麦わらの一味殲滅RTA〜夢を閉ざす者〜 (敗北者)
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#1 キャラ作成

少し修正しました


 こんにちは、こんばんは、おはようございます! 

 

 

 オッハーーー!!!! (クソデカ挨拶)

 

 

 というわけで、本日やっていくゲームはこれ、『ONE PIECE 新たな伝説』。

 人気漫画であるONE PIECEを原作にした大人気ゲームです。

 

 このゲームはとんでもないボリュームと自由度でONE PIECEの世界をオリジナル主人公を作って追体験できる名作です。また、原作に登場する一部キャラ(主要キャラでない脇役)も操作キャラにすることもできます。

 基本的に漫画やアニメなどの原作があるゲームは、原作の流れを重視するために自由度が極端に少なかったりする場合が多いのですが、「原作? そんなものは知らん!」とばかりになんでもできちゃうのがこのゲームです。

 

 どのくらいの自由度なのかというと、原作が始まる前の時間軸でドラゴンを○せば原作主人公のルフィが存在しない世界線に突入してしまうぐらいの自由度です。

 

 さすが〈自由〉を標榜する海賊が主役のゲーム。何だこれは、たまげたなぁ……。

 

 元々魅力的な世界観を持つONE PIECEですから、その自由度と合わせて人気が大爆発。

 発売から一年経つ今でも品薄で、まだ購入できていない兄貴姉貴も多いことでしょう。

 

 まぁそんなことは予め知っている兄貴姉貴しかいないと思いますが、ゲームの説明は様式美というモノです。早く始めろというせっかちホモ達は我慢してください。

 

 慌てんなよ……慌てんな……。

 

 では、早速キャラメイクに進んでいきましょう。

 

 あ、オイ待てェ(江戸っ子)

 

 忘れるところでした。レギュレーションの説明が先ですね。

 といっても、特に縛りとかはありません。RTAなので、ちかたないね。

 

 今回のRTAの目標は称号【夢を閉ざす者】の獲得です。

 称号の獲得条件は麦わらの一味全員の捕縛、或いは○害にオリジナル主人公が関わることです。

 オリジナル主人公が全員を捕縛&○害してもいいですし、仲間に手伝ってもらってもいいです。ただし、オリジナル主人公がすべての麦わらの一味の捕縛&○害で何らかの貢献をしなければならないのが注意点です。

 主人公の味方の勢力の誰かが、あずかり知らぬところで勝手に麦わらの一味の誰か一人でも捕縛or○害してしまえば、【夢を閉ざす者】は取得できません。その場合は【夢を閉ざす者達】という下位の称号になってしまいます(無慈悲)。

 

 この場合の麦わらの一味というのは、ルフィ、ゾロ、サンジ、ウソップ、ナミ、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルックの九人が対象となります。

 九人が揃う前に麦わらの一味を捕らえても【夢を閉ざす者】は獲得できません。ですが、ジンベエ加入後はジンベエの捕縛or○害も条件に入ります。

 

 しかし、二年後になると麦わらの一味が超強化される上に同盟&傘下の船団が増え、その上にジンベエまで加入するという難易度の爆上がりがありますので、かなり難しくなります(8敗)。

 

 まぁ、そもそも今回はRTAなので、新世界編に突入する気はありません。タイムが遅くなりますからね。

 なので、麦わらの一味が九人揃った後で、一番最初の捕らえるチャンスであるシャボンディ諸島編が狙い目です。

 ブルックの麦わらの一味加入判定が入るのがスリラーバーク編の終了時なので、スリラーバークに乗り込んで麦わらの一味を捕まえても意味はないです(1敗)。

 

 なお、他に走っている人がいないため自動的に私が世界一位です。

 

 では、説明も終わったところでキャラメイクにイクゾ!! 

 

 デッデ デデデデ

 

 はーい、よーいスタート。

 

 キャラメイクの開始とともにタイマースタートです。

 

 あ、ちなみに本RTAには淫夢要素は「ないです」。あたりまえだよなぁ? 

 

 まず最初に、主人公の名前……ではなく、時代を選びます。

 

 選べるのはロックス時代(カイドウなどと同世代)、ロジャー時代(シャンクスなどと同世代)大海賊時代(ルフィなどと同世代)の三つです。

 これがまず自由度が高すぎるって言われている所以の一つですね。

 

 ですが今回選ぶのは大海賊時代一択です。タイムが大事なのでね。

 

 参考までに、例えばロックスの時代を選べば大海賊時代には四皇の一角にまで登りつめたりすることもできます。

 他にも、上手く立ち回ることでゴッドバレーの戦いでロックスを生き残らせて、世界の王になるという所謂ロックスエンドというものがあります。

 ですが、これを達成するにはゴッドバレーの時点でプレイヤーの年齢およそ10代で最低でも当時の全盛期白ひげレベルまで強くなる必要があります。しかも、それでも最低限。

 なぜなら、当時の海軍には全盛期ガープ、センゴク、おつる、ゼファーといった化け物がひしめき合っており、さらには理不尽バグ集団であるロジャー海賊団とかいうホモ達を同時に相手取る必要があるからです。

 

 はっきり言って、ロックス海賊団に白ひげがもう一人増えた程度では焼け石に水。その程度の強さを身に付けた上で上手く立ち回らなければなりません。

 どれだけゴッドバレーでのロックス兄貴の状況が無理ゲーだったか……涙がで、出ますよ……。

 

 ですが、ロックスエンドはこのゲームでも最も評価の高いエンディングの一つ。苦労に見合うだけのモノです、お時間がある兄貴姉貴達はぜひ挑戦してみてください。

 

 走者もやったんだからさ(同調圧力)。

 

 ちなみにRTAではありませんが、先駆者である海軍大将緋熊兄貴はロックス時代スタートで仲間を積極的に強化していって、四皇レベルにまで強くなったら解雇。それを繰り返して、大海賊時代には60皇を作り、同じく強化しまくった山賊ヒグマに狩らせまくることで56皇○しという偉業を成し遂げました。

 

 やはり、ヒグマは最強だった可能性が微レ存……?

 

 特に最終回でシャンクスに向けて放った「八百億ベリーが、おれの首にかかっている。56人○したのさ。てめェのように生意気なやつをな」という言葉はカッコ良すぎて痺れましたね。結局、左腕を犠牲に敗走したシャンクスですが、むしろヒグマを相手に片腕を失うのみで逃げ果せたシャンクスを賞賛するべきですね。

 

 面白いので、興味がある方はぜひ見てね! (露骨な宣伝)

 

 ロジャー時代スタートははっきりいってうまあじは少ないです。ロジャー時代スタートでできることは、ロックス時代スタートでもできることがほとんどなので、仕方ないね。強いて言えば、シャンクスや黒ひげと同世代になれることでしょうか? 

 シャンクスや黒ひげが好きな兄貴姉貴には良いかもしれませんね。もちろんバギーでもいいゾ。

 

 このRTAで選ぶ、ルフィと同世代の大海賊時代スタートは言わずもがなですね。このゲーム一番の人気です。

 

 はい、時代を選んだ後は名前を入力します。

 

 ここは、入力速度と諸々を考慮して『モンキー・D・ホムラ』とします。

 メリケン風にすると、『ホムラ・D・モンキー』略してホモちゃんです。

 

 性別は女の子です。女の子だと、サンジ兄貴に無条件でデバフを与えられるので、少しでもタイムを縮めるために一択です。逆にプレイヤーキャラを男にする意味はありません。

 ホモの兄貴姉貴たちは帰って、どうぞ(反逆)。

 

 名前の理由ですが、大きな理由は三つあります。

 まず、一番大事な『D』という名前。これは、原作にも登場する所謂『Dの一族』というもので、このたった1文字のアルファベットが名前に入っていると、キャラクターの素質値が底上げされ、〝武装色の覇気〟と〝見聞色の覇気〟の才能を確定で得られ、更には〝覇王色の覇気〟の才能も50%の確率で得られます。

 覇気というのは戦闘能力に大きく影響を与えるため、このゲームでは最も重要なステータスです。覇気の才能を持たないキャラは人間扱いすらされません、すぐに〈凪の海(カームベルト)〉に飛び込んでお魚さんと戯れましょう(過激派)。

 

 そんな超重要な覇気の才能を確定で得られるのですから縛りプレイでない限り名前に『D』を入れない理由はありません。

 なお、〝覇王色の覇気〟は使わなくとも、使えずとも。才能を持っているだけで能力に成長補正が掛かり他の覇気が強化されますが、最悪無くても何とかなりますので無くてもいいです(いらないとは言ってない)。

 

 次に『モンキー』です。これは言わずもがな、原作主人公様であらせられるルフィと同じ名字となります。

 これを名前に入れた場合、ほぼ確実にルフィと同じ血族になります。この場合のメリットは、祖父にガープがいることです。

 ルフィやエースは海賊を目指していたために、ガープから本格的な指導を受けることはできませんでしたが、麦わらの一味殲滅という目標を持つホモちゃんは海軍に入るので、ガープに鍛えてもらうことができます。

 

 伝説の海兵、ガープという指導者がいればメキメキと実力を伸ばしていけるのでうまあじです。なので、手っ取り早く強くなりたいなら『モンキー』を名前に入れましょう。

 

 しかし、これには一つだけ致命的なデメリットが存在します。『モンキー』という名字だと、ルフィと兄弟姉妹になる可能性が高く、そうなってしまうとルフィと戦う際に関係性による精神的なデバフが入ってしまうのです。これは、【夢を閉ざす者】を獲得するにあたってあまりにも致命的。

 なので、それを相殺するための『ホムラ』という名前です。

 

『ホムラ』という名前。有識者兄貴姉貴ならすぐにわかると思いますが、これは和の国風の名前です。漢字で書くなら『炎』ですね。

 ところで皆さん、無限列車編は見ましたか? (唐突)

 

 超名作映画は置いといて、和の国風の名前にすると凡そ八割くらいの確率で親が和の国出身になります。八割ということは、つまり十割ということです。

 ですので、今回のホモちゃんの『モンキー・D・ホムラ』という名前だと、出自の自動生成によってルフィの親であるドラゴンかガープが和の国の女性との間に一夜の過ちで作ってしまったルフィの腹違いの兄弟、といったような背景が生まれます。この場合は隠し子的な存在となるため、ルフィとはほぼ他人となります。だから、この背景に生まれる必要があるのです。

 生まれるよな? 頼むで! ルフィの兄弟設定は嫌や! (5敗)

 

 というわけで、『モンキー・D・ホムラ』という名前に決定です。

 

 次に、容姿などの設定ですが、RTAなので入力速度を考慮して当然ランダムです。

 ちなみに、容姿が良ければ様々な行動に補正が掛かり、容姿が悪ければ下降補正が掛かりますが重要なことではありません。

 今回のRTAで重要なのは主に強さなので、容姿は関係(ないです)。

 ビッグマムが最強の一角であるという事実が、つまりそういうことです。

 

 で、自動生成された容姿ですが……ファッ!? 

 

 なんだこの美少女は……たまげたなあ(恍惚)。

 

 これは、あれですね。例えるならいぬぼくの凛々蝶姉貴ですね。

 華奢な身体で身長も低めのちっちゃくて可愛い美少女です。ちなみに胸もありません。ONE PIECEでは珍しい美人系ではなく可愛い系女子です。

 目の色が凛々蝶姉貴と違って金色なのがポイントですかね。

 

 自力で頑張ってキャラメイクしてもこんなん作れへんぞ、やばすぎやろ(突然の猛虎弁)。

 

 まぁ、容姿は良いに越したことはないので、ヨシ! (現場猫)

 

 やったぜ(手のひらドリル)。

 

 時代と名前と、容姿を決めて、これでキャラメイクは終了です。

 キャラクターの素質値や初期能力値、初期スキルなどはなんと自動生成となります。RTAに優しい仕様ですね。

 

 

 

 そんな訳ないやろ!!! (豹変)

 

 

 

 ここでクソザコ数値を引けば全てが( ᐛ )パァです(56敗)。

 

 許゛せ゛ん゛

 

 と、キャラメイクが終わったところで今回はここまで。

 次回からは本格的にゲームスタートです。

 

 本日はご視聴ありがとうございました。

 

 グッバイ! (Official髭男dism)

 

 

 




続くかな?


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#2 おねロリは良いぞ

続いた


 人の夢を終わらせるRTA、もう始まってる! ババババババ

 

 前回、ホモちゃんのキャラクリを終わらせたところから再開です。

 決定ボタンを押すと同時に、画面が暗転してゲームが始まりますが……

 

 なぁんで、フーシャ村なんですかねぇ……? 

 

「あら、ホムラ。起きたのね?」

 

 ホモちゃんが目を覚ますと、目の前にはマキノ姉貴がいます。マキノ姉貴と言えばONE PIECEの隠れ人気キャラの一人で、幼き日のルフィを描いた記念すべき漫画の第一話に登場するルフィの姉貴のような存在です。

 

 そして、ホモちゃんの隣にはもう一人の子供がスヤスヤと眠っています。

 はい、我らが主人公にしてホモちゃんの未来のターゲットであるルフィ兄貴ですね。

 

 クォレハ……おめでとう! ルフィの兄弟確定です! 

 

 と゛ほ゛し゛て゛!!!! 

 

 なんでや! ルフィの兄弟は嫌だって言ったやん! 

 はあぁ……つっかえ(クソデカため息)。何も悪いことしてないのにゲーム始まって2秒でガバですよ。さっそくチャートが使えなくなりました。

 どうしてくれんの、これ? 

 

 まま、ええやろ(切り替え)。

 多少やることが増えますが、一応リカバリーはできますし、やりようはいくらでもあります。

 なので、リセットはしません。

 決してホモちゃんが世紀の美少女だからリセットしたくないわけではありません、いいね? (ノンケ)

 

 さて、気を取り直してマキノ姉貴に挨拶を返しましょう。挨拶は大事、古事記にもそう書かれていますからね。

 

「……おはよ」

 

「はい、おはよう。朝ごはんは用意できてるから準備できたらおいで」

 

「うん」

 

 あれ、なんかホモちゃん元気ないですね? 

 口数が少ないです。これは初期スキルがなんかやってますね。口数が少ないとなると、可能性としては〈無口〉か〈臆病〉あたりでしょうか。

 〈臆病〉が付いてると戦闘時になかなかのデバフが掛かるのでやめてクレメンス、頼むで(懇願)。〈無口〉はただ無口なだけですので、関係構築にデバフがかかる程度なので問題ありません。

 

 マキノ姉貴が部屋を出て行くと、自由行動開始です。

 さっそくホモちゃんのステータスを見ていきましょう。

 

 ───────────────────────────

 モンキー・D・ホムラ(7)

 強さ :幼女/とても弱い

 素質 :力3・体4・速7・技10

 覇気 :??? 

 スキル:〈治りが早い〉〈無口〉

 関係 :『モンキー・D・ルフィ/双子兄/好』『モンキー・D・ガープ/祖父/良』『マキノ/お姉ちゃん/愛』

 ───────────────────────────

 

 ファッ!? 技10!? 勝ったな(確信)。

(無言のガッツポーズ淫夢くん)(おもむろに流れ出すUC)

 

 失礼、あまりにもホモちゃんが優秀すぎて取り乱しました。説明をしましょう。

 強さは【とても弱い】ですが初期なのでこんなものです、これはどうでも良いですね。

 問題は【素質】です。これは、キャラクターの戦闘能力に直結する覇気と同じくらい重要なステータスとなります。【力】は主に攻撃力、【体】は体力と打たれ強さ、【速】は足の速さと反応速度、【技】は各種技量に応用力。各キャラクターは基本的にこの【素質】に対応した成長をしていくことになります。

 

 数値に関してですが

 1……ダメダメ

 2……まずまず

 3……ふつう

 4……すごい

 5……とてもすごい

 6……すごすぎる

 7……ちょうすごい

 8……さいきょう

 9……うちゅうレベル

 10……神isGod

 となっております。3を基準に変動していくわけですね。ちなみに、『Dの一族』だと自動的に全素質の最低値が3となります。このチート種族さあ……。

 

 参考までにルフィの素質値ですが、【力8・体10・速8・技7】となっています。さすがは主人公ですね。やばいです☆

 

 私としては、できれば最低でも力と速の二つが6、できれば8以上だと安定感がありますので狙っていたのですが、技10なら他が多少低くても何も文句はありませんね。むしろお釣りが来るレベルです。

 ちなみにどれかの数値10が出る確率は約0.5%らしいです(出典・wiki)。ホモちゃんは選ばれしホモですね。やったぜ。

 技10がどれほどの壊れなのかはおいおい語るとして、次の説明に移りましょう。

 

 覇気は使えるようになってからでないとステータスには表示されませんので、特に言うことはないです。ですが、ホモちゃんは『Dの一族』なので武装色と見聞色は確実に持っています。

 覇王色ですが、50%の確率で持っていますが、50%は走者にとっては10000%なので間違いなく持っていますね。

 

 0.5%引いたんだからさ、へーきへーき。

 

 スキルは二つ、初期スキル二つ持ちはなかなかレアです。多くの場合がスキルなしか一つですから。

 しかし、〈無口〉はマイナススキルなので実質〈治りが早い〉の一つだけです。〈臆病〉じゃなかっただけありがたいと思いましょう。

 肝心の〈治りが早い〉ですが、必須スキルではありませんがあったら便利、そんなスキルです。効果は読んで字のごとく怪我の治りが早くなること。具体的には、軽い擦り傷や切り傷は2〜3時間で完治し、骨折が3〜4日で完治します。

 速スギィ!! と思う兄貴姉貴もいるかと思いますが、ONE PIECEの世界ではこれが常識です。諦めて受け入れてください。

 

 最後に関係ですが、ルフィが好でガープが良。ガープ兄貴……もっと孫のホモちゃんに会いに来てやってクレメンス。なお、存在すら知らないドラゴン兄貴(無関心)。

 マキノ姉貴の愛ですが、愛は好の上の関係値で一番上です。つまり……あっ……(察し)。ホモちゃん……ホモちゃんじゃなくてレズちゃんじゃったか……。

 

 おねロリは良いぞ(突然の布教)。

 

 では、あまりマキノ姉貴を待たせるのは(タイム的に)よくないので、さっさとご飯をもらいに行きましょう。このゲーム、ステータスには表示されませんが、マスクデータとして空腹値のようなものが設定されているようで、何も食べないでいると普通に死ぬのでタイムを惜しまずしっかりと食べましょう。

 

 部屋を出て、廊下を出ると原作一話で親の顔より見慣れた酒場が広がっています。といっても、まだ開店準備中でお客さんはいないようです。ホモちゃんは現在7歳で、となると双子の兄であるルフィも7歳ということになります。この時期はルフィがフーシャ村を旅立つ10年前で、赤髪海賊団がフーシャ村に滞在している時期です。しかし、隣で眠っていたルフィの左目の下には傷跡がなかったので、まだギリギリ原作開始前ですね。

 

 カウンターでおとなしく座って待っていると、マキノ姉貴が朝ごはんを持って来てくれました。メニューは卵のサンドイッチとコーンスープです。ホモちゃんはきちんと食前の挨拶をしてから小さな口で静かにマキノ姉貴の愛情入りの手料理を黙々と食べ始めました。小動物みたいで可愛らしいですね。

 

 さて、ホモちゃんの食事風景を見ながら今後の流れについて考えましょう。残念ながら、もともと用意してあった『モンキー』家の隠し子チャートは木っ端微塵に粉☆砕されてしまったので、新しくチャートを組み直さなければなりません。

 ですが、このI.Q53万の走者の手にかかれば何も問題はない! 

 こんなこともあろうかと、ルフィの兄弟になるルートも何度か検討したことがあるので、ある程度のチャートは即席で組むことができるのです。

 

 現在、マキノ姉貴のお世話になっているらしいホモちゃんとルフィですが、この後シャンクス達との交流を経てルフィは海賊に憧れるようになります。ですが、そんなことを海軍中将であるガープが許すはずもなく、ルフィは憐れにも悪逆非道の山賊ダダンの住処に投げ込まれることに……。

 ここでホモちゃんも一緒になってダダンの下に送られるわけにはいかないので、このタイミングでガープに海兵になりたいと希望を伝えましょう。

 すると、ガープはその言葉を待っていたと言わんばかりに喜び勇んでホモちゃんを鍛えるために見習い海兵として海軍本部に連れていってくれます。

 

 海軍本部までたどり着ければ後はこっちのものです。イベントなどは基本無視してひたすら鍛え続けましょう。ダダンの下に行ってエースやサボと仲良くなってしまうと、無視することができない様々なキーイベントが発生するようになって、大幅なタイムロスになります。普通にゲームするのであればキーイベントは積極的に楽しみたいところでしょうが、RTAではそんなものフヨウラ!! 

 

 一方、海軍本部にはキーイベントなんて殆どありません。サブイベントはそれなりにありますが、それらはすべて無視することができますので、最低限必要なサブイベントだけ回収して後は放置。

 ひたすら修行修行&修行で、効率的に強くなりつつタイムをガンガン縮めていきましょう! 

 

「マキノーーー!! メシーーー!!」

 

 マキノ姉貴はメシじゃありません!

 

 静かにご飯を食べるホモちゃんと、それを眺めながらニコニコしているマキノ姉貴という素敵なおねロリ空間を領域展開していると、眠りから覚めたガイア──もとい、我らがルフィが起きて来ました。

 

「はーい、すぐに出すから座って待っててね」

 

「おう!」

 

 ルフィがホモちゃんの隣に座ります。あっ、オイィ、さっきからチラチラ見てただろ? 

 待ちきれないルフィがホモちゃんのご飯を狙っていますが、ホモちゃんは取られまいと守り、謎の攻防が開始されます。

 そうこうしているうちに、マキノ姉貴がルフィのご飯を持って来たため、ホモちゃんのご飯はなんとか無事でした。

 この食い意地の張ったホモガキがよォ……。

 

 ご飯を食べた後は自由行動です。といっても、まだ幼いホモちゃんではできることは多くありません。

 普通のプレイであればオススメは港の赤髪海賊団に会いに行って関係を深めることですが、このRTAではそんな無駄な行動はしません。

 

 おら! 修行するんだよ! 走れ、走れ! 

 

 本格的な修行は海軍本部に行ってからですが、村の中を走り回ったりするだけでも基礎体力づくりになりますからね。ホモちゃんに遊んでいる暇はありません。

 ルフィは赤髪海賊団に会いに行きましたが、ホモちゃんはランニングです。この意識の違いが、後の決定的な実力差を生むことになるのである(ノストラアヌスの大予言)

 

 そんな感じで、ガープ来航まで毎日ご飯食べてトレーニングしてマキノ姉貴と愛を育んでの充実した日々を過ごします。

 

 しばらく変わり映えしないので、早送りで飛ばしてしまいましょう。

 

 甥の木村、加速します。

 

 114514×1919×810×0+10日後……。

 

 ルフィの左目の怪我を確認したところで、今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。



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#3 シャンクスは強者です。反論は許さない。

 兄より優れた妹を目指すRTA、はぁじまぁるよー。

 

 前回、左目の下に傷を作ってきたルフィ兄貴。

 この傷があるということは、原作が始まったという意味です(名推理)。

 

 これから56皇○しのヒグマが登場し、ルフィがゴムゴムの実を食べ、とイベントが進んでいくのですが……

 

 ホモちゃん、この感動的なROMANCE DAWN(冒険の夜明け)をまさかの全スルーすることに決定。

 

「何それ?」

 

「これは、おれの覚悟だ!」

 

 これって……勲章ですよ? 

 

「……そっか」

 

 左目の下に傷を作ってきたルフィが、赤髪海賊団を連れて酒場の方に歩いていきますが、すれ違ったホモちゃんは怪我したルフィを心配して声を掛けるだけで、付いて行こうとはしません。

 

 そんなことよりトレーニングだ! 

 

 というのも、このイベントに今のクソザコホモちゃんが入っても特に何もできることはありませんし、する必要のあることもありません。酒場の隅で震えながら傍観するぐらいなら、ホモちゃんはランニングをします。

 こっちはタイムが掛かってるんだ。あたりまえだよなぁ? 

 

 それに、今までイベントを回避するために赤髪海賊団が酒場に集まり出す度にコソコソと脱出してトレーニングをしていたホモちゃんは、シャンクスとの接点もあまりありません。

 

 そもそも海兵を目指しているホモちゃんですから、海にプカプカ浮いてヘラヘラやってる海賊であるシャンクスと何らかの関係性を作るメリットは皆無です。

 

 メリットデメリットだけで人生を生きる人間の屑かこの野郎……

 

 ちなみに、海賊になるルートなら、ここでシャンクスと仲良くなる意味は大いにあります。四皇であるシャンクスは様々なところに大きな影響力を持っているため、仲良くなっているとプレイヤーが困ったときのド○えもん的な感じで何らかの助けになってくれることが割とよくあるのです。

 それがなくとも、ここでシャンクスに弟子入りすればフーシャ村に滞在している期間中、面倒見の良いシャンクスはプレイヤーの特訓相手になってくれます。トレーニングは一人でやるよりも、誰かに教えてもらいながらの方が能力が上がりやすくなるので、弟子入りしない理由はありませんね。

 ただし、ルフィのように船に乗せてと頼んだところで絶対に乗せてくれることはないので、そこは注意点です。

 これからこのゲームをやるという兄貴姉貴たちは、ぜひ参考にしてください。

 

 では、ルフィたちは放置してトレーニング開始です。

 相変わらずホモちゃんのやることは変わらないので、次のイベントが発生するまで一気に倍速で飛ばしてしまいしょう。

 

 甥の木村、加速します……

 

 ん? 倍速が止まりましたね。

 

「この!! バカ山賊っ!!!」

 

「クソ生意気なガキがよォ……」

 

 ドゴォ(腹パンの音)

 

 村の広場に人がぞろぞろと集まって……、これはアレですね。ヒグマ兄貴によるルフィリンチ事件。

 題して、ゴム人間解体ショーの始まりや! 

