NTRと主人公に思われたくないけど、童貞は捨てたい転生者 (鳩は平和)
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1巻
主人公が付き合う前なら大丈夫………筈だ


ハメTS杯にて、書いた作品をリメイクしました。


「それで、君には小説の世界にラノベに転生して、ヒロイン作って欲しいのん」

 

俺は頭を抱えている………ラノベを読んで目が覚めたら目の前に、なんか2頭身の人………いや、人はあそこまで顔が横長くない。そんな人もどきが、いきなりそんなことを言って、きて怪しさしかない。

 

「あ、名前忘れてたのん……僕は淫王。サキュバスやインキュバスを統括するのん」

 

「その、淫王様が、なんで俺………自分でもいうのは悲しいけど、よくある転生者や異世界転移した奴らみたいに特異な力も才能もないぜ」

 

そのために拙者、童貞でこのまま30歳まで貫き、茶番台でお酒を飲んで、絶望して涙を流し、そこで友人の女の子が『そうだよね、辛いよね〜童貞で魔法使いは仕方ない』と慰められるはずと友人は言っていた……なにその、辛い現実は?。

 

「そんなのん、普通だからこそ君を選んだのん。そして君願いでもある30歳までに童貞を捨てられる世界の小説を選んだのん」

 

語尾の『のん、のん』が気になるけど……童貞を捨てられるなら嬉しいのん。あ、語尾が移ってしまった。

 

「じゃあ、その一人のヒロイン作るのも転生するのも………まあ、納得は出来ないけど理解は出来た…淫王様、俺がいく小説の世界はどこですか?」

 

「新妹魔王の契約者の世界のん」

 

……聞き入れ難い言葉を聞いた。いや、間違いだ………そんなのありえない筈だ。

 

「すみません、死んでしまったのか原因かよく聞き取れませんでした。もう一回お願いします」

 

「新妹魔王の契約者」

 

二回目の言葉に俺は固まった。さ、最悪だぁぁぁぁぁ!!せめて、さあハイスクールD×Dにしてくれよ!!こんなの………こんなのあんまりだぁぁぁ!!いや、好きだよ!!全巻読んだし、推しも普通にいる。だからこそだ!!

 

12巻最終は全員が性奴隷になる世界とか嫌だぁぁぁ!!……そもそも、あの世界は現代ファンタジーに近い世界観で、モブがあんまり死ぬことはないけど、それ以上に主人公や敵キャラがインフレなんだよ!!

 

「変えることは「絶対に無理のん」……さいですか?」

 

いや、ここはもう諦めて、異世界転生に励もう。いいじゃないか、どうせ、また童貞として過ごしつつ、推しと主人公がイチャイチャして、最終的に性奴隷へと落ちる彼女たちをみて血涙流す。よろしくな童貞

 

「それと転生するのに代償が必要なのん………えーと、まずはヒロインは一人じゃなく最低六人作るのん」

 

はっ!?そんなの無理に決まっているだろ!!ヒロイン一人と作るなんて、そんなの無理だ!!

 

「これ破ったら一生童貞な上に、地獄に落ちるのは明白のん………一生サキュバスたちに魂剥き出しのまま、弄ばれるのん。知ってる?魂が剥き出しの状態だと……サキュバス一人につき、脳がショートするほどの快感がおそってくるのん、1日百回も続くのん」

 

そ、そんなことになったら………おれ、死ぬよりも恐ろしいことが……想像すると真っ青になった。

 

「期間は原作終了まで、それまでに出来なかったら容赦なく君を地獄におとすのん」

 

ええ、ちょっと待って……たしか、原作スタートが大体一年生のなっでで、原作終わりは二年生ぐらいだったか………季節は分からん!!つまり早くても半年……一ヶ月で一人で恋人作らないとダメだよね!?

 

そんなの無理だよ!!こちとら20年の童貞………そこらの童貞と年季が痴漢じゃい!!

 

「それと、特典とか力を授けることは出来ないから、欲しいなら転生する世界で現地調達してねん……せめて、どのヒロインと付き合えるのかは夢で教えるのん」

 

そりゃ、ありがたいけど………ええ、下手したら俺死なない?例えば、主人公東城刃更の担任とか、ゾルキアとかベルフェゴールとかに殺されないか?

 

「それじゃあ、伝えることは伝えたのん。それじゃあ頑張るのん!!」

 

淫王は親指を立てると、どこかで見たことがある魔法陣が出現し、俺の足から徐々に光の粒子となった。

 

「良き、ハーレム生活を過ごすのん」

 

それだけをいうと同時に俺の意識が消えた………絶対に、新妹魔王の世界で童貞を捨ててやるぅぅ!!

 

ー○●○ー

 

その日の空は………赤く染まっていた。

 

「母さん!! 母さん!!」

 

俺は何度も自分の母親だ・っ・た・も・の・に呼びかける。その肩や背中を揺すって見るが、なんの反応も帰ってこない。

 

濡れた感触。

 

冷たい感触。

 

手の平を通して感じるのはそれだけ。両手を見れば………赤く濡れている。何もかも………父も復活しようとする邪精霊による暴走による非難対象して……護り……死んだ。

 

死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。

 

俺の世界を構成していたものは。何もかも消えた。

 

「ああ……ああ……」

 

母親の背中に俺は縋りつく。あの剣撃を母さんが庇ってくれなければ、俺も死んでいた。だけど、いっそ俺もみんなと同じように死にたかった。こんな世界にたったひとりで残されるくらいなら。

 

「■■くん!」

 

その声を聞き、反射的に顔を上げる。そこにいたのは汗だくになった男だったその人は地面に倒れた母さんを見て悲しそう顔をした。安心したのか……また泣いた。

 

泣いて。

 

泣いて。

 

その人はただ俺を黙って強く抱きしめてくれた。やがて男から立ち上がった。

 

「■■くん、立つんだ」

 

「……無理だよ」

 

「立つんだ。立たなけりゃいけない」

 

その人は厳しい声で繰り返す。

 

「どうして?」

 

「君がまだ生きているからだ」

 

「……」

 

俺はその人の顔を見上げた。その人はいつも厳めしい表情で、見た目通り何事にも厳しい人で、自分の息子にも厳しく、正直俺は苦手だった。

 

けれど、優しい父さんも母さんもいない。

 

もう、いない。

 

「……」

 

無理だ。

 

無理だよ、父さん、母さん。

 

俺には立てない。

 

こんな絶望しか残ってないような世界で立ち上がるなんて……こんな何もかも混ざり汚く濁った血を持つ俺には無理だ。

 

俺には無理だ。

 

俺は、もう立ちたくない。

 

この絶望の淵から起き上がりたくない。

 

もし、それすらも叶わないなら。

 

………

…………

……………

………………

……………………

いっそのこと………殺して欲しい。

 

 

 

また景色が変わった………赤い……血よりも紅い髪をなびかせる少女に引っ張られるが………どうしてか、その子の顔が何か墨で塗りつぶされている。

 

『ねえ、銀……私ね……大きくなったら銀のお嫁さんになるの』

 

子供の幼地味によく見る光景………それなのに、何故か俺の気持ちがモヤモヤする

 

ー○●○ー

 

「………ぁ」

 

なんか、目覚めが悪い夢を見た気がする………頭が痛い、身体がだるい………窓を見ればまだ、月の光が広がっていた。

 

──ぐぅぅ

 

晩御飯をちゃんと食べたが………お腹の虫がなった。一人暮らしだから……貯蓄は十分な筈だ。

 

そう思いながら………俺は下の階へと降りて、カップ麺を探したがなかった。明日の朝ごはんを食べるわけにもいかない。家族も居ないし………一つの考えに至った。

 

「そうだ、コンビニに行こう」

 

そう思いつつ、俺は外に出るように着替えた……シーフードが食べたい。俺の胃がシーフードを求めている。

 

脳内はご飯のことしか考えておらず、俺は外に出て俺はコンビニに出た。

 

ー○●○ー

 

「いやー買った買った」

 

近くのコンビニで、気になっていたお菓子やホクホク顔になる俺……もう、幼少期の記憶はないけど、どっちにしろ、こうなったらこのラノベ世界を楽しもう。

 

じゃあどうやって、六人の彼女と付き合えばいいのか……俺の中にある原作知識を使い、キャラたちを救えばいいのか………無理だ。いかなる作品に置いて……世界はモブ(オレ)には興味ないが、モブには厳しい……何故ならいくらでもいるからだ。

 

じゃあ、どうするか……滝川みたいに主人公に近づきつつ………そのおこぼれをいただく………メリットは運が良ければハーレム成功……ギャルゲーでよく見る親友ポジで、俺の知識を主人公に教えればいい、デメリットは原作に突入することと、失敗したら敵キャラたちに殺される。

 

確実にメリットに向かうには………力が必要だ。力………力が欲しい。

 

『──るか』

 

「──っ」

 

その声ともズクンっ………ズクンッとまぶたの奥が疼く。咄嗟に俺は左目を抑えるが手のひらに眼球の熱を感じる。

 

「夜だからかな……無理に起きすぎたかも………」

 

近くの公園のベンチで左目の疼きが収まるのを待ちながらも、今も夜を照らす月を見上げていた。

 

 

二十秒足らずで疼きは収まった。収まったのを確認して公園のベンチから立ち上がった。

 

「フヒ……フヒヒヒ、澪ちゃん澪ちゃん!!」

 

「離しなさい、それ以上近づくと()()()()()()!!」

 

どこからか気味が悪い笑い声が聞こえた………うん、今……聞き覚えがあるセリフが聞こえた………まさかね。

 

嫌な、不安を覚えながらも………俺は、声が聞こえた方向へ向かった。

 

 

向かった先は、噴水の近場でそこにいたのは、油ぎったデブの丸メガネのおっさんだった。そんな男は………少女の腕を掴んでいた。血よりも赤い………髪の美少女だった。デブ男が鼻息荒くなるほどに巨乳でスタイル抜群……みて心の鼓動が早くなった。

 

「どうして、どうしてだい!!僕はこんなにもこんなにも澪ちゃんを愛しているのに!?ブヒヒヒ」

 

デブ男の口数がどんどんと早くなる……おいおい、あそこにいるのは元最強魔王の一人娘である成瀬澪ではないかっ!!あの、デブ男、下等な豚のくせ「メインヒロイン様をストーカーするなんて、いい度胸だなおい………そんなことしたら主人公に魔剣でトンテキにされるぞ。

 

主人公もしくはロリ従者!!早く、メインヒロインを助けろよ!!じゃないと、ここからR18指定のNTR同人みたいに堕ちてしまうぞっ!?………

 

しかし、五分経っても主人公やその従者は来なかった…………どういうことだ……はっ!!そういえば、まだ夏休みが始まったばかり………つまり原作が始まっていない……ど、どうしよう、このままだと、本当に大変なことになる。

 

「………やるか」

 

正直……ケンカとかは苦手だし、なんか油がギトギトしてそうだし……けど、そこで逃げたら、俺は一生後悔するかもしれない。

 

「ああ、もう!!ヤケクソだ!!」

 

俺はデブタの後ろまで歩き、足を上げた、メインヒロインは気づいたが声を出さなかった。

 

「せーの!!」

 

掛け声と同時にデブタの背中を蹴り飛ばした。気づかなかったデブタはそのまま、倒れ顔面ゴンっと地面にぶつけた。

 

「ぶへっ!!」

 

「こっちにきて!!」

 

「え!?」

 

メインヒロイン有無を聞かずに俺は彼女の腕を掴み、そのままどこかへと走り出した。なんか後ろから豚の鳴き声が聞こえるが、気にしない気にしない。

 

ー○●○ー

 

無我夢中で……走った結果、我が家に招き入れてしまった。ど、どうしようと俺は心の中で慌てる。

 

「ねえ、そろそろ離してくれない?」

 

「あ!?そうだった」

 

俺はすぐさま、メインヒロイン様の腕を離した……悪気はなかったとはいえ、こ、殺されるぅぅ!!

