白兎は正義に憎しみを抱く (暗闇水明)
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プロローグ
Chaptear1誓い


こんにちは。暗闇水明です。今回から連載にすることになりました。更新ペースは活動報告通りなのでよろしくお願いします。


ある日のことだった。僕の村が焼け落ち、辺りには血が広がっていて周りには死体の山だった。そこに殺していた一部を僕は見てしまった。一人の緑髪のエルフの女は何やら詠唱を使い村の建物を壊しそれに続くように次々と虐殺が起こった。黒髪の女にピンク色の小柄な女も次々と村の皆を殺していた。お爺ちゃん、おじさん、友達も皆殺された。恐怖で足がすくんで逃げようにも逃げられなかった。その時だった。その女の集団がこちらを向いたのだ。

 

「あ・・・やめろ・・・来るな・・・」

 

逃げようと走ろうとしたがこけ地面に転ぶ、音が聞こえたのかそんな自分の目の前に容赦なく女達は近づいてこようとしてきた。

 

(怖い怖い怖い怖い怖い、動け動け動け動け動け動け!!殺される殺される殺される!!)

 

死ぬ・・・そう直感したときだった。その時だった。

 

「捕まって!!」

 

赤髪の女性が現れ僕を担ぎ森に逃げた。少しの浮遊感が僕を襲いいつの間にか着地をしていた。その時あの女達は何かを叫んでいるようだったがやがて村の出口をでた。その時安心と恐怖と共に僕は燃える村を見て深く意識を落とした。

 

 

 

 

「ウ・・・ン・・・?」

 

気づいたときには僕は洞窟にいた。辺りが暗い中目の前にはパチパチと焚き火が突いており体にはぬくもりがあった。そこにさっきの赤髪の女性がいた。

 

「あ!起きた?大丈夫?!」

 

僕が起きたのに気づくと赤髪の女性がそばに駆け寄り僕の顔を触れた。

 

「うん!大丈夫そうね、スープ飲んでいて。体もう少し温めとく必要があるから」

 

そう言ってスープを差し出す。最初は毒でもあるかもと思い警戒していたが赤髪の女性は優しく微笑み僕の頭を撫でた。

 

「大丈夫、毒が入っているならとっくに殺しているし何より私も逃げてきた身だから」

 

そう言って赤髪の女性は一緒にスープを飲んだ。それに僕も安心しスープを飲んで暫くして体が温まった気がした。

 

「あの・・・あなたは?」

 

僕はふと彼女のことが気になっていた。何故彼女があの場にいたのか気になったからだ。少し彼女はうつむいたがすぐに顔を上げ名前を告げた。

 

「ああ、私?私はローゼ・ア-リヴェル。私も彼女たちから逃げてきたの、旅人で途中からあの村に行っていたんだけど・・・」

 

「そう・・・なんだ・・・僕はベル・・・ベル・クラネル」

 

「ベル・クラネル・・・うん、いい名前ね」

 

暫くして混乱していた頭がだんだん理解できた。僕の家族と友達、おじさん達も皆死んだ。あの女達のせいで・・・次に出てきたのは怒りと悲しみだった。何故僕の家族は死ななければならなかったのか、何故僕の友達が死ななければならない、何故僕の大切な場所を奪われなければならない!そこに僕は拳を握りしめる。唇をかみしめそこからは血が垂れていた。

 

「ちょ・・・?!唇から血が流れているわよ!!」

 

それに気づいたのかローゼは唇を拭いてくれた。しかし今の僕には憎しみの感情と怒りにあふれていた。外の空気を吸いに行くと言い僕は洞窟の出口にたっていた。辺りは夜で星が輝いており僕を見下ろしているようだった。

 

「お爺ちゃん・・・おじちゃん・・・おばさん・・・皆・・・ッ!」

 

星が見守る中僕の涙腺は川の防波堤のように壊れた。

 

「ウ・・・ア・・・アアアアァァァァ!!」

 

星が見下ろしている中僕はそこで泣き崩れた。僕の泣き声が盛り中に響き渡る。その時の泣き声は何時もより遠くに響いた気がした。もっと僕に力があれば・・・もっと僕が強ければ・・・そう思って涙を流し続けた。後悔、絶望が僕に襲った。暫くして泣き止むと僕にあることが頭に浮かんだ。それはきっとお爺ちゃん達は望んでいないかも知れない。それでも耐えられなかった。

 

「あいつらさえいなければ・・・」

 

そして見下ろしている星に向かい僕は復讐を誓う。

 

「絶対・・・絶対あの女達を殺してやる!!一人残らず皆殺しに・・・ッ!!」

 

それに答えるように星はまた輝きだした。その時そばでローゼが涙を流しながら僕を見つめていたのはこの時はまだ知らなかった。

 

ベルside end

 

???side

 

私アリーゼ・ローヴェルは大きな罪を犯した。私たちのファミリア『アストレア・ファミリア』はジャガーノートを苦しみながらも討伐し闇派閥の残党があの村を集落にしていると私たちは聞きつけここで終わらせようとしていた。既にブラックリストで殺すようにギルドにも言われ襲撃したのだがここで私は取り返しのつかないことをしてしまった。この情報が誤りであり本来の襲撃するべき場所はここから北の3kmはなれた廃墟だったのであった。それで私が気づいていた時は皆襲撃が激化していた。この時からもう虐殺に入っていたのだろう。ジャガーノートの恐怖もあり皆気が動転もしていたのだ。止めようにも虐殺はひどくなってゆく。このままではと思ったそのときだった。

 

「あ・・・やめろ・・・来るな・・・」

 

白い髪の小さな男の子がいた。このままでは彼女達に殺されるかも知れないと思い彼を逃げさせた。

 

(せめて・・・せめてこの子だけでも!)

 

「捕まって!」

 

私は仲間達の声を無視して森を突っ切った。その後途中であったヘルメス・ファミリアにお願いし闇派閥の残党を全滅させてもらった。そして私はこの少年を安全な洞窟に避難させそして寝かせた。一旦ヘルメスに様子を見てくれるよう頼みオラリオに戻ったが私が洞窟に戻るまで起きなかったという。それも当然だろう、あんなことがあったのだから。オラリオでは責任について全て私の責任として団長を辞めオラリオから追放された。普通なら処刑されることだったが闇派閥の件もあり処刑は免れたという。メンバーの皆のことも考えてできる限り責任を私のほうに寄せ付けた。それで追放されるときは住民から石を投げられたりもしたが・・・あの時のアストレア様の顔は悲しそうにそして心配しているような目だった。追放される前アストレア様は

 

「どんな過ちを犯しても、私はあなたの味方よ。それだけは覚えておいて」

 

そう言って抱きしめてくれた。あの言葉と温もりは今でも忘れられない。

 

「最後までお人好しだったなぁ・・・あの神は・・・」

 

そう言いながら私は彼の頭を撫でる。

 

「にしてもこの子・・・可愛いわね」

 

今も彼が寝ている。白い髪で兎のような可愛い寝顔を見て頬を触る。自分にそんな資格はないと分かっておきながら。

 

(私はこの子の大切なものを・・・)

 

寝顔を見ていると罪悪感が重くのし掛かる。彼の幸せな日常はこの日の境に消えてしまった。それは正義の眷属にはあってはならないこと。私のミスで彼の日常を奪ってしまった。イヤそれどころではない。私は虐殺を起こしてしまった。あの村の住民を、彼の家族を、何も罪のない人間をこの手で殺してしまった。その事実だけが私に重くのし掛かる。私に抗えぬ罪だ。どうすれば彼に罪滅ぼしをしてやれるのだろう。そんな甘いものではないとはっきり分かっている。でもこの子は私のせいで孤独になってしまった。ヘルメス様が言うにはこの子のためには私がそばにいることがいいと伝えられていた。孤独はこの世で一番の毒だ、それを補うのは誰かが彼によりそうこと。それが今私にできる唯一のこと。だから私はこの子のためにも・・・そばにいよう。そう、誓ったその時だった・・・

 

「ウ・・・ン・・・?」

 

「あ!起きた?!大丈夫?」

 

あの子が起きた。私は急いで彼の元による。顔に手を当ててちゃんと脈や体温が正常かどうか確かめた後私は急いでスープを作って渡した。しかし渡しても飲まなかった。もしかしたらと思い声をかけた。

 

「大丈夫、毒が入っているならとっくに殺しているし、何より私も逃げてきた身だから」

 

すると急に飲み始める。やっぱり疑われていたのかと思い少し落ち込む。それに構わず飲み続けている彼はふとこちらに目を向けた。

 

「あの・・・あなたは・・・」

 

ここで私には少し答えるのを戸惑った。自分が本名で名乗ったらアストレアファミリアの団長だと聞いた時彼は私を殺しに掛かる。本来はそうされるべきなのかも知れない。でもその後は彼が一人になってしまうことを恐れていた。自分が死にたくないための言い訳かも知れない。それでも、私はこの子を一人にはさせたくない。だから・・・

 

「ああ、私?私はローゼ・アーリヴェル。私も彼女たちから逃げてきたの、旅人で途中からあの村に行っていたんだけど・・・君は?」

 

私は嘘をついた。多分今までの人生の過去で一番、最低な嘘だろう。名前も正体も何もかもなかったことにしてしまったのだから・・・

 

「そう・・・なんだ・・・僕はベル・・・ベル・クラネル」

 

そう言って彼はスープを飲み干す。

 

「ベル・クラネル・・・うん、いい名前ね・・・」

 

そして私が微笑みかけたがいつの間にか彼が唇から血を流していた。

 

「ちょ・・・?!唇から血が垂れているわよ!」

 

彼の唇を拭いたが彼の表情からその痛みと憎しみ、怒りが私の心に痛いほど響いた。

 

「少し外の空気を吸いに行ってくる」

 

暫くして彼がそう言ってきたので私は少し心配になり後をつけていた。そこに彼は涙を流しながら夜空を見上げていた。そこには家族、知り合い、友達のことで泣いていた。その姿に私は更に心が痛む。そして彼は何か言ったようで星を見ていた。

 

「絶対・・・絶対あの女達を殺してやる!!一人残さず皆殺しに・・・ッ!!」

 

狼のような目つきをしながら虚空の空を見上げ、涙を流しながらそう叫んでいた。

 

(私は、何という過ちを犯してしまったの・・・)

 

その姿に自分の罪の重さと彼の悲しみが胸に響いて涙を流したのだった。

 

 



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Chaptear2

はい、連載になって2話目です。最初は何も知らない状態のベルです。あの話から数週間後の話です。




「さて・・・どうしようかしら・・・」

 

3日くらい洞窟で過ごして私アリーゼ・ローヴェルもといローゼ・アーリヴェルは今超絶ピンチだった。とりあえずオラリオに追放させられて彼のそばにいることを決めた私だったのだがここでとある問題に気づく。お金もある程度あるし衣類などはいくらか持ってきているし食料も魔石さえ狙わなければモンスターから取れる。問題は・・・

 

「家のことを全然考えていなかったわ!!」

 

そう、人間に必要な衣食住の一つ『住』、つまり家がないのだ・・・これは一大事だ。住む場所が無い為寒さも今回の洞窟のような場所があっちらほっちらあるわけでは無い。つまり住む場所が無い。この洞窟も冬は越せるかどうかも怪しいのだ。何より水の問題もある。早く見つけないとこの子の体力がやばいし何より旅人って言っちゃったけど旅の経験は私には全然無い!!冒険者で遠征はあるけども実際それしかないもの。しかもその時は皆でやってきたのだから、小さな子連れて二人で旅するなんて難しすぎる・・・辺りは夜で今悩みまくった結果現実逃避に星を眺めていた。

 

「ローゼ・・・」

 

そこにベルが泣きながらこちらにやってきた。最初は警戒をしていたのだが夜が明けたらすっかり懐いた。兎みたいで懐いたときは可愛いなとも思っていた。「どうしたの?」と、聞いたら怖い夢、村のことを思い出し寝られなかったらしい。起きたら私がいなく焦ったらしいが私の声を聞いてこちらにやってきたと言う。

 

「お願い・・・いなくならないで・・・そばにいて」

 

ふと、彼はそうこぼしポロポロと涙を流し、体を震わせており私の胸に顔をうずくめる。彼の過去が、トラウマがフラッシュバックしたのだろう。それも幼い子どもには大きすぎるほどに・・・少しはなれただけでも誰かがいないと駄目なほどこの少年はあの日が怖かったのだろう。今更自分勝手なことをしてしまいひどく後悔した。

 

「大丈夫・・・私はここにいるよ」

 

そっと抱きしめ頭を撫でる。この子は今愛に飢えている。家族と呼べる人は現状私しかいない。だからこそこの子の傍にいなければならない。今はそれでしか償いができない。

 

「ねぇ、一つ提案があるんだけど」

 

「ン・・・?」

 

一つの考えが私に降り注いだ。それは少し危険だがこれしかないだろう・・・

 

「私と一緒に旅をしない?」

 

「え・・・?」

 

ベルはキョンとした表情で私を見つめる。

 

「私は旅人って言っていたけど実際かなりの素人なの・・・本当は誰かに預けるべきなのかも知れないけど私自身君が心配だし何より君の意思を尊重したい。私と一緒に旅をしてみる?家探しという物もあるけど・・・」

 

そう言ってベルは少し考え込む。謎の緊張感で時間が長く感じた。そして暫くするとベルは腕をつかんで来た。

 

「行く!僕、ローゼの傍にいたい!」

「そう、じゃあ行こうか!!」

 

「うん!!」

 

こうして私たちの旅は始まった。

 

アリーゼside end

 

ベルside

 

夢を見た。僕の村が焼けそしてあの女達を目にしたとき急いで逃げている夢。そこに黒髪で極東風の女が目の前に来た。後ろに逃げようとするも後ろには緑色の髪をしたエルフの女が立っていた。

 

(ローゼは?!ローゼは何処?!)

