代理人の異常な空間認識 (イエローケーキ兵器設計局)
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グラウンド・クロラ
OPERATION KATANA BRAKER -01


これはそう……整備会所属のとある代理人達と、
反乱を起こした代理人の戦争の記録である。


 客車の中で目覚める。

 周囲には死体。

 海兵隊の戦闘服で歩き回る。

 荷物の山を登り、潜り、M1911を手に進む。

 敵が出てきた!発砲!

 何とか倒し、BARを拾う。

 ん?この音は……この車両はもうすぐ吹っ飛ぶ!

 前の車両に移動しないと!

 窓から迫り出し、飛んで捕まり、屋根の上へ。

 後ろで車両が吹き飛び、爆音がトンネルに響く。

 BARを構えて匍匐前進。

 飛び出す敵は7.62mmで黙らせ、車両の中に。

 誰も居ない……?

 そう思ったら横から殴られて暗転した。

 

 

「気分は?」

『戦友を撃っておいて言い訳が無いじゃないですか。』

「だろうな。」

「プリオン中佐、君は何を思って戦友を撃った?」

 

 

───────────────────────────────

 

 

 それはおよそ3日前。

『極東重鋼学連にて試作ガス砲弾が失踪……』

「うむ。ニューマコーニオシス君、君にはプリオンαとして現場に潜入し、捜索を行ってくれ。一分隊なら引き抜いても構わないだろう。」

『はっ!』

「質問は?」

『……では、一つ。なぜ極東が動かないのです?』

「……機密事項だと言ったら?」

『……了解です。』

『失礼致しました。』

(扉の閉まる音)

「……全く……極東は何してくれやがる……」

 

 

「敵襲!」

『ロタ砲か!』

 ロケットが建物から撃ち込まれる。

『撃て撃て撃て!』

 ARMSを装備せずに歩兵用火器で応戦している。

 それはARMSの故障が原因。

 もっとも……一斉に壊れたと言うのが不可解なのだが。

 

 引き抜いた分隊は少し編成が偏っていて……

・A-26B (大火力担当)

・IL-10 (突撃役)

・マウス (壁担当)

 という地上攻撃向けではない編成であり……

 

『連射が効かないというのがキツイな……』

(パシュンという少し変わった音と……爆音)

「命中!火点を一つ潰した!」

『ライフルグレネードか!』

「誰が誰だかわかんねぇな!」

「私がインベーダー。キ109にしか見えないけど。」

「私、ビーストが……なんだっけ?」

「お主は閃電じゃろうが!そして妾はオイ車じゃな!畜生!胸がでかい!」

『まあまあ……私なんて元は男なのに……』

「震電もなかなかにデカイよな……」

そして全員、皮を被っている。

 

「お、BARだ!」

『なに!BARだと!』

「武器の横流しか?」

「隊長!増援、来ます!」

『伏せろ!』

 30mm機銃の代わりにKar98Kを振り回す震電。

 75mm砲の代わりに九七式自動砲を構えるキ109。

 20mm機銃の代わりに一〇〇式機関短銃を振り回す閃電。

 15cm砲の代わりにロタ砲を抱えて走るオイ車。

 4人の視線の先にはビルから狙うPTRS1941が有った。

『私とプリオンγが引きつける!プリオンδはあいつを撃て!』

「了解!」

 ライフル弾と拳銃弾が織りなす二重奏の中、ロタ砲を構えるオイ車。

『撃て!』

右からロケット弾が火を吹きつつ飛び、ビルの一部屋に突入。DOLLSを吹き飛ばした。

「なんでDOLLSと交戦しなくちゃならないんだ!」

『知るか!行くぞ!』

 

「こちら第三中隊!敵の打撃により負傷者多数!救援求む!」

無線から聞こえる悲痛な声。

『……やるか。プリオン隊了解。現在地を送られたし。』

 

続く

 

 

 

 

 



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OPERATION KATANA BRAKER -02

 秘密兵器を追って極東にやってきたプリオン隊。彼女たちが目撃したものとは。


 

『……やるか。プリオン隊了解。現在地を送られたし。』

 座標情報を取得。

『急ぐぞ。烈風、陣風が負傷。零戦と紫電、紫電改が応戦してはいるが押し負けているようだ。』

「押されてますね……」

「キ109、弾薬は残ってる?」

「残ってるよ。オイ車さん。」

「慣れないな……お医者さんって言われている気分になるよ。」

 

 単独行動に慣れすぎてコードネームで呼ぶのが大変だから結局識別名で呼ぶ事に。

『閃電、リロードしたか?』

「問題無いよ。震電。」

 マガジンを一度外して覗いてから戻す閃電。中身は赤色十月のIL-2Mである。

『ゼロナイン(Ki-109)は?』

「ちょっと待ってね。よいしょっと。」

 マガジンを上に差し込むキ109。中身は星屑連邦のA-20Gである。

『オイは?』

「ん?妾はもう大丈夫だぞ?」

 ガッツポーズをするオイ車。それ反対方向に構えてないか?一応、中身は黒十字のマウスである。

 

『あそこか……』

「こちら第三中隊!準備は整った!援護を!」

『了解。こちらも配置についた。』

 右手側から左側へと大通りを抜けようとするDOLLS達。ARMSは破棄したのか歩兵用の火器を頼りにここまでやってきたようだ。

 零戦は機関短銃を構えてはいるが……どうやら予備の弾倉は一本しかないらしい。もし合流できたら弾薬を渡しておこう。

 紫電、紫電改は四式自動小銃……こちらも残弾は残り少ない模様。

 負傷者組の烈風と陣風は……九九式狙撃銃か。

 

「第三中隊、移動する!2時の火点を叩いてくれ!」

『了解した。ゼロナイン、火点を。閃電、私と火点を制圧しよう。オイは……待機。』

「ゼロナイン、了解。」

「閃電、了解。」

「オイ車……了解。」

『オイ、不満が?』

「うーたーせーろー!」

『静かに。』

 オイ車のヘルメットを叩きつつ火点を制圧する為、引き金を引いてはボルトを引いて戻す。

 

 火点のあった建物が崩れ、機関銃は兵員と共に潰れた。

「支援、感謝する……敵襲!3時!」

『横っ腹を狙う気か!オイ車!榴弾!』

「これは高く付くよー?」

 オイ車が右肩に載せた筒から炎と爆煙が吹き出し、ロケットが飛んでいく。地面で爆ぜた。

『再装填急げ!』

「よっこいしょ……」

 今の一撃で散開してしまったので小銃と短銃で攻撃を加える。

 第三中隊が移動中。遮蔽物から飛び出し、負傷者を引きずりながら走っている。

「協力感謝す……伏せろ!」

 甲高い銃声。零戦の指示があと1秒遅ければ負傷者が一人増えていただろう。

『狙撃!どこだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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スカイ・スイマ
GOING SWIMMING 01


 時系列は少しずれてとある代理人たちの頭上にまで移動する。
これはとある航空兵のお話。


 ここはとある時間帯の寒冷地。赤色十月領にほど近い空白地域。

「くれぐれも地上にいる味方に弾をばら撒くなよ?」

『はいはい……気をつけますよ。』

 

一時間前

 