 

 できればこのイベントもスルーする予定でしたが、残念ながらこのイベントは発生地点がフーシャ村全域でランダム。こればっかりはスルーできなくても仕方ないですね。

 

「ホムラ! こっちに!」

 

 マキノ姉貴が焦ったような声でホモちゃんを呼びつけると、後ろから抱きしめるようにガッチリホールド。きっと、兄がリンチにされているところに飛び込んでしまわないように、ということでしょうね。

 ですが、ホモちゃんを抱きしめるマキノ姉貴の体も震えています。きっと、今すぐにも飛び出していきたいのでしょう。ですが、一般人のマキノ姉貴が無策に山賊に挑んでもどうしようもない。

 これはそんな悔しさと情けなさと怒りから来る震えですね、わかります。

 

 ホモちゃんも拳を強く握りしめて怒りを堪えています。

 

 ──よくも兄さんをボコボコに……兄さんをボコボコにして良いのはわたしだけなのに……!! 

 

 ──許せない!! これが〝悪〟!!!! 

 

 ──兄さんをボコボコにするわたし以外の全てを!! 

 

 ──駆逐してやる!! この世から……一匹残らず!!!! 

 

 おや? ホモちゃんが非常に強い思いによってスキル〈正義の心〉を獲得しましたね。

 これは悪や非道に対して強い憤りを覚えるようになるスキルです。そしてその憤りは力に代わり、悪を討ち亡ぼす原動力となります。効果は単純な能力バフ系ですね。効果対象が広い代わりに効果量が控えめなタイプです。

 ただしこのスキル、海兵になる場合実は少し微妙なスキルです。なぜなら、この場合の悪には、世界の癌こと天竜人も含まれる可能性が極めて高いからです。知っての通り、海軍の任務の一つに天竜人の警護や護衛がありますが、このスキルを持っていると天竜人を嫌悪してしまうため、それらの任務を絶対に受けようとしなくなります。海兵は清濁併せ持つ玉虫色の心が求められるというわけですね。天竜人関連の任務は、報酬がかなり良いのでそれを受けられないとなると割とまずあじです。

 

 まぁ、〈正義の心〉のバフは素直に嬉しいのでヨシ! (現場猫)

 

 ちなみに、何を持って悪とするかですが、それはすべてホモちゃんのさじ加減によって決まります。なので、例え相手が世界に名だたる聖人だとしてもホモちゃんが「お前悪な!」と決めつければ、それは悪ということになり〈正義の心〉が発動します。つまり、普遍的な悪や絶対的な善悪の規格などは存在しないということですね(哲学)。

 

 今回は、非常に強い思いでスキルを獲得しましたが、この獲得の仕方は全く安定しないので、獲得できたらラッキーって程度に思っておいてください。特に、RTAでは一切あてになりません。それどころか、欲しく無いスキルを勝手に獲得してしまうこともある始末なので、チャートクラッシャーな仕様です。ふざけんな!!(迫真)

 他のスキル獲得条件は、誰かから教えてもらうか経験によって獲得するかですね。こちらはほぼ狙った通りにスキルを獲得できるため、メインのスキル獲得方法となっています。

 

「港に誰も迎えがないんで、何事かと思えば……」

 

 そうこうしているとシャンクスがやってきましたね。これで山賊はザ・エンド(誤字ではない)ってね……。

 

 赤髪海賊団の副船長、ベン・ベックマンがまるで無双ゲーのように山賊たちを薙ぎ倒していきます。まぁ、この山賊たちは赤髪海賊団のクルーからしたら果てしない雑魚ですからね。

 というか、なぜ副船長がわざわざ相手したのでしょうか。一般クルー(モブ)の適当な一人でも同じことができそうですが……きっと、ちょうどいい運動だったのでしょうね。

 

「うぬぼれるなよ山賊……!! ウチと一戦やりたきゃ軍艦でも引っ張ってくるんだな」

 

 見事に制圧した副船長がビシッと決めます。つ、強すぎる……!!

 これには海賊志望のルフィだけでなく、マキノ姉貴とフーシャ村の村長、ホモちゃんまでも唖然とした様子です。

 

 しかし、追い詰められた山賊は煙幕を使い、ルフィを連れてまんまと逃げ果せてしまいました。これに大袈裟に慌てるシャンクス。

 

 このシャンクスのガバに関して、見聞色の覇気を使えばすぐに見つかるのでは……? と思っている兄貴姉貴たちもいるかと思いますが、シャンクスの名誉のために答えておきますと、実は慌てている様子はシャンクスの高度なブラフです。

 シャンクスはすでにこの時点で見聞色の覇気を使い、山賊とルフィの居場所は把握しております。シャンクスがブラフを用いてまですぐに動き出さないのは、ルフィに未熟な己と悪人の怖さ、海の恐ろしさを伝えるためです。すぐに助けてしまっては、それらを十分に伝えきることはできませんからね。

 無謀にも海賊を目指すルフィ少年を諭すために、山賊という相手はちょうど良かったわけです。これで海賊志望を諦めてくれればヨシ、それでも諦めないならそれもまたヨシっていう寸法でしょう。(理論武装)

 

 少し考えればわかることですが、この時はまだ四皇ではないとはいえ、未来の海の皇帝がそこらの山賊に出し抜かれるわけが無いですからね。そういうことです。

 

 シャンクスは決して雑魚じゃありません。いいね? 

 

 え? なんでそんなシャンクスが近海の主に左腕を食われたのかって? 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 これはもうわかんねぇな……お前どう? (諦め)

 

 それはともかくとしてしばらく待っていると、シャンクスに連れられてルフィが無事に港に帰ってきました。

 シャンクスは左腕を失い、ルフィはギャン泣きしています。マキノ姉貴や村人たちは左腕を失ったシャンクスの姿を見て言葉を失っている様子。

 ですが、赤髪海賊団のクルーは「あー、あの馬鹿は」みたいな、なんかわかった風な顔をしていますね。テメェらにシャンクスの何がわかるんだよ、俺にはわからねぇよ(豹変)。

 

 そんなシャンクスにも周りの状況にもいっさい目もくれず、突然駆け出したホモちゃんは思いっきりルフィを抱きしめました。いくら悪である海賊を目指しているとはいえ、兄は兄。大切な家族が危険な目にあってホモちゃんも色々限界だったみたいですね。

 ルフィと比べてわりと大人びて見えるホモちゃんですが、やはりまだ子供です。

 

 将来、こんな仲の良い兄弟が争うことになるんですから、全くひどい話ですよ。そうだと思いませんか?(すっとぼけ)

 

 そんなこんなで、今回のゴム人間解体ショー事件は無事に収束しました。

 

 このイベントで、ホモちゃんは新スキル〈正義の心〉を獲得したのに加え、シャンクスとの関係が【シャンクス/知り合い/良】になりました。ルフィを助けてくれてありがとナス!

 ぶっちゃけ、シャンクスとの関係性は別にいらなかったんですけど、あるならあるでいつか利用できるかもしれませんね。

 

 それじゃあキリがいいところで今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 



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#4 動物系は弱くないぞ!

 幼女が爺さんにハイエース(軍艦)されるRTA、はぁじまぁるよー。

 

 前回はヒグマ兄貴のゴム人間解体ショーと、シャンクスの名シーン、「だってよ……シャンクス……! 腕が!!」「頭も!!」「袖が!!」「髪が!!」「俺も!!」まででしたね(記憶捏造)。

 シャンクスいろいろ失いすぎて草生えますよ。

 ホモの兄貴姉貴たちは、シャンクスをおもちゃにするのは、やめようね! 

 

 よいこのみなさんは、『シャンクス ネタ』とか、『シャンクス コラ』とかくれぐれも検索しないように。検索するなら、腹筋を破壊する覚悟を決めてからにしてくださいね。ホモちゃんとの約束だよ。

 

 さて、あいも変わらずホモちゃんは今日もトレーニングに勤しんでいます。ホモちゃんが倍速で一生懸命頑張っている姿を背景に、まだ詳しく説明していなかったステータスである【強さ】と【素質】についての説明をしておきましょう。

 

 現在のホモちゃんの【強さ】は、【幼女/とても弱い】から【幼女/普通】にまで上がっています。といっても、結局幼女なことには変わりはないので、前回登場したベン・ベックマンに無双ゲーのごとくボコられたヒグマ兄貴の手下のチンピラにすら、ホモちゃんではまだ勝てません。

 相手がホモちゃんと同じような子どもならともかく、大人との戦闘で勝てるようになってくるのは、少なくともホモちゃんが【少女】になってからですね。

 

 ちなみに、【強さ】の表示はずいぶんアバウトですが、細かい数値などはすべてマスクデータとなっていて見ることはできません。私は見ることはできませんが、解析班によると【力/体/速/技】による各能力値(マスクデータ)を総合的に計算して、【とても弱い】や【普通】などと表示されるようになっているらしいです。

 なので、仮に二人のキャラの【強さ】がどちらも【幼女/普通】と同じだったとしても、片方は【力】が高い、もう片方は【速】が高いといった感じで全く違う性能をしているとのこと。あくまでも目安といった程度に思いましょう。

 

 【強さ】を伸ばす方法は、基本的に修行か実戦です。例えば走り込みをすれば【体】、筋トレをすれば【力】のように、修行内容に対応した能力が成長します。

 

 素質に関してですが、修行を行なったときにどれほど対応した能力が伸びるかという、成長効率に関わってきます。

【力1】のキャラと【力10】のキャラが同じ修行を行うと、【力10】のキャラは【力1】のキャラと比較して十倍の成果が得られるわけですね。当然、キャラが成長する速さも、素質値が高いほど速くなります。

 なので、キャラの成長速度が重要なRTAでは、高めの素質値が求められるわけです。これが私が素質値を最低でも力と速で6、できれば8を狙っていた理由です。

 

 後は、各能力や習熟度の限界値も素質によって左右されます。

 ある程度の強さであれば素質が特別高くなくともせいぜい4〜5程度あれば時間をかけることで、それなりのものを手に入れることができますが、海軍大将や四皇といった世界の頂点に匹敵するような強さを得るには素質は絶対に高くないといけません。

 そのレベルに至るのに必要な素質値の目安は、8です。どれか一つが8だとギリギリ、8が二つ以上か一つでも10があれば四皇の強さに手が届きます。

 もちろん全てが素質値で決まるわけではなく、これに加えて覇気の才能値とかもあるのでさらに複雑になっていき……これもうわかんねぇな。

 

 とりあえず、『D』の一族なら覇気の才能値は十分なはずなので、『D』の一族でかつ【技10】のホモちゃんは最強ってわけよ。

 

 それと、後回しになってしまいましたが、【強さ】の【幼女】という部分についてです。これは、キャラの年齢と性別によって変動し、0〜8歳までは【幼女/幼児】9〜14歳までを【少女/少年】15〜22までが【乙女/青年】23〜65までが【大人】、66〜が【老人】となります。

 これが影響するのは、素質とはまた別のキャラの能力値の成長限界です。素質値に対応した成長限界の、【幼女/幼児】なら20%、【少女/少年】なら60%、【乙女/青年】なら90%、【大人】なら100%、【老人】なら80%が成長限界として適応されます。

 例えば、【力1】の成長限界が【攻撃力1000】だとしたら【幼女/幼児】の時期だと、最大でも【攻撃力200】までしか成長できない、といった感じです。

 

 ちなみに素質値ですが、これを後天的に上げられる手段が一つだけあります。それは、動物系(ゾオン)の悪魔の実を食べることです。

 動物系(ゾオン)の悪魔の実を食べると、身体能力が上がると言われていますが、このゲームでは【技】以外の素質値が上昇します(上限は変わらず10)。上昇する数値は、せいぜい0〜2程度ですが、それでも大きな戦力アップになるのは間違いありません。

 不遇とか言われてた動物系(ゾオン)なんて無かったんや。

 

 え? 自然系(ロギア)? 自然系(ロギア)は……ナオキです。

 

 おっと、倍速が止まりましたね。イベントですか。

 ルフィがホモちゃんの下までダッシュで駆け寄ってきます。その頭には、麦わら帽子。シャンクスはもう出ていったのでしょうか? 

 

「ホムラ! 最後だからお前も来いよ!」

 

 どうやら、シャンクスはまだ出航していないみたいです。シャンクスとそこそこ仲が良くなってしまったせいで、シャンクスの出航イベントにホモちゃんが強制的に巻き込まれたみたいです。

 

 港まで行くと、赤髪海賊団のクルーがエッサホイサと出航の準備をしていますが、シャンクスは律儀にルフィとホモちゃんを待っていてくれていたっぽいですね。シャンクスは決してサボっていたわけではありません、いいね? 

 

 このイベントは、シャンクスとある程度仲良くなっておくと発生し、ルフィに麦わら帽子を預けたように、プレイヤーにもシャンクスが何らかの餞別をくれます。

 ですが、悪魔の実や業物の剣などといった大したものはもらえません。貰えるもんはもらっておいたほうがいいですが、RTAではこのイベントで貰えるアイテムより、このイベントのタイムロスの方が気掛かりなので……やっぱりシャンクスと仲良くなるメリットは(ないです)

 

 ですが、貰えるもんはありがたくちょうだいしましょうねぇ〜

 

 お……これは……? 

 

『ホムラは 〈不斬(なまくら)〉 を ゲットした』

 

 ああ^〜いいっすね〜

 

 〈不斬(なまくら)〉は刀ですね、種別としては脇差。この刀の最大の特徴は、刀身に刃がないことです。刀身に刃がないんじゃ、どうやって斬るんじゃい! 

 

 詳細説明によると、この刀は人を斬らない、人を殺さないために打たれた刀。この刀を打った刀工は何を考えてこの刀を作ったのかはわからないが、刀の質はかなり良い。とのこと。

 

 まぁ、普通に考えて暴徒鎮圧用に作られたんじゃないっすかね? (適当)

 

 これはシャンクスの餞別の中ではあたりの部類です。敵を斬れないとは言いますが、それはそれで捕縛用として使えますからね。もちろん、斬れずともこの刀で叩きまくれば人は死にますが、たいていの場合その前に相手を気絶させられます。

 ○したくない相手との戦いや、手加減が必要なときなどに使っていきましょう。

 

 それに、〈不斬(なまくら)〉には業物などといった位列こそありませんが、刃がないこともあって耐久性などはかなり高く、これから先、ずっと使っていける優秀な武器です。詳細説明にも刀の質は良いと書かれていますしね。

 

 やっぱシャンクスの……餞別を……最高やな! (熱い手のひら返し)

 

 〈不斬(なまくら)〉をありがたく譲り受けて、ルフィやマキノ姉貴たちと一緒にシャンクスを見送ります。

 ルフィは大泣きしていますが、ホモちゃんも少し寂しそうですね。これ、ちゃんと海兵になってくれますかね。あんまりシャンクスと仲良くなりすぎると、海賊と戦う海兵になるのを拒んだりしてしまうので、心配なんですが……もうガバは嫌じゃ……。

 まぁ、【シャンクス/知り合い/良】ならさすがに平気ですかね。好だったら危なかったです。

 

 さて、こっからルフィの周囲で起こるイベントはガープがフーシャ村に帰ってくるまで、ほとんどありません。

 ですので……ガープが来るまで倍速です。

 

 甥の木村、加速します。

 

 114514×1919×810×893×0+1ヶ月後……

 

 朝目覚めるとともにイベント発生です。ガープが帰ってきたので、港に会いに行こう! 

 マキノ姉貴に朝ごはんをもらって、三人で一緒に港まで出かけます。

 

 すごく……大きいです……(身長287cm)

 

「久しぶりだな! 爺ちゃん!」

 

「……おかえり」

 

 孫二人に会って、ガープも嬉しそうな表情をしていますね。海軍の英雄様も、人の子だったか……

 

 しかし、ルフィが海賊になるなどとガープに告げると、たちまち激昂。ルフィの頭に容赦なくゲンコツを落としました。それを受けたルフィは痛そうに地面をゴロゴロ転がっています。

 ゴム人間にこれほどまでの物理攻撃を……! 

 

 あまりにもガープがカンカンになっているので、クールダウンさせるためにも、ここですかさずホモちゃんの希望を伝えてやりましょう。

 

「おじいちゃん……わたし、海兵になりたい……」

 

「なぬ!? 本当か!? ぶわっはっはっはっは!!! さすがわしの孫じゃ! 海賊なんぞに憧れるルフィと違ってホムラは偉いのう!!」

 

 般若の形相だったガープの表情が、たちまちに笑顔になり、ホモちゃんを抱えると高い高いしながらご機嫌に笑い出しました。

 287cmに高い高いされるホモちゃん……顔が青ざめています。

 かわいそうに。これが人間のやることかよぉ!! 

 

「海賊なんぞじゃない! おれはシャンクスみたいなすごい海賊になるんだ!!」

 

「シャンクスだとォ……!! あの小僧め!! 余計なことをしおってからにィ!!!」

 

「……おじいちゃん、立派な海兵になりたいから鍛えて」

 

「なにィ!? もちろんじゃ!! わしがホムラを最強の海兵にしてやるぞ!! ぶわっはっはっはっは!!!」

 

 お前、感情ジェットコースターかよ!! 機嫌の高低差激しすぎるやろ!! 

 

 はい、そんな感じでシャンクスがいなくなった代わりに、フーシャ村の愉快な仲間たちにガープが追加されました。

 今日から、ガープがルフィをコルボ山に放り込んで海軍本部に帰るまでの間、それなりの期間がありますがその期間中もやはりホモちゃんは修行しかしません。

 

 しかし、この期間中はガープに修行を見てもらえるので修行効率は今までの比じゃないくらいうまあじになります。

 なお、海軍本部に戻るとガープは仕事がありますので、今回ほど付きっ切りで修行に付き合ってはくれませんので、この期間中はがっつりホモちゃんを育てていきたいですね。

 

 ではやっていきましょう! 

 

 デッデッ デデデデ カ-ン

 

 

 

 キングクリムゾン!! 

 

 

 

 はい、というわけでガープが海軍本部に戻る日、そしてホモちゃんが海兵になるために海軍本部に行く日になりました。

 

 ガープが来てから帰るまでのこの数日間、色々な話がありましたね。山あり谷あり、涙ありのホモちゃんの物語。

 

 わたしはしばらくのお別れになるホモちゃんとマキノ姉貴がお互いのことを忘れないように、今までの思い出を夜遅くまで語り合う場面が好きでしたね。決して血は繋がってなくとも、今までずっと一緒だった二人の仲の良い〝姉妹〟の思いに感動して、涙がで……出ますよ……! 

 

 これをご覧になっている兄貴姉貴たちはどの場面がお気に入りでしょうか。やっぱり、あのシーンですかね? 

 ルフィが海賊になるのを認めてもらうためにガープに殴りかかって、何度倒れても立ち上がって……それでも結局ガープには認めてもらえなくて。

 泣きながら港でシャンクスの消えていった海の果て──水平線を眺めるルフィを、夜ご飯だからと呼びに来たホモちゃんが隣に座って二人でお互いの夢を語り合って……いつまでたっても帰ってこない二人を心配して港に来たガープに二人揃ってゲンコツを受けて……

 

「なぁじいちゃん。認めてもらえなくてもいいんだ。それでもおれ、やっぱり海賊になる。シャンクスとの約束で、おれの夢だから」

 

「フン……生意気なヤツじゃな」

 

「……大丈夫、お兄ちゃんが海賊になったら……わたしが捕まえる」

 

「そうか……なら、安心じゃな……」

 

「にしし! そう簡単に捕まんねェぞ!」

 

「……ほれ、帰るぞ。メシじゃ、メシ!!」

 

 というひと時の温かい家族の団欒のシーンでしょうか。

 ルフィに海賊になって欲しくないガープの思いは、ただ海賊が悪だからというわけではなく、きっとルフィと争いたくないという親心もあるのでしょうね。

 しかし、そんな親心などまだ子どもの二人には伝わらない。ルフィは盲目に海賊になるのを夢見て。

 一方、ホモちゃんはルフィが海賊になったら自分が捕まえるから大丈夫と、ルフィと戦いたくないというガープの核心を突いた言葉を無意識に突き付けて励まそうとする。

 不器用にすれ違った家族の心ですが、それでも彼らはちゃんと家族で、そこには温かい絆が確かにあるんですよねぇ……。

 

 それは置いておいて、いよいよ出航のときです。

 ホモちゃんはしばらく会えなくなるマキノ姉貴に抱きついてなかなか離れようとはしませんが、ガープに「そろそろ行くぞ」と言われてしぶしぶ離れました。

 

 ちなみにルフィはすでにダダンに預けられていますのでここにはいません。

 お労しや……兄上……。

 

 さて、ガープが船に乗り込んで、最後にホモちゃんが乗り込むと、船は錨を上げて静かに動き出しました。

 

 しゅっこ〜〜!! ヨーソロー!! 

 

 といった感じで、今回はここまで。

 ご視聴、ありがとうございました。

 

 




不斬(なまくら)
位列……なし
刃長……一尺七寸
大業物を世に送り出した、かの名工が鍛えた刀。その刀身に刃はなく、何者も決して殺すことはない。刀としての体をなしていないため位列こそないが、その質は良業物に匹敵する。
彼が何を思ってこの刀を打ったのか、それは誰にもわからない。


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幕間 別れの朝・約束の空

忘れたりうろ覚えだったりする部分が結構あるから、ONE PIECE読み返そうかなって思うけど約100巻分読み返すの大変すぎる。
なるべく読み返したり調べたりして、設定やキャラを原作に寄せているつもりですが、違和感があったり間違いがあったら教えてください。


 

 

 いつか海兵になったときのためにと、すでに日課となっている修行を行なっていたら、どこかで見たような見覚えのある麦わら帽子を被ったルフィが、ずいぶんと急いだ様子で走ってきた。

 

 それから話を聞くと、どうやらシャンクスは今回の航海ではフーシャ村にはもう戻らないという。

 

「ホムラ! 最後だからお前も来いよ!」

 

 そんなことを言いながらわたしの腕をとって引っ張るお兄ちゃんには、「自分で歩く」というわたしの声はすでに聞こえていないみたいだ。

 

 お兄ちゃんは昔からこうだ。妙にお兄ちゃん風を吹かせるくせに、考えなしで向こう見ず。わたしの言葉はろくに聞きもしない。

 産まれたのがわたしよりたった数分早かっただけで、歳は全く一緒なんだから精神的にも肉体的にもわたしとほとんど変わらない。それなのに兄だからとわたしに構おうとするのはやめてほしい。

 はっきり言ってお子さまなお兄ちゃんに構われるのは疲れる。

 まったく、大人で優しいマキノお姉ちゃんを見習ってほしいものだ。

 

「シャンクスーーー!! ホムラ連れてきたぞーーー!!」

 

「おーう! よう、ホムラ!」

 

「……ん」

 

 シャンクス。もうだいぶ前にフーシャ村に寄港して、それからずっとこの村を拠点にしている海賊だ。そして、お兄ちゃんが海賊の道を志すようになった、原因。

 

 わたしは海兵志望だから、今まで極力シャンクスとは会わないようにしていた。それにシャンクスは、海賊だけど……良い人だ。

 そんな人と仲良くなったりしたら、わたしの海兵になるという夢が揺らいじゃうかもしれないから……だから、シャンクスとは仲良くなりたくなかった。

 

 わたしの憧れは、シャンクスではなくおじいちゃん。この村の人たちにおじいちゃんはすごい人だって聞いて、それからたまにフーシャ村に帰ってくるおじいちゃんに武勇伝をせがんで。

 それで、わたしは海兵に憧れるようになった。

 

 でも、もしかしたら海兵に憧れるようになる前にシャンクスと出会っていたら、わたしもお兄ちゃんと一緒で海賊に憧れることになっていたかもしれない。

 そう思えてしまうほどに、シャンクスは──赤髪海賊団は魅力的で素敵な人たちだった。

 

 海軍は正義、海賊は悪。それが世界のルール。だからわたしは海兵を目指すんだ。

 それで良い、それだけで良いはずなのに……シャンクスを見ていると本当にそうなのかと思わず疑問に思ってしまう。

 そしてそんな疑問を持ってしまうたびにわたしは自己嫌悪に陥ってしまう。

 

 あの山賊からお兄ちゃんを助けてくれたときなんてまさにそうだ。あれではまるで、シャンクス達が正義の……やめよう。

 

 きっと、おじいちゃんに聞けば、シャンクス達は悪だと即答するだろう。わたしは、そんなおじいちゃんが少し羨ましい。

 

「ホムラ、難しい顔して、どうした? ……さては、ルフィに麦わら帽子をやったのが羨ましいんだな?」

 

 どうやら変なことを考えていたのが顔に出ていたようだ。シャンクスに指摘されて、恥ずかしくて顔に熱が集まっていくのを感じる。

 

 それに、麦わら帽子……? 