 

辺りを見つめるがローゼの姿は見当たらない。それをしている間に黒髪の女が刀で切りつける。

 

「・・・ァガァ・・・・」

 

クビに切りつけられ声帯をやられたのか声が出なくなった。クビからは血が流れている。それに動じて倒れる。段々と意識が薄れていった。

 

「ロ・・・・・・ゼェ・・・・・・」

 

そして僕の意識が落ちる前になにかドシャッという音が聞こえた。段々と地面が赤く染まる。最初は自分の血かと思っていた。しかし血が何か違った。ふと顔を持ち上がるとそこには・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔まで血に染まって倒れていたローゼだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

悲鳴を上げて僕は毛布から飛び上がった。額には汗があり呼吸は荒い。急いでローゼを探すもいなかった。何処に行ったの?まさか殺された・・・?あいつらに?違うそんなことは無い!あいつらはここまで来ないはずだ・・・!どこだ?何処だ?何処に行ったの?何処何処何処何処何処何処ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコ

ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコ?

 

いないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイ・・・

 

「どこにいるのぉ・・・ローゼェ・・・」

 

恐怖で僕は足がすくんだ。この感覚は村の虐殺と同じ感触だった。恐怖に震え僕は倒れ込む。大切な人がいなくなる。その恐怖が何より怖かった。そして僕は泣き叫ぶ。その時だった、洞窟の外にローゼの声が聞こえた。僕は急いででローゼの声が聞こえた方に向かう。そして洞窟を出口の横でローゼがいた。

 

「ローゼ・・・」

 

「ベル・・・?どうしたの?」

 

間違いない、ローゼだった。その声を聞いた途端僕は勢いよく彼女に抱きついた。

 

「ワ・・・大丈夫?」

 

そう言ってローゼは僕の頭を優しく撫でた。この体温、優しい手、間違えない彼女だった。ちゃんと生きている。死んでない。ちゃんとここにいた。

 

「どうしたの?何かあった?」

 

そう言って優しい笑顔で優しく撫でてくれる。そこで僕はあの悪夢のことを話した。

 

「あのね・・・あの女達の夢を見て・・・それで僕が殺された夢を見て・・・」

 

「うん・・・」

 

黙って僕を撫でて話を聞いてくれる。僕は話を続ける。

 

「それでね・・・ローゼも殺されちゃう夢を見て・・・」

 

段々と僕の唇が震える。当然声も震えた。そして話し続けているうちに涙を流した。

 

「起きたとき、ローゼがいなぐなっだと思っで・・・それで怖ぐっで」

 

もはや涙で声が拭み他人からみたら何を言っているのは分からないだろう。それほど泣いて声が震える。

 

「お願い・・・いなくならないで・・・傍にいて・・・」

 

そう言って僕はローゼの胸に顔をうずくめる。そしてローゼは僕をそっと抱きしめ涙を流してくれた・・・そして彼女は

 

「大丈夫・・・私はここにいるよ・・・」

 

そう言ってくれた。それがたまらなく嬉しかった。家族がいる。大切な人がそばにいてくれるだけで本当に嬉しい。そして暫く僕は泣き続けた。ローゼも一緒にないてくれてそして優しくそれでいて強く抱きしめてくれた。暫く泣き止んだ後もローゼは抱きしめてくれた。

 

「ねえ、一つ提案があるんだけど」

 

「ン・・・?」

 

「私と一緒に旅をしない?」

 

「え・・・?」

 

突然のことに少しびっくりした。もしかしたら預けるとかでまた離ればなれになるかも知れないと思っていたのだ。実際、大体はそうなるだろうと思っていた。旅というのはとても危険だと言うことは分かっていた。僕もお爺ちゃんに聞いたところ両親が死んで預けられたような感じだったので少し怖かったのだ。ローゼと離れるのが・・・聞いたところローゼは旅人でも初心者だったらしい。これから大変な旅になるかも知れない。それでもついていくかどうかを聞いてきた。外には怖いモンスターもいるとおじいちゃんは言っていた。正直怖かったのもある。実は一度モンスターに会ったことがあるのだ。その時はゴブリンだったがそれでも恐怖はあった。幸お爺ちゃんが助けてくれたがそれでもあの恐怖心はある。でも・・・

 

「行く!僕、ローゼの傍にいたい!」

 

あの女達に比べれば、ローゼがいない恐怖に比べたら昔のモンスターが怖いことなんてきれいさっぱり忘れた。怖くなくなったのだ。何か不思議なのだがローゼと一緒ならどんなモンスターでも怖くなくなってきた。ローゼとなら何処にだって行ける。それが地獄の道だろうが関係ない。僕は彼女とともに歩くことを決めたのだった。それに・・・もしかしたらあいつら・・・村の皆を殺した手がかりを見つけられるかも知れない。そしたら何が何でも強くなって奴等を殺す!

 

「そう・・・じゃあ行こうか!」

 

「うん!」

 

こうして僕達の旅は始まったのだった。

 

 




はい、今回はここまでです。暫く旅の話が続きます。オラリオの話はもう少し後になります。最初はアストレア・ファミリアのことも知りません。これからどんどん真実に迫っていくベル君にご期待を!


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鍛冶の街
Chaptear3鍛冶師の都市


こんにちは、今回から暫く旅を続けさせます。アーディもそろそろ出す予定なのでお楽しみに!ちなみにアリーゼは今作ではとあるキャラに似せています。誰なのか当ててみてください。それではどうぞ!


朝日が照らし広い草原の中カラカラと馬車が走っている。私と兎が最初に訪れる街が朝日から出ていた。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「ホラ、ベルもうすぐ着くよ」

 

うん、なんか普通に可愛い。寝顔がとても素敵だ。ほっぺはマシュマロみたい柔らかく白い肌・・・今度女装させてみようかしら。

 

「フェ・・・?」

 

「もう・・・お寝坊さんね」

 

「うう、ごめん」

 

寝起きで現れたベルは天使だった。やばい超可愛い・・・あれ?男の子って何だっけ・・・まぁこの瞬間思ったことは・・・

 

(結婚したい・・・・)

 

それだけだった。

 

あれから数週間私たちは旅をしてきた。まぁ旅と言っても山を登りキャンプしていたようなものだったが・・・とは言ったもののそれは地獄であった。

 

山登りをしたのだがなぜか思うように体が動かせ無くて草に引っかかったことがあり更には斜面崩れて転げ落ちたりとか(斜面の大きさは5度程度で高さもそんな無かった)していた。更に言えば食料を調達するときもなかなか外の植物はしらず危うくベルが教えてくれなければ食あたりになりそうになったりと色々ボロボロだった。ちなみになぜかベルに足引っ張ってばかりなんだけど?あれ、おかしいな?一応最低限の自衛のために恩恵はあるはずなんだけど?レベル4よ私・・・まぁそんなこんなで色々あったのだがそれはそれで色々充実したのであった。そして何処に行こうかと話していたところここの近くに都市があると聞いたので向かうことにした。

 

「ここだよね・・・」

 

「ええ、ここが鍛冶師の都市・・・サレルメスよ・・・」

 

私たちは鍛冶師の都市サレルメスについた。

 

「でも何でここに?」

 

「いや~少し自衛用の武器が欲しくて・・・この武器壊れてもう使えないし・・・御守りとして持っているんだけど他にもね・・・」

 

「へぇ~」

 

一応アストレア・ファミリア時代にいた私の武器は持ってはいる。だがこれはいざというときの為に使うようではある。この武器が分かってしまえばいずれかはばれるかも知れない。更には多分耐久の問題もあるため壊れる可能性はある。そうならないためにもとりあえず別の頑丈な武器を持たなくてはいけない。もう一つオラリオで準備したのもあるがそろそろ壊れるだろうとも思っていたのだ。まぁそんなこんなで今はこの街に来ている。

 

門を出た後(ここには検察はそこまで必要ない)とりあえず街を歩く。とりあえず宿を取った後私たちはここの都市独自のギルドに行くことになった。

 

ギルドと言ってもオラリオを本部としているグループだけでは無い。こうやってこの街だけのグループのギルドだってある。それを調べ上げて一番近かったのはここなのだ。

 

「すいませ~ん」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「はい、自衛用の武器を作って欲しいのですがどこかいいところありませんか?」

 

「分かりました・・・少し待っていてくださいね、今リストに載せますから」

 

「ありがとうございます」

 

受付の人がとりあえずリストを作っている間私たちはギルドにある酒場に来ていた。そこで昼食をとっている間の時だった。

 

「ねぇローゼ・・・ローゼって旅人になる前は何をしていたの?」

 

「え・・・?どうして急に?」

 

「うん・・・ローゼって色々抜けているところがあるけどいざというとき強いし、昔何していたのか気になっていて」

 

ベルが昔のことを聞いてきた。そう言えば私はベルの名前と誕生日くらいしか知らない。つまりまだお互いのことは詳しく知らないのだ。少し悩んでいたがとあることが私の頭の中でひらめいた。

 

「そうね~じゃあまずベルから教えて!」

 

「え・・・何で?」

 

「だって~私が教えるだけじゃ不公平じゃない?それにこの超絶美人のこの私の話は1日じゃ収まりきれないからね!!」

 

「う~ん分かった!じゃあまず何からはなそうかな~」

 

そう言ってはなしてくれた。少し安心してしまう。ここで聞いたがベルは両親がおらず代わりに血はつながっていないが祖父が世話してくれたのだという。祖父は少し変人だったが優しく息子のように育ててくれたとベルは幸せそうに話してくれた。子どもの時は英雄譚を読ませてくれたとも話してくれた。

 

「それでね、お爺ちゃん。よく、「オラリオに行けば可愛い女子がたくさんいる。そこでハーレムを築くのじゃあああ!」とか言ってたよ」

 

「マジで・・・?」

 

「うん、まじで・・・ところでハーレムって何?」

 

聞いてみたところなんかベルのお爺ちゃん、こんな純粋な子になんてことを教えているのか・・・少し怒りもあるがここはとりあえず・・・・・・・

 

「良かった・・・ベル、いい?それは知らなくていいことなのよ。なんせこの美人お姉さんの私がいるのだからね!」

 

忘れさせよう!ハーレムなんざ作らなくていいし何よりそんなこと知ってしまえば私のベルは・・・でもベルも男の子だし・・・イヤ駄目でしょう!ハーレム作りたいなんてそんなこといざ大人になって知ったらきっと・・・よし、ともかく!ベルのお爺さん・・・私のベルが変態になってしまわないようにあなたの教えたハーレムはベルには忘れさせてもらいます

 

「アア、うん・・・」

 

ベルは冷や汗かきながらこちらを見つめていた。そこに酒場にいる全員の視線が刺さる。アレ・・・?皆さん、何その目?なんか痛々しいような目で見つめるの止めて!

 

「うん、大丈夫・・・ローゼ自身がローゼは美人だから・・・」

 

あ、なんか少し嬉しい。じゃなくて他の人たちがうなずきながら目をそらしているんですけど!なんか普通に悲しくなってきたわ・・・

 

「でも・・・もうあの日々には戻れないんだな・・・」

 

そう言った途端急にベルは涙を流した。その姿にまた罪悪感がのし掛かった。

 

「こうなるんだったら・・・もっと・・・お爺ちゃんや皆と遊びたかったなぁ・・・もっと英雄譚を読ませて欲しかったよ・・・」

 

そうしてうつむきながら涙を流す。その姿を見て私は思い出す。そうだ・・・普通、私はこの子に殺されるはずだったのだ・・・本来ならそうなるはずだった。だが今は彼によって生かされている。そう、分かっているはずだった。いつの間にか意識が家族の感情になっていた。罪悪感が私を呼び戻す。

 

「ごめんね・・・思い出させちゃって・・・」

 

何をしたらいいかも分からずに私はとりあえずベルを抱き寄せ頭を撫でる。この頃周りは状況を察したのか酒場では騒いでいたのが少しの間だけ静かになった。

 

「ごめんね・・・急に泣いちゃったりして」

 

「ううん、私もごめん・・・大丈夫・・・これからは私が傍にいるから・・・それに・・・誰だってあんなことになったら泣くよ・・・」

 

「・・・うん」

 

暫く静寂が続きベルは涙を止める。そして笑いながら楽しそうに話の続きをしようとしていた。

 

「ねえ、ローゼはどうなの?昔何をしていたの?」

 

「私・・・そうね~なんて言えばいいのかしら?」

 

その途端私は何を言おうか迷っていた。なんせオラリオのことを話してしまえばアストレア・ファミリアの皆も危ない。なので少しごまかすことにした。

 

「私はね・・・とある都市の騎士だったの。モンスターから守るためにね・・・」

 

「へぇ~」

 

「でも、なんか私達の部隊、他の皆が実力不足で解散しちゃって・・・引退して何をしようと迷ったとき知り合いから旅をしてみればって・・・それで最初にやってきたのが・・・・・」

 

「僕の村だったんだ・・・」

 

ああ、また私は嘘をついた。ホント・・・最低だなぁ・・・私は・・・もう皆に会わせる顔がないや・・・罪悪感がより一層重なる。

 

「まぁ・・・その時騎士の経験が役に立ったわよ・・・こうしてあなたに会えたのだから」

 

そうして頭を撫でる。分かっている、この手は血で汚れていることぐらい。私が撫でる資格なんて無いのに・・・だけど・・・やっぱり駄目だ。どこかでこの子と一緒にいると楽になってしまう。罪を・・・忘れてしまう・・・そんなことあってはならないのに・・・

 

「ローゼェ・・・長い・・・」

 

「あ、ごめん・・・」

 

思わず長く撫でていたようだ。ベルは気持ちよかったのか暫く顔が赤くなったが・・・

 

「あのすいません、リストができました」

 

暫くして受付の人が来た。

 

「ベル・・・どうしようか・・・」

 

「とりあえず今日は遅いから明日にしよう・・・」

 

「そうだね・・・」

 

私達はリストを受け取った後ギルドを後にし宿に向かうのだった。

 

 




はい、今回はここまでです。とりあえず鍛冶師の都市は次回くらいで終わります。(と言うか都市を2話ずつ投稿の予定)

では、また次回で。


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Chaptear4現実

こんにちは、今回はオリキャラが出てきます。それではどうぞ!


