァの放送日も決まってテンションが爆上がりしております。
今日から学年末テストじゃなければもっと良かったんですがね・・・・・・


カズマ達1年A組が集まっていた頃、隣の教室でも顔合わせが行われていた。

 

「ねぇダクネス、ここは一体どこなのでしょう」

「十中八九あの”がっこう"とかいう場所だとは思うが、カズマとアクアの姿が見当たらないな」

「それに前回からかなり人も変わってるようですね。

知ってる人なんてあの3人くらいです」

 

めぐみんはちょむ助を腕に抱えたまま、教室の後ろの方をじっと見た。

その先にはメイド服を着た双子と小柄な少女の姿があった。

 

「そんなにじっと見て、なんなのかしら?」

「い、いえ、私はただ・・・・・・」

「お久しぶりです。私のことを覚えていらっしゃいますか?」

「!?」

 

その小柄な少女ベアトリスに睨まれてキョドってしまっためぐみんに変わり、ダクネスが礼儀正しくそう言った。

流石は貴族令嬢と言いたい所だが、その姿はいつも一緒にいるめぐみんが驚く程のギャップがあった。

 

「覚えているのよ。確かダクネスにめぐみんだったかしら」

「はい!そちらはベアトリスさんとレムさんにラムさんですよね」

「そうなのよ」

 

お互いに確認した5人は現在の状況について頭を捻ることになった。

 

「それにしてもまた面倒事に巻き込まれたみたいかしら」

「スバルくんとエミリア様もいませんし・・・・・・」

「こちらもカズマとアクアがいません・・・・・・」

 

レムとめぐみんが目に見えるように落ち込みだす。

 

「ま、まぁ、あいつらの事だ。どうせ何処かでバカをやっているに決まっているさ」

 

ダクネスがそう言って2人を励ます。

一方その頃A組ではスバルが自己紹介で盛大にやらかしていた。

 

「それにしてもこの教室は・・・・・・」

 

めぐみんが教室内を見渡す。

 

「冬夜さん、ここは一体どこなのでしょうか」

「さぁ、僕にも分からないよゲートも使えないみたいだし」

「冬夜にもわからないの?」

「残念ながらね、でも安心して、2人は必ず僕が帰すから」

「冬夜・・・・・・」

「冬夜さん・・・・・・」

 

「ケヤルガ様、どうしましょう、私があんなボタンを押してしまったばっかりに・・・・・・」

「別にフレイアのせいじゃないさ」

「ケヤルガ様・・・・・・」

「相変わらずケヤルガ様はフレイアに甘い。フレイアがドジ踏まなかったら今頃もっと強くなれた」

「まぁ、そう言ってやるなセツナ。フレイアだって別に悪気があった訳じゃないんだよ」

「まぁ、ケヤルガ様がそう言うなら・・・・・・」

 

「ねぇねぇカイン君、何だか大変な事になっちゃったね!」

「何でシルクはそんなに平然としてるの!?」

「多分シルクはカイン様ならどうにかしてくれると思ってるんですよ」

「流石テレスだね!わたしのことよく分かってる!」

「信頼してくれてるのは嬉しいよ。でも、困ったな・・・・・・…さっきから何度か試してるけど転移が使えないんだよね」

「それは弱りましたね・・・・・・」

「まぁ、カインくんとの小旅行だと思えば楽しいかも!」

「そうですね!カイン様との旅行なら良いです!」

「あはは・・・・・・」

 

「困りましたね、ゲートが開きません」

「こちらもだな」

「俺もダメだー。多分現在地がハッキリしてないことが原因だと思うんだけど」

(てゆうかここ多分日本だよな。異世界まで飛ばされたのか?それだと流石の俺でも帰るのは無理だぞ・・・・・・)

「シン?どうした?」

「いや、なんでもない・・・・・・」

「シン君・・・・・・あまり顔色がよくないですよ。どうしたんですか?」

「いやいや、ほんとに大丈夫だよ」

「そうですか・・・・・・」

「大丈夫・・・・・・絶対帰る方法を見つけるから」

「シン君・・・・・・」

 

 

「この教室は何だか空気がピンク色な気がするのですが!」

 

教室を見渡していためぐみんが吠えた。

 

「ちょっと落ち着けめぐみん。カズマがいなくて落ち着かないのは分かるが、周りからすごい見られてるぞ!」

「べ、別に・・・・・・カズマがいないからと、お、落ち着かない訳ではありませんよ・・・・・・」

 

ダクネスが周りからの視線を感じながらめぐみんを宥めていると、突然教室の扉が開いた。

 

ーーガラガラーー

 

「はいはーい。みんな席に着いてねーぇ」

「またお前なのねロズワール」

「先生だよ?ベアトリス君」

 

扉から入ってきて教卓の前に立ったのはベアトリスからすれば見慣れた顔の男だった。

そのインパクトのある見た目の男に一同が困惑する中、白いコートを着た男が手を挙げて発言した。

 

「あの、すみません・・・・・・」

「ん?どうしたのかーな?」

「ここは日本ですか?僕達は何故ここにいるんでしょうか?」

 

その白いコートを着た男望月冬夜にそう訊ねられたロズワールは少し考え込んだあと冬夜の目を見て言った。

 

「日本なんて地名は知らないけど、ここは学校で、君たちには今から学園生活を送って貰うよ」

 

ロズワールの言葉に一同は少し騒然とした。

真っ先に反発したのは先程まで大人しく座っていた4人の男女の内、赤い角を生やした男だった。

 

「ふざけるな!俺達はそんな事にかまけている暇はないんだ。

今すぐにテンペストに戻りリムル様の護衛に行かねば・・・・・・」

「あ、リムル君なら隣の教室にいるよー」

「な!?ソウエイ!」

「分かっている」

 

赤い角の男ベニマルがそう言うと、隣に座っていたソウエイが消えた。そして直ぐに帰ってきた。

 

「俺は大丈夫、取り敢えず様子を見ろとの事だ」

「分かった」

「それなら私達からも何も言う事はないですね」

 

ソウエイがそう言うとベニマルも大人しく席に座った。

その後ろに座っていたシオンとシュナも渋々ながら納得したようだ。

 

「まぁ、色々言いたいことがある人はいるだろうけど、取り敢えず自己紹介をするよー。そうだね、最初はベニマル君達からにしようかーぁな」

 

「ベニマルだ。リムル様からは侍大将の役職を頂いている。

これからよろしく頼む」

「ソウエイ。諜報活動をやっている」

「シュナです。リムル様からは巫女姫の役職を頂いています。これからよろしくお願いしますね」

「シオンです。武士、リムル様の護衛兼秘書をやっています!」

 

「(姉様姉様、同族がいますよ)」

「(違うわレム、よく見なさい。彼等は私達とは別の鬼族よ)」

 

 

「うん。いい挨拶だーぁね。それじゃあ次はー、君たちにお願いしようかーぁな」

 

そう言ってロズワールは黒装束に身を包んだ5人の方を向いた。

すると、その内4人が綺麗に揃った動きで立ち上がり、もう1人は焦ったようにいそいそと立ち上がった。

 

「アルファ」

「ベータ」

「ガンマ」

「イプシロン」

「デルタです!」

 

最後の耳の生えた獣人らしき人物だけは元気よく答えたが、それ以外は静かに自分の名前を告げるだけで、静かに席に着いた。

 

「はは、彼女達凄く強いね。1度でいいから手合わせ願いたいなぁ」

「・・・・・・あんたはそればっかりね」

 

黒い服を着た男女がアルファ達の自己紹介を聞き、そんな話をした。

 

「それじゃあ次は僕達がやるよ。

どーも、レイ グランズドリィです。

特技は剣術です。この教室には凄く強そうな人達がいっぱいいるので戦って見たいです!」

 

(あー、ティファーナと同じ部類の人だぁ・・・・・・。絡まれないように気をつけとこ)

 

カインは心の中でそう思った。

 

「混沌の世代、破滅の魔女、サーシャ ネクロンよ。

ま、よく分からないけどよろしく頼むわ」

 

(混沌の世代とか破滅の魔女とかはよく分からないけど、何だか凄そうだ)

 

「次は俺たちがするよ!

どうも、シン ウォルフォードです」

「シシリー クロードです」

「アールスハイド王国第1王子、アウグスト フォン アールスハイドだ。

親しきものはオーグと呼ぶ。よろしく頼むぞ」

 

オーグが自己紹介をすると、ダクネスとカイン、シルクの3人が跪き、頭を下げる。

 

「ど、どうしたんですかダクネス!?」

「控えろめぐみん。異世界とはいえ異国の王子を前に対等な目線でいられるものか!」

 

幼き頃より貴族の家で育てられた3人はそういう習慣が身についているようだ。

オーグはそんな3人に少し驚きながらも、威厳を含んだ声で言った。

 

「気を使わせてしまいすまない。ただ、ここは学校だ。

私と平等に接してくれて構わない」

「「「は!」」」

 

その言葉に3人はホッと胸を撫で下ろした。

 

「次は俺たちがやろう。錬金術師のケヤルガです。どうもよろしく」

「フレイアです。よろしくお願いします」

「セツナ。よろしく」

 

ケヤルガは笑顔で自己紹介をしたが、その貼り付けた笑顔の裏を読み取ったのか、ベアトリスとアルファを初めとした何人かの女性陣が、警戒した目でケヤルガを睨んだ。

 

(あの男、なんて気色悪いのかしら)

(取り繕っているけど、下衆の目をしてる・・・・・・気色悪い)

(なんだか、ザワザワするです・・・・・・)

(下衆が・・・・・・)

(なんて、気持ちの悪い・・・・・・)

(なにあいつ、気持ち悪いわね)

 

上からベアトリス、アルファ、デルタ、イプシロン、シオン、サーシャであるが、酷い言われようである。

 

「んー、みんな元気が良くて、なりよりだーぉよ。それじゃあ望月冬夜くん、よろしくー」

 

「あ、僕ですか・・・・・・

どうも、望月冬夜です。突然こんな異世界に送られちゃったけど、折角だし、みんなと仲良くなれたら嬉しいです。よろしくお願いします」

 

「なんて眩しい善人オーラだ・・・・・・オーグとは大違いだな」

「ほう?私が悪人だと言いたいのか?」

「げっ、すみませんでした」

 

シンとオーグがそんな漫才をやっていると、この教室でも目立つ銀髪の双子の少女が続いて自己紹介を始めた。

 

「どうも、リンゼ シルエスカ・・・・・・です」

「エルゼ シルエスカよ!よろしくお願いするわ」

 

なんとも可愛らしい2人の自己紹介だったが、

この教室で双子の少女といえば、彼女達だけではないことを覚えているだろうか。

 

「これは負けてられないわね。いくわよレム」

「はい姉様!」

「お初にお目にかかります。ロズワール様の使用人、ラムです」

「同じくレムです」

「ベアトリスなのよ」

 

エルゼとリンゼに対抗心を燃やしたラムとレムが自己紹介を始めた。それに続きベアトリスも手早く済ませる。

流石、メイド歴が長いだけあって、2人の姿からは気品を感じさせる。

 

「こらこーぉら。ラム、レム、ここでは先生だよ?」

「「申し訳ございません。ロズワール先生」」

 

その息がピッタリあった2人の自己紹介を聞いて負けたと思ったのか、エルゼがぐぬぬ、と悔しがっている。

因みに、それを見たラムはエルゼにドヤ顔をかまし、さらにエルゼが悔しそうにしていた。

 

「次は僕達がやります!

