伝説になる骸骨と伝説になるかもしれないハゲ (蓮太郎)
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骸骨とハゲ、出会う
カルネという村にサイタマという青年がいた。
彼には親はいない、というのも彼が赤子の頃、カルネ村に死に体でたどり着いた女性が息を引き取る前に託した赤子が彼であり、幸いにも村の人たちが善人であったために引き取られて暮らしていた。
知識こそあまりないが、成長するにつれて村の働き手としてそれなりに頼られるようになっていた。
だが、何故サイタマが王国が帝国との戦争中に徴兵されていないかというと、彼がカルネ村を拠点とする冒険者であるから、ということになっているからだ。
いつだったかサイタマにエ・ランテルにお使いを頼んだ際に本来なら二日かかるところを日帰りで帰ってきたことから始まる。
彼は貴重な村の若い男の働き手として一応残しておきたかった誰かが「こんなに早く帰ってこられるなら運び屋として登録しておけばいいんじゃないか」と言ったことで成り行きで登録していた。
その後は村で働きつつ冒険者として運び屋の役割を果たしていつも日帰りで帰ってきていた。
後ついでに腕立てと腹筋、ランニングを日課として行っていた。
村人は知らなかった、運び屋としての道中でモンスターと戦闘をして何度も死にそうになっていたのをはったりやお小遣い程度の金で買った安物のポーションだけで済ませていたことを。
日課のランニングは魔物だらけのトブの大森林で行っていたことを。
いつの間にか身の丈を超えた戦闘を、特訓を死に物狂いで繰り返していたサイタマはいつしか…………
モモンガはがっかりしていた。
かつて『ユグドラシル』というDMMO-RPGにて悪名を轟かせていたがサービスが終了してしまい、最後までログアウトせずに残っていたら異世界転移してしまった。
色々あってこの世界で二度目の外出でとある村の襲撃をみてしまい、かつての仲間の言葉を思い出して村の襲撃者を撃退しようと行動に移した。
しかし、その襲撃者はモモンガの想定よりもはるかに弱く、レベルが100でカンストしているモモンガに対し襲撃者の兵士のレベルは1桁しかない。
ついデスナイトを解き放ってしまったが、いくら何でも過剰だったのではと思っていた。
「お姉ちゃん、だいじょうぶ?」
「う、うん。この方がくれたポーションで治ったから」
そしてここにいる姉妹は村の襲撃者から逃げてきてモモンガに助けてもらったという経緯がある。
この姉妹は戦闘なんて一度も関わったことがないから兵士から逃げることしかできないのも当然だった。
「こんな時にサイタマがいたら…………」
恐らく村の中で一番戦えるはずの青年の名を口にした。
「ふむ、サイタマという者がいればなんとかなったのか」
「たぶん…………でも今日は用事があったからいなくて…………」
ふむ、とモモンガは思考する。
「(サイタマ、という人は多分村の中で最強って感じの人だろう。しかし、タイミングが悪かったとしかいいようがないなぁ)」
さっきの兵士が1桁台のレベルならサイタマという人は二桁ちょっとあるくらいじゃないかな、と考えていた間に従者としてついてきた鎧姿のアルベドが物凄いオーラを出していることは怖くてスルーした。