「はあ~~~~」

 

「ローゼ・・・しょうがないよ・・・」

 

現在アリーゼ・ローヴェル兼ねローゼ・アーリヴェルとベル・クラネルは鍛冶師の都市サレルメスを彷徨っていた。あれから宿で一泊してリストにあった街中の鍛冶屋に行ったのだがどれも高かった。この街は宿泊料、食料品などはそこまで高くはないが武器が少し高いのだ。それに資源もあんまり無い。なのでオラリオでも中くらいの武器でも上級者ようの武器並に高いのだ。流石にヘファイストス・ファミリアやゴブニュ・ファミリアの一級武器よりかは安いが・・・

 

「それでも・・・これで鍛冶の街って・・・」

 

「多分ここらの周辺では安い方だと思うよ・・・確かモンスターの強さはオラリオ外ならそこまで強くなかったらしいし・・・」

 

「まぁね・・・しょうが無い・・・もう少し安めの所狙おうかな・・・或いはクエストとかもうけた方がいいと思うし・・・」

 

 

クエスト、オラリオでも冒険者に与えるのだがこちらでも受けられる。ちなみにオラリオよりかはクエストの難易度が低い分報酬が低いと思われがちだが独自の国でオラリオから離れていると話は別だ。中には恩恵を持っていない国もあり十分脅威になるクエストには報酬がかさむ。それもオラリオの冒険者でレベル2くらいなら余裕なほどのクエストも上級冒険者並にもらえることもあるのだ。

 

「とりあえずもうちょっと回ってみよう・・・もしかしたら安くていい武器、あるかも知れないから・・・」

 

「そうだね・・・じゃあもうちょっと回ってみようか!」

 

「うん!」

 

そうして二人は手をつなぎながら町中も歩く。暫くして食事をとった後また鍛冶屋を見て回る。

 

「やっぱり高い・・・」

 

「ハァ・・・どうしよう・・・」

 

・・・とごらんのようになかなか安くていい武器は見つからなかった。もう少し安くできるかと聞くとこれでも安い方だと言われ追い出されたのだ。行き当たりばったりなところ二人は現実逃避をしてカフェでパフェを食べていた。

 

「どうしよう・・・本当」

 

「鍛冶師の都市と言われているから安くていい武器があると思ってきたけど思ったより現実は甘くなかったわね・・・」

 

「ズーン」という音が二人の間に聞こえる。ベルはギルドからもらったリストを見る。現在チェックマークをつけているのは全部高くて難しかったり、あまり性能が良くない店である。

 

「とりあえず、クエストでもうける?」

 

「イヤ・・・でもここのクエストを受けてもあまり報酬は良くないしね・・・」

 

「これじゃあ私達、モンスターに引き裂かれて終わりよ・・・」

 

「止めて、怖くなる・・・」

 

とまあ雑談をしている二人であった。まあ、アリーゼが言ったことは正直現実味ある。途中で武器が壊れてしまえばレベル4の冒険者は難しいのである。とりあえず武器を早く調達したい二人であったがなかなか見つからない。

 

「もうここに住んじゃう?私達でイチャイチャ生活でも・・・」

 

「イヤ、まず武器を買えないのにそんなお金があるわけ無いよ・・・クエスト受けている間に宿代尽きるし」

 

「デスヨネー」

 

アリーゼの言葉にベルは苦笑いする。とまあ雑談していて会計に行こうとしたところだった。

 

「アレ・・・?お前・・・もしかして・・・?」

 

「え・・・?」

 

突然一人の青年がベルに近づいてきた。アリーゼは急いでベルの元に向かい守るように前に立つ。

 

「もしかして・・・アルミノ兄ちゃん?」

 

「やっぱり、ベルじゃねぇか!どうした?!大きくなったなぁ!」

 

「アルミノ兄ちゃん!」

 

黒髪で黒いローブをはおっておりアルミノと呼ばれる青年はベルだと分かった瞬間嬉しそうにベルの頭を撫でた。それに安堵したのかベルは涙を青年に抱きついてきた。やがて大きな声で泣き始める。

 

「おい・・・どうしたんだ?急に泣いて、男が泣いちゃ駄目だろう?お爺ちゃんも一緒か?」

 

「あの・・・」

 

「ン?あんたは?」

 

そこにアリーゼが加わる。もしかしてと思い少し言いづらかった。

 

「私は旅人のローゼ・アーリヴェルです。あなたはもしかしてベルと同じ村の出身ですか?」

 

「ああ、俺はアルミノ、アルミノ・ファブロだ・・・ここの鍛冶師をやっている。ローゼだっけ、見ない顔だな・・・」

 

「ええ、旅人で偶然会ったのですから」

 

「そうか・・・そうだ、ベル、お前のお爺ちゃん元気か?!リーファは?母さんも元気にしているか?」

 

そう言った途端アリーゼは顔をうつむく。ベルもその話題に泣くばかりだ。

 

「なぁ・・・どうしたんだよ?」

 

アルミノも困惑の表情を見せる。どうすればいいのか分からなくなったのだ。そうして暫く間が開きアリーゼが口を開く。

 

「アルミノさん・・・あなたの村は・・・もうありません」

 

「は・・・?」

 

「皆・・・何者かによって殺されました・・・もう村は燃え生存者もベルしかいない状態です・・・」

 

そのことを聞いたアルミノは唖然とたっている。そして氷のように固まっていた。

 

「なぁ・・・嘘だろう?村が・・・もう無い?ふざけんなよ!?そんな冗談流石に怒るぞ!」

 

「その娘が言っているのは本当だぜ・・・」

 

「ヘルメス様・・・?」

 

そこにオラリオ外でも有名な旅人のヘルメスが入ってきた。

 

「ヘルメス様、来てたんですか?」

 

「ああ、少しここに用があってね」

 

そう言ってアルミノの元に来る。そして・・・

 

「これが、今の君の村だ」

 

写真をアルミノの前で見せた。その光景は・・・

 

「うわワワワアアアアアアアアァァァァ!!!」

 

あの虐殺の後の村の光景だった。死人の体は焦げ中には死またを両断されていたものもいた。カフェにいた人たちも何人かみたが誰もみたくない状態だった。中には吐いた人もいたほどだ。その中には・・・

 

 

「母・・・さん?」

 

アルミノの母だと思わせるような死体だった。それだけでは無い。妹、そして父だと思わせるような死体だってあった。

 

「アア・・・アアアア、嘘だ・・・どうして・・・?」

 

「ローゼちゃんの言うとおり殺されたんだよ・・・何者かによってね・・・」

 

ヘルメスはただ現実を言い放った。その現実にアルミノは心が刺さる。まるで耳元に『これが現実だ』という言葉がささやいたようにうずくまり首を横に振り、泣き叫んだ。

 

「ウワアアアアアアアアアアアア!!」

 

その光景にアリーゼは涙を流す。アリーゼにはこの光景は胸に刺さる。正義の眷属だった彼女の犯してきた罪に悲しむのはベルだけでは無かった。その罪がまた肩にのし掛かる。そこにヘルメスが肩を手に取り耳元でこうささやいた

 

 

「これが君のやってきたことだ・・・」

 

「ア・・・」

 

その言葉を聞きアリーゼは泣き崩れる。いつも賑わっているカフェは悲しみに包まれたのだった。

 

 

 

 

暫くして落ち着いたのでアルミノの鍛冶屋に行くことになった。部屋に案内するように言われた助手達は先にその状況を聞いたので挨拶をしたら紅茶を入れて部屋を出て行った。

 

「すいません・・・わざわざ・・・」

 

「イヤ、俺もすまない。怒鳴ったりして・・・」

 

「いえ・・・アレだったらしょうが無いですよ・・・気持ちは分かります」

 

「アルミノ兄ちゃん・・・」

 

そこにベルがアルミノのそばに来た。それに気づきアルミノはベルの頭を撫でる。

 

「お前も辛い思いをしてきたんだな・・・」

 

そしてまた涙を流す。

 

「すまない、駄目だな、俺・・・俺まで泣き虫じゃねぇか・・・」

 

「大丈夫です、たまには泣いてもいいんですよ」

 

アリーゼはハンカチを出して涙を拭いた。

 

「いや、大丈夫だ。ありがとな、ベルは俺にとっても弟のような存在だったからあんたに会えて安心したよ・・・」

 

「いえ、私はただ一人の子どもしか救えませんでした・・・」

 

「ベルを助けてくれただけでも嬉しいさ・・・ありがとう」

 

そう言ってアルミノは紅茶を飲む。そこに一人の女性が入ってきた。

 

「アルミノさん?大丈夫ですか・・・?」

 

「ああ、もう大丈夫だ・・・お菓子おいといてくれないかな?」

 

「分かりました・・・」

 

気まずそうに女性は更にクッキーやらチョコレートをおいといた。

 

「それでは・・・」

 

そうして女性は部屋を出る。

 

「今のは・・・」

 

「ああ、期待の新人だ。鍛冶師の腕はこの店で俺以外ならトップと言っても過言では無いほどうまいんだ」

 

「そうなんですか・・・」

 

そうして暫く沈黙が続く。そしてアルミノは口を開く。

 

「お前ら、旅をするための武器が欲しいんだろ?ちょうどいい、彼奴に打たせてやろうか?」

 

「え・・・?でもお金が・・・」

 

「そんなん要らねぇよ・・・俺の金で出しといてやる。彼奴からは俺から話をつけといてやるから遠慮するな」

 

「いいんですか?」

 

「ああ、ベルを助けてくれたお礼だ・・・それに最初はベルをこちらで預かろうかと思ったがあんたといた方がこの子のためになるかも知れねぇしな・・・ベルの分も渡しといてやる」

 

そう言って笑顔になる。アリーゼ自身申し訳なさそうだったがその笑顔に断れなくなった。

 

「ありがとうございます、わざわざ・・・」

 

「いいって事よ・・・俺は店のこともあるし一緒に行けねぇからこれしかできないからな」

 

そして部屋を出ようとする。そこに何かを言い忘れたようにアルミノは止まった。

 

「ベル・・・ちょっといいか?」

 

「何・・・?」

 

そうして少し迷いもあった。が、アルミノはすぐに首を横に振り決めたような顔だった。

 

「後で見せたいものがある、来てくれないか?」

 

「うん!」

 

そう言った途端ベルは好奇心があったからかアルミノの提案にすぐに乗った。そして暫くして助手に武器を打たせてくれるように頼んだところやってくれると言うことになったので打つことになった。そして日は経ちベル達の武器ができあがった。

 

「はい、ベルにはこれな・・・」

 

「うん、ありがとう!」

 

「ありがとうございます、まさかここまでしてくれるなんて」

 

「いいって事よ・・・」

 

「そう言えばベル、あなたもう一本持っているけどそれ何?」

 

アリーゼはベルが背中に持っている武器に目が行った。

 

「これ?なんか要らないからあげるって」

 

「そう・・・」

 

そうして目的を達成したベル達はサレルメスを後にしようとした。旅を再開したときベルはアルミノ達が送ってくれた。最後にベルの頭をなでた。ヘルメスは何やら呆れ顔でベルに声をかけた。

 

「ベル君俺たちはまだここに居続けるがローゼちゃん初心者だから頼んだぞ・・・」

 

「うん・・・」

 

「ありがとうございます、ベルは私が守りますのでまかしてください。この超絶美人のローゼちゃんにお任せを!」

 

「うん・・・分かったから・・・」

 

そう言ってアリーゼは街の人たちに引かれたのだった。その時「みんな~」って言っていたという。旅立つときベルは背中にある剣をみて昨日のことを思い出していた。

 

「ベル・・・いいか?お前にこの剣を授ける」

 

「これって・・・?」

 

あの日の夜アルミノから赤い剣を渡された。その剣がみたこと無いようなものだったのだ。

 

「俺たちの一族に伝わっている剣だ・・・実際俺たちは使えない。俺たちが使えたとしてもこれは剣と言うより鈍器だ。聞いたところによるとお前のじいちゃんがいつかベルに使わせるようにと言われていた奴だ・・・」

 

「じゃあどうして?」

 

「いや、俺たちは時々これを研究してこれが何かを調べるためだ。ベルが14歳になるとき渡す予定だったが、もっておいといてくれ・・・今の方がいい気がする」

 

そうしてアルミノは最後に涙を流しながら言った。

 

「なぁ・・・一つ頼んでもいいか?もし仇を見つけて討つなら俺の武器を使ってくれないか?無理にとは言わない・・・でももしお前が復讐をするなら俺たちの村の皆を殺した奴にこれで敵をとってくれ・・・」

 

そうしてベルは暫く悩んでいたようだがすぐに顔を上げた。

 

「分かった・・・」

 

「ありがとう・・・」

 

その意思を持ってベルは今日も歩み続ける。家族を殺された恨みとケツイと共に今日も歩み出す。

 




はい、今回出てきたオリキャラの説明をします。

アルミノ・ファブロ

ベルの村出身、鍛冶師になるために村を出て、サレルメスに来た。村には妹もいたがアストレアファミリアによって殺された。何やら剣を隠していたようだがこの剣の正体は?