 そういえば今日のシャンクスはトレードマークの麦わら帽子を着けていない。ルフィの被っていた麦わら帽子が見覚えがあると思っていたら、シャンクスの麦わら帽子だったのか。

 でも別に、わたしは麦わら帽子が羨ましいなんて思っていない。そんなの、強請っているようで浅ましい子どもみたいじゃないか! 

 

「べつに、羨ましくない」

 

「照れるな、照れるな! ガキなんだから、欲しいものは欲しいって言えばいいんだよ!」

 

「だから、ちが──」

 

「──はっはっはっは!! ホムラは妙に大人びてやがると思ってたが、やっぱりまだまだガキだな!!」

 

 ぐぬぬ……! ルフィといい、シャンクスといい……話を聞け!! 

 

「そうだな、悪ィが、麦わら帽子はもうないからなァ……よし、ホムラにはコレをやろう」

 

 そう言ってシャンクスが取り出したのは、木製の鞘に入った……刀? でもちょっと短い? 

 

「ほら、抜いてみろ」

 

 渡された刀は、ずっしりと重い。両手でしっかりと持って、なんとか鞘から刀身を抜いてみる。

 

「……刃がない?」

 

「こいつは〈不斬(なまくら)〉って刀でな、人を殺さないために作られた刀だ」

 

「刀なのに?」

 

「ああ、製作者が何を思って作ったのは知らねェが……ホムラにちょうどいいと思ってな」

 

「……?」

 

「お前、よく一人で特訓してるだろ。ちょっと前にたまたま見かけてな……おれが見た感じお前には剣の才能がある。だが、剣なんてガキに持たせるモンじゃねェ……だからその〈不斬(なまくら)〉はちょうどいいだろ?」

 

 どうやらシャンクスはわたしのために色々考えてくれていたらしい。確かに、この刃が無い刀なら危なくないし、わたしの修行に使うにはちょうどいい。長さが短いのも、今のわたしにとってはまだ大きいけど、振り回せないほどでもない。

 わたしのことを考えて、こんなプレゼントを用意してもらって……嬉しくないわけがない。だけど……これじゃあ、なおさらわからなくなってしまう。

 

「シャンクス……シャンクスは、悪?」

 

「あ? おれは海賊だぞ?」

 

 思わず口をついて出てしまったわたしの言葉に、シャンクスは当然だ、とでも言うように肩を竦めて答えた。

 

「そうだけど! でも……シャンクスは優しい」

 

「……」

 

「わたし、海兵になりたくて……でも、海賊の中にもシャンクスみたいな良い人がいるのなら、って考えると……わからなくなってくる……」

 

 シャンクスの顔つきが、真剣なものに変わった。

 

「わたし……どうしたらいいのかな……? シャンクスは悪い人なの……?」

 

「はぁ……そんな迷子みたいな顔をするな」

 

 そんな顔をしていただろうか。わたしは……それほどまで追い詰められていたのだろうか。海兵になるという夢が揺らぎそうになって……。

 

 シャンクスがわたしに目線を合わせるようにしゃがみこむ。

 

「いいか、ホムラ。おれは──海賊は社会的に言えば間違いなく悪だ。けどな、例えばルフィのようなヤツにとっては、正義とまではいかなくとも、少なくとも悪じゃない。わかるよな?」

 

「……うん」

 

「それは、ホムラにも言えることだ。おれがお前にとっての悪か正義か……そんなこと、誰に決められるモンじゃねェし、おれが決めることでもねェ」

 

「……」

 

「それはホムラ……お前が決めることだ。誰が悪で、何が正義か……それを決めていいのは、誰でもねェ自分自身だけだ」

 

 シャンクスの手が頭を撫でる。その手は、とても大きかった。

 

「おれがお前に言えるのは……そのぐらいだな」

 

 何が正義で、誰が悪かはわたし自身が決める……。わたしは答えが知りたくてシャンクスに聞いたのに、これじゃあ今まで悩んでいたことは何も解決してないし、むしろ悪化している気がする。

 わたしを悩ませるシャンクスは、やっぱり悪……? 

 

「……難しい」

 

「はっはっはっはっ!! 別にすぐ答えを出す必要はねェよ。お前、海兵になるんだろ? それなら、次会ったとき答えを聞かせてくれ」

 

 頭からシャンクスの手が離れていく。お話は終わりみたいだ。

 

「よォし、野郎ども!!! 錨を上げろォ!!! 帆をはれ!!! 出発だ!!!」

 

 シャンクスの船が港から遠ざかっていく。

 

「シャンクスぅぅぅぅ!!! 約束はぜったいに守るからなあああああ!!!!」

 

 お兄ちゃんが泣き腫らした顔で、喉が裂けるほどの大声で叫ぶ。この村で一番シャンクスと仲良くしていたのはお兄ちゃんだ。別れは辛く、寂しい。

 あまりシャンクスと関わることのなかったわたしでも、えも言われぬ寂寥感のような何かが胸に去来するくらいだ、お兄ちゃんはどれだけ辛いのだろうか。

 

 それにしても約束……か。わたしはシャンクスとルフィが交わした約束というものが何なのかは知らないけれど、それはきっととても大事なことなのだろう。

 

 …………

 

「シャンクス……またね」

 

 わたしのその小さな呟きは、シャンクスに聞こえることはきっとなかっただろう。だけど、船から港に向かって大きく手を振るシャンクスと、一瞬だけ目が合った気がした。

 

 ──答えを、楽しみにしてる。

 

 そんな声が、聞こえた気がした。

 

 

 



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幕間 心配な姉・素直じゃない人

 

 

 犬の頭をした軍艦が、少しずつ小さくなっていく。それが水平線に消えていくまで眺めていた私は、思わず小さく溜息を吐いてしまった。

 

「行っちゃった……」

 

 ルフィも少し前にコルボ山のダダンさんのところに預けられちゃったし、ホムラは海兵になるという夢を叶えるためにガープさんと一緒に海軍本部に行った。ルフィには会おうと思えばいつでも会えるし、ホムラとは定期的にフーシャ村に帰ってくる約束もした。だから、二人とも今生の別れというわけではないけど、それでも離れるのは寂しくないと言えば……嘘になる。

 

 思えば、もうずっと前から三人でいた。血は繋がっていないけど、二人は私にとって間違いなく弟と妹だったし、あの子達も私のことを姉のように慕ってくれた。

 

「これが成長なのかなぁ」

 

 少し前まで私の後ろをちょこちょこと付いてきた子どもが、形は違えどそれぞれの夢に向かって邁進している。

 

 海賊になるという夢を追い続けるルフィ。例え、祖父であるガープさんに強固に反対されても、絶対に意思は曲げず、いつか必ず船長さん──シャンクスさんのようなすごい海賊になると豪語するルフィは、その頑固さがどこかガープさんと似ていて。やっぱり、家族だなぁ……と笑ってしまった。

 ダダンさんのところにいるというもう一人のガープさんの孫──エース君と仲良くやれているだろうか。ルフィにとって妹であるホムラ以外の、数少ない歳の近い相手。物怖じしないルフィなら問題ないとは思うけど、それでも心配してしまうのは姉心か……過保護かな? 

 

 海賊になるなんて、褒められたことではないだろう。でも、ガープさんには悪いけれど、実は私もルフィの夢を応援しているのは内緒だ。

 この村には、私と同じ考えの人も結構多い。これだけみんなに思われているルフィは、きっとシャンクスさんのような素敵な海賊になるに違いない。道を踏み外すことは決してない、それだけは断言できる。

 

 ホムラも自分の夢に向かって進んでいる。歳の割に大人びたあの子の場合は、ルフィよりももっと具体的なしっかりとした未来のビジョンを持っているようで、このところは遊ぶ時間を惜しんで強くなるために特訓していたのを私は知っている。ついには海兵になるために本格的な指導を受けようと、遠いところに旅立っていってしまった。

 

 だけどホムラは頭が良すぎるから、心配だ。真面目で責任感が強いあの子は、いろいろと難しく考えて抱え込んでしまうかもしれない。

 口下手で大人しいホムラは、抱え込んだものをどこかで吐き出すことができるのか……あのときのシャンクスさんとの会話を思い出す。

 考えてみれば、あの子があれほど声を荒げた姿を見たのは初めてかもしれない。それだけ、今まで思い悩んでいたということなのだろう。

 それを、私に相談してくれなかったことは悔しいし頼りになれなかった自分が情けない。せめてどうか、向こうで悩みを吐露できるような人と出会ってほしいと切に思う。それに加えて、ルフィにとってのエース君のような近い歳の友達でもできればもっといいだろう。

 

 フーシャ村に帰ってきたときは、悩みを聞いてあげよう。力になれるかはわからないけど、何もしないよりはマシなはずだ。大切な……私の大切な〝妹〟にはもっと頼ってほしい。

 

「はぁ……」

 

「なんじゃ、マキノ。ため息なんぞ吐きおってからに」

 

「村長さん」

 

 どうやら村長さんに聞かれてしまったみたいだ。迂闊だったかなあ。

 

「村長さんは、ルフィがいなくなって、寂しくないかしら?」

 

「フン。……海賊、海賊と……小うるさいのがいなくなって、せいせいしとるわい」

 

 相変わらず、素直じゃないなぁ。村長さんが海賊になろうとしているルフィに反対しているのは、叱りつけているのは、きっとルフィのことを心の底から心配しているからだ。海賊なんて危ない世界に、ルフィに足を踏み入れて欲しくないからだ。わざわざ海賊にならなくとも、この村でずっと平和に暮らしていてほしいと願っているからだ。

 村の恥だなんだと……そんなのは建前にすぎない。

 

 そうじゃなきゃ、あんなに熱心に叱りつけたりはしない。村長さんはルフィが大好きだから、孫のように大切に思っているから叱るのだ。

 普段から難しそうなしかめっ面をしているけどたまにルフィとホムラのことを優しげな目で見ていたことを、まだバレていないとでも思っているのだろうか。

 

 なんだか、おかしい。

 

「ふふ……そういうことにしておくわ」

 

「……」

 

 苦虫を噛み潰したような顔でおし黙る村長さん。やっぱり素直じゃない。

 

「ホムラの方はどうなの? あの子……いろいろと心配にならない?」

 

「それこそ問題ないじゃろ。あやつにはガープがついておる」

 

 確かにガープさんがついているけれど……なんとなく不安に思ってしまうのはなぜだろう。ガープさんのことは、もちろん尊敬しているし信頼もしている。だけど、子育てというのは尊敬と信頼だけで成り立つものでもない。

 子どもがいない私が子育てを語るのは変な話だけど、それでもルフィとホムラを育てたという自負はある。だからこそ、たまに帰ってくるガープさんの二人への接し方を見て、どうにも不安に思ってしまうのだ。

 今回だってそうだ。いくらガープさんが海軍の偉い人で、海賊を毛嫌いしているからと言って、教育と称していきなり山賊の下に子どもを預けたりするだろうか。以前にも、ルフィをジャングルに放り込んだことがあったのだ、これで心配にならないわけがない。

 確かにダダンさんは、以前村に現れた山賊と比べて義理人情に厚い良い人だと思うけど、それにしても……。

 

「はぁ……」

 

「……わしからすれば、お前の方が無駄にいろいろと考えすぎだと思うがな」

 

 言われてみれば……と自嘲する。心配性でちょっと考えすぎていたかもしれない。二人がいなくなることが、思ったよりも私の心の負担になってたのかな。

 それに、なんとなく、寂しい気持ちを奥へ押しやるために二人のことばかり考えていた節がある。

 

 二人のことを過剰に心配していたのも、きっと寂しさの裏返しだったのだろう。二人のことを考えることで、寂しさを隠そうとしていたのだ。何かを考えている間は、そのことに集中していられるから。

 

 ダメだなぁ……私。ホムラにはお姉ちゃんぶってまたいつでも会えるから寂しくないよなんて言っておいて……。

 

「はぁ……」

 

「またため息か」

 

「だって、村長さん……」

 

「フン。お前もまだ子どもじゃな」

 

 もうすぐ私も20歳になる。だけど、私なんかよりもずっと歳上な村長さんにとっては、まだまだ子ども扱いらしい。

 私だって一人でお店を持って、ちゃんとやっていけているのに……村長さんは厳しい。

 

「はぁ……」

 

「ああああああ!! うっとうしいのう!! うじうじうじうじと!! そんなに心配なら、引き止めればよかったじゃろ!!」

 

 確かに、海賊を目指すことに怒ったガープさんに無理矢理コルボ山に放り込まれたルフィはともかく、ホムラの方は私が止めればこの村を出て行くことはなかったかもしれない。せめて、後1年か2年は一緒にいられただろう。

 あの子は私にとても懐いているから……弱みに付け込むみたいで嫌だけど、その気になればきっと引き止められた。

 

「……でも、二人の夢だから……」

 

「なら、とっくに答えは出ておるじゃろう! ここでうじうじ考えていても何にもならん! ……見送ったんだから、わしらにできることはここで、見守っていることだけじゃ」

 

「そう……よね……」

 

 村長さんなりの、励ましなのだろう。相変わらずしかめっ面で、口が悪くて……優しくて。

 

「フン。わかったらとっとと戻るぞ。メシじゃ、メシ。マキノ、なんか作ってくれ」

 

 でも、目だけは真っ直ぐだから。考えていることはすぐわかる。

 

 思えば、昔からこの人には何度も励ましてもらっていた。いつも不器用で、回りくどかったりするけど、私が困ったり悩んだらしたときには嫌そうな顔をしながらも必ず力を貸してくれた。

 

 やっぱり、素直じゃない人だ。

 

「ふふ……はぁい。今朝作ったシチューが、あるわ。ホムラはシチューが好きだから、たくさん作ったのよ」

 

 まったく。うじうじして、私らしくなかったわ。

 

 ルフィ、ホムラ。私から二人にしてあげられることは少ないけど。二人の夢を、いつまでも世界で一番応援しているわ。

 

 美味しいご飯をたくさん作って待っているから、いつでも〝ここ〟に帰ってきてね。

 

 いってらっしゃい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




たくさんの高評価、ありがとうございます。頑張ります。
評価の一言も、見てます。とても励みになりました。

幕間はひとまず今回で終了、次からはRTAパートに戻ります。

いつもアンケートの回答ありがとうございます。
アンケートを反映して、悪魔の実あり、生やすなら羊のツノ、幕間は定期的に書いていくことにします。

マキノと村長はこんな感じで良いのだろうか……と、多分今後も原作キャラを動かすたびに思うんだろうなあ。二次創作の難しいところですよね。


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#5 マリンフォード

マックイーンが可愛いので初投稿です

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 海軍本部で修行パートなRTA、はぁじまぁるよー。

 

 前回、フーシャ村を旅立ち、ガープとともに海軍本部に向かうことになったホモちゃん。

 東の海のフーシャ村から〈偉大なる航路(グランドライン)〉の海軍本部のあるマリンフォードまでは、かなりの距離があるため移動には数日かかります。

 その間に途中の島に補給のために立ち寄ったり、船の中を探索したりなどと、長い航海を楽しむことができますが……

 

 もちろんホモちゃんは変わらず修行です。船の上でも寄港した島でも修行修行&修行。お前、さっきからそればっかだな! 

 

 ガープに師事してバリバリ鍛えていきますよ〜

 

「よし、ホムラ! どんどん打ってこい!」

 

「……ん!」

 

 オッスお願いしま〜す。

 

 ガープの軍艦に乗船している海兵(モブ)はあまりにもストイックすぎるホモちゃんに若干引いていますが、ホモちゃんを最強の海兵にするという崇高な志を持っているガープは御構い無しに鍛えてくれます。明らかにオーバーワークに見えますが……実際オーバーワーク。

 ですが、ホモちゃんには〈治りが早い〉があるので、多少やり過ぎくらいがちょうどいいです。骨折レベルの怪我さえなければ寝て起きたら治ってますから。

 

 ある目的があってだいたい半年後くらいにホモちゃんを訓練とかではなく実戦で、ある相手と戦わせる予定です。しかしその相手が勝てないほどではありませんがわりと強いので、まだ【幼女】のホモちゃんだと厳しい戦いになります。ですので、せめて半年後までに成長限界まで到達しておきたいです。

 

 覇気を覚えることができればその相手もボコボコにできますが、海軍では【幼女】のうちはまだ覇気を教えてもらうことはできません。覇気を教えてもらえるようになるのは、【少女/とても強い】ぐらいの能力になったときが目安ですね。

 

 それまではひたすら基礎トレーニングと、シャンクスにもらった〈不斬(なまくら)〉で剣術を鍛えます。

 

 ちなみに、【技10】であるホモちゃんはぶっちゃけ世界最高峰の天才なので、自分で剣術流派を生み出してくれると思います。ですので、特に剣術で誰かに師事する必要はありません。

 

 六式などの既存の技などに関しては、恐るべきことに一目見ることができれば覚えます。まるで刀語の鑢七実の見稽古を彷彿とさせますね。

 

 この辺が【技10】のヤバさの一端です。まぁ、技に限らず素質10は強さのランクで言えば【神isGod】なので。8の時点で強さランクが【さいきょう】なことから察してください。

 

 ただし、仮に六式を見て覚えてもまだまだホモちゃんは使えません。六式は極限まで体を鍛え上げたホモ達の超人技ですから、技術を盗んでも体が出来上がっていないうちは到底使えるものではないのは当然ですね。

 

 ですので、基礎トレーニングというわけです。まずは体を作っていきましょう! 

 

 そんな感じで、倍速で進めていきましょうね〜

 

 甥の木村、加速します。

 

 

 

 

 

 はい、というわけでマリンフォード海軍本部に到着です。

 

 この後、ホモちゃんは海軍に入隊……の前に、海軍学校に入学することになります。7歳の子どもをいきなり船に乗せて海や戦場に出すわけにもいきませんから、あたりまえだよなぁ? 

 

 ホモちゃんは10歳になるまで海軍学校で学生として算術、航海術、歴史、戦術、戦略などの勉強をしつつ、訓練に打ち込むことになります。

 いわゆる修行パートですね。見どころさんは特に(ないです)。なのでガンガン飛ばしていく予定です。

 

「ホムラ、頑張ってくるんじゃぞ」

 

「……ん」

 

 ガープの応援を背にホモちゃんは歩いていきます。ガープは基本的に仕事がありますが、たまにホモちゃんを見に学校の方に顔を出してくれるそうです。ありがたいですね、学校の教官に教えてもらうよりも、やはり比類なき強者であるガープに学んだ方が効率的に強くなれるのでうまあじです。

 

 なお、学校には寮がありますがホモちゃんはガープの家で寝泊まりするようです。祖父が海兵でマリンフォードに住んでいるのなら当然ですね。

 

 じゃけん学校行きましょうね〜

 

「あなたがモンキー・D・ホムラさんね、話は通っているわ。付いて来なさい」

 

「……ん」

 

 入学の手続きはマリンフォードに向かっている最中にガープがすでに電伝虫で伝えたのでしょう。学校の入り口で女性の教官(モブ)が待っていてスムーズに進んでいきます。

 さすがガープ兄貴、ここで書類だ手続きだとまごまごしていたらタイムロスですから、走者であるホモちゃんに配慮した見事な采配です。やりますねぇ! 

 

 ちなみに、学校とは言いますがそんなに大きく立派なものでもありません。まぁ、利用する者が少ないのですから、しょうがないね。10歳以下で海兵になろうなんて志を持っている子どもなんて少数派なんや。普通は10代半ばになってから海軍に見習いとして入隊して、現場で叩き上げられます。

 

「私があなたを担当する教官になるわ。教官と呼びなさい」

 

「……ん」

 

 校舎の廊下を歩きながら、教官がいろいろと説明してくれますが特に大事な内容はないです。ですがホモちゃんは真面目なのでしっかりと聞いているようです。

 

「ここが教室よ、あなたと同い年の子は一人だけいるわ」

 

「……!」

 

 そうこうしているとすぐに教室に着きました。前後にスライド式のドアがあるオーソドックスな教室です。

 

 お! 開いてんじゃーん! 

 

 教室の中にいたのは、ホモちゃんと同じぐらいの背丈の小さな女の子でした。黒髪碧眼のショートボブが可愛らしい幼女が、好奇心旺盛な様子でホモちゃんを眺めていますね。

 

「シアさん、この子はモンキー・D・ホムラさん。同い年だから仲良くしてね」

 

「はーい! シアはシアだよ! よろしくね、ホムラちゃん!」

 

「……よろしく」

 

 シアパイセンですね。よろしくお願いさしすせそ。

 

「ねー! ねー! ホムラちゃんはどこから来たの?」

 

「えっと……」

 

「あっ! それもしかして刀!? いいなー!」

 

「あっ……」

 

「髪の毛長くてきれー! すごーい!」

 

「うっ……」

 

「モンキーって、もしかしてガープ中将がおじいちゃんなの? ガープ中将かっこいいよねー!!」

 

「……」

 

 なんだお前! や、やんのか!? 

 

 賑やかなシアパイセンの質問責めにホモちゃんがコミュ力でボコボコにされてますね。無口でコミュ障で知り合いとしかまともに話せない典型的な陰の幼女のホモちゃんに、光の道を歩む陽の幼女であるパイセンは刺激が強すぎるようです。

 小学一年生の年齢でたった二人の学級なのにすでに社会の縮図が完成してるのか……悲しいなあ……。

 

「はい、シアさんそこまで。授業を始めるわ」

 

「はーい!!」

 

「……ん」

 

 教官の声でシアパイセンの質問責めが止まって明らかにホッとするホモちゃん。

 

 陰の者に手を差し伸べてくれる教官……さては聖人か? この人は二人組作ってー! とか言わなさそう。

 まぁ、このクラスは二人だけなので二人組の悪夢は起こり得ませんが。もし仮にもう一人いたら地獄でしたね。ホモちゃんがボッチになる未来しか見えません。やっぱ、〈無口〉は致命的なスキルだった可能性が微レ存……? 

 

 さて、今更ながらシアパイセンについての説明です。彼女は、原作漫画には登場しないキャラです。教官と同じモブですね。このゲームは世界が広いため、原作キャラだけだと登場人物が圧倒的に足りないので彼女たちのようなモブが数多くいます。

 

 しかしモブだから価値がないというわけではなく、彼ら彼女たちは仲良くなるとプレイヤーの仲間になってくれたりしてくれます。中には優秀な素質値を持っていて、鍛えれば四皇クラスに届く者もいます。

 このRTAの一話で説明した56皇○しのヒグマ兄貴の動画でも、育て上げた56皇のうち50人がモブでした。

 なので、このゲームで上手く立ち回るならモブを有効活用するのがコツです。

 

 さて、この海軍学校入学イベントでは、モブが0〜3人ほど同期として登場します。今回は一人でしたね。

 ここで同期になったキャラは海兵志望ということもあって素質値が比較的高めで優秀、しかも関係値も上がりやすく、海軍で出世した後に部下になってくれたり仕事を手伝ってくれたりするので普通の海兵プレイでは重宝します。

 

 なお、海軍学校に入らなくとも10代で見習い海兵として入隊すれば同じ条件で同期が現れます。

 

 このRTAではタイムロスになるので何人もモブを育成するつもりはありませんが、一人ぐらいなら育成する手間はほとんどありませんし結果的なタイムで言えばうまあじです。元々、モブを仲間にするチャートと、仲間にしないチャートをそれぞれ考えていたので、せっかくですから今回はシアパイセンを仲間にしてしまいましょう。

 

 気になるパイセンの強さや素質などの具体的な数値は、世界中のいろんな場所にいる能力鑑定ができる特殊なモブに教えてもらう必要があります。ちなみにここの海軍学校にも存在します。

 今後の育成を考える上で重要な情報なので、早速教えてもらいに行きましょう。

 

「おう。よく来たな。わしに何が聞きたいんや?」

 

 なんだこのおっさん!? 

 

 サングラスを付けたスキンヘッドの彼が、この海軍学校の能力鑑定係です。その見た目と謎の関西弁モドキから、プレイヤーたちに付けられたあだ名は、変態糞親父。

 ホモちゃんとシノパイセンの二人は幼女なので、幼女とおっさん。完全に事案ですねクォレハ(名推理)。

 

 もしもしポリスメン? あ、変態糞親父も一応海兵? 

