ROMAN DE ドォォォォン!! (霧鈴)
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01.ロマンに目覚めるドン!

 

 

 

気がついたら無人島にいた。周りの状況から見るに難破してしまい流れ着いたようだった。

人間まだチャンスがある時ってのは焦るもんだけど、なんかもう詰んでる状況だと意外と冷静になれるってわかった。それがわかるのは詰んでからなんだけどね。

 

このままだと餓死一直線とかシャレになってない。マジどうしよう?

船の残骸に何か食べ物とか救命ボートとか無線とか残ってないかと探してみたが何もない…

無人島に持っていくものアンケートとかで趣味の道具とか時間つぶしの本とかふざけた事を言ってるやつに言いたい。

 

 

無人島には帰りの手段を持っていけ!!

 

 

もしくは遭難しても繋がる連絡手段だ!!

 

 

ここが無人島だって言い切れるのは、小さな森があるくらいであとは何もないのが見渡せるくらいの小さな島だったからだ。

小さいながらも森があるんだし、木の実とか野草とか何かしら食べるものはあるだろう。

 

少なくとも俺にはサバイバルの知識なんてないし、キノコを見分ける慧眼も持ってないから木の実とかを探して飢えを凌ぐしかない。

 

ちなみに冷静に言うことじゃないけど、なぜか俺は子供の姿になってる。頭脳は大人、身体は子供ってやつだ。

もう状況がピンチすぎてこれからどうやって生きていけばいいのかを考えるのに必死なので理由まではわからんが、現状子供の姿になってる事と遭難して1人無人島にいる事だけわかっている状況だ。

 

とりあえず木の実を探して森を探検するしか生き延びる方法が見つからんので森の中へと入ってみた。

 

 

 

木の実あるけど木が高いよ!登ろうにも子供だから無理だよ!

 

 

 

必死の努力も虚しく食べ物にありつけないまま、その日は遭難した残骸を集めて風よけにして泥のように眠った。

 

次の日浜辺に変な物体が流れ着いてた。

 

メロンみたいだけど模様がオカシイ…が、食わなきゃ生きられないと思い一気に齧り付いた。

クッソ不味いけど、栄養のためだと無理やり全部口に入れて飲み込んだ。

あれだ。不味いものほど栄養があるとかそういう都市伝説みたいなもんだ。

 

不味い後味そのままに、木の実がダメなら釣りはどうかと思い、木の枝と糸と曲がった釘で即席の釣り竿を作ってみた。

ところが膝あたりまで海に入ったところで突然力が抜けて座り込んでしまったんだ。

一応意識して力を入れれば動けるんだが、ちょっとでも足の付かないところに行ったら間違いなく溺れ死ぬってくらい脱力感がある。

 

マジで意味がわからない。いくら子供の身体だからといって泳げなくなるなんて考えられない。

その前に泳ぐほどの深さにも行ってないし。

 

あれか?この身体が元々海に弱いとかなのか?それとも俺って海に嫌われてるのか?

 

…うん?

 

…え?

 

クッソ不味いメロン+海に入ると力が出ない=ということは…

 

やばい…冷や汗が止まらない。

 

これはアレか?モブに人権はないっていうビックリ人間たちが跋扈する世界なのか?

 

 

ダッシュで船の残骸のある場所に移動し何か情報がないのかと漁ってみたところ、ずぶ濡れの新聞を発見した。

 

 

なになに?百獣海賊団とゲッコー海賊団が争って百獣海賊団が勝利。はい確定。

 

 

やっぱり間違いないということは、俺も何かしらの能力を有しているというか、さっき食ったヤツがそれだったってことだよな…

 

ひとまず浜辺で自分の身体に変化がないかを確認してみるが、今のところ何も変わったところは見当たらない。

力を入れて光とか氷とか砂とか霧とか煙とか思い当たるものに変化させられないかと期待したが、まったく変わっている感じもしなかったし変わっていなかった。

 

つまり自然系ではないということだ。

 

誰もが欲しがる最強種なだけに、俺が食ったのがロギア系であってほしいと思ったが、やはり(モブ)にそんな都合の良い事は起こるはずがなかった。

 

なら後はなんだっけ?ちゃんと覚えてないけど動物系と人系とかそんなんだったな。

でも全身に力を入れてみて変わらなかったんだから動物系でもなさそうだ。

てことは残るのは人系か…

ルフィとかバギーとかが人系なんだったか。あとチョッパーもだっけな。

これでチョッパーが食ったヒトヒトの実とかだったらマジで泣くぞ。

 

 

人間がヒトヒトの実食ったら何になるんだろうな?真人間とかか?

 

 

まぁいい。とりあえず俺が食ったのは人系のやつで間違いなさそうだ。

とはいえほっぺた引っ張ってみたけど伸びないし、自分をバラバラにする勇気はないから確認は後回しにして、ひとまず海に入らないように釣りを再開しよう。

 

最悪は雑草を丸かじりするしかないけど、絶対にお腹壊す未来しか見えない。そこだけは見聞色の覇気がなくても未来視できるわ。

 

考えれば考えるほど悲しくなってきたので、ネガティブ思考を打ち切って釣り竿を引き摺って浅瀬へと移動しようとしたんだが、やけに釣り竿が重い…

振り返って見てみたら釣り竿がバカみたいにデカくなってた!あと俺の手も!

 

 

よくわからんがこれが俺の食った実の能力ってやつか!?

 

自分や触ってるものをデカくすることができるとかそういう感じなのか?

 

正式名称はわからないけど、たぶん「デカデカの実」とかそんな名前のやつかもしれないな。

 

 

さっき森で木の実を取れなかったが、デカくなれるのならば話は別だ。

もう一度森に戻ってデカくなった手を伸ばして木の実を取る事に成功した。

しかも嬉しい事に木の実をデカくすることもできた!これで食糧難の心配がなくなったぜ!

 

今のところ俺は身体の一部か触ってるものを巨大化させることしかできないようだ。

もっと能力を鍛えれば全身を巨大化させたりできるのかもしれないが…

 

ただ全身巨大化とかどう考えても最後に主人公にやられるフラグにしか思えんのだが…

あれか?俺にラスボスになれと誰かが囁いてるのか?

俺もロギア系でスタイリッシュなオサレムーブしたいんだが、モブの俺にはそれすらも許されないってやつなのかよ。

 

お前(モブ)はせいぜい巨大化して主人公にやられてろって事なのか…

 

てか、巨大化して戦うとかラスボスどころかいいとこ中ボスじゃん。

いや今のままだと「序盤の」中ボスクラスがせいぜいってところか。

 

普通ならこの(自分も武器も)巨大化っていう能力で調子に乗るんだろうが、今の俺がそれをやったら確実に捕まるか殺されて人生終了だ。

 

 

……そうだよ。ものは考えようってやつだ。

 

なにせ俺は『覇気』の存在を知っている。習得の仕方はわからんけど…

 

そして覇気には3種類あり、『武装色の覇気』『見聞色の覇気』『覇王色の覇気』があることも理解している。

 

覇王色の覇気は才能だとか、生まれた時のランダム抽選だとか、血統や血筋だとか言われてたはずだ。

モブな俺がこの抽選に当たっているなんてあり得ない。つまり覇王色の覇気は使えないだろう。

 

次に見聞色の覇気。なんか気配を感じたり声が聞こえたり未来が視えたりするすごい力だったはずだ。

だが巨大化した俺が未来視で攻撃を避けようとしても、スピードタイプに翻弄されてボコボコにされるのが目に見えてる。

俺の能力的に見聞色の覇気は相性が悪い気がする。

 

最後に残ったのは武装色の覇気だ。なんか黒くなって悪魔の実の能力者にもダメージを与えることができるとかなんとか。

鍛えれば武器とかにも纏わせたりとかできたような気がする。

 

巨大化させた武器に武装色の覇気で強化して叩き潰す。

うん、これいけるかもしれない。てかこれが最善な気がしてきた。

 

 

俺が仮に2年修行したからといって、覇気を全部使いこなすようになれるなんてあり得ない。

まぁルフィの場合はレイリーに教えを請う事ができたからこそなのかもしれないけど…

 

今の俺は方向性を固めてそれだけを磨いたほうがいいだろうな。

あと武器も1つ決めたい。毎回毎回戦いの度に全身巨大化して戦うとか見た目が悪すぎる。

もう脳筋力押し戦法で行くって決まってるんだから、武器もロマンのある武器にしたいな。

 

巨大化させた剣で叩き斬る…うん、悪くないな。ただ避けられたらどうしようもない。

 

巨大化させた銃で撃つ…それやるくらいなら、誰だっけ?ルフィの爺ちゃんみたいに砲弾投げたほうが早いな。

 

いっその事素手で殴るか…完全に被るがルフィみたいに腕だけ巨大化させるってのもアリと言えばアリだな。だが武器でもないしロマンって感じでもないか。

 

 

 

ロマン溢れる武器って言ったら……やっぱりハンマーが思い浮かぶな。

 

 

 

巨大化させたハンマーで敵を叩き潰すってのはいいアイデアかもしれないな。

 

襲いかかってくる大勢の敵を巨大なハンマーで一撃粉砕!とかロマンじゃね?

 

いっそ大勢の敵どころか町1つを叩き潰せる破壊力とか最高じゃね?

 

いやむしろ町1つどころか、島1つ丸々叩き潰せるハンマーとかできたら、それはもうロマンの塊じゃん!

 

 

 

なんか考えれば考えるほどに良いビジョンしか思い浮かばないぞ。

 

ゴムだから打撃は効かない?(覇気)のあるハンマーはゴムだろうと関係ないぜ。

 

剃とかの高速移動で逃げる?逃げた先も攻撃範囲内だとばかりに振り下ろされる超巨大ハンマーに逃げ場なんてあると思うなよ。

 

ロギアで実体をなくせば攻撃が当たらない?そんなの関係ないとばかりに武装色の覇気で強化されて振り下ろされる超巨大ハンマーで叩き潰してやるぜ。

 

 

夢が広がってきた!!

 

 

丁度残骸の中に船の修理用だったであろう木槌があったので、巨大化させてみたらアラ不思議!完璧なハンマーに早変わりだぜ!

 

これならばイケル!今のところ将来の予定は考えていないが、仮に海賊になろうが海軍になろうが関係なく戦えるはずだ。

 

ワンピース(ロマン)なんて俺には必要ねぇ!!俺が求めるのはロマン(ハンマー)だ!!

 

当面の目標はできたので、まずは覇気の特訓と能力を鍛えるところからだな。

 

 

 

 

 

この島で特訓を始めてどれくらい時間が経ったのか、日付や時間を確認する手段がないからまったくわからないが、それらしく形にはなってきた。

最初なんて自分で巨大化させたハンマーが持てなくて、まずは自由自在に振り回すところからスタートだった。

おそらくこの世界で一番ハンマーを振り回してたはずだ。たぶん俺に勝てるのはアイスクライマーくらいだろう。

 

とにかく自分を追い込むためにひたすら苦行みたいな事を繰り返した結果、能力のほうはある程度把握して自在に使えるようになった。

当面の目標は俺が巨大化させたものを、俺が手を離しても戻らないってのが理想なんだが今のところはまだうまくいっていない。

 

覇気のほうは…たぶん覇気?みたいな感じだが使えるようになってきたと思う。ちなみにあくまでも武装色の覇気のみのため、見聞色の覇気は使える見込みすらない。

まずこの島に獰猛な動物とかいないから鍛えようもない。最初からそっちは覚える気もないんだけどさ。

 

なにせ覇気の使い方を教えてくれる人がいないせいで、特訓自体がこれで合ってるのか間違ってるのかすらわからないんだよ。

 

後は実戦で経験を積むのと、できれば誰か覇気を知ってる人にきちんと教わっておきたい。

贅沢を言えば、あといい加減肉を食いたい。いくら少量の食い物を大きくできて腹いっぱいに食べられると言っても果実とかだけじゃ物足りない気持ちもある。

そして、ここは無人島といっても離島のような感じのようで、かなり遠くではあるが島を見つけることができた。

丁度俺が残骸と一緒に島に流された場所と反対側だったから気づかなかったんだな…

 

 

俺は残骸から見つけておいたお椀とスプーンを持ってきて巨大化させる。これで船の完成だ。

 

 

完全に一寸法師だけど、俺には船を作ったり修理したりなんてできないし仕方ない。

手を離すと元に戻っちゃうからちょっと面倒だけど、その中に集めておいた果実や残骸に残っていたお金などをボロボロのリュックに入れて放り込み、スプーンをオール代わりにして無人島から人のいる島を目指すことにした。

 

 

 

 

 

俺がこの世界中にロマン(ハンマー)の素晴らしさを知らしめてやるぜ!

 

 

 

 

 

 



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02.幼女に目覚めるドン!

 

 

 

スプーンのオールで必死にお椀()を漕ぎ、なんとか島まで到着することができた。

気候が安定していたし波も静かだったから良かったけど、よく考えたら少し海面が揺れるだけで転覆の可能性があったんだよな。

ここが何ブルーかわからないけど、こんだけ気候が安定してるんだしたぶん偉大なる航路ではないと思う。

 

島にある港町に着いて、そこの人に聞いてみたところどうやらウエストブルーのようだ。

イーストブルーだったらフーシャ村とか行ってシャンクスに覇気を教えてもらうとかも考えられたけど、ウエストブルーだと何があるのかまったくわからない。

あと時系列に関しては、まったくではないがほとんど覚えてないので流れに身を任せようと思う。

 

ひとまず食堂に入り、持ってきた小銭でちょっとだけでいいからと頼み込んでお肉の切れ端を焼いてもらい、お椀に戻ってから巨大化させて食らいつく。マジでうまい!

ちなみに小銭で切れ端を焼いてくれって言ったのを同情されたのか、店のおばちゃんはタダでいいからと肉だけでなく野菜の切れ端も付けてくれた。

 

さすがに宿で寝られるほどお金もないのでお椀の中で一泊し、当面の資金を稼ぐのと身体を鍛えるために港で仕事の手伝いなんかさせてもらえないかを頼んでみたところ、またもや子供が1人で生きていこうとしている事に同情されたのか即決でオーケーをもらえた。

 

両親は?とか聞かれることもあったが、俺はこの身体の生みの親たちを知らないため「遭難して気がついたら1人だった」と言えば勝手に解釈してくれる上に、ご飯を奢ってもらったりと良い事ずくめだった。

 

 

 

なかなか人情味溢れる良い町だ。将来俺がロマン(ハンマー)を振り回すようになっても、この町には振り下ろさないでおこう。

 

 

 

そうやって町の人の好意に甘えながら昼間は港で仕事の手伝いをして、終われば浜辺で身体や能力を鍛えたり、武装色の覇気の訓練をしたりして過ごしていた。

能力のほうも巨大化させてから手を離しても元に戻るということはなくなり、俺が意図的に戻そうと思わない限りはそのままを維持させることに成功した。物によるけど。

後は巨大化させる大きさをもっともっと大きくできるように訓練していくだけだ。

 

ちなみに武装色の覇気のほうはまったくうまくいかない。

腕や足に力を入れてみても、眠っている潜在能力を解放するような感じでやってみてもうんともすんとも言わない。潜在能力があるかどうかは別として。

こっちは無人島に居た頃からまったく進んでいないといってもいいだろう。

やっぱり何かきっかけがないと使えないんだろうな。そうじゃなかったら普通に戦ってる海賊や海軍が覇気使いだらけになってるはずだし。

 

 

しばらくそんな事を繰り返していたある日、浜辺にいた俺は海に2本の線があることに気付いた。

近くまで寄っていって見てみると、それは氷のようで結構遠くまで続いているようだ。

自然現象で海の上に氷の線ができるなんてあり得ないし、何か意味でもあるのかと思いずっと眺めていたら、その氷の線の間を小さな船がこっちに向かって来ているのが見えた。

 

じーーーっとそれを見ていたら、小粒のようだった船は小舟であることがわかり、そこに俺と同じくらいの女の子が1人で乗っている事がわかった。

黒髪でおかっぱの女の子が浜辺に着いたので、累計年齢でいえば俺のほうが年上だしと思い声をかけてみることにした。

 

 

「ねぇ、君は1人でこの島にやってきたの?」

 

「…うん」

 

「お父さんとかお母さんは?」

 

「……もういないの」

 

 

やっちまった!1人でボートみたいな小舟でやってきたんだから、それくらいはもっと考えるべきだった!

だがまだ大丈夫だ俺!きっとこの子もわかってくれるはずだ。気を取り直して自己紹介でもしてこの凍った空気を和ませるんだ。

 

「そっか…ところで君の名前はなんていうの?」

 

「…わたしはニコ・ロビン」

 

「…えっ?き、君はニコ・ロビンっていうの?」

 

「うん。どうしてそんな事を聞くの?」

 

ニコ・ロビンってあのニコ・ロビンだよな?なんでニコ・ロビンが小さい女の子で1人で船旅なんてしてるんだ?同姓同名の別人とかそんな可能性もあるのか?それともここはパラレルワールドで、この世界のニコ・ロビンは幼女枠なのか?

 

なんか頭が混乱してきたがとにかく俺も自己紹介しないと…って言っても俺ってこの身体の名前知らないぞ?

もういっそ適当に名前名乗るか。ロマンを目指すハンマー使いだから…ハマン、何か違う気がするな。しかも様を付けないと怒られそうな感じがする。もうハンマとかでいいや。

 

「いや、ちょっとどこかで聞いたことがあったかと勘違いしちゃってね。俺はハンマ。よろしくね」

 

「うん、よろしくハンマ」

 

「ロビンはこの町に何か目的があって来たの?」

 

「………ぐすっ」

 

「あーあー余計な事を聞いたよね!とにかく俺もこの町に最近来たばかりなんだけど、良かったら友達にならない?」

 

「…いいの?」

 

「もちろんさ!なんなら俺の事はハンマでも、お兄ちゃんでも、にぃにでも、好きに呼んでいいんだからね!」

 

「ふふ、ハンマおもしろいね」

 

ふう、危ないところだった。幼女を泣かせるとか犯罪者もいいところだぜ。

そこからはロビンと一緒に行動するようになり、仲良くなるのに時間はかからなかった。

これには累計年齢は別として、外見年齢があんまり変わらないというのも大きかったんだろうな。

ある時ロビンが自分は化け物だと虐められていたということを聞かされた。どうやら悪魔の実の能力があるから他人とは違うということが原因らしかった。

 

 

だが『原作知識持ち現在進行系能力者』の俺にはそんなことまったく関係ない!

 

 

てか初日からお椀を巨大化させて家代わりに使ってるのを見せてるから、もしかしたら自分と同じかもと思って教えてくれたのかもしれないな。

俺が遭難して無人島で悪魔の実を食べた事とかを話したら、ロビンも同じように自分がどうしてここに来たのかを教えてくれた。

 

自分が今まで過ごしていたオハラという島が、歴史を研究していたことによって滅ぼされてしまった事や、お母さんやクローバー博士といった身近な人たちがみんないなくなってしまった事。

その時に助けようとしてくれた巨人のサウロに助けられ、最後はクザンという氷の能力者に見逃されてこの島に着いたということだった。

 

 

それを聞いてやっと思い出した。ロビンの過去編じゃん!と…

 

 

つまりまだ原作始まってなかったよ。もしかしてまだルフィたちって生まれてすらいないんじゃないのか?

確かロビンってこれから賞金稼ぎやらに追われながら生きていくんだったっけか…

そのあたりは確か詳しい描写はあんまりなかったはず。俺が覚えてる限りではだけど。

 

…この場合どうしたらいいんだろう。どうすれば最善なのかがわからん。

 

てかもう超仲良しになっちゃったのに、賞金目的でロビンを捕まえるなんてできるはずもない。

そのあたりはもう適当でいいや。俺の目的は世界にロマンを知らしめることだ。

 

思考を放棄してなるようになるさと気楽に構えていたら、どうやらロビンの手配書がこの町にも回ってきたようだった。

町の人たちも「この子どこかで見たことがあるな」と噂しているため、さすがに気づかれるのも時間の問題だと思った俺はロビンの手を引いて走り出し、お椀に飛び乗り島を出ることにした。

 

 

「きゃっ。ハンマ、突然どうしたの?」

 

「ロビン、どうやらロビンの手配書が出回ったみたいだ。町の人たちも見たことがあると噂していた。追いかけられる前に島を出るぞ」

 

「えっ?…その、ハンマはそれでいいの?わたしを捕まえたらお金もらえるんだよ?」

 

「そう言われてもロビンとはもう友達だからな。それにお金なんて、今の俺ならそのへんの海賊でも叩き潰したら簡単に手に入るさ。でも友達はハンマーじゃ手に入らないだろ?」

 

 

ロビンはいずれ賞金首として世界中から狙われることを薄々理解していたのかもしれない。

涙目で自分を突き出せば賞金が手に入ると言うロビン…

友達だからと一緒にお椀の船で飛び出した俺に感極まったのか抱き着いてくるロビン…

 

 

 

 

 

あれだ。ロビン、いや、ロリンちゃん可愛い!!!!

 

 

 

 

 

この子もしかしてメロメロの実食べてるの!?

 

もう今の俺なら賞金稼ぎの10人や100人くらい、簡単に叩き潰せるよ!?

 

原作どおりに進めるべきかと悩んだけど、ロリンちゃん可愛すぎてもう手放せないよ!!

 

よしもうクロコダイルにもルフィにもロリンちゃんはやらん!!

 

てか歴史が知りたいなら、レイリーかシャンクスにでも聞けばいいじゃん!

俺がんばって頭下げて教えてもらえるように頼み込むよ!

ダメならレイリーの住んでる島とかシャンクスの船とか叩き潰してからお願いしてあげるよ!

 

 

 

やべぇ思考が変な方向に飛んでいった…

ロリンちゃん破壊力すごすぎだろ。

 

まぁ冷静に考えてもロビンを狙ってくる賞金稼ぎたちが相手なら、ロビンを守りながら実戦経験を積むことができるし、一緒にいるってだけでメリットがあるんだからまさしく一石二鳥だ。

 

今の俺が木槌を能力全開で巨大化させてもせいぜい10メートルがいいところだ。

しかもまだ子供の身体だから全開で巨大化させると疲労がすごい。

赤い土の大陸(レッドライン)を叩き壊すくらいまで出来るようになれば世界中がロマンの素晴らしさに目覚めると思うんだが、まだまだ先は長そうだな。

まぁまだ原作始まってない時期だし気長に頑張るしかないか。

 

 

お椀の船に乗りスプーンのオールで漕ぎ続けて、一旦俺が遭難した無人島まで戻ってきた。

さすがに手配書にびっくりして急いで出てきてしまったので、どこに島があるのかわからないまま海に漕ぎ出すにはリスクが大きすぎると判断したためだ。

ロビンも急に連れてこられたので、これからどこかの島に行くにしても一旦落ち着いて話し合わないとな。

 

 

「ロビン、とりあえず急いでたから俺が遭難した無人島に逃げてきたんだけど、これからどうしようか?」

 

「わたしがいたらきっと賞金稼ぎとかに狙われるよね…」

 

「いや、むしろ俺の経験値稼ぎに丁度いい。クククッ、賞金稼ぎにはせいぜい俺の糧になってもらうさ」

 

「ハンマ、笑い方怖いよ」

 

 

おっと、ロリンちゃんを怖がらせちゃいけないな。自重しろ俺。

森で取ってきた果実を巨大化させて、2人で食べながら今後について話し合っていく。

ロリンちゃんはどうやら考古学の博士号だけでなく、簡単な航海術についても頭に入っているようで違う島に行くくらいならなんとかなるらしい。

 

そっか。世界の歴史を調べたり研究したりする以上は、当然の事ながら世界地図とかも頭に入ってるってことだもんな。

そして俺がいるから食料もそこまで気にしなくても大丈夫になる。下手すりゃリンゴ1個あればルフィでも満腹にすることができるからな。

 

これなら後はまともな船があれば、とりあえず航海することはできるということだ。

 

 

「ねぇハンマ。わたしね、お母さんやクローバー博士たちみたいに世界の歴史を知りたいの。どうしてオハラがあんな目に遭わなくちゃいけなかったのかもちゃんと知りたいの」

 

「うん、知りたいと思うのは良い事だと思うよ。ロビンならきっと歴史を全部知ることができるさ」

 

「うん、それでね。歴史の本文(ポーネグリフ)っていうのを探したいんだけど、ハンマも一緒に手伝ってくれる?」

 

「もちろんさ!でも1個ロビンにお願いしてもいい?」

 

「どうしたの?」

 

「お願いお兄ちゃんって言ってみて」

 

「?…おねがいおにいちゃん」

 

「ロビンはほんと可愛いな!ロビンが歴史を知れるように、立ちふさがる敵は俺が全部叩き潰してあげるからね!」

 

「…ハンマってたまによくわからないね」

 

 

ふう、答えは得たよ。やっぱりロリンちゃん超可愛い。

 

 

そういや覇気のコツは疑わない事とかなんとかだった気がする。

 

 

つまりロリンちゃんがいれば俺はもっともっと強くなれるということだ!

 

 

なるほど。人は1人では強くなれないっていうのはこういうことだったんだな!

 

 

俺は今その言葉の意味を身を以て知ったぜ。

 

 

 

 

 

さすがに俺が幼女(ロリンちゃん)の素晴らしさを世界に知らしめるわけにはいかないが、その分も合わせて浪漫として世界中にロマン(ハンマー)の素晴らしさを伝えていく事にしよう。

 

 

 

 

 

 



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03.覇気に目覚めるドン!

 

 

 

ロビンと一緒に俺が遭難して漂着した無人島を出発し、別の島を求めていってやっと次の島に到着することができた。

天候が荒れたりしなかったとはいえ、やっぱり航海術って大切なんだなって実感したよ。

 

ロビンがいなかったら俺は確実に迷子になってたと思う。

 

ちなみにロビンに「ロビンはやっぱりすごいな!」とか「俺だけだったら確実に迷子になってそのまま遭難してたよ」って褒めたんだけどさ。

なぜか「これくらい普通だよ。ハンマにも教えてあげようか?」とめっちゃ普通に返された。

照れたりするところを見たかったんだけど、ロビンって褒められ慣れててあんまり照れたりしないのかな?それとも照れ隠しなのかな?

 

 

「さてロビン。ひとまず港町に着いたし、まずはロビンの変装用に服とか帽子とか買おうか」

 

「そんなお金あるの?」

 

「これでも前の町で少しは仕事の手伝いをしてたからね。それにご飯にほとんどお金かからないし、服とかを買うくらいなら問題ないよ」

 

「そういえばハンマはなんでも大きくできるからご飯お腹いっぱい食べるの簡単だもんね。じゃあ服屋さん行ってもらってもいい?」

 

「ああ、それじゃ行こっか」

 

 

ロビンと手を繋いで服屋さんを探して町を歩いていく。これなら仲の良い子供が町を歩いてるだけに見えるだろうし、すぐにロビンだとわかる事はないと思う。

ただ、他の海賊やら賞金首のやつに比べて、ロビンは小さい女の子なのに多額の懸賞金をかけられてるっていうインパクトが強いから気をつけないといけない。

 

しかも悪魔の子とか、さも極悪人かのような手配書になってるから余計にだ。

 

町の人だって何も知らない人ならば、まだ子供なのに7900万ベリーという高額の賞金を掛けられるほどの事をしたと思われても仕方ないといえば仕方ない。そこは理解できるんだ。

まぁだからと言ってロビンを捕まえようとしたら、一般人だろうが関係なく俺のハンマーの餌食になってもらうけどな。

ギャグ補正があればタンコブで済むかもしれないが、モブ一般人が俺のハンマー食らったら確実に赤い染みになるのは間違いない。

 

 

「ロビンこれなんか似合うんじゃない?あーでもこっちも似合いそうだね」

 

「そんなにいっぱいいらないよ。動きやすくて普通のでいいよ」

 

「えーでもせっかくだしいくつか買おうよ。このフード付きなんかもいいかも。ちょっと試着してみなよ。すいませーん、これ着てみていいですかー?」

 

「ハンマって知らない人でも気軽に話せるんだね。ちょっと意外だった」

 

「そんなに意外な事だったの?お、それ可愛いね。それ買うから着たままでいいよ。買い物終わったらご飯食べに行こ」

 

 

服屋さんを見つけて一緒に店に入り、これが似合うあれが似合いそうとキャッキャしながらいくつか選んで、1着はそのまま着て店を出てご飯屋さんを探して食事を取ることにした。

ロビンの中で俺はどんなイメージなのか知りたいところではあるが、これはたぶん良いイメージになってない事はわかる。

いくらなんでも店員さんと普通に話してるだけで意外と言われるなんて、ロビンの中では俺は人見知りな印象だったのかな?

 

フード付きのパーカーにして少し髪型を変えてみたら町の人に気づかれる事もなく、普通にご飯を食べて出てくることができた。

できればまともな船が欲しいところだけど、今の俺たちの手持ちじゃあ船を買うには全然足りていないからどうにかしないといけないな。

そんな事を考えながらロビンと2人で町を散策していたところに、遠くのほうから町の人が「海賊がきたぞーー!!」と叫びながらこっちに走ってきているのを見つけた。

そこまで大きい港町じゃないから、すでに俺たちにも海賊船が見えている。

海軍がどうにかするのかと思っていたが、この町にはそこまでの戦力は常駐していないみたいだな。

ひとまずロビンと2人、町の人たちに紛れながら様子を伺っていたんだが、運悪くロビンが見つかってしまった。

 

 

「ぎゃはははは、俺には1000万もの懸賞金がかけられている。大人しく金と食料を差し出せば命は助かるかもしれねぇぜ?嫌なら奪うまでだがなぁ」

「「「「「ぎゃはははははははは」」」」」

 

「食料は差し上げます。しかし、貧しい港町故お金などほとんどありませ…ぎゃっ!」

 

「おいおい、つまらねぇ事を言うからつい殴っちまったじゃねぇか。…そうだな、見せしめにガキでも殺して見せたら理解するか?おい!そこのガキ!こっちへ来な」

 

(…ロビン、俺が行くからロビンは逃げろ)

(そんな…それならわたしも一緒にいくよ!)

 

「グズグズしてんじゃねぇよ!…ん?そこのガキ、ちょっとツラをよく見せろ」

 

(やばいな。ロビン早く逃げるんだ!)

(でもハンマが…)

 

「やっぱりか。おいてめぇら!このガキを捕まえて船倉に放り込んでおけ!こいつはニコ・ロビンって7900万の賞金首だ!思わぬところで臨時収入が入ったぜ。ぎゃはははは!」

 

「いや!触らないで!痛い!」

 

「ロビン!お前らロビンを離せ!」

 

「そんなに離して欲しかったらてめぇで何とかしてみやがれ。おい、このガキは殺せ。俺は酒場で酒でも飲んでくらぁ」

 

 

くそ、まさか海賊もロビンを狙うとは思わなかった!ロビンは海賊船に連れて行かれ船長は酒場に行ったが残りの海賊どもはまだ残ってる。

本格的な戦いなんて経験したことのない俺は、カトラスに銃やらと武装してる海賊に気が引けてしまいボコボコに殴られて倒れていた。

 

(くそっ!こんな海賊にビビってどうすんだ俺!ここは平和な世界じゃないんだ。都合のいい展開なんてあるわきゃないんだ。やらなきゃロビンが死ぬぞ。覚悟決めろ俺!)

 

「あああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

気合を入れ直し巨大化させたハンマーを全力フルスイングで振り抜いて海賊をぶっ飛ばす。

 

…あれ?思ったより軽いぞ。そういや人間にハンマー振るったの初めてだったが、人間ってこんなに軽いのか。

 

俺にぶっ飛ばされた海賊は町の外まで飛んでいったんだ。場外ならぬ町外ホームランってやつだな。

そこからは襲いかかってくる海賊を俺のハンマーでぶっ飛ばしていき、海賊船に連れ去られたロビンを船から助け出すことができた。

 

 

「ロビン!無事か!?」

 

「ハンマ!怖かったけどハンマが来てくれると思って、わたし泣かなかったよ!」

 

「えらいなロビンは。海賊はみんなぶっ飛ばした。後はあの船長だけだ。とにかくこの船を出よう」

 

 

敵の海賊船なんてどこに何があるかわかったもんじゃない。ロビンを連れて海賊船を降りたところで、酒をラッパ飲みしながら敵の船長がこっちに来ていた。

 

 

「おいおい、うちのクルー共はガキ1匹まともに殺せねぇのかよ。てめぇもせっかく捕まえたガキを逃がすなんて死ぬ準備はできてんだろうな?」

 

「黙れ薄汚ねぇ海賊(モブ)風情が。いくら俺も同じ(モブ)だっつってもお前にロビンを渡すくらいなら死んだほうがマシに決まってんだろ!」

 

「それならお望み通りに殺してやるよ!」

 

 

もう今の俺に躊躇いも戸惑いもない。こんなモブ海賊に躓いてたらロビンを守れねぇじゃねぇか。

今できる最大のデカさまで木槌を巨大化させ、敵に向かってハンマーを振り下ろす!

一撃で叩き潰したつもりだったが、虫の息ながらまだ生きているようだ。まだ破壊力が足りないのか?それとも無意識に手加減してしまってるのか?

 

とにかくロビンが無事で良かった。後はこの海賊の懸賞金を受け取ることができれば船を買うこともできるかもしれないな。

海賊を引きずりながらロビンと一緒に町へと入っていき、町にある海軍の派出所みたいなところで海賊を引き渡して賞金首であることを確認してもらう。

ちなみにロビンは外で待っている。あの海賊ですら知ってただけに、さすがに海軍の人間ならばロビンに気づく可能性は高いだろうから念のためだ。

派出所では最初「こんな子供が!?」と驚かれたが町を略奪から守ったということでお礼を言われ、やはり賞金首であることが確認されたため、すんなりと1000万ベリーをもらう事ができた。

 

外に出てロビンを探してみたら、ロビンが大人2人に何かを言われているようだ。

近づいていくと、どうやらこいつらは賞金稼ぎらしく「痛いめに遭いたくなかったら大人しく着いてこい」ということらしい。

 

 

「おいお前ら。何勝手にうちのロビンを連れて行こうとしてるんだ?」

 

「なんだこのガキは。いいか?こいつは悪魔の子って言われてる犯罪者なんだ。俺たちはその犯罪者を捕まえるのが仕事なんだよ。ガキが邪魔すんじゃねぇ」

 

「そうか。じゃあお前らも俺の経験値になれ!」

 

「なに言って…ぎゃああああああああああ」

「おいお前なにすん…あばあああああああああ」

 

 

賞金稼ぎ2人を町外ホームランでぶっ飛ばしてみたが、やっぱり軽く感じるな。

この木槌の重さに俺が慣れてきてるからなのか?

それとも人間を叩くことに戸惑うことがなくなったからとかそんなのかもしれないな。

と、思ったら答えはロビンが教えてくれた。

 

 

「ねぇハンマ。どうしてハンマは戦う時に腕が黒くなってるの?」

 

「…え?黒くなってた?」

 

「うん、海賊と戦ってる時もなってたよ」

 

 

そっか。ロビンを助ける事に必死だったけど、武装色の覇気が使えるようになったって事だったのか。

もしかしたら今まで使えなかったのは戦闘経験がなかった事とかも関係してたのかもしれない。

ロビンを少し危ない目に遭わせてしまったが、海賊や賞金稼ぎで経験を積めたし賞金も手に入ったし良い結果に終わったから良しとしよう。

 

既に海賊や賞金稼ぎにロビンの事がバレてしまっているので、町の人に見つかるのも時間の問題だ。

急ぎ食料などを買ってリュックに詰め込みこの島を出ることにした。

 

2人で港に向かい、小さくてもいいから船を買えないかと思い来てみたら先程ロビンを捕まえようとした賞金稼ぎが自分たちの船に乗ろうとしていた。

どうやら2人で乗るには十分な大きさで屋根もあるし過ごしやすそうな船である。

 

俺は閃いた。

 

 

ロビンを捕まえようとした賞金稼ぎ+過ごしやすそうな船-ロビンを捕まえようとした賞金稼ぎ=船は俺たちの物

 

 

もはや交渉など必要ない。問答無用でハンマーを振るい、賞金稼ぎを地平線の彼方…は言い過ぎだけど海の向こうへと叩き出して自分たちの物にすることにした。

 

賞金稼ぎたちの船に乗り込んでみると、キッチンなどの設備も整っており2人で航海するには十分すぎるほどだ。

ちゃんと地図やら方位磁針とかも備え付けられているし、ベッドもシャワーもあるみたいだ。

 

とはいえ、賞金稼ぎが使ってた布団は使いたくない。これは潔癖とかじゃなくて気持ちの問題だな。

なのでロビンに留守番しててもらい、急いで布団を2組買ってきて自分たち用にした。

どうやらこの賞金稼ぎたちは補給のためにこの島に来ていたみたいで水やら食料も補充されている。

船を買う金も浮いたしなんかすごい順調すぎて怖いくらいだな。

 

まぁ実際のところ、今まで乗ってきたお椀の船に比べれば天と地ほどの差があると言っても過言ではない。

あれはあれでシュールな感じがして嫌いではないんだが、遊びならともかく航海するには危なすぎるしな。

 

 

「ねぇハンマ。これからどこへ行くの?」

 

「そうだなぁ。まだ偉大なる航路に行くには俺たちは力不足だから、しばらくはこのウエストブルーで海賊と戦ったりしながら経験を積んでもっと強くなりたいかな?」

 

「そっか。わたしもハンマと一緒に戦えるようにがんばるね」

 

「そこまで無理しなくてもいいよ。ロビンには船を動かしたりいろいろとやってもらうから、戦いは俺がやるよ」

 

「ううん、きっとこれからもわたしを狙って海賊とか賞金稼ぎが来ると思うから、ハンマがわたしを気にせず戦えるようにわたしも頑張るの」

 

「…そっか。じゃあ一緒にがんばろう」

 

「うん!」

 

 

そんな事を考えてたのか。ロビンも初めて海賊や賞金稼ぎに狙われることで思う部分があるんだろうな。

確かに俺だけでロビンを守りきれるとは限らないし、今回だってロビンを人質にされてたら何もできなかっただろう。

ロビンには見聞色の覇気を覚えてもらえればバランスがいいと思うんだけど、俺が使えないから教え方もわからないしなぁ。

ウエストブルーに覇気使いがいるとは思えないし、ロビンの場合は俺みたいに脳筋戦法取る必要がないからやっぱり能力の強化とかそんな感じかな?

 

俺自身もどうやら使えるようになった武装色の覇気をもっと磨き上げないとな。

ハンマーに纏わせる事ができるようになって、やっと能力者とまともに戦えるようになると言ってもいいくらいだ。

 

 

 

 

 

しばらくは島から島へと渡りながらロビンと一緒に鍛えていくことにしようっと。

 

 

 

 

 

 



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04.時は流れるドン!

 

 

 

ロビンと2人で航海してから既に数年が経ち、情報収集を欠かさなかった俺たちだが、世間ではいろんな大事件と言われるものが起こっては紙面を飾っていた。

フィッシャー・タイガーが聖地マリージョアを襲撃したり、王下七武海に海賊女帝が加入したり、更にはついに海列車全線開通!なんて記事もあったりと話題が尽きない。

もちろんこれらは同時に起こったわけではないが、新聞には毎度の事のようにどこかの海賊が何かをやらかした等の記事が載っていた。

 

 

俺からすれば「そんな事もあったっけな」という認識ではあるが、何も知らない人々からすれば大事件であることは間違いない。

だが初耳のはずのロビンなんて「そうなんだ」といった淡白な反応なので、俺たちは特に騒ぐ事もなく相変わらずいろんな島へ行ったり海賊を叩き潰したりマフィアを叩き潰したりして過ごしていた。

 

ちなみに先程のニュースは世界中の、というか偉大なる航路での出来事ばかりであり、ウエストブルーでのニュースというと大体海賊かマフィアの事がほとんどだ。

この海はどうやらマフィアが幅を利かせているらしく、5つか6つくらい大きなマフィアが日夜抗争を繰り返し縄張りを広げたり取られたりしているらしい。

もちろん海賊もちゃんと存在しており、ただの一般人には少々住みにくい部分もある海だったようだ。

まぁ俺にとっては格好の獲物ばかりが集まってるので、とても充実した日々を過ごせる海だったりする。

 

 

なにせ子供だった俺も今では青年になり相変わらず脳筋戦法に磨きをかけている。

体力や筋力はもちろんだが、能力や覇気も子供の頃とは段違いに成長してきていると思う。

まだ武装色の覇気をハンマーに纏わせるのに苦労している部分もあるが、概ね強くなっていると言ってもいいだろう。

1度、海の上で海賊船に出くわした時に、最大まで巨大化させたハンマーがどこまでの威力になっているのかを試そうとしてみたんだが、海賊船よりもデカくなっており文字通り一撃で船ごと粉砕することができた。

 

 

 

その後の衝撃と荒れた海のせいで自分たちの船まで沈みそうになり、ロビンからものすごく怒られたが…

 

あれは本当に危なかった。慌てて船を巨大化させて乗り切ったが、そのままの大きさだったら間違いなく転覆してただろうな。

 

俺もロビンも泳げないんだから怒るのも仕方ない。しかも俺の攻撃の余波が原因で自分たちの船が沈むとかシャレにならん。

 

 

 

まぁ、怒られたことは別として徐々に俺の目指すロマンに近づいてきていると思う。

まだまだ浪漫である島1つ覆うくらいの巨大ハンマーはできそうにないが、海の上で海賊と遭遇しても一方的に粉砕できるってのは安全だし悪い事ではないだろう。

 

 

ちなみにロビンのほうも基礎体力だけでなくハナハナの実の能力をしっかりと鍛えている。

原作通り関節技もあるが、相手が多数の場合は首を絞めたり口や鼻を塞いだり目潰ししたりと応用しまくってる。

 

これは確かに暗殺にも向いてる能力だと思うわ。しかも相手が部屋に閉じこもって鍵を締めたとしても、反対側に手を咲かせて開ければいいんだもん。

 

単独で強大な力を持ってる相手には分が悪いところもあるが、まだ偉大なる航路に入ったわけではないので敵無しと言ってもいいだろう。

 

そんな能力もだが、身体も子供の頃からすっかりと女性として成長してきている。

もうあの頃の可愛いロリンちゃんが見れないのは少々寂しいものがあるが、成長していくところを愛でることができたし今も十分に可愛いのでそれはそれだ。

 

本来(原作)なら子供の頃からずっと追われ続けて精神的に消耗し、一縷の望みをかけてアラバスタのポーネグリフを目指していたはずだから、今のほうが幸せなんだと思いたい。

 

てか今のロビンはよく笑顔を見せてくれるので、きっと俺は間違っていなかったはずだ。

 

 

それが例え海賊やマフィアを叩き潰したりしてるところを誰かに見られていて、ロビンの懸賞金だけが上がっていたとしても、俺は間違ってないと言い切ってやる。

おかしいな?俺の記憶では確か初頭手配から、麦わらの一味に加入するまでずっと7900万のままだったはずなんだが…

 

てかなんで俺は賞金首になってないんだろ?海賊とかマフィアとかばっかり叩き潰してるからか?

 

ロビンも同じはずなんだが、元々が賞金首だから海賊を潰したことで危険度が上がったとかなのかな?

 

 

暴れてる度合いと周囲の被害の度合いを考えたら、俺のほうが危険だと思われても仕方ないと思ってたが俺の場合はちょっと周囲の被害が大きいだけの賞金稼ぎ扱いとかなんだろうな。

まぁ周囲の被害って言ってもハンマーでスタンプ連打くらいしかしてないから、それこそロギア系とかに比べたら俺が齎す被害なんて可愛いもんか。

 

俺たちは別に海賊を名乗ってるわけでもないし、むしろ見かけたら積極的に潰してる側だから懸賞金かけるよりも野放しで様子見とかしてる感じか。

 

今のところ世界政府的にご法度の歴史を探求してる素振りも見えないから積極的にロビンを狙わずに静観してるんだろう。世界政府ならやりそうな事だな。勝手なイメージだけど。

 

 

「ねぇ、ハンマったら聞いてる?」

 

「…うん?どうかした?」

 

「あなた、何を考えてるのかわからないけど表情に出すぎよ?うんうん唸ってたと思ったらこっち見てニヤニヤしてるし、そこからまた何か思案してるような顔してたわよ」

 

「うそ!?なんかそのうちロビンには考えてる事全部バレそうで怖いな」

 

「あら、ハンマったらバレて怒られそうな事でも考えていたのかしら?」

 

「…いや、特にバレて困るような事は考えてなかったわ」

 

「なら問題ないわね。あとどうしてハンマはたまに私を微笑ましいって顔で見るのかしら。あなたと私って同い年くらいのはずよね?」

 

 

最近ロビンが見聞色の覇気でも会得したのかってくらい鋭い気がする。

これはあれか?女の勘ってやつなのか?見聞色の覇気って実は第六感だったりするんだろうか。

まぁ俺が考えてる事なんて原作どうだったかなーとか、そういえばこんなイベントあったなーとか、ロビン可愛くなったなーでもロリンちゃんも可愛かったなーくらいなもんだ。

原作知識については誰にも話すつもりはないし、ロビンを愛でてるのは別にバレても構わないから無問題だな。

微笑ましい顔で見るのは仕方ない。だって実際にそうなんだもん。累計年齢で結構年上だからつい愛でてしまうんだ。

ここで重要なのは精神年齢ではないことだな。俺はそこまで達観していない。

 

 

こんな感じでほのぼのとした船旅を楽しんでいるんだが、結構な頻度で海賊には遭遇する。

 

やっぱり大海賊時代ってのは伊達じゃないな。

 

その度に武装色の覇気を訓練しながら叩き潰しているので、俺としては遠慮なく潰せる相手がそこら中にいるってのはありがたい話ではあるんだが。

そのおかげでやっと武装色の覇気をハンマーに纏わせることができるようになった。

やっぱり実戦って大事だな。これで破壊力も上がるし、仮に強力な悪魔の実の能力者が現れても戦えるはずだ。

 

島に着いたら大体俺が買い出ししたりしてる間にロビンは酒場やらお店やらで情報を集めていたりする。

本当は賞金首になってしまっているロビンに不特定多数の人間がいるところは危ないって言ったんだけど「ハンマが情報収集してもきちんと情報を集められないじゃないの」とごもっともな指摘をされてしまい、以降はロビンに任せるということになっている。

 

 

そして世界政府はロビンがポーネグリフを探したりなんてしていないと思っているのかもしれないが、そのあたりの情報収集はある程度行っていたりする。ロビンがな。

俺としてはアラバスタにあるよ!とか空島にもあるよ!って言いたいところだけど、なんでそんな事を知ってるのかってなったら答えられないしな。

 

それに表立って歴史の調査なんて世界政府にケンカを売ってるのと同じだから、そこは慎重に行こうと2人で決めてある。

まぁ世界政府が禁忌としている歴史の情報がそこらへんに落ちてるはずもないから、手当り次第じゃなくてちゃんと相手とかを見極めてから情報を集めようっていうので意見は一致している。

おそらく遠くない将来偉大なる航路には入ることになるだろうし、そうなったらアラバスタ王国にあるって情報が入ってくる可能性も高そうだ。

てかロビンは実際アラバスタにあることを突き止めてたはずだもんな。

 

 

ただ問題は俺たち2人でどうやってアラバスタのポーネグリフを見せてもらうかだよな。

 

 

コブラ王何かの手違いでアラバスタ歴史博物館とか作らないかな?誰にも読めないから別にいいやって博物館の目玉に「大昔の石碑」みたいにしてポーネグリフを展示とかしないかな?

 

…さすがに無理か。あの王様って書かれてるのが古代兵器の事だって知ってるんだっけか。

確か王家の秘密とかなんとかだった気がするから博物館は無理があるな。

 

普通に「趣味で大昔の石版とか見て回ってるんですー」って言ったら見せてくれるかな?

研究とか解読とかそういう事を言わなければワンチャンいけるか?

あーくそ。子供の身体だったら何食わぬ顔していけたかもしれないが、今だと警戒される可能性があるな。

 

 

後考えられるのは…クロコダイルの乱に乗じてこそっと見るか。

別にロビンがいなくてもクロコダイルはアラバスタ乗っ取りを計画……するのか?

クロコダイルってロビンに唆されてアラバスタ行ったんだっけ?やばいわからん。

 

 

もう頭が混乱してきた!もうこうなったらなるようになる!

いざとなったらクロコダイルごとアラバスタを叩き潰して勝手にポーネグリフ見ればいいや!

それならたぶん国を救った事とぶっ壊した事でプラマイゼロだろ!

まだ偉大なる航路に入ってもいないのに考えすぎてわけわからん。

 

こういう時は身体を動かしてスッキリするに限る!

 

ちょうど船の前方に海賊船が見えた。なんてタイミングのいいカモなんだ。

 

 

「ちょうどいいカモ発見。スカッとする一撃で海の藻屑にしてやんよ!」

 

「…ねぇハンマ。あなたそれやってどうなったのか(転覆しそうになった事)忘れたわけじゃないわよね?」

 

「い、いや!違うぞロビンさん!俺は船ごと叩き潰そうとなんてしてないんです!」

 

「ふーん?別にいいけどなんで敬語になってるのかしらね。あなた腹芸はできないんだから正直に言ってるほうがいいわよ?」

 

「ちょっとテンション上がって船ごと叩き潰そうとしてました」

 

 

なんでロビンは俺がやろうとしてる事がわかるんだろうな?

しかしこれができないと俺のロマンが…何かいい方法ないかな?

 

 

そうか!いいこと思いついた!

 

 

縦に叩き潰すから怒られるんだ!横に振り回せば波風立たないはずだ!海だけに!

 

 

やっぱ俺って天才なのかもしれない!脳筋だと思ってたけど実は頭脳派だったパターンかもしれない!

 

 

よし海賊ども!今からお前らを空飛ぶ海賊にしてやる!

 

 

俺は目の前に見える海賊船に向けて、巨大化させてその海賊船よりも大きくなったハンマーを振りかぶる。もちろん武装色の覇気を纏わせての全力全開フルスイングだ。

 

ククッ、海賊どもめ。本来なら自分たちが優位で略奪するつもりだったんだろうが、船よりデカイハンマーが振りかぶられてるのを見て、今から何が起こるか理解したようだな。

アタフタするのは勝手だが、しっかり掴まってないとどこかに飛ばされても知らないぞ?

 

 

ほらいくぞ海賊ども。この渾身の一振り、全力ホームランでお星さまになってこいや!

 

 

せーの…ドォォン!っと。

 

 

振り抜かれるハンマー。激突する海賊船。バラバラになって飛んでいく海賊船の破片と海賊たち。

あれ?思ってたのと違うな。予想では船がそのまま飛んでいくはずだったんだが…

 

そしてちょっと遅れてすごい風が巻き起こり、俺たちの船を揺らしていく。

 

 

「きゃっ!ちょっとハンマ。波はないけど風がすごいわよ!」

 

「…ごめん、なんか思ってたのと違った。とりあえず帆を畳んで風の影響を減らしておくね」

 

 

うーん、俺としては「バイバイキーーン!」って捨てゼリフ残して飛んでいくバイキンみたいになるイメージだったんだが、空中分解どころか叩き潰されてから飛んでいった感じになってしまった。

 

でもどっかの場面でルフィたちって空飛んで逃げてなかったっけ?

それとも俺の記憶違いだったのかな?

 

 

まぁ今回はロビンに怒られることも船が転覆しそうになることもなかったし、次に同じ事やる時は帆を畳んでからやれば問題はなさそうだ。

 

それに、もしかしたら武装色の覇気を纏わせなければ船はキレイに空を飛んだかもしれない。

うん、次の機会に試してみようっと。

 

俺としても超巨大ハンマーはロマンの塊なだけにちまちまと敵を叩くのは性に合わないし、今はまだいいが偉大なる航路に入れば超巨大な海賊船とかも出てくるはずだ。

確かゾンビ使いがそんなデカイ島を海賊船にしてたはず。海賊船が島なんだったか。

とにかくこれからも旅を続けていればそんな奴らとも戦う事になる可能性も低くはない。

だからこそ俺はそんな奴らを一撃粉砕するためにも、もっともっと強くデカくならなければいけないんだ。

 

 

「ちょっとハンマ?あなた人の話をちゃんと聞いているのかしら?」

 

「はい、ちゃんと聞いてますロビンさん」

 

「あなたの戦い方を私がとやかく言うつもりはないのよ?ただもう少し周りを見てって言ってるの。わかるかしら?」

 

「はい、ちゃんと自分たちの船が沈まないように努力しますです、はい」

 

 

…強くなるって大変だな。ロビンの言ってる事はとても当たり前の事すぎて言い返す言葉もない。

今回は怒られないと思ってたんだが、どうやら俺の勘違いだったようだ。

 

こんなお小言をもらったりはするが、基本ロビンは優しいしご飯も作ってくれたりと大変お世話になっている。

いろいろと教えてもらったりもしているし、出来の悪い息子扱い…いや弟扱いみたいな感じに思っているのかもしれないな。

 

 

 

 

 

…あれ?昔は俺がロビンを守ってたのに、なんかいつの間にか立場逆転してないか?

 

 

 

 

 

 



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05.偉大なる航路に入るドン!

 

 

 

「ハンマ、偉大なる航路に入りましょう」

 

「突然どうしたの?何かいい情報でも入った?」

 

「ええ。元々ポーネグリフがあるとしたら、古くから存在する国や場所が怪しいとは思ってたのよ。私の故郷だったオハラだって相当昔から存在していた。そして今までいろんな情報を集めてきて、偉大なる航路のほうが4つの海よりもポーネグリフが存在する可能性が高まったと言ったところかしら」

 

「…なるほどな。だが偉大なる航路は今までとは違って危険な航海になるだろうから、準備だけはしっかりとしてから向かうとしようか」

 

「そうね。それじゃあこの島で必要そうな物を買ってからリヴァース・マウンテンに向けて出発しましょう」

 

 

どうやらついに俺たちも偉大なる航路へと向かう時が来たようだ。

ロビンも今まで情報を集めてきた結果偉大なる航路に焦点を絞ったみたいだな。

まぁ情報がないっていうのも立派な判断材料だし、この結果が導き出されるのは必然だったってわけだ。

 

しかし遂に偉大なる航路か。いくら原作知識があるとはいえ、果たして今の俺がどこまで通用するのかな。

さすがに前半の海でやられるとは考えてないけど、悪魔の実の能力者との戦いも増えそうだし気合を入れないとな。

 

 

武装色の覇気についてはある程度自在に使えるようになったと言ってもいいと思うんだが、発展型とか応用系の使い方とかいろいろと教えてもらえないと俺じゃ考えつかない。

 

あーあ、偶然レイリーがリヴァースマウンテンで灯台の爺ちゃんとお茶してる場面に出くわすとかないかなぁ。

そんで偶然にも覇気を教えたい気分だったとか言って教えてくれたら最高なんだが。

 

俺じゃあロビンに見聞色の覇気を教えることができなかったんだ。

「自分を信じれば、見えないものが見えるようになって、聞こえないものが聞こえるようになる」とか説明されてもわかるわけないよな。

 

 

…あの時ほどロビンと心の距離が開いたと思った時はなかったよ。

 

 

それなら目や耳を咲かせたらいいんじゃないの?って言われたらその通りだし。

 

まぁ覇気はそのうちロビンもちゃんと知るようになるだろう。俺じゃ無理だ。

 

 

あとはどこかの島で今俺が使える能力の全開状態も試しておきたい。海でやったら絶対怒られるし。

移動するときにどこか無人島でもあれば寄ってもらうようにお願いしておこうっと。

 

 

ロビンはまだ町に入ったまま戻ってきてないので、俺は1人船で留守番しながらどうでもいい事を考えていた。

 

やっと戻ってきたロビンを出迎えて、さっそく船を出すということなのでさっき考えてた能力の確認のために無人島に寄ってもらった。

 

 

「ねぇ、無人島に来たけど何をするつもりなの?」

 

「ロビンに言ってなかったっけ。今の俺の能力でどれくらいの破壊力が出るのかを確認しておきたかったんだ。偉大なる航路に入る以上何が起こるかわからないからな」

 

「随分と慎重なのね。いつものハンマなら俺が全部叩き潰してやるぜ!とか言うと思ってたのに」

 

 

まぁ俺ができる事はハンマーを振り回して叩き潰すだけだから間違ってないんだけどね。

でもロビンよ、俺はいつでも慎重だぞ。レベルを上げてから物理でぶっ潰すのが俺なだけだ。

 

念のために船から少し離れたところで木槌を今できる最大まで巨大化させる。

 

 

 

おーデッケぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

 

 

 

大帆船なんてプチッっと潰せそうなほどデカいハンマーが俺の手にある。

クッソ重いからちょっとフラフラするが、これを海に向かってぇ…ドォォン!!っと。

 

恐ろしいほどの水しぶきと衝撃で周りの状況がよくわからん。

海水が雨みたいに降りまくってるし、俺も海水浴びて力抜けるし、ロビンは…無事みたいだな。

どうやら俺の能力もちゃんと成長しているようで何よりだ。

だがまだハンマーに振り回されてるから、もっと鍛えないといけないか…

 

 

「ロビーン、無事かー?」

 

「ええ、わかっていたけど本当にすごい破壊力ね。あなた一体何と戦う事を想定してるの?」

 

「何と戦うっていうか、ハンマーの良さを世界中に知らしめたいと思って今に至る感じ」

 

「…私にはわかってたわ。ハンマはどこまで行ってもハンマだって事にね」

 

 

うん?浪漫武器が持つロマンはロビンには少し難しかったか?

やっぱりこういうのは男の子の夢的なやつだから、女の子には理解しにくい部分があるのかもしれないな。

 

まぁいずれロビンにも理解できる日が来るはずだ。たぶん。

 

とにかく俺の能力の確認も終わったことだし、偉大なる航路を目指そうと思ったんだがどうやらまだ船を出さないほうがいいらしい。

原因は今の俺の巨大ハンマー叩きつけのせいで海が荒れてて海面の状況が良くないからだそうだ。

 

その日は無人島で一泊し、翌日には静かな海になっていたので予定通りにリヴァースマウンテンを目指すことになった。

 

 

ちょっとアクシデントがあったけどそれ以外は順調な旅路だと思う。

そしてついにリヴァースマウンテンまでやってきたが、実物で見ると本当にすごいなこれは。

海が山を登るっていうか、どういう原理なのかまったく理解できないけど船で山登りして山下りするっていう貴重な体験をすることができた。

 

てか山登りする時だって特に問題なく普通に入ることができたのでルフィたちのような慌てる展開にもならなかったよ。

運が良かったのかロビンがしっかり舵を取ってたのかわからないけど、こんなところで躓くわけにもいかないもんな。

 

お、ちゃんと灯台もある。なんだっけな。確か…クロックスさんいるかな?

できるならなんとかクジラのザブーンも見てみたいけど食われるのは勘弁だ。食おうとしたらハンマーの餌食にしてやるぜ。

 

…と思ったけど両方出てこないな。あれ?どうなってるんだ?

 

 

「おーーい。誰かいませんかーー?」

 

「突然叫びだしてどうしたの?」

 

「いや、灯台だし誰かいるかなって思って」

 

 

どうやら本当に両方ともいないようだ。1人と1頭で出かけてるのかな?

まぁいいか。いないものは仕方ない。

 

…そういえばロビンってログポースの存在を知ってるのかな?

知らなかったらクロックスさんを待ってからじゃないと進めないと思うんだけど。

 

 

「ところでロビン。偉大なる航路に入ったはいいけど、これからどこに向かう予定なんだ?」

 

「そうね…できれば歴史の古い国とか言い伝えのある場所とかに行きたいんだけど、そう簡単に行けるわけじゃないのよね」

 

「ちなみに方位磁針が狂いまくってるんだけど、これどうするの?」

 

「あら、私が偉大なる航路に入るのに用意を怠るわけがないでしょ?ちゃんと偉大なる航路の経験者たちから情報を集めてあるわよ。この海を進むための手段もちゃんと用意してあるわ」

 

 

やっぱりロビンはちゃんとログポースを用意してたようだ。

でも俺に教えてくれなかったってことは…あれか。航海とかは私に任せてあなたは戦闘に集中して!ってことだな。

決して俺に言っても意味がないとか思われてるわけじゃないはずだ。

 

まぁ俺には7本の航路って言われてもどれがどれかなんてわからないし、こういうのはしっかりしてるロビンに任せておこう。

原作だったら確かサボテンの島に行ってバロックワークスと戦ってたけど、ロビンがここにいるからバロックワークスは存在してないのかもしれないし、わざわざそこに行く必要もないだろう。

 

 

「なぁロビン、まだ出発しないのか?」

 

「ええ、ここから先の海はね。島同士が引き合うように強力な磁力によって繋がれているのよ。だからこの記録指針(ログポース)に磁力を記憶してから、記憶された指針が示す先に次の島があるの。今は記録(ログ)を溜めてるところよ」

 

「なんか初めて来たとは思えないほどの知識っぷりだなぁ。いつの間にそこまでの情報を集めてたの?」

 

「ウエストブルーだけで私の知りたい歴史が見つかるはずないもの。もちろん他の海も同じ可能性が高いわ。そうなれば一番に思い当たるのは偉大なる航路でしょ?だから偉大なる航路の事はそれなりには調べたつもりよ」

 

 

そこまで調べているとは…ロビン恐るべし。いや俺が原作知識にあぐらをかいて何も調べてないだけか?

もしかしたらそれが普通で、ルフィたちみたいに勢いで行っちゃうほうが間違ってるのかもしれない。

つまり俺も傍から見たら何も考えずに偉大なる航路に突っ込んで行っただけに見えるって事だよな。

やばい、どっかで頭脳派な事をアピールしとかないとおバカキャラだと思われてしまう…

俺は断じてバカではない!浪漫を求めるだけの一途な男とかそんなんだ!

 

 

「どうやらログが溜まったようね。ちゃんと次の島を指してるみたいだし、そろそろ行きましょうか」

 

「オッケー!俺に任せろ!偉大なる航路にロマンってものを見せつけてやるぜ!」

 

「はぁ…またおかしな方向に行ってるわね。いつもの事だけど。とにかく行きましょ」

 

 

しかしこの時の俺はすっかり忘れてたんだ。偉大なる航路1本目の航路が荒れに荒れまくる事を…

 

雨が降り強風に吹かれ、嵐が来たと思ったら無風になったりと無茶苦茶な天気の中を必死に突き進んで行った。

備え付けられてた傘をデカくして雨風を凌いだり、あんまりにも船が揺れる時は船を巨大化させて持ちこたえたりしながらも、なんとか次の島へと辿り着くことができた。

ロビンはずっと指針を見てないといけないから、方角だけに専念してもらって俺はとにかく必死に船を沈めない事だけ考えてた。

 

こんなに荒れるとは思わなかった…もしかしてこれから先ずっとこんな船旅なのか?

そうだとしたらみんなすごすぎだろ。海賊なんてやらなくても食っていけるって。

 

 

「なぁロビン。これから先もこんな荒れた海を進んでいくことになるのか?」

 

「場合によってはそうなるでしょうね。でも偉大なる航路は最初が一番厳しい航海になるって聞いてたから、これからはもう少し楽になると思うわ」

 

「あー…そうか。そういえばそうだったな」

 

「?」

 

 

ロビンに聞いて思い出したよ。てかそんな細かい描写までいちいち全部覚えてないっつーの!普通に忘れてたわ。

それに思い出したって言っても「そんなこともあったっけな」くらいなもんで、後から思い出しても何の役に立たない無駄知識だな。

 

 

「ハンマ、そろそろ島が見えてきたわよ」

 

「おー、やっと着いた…くそっ、天気ごときに翻弄されるとは。こうなったら俺のハンマーで嵐も吹き飛ばせるようになってやる!」

 

「いい加減現実(こっち)に戻ってきてくれないかしら」

 

 

確かどっかで雲を斬ったり空を割ったりしてなかったっけな…

誰かにできるんならきっと俺にだってできるはずだ。でもハンマーで斬るのは無理だな。

 

こうなったら空を斬る時だけ剣を持つか。巨大化させた剣でイデオンソードみたいに振り下ろして天を切り裂く。カッコイイ…

 

 

「ハンマ?」

 

「あーごめんごめん。ちゃんと島も見えてるし船を付ける準備するね」

 

 

どうやら着いた島はサボテンの島とは違うところみたいで、港町みたいなものも見えるから原始的なところでもなさそうだ。

見たところ海賊船もあるにはあるが略奪してるって感じでもないし、もしかしたら「偉大なる航路でこれからがんばろう!」とか言いながら決起集会でも開いてるのかな?

 

しかしなんでみんなワンピース目指してるんだ?ロジャーのお宝狙いなんだったっけ。

確かネタであったの思い出したけど、もしロジャーのお宝が服のワンピースだったらどうするつもりなんだ?

それを着させて嫁さんとイチャイチャするのが楽しかったとかいう思い出の品だったりしたら海賊たち絶望するんじゃないのかな…

 

あれか。ロジャーは白い砂浜に白いワンピースで日傘とかが好きだったりしたのかな?…ってそれ俺じゃん!

あーあと忘れちゃいけないのが子犬ね。これは必須アイテムだ。でも代替アイテムとしてチョッパーなら可。

 

あーチョッパー欲しくなってきた…綿あめあげるから仲間になってくれないかな?

 

 

「思ったよりも普通の町のようね。ログも溜めなきゃいけないし、私はこの町で歴史の古い国とか遺跡の情報を集めることにするわ。あなたはどうする?」

 

「んー、ただ待つのもなぁ…何か買い揃えるようなものってある?」

 

「そうね…今のところ特にないわ」

 

「じゃあ買い物でもしてこようかな。天を切り裂く巨大な剣をさっき思いついたからやってみたくなってきた」

 

「わかったわ。じゃあハンマは私と一緒に情報収集ね」

 

「あれ?ロビンさん?」

 

 

ロビンに手を引かれてそのまま町を歩いていくんだけど、なんかおかしくない?

別に何も悪いことしようとか思ってないよ?ちょっと天を斬るだけだよ?

 

…まぁきっとロビンも初めての偉大なる航路で緊張してるんだろうな。

ここのところお姉さんぶってたから言うのが気恥ずかしいとかそんなんだろう。俺にはわかってる。

大人しくロビンに手を引かれたままお店や酒場とかで話を聞いていくんだが、なんか老人と話してる事が多いな。なんか意味あるのかな?

 

 

「なぁロビン。さっきからなんで老人をメインで話しかけてるんだ?」

 

「古い歴史の事を聞くなら長く生きてる人のほうが知っているからよ。偉大なる航路の情報なんかもお爺さんたちのほうが知っていたわ」

 

 

そういう事か。確かに情報を集めるなら年若いやつよりも老人のほうが長く生きてる分だけいろいろと知ってて当然だ。

「今」の情報なら情報屋とかのほうが詳しいんだろうけど、ロビンの求めているものは昔を知っている人のほうが得られる可能性が高いもんな。

ロビンが話を聞いている人たちは確かに昔の事をいろいろと知っていた。ただ、偉大なる航路を行き来している人はあまりおらず、いても海運で近くの島に行ったことがあるとかだった。

 

ただ、この近くで歴史の古い国という事を聞いた時にアラバスタの名前が出てきており、3000年だか4000年だかのかなり古い歴史を持つ国なんだという情報を手に入れることができた。

 

あらロビンさん何かアラバスタに興味持っちゃってる感じかな?他にもいくつかの情報を手帳に書き留めて、今度はアラバスタの事を聞き始めたぞ。

 

今度は現状のアラバスタの国や行き方を調べるために酒場などの情報が集まるところへと移動し、ここから行くなら永久指針(エターナルポース)というものがないと行けないという事がわかった。

更に今は王下七武海のクロコダイルがアラバスタを根城にしており、アラバスタを襲おうとする海賊などは海軍やアラバスタの軍隊ではなくクロコダイルが排除しているらしい。

 

やっぱりクロコダイルはアラバスタにいたのか…てことはやっぱりアラバスタ博物館は存在しないのかな?

 

 

「ロビン、アラバスタに行きたくなったの?」

 

「…ええ、この近くで4000年もの古い歴史を持つ国。ポーネグリフがある可能性は高いと思っているわ」

 

「でもここからだと行けないらしいけどどうする?リヴァースマウンテンに戻るの?」

 

「いえ、エターナルポースを探すか、行き方を調べるわ。この島になくても次の島にあるかもしれないし」

 

「確かに。もしかしたら島と島を結ぶ連絡船とかもあるかもね」

 

 

 

 

 

どうやら次の目的地はアラバスタで決定のようだ。俺のハンマーが活躍する時がきた!!

 

 

 

 

 

 



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06.アラバスタを目指すドン!