容姿はSAOのキリトをイメージしております。

それではまた次回もお楽しみにしてください!


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Chaptear5怖い話

こんにちは、今回から他作品も入れます。記念すべき最初の奴は多分ダンまちとあの人気ゲーム!!一体何なのか・・・それではどうぞ!!


ベル達は今山の中にいた。サレルメスを出て暫く経つがしばらくの間野宿ですごしながら少しずつ足を運んでいた。主に山で時には遭難するかに思えたがベルが何とかして凌いだ。なぜ得意かと聞いたところベルの村ではこういうのに適した対応するように教えられている。ベル自身も祖父の薪割りを手伝っていたので山に入るのも当たり前だったのである。なのでこういうのは、なれているのである。

 

「ゼーッゼーッつかれたぁ・・・」

 

「ローゼって一応騎士やっていたんだよね?体力、一応あるんじゃ・・・」

 

「馴れてないのよ・・・こんな複雑だったなんて知らなかったんだし・・・」

 

「はぁ・・・そう言えば目的の街は?」

 

「もうそろそろつくと思うけど・・・」

 

会話をしながらベルとアリーゼはテントを張る。そして明かりを付けた。

 

「は~!生き返る!!」

 

「全く・・・少しは気をつけてよ、ローゼ、あと少しで毒キノコ食べようとしたからね・・・」

 

「だってぇ~おいしそうだったんだも~ん!」

 

「キノコって素人がとると危険なんだよ?それ分かっている?この前何やら毒キノコを触ってかぶれたのにまだ懲りてないの?」

 

「ウグッ!何も言い返せない」

 

ローゼが少しふてくされながらもベルも苦笑いしていた。イヤ、これはどちらかというと充実している方なのだろう。ベル自身この旅は面白く、それでいて安らぎの場所なのだ。もちろん復讐する。とも考えていたが今はこの旅を長く続けたいとも思っている。暫くして調理を始めた。ちなみに村にいたころ、祖父の手伝いで料理したことは多々ある。これくらいは大丈夫なのだ。基本的な調理器具もあるし火に関してはサレルメスでヘルメスからいただいた『ライター』というものでまかなえる。

 

「はい、できたよ-」

 

「わーい、ありがとう、ベルママ」

 

「何でママ?!しかも僕より年上だし」

 

「細かいことには気にしない!」

 

そう言って談笑を楽しむ。暫く食事をしてアリーゼは何かを思いだしたように話した。

 

「ベル、次に行く街の名前、覚えている?」

 

「え・・・?確か農業の街フェレライ・・・だよね?」

 

そう言ってベルは首をかしげる。特に行く予定はないが一応野菜も重要だろうとのことで行くことになった都市だ。アリーゼは怪しい笑みを浮かべながらランプに火を付けちょっとだけ顔に近づける。

 

「・・・その街ではさ・・・農業の街と言われているのにね、実はここら周辺で一番飢えに苦しんでいるんだって」

 

 

「それ、結構真面目な方?」

 

「いや、怖い話」

 

「え・・・マジ」

 

「うん、マジ」

 

そう言って身構えながら話を聞こうとするベルにアリーゼはニヤニヤしながらも話を続ける。

 

「でもどうして?」

 

「なんかね、その街で前の領主が死んだ時新しくできた娘が継いでいるらしいの。それから始まったんですって」

 

「へ~でも何で?」

 

ベルは少しおびえながらも好奇心旺盛な年だからか聞きたくなってしまう。それにアリーゼは更に話したくなってしまい何やら「ヒュールル」という音が聞こえ始めた。

 

「それでね、その女の人極東出身の妻の間に生まれた娘で何やら美しい見た目していると噂されているのだけれども仮面を付けていて誰もその姿を目にしたことはないらしいの、何時も館にいなく船にこもっているらしいわよ・・・館にいるときは年に2回とか」

 

「ゴクリッ」とつばを飲み込みながらアリーゼの話に耳を立てる。そしてここでアリーゼは悪巧みな顔をした後震え声で言った。

 

「それで噂されているのだけれど~アレは餓死ではなくて魂を食われたんじゃないかって言われているの・・・聞けばその女の人かなり年をとっていて若さを保つために食われたって言われているの・・・食われた魂は最後・・・彼女の腹の中で・・・永遠に!!」

 

「ぎゃああああああああ!」

 

そうしてベルの絶叫が辺りに響く。そして「二ヒヒッ」と笑いながらベルを見つめているアリーゼは転げ落ちる。

 

「もう!こんな、暗い夜に怖い話しないでよ!!」

 

暫くしてベルは涙目になる。そうして暫く笑っていたアリーゼは立て直していた。

 

「イヤー!ごめん、ごめん!」

 

「もう・・・その街行きたくなくなっちゃうじゃないか!!」

 

「大丈夫、噂だし単なる作り話だと思うわよ」

 

そう言ってベルはほっと胸をなで下ろす。その姿が何やら可愛らしかった。アリーゼは無意識にベルを抱きしめる。

 

「大丈夫?」

 

「うん、もう平気」

 

そう言っていながらもまだ怖がっていたのかアリーゼに抱きつきながらテントに入る。そして寝袋を用意した後ベルはアリーゼの袖を「クイッ」と持ち上げる。アリーゼはなんとなく察したようだった。アリーゼが予想していた反応でベルを見ながらもベルは口を開く。

 

「お願い・・・今日は一緒に寝て・・・」

 

とうつむきながら言った。

 

「ハウワァ!」

 

それに心打たれたのかアリーゼは断れるはずもなくすぐにうなずいた。そして二人は寝袋に入る。暫くしてベルはうなされてたなのだろうか震えていた。そこにまた頭を撫でる。暫くしてベルは目を開ける。どうやらまだ寝られていないようだった。

 

「ベル・・・?」

 

アリーゼは少し不安そうな顔でベルを見つめた。そしてベルはアリーゼの胸にうずくまる。

 

「ちょっ・・・ッ!ベル?!」

 

少しあたふたしながらもとりあえず離そうとする。しかし胸の辺りに涙のような感触があった。

 

「・・・ごめんね・・・あんな話をして・・・」

 

「大丈夫・・・ただ・・・まだ心の準備ができていないだけ」

 

そう言って顔を上げる。

 

「もう大丈夫・・・ありがとう!」

 

そう言って泣きながらも笑顔を見せた。その笑顔は傷ついた人を癒やしそしてどこか浄化させていく、まるで女神のようだった。男なのに・・・だ。普通、天使とか言うがなぜかアリーゼは女神と読んでしまうのである。・・・とまあここでアリーゼが思ったことはただ一つ・・・

 

(結婚しよう・・・)

 

それだけだった。暫くしてベル達は眠りについた。その時その様子を見ているのは月だけだった。月も人間と同じようにこの光景を見て顔を赤くしたのと同時に照らし出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから地獄を見ることを知らないまま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アア・・・・まだ足りない」

 

そう口にして極東風の着物を着ていた女性は割れた鏡に向かって鼻歌を歌いながら髪を整えている。

 

「まだ足りない・・・まだ足りない・・・あああ、もっと美しくなりたい。永遠の若さを!!もっと欲しいの、美しさが!」

 

そう言ってまた鏡を割る。暫く気性が荒くなったのか極東風の女は暴れ始める。暫くすると落ち着き地面を見る。そこには白い髪があった。ふと女性は咄嗟に仮面を付ける

 

「そろそろ、この時期かしらね・・・この『モウ』さえあればゲストに飯を食わすだけで若さが手に入る、まさに神の船!!あの街から小麦なども採取できているしなによりあいつらの腹が減りさえすれば・・・フフフ、豚共!このレディへの若さの糧になりなさい!!」

 

 

極東風の女、レディの不気味な笑い声と共にこの化け物の船『モウ』の中で響いた。

 

 

『モウ』の中では金属をこすれる音、調理している音、そして船の動く機械の音がレディの不気味な笑い声と共に響くのだった・・・

 

 

 

次回、『白兎は正義に憎しみを抱く リトルナイトメア編』始動!!

 

 




はい、次回から何と、リトルナイトメア編が始動します。僕自身ホラーは無理で実況じゃないと無理なタイプですが2に関しては勇気出して買おうかなって思います。それでは次回、お楽しみに!


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リトルナイトメア編
Chaptear6胃袋


こんにちは、今回からリトルナイトメア編です!ダンまちとこのホラーゲームは初の試みだと思います。やっているという方がいらしたらすいません


「ここが農業の街フェレライ・・・」

 

「なんか、荒れているね・・・」

 

ベル達はあのキャンプの三日後農業の街フェレライについた。その道中でもアリーゼが色々トラブルを起こしかねなかったが、まぁベルのおかげで何とか免れたのだ。

 

そしてこの街に着いた。周りの風景は少し大きな建物が中心部分にありその奥には海がある。そのほかの周りがほとんど農地なのだがなぜか痩せている人が多い。今にも餓死しそうな人もいる。一応収穫しているところを見ている限り食糧難には陥らないほどの量である。そこにベルはほっとけなくなったのか干し肉を差し出した。

 

「あのぉ・・・良ければどうぞ」

 

「おお、ありがとう!」

 

それを見た途端その痩せた人はガツガツと食べた。本当に飢え死しそうな顔だった。そばには子どももいたのでその子にもあげる。少し情報を聞くことにした。

 

「すいません、あの作物で何とか賄えないんですか?」

 

「ああ、領主の命令でね・・・何でも作物を3000kg領主に譲渡しろと命令が出てね・・・今回も何とかギリギリなんじゃよ」

 

「3000kgってほとんどじゃないですか!!なぜその領主はそのままほったらかしなんですか?!」

 

「でも、この状態を一定の期間を経過すると皆中央の街に行けるんだ。そこで大量の食事が用意されると聞く・・・途中その量を達成できなければまたやり直しだ・・・まぁあんさんらは旅人だったら通してもらえるよ、あそこ旅人に関しては優遇するからねぇ・・・」

 

そう言って痩せた人は子ども達を連れて作業に戻る。その様子をベル達は黙ってみているしかなかった。

 

暫くして旅人として中央の街に入れてもらい現在はこの街のギルドに行きサレンメスのギルドカードを見せた。ギルドカードは全ギルドでも共通のものであり独立しているギルドでもこのカードさえあれば何処のギルドでさえ使えるのだ。オラリオでも神の恩恵を持っていなければこれでは入れることも可能だ。現在ベル達はここの街のギルドから紹介してもらった宿で休憩を取っていた。外は突然の嵐でビュービュー風が吹いている。

 

「・・・この街一体何なの?」

 

「正直見ていて酷いとは思うけどちゃんと達成した人には食事が用意されるって言うところが何か変よねぇ・・・」

 

「うん・・・その領主も変な命令を出すわよね」

 

二人はあの痩せ細った人のことを思い出していた。中央の街ではそこまでも無く普通に暮らしている人が多かった。なので宿の食事も難なく普通、イヤ少し豪華だったのだ。

 

「まるでこの街に住んでくれって言っているようだったね」

 

「うん・・・」

 

そして二人はこの街の謎を考える為暫く沈黙が続いた。暫くするとベルは何か思い出したように口を開く。

 

「ねぇ・・・まさかこの前の話、実話だったとか?」

 

その言葉にアリーゼも固まる。

 

「な・・・なにいってんのよ。アレは噂話だっていったでしょう?」

 

「でも少し状況が似ているような?」

 

「そんなわけないわよ・・・そんなわけないはず・・・」

 

確かにベルの言っていたことも一理ある。この街の状況は噂で聞いていたとおり飢えにより苦しんでいる人が他の街に比べて圧倒的に多い。更に領主の命令にも違和感がある。まるでこの街に誘い出しているようなそんな感じだ。それに何よりこれは噂話だ。作り話という保証は何処にもない。更に言えば実話ではないと言う証拠もないのだ。その考えが二人の体に駆け巡る。

 

「ねえ、早くこの街から出ない?」

 

「そうね、ここ何かしら不気味だし早く出た方がいいかも」

 

そうして二人はこの街を出る準備をしていた。

 

 

 

「ここがフェレライ・・・農業の街と言われているのに・・・噂通りですね」

 

「本当・・・気味が悪くて仕方ないぜ」

 