 冗談はよしてくれ(タメ口)

 

 さて、さっそく変態糞親父にパイセンの能力を教えてもらいましょう。

 

「なるほどな。いいぜ、教えてやるぜ」

 

 ───────────────────────────

 ユーリア・シア(7)

 

 強さ :幼女/かなり強い

 素質 :力5・体4・速4・技6

 覇気 :武装色5・見聞色3

 スキル:〈元気印〉〈ムードメーカー〉〈愛嬌◎〉〈勇敢〉

 関係 :『シノ/母/愛』『ユキト/父/愛』『チエル/友達/好』『クロエ/友達/好』『ユニ/友達/好』『アオイ/友達/好』『教官/教官/好』

 

 ───────────────────────────

 

 おー、ええやん。

 

 素質値も覇気もそこそこ。ですが、この数値なら限界まで育てば中将にはまず間違いなくなれるでしょうね。といっても、パイセンは戦闘員というよりサポート要員として育てる予定ですが。

 

 スキルを見た感じは、とんでもねー陽キャでみんなを引っ張っていく感じですかね。ホモちゃんよりよっぽど主人公っぽいキャラだな。

 

 全体的にかなり優秀な感じです。

 

 ついでに、ホモちゃんも見てもらいましょう。このおじさんは、ステータス画面じゃ見られなかった覇気の才能値も教えてくれるタイプのおじさんです。覇気の才能値に関してはなぜか教えてくれない鑑定係もいます。なので、この変態糞親父はいいおじさんということです。

 

「なるほどな。いいぜ、教えてやるぜ」

 

 ───────────────────────────

 モンキー・D・ホムラ(7)

 

 強さ :幼女/とても強い

 素質 :力3・体4・速7・技10

 覇気 :武装色3・見聞色・3・覇王色10

 スキル:〈治りが早い〉〈無口〉〈正義の心〉

 関係 :『モンキー・D・ルフィ/双子兄/好』『モンキー・D・ガープ/祖父/好』『マキノ/お姉ちゃん/愛』『シャンクス/知り合い/良』

 

 ───────────────────────────

 

 ファッ!? 覇王色10!? やばすぎやろ! (デジャブ)

 

 ですが覇王色はいいとして、【武装色3】と【見聞色3】が微妙ですね。3の強さのランクは一応【普通】なのですが、例によって『Dの一族』の場合武装色と見聞色は確定で3は持っています。

 

 はい、つまり最低値です。

 

 武装色と見聞色で最低値引いて覇王色で最高値引くとかギャグかな?

 

 皆さんも知っての通り、戦闘において重要なのは武装色と見聞色です。それが最低値で、使い所さんの少ない覇王色が無駄に最高値なのはちょっと微妙ですね。とはいえ、覇王色は持ってない可能性も高かったので持ってるだけありがたいです。

 

 それに、以前にも説明しましたが覇王色は持っていると、武装色と見聞色に補正が掛かりますので、ホモちゃんの覇気は見た目以上に強いはずです。それに加えて、覇気の才能値で表されているのは覇気の総量と出力、強度です。覇気の発展系である〝流桜〟の弾く覇気や見聞色の未来視は覇気の才能値が低くても〝ある数値〟が高ければ使えます。

 

 その数値とは何でしょうか。はい、【技】です。

 

 つまり【技10】のホモちゃんはさいつよ。神isGodですので、何も問題はありませんね。

 

 覇気の強度が弱くても、技術でカバーや! 

 

「ねーねー! シア、強い?」

 

「ああ、かなりの才能だぜ。シャボンディの北のマングローブの土手の下で、一緒に海賊狩りをしようや」

 

「ほんと!? やったーーー!!」

 

 ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ幼女と、それを見てニヤリと口の端を吊り上げるグラサンスキンヘッドの変態糞親父の微笑ましい会話という、犯罪的な現場を背景に今回はここまで。

 

 では諸君ッ! サラダバー!! 

 




高評価や感想、ありがとうございます。励みになります。

前回のアンケートで、オリキャラは一応『あり』が勝っていたのですが、『なし』も多かったため間をとって登場させるのは一人だけにしました。
教官やおじさんなどは物語を進めるために必要だったので出てきただけで、特にメインキャラではないただのモブか舞台装置です。
今後もメインで登場する予定があるのはシアというキャラだけです。

オリキャラが苦手な人には、申し訳ありません。


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#6 ガバなど無い!

URAファイナル優勝したので初投稿です。

うまぴょいから逃げるな。


 拳を交えればわかりあえるRTA、はぁじまぁるよー

 

 前回、シアパイセンという新たな仲間を加え入れたホモちゃん。

 これから、半年後までひたすら学校で勉強と訓練に勤しみ、パイセンと一緒に強くなっていく予定です。

 

 というわけで……キングクリムゾン!! 

 

 

 

 

 はい、半年経ちましたね。

 

 この半年間でホモちゃんとパイセンは二人とも【幼女】の段階で成長できる限界値、成長限界まで到達しました。

 

 それに加えていくつかのスキルを獲得し、弱冠7歳で独自の流派すら生み出してみせたホモちゃんは海軍学校始まって以来の天才ともてはやされています。しかし、真面目でストイックなホモちゃんはそんな周囲の評価などなんのその。自惚れることは一切なく、今日までひたすらに体を鍛え、剣を研いできました。

 

 決してコミュ障だから、もてはやされてもどうしていいかわからず、トレーニングに逃げているわけではありません。いいね? 

 

 ホモちゃんと一緒にトレーニングに励むパイセンの方の育成も順調で、その恵まれた素質値を遺憾なく発揮しかなり強くなっています。今ではホモちゃんと揃って、海兵として将来を嘱望される期待株の二人組として大いに注目されています。

 

 どれくらい注目されているのかというと、海軍元帥であるセンゴクが海軍学校に視察に来るほどです。もっともそれは建前で、親友であり戦友であるガープの孫娘を一目見たかったというのが一番の理由だと思いますが。

 

 パイセンは突如現れた海軍のトップにらしくもなくテンパっていましたが、コミュ障陰キャなくせに謎に肝が座っているホモちゃんは、いっそ無礼なほどにいつも通りの無口と素っ気なさでした。(海軍元帥にそれは)まずいですよ! 

 

 そんな二人組は今ではとても仲良くなっており、シアパイセンに対する関係は【シア・ユーリア/親友/好】になりました。

 無口でコミュ障で陰の者なホモちゃんがたった半年でここまで仲良くなれたのは、ひとえにパイセンの人柄ですね。

 すげぇよ、シアは。

 

「ホムラ、シア。しばらく帰ってはこれないが、準備は大丈夫か?」

 

「……ん」

 

「はーい!」

 

 ホモちゃんはガープの休暇に合わせて、半年ぶりにフーシャ村に帰郷することになりました。パイセンもどうやら付いて来るようです。パイセンは境遇としてはホモちゃんと似ていて、海軍本部将校の父親に憧れて故郷を離れてマリンフォードに勉強に来ているらしいです。この歳で偉いですね。

 

「よし、それじゃあ行くぞ」

 

 しゅっこ〜! ヨーソロー! 

 

 さて、フーシャ村に着くまで倍速で飛ばしている間に、なぜフーシャ村に帰るのかの理由を説明しておきましょう。

 

 それは今回の帰郷で、とある目的を果たすためです。

 

 覚えていますでしょうか。記念すべき私の最初のガバ。

 まだ何も悪いことをしていなかったのに、ゲーム開始と同時に背負わされた†咎†。

 ルフィと兄妹になってしまうというガバです。

 

 しばし遅れをとりましたが、今や巻き返しの時です。

 

 うすうす察している方もいらっしゃるかと思いますが、この後コルボ山でエースとついでにサボに会う予定です。

 ガバのリカバリーのために、エースと良好な関係を築く必要があるのです。なぜそういう話になるのかというのは、おいおい語るとして、まずはどうやってエースと仲良くなればいいのかというのが問題です。

 

 なぜなら、ホモちゃんは無口のコミュ障。フーシャ村での滞在期間はせいぜい10日もあれば良いという程度。この短期間でコミュニケーション能力に永続デバフを受けているホモちゃんが、全く知らない人間と仲良くなれるわけがありません。

 

 その上、この時期のエースはまるで狂犬のように誰彼構わず噛み付き、なかなか他人を信用することのないめんどくさい困ったちゃんです。

 誰とでも仲良くなれるルフィですら、仲良くなるのにあれだけ苦労したのです。いくら義兄弟の盃を交わしたルフィの妹とはいえ、正攻法で挑んでホモちゃんが仲良くなれる可能性は万に一つもありません。それに加えて、ホモちゃんは海兵志望。万に一つどころか、億に一つです。

 

 ですが、走者には策があります。問題ありません。

 

「ホムラ! おかえり!」

 

「……! ただいま……!

 

 フーシャ村に着くと、マキノ姉貴が満面の笑みでホモちゃんを抱きしめてくれます。

 でかい! 説明不要ッ!

 ホモちゃんもぴったりとマキノ姉貴ひっついて、とても嬉しそうにしています。

 

 その後、パイセンの紹介をしつつ少し話をして、今夜帰って来てマキノ姉貴の家に泊まるのを約束してから、ルフィに会いにコルボ山に行くというガープに着いていきます。

 

 なぜか山賊をやっている聖人ことダダン姉貴……姉貴? おば……

 おばさんだと!? ふざけんじゃねぇよお前! お姉さんだろぉ!? 

 

「ホムラ! 久しぶりだな!」

 

 ニコニコ笑顔で迎えてくれるルフィ。そして、ダダンの家の隅から警戒するようにこちらを伺うのがクソガキどもこと、エースとサボですね。

 

 ガープとダダンが話している間に、ルフィは「義兄弟を紹介するよ!」とホモちゃんと自己紹介を済ませたシアパイセンを引き連れてエース達の下に案内してくれます。

 

「義兄弟って、何?」

 

「一緒に盃を交わすんだ! そしたら、血は繋がってなくても義兄弟になれるんだよ!」

 

「なるほど……?」

 

「仲良しなんだね! いいなー!」

 

「ししし! だろ!」

 

「シアたちもその〝さかずき〟……? とかいうのやろうよ! ホムラちゃんと義兄弟になりたい!」

 

「……わたしとシアなら、義兄弟じゃなくて義姉妹だと思う」

 

「やろー! やろー!」

 

「……まぁ、いいけど」

 

「やったー!!」

 

「なら、あとでダダンの酒(もら)ってきてやるよ!」

 

「ありがと! ルフィくん!」

 

 ルフィに義兄弟の契りのことを聞いて、ホモちゃんとそれをしたくて仕方なくなってきたシアパイセンと、頬を染めて照れながらも素っ気なく許可を出すホモちゃん。微笑ましいですね。

 

 ところで、ルフィ。その発言を聞いたダダンがものすごい形相で睨んできてるが、ええんか? 

 

 それにしても、パイセン。出会って数秒でルフィとめっちゃ仲良くなってますね。これが陽キャか。ルフィも陽の者なので、陽と陽で引かれあっているのでしょうね。

 陽キャはスタンド使いか何かかな? 

 

 そんな風に和やかに話している三人ですが、エースたちは全く警戒を解く様子はありませんね。ルフィと仲良くしている様子を見せれば多少は警戒を解くかと思いましたが、手強い相手です。

 

 ですが、ご安心を。走者の策は無敵です。走者の華麗なるクソガキ懐柔策。それをとくとご覧に入れてやりましょう! 

 

 おらぁ! 見たけりゃ見せてやるよ! 

 

「……ん」

 

「あ? なんだこれは?」

 

「……お煎餅」

 

 意外! それは餌付け!

 食い意地の張ったこの歳のガキなどこれでイチコロやで!

 

「ちっ……いらねぇ」

 

 パシッ(エースがホモちゃんの渡そうとした煎餅の袋をはじく音)

 

「……」

 

 ……あったまきた……(冷静) さてはお前、死にたいらしいな? 

 

 ホモちゃんがお前と仲良くしたいと思って、少ないお小遣い握りしめながら買ってきた煎餅(特盛り・1000ベリー)やぞ! この犯罪者予備軍がよぉ……! 

 

 ドゴォ! (腹パンの音)

 

「ぐあっ!!」

 

「「エースッ!!!!」」

 

 この手に限る。

 

 ホモちゃんに殴られたエースが冗談みたいに吹っ飛んで壁に激突しました。それを追って駆け寄るルフィとサボ。パイセンは「あちゃー」みたいな顔してます。

 

 せっかくコミュ障陰キャのホモちゃんが、ガープの孫(義)だからってことで頑張って自分から進んで歩み寄ってやったってのに……このクソガキがよお。

 

 ですが、ご安心ください。もちろん計画通りです。

 

 まず、お菓子をあげることで懐柔する買収策。それが叶えばヨシ。もし叶わなかったら実力行使するのでヨシ。元々二重の策です。

 古来より、殴り合いは友情を育むものとして代表的な手段の一つです(走者調べ)。

 喧嘩友達とか、喧嘩ップルとか、古事記にもそう書いてありますし、なんなら日本書紀にも書いてあります。聖書はどうでしたかね。でもきっと書いてあるでしょう(適当)。

 

 これが走者の策の全てです。あまりにも完璧で我ながら惚れ惚れしますね。

 

 やはり暴力はすべてを解決する。(至言)

 

「いってェ……」

 

 よろよろと起き上がるエース。

 

「……ふっ」

 

 挑発するように鼻で笑うホモちゃん。普段大人びたホモちゃんがこれは、相当おかんむりですね。なけなしのお小遣いは子どもにとって安くないんや! 

 

「ッ! テメェ……!!」

 

 独歩(エース)、キレた!! 

 

 エースが飛びかかってきますが、ホモちゃんは軽くいなします。【少年】である上に素質値もバカ高いエースには【幼女】のホモちゃんでは、膂力では敵いません。しかし、戦闘技術に関しては【技10】で且つ学校できちんと学んできたホモちゃんと、そこら辺のゴロツキと大差ないエースでは雲泥の差。

 

 エースの攻撃を軽々と避け、いなし、隙を見つけては的確に殴り返していきます。エースの態度にムカついて思わず殴っちゃったホモちゃんですが、それでも〈不斬(なまくら)〉を抜かない程度には冷静でわきまえているようです。

 

 貴様……命拾いしたな……

 

 ちなみに、ホモちゃんの煎餅は巻き込まれないようにシアパイセンがちゃっかり回収していました。えらい。

 

「がぁっ!」

 

 再び吹き飛ぶエース。

 

「エースッ! この!」

 

「サボまで! やめろお前ら!」

 

 ボコボコにされるエースを見て、乱入するサボ。

 

 ちょうどいい。エースだけじゃモノ足りねえと思ってたんだ。まとめてかかってきやがれ。相手になってやる。

 

 ルフィはさすがに妹と殴り合いなんかしたくないようで、必死に止めようとしています。

 

 パイセンは困った顔をしながらも完全に観戦モード。ついでにガープとダダンと愉快な仲間たちも観戦モード。ガープなんて煎餅を食べながら「やれ!」だの「そこだ!」だの囃し立て始めました。お前、一応ホモちゃんとエースの祖父(養祖父)だけどええんか……? 

 

「シア、ダダン、お前らも食うか?」

 

 終いにはなんか煎餅を勧め出しました。それ、ホモちゃんのなんだけど……

 

 1対2になって、さすがにホモちゃんも苦戦しています。自分より身体能力がかなり高い相手が二人。いくらホモちゃんの戦闘技術が高くとも、力も体力も速さも劣るホモちゃんではなかなか厳しい戦いです。

 

 しかし、多少苦戦するからなんだ。

 退かぬ!! 媚びぬ!! 省みぬ!! 

 ホモちゃんに敗北も逃走もないのだ!! 

 

 その後、なんやかんやあって決着。結局勝ったのはホモちゃんですが、体力を切らして立ちながら肩で息をしていますし、何発かもらったのか痛そうにしています。

 

 なお、エースとサボは無様に転がっています。戦場では勝者は常に一人……!!

 

 ともあれ、ヨシ! これでホモちゃんとエースは仲良しだな! 

 

 ん? あれ……? 【ポートガス・D・エース/敵/嫌】……? 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 ガバったーー!!!! 

 

 やべーやべー! どうしよう! 

 

 殴り合いで友情が芽生えるんじゃねえのかよ! 

 古事記も日本書紀もデタラメ書きやがって……!! 

 まともに考えれば喧嘩で友情が生まれるわけねーんだよ! アホかお前はさぁ!!

 

 これから、意中の相手や仲良くなりたいクラスメイトに、仲良くなる手段として喧嘩を吹っかけようとしている兄貴姉貴たちは気をつけてください。今回得た教訓は、喧嘩じゃ友情は生まれないということです。これでまたかしこくなりましたね。

 

 あー……にしても、どうするかなぁ……これ。

 またチャート組み直しかよ。はあ……つっかえ。

 

 まじくそー(コントローラー投げ捨てる)もう二度とやらんわこんなクソゲー。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 ッス(コントローラー構える音)

 

 まぁ、起きちゃったもんはしょうがない。切り替えていけ。

 まだ諦めるような段階ではありませんし、ここから巻き返しを……? 

 

 ……ん? 【ポートガス・D・エース/友達/良】……? 【サボ/友達/良】……? 

 

 ファッ!? コントローラー投げ捨ててる間に何が起きた!? 

 

 えっと、ログを見た感じ、シアパイセンが喧嘩をした三人を取り成したみたいですね。それから会話を回して、上手いこと三人の間に入る形で話題を提供しつつ潤滑剤のように働いたみたいです。

 シアパイセンの手のひらの上で踊ってるとも知らず、三人はお互いにいろいろと話します。ホモちゃんが二人を強かったと褒めると、エースたちはホモちゃんの卓越した戦闘技術を褒めて、と。

 そんなことをしていたら友達になっていたみたいです。

 

 …………シアパイセン……人間の鑑か……? おそろしい陽キャ()……!! 

 

 すげえよ、シアは。(本日二度目)

 やっぱり持つべきものは、古事記や日本書紀じゃなくて優秀な仲間やで! 

 

 ガバれども リカバリすれば ガバあらず(詠み人知らず)

 

 ガバはなかった。いいね? 

 

 まぁなんやかんやありましたが、そんな感じで目標を無事達成したので、ヨシ!(現場猫)

 

 この後、パイセンに捧げる感謝の正拳突きをしに逝ってきます。

 

 アリーヴェデルチ! (さよならだ)

 

 

 

 



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幕間 海賊志望・海兵志望

今回の話は難産、というかなんというか。
ちょっと上手く書けた感じがしない……

三人称一元視点で書きました。だからかな?

後で修正するかもしれません。


「なんなんだ? あいつら」

 

「あのジジイは……ルフィのジジイだ。後の二人は知らねえ」

 

 小さく呟いたサボに、エースもまた小さな声で返答した。

 突然やってきたガープが、また小さな子どもを連れてきた。しかも今度は二人だ。あいつらもここに預けられるのだろうか、そう考えると、エースは顔を顰めずにはいられなかった。

 

 今となってはエースはルフィとは義兄弟として仲良くやれているが、最初からそうであったわけではない。初めは、付きまとってくるうっとうしいヤツ。ぐらいにしか思っていなかったのだ。

 しかし、ブルージャムの仲間のあの海賊──ポルシェーミの一件があって、ルフィは信用できるやつだとわかった。ブルージャムに命を狙われることになったから三人で協力するようになって、一緒に暮らしていくうちに掛け替えのない存在になった。

 そして……義兄弟の盃も交わした。

 

 だが、ルフィと仲良くなれたからってあいつらとも仲良くなれるとは限らない。というか、エースは仲良くなんてなる気はない。それどころか、エースとサボとルフィ。この三人の輪の中には誰にも入られたくないとすら思っている。

 そもそも、命を狙われているエースたちと仲良くすればあいつらも命を狙われかねない。エースにとってあいつらがどうなろうが知ったことではないが、自分たちのせいで捕まったりしたら面倒だしなんとなく嫌な気分になる。きっと、あいつらが情報をもらす可能性があるからだろう。やはり、近くにいてほしくはない。

 

「……ルフィとは仲良さげだな。知り合いなのかな」

 

「……」

 

 その可能性もあるが……フーシャ村にあんな子どもはいただろうか。

 

「こっちに来るな」

 

「……ああ」

 

 表情が乏しい静かな女と明るくニコニコした女。正反対の二人だ。そんな二人組を、ルフィが引き連れてきた。

 

「エース! サボ! 紹介するよ! おれの妹と新しい友達だ!」

 

「シアはシアだよ! よろしくね、エースくん、サボくん!」

 

「ホムラ……妹の方」

 

 静かな方──ホムラはルフィの妹だったのか。道理で親しげだったわけだ。そういえば、以前ルフィは双子の妹がいると言っていた。こいつがそれだというわけか。

 

「ああ、よろしく。おれはサボだ」

 

 ルフィの妹だと聞いて、サボは多少警戒が解けたようで無難に挨拶を返した。

 

「……エースだ」

 

 だが、エースは警戒心をまるで解かなかった。エースは覚えていたのだ。ルフィの妹は海兵を目指しているという話を。こいつは敵だ。となると、一緒にいるシアも同じ海兵志望なのだろう。エースはより一層ホムラとシアに対しての警戒を深める。

 

「……」

 

 ホムラがエースをじっと見つめてくる。何を考えているかわからないが、海兵なんぞを目指しているやつに見られるのは不快だ。

 

「……ん」

 

 スッと、何かを差し出してきた。どうやら、袋に入った煎餅のようだ。だが、そんなものを渡してきてどうするのだ。

 

「あ? なんだこれは?」

 

「……お煎餅」

 

 そんなものは見ればわかる。エースが知りたいのはそういうことではない。

 

「……お菓子あげれば……仲良くなれるって聞いた……おいしいよ……?」

 

 その言葉を聞いて、エースはカッと頭に血がのぼるのを感じた。それではまるで、餌付けだ。エースはそんな手段で懐柔されるようなガキでもないし畜生でもない 。バカにされているのかと思った。

 思わずとっさに手を振り上げて……振り下ろす場所に困った。相手はルフィの妹だ。それでなくとも歳下の女。こんなことで殴りかかったりするのはさすがに情けないとエースは思った。

 

「ちっ……いらねぇ」

 

 振り上げた手で、煎餅の袋を弾く。このぐらいなら許されるだろう。これで多少は溜飲が下がった。

 

「……」

 

 

 ◆

 

 ホムラの表情が完全に消える。ホムラは、実は今日ここに来るのをわりと楽しみにしていたのだ。ガープから、血は繋がっていないがもう一人孫がいると、今はルフィと同じ場所に預けていて今回の帰郷で会いにいくと聞いた。

 初めて会う相手だが、ガープの孫なら自動的にホムラにとっても家族ということになる。親友のシアは家族は仲良くするものだと言っていた。

 

 だから、ホムラもなんとか仲良くなれないかと考えた。教官にアドバイスをもらってプレゼントを贈ると良いと聞いたから、月500ベリーのお小遣いを貯めて1000ベリーのお煎餅を用意した。

 マリンフォードにあるホムラの大好きなお店のお煎餅。きっと喜んでくれるはず。

 そう信じて疑わなかった。

 

 やってきたダダンという山賊の住処。ガープに教えられたエースという少年。なぜかもう一人子どもがいたが、ひとまずはエースだ。

 

 ホムラは周りの人には隠しているが、実は口下手で結構人見知りするタイプだ。生来の大人しい性格と相まって、知らない人と会話するのはいつも一苦労する。このことはまだ誰にも気づかれてはいないだろうが、苦手なことだと自覚していた。

 

 だけど、初対面だがエースは家族ということになっている。だから、ホムラは勇気を出して自分から話しかけた。

 お煎餅もちゃんと渡そうとした。

 

 なのに……なのに、お煎餅は受け取ってくれなかった。それだけならまだ良かった。もしかしたらお煎餅が嫌いだったのかもしれない。それならプレゼントにお煎餅を選んだホムラが悪い。そう納得しかけて、その思いも霧散した。

 

 あろうことか、エースはホムラのお煎餅は乱雑に払い除けたのだ。ホムラが二ヶ月分のお小遣いで買った、自分で食べるのも我慢してエースのために用意したホムラの大好物。これから家族になる彼にも一緒にこの美味しいお煎餅を共有してほしくて、喜んでもらえると思ったのに。

 

 全てを裏切られたホムラは、もうすでにエースのことを嫌いになりそうだった。

 

 そもそも、食べ物を粗末にするのは悪いことだ。ホムラはマキノにそうやって教えてもらった。その上、それがホムラの大好物だったのだから尚更だ。もうホムラはこの男をボコボコにしたくて仕方なかった。この男は〝悪〟だ間違いない。

 だけど犯罪を犯したわけではないから、捕まえることはできない。

 

 だけどまぁ、一発ぐらいは良いだろう。

 

 食べ物は粗末にしてはいけないと、わからせてあげなければならない。ガープがルフィによく行っていた、教育の拳だ。この一発でなんとか頑張って怒りを沈めよう。そして、この男に食べ物を粗末にしてはいけないとキチンと教えてあげるのだ。

 

 そう思った時にはすでに、ホムラは拳を振り抜いていた。

 

 あんなに楽しみにしていた自分が滑稽で笑えてくる。くだらない。家族はルフィとガープにマキノと、それに義姉妹の盃を交わす約束をしたシアだけで良い。

 

 ルフィには悪いけれど、この男はいらない。

 

 ホムラはそんなことを考えていた。

 

 ◆

 

 

「ぐあっ!!」

 

 ──こいつッ! いきなり殴ってきやがった!! 

 

 ホムラに殴られたエースは吹き飛び、壁に背中を叩きつけられる。

 

「「エースッ!!!!」」

 

「いってェ……」

 

 なんとか起き上がるが、殴られた腹と壁にぶつけた背中がズキズキと痛む。

 いきなり殴り掛かってくるか、普通? エースはつい先ほど、ホムラに殴り掛かりそうになった自分を棚に上げて、ホムラの神経を疑った。

 

 だが、それでもエースはまだ冷静だった。菓子を跳ね除けたのは、悪いことだと自覚していたからだ。せっかくあげようとした菓子にそんな扱いをされればホムラが怒ることも理解できる。

 

 いきなり殴り掛かってくるのはおかしいが、一発くらいは甘んじて受けよう。そう思う程度には、エースは悪いことをしたと自覚していたし、やはりまだ冷静だった。

 そう、冷静だったのだ……次の瞬間まで。

 

「……ふっ」

 

「ッ! テメェ……!!」

 

 ──ハナで笑われた……? 

