T-800(守護者)になった俺の前線生活 (automata)
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プロローグ

はじめましての方ははじめまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。
急に忙しくなり、執筆する時間が無くて、最近ようやく書ける時間が出来ました。
当初は「T-800(エンドスケルトン)になった俺氏死なないように生きていきます」を続けようと予定していましたが、オリ主と指揮官との距離感が曖昧だったり、自分のスタイルが変わったりしたので思い切って一から仕切り直そうと思い至りました。


では、最初の一話です。時間がバンバン飛びますのでご容赦ください。


「はぁ…はぁ…クソったれが!」

 

 

悪態をつきながら、わたしは少女を担いで、誰もいない研究室の廊下を必死で走る。

心臓は今にも胸を突き破らんとばかりにバクバクと蠢き、足も棒になりそうだ。日頃、研究ばかりに現を抜かし、碌に運動をしなかったツケがこんな時に回ってくるとは…。

 

 

「せんせー、どうしてそんなにはしるの?」

 

「はぁ…はぁ……先生、ちょっと急いでるんだ。あとちょっとで…よし!着いた!」

 

 

2029と書かれた扉の前でわたしは首にかけているセキリュティカードをかざして、ロックを解除する。

自動で電気がつき、真っ暗だった部屋の全貌が明らかになる。

部屋の中央には人ひとり入れそうな冷凍睡眠カプセルが置かれていた。

わたしは少女を下ろして、カプセルの隣にあるタッチパネルを操作する。

 

 

「よし、あとはこれを…」

 

 

接続端子にUSBメモリーを挿して、再びタッチパネルの上で指を滑らす。

 

 

ーーOS “守護者(ガーディアン)”をインストールしますか?

ーーYES

 

 

ーー・・・インストールが完了しました。

ーー試作型戦術人形“抹殺者(ターミネーター)モデル101を起動しますか?

 

 

ーーYES

 

 

ーー命令を確認。解凍プロトコルを発動します。

 

 

そうして、ボタンをタップした時、カプセルの温度が上昇して、中の様子が明らかになる。

筋骨隆々の大男がパンツ一枚だけ履いただけの状態で眠っていた。彼は人間ではない。彼は遺伝子改造された人間の細胞を被った戦術人形・・所謂ロボットだ。

わたしはカプセルの重いハッチを開ける。ひんやりと冷たい冷気が溢れ出てきた。

 

 

「頼むから動いてくれよ…」

 

 

そう呟いた時、ターミネーターは目を開けた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

目が覚めたら、パンツ一丁で目の前に眼鏡をかけた白衣の男と幼女がいたんですけど。

えっ、マジでここは何処だ?

 

 

「よっしゃ! 動いた!」

 

 

眼鏡さん(仮称)がガッツポーズする。

隣の女の子が凄い興味津々に俺を見てる。

て言うか、さっきからUI?みたいなものが視界に浮かんでいる。本当に何だ?夢?それにしてはリアル過ぎる。

 

 

「せんせー、このひとはせんせーのともだち?」

 

 

女の子は眼鏡さんを先生と呼んでいる。手術着を着ているし、病気なのか?

 

 

「そうだよ…先生の友達だよ」

 

 

ちょ、お前勝手に俺を友達認定するなや。まだ出会って5分も経ってないぞ。

 

 

「一口では言えん。だが、とにかくわたしを信じてくれ」

 

 

すると、眼鏡さんが突然耳元で言う。さては君、組合員だな?

 

 

「おじさん、パンツだけでさむそう」

 

 

何故か寒くは感じないけど、何か着る物が欲しい。

 

 

「ああ、これを使ってくれ」

 

 

眼鏡さんが服を差し出してきた。

 

 

「ありがとう」(ん?)

 

 

確かに俺は喋った筈だが、声は俺の物じゃなかった。低くて尊厳のある玄田さんそっくりな声だ。

カプセルから出て、貰った服を着ているとカプセルのガラス部分が俺の姿を映してくれた。俺はその姿に言葉を失う。

 

 

(シュワちゃんじゃねぇか)

 

 

まさかのシュワちゃんになっていた。顔から見て、ターミネーター2くらいの頃の年齢かな?

貰った服も革パンにTシャツ、レザージャケット、ブーツとサングラスと明らかにターミネーターを意識した服装だ。

 

 

「着替えたな。こっちだ。説明は道中する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…という訳なんだ」

 

眼鏡さん(本名を聞いても、はぐらかされた)から聞いた話をまとめるとここはドルフロの世界だ。しかも、今は2050年と本編開始より12年も前だ。

俺は鉄血で一番最初に開発された戦術人形ターミネーター…を眼鏡さんがOSを書き換えたらしい。

そして、俺が今抱えている女の子、レナちゃんは世界中の優秀な人物の遺伝子を集め、ゲノム編集して究極の人間を作るというトチ狂った研究の為に生み出された試験管ベビーという真っ黒過ぎる闇を抱えている。

 

 

 

「君を起動させたのは他でもない。どうかわたしに代わってレナに人並みの人生を歩ませてほしい」

 

「お前には出来ないのか?」

 

「ああ、わたしはここから出られない。首にナノ爆弾が仕込まれててな。外に出たら、自動で頭が吹き飛ぶ」

 

 

そう言って、眼鏡さんは首筋に指を指す。

首筋には小指の爪より小さな盛り上がりがあり、よく見ないと気づかないくらいだ。

すると、眼鏡さんは自分の過去を俺に教えた。

 

 

「最初は純粋な学術的研究だったよ。わたしは大学で遺伝子分野を専攻していて、ある実験で遺伝子のある可能性を見つけたんだ」

 

「ある可能性?」

 

「遺伝子の改造さ。遺伝子組み換え技術やゲノム編集には出来なかった他の生物の遺伝子を組み込めたり、ある特定の遺伝子を生物の限界以上まで強化するという画期的な技術さ。そしたら、教授がこの研究所でプレゼンをして来いと言われたんだ。結果は上々、すぐにわたしは採用されて、潤沢な資金で寝食を忘れて、研究に没頭した」

 

 

眼鏡さんの顔はとても楽しそうに見えた。だが、すぐに表情が抜け落ちて、悲しそうな顔になった。

 

 

「最初は核兵器で汚染された環境でも育つ作物を作る研究だった。だが、研究は徐々に歪み、最終的には放射線もコーラップスの汚染にも耐えられる究極の人間を作るという狂気の研究になった。わたしは首筋に爆弾を仕込まれ、無理矢理研究をさせられたよ。そして、生まれたのがレナだ。彼女は唯一作られたプロトタイプだが、生まれた時からあらゆる面で人間を超えていたよ。学力は今では大学生レベル、身体能力はオリンピック選手超え、IQも300超え、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、中国語、日本語も喋れる…まるで漫画みたいな子だ」

 

 

何だろう、初代仮面ライダーの本郷猛みたいなチートだな。あっちは天然物だけど。

 

 

「だが、所長は彼女をある研究機関の被験体として、送ると言ってきやがった」

 

「ある機関?」

 

「わたしもよく分からないがこんな研究に興味を持ってんだ、どうせ非合法な人体実験を平気でやるクソッタレの集まりだ。所長は大方金で丸め込まれたんだろう。わたしはこんな形で彼女に生を受けさせてしまった。だから、これ以上彼女の命を弄ぶのは絶対に許さない。だから、上の連中にはレナちゃんの存在に気づいた何処かの誰かさんが研究所に保管されていた君をウイルスに感染させて暴走、レナちゃんを連れ去る…というカバーストーリーを流す。時間稼ぎにはなるだろう」

 

 

一通り喋ると眼鏡さんは赤いカードを俺に渡す。

 

 

「外にでると研究所の警備員が使う(ハマー)がある。このカードを使えば、エンジンが掛かる筈だ」

 

 

でも、警備員が使うやつだから、追跡されないかな?

 

 

「大丈夫だ。追跡はされない。そもそもうちはそんな所まで予算は注ぎ込まないからな」

 

 

心を読んだのかのように先回りされた。

そして、青いカードとを手渡される。

 

 

「クレジットカードだ。私の金だが、どうせ貯まるだけだ。好きに使え」

 

 

やだ、この眼鏡さんイケメン。

顔も地味にカッコいいし、内面もイケメンとかこいつチートじゃね?

 

 

「せんせーはいっしょにいかないの?」

 

「うん。一緒には来れないさ。それに先生とは今日でお別れだ」

 

「そう…なんだ」

 

「本当にごめんね」

 

 

まだ9歳で子供のレナちゃんは大して駄々もこねず、受け入れている。

 

 

「あとは頼んだ。わたしはこれから研究所を荒らさなきゃいけないからな」

 

「ああ、分かった」

 

「せんせー、またね」

 

 

ここまで言われたら断れる訳ないよなぁ。眼鏡さんは俺達が外に出るまで手を振ってくれた。

外に出ると眼鏡さんが言う通り、ハマーが駐車されていた。

レナちゃんを助手席に乗せると俺も運転席に座る。

 

 

「おじさん、これからどこにいくの?」

 

 

シートベルトをつけているとレナちゃんが聞いてきた。

俺はカードを翳して、エンジンをかけるとこう言った。

 

 

「何処へでも」

 

 

こうして、俺のパーフェクトヒューマンなレナちゃんの子育て生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから9年もの時が過ぎた。

自然の多い場所に家を構え、眼鏡さんから貰った資金を元手に俺はカーテン屋と木こりを始め、悠々自適な生活を始めた。

戸籍も作り、俺はカール・B(ボブ)・オーウェンズ、レナちゃんは俺の養子でレナ・オーウェンズとなった。

この世界は忘れがちだが、世紀末だ。ちょっと外に出れば銃弾と砲弾が飛び交い、モヒカンヒャッハーやゾンビがウジャウジャいる。

だから、データベースに記録されている格闘術や銃やナイフの扱い方、爆弾の作り方、ヘリの操縦を教えた。えっ、やり過ぎだって?備えあれば憂いなしですよ。こんな世界だったら、尚の事。

でも、流石はレナちゃん。教えたことは必ず1発で成功させ、今じゃ俺をスティーブン・セガールみたいな最小限の動きで俺を完封している。

 

 

 

 

 

 

と言うわけで現在依頼されたカーテンを仕事場で修復中です。

飼い犬に食い千切られたらしく結構ボロボロだ。こりゃ、直すのは骨だな。これ無料サービスだからお金出ないんだよなぁ。

まぁ、眼鏡さんのクレジットカードのお陰で一生遊んで暮らせるくらいの額はあるからモーマンタイだけど。

そうやってボロボロのカーテンに四苦八苦しているとドアの開く音がして、ドタドタと廊下を走る音が近づいてきた。

 

 

「おじさん、ただいま!」

 

「おう、おかえり」

 

 

バーン!と大きな音を立てて、学校から帰ってきたレナが飛び込んできた。

あれから9年。9歳だったレナは今や高校3年生。スタイル抜群の189センチの長身、キリッとした切り目に大人びた顔立ちと可愛らしい少女から黒髪イケメンのパーフェクト美女にパワーアップした。でも、口を開けば、年相応の可愛らしい声とちょっとギャップがある。

レナは今だに俺を“おじさん”と呼ぶ。この前の進路相談の時も先生の前で平然と俺をおじさんと呼んで、話がややこしくなったものだ。

 

 

「見てみてー、テストでまた1位取ったよ」

 

「相変わらずだな」

 

 

テスト用紙とランキング表を俺に見せる。

レナは小中高一貫の難関学校に通ってるが、9歳の時点で大学レベルの学力を身につけていた彼女にとってはそんな学校の出す問題も簡単過ぎるのだろう。編入学試験の時だって、満点でパスしてたし。

 

 

「それでね、今日学校にスカウトが来たの」

 

「スカウト?」

 

「うん、グリフィン&クルーガーって言うPMCから」

 

 

えっ、これって原作介入しないと行けないパターン?因果律を操作してまでうちの娘を巻き込むつもりか。(親バカ)

だからと言って反対なんて出来ないんすけどね。もし、レナを泣かせてしまったら、絶対溶鉱炉にダイブするから。(親バカ)

 

 

「レナ、お前の好きにやればいいさ」

 

「うん、ありがとうおじさん」

 

 

うーん、良い笑顔。もう死んで良いかも。

その後、レナは学校を卒業後、グリフィンの50倍もの選抜テストに合格して無事入社することになりましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…グリフィンに入って貰えないか?」

 

 

レナが選抜テストに合格した翌日、何故か俺も連れて行かれて、スカウトされた。なんで?

 

 

 

 

 




リブートしたからにはT-800も守護者にしないとな!

そう言えば、Netflixでターミネーターがアニメ化するらしいですね。早く観たいなぁ。


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運命(就職)からは逃れられない

次はドンパチやりてぇなぁ。


「なぁ?」

 

「何かな?」

 

「なんで俺までスカウトしたんだ?」

 

 

ホントになんで?

荷造りも終わって、迎えの車が来て、いよいよ娘と離れる時が来たかと思いきや、俺まで乗せられてグリフィン本部まで連れて行かれて、尋問室みたいな所に放り込まれて、挙句の果てにはクルーガー社長自らがやって来て、「グリフィン入らない?」と言われた。

俺まで原作介入させられるの?

 

 

「オーウェンズ君からの要望でな」

 

「レナの?」

 

 

俺をグリフィンに入れようとしたのはレナだった。

 

 

「ああ、彼女の要望でな。君を副官にしたい、と言ったんだ。どうだ? 我が社に入ってくれないか? 」

 

 

あの時の眼鏡さんといい、何で俺は引き受けるしかないようなシチュエーションばっかり遭遇するんだろう。

いくらレナが優秀とはいえ、クルーガーは何故そこまでするだろうか?

 

「一つ質問がある。何故レナにそこまでする?別に断る事も出来た筈だが」

 

 

そう言うとクルーガーはテーブルに置かれたコーヒーを飲んで一息つくと話を続けた。

 

 

「実は言うとだな。我が社は規模の拡大で戦術人形が足りてなくてな。1人でも多くの人形が欲しいんだ」

 

「それが出所不明の人形でもか?」

 

「君は戸籍があるだろう?子供もいるし、IDもある。正規に登録された市民だ。出所不明の人形ではないさ」

 

 

 

クルーガーの言う通り、人形にも人間と同じ人権があり、一市民として扱われている。IDも登録され、この人が何処の誰なのかが行政のサーバーに入っている。

だから、俺みたいに人形が人間の子供の親になるなんてままあることだ。

 

 

 

「分かった。俺もグリフィンに入るよ」

 

「すまんな」

 

 

 

クルーガーと肉密度1000%の握手する。

お互い手を離すことはなく、逆にどんどん力を入れて、腕相撲が始まる。

 

 

「ぐぐ…分かった降参だよ」

 

最後はクルーガーが降参して何故か始まった腕相撲は終わる。

ある程度力を抑えているとはいえ、人形の腕力と張り合えるって凄いな社長。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クルーガーからのスカウトを受けて、数日後。

カーテン屋を辞めて、グリフィンに就職しました。

 

 

「そろそろ着くのかな?」

 

「あと少しだ・・・おっ、見えてきたな」

 

 

助手席にレナを乗せ、荷物を満載したハマーを走らせる。目的地はこれからの勤務先であるS09地区の基地。

 

基地の門を通過し、駐車場に行くと女性が1人立っていた。

荷物を持って、ハマーから降りると女性は俺達の方に駆け寄ってくる。

 

 

「はじめまして!これから指揮官さまの業務をサポートさせていただく、後方幕僚のカリーナと申します!気軽にカリンと呼んでくださいね!」

 

「レナ・オーウェンズです。よろしくお願いします」

 

「カール・B・オーウェンズだ。戦術人形でターミネーターという名前もあるが、好きに呼んでくれ」

 

 

軽く挨拶を交わすと、カリーナが「ごほん!」と咳払いをして、何処からともなくクーラーボックスを持ってきた。ホントに何処から持ってきたの?さっきまで影も形も無かったのに。

 

 

「指揮官さま、お飲み物はいかがですか?今ならお安くしますよ♪」

 

 

目のハイライトが$のマークに変わって、早速シュセンドー式の商売を始める。嫌な予感がする。

 

 

「人工甘味料を使ってない100%天然フルーツで作ったミックスジュースです!普通なら300ドルしますが、今なら230ドルで売ります!」

 

 

商品の嘘は言ってない。北蘭島事件とWW3(第三次世界大戦)のコーラップスと核兵器による汚染で居住可能な土地が一気に無くなり、農場を作る場所すらなくなった。そして、その穴を埋めるように小さな工場でも安価に大量に生産できる合成食品が普及するようになった。

最近は土地の整理とかで生鮮食材が買えるようになったが、やっぱり高い。

カリーナの持っているジュースはその中でも超高級品。1ドルを100円と換算すれば、230ドルは23000円くらい。普通の販売価格は120ドルだ。要はぼったくりだ。まぁ、普通の人ならぼったくり云々よりも高すぎて買わないだろう。普通の人なら…。

 

 

「安っ!買う!」

 

(気づいてくれると信じた俺がバカだった…)

 

 

レナは弱点のないパーフェクトレディと思われがちだが、実は弱点がいくつかあり、その1つが金銭感覚が完全に死んでいることだ。

眼鏡さんのお陰で一生遊んでいける額の金で不自由なく生活してきた他、学校も金持ちエリート達に囲まれて過ごしてきた為か、どれくらいの額が高いか安いかの区別がかなり曖昧…と言うかわからない。戦後のインフレなどで生活必需品の値段が高いことは当たり前。桁が大きいのは当たり前。3桁以内だったら、安いかもしれない。そう思っている。

 

 

「うーん!美味しい!」

 

(こりゃ、本気で何とかしないとカリーナのカモになるな)

 

 

美味しそうにジュースを飲むレナの横で現金を数えながら、「ケケケ、この指揮官はいいカモになるぜ」とキャラ崩壊を起こして、小声で呟くカリーナ。現金をポケットにしまいこむと一転、笑顔になる。

 

 

「では、この基地について、案内します。まずは宿舎です!」

 

「はーい」

 

俺はまたカリーナが何かしないか警戒しながら、ついていった。

 

 

案内された宿舎はホテルのような内装でとても軍隊の宿舎とは思えない。

 

 

「これが部屋の鍵です」

 

 

カリーナがカードキーを渡してきた。08と書かれており、これが俺の部屋の番号だろう。

 

 

「私は01だ。おじさんとは別室だね」

 

 

レナは俺に鍵を見せる。

早速鍵を開けて部屋に入ると簡素なベッドとテーブル、椅子が置かれていた。あと、地味にシャワールームとキッチンも完備してある。

本当は3人部屋だが、俺は男だし、今後人形が配属されても俺の部屋には入らないらしい。ちょっと得した気分だ。荷物を部屋に置いて、他の施設の案内が続いた。

 

 

 

この基地は渓谷にへばりつくように建てられている。元々は正規軍の基地で、グリフィンがこの地区の管轄を任されると施設を残して、人員と装備は撤収した。その時にクルーガーが基地を安く買い叩いたらしい。

地上には前線基地や救護施設、情報センターが建てられ、渓谷の中には格納庫、居住区、データルームが建てられている。ゲームの頃と同じだ。正直、こんな所に基地を建てた正規軍は何を考えていたのだろうか。

 

 

「最後に格納庫です。ここには輸送ヘリやトラックが格納されています」

 

 

カリーナがドアを開けるとヘリやトラックにまとわりつく小さな小人がいた。

俺達に気づくと、レナとカリーナに集まってきた。

 

 

「カリン、この子達は?」

 

「妖精です。先日グリフィンが正式採用した戦術人形をサポートするドローンです……一応。って! いててて」

 

 

説明していると妖精がカリーナの肩に登って彼女の髪を引っ張った。

レナはその妖精を摘み上げると反省したのかしゅんとした表情になる。そして、自分の手のひらに乗せて、頭を撫でた。

 

 

「ドローンなのに妖精?」

 

「はい、開発元のIOPに問い合わせたら、そういう仕様らしくて」

 

「つまりこの子達は」

 

「端的に言うと自分を妖精だと信じてやまない一般AI達です」

 

 

この子達はなんかの料理と飲み物で優勝でもするのだろうか。

 

 

「これで基地の案内は終わりです。明日から仕事なので今日は休みましょう」

 

 

お開きになったが、レナを気に入ったのか妖精達は肩や頭の上に乗っかったり、服の中に入ったり、更には胸の谷間に入った。なっ、なんだァ?てめェ…。(憤怒)

しかし、レナはそんなことを気にすることもなく部屋へ戻っていった。

 

 

 

 

俺は自室に戻るとシャワーを浴びる。

 

 

(俺も老けたな)

 

 

湯気で少し曇った鏡が俺を写す。

起動して9年、若かった顔は中年くらいまで老けていた。

T-888のように食事ができる機能と休眠機能を持っているがどれだけバランスの良い食事を摂って、適度な運動(筋トレ)をして、休眠して、細胞の劣化を食い止めようとしたが、老いには勝てなかった。

更には外見だけでなく、内部構造も劣化が進んでいる。まだ動作に支障はきたしてないが、近いうちにやってくるだろう。

タオルで体の水滴を拭き取ると、部屋着に着替えて、ベッドにダイブした。

 

 

正直、不安もあるが心の何処かでワクワクした気持ちがあった。

 

 

 

 




完璧過ぎると面白みが無いのでレナに弱点と天敵を少々加えてます。
真の敵は身内にいると言うわけか…。


しかし、妖精よ。そこちょっと変わって〈コンコン〉おや?誰か来たようだ。


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グリフィン生活1日目

次はドンパチしたいと言ったのを覚えてるか?