「幽霊とでも言うのか、屍のようだったわ」

 

「でも・・・この街の人たちとても辛そう」

 

とある4人の女がこの街フェレライに訪れていた。現在ベル達とは別の宿に泊まって休んでいたところだ。

 

「なぁ・・・輝夜、本当にあると思うか?」

 

「ああ、以前極東にいた時も聞いたことがあってな」

 

「モウ・・・でしたっけ、一見極東風に聞こえませんね・・・」

 

「ああ、私達の意味では「胃袋」って意味で親しまれている」

 

赤い着物を着ていて刀を付けている極東風の女、極東の貴族らしい容姿似合わない口調で話す、ゴジョウノ・輝夜は少し舌打ちしながら腕を組む。それと同時にピンク色の髪で男勝りな性格の小人族のライラ・はベッドに寝転がりながら話していた。

 

「そんな船がこの街に?」

 

「そんな可能性がある、と言うだけだ・・・実際私達も伝説だと思っているんだが・・・」

 

「その船らしきものがでたと・・・言うことですか」

 

薄緑色の髪色のエルフ、リュー・リオンと青髪のヒューマンでこの中の唯一のガネーシャ・ファミリアの団員、アーディ・ヴァルマも席に座りながら話をしている。

 

「で・・・オラリオからも協力が必要だって聞いて私達が呼ばれたんですね」

 

「そのモウを見つけて首謀者を見つけて捕らえる・・・と」

 

「まあ、そうだな」

 

そう言って4人の沈黙が続く。暫くすると突然リューが口を開いた。

 

「アリーゼがいたら、なんて言ったのでしょうか・・・」

 

その言葉で皆悲しそうな顔をする。現在、アストレア・ファミリアの信用は徐々に回復している。しかしそれはアリーゼのお陰だからである。責任と人々の目をできる限りアリーゼの方に向けて処罰をアリーゼだけにした。このお陰でアストレア・ファミリアはアリーゼ以外特になにもなかったのである。しばらくはアストレア・ファミリアの信用は底辺位だったが。このファミリアはオラリオに必要だと言うことをアリーゼはいってくれた。そのことが胸に刺さる。アーディもアリーゼは最後まで友人だとも言ってくれたという。

 

「本当は私達のせいだったのにな・・・」

 

「はい、私達はあの村の住人達を・・・無実の人たちをこの手で殺めました。」

 

「ああ、作戦を立てたのはアリーゼだったが実際殺ったのは私達だ」

 

そう言って3人はうつむく。あの頃からずっとこのままだ。アリーゼがいなくなってから、そしてあの村の住人虐殺に対して罪悪感から引きこもる団員達も増えていった。現在は団員の半数が戦闘不能な状態なのである。中には自殺しようとしたものまでいたのだ。何とかアストレアが止めたのだが・・・

 

「そう言えば、あの子はどうしているでしょう・・・」

 

「あの子って?」

 

リューがベルのことについて話した。それにアーディも首をかしげてリューに問いかける。

 

「私達があの虐殺を引き起こしたときアリーゼが助けたガキだ。容姿は覚えてないんだがな」

 

「そんな子が・・・」

 

「まぁ・・・親戚に預けられているだろう、今頃どこかの家で育てられているだろうな」

 

「もし、その子がオラリオに来たら・・・」

 

そう言って全員黙り込む。しかしそれは死が怖いわけではない。ただ、あの子にはどうしてあげればいいのだろうかと考えているのだ。アストレア・ファミリア内でも唯一の生き残りはいたと教えられており彼に罪滅ぼしをしたいとの団員もいる。しかし名前も分からないのだ。

 

「ファミリア内でもこの前アミッドを呼ぶほど酷い状況だって」

 

アーディ自身も団員達の様子を見て口を開けてしまうほどだ。

 

「いざという時は・・・」

 

「でも、アリーゼはこのファミリアが必要って言葉で今は動いているものだよね」

 

「ああ、だからこそ私達が繋げる必要があるんだ、ウジウジしている暇なんてないぞ」

 

そう言って輝夜は資料をまとめる。その言葉と共にリューは顔を上げた。

 

「とにかく今は、この街の調査だ。明日、情報を集めるぞ」

 

「「「ええ!」」」

 

そうして皆は就寝に入る。やがて夜は明ける

 

「お腹・・・すいた」

 

小さな悪夢の始まりがすぐそこまで迫っていることを知らずに・・・

 

 

とりあえずベル達はこの街を出る準備をしていた。外は現在も曇りで少しくらい状態だった。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「うん・・・ってあれ?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんか入り口の前に人が集まっているような」

 

そうして二人は入り口の門の近くに来た。そこで二人は近くの男に声をかけることにした。

 

「どうしたんですか?」

 

「ああ、実は昨日、入り口の門が嵐によって壊されたんだ、お陰で今は復興作業中だ」

 

「そんな・・・」

 

そうしてベル達はどうしようか悩んでいたところ・・・

 

「そう言えば、そろそろだなぁ・・・」

 

「ああ、全く羨ましいぜ」

 

二人の男の声が聞こえた。思わずアリーゼは二人の男に声をかける。

 

「あの、そろそろって?」

 

「ああ、年に一回人生を保障される人間が選ばれる日なんだ」

 

「人生を保証される?」

 

「ああ、領主に選ばれた人間は幸福になるって噂でさ、どこかに連れて行かれその先は楽園って噂だ。実際戻ってきた人はいないが楽園にいって楽しんでいるんだとよ・・・」

 

いかにも怪しそうなことで二人はともかく離れた。

 

「どうする?」

 

「とにかくやり過ごすしかないわね・・・」

 

そう言って二人は宿に戻る。追加料金を払いとりあえずベル達は宿に入る。

 

「ねえ・・・これって・・・」

 

「うん、噂の内容に似ている・・・よね・・・」

 

宿の中でアリーゼ達は噂話を思い出す。帰ってきた人は誰もいない、領主、共通点が多すぎる事に二人は体が震えた。

 

「ど、ど、どうする?!ローゼ!どうやってでる?!」

 

「お、お、落ち着きなさい、ベル?!たかが噂話よ!多分、なにもない・・・はず」

 

そして二人は一旦落ち着きを取り戻す。

 

「ねえ、これからどうする?」

 

「どうにもね・・・一旦ギルドに行ってみましょうか」

 

ベルとアリーゼはこの街のギルドに向かった。その時だった。

 

「ローゼ・アーリヴェルとベル・クラネルですよね?」

 

突然男女二人組のヒューマンが目の前にやって来た。

 

「あなた達は?」

 

アリーゼは武器を構えながら二人組の男女に問いかける。ベルはアリーゼの後ろに隠れた。女の方がアリーゼ達の前に来る。

 

「あなた達にはここの領主様の命令が下されましてモウにご招待することにしました」

 

「モウ・・・?」

 

「楽園の事です」

 

「・・・ッ!イヤです!あなた達の戯れ言に付き合う暇はありません!」

 

そう言ってアリーゼは帰ろうとするが・・・

 

「私達も手荒なまねをしたくはありません、ついていただけますよね?」

 

「・・・ッ!ローゼ!クソ・・・ッ!」

 

「ベル!!」

 

そう言ってアリーゼの首元に刃を向ける。更にベルの方も男の方に捕まれた。

 

(見切れなかった?!)

 

本来、オラリオ街は基本レベル3以下の冒険者しかいないはずであった。・・・が、それはオラリオにいたことが無いことである。もし、オラリオにいたことがあるなら話は別である。その街は急変的な強さを持てるのだ。恐らくだがこの街はレベル5以上がいると言うことだ。

 

「もう一度言おう、ついてこい。でなければ二人とも殺すまでだ」

 

「・・・ッ!」

 

アリーゼ自身もここは状況を見て抵抗しない方が身のためなのは、知っている。だがベルもいるのだ。ここは何とかしてもベルを助けたいが・・・

 

「ローゼ・・・・」

 

「・・・ッ!」

 

必死に頭を考えるがそれでもここの状況を打開するのは難しかった。どうしたものかと考えたその時・・・

 

「・・・ッ!これは」

 

ベルの背中が光った。イヤ、正確に言うとサレンメスにいた時にもらった例の剣が赤く光り出したのだ。

 

「・・・ッ!クソ・・・ッ!」

 

そうして二人組の男女は手を離す。

 

「・・・ッ!ベル、今のうちに!!」

 

「うん!」

 

そうして二人は逃げ出す。

 

「逃げたぞ!!終え!!」

 

女の声が聞こえる。アリーゼはベルを抱えながら走った。

 

「ローゼ!!」

 

「大丈夫・・・しっかり捕まって」

 

そう言って屋根に飛び移る。しかし、二人組に加え他の人間も来た。

 

「・・・ッ!どうすれば・・・ッ!」

 

そこにアリーゼは一つの港が見えた。そこに木製のボートを見つける。

 

「アレなら・・・ッ!」

 

「・・・ッ!ローゼ!!」

 

「大丈夫・・・ッ!」

 

そう言って木製のボートに乗り込みヘルメスからもらった魔道具を付ける。すると・・・

 

「・・・ッ!早い!!」

 

木製のボートが猛スピードで走って行った。この魔道具は船に付けることで通常の三倍のスピードで走る。更にボートには負担しないように結界が張ってある。暫くしてかなり沖に出る。

 

「フー!もう大丈夫!!」

 

「流石ローゼ!!いざという時は頼りになる!!」

 

「ふっふーん!流石この私ね!状況判断ができるなんて素晴らしい美女なのかしら!」

 

「それがなければかっこいいのに」

 

「なっ?!なによそれ-!」

 

「はは、そう言えばこの後どうする?」

 

「ア・・・」

 

その瞬間アリーゼの顔が青ざめる。

 

「まさか・・・考えてなかった?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「やっぱり?!どうすんの?!」

 

「だって~逃げることしか考えられないもん!!」

 

「はぁ~まあ、何時ものローゼだね・・・仕方ない・・・」

 

そう言ってベルは剣を包んでいた布を広げる。そして

 

「どうしたの・・・?」

 

「シェルターを作るんだよ、こうやってね」

 

そう言って棒などを用意して日陰を作るような屋根を建てた。

 

「こうやれば日光を遮れるから大丈夫・・・そして・・・」

 

「ちょ・・・ッ!何しているの?!」

 

ベルは突然靴紐をほどき始める。更にそばにあった針金を使った。

 

「これで、釣りができるよ。昔お爺ちゃんがサバイバル術を学んで覚えていたんだ」

 

「ほぇ~すごいね」

 

そう言って感心するアリーゼ・・・ベルは釣り糸を垂らす。そして暫くすると・・・

 

「おお、釣れた!!」

 

そう言って魚が釣り上げた。

 

「これで陸地を探そう」

 

「うん・・・やばい、ベルってホント頼もしいよね」

 

「ふふ、ありがとう」

 

そうして暫く放浪していた。そこに・・・

 

「あれ・・・?」

 

「もしかして・・・」

 

「「島だああああああ!!」」

 

島らしきものを見つけた。とりあえず上陸する。

 

「ここは・・・無人島?」

 

「みたいだけど小さいね・・・植物もそこまでないし・・・」

 

「ベル!見て!扉が・・・ッ!」

 

「本当だ・・・鍵は・・・開いている・・・」

 

そう言って扉を開けた。そこには・・・

 

「なに・・・これ」

 

地下に続いていた。ベル達は息をのんで地下へ足を踏み入れた。そこに広がっていたのは

 

「ひっ・・・ッ!」

 

「これは・・・」

 

与えられた食事をむさぼり食う太った人間が広がっていた。

 

数時間前・・・

 

「せっっっっっま!」

 

「しょうがないですよ・・・こうやって詰め込むのが限界ですから」

 

「ちょっ!暴れないで!」

 

「こんな息苦しいのは久しぶりだ」

 

リュー、アーディ、輝夜、ライラは船に乗っていた。モウの潜入捜査するため乗り込んだのだがほとんどが太っているため狭いのである・・・

 

 

「頑張ってください・・・もうすぐ着くはずです」

 

そう言って全員耐える。そして・・・

 

「着いた・・・ッ!」

 

「ここが、モウ?」

 

ベル達が訪れた島、イヤ正確には島に似た船、モウに船は止まった。

 

「気を引き締めていくぞ」

 

「「「ええ!(はい)」」」

 

そして4人はモウに入っていった。

 




はい、ようやくアストレア・ファミリアの団員とアーディを出すことができました。どっちかというと今回はアーディ中心です。アストレア・ファミリアの絡みは少ししかありません。楽しみにしている方々、すいません。そしてあの少女も・・・それではまた次回お楽しみに!