カイン フォン シルフォード ドリントルです。シルフォード王国で子爵に叙勲されドリントルの街を収めております」

 

そんな堅苦しい挨拶だったが、カインのその言葉にダクネス、オーグ、シシリー、が驚き、目を見張った。

カインはどう見ても10歳ほどにしか見えない子供が叙勲され、独立貴族になるなど、彼女らの常識ではありえないのだ。

 

「エリック フォン サンタナ マルビークの娘、シルク フォン サンタナでございます。こちらのカイン君の婚約者でもあります」

「エスフォート王国第3王女、テレスティア テラ エスフォートです。シルクと同じくカイン様の婚約者ですわ」

 

(公爵家の娘と王女の2人を婚約者だと!?子供にして叙勲されているのも含めて。カインか・・・・・・何やら苦笑いしているが、実はとんでもない奴なのか?シンみたいな奴じゃなければいいが・・・・・・)

 

「なぁ、オーグ、今凄い失礼な事考えなかったか?」

「ん?気のせいじゃないか?」

「そうか」

 

「それじゃあ最後にめぐみんくんに頼もうかーぁな」

 

ロズワールのその言葉にめぐみんが不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる。

 

「ふっふっふ、真打登場っといったところですね!

我が名はめぐ「こいつはめぐみんだ。私はダクネス、よろしく頼む」」

「な!?ちょっとダクネス!カズマみたいな事しないでくださいよ!

紅魔族にとって自己紹介とはですね・・・・・・ちょっと耳を塞がないでください!」

 

めぐみんが長々と喋るのをダクネスは両手で耳を塞ぎ聞かないようにした。

 

「まーぁあ、何とも個性的な人達が集まったものだーぁね。

これからはみんな仲良く、学園生活を送るんだーぁよ」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 

 

1年B組はA組と比べて平均年齢が低く、何ともまぁ、素直な人が多いみたいだ。

 





次回は色々キャラを絡ませようと思います。


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邂逅!クラスメイト!前編


久しぶりの投稿で待たせるのもあれだったので文字数は少なめです。
後半はルーデウス視点となっております。


 自己紹介が終わり、A組教室内

 

「今日は以上です。それでは改めて、皆さん明日からよろしくお願いします」

 

 ロキシーがそう言って教室を出ていく。

 生徒達は各々席を立ち帰ろうとする者も居れば、少し話をしている者もいた。

 

「やっと終わったー! ツトム! 一緒に帰ろ!」

「あ、うん。てか帰るってどこに帰るんだろ…………?」

「なんだかこっちに行けばいい気がするっす」

 

 ツトム達一行は直ぐに帰ろうと、教室から出ようとした。

 だが、そのツトムに声を掛ける者がいた。

 

「なぁあんた、ちょっといいか?」

「あなたは確か…………リムルさん?」

「リムルでいいさ。ここだと何だ、少し場所変えないか?」

 

 水色の髪の少年? 少女? がそう提案する。

 ツトムは少し考えたあと、了承した。

 

「あ、はい。じゃあそういうわけだから2人は先に帰ってて」

「分かったす!」

「じゃあね!」

 

 ──▽▽──

 

「ナオフミ様! 早々にお友達を作らなければ、グループが出来てしまいますよ」

「そんなものは必要ないだろ」

「また貴方は……友達は必要です!」

「だからいらないと…………」

 

「ハジメさんは友達作らないんですか?」

「そんなもん必要ないだろ」

「いやーハジメさんは作らないんじゃなくて作れないんでしょ」

「あ? その耳もいでやろうか?」

「ユエさん聞きました? 実は気に入ってる私の耳をもぐとか言ってますよ」

「ハジメ、め!」

「ーっ、ユエを使うとは…………後で覚えてろよ残念ウサギ」

「乱暴にするならベットの上にしてくださいね!」

「…………」

 

「ナオフミ様! 先ずはあの人に話しかけてみては如何ですか?」

「ハジメさん! あの人なんかハジメさんと気が合いそうですよ」

 

「「誰があんな気難しそうな奴と…………」」

 

 ハジメとナオフミの声が揃う。

 

「「あ?」」

 

 ──▽▽──

 

 俺は今屋上にいる。

 何かよく分からん奴に呼び出されたからだ。

 これからシルフィとエリスとロキシーの4人で下校デートを楽しもうと思っていた所を呼び出されたのだ。

 つまらない用事だったらはっ倒してやる。

 

「それで、俺に何の用ですか?」

「いやいや何でちょっと機嫌悪いの? 

 確かに嫁と水入らずの時間を邪魔したのは悪かったけどさ、昔の友達との感動の再会なんだぜ? もっとこうィェーィとかないわけ?」

 

 こいつは何を言っているのだ。

 俺にこんなテンション高いアホな友達がいるわけないだろ。

 あ、バーディガーディがいたか…………

 

「昔の友達? 俺はお前なんて知らないけど…………」

「え、マジで…………?」

「マジで」

 

 本当になんなのだろうかこの男。

 俺は目の前の頭を抱えている男を見ながら考えた。

 見た目は黒髪黒目、目つきはすごく悪い。オルステッドといい勝負だと思う。いや、流石にそれは言い過ぎか。

 それに何よりも自己紹介の時から思っていたが、こいつの服装…………

 どっからどう見てもジャージだよなぁ。

 

 俺がそう思っていると男は開き直ったように突然肩を組んできた。

 

「まぁ細かいことは良いじゃねぇか、お前が覚えていてもいなくても、俺たちは友達だ。そうだろ?」

「いや、距離の詰め方エグイな」

 

 なんなんだこの男は。

 服装に髪や目の色からぶっちゃけもう分かっている。

 だが、俺は転生してからナナホシ以外に日本人を見たことがない。

 だが、男は俺を知っているという。

 もしかしたら俺が転生した日本人だということも知っているのかもしれない。

 あの教室にはパッと見でも4.5人は日本人らしき人達はいた。

 だがなんだろう、この目の前の男からは他の人達とは違う親しみを感じる。

 まるで、昔に会ったことのあるような…………

 

 俺は単刀直入に聞いてみることにした。

 

「あの、もしかして君、日本人ですか…………?」

「あぁ! お前もだろ? ルーデウス! それとスバルでいいぜ」

 

 やはり、俺が日本人である事も知っているみたいだ。

 

「あ、やっぱり知ってたんですか」

「まぁ、お前から聞いたからな」

「俺から…………? すみません、やっぱりちゃんとスバルの事教えてください。何故俺を知っているのか、何故俺にはその記憶が無いのかを」

「そうだな、俺ってば結構波乱万丈な転移しててさ、ちゃんと1から話すよ。嘘だと思う事もあるかもしれないが聞いてくれるか?」

「はい。聞かせてください」

 

 それからスバルはコンビニ帰りに異世界に転移したこと、さらに、その世界でデートを控えた日にまた違う異世界に転移したこと、その世界でヒトガミから俺と協力するように言われ、オルステッドとの長い戦いを経て何とか最初に転移した世界へと戻り、今回みたいな学校へ転移させられたのも2回目だということを話してくれた。

 

 こいつ、ほんとに波乱万丈な異世界生活送ってるな。

 つまり異世界を渡るのは今回で6回目みたいだ。

 いやほんとに凄いな! 

 

 時々スバルは何故か胸を抑えて苦しそうにしていたが何となく事情は把握した。

 

 詳しくは無職転生コミックス9巻と10巻のおまけに載ってるリゼロとのコラボ小説を読んでみてくれよな! 

 

「何となく分かりました」

「信じてくれるのか?」

「えぇ、そりゃ俺も異世界転生とか体験しちゃってる身だし、知り合いに異世界転移した奴もいるしね」

「ルーデウス…………やっぱりお前は最高だな!」

「おい、抱きつくな! 

 ほんと、距離の詰め方どうなってんだよ!」

 

 距離の詰め方はおかしいが、まぁ、悪い奴ではなさそうだ。

 

「じ〜〜〜」

「うわぁ!?」

 

 え!? 

 何か屋上の扉からめっちゃこっち覗いてるやついるんだけど。

 思わず変な声出しちゃったじゃないか。

 口でじ〜〜とか言ってちゃってるし、

 

「お、カズマじゃねぇか!」

「じ〜〜〜」

「いや、じ〜〜って何だよ。てかなんで隠れてるんだ?」

「いやさ、2人が屋上行くの見えたからつけてきたんだけどさ、2人で何だか感動の再会みたいなのしてたから入るタイミング完全に失っちゃって

 知り合いの知り合いって1番気まずいじゃん」

「いや、それはすっごい分かるけど!」

 

 どうやらこの男はカズマというらしい。

 服装からして、俺と似たような世界からきた冒険者か? 

 

「わるいわるい、紹介するぜ、こいつはカズマ。

 1回目の学園生活で一緒だったんだよ。ちなみにこいつも異世界転生だ」

「どうも佐藤カズマです」

「これはご丁寧にどうも、ルーデウスグレイラットです」

「いやいや、何でそんな余所行きの挨拶!? 