ありゃ嘘だ。(屋良版)


ーー休眠状態を解除します。再起動開始。

 

 

休眠機能が解除されて、俺はベッドから起き上がる。

外はまだ暗く。時計を見ると朝の4時だった。いつも通りの時間だ。

 

キッチンで水を一杯飲むとトレーニングウェアに着替えて、日課のジョギングをするために外に出た。

ルートは基地の外を回る感じでいいだろう。

 

 

「………」

 

 

無呼吸で走る。機械である俺には肺も無ければ、心臓も無い。

生体組織は内部で生成される酸素が供給されるので例え水中に居ても何ら問題は無い。重いから泳げないが。

 

 

基地を10周回った後、タオルで汗を拭く。早く新しいルートを開拓して行かなくてはな。

これからはこの時間帯でも作業する人が来るかも知れないから邪魔にならないように基地の外で走りたい。

 

 

俺は自室に戻り、キッチンで朝食の準備をする。

シェイカーでバニラ味のプロテインと牛乳を溶く。それをミキサーに入れて、プロテインシリアルや色々とぶち込む。

勢いよく入れていると材料がガタンと音を立てて、床に落ちた。急いで拾って、それもミキサーに入れる。3秒経ってないし、セーフやろ。

後は、よく混ぜて特性プロテインの完成。

 

 

(一日において、朝食が一番大切だからな)

 

 

そう思いながら、プロテインを一気飲みした。

うん、我ながら酷い味だ。

プロテインを飲み終えると俺はトレーニングウェアから何時も服に着替えて、レナに渡しそびれた銃と自分用の銃をカバンに入れて、執務室に向かった。

 

 

 

 

 

 

「それでは今日から指揮官業頑張っていきましょう!その前に本日から配属になる人形の方達がもう間もなく到着するようです」

 

 

さあさあとカリーナはヘリポートまで連れて行かれる。

少し待っているとグリフィンのエンブレムが描かれた輸送ヘリが着陸し、4人の少女たちが降りて来た。

 

「M4A1です。指揮官……よろしく…お願いします」

 

「M4 SOPMOD-II、指揮官、よろしくね!」

 

「コルトAR-15よ。正式に貴殿の部隊に加わります」

 

「よぉ、M16だよ。荒事は私に任せな!」

 

「私はレナ・オーウェンズ。みんな今日からよろしくね」

 

「カール・B・オーウェンズ。よろしく」

 

「カリン、この子達の基地の案内任せてもいい?」

 

「分っかりました!料金は50ドルです!」

 

「ほい」

 

(ここでも金をとるのか)

 

 

軽い挨拶からなんて自然で違和感のない料金請求。レナからお金を取ると、カリーナは俺のほうを向いて、ケッケッケという笑い声が聞こえそうな嫌味ったらしい笑顔を浮かべた。

 

 

 

(資本主義者め…)

 

「おじさん、早くいこ」

 

「…ああ」

 

 

カリーナに彼女達の基地案内を任せて、俺はレナと執務室に戻り、書類仕事を始めた。

カタカタとキーボードを叩く音とプリンターの唸る音をBGMにただひたすらパソコンの画面とにらめっこして、キーボードを叩き、プリンターから印刷された書類を取る。

そんな単純作業を淡々とこなしていると気がつけば、印刷された最後の1枚を俺は持っていた。それを紙の山に乗せると今日の書類仕事は終わった。

 

 

「うーん…終わった〜」

 

レナも仕事は終わったらしい。背伸びをして、肩の凝り固まった筋肉をほぐしている。

時計を見ると2時間しか経ってなかった。

 

 

「ふぅ、指揮官の机仕事って意外と楽勝かもしれないね」

 

「いや、もしかしたらこれくらいはまだ少ない方かも知れんぞ。これからどんどん量が増えるんじゃないか?」

 

 

そうかも、と言う。俺は立ち上がって、コーヒーメーカーを動かす。

 

 

「あっ、おじさん。私はミルクと砂糖入れて」

 

「りょーかい」

 

 

カップをセットして、ボタンを押す。

カップにコーヒーが注がれて、湯気と香りが立つ。レナのにはミルクと砂糖を入れて、渡す。

 

 

「ありがと」

 

 

2人でコーヒーブレイクをしていると無機質な電子音が聞こえた。

音の発生源はレナの後ろの壁に設置された大型モニターだった。

 

ひとしきりに音が鳴ったあとモニターの光が灯り、グリフィンの赤いコートを着て、レティクルをかけた女性が映し出された。

合コンの負け犬と名高いヘリアントス上級代行官。ゲームでは彼女はプレイヤーの上司に当たるが、ここでも立場は同じという訳か。

 

〈仕事中に失礼するオーウェンズ指揮官。着任早々にすまないが緊急の任務がある〉

 

「はっ、任務についてお聞かせください」

 

 

さっきの緩い雰囲気は鳴りを潜め、キリッとした表情でヘリアンに敬礼した。

これはレナの仕事人モードと言ったところか……これも…イイ!

 

 

〈つい先ほど本部直属の人形部隊が移動中に消息を絶った。無線記録の解析の結果、S09地区とS03地区で活動しているスカベンジャーの集団に襲撃されたらしい。敵はS09地区とS03地区が隣接する区域にある廃ホテルを根城にしている。貴官らには人形たちの救出とスカベンジャーの殲滅を命ずる〉

 

「はっ、承りました」

 

 

最後にヘリアンは幸運を、と言い残してモニターの光が消えた。

するとレナはふにゃと姿勢が崩れて、いつもの雰囲気に戻った。

 

「はぁ〜やっぱ、これは慣れないね」

 

たはは、と笑って、残ったコーヒーを飲み干した。

 

 

「おじさん、最初の仕事よ。みんなを集めて」

 

「承りました指揮官殿……なんてな、ハッハッハ」

 

 

さっきの仕事人モードのレナのセリフを茶化して笑うとレナも釣られて笑った。

 

 

 

 

 




次は絶対ドンパチやります。


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戦の鐘が鳴るー♪

ドンパチ回。


バリバリと大きな爆音を立てて、空を飛ぶブラックホークに乗り、ちょっとした空の旅を満喫していた。

このヘリを操縦しているのは人間…ではなく空挺妖精。コックピットには本来人間が乗るはずの席に全周囲カメラが設置されている。

 

 

俺の隣ではC-MORE製のダットサイトとシュアファイア製のタクティカルライトを装着したHK416の動作確認に勤しむレナがいた。

制服の白いワイシャツの上にグリフィン正式採用の黒いパワーアシストスーツを重ね着している。下半身はスーツに覆われているが、上半身はほとんど装甲に覆われておらず、フレームが剥き出しになっている。申し訳程度に胸と肩、両腕に薄いアーマーがある。

右足のハードポイントにはレッグホルスターが装着されていて、MK23が収められている。

 

 

防御力はワイシャツの下に着ている防弾チョッキ頼りだが、ただでさえ、身体能力が化け物の彼女が更に強化されている。

 

 

「レナ、作戦は?」

 

俺もAR-18とSPAS12、コルトM79の動作確認をしながら言う。

実は事前に作戦も立てずに基地から飛び出した。レナはAR小隊を招集させて、有無を言わさずヘリに詰め込んだのだ。だから、AR小隊の面々は不安そうな顔をしていたり、レナに「頭でもイカれてるのか」と言わんばかりの目線を向けていた。

 

 

レナは手を止める。

 

 

「そうね……情報だけ見ても相手は統率のとれてないスカベンジャー。近代の軍隊の戦い方は通用しないし、戦力もあってもテクニカル。だから、サーチアンドデストロイ。ヘリの重火器で敵を抑えている隙にヘリボーンで降下、建物に入ったら、ツーマンセルで行動、目に見える人影は全部ヘッドショット。人形が囚われている部屋があったら、ドアを蹴破って、救出。それだけよ」

 

 

何と…単純な……指令なんだ。その言葉にAR-15はため息をする。

 

 

「あなたねぇ…そんな簡単に出来ると思うの?」

 

「ハッハッハ、いいじゃないか。分かりやすくて」

 

「そうそう、最近は複雑な作戦ばっかりだし、たまにいいじゃない? AR-15は考え過ぎだよー」

 

 

M16とSOPがそう言う。真面目で心配性なAR-15はそれでも納得せず、はぁ、とため息をついて椅子に深く座り込んだ。

そんな彼女達を見ていた俺だが、一番目を引いたのは装備だった。

M4は銃の色がタンカラーから黒一色に変わり、ハンドガード下部にはフォアグリップがリアサイトに変わっている。

 

SOPは銃自体に変化はないが彼女の左腕は血のような赤い色の義手になっている。まるでMGSVのバイオニックアームみたいだ。

 

AR-15も銃の色が黒一色、ストックが固定式に、ハンドガードもA2のような丸型に変更されている。

 

M16だが、彼女に至っては完全に別物だ。黒と赤、黒と白のM16ライフルを2丁持ち、いずれもストックが取り外されている。そして、彼女の担いでいるコンテナはよりゴツく大型化している。M16が銃の動作確認中にチラッとだけマガジンの中が見えたが明らかに5.56mmとは違う大きな弾が入っていた。解析の結果は.50ベオウルフ弾だとか。

 

 

 

〈皆さーん、そろそろ作戦区域に入りますよー〉

 

 

基地でバックアップを担当するカリーナからの無線が来た。

その瞬間、ヘリの側面ドアに搭載されたミニガンからヴオオオと唸りが聞こえた。グリフィンに就職して最初の任務が始まったのだ。同時に俺とレナがグリフィンに就職したことを祝う祝砲にも聞こえた。

 

 

ヘリのカメラとリンクさせて、外の様子を見る。

空挺妖精に遠隔操作されたミニガンからマズルフラッシュでストロボのように瞬き、スカベンジャー達を薙ぎ払う。スタブウィングに搭載されたロケットポッドとヘルファイアミサイルが粗末なテクニカルと寄り集まるスカベンジャー達を木端微塵にする。

 

 

ある程度、敵を掃討するとヘリを静止し、高度を下げ始めた。

レナとM4が側面ドアを開けて、ヘリにロープを固定して、一気に滑り降りる。

 

俺もそれに続き、降下するとレナとホテルのロビーから侵入した。

 

 

頑丈な俺がタンク役としてレナの前に立ち、攻撃が集中している隙にレナが仕留める。

MMORPGとかでよく見る光景だ。

 

 

そうやって、ホテルの奥へ突き進んでいく。

 

 

ホテルの廊下を歩いていると後ろから物音が聞こえた。

 

「っ!レナ!」

 

 

敵が後ろからAKを腰だめで撃ってきた。

俺は素早くレナをかばう。そして、弾を受け止めている間にレナが片手でHKを撃つ。

 

 

「おじさん!」

 

 

庇うのやめて、背中合わせになり、前後から襲ってくる敵を迎え撃つ。SPASで足止めして、AR-18で心臓かヘッドショット。

 

 

「レナ!」

 

 

その一言でレナは左の部屋から離れる。

すると、部屋のドアから無数の弾丸が飛び出す。俺は口で手榴弾のピンを外して、爆発のタイミングを調節し、部屋に投げ入れた。

部屋から爆発音と煙が溢れ出した。

 

 

「おじさん!」

 

 

レナは俺に銃口を向けた。即座に伏せると、バンと発砲。後ろにはナイフを持った敵が頭から血を流して、倒れていた。

 

 

「早く行きましょう」

 

「了解」

 

 

ただ名前を呼び合うだけで映画のような鮮やかな連携ができた。呼ばれただけで分かってしまう自分に少しドン引きしながら、レナの後を追った。

と、上の階から複数の発砲音とウオオオと獣の雄たけびにも聞こえる野太い叫び声が聞こえた。

 

 

その先には物陰に隠れて缶詰状態のAR小隊がいた。

 

 

「よう、指揮官。ちょっと手こずってるんだ。手を貸してくれ」

 

 

ハハっと笑うM16。左腕は血で汚れていて、被弾したのだろう。

物陰からチラッと除くと突き当たりに陣取って、LMGを2丁持って、制圧射撃をしている敵がいた。

 

 

「姉さん、血が出てますよ。早く応急処置を!」

 

「拭いてる暇もねぇよ」

 

「SOP、グレネードは?」

 

「もうないよ!」

 

 

俺はM79に弾を込めて、銃だけを物陰から突き出す。そして、LMG2丁持ちマンに向けて撃った。

轟音と塵が吹き荒れた。銃声は止み、覗くとLMGマンは息絶えていた。

 

 

「これでゆっくり拭けるぞ」

 

 

M16にそう返し、先へ進んだ。

一部屋一部屋、スキャンして、囚われた人形を探す。

すると、ようやく反応が出た。

 

 

「レナ、ここだ」

 

 

敵に聞こえないように静かに言う。

 

 

「敵は?」

 

「2人。武器は拳銃」

 

「ドアのブリーチをお願い」

 

「了解」

 

 

ポケットの中に手を突っ込んで、ブリーチング弾は取り出す。

SPASを手動に切り替え、装填しているとAR小隊も合流した。

準備が完了するとドア錠と蝶番に弾を叩き込んで、蹴破る。室内に突入すると頭に麻袋をかぶせられ、拘束された4人の人形と両手の2丁の拳銃を人形の頭に突きつける2人の男がいた。

 

 

「まぁ、落ち着け。銃を突き付けられたら、ビビッて話もできやしねぇ。こいつらは無事だグリフィン。少なくとも今の所はな」

 

 

男の1人が余裕そうにコマンドーの名言で話す。おっ、フラグが立ったな。

 

 

「この先どうなるかはあんたら次第だ。俺達の脱走に協力しろ…OK?」

 

 

その言葉に俺とレナはちょっと顔を見合わせるとレナは頷いた。

男の表情は「計画通り」と言わんばかりに笑みがこぼれた。

 

 

「「OK!」」ズドン!

 

 

 

断り、男2人の頭に銃弾を叩き込んだ。

2人はOKという言葉が断りの言葉とは分からず、死んだ。

 

 

「この手に限る」

 

「この手しか知らないでしょ?」

 

「まぁな」

 

 

周辺のクリアリングをAR小隊に任せ、人形達を縛り付けるロープを切る。

麻袋も取ろうかと思ったが、手が自由になった瞬間、自分たちで取った。

 

 

「ふぅー、それであなたたちは?」

 

「グリフィンの救出部隊よ」

 

「そっ、ありがとね」

 

「いやー、助かったよー」

 

「まぁ、礼は言っておくわ」

 

「zzz」

 

「起きなさい! あんた、ここに縛られてからずっと寝てたの!?」

 

 

 

救出対象、404小隊だったのかよ…。

 

 

あの後、何事もなくヘリに乗り、基地に帰還したがその道中はピリピリした。

HK416がM16の被弾した左腕を見て、「腕が落ちたわね」とか言い、「なら、さっきの作戦、VRで体験してみる?」と返して、ヘリの中は常時ピリピリムードだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日…。

書類仕事にすっかり慣れ、面白半分で書類仕事RTAをしていると執務室のドアのノックの音がした。

レナはキーボードを叩きながら、「開いてるよー」と言った。

 

 

そして、入ってきたのは……

 

 

 

「UMP45が来ました。指揮官、仲良くやりましょう〜」

 

「UMP9ただいま就任!これからみんな家族だ!」

 

「HK416、ちゃんと覚えてくださいね、指揮官」

 

「G11…です……zzz」

 

 

404小隊だった。え?レナも心当たりない?

45さん、なんだって?クルーガー社長からの指令でここに配属になった?社長直筆の命令書も持ってきた?

 

 

45から命令書を貰って、読む。

まどろっこしく長々と書いていたがまとめるとこうだ。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

部隊についての詮索は無用。

 

404小隊は上層部から直接ダーティーな任務が来るのでその時はそっちを優先させてあげてね。

 

今後、404小隊の任務に参加することになる時もあるから覚悟の準備をしておいてください!

 

部隊の存在がグリフィン社内であっても漏れるのはNG。

 

 

もし漏れたら………あとはわかるな?

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

といった感じ。………うそん。




気苦労は増えると思うけど、休んでいる暇はないぞ!仕事だ!


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あなたの背後に這いよるプレデター

言い忘れていましたが、レナとカールの使う銃はターミネーターシリーズとシュワ映画で登場した銃器を中心に使っていきます。


「模擬戦ですか?」

 

「そっ」

 

 

グリフィンに就職して、早1週間。

最初の任務もこなし、曰く付きの404小隊の汚れ仕事の片棒を担がれかけられている今日この頃。

任務も無く、筋トレをして暇を潰していると突然レナからお呼びがかかった。

執務室に入るとAR小隊も404小隊も集められていた。

 

また新しい任務かと思ったが意外にも模擬戦だった。

話を聞くとAR小隊と404小隊…特に隊長格であるM4とUMP45の指揮能力向上が目的だと。

 

「ふーん、それで誰が相手をするの?AR小隊はまだしも私達404小隊は存在しない部隊よ?」

 

「あっ、私が相手するから」

 

 

45の問いにレナは食い気味に答えた。

その言葉に俺以外の人形はポカーンとした顔になる。

 

 

「指揮官、確かにアンタは前の任務で出張ったが、相手したのは統制も訓練もされてないゴロツキだったんだぞ。そいつらと訓練された戦術人形じゃあ、訳が違う」

 

 

M16はレナに苦言を呈する。確かに実戦経験無しのグリフィンの指揮官が実戦経験豊富な戦術人形部隊を真正面から戦うと間違いなく勝つのは後者だ。

だが、今彼女達の前に座る指揮官はただの人間じゃない。それを知るのは俺だけだが。

すると、レナはフッと笑みを浮かべてこう言った。

 

 

「心配は無用よ。私は強いから」

 

そして、椅子から立ち上がるとみんなを模擬戦の舞台である野外演習場に連れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一対四の対戦形式。レナは404小隊とAR小隊を相手取らなければならない。

カリーナと一緒にパソコンで模擬戦の様子を見る。

野外演習場は森で生い茂っており、各地に配置されたドローンと人形の目、レナの胸に装着した目線カメラから送られて来る映像で模擬戦の様子を見ることができる。この映像も模擬戦後に貴重な資料になる。

 

 

ドローンの映像からレナが映っていたものに切り替える。装備は前と同じHK416とMK23。今回はパワーアシストスーツは着ていない。

その向かい側には404小隊がいて、落ち着いた様子だ。

模擬戦で使うのは実弾ではなくペイント弾だ。人を殺す程の威力は無いが実弾に限りなく近い弾道で飛ぶように作られており、当たると結構痛い。

 

 

ビー!と音が鳴り、模擬戦が始まる合図だ。

 

 

45のハンドサインで404小隊は散会した。G11は自身で選んだ狙撃ポジションに陣取り、45と9はツーマンセルで前衛、416はその後ろに立ち、遊撃のポジションを取る。

生い茂った木々を掻き分けながら、45と9は音を立てずに歩く。416はその後ろをついて来る。

 

〈いい?いつも通りに行くわよ〉

 

〈分かったよ、45姉〉

 

〈ふん、言われなくても分かってるわよ〉

 

 

 

9の視覚に映った草むらが動いた。音も鳴り、3人はしゃがんだ。

 

 

〈見てきて、ナイン〉

 

 

おっ、フラグかな?(組合員感)。45の言う通りに9は草むらに近づく。

うーん、反応は良いが地面の足跡は気づいているのだろうか?レナにしてははっきりと見えるくらいの足跡を残しているからこいつは何か裏があります。

 

 

〈うーん、何もないよ。……わぁ!〉

 

〈っ!ナイン!〉

 

 

すると、9が上空へと引っ張られた。

ツルで作られた縄が9の右足首にくくられていた。やっぱり罠を張っていたか。

 

 

「指揮官さまって、凄い器用なんですね」

 

「ああ、あいつは自然遊びが好きでな。子供の頃は川で釣りしたり、貝拾って来たり、蝶捕まえたりしてたからな。学生の頃は罠を使った狩りも始めたしな」

 

「逞しいですね」

 

 

俺が営んでいたカーテン屋は森の中に建っていた。だから、レナは自然に触れる機会が多かった。

まぁ、初めての狩りで素手で熊を2頭仕留めて帰ってきたんですけどね、初見(カリーナ)さん。

 

 

〈急いでナインを降ろすわよ!……きゃ!〉

 

 

突然45が転ぶ。ああ、紐で作った簡単な罠に足を取られて転んだな。

 

 

〈ちょっと!こんな時に転んで…痛っ!〉

 

おっ、初被弾は416か。うへぇ、お尻に当たってる。

しかも、撃った先には銃を構えて棒立ちのレナがいた。フッ、と鼻で笑うと森の奥へと逃げた。

完全に遊ばれているな。

 

 

〈っ!いたぞぉぉ!いたぞぉぉぉぉぉ!〉

 

 

小馬鹿にされたと思ったのか416は激情に駆られ、ライフルを腰だめで乱射しながら、レナを追いかけた。レナの目線カメラに切り替えると、まるで鬼ごっこをしている子供のような声で笑いながら木から木へと飛び移っていた。あの子、こんなこともできたのか。これもうサルっていうかプレデターだな。

 

 

〈誘っているのよ416!戻ってきなさい!〉

 

 

45の声も届かず、416は森の奥へ奥へと誘い込まれた。

道中、罠を踏んでペイントがついた枝がペチペチと叩き、ペイント塗れになるが今の彼女を気づいていない。

ライフルの弾が空になると、被っていたベレー帽を脱ぎ捨て、スタンドアローンモデルのM203を取り出し、四方八方に撃ちまくる。

 

 

〈出てきなさい、クソッタレーー!〉

 

 

なお、レナは木から木に飛び移って射線から離れているので416の怒りの銃撃は実際無意味。

やがて、グレネード弾が切れる頃には45と9、G11が416の後を追ってきた。

 

 

〈眠いし疲れたしうるさいし…〉

 

〈ハァ…ハァ…やっと追いついたよ45姉…〉

 

〈そうね…きゃ!〉

 

〈またー!?〉

 

4人が揃うと地面の落ち葉の中からくくり罠が出現し、彼女達の片手、片足を縛った。

そして、草むらからレナが現れ、容赦なく撃った。

 

 

森に悲鳴がこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

模擬戦が終わり、森の前で待っているとレナにコテンパンにやられた404小隊がトボトボと出てきた。

彼女達の服はピンク一色に染まり、しこたま撃たれたことがよく分かる。

 

 

「うっひゃー見事にペイント塗れですね」

 

 

カリーナは少し顔を引きつって、言った。

なお、この元凶であるレナは一発も被弾しておらず、ちょっと土で汚れているだけだった。

「やりすぎだ」と注意してレナの頭に軽く(普通の人が喰らったら結構痛い)チョップする。

 

 

「はぁ…とりあえず、俺は彼女達をシャワー室に送ってくる。レナ、今度は自重しろよ」

 

「おかのした」

 

 

全く信用ならん返事が返ってきて、俺は次に犠牲になるだろうAR小隊に合掌した。

 

 

 

数十分後、また森のほうから悲鳴が聞こえた。

後にこの野外演習場はキリング・フォレスト(恐怖の森)と呼ばれるようになったりならなかったり。

 

 

 

 




はい、ということでまたレナ無双回でした。
これからAR小隊と404小隊は徐々にレナに染まり、脱人形への階段を上ってくれるでしょう。

脱人形ってなんだよ(哲学)


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酒にはご用心

あの模擬戦から3週間、哨戒任務という味気ない任務をこなしながら、AR小隊と404小隊はハートマン軍曹も大満足な地獄のシゴキを受けている。

内容は単純、レナと延々と模擬戦をする。それだけ。

 

 

今は2部隊がかりでレナはナイフ一本だけというハンデで模擬戦をしているが、未だに一勝もしてない。だが、模擬戦を重ねていくたびにM16とM4に敵意剥き出しだった416が随分と軟化したりと良い効果が出ている。

 

 

そういう訳でレナは訓練に熱が入り、主な事務作業は俺とカリーナがやる……だったんだが、俺が模擬戦でボロボロになった彼女達の為に料理を作るようになると仕込みに時間を食ってしまい、今ではカリーナがワンオペで頑張って貰っている。

 

 

最初は物凄く睨まれたが、手作りスイーツと紅茶を毎日貢ぐということでなんとか許してもらった。

 

 

 

 

 

「もうこんな時間か…」

 

明日の料理の仕込みをしているともう夜の11時だった。そろそろ部屋に戻ろうと後片付けをしていると食堂のドアが開く音がした。

 

 

「よぉ、開いてるかー?」

 

 

M16が入ってきた。席に座った。

 

 

「それでジャック・ダニエルある?」

 

 

やっぱり酒目的か。うちはバーじゃねぇんだぞ。でも、今あるのってビールくらいなんだよなぁ。

 

 

「そいつは今置いてないね」

 

「んだよ〜。そんじゃビールある?」

 

 

俺は冷蔵庫から瓶ビールを一本取り出して、栓抜きを使わずに開けて、M16に出す。

 

 

「おう、ありがと。んくんく…ぷっはぁぁぁ!キンッッキンに冷えてやがるぅぅぅ悪魔的だぁぁぁぁ!」

 

 

カイジのセリフを言って、ビールを飲み干した。ドン!と空の瓶をテーブルに叩きつけて、「もう1本!」と言ってきた。

また冷蔵庫から取り出して出すとまた一気飲みして、「もう1本!」と言ってきた。あれ無限ループ?

 

 

「カール、つまみも出せよぉぉぉ」

 

(もう酔ってるのかよ)

 

 

俺はため息を吐きながら、何かつまみになりそうなものを探す。あっ、チーズあるな。とりあえずこれにするか。

 

「ビールぅぅ…カール、ビールぅぅ」

 

 

テーブルにうずくまってるM16にチーズの盛り合わせと新しいビールを出す。

ビールの瓶をガシッと掴んでラッパ飲みし、チーズを口に放り込んだ。

 

 

「なあ、もう酔ってるのか…そろそろやめておいた方がいいんじゃないか?」

 

「なぁに言ってんだよ。戦術人形は簡単には酔わねぇよ。もう…ああもうめんどくせぇカール!今あるビール全部持ってこい!」

 

「ゑ?」

 

 

思考が停止した。は?え?全部?今あるビールを?

 

 

「いや、流石に戦術人形でもまずいぞ」

 

「大丈夫だって、安心しろよ〜平気平気、兵器だから」

 

「知らんぞ、本当に俺はどうなっても知らんぞ」

 

 

厨房に戻り、俺は紙とペンを取り出して、サラサラと誓約書を作る。

 

 

「何があっても自己責任ですよっと」

 

そして、それをM16のテーブルに出す。

 

 

「何だこれ?」

 

「誓約書だ。例えアンタが急性アル中とか、何があっても俺は責任を取らん」

 

「あっはははは!たかが酒で何ビビってんだよー!」

 

すっかりアルコールが入って、ハイテンションになっている彼女は俺のペンをひったくって、記入欄にM16と書いた。

同意したと確認すると冷蔵庫からビールをありったけ持ってくる。

 

 

「ぷっはぁぁぁ!ビールサイコー!ビール万歳!あっははははは!」

 

 

真夜中の11時に1人でどんちゃん騒ぎ。本格的に彼女を心配していると変な風を感じた。

ほんの僅かだが、食堂のドアが開いた。閉めて無かったのだろうか?

 

 

「姉さん?」

 

 

声をする方向を向く。そこにはにっこりと笑うM4がM16の後ろに立っていた。

 

 

「おいおい、どうしたんだよカール?そんな幽霊を見たような顔をして?」

 

 

酔いに酔ったM16は俺を見て、ワハハと笑う。こいつM4の声を聞いてなかったのか。

俺は目で後ろを見ろと訴えかけるが、こうかはいまひとつのようだ。

 

 

「カールぅ、実はここだけの話なんだがなぁ。この前M4に禁酒しろって言われたんだよぉ。だから、隠されたジャック・ダニエルをスキットルに移してよぉ、任務の時にこっそり飲んでんだぉ。その時の背徳感と言ったら、もうサイコーでよぉ。今日もM4の寝てるタイミングを見計らって来たんだよぉ」

 

 

バカっ!お前何自白してんだよ!ああ、後ろのM4が青筋立てて、怒ってるよ!笑ってるけどめっちゃ目が笑ってないよ!

 

 

「そうですか、それは良いことを聞きました」

 

「だろ?M…4…」

 

M4がM16の隣に座る。相変わらず微笑んでる。

ようやくM4の存在に気づいたM16は顔色がどんどん青白くなっていく。

 

 

「よっ、よぉM4。どうしたんだぉ?よっ、よく眠れなかったのかぁ?」

 

「ええ、微睡んでた時に姉さんが何処かに行っちゃったんで、それはもう心配で心配で」

 

「そっ……その…」

 

「姉さん、前に言いましたよね?禁酒するって、きちんと誓約書も書きましたのに」

 

おま、誓約書まで書かされたのかよ。M4は懐から折り畳まれた紙を広げて、M16に見せる。

 

「でっ、でもよ。約束を破っても別になんかペナルティとか書いてないだろ。…つっつまりノーカンだ!ノーカン!」

 

 

あまりにテンパってるのか、はたまた頭が冴えてるのか苦し紛れの言い訳をする。俺もM4の誓約書を見ても、確かに約束を破ったらペナルティあるよ、みたいなことは書かれていない。

M4はペンライトを取り出して、スイッチを押す。紫色の光が出るとそれを紙に照らした。すると、紙から文字が浮かび上がって発光した。

 

 

「このペンライト、姉さんが書く時に置いてましたよ。頭の良い姉さんなら気づいてくれると思ったのですが」

 

 

いや、それ詐欺師の手口だから。誰だって気づかないよ。

紙に不可視インクがあるかもしれないって考えるの慎重勇者だけだと思うよ。

 

 

「ヒィ!カッ、カール助けてくれぇ!」

 

最後の希望で俺に縋り付くM16。だが、M4は追い討ちで俺が書かせた誓約書を見せた。あれ?それ俺のポケットに入れてた筈だったんだが。

 

「何があってもカール・B・オーウェンズはM16が如何なる損害を被っても一切の責任は負わない…って書かれてますけど?」

 

「あっ……」

 

「では、少しお話ししましょう?」

 

「グッ!えっM4なんかこの前より力が強くなってる!?」

 

「それはそうでしょう、指揮官に何時も鍛えられてますから」

 

M16はM4に首根っこを掴まれて何処かに連れて行かれた。

俺はただM16の無事を祈るしか出来なかった。骨くらいは拾ってやろう。

 

 

 

 

 




コソコソ噂話

M16はM4に超不味いアルコールを飲まされたらしい。
そのアルコールはペルシカ謹製なので実際安全…maybe.


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汚れ仕事 入門編

大した任務もなく何時ものように料理の仕込みをしていた時だった。レナからの呼び出しがかかった。

久しぶりの任務だと肩を回しながら、執務室に入った。

 

部屋には404小隊もいて、俺は(あっ、これダークサイドな仕事だ)と一瞬で察した。とうとう404小隊の汚れ仕事の片棒を担ぐ時が来たのだ。と言うかこんな仕事、新米指揮官にやらせますかね普通。

 

 

「ブリーフィングを始めるわね」

 

45が懐からファイルを取り出して、紙を数枚、机に広げた。

この手の仕事は45達の方が手慣れているという訳で45が指揮を執る。

 

 

「内容はある武器商人の暗殺よ。これがターゲットの写真」

 

 

数枚の写真を見せた。白いスーツに金と宝石のアクセサリーをジャラジャラつけた如何にも成金野郎だった。

 

 

「ただの武器商人なら、良かったんだけどこいつは人権団にロボット人権団体の過激派に武器を売ってるの。後、麻薬に人身売買と色々やってるわ。取引の時以外は滅多に顔を出さないの。だから、ここはカールの出番よ」

 

 

「え、俺?」

 

みんなが一斉に俺に視線を向けた。

 

 

「カール、あなたはこの武器商人から武器の取引をして欲しいの。私達があなたの後を追うわ。好機だと分かったら、一気に叩くのよ」

 

そう言って、45は地図と現金がぎっしり詰まったバッグを渡してきた。

 

 

「殺し屋達が集まる酒場があるの。ターゲットはそこで客を待っているからコンタクトを取ってね」

 

 

俺はバッグを担いで、執務室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車で行ってみると場所は何と高級ホテルの中にあるバーだった。

中はとても落ち着いた雰囲気でイメージしていた殺し屋達が集う酒場とはえらい違いだった。

 

 

辺りを見回しているとカウンターに例の武器商人がいた。

俺は隣に座った。

 

「武器を買いたい。強力で足のつかないやつが欲しい」

 

単刀直入に言った。すると、武器商人は俺を睨みつけた。

 

「ハッ、俺が鉄砲店のオヤジに見えるか?人違いだ、とっとと失せろ」

 

 

シッシッと手で払われる。俺は「そうか」と言って、彼の前にバッグを置いて、現金を見せた。

すると現金を手にとって匂いを嗅ぎ始めた。それで本物だと分かったのか目の色を変えて俺を見た。

 

「本物の金か…お前、サツじゃないよな?トラブルは御免なんでね」

 

 

まぁ、疑われるだろう。映画でもこの手の商人は見知らぬ客が突然金をたんまり持ってきたら疑ってたもんな。

俺は武器商人から金を取り上げて、帰ろうとするそぶりを見せつけた。すると、慌てて俺を止めた。

 

 

「待て待て、ただちょっと確認しただけさ。このご時世何処から警官なりグリフィンなりがいるかもわかんねぇからな。外に車がある。乗ってくれ」

 

 

男は立ち上がって俺を車に乗せて、廃工場に連れていった。

 

 

 

 

 

 

廃工場に到着すると中には黒いバンが2両あり、筋肉ムキムキの男達が椅子に座ってタバコと酒を楽しんでいた。

廃工場の窓は鉄板で塞がれていて外から見えないようにしている。

 

「おい、オメェら客だ!銃を持ってこい!」

 

 

パンパンと手を叩いて、武器商人は部下であろう男達は立ち上がると積み上げたガンケースを机代わりにバンから大量の銃を持ってきて、陳列させた。

テロリスト御用達のAKに民間モデルのAR15、骨董品のボルトアクションライフル、どっから取り寄せたのか特殊部隊向けのMP5Kなどが並べられた。こいつら戦争でも起こす気なのか。

 

 

「ほら、これはどうだイングラムのMAC11だ」

 

 

武器商人がサブマシンガンを持ってきた。俺はそれを受け取るとコッキングレバーを引いたりして物色する。

 

 

「380ACPだ。元はセミだが、フルオートに改造してある」

 

〈カール?、聞こえる?45よ。今着いたわ。これから発電機を止めるから少し時間を稼いで〉

 

〈銃で破壊出来ないのか?〉

 

〈頑丈にシールドされてるから無理ね。ハッキングで止めるから10分ちょうだい〉

 

〈了解…〉

 

 

10分か…。案外長いなぁ。俺は深呼吸してMAC11を商人に返す。

 

「もっと口径のデカイ銃は無いのか?」

 

「ド派手に決めたいって訳か」

 

 

商人は笑うとバッグの中から巨大なリボルバーを俺の前に置いた。

 

 

「スミス&ウェッソンのM500、8インチ。50口径で世界一強力な拳銃だ」

 

 

そういや、ラストスタンドでもシュワちゃんが片手で使ってたなぁ、と思いながら持つ。

本当は2kgとかなり重いのだが、体が機械だからか軽く感じた。

 

 

「試し撃ちしてもいいか?」

 

すると、商人が弾の入った箱を机に置いてくれた。

箱を開けて、弾を取り出すと1発1発ゆっくりシリンダーに弾を込める。このリロードで少しでも時間を稼がなくては。

5発入り終わると適当なコンクリートの塊に狙いを定める。

 

 

「おおっと、ちょっと待ちな」

 

突然、商人が銃身を握って、止めた。まさかさっきのリロードで不審に思われたか…!

 

 

 

 

 

パンパン

 

 

 

商人が手を叩くと部下は何かを物陰から引きずってきた。

 

 

「んー!んー!」

 

 

ボロボロの衣服を纏い、ロープで縛り付けられた金髪の少女だった…いや、この反応は…戦術人形?

 

 

「ハッハー!どうだ、いい的だろう?グリフィンのクソどもから1匹パクってやったのさ。このままブラックマーケットに安く売る予定だったんだが、まぁ売っても足しにならんしここで処分してもいいかと思ってな」

 

 

この男は…!俺は怒りを抑えて、銃の安全装置をかける。

 

 

「まずは普通にコンクリートを撃たせてくれないか?」

 

「んだよ、女子供は殺さない主義か?」

 

「そうじゃない、こんなモノを撃ってみろ。辺り一帯に肉片やらなんやらが飛び散って後始末が面倒だろ?そういうのは最後に取っておくもんだろ?」

 

 

怒りで頭が回らない中で俺は言い訳をする。すると商人はニヤニヤとしながら、俺に近づいた。

 

 

「へへっ、そうかよ。分かった。おい!そいつは最後に出す。元の場所に戻しておけ!」

 

 

少女はまた引き摺られて、元の場所に戻された。

 

 

〈聞こえる?45よ。発電機のハッキングが終わったわ。準備は?〉

 

〈いつでも。それと…〉

 

〈分かってる、捕まってる人形のことでしょ?ずっとあなたの視覚センサーから見てたから。スタングレネードで行くわよ…5…4…〉

 

45がカウントダウンを始めた。銃の安全装置を解除する。

 

〈3…2…〉

 

バレないようにコンクリートの塊に狙いを定める。

 

 

〈1…0!〉

 

 

バン!と電気が消えた。窓が鉄板で塞がれているせいで廃工場の中は真っ暗だ。

自動で暗視モードに切り替わり、真っ暗な中でもよく見えるようになった。突然の暗転で商人達はパニクっている。

 

 

俺はM500を商人の心臓に向けて、引き金を引いた。大砲のような轟音が工場内に鳴り響いた。商人に当たったことは確認せず、すぐに伏せて目を閉じ、両耳を塞いで口を開けた。

 

その刹那、工事内に閃光とキーンと頭に突き刺さるような轟音が発生した。

404小隊がスタングレネードで突入してきた。彼女達は突然の閃光と轟音で悶えている商人の部下達をテキパキと倒していった。

 

 

「クリア!」

 

「45姉、クリアだよ!」

 

「こっちもクリア…」

 

 

「了解。カール、お疲れ様」

 

45が俺に手を差し伸べた。俺は45の手を掴んで起き上がった。

 

「あの人形は?」

 

「大丈夫よ。416が保護したわ」

 

「そうか」

 

「それでターゲットは…これね」

 

45の指す方向には胸から血を流して絶命した商人がいた。俺の弾が当たっていた。

 

 

「これで任務完了ね。あなたこういう仕事に向いてるかもね」

 

「勘弁してくれ、もうクッタクタだよ。主に心が」

 

「ふふっ、あと5分でヘリが来るから休んでなさい」

 

 

俺は床にドガっと座り、今日の夕飯の献立を考えて、ヘリが迎えに来るまでの時間を潰した。




武器を売る人は大抵殺されるか酷い目に遭うイメージが強いです。(ターミネーターのアラモ銃砲店のオヤジが撃たれたり、コマンドーの軍放出品店でブルドーザーで入店された挙句商品を100%オフにされたり)


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筋肉式の方が能率的だ

また忙しくなってきて、書く暇がねぇ…。


「クソクソクソがぁ!何でこんな時に殺し屋が来るんだ!俺はまだ死ね……」

 

「抹殺完了」

 

 

BANG!

真夜中の廃墟のビルの中で銃声が響いた。大型のレーザーサイト付きのハードボーラーが放った弾は逃げ惑っていた男の頭に命中し、死んだ。T1のT-800に倣って、マガジン一つ分、薬室込みで計8発の45ACP弾を脳、心臓などの急所に叩き込んだ。

ハードボーラーから空のマガジンを引き抜いて、真新しいマガジンに交換し終わると俺は殺した男から携帯を奪い、飛び散った空薬莢を回収するとその場から立ち去る。

 

 

〈こちらカール、目標の抹殺が完了した。これより帰投する〉

 

〈こちら45。了解した。ヘリを送るから待っててね〉

 

 

あの武器商人を殺す任務を皮切りにポンポンと椀子そばのように汚れ仕事が舞い込んできた。大手PMCとなれば、色んな方面から恨みを買われることはよくあるのだろうが、それにしても数が多すぎる。

麻薬の売人、武器商人、テロリスト、カルト教団、要注意団体、PMC、ets ets。そんな奴らのアジトに潜入して情報を盗むなり、殺すなりしている。

これは個人的な意見だが、別に面倒くさい方法をとらずとも、堂々と戦争をふっかけた方が手間もかからないのでないのかと思ってたりする。まぁ、T-800もサラ・コナーの暗殺が目標だったし、潜入と暗殺は一番ターミネーターらしい仕事なのかもしれない。

 

 

 

そうやって仕事をこなしていくと一体誰が言い始めたのか裏社会では“抹殺屋”なんて異名をつけられるようになった。

曰くどんな相手も必ず殺す傭兵、曰くその正体もクライアントも不明、曰く暗殺に使う銃は必ず45口径などなど話すときりがないが裏社会ではそういった話が実しやかに囁かれている。

 

 

そうこうしているとようやくヘリがきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅぅ…つっ疲れた……」

 

「ペイント弾だけどナイフで弾いて、しかも汚れないって意味分かんないわよ」

 

「また罠に引っかかったよ〜」

 

「あぁぁ、酒が飲みたい…」

 

 

 

 

ある日の正午、食堂には相変わらずレナにボロ負けして、テーブルに伏しているAR小隊と404小隊の姿があった。

みんなレナに一矢報おうと役割を決め、あの手この手で作戦を立て、自主練に励んでいるがだからどうしたと言わんばかりに作戦を破られ、返り討ちに遭う。何なら作戦に乗ったフリをして彼女達を手玉に取ったりしている。

 

 

前にレナが「私を鍛えたのはおじさん」と言ったせいで「どうしたら、あんなに強くなるんだ?」と質問責めにあったが、アメリカ軍の新兵育成プログラムに書かれたことをまんま教えただけと答えるとこの世の終わりのような表情をしていた。合掌。

 

 

「みんなーいるー?」

 

愚痴っているとこの時間には珍しくレナが食堂に入ってきた。この時間帯だと罠を設置してい(遊んでい)る筈だが。

 

 

「よかった。みんないるね。早速だけど任務が来たわよ」

 

そう言うとレナは茶封筒から何枚かの紙を取り出して、テーブルの上に広げた。マーカーだらけの地図、車や人物を撮った写真、字がぎっしり詰まった書類などなど。

 

 

「任務はここ最近活動しているコカインの売人達の逮捕よ。この前おじさんが回収した携帯から得た情報でようやく拠点が見つかったの」

 

あー、あの時のやつか。あの日は5件くらい仕事してたから忘れてたな。

 

 

「で、元締めはこいつ。ビクトル・ロスタビタ。表向きは酒場を経営してるらしいわ」

 

 

見せたのは小汚い格好をした中年の男。うん、顔つきはまんまレッドブルのビクトルだ。

 

 

「作戦はグリフィンの制服を着たおじさんが正面玄関から入って、連中が逃げるように促す。そして警察とあらかじめ作った包囲網で全員をお縄につけるっていう感じよ」

 

 

作戦の概要を説明するとM16が手を上げた。

 

 

「連中が発砲してきたら、どうすればいい?逮捕が目的なんだろ?」

 

「相手がどんな火器で武装してるか分からないから撃ってきたら撃滅してもいいわ。他に質問は?」

 

 

それからは1人も手を上げなかった。

 

 

「よし、じゃあ準備開始!あっ、おじさんは制服を渡すからこっちに来て」

 

 

レナの一声で基地は騒がしくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

制服に着替えて準備を終えた俺達は現場に着いた。パトカーがあちらこちらに止まっていて、警官も慌ただしく動いている。

 

 

「ちょっとネクタイがズレてるよ…よし。これでオッケー」

 

 

 

レナにネクタイを直してもらう。近くの窓ガラスに自分の姿が映っている。うーん、上着に袖を通さずに羽織ったらクルーガー社長と被るな。

最後に自分の持ち物を確認する。身分証ヨシ!防弾チョッキヨシ!護身用に持ってきた44マグナムヨシ!今日も1日ご安全に!

持ち物確認が終わると俺は酒場へとカチコミしに行った。

 

 

(え〜っと、地図によるとここかな?)

 

貰った地図に沿って歩いていると寂れた建物の前にたどり着いた。外装はボロボロ、中からアルコールの匂いが漂ってきて、ここが酒場であると主張している。だが、扉はcloseと書かれたプレートが吊り下げられていて、鍵もかかっている。

 

 

 

ドン!ドン!ドン!

 

Griffin! Open up!(開けろ!グリフィンだ!)

 

 

応答なし。俺は仕方なくドアを強引にこじ開けて入る。

中にはたくさんの“お客”がいて、誰一人何も喋らず、ジッとこっちを見ている。

 

 

「なんです、旦那?何も出ませんよ」

 

この酒場のマスターがそう言ってきた。何も出ない割にはコカインは出るんだなぁと思いながら、彼を無視して、ビクトルを探す。

 

 

(あっ、いた)

 

 

店の中心で女を侍らせて、酒を飲んでたビクトルがいた。

俺はビクトルの前に立って、偽の身分証を見せる。

 

「グリフィンだ、全員出ろ」

 

「どうしてお前らPMCは俺達見てぇな貧乏人を目の敵にしやがるんだ。俺達ゃ戦争で追われた田舎モンで都会の暮らし方ぁ知らねぇ。だから、いつもカモにしていたぶりやがる。犬野郎が」

 

 

ビクトルは小声で喋り出した。それに他の客はそうだそうだと便乗する。

 

 

「そうだ!これじゃあ戦時中に逆戻りだ!俺達ゃナンモしてねぇ!とっとと帰りやがれ!」

 

「俺達をパクる理由は何だ?」

 

 

俺はその問いに答える為に義足の男の胸ぐらを掴んで腹パンする。

 

「モアイ……」

 

 

変な断末魔を上げて、蹲るとそいつをぶん投げる。そして、そいつの義足を引き抜く。周りは悲鳴を上げるが無視だ。

義足のパイプにはコルク栓が付いていて、PON!と開ける。義足をひっくり返すと白い小麦粉のような粉がドバドバと出てきた。

 

 

「コカインだ」

 

 

空になった義足を投げ捨て、周りの客を見回す。全員義手や義足をつけている。つまりこいつら全員運び屋だ。

 

 

「……ずらかれ!」

 

 

誰かがそう叫んだ。お客は逃げ出すか、俺に銃を向けてきた。マグナムをホルスターから抜いて、銃を向けてくるお客に向けて発砲する。

 

 

BANG!BANG!カチッ!

 

 

マグナムの弾が切れた。それを好機と見たビクトル達は俺を囲い込んだ。

 

 

「ふん!」

 

俺は拳で応戦する。バカめぇ!こっちの方が速くて強いわ!

ナイフで襲いかかってくるやつもいたが、難なく交わして、代わりに近くにあった酒瓶を持って、殴りつける。

 

 

「相手は1人だぞ!何やってるんだ!」

 

 

敵1人を拘束して盾代わりにして、片手でマグナムをリロードする。

マグナムが当たっても死にはしない箇所を慎重に選んで撃つ。すると、カランカランと音がした。その刹那、白い煙幕が噴き出した。

 

 

(スモークか!)

 

 

盾にしていた男はもう用済みなのでカウンターの角に叩きつけて気絶させる。

煙幕で周りが見えない中、辺りを警戒していると後ろの方から僅かに風を感じた。その風を辿ると微妙に色の違う床板があって、それをめくると下水道へと通じていた。

 

 

(これは…地下通路か!)

 

 

恐らくこういった事態を想定して作った非常用の脱出口だろう。

ビクトルは煙幕に紛れて、地下へと逃げたのだ。俺も下水道へと飛び込み、センサーの出力を最大にして、ビクトルを追う。

まだ逃げ出して、そこまで時間は経っていない。それに明かりが一つもない下水道…まだ近くにいる筈だ。

 

 

迷路のように複雑に入り組んでいる下水道。俺は焦りを感じ、必死に探す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああ!」

 

 

「なんだウグっ!」

 

突然、男の悲鳴が聞こえた。それと同時に何か大きなものが前から飛んできた。

俺は咄嗟に構えたおかげで下水に入らずに済んだ。

 

 

「っ!ビクトル!」

 

 

飛んできたのは探していたビクトルだった。しかも白目を剥いて気絶している。下水の方を見ると彼と一緒に逃げていた男数人がドザエモン状態になって流れていた。ヒデェや。

 

 

「カールさん、大丈夫ですか?」

 

 

ビクトルが飛んできた先からM4がパタパタと駆け寄ってきた。

 

「ああ、何とか。これは一体?」

 

「指揮官からの命令で下水道の所を見てこいと。それで回っていたら、この人達が突然ナイフで襲いかかってきて…」

 

「そうか…」

 

「すみません、いつも指揮官と戦っていたのでちょっと力の入れ方を間違えてしまいました」

 

 

力の入れ方を間違えたって、君たち何時も大人を気絶させて、尚且つ吹き飛ばすくらいの力でレナと戦ってるのか。何それ怖っ。

 

 

 

「SOPキーック!」

 

「うわああぁぁぁ!」

 

「私の後ろに…立つな!」

 

「ヒデブゥ!」

 

 

 

 

話しているとまた奥からザブーンザブーンと何かが水に落ちる音が聞こえてきた。声からしてSOPとAR15が落としたのか。

 

「とりあえず、こいつらを回収して地上に出よう。俺がやる」

 

「…はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談というか今回のオチ。

あの後、俺は下水に入って、浮かんでた男達を引き上げて、地上に戻ると既に逃げたお客は全員お縄についていた。

下水道に入ったビクトル達は匂いが強烈過ぎて、警官達は鼻を摘みながら、彼らを連行した。可哀想にありゃ、いくらシャワーを浴びても当分は取れないだろうなぁ。

 

 

 

後、俺もあいつらを引き上げる時に下水に入っちゃったので1週間経っても匂いが取れず、ずっとシャワーを浴びた。服も洗濯しても匂いと汚れが取れなかったので仕方なく全部燃やした。お気に入りだったのに……それもこれも全部ビクトルってやつが悪いんだ。(草加感)




AR小隊
レベルが135まで上がり、天元突破。何をどうしたらそんなに上がるんだ…。


カール
カリーナから絶対匂いと汚れが落ちる洗剤と石鹸を勧められて買ったが効果なし。資本主義者めぇ。


ビクトル一味
頭から下水に突っ込んで全身クソまみれ。お気の毒。


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映画みたい、85年の

気が付いたら月が変わってた件について。


「くぁー眠い」

 

眠気を噛みしめながら、俺は真夜中の廊下を歩く。

明日の料理の仕込みが予想以上に掛かってしまい、もう午前3時だ。

やっぱ、ラーメンなんて作らければよかったと軽く後悔する。

 

「ハァーイ、カール♪」

 

 

扉を閉めた。おっかしーな、今部屋に45がいたぞ。

人形って寝不足になると幻覚を見るのか?

そうだ、そうに違いない。一時的なバグだ。全く、これからは早く寝よう。

そう確信して、扉をもう一回開ける。

 

 

「あら、閉めるなんていけずね」

 

「マジかよ」

 

 

やっぱり45がいた。ああ…絶対404絡みだぁ…。

 

 

「さぁ、これからブリーフィングよ。みんな揃ってるから上がりなさい」

 

45の後ろを覗くと9は冷蔵庫に入っていたプリンを食べ、416は本棚の本を全部出してビルのように積み上げて読書、G11はビーズクッションの上で爆睡。あの…ここ俺の部屋なんですけど…。

言いそうになったが抑えて、部屋に上がる。

 

 

 

「さて、ブリーフィングを始めるわよ。今日の任務は人形を違法売買するギャングの一掃、そしてリーダー格のこいつを取っ捕まえてここまで運ぶこと。んで、これが連中の店の見取り図」

 

テーブルに店の見取り図と今回のターゲットの写真を広げる。

彫りの深い顔つきにスキンヘッド、伸ばした髭が特徴の如何にも犯罪組織のボスっぽい男。

 

 

「それなりの資金があるから建物は要塞化されてるわ。窓は防弾ガラスと鉄格子、壁とドアは防弾鋼板で補強、死角がないように張り巡らせて尚且つ小銃をつけた監視カメラにセキュリティシステムも完備よ。そこで私に良い考えがあるわ」

 

見取り図から45に視線を移す。なぁんか爆発しそうだなぁ。(コンボイ感)

 

 

「まず私がサーバーに侵入、ドン。動体感知器と生体認証センサーを切る、ブチッ。そして監視カメラを乗っ取れば、ババーンと乗り込める。そして最後は乗っ取ったセキュリティシステムで逃げ道を失った敵を手当たり次第に撃ち殺す。簡単でしょ?」

 

「それだけか?」

 

「それだけだよ」

 

「それだけよ」

 

「マジで…それだけ」

 

凄く……エクスペンダブルズです…。

あれ?404小隊ってもっとこう搦め手とかそういう手の込んだ作戦とかするイメージが強いんだけど。……ああ、あれかレナリズム(脳筋思考)が彼女達にも伝染したのか。

 

 

「ちょっと前の私達ならもっと搦め手とか使ってたんだけど、指揮官と戦ってね。分かったのよ」

 

 

45が若干濁った目でこっちを見つめて、はっきり言った。

 

 

「下手な小細工なんて必要ない!」

 

 

あっ、もう手遅れっすね。(白目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あークソねみぃ~)

 

俺はあくびを噛みしめながら、防弾改造されたバンを運転する。そりゃそうさ、ブリーフィングが終わった後、すぐに出発したんだから。

幸い場所はそこまで遠くはなく、車で一時間で着く距離だ。

助手席には持ってきたM249が立て掛けられている。そして、右足のレッグホルスターにはこの前の武器商人からもらった(パクった)M500。

我ながら火力全振りの構成だな。

 

 

 

ーー目的地に到着しました。

 

 

気が付くともう目的地に着いた。

誰もが眠り、店なんてやってない真夜中にネオンを爛々と輝かせる一軒の建物。

卑猥な言葉で書かれたネオンの看板がチカチカと光っていて明らかに普通の店ではない。

 

 

「着いたわね。さて、任務開始ね」

 

後ろで45がノートパソコンのキーボードをカタカタと叩く。

それと同時にナイン、416、G11がバンから降りる。俺もそれに続く。

裏口に進み、ドアを見るとオートロック式だった。

 

〈聞こえる?サーバーに侵入したわ。今からロックを解除するわね〉

 

 

するとピピッと電子音が鳴り、開いた。

 

 

「レディファーストだ」

 

「だったら、あなたじゃない?」

 

「早く行けよ」

 

 

俺が冗談で言うと416が軽口で返す。

ナインが先行し、次に416とG11、最後尾は俺だった。

奥へ進んでいくとAKを持った見回りが2人いた。

 

 

〈サーバーは完全に掌握したわ。今から店中の照明を全部落とすわね〉

 

 

次の瞬間、電気が消えて、真っ暗になった。

 

 

「おい!どうなってる!」

 

「誰だー!電気消したのはー!」

 

従業員達は突然の停電で慌てふためいている。

 

 

「よぉし派手にいこう」

 

 

 

俺達は物陰から飛び出し、M249をフルオートで撃ち、見回り2人を蜂の巣にした。

全ての扉にロックがかかり、従業員は扉を開けようと叩き、手持ちの銃で壊そうとする。しかし、防弾鋼板で無駄に補強したのが仇となり、この建物は自分達を守る要塞から自分達を閉じ込める監獄へと変わった。

そして、45に支配された小銃を取り付けたガンカメラが火を噴く。

 

 

〈次の角を左、そのあとは突き当たりまで行って右よ〉

 

 

45が上手くやってくれたおかげでほとんど敵と会うことなくスイスイと行けた。

突き当たりを右に曲がるとその奥にはエレベーターの扉があった。

 

〈そのエレベーターの中にターゲットがいるわ。合図を出したら開けるわ〉

 

「いや、その必要はない。俺がこじ開ける」

 

〈あっそ、了解〉

 

うーむ、この程度でもうろたえないとは…もうこの子達も85年辺りのアクション映画脳になってるな。

ナイン達は何も言わず、俺の後ろに一列に並んで隠れた。これが阿吽の呼吸…。

 

M249を地面に置き、エレベーターの扉をこじ開ける。金属の軋み、擦れる異音が鳴る。

 

 

「オープンセサミ」

 

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」

 

扉を開けた瞬間、叫び声と銃弾の雨が襲ってきた。だが、そんな銃で俺を倒せるわけもなく、銃弾の雨はすぐに止んだ。

 

「ギャング諸君…」

 

「ふぁ~えぇーっと任務ご苦労?」

 

「さようなら」

 

 

後ろに隠れていたナイン達が出てきて、ターゲット以外の護衛を撃ち殺した。

G11の左手には紙切れが握られており、後ろに隠れている間にセリフを考えてたのだろう。余裕あるね君たち。

 

「ターゲットはこいつだな。連れていくぞ」

 

「あっちょっと待って」

 

腰の抜けたターゲットを連れていこうとするとナインが止めた。

なぜだろうと思ったら、パーカーの裏から太いロープを取り出し、一瞬でターゲットをグルグル巻きにして、引きずって運んでいった。ええ…。(困惑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソぉ!この俺をモノみてぇに縛りやがって!グリフィンのクソ共がぁ!殺してやる!殺してやるぞ!」

 

 

運転しているバンの後ろでナインに縛られたターゲットは喚く。声質が大塚○忠さんみたいで内心ビクッとする。その声だけで食っていけそうだな。

 

 

「ちょっと黙ってて」

 

バックミラーを覗くと横でパソコンを使っていた45が銃のストックでターゲットの頭を殴った。ゴリッと明らかにヤバイ音が聞こえ、倒れた。

 

 

「死んだんじゃない?」

「生きてるよ」

 

 

ナインはターゲットの安否を心配したが、45は食い気味に否定した。

416とG11は何も反応していないから、まぁ何時ものことだろう。

ふとドアミラーを見ると後ろから車のライトが見えた。それも複数。こんな時間に怪しいなと思っていると2両のバイクがやってきて、バンの左右を挟んだ。乗っていたライダーの片手にはサブマシンガンが握られていた。

俺は咄嗟にアクセルを踏んで、スピードアップする。

 

 

「きゃあ!? カール、どうしたの?」

 

「敵だ! まだ生き残りがいたんだ! 狙いはターゲットだろう」

 

45達も銃を持ち、車から身を乗り出して応戦する。

ハンドルを片手にM500を握る。すると、またライダー達が近づいてきた。

右の窓に銃口を向けて射線に出てきた瞬間、引き金を引いた。相変わらず大砲のような轟音を鳴らす。だが、弾は明後日の方向に飛んで行った。

バンよりも少し前にライダーは進み、サブマシンガンを握っている左腕を後ろに向けて弾をばら撒く。何発も被弾するがその程度では俺は怯まない。

M500のグリップを握り直して、ヒビが入っているフロントガラス越しにもう一度撃つ。今度はライダーのヘルメットに命中し、バランスを崩したライダーは派手に転倒した。

 

 

 

ドアミラーで後ろを確認すると空からライトの光が降ってきた。

バリバリとバンのエンジン音を搔き消す音、まさか…ヘリか!そう結論を出した瞬間、ヘリの機銃攻撃が来た。

しかも、相手は相当なやり手でバンの後ろにぴったりくっついて、フロントウィンド越しからサブマシンガンを撃ってきた。T-1000みたいなことしてるぞ。まだ弾の残ってるM500のシリンダーから弾を抜き、太ももの間に銃身を挟んで固定させる。そしてポケットからスピードローダーを取り出して、リロードする。

 

 

「おい、掴まってろよ!」

 

〈えっ!?ちょ、きゃあ!?〉

 

 

俺はハンドルを切って、バンを180°回転させる。すかさずバックに切り替えて、運転している俺とヘリが向かい合う形にする。

深呼吸をして気持ちを落ち着かせるとM500をヘリのコクピットに向ける。

 

 

BANG!

1発目、パイロットの隣でサブマシンガンを乱射していたやつに撃つ。弾は銃に当たり、銃はひしゃげる。その時の跳弾がたまたまだが頭に吸い込まれていった。

 

 

BANG!

2発目、パイロットに向けて撃つ。フロントウィンドにヒビが入る。

 

BANG!BANG!

3発目、4発目。2発目の当たった箇所に命中。ヒビが大きくなり、フロントウィンドを貫通して、大きな穴が開いた。

 

BANG!

最後の5発目。放たれた銃弾はフロントウィンドの穴を通り、パイロットの脳天に命中した。

 

制御を失ったヘリは不規則に揺れ動きながら、落ちた。

ヘリを撃ち落とされたことで怖気付いたのか残ってた敵は撤退していった。

 

(ヘリで追うんだったら、T-1000かRev-9でも持ってこいや)

 

俺はそう心の中で捨て台詞を吐いた。でも、本当に持って来られるのはやめてください、何でもしますから。

 

 

 

 

 

 

 

「いってえ!クソブリキ人形共、こっちは怪我人なんだぞ!」

 

 

ターゲットを運んだ所は誰もいない廃墟の街だった。

ナインがターゲットを引きずってバンに下ろすが、さっきのカーチェイスで流れ弾が当たったようで彼をぐるぐる巻きにしたロープの隙間から血が溢れていた。

 

 

「あぁ〜、もう女みたいに喚くな!」

 

「何だとこっ「ただのかすり傷じゃない!」よく言うぜぇ…」

 

喚くターゲットに416が怒鳴る。かすり傷って…人間は拳銃弾でも致命傷になるですがそれは。(タルコフ脳)

 

「こっちはなぁ!流れ弾で骨も折れてんだよ!」

 

「人間には215本も骨があるのよ。1本くらい何よ」

 

 

ターゲットの訴えを416は筋肉論破で完封した。

そして、ターゲットは廃墟の建物の中へと連れて行かれた。

 

 

「お疲れ様、カール。後は私達に任せてあなたは帰って仮眠でもとってなさい」

 

「んで? あいつはどうなるんだ?」

 

「ちょっと軽くお話するだけよ。それが終わったら、体中の骨をへし折って、警察に送り届けるわ」

 

 

45は廃墟の中へと消えていった。

すぐにターゲットの悲鳴が聞こえ、俺は静かに十字を切り、バンに乗ってその場を後にした。




404小隊
80年代のアクション映画みたいな思考回路になってきた。だが、それでいい!


ターゲット
作者の怠慢で名前すら与えられず、最後は体中の骨をテキパキボキバキと折られて警察に突き出された悲しき男。中々良い声の持ち主で若かりし頃は声優を目指していた時期があったのかもしれません。


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鉄血とドンパチすることになった俺氏

最近、書く時間が減ってるなぁ…。どうにか書く時間を確保せねば。


腹の底から響く爆発音、飛んでくる緑色の光線。俺は屈みながら、手近なコンクリートの壁を見つけると、そこに背を預けて、グレネードランチャー付きのARX160をリロードして一息つく。

 

 

(クソ、なんで…っ! 殺気!)

 

悪態を吐く間も無く、俺は伏せた。すると、メートル単位もの分厚いコンクリート壁が温かいバターの様に切れた。

後少し遅ければ俺もこのコンクリートのように上半身と下半身が両断されていただろう。

咄嗟に銃を構えるとアイアンサイト越しに武骨で巨大な右腕でブレード、左手には大柄の拳銃を持った少女が映った。

原作では第2戦役でボスとして立ちはだかる鉄血の戦術人形、処刑人(エクスキューショナー)

 

 

「おいおい、逃げてばっかでつまんねーよ。もっとオレを楽しませろよ」

 

 

獰猛な笑みを浮かべて、処刑人は言ってきた。

 

 

「クソ…あとでお前らの研究員から多額の慰謝料請求してやる。そんで詐欺罪で訴えてやる」

 

「ハハ…なら、五体満足で生き残らなきゃなぁ!」

 

 

悪態を吐くと処刑人は嬉々とした表情で拳銃を俺に向けた。

 

ほんと………

 

 

 

何でこんな事になったぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

話をしよう。あれは今から36万…いや6時間前だったか……まあいい。とにかく今週はAR小隊は定期メンテナンス、404小隊は任務で不在だった。基地にいるのはカリーナ、レナ、そして俺の3人だけだった。

 

 

「おじさん、仕事が来たよー」

 

しかし、そんな状態でも依頼は来る。

 

 

 

「今日の仕事は…鉄血からの依頼でー報酬は前払いでー鉄血の研究所に行って……あれ? 続きがない」

 

前払い、依頼内容があんまりない、これって騙して悪いが、だろうか。

 

「おじさん、武器をありったけ持っていくわよ」

 

「了解、もし連中が騙してたらどうする?」

 

「ぶっ潰す」

 

「オッケー」

 

 

ハイタッチする。さてと武器をハマーに詰めなきゃな。

 

 

 

 

 

 

武器をありったけ詰めたハマーに乗り、依頼通りに鉄血の研究所まで着いた。

研究所の正門の前には白衣を着た男が3人立っていた。ハマーを駐車場に止めて、何があってもいいようにホルスターに仕舞っていたハードボーラーの安全装置を解除、チャンバーに弾が入ってるか確認する。助手席のレナもMK23に同じ動作をしていた。

 

 

それが終わると俺達はハマーから降りた。すると、3人の男が出迎えてくれた。

 

 

「ようこそ、鉄血の研究所へ。私はこの研究所で所長をしているアーロンです」

 

「G&Kのレナ・オーウェンズです」

 

「副官のカールだ」

 

挨拶を交わすとアーロンは俺を見ると驚いた表情になる。

 

 

「おお、君が噂の…いやはや9年も稼働すればここまで……これは…実に興味深い」

 

 

そして、アーロンは変わり者の科学者らしくブツブツと独り言を言い始める。

 

 

「あのアーロンさん?」

 

「おっと、すまない。それでだが、今回の依頼は抹殺者(ターミネーター)…失礼、カールと言ったか。彼のデータを収集させて欲しい」

 

 

え? 俺って最初期のオンボロだぞ。特にデータを取る理由は無さそうだが。

 

 

「実は我々は今新型の戦術人形を開発しているんだが、暗礁に乗り上げてしまってね。依頼の内容を伏せたのもグリフィンを通してIOPにこの情報が流れないようにしたんだ。今や僅かな設計図しか残っていないターミネーターが実物でしかもデータも有れば、この状況を打開するヒントになるかもしれないんだ。どうだろうか、報酬なら追加で支払おう」

 

 

そう言って、アーロンは頭を下げた。俺はレナの方を見るとお好きにどうぞ、と目で返された。まぁ、騙して悪いがにはじゃないし受けよう。

 

 

「分かった、依頼を受けよう」

 

「ありがとう」

 

 

 

という事で最初は射撃場で銃撃ったり、パワーの計測とかそういうので終わると思ったら、アーロンと愉快な仲間(マッドサイエンティスト)達がもっと良質なデータが欲しいって言ってきて、鉄血のハイエンドモデルの性能試験ついでに戦う羽目になった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

そして、現在絶賛処刑人にヘッドショットされそうな俺氏。

 

 

「ぬおぉぉぉぉ!!」

 

 

全力で回避する。走馬灯のようなものが流れたが、原作スタートになるまでは死んでなるものかぁぁぁ!!

 

 

「避けやがったか」

 

 

何とか銃撃を避けた俺はお返しとばかりにARXをフルオートで連射する。使っている弾は模擬弾だが、弾頭がゴムで出来ていること以外は実弾とほぼ同じ性能を持っている。当たると死ぬほど痛い。

 

 

「そんな数だけのモンはなぁ!」

 

 

ブレードで全ての弾を弾かれた。嘘だろ…至近距離で30発の弾をブレード一本で全部弾くかよ。ええい、鉄血の人形は化け物か!

 

 

〈ウオッホー!おい、お前の処刑人がここまで進化したぞ!〉

 

〈うぉっしゃー!始末書30枚書いてでも作った甲斐があったぜ!〉

 

〈あっ、コーラ切れた〉

 

〈おかわりもあるぞ!〉

 

こっちは命がけで戦ってんのにスポーツ観戦感覚かよ。あっ、ポップコーンとポテチとコーラを補充しやがった。マジで金踏んだくってやる。

ARXは弾切れ。リロードしてる暇も無いから捨てる。最後の武器はハードボーラーだけか。

 

 

「なんだ、降参か?」

 

 

ARXを捨てた俺を見て、処刑人がブレードを肩に担いで挑発する。

俺は地面を思いっきり蹴り、一気に処刑人にタックルを仕掛ける。

 

 

「なっ!?」

 

流石の処刑人もこの速さは想定外だったのか。驚いた表情になる。だが、咄嗟にブレードでタックルを防いだ。

 

 

「てめぇせめて、そのホルスターに仕舞ってる拳銃使えよ!」

 

「アンタも剣使ってるだろうが!」

 

「くそ!納得してしまった!」

 

 

ギャグのような会話を交わしながら、処刑人の剣撃を避ける。彼女の剣筋はパワーとスピード任せに振っている感じで見切りやすい。後、ブレードを握っている右腕は大きいので振るにも予備動作が必要だ。埒があかないと焦った処刑人は右腕のパワー全開でブレードを大きく振りかぶった。

 

 

 

「嘘だろ!?」

 

 

処刑人のブレードを真剣白刃取りする。処刑人は急いでブレードを抜こうとしているがビクとも動かせはしない。

 

 

バキン!

 

 

 

あっ、やべ、力入れ過ぎてブレード折っちゃった。

 

 

「てめぇ……よくも…よくもオレのブレードを折ったなぁ!!」

 

「ちょっ!? 待って! 今のは不可抗力! 不可抗力だから! 折ったの謝るから!」

 

「うっせぇ!1発殴らせろ!」

 

「どう見ても1発じゃ、すまないやつだろ! 万発殴る気満々じゃねぇか!」

 

 

ブレードを折られて、涙目になった処刑人はがむしゃらに俺に殴りかかった。

 

 

 

〈処刑人、そこまでだ。戦闘終了だ〉

 

「オレはこいつがッ 壊れても 殴るのをやめない!」

 

〈これは殺し合いじゃないぞ。あくまでも性能試験だ。また新しいブレード作ってあげるからな?〉

 

「うぅ…分かった」

 

 

アーロンが無線越しで処刑人を止めてくれた。処刑人はスタスタと帰っていったがすれ違いざまに「お前を殺す」と言われた。ホントすんませんでした。

そんなこんなで地獄のデータ取りはようやく終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた…」

 

「ほら一杯。故郷の味だよ」

 

ベンチで横になっているとレナがプロテインを持ってきてくれた。ふむ、バニラ味か。しかも水じゃなくて牛乳で溶かしている。分かってるじゃないか(歓喜)。

 

 

「あ゛あ゛あ゛」

 

 

プロテインをがぶ飲みして、濁点塗れの声が出る。

 

 

「それで報酬金は?」

 

「予想以上に良いデータらしかったから10万ドルをポーンとくれたよ」

 

「ならいい。帰ろう、ホームシックだ」

 

 

プロテインを飲み干すと、俺はレナとそそくさと研究所から出て行った。途中、色んな部屋から俺のデータを見て狂喜乱舞している研究者達の声が聞こえたが聞かなかった事にしよう。




あっ、そうだ(唐突)。皆さんはプロテイン飲む時、何で溶かしてますか。
私は牛乳です。チョコレート、ココア、バニラ味のプロテインがめっちゃ美味くなって、水に戻れなくなりました。


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いい天気なので海賊を殺しに来たんだ

お気に入りが101になりました。感謝!圧倒的感謝!!


「という訳で今日はいい天気なので海賊を殺しに出かけます」

 

 

開幕早々、会議室で物騒な発言をしたレナ。会議室に集められたAR小隊は特に驚くこともなく、ダラーと椅子に座っている。すっかり80年代のアクション映画脳に染まったようだ。

 

 

「海賊は豪華客船に立て籠もって、身代金300万ドルを要求、政府は金を渡したくなくて手をこまねいてたらあっという間に3ヶ月が経過、流石にまずいと思ったのかグリフィンに人質の救出と海賊の殲滅を依頼してきた…こんな所よ」

 

「要はいつも通りってことだろ」

 

「そういうこと。それでこれが船の見取り図。人質は全員船倉に囚われていて……」

 

 

レナは作戦の概要を話し始める。だが、やる事はいつもとほとんど変わりないので俺もAR小隊も半分聞き流していた。レナもそれを承知で概要の説明も適当気味だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中の午前2時。月明かりしかない真っ暗な海で俺は音を立てないように気を配りながら、レナとAR小隊を乗せた複合艇(RHIB)を操縦して照明が落とされて、ゴーストシップと化した豪華客船に近づく。

 

 

「よし、この辺りで止めて」

 

 

レナの指示で船の後ろに止める。するとM16とM4がボートに積んでいたグラップリングフックを取り出して、船の手すりに向けて射出した。手すりに引っかかるとボートが波で離れないように固定する。

 

 

「準備オッケーね。行くわよ」

 

 

レナの号令でフックのワイヤーに昇降装置を取り付けて、船に乗り込んだ。俺もダミーの札束が入ったバッグとダットサイト、シュアファイアM900付きのノベスキーN4を肩にかけて、後に続いた。

船に乗り込むと船倉へと続く道を警戒しながら、進む。

 

 

「ねぇ、見張りがいないんだけど」

 

「動体探知も引っかからないです」

 

「3ヶ月も船の中で立て籠もってりゃ、流石の海賊も参ってるのかもな」

 

 

扉に着くまで歩哨の1人も遭遇しなかった。監視カメラも電源が入っていなかったので楽でよかったが、返ってそれが不気味に感じる。

 

 

ゆっくりと気密扉を開けて、人質が囚われている場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何ヶ月になると思う……3ヶ月だ!」

 

 

人質が囚われている場所に着くと海賊のリーダー格の男がマチェットを片手に部下が持ってるビデオカメラに向けて、そう叫んでいた。

 

 

「待たせやがって…こうなったら、こいつらで償ってもらう!」

 

 

 

「散開して囲いこむわよ。M4とM16は右、AR15とSOPは左に回り込んで」

 

 

冷静にレナはそう指示するとM4達は素早く静かに移動を始めた。

 

 

「たっぷり時間をやったってのに……上級国民様の命なんて無視って訳か。……なら、こっちだってもう知ったこっちゃねぇや!」

 

リーダー格の男が苛立ち、人質の中から1人の少女の髪を掴んで、カメラに映るように引きずって来る。

 

 

「やめて!娘だけは!」

 

「いやぁ!お母様ぁ!」

 

「悲鳴を上げるな!……神経が苛立つ!」

 

 

何故かジャックオーランタンのマスクを被った構成員の1人が少女に怒声を浴びせて、頭をAKのストックで殴りつける。

 

 

「いいか!1時間以内に金を持ってこい!持って来なかったら、ネット中継で人質を1人1人殺してくれと叫ぶまで痛ぶってやる!手始めにこの小娘のバラバラ死体を送ってやらぁ!」

 

〈〈指揮官、準備できました!〉〉

 

「了解、おじさん投げて!」

 

 

レナの合図でバッグを放り投げる。

突然バッグが降ってきて、海賊達は驚いて、持っていたAKを構える。

 

 

 

「待て!撃つな!」

 

 

リーダーの男は部下を抑える。

俺達も物陰から姿を現して、銃を向ける。

 

 

「てめぇら、何モンだ?」

 

「人質を解放しろ。そのカバンに現金300万ドルが入ってる」

 

「今更かよ……500万だ。500万用意して出直せ!」

 

〈がめつい海賊ね〉

 

無線越しにAR15が毒吐く。レナの方を見ると肩をすくめていた。

 

 

「いいか!金だ!金を持ってこい!」

 

「黙って受け取れ」

 

「はぁ…もういいわ。驚かせてあげましょう」

 

これ以上は平行線のままだと思ったレナは懐からリモコンのようなものを取り出して、ボタンを押す。すると、放り投げてたバッグから煙幕が噴き出す。

瞬く間に船倉に広がって1m先も見えなくなった。

 

 

「みんな明かりを消して!」

 

 

 

そう指示して、船倉にある照明を全て銃で壊す。真っ暗になると自動で暗視モードに切り替わり、レナもサーマルゴーグルを装着する。

何も見えず、手当たり次第に銃を撃つ海賊達を人質に当たらないように点射でテキパキと撃ち殺す。

 

 

「SOP、人質の女の子を“持ってこれる”?」

 

 

〈任せて〜。……はいだらー!〉

 

 

SOPの方を見ると左腕の義手の外装が分離して、少女をこっちに引き寄せた。まんまMGSVのハンドオブジェフティだ。

俺は人質の少女が突然消えて混乱していたリーダーの男を撃ち殺した。

 

 

突然視界が真っ白になった。咄嗟に目を閉じて、暗視モードが解除される。恐る恐る目を開けると生き残った海賊共がまた赤髪の女性にマチェットを突き立てていた。

 

 

「金だ!金を持ってこい!でなきゃ殺す!」

 

 

「いやー!お母様!」

 

「おわっ!ちょっと!」

 

 

SOPが抱えていた少女が悲鳴をあげる。どうやら彼女の母親のようだ。

 

 

「ラストチャンスだ。300万持ってさっさと失せろ。500万くらいこれを元手に投資で手に入るだろ。ソマリアの海賊も投資に成功して、豪邸を建ててるぞ」

 

 

でまかせに言ってるように聞こえるが身代金を元手に投資してるソマリアの海賊もいるらしい。他にも海賊に投資して身代金の分け前を貰う投資市場がオープンしたりと凄いことになっている。

 

 

 

 

 

ブー!ブー!

 

 

「何だ?」

 

「あっ、私の携帯メールだ」

 

「メール?誰から?」

 

「多分、カリン。出掛ける前にフルーツジュース箱買いしたから」

 

レナの携帯のバイブの音がなった。あまりにも舐め腐った態度をとる俺達に海賊共はとうとう堪忍袋の尾が切れた。

 

 

「ぶっ殺してやるー!」

 

 

ブチ切れて、マチェットを振り上げた。その瞬間1発の発砲音がした。海賊共の額から血が吹き出て、全員倒れた。レナやM4達もほぼ同時に発砲したため、1発だけ撃ったように聞こえていた。

 

 

念のため海賊共の脈を1人ずつ確認する。仕事の内容は海賊の殲滅だし、ここで死んだふりしてたら、最後の悪あがきで人質を襲いかかるかもしれない。

その間にAR小隊が人質達の拘束を解く。

 

 

「全員の死亡を確認…人質も全員無事…っと。さーて任務終了ー」

 

 

「指揮官!海賊っぽい怪しい人を見つけました!」

 

 

M4が大の大人を引きずってきた。この豪華客船の乗員乗客とは思えない薄汚れた服に布で顔を隠してたりと海賊共と似たり寄ったりな格好をしている。

 

「俺は海賊なんかじゃねぇよ!ゴミさ目糞鼻糞さ。なぁ、頼むよ俺は本当に海賊じゃないんだよ」

 

「クソが!」

 

「M4どうしたの!?」

 

「あっ、すみません。さっきこの人からシナモンロールの匂いがしたら突然発作が…」

 

どんな発作だよ。毎日食べさせられても別に嫌いなわけでもないらしいがこれ発作というより癖か?

 

 

「おい、そいつなんか様子が変だぞ」

 

 

M16が遠巻きから指摘した。男を見るとうつ伏せの状態で動いていなかった。

 

 

「おい、どうした?大丈夫か?」

 

「ううううううぅぅぅ……」

 

男をひっくり返すと白目剥いて口から泡を吹いて小刻みに震えていた。

 

 

「まさか……この人、心臓に持病があるわ!?」

 

「マジかよ!」

 

マジで発作を起こしてた。

スキャンすると心臓が変な動きして止まりかけてるじゃねえか!?

 

「あわわわ…姉さん、どっどうすれば…」

 

「確かこの上にAEDがあった筈だ!M4ー!AEDだ!AED持って来ぉぉぉぉい!!」

 

「はいーー!!」

 

M16に言われて、M4はAEDを取りに船中を駆け回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談というか今回のオチ。

あの後、救助部隊が来て、乗員乗客は無事に家に帰ることが出来た。心臓が止まりかけた海賊っぽい男はAEDで復活した。取り調べをしてみたら、海賊の一味ではなく、ガチでただの乗客だった。何でも海賊が襲撃した時に運良く見つからずにそのまま3ヶ月間、息を潜めていた。食料や水の調達は服をわざと汚し、布で顔を隠してそれっぽく振る舞って船内を歩き回ってた。しかも一度も気づかれず、何なら会話も交わしていたらしい。

 

 

持病持ちとはいえ、こいつ無駄にサバイバビリティ高くね?

 

 

 



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鉄血の安全保障は退屈か?

日常回に組合員要素を入れようと挑戦して1ヶ月以上が経過…。



結局ダメでした。
ということで今回は組合員要素は皆無です。


今日の仕事は俺だけ鉄血の研究所の警備。シフトに1人空きが出たから俺が1週間、代わりを務めることになった。とはいえ、この前の事があるので警備の仕事もなーんか嘘くさい。

 

 

ただ仕事は仕事なので警備もしっかりやらないとな。つっても研究所の中と外を歩いて歩いて歩き倒すだけだが。

 

 

 

この研究所は前も来たがかなり大きい。迷路のように入り組んでいて、常に視界の右上に表示されているマップを見ていないと迷いそうだ。うちの基地も似たような感じだが、うちの方が天国に思える。こんな所を地図も無しに働いている研究員も警備員も大したものだ。

 

 

警備ルートに沿って歩いていくと人形の製造ラインがある区画に入る。ベルトコンベアの上にT-800のエンドスケルトンに似た金属骨格が人の形をした金型状の機械で全身を挟み込まれ、人工筋肉と人工皮膚がカバーされる工程だった。。金型が開くと銀色に輝く骸骨はものの数分でリッパーに変身した。

 

 

人形の作り方もT-800とそう変わらないようだ。

 

 

そうやって、製造ラインを流し見して、ルートを歩いていると腕時計からピピと電子音が鳴った。

 

 

(12:30か。飯でも食いに行くか)

 

 

ちょうど昼休みだ。ルートを食堂に変えて、食堂に向かった。鉄血の社員食堂ってどういうものが出されるんだろう。少し楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰もいない?」

 

 

食堂には誰もいなかった。テーブルや椅子には小さな傷や汚れはなく、誰も食堂を使っていない印象を受ける。

そして、食堂の端っこに鎮座している自販機のような機械。

すると、白衣を着た研究員が食堂に入ってきた。研究員は自販機の前に立ち、ピッとボタンを押した。研究員はしゃがんで受け取り口から何かを取り出すとそそくさと食堂を後にした。

 

 

気になって、自販機を見る。

 

 

「栄養補給パック?」

 

 

なんともまぁ、味気ない名前が書かれたものを売ってるものだ。てか栄養補給パックしかないのかよ。

俺もそれを押すと栄養補給パックが受け取り口に落ちた。

取り出すとラベルも貼ってない銀色のゼリー飲料みたいなものが出てきた。

 

 

蓋を開けて、一口飲んでみる。パックを握るとちゅるとゼリーが口の中に広がった。

そして、肝心の味は………

 

 

 

 

 

「なんと…味のしない…ゼリーなんだ…」

 

 

びっくりするほど、無味無臭だった。水を飲んでいるのとなんら変わりない。

もったいないと自分に言い聞かせて、全部飲み干したが、全然腹が膨れた感じがしない。

こんなもので毎日の食事を済ませてるなんてここの連中は頭がイカれちまってるよ。

 

 

空になった栄養補給パックをゴミ箱に捨てて、食堂の奥に進むと厨房があった。水道にコンロ、無駄にデカイ冷蔵庫と冷凍庫、鍋にフライパンと一通り揃っているようだ。食材はレナに連絡して送ってもらおう。

俺は携帯を取り出して、レナに電話する。

 

 

 

〈おじさん? どうしたの?〉

 

数コールもしないうちに出てくれた。

 

「レナか? ちょっと頼みたいことがあるんだが……」

 

 

俺はレナに事の成り行きを説明した。

 

 

〈オッケー、すぐに届けるから待っててね〉

 

 

そう言って、プツリと電話が切れた。レナは陸路で食材を運んで来る筈だから、早くても今日の夕方くらいに届くかもな。それまでは頑張るぞー。

 

 

 

 

〜5分後〜

 

 

 

 

「おじさんー!食材持ってきたよー!」

 

まさかヘリコプター飛ばして、空輸してくるなんて思わなんだ。

レナはウキウキとヘリに積まれた食材が入ったコンテナを出してくる。コンテナの中の食材を台車に乗せて、腐りやすい生鮮食品と冷凍食品を優先的に厨房に運ぶ。

 

 

10分もしないうちに運び込みは終了し、レナはヘリコプターに乗って、帰っていった。

 

 

「さて、いっちょ作るか昼飯」

 

 

冷蔵庫からレタスとタマネギ、トマトを出して、ちょっと厚めにスライスする。

あとは揚げ物鍋に油を投入、油が温まるまではジャガイモを皮付きで切る。

 

 

「あいつ何やってんだ?」

 

「料理か…?」

 

「は? 食事なんてただの栄養補給だろ? そんな手間かけて食事するより研究の方に時間使うわw」

 

「だよなーww。非効率的だよなーwww」

 

「研究以外で時間使うとか無いわーww」

 

「俺はあのゼリーで十分なんだよなーww」

 

っと、さっきの騒動で様子を見にきた職員達がくそみそに罵る。

そんなことは気にせず、冷凍庫の中から合成挽肉、冷蔵庫から手作りバンズを取り出す。

事前に温めていた鉄板の上に挽肉を円盤状にして焼く。肉の焼ける音と匂いが漂い、罵っていた職員達はよだれを垂らして、めっちゃガン見してる。

揚げ物鍋に切っていたジャガイモを投入、素揚げにしてフライドポテトにする。

挽肉をひっくり返したり、バンズをちょっと焼いたりと色々としているうちに熱々のチーズバーガーが完成した。

ルンルン気分で厨房から出ると食堂には物凄い人数の職員達が土下座してた。特にさっきまで「食事とか時間の無駄だわー」と言ってた奴らは床が沈むんじゃないかって勢いで土下座してる。

 

 

 

そんな光景を見て、俺はボソッと呟いてしまった。

 

 

「……分かった、作るよ」

 

 

『うおおおおおぉぉぉぉぉ!!』

 

 

 

 




Q:鉄血の安全保障は退屈か?

A:鉄血(社員)の食の管理がクソ忙しいので安全保障なんかやってられません。


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(代理人の家事スキルは)破壊的だ、って評判悪かったぞ

あれ書きたい、これ書きたいとこの小説以外のアイデアが溢れまくって、投稿が遅れてしまいました。


「3番席、フライドチキン2。16番席はシーフードピザの注文です!」

 

「先生!24から34番席で暴動が!」

 

「唐辛子スプレーで鎮圧しとけ!」

 

 

ガチャガチャと金属やプラスチック製の調理器具が奏でる雑音と飛び交う怒号。

なし崩し的に鉄血の厨房で働くことになって、2日目。

 

 

 

 

 

死ぬほど忙しい。

 

 

 

いやね、ここって研究員と警備員と戦術人形しかいなくて、料理ができる人がいないんすよ。猫の手も借りたいけど、研究員は何故か毒ガスになるわ、警備員は名状し難い暗黒物質に変化するわ、戦術人形は力の配分を間違えて調理器具を壊してしまう。だから、俺がワンオペで頑張ってる。

 

 

特に朝の7時、昼の12時、午後15時と20時は地獄のラッシュタイム。あのだだっ広い食堂が人で埋め尽くされていて、津波の如く注文が殺到する。作っても作っても終わらない。

最初はバイキング方式にしようかと考えたが、天然の生鮮食品も使ってるし、料理は少なからず残って、食品ロスになってしまう。あとはせっかく作った料理も冷めてしまうことからやめた。食えるだけありがたいくらいに世紀末だからなこの世界。

 

 

更にこいつら家事スキルも皆無だから、大抵の職員の部屋は汚部屋だし、服はずっと同じものを着てるからくたびれてるしで発狂しそうだ。おうちにかえりたい。

 

 

 

「精神的に疲れた…」

 

「お疲れ様です、先生」

 

 

昼のラッシュタイムが終わった。机に伏していると代理人が水を差し出した。

俺がいなくなってもある程度の家事が出来る人材を育てるために代理人なら家事スキルを習得できそうだと思って、色々と教える予定だ。それで何故か先生って呼ばれてる。

 

 

 

俺は水を飲み、一息つく。

 

 

「じゃあ、今日から始めるぞ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは洗濯だ。服は白いものと色のあるものを分けて、洗濯機に入れる。洗剤はこれくらいの量で大丈夫だ。俺はシミ取りをしてくるから終わったら呼んでくれ」

 

「はい」

 

 

洗剤はきちんと渡したし、服は事前に分けておいたし、こんなの子供でも出来るさ。

 

 

パァァァァン!!

 

 

「どうした!?」

 

「先生…」

 

 

謎の破裂音がして、慌てて駆けつけると部屋は泡まみれ、洗濯機は破裂し、代理人は涙目でへたり込んでいた。どういうことだ…。

 

 

 

 

「次は洗濯物を畳んでみよう。ここを折ってだな」

 

「はい、これなら私も〈ビリビリ!〉…すみません!!」

 

「……」

 

 

 

 

「よっ…よし、今度は掃除だ。掃除機をかけて…」

 

「今度こそ、絶対〈ボォォォン!!〉……ヒィ!掃除機が爆発した!」

 

 

?????????

 

 

 

 

 

 

その後、色々試したが中華鍋を飴細工のように捻じ曲げるわ、包丁を持たせると刃が根元からポッキリと折れるわ、コンロに火をつけると火炎放射器の如く火を噴くわ、で思わず「そうはならんやろ」とツッコんでしまった。

 

 

そうこうしていると、もう夜になった。そして晩のラッシュタイムも凌ぎ切り、誰もいなくなった食堂で代理人と2人で座る。

 

 

「なぁ、代理人」

 

「はっ、はい…」

 

「自律人形で料理が出来るようになる便利なモジュールがあるんだが、取り付けられるか?」

 

「その…私達ハイエンドモデルは戦闘に特化した設計でして、その…ネジの1本に至るまで専用設計なのでそういったモジュールは取り付けられないです」

 

 

 

どうすんだよ!こんな某フローレンシアの猟犬みたいなやつ、どうやって育てりゃいいんだよ!

クソ、こうなると家事が出来る人を雇うくらいしかないか。いや、こんな所に家政婦を何人も雇っても過労で倒れるよな。あれ? じゃあ、俺が全部1人でこなせるのって結構異常なのか。

 

 

 

まぁ、そんなことはどうでも良くて。

 

 

どうすれば……あっ、そうだ。

 

 

 

「代理人…俺、明日から本気出すから」

 

「??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

「こちらにサインを」

 

「ああ」

 

「はい、ありがとうございましたー」

 

 

俺が思いついた策。それは家電を全て最新で壊れにくい新品に買い換えるという頭の悪いゴリ押しだった。当然全て俺のポケットマネー。研究所にあった洗濯機とかは結構古い型だったし、全部分解したら、長らく放置されてたせいで色んな部品が痛んでいた。そんな状態で動かしたから昨日の惨劇が起こった。

 

 

「あの先生、本当にいいのですか?」

 

「これも未来への投資だと思えば安いもんさ」

 

 

まぁ、来年にはこんな投資パーになるんですけどね。初見さん。

 

 

さて、道具も揃ったし、あとは付きっ切りで代理人に包丁の持ち方から教えるか。

 

 

 

 

 



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\ランニングマ〜ン!/

結構駆け足気味です。ご容赦ください。


西暦2060年、鉄血工造株式会社の社員達はフラストレーションが溜まっていた。ある研究所に食事という娯楽が到来したことにより、彼らはより一層娯楽に飢えていた。アーロン率いる一派は研究所に1週間だけ滞在しているカールに目をつけ、実験と称したハイテク殺人ゲームを企画した。

 

 

 

 

 

 

はい、バトルランナーっぽいナレーションを入れた事で1時間前に絶賛ハイテク殺人ゲームに参加させられた俺氏。

朝起きてたら、突然麻袋を被せられて、ロープで拘束されて演習場に連行された。麻袋を外された時は目の前で職員達がパイプ椅子に座って、ポップコーン片手にくつろいでいた。

 

 

そして、普段よりキチッとスーツを着こなしたアーロンがマイク片手に壇に立ち、テレビ番組の司会者のように話し始めた。

 

 

 

「この世で1番面白いイベントは〜?」

 

 

\ランニングマ〜ン!/

 

 

「そんな面白いイベントを企画したのは〜?」

 

\アーロ〜ン!/

 

 

「そう!ランニングマン!4つに区切られた演習場で1人の逃亡者は我が社のハイエンドモデルの追跡をかわします!ルールは簡単!ハイエンドモデルは逃亡者をタッチすればOK!逃亡者は制限時間160分間、逃げ切ります!後、武器の使用も許可されてます!さぁ、時に逃げ、時に立ち向かい、時に欺く、白熱した死闘が繰り広げられます!あっ、それとこれは我が社のハイエンドモデルの性能実験がこのイベントの趣旨であることをお忘れなく!」

 

 

 

一通り喋り終わるとアーロンは指を鳴らす。するとスタッフがミサイルとパラシュートパックを持ってきた。

パラシュートを俺に装着した後、ミサイルに括り付けられた。

 

「それと逃亡者が捕まったら、罰ゲームとして職員全員にスイーツを作って下さい!」

 

「はっ!? おま、ふざけんな、今でもギリギリなのに!」

 

 

「では、前置きはこの辺りにして、そろそろ始めましょう! ランニーング!」

 

 

「うおおおおおおおああああああーーー!」

 

 

アーロンが懐からリモコンを取り出して、ボタンを押すとミサイルは空高く飛んで行き、俺はアジズみたいな叫び声を上げた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

という事があり、ミサイルは空中で爆発、大空に投げ出された俺は急いでパラシュートを開いて、下にあった廃車に着地した。結構ギリギリだったから車はペチャンコになったが。

市街地エリアを駆け回っているといくつか使えそうな物があった。スモークグレネードにスタングレネード、それにガードが使っている銃剣付きの拳銃と盾。恐らくこのゲームの為にアーロン達が用意していたのだろう。バトロワを思い出す。

 

 

 

「っ!やべぇ!」

 

「見つけたぜ」

 

 

演習場の市街地エリアの中で物資集めに奔走していると処刑人に鉢合わせしてしまった。

処刑人もあの頃からアップグレードしていた。巨大な右腕の義手は普通サイズまで小さくなり、腕から右胸辺りまでは赤と黒のプロテクターに覆われている。そして、彼女が担いでいるブレードは赤く光る日本刀状の高周波ブレードになっていた。

まんまジェットストリームサムやんけ。

 

 

「てめぇにブレードを折られてからずうっと復讐を想い続けてたんだ。ようやくその時が来た。長かったぜ」

 

 

そう言ってジリジリと詰め寄って来る。俺は静かにウエストポーチに手を突っ込みとスタングレネードのピンを抜く。

 

 

「そうかよ。だがな、処刑人。獲物の前で舌舐めずりしたのはビッグミステイクだぜ!」

 

 

ポーチの中から投げて1秒後に起爆するように調整したスタングレネードを処刑人に投げる。

グレネードはキーンと耳をつんざく音と強烈な光が炸裂する。俺は踵を返して逃げた。僅かだが目くらましにはなった筈だ。

 

 

 

走る。とにかく走る。地面に設置されているトラバサミや落とし穴、赤外線センサーがついた地雷、セントリーガンといった罠をパルクールの様に避けて走ってるのだが、どこかに導かれているように思える。

 

 

すると上からレーザーと剣の雨が降ってきた。俺はガードの盾で防ぐ。

 

 

「ほう、良い反応だ」

 

「旧式とは言え、侮れんな」

 

 

プシューとガスの抜けるような音を立てて、空からは白髪の人形、狩人(ハンター)。廃ビルの屋上からは白と黒の双剣を携え、周囲には剣が浮遊している人形、錬金術師(アルケミスト)が飛び降りてきた。

 

 

 

(クソ、ハンターは対人立体機動装置でアルケミストは無限の剣製か?)

 

 

今の俺はタッチされれば、そこでゲームオーバー。つまりターミネーターお得意の格闘戦が出来ない状況だ。射撃戦で対抗するしかないが、射撃武器は拳銃1挺、後は盾とスモークグレネードとスタングレネードだけだ。そして相手はゴリゴリのインファイター。逃げるしか手は無い。

スモークグレネードに手を伸ばしかけた時、急に俺の後ろが陰で暗くなった。

後ろにはさっきまで無かった巨大な塔が建っていた。

 

 

「アッハハハ!チノ=リを得たぞーってね☆!」

 

「アーキテクト、ちょっとは落ち着け!」

 

 

塔の頂上から顔を出してきた建築家(アーキテクト)計量官(ゲーガー)。アーキテクトの手には鉛筆と青写真。フォートナイトの建築能力か!?ゲーガーは普通にライトボウガンを持ってる。さてと…

 

 

「撤退!」

 

 

ポーチからスモークグレネードを投げて、煙幕を張る。

 

 

「おらー困った時のロケラン乱射ぁぁぁー!」

 

「アーキテクト!味方も巻き込むぞ!」

 

「1発までなら誤射で許されるよ!」

 

 

建物と建物の間を縫って逃げるとアーキテクトが武器に装着されていたロケットランチャーをデタラメに放ってきた。吹っ飛んだ建物の破片を盾で防ぎながら、俺は声いっぱいに叫んだ。

 

 

「チクショー!やられてたまるかー!」

 

 

 

 

 

 

 

途中からどうやって逃げたか覚えていないが、アイツらを撒くのには成功した。俺は廃墟の中に身を潜め、一休みすることにした。

もう自分が何処にいるのかも分からない。不安な気持ちを少しでも落ち着かせようとそこら辺に落ちてた新品のミネラルウォーターをがぶ飲みする。

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛。ここで迷ったら間違いなく見つかるな」

 

 

あっという間に空になり、ペットボトルをポイ捨てする。マナー違反だが、そんな事言ってられないんだ。

 

 

 

投げたペットボトルが宙を舞った時、レーザーと爆発物の嵐が襲いかかった。盾で攻撃を防ぎながら穴の空いた天井に駆け込み、階段を上がって、屋上へ向かう。盾はもうボロボロで使い物にならないから捨てる。装備は必要最低限に抑えて出来る限り身軽にする。そして、建物から建物へと飛び移る。俺、今むっちゃトム・クルーズみたいなアクションしてんな。

 

 

 

 

 

「っ!? ヤッバ!」

 

ちょっとカッコつけてビルに飛び移ろうとしたら、足を滑らせた。落ちそうになったが何とか右手で縁を掴んだ。

参ったなぁ。この高さから落ちたら運が悪ければフレームが歪む。良くても内部構造の劣化が進む。だからといってこのままぶら下がっても右腕に負荷をかけ続けるから何とか上がりたい。

 

 

「さぁ、先生、私の手を掴んでください」

 

 

どうしたものかと悩んでいると狙い澄ましたかのように代理人が現れた。

 

 

(…クソ、観念してスイーツ作るか)

 

 

観念した俺は左手を上げて、代理人が差し伸べた手を掴んだ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

「やぁ、アーロン。今日はよくもやってくれたな。座れ」

 

「やっ、やぁカール。ご機嫌はいかがかな?それと銃を下ろしてくれないか? 突きつけられたら、ビビって話もできやしない」

 

「最高だよ、せっかくだからこのイカれたゲームの完成度を採点してやろうと思ってな」

 

「えっ? 採点?」

 

「ああ…0点だよ」ズドン!ズドン!

 

「何するんだ!何故撃った!」

 

「どうせなら、殴った方が良かったか?」

 

「ごめんちゃい☆」

 

「今度やったら、訴えますよ」

 

 

 

 

その日の夜。俺は職員全員にスイーツを作った。特にハイエンドモデルには好評だったらしく、しょっちゅう食いに来るようになった。

 




ある動画のコメント

忠実な信徒が聖書の一文を引用できるように、忠実な組合員はシュワ映画の台詞を引用する。



それを見た感想

組合員ってのはサイボーグみてぇだな、腕が立つよw


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(基地に)戻ったぞ!

IQ3の作者が今後の展開をどうするかで悩みに悩みまくって書きました。


「頼む!帰らないでくれー!!」

 

「ええい、離せー!」

 

 

 

鉄血の警備任務(というよりハウスキーパー?家政夫?)の最終日の夜。アーロンやその他の研究員に張り付かれています。

 

 

「もういいだろ!代理人だって、洗濯も掃除も料理だってある程度できるようになったじゃないか!」

 

「知るかそんな事!そもそも君はうちの人形だろ! 親である鉄血で働くのは当然じゃないか!」

 

「横暴過ぎるだろ!」

 

 

 

そんなこんなで代理人に助けを呼んでなんとか彼らを引き剥がすことに成功した。

 

 

 

 

 

 

「あー、精神的に疲れた」

 

「お疲れ様です。先生」

 

 

仕事で与えられた部屋で代理人がサンドイッチなどの軽食と紅茶を持ってきた。というかこの掛け合いって前にもしてたよな。

チラッと代理人を見ると慣れた手つきで紅茶を注いでいた。根気よく教えた甲斐があるというものだ。

 

 

「どうぞ」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

ティーカップを受け取って、飲む。暑過ぎずぬる過ぎず、程よい温度で飲みやすい。

テーブルにサンドイッチが乗った皿を置いた。どれも見た目は普通だ。ダークマターに練金していた最初の頃と比べると物凄い成長だ。

ツナサンド?みたいなやつを食べる。うん、うまい。でもツナっぽくない味だ。

 

 

「中身はなんだこれ?」

 

「知らない方がいいですよ」

 

 

 

あっ、詮索するな、ってことですね。深くは聞かないでおこう。センサーがめっちゃ化学調味料やら虫の幼虫の羅列を表示しているが黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼む!帰らないでくれー!」

 

「ええい、離せー!」

 

車に荷物を積み込んでいるとアーロンが足にしがみついてきて、昨日と全く同じくだりをする。

 

 

「だーかーら!きみはうちのにんぎょ「うるさいです」アバババババ」

 

 

困っていると代理人がアーロンにスタンガンを突きつけた。バチバチと電流が迸る音がして、アーロンは気絶した。

 

 

「助かった、それと奥で処刑人が伸びてんだがどうしたんだ?」

 

「彼女はあそこに住んでます」

 

 

教えてもいないのに組合員らしい返しをする代理人。絶対、俺を引き止めようとして、代理人にスタンガンで気絶させられたな。1番俺の料理にがっついてたの処刑人だし。

 

 

「それでは先生、また会いましょう。必ず先生の腕を越えてみせます」

 

「ああ、またな」

 

 

ちょっとした宣戦布告をされて、俺は車に乗って、研究所から出た。バックミラーを見るとアーロンと処刑人を引きずっている代理人が見えた。

 

 

 

 

 

 

「ヤバイ!おいみんな逃げろ!」

 

「やめろーみんなしんでしまうぞー!みんなしんでしまうぞー!」

 

「あぁぁぁーー!来るぅぅぅー!」

 

 

久々に帰ってきたS09地区基地。1週間見ない間にドンパチ賑やかになってんな。

っと、現実逃避はほどほどに。見たことない人形達がレナに実戦方式の訓練をさせられていた。基地内でドンパチとはたまげたなぁ。

 

 

「今日の訓練はこれで終わり、お疲れー」

 

 

クッタクタになっている人形達を尻目にレナは俺を見ると駆け寄ってきた。

 

 

「おかえり、おじさん」

 

「ああ、ただいま。それとこの状況は?」

 

「最近グリフィンに入ってきた子達よ。上から新人の訓練をするようになったの」

 

ここに連れてこられた人形達に哀悼の意を。だが、これを乗り越えたら強くなれるから頑張って欲しい。そう思って心の中で手を合わせる。

 

 

「じゃあ、俺は荷物を部屋に持っていくから」

 

「分かった」

 

 

俺は荷物を持って、レナと別れる。

たった1週間しか経っていないのにここが物凄く懐かしく感じる。歳をとったのかもな。

 

 

「うぉ!」

 

曲がり角で誰かとぶつかった。

 

 

「すまない、大丈夫か?」

 

「大丈夫です」

 

 

ぶつかったのは俺と同じくらい背丈の女性だった。グレーの軍服を着込み、銀髪でつり目、クールな印象だ。うーん、AK15に似てるけどゲームでこんな子いたっけ?

 

 

「あなたが指揮官の言っていた副官ですか?」

 

「えっ? ああ、そうだが」

 

「申し遅れました。私はポドヴィリン9.2mmオートマ、本日よりS09地区基地に着任します」

 

 

 

 

 

うせやろ? あれ映画の架空銃だぞ。

 

 

 

 

 




代理人

最終的に美味くて栄養満点で安ければ良かろうなのだ精神に行き着き、化学調味料や虫に手を出した。多分、知ったらみんな食べなくなると思う。


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今日は厄日だな

12月に入ってクソ忙しくなるわ、体調は崩すわ、モチベーションは下がるわで、でもどうにか年末にはと書きました。


ポドヴィリン9.2mmオートマチック

 

イジェフスク造兵廠に勤めていたニコライ・レオノヴィッチ・ポドヴィリンが開発した大口径拳銃。変わり者のポドヴィリンは西側のデザートイーグルMk.Iをベースにして、P38風に組み直し、357マグナム弾を参考に9.2mm専用弾も設計した。ただ、ソ連軍は拳銃はあくまでも副次的な装備と考えていた為、開発当時は誰も見向きもしなかった。

冷戦末期、開放政策の中でソビエト連邦内でも麻薬、犯罪組織が急増しつつあった。麻薬で稼いだ資金を用いて最新のボディアーマーや銃器を揃え、更に麻薬により極度の興奮状態の犯罪者に警察で支給されていたマカロフでは威力不足だった。現場の警察官からは携行が容易でボディアーマーを貫通し、麻薬で興奮状態の犯罪者を一撃でノックアウトできるポドヴィリンは人気を集めた。

ソ連崩壊後は設計者のポドヴィリンは失踪し、大半の個体と設計図は紛失した。

現在ではガンコレクターに高値で取引されている。

 

W◯K◯より

 

────────

 

 

(この世界ではあるのかポドヴィリン…)

 

 

ポドヴィリンと出会ってすぐに自室に戻って、ネットでググった。そしたら、実在した銃になっていた。

コンコンとノックが聞こえた。入っていいぞ、と言うとドアが開いた。入ってきたのはレナだった。

 

 

「どうした?」

 

「いや…ちょっとやって貰いたい事があって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで合ってますね?」

 

「ああ…ピザは頼んだぞ」

 

 

連れて来られたのは何時ものキッチン。何でも訓練に来た人形達の歓迎会という事で色々と料理を作っているのだが、レナから頼まれたのはそういう事では無く一緒に作ってる人形達の監視だ。

 

スプリングフィールド、SAT8、G36、P30。

P30以外は料理や家事が得意そうな面々。一見、監視する必要が無さそうに見えるが、問題は彼女達の経歴だ。

 

 

何と全員つい最近までプロの殺し屋だった。それも裏社会ではかなり有名な。

銃剣でマフィアを壊滅したスプリングフィールド、様々な毒物を料理に混ぜて要人を暗殺してきたSAT8、ナイフ一本で重武装した数十人の正規軍兵士達を斬り殺してきたG36、鉛筆一本で3人の大男を瞬殺した事があるP30。

 

 

そう言った経歴からグリフィンの指揮官達は殺されるのでは、と怖がって、着任させたく無かった。つまり、クルーガーはこの問題児4人組をうちに押し付けた訳だ。

 

 

俺が居ない間は彼女達が家事などを買って出てくれたらしいが何でグリフィンに来たのだろうか。誰かからの依頼なのか、それとも深い理由もなくグリフィンに流れて来たのか、それを見極めるのも俺の仕事だ。とは言え、究極の人造人間として作られたレナに毒物なんて効く訳もないし、昨日の模擬戦で4人ともコテンパンにやられたらしく今すぐ奇襲を仕掛けた所で殺せる訳がない。とりあえず今は毒殺に手慣れているSAT8に気を配りながら、俺はケーキ用の生クリームをかき混ぜる。

 

 

 

「カールさ〜ん、ケーキ焼き上がりました」

 

「ケーキは置いといてくれ、後でクリームを塗る」

 

「分かりました」

 

 

スプリングフィールドが焼き上がったスポンジケーキを持ってくる。ケーキを俺の側に置かせて、スプリングフィールドは他の料理を作る為に離れた。

よし、後はG36が切ってるフルーツを持って来なくては。

 

 

「G36、ケーキ用のフルーツ切ってくれ…た…か?」

 

俺は絶句した。G36が明らかに料理用には向かないであろうカランビットナイフでりんごの皮を剥いていた。しかもその周りには大小様々な戦闘用ナイフがズラリと並べられていた。

 

 

 

「なぁ、包丁ならいくらでもあるが?」

 

「? こっちの方が使いやすいじゃないですか?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

心底不思議そうな顔で言ってきた。同じ言語で喋ってる筈なのに言語の壁のようなものを感じる。

 

 

「…フルーツ持っていくぞ」

 

「はい」

 

 

少し気まずい空気になったのでカットされたフルーツがたっぷり入ったボウルを持って、急いで戻った。

 

 

「カールさん、ピザが焼けました!」

 

「じゃあ、ピザはそっちに置いといてくれ」

 

「はぁ〜い」

 

 

SAT8がピザを食堂のテーブルに持っていくとSATが料理をしていた所に3つの茶色の瓶が。俺は見られてないか確認して、瓶の中を見る。中には謎の白い粉が詰まっていた。

 

 

(いざ!)

 

 

意を決して、3つの瓶から粉を手に乗せて舐める。さて、どんな毒物を持ってきたんだ?

 

 

─解析完了

 

─塩、砂糖、片栗粉

 

 

(…紛らわしい)

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから特に毒物が仕込まれる事なく歓迎会の準備が終わった。

食堂にはここに来た人形達でごった返していた。訓練でクッタクタになった人形達はスプリングフィールド達が作った料理を美味しそうに食べていた。

俺は食堂の端っこに座って、コーヒーを飲んでいるとレナが隣に座った。

 

 

「それであの4人はどうだった?」

 

「特に何も仕掛けては来なかった。料理には毒物らしき物は検知されてない」

 

「なら、もう少し様子を見る感じだね」

 

「そうだな」

 

 

 

話終わるとレナは席を立って、楽しく談笑している人形達の輪に入っていった。さて、来年から蝶事件か。アーロンも死ぬのか。蝶事件を未然に防ぎたいなぁ、そんな事を考えながら俺はコーヒーを飲み干して、料理を取りに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォーン!!

 

 

 

 

突然の爆発音。急いで窓から外の様子を見ると正面の門が破壊されていた。立ち込める土煙の中から旧式の戦車に装甲車、私服にAKを抱えた連中が現れた。リーダー格と思われる男が戦車の上に立ってメガホンを手に取った。

 

 

〈我らはロボット人権団体である! これより人形を酷使するグリフィンに天罰を下す!〉

 

 

それを言った後、戦車の砲塔が動いて、食堂の方向に狙いを定めた。

 

 

「戦車がこっちを狙ってるぜ!」

 

「よっこらほい!」

 

 

俺が叫ぶと人形達は食堂から退避した。

俺が最後に食堂が出ると戦車の砲弾が食堂を吹き飛ばされた。ああ…せっかくの料理がぐちゃぐちゃだ。

 

 

「みんな戦闘準備よ!」

 

 

レナの一声で人形達は戦いの準備の為に武器庫へと走っていった。

 

 

「おじさん、スプリングフィールドとG36とSAT8とP30は?」

 

「え? 他の人形達と一緒に武器庫に行ったんじゃないのか?」

 

「いえ、居なかったわ」

 

 

困惑していると外から銃声が聞こえた。外を見るとロボット人権団体を自称する連中が何かと戦っていた。俺は一瞬で察した。あの4人はもう既に戦っているのだと。

 

 

「レナ! あいつら銃も持たずに交戦してるぞ!」

 

「えっ!? 」

 

 

 

 

 

 

銃を用意して駆けつけた時には既に敵は全滅していた。しかし、死者は居らず、全員縄で拘束されてるだけで生きてる。

 

 

「クソがぁ!ぶっ殺してやるクソガキィ!」

 

「クソガキって誰? あたしのこと? ふぅん、あたしがせっかく作った料理をぐちゃぐちゃにして…絶対に許さない!」

 

「そこまでしなさいP30」

 

激昂したP30は捕らえたリーダー格の男を殴りかかろうとするがG36がたしなめる。

それを尻目にSAT8は懐から何かの薬剤が入った注射器を取り出して、連中の首筋に注射する。するとさっきまで暴れていた彼らはスッと眠った。多分、鎮静剤か何かだ。

 

 

「SAT、注射するなら消毒くらいして下さい。私達を襲ってきたとは言え、バイ菌が入ったら大変でしょう?」

 

「大丈夫ですよ、ちゃんと注射針は消毒してますから」

 

 

そっちじゃないのに、とスプリングフィールドは頭を抱えて言う。

 

 

「指揮官、敵は全員無力化しました! 後は営倉にでも入れて、色々と喋ってもらいましょう」

 

「うっ、うん。ソダネ」

 

 

そう言って、SAT8は男達を引きずって営倉に運んでいった。単純な作業をしているように手慣れている。俺達はただ唖然とその光景を見ることしか出来なかった。

 

 

「おじさん…」

 

「なんだ?」

 

「食堂っていつ直るんだろうね」

 

「早くても2週間だろうな。キッチンもやられてるからしばらくはレーション生活だ」

 

「今日は厄日だわ」

 

「ああ、全くだ」

 

面倒な仕事が増えたなぁ、と思いながら俺はため息を吐いた。

 



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アイツよ! アイツが来たんだわ!

Q:作者? (仕事に)殺されたはずじゃ?

A:残念だったな、一回死んだよ。仕事に追われてからずっと執筆する時間を探してた。ようやくその時が来た。長かったぜ。



Q:作者ぁ! これから投稿頻度はどんなだ?

A:私にも分からん。


食堂とキッチンが派手に吹き飛んで早2週間。

基地を襲った連中はスプリングフィールドらに“特別応接室”とやらに連れて行かれ、そこで色々と喋ってくれた。

 

どうも奴らはロボット人権団体の人間とかではなく、ただのチンピラ連中だった。怪しげな武器商人から改造された旧式戦車を格安で購入したらしく、戦車を使い、強盗をしていた。それで調子に乗ったらしく酒のノリでうちを襲った。というのが動機だった。

 

修理工事は無事に終わったがそんな下らない理由で基地を襲撃された事が基地中に知れ渡ると本部に引き渡される間、夜な夜な特別応接室から男達の悲鳴が聞こえる怪奇現象が起こったとかなんとか。

 

ドタバタして、ようやく一息つけるかと思いきや、容赦なく任務が飛んできた。

 

「今回の任務は正体不明の部隊に占拠された古代遺跡を調査している研究所の奪還、及び人質の救出よ。ここはグリフィンに警備を任せてるんだけど、数日前に謎の部隊に襲撃を受けているという通信を最後に連絡が取れなくなってるわ」

 

会議室には俺とレナ、今回の任務で呼ばれた人形達、デザートイーグル、MP5、AA12、UKM-2000、ベクター、M60がスクリーンに映されている資料とレナの話を聞きながら、思い思いの装備を整備する。

 

「この作戦はスピードが命、1日で済ませるわよ。研究所から2kmから離れた所に降りて、静かに接近し、人質を奪還して、敵部隊を1人残らず抹殺して、引き上げる。かなりのお得意様らしいから万が一には本部直属の部隊が支援として来てくれるわ」

 

「そんなに大切なお得意様ならどうしてうちに行かせるんだ?」

 

「何処かのバカがお前達が適任だと推薦したんだよ」

 

俺の疑問に答えたのはレナじゃなかった。声のする方向を振り向くとクルーガーがいた。

 

「あっ社長!」

 

「えっ! 社長!?」

 

「ええ、ちょ、マジ!?」

 

レナの言葉にMP5とAA12は驚きのあまりドタバタしながら敬礼した。

UKM-2000やデザートイーグルは多少驚きはしたが敬礼し、ベクターとM60は特に驚きもせず、普通に敬礼した。クールだねぇ。

 

「カール、この野郎、生きてたか」

 

(それ、俺のセリフ)

 

セリフは取られたが肉密度1000%の握手をする。そして、始まる腕相撲。

 

「どうした? グリフィンのデスクワークで鈍っちまったか?」

 

「誰がお前なんかに負けるか」

 

膠着状態が続いたが先に仕掛けたのはクルーガーだった。想定外の腕力で俺が不利になる。俺は思わずフルパワーを出して、如何にか勝った。

 

「うぉ! はは、分かった降参だよ」

 

並みの戦術人形を上回るパワーだったぞ。俺は怖い。

 

「指揮官、カールが社長に対して、あんな態度をとっていいのか?」

 

「まぁ、2人の仲だしいいんじゃない? 何か通じるものがあるんでしょうね」

 

「単に仲が良い関係というより、もっと深い関係なのかもしれないですね」

 

「なるほど、それなら納得がいく」

 

おい、M60とデザートイーグル、うるさいぞ!

 

「私達、本部直属の部隊は三方を固めて、後方はヘリを飛ばして援護する。武装ヘリで上空から攻め込めば研究所は20分で制圧できるだろう」

 

「研究所に余計な被害が出たら、大変じゃないか?」

 

「あそこには遺跡研究のトップクラスの科学者が人質になっているんだ。こいつは救出活動だよ」

 

「まぁ、私達が順調に進めたら、良いだけよ。斥候はデザートイーグルとMP5、UKM-2000は斥候の援護、しんがりはおじさんとAA12、M60はしんがりの援護、私とベクターは左右を警戒しながら進む。何か質問は?」

 

誰も手を上げず、質問が無いことを確認するとレナはスクリーンの電源を落とす。

 

「じゃあ、作戦開始は2時間後よ。ヘリの前で集合。それまでに準備してね」

 

そういうとレナも準備のために会議室を後にした。俺も準備に入るか。

所変わって、格納庫。ここで任務で使える武器を物色中です。

あっ、そうそう、ここにチンピラ共から押収した戦車が置かれている。装甲車は別の所に置いてる。戦車はなんとM47パットン。シュワちゃんの愛車だ。骨董品もいいところな旧式戦車だが、外見はリアクティブアーマーに覆われただけだが、内装は全てのパーツが最新のものに置き換わっている。武装は自動装填装置付きのレールガンに同軸機関銃はM2重機関銃、砲塔上部のRWSにはMK19を積み、おまけに60mm迫撃砲と最新型のAPSが搭載されている。更に移動から射撃まで全ての操作を1人で出来るようになっている。これをチンピラ共に格安で売り払った商人は頭おかしい。下手したら、正規軍の戦車と同等のスペックしてるぞ。

 

まぁ、今回の任務では使えないな。色々な武器を物色してると布を被った黒い鉄塊を見つけた。

布を取ると俺は思わず笑みがこぼれた。

 

M134ミニガン。

 

やっぱ、ターミネーターと言えば、ミニガンだよな。

とはいえ、これはヘリガンナー用のやつなので、携行用に手を加えないといけない。

さっさと改造しよう。えーっと、ジャンクになってるM60からハンドガードをもぎ取って、それをミニガンにくっつけて、グリップとトリガーもつけて、バッテリーは弾と一緒にバックパックに詰めよう。

 

「よし、完成だ」

 

プレデタースタイルのミニガンの完成だ。俺はこっちの方が大好きだ。

サイドアームはデザートイーグルでもうひとつの武器はサムホールタイプのCQRストックが付いたグレネードランチャー付きのM16。レシーバーにはHAMMERHEADという刻印が入ってる。アタッチメントでサプレッサーとホロサイトがついている。

最後にそこら辺に落ちていたポーチに弾をハンマーヘッドのマガジンをいようとポーチを開けた。

 

「なんだこれ?」

 

開けると中は真っ暗だった。暗視モードで見ても、フラッシュライトで照らしても全く奥が見えない。俺は恐る恐る手を突っ込んだ。中は思った以上に広く、ポーチの底がない。すると硬いものが手に当たった。それを掴み、ポーチから手を出すと硬いものの正体は弾が入ったGIマガジンだった。

 

今度はポーチをひっくり返すとジャラジャラと様々な弾やマガジン、RPGの弾頭まで出てきた。

これもしかしたら、俺の【転生特典】とやらじゃないか? 今までこれといった能力なかったし。

 

まぁ、考えるのは後だ。持っていこう。散らばった弾を片付けて、集合場所のヘリに向かった。

 

 

既にデザートイーグル、AA12、ベクター、M60が待機していた。そして、武器や装備が中々にイカれたものを持っていた。

デザートイーグルは身長を上回る程の長いバレルにサプレッサーとスコープを銃につけている。

AA12はUCP迷彩を銃に施し、シュアファイア製ライト一体型のフォアグリップにドラムマガジン、弾は炸裂弾。

M60は銃のバレルに小さな盾、マガジンと銃本体にはスマイリーマークとADIOSが描かれ、アンダーバレルグレネードランチャー付き、弾は7.62mm炸裂弾。

そして、ベクターだがこの子に至ってはもう原型を留めてない。消防士を思わせる耐火服を着ていて、胸には焼夷グレネードが入ったベルトを肩掛けし、顔はゴーグルと酸素マスク、銃には火炎放射器を括り付け、背中にロケットブースター付きの燃料タンクを背負い、腰に酸素ボンベをつけている。清々しい程の放火魔になってる。

 

………

 

……

 

 

 

なんだ、この超重火力部隊は? 敵どころかジャングルを燃やし尽くすつもりか。

まぁ、ミニガン抱えている俺も言えたことじゃないけど。

 

「あっ、もうみんな来てたのね」

 