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Chaptear7闇

こんにちは、今回はついにあのキャラが登場します。そしてあのキャラとの絡みも・・・一応時系列は5年前の話です。それでは、どうぞ。


「ここは・・・?」

 

ベルとアリーゼは思わず息をのむ。それもそうだろう。無人島かと思いきや地下室らしき物があり入ってみると目の前には、大量の太った人間が何も調理していない生肉を食していたからだ。汗を垂らしむさぼり食う。味わいもしていなさそうだった。そしてその人間はやがて食べた食べ物を吐く。その光景が地下室に広がっていた。

 

「ゥ・・・・」

 

ふとアリーゼ達が呆然としていると太った人間はアリーゼ達の方を見る。そしてこちらに迫ってきた。

 

「・・・ッ!ここから出ないと!」

 

そう言ってアリーゼはベルの上を引っ張り逃げようとするが・・・

 

「・・・ッ!閉まっている?!」

 

「嘘でしょ?!」

 

その扉はいつの間にか閉まっていた。門のような扉で強引には開けられないのである。急いでアリーゼ達は物陰に隠れる。すると見失ったように太った人間は席に着きまた生肉を食い始める。

 

「どうしよう・・・」

 

そう言ってベルはアリーゼの近くで震えていた。それを見てアリーゼはベルを抱き寄せる。そしてあやす。

 

「大丈夫・・・私が傍にいるから」

 

「うん・・・」

 

そして暫く隠れることにしたがこのままでは埒があかないと言うことで移動することにした。

 

「行くよ・・・」

 

「うん・・・」

 

そう言って忍び足で進む、太った人間には気が付けられないようにしている。しかし古びた床なのかベルの足にとげのような物が刺さった。

 

「痛っ・・・ッ!」

 

「ベル・・・大丈夫?」

 

「うん、木の枝が・・・少し・・・」

 

そう言って大丈夫だと言い先に進む。暫く進んでエレベーターの方に進む。その時だった・・・

 

「ウ・・・・」

 

包丁を持っていておりコック帽をかぶり、エプロンが血まみれの丸々と太ったシェフのような男が降りてきた。そしてアリーゼ達を興奮した状態で見つめる。アリーゼは冒険者の勘が騒いだ・・・

 

「ブォ!!」

 

「・・・ッ!ベル!!逃げるわよ!!」

 

「え・・・?」

 

そう言って逃げた瞬間シェフが包丁を持ってアリーゼ達を追う。興奮状態でこちらに迫ってくる。

 

(遅いわね・・・体が大きい分・・・ノロい!!)

 

そうしてアリーゼは猛スピードで船の中を駆けた。そばには太った人間もいたがそれでもスピードはアリーゼが圧倒的だった。

 

「このまま突っ切るよ!!」

 

「うん!」

 

そうして目の前にエレベーターを見つけた。しかしそこには・・・

 

 

「ゴァ!!」

 

「シェフ?!」

 

「双子なの?!」

 

シェフが現れた。しかし、顔が若干違うため双子だと分かる。すぐに逃げようにも目の前には太った人間とシェフがいる。

 

(レロッ!)

 

「・・・ッ!」

 

ふと、太った人間が地面についているベルの足にたれている血をなめた。その途端・・・

 

「ウオオオオォオオオ!!」

 

突然太った人間は叫び出した。相当な興奮状態だった。その様子を見て太った人間はベル達の方を見る。

 

「ヒッ・・・ッ!」

 

「・・・ッ!」

 

そうして勢いよくベル達の方に向かって突進してきた。さっきとは比べられないほどのスピードだ。

 

「不味い・・・ッ!」

 

「ウオオオオオ!!」

 

このままでは殺される。そう直感し、剣を抜くがそれでも剣が折れそうな勢いだった。食にとりつかれた人間は机を壊すほどの力、下手したら鉄も折れる勢いである。それにアリーゼも圧迫される。そうして太った人間はベルの足を噛みつこうとした・・・その時だった・・・

 

「ウワアアアアアア!!」

 

床が抜けたのだ。太った人間が次々と落ちる。そこにアリーゼはベルの手をつかむ。

 

「ベル!!大丈夫?!」

 

「うん、ありがとう・・・ローゼは?」

 

「私は大丈夫・・・「ローゼ、危ない!!」え・・・?」

 

ベルが叫ぶと後ろのシェフが包丁を振りかぶろうとしていた。

 

「止めろぉ!!」

 

「オオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!」

 

ベルは残っている片手で短剣を出しシェフの方に投げる。何とか一人腕に刺さり苦しそうなうめき声を上げる。しかし・・・

 

「うぉ!!」

 

「・・・ッ!」

 

もう一人のシェフがこちらを見つめ鉄の棒を振りかぶる。その途端アリーゼの背中に傷がついた。

 

「・・・ァ!」

 

「ローゼェ!!!」

 

ベルの叫び声が空間に響く。恩恵があるからか耐えられてはいけるがそれでも何度もやられれば死にいたってしまう。

 

「ローゼェ・・・僕を・・・離して・・・」

 

「離さないわよ、バカ!大丈夫、私は超絶美人ちゃんなんだからすぐに助けるから・・・」

 

そう言ってベルは涙を流す。アリーゼの手から背中に流れている血が流れ出ていた。さっきよりも酷い状況だ。それにベルはまだ9歳・・・この年齢でこの光景は恐怖でしかなかった。その途端、またあの夢が、あの村の出来事がフラッシュバックしてきた。その途端ベルの手が震え出す。

 

「・・・もう、イヤなんだ・・・」

 

「ベル・・・?」

 

「もう、大切な人を失いたくないんだ・・・これ以上・・家族が死ぬのを見たくない!!」

 

そうしてベルの背中にあった布が剥がれ落ちる。後ろにある剣はその姿をさらけ出した。それがなぜか心臓の音と共に鼓動が走る。

 

「僕は・・・あの村を殺した女達を・・・僕の家族を傷つける奴は誰であろうと・・・許さない!!ローゼは・・・僕がまもるんだぁぁ!!」

 

「ヴォ!!」

 

「・・・ッ!?」

 

そう言った瞬間突如、ベルの剣が赤く光り出した。それに反射してシェフは目をつぶる。それと同時にアリーゼは今のうちと判断したのか急いでベルを引き上げる。

 

「ベル!逃げるよ!!」

 

「・・・うん!」

 

そうして逃げた途端、ベル達は一気に廊下を駆け抜ける。後ろに迫ってくるのは太った人間達、背後から来る重量級モンスターのように向かってくる。アレに踏み潰されたら一溜まりもなさそうだった・・・

 

「急がないと・・・ッ!」

 

「見て・・・ッ!」

 

急いで走ると行き止まりで穴になっていた。

 

「・・・ッ!」

 

しかし、それでも太った人間達は追うのを止めない。奥の方では押しつぶされているにもかかわらず進んでいる者がいる。その姿に二人はゾッとした。しかしそうしている間もなくこちらに向かってへたりつきながら追いかけてきた。

 

(どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする?!)

 

アリーゼ自身辺りを見渡す。しかし、何処にも抜け道がない。ふと隣に小さな展望台のような部屋が横にあった。そこを見て少し深呼吸をする。そして、ベルに告げた。

 

「ベル!私に捕まって!!」

 

「え・・・なにw「良いから早く!!」・・・ッ!分かった」

 

そう言ってベルはアリーゼの体につかまる。そして・・・

 

「行くよ!!」

 

そう言って壁のへこみに手をつかむ。それに太った人間は追った衝撃で何体か下に落ちていった。

 

「・・・ッ!」

 

ベルは一瞬のことで何かは分からなかったが下には深い穴が広がっていた。それに恐怖を覚えた。もし落ちれば即死・・・その恐怖がベルを襲った。

 

「ベル、大丈夫?」

 

「ウ・・・うん・・・ローゼも大丈夫?」

 

「ええ、へっちゃらよ・・・今からあそこに渡るから・・・じっとしていて」

 

ベルはうなずき、アリーゼは深呼吸をして展望台のような場所まで行った。

 

「ふう・・・ついた・・・」

 

二人は今までの疲れがどっと来た。

 

「全く・・・この島何なの?!」

そう言って寝転がる。その時ベルが口を開いた。

 

「違う・・・ここは島じゃない」

 

「え・・・本当だ、わずかだけど揺れている」

 

そう言ってアリーゼも床を触る。少しだけだが揺れていた。

 

「ここは船だね・・・最初島だと勘違いしたけど」

 

「こんな船があるなんて・・・」

 

そう言ってベル達は暫く休憩をする。ふと奥のふすまに目が行く。

 

「進んでみる?」

 

「うん・・・」

 

そうしてベル達はふすまを開け進み始める・・・暫く道を進み始めるとどこか異臭がした。その時だった・・・

 

「・・・・ッ!」

 

「これは・・・」

 

何やら生き物の死骸だった。しかも見たこともない。そばにはソーセージが落ちてある。その生き物は小さい人型のようだった・・・三角形の頭をしていた。

 

「何なの・・・?」

 

「分からない・・・何があったの・・・ッ!」

 

次の瞬間何か物音が聞こえた。アリーゼ達は辺りを警戒する。少しあたりを見渡したとき机の下から何か見えた。

 

「え・・・?」

 

「ヒッ・・・ッ!」

 

そこにいたのはネズミと同じ身長の黄色のレインコートを着た小さな、小さな少女だった。こちらを見て震えている。

 

「ベルどうしたの・・・って小さっ!」

 

アリーゼも見つけてレインコートの少女を見つめる。レインコートの少女の震えは止まらなくなっていった。そこでどうしたものかベル達が悩んでいたところ・・・

 

「ねえ・・・君、名前は?僕はベル・クラネル・・・」

 

そう言ってベルが自己紹介を始めた。そこに少女は敵では無いと悟ったのか近づいてくる。

 

「シックス・・・」

 

レインコートの少女、シックスはすんなりベルに近づいて指をつかむ。それにアリーゼはときめいたのか、目を輝かせる。

 

「何、この子可愛い!!」

 

そう言ってシックスを手にのせスリスリと頬に擦る。それにシックスは少し怖がっていた。

 

「ローゼ、シックスが怖がっているよ」

 

「あ、ごめんね、シックスちゃん・・・」

 

「・・・ローゼ・・・怖い」

 

そう言ってシックスはアリーゼを避ける。アリーゼは「ガーン」と音が聞こえ落ち込んでいた。ベルは暫く励まし、シックスはその様子を少し笑っていた。

 

「そこに誰かいるの?!」

 

そこに一人の女の声が聞こえた・・・アリーゼは何やら焦ってフードをかぶり後ろを見つめる。そこには・・・

 

「貴方は・・・」

 

「止まって、それ以上近づくなら・・・」

 

その途端ベル達は振り向く。そこには・・・

 

「アーディ・・・」

 

ガネーシャ・ファミリアの団員、アーディ・ヴァルマだった。

 

「何で私の名前を・・・ってその声って・・・」

 

そう言いかけた瞬間アリーゼはアーディに抱きついた。アーディ自身何が起こったか分からなかったがとりあえず状況を整理していた。アリーゼはベルのいないところでアーディを連れて行く。

 

「ローゼ?」

 

「ごめん、ちょっと話があるから・・・」

 

そう言って少し奥に行った。

 

「アーディ!久しぶり!!」

 

「もしかして、アリーゼ?」

 

アーディもアリーゼだと気づき涙を浮かべる。

 

「アリーゼ!なんでこんな所にいるの?!」

 

「いやね・・・ベルと一緒に旅をしていたらフェレライについて怪しい人間にであって逃げたらこうなった」

 

「ちょ・・・マジで・・・?」

 

「うん、アーディこそどうしてここに?」

 

「私はオラリオの要請で、こっちに来たの・・・この船、モウのね・・・」

 

「・・・ッ!」

 

モウ、と言う言葉にアリーゼは驚嘆の声を上げる。あの二人組について思い出した。

 

「他にもリュー達も来ているから・・・良かったら合流した後会わない?」

 

そう言った途端アリーゼは暗い顔をする。アーディは心配そうにアリーゼを見つめる。

 

「どうしたの・・・?」

 

「ごめん、アーディ。それだけは出来ない」

 

「どうして・・・?」

 

「実は・・・」

 

アリーゼは全てを話した。あの後どうなったか。ベルがあの村の唯一の生き残りであること、ベルと旅をしたこと、そして自分をごまかしていること・・・全てを話した。

 

「そうか・・・色々大変だったんだね、分かった。私もあのこの前ではそう振る舞うよ」

 

「うん、ありがとう・・・」

 

そう言ってアリーゼ達はベル達の元に戻る。

 

「ローゼ・・・この人は・・・?」

 

「初めまして、ベル君。私はアーディ・ヴァルマ・・・ローゼから話は聞いたよ・・・大変だったね・・・」

 

そう言ってアーディはベルを抱きしめる。そのときわけも分からずだったが安心したのかまた泣き出してしまった。その様子にシックスもベルのそばによる。

 

「ありがとう・・・」

 

暫く泣き続けた後ベル達はとにかくこの状況をどうするか考えていた。

 

「まず、ここの脱出よね・・・一体どうすれば・・・」

 

「扉は閉まっているし、かといってむやみやたらに動くのは危険、だけどここも安全というわけではないし・・・どこか抜け道は・・・」

 

そうなやんでいた末にアリーゼたちの沈黙は続く。その時シックスが何かを見つけた。

 

「これって・・・」

 

それは抜け道だった。ちょうど人一人はいれるくらいの大きさだ。

 

「これなら・・・」

 

そう言ってシックスは穴に入る

 

「うん、いける!」

 

「でかしたわよ!シックスちゃん!!」

 

「エヘヘ」とシックスは少し照れながらも穴に入っていく。それに続くようにベル達も入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この先の悪夢も知らずに・・・

 

 

 

「チッ!!レディの刺客か!!」

 

「侵入者は排除だ」

 

輝夜、ライラ、リューはアーディと分かれた後モウの地下らへんを捜索していたが突如あの二人組の男女だった。

 

「クソ・・・ッ!こいつら、攻撃があたらねぇ!!」

 

「闇で出来ているのでしょうか・・・そんな感じがします」

 

「この程度ですか・・・」

 

「チッ!!なめんじゃねぇ!!」

 

そう言ってリュー達は攻撃する。・・・がそれも全然効かない。二人組は闇に消えてしまった。

 

「終わりだ・・・ッ!」

 

そう言って女の方はリューに剣を振るう。

 

「リオン!!」

 

「チッ!!」

 

しかし、何とか輝夜が受け止める。そこでライラが女方に武器を振るう。

 

「輝夜・・・ここは・・・」

 

「ああ、撤退だ」

 

そう言ってリュー達は退却の準備をする。

 

「させるか!!」

 

そこに男が斬りかかってきた。それをリューが止める。

 

「クソ・・・ッ!待て!!」

 

「走れ!!」

 

そしてリュー達は廊下を駆け抜ける。やがて明かりがある場所につく。

 

「ヤツは・・・」

 

ライラ達は後ろを向く。二人組の男女はいない。どうやら撒いたようだった。

 

「ハァハァ・・・」

 

全員息が上がっている。少し傷もついていた。

 

「何だよ・・・この船は・・・」

 

そう言ってリュー達は怪我の治療をした。その時だった。ある紙、いや写真が壁に貼ってあった。リューがそれを見つける。

 

「何でしょう・・・これ」

 

リューは写真を見る。

 

「指名手配?」

 

「犯罪者か?こいつ・・・」

 

「脱走者だってよ・・・」

 

そう言って全員写真の方を見る。上に名前がついていた。

 

「この子の名前って」

 

そこに書かれてあったのは・・・

 

「シックス・・・」

 

黄色のレインコートを着たシックスだった。

 




はい、ついに登場させました。リトルナイトメアの主人公、シックス。そして出ました、アーディとアリーゼと、再会です。ちなみにアーディはあの虐殺には全くの無関係です。これからベルと共にどんな結末になるかお楽しみにしていてください!