 もっとこう、何かないの!?」

 

 そう言われても困る。

 知り合いの知り合いが1番気まずいというのはカズマと同意見だ。

 それにしても異世界転生か…………俺とは違って死んだ姿のまま転生したのか。

 

「さっきの話は聞いてたけど、ルーデウスさんも異世界転生なんだよな? 

 それも赤子からなんて、相当ハードだったんじゃないか?」

 

「ルーデウスって呼び捨てでいいよ。

 確かに大変だったけど、一応あの世界ではトップレベルに魔力が多いっていうチート特典もあったから何とかだったよ」

 

「チート能力いいなぁ、俺なんかさ、転生特典は回復魔法は1級品だが頭の悪い駄女神が一緒についてきただけで、能力値は平凡で、初級職の冒険者になって、今はマシになったけど最初なんか土木作業のバイトで日銭稼いで馬小屋生活だよ?」

 

 カズマも相当ハードな異世界生活を送ってきたようだ。

 その声にこもる熱量から本気度が伺える。

 

「俺もさぁ、異世界行っても何のチート能力も無くてよぉ持ってたのはこのジャージにコンポタスナックと充電の少ない携帯電話だけ。人の腸大好きサイコパス女にお腹引き裂かれるわ、魔獣にガブガブされるわで災難だったぜ」

 

「俺なんか仲間の魔法に巻き込まれて何回死んだことか。その度にアクアに蘇らせてもらったけど、何度も何度も冒険者なんか止めて引きこもりたいと思ったさ」

 

「俺も1回だけだけど死んだことあるよ。

 俺の場合目つきの悪い奴にであいがしらで腹貫かれたんだよ」

 

「オルステッドだな! あいつの目つきの悪さは俺を超えてると言っても過言じゃない!」

 

「いや、スバルより目つきの悪いって一体どんな奴なんだ……ほんとに人間かそいつ?」

 

「おい、どうゆう意味だコラ」

 

「「あはははは」」

 

 俺たちは3人はよく晴れた屋上の上でひとしきり話をした。

 2人はどうやら相当なオタクらしい。

 似た境遇の者同士で、前世のネタもこんなに通じるのは久しぶりだ。

 ナナホシ相手だとジェネレーションギャップを感じることがあったからな。

 

 これからの学園生活がどうなるか分からないし、むこうに残してきた母さん達も心配だが、今はこの生活を楽しむとしよう。

 

 

 

 

 

 

 




スバルとルーデウスの絡みは
本文にも記載の通り、無職転生コミックス9巻と10巻をご覧下さい。
ルーデウスとスバルとカズマの3人はどうしても絡ませたかった。


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邂逅!クラスメイト!中編

久々の投稿
ふと小説情報を見たら更新を待ってるとの感想を頂いたので、速攻で書きました。それと誤字が多すぎですね。すみません気をつけます。



「つまり、リムルさんも日本人ってことですか…………?」

「リムルでいいよ、あぁその通りだ。今じゃこんな姿だけどな」

 

 そう言ってリムルは人型からスライムへと変身する。

 

「おぉ、その姿になってる時って手足の感覚とかどうなってるんですか?」

「動く時は歩くみたいな感覚で動けるし、手はこんな感じで液体の部分を動かせるぞ」

 

 リムルは器用にその水色の体を動かしながらツトムに説明した。

 

「なぁ、ずっと聞きたかったんだが、あんた、ライブダンジョンってゲームやったことないか?」

「!? ……知ってるんですか?」

「あぁ、廃プレイとはいかないまでも昔に結構やり込んでた時期あってな」

「ほんとですか!? いや、ライブダンジョンって結構古いゲームじゃないですか、だからリアルでやってる人と会うの初めてなんですよ。僕オフ会とか行かなかったんで」

 

 突然早口で捲し立てるツトムにリムルは暖かな視線を送りながら言った。

 

「白魔道士でツトムってもしかしてあのトップランカーのツトムだったり?」

「僕のことも知ってるんですか!?」

「あぁ、てゆうか何度かパーティ組んだことあるしな。サトルって名前で双剣士使ってたんだが覚えてないか?」

 

 リムルが自分の名を告げた途端、ツトムは興奮したように目を見開いた。

 

「双剣士のサトルって、かなりのビックネームじゃないですか! 

 初めて冬将軍を討伐したパーティの1人で、発売から半年程経っていた当時、五大アタッカーてして数えられてたあのサトルですか!」

「あぁ、恥ずかしいが、そのサトルだな」

「うわぁー、こんな所で伝説のプレイヤーに会えるなんて感激です!」

 

 サトルはツトムが有名になる前に活躍しており、ツトムがその動きを何度も参考にした程の元トッププレイヤーなのだ。

 思わぬ人物との邂逅にツトムのテンションははち切れていた。

 

 尊敬の念を込めた目を送ってくるツトムにリムルは恥ずかしそうに頬を掻きながら苦笑いした。

 

「まぁ、俺は社会人になって、その後ゲームなんてする余裕がなくなったから引退しちまったけどな」

「そうだったんですか…………」

「ま、それでもある程度やり込んだから分かるぞ、ツトムのその装備とかハンナさんやエイミーさんの自己紹介を聞くあたり、ツトムはゲームの世界に飛ばされたんだろ?」

「そこまで見抜いていたんですか。凄いですね」

 

(ま、ホントはツトムの事も俺の記憶を読み込んでいたシエルが教えてくれるまで気づかなかったんだけどな。シエル様々だぜ!)

 

「あの、サトルさんは……」

「だから、ここではリムルって呼び捨てでいいよ」

「すみません。リムルは異世界に転生して日本に帰りたいって思いますか?」

 

 ツトムが切り出したのはそんな突拍子もないことだった。

 その問いに対し、リムルは少し考えてからゆっくりと答えた。

 

「んー、そりゃ思うさ。向こうに家族も残してきてるし、可愛い後輩の相談も聞いてる途中だしな。

 ただ…………もう、俺は向こうの日本では死んでるからな。その辺は既に折り合いをつけてるよ。

 それに、転生してから築いてきた物が大きすぎる。最初はへなちょこなスライムだった。だけど、今は慕ってくれてる者も多い一国の王様だぜ。簡単にバイバイってできる程背負ってるものは軽くないんだ。まぁ俺はそんな訳だが、ツトムは帰りたくないのか?」

 

「僕は…………分かりません。

 正直に言うと、今の生活は凄く楽しいんです。

 あの世界はまるでライブダンジョン最盛期のように賑わってて、大変な事もあるけど僕にとってはまるで夢のような世界なんです。

 ですが、それ以上に怖いんです。目が覚めたら全てが夢で元の世界に戻されるんじゃないかって…………」

 

 ツトムの言葉をリムルは黙って聞いていた。

 

「僕はどうすればいいんでしょうか?」

 

 リムルは考えた。ここで自分が安易に答えるのは駄目な気がしたからだ。

 リムルにとっては日本での人生は1度死んでいる為、そこで終わっている。だが、ツトムの場合、転生ではなく、召喚、自分の容姿もそのまま引き継いでいるのだろう。それなら怖くて当然なのだ。

 

 そこでリムルはある事を思い出した。

 

「正直に言うと、俺にはツトムの気持ちを完璧に理解することはできない。だから俺はその質問に答えることができない」

「そうですか…………」

 

「だが、俺以外ならどうだ? ツトムも気づいてるだろうが、俺達のクラスには俺達以外にも日本人何人かいただろ? そいつらに聞いてみたらいい」

 

 リムルのその提案にツトムはなるほどといった顔を浮かべた。

 確かにA組には異世界人が多い、カズマ、スバル、ルーデウス、尚文、ハジメ、夜霧、知千香、シド、日色

 この内6人が異世界召喚組だ。この人達に聞けばツトムが求めている答えも聞けるかもしれない。

 

「ありがとうございますリムル」

「いいってことよ。じゃ、俺はそろそろ帰るわ。

 この学園生活もいつまで続くか分からないからな。ま、これなら仲良くしようぜ」

「はい!」

 

 リムルとツトムはお互いにサムズアップし合い、それぞれ帰っていった。

 

 ──▽▽──

 

 ──ドガーン! 

 ──バゴーン! 

 

「ちょっとちょっとちょっと! 待ってくださいって!」

「お、お前ら、やりすぎだ!」

 

 学校から遠く離れた荒野、最初は平だった地面も既に幾つものクレーターができている。

 その原因となっているのは空中に浮かんでいる2つの人影だった。

 

 ──時は3時間前へと遡る──

 

「なぁ、あんた」

「ん、確か貴様はアレルといったか?」

 

 自己紹介が終わり、生徒がそれぞれ教室から去っていった頃、アレルがアノスを呼び止めていた。

 

「あぁ、あんた魔王なんだろ?」

「まぁ、そうだな」

 

「俺と戦ってくれ」

 

 教室にそんな一言が響いた。

 

「ちょっと待てアレル! 何を言っている!」

「そうですよ! なんでこんな1番危なそうな人に戦いを挑んでんですか!?」

 

 ライナとリリアが猛烈に止めに入るが、既にアレルの耳には聞こえていなかった。

 

「何故俺に戦いを挑む?」

「挑む理由か…………しいて言うなら強くなる為だな」

「フハハハハハ! 強くなる為だけに俺と戦おうとは、そんな奴神話の時代にはいなかったな。いいぞ面白い、戦ってやろう」

「あぁ、ありがとう。さて、どこでやろうか」

 

 既にやる気満々の2人、その間に1人の少女が割って入った。

 

「アノス…………学園生活のきまり…………暴力禁止」

「あぁ、そうだったな。なら止めておこう」

「おいちょっと待ってくれ。暴力禁止とは言っても、振るわれた側が訴訟を起こさなければ、問題ないんじゃないか?」

「ふむ、確かに一理あるな。それならなるべく遠くでやることにしよう。

転移(ガトム)】」

 

 アノスがそう唱えると、一同の見ている景色が一瞬で移り変わった。

 見渡す限りの荒野、どこかは分からないが、周囲には全く人の気配がしなかった。

 

「おぉ、凄いな転移魔法か。後で教えてくれ」

「別に構わんぞ」

「それじゃあ始めるか」

「武器は剣だけか?」

「魔法も使える」

「なるほど、勝負は片方が死ぬまででいいな?」

「「はぁ!?」」

「あぁ」

「それではよーいドンだ。獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)