「コード01、該当者は3番滑走路へ。」

「ホルニッセ、出撃だ。」

『……はいはい。』

 館内放送が鳴り響く。ここは砂漠に設けられた黒十字帝国学連の共同飛行場。

「回せー!」

 ARMSからの爆音がハンガー内に響く。

「よく来たホルニッセ!お嬢さんの乗機はこいつだ!」

『……うーん?何故ここにDo335が?』

「こいつはただのプファイルじゃないぞ?特別仕様機だ。」

『……言われてみれば少しデカイような。』

「"イエローケーキ兵器設計局"は知ってるか?星屑にいる古参の学院だ。」

『あの変態集団ですか。他の学院からARMSを研究目的で買い取っては改造してテストする……』

「そうだ。こいつは……」

『断固拒否します。』

 悪い予感は大抵的中する。回避するが勝ち。

「まあ、そう言うなよ。こいつも人間が装着するように開発された珍しいARMSなんだ。」

『未知のARMSより既知の人間用の機体の方がいいと思うのだけれど。』

「なあ、頼むよ。君だけが希望なんだ。」

『私が希望とは、呆れ返るものですね。』

「そこをなんとか……」

『……時間も押してますからね。しょうがないですね。』

 折れてやるしかない。

「信じてたよ!」

 キレイな都市迷彩に身を包むDo335。実際にはそれのコピー品らしい。

「ターボプロップエンジンだからな。」

『え?』

「健闘を。行ってこい!ホーネット02!」

『え〜!』

「もし、無いとは思うが撃墜されたらARMSはしっかりと破壊してくれ。鹵獲されては困るからな。」

『……はいはい。』

「回せ回せー!」

 エンジンを始動。キュピッ プロロロロロ……という特徴的な音を立てて回りはじめるプロペラ。

 大出力故にプロペラの枚数は前後共に6枚ペラ、更には機体は金属ではなく、繊維強化複合材という特殊な素材によって作られている。

『ホーネット02、滑走路に出ます。』

 昇降舵、水平舵の動作も確認。

 機銃の動作確認……良し。30mm,20mmの調子も問題ない。

「ホーネット02、離陸を許可する。君の僚機はホーネット01,及びホーネット03だ。」

『……了解。』

 滑走路を走る。照り返しを消した鼠色で、少し大柄な矢がスズメバチを載せて放たれた。

 

『……癖はあまり強くない。加速力も上々、速度780km/h……』

 

 今日の任務は赤色十月の連中とどんぱちしてこい……ではなく、あくまで地上支援。航空優勢さえ維持できればそれでいい。

 




時系列的にはこちらの作品の前半部に当たります……?
https://syosetu.org/novel/230582/11.html


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GOING SWIMMING 02

前回の続きです……
時系列的にはこちらの作品の前半部くらい……かな?
https://syosetu.org/novel/230582/11.html


 高度およそ3000m。

 隣を飛ぶホーネット03は武装の点検をしている。

 ホーネット01,03は本物のDOLLS。私のように被弾すれば細切れになるような可能性は低い。多少の装甲を纏っているとはいえ彼女たちと比べれば紙に近い。困ったものだ。

 

 地上部隊が戦闘を開始。相手は災獣のようだ。もっとも、上空からは見えない。想定外の吹雪のせいである。

 

 前方に複数の芥子粒を確認。補助の望遠式照準器を覗くと……正体はYak-9,La-7であるとわかる。

 Yak-9といえば、"フランク(Frank ?)"というコードネームを持つARMSを装備した青っぽい露出度の高い教官機だった筈……。37mmか45mmの機関砲を装備していたっけ。

 La-7も青っぽく、20mm機銃らしきものを装備していると聞いた。

 対するこちら側は30mm機関砲、20mm機銃の混載である。

 速度で勝り、機動性で劣る。敵であるならば戦い方を選ばなくてはならない。

 

 酸素マスクを着用。これであと5時間は上に上がれる。奴らは高高度が苦手と聞いたことがある。3000mあたりでもたつくとか……

 

『30秒で射撃位置に着く。散開!』

「ホーネット01,03了解。」

 

 DOLLSの射撃武器には敵味方識別装置(IFF)射撃管制装置(FCS)の両方の機能が備わっていることが多い。敢えて外すケースもあるが。IFFに反応は相変わらず無い。

 

「ホーネット01、エンゲージ!」

『ホーネット02、エンゲージ。』

「ホーネット03、エンゲージ!」

 さあ……誰が来る?敵はヤコブレフランク(Yak-9)が6機、ラボチキチキン(La-7)が6機……頭数的には勝てる訳がない。でも、後ろにはHs-129B-3(アヒル)が複数機待機している。ここを突破されるわけには行かない。

 

 上下二連式ライフルを構える。30mm機関砲が上、20mm機関銃が下側。奴らの装甲が戦車並みでなければ……やれるはず。

 

 Yak-9が発砲。散開していた上に回避機動を取れたから被弾は無かった。

「インメルマンターンだ!02,03、上へ!」

『02了解。』

「03了解。」

 インメルマンターンとは、宙返りの頂点で半ロールを打ち、速度を犠牲に高度を稼ぐ機動である。

 