 

「あーえーと……とりあえず、今帰るとヤバそうだし……幸い空き部屋はあるし……泊まっていけば」

 

メインヒロイン様は何かを考えこみ、靴を脱いだ。

 

「そうね……でも、貴方もそんなことしたら100回殺すわよ」

 

「そんなのしませんっ!!」

 

全力で俺は彼女の言葉を否定した……俺、まだ死にたくないからなっ!!恐怖で心臓の鼓動が速くなるなか、俺は彼女を空き部屋に案内した……どうしてだろう、あんなにも楽しみにしていたシーフードヌードルを食べる気を無くし……そのままゆっくりと俺は自室に戻り寝た。

 

ー○●○ー

 

その次の日の朝………俺は自室から出るとメインヒロインが寝ていた部屋の扉が開いていた。俺はその部屋を確認すると、そこには誰もいなかった。ちょっと、一緒に朝ごはんを食べれると思ったけど………漫画は現実ほど甘くないんだな。

 

 

階段を降り、朝ごはんを食べるために冷蔵庫を開けると………そこに見慣れない………肉じゃががあった。手紙が供えられていた。

 

──ありがとう、昨日は助かったわ……これで貸し借りは無しよ

 

それをみて俺はクスッと笑ってしまった。

 

「なんだよ、直接言えばいいじゃん……」

 

流石ツンデレメインヒロイン様だ………ここまで来ると笑ってしまう。もう、早く主人公と付き合えよ。俺は……肉じゃがを取り出しレンジで温める。

 

 

温め終えた、肉じゃがをレンジから取り出し俺は一口食べる。

 

「……うぐっ!!…………普通に俺よりも上手い」

 

肉じゃがの美味しさとメインヒロインが俺なんかに作ってもらった嬉しさを堪能していた……ああ、もうこれで死んでも構わない……わけない!!

 

いやだぞ、死ぬまで童貞だとか…………しかし、俺には何にも力無いから………成瀬澪とか付き合いたいけど………無理だよな。接点とかほとんどないし………どうやって……夏休み明けだから、主従の契約もやっているし、かと言ってロリは対象外。

 

別にヒロインと付き合う必要はないんだっ!!ここは二次元の世界っ!!綺麗な女の子はいっぱいいる………筈だ。ガハハ、勝った!!わけあるか……何言ってるんだ、自分……死ぬのか俺は?いやもう死んでいるけどね!!

 

『それじゃあ、まず………ヒロインを呼ぶのん!!」』

 

聞き覚えがある語尾に戦慄すると同時に強烈な眠気が俺を襲った。

 

 

白い空間が広がる中、ひとりの少女が立っていた、それはとても綺麗だった。透き通る氷のような雰囲気。

 

『銀』

 

そう言い、彼女が俺の名前を呼びながら、手を差し出した。いきなり名前を呼ばれてたのか………それともこれが、初恋というやつなのか俺の心臓の鼓動が早くなる。すると………いきなり抱きしめられた。柔らかい女の子の感触と、ほんのり甘い匂いが…………まて、これ夢だよな!?

 

『第一の試練、スタートなのん』



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危うく土下座するところだった

俺は夢から起きて、頭を抱える………マジかマジか!?俺が初めて付き合う彼女は……野中柚希………だと。嬉しい8割……悲しみ2割。そりゃ、この作品の推しの一人だ、嬉しくないはずがない。

 

野中柚希……勇者の里出身であり……霊刀咲耶を振るう超技術タイプの女の子。妹がおり………テンションが上がると偶に関西弁になるという……たしか、性感帯はお尻だっけ?

 

けど……出来ない、だってそんなことしたら確実に原作に関わる。それは彼女は主人公に……家に不法侵入するぐらい好きなんだよ。そんな彼女が俺と付き合える可能性がある!?嘘だと言ってくれよ…………考えれば考えるほどに思いつかない……俺は深いため息を吐く。

 

「どうやって…………告白すればいいんだよ」

 

その時だった………俺の脳内に天啓が聞こえた。

 

『土下座で告白すれば……イケる』

 

「そうか………土下座か!?………体育館の旧校舎に彼女を呼んで土下座で告白したらいいんだ!?」

 

俺は………どうやって彼女を呼び出すための手紙の執筆を始める。

 

ー○●○ー

 

夏休みが終わった、登校中の俺は空を見上げた。見渡す限りの蒼。それがこの色だった………結局、野中柚希とは会うことも出来なかった。セミまでもが暑いと喚いているように鳴いた。

 

「あー暑いな……くそ」

 

すると目の前に………見たことがある……赤い髪の女子……成瀬澪と男が楽しそうに話している……つまり、隣にいるのが主人公、東城刃更……か、くそ、あそこにいるっていうことは、昨日はイチャイチャとエッチなことをしていたんだろ。いいよーだ!!俺だって……俺だって………ちくしょう、これは汗だ……目から流れる汗なんだ。

 

「あれ?」

 

主人公東城の後ろにワンピースを着た少女が……現れた。あれが……成瀬澪の従者の成瀬万理亜か………あいも変わらず、ロリロリしてるな。いやでも、確か本気モードだと、すごい妖艶になって…でも、ロリ……あれ……サキュバスってなんだ?

 

「早く教室に向かって、クーラーの恩恵に縋ろう」

 

気温も三十度でもあるために、早足になりつつ三人の横を通り過ぎた時………成瀬澪と一瞬目が合った……気がする。そのまま学園の中に吸い込まれるように入っていった。

 

ー○●○ー

 

今のは……成瀬銀よね。話したことはない………あったのは、この前のストーカーの時だけ……いつも、教室の隅で表情が見えない……どこにでもいる人間なのに、どうしてか、彼から目が離せなかった。

 

私は魔王の娘……成瀬銀は人間………ねぇ、銀…教えて、どうして、あの時私を助けてくれたのか……今も、元勇者の一族のお世話になっている……嬉しい、私を私のまま受け入れてくれる……隣にいる刃更とも楽しくやっていけてる。また、夜みたいに、影と魔獣が襲ってくるかもしれない……それだけはだめ。

 

主従契約もやってしまった………首に紋様が浮かんだ。これで私と刃更は常にどこにいるのかわかる。

 

「澪さま?……暗い顔をしてどうしたのですか?」

 

「えっ!?……ううん、なんでもないわ!!

 

私と視線を合わせる万理亜………いけない。もうすぐ、学校も始まる。万理亜を心配させてはいけないわね。

 

「いい、刃更、学校では、私に話しかけてはダメだから」

 

「へいへい、お前もあんまり無理するなよ……呪いが発動してしまうかもしれないからな」

 

刃更の言葉に私は優しく自分の首を触る……呪いが発動すれば紋様が浮かぶ。その範囲は配下が主を裏切れば、呪いが発動する………本当なら私が主で刃更が配下なのにそれが逆になるなんて……それに万理亜の催淫の呪いも発動するなんて……胸を揉まれるなんて……でも、キスはしてないわ。

 

「それでは澪さま、私は近くで待機しておりますので……刃更さん、澪さまをお願いします。人が多い場所なので大丈夫とは思いますけど」

 

「うん、よろしくね」

 

「ああ、何があったらすぐ報せるよ」

 

万理亜と別れて、私たちは校内の中に入っていった。

 

ー○●○ー

 

教室にて、俺は理想郷にいるかのように……ぐでーと俺は倒れる。はあ、クーラー発明してくれてありがとう!!

 

もう、原作展開とかどうでもいい………もう、一生童貞で死んだ後はサキュバス地獄……にイきたくない!!あっぶっねぇ、もう少しで、思考が溶かされるところだった。

 

チラリと窓側の席を見れば、まるで氷のように冷たい少女……夢に見た、野中柚希が本を読んでいた。誰とも話さず静かにしていた。流石氷のお姫様……さて、どうやって、彼女を呼ぶか……ラブレターは出来た。あとはこれを渡せば………勝てるわけあるかぁぁぁぁ!!

 

 

こちとら年齢=彼女いない歴のキング童貞だぞっ!!女の子なんて、コンビニの店員で『温めますか?』『袋はご利用なさいますか?』ぐらいだぞ………どうやって告白すればいいんだよっ!!

 

教室の扉が開き、入ってきたのは爽やかオーラを放出させる坂崎担任だった。まあ、みんなからマモちゃんとしたわれているが俺は好きではない……何故なら、本物の坂崎は死んでおり、そこにいるのは神族の……たしか、オルニスだったか?とりあえず人を虫と思っているし……擁護教論信者だし………はあ、どうやって過ごそう。

 

その後ろに……主人公東城が入ってきた。クラスのみんなは、東城の値踏みが開始された。そして、男ども落胆するな……いくら男だからといって露骨に落胆するなよ、主人公様に失礼だろう。

 

あれ……気のせいか、野中柚希が主人公東城に対する視線が弱い?なんといえば…久しぶりに会った友達程度に……どういうことだ?