 

 ──このおれが……? 

 

 ──クソッ!! 許さねェ……! ブッ飛ばしてやる!!!! 

 

 ああ、確かに悪いのはエースだっただろう。一発くらいは甘んじて受けてもいい。

 だが、嘲笑されて黙っていられるほどエースは大人ではなかった。ホムラが何を思って嘲笑してきたのかは知らないが、ナメられたままでいられるわけにはいかない。女だからとか関係ねえ。わからせてやらねばなるまい。

 

 冷静さを明後日の彼方へ投げ捨る。やはりこいつは敵だった。警戒していて正解だった。海兵志望なんてロクな奴はいない。そう判断してからはエースに迷いはなかった。

 

 エースが突っ込むと、自分から喧嘩をふっかけたはずのホムラはなぜか驚いた顔をした。反撃されないとでも思ったのだろうか。

 だが、どうだっていい。エースは構わず殴りかかる。

 

「オラァ!」

 

 しかし、彼女はそれを難なく躱す。さらなる攻勢を仕掛けるが、悉く防ぐ、躱す、受け流す。さらには、隙を突いてエースの腹を的確に殴り抜いてきた。とっさにかわそうとしたが、あまりにも的確なタイミングだったためにろくに防御もできず、再び殴り飛ばされた。

 

「がぁっ!」

 

 ──こいつ! クソつええ……!! 

 

 ホムラのことを歳が下だし女だしと、絶対に格下だと思っていたエースだったが、その予想以上の強さに唖然とする。

 まるで流水を相手にしている気分だった。攻撃は何も通じず、流れるようなカウンターを打たれた。

 

 コルボ山の獣や、並みの大人相手になら難なく勝てるエースだが、そのエースをもってしても明らかな強者。力や速度はこちらの方が速いし、今まで相手してきた敵と比べても特別速いというわけではない。

 だが、その技術力という一点だけが、力技しか覚えのないエースにも明確にわかるほどに鮮やかで圧倒的だった。

 

 それでも負けるわけにはいかない。エースは何よりも逃げ出すことが大嫌いだ。何度殴られてもエースは己を奮い立たせて、諦めずにホムラに殴り掛った。

 

「エースッ! この!」

 

「サボまで! やめろお前ら!」

 

 サボが加勢してくると、状況が変わった。元々、身体能力はエースが勝っていたのだ、いくらホムラに技術があるとはいえ、自分よりも基礎的なスペックが高い相手に二人掛かりで攻められればさすがに苦戦するらしい。

 

 その上、エースとサボのコンビネーションは抜群だ。

 

 サボが加勢した以上、エースは負ける気がしなかった。

 絶対に勝てる。そう確信していた。

 

 だが……

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

「ッ……! ……く、くそっ!」

 

「……はぁ……ふぅ……」

 

 床に転がっているのは、サボとエース。疲労困憊でありながら立っているのはホムラだけ。

 

 負けたのだ、エースは。歳下の女に、二人掛かりで挑んで、それでも負けた。もう情けなさで死にたい気持ちだった。

 何発か攻撃は当てることができたが、それでも攻撃を当てた回数ではエースたち二人を合わせてもなお、ホムラの方が十倍は多いだろう。

 

 完膚なきまでの敗北だ。

 

「……はぁ…………嫌い。かえる」

 

 小さく簡潔に今の心情を呟いたホムラは、踵を返す。

 

「……ハァ……おい、……待てッ!」

 

 エースはとっさに呼び止める。なんでそんなことをしたのか自分でもわからない。気づいたら声を上げていた。しかし、ホムラはそれを無視して出て行こうとする。だが、そこに待ったをかける者がいた。

 

「待って! ホムラちゃん!」

 

 シアだ。親友であるシアの呼びかけに、ホムラは足を止めた。

 

「……なに?」

 

「えっとぉ……、そう! 喧嘩したら仲直りしなきゃダメだよ!」

 

「なんで?」

 

「何でって……何でも!」

 

「……べつにいい。仲良くする気はない」

 

 にべもなく突き放すホムラに困ったような顔をするシア。彼女は本気でエースたちのことが嫌いなようで、もう目を向けもしていない。

 

「もう! ホムラちゃんが知らない人と話すのが苦手なのは知ってるけど、こんなんじゃダメだよ!」

 

 シアの言葉を聞いて、明らかに動揺した表情をするホムラ。今の言葉のどこに動揺する要素があったのだろうか。彼女が口下手で人見知りなのは、この短時間しか接していないエースでもすでに気づいていたことだ。きっとサボも気づいているし、ダダンたちも気づいたことだろう。

 いや、ルフィだけは気づいてないかもしれん。あいつはバカだ。

 

「な、なんで……知って……」

 

「仲良くなりたいならちゃんと話さなきゃ! あんなにエースくんと仲良くなりたいって言ってたじゃん!」

 

 ──は? ホムラがおれと仲良くなりたかっただと……? 

 

 ホムラと出会ってからのことを思い出す。挨拶された。菓子を差し出された。お菓子をあげると仲良くなれるとかなんとか言ってた気がする。それを断った。それだけで飽き足らず払い除けた。そしたら殴られた。そりゃそうだ。

 鼻で笑われたことだけは理由がわからないが、ホムラのこの様子だと別にエースを嘲笑したのではなく、何らかのちゃんとした理由があったのかもしれない。

 それで逆上して二人掛かりで殴りかかったのは、今になって思うと明らかにやりすぎだ。

 

 ──全面的におれが悪くねぇか……? 

 

 海兵志望だからといって、あまりにも警戒心が強すぎてホムラのことを穿りまくった目で見ていたことを、エースは今更ながらに自覚する。

 ただ菓子をくれようとしただけで餌付けってなんだ。常識的に考えてそんな訳がないだろ。発想が飛躍しすぎだ。

 

 冷や汗がたらりと流れる。

 

「おい待て、それは本当なのか……?」

 

「知らない」

 

「もー! ホムラちゃんはいつまで拗ねてるの! あんなに会うの楽しみにしてたでしょ! ガープ中将のお孫さんなら、家族だから、仲良くなりたいって! 言ってたじゃん!」

 

「……」

 

 表情に乏しいのでわかりにくいが、何となく恥ずかしがっている気がする。その反応を見れば、誰でもわかる。本当のことらしい。

 

 それにしても……家族、か。エースに血の繋がった両親はすでにいない。それどころか、父親はもう死んだがとんでもない大罪人だ。そのことを知れば、誰もがエースを嫌い、蔑み、否定する。エース本人だってそんな迷惑な父親のことは大嫌いだ。

 ホムラはきっと、エースの父親のことは知らないだろう。ガープにエースの素性を聞いていないからこそ、その言葉が出てきた可能性は高いだろう。

 それでも、自分を家族と呼ぼうとしてくれたという事実は、多少なりともエースの心を動かした。少しだけ、ささくれ立った心を解きほぐした。

 

「……すまん。おれが悪かった」

 

「……!」

 

 エースは、一言で言うとクソガキである。その上、海賊を目指していることから、食い逃げ、盗み、暴力など、悪いことはなんでもやってきた。さすがに、例え相手が悪人であっても殺しはやってないし、一般市民への暴力も基本的にはしない。だが、それでも札付きのワルであるのは間違いない。

 

 しかし、それらも悪いことをやっているという自覚はちゃんと持っている。反省はしないが、自覚は持っているのだ。

 

 だからこそ、その気になれば自分の非を理解して詫びるくらいのことは当然できる。

 

 札付きのワルではあるが、エースはタガが外れた悪人などでは決してないのだ。

 

 ましてや相手はめちゃくちゃ強いとはいえ、歳下の7歳の女子。こんな相手にしっかりと詫びを入れないのは、むしろダサすぎることだと、自らの高くそびえ立ったプライドが囁いた。

 

 エースが頭を下げると、ホムラは何かを考えるような仕草をする。

 

「……お煎餅……好き?」

 

「あ? ……まぁ、どっちかと言えば好きだ」

 

 付け加えるなら、辛ければなお良い。

 

「食べる?」

 

 そう言って先ほどと同じように袋を差し出すホムラ。なぜか封は開かれていて、中身が若干減ってる気がするが気のせいだろう。

 

「じゃあ、もらう」

 

「おいしい?」

 

「美味いな。今まで食べた煎餅で一番美味いかもしれねえ」

 

「ならいい」

 

 ホムラは満足そうに頷く。これは、謝罪を聞き届けてくれたのだろうか? 

 彼女は無口で表情も乏しく、エースには彼女が何を考えているのかよくわからない。結局そのすれ違いと、エースの被害妄想じみた思考の結果がさっきの喧嘩だ。今後も同じようなことが起こらないとも限らない、これはめんどうだなとエースは頭を抱えた。

 

「ほら! ホムラちゃんも謝って! 事情があったとはいえ、先に殴っちゃったのホムラちゃんでしょ!」

 

「ん、ごめん」

 

「あ、ああ」

 

「よし! ちゃんと仲直りできたね! サボくんもそれでいい?」

 

「……いいもなにも……ホムラ、悪かった」

 

「ん……わたしも、ごめんね」

 

「じゃあ、この話はおしまい! それより、もっと楽しいお話しようよ! さっきの喧嘩見てたけど、エースくんとサボくんも強かったね!」

 

 それは、楽しい話なのか? エースは疑問に思った。

 エースやサボ、ルフィにとっては喧嘩の話などは大好きだが、女子がそれを楽しいと思うのは何となく違う感じがする。だがまぁ、他でもない女子であるシアがその話を楽しいと思っているのだから、女子もこの手の話が好きだということなのだろう。

 エースはそう納得した。

 

「別に、強くねぇ。二人掛かりでホムラに勝てなかった」

 

「ああ、情けねぇよ」

 

 エースは己が強いと思っていた。サボもルフィも同じ気持ちだろう。──ただし、ルフィはあまり強くないが。

 今まで大人や獣に何度も勝利しているのだから、それは事実として間違いではない。

 だが、今回の喧嘩で自分の弱さを知った。ホムラはもっと強かった。

 

「そうだよ! ホムラってあんなに強かったのか、びっくりしたよ!」

 

「べつに、強くない」

 

 ルフィが心底驚いたように叫ぶ。兄なのにホムラの強さを知らなかったのか。以前、妹は海軍本部に行ったとルフィは言っていた。だとすると、海軍本部に行ってからこれだけ強くなったのだろう。それは少し、羨ましい。きっと、向こうには戦い方を教えてくれる優秀な指導者がいるのだろう。エースたちの環境だと、そんな存在はいないため独学で強くならねばならないのだ。

 

 まだ7歳のホムラだ。きっと、海軍の正式な海兵たちはもっと強いだろう。ホムラ本人も、自分は強くないと言っている。ホムラより強いやつがたくさんいるのだ。

 そう思うと、このままではいられない。もっと強くならないと、大海賊になんてなれはしない。エースは気合いを入れ直す。

 

「おれは、大海賊になんのさ。誰にも負けねぇくらい強くなる!」

 

「おれも自由な海賊になるんだ! このままじゃいられない!」

 

「おれは海賊王になるぞ!」

 

 エースの言葉に、サボとルフィが続く。別にここで夢を語る必要は特にない。だが、何となくホムラにはこれを言っておきたかった。エースは強い奴が好きで、弱くて情けない奴は嫌いだ。悔しい気持ちが最も強いが、自分たちを打ち負かしたホムラに対して尊敬の気持ちは僅かながらにあるし、すでにその強さを認めていた。

 だからなのか、こいつにも認めてもらいたいと思ったのかもしれない。自分の夢を、エースという存在を。

 

 後ろの方で「まだ海賊になるなどと、くだらんこと考えいるのか!」という怒声が聞こえたが、無視でいいだろう。

 

「……海賊。なら……シアたちのライバルだね!」

 

「わたしは最強の海兵になる……だから、三人ともわたしたちが捕まえる」

 

「捕まるわけにはいかねぇな」

 

 ライバルか……

 なるほど、その言葉はしっくりくる。ホムラもシアも、海兵志望の敵だが、すでにわだかまりはない。戦闘能力で圧倒したホムラはもちろん、シアの明るい人柄は敵となったら厄介になりそうだし、その実力はわからないがきっとかなり強いはずだ。彼女たちとライバルとして戦っていく関係。そういうのも悪くはないだろう。

 

 何より、この二人。特にホムラには負けたくないと、強く思う。エースは今までサボ以外の子どもに負けたことがないのだ。サボは敵ではなく義兄弟だし、負けてもそれはいつも通りの修行の一環にすぎない。

 だが、ホムラは違う。こいつは海兵志望の敵だ。だからこそ、負けたくはないし、こんなに悔しい思いをしているのだ。

 

 ──面白いじゃねえか。

 

 エースは、自然と笑みを浮かべて自らのライバルに堂々と宣言した。

 

「次は絶対に負けねぇ」

 

 その言葉に、やはりホムラも口もとを微かに緩めて笑った。

 

「次も勝つ」

 

 この日、エースはこの先ずっと続くことになる終生のライバルを得ることになった。

 

 

 

 

 

 



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幕間 強いキャラ・つよいきゃら

なぜか完全にギャグ回になってしまいました。
もう最後まで簡易的なプロットは完成してるけど、詳細な部分は基本的にその場のノリと勢いで書いているからこうなる。


 

 

 ガープ中将の休暇に合わせてホムラちゃんの故郷であるフーシャ村に遊びにきて、コルボ山という場所で三人の新しい友達と出会った。

 

 最初のうちは、すれ違いがあってホムラちゃんとエースくんとサボくんが喧嘩になっちゃったけど、必死に宥めたらなんとかなってくれて良かった。

 

 それからは五人でいろいろなことを話して、仲良くなれたのは良かったけど、三人が海賊を目指しているということには驚いた。

 エースくんとルフィくんは、海軍の英雄であるガープ中将のお孫さんだ。そしてサボくんはその二人と義兄弟。そんな彼らが海賊を目指すのは変な話だと思った。ルフィくんの妹であるホムラちゃんの夢が最強の海兵なのだから、なおさら。

 

 海兵を目指しているシアの立場なら、海賊にならないように止めるのが正解なんだと思うけど。シアは止めようとする気は起きなかった。

 彼らの夢を語る目がまっすぐで、キラキラしていたからだ。たしかにシアには未来の海兵として、責務があると思う。

 だけど友達として、それを否定することはしたくなかった。責務より友達を優先するシアは、正義感の足りないダメダメな海兵かもしれないけど、自分の本心に嘘はつけない。

 

 それに、悪いことをした友達を止めるのも友達の役目。彼らが将来、海賊としてではなく人として、足を踏み外すことがあればそのときはシアとホムラちゃんが捕まえればいいのだ。

 

 だから、ライバルなんて言葉を使ったのだ。将来、悪いことしたら捕まえるよ、という宣言だ。

 

 それからは、海賊を目指している三人に怒ったガープ中将がゲンコツを浴びせ、その流れでそのままみんなでガープ中将に稽古を付けてもらうことになった。

 ガープ中将の教えはとても参考になる。学校でもたまにホムラちゃんの様子を見に来たガープ中将に、ホムラちゃんと一緒に稽古をつけてもらっていた。

 

 そのおかげでシアもかなり強くなれたし、ホムラちゃんなんて前に戦闘訓練の相手をしてくれた准尉を倒してしまったくらいには強い。准尉はもちろん大人で、ホムラちゃんとは身長も力も全然違う。それなのに勝ってしまったのだ。親友として鼻が高い。

 

 さすがにその後で戦闘訓練の相手になった大尉の人には負けてしまったが、かなり良いところまでいってたし、大尉も手放しでホムラちゃんを褒めていた。

 ちなみに、シアはそれなりに戦えはしたけど准尉に普通に負けた。

 

 だから、そんなホムラちゃんを二人掛かりとはいえ追い詰めたエースくんとサボくんは本当にすごいと思う。シアもエースくんと模擬戦をしてみたけど、引き分けだった。年齢の差があったとはいえ、海軍学校で訓練を積んでいるシアと、誰にもロクに戦い方を教えてもらったことのないエースくんが互角なのだ。これはとてもすごいことだ。

 

 そんなこんなでガープ中将の稽古も終わり、シアとホムラちゃんとガープ中将は帰路に着いた。マキノさんの家に泊まる約束をしていたシアたちはガープ中将と別れ、マキノさんに迎えられて彼女の家兼酒場に入る。

 

 そこで、ホムラちゃんから深刻な顔で相談があると言われて、マキノさんと一緒にそれを聞くことになった。

 

「それで、ホムラちゃん。相談って?」

 

「それは……」

 

「私が助けになれるかはわからないけど、困ってることとか悩みがあるなら教えて? ホムラの助けになりたいわ」

 

「……ん」

 

 真剣な顔で問いかけるマキノさん。彼女は、ホムラちゃんにとっては大切なお姉さんらしい。血は繋がっていなくとも、二人を見てればどれだけ親密な関係なのかは一目瞭然だ。

 そんな妹から、深刻な表情で相談されるのだ。マキノさんからはホムラちゃんを心配している気配がありありと伝わってくる。

 それは、ホムラちゃんにも十分に伝わっていたらしく、ホムラちゃんはゆっくりと口を開いた。

 

「……実は、わたし……知らない人と話すのが……苦手で……」

 

 苦々しい表情で思いを吐露するホムラちゃん。でもそれは、今更では……? 

 ホムラちゃんが知らない人と話すのが苦手でその大人しさも相まって……いわゆる、〝こみゅしょー〟とか言われるやつなのは誰の目にも明らかだった。シアは彼女と出会ったその日に気づいたし、マキノさんも当然知っていたことだろう。

 

「シアには、バレてたみたいだけど……マキノお姉ちゃんとか、他の人にはまだバレてないはず……」

 

「ホムラ……」

 

「ホムラちゃん……」

 

 なんかもう、いろいろな意味で見ていられなかった。本当にバレていないつもりなのか。シアからすると誰でも気づけるくらいにバレバレだと思うのだけど。この子はこんな感じでこの先生きていけるのだろうか、心配すぎる。

 マキノさんもきっと同じ気持ちだろう。ちらりと横にいるマキノさんの顔を覗き見ると、やはりというかなんというか。まるでかわいそうな子を見るような、憐れむような目でホムラちゃんを見ていた。

 

「そ、そうなのね。つまり、それを直したいってことね?」

 

「シ、シアたちに任せてよ! ホムラちゃん!」

 

 具体的にどうすれば〝こみゅしょー〟が治るのかはわからないけれど、人と話すのが苦手なら、たくさんの知らない人と話して経験を積んで慣れていけばいつかは治るはずだ。シアとマキノさんは、そんなホムラちゃんの隣でサポートをすればいいのかな? 

 

「あの……違う。そうじゃないの」

 

「あれ、違うのかしら?」

 

 ……? それなら、一体なんの相談なんだろう。

 

「ん。わたしは、苦手なだけ。……苦手なだけで、その気になればちゃんとできるはずなの」

 

「それは……!」

 

 ──無理では? 

 その言葉が口をついて出そうになってなんとか堪えた。やればできるとか、やろうとしないだけとか……そういうのはできない人の常套句だと教官が言っていた。

 だけど、無理だなんだと決めつけてしまうのは、あまりにも酷だ。両手の拳を握りしめて「わたしならやれる」と言わんばかりの彼女に、そんな言葉を言うのは憚られた。それに、もしかしたら本当にホムラちゃんならできるかもしれない。それを信じてやれないで、何が親友だろうか。

 

 ……でもやっぱり、心配なのでこれからは傍でホムラちゃんの〝こみゅしょー〟をサポートすることを密かに決めた。

 

「じゃ、じゃあ。そうじゃないなら、相談っていうのは何を?」

 

「ん。わたし、〝くーる系〟を目指そうと思って……」

 

 なんだこの残念な生き物は。あまりにも残念なその姿に、なんだか胸の奥から込み上げてくるものを感じる。この感情はなんなのだろうか。今すぐホムラちゃんを抱きしめたくなってきた。ホムラちゃんはシアを一体どうしたいのか。

 

「教官が言ってた。最強の海兵になるには、強い〝きゃら〟とか言うのがいるって。でも、話すことが苦手だから……ほんの少しだけ難しい」

 

 教官はホムラちゃんに一体何を教えているのかな。

 キャラというのは、いわゆるキャラクターのことだよね。元気系とか、クール系とか、おっとり系とか、人の特徴とか性格を言う言葉らしい。故郷の友達にそういうのに詳しい子がいて、シアも多少だけどわかる。ちなみにシアは、その子に元気系の陽キャって言われた。

 

 でも、それが最強の海兵になるのに必要とはあまり思えなかった。だけど、こんなに深刻に悩んでいるのなら、ホムラちゃんにとっては大事なことらしい。

 

 マキノさんはキャラというのが何なのかわからないようで、頭に疑問符を浮かべていたけど、シアがわかる範囲で説明した。

 

 すると、マキノさんにはキチンと伝わったようで、「なるほど」と頷く。

 

「つまり、ホムラはなにか他人に対して強く印象に残るようなキャラが欲しいのね?」

 

「……! そう!」

 

 なるほど。そういうことなら、最強の海兵に強いキャラが必要って言葉にも一理ある。例えば、ガープ中将なんて特にいい例だろう。豪放磊落で自由で豪快、仕事はサボってばかりだけど、やるときはキッチリやるし戦闘力は海軍の中でも随一。間違いなく、印象に残るしキャラが強いと言えるだろう。

 

 逆に、海軍大将の〝青雉〟さんは何かパッとしない。大将なのだから強いのだろうけど、見るからにオーラがあって強そうな〝赤犬〟さんと、常に変な顔でなんかよくわからない謎の存在な〝黄猿〟さんと比べると、やっぱりパッとしない。これがキャラが弱いということなのかな。

 

「でも、ホムラちゃんは、今でもかわいい系のキャラだと思うよ」

 

「そうね、ホムラはとってもかわいいわ」

 

 正確に言うのならば、かわいい系の陰キャといった感じだろうか。特に、その容姿がびっくりするほどかわいいのがホムラちゃんの最大の特徴だ。

 でも、さすがに陰キャなんて言ったらホムラちゃんがかわいそうだから言わないけど。それにホムラちゃんは自称やればできる子だ。やっぱり陰キャではないかもしれない。

 

「……! それじゃダメなの! ……かわいいとか……そんなの強くない」

 

 かわいいと言われてちょっと赤くなっているホムラちゃんはやっぱりかわいい系だと思う。それに加えて、小動物系とマスコット系も入ってるかな? 

 少なくともかっこいい系やらクール系はホムラちゃんの対極の存在な気がする……。

 

 いや、無口系はクール系の派閥の一つだったかな? 心の中の故郷の友達に尋ねると、彼女はゆっくりと首を縦に振った。

 それなら、やりようはありそうだね。

 

「それなら、ホムラちゃんの〝こみゅしょー〟を逆手にとっ──」

 

「──わたしは〝こみゅしょー〟とかじゃない。やればできる」

 

「そ、そうだよね、うん。わかってるよ、もちろん……とにかく、ホムラちゃんは口べ……あーっと、無口だから。そのまま、無口キャラとか、どうかな?」

 

「無口きゃら……?」

 

「なるほど、そういうキャラもあるのね。それなら、ホムラにぴったりじゃない?」

 

 難しそうな顔で悩むホムラちゃん。無口キャラは嫌なのかな? 

 

「無口きゃら、は……強い?」

 

「うん、クール系の一種だと思うよ!」

 

「なるほど……!」

 

 自分に最適なクール系のキャラがあったことがよほど嬉しいのか、目をキラキラさせて口もとをむにむにと動かして笑みを浮かべているホムラちゃん。そういうことしちゃうから、かわいい系なんだよなぁ……。

 

「それなら、無口系は……どんな風にすればいい?」

 

「決めゼリフとか、どうかしら?」

 

 マキノさんが提案する。

 

「普段無口な子が、ここぞというときにかっこいいセリフを言えば、かっこよくないかしら?」

 

「なるほど……! ギャップだね……!」

 

「「ギャップ……?」」

 

 早くもギャップという、〝強いキャラ〟のあり方に気付いたマキノさんは相当な才能がありそうだ。心の中の故郷の友達も、マキノさんという逸材を見つけて喜んでいる気がする。

 

 ギャップというのは例えば、とんでもない悪党の海賊が、雨の日の寒さに震えている猫にそっと毛布や傘をあげたりする。すると、どうだろうか。あの人にあんな一面があったのかと、誰もが思うだろう。普段の人柄からかけ離れたその一面を見た人は、その人が実は優しくて良い人なのではないかと強く印象付けられてしまうのだ。

 しかし、普段から優しい良い人が、猫に毛布と傘をあげても、それを見た人は「まぁ、あの人ならそうするよね」と、たいして気にも留めない。

 

 これが、ギャップというものだ。

 

 普段から無口なホムラちゃんが、ここぞという場面でポツリとかっこいい決めゼリフをキメれば、それは間違いなく〝強いキャラ〟になれるはずだ。

 

 そんなことを力説すると、二人はなんだか呆けた顔をしてしまった。どうしたのかな? 

 

「ま、まぁ、そんな感じね。どうかしら?」

 

「……ん、すごく良い……!」

 

「よし! じゃあ、三人でホムラちゃんの決めゼリフを考えよう!」

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 その後、あれこれ考えて、実際にホムラちゃんに言ってもらったりしたけど、かわいいホムラちゃんがどんなにかっこいいことを言っても、ただかわいいだけだと気付いた。

 

 でもまぁ、当のホムラちゃんは喜んでいるみたいだし、わざわざ言わなくてもいいかな。

 それにかわいい子がかっこいい言葉を言って、しかもちゃんと強かったら、それはそれでギャップだし……

 

 うん! 〝つよいきゃら〟にはなったと思うよ!

 

 

 

 

 

 




なんか、ホモちゃんがただの萌えキャラみたいになってしまった。なぜだ。おかしい。
これも全部ディケイドってやつのせいなんだ。おのれ、ディケイドォォォォオオオオ!!!!

真面目な話▽
オリキャラの主張が強すぎるのでは?大丈夫か?(意訳)
といったような評価をいただきました。確かに、オリキャラの存在は人によって好みが分かれると思いますし、嫌いな人は嫌いだと思います。ですが、だからといって登場する機会を減らしてしまえば何のために登場させたのか、別にいてもいなくても……という問題になってしまいます。
私としましては、オリキャラが嫌われやすいことも重々承知しております。その上で、アンケートをしてまで一度出すと決めた以上は積極的に話に絡ませていき、キャラを立たせていければと考えています。
オリキャラの存在を不満や不安に思ったりする気持ちもわかります。ですので、オリキャラを少しでも多くの人に受け入れてもらえるような、好きになってもらえるような魅力的なキャラとして書けるよう精進いたします。
このようなことを、しっかりと声に出して教えてくださってありがとうございました。真摯に受け止め、私なりにみなさんに面白いと思っていただけるような作品を書けるよう、努力いたします。


ということでかっこいいセリフオブグランプリです。

思いついた瞬間脳汁が出まくったのが1番。
旅に【ユメ】っていうルビを振るのが最高のオサレポイント。
2番と4番もオサレポイント高め。
3番は安直かなー。5番は煉獄さん(ネタ)

中二病とか言うな!


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#7 卒業

独自設定・独自解釈タグ注意です。

原作での海軍側の詳しい情報が少ない……


 どんどん飛ばしていくRTA、はぁじまぁるよー

 

 前回エースとサボと仲良くなったホモちゃんですが、今回は一気に時間を飛ばして三年後。10歳になったホモちゃんたちは、海軍学校を無事に卒業して、新兵として海軍に入隊することになりました。

 

 この三年間でホモちゃんは【少女】に成長。背丈も伸びて、145cmになりました。シアパイセンと比べて、自分の方が身長が高めなことにホモちゃんは大いに喜んでおります。最近は、隙あらばシアパイセンに身長マウントを取ろうとする元気な日々を過ごしているようです。

 やったね、ホモちゃん! 身長が増えたよ!(なお、ここから一切伸びない模様)

 

 もちろん戦闘力もばつ牛ンに伸びていますし、まだまだ伸びていきます。【少女】になったので覇気もしっかりと覚えました。まだ成長限界には達していませんが、すでにめちゃくちゃ強いです。【技10】が強すぎるんや! 

 

「二人とも、卒業おめでとう。立派な海兵になるのよ」

 

「……ん」

 

「はい!」

 

 教官に見送られて海軍学校を去ります。三年間通い続けた学び舎を背に、ホモちゃんは少し寂しそうです。ですが、シアパイセンが元気づけるように手を握ると、明るい顔になりました。

 

「ホムラちゃん! 一緒に最強の海兵になろうね!」

 

「……ん!」

 

 あら^〜

 

 微笑ましいですね。これがもしきららだったらホモちゃんはレズちゃんになって、パイセンルートに突入していたことでしょう。しかし、残念ながらこのRTAには恋愛要素は(ないです)。

 

 さて、この後の流れですが、新兵のホモちゃんは当然ですがまだ自分の船を持つことができません。船を持つには、階級にして少尉以上からとなる海軍将校になり、更に階級を上げて少佐以上になる必要があります。

 現在のホモちゃんは新兵なので三等兵ですね。

 自由に動けるようになるのは自分の船を持ってからなので、順番に、三等兵・二等兵・一等兵・伍長・軍曹・曹長・准尉・少尉・中尉・大尉・少佐の順で昇級しなくてはなりません。

 

 ですがご安心ください。ホモちゃんは海軍学校卒業資格を持つエリートなので、新兵として規定の一年を過ごした後は無条件でいきなり軍曹の階級になります。その上、実力主義の海軍では新兵時代の活躍もしっかりと評価されますので、クソデカ戦闘力を持つホモちゃんなら新兵から活躍しまくっていきなり少佐スタートも十分にあり得ます。

 

 ちなみに、新兵になるのと同時にタイマースタート、新兵を卒業し正式入隊すると同時にタイマーストップの海軍本部昇級RTAというものもあります。これは、正式入隊時の階級を競うRTAですが、手軽にできることもありこのゲームでも1・2を争うほど人気のRTAで、たくさんの先駆者兄貴姉貴たちが走りまくっています。

 

 肝心の世界記録はというと、驚くべきことに海軍大将です。この記録を叩き出したのはみなさんお馴染みの海軍大将緋熊兄貴。ヒグマを操作キャラとして、あらかじめ彼を賞金稼ぎとして活躍させまくって名声を高めておき、〝赤犬〟と〝青雉〟の決闘の約一年前に新兵として入隊し、彼らの決闘終了直後に正式入隊。その結果まんまと、空いた海軍大将の穴にヒグマを入れようという話が持ち上がるわけです。

 

 なお、その際のプレイでもきっちりとヒグマは緋熊兄貴のプレイヤーキャラが用意した56皇を打ち倒し、56皇○しを成し遂げております。だからこそ、いきなり海軍大将になれたのでしょうね。普通にやってたら、めちゃくちゃ頑張っても中将が限界ですからね(2敗)。

 

 海軍大将就任時のヒグマの、「おれは8000億ベリーを、この腕で稼いでやった。56人○したのさ。海の皇帝(やつら)のように生意気なやつをな」という言葉はカッコ良すぎて震えましたね。その後にヒグマと会敵したシャンクスが、左腕を犠牲に(以下略)

 

 やはり、ヒグマが最強なことは確定的に明らかです。はっきりわかんだね。

 

 なお、世界徴兵でもいきなり海軍大将になることはできますが、そちらはレギュレーション違反なので記録にはなりません。あたりまえだよなぁ? 

 

 では、満を辞して入隊です。これからは修行の時間は減り、海軍の誰かの船に乗って海に出て実戦で経験値を稼いでいくことになります。肝心の乗る船ですが、これは良好な関係を築いた海軍将校の相手がいれば、その人物を選ぶことができます。ホモちゃんとパイセンの場合は、ガープの船が対象ですね。

 

 ですが、ここはあえてガープの船に乗りません。代わりに、関係を築かなくても無条件で乗せてもらうことができるゼファー先生の船に乗せてもらいましょう。

 

 理由はもちろん、お分かりですね? (ジョルノ・ジョバァーナ)

 

 そうです、ゼファー先生の新兵を乗せた訓練艦を悪逆非道な海賊が襲う例の新兵虐殺事件が目的です。あの事件が起こるのは、ルフィがフーシャ村を発つ7年前。ちょうど、ホモちゃんが新兵となったこの年です。

 

 別に、ゼファー先生を助けたいとかそういう理由ではありません。私は走者なのでね、これもタイムのためです。

 別に、あ、あんたのためじゃ、ないんだからね! (ツンデレ)

 

 この事件に関わることによるメリットはいくつかあります。

 

 一つ目は、経験値稼ぎ。この事件で襲ってくる海賊は、王下七武海や四皇幹部クラスの世界最高峰の強者です。はっきり言って、こんな強者と戦う機会なんて滅多にありません。当然、その強さに見合ったヤベェ経験値をくれますので、うまあじです。

 しかも、今回はゼファー先生という敵と同等の強さの味方がいるわけですから、比較的安全に経験値が手に入るのです。やらない理由はありませんね。

 

 次に、この事件で活躍すればこれまたとんでもねぇ名声を稼げます。名声が高ければ高いほど、海軍からの評価も上がり、正式入隊時の階級が高くなります。正式入隊と同時に自分の船を手に入れなければ自由に動くのが難しくなるので、確実に名声を稼げるこの事件は絶対に外せません。

 

 三つ目に、特別報酬目当てです。ここで活躍しまくれば、その活躍に対しての特別報酬を海軍が出してくれます。その報酬とは、ずばり悪魔の実です。海軍では、将来有望な海兵に対して戦力増強のために、本人が望めば海軍の蔵にある悪魔の実を与える風習があります。

 選択によっては、他にも業物の刀や海楼石製の武器なども選べます。しかし、普通のプレイだと運の要素も絡むため獲得の難しい悪魔の実を、確実に手に入れられる手段があるのは海軍ルートでプレイする大きなメリットの一つ。

 特別報酬をもらえるかは活躍次第ですので絶対とは言えませんが、できれば悪魔の実は欲しいところです。

 

 他にも細々としたメリットはいくつかありますが、大きなところはこの三つですね。

 また、実力主義の海軍において階級と名声は高ければ高いほど自由に動けて、様々なことに融通が利くようになり、たくさんの恩恵が受けられます。ですのでやはり、王下七武海か四皇幹部クラスの強敵相手と確実に戦えるこのイベントは逃せません。

 

 修行やら経験値やら悪魔の実やら名声やらと、シャボンディ諸島時点の麦わらの一味を捕まえるのにそんなに強くなる必要はあるのか? と疑問に思う方もいると思いますが、実際あります。

 なぜならシャボンディ諸島編では、くまが確実に麦わらの一味の味方をしてきますし、レイリーなどの不確定要素もいます。ですので、それらを跳ね除ける強さは必須です。

 そんな不確定要素に対処するためにも、少しでも強くなっておけば保険になりますからね。

 

 そもそもオリジナル主人公で麦わらの一味を捕らえるという称号の獲得条件の都合上、どれだけ早く走ろうとも大海賊時代スタートだとルフィの同世代ということで、確定で10年以上は時間が掛かることになりますからね。この時間をいかに有効活用するか、となるとまぁ強くなることがベターかと。変に色々なところに影響を出して原作の流れが変わり麦わらの一味の結成フラグが折れてしまえば、称号の獲得条件も満たせなくなっておしまいですからね。少なくとも、シャボンディ諸島編までは原作の大きな流れを変えるのはNG。

 急がば回れ。という言葉の通りです。古事記にもそう書いてある。

 

 なお、ホモちゃんがいる時点でもう変わってる! という言葉は知らん! 多少変わるぐらいなら平気や!

 

 というわけで、ゼファー先生のところに行くどー! 

 

「ホムラちゃん、ガープ中将の船じゃないんだね」

 

 お、そうだな。おら、お前も付いてくるんだよ。あくしろよ。

 

「シアも一緒」

 

「もちろん! シアはホムラちゃんとずっと一緒だよ!」

 

 落ちたな(確信)。シアパイセンとはお互いに【義姉妹/愛】の関係のため、このくらいのことは頼めばほぼ確実に叶えてくれます。ホムラちゃんとパイセンはズッ友や!(死語)

 

 ということで、ゼファー先生! ホモちゃんたちを先生の船に乗せてくれ! 

 

「あァ、ビシバシ鍛えてやる。覚悟しておけよ」

 

「よろしくお願いします!」

 

「……よろしく」

 

 ニヤリと笑ってホモちゃんたちにそう言うゼファー先生は、やっぱりかっこいいですね。

 走者はとにかくゼファー先生というキャラが好きすぎて、ONE PIECEの映画ではぶっちぎりにZが好きなんですけど、視聴者の兄貴姉貴のみなさんはどうですかね? 

 ただ、ゼファー先生のキャラ的な魅力を除けば、単純に面白いと思ったのはゴールドかもしれん……これもうわかんねぇな。

 

 まぁ、全部面白いということで! 実際ONE PIECEの映画はほとんど面白いので……ヨシ!(現場猫)

 

 それじゃあ、ゼファー先生の船に新兵として乗ることになったところで、今回はここまで。

 

 ご視聴、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 



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#8 例の事件

ゼファーの船を襲った海賊はほぼエドワード・ウィーブルで確定しているみたいですが、現時点では原作で明言されたわけではないのでボカしています。
ご了承ください。


 ゼファー先生の運命が変わるRTA、はぁじまぁるよー

 

 前回、海軍学校を卒業して新兵として海軍本部に入隊したホモちゃんズの二人は、ゼファー先生の船に乗ることになりました。

 

 ゼファー先生の船には、ホモちゃんズ以外にもたくさんの新兵がいます。みんな、海軍学校を出たばかりのホモちゃんズと比べると面構えが違いますね。ちなみに、年齢はホモちゃんズが余裕で一番下です。知ってた。

 

 ところで、君。もしかしてクレヨンしんちゃんに出てきたりしてない? え、違う? 本当に? 

 でも君ならきっと、クレヨンしんちゃんに出れるよ! 

 

 さて、クレヨンしんちゃんのキャラにしか見えないビンズ兄貴のことは置いておいて。ここでは、新兵として航海術やらなんやらを実践で学びます。といっても、座学として海軍学校でたくさん学んできた二人ですから基本的には楽勝なようです。

 

 船の上であくせく働いて、たまに海賊と衝突してと、代わり映えしない日々がしばらく続きますので、例の事件が起きるまで倍速にしてしまいましょう。

 

 せっせと頑張るホモちゃんズを背景に、ゼファー先生の説明でもしておきましょうか。

 

 彼は海軍元帥のセンゴクやガープ、つると同期でロジャーの時代に海軍大将だった男です。当時は、類稀な武装色の使い手でもあり〝黒腕〟の異名で呼ばれた超実力派の海兵でした。

 しかし、ある時彼のことを恨んだ海賊に妻子を○されてしまい、そのショックから海軍大将を辞任。その後、周りに引き留められ勧められる形で教官として海軍に残りました。

 それからは、教官としても優秀な手腕を発揮し数々の偉大な海兵を育てていくことになります。現海軍大将の三人、〝赤犬〟〝黄猿〟〝青雉〟の三人も彼の下で教えられた教え子です。そんな彼は、今ではすべての海兵を育てた男と呼ばれ慕われ、絶大な信頼を寄せられています。

 

 ですが、そんな彼を新たな悲劇が──

 

 おっと、倍速はここで終了です。例のイベントが発生しました。

 

「……ッ! 総員! 戦闘配置に着け!!」

 

 ゼファー先生の大音声に一気に船内の緊張感が高まります。今まで、ゼファー先生はここまで緊迫した様子を見せたことはありません。この異常事態に、新兵たちが気づかないはずもなく……。

 

「ホムラちゃん……」

 

「大丈夫」

 

 前回と違い、今回は不安そうなシアパイセンの手を握るホモちゃん。あなたは死なないわ、ホモちゃんが守るもの。

 

 海の向こうから、何やら一隻の船が。そこから発される強者の気配は、歴戦の猛者であるゼファー先生を焦らせるほどのもの。それを見聞色で感じ取ったホモちゃんは口では大丈夫と言いつつも、さすがに冷や汗をかいています。シアパイセンも感じ取ったことでしょう。このヤバさを。やべぇよやべぇよ……

 

 そんなこんなで戦闘開始です。ここで襲いかかってくる敵は、前回も言いましたが王下七武海や四皇幹部クラスのとんでもねー敵です。

 

 ホモちゃんのいない本来の原作では、アインとビンズの二人を残して新兵は全滅。ゼファー先生も右腕を失う大怪我をしました。これが俗に言う訓練艦新兵虐殺事件です。この事件をきっかけに、ゼファー先生は教官を辞め右腕にゴツい義手兼武器を装備し、海賊遊撃隊という部隊を組織することになります。

 これがゼファー先生を襲った二度目の悲劇ですね。

 

 しかも、ここで襲いかかって来た海賊が後に王下七武海に加入し恩赦を与えられるというオマケ付き。その結果、ゼファー先生はついに海軍の掲げる正義とやらに失望し、自らの力とやり方で海賊を殲滅するためにNEO海軍という反社会的過激派組織を作ります。

 あまりにも壮絶で悲しすぎる人生に、涙が出、出ますよ……。

 

 ですが、ご安心ください。ホモちゃんがいる限りそんな未来は(ないです)

 

 この敵は確かに強いですが、ゼファー先生だって十分以上に強いです。新兵を守らなければならないというハンデさえなければ、そう簡単に負けることはありません。

 

 ですので、ホモちゃんズがやることは一つ。新兵を守ることです。ホモちゃんは【技10】ですしパイセンもかなり強いです。そして何より、二人は覇気を使えます。戦闘の余波から新兵たちを守ることくらいのことはできるでしょう。

 

 そうすれば、後ろを気にしなくて良くなったゼファー先生が敵を返り討ちにしてくれるはずです。しかし、万が一にもゼファー先生が負ければホモちゃんもピンチになります。

 それでも、ゼファー先生に弱らされた敵なら今のホモちゃんでも勝てるかもしれません。ですが一応、念のため隙があればゼファー先生の勝率を上げるために直接的なサポートもしましょうね。

 

 あ^〜名声と経験値ドバドバでうまあじすぎるんじゃ^〜

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 工事完了です……(達成感)

 

 敵の海賊船が離れていきます。

 ゼファー先生は海賊を捕らえることはできなかったみたいですが、撃退することには見事に成功しました。追撃も可能でしょうが、たくさんの新兵を抱えている以上やめておいた方が良いとゼファー先生は判断したみたいですね。英断です。ここで欲をかくような者から殉職していくのです。

 

「ホムラ、シア、良くやった。お前たちのおかげで誰一人犠牲が出ることはなかった」

 

「……当然」

 

「みんなを守れてよかったです!」

 

 ゼファー先生がしきりに褒めてくれます。

 良いってことよ!

 

「ホムラ、シア。ありがとう」

 

「助かったぜ」

 

 アイン姉貴とクレヨンしんちゃん、その他のモブからも感謝されます。

 良いってことよ!

 

 新兵たちを守れたホモちゃんズは、みんなからのお礼や賞賛に頬を赤らめながら一緒になって無邪気に喜んでいます。微笑ましいですね。

 

「お前たちがいなければ、どうなっていたことか……」

 

 これって、勲章ですよ? 

 ホモちゃんズが頑張ってたってしっかりと報告よろしくやで! 

 

「このことはセンゴクにしっかりと報告しておこう。……褒賞がもらえるかもな」

 

「……!」

 

 やったぜ。この言葉が出るならほぼ確実に特別報酬がもらえますね。ウレシイウレシイ。

 

 それにしてもゼファー先生がめちゃくちゃ嬉しそうに笑っていますね。ホモちゃんたちがいなければ、この顔が一転して絶望の慟哭に変わっていたと考えると……やっぱりゼファー先生不幸の星の元に生まれすぎでは?

 私は、悲しい……(ポロロン)

 

 では、楽しい楽しい特別報酬の時間です。センゴクから呼び出しを受けた二人は海軍の倉庫を目指します。

 

「何もらえるのかな? 楽しみだね、ホムラちゃん!」

 

「……美味しいお菓子……?」

 

「……さすがに、違うと思うよ」

 

 ホモちゃんはお腹ペコペコだったみたいですね(適当)

 

 安心してホモちゃん! ゲロマズの果物ならあるよ! 

 

 倉庫に行けば、センゴクが直々にお出迎えしてくれました。悪魔の実の管理は、海軍元帥が自ら動くほどに厳重というわけですね。

 

「来たか。モンキー・D・ホムラ三等兵にユーリア・シア三等兵だな。今回の件は良くやった。お前たちのおかげで新兵の犠牲がなかったとゼファーから聞いた」

 

「ん」

 

「身に余る光栄です!」

 

「では、褒賞を与えようか」

 

 そう言って、センゴクが提示したのは悪魔の実か武器のどちらかです。

 

「シアは海楼石の武器が欲しいです!」

 

 シアパイセンは海楼石の武器を選びます。別に悪魔の実でも良いのですが、ホモちゃんが悪魔の実を食べるとなると、万が一海に落ちたときなどに助けてくれる人がいないと大変なので……という理由です。まぁ、ホモちゃんからシアパイセンに頼んだのですけど。

 

 実際のところは、シアパイセンに食べさせる悪魔の実は実はすでにあてがあるので食べさせたくなかったのです。その目的の悪魔の実は、海軍ではもらえないやつなので。

 ですので、ここは無難に海楼石の武器です。

 

「悪魔の実」

 

 ホモちゃんはもちろん悪魔の実です。海軍本部の特別報酬でもらえる悪魔の実はランダムです。ランダムで選出された5つの悪魔の実から、一つを選んで獲得することができます。

 

 はい、つまりガチャですね。ガチャはわるいぶんめい……

 

 ホモちゃんに食べさせたい悪魔の実ですが……まぁ、動物系(ゾオン)ならなんでも良いですね。ホモちゃんは【技10】の剣士なので、いずれミホークを超える存在です。ヘタな能力の超人系(パラミシア)自然系(ロギア)は戦闘スタイルの邪魔になる可能性すらあります。なので、単純に身体能力の上がる動物系(ゾオン)がホモちゃんには一番適しているのです。

 

【技10】故に戦闘能力は高いですが、【力・体】はお世辞にも高いと言える数値ではないので、そこをカバーすることができればホモちゃんは順当に強くなれます。

 

「うむ。この中から決めろ」

 

 一つ目は……超人系フサフサの実。髪の毛が伸びる能力です。これいる? 

 

 二つ目は……超人系テルテルの実。頭皮が光る能力です。うーん……

 

 三つ目は……自然系モクモクの実。モクモクしちょるだけの……いらん。

 

 四つ目は……超人系モサモサの実。原作でビンズが食べた実ですね。そこそこ強いけど……

 

 あと一個……! 

 動物系来い! 動物系来い! 動物系来い! 

 

 ん? この音楽は……? (唐突に流れ出すUC)

 

 流れ変わったな……?

 

 これは……来たか……? 

 

 五つ目は……

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 動物系幻獣種ウシウシの実・モデル〝黄金の羊〟

 

( ゚д゚) ……

 

(つд⊂)ゴシゴシ

 

(;゚д゚) ……

 

(つд⊂)ゴシゴシゴシ

   , .

(;゚ Д゚) ……!? 

 

 ファッ!? マジ!? SSRやんけ!! 

 

 やったぜ。完全勝利です本当にありがとうございました。

 

 

 

 激レア悪魔の実を引いたところで、今回はここまで。

 

 ご視聴、ありがとうございました!

 

 

 



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#9 もふもふ天国

ウマ娘、プリコネ、デレステ、シャドバ…………

サイゲの犬になったので初投稿です。


 

 悪魔の実ガチャに完全勝利したRTA、はぁじまぁるよー

 

 前回、無事にゼファー先生の運命を捻じ曲げ、NEO海軍フラグを叩き潰すことに成功しました。その後、活躍したホモちゃんに特別報酬として悪魔の実が与えられることになったのですが……選択肢として提示された悪魔の実になんかヤヴァいのがありますねぇ……。

 

 動物系幻獣種ウシウシの実・モデル〝黄金の羊〟

 これはプレイヤーの間で実しやかに囁かれる黄道十二宮シリーズと呼ばれる悪魔の実の一つで、牡羊座担当とされるものです。

 といっても、黄道十二宮シリーズはあくまでもプレイヤーが勝手にそう呼んでいるだけで、正式にカテゴライズされているわけでもなく全部が幻獣種とかでも(ないです)

 牡牛座担当にゴロゴロの実が入ってる程度には適当でガバガバです。エネルはゼウスだった……?

 

 この悪魔の実のモデルとなったのはギリシャ神話に登場する金色の毛を持つ羊。神に遣わされたかの羊は、二人の人間を背に乗せ空を駆け海を渡り、ゼウスに生贄として捧げられると天へ登り星座となりました。

 後に羊の死後残った金羊毛は、コルキスという国にて眠らない竜に守護され秘宝となります。それを巡ってアルゴナウタイと呼ばれる英雄達が奮闘する、アルゴナウティカという有名な英雄譚の題材にもされていますね。

 

 ちなみにこのアルゴナウタイですが、少しでもギリシャ神話を知っている兄貴姉貴ならびっくりして腰を抜かすほどの面子が揃ったギリシャ神話英雄オールスターズです。興味があったら、調べてみてね。

 

 どちらかというと生前より死後の方が有名な羊くん……かなしいなぁ……

 

 これはとんでもない悪魔の実を引きましたね。海軍でもらえる悪魔の実の中ではかなりのあたりです。他のあたりとされるのは一応モクモクも含む自然系とか……ロックスの時代であれば三大将の手に渡る前のマグマグ、ヒエヒエ、ピカピカも候補として上がりますね。

 〝黄金の羊〟はそれらと比べても遜色ない強さの悪魔の実です。

 

 肝心の能力ですが、動物系特有の身体能力(素質値)の向上はもちろん。他にもいくつかあります。

 

 一つ目は、空を足場にする能力です。空を飛ぶ……ではないのがポイントですね。空中を歩いたり、空中に立ったり、空中で踏ん張ったりと、ただ空を飛ぶよりも応用の幅が広く、使いやすいです。

 

 剣士のホモちゃんにとっては、この能力だけでお釣りが来るレベルで相性がいいですね。使いこなせれば空中すら足場にした超立体的三次元戦闘ができるようになります。ぴょんぴょん、ぴょんぴょん、ぴょんぴょんと、羊というよりウサギですねクォレハ……

 

 月歩で事足りるのでは? と考える兄貴姉貴たちもいるかと思いますが、実際月歩でも似たようなことはほとんどできます。

 しかし、月歩は常に空中を蹴り続けないと落下するマグロみたいな技なので、空中を自由自在に動ける上に蹴り続ける必要もないこっちの方が利便性は段違いです。

 

 他にも能力はありますが……それはおいおいということで。

 

 さて、こんな悪魔の実を逃すわけにはいきません。キミに決めた! 

 

「……! これ!」

 

「うむ。いいだろう」

 

 なんか、センゴクも「そら(この中で選ばせるなら)そう(なる)よ」みたいな表情をしている気がしますが、気のせいですかね。

 

 では、センゴクに挨拶をして別れましょう。今日の仕事はもうないので、シアパイセンと一緒に帰宅します。どうやら、シアパイセンはホモちゃんの悪魔の実がどんな感じなのか知りたくて付いて来るみたいです。

 

 見たけりゃ見せてやるよ!

 

「どんな能力なのかな? 楽しみ!」

 

「わたしも、楽しみ」

 

 ガープの家に帰宅します。家主のガープは航海に出ているのでいませんね。それじゃあ、実食! 

 

「うぇ……まずい」

 

 ホモちゃんがすごい嫌そうな顔をしています。悪魔の実はまずいって、それ一番言われてますけど、実際はどのくらいまずいんですかね。まずいまずいって言われてるものって、なんとなく食べて見たくなりませんか?

 

「ホムラちゃん、大丈夫……?」

 

「だめ」

 

「そんなに美味しくないの?」

 

「土の方がおいしい」

 

「土って……悪魔の実って、一口食べれば良いんだよね? そんなに美味しくないなら、もうやめとこう?」

 

「ん、やめる。二度と食べない」

 

「二回食べたら死んじゃうよ!」

 

 そんな微笑ましい会話は置いておいて、これで晴れてホモちゃんは能力者です。動物系ですから、それでは早速使って見ましょう……変身! 

 

「羊だね」

 

「……」

 

「金色だぁ」

 

「……!」

 

「もふもふだー!」

 

「んぅ……」

 

 はい、獣型は羊です。金色の毛がもふもふのゴージャスな羊。毛並みがたいそう良さそうで、シアパイセンは辛抱たまらんといった感じでホモちゃんに抱きつきました。

 特に羽とかは生えていませんね。黄金の羊は羽が生えているか、生えていないかで諸説あるかもしれませんが、ホモちゃんには羽が生えておりません。なので、幻獣種のわりになんの変哲も無いただの金ピカの羊です。

 ちなみに角も生えています。角が生えた羊はオスの個体だけですが、まぁあくまでも悪魔の実ですから(激ウマギャグ)

 

「なんか変な感じ」

 

「その姿でも喋れるんだー」

 

「……メェー」

 

「喋れなくなっちゃった!?」

 

 さて、次は人獣型です。動物系の能力者は、この姿で戦うことが多いので一番重要な形態と言っても過言ではありません。ホモちゃんも例に漏れずこの人獣型を基本的に使っていくことでしょう。羊は刀を持てないですからね。

 

 一応説明しておきますと、動物系の能力者は悪魔の実を食べる前の姿である基本となる人型と、モデルとなった動物の姿になる獣型。そして、その中間となる人獣型の三つの形態に変身することができるようになります。

 形態変化には慣れなどが必要になるようですが、そこは【技10】のホモちゃん。一回変身すれば全てを理解することでしょう。

 

「シア、変身するから離れて」

 

「はーい」

 

 さぁ、ホモちゃんの人獣型は……はい。直立する手足が長めの金色の羊ですね。

 うーん……これはかわいくない。まぁ、強さに見た目は関係ありませんし……ま、多少はね? 

 動物系だから、こればっかりはしゃあない。

 

「かっこいい?」

 

「もどして」

 

 これにはシアパイセンも思わず真顔。ホモちゃんかわいい人型と、もふもふ天国獣型に比べて、どうしてここまで差がついたのか……慢心、環境の違い……

 

「……ちょっと待って」

 

 おっと? ホモちゃんが何やら頑張っていますね。

 直立する金色の羊から姿が徐々に変わっていき……

 

 なんと驚き。人獣型から比重を人型に寄せていき、なろう系でよくあるケモ度の低い萌え獣人みたいな姿になってしまいました。

 ランブルボールもなしに、たった一度の変身でこの練度……やはり天才か……? 

 

「どう?」

 

「かわいい!」

 

「……かっこよくないの?」

 

「さっきよりはかっこいいよ!」

 

「そう。……ふふん」

 

 シアパイセンも絶賛。ホモちゃんは無い胸を張って得意げに笑います。

 

 ちなみに今のホモちゃんの姿ですが、黒色だった髪の毛が金色になって側頭部の耳の上に黒い羊の角、耳も羊の耳になってます。他は特に変化はありません。

 もはやただの悪魔っ娘か獣人系の萌えキャラです。本当にありがとうございました。

 

「それよりも、もう一度さっきの羊になってよー! もふもふー!」

 

「やだ」

 

「お願い! お煎餅あげるから!」

 

「……そんなのに釣られるわけ……」

 

「もふもふー!」

 

 って、釣られるんかい!

 

 ホモちゃんちょろすぎん? 大丈夫か? 

 きっと、お腹が減ってたのでしょうね(適当)

 

 そんな感じで、今回はここまで。

 

 ご視聴、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 




感想、高評価、お気に入り、ありがとうございます!励みになります!
ウレシイウレシイ

みなさんのアンケートの結果、決めゼリフは
「あなたの(ユメ)は、ここで終わり」に決定しました!

それにしても煉獄さんはやっぱり人気ですね。かっこいいもんな!

ちなみに、猫耳なら火車。うさ耳ならネザーランドドワーフになっていました。


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#10 正式入隊と雪月花

一体いつから……〈不斬(なまくら)〉がメイン武器だと錯覚していた?

侍といえば、やっぱり大小二本差しだよね!(ホモちゃんは侍ではない)


 はーい、よーいスタート。

 

 前回、そんなこんなでついに能力者になったホモちゃんですが、それでもまだまだ一年経っていないので、新兵としてゼファー先生の船でエッサホイサと頑張ります。

 あの襲撃を経験した新兵のみんなですが、誰一人恐怖で折れることはなく日々励んでおります。そんなたくましいみんなを見て、ゼファー先生もより一層教官としてイキイキとしていますね。

 

 ということで……キングクリムゾン!

 

 

 

 

 はい。時間が経って、ホモちゃんズの二人は無事に新兵として一年間の就労を果たしました。この一年でホモちゃんはより一層成長(身長体型以外)し、【少女】の成長限界もだいぶ近くなりました。それに加えて強力な悪魔の実も手に入ったことで戦力はマシマシです。

 

 ちなみに、シアパイセンの頼んだ海楼石の武器ですが。手の甲から指の第一関節までを海楼石で覆った前腕まである武器兼防具の籠手と、足の甲と脛を海楼石で覆ったブーツです。実はシアパイセン、意外にも徒手空拳で戦うバリバリの肉弾戦系キャラです。

 格闘で戦う女の子イイ……良くない? 

 

 シアパイセンの身長も伸び、一時期勝っていたホモちゃんを追い抜き155cmになっています。それでも引き続き成長期なので、パイセンのほうはホモちゃんと違ってまだ伸び続けるでしょう。

 執拗に身長マウントを取り続けていたホモちゃんですが、一年間全く身長が伸びず、挙げ句の果てにパイセンに抜かされた瞬間には、この世の全てに絶望したような表情で三日間寝込みました。

 

 超絶陽キャのパイセンも、そんなホモちゃんの姿にはさすがに苦笑いしかできない。身長マウントで逆襲することもなく、ホモちゃんを励ましていました。人間の鑑か……? 

 

 そんなホモちゃんズの二人も、今日でゼファー先生の船から降りることに。そして、海軍本部への正式入隊の日です。

 

「達者でな。お前らは、おれの自慢の生徒だ」

 

「……先生」

 

「先生! 先生もシアたち自慢の先生です!」

 

「フッ……そいつァ、光栄だ」

 

 ゼファー先生に見送られて船を降ります。ともに過ごしたモブ新兵たちもホモちゃんズとの別れを惜しんで手を振ってくれていますね。ですが、これは別れではありません。門出です。笑って旅立ちましょう。

 

 さて、海軍本部に正式入隊したホモちゃんズですが、肝心の階級は新兵時代の功績を加味して、ホモちゃんが少佐でシアパイセンが大尉となりました。

 目標達成ですね。佐官となったホモちゃんは無事に自分の軍艦を持てるようになりますので、もちろん申請して艦長になりましょう。艦長になると副官を付けることができますが、これは当然パイセンです。

 

「シア、一緒」

 

「うん! 改めてよろしくね、ホムラちゃん!」

 

 二人はズッ友ですので。あたりまえだよなぁ?

 

 新米海軍将校となった二人の背中には、正義の文字が掲げられた通称正義コート。なんというか、ついにここまで来たって感じで感慨深いですね(なお、シャボンディまでまだ6年)。

 

 海軍将校となると私服が許されるようになりますので、もちろん二人も私服を着て自分のファッションを惜しげもなく晒しています。

 

 ホモちゃんは黒を基調とした膝丈のセーラーワンピ。靴も黒の革ブーツ。腰にベルトを巻いてそこに〈不斬《なまくら》〉を差しています。海兵の制服がセーラー服ですから、そう考えるとなんだか真面目な感じですね。セーラーワンピは改造セーラー服みたいなモンですから(適当)。

 とはいえ、そこはかっこよさを追い求める(自称)クール・ホムラ。真っ黒な衣装に真っ白な正義コートを合わせて、見事にモノトーンでキメた可愛さと格好良さの同居したクール系ファッションです。腰まである長い髪も(人型形態では)黒。唯一、金色の目が神秘的で映えますね。

 ちなみに、しっかりとスパッツを履いているのでチラリズムは(ないです)。

 

 シアパイセンは武器兼防具の海楼石の籠手とブーツがゴツいですが、上半身はノースリーブのシャツで下半身はショートパンツという完膚なきまでの元気っ娘スタイルです。ショートパンツとニーソックスで絶対領域を作り出しているのがあざとい。

 最近伸ばしたらしい黒髪を涼しげに纏めたサイドテールと好奇心旺盛な青い碧眼がパイセンの元気な印象をさらに強くしてくれます。

 そして、(ホモちゃんと違って)シアパイセンにはちゃんと胸があります。それほど大きくはないですがノースリーブで強調されて……まずいですよ! (ノンケ)

 

 正義コートにもバリエーションがあって、ホモちゃんのは襟の代わりにフードがついているタイプ。シアパイセンのは、丈が短くもはやコートというよりジャケットです。

 

 まぁ、女の子の服装なんてどうでもいいですけどね(ホモ)。海軍本部に正式入隊した後は、適当に海賊を狩って経験値と名声を集めていくことになるのですが、その前に船を手に入れたら真っ先に行く予定だった場所があります。

 

 ということで、そこに向かいましょう。

 

 新しく用意してもらった船に乗り込み、艦長とその副官としてホモちゃんの船に配属された船員(モブ)に挨拶してから、早速船を出します。

 

「シア、出る」

 

「了解! しゅっこーー!!」

 

「「ヨーソロー!!」」

 

 船員たちの元気な声を合図に船が動き出します。ホモちゃんも、心なしかワクワクしている様子ですね。自分の船と部下が持てて嬉しそうです。

 でも、出航の合図はシアパイセンに任せるらしいです。大声とか、クールじゃありませんからね。

 

 そんなこんなで、早送りで進めてしばらく。着きました。前半の海のとある島。ここが目的の島です。ここは、地下に洞窟があるだけの何もない小さな島ですが、その洞窟にとっておきのブツがあります。

 

 では、迷うことなく洞窟に突入しましょう。入って、どうぞ。

 

「なんだろ、この洞窟。なんだかワクワクするね!」

 

「……」

 

「ホムラちゃん……震えてる?」

 

「……武者震い」

 

 洞窟の中は真っ暗で、今にも幽霊でも出てきそうな雰囲気です。

 

「ッ……!!!」

 

「えっと……コウモリだよ。大丈夫」

 

「……知ってる」

 

「……手、繋ぐ?」

 

「……」

 

 あら^〜

 

 コウモリにびっくりしたホモちゃんが思わずパイセンに抱き着いて、無言で手を握りました。これでこの二人、デキてないってマ? 

 

 それにしても、ホモちゃんはどうやらホラーとかが苦手なようですね。これ、ブルックと会ったとき平気だろうか。驚いて失神でもされたらRTA終了なんじゃけど。

 シアパイセンはむしろ楽しそうですね。〈勇敢〉スキルがあるからか、こういうのは得意みたいです。

 ちなみに、船員は船に置いてきました。連れてきても仕方ないので。モブ船員とか、船を動かすためだけの存在って、それ一番言われてますからね。

 

 しばらく進んでいくと、広場に出ました。そして、広場の奥に鎮座する祭壇。そこに目的のブツがあります。

 

「これ……刀だよね?」

 

「……」

 

 祭壇の上に飾られているのは、一振りの刀です。黒い鞘にはなにやらびっしりとお札が貼り付けられている見るからに曰く付きの不気味な刀。

 あまりにも普通じゃない雰囲気に、さすがのシアパイセンも口数が減っています。ホモちゃんに至っては顔を青ざめさせています。

 

 かわいそうに……おらぁ! 早くその刀を取るんだよ! (豹変)

 

「……!」

 

「ホ、ホムラちゃん!!」

 

 勇気を振り絞って刀を手に取るホモちゃん。すると刀から、何やらやばそうな黒いオーラがドバーッと噴き出します。ですがしばらくして、オーラが収まると何事もなかったかのように広場に沈黙が戻りました。

 

「……ホムラちゃん、何ともない?」

 

「ん、平気」

 

『ホムラは 〈骸纒桜花残雪朧月(がいてんおうかざんせつおぼろづき)〉 を ゲットした』

 

「綺麗な刀だね……」

 

「すごい……」

 

 刀身を抜くと、光に反射して淡く桜色に輝いています。ふつくしい……

 

 詳細説明によると、〈骸纒桜花残雪朧月〉は桜の木下に埋まっていた骸が抱えていたという曰く付きの製作者不明の刀だそうです。骸が抱えていたことから『骸纒』、桜の木下に埋まっていたことから『桜花(桜下)』。残雪朧月は刀の銘です。

 

 この刀、この洞窟に封印されていたことからわかるように当然のごとく妖刀です。どんな妖刀かというと、至極単純なもので普通の人が持つと3日以内に不審死するという妖刀です。

 

 これを使いこなす条件はたった一つ。刀に主人として認められることです。認められる条件は二つあり、一つはこの刀の所持者を○すこと。もう一つは、比類なき刀の才を持つ者です。

 

 はい、つまり。【技10】です。 い つ も の 。

 

 というのも、この刀。このゲームの隠し要素的なものである『四季シリーズ』と呼ばれる装備群の一つです。

『四季シリーズ』は、装備条件としてどれかの素質値10を求める異質なもので、それぞれがピーキーな性能を持つ困ったちゃんな装備たちです。

 代表的なのは、夏担当の指輪。装備条件が【体10】のくせに、装備すると防御力が0になりその分の攻撃が上がるというわけのわからん代物。しかも、一度装備すると外せないというオマケ付き。何というか、ゲーム開発者の悪ふざけみたいな装備です。

 

 〈骸纒桜花残雪朧月〉はその中の春担当で【技10】担当です。どんな性能かというと、決して折れず曲がらず刃毀れせず傷一つつかない。もちろん燃えもしないし錆もしない。更には、敵を切れば切るほど切れ味を増していくという成長する刀です。

 ただし、もちろんその性能に見合った困ったちゃんな一面もしっかり持っています。それは、装備している間【体】の素質値が半分になるというものです。

 夏担当に比べて大したことないのでは……? と思うかもしれませんが、実際大したことありません。

 

 耐久性に関しては最上大業物すら超えかねないものです。しかし、刀として最も大切な斬れ味は、やがて最上大業物を超える可能性を持っているとはいえ、逆に言ってしまえば成長する前は最上大業物に全く敵わない良くて業物程度の斬れ味でしかないためです。

 そんな控えめな性能故に、デメリットも少ないわけですね。

 

 とはいえ、絶対に壊れず成長し続けるため、この先一生使っていける優秀な武器です。武器の更新が必要ないというのは、とても素晴らしいことですからね。

 

 ホモちゃんは現在【体5】です。元々は4でしたが、動物系の特徴である素質値上昇によって【力・体】がそれぞれ+1されていましたので5になりました。この場合、半分にされると2.5。小数点以下は切り上げなので【体3】になります。

 3ならまぁ、最低限は確保できているので大丈夫だと思います。それに、そもそもホモちゃんは回避型ですのでね。防御力など飾りですよ。

 

 なので、気にせずもらって行っちゃいましょう。【技10】とか装備条件厳しすぎて実質ホモちゃん専用装備ですし。今後、この〈骸纒桜花残雪朧月〉略して〈朧月〉がホモちゃんのメーン武器となります。

 

 そんなわけで、メーン武器を手に入れたところで今回はここまで。

 

 ご視聴ありがとうございました!

 

 

 

 




骸纒桜花残雪朧月(がいてんおうかざんせつおぼろづき)
位列……なし
刃長……二尺二寸
極めて美しい刀だが、今までの所有者は朧月を使い始めてから3日以内に全員が謎の不審死を遂げているという曰く付きの妖刀。とある桜の樹の下に埋まっていたことから桜花(桜下)、骸骨が抱えていたという逸話から骸纒、刀の銘から残雪朧月という名前がそれぞれ取られた。
まともに扱えた人物が記録に一切無く、あまりにも曰く付きなため、その性能・芸術的価値に反して位列は無し。

こういう設定とか考えるの好きなのは中二病だからだろうか……不治の病……

そろそろ毎日投稿途切れそう


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幕間 二人の日常・お金じゃ買えない

 

 海軍本部に併設された訓練場。広々とした訓練場を、なにやらたくさんの海兵が囲んでいた。彼らは一様に同じ場所に注目しており、期待や楽しみといった感情を浮かべているようだ。

 

 彼らが注目している訓練場の中心。そこには、二人の海兵が向かい合っている。ただし、訓練場を囲む多くの海兵とは違いいっそ幼いと言えるほどに年若く、それでいて女性だ。

 

 一人目は、黒い長髪を片側で纏めたサイドテールの少女。手足に頑丈そうな籠手とブーツを着け、構えを取る。その青色の瞳は力強く対面の相手を睨み据え、一切の油断は感じられない。

 

 もう一方は、金色の髪を腰まで伸ばした小さな少女。存在感を主張する側頭部から生えた角と羊のような耳から、彼女が普通の少女ではないことは明らか。腰に二振りの刀を佩いた彼女の黄金の瞳は、まるで凪を思わせる静かさでサイドテールの少女を見つめていた。

 

 二人に共通しているのは、背中に正義の二文字を背負っていること。この場でそれを背負えるのは、海軍将校だけであることは周知の事実。未だ幼い少女でありながら、只者ではないことは誰の目にも一目でわかった。

 

「なぁ、おい。どっちが勝つと思う?」

 

「そりゃあ……どっちだ?」

 

「バカヤロウ! そんなもん少佐の方に決まってる!」

 

「わからないぜ。大尉の強さも相当だ。この前なんか──」

 

 周りの海兵たちが好き勝手に騒ぎ立てる。彼らは、中心で向かい合っている少女たち──ホムラとシアの部下であり、その船に乗るクルーだ。

 航海から拠点である海軍本部に戻ってきて、各々が休暇を満喫しようとしていた矢先。彼女たちが模擬戦をするという情報を入手したとあるクルーが、他のクルーたちにその情報を流した。

 それを知った彼らは、海軍将校同士、しかも自分たちの直属の上司による模擬戦を見る機会を逃してなるものか、と一人また一人と集まった。その結果が、今のこの訓練場の有様である。

 

 挙げ句の果てには酒や肴を持参し、模擬戦を観戦しながら一杯やろうとする者や、賭け事を始める者たちまで現れ始めた。普通なら、上官たちの模擬戦をまるで娯楽のように扱っている彼らは罰せられそうなものだが、少女たちは好きにさせていた。

 

 それは、ひとえに少女たち──特にシアの人柄によるものだ。

 

 シアはその人柄によって自然と人々を引っ張り、打ち解けさせ、和を作る。初めの頃は、自分たちの上官になったのが少女であることに困惑し、怒り、嫉妬する者も当然いた。しかし、シアの人柄に触れることで次第に蟠りは解け、いつの間にか少女たちの船が彼らにとって居心地の良いものとなっていったのだ。

 

 そんな彼らは、軍隊としては甘いとしか言えない環境にいながらも、遊ぶときは遊び、仕事をするときはキッチリと仕事をする優秀な海兵として、なぜか勝手に育っていった。

 だからこそ、少女たちは怒ったりはしない。仕事はちゃんとやるという信頼があるからこそ、この程度のことで目くじらを立てたりはしないのだ。

 

 ちなみにホムラの方は無口で人見知り、クルーたちへの指示も艦長でありながら副官であるシアを通して行うほど。そのため、クルーたちもまともに話したことがない者も多い。シアとは仲睦まじい様子がよく見られるが、正直言ってクルーたちにとっては良く分からない上官である。

 ただ一つだけわかることと言えば……恐ろしいほどに強いということ──と、あとそれと同じくらいに可愛いということだけである。

 

 そんなわけで、ホムラの船のクルーがほぼ全員集まることになった。しかもそれだけでなく、そのただならぬ雰囲気に釣られて訓練場の近くを通りがかった海兵たちも自然と集まりだしていた。

 

「おい、これは何の騒ぎだ?」

 

「模擬戦か? 見ていこうぜ」

 

「将校同士の模擬戦なんて、滅多に見られるものじゃない!」

 

 周りの海兵たちがワイワイガヤガヤと騒ぎ立てるが、少女たちは気にも留めていなかった。ただ、眼前の相手にだけ集中する。

 ふいに、ホムラが二本ある刀のうち短く刃の無い〈不斬(なまくら)〉と呼ばれる方をすらりと抜いた。それが合図だった。訓練場を囲む海兵たちは息を呑み、先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返ると、ついに始まる戦いへと意識を集中させた。

 

「いくよ……! ホムラちゃん!」

 

「いいよ」

 

 まず動いたのはシアだった。一瞬のうちに地面を何度も蹴り、その場から跳ねるように高速移動する。肉体を極限まで鍛え上げた超人のみが使用できる六式と呼ばれる六つの超人技。その一つである〝剃〟という技だ。

 目にも留まらぬ速度で動き、高速で奇襲する。

 

「はぁぁぁぁ!! 武装硬化、〝打壊〟!!」

 

 〝剃〟で高速移動し、そのままの勢いで殴りつける。武装色の覇気を使うシアの振りかぶる拳は、それを覆う籠手ごと黒く染まり、絶大な威力を発揮する。

 並みの相手なら、この一撃で何の抵抗もなく打ち倒されてしまうだろう。シアは、今まで何人もの海賊を仕留めてきたその拳を、親友であり義姉妹であるホムラに躊躇なく振るった。

 

 その威力は、まともに当たれば大怪我は免れないだろう。しかしホムラは、決して並みの相手ではない。

 

 ──天衣無縫・桜花一刀流

 

「〝花の舞〟」

 

 ひらり。

 

 背後からのシアの強襲を、目で見ていないにも関わらずまるで見ているかのように躱す。

 

「まだまだ! 〝蹴壊〟!」

 

 しかし、まるでそれは織り込み済みだと言わんばかりに、シアは蹴りを放つ。その鋭い蹴りも、先ほどの拳と同様に当たれば一撃でホムラを昏倒させるほどの威力を秘めていた。

 

 ひらり。

 

 だが、当たらない。まるで、舞い落ちる桜の花びらのようにひらりひらりと避ける。何度攻撃しても、どこから攻撃しても、ホムラはその悉くを最小限の動きでひたすら躱し続ける。

 

 ホムラの作り出した剣術流派、『天衣無縫・桜花一刀流』は全部で四種類の〝舞〟を基礎とした流派だ。四種類の〝舞〟は適切に使い分けることでどんな敵、どのような戦況、いかなる状況においても常に完璧に対応することができる。

 天衣無縫……天女の羽衣には一切の縫い目なく、綻びなく完璧で自然であるという。

 この流派は、その名の通り〝天衣無縫〟を体現する。その〝舞〟には一切の綻びはなく、隙はない。

 

 一つ目の〝舞〟である〝花の舞〟は、対一の近接戦闘を想定した舞だ。ホムラの圧倒的な技量によって成し遂げられた、見聞色の覇気による〝未来視〟によって未来を覗き、六式の一つである〝紙絵〟の動きによってその〝舞〟は完成された。さらに、〝黄金の羊〟の悪魔の実によって得た能力の内の一つで相手の動きの全てを見切ることで、更に〝花の舞〟は昇華される。

 相手のいかなる攻撃を、まるで宙を舞う花びらのように躱すことで絶対の防御となり、そして──

 