デスナイトが襲撃者を全員殺してしまうのではないかということに気づいたモモンガは慌てて様子を見に行くが、最後に残った襲撃者はデスナイトに切り捨てられてしまった。
あちゃ~、と思いつつも仮面の下で表情が見えない(表情と言っても骸骨なので普通は分からない)ため声だけ平静を装い生き残った村人と話し始める。
ここでアインズ・ウール・ゴウンと名乗った事や村の復興に協力するなどの取り決めを交渉していた時に事件は起こった。
「なんだ今の音は?」
「もしや、また襲撃者がやってきたのかもしれません」
悪夢の再来かと考えた村長だったがモモンガ改めアインズにはデスナイトがやったものだと思った。
しかし現実は逆だった。デスナイトの気配が消えたことから外部からやってきた者がデスナイトを一撃で仕留めたのだと確信した。
「村長はここで待っていてください。アルベド、一緒に来い!」
「はい、モモンガ様」
もしかしたらこの地域だけが特別に弱かったのかもしれない、それとも規格外が訪れたのかもしれないと警戒心MAXで出迎える。
もしかしたら我々の知らない魔法があるのかもしれない。未知のマジックアイテムがあるのかもしれないと内心期待もあってきたのはいいものの。
「えーっと…………これの持ち主、でいいんだよな?」
そこにいたのは遊んでたら窓ガラスを割ってしまったかのような間抜け面のハゲだった。
「ち、ちがうんです!サイタマはさっき帰ってきたばかりで事情を知らないんです!」
「ごめんなさい!何でもしますから命だけは…………」
「…………こ、この下等種族が」
デスナイトの残骸らしいものとその周囲に村人がたかっていたが、アインズの姿を見ると顔を真っ青にして弁明してきた。
ここまで過剰反応するのかとアインズはのんきに考えていたが、隣のアルベドが鎧越しなのにイラついてブチぎれる寸前だったことを察しとっさに止める。
村人の反応、デスナイトを倒せるほどの強さを考えて一つの答えを出した。
「なるほど、君がサイタマだな」
「ああ、そうだけどあんたは?」
「私はアインズ・ウール・ゴウン。このデスナイトは私が創ったものだったが、いったいどう倒した?」
「あー、なんか村にヤバそうなのがいたから殴った」
「な、殴った?」
デスナイトは本来ならタンクとして即死ダメージを受けても一度だけ耐えきるという特性があるアンデットなのだが、一撃で上半身を粉砕し戦闘不能にすることは不可能である。
しかし、現状の証拠として上半身のないデスナイトと無傷のサイタマがいる。
「なあ、サイタマ君」
故に興味を持った。そこらにいる人間なら興味を持たなかっただろうが、ここはアインズの認識が正しければ異世界であるため何かしら得られるものがあると考えた。
それは、愛する家族を守るためか、いつか帰ってくるかもしれない友を待つためか。
「少し、私と話をしないか?」
「ああ、別にいいぞ」
ここに不死の王と知られる骸骨と後に趣味でヒーローをやる男が邂逅した。
この二人が後の歴史にどう影響するのか、それはまだ分からない。
この作品のサイタマはユグドラシル産ではなく現地産なのでいくらでも無茶苦茶にできるはず(暴論)
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骸骨とハゲ、力の一端を見る
サイタマの育った村が襲撃されたってことは育て親同然の人も死んでる可能性あるんですよね。許せねぇよなぁ?