 

 アノスは手始めに自身の得意魔法である獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)を同時に7つ放った。

 

「!」

 

 アレルはそれに対して、〈神足通〉で高速回避しながらアノスの背後へ周り込み、同時に10発の〈飛刃〉を放った。

 

「ほう、今のを躱すか、だが少し攻撃力が足りないんじゃないか?」

 

 アノスは飛んでくる〈飛刃〉を全て手で叩き落とした。

 

「アレルの〈飛刃〉をまるで羽虫のように…………」

「あんなの、本物の化け物じゃないですか!?」

「はっはっは、酷い言い様だな……!」

 

 アレルはアノスが笑っている隙を逃さず、〈神足通〉で一瞬で距離を詰めた。

 単純な遠距離火力ならアノスに分があると判断したからだ。

 

 だが、アノスはアレルの渾身の一振を片手の3つ指で摘んで止めた。

 

「な!? 神話級の魔物にも傷を付けるほどのアレルの剣を指三本で止めた!?」

 

 途端、アレルの腕が不自然に膨張を始めた。

 

「ほう、中々良い筋肉をしているな。指三本では、キツそうだ」

 

 アノスは今度はしっかりと刀身を握るようにして持ち、その剣を抑えた。

 

「〈神憑り〉、〈身体強化〉×5」

 

 アレルはアノスに刀を握られた状態で、複数の身体強化を同時に掛けた。その圧倒的な力は遂にアノスの手を超え、アノスの右腕を切断した。

 

 アノスの腕が宙を舞う。

 

「はっはっは、まさか俺の腕を切断できるとは思わなかったぞ

 これはもう少し本気でやった方が良さそうだな。【治癒(エント)】」

「な!? 腕が…………くっついて!?」

 

 切断された筈のアノスの腕がまるで意志を持っているかのように、アノスの基へと帰っていき、アノスが使った治癒魔法によってくっついた。

 

「来い、ヴェヌズドノア」

「なんですかあれは…………」

「なんだ…………あれは…………」

 

 突如としてアノスの足元から禍々しい形の剣が現れた。

 全ての理を無に返す理滅剣ヴェヌズドノア。それが放つ魔力はライナやリリスを恐怖させるには十分過ぎた。

 

「アレルさん! 逃げてください!」

 

 リリアの必死の叫びはアレルには届かなかった。

 

(今ある6つの人格を幹部にし、さらに人格を10等分にする。

 そして出来上がった60の人格で同時にスキルと魔法を使う)

 

「〈神憑り〉、〈身体強化魔法〉×59」

 

「神足通!」

 

 ──ドガーン! 

 

 最強と最強の衝突。

 それが発生させた衝撃波はライナやリリアだけでなく、ミーシャをも吹き飛ばした」

 

「「きゃあー!」」

「…………」

 

 ──ドガーン! 

 ──バゴーン! 

 

「ちょっとちょっとちょっと! 待ってくださいって!」

「お、お前らやりすぎだ!」

 

 そんな2人の声ももはや、衝撃波にかき消され、アノスとアレルに届くことはなかった。

 

 ──ドガーン! 

 ──バゴーン! 

 

「フハハハハハ、喜べ、ここまで楽しませてくれたのはレイ以来だぞ」

「レイが誰かは知らんが、そいつとも是非手合わせ願いたい」

「まぁ、あいつなら喜んで受けそうな気がするがな。隣の教室に居たみたいだから今度頼むといい」

「そうさせてもらう」

 

 ──ドガーン! 

 ──バゴーン! 

 ──ドガーン! 

 ──ドガーン! 

 ──バゴーン! 

 ──ドガース! 

 ──ドガーン! 

 ──バゴーン! 

 

 2人は空中で剣をぶつけ合いながらも、余裕の表情で会話していた。

 その攻防はいつまで続いただろうか、長いぶつかり合いもいずれ終わりは来る。

 

「ひとつ聞くが、お前は勇者か? それとも剣神か?」

「いや、母さんが剣神だが、俺はただの無職だ」

「そうか」

 

 途端、アレルの剣が砕け散った。

 

 アレルの剣はアレルが魔法で拵え、さらにずっと魔力を纏う事で強化してきたのだが、流石に理滅剣と何度も打ち合うには役不足であった。

 

「あ」

「中々に楽しめた。ではさらばだ」

 

 アレルの体はアノスの剣によって真っ二つにされた。

 

「「え?」」

 

 そのままアレルの体は空中から自由落下し、地面へと叩きつけられた。

 

 すぐさまライナとリリアがアレルの死体へと近寄って行く。

 

「ア、アレル…………嘘…………だろ…………?」

「アレルさん…………? まさか、アレルさんが負ける筈…………」

「少し離れていろ。〈蘇生(インガル)〉」

 

 アレルの死体が光に包まれる。やがて、光が晴れると

 真っ二つになったはずのアレルの体は五体満足で繋がっており、アレル本人も何食わぬ顔で顔でこちらを見ていた。

 

「アレル!」

「アレルさん!」

 

 すぐさまにライナとリリアの2人はアレルに抱きついた。

 

「あぁ、俺は負けたのか」

「あぁ」

「母さんとライナ以外に負けたのはこれが初めてだな」

「いや、そこに私を並べないで欲しいのだが…………」

「いやだって負けたのは事実だろう」

「いや、そうだが…………そんな事よりも! お前が死んだ時は心配したんだぞ!」

 

 それからアレルはライナとリリアに正座させられ、小一時間程お説教を食らった。

 そしてその間に、先程まで自分と互角に打ち合っていたアレルを説教するライナを見てアノスがほぅ、とライナに関心を向けていた。

 

「さて、そろそろ戻るとしよう。〈転移(ガトム)〉」

 

 そして再び景色が移り変わり、教室へと帰ってくる。

 

「それでは、俺たちはそろそろ帰るとしよう」

「…………また明日」

 

 アノスとミーシャがそう言って教室から出ていった。

 

 

 学園生活1日目。

 スバルとルーデウスとカズマが仲良くなり

 リムルとツトムがゲームの話で盛り上がり

 アノスとアレルが戦っている頃

 クラスメイト同士の邂逅は他にも行われているのだった。

 




感想と誤字報告くれた人ありがとう!



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邂逅!クラスメイト!後編

久しぶりの投稿です。
やっぱり感想を頂けるとモチベが上がり書く気になれますね。
なので、バシバシ感想書いてくれると投稿頻度が上がるかも?


「それで奈落から何とか這い上がってきたってわけか…………苦労してるな。お互いに」

「あんたこそ、相当悲惨な目にあったみたいじゃねぇか」

 

「「ほんと、異世界なんてクソ喰らえだな」」

 

 教室から出てすぐにある、階段の踊り場で二人の男が話していた。

 その後ろを暖かな目で見守る人影が3つ。

 

「すごい! すごいですよ! 男の人とあんなに楽しそうに話してるハジメさん初めて見ました!」

「ハジメ……楽しそう……」

「ナオフミ様があれほど楽しそうにしているのを見るのは初めてです!」

 

 いつもぶっきらぼうで人間不信のハジメと尚文だったが、お互いの体験を話し合っている内に意気投合していた。

 

 今もそれぞれの世界にいたクズ達の話で盛り上がっている。

 

「マジかよ、その王様と王女ほんとにクソだな」

「あぁ、それに俺以外の勇者はどいつもこいつもゲーム気分ときたもんだ」

「俺の世界の勇者様(笑)もダメダメだったな。俺が世界を救うとか掲げながらいざ敵を前にして殺すの躊躇ってやがった」

「そもそも、平和ボケした日本人達を呼び出して無理やり戦わせようとする異世界の王族が気に食わないんだ」

「それは確かに言えてるな」

 

 2人の話を離れて聞いていた3人はその内容の酷さに呆れ顔を浮かべた。

 

「あの二人他人の悪口で盛り上がってますね……」

「ま、まぁ、尚文様らしいといえばらしいのですが……」

「ハジメ……後でおしおき……」

 

 ユエのおしおきという単語にラフタリアが反応を示した。

 

「そういえば、ユエさんはハジメ様のこ、恋人と仰ってましたが、き、キスはもうしたのでしょうか……」

「ん……した……」

「へぁ!? 私声に出してましたか!?」

「自覚なかったんですか? 思いっきり声に出てましたよ」

 

 心の中で言ったと思っていたラフタリアは恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にした。

 

「ラフタリアさんは尚文さんとどこまでヤってるんですか?」

「い、いえ、私は特に……」

「え!? 絶対2人はできてると思ってました!」

「シア……はしたない……」

「す、すみません。でもユエさんもそう思いませんか?」

「ん……思う……」

「ユエさんまで!? わ、私と尚文様はまだそんな関係じゃ……」

 

 ラフタリアはあわあわしながら必死に弁明しようとするが、

 シアがニヤニヤしながらラフタリアに問い詰める。

 

「まだ、ですか? やっぱりラフタリアさんは尚文さんの事を……」

「もう、シアさん! いい加減にしてください!」

「シア……もうやめる……」

「はい。ごめんなさいです」

 

 いつも元気いっぱいに立っているシアのうさ耳がぺこりと垂れ下がった。

 その悲しそうな仕草を見て流石に申し訳なく思ったのか、ラフタリアは自分について話し始めた。

 

「私と尚文様が出会ったのは私が心も体も10歳の時でした。

 そこからまだ1年も経過していないんです」

「……?」

「え? でも、ラフタリアさんはどう見ても私と同い年位じゃないですか?」

「私達の世界の獣人は幼い頃にレベルを一気に上げると体もそれに伴って成長するんです」

「へー、そうなんですねー」

「お2人はあまり驚かれないんですね」

「まぁ、見た目と年齢のギャップがあるのはユエさんで見慣れてますしね」

 

 そう、明らかに12歳くらいのユエも実年齢は300を超えている。

 それに今ここにはいないが、普段一緒に旅をしている着物を着たドMのドラゴンだって年齢は相当いっているだろう。

 だからユエやシアにとってラフタリアが10歳なのも今更なのだ。

 

「まぁ、そんな訳で尚文様は私の事をまだ子供だと思っているみたいで……私の気持ちに気づいてくださらないんです」

「わー、それは大変ですね……まぁ頑張ってくださいよ! 私だって、早くハジメさん公認の愛人になれるよう日々頑張ってますよ!」

 

 シアが胸を張って言った。

 

「ラフタリアにも……そのうち良いことある……」

 

 ユエが柔らかな笑みを浮かべて言った。

 

「シアさん……ユエさん……

 今度はお二人の事も聞かせていただけませんか?」

「ん……分かった……」

「任せてください! 

 先ず私とハジメさんが出会ったのはですね……」

 

 それから3人は楽しく恋バナを始めた。

 特にラフタリアは普段そういった事を話す相手がいなかったので、より一層この時間を楽しんでいたのだった。

 

 ──▽▽──

 

「それでですね、ハジメさんは私の耳をいつもモフモフしてくるくせに、いっつも素直じゃないんです! 捻くれ者なんです!」

「あ……」

「シアさん、そのくらいで……」

 

「おい、誰が捻くれ者だ、このダメ兎が」

「ひゃあ!?」

 

 後ろから気配無く近づいてきたハジメに両耳を鷲掴みされ、シアが悲鳴を上げる。

 

「ラフタリア、この人達と話していたのか?」

「はい!」

「そうか、仲良くなれたのか?」

「はい! とっても!」

「そうか、それは良かったな」

「はい! 尚文様はどうでしたか?」

「まぁ、悪くはなかったな」

「それは良かったです」

 

「二人はまるで息のあった熟練夫婦みたいですね」

 

 シアがハジメに耳を掴まれながら尚文とラフタリアの様子を見てそう感想を漏らした。

 

「夫婦? どっちかと言えば、親子だろ」

 

 それに尚文が即座に否定する。

 それを聞いたシアとユエ、ついでにラフタリアまでもがあきれ顔を浮かべた。

 

「ラフタリアさん、聞いてた通り大変ですね」

「あはは……」

 

 シアにそう言われたラフタリアは苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

 

「ん? ラフタリア、こいつらと何を話してたんだ?」

「秘密です」

(前は聞いた事は正直に話してくれたのに、こいつらに毒されたか?)

 

 尚文はユエとシアを見ながらそんな事を思った。

 

「尚文様、今変な事を考えましたか?」

「気のせいだ」

 

 と、2人がお約束のやり取りをした所で、ハジメがシアの耳を離した。

 シアは少し痛かったのか、自分の耳を涙目になりながら擦っている。

 

「それじゃあ俺らはそろそろ帰るわ。また明日な、尚文」

「あぁ、また明日」

 

 そして彼らはそれぞれの帰る場所へと下校した。

 

 ──▽▽──

 

 時は少し遡る。

 

(まずいまずいまずい。

 友人キャラに出来そうなモブっぽい奴がいない!)

 

 そんな事を考えているのは、教室の窓側真ん中付近に座る、少年、シド・カゲノーだった。

 

(何だよこのクラスは、辺りを見渡せば、ケモ耳、鳥人、エルフ、魔王、スライム、ジャージ、精霊、女神(?)、まるで個性のサラダボウルだ。僕は影の実力者になる為に、モブを演じなくてはならないのに)

 

 そう、彼は影の実力者になる。それを生き甲斐にし、その為だけに生きているのだ。

 そして、その為には学校ではモブを演じなくてはならない。そうなると目立たなそうな奴と友達になり、ひっそりと生きる必要があるのだ。

 

(唯一まともそうなのは、あの制服を着た男女と、カズマって奴だが……

 カズマは駄目だ。あいつはこの世界は2度目みたいな事を言ってるし、開始早々そこそこ目立っている。

 後数日もすれば、クラスの突っ込み役としてのポジションを確立することは間違いない。

 だとすれば、残りの2人だが……)

 

 そして、シドは2人の男女、夜霧と知千香に目を移した。

 

(比較的マシな方だが、あの男の方は関わってはいけない人種だ。何故かは分からないが、僕の中の危険信号がビンビンに告げている。

 それに何やら女の方も油断ならない。だって、なんか明らかに幽霊っぽい奴が後ろにずっと憑いてるし、平安時代くらいの人の顔してるし、今バッチリ目合ってるし。

 いや、ほんとマジでどうしよう……

 ロキシー先生が隣にもクラスがある的な事を言ってたし、七陰のみんなもそこに居たりするのかな?)

 

 そして、シドがこれからの事に頭を抱えていると、ロキシーが今日は解散ということを告げた。

 

(これからの事は一旦家に戻って考えるか……)

 

 シドはそう思い、1人目立たないようにそそくさと教室から立ち去った。

 

 

「主様、ガンマです」

 

 下校途を1人で歩いていると、突然背後から声を掛けられた。

 魔力の質から接近していた者の正体を知っていたシドは冷静に振り返った。

 

「やっぱり君達も来てたんだね。他のみんなは?」

「他の七陰は皆でこの世界の調査を行っております。

 そして、私はアルファ様より、主様からの指示を頂くように申し使っています」

 

 その言葉を聞いたシドは少し悩んだ後、ガンマにとある質問をした。

 

「そう、取り敢えず聞きたいんだけど、B組はどんな感じだったの?」

「では、B組の教室でのことをそのままお伝えいたしますね。

 先ず、担任のロズワールと名乗る道化のメイクを施した男が現れました」

「いきなりから、やばいね……」

「そして、そこからベニマルという人が抗議を始めまして……」

 

 それからシドはガンマからB組の生徒について話を聞いた。

 

(うーん……最悪モブ友が出来るなら隣のクラスでもいいかなって思ったけど、B組のもかなりキャラが濃い人達が多いみたいだ。王族とか2人もいるらしいし、貴族の人もけっこうな数がいるそうだ)

 

「なるほど大体分かった」

「流石です」

「そ、そう? 

 まぁ、取り敢えずこっちでも元の世界に帰る方法を探しとくから、ガンマもアルファ達と一緒にこの世界の調査を任せるよ」

「かしこまりました」

 

 ガンマはそういうと、一瞬にして姿を消した。

 そして、少し遠くの電柱からゴンッと音がして「痛っ!」っと声が聞こえ、シドは少し不安になったが、また、家に向かって歩き出した。

 

「ガンマのドジっ子属性はいつまでも治らないな。

 まぁ、そこが彼女の魅力なのかもしれないけど……

 さて、これからどうしよっかなー」

 

 シドはこれからの生活に不安をひしひしと感じながらも、どうすればクラスでモブとしての立ち位置を確保できるかで頭を回していた。

 

 ──▽▽──

 

「もう、スバルったら、終礼が終わると直ぐどっか行っちゃうんだから」

「でも、何だか今日のスバルは生き生きしてたね」

「そうね、あのルーデウス君の事をきらきらした目で見てたもの」

「あのルーデウスって子凄い魔力だったよ」

「え、そうなの?」

「うん。単純な魔力量だけならボクよりもずっと多そうだったよ」

「そうなんだ。ルーデウスって子供なのに凄いのね」

 

 終礼が終わったあと、スバルがルーデウスと共に屋上へ行ってしまったので、教室に取り残されてしまったエミリアはパックと談笑していた。

 

「そういえば、隣のクラスにラム達はいるのかしら」

「そういえばそうだね、ちょっと見に行ってみようよ」

 

 2人はそう言って廊下へ出て、隣の教室の前まで移動した。

 扉の前の札には1年B組と書かれている。

 

 ──ガラガラ──

 

 エミリアが中に入ろうか迷っていると教室の扉が開いた。

 

「あぁ! エミリアではありませんか!」

「わぁ! めぐみんにダクネス! 貴方達も来てたのね」

「あぁ、久しぶりだなエミリア」

 

 以前の学園生活で同じクラスだっためぐみんとダクネスと再会を果たしたエミリアはB組の教室を覗き込み、レム達を探した。

 

「あ、いた!」

 探していた姿は直ぐに見つかった。

 向こうもこちらに気がついたようで、こちらへと歩いてきた。

 

「エミリア様、ご無事で何よりです」

「ラム達も無事で良かった!」

「にーちゃ! 会いたかったのよ!」

「ボクもだよベティ」

 

 直ぐにパックの姿を確認したベアトリスはパックを抱き寄せ、ここぞとばかりに、毛並みを体験していた。

 

「ところでエミリア様、スバル君は何処ですか?」

「あ、スバルならさっきA組の子を連れて何処か行ったけど」

「そうですか……」

「全く、いっちょ前にレムを悲しませるなんて、バルスが帰ったら足を切り落としましょう」

「姉様、流石にそれは可哀想です。朝まで正座とかにしましょう。

 レムが一日中監視します!」

 

 レム達がそんな会話をしている中、めぐみんが少し挙動不審な動きを始めた。

 

「ん? どうしたのめぐみん?」

「いえ、A組にはカズマ達はいましたか?」

「安心してめぐみん。カズマとアクアならちゃんといたわ」

「それは良かったです」

 

 噂をすれば何とやら、めぐみん達がその話をしているとA組の教室からアクアが出てきたのが見えた。

 

「アクアー!」

「めぐみんじゃない! 聞いてよ! カズマったら終礼が終わって直ぐにどっか行っちゃったのよ!」

「全く、相変わらずマイペースなやつめ。一体どこへ行ったのだ」

「ちゃんとダクネスもいるのね! 良かったわ! 心配したんだから!」

「皆、無事に会えて良かったですね!」

 

 無事合流を果たした、7人と1匹は帰る方向が同じだった事もあり、途中まで談笑をしながら一緒に下校した。

 

 

 明日から始まる学園生活、それに不安を感じる者、楽しみに胸を踊らせる者、様々だ。

 そこで新たな出会いを経て、彼ら彼女らが何を思うのか、それはまだ誰にも分からない。

 




書いてる間に、無職転生のアニメ1クール目が終わっちゃいましたね。
魔大陸編の字幕で言語の違いを表現するのは、洋画を絶対字幕で見る派の自分にはかなり刺さりました。2クール目も楽しみです!


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決定!いいんかい!

お久しぶりです。
続き待ってるとの感想を頂いたので、指が進みました。
今回はアニメ化もされてないマイナー気味な作品のキャラを中心に書いてます。
これを書き始めたのは布教活動の一環でもあるので、是非、読んだことの無い作品があれば読んでみてください。小説家になろうで大体読めるので。


「それでは早速ですが、委員会を決めたいと思います」

 

朝一早々、教卓に立ったロキシー先生がそう言った。

 

「委員会って何すか師匠」

「学校内で決められた役割の事だよ。3種の役割に近いんじゃないかな。いや、この場合はジョブかな?」

「どんなのがあるんすか?」

「普通だと、保健委員とか、風紀委員、飼育委員、とか?」

 

ツトムが指を折りながら挙げていくと、ハンナは興味深そうに聞いていた。

 

「色んなのがあるっすね。師匠は何に入るっすか?」

「保健委員かな。一応僕ヒーラーだし」

「私は飼育委員がいいっすねぇ」

「それはハンナに飼われる子が可哀想だよ」

「ちょっと、どうゆう意味っすか?」

 

ツトムとハンナがそんな軽口を叩いていると、ロキシー先生がつらつらと委員の名前を書き出していった。

 

・委員長 1名

 

・副委員長 2名

 

・飼育委員 4名

 

・風紀委員 3名

 

・給食委員 3名

 

・図書委員 4名

 

・体育委員 3名

 

・保健委員 4名

 

・放送委員 2名

 

「まずは、委員長と副委員長を決めたいと思います。

誰か立候補したい人はいますか?」

 

ロキシー先生がそう言うと、長い青髪の少女が元気良く手を挙げた。

 

「はいはいはーい!今回こそ、私が委員長の座を手に入れてみせるわ!」

 

みんなある程度アクアの性格から察していたのだろう。

誰からも異議は出なかった。

 

「はい、アクアさんの他にはいますか?」

 

誰も手を挙げないだろうと思った矢先、2つの手が上がった。

 

1人は銀髪の美少女、もう1人は白い服を着たイケメンだった。

 

「わ、わたしも立候補、します……みんなが仲良くできるクラスにしたいから」

「俺も立候補しよう」

 

手を挙げた2人に必然的に視線が集まった。

 

「だったら俺は!今回もエミリアたんを委員長にしてみせる!」

「ま、前回はくじ引きだったからスバルは何の役にも立ってなかったけどな」

 

立ち上がったスバルにすぐ様カズマがツッコミを入れる。

 

「それで、今回の選出方法は何なんだロキシー先生」

「くじ引きですよ」

「くじ引きはいやぁぁあ!

だって私勝てないじゃない!私の運はとてつもなく低いのよ!選抜方法の変更を要求するわ!」

「おいアクア、ロキシー先生が困ってるだろ、その辺にしとけって」

「あ、そうだわ!」

 

アクアが何かを思いついたように言った。

 

何を思いついたのかは分からないが、どうせろくでもない事なのだろうと嫌な予感に胸をざわつかせるカズマだった。

 

 

 

委員長立候補者は3名。

アクア、エミリア、アノス。

 

そして今!この3名による、委員長を掛けた、壮絶なバトルが始まろうとしていた!

 

「って、なんか大層なナレーションだけど、くじ引きだよな!?」

 

そんなカズマの突っ込みも束の間

 

「ブレッシング、ブレッシング、ブレッシング、ブレッシング!」

「うわ、ずりぃ。魔法で運上げてやがる」

「いい?カズマ、運も実力のうちって言葉があるじゃない?つまり実力も運のうちなのよ!」

「そんなの、屁理屈じゃねぇか!」

 

そしてアクアは自信満々に、エミリアは不安そうに、

アノスは余裕含みの顔でくじ引きを引いたーー

 

 

 

委員長 アノス

 

副委員長 エミリア

     アクア

 

「このクラスの委員長になったアノス・ヴォルディゴードだ。

俺が委員長をやるからには半端は許さん。覚悟しておけ」

 

 

「どぉしてよぉぉぉおお!」

「おいアクア、丁寧な前フリだったな(笑)」

 

ズルまでしたというのに、見事に落選したアクアが地面に転がり駄々を捏ねている。

 

「それでは、もう面倒なので他の委員も全てくじ引きにしてしまいましょう」

 

ロキシー先生のその言葉により、全員くじを引くことになった。

 

・委員長 ・アノス

 

・副委員長 ・エミリア・アクア

 

・飼育委員 ・カズマ ・ハンナ ・シア ・リリア

 

・風紀委員 ・ラフタリア ・ルーデウス ・ライナ

 

・給食委員 ・リムル・アノールド・ユエ・アレル

 

・図書委員 ・ヒイロ・シルフィ・夜霧・シド

 

・体育委員 ・エリス・ハジメ・知千香

 

・保健委員 ・ツトム・ミーシャ・ミュア・ナオフミ

 

・放送委員 ・エイミー・スバル

 

 

「委員会はこのメンバーで決定にしたいと思います」

 

ロキシー先生のその言葉を聞いたみんなの反応はバラバラだった。

 

「よし、図書委員を引けたぞ」

「嬉しそうだなヒイロ、俺は給食委員か・・・、えっと同じ委員の奴はっと・・・・・・」

 

アノールドが辺りを見回すとユエと目があった。

そしてユエの幼いながらも妖艶な雰囲気持つ彼女に思わず赤面した。

 

「おいロリコン、場所を弁えろ」

「べべべ別に俺はロリコンじゃねぇって、言ってるだろ!」

「おじさん・・・・・・」

「おいミュア、そんな顔しないでくれよぉぉお」

 

 

ーー▽▽ーー

 

「ここが飼育小屋っすか〜」

 

ハンナ、カズマ、リリア、シアの飼育委員4人は飼育小屋へとやって来た。

 

「結構広いみたいですね」

「前の時はもっとちっちゃかったんだけどな」

「あ、そういえばカズマさんは前に来たことあるんでしたっけ」

 

4人がそんな話をしながら飼育小屋に入って行くと

 

「おいそこの人間、我が主を見なかったか?」

「うぉっ!びっくりしたぁ!」

 

突然何者かに話しかけられ、カズマが驚き声を上げた。

 

「って、狼!?しかもでっかっ!」

「下がってくださいカズマさん!」

 

カズマが声の主を確認すべく、後ろを振り返ると、額に角を生やした巨大な狼がそこにはいた。

すぐさま戦闘慣れしているシアとリリアが、臨戦態勢を取る。

 

「そう警戒しないでくれないか?我は主を探しているだけなのだ」

「主?その人はどんな人なんすか?」

「ちょ、ハンナさん危ないですよ!」

「大丈夫っす。向こうに敵意はないみたいっすよ」

 

ハンナが前に出て、未だに臨戦態勢のみんなを宥める。

 

「我が主、リムル様は人ではない。

確かに人型の姿をしている事も多いがあの方はスライムだ」

「リムル・・・・・・それにスライムって・・・・・・あの人の事じゃないっすか?」

「知っているのか!?」

「その人なら私達のクラスメイトっすよ。多分今、教室にいるんじゃないっすかね」

「そうか、感謝する。我が名はランガという。お主の名は?」

「ハンナっす」

「そうかハンナ、ではまた!」

「いってらっしゃいっすー」

 

そう言ってランガは飼育小屋から飛び出していった。

ハンナが3人に目を移すとみんな驚いた顔をしてハンナを見つめていた。

 

「みんなどうしたっすか?」

「ハンナさん・・・・・・凄いですね」

「そうっすか?」

「誰だってあんな大っきい狼が見たら多少なりともビビりますって!」

「まぁ、私は前にもあれくらい大きくて友好的な狼を見たことあるっすから」

 

ハンナがそんな事言っていると飼育小屋の隅から何やら別の話し声が聞こえてきた。

 

「へぇー、ミカヅキちゃんはいいご主人を持ったんだね」

「クイックイックイッッ!」

「今度は何ですか?鳥・・・・・・?」

 

リリアが視線を向けると2匹の鳥のような生物が会話をしていた。

 

「チョ〇ボじゃねぇか!?」

「むぅ、フィーロ達はチョコ〇なんてヘンテコな名前じゃないもん!」

「クイックイッ!」

「ほら、ミカヅキちゃんも「そうだよ!ミカヅキたちはそんな名前じゃないよ」って言ってるよ!」

 

2匹の鳥がこちらに向かって猛抗議してくる。

しかも良く見たら片方の鳥はなんというか、凄く大きかった。

 

「わぁ、フィーロちゃん、大きいっすねぇ」

「フィーロ、でぶじゃないもん」

「まん丸で可愛らしいっすよ」

「えへへー、そうかなー」

「クイックイックイッッ!」

「んー?もちろんミカヅキちゃんも可愛いっすよ」

「クイッ〜!」

 

同じ鳥どうし、通じ合うものがあるのか、ハンナは直ぐに2匹と打ち解けていた。

 

「ねぇ、ご主人様知らない?」

「ご主人様っすか?」

「うん。すっごく優しくていい人なの!」

「それだけだとちょっと分かんないっすよ」

 

フィーロのその言葉にハンナが困った顔を浮かべる。

口を開いたのはカズマだった。

 

「フィーロのご主人様って言ったらあの人だろ?」

「知ってるの!?」

「あぁ、ナオフミの事だよな?」

「そう!ご主人様!」

 

2回目なのでフィーロの事も知っていたカズマが尚文の事を言い当てると、なにも知らないハンナ達は意外そうな表情を浮かべた。

 

「ナオフミってあの怖そうな人っすよね」

「ハジメさんと仲良くしてた人ですね」

「意外とあの人根は優しい人なんですね」

「うん!ご主人様はすっごく優しいんだよ!」

 

そして今度はミカヅキが鳴き声を上げた。

 

「クイックイックイッー!」

「ん?どうしたっすかミカヅキちゃん」

「えーと、ミカヅキちゃんはねー「ミカヅキのご主人の事は何かしらないの?」って言ってるよ」

「カズマは知らないっすか?」

「いや、ミカヅキは初めて見るから知らないぞ」

 

その言葉にミカヅキがションボリしたように首を下げる。

 

「ねぇ、ゼル君は何か知らない?」

「ゼル君?」

 

突然何かに話しかけ始めたフィーロに全員の視線が向いた。

すると、フィーロの背中の羽毛がモゾモゾと動き出し、中からひょっこりと小さなヒヨコが現れた。

 

「ゼル帝!?お前こんな所にいたのかよ」

「カズマ何か知ってるんすか?」

「あぁ、あいつはゼル帝。アクアが飼ってるヒヨコだよ」

 

カズマがゼル帝について話していると、何やらゼル帝がフィーロに向かってピヨピヨと話しているのが見えた。

 

「ゼル君も知らないみたい。ミカヅキちゃん、そのご主人ってどんな人なの?」

「クイックイックイッ!」

「「赤いローブを着て眼鏡を掛けた黒髪黒目の男の人」って言ってるよ」

「あー!あの人じゃないですか?」

「あー、確かヒイロさんでしたっけ?」

「クイッ!クイッ!」

「「その人だよ!」だって」

「大丈夫、ナオフミもヒイロも俺達のクラスメイトだぞ」

「そうなの!?良かったー!」

「クイッ!」

 

フィーロに続き、ミカヅキも嬉しそうに鳴き声を上げる。

 

「何だかこれから楽しくなりそうっすね」

「そうですね。これから4人で頑張っていきましょう」

「カズマさん!この学校に詳しい貴方を頼りにしてますよ」

 

ハンナとリリアとシアが楽しそうな鳥達を見ながらそんなことを言う。

 

(あれ?もしかして俺モテ期きてる?

きてるんじゃない?

ハンナもリリアもシアもみんなアホっぽいけど、全員美少女だよなぁ。

これからこの子達3人とハーレム学園生活始まっちゃうんじゃ・・・・・・)

 

「あ!ハジメさーん!」

「師匠〜!」

「アレルさーん!」

 

3人は外に知り合いを見つけると、一目散に飼育小屋から飛び出ていった。

 

「・・・・・・・・・・・・チクショォオ!」

「クイッ〜」

 

カズマの思いも束の間、飼育小屋には独り身男の叫びと鳥の欠伸が響き渡った。

 

ーー▽▽ーー

 

ここは図書室。

A組の図書委員に選ばれた4人はある程度仕事をこなした後、休憩という名目で特に何をするでもなく、ただそれぞれが1人で本を読んでいた。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「zzz」

 

そこに会話は一切無く、3人はただひたすらに自分の知識欲を満たしている。

その空間に1人の少女が扉を開けて入ってきた。

 

「おい、ちょっといいかしら」

「・・・・・・」

「無視するんじゃないかしら!」

「何だガキ」

「誰がガキかしら!こう見えてお前よりもずっと長いこと生きてるのよ」

「それでも見た目がガキならガキはガキだろ」

 

図書室に入ってきたB組のベアトリス、彼女と言い争っているのはヒイロだ。

 

「ガキガキ五月蝿いのよ人間」

「・・・・・・ほう、精霊なのか」

「っ、どうして分かったのかしら」

「それを教える義理はないな」

 

実際は『覗』の文字魔法でステータスを覗き見たのだが、

ヒイロが異世界人を鑑定しても見れるのは名前と種族だけだった。

 

「それで、何しにきた」

「本を借りに来ただけなのよ。ここの本を持ち出すには図書委員の許可がいるかしら」

「そうか、おいコミュ障、お前がやっておけ」

「は、はぃ」

 

ヒイロにコミュ障と呼ばれる少年、シドは慌ただしくベアトリスから本を受け取り、手続きを始めた。

 

「ちょっと、ダメだよヒイロ君。

シド君をパシリみたいに使っちゃ」

「暇そうな奴にやらせただけだ」

「ヒイロ君も暇だったでしょ」

「俺は本を読んでいた」

「シド君も読んでたよ」

「あいつは本を読む振りをしていただけだ。その証拠に最初のページから全く進んでなかった」

「え、そうなの?」

「す、少し考え事をしてたんですよ」

 

そう述べたシドだが、実際は本を読む振りをしながら魔力操作の訓練にひたすらに勤しんでいたのだった。

 

「そんなのはどうでもいいかしら。さっさとするのよ」

「は、はいぃ」

 

どうやら、シドはこの世界ではコミュ障のボッチキャラを目指すようだ。

そして、ベアトリスはシドから本を受け取ると静かに図書室から出ていった。

 

「さて、そろそろこの本の山を片付けるか・・・・・・」

 

ヒイロはそう言って受付の横に置いてある本の山を見た。

今日の図書委員の仕事は貸出の手続きとこの本の山を元の位置に戻すことだった。

 

「そうだね、そろそろ休憩も終わろうかな」

「zzz」

「夜霧君はこの騒がしさでも相変わらず気持ち良さそうに寝てるね」

 

シルフィが机に突っ伏している夜霧に目を向けて言った。

実は今日中

 

「そいつにも仕事をさせるぞ。起こしてやる」

 

ヒイロはそう言って空中の『起』の文字を書き、夜霧に向かって飛ばした。

 

(漢字を書いて飛ばした?魔法で書いた文字の現象を引き起こすとかそんな感じかな?透明になったり空も飛べるのかな、いいなぁ僕の世界は魔力はあっても魔法はないからなぁ)

 

シドがヒイロの魔法について冷静に分析していると

ヒイロの放った文字は夜霧に当たる前に霧散して消えてしまった。

 

「な!?」

 

今までに見た事のない現象にヒイロが驚いていると、

ムクリと夜霧が起き上がった。

 

「どうしたの?今魔法か何か撃ってきたよね?もう下校時間?」

「いや違うが、今お前何したんだ?」

「ん?あぁ、俺ってさ任意のものを即死させれるんだよね」

 

突然訳の分からない事を言い出した夜霧に3人は訝しげな視線を向ける。

 

「は?何だそれ、ならお前が今やったのは何なんだ」

「ん?ただ魔法を殺しただけだけど」

「意味が分からん。まぁいい、お前も図書委員なら働けよ」

「ま、仕方ないか・・・・・・」

 

そのヒイロの言葉に夜霧はめんどくさそうな顔を浮かべるも、素直に従った。

 

「それじゃあ終わったら勝手に帰ってていいぞ」

「え?ヒイロ君はどうするの?」

「俺は暫くこの図書室に引きこもるつもりなんでな」

「ヒイロ君って知識欲旺盛だよね・・・・・・ってそうじゃなくて、下校時刻は守らないとダメだよ。学校側から何のペナルティがあるか分からないからね」

「確かに、それは一理あるか・・・・・・なら100冊程持っていこう」

「ひゃっ、100冊!?す、凄いね・・・・・・」

 

常識外れなことばかり言うヒイロに呆れたのか、シルフィもシドも夜霧もこれ以上ツッコむことは無かった。

 

その後、本を直し終えた4人はそれぞれ帰宅した。

これは余談なのだが、1人で持ちきれないと判断したヒイロはアノールドを魔法で呼び出し、本100冊を彼に持って帰らせたのだった。

 

「クイッー!」

「うお、ヨダレ鳥、お前も来てたのか」

「クイックイックイッ!」

「あぁ、その姿じゃ喋れないんだったな」

 

ヒイロは空中に『擬人化』の文字を書くと、ミカヅキに向かって放つ。

すると、鳥の姿だったミカヅキは瞬く間に小さな女の子へと変貌とげた。

 

「ごしゅじん!ほんとにいたんだね!」

「?、どうゆう事だ?」

「えっとね、カズマとハンナとシアとリリアがごしゅじんと同じクラスだよって教えてくれたの」

「カズマ・・・・・・?あいつか」

「そうか、それは良かったな」

「うん!それでねそれでね、ミカヅキにお友達ができたんだよ!

フィーロちゃんっていうんだけど・・・・・・あれ?どっか行っちゃった・・・・・・」

 

ミカヅキが周りを見渡してもあの大きな鳥は見つからず、いたのは緑の服を着た目つきの悪い男とタヌキの耳と尻尾を生やした獣人の少女、そして、天使のように羽が生えた可愛らしい女の子だけだった。

 

「どこいっちゃったのかなー?」

「お前の妄想なんじゃないのか?」

「ちがうもん!」

 

本当にいたと言い張るミカヅキを無視してヒイロは帰路へと足を進め始めた。

 

「おいヒイロ!てめぇ少しくらい手伝いやがれ」

 

ヒイロに本100冊を持たされているアノールドが吠えた。

 

「黙れ下僕。お前、俺にどれだけ借りがあるか忘れたのか?」

「クソッ!事実なだけに反論しずれぇぜ」

「おじさん、辛いなら私も持つよ?」

「いやいや、こんなモン軽い軽い!ミュアの手なんていらねぇよ」

 

そんな事をにやけ顔で言うアノールドにヒイロは短く

 

「ロリコン」

 

と言った。

 

「てめぇヒイロ!後で覚えてやがれよ!」

 

こうして、また1日が終わる。

 




ぶっちゃけ即死チートは読んだの凄い昔なので、夜霧君がこんな感じだったかはあまり自信がありません。
ちなみに自分が思うA組の主人公達の強さランキングは
夜霧>アノス≧リムル>アレル≧シド>ヒイロ≧ハジメ≧ルーデウス>尚文>カズマ>ツトム>スバル
位だと思ってます。あくまでタイマンの一騎討ちとして、スバルは死に戻り無し、尚文は憤怒の盾解放直後、ハジメはティオを仲間に加えた時くらいの設定、なのでこんなもんかと。


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激闘!体育の時間!

お久しぶりです。
異世界主人公達を集めたらどうしても戦わせたくなるのが、男のサガだとおもいます。思います。


「ちょっと!本気を出しなさいよ!」

「じゅ、十分全力ですよぉ……」

 

目の前にいる獣のような眼をした赤髪の少女が全力で斬りかかってくる。

使っているのは木刀なのだが、

彼女の剣は、デルタ並みの膂力に加えて、アルファ並みの剣術の冴えを兼ね備えていた。

どうして僕がこんな目に遭っているかを説明するには少し時を遡る必要がある。

 

 

ーー▽▽ーー

 

「体育の授業を始める」

 

朝のHRが終わり、ロキシー先生と入れ替わりで入ってきたのは額に角を生やした初老の御仁だった。

 

「わしの名はハクロウ。なぁに、しがない体育教師じゃよ。

わしの体育の授業は剣術をする。みな木刀を持ちグラウンドにでるんじゃ」

 

その言葉を受けた皆の反応は千差万別だった。

 

「聞いた!?剣術だって!」

「エリスは楽しそうでいいね……」

「ルーデウスは嫌なの?」

「一応素振りとかはしてるからある程度動けるとは思うんだけどね、エリスとかと打ち合いしろとかは流石にね……」

「私も、剣はあんまり得意じゃないなぁ……」

 

やる気満々のエリスに対して、ルーデウスとシルフィは気が重いようだ。

 

「ははは、何ともレイが喜びそうな授業だ」

「レイだけじゃない……」

 

ミーシャがそう言って指を指した方向をアノスが見ると、こちらに熱烈な視線を送ってきている男がいた。

 

『そんなにやりたいなら何時でも受けて立つぞ。』

『あんたから教えてもらった魔法を試したい。』

『今日は剣術だ。諦めろ。』

 

アノスとアレルが戦ってから何日かが既に経っている。その間、アレルはアノスに教えを乞い、簡単な異世界の魔法を習得しつつあった。

その一つが現在も使用している【思念通信(リークス)】だ。

 

「あの人…すごいね…」

「あぁ、まさかこんな短期間で1から思念魔法を習得してしまうとはな」

「しかも、凄く強かった」

「そうだな、魔剣を持たせればレイといい勝負するかもしれんな。

まさか俺もヴェヌズドノアを使わされるとは思わなかったぞ」

「ヴェヌズドノア無しじゃ勝てなかった?」

「辺り一帯を吹き飛ばしても良ければ勝てたが、お前達が居たからな」

 

アノスとミーシャがそんな雑談をしていると背後から声を掛けられた。

 

「おーいアノス!ミーシャ!もう皆行くみたいだから、行こうぜ!」

「あぁ、直ぐに行く」

 

声を掛けたのはスバルだった。

委員会を決めてから1週間程が経過し、生徒達も段々と馴染み始めていた。

特にアノスは委員長として様々な生徒と関わっている機会が多いので、仲良くしている生徒は多い。

 

ーー▽▽ーー

 

「ほれ、腕が下がっどるぞ」

「ひ、ひぇ…」

 

グラウンドに出た生徒達は先ず、既にある程度剣術を習得している者と全くの素人の者の2つのグループに分けられた。

 

既に剣術を習得しているグループは決められた相手とひたすら組手を、素人のグループはハクロウ監督の基、素振りから始めていた。

 

因みに素人グループは

ツトム、ハンナ、アクア、エミリア、シルフィ、ミーシャ、ハジメ、ユエ、シア、夜霧の10人だ。

勿論剣を持つことが出来ない尚文は見学をしている。

 

「なんで僕が剣術なんか……せめて棒術教えろよ棒術」

「師匠、そんなん言っても授業なんだから仕方ないっすよ」

「ハンナも剣術なんかやらずにシャドーボクシングでもやってた方が良いんじゃない?てか、ダンジョン潜りたい、神台見たい……」

「これ、無駄口を叩くでない」

「くそっ…」

 

愚痴を言っているのが見つかったツトムがハクロウから叱りを受ける。

 

「異世界に来てから銃しか撃ってなかったから、剣術なんて分からん」

「ん……ユエも」

「私もです。剣よりハンマーでぶん殴った方が強いと思うんですけどね!」

「そう言う割にお主ら身のこなしは中々じゃの」

「まぁ、ステータスだけは高いからな」

 

「は!」

「おりゃ!」

「や!」

「……」

「うむ、お主らは熱が入っとるの」

「私はみんなの前で戦える王様になりたいから」

「俺はそんなエミリアたんを支えられる男になってやる」

「ボクはエリスみたいにルディの隣に立ちたいんだ」

「私は…アノスみたいに強くなりたい……」

「目標があるのは良いことじゃな」

 

このクラスにはツトムとは違い、この授業にも意味を見出している者もいるようだ。

 

「もういやぁぁあ!

なんで私がこんなことしなきゃいけないの!?

私はアークプリーストなのよ!回復支援がメインなの!!

剣術なんてやったって仕方ないじゃない!」

「………」

 

「zzz」

「おい、お主、寝るでない!」

「ん?もう授業終わり?」

「まだじゃ、そんな事より、ようそんな立ったまま器用に寝れるの」

「zzz」

「………」

 

アクアと夜霧に至っては女房役不在の為、制御不可能だった。

 

ーー▽▽ーー

 

カン、カン、

 

経験者組の集まるグループの方では木刀と木刀の打ち合う音が軽快に響いていた。

 

「はぁぁ!」

「ちょっ、エリスさん!待ってよぉ」

「五月蝿いわね!ほら、さっさと構えなさい!」

「そんな事言っても無理ですよぉ……」

 

エリスの相手はシドだ。

組手のペアはハクロウがある程度実力が拮抗するように組み合わせを選んでいる。

つまり、シドがエリスと打ち合える実力がある事を一目で見抜いたのだ。流石に経験値が違うようだ。

 

もっとも、シドの実力をうっすら感ずいている者は他にも何人かいるようだが

 

「ちょっと!本気を出しなさいよ!」

「じゅ、十分全力ですよぉ……」

 

(僕が長年磨いてきたモブ力が見抜かれるなんて……

それにこの娘凄く強いね。本気を出せば、勝てるだろうけど、ここは上手くやり過ごすか)

 

シドはそう思い、大怪我を負わないように気をつけながら相手の攻撃をなるべく大袈裟に食らい続けた。

 

「うひゃあ、ルーデウスの嫁さん怖ぇ……」

「ばか、そこが良いんじゃんか。

俺は赤髪ツンデレ剣士は大好物だね!」

「この愛妻家め……いいよなぁ、シルフィちゃんは大人しめのボクっ娘エルフだし、ロキシー先生はロリっ子魔法使い教師だろ?俺もそんな正統派ヒロインに恵まれたかったよ」

「はっはっは!皆ベッドの上じゃ可愛いんだよ。まぁエリスは俺の方が食べられちゃうんだけど……」

「くそ、羨ましいな!」

 

ルーデウスとカズマはハクロウにバレないように端っこで軽く打ち合いながら話していた。

 

「カズマだって、B組のめぐみんちゃんと良い感じなんだろ?それに王女様からお兄様呼びされて大層慕われてるみたいじゃないか」

「アイリスは俺の自慢で理想的な妹だ。けど妹だからそんな目で見れねぇよ。めぐみんはまぁ、確かに見た目は可愛いし、一緒にいて楽しいけど……」

「はは、ウブだねぇ!カズマなんか俺からしたらまだまだ子供なんだから、これから色々あるよ。ま、俺が童貞すてたのは13の時だったけどな(笑)」

「うぜぇ、ほんと何でこいつがモテるんだよ。そこそこイケメンで強くて金持ってて……良く考えたらモテる要素だらけじゃねぇか!」

 

カズマの叫びが児玉する中、グラウンドの方では凄まじい破裂音を生み出している箇所があった。

 

「飛刃」

「っと、以前よりも技の威力が上がってるな。

だが、飛刃」

「!?」

「くはは、貴様が扱える技を俺が出来ないと思ったか?」

 

破裂音の中心には当然ながら、アノスとアレルがいた。

更にこのグラウンドには他にも激しい戦いを繰り広げている者達がいる。

 

「くっ、」

「転移に怪力に加え高速移動か、面白い魔法使うなお前」

(何だこいつは、ステータスが違いすぎる。

こちとらもう文字のストックはもう無いんだぞ)

 

こちらでやり合っているのはヒイロとリムルだ。

アノスとアレルの次点としてヒイロとリムルだったのだが、力の差は大きく、リムルのワンサイドゲームになっていた。

 

「嘘だろ……ヒイロの野郎が一方的にやられてやがる……」

「よそ見をしないで下さい!」

「っと、この嬢ちゃんも相当強えし……ここはどうなってんだ」

 

少し離れた所ではラフタリアとアノールドが打ち合っている。

アノールドは普段斧のような得物を振り回しているが、師匠には剣でも闘えるように仕込まれている。

両者にそこまでの差はないが、少しラフタリアが推しているようだ。

 

「は!てや!」

「えっ、ちょっ、にゃんでそんなに強いの知千香ちゃん!?」

「そんなの私が聞きたいよ!?

何でうちの実家では異世界人と打ち合える程の剣術教えてるの!?」

「ちょっと本気出さないとヤバそうかな。ブースト、岩割刃、双刃斬」

「ちょっ、遠距離攻撃はせこくない!?」

 

更に離れた所ではエイミーと知千香がやり合っている。

知千香の実家で伝承されている壇ノ浦流では剣や刀を使った技も一定数存在している。なので、両手に木刀を持ったエイミー相手にもいい感じに戦えていた。

 

エイミーの放った双刃斬が空を切りながら知千香に迫る。

それを知千香は高跳びの要領で回避し、その体勢のまま木刀を放り投げた。

 

「うわっ!」

「何で壇ノ浦流にはこんな状況に対する技があるのかな!?」

「知らにゃいよそんなの!ってやばば」

 

突然飛んできた木刀に少し面食らったエイミーとの距離を一気に詰め、知千香は腹に掌底を放った。

それを何とか右手の木刀で受け止めたエイミーだったが、

知千香はすかさずにその木刀をがっちりと掴み、柔術の要領で木刀ごと

エイミーを放り投げた。

 

「にゃっ!」

 

突然未知の力に襲われたエイミーは受け身も取れないまま地面に叩きつけられる事になった。

 

「何で私の戦闘パートだけこんなに詳しく書いてるのかな!?」

 

知千香のツッコミが木霊したタイミングで

地面に倒れているエイミーの体を緑色の光が包んだ。

 

「ヒール、エイミー大丈夫?こっぴどくやられてたみたいにだけど」

「ツトム!?そっちはどうしたの?」

「あぁ、今日はもう終わったよ。君達が最後だよ」

「あ、そうなの?にゃはは〜恥ずかしい所見られちゃったな〜」

「ま、流石に彼女が対人戦で異常だっただけだよ。対モンスター戦なら流石に負けないでしょ」

「ま、そだね〜」

 

エイミーにはそう言ったツトムだったが、内心では知千香の事を分析していた。

 

(凄いね彼女、唯のツッコミ役かと思ってたけど何であんなに強いんだよ。

ほんとに同じ日本人?なんか背後霊みたいなのいるし)

 

ツトムには見えている。

知千香の後ろにプカプカと浮かぶ平安美人の幽霊が。

 

そして、その幽霊も明らかにこちらが見えているであろうツトムの事をまじまじと観察しているのだった。

 

 

 




はい、短いですね。
もっと頑張ります。

追記〜
誤字報告あざす。
まじすまん


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