パワポケSS断片集 (艶 紫苑)
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花丸高校VS日の出高校 別パターン(レッド×ユイ)

レッド×ユイ、洗脳ものの導入
強くなりすぎたヒーローたちに日の出高校がボロボロにされてるひどい内容ですのでそこもご注意ください。

エッチな部分が思いつかなかったのでここに置いておきます。


甲子園球場が異様な盛り上がりをみせていた。

 

 

 

ヒーローたちの登場により生まれ変わった花丸高校と、はたから見ると呪われていたのではないかというほど次々と降りかかった逆境をはねのけ這い上がってきた日の出高校。

 

ともに快進撃を続ける二校の対決。

 

 

 

(彼がキャプテンか。彼女を苦しめていたのはこの男か)

 

 

 

日の出高校との対戦前にヒーローはある人物に接触していた。

 

日の出高野球部のマネージャーだ。

 

 

 

レッドの気迫あふれるピッチングの前に彼は二球見逃し、あっという間に追い込まれる。

 

三球目、意地になったのか、バットを振ったものの、ど真ん中の剛速球にまったくタイミングが合わずに空振り三振。

 

勢いあまってくるくると舞い、尻餅をついた。

 

 

 

続いては、ピッチャーとしてもバッターとしても超高校級のエースが打席に入った。

 

 

 

「ここで挫折を知っておいた方が彼のためになるだろう」

 

「そうだな、オレたちが壁になってやるか」

 

 

 

ここまで大活躍だった日の出高のエースだが打席では三三振、

 

 

 

「くっ……バカな……」

 

「この挫折をバネに強くなれ、少年」

 

 

 

そのうえ大量失点、ヒーローたちの猛攻、そしてレッドの闘気を前にボールを投げられなくなる。

 

やっとの思いで投じた球も軽々とスタンドに運ばれてしまう。

 

 

 

「かわいそうだから甲子園でもコールド制度を」「レッド様すてき♥」「十桁失点」「手抜きせずにいったらマジで十桁いきそう」「ピンク様が最後の希望」 「何時間かかるんだこれ」「レッド様すてき♥」「ピンク様が手抜きしてるけどそれだけじゃ終わらないぞ」「手抜きって単語エロいな」「対戦相手 『ピンク様、手抜きしてください、おねがいします』ドピュドピュこうですか」「マゾにとっては最高のオカズだ…試合してる選手たちもマゾに目覚めるしかないな心が壊れちゃーう」「ピンクって男疑惑があるけど」「ゲェェ…」「漢ピンク『キミはもっと弱さゆえの変態性欲に身を任せてもいいと思うのだよ』ソイヤソイヤソイヤソイヤ」「アッー」「レッド様すてき♥ 」

 

ネットにはそんな書き込みがあった。

 

試合後、機械に強い仲間からそれを聞き、レッドは肩をすくめた。

 

「彼らは強かったよ」

 

「パーフェクトピッチング、全打席ホームランのレッドサマが言っても嫌味にしか聞こえないな」

 

「そんなことはない。人間にしては強かった。おかげでムキになった」

 

「あー、なるほど、それで。最初はあたしもエースをいじめるのが楽しくてはりきっちゃったけど、途中から飽きたし疲れたから早く終わらせようとわざと――」

 

「あれはいけない。相手に失礼だ」

 

ぎろりと鋭い視線に射抜かれる。

 

「ごっ、ごめんなさーい。わざとじゃないわよ? それだけ相手ピッチャーの……犬神だっけ?」

 

「……大神」

 

「そう! そいつが強かったってことよ。わざとアウトになんてなってないわ。本当よ? あたしを打ち取るなんてナカナカヤルジャナイ犬神様」

 

「……大神」

 

「本当に強かった。ここまで対戦した中では間違いなく一番だろう。それだけに今回の勝利は格別だ。最後の一人を抑えたあとすぐに、皆に胴上げしてもらいたかったぐらいだ」

 

「胴上げはダメでしょ。まだ優勝もしてないんだから」

 

「このまま勝ちまくっていこう。次の相手は……超最強学園、か」

 

「ヤバっ!?……超最強、なにそれ……うわぁ」

 

「ここまで勝ち上がってきた強豪だ。油断せずにいこう。優勝したあかつきには胴上げ――」

 

「優勝してもダメ……レッド、キャラ変わった?」

 

「そうか?」

 

レッドが問いかると、皆がこくりとうなずいた。

 

「多くの人と触れあって変わったのかもしれない」

 

「多くの人って、女ばっかりじゃないか。試合前に日の出高校のマネージャーにも手を出したらしいな。それに、試合後――」

 

「ヒーローとして彼女の悩みを解決しただけだ。暗い顔をしていた彼女を放っておけなかったんだ」

 

 

 

レッドは相手校のマネージャーとの逢瀬を思い出す。

 

 

 

「彼のことは忘れられそうか?」

 

「はい……レッド様、」




チラシの裏はR18はダメらしいので、ネットの書き込みのところが気になりますけど、このぐらいならセーフですよね? ちょっとビクビクしてます


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花丸高校VS超最強学園

ところどころ台詞が思いつかなかったのと、野球やってるシーンが全然書けなかったので、チラシの裏に置いておきます。いつかちゃんとしたものにしたいですね

暴走するバッドエンドもあるし、多少はね
とはいえ、ヒーローたちをちょっと悪役にしすぎたかなと反省しています。


歴史的大勝をした翌日、

 

「大変だ、らっきょうがない!」

「なんだと!?」

「何者かが買い占めていったらしい」

 