でもサイタマは更生の余地がある人は殺さないのであしからず…………
「へー、よく分らんがとにかくすごい
「ふむ、モンスターを積極的に倒すのではなく鍛えて強くなるか…………なるほど、基礎能力の向上か?いやはや興味が尽きんな」
偉大なる
なにせサイタマは辺境に住む村人と同じ知識量しかないためアインズの
当然、話を切り上げるほかなかった。
ちなみにアインズの偉大さを話す際は隣に従者として立っていた鎧姿のアルベド(一応アインズがサイタマに名前を教えた)が物凄い剣幕で語っていた。
しかしサイタマにとってはユグドラシルの話ばかりで知らない世界のことなので何一つ理解できていなかった。
サイタマの表情からつまらんということを察したアインズが話を切り上げなければもっと続いただろう。
実際、お互いの底知れぬ強さはどちらも見抜くことはなかった。
そのころ、ガゼフ・ストロノーフが襲撃者がいたはずの村を転々とし、カルネ村に到着した。
ガゼフはカルネ村が無傷ではないが全滅していないことに違和感を感じたが、村人の話でデスナイトを従える
ここ最近では帝国との戦争で若い男が徴兵されているため全滅は覚悟していたが、生き残りがいるということで安心した。
そして、村人らを生き残された
「どうも、私がアインズ・ウール・ゴウンだ」
「私はガゼフ・ストロノーフ。村を救っていただき感謝する」
「いえいえ、全て事の成り行きですよ」
少ない会話ではあるがガゼフの礼儀正しさに交換を覚える一方、ガゼフのレベルは30程度と王国最強格と聞いていたアインズはまた少しがっかりしていた。
ふと、その時にサイタマのステータスをのぞき見していなかったことを思い出したが、この後に起こる
「ふむ、確かに帝国が露骨に証拠を残すはずがない。となるとやはり法国…………」
「間違いなく私を始末したいのだろう。済まない、このようなことに巻き込んでしまって」
「まさかとは思いますが、このまま放置するおつもりで?」
「…………これは我々王国の問題だ。申し訳ないが決着は我々でつけさせてもらう」
物語に出てくるような武人にアインズは心打たれた。そして彼が間違いなく負けるであろう戦場に向かおうとすることも即座に理解した。
だから少し手助けをしたいと、考えていた時だった。
「すいませんアインズ様!サイタマを見かけませんでしたか?」
「む?」
「サイタマ、というのはここの村人か?」
「はい、襲われた後に帰ってきたばっかりだったんですけど見当たらなくて」
言われてみればアインズが外に出てきてから一回も目立つ禿げ頭を見かけていない。
あの毛髪が一本もない頭は訓練の賜物と言っていたが、実際にああなるのはスキルか何かの反動ではないのかと訝しんだのはご愛嬌というものだ。
しかしサイタマが見当たらないとなったら一体どこに行ったのか。
こっそり使い魔を召喚し偵察に出したアインズは、興味深いものを見た。
「おい、お前らが村を襲った奴の仲間か?」
ニグンは困惑した。陽光聖典としてガゼフ暗殺の指名を受けており、ガゼフをおびき出すことに成功した矢先に冒険者らしい青年に見つかってしまった。
様々な村を襲撃して時間はそこまで経っていないが、もしかしたら襲った村が故郷でちょうど帰ってきたばかりの不幸な冒険者だったのかもしれない。
『不幸なことに』、目撃者が居ては今回の作戦は失敗となる。そのため目の前に立つ冒険者を…………
目の前の青年は皮鎧どころか布の服で腰に剣すら刺していない、どう見てもそこら辺にいそうな村人ハゲに見えてきた。
「だとしたらどうした。今からお前はここで死ぬのだ」
「話きかねー奴らだな。なんでやったかどうか聞いてんのに殺す選択肢が出てくるんだよ」
「説明せねばわからんとは、無理もないか」
やれと言わんばかりに部下に視線だけで合図を送る。
意図を汲んだ部下が剣を抜きサイタマを切り捨てんと襲い掛かってくる。
見た目通り弱そうであれば剣を一度振るうだけで終わるはずだった、少なくともこの場にいる陽光聖典のメンバーは。
バゴンッ!
その考えはサイタマに通用しない。
「…………は?」
たった一回、拳を振るっただけで剣を振ったはずの者がニグンらよりもはるか後まで飛んで行った。
振り返って倒れた者を見てもピクリとも動かない。
「お前ら…………覚悟できてるんだろうな」
静かな怒りというのはこういうことを指すのだろう。表情はなく、声に抑揚もない、しかし声にはドスが効いていて不気味さを醸し出している。
サイタマは敵対する者に対して容赦はなかった。今までも魔物だけでなく盗賊など誰にも知られない悪党に分類する類の人種を一撃で叩きのめしたことだってあった。
それ以前に、今まで育ててくれた親代わりの近隣住民を殺されて怒らないなどもってのほかだった。
「うっ、ぜ、全員構えろ!詠唱の準備だ!」
ニグンの号令で我に返った者たちが魔法を発動するための詠唱を唱えようとする。
もしかしたら目の前にいる男は怪物なのかもしれないという恐怖を頭の片隅に背負い、詠唱してもその恐怖が晴れることはなかった。
最も、その祈りが届く前に意識が飛んで行ったことに気づくことすらできなかった。
「う、うわあああ!」
「なんだこいつ、はや、あべっ!?