 

うーんこれはよくわからないなと考えている………が、坂崎が爽やかに笑った。

 

「さて、見ての通りの転校生だ。───東城、自己紹介を」

 

「あ、はい」

 

気の抜けた返事をしながら、黒板に名前を書く主人公。

 

「えーと、東城刃更です。名前はちょっと物々しいですが、見ての通り普通の奴なんで、これからよろしくお願いします」

 

原作通りに主人公は自虐的に自己紹介すると、教室の空気が和み、歓迎ムードになった。そこから質問タイムがあった……何質問したらいいからわからなかったので、最近買ったラノベを読もう。

 

ホームルーム終了のチャイムが鳴ったのと同時に、坂崎が手を鳴らした。

 

「よし、とりあえずここまで。続きは、始業式の後でな。東城、お前の席はそこの空いている所だ。野中、委員長のお前が東城の面倒を見てやってくれ」

 

「……はい」

 

野中が立ち上がるのと同時に、クラス全員が立ち上がり始業式のために体育館に向かうために、廊下に並ぶ。俺はこれから一悶着が起こるために、あえて……そう、あえて最後まで残ったのだ。

 

「────」

 

「────」

 

遠いのか、小声で話しているのか……よく聞こえなかったが、幼馴染と出会ったみたいに二人は嬉しそうに話し……そうこの後だ、この後に野中は東城に抱きつき、澪はそれを怒って、東城と同棲していることを廊下にまで響き渡り、東城は友達が出来ない。

 

「………えっ!?」

 

二人はそのまま廊下に並ぼうとした……おかしいおかしい!!成瀬もまた廊下に並ぼうとしているし………原作ではこんなふうになっていない。

 

おかしいと思いながらも俺も廊下に並ぶ。

 

ー○●○ー

 

放課後になった………やっぱり、おかしい……東城が普通にクラスメイトと話している。こんなことに……ならない。昼休みだって、滝川と屋上で食うはずだったのに……普通にクラスメイトの男子達と楽しそうに話していた。

 

「なあ、刃更、カラオケ行こうぜ」

 

今もまた……クラスメイト達と、楽しそうに話している。おかしい………何もかもがおかしい。東城は……俺と同じぼっちだと思っていたのに…どうしてこんなことに……

 

悩む中、東城が俺にいつのまにか近づいていた。ひえっ!!お、俺……まだ、あなたのヒロインに手を出していないよ………もしや、澪さんが俺は家に泊まらせたことで怒ったのか!?

 

「なあ、成瀬……あー、でもそれだともう一人の成瀬と被るか……なあ、銀、お前も一緒に来ないか?」

 

「えっ!?」

 

まさかのお誘いだった………けど……後ろにいる男子生徒達はめっちゃ嫌そうな顔をしているのがバレバレだった。

 

「あー俺、今日掃除当番だし………やめておくよ」

 

「そうなんだ……わりぃな」

 

軽い謝罪をしつつ、東城は男グループの方に向かい、教室を出た。思わず、俺は深いため息を吐いた……掃除は半分嘘、半分は本当だ。今日、俺は掃除当番ではないが、彼女とデートなのかクラスメイトに押し付けられて掃除をすることになった。

 

ここまでいい、お気づきだろうか……絶賛、俺はクラスメイトのほとんどに嫌われている。理由もわからないが……とりあえず、居場所が出来ない。

 

べ、別にぼっちだからといって悲しくないんだからねっ!?前世だって、ブラック企業なのか、気がつけば同期は俺以外いなかったし、いっつも一人酒とかしてたし、別に友達と一緒にご飯食べたり、カラオケ行ったりしたいとか思っていないんだから………ヒクッ……早く掃除して、家に帰って告白作戦練ろう。

 

「ねえ、銀………話があるの」

 

高校生活……久しぶりの会話は……ヒロインでもある野中柚希だった。

 

ー○●○ー

 

向かった場所は体育館の裏側だった。心臓の鼓動がうるさい…………ちょっと待ってちょっと待って!!もしかして………告白なのかっ!?嫌……ないな、だって主人公ゾッコンヒロインだも、俺知っているんだもん。

 

「あの……野中さん、どうしたの?」

 

「柚希……」

 

「え───」

 

次の瞬間、俺は理解出来なかった…………それは、野中柚希が俺に抱きついてきたのだ………理解できない、夢なのか、そうだ……そんな、会って数秒で俺が原作主人公みたいことになるはずがない。

 

しかし、野中柚希から匂う甘い匂いと体の柔らかさが伝わり……現実だと伝わってくる。そして………何かが気に入らなかったのか、頰を膨らませる野中……グハッ!!これが可愛さの暴力。

 

「柚希って………呼んで」

 

えぇぇぇ!?何、この野中のなつき様……俺、もう理解が出来なくて頭が爆発しそう。

 

「いや、流石に………野中さんと俺、()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ…………」

 

野中は何かに驚いたのか、俺から離れた………その顔はまるで捨てられた犬のように悲しい表情になっていた。

 

「銀………()()()()()()()()()()()()?」

 

「今この状況………」

 

どういうことかわからない言葉に首を傾げる………どういうことなのか、俺にもわかるようにいってほしい。

 

「そう………ねえ、銀…………成瀬澪に近づいちゃダメ……話はそれだけ」

 

それだけを言い野中はそのままどこかに去っていった………ああ、もう!!これどういうことなんだよっ!!告白じゃないのかよ!!俺は両手を地面につけて、涙を流す。

 

「違うだろ………俺があそこで告白したらいい話だろう!?」

 

くそっ!!この胴体野郎め!!この馬鹿野郎!!

 

ー○●○ー

 

夜…………落ち着かない。目を瞑ればあの時のことを思い出す!!ああ、もう……このヘタレ野郎めっ!!

 

「はあもう!!野中さんの感触もそうだけど、それ以上にあの言葉が理解できない」

 

くっそぉ!!思い出せ、俺っ!!野中さんとあそこ以外で話した記憶がどこかにあるはずだ!!それを思い出せば

 

『──えるか』

 

「───っ」

 

他の記憶を思い出そうとした時……また声が聞こえ左目が疼くのと頭痛が起きた。くっそぉ!!最近疼かないから忘れかけたくせに………痛い痛い!!

 

「俺………何か、大事な記憶を忘れているの?」

 

幼少期の記憶はぽっかり穴が空いたように忘れている。思い出せない………あの夢に見た赤い女の子の顔のように

 

「ああ、もう!!」

 

一旦冷静になる為に……家の外を出て散歩に向かうのであった。夜であってもそれでも二十度は超えていた。

 

「公園に向かおう」

 

暑い暑いと思いながらも俺は公演と向かう。

 

ー○●○ー

 

「ふぅ、夏はやっぱり嫌いだ〜早く冬にならないかや〜」

 

ベンチに座りながら俺は呟いた。多分、冬になったら今度は早く夏になれ!!とか思っているんだろうな………途中で勝ったスポドリを飲む。

 

「はあー結局、野中さんの言葉の意味がわからない………」

 

「ああ、それは君が監視対象だからだろう」

 

俺の独り言に反応し、あらぬ方向から声が聞こえた。この声……まさかっ!?錆びたブリキ人形のようにギギギと向いた方向にいたのは……一般人でもわかるほどの禍々しいオーラを放つ白の仮面に黒のタキシード男だった。

 

「───!!」

 

そこにいたのは主人公のライバルポジの魔族ラース、又は俺と同じクラスの滝川八尋………思わず滝川と呼びそうだった俺は……口を塞いでなんとかなった。もし、人間名言うと、多分殺される!!嫌絶対に殺される!!

 

「まあ、とりあえず……一人だけだからとっとと終わらせるか」

 

滝川の手が光ると………影が蠢き………5つの影が形を作る。黒い布に全身を包み、柄の長い大鎌をもつ人形の影が三つ。二つは羽を持った獅子の魔獣──原作だとあれは……えーと、あれ………そう、マンティコアだ!!

 

「とっとと、そこにいる監視対象を捕まるぞ」

 

そこから始まったのは、捕まれば地獄の逃走劇であった。



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自分は基本的にハッピーエンド派なので!?

久しぶりの投稿だからちゃんとした文になったか心配ですが、投稿です!!


「あああああああああああああああああ!!」

 

見上げるほどに高い木が鬱蒼と生え繁る森の中、俺は全力で逃げている。後ろを振り返るとそこにはマンティコアと人型の影が大きな鎌を振り回しながら追いかけてきた。

 

「なぜ、こんな!!ゲホッ!ゲホッ!!」

 

俺は全力で森の中を走りながら叫んでいる。ああ、くそっ!!今頃の俺は自宅でシーフードヌードルをソファで寝転がりながら食べているのに………なんで、主人公のライバルポジの魔族に追いかけられているんだ!?

 

マンティコアは大きな木をものともせず、突撃で木を粉砕し、人型の影は鎌を薙ぎ払い、大木は切り裂いた。

 

「死ぬぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「ああ、そうだよ……逃げないと死んでしまうぞ〜」

 

ああ、あの無駄にイライラするボイスを言いながらフヨフヨと浮いていた。地獄に堕ちて、禿げろ!!いや、俺が禿げさせてやるぅぅ!!

 

「「ぐるぅぅぅぅぅ!!」」

 

「いやぁぁぁ!!」

 

2匹のマンティコアが俺に鋭く尖った爪で俺の身体を引き裂こうとするが、俺は地面に転がり避けた。

 

「くっそぉぉぉ………力ってなんだよ………俺は至って平凡な男子高校生なんだよ」

 

ヨロヨロと立ち上がる………疲れた。はあ……ツイてない。友達はできないわ……記憶ないわ。魔族に襲われるわ……はっは、もう、俺の人生が悪すぎて泣きそうだ。

 

『ウヒヒヒ、死にそうだな、人間(ミレニアン )

 

「!?」

 

突然の聞こえた声に驚きを隠せず声が出そうになるのを必死に堪える。あの魔族とは似ても………いや、男だから似ているのか?どうなんだ………いや、分からん!!

 

『──おっと、ようやく声が届いたか。お前がその首につける()()()()()()()うまく声が聞こえなかったようだが、俺サマの呼びかけを何度も無視するとは不届きな奴だ!』

 

マンティコアが喋った?………そんなわけないか、人型だってあの魔族が作った奴だ………だとしたら、この声は俺だけに聞こえているのか!?

 

ていうか………俺、いつのまにか銀の十字架のネックレスをつけているんだ!?

 

(お前は誰なんだよ)

 

『───名乗ってやってもいいが、その前に敵が来るぞ』

 

「──へ? ぎゃぁぁぁ!!」

 

声の言う通りに後ろを振り返るとマンティコアが俺に追いつき、俺を叩き潰そうとしてくるが、もう一回横に転がった。

 

『──運のいい奴だ。頭を叩き潰されて脳みそぶち撒けられてから俺サマの名前を聞くか?』

 

声がデキの悪い喜劇でも見たように嘲笑う。一つわかった………こいつ、ぜっっっっっったいに性格悪い。匂う、腐った牛乳を拭き取り、そのまま一週間ぐらい放置した雑巾ぐらい匂うぞ。

 

そのまま俺は逃げる………あいにく俺は、あの獣みたいに大木すら割り箸のように簡単に折る剛腕は持っていないし、切り裂く大鎌も持っていないんだよ。とにかく、俺は今この状況を打破する力が欲しいんだよ!!