「どうする?」

昨日の試合で大暴れしすぎた反動がきていた。

それだけにどうしても手にいれたかったのだ。

「誰かに買いにいかせるか?」

「いや、その必要はない。逆境を乗り越えてこそヒーロー。それに相手は名前だけのイロモノだ。問題ないだろう」

レッドは不敵に笑った。

(人には油断するな、とかいっておいて。追いつめられて本性が出たわね)

 

 

 

決勝戦。

 

「何度見てもすごい名前ね」

「フッ、そんなにすごいかな?」

「いや、誉めてないから。むしろバカにしてんのよ」

「なんだって……」

「皇くん、ワシが思うに――」

「フッ、そうだね統道くん。ぼくとしたことがヒツジに年代記を教え込むような愚かな行為をしてしまったよ」

「なんですってぇ!? 恥ずかしい名前の高校に通うあんたたちに、あたしたちが真の最強ってものを教えてあげるわ! ね、ブルー?」

「……」

「はぁ……これだから凡俗はいやになるでゴワス」

「凡俗ぅ!? なに言ってんのよあんたたち!?」

「我らの母校の名をよく見るでゴワス。我らの母校の名は超最強学園。文字通り最強すら超えるでゴワス」

「そうとも統道くん。ちなみに超最強と書いてグレイテストと読む。相手が最強だろうが真の最強だろうがぼくたちはそれを超越している。ぼくたちの勝利は揺るがない」

「ゴワス!」

「キーッ」

「……ピンク、とりあえず落ち着け」

「口ではなんとでも言える。だが試合はそうはいかない」

 

「レッドくん、キミの話は聞いているよ」

「……なんのことだ?」

「対戦した高校の女子生徒を手籠めにしているそうじゃないか」

「根も葉もない噂だ。誰がそんなデタラメを?」

「ある人物から聞いたんだ。ヒーローたちを倒してほしい。その人物から泣きながらお願いされてね。王土に涙をこぼしながら懇願した哀れな子羊の想いに応えるのも超エリートの務め。白き王が色に狂った英雄を成敗してあげよう」

横で聞いていたピンクがふきだした。

「白き王ぅ!? あははっ」

「皇くんの名前を漢字で書くと――」

統道がすかさず口を開く。

「それはわかってるわよ? わかった上で、白き王、ぷくくっ。白き王、フルネームはなんて読むのこれ、○うていさんはレッドに嫉妬してるだけでしょ? ダッサ」

「○うていだと!? ぼくの名前は○うていでも皇帝でもない。すめら みかどだ!」

「あー、はいはい。そこはどうでもいいから」

「よくない! 大切なことだ!」

「レッドは別に手籠めにはしてないからね。仲良くなっただけ。哀れな寝取られ男――負け犬からその話を聞いて、モテモテのレッドサマに嫉妬しちゃったんだ、○うてい君」

「すめら! みかど! だ!! 」

「図星だから焦ってる~、あははっ」

爆笑されて皇の顔が真っ赤に染まる。

「皇くん、ワシが思うに――」

フォローする統道。

「フッ、そうだね統道くん――」

「なんですってぇ――」

さっきと似たようなやりとりがくりひろげられる。

 

そのとなりでレッドは思案に耽っていた。

(誰だ? オレが相手校の少女を救ったという情報を誰がこの少年に伝えた?)

レッドはこれまで救済した少女たちと寝取られ男たちの顔を思い出す。

記憶を遡り、ある人物に行き当たる。

(まさか……とすると、らっきょうの買い占めも……)

 

「嫉妬してんの? してないの?」

思案を巡らせるレッドのとなりではまだ言い合いが続いていた。

「嫉妬などしていないよ。使命感には燃えているけどね。今日は超最強学園の名はもちろん、ヒーローの横暴に苦しめられた者たちの想いも背負っている。絶対に負けられない」

「彼女を満足させられなかった寝取られ男どもと、レッドに嫉妬する○うてい君の想いねぇ……吐き気がするほどイカ臭そう。近寄らないでくれる?」

「ど○ていじゃない! す・め・ら み・か・ど!」

 

試合、開始。

前評判を覆し意外な展開になる。

 

「強大な力を持ち外敵を寄せ付けなくなった帝国も決して磐石ではない。内部からの反乱によって崩れていくのさ。歴史書をひもとけば簡単にわかることだ」

 

「キミたちの敗因は力をつけすぎ横暴になったこと。それに外だけでなく内にも目を向けるべきだったね」

「やはり情報を流したのは……」

「彼だけじゃない。」

 

「悔いることはないよ。超エリートのこのぼくがキミたちを導いてあげるよ。迷える子羊たちのクロニクルは今日この場所から紡がれていくんだ」

 

ゲームセット。

 

「……バカな、オレたちが負けるなんて」

「こんなイロモノなんかに……」

「イロモノはキミたちの方だろう?」

「ゴワス!」

『史上最悪のバッドエンド……なんということだ……』

「実況!?」

四方八方から地鳴りのような大ブーイングが飛んでくる。

人々の目はうつろで、あきらかに異常な雰囲気だが、ピュアな超最強学園の面々は異変に気づかない。

「まるでぼくたちが倒されるべき悪だったみたいな扱いはやめろ!!」

「皇くん、これはエリートの宿命でゴワス」

「なんだって……そ、そうか、そついつことか。いつの時代も優れた者は妬まれる運命か、ハハハ……しかし優勝したのにこの反応は堪えるな……」

「頭が高いでゴワス、ひれ伏すでゴワス凡俗ども!!」

BOOOOOOOOO!!