「一体我らは、何を敵に回したのだ?」
ガゼフを抹殺するために集まった精鋭たちが拳一つで蹂躙されていく。
まるでドラゴンに出会ってしまったような、運命であるかの如く一撃で葬られていく。
「くっ、こうなればアレを使うしかない!皆、時間を稼げ!」
もはや全員が決死の勢いでニグンが持つ魔封じの水晶に賭けるしかなかった。
サイタマの強さは彼らが知る中で最上位に位置するモノと確信した。
ならばかつて魔神を葬った天使を召喚するほかない。ニグンはそう確信して、部下を捨て駒同然として召喚の準備を行う。
部下は魔法にて天使を呼び出しサイタマに対抗しようとした。
だが第三位階魔法で召喚した天使如きでは快進撃は止められることはできない、しかし注意を逸らし時間稼ぎはできた。
「見るがいい、最高天使の尊き姿を!」
水晶が砕けて神々しい光と共に
あたり一面を天使が発する光で照らし、文字通り現地では神の使者と言わんばかりの威光を放っていた。
「ふ、ふはははは!この最高位天使さえいれば貴様如きー」
「うお、まぶしっ」
その一言のうちに目に止まらぬ速さで前方に跳躍し拳を前に出した、それだけの動作を一瞬で行なった。
それだけのはずなのに、振り向いたニグンの目に映ったのは半身が吹き飛んだ
吹き飛んだ上半身がなくなったことで下半身も光る粒子となって空気に溶けていく様が天使が敗れたという証明になっていた。
「ば、馬鹿な…………こんなことが…………」
魔とはいえ神とついたものを倒した天使を瞬殺したという事実を受け入れられず膝をついてしまう。
切り札を失った隊長が折れてしまったとなれば部下も心折れるというもの。
逃げ出すものもいれば全て諦めて同じように膝をつく者もいた。
だがサイタマは許さない。倒すことを諦めてしまったニグンに近づいていく。
「ひっ!?た、頼む!金なら幾らでも渡す!だから」
「うるせえ、そんなことより死んだ奴らに詫びろ!」
ゴッ、という殴られた音が聞こえる前にニグンの意識は途切れた。
「ほう…………やはりというか、サイタマ君は『特別』らしい」
村人総出、とは行かなかったものの少なくはない人数をサイタマ捜索に当ててる中、アインズはポツリと呟いた。
「皆さん、私の使い魔で様子を見たのですがサイタマ君は無事です」
とはいえ、このままだと話が進まないためサイタマを見つけたことを報告する。
「ああ、問題はありませんよ。戦士長殿、どうやら全て終わったようです」
「なんだって、いや、それは…………」
「あの方角にサイタマ君が気絶させた者どもがいます。手間が省けましたね」
ざわつく戦士達をよそにアインズは思考する。
「(うっわ何あれワンパンって!いやあれくらいの召喚天使ならどうとでも出来るけどこの世界の人たちってレベルが極端なのか?通常攻撃であれくらいの威力出るならシャルティア辺りとか対等…………いやデスナイトをワンパンで倒してるから別の力が働いてる?それか一撃必殺のスキルみたいな、いやでもあそこで殴られた人全員生きてるっぽいしなぁ、というかあれ生きてる?)」
サイタマが殴った者達はピクリとも動かないが最低限の呼吸はしているようなので生きてるはず。
逃げた者らは既に包囲していた
「(推測ではあるが個体差が激しい?うーむ、捕らえた人間で試すべきだな。となると、この世界にはサイタマのような人間がいるかもしれない、警戒しないと)」
誰にも気付かないうちにアインズの警戒度は大きく跳ね上がった。
サイタマ「とりあえず許さんから一発殴る(致命傷)」
アインズ「うわ現地人こわ、警戒しよ」
アルベド「(出番…………どこ?)」←夫(仮)を讃える機会を失う
ニグン「」←この後連行される
ガゼフ「何が起きたんだ…?」
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ハゲの一日・カルネ村復興・前編
毎日腹筋100回腕立て100回スクワット100回ランニング!あと食事はキチンととって環境に適応しろ!