レナとMP5とUKM-2000が来た。MP5は銃のアンダーバレルにM203PIを装着、腰のベルトには40mmグレネード弾用のポーチがたくさんついている。

レナはターミネーター4のジョンが着ていた戦闘服に似たようなものを着ている。メインは416でサブでスタンドアローンモデルのM203を手製のホルスターに入れている。

UKM-2000は…普通だな。

 

「おじさん、その武器、ピッタリね」

 

レナにミニガン持ちを褒められました。分かってるな~。(歓喜)

 

「よぉーし、出撃よ! みんなヘリに乗って!」

 

レナの号令でヘリに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

バリバリと大きな音が鳴るヘリの中で機内で流れているノッポのサリーを聞きながら、窓の景色を眺める。まぁ、緑しか広がってないから面白味もないけど。

 

「よし、みんな着いたよ!」

 

そういうとドアが開かれ、ファストロープ降下する。

俺は重過ぎるのでギリギリまでヘリが高度を下げてもらい、飛び降りる。

ガツンと足に衝撃が響く。ちょっと関節に来る。

 

遺跡に向かって、早や2時間。ジャングルは例年よりも気温と湿度が異常に高く、サウナにいるようで暑い。

俺とレナは特に問題ないが人形達は少し疲れているようだ。動物すら通らないような所を通っているので歩くだけでも大変だ。

 

「ちょっと休憩よ、私がちょっと周りを警戒してくるね」

 

レナは木に登り、そのままプレデターの如く木々に飛び移りながら消えた。

 

「し……指揮官様って何者ですか?」

 

「意味分かんない、これって私達いらないんじゃない? …ああ、クソ」

 

「体力には自信があったが…流石、指揮官だ。私も鍛錬を重ねなくては」

 

「あの身のこなし…芸能時代に見た中国雑技団の方たちのようですわ」

 

「まさか指揮官って【奴ら】なのかな? いや、【奴ら】は基本猫に潜むからそんなことは…」ブツブツ

 

「はぁ、こんなジャングル、今すぐ燃やせば楽なのに…」

 

全員どっと地面に座り込んだ。MP5は涙目で座り込み、AA12は自己嫌悪で棒付きキャンディーを口に放り込み、M60は手帳を取り出して、自主訓練メニューを書き込む。デザートイーグルは持ってきたスポドリを飲み、UKM-2000はいつもの電波モード、ベクターは焼夷グレネードを1つ手に取って弄る。

かく言う俺もちょっと疲れている。今までの戦闘も建物の中ばかりだったので本格的な野外戦はこれが初めてだから。

 

「うん、この臭いは?」

 

「おい! どこへ行く!」

 

UKM-2000がフードの耳をピーンと張らせ、突然走り出した。

俺は後を追う。追いついたと思ったら、UKM-2000は立ち尽くしていた。

 

「おい、どうした。って、これは…」

 

UKM-2000の視線の先には惨殺された人の死体があった。

 

「ひでぇ殺し方をしやがる…」

 

「これは【奴ら】……いや、違う。【奴ら】はこんな殺し方をしない……となると遺跡は【アイツら】の巣なのか?」ブツブツ

 

UKM-2000はずっとブツブツとつぶやいてる。一通り呟き終わると突然俺に銃を向けた。

 

「ちょ!」

 

「伏せて!」

 

言われた通り伏せると、フルオートで撃ち始めた。

 

「キシャァァァァ!」

 

銃声の中で謎の叫び声が聞こえた。UKM-2000が射撃を終えると撃った先を見る。

それは物凄く見慣れた黒い【アイツ】だった。

 

「こいつは……」

 

「やっぱりね、気をつけて、こいつらの血は強酸性で金属も溶かすのよ!」

 

「……ゼノモーフ」

 

そう、ゼノモーフだ。あのエイリアンでお馴染みのクリーチャーだ。

バババとデザートイーグル達のいる方向から銃声が聞こえた。

 

《こちら、M60! 正体不明の怪物と交戦中! 繰り返す! 私達は正体不明の怪物と交戦中!》

 

俺とUKM-2000は顔を見合わせると急いでデザートイーグル達の元に戻った。

 

「ああ、クソ! 何なのよこいつら! 次から次へと!」

 

「汚物は消毒だ―!」

 

「M60さん、後ろです!」

 

「援護感謝する!」

 

「ベクターさん、リロードしますわ!」

 

「了解!」

 

おおぅ……もう既にゼノモーフ共相手に無双してる。M60はランボー持ちで弾幕を展開し、AA12は炸裂弾で絨毯爆撃、M60に近づいてきたゼノモーフはMP5が片付け、ベクターがM60とAA12の攻撃を切り抜けたゼノモーフを火炎放射器とサブマシンガンで迎撃。デザートイーグルはベクターのカバー。UKM-2000もM60の隣に混ざり、弾幕を張った。俺も負けじとミニガンをコッキングし、構える。

 

「芝刈りの時間だ!」

 

ブオオオオオ! っと繋がった銃声とストロボのように瞬くマズルフラッシュ、滝の様に落ちる7.62mmの空薬莢。予想外に大きな反動に思わず体が逸れてしまう。ブレインとマックはこんな物を振り回していたのか!? おーおー、ゼノモーフ共が面白いように溶ける。

 

「キ…キャァァァ……」

 

「抹殺完了」

 

最後に残ったゼノモーフをサイドアームのデザートイーグルで留めを刺した。

突然の戦闘で人形のみんなは疲労困憊のようだ。

 

「みんな少し休憩したら、レナを探すぞ」

 

「あの…カールさん、私達さっきの戦闘で弾を使い過ぎました」

 

MP5がちょっと涙目になりながら、話してきた。

安心しろ、弾ならある。

 

「弾か、ちょっと待て」

 

例のポーチから弾を取り出す。9mmパラベラム、45ACP、40mmグレネード弾、7.62mmNATO弾、50AE弾、炸裂弾を配る。

 

「これで足りるか? 足りなくなったら、また言ってくれ。たんまりと持ってきた」

 

弾をマガジンに込めている間、俺とLMG組は周辺の警戒をする。

レナと早く合流しないといけない。まぁ、ゼノモーフどころかプレデター相手でも軽く一捻りしてそうだが。

 

「グギャァァァァ!!」

 

「なん…うぉ!」

 

ゼノモーフのような叫び声が聞こえたかと思ったら、何かが俺の足元に飛んできた。

傷だらけのゼノモーフ……だが、頭にはドレッドヘアーと4本の外顎がある。こいつは!

 

「…プレデリアン」

 

プレデターの遺伝子を取り込んだゼノモーフ。この世界にはプレデターもいるのか。

MP5達も弾込めを中断して、プレデリアンが飛んできた方向を警戒する。

 

ガサガサと草むらが動く音がする。俺はミニガンの引き金の指をかける。来やがれ、面を見せろ。出てこい、チェーンガンが待ってるぜ。

 

「ふぅー、倒した倒した……あっ」

 

「レナか!」

 

「あっ、おじさん」

 

レナだった。俺は引き金から指を離して、ミニガンを下げる。

 

「無事だったか」

 

「ええ、辺りを見て回ったら、こいつと黒いバケモノがいてね。結構な数がいたから倒すのに少し手間取っちゃった」

 

レナの無事に安堵し、振り返るとUKM-2000がずっと上を見つめていた。

 

「おい、どうした?」

 

そこにいるのは分かってるわ。ちょっと話をしない?

 

UKM-2000が突然、謎の言語で木の上に話かけた。すると、UKM-2000が見つめていた木々が揺れて、若干光が屈折して輪郭がぼんやりと見えるが透明な人型がUKM-2000の前に着地した。

 

「グルルル」

 

あの独特な唸り声、間違いないアイツだ。ああ…例のBGMが勝手に脳内再生される。

すると、目だけがライトのように光り、光学迷彩が剥がれ、姿を現した。

 

「久しぶりに見たわね。ヤウージャ」

 

プレデターキター!

 

 




Q:今回のメンツは?

A:大体プレデターシリーズに登場した銃器で固めました。



Q:UKM-2000はプレデターシリーズでは見ないようだな、見えるか?

A:最初はアウトオブ眼中でした。しかし、攻略wikiで偶然発見し、設定がこの話におあつらえ向きだと思い、急遽入れました。見つけてなかったら、プレデターとバトってました。



Q:言え! どうして、ゼノモーフも入れた!

A:プレデターのダチだから。


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エイリアンの巣の真っ只中に潜入!

Q:作者! 死んだと思ってた…。

A:俺もそう思ったぜ。目が覚めたらアークの下水溝で逆さまに寝てた!(CV:麦人)


まだ生き残りがいるとは

 

まぁね、それよりも何があったの? 虫が外に溢れているってことは儀式の失敗?

 

…忠告しておく。俺の邪魔をするな

 

UKM-2000とプレデターが何か話しているのか分からないので俺達は蚊帳の外。

まさかUKM-2000がマジの異星人だったとは…。ほら、クールなベクターですら呆気に取られてるぞ。

 

「UKM-2000さんって本当に宇宙人だったの?!」

 

「私はただの不思議ちゃんだと思っていましたわ…」

 

「奇遇ね、私もよ」

 

「私も。頭の病院から抜け出してきたのかと」

 

「…ちょっと外野! うるさいわよ! 私は違う星から来たっていつも言ってたじゃない!」

 

フシャーっと外野の俺達を威嚇する。その隙にプレデターは透明化し、森の中へ消えた。

 

「あのエイリアンなんて言ってたの?」

 

「“邪魔をするな” だって、どうせ儀式の失敗じゃない?」

 

UKM-2000は肩をすくめた。

 

「儀式?」

 

「そうだった、この際だから話そうか。あのエイリアンとさっきの黒いバケモノについて」

 

そこからUKM-2000によるエイリアン&プレデター講義が始まった。俺からすれば、全部知ってるので驚いたフリをして、講義を聞き流した。

 

「……とまぁ、こんな感じよ」

 

休憩兼講義が終わる。

 

「話は分かったわ。聞いた限りだとクリーナーっていうヤウージャ達が怖いわね」

 

「クリーナーが来るのは儀式に参加したヤウージャが死んで、虫が大量増殖する時よ。なるべく早く研究所の生存者を救出して、ここから出ないと」

 

「じゃあ、ここからは強行軍ね。あと、これからあの黒いバケモノの事をなんて呼称する? 流石に虫虫とか言ってたら聞き間違えるわ」

 

おっ、これはゼノモーフというチャンスだな。

 

「じゃあ、ゼノモーフというのはどうだ?」

 

「いいね、それ採用」

 

あっさり採用された。それでいいのかとツッコんでしまいそうだが、大手を振ってゼノモーフと言えることに俺は心の中でガッツポーズした。この調子でヤウージャをプレデターと言えるようにしたいものだ。

 

「一応、この事をカリン達に伝えておかないとね」

 

そう言って、無線機のスイッチを入れる。

 

〈指揮官さまですか? どうされました?〉

 

〈カリン? ちょっと厄介な事が起きたわ〉

 

〈何でしょうか?〉

 

〈一口では言えない。これからデータを送るから確認して〉

 

そう言って、携帯端末を弄った。多分、俺達のさっきの戦闘の映像を送るのだろう。

 

〈はいはい、確認しますね~。……なんですか、このバケモノ、新種のELIDですか?〉

 

〈UKM-2000が言うにはこいつらはエイリアンよ〉

 

〈……は?〉

 

〈信じれないと思うけど、このデータはすぐに社長達に伝えて〉

 

〈わ、分かりました。指揮官さま、すぐに部隊を向かわせましょうか?〉

 

〈今はできる限り、研究所に近づくわ。必要な時にまた連絡する〉

 

〈……お気を付けて〉

 

それから全力疾走に近いスピードで走った。俺が先頭に立ち、草木が生い茂る森の中を強引に走って、道を作り、後続がそれに続く。これで20分程で研究所の近くまで着いた。

 

俺達は近くの倒木に隠れて、双眼鏡を取り出して、様子を伺う。

黒煙の上がっている近未来的なデザインの研究所と隣接しているマヤ文明のピラミッドのような遺跡が立っていた。ゼノモーフの姿は見えず、あるのは研究所を襲った部隊と思われる兵士の死体が転がっているだけだった。動体探知センサーを起動して、索敵をする。

 

──ピッピッピッ

 

まんまエイリアン2のモーショントラッカーだ。視界の端にレーダーが表示され、俺の前に浮かんでる緑の点は友軍を表してるのだろう。

レーダーでは遺跡の辺りに点が集まってる。それも物凄い数が。

 

 

「…どう?」

 

俺の隣で倒木にもたれかかって、息が上がる寸前のUKM-2000が話しかけた。

 

「ゼノモーフもヤウージャも姿はない。やるなら今の内だ」

 

「オッケー、ならさっさと生存者を探そう。いたら、その場で隠れて貰おう」

 

レナがグレネードランチャーに弾を込めながら言う。

 

「し…指揮官様…ちょっと…ちょっとだけ休ませてください…」

 

「アメ…アメを舐めさせて…」

 

「水を飲むので…少しだけお時間をください」

 

「ああ…防火服が暑い」

 

「わ…私はまだいけ…ゴフ」

 

草むらの中にMP5、AA12、デザートイーグル、ベクター、M60が横たわってた。一応隠れているのだろうがやはりというか、戦術人形特有の派手な衣装でどこにいるか一目瞭然だった。5人とも息が上がり、かなりつらそうに寝転がっていた。

 

「ああ~じゃあ、5分だけ休憩ね」

 

少しだけの休憩となった。各々、体を休めている中、俺は研究所を監視し、レナは周辺の警戒にあたった。

 

 

 

 

休息を終えると俺達は研究所の中に入った。中は松脂のような有機的なものが壁や天井を覆いつくされ、電気は通っていないのか真っ暗だった。それに外よりも暑く、ジメジメする。ここもすぐに巣として改築する予定なのだろう。

 

「暗いですわ」

 

「暑い…クソ、アメが溶けてる」

 

「まるで蒸し風呂だな。外よりも暑い」

 

「フ、フラッシュライト持ってきたからよかった…」

 

センサーに何も引っかからなく、生存者がいるとは思えなかった。そうして、いつの間にか研究所の中枢、コントロールセンターに到着した。誰もいないのはセンサーで確認済みの為、普通に入る。何かの書類が大量に散乱し、壁についている大きなモニターやデスクに並べられているパソコンは動いていなかった。誰も何も言わず、情報を集め始めた。

 

俺はふと目に入ったノートパソコンを手に取り、電源ボタンを押した。バッテリーが残っていたので動いてくれた。ほとんど何かの書類ファイルばかりだったが、このパソコンの持ち主は日記を書いていた。随分昔から書いていたので新しい日記を開いた。

 

─────────────

 

■月■日

今日、研究所に重武装した部隊が襲ってきた。兵士達の右肩についたパッチを見て、私はこいつらはスターゲイザーの私兵部隊だと確信した。スターゲイザー、表向きは遺跡の調査を請け負う企業だが、実態は手当たり次第に遺跡研究所を襲い、遺跡から発掘された遺物やテクノロジーを兵器転用して売りさばく死の商人だ。最初はグリフィンの人形部隊とセキュリティメカが食い止めてくれたが研究員のカーターが裏切り、セキュリティメカを乗っ取って、グリフィンの部隊を殲滅した。カーターの手引きにより研究所を占拠した部隊は遺跡に封印されている生物“クイーン”を生物兵器に転用すると言ってきた。クイーンの危険性をよく知っているラスはあんなバケモノはコントロールできない、と反論したがカーターに頭を銃で吹き飛ばされた。

 

■月■日

クイーンを縛る拘束具の取り外し作業が始まった。まずはクイーンが産んだ卵を撤去し、産卵管を防ぐことを始めた。しかし、クイーンは我々の姿を見ると暴れ出し、作業は難航した。ラスの言う通り、ヤツをコントロールすることなんて不可能だ。ヤツは明らかに我々に対して、殺意を持っている。

 

■月■日

とんでもないことが起きた。解放作業中に謎の人型生物が2体襲ってきた。姿は遺跡の石像や壁画に書かれた存在─我々はプレデターと呼んでいる─とそっくりだ。この遺跡に異変を感じてきたのだろうか。プレデターはスターゲイザーの私兵部隊を蹴散らし、追い込まれたスターゲイザーの私兵達はクイーンの拘束具を強引に破壊して、プレデターにぶつけようとした。だが、解き放たれたクイーンは暴走し、事態は余計悪化した。

 

■月■日

状況は最悪だ。クイーンは研究員と兵士、あまつさえ1体のプレデターを捕らえ、働き蜂に相当するウォーリアーを生み出している。生き残ったのは私と主任研究員だけ。研究所の動力は停止し、グリフィンに救難信号も送れない。スターゲイザーに襲われた時の通信が届いてくれているといいが。主任はクイーンを殺すと私に言ってきた。私は説得してやめさせようとしたが彼女は今放置したら北蘭島以上の惨劇が起きる、と言って作業用のパワーローダーを持ち出して、遺跡に向かった。

私も行こう。パワーローダーに乗ったままじゃ、隔壁の1つも開けられないからな。

 

─────────────

 

日記はこれで終わった。最後の日記は俺達がちょうど研究所に着いた時に書かれていた。クイーンというのはクイーンゼノモーフの事を言ってるのか。この世界にパワーローダーやプレデター世界で出てきたスターゲイザーがあるのも驚きだ。それにこの日記に書かれている主任研究員とやらは単身、クイーンに立ち向かうとは大した度胸だ。彼女と書いてるし、何だかリプリーを思わせる。あと裏切ったカーターね…。何となくこいつの顔はポール・ライザーに似てそうだな。他にもパソコンのファイルを探ると遺跡の見取り図があった。研究所から直接クイーンが封印されている場所に繋がるルートがある。恐らく日記の筆者と主任研究員はここを使ったのだろう。

生存者が2人いることが分かり、俺は皆を集めて、パソコンの日記と見取り図を見せた。

 

轟音と振動が響き渡った。主任研究員がゼノモーフと戦闘しているのだろう。レナは早く行こう、と急かした。俺はすぐに見取り図をダウンロードし、道を教えながらクイーンがいる場所に向かった。

 

 

 

クイーンへ繋がる通路は完全にゼノモーフの巣と化していた。真っ暗な通路の中で壁にはチェストバスターされた研究員や兵士の死体が張り付いていた。暗視モードではっきりと見えて物凄くグロい。映画で見たのと遜色ない生々しさとグロさだ。ライトを当てると謎粘液がてらてらと光る。あの映画って、凄く作りこんでいたんだなと場違いなことを思った。

 

「UKMから聞いてたけど…酷いものね」

 

「はぁ、いつ見ても嫌なものよ。星間戦争の頃を思い出すわ」

 

「ゾッとするね。当分寝られそうにないわ。夢に出そう。下の人達をやったのはヤウージャかなぁ…なんで皮を剥いだり、脊椎を引っこ抜くのよ」

 

そして、床には日記で書かれていたプレデターに惨殺された兵士の死体と主任研究員がパワーローダーで殺したのだろう胴体を引き裂かれたゼノモーフの死体に空のエイリアンエッグ、役割の終えたフェイスハガーの死体が転がっていた。まさに死屍累々だ。辺りに漂う死臭にこの場にいる誰もが顔をしかめた。

 

「うへぇ、なにこれ…」

 

AA12が銃のバレルにフェイスハガーの死体を引っかけて持ち上げた。謎粘液まみれで糸を引いている。

 

「それがむs…ゼノモーフの卵を他の生物に産み付ける虫よ。言うの忘れたけど、地面にある卵に気をつけて、開いてないやつから生きてるソレが飛び出してくるから」

 

「そういうのは早く言ってくださいよ!」

 

「ねっ…ねぇ、ここら一辺燃やしていい?」

 

「おやめください! 指揮官が酸欠で死んでしまいますわ!」

 

涙目になり、火炎放射器を握り締めたベクターをデザートイーグルが組み付いて、わちゃわちゃしていると視界が真っ白になり、暗視モードが強制的に解除された。大型のライトを照らされたようだ。

目を細めて、見るとライトを括り付けた黄色いパワーローダーにシガニー・ウィーパー似の女性が乗っていた。その傍にはランス・ヘンリクセン似の男性が立っている。知っている。俺はあの2人をよーく知っている。

 

「…リプリーとビショップだ」

 

2人ともエイリアンの世界からドルフロの世界に異世界転生したのだろうか。




Q:リプリーとビショップ出たならニュートは入れるだろうな? 入れるよな?

A:本当に申し訳ない。研究所にいる理由が思いつかなかったから出ないんじゃ。



俺もハーメルンで色んなフォントを見てきたが、プレデターのフォントが無いのは驚きだ。(誰か実装してれ)


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