「ええい、こうなったらやけくそだ! 甲子園球場全体を震わせるこのブーイング! これこそ、ぼくたちがエリートである証だ! いいぞ、もっとブーイングを! もっと、もっとだ! みんなが大好きなヒーローを倒したぼくたちが憎いだろう? 世界一憎いと言ってくれ!! クフフ、クハハッ……ハハッアハハハハハハハハハッ!」

 

地球の裏側まで届きそうなほどの大ブーイングの中心で皇は泣き笑いの表情。

高笑いを響かせて崩れ落ちた。

 

「なんだ、精神崩壊を起こすかと思ったのに楽しそう。どこまでもつまんない連中だわ」

「楽しそう?」

「……」

 

 

 

翌日。会見。

会見の場にレッドもいた。

「オレたちはまだ負けていない。甲子園はプレーオフ制度だからな」

「どういうことでゴワス?」

「レッドくん、気持ちはわかるよ。ぼくもキミの立場になったら狼狽してそんなことを口走っていたかもしれないな。けれど……ん?」

「プレーオフ制度の導入が決定しました」

偉い人がやってきて、そう告げた。

皇は目を丸くする。

「へえ。それじゃ次の大会から戦い方を考えないといけないね。忘れないよう心に刻みつけておかないと」

「今大会からです」

「は?」

皇と統道は固まった。

レッドが勝ち誇ったように笑う。

統道が声を荒らげる。

「そこまでして花丸高校を勝たせたいでゴワスか!」

「統道くん。ダメだよ」

すさまじい勢いで立ち上がった統道を皇が手で制した。

統道と向き合う。

澄んだ目でのぞきこまれ統道は冷静になる。

「皇くん?」

「ちょうどいいじゃないか」

「ぼくたちはある人物からもたらされた情報により、ヒーローたちの力の源を買い占めた。それを知ったヒーローの支持者たちがぼくたちのことを卑怯者だなんだと罵っているようなんだ。だからちょうどいい。今度は小細工なしでヒーローたちに勝利しよう」

「で、でも……」

「連勝して完全勝利、超エリートの証である大ブーイングのただなかで深紅の優勝旗をいただこうじゃないか。」

皇とレッドがにらみあう。

甲子園決勝第2戦の火蓋が切って落とされた。




R18SS的に失うもののない超最強学園の勝利、
2試合目以降の結果はどうあれパワポケ10に続く、みたいな妄想です。


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ヒーローに寝取られたお転婆娘(レッド×リコ)

寝取られ注意です


「どういうつもりだ!」

「暴れられたら困るからな」

「くっ、離せ!」

 

必死に抵抗するがヒーローには敵わない。

手足を拘束されてしまう。

口にガムテープまで貼られてしまった。

 

「あーあ。かわいそう」

「やりすぎだぞ」

 

二人の前にごろんと転がされた。

拘束という暴挙に出たヒーローはさっさと退散してしまった。

部屋に残ったのは三人。

 

彼女とレッドに哀れみの視線で見下ろされる。

 

 

「さて、どこから話せばいいかなぁ。」

「まずは出会いのきっかけからだな」

「そうだね♪あたしとレッド様が出会ったのは――」

 

説明を受ける。

 

怪しいところでバイトしていた彼女と、正義のヒーロー。

言われてみれば二人が対峙する可能性は十分にあった。

むしろ、いままで激突していなかったのが不思議なほど。

 

問題はそこではない。

なぜ彼女が様付けするほどレッドに心酔しているのか。

 

「――あたしはアジトに踏み込んできたヒーローたちをばったばったとなぎ倒してたんだ。あのときのあたしはバカだったから。レッド様にまで手をあげちゃって…」

 

心底申し訳なさそうにうなだれる。

その肩をレッドが抱いた。

目を丸くする。

 

「気にすることはない。それは過去の話だ。」

「はい♥ありがとうございます、レッド様♥」

 

彼女も同じように目を丸くしていたが、すぐに表情をゆるめた。

肩を抱かれるがまま。

身を委ねて頭をレッドの胸板のあたりに預けている。

 

「レッド様が来てくださらなかったら、あたしはもっと罪を重ねていたかもしれません…」

「過去のことはいい。未来を見るんだ」

「そうですね。ヒーローの一員として償っていきます――いえ、償わせてください」

 

レッドがうなずいた。

二人が見えない力で引かれ合うように――

 

「はああああああ!?」

 

思わず声をあげる。

キスを交わしそうだった二人が視線をこちらにむけた。

すさまじいほどの不機嫌顔。

 

「あ、そうだった。キミもいたんだった。ごめんね、完全に忘れてたよ」

 

…空気の読めない男は嫌われるよ。

舌打ちしそうな顔、こっちにギリギリ聞こえる声。

 

「いや、なに普通にキスしようとしてるんだよ!?」

「なにって…あらためてレッド様に忠誠を誓うため♥」

「彼氏の前だぞ!なんで他の男と…」

「あー、それね」

 

面倒臭そうに眉をあげる。

あらためて、という単語も気になったが、表情に圧倒されてしまう。

 

「あたしと別れて」

 

彼女が頭をさげた。

あっけにとられる。

 

「は…?え…?」

「ごめんね。他に好きな人ができちゃったんだ」

「好きな人…?」

「んー。いや、好きどころじゃないね。大好きな…。ちがう。愛する、なんて言葉でも足りない。なんていうのかな…。運命…そう!運命の人を見つけちゃったんだ。だから、別れてください」

 

彼女が再び頭をさげた。

さっきよりも深く丁寧に。

他人行儀な敬語が胸に突き刺さる。

 