これだけで強くなるサイタマって神人の可能性が微レ存(本小説にはそんな設定はないです)
「サイタマ、起きなさい!もう朝よ!」
カルネ村にいるサイタマの一日は早い、というのも普段は特にやることもないため村の手伝いをやっていることが多い。
そのため、遅ければ昼くらいまで寝ているサイタマを叩き起こしに来るのだ。
特に、襲撃があったせいで死体の処理や壊された家の修復、また外敵が来る可能性があるせいで柵を立てることになったた。
何せ人手が減ったのだ、サイタマが手伝わなければ何言われるかもわからない。
サイタマの主な仕事は近くの木を伐採し、物資を運ぶこと。
伐採に関しては木を殴って折るとかいう豪快な方法を用いているが、細かいことは苦手な傾向にあるため共同作業になる。
もちろん、柵を作る方を任せるのだが、柵を地面にさすのはサイタマの仕事である。
「いやー、サイタマがこの時期にいてくれて助かった。ネムにこんな作業やらせるわけにはいかないからな!」
「こんなって言うなよ。俺だって帰るところがなくなったら困るからな」
「くぅ~、非常時には役に立つなぁ~」
「いつもは役に立ってないみたいに言うなおい」
軽口を叩きあいながらも作業は進めていく。
時折、丸太を肩に複数抱えたまま日課の筋トレの一つであるスクワットを休憩時間の合間に行う、暇な時間はカルネ村にいる限り余りないのだ。
カルネ村の人たちからすれば日常風景なのだが、外から来た人が見れば異常だと思うだろう。
なにせサイタマが抱えている丸太は根元から叩き負った未加工のものを縄でまとめた6本分、それを背負ってないかの如く軽々とスクワットを行っているのだ。
それでもサイタマにはただの筋トレでしかないのだ。どう見ても荒行の一つにしか見えないが、これが普通なのである。
「あー、木材なら
「馬鹿野郎お前、
『アレ』とはかつてサイタマが大量にとってきたのはいいものの、カルネ村にいる人間どころかエ・ランテルに運んでも誰も加工することができなかった謎の木材である。
サイタマに聞いても「襲ってきたから殴り倒した、その時の戦利品」というだけでトレントか何かと思われる。
売るにも物が物だけに中々売れず、結局倉庫番もしくは元あった場所に放置してきたものだ。
そんなものを使ったとしても縄で結んだ見た目も悪く質の低い柵しかできない、しかし今は頼れる
「アインズなら何とかしてくれるかもな」
「アインズ様かぁ?まあ確かにあの方ならなんとかできるかもしれんが、というか様をつけろ様を。あの方は村を救ってくださった人なんだぞ」
「あー、がんばる」
ここにシモベが居たら激怒していたことだろう。実際、サイタマの近くに潜ませている
もし『アレ』を加工できるなら持っていく価値はあるかもしれない。念のため、少しでも多く持っていこうと
再び『アレ』の採取にサイタマは向かう。
時間は昼過ぎ、食事をとったサイタマは森の中を走って進んでいく。
森というのはもちろんトブ大森林のことである。ここをランニングコースとしているサイタマは特に苦も無くとてつもない速度で走り抜けていく。
今日はやけに動物の視線が多いなと思いつつ、ずんずんと進んでいく。
ここでトブの大森林は普通の人間ならある程度のところまでなら安全ではあるが、一定を超えると鬱蒼とした不気味なものと化し、いつモンスターが襲い掛かってくるか分からないも程になっている。
冒険者とは言えど、依頼でもなければ近寄りもしない場所を走り込みに使うというのは狂気じみているとしか言いようがない。
「そろそろあそこにつくはずだよな…………お、ここだったな」
深い深い森を抜けるとそこは一つの荒れ地があった。
ただの荒れ地ではなく、中心には全長50mはあると思われる大きな木がぽつんと一本だけ立っている。
その周りには木や草が一本もなく、まるで養分が全て大きな木に吸われてしまったと言って過言ではない状況。
よく見ると大きな木は血管のように脈打つ部分があり、サイタマが近づくほどその鼓動は大きくなっていった。
「ォ…………ォォォオオオオオオオオオ!!!?」
ある時は破滅の竜王と呼ばれ、またある者はこれをザイトルクワエと名付けた世界を滅ぼしかけない魔樹。
存在するだけで世界を滅ぼしかねない厄災が今ここに目覚めた。
相対するならば絶望するしかないソレにサイタマは歩んでいく。
「よし、久しぶりにやるか」
まるでたまに来てはぶっ倒しているかのように、
その証拠に魔樹はサイタマを異常に嫌がっており地面から生えさえた根っこの触手で追い払おうと必死の抵抗を繰り出す。
だが、その触手はサイタマに軽く払われただけで爆散していき足止めにすらならない。
「ノオオオオオオォォォ!!!グルナアアアアアアア」
「相変わらずうるさいなお前」
びゅんっ!
バッキャアァ!
たった一回だけ、ちょうど全長のど真ん中に跳躍して拳を振るう。
ザイトルクワエは殴られた衝撃に耐えられず、殴られた個所から真っ二つに折れた。
「アアアアアァァァァァ…………」
本体の半分がぶっ飛ばされ生命力を失っていく様が遠めから見てもわかる。
後に、監視していた
ザイトルクワエはアインズが知る世界から見ると『レイドボス』と言われるモンスターに値するもので非常に多い体力を持つことから協力者が必要と言われるほどの者だった(アインズだと一人でも倒せるが)。
ちなみに、本来のザイトルクワエの大きさなら100mを超える超巨大樹なのだがサイタマに何度も折られ続けている。
しかし、ザイトルクワエは瀕死の状態になった後に倒したと思ったサイタマが放置するためギリギリのラインで生き残っているのだ。
そのため何度も復活するものの周りに十分な栄養分になる木や生物がいないため徐々に小さくなっている、例えるならレイドボスを倒せなくて時眼切れになったら体力がある程度回復して復活して再登場する方式である。
これを無自覚にやられてしまっているためザイトルクワエはサイタマのことを『自分を瀕死まで痛めつけてくるやべーやつ』と記録されてしまいサイタマが近づくだけで頑張って目覚めて帰ってもらおうとするくらいなのだ。
「よーし、これくらいでいいよな。さて、帰るか」
柵の材料になりそうなザイトルクワエの木材をひとまとめにし、担いでそのまま直帰する。
ちなみに、トブの大森林は様々な要素が加わっているせいで現地人では全貌を探索することはできない。
ザイトルクワエに最低限の監視をしていたがサイタマが易々と倒したことによって状況は一変、法国でプレイヤーが降臨したのではないかと監視に注力することになった。
なお、肝心のハゲは森の中に入った途端に見つからなくなる模様。
「これアインズが加工してくれっかな」
光が入りずらい森の中では
影の悪魔「(なんやあのハゲ)」
アインズ様「なんだこいつ」
サンドバッグ樹「コロシテ……ユルシテ……」
法国「どこ行ったあのハゲ」
こんな経験値稼げそうな場所、逃すはずないよなぁ?
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