 

 

 

アラバスタなう。

 

 

 

これだけだとすぐにアラバスタまで来れた感じになるが実際は結構時間がかかった。

 

結局最初の島ではエターナルポースを見つけることもできず、島と島を結ぶ連絡船もなかったため普通に次の島を目指すことになったんだ。

ロビンもそのあたりは織り込み済みのようで、ログが溜まるまでは大人しく宿で本を読んだりしながら過ごしていた。

 

俺はやろうとしていた天を切り裂く巨大な剣をロビンに止められてしまったため、一応準備だけということで剣を買うだけにしといた。

 

まぁロビンからしてみれば、わざわざ余計な事をして目立つ必要はないということだろう。

 

俺としては巨大な剣はロマンだと思うしみんなに見せたい気持ちがないわけではないが、それで追いかけられるのも面倒だし、アラバスタに行けば使うチャンスはあると大人しくしていた。

 

 

どうやら数日でログは溜まったらしく、船を出して次の島を目指して進んでいく。

多少天候が荒れたりはあったものの、最初に比べたら問題のない程度でしかなかったのでスムーズに次の島に辿り着けたと言っていいと思う。

 

 

 

ただ、次の島が問題の多い島だった。というか海賊(問題)が多い島だった。

 

これは俺たちのタイミングが良かったのか悪かったのかわからないが、最初の航海で危険な目に遭いなんとか次へと進んだはいいけれども、そこから進むために準備しているところに他の海賊もやってくるの繰り返しだったみたいだ。

そして、後から聞いた事だが海賊が増えていく理由の1つとして、ログが溜まるのに1ヶ月かかるのも大きな要因になっていた。

 

つまり、海賊が来る>1ヶ月ログが溜まるまで待機しないといけない>その間に他の海賊が来てしまう、というサイクルで海賊の溜まり場のようになってしまっていたらしい。

 

もちろん海賊が他の海賊を見つけたら平和的に「お、お前たちもワンピース狙いか?お揃いだな!宴にしようぜ!ぎゃはははははは」なんてなるわけがない。

当然「なんだあいつは!」「敵が来たぞ!応戦しろ!」「俺たちに歯向かうだと!」「叩きのめしてやれ!」となるわけだな。

その結果小競り合いに発展し、最後には海賊同士の争いにまでなっていたようだ。

 

これが2つの海賊だけだったらそこまで大きな問題にならないんだろうが、そこに更に他の海賊が割って入り、更に更に別の海賊がっていう悪循環みたいな事になってたらしい。

 

 

その島に住む町の人たちも海賊同士の争いに巻き込まれたくないからか、みんな家に閉じこもったりしているようで、もはやある意味海賊の島と言っていいくらいだった。

ただ運が良かったのか住民が襲われたりはしていなかったようだが。

いや、これは運が良いというか、目の前に別の海賊がいるから一般人に目を向けてられないって感じなんだろうな。

 

 

そして、なんでかわからないんだが海賊たちは自分の懸賞金を自慢する傾向にある。

名刺代わりというか「俺たちは○○○○万ベリーの懸賞金をかけられているだぜ!」とか普通に言い出すんだよ。

ちなみに高いやつでも1000万ちょっととかそれくらいだった。よくそれで自慢できるもんだ。

仕方ない。上には上がいることを教えてやろう。

 

 

 

お前らそれ言い出したらうちのロビンさんすごいんだぞ?

初頭手配で7900万ベリーで、今なんて海賊やら潰しまくって8900万ベリーになっちゃってるんだからな!

懸賞金が高いほうが偉いんならお前らみんなロビンさんの手下になりやがれ!このザコどもが!

 

 

 

そうやって俺も一緒になって(ロビンの)自慢してたら争ってたはずの海賊たちがみんな仲良くこっちを襲ってきやがったんだ。

これはあれか!?懸賞金を自慢するフリをしておいて、本当は一番高いヤツを協力して狙うという海賊たちの暗黙のルールみたいなやつなのか!

 

 

それならそれで受けて立ってやらぁ!!

 

 

そこから巨大化させた自慢のハンマーを振り回しては海賊をまとめて空の彼方へとぶっ飛ばしたり、大勢でかかってきたところを振り下ろして1叩きで潰して地面に埋めてやったりしていった。

中にはロビンに気付いて「あの女、悪魔の子だ!」って言ったやつがいたんだが、ロビンを悪魔の子と呼んだ事に頭にきてそいつには全力フルスイングでホームランかましてやったがな。

気がついた時には残った海賊どもが並んで土下座しており、どうやらロビンの偉さとハンマーのロマンをしっかりと理解してくれたみたいだ。

 

その結果海賊たちは俺のことを「ハンマ兄さん」ロビンのことは「ロビン姐さん」と呼ぶようになり、争っていたはずの海賊たちがなぜか仲良く手下みたいな感じになったりした。

 

 

ちなみにロビンにはものすごく冷たい目で見られてた…

 

 

「お前ら!これ以上ぶっ潰されたくなかったら大人しくしてろ!」

 

「「「「「はい!ハンマ兄さん!!」」」」」

 

「ロビンからも何か言ってやれ」

 

「あなたも一緒になって暴れてどうするのよ…ところで私たちアラバスタに行きたいのだけれど、誰かエターナルポースとか持ってないかしら?」

 

 

海賊たちはみんな声を揃えて「ロビン姐さん、おれたちは持ってません!」と返してた。

そりゃそうか。偉大なる航路に入って2つ目の島にいる海賊たちがアラバスタ行きのエターナルポースなんて持ってるはずないよな。

ロビンも万が一の奇跡みたいな確率で持っていればいいなって感じで一応聞くだけ聞いてみたってところか。

 

しかし、これで海賊騒ぎは解決したとはいえ、1ヶ月もここに滞在しないといけないってのは長いな。

そう思って何かロマン的な技でも開発するかーとかのんきに考えてたんだが、思わぬところから情報が入ってきた。

 

海賊たちが大人しくなったことで、今まで自宅待機していた住民たちが何かあったのかとぞろぞろと出てきた。

どうやら海賊たちが戦って騒がしかったのに、急に静かになったことを不審に思っていたようだ。

俺が「ちゃんと説教しといたから、もう暴れたりしないから大丈夫だよ」と伝えてあげたらとても喜んでくれた。

そこでアラバスタに行きたいんだけど何か方法ない?って聞いてみたら、アラバスタと交易している島になら行ける事がわかった。

 

どうやら大海賊時代を迎える前までは行っていた海運業が、海賊が蔓延るようになってしまってからはできなくなってそのままだったらしい。

その島までのエターナルポースで良ければ、海賊を大人しくさせてくれたお礼ということで俺たちにくれるとの事だ。

 

 

つまりアレだよ。海賊たちを一網打尽にして住民からお礼にエターナルポースをもらうために俺は一暴れしたんだよ。すべては俺の策略とか計算だったのさ。

…ほんとうまいこと進んでくれて良かった。もうこのままシャボンディ諸島まで行っちゃうかと思ったよ。

 

その日はこの島で一泊し、住民からエターナルポースを受け取った俺たちはそのまま島を出ることにした。

なぜか海賊たちは盛大に見送ってくれて、この島ではもう争ったりしないと約束までしてくれた。

 

…なんであいつら海賊なんてやってるんだ?めっちゃノリのいいだけのやつらだったぞ?

 

まぁこの世界では憧れの職業第一位に海賊とか書かれてるのかもしれないな。

ってそれじゃダメじゃん。海軍もっとがんばれよ!

 

 

そのままエターナルポースに従って次の島を目指していき、着いた島にあるアラバスタ行きの交易船に頼んで後ろを着いていく事になった。

 

ただ、アラバスタとは距離もある事から毎日運航しているわけではないらしく、天候の影響もあるため1週間に1度から2週間に1度くらいのペースで船が往復しているとの事だ。

次の船が出るまでは大人しく待つしかないが、アラバスタ行きの定期便を待つだけなので気楽に待てばいいのが救いだな。

 

その間はロビンは大人しく宿で読書、俺は新しいロマン技を考えて過ごしていた。

 

アラバスタへの定期便は1週間ほど待ったところで戻ってきたらしく、整備して補給してから出港するので2日ほど準備に時間がかかるとの事だった。

 

そして2日経って定期便の後ろを着いて行きながら一路アラバスタを目指していった。

 

ちなみにこの島からアラバスタまでの航路は、リヴァースマウンテンからログを順番に辿って進んでいく航路とは交差することはあっても重なる事はないため、海賊に出会うということもなかった。

 

 

 

そして今に至るというわけだ。

 

 

 

思ったよりも早くアラバスタに来れたというか、順調そのものだった気もする。

本来普通にワンピースを目指す海賊ならかなりの寄り道になるんだろうが、ポーネグリフを目指すロビンにとってはこっちが最短経路なんだもんな。

 

ちなみに今はナノハナってところでひとまず宿を取りロビンの部屋で今後の相談をしているところだ。

 

 

「ロビン。アラバスタに来たのはいいけど、ここからどうする?歴史の古い物って言ったら王宮とかが代々王家のなんとかとか保管してそうだけど簡単に見せてくれるかな?」

 

「さすがに難しいでしょうね。突然ポーネグリフを見せてくださいなんて言ったら下手したら捕まっちゃうかもしれないわ」

 

「だよなぁ。アラバスタ歴史博物館とかやってないか期待してたんだけど、やっぱりそんな都合のいいものはなかったわ」

 

「あなたの発想はほんとよくわからないわね。それはちょっと都合が良すぎよ」

 

「せめてどこにあるかわかればなぁ…」

 

「…ねぇハンマ。もし場所がわかったらどうするつもり?」

 

「ククッ、そりゃあ…ねぇ?」

 

 

まぁ王宮にあるのは知ってるんだけどね。とはいえ確かに見せてくださいって言って見せてくれるような事はないだろうな。

 

ちなみに今俺の頭の中にあるのは巨大な剣をお城に叩きつけるプランだ。

 

これなら剣でお城を真っ二つにするだけで済み、ハンマーに比べて被害が少ないのが特徴だ。

 

俺が陽動役を行い、そして大混乱してるうちにロビンがポーネグリフをこそっと探して見つけるというルパンも納得の方法である。

 

あとはお城に向かって最大化ハンマーを振りかぶって「ポーネグリフ見せてくれないとこのハンマー振り下ろしちゃいそう」プランもある。

 

こっちはクロコダイルやお城の兵士たちが飛んできて戦う可能性が出てくるのと、仮にクロコダイルや兵士たちを倒しても倒さなくても犯罪者扱いされる可能性が高いということだ。

 

そしてクロコダイルとの戦いとなった場合はロギア系の能力者なだけに、今の俺ではあまり真正面から戦いたくはない。

 

いくら俺が武装色の覇気を使ってダメージを与えられるとはいえ、巨大ハンマーを食らってくださいとばかりに振り下ろしても避けられるだろう。

 

だからこのハンマー振りかぶり脅迫の場合は、脅しが通じなかった時点でハンマーを振り下ろして逃げるか、振り下ろさずに逃げるかするしかない。

 

 

無人島の時から考えていたことだが、ロギアと戦うなら逃げ場がなくなるほど巨大化させた覇気ハンマーじゃないと難しいと思う。それか完全な不意打ちか。

不意打ちだって見聞色の覇気があれば避けられる可能性は高いから、そうなってくるとやはりどれだけ巨大化させられるかにかかってくるな。

 

昔からだが、俺の仮想ロギアの敵は海軍の三大将とかである。

あいつらはインパクトあったからよく覚えている。

戦うかは別として、あれくらいのレベルのロギア系を倒すとしたらどうすればいいのかという事を考えるのに丁度いい存在なのだ。

 

考えた結果が空を覆うほどに巨大なハンマーで逃げ場をなくして叩き潰すだったわけなんだが…

 

 

「ねぇハンマ。あなたが何を考えてるのか知らないけど、それはダメよ」

 

「え?まだ何も言ってないのに?」

 

「だってろくでもない事を考えてるのが丸わかりよ?どうせ巨大ハンマーで城ごと叩き潰そうとか考えてたんでしょ?」

 

「残念でしたー。今回は前にできなかった天を切り裂く巨大な剣でお城を一刀両断しようって考えてたんだもんねー」

 

「…何が違うのかしら」

 

 

ロビンが言ったのは第2プランのほうだ。

まだまだロビンに俺の考えを読むのは早かったようだな!…いや、読まれないほうがいいに決まってるじゃん俺。

 

てか、俺が暴れて陽動プランがダメならどうするつもりなんだろ?

やっぱりクロコダイルを古代兵器(プルトン)を餌にして動かすのかな?

別に俺はどっちでもいいけど、うちのロビンはあんまりそんな事しない感じに育ったと思ったんだが違ったか。

 

ロビンって俺がいなかったら裏社会を渡り歩いて「利用されるほうが悪いのよ…」とか言ってる感じなんだったっけ?

決め台詞は「あなたの栄養(生命)を得て()は美しく咲き誇る!」とかそんなんだったような気がする。すげーなロビン、まるで悪女じゃん。

 

いてっ、そんな事を考えてたら俺の肩から生やした手でゲンコツされた。

 

 

「余計な事を考えてないでちゃんと話を聞いてちょうだい」

 

「ごめんごめん。んで、結局どうするの?」

 

「そうね。きちんと説明するわ。まずは…」

 

 

 

 

 

こうして俺とロビンの「アラバスタのポーネグリフを見よう」作戦が開始された。

 

 

 

 

 

 



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07.暗躍する計画を立てるドン!

 

 

 

「ハンマ、どうやら作戦は一旦中止になりそうよ」

 

「うん?まだ何もしてないから大丈夫だけど何かあった?」

 

「ええ、これを見てちょうだい」

 

 

あれ?せっかく作戦を立てて実行する準備してたのに何か問題でもあったのかな?

と思ったらロビンが手紙を渡してきた。なになに?

 

 

ニコ・ロビンと話がしたい、レインディナーズに来られたし。クロコダイル

 

 

なんでロビンがアラバスタにいることを知ってるんだ?港に部下でも配置してて賞金首だったら報告しろとか言ってあったのかな?クロコダイルならあり得るな。

でも今の民衆の支持を得ているクロコダイルだったら、住民が知らせたって線もあるのか。

 

まさかクロコダイルからの呼び出しがあるとは思わなかった。

 

ロビンが立てた作戦は穏便にアラバスタ王宮に潜入してポーネグリフの在り処を探していくというものだったので、俺も護衛隊として少しずつ地位を上げながら信用を得ていく予定だったんだ。

いくら兵士たちより強くてもすぐに中枢に入り込めるわけじゃないから、2~3年くらいかけて王様とも面識がある状況にして、あわよくば直接話す事ができるくらいになれればいいなとか考えてた。

 

そうやってある程度宮殿の中とかを自由に歩き回っても不審に思われないだけの信用を得てから、ロビンがメインになってそこら中を探し回るのだ。もし誰かに見つかっても見回りとか言い訳できるし。

それで見つけることができたら、2人揃って適当な理由を並べてアラバスタを出る。

これなら誰にも迷惑をかけずにこそっとポーネグリフを確認して去ることができるはずだったんだ。

 

…そんな矢先にクロコダイルから接触だ。さすがにこのまま王宮に潜入するわけにはいかないな。

 

俺の事は知ってるのか知らないのか、そのあたりも不明なのでロビンだけでクロコダイルに会うつもりらしい。

まぁ原作ではロビンはバロックワークスの副社長とかやってたくらいだし、今回も同じように秘密結社を一緒に作ろうとかいう勧誘かもしれない。

てか、秘密結社っていい年して恥ずかしいと思わないのか?

 

ロビンはレインディナーズというクロコダイルが経営するカジノに呼ばれているので、俺も建物の外までは一緒に行き、ロビンの話し合いが終わり戻ってくるのを待つことにした。

 

さて、どんな話になるのやら…

 

 

 

 

 

「お、話し合いは終わったみたいだな。クロコダイルはどうだった?」

 

「そうね。計画の大幅な変更が必要になったけれど、一応彼との話し合い自体は合意したとだけ言っておくわ」

 

「うん?なんか意味深な感じだな。合意したってことは何か持ちかけられたりした?」

 

「…そのあたりは宿に戻ってから詳しくするわ。ひとまずナノハナの宿に戻りましょ」

 

 

ロビンが戻ってきた。特に怪我とかもなさそうだし、どうやら話し合いだけして終わったみたいだ。

話し合いの結果は戻ってから話すということなので大人しくナノハナまで戻ることにした。

ロビンはずっと考え事をしてるので、俺も大人しくロマン技を考えていた。

 

ちなみにロビンの背中からたくさんの腕を生やして千手パンチとかやってもらいたかったんだけど、たぶんっていうか絶対に言ったら怒られると思うのでまだ言えていない。

 

宿に戻ってもまだロビンは考え事をしているみたいなので、宿の人にご飯は部屋で食べるからと2人分もらって戻り、ロビンが現実(こっち)に戻ってくるのを待つ。

お、どうやら考えが纏まったようだ。

 

 

「お待たせ。ご飯をもらってきてくれたのね。それじゃあ食べながら説明するわ」

 

「おっけー。それじゃいただきます」

 

 

ロビンとクロコダイルとの話し合いはやはり予想していた通りだった。

 

クロコダイルは自身の部下に港町で見張りをさせており、海賊や賞金首が来た時には連絡するように言っていたようだ。

そこにロビンが現れたことでクロコダイルに連絡が行ったらしい。

 

そっか。ロビンの手配書が子供の写真のままだったら気づかなかったかもだけど、俺と一緒に海賊を潰したりしてるから金額と一緒に写真も更新されてたのか。

それによってすぐにロビンだとわかってしまったんだな。そこまで気が回らなかった。

 

俺の事も一緒にアラバスタに来た男ということだけは知っているようで、ロビンは戦力になるから連れているとだけ伝えているそうだ。

 

そして肝心のクロコダイルの話したい事だが、この国にある「とある物」を探しているということだった。まぁ古代兵器(プルトン)だろうな。

 

どうやら何処かでその存在を知り、アラバスタにある可能性が高いということでこの国を根城にしているらしい。

もちろんこの島の環境がクロコダイルにとって優位に働くというのも根城にしている要因ではあるらしいが。

 

ロビンはクロコダイルの言った内容を聞いて、この国にある物ということでポーネグリフを探しているのかもしれないと疑っているみたいだ。

まあ結果的に間違ってないもんな。ポーネグリフに書かれてあるプルトンの在り処を知りたいわけだし。

 

ロビンもこの国に来た目的は探しものがあるとだけ言って詳しくは言わなかったようだ。

ただ、王宮かその周辺に隠されている可能性が高いだろうというのは双方の見解が一致したことで、クロコダイルとしてはお互いに探しているものを手に入れるために手を組まないかということだった。

 

クロコダイルは既にアラバスタの民衆から支持されていて、その影響は計り知れない。

本人もそうなるようにわかっていて行動しているので、クロコダイルからすればそれらも計画の一環なのだろうとロビンは考えているようだ。

 

俺たちが来なければ、普通にアラバスタ王国の英雄として国王に近づき、プルトンの在り処を聞き出そうとしていたのかもしれない。

 

手下や外様の海賊なんかを使って危機を演出し、王国崩壊の憂き目に会えば国王とてプルトンを持ち出すかもしれないと考えてもおかしくないな。そしてクロコダイルなら迷わず実行するだろう。

それでアラバスタが滅んでも自分が国王として再建してからプルトンを探せばいいし、もし国を守るためにとプルトンを持ち出してくれれば横取りすればいいだけだ。実に理に適った計画だと思う。

 

ただ、その計画で行くとすれば表ではアラバスタの英雄として活動しつつ、裏では水面下でこの国にある護衛隊や、もしかしたら援軍として来るかもしれない海軍の戦力をも上回るだけの戦力を集める必要がある。

 

まぁクロコダイルならそれくらい我慢強くやるのかもしれないが、そこにロビンが現れた事でクロコダイルは考えていた計画を修正しながら早める事ができるかもしれないと思いロビンを呼び出した。

もしロビンが手を組む事に合意しなければ、賞金首が入り込んでいたとして始末すればいい。

だが合意したら有能な人材が手に入る。クロコダイルの考えはそんなところだろうな。

 

ロビンが海賊としてではなく、原因はわからないまでも単身で賞金をかけられているからこそ声をかけたのかもしれない。

写真が更新される前の手配書を覚えていれば、ロビンが子供の頃から賞金首になっていたことはわかっているはずだ。

そして今も俺という連れはいても、ほぼ単独のような動き方でアラバスタへと現れた事によって未だに追われているのだろうと予測した。

 

そしてそんな考えを読んでロビンもクロコダイルと手を組むことにしたと。

 

詳しい内容は次の話し合いの時に決めていくらしいけど、大まかな計画については既にできていて俺の予想通り反乱を起こさせるらしい。

クロコダイル自身の信用度をこれ以上上げるよりも、王家の信用を落とす事で民衆の不信感を煽るそうだ。

 

そして内乱となれば海軍が出張ってくる可能性は低く、更には王下七武海の一角が王家を打倒した民衆を導く事で海軍の出番はゼロとなる。

王宮の護衛隊と反乱を起こした民衆をぶつけることでクロコダイルは戦力を余分に集めたり無駄に消費したりすることもなくなる。

 

ひとまずクロコダイルとの話し合いとヤツの計画はこんな感じだったそうだ。

 

なんか駆け引きというか、思考の攻防がすごいな。俺じゃ絶対できないやつだわ。

 

もうここまででお腹いっぱいになってきた。

 

 

「なんていうか…お疲れさま。手を組むってことはクロコダイルの暗躍に手を貸すってことでいいの?」

 

「一応はそうなるわね。彼が私たちを引き込んだことで、どういった方法を取るのかはまだわからないけれど、今のところは素直に従っておくつもりよ」

 

「今のところってことはロビンは何か考えがあるってこと?」

 

「ええ、彼の求めている物は私の求めているものと同じかもしれないし、それに今後を動きやすくするためにちょっとハンマにやってもらいたい事もあるしね」

 

 

 

 

 

そしてここからがロビンがクロコダイルと話して、手を組むことになった後に考え出した計画との事だった。

 

 

まずしばらくの間はクロコダイルの計画通りに、王家の信用の失墜や民衆の不信感を煽っていくのはそのまま実行する。

 

王家の失墜についてはまだどうするのか決まっていないが、何か不祥事を起こさせるかこちらで予め用意していたものを発見させる形で信用を失わせることになる。

 

それを発覚させるか、こちら側の人間に発覚させた事にして不信感を煽り、ただ民衆任せになんて事はしないはずだから、扇動するものが必ず必要になるのでそれを集める。

 

民衆が決起したとしても、王国の護衛隊というのは当然民衆よりも強いのは間違いないので、ある程度抑えておけるようにそれなりに強くて使えそうな人材を集める。

 

ここまでで数年くらいかかる予定。

 

そしてここからが本番。

 

護衛軍と決起した民衆たちとの戦いの最中に、何か全員の目を引くような事をして一旦争いを止めさせて、そこに俺が黒幕がクロコダイルである事を暗躍していた証拠を見せながら知らせる。

 

クロコダイルは王下七武海ではあるがあくまでも海賊であることを伝え、暗躍して反乱を誘発させて国家の乗っ取りをしていた事を、世界会議にも出席している世界政府加盟国アラバスタのコブラ国王の前で明らかにすることで世界政府に対する証人とする。

 

そうしてアラバスタ国民全員が見ている前で俺がクロコダイルを倒しアラバスタを救う。

 

それによって暗躍していたという証拠と、バロックワークスが扇動していたという状況証拠も揃い、クロコダイルは王下七武海の地位を剥奪される。

 

そして空席となったところに、アラバスタ国王の推薦によって俺が王下七武海に収まる。

 

そうすることで王下七武海の権限が使用できるようになり、ロビンも七武海の庇護下にあることになる。更には賞金首であることによって今まで行けなかった政府関連の施設などにも入ることができる。

これによって俺は今までもやっていたが、堂々と海賊たちを叩き潰すことができ、ロビンは堂々とまではいかないがある程度動きやすくなることができる。

 

 

これがロビンが考えた計画という事だった。

 

 

…ロビンすごくね?クロコダイルとの話し合いの後でここまで考えてたんだ。

 

 

しかも俺、民衆たちが見てる前でクロコダイル倒さないといけないのか…

 

俺がクロコダイルを倒すとなると、たぶんかなり周囲に被害出ると思うんだけど大丈夫なのかな?

しかも戦い方が覇気ハンマーでクロコダイル目がけてぶっ叩いて、クロコダイルが覇気ハンマーから逃げるみたいな…もぐら叩きに見える戦いだと思うんだけど、ほんとに大丈夫なのか?

 

 

まぁ今のロビンの計画はあくまでも現段階でクロコダイルと話した結果から考えてるから、もしかしたら変更になるかもしれないし…

でもロビンの計画だからなぁ…たぶんクロコダイルが何か違う事を計画していても、結局最後は帳尻合わせて戦わなくちゃいけなくなる可能性のほうが高そうだ。

 

 

そうやって俺を救国の英雄に仕立て上げて国王から王下七武海への推薦を取り付けるとか、そんな簡単にできるもんなのかな?

しかもクロコダイルに協力しながら暗躍しといて、最後は自分たちでクロコダイルを倒すとかマッチポンプもいいところな気がするんだが…

 

まぁ実際に王下七武海っていう権限は大きいもんな。黒ひげとか海賊女帝だってインペルダウンに普通に入れるくらいだったわけだし。

ロビンが倒しても懸賞金が上がるだけになるだろうから、今はまだ手配されてない俺のほうが都合が良いのはわかる。

 

 

つまり人材集めとかする数年の間に、本気で対クロコダイルのための特訓とかしたほうがよさそうだな。

あと海水とかを瓶詰めしてたくさん用意しておくか。そんでもってロビンにこっそりいろんな方向から投げてもらえばいけるんじゃね?

別にタイマンで勝たないといけないとかないだろたぶん。

 

 

 

 

 

まぁ最悪の最悪は最終手段を使うかもしれないけど、できればこれだけは使いたくない。

 

 

 

 

 

 



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08.犯罪秘密会社だドン!

 

 

ロビンと共にクロコダイル失墜計画を立ててから、ロビンはクロコダイルと何度も話し合ってアラバスタ乗っ取り計画を煮詰めていった。

 

すごいよな。ロビンはクロコダイルと計画を立てながら、裏では俺と一緒にそれを潰す計画も立ててるんだから。

 

本当ならばさっさとクロコダイルを始末できればアラバスタにとって一番良い結果になるのはわかってるが、今の状況だとクロコダイルを倒しても国民から悪者にされるのは目に見えてる。

更に国王までもがクロコダイルを信用している以上、今の段階でどれだけ危険性を訴えても意味がないだろう。

 

そして今のうちにクロコダイルを倒すとなると、ヤツを支持してる国民に見られてもいけない事になるんだが、砂のロギアと戦うのにそんな簡単に気づかれずに暗殺みたいな真似ができるはずもない。

 

俺としては今のうちにクロコダイルのいるレインディナーズをドォンってやってしまいたいんだが、もしやってしまったらアラバスタが敵になるんだろうなぁ…

 

 

…別に敵になっても問題なくね?あーでもロビン的には王下七武海の地位ももらっちゃう計画っぽいしな。

 

 

クロコダイル叩き潰して世界政府に持っていったら「じゃあ君が次の七武海だ!」とかならないのかな?

あーでも知名度とかも必要なんだったっけ。今の俺は賞金首のはずのロビンと一緒にいるから賞金稼ぎじゃなくてただの海賊潰しみたいに思われてそうだもんなぁ。

 

ちなみにロビンは忙しく動き回っており、そこそこ名のある賞金稼ぎや腕のたちそうな人物に声をかけたりして人材確保に走り回っている。

俺はというと、海に出ており海賊を見かけたら叩き潰したり、対クロコダイルのために戦い方を模索したりして過ごしていた。

 

本当なら海賊船が見えた段階で、巨大ハンマー振り下ろして船ごと一撃粉砕で海の藻屑にしてやるところなんだが、ちょっとでも近接戦闘の経験値を稼ぐためにあえて1対多数の戦いをしていたりする。

 

クロコダイルは砂のロギアだからいつどこから攻撃が来るかわからないため、複数の海賊をクロコダイルの攻撃に見立てて回避したり防御したりと特訓に活用していた。

もちろんこんなのは対クロコダイルにもなっていないのはわかってるんだが、見聞色の覇気が使えない俺ではこうやって少しでも反応速度を上げたりしとかないと、気がついたらミイラになってたとかシャレにならんからね。

 

 

 

余談だが、世間では今四皇という言葉が広がりを見せているようだ。

つまり赤髪のシャンクス率いる赤髪海賊団が新世界の新たな勢力として認められたわけである。

 

でもさ、元々白ひげとカイドウとビッグマムがいたところに対して、海軍と王下七武海で均衡を保ってたわけじゃん。

 

そこにシャンクスが加わるんだったらさ、海軍と王下七武海サイドもまた誰か加えないとバランス悪くならないか?

例えば赤髪海賊団と1人でやりあえるようなヤツが加わったとかだったら理解できるんだけど、そんな制度が追加されたり高名な誰かが加わったなんて話は聞いたことがない。

 

 

つまり今の状況は、戦力バランス的には四皇側に大きく傾いていると言ってもいい状況のはずだ。

それか、逆にシャンクスが入るまでは海軍と王下七武海側のほうに大きく天秤が傾いていたのかどちらかだな。

 

それでシャンクスが入ったことによって天秤が戻ったと考えるなら納得できる話だ。

 

そこまで海軍と王下七武海のほうが戦力が大きいとは思えないんだが…

 

頂上戦争を思い出す限り、白ひげ海賊団と傘下の海賊団が勢揃いしていたとはいえ、本来ならばそいつらも含めてさっさと撃退なり殲滅なりできてないと辻褄が合わない。

 

まさか傘下の海賊たちは戦力として計算せずに、単独海賊団の戦力だけを見て「世界の戦力の均衡がー」とか言ってるわけでもあるまいし。そうだったら世界政府とかバカの集まりになるぞ。

 

例えば俺が目指している空を覆うほどの巨大覇気ハンマーで、ロギアだろうがなんだろうが関係なく、更に傘下の海賊を率いてどれだけ大艦隊で来ようが関係なく、全部纏めて一撃粉砕できたと仮定して、それができる俺が海軍側に付いていたのなら天秤は海軍側に大きく傾くだろう。

 

それは極端だとしても、海軍本部と王下七武海が集合してエース1人処刑するのにあそこまでゴタゴタするほうがおかしいはずだ。

 

それともあの頂上戦争を思い返すに、四皇のうち1つ対海軍+王下七武海で均衡が取れてるってことか?

あの戦いを考えるとそれなら均衡が取れていると見れないこともない。

 

でも、もしそうなら海軍があと3つと王下七武海があと3つないと四皇との戦力の均衡取れなくね?

 

 

 

ダメだ。考えてるうちに段々と訳がわからなくなってきた。

別に俺は考察がしたいわけじゃないんだが、そんな事を考えると1つ問題が発生するんだよな。

 

そう、ロビンの計画通りにクロコダイルの代わりに俺が王下七武海になったら、俺も白ひげと頂上戦争しなくてはならない可能性があるんだ!

 

マジで対クロコダイルじゃなくて対白ひげを考えて鍛えたほうが良さそうだ。

 

もし海軍が許してくれるのなら、白ひげが海の中から出てきた瞬間に船ごとドォンで全員海に叩き落としてやるんだが…そこを青キジが海ごと凍らせたら終了だろ。

 

実際に頂上戦争が起こるのか、俺が王下七武海になれるのかはまだわからないが、白ひげと単身戦えるくらいまでレベルを上げておくに越したことはない。

 

 

「ゼェゼェ…くそっ!こんな強いヤツがいるなんて聞いてねぇぞ…俺たちを全員タコ殴りにしやがって」

 

「おいおい、こっちは将来の戦争に備えてもっと強くならなきゃいけないんだ。もっと頑張って俺の経験値になってくれよ」

 

「舐めやがって!こっちは最初にてめぇに船を潰されてどこにも行けねぇんだぞ!てめぇの船を寄越しやが…ぶべっ!」

 

「あーあー、お前らじゃもう経験値にならん。もう寝てろ」

 

 

さすがに偉大なる航路に入って間もない海賊じゃあ良い経験は積めないな。

こうなったらもっと海を進んでみるか?それならもっと強いヤツに会えるかもしれない。

ちなみに今のやつで600万ベリーの賞金首の海賊らしい。

 

 

ロビンも後から潰すための組織のスカウトを頑張ってるんだし、俺も少しくらい役に立たないとな。

一応今の俺は対クロコダイルの修行をメインに、サブで賞金稼ぎをしている。

これ自体は昔からやってた事と同じだし、倒した賞金首はバロックワークスの下っ端が持って帰ってくれる。これはいちいち倒しては捕まえて戻らなくても済むのでありがたいシステムだ。

 

 

「お疲れさまですハンマさん。よくあんなに大勢の海賊を1人で倒せますね」

 

「これくらいできるようにならないと生き残れないぞ?とにかくこの賞金首は任せた」

 

「はい!ちゃんと持って帰っておきますね。次はどこに行くんですか?」

 

「んー、もっと強い海賊が集まってそうな島に行きたいな。そんな島の情報とかあるか?」

 

「いや、この辺りじゃあハンマさんが満足するようなヤツはいないと思いますが…」

 

 

くそっ、それだと強くなることも経験を積むこともできないじゃん。

何かいい方法はないのか…!

 

 

…!!あるじゃん!死ぬかもしれないけど確実に強大な相手と戦う方法が!!

 

 

「おい、アラバスタのエターナルポースよこせ」

 

「え?ハンマさんどこ行くんですか?」

 

「ちょっと修行してくる。ある程度したら1回アラバスタに戻るから、ろび…えっと副社長にそう伝えておいてくれ」

 

「いやいや、俺たち一緒に着いていけって言われてるんですよ!勝手に帰ったら副社長に怒られますって!」

 

「…まぁ勝手にしろ。とりあえずエターナルポースだけ俺が預かっとく。着いてきてもいいが危なくなったら帰れよ?」

 

 

危ないから着いてきてたヤツらは帰したかったけど、一緒に来るのなら好きにすればいいさ。

ただ死んでもしらんけどな。今から行くところは俺だって命がけなんだから。

 

ログなど見ずに空を見ながら船を適当に進めていき、目的の場所のほうへと向かっていく。

無風地帯なんだから当然天候が荒れることもなく静かな場所がそれのはずだ。

 

俺は3人乗りくらいの小舟に1人で乗っており、他のヤツらも別の船で追いかけてくる。

 

 

 

 

着いた!さぁ出てこい海王類!!俺の糧にしてやんよ!

 

 

とか思ってたら海面が盛り上がって…スッゲェぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

灯台でザブーンを見れなかったから感覚がわからなかったけどマジデッケぇぇぇぇぇ!

 

 

「「「「ぎゃあああああ海王類だああああああ!!!」」」」

 

 

あいつらだから帰れって言ったのに…まぁ放っといたら勝手に帰るだろ。

 

俺は乗ってる船を巨大化させ、広い足場を作り巨大化させたハンマーを構えて海王類を睨みつける。

 

 

「ククッ、いくぞ海の王者どもよ!お前らを倒して、俺はもっと強くなってやる!」

 

 

 

 

 

そこからは熾烈な戦いだったと思う。

船は壊されるし、あいつら叩いても叩いてもなかなか気絶すらしない。

だが船を巨大化させていたおかげで、壊された事によってそこら中に大きめの足場ができたのは幸いだった。

こっちは武装色の覇気を纏わせたハンマーで叩きつけては振り回してるが、足場が悪いとこうも威力が落ちるのか!?

ならこれならどうだ!縦回転からの…ぐるぐるドォォン!!お、これは威力高いな。

 

 

人間必死になれば火事場の馬鹿力ってのは出るもんだ。

縦回転からの叩きつけはかなりの高威力を発揮することもわかったし、海の上の不安定な足場でも段々と戦えるようになってきた。

だが慣れない海上での戦闘と、海王類の相手はなかなか精神的にも消耗したので、足場にしていた板に乗って偉大なる航路へと戻ることにした。

まぁ偉大なる航路に戻るだけでも命がけだったんだが…海王類は海中に沈むだけでもものすごい波になるからな。こんな緊張したのは移動はお椀で一寸法師した以来かもしれない。

 

 

ひとまず近くに見えた島まで向かっていき、せめて船くらいは調達しないと板切れじゃあアラバスタまで帰れないなと思っていたら、どうやら着いてきていたバロックワークスの下っ端たちがそこにいた。

 

 

「お前らこんなところで何やってるんだ?帰らなかったのか?」

 

「ハンマさんと一緒にじゃないと帰れなかったんですよ!エターナルポースはハンマさんが持ってる1つだけなんですから!」

 

「…あー、なるほどな。納得した。じゃあこの島で少し休んで、何回かこの修業を繰り返してからアラバスタに戻るか」

 

 

つまり帰れって言われても帰るに帰れなかった状態だったのか。それは悪い事をしたな。

だが俺も強くなるために必死なんだ。待ってるだけでいいからもうちょっと付き合ってくれ。

 

とにかく俺もかなり疲れたし、とにかく一旦休まないと倒れそうだ…

周囲の見張りは下っ端に任せ、精神的にも肉体的にも疲れ切ってた俺はちょっと寝ることにした。

 

 

 

起きたら下っ端が船を調達してくれてたので、それに乗ってまたカームベルトまで行き海王類に挑むのを繰り返していった。

毎回海に落ちそうになるわ、船は壊されるので板切れに乗って戦うことになるわ、海王類も相変わらずタフで戦い甲斐があるわで普通に海賊を相手にしていたんじゃ得られない経験を積むことができた。

 

そういえば海軍の体術かなんかで空中を飛び跳ねるのあったよな。あれ覚えたいな。

 

確か空気を蹴りまくるとかそんなんだったっけ。ただハンマーとの相性は悪いから移動用と割り切るか。

いや、空中からのぐるぐるドォンは遠心力と重力がいい感じにコラボってくれるからいい感じかも。

 

俺が新たな戦い方を模索している間に、もはや下っ端たちは島に住居を作っており、こいつらはこいつらでサバイバル技術のレベルが上がっていた。お前らそれでいいのか?

 

かなりの期間その島とカームベルトを往復していたので、アラバスタを出発してからどれくらい時間が経っているのかまったくわからないくらい修行に明け暮れていた。

ちなみに空中歩行はまだできていない。

 

下っ端たちも「たぶん1年くらいはここにいるんじゃないですかね」と曖昧だったので、まぁそれくらい経ってるのかもしれない。

 

そろそろ一旦アラバスタに戻っておくべきか。久々にロビンの顔を見たいな。

 

そう思いながら疲れた身体を横たえて眠りについた。

 

 

「…さん、ハンマさん。そろそろ起きてください」

 

「…んー、今何時?」

 

「今はもう朝です。ハンマさんずっと寝続けてたんですよ」

 

「マジか。よっぽど疲れてたんだろうなー。それじゃ結構時間経ってるし一旦アラバスタに戻るか」

 

「ようやくですか。んじゃ船に乗ってください」

 

 

…なんか身体が妙に軽いな。やっぱ海の上で海王類と戦うなんて極限の状況を繰り返したからか、俺もそれなりにレベルアップできたって事かな?

 

まぁまだまだ足りないだろうけど、この海王類との戦いの繰り返しは結構強くなれそうな気がする。

確かクジラの肉を取って帰ろうとしてた覚えもあるから、海王類を仕留めることができたら持って帰ったら喜ばれるかもしれない。

 

アラバスタへの帰り道でゆっくりできると思ってたんだが、どうやら前方に海賊船が見えると下っ端から報告があった。

今は捕まえる気分ではなかったので、邪魔だし飛んでいってもらおうといつもと同じ感覚でハンマを巨大化させたんだが、いつもよりもハンマーの大きさがめちゃくちゃデカくなってた…

 

あれ?あんまり力入れてないのになんでこんなにデカくなってるんだ?

 

やっぱり死ぬかもしれない戦いを繰り返したから能力の最大値が大幅に上がったんだろうか?

 

とにかく昔と同じ失敗はしない。あの時は覇気を纏わせてフルスイングした結果、海賊船ををバラバラにしてぶっ飛ばしてしまったが、今回は覇気なしでのフルスイングだ。

だからきっと船の形は保ったままうまいこと「バイバイキーン」って飛んでいってくれるはずだ。

今度こそ空飛ぶ海賊にしてやるぜ!

 

 

いくぞ海賊ども。この渾身の一振り、全力ホームランでお星さまになってこいや!

 

 

せーの…ドォォン!っと。

 

 

…………また砕けて飛んでいったよ。なんでだ?今回は覇気込めてないぞ?

 

 

そうか!当たりどころが悪かったのか!

 

なんか記憶にあるぞ。スーパースイートポイントに当てたら光って飛んでいくとかなんとか。

つまりハンマーの中心の1点に力を集中させなければうまいこと飛ばないってことだ。

…なかなか空飛ぶ海賊をやらせるのも難しいな。別に必要のない技能ではあるけど、せっかくだから会得してみたいって気持ちが大きいんだよな。

 

あれにはあれでロマンがある。

 

 

「…ハンマさん。海賊船が砕け散って空の彼方に飛んでいったんですが…」

 

「あぁ、なかなかうまいこといかないもんだよな」

 

「ハンマさんの考えは俺らにはよくわかんないけど、賞金首捕まえなくて良かったんですか?」

 

「今は捕まえる気分じゃなかったんだよなー。それにまた別のを捕まえればいいだろ」

 

 

そんないい加減な俺と下っ端たちは一路アラバスタへと戻っていった。

 

 

 

 

 

俺が計画を忘れて修行しまくってる間に、アラバスタでは着々と計画が進んでいる事を知るのはロビンに怒られてからだった…

 

 

 

 

 

 



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09.お説教は怖いドン!

 

 

 

さて、海王類との激闘によってレベルアップして戻ってきたはずの俺だったが、現在宿でロビンに正座させられて淡々とお説教されております。

 

 

「ねぇハンマ。私がクロコダイルの信用を得るために色んな島に行って必要な人材を集めていた事は知っているわよね?」

 

「…ハイ」

 

「その時ハンマは一体何をしていたのかしら?」

 

「修行しながら海賊を狩って賞金首を捕まえてました」

 

「ええ、そうね。それは私たちの計画のためにも、そしてあなたがバロックワークスの中で強さを示すためにも大事な事だと思うわ。そしてあなたが捕まえた賞金首を引き渡して運用資金にもなっているから、それはとても助かっているのよ?」

 

「アリガトウゴザイマス」

 

「で、私はその後から定期的にクロコダイルの能力なんかも大掛かりに使ってもらいながら王宮周辺以外を干ばつ状態にまで持っていき、タイミングを見計らって本格的に王家の信用を失わせるためにダンスパウダーをわざと見つかるようにしたり、それによる不信感を煽るためにその情報を町中に流したり、それを聞いた誰かが反乱を起こしてもおかしくないように情報統制をしたり、本人たちは潜入してるつもりの王女様と護衛隊長を正体が見つからないようにしながら、私が裏でその糸を引いている事をバレないように密かに招き入れたりしてた時に、あなたは、どこで、何を、していたのかしら?」

 

「…海賊じゃあ物足りなかったのでカームベルトに行って海王類と戦ってましたっていうか、え?何その情報。反乱を起こしやすい状況に持っていったところまでは理解できたけど、王女と護衛隊長をロビンが潜入させてあげたの?」

 

「もちろんよ。私が計画のための人材集めをしているのよ?それに私たちの元々の計画は王宮に侍女と兵士として潜入する予定だったじゃないの。当然コブラ国王やビビ王女、それに護衛隊長イガラムやその周辺くらいまでは調査してあるに決まっているでしょう?」

 

 

やべぇ。ロビンが有能すぎて俺がまったく役に立ててない気がする。

てか、ロビンってばビビとイガラムが潜入してきた段階でもう正体を把握していたのか。

原作ではどうだったのか知らないけど、うちのロビンは凄すぎる。

…でもなんでビビとイガラムを潜入させたんだ?最後まで秘密裏に動いたほうが邪魔にならない気がするんだが。

 

 

「なぁロビン。なんで王女と護衛隊長を潜入なんてさせたんだ?俺たちの計画で行くなら潜入なんてさせないほうが、嗅ぎ回ったりとか余計な動きをされなくていい気がするんだけど」

 

「あら、嗅ぎ回ってくれて構わないのよ。いわば王女たちは目眩ましの囮のようなものね。クロコダイルは用意周到な上に警戒心も高いわ。万が一にも私たちの計画を勘付かれたり、余計な疑いを持たれる可能性をなくすためにあえて泳がせる方向にしたのよ」

 

「…なるほど。でもそれで情報が抜かれて国王とかに伝わるって事はないの?」

 

「王女たちに流す情報はこちらである程度選別して渡すつもりよ。そして計画が最終段階に近くなってきた時点でクロコダイルの国盗りの情報も流してあげる予定ね。その情報の中には私たちが本当の事は何も知らされていないか、騙されていたという内容も一緒に付けるつもりよ。そうすれば、私たちの計画の時に、王女様が直々に調査したというクロコダイルの暗躍の証拠を突きつけてくれるでしょう?そしてあなたがクロコダイルを倒してくれれば、あなたが自分でクロコダイル暗躍の証拠を広めるよりも情報の信憑性が増すのよ」

 

 

なるほど、王女に暗躍の証拠を握らせて国王や民衆に教えさせる事で、確かに元々の計画の俺が民衆たちの前でそれを説明するよりも信用されるだろうな。

いわばクロコダイルがラスボスで、ロビンは隠しボスみたいな感じか。

果たして隠しボス(ロビン)の存在に気づく人間はいるのだろうか?

 

…無理だな。たぶん誰も気づかないまま終わるだろう。下手したらクロコダイルも気づかないんじゃないのかな。

 

なんかロビンの職業は考古学者じゃなくて、策略家とか謀略家とかのほうが似合いそうな気がしてきた。本人には絶対言わないけどさ。

 

俺は何になるんだろ?世界にロマンを広めるから…ロマンチスト?なんか職業ロマンチストって嫌だな。

 

すっごい自分に酔ってそうで名乗れたもんじゃないわ。

もし誰かが自分の事を「自分はロマンチストです」って自己紹介してたら絶対近づかない。

…いや、でも逆にそのほうがロマンってものを広められるか?

 

まぁこれについては今度ロビンにも相談してみよっと。考古学者の横にロマンチストがいるってのはなかなかにシュールな気がする。

すっごい現実を見てて研究とかしてる考古学者と、夢を追いかけてロマンを求めるロマンチストって対極にいるような存在だよな。

でも考古学ってのもある意味ロマンの一種って考えたら似たもの同士になるのか?

 

 

 

なんかまた考えが逸れてるな。

 

つまりもうアラバスタ王家の信用を失わせて反乱の種は蒔かれてるって事なのか。

てことは本格的に動き出すまでにそんなに猶予はないのかもしれないな。

反乱の種がどれくらいで芽吹いて、どの程度の速さで増えていくのかわからないが、たぶんどこかで加速させるような情報を流したりそういう状況に持っていったりするんだろう。

全部掌の上って怖いな…

 

なんかロビンとクロコダイルが将棋とかチェスとかしたらいい勝負しそうだな。

今回で言えば、王手やチェックメイトをするのが俺の役割って事だ。

 

てかつまり、絶対に負けられない最後の一手が俺なんだから、修行してたのは大目に見てくれても良かったんじゃないのかな?

でもまぁ片方で細心の注意を払いながら人材集めたり情報管理したりしてるのに、片方はハンマー振り回してるだけだったら小言くらい言いたくなっても仕方ないか。

 

海王類との激闘はものすごく良い修行になったからまだ続けたいところなんだけど、俺に手伝えることがあるならやっといたほうがいいし、ロビンに聞いておくかな。

 

 

「なぁロビン。本格的に計画を進めていく段階に入ったんだとして、俺は何をしてればいいんだ?やれる事があるんなら言ってくれ」

 

「今バロックワークスではクロコダイルと私を除いて、男女5組のオフィサーエージェントを選ぶつもりなの。これはクロコダイルのほうの計画の最終段階で戦力とするためね。ただ、そこにあなたは入れないわ。クロコダイルに下手に顔や実力を知られないようにね」

 

「ふむふむ」

 

「ただ多少自由に動けるようにはしておきたいから、次席のNo6にしようかと思ってるだけれど構わないかしら?666は不吉なんて言われてるから6も嫌なんて人もいるし無理にとは言わないけれど…」

 

 

666は悪魔の数字とかなんだったっけ。666が悪魔なんだったら、6は小悪魔か?

関係ないけどロビンは勝手に悪魔の子とか呼ばれてるんだよな…

なら俺が一緒にいる事でロビンは小悪魔系女子になるのかな?それもうただの可愛い女の子じゃん。

願掛けにもならない勝手な思い込みだけど、俺が一緒にいる事でロビンの可愛さが際立つのならそれもいいかもしれん。

 

 

「ねぇハンマ…ハンマったら現実(こっち)に戻ってきて」

 

「あぁ、ちゃんと考えてたんだ。6番目で構わないよ」

 

「…言い難いのだけど、今ハンマは考えてたつもりなんだろうけど、全部声に出てたわよ?」

 

「…うそ!?」

 

「小悪魔系女子って何を考えているのよ…聞いてるこっちが恥ずかしいわ」

 

 

まさか口に出てるとは思わなかった…それは聞かれた俺も恥ずかしいわ。

まぁ別に聞かれても構わない内容だけどさ。

でもNo6なら確かにクロコダイルと接する機会も少ないだろうし、なんなら副社長(ロビン)からの勅命で外出してるとか言い訳もできるか。

確か7とか8とかがサボテンの島で賞金稼ぎとかやってたはずだけど、そんな事やってる時間あったら修行しときたいし、意外といい選択なのかもしれないな。

 

 

「それじゃあ俺は今まで通り海賊を倒して賞金首を捕まえたりしてればいいってこと?」

 

「一応偉大なる航路の最初の島あたりで、社員をある程度人数を集めて賞金稼ぎをさせたりしようと思ってるけどそこにでも行く?」

 

「いやだ。それだと修行にならないから海王類と戦ってたほうがマシだもん」

 

「…じゃあ今のところは好きにしてていいわ。ただ定期的に戻ってきてちょうだい。1年とか勝手に修行だけしてるのはダメよ?」

 

 

なるべく賞金稼ぎもやるけど、今はとにかく修行を優先させたいんだが…

何せクロコダイルもだが、その先にあるかもしれない白ひげとの戦いも視野に入れてるから悠長にしてられないんだよ。

 

あの戦争は世界中に中継とかされてたはずだから、ハンマーのロマン性を知らしめる大チャンスでもある。

 

本当の事を言えばマリンフォードごと全部纏めて一撃粉砕!とかやってハンマー最強説を実証したかった気持ちもあるが、残念ながら今の俺ではマリンフォード全域を一撃で叩き潰せるだけの巨大化をできていない。

 

それでも最初は海王類を滅多打ちにしないと気絶させられなかったのが、今では軽くとは言わないが少しは余裕を持って渡り合える程度にはなってきてる。

これは戦い慣れてきた事も含まれてるんだろうが、威力も上がっているのは間違いない。

 

 

まぁロビンからも定期的に戻ってくる事を条件に修行の許可も得たし、すっかりサバイバルに目覚めた下っ端たちを連れてまたカームベルトに向かうことにした。

 

 

そういえば移動中に賞金首の手配書を見せてもらってたんだが、どうやらエースがスペード海賊団として名を上げ始めたようだ。

まぁ会っても何かあるわけじゃないし、今のエースならハンマーの餌食にするだけだからどうでもいいか。

 

 

そんな事を考えながら手配書を眺めたりしてカームベルト付近の小さな無人島に下っ端たちを残して、俺は1人でカームベルトに突っ込んで戦う生活に戻っていった。

もちろん空気を踏んで飛ぶ練習もずっとやってるんだが、これがまたうまくいかない。

2段ジャンプとかならできるようになってきたんだが、そっちに集中するとハンマーのほうが散漫になるからまだまだ要修行だな。

 

まだまだヒヤッとする事もあるが、海王類との戦いもいい感じに優位に立つ事もできるようになり、倒した1匹を持って一旦アラバスタへと戻る。

これならロビンも成果をして認めてくれるだろう。

 

 

 

 

 

なぜ俺はまた正座させられてロビンに怒られてるんだろうか…?

 

今回はちゃんとすぐに戻ってきたしお土産(食料)も持って帰って来たから褒められると思ってたんだけどなぁ。

 

 

「ねぇハンマ。あなたあんな大きな海王類を持って帰ってきたら目立つに決まってるでしょう?せめて社員たちがいるほうの島に持っていくとか考えなかったの?」

 

「食料にいいかと思ったんだけど、その発想はなかったなぁ…」

 

「おかげで港町のナノハナはすごい人だかりになってるわ。とにかく誰がやったのかはわからない事にしてあるけど、弱っていた海王類がたまたまカームベルトを出てきて、誰かがそのまま倒せちゃったって事にしたから話を合わせておいてね」

 

「一緒に行ってた下っ端たちは知ってるけどいいの?」

 

「そっちは口止めだけしてあるわ。バロックワークスの理念は秘密だから、無闇矢鱈と言いふらしたりはしないでしょう」

 

 

まさか喜ばれると思って持って帰ったお土産でそんな事になるとは思わなかったな。

次からは気をつけよう。てか海王類のお土産は確かにやりすぎだったかもしれない。反省しろ俺。

 

クロコダイルが海王類を倒した事にすれば民衆には喜ばれるかもしれないが、当のクロコダイルからしたら海王類を倒せるヤツが近くにいるって事になるもんな。

ロビンにいらぬ気苦労をかけてしまった。ちゃんとどこかで挽回しないと…

 

 

そんなアラバスタとカームベルトの往復を何度か繰り返して常に極限の状況に自分を置いていたからか、自分でしっかりと実感できるくらいに能力も覇気も成長を感じられた。

空中歩行はそっちだけに集中すれば空を走れる、戦いでなら3段ジャンプくらいまでならできるようになった。

 

 

ロビンのほうも計画は順調に進んでいるらしく、今は反乱軍にも国王軍にも社員を多数潜入させているらしい。

反乱軍の規模も結構膨れ上がってきてるので、拮抗状態を作り上げるのにもそう時間はかからないだろうとの事だ。

王女様と護衛隊長については適度に情報を流しつつ、賞金稼ぎの真似事をさせたりしているらしい。

あんまり下っ端にすると王女たちに情報を流す事もできなくなるため、8番と9番の地位に配置しているそうだ。

 

ふと気になって俺のペアの相手は誰かいるのか聞いてみたんだが、どうやら俺にペアの相手はいない事にしてあるんだと言われた。

 

なんでも、No2もペアがおらず単独で行動しているようで、それならとNo6である俺も単独でいいだろうとの事だった。

ただ、No2の場合は特殊な事情で単独になっているのに対して、俺の場合はペアがいたけれど気性が荒くペアの相手を殺してしまったために単独にしてあるという理由だそうだ。

そうすることによって他の社員からはNo6は仲間でも平気で殺すような凶暴な男という認識となり、他のエージェントや社員たちとも一緒に行動させられないという理由付けにもなるんだって。

 

よくそんな設定がポンポンと出てくるもんだよ…

 

確かにその設定ならペアで行動する必要もなくなるし俺としても助かるんだけどさ。

あとロビン以外の誰かとずっと一緒に行動とかして、下手に情報を漏らしちゃうなんて可能性もなくなるしありがたい事だ。

たぶんロビンの事だからそこまで見越してペアがいない事にしてあるんだろうな…

 

なんかお説教ばっかりされてる気がするけど、そういう細かいところまで気遣ってくれてるのはちゃんと理解している。

クロコダイルや俺も含めて全部がロビンの掌の上な気がしてならないな。

 

 

 

 

 

やっぱりロビンは小悪魔系女子なんじゃないのか?

 

 

 

 

 

 



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10.計画が動き出すドン!

 

 

 

数々の下準備と暗躍によって、いよいよクロコダイルのアラバスタ乗っ取り計画が本格的に進められていくことになった。

 

 

それはつまり、ロビンが計画したクロコダイルの終わりの始まりでもある。

 

 

反乱軍も既に約30万人になり更に増え続けている状況だ。扇動してる者がいるとはいえどうやったらそこまで増やす事ができるんだろ。

 

そして国王軍の内部にも当然潜入し裏切り工作を行っている者も多数いる。

人間ってのは不思議なもので、洗脳とは違うが国王を信じている兵士に対して数人で国王への不満や不信を囁いてやるだけで勝手に悪い方向へと考えてしまう。

「そんな事はない!」と言い張っていても側近ならばまだしも、ほとんどの人間は国王の人間性なんて知らない事のほうが多いんだから「もしかして…」などと少しでも思ってしまえば状況も相まって離反が頭を過ぎってしまったりするものだ。

 

そして国王軍が優勢だと油断しているところに、タイミングを見計らって一気に離反者を出して戦況をひっくり返すらしい。

ただ、ひっくり返すと言っても逆転させるのではなく、両軍の戦力を同じくらいになるように調整するだけだって言ってた。

ロビンが言うには「もし反乱軍の戦力が一方的になってしまったら、そのまま反乱軍が攻め入って争いに発展するかもしれないから」だそうだ。

 

 

俺が疑問なのは、今の段階でもクロコダイルが反乱軍の指揮を取り、王宮を攻め滅ぼしたほうが国盗りするなら手っ取り早いと思うんだが、なんでそれをやらないんだろうな。

そして国王軍を倒してから国王だけ捕らえて「ポーネグリフの場所を言え」とかやっちゃったほうが楽だと思うんだが。

そんで最後に口封じとして国王を愚王として公開処刑なりすればクロコダイルも反乱軍も、腐った王家を滅ぼした革命の英雄みたいな扱いになってめでたしめでたしにならないか?

 

まぁこの場合クロコダイルの評価が上がるだけになるから、ロビンとしてはやらない内容ではあるが、クロコダイルとしてはこっちのほうが絶対にいいと思う。

じゃないと今の計画だと反乱軍も国王軍も両方共倒れにさせてから国造りとか、クロコダイルは箱庭ゲー好きなのか?としか思えない。

 

もしそんな事になったら俺が遠慮なく国ごと叩き潰す事になるんだけど…

 

 

「ハンマ、いよいよ本格的に計画が動くわよ。準備はいいかしら?」

 

「俺はいつでも大丈夫だよ。しっかり身体を休めたし、逆にやりすぎないか心配なくらいさ」

 

「それなら安心ね。あなたはいつも通りやりすぎるくらいで丁度いいわ」

 

「あれ?俺っていつもやりすぎてたの?…まぁいいや。ところで王女様たちはどうしてる?」

 

「彼女たちは社員たちが賞金稼ぎとして集まっている島に派遣しているわ。出ていく前にクロコダイル暗躍の証拠を王女様の荷物にこっそり忍ばせておいたから、今頃はどうやってそれを知らせるか悩んでいるところじゃないかしらね」

 

「なるほどね。ちなみにクロコダイルのほうには王女が真実を知ったっていうことは言ってないの?」

 

「ええ、言っていないわ。ただクロコダイルの目を私たちから逸らすために潜入を許したのだから、王女が護衛隊長と一緒に嗅ぎ回っているって事はもちろん伝えてあるけれどね」

 

「そうすると、王女たちがいつでも戻ってきて来れるって事だから、もしすぐにでも戻ってきて国王に告げられたらマズいんじゃないの?」

 

「それならそれで構わないわ。真実を知って王や国王軍がクロコダイルとバロックワークスに戦いを挑んでも、私が用意したエージェントたちや社員たちとクロコダイルに返り討ちにされる事は想像に難くないわ。ただ、万が一国王軍がクロコダイルを倒したとしても、それでも七武海の席は空くでしょう?」

 

「でもそれだと俺の出番なくない?」

 

「国王軍が勝つという可能性は低いと思ってるもの。そして国王軍と戦って勝ったクロコダイル側も少なからず消耗はしているはずだから、そこであなたが出ていって残った全員倒せばいいの。そうすれば計画通りに終わるわ」

 

 

なんか真実が国王に早バレパターンだと俺の敵がクロコダイルだけじゃなくて、残ったほぼ全部になってるんですが…

ロビンが段々と大雑把になってないか?いや、俺ならそれだけの事ができるという信用だ、たぶん。

確かに1対多数のほうが俺も本領を発揮できる。そう考えればどっちに転んでもそんなに変わらないか。

 

 

 

…あれ?そういえばこれってルフィとか出てくるんじゃないのか?

 

いや、時期が合っているのかどうかすらわからないから、もしかしたらいない可能性もあるのかな?

なにせ俺とロビンが一緒にいる事でいろいろ変わってきてるだろうしなぁ。

実はルフィはまだ船出すらしてませんとか言われても納得できる。

 

 

ただ完全に存在すら忘れてたけど、おぼろげな記憶じゃ王女ってルフィと一緒に戻ってくるとかだったはずだ。

でも今のクロコダイルは王女が真実を知っていることを知らない。つまり追手もなく普通に戻ってくることができる。そうなるとルフィと行動する理由がないな。

 

…まぁもし一緒に来たとしても、お互いにクロコダイル狙いってのは変わらないし戦う事はないだろうけど、そうなった場合はどうするべきなんだろう。

手柄はルフィに譲るべきか?それとも俺が倒してしまっていいのか?

 

なんか同じような悩みを昔も持ったような覚えがあるんだけどなんだったかなぁ。

 

 

…………あぁ!ロリンちゃんがロビンだってわかった時だ!

 

 

確かロリンちゃんが可愛すぎてクロコダイルにもルフィにもやらん!とか考えてたんだった。

 

ってそこじゃない!ロリンちゃんは原作だと1人でずっと裏社会で生きていくのに、俺が一緒にいていいのかとかなんとかウダウダ考えてた気がする。

 

つまり俺は何も気にせずクロコダイルを叩き潰せばいいんだ!簡単な答えだ。

 

 

「そうそう、これを渡すのを忘れていたわ」

 

「ん?これは金槌?」

 

「ええ、あなたずっとその木槌を使ってるでしょ?木製だから結構傷んでいるみたいだし、こっち(金槌)のほうが傷む事も少ないはずだし威力も上がるんじゃないかと思って」

 

「ありがとうロビン!これで破壊力倍増だ!クロコダイルなんてペチャンコにしてやんよ!」

 

「ふふ、喜んでくれて嬉しいわ」

 

 

おおおお!武器も新しくなって攻撃力まで上がっちゃったぜ!

確かに今使っている木槌は叩きまくってるから結構傷んできてる。それも仕方ない。

ロビンと出会う前からずっと使い続けている愛用品だ。というか買い換えるのすら忘れてた。

それでも十分だと思ってたけどロビンからのプレゼントで思わぬ攻撃力アップだ。

 

だが木槌と金槌じゃ重さが結構違うな…これはどこかで振り回して慣らしておかないと。

武器が木製から鉄製に変わった分だけ、巨大化させた時の破壊力と重量も段違いに上がっているだろうから、しっかりと使いこなせるようにならないとな。

 

 

ロビンに金槌の試し振りしてくると告げてから海に出て、1週間ほどかけて巨大金槌の重さを身体に慣らしていった。

特に巨大化させた時に木槌よりも重い分だけ動きが遅くなってしまうので、縦降りでスタンプ連打したり横降りでスイングしたりと入念に鍛えておいた。

 

 

アラバスタではいよいよ国王軍と反乱軍のにらみ合いがだんだんと本格的になり、きっかけ1つで大乱戦になってもおかしくないほどに緊張感が高まっていっている。

 

ただ、反乱軍はどう思ってるのか知らないが、国王軍というよりもコブラ国王はなるべく被害を出さないようにしておきたいところだろう。

 

 

心配はいらないぞ国王よ。うちのロビンは双方の全軍が揃った段階でショータイムを始めるつもりだ。つまり死者を限りなくゼロで終わらせて、クロコダイルだけを倒す計画なのだ。

なんだかんだと暗躍してはいるが、それもクロコダイルの計画を入念に調整し、誰も死なずに終わらせるために細心の注意を払って動いているのだから。

 

 

王女が真実を知らせるために戻ってくるのが早いか、間に合わなくて俺が代わりに真実を広める事になるのかの違いはあるけれど、遅くても戦いが始まる瞬間には真実が公表されて戦わずに済むように計画されている。

 

 

そしてその時にはロビンや俺含めバロックワークスの社員たちも、全員クロコダイルに騙されていた被害者として何も知らなかった事にしてしまう算段だ。

「理想国家の建国という目的のために頑張ってきたけど、それが国の乗っ取りだったなんて知らなかった」という言い訳である。

雨を奪ったのも、ダンスパウダーを置いたのも暗躍は全部クロコダイルがやっていて、誰も本当の事は知らぬ存ぜぬプランだな。

 

 

ロビンは「建国するために人材を集めて、最後はアラバスタを出て国を作るものだと思っていた」とかで、俺や他のやつは「そのために賞金首を捕まえて国家運営のための資金作りだと思っていた」とか言う予定だ。実際にそういう謳い文句で人増やしてあるはずだから嘘じゃない。

 

乗っ取り計画をクロコダイルから直接聞かされたオフィサーエージェント?それはもう自己責任だろ。

 

 

そしてクロコダイルを倒して恩を売っておいてから「悪用とかしないからポーネグリフ見せてよ。大事な国を救ってあげたでしょ?」とか言って見せてもらうのだ。

 

ついでに「海賊が王下七武海なんて権力を持っちゃうから余計に悪い事を企んだりするんだよ。それなら海賊じゃないけど強い人が王下七武海になって、海賊を狩る象徴みたいになれば解決じゃない?候補?俺とかいいと思うよ!」で七武海に推薦してもらうわけだな。

 

 

実際には俺じゃなくてロビンが交渉してくれると思う。俺だとマジでそんな感じで言っちゃうからね。

 

 

 

 

 

そしていよいよ争いがいつ始まってもおかしくないほどに緊迫した状況になってきてる。

まさに戦が始まるって感じで、アルバーナとカトレアの中間地点で両軍が揃っている。

 

これも恐らくは何かしら画策して両軍が揃うように手配したんだろうな。

本来ならお互いの総戦力が一か所に集まるなんてしないはずだ。もちろん本拠地を守る戦力や拠点を守るための戦力は残してあるとは思うけど。

 

 

国王軍はアルバーナ側、反乱軍は本拠地としているカトレア側で両軍総戦力が揃い向かい合っている状態だ。

 

すごいな、国王軍約70万人 対 反乱軍約70万人という規模は見ていても壮観だな。人数はたぶんだし、実際は防衛やら非戦闘員やらでもうちょっと少ないんだろうけど。

確か国王軍が元々100万人で、反乱軍が40万人だったところを30万人も寝返らせたのか。

 

 

ちなみに俺はその両軍の睨み合いを少し離れた場所で、横のほうから眺めている状態で待機している。

俺の仕事はここから両軍にクロコダイル暗躍の真実を告げて、全部のヘイトをクロコダイルに向けさせなければならない。

そうすれば両軍は「勘違いしてごめんね。クロコが悪いから一緒に倒そっか」で共闘モード突入なわけだ。クロコダイルを倒すのは俺だけど。

 

そして俺の最大の大仕事として、レインベースにいるクロコダイルを倒して計画は8割くらい成功となるわけだ。

もしかしたらクロコダイル以外にオフィサーエージェントがいるかもしれないけど、いたらいたで叩けばいいだけだ。

 

そうしてクロコダイルの企みは潰えて、アラバスタは国盗りという魔の手から救われる事になるわけだな。

王女様が間に合ったとしても間に合わなかったとしても、俺はクロコダイルの暗躍をいち早く察知して国民同士の戦いを止めた上に、諸悪の根源であるクロコダイルまで倒した英雄となる。

 

まぁ王下七武海に入れるかどうかはわからないけれど、少なくともポーネグリフは見せてもらえるだろう。じゃないと今度は俺がアラバスタの敵になる…かもしれない。

 

 

今クロコダイルとロビンはレインベースにいる。クロコダイルがどう動くのかまでは読めないので、もしかしたら国王の元に向かうかもしれないとはロビンから聞いている。

 

 

さて、それじゃあそろそろショータイムといこうか。

 

 

全員の視線をこっちに向けるのならば俺の能力は適任だ。ここにいる140万人くらいにロマンを魅せてやるぜ!

 

 

 

…と、思ったら向こうからカルガモ(?)に乗った人間が1人こっちに向かってきている。

 

てことは…王女様が間に合ったのか?

 

 

 

ならば説得というか真実の暴露は王女様に任せるとしよう。安心しろ王女様!舞台は俺が整えてやるぜ!

 

滅多に使わない剣を抜いて両手で持ち天に掲げる。さぁいくぞ!

力を込めていき剣を巨大化させて、まさに天を突くかのような巨大な剣が突然睨み合っている両軍の横から現れる。

 

そしてその剣を……ドォォン!っと。

 

 

「お前ら!争いは終わりだ!お前たちは騙されていたんだ!」

「そしてお前たちを止めるために!それを伝えるために!ここまで来てくれた人がそこにいる!」

「国王軍!反乱軍!その子の言うことをよく聞いて真実を理解しろ!!」

 

 

突然巨大な剣が両軍の間に振り下ろされ、大きな振動ともの凄い砂埃が収まった頃に俺は剣の上に立ち全員に向かって止まるように伝える。

そしてこっちに向かってきていたのは…水色の髪の子。王女様で間違いないだろう。

何が起こったのかわからない両軍に向かって王女様を見るように叫ぶ。

 

王女様もそんな俺の声が聞こえたのか、引き継ぐように声をあげ周囲に真実を伝えていく。

 

 

「みんな聞いて!ここにみんなが疑問に思う事に対する証拠がある!すべての黒幕は…クロコダイルなの!」

「雨が降らないのも!砂嵐で町が枯れたのも!国を想うみんなが敵対しているのも!全部クロコダイルの仕業だったのよ!」

 

 

「ビビ様だ」「ビビ様が来てくれたぞ」「本当なのか?」「クロコダイルさんが敵だったなんて」

「ビビ様、今言ったことは本当なのですか?本当にクロコダイルが仕組んだ事なのですか?」

 

「ええ!間違いないわ!敵はここにいる誰でもない!クロコダイルがすべての元凶なの!」

 

「なんてことだ…まさか騙されていたとは…」「本当にクロコダイルさんがそんな事を?」

 

 

国王軍は王女が来た事と告げられた事に困惑を隠せず、指揮官らしき人は王女に疑問をぶつけていく。

そして王女はそれに答え、何度も何度もクロコダイルが黒幕であると伝えていた。

 

 

これで国王軍と反乱軍が真実を知れたし、これ以上争う事はないだろう。ここはもう大丈夫だろうから、俺は次へ行くとするかな。

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

やがて全員が落ち着きだした頃に一発の銃声が聞こえ、国を想い民を想った王女はその場に倒れた…

 

 

 

 

 

 



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11.アラバスタごと叩き潰したドン!

 

 

 

「…………え?」

 

 

それを言ったのは誰だったのか、その場に集まっていた全員が固まり、王女が倒れていく光景を目にしていた。

ここにいる全員が真実を知った…そう思った矢先の出来事だった。

 

 

「「「「「ビビ様!!」」」」」

 

 

そう。誰よりも国と民の事をを想い、心配する護衛隊長と共に敵対組織に飛び込んだ王女は今、その身体から真っ赤な血を流し倒れ伏している。

誰もが時間が止まったように動けなかった中で、銃口から煙を上がったままの銃を今もなお王女に向けていたのは反乱軍の1人だった。

 

 

「今更王族の人間が自分たちの罪を他人に被せる気か!?」

 

 

王女を撃った男はそう言いながら周りに取り押さえられていく。だが、一度引かれた引き金はもう戻る事はない。

そして王女を撃った男に同調する者、非難する者、王女を否定する者、肯定する者と様々な者たちの言い争いが始まり、一発の銃弾が鎮まったはずの戦いの空気を呼び起こしてしまった。

そして至る所で口論になり、どちらも退く事なく自分たちの主張や恨みを言葉という武器を使って切りつけていく。

止まらぬ口論は暴力へと発展し、最早泥沼の戦いへとその姿を変えていった…

 

 

「…おいおい、なんで止まったはずの戦いが始まってるんだよ?あとは王女に任せておけば良かったんじゃなかったのか?」

 

 

確か俺は巨大な剣を叩きつけて全員の目を引き、そこに現れた王女によって無駄な争いは回避したはずだ。そして後を王女に任せてクロコダイルの元へと向かおうと移動を始めようとしていたんだ。

だがそこに聞こえた銃声によって戻ってみると、なぜか両軍入り乱れての大乱闘になっていた。

 

何をやったらこんなことになるんだ!?王女は何かやらかしてしまったのか?

 

俺がやめろと叫んでも誰も振り返りもせず、黒幕はクロコダイルだと叫んでも誰も話を聞こうともしない。

 

 

…そうか。そんなに肉体言語が好きなら俺もロマン(ハンマー)で語ってやる!

 

少し頭冷やさせてやんよ!さぁ…OHANASHIの時間だ!!

 

 

言葉が通じないならハンマーで語るまで!という事で俺はいつもよりも巨大化させたハンマーを振りかぶり、争ってるやつら目がけてスイングでぶっ飛ばしていく。

おー、木槌の頃よりも少ない力でも十分な威力になるな。

どうせこいつら全員俺の仲間じゃないんだから遠慮もいらんわな。

 

ちょうどいい準備運動だバカヤローどもめ!

 

空へと吹き飛ばし、叩きつけて地面に埋め、国王軍も反乱軍も男も女も関係なくハンマーの餌食にしていく。

1回のスイングで200人ぶっ飛ばし、叩きつけては300人を地面に埋める。

そこには戦いではなく、一方的なハンマーによる暴力の嵐だけがあった。

逃げようとするヤツらには望み通り横振り(スイング)で遠くまで飛ばしてやり、向かってくるヤツや動けないヤツには縦振り(スタンプ)で地面に埋めてやった。

 

 

 

 

 

そうやってかなりの時間ハンマーを振り回し続け、気がつけば立っているのは俺1人となり、周囲には頭を冷やされた人間たちが大量に埋まっていた。全員白目を剥いていたが。

 

 

「「「「「……………………」」」」」

 

「頭は冷えたかバカヤローども!余計な時間使わせやがって!」

 

 

マジでかなりの時間を費やしてしまったじゃねーか。これじゃクロコダイルがどこにいるのかまったく見当がつかないぞ。

…ここからならお城のほうが近いな。まずはお城に行ってみて、クロコダイルがいなかったらカジノのほうへ向かうか。

 

と、思ったら誰か立ち上がってきやがった。仕方ない、もう1回頭冷やさせてやるぜ!

 

 

「待って!!」

 

 

1人なので少しだけ大きくしたハンマーを振りかぶって叩きつけてやろうとしたらそんな声が聞こえてきた。

しかし俺には止まる理由なんぞない!せーの…ドォン!っと。

 

 

「ねぇ待ってって言ってるでしょ!?」

 

 

うん?避けられてもう一度振りかぶろうとしたらまだ何か言ってる…ってよく見たら王女じゃん。

なんでこんなところにいるんだ?

急ぎたいのは山々だけど、王女なら戦う必要もないしと思い話をした結果、一緒にカルガモに乗ってお城へ向かうことになった…

 

 

どうやら撃たれて気絶したけれど、意識は少しして戻ったので一部始終見ていたらしい。

そこから「クロコダイルのところに行くなら私も連れて行って!」とか言い出し、遅くなるから嫌だと返事して行こうとしたら、横で一緒になって気絶してたカルガモを寝起きビンタで起こして着いていくと聞かなかった。

 

ちょうどいいからカルガモに一緒に乗せてもらいながらここまで来た経緯を聞いてみたところ、やはりロビンの計画通りに社員が集まってる島に着いてから、カバンにある見覚えのない書類の束を発見したみたいだ。

 

すぐにでも護衛隊長と一緒に戻ろうと思ったがお互い違うペアの相手もいるし、その島に来るときに乗っていた船は出てしまい、残っているのは小舟しかなく、それでもこっそり抜け出そして急いで戻ろうとしていたところに海賊がやってきてしまったと。

 

そこで王女は「小舟で移動するよりもあの海賊船を奪えば、ずっと早くアラバスタに戻ることができるはず」と思い、まずはバロックワークスの社員や島にいるエージェントと一緒に海賊を倒すことにしたらしい。

 

ところがどっこい、いつも通りに歓待して油断したところを捕獲するはずが、その海賊が強くて全員返り討ちになってしまってさぁ大変。

 

そこで護衛隊長が何を思ったのか、突然その海賊に「自分たちを乗せてアラバスタまで行ってほしい」と頼みだし、紆余曲折の末に王女と護衛隊長は一緒に海賊船に乗ることになったんだって。

 

一路アラバスタを目指して船を出したんだけど、どうやら賞金稼ぎの島とアラバスタの直線上を走っていたらたまたま島が見え、その海賊船の船長がどうしても行ってみたいということで食材などの補給を兼ねて少しだけ寄り道することになったみたいだ。

 

そこにいた巨人と仲良くなって見送ってもらい、船を進めていたら航海士が倒れて急いで別の島で医者を探すことになったと。

 

そしてその先にでトナカイの医者を仲間に入れて戻ってきたところ、国王軍と反乱軍が総戦力で対峙していると聞いて急いでここに来たらしい。

 

どうやら一緒に来た海賊たちは、反乱を止めるために協力してくれるらしく、今はクロコダイルがいるであろうレインベースとスパイダーズカフェ、そしてアルバーナ王宮と手分けして向かってくれているとの事だった。

 

詳しく聞いてみたが、やはりその海賊というのは麦わら帽子を被った船長と若い少数の船員だけの海賊団みたいだ。

 

 

そうか…偶然なのか必然なのかわからんけど、結局原作主人公はこのタイミングでここに来るのか。

 

 

なんか状況が思ったよりも混乱してきて、俺もクロコダイル倒す以外にどうしたらいいかわからなくなってきた。

最後は後で怒られる前提でロビンに丸投げすればいいと思う。てか、俺にはそれしか解決策が思い浮かばない。

 

お城も見えてきた頃、同時に砂嵐みたいなのが巻き起こっているのも見えてきた。

やっぱりクロコダイルはお城のほうに来たみたいだな。てことはロビンも一緒にいるのかな?

 

 

「クハハハハ、ここはルーキーが粋がって来ていい海じゃねぇのさ。すでにこの国の人間同士の殺し合いは始まっている!こう誰にも止められねぇんだ」

 

「こんにゃろ!お前を倒せばまだ間に合う!ビビも向かってるんだ。あいつならきっとなんとかしてるはずだ!」

 

 

あ、丁度クロコダイルと麦わらのルフィが戦ってる。だがすまんクロコダイルよ。ご高説のところ悪いが殺し合わせる予定だった国民はみんなハンマーの餌食にしてしまった。

 

 

「ルフィさん!!」

 

「クハハハ!てめぇのような生意気なガキが海賊気取って早死にするのさ。そしてこの国の国民たちもな。どいつもこいつも国のためだと笑わせやがる」

 

 

どうやらお城に着いたのは麦わらだけだったようで、他の仲間はここには来ていないようだな。

麦わらの攻撃は結局どれもクロコダイルには通用せず、最後は身体から水分を奪い取られてやられてしまった。

 

 

 

ってあれ?なんでロビンが国王と一緒になって血を流して倒れてるんだ?

 

 

 

「…おいそこのクロコダイルさんよ。なんでそこでロビンが倒れてるんだ?」

 

「あぁ?誰だてめぇは。この女は俺の邪魔になるかもしれないからさ。国王は俺がこの国で求める物を隠そうとした。だから2人揃って仲良くこうなってるのさ」

 

なるほど、邪魔になるかもしれないからか…確かに邪魔をするつもりだったわけだが、そう言われると腹が立つな。

たぶんクロコダイルはプルトンがここに眠ってると思っているから、同じくプルトンを求めたんだと思っているロビンを今のうちに排除しておこうとしたってところか。

 

しかしこの場で戦おうにもロビンも国王も倒れてるんじゃ下手に暴れられないしどうするか…

 

 

「クロコダイル!!お前のせいで!!」

 

「おい王女!いいところに来た!お前はロビンと国王を連れてこの場から離れろ!」

 

 

倒れた麦わらのほうへ走っていった王女が戻ってきて、そのままクロコダイルに挑もうとしていたので倒れている2人を離れさせる。ナイス登場だ王女!

これでロビンが俺の攻撃の巻き添えになる心配はないだろう。

 

 

「クハハハ、次はてめぇの番か?命知らずなバカは長生きできねぇぜ?」

 

「ああそうかよ。俺はお前は許さん!これだけは使いたくなかったが俺を怒らせたお前が悪い!ロビンをやってくれた礼にお前にも絶望をくれてやるよ!」

 

 

これだけは本当に使いたくなかった。理由は…何よりも格好悪いと思うからだ!

 

いつもならば持っているハンマーに力を入れるように巨大化させているが、今回は自分の全身に力を入れて巨大化させていく。

だんだんと目線が上がっていき、人間が指先で摘めるほどの巨体となってクロコダイルを見下ろした。

巨人族がどれくらいのデカさなのか直接見た事がないからわからんが、今の俺は恐らく巨人族くらいかそれ以上の大きさはあるだろう。

 

 

これが俺のあんまり使いたくない最終手段。それは…俺自身が巨人になることだ…!

巨大化は敗北フラグだが…俺は今日そのフラグをへし折る!

 

 

手にしたハンマーも巨大化させているが、今の巨人サイズの俺にとっては本当に片手で持てる金槌の大きさだ。

それを釘を打つように振り下ろせば…破壊力は見たままとなるわけだな。

 

「くっ!それがてめぇの能力か!だが俺には当たらねぇぞ!」

 

「なら当たるまで振り下ろせばいいだけだろうが!」

 

クロコダイルが避け、俺はひたすらハンマーを振り下ろす。王宮に逃げようが関係ない。

武装色の覇気を纏い黒くなったハンマーでひたすら叩き続けていく。

 

ワニワニパニックなら出てきたところだけ叩くところだが、俺は隠れている王宮ごと叩くのでどれだけ身を隠そうが関係ないぞ。

王宮が壊れる音と地響きだけが繰り返し辺りに響き続けているが、まだクロコダイルに当たらないな。

 

「てめぇ…まさかその力まで使えるとは思わなかったぜ。だがそれだけじゃ俺には当たらねぇな!」

 

「そうかよ…ならもっとハンマーがでかければ問題ないな」

 

「なっ!てめぇはこの国がどうなってもいいってのか!」

 

「そんなもんお前に心配される筋合いはない!心配するくらいならさっさと叩き潰されろ!」

 

いくら巨人化したとはいえ、やはり片手ハンマーじゃ簡単に避けられてしまう。

やはり腐ってもロギアということか…ならばやはり城を一撃で粉砕できるハンマーで叩き潰すしかないな。

 

ハンマーに力を入れてもっともっとデカくし、クロコダイルに向かって叩きつける!

見聞色の覇気を使えないから、当たったかどうかもわからないのでとにかく叩き続けていく。

しばらく叩き続けていたが、クロコダイルが出てこない…なら最後に更に巨大化させたハンマーで念のためのトドメをさしておくか。

 

「クロコダイル、聞こえているか知らんが覚えておけ。お前は俺の大事なものを傷つけた…だから今から粉々に叩き潰してやんよ!」

 

「やめて!お願いだからもうこれ以上町を壊さないで!」

 

最後にどデカイのを一発くれてやろうとしたら、下のほうから王女が何故か止めろと叫んでいた。

だがここで止める理由など俺にはない!ロビンはもっと痛かったはずだ、たぶん。

 

「おい!もうやめろ!ゴムゴムの…ライフル!」

 

静止の声を聞かずに振りかぶった俺に麦わらが攻撃してきた。そんなもん痛くねぇよ。

お前の相手は後でしてやる。まずはクロコダイルを……

 

「コリエ…シュート!」「鬼…斬り!」「必殺…卵星!」

 

次から次へと…お前らの相手は後にしようと思ったが、先に相手してほしいなら叩き潰してやるぁ!

もぐら叩き再開だ。チョロチョロと飛び回るヤツらをひたすらハンマーを振り下ろし叩いていく。

 

ゴムだから打撃は効かない?こちとら武装色の覇気入りハンマーだ!こいつは痛いぞ!

刀で受け止める?誰かが言ってたが速さが重さじゃねぇ!質量こそが重さだ!受け止められるなら受け止めてみろや!

飛び回ろうが逃げ回ろうが関係ねぇ!逃げる範囲ごと叩けば当たるんだよ!

 

 

 

「…ハンマ、もうやめて。お願いだから止まって」

 

 

 

「ロビン!無事だったのか!?」

 

そんな巨人となって暴れまわっていた俺に聞こえてきたのは、とても聞き覚えのあるロビンの声だった。

ピタリと暴れるのを止め、そして同時に頭に血が上っていたのが一気に冷静になって逆に血の気が引いていくのがわかった。

 

 

これはやりすぎたかもしれん…

 

 

王宮は粉々になっており、町も瓦礫だらけになっている。

ひとまず巨人化を解除してロビンの元へ走り、怪我の様子を伺っておく。

どうやら刺されはしたが今は意識もあるし大丈夫そうだ。とはいってもフラフラなのは間違いない。

ここは全力で誤魔化そう!

 

「ロビン、大丈夫か!?とにかく治療しよう。いや何も言わなくていい。きっと立っているのも辛いはずだ。ここじゃ満足な治療はできそうにないな…よし、俺が連れてってやるから心配いらないぞ」

 

「ハンマ…そこに座りなさい」

 

「………ハイ」

 

「私も立ってるのが辛いから座るわね。ハンマ、あなたの事だから私が倒れてるの見てああなったんでしょうけど、ちょっとやりすぎにも程があるわよ?」

 

「違うんだロビン。聞いてくれ。あれはクロコダイルの仕業だったんだ。クロコダイルが王宮の土台を砂にして脆くしてたんだ」

 

やべぇ…ロビンが怒ってる気がする。ロビンの言う通り倒れてるところを見て頭に血が上っていたわけなんだけど、それだけだとマズい気がしたのでクロコダイルにも責任がある事にしてみた。

まぁそんな魂胆なんてロビンにはお見通しなわけで「嘘を言ってごまかすのはこの口かしら?」ってほっぺを引っ張られてしまった。いひゃい。

 

 

 

 

俺がやったことって、国民同士の争いを止めるために国王軍も反乱軍も叩き潰して、クロコダイルを倒すために王宮や町ごと叩き潰しただけだな…うん、怒られても仕方ないかもしれない。

 

 

 

 

 

 



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12.復興のお手伝いをするドン!

 

 

「…ゴメンナサイ」

 

 

今俺は戦いが終わり別の町へ移動した後に、国王たちにめっちゃ頭を下げて謝っている。

何せクロコダイルを倒すためとはいえ、王宮も城下町もメチャクチャにした張本人だからな。

多少は仕方ないと思うんだが、これでロビンの計画が狂うとマズいのでちゃんと謝っておく。

 

「まぁ…少々被害が大きかったのは否めないが、クロコダイルの陰謀を阻止してくれた事は感謝しているよ」

 

「だよねー」

 

「ハンマ?」

 

「ハイ、ゴメンナサイ」

 

ダメだ、今のロビンはまだ怒りが収まってないみたいだ。いや怒ってるっていうよりも呆れてるのかな?

確かにアルバーナは周りを見れば王宮も町も瓦礫だらけの「何があったんだ!?」って思うような状態だけど、結果だけ見れば悪くない終わり方をしたと思うんだ。

 

国王軍と反乱軍は殺し合うことなく仲良く気絶したし、国王も王女も含めてみんな生きてる。

お城や町に人たちは早い段階で避難していて無事だったらしい。

クロコダイルはちゃんと倒して海軍に引き渡したし、勝手に突っかかってきた麦わらの一味が怪我して寝てるのは自業自得だ。

 

そこからは俺がまた余計な事を言わないように、ロビンが国王と王女に今までの状況の説明をしていた。

クロコダイルの企みを阻止するために内部に入り込んだはいいが、肝心のアラバスタの人間は国王含め全員と言っていいほどクロコダイルを信用していたため、とにかく被害が出ないように立ち回っていたという感じでだ。

そしてアラバスタを守るためと潜入してきた王女を陰ながらサポートして情報を渡しつつ、こちらが決定的な証拠を掴んだので王女に渡し国民同士の戦いを止めてもらうようにした事にしてた。

 

確かに国王軍と反乱軍の間に巨大な剣を叩きつけて全員の注目を集めて、そのまま王女にバトンタッチだから王女のサポートをしてたと言われたらその通りに見えるな。

 

「まさかクロコダイルがそこまで動いていたとは…君たちには随分と苦労をかけてしまっていたようだな」

 

「あの…ミス・オールサンデー、いえニコ・ロビンさんはどうして私たちを助けてくれたんですか?」

 

「あら王女様、目の前でいいように操られて勝手に戦わさせられるっていうのがわかっているのに、あなただったら放っておけるのかしら?確かに王様の言う通り苦労はしたけど、苦労で内乱が収まるのなら安いものじゃなくて?」

 

そういえばロビンは「クロコダイルに新しい国を作るって騙されてたプラン」で話すのかと思ってたら「目の前の騙されてる人たちを黙って見ているなんてできなかったプラン」で説明してるな。

 

この「黙って見れられなかったプラン」は俺も知らないから今考えたんだろうけど…

 

おかげで国王も王女もすっかりロビンの言う事を信じてしまっているよ。

まぁ結果的にはクロコダイルの暗躍を止めたわけだし、今更疑っても仕方ないもんな。

それにここからが本題だ。国王に俺をクロコダイルの代わりの王下七武海に推薦してもらわねばならないのだから。

 

「それに王様。私たちだって何の目的もなくこの国に来たわけじゃないわ。それとは別に少しばかり提案もあるのだけど…」

 

「ふむ…君たちの目的が何かわからないが、この国を救ってくれた以上できる限りは協力しよう。それで提案とは?」

 

「そんなに難しい話じゃないのよ。海賊に対する抑止力として作られた王下七武海を担うのが海賊だから今回のような事が起こるわけでしょう。だから、クロコダイルの後任は海賊じゃないほうが良いのではないかと思っているの」

 

「…なるほど。確かに七武海の一角ということで、私も国民たちもクロコダイルを信用してしまっていた。君の言うことは一理あるな」

 

「ええ、だからその後任はクロコダイルを倒した上に海賊でもない、このハンマに任せたらどうかと思っているのよ」

 

国王も王女も、そして黙って成り行きを見守っていた護衛隊長やら副官やらが揃ってこっちを見てくる。

言いたい事はわかるよ?ある意味アラバスタを叩き壊した張本人だもんね。複雑だよね。

でもさ、国民同士の殺し合いもクロコダイルも全部ちゃんと止めたんだから、それでチャラってことにしといてよ。

 

「私の一存で決められる事ではないが、そういう話なら政府のほうに通しておこう。そちらの彼の力は十分に見せてもらったからね」

 

「ええ、それで構わないわ。あと壊してしまった王宮や町も、瓦礫の撤去なんかはハンマにやらせる事にするわ。いいかしら?」

 

「それはありがたい話だが君たちはそれでいいのかい?」

 

「多少は仕方ない部分もあるのだけど、それでも必要以上に暴れたのは間違いないでしょう?だからせめてそれくらいは手伝わせて」

 

おろろ?七武海の推薦の話がスムーズに進んだと思ったら、いつの間にか瓦礫を撤去する作業が発生したでござる。

壊したんだから片付けもやれって事なの?ロビンの考えがよくわからんな。

結局明日からアルバーナの瓦礫を撤去する事になり、今日は大変な1日だったからゆっくり休むことになった。

 

「ロビン、瓦礫の撤去って突然どうしたの?」

 

「あら、あなたがお城も町も全部使えなくしちゃったからお詫びにと思っただけよ?」

 

「絶対ウソだ…で、本当のところは?ポーネグリフ見つからなかったの?」

 

「ええ、クロコダイルったら国王にプルトンの在り処を聞いて、知らないって言われたら攻撃してきたのよ。おかげでまだポーネグリフは見つかっていないわ。だからハンマには瓦礫をどけながら探してほしいのよ」

 

てっきりポーネグリフを読んだ上で目当ての物じゃなかったからだと思ったら、まだ確認もしてないのに邪魔だの隠しただのと言ってたのかよ…

てことは俺が瓦礫撤去なんてやらされるのはクロコダイルのせいってことか。

それだったらもっと徹底的に叩き潰して粉々にしてやればよかったわ。

 

 

 

そして翌日からアルバーナの掃除を始めたわけだが、普通ならかなりの人数でやらないといけない作業だ。

だが、俺は1人で全部掃除することになっている。これは表向きは近くにいたら危険だからって事になってるが、裏はポーネグリフを見つけるためだ。

お城の地下にあることはわかっているので、まずは町を掃除してから城を掃除して掘っていく予定である。

 

俺はあんまり気乗りしなかったんだが、ロビンから「いいからやりなさい」と厳命されているため全身を巨大化させて町を綺麗な更地にしていく。

巨人化すれば家の1つなんてちっちゃな箱みたいなもんだし、ある意味開拓とかにはもってこいの能力かもしれないな。

 

 

 

「お~~~!でっけぇぇぇぇぇ!」

 

「おいルフィ!騒ぐな!また襲ってきたらどうすんだよ!?」

 

「落ち着けウソップ。あれは俺たちが攻撃したせいでもあるってわかってるだろ?」

 

黙々と町を綺麗にしていたら騒がしい声が聞こえてきた。ってあれは…ルフィとウソップとサンジか?俺に何か用でもあるのか?

ひとまず元のサイズに戻りながら近づいてくる3人に声でもかけて用件を聞くか。

 

「よう、話すのは初めてだよな。俺はハンマだ」

 

「おれはルフィ!こっちがウソップとサンジだ」

 

「昨日は突然襲いかかって悪かったな。城を攻撃してる巨人と戦ってるルフィが見えたもんで勘違いしちまった」

 

「あ~、だから攻撃してきたのか。てっきり敵だと思って普通に迎え撃っちまったぞ」

 

なるほど、客観的に見たら巨人がお城を攻撃してるように見えるよな。そしてそれを阻止しようと戦ってる麦わらか…どう考えても麦わらを応援するよな。仲間なら尚更か。

 

 

だから巨人化したくなかったんだ…見た目が悪者すぎるんだよ…

 

 

なんか普通に落ち込んでしまった。突然落ち込みだした俺に3人は驚いていたが、理由を言えばサンジなんかは「まぁなんだ…気持ちはわかるが元気出せ」って慰めてくれたんだが、ルフィたちはわかってくれなかったな。

 

超巨大な武器を振り回すことがロマンなんであって、自分も超巨大化はフラグなんだよ。

 

話を聞いてみればルフィたちは俺にやられて気絶した後、目覚めて王女から詳しく事情を聞いたようだ。

そこではじめて勘違いだった、俺は敵じゃなかったとと理解してくれたみたいだ。

とはいえ、一方的にやられて負けた事には思うところがないわけじゃないみたいだが、俺はそれどころじゃないんだ。

 

ゆっくり話すのは後にしろと話を打ち切り、町の掃除を終えた俺はお城のほうを片付けていく。

表面の瓦礫を全部どけて、巨大化させたスコップで掘っていく。お、硬いものに当たったぞ。

 

おー、見つけた見つけた。これでロビンの目的も達成だな。

 

「お疲れさま。どうやら見つかったみたいね」

 

「ロビン、ちょうどいいところに来たな。これだろ?」

 

「ええ。………………でもこれは私の欲しい情報ではないようね」

 

「な~に、中身は違ったかもしれないが、ポーネグリフ自体は見つけられたんだ。なら後は同じように探していけばいいだけさ」

 

「ふふ、それもそうね。たまにはハンマのそういうところを見習わないとね」

 

本来なら1ヶ月単位でかかる作業なんだろうが、巨人化したおかげで1日で終わることができた。

国王たちもこれには驚いていたが、巨人化して作業するって言ってあったので「そういえばそうか…」で終わってしまった。

 

もっと「もう終わったのか!?」とか「すごいな!」みたいなのがあるかと思ったんだけどな。

一応ポーネグリフは国王に「なんか模様の刻まれた石が埋まってたんだけど、どうしていいかわからなかったからその場に置いておいたよ」とだけ報告しておいた。

 

今は宿の食堂に国王や王女、側近たちに麦わらの一味まで集まってご飯を食べながら雑談しているところだ。

アルバーナが壊滅してしまったため、お城や町に住んでいた人たちは各地に分散しながら暮らしているということだった。

そのため、食料などが不足気味であまり食事の量が多くないらしい。

 

 

フッフッフ、どうやら俺の出番のようだな。

 

 

出された料理や飲み物などを全部巨大化させていき、全員が腹いっぱいに食べても余るほどの大きさにしていく。

驚きとともにルフィは料理を、ゾロなどは酒が巨大化したことに喜んで好きなだけ口に入れていってる。

 

「ねぇハンマさん。こんな事ができるなら、他のみんなも食料に困らないんじゃ…」

 

「…その発想はなかった。王女はなかなか頭いいな」

 

元々俺とロビンが少ない食材でもたくさん食べられるようにって程度にしか使わなかったせいで、食料が足りないからデカくして配るなんて考えもつかなかった。

確かに俺が食材や料理を巨大化させていけば、飢えて苦しむ人は減るだろう。

 

この状況になったのも俺がアルバーナを叩き潰したせいでもあるしなぁ…と思いながらロビンを見てみれば「別に構わないわよ?先を急ぐ旅でもないしね」ということで、少しの間だけという条件で炊き出し要員をすることになってしまった。

 

まぁ炊き出しなんて言っても俺ができるのはデカくすることだけだ。食材をデカくしても料理が大変なだけなので、出来上がったものをデカくしてみんなで食べられるようにしていく。

 

料理を作る時にデカくする前提で作ってもらえばちょうどいいしな。

 

作るのはお城の給仕の人とか、なぜかサンジも参加していた。「メシが満足に食えねぇ辛さはよく知ってる。お前がいれば腹いっぱい食わせてやれるんだからしっかり働け」だそうだ。

そりゃ1人前の料理を作って軽く100人前のデカさになるんだから、町の人たちだって腹いっぱいになれるだろう。

 

あとルフィなんかは腹減ったって言ってサンジにもらった果物や肉の切れ端を持って俺のところに来るようになった。

たぶんサンジにそれを言ってた時に、つい俺がリンゴを背丈ほどのサイズにして食わせたからだろう。

つまみ食いされる心配もなく、リンゴ1個でルフィを腹いっぱいにさせられるとなれば主につまみ食いの被害を受けるサンジとしても使わない手はないよな。

 

アルバーナのほうも建物の建て直し作業が開始されており、配達してこいと言われた俺は「一緒に行く」という王女と一緒にカルガモに乗ってそっちに料理を運んでからデカくして食べてもらったりもしていた。

騙されていた反乱軍の面々は「せめてもの償いに」と積極的にアルバーナ復興に協力している。

国王や王女のおかげか、今はもう国王軍との軋轢などはないようだ。

 

ロビンは国王からこの国の歴史などを聞いたりしている。伝承などもあったら教えてもらいたいそうだが、国王のほうはそこまで詳細な内容を知っていたり伝え聞いているわけではないらしい。

知りたい「空白の百年」ではないが、古くから存在する国の歴史や伝承は、それはそれで面白いみたいでロビンは結構満足しているようだ。

 

 

麦わらの一味のほうはそれぞれ好き勝手に過ごしている。

 

唯一やり取りをしているのは料理しているサンジと、たまにオヤツをデカくしてくれって言ってくるルフィくらいだ。

ゾロは特訓するとか言ってたから器具をデカくして、より鍛えられるようにしておいてやった。

ウソップとチョッパーなんて俺に近寄ってもこない。ウソップなんて卵投げただけでハンマーの餌食になっちまったし多少は仕方ないだろう。でもチョッパーには何もしてないぞ?

ナミとは特に話すこともないし、航海の事なんて俺よりロビンのほうが詳しいから挨拶したくらいで話してもいない。

 

 

数日ほど滞在していた後、麦わらの一味は次の島へ向けて出港するということだった。

そんな話が出て、一緒に聞いていた時にルフィから勧誘の言葉が飛んできた。

 

 

 

 

「なぁハンマ。お前、おれたちの仲間になって一緒に冒険しようぜ!」

 

 

 

 

 



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13.麦わらと海軍だドン!

 

 

 

「…悪いがその誘いには乗れないな。俺にも予定ってものがある」

 

 

 

「えーー!?いいじゃねぇか。一緒に冒険しようぜ!」

 

てっきりそのまま出ていくもんだと思ったら、なぜか俺が勧誘されてた。

 

別に勧誘すること自体は自由だから構わないけど、俺にはロビンが立てた「クロコダイルを倒して七武海になろう」計画がある。

 

確か黒ひげがエース倒して七武海に加入してたんだから、クロコダイル倒した俺はアラバスタ国王の推薦までもらってるんだから加入できる可能性は高いだろう。

そして海賊じゃないほうがいいって言って国王に推薦してもらうんだから、ここで俺が海賊になるなんてなったら問題だ。

 

空島のポーネグリフなんて、ルフィがゴロゴロのヤツを倒した後にゆっくり見に行けばいいだけなんだから急ぐ必要もない。

 

「俺たちにもいろいろと都合と事情があってな。お前たちが海賊じゃなく冒険家とかとして海を渡るなら考えないでもないが…」

 

「それはいやだ!おれたちは海賊なんだ!」

 

「つまりそういうことだ。お前たちが海賊である以上、今の俺たちにとっては都合が悪いのさ」

 

「ねぇ、もしかしてあなた海賊が嫌いなの?」

 

ルフィに都合が悪いってちゃんと説明してるんだが、これ通じてるのか?てか、ルフィたちは別に海賊じゃなくても問題ないと思うんだが、そのあたりはこだわりか何かなんだろう。

そう思ってたらナミから嫌いなのかと聞かれたが、別に嫌いなわけではないんだ。

 

ナミならばわかってくれるだろうと思い、国王に海賊ではない七武海としての推薦をしてもらうために海賊にならない事を説明し理解してもらう。

あと大事な事なのでロビンを守るためにも必要な事だということもちゃんと付け足しておく。

ロビンは現在8900万ベリーもの賞金を懸けられているわけだから、ルーキー海賊の船にいるのと七武海の庇護下にいるのとでは安全度が全然違う。

 

「そういうわけだ。たぶん腹いっぱい飲み食いできるとか食料的な意味で俺が欲しいんだろうが、俺は海賊になる気はないぞ」

 

「あなたの言う事ももっともね。確かに海賊じゃない七武海になって守るっていうのなら、海賊の仲間になれるわけないわよね」

 

「そんなのおれたちが守ればいいだけだろ?仲間は多いほうがいいじゃねぇか」

 

「…じゃあこうしよう。俺と模擬戦をしてそれだけの力があると見せてくれ。悪いが今の俺の中では、お前たちは俺よりも弱いと認識している。つまり俺はロビンだけじゃなくお前たちまでも守らなきゃいけないって事になってしまうからな」

 

煽るつもりはないが、少なくとも今は俺のほうが強いということを伝えておく。

こちとら幼少期から具体的な敵をイメージしながら修行してきたんだ。今はまだ偉大なる航路前半のため聞いたことすらないだろう覇気だって習得している。武装色だけだけどな。

 

この言葉にはルフィだけでなく、ゾロやサンジも反応していた。まぁブチギレ巨人化状態だったとはいえ、一方的にやられたからな。遺恨はなくても悔しい気持ちはあるんだろう。

 

 

 

 

 

「「「「……………………」」」」

 

勝負はあっけなく終わった。結果?もちろん俺の勝ちだ。

 

ゴムの身体というのは応用力も高いんだろうが、今のルフィじゃ伸ばして攻撃する程度だ。

俺は応用も何も巨大化させて武装色の覇気でぶっ叩くくらいしかできないが、道半ばとはいえすでに20年以上もこれ1本で戦ってきた。

 

「これでわかったろ?誘ってくれるのは嬉しいが、今はそれぞれの冒険をしようぜ」

 

ルフィとの模擬戦も金槌を巨大化させて武装色の覇気を纏って叩きつけただけだ。

覇気を纏っていなければただの打撃だから効果はないんだろうけど、こっちはこの世界を認識してからハンマーのロマン的な戦い方を含め模索し続けてきている。

 

「おーい、ルフィ。生きてるか?」

 

「……くそっ!やっぱハンマはつえーな」

 

「そりゃこれでも海賊やらマフィアやらを叩き潰しまくってきたからな。強くなるための特訓はいろいろやってるんだぜ」

 

まぁこれは決闘とか意地のぶつかり合いとかじゃなくあくまでも模擬戦だし、力試し的な感じだから終わってしまえばこんなもんだ。

それに覇気でダメージがあるとはいえ、ゴムだからそこまで重症にはならんだろうし。

 

「…なぁハンマ。偉大なる航路にはあのワニとかお前よりも強いヤツがたくさんいるのか?」

 

「そりゃいるだろ。ここは偉大なる航路でも入ってすぐのほうだ。強いヤツらってのは後半の海とか海軍本部とかにたくさんいるんじゃないか?もちろん俺みたいに海賊でもなくうろついてるヤツだって他にもいるかもしれないしな。こう言っちゃなんだが、もっと強くならないとこの先苦労するかもしれないぞ?」

 

お互いにな、とは思っていても口には出さないでおく。

 

あー、マジで白ひげとの戦争どうしよう…七武海に入ることが確定したら、本気で旅なんてせずに修行しまくらないといけないかもしれないなぁ。

 

あの戦争には巨人族もいたのにまるで引き立て役みたいな扱いだったし、今回みたいに自分を巨大化させてもダメだろう。

もしそれをやるなら白ひげの船を片手で握りつぶせるくらい、つまり…数百mのデカさにならないといけないはずだ。たぶん。

 

…もう戦争の招集だけ拒否したりできないかな?

 

「…決めた!おれたちはしばらくここで修行して強くなることにするぞ!」

 

「うん?別にここじゃなくても冒険しながらでもいいんじゃないのか?」

 

「ここならハンマがいるだろ?それに負けっぱなしも悔しいからな!」

「ああ、そりゃ名案だ。ハンマは剣士じゃねぇがリベンジはしときたいしな」

「マリモと同じ意見ってのはアレだが、ここらで腰を据えて特訓しとくのも悪くねぇな」

 

「…俺は俺の予定を優先するからな?ずっとは付き合えないぞ?」

 

なんでだよ!?早く空島の平穏を取り戻してこいよ!あとウソップとナミとチョッパーの事も考えてやれよ!

…でも結局この3人も戦う必要が出てくるんだし、特訓しといて損はないな。南無…

 

 

そこからは食事の時間だけ料理を巨大化させたり配膳したりして、それ以外の時間は修行をしまくった。

とはいってもルフィたちの相手してる時はハンマー振り回して一方的にぶっ飛ばしてるほうが多かったんだが…

 

それでも極限状態ならば掴めるものもあるだろう。俺だって海王類と海の木片の上でバトって強くなれたんだ。

 

ナミたち?泣きながら逃げ回るのをハンマー振り回して追いかけてただけだ。さすがにホームランとかもぐら叩きは可哀想なのでやらなかった。

 

だからといって、俺と目が合うだけでビクッとするのやめてくれないかな…

 

 

そんな事をしてたら、政府のほうに伝えてもらった推薦が届いたようで一度こちらに来てくれということらしい。場所は海軍本部との事だ。

ロビンには危ないのでアラバスタにいてもらい、ルフィたちにその旨を伝えて1人で海軍本部へと出かけていった。

 

 

 

 

 

「君がクロコダイルに代わる新たな七武海として推薦されているハンマだね。私は海軍本部元帥のセンゴクという者だ」

 

「元帥がなんでまた?」

 

「ああ、君は海賊じゃないから楽にしてくれて構わないよ。アラバスタ王国では国を救うためにクロコダイルを倒したと聞いている。そして、七武海という海賊に対する抑止力には海賊じゃないほうが安全だという事もね。君の意見は至極もっともな事だ」

 

あれ?この意見はロビンじゃなくて俺が出した事になってるのか?まぁそのほうがロビンにも俺にも都合がいいからそうしたんだろうな。

センゴク元帥の話では俺が出した意見はもっともなんだが、名の知られていない一般人を七武海に任命しても抑止力としての効果が薄いだろうということだった。

 

まぁ俺がやってたことって、海賊やマフィアを一方的に叩き潰してただけだからなぁ。

相手なんて確認せずに巨大ハンマーで海の藻屑にしてきたから、俺の事を知ってるヤツのほうが少ないのかもしれない。

アラバスタに着いてからなんてバロックワークスとして活動してたから無名だろうし。

クロコダイルを倒したって言っても、それだけじゃインパクトに欠けると言われたらそれまでだ。

 

フフフ、クロコダイルがやられたか…所詮ヤツは七武海最弱の男…みたいな感じなんだろう。

でもそうなるとどうなるんだ?

 

「君の今までの功績は海軍でも少しは把握しているつもりだ。ウエストブルーでハンマーを使い海賊船やマフィアの船などを一方的に叩き潰していたと聞いているよ」

 

「あ、それ見られてたんだ。船ごと叩いてたし、賞金稼ぎみたいにいちいち捕まえたりしなかったから知られてないのかと思ってた」

 

「ああ。小さな船から巨大なハンマーが生えて、海賊船を叩き潰したりふっ飛ばしたりしているのを海軍の船が目撃していてね。悪魔の実の能力者のようだが、海賊行為をするわけでもないから意図がわからず静観していたんだよ。ただ、今回で少しわかったことがあってね。君が七武海に入りたい目的は…これだろう?」

 

そう言って出してきたのはロビンの手配書だ。さすが知将、そこまでわかっていたのか。

まぁ俺が海軍に見られてるって事はロビンも見られてるって事だし、大体ロビンだけ賞金額上がってたわけだから知ってて当然だよな。

 

でもそうだとするとセンゴクの目的が見えないな。ロビンだったらわかるんだろうか?

 

「そう警戒することはない。君や彼女に何かをしようというわけではないのだ。ただ、君は彼女が何をもって手配されているのか知っているのかい?」

 

「ああ、知ってるよ。オハラが海軍の手(バスターコール)によって滅んだことも知っている」

 

「…そうか。君はそれを知っていて七武海に加入、いや政府の下につくという事でいいのかな?」

 

「ここにいる事がその答えになっているだろう?俺はあんたらにいい印象は持っていないが、かといって海軍憎しで襲ったりもしていないはずだ」

 

うーん。これ七武海の面談っていうよりも、ロビンに手を出さない代わりに海賊狩れって言ってるって事なのか?

俺にはセンゴクが何を考えているのかがわからんから、どう答えれば正解なのかがまったくわからん。

 

結局この問答の意味がわからないまま終わり、結果は追って知らせる的な感じだった。

これ結果が出るまでアラバスタにいないといけないのか?それとも何か別の連絡手段でもあるのか?

部屋から出て帰ろうとしたら、今はまだ会いたくなかった人物が俺を待ってたよ。

 

「ちょっとだけ時間いいか?すぐに終わる」

 

「…なんでアイマスク?」

 

「これは…アレだ。あるとよく眠れるんだ」

 

もじゃもじゃ頭でアイマスクをつけたノッポさんだ。そう、大将青キジである。

そのまま青キジの部屋に連れられてソファに座れとの事だった。早く帰りたい…

 

「お前がクロコダイルに代わる七武海に推薦されてるんだってな。話は聞いてるぜ」

 

「…これってどういうシステムなの?もしかして順番に面談していくの?」

 

「いや、俺のは個人的な話だ。面談はセンゴクさんがやってるから俺は関係ないと思っておいてくれ。それでだ。お前を呼んだのは、お前が来たっていうんで少し話してみたかったってだけだ」

 

「海軍を恨んでないかとかそういう探り的なやつ?」

 

「…やっぱ聞いてたか。まぁ恨まれても仕方ないんだが本題はそこじゃねぇ。お前がどういうヤツなのか見ておきたくてな」

 

あぁ、そういう事か。つまり青キジは恨まれててもいいけど、自分が逃した子がちゃんとまっとうに生きていってるのか知りたかったとかかな?

後は騙されたり唆されたりして迂闊な行動を取らないかとか?

 

確か原作では「寄る辺なく彷徨っているならこの俺が引導を渡してやる」的な感じで凍らせたんだっけか。

心配するな青キジよ。ロビンはちゃんと可愛い女の子に育っているぞ。たまに小悪魔になるが…

 

「そこは無用な心配だな。ロビンはめちゃくちゃしっかり者で世話焼きだぞ。ずーっと一緒にいる俺が言うんだから間違いない。たまに怒ると怖いがな。あと俺の考えが筒抜けな時があるんだが、なんか考えが読まれないようないい方法とかないの?」

 

「そんな事俺が知るか…まさかノロケを聞かされるとは思わなかったぞ…面倒くせぇがこれなら大丈夫そうだな…時間取らせて悪かった。もう帰ってもいいぞ」

 

青キジが心配していたであろうロビンがちゃんと育ってるかについては、俺が思っている事は全部ではないが伝えた。これでたぶん青キジもロビンをわざわざ狙おうとは思わないはずだ。

今の俺ではまだ青キジたち大将には届かないだろうから、下手に襲ってこられては困るしな。

別に嘘を言ってるわけでもないし、ロビンの事が正確に伝わってくれているだろう。

 

 

 

 

でもロビンには青キジの事言ったほうがいいのかな…あんまりトラウマ刺激したくないし、ただの面談だったって言っとくか。

 

 

 

 

 



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14.やっぱり空島に行くドン!

 

「…………なにこの状況?」

 

 

海軍本部に行って面談してアラバスタに戻ってきたのはいいんだが、目の前にある光景に理解が追いつかない。

ルフィたちとロビンが戦ってるのは、まぁ俺とやってる模擬戦みたいなもんだろうからそれはいいんだ。

ただ、なぜかロビンが一方的にルフィやゾロを近づかせずに圧倒してるんだ…

 

「くそっ!ロビンもつえーな!」

 

「ふふ、直接戦えばあなたたちのほうが強いのかもしれないけれど、これでもハンマと一緒に小さい頃から過ごしてきたのよ」

 

「ちっ、確かにこいつはハンマみたいに力ずくじゃねぇ…だがその分こっちが力を出せないようにしてきやがるからやりにくくて仕方ねぇな」

 

ルフィやゾロが攻撃しようとしても、地面から生えた腕が足を掴んだり肩や頭から生えた手が目を塞いだりして攻撃させないようにしている。

サンジたちはそれを見ているので、何でこんなことになってるのか聞いてみた。

 

どうやら俺がいなくなってからも修行してたらしいんだが、そこにロビンが顔を出して「その程度じゃまだまだハンマには届かないわよ?」とか言われたらしい。

それを聞いて食って掛かって、1人ずつあしらわれてたんだけど「このままじゃ私の訓練にもならないし2人で来てくれないかしら?」とか言われて今の状況になったそうだ。

 

まぁロビンの能力は攻撃力とか上がるわけじゃないけど、その分応用力は桁外れだと思うしなぁ。

でもなんでわざわざ訓練なんてしてるんだろ?歴史の話とか聞き終わって時間ができたのかな?

 

「…そろそろ終わりにしましょうか。ハンマも戻ってきたみたいだし」

 

「ただいまロビン。結果はわからんけど元帥と面談してきたよ。ところで何でまたルフィたちと訓練なんてしてるの?」

 

「今回クロコダイルにやられた事で少し考えたのよ。せめてロギアが相手でも身を守れるくらいはできないとってね」

 

「あーなるほど。それなら納得だ」

 

ただそれなら見聞色の覇気を身につけるのが一番なんだけどなぁ。

俺が使えないから教えられないし、教えたところで理解できないって顔されるからどうしていいのかわからん。

でも多人数相手とかは俺もやってたしどこかで役に立つだろう。ルフィたちも搦め手を使う相手との戦いは良い経験になるはずだ。

 

ロビンのほうだって相手がロギアだからこそ不覚を取ったものの、本来の裏社会を渡り歩いてるロビンに比べてうちのロビンは強くなっているはずだ。

そのうち「分身の術」やら「身代わりの術」とかも考え出しそうな感じすらする。

 

…いつか千手パンチやってもらえたらいいな。

 

アラバスタ王国のほうも、アルバーナの再建の目処が立ってきたようだ。

大量の木材や石材が必要にはなるが、半壊の修復じゃなくて更地で1から作り直しな分いろいろと「あそこはああしよう」とか「せっかくだからここはこうしよう」とかワイワイ話し合っているらしい。

 

なんかもう大丈夫そうだし、俺もちょっと今後に備えて本格的に修行したくなってきたんだよな…

青キジと戦う可能性は低くなったと見ていいと思うんだが、七武海になれなかった場合にはロビンが狙われる可能性も出てくる。

少なくとも俺と一緒にいるってことはもう海軍に知られてるわけだし、万が一のためにも今よりもっともっと強くならないと…ちょうどいい修行の場所ないかな?

 

 

…あるじゃん!ロギアと戦えて、もし俺が負けても大丈夫な相手が!

 

 

「ルフィ!ちょっとの間だけど一緒に冒険しようぜ!」

 

「お?やっぱりハンマも冒険したかったんだな!よし、すぐにいこう!」

 

 

そうだよ。次は空島じゃん。つまりルフィがいれば俺が負けても問題ない案件だ。

雷なんて食らったらどうなるのかわからないけど、今の俺がどこまで戦えるのか試すには絶好の機会だよ。

しかも相手は見聞色の覇気持ちだったはずだ。空島を海に叩き落とすくらいじゃないと勝機はないだろう。

 

ルフィを保険として利用するようで悪いが、ウダウダ悩むよりロマンを求めて突き進むのが俺だ。

 

それにポーネグリフがあるからロビンも幸せ、命がけではあるがロギア相手の修行ができて俺も幸せ、言うことなしだ。

そしてオマケに、俺が一緒にいればルフィたちも食材の残りとか気にせず存分に飲み食いできて、つまりはみんな幸せだ。

 

アラバスタのみんなには「俺たち修行しながら旅してくるからがんばれ!」とエールを送って、ロビンと一緒に乗ってきた船に乗り、ルフィたちのメリー号と一緒にアラバスタを出発した。

 

 

移動中は特に変わった事もなく、偉大なる航路らしい天候と海だった。空からガレオン船が降ってきた時は「そんな事もあったなぁ」とハンマーで叩き壊し、猿が来た時は「あーこんなのいたっけなぁ」と眺めていたりしてた。

 

 

ジャヤ島に着いてから思い出したんだが、ここって確か黒ひげいなかったっけ?

 

 

もし俺がここであいつを叩いておいたら、俺が七武海に入るのに余計な横やりを防げるんじゃないのか。

そしてその結果エースと黒ひげの激突がなければ、俺が七武海に加入してもあの戦争を回避できるかもしれない。

そうなれば俺が余計な未来を気にしてソワソワしたり焦ったりする必要もなく、ただただロマンを追い求めてハンマーを振るえるんじゃないだろうか。

 

 

やべぇ…名案すぎて自分の閃きが怖い。

 

 

「ハンマ。また変な事考えてたんでしょうけど、麦わらくんたちは町に空島の情報を集めに行ったわよ?」

 

「あれ?もう話は終わってたの?じゃあ俺もちょっとウォーミングアップしてくるから、ロビンはここで待っててよ」

 

「つまり暴れてくるってことよね。あまりやりすぎてお尋ね者になっても知らないわよ?」

 

大丈夫だロビン。確かここは無法地帯のはず。つまり、どれだけ暴れても災害みたいなもんで泣き寝入りするしかない町なんだ。

そして俺にとっても無法地帯は都合がいい。これから空島で戦う前に、今の俺の力でどれだけの威力を出せるかの実験にもってこいなんだ。

 

雨が降っても雷が落ちてもみんな運が悪かったって考える。ましてここは偉大なる航路だ。

ここに来るまでにガレオン船だって降ってきたわけだし、超巨大なハンマーが降ってくる天気だってあっても不思議じゃないはずだ。

 

 

 

 

「お、ルフィ、ゾロ、ナミ、空島の情報は何かわかったか?」

 

「ハンマ!あんたなんで一緒に来てくれなかったのよ!変なのに絡まれて大変だったんだから!」

 

「うん?何か問題でもあったのか?」

 

「いや、何も問題はねぇよ。ナミの言う通り変なのに絡まれただけだ」

 

ちょうど町に向かってるところで帰ってくるルフィたちと会った。なんかルフィとゾロだけ怪我してるな。

なんかあったっけな。ああ、空島なんて存在しないとかなんとかか。

 

…まぁ俺には関係ない事だ。何せ今から町のヤツらは()()に遭うんだからな。

 

「ハンマも町に行くのか?」

 

「ああ、ちょっと町の天気が変わるんでな」

 

「?そっか、おれたち先におっさんのところに戻ってるぞ」

 

まぁ俺もすぐ戻るよ。この島の天気を「晴れ、ところにより(モックタウンにだけ)ハンマー」に変えてくるだけだ。

 

今の俺ならばこの町を覆うくらいのハンマーが軽く生み出せるかもしれない。

今まではハンマーだけを超巨大にしてたから気づかなかったのか、クロコダイルの時に今まで使わなかった巨人化をしたことによってなのかわからないが感覚が少し変わった気がする。

 

通常の俺のサイズでハンマーを超巨大化させても、巨人化した時にはそこまで大きく感じなかった。

だが巨人サイズになってから更に超巨大ハンマーを生み出した事で、その大きさの感覚を覚えることができたんだろう。

 

 

 

町から少し離れたところで止まり、金槌を手にして力を込めていく。まだまだ、もっともっとデカくだ…

 

 

いくぞ無法者ども!俺のこれからの安寧のための生贄になりやがれ!

 

最大出力の覇気込みハンマー連打だ!ドォンドォンドォンドォンドォン!…っと。

 

 

町のヤツらからすれば、黒い鉄の塊が突如として町の外に出現して、そしてそれが考えられない早さで上下に反復運動を繰り返して町を粉砕していくんだ。

まぁ一撃で運良く意識を失えるといいな。やってる俺が言うのもなんだが。

 

そのまま町の至るところを念入りに叩き潰していく。隅っこにいて逃げられても困るからな。

もはや町があったという痕跡すら残さないほどにハンマーで叩き続け、すべてが更地になった結果見晴らしのいい景色だけが見えている。

酒場も、リゾートホテルも、人間も、動物もなにもない。わずかに海辺に漂う木片だけが、ここに何かあったんだろうという痕跡になっているくらいだ。

 

 

うむ!いい感じの威力になってるな。でもまだハンマーのサイズをもっと大きく、そしてもっと早く振り上げ振り下ろしできるようにならないとダメかな。

 

 

現時点の威力の確認や課題なんかを考えながら、ロビンたちが待つクリケットの元へと戻っていく。

これで黒ひげ一味が全滅したと思うんだが、俺の攻撃の難点は倒したのかどうかの確認ができないところだな。

視認する前に相手が逃げる場所のないくらい巨大なハンマーで攻撃する上に、念入りに連打してるから余計にわからない。

こういうとき見聞色の覇気があれば認識できたりするんだろうか?誰かコツとか教えてくれないかな…

 

 

 

 

 

「ハンマ。あなた暴れすぎよ?こっちまで地響きが届いてたんだから」

 

「マジで?まぁあんだけやれば響いても仕方ないよね」

 

「…何やってたのか詳しく聞かなくてもわかるわ。あなたのハンマーはここからでも見えてたもの」

 

「あー…そりゃあれだけのサイズなら見えててもおかしくないもんな。まぁ課題も見つかったからやってよかったよ。まだまだ修行が足らないな」

 

戻って早々ロビンに何やってきたのかバレてた。てか見られてた。

そりゃ町1つ覆うくらいのハンマーなんて遠くからでも見えて当然だよね。

でも今から攻撃しますっていうのが周りにも丸わかりなのはどうにもならないもんなぁ。

 

俺がモックタウンにハンマーを叩きつけていた時に、他のみんなは空島に行くために鳥を探しに森へ入っていたらしい。

なんとか捕まえることはできたんだが、その間ずっと地響きが続いていたので地震かと思っていたそうだ。

ロビンだけは聞き慣れたリズムの地響きだったもんですぐわかったみたいだし、少し遠くを見渡せば見慣れたハンマーが見えるしで俺が暴れてるように見えたんだろう。

 

一応言い訳をさせてもらえば、決して無駄に暴れてたわけじゃないんだ。未来のためなんだよ。

 

俺の全力の確認、黒ひげを全滅させることで戦争回避、無法者を町ごと殲滅することでクリケットは黄金取られない、良い事ずくめだ。

今の時点ではただの破壊行為でしかないけど、ちゃんと未来を見据えてやってることなのさ。

 

だからロビン、そんな「ハンマったらストレスでも溜まってるのかしら?」みたいな疑わしい目で見ないで。もし七武海になれなくて狙われても手を出せないように力の痕跡を残しておくのだって必要な事なんだから。

 

 

 

少々奇行に走ったみたいに見られたけど、その後は無事船を出して空まで打ち上げられることに成功した。

確かこのあたりで黒ひげが現れて1億の首だとか教えてくれるはずだけど、既に黒ひげさんは俺がハンマーの餌食にしてしまっているので誰も教えに来てくれる人はいない。

 

 

…ってクロコダイルを俺が倒してるからルフィは1億になってないんじゃね?

 

 

まぁいいか。懸賞金なんて少ないほうが狙われにくいし、ルフィたちだって冒険したいだけなんだからきっとこのほうがいいに決まってる。

 

 

 

 

「ここが空島かー。ロビン、ここにもポーネグリフあるといいな」

 

「そうね。そんなにすぐに見つかるものでもないけれど、せっかく空島なんて珍しいところに来たのだからいろいろ見るのも悪くないわね。でもさっきのアレは良かったのかしら?」

 

「別にいいんじゃない?空島には空島のルールがあるのかもしれないけど、ダメならそのときは謝るか開き直るかするよ」

 

ロビンはそんなすぐに見つかるわけがないだろうと思ってるのか、比較的観光気分で空島を見て回るつもりのようだな。

入り口みたいなところでお金を払う払わないについては何も言わず眺めているだけにしておいた。

どうせ最後は戦うんだし、お金がないわけじゃないけどルフィたちが払わずに俺たちだけ払うのもなぁ…って思ってたら船ごと運ばれてたよ。

 

 

 

 

 

まぁ今回は比較的気楽な旅だし、ロビンの言う通り空島を見て回ろうかな。

 

 

 

 

 

 



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15.空島は楽しいドン!

 

あんまり空島での旅の光景って描写されてなかったのか、俺の記憶にはなかったもんで珍しい物だらけだった。

ダイアルは覚えてたんだけど、やっぱり空にあるだけあって独自の文化を築いているんだなーとかロビンと2人で散策しながら感想を言い合ったりしてたよ。

 

ちゃんとコニスちゃんには「へそ!」の挨拶もしたし、パガヤさんには「すいません」に対して「こちらこそすいません」とか謝り合って遊んでたりもしたし、自分でもテンション上がってるのがわかった。

 

「ハンマ、あなた馴染むの早すぎじゃない?もしかして空島がどんなところか知ってるの?」

 

「まさか。初めて来たからすっごい興奮してるよ?それに見た感じいい人多そうだから気を張る必要もないしね」

 

「それにしても「へそ」って言われてすぐに返せるんだもの。どこかで聞いた事があるのかと思っちゃったわ」

 

「初対面の相手に言うんだから挨拶じゃないかと思ってね。それにとりあえず同じ言葉で返しとけば問題ないでしょ?ロビンも言ってごらんよ。へそ!」

 

そんな観光客丸出しな会話をしながらラブリー通りでキャッキャしたり、ダイアルを見ていくつか買ったりこっちで言う青海にはない物をいろいろ聞いたりと空島の人との交流を楽しんでいた。

 

ロビンのほうも珍しい物が多いからか「空島ではどういう生活をしているのか」とか「空島の文化と歴史について」とかお店の人に聞いたりしてる。

考古学とか関係なく異文化に触れるっていうのは面白いものだし、価値観が違ったりと何かと驚かされたりするものだからロビンじゃなくても話してて楽しいだろう。

 

そして俺にはわかる。これはロビンもロビンで結構テンション上がってるな。

 

まぁ青海ではおとぎ話みたいな扱いだったし、ベラミーたちも「あるわけねぇぎゃはははは」みたいな感じだったはずだから、実は存在していてたどり着いたっていうのは大きいよな。

しかも俺のせいでベラミーのほうがもう()()()()()わけだからあべこべだな。…いや、俺のせいじゃないや。異常気象でハンマーが降ってきたせいだった。やっぱり偉大なる航路は怖いところだな。

 

せっかくなので空島特産の花と小さなダイアルで作られたブローチを買ってロビンにプレゼントしたり、ダイアルをいくつかと、珍しい果物を後で大きくして食べようと買っていったりしてコニスちゃんのところに戻ることにした。

 

「コニスちゃんただいま!…あれ?ルフィたちどっか行ったの?」

 

「ああ、ハンマさん。実は…」

 

コニスちゃんから話を聞いてみれば、もうルフィたちは冒険に出かけたらしい。

ナミがウェイバーだっけ?この名前聞くと違うの思い出すんだけど…

ウェイバーに乗ってとか言われると「アララララライ」とか聞こえてきそうだな。

 

違うそうじゃない。ウェイバーに乗ってどっか行っちゃってメリー号も連れ去られて飛び出していったらしい。

 

つまり神様やら神官やらと戦いに行ってるということだ。せっかく命がけでノックアップストリームに乗ってまで来たんだから、もっと空島を楽しんでから行けばいいのに…

それとも俺たちが空島観光を満喫しまくってるだけか?

 

 

それはそれとしてスカイシーフード満腹コースは美味いな。

 

 

コニスちゃんから話を聞くついでに、残されていた料理を食べてたんだけど結構イケる。

ロビンも一緒に食べながらいくつか料理について聞いたりしてるな。青海に戻っても作ってくれるのかな?

コニスちゃんとの話はルフィたちが飛び出して行った話から「俺たちは一緒に来たけど同じ船の仲間とかじゃないんだよ」ってところからルフィたちとの出会いやアラバスタの話をしたり、それまでの旅の話をしたりと盛り上がった。

 

コニスちゃんも青海の話は興味津々のようであれやこれやと質問してくるものだから、つい昔を振り返りながらいろいろと教えてあげたりしていた。

…まぁほとんどロビンがだけど。俺の話せる思い出だとハンマー振り回してるばっかりになってしまうんだ。

 

なんだかんだワイワイと思い出話やら空島の話やらと盛り上がってたら、何やら遠雷のようなものが聞こえてきた。

 

…しまった。お茶会での話に夢中になって俺の目的を忘れてた。

 

「ロビン、せっかくだし神様の顔でも拝みに行かないか?神様っていうくらいだしポーネグリフがお供えしてあるかもしれないぞ」

 

「神様にそんなもの(ポーネグリフ)お供えしてどうするのよ…でも古い建造物や遺跡なんかが見れそうね」

 

「空島の文化や生活はもう堪能したし、次は昔の遺跡探検といきますか」

 

今ルフィたちの戦いはどこまで進んでるのかわからないが、きっと間に合うはずだ…

コニスちゃんに「気をつけてください」と心配されながら見送られて、ロビンと2人ジャングルみたいな秘境っぽい場所へと移動していった。

しかし空島の植物は成長が早いのか成長率の上限が高いのか知らんがデカいな。

空島の成分が植物を異常に成長させるとかなんとかなんだっけな?あれ、これは仮説だったかな?

 

 

 

 

 

「お、みんないた…けど、なんかもう終局って感じがするなぁ」

 

「あら、ハンマは麦わらくんたちが戦っているのを知っていたの?」

 

「知らなかったけど見た感じがそんな感じじゃない?俺はちょっと参加してくるけど、ロビンはあっちの遺跡見に行ってくる?」

 

「そうね。ハンマが暴れたら遺跡が壊されちゃいそうだし、先に見に行ってみるわ。でもあんまり遺跡を壊さないでね」

 

遺跡を壊すなか…俺にその要求はハードル高すぎない?それならいっそのこと戦うなって言われたほうがまだマシだよ。

ここにはゾロもチョッパーもいるし、元神様だっけ?もいるし空島の戦士もいる。みんな満身創痍で入院不可避みたいな感じになってるけど。

もう生き残りバトルロワイヤルも終わって後は神様を退治すればいいんだったっけ。

 

「なぁゾロ、生きてるか?これどういう状況?見たところ、そこに転がってるこの戦士っぽいヤツと相討ちにでもなった?」

 

「……ハンマか。ハァハァ…これは相討ちじゃねぇしそいつも敵じゃねぇ。今は神なんて言ってるフザけたヤツにナミが連れてかれたからルフィが追っかけてるところだ」

 

「なるほど。んで、ルフィと神様はどこにいるの?」

 

「おそらくあの船だ…行くのか?」

 

いや、わざわざ船に乗り込んだりなんてしないさ。あんな小さい船の上じゃ俺は満足に戦えないからな。

そして地上戦をしようにもここじゃ遺跡を壊しちゃうから満足に戦えない。

 

だが敵は今船に乗って浮いてて、これならば遺跡を壊す心配も避けられる心配もない。

 

確か神様は月に行きたいんだったよな。本当ならホームランをプレゼントしてやりたいが、それだとルフィも一緒に飛ばしちゃうから勘弁してくれ。

 

「聞こえないだろうが先に言っておく。ごめんルフィ」

 

あんな小舟程度、今までに叩き潰してきた海賊船に比べりゃ大したことはないんだぜ。

しっかりと武装色の覇気を込めてハンマーを巨大化させていく。モックタウンを滅ぼしたサイズほどデカくはないが、神様ご自慢の船の10倍ほどの超巨大な覇気込みの鉄の塊をお届けしてやる。

 

大事な船があるから逃げるわけにもいくまい!船と一緒に空島の土に還るがいい!

 

 

いくぞ自称神様!俺の渾身の一振りを…ドォォン!っと。

 

 

本当はしっかりとトドメを刺すために連打するんだが、ルフィも一緒に叩いてるはずだから1回で終わらせておく。

 

…………待てよ?船にナミも乗ってなかったっけ?

 

まぁいいか。さすがに死んではいないだろ。てかナミがいるから攻撃できないとかあり得ない。

もしかしたら全身骨折くらいにはなってるかもしれないが、ちゃんと謝れば許してくれるはずだ。

 

俺の当初の目的では神様とタイマンして勝てるなら良し、負けてもルフィがいるから大丈夫って計画だったはずなんだが、どこでこんなに計画が狂ったんだろうな?

 

神様の大事な船は叩き潰されてバラバラになってる。さすがに黄金で出来てるところはそのまま埋まってるが、これじゃあ月にも行けないだろうな。

とりあえずルフィとナミを探さないと…ルフィは間違いなく生きてるはずなんだが、ナミがどうなってるかだ。

 

「おーい、ルフィー!ナミー!生きてたら返事しろー!死んでたら神様にやられたって事にしとくからなー!」

 

「…オイ。どう考えてもお前のハンマーでやられてんじゃねぇかよ」

 

「お、ゾロ。もう動けるのか。ルフィとナミを探すの手伝ってくれ」

 

って言ってるそばからルフィ発見。なんでこういう時って頭から埋まるんだろう?

 

「ようルフィ、神様と戦ってるって聞いたから手伝いに来たぞ」

 

「やっぱりハンマだったか!死ぬかと思ったぞ!」

 

「いや普通は飛び立とうとしてる船見つけたら叩き落とすだろ?これはもう人間の本能みたいなもんだ」

 

「…………なるほどな!本能なら仕方ないな!」

 

上半身が埋まってるルフィを引っこ抜いて適当な言い訳をしておいたら納得してくれた。

どうやらナミは、ルフィが俺のハンマーに気付いた時点で船の外に放り投げたらしい。

咄嗟にしてはいい判断だ。モックタウン叩き潰した時みたいな町サイズのハンマーにしてなくてよかった。俺もナイス判断だ。

 

お、噂をすればナミがこっちに走ってきた。無事で良かった良かった。

 

「こんのぉぉぉ……………あほーーーーー!!!!」

 

「いでぇ!!なにすんだよ?ゲンコツなんてロビンにもされたこと……あるわ」

 

「あんたなんで私ごと叩き潰そうとしてるのよ!ルフィに放り投げられたのも怖かったけど、あの神様も怖かったけど、あんたのハンマーも怖かったじゃないの!」

 

「そんだけ怖いものだらけだったら別にいいじゃんか。てかアラバスタであんだけハンマー振り回して追いかけてたのにまだ怖いのか」

 

ちょっとばかりボロボロのドロドロになってるナミにはちょっとだけ悪いことしたかなーと思わなくもないが、ロギアを相手にちまちまと攻撃繰り返すなんてやってられん。

元々俺があの神様と戦う時は空島ごと叩き落とす勢いでハンマー振り回す予定だったんだから。クロコダイルの時はそれやってアラバスタのお城と町が壊滅したけど…

まったくロギアってのは厄介なヤツらだ。

 

「ハンマ、今回はあまり暴れなかったのね」

 

「でしょ?ロビンは遺跡のほうどうだった?」

 

「ちょっと気になるものがあったのだけれど、どこにも見つからなかったからここにはもうないのかもしれないわ」

 

ロビンは遺跡のほうで古代文字で書かれたものを発見したみたいだけど、大鐘楼がどこにもなかったらしい。

あれ?なんか蔦登って行った先になかったっけ?わかんないけど行けばわかるか。

 

「ロビン、遺跡なんだからそこに残ってるとは限らないぞ。どうせだから高いところから見下ろして探してみよう!」

 

「突然どうしたの?周辺も含めてそれらしいところは大体探したわよ?」

 

ロビンの手を引いて豆の木の麓まで来たが登るとなると面倒だなー。もういっその事巨大化してロビンを運ぶか。

俺は自分をアラバスタの時よりも巨大化させていき、足元のロビンを気をつけないと見失いそうなサイズへと変化させていく。

 

「ロビン、俺の手に乗れ」

 

手にロビンを乗せて蔓のてっぺんを確認してみるが何もない…

あれ?ここじゃないんだったっけ?この近くなのか?お、キラリと光るもの発見。

 

「これは…どうやらハンマの予想が的中したみたいね。これがあのお猿さんたちが海底を潜って探していた黄金の鐘に間違いないわ」

 

「おー、良かった良かった。それじゃこの鐘を下ろそうか」

 

「待って。これは……ポセイドンの在り処と、ゴール・D・ロジャーの刻んだ文字」

 

「一応ロビンの探しものもあったって事か。それじゃこの島雲ごと持って…っと」

 

島雲と黄金の鐘一式をまとめて持って、みんなのいるところに置いてから元のサイズに戻っていく。

これで後はこの鐘を鳴らしてあげればめでたしめでたしだな。

 

 

 

 

と、思ったらそんなハッピーエンドっぽい感じにならなかった。

 

なんか自称神様の被害が少ないからか、まだ空島の民とシャンディアの戦士たちの溝は埋められてないみたいなんだ。

直接戦闘をしてはいないんだが、なんかギスギスしてるし先住民だの奪われただのと400年越しの諍いなんぞに興味はない。

 

これはアレか?強大な敵に対して手を取り合って一緒に戦うことで得られる一体感的なヤツがなかったせいか?

 

つまり…その役を俺がやればいいってことだな。オーケーだ。

 

「ロビン、ちょっと暴れるから離れてたほうがいいぞ」

 

「いきなりどうしたの?ハンマの思考は私には理解できないのだけれど…」

 

「いや、ちょっとアイツらの小競り合いを止めさせようと思ってさ。ぶっ叩いてやれば頭も冷えるだろ?」

 

 

 

 

 

開幕の合図に丁度いいと黄金の鐘をハンマーで打ち鳴らし開戦を告げてやる。空島の諸君。少し頭冷やそうか…

 

 

 

 

 

 



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16.予定は所詮予定だドン!

 

「……ゴメンナサイ」

 

「ちゃんと反省してるのかしら?ねぇハンマ、私は遺跡はなるべく壊さないでねってお願いしたわよね?」

 

空島のみんなの頭を冷やさせるって目的でハンマーを振り回してたはずだったんだが、ロビン的にはどうやらまたやりすぎてしまったらしい。

でも仕方ないと思うんだ。意地張ってる時はそれを無理矢理折るんじゃなくて違う方向に向けてやればいいって誰かが言ってた気がするんだ。

 

だからあの自称神様がやれなくなった代わりに、俺が空島のみんなの敵役みたいな感じになってみようと思っただけなんだ。

その結果、興が乗ってアラバスタで反省したはずの超巨人化までして暴れまわったのは反省してるよ?

ただ、今なら見た目悪者扱いされても別に問題ないや!みたいな感じで調子に乗っちゃっただけなんだ。

 

まぁこんな言い訳したらロビンに怒られるの目に見えてるから絶対に言わないが…

 

「ハンマ、あなたまったく反省してないでしょ?顔に書いてあるわよ」

 

「そんな事はないよ?でもアラバスタ以来2回目の巨人化で、またちょっとコツを掴めたというか…俺的にも得るものがあったなーとか考えてただけだよ」

 

「…昔からだけど、あなたが何と戦うつもりでいるのかが私にはよくわからないわ」

 

そんな一見和やかな反省会だけど、周囲は大災害に遭ったって言われても納得できるほどボロボロになっている。

今回は覇気を纏わずに、ただの超巨大なハンマーをひたすら叩きつけ続けていただけだ。

そして俺自身もアラバスタの時よりもデカくなれているので、前より成長を感じられて嬉しい一面もあった。

…どうせなら自身の巨大化の最大がどこまで大きくなれるのか試してみればよかったよ。

 

「ねぇロビン、ちょっとだけどこまで大きくなれるのか試してみていい?」

 

「それは今度にしてちょうだい。また暴れて、もし空島が墜落とかしたらどうするつもりなの?」

 

それもそうか。簡単に空島って言ってるけど、ここは空の上にあるんだった。

もしこのまま青海に真っ逆さまとか笑えないな。俺は巨大化できてもゴムゴムの風船は出来ないんだから。

 

ってなんでまた暴れる前提になってるのさ。ちょっと今の自分の能力を確かめたいだけだって。

 

 

「まぁロビンのお説教はひとまず置いといて、みんな頭は冷えたかな?また叩かれたいヤツがいれば言ってくれ。今度はもっとデカくなって叩いてやるからさ」

 

「「「「「………………」」」」」

 

「みんな反省してくれたようで何よりだ。何百年前に何があったのか知らんがそろそろ意地を張るのを止めるにはいい機会だと思うぞ」

 

空島のみんなも争いの無意味さを理解してくれたみたいだ。

 

そう考えると、アラバスタ行く前は海賊たちの仲裁をしたし、アラバスタでも国王軍と反乱軍を止めたし、俺って説得が得意なのかもしれない。隠れた才能ってやつか?

肉体言語だって立派な言葉だ。哀しみを秘めた俺のハンマーに叩かれる事でみんな悟るのかもしれない。そんなもん秘めてないけど。

 

そんな自分に隠されてた才能について考えてたら肩にポンっと手を置かれた。…ナミ?

 

「こんの………どあほーーー!!!!」

 

「いでぇ!だからなんなんだよ?ナミ空島来てからちょっと暴力的すぎだぞ」

 

「暴力的なのはアンタよ!なにあの巨人より大きな巨人みたいな姿は!?リトルガーデンにいた巨人たちよりも大きいじゃないの!ロビンの近くにいなかったら私も一緒に巻き込まれてたじゃない!」

 

ああ、絶対安全圏であるロビンの近くにいたのか。それならハンマーの被害から逃れられるな。

って別にハンマー食らってないんだから怒ることないんじゃないのか?怖かった?それは慣れろとしか言えないな。

 

「まぁ落ち着けナミ。そんなに巻き込まれるのが怖いならそのままロビンの近くにいればいいだろ?」

 

「…そうするわ。ところでちょっとハンマに相談があるんだけど」

 

「うん?なんかあったか?」

 

悪い顔したナミの相談は簡単だった。「黄金いくつか見つけたから、青海に戻ったら巨大化させてくれ」って事だ。それくらい構わないさ。

 

確かに俺がいれば黄金のカケラでもあれば普通の黄金の塊にすることができるな。

食糧難に続いて財政難も解決できるとは、我が能力ながら全然気づかなかった。

 

「もしかしてロビンも、俺の能力ってそういう使い方ができるって気付いてた?」

 

「ええ、もちろんよ。でも私たちの場合はお金に困らなかったでしょう?ハンマが海賊やマフィアなんかをを見かける度に叩き潰したりしてたもの。だからわざわざ言う必要もなかったわ」

 

そう言われればそうだな。海賊だけでなくマフィアまで多いウエストブルーにいたせいか、賞金首を捕まえて稼ぐっていうよりもそいつらから奪い取るってほうが多かった気もするな。

もしかしたらまだまだ俺が気付いてないだけで便利な使いみちがあるのかもしれない。しかし暴れ…みんなを説得してたら腹が減ってきたな…

 

「ロビン、ナミ。腹も減ったしラブリー通りに戻って何か食べないか?青海に戻ったら空島食材なんてなかなか食べられないだろうし、今のうちにいろいろ食べておこうぜ」

 

「そうしましょうか」

「…もちろんハンマの奢りよね?」

 

「別にいいぞ。てかルフィたちどこいったんだ?」

 

「たぶんそこらへんでみんなと一緒に寝てるんじゃない?」

 

そこらへんで寝てるってことは、もしかして俺の説得の巻き添え食らったのか?

てか今回のは覇気込めてないからルフィには効いてないと思うんだが…

 

「ナミ!ハンマとロビンもいたのか!お宝発見したぞ!」

 

「お、ルフィ無事だったか。お宝は逃げやしないから先にメシ食いに行こうぜ」

 

「メシ!いいな行こう!腹減ってたんだ!」

 

 

 

「あのルフィを気軽にご飯に誘えるハンマって実はすごいわよね…」

 

「だってハンマの能力があればお腹いっぱい食べるなんて簡単だもの。一緒に過ごしてきてその使い方をすることは小さい頃だけだったから私も忘れていたんだけど…」

 

まぁ普通なら料理を大量に作るなり、食べた分の大金を払うなりする必要があるはずなんだが、俺の場合はそれらが必要ないからな。

一口サイズの料理がたくさんあれば、それをデカくして満漢全席みたいにすらできる。こっちでは満漢全席なんて通じないだろうけど。

 

みんな仲良く眠っているアッパーヤードを後にして、4人でラブリー通りまで戻りご飯を食べながら談笑してたら、残りの麦わらの一味がやってきた。

ちなみに俺たちは4人だが8人席に座ってる。ルフィ1人で4人テーブル1つだ。テーブルいっぱいの巨大料理を堪能しているルフィと、横で普通にメシ食ってる俺たちを見て何やら言いたいことがあったようだが、とりあえずメシを食う事にしたみたいだ。

 

あとなぜか全部俺の奢りらしい。あれだけ暴れたんだからそれくらい払えということだった。

 

みんなメシ食って腹がいっぱいになったからか、いろいろあって戦い疲れたからか船に戻って休むことにした。

と思ったらまだ夜更けなのに騒がしい。

 

「ハンマ!見ろ!黄金がカバンにパンッパンだ!」

 

「…あ~、そういえばそんなこと言ってたな。こんな夜更けにわざわざ取りに行ってたのか?」

 

「ああ!後は見つかる前に逃げるだけだ!」

 

随分と急いでるんだな。黄金は後で巨大化させてやるってナミと約束してたから、そこまで急ぐ必要なんてないっていうのに…ナミも言うの忘れてたのか?

しかも俺たちは別に黄金盗んでないから逃げる理由なんてないぞ。

 

「いたぞ!俺たちを攻撃してきたハンマーの男も一緒だぞ!」

 

「…なんで俺?」

 

「ハンマ、あなた自分が何やったのかわかってないの?」

 

「おはようロビン。何って言われてもアイツらの間の溝を埋めてやっただけなんだけど」

 

「…確かに彼らの溝は埋まってるっぽいわね。その代わりあなたとの溝は深そうよ?」

 

あーそういうことか。お互いの溝は埋まってるけど、そのきっかけになった敵である俺がまだここにいるのが問題なのか。

 

それならまぁ…ここらで空島とサヨナラしとくか。

 

そのままメリー号と一緒になって白海を移動していき、コニスちゃんとパガヤさんに「へそ!」って別れの挨拶をしてから青海へと戻ってきた。

 

 

 

 

 

「結構面白いところだったなー。ほとぼりが冷めたらまた行ってみたいな」

 

「ええ、そうね。みんながハンマの行動の意味を理解して納得してくれるといいわね」

 

「きっと大丈夫さ。たぶん時間が解決してくれるよ」

 

「400年も前の先祖の遺恨を持ち続けた彼らにそれはどうなのかしら?」

 

ロビンにそう言われると解決しない気がしてきた…確かに執念深すぎだろ。

また行くとしても当分先の話だし、もしまだ同じような事になってたらその時はその時でまた相手になればいいや。

 

空島の冒険は楽しかったから忘れてたけど、海軍から連絡来てるかもしれないし確認しとかないと。

うちの船には電伝虫を置いてないから、どこかの島で海軍の駐屯地とか行ってセンゴクに繋いでもらえばわかるかな?

 

 

「おーいルフィ!俺たちはここまでだ。お前らも冒険がんばれよー!」

 

「えー!?もう行っちまうのかよ!もっと一緒に冒険すりゃいいじゃねぇか!」

 

「アホ言うな。俺が七武海になったら海賊を狩る側になるんだぞ?わざわざお前らを狙ったりはしないが、たまに海賊船だったら確認もせず問答無用で叩き潰したりしてるから気をつけろよ」

 

「…ねぇハンマ。その言い方はおかしくはないんだけれど、それってあなたが今までやってきた事そのままよ」

 

ロビンから冷ややかなツッコミが入ったが、確かにそのままだな。俺が海賊だったならこのセリフは合うんだろうけど何も変わってないや。

 

それはそれとして、ルフィたちは自前で黄金持ってきてたからカケラを巨大化させる必要もなかったし、そろそろまたロビンとのふたり旅に戻るとしますか。

 

しかし七武海になったらとか言っておいて七武海の面談に落ちてたらどうしよう…笑われる未来しか見えないわ。

いや笑われるのは別にいいんだが、七武海になる目的ってロビンを守るのと権限を活かして歴史とか調査しやすくするためなんだよな。

 

 

 

もういっその事四皇どころか五皇目指すか?いや権限っていうなら五老星に入れてもらって六老星になるってものいい案な気がする。

俺には前世的な知識もあるし原作知識もある。そして通算年齢ならお爺ちゃんと言えなくもない。

そう考えると五老星に入るのもおかしい話じゃない気がしてきた!

 

世界の均衡なら俺が保ってやればいいし、暗躍とか策略はロビンの得意分野だ。言ったらほっぺ引っ張られそうだけど…

 

誰かが五老星を倒したとしても、その後で出てくる俺。「フッフッフ、五老星を倒したか…だが五老星とか表向きで実は六老星だったのだ!」とか言って相手を叩き潰す俺。

世界の安寧はハンマーによって守られた…みたいな語りと共に浪漫を知らしめる事もできるかもしれない。平和の象徴としてハンマーのマークが使われる日も近いな。

 

ロビンもわざわざ調べなくても五老星に聞いたら歴史だって教えてくれるかもしれないし、お爺ちゃんなんだから孫とかの年齢の子には弱いはずだ。

 

なんで俺の能力はデカくするだけなんだ!ちっちゃくできればロリンちゃん復活して取り入ることだってできたかもしれないのに!

「お爺ちゃん昔話して♪」とかロリンちゃんに言われたら五老星だってデレデレしながら歴史の話をしてくれてたかもしれないと考えると悔やまれるな。

 

だがそう考えてみると七武海なんて落ちてもいい気がしてきたぞ。

 

そうだよな!七武海はみんな海賊なんだからやっぱり海賊がなるほうが自然だよな!

民間人の俺が七武海なんてやってても誰も怖がってくれないよな!

むしろ抑止力としての七武海の名前の価値が下がっちゃうかもしれないよな!

やっぱりここは最悪の世代とか超新星とかのほうがネームバリューもあって恐れられるよな!

 

少々言い訳っぽいがこれなら気楽に面談の結果の「お祈り連絡」も聞けるってものだ。

なんせ今の俺には六老星になるっていう目的ができたんだから。下っ端七武海なんてやってらんねーよ。

 

ルフィたちと別れて近くの島にあった海軍の駐在さんに電伝虫で海軍本部に繋いでもらい、少々怪しまれたが事情を説明してセンゴク元帥と話すことができるとの事だった。

 

ここからが本番だ。六老星になるためにも、あの知将を相手に五老星へと渡りをつけてもらわないといけないのだから…

 

 

 

 

 

「おめでとうハンマ。世界政府は君を新たな七武海の一角として認めるとの事だ」

 

 

 

 

 

「…………えっ?」

 

 

 

 

 

 



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17.海軍本部へ向かうドン!

 

 

「ロビン、七武海の説明と顔合わせのためにちょっと海軍本部まで行くことになったよ」

 

「ハンマったら、七武海になれたんだからもっと喜ぶのかと思っていたのに。どうしてそんな複雑そうな表情をしているのかしら?」

 

「いやぁ…てっきり民間人だし七武海に入れないだろうと思って、別のプランを計画してテンション上がってたもんだから肩透かしというかなんというか…」

 

「ふふ、ハンマったらいつまで経っても変わらないわね。そうやっていろいろ考えて、最後には暴れまわるのがハンマだもの」

 

え?俺ってそんなキャラだったの!?頭脳派とは口が裂けても言えないけど、これでも結構インテリ脳筋キャラだと思ってたんだけど…

いや、ロビンの言う通りいろいろ考えて最後に暴れてるわ。どっかの暴君くまじゃないけど、的を射ているとはこの事だな。

 

まぁ海軍本部には行くんだけどアラバスタの時と違って、知らない町でロビンだけ残していくなんて俺はしない。かといってロビンを海軍本部に連れていくなんて事もしないが。

こんな事ならルフィたちに一時ロビンを預かってもらえばよかったかな?それはいくらなんでも子供扱いしすぎか。

 

適当にログの示すまま進んでいっても海軍本部の近くまでは行くんだし、どこか歴史の古い島とかのんびりできる島があったらそこで待っててもらおうかな。

たどり着いた島で電伝虫を貸してくれた海軍の駐在さんにお礼を言って、島を出てからログの示すまま海を進んでいく。

 

そういえば空島で観光とかしてて忘れてたけど、新しくやってみたいことができたんだよな。

あの自称神様は雷だから素で相手の攻撃を避けて「どこを攻撃している?」とか「残像だ」みたいな事ができるんだろうけど、俺はパワー全振りだからスピードはまるっきしダメだ。

 

そこで俺が思いついたのが攻撃に当たり「やったか!?」と期待を持っている相手に対する「…いま何かしたのか?」である。これは相手に絶望を与える名シーンだ。あとカッコイイ。

 

つまり武装色の覇気を全身に纏わせて防御力を上げるわけだが、ただ覇気を纏うだけなら今でもできている。だがそれでは俺の求めるものには足りない。

なんせこれから先は覇気が標準装備みたいな戦いが続いていく可能性が高いわけだし、七武海に入った以上四皇とかの抑止に使われる事だって考えられる。

 

なんか見聞色の覇気は極めれば未来が見えるとかなんとかだった気がするけど、武装色の覇気は極めたら何が起きるんだろ?

いや、何が起きるかは自分で確かめればいいんだ。まずは覇気の練度と密度を上げて常に纏えるようにするところからだな。

かのサイヤ人たちだってそうやって強くなっていったんだ。参考になる知識は頭の中に山程ある。

 

まずはパワーを上げるには怒りが一番だ。よし、アラバスタでロビンが刺されたのを思い出して…だんだんムカついてきたぞ。よくも、よくもロビンを…!!

 

「ハンマ、ご飯できたわよ」

 

「…おっけー今行く」

 

まぁぼちぼち修行もしていくとしよう。もう戦争は起こらないんだし、ロマンと冒険をいい具合に堪能してかないとな。

ロビンの作ってくれたご飯を堪能しながら他愛のない話をしつつ、ぼんやりとそんなことを考えていたんだが…この味はなんか最近食べたような?

 

「あ、これって空島の食材?」

 

「ええ、せっかくだから買っておいたの。あまり量はないけれど、傷む前に食べないともったいないでしょう?」

 

「食べたくなったらまた行けばいいじゃん。そうか…俺が空島に届くくらい巨大化できるようになればいいのか。これはいい目標ができたな」

 

「…あなた世界でも滅ぼすつもりなの?空島に届く巨人って、それってもうレッドラインすら軽く跨いで通れるわよ?もし躓いたらレッドラインのほうが崩壊しちゃうかも」

 

それはなんか俺のイメージするロマンと違うから目指さなくていいや。やっぱり覇気と能力を鍛えていくほうが良さげな感じだな。

でもレッドラインすらも跨いで通るってのはちょっと惹かれるものがある。俺にドジっ子属性はないので「今何か踏んじゃった?」とか言って聖地を粉砕するなんて事はやらないと思うが。

 

ロビンは相変わらず呆れ半分理解不能半分みたいな目で見てくるけど、ロビンの能力でもやってもらいたい事たくさんあるんだよ?

ハナハナの能力はどこかに自分を咲かせることなんだから、うまくやればこの世界のどこにでも自分を咲かせることができるかもしれない。

そして咲かせた自分と入れ替わることができれば瞬間移動だって分身だって夢じゃないんだ。

 

まぁそれはさておいて、ロビンと2人でゆっくりご飯食べるのは当たり前だったのに久しぶりな気がする。

騒がしいのがいないってのは静かで良いなと思う部分と、なんかちょっと物足りないと思う部分があるから不思議だな。

 

食事も終わり、ログを辿りながら船を進めていく。もちろん途中で出会った船を沈めて行くのを忘れずに。

もし民間船だったら怒られるかもしれないけど、こんな海賊船がそこら中にいる偉大なる航路で民間船がチョロチョロしてる事もないだろう。

 

「ハンマ、島が見えてきたわよ。あとついでに海賊船らしき大きな船も見えるわね」

 

「わかった。あの島がログの示す島なんだったら海賊船叩き潰してからログが溜まるまで休憩かな」

 

ちょうどご飯ができちゃったから中途半端で終わってる特訓の再開だ。

しっかりとイメージして…おのれクロコダイルめ!よくもロビンを…

 

「よくもロビンをぉぉぉ!!!」

 

巨大なハンマーが怒りと共に海賊船に振り下ろされる。

かなり大きな海賊船だから相当な人数が乗っているんだろうが、まさか上から攻撃がくるとは思うまい。

一撃で海賊船を粉砕することはできたんだが何か違うな。これじゃ特訓にもなってないただ海賊を叩き潰すといういつもの行動だ。

怒りによって多少は攻撃力が上がっているのかもしれないが、俺が求めているイメージとはだいぶ違うような気がするな。

 

「ねぇハンマ。あなたの中で私はどうなっているのかしら?」

 

「どういうこと?」

 

「私はあの海賊たちに何かをされた覚えはないのだけれど…」

 

あぁ、そういうことか。そりゃ突然「よくもロビンをぉぉ!!」って海賊を攻撃しだしたら意味わからんよね。別にロビンが間違ってるわけじゃないよ。

ちょっと怒りでパワーを上げようとしただけだということと、その怒りのためのイメージとしてロビンが刺された時の事を思い出しただけだって説明しておいた。なんか複雑な顔してたけど。

 

まぁ俺自身の成果はあまり得られなかったが、海賊はちゃんと叩き潰しておいたから島の人は安心だろうから良しとしよう。

そう思ったら島が見渡す限りただの草原だった。もしかして無人島だったのかな?

 

しかもそれなりの人数が島に上陸していたようで、何やら出店みたいなのとかいろいろと置いてあった形跡がある。

全部俺が海賊船を叩き潰した余波で波にさらわれたりしてるけど…

もしかしてお祭りとか宴会が好きな海賊たちだったのだろうか?「島が見えたぞー!野郎ども祭りだーー!!出店を出せーー!!」とか?

 

だとしたら悪いことをしたかな?いや海賊だし別にいいか。ここは偉大なる航路だし、これも気候の一種だということにしておこう。ほんと怖いな偉大なる航路って海は。

 

「海賊船は潰したけど海賊どもはそこそこ残ってるな。もう一発お見舞いしてやろうかな?」

 

「ちょっと待って。もしかしてあれって麦わらくんたちじゃないかしら?」

 

「うん?どこだ…………あーいたいた。確かにルフィたちじゃん。何やってんだあいつら」

 

「ハンマが船を潰した海賊たちと一緒にいるみたいね。ここから見た感じだと、たまたま出会って仲良くなって宴会でもやろうとしてたとか?」

 

うげ…もしそうなら俺悪者じゃん。いやまぁ別に悪者でもいいんだけどさ。もう開き直って七武海らしく海賊を殲滅してやるか。よしそうしよう!

ここでは何か天変地異があって原因不明だけど海賊が全滅した。このプランでいくしかない。ルフィたち?巻き込まれるとは運がなかったとしか言いようがないな。

 

明らかに固唾を飲んでこちらを凝視する海賊たちの目の前に立ち、これからの自分たちの運命を告げてやる。

 

「初めまして、そしてさようなら海賊ども」

 

「ふふ、ハンマ。もう言動すべてが極悪人よ?」

 

ロビンさんちょっと静かにしててね。せっかくカッコよく登場してるんだから最後までキメさせてよ。それに民間人に対して言ってないから問題ないんですぅ。

 

じっとこちらを見ていた海賊たちに対して強キャラムーブっぽい挨拶してみたんだが、そんなに極悪人みたいな感じではないと思うんだよね。

俺の記憶が確かならば、鷹の目なんて海賊を襲った上に理由が「暇つぶし」とかだったはずだもん。

つまり俺も暇つぶしに海賊を潰しに来たとかのほうが良かったのかもしれん。

 

「…訂正だ海賊ども。俺の暇つぶしに海の藻屑となれ」

 

「それだとさっきよりも悪人っぽいわよ?」

 

「うーん、別に正義の味方なわけじゃないからなぁ…とりあえずこいつら潰してから何かカッコいい言い回しとか考えてみようかなぁ?」

 

 

 

「ちょっとハンマ!あんたなんでわたしたちまで巻き添えにしようとしてるのよ!やるならあいつらだけにしなさいよね!」

 

「え?海賊同士で交流してたんじゃないの?てかナミはなんでロビンの後ろにいるわけ?」

 

ロビンから極悪人みたいと言われたから言い方変えてみたらあんまり変わってなかったようだ。

毎回登場するたびに言うわけじゃないけど、こういう台詞回しとかってテンション上がったりもするからちょっと考えてみるのも悪くない。

ロビンとそんな事を海賊たちを目の前にして相談してたら、様子を見守っていた中からナミがやってきて自分を巻き添えにするなと言い出した。ロビンの後ろに隠れながら…理由はロビンの近くは安全だから、ということらしい。ナミのやつ賢いな。

 

だがなんでも何もここにいる俺とロビン以外はみんな海賊なわけだし、別に先制攻撃したところで何も問題ないだろうに。

大体空島から別れる時だってちゃんと言ってあったはずだぞ。そんなもん知らん?それは俺も知らんわ。

 

「大体なんでお前らここにいるのさ?てっきりもっと先に進んでると思ってたわ」

 

「ログを辿ってこの島に来たんだけど、こいつらが突然海賊のゲームとやらをふっかけてきたのよ。しかもルフィたちはそれに乗っちゃうし。断ったら誇りに傷が付いちゃうとかで受けるしかなかったのよ」

 

「海賊同士でゲームって…やっぱ普通に仲良く交流してるだけじゃねーか。あれか?ぶっ潰すのはゲーム終わってからにしてくれとかそういうことか?」

 

「なんでそうなるのよ!…それよりハンマ、ちょっと協力してくれない?たまにはゲームして気分転換するのも悪くないと思うのよ。ついでにチョッパー取り返してくれたらそれでいいわ」

 

なんかよくわからんがゲームなのに誇りに傷がつくのか?しかも俺たちにも参加してチョッパー取り返してこいとか、ナミはなかなかいい根性をしてるよな。

てかチョッパー取り返すって、花いちもんめでもやってたのかな?まぁ相手の気持ちは理解できる。俺でも最初にチョッパー狙うな。だってかわいいもん。

 

とはいえ、答えはNOだ。俺の場合、勝とうが負けようが最後にはどうせ叩き潰すんだからゲームをやる必要なんてない。

 

それに俺とナミとの会話を周りで聞いていた海賊たちも我に返ったのか戦闘態勢で向かってこようとしているようだしな。

 

「フェフェフェ。おいお前、よくもうちの船を潰してくれたな」

 

「ん?別に礼はいらねぇぞ」「そうね、海賊船を見たら叩くのはハンマの習性みたいなものだものね」

 

「大方俺の懸賞金目当てで戦力を削ぎたかったんだろうが残念だったな。俺のクルーたちはほとんど船を下りていた。ケンカを売ってきたんだから覚悟はできてるんだろうな?」

 

「お前が誰で懸賞金いくらかも知らんが叩き潰す覚悟ならできてるぞ」「ええ、相手を確認したことなんて今まで一度もなかったわね。懸賞金なんてもらいに行ったことのほうが少ないくらいじゃないかしら」

 

「…つまり相手も見ずにケンカ売ってきたわけか。ふぇっふぇっふぇ、なら教えてやる。俺たちはフォクシー海賊団!そして懸賞金2400万ベリーの船長、銀ギツネのフォクシーとは俺のことだ!」

 

「わざわざ教えてくれるのか。まぁ海軍本部に向かってるわけだし手土産にはいいかもしれないな」「でもきっとまとめて叩いてしまって、いちいち探すの面倒だからって放っておくんでしょうけれど」

 

「…あれ?ロビンって俺のこと嫌いだったっけ?」「いいえ、大好きよ?」「だよね」

 

おかしいな?ロビンからの合いの手というかツッコミが何か怒られてるような気がしてきたんだが。

もしかしてちゃんと賞金首は換金しなかった事を根に持ってたりするんだろうか?でも2人乗りの船で賞金首をいちいち海軍に届けてたら手間がかかって仕方ないと思うんだけど…

 

そんな前口上も終わりさぁ叩きのめすかと思っていたら、それを見ていたルフィたちから「待った」がかかった。

なんでも「俺たちが先に受けた勝負だし、チョッパーも取り返さないといけないから待て」ということらしい。

 

 

なんかもう面倒になってきたから放っておいて先に進もうかな。

 

 

 



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18.お迎えが来たドン!

 

 

「ねぇロビン、アレ止めなくてもいいの?」

 

目の前の光景を見ながら、麦わらくんの船の航海士さんが私に聞いてくる。

 

と言っても繰り広げられているのは見慣れた光景なのよね…

 

麦わらくんたちが「まだデービーバックファイトの途中だから」とハンマを止めて、自分たちのゲームを先に済ませるということで待つことになったのよね。

ハンマは海賊同士のゲームなんてどうでもよかったのか、さっさと船を出そうとしてたわね。まだログが溜まってなかったから大人しく待つしかなかったんだけれど。

 

ゲーム自体は麦わらくんたちが勝って無事船医さんも取り戻したんだけど、ゲームが終わった後にハンマが突然フォクシー海賊団にゲームを挑んだ。もしかしたら相手に麦わらくんたちも含まれてるのかもしれないけど。

…あれをゲームって言ってもいいのかわからないけれど「次は俺ともぐら叩きしようぜ。お前らモグラな」と言って襲いかかり一方的に蹂躙している。

 

ああいう時のハンマって相手を殲滅するまで止まらないから、初めて見る航海士さんからしたらビックリする光景なのかもしれないわね。音の衝撃と地響きとかすごいもの。

それでもちゃんと私の声は聞こえてるみたいだし、止まってって言ったら止まってくれるから心配はしていないんだけど。

 

それに暴れる相手は大体海賊とかだからわざわざ止める理由もないもの。

 

「ハンマが満足するか相手が全滅すれば終わるわ。放っておいて大丈夫よ」

 

「あれを見て普通にしてられるロビンもなかなかすごいわね。なんかあの海賊たちに同情しちゃうわ」

 

「それハンマに言わないほうがいいわよ?『じゃあお前らも味わってみるか?』とか言って襲いかかってくるかもしれないから」

 

「なにその理不尽!あいつのほうがよっぽど海賊みたいね」

 

まぁ航海士さんの気持ちもわからないでもないわ。相手が海賊やマフィアだってだけで、実際にハンマがやっている行動や言動すべてが海賊やマフィアと変わらないもの。

たまに私でも驚くような行動を起こしたりもするけれど、そんなハンマの奇行も今に始まったことじゃないから受け入れることができている。

 

20年…私がオハラからたった1人逃されて、たどり着いた先の島で出会ってからずっと一緒にいる。

 

良くも悪くも昔から変わっていない行動だったから見慣れたものだけれど、もう少しくらい理性的な行動とか覚えてくれたらなと思う事もなくはない。

アラバスタでは海王類と戦っていたり、ジャヤでは町を1つ潰してたり、偉大なる航路に入ってから私では理解できない突発的な行動が増えてきてるような気がするし。たまに私のほうをキラキラした目で見てくることもあるし、あの目は絶対くだらない事を考えてるのよね。

 

そんなことを考えながらギャーギャー言いながら逃げ回る海賊たちと、プレゼントしてから愛用してくれている金槌を巨大化させて振り回しているハンマを眺めていたら、後ろから突然声が聞こえてきた。

 

「へぇ、ハンマから聞いてた通り随分といい女になったみたいじゃないの」

 

「………!?」「ちょっとロビン!?どうしたの?」

 

「あーあー、そう怯えなさんな。別にお前さんを捕まえようってわけじゃねぇよ」

 

「……ぃゃ」

 

その男を見て腰を抜かしてしまったかのように地面に座り込んでしまった。まさかこの男がこんなところにいるなんて…

心配して声をかけてくる航海士さんに答えることもできず、ただ震えながら声も出せず頭の中でハンマに助けを求めることしかできなかった。

 

するとその男の頭上から巨大なハンマーが振り下ろされ、私の視界は長身で見上げないと顔が見れないほどの男から鉄の塊に変わっていた。が、やはりその男には攻撃は効いておらず冷気が集まってすぐに元の姿へと戻っていった。

 

「…おいおい、突然攻撃するなんてひどいじゃないの」

 

「ロビンが俺を呼ぶ声が聞こえた。って誰かと思えば大将じゃん。こんなとこで何やってるの?」

 

 

 

 

 

なんかロビンが呼んでた気がしたから咄嗟にその相手を叩き潰してみたら相手は海軍大将だったでござる。

これって海軍への謀反的な感じになるんだろうか?ひとまず何もなかった事にして全力で誤魔化してみることにした。

 

「おいおい、お前さんいきなり攻撃とかびっくりするじゃないの」

 

「いやーごめんごめん。いやまさかこんなところに大将がいると思わないじゃん。俺たちちょうど海軍本部に行くところだったんだけど、まさかこんな島で会うなんて奇遇だねー」

 

「なんだ、センゴクさんと連絡取れてるのか?お前さんと連絡が取れないってんでこれ幸いとサボっ…新たな七武海をわざわざ探しに出てきたんだが」

 

本音が漏れてるじゃねーか。適当な言い訳作ってサボろうとしてたわけね。

俺が空島行ってる間にアラバスタに海軍から連絡があったのだろう。そして俺がいないから連絡が取れず、それを好機と見て「ハンマと連絡が取れない?それは大変だな。新しい七武海なわけだから大将が迎えに行くのは問題ない」とか理由付けて出てきたんだろうな。

 

でもこれは案外ラッキーかもしれない。このまま自転車の後ろに乗って送って行ってもらえればログを辿らずとも海軍本部まで行くことができるじゃん。

 

「それなら俺を送って行ってよ。海賊とゲームしてたんだけどもう終わりにするつもりだったし良いタイミングで来てくれたね」

 

「海賊とゲーム?もう七武海になったってのに随分と仲良くやってるみたいじゃないの」

 

「そうかな?俺の攻撃に耐えられなかったら負けの簡単なゲーム(蹂躙)だよ」

 

「あー…やっぱお前さん七武海に向いてるわ。まぁいい。海軍本部に行く前に俺の用事を終わらせておくからちょっと待ってろ」

 

そう言って大将青キジは海賊たちが死屍累々で倒れ伏している方向へと向かっていった。

何の用事かわからんけど、今のうちに座り込んでいるロビンの元へと歩いていき立たせてあげておく。

少々顔色が悪いが大丈夫そうだな。そういえば青キジと会うのはオハラのとき以来だし、やっぱりまだトラウマになってるんだろうな。こんなところで会うのなら前回海軍に行った時に青キジに会ったことも話しておいて多少覚悟しておいてもらうべきだったかもしれない。

 

「ロビン、大丈夫?」

 

「ええ、大丈夫よ。ちょっとビックリしちゃっただけだから心配しないで」

 

「それならいいんだけどね。気分悪いなら船に戻って休んでてもいいよ?」

 

「そうしたいのは山々なんだけれど、あれを見てるとそうゆっくりしてられなさそうだしね」

 

「ルフィ!ゾロ!サンジくん!ウソップ!チョッパー!」

 

そう言ってロビンと一緒に青キジのほうを見てみると、なんでか今度は青キジが残ってた海賊を蹂躙しているというか凍らせてる。ロビンは何を心配してるんだ?もしかして自分も狙われてるとか思ってるのかな?

 

あら、ルフィたちも凍ってるわ。そういや決闘とかしてなかったっけ?ここじゃないのかな。

そうこうしてる間に青キジは残ってた全員凍らせちゃったみたいだ。残ってるのは俺たちとロビンの後ろに隠れてたナミだけになってる。ナミは仲間たちを呼んでるが聞こえてないと思うぞ。

 

「ハンマ、お前さんこの海賊たちをどうするつもりだったんだ?」

 

「海軍本部に行く手土産にでもしようかと思ってたんだけど、いらないなら放っておくかなー」

 

「なら持って行くのは面倒だし、ここで砕いておくか」

 

氷像となっている仲間を守るためナミは涙を堪えながら青キジに対峙しようとしてるけど、どう考えても氷像が1つ追加されて砕け散る予感しかしない。

 

 

あ!いいこと考えた!

 

 

「ねぇ大将。海軍に持って帰らないのならこいつら俺がもらってもいい?」

 

「ん?突然どういうつもりだ?」

 

「いや、俺が海軍本部に行ってる間ロビンが1人になっちゃうからさ。さすがに連れて行けないしどうしようかと思ってたんだけど、それならその間こいつらに預かってもらおうかと思ったんだ」

 

「…………こいつらは先々厄介事の種になる気がするが…まぁいいか。お前さんの大事な女が心配で、1人にさせたくないから護衛をさせるっていうんなら仕方ない。このまま本部に戻るとするか」

 

これでロビンが1人になる心配はなくなったな。勝手に決めちゃったけど、ルフィたちもきっとこのまま砕け散るよりはいいだろう。名案すぎて自分が怖くなるな。

俺は七武海になったとはいえ、まだあの計画を諦めたわけじゃない。そのためには海軍本部に行って挨拶してすぐ帰ってくるわけにはいかないんだ。

だからこそロビンを待たせてしまうわけだが、その間ずっと1人でっていうのも申し訳ないし良い方法が悩んでいた先にこんな機会がやってきた。

 

「ナミ、話は聞いてただろ?助けてやるからしばらくロビンを預かっててくれ」

 

「…あんたあいつと知り合いなわけ?ちゃんと説明しなさいよ」

 

そういえば知らないんだったっけ?ナミにあのノッポは海軍本部の大将ですごく強い事や、俺が七武海に任命されたから海軍本部に呼び出されていることを説明し、更にこのままルフィたちが砕かれるところだったが俺が海軍本部に行っている間ロビンを預けることで助けることになったことを説明した。

 

「そういうわけで断れば全員砕け散るわけだが、一応返事を聞いてもいいか?」

 

「あんた鬼ね。そんなの答えは1つしかないじゃない」

 

「別に悪い話じゃないだろ?お前たちの事を知ってるからこその提案だ。他のやつらだったらこんな事を言ったりせずにさっさと砕いて先に進んでるさ」

 

「…見方によってはあんたが七武海って立場を使ってロビンを預けてまで助けてくれるって事だし、私たちもあんたたちの事は知らない仲じゃないから確かに断る理由もないわ。でもロビンはそれでいいの?」

 

「まぁ海軍本部から帰ってきた後に多少お小言をもらうのは仕方ない。ただ、ロビンを傷つけたり悲しませたりしたら…………どうなるかわかってるよね?」

 

これで大丈夫だろう。ナミにロビンをくれぐれもよろしくねって念押ししておいたし、ナミもこのまま青キジと対峙して砕け散るのを想像して恐ろしかったのか青い顔をしてコクコクと頷いていた。これならきっと他の海賊やら賞金稼ぎなどから守ってくれるはずだ。

ロビンにはこの事を話したと同時にほっぺを引っ張られて「私がいくつだと思ってるの?いい加減子供扱いするのやめてちょうだい」と言われてしまったが…

 

島を出る前に俺の最初の攻撃の余波で陸に転がってるメリー号を海へと戻し、女の子2人だけで氷像になってるやつらを運ぶのは大変だろうから代わりに運んでおく。

本当は全員解凍してちゃんとみんなにロビンをよろしくねって言っておきたいところだが、どうやって解凍すればいいのかもわからんし意識が戻るまで待つわけにもいかない。

なので船に運び込むところまで俺がやって、後はロビンとナミに任せて青キジの自転車の後ろに乗せてもらい海軍本部に向けて出発することにした。

 

「よかったのか?」

 

「うん?何が?」

 

「海賊にニコ・ロビンを預けてきてよかったのか?」

 

「あいつらなら大丈夫だと思うよ。一応空島には一緒に行った仲だし、ちゃんとよろしくねって言ってあるから丁重に扱ってくれるんじゃないかな?」

 

「まぁ、お前さんがそれでいいのならこれ以上口を出すのも野暮だな」

 

青キジが自転車をこぎながらロビンを麦わらの一味に預けてよかったのか聞いてくる。俺としては一応朧げながらも原作知識として知ってる部分もあるし、これくらい問題ないと思っているが他人にはわからないことだもんな。

もちろん俺の知っているルフィたちと違う部分があるのかもしれないが、だからといってロビンに襲いかかるような事はしないだろうというのはアラバスタから空島の間に見ていてわかる。

 

むしろ心配なのはロビンじゃなくて俺のほうだ。

どんな結果になるかわからないが、うまくいけば中枢に食い込めるかもしれない。最悪の場合は七武海任命直後に解任でインペルダウン行きってところか。あいつらに対して海賊じゃないからなんてのは俺を守る盾にはならないからな。

 

実際の話ナミにはああ言ったが、無事に戻ってこれる保証がない以上信用できる相手にロビンを守ってもらいたいってのが本音なところだ。

もちろん交渉がうまくいくように頑張るつもりではあるんだけど…

 

分の悪い賭けは嫌いじゃないってのは誰のセリフだったかな。まぁやれるだけの事はやってみてダメならインペルダウン騒動のときに一緒に脱獄でもするか。

 

 

 

…って俺が黒ひげぶっ潰しちゃったから脱獄騒ぎもないんだった!

 

 

 

 

 

 



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19.俺も暗躍してみるドン!

 

 

「ロビン、みんなが目を覚ましたわ。事情を説明するから一緒に来てくれる?」

 

「ええ、今行くわ」

 

ハンマが麦わらくんの一味を青キジから助けて、そのまま私の護衛を任せて海軍本部へと行ってしまってしばらく。治療の方法もわからないので航海士さんと2人で「とりあえず氷を溶かそう」ということになり水をかけたり色々試して全員の解氷に成功した。

何せ船医さんも凍ってしまっていたのでどうしていいかわからないし、寝かせておいて自然に目覚めるのを待つしかなかったのだから。

 

ハンマも自分がいない間の護衛を任せるというのならちゃんと目覚めるまでいてくれたらいいのに…でもそうすると青キジも一緒にいることになるから、もしかしたらそっちを気にしたのかしら?

 

青キジに会うのはオハラの忌まわしい出来事の時以来…

 

もしハンマと出会っていなかったら、私はきっと人の目から逃げながら暗闇の中を走り続けていたのかもしれない。

8歳の子供が賞金を懸けられ、誰も信じられずに賞金首に相応しい生き方をしていたんだろうと思うことがある。

今となってはバカバカしい想像に過ぎないけれど、ほんのちょっと運命の歯車が狂っていればそんな世界を生きていたのかもしれないわね。

 

航海士さんが意識が戻り集まった仲間たちに事情を説明している間、ふとそんな事が頭を過ぎった。

 

ハンマが何を考えて私を麦わらくんたちに預けたのかわからない。普段なら「どこかの島で待ってて。ちょっと行ってすぐ戻ってくるよ」とか言って終わるはずなのに、知らないわけじゃないとは言っても出会ってそんなに長いわけでもない上に、いつもなら叩き潰している海賊に任せるというのが腑に落ちないからかしら?

 

良いように考えれば青キジに出会って動揺していた私を心配して麦わらくんたちのバカ騒ぎでも見て気分転換しててって感じに思えるし、悪い考えだと自分がもしいなくなってもいいようにっていう風にも捉えられる。

 

…やっぱり青キジに出会って私も少し不安定になっているのかしら?

 

「…そんなわけで、あの男は海軍大将だったのよ。そしてあんたたちみんな大将に凍らされて砕かれそうになったところでハンマが助けてくれたってわけ。条件はハンマが海軍本部に行って戻ってくるまでロビンを守ること。わかった?」

 

「わかった!つまりしばらくはロビンもおれたちと一緒に冒険するってことだな!」

 

「全然わかってないじゃない!ロビンに何かあったら私たちがタダじゃ済まないのよ?」

 

ハンマったら航海士さんに何を言ったのかしら?脅したにしては怖がりすぎじゃない。

そんなに心配しなくてもハンマだってそこまで本気で言ったわけじゃないと思うのだけれど。

 

「ねぇ航海士さん。ハンマの言うことをそこまで本気にしなくてもいいわよ?なんだったら私は自分の船もあるし、どこかの島で待ってても構わないわ」

 

「ダメよ!あのハンマの目は本気だったわ!溺愛しているロビンをほったらかしにしたら私たちが海の藻屑にされちゃうに決まってるわ!」

 

…航海士さんの目は節穴なのかしら?気候と海図ばかり見ていてあまり人を見ていなかったのかもしれないわね、可哀想に…それにハンマってそこまで私の事を溺愛してる感じじゃないと思うんだけど。

 

大人しく1人で待ってるってのもダメっぽいし、しばらくは麦わらくんたちにお世話になりながらハンマを待つしかなさそうね。

わざわざ船を出しても大丈夫なのかまで確認してくるくらいだから、もし相当な脅迫でもされてるのならハンマが戻ってきたら少し注意しておいたほうがいいのかしらね。

 

アラバスタにいた時にハンマが海軍本部に行っていた時もそんなに経たずに戻ってきたから、今回もそこまでかからずに戻ってくると思うんだけど。

ハンマのことだからもしかしたら何かしらやらかして帰ってくるのかもしれないわね。

 

 

1つ気になるのは私たちがどこにいるのかをどうやって知るつもりなのかしら?

 

 

この何もない島で待ってろって事じゃないと思うし、追いつくから先に進んでていいよって事だと思うんだけど聞いておけば良かったかもしれないわ。

ハンマだって偉大なる航路を進むのは初めてなはずだし、ここから先のログがどこに続いているのかなんて知らないはずよね。

それともそのあたりは海軍に情報を聞いて先回りでもする予定になってるのか、ちゃんとハンマにこの後の事を聞いておけばよかったわ。

 

「なぁロビン。あの氷のやつとか砂ワニとか攻撃が効かないんだけど何か知らないか?」

 

「それはロギア系の能力者の特徴ね。青キジもクロコダイルもロギアだから、普通に攻撃しても効果がないわよ」

 

「ハンマはどうやってあの砂ワニを倒したんだ?」

 

「私も詳しくわからないの。何せハンマの説明が理解できなかったのよ。戻ってきたら聞いてみればいいんじゃないかしら」

 

そういえば麦わらくんたちはクロコダイルを知っているんだったわね。あのロギア系に攻撃を当てるってのは確かに普通じゃ考えられない。

以前ハンマに教えてもらったけど、抽象的というかふわっとした説明すぎて私じゃ理解できなかったのよね。

 

戻ってきたらもう一度ちゃんと説明してもらおうかしら。ハンマは賞金首でもないし、七武海に任命された事でその説明を受けに海軍本部に行ってるだけなのに考えれば考えるほど妙な胸騒ぎがする。

海軍本部に行ってまで暴れないと思うけど…お願いだからいつもみたいなおかしな真似はしないで大人しく戻ってきて。

 

…まさか私に内緒でロクでもない事なんて考えてないわよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして五老星。俺はあんたらからクロコダイルに代わり王下七武海に任命されたハンマだ」

 

「うむ、知っておる。して、我らに話があると元帥から聞いておるが何の用だ?」

 

「何、大した事じゃない。俺も君たち五老星の仲間に入れてもらおうかと思ってな」

 

「…クロコダイルを倒したことで増長したか、それとも七武海に任命されたことで気が大きくなりおったか?」

 

「おっと、話は最後まで聞いてから返事をしてくれればいい。クロコダイルを倒したなんてのは小さな事だ。だが、世界政府からすれば俺のやったことは小さい事ではないと理解しているはずだが?」

 

「何を言っておる」

 

「これが他の国で倒していたのなら小さな出来事として処理できただろう。だが、問題が起こったのがアラバスタであったことが小さな出来事とはできなかったはずだ。なにせ、20人の王の末裔のいる国なんだからな。クロコダイルにアラバスタを、そしてネフェルタリ家を手中に収められることが何を意味するかわからないほど耄碌してはいまい?」

 

「…貴様何を知っている」

 

 

俺は大将青キジに海軍本部に連れて行ってもらい、そのまま元帥の元へと案内され王下七武海としての活動などについて説明を受けた。

本来は懸賞金を取り消される代わりに海賊を狩り、その一部を世界政府へと納めることで成り立つわけだが、それは海賊が七武海として活動を許されるための条件だ。

俺は賞金首でも海賊でもないから別に海賊を狩るのは何も問題ないわけだが、それについては他の七武海を担っている海賊と同じ条件で構わないとしておいた。

 

その代わりではないが、俺から1つ条件を出すことにした。その条件は…五老星との会談の場を設けてもらうことだ。

もちろん民間人の七武海とはいえ、1人でノコノコと聖地マリージョアへと行くことが許されるわけはない。

なので、センゴク元帥が同行するということで五老星との面会を許されることになった。

 

もちろんそう言ってすぐに会えるわけでもないので、元帥と五老星の都合のつく日を決めてもらい待つことになったわけだ。

その間は海軍本部で寝泊まりさせてもらえたので、訓練風景を見たり図書室で資料を見たりしながら過ごしていた。もちろん案内役兼監視役の海兵が常に一緒にいたが。

 

そしてようやく元帥同行の上で五老星に会う日がやってきた。

 

五老星と相対した俺はそれっぽい黒幕ムーブで軽い挨拶とジャブを仕掛け、俺がただの民間人ではないことを示しておく。

そして本番はここからだ。芝居はあんまり得意じゃないが強キャラロールプレイならお手のものなんだぜ。

更に前世知識も相まって架空設定だってお任せあれってなもんだ。聞いて驚け五老星の老人ども!

 

 

 

「まぁ話を聞いてくれ五老星の諸君、そして海軍元帥よ」

 

「少し話は逸れるが、見聞色の覇気を極めると僅かな先の未来すら見通すと言われている。だが、果たしてそれだけなのか?未来を視るのではなく、他人の意識を聴く事ができてもおかしくないと思わないか?」

 

「そういえば余談だがセンゴク元帥の『仏のセンゴク』って呼び名は悪魔の実の能力から来ているのかな?」

 

「情報はそちらに届いていると思うが俺の悪魔の実の能力は『大きくさせる』ことだ。だがこれが物質の巨大化のみだと誰が言った?感情の起伏を、とりわけ不安や憎しみなどの負の感情を、そして秘めている知られたくない心の声などを大きくできないと誰が言った?」

 

「勘違いのないように言っておくが、俺は世界政府や海軍と反目していない。むしろ今までやってきた事はすべてそちらが考える世界のためになっている事だと言っても過言ではないくらいだ」

 

「これから先、大きな時代のうねりがやってくる。だが今のままでは時代に取り残されてゆくだろう。世界を治めるということは、そんな流れさえも読み切って相応しい在り方を示した者にこそ許されることだと思っているがどう思う?」

 

「「「「「「……………」」」」」」

 

 

これが俺の考えた架空設定。「見聞色なんだから視るだけじゃなく聴こえていてもおかしくないよね?」ということだ。

確か海賊王ロジャーも声が聞こえるとかどうとかだった気がするから、それこそロジャーが海賊王と呼ばれる前から知っているはずのセンゴクや五老星だってそれを知っていても不思議じゃない。

だがそれだけだと俺がロジャークラスの見聞色の覇気を使えるかそういった能力を持っている事になってしまうため、俺の悪魔の実の能力をそれっぽく表現することで説得力を持たせる。

 

これで五老星からすれば既に自分たちの秘密を知られているかもしれないという事態に陥っているはずだ。

そして更に俺は世界政府と敵対するつもりがないことと、これから大きな時代の流れがやってくるということをさも当然のように語ってみせる。

それを俺がいればそんな時代のうねりでさえも今のまま乗り切れると言わんばかりに。

 

 

更に畳み掛けるように世界政府と海軍にとって良いだろうと思う事を提案してみる。

 

「これは独り言なんだが、やり方によっては世界政府が加盟している国の中での中枢という意味ではなく、本当の意味での世界政府とすることだって、そして海軍本部もまた権力に抑えつけられたただの下部組織ではなく弱きを助け強きを挫く本当の意味での正義の組織とすることだってできるんだが…」

 

「ふむ…だがそれによって貴様に何のメリットがある?貴様の目的は何だ?どこまで知っているのかわからんが、その答えによってはここで消えてもらう」

 

なるほど、そう来たか。

 

みんなのためになると思われる提案があることを匂わせてみたわけだが、感触は悪くない感じがする。

ただ、これはどう答えたものかな…俺の目的やメリットか。五老星や元帥にロマンを説いて理解してくれるとは思えないし、ロビンの目的を言うといらん疑いが発生しそうだな。

 

しかも答えによっては消えてもらうとか、なんかいきなり分水嶺みたいになってしまった。

 

 

 

「俺の目的か?それは……」

 

 

 

 

 



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20.ロビンは偉大なる航路を進むドン!

 

 

「なぁロビン、この水水肉っていうのおいしいぞ!」

 

「ふふ、そうね。でもあまり食べすぎるとコックさんのご飯が入らなくなっちゃうわよ?」

 

あれから麦わらくんたちと一緒にログを辿っていき、今は造船の島ウォーターセブンへとやってきている。

ハンマがどれくらいで戻ってくるのか、先に進んでいてもいいのかわからなかったのでしばらくこの島で逗留して待ってみることになった。

どうやらハンマから直接私のことをお願いされた航海士さんの「ロビンを1人にはさせてはいけない」という言葉のおかげでどこかに行く時は常に誰かと一緒に出かけたりしている。

今日は船医さんが私と一緒に町を散策することになった。

 

賞金首とはいえ元々そこまで行く先行く先で狙われるわけじゃないし、そんなに神経質になる必要はないと思うのだけど…

 

今は船医さんと一緒に本屋へと行きお互いに見たい本を見て買ってから、屋台で少しこの島の特産品を食べたりして過ごしている。

他のみんなはそれぞれ買い出しだったり観光だったり、後は空島の黄金を換金して船を修理するとか言っていた。

私とハンマが乗っている船は小さいけれどしっかりしているので大掛かりな修理は必要ない。

それに愛着は多少あれども、あんまり傷んでいるようであれば「それじゃ乗り換えようか」となるから彼らの気持ちはそこまで共感できないのよね。今までもそうだったし。

 

ハンマもまだ戻ってこないし、王下七武海って説明とか研修とかあるものなのかしら?

 

元々私がアラバスタでクロコダイルから協力を持ちかけられた際に考えたハンマの七武海加入計画だけど、ここまではうまくいっていると思う。

海賊を見たら「とりあえず叩いてみる」がモットーみたいなハンマだから丁度いいと思ったのだけど、正直なところここまでトントン拍子に進むとは思わなかったのよね。

というのも、クロコダイルがロギア系な以上なんとかアラバスタから追い出すことはできても、確実に勝てるとは思わなかったから。

 

結果的にハンマがクロコダイルを倒してくれたから良かったものの、援護するつもりだった私が真っ先にやられちゃったのには思うところがある。

小さい頃からずっと守ってくれているし、せめて足手まといにならないくらいには戦えているつもりだったけれど…それではまだ足りていないことを実感させられた。

 

ハンマがどうやってロギアであるクロコダイルを倒したのかわからないけれど、戻ってきたら詳しく聞いてみようかしら?麦わらくんたちも知りたがってたみたいだし。

でも麦わらくんたちはあくまで海賊だものね。そう考えるとハンマが聞かれて答えるのかは私にもわからないわね。

 

それにしても私にはハンマの基準がわからないわ。麦わらくんたちを信用しているのかと思ったら普通に攻撃したりするし、かと思ったら「ロビンをよろしく!」とか言って勝手に預けて海軍本部に行っちゃうし。

20年も一緒にいたら多少なりとも考えって似たりするものなのかと思ったらまったくなのよね。

 

「船医さん、そろそろ戻りましょうか。もうみんな船に戻ってきてる頃よ」

 

「わかった!ロビンも一緒にご飯食べるんだろ?」

 

「ええそうね。ハンマが戻ってくるまでは大人しくお世話になるつもりよ」

 

「うぇっ…なぁ、ロビンはハンマが怖くないのか?」

 

あら?ハンマってこの船医さんの事は可愛がってる気がしてたけど、まさか反対は怖がられてるとは思わなかったわ。

まぁたまに特訓とか言ってハンマー振り回して追いかけ回してたみたいだから、苦手意識を持たれるのもハンマの自業自得なのかしら。

一応怖くないって事は説明しておいたけれど、こればっかりは慣れなのかもしれないわ。

 

 

麦わらくんたちの船に船医さんと一緒に戻ったところ、何やら口論のようなものが聞こえる。

珍しいわね。いつもは無駄に騒いではいるけどそういう感じではなかったのに。

 

「今戻ったわ。ところでこれは何の話し合いなのかしら?」

 

「おかえりロビンちゃん。この船を乗り換えるって話でルフィとウソップがちょっとエキサイトしちまってね」

 

「あら、思ったよりくだらない話だったのね」

 

戻ってコックさんから口論の原因を教えてもらったが、私にとって意味がわからない内容だった。

つい率直な感想が口からこぼれてしまい、狙撃手の長鼻くんが私を睨みつけてきた。

 

「おいロビン!お前にとっちゃくだらなくてもな!この船はおれたちの大事な仲間なんだ!」

 

「あら、ごめんなさい。つい思ったことが出ちゃったみたい。私のことは気にしないで」

 

「ふざけんじゃねぇ!この船はな!おれの島からずっと一緒に旅してきたんだぞ!ハンマしか仲間がいないお前にはこの気持ちがわかんねぇのかもしれねぇがよ!」

 

随分な言われようね。コックさんや航海士さんが止めてるけど、頭に血が上っているみたいだし今は何を言っても聞かないでしょうね。

でも本当に私の意見は変わらない。だからせめてその理由くらいはきちんと説明してあげるわ。

 

「ちゃんと私の意見を言っておくわね。聞くのも聞かないのもあなたたち次第よ。

私とハンマはお互い悪魔の実の能力者なのは知っているでしょう?つまり船が沈むってことは、そのまま2人とも死ぬということ。だからこそ私たちは船に愛着があろうとなかろうと危ないと思ったら迷わず乗り換えるわ。

これが穏やかな海で、能力者がいないなら、そしてちょっと近くの島まで出かけるくらいなら修理しつつ乗り続けるって選択肢もあるのかもしれないけれどね。

ただでさえ海賊が跋扈するこの時代に、何が起こるかわからない偉大なる航路で、船大工から船の危険を示唆されておきながら、仲間だからと感情論で死にに行くなんて有り得ないわ」

 

「…………」

 

「あなたがこの船を大事に思っているのは理解しているわ。だからといって今ここにいる仲間を道連れにしてもいいほど大事なのかしら?熱くなるのは勝手だけれど、そのあたりはちゃんと考えないと後悔することになるわよ」

 

これで少しは考えてくれればいいのだけど…ここにハンマがいなくて良かったわ。

たぶんだけど、ハンマがこれを聞いた場合「船を乗り換えるかでケンカしてる?じゃあその船を俺が沈めてやるよ!そうすればケンカの原因がなくなって解決だろ?」とか言ってとっくにこの船を叩き壊してるだろうし。

 

…いやだわ。さっきまで考えが似てないって思ってたのに、こんな事が簡単に想像できるくらいにはハンマと考えが似通ってきてるのかしら?それとも思考が毒されてる?

いけないわね。私までハンマと同じような力ずくの思考になっちゃったらいろいろとマズいわ。

 

どうやら彼らの口論は一旦時間を置くみたいだし、私もちゃんといつも通りにならないと。

 

 

 

「ロビンちゃん、さっきはありがとう。あと憎まれ役みたいな事させて悪かった。きみの言葉であいつらも少しは落ち着いて考えると思うよ」

 

「それなら良かったわ。と言っても私の意見をそのまま伝えただけなのだけれど」

 

「みんなロビンちゃんの意見は正しいと理解してる。ただ、ウソップのやつにとっては特に大事な船だからわかってても素直に受け入れられないだけさ」

 

今はクールダウンの休憩ということでコックさんにコーヒーを入れてもらいながら軽く雑談している。

見てられなくて少し口を出してしまったけれど、これは彼らが自分たちで答えを出さなくてはいけない事だもの。その結果、この船をそのまま乗り続けるというのならそれはそれで構わないわ。

 

私があまり出しゃばっても良くないし、自分の船に戻って今日買っておいた本でも読んでいようかしら。

入れてもらったコーヒーを飲み干し、自分の船に戻ろうと席を立とうとした時、航海士さんが焦った表情で飛び込んできた。

 

「ロビン、大変よ!世界政府の人間がロビンに用があるって外に来てるわ!」

 

「…どうしてこのタイミングで?ハンマが何かしたのかしら?」

 

「いないって言ってもここにいるのはわかってるって返されるし、用件を聞いても直接言うからって言って教えてもくれないわ。どうするの?」

 

「出るしかないでしょうね。あなたたちは船の中にいて。もし私が連れて行かれても大人しくしてて」

 

世界政府にとって私は邪魔でしょうから捕まえたいというのは理解できる。ただハンマが七武海となり、私から離れた時を狙ったかのようなタイミングで来ているのがわからない。

もしかしたら私を人質としてハンマを利用するため?それとも逆にハンマがいないこの時を狙って私を何かに利用するため?

 

頭の中で目まぐるしくいろんな考えが浮かぶけれど答えは出ない。

 

一番有り得ないのはハンマが何かやらかして、それを止めるために私を呼ぼうとしているっていうものね。

でも一番有り得ないはずなのに、一番納得できる理由なのはなぜかしら…

 

 

 

 

 

「お前がニコ・ロビンで間違いないな?」

 

「ええ、そうよ。一体私に何の用なのかしら?」

 

「世界政府からの言葉を伝える。よく聞け。

 

 ニコ・ロビンに懸けられた賞金は取り消しとする。

 

…以上だ」

 

「…………は?」

 

「用件は確かに伝えたぞ」

 

「待って!ちゃんと説明してくれないとわからないわ」

 

「我らもその伝言を伝えるよう指示を受けただけだ。詳しく知りたければ自分で聞け」

 

どういうことなの?どうしてハンマが七武海に加入したら私の懸賞金が消えるの?

まさか七武海に入る条件として私の懸賞金解除を求めたとか…ありえるわ。

ハンマなら「俺は賞金首じゃないから代わりにロビンの懸賞金をなしにしといてよ」とか言いそう、というか言うわね。

 

でも私に懸けた賞金を解除するなんてやはり考えられない。

私はあのオハラの生き残り…世界政府が私を危険視しない理由がない。

 

それとも何か別の条件でも出されたのか…七武海の説明のために海軍本部に行ってるはずなのに世界政府の役人がやってきた事だって辻褄が合わない。

 

いろいろと聞きたい事や知りたい事がありすぎてわけがわからないわ。

 

聞いた時は思考が停止し、その言葉の意味が理解できたら今度はいろんな可能性が頭を過ぎっていく。

 

「ねぇロビン、あの役人たちは何の用だったの?」

 

「え、ええ…なぜか私の懸賞金が解除されたって事を言いに来たみたいよ」

 

「うそ!?そんなことってできるものなの?」

 

「私にもさっぱりわからないわ。たぶんハンマが何かしたんだろうなって予想はできるんだけれど…」

 

航海士さんから用件を聞かれ、そのまま答えたけれど驚いて当然だと思う。私だって未だに信じられないくらいなのだから…

その日は麦わらくんたちは船の事を、私は私で突然出てきた懸賞金解除ということについて考えるためそれぞれの船で休むことになった。

 

 

 

 

 

翌日、まだ考えが纏まらないうちに今度は別のところから私に会いにくる人物がいた。

 

 

「失礼。少し聞きたいことがあるんだが、きみはこの手配書のニコ・ロビンで間違いないか?」

 

「…それは私の事ね。何の用かしら?」

 

「ンマー。おれはガレーラカンパニーのアイスバーグという者なんだが、少しきみと話したいことがあってな。あまり一緒にいるところを誰かに見られたくないんで別の場所に移動しても構わないか?」

 

ガレーラカンパニーといえばこの島にある造船会社ね。世界政府の役人が来たかと思えば次はこの島の有権者が1人で私に会いに来るなんて一体どうなっているの?

少なくとも私には何かした心当たりはないし、ここにいないハンマの事でもないでしょうね。

 

一応麦わらくんたちに出かけてくる事を伝えておき、少し込み入った話になるかもしれないからと付き添いは断って1人でついていくことにした。

ガレーラカンパニーの社長室へと入り、一切誰も出入りしないようにと秘書に伝えて2人だけが部屋に残された。

 

「わざわざすまない。ただ、どうしても君に会って聞いておきたいことがあったんだ」

 

「別に構わないわ。私も連れと合流しないといけないし、考えないといけないことも増えたしね」

 

「ンマー。その、なんだ。単刀直入に聞こう。君が世界を滅ぼしかねない危険人物というのは事実なのか?」

 

「…え?それってハンマのことじゃなくて?」

 

「ハンマ?最近聞いたことがある名前だな…どこだったか」

 

この人、頭大丈夫なの?内密に話したいことがあるって来てみたら「君は危険人物か?」っていうのはあんまりじゃないかしら。

 

そういうのってハンマの担当でしょう?私は暴れたことなんて…偉大なる航路に入ってからは一度もないはずよ。

この人の中では私は一体どんな人間だと思っていたのか、少しだけ興味はあるけれど聞きたくはないわ。

 

少しばかり残念な頭のようだと哀れんで見ていたら、目の前のアイスバーグ社長はその理由を説明してくれた。

そしてそれを聞いてやっと納得できたわ。まさか古代兵器復活を目論んでいるとか思われてるなんて…

 

そんなものに興味なんてないということは伝えておいたけれど、そんな言葉で安心するほど能天気ではなさそうね。

確かにポーネグリフに刻まれていた、古代兵器であるプルトンとポセイドンの在り処は私の記憶に残っている。

だからといってこれは誰にも話していない。もちろんハンマにも言っていない。ハンマにはちゃんと誰にも言うつもりがない事を伝えてあるし、それについて理解してくれている。

 

私もハンマも世界をどうこうするつもりなんてないし、古代兵器なんてものが人の目に触れるところにあってはいけないっていうのが共通の認識ね。

 

というか、たまにハンマ自身が「空島に届くような巨大化ができればいいんだ」とか「天を切り裂く剣を作りたい」とか古代兵器を超える危険人物になろうとしているような言動があるから、どちらかと言うとハンマのほうが危険っていうのもあって古代兵器の事なんて忘れていたわ…

 

「ンマー。どうやら情報に誤りがあったようだ。手間をかけさせた」

 

「いいえ、構わないわ。行動の真意は別として危険視するのは間違っていないもの」

 

「いや、そういうつもりでは…あー、そういえば今日は海軍本部のほうでセレモニーがあるらしい。映像電伝虫で世界中に放送しているらしいな。少し見てみよう」

 

聞いていた情報が間違っていたというか、私に古代兵器をどうこうする気がないことがわかり、少々気まずくなったと思ったのかまったく違う話題を振ってきた。

海軍本部でセレモニー?海軍本部でそんなことをするような事があったのかしら?

 

確か聖地マリージョアで地震があって世界貴族たちが亡くなったってニュースは知ってるけれど、それとセレモニーとは結びつかない。

アイスバーグ社長が映像電伝虫を用意し、今まさに中継されている海軍本部の様子が映し出される。

 

そこには海軍本部の広場に集まる海兵たちが規則正しく並び、元帥や大将といった人物までもが揃っていた。

そして1人のよく見知った…いえ、私にとっては一緒にいないことのほうが少ないはずの人物が登壇し、海兵たちへと演説を行おうとしていた。

 

 

 

 

『親愛なる海兵戦友諸君!そしてこの中継を見ている世界中の諸君!私が新たに王下七武海を担うことになった鉄槌のハンマである!』

 

 

 

 

ハンマ…………あなた本当に何やってるの?

 

 

 

 

 



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21.六老星への道だドン!

 

 

「俺の目的か?……それは」

 

五老星とセンゴク元帥が俺の言葉を待っている中、頭の中ではどんな答えが()()()()()かを必死に考えている。

世界政府や海軍に取り入るわけでもなく、かといって反発されるでもない答えじゃないと納得しないだろう。

 

こうなったら今ここで五老星を叩き潰して俺が世界を裏で操るか……?元帥ならうまく説得すればいけるかもしれん。

海軍だって世界政府の下部組織とはいえ天竜人の行いには涙を飲んで堪えているはずだ。

五老星の役割がどんなもんか知らんが大した仕事なんてないだろうし、こいつらがいなくなって俺が代わりにやったほうがマシになるまで有り得る。

 

そして五老星は全員老齢のためとか言っとけば周りも「ああ…もう歳だもんな」って納得する未来が見える気がする。

 

「どうした?さっさと貴様の目的を言え」

 

そう急ぐな五老星ども。老い先短い命が最短になるだけだぞ?

 

五老星をこの場で倒すとしても、せめてセンゴク元帥は仲間に引き入れておきたい。この知将を取り込むことができたなら、俺が世界政府を運営するにしてもきっと良い案を提示してくれるはずだからだ。

 

何かそれっぽい単語はないのか!?考えろ俺!世界政府が「そこを突いてくるのか…アイタタタ」ってなる泣き所っぽいやつだ!

 

「…Dの一族」

 

「!?…今なんと言った?」

 

「返事が遅くなってすまないな。諸君に飲み込みやすい言葉を考えていた。Dの一族という言葉に聞き覚えがあるだろう?そして俺はここに来るまでに1人その名を持つ者を葬ってきた」

 

原作知識を持つ俺だから出てくるそれっぽい言葉…これでダメなら叩き潰そうと思い発した単語は思いの外五老星に刺さったらしい。

正直これが何の意味を持つのかとかまったく知らんが、確か世界政府はDの名前を持ってるやつを警戒してたような感じのはずだ。

そしてそいつを葬ったって言えば「こいつは敵じゃない」って思ってくれるんじゃないだろうか?

 

別に嘘じゃないし、ちゃんと黒ひげを叩き潰してあるからね。

 

とりあえずいけるところまでそれっぽい演説でやってみるか。

 

「俺の目的を聞いたな?俺はDの名を持つ者を叩き潰しており、相手が海賊ならばそれが誰かを確認するより先に手を出している。世界政府や海軍がやっている事と何が違う?それに、見ようによっては世界政府と海軍の尻拭いをしているとも取れるんだぞ?」

「海賊王ゴールド・ロジャー。いや、ここではきちんと呼ぼうか。ゴール・D・ロジャーを処刑する時に発せられた言葉がこの大海賊時代を招いた。つまりそれは世界政府と海軍がこの時代を作ったのと同じ事だ。海賊が跋扈する現在を作り上げたのが世界政府と海軍だと言われても反論できんぞ?」

「世界の平穏だと?海軍本部・王下七武海・四皇が力の均衡を保っている?そのどこが世界の平穏なんだ?そういえば海軍は正義を掲げていたな。だが勝者こそが正義だ。言葉では均衡と言っていても、その大半は海賊だ。つまりいつ七武海も海軍や世界政府に牙を剥くかわからないわけだ。もしかしたらすでにその牙を鋭く研いでいて、喉元に迫るのも時間の問題なのかもしれんが…果たしてその時に正義を語れるのかどうか」

 

 

「…それが貴様の目的とどう繋がるというんだ?」

 

 

「諸君らは言わば自らが時代の荒波を作り出し、あまつさえそれに飲まれようとしていた。だが…そこには俺がいた。良かったな五老星の諸君。俺が君たちの危惧する海賊や革命軍ではなくて。君たちの危惧するDの名を持つ者ではなくて。そして何より…古代兵器を悪用する者ではなくてな」

 

 

これならどうだ?結構それっぽい感じに話せたんじゃなかろうか?

 

実際のところは俺の目的なんて1つも答えてない。まるですべてを知っているかのような態度で、まるで自分こそがこの荒れ狂う時代の申し子なのだと言わんばかりの言動でそれっぽく言ってみただけだ。

ついでに俺にはロビンがいるんだぞ?何かあったらプルトン炸裂しちゃうぞ?と暗に脅してみたんだが…これでダメなら交渉は決裂だ。元帥がどっちにつくかわからんがバトルフェイズ突入しかない。

 

「五老星…私から意見を言わせていただけるなら、私はこの男(ハンマ)に七武海を任せても良いのではないかと思っております」

 

「ふむ、元帥ともあろう男が何をもって信用に足ると判断したのか…それで?貴様はこれからどうするつもりなのだ?」

 

おや?なんか知らんがセンゴク元帥からフォローの言葉が飛んできたぞ。もしかして思ったより感触は悪くないのか?

てっきり「その忌み名を知り、古代兵器まで持ち出す輩など信用できん!者共、出合え!」みたいな展開になるのかと覚悟してたよ。

 

しかしこれからどうするか、ねぇ…ほんとこれからどうしようかな?

 

一応原作知識的に「こうしたほうがいいんじゃないか」とか「なんでこの時にこうしなかったんだろう」みたいな考えというか感想はあるにはある。

でもそんな事を今言っても意味がないだろうし、何より行動で示すほうがカッコいいはずだ。俺はたぶんきっと有言実行じゃなく不言実行の、行動で示す無骨なタイプだと思う。たぶんきっと…

 

それにその前に七武海になるわけだから、きちんとその条件を五老星とも話し合っておかないとね。あとになって「話が違う」なんて事になったら大変だもん。

 

「これからどうするかよりも先に、俺が七武海に加入するわけだからちゃんと条件を決めておこうじゃないか。確か海賊を狩った中から一部を政府に納めるんだったな。なんか二つ名みたいなの必要なんだったか?金槌振り回してるけどそのままじゃ芸がないな。『鉄槌』でいいか。あと本来は俺の懸賞金が解除されるはずだが、生憎と俺は賞金首ではない。となると…」

 

「貴様…まさか…」

 

「そうだな。ニコ・ロビンの懸賞金を代わりに解除してもらうとしようか」

 

「なるほど。つまりそれが貴様の目的か…」

 

「別に目的ではないさ。ただ俺の身近にいて賞金首となっているのが彼女しかいないだけだ。だから嫌なら断っても構わない。ただ、これは世界政府にとっても利のある事だと思うがね」

 

俺は訝しむ五老星のお爺ちゃんたちに「ロビンの懸賞金を解除する事によるメリット」を教えてあげる。

 

とは言っても簡単な答えだ。

 

ロビンと俺が常に一緒にいることは海軍も、そして報告を受けているだろう政府のほうも知っていることだ。

そして世界政府が禁じていて、誰にも知られたくないであろう秘密を解くとすればロビンしかいない。もしそれが古代文字で書かれてればの話だが…あと既にその秘密を知ってるであろうレイリーとかは除外として。

 

つまり俺が七武海として、そして六老星への道を進んでいて政府と付き合いをしている間はロビンだって政府に何かしようなんて思わない()()()()()()だろう?ということだ。

 

古代兵器なんて持ち出さない()()()()()()。歴史の探求をしない()()()()()()。ついポーネグリフを()()()()読み解いて、結果何かしら知ってしまったとしても誰にも言わない()()()()()()

 

現在、世界政府はそれを阻止するためにロビンに賞金を懸けて捕らえようとしている。

 

だがどちらのほうが良いのかは考えなくても理解できるはずだ。俺がロビンと出会い、更には七武海に名を連ねるという出来事があった事によってその選択肢がやってきたのだから。

 

「五老星の諸君。これほどの機会はもう二度とないだろう。諸君らの危惧する事柄を解決する英断のチャンスなのだから。ああ、言っておくがそれならロビンを捕まえればいいとか、処刑すればいいとかいう考えはないと思えよ。その場合、俺は持てる全ての手段を使ってでもロビンを守ることになるぞ」

 

 

 

五老星たちは何かここでは言えないのか一旦別室へと移動していき、俺は元帥と少し待たされたが、しばらくしてから答えが出たのか戻ってきた。

 

 

 

「…………今までの貴様の言葉がすべて本当ならば確かに我々にとって悪い話ではない」

「そしてここで貴様を捕らえることも、またはオハラの生き残りに手を出すことも別の引鉄になりかねん…か」

「いいだろう。貴様の七武海加入の条件は纏まった。後は貴様の働き次第だ」

「大言壮語を語るよりも行動で示せ。貴様のその言葉がただの法螺ではないということを我々に理解させてみよ」

「だが世界政府にとって反逆だと判断したら、その時は貴様にもオハラの生き残りにも消えてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「ハンマ、随分と危険な真似をしたな。1つ言葉を間違えば君はあの場で消されていたかもしれなかったぞ」

 

「元帥には申し訳ないことをしたね。ただ悪くなることじゃないから心配しないでよ。ちゃんと五老星から言われた通り、行動で示してみせるつもりさ」

 

「ふむ…五老星の方々に向かってあそこまで言っていたんだ。何か具体的な案があるということか?」

 

五老星との会談が無事?に終わり、センゴク元帥と一緒に出てきた途端にお小言をもらった。最後ちょっとだけ別室に移動したりしてたけど、たぶん内輪で話し合ってたんだろうな。

 

それに甘いぞ元帥よ。五老星が「行動で示せ」って言ったってことは、つまるところ「好きにしていいよ」って事なんだぜ?お小言はもうちょっと後まで取っとくといい。

 

俺の六老星計画はまだまだ序盤もいいところだ。まさか初対面で「五老星に入れて」「いいよ」となる事なんて有り得ないのは俺だってわかってる。

そうじゃなかったら今頃、五十六老星とかになってても不思議じゃないんだからな。てか五十六老星って、それただの議会じゃん。

 

具体的な案というか、海賊云々はすぐに殲滅して終了とはいかないけども、それ以外ならすぐに効果が出る事があるにはある。

バレたらインペルダウン行きになるかもしれないけど、でも行動で示すって言っちゃったしなるようになるだろ。

 

そうなるとまずはアリバイ作りからだな。クックックッ、ちょうどここにいるのは海軍本部の元帥様だ。しっかりと利用…おっと、協力してもらうことにしよう。

 

なんか今日の俺は冴えてる気がする。もしかしてロビンとずっと一緒にいたことで暗躍スキルが俺にも付与されてるのか?

前世では長年一緒に連れ添ったら似てくるって言われてたし、俺の考え方がロビンの考え方に影響されてるとしても不思議じゃないな。

 

センゴク元帥に「せっかくここまで来たわけだし俺は知名度がないから、ただの民間人から七武海になった人間がいることを世界に知らしめたい。そしてその七武海は海軍と友好的な人間であることも伝えたい」ということを言ってみた。

戦力バランスが、というよりも海軍本部だけでは力不足だということが七武海制度の根底にあるのだろう。案外すんなりと俺の提案は通り、スピーチの場を用意してくれることになった。

 

前例のない七武海発表の場を海軍本部で行うという出来事には数日の準備が必要との事なので、そして俺という人物を見定めたいだろう政府の図らいによって俺は例外的に聖地に留まることを許された。

世界政府と海軍に友好的な王下七武海の誕生ということで、聖地にいる役人やサイファーポールや海兵などを集めて酒を飲みながらそれっぽく語り合ったりしておいた。

 

やはり俺の事は既に調べてあったようで、海賊を見つけたら即粉砕してきたのは意外にも好印象だったようだ。

もちろんこんなことをしている目的はある。あわよくばアリバイ、こいつらが酒で潰れてくれたらラッキー、戦力の確認とこれで減ってくれればいいなという希望だが。

 

 

 

 

 

 

そんな日の夜…………聖地マリージョアで局所的な大地震が発生した。

 

パンゲア城は無事だったが世界貴族たる天竜人たちが住まう建物はすべて崩壊しており、その生存は絶望的だろうというニュースが世界中を走った。

 

海軍や政府が調査しているが原因は不明であり、まるで大量の隕石が降り注いだかのような壊れ方にも関わらず何も見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 



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22.七武海の幕開けだドン!

 

 

「さてハンマ。ここには私と君しかいないわけだが、私が何を言いたいのかわかっているね?」

 

「うん?何が言いたいのかサッパリわからないんだけど?」

 

「あまり私を侮ってもらっては困るな。聖地マリージョアを襲った隕石か何かが大量に降り注いだような破壊痕、地震はその振動だろうな。そして君の能力や戦い方、七武海就任と五老星への言葉。疑わないほうがおかしいだろう?」

 

「元帥、俺が言いたいのはそこじゃない。それに俺は五老星への言葉を違えたりはしていないぞ」

 

なぜかセンゴク元帥に呼び出されて、暗に「お前がやったんだろ」と言われている。まぁちょっと考えればわかることだし別に完全犯罪がやりたかったわけじゃないからいいんだけど。

巨大な何かで叩き潰されたマリージョア、凶器は見つからない、俺はハンマーを巨大化させて戦ってる。これだけ材料があれば疑って当然だな。

 

「…これがお前の言っていた『行動で示す』ということだとでも言うのか?」

 

「では元帥。逆に聞くが、今回の出来事に対して誰が悲しむというんだ?」

 

「なんだと…?」

 

「不幸な奴隷がいなくなり、お守りをする役人は他の仕事ができ、護衛だなんだと戦力や人員を割かれていた海軍は治安維持や海賊捕縛に専念できる。ああ、奴隷を売りつけていたやつらは悲しむかもな。金づる…おっと、取引相手がいなくなって」

 

「……だがあそこには奴隷にされていた者たちもいたんだぞ」

 

「そこは言わないほうがいい。その奴隷にされ虐げられていた者たちを見て見ぬフリをしてきたのは海軍であり、それを命を絶つという形で終わらせたのは原因不明の事故(俺のハンマー)だ。どっちがなどと言うのは野暮ってもんだろ?」

 

「…………だが!」

 

「今回の悲しい出来事を乗り越えて、新たに民間人が七武海となり海軍と協力し、世界に平穏をではなく()()()()()()齎すために尽力する。惜しくも亡くなった世界貴族たちもそれを望んでいる…というスピーチをしようと思っているんだがどうだろう?」

 

センゴク元帥も思うところはあるんだろうが、俺から言わせれば海軍って組織は『正義』を語っていても決して『善』の組織ではない。

だからこそ悪しき権力者たちの大半が原因不明の天災事故に遭ってしまった今が変わるチャンスでもある。

そうすれば人々の海軍に対する評価も一転し海兵志望の者たちだって増えてくるだろうし、海兵たちはきっと正義を心に刻んで前に進んでくれるだろう。

世界政府だって天竜人の大半がいなくなって、マイナスだった評価のこれ以上の下落を止めたんだから十分だろ?

 

そんなことをセンゴク元帥に言ってみた。まぁ海兵たちだって本部に勤務する者たちは誰かしら天竜人の横暴を見ているし聞いているだろうから、いなくなっても喜ぶ者こそいても悲しむ者なんていないだろう。

もしいたとしても原因不明の天災なんだから仕方ない。本当に偉大なる航路の気候ってのは怖いな。クワバラクワバラ。

 

さて、それじゃあスピーチの言葉でも考えようかな。元帥からは「スピーチで何を話すか事前に報告しろ」と釘を刺されている。

もしこれが海賊の中での話なら「諸君、私は戦争が好きだ」とかやるんだけど、海兵たちの前と中継でやるには場違いだ。

まぁ大まかなところはさっき元帥に伝えた内容だし、多少誇張して海兵たちの正義感を煽ってやれば大丈夫だろう。

 

 

…そういえばロビンは今頃どの辺りにいるのかな?

 

 

俺が「六老星になろう計画」を思いついて、忘れないうちに実行したくて急いで来ちゃったけど…考えたらどうやってロビンと合流すればいいんだろ?

俺たちの船に電伝虫は置いてないし、メリー号もたぶん電伝虫はなかったはずだ。やべぇ…連絡を取るどころか居場所すらわからんぞコレ。

 

もはやぼんやりとしか覚えてない事も多くなってきた原作知識を思い出そうとしてみる…えーと、空島行ってその後どこに行くんだったっけ?見たら思い出すんだけどなぁ…こんなことならどこかに書き留めておけばよかったわ。

 

こうなったらロビンと別れた島まで戻ってそこからログを辿るか?でもそれだといつまで経っても追いつけそうにないな…

最悪元帥に頼み込んで送ってもらうか?海軍って偉大なる航路のどの島が次どこに繋がってるかとか全部把握してるのかな…海兵たちと一緒に偉大なる航路を進む冒険なんて気まずくて嫌だぞ。

まぁそんなことにはならないだろうが。今の俺にはロビンの代わりに知将が近くにいる。困った時は相談すれば何かしらの解決案を提示してくれるだろう。

 

ひとまずロビンとの合流については棚上げとし、まずは海兵たちや世界中へと放送されるはずの中継の中でどういった演説をするのが効果的かを考えることにした。

てか俺って背中で語る無骨系ロマンチストじゃなかったっけな…なんで演説とかすることになってるんだ?

キャラがブレすぎてよくわからなくなってきた。なんのキャラかわからんが…

 

 

 

 

 

 

「ハンマよ。これからお前の七武海入りを海兵たちだけでなく全世界に知らせることになる。準備はいいな?」

 

「ああ、もちろんだ。ちゃんと世界中にこれから時代は変わることをアピールしてくるよ」

 

王下七武海に加入した俺の最初の仕事だ。聖地マリージョアの事故?あれは事故だし原因不明だから俺の仕事にはカウントされない。

いよいよ海兵たちの前で、そして中継で世界中に新たな七武海加入を伝える時が来た。

 

本来ならば実力と知名度のある海賊がその地位につく。もしくは将来性を鑑みて今のうちに世界政府の傘下に入れておこうとした場合かな。

そして海軍からすれば七武海と言えども海賊だから一定の警戒は必要なんだろうが、俺の事はある程度事前に通達されていたようで()()()()()()()はされていない。

 

それにしてもセンゴク元帥は俺の情報について少々誇張して周知してあるようだった。

なんだよ…「賞金には目もくれず海賊を見つけたらとりあえず叩き潰す」とか「海賊を蹂躙する遊びが大好き」とか「近づいたらとにかく最初にハンマー叩きつけてからその後に誰なのか確認する」とかさ!

 

これもう青キジの逆恨みだろ!?センゴク元帥のちょっとした意趣返しも入ってるかもしれないけど、大半の心当たりは青キジじゃねーかよ!

 

おかげで海兵たちは海賊を見るような警戒心じゃなくて、いきなり襲いかかってこないかっていう俺からしてみれば心外な警戒をされてたわ。俺と目が合うとビクッとされるとか、おかしいだろここ海軍本部だろうが。

 

ちなみに三大将たちにも事前に挨拶はしておいた。

青キジは面識あったから「お前さん、面倒な事やってるな…」と呆れ顔。ちなみに俺の印象情報バラまいたのアンタだろって文句言ったら不思議そうな顔して「見たままを伝えただけだ」って言われた…

黄猿からは「がんばってねぇ」と応援してるのかしてないのかわからん声援をもらい、赤犬には「民間人の七武海じゃと?…海賊に食われんように精々頑張ることじゃけぇ」とたぶん声援の言葉をもらった。

 

中将たちも俺の事は聞いていたらしいが、まぁ俺が叩き潰してる相手は全部海賊とかだったから「結構暴れてるみたいだな」とかそんな事を言われただけだった。

 

面倒だったのは海軍の英雄ガーブ中将だ。ちょっと話の種になるかと思って「ルフィは元気にしてたよ」って教えてあげたんだけど、そこからガープ中将に捕まってしまい延々と孫自慢された。

いや自慢するのは構わんがアンタの家族全員お尋ね者になっとるがな…と思っても口には出さず、もらったせんべい食べて聞き流してた。

 

ガーブ中将の話を聞き流しながら思い出したが、エースって結局どうなってるんだろ?

今もまだ黒ひげ探してウロウロしてるんだろうか?もういない相手を探し続けるとかよくやるな。エースがずっと探し続ける事になったその原因は俺だが…

一応見かけたら「もう黒ひげはいないよ、やったね家族の元に戻れるよ!」って言ってあげようと思ってたんだけど、エースって偉大なる航路をログとか関係なく単独で走り回ってるからどこにいるかわからんし。

 

どうせだから白ひげのほうに伝えるか?でも「なんでそんなことを知ってる?」って言われても面倒だし、やっぱり放置の方向でいこうっと。

 

 

 

 

 

すでに海兵たちは広場に整列し話が始まるのを待っている。自分でこの場を提案しておいてなんだけど、これはなかなか見ることができない光景だな。

 

20年ほど前に海賊王として処刑される寸前のロジャーの言葉で大海賊時代が幕を開けた。人々がロマンを求めて、力を求めて、富を求めて、様々な人間たちが大海原の先に夢を見て海賊旗を掲げ海へと飛び出していった。

本人にどういう意図があっての発言なのかは誰にもわからないだろうが、1つの時代を築き上げた人物だと言っても過言ではないだろう。

 

残念なのは死の間際にそうなってしまった事だ。もし今もまだ生きていたら、更に人々に夢を魅せていたのかもしれない。

 

俺もロマンを求める身だ。世界中に俺の言葉を届けるなんていうこんな機会は滅多にないのだから、やはりここは俺も世界にロマンを示してみたいという気持ちが大きい。

いや、むしろこの好機を逃せば世界に知らしめることなんてできないかもしれない。

 

そうだよ、今すぐに世界にロマンを知らしめることはできなくても、俺という存在をまず認識させておけばいいんだ。

そのためにはただの挨拶じゃ意味がない。何かインパクトのある演説にして、みんなの記憶に俺という存在の爪痕を残さないと「ふーん」で終わってしまうかもしれない。

 

いや、逆に考えろ。もし演説が失敗したら力で示せばいいんだよ。と言っても海兵相手に大立ち回りするって意味じゃない。

目下、規則正しく並んでいる大勢の海兵たちの頭上を覆って余りある巨大なハンマー、これがそのまま勢いよく降ってきたら…そう思わせることができればそれだけで十分なアピールになるわ。

 

…なんだ、答えはこんなに近くにあったのか。

 

 

よし!やることは決まった。ここから『鉄槌のハンマ』のスタートだ!

 

五老星との会談で勢いのまま決めちゃったけど、なかなか良いネーミングの二つ名になってる気がする。

この鉄槌は俺の武器である金槌のことだ。そしてこの金槌はロビンからのプレゼントだ。

 

つまり…世間に対しては『ロビンには常に俺がいる。ロビンに何かあったら叩き潰す』という表明であり、五老星たち世界政府には『俺にはロビンがついている。お前ら大人しくしてないと古代兵器のボタン押しちゃうかもよ?』という脅しとなる。

 

この金槌がロビンからのプレゼントということを誰も知らないなんて事は気にしない。

そのあたりはこれからの演説でアピールすればいいだけなんだから…決してその場しのぎの言い訳ではない。

 

 

 

 

センゴク元帥の言葉が終わりいよいよ次は俺の番が来る。

 

こんな俺がどこまでやれるかわからんが、きっとこれが後世に名を残す偉大な第一歩になるはずだ。

 

一歩一歩と足を進め、海兵たちの視線を一身に受けながら壇上へと歩いていく。

 

気合は十分!

 

覚悟も完了!

 

演説が失敗した時の対処も用意済み!

 

頭に描くは前世知識にある演説の得意なキャラクターたち!

 

 

 

 

 

「親愛なる海兵戦友諸君!そしてこの中継を見ている世界中の諸君!私が新たに王下七武海を担うことになった鉄槌のハンマである!」

 

 

 

 

 

 



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23.思惑の相違だドン!

 

 

『親愛なる海兵戦友諸君!そしてこの中継を見ている世界中の諸君!私が新たに王下七武海を担うことになった鉄槌のハンマである!』

 

 

 

 

 

「…始まったか」

 

「そのようだな…まったく、厄介な男が現れたものだ」

 

「だがまだ許容範囲だ。アレも使い方次第では我々にとって大きな駒となることも事実」

 

「然り…すべてを信用するわけではないが、あの男が()()()()()()()()()()()以上、今のところあの言葉が全て口先だけというわけではないのだろう」

 

「何を考えているのかなど些事よ。果たして世界の安寧を保つことができるのか、我々が求めるはその一点のみ」

 

 

世界を動かす5人の老人は、今世界中に放送されている1人の男を眺めながら話し合っていた。

 

王下七武海の一角、サー・クロコダイルが国家転覆を企み、破れたという報告は入っていた。

急ぎ次の者を選定する必要があると言っていた矢先、アラバスタ国王ネフェルタリ・コブラより1人の男が推薦されてきた。

 

聞けば海賊や賞金稼ぎでもないその男は「海賊に対する抑止とするはずの力を海賊が担うからこうなる。ならば民間より力ある者がその地位につく事こそが、王下七武海の本来の在り方ではないだろうか」と言っていたらしいのだ。

 

無論、そんな事は言われるまでもない。だが、この大海賊時代に力ある者は海軍として正義のために海兵となるか、海賊となり海を跋扈しているのだ。

 

しかし、だからこそこのネフェルタリ・コブラからの書簡は説得力のあるものだった。王下七武海の一角を落としたというだけでなく、クロコダイルは悪魔の実の能力者の中でも最強と言われるロギア系の能力者なのだ。

並の者たちでは傷つけることすらできず敗れるだろう、そのロギアの能力者を相手にして一方的に勝ったというのは確かに捨て置くには惜しい人材とも思える。

 

センゴクに見定めるようにと伝え、その結果「思想、思考に反乱の予兆なし」との事だったので王下七武海へと任命してやれば、今度はセンゴクを通し「五老星と会談がしたい」ということだった。

 

 

 

「しかし、思い返しても厄介な男だったな」

 

「どこまで知っているのか…底の見えないヤツよ」

 

「だがセンゴクの懸念は至極当然のことだ。今のうちに枷を付けておきたいというのは妥当な判断だな」

 

「その枷がどこまで縛れるものかが疑問だが…もはや過ぎた話か」

 

「うむ、我らは約定を果たした。ならば次はヤツの番だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王下七武海の面談の一環として五老星との会談が行われた最後、五老星は別室にて元帥の監視の元待機するその男を残し最終判断を話し合っていた。

 

「センゴクはなぜあの男を推すような言動をしたのか…」

 

「最初に海軍本部でヤツと話したのはセンゴクだ。何か意図があっての事だろう」

 

「だが新世界で通用する程度ならば他にも多くいる。無論海賊や賞金首ではない力ある者が抑止力となる事は望ましいことではあるが…」

 

「いや待て。ヤツの言っていた能力を考えればセンゴクの懸念も理解できる。ならば今のうちに取り込んでおかねば厄災へとなりかねん」

 

「何を…いや、そうか。確かにその通りだな。まったく面倒な組み合わせだ」

 

力があるだけならば他にいくらでもいる…確かにそうだろう。偉大なる航路には懸賞金が億を超える者たちも多くおり、多種多様な能力者たちがその覇権を求めて研鑽している魔の海なのだから。

だが五老星はその男との会談の内容を思い返し、ハンマという男の危険性を理解した。いや、ハンマとニコ・ロビンという2人の危険性と言うべきか。

 

答え合わせではないが、五老星たちは己等の行き着いた答えを口にしていく。

 

「まず最初にあの男が自ら言った能力である『心の声を大きくして聞くことができる』について、これは真偽のほどはわからぬ。ただ、センゴクの二つ名である『仏』という名が悪魔の実の能力にかかっているのかと言っていた以上、やはりそういった能力の使い方ができるのかもしれん」

 

「うむ、何よりヤツはあの一族の呼び名を我々の前で口にした。よもや偶然であるはずもないな…次にオハラの生き残りであるニコ・ロビンについてだが、恐らく古代兵器の情報を知っているのは間違いないだろう。何よりもヤツらはクロコダイルを()()()()()()倒している。先程あの男は我々に古代兵器を悪用しないような言い回しをしておった。単なる口先だけとも取れるが…」

 

「そんな言葉は何の保証にもならぬ。それにヤツは言っておっただろう。オハラの生き残りに手を出せば持てる全ての手段を使うと…それは逆にあの男に何かあった場合はオハラの生き残りもまた手段を選ばぬという事だろう。つまり互いが弱みでもあり逆鱗でもあるということ…」

 

「あの男は自身の能力で、オハラの生き残りは古代兵器でお互いを守っているということか。それだけならばまずはオハラの生き残りを始末し、あの男には大将なりを向かわせて抑えれば済む話ではあるのだがな…」

 

「まったく厄介な組み合わせだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから…いや、だからこそ敵対しないための措置として、そして我らの管轄下で動向を把握しておくための七武海か。センゴクがあの男を引き込もうとするような言動もそこだろうな」

 

 

古代兵器は世界にとって危険となる。そして何より古代文字を扱えるというのが問題だ。だがその古代兵器を呼び起こす可能性のある人物の隣には、同じような災害を巻き起こしかねないだけの力を持った男がいた。

 

大きくする能力…これだけならば、そして今まで使用されてきた能力の使い方ならばまだ良い。

 

しかしその力を制限せずに使った場合、被害を考えるのも馬鹿らしいほどのものとなるだろう。少なくとも報告では海賊船を、その船を覆うほどの巨大なハンマーで叩き潰しているらしい。

片手で持てる程度の金槌がそれだけの大きさになっているのだ。つまりヤツの能力の上限が100倍や200倍程度の大きさではないことは明白だ。そして目撃の報告がある以上は少なくともそれだけの巨大化が実際にできているというのは間違いない。

 

もしそれを大砲などに使われた場合など、どうなるか見当もつかないのだ。仮に少なく見積もって100倍にできたとして、30cmほどの砲弾だった場合はその能力で30mの砲弾となって飛んでくるのだから。そして200mの射程の大砲だった場合、20km先から飛んでくるかもしれない。そう単純なものではないが、脅威のほどは察して余りある。

 

更にあの男はクロコダイルすらも倒しているところから、覇気も自在に使いこなしている可能性が高い。

そんな男が形振り構わず暴れだしたとしたら、例え海軍であろうと一筋縄ではいかないだろう。

 

そして本人が言っていたような『負の心』を大きくするなどできるのならば、争いを巻き起こし世界中を混乱に陥れるなど容易いものだろう。

 

世に現れた時から海賊を狩り続け、更にはあの一族の名を持つ者すらも葬っている…確かにそれだけの力を持ちながら我々に対しては『仲間に入れてもらおうと思ってきた』と言っていたのだから、語っていた言葉にも一定の信憑性はあるのかもしれない。

 

言葉通りに受け取ればそんな大きな力を持つ上に、どこまでかはわからないが世界の秘密を知るほどの者が助力しに現れたとなる。当然ながらそんな風に受け止める者は1人もいなかったが…

 

 

そして問題はすぐにやってきた。

 

 

夜中、突然大きな振動が聖地マリージョアを襲ったのだ。地震など起こるはずがないにも関わらず、まるで何か巨大な物が降り注いでいるかのような爆音と振動、そして悲鳴が続いていった。

すぐさま聖地にいたサイファーポールの人間が事態の把握に向かったが、夜中で視界が悪い上に天竜人たちの建物は全壊しており生存は絶望的だろうということだった。

 

翌朝には海軍本部からも海兵を呼び寄せて調査を行ったが、やはり原因はわからず不明のままとなった。

最初は過去にもあった天竜人襲撃事件の再来かと思われたが、奴隷たちを逃したような形跡はなく天竜人諸共葬られていた。

天竜人に対して、マリージョアに対して襲撃を仕掛けてきたのであればこのパンゲア城を残しておくというのは有り得ない。

 

つまり世界貴族は必要ないが世界政府は必要としているということか…

 

当然の事だが、この聖地マリージョアの警備は厳重なものである。もちろん過去にも例があるように、まったく外部からの侵入者が入れないというわけではないが。

 

サイファーポールは今回の襲撃を行いそうな海賊などを洗い出しているが、聖地マリージョアの周辺に海賊船などは近寄っておらず今回のような襲撃をできるような相手は見当たらなかった。

五老星の元へも当然原因不明として報告が上がってきているが、犯人など予想するまでもないことだった。

 

王下七武海として突如現れ、どこまでかはわからないが明らかに何かは知っている男…五老星に対しては敵対こそしていないが、味方というには謎と危険が大きすぎる。

 

まず間違いなくヤツだろう…()()()()()()()()()というだけということか…

 

他の天竜人たちは奴隷も建物も全て壊滅させられているのに、パンゲア城と城にいた奴隷などは何もされていないのだ。

それはつまり、これだけの被害がありながら世界政府の機能は停止していないということ。

これが意図されたものではないというほうがおかしい。

 

もちろん世界貴族である天竜人たちがいらぬ恨みを抱かれていたという可能性もないことはないが、それなら自分たちもその対象に入っているはずだしその線はないのだろう。

今すぐにでも呼び出して問い質し、返答如何ではインペルダウン送りにするということも頭に浮かんだ。

 

だが、用意周到なあの男は「世界中に新たな七武海を海軍と共に知らせる」という案によってその選択肢を断つつもりだろう。すでに海軍や政府はその準備に取りかかっているし、内部ではもう周知されている。

 

ここで七武海任命を取りやめインペルダウンへ送るとなると、様々なところでいらぬ誤解を招きかねない上に均衡にすら新たなヒビを入れる可能性もある。

更にオハラの生き残りがどういった行動に出るかも懸念される上に、あの男から聞いた場所を辿り世界政府の役人が探しだした事で判明した、オハラの生き残りがいる場所は()()()()()()()()()()()()というではないか…つまり今、影の諜報員が在り処を突き止めようとしている()()にも手をかけようとしているのかもしれないのだ。

 

ならば非常に忌々しいことだが、今は静観していてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

そんな、新たな七武海となった男の演説が終わりを迎えた。その映し出される映像を見ながら五老星の面々は渋い表情を崩さない。

 

「どうやらヤツは扇動も得意のようだな。ただ海賊を打ち倒し七武海の責を全うだけすれば良いものを…忌々しい男だ」

 

「我々に対してあれほどの大言を吐いたのだ。あの程度はヤツにとって予定調和なのだろう」

 

「原因不明の事故などと、どの口が言うか。面の皮が厚い道化めが」

 

「ヤツが本当に真実を知りながらも我々の元に来たのであれば、これ以上は余計な事を起こすまい。そうでなければ最初から来なければ良いだけの話なのだからな」

 

「うむ、ならば我々はあの男1人に目を奪われている場合ではない。そう、全ては…」

 

 

 

 

「「「「「世界の安寧のために」」」」」

 

 

 

 

 

 



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24.ただいまだドン!

 

 

やっと俺のお披露目演説が終了した…

 

なんか自分でも何言ったのか覚えてない部分もあるが、海兵たちへの激励にはなったんではないだろうか。

つい調子に乗ってというか、テンションに任せて言ってみたわけだが我ながら良い出来だったと自画自賛してもいいくらいの演説にはなったと思う。

 

「ハンマ、これで君の言っていた『民間人上がりの七武海であり、海軍とも協力している』事を世界中に伝えるという計画は成功だろう。大役ご苦労だった」

 

「まぁ今のところはあくまでも()()ってところになるけど、これから増やしていけるように頑張ってみるよ」

 

「ぜひそうしてくれ。演説で突然浪漫を語りだした時は驚いたが、結果的には海兵たちもやる気になってくれたようだし良しとしておこう」

 

やっぱりアレはやりすぎだったか…でもみんなノリ良かったし、誰も怒ってないからノーカンでいいだろ。

せっかくの機会に「今回クロコダイルに代わって王下七武海になったハンマですよろしく」とか言って終わるなんて有り得ない話だ。

それでもちゃんと言わないといけない事は伝えたつもりだし、少しでも多くの人たちが胸にロマンを秘めてくれたらうれしいな。

 

一応これで今回の俺の計画は終わりだ。

 

今頃ロビンの元には「やったね!ロビンの懸賞金は取り消しになったよ!」っていう伝言が届いているはず。

ロビンのことだから俺がやったっていうことはすぐに理解してくれるだろう。戻ったらきっと「すごいわね。見直したわ。今日は頑張ったご褒美にご馳走を用意するわね」とか言って褒めてくれるに違いない。

 

既に世界政府から海軍を通してロビンの居場所は教えてもらってある。

 

なんでかわからんがウォーターセブンでのんびりしているらしいんだよ。そのまま進んでくれていれば近くまで来れてそのへんで合流できてたのに、ウォーターセブンって何かイベント的な感じの出来事あったっけ?

 

…待てよ?そういや海兵が造船の島だとか言ってたな。てことは…メリー号乗り換えイベントか?

 

なんかそんなのがあった気がする。確かメリー号を燃やすんだったよな。そんでメリー号は泣きながら「もっと走りたかった…」って言って燃えていくとかだったはずだ。あれ?ここだけ聞くとルフィたちひどくね?違ったっけ?

 

他にもなんかいろいろとあったような気がするんだが、もう頭に浮かぶのが原作知識なのか俺の勝手な想像なのか段々怪しくなってきたんだよな。

 

まぁ俺の曖昧な記憶はどうでもいいとして、一応帰る前にお偉いさん方には挨拶しておくようにしようと思い、それぞれに「今後ともよろしく」的な挨拶をして回った。

 

三大将には全員にバカを見るような目で見られた気もするが、とりあえず「頑張れ」的な言葉はもらった。むしろお前ら海軍がもっと頑張ってれば七武海なんていらないんだぞ?お前らがもっと頑張れ。そして俺は更に頑張って強くなったお前らを超えてやるわ。

 

中将たちは「お前なかなか良い事言うな」っていう人と「今までに例を見ない海軍本部で七武海のお披露目という場で何を言ってるんだお前は…」って呆れてる人が半々くらいだった。

呆れてるやつらはきっとこれから世界中を巻き込む新しい時代に乗り遅れるがいい。これからってのが何年後かはわからんがな。

 

あと帰りがけの駄賃じゃないが、ついでに他の七武海の奴らがどこにいるのかを教えてもらっておいた。

今のままじゃ王下七武海の一角でしかないわけだし、他の6人が現状のままではあれだけ演説かましても机上の空論に過ぎない。

ならば俺のやるべき事はそう多くないわけだ。まぁいずれにせよロビンと一緒に新世界に行くのは間違いないし、全員と会う機会もそう少なくないだろう。

 

まずは前半の海にいるという2人のうち、ゲッコー・モリアってのに会いに行くとするか。

 

王下七武海ってのは独立勢力ではあるんだろうが、俺は表面的に海軍寄りなわけだからセンゴク元帥にはきちんと伝えておくとしよう。

 

「元帥。俺はウォーターセブンに戻ってロビンと合流して、その後ウロウロしつつゲッコー・モリアってのに会ってくることにするよ」

 

「そうか、一応言っておくが気をつけろよ。ゲッコー・モリアはかつて百獣のカイドウと戦い、敗れたあと前半の海で再び戦力を集めていると聞く。そしてヤツは魔の海域に潜んでいるため我々もその全容は把握しておらんのだ」

 

「ふーん…てか潜んでたら七武海の役目果たしてなくね?」

 

「奴らは王下七武海といえど所詮は海賊。お前のように常日頃から理由もなく海賊を狩ったりはしていないのだろう」

 

おい待て!その言われ方だと俺が悪者みたいに聞こえるぞ!?言ってることは合ってるのに、なんでかわからんが腑に落ちない。まるで謂れのない誹謗中傷を受けた気分だ。帰り道に海賊いたらストレス発散に叩き潰してやる。

 

そのまま海軍の船に乗せてもらい、ウォーターセブンに向かって出発してもらった。

 

途中本当に海賊船に遭遇したが、海兵たちがわざわざ帆のマークを確認してどこの海賊だとか言ってる間に予定通りストレス発散のため叩き潰しておいた。

しかしどうやらやる気に満ちている海兵たちの仕事を奪ってしまったみたいだから、邪魔しないように適当に眺めていることにしよっと。

 

俺から言わせれば別にどこの海賊でもいいじゃん。どうせ潰すことに変わりはないわけだしさ。

 

だが海兵が言うには、海賊旗を掲げていても害のないやつもいるらしい。全ての海賊を一気に相手にできない以上、凶悪な海賊を減らす事が大事なんだと説明された。

まぁどうでもよかったので適当に相槌だけ打って聞き流していたわけだが…

 

海軍のお仕事に口を出す気はないし、海賊を狩るのは俺のお仕事でもあるわけだから文句を言われる筋合いなんてない。俺に対するクレームの窓口は五老星だ、ということにしておこう。

大体まずもって害のない海賊ってなんなんだ?害があるから()()なんじゃないのか?

 

そういう難しいのはロビンの担当だからなぁ…ロビンが「潰さなくていい」って判断したのなら俺も殲滅したりしないよ。そんな事は今まで1度もなかったが。

なんか小難しい事考えるの疲れるわ…五老星と頑張って駆け引きっぽい事したんだからもういいだろ?

 

俺が一方的に海賊を船ごと叩いてしまったせいで捕縛に時間がかかってしまい、なんか面倒になったので船室に案内してもらった。いっそのことウォーターセブンまでダラダラと食っちゃ寝しながら過ごそうかと思ったが、よくよく考えれば今は全自動で目的地に向かってくれる船にいるようなもんだ。

それならせっかくだしストップしている修行をするのにいいかもしれない。

武装色・極による超攻防力を得るためにも今の時間はかなり有意義に使える時間だ。

 

まずは某超野菜人的な感じで常時武装色から挑戦してみよう。

 

そしてそれが普通になれば、武装色2や武装色3…更には武装色ブルーとかまでいけるかもしれん。

 

 

 

 

…ウォーターセブンに到着しちゃった。思ったより早く着いたせいで効果があったのかなかったのかわからん程度にしか成果がなかったような気がする。

意思の力って言うくらいだし、やっぱり怒りとか感情をコントロールする方向で修行すべきだったか?

 

てか、せっかく海軍本部に行ったんだから誰かに聞けばよかった!大将とかもいたんだから、あの頂上戦争で使ってたよくわからんバリアみたいなのとか使い方聞けばよかった…もったいない事したかも。

あれどう考えても武装色の覇気だろうし、俺にピッタリな感じだったのに…まさかあんなバリア張っといて見聞色の覇気ってことはないよね?覇王色だったら潔く諦めるわ。

 

 

港で海兵たちにお礼を言って別れ、俺たちの船は小さいから目印にとメリー号を探して歩いていく。

あの羊の船首は他にないだろうから目印にするにはもってこいだな。

 

 

 

 

 

…………メリー号が見当たらん。

 

もしかしてもう焼き殺した後だったりするのか?別にそれでもいいんだが、それだとロビンと合流する目印がなくなっちゃうんだよ…

メリーさんメリーさん…どこにいるのかな~?呼んだら返事とかしてくれないかな。

 

なんかメリー号って擬人化みたいな感じの事できなかったっけ…?それで自分を修理してたような記憶があるような無いような…

 

造船の島だけあって船が多すぎて探すの苦労しそうだなぁ。もうこうなったら虱潰しに叩き潰していくか?島のやつらは修理する船が増えて喜ぶし、俺もロビン探しやすくなるし一石二鳥じゃね?

…なんか名案に思えてきた。もしかしてまだロビンからの恩恵である『スキル:策略』が機能してるのかもしれない。これはやらないという選択肢はないというロビンからのメッセージか。

 

 

「あーー!!ハンマがいる!!」

 

「ん?おー!ルフィがいた!お前ら探してたんだよ」

 

「そうなのか?おれたちはこの島で宿取ってるぞ?」

 

あれ?船で寝泊まりとかしてないものなのか。まぁ出会えたから良しとしよう。

俺たちの船まで案内してもらう道すがら、この島に着いてからの事を聞いてみた。メリー号がもう走れないから乗り換えることになったらしい。そのことでウソップと言い合いになったけど、その最中にロビンが言った言葉が決め手になったみたいだ。

 

何を言ったのかちょっと教えてもらったけど、ロビンの言ってることはごもっとも過ぎて反論のしようがない内容だったわ。まぁどうしても一緒にって言うのなら船首だけでも再利用すれば?って言っといた。

俺はメリー号に愛着とかないから、他人事にしか思えんので大したアドバイスはできんぞ。

 

どうやらこの島にいる間、ロビンは一味の誰かしらと一緒に行動していたようだな。

たまにアラバスタの時みたいに戦闘訓練もやってたみたいだし、本読んだり買い物したり散策したりして有意義に過ごせていたようだな。

 

ただ、ルフィ曰く「突然ロビンがあんまり外に出なくなって、ずっと何かを考えてるみたいだ」っていう状態になったらしい。そこからは宿じゃなくて自分の船に籠もってるんだって。

そんでもって、ナミの厳命によりロビンを1人にしちゃいけないから空いてる誰かが様子を見るようにしてるとか。

 

なんか随分迷惑かけてるような気もするが、考えてみたら青キジに凍らされて「砕けて死ぬ」か「ロビンを守る」かの二択を選ばせて助けたんだったわ。それなら安いもんか。

 

しかし状況がまったく伝わらん。突然そんな状態になるような事なんてあったのか?

よくわからんがロビンに悩み事があるならその原因を取り除けばいい。そうすれば解決だ。

 

ふと思い出した。ロビンが「生きたい!」って言ってたのココじゃなかったか?

まぁそれはうちのロビンには関係ない事ではあるんだが…まさか潜入してるとかだった政府のスパイに何かされたか?

 

有り得るな…世界政府の諜報員ならば全員ではないにせよ、ロビンが古代文字や古代兵器に通じている事は情報として知っているはずだ。

そしてこの島にやってきたのをいいことに接触を図ったとすれば、ロビンが悩んでいたとしても説明がつく。

これは場合によってはこの島ごと叩き潰すのも視野に入れておく必要があるかもしれんな…

 

「あー!ハンマ、やっと帰ってきたわね!あんた海軍本部まで行ってくるって言って戻ってくるのが遅いのよ!」

 

「あー…まぁいろいろやることがあってな。ナミはここで何してるんだ?」

 

「あんたに頼まれた通りロビンと一緒にいるのよ。政府の役人が来て、次の日に1人でどこかに話をしに行ったんだけど…帰ってきてしばらくしてから船に籠もるようになっちゃったのよ」

 

「そっか、まぁ後は俺が話聞いとくわ。ロビンを守ってくれてありがとな」

 

「こっちもロビンがいてくれたおかげで船についての揉め事が解決できたから構わないわ。あと、この前約束したことお願いしたいから落ち着いたら来てくれる?それじゃあ私たちは宿に戻るわ。ルフィ、行くわよ」

 

「おー!ハンマ、またなー!」

 

 

 

 

 

さて、しばらくぶりの船に戻ってきたわけだが、ロビンはどうしてるのかなっと。

扉を開けて中に入ってみれば…いたいた。確かに考え事してるっぽい感じだな。

 

「ロビン、ただいま!」

 

「…………ハンマ?」

 

「…どうしたの?何かあった?」

 

「ううん、そうじゃないの…その、おかえりなさい」

 

 

これは…どうすればいいんだ?

 

 

 



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25.これからに関わる大切な話し合い…だドン!




今回は1つの状況をロビン視点>ハンマ視点で書いています。


 

 

 

 

ハンマが無事に帰ってきてくれた。

 

 

別に常に一緒にいるわけじゃないけれど、今回はいろいろとありすぎてすごく長い時間離れていたような気がするわ。

 

いろいろと話したい事があるのに、私に関する部分での変化が大きすぎて戸惑っているのかうまく言葉が出てこない…

 

何も知らない人からすれば私はただの賞金首。だけど古代兵器の存在なんかを知っている人からすれば私は、そんな危険物を蘇らせる可能性のある危険人物だと思われていることを知った。

なのに今度はそれを世界中に否定するかのように、世界政府が私の懸賞金を取り消してしまった。いいえ、正確に言えば取り消させた。

 

「ねぇロビン。ロビンの懸賞金取り消しになったんだけど、それって聞いてる?」

 

「ええ、政府の役人が突然やってきて、それだけを伝えられたわ」

 

「「…………………」」

 

いつも通り食事の準備をし、いつも通りハンマと一緒にご飯を食べる…だけど普段なら雑談しながら食べているはずなのに、いつも通りの言葉が出てこない。

 

ありがとう、なんて言葉では足りないくらいの事をハンマは私にしてくれている。

 

世界政府の役人が、()()()()私を探し出し直接懸賞金の解除を告げてきた。これはつまりハンマが海軍ではなく、世界政府に対して私の懸賞金の解除を交渉したのは間違いないわ。

 

世界政府という巨大な相手に対して、ハンマがやったことがどれだけ大変だったのかなんて想像もつかない。1つ間違えればハンマだって犯罪者にされていてもおかしくないほどの綱渡りの交渉だったのだろう…というくらいしか私にはわからない。

 

世界政府に対して、どれだけの覚悟でどんな交渉をしたのかがわからないのに、私から「どんな話し合いだったの?」なんて簡単に聞いてもいいのかもわからない。だって、きっとハンマが世界政府と交渉したのだって、私のために頑張ってくれた事なんだもの。

 

だからせめて「大変だったよ」って言ってくれれば…話を聞くくらいしかできないけれど、それでも話すことによって内に抱え込まずに済むのであればと思う。

でもわざわざハンマにこれ以上気を使わせるわけにもいかないわね。いつも通りに聞けば、きっとハンマもいつも通りに答えてくれるはずよ。

 

「ハンマ…あなた、他に私に何か言うことがあるんじゃないかしら?」

 

「……え?」

 

「他に私に何か言うこととか、話しておくこととかない?」

 

「……心当たりしかなくて、どれの事なのかサッパリですハイ」

 

いつも通りのつもりだったけれど、やっぱり余裕がないのかなんだか問い詰めるような言い方になってしまったわ…それよりもちょっと聞き逃がせない答えが返ってきたのだけれど?

 

心当たりしかない…ちょっと待って。まさかと思うけれど、聖地マリージョアであった『地震』って…ハッキリと脳裏に思い浮かぶ光景になんだか頭が痛くなってきたわ。

あの巨大なレッドラインで地震なんて初めて聞いたんじゃないかしら?とか思っていたけれど、まさか…いえ、なんだかその答えを聞くのが怖いからそれはいいわ。きっと私には馴染みのあるリズムの地震だったことでしょうね…

 

私に何も言わずにさっさと青キジの自転車の後ろに乗って出かけていくと思ったら、まさかそんな事を考えていたの?

 

まぁそれは置いておきましょう。きっとただの地震だったのよ。それ以外考えられないわ。

それに知りたいのはそこじゃないもの。言いたくないのなら無理には聞かないけれど、七武海の説明を聞きに行って世界政府と交渉することになった経緯くらいは知りたいわ。

 

「海軍本部に行くって言ってたのに、世界政府と話をしてくるなんて驚いたわ」

 

「あー、それね。ちょこっと元帥に頼んだら快く承諾してくれたよ。五老星たちも俺の事を理解してくれてるみたいで、口より先に行動で示せっていう感じだったんだよね」

 

「そうなのね…」

 

まるで大したことじゃないようにすごく軽く言ってくれるけれど、元帥に頼んで世界政府のトップである五老星と会うなんて普通じゃ考えられないわ。

それだけでも普通じゃないのに、懸賞金の解除までやってのけてる。まさかと思うけれど、何かを犠牲にしたの?

 

そういえばあんな演説なんて世界政府や海軍らしくないわね。いくら民間人からの王下七武海だと言っても、それを中継までして知らしめる必要なんてないはず。

中継で言ってることはハンマらしい部分もあったけれど、まるで海軍と七武海は共にあるという事を示すためのプロパガンダのような…七武海と祭り上げながら実は使い潰すつもり?

 

それを承知でハンマは…まさか自分を犠牲にでもしたというの?

 

私とハンマは一緒にいてもう20年…子供の頃から今に至るまで、ずっとハンマは私を守ってくれている。それは海賊や賞金稼ぎなどから守ってくれているだけじゃない。

本当なら一番恐ろしいであろう『孤独』からも私を救ってくれた。

 

もうそれだけでも十分に大切にされていると理解しているけれど、それだけじゃなく今度は世界政府によって犯罪者に仕立て上げられた懸賞金すらもなくしてしまった。

すでにハンマから受けている恩は、もう返しきれないほど大きなものになっている。

 

せめて私もハンマを少しでも助けられるようにならないといけないわね。でもどうしたらいいのかわからない。

私も今まで通りじゃなくもっと違う考え方をするべきかしら?ハンマのような突拍子もない事は思いつく自信はないけれど、視野を広げて物事を考える必要はあるのかもしれない。

 

 

 

「ねぇハンマ。私はこれから変えていくべきかしら?」

 

「うーん…そうだな。ロビンは今のままでいてほしいな」

 

「……わかったわ。ハンマがそう言うならそのままでいくわ」

 

そう…ハンマは今の私のままでいいって事なのね。考え方を変えていくべきかって聞いた答えが「今のままでいいと思う」といったような意見ではなく「今のままでいてほしい」って言ったってことは、ハンマがそう望んでいるということ。

 

そう言ってくれるのなら、私は今の私のままでいながら守られるだけじゃなく隣に立てるようになってみせるわ。

 

悩むのはもうお終い。心配かけてごめんなさい。ちゃんと今までと同じいつも通りの私に戻るわね。

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

海軍本部からウォーターセブンのロビンの元へと戻ってきたわけだが、なんかロビンの様子がおかしいというかそっけないというか…

いつもなら微笑みながら「お疲れ様」とか言ってくれるのに、今日はなんだか違う気がするんだよな。

 

俺なんかしたっけ?五老星にロビンの懸賞金を取り消しにしてもらって、戻るのにちょっと時間かかりそうだったから先に教えといてあげようと思って伝言お願いしたくらいだよな。

 

…これはもしかしてちゃんと伝言しなかったのか?さては政府の役人どもはサボりやがったな?

 

きっと役人たちは「なんで俺たちが元賞金首に懸賞金が取り消された事を伝えなくちゃいけねーんだよケッ」とか言ってバックレやがったんだ。

それならロビンの態度も納得だ。なんの成果も言わずに戻ってきたから「あなた何しにわざわざ行ったの?」ってことか。

 

確かに六老星にもなれてないし、懸賞金の取り消しだって別に大した成果ではないもんな。

これであの演説とか見られてたら羞恥死するかもしれないわ…

ロビンに「あなた何やってるの…?」とか冷めた目で見られかねん。違うんだ…ついテンション上がってしまっただけなんだ。

 

「ねぇロビン。ロビンの懸賞金取り消しになったんだけど、それって聞いてる?」

 

「ええ、政府の役人が突然やってきて、それだけを伝えられたわ」

 

「「…………………」」

 

あれ?政府の役人は仕事してたみたいだ。くっ、それならなんでロビンは何も言ってくれないんだ…?

俺の予想では「あら、私の懸賞金を取り消してくるなんてすごいじゃない。あなたも力ずくだけじゃなく交渉も上手になったのね」とか褒められると思ってたのに。

 

「ハンマ…あなた、他に私に何か言うことがあるんじゃないかしら?」

 

「……え?」

 

「他に私に何か言うこととか、話しておくこととかない?」

 

うそぉぉぉぉぉぉん!?もしかしなくてもロビン怒ってるの!?

 

もしかして俺が五老星との交渉のカードに使った「俺に何かあればロビンさんが黙ってないぜ?」を見透かされてるのか!?それとも黙っとくって約束だった古代兵器の話を出しちゃったからか!?なんでその場を見てないはずなのにバレるんだ……これが見聞色の覇気か!?

 

違うんだ!あれは見せ札(ブラフ)ってやつなんだって!

 

それとも五老星への要求がまだ足りなかったのか?ロビンだったらこの程度(懸賞金解除)では済まさないで、何かもっと世界政府から引き出せていたとでもいうのか…有り得るな。ロビンなら初めての会談にも関わらず六老星になっていたかもしれん。

 

くそ…俺はまだまだ精進が足りていなかったらしい。策士策に満足するってやつか…

 

あとは…あれか?ないとは思うけど勝手に懸賞金をなしにしちゃったのがマズかったのか?

実はロビンって心の中では「ふふふ、私は8900万ベリーの賞金首なのよ」みたいな感じで格下賞金首たちを見ては愉悦ってたのか?それなら怒ってるのも納得できる。…まぁこれは冗談だが。

 

いろいろと心当たりはあるがどうしたらいいかわからない。とりあえずわからないならわからないと言わないとロビンもわからないと思い、そのままを伝えてみることにした。

 

「……心当たりしかなくて、どれの事なのかサッパリですハイ」

 

「海軍本部に行くって言ってたのに、世界政府と話をしてくるなんて驚いたわ」

 

「あー、それね。ちょこっと元帥に頼んだら快く承諾してくれたよ。五老星たちも俺の事を理解してくれてるみたいで、口より先に行動で示せっていう感じだったんだよね」

 

「そうなのね…」

 

なんだそんな事か。まぁ考えてみればロビンは俺が聖地マリージョアや海軍本部で何をやってきたかなんて知ってるはずないもんな。

世界政府だって原因不明の地震で天竜人が死んだとかニュースにしないだろうし。いや、俺が演説で言っちゃってた気がするわ…まぁそれだけで俺がやったなんてわかるはずがない…ないよね?

 

それにあの演説も世界中に中継されているとはいえ、俺たちの船にもルフィたちの船にも映像電伝虫なんてあるわけないから知ってるはずもない。

 

 

 

「ねぇハンマ。私はこれから変えていくべきかしら?」

 

ロビンから突然「変えていったほうがいい?」なんて抽象的なふわっとした質問が飛んできた。正直言って「何を」変えたいのかを教えてほしい。

 

普通なら何を?って聞き返すんだろうが、俺の明晰な頭脳と今までのロビンとの付き合いの長さがあれば何をと聞くまでもなく聞きたい内容が理解できる。

 

つまりロビンは…イメチェンするべきか悩んでいるんだ!

 

本来ならば賞金首として海を進んでいくはずのロビンなわけだが、今のロビンは懸賞金を解除されて普通の女の子となっている。

そして俺だけしか知らない原作知識では、2年後のロビンは髪を上げているんだ。原作ロビンが何を思って2年の間にイメチェンしたのかはわからない。今はまだ2年後ではないが、うちのロビンは懸賞金を解除され普通の女の子になったのを機会に髪型を変えたりしたいと思ったんだろう。

 

もちろん懸賞金が解除されたからといってすぐにみんながそれを知るわけじゃないし、変装じゃないけど周囲からのいらん疑いを避けるためって意味もあるのかもしれないが。

 

だが本当の理由はそこじゃない。それらを建前にしながらもオシャレしてみたい的な乙女心な心境があるんだろう。「変えてみたいけど、でもなんか踏ん切りがつかないわ」みたいな。それを身近にいる俺に同意してもらい背中を押してもらいたかったんだな。

 

てことはあれだ。海軍本部から戻ってきてから、なんとなくいつもと空気が違ったのはロビンがそれを言い出すタイミングを見計らってたってことだ。

 

もしかしてナミが髪型変えてたり、ウォーターセブンで待ってる間にそのへんの女の子の髪型とか服装とかを見て内心では「いいなー」とか思ってたのかもしれないな。

そしてついにロビン自身も普通の女の子になれたから、今まであんまり考えてないようにしていた乙女心が刺激されたってことか。

 

なーんだ。わかってみれば大したことじゃなかったわ。

 

いやロビンからしたら多少の変化はあれども今までずっと同じような髪型だったわけだから、そこに変化をつけるっていうのは大きいイベントなのかもしれない。

道理で俺のことを褒めてくれないと思ったよ。つまり自分の事でいっぱいいっぱいになっちゃってたんだな。

 

一応今まではちょこちょこ服屋とか行っていろいろと似合う服とかは買ってたりしたけど、やっぱり他人から勧められるよりも自分の感性で良いと思った物を着たりしたいよな。

でも「自分は賞金首だから」っていう部分が知らないうちに自分を抑圧してしまっていたんだろう。

髪型もたまに提案したりしてたけど「このままでいいわ」ってやんわり断られてたし、でもそれが解き放たれたのが今っていうことか。

 

 

 

 

 

 

 

…だがすまないロビン。期待を裏切るようで悪いが、実は俺は『前髪はあったほうがいい派』に属しているんだ。

あとたまに料理作ってくれたりしてるときに、後ろをくくってるのとか好きなんだ…黙っていたけど実は『たまに見えるうなじっていいよね協会』の会員でもあるんだ。

 

俺だってできればロビンの希望に沿う答えを返してやりたい…返してやりたいところなんだが、今回ばかりは俺のわがままを通させてもらうつもりだ。

 

断腸の思いとはこの事かと思いながらも俺の答えは1つだけだ。そして俺たちの間に余計な言葉は必要ない。

きっとロビンならわかってくれると信じて俺の気持ちを伝えよう!でも即答したら何も考えてないっぽいから少々悩む仕草を見せて…

 

「うーん…そうだな。ロビンは今のままでいてほしいな」

 

「……わかったわ。ハンマがそう言うならそのままでいくわ」

 

やっぱりロビンだな。俺の気持ちをよくわかってくれているようで何よりだ。

しかしあれだな…これが所謂『原作を変える』ってやつか…これが後々どういったバタフライエフェクトを起こすのかわからないが…って髪型変えないくらいで何も起こるはずないわ。

 

つい、女の子が髪型を変えるのは大きな決断だ…みたいな知識に流されるところだった。しかもよくよく考えれば確かそれって失恋じゃねーか!

 

もしうちのロビン泣かせたやつがいたら、即刻叩き潰してハンマーの頑固な汚れにしてやるわ!

 

 

 

 

 

 



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26.世界の平和を守るドン!

 

 

 

ロビンが元通りになってくれた!

 

 

髪型を変えるかどうかで随分と悩んでいたみたいだが、最後は俺のお願いを聞いてくれてそのままでいくことにしてくれたようだ。

俺からしてみれば「悩むようなこと?」って気がするが、このあたりは感性の違いってやつなんだろう。

 

ナミとかにでも相談すれば良かったんだろうが、もしかして言い出しにくかったのかな?ロビンは自分の中に抱え込むところがあるからなぁ。

俺には言うことができても、他のやつじゃなかなか弱みとかは見せるのに抵抗あるってのは理解できる。俺だってロビン以外に相談とかできるやつがいるかって言われるといないしな。

 

ロビンも悩みが解決してサッパリしたのか「私の懸賞金解除を世界政府に交渉してくれたんでしょう?お疲れさま。それと…頑張ってくれてありがとう」と笑顔でお褒めの言葉を頂いた。

俺が勝手にやったことだが、ロビンも満足してくれた結果になったみたいだし一安心だ。

 

ただ最後に「でも…あまり心配させないでね?」って言われたから、俺ではまだ荷が重いと思われてたということだ。それは否定できない…五老星との会談だって結構行きあたりばったり感は否めない感じだったもんな。

 

何にせよいつも通りに戻ったとはいえ、俺がいない間のお悩みロビンのことをルフィたちも心配してたみたいだし、ナミも何か頼みたいことがあるとか言ってたから明日にはとりあえずあいつらが泊まってる宿に顔を出しておくか。

 

 

 

だがその前に俺は衝撃の出来事に遭遇することになる…

 

翌朝、起きてから出かける準備してコーヒーでも飲もうと思ったらロビンがすでに起きてた。

 

「おはようロビン」

 

「おはよう、あなたもコーヒー飲む?」

 

「そうだね、お願いしようかな」

 

席に着きロビンにコーヒーを入れてもらっている間にテーブルの上を見ると、どうやら今日の分であろうニュース・クーが置かれていた。

それ自体はいつもの事なんだが、目に入った見出しの記事と写真が俺の背筋を凍らせることになった…

 

そこには『新王下七武海・鉄槌のハンマ、海軍本部にて世界中へ向けて語る!』とか書いてある。

 

これロビンはもう見てるんだろうか…?いや、見てたら何か言ってくるはずだ。これを読んだ後なら俺に「あなた何をしてるの?」とか「随分と楽しそうな事をしていたのね」とか言うはずだ。

つまりロビンはこの新聞を買ったけれどまだ目も通していないということだ。

 

隠さねば…せめて俺の記事の部分だけでも抜き取らねば…

 

ロビンも俺と一緒にいるときにわざわざ新聞広げたりはしないから、とにかくロビンを1人にしてはいけない。

だが俺はロビンの目を盗んでこいつを処分せねばならない。今だけ俺の能力が反転して「小さくする」にならないかな。そうすればこの新聞を小さくして処分するんだが…

 

とにかくロビンを外に連れ出そう。チャンスは出かけてから戻ってきた時の一瞬しかない。

 

「ロビン、ルフィたちのところに行くんだけど一緒に行かない?あいつらも心配してたみたいだからさ」

 

「ええ、そうね。彼らにも心配かけちゃったから、もう大丈夫って伝えておかないとね」

 

ロビンと一緒に船を出て、案内してもらいながらルフィたちが泊まっている宿へと向かっていく。

途中ヤガラブルとかいう珍しい乗り物に乗ってみたり、ロビンに教えてもらった水水肉というとろけるようなお肉を食べたりしたが宿へと到着することができた。

ちなみにこれは決して寄り道ではない。俺だけウォーターセブン初心者なんだから、少しくらい散策してもいいよね?っていう何かだ。

 

宿に入ってみると、ルフィたちはちょうど揃って食事しているところだった。1つの大きなテーブルを囲んで並べられた料理を食べている。こいつらのイメージはテーブルいっぱいに料理が並んで我先にと争いながら食ってそうな感じに思ってたんだが、見る限り普通に定食1人前ずつみたいな量しかないぞ。ダイエットでもしてるのか?まぁいいか。

 

「おっす!ロビン元気になったぞ。ちょっとセンチメンタルな気分になってただけだからもう大丈夫だ」

 

「センチメンタルとは違う気がするけど…もう大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」

 

もうロビンは大丈夫ということを伝え、そのまま勝手知ったるとばかりに空いている椅子を持ってきて一緒にテーブルを囲み、並べられている料理を勝手に食べていく。

すると何やら期待の眼差しが飛んできたため、料理やら酒を巨大化させてやると口に運ぶ勢いが増しやがった。そんな柄には見えないんだが、ダイエットじゃなくて節約でもしてたのか?

 

まぁそれはどうでもいいや。とりあえずナミの用件を先に聞いておくか。

 

 

「ナミ、そういやなんか頼みたいことがあるんだっけ?何かあったのか?」

 

「そうそう、そうなのよ。空島で黄金を奪ってきたじゃない?それを換金したんだけど、ゴタゴタしてる間に半分奪われちゃったのよ。だからハンマに残ってる黄金の欠片を大きくしてもらって奪われた分を補填したいんだけど…」

 

「うん?巨大化させるのは元から約束してたから別に構わんけど、奪われた金は取り返さなくてもいいのか?」

 

「もちろんよくないわ。でもルフィたちが乗り込んだ時には、すでにどこかに持っていった後らしくて取り返しようがないのよね」

 

なんだそりゃ?運の悪いやつらだな。いや、逆に俺がいるから運が良いのか?

俺が聞いてるのはルフィとウソップが何か口論になったけどロビンが収めたとかくらいだから、それ以外で起こってることなんてわからん。

 

詳しく聞く気はあんまりなかったんだが、ナミのほうは鬱憤が溜まってたのか食べながらも愚痴を言ってくる。

ところどころに「私のお金」ってセリフが聞こえるが、まぁそれは置いておこう。そもそも別に俺が突っ込むところじゃない。てかツッコミ役のウソップがなんか静かだな。

 

と思ったらウソップがなぜかロビンに謝りだした。「ついカッとなってひどい事を言ってすまなかった!」とか言ってる。

ロビンも特に怒ってる様子でもなく「気にしてないわ」とか言ってるからまぁいいか。わざわざ俺が口を出すことでもないだろ。まぁ内容によっては口は出さないが手を出すだけだ。

 

あとフランキー一家?ってなんか聞き覚えがあるような無いような…こう思い出せないとモヤモヤした気分になって気持ち悪いな。そのうち会うことがあったら思い出すかな。

 

「ナミ、とりあえず食い終わったら残ってる黄金の欠片とか持って来いよ。そんでさっさと換金してくれば?」

 

「そうね、お願いするわ。ちょっと待ってて」

 

「ハンマ!これもデカくしてくれ!」

 

「いいぞ…ほれ。好きなだけ食え」「んほーー!!」

 

いくら全身ゴムだからって体型変わるほど食いたいものなのか?

てかよく今まで旅してこれたな。どう考えても食糧難に陥ってゲームオーバーになりそうなもんな

んだが、こいつらの船の倉庫は食料が詰まってるとかなんだろうか。

 

ナミが持ってきた黄金の残りを大きくしてやり、元からあったくらいにしてやったので奪われた分の補填は十分だろう。

 

「ありがと!これで新しい船のために節約しなくてもいけるわ」

 

「もう取られるとか間抜けな事するなよ?俺だって大きくするモノがないことにはどうしようもないぞ」

 

「ええ、次はみんなで行くことにするわ」

 

ナミとの約束も果たすことができたので食事が終わった後に宿の前でルフィたちと別れ、ロビンと2人自分たちの船へと戻る道を歩いていると、何やら海パン男と女2人が目の前に立ちはだかった。

 

 

「アウッ!手配書と同じ顔…お前が悪魔の子(ニコ・ロビン)か?」

 

「あなたが誰か知らないけれど、私に何か用かしら?」

 

「別にお前にゃ恨みはねぇが、見つけちまったからには素通りするわけにもいかねぇ…聞くところによるとお前は世界の破滅を企む危険人物だそうじゃねぇか。さっさと子分どもの仇討ちにしてぇところだが…事実ならのさばらせるわけにはいかねぇからな。どっちなのかちっと確かめさせてもらうぜ!ウエポンズレフト!」

 

なんか海パン男が手配書を確認してからロビンを攻撃してきやがった。なるほど、こいつは賞金稼ぎか何かだな?

しかも腕を飛ばして攻撃してくるとは…意表を突いてるつもりだろうが俺には通用せん!

ロケットパンチをハンマーで叩き落とし、そのままハンマーを突きつけ今からどうなるか教えてやる。

 

「おい、うちのロビンに攻撃するとはいい度胸してるじゃねーか。そんなに死にたいならお望み通りにしてやるよ」

 

「ねぇハンマ、たぶん彼が麦わらくんたちのお金を奪ったフランキー一家じゃないかしら」

 

なるほど、それじゃ後でルフィたちには叩き潰したことを教えてやるか。ちゃんと覚えてたらだが…

 

だがなんかこいつ見たことある気がする…………思い出した!このロボットもどきはプルトンの設計図を持っててルフィたちの船を作ってたやつだ!あれ?プルトン作るんだっけ…?ルフィたちの新しい船がプルトンだっけ?

 

ダメだ思い出せん。まぁロビンに攻撃した時点でそんなことはどうでもいいんだが。

 

 

それはそれとしてこの野郎、せっかくのロビンの新たな門出に水を差しやがって。

ロビンが普通の女の子になってイメチェンするだけにどれだけの想いがあったと思っていやがるんだ。

 

小さい頃から濡れ衣で犯罪者に仕立て上げられて、それでも挫けずに健気に生きてきたんだ。

いろんな島を巡る中で他の女の子たちがオシャレしてても「私は賞金首だから…」とか「きっと私じゃ似合わないから…」とか可愛いのにも関わらず自虐的になって影で涙を堪えてたんだぞ。

 

そしてやっと懸賞金が解除されて賞金首じゃなくなって、新しい自分をスタートすることができるんだ。それでもすぐに今までの自分から変われるわけなんてない。

 

だからこそ、ここから新しい自分を始める第一歩だったんだ。

 

 

まぁ全部俺の想像だけどな!

 

 

少々悲劇のヒロイン的な感じだがそう間違ってないはずだ。ずっとロビンと一緒にいる俺が言うんだから間違いない。

 

 

「誰だてめぇ。おれが用があるのは悪魔の子(ニコ・ロビン)のほうだ」

 

「俺は王下七武海・鉄槌のハンマだ。ロビンはお前に用はない。俺のほうはたった今お前に用ができたんでな。とりあえず叩き潰されろ!」

 

このロボットもどきに手加減なんぞ必要ない。手下と一緒に叩き潰してくれるわ!

 

 

 

……

………

 

 

 

さて、フランキーも手下も倒れ伏してるわけだが…こいつらをどうするか。

 

そもそも俺の戦い方は一撃必殺に重きを置いてるから、相手から攻撃されて攻撃してなんてターン制みたいな事はしない。そういうのは門外漢なんだ。

フランキーも手下も纏めて逃げ道ごと一撃で叩き潰せばいいだけなんだから。

 

 

とりあえずフランキーと手下を叩き潰してやったわけだが、こいつはなんでロビンに手を出そうとしたんだ?

危険人物とか世界の破滅とか言ってたってことは、こいつもロビンが古代文字読めるとか知ってるんだっけ…?

 

 

ハハーン、さてはロビンを利用して古代兵器を集めたりするつもりだったんだな。

 

 

恐らくこいつはある日偶然にもプルトンの設計図を手にすることができた。

 

本当ならばすぐにでも作りたいところだったんだろうが、プルトンを作れるだけの材料や金もない…だから見つからないように資金を集めていたんだな。ルフィたちから金を奪ったのも懸賞金が億にも満たない少額海賊ならば問題ないと判断してのものなんだろう。

 

そしてそれだけでは満足することなく更に戦力を増やそうと考えた結果、プルトンだけじゃなく他の古代兵器であるポセイドンやウラヌスも手中に収めることを思いついたんだ。

 

だがそこはやっぱり古代兵器。情報を集めようにもそう簡単に見つかるわけもない。そしてそこに古代兵器を見つけるための鍵であるロビンの存在を知ったんだ。

ロビンがいれば残る古代兵器を探すのは容易になると考え、連れ去るために攻撃してきたというわけだな。

 

そうして最後は古代兵器を使って世界征服とかする気なんだ。力に溺れたヤツの考えることなんて過程は違っても大体そんな感じのはずだ。

叩き潰す前に「のさばらせるわけにはいかない」みたいなことを言ってたはずだから、つまるところその言葉の意味は「この俺がお前を管理して有効利用してやるよケケケ」ってことだろう。

 

きっとこいつの脳内ではチンピラからの成り上がりサクセスストーリーを描いていやがったに違いない。

 

そんなヤツがどうやってルフィたちの仲間になったのか覚えてないからわからんが、俺の予想ではたぶんこいつがウォーターセブン編のボスでルフィたちがこいつを倒した後に「実は…」とか回想が入ってから最後は改心して仲間になったとかかもしれんな。少年誌にありがちな展開だし、ピッコロさんポジションと似たようなもんか。

 

てことは本来のルフィの役割を俺が取っちまったかもしれないのか。すまんルフィ、そのうち食いきれないほど食い物巨大化させてやるから許してくれ。

 

しかしまさか七武海として世界の戦力バランスがどうこうとか以前に、世界征服を目論む小悪党を退治することになるとはな…

 

 

とりあえず気絶してるフランキーの体のどこかに設計図があるはず………あった、これだ。

 

 

「ぐっ、てめぇ…そいつ(設計図)を返しやがれ…」

 

「ん?意識が戻ったのか。いきなり襲ってきたくせに何寝ぼけた事を言ってんだこのタコ。今のお前は泣き寝入りして手下共々助かるか、みんな仲良く叩き潰されるかの二択しかないんだよ。選ばせてやるからどっちがいいんだ?」

 

「…それが七武海の、政府のやり方か」

 

「七武海も政府も関係ないな。これが俺のやり方だ」

 

世界征服を目論んでたくせに七武海も政府も関係ないだろうが。自分から襲いかかってきておいて都合が悪くなったときだけ相手を批判する被害者ムーブが通じるほど俺は甘くないぞ。

本来ならばこのまま叩き潰して暴れてやりたいところだが、これ以上ロビンの新しい旅立ちを余計な騒動で邪魔したくない。

 

この設計図は俺がどうにかしておいてやるから、お前は安心して今まで通りチンピラ業に勤しめ。

 

一応こいつはチンピラとはいえども賞金首でも海賊とかでもないから「どっちがいいんだ?」ってわざわざ質問してやってるのにずっと「返せ…」しか言わないから、なんかもう面倒になったのでぶっ叩いてもう一度気絶させておいた。

 

そのままフランキーたちを放置して、ロビンと一緒にそのまま船へと移動していった。ロビンは俺が持ってるものが気になったらしく、何を奪ったのか聞いてきたのでそのまま正直に答えておいた。

 

 

「珍しいわね。ハンマが何かを奪うなんて」

 

「あー…さすがにあんなやつに持たせておくには危ない代物だからなぁ。ロビンはコレどうしたらいいと思う?」

 

「まず何を奪ったのか知らないんだけど…紙の束なのは見ていたけれど、それは一体何なの?」

 

「プルトンの設計図」

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 



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27.俺たちの冒険はこれからだ!

 

 

 

とりあえず古代兵器(プルトン)の設計図を奪ってみたわけだが、あれから取り返そうとするフランキーの襲撃が鬱陶しいほど繰り返された。全部返り討ちにしてやったが。

 

ただでさえロビンに「彼がプルトンの設計図なんてものを持っているなんて、ハンマはどうして知っていたのかしら?」とか聞かれて弁解するの大変だったってのに、余計な手間をかけさせてくれるもんだ。

 

一応事実なんだけど、だからといって「原作知識だよ!」とか言ったらふざけてると思われるだろうし、どう答えたらいいのかわかんなくて「あー…」とか「うーんと…」とか言ってたら、ロビンのほうが何やら独り言を呟いたかと思ったら勝手に解釈して納得くれたようなのでなんとか乗り切れた感じだ。

 

ちなみにニュース・クーの件は結局隠すことができず、ロビンに読まれてしまった。

ただ、おかしいのは読んだにも関わらずロビンから何も言われなかったことだ。俺は読んでないから何が書かれているのかわからんけど、何も言われないっていうのもどうしたらいいのかわらん。

 

中継を見られてたら恥ずかしくて死ぬかもしれんが、新聞に掲載されてることに何も触れられないとなると話題にするまでもないような内容だったということかな?まぁ何も言ってこないのなら俺から掘り起こすような事でもないし後回しにしておこう。

 

 

俺に設計図を奪われたフランキーは勢いよく「返せ!」って言いながら襲いかかってくることもあるし「頼むから返してくれ」って泣き落としみたいな事をしてくることもあった。

 

あんまりしつこいから「返せなんて偉そうな事を言う前に、まずお前が奪った金を麦わらの一味に返してこい」って言ってやったら「もう使っちまって無い」とかふざけた事を言うんだもん。

人から金を奪った上にすでに使っておいて、自分の場合は奪われたら返せなんて都合が良いにも程がある。

 

そうやって自分に都合が良い考え方でプルトンも使おうと思ってたに違いないな。いや、ルフィたちから奪った金で材料を買って「いよいよ古代兵器の誕生だ!」って作ろうとしてたところに俺が現れて肝心要の設計図を奪われたって感じか。

 

俺グッジョブだ。しかも誰にも知られずに世界の危機を未然に防ぐとか最高にカッコいい!

 

「ねぇロビン。俺ってもしかしたら勇者の生まれ変わりなのかもしれない」

 

「そうね。暇ならこの食器を洗うの手伝ってくれる?」

 

「…ビックリするくらい興味ないみたいね。まぁいいけど」

 

ガチャガチャと2人で肩を並べて食器を洗う勇者…いや勝手に思ってるだけなんだけどさ。しかも相手は魔王とかじゃなくて力に目が眩んだ小悪党だもんな。

それはそれとして、2人で旅してるんだから家事は協力しないとね。普段からロビンに任せきりにはしてないつもりだけど、つい甘えちゃう時があるからやれるときにやっておこう。

 

しかし意図せずに世界征服を阻止したとはいえ、そろそろウォーターセブンにいる必要もないし次の島に行くとするか。

 

「ロビン、まだこの島で何かすることある?」

 

「いいえ。元々ハンマと合流するために待ってただけだから、ログも溜まってるしいつでも出発できるわよ」

 

「それじゃあそろそろ移動しよっか。どこか行きたいところとかないの?」

 

「行きたいところで言えば、この近くに少し歴史のある島があるらしいのよ」

 

「じゃあログ辿る前にそこに行こうか」

 

「それじゃあちょっとだけ買い出しするから手伝ってちょうだい」

 

俺の用事は前半の海にいるっていうゲッコー・モリアに会うくらいしかないから、ロビンが行きたいところがあるならそっち優先でも問題ない。

しかも近くに行ってみたい島があるんだったら先に行かないと、後から戻ろうとかなったら余計な手間だしな。

 

ロビンと一緒に消耗品や食材などの不足分を買ってると、前方から買い物中だろうナミと荷物持ちっぽいサンジが歩いてきた。

 

「よお、お前らも買い出しか?」

 

「ハンマ!あんた今度は何やらかしたのよ?なんかフランキー本人が突然やって来て『奪った金を使っちまった。返すことはできねぇがその分おれを好きなだけ殴ってくれ!』とか言い出して大変だったんだからね」

 

「ほー、それで?好きなだけ殴ったのか?」

 

「そんなことするわけないでしょ!まぁ突然謝罪から始まったから毒気を抜かれたって感じなんだけど…それで突然そんなことをしにきた理由を聞いてみたら『七武海の鉄槌に大切なものを奪われた。お前らの許しがないと返してもらうことができない』っていうことらしいのよ。見ていて可哀想なくらい反省してたんだけど、あんたやりすぎじゃないの?」

 

なんだそれ?こいつらが許すのと俺がプルトンの設計図をどうするかは別の話だぞ。どうやら俺には効果のなかった泣き落としをこいつらにもやってるみたいだし、古代兵器が手に入るか入らないかの瀬戸際だと思って手段を選ばなくなってきてるな。

ナミたちには「それはそれ、これはこれ」と言っておいたし、あんまり回りくどい手を使ってくるようならこっちにだって考えがあるぞ。それを考えるのはロビンだが。

 

そんなどうでもいい話を少しして「俺たちはもうこの島を出るし、お前らも頑張れよ」と応援して別れた。

 

最近バタバタしててあんまり修行とかできてなかったし、ロビンが歴史とか調べたりしてる間に何か新しい技とか考えたいな。

剣もアラバスタで1回使ったくらいでずっとお蔵入り状態だから、たまには剣を使って何かやってみるのも面白いかもしれない。

 

海列車ってやつにも乗ってみたいという気持ちもあるが、次に来たときにでも乗ればいいや。あと俺がいない間にウォーターセブンを襲ったっていうアクアラグナっていう大津波も見てみたかったな。

俺が全力全開でハンマーを海に叩きつけたら再現できないかな?後でやってみようっと。

 

ウォーターセブンを後にして、ロビンの行きたいと言っていた島を目指して船を進めていく。

 

ロビンは懸賞金を取り消しになったのでもう金目当てのやつらに狙われることはないし、1人の女の子としての人生が始まるわけだ。

これからもやることは何も変わらないけど、やっぱり気持ちの部分で心機一転な感じはある。

 

 

 

だがそれとは別にわかったこともある。

 

例え懸賞金目当てじゃなくても、古代兵器などを知る者たちにとってロビンは賞金首であるなしに関わらず注目されているということだ。

 

客観的に見れば七武海である俺が守っているという事で多少は抑制効果はあるかもしれないが、今回のフランキーのように襲ってくる可能性だって否定できない。

そして今はまだいいがこれから偉大なる航路後半の海へと進んでいくことになる以上、あんなチンピラではなく手強いヤツらがロビンを狙ってくることだってあると考えたほうがいいだろう。

 

もちろん俺が今よりも更に強くなるというのは確定事項だが、ただ強くなるだけじゃあダメな気がする。

世界政府や海軍だって今は静観しているが、いつロビンを捕まえに来たっておかしくないんだ。

いくら懸賞金がなくなったとは言っても、また再度犯罪者に仕立て上げるくらい簡単だろう。だって犯罪者扱いにしてるのはあいつらなんだから。

世界政府や海賊たちですら安易に手出しできないような何か…

 

閃いた!俺が古代兵器よりも恐ろしい存在になればいいんだ。

 

ロビンを狙うヤツらが口を揃えて「何をやってもあいつには勝てない」とか「ニコ・ロビンに手を出そうとしたら最後だ」って言わせるほどの存在になればいいんだ。

そんな俺の事が世界中に知れ渡れば、話を聞いたそのへんの子供たちだって「大きくなったら鉄槌のハンマみたいになりたい」とか言ってくれるかもしれない。

 

そしてそんなみんなが身の丈に合わないほどの大きなロマン(ハンマー)を担いでいる。

 

うん、これでいこう。俺のほうも新しい目標が決まったことだし、誓いってわけじゃないがちゃんとロビンには俺が目指すところを言っておかないとね。

 

「ロビン、俺ちょっと古代兵器目指すわ」

 

「…え?あなたあれで目指してなかったの?」

 

え!?どういうこと?ロビンにとって俺は古代兵器を目指して当たり前だったのか?もしかして「私を守ってくれるんでしょう?ならそれくらいの力を持っててくれるのよね?」みたいなことなのか?

まぁそれはないだろうけど、今までだってそんな世界をどうこうするような力を求めたことなんてないんだが…

 

ロビンは何か勘違いしてるっぽいな。

 

どういうことか聞いてみたら、そもそも今までの俺の言動から古代兵器クラスの危険度にでもなりたがってるのかと思っていたということだった。

 

そして前に俺が言ってた「天を切り裂く巨大な剣」っていうのは「天=天竜人や世界政府、それらを切り裂く=倒す」っていう意思を表現してるって意味だと思ってたみたい。

最初は普通に言葉通りだと思ってたけど、俺が聖地マリージョアに行って地震が起きて世界貴族たちが亡くなったからそういうことを表現してるのかと後から思ったらしい。俺ならばそんな事を考えてそうっていう言葉も付け加えて。

 

それいいな。頂くことにします。さすがロビンとしか言いようがないわ。

 

そんな意味はまったくなかったけど「さすがにロビンにはわかっちゃうよねー」と誤魔化しておいて、これから何かあったらそういう意味だって言おう。

世界政府はともかく、それをできそうなちょうどいい天竜人は原因不明の事故で死んじゃってるから手遅れだったりするんだけど…

 

「ま、まぁあれだよ。ロビンにはバレバレだったかもしれないけど、古代兵器に匹敵するくらい強くなって誰も手出しできないくらいの存在になるっていうことだよ」

 

「私はもっと大人しくしててほしいくらいなんだけど…ほどほどにしておいてね」

 

「大丈夫だよ。これでも()()は弁えてるつもりだもん」

 

「…そうね。きっと私には理解できないレベルの()()なんでしょうね」

 

ロビンの言う「ほどほど」ってどれくらいなんだ?まず古代兵器がどんなのかわからんからなぁ。

プルトンは設計図を見る限り船っぽいんだよな。造船の知識なんて皆無だから見たところですごさなんてまったくわからんけど。

 

でもすごい船か…すごい船っていうと宇宙戦艦くらいしか思いつかん。

そういうことか!たぶんプルトンは宇宙を飛ぶんだ!

 

ポセイドンはあんま知らんけど海の神様の名前だったっけ。ウラヌスは…惑星?

 

宇宙から惑星を堕として世界を海に沈める?

 

これ俺にできるかな…?いや考えろ俺。やってやれない事なんてないはずだ。

 

 

 

…そうか!超超巨人化して宇宙に届くほどの大きさになって、星を掴んで海に叩きつければいいんだ!

 

 

 

ゴールは見えた!後はそこに向かって突き進んでいくだけだ。

ロビンは優しいから恐らく「そんなに無理しなくてもいいよ」って意味でほどほどにって言ってくれたんだろう。

 

だがそこを目指すからにはそんな優しい言葉に甘えるなんてあってはならないはずだ!

 

 

 

 

 

「ハンマ、島が見えてきたわよ」

 

「おっけー。それじゃあ上陸の準備しよっか」

 

 

今回の旅で俺は王下七武海となり世界中にロマンを伝えたし、悪党から古代兵器の設計図を奪い取ることで世界征服の野望を阻止することができた。

そしてロビンとの話の中で新たな目標を見つけることもできた。これからも海賊を叩き潰していくのは変わらないが、短い期間にすごい濃密な時間を過ごせたと思う。

 

ロビンはきっと気にしていたであろう懸賞金を取り消すことができた。

これで賞金稼ぎに狙われることはなくなった。それでもまだロビンを狙うヤツらは出てくるだろうけど、俺が目標に近づけば近づくほどそんなヤツらはいなくなっていくはずだ。

 

俺の夢もロビンの夢もまだまだ序盤だが、どっちが先に叶えることができるのか楽しみだな。

 

なるほど、これがアレか。それなら俺もちゃんと言わないとな。

 

 

 

 

 

「俺達の冒険はこれからだ!!!」「何を当たり前の事を叫んでるの?」

 

 

 

 

 

 



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28.ゲッコーさんに挨拶だドン!

 

 

 

 

 

 

 

 

おれたちは結成して数年のしがない海賊。

 

あの海賊王の最後の言葉に夢を見て必ずワンピースを見つけると約束し、心配する幼馴染を島に残して故郷を飛び出してきた。

 

その後たまたま似たようなやつらが酒場に集まり、意気投合した結果一緒に海賊をやることになったんだ。

船長はみんなやりたがったが、くじで決めることにした。その結果、おれは当たることはなかったが、あいつが船長をやっていることには納得している。

 

そこからは冒険の連続だった。他の海賊との戦いもあったし、島で猛獣に襲われることもあった。

そんな大げさなことではないかもしれないが、それでもおれたちは楽しかったんだ。

 

だが、そんなおれたちの冒険に暗雲が立ち込めることになる。きっかけは…悪魔の実だ。

 

たまたま見つけることができた何の実かもわからないこれを、どうするかと話し合っているうちに船長が独断で食ってしまった。

そこからは…まるで悪魔に魅入られてしまったかのように船長は変わってしまったんだ。

今までは話し合って決めていた事をすべて自分の判断で決めるようになり、いつしかクルーたちにさえ手を出すようになっていった。

 

島に上陸しても酒場で騒いで楽しんだら金を払って帰るだけだったのに、気に入った女がいたら力づくで連れてきては相手をさせるようになった。

 

おれたちは何度も船長を説得し、改心するように求めたが効果はなく、もはや最初の頃にあった結束は見る影もない状態となってしまっていた。

ズルズルとそのまま偉大なる航路へと入っていき、辿り着いた島でも同じことの繰り返し…

いつしかクルーたちも船長と同じように気に入らなければ暴力を振るい、島へ上陸すれば金と女を奪うようなお尋ね者へと変貌していた。

 

だがそんなおれたちにも天罰ってのが下ったんだろうな…

 

町でいつも通りに略奪をしていた時、小さな船がこちらへとやってくるのが見えた。

運の悪いやつもいるもんだ…この時はそう思っていたんだ。

 

しかも船から降りてきたのは男女2人だけ。きっと旅人か何かなんだろう。

 

更に船から降りてきたその女はとても可愛い上にスタイルも良いという最高の女だ。きっと性格も抜群に良いんだろう。優しさが滲み出ている気がする。

 

だが、我先にとその女を奪おうとしたクルーたちは見事に返り討ちにあっていった。

 

一緒にいた男はどこから出したのかわからない巨大なハンマーを使って攻撃してきたのだ。

 

おれたちは必死に戦った。船長も含め全員が騒動を聞きつけてその男に攻撃していった。

だがその男のハンマー捌きは見事なもので、銃弾も刃物もすべて跳ね返したりいなしてしまう。

きっと相当に名の知れた男に違いない。クルーたちは1人…また1人と倒されていく。

 

ここがおれたちの終わりか…そう思ったら故郷に残してきた幼馴染の顔が頭に浮かんだ。

 

帰れなくてごめんな…目の前に迫りくる巨大な鉄の塊を見ながら、最後におれは幼馴染に謝っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っていう物語を思いついたんだけど、なかなか良い出来じゃなかった?」

 

言いたい事(ツッコミどころ)が多すぎて何て言ったらいいのかわからないわ」

 

「そう?こいつらの生涯が簡潔に纏められてると思ったんだけどな」

 

「一方的に叩き潰しておいてまるで激闘だったみたいな表現もだけど、私のところ褒めすぎじゃない?言われて悪い気はしないけど、そこまで言われると恥ずかしいわ」

 

うーん、さすがに言い過ぎたか?別に嘘を言ってるわけじゃないからいいと思うんだけどなぁ。

 

俺の妄想ストーリーは置いといて、あれからウォーターセブンを出発して辿り着いた島には海賊がいたんだ。

そいつらは俺たちを、いやロビンを見るなり連れて行こうとか言ってやがったのでそのまま船も含めて粉砕してやった。

だがそれだけだと毎度恒例の事だし、なんとなく思いついたこいつらの人生を俺が脚色してあげてロビンに聞かせてみたんだけど感触はイマイチだな。次は感動させてやる。

 

 

町の人たちみんなからお礼を言われ、更には「お礼にぜひ泊まっていってくれ」という町長のお言葉に甘えて町長宅にしばらく滞在させてもらうことにした。

ここに来たのはロビンの目的のほうだから、俺は新しく定められた自身の目標に向かって努力を積み重ねるだけだ。

 

ロビンが町長や町の人たちから話を聞いたりしている間に、俺は新しくやってきた海賊ども(実験台)を利用して修行して過ごしていた。

イメージするのは最強の自分だ。古代兵器すらも凌駕し、あらゆる攻撃が効かずこちらから攻撃すれば世界を滅ぼすほどの自分の姿…それを明確にイメージして全身に武装色の覇気を纏いながら海賊たちの攻撃を一身に受け、それでも傷1つないという状況に絶望する海賊たち。

 

最後は白旗を掲げて降参してきたんだが、もうちょっと粘ってほしかった俺は「もっと頑張れよ!敵わないからって諦めるな!お前たちの眠っている力を開放しろ!」と海賊たちを鼓舞してみたんだけど、もう心がポッキリ折れてしまっているみたいだ。

 

どうやらもう俺の修行としては使い物にならなくなってしまったので、そのままホームランで海の向こうへと叩き出して海賊船に積まれていた食料や金などはロビンが話を聞かせてもらってる礼にと町に寄付しておいた。

 

そこからはまた1人での修行になったから、全身を武装色の覇気で纏いながらしばらくやってなかった空中移動とかやって過ごしていた。

 

「ハンマ。もうここで聞ける話は全部聞いたと思うから、いつでも出発して構わないわよ」

 

「りょーかい。それじゃ次の島にでもいこっか」

 

「町の人たちは随分と喜んでいたわね。私までたくさん感謝されちゃったわ」

 

「別にいいんじゃない?友好的に接してくれるならそれに越したことはないと思うよ」

 

俺が海賊を倒したことでロビンのほうにも協力的になってくれるのなら言うことはない。ロビンが聞いたことで町の人にはわからないことでも調べてくれたりしたみたいだし。

だが一通り調べ終わった事で、この島での目的は果たしたみたいだから次の島へと移動することにした。

 

俺たちは世話になった町長や町の人たちに別れを告げ、大勢で見送ってくれる中次の島へと出発していった。

 

 

 

 

 

ところで魔の海域ってどこにあるんだ?

 

ロビンから「ハンマは行っておきたい場所とかないの?」って聞かれたんで、そのまま予定を伝えたんだけど「それで、その海域はどのあたりにあるか知ってるの?」って更に聞かれて答えられなかった…

 

てっきりロビンなら「ああ、あそこね」とか言ってくれるもんだと思ってたから、海軍本部でも詳しい場所を聞いてない。

元帥に「ちょっと会ってくるよ」とか言っといて会えなかったとかマズイかな?別にいいか。

 

適当に進んで行って、辿り着ければそれでよし。辿り着けなかったら魔の海域が俺から逃げたってことにしとこう。なんか運命に身を委ねるみたいでカッコいい気がする。

 

 

 

……

………

 

 

 

やっと見つけた…あれから船を進めていったはいいけど、全然魔の海域とかいうところに遭遇することができなかったおかげでとにかく探し回ったよ。

本当は見つからないならそれでも良かったんだけど、ロビンから「私だけ行きたいところに行くなんてダメよ。ちゃんとハンマの行きたいところも行きましょう?」と言われてしまったからな。

 

こんなことならロビンに予定を言わなければよかったかもしれん。つーかゲッコー・モリアも潜んでるなら潜んでるで、どこにいるのかわかるようにしとけよな!

 

霧の深い中を進んでいき、やっと陸地を見つけたから上陸してみたんだけど誰もいない。

なんか船は停泊してたから誰かいると思うんだけどなぁ。これで違ってたらもうロビンを説得してでも先に進もう。

 

ゲッコー・モリアに会いに来たのだって、ちょっと挨拶程度のつもりだったんだ。一応王下七武海の新参者ではあるから「これから同僚だよ。よろしくね」くらいの用事なんだ。

まぁここまで来た以上は、ちゃんとゲッコーさんのお宅訪問してご挨拶はしておくけどさ…

 

しかし森ばっかだな。ロビンと一緒にしばらく先に進んでいると、どこかから戦闘してるっぽい感じの音が聞こえてきた。あれ?なんか静かになったぞ。もう終わったのかな?

 

「おや?ゾロと…………だれ?」

 

「ハァハァ…ハンマか。がはっ、なんで…こんなところ、にいるんだ…?」

 

「なんか死にそうになってね?あとこちらさんは知り合いか?」

 

「…鉄槌か」

 

「俺の事は知ってるのか。どちらさん?」

 

「お前と同じだ。暴君、と言えばわかるか?」

 

あれ?七武海の暴君くま?もしかして…ここゲッコーさん家じゃなくてくまさん家だったのか?

 

……ま、まぁ結果的には七武海に会えたんだし良かった事にしよう。ゲッコーさんには会えなかったがきっと人見知りでシャイなんだろう。七武海として致命的だと思うんだが、そんなところを五老星や元帥は気に入ってるのかもしれないしな。俺ならごめんだが。

 

「初めまして暴君。俺はクロコダイルの後任のハンマだ。さっき言った通り鉄槌でも構わんよ」

 

「海軍本部からお前がここに来るはずだと聞いて来た。お前の船には連絡手段がないそうだからな。世界政府からの言葉を伝える…『新世界へと渡り、与えられた任を全うせよ』…以上だ」

 

「うん…?俺ってなんか任務とか与えられてたの?」

 

「詳細は聞いていない」

 

「いや今言っても仕方ないけどさ、相手に伝わらなかったら伝言の意味なくね?」

 

「なるほど、的を射ている。だが伝言は確かに伝えたぞ」

 

確かに伝えられたわけだが、肝心のその言葉の意味が俺に伝わってないぞ?

しかしなんで俺への伝言を持っててゾロと戦ってるんだと思って聞いてみたら、くまさんが「海賊を狩っているだけだ」と納得できる答えをくれた。

おお!仕事熱心な同僚がいて嬉しいぞ。人前に出るのが苦手で隠れてるどこかのゲッコーさんにも聞かせてやりたい言葉だな。

 

くまさん家に訪問ができたからもういいだろう。ゲッコーさんには、いずれどこかで会うことがあれば「近くまで行ったけど場所はわかんなかったよ」って言えば理解してくれるだろ。

 

 

 

あーでも、せっかくだからくまさんの戦い方とか見てからでもいいかな?もう終わっちゃったかな?

 

俺の用事は終わったし「俺の事は気にせずにやってていいよ」って2人に伝えてロビンと並んで状況を見守ってみることにしてみた。

 

すると、このまま麦わらの一味を狩ってしまうのかと思ったら、ゾロから「おれの首だけにしてくれ」と命乞いコールがかかり、くまさんは「麦わらの蓄積したダメージを肩代わりして生きていたら見逃してやる」ということだった。

 

どうやらくまさんは俺と同じくゲームが好きなようだ。むしろ俺の「攻撃するから耐えられなかったら負け」というゲームより優しい気がする。だって俺の場合は()()()()()()()なんて言ってないんだもん。

 

てかゾロのやつ、なんで俺に助けを求めなかったんだ?くまさんのゲームでワンチャン狙うよりも俺にヘルプコールしたほうが助かる確率高いとは思わなかったのか?

いくら俺でも瀕死のやつらを甚振って遊ぶ趣味はないんだぞ。せいぜい「俺に傷を付けることができたら助けてやる」って言って中途半端になってる武装色防御の修行相手になってもらうくらいだ。

 

最後まで眺めててもいいけど、用事も終わった上に同僚のお遊びをガン見するのも悪いので退散することにしようっと。

 

「ロビン、人は違うけど俺の予定は達成できたから次行こうか」

 

「え?もういいの?」

 

「うん、ただの挨拶だからね。ところで世界政府から与えられた任務ってなんだと思う?全然心当たりないんだけどさ」

 

「…………何か特別な事を言われてないのであれば、七武海としての役目を果たせってことじゃないかしら?」

 

あーそういうことか。つまり五老星は『いつまでも前半の海にいないで、さっさと後半の海に行って凶悪海賊どもを狩ってこい』って言いたかったんだな。それならそうと言えよ。言葉が足りなすぎるだろ。

 

どちらにせよ後半の海には行くんだしそこまで急かさなくてもいいと思うんだが…もし後半の海に行った後に「前半の島に重大な歴史のヒントがあるよ!」とか言われたらどうするつもりなんだ。

 

それに誰にも知られてないから仕方ないけど、これでも俺は世界の危機を未然に防いだ英雄なんだぞ。

俺があの設計図を奪わなかったら、今頃世界は火の海に包まれていたのかもしれないなんて思ってもいないんだろうな。

 

こんなことなら修行しながら先に進んでいたほうが有意義だったんじゃね?なんか余計な寄り道をしてしまったせいで無駄に疲れたわ。

 

 

 

 

 

 



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29.レイさんを探すドン!

 

 

 

くまさん家で挨拶をしてからさっさと次の島へと船を進めていったわけだが、到着したのはシャボンディ諸島だった。

ここはなんとなく覚えている。レイリーがいて奴隷の売買をしているヤツらとかもいるところだ。

 

ロビンが望むのなら、レイリーに歴史の真実を教えてもらい目標達成とすることだってできる。

もし自分で見つけるから教えてもらわなくてもいいとなったとしても、俺のほうが教えてもらいたいことがあるからどちらにしても会っておきたい。

 

「ロビン、俺ちょっと会いたい人がいるんだけど…」

 

「あら、ハンマの知り合いでもいるの?」

 

「いや、一方的に知ってるだけで向こうは俺のこと知らないと思うよ」

 

「別に構わないわよ。ここが前半の海最後の島だから、後戻りしなくてもいいようにしておきましょう。私もできるだけ情報を集めておきたいわ」

 

だがこの区分けされた島で1人の人間を探し出すとなるとなかなか大変なことになりそうだ。

いっそのこと『海賊王の右腕』みたいな感じの看板でも出してくれてたらいいのに…

ゲッコー・モリアといいレイリーといい、なんで海賊として名前を売っておきながら隠れるんだよ。探すほうの身にもなってもらいたいもんだ。

 

「それじゃあ一旦二手に別れましょうか。私は情報を集めに行ってくるわ。ハンマは会いたい人を探すんでしょ?」

 

「そうだね。見つけることができたら俺にとってもロビンにとっても有用な情報が手に入るかもしれないんだ」

 

「ふふ、期待しておくわね。それじゃあまた後で合流しましょ」

 

それじゃあ期待に応えるためにも頑張ってレイリーを探すことにしますか。どこにいるのかなんて記憶にまったくないから、闇雲に探すよりも推理して動くほうが無難だろう。

レイリーはロジャーの船の副船長だったはずだから、当然の事ながら海賊なわけだ。そして道行く人に少し話を聞いてみたら、このシャボンディ諸島にも海賊が多くいる場所があるらしい。親切な人だったようで詳しく教えてくれた。

 

1番から29番グローブは無法地帯となっているらしく、それならば海賊の多くいるというそのあたりの区画に行けば少しくらいは情報が集まってくるかもしれない。

そして…無法地帯か。とってもいい響きだな。レイリーを見つけるまでの間に修行もできて一石二鳥とはこのことか。

 

 

 

とりあえず無法地帯の区画に来てみたはいいが、あんまり情報は集まらないもんだな。

レイリーってお爺ちゃんを探してるんだが知らないか?って聞いてるだけなのに「知りたきゃ金を

よこせ」とかばっかりで話にならん。しかも返り討ちにした後は「何も知りません…」とか、知らないなら知らないって言えばいいのになんで金を払わせようとしてるんだ…あんまりにもムカついたから建物も人も関係なく巨大ハンマーで叩き壊してストレス発散しちゃったじゃないか。

 

こいつら…まさかとは思うが「俺と話したいなら金を払え」ってことなのか!?

 

なんつー島なんだ。酒場に行って女の子を指名するならまだしも、道端で相手が男ですら話すのに金が動く島なのか?そんな島なくなったほうがみんなのためだろ。

この無法地帯となっている地域で、昔誰かが「俺と話したけりゃ金を払え。そうすれば話を聞いてやる」みたいな事を言って、それが根付いて習慣となってしまったとかなのかな。

 

よし!もう遠慮はいらんな。俺がこの無法地帯からそんな闇ルールを取り払ってやる。そうやって島に瓦礫を量産してたら、そのうちレイリーにも当たるだろう。名案すぎて自分が怖くなるな。

 

手始めに目の前にあるぼったくりバーを叩き潰しておくか。いや、自分から店の名前をぼったくりバーにしてるってある意味正直なのか?

まぁそんなことはどうでもいいか。ついでにこの店の周囲も纏めて更地にしといてやろう。

 

「あなたそんなもの(巨大なハンマー)を振りかぶって、この店に何するつもりなの?」

 

「うん?この島に古くからある悪しきルールを取り払ってやろうかと思ってね」

 

「…そんなルールあったかしら?」

 

なんか店から女の人が出てきて声をかけてきた。まさかと思うが、今の会話にも金が発生するとでも言うつもりなのか?きっと染まりすぎて自分でも気づけていないんだろう。

教えてやる義理はないが、今から大規模破壊攻撃が始まるんだ。せめてその常識だと思ってるルールが実は超マイナーローカルルールだってことくらいは教えておいてやるか。

 

 

……

………

 

 

穴があったら入りたいってのは今の俺の心境にピッタリの言葉だよ…

 

誰だよ悪しきルールとか言ってたやつは。あいつらはただのチンピラであって話しかけるのに金を払うっていう決まりなんてないんじゃねーか。

最初はただの戯言だと思って信じなかったんだけど「もし嘘だったら私のことを好きにしていいわよ」とまで言われたら信じるしかないわ。自分の命を賭けてまでそんな嘘は言わんだろうし。

 

むしろ堂々と意味のわからんルールを語られて「こいつ何言ってるんだ?」って感じだったんだろうな。その後思いっきり笑われたもん。大爆笑だったよ。

 

「ふふ、鉄槌ちゃんって聞いていたよりも面白いのね。まさかそんな理由で暴れようとしてたなんて想像以上だったわ…ぷっ」

 

「…もう好きなだけ笑えばいいと思うよ。いっそ笑ってくれ。俺の事どういう風に聞いてたのか知らないけど哀れみの目で見られるよりマシだわ」

 

「そう拗ねないで。勘違いは誰にだってあるわよ。きみくらいぶっ飛んだのは初めてだったけどね。しかもそれが理由で暴れようとしてたなんて面白すぎるでしょ?」

 

「人探ししてるだけなのに、聞く相手がみんな知りたきゃ金よこせって言ってきたらそう思っても仕方なくない?しかも結果何も知らないんだから、話すだけで金がいると思っても…それがこの場所では普通の事だと思うじゃん。そうだよ、俺は悪くないはず」

 

「…あなたそうやって勘違いしてることたくさんありそうね」

 

失礼な!今回はたまたま勘違いしてただけで、いつもはもっとしっかりしてるんだぞ。たった1回の失敗なんて大したことないさ。

それに仮に万が一俺が何か勘違いや間違っていたとしても、ロビンがいるから大丈夫だ。きっとなんとかしてくれるはず。

 

ぼったくりバーの中に入れてもらってこの女の人…シャッキーとミルクを飲みながら話してるわけだが、これもぼったくられるんだろうか?ミルク1杯数万ベリーとかなのかな。

でも何も言ってないのに出してくれたんだからサービスだろう。勝手に出して金取るとか…ありえるわ。やばい、バレたらロビンに怒られるかも。

 

そう思っていたが、運は俺のほうを向いているらしい。見るからに明らかに一般市民じゃないヤツらが店に入ってきた。

そいつらは大きな声で「海軍の船を沈めてやった」だの「これでまた懸賞金が上がる」だのこちらに聞こえてほしいかのように話している。わざわざ教えてくれるなんて、こいつらはなんてイイヤツらなんだ。

ぼったくられそうになったら踏み倒す気満々だったんだが、向こうから賞金首がやってくるなんて俺の日頃の行いの賜物ってやつなのかもしれん。

 

「ねぇシャッキー。このお店って賞金首払いでもいいの?」

 

「いいわよ。鉄槌ちゃんって換金すらしそうにないものね」

 

…シャッキーの中で俺のイメージがおかしな事になってないか?いや、前にロビンにも同じこと言われたような気がする。つまり間違ってないってことか。

ま、まぁいい。とりあえず大声で早く捕まえてくれとばかりに自己主張してるやつらで支払いを済ませよう。

 

「なぁ、あんたら賞金首なんだよな?」

 

「ああ?そうさ!おれこそが懸賞金にせんごがばっ!!」

 

「そういうのいいから。長旅お疲れさん」

 

なんで海賊たちは今までもそうだったけどわざわざ教えてくれるんだろうな?親切なのはありがたいがそこまで詳しい情報はいらんのでイエスの返事をもらったら即黙らせていく。

結局こいつらが懸賞金いくらかは知らんが、これでお金の心配はいらなくなったはずだ。

 

「ふふ、ほんとに問答無用なのね。情報通りのところを見れて嬉しいわ」

 

「情報ね…そうそうシャッキー。レイリーっていうお爺ちゃんの情報とか知らない?たぶんこの島にいると思うんだけどさ」

 

「あら、あなたレイさんに用だったの?」

 

「あれ?知り合いだったりするの?誰も知らないから困ってたんだよね」

 

賞金首を渡しついでに情報と聞いて思い出したから聞いてみたんだが、まさか知り合いだったとは…

だがこれで俺のこの島での目的は果たせそうだ。居場所を聞いたらロビンと合流して連れて行こうっと。

 

だがシャッキーもどこにいるのかまでは知らないということで、たぶんギャンブルしてるか女のところにいるか、どちらにせよその辺りにいるだろうという事だけ教えてもらえた。

待ってても仕方ないので探しに行くと伝え店を出ようと思ったら「彼を呼ぶ時はレイリーじゃなくてレイさんって言ってあげて」ということだった。

 

 

 

 

 

「レイさんやーーーーーーーい!!!いたら出ておいでーーーーーー!!!」

「ぎゃーーー!!!」「なんか暴れてるヤツがいるぞーー!!」「とにかく逃げろーー!!」

 

シャッキーの店を出て、そこからは超巨大ハンマーでとにかくレイリーを呼びながら建物を叩き壊していく。

逃げ惑う人間の中にいるわけないだろうし、海賊っぽいのもいたが別に殲滅目的じゃないから逃げるヤツを追撃はしないでおいてやる。

 

きっとレイリーなら俺のハンマーを受け止めて「きみは誰かね?」とかカッコよく登場してくれるはずだ。

 

「レイさーーーーーーーーーーーん!!!いたら返事してくれーーーーー!!!」

「こっち来たぞーー!!」「海軍を呼べぇーー!!」「おれたちが何したってんだ…」

 

なかなか見つからんな。すでに結構な場所を叩いて回ってるはずなんだが、見つけるのも一苦労とはさすがロジャー海賊団の副船長だけある。

いや、俺が七武海だからか?そういえば元とはいえ海賊と、それを狩る俺じゃあ出てこなくても当然かもしれんな。

 

「レーーーーーイさーーーーーーーん!!!捕まえないから出てきてーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、ここまで変わった呼び出しを受けたのは初めてだよ」

 

 

 

 

 

 

お?あれは…レイリーじゃないか!?どうやら俺の想いが通じて出てきてくれたようだ。

ハンマーを元のサイズへと戻し、こちらへと歩いてくるレイリーの元へと俺も歩いていく。

これでロビンの目的が果たせるかもしれないし、俺のほうもいろいろと聞けるかもしれないわけだ。

 

「レイさんだよね?いやーなかなか見つからなかったから探すの大変だったよ」

 

「さすがにここまで派手に呼ばれては出ていかないわけにもいかないからね。まさか暴れながら探されるとは思わなかったよ」

 

つまりこの方法は人探しに適した方法ってことだ。なんせあのレイリーですら探し出すことができた画期的な方法なんだから。

 

立ち話もなんなので13番グローブに戻り、シャッキーのお店に行ってカウンターへと座る。

店に入っていった途端にシャッキーから「探すのはわかってたけど、あの探し方は予想できなかったわ」と俺の画期的な捜索手段にお褒めの言葉をもらった。

 

後はロビンを連れてくるだけだ。レイリーに「ちょっと連れと合流して戻ってくるから待っててね」と伝えて合流ポイントへと移動していく。

もしまたレイリーがフラフラと出ていったら今度は超巨人化した状態での超巨大ハンマーで探し出してやる。

 

 

 

 

「ロビン!見つけた!」

 

「え?ここで合流する予定だったのだから私がここにいるのは当然でしょう?」

 

「あー違う違う。会いたいって言ってた人を見つけたんだ。放っておくとまたどこか行くかもしれないから今すぐ行こう!」

 

「きゃっ、そんなに急がないとどこかに行っちゃう人なの?」

 

時間短縮にとシャッキーの店から空中を跳躍しながらロビンとの合流地点に移動し、待っていたロビンを抱き抱えてまた跳びながら来た道を戻っていく。

空中移動は練習した甲斐もあり、ハンマーを振り回すとかじゃなければ結構スムーズに移動できてるな。

 

ロビンにはまだ俺が誰を探していたのかは言ってないからな。きっと会ったら驚くだろう。

そういえばロビンって空白の100年に何があったのかを知ることができたらどうするつもりなんだろ?

 

俺自身は何があったのかにそこまで興味はないけど、ロビンが教えてもらうのなら聞いてみたいという気持ちはある。

俺がそれを知ったところで何かできるわけでもないしな。

 

 

 

「着いたよ。このお店で待っててくれてる…はず」

 

「わかったわ。でもこのお店、ぼったくりバーって書いてあるんだけど…」

 

「ちゃんと賞金首で払っといたから大丈夫だよ…お店出たらまた払わないといけないのかな?」

 

「そんなこと知らないわよ。とにかく待っててくれてるんなら入りましょう」

 

 

 

俺はとにかく祈っておいた。また賞金首がやってきますように…と。

 

 

 

 

 

 




レイリー裏側、ギャンブル場での会話のみ

「おや、また負けてしまったようだね」

「おいおい爺さん。ちゃんと負け分は払えるんだろうな?金が無いなら老い先短い人生を売ってもらうことになるぜ」


「大変だ!なんかデカいハンマー振り回して町を破壊してる男がいる!こっちに向かってるから早く逃げろ!」
「あん?どういうことだ?」
「知らねぇよ!とにかくそいつは『レイさん』ってやつを探してるみたいだ。見つかるまで暴れまわるつもりかもしれん!」

「ふむ、どうやら私を探してるようだね」

「爺さん、アンタ何やったら町を破壊するような男に狙われるんだよ…」
「さてね。だがギャンブルで負けてしまったしどうするか…」
「もういい。アンタが出て行かなきゃ暴れてるヤツは止まらねぇだろうし、出ていって爺さんが無事に済むとも思えん。香典代わりに負けはチャラにしといてやるよ」

「おお、それはありがたい。それじゃあ呼ばれてるようだし行ってくるとするか」

「爺さん、生きてたらまた来い。そんときゃキッチリ払ってもらうからよ」


「思わぬところで借金がなくなってしまったな。さて、あまり騒ぎが大きくなって海兵たちが出てこないうちに用件を聞いておくか」






「やれやれ、ここまで変わった呼び出しを受けたのは初めてだよ」







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30.麦わらとの再開だドン!

 

 

 

シャッキーの店へとロビンと一緒に入り、両方を知ってる俺がそれぞれを紹介していった。

といっても「この可愛い子がロビンだよ!」「海賊王の右腕だったレイリーだよ!」「このお店でぼったくってるシャッキーだよ!」って感じの紹介ではあったが…

 

後はレイリーがロビンの望む空白の100年を知っているかもしれないから連れてきた事と、レイリーにもちょっとお願いしたいことがあるから探してた事を伝えておいた。

ロビンのほうは突然ロジャー海賊団の副船長が現れて驚いていたようだが、更にレイリーの「我々は歴史の真実を知った」という言葉に驚きを隠せずにいるようだ。

 

ここで歴史の真実を聞いたからといってロビンの旅が終わるわけじゃないし、教えてもらえるならば聞くだけ聞いておいたら役に立つかもしれない。

 

 

 

 

「そうね……それならレイリーさんには、私が歴史を紐解いた後にその考察を手伝ってもらおうかしら」

 

「どゆこと?」

 

「レイリーさんが知っているのは『レイリーさんたちが知った情報による真実』となるわ。私がこれから旅をしながら知っていく歴史の真実とまったく同じになるとは限らない。ロジャー海賊団が世界中にある全てのポーネグリフを見て、レイリーさんはその全ての情報を知っているというなら話は別だけどね。それなら今ここでレイリーさんの知る真実を教えてもらって先入観を持つよりも、私は私でポーネグリフを見ていって集めた情報と合わせて考えたほうが、より精度の高い真実になると思わない?」

 

言われてみれば確かにそうだ。ロジャーたちが重要かどうかは関係なく全部のポーネグリフを見ているって誰にも…それこそ本人たちだって言えないよな。俺たちだってこれから見ていくポーネグリフが全部を網羅できてるなんて事はありえないだろうし。昔の人がポーネグリフマップみたいなものを残してない限りいくつ残ってるのかなんて誰にもわからないわけだ。

 

それならレイリーがロジャーと共に旅をしたときに知った歴史の真実と、俺たちがこれから旅をして知ることになる歴史の真実をお互いに言い合って「ここはこういう記載があったから、こことここの出来事の間にはこれが入るんじゃないか」とか話し合うってのは大事な気がする。今ここで聞かないのは、先に聞いてしまったことで「ここはああ言ってたからこうなるはず」とか自己解釈してしまわないようにするためか。

 

そしてお互いに情報を出して欠けている部分を補うことができれば更に深い真実となるわけだ。

 

 

「ハンマ、ごめんなさい。あなたの厚意を断るような形になっちゃって…」

 

「ううん、気にしなくていいよ。こんな話ができたってことが大きなことなんだからさ。後はレイリーが死ぬ前に歴史の真実を知って戻ってこないといけないね」

 

「おいおい、縁起でもない話を本人の前でしないでくれないかね。これでも隠居してのんびり老後を過ごしているつもりなんだよ」

 

ロビンのほうは歴史の真実を知るということはしなかったけど、この出会いは後々有意義なものになるだろう。

それにロビンのためだけにレイリーを探したわけじゃない。俺には俺の目的があってレイリーを探してたから、歴史とかとは全然関係ないけど次は俺の用件だ。

 

「レイリー。次は俺のお願いなんだけどさ。ロビンに見聞色教えて!」

 

「ふむ…彼女に見聞色だけということは、きみは一通り使えるのかね?」

 

「ううん、俺は武装色だけだね。できれば俺はこっちを先に極めたいと思ってるんだ。今はこんな感じなんだけど……レイリーから見てどんなもん?」

 

「ほう。流桜まで使いこなすか…うむ、思っていたよりもできているな。練度もなかなかのものだ。かなり使いこなしているようだね」

 

おお!レイリーからお褒めの言葉をもらえた。武装色の覇気だけは20年近く使いまくってきてるだけに熟練度はなかなかのところにきてるみたいだ。

俺も見聞色の覇気を使えたほうがいいに決まってるんだが、今まで武装色のみで戦ってきてるのに今更拙い見聞色を取り入れたところで強くなれるとは思えない。なんせ動きの先読みができないから逃げ場ごと叩き潰す戦法を取ってるんだから…

 

それなら武装色の覇気を極めに極めて、それから学ぶようにしても遅くはないだろう。

 

それにロビンなら見聞色の覇気を使えるようになるのに時間かからないと思うんだよな。

たまに何も言ってないのに俺の考えてることを当ててくるし、もはや潜在的に使っていると言われても不思議じゃないと思っている。

 

そんな事を伝えてみたら、3人から呆れたような目で見られた。しかもシャッキーなんて「鉄槌ちゃんの考えてることなら私でもわかる気がするわ」とまで言われてしまった。

いやいや!むしろ俺の考えてることわかんなかったじゃん。レイリーを探したときだって「あんな探し方があるなんて…」みたいな感じだったじゃん。

 

え?あれは誰にもわからない?それがわかるのが見聞色の覇気なんじゃないの?

 

それに勿論タダでとは言わないよ!なんなら五老星とか海軍元帥とかに「レイリーは安らかに眠ったよ」とか言っておいてあげるよ!そしたら安心してギャンブルでも女遊びでもできるよやったね!信じなかったらプルトン持ってって「信じるよね?」って言ってあげるよ!

 

なんでプルトン持ってるのかって?世界征服を目論む小悪党から設計図奪ったんだよ。現物?持ってるわけないじゃん。大丈夫!小型サイズのプルトン作れば俺が巨大化させて原寸大プルトンの完成だよ!その後元のサイズに戻して叩き壊しておけば大丈夫でしょ?世界広しといえども使い捨てプルトンなんて持ってるの俺だけなんだよすごいでしょ?え…ロビンさん、その手はなに?いひゃいいひゃいもう言いまぜんごべんなざい…

 

 

「あなたも大変ね…鉄槌ちゃんの面倒を見るのって、私ならお断りするわ」

 

「ええ、でも良いところもあるのよ?目が離せないのは間違いないんだけど…」

 

「いや…こんなハンマくんだからこそ古代兵器の設計図を持ちながら使うことをせず、ポーネグリフを読めるきみの隣にいながら世界政府にも話を通すことができるんだろう。彼はなかなか稀有な存在だと思うよ」

 

シャッキーが貶し、ロビンがふわっとしたフォローをして、レイリーが褒めてくれる。ロビンとレイリーの立場逆じゃね?

てか話の流れがおかしいだろ。見聞色の覇気教えてもらう話をしてたのになんでこうなったんだ…とにかく一旦落ち着こう。

 

「シャッキー、ミルクちょうだい」

 

「はいはい、さっきも思ったけどバーに来てお酒を飲まないなんて珍しいわよね」

 

「お酒はロビンから止められてるんだよ。俺も別に飲みたいわけじゃないからいいんだけどさ」

 

「あなた酒癖悪いんですもの。しかも記憶がないから余計に質が悪いのよ」

 

そうなんだよな。だいぶ前に1度ロビンとお酒を飲んだことがあったんだけど、何があったのかまったく記憶にないんだ。

しかもロビンは何があったのか教えてくれないから知ることもできない。

 

別に怒ってなかったし何かやらかしたわけじゃないと思うんだが、次の日にロビンから「あなたお酒禁止ね」って言われたんだ。それ以来まったく飲んでない。

何があったのか聞いたこともあったんだけど「言いたくないわ」ってそっぽ向かれちゃうからそれ以来聞くこともお酒を飲むこともしないようになったんだ。

 

まぁお酒の失敗なんてよくあることだし、それ以来飲んでないから置いとこう。

 

大事なのはレイリーに見聞色の覇気を教えてもらうことだ。

俺の方は武装色の覇気をもっと極めたいし、今まで独力での修行だったからレイリーに教えを請う事で効率は段違いに良くなるはずだ。

 

レイリーが「ふむ…」なんて考えてるが、何かもうひと押しできる材料はないかな…

 

ついでに俺も「ふむ…」って説得する材料を考えていると、お店の扉が開き誰かが入ってきた。

 

「ニュ~、シャッキー。レイリーいるか?あとお店の看板にこんなものが貼ってあったんだけぎゃあああ!」

 

「この店に来たってことは賞金首だな。シャッキー、こいつで支払いするね」

 

「鉄槌ちゃん、残念だけど彼は賞金首じゃないわよ。あとついでに私たちの知り合いよ」

 

あれ?せっかく賞金首払いしようとしたのに知り合いだったのか。紛らわしいやつだな。

しかもデカいたんこぶ作って寝てるそいつを見てみればなんだかタコっぽいな。なんだこいつ?

 

「はっちゃーーーん!!!!コンニャロ、いきなり攻撃してくるなんて…ってハンマ?」

 

遅れて店の中に入ってきたのはルフィたちだった。なんかよく会うな。って考えてみたら大体みんなこの島に集まるんだっけ?

ちょうどいいからシャッキーに「こいつ賞金首のはずだから支払いはコレでよろしく」ってルフィを突き出したのに「もうさっきの賞金首で足りてるからいいわよ」って断られた。

 

良心的なぼったくりバーってなんか新しいな。

 

ぼったくりって掲げながら実はお値打ち価格で酒を提供する隠れた名店でも目指してるのか?

それとも格式高い店をなんて表現していいかわからずに「ぼったくり」としか言葉が出てこなかったとかか?

ふむ、今ここで指摘したらシャッキーに恥をかかせてしまうかもしれないな。後でこっそりと教えてあげることにするか。俺は気遣いのできる男なんだ。

 

「ハチは何の紙を持ってきたんだ?なになに…『賞金首以外お断り』こんなもの看板に貼ってあったかな?」

 

「知らないわね。誰かのイタズラかしら?」

 

ギクッ…俺がお店に入る前に看板に貼っておいた紙をこのタコが持ってきてしまったようだ。

きっとこう書いておけば「ほう?賞金首しか入れない店か…なら俺は大丈夫だな」とか言って入ってくるヤツがいるだろうし、それを叩くことで俺が賞金首払いするためにわかりやすく書いておいたんだが…まさか貼り紙を持ってくるとは思わなかったな。

 

仕方ないので正直に金づるを呼び寄せるために俺が貼ったと言って謝っておいた。

 

しかもルフィの首で支払いしようとした事に一味揃って文句言ってきたが「わかったわかった。店の酒を全部飲みきれたらなんかしてやるよ」と飲み会にシフトすることに成功した。

 

クククッ、飲み干せるならばやってみるがいい!俺の能力は瓶1本で船よりデカい酒瓶となるんだぜ!巨大化させた酒瓶に船を入れたら原寸大ボトルシップの出来上がりだ!やらないけどね。

 

ちなみに俺は飲まない。こいつらに「あれ~?海賊なのにお酒飲めないの?」とか「あんな大海原を船で冒険するんだから、こんな酒の海くらい腹に収めて当然だな」とかとにかく煽って酔い潰す作戦だ。

 

もちろん1種類だけじゃなくちゃんぽんして悪酔いさせるために違う酒も一緒に巨大化させてどんどんグラスへ注いでいく。

念の為に潰れていったヤツから順番にトドメとして鼻つまんで口から酒流し込んだらナミとゾロは起きてやがった。酒吹き出して「「鬼かっ!」」って言ってたけど騙すほうが悪くね?

 

 

……

………

 

 

「きみはなかなか容赦のないことをするね」

 

「彼、モンキーちゃんでしょ?鉄槌ちゃん知り合いじゃなかったの?」

 

「え?むしろ一応知り合いだから捕まえもせず叩き潰しもせずにいるんだから優しくない?」

 

「みんなお酒で潰れてるけれどね」

 

自分でやっといて何だが、麦わらの一味は結局出された酒を全部飲みきれずに潰れて寝ている。

店の酒飲み干したらって言ってあったのに、ビン数本の酒でダウンするとか情けないヤツらだな。しかも開けた酒瓶ですらまだ残ってるし。

 

まぁちょこっとアクシデントというか、意図しない闖入者の登場でグダグダにはなってしまったが修行の面倒を見てくれることになった。

とはいえ付きっきりではなくある程度見聞色の覇気の基本を教えるだけという条件付きだが…そこからは自分で考えて応用しながら鍛えていけということらしい。

 

それなら俺は今まで通り自己鍛錬にして、ロビンを重点的に見てもらったほうがいいだろう。

 

海軍本部も近くにあるし、どうせだから俺はそっちに顔出して修行するのも悪くないな。

よし善は急げだ。レイリーたちに「ちょっと自分の修行用に海軍に連絡取ってくる」と伝えて店を出ていく。

こういう場合もセンゴク元帥に言ってもいいものかな?他に話ができそうな人いないし突撃してみるか。どこかに海兵さん歩いてないかな~?

 

 

 

 

 

「およ?黄猿大将?」

 

「やぁ~~っと見つけたよォ~~」

 

「こんなところで何やってるの?」

 

「きみねェ~暴れすぎだよォ~」

 

間延びしてる黄猿大将の言葉を短くすると「シャボンディ諸島でハンマー持って大暴れしてる()()()いるから助けてくれ」って連絡が海軍に入ったらしい。誰が海賊だ!

そんで、巨大なハンマー持って暴れてるってところで俺ってことがわかったから、光の速度で移動できる黄猿が元帥に頼まれて注意しに行くことになったんだとさ。

けど突然攻撃が止んでどこにいるかわからないから探していたところだったらしい。

 

「そんなわけでェ~もぅちょォ~~っと穏便に暴れてくれないかねェ~~」

 

「ここ無法地帯だから別によくね?ちゃんとそのへんにいた海賊も叩いてるよ?」

 

「あ~~そうそう、それもセンゴクさんから伝言があるよォ~」

 

まだあるのかよ!元帥からの伝言は「海賊を潰したらせめて海軍に報告するか、賞金首なら海兵に引き渡してほしい」ということだった。

そんなん知らんがな…大体どいつが賞金首かなんてわからんよ。まさか俺に毎回毎回海賊の「おれは○○海賊団で~○○万ベリーの賞金首なんだぞ」とかいう名乗りを聞けとでも言いたいのか?

 

「そんな手間かけて海賊潰すとか時間の無駄すぎね?なんか七武海やるのめんどくなってきたんだけど…」

 

「まァ~そう言わずにさァ~~。きみのことは海軍でも評価してるんだからぁねェ~~」

 

ふむ、ならば交換条件といこうじゃないか。

 

黄猿大将に「じゃあ俺も努力してみるからさ、その代わりちょっと修行手伝ってよ」と持ちかけてみた。

さすがに大将はみんな忙しいらしいんだけど、海軍本部での修行ならセンゴク元帥に話を通しておくということだけは約束してくれた。青キジとかほんとに忙しいのか?って疑いはあるが言わないでおこう。

 

もうこれ以上暴れないから大丈夫だって事を伝えて、飛んでいく大将を見送ってからシャッキーの店に戻って今あったやり取りをちゃんと伝えておく。

「なんでちょっと外に出たと思ったら、突然大将と出会ってそんな約束取り付けることができるの…」って言われたけど出会ったものは仕方ないよね。俺の運が良いとしか言えないわ。

 

あー、しまった。ついでにレイリー死亡説をお礼代わりに流しておけばよかったかもしれん。

 

 

 

 

 



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31.ボアさんに挨拶だドン!

 

 

 

「空が青いな…」

 

修行しに海軍本部まで行ったのになんで俺は海の上にいるんだろうな…

良くも悪くも元凶は自分自身ってことはわかってるんだが。

 

 

 

 

 

レイリーに「ちょっと行ってくるからロビンをよろしくね!」って言って俺だけ海軍本部に行ったわけだが、ほんとに大将は3人ともいなかった。

仕方ないから訓練してた海兵に協力してもらい、俺の武装色防御を高めるために攻撃してもらってたんだよな。

そしたら通りがかったガープ中将に「それならわしが鍛えてやるわい!」って言われて、そこからはひたすら砲弾の雨に耐える時間が始まったんだ。

 

海兵たちならばすぐに気絶してしまうんだろうが、残念ながら俺はそんなにヤワじゃない。

ただ耐えるだけだったら続かなかったかもしれない。だが俺にはハッキリと見えたんだ。

 

薄れそうになる意識の中で、俺の後ろにロビンがいる光景が!そうだ、俺がやらなきゃ誰がやるっていうんだ!

 

気分はサイヤ人が襲来して攻撃される悟飯を庇うピッコロさんだ。あれはそのままやられたけど…

 

「ほう、わしの攻撃(砲弾)を受け続けても耐えきるか。なかなかやるのぅ」

 

「真に守るものがある時、人は強くなれるという…つまり今の俺は守護者(ガーディアン)だ!」

 

「小僧が吠えよるわ…ならばこれも耐えてみせぃ!」

 

なんか砲弾とか投げ捨ててゲンコツで攻撃してきやがった!ならば俺はそれを全部受けきってみせてやるわ!

 

少々危なかった気もするが、ガープ中将の攻撃が終わり土埃が晴れていく…ここだ!言ってみたかったセリフ第1弾いくぜ!

 

「…今、何かしたのか?」

 

「なんじゃと!?ならばもう手加減は無用じゃな!これでも食らえぃ!!」

 

いやああああああ!温めてたカッコいい強キャラムーブを実行したらガープ爺ちゃんに火が着いちゃった!

腕に武装色の覇気を纏わせて殴りかかってくるガープ中将。ぐぬぬ、さすがにこれはマズイか…?

迫りくるガープ中将の黒い拳がやけにハッキリと見える。周りの海兵たちの声もやけにハッキリと聞こえるな。

 

これがアレか…死ぬ前になると動きがスローモーションになると世間でもっぱら噂のやつか…

 

ってなんで特訓で死ぬんだよ!フザケンナ!拳が当たるだろう頭に力を込めて武装色の覇気を集中させる。…あれ?思ったほど痛くないぞ?

 

「ぶわっはっはっはっは!わしのゲンコツを受けて無事でおるとは…お前なかなかやるのォ」

 

「なかなかやるのォ…じゃねーよ!なんか全部スローモーションになったぞ!危うく死ぬところだったわ!」

 

「うん?今までそんな話は聞いたことがないぞ。まぁせんべいでも食って落ち着け」

 

バリバリとせんべいを噛み砕きながら今の一撃の事を思い返してみるが、死ぬ間際になるやつじゃないのか?

試しに訓練してる海兵に巨大ハンマーを振りかぶり、叩きつける手前で寸止めして「今さ、ハンマーの動きがスローに見えた?」って聞いたんだが「そんなわけないだろ!」って怒られた。

つまり俺はなったけど海兵ではならなかったというわけだ。スローに見える…か。どこかで聞いたな。

 

…ピーンときた。これはもしかしてスタンド発現じゃないのか!?

 

何のスタンドかわからんが、命の危機に瀕して眠れるスタンド使いの力が目覚めたのかもしれん!

それなら俺だけが見えたのも納得がいく。俺が見聞色の覇気が使えないのはスタンド使いだったからってことだ。

だが肝心のスタンドさんが見えないな。後ろを見てもいないしどうなってるんだ?

 

キョロキョロしてたらガープ中将から「何やっとんじゃ」って聞かれたから「たぶん新しい力に目覚めたからその証拠を探してるんだよね」って正直に答えたのに呆れたような目で見られた気がする。

その後「もしかして悪魔の実の能力じゃないのか?」って言われたけど、俺の能力は大きくするだけのはずだ。スローモーションに見えるのに大きくなってるものなんてあるのか?

 

まぁわからん時には聞くに限る。ということで知将のお力を借りることにしよう。

 

「センゴク元帥、ちょっと相談があるんだけど」

 

「うん?またガープあたりが何かやらかしたか?」

 

「いんや、ガープ中将には協力してもらって修行してたんだけどね…」

 

とりあえず事のあらましを説明し、何か思いつく事はないかと聞いてみたわけだが…

 

「それは悪魔の実の能力だろうな。詳しくはわからんが、恐らく『大きくする』というのが視力や聴力にも作用したんじゃないか?というかお前、確か五老星のところで内面も大きくできるとか言ってなかったか?」

 

そういうことか。嘘から出た真とでも言おうか、他人に作用できるのかはわからんが物理的なもの以外にも大きくすることができるようになったってことだ。

あと元帥よ。俺は確か「大きくできないと誰が言った?」って思わせぶりな感じで五老星に言ったはずだ。別にできると言った覚えはないぞ。できないとも言ってないし。

 

そういうことを伝えたら思いっきりため息吐かれた。今度何かお手伝いでもするかもしれないから元気出して。

 

だがこの慰めが良くなかったらしい。元帥は「ほう?それなら少々手伝ってもらおうか。なに、お前の目的にも合致していることだ」って悪い顔をしだしたと思ったら、あれよあれよという間に海軍の船に乗せられてしまっていた。

 

 

 

 

 

「空が青いな…」

 

 

元帥が「お前の目的にも合っているから行って来い」っていうから大人しく連れられて来てるが、乗ってるの俺と普通の海兵たちだけだぞ。

せめて俺の修行の相手になりそうなヤツ乗せとけよ…仕方ないから新たに使えるようになったのか、今まで俺が使える事に気づかずにいたのかわからん能力の確認でもしとこう。

 

 

 

たぶんスローモーションに見えたのは見る力が大きくなったってことでいいのかな?もしかしたら遠視もできるのかもしれないな。あ、海の向こうが良く見えるわ。

聞く力が大きくなったら遠くの声が聞こえるとかか。海兵たちの会話が聞こえてくるし、聞きたいほうに集中すればそこだけ聞けそうだな。

 

もう見聞色の覇気の代わりはこれでいいじゃん。

 

後はロビンのところに戻ってから相談しながら把握していくことにしよう。いろんな力を大きくできるのなら使い勝手は格段に上がるだろう。

確かに能力は使い方次第とはうまいこと言ったもんだ。レイリーたちにもアイデアを聞いて他に使い道がないかも確認しておこう。早くいろいろ試したいな。なんかもう帰りたくなってきた。

 

 

……

………

 

 

どうやら目的の島に到着したらしい…が、船を岸につけずにいる。何やってんだ?

海兵に聞いたところ、海軍からの書簡を届けに来たんだが、ここは女ヶ島という島だそうで男子禁制の島だからいつもこうやっているそうだ。

あと俺と同じく王下七武海の一角である海賊女帝が九蛇海賊団と共にいる島でもあるということも教えてくれた。

 

なるほど、元帥が俺を一緒に連れてきたのは「お前挨拶して回るんだろ?ついでに乗せて行ってやるから行って来い」ってことだったのか。それならお言葉に甘えよう。でもそれならそうと言ってほしかったわ。

 

「ねぇ海兵さん。男子禁制っつってもその書簡を投げ渡すわけにもいかないだろ?岸に船をつけて渡すだけでもダメなの?」

 

「ああ、女帝の許可がないとそれすらも許されないんだ。絶世の美女と聞くから一度お目にかかりたいんだがな」

 

「いやそういうのいいから。それに船をつけてくれないと俺が来た意味ないじゃん」

 

まさか遠くから「新しく七武海になったよよろしくねー!」って叫べとでも言うつもりか?

見張りみたいなやつが島にいるんだから話を通してもらえばいいのに…聴く力を大きくして見張りの会話を聞いてみれば「海軍め、忌々しいやつらだ」とか「どうせいつもの用だろう。放っておけ」とか塩対応にも程があるだろってくらい歓迎されてないみたいだ。

 

なるほど…同僚に会いにわざわざ来たのに、挨拶すらできないのならまずは来客を知らせるためにノックをすることにしよう。

きっと女ばかりな上に引きこもってるから常識ってもんを知らないんだろう。そんな箱入りお嬢さんたちの凝り固まった頭をほぐしてあげるのも俺の役目ってやつか。

 

甲板の上にいる海兵たちを危ないからと離れさせ、モックタウンを叩き潰した以上の大きさで超巨大ハンマーを女ヶ島に向かって振りかぶる。

 

「おい鉄槌!そんなもん振りかぶって一体何をするつもりだ!?」

 

「お客さんが来たことを知らせるには、まずノック!これ常識!」

 

「「「「「どこの常識だァァ!!」」」」」

 

海兵たちもこの程度の常識を知らないとは…海軍本部に帰ったら元帥にちゃんと教育しておくように言っておかないといけないな。

まさかこいつらは人の家に入るときでもノックしないんだろうか。ああそうか、見聞色の覇気があるからそんなことする必要がないとかなのかな?でも本部の中ではやってたような…

 

まぁいい。島全域に向かって叩きつければどんな引きこもりだって来客が来たって気づくだろう。

 

そのまま振り下ろし、島全体がものすごい地響きと轟音で包まれる。

 

ハンマーを元に戻してから土埃が晴れるのを待っていれば、そこには人だかりが見えた。どうやら俺のノックのおかげで来客に気づいてくれたみたいだ。まぁ武装色の覇気も纏わせてないしな。

岸のほうまで来たやつらが何か言ってるが俺じゃなきゃ遠くて聞こえんな。なになに?「海軍め、まさか攻撃してくるなんて…」とか言ってる。攻撃するならちゃんとしてるっつーの。

 

「海兵さん、これで島に客が来たってわかっただろうから船つけてよ。ちょっと話をしてくるからさ」

 

「ぬぅ…どうなってもしらんぞ」

 

それじゃあノックもしたしご挨拶といこうかな。

 

 

 

……

………

 

 

 

「何をしにきおった?」

 

「初めましてお嬢さん。王下七武海が一角、鉄槌のハンマだ」

 

「そんなことは知っておる!わらわは貴様が何をしにきたのかと問うておる!」

 

なんで初対面なのにこんなに怒ってるんだ?お嬢さん扱いが気に入らないってことか?そんな事は言われなくてもわかってるって言われても、お嬢ちゃんって年じゃないだろう。お嬢様のほうが良かったってことかな。

大体何をしにって言われても俺は「今後ともよろしく」ってだけの用事だから、ちゃんとした用事は海兵に聞いてくれ。

 

「無礼な男どもめ。ならばわらわの魅力で石になるがいい…メロメロ甘風(メロウ)!」

 

「……?何がしたいのかよくわからんけど、そのポーズと技名って自分で考えてるの?」

 

「!?なぜわらわの攻撃が効かぬ!!わらわの魅力が通用せぬとでもいうのか!」

 

こいつは一体何を言っているんだ?と思ったら俺の後ろにいた海兵たちが石になってる。

今のは石化の技だったのか…しかし魅力か、残念だったな。俺は『女子前髪推進委員会』の中でもタカ派の急先鋒だった男だぞ!そして更にお前たちのような露出過多な格好ではなく、チラリと見える素肌にロマンを感じる『チラリズム至上(ロマン)主義』でもあるんだ!絶対領域をナメるな!

 

しかしいきなり攻撃してくるとは…やっぱり七武海だけあって、挨拶は力をある程度見せて「どうやら雑魚ではないらしいな。認めてやる、ようこそ王下七武海へ」みたいな感じなんだろうか。

それなら俺もちゃんとやらないとな。口より先に手を動かせとはよく言ったもんだ。それにノックだからと覇気を込めなかったのは間違いだった。この反省は次に活かそう。まずは自己紹介を兼ねて力を示すとしよう!

 

 

「貴様…どういうつもりじゃ」

 

「いや、確かにさっきのは失礼だったな。その失態をこれから取り戻すことにしよう」

 

「なっ!?みなのもの下がれ!」

 

またハンマーを巨大化させていき今度は武装色の覇気をハンマーに纏わせる。そして振り上げ、さっき攻撃してきた偉そうな言葉使いの女に振り下ろしていく。たぶん言動からして海賊女帝だろうから、これくらいでは倒れないはずだ。

相手が名乗りもしなかったのは、たぶんまだ俺が認められていないからだろう。巨人化はしないが、その分巨大化させたハンマーで辺り構わず叩いていく。

 

「くっ!島の者たちまで巻き添えにするとは…貴様!海軍に言われ、わらわを討ち取りに来たとでも言うつもりか!?」

 

「海軍の用事と俺の用事は別だ。しかし当たらんな…なんか動きを読まれてるような…」

 

「貴様の単調な攻撃なぞ当たるものか!しかしこれでは近づけんな…ならば、虜の矢(スレイブアロー)

 

もしかして見聞色の覇気で読まれてるってことか?それならばいつも通り逃げ場ごと纏めて攻撃すればいいだけだ。

なんか遠距離からよくわからん攻撃してきているが、ガープ中将の武装色ゲンコツでも耐えきった俺にそんなもん効くか!

 

女帝の攻撃を躱すことなく、当たりながらもそのまま更に巨大化させたハンマーは最初にノックした時と同じくらいの大きさになっていく。

そのまま勢いよく振り下ろし、2回3回と叩きつけていけば十分に俺が七武海に仲間入りするのに相応しいと納得してくれるだろう。

 

「そこまでだ鉄槌よ!!」

 

「うん?なんで海兵が俺を止めるんだ?」

 

「こいつらは海賊ではあるが、あくまでも七武海の1人。そして我々は書簡を届けることが今回の任務だ。これ以上暴れるというのであれば、元帥へ報告させてもらうぞ!」

 

「勝手に報告すればいいだろう。俺は俺の目的があって来ているし、その目的は元帥も知っていることだ」

 

「なんだと…?センゴク元帥は貴様が暴れることを許可したとでも言うのか…」

 

なんか石になってない海兵がいきなりストップかけてきた上に「やめないとセンゴク元帥に言っちゃうぞ?」とか言ってきやがった。

だが海兵よ。俺が挨拶のためにここに連れて来られてるのは元帥の指示だ。むしろ俺はどこに向かうのかも知らなかったんだ。

 

今やってるのは七武海として既存メンバーである女帝に認められるための自己紹介だぞ。

俺より先輩の女帝だってたぶんこれで「おぬしなかなかやるではないか。どうやら我らと名を連ねるに相応しいだけの力があるようじゃな。改めて歓迎しよう。ようこそ王下七武海へ」とか言ってくれるはずだ。俺の未来視がそう告げている!

 

 

「「姉さま!!しっかりして!!」」

 

 

なんか女帝が倒れていて、姉さまとか呼んでるおっきな子が2人で抱きかかえてる。俺の未来視あんまり精度良くないな。

とりあえず力は示せただろうから歓待の言葉だけ聞いとくか。

 

俺はただ「ようこそ七武海へ」って言って認めてくれればいいんだが、近づいただけで介抱していた1人がわけわからん事を言いだした。

 

「やめて!お願いだからこれ以上姉さまを傷つけないで!!」「ソニア!!」

 

「…うん?どういうことだ?」

 

なんか目の前で寸劇が始まったんだが…これは一体どうしたらいいんだ?女帝のライフポイントはゼロだとでも言いたいのか?それならそれで「HANASE!」って言うから俺を掴むなりしてくれ。

片方は「今のうちに姉さまを!」とか言ってるし、もう片方は「ソニアを置いていけない!」とか言ってる。後ろでは海兵が「鉄槌め…七武海であろうと海賊は潰すとでも言いたいのか…」とか呟いてる。お前それ聞こえてるからな。

 

 

 

 

一体どうなったらこんな事態になるんだ?女帝も目を覚ましたのか「ソニア…マリー…そなたたちは逃げよ…」とか言ってるし、俺も悪役ポジションで何か言ったほうがいいのか!?

 

待て待て状況を整理しよう。俺は女帝に七武海に足るだけの力を示せたはずだが…ここは確か女だけしかいない島、男子禁制、女の園…あーそういうことか。これは転生したであろう俺にしか気づけない事だ。

 

 

つまり、この世界にもTAKARADUKAの概念があるってことだ!!

 

 

そして女帝もたまには悲劇のヒロイン役をやってみたかったということか。

いつもは立場的にヒーロー的なポジションが多いんだろう。男役っていうのがあるのかはわからんが、なかなかやりたくても譲ったりして演じる機会のない役どころだったんだな。

だが俺が来たことでここぞとばかりにアドリブで演じてるのか。もしくはこのたぶん妹であろう2人が「「姉さまー!!」」って言い始めたから乗っただけなのかはわからんが。

 

これはもう七武海として認められたからこそ、俺にも「お前七武海なんだったらこれくらい対応できるよな?この程度を柔軟に対応できなければ時代の変化になんてついていけないぞ?」という挑戦なのかもしれない。

 

ならば俺もこの挑戦を受けないという選択肢はない。全力で悪役ムーブを演って盛り上げてやろうじゃないか!

 

「クククッ、大人しく我の元へと降っていれば痛い目を見ずに済んだものを…だがこれで力の差というものがわかっただろう。無駄な抵抗はやめることだな」

 

「くっ…2人とも、早くここから離れるのじゃ…」

 

「「姉さまを置いてはいけないわ!!」」

 

「貴様らがどれだけ抵抗したところで我に敵わぬということがまだわからぬか…だがその威勢がどこまで持つかな!」

 

庇っている2人を突き飛ばし、女帝の服に手をかける。女帝も怯えたような表情でしっかりと悲劇のヒロインを演じてくれているようだ。

 

「やめよ…それだけは…!!」

 

心配しなくても無茶なことなしないさ。ちょっと服を破って()()()()()()程度だ。それくらいなら劇としてありえる範囲の演出だろう。

いくら悪役だったとしてもさすがに過度な演出は後から怒られる可能性があるからな。せっかくいい感じのシーンを演出できてるのにぶち壊しにするわけにはいかない。

 

「「姉さまに触れるな!!」」

 

「ほう?まだ抵抗する気力があるのか…ならば貴様らとの力の差をわかりやすく教えてやろう!」

 

「「「なっ!?」」」

 

突き飛ばされた2人が立ち上がり姉の危機に奮起しているな。うんうん、やっぱり王道っていうのは燃えるよね。俺もそっち側が良かったよ。

だが今の俺に求められているのは悪役なんだよな…もちろんやるからにはちゃんとやるけどさ。

 

あんまりこういう使い方はしたくなかったんだが、女帝の服を掴んだままだったので投げ飛ばし、巨人化して見下ろしながら出番のなかった巨大な剣に武装色の覇気を纏い頭上へと掲げて「いつでもお前たちを叩き斬れるぞ」とばかりに見せつける。

 

たぶんここから「「姉さまに手出しはさせない!2人でいくわよ!」」とか言って大逆転からの大団円に持っていく気なんだろう。女帝もきっとヒロインらしく勝利の祈りの舞とか踊るはずだ。

ほんと悪役としては俺の巨人化って見た目的にもバッチリすぎて困るわ。

 

「国が滅ぶ様を見てから絶望と共に我が物となるか、民のために自らを捧げ我が物となるか選ぶがいい!」

 

「わらわは…わらわたちはもう何にも縛られはせぬ!」

 

「フハハハハハ!ならば絶望の果てに地獄を見るがよいわ!!」

 

「……待って!」「「ソニア?」」

 

悪役ムーブをバッチリ決めて、なんか女帝のほうも自分を奮い立たせて妹たちを鼓舞して、ラストバトルからの歌と踊りだと思ったらたぶん妹から待ったがかかった。てかお前よく見たら舌出てるぞ?

別に心配しなくてもちゃんと負けてあげるよ?さすがにこのまま続編まで付き合えとか言われたら俺だって困るしね。

 

だが舌出てる妹は何を思ったのか「自分が身代わりになるから、これ以上姉さまに手を出さないで」ということらしい。

もしかしてこれってまだ続くのか?たぶん俺の巨人化を見てもっと使いたくなったとかだろうな…

同僚として認められたわけだし、もうちょっとくらいは付き合ってやるか。

 

てか女帝よ。舌の出てる妹にヒロインポジション取られてるぞ?もしかして俺が女帝のほうに「我が物となれ」をやっちゃったからか…申し訳ないことをしたな。

それじゃあ次回はちゃんと女帝をヒロインに据えるようにがんばるから、今日のところは妹にヒロイン演ってもらうとしよう。てかもう精神的に疲れた…

 

「良かろう。わざわざ地獄へ連れて行ってくれと言うその女の心意気に免じて、今日のところは退いてやろう。我が慈悲に感謝するがよいわ」

 

「どういうつもりじゃ……?」

 

「言葉通りの意味だ。大人しく救われた命に感謝しておくがいい」

 

そのまま海軍の船へと戻り、元のサイズに戻って船内へと入っていく。

 

まったく俺だからあんな無茶振りに対応できたが、他のヤツらも同じような感じの事をやってるのか?

まぁ挨拶はできたからもう当分ここに来ることはないだろ。てか即興でこんなことやらせるとか、あいつら頭おかしいんじゃないのか…

 

 

 

 

 

とりあえずこれで書簡も渡せるだろうし、海軍の仕事の手伝いもできて七武海の顔合わせもできたしまさに一石二鳥だな。

センゴク元帥もなかなか効率の良い仕事をするもんだ。知将の名に偽りなしということか。

 

 

 

 

 

 



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32.お酒は飲んでも飲まれるなだドン!

 

 

 

「さて鉄槌よ。報告は上がってきているが、随分と暴れてきたようだな」

 

「ちゃんと元帥の考えていた通りになったんじゃないの?」

 

「いくら私でもそこまでやるとは考えていなかったよ。自分が何をしたのかわかっているのか?」

 

「七武海の同僚である女帝に挨拶と自己紹介をしただけだよ。あー、その後ちょっとお遊びに付き合ってあげたくらいかな」

 

()()()か…お前が何を考えているのかは知らんが、今回のような事はなるべく控えろ。いいな?」

 

海賊女帝との初対面は悪いものではなかったが、思ったよりも精神的に疲れるものだった。

なので帰りの船では船室のベッドでゴロゴロしながら過ごしてたわけだが、海軍本部へ到着早々元帥からお呼び出しがかかった。海兵がなんて報告したのか知らんが、勝手に暴れてる扱いは心外だぞ。

 

俺がやったことなんて、『自己紹介と力のアピールして、即席の演劇に参加させられた』だけだ。

 

きっと今頃女帝たちは「あの巨人は悪役にもってこいじゃな。これからは囚われの姫シリーズを増やすか」とか話してるんだろうな…まぁ歌劇としては王道ストーリーだしわからないではない。

少々島を破壊したことは事実だが、それに対して文句も言われてないし織り込み済みだったんだろう。

 

しかし元帥がわざわざ控えろとまで言うなんて、女帝の歌劇に参加したのは何か悪かったんだろうか?控えろって言われるようなことなんて……あー、しまった。そういうことか。

 

 

 

元帥が言いたかったのは『女だけの歌劇なんだから男が参加するな』ってことだ。

 

 

 

これは盲点だった。確かに元帥の言う通りだわ。そこまでやるとは思わなかったって言われても当然だ。いくらその場の流れで参加しちゃったとはいえ、そこはちゃんと反省しないとな。

 

「言いたいことは理解した。確かに元帥が正しいな」

 

「そうか…理解してくれたようで何よりだ」

 

「それじゃ俺は帰るとするよ。今回の船旅は少々気疲れしたからね」

 

元帥にちゃんと反省してることを伝え、海軍本部を出てシャボンディ諸島に戻っていく。

まさかこの世界にも女性歌劇文化が存在してるとは思わなかったが、更に飛び入りで参加することになるとはもっと思わなかったよ。

今日は疲れたからロビンに愚痴を聞いてもらおうっと。

 

 

 

……

………

 

 

 

「ただいまー!」

 

「おかえりなさい。随分と戻ってくるのが遅かったのね」

 

「そうなんだよ。ちょっと聞いてよ…」

 

シャボンディ諸島に戻ってから自分の船へと移動し、ロビンに海軍本部での出来事や海賊女帝とのやりとりなんかを聞いてもらう。

とはいえ愚痴ばっかり聞かされても楽しくないだろうから「ガープ中将との特訓で新しい能力の使い方が判明した」とか「海賊女帝がいた島は女の子しかいない島だったみたいだよ」とかそんな感じだ。

 

「女性だけの島なんてあるのね。それでどうだったの?」

 

「どうって言っても大したことはしてないよ。挨拶して認めてもらって、ちょっとだけお遊びに付き合った程度かなー」

 

「随分と仲良くなれたみたいで良かったじゃない。あなたの事だからてっきり突拍子もないことをしてたんじゃないかと思ってたわ」

 

突拍子もないってのがどんな事を想像してたのかわからないけど、いくら俺でもそんな無茶苦茶な事はしないぞ。後で怒られるかもしれないじゃないか。

むしろ突然小芝居が始まって悪役を振られたんだから、無茶苦茶なのは向こうのほうだ。

 

「ロビンのほうはどんな感じ?見聞色の覇気わかった?」

 

「ええ、レイリーさんから教えてもらって少しだけどわかってきたところかしら。ハンマが教えてくれた時は意味不明だったけれど、あんな説明でもきちんと教えようとしてくれていたのね」

 

やっぱり意味不明だったんだ。確か俺が説明したのって「自分を信じて!」とか「見えないものを見て!」とかそんな感じだった気がするし、かなり昔の話だから仕方ないと思うわ。

その日はお互いの出来事や他愛もない話をしながらゆっくりと過ごし、翌日俺の能力の使い方の意見を聞くためにロビンと一緒にシャッキーの店に行くことにした。

 

だが店に入った途端にシャッキーの「鉄槌ちゃん、随分と暴れてきたみたいね。もうこっちにも話がきてるわよ」の言葉で何があったのか詳しく説明しろって流れになったんだ。

 

 

……

………

 

 

「鉄槌ちゃんって思った以上にバカだったのね」

 

「いや、きみほど面白い男は初めて見たかもしれん」

 

「やっぱり暴れてるんじゃない…いえ、いつも通りかもしれないわね」

 

 

シャッキーに馬鹿にされ、レイリーに笑われ、ロビンには呆れられてる?

詳しく説明しろって言うからその通りにしたのに、聞いた感想がそれなのはどうかと思うぞ。

ちゃんと「引きこもりがちのお嬢さんたちに来客を告げるノックをして、出てきてくれた女帝たちには自己紹介として力を示して、その後即興のお遊びに参加しただけだよ」って言っただけなのに…まぁ超巨大ハンマーでノックした事とか、なかなかハンマーが当たらないからそこら中を叩きまくった事とかにはため息吐かれたけど。

 

「しかし…あの娘たちは演劇までやっているのか。聞いたことがなかったが、思っていたよりも元気そうで何よりだ」

 

「…ねぇ鉄槌ちゃん。本当に彼女たちは演劇なんてしてたの?また何か勘違いしてない?」

 

「本当なんだってば!この俺の蓄積された知識によって導き出された答えに間違いはない!」

 

「どうして鉄槌ちゃんがそこまで自信満々で断言できるのか本当にわからないわ…」

 

レイリーは女帝たちと知り合いだったのか…世間は狭いって言うけど本当なんだな。知り合いってわかってれば何か伝言くらいは聞いておくこともできたかもしれないが、まぁ次に機会があればということにしておこう。

 

しかしシャッキーは疑り深いみたいだな。同僚に会いに行っただけなのに突然「もうやめて!」とか言い出すなんてどう考えてもフリでしかないだろうに。

 

ロビンは今日もレイリーから見聞色の覇気の講義を受けるため2人で出ていった。俺も参考にと思って一緒に行こうと思ったんだが、ロビンから「集中したいからどこにも行かずにここで待ってて」と言われてしまい大人しく留守番してることになったんだ。

 

だから待ってる間にシャッキーに俺の能力の使い方の相談をしてたんだけど、俺自身がどこまでの力に干渉できるのかがわからないから色々と試していけという結論になった。

 

 

 

外で騒がしい声が聞こえると思ったらルフィたちが揃って店の中へと入ってきた。なんか遊園地とかに行って遊んだりしてきたらしい。今日はタコだけじゃなくヒトデと人魚も連れてるな。

デカい声で「腹へったーー!メシーー!」とか言ってるがここバーだぞ。ミルク飲んでる俺が言うのもアレだがお酒を提供する場所だぞ。

俺はカウンターに座っており、麦わらの一味はテーブルのほうにいたんだが、なんかコソコソと話してると思ったらウソップがジョッキ片手に話しかけてきた。

 

 

「なぁハンマもたまには一緒に飲もうぜ!」

 

「いや、俺はロビンにお酒禁止令を出されてるから飲まないぞ。見つかったらたぶん怒られるからな」

 

「え~~??別にちょっとくらいならいいじゃねぇか。うまいぞ?」

 

「お前ら酒飲まされて潰されたの根に持ってるだろ?いくら言われても飲まん」

 

 

そんな酒を勧める言葉には耳を貸さずに手元にあるミルクを飲んでいく。あれ?このミルク、なんか味がおかしいな…まぁいいか。そういやこいつらに1個聞きたいことがあったんだ。

 

 

 

 

 

その後、俺は覚えてなかったんだが麦わらの一味は全滅の危機に瀕していたようだ。

 

 

 

……

………

 

 

 

「ハンマったら遅いわね…またどこかに行ってるのかしら」

 

レイリーさんに手ほどきを受け、今日の分は終わったからと1人で船に戻ってきたのだけどハンマが戻ってこないわ。疲れていたから先に戻ってきちゃったけど、やっぱり迎えに行ったほうが良かったかしら?最近は1人にすると暴れまわってるような気もするし、なるべく一緒にいたほうがいいのかもしれないわね。

 

帰りがけにレイリーさんも「ハンマくんがいたら戻るように伝えておくよ」って言ってくれてたからそろそろ戻ってきてもいいと思うんだけど…

そう思っていたらハンマじゃなく麦わらくんのところの航海士さんたちが船に飛び込んできた。

 

「ロビン!お願い助けて!!」「ロビ~ン!おで殺ざれる!」「頼む!ハンマを止めてくれェ!」

 

「突然どうしたの?」

 

「ハンマがいきなり『皆殺しだ!』って言って暴れだしたのよ!ルフィたちが止めてくれてるけど、このままじゃ本当に殺されちゃう!」

 

どういうことかしら?状況がまったくわからないわ。それにしてもハンマがわざわざ「皆殺しだ」とまで言うなんて珍しいわね。

そう思っていたら外からハンマの声が聞こえてきた。船の外に出てみると…これはどういう状況なのかしら?

 

 

 

「どこに逃げようが無駄だぞ!逃げたら逃げた先の人間ごと殺し回ってやる…ヒック」

 

「「ルフィ!ゾロ!サンジ!」」

 

麦わらくんたちがボロボロになって引きずって持ってこられてるわ。相変わらず仲が良いのかなんなのかよくわからない行動をするわね。でも、それよりもハンマのこの様子からすると…もしかして酔ってるの?

 

「ハンマ、あなたお酒飲んじゃったの?」

 

「あ~ロリンちゃんがいた。ちょっと待っててね…ヒック。この長っ鼻の目の前で仲間全員殺して、ちゃんと同じ気持ちを味わわせてやるからね」

 

「状況がまったくわからないけど…そんなことしなくてもいいのよ。膝枕してあげるからこっちへいらっしゃい」

 

「えー…………そこまで言うなら仕方ない。………よいしょ、zzz」

 

ズルズルと引きずってきた麦わらくんたち3人をそのまま床に落として大人しくこっちへ来てくれる。こういうところはお酒飲んでても変わらないのよね。すでに私の膝枕の上で寝てるし。

理由がまったくわからないけれど、ハンマは膝枕をしてあげるとすぐに寝ちゃう。だからまず大人しくさせるにはこれが一番だわ。それにしても…

 

「あなたたち、ハンマにお酒飲ませちゃったの?」

 

「ウッ!えーと、その、この前飲まされて潰された仕返しにと思ってハンマの持ってたミルクに酒を入れたんだ…」

 

あら、それじゃ仕方ないわね。仕返しされるのはハンマの自業自得だからいいんだけど、今回はその方法が良くなかったって事だわ。

そういえばハンマがお酒飲んだのなんて10年以上前の事だし、飲んだらどうなるかなんて誰にも言ってないから知らなくて当然よね。

 

「知らなかったんでしょうけど、ハンマは酒癖が悪いから飲ませちゃダメよ」

 

「いや、あれは酒癖が悪いってレベルじゃないだろ!酔っ払ったら周りの人間を殺すのか!?」

 

「そこまではやらないと思うんだけど、あなたたち何かしたのか言ったんじゃない?状況がわからないから原因もわからないわ」

 

「えーと…ハンマから『ウォーターセブンでロビンに謝ってたけど何したんだ?』って聞かれたから、ひどいこと言っちまったんだって言ったんだ。そんで更に『なんて言ったんだ?』って聞かれて、ハンマ以外に仲間いないだろみたいな事を言っちまったって言ったら『じゃあ皆殺しな』って言って襲いかかってきたんだ。意味わからないだろ?」

 

長鼻くんから説明してもらって理解できた。そういうことね。それならお酒を飲んじゃったハンマがああなっても仕方ないわ。

彼らにしてみれば理解できない事なんでしょうけど、一応ハンマにもハンマなりの基準というか理由みたいなものはあるにはある。誰が聞いても理不尽だと思う理由だけどね。

 

「「「…うぅ」」」「お前ら大丈夫か!?チョッパー!早く診てやってくれ!」「わかった!」

 

丁度麦わらくんたちも意識が戻ったみたいだし、ちゃんと説明してハンマのフォローくらいしてあげましょうか。意識の戻った3人も含めて、全員に対して声をかけてみる。

 

「あなたたち、ハンマが迷惑をかけてごめんなさい。いろいろと重なっちゃったことだし、ハンマも起きたら何も覚えてないでしょうから悪く思わないであげて」

 

「…ちゃんと納得のいく説明はしてくれるんだろうな?」

 

「もちろんよ。ただ、剣士くんが納得がいくかどうかはわからないけれど…」

 

まず最初にハンマはお酒を飲んだら思考がすごく短絡的になること、そして起きた時には何も覚えてないことを説明しておく。だからお酒を飲むことを禁止しているということも。

 

そしてハンマが暴れたであろう理由、長鼻くんから聞いた事とハンマがさっき言っていたことを合わせればどうしてそうなったのかもすぐにわかった。

もう20年も昔の話だし、寂しいって気持ちはないこともないけれど孤独(ひとり)ではなかったからもう吹っ切れている。でも酔ったハンマはそう思わなかったんでしょうね。

 

だからちゃんと教えてあげる。私の故郷(オハラ)が滅ぼされて家族(母親)も、親しかった人(クローバー博士やサウロ)たちもみんないなくなってしまったことを。

長鼻くんの言葉を聞いて、ハンマが「同じ気持ちを味わわせてやる」って言ってたから長鼻くんの目の前で仲間を殺そうと思ってただろうってことを。

 

「そういうわけでハンマは短絡的な考えになって、長鼻くんの前で全員を殺すって判断になっちゃったんだと思うわ」

 

「「「「「……………」」」」」

 

「私にはハンマしか親しい人がいないのは事実だし、知らなかった事だから仕方ないと思うけれどね。ただハンマって私に対してすごく過保護な部分があるから、重ねて言うけどあまり悪く思わないでくれると助かるのだけど……剣士くんもこれで納得はできないかもしれないけど、理解してくれたかしら?」

 

「……ああ、なんつーか、言いたくない事を言わせて悪かったな」

 

「別に謝ることなんてないわよ。それで殺されそうになってたわけだし、文句はハンマが起きてから直接言うといいわ。何も覚えてないと思うけれどね」

 

本当にね。せめて記憶でも残っていてくれたら注意なりするんだけど、何も覚えてないから言っても意味がないのよね…

今回は麦わらくんたちがハンマの悪酔いに振り回されたけれど、最初の時はまったく知らない人たちだったから余計に災難だったでしょうね。

 

 

きっともう彼らもハンマにお酒を飲ませることはないだろうし、今回のことは事故だとでも思っておいてもらいましょう。

 

 

 

 

 







酔っぱらい大暴れ中会話のみ


「長っ鼻ァァァ!!逃げるんじゃねェェ!!」

「ハンマ!正気に戻れって!」
「聞こえちゃいねぇな…とにかくさっさと眠らせるぞ!」
「ったく手間のかかるヤロウだな」



「さっきから鬱陶しいな!そんなに死にたきゃまずはお前らから血祭りにしてやらぁ!」

「くそ!全然攻撃が効いてねぇぞ!」
「止まるな!とにかくバラけて動け!」
「なんて酒癖の悪いヤツなんだ…」



「なぁハンマ!なんでウソップを狙うんだよ!?あいつはちゃんと謝っただろ!」

「謝ったからどうした?知らなかったら何言っても許されるのか?お前らの解釈で勝手に決めるな。あー、あとまだ死ぬなよ?長っ鼻の目の前でちゃんとトドメ刺してやるからな」



「がはっ!!」「ゾロ!!」「あいつ…傷口が開きやがったか!?」

「痛そうだな…こいつ(ハンマー)で楽にしてやるよ!」



「ヒック、戦えない仲間を庇って一緒になって死にかけてちゃ世話ねぇな」

「うるせェ……仲間を守って何が悪いんだ…」

「悪くないさ。仲間だから助け合う…そんなもん当たり前の話だろ。俺から言わせりゃ、仲間の傷口に触れられて怒って何が悪いんだ?死ぬ前に教えてやる。悪意のない者ほど無自覚に誰かを傷つけるんだぜ?」



「お前らはここで死ぬ。長っ鼻はイーストブルーの故郷の島を目の前で滅ぼしてから殺してやるよ」

「や…やめろ…」

「お前に仲間を守る力はねぇ…やめてほしけりゃ止めてみろ!お前が俺を止める(仲間を守れる)だけの力があるならな!」



「「「…………」」」

「気絶したか…まだ死ぬなよ?ちゃんと仲間の前で殺してやるからな。ヒック」





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33.特訓はシチュエーションが大事だドン!

 

 

「おはよう、ハンマ」

 

「…なんで俺はロビンに膝枕されてるの?」

 

「あなた、間違ってお酒飲んじゃったのよ。あとはいつも通り暴れて、戻ってきた途端に私の膝枕で気持ちよさそうに眠ったんじゃない」

 

マジデ!?そんなことしちゃってたの!?まったく覚えてないんだけど…

もしかして俺ってばお酒飲むと甘えるタイプなのかな?だからロビンは何があったか教えてくれないのか?

 

しかも起きるまでずっとそのままでいてくれてたってことか…怒ってはいないみたいだけど、それは申し訳ないことをしたな。

しかしなんでお酒なんて飲んじゃったんだろ?シャッキーのお店でロビンを待ってて、ルフィたちが入ってきたような気がするんだが…そのあたりから曖昧だな。シャッキーに聞いたらわかるかな?

 

「ねぇロビン、今日もレイリーに特訓してもらいに行く?」

 

「そうね…少しでも早く身につけたいと思ってるから行くつもりよ。そうしないと先に進めないでしょう?」

 

「進めないこともないけど、習得してくれてると俺が安心して戦えるかなぁ」

 

「なら決まりね。私もがんばるから、もう少しだけ待っていてくれる?」

 

別に急がせるつもりはないから、レイリーの元でしっかりと見聞色の覇気を習得してくれればいい。

戦いは全部俺が受け持つつもりだけど、これから先どんな相手がいるかわからないからな。不意をついた攻撃なんかを避けることができるだけでも十分だ。

それじゃあロビンと一緒に朝ごはんを食べてからシャッキーの店に行くとしよう。

 

 

……

………

 

 

「レイリー!今日もよろしくねー!ってお前らもいたのか。雰囲気暗いけど何かあったのか?」

 

「おはよう。鉄槌ちゃんって本当に何も覚えてないのね」

 

「そうそう、シャッキーに聞きたかったんだ。俺お酒飲んじゃったらしいんだけど、間違って飲んだのかな?」

 

「…ちゃんとあの子たちに謝っておきなさいよ?はい、あなたにはミルクね」

 

どうやら俺は何かやらかしてしまってるみたいだな。ルフィたちに何かしたのか?そういえばケガしてるような…気分が良くなって大魔王ムーブとかでもしたのかな?

 

「おっす。よくわからんが悪かったな。まったく覚えてないんだが何かあったのか?」

 

「アンタ…まぁいいわ。ちょっとこっち来なさい」

 

「なんだよ…イテェ!なんでナミはすぐにゲンコツするんだよ?」

 

「これで許してあげるわ。結果的にみんな無事だったし、こっちのせいな部分もあるしね」

 

うーん…何かしてるんだろうが、ゲンコツで許されて特に何も言われないってことは大したことじゃなかったってことかな?それにしては神妙な表情をしてるような気がしないでもないが…

 

 

 

「なぁハンマ。ハンマくらい強くならないと仲間を守れねェのか?」

 

「うん?今の俺がどれくらい強いのかは正直なところ自分でもわからんが、俺の目標は世界の全部を敵に回してもロビンを守りきるくらいの強さだ。これから戦う相手が全部自分より弱いなんて有り得ないだろ?そして自分と敵が比例して強くなっていくのなんて物語の中だけだぞ」

 

「おれは…弱ェ。もう少しで仲間も何もかも無くしちまうところだった…もうあんな思いはしたくねェ」

 

なんか思いつめたような顔したルフィから強くないと仲間を守れないのか聞かれた。そんなことは当たり前のような気もするが、俺だって自分がどれくらい強いのかわからんからなぁ。

俺の目指すところは古代兵器超えなわけだし、世界を海に沈めるくらいの古代兵器より強くなれれば世界中を敵にしたとしても戦えるだろう。

 

ふと『宇宙からの侵略者』って単語が頭に浮かんだが、さすがにそれはないだろうと思いたいな。

 

しかし「何もかも無くすところだった」って、一体何があったらそんな悩みにぶつかるんだ?

原因がわからんからその悩みを解消してやることはできないし、ありきたりではあるが俺は自分の経験なんかを元にして参考程度に話してやることしかできない。

 

「何が言いたいのかわからんが、無くしたくないなら抱えて守れるだけ強くなるしかないだろ。俺が強くなるのは自分とロビンのためだぞ。それに守るのは命だけじゃない、心も守れないと意味がないからな。俺が七武海になったのも、六老星になろうとしてるのも全部そのためだ」

 

「命だけじゃない…心も守る…」

 

あんまり説教というか、こういうのは柄じゃないから少々こっ恥ずかしい気持ちがあるが、考えてみればこいつらって俺よりかなり年下なんだもんな。

たまには若者に対して助言をするってのも悪くはないだろう。とか思っていたらロビンから待ったがかかった。

 

「ねぇハンマ?ちょっと私の知らない単語が出てきたんだけど、六老星って何かしら?」

 

「あれ?ロビンには言ってあったと思うだんけど…七武海になれなくても五老星の仲間に加えてもらえれば問題ないよねっていう画期的な計画だよ」

 

「…あなたそんな事を考えていたの?私には言ってあったって、初耳なんだけど」

 

「うそ!?」「嘘なわけないでしょう…」

 

マジカ…てっきり伝えたと思ってたよ。てことは『六老星になろう』計画をロビンは知らなかったってことだよな。まぁ今言ったから問題ないか。

ただロビンさん?「どうやら洗いざらい話してもらう必要があるみたいね…」とか呟いてるの聞こえてるんですが…なるべく、なるべくお手柔らかにお願いしますね?

 

まぁそれは置いといて、きっとルフィたちも俺が知らない間に仲間を失いかけるような何かがあったんだろう。

俺には応援することしかできないが、がんばって強くなれよ…とか思っていたらレイリーから思わぬ提案が飛び出した。

 

「ふむ…それならばハンマくんが少し鍛えてあげればいい。きみも自分の能力の使い方を考えているところだろう?お互いに得るものがあるんじゃないかね?」

 

「えー…それならレイリーがやればいいじゃん。未来ある若者に手を差し伸べるのも老人の役目なんじゃないの?」

 

「ならばこうしよう。私が彼女に教えている間に、きみが彼らを鍛える。これならば対価としては十分だろう?」

 

「ぐっ…交換条件とは卑怯な。でも俺は我流だったからレイリーみたいにうまく教えることはできないし、とにかく追い込むことしかできないけどいいの?」

 

「構わんさ。アレは意思の力だ。それくらいしなければ、ただ聞いて使えるような代物ではないからね」

 

ロビンに見聞色の覇気を教えてもらってる手前、断るのも悪いし仕方ないか。ついでにこれを貸しとしてガープ中将あたりに返してもらうとするかな。

あの爺ちゃんなら「孫を鍛えてやったぞ」って言ったら頼み事くらい聞いてくれるだろ。

 

ただ、最初にこれだけは聞いておかないとな。

 

「さてお前たちに確認しておく。聞いての通り、これから俺がお前たちに強くなるための修行を受けさせる事になったわけだけど、もしかしたら死ぬかもしれないが構わないか?」

 

「「構うわこのアホ!!」」

 

「じゃあお前らは参加しなくていいさ。別に俺はお前らが強くなろうが弱かろうがどっちでもいいんだからな。なんなら全員不参加のほうが俺としては楽なんだが…」

 

「「「望むところだ!!」」」

 

ルフィ、ゾロ、サンジは参加でナミとウソップは不参加かな?チョッパーは医者だから治療要員でいいだろ。ケガしても遠慮しなくて済むし俺としてもありがたい。

ウソップは震えながら「お、おれも勇敢なる海の戦士だからな。もちろんやるぞ」とか言ってるが、みんながやるからなんて思ってると痛い思いをするだけだぞ。

 

 

 

……

………

 

 

 

「さて、始める前にお前らに今回の修行のゴールを見せておく。そうしないとイメージが掴めないだろうからな。ルフィ、帽子とってこっち来い…そんで今からお前を殴るから痛いかどうか言ってみろ」

 

「ん?わかった…いたくねェ……なんだその腕?ってイテェ!!」

 

わかりやすい説明のためにゴム人間であるルフィを普通の拳で殴って、その後に武装色を纏った状態で同じ力で殴ってみせる。これなら口頭で説明するよりも理解するのは簡単だろう。

 

「わかったか?攻撃にも防御にも使えて、悪魔の実の能力者に対しても効果がある。これを使えてればあの時凍らされることもなかったかもな」

 

「イテテ…こんなんあるならもっと早く教えてくれよ」

 

なんで俺がいちいち教えてやらにゃいかんのだ。とにかく追い込むだけ追い込んでみるか。

ここには麦わらの一味全員いるが参加するのはルフィ、ゾロ、サンジと薬箱のチョッパーだけだ。ナミとウソップは何をするのかわからないから離れたところでとりあえず見学するらしい。

 

そこからはハンマー振り回しては追い回す作業の連続だった。まぁ一朝一夕で身に付くような力じゃないし、俺にできるのはとにかく窮地を演出することだけだ。

 

数日ほど叩いてはボロボロにしてチョッパーが治療するサイクルが続いていたが、経験値は積めてるんだろうけど大きな進展はない。何かいい方法ないかなぁ。

そういえば俺が武装色を使えるようになったのっていつだったかな…思い出した。あれはロビンが海賊に連れ去られて助けるのに必死だったときだ。

 

 

閃いた!これならあいつらもきっかけになるかもしれないぞ。

 

 

今日の特訓はきっと効果があるはずだ。何せ俺という実体験者がいるんだから…

そして女帝のところで悪役を演じさせられたことによって、俺の演技力も上昇しているはずだ。

 

ナミとウソップは初回に特訓内容を見て「自分たちで考える」と言って次回から来なくなった。なので次回以降の観客はいつもチョッパーだけで見守っていたんだが、今はチョッパーと共にナミも一緒に来るように言ってある。それじゃあ俺の演技力に驚くがいい!

 

「さて、今日も特訓をするわけだが…俺もいつまでも付き合う気はない。よってお前らに進展が見られなかった場合…ナミちょっとこっち来い」

 

「いいけど…何もしないわよね?」

 

「何もしないわけがないな。もし今日お前らが少しも成長していなかったら、ナミの手足を折ることにした。全ては強くなれないお前らが悪い」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

そう、これこそがきっとこいつらに足りなかったものだったんだ。仲間を守るために強くなりたいのに、強くなれないがために仲間を傷つける。なんかポエムみたいだな…

これなら怒りの感情と共に目覚めるきっかけになるはずだ。俺は実際それで武装色目覚めたような感じだったし。

 

「ちょっと!なんで特訓で手足を折られなきゃいけないのよ!?アンタおかしいんじゃないの!」

 

「簡単な答えだ。お前らはたぶん危機感が足りなすぎる。ここらで大事な仲間が傷ついておいたほうが本当の意味で守ることの難しさを理解するだろう。それとも先に仲間が死にそうになったほうが力が出せるか?なら今からナミを文字通り砕いてやろうか。もし死んでしまったとしても俺は事前に死ぬかも知れないって言ってあるし、海賊だから文句も言われないしな」

 

やってから言うのもなんだが、これってマジですごい悪役だな。レイリーとの交換条件で鍛えてやってるから実際に実行したりするつもりはないが、この方針は案外悪くないのかもしれない。

3人とも目つきからして変わってるし、どうやら覚悟も決まってきてるようだ。

 

 

……

………

 

 

「「「「…………」」」」

 

「気迫は良かったんだが、コレでもまだダメか…」

 

「ルフィ!ゾロ!サンジくん!チョッパー!」

 

ナミにハンマーを振りかぶったところで3人が勢いよく襲いかかってきたんだが、それでも俺の武装色を抜くには至らなかった。

黙って見守るはずだったチョッパーまで攻撃してきたから返り討ちにしてしまったが、医者がそんな短慮じゃダメじゃね?

 

たぶん時間かけてちゃんと修行すれば目覚めるとは思うんだが、そもそも俺がちゃんとした修行っていうのを知らないからなぁ。

レイリーは俺のやり方でいいって言ってたけど、これ以上追い込む方法を思いつかんぞ。

 

まぁいい。チョッパーも一緒に寝てるんじゃ治療もできないし、今日のところは戻ろうかな。なぜかナミが棒を構えて目に涙を溜めながらこっちを睨んでるが、もしかしてナミ覚醒フラグだったのか?

 

「どうした?お前も戦いたく(修行したく)なったのか?」

 

「ふざけんじゃないわよ!このまま黙って手足を折られるくらいなら抵抗するに決まってんでしょ!」

 

「何言ってんだお前?あー、そういうことか」

 

俺の悪役演技が迫真すぎてこのまま最初に言っていた通り骨を折られると思ってるのか。

とりあえずここで説明するのが面倒だったので「やらないからこいつら運ぶの手伝え」と言ってチョッパーを持たせる。ナミに持てるのはチョッパーくらいだろ。あとの3人は引きずっていくだけだ。

 

 

「ただいまシャッキー。ロビンたち戻ってきた?」

 

「まだよ。今日も絞られたみたいね。お疲れさま」

 

「あれ?こいつらだけ?俺には労いの言葉はないの?」

 

「はいはい鉄槌ちゃんもお疲れさま。ご褒美にミルクあげるわ」

 

戻ってきてぞんざいに扱われたけど、俺ちゃんとがんばってるよ?いろいろ工夫もして速成できるように考えてるしさ。

ナミから「早くちゃんと説明しろ」みたいな目で睨まれてるし、寝てるこいつらにはナミが説明してくれるか。

 

そこからちゃんと俺には俺の考えがあったことを伝えていく。

 

自分が武装色を使えるようになったのはロビンが海賊に連れ去られた時だったことや、大事であればあるほどきっとピンチになれば怒りやら何やらでパワーアップするかもしれなかった事。

手足を折るって言ったのは、単純に殺すとかだと現実味がないかもしれなかったからだ。あくまでも修行の中での事なのに、そんなこと言ったらこいつらだって「ああ、ハッタリなんだな」って思うだろう。ナミを選んだのは一味の中で一番手を出されたら怒るかなと思って選んだだけだ。

 

「言いたいことはわかったけど、それなら私にくらい言っておいてくれてもいいじゃない!」

 

「もしかしたらそんなピンチになれば、こいつらだけじゃなくナミも覚醒してパワーアップするかもしれないだろ?大体お前にそんな演技できるのか?」

 

「失礼な!むしろアンタよりマシよ!」

 

おいおい、俺はTAKARADUKA…じゃない。女帝たちに即興で悪役を振られても演じきった男だぞ。あと五老星たちとも強者ムーブで渡り合った演者だぞ?

まぁちゃんと説明はしたし、気絶してるこいつらにはナミのほうから言っておいてくれるだろう。

 

「おや、随分と賑やかじゃないか」

 

「レイリーおかえり!ロビンもお疲れさま!」

 

「ええ、ハンマもお疲れさま」

 

そうこうしてるうちにロビンとレイリーも戻ってきたわけだが、ナミのほうはまだ気が収まってないらしく「わたしはアンタみたいに見境のない理不尽暴力バカじゃないのよ!」とかすごく失礼な事を言ってる。

誰が見境ないんだよ…俺ほどわかりやすい見境持ってるヤツなんていないだろうが。まぁわからないって言うんなら教えておいてやる。

 

「ナミ、俺は理不尽なわけじゃない。ちゃんと明確な判断基準があるんだぞ」

 

「…その基準って何よ?」

 

 

「ロビンか、ロビンじゃないかだ!!!」

 

 

「なっ…」「ほう…」「あらあら」「ハァ…」

 

これほどわかりやすい明確な基準はどこを探しても他にないだろう。ナミは驚愕し、レイリーは感心し、シャッキーは微笑ましく見ており、ロビンはため息…ため息?ナンデ?

 

「あんたねぇ…いくらロビンが大事だからって、それ以外は全員攻撃対象なわけ!?」

 

「だが彼のようなタイプは芯が強いのも事実だ。特にハンマくんの場合は迷いや躊躇いがない。ここまで言い切れる者はなかなかいないよ」

 

「レイリーさん!こんなヤツ褒めちゃダメよ!ほら、なんか自慢げな顔して腹立つわ!」

 

ナミめ、レイリーに褒められた俺に嫉妬してるな。フハハハ!俺のようになれるようにしっかりと励むといい。

 

さて今日はここまでにして戻ってゆっくりしようかな。

 

 

だが、そうは問屋がおろさなかった…ロビンと一緒に船に戻り、ご飯を食べたところまでは普通だった。

食後にコーヒーを飲んでゆっくりしてた俺は微笑みながら放たれたロビンの言葉に、これから何が始まるのかを理解した。

 

 

 

 

 

「ハンマ、ちょっと私と()()()()お話しましょうか」

 

 

 

 

 

 



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34.頭がおかしいと思われただドン!

 

 

 

「あら、突然正座なんてしてどうしたのかしら?」

 

ルフィたちを鍛えるためにがんばった後にロビンと船に戻ってきて、ご飯を食べ終わったら「ちょっと私とお話しましょうか」って優しく言われた…

 

これはアレだ。『六老星になろう』計画を言ってなかった事に対してのお説教だよな。この計画をロビンが知らなかった事が判明してから今まで何も言われなかったから、てっきりその事はなかった事になってたんだと思ってた……こういうときは素直に謝るに限る。言ったつもりで言ってなかったのは俺が悪いんだから。

 

「ちゃんと言ってなくてごめんなさい」

 

「別に怒ってはいないわよ。ただ、ちゃんと話してほしいだけなの。私の言ってることわかるわよね?」

 

「えーと、どこから話せばいいものやら…」

 

「全部よ。どう考えて何をしたのか、ちゃんと最初から全部説明してちょうだい。できるわよね?」

 

「…ハイ」

 

 

 

……

………

 

 

 

「ハンマ、あなたバカね。どうして1人で抱え込もうとするのかしら。私はそんなに頼りにならない?」

 

「むしろ頼りにしかしてないと思うんだけど…」

 

 

七武海になるって決まる前から『六老星になろう』計画を考えていたことから始まり、シャボンディ諸島に来たところまで本当に全部話したよ…

さすがに五老星との会談の中で思わせぶりに「Dの一族が…」とか言ってたことや黒ひげを葬った事とかは言えなかったけど、調子に乗って世界中へ向けて演説したことまで話せることはほんとに洗いざらい話した。

 

なんで五老星に入ろうかと思ったのかって聞くから「俺が五老星の仲間入りできれば、ロビンが歴史の真実を知るのに近道になるかと思った」って正直に答えたわけだけど、それを言ったらバカっていう答えが返ってきたわけだ。

 

バカなのは事実だと思うけど、ロビンが頼りにならないってのは大いに否定するぞ。むしろ何か困ったことがあったら最後にはロビンに丸投げする気満々なんだから。

 

 

 

 

しかし問題はこれだけでは終わらなかったんだ…むしろ俺はここから「天国から地獄」ってのを身を以て味わった。

 

 

「あなた、シャボンディ諸島に来てからもわけのわからない勘違いして暴れようとしてたそうね」

 

「やっぱりそれ聞いてたんだね…思い出すだけでも恥ずかしいわ」

 

「女ヶ島ってところに行って、海賊女帝たちが演劇をやってたって言ってたわよね。でもそんなはずはないって聞いてるんだけど、どうして演劇をしているなんて思ったの?」

 

「それは…」

 

どうやって説明したらいいんだ…?「前世的な知識でそういう歌劇団があった」なんて言ったら頭のおかしいヤツとしか思われんぞ。

まずい…ロビンが俺の言葉を待っている。時間をかければかけるほど怪しく思われるだろう。こうなったら一か八かだ!

 

「が、ガイアが俺に囁いてきたんだ」

 

「そう…そうだったのね」

 

あれ?てっきり「あなた何言ってるの?」っていつも通りに呆れられて誤魔化せると思ったんだが、まさか納得してくれるとは思わなかった。

もしかしてロビンは見聞色の覇気を習得しつつあるから、何か大地の声的なものとか聞こえるようになったのかな?

 

 

 

だが次にロビンが発したのは謝罪の言葉だった。

 

「ごめんなさい。私が今まであなたに頼り切りだったから、きっとその重圧に耐えられなかったのね…今までの言動で気付くべきだったのに、本当にごめんなさい」

 

「…へ?」

 

なぜかロビンが悲しそうな表情のまま近づいてきて、優しく胸元で抱きしめられた。

おっぱいやわらけぇ…これが楽園ってやつなのか。そうか、やっぱり古から言われている通りおっぱいには夢とロマンが詰まってるっていうのは事実だったんだな…

 

 

 

 

 

 

 

 

「でももう大丈夫よ。これからはずっと一緒にいるから、今はゆっくり休みましょう?それからまた旅をしても遅くはないわ。ね?」

 

「……うん」

 

優しく頭を撫でられ、なぜか俺を甘やかしてくるロビンさん…よくわからないが俺の求めるロマンっていうのはおっぱいの事だったのかもしれない。

もうゴールしてもいいのかもしれないな…そうだよね。俺がんばったもんね。ちょっとくらいこの温もりと柔らかさに浸っていてもいいよね…?

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう何も心配はいらないわ。だから安心していいのよ。誰だって心の病はなりえるものなんだもの」

 

「っ!?待って!ロビンは何か勘違いしてるよ!!」

 

 

なんで俺が頭おかしい認定されてるの!?夢心地が一瞬で冷めたわ!

ちょっと待ってくれ!やめてくれ…一瞬で俺の精神的ライフはゼロどころかオーバーキル状態だよ。虫野郎のほうがまだマシなレベルだ。

 

大体俺のコレは心の病とかじゃないからね!現世と前世の知識が入り混じってる俺だからちょこっとくらいは勘違いがあったのかもしれないけど、そんな頭がバグってるみたいな扱いで優しくされるとか困る!てかまさかの展開に俺もう泣きそうだ!

 

なんでこんなことになったんだ?この前「床から手を何本か生やしてみてよ。そんで1本だけアワアワしてる感じで」ってマドハンドはとまどっているごっこしてもらおうとしたからか?いやそんなのいつもの事だから原因にはならないはずだ!

 

そこからはもう必死だった。これほど必死になったのはいつぶりだろうか。

 

ここまで虚しい釈明もないよな…だからといって今この誤解を解いておかないと俺はただの精神病的な扱いになってしまう。

他のヤツなら勝手に言わせておけばいいで済むけど、なんでロビンがそんな勘違いしちゃうのよ。子供の頃からずっと一緒にいるんだから俺の事わかってるでしょうに…

 

一体誰がこんな事をロビンに吹き込んだんだ…?

 

 

「…本当に大丈夫なのね?無理してない?」

 

「ほんとにまったく何にも問題ないんだよ…無理なんてした記憶すらないの…お願いだから信じて…」

 

「それならいいのよ。昔からだけど、あまりにも言動が普通じゃないからもしかしてと思ったんだけど…」

 

「まさか頭の心配されるとは思わなかったけど…もうやめてね?危うくこの年で涙が止まらなくなるところだったんだから…」

 

 

必死の弁解の末ロビンもなんとか納得してくれたみたいだ。これからはもう少し抑えめにしておこう。もうあんな思いをするなんてごめんだ。あれ?なんか誰かが似たような事言ってたような…

とにかく俺からすれば明後日の方向ではあるが心配かけてたことは間違いないし、もう同じ過ちは繰り返さないようにしよう。

 

 

まぁ俺の事だからどうせ繰り返すんだろうな…それが人間ってものだ、たぶん。

 

 

 

 

 

ちょっと予想外の出来事で精神的に疲れていたので次の日は特訓もお休みして、シャッキーの店には行かずシャボンディ諸島を観光することにした。

 

ロビンもせっかく普通の女の子になったんだから、周囲の目を気にせずに遊べるわけだし出かけない理由なんてないよな。

ルフィたちには何も言ってないから待ってるかもしれんが、そこはレイリーあたりが代わりに面倒見てくれてるだろうし勝手にやってるはずだ。

 

シャボンディパークという遊園地に行ったわけだが、ほんとに遊園地そのものだな。

こういうのは全力で遊びに限る!童心に帰るわけじゃないが、疲れた心をリフレッシュするのに騒ぐのはきっと悪くないだろう。

 

「ロビン、どれから乗ろうか?」

 

「そうね…ハンマの好きなものでいいわよ」

 

「んー…悩むなぁ。今日は1日ロビンに付き合うつもりだし、とりあえず順番に乗っていこっか」

 

ジェットコースターに観覧車にコーヒーカップ…まさに俺の知ってる遊園地そのものだが、まさかこの世界にもこんなものがあるとは思わなかったな。

ただ、なんとなく思い出せる前世の情景と目の前に広がる光景にノスタルジーではないけど懐かしさを感じさせるような不思議な気持ちになった。

 

だがどこにでもそういった楽しい気分を邪魔するやつってのはいるもので、せっかくロビンと2人で遊園地を堪能していたというのに声をかけてくる男たちがいた。

 

「よォねーちゃん、ちょっとおれたちと一緒に来てもらうぜ」

 

「ん?」「あん?誰だお前ら」

 

「男に用はねぇ、痛い思いをしたくなかったら失せな。こっちはただでさえ実入りが減って、とにかく攫って数こなさなきゃいけねぇんだから…ぶほっ!!」

 

ロビンを攫おうとするとはなんてバカなヤツらなんだ。しかし天竜人を減らしたつもりだったんだが、人攫い自体は減ってないのか?

こういうヤツらがいては楽しむのも一苦労だな。とりあえず潰しておくか。自分たちが何をしたのかわからせるためにしこたま殴ったし、きっと二つ返事で了承してくれるだろう。

 

「なぁお前ら、ちょっとお前らの店に用があるんだが案内してくれるよな?」

 

「ひ、ひぃ!案内しまずがらもう殴らないで…」

 

 

……

………

 

 

「こ、ここでず…え?もう殴らないって言っだがはっ」

 

「殴らないなんて言ってないだろ。それじゃあ責任者に出てきてもらいますか」

 

店をちょうど潰せるサイズにハンマーを大きくして、目の前のヒューマンショップとやらを一撃で叩き潰す。こうやってノックすれば責任者が勝手に出てくるだろ。

 

「ハンマ、あなたこのお店に用があったんじゃなかったの?もうお店潰れちゃったわよ?」

 

「これはただのノックだから問題ないよ。こうすれば責任者が出てきてくれるはず」

 

「ああ、女ヶ島でもそうやったってことね…」

 

ロビンは知らなかったかもしれないけど、実はこれ結構有効な手段なんだよ?実際に女帝だって出てきたわけだし、これからはこの方式でいこうと思ってるくらいだもん。

ほら、瓦礫の中からそれっぽいやつが出てきたでしょ。

 

「くそ…一体何があったんだ…?店がメチャクチャじゃねぇか」

 

「お前がこの店の責任者だよな?この店は今日で閉店だ。あとお前らの元締めが誰なのか教えてほしいんだが…」

 

「だっ、誰だテメェ!こんな事してタダで済むと思ってんのか!?」

 

どうやら自分の状況が理解できていないらしいな。それならわかりやすいように体に教えてやるとしよう。

俺たちを案内してくれたヤツらと同じようにボコボコに殴ってやる。気絶しようが殴ってたら勝手に意識は戻るし、ここまでやればきっとわかってくれるはずだ。

 

 

「質問してるのは俺だ。まず俺の質問に答えてから、お前のにも答えてやるかもしれない。理解したか?」

 

「ばい…ずいまぜんでじた…だがらもう殴らないで…」

 

「で?お前らの元締めは誰なんだ?」

 

「じ、七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴでず!」

 

 

なるほど、こんなところで同僚の名前が出るとは思わなかったな。

だがそうか…それならきちんとやり返さないと気がすまないなぁ…そのドフラミンゴってのはどこにいるんだ?ドレスローザ?どこだそれ。

後半の海(新世界)にある国か…後半の海ならこれから行くからちょうどいいな。場合によっては引き返すことも考えたがそれなら戻る必要もなさそうだ。

 

「ハンマ、顔が怖いわよ。私は気にしてないからもう行きましょ」

 

「そうだね。せっかくの遊園地の楽しい思い出がこいつらのせいで…あー、やっぱりちょっとドレスローザってところ滅ぼしてくるわ」

 

「はいはい、いいから行くわよ。今日は私に付き合ってくれるんでしょう?」

 

ロビンに付き合うって言った手前、いきなり反故にするわけにもいかないか。手を繋いで先に進まれたんじゃ付いていくしかない。

そうだよな。ロビンを放っておいてまで行くような用事でもないし、後半の海なんだったらどうせ行くしそうじゃなくても七武海の集まりとかで会う機会もあるだろう。どっちが優先なのかなんて考えるまでもない事だわ。

 

 

だが名前は覚えたぞ。なぁドフラミンゴよ。人の大事なものに手を出すってことは、お前の大事なものを叩き潰してもいいってことだよな?

クククッ、首を洗って待っているがいい。ドレスローザとやらがお前の墓場だ。

 

 

「ハンマ、いい加減現実(こっち)に戻ってらっしゃい。まださっきの事を考えてるの?」

 

「んー、ちょっとだけだよ。次は何乗ろうかなとか思ってたところ」

 

「ならいいんだけど…今日くらい余計な事を考えずにゆっくり休みましょう」

 

いかんいかん、また心配かけるところだった。もう山程心配かけてるのは重々承知しているが、この心配メーターがMAXになると精神病的な扱いを受けてしまうようだからな。自重せねば。

 

その後は特に問題もなく普通に遊園地を楽しんで、他にもシャボンディ諸島をウィンドウショッピングとかしながら観光とかしていった。

 

ロビンからちょっとどころじゃない誤解を受けたのは俺の不徳の致すところってやつなんだろう。

 

しかし今までそんな風に思われたことなかったのに、突然の話だったからには何か原因があるはずだ。さしあたって一番怪しいのはシャッキーか?一度聞いておく必要があるな。

いくらロビンがレイリーに覇気を教わっているとはいえ、頭おかしいなんて吹き込むのであれば戦争も辞さないつもりだ。

 

それはそれとして、24番グローブでご飯を食べてから船に戻った。ちなみになんとなくだがグランドラインチョコレートもお土産じゃないが購入した。

 

 

……

………

 

 

翌日は普通にシャッキーの店を訪れ、ロビンは見聞色の覇気の訓練を再開するべくレイリーと出かけていったのでシャッキーに気になったことを聞いてみた。

ちなみにルフィたちは何か文句言ってたが自分たちで勝手に特訓してたみたいだから今日も同じことをやっとけって言ってある。

 

 

「ねぇシャッキー、ちょっと聞きたいんだけどさ。ロビンに俺が勘違いしてたこと言ったでしょ?他にも何か言ったんじゃない?」

 

「どういうこと?」

 

「なんかロビンに頭おかしい認定されそうになったんだけど、シャッキーが何か吹き込んだんじゃないの?」

 

「…鉄槌ちゃん、その疑いはすっごく心外よ?そして彼女は何も間違ってない、ごくごく普通の判断じゃないかしら」

 

何が心外なのかわからんけど、違うのなら別にいいや。

 

今日はちょっと作ってもらいたい物を頼んで用意してもらうために出かけるつもりだったし、さっさと行って用件を伝えてくることにしよう。

 

 

 

 

 



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35.かつての部下が集まってきたドン!

 

 

 

「中将なら執務室におられると思いますよ」

 

「ありがと。じゃあちょっと行ってみるよ」

 

 

シャボンディ諸島から出て海軍本部へとやってきた俺は、今回の目的の人物に会うため海兵さんに場所を聞いて向かっていた。

ロビンが見聞色の覇気を使えるようになるまでにいろいろとやっておきたい事があるし、後半の海に向けてしっかり準備を整えておくに越したことはないからだ。

本当なら地位的な意味で元帥にお願いしたらいいんだろうけど、いくら協力的だと言っても簡単には聞いてもらえないかもしれない。それに交換条件とか出されたら面倒なので話を通しやすそうな人物に頼むのは当然のことだろう。

 

「ガープ中将いる?」

 

「鉄槌か、何の用じゃ?」

 

「いや、ちょっと中将にお願いしたいことがあってね」

 

執務室の扉を開けて声をかけてみたらガープ中将がいた。あんまり机仕事やらないイメージなんだけど、今はちゃんとやってたみたいだな。

 

俺の用件は単純だ。端的に言えば「俺の新しい武器を海軍で作って」ってだけなんだから。

 

これから後半の海を冒険していくにあたって、戦う相手は前半の海と比べ物にならないほど強力になっていくだろう。

そんな戦いを乗り越えるためにも俺自身の強化と同時に武器の強化もやっておきたい。という名目で男のロマン第二弾であるドリルに手を出したいんだ。あと能力者対策に海楼石でできてたりすると尚良し。

俺ではどうやったらドリルを作れるのかすらわからんから、それなら作ってくれそうなところに頼めばいいと思いついて、更にルフィを鍛えてやってる貸しを爺ちゃんであるガープ中将に返してもらうというアイデアでやってきた。

 

回りくどい言い方は嫌いだろうからと思って「新しい武器作ってほしいから中将から頼んでちょうだい」って簡潔に言ったのに、返ってきた答えは「面倒だから自分でなんとかしろ」だったよ。

だがそんな答えで俺が納得すると思うなよ?こちとら説得する材料を持ってきてるんだからな。

 

「俺から頼むより中将からのほうが効果的なんだもん。実は今さ、ルフィをちょっとくらいじゃ死なないように鍛えてやってるからそのご褒美だと思って作ってよ。ね?」

 

「なんじゃい。ルフィはお前が鍛えとるのか。しかしのぅ…」

 

「このままだとあいつすぐ死んじゃうよ?具体的にはどっかのハンマーで叩き潰されて海の藻屑になっちゃうかもしれないよ?そうならないように俺が鍛えてあげてるんだから悪い話じゃないでしょ?」

 

「ぐぬぬ…人の可愛い孫を人質にしおって…ならばわしから話は通しておいてやるが、一応ちゃんとセンゴクにも伝えておけよ」

 

やったぜ!これで俺のやる気も天井知らずに上がっていくってものだ。覚悟しておけルフィたち!これからは本格的に鍛えてやるからな!

 

そのまますぐにセンゴク元帥の元へと行き「ちょっと俺の武器作ってもらうことになったからよろしくね!」と伝えておいた。

センゴク元帥は「せめてきちんと説明せんか!」って怒ってたけど、今の状況だと俺が強くなることで海軍にデメリットはないので最後はため息吐かれただけで終わった。それでもちゃんと兵器開発とかしてるらしい人たちを呼んでくれて、その場でいろいろと相談した結果少々時間はかかるが作ってくれることになった!

 

 

 

 

 

海軍での相談も良い結果で終わりシャボンディ諸島に戻ってきたわけだが、島に着いたらちょうどのタイミングでどこかの海賊たちがやってきたところだったみたいだ。錨を下ろして船を岸に寄せてるわけだが、見逃す必要もないしそのまま沈めてあげるのが優しさってやつだろう。

 

偉大なる航路も半分まで来て感無量のところ悪いが、残念だけどここでお前たちの旅は終了だ。

 

ハンマーを海賊船を潰せるサイズに巨大化させて振りかぶったら、なぜか船に乗っていた海賊から大声で名前を呼ばれた。

 

「ハンマ兄さん!!!やっと会えた!!!」

 

「んん?」

 

「おれたちっすよ!ほら!ハンマ兄さんとロビン姐さんがアラバスタ?とかいうところに行きたいとか言ってた時に出会ったでしょ!?」

 

「……ああ!なんか揉めてた海賊か!」

 

思い出した!アラバスタに行く途中で海賊同士が争ってた島があった気がする。しかも俺のことを兄さん、ロビンのことを姐さんとか呼ぶってことはその時の諍いを止めるためにハンマーで叩いた海賊たちってことか。

てかこいつら偉大なる航路を渡ってこれたのか。何気にすごくね?空島には行ってないにしても、偉大なる航路の天候を乗り越えていけるだけの実力はあったってことだもんな。

 

正直あんまりこいつらの顔は覚えてないんだが「やっと会えた」ってことは俺に何か用事でもあったのかな?

 

話を聞いてみると、俺とロビンがあの島を旅立ってからもログが溜まるまで島にいたらしい。そして、新しく島にやってくる海賊ともなるべく揉めないようにしていたそうだ。

ただ中には暴れん坊な海賊もいるらしく、そういうヤツには島の連中も含めてみんなで協力して追い出したりしていたらしい。もうお前ら海賊名乗るなよ…

 

そんな時に世界中に新たな七武海のニュースが知れ渡り、しかもそれが俺だったことで『この島は七武海・鉄槌の縄張り』みたいな扱いにしてしまったそうだ。そのほうが新しくやってきた海賊たちも大人しくしてくれるから都合が良かったみたいだな。

更にこいつらは「どうせだからおれたちハンマ兄さんたちの部下になればいいんじゃね?ていうかもう手下みたいなもんだろ」みたいなノリで俺を探すことにしたと…バカじゃないのか?

 

とはいえ「部下にしてくれ」って言われても「いいよ」って俺1人で勝手に決めるわけにもいかない。ひとまずロビンにお伺いを立てるために「13番グローブにあるぼったくりバーに行ってロビンに説明してこい」と伝え向かわせておく。一緒に行けば良かったんだが、どうやらこの前レイリーを探してた時に海賊扱いされてたみたいだし、海賊引き連れて歩いてたらそれこそ海賊扱いされてしまう。そういえば部下になりたいならあいつら海賊やめさせないといけないわ。

 

とりあえずロビンのところに戻ろう。

 

 

 

……

………

 

 

 

「「「ハンマさん!!やっと見つけましたよ!!」」」

 

「うん…?あれ、お前たちなんでここにいるんだ?」

 

「何言ってんですか!ハンマさんが勝手にどっか行くから探すの苦労したんですよ!しかも知らないうちに七武海になってるし!こっちはいろんな島に行っては『所かまわずハンマー振り回す頭のオカシイ人見なかったか?』って聞き回ってやっと見つけたってのに…」

 

「オイ」

 

ロビンの元へと帰ろうと1人で歩いていたら突然呼び止められた。そこにはバロックワークスにいた時に一緒に修行してた部下たちがいた。正確には修行していたのは俺で、こいつらはサバイバルの修行していたような感じだったはずだが…

 

てか、どっか行くも何もバロックワークスはクロコダイルが作ったんだから俺関係なくね?最終的に俺がクロコダイル倒したわけだし、どっちかと言うと敵側に回ったみたいな感じに見られてるのかと思ってたんだけどな。

 

「まぁいいや。それで、俺を探してどうしたんだ?クロコダイルの仇討ちでもしたかったのか?」

 

「なんでそうなるんですか…バロックワークスは知らない間になくなってるし、どうしたらいいかわからなかったからハンマさん探してたんですよ。おれたちはハンマさんの部下なんだからついていくのは当たり前でしょ」

 

「…なるほどわからん、けどまぁいいか。今からロビンのところに戻るからお前たちからちゃんと説明しとけよ。あとロビンがダメって言ったらダメだぞ?」

 

 

珍しい事が続く日だな。まさか前半の海で出会った海賊たちもだが、バロックワークスとして動いていた時の部下が追いかけてくるなんて夢にも思わなかった。てっきりバロックワークスの一員としてとっくに捕まってるか、元々何やってたのか知らんが元の鞘に収まったんだろうくらいにしか考えてなかったしな。

 

シャッキーの店までの道中で少し聞いてみたわけだが、こいつらがたぶんある意味一番冒険してたわ。荒れ狂う天候の海を乗り越え次の島を目指し、辿り着いた島に海賊がいれば出ていくまで様子を見てから壊された家などを建て直してあげたり、無人島だったらキャンプしながら探索して腕を磨いたりしていたそうだ。

 

 

「ただいまー!ロビンいる?」

 

「ハンマ、あなたどこに行ってたの?こっちはさっきまで大変だったんだから…」

 

「ちょっと欲しいものがあって頼んできただけだよ。それよりもさっきロビンに会いにきたヤツらいたでしょ?そんでもって、こいつらもわざわざ追いかけてきたみたいなんだけど、どうしたらいいと思う?」

 

「「「「「副社長!またよろしくおねがいしまーす!!」」」」

 

「……ハンマ、拾ったところに戻してらっしゃい。あと副社長って言わないで」

 

「「「「「えええええええェェェェェェ!!!???」」」」」

 

さすがロビン、かつての部下のはずなのに捨て動物扱いとは…いくらなんでも可哀想な気がしたし、こいつらだってきっと前半の海を乗り越えてやってきたんだから成長してるはずだ。少しくらいフォローしてやってもバチは当たらないだろう。

 

 

「ロビンもちょっと落ち着いて?人が増えることで良い事があるかもしれないしさ」

 

「これから行く場所(新世界)がどんなところかわかってるの?四皇なんかも含めて強力な海賊たちがひしめき合っている海なのよ?」

 

「…それもそうだ。でもこいつらだって多分だけどただ航海してたわけじゃないと思うよ。ちょっと聞いたけど腕を磨いてたらしいしさ。お前らあれから力はついたんだよな?」

 

「はい!おれは料理のレパートリーが増えました!」

「おれは大工仕事が上達しました!」

「おれは食べられる植物が見分けられるようになりました!」

「おれは裁縫の腕が上達しました!」

「おれは」「おれは」「おれは」

 

「もういい…お前らサバイバルのレベルが上がってるだけじゃねーか!」

 

「だって戦うのはハンマさんの役目でしょ?おれたちずっとそうやってきたじゃないですか」

「オイ」

 

確かにそうだけどお前ら戦う気ゼロかよ。なんだその「やくめでしょ」って…しっぽ切るんじゃねーんだよ!まさか俺がずっと修行のために1人で戦いまくってた弊害がこんなところに出るなんて…

 

ロビンの「サバイバルが何の役に立つのよ」って目に晒されているこいつらが可哀想になったので、とりあえず「今後サバイバルをする予定はないから、この島で賞金首とかでも捕まえて少しくらい修行してこい」って放り出しておいた。一緒に旅をするしないは別として、これから先の海を行くなら最低限自分を守れるくらいの力が必要なのは間違いない。今のうちにある程度戦えるようにしておいてやるのが、ここまで探しに来たあいつらに俺がしてやれる優しさだろう。

 

ちなみに俺たちよりも先に来てたヤツらにもロビンが同じような事を言って放り出してたみたいだ。ロビンがそう言った理由の半分以上は厄介払いだったみたいだが…たぶんだけど、突然現れて「あなたの部下です」とか言われて困ったんだろうなぁ。

 

これからシャボンディ諸島を使った大規模な修行(賞金首狩り)が島の各地で行われることだろう。正直ここで苦戦するようなら新世界ではやっていけないだろうから、場合によっては前半の海だけで航海したり冒険したりするように言ってやるのもあいつらのためかもしれない。

 

そんな事を考えていたら、今までのやり取りを眺めていたであろうレイリーからよくわからない質問をされた。

 

「これから随分と賑やかになりそうだね。ところで1つ聞きたいのだが、ハンマくんは一体何を目指しているのかね?」

 

「……どういうこと?」

 

「君たちが私のところに来たのは歴史の真実を知ることができるかもしれないから、というのは理解している。そしてそのためにこれから後半の海へ挑もうと修行しているのもだ。だが、それは彼女(ロビンくん)の目的であって君の目的ではない。だから少し聞いてみたかったんだよ。君が目指す(未来)に何を見ているかをね」

 

あー…そういうことか。ロビンなら旅の目的は『歴史の探求』だし、ルフィなら『海賊王になる』っていうように明確な目指すものを掲げているもんな。何で突然そんな話が出てきたのかはわからないけど、ちょっと聞いてみたかったってところかな?

 

元々俺がこの世界を認識して掲げたのは『世界にロマンを知らしめる』事だ。

 

そして今の俺が更に目指していると言えるのは『古代兵器を超えた脅威になる』くらいだけど、こっちは強さ的な指標であってたぶん聞きたいのはそれじゃないんだろう。それにどっちも抽象的なものだし「海賊王におれはなる!」みたいな明確な目標(ゴール)を聞きたいんだろうな。

 

そうなると…今のところ俺自身に明確な目的地や目標となるものはないと言える。

 

この世界を認識してすぐの頃はいろいろと考えていたと思うんだが、既に20年ほどの時間が過ぎており原作知識だって朧気になっている。考えてもみればいくら前世的な知識があっても、その知識の中でも原作(ONE PIECE)知識は一部でしかない。なので言い訳じゃないがそこだけをずっと覚えているなんてきっと誰にも不可能だろう…決して俺が忘れっぽいわけじゃないはずだ。

 

俺としてもそんな事を誰かに言うわけにはいかないし、そもそもレイリーが聞きたい答えにもなっていない。だからそれっぽい話でお茶を濁そうっと…

 

「そんなに大それたものじゃないけど…かつて俺は山賊に連れ去られて毎日殴る蹴るの暴行を受けていた。そこから抜け出した俺は同じような目に遭っている子供を助ける事になり、そのままいろんな島々に行って虐げられている女子供を助けていくようになったんだ。そうやって少しずつ人が増えていって船も増えていき、船団を名乗ってもおかしくないくらいに人数が膨れ上がったからそろそろ拠点でも作らないといけないかなぁとか思ってたんだよね。そうやってどこか無人島でもないかと探していたんだけど、ある日大きな嵐に遭遇してしまってね…気がつけば小さな無人島で1人に逆戻りしていたってわけなんだけど、そこでロビンに出会って今に至るって感じ」

 

「ハンマ、その山賊に云々とか人助けしていったとかの話って必要だったの?」

 

「だって普通に答えたら『気がついたら無人島にいてロビンに着いていく事にしました』になっちゃうじゃん。それだと短くてつまらなくない?」

 

「そうね…あなたそういうの好きだものね」

 

考えた末に俺が答えたのは『なんとなく適当な物語を作って最後にロビンに出会った』っていう内容だ。まぁロビンには完全にバレているため「また適当な事ばかり言ってるわね」的な返しが来たわけだけど…いやほんと表向きでもいいから何か考えとこうかなぁ。

 

 

 

 

そんな良い話っぽい事を語っていた俺だが、海軍(元帥)からの恒例となっているお説教のお呼び出しがかかるのはこの後すぐだった。

 

 

 

 



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36.お小言ばかりだドン!

 

 

 

「まったく…何をやっとるんだお前たちは」

 

「いやいや、それ俺のせいじゃなくない?あいつらが勝手にやっただけだよ?しかもちゃんと海軍に持っていってるなら文句言われる事もないと思うんだけど…」

 

「確かにその通りだが()()()()()()()だ。おかげで『シャボンディ諸島近海は鉄槌の縄張りになったのか!?』と住民たちから聞かれて大変だったらしいぞ」

 

シャッキーの店で話をしたあとに船に戻ってたら、海兵が大慌てでやってきて「元帥が呼んでるからすぐに来てくれ!」って呼び出された。

てっきり頼んでいた武器の話かと思って海軍本部に来てみたら、受けたのは武器完成の報告じゃなくて説教みたいなお小言だった。意味がわからず話を聞いてみれば、シャボンディ諸島で「賞金首でも捕まえて修行してこい」って放り出したヤツらの事だったらしく、シャボンディ諸島各地で一斉に行われた賞金首狩りについての事らしい。

 

どうやら放り出したアイツらは「ハンマさんからの指示だから大人しく狩られろ!」とか言いながら賞金首を捕まえてるみたいで、それを聞いた人たちは「七武海であるはずの鉄槌がシャボンディ諸島を縄張りにしようとしているんじゃないか」っていう考えになり海軍に真相を聞くべく詰め掛けたそうだ。

ついでに捕まえた賞金首を海軍に持って行った時も「これハンマさんから」とか言って渡してるみたいで、受け取った海兵も何で俺がそんな事やりだしたのか意味不明って感じっぽい。

 

そりゃそうだろうな…俺は別にそんな指示とかしてないというか「修行してこい」とは言ったけど、捕まえた賞金首をわざわざ俺の名前を出して引き渡してこいなんて一言も言ってない。むしろなんでそんな話になってるのか俺がわかってないのが現状だ。ただ賞金首を捕まえてるだけなら治安が良くなる事だし問題なかったんだろうが、海軍的に問題だったのはその()()()()のほうだった。

 

あいつら、どうやら賞金首を捕まえるために容赦ないやり方してるみたいで、1人に対して大勢でかかるのは当たり前…悪魔の実の能力者や手強い海賊だったりした場合は毒などを使ったりといった搦め手も普通に使用してるから住民も怖がっているらしいのだ。住民に被害があったのかは聞いていないが、これに関しては俺は別にいいと思っている。一応、立場的に苦言を呈する必要のあるセンゴクとしてはなるべく控えて欲しいのだろう。だからと言ってそれを俺に言われても困るんだけどさ…

 

センゴク元帥のお小言を聞いて、それだけじゃ解決にならないという事で賞金首を捕まえる道具として海楼石の手錠なんかをいくつか融通してもらう事になった。これがあるだけで能力者を捕獲するのに全然違うからありがたい話だな。

そんな話が終わって海軍本部を出てシャボンディ諸島に戻ってきたわけだが、とりあえず今も修行という名の賞金首狩りをしてるであろうヤツらに一応は注意と説明をしておいたほうがいいだろう。とはいえ、あいつらがどうやって今まで偉大なる航路を乗り越えて来れたのかがわかったし、ちゃんと力が無いなら無いなりに考えた戦い方をしてる事が判明して個人的には褒めてやりたいところだ。

 

「あ、ハンマ兄さん。こんなところでどうしたんですか?」

 

「海軍本部に呼び出されて行ってきた帰ってきたところだ。お前たちは何やってるんだ?」

 

「ハンマ兄さん知ってます?この島にはでっかい遊園地があるんですよ!」

 

「あー、あれな。俺もロビンと行ってきたよ。そうそう、賞金首捕まえる時は周りに気を使えって元帥が言ってたぞ。あと能力者用に役立つアイテムももらえる事になったから受け取っといてくれ」

 

ちょうど遊園地に行くっぽい海賊組のほうの部下(仮)がいたから元帥のお小言や伝言を伝えておいて、俺はそのままシャッキーの店に向かうことにした。ロビンの覇気修行が現在どれくらい進んでいるのかわからないが、しっかりじっくり取り組んでほしいので気長に待つくらいしかできない。それでも俺のように我流でなんとかするよりも、レイリーという先達がいる分俺のときよりは効率が良いだろうからそこまで時間はかからないだろうと思っている。

 

シャッキーの店に着いたら、なぜか店の前に男たちが数人ほど縄で縛られて転がっていた。これはアレか、ぼったくりバーで踏み倒そうとして返り討ちに遭ったヤツらかな?ぼったくり(シャッキー)無銭飲食(賞金首ども)の戦いでぼったくり(シャッキー)が勝利したという事だろうな。

…なんでこいつらはわざわざぼったくりのお店に来るんだろうか?わかりやすいように店の前に看板まで出して「ぼったくります」って伝えてるんだから、普通なら別の店に行けばいいと思うんだがなぁ。よほど自分に自信があって「おれたちからぼったくれるものなら、ぼったくってみやがれギャハハハハ」みたいな感じなんだろうか?俺の場合はたまたま招かれたけど、普通なら入ろうと思わない類のお店だと思うぞ。

 

 

「ただいまー。シャッキー、ミルクちょうだい」

 

「鉄槌ちゃん、あなた部下の面倒くらいちゃんと見なさい」

 

「……次は何があったの?」

 

お店に入って注文したのに、返ってきたのは苦情だった。センゴクの次はシャッキーかぁ…なんでみんな俺に言うんだよ。あいつらに直接言えばいいじゃん。責任者なんだからちゃんとお前が教育しろ?まだお試し修行なんだから俺の責任じゃなくない?

そんでシャッキーは何があったのさ?あいつらの中のコックがお店に来た(カモ)のお酒に痺れ薬混ぜて飲ませて捕まえた?それなら別に問題ないじゃん。お店のお酒に混ぜるな?オーケー、後で覚えてたらちゃんと言っとくね。

 

「あの子たちが鉄槌ちゃんの部下っていうのがよくわかったわ。容赦と躊躇の無さは確かに鉄槌ちゃん譲りって感じね」

 

「俺そんな事してないんだけどなぁ…」

 

シャッキーのほうはセンゴクと違って「客のうちは手を出すな」って事だったみたいだ。俺が店に来た賞金首を殴るのは客同士の事だから問題ないけど、店で出す酒に痺れ薬を入れるのはシャッキー的にはダメということだった。まぁやってしまったカモ()については仕方ないので後で換金しておくそうだ。

 

なんか今日は疲れた…俺は何もしてないのに苦情を聞かされて1日が終わるとか、もはや最悪な1日だったと言ってもいいかもしれない。そう思っていたんだがまだ1日は終わっていなかったらしい。大人しくミルクを飲みながらロビンとレイリーが戻ってくるのを待ってたんだけど、戻ってきたのはロビンとレイリーだけではなくなぜかナミも一緒になって3人で戻ってきた……んだがナミの表情が明らかに怒ってるんだよなぁ。

 

「ちょっとハンマ!!あんた部下がいるんならいるでちゃんとわたしたちの事を話しておきなさいよ!!」

 

「ロビンお疲れさま……そんでナミ、今までの流れでなんとなくわかるが、言ってる意味がまったくわからん。とりあえずこれ(ミルク)でも飲んで落ち着け」

 

「そんなんで誤魔化されるか!あんたの命令で島中の賞金首を捕まえて回ってるってのはわかってんのよ!こっちがどんだけ苦労したか……ロビンがいなかったら大変だったんだからね!」

 

今日は厄日か何かなのか?なんで海軍(センゴク)からも飲み屋(シャッキー)からも苦情言われて挙げ句の果てには海賊(ナミ)からも文句言われなきゃいけないんだよ……なになに?俺の部下を名乗ったあいつらがチョッパーやウソップたちを誘拐していって、慌てて追いかけたら大勢の仲間たちに囲まれた上にチョッパーたちに銃を突きつけて「こいつらを解放してほしけりゃ賞金首であるルフィを差し出せ」って言われた?

 

……なんか立場が逆じゃない?

 

「なにその面白い展開。俺もぜひ間近で見てみたかったな」

 

「ワクワクすんな!たまたま通りかかったロビンがいてくれたから何事もなく収まったけど、危うく捕まるところだったのよ!」

 

「ロビンが来てくれてよかったな。とはいえお前らは海賊なんだからそんな事もあるさ。それでルフィやあいつらはどうしたんだ?」

 

「それが……ルフィたちがアンタに修行をつけてもらってるってロビンから聞いて『早く言ってくれよ!おれたちはハンマさんの部下だしそれなら兄弟みたいなもんだな!お詫びに飯や酒をおごるから仲直りといこうぜ!』って言葉で……」

 

なるほど。みんなそっちに行って、ナミだけは俺に苦情を言うためにロビンと一緒に戻ってきたというわけか。

 

 

……なんかみんな楽しんでるな。俺だけ仲間外れ感があるのは気のせいか?

 

 

そういえば俺だけシャボンディ諸島に来てから気をつかってばっかりな気がするぞ?同僚である女帝には挨拶しに行っただけなのに歌劇に参加させられ、海軍というかセンゴク元帥からは事あるごとにお小言をもらい、ロビンにはあらぬ勘違いをされ、ルフィたちにはロビンに覇気を教える交換条件とはいえ修行つけてやる事になり、更には部下たち(仮)の苦情まで受ける羽目になってる。

 

もう十分に働いてるよな俺。こんなに頑張ってるんだからちょっとくらいストレス発散したって誰も文句言わないだろ。むしろこれを聞いたら誰もが「もういい。もう休んでいいんだ」って言ってくれるに決まってる。そうだよな、俺は頑張りすぎたんだ。ここらで俺も楽しんだ(羽目を外した)ところで誰も文句なんて言うはずがないよな。

 

この島に来てからまともに体を動かしてもないし、なんだか考えれば考えるほど運動不足な気がしてならなくなってきたぞ……よし!思い立ったが吉日とも言うし、気分転換に出かけようそうしよう!

 

「ねぇロビン。きっとロビンも修行で根を詰めてて疲れてるだろうからさ、ここらで休息がてら気分転換に行かない?」

 

「突然ね……いえ、ハンマの思いつきが突然なのはいつもの事だったわね」

 

「いやー俺も色々と頑張ってたからなのかストレスが溜まってたみたいだからさ。それならここらへんで一休みしたほうが良いかと思ってね」

 

「ストレス……?あなたにそんなもの溜まるような出来事なんてあったかしら?それで、どうしてそんな考えに至ったの?」

 

ロビンだって最近はレイリーから覇気の修行を受けてるばかりだし、たまには気分転換するのも悪くないと理解してくれるはずだ。だがストレスが溜まってるって言ったのに「そんなストレスの溜まるような出来事あったかしら?」って言うって事は俺がやってる事なんてロビンにとっては些事だったって事なのか?

 

確かに頭脳労働ではロビンのほうが優秀だし俺がやってる事なんて大したことではないんだろう。俺だって覇気の修行をしてた時は目標に向かって進んでる気がしてそんな事考えもしなかったもんな。きっと立場が逆で俺が覇気の修行をして、ロビンが海軍とやり取りするほうが本来の役割的には合ってるんだろう。でも今は反対なわけで、俺がストレスが溜まってるってことは…つまりロビンも気づいていないだけでかなりのストレスが蓄積されているという事でもある。

 

でもきっとロビンは「これから新世界を進むためにも早く覇気を習得しなきゃ……」みたいな焦りがあって気づいていないだけだな。そんなロビンのために、ここはひとつ俺が気づかれないように道化を演じて一肌脱いであげようじゃないか。それならロビンも気遣うことなく一休みできるはずだ。

 

「なんかみんな好き勝手して楽しそうだからさ。俺も暴れたいし遊びたい!だから一緒にお出かけしよう!」

 

「ふふっ、まるでダダこねてる子供みたいよ?それじゃあ気分転換に一緒に出かけましょうか」

 

よし釣れた!ロビンも俺の完璧な理論の前には反論の余地はなかったと見えるね。まぁ万が一ダメだって言われたとしても無理やり連れ出したから結果は変わらないんだけどさ……

 

そういや目的を定めずに出かけるのいつぶりだろ?偉大なる航路に入ってからは俺もロビンも色々とイベントがあって大変だったし、たまには2人で童心に帰るのも悪くないな。

 

「急に気分転換なんてびっくりしたけど、たまには悪くないかもしれないわね。また遊園地にでも行く?」

 

「んー……それでもいいんだけど、どうせなら違う島にでも行ってみようよ。ちょっと聞いた話だとシャボンディ諸島の海底には魚人島ってのがあるらしくてさ。ちょうどいいと思わない?」

 

「何がちょうどいいのかわからないけどよく知ってるわね」

 

これでも海軍本部や世界政府に出入りする身だからねー。後半の海に入るためには2つの道がある事くらい教えてもらってあるのさ。俺の立場を鑑みれば普通に世界政府の道を通るつもりだったから、海賊たちが通るっていう海底の道は選ばないんだよね。だけど魚人とか人魚たちの国ってのも見てみたいって気持ちもあったし、この際だから観光と気分転換兼ねて行ってみる事にした。

 

ちなみに魚人島は白ひげの縄張りになってるらしい。別に誰の縄張りでもいいけど、七武海が四皇の縄張りに行ったら何か問題でもあるのかな?まぁ何か言われたらその時はその時でなんとかなるだろう。今回はただの観光だから魚人島を堪能してからシャボンディ諸島に戻るだけだし、ロビンも異論はなさそうだったから船をコーティング?っていうのやってもらって魚人島観光することで決まった。

 

 

 

 

 

 



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37.

 

 

「ほえ~、魚人島ってこんな感じになってるんだね」

 

「ええ、とても綺麗ね。それに話には聞いていたけれど……生活もあまり人間と変わらないようにも見えるわ」

 

俺とロビンは気分転換の散歩を兼ねて魚人島に来ていた。海に潜るために船のコーティングを頼んだレイリーには「ロビンと散歩に出かけてくるから暇ならルフィでも見といて」ってお願いしておいたし、船のコーティングを待ってる間に発見した部下(仮)には「ちょっとロビンと散歩に出かけてくるから引き続き頑張れ。どうせだから偉大なる航路をウロチョロしてみれば?ってみんなに伝言しといて」って言ってある。

 

魚人島に行く事はレイリーしか知らないかもしれないけれど、俺だってたまにはお小言とか説教から逃れたい日だってあるわけだし……それにちょっとくらい外出したところで何も問題はないはずだ、たぶん。

 

魚人島ではその名の通り魚人や人魚たちがたくさんおり、ロビンと一緒に散策しながら他愛もない話をして歩いていた。どうやらこの島の住人たちは俺の事は知らないようで、それなのに遠目から見られたりなんか様子がおかしいんだよな。一応話しかけたら答えてくれたりはするんだけど、たぶんこいつらは『七武海の鉄槌』っていう名称は知っていても顔までは知られていないような感じだった。これは恐らく海軍本部で行った演説は映像電伝虫を持っていたりその映像を直接見た人間にしか知られていないんだろうな。その演説の記事が掲載されている新聞だって顔がわかるほどの写真は載っていなかったし……

 

シャボンディ諸島でも俺の顔を知ってるヤツが少なかったのはそういう事なんだろう。海賊なんであれば手配書が出回り悪名が高くなってしっかりと顔と名前が一致してきた頃に七武海に選出されたりするんだろうけども、俺の場合は無名の一般人からの七武海抜擢なんて前代未聞の事態なせいで通り名だけが先走って実物を認識できないという珍事になってしまったわけだ。

 

これについては良し悪しあれど、今の状況においては良かったと言える。ただの散歩で来てるのに七武海が来ただとか騒がれてもいいことはないからな。とはいえお忍びで来て後から何か言われるのも嫌だし、ここ魚人島にはリュウグウ王国という国家がある以上挨拶くらいはしておいたほうが無難かもしれない。

 

「ねぇロビン。一応俺の立場的にこの国の偉いさんには挨拶しておいたほうがいいと思う?」

 

「……そうね。挨拶の仕方次第だと思うんだけれど、あなた一体どういった挨拶をするつもり?」

 

「そりゃあノックして出てきたところで『こんにちは七武海のハンマですお邪魔してます』じゃないかなぁ」

 

「今回はただの気分転換の散歩だし挨拶はしなくていいんじゃないかしら。向こうも突然来られても困るかもしれないし、今回はやめておきましょう」

 

確かにロビンの言う通りちょこっと観光してシャボンディ諸島に戻るわけだしそこまでしなくていいか。魚人島の国やお城ってのを見てみたいって気持ちもあったけど、確かにお城に行ったりしてたらロビンも余計な気を使う羽目になるかもしれないもんね。

 

ロビンとの相談の結果『お城には挨拶に行かない』という結論が出たので、ひとまず通りかかった人魚さんにごはん屋さんを教えてもらって行く事にした。空島の時もそうだったけど、その地域の食材とか調理法とかあるみたいで楽しみなんだよね。そういう料理を出してくれるところで昔ながらの調理法とか昔話を聞いたりするのはロビンも考古学者としての血が騒ぐのか興味深く聞いていたりする。

 

今回もそんな感じで軽く聞いてみたわけなんだけど、なんか思っていたよりも返ってくる返事が暗いというか悪いというか……食べながらこっそりとロビンに聞いてみたら、昔この国というか魚人や人魚たちは迫害されていて人間に良い印象を持っていないという事を教えてもらった。もちろん全員ではないのかもしれないけど、そういった出来事があったので今でも多少の軋轢はあるんだろうとのロビンの談だ。

 

えー……俺としては「この料理おいしいね。どうやって作ってるの?」とか「それはこうやってるんだぜ!昔こういう事があってこうやって工夫して今の味になったんだ」みたいな話で盛り上がると思ったんだけどなぁ。これはアレか?ここをいつから縄張りにしてるか知らんが、白ひげが「ここは今日からおれたちの縄張りだァ!人魚も魚人も逆らうヤツは皆殺しだぜェ!」とかやってるとかなんだろうか?そもそも白ひげってそんなキャラだったっけ?エースの処刑に突撃してきて頂上戦争して死ぬのは覚えてるんだけど、もうそんな知識なんてほとんど覚えてないし昔の白ひげなんて更に知らんからわからんとしか言いようがないなぁ。

 

まぁ白ひげも海賊なわけだし、魚人島を縄張りにすることによって海賊たちが前半後半の海を簡単に移動できるようにしている可能性だって考えられる。いわば関所みたいなもんとして魚人島を抑えているといったところか。

 

今の俺が白ひげを相手にして確実に勝てるとは言えないけど、でも確実に負けるとも言えないわけだし……まぁ今はそれはいいか。いずれ新世界を旅していけば会う事もあるだろう。そしてせっかくの魚人島観光が微妙な感じで終わりそうな恨みはその時に晴らしてくれるわ。

 

「とりあえず白ひげに鉄槌を食らわせるのは確定として……」

 

「どうしてあなたはそう唐突に四皇と戦おうとしているの…?一応言っておくけれど、白ひげは世界最強と呼ばれている海賊なのよ?」

 

「でも世界最強くらい軽く倒せないようじゃ俺の求める強さにはならないんだよねー」

 

ふと思った事が口に出てしまっていたのか、それを聞いたロビンの反応は俺が白ひげと戦う事はあんまりよろしくない様子だった。まぁ相手は言う通り四皇の一角だし、ついでに世間的にも世界最強って事だったから進んで戦ってほしくはないんだろう。つまり俺はまだまだロビンに心配されるくらいの強さしかないって事か……要精進だな。

 

「でも今すぐに白ひげと戦うわけじゃないし、ロビンが心配するような事はしないから安心してよ」

 

「本当かしら…ハンマを信じていないわけじゃないけれど、違う意味で裏切られる事があるから何をするのかはちゃんと教えてね」

 

「基本的に俺がやってる事って忘れてない限り全部言ってるはずなんだけどなぁ」

 

「確かにちゃんと言ってくれてると思うわよ?でもそれが勘違いだったりもするんだもの」

 

うぐぐ……さすがロビン。なかなか痛いところを突いてくるな。というかまだあの勘違い事件を引きずってるの?そろそろ忘れてくれたほうが俺のためになるんだけど……せっかくの観光だし白ひげの事はいいや。そういう事を忘れて気分一新するのが目的なんだからね。だからロビンも余計な事は思い出さないで魚人島を楽しもうじゃないか。

 

 

……

………

 

 

「人間がこんなところで何をしていやがる!!」

 

「ただの観光だな。シャボンディ諸島でいろいろと疲れたから散歩がてら二人で魚人島まで足を伸ばして来てみたんだが……」

 

「わざわざ観光とはご苦労なこったな。それならここへ来た事を後悔して死んでいけェ!!」

 

ロビンと一緒にウロウロしてたらだいぶ外れの方まで来てしまったみたいで、そこにいた魚人たちにものすごい睨まれてしまった。てか別に魚人の島だからって人間が珍しいわけじゃないだろうに……海賊たちが後半の海へ行くのに通る裏道になってるって事はそれなりの人間が通ってるって事だろ?更に白ひげの縄張りになってるんなら白ひげ海賊団のヤツらだって来てるはず。まぁ海賊の縄張りにされてる上に海賊がひっきりなしに来るんならこれくらい当然の反応か。しかし後悔して死ねとか大袈裟すぎじゃね?

 

……わかったぞ!こいつらはきっと海賊しか人間を見た事がないんだ!そんでもって海賊なんて無法者たちばっかりなわけだから、きっと魚人島に来て「後半の海に渡る景気づけにいっちょ暴れるかギャハハハハハ!」とか言って略奪とかしていくんだろう。それならこいつらの俺に対する反応も納得できる。俺の予想が確かならばこいつらは海賊(人間)を良く思っていないという勘違いをしてるだけだ。本来なら放っておけばいいんだろうけど……

 

 

襲いかかって来られて俺が戦わない理由にはならん。ちょっといいこと思いついたし、たまには善意で教えてあげるとするか。

 

 

「なんでどこに行ってもこういうヤツっているんだろうねー」

 

「彼らからすれば人間は恨みや恐怖の対象でしょうし仕方ないかもしれないわね」

 

「俺がやるからロビンは下がっててね。ちょっとこいつらに気合入れてくるわ」

 

「……気合?」

 

襲いかかってくる魚人どもをちぎっては投げ……の代わりにひらすら叩きのめしていく。一緒に貝殻っぽいデザインの家とか色々と壊れてるけど、そこはまぁご愛嬌的な感じでいいだろう。こいつらがケンカ売ってきたわけだし襲ってきたわけだし、あとこいつらも自分たちの攻撃で周囲に被害与えてるからお互い様だ。

 

巨大ハンマーを振り回して瓦礫の山を量産しつつ襲いかかってきた魚人たちを叩きのめしていき、その場にいた全員がボロボロになって這いつくばったのを確認したので攻撃を止めて魚人たちを見回してみる。どいつもこいつも根性だけはあるみたいで俺のことを睨みつけてるな。うん、なかなかいい顔をしてるじゃないか。

 

「くそォ……人間ごときに……」

 

「覚えとけ!力とは……パワーだ!!」「……でしょうね」

 

人間ごときとか負け惜しみにも程があるだろって言葉を聞きながら、俺は魚人たちにこの世界の真理を説いてやった。今回はロビンもツッコミどころがなかったんだろうな、普通に納得してた。

 

こいつらもきっと白ひげや他の海賊たちにいいようにされて悔しいんだな。この国の王様がどんなヤツなのか知らんが、こういう反骨心のあるヤツは嫌いじゃないぞ。そういや人魚とかも拐われたりしてたらしいし、そういった負の感情が海賊=人間という形になっていってしまったんだろう。

 

「お前ら!どんだけ睨もうが恨もうがその程度じゃ相手を倒す事なんてできねぇぞ!人間がどうこう言う前にもっと強くなれ!」

 

「うるせェ!てめェに言われなくたってそんなことァわかってんだよ!」

 

「いいやお前らは何もわかっちゃいねぇ!いい加減自分たちの小ささを自覚しろ!」

 

ハンマーを突きつけて魚人たちの浅はかな考えを間違いだと断じてやれば、きっとこいつらだって理解できるだろう。偉大なる航路の前半と後半を隔てる場所にある魚人島がどれだけ海賊の被害に遭ってきたのかなんて俺にはわからない。なにせ後半の海にある島出身の海賊以外はほぼ全ての海賊たちがこの島を経由しているはずなんだから……その被害はきっと俺の想像以上に凄惨なものだったんだろう。

 

だからと言って海賊を人間全部と置き換えて中途半端に恨んだところで何も変わらない。こいつらは海賊に襲われて海賊が嫌いな人間たちと何も違いなんてないんだから。だからきちんと教えてやろう。そう思って更に言葉を重ねようと思っていたら、何やら町中のほうが騒がしくなっていた。

 

「ん?なんかワーキャー聞こえるけど何かあったのかな?」

 

「恐らくどこかの海賊が後半の海へ行こうとこの島にやってきたんじゃないかしら」

 

「なるほどねー。なら俺の出番かな?おいお前ら!ちょっと海賊ぶっ潰してくるからここで待ってろ!」

 

「ふざけんじゃねェ……おれたちがやってやる……」

 

「来てもいいけどお前らの出番はないからな?ロビン、とりあえず行こっか」

 

せっかく今から魚人たちに大切なことを教えてあげようとしていたのに……間の悪いことにどこかの海賊たちがやってきたらしい。気持ち急ぎつつロビンと一緒に船を停めた場所へと移動してみたら、本当にロビンの予想通り海賊たちが船を着けるところだった。

 

残念だったな海賊ども……意気揚々と後半の海へ渡ろうとしていたんだろうが、俺がここにいたのが運の尽きだ。

 

 

 

船を停泊させて上陸しようとしているところに巨大化させて覇気を纏わせたハンマーを振りかぶり……一気に海賊船に向かって振り下ろした。

 

 

 

……

………

 

 

 

「「「「ぎゃあああああああああ」」」」

 

ハンマが振り下ろした黒く染まった巨大な金槌によって、魚人島にやってきた海賊船は叩き壊されてしまったわ。別に海賊船を襲うのはいいんだけれど、ここが深海の中にあるってことを忘れていないかしら?

 

今のところは覇気を纏うことなくただの巨大ハンマーで殴りかかっているだけだから一応配慮はしているのかもしれないけれど、何が切っ掛けでこの魚人島が海に沈むかもわからないんだから気を付けてもらわないと…

 

ハンマからの説明では理解できなかった覇気という力も、レイリーさんに会ったことできちんと習うことができた。この『武装色の覇気』『見聞色の覇気』という2つを使いこなすことがこれからの海…新世界では必須であり最低限であるということだったわ。もう1つ『覇王色の覇気』というものがあるらしいけど、これは誰でも鍛えれば使える前2つと違い素質が必要になるらしいわね。

 

その素質というのが血筋なのか経験なのかわからないけど、少なくともハンマも私も今のところ使えないということ。ハンマは覇王色の覇気が使えないことを一切気にしていないから「使えなくても構わない」と言っていたし、それに「威圧するならハンマー振り下ろせば済む」と笑ってもいたわ。

 

私にはとにかく『見聞色の覇気』を鍛えて欲しいらしいから、戦うよりも索敵や身を守ることを優先させたいようね。わざわざレイリーさんに会いに行って鍛える時間を設けてまで力を蓄えようとするのは決して間違っていない。ここから先は新世界…四皇だけでなく強力な力を持つ海賊たちがひしめき合う海なのだから、油断などしていなかったとしても力負けしてしまう可能性だって十二分に考えられる。

 

そんな考え事をしながら眺めていたら終わったようね。

 

 

「待ってくれ!おれたちはピースメインだ!ここを襲おうなんて思っちゃいない!」

 

「なに意味のわからん事を言ってやがる!海賊船を襲って何が悪い!?」

 

……ところでもしかしてハンマって海賊にも大別して二種類いるのを知らないのかしら?いえ知らないはずはないわ。かなり昔にきちんと説明したもの。主に冒険や宝探しなどを行い、海賊というよりも冒険家みたいな存在のピースメイン。もう1つはピースメインとは反対に略奪などを行い世間的に海賊だと認識されているモーガニア。彼らの言い分を信じるのであれば、この魚人島を通過して後半の海へ行こうとしていたということ。

 

まぁハンマにとってはどっちでも関係ないことかもしれないけれど……

 

それに海賊旗を掲げてハンマの前に現れたらああなっても仕方ないわ。さっきハンマが叩きのめしていた魚人さんたちも追いついてきたみたいで、ハンマの暴れっぷりを見て驚いているみたいね。

 

この魚人島は、かつてひどい差別によって人類とすら見てもらえなかった過去を持つ。確か200年ほど前に世界政府に加盟し表向きは差別もなくなったはず。その後海賊白ひげが縄張りとした事で他の海賊たちも白ひげを恐れて怒らせるような事をしなくなった……だったかしら。

 

更にハンマのせいなのかおかげなのかわからないけれど、天竜人が大半いなくなってしまった事によって今までよりも状況は良くなっていると予想しているんだけれど……彼らの言動を考えれば何も変わっていないのか、それともそれだけ恨みが深いのかどちらでしょうね。

 

魚人島へやってきた海賊たちを船ごと文字通り叩き潰していたハンマは…なにかスッキリしたような顔をしているから、理由は不明だけれど本当にストレスでも溜まっていたのかしら?

 

「ロビンお待たせ!なんだか久しぶりに海賊を叩き潰した気がするよ」

 

「そういえばシャボンディ諸島に来てからは海賊と戦っていなかったわね。麦わらくんたちくらいじゃない?」

 

「あれはレイリーからの交換条件だし特訓だからねー。それ以外だと……全然海賊と遭遇すらしてないんじゃないかな?」

 

今までの旅でハンマが暴れない日のほうが少なかった事を考えると、もしかしてシャボンディ諸島に来てから暴れてないのがストレスになっていたのかしら?楽しそうに海軍本部に行ったり同じ七武海のところに行っていたからそんな事はないと思うんだけれど……

 

 

「失礼…貴殿は王下七武海の鉄槌殿とお見受けする。我々はリュウグウ王国の近衛部隊。できれば王がお会いしたいという事なので宮殿までお越しいただけないでしょうか?」

 

「王様が?どうするロビン」

 

「やめておきましょう。ここは白ひげの縄張り…ただでさえ暴れているのに、これ以上余計な刺激はしないほうがいいわ」

 

「んー…わかった。それじゃ悪いけど俺たちはもうシャボンディ諸島に戻るからまた今度ね」

 

さすがにこれだけ暴れたら騒ぎになるでしょうし、海賊船を叩き壊すハンマーなんて振り回してたら誰が来ているかなんて一目瞭然よね。今のところ新七武海とはいえ『鉄槌』という名前と巨大なハンマーが目立つからなのか、ハンマの顔自体は一般にそこまで知られているとは言えない。

 

ちょうど海賊たちを殲滅したところでやってきたこの国の近衛部隊のようだけど…さすがに七武海の一角ということを考えれば慎重に行動したほうが無難でしょう。慎重にというなら暴れなければいいだけかもしれないけど、過ぎた話を言っても仕方ないわ。

 

それに魚人島に来れたのは気分転換もだけど、歴史を探求している私にとっては…魚人や人魚たちには悪いけどとても有意義なものだったわ。本で読むだけでは決してわからないものが現地にはある。私たちが何も思っていなくても魚人たちの中には『人間への畏怖や憎しみ』が小さな火種として残っているということを知れた。

 

『次』にいつここに来れるかわからないけれど、その時は王様たちからも話を聞いてみたいものね。

 

 

 

 

 

 

「ただいまレイリー!魚人島はなかなか楽しかったよ!」

 

「ほう、それは良かった。君たちの事だから目当ての物(ポーネグリフ)も見てきたんだろう?」

 

「え?普通に観光して交流してきただけだよ?」「待ってハンマ。レイリーさん、もしかして魚人島に……あったの?」

 

「ん?それを知っていてわざわざ行ったんじゃないのかね?」

 

「ハンマ、戻るわよ」「……え?」

 

 

思ったよりも『次』は早かったわ。

 

 

 

 



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38.

 

 

 

今、俺の目の前には白ひげ海賊団の2番隊隊長である火拳のエースが捕まって座っている。

 

なんでこいつがここにいるかというと…部下たちが賞金首を捕まえて修行するのに、シャボンディ諸島だけじゃ飽き足らずウロウロと海に出たのが原因だったらしい。さらにその海に出る原因は魚人島に行く前に「偉大なる航路をウロチョロしてみれば?」っていう俺の言葉だった。その言葉通りにどこかの無人島でキャンプしてたらいつの間にか参加している男がいて、そのまま騒ぎながら一緒になって飲み食いしてたら突然寝たんだそうだ。

 

上半身裸のその男の背中一面にはまるで見せつけているかのように白ひげのシンボルが描かれていて、ついでにバロックワークスにいたヤツらなんかは手配書もちゃんと見ている。更にいくら新世界の海賊だからといって…いや、新世界の海賊だからこそ、その戦い方や武勇伝なんかは前半の海だろうと伝わってくるもんらしい。

 

普通に戦って勝てるわけがないとわかっていたようで、さすがにどうするべきか迷った部下たちは『とりあえず捕まえてハンマさんに決めてもらおう』となったということだった。起きている時に襲いかかれば返り討ちになっていた可能性のほうが高かったが、寝てるそいつに海楼石の手錠をかけるのは簡単だったって報告された。

 

なんで海楼石の手錠を持ってるかって?海軍から受け取るのをこいつらに任せてたからだ。

 

そして俺を呼んでくるヤツと見張りをするヤツに分かれて俺の到着を待っていたらしい。

 

もちろんそいつも起きてから抵抗しようとしたらしいが、海楼石の手錠のせいで能力は使えないし…暴れようとしても痺れ薬とかを使われてまともに抵抗することをさせず簡単に連れてくることができたということだった。

 

それを聞かされて思った事は『こいつがここで出てくるかぁ……』だ。

 

いくら俺でも七武海や六老星になろうとしたり戦争を回避しようとしたキッカケの人物の事はまだ忘れてない。こいつが黒ひげに負けて海軍に連行され処刑される事になったからあの戦争が発生したんだからな。魚人島ではいつか白ひげをぶっ叩いてやると思ってたけど、まだその時じゃないとわざわざ回避したはずの戦争を起こしてやるわけにもいかんよなぁ……

 

「とりあえず初めましてだな。俺は七武海の鉄槌…でわかるか?」

 

「あぁ…噂くらいはな」

 

「ならいい。んでポートガス・D・エース…お前はなんで前半の海にいたんだ?」

 

一応俺の頭にあるあやふやな知識との違いがあるのか確認のために聞いてみたがだんまりを決め込んで答えようとしない。尋問なら脅すなり矢継ぎ早に詰問するなりすればいいんだろうけど、しばらく黙って待ってみたことで何か変わったのかエースが重い口を開いてくれた。

 

その結果エースの部下だったティーチが仲間殺しをして逃げたのを追っていて、ところがある時からまったく足取りを掴めなくなったということだった。それでも手当り次第に走り回って探してみたが一切痕跡も見つからず、新しい情報を求めると共に新世界との境であるシャボンディ諸島の近くへと戻ってみることにしたらしい。

 

なるほど…そこでバーベキューしている俺の部下(仮)がいて、一緒に盛り上がっていたら捕まったのか。

 

「エース、お前の探してる黒ひげは俺が殺しちゃった」

 

「……は?」

 

「お前の探してる黒ひげは俺が殺しちゃった」

 

「2回言うんじゃねェ!それは…本当なのか?」

 

「死体はない。地面のシミになってるからな」

 

別に隠す理由もないので俺がやったと教えてやったんだが、あまりの衝撃になかなか信じられないようだ。まぁ仇のはずの相手がミンチどころかシミになってるとか普通は思わないもんな。でもそうか…今考えれば俺はエースの代わりに仇討ちをしてやったわけだ。つまり白ひげにとっても俺に大きな借りができたと言っても過言ではないかもしれん。

 

「そうか…」

 

「そういうことだ。思い残すことがなくなって良かったな」

 

「…なんだと?」

 

殺された仲間の事を考えていたのか知らんがエースよ、今の状況で思いを馳せている余裕があるのか?仲間が誰もいない中で更に海楼石の手錠で能力も身動きも封じられて、しかも周りは七武海の俺とその仲間たち…どこをどう考えても人生の詰みだろ。

 

「ハンマさん、でも白ひげって仲間の死を許さないって噂じゃ…」

 

「そんなもん誰だってそうだろ。俺だってお前らが死んだらたぶん仇討ちくらいするぞ」

 

「ハンマさん…そうじゃなくって、下手したら戦争になるんじゃないっすか?」

 

周りでこの状況を固唾を飲んで見守っていた1人が戦争を示唆してくるが、こいつらにとってその心配は当然だろうな。この世界じゃないけど実際に戦争になったしね。じゃあ戦争が怖いからエースをこのまま見逃すのかと言えば、そんなことをしていて新世界でやっていけるわけもないしそんなつもりもない。

 

それに海軍に引き渡すくらいならビッグマムやカイドウに『ポーネグリフと交換』でエースを渡したほうが俺とロビンにとってメリットがでかいだろう。あいつらに「ロジャーの息子やるからお前の持ってる石碑くれ」って言えば納得してくれるんじゃないだろうか。

 

その結果ビッグマムやカイドウと白ひげが戦争になったところで海軍も政府も困らんだろ…たぶん。

 

もしそれすらもせずに今度の戦争になるかもしれない火種を取り除く方法があるとすれば…例えばエースを殺して、死体を白ひげのところに持っていって「エースは勇敢に戦った。最後の言葉は『すまねぇオヤジ…』だった」とか言えばいい。そんで黒ひげは俺が殺したって言えば、そこに嘘は言ってないしバレないだろ。

 

これならエースは穏やかにフェードアウトし、白ひげ海賊団はエースを悼むだけで済む。

 

とりあえず『ポーネグリフ引換券』にするか『亡骸との涙の再会』にするかはロビンに決めてもらおう。

 

「ねぇロビン。エースを殺して白ひげに送り届けるのと、ビッグマムやカイドウが持ってるだろうポーネグリフと交換するならどっちがいいと思う?」

 

「ビッグマムやカイドウがポーネグリフを持っているの?」

 

「それはわかんないけど、持ってないのなら交換しなければいいだけじゃない?」

 

「……白ひげはポーネグリフを持っていないような話し方だけど、それで言うなら白ひげも持っていても不思議じゃないんじゃないかしら」

 

っ!?そういえば白ひげがポーネグリフを持っていないかどうかなんてわからないんだ!

 

そう考えると話が変わってくる。やっぱりロビンに相談して良かったぁ…確かビッグマムとカイドウは本拠地というか自分の城を持っているけど、白ひげがどうなのかなんて聞いたこともなかったや。白ひげの縄張りなんてどこからどこまでなのかもわからんし、せっかく情報が手に入る札を持ってるんだから切り捨てるにはもったいないが過ぎる。

 

それにいくら白ひげでもエースの死体を持っていったからって自分が持ってるポーネグリフを見せてくれるとは限らない。それなら生きているエースを持っていったほうが好感度は稼げるだろう。

 

しかしそうなるとエースがどこかでヘマやらかして捕まる可能性だって残ったままになるが、もうそうなったらそうなった時だ。どうせアレコレ考えたところでうまくいく保証なんてないんだから当初の予定通り俺が強くなれば何も問題ない。

 

ただ何もせずにこのまま白ひげに引き渡すのもアレだから、悪いが保険だけはかけさせてもらおうか。

 

「エース、今から俺と決闘だ。俺が勝てば白ひげのところに戻って大人しくしてろ。少なくとも白ひげが死ぬまで傍にいろ」

 

「…おれが勝てば?」

 

「このまま解放してやる。それじゃいくぞ!」

 

「待て!その前にこの手錠を…ゴブッ」

 

フハハハハ!俺はエースの焦った声なんて聞き届けずにそのままハンマーを振り下ろしてやった!

 

悪いが俺は「今から」と言ったぞ?海楼石の手錠を外してからなんて言ってねェ!むしろ覇気も使わず巨大木槌で殴っただけ温情ある采配だと感謝してもらいたいもんだ。周りは「さすがに汚ェ…」とか「相変わらずえげつねェ…」とかドン引きしてるけど、なんでお互いが万全の状態でヨーイドンだと思ってたんだ。

 

そもそもお前らだってシャボンディ諸島で容赦ない海賊狩りしてただろ…そのせいで海軍からもシャッキーからも文句言われたんだからお前らに言われる筋合いはないはずだぞ。

 

それにこれでエースはフラフラすることなく白ひげの船にいることになり、俺たちは白ひげからポーネグリフを見せてもらえる。持ってなかったとしても『持ってない』ということがわかればそれでいいんだ。

 

「うっ…ぐぅ…」

 

「起きたか?決闘は俺の勝ちだな」

 

「クソ…」

 

意識を取り戻したエースに勝ちを告げてみたが文句はないらしい。ここでゴネるなら言葉責めでもしようかと思ってたけど、さすがに思うところはあれど言っても仕方ないということは理解できていたようだ。

 

このまま白ひげの船に連れて行かれると考えているんだろうが、それは甘いぞエースよ。

 

とりあえずこの無人島に居ても仕方ないしそろそろ移動しよう。

 

「ロビン、それじゃシャボンディ諸島に戻ろっか」

 

「ええ、まさかこんなことになるなんてね」

 

「白ひげがポーネグリフ持ってるといいね」

 

「高望みはしていないけれど…ええそうね、あるといいわね」

 

みんなでバーベキューの片付けをしつつ船出の準備をしていくが、それを見ているエースは少し驚いたような表情をしていた。こいつもまさか俺たちが後片付けまできちんとしているとは思っていなかったんだろう。

 

バロックワークス時代の部下たちは俺が率先して暴れていたせいで荒事よりもサバイバルに長けているからな。しかもそれぞれにきちんと役割分担ができていて、1つの集団としては非常に練度が高いと言っても過言ではない。

 

これで新世界での自衛ができるくらいになれればロビンが心配している事もなくなるんだけどなぁ…

 

 

 

……

………

 

 

 

「ただいまシャッキー!」

 

「おかえりなさい。今度はどこに行ってたの?」

 

「ちょっと迷子を拾ってね。ところで白ひげと連絡取れないかな?」

 

「それは…あなたたちの後ろにいる彼が関係しているってことでいいのかしら?」

 

シャッキーからミルクを出してもらいつつ、ついでに白ひげと連絡取れないか聞いてみたんだけどエースの事気になるよね。ここにいるのは俺とロビンとエースだけだ。部下たちは休んだり遊んだり、飯食ったり海賊捕まえたりしてるらしいから放っておいてる。

 

一応部下が捕まえて紆余曲折あった末に白ひげのところに戻すことになったと教えてあげて、ついでにエースにも何か食べ物を用意してもらえるように頼んでおいた。無人島ではバーベキューを食べたものの捕まってからは何も口にしていなかったらしく、エースの分もちゃんと用意しても毒を警戒してなのか食べなかったと聞いている。

 

まぁそれは当然の反応っちゃ反応なんだけどさすがにぼったくるけどお店であるシャッキーの料理なら食べないってことはないだろう。

 

「エース、この店はぼったくりバーだけど美味しいから食べとけ」

 

「…せめて食いにくいから手錠外してくれよ」

 

「いやお前自分の立場考えろよ」

 

背中にデカデカと白ひげ海賊団のマークを背負ってるヤツと俺が仲良く歩いてたら「鉄槌は白ひげと秘密裏に結託している」とか言われるかもしれないだろ。それでも手錠付けてる状態で襲われたらひとたまりもないだろうからって連れてきてやってるんだからむしろ感謝してほしいもんだぞ。

 

さすがに後ろ手に手錠なんてかけてるエースに「あ~ん」とかする気にもなれんし、されたエースもイヤだろうから手錠は前にしてやってるんだ。

 

「ふふっ、鉄槌ちゃん。あなたって本当に見てて飽きないわね。次は何をしでかすのかしら」

 

「割りと普通の事しかしてなくない?どっちかっていうと七武海になってから務めも果たしてないくらいにゆっくりしてるつもりなんだけどね」

 

「ハンマはそう思ってるかもしれないけど、見ているほうはそうは思わないものなのよ」

 

どうやら俺が思っているよりロビンは別のことを考えてたりするのかな?少なくとも七武海になってからって同僚に挨拶に行ったくらいで、後はシャボンディ諸島にいるからみんなが心配とか懸念するような事って起きてないはずなんだよな。

 

せいぜい部下たちが集まってきてシャボンディ諸島や周辺の海域で海賊を捕まえて海軍に突き出してるくらいで、これはどっちかというと島の平和の一端を担っているはずだ。聖地マリージョアの天気が悪くてハンマーが降ってきたのは異常気象だから仕方ないし、ロビンを連れ去ろうとした人さらいについては『まだ』何もしていない。

 

そんな事を思い出し無実であると自信を深めていたところでレイリーが帰ってきたらしい。そしてついでにルフィたちも一緒だったようだ。

 

「エェェスゥ!?なんでここにいるんだ!?」

 

「ルフィ!?」

 

ボロボロのルフィたちはまずエースを見て驚いていた。あと手錠ついてる状態で飯食ってたから驚きは余計に大きかったのかもしれない。まぁここにいて手錠かけられてて俺もいるってなれば予想するまでもないことだしな。

 

それでもエースからきちんと「鉄槌に負けて捕まっちまった」と聞くまでは信じられなかったようだった。とはいえ最近ルフィたちに修行を課して毎度ボコボコにしてるのは俺だし、更に俺の部下たちは容赦なく海賊を捕まえまくってるから納得できる部分もあるんだろう。

 

「なぁハンマ!!エースはおれの兄ちゃんなんだ!だから助けてやってくれ!!」

 

「…エースは今から自分の船に戻るから心配すんな。それよりしばらくは積もった話でもしとけ」

 

「そっか!ありがとな!!」

 

捕まえた海賊たちは全員海軍に引き渡されてる事も知ってるからか、いくらルフィといえど目の前でエースが捕まっててこれから引き渡されるかもしれないと思えばヘルプコールも当然っちゃ当然の反応だろうな。これがどこか他所の海賊とかなら助けようとするだろうし、たまたま俺だったから頼めばどうにかなるかもしれないと考えたのかもしれない。

 

まぁそんな事を頼まれる前にエースは白ひげのところに戻すってことで結論出てるから関係ないんだけど、わざわざそんなこっちの都合を話してやる必要もないだろう。

 

手錠付きとはいえ飯食って元気な様子のエースに安心したからか、そして無事にシャボンディ諸島までやってきたルフィを見たからか2人は楽しそうに話している。この時を除けば次にエースと会おうとすれば白ひげの船に行かないといけないから存分に話しておくといい。

 

もしかしたらレイリーのほうも何かエースに言いたいことがあるのかもしれないけど、そこは割って入るようなことはせずに楽しそうに眺めながら酒を飲んでいる。どうせならロジャー海賊団の武勇伝とか話してあげればいいのに…

 

「鉄槌ちゃん、白ひげの船と連絡が取れたわよ」

 

俺とロビンもシャッキーに作ってもらったご飯を食べつつゆっくりしていたら、どうやら白ひげと連絡を取ってくれていたっぽいシャッキーが電伝虫を持ってきてくれた。

 

 

 

『…エースは無事なんだろうなァ』

 

 

 

 



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39.

 

 

 

「やぁ白ひげ、俺は最近七武海になった鉄槌のハンマだ」

 

『あぁ、話は聞いてる。うちの息子を見つけてくれたんだってなァ』

 

「迷子になってたから保護しといたぞ。ただちょっと話したい事もあるからさ、俺としては父親であるアンタに迎えに来て欲しいんだ」

 

別に気にせずにいつも通りに飯食って騒いでいればいいのに、なんでか全員俺と白ひげの話を静かに聞いている。

 

別に取引をしようってわけじゃないし大した内容でもないんだから気にする必要ないだろ。確かに白ひげに来てくれとは言ったが、なんでウソップはそんな世界の終わりみたいな絶望の表情をしてるんだ?四皇に会うと死んでしまう病?それ普通に出会い頭に殺されてない?

 

だいたい迷子の子どもを迎えに父親が来るって普通のことだろ?

 

ロビンも何か言いたそうな顔してるけど、さすがに通話してるときに口を挟むようなことはしないのはさすがだね。

 

 

『グラララララ、生意気な小僧だ!このおれに迎えに来いだとォ?』

 

「ああ、難しい話じゃないだろ?ちなみに海軍とかにエースを捕まえた事は言ってないから罠とかは心配しなくていい」

 

『そんなこたァわかってる。センゴクならそんな真似はしねェだろうからなァ』

 

「そうなったら話もできないだろうから、わざわざこうやって連絡したってのはわかってもらえてるようで何よりだ。あ、あとエースの追ってた黒ひげは俺が殺しちゃったから悪く思わないように」

 

『…ほぉ、悪くは思わねェがテメェがあのティーチをか』

 

あれ?黒ひげを俺がやっちゃったの気に入らなかったのかな?悪く思ってないらしいけど一応自分とこの船にいたわけだし、もしかしたら思うところでもあったりするんだろう。だからってそれで文句言われるのはお門違いだし、この交渉が決裂するようならそれはそれで仕方ない。

 

白ひげの縄張りってのがどれくらいの規模なのかわからないけど、虱潰しに島を巡っていく事も視野に入れておくことになるだけだ。

 

とはいえ仲間殺しの裏切り者と現在進行系で息子のエースならさすがにエースを取るはずだ。

 

いや待て…考えてみればどっちかを選ぶなんて誰が決めたんだ?相手は世界最強と呼ばれている海賊なんだ。つまり「エースは返してもらう!ティーチは裏切り者だがそりゃおれの船の中の事だ!だから部外者のテメェがティーチを殺した分はテメェの命を供えてやらァ!」という世間ではまったく通用しない謎理論を展開するかもしれない。

 

まぁそうなったら戦うだけなんだけど…やっぱりセンゴク元帥に言おうかな。

 

「んで結局迎えに来てくれるわけ?それとも来てくれないわけ?」

 

『…迎えに来なけりゃエースを海軍にでも渡すつもりか』

 

「ん?つまり迎えに来てくれないってこと?」

 

『クソ生意気な小僧だ……いいだろう。テメェの誘いに乗ってやる』

 

「あー、勘違いのないように言っとくけど別に1人で来いってわけじゃないから。俺が連れて行ってもいいんだけど、まだちょっと新世界入りは先になりそうだから迎えに来てもらうだけさ」

 

『グララララ、その理由でこのおれに直接来いと言ってくる肝の太さは認めてやるがな。息子の迎えがてらそのツラァ拝みに行ってやらァ』

 

 

おお、交渉はうまくいったみたいで良かった良かった。通話が終わったことで電伝虫が寝たのを確認したのか、エースを含め文句を言いたそうなヤツらが多々いるが問題ない。

 

レイリーも久しぶりに白ひげに会いたいだろうし、エースも白ひげが来たら大人しくしてるだろう。そしてロビンは白ひげの縄張りにポーネグリフがあるか確認できるし、俺は…特にないけど良い事ずくめなんだからそこで文句を言うのも野暮ってもんだ。

 

さすがに白ひげもお忍びで来てくれるだろうし、海軍も世界政府も気付かなければ問題ない。バレたら「レイリーと久しぶりに会いたくなった」とか何かしら言い訳してくれるだろう。

 

「ねぇハンマ、どうして白ひげに直接来いなんて言ったの?」

 

「んー…白ひげにも言ったけど、もしエースを連れて行くとしたらもうちょっと先になるしさ。それなら迎えに来てもらったほうが早くない?」

 

「それなら白ひげじゃなくても良かったんじゃないの?」

 

「でも直接ポーネグリフの事聞けるしこのほうが話が早いと思っただけだよ」

 

今のロビンの特訓がどの程度進んでるのかわからないからなんだけど、それ言っちゃうと急かしちゃうみたいになるから言いたくないんだよな。俺たちはワンピースを狙ってるわけじゃないけど、ロビンの求めてる歴史の真実を知るためにはそれなりに深いところまで進まなきゃならないことは覚悟してるわけで…そうなれば戦いは絶対に避けられないことは間違いない。

 

俺の能力は巨大化させることだからそれをもっともっと極めたいっていう気持ちもあるし、その巨大化した攻撃はとにかく範囲が広いからロビンに怪我ないようにするにはある程度回避してもらえるに越したことはない。今の俺が本気の巨大化したらロビンに肩に乗ってもらっても小さすぎて気付かなさそうで怖いから、そのあたりも新世界に行くまでに解決しておきたいんだよね。

 

たぶん俺が見聞色の覇気を身につければ解決するんだろうけど、敵の位置を察知したり攻撃を避けようとするよりアラバスタの時のように…誰のどんな戦い方であろうと巨大ハンマーで叩き潰す俺の戦い方と合わないからかどうにも難しい。

 

考えてる案はいくつかあるにある…俺の知識と誰かの協力があればどんな相手でも戦えるようになるはずなんだけど、まだその当てがないのも事実。まぁそこは修行しつつ追々解決していくしかないだろう。

 

「おいハンマ!お前ェあの白ひげを呼び出すとか何考えてんだこのアホォォ!!!」

 

「ウソップお前結構失礼なヤツだな。別にお前らは会いたくないなら会わなければいいだけだろ?」

 

「お、おれは勇敢なる海の戦士だぞ!誰が相手だろうと逃げたりしねェ!」

 

さっき四皇に会ったら死んでしまう病だって言ってなかったか?でも別に麦わらの一味に同席してくれなんて言ってないんだから怖かったら別の場所にいればいいじゃん。ルフィが「エースのいる船の船長に会ってみたい」って言ってる?それはお前らで解決してくれ、俺ではどうしようもないわ。

 

「それにレイリーだって久しぶりに白ひげと会って話せるんだから懐かしい話もあるんじゃない?あとシャッキー、白ひげ来るまでエース預かってくれない?」

 

「ふむ…確かに懐かしい相手ではあるが、まさかこんな形での再会になるとは思わなかったよ」

 

「最悪引っ越しも視野に入れておけばいいかしら…彼を預かるのはいいけど白ひげが来るならお店改装しなきゃ入らないわね。鉄槌ちゃん、あなたが提案したんだから協力しなさいよ」

 

白ひげってシャッキーのお店を大きくしないと入らないってことかな?別に建て直さなくても俺がお店を巨大化させればいいんじゃない?あぁ、それはそれだけどお店の改装はしたいんだね。そして費用も俺が出せってことか…とりあえず賞金首探さないといけないや。

 

俺が指示したとはいえ部下たちが捕まえた賞金首のお金を使うのも気が引けるし、バロックワークス時代にやってた修行兼お金稼ぎを再開しよう!アラバスタの近くよりシャボンディ諸島のほうが質の高い修行と金稼ぎができるはず…なんだけど、部下たちが割りと普通に賞金首を捕まえてるとなると実力的にはそんなになのかな?

 

まぁアジトってほどじゃないにせよシャッキーのお店にはお世話になってるし、たまには売上に貢献してあげるとしようか。

 

「とりあえずそこらへんにいる賞金首持ってくればいいよね?何人くらいの首があればいい?」

 

「鉄槌ちゃんは運が良いわ。今シャボンディ諸島には億を超えるルーキーたちが来ているらくてね、そいつらを捕まえてくれたら手っ取り早いんじゃないかしら」

 

「へぇ~、やっぱ日頃の行いが良いと向こうからやってきてくれるのか。そんじゃちょっと狩ってくるよ」

 

 

 

「オイオイこんなところに店があったとはなァ」

 

 

 

ちょうど店を出ようとしたところで新しくお客さんが3人で入ってきたみたいだ。つまりこいつらも『賞金首歓迎』の看板を見てやってきたクチだな。いつもは店主のシャッキーが接客してるんだろうが今ここにはロビンを始めとしてレイリーにエースやルフィたちもいるし、それにルフィもエースもよく食うから俺が手伝ってやるとしよう。

 

「いらっしゃい、3人さんは賞金首でよかったか?」

 

「あぁ?オメェ…なんかどこかで見たことあるような顔だな?」

 

「まぁ気にすんな。とりあえず飲め飲め!!」

 

「迎え酒ってヤツかァ?気が利くじゃねェか!!」「まったくだ!!」「ギャハハハハ!!」

 

俺の顔を見てすぐに気付かなかったのがお前たちの運の尽きだ。しっかり味わって飲めよ…お前らこれから当分禁酒生活になるんだからな。酒飲んで楽しそうにしてるし好きなだけ飲ませてやってもいいんだが、こいつらの首じゃあお店の改装費用に全然足りなさそうだしなぁ…

 

このまま殴り倒してもいいんだが、それは前にシャッキーから「客のうちは手を出すな」って止められたような気がするし…止められたっけな?いやそれは部下たちが痺れ薬盛ったから言われただけで俺が言われたわけじゃなかったかもしれん。

 

とはいえ今は横にロビンがいるし…さっきも心配させちゃってるような事を言われたから、ならば今から俺がちゃんと接客とかできるところを見せてあげるとしよう!

 

「さてお客さんたち…お楽しみのところ悪いが、現在のお会計は9億ベリーになるんだがお財布のほうは大丈夫か?」

 

「「「ハァァァァァ!!!!????」」」

 

「おいおい、酒1杯2億ベリーで席料が1人1億ベリーなんだから合計9億ベリーで合ってるぞ?」

 

「フザケんじゃねェェ!!ぼったくりにも程があるだろこのボケェェェェ!!!」

 

前も思ったことだけど派手に驚いた表情をしてるがちゃんと店に『ぼったくりバー』って書いてあるぞ?なんでわかってる店に入って来てるのに驚くのかこいつらの心境がわからん。隠すことなく書いてあるんだから予算は多めに持って来るのが普通だろうに…

 

すべてが言い値で後から法外な値段を押し付けられる店に比べたら、このシャッキーの店ってめちゃくちゃ良心的だと思うんだよ。

 

とはいえ店主であるシャッキーはなんか呆れてるみたいな表情してる。これはもしかして「わたしの店のお酒がそんな安いわけないでしょう…」って顔か?俺としてはぼったくろうとしてたけど、シャッキーからしてみれば割安料金で提供しちゃってたってことか…ぼったくり道って奥が深いんだな。

 

 

 

結局この賞金首たちは払えなかったみたいで暴れようとしてたんだが、珍しくハンマーを使わずに素手でボコボコにしておいた。もしハンマーなんて使ったら店は確実に廃墟になるし、エースが寝泊まりするところもなくなったりで大変だからね。俺は気遣いのできる七武海なんだ。

 

「「「も、もう…ゆ…ゆるじで……」」」

 

「何言ってやがるんだ。お前らがちゃんと金を払えばそれで済む話だろ」

 

「だがらって…9億は高ずぎる…」

 

「これがお前らの命の値段だと思え。それでも安いのか?」

 

「「「…………」」」

 

謝って泣きつけば許してもらえると思ってたのかわからんが、こいつらは賞金首なのにわざわざ見逃してやる理由もない。ただ「見るに堪えないから有り金全部で許してあげなさい」というロビンの言葉に光を見たのか…賞金首たちが提示してきたのは金じゃなくて悪魔の実だった。

 

何の実なのかはわからないけど、これが今こいつらが持ってる財産らしい。金や宝石とか持ってそうだったんだけど、こいつらが言うには「これから新世界に入るから、万全のために金は全部用意に当てた」ということだった。なんでそこらへんは計画的なのに飯食う店だけ金払おうとしなかったのか理解に苦しむな。

 

まぁ俺だって鬼じゃない。酒代についてはこの悪魔の実とこいつらの懸賞金で勘弁してやるよ。

 

悪魔の実を取りに行くついでに近くにいた部下にこいつらの船の回収と海軍へ連れて行くことを頼み、とりあえず俺は自分の船に回収した悪魔の実を置いておく。誰かに食べさせてもいいけど何の実なのかもわかってないし、大ハズレの能力とかだったら可哀想だからだ。

 

俺が食べた時は生きるか死ぬかの瀬戸際だったしロビンは出会った時から能力者だったから仕方ない部分があるけど、そうじゃないのならせめて知ってから食べるか決めたいと思うだろう。

 

「あいつら大したお金にならなかったよ。後でシャッキーの言ってたルーキーでも捕まえてくるわ」

 

「え?彼らの持ってた悪魔の実で許してあげたんじゃなかったの?」

 

「うん、無銭飲食については許してあげたけどそれと賞金首捕まえるのは別じゃない?」

 

「あら、珍しく優しいと思ったらそういうことだったのね」

 

お店に戻ってロビンに賞金首の事を教えてあげたら海軍に突き出したことを納得してた。なぜかレイリーはおかしそうに笑ってるし、エースやナミたちはドン引きしてるけど俺は普通にぼったくっただけだぞ。

 

てか今ここにいる賞金首ってレイリーを除けばエースとルフィだけなんだよな。

 

 

 

ルフィは賞金額6000万ベリー?3000万で偉大なる航路入りしてゲッコー・モリア倒しただけしか知られてないからそんなもんなんだ。

 

 

 

 



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