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Chaptear8小さな悪夢 前編

こんにちは、今回リトルナイトメア編最終決戦の少し前です。リトルナイトメアに関しては僕のガバガバ考察要素もあるのでよろしくお願いします。それでは、どうぞ!


ベル、アリーゼ、アーディは現在シックスが見つけた抜け道を通っている。ベルにとってはそこまでではないがアリーゼ達にとってはとても狭いのである。

 

「狭い~」

 

「しょうがないよ・・・そもそも人が通るように作られているわけではないし」

 

「だとしても狭いよ~」

 

「ストレッチしていて良かった~」

 

アーディは体が柔らかく余裕だったが・・・そうして暫くベル達が進むとやがて上にどこかつながる出口を見つけた。

 

「出口だ・・・」

 

そう言ってベルは出口の扉を開けようとする。

 

「待って・・・」

 

しかし、シックスが止めた。ベルは首をかしげるがシックスが震え出す。次の瞬間アリーゼ達は何かを感じた。

 

「誰か・・・いる・・・」

 

そう言ってアリーゼはベルを抱き寄せる。そしてアーディは、持ち前の武器を手に持ちゆっくりと扉から出る。

 

「あの人は・・・・・」

 

そうしている間に着物を着ており仮面を付けている女がエレベーターを待っている。さっき、出会ったゲスト達と双子のシェフより違う雰囲気が出ていた。

 

「もしかして・・・アレが」

 

アーディはオラリオから聞かされた情報からレディと断定した。レディはエレベーターを待っている間髪を整えている。アーディ自身レディが仮面を付けているのがとても不気味だった。どんな顔をしているのか・・・どんな表情をしているのか・・・それが不気味でしょうがなかった。

 

(何なの・・・あの女・・・震えが止まらない・・・ッ!)

 

謎のオーラと共に感じる不気味さ・・・その恐怖にアーディの腕が震える。

 

暫くしてエレベーターが着きレディはエレベーターに入って行った。正面を向きエレベーターの扉が閉まり上に上がっていった。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

安心したのか腕を脱力させて座り込む・・・

 

「アーディ・・・大丈夫?」

 

そこにベル達も扉から出てきた。シックスが心配そうな表情でアーディを見つめる。

 

「大丈夫だよ・・・シックスちゃんは、どうしてここに来たの?」

 

そう聞いたシックスはボーッとしていたが次の瞬間頭を押さえる。同時に震えも出てきた。

 

「シックスちゃん、大丈夫?」

 

何か不味いこと聞いたかと思い気を扱う。しかしシックスは気にしていないようだった。

 

「大丈夫・・・ただ分からないだけ・・・」

 

「分からない・・・?」

 

ベル達も首をかしげる。シックスは自分のことについて話すことにした。

 

「私・・・ここに来るまでの記憶がないの・・・どうしてここにいるのか、何のために生きているのか・・・覚えているのは名前だけで・・・何か、大切なことを忘れている気がして・・・」

 

そう言って座り込む。シックスは更に続けた。

 

「時々、何かに縛られている気がするの・・・記憶がなくなってもどこに行っても縛られている気がして鎖のように、重いの・・・」

 

シックスは息を荒げ涙を流しながらうつむき話を続ける。

 

「私がここで目覚めて脱出しようとしたときも首つりの男がいたの・・・遺書のような物があったけど・・・その時、遺書には私の名前が書いてあったの・・・」

 

「シックスちゃん・・・」

 

「もし、それが大切な人だったら私、怖くて・・・ッ!」

 

その様子を見てベルはどうすれば良いか分からなかった。目の前の少女は記憶がない。記憶がないのはどんなことより辛いのだ。記憶がない、家族も、友達との思い出がなくなるのはベルにとって恐怖しかなかった。

 

「シックスちゃん!」

 

思わずベルは叫ぶ。シックスは驚き思わずベルを見る。

 

「あのさ・・・・記憶がないのは辛いのは分かるよ・・・でも、記憶があってもなくなっても何のために生きるかという理由は何処にもないと思う、だって自分の為に生きた方が人生を楽しめると思うしさ・・・もしかしたらその人もそう望んでいるはずだよ・・・」

 

「ベル・・・」

 

「シックスちゃん、ここから出たら何をしたい?」

 

「ここから出たら・・・?」

 

そう言ってベルはシックスに問いかける。それにシックスは目を輝かせたように声を上げる。

 

「私・・・美味しい物いっぱい食べたい!外の食べ物いっぱい食べたい」

 

そう言って飛び跳ねる。レインコートで顔は見えないが恐らく途轍もない可愛い笑顔なのだろうと3人はこの時思ったのである。

 

暫くしてアーディがレディのことについて話した。そのことを聞き二人は青ざめる。

 

「嘘・・・・じゃああの話は・・・」

 

「実話・・・」

 

二人は冷や汗をかく。そして何かをブツブツ言った。

 

「ローゼ?ベル?大丈夫?」

 

「「大丈夫じゃない・・・」」

 

そう言って二人は何やらひしひしと抱きついていた。聞いたところ二人はこの話を単なる噂話程度でフェレライに来ていたらしい。

 

「どうしよう私、もう一人でトイレ行けない・・・」

 

「いい年した女が、何言っているのよ!!」

 

アリーゼがあまりにも幼稚なことを言っていたので思わずアーディは突っ込む。そのせいか少し空気が和んだ。シックスもクスリと笑っている。暫くしてシックスは何かを決めたようだった。

 

「私・・・行く、あの女の元に」

 

「シックスちゃん?!危ないよ!!」

 

「でも、これは私が決着をつけなければいけないのだと思う・・・私が行かなっきゃ・・・」

 

それを聞いてシックスは一呼吸おく。そして彼女はあることを語り始めた。

 

「私・・・夢であの女、見たことある。多分何かしらの関係はあると思う。それに・・・」

 

「それに?」

 

そう言ってシックスは黙り込んだ。その途端また頭を抱え込んだ。何かをお思い出しそうな感じで必死に記憶を探しているようだった。あまりの苦しさにうめき声を上げる。それにベルは「大丈夫?」と声をかける。

 

「大丈夫・・・?」

 

「うん、大丈夫・・・行こう」

 

そう言ってシックスはエレベーターのスイッチを見つけ、落ちてあった缶詰みたいな物を投げボタンを押した。やがてエレベーターは降りてきた。

 

「シックスちゃん、私達も行くよ!」

 

アーディ達も覚悟が決まったようだった。ベル達もいる。

 

「アーディ、アリーゼ、ベル・・・大丈夫?」

 

「ここにいてもさっきのゲスト達が来たら危ないよ・・・そしたらあの女倒してここを出るわ」

 

「それにここの地形、ベルくらいの子どもがいれば結構良いかもしれない」

 

そう言ってベルも行くことになった。さっきいた場所も安全というわけでは無いため一緒に行くと良いと判断した。聞けばあの二人組もこの船にいる可能性もあるからだ。

 

「じゃあ・・・行くよ」

 

ベル達は息を潜めエレベーターのスイッチを押す。やがてエレベーターに乗り込んだ。そして扉は閉まる。エレベーターは上に上がるのだった。

 

 

 

やがてエレベーターはレディのいる部屋についた。

 

「行くよ・・・」

 

「「「うん(ええ)」」」

 

そう言ってベル達はエレベーターを降りる。

 

「これは・・・」

 

そこにはピンク色の壁に囲まれ高い階段と共に不気味な絵が大量に飾ってあった。どれも顔面がおかしい絵面だった。中には片目がおかしな形になっている部屋もあった。

 

「ここ鍵がかかっている」

 

扉を出てまっすぐに行った扉は鍵がかかっていた。しかし、どれも絵画に見られているようで幼いベルとシックスは恐怖を感じていた。

 

「怖い・・・」

 

ベルが震えるがアリーゼが何とかフォローする。色々絵画とかも眺めていたが上に上がると・・・

 

「「「・・・ッ!」」」

 

どこからか歌が聞こえた。上の階からだ。

 

「この歌・・・」

 

「レディの・・・」

 

「行こう・・・」

 

そう言ってベル達はレディの部屋を覗く。そこにはレディがいた。不気味な鼻歌を歌いながら割れた鏡に向かい髪を整えていた。周りには割れた鏡が大量にある。不気味さがレベルをまして、狂気にも見えた。これはアーディから聞いたがほとんどの人物が仮面を付けているらしい。さっきの双子のシェフも顔に見えていたのは仮面だったのだ。レディ自身も素顔が分からない状態だ。皆が皆、素顔を見られたくないようだった。

 

「私達が行っても気が付かれるだけね・・・どうしようかしら・・・」

 

そう言ってベル達は一旦部屋の外に出る。どうするかと考えたがシックスが立ち上がった。

 

「私が行く・・・」

 

「シックスちゃん・・・」

 

確かにシックスは体が小さい分気づかれにくい。アリーゼ達が行った途端破片で気づかれる可能性がある。ここはシックスが適任だろう。

 

「分かった・・・気をつけてね、シックスちゃん」

 

「うん!」

 

そう言ってシックスは扉を開ける。扉を開きレディの部屋に入る。ベル達は万が一のために隠れられる場所に隠れている。まあそれがレディの部屋にあるタンスなのだが・・・

 

「シックスちゃん、頑張れ!」

 

「大丈夫かな・・・」

 

「・・・・////」

 

まあ、どんな態勢になっているかに関してはご想像にお任せしよう。

 

シックスはレディの後ろをこっそりと奥の部屋に忍び込む。気が付かれてはいないのかレディの鼻歌はやまず髪を整えている。

 

シックスは何とか奥の部屋にたどり着いた。

 

「鍵は・・・」

 

シックスは鍵を探す。しかしレディの部屋には見当たらない。鍵というのは大体、大切な物なので自分の部屋に置いてあるはずだ。そう踏まえたのだが・・・

 

「見当たらない・・・」

 

机の中とか、ベッドの下にあると思い探したのだが、これも見当たらず緊張と恐怖がシックスの中を走った。なんせシックスが見た悪夢と同一人物が目の前にいるのだから、怖いのも当然なのである。

 

「とにかく、早く戻らないと」

 

そう言って机におりようとしたときだった。

 

(パリンッ)

 

(・・・・・・・ッ!しまった)

 

シックスが机においてあった壺を割ってしまったのだ。鼻歌が止まっており確実に気が付かれた。シックスはすぐにベッドの下に隠れた。アリーゼ達も息を潜める。

 

(怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い)

 

シックスはベッドの下で生まれたての子鹿のようにブルブル震えていた。

 

「・・・・・・?来ない?ア・・・」

 

しかし、いくら待ってもレディは来ない。そして壺のそばに鍵を見つけた。アリーゼ達も不思議に思ってみてみたらレディはその部屋にいなかった。すぐにシックスの元に向かう。

 

「シックスちゃん!大丈夫?!」

 

「ウ・・・うん」

 

そう言ってシックスは胸をなで下ろす。地面にへたり込んで安心したようだ。

 

「ウ・・・ウワアアアアアア!!」

 

「よしよし、怖かったね」

 

シックスは我慢できなかったのか泣き出してしまった。アーディの膝元で泣きじゃくりアーディはそっと指で撫でた。膝には小さな涙の後が出来た。暫くして泣き止んだ後とりあえずどうしようかと話しあっていた。

 

「どうしようか?気が付かれたのは、確かよね」

 

「それなのになぜ襲ってこないのかしら・・・」

 

そのことが謎だった。レディはシックスと何か因縁があるのか分からないがそれでも油断は出来なかった。

 

「とりあえず、あの鏡の場所に行ってみましょう」

 

「うん、とりあえず先に進まないといけないし」

 

「そうだね、行こう」

 

「うん」

 

そう言ってベル達は高い階段を降り鍵がかかっている扉の前に来た。そしてシックスが持ってきた鍵をはめる。

 

「開いた・・・」

 

扉を開け、中に入る。

 

「暗いね・・・」

 

部屋の中はどれも割れた鏡とマネキンでいっぱいだった。暫く進んだ。その時だった・・・

 

(バァン!)