「そこ」

 

「っ!」

 

 相手の全てを見切ることにより、相手の隙をも見極める。〝花の舞〟は絶対の防御と的確なカウンターから成る、対一において最も完璧な〝舞〟である。

 

 シアの拳戟を〝花の舞〟によって完全に見切り、攻撃後の隙を突いて刀を振るう。その剣閃は、見事に無防備な隙を晒していたシアを打ち据えた。

 

「いったぁ……やっぱすごいね! それ!」

 

「シアも、なかなかやる」

 

 ホムラに斬られたシアだが、咄嗟に被弾箇所に武装色の覇気を集めることで防御していた。それでも、完全にダメージを防ぐことはできずに痛がっているが、まだまだ戦闘不能には程遠いようだ。

 

「まだまだ、いくよ!」

 

 再び、シアが攻勢を仕掛ける。それは先ほどの焼き直しのような状況だ。だが、本気を出し始めたのだろう。より速く、より強く、シアは先ほどよりも激しく苛烈に攻め立て始めた。

 

「〝嵐脚〟!!」

 

 さらには、新しい技を繰り出して攻める。六式の一つで、蹴りに合わせて斬撃を飛ばす〝嵐脚〟は、今までの攻撃とは違って遠距離からの攻撃となる。

 

「効かない」

 

 だが、やはりホムラの〝花の舞〟は崩せない。

 

 シアの放った〝嵐脚〟を手に持った刀で防ぐ。〝花の舞〟は躱すだけではなく、弾く、防ぐ、受け流しをも利用する。それら全てを用いて、完全な防御となす〝舞〟である。

 

 ホムラの守りは、崩せない。

 

 ホムラはその技量こそ、天才などという言葉では生ぬるいほどの才を持つが、その一方で速さを除いた力や体力などの身体能力、武装色の覇気と見聞色の覇気の強度といった面では平凡の域を出ない。決して弱くはないが、海にのさばる強者たちと比べると決して強いとは言えない。

 故に、自分の持っている技術(もの)を活かして強者たろうと力を付けた。

 

 その結果生み出されたのが『天衣無縫・桜花一刀流』であり、この戦いである。

 

 

 

 

 

 

「すげえ……どうなってんだ?」

 

「速すぎてわかんねぇ」

 

「大尉が攻めてるのはわかるが……少佐はさっきから一歩も動いてないな」

 

「少佐が押されているのか?」

 

「バカ言え、これだけ打ち込まれているんだ。それならすでに決着はついているはずだろ」

 

 二人の戦いを見て、周囲の海兵が意見を交わす。しかし、その戦いがどうなっているのか、それを正確に理解できるものなどほとんどいなかった。

 だが……この中に一人だけ、この戦いで起こっていることを理解している者がいた。

 

「こいつァ……相変わらずやるな、あいつら」

 

「は……? ゼ、ゼファー教官!? これは失礼を……」

 

「ああ、気にすんじゃねェよ……おれァ、勝手に二人の模擬戦を見に来ただけだ」

 

 マリンフォードに滞在していたゼファーは、たまたま訓練場の近くを通りがかった際、訓練場が騒がしくなっているのを知ってなんとなく覗いてみた。そしたら、自分の教え子たちが模擬戦をしているようで、興味が引かれたためちゃっかりと観戦客に紛れていたのだ。

 

「教官は、あの戦いがどのようになっているか、わかりますか……?」

 

「ああ、わかる。シアのやつが果敢に攻めているが……どうやら、ホムラには通じていないみたいだな」

 

「しかし……少佐は防戦一方に見えますが……」

 

「よく見てみろ。あいつは全ての攻撃を紙一重で躱している。その上、隙を突いて反撃も加えているな」

 

「そ、そうなのですか……? ……自分にはわかりません……」

 

「フッ……あのレベルはお前らにはまだ早えよ。だが良く見ておけ……あれは、お前らが目指すべき高みの一つだ」

 

 少し前まで自分の船に乗っていた子どもが、ここまで高度な戦闘を行なっている。ホムラはもちろんすごいが、シアもすごい。あれだけの威力、精度、そして攻勢を続ける体力。どれを取っても優秀の一言。相手がホムラだから通じていないのであって、かなりの実力を持っているのは間違いない。

 

 この歳で良くここまで練り上げている、とゼファーは感心した。一年ほど前、例の海賊が訓練艦を襲って来たときも二人の強さには驚き、そして助けられたが、一年でまた一段と見違えるほど強くなっている。

 

「……全く、子どもの成長は早ェな」

 

 ゼファーは楽しそうな笑みを浮かべ、小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「そろそろ終わり?」

 

「ううん。まだまだやれるよ!」

 

 拳を握りしめて気合いを入れるシア。しかし、その動きのキレは確実に鈍くなっていた。ずっと動きっぱなしなのだ、体力はもう残っていない。その上、何度も反撃をもらっているため体の節々が痛い。シアも黙ってやられずに武装硬化で守っているが、それでもなんども攻撃を受ければ痛いものは痛い。もはや気合いで立っている状態だ。

 

 対して、その場からほとんど動いていないホムラは、シアと比べて体力はそこまで消費していなかった。〝花の舞〟を使い続けるのには集中力がいるが、ホムラはその点に関しては問題なかった。むしろ問題なのは、ずっと使い続けている見聞色の覇気だ。ホムラの見聞色の覇気は、はっきり言って少ない。覇気というものは、使い続けると休んで回復しない限り減るのだ。いくら完璧な覇気のコントロールで消費を抑えたところで、長時間使い続ければ枯渇してしまう。

 

 戦闘開始からおよそ一時間。そろそろ見聞色の覇気が使えなくなりそうだった。一応、少ない覇気を補う手段はすでに開発しているホムラだが、この覇気の少なさは相変わらず課題点だな、とため息を吐いた。

 

「わたしがそろそろ限界だから、終わらせる」

 

「っ!」

 

 その言葉ともに、ホムラは覇気を練り上げる。見聞色と同様、あまり多くない武装色を多めに〈不斬(なまくら)〉に籠めると、刀は黒く染まり、存在感を増す。

 

 シアの攻撃をひらりひらりと躱し、攻撃後の隙を突く。

 

「〝天斬(てんざん)〟」

 

 天を割り地を割く渾身の一撃。袈裟に振り抜かれる〈不斬〉が、シアの武装硬化の上から叩き込まれようとする。しかし、シアは刀が振り下ろされる直前に、一歩足を引くことで刀の射程から逃げた。だが、それに合わせて一歩踏み込んだホムラの斬撃は見事に命中し、シアはその衝撃によって吹き飛び離れた地面に叩きつけられてしまう。

 

そしてしばらく、飛び上がるように起き上がった。

 

「いったーーいっ!!」

 

「……元気じゃない?」

 

「元気じゃないよ……」

 

 一度起き上がったはいいが、すぐにぐでーっと倒れこむ。どうやら、もうまともに立ち上がれないほど体力を使い切ってしまったようだ。しかし、倒れこみながらも悪戯っぽく笑うと、シアは口を開いた。

 

「でもホムラちゃん、一歩、外に出たよね?」

 

「うっ……」

 

 その言葉に、ホムラは自分の足元を見る。足の周りに丸い円が引かれており、ホムラの足は少しだけその円を外れていた。

 

「ということで、シアの勝ち! 今夜はお寿司ね!」

 

「あぅ……」

 

 実はこの勝負。ホムラが足元に引かれた円を一歩でも外に出たらシアの勝ちというルールで戦っていた。なぜなら、普通にやってもほぼ確実にホムラが勝つからだ。今まで、なんども模擬戦を繰り返してきた二人だからこそ、その結果がどうなるのかはよくわかっていた。

 

 その結果とはすなわちホムラの勝ちで、シアの負けだ。そもそも徒手空拳で戦うシアは、ホムラの〝花の舞〟を破る手段が全くと言っていいほど無い。例えば、〝花の舞〟を破るのに最も効率的な方法は攻撃範囲の広い面制圧となる。

 近接戦闘専門のシアは、岩や木などの障害物を利用できる場所ならともかく、訓練場のような場所ではそんな手段は一切持たない。故に、破る手段がない。

 それだけ、〝花の舞〟が優秀であり小細工なしの近接戦闘専門の相手に相性が良すぎるわけなのだが……それでは修行にはならない。

 

 なので、二人の模擬戦にはいつも何らかのルールを付ける。今回以外の例では、例えば見聞色の覇気の禁止……などといった感じだ。これは、ホムラとしても勝ちが確定している戦いをするよりも鍛錬になるからということで、採用している。

 

 そして、勝負に負けたら勝った方に夜ご飯を奢るというのが、模擬戦をするときのもう一つのルールだ。

 

「あのお店がいいな、目を付けてたんだー!」

 

「でも、あのお店……高いよ?」

 

「この間はもっと高いお店、シアに奢らせたよね……?」

 

「うぅ……お金が……」

 

 シアが言っているのは、一食二万ベリーもするお高い寿司屋のことだろう。それを、ホムラの自分の分と合わせると、四万ベリー。けっこうな給料をもらっているとはいえ、お財布に大ダメージである。

 たしかに、この間はシアに一人三万ベリーの焼肉を奢らせたホムラであるが、それはそれ、これはこれという都合の良いことを考えていた。

 

「よう、ホムラ、シア。良い戦いだったな」

 

 そんなところに、ちょうどよくゼファーが現れる。いつの間にか二人の模擬戦を観戦していたらしいが、そんなことはどうでもいい。

 ホムラはこれを、天啓だと思った。

 

「ゼファー先生、お腹すいた」

 

 ちらりとアイコンタクトを送る。シアはそれだけで全てを察したようだ。やはり義姉妹だ、とシアと以心伝心なことにホムラは嬉しくなった。

 

「お久しぶりです、ゼファー先生! この後、夜ご飯とかどうですか? お寿司とかどうですか!」

 

「お、おう……良いぞ。お前らと久しぶりにメシを食うのも悪くねェ。近況をいろいろ聞かせてくれ」

 

 シアの勢いに若干引き気味になるが、それでも快く快諾するゼファー。ホムラは静かにガッツポーズをする。ゼファーを連れ出すことができれば、お財布は無事で済む。こういうときは、まず間違いなく上官が食事を奢るのである。海軍に入隊して、新兵の時間を合わせるともう少しで2年。ホムラも海軍の流儀というモノを理解し始めていた。

 正確にはゼファーは教官であり階級は持っていないが、海軍にとっての重鎮であることは間違いないので、上官と言っていいだろう。

 

 どうやらゼファーも、教え子の二人に自分の下を離れてからの話を聞きたかったらしいので、お互いに幸せな関係だ。

 ホムラは良いことをした、と誇らしくなった。

 

「ありがとう、ゼファー先生」

 

「ありがとうございます、先生! じゃあ、一緒に行きましょう! 気になってるお店あるんですよ!」

 

 お寿司、お寿司、とワクワクしながら、早く行こうと促す二人。しかしそこに、待ったをかける者がいた。

 

「ゼファー先生、俺もご一緒して良いですか!?」

 

 名も無き海兵Aである。彼はホムラの船のクルーであり、またゼファーの教え子でもあった海兵だ。そんな彼もまた、自分の給料ではなかなか食べることが難しそうなメシを求めてゼファーにタカ──近況を聞いてもらいたかったのである。

 

「あぁ、もちろん良いぞ。お前も来い」

 

 鷹揚に頷くゼファー。しかしそこに、またもや待ったをかける者がいた。

 

「ゼファー先生、俺も!」

 

「私も!」

 

「僕も!」

 

 名も無き海兵B、C、Dである。彼らはホムラの船のクルーであり、またゼファーの教え子でもあった海兵だ。そんな彼らもまた、自分の給料ではなかなか食べることが難しそうなメシを求めてゼファーにタカ──タカろうと名乗りを上げた。

 

「あぁ、もちろん良いぞ。全員来い」

 

 鷹揚に頷くゼファー。しかしそこに、またまた待ったをかける者がいた。

 

「みんな聞いたか!? ゼファー先生が奢ってくれるってよ!!」

 

「「「うおおおおおおおお!!!!」」」

 

 そこにいた全海兵が一気に盛り上がる。

 総勢何十人いるだろうか。さすがのゼファーも頬が引き攣る。

 

「さすが俺たちの先生だぜ!」

 

「俺たちにできないことを平然とやってのけるッ!」

 

「そこに痺れるッ! 憧れるゥ!!」

 

 まさかここまで大ごとになるとは……ホムラもシアもさすがにゼファーに申し訳なくなって苦笑いしかできない。

 

 盛り上がる海兵たち。こうなると、今更ダメだと言える雰囲気ではない。ゼファーは遂に、腹を括った。

 

「……よし、お前ら! 美味いモン、食いてェヤツは全員来い!!」

 

「「「うおおおおおおおお!!!!」」」

 

 その日の夜は、大いに盛り上がった。階級、年齢、何もかも忘れてみんな一緒になって遅くまで騒いだ。

 

 ゼファーの財布は空っぽになったが、その豪快な笑顔が無くなることだけは決してなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




最初はゼファー視点で二人の新兵時代の話を書こうとしたんですけど、何かこうなりました。

『天衣無縫・桜花一刀流』
四つの〝舞〟を基礎とした剣術流派。四つの〝舞〟を使い分けてあらゆる状況に対応することで〝天衣無縫〟を体現する。
それぞれの〝舞〟にそれぞれ必殺の〝奥義〟があるらしい。
なお、〝花の舞〟を破っても他の〝舞〟が出てくる。

心の中の中二がひどく疼く……うおぉ……鎮まれオレの右手ェ……


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幕間 宴の夜・月下の姉妹

 

 

「ホムラとシアの昇進を祝して! 乾杯!」

 

「「「乾杯!!」」」

 

 わたしは休暇を使って久しぶりにフーシャ村へと帰ってきていた。もちろんシアも一緒。名目としては、マキノお姉ちゃんへのわたしとシアの昇進の報告だ。

 

「それにしてもすげーよな、タイヤとチュウニだっけ? よくわかんねぇけどすげー!」

 

「大佐と中佐よ、ルフィ。本当にすごいのよ? わかってるのかしら……」

 

 わたしが大佐、シアが中佐。それを祝ってマキノお姉ちゃんがたくさんの料理を用意してくれて、お兄ちゃんとエースにダダンさんたち、それに村長さんや村の人たちも来てくれた。これだけ多くの人が祝ってくれるのは、とても嬉しい。思わず頬が緩みそうになるけれど、我慢する。わたしはクール系を目指しているのだ。

 部下のみんなやおじいちゃんも祝ってくれたけど、部下たちは遠慮して船に残り、おじいちゃんは仕事でこの場には来れなかった。

 残念。

 

 新兵を卒業して海軍に正式入隊してからかれこれ一年。とんでもないスピード昇進だとおじいちゃんは喜んだけど、わたしはあまり実感がわかなかった。

 わたしもシアも、ただ航海のいく先々で悪さをする海賊を片っ端から捕まえていただけだ。そしたら、階級が勝手に上がっていった。

 

 今は、大海賊時代とかいう時代だ。この時代に生まれたわたしにはよくわからないけれど、昔に比べると海賊が何倍も多いという。その分だけ、無辜の一般市民が危険に晒されていて多くの海兵が必要とされる時代。

 だからこそ、わたしたちはすぐに階級を上げられたのだろう。海軍は実力主義だ。強ければ強いほどその強さに相応しい階級が付いてくる。掃いて捨てるほどたくさんいる海賊を捕まえれば捕まえるほど階級は上がるのだ。大海賊時代だからこそのスピード昇進だろう。

 

 別にわたしは誰よりも強いとかうぬぼれる訳ではない。現にゼファー先生やおじいちゃんには、模擬戦で良いところまではいってもまだ勝てたことはないのだ。

 中将のおじいちゃんや教官のゼファー先生に勝てないのだから、それより上の海軍大将にはもっと遠く及ばないと思う。それでも、多分それなりには強いのだろう。でなきゃ大佐になんてなれっこない。

 最強の海兵になるという夢は果てし無く遠いけど、なんだかんだでわたしはまだ12歳。まだまだ強くなれるはず。「よし」と目標を再確認して気合を入れ直す。

 

 とはいえ、今はご飯だ。給料をもらうようになっていろいろな美味しいものを食べて来たけど、なんだかんだでやっぱりマキノお姉ちゃんの手料理が一番好き。特に、シチューは絶品だ。

 

「たくさん食べてね」

 

「ん」

 

「りんごジュースもあるわよ」

 

「のむ」

 

 マキノお姉ちゃんがりんごジュースを持ってきてくれた。りんごジュースは好きだ。とても美味しい。オレンジジュースも捨てがたいけれど、わたしはこっちの方が好き。

 お酒は嫌いだ。苦くて、まずい。良いところなんて何もない。

 

「アップルパイもあるわよ」

 

「たべる」

 

 アップルパイもとても好き。美味しいものに囲まれて幸せ。

 

 お兄ちゃんやエースみたいにたくさん食べることができないのが、とても悔しい。マキノお姉ちゃんの料理をたくさん食べたいのに、このままだとすぐにお腹がいっぱいになってしまいそうだった。

 二人はなんであんなに食べられるのだろうか? 羨ましい。

 

 そんなことを考えながら黙々とご飯を食べていると、エースが口を開いた。

 

「ホムラが大佐で、シアが中佐か。早いもんだな。おれも早く海賊になりてぇよ」

 

「エース君とルフィ君が出航するのは17歳になってからだっけ?」

 

「ああ、そのよて……ぐがー」

 

「エース君が急に死んだー!?」

 

「……!?」

 

「ふふ……眠ってるだけよ」

 

 エースが急に頭を皿に沈めてびっくりした。死んだかと思ったけど、マキノお姉ちゃんが言うには眠っているようだ。マキノお姉ちゃんが知っているということは、今までにも何度も同じことがあったのだろう。……変な癖。

 

 それにしても、エースとルフィは相変わらず海賊を目指しているらしい。できれば海賊になるのはやめてほしいのだけど……もうこれは無理だな、と今となっては完全に諦めてしまった。なにせ、もう五年前からずっとこれを言ってるのだ。どうしようもない。もはや病気である。

 

「ねぇ、シアはどうするの?」

 

「ん? 何のこと?」

 

「お兄ちゃんたちが、海賊になったら」

 

「……捕まえるよ。悪いことしたら止めなきゃ。友達だもん」

 

「そっか」

 

 まっすぐな瞳で答えるシアは、やっぱりすごい。わたしがまだ幼かった頃の、シャンクスとの約束。その答えは今になってもまだまだ、わたしには出せそうにはない。だけど、シアはしっかりと自分の答えを持っている。

 

「……友達だからこそ……」

 

 わたしはお兄ちゃんやエースを捕まえることができるのだろうか。お兄ちゃんは家族だし、エースもまぁ……家族みたいなものだ。そんな二人を、わたしは他の海賊たちと同じようにインペルダウンに放りこめるのだろうか。

 

 今まで出会ってきた海賊は全てが間違いなく悪だった。だから何の葛藤もなく捕らえてきた。

 だけど、もし完全に悪と言い切れない……シャンクスのような良い海賊がいたとしたら、わたしはその時どうするのだろうか。シャンクスだけが例外だったのかもしれないけれど、他にも良い海賊がいる可能性はある。

 

 もしかしたら、海賊になったお兄ちゃんやエースと相対することになるかもしれない。もし仮に、二人が間違いなく悪と言える海賊になっていたら、迷うことはきっとないと思う。わたしだって、大佐にもなった海兵だ。相手が悪人なら家族や友達でも毅然と対応できる……はず。

 

 だけどこの二人が今まで見てきたような悪い海賊になるとは、家族としての贔屓目なしに考えてありえないと思う。果たしてそれは、悪なのだろうか。海賊だからと、悪と決めつけていい理由になるのだろうか。

 

 シャンクスと再会するのが先か……それとも、海兵と海賊として二人と出会うのが先か。

 

 どちらにせよ、その日はそれほど遠くない未来になる気がする。

 

「何が悪で何が正義か……自分で決める……」

 

 そのときにわたしは答えが出せるのだろうか。

 

「はぁ……やっぱり難しい」

 

 今はまだ、無理かもしれない。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ホムラ、悩みごと?」

 

「マキノお姉ちゃん……?」

 

 宴会が終わって、お兄ちゃんたちがコルボ山に帰り、村長さんたちもそれぞれの家に帰った。マキノお姉ちゃんの家に残ったのはわたしとシアだけで、すでにシアも眠りについた。

 

 だけどわたしは何となく眠れなくて、ぼうっと夜空に浮かぶ月を眺めていた。そしたら、心配そうな顔をしたマキノお姉ちゃんが部屋を訪ねて来た。

 

「何かあるなら、話して? 悩みでも、困っていることでも、何でもいいわ。ホムラの力になりたいの」

 

「……」

 

 マキノお姉ちゃんになら、話してもいいかな……。相談できるのなら、したい。一人で考え続けるのは苦しい。

 でも、これに関しては自分で考えなくちゃいけないってシャンクスも言ってたことだし……。

 

「……話せない?」

 

 マキノお姉ちゃんの顔が悲しそうに曇る。そんな顔をさせたくないのに。心が痛い。

 

「……」

 

 わたしが黙っていると、マキノお姉ちゃんがベッドに腰掛けるわたしの後ろに回って抱き締めてくれる。この歳になってこんな子どもみたいな扱いは恥ずかしいけれど、マキノお姉ちゃんの側はどうしようもなく落ち着く。この匂いに包まれると、リラックスできるのだ。懐かしさとか、マキノお姉ちゃんの優しい人柄によるものだと思うけど……やっぱりとても恥ずかしくて顔に熱が集まってくるのを感じる。

 

 抜け出そうとすると、抱きしめる力を強くされた。逃げられない。

 

「いいのよ。話せないこともあると思うわ」

 

「ごめん。……自分で考えなくちゃいけないことなの」

 

「そうなのね……大切なことなの?」

 

「……ん」

 

「そっか」

 

 マキノお姉ちゃんが離れていく。怒らせてしまっただろうか。喧嘩とか、絶対にいやだ。謝ったら許してくれるかな……。

 

「……怒った?」

 

「え? ふふ……そんなことないわ。大丈夫よ」

 

 どうやら怒っていないみたいだ。よかった。すごくホッとした。もしマキノお姉ちゃんと喧嘩になったら辛すぎて死んでしまうかもしれない。

 

 マキノお姉ちゃんは部屋の隅の棚から、瓶に入ったお酒を取って戻ってきた。

 

「……お酒?」

 

「そうよ」

 

「飲むの?」

 

「ええ……はい、ホムラのぶん」

 

 瓶と一緒に持ってきた二つの盃に、それぞれお酒が注がれる。マキノお姉ちゃんは片方の盃をわたしの方に差し出すと、もう一つの盃を手に取った。

 

「作法は詳しくはわからないけど……」

 

「もしかして、兄弟盃?」

 

「あたり。一緒にどうかしら?」

 

 もちろん嫌なわけがない。むしろ、マキノお姉ちゃんとこの盃を交わすのはとても嬉しい。だけど……。

 

「……なんで急に?」

 

「理由なんていらないわ。私とホムラの仲でしょ?」

 

「それは、そうだけど……」

 

「嫌なの?」

 

「……! 嫌じゃないよ!」

 

「ふふ……意地悪だったかしら? そうね……理由を付けるとしたら、ホムラが悩んでいるからよ」

 

 わたしが悩んでいるから……? 

 

「ホムラが何を悩んでいるのかはわからないけど……私はずっとホムラの味方。何があっても。この盃は、その証よ」

 

 どうしてマキノお姉ちゃんはこんなに優しいのだろうか。こんなに素敵なお姉ちゃんがいて、わたしは幸せ者だ。なんだか、涙が出てしまいそうだった。

 でも、わたしはもしかしたらそんなマキノお姉ちゃんのことを裏切ってしまうかもしれない。わたしと同じぐらい、マキノお姉ちゃんにとってもお兄ちゃんのことは大切なはずなのだ。

 

「……もしわたしがお兄ちゃんのことを捕まえちゃっても……? 恨んだりしない?」

 

 マキノお姉ちゃんが納得したような表情をする。わたしが何に悩んでいたのか、なんとなく察しはついていたらしい。

 

「ええ、もしそうなっても……私はホムラの味方よ、恨んだりもしないわ」

 

「……本当に?」

 

「もちろん。……あ、でも。一応、私はルフィの味方でもあるわ」

 

「どっちなの……?」

 

「それは当然……どっちもよ!」

 

「ふふ……何それ」

 

「あ、やっと笑ったわね。元気出たかしら?」

 

「ん、ありがと。励ましてくれて」

 

「いいのよ。お姉ちゃんだもの!」

 

 マキノお姉ちゃんにひっつく。やっぱり、この匂いがわたしはとても好きだ。

 

「ねえ、お姉ちゃん。今日は一緒に寝よ?」

 

「あら、甘えん坊な妹ね」

 

「だめ?」

 

「ふふ……一緒に寝ましょう、ホムラ」

 

「やった」

 

 マキノお姉ちゃんと一緒に月を眺めながら飲んだお酒は、苦かったけど、なんだかとても美味しく感じた。

 

 大嫌いなお酒が、少しだけ好きになった。

 

 

 

 

 

 

 




こういう真面目な話を書くのが、中二病を曝け出すのより恥ずかしいのは何故なのか……これがわからない。


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