 

『───ウヒヒヒ、そうだな。今お前に必要なのは戦う力だ。お前には俺サマの能力をくれてやろう。ありがたく地べたに額を擦り付けながら受け取れた』

 

(能力? それは………)

 

そう尋ねようとした時だった──突然、膨大な情報が俺の頭に流れ込んできた。俺のIQ53万(自称)の脳の処理能力が追いつかず目眩を起こす。

 

「こんなところで気絶したら絶対に死ぬぅぅぅ!!」

 

そう意気込み、意識を踏ん張った。両手で頭を抱え、痛みに堪える。ああ、クソだ……世の中が本当にクソすぎる。この声の正体がよりによって、魔神?そりゃ、あの魔族も警戒するわ。

 

「さて、劇も終幕ときた………とっと終わらせよう」

 

俺の前に優雅に降りてきた滝川

 

「ああ、そうだな…………成瀬銀の名において命ず。そこにいる影と魔物よ、俺に隷従(したが)え」

 

左目の紋様の光が強くなり………マンティコアと影は指一本動かなくなった。それを見た、仮面はやれやれと嘆息する。

 

「はあ、ここで能力覚醒とか……どこの少年漫画風だ?」

 

「黙れ、お前は今全国の少年漫画を愛する人たちを敵にしたぞっ!!行けっ!!マンティコア達と影達よ!!」

 

魂まで操られたマンティコア達は一斉に魔族に突撃する…………両手に闇を広げ一気に解き放なった。無数の光の魂は影やマンティコアの肉体を抉った。

 

はいっ、知ってますよ!!そんなこと、マンティコアなんかです倒せたら苦労してないよっ!!

 

「やれやれ、俺もこいつらみたいに隷従されるわけにいかないし……今日はここらで退散しようか」

 

魔族は…………いつのまにか持っていた謎の球を地面に叩きつけたのと同時に強烈な光が俺の視界を奪った。光が消えた時………白面の魔族……滝川が消えていた。

 

安堵した時だった………俺のお腹から、短剣が貫いていた。白いシャツに赤いシミが広がって………

 

糸が切れたように、倒れながらも俺は……そこには影が立っていた。ああ、クッソぉ、滝川のやろう………もう一体作っていたとか……

 

「はあはあ……クッソぉ、あいつ……今度であったら絶対に顔面を殴る」

 

そう決意しながらも俺の視界が霞んでくる………本当に……俺って運が無いし凡人だし、モテないし、童貞だし………ああ、自分で皮肉っておきながら悲しくなってきやがる

 

その時だった…………俺の顔を見る………黒い髪の女性が俺を見るのと同時に………俺の意識が消えた。

 

ー○●○ー

 

「……知らない天井だ」

 

開けたら………そこは知らない天井だった。俺の家はそこまで天井は高くはない。そしてベットもここまでフカフカじゃない。

 

「───っ!!」

 

起きあがろうとした時、お腹に激痛が走る。いったぁぁぁぁぁ!!激痛に耐えられず、ベットに眠る。

 

「もしかして……優しい人が救急車に通報してくれたとか?」

 

そうだ………それなら………でも点滴はされていないし、されたのは包帯だった。ケータイもないし……次の日って考えたら平日だし、授業サボってしまった。ああら皆勤賞を逃してしまった。

 

「とりあえず………起きてみないとわからないよな」

 

お腹の痛みに堪えながら俺はベットから立ち上がり、足を引きずりながら部屋の扉を開けた。

 

「どこなんだよ……ここは?」

 

絶対にわかるのは俺の家はここまで、高級な廊下ではないことだけは確か………マンションか?病院じゃないのはわかる……だって、点滴とかそれっぽい機械がないんだから……

 

「とりあえず………お礼と挨拶をしないとダメだよな」

 

リビングらしきところに向かった…………その時、自分の胸が重く、身体に違和感を感じた。まるで………胸にボールでもぶら下げているような。その違和感を感じながらも、視線をしたに送るとて………唖然とした。学生服の内側から押し上げるモノが鎮座しており胸元から谷間がその存在感を強く主張すると共に、確かな大きさを誇る……そう、成瀬さんよりも大きな………おっぱいだった。

 

「えっ……えぇぇぇ………いやいやそんなまさか」

 

俺は無意識に恐る恐ると股間に手を伸ばしていた。そしてそこにあるはずの………男の象徴が消えていた。俺は……受け入れ難い現実に俺は両手を廊下につけ、涙を流していた………違う、これは俺の涙じゃない………だって俺は男なんだから………

 

その時だっだ、自分が女の姿になって居ることに夢中で誰の家かがわからない中、後ろの扉が開いた。

 

扉から現れたのは黒の長髪、非常に整った顔に………出るところ出ており引き締まって居るところは引き締まっている。緑のタートルネックはより、妖艶さを増し、その上に白衣を着ている

 

なっなっなっ!!!は、長谷川先生っ!?………つまり、ここは長谷川先生のマンションなのかよ…………おおぉぉ!!嬉しい!!嬉しいけど、なんで俺がここにいるんだよ………疑問しか無い。

 

「うんっ………ああ、成瀬か……飲み物はオレンジジュースとコーヒーどっちがいい」

 

「いや、えっ!?…………あの、オレンジジュースでお願いします」

 

長谷川先生は俺の体に………怪しむことなく、普通に俺に接してきた。これは俺がおかしいのか!?

 

ー○●○ー

 

「トーストの焼き加減は大丈夫だったか?」

 

「えっ、あの……その、大丈夫です」

 

俺と長谷川先生はそのまま朝ごはんを食べる………トーストの焼き加減は外はさっくりと、中はふわっとしている。多分………いい、食パンを使っているんだろうな……でも、おかしい………何故なら、味がしないのだ……いい食パンだということはわかる。

 

そして原因もわかった…………それは、緊張だ。俺は大変緊張をしている、理由としては、目の前に新聞を広げコーヒー飲む姿が大変美しい長谷川先生がいることだ。

 

いや、嬉しいよ………新米魔王を読んだ男なら誰もが一度は見るドキドキシチュ、艶やかな黒髪……だが悲しきかな、長谷川先生は人間にあらず、かつて神々の頂点の十神の一柱アフレイアさまだぞ。

 

…………まあ、最終的に主人公に堕とされてしまって性奴隷になるんだけどねっ!!

 

「あの………長谷川先生」

 

「うん、どうした?」

 

「どうして、俺の身体が変わったのに………そんなに平然としているのですか?」

 

俺の質問に長谷川先生はコーヒーを置き新聞を閉じた。

 

「そうだな………私が来た時には君はすでにお腹からは血を流し倒れていた。何か時間でもあったのかと思い申し訳ないが、君を調べさせてもらった」

 

先生がポケットから取り出したのは俺の財布と生徒証明証、俺がまだ男だった時の写真もあった。でも、よく考えたら…………吸血鬼ヒロインの七緒も大人になるまでは性別の境界線がなくて………主人公の塔城とあれやこれやして女の子になることを選んだったっけ……もしかして、俺って記憶がないだけで、本当は人間じゃなくて吸血鬼だったとか………

 

『ウヒヒヒ、面白そうな考えをしているが……お前は俺さまを宿した正真正銘の人間(ミレニアン)だぜ』

 

バロールの言葉に………俺は落ち込んだ。クソッ、もうちょっと夢を見せてくれてもいいじゃないか……

 

「それと……身体の方を勝手ながら調べさせてもらったが……そして気になる質問が一つある……何故君は魔神を宿しながら自分の自我を持てる?」

 

「えーとその………どういうことですか?」

 

「通常、神に肉体を取られば……君の魂は神の魂が塗り替えられ、その肉体も奪われる………はずだった」

 

「なっ!!そんなの知らないですっ!!」

 

俺は長谷川先生の言葉に納得出来ない言葉に俺は立ち上がった。俺は一歩間違えたら、バロールに肉体を奪われていたっていうこと!?

 

『フヒヒ、すまんなぁ……本来ならその身体は俺サマの肉体になっていたから言うの忘れていたぜっ』

 

このまま魔神、本当に性格が悪いな…………そういえば、この魔神……たしか、俺の首にかけられている十字架のアクセサリーでほとんど奪い取ることが出来ないって………

 

俺は視線を下に下ろすとそこには、銀の十字架があった。何かに気づいた長谷川先生は思い出したかのように口開く。

 

「そうか………その十字架で貴様の中にいる魔神を崇め畏れられるモノから。

 討ち滅ぼされるモノへと変え、神格を低下させたのだな」

 

「あの………えーと、多分そうじゃないですか」

 

俺………多分、そういう事は専門外なので、長谷川先生が考えている通りではないですか……

 

『なあなあ、銀………まず目の前にいるアフレイアを凌辱しようぜ。なあに安心しろ、俺サマとお前の視覚と触覚は共有だ。それなりに俺サマも楽しめるぜ』

 

本っ当にちょっと黙ってもらえないかな、このエロ魔神は!?

 

『なんだ………度胸ないのか?もしかして、お前は童貞なのか?』

 

バロールは嘲笑を返しながら質問してきた。ああ、そうですよ………前世の分も考えたら、童貞捨てるどころか、女性と話した記憶も全くない、マジで悲しくなってくる。

 

『けどよ、目の前にいる女を見てみろよ……極上の女だぜ?それで童貞捨てることが出来るとか役得すぎるだろう、童貞を捨てるチャンスだぜ』

 

だめだ、この魔神と話すと頭が痛くなってくる。どこまでが冗談で本気の境界線かわからない。

 

『ウヒヒヒ、俺サマは至って大まじめだぜ。それに………俺サマは享楽と堕落と破滅が大好きなんだよ。神が人間(ミレニアン)に快楽とかで堕ちる様はいつ見ても見ものだ』

 

そうか、あいにくと俺はライトノベルやゲームではハッピーエンドが好きなんだよ……俺とお前は合わないようだな。

 

『けど、お前、おっぱい好きだろう?』

 

………俺はバロールの言葉に反論することなく静かにそっぽを向いた。

 

『そう照れるな、男が女のおっぱい好きなのは、赤ん坊がかーちゃんのおっぱい好きなのと同レベルの真理だからよ、堂々と目の前の女おっぱいを揉めばいいんだよ。けどあのおっぱいは柔らかそうだな、かぶりつきたいぜ』

 

それ、そのあと長谷川先生に塵と化す未来しか見えないんだけどな〜

 

「それでだ……君が宿した魔神の名前を確認したいのだが良いか?」

 

「えーと、はい………ケルト神話の魔神バロールですね」

 

俺の言葉に長谷川先生は深いため息を吐いた。

 

「よりによって、あいつか………その、これから苦労すると思うが絶対にあいつに肉体を渡してはいけない。いいな………バロールが悪戯としてやることは本当に厄介なことしか巻き起こらない」

 

「は、はい……気をつけます」

 

この二人………何やら深い因縁でもあるのかな………それと長谷川先生………すでに俺は苦労していますので助けてください。

 

その時だった…………俺の身体が突然光出し……光が消えるのと同時に……何かまた違和感を感じ、下を向けると胸が消え……息子が家出から帰ってきた。

 

「も、戻ったぁぁぁ!!」

 

俺は嬉しさのあまり両手をあげて喜んた。どうして、突然俺の身体が戻ったのかはわからないけど戻ったなら問題ない。

 

「ふむ、どうして急に戻ったのかはわからないが……大変喜ばしいことだな」

 

「はい、それに長谷川先生が俺を助けてくれなかったら本当に死んでいたかもしれません。その節は本当にありがとございます!!」

 

俺は改めて助けてもらった長谷川先生にお礼を口に出すと長谷川先生は少し頬を赤くしてそっぽを向いた。原作だと東城にしか見せない表情だけに俺はドキっ鼓動が早くなるのを感じた。

 

「先生━━照れることが出来たのですね」

 

「……どういうことだ?」

 

俺が思わず口に出した言葉に納得してない表情する長谷川先生……だって長谷川先生ってなんか近付きにくいイメージ出し、俺は原作を読んだからなんとんく知ってるけどそれはあくまで物語の話、現実となった今では原作通りに進むのか分からなくなってきた。

 

「まあいい、帰りは私の車で送ろう」

 

ええぇ!?それってあの高級車に乗れるってことですか!?なんか色々あったけど、なんか全て許せる気がした。

 

「それと……返しておく」

 

長谷川先生は預かっていた財布を俺に差し出した。俺も長谷川先生に向けて手を出した。

 

『いいぞ!!そのまま大きく育ったおっぱいを揉んでやれ!!』

 

バロールの言葉を無視する。

 

財布などを手にする時だった………愚然だった、俺の手と長谷川先生の手触れた時

 

ぼっふんと煙が突然立ち上がった

 

「ゴッホゴホ……突然何が……あれ?」

 

聞き覚えがある声に俺は恐る恐る視線を下に向ける……また、俺の姿が女の子になっていた。

 

「な、なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

『うひゃひゃひゃ!!』

 

長谷川先生の家にて俺の叫び声とバロールの愉悦の笑い声が木霊した…………俺が完全に戻るにはもう少し掛かりそうだ



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地獄を………見た

第1巻は次で終わりですね!!

評価ポイントに色が付いたよぉぉぉ!!ありがとうみんな!!これからも頑張って書いていくね!!




長谷川先生が持つ高級車の助手席……ときおり、道路の段差で車内が揺れるのと同時に長谷川先生の髪の毛も揺れると、長谷川先生の香水の匂いが俺の鼻をくすぶってくる。

 

「「………」」

 

無言である……あと少しで俺の家に着くがずっと無言だった。胃が痛い……このプレッシャーは俺には耐えられない。

 

「そういえば………先生はバロールと知り合いなのですか?」

 

「うん?………ああ、ちょっと………いや、あいつはよく問題を起こしていたからな」

 

何か言いにくそうな顔をしている長谷川先生………大丈夫です、すでに困っているので……

 

「まず、あいつは自身の魔眼で女神たちを支配し、四つん這いにし彼女達の感覚を敏感にした上で、彼女達の尻の上を滑った」

 

『ウヒヒ、懐かしいな……あいつらの喘ぎ声は格別だったぜ、ギンお前もやってみろよ。絶対にイケるぜ、なんなら教えてやるよ、まず女に際どい水着を着せて、自分の全身に日焼け止め塗りたくって、尻に向かってローラみたいにゴロゴローっとローラーみてえにダイブするんだよ』

 

バロールは懐かしみ、長谷川先生と俺はため息をついて、現実逃避するように天を仰いだ。

 

ー○●○ー

 

自宅に着き、俺は車から降りた。

 

「すまないが、放課後は私の保健室に来て欲しい…煩悩に塗れたバロールとはいえ魔神だからな」

 

「はい、わかりました」

 

つまり、保健室で二人きりだということですね……うーん、これは担任の先生に殺されそうだな。

 

そして先生はそのまま自分の家に車を運転し、俺は見送りそのまま自分の家に入ひ自室に入り、吸い込まれるようにベットに倒れた。なんか……色々疲れた。

 

『ウヒヒ、だらしねえな………そんなのだとまた襲撃されるぜ』

 

「そんなこと………ないと言いたいけど………そもそもの要因はお前なんだよな」

 

『別に俺サマに身体全部渡したら、魔術も召喚も思いのままだぜ」

 

そんなこと絶対にさせないし……これからは肌身離さず十字架のアクセサリーを持っていないとダメだな……はあ、またみんなに変な目で見られる。

 

「とりあえず、昼間は絶対に話すなよ……授業に集中出来ないから」

 

『分かった、分かった、俺さまは女子高生を堪能しておくぜ』

 

ああ、こいつ……一刻にも早く切り離さないと俺は絶対に将来セクハラ案件で逮捕されるかも確信した。

 

「ああ……もう……だめ……寝る」

 

意識が深い闇の底へと沈んでいく。

 

『せいぜい、俺を飽きさせないでくれよ……ギン』

 

その言葉と同時に俺は……寝た。

 

ー○●○ー

 

燃ゆる大地を()()()()()()。かつて慕った両親がいた……友がいた。

 

『話を聞いて』

 

『あなたはもう戦わなくていい』

 

『帰りましょう』

 

『ここはお前が来る場所じゃない』

 

その全員が亡き者になり、私に語りかけてくる。銀の装甲を纏いし魔剣を操る者を憎んだことがある、自分に力がなく無力だと絶望したことがある。

 

神も、人も、全てを憎んだことはある。私はかつて、確かに人間が憎かった。自分をでも、仲間を虐殺されたからでもない。それを歴史の構造(システム)として受け入れる人類そのものが憎かった。

 

歯止めの利かない欲望は肥大を極め、文明の発展と比例して凶悪かつ苛烈な暴力が支配する弱肉強食の世界そのものが憎かった。

 

その時だった、空気が震え空間が割れる。ソラが割れる。そしてあり得ざる光景が顕れる。

 

歪み、撓み、ねじ曲げられながら引き裂かれた───隙間の向こうに何かが在る。大きな瞳にて、私たちを見ている。

 

あれが………■だ。星を覆う大海の向こう。

空の海さえ渡らんとする大いなる方舟。

それは世界の事象そのもの。曰く、全能の■■。

 

歪みの空の間隙から《私たち》を覗くあれに私は手を出して伸ばす。

 

───民も文明も、不要。

 

───知性も精神も、不要。

 

───繁栄も滅亡も、全て不要です

 

空の間隙から機械のような声にて誰かに告げる。

 

だから、私は捨てたぞ■■■よ。彼らを憎悪するという心を、人類救済のために切り捨てた。

 

私には全てを消し去る力はない、技術もない、才能もない……だが、わたしには他の人が持たない……干渉性を持つ。孔に干渉し、並行世界、森羅万象を呼び起こし取り込み私の力にする。

 

正義で救えない悪があるならば、全てを飲み込む悪となり全てを救おう。さあ人よ、今こそ■との訣別の儀を、今ここで■の概念を討ち滅ぼさん。

 

■■■よ、舞台は整った、さあ始めよう……どちらがその座に座るのがふさわしいのかを……

 

人よ…… 白く、白く、塩の純白に染まれ。

 

ー○●○ー

 

目を覚ますと気分が悪かった………変な夢のせいかな。胃の中を何かでぐちゃぐちゃとかき回されるような不快感さえあった。

 

『ウヒヒヒ、死んだ人間のように顔が真っ青だぜ、ギン』

 

「うっさい」

 

『そう、怒るなよ……わかっているぜ、夢の中でエロい事が出来なかったんだろう』

 

バロールは悪びれる事なくそういう……ああ、十中八九お前が俺の左目に入ってから明らかにおかしくなった。

 

昨日のことを思い出すと、深いため息しか出ずにいた、女の子に触る触られると俺が女の子になってしまうこと………

 

「はあ、今日も休みたいけど、休めば長谷川先生に怪しまれる。かと言って、このまま登校しても、勇者の人や魔族に監視される」

 

逃げたい……素直に言ってこの町から出て行きたいが、それが一番悪い結果が起きそう。

 

『ウヒヒヒ、いいこと教えてやるぜ…… アフレイア、今長谷川って名乗っていたか?そいつには彼氏がいたんだぜ』

 

「はっ?」

 

なにそれ………そんな描写は原作にはなかった。おかしい………何かがおかしい。野中が何故か俺を気にする。主人公が嫌われず、普通に過ごしていること……

 

「ちなみに、その彼氏は?」

 

『ああ、死んだぜ……神同士の戦争で俺もアイツも肉体を失ったからな』

 

「神同士の戦争?魔族じゃなくて?」

 

バロールの言葉に首を傾けた………神同士が殺し合いをした?

 

『まあ、そこらはお前が学校に行きながら話してやるぜ……時計見てみろよ』

 

バロールにそう言われて時計を見ると、あと30分で確信に学校のホームルームが始まる。

 

「ああああああぁぉぁぁぁ!!バロール!!そういうのはもっと先に言えぇぇぇ!!」

 

『ウヒヒヒ!!悪ぃな!!俺は魔神だから、そういう面白いことは最後まで取っておくものなんだよ!!』

 

冷蔵庫から10秒でチャージできるゼリーを飲みながら学校に向かった。

 

ー○●○ー

 

「それじゃ、まずここは………」

 

な、なんとか授業に間に合った……ぼっちであるために誰も心配する人はいなかったのは少し……そう、ほんの少しだけ悲しかったが………特に気にせずノートにメモを取る。

 

『さっきの詫びだよ………朝の話を続けるぜ』

 

「うん………」

 

『まあ、世界はざっくり言うなら三つに分かれているんだよ。俺たち神がいる世界、魔族が住まう世界……そして、その魔族が神界に攻め込むのを阻止するために作られた人界だ』

 

そこは知っている、確か魔族の先祖は神々が魔界に堕ちて変異した存在だったはず。

 

『まあ、神々っていうのは綺麗好きでな、魔界に溜まった汚れをどうしても消したいが、これが傑作なのが、人界が邪魔で魔界に攻め込むのは難しいとき……だから、まずは人界を武力を持って制圧し、魔族を滅ぼす』

 

本当に神さまは身勝手だな、神界を攻め込まないために世界を作ったが、今度は邪魔だから、その世界を消すとか……

 

『ウヒヒヒ.魂のゆらめきを感じるな……そうだ、その感情を忘れるんじゃないぜ……まあ、その武力で制圧に9つ陣営に分かれた……思いのほか、人間に復讐したい奴らはいたな、もしくは単純に世界を滅ぼしたい奴と』

 

「人間に復讐?」

 

『そうだ、神々の中には主神の座から追い出された、人間に滅ばされた、悪魔に堕とされた、復讐する神の息子である人間を殺したい、そういうやつはたくさんいた……まあ、武力で人界を制圧するのを反対する奴らもいた……そりゃ人間を巻き込んだ内輪揉めだ』

 

シャーペンで文字を書くのを止めてバロールの話を聞く。

 

『反対する神は人間に加護を与え、戦力を増やし……そしてついには星までも味方につけた』

 

「星が味方?」

 

バロールの言葉は時々理解できない………それじゃまるで、星にも意識があるみたいじゃないか

 

『そうだ、お前たちだって、死にたくない平和でいたいと願うだろう?それと同じように星だって長生きしたい、死にたくないと願うんだよ……それが人間の背中を後押しするように力を授けた結果、9つの陣営は全て敗北……肉体を失い、不要の存在となり世界の裏側に堕ちたんだよ』

 

なるほど…………しかし、それと長谷川先生がどういう関係があるのかがわからない。

 

「気になることがあるん『成瀬!!』は、はい!!」

 

俺がバロールに質問はしようとした時、突然大声で名前を呼ばれて、ゆっくりとその声の方向へ向けると、こめかみに青筋を浮かび上がらせる社会の先生だった。

 

「昨日も休んだくせに、偉く余裕だな………そんなに私の授業はつまらないか?」

 

まあ、楽しくないっちゃ楽しくはないと言いたいがそれを言うと間違いなく目立つ……いや、眼帯をつけている時点で目立っているから俺はもう何も言わない。

 

「おまえ、放課後は罰として、職員室に来なさい」

 

ええ、俺放課後は長谷川先生の所に行かなければならないのに、どうしておっさんと二人きりにならないとダメなんだよ、ふざけんなよ!!