「なんでだよ、誰なんだ、その運命の相手って…」

 

分かりきっているが、ついそんな間抜けな台詞を口にしてしまう。

 

「この状況でわかんない?それとも答え合わせがしたいのかな?いいよ、教えてあげる。あたしの運命の人。それは…」

 

いたぶるようにもったいぶる。

微笑で見下ろしてくる。

視線を外し、隣に立つ男へ向ける。

 

「レッド様♥」

 

彼にぎゅっと抱きついた。

腕を巻きつけ、胸を押しつけ、頭をすりすりと擦り付け思い切り甘えてみせる。

 

「なんでそんなやつと…」

「うわ…レッド様に向かって、そんな口の利き方――」

「うるさいな!!」

 

思わず声を荒げる。

彼女はきゃっと悲鳴をあげてレッドの腕にしがみついた。

 

「なんなんだよ、レッド様レッド様って…どうしちゃったんだよ…」

「だーかーらぁ♥何度も言わせないで♥ま、レッド様とのことは話すだけでも嬉しいから、何回でもいってあげる♥けど照れ臭いんだよね」

「いや、まだ…」

 

あまりの心酔ぶりにドン引き。

怒りより、あっけにとられて口が鈍くなる。

 

「あ、まだ途中だっけ?どこまで話したかな?」

 

レッドが耳打ちする。

二人でこそこそ話。

奔放さがなりをひそめ、可憐な女の子の顔になっている。

 

 

何を話したのかは知らないが、レッドが席を外した。

彼女と二人きりになる。

 

「本当にごめん…」

 

「レッドのことをレッド様って呼ぶのはやめてくれ」

「なんで?レッド様はレッド様でしょ♥呼び捨てになんか畏れ多くてできない」

「様じゃなくて、レッド君とか」

「あー。ダメ。昔のあたしはそんな風に呼んじゃってたね。めまいがするよ」

 

「レッド様♥」彼女が情感のこもった声で言った。

羞じらいと他の男への敬愛が伝わってきてイライラする。

そんなこととは露知らず、彼女はうんうんと満足そうにうなずく。

 

「ご主人様…♥これもなかなか…♥あなた、は憧れるけど、ちょっと馴れ馴れしいね♥畏れ多いよ…やっぱりレッド様はレッド様♥」

 

どう考えてもおかしい。

レッドに何かされたとしか思えない。

 

「レッドに何かされたんだろ?」

「レッド様はあたしのことを叱ってくれたんだよ。それでキュンときちゃったんだ」

「叱った?それなら、俺だって…」

「キミのはただ怒ってただけ。レッド様はあたしのことを考えて叱ってくれたんだ。ちょっと怖くて泣いちゃった」

「泣いた…?」

「なにその顔。あたしだって泣くことぐらいあるよ。」

 

奔放で気丈な彼女が泣いている姿は想像できなかった。

レッドはその泣き顔を見たのだろう。

こちらが知らない彼女の顔。

 

「レッド様が怖く見えたのは、あたしのことを真剣に思ってくれてたから。叱られてる最中にその思いが伝わってきて、そのうえあとで優しく慰めてくれて…ギュッてされたり、頭撫でられたり…ああ、もう思い出しただけでキュンキュンしちゃうよ♥」

 

彼女はとろんとした視線を空中にさまよわせている。

瞳はどろりと愛欲ににごり、頬は赤に染まって、口元がだらしなく緩んでいる。

 

「本当はレッド様と対峙した瞬間に確信してたんだ。びびびっときたんだよ。この人が運命の人だってね。」

「でも、抵抗したんだろ?」

「素直になれなかったんだよ、たぶん。」

「たぶんって…」

「見つめあった瞬間にあたしの心は奪われてたけど、照れ隠しに――もしくはそれが愛情表現だと思ってたのかも♥うーん。レッド様との出会いが衝撃的すぎて、出会う前のあたしの気持ちが自分でもよくわかんないな」

 

 

「そりゃね。運命の人に出会えたし、夢も見つけられたから。だらしなくもなるよ」

「夢…?」

「レッド様の正義のために、身も心も捧げること。それがあたしの夢」

「はあ?」

「レッド様の夢があたしの夢♥レッド様とあたしが組めば……もう無敵だね♥文字通り、敵無し♥」

「なんだよ、それ…」

 

………

 

「これで彼は変わるだろう。憎しみを糧にさらに飛躍するはずだ」

 

ヒーローが言う。

となりにはリコがいた。

 

「君には嫌な思いをさせてしまった。すまない」

 

頭を撫でると彼女はうっとりと微笑んで、ヒーローの腕にしがみついた。

たくましい肩に頭をのせ、腕に胸をぎゅっと押し当てる。

 

「そんな…♥気にしないで。レッド様の力になれてむしろ喜んでるんだから」

 

それだけではない。

目を血走らせている元彼を見ていて、彼女の中にはある感情がふつふつとわきあがっていた。

それは哀れな男をいたぶり、喜ぶ、魔女のような感情。



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和那VS謎の男

和那が暴走していた時期にあるヒーローと出会っていたらみたいな妄想です
ヒーローがどうにかして手に入れたジャマーで超能力を封じているという設定です
超能力ありの戦闘は書けないので


長身の女と浮浪者然とした格好の男がにらみあう。

じりじりと間合いをつめる。

女が見下ろし、男が見上げている。

見下ろされても男は臆することなく先に動いた。

強烈なローキックが女の長い脚に叩き込まれる。

 

「ちっ…なんちゅう…」

 