 100m、200mと宙返りを繰り返す度に上昇していく。

 高度4000m帯。ラボチキチキン(La-7)のエンジンはこのあたりで出力が下がる。半分くらいになるとのレポートがある。

 しかし、ヤコブレフランク(Yak-9)はそうも行かないだろう。

 となると、勝つ為には高度が必要になる。さらなる高みへ。幸運な事に私達は出力で勝る。

 

『フランクが接近中。排除する。』

 高度を犠牲に速度を稼ぐ。ロー・ヨー・ヨーの原理である。芥子粒からゴマ粒にまで拡大された実像がこちらに照準を合わせる前に下を向いて飛び込む。

 

『癖がないと思ってたが……かなりあるじゃないか。』

 この機体は素直だと勝手に思っていたが、実際はそうでもないらしい。

『そろそろ喰い付くな……来たぞ。』

 ゆっくりと反転しながら追いかけてくる影。まだハッキリとは見えないが敵影だ。

 ARMSの仮想操縦桿を引き起こし、高度を上げる。影もついてくる。機首を起こしながらエアブレーキとフラップを開く。ARMSに引っ張られて少し身体が悲鳴を上げる。スポイラーを開いて失速させる。ついてきたヤコブレフランク(Yak-9)は狙い時、と照準を合わせようとする。が、それが運の尽きであった。

 

『また会おうねー?教官さん?』

 後ろからの機関砲、機関銃による鉄の雨がその身体を穿き、DOLLSだったモノへと変えてしまった。

「お見事。」

『共同撃墜……01、と。』

 

 その後も喰らいついてくる敵機。出力低下による性能低下を覚悟の上で助けようとしたラボチキチキンは翼を30mmに引き裂かれた。

 追いすがるYak-9をコブラでオーバーシュートさせ、エンジンを破壊。下で01と格闘戦をしていたLa-7は既に火の玉になっていた。

 

 コブラは失速機動の一つ。進行方向を変えずに機首を上げ、後ろにつく敵機をオーバーシュートさせる機動である。なお、プロペラ機でやるような芸当ではない。

 

「こちらホーネット03!動きの早いフランクに絡まれている!……撃ってこないぞ?」

「ホーネット03!逃げろ!」

「クソッ!離れない!」

 DOLLSに備わる恐怖と生存本能などによって引き起こされる悲鳴と、少し遅れての爆発音。一機味方を喪った。

 

『ホーネット01、あいつは……私が。他を頼める?』

「……ホーネット01了解。必ず勝って。」

『……やってみよう。』

 

 相手はフランク。ヤコブレフランクなんて呼んでたからキレちゃったのだろうか?

「……君の名前は?そこの4本線。」

『……私か?』

「そう。君。」

『……コードネーム?それとも……個体識別コード?』

「……コードネーム。私は戦う相手の事を知りたい。」

『そうだな……私はホーネット02。貴女は?』

「私は……エカテリーナ。部隊ではカーチャ1と呼ばれている。……こんな内戦なんて馬鹿馬鹿しいのだが。」

『そう……カーチャ、私はホルニッセ。よろしく。』

「な、人間だったのか。」

 距離100。高度1000。互いに静止。向き合って無線で会話している。武器を向ける様子はない。相手は私と同じ人間、か。

『撃たないのかい?』

「撃った方が良いか?」

『さあ……どうだか。』

「30秒で離れて、交戦しよう。」

『もっと穏便に、別の形で会えればよかったんだけど……』

「まったくだ……1,2,3……」

 全速力で反転する。後部カメラからは反対方向に逃げる姿が見えた。

 高度を仰角30°で上昇。高度3000mまであっという間につく。

『……交戦開始、か。』

 同時に反転するカーチャ。距離的には互いに射程外。もしかしたら37mmか45mmが飛んでくるかも……飛んできた。

『発砲炎が見えてなかったらやられていたかもしれんな……』

 小さな光の放射が私をミンチになる未来から救い出した。

 

 

 

 

 



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