 

これも全てバロールが悪いな。

 

『─── 何か理不尽な責任転嫁をされた気がするぞ』

 

ー○●○ー

 

「たっく、なんで俺がこんな目に……」

 

ぶつぶつと呟き文句を言いながら俺はプリントを整理する……いっそのこと、魔眼であの教師を支配して……やめておこう。単純に俺の死因が増えるだけだ………

 

「そうだ、バロール……長谷川先生の彼氏は?」

 

『うん?ふぁぁ……そうだったな……寝みぃ』

 

こいつ……俺が作業している間寝ているだと………くそっ!!こんな仕事やってられるかぁぁ!!と全てを投げ出して帰りたい。

 

『まあ、そいつも一つの陣営の主神として……アフレイア達と敵対したなぁ……俺的には見ていて楽しかったけどな』

 

バロール自身は十神達が気に入らないから離反したとか……まあ、魔神らしい考えだな。

 

「よし、終わった!!」

 

プリントをトントンと机に叩き整理して、俺は扉を開けて教室を出ようとした時──不意に周囲が夜の闇で見えなくなった。困惑の前に周りを警戒をする……

 

ここ最近本当に失敗しかない……主人東城と魔族ラースの展開を忘れていた。

 

『ウヒヒヒ、敵か?敵だな』

 

「ああそうだよっ!!」

 

眼帯を外すと俺の左目は宝石のように輝く……支配の魔眼はまだ使うべきではない。三回しか使えない上に二回分を消費する……

 

微かに光る非常灯が、闇の中に浮かび上がる5つの影を浮かび上がったの同時に俺は逃げた。

 

『おいおい、逃げるのかよ』

 

バロールは俺の行動に詰まらなそうに問いかけてきた……そうだ、俺は勇者でも英雄でもない……そういうのはしたい奴がすればいい……俺は英雄(化け物)になんかなりたくない。

 

武器も才能もない俺がただ偶然にも魔眼を宿した、魔族に狙われてしまっただけ……いっそのことバロールに身体を明け渡して……化け物として殺されるか?

 

『『銀……』』

 

『あなたはもう戦わなくていい』

 

『帰りましょう』

 

複数の声が聞こえるのと同時に頭痛が走り、立ち止まった。

 

「……うるさいっ!!なんなんだよっ!!何がしたいんだよっ!!頼むから黙ってくれ!!」

 

そこには誰もいないはずの声に俺は叫ぶ。正義の味方に憧れた?全ての人を救える……そんな御伽噺はあるはずがない……人は死ぬ誰かを救うということは誰かを助けずに見殺しにする……人なんて大っ嫌いだ、惨めで弱くて……恨みは覚えているくせに恩はすぐに忘れる。

 

それが人間()なんだよ……何も考えず、甘い汁だけを吸えればそれでいいんだよ!!

 

魔族が作った人形が立ち止まった俺に近づいてくる………手に持つそのナイフや鎌で死ぬだろうな、俺は……

 

『ふん、情けないな』

 

また声が響いたのと同時に、俺の左腕に激痛が走る。

 

『此度の戦い、受肉することに成功したことに喜ばしいことだ……が、貴様、何故自我を保っている?』

 

「本当に……バロールといいこの声といい………俺の身体だっ!!誰にもあげるかも渡す気もないんだよっ!!」

 

そう言ったのと同時に、俺の手に光が集束し、剣の形を成した。太く肉厚な刃の剣。非常に無活なその武器は、刃の先端が欠け、突きには適さないのは一目瞭然だった。

 

5つの影が同時に俺に飛びかかってきた。

 

『ふん、これぐらいっ!!』

 

鋭き剣閃は五つの影をものともせず影の身体を両断し、影は雲散した。

 

「うっ、重っ!!」

 

羽のように軽かった剣は……急に重さを感じ、地面に落とす………なんだよ、この剣は……それにさっきの声は誰なんだよ?。

 

「これが……バロールの隠された力……」

 

『いや、俺の力じゃねえな……お前の力じゃないのか?』

 

パロールの返しに俺は首を横に振る……本当にわからない……あの声も……誰なんだ?

 

『ふ、ふぁぁ、突然起こされたから、二度寝しよと思ったが、外がうるさくて寝れん……腹が減った』

 

またさっきの声が聞こえた。

 

「お前は……お前は誰なんだよ」

 

『名を尋ねる前に己の名前を名乗るのが通りだろう』

 

「うっ……成瀬銀……成瀬銀だよ」

 

姿を現さない人に怒られた………たしかにそうだけど……なんか調子が狂う。

 

『我が名は建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)。スサノオと呼ぶがいい』

 

………ええ、日本でも一二を争うほどの有名な神じゃないか………長谷川先生へ………どうやら、俺の体は一癖も二癖もあるかもしれません

 

 

 




Ps
2巻編以降から別作品のキャラが沢山出てきます



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雨降って地固まらない

これで一巻しゅーりょーです!!

リクエスト全般に関しては、感想で言うのではなくメッセージ等でお願いします。

また私自身活動報告等でも、『こんな作品書くけど、どんなのがいいかなあ』と投げますので、そちらの方でよろしくお願いします。

祝ルーキー日間6位!!ありがとうございます!!


俺はとりあえず、名前を聞いて頭を抱えた、ケルト神話の魔神の次は日本神話最大の問題神がいま、俺の中にいる。どう考えても、普通はこんなことは起きないだろう。

 

「とにかく帰ろう……もし、魔族と勇者にこのことが知られたら絶対に警戒される」

 

そう誰もいない廊下にて決心するが、この剣重たいし………どうやって、持てばいいんだよ。引きずったら廊下に傷跡つけるし……早く消えて!!

 

そういうと剣は光の粒子となり細かく消えていった。うーん、これも俺の武器になるんだろうか?

 

『おいおい、帰るのかよ〜これから良いところだったのによ〜』

 

(オレ)は強者と戦えればそれで構わない』

 

二人が同時に話し俺の脳内に響かせた。俺は思わず頭を押さえた。

 

「うるさい、いっぺんに話すな……頭が痛くなる」

 

こんなところ1秒でも早く逃げたい……あの五体の影だって、スサノオが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

俺は三階から一階へ戻るために階段を降りる…………しかし、いつまで経っても一階にたどり着くことは無かった。

 

「あれ?」

 

階段近くにあるプレートを見れば三階と書いてある………

 

「なんでだよ!?俺はたしかに、降りたはずなのに………どうして」

 

俺は悩み焦る……このままずっと立ち往生しているわけにはいかない、かと言って何か対抗する方法もない。

 

『ウヒヒ、俺サマに身体を開け渡せばこんなのすぐに破壊出来るぜ』

 

「それだけは絶対にない」

 

『そうかよ………つまんねえな』

 

そしてバロールは興味を無くしたのか、その声を出すことがなかった。

 

『ん?……小僧、(オレ)天羽々斬(アマノハバキリ)を出してみろ』

 

スサノオが何かに気づいたのかオレに提案してきた。

 

「出してみろって言われても………どうやって?」

 

『はぁ………念じてみろ』

 

スサノオに深いため息を無視した……いいよ、俺はすぐに理解出来ない凡人だからなっ!!

 

「出てこい……出てこい……出てこいっ!!」

 

どうやって出せばいいのかわからなかった俺はただひたすらと念を口に出しながら送った。

 

その時光の粒子が集まり、さっきの武器へと形成した。

 

『それをその振り下ろせ』

 

「あのね、スサノオ……そう簡単に振り下ろせって言うけどこんな重いもの『なんだ、まさか持つことすら出来ない軟弱者なのか』……」

 

スサノオの言葉に俺は久々にキレちまったぜ……上等じゃねえか、やってやらぁぁ!!

 

「やっぱり重い……だけど、なんのこれしき!!」

 

ゆっくりと上にあげる、もしこれで足を滑らせたら多分俺が死ぬと思う。

 

「どっせい!!」

 

重さを利用し、大上段から一気に振り下ろした。瞬間、その剣は何もない()()()()()()。空間はひび割れ砕けちり、そこにあったよは光すら飲み込むブラックホールらしきものが存在していた。

 

「えっ!?」

 

『なんだ、何かを幻覚で覆っていたののか』

 

俺が驚く中、スサノオはこともなげに呟いた。さっきまでそこには何もなかったはずなのに……スサノオはどうやって気づいたんだ。

 

『──ふーん、これまた厄介な()だな」

 

バロールがまた起き出し、発した言葉に首を傾ける。

 

「──剣?」

 

『ああ、おそらくだが、幻に気付いたのはその剣が()()()()()()()()

 

バロールがそう言い、俺は両手に持つ先端の欠けた剣を見つめる。スサノオといえば、日本最大の怪物八岐大蛇を倒した偉業が有名……そして……

 

「そうか、思い出した!」

 

『何かわかったのかよ、その剣の正体が?』

 

「多分、これは日本神話最古の火伏せの剣。スサノオの愛剣だった天羽々斬だよ」

 

日本で有名な剣の一つであり、その先端はスサノオの尾を斬った時に欠けた。

 

「けど、それがどうして?火伏せは火災を防ぐという意味だけど?」

 

『火っていうのは、文明の象徴のほかに死を……つまり終わりを象徴させるものなんだよ、それが転じて災厄を防ぐという意味があるだろう?』

 

バロールの言葉に納得した、災厄を撒き散らす八岐大蛇を退治したこの剣は、極めて強力な魔を払うどういうことかな?

 

つまり、魔族が作り出した幻術は魔に属するからこの剣が反応し、それを払ったということ……これ、下手したら魔族や勇者に即座に始末案件か監禁案件なのでは!?

 

「よし、帰ろう……今すぐに……」

 

『ウヒヒ、ラノベだとこういう場合その剣で魔族を狩り女を魅了するものなんだけどな』

 

うるさい、俺は少年誌、努力で成り上がる主人公に共感を持つんだよ。無双系はあんまり好かん!!

 

「この隙間……あれ?」

 

いつのまにか……俺の声が……まさかっ!?

 

俺はスマホを取り出し、カメラを内カメラに変換して鏡代わりにすると………女の子の顔になってた。

 

 

「つまりは……うわっ!!」

 

胸もしっかりと女の子だよと主張していた……なんでだよ……これはどういうことだよ。

 

「けど……このまま帰れば関係ないか……うう、ズボンが違和感しかない」

 

剣を出し入れを慣れたのか、すぐに剣を消して俺はブラックホールギリギリを攻めようと思う。

 

「あっ……」

 

これが偶然なのか……それともどこにいるかわからない神の仕業なのか、俺は足を滑らせて、そのブラックホールの中に入ってしまった。

 

ー○●○ー

 

成瀬澪は自身が使える魔法を白画面に叩き込み、燃え盛る炎を荒い息を吐きながら見ていた。

 

「はぁはぁ………これで…」

 

「これで気が済んだかな?」

 

炎の中から声がし、ヒュゴォォォっという風のような音と共に炎が掻き消さられる。服すらもダメージなく白仮面が動かずに佇んでいた。

 

「そんな……」

 

「何を驚いているんだい? 相手が先にいる場所に何も用意なしにうんっ?」

 

白仮面は何かに気づき上空を見上げた、成瀬も空を見ると夜空に一つの穴が出現し、一つの影が二人の間に落ちてきた。

 

「イタタ………ついてない」

 

月明かりが影の正体を知らせた……銀色の髪に蒼い瞳をした少女だった。少女はゆっくりと立ち上がり………周りを見て騒然とした。

 

「……まじかよ、おい」

 

ー○●○ー

 

どうやら俺は……成瀬澪と魔族が対決している間に落ちてしまった……いやいや、おかしいでしょう、普通落ちるとしたら、学園のはずなのに………なんでだ?

 

『おそらくだけど、なんらかの想いが反映したんじゃねえか?』

 

なるほど、つまり犯人はお前だな、バロール。

 

『おいおい、すぐに決めつけるのは良くねえぜ……それに俺ならもう少し上手くやるぜ』

 

よし、お前はくっそ性格悪い魔神だな。

 

『ふむ、ならばここに着いたのは(オレ)だろう』

 

スサノオがそう言った……なんだと、この原因はおまえがっ!?どうしてだっ!!

 

(オレ)が求めるのは強者との戦い。相手の数も技も獲物も関係ない。その全てを我が力で叩き潰してくれる。その道に強者がいるならそこに向かうまでよ』

 

俺は頭を抱えた、ある意味でスサノオもバロールと同類だ。バロールが享楽と堕落を破滅を楽しむように、スサノオは闘争を愉しんでいるんだ。

 

「ああ、ここで……本当にあの学園でゆっくりしておいたら何もしていなかったのに……成瀬銀」  

 

「……銀、もしかしてあなた……」

 

ここでこの姿をばらすとか本当に魔神といい魔族といい本当にいい性格をしている……

 

「うっさい……本当に俺は……ついてないけど、俺は決めたんだよ、お前の顔面を殴るって!!」

 

スサノオの剣である天羽々斬を呼び出した………正直にいうと勝てる気がしないけどね。オレ……勇者の子じゃないし、ただの人間。

 

「はあ、ここまでしないなら殺す気はなかったんだけどなぁ、一つ言っておくと後ろにいるの僕と同じ魔族だぜ?それも、無関係なら放っておくのがセオリーだと思うけどなあ」

 

白仮面の魔族はやれやれとため息を吐いていた。

 

「たしかに、俺だってここに来なかったら助けに来なかった…………けど、少しでも彼女のように善人が平等を享受出来るようなら、俺は………不平等に人を助ける」

 

俺は即座に魔眼を発動させるのと同時に白仮面の体が動かなくなったを確認したのと同時に………彼女を抱えて森の奥へと走った。

 

ー○●○ー

 

「はぁはぁ………重たかった」

 

「ちょっと!!重いって何よ!!」

 

つい呟いた言葉に成瀬澪が抗議した……やべえつい本音を言ってしまった。

 

「どうして、逃げたのよ……」

 

まあ、成瀬澪の言いたいことは何となくわかった、バロールの魔眼で動かなくした………その隙を狙って彼に一撃喰らわすことも出来たかもしれないが……俺は剣を握り、振るのは初めてだ。大した一撃にもならない筈だ。

 

この十字架を外してスサノオに身体を明け渡せば、なんとかなるかもしれないが、それはまた俺の身体が戻ってくるのかはわからない。

 

「正直にいうなら、俺たち二人の手には負えないし………このまま逃げ続けて応援来るのを待とうかなって………」

 

「それなら……あなた一人で逃げたらよかったのよ……私は……」

 

「なあ、澪さん、俺は君のことはよく知らない……けど、それでも……目の前の人を見捨てるほど心は腐ってないんだよ……君はどうしたい?あの魔族に捕まるか……それとも、泥臭く逃げてまた家族と平和に暮らすか……」

 

成瀬澪は考えた……もし、俺がいなければ野中が助けに来たかもしれないが……俺というイレギュラーの存在でどうなるは全くわからない。

 

「ほら、早く出てきてほしいなぁ、出てきてくれないなら配下に命令してみようか?君の火炎魔法とあの家、どっちが綺麗な炎になるか?」

 

「……っ!!」

 

澪さんは立ち上がり、白仮面のところへ向かおうとするが俺が彼女の肩を掴む。

 

「落ち着いて、これは明らかに罠だよ」

 

「でもっ!!家には……万理亜と刃更がっ!!」

 

たしかに配下に連絡されたら、傷が付いている刃更たちは逃げるのに精一杯……成瀬澪もそれはわかっているが、我慢しているのかは唇を噛み締め肩が震えていた。

 

「だったら、俺にいい作戦あるよ……」

 

ー○●○ー

 

白仮面は脅しの警告をするが二人が出てこないことにイラついていた。この森を全て吹き飛ばし、ふたりを回収するのも楽だと感じた白仮面は魔力を手のひらに蓄積するときだった。

 

ガサッと草陰から成瀬澪が出てくる。

 

「卑怯とは思わないでくれよ、責めるならその力を持った自分たちを責めてほしいね」

 

「……アンタの目的は私でしょ。お願い、刃更たちには手を出さないで」

 

「構わないよ。それでこれ以上、余計な手間が増えないので有ればね」

 

成瀬澪はゆっくりと手を出すと、手首に紫色の縄が巻きついた。

 

「それで、成瀬銀は……もしかして逃げた?あんなセリフを言っていたから堂々と戦ってくると思ったけどなぁ」

 

「銀は関係ないわ……どこへ連れて行く気?」

 

戦意は消えない澪に白仮面は答えた。

 

「決まっているじゃないか……魔界だよ。ぼくの主が、君を帰ってくるのを待って───」

 

────ビシッ

 

ガラスが罅割れるように、()()()()()()()()()()()()。やがて全てが幻のように。

 

バギィン………!

 

音を立てて、粉々になっていた。そして目の前にいた成瀬澪もまた粉々になり消えた。

 

「まさかっ!!」

 

白仮面は即座に警戒をし、周りを見たがそこには誰もおらず……

 

「残念上だよっ!!」

 

木の上に隠れていた成瀬銀が再び白仮面に向けて振り下ろされていた。鉄壁を誇っていた白仮面の障壁と成瀬銀の天羽々斬がぶつかり合う。

 

その剣は魔を討滅ばさんとする剣……魔を作り出したものに優位に立つその剣は白仮面の障壁を断ち切った。

 

白仮面はとっさに背後へ飛び退り、かろうじて剣を避けたが、それでも肩から血が滲み出していた。

 

「その剣は本当に危険だなぁ」

 

しかし、成瀬銀の左目からは流血していた、バロールの第三の魔眼『幻象』。

1分の間幻を作り出し、バロールほどの魔神ともなれば限定的には世界を書き換える等しい……しかし、完全に扱えない成瀬銀は二回分を消費していた。

 

「魔を払うだけなら一級品だよ……そして、俺だけに警戒していいのかな?」

 

「まさかっ!!」

 

成瀬銀の言葉に咄嗟に離れると同時に白仮面がいた空間を、斬撃による風の刃にさが切り裂く。

 

それは成瀬銀たちと同じ制服に身を包み、右手には霊刀を携えた野中柚希だった。

 

ー○●○ー

 

『──ウヒャっ、恐れ入ったか白仮面!!』

 

見事に出された白仮面を見て上機嫌になったバロールは人の頭で大笑いしていた。

 

「……銀、あとで話あるから……」

 

俺一発でバレたよ……

 

「は、はい……」

 

野中の否定もできない圧力を感じる……何故、怒っているのか俺にはわかりません。成瀬は…まだ隠れている………だから早く主人公来てくれと懇願するしかなかった。

 

障壁潰した………ならば野中なら一撃を喰らわすことが出来るかもしれないし……すると成瀬澪がこちらに来ていた。

 

「どうしてっ……」

 

「別にあなたを助けるためにじゃない……」

 

野中は淡々と告げ、霊刀を白仮面に向けた。

 

「私は()()()()()()()()()()()()貴方を、絶対に許さない」

 

冷たい殺意や込めて白仮面に言った……あれ?何かがおかしい……けどそれを考える余裕は今の俺にはない。

 

「だったら───これならどうかな?」

 

無数の黒い光球が出現した………無理だ、避けることは出来ない。だったら

 

「二人とも、俺の後ろにっ!!」

 

「銀、あなたがっ……!」

 

ええい!!今は人を心配するほどの余裕はないっ!!俺は彼女たちの有無を言わさずに前に立ち、天羽々斬を地面に突き刺し防御に入る。

 

それが一斉に俺の方へと解き放たれた。

 

「やだ……っ、ダメェェェぇ!!!」

 

『銀よ、今こそ我神武を見せる時だっ!!』

 

スサノオが口に出してきた。どういうことだ?と首を傾ける。それと同時にバロールと似たような頭痛が走る……情報がまたいっぱい入ってくる。

 

「本当に……嫌だなっ!!」

 

俺は天羽々斬で頭上の空間を斬った。あの時と違うのは幻を斬り裂くのではなく、文字通り天を切り裂いた。

 

「我が神武の証を天に奉る!」

 

俺の声と同時に天の裂け目から(いかずち)が落ちる。その衝撃が地面に伝わり、大地を削る。しかしそれは前置きに過ぎなかった。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

稲妻と見間違う光から降り注いだのは眩いばかりの白き剣だった。

 

それを手にした瞬間……俺の手のひらが熱かった。熱した鉄板に押し付けられたような熱さと頭に唇を噛み締める。

 

「「「!?」」」

 

3人はその剣を見ただけで、冷や汗を流していた。

 

「お前さんに宿ったもう一柱は………ちっ!!」

 

白仮面は逃げようとするが………もう遅い、すでにこれは発動している。

 

天地を覇する神皇剣(アメノムラクモ)!!」

 

放たれた極大の白い光が、黒い光球も、大地も、目に映る全てを呑み込んだ。

 

ー○●○ー

 

光が消え、俺は目の前の光景を見て唖然とした。

 

何もない。

 

その剣から放たれたその先は抉られた大地以外に何もなかった。空を見上げれば、空間の裂け目があった……たぶん、人に気づかれないために結界張っていたんだろうな。

 

咄嗟にとはいえ……白仮面生きてるかな……生きてくれると嬉しい。何故なら原作が崩壊してしまうから……いや、俺のせいでもしかしたら原作が崩壊しそう。

 

そして自分の手を見ると皮は捲れていた……これは重度の火傷のレベルじゃない………超痛い……やべえよ。後ろの二人がいなかったら俺……俺多分、泣き叫びながら地面に転がっているよ。

 

風に当たっているだけで超痛い……

 

『出来ればまた生きていて欲しいものだな……』

 

「……そうだねぇ」

 

生きることに特化しているから多分大丈夫だろうと願おう。

 

「あの……二人とも大……あれ?」

 

俺は確認しようと二人の方へ顔を向けようとするが、視界が歪み立っていられなかった。

 

鈍器で殴られたような頭痛、心臓の鼓動がバクバクと早く鼓動し、息苦しさ……倒れながらら自分の手を見ると指先が震えていた。

 

『やはり、まだ馴染んでいないから、一日一発が限度か』

 

スサノオの言葉に否定したい、冗談じゃない、こんなのが続くなら俺はもう二度と使わない。

 

「「銀っ!!」」

 

「……っぁ」

 

俺はそのまま静かに気絶した。

 

ー○●○ー

 

一人の女性…… アフレイアが高層マンションから景色を覗いていた時だった……公園の方から光の柱が突然出現したのを確認した。

 

「まさか………いや……あいつなはずがない

 

アフレイアには彼氏がいた、神族同士の戦いで彼氏を失い……今となっては十神の地位さえあった、そして後悔したもっと早くこの地位にいれば血を流さずに済んだかもしれないと……

 

「……ヴィシャよ、私はお前が望む世界に維持していることが出来ているのだろう」

 

返事はない、なぜならそこには誰もいなかったから、アフレイアの声が静かに木霊した。

 

そして、ふと……成瀬銀の事を思い出した……魔神バロールを受肉しながらも、自らの、人の意思を持っていると………

 

アフレイアはそれを見てふと、愛した人と重なってしまった。

 

「いや……ないな、だがまた彼が困っているなら私がまた助ければいい」

 

アフレイアは考えるのをやめ人として過ごす、長谷川養護教諭としてまた歩き出した。

 

ー○●○ー

 

腕痛い…身体が痛い………そして重い。

 

俺はそう思いながら目を開ける……そこは知らない天井だった。長谷川先生の家でも病院でもない場所に俺は疑問を持つ。そして自分の身体がまだ女の子であるが、それは後回しにしよう。

 

「すー……すー」

 

静かな鼻息が聞こえる……ゆっくり視線を落とすとそこにいたのは成瀬澪だった。なるほど、彼女がここにいるから、俺は女の子の身体なんだな。

 

しかし両手を見ると綺麗に包帯が巻かれていた……まさか、成瀬澪が……うう、ありがたい。

 

ここ、彼女がいるということは多分、主人公の家なんだろうな……はあ、がっつり原作に絡んでいるじゃん、怒りに身を任せたとはいえ……やってしまったことはもうしょうがないか。

 

ゆっくりと彼女を起こさないように………俺は体を動かす。部屋を見る限りここは彼女の部屋なんだろう。

 

「うう………お父さん……お母さん……行っちゃ……ヤダ……」

 

成瀬澪が静かに涙を流しながら、寝言を言っていた。多分ゾルキアに両親を殺されて………もし、俺じゃなく他の人ならゾルキアを倒しにいこうとなるだろう。けど……俺はそれをしない。

 

その復讐の権利を奪う理由にはならない……俺には主人公たちのように勇敢に戦うことが出来ない。

 

「俺って……本当にロクデナシだなぁ」

 

だから最初に受肉してきたのがバロールなんだろうな……ここに主人公がいるなら多分、彼女の頭を撫でて落ち着かせていたのだろう。

 

『うひっ、なあなあ、寝落ちプレイというのも中々乙なもんじゃないか』

 

前言撤回、俺はこいつのようにエロくない。

 

ー○●○ー

 

早朝であるために………家のほとんどの人が寝静まる。

 

静か過ぎて廊下の音しか聞こえない。階段を降りてリビングを確認する……と一人の少年が一心に木刀を振っていた。頰に傷がある……少年は真剣な顔つきで木刀を振っていた。

 

流石に、挨拶なしに帰るのは人として失礼だと思った俺は……庭の方へと向かった。

 

「あっ、起きたんだな……両手は大丈夫か?」

 

「お、おう……」

 

東城は木刀をおき、体や顔をタオルで拭いた。リビングに上がり、冷蔵庫から取り出したのはチャージゼリーだった。

 

そして俺と東城は縁側に座るが無言だった………やっぱりきつい、もしかして、俺の彼女に手を出すんじゃねぇ、出したら消すぞってか……やべえ、怖いっ!!

 

「けど懐かしいよな……まさか、お前もこっちにいるなんてな……」

 

「えっ?」

 

「え?」

 

東城の言葉に俺は理解出来なかった………懐かしい?「ほら、親父と幼少期をさ……」

 

「いや、ちょっと待って……頭の整理が追いつかない……俺と東城は知り合い?……え?」

 

頭を抱える俺に東城は悲しそうな顔をしていた。

 

「お前……記憶を無くしているのか?」

 

「いや……うーん、多分……確証はないけど、東城がそういうなら多分、俺は……何か記憶を失っているかもしれない」

 

ー○●○ー

 

放課後、俺は屋上に……早朝で話そうと思ったが一旦落ち着いてから話し合おうと東城と話し、俺は家に帰り、学校を登校するがその時に両手を大怪我し、さらにクラスから孤立したのは気のせいだと思いたい。

 

あれ……おれ、文化祭や体育祭ちゃんと過ごせるかな?

 

『うひっ、そん時は俺様が相手になってやるぜ……メイド喫茶でご奉仕プレイだなぁ』

 

「そん時は、支配の魔眼で寝てもらう」

 

この人でなしっ!!むっつりスケベ!!と脳内で抗議してくるが俺は無視した。そして屋上の扉を開くとそこには滝川が立っていた。

 

多分、昼休みにもいなくなったからそこは原作通りに進んだろうと……はあ、よかったと俺は胸を撫で下ろした。

 

「よお、銀っち、お前も俺に何か用あるのかよ?」

 

手を振ってきた滝川に俺は近づく。俺は笑顔になり口を開く。

 

「いや、生存確認してきただけだ………流石にあれはやりすぎたとは思っているよ魔族穏健派のラース」

 

一瞬固まったのを見逃さない………しかし、滝川は笑顔だった。

 

「何言っているんだよ、怪我のしすぎで頭がおかしくなったのか?」

 

「ああ、ごめん……確か、お前はゾルキアに復讐するために現魔王派との二重の仕事はきついか?お前も幼少の頃大変だったもんな、大事な養父母が「それ以上いうと、俺はお前の首を飛ばすぜ」」

 

話すのをやめ滝川の方を見ると感情が消え、無機質な機械のように表情になっていた。

 

「こっちだって、お前にナイフでお腹を刺されたんだ。覚悟はすでに出来ているんだよ」

 

それを聞いた滝川は頭を掻いて深いため息を吐いた。

 

「はあ、おおかたその魔眼で俺の過去を見たのかよ……本当に万能すぎてめんどくさい相手だなあ。それで何がしたいんだよ」

 

「別に俺は平穏な生活を過ごせるならそれで構わないし、穏健派に提供して保護を約束してもらうのも……いや、現魔王のお姉さんに提供するのもアリかな〜」

 

あちゃぁとと滝川は額を手で押さえた。

 

「マジかよ、そこまで知っているのかよ……お前の魔眼はなんでもありかよ……それをされるのだけはマジで勘弁……なら、お前は勇者の一族も知っているのかよ」

 

「まあ、知っているけど……勇者の一族は基本的に信用出来ない。まあ、ソレらを脅すネタはいくつもある」

 

やれやれ、末恐ろしいぜと呟きながら滝川は苦笑する。

 

「お前は魔神を受肉して、人でありながら魔神でもあるんだ……人のことをどう思う?」

 

滝川が質問してきた。それを聞いて悩む……人をどう思うか

 

「そうだなぁ、個人個人となるとわりと、ほら、まあ、うん、よし!言わぬが花という」

 

「お前結構ロクデナシだな」

 

「多分そうなんだろうな、けどロクデナシだから目の前に困っている人を救わないという理由にはならない」

 

まあ、それは主人公たちには内緒だ……まあ、正直にいうと怖いだけなんだけどな。

 

「まあ、俺としては監視とかそういうのをやってもらえないと嬉しいかな……うん、それが一番」

 

そうすれば、原作崩壊は回避できるし、俺も恋人を作ることに専念出来る。

 

「お前は………成瀬澪と関わりがあるのか?」

 

「いや、無い………とは言い切れない。俺、小さい頃記憶がないからな……」

 

多分東城のお父さん……迅さんなら何か知っていると思うけどあの人多分魔界にいるから無理だろうな。長谷川先生は……どうなんだろう……微妙だなぁ。

 

「そうか、忘れてくれ」

 

「うん、そうする……けどよかった、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

へいへいとそう言いながら手を振ってきた滝川に俺はそのまま屋上を後にする。

 

『なんだよ、ここは俺に身体を明け渡してこの学校にいる無抵抗な奴や女を魔眼で占領しないのかよ……いいもんだぜ足から徐々に石化して、顔が恐怖で染まるのはいつ見てもゾクゾクするぜぇ』

 

バロールの言葉を無視した………帰る、とにかく帰って早く寝たい。

 

 

しかし、その時の俺は知らなかった………運命からは容易に逃げられないと……




刃更さんの登場を奪ってしまった……猛省。

2巻以降はもっと彼らを出すので許して……

やったね成瀬銀!!勇者の一族に完全に警戒されるなっ!!

ぶっちゃけ、R18版書くか悩んでいるのですが、読みたいですか?

長谷川先生の元カレ………どっちにするか迷いました……


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