膝をあげ防御するも、膝から下が千切れ飛んだかと錯覚するほどの威力。

 

――こらあかんわ。ガードやのうて、完璧にかわさな…

 

男は足を重点的に攻めてきた。

足をキャッチしようとするが、上手い具合に攻撃を散らしてくる。

蹴りだけでなく拳も強烈だった。

 

「さっきまでの威勢はどうした?」

「ぐぅぅ…うっさい、あほ!」

「動きが鈍いぞ。超能力に頼りすぎたツケだな」

 

視界が塞がれる。

男が身にまとっていた外套を投げたのだ。

 

「ちっ、小賢しい!」

 

薙ぎ払う。

視界が晴れた先。男の姿が消えていた。

 

ざざっと砂を擦る音。

とっさに身をかわした。

 

「っぶな!」

 

男が足めがけて滑り込んできたのだった。

ベースに滑り込むときのようなスライディング。

ぼーっと突っ立っていたら骨を砕かれていたかもしれない。

 

「わわっ」

 

足元に男がいる。カウンターを叩き込むチャンスでもあったが、かわすのがやっとだった。

足に男が絡みついてくる。

転がされ、膝を極められそうになる。

極めきられる前に反対の足で蹴って脱出する。

 

「いったぁ…もう、なんやねん…」

 

距離をとろうとしたところで強烈なローキックを入れられた。

 

ふらついたところに連続攻撃。

かわしきれず何発も喰らってしまう。

反撃はかわされいいところがない。

 

「千本槍、どうやら君は口だけだったようだな」

「…あはは、確かに。ボコボコやね」

「終わりにしよう。そのあとでたっぷりとお説教だ」

「はっ!やれるもんならやってみい!」

 

男が距離をつめてくる。

迎撃。ひらりとかわされる。

 

――くそっ、ほんまにツケが回ってきてるみたいやな…超能力を使った戦闘に慣れすぎた…思うように体が動かん…コイツが予想以上に強いっちゅうんもあるけど、打たれ放題や…

 

一方的に攻められる。

日本刀のような切れ味のローキック。ワンツーから強烈なアッパー。

かわし、受け流し、決定打こそさけるが、ダメージは確実に蓄積していく。

 

「どうした、本当に口だけか?」

「うぅぅ…」

 

痛みと絶望感に顔をゆがめる。

男が〆とばかりに攻勢を強めてきた。

 

――でも、見えてきたで。アンタのクセ。

 

絶望の表情の裏で、和那はぺろりと舌を出した。

 

 

 

「つかまえた♪」

「なっ」

 

耳元で囁かれぞっとする。

胴に何かが巻き付いた。何か。和那の腕だ。

ふわりと持ち上げられる。早業かつ力業。踏ん張るいとますらなかった。視界がぐるりと流れる。へそが天を向いたあたりで胴に巻き付いていた腕が外された。空に投げ出され落ちてゆく。

 

「ぐぅっ!!」

 

強い衝撃が体を突き抜ける。

 

「暗黒イズナ流星落とし、バージョン和那…能力が使えたらもうちょいちゃんとパクれるんやけど、いまのはただの投げっぱなしジャーマンやね。背中から落ちるようにしといたで。普通のヤツならそれでもあかんけど、あんたなら大丈夫やな?」

「くそっ…」

 

ふらふらと立ち上がる。

和那が目の前にいた。

 

「形勢逆転。…さっきまでのお返しや!」

 

ドカッ!バキッ!ボコッ!

 

「ぐあっ!!」

 

長い手足から繰り出される攻撃。

一方的な展開になる。

無理やりにでも反撃。ひらりとかわされた。大きな体を地を這うような低い姿勢でもぐりこまれる。

再び胴をとらえられた。

 

 

 

和那は一瞬躊躇する。

 

――さすがにもう一回はマズいかな?

 

バックを取り情け容赦なく反り投げようとした寸前に善良な心が顔をのぞかせたのだ。

躊躇したのはほんの一瞬。

 

「ぐぅっ」

 

その一瞬に肘を叩き込まれた。

顔面に痛みが走る。

 

「いったぁ…コイツっ!」

 

無理やり投げようとして、もう一発肘を入れられた。

胴をとらえていた手を離してまう。

男が空中でくるりと回転した。

華麗に着地する。

和那はべちゃりと倒れこんでしまった。

 

それでもすぐに立ち上がる。

鼻からつっと熱い液体がしたたった。

呆然とそれを拭う。

赤く染まった手を見て目を見開く。

 

――あまっちょろい考えは通用せんってコイツに教えたるつもりだったのに…まさかこっちが思い知らされるなんて…

 

「いまので目が覚めたわ」

「なんだ、いままで寝ていたのか」

「ああ、そうやね。こっからが本当の戦いや!」

 

叫んで間合いをつめる。

男も前に出てきた。

殴り合い。

 

――あらら。こらあかんわ。最初に蹴りをもらいすぎた…

 

足の痛みがひどい。

本当の戦いなどと息巻いたが、あっという間に圧されてしまう。

 

――なんやねん、コイツ。バケモンか?

 

男の驚異の回復力。

ついさっき地面に思い切り叩きつけられたことなどなかったかのような動き。

 

――頭から地面に突き刺すべきやったか…

 

殴り合いが殴り合いではなく一方的になるのも時間の問題だった。

 

中段蹴りを放つ。

痛みのせいでひどいもの。

男に受け止められてしまう。

 

「離せっ!このっ!」

 

顔面に爪を立てる。頭突きをくらわせる。がむしゃらだった。

よろめいた男にタックル。馬乗りになって拳を落とした。

鬼の形相。

 

しばらくして拳をとらえられる。腕ひしぎを極められそうになる。

 

「ぐあっ!」

 

男の脚に噛みついた。

たまらず腕を離した男にもう一度馬乗りになろうとする。

だが、するりと逃げられてしまった。

 

もう何度目かのにらみあい。

 

「驚いたな…心優しい大江和那という女の子はもうどこにもいないらしい」

 

男は苦笑いする。

和那はけたけたと声をあげて笑った。

 

「大江和那?誰やねん、そいつ」

 

たがが外れたように、腹を抱えて大笑いする。

男が怪訝そうな顔をした。

 

「なにがおかしい?」

「はっ。笑わずにはおれんわ。なんや、あんた、大江和那と戦っとるつもりだったん?」

「そうだが?」

 

けらけらと笑う。

 

「涙出てくるわ。ぷくくっ。あー、おかし」

 

男は呆然としていた。

和那はため息をひとつついて笑いを一段落させる。

 

「――あんた、間違えてるで。人違いや」

「人違い?」

「そ、あんたが探しとるんは大江和那やろ」

「いまさらしらばっくれるつもりか?」

「ちゃうちゃう。しらばっくれるんやのうて、事実や」

 

「臆病で、背の高いことを気にしとって 自分に自信がなくて…でも、それでも、同じクラスの男の子のことを本気で好きになって恋に落ちた、大江和那はいまはおらん」

 

「いまあんたの目の前におるんは――ケンカが好きで暴悪な鬼――茨木和那や!…大江和那?二度と間違えんな、ボケがっ!」

 

 

 

男が笑った。

間合いをつめてくる。

 

男の動きに合わせて腰を落とす。

低い姿勢で攻撃をくぐり痛みに顔をしかめながら右手右足を前へ。

 

 

 

男は目を丸くした。

 

――槍を隠し持っていたのか…?

 

和那の長い手足、完璧なタイミング、茨木流の鍛錬によって身についた姿勢。

それらが合わさって男に槍の一撃を幻視させた。

胸を穿たれたかと思うほどの威力。

 

崩拳が男のみぞおちに直撃した。




殴り合う二人の間に武美がノコギリをもって乱入
和那があっさりと手首をつかまえて投げ飛ばし、つめよっている
隙をつかれヒーローキックを食らわされて決着

ってな感じの妄想


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和那VS謎の男 その2

和那VS謎のヒーロー
その2といいながらその2ではない部分も

下書きの山の中から見つけたもの
チラシの裏を下書きの整頓に使っても、バレへんか!
ってな感じでね


夜の公園。

和那は野球中継を見ていた。

休憩がてら。

画面の向こうで男がボールめがけて飛び込んだ。

 

身を投げ出すような格好で腕を伸ばし――見ようによっては足をもつれさせて、ゴロゴロと派手に転倒したと勘違いしてしまいそうな――にもかかわらず、その男はボールをしっかりとキャッチしていた。

グラブのなかをのぞきこみ、本人も驚いたような表情をしている。

ダイビングキャッチ成功。ファインプレー。

大歓声が響きわたる。実況も大興奮している。

 

「うんうん、さすがやな。やっぱりすごいわ」

 

和那は顔をほころばせて、我がことのように喜んだ。

 

 

 

野球中継に見入っていたせいか、まわりへの注意を怠っていた。

 

「驚いたな。千本槍などと恐れられているキミもあんな顔で笑うことがあるんだな」

 

不意の声に、和那は慌てて距離を取った。

不審な影がいつのまにかすぐ近くまで接近していた。

「あらら、恥ずかしいとこ見られてたみたいやね」

 

冗談ぽく笑いながら身構え、不審な影と向き合う。

 

(……こいつは誰や? 千本槍なんて呼び名を知っとるっちゅうことは、面倒くさい相手なのは間違いないやろうけど)

 

ヒーローとして戦う彼女には心当たりはあるものの、その数が多すぎて特定できない。

神経を張りつめたまま記憶の糸をたどっていると、妙な違和感に襲われた。

 

(……しまった! この感覚、ジャマーやな。能力を封じられたか……)

 

表情を険しくすると男が笑った。

 

「悪いな、能力ありで戦ってもいいが、それだと周囲への被害が大きくなる。お互いそういうのはなしにしよう」

「ん? あんたも超能力者なん?」

「似たようなものだ」

「へえ……」

 

和那は口元をゆるめた。はっと我にかえって、

「……って、なに戦う前提で話進めとんねん。うちはそんな野蛮なことはせえへんよ」

「どの口が言う」

「この口やこの口、見えるかな?」

 

腰をかがめ男の目線に合わせるようにして、歯を見せて笑った。

身を翻して立ち去ろうとする。

 

「怖いのか?」

「あ?」

「能力と最新鋭の装備がなければ怖くて戦えないか? 千本槍と名高いキミもその二つさえ封じてしまえば、体がデカいだけの臆病者というわけか」

「なんやと、こらっ!」

体を再度翻し、男につめよった。

「もういっぺん言ってみい! デカいって……そりゃウチもちょっと……ほんのちょこっと身長が高いかもしれんけどなあ……もうちょい言い方ってもんがあるやろ!」

目を剥いて怒鳴りつける。

挨拶がわりに両の手のひらで男の胸を軽く押した。

(ん……?)

軽くといっても、そこらの男なら尻餅をついてもおかしくないほどの強さ。

だが男はまったく動じない。

手のひらから伝わってきた強い感触に和那は眉を開いた。

「へぇ……うちにケンカを売りにきただけあって、そこそこ鍛えとるみたいやね」

「まあな」

男が両手を胸の高さにあげて、和那に突き出そうとした。

手のひらで胸を押そうとしているのだとわかり和那は慌てて間合いをとる。

「は……な、なに堂々と痴漢しようとしとんねん!」

「……痴漢? いや、こういうときは同じ攻撃をやり返すのが礼儀だと思ったんだが……」

「そんな礼儀あるか!」

無意識に身体をひねって胸をかばう。

男は何がなんだかという風に首を傾げていた。

(どういうことやねん……日常的に痴漢しすぎてわからんようになっとるってことか? 恐ろしい男やな……)

 

 

「……戦う前に、ひとつ聞きときたいんやけど」

「なんだ?」

「あんたは何者?」

「ある人物の依頼で最近暴走気味のキミにお灸をすえにきた、ただのお節介やきさ」

「ある人物……? 誰やそいつは?」

「それは言えない……だが、ヒントは出そう。……キミの身近な人物だ」

「なに……? そんなアホなこと……」

「ない、と言い切れるか?」

「それは……」

最近のみずからの荒れ具合がひどいのは自覚もあった。

不殺の信念も、いまは努力目標になっていた。

戦いのあと、気持ちの悪い笑い声を立てていたと指摘されたこともある。無意識に笑っていたらしい。

暴走と言われても仕方がない。ひょっとすると身内にも快く思っていないものもいるかもしれない。

視線を落とす和那の脳裏に共に戦う仲間の顔が浮かんだ。

「なんや、そういうことか。アホらし」

ある可能性に思いいたり和那は笑った。

「……何がおかしい?」

「そうやって揺さぶりをかけて、ウチらを仲違いさせようっちゅう魂胆やろ? けどな、そんなしょうもない手はくわん」

不敵な笑みを男に向ける。

「確かに最近のあたしの行動はひどいもんがあるかもしれん。自覚はあるよ。でも、それやったら直接言ってくるやろ。少なくとも、あんたみたいなどこの馬の骨か分からんような男に依頼するとは思えんな」

男は肩をすくめた。

「……俺の言葉を信じるか信じないかはキミの自由だ。……依頼を受けてから俺自身もキミのことについては調べさせてもらった。最近のキミの行動は目に余る」

「んで、ウチをぼこぼこにこらしめて改心させたろうっちゅうことか? なんや、まるで正義の味方みたいやね」

「正義の味方か、悪くない響きだな」

男はふふっと嬉しげにする。

和那はずっこけそうになった。

(否定せいへんのかい! なんやねん、こいつ……まさか、本気で正義の味方のつもりか……?)

 

「まあ、ええわ。あんたの望みどおり手合わせしたる。逆にぼこぼこにしたるから覚悟せえよ」

「それは怖いな。お手柔らかに頼むよ」

「無理やな。あんたから言い出したんやで? 手加減はなしや」

和那はみずからの拳を胸の前でぶつけ気合いを入れる。

笑みを浮かべつつ強い視線で男を見据えた。

男も笑みを浮かべている。

「やめるんやったらいまのうちやで。ごめんなさいしたら許したるわ」

「残念ながらそのつもりはない」

「言うたな。どうなっても知らんで」

 

………

 

最初こそ一進一退の攻防だったが男の驚異的な身体能力とタフさに徐々に押され始めた和那は噛みつき、目潰し、ひっかきとなりふり構わない攻撃をくりだして闘いの流れを取り戻そうとする。

 

………

 

「あのころのキミは、もういないようだな」

「なに……?」

「あとはとどめをさすだけという敵対勢力の男にとどめを刺すことができず、その男をあやめたのは他のものだったにも関わらず泣きながら手を洗っていた潔癖なキミはもういないんだな」

和那は呆然とした。

「なんで、それを……」

「昔のキミを知る数人の者から話を聞いた。それをつなぎあわせて推測したんだ。キミの反応を見るに、俺の推測は当たっていたようだな」

敵対勢力の男を始末できなかったという話を知っているものは何人かいるが、そのあと必死に手を洗っていたことを知っているのは一人しか心当たりがない。

「まさか、お前、あいつに何か――」

「安心しろ。彼には何もしていない。酒を酌み交わし、キミの昔話を聞いただけだ」

「んなもん、信用できるか!」

「さっき野球中継を見ていただろう。俺に何かされたように見えたか?」

「それは……」

見た限りは何も変わりはない、コンディションはむしろよさそうだった。

ただ内側はどうなっているかわからない。

経緯はわからないが、怪しい男にべらべらと昔話をしてしまうぐらいだ、何かされている可能性はある。

 

視線を鋭くする。唸る獣のように歯をむき出しにして男をにらみつける。

「ぼこぼこにして話をじっくり聞かせてもらわなアカンなあ……」

「悲しいな。やはりあのころの心優しいキミはもうどこにもいないのか」

 

………

 

飛び回し蹴りを頭部に受け、ふらつく。意識が吹き飛んでいた。

がしゃんと音が響いた。

公園のまわりを囲うフェンス。

(いったぁ……なんやねん、もう……)

これがなければ和那は地面に大の字になっていただろう。

(ははっ、ちょうどええわっ)

衝撃で目が覚めた。

同時に脳内にダイビングキャッチを成功させた彼の姿が浮かんだ。

フェンスにぶつかった反動を利用して男に向かっていく。身を投げるような形――倒れているだけといった方が正しいかもしれない。

「なっ……」

男が目を丸くしていた。

和那は腕を横に伸ばした。

飛び回し蹴り――それを長身の和那の頭部に命中させるほど跳躍した直後でまだ体勢を立て直せていない男めがけて腕を振り抜く。

「ぐぅっ!?」

振り抜いた腕の内側が男の喉元にめり込んだ。

(勝った! ウチの――えぇっ!?)

和那は驚愕に目を見開いた。

クローズラインを食らい吹き飛ぶと思っていた男が腕に絡みついてきたのだ。

(うそやろ……なんやねん、こいつ……)

決死の思いで放ったクローズラインでも男を倒すことはできなかった。

飛びつき式の腕十字を極められてしまう。

 

体を痛めつけられていなければ――もしくは能力を封じられていない状態なら極められたままでも男を持ち上げ地面に叩きつけることができた。

しかし、今はそれができない。




クローズライン
あえてアメリカ風で


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暴走気味の彼女が流浪のヒーローに成敗されたらしい

カズが暴走している時期にレッドに会っていたらみたいな妄想です
レッド×和那 寝取られ注意です


「ある方と戦って、負けたんや」

 

彼女は、なぜか嬉しそうにそう言った。

 

「ボコボコにされて、ウチは最近暴走気味やったなって反省したわ。あの方に楯突くなんて、ほんまアホやった」

 

ボコボコにされたというわりには、うっとりとした表情で語っている。

頬は赤に染まり、大きな体をもじもじとくねらせて、まるで大好きな人のことを考えて悶える乙女のようだ。

 

「ボコボコにされたのに、なんでそんなに嬉しそうなんだ」

「暴走を止めてもらえたから、かな?おかげで目が覚めた。それに、強い人にめぐりあえて、拳を交えることができたのも嬉しい。体をぶつけあって、胸を借りて…結果はボコボコやけど…なのに、なんでこんなに嬉しいやろ?アカン、これじゃウチ、ボコボコにされて喜ぶ変態みたいやん!…自分でもようわからんわ」

 

彼女はごまかすように笑った。

 

「あ、そうや、これ見て」

 

変身と、ヒーローらしい台詞とともに彼女の体が黒いものに包まれた。

漆黒のヘルメット。漆黒のスーツ。

 

「わがまま言って、ちょっとデザインを変更してもらったんや。どう?似合う?」

「ヒーローっぽくていいんじゃないかな」

 

素直な感想を言う。

 

「これで、レッド様とおそろい♥角は耐久性だかなんだかの問題でつけれんかったけど、ないほうがええかな。レッド様に人間に戻してもらった証っちゅうことで♥ああ、もう、身も心もセイバイされてもうたわぁ♥ウチも結局女やったんやなぁ」

 

何を言っているのか、さっぱりだった。

 

「タフでクールなナイスガイと改心した鬼、この二人が組めば敵なしやね」

 

彼女はにやりと笑った。

こちらは完全に置いてきぼりだ

 

 

 

「ウチとレッド様の戦いが終わりかけたとき、漁夫の利狙いの敵が出てきたんや。そいつはどうやらウチをつけてたらしい。そいつが出てこんかったらウチはまだ悪あがきを続けてたやろうなぁ。

戦いを中断して、二人で敵を倒すことにした。ウチはボロボロで動けんかったのに、レッド様はぴんぴんしてた。きっとウチには手加減してたんやね。もうちょっとで勝てるかもなんて思ってた自分が恥ずかしなったわ。

真剣勝負のはずやったのに、手加減されてたっちゅうのはちょっとイラッとしたけど、それはウチの実力不足のせいやし。もっと強くなって、いつかレッド様と本気で手合わせしてみたいなぁ♥

で、漁夫の利狙いの敵は、ほぼほぼレッド様ひとりで戦って……あれは共闘とは言えん、完全にレッド様に護ってもらった形や。あの大きな背中、卑怯な敵を一喝して、必殺技を決める姿。ああ、もうキュンキュンしたわ。」

 

彼女がちらりとこちらを見る。

冷笑に見えて、ゾクッと背筋に冷たいものが走る。

 

「ウチもいちおう女の子やし、護るより、護ってもらえる方が嬉しいわぁ♥」

 

ヒーローの姿でも思い浮かべているのだろうか。

とろけそうな笑顔で虚空をみつめている。

 

なにも言い返せない。

レッド様、レッド様、と彼女の口から甘い声がこぼれる。

 

「なんだよ、レッド様、レッド様って…。俺じゃダメなのか」

「あんたはウチの暴走を止めてくれんかったやん」

「それは…」

「あんたがウチを護れるとも思えんなぁ」

「そんなことはない!」

「じゃあ、いまからウチとやってみる?」

「なっ…」

 

「あ、やるいうても、あれちゃうよ。」

 

彼女が艶やかな笑みを浮かべる。

いつからこんな大人びた表情をするようになったんだろうかと、びっくりする。

 

「喧嘩。やってみる?」

「なんで喧嘩することになるんだ」

「確かめるんや。ウチと喧嘩して負けるようなやつがウチを護れるはずがないやろ。どうする?やるか?」

 

 

青年はプロ野球選手、体にだって自信はある。

だが、青年よりも高い身長、死線をくぐり鍛え抜かれた肉体、さらには超能力まで持っている彼女に勝つ自信はなかった。

 

「なーんてな。冗談や。」

「待て!ここまで言われてひきさがれるか!」

「え?ほんまにやるん?ええけど、レッド様がウチにしてくれたみたいに上手に手加減できるかなぁ」

「なに!?」

「たぶん無理やわ。野球もしばらくできへんようになるかもしれんから、覚悟してな」

「くっ…」

 



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