 

「「「「・・・・・・・ッ!」」」」

 

突然扉が勝手に閉まったのだ。何かイヤな予感がしたのかアリーゼ達は走った。やがてそのイヤな予感が当たる。

 

「見つけたああああぁぁぁ!!」

 

「・・・・・・・ッ!走って!!」

 

レディが後ろに現れたのだ。ベル達は急いで逃げる。うめき声が後ろに聞こえた。

 

「・・・・・・・ッ!行き止まり」

 

ベル達が逃げた先の目の前に大きな棚があった。このままでは全員殺されて終わりだ。レディは着々と後ろに近づいてくる。

 

「ローゼ!ここの棚の物を押して!!」

 

突如、ベルは大声で言った。そしてアリーゼは棚の物を押した。すると人一人通れそうな穴が出来た。

 

「これは・・・ッ!」

 

「でかしたわよ!!」

 

「早く来て!!」

 

そう言ってシックスも入りベル達もその穴に入る。黒い煙と共にレディは消えた。

 

「ハァ・・・びっくりした」

 

「彼奴、光に弱いのね」

 

そう言って奥の部屋の方に進んだ・・・最終決戦がここで始まろうとしていた。

 

一方・・・

 

リュー達はあの二人組を撒いたところだった。怪我をしてとにかく高等回復薬をかけ傷を癒やしている。

 

「にしても何だよ、この船・・・ゲスト達、全員目が死んでいたぞ」

 

「ああ、アレは食事と言うより合体だ・・・あんなの正気の沙汰ではない」

 

「楽園と言うより地獄ですよね・・・ここは」

 

そう言ってとにかく指名手配のような紙を見る。

 

「この子は一体・・・」

 

「さあな・・・とりあえずアーディと合流しましょう・・・」

 

「ああ、とにかく行くz「させるか・・・」・・・・・・・ッ!」

 

休憩していた所、突然二人組が襲ってきた。

 

「また、この二人組・・・ッ!」

 

二人はリュー達に、向かい刃を向ける。それに対して3人も抵抗しとりあえず戦いを始めた。

 

「・・・・・・・ッ!何で突然・・・」

 

「貴様らに教えるつもりはない」

 

そう言って輝夜を切りつける。受け止めているが、それでも攻撃は重かった。そしてもう一つ疑問点があった。

 

(なぜ、あの時、追ってこなかった)

 

そう、実は輝夜達を逃したとき実は直線の廊下だったのだ。それなのに追ってこなかったのは何かおかしかった。その時何か引っかかった。この部屋の状態、そしてさっきの戦闘していた廊下の状態をよく見てみると

 

「・・・ッ!そういうことか」

 

「輝夜、どうした?!」

 

「あいつら、闇の中では活性化するが光は弱い!!光のあるところまで目指すぞ!!」

 

そう言った途端全員はその一言で動いた。現在、ここに光を使える人材はいないためとりあえずリューは光ある場所を探す。そこにとある部屋を見つけた。

 

「ここは・・・ッ!」

 

そこはアリーゼ達が訪れたあの階段の部屋だった。明かりもあり広い、戦闘には絶好の場所だった。

 

「・・・・・・・ッ!察しの良い奴め」

 

そう言って明かりがある場所を見てあの二人組は剣を構える。

 

「どうやら多少弱体化はするんだな」

 

「ええ、これで戦いやすい!」

 

そう言ってリュー達は斬りかかる。しかし、彼らも負けずに斬りかかる。

 

「それでも、貴様ら強いな・・・」

 

「当然だ、我々はレディ様の一部だからな!!」

 

そう言って攻撃する。さっきより軽かった。それに隙を突いたのか、輝夜は腹に拳を入れる。

 

「・・・カハァ!!」

 

それと同時に輝夜は男を蹴り飛ばす。

 

「・・・ッ!オラリオの冒険者と聞けば、やはり強いな」

 

「当然だ、私達は正義の眷属だ。お前達をここで倒すために来たんだよ!さっさとあんたの主、さっさと吐きな」

 

そう言って輝夜は男の首に刀を近づけさせる。そうした途端、男は鼻で笑った。

 

「はは、正義・・・か・・・」

 

「何がおかしい」

 

そう言って男は笑みを浮かべる。何かを知っているように・・・

 

「調べさせてもらったぞ、お前ら、数ヶ月前に無実の人間を殺したようだな」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「それでいて正義か?笑わせるな」

 

「黙れ・・・・・・・ッ!」

 

 

「今オラリオにいられるのは、そのアリーゼという人間のお陰だろう?」

 

「黙れ・・・・・」

 

「しょせん貴様らは正義ではない、あそこにいる豚と変わらない、大罪であり傲慢な存在なのだ!!」

 

「黙れえええええええ!!」

輝夜は怒りのままに刀を振りかざす。それ一瞬の隙を生んだ。

 

「やはり人間は単純で傲慢だな・・・」

 

「ウグゥ・・・・・・・ッ!」

 

そう言って女の方が輝夜の背中を切る。それにより出血が出ていた。

 

「しまった!!」

 

「輝夜!」

 

ライラは二人組に攻撃しリューはその隙に輝夜を運ぶ。リューは高等回復薬で輝夜の体を直す。

 

「大丈夫ですか?!」

 

「ああ、すまない、取り乱した」

 

ライラも一旦退く。二人組は果敢に攻めてきた。光の弱体化に構わずとも大丈夫かと思ったのだろう。

 

「・・・・・・・ッ!輝夜、お前は休んでいろ!」

 

「ああ、すまん」

 

そう言って輝夜は壁に座り込む。そしてリューとライラは共に武器を構える。

 

「リオン、分かっているよなぁ!!」

 

「はい、ここであいつらを倒す!!」

 

「ふん、どっちにしろ変わらん」

 

「そろそろ終わらせましょう・・・」

 

そして部屋の中では金属のこすれる音と共に火花が散らしたのだった。

 




はい、今回はここまでです。そして次回、決着です!お楽しみに!


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Chaptear9小さな悪夢 後編

はい、今回はレディとの最終決戦です。ここで、例のあのシーンが・・・(作者二番目のトラウマシーン)それではどうぞ!


ベル達はレディから逃げてとりあえず休憩をしていた。どうやらレディは明るいところでは弱体化をするらしいので光があれば何とかやり過ごすことが出来るらしい。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

ベルはさっきの事で震えが止まらなくなっていた。それもそうだろう、急に扉が閉まって、その途端に不気味な声をした女が仮面を付けて追いかけてくるのだ。仮面がついている分、どんな顔なのかも分からない為、余計に怖くなるのである。9歳である身でありながらこれほどの体験はトラウマ物だろう・・・

 

「ベル・・・大丈夫?」

 

アリーゼが何とか落ち着かせる為、抱き寄せる。しかし、恐怖で震えているのは他にもいた。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」

 

アーディが逃げたところからずっとこの調子なのだ。アーディはエレベーターに乗る前からレディに恐怖心を持っていた。その恐怖心がさっきの出来事で爆発したのでうずくまって震えながらこの状態である。

 

「アーディ・・・」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・・」

 

シックスはアーディのそばによる。ネズミと同じ身長な為棚でよじ登り、アーディのそばによる。すっとアーディの顔にシックスは頬をのせる。

 

「大丈夫だよ・・・私がいるから・・・」

 

そう言って本当に小さな手で、シックスはアーディの涙を優しく拭う。少し、アーディは落ち着いたようだった。

 

「シックスちゃん・・・すごいね、こんなに小さいのに・・・」

 

アーディは人差し指でシックスの頭を撫でた。少し恥ずかしくなったのか、顔をそっぽに向く。

 

「ううん、実際私今も怖いよ・・・ここに来るまでもずっと震えていたし」

 

「それでも、シックスはよく一人で頑張ったよ・・・今でもシックスのお陰で勇気がもらえているんだから・・・」

 

「うう、もう行くよ!!」

 

そう言ってシックスは顔を赤くしてアーディの体から降りる。休憩を終わりにし、シックスは小さいライターを持って先へ進んだ。暫くして大きな広間に出る。

 

「ここは・・・」

 

「これはまた不気味ね・・・」

 

そこには着物をマネキンが大量に置かれてあった。部屋には不気味さが増している。アリーゼ立ちは広間を探索したがどれもマネキンや割れた鏡が散乱していた。

 

「ここは・・・」

 

シックスは木の板で打ち付けられた入り口を見つけた。

 

「ちょっと待ってて」

 

そう言ってアーディは自分の剣を取り出した。そして剣で板を割る。

 

「ここは・・・」

 

そこは狭い部屋だった。中には割れた鏡が大量にあった。

 

「やっぱり、鏡は壊されているわね・・・」

 

アーディ達は探索するもなかなかめぼしい物は見つからなかった。

 

「ねえ、これは・・・?」

 

シックスが何かを見つけたようだった。全員シックスの方を見つめる。そこには・・・

 

「鏡・・・?でもこれって・・・」

 

「うん、割れていない・・・」

 

割れていない鏡だった。アーディ達は少し首をかしげる。明らかに重要そうだった。

 

「とりあえず、持っていこう」

 

そう言ってシックスは鏡を持ち出す。持ち上げトテトテッと歩き出した。「自分で持てる」と言う意思表示みたいで少し可愛いと思う3人で会った。

 

「・・・・・ッ!」

 

しかしそれを思う事もつかの間・・・その時全員が冷や汗を掻く。少し、明かりがある所にレディを見つけた。恐らくだが気が付かれている。退路も遠かった。ベル達は急いで剣を抜く。そして全員がレディの方を向いた。

 

「見つけた・・・」

 

レディは不気味な声と共に後ろを向く。ベル達はレディの不気味さに足が震える。

 

「あなた達のせいで・・・私の永遠の若さがこのモウで手に入られる・・・そのはずなのに!」

 

そう言ってレディはベル達の方に向いた。仮面を付けていて分からないが、とても恐ろしい形相だと分かる。

 

「お前達が侵入してきて、許さん!!ここで殺してやる!」

 

「「「・・・・・ッ!」」」

 

その瞬間、黒い煙によって消えた。闇によって消えたのだ。

 

「ベル、シックスちゃん!隠れて!!」

 

そう言ってベルとシックスは逃げようとする。しかし・・・

 

「逃げられると思うな!」

 

レディがシックスの近くにいた。そしてシックスの元に近づくとレディは手に黒い霧が集まる。それと同時にシックスの体が浮かび上がる。

 

「あっ・・・が・・・」

 

首を絞めているようだった。シックスをつかむとき小さな光で居場所を把握し、ベルは剣でレディの元に斬りかかる。

 

「邪魔をするな!!」

 

「ウグッ!」

 

「ベル!クソ・・・ッ!」

 

「シックスちゃんを離して!!」

 

しかし、レディによってベルは動きが止まりそのままベルは倒れ込んだ。アリーゼ達も斬りかかるが同じくレディは避け、アリーゼ達は動きを止められ倒れ込んだ。

 

「大人しく見ていなさい・・・この子が殺される瞬間を・・・」

 

「アアアアァァァァ!」

 

そう言ってシックスの首を締める力を強めた。

 

「シックスちゃん!!」

 

「クソォ!!」

 

アリーゼ達が動こうにもレディの力によって動きが止められる。ベルは何とか立ち上がろうにも、恩恵もないただの子どもが出来る訳も無かった。

 

「ウグッ・・・・・!シックスちゃん

 

(僕は・・・また・・・)

 

そうしてベルは意識を落とした。

 

???sideend

 

ベルside

 

「ウグ・・・・・ッ!シックスちゃん・・・」

 

体が重い・・・口を開くのも苦労するくらい、僕の体は重かった。杭で打たれたような感覚だった。起き上がろうにも起き上がれない。ここに来て自分の無力さを呪った。

 

ふと、僕はあの日を思い出す。村の皆が殺された日のことだ。あの時、僕はただ震えながら見ているだけだった。燃えさかる草原、壊れる建物。そして悪夢とも言える多数の村人の悲鳴、血のにおい。そして明確に向けられた殺意。震える体で逃げようもするも転んでしまった。そこでローゼに助けられた。あれ以来、ローゼには助けられている。他人からみれば僕が助けているみたいだが、ローゼによって僕は生かされていた。身体も心を・・・

ローゼがいてくれているから、僕はここにいる。僕は一人では何も出来ない・・・ただの無力な子どもなんだ・・・分かっている・・・だけど・・・

 

(無力でも・・・・・ッ!僕は一人の女の子を助けられないで・・・もう・・・!!)

 

「止めろおおおおおおお!!」

 

そう叫んだ瞬間僕の背中の剣が宙に浮いた。

 

ベルside end

 

???side

 

「止めろおおおおおおお!!」

 

レディがシックスの首を締め、レディがベル達の動きを封じられ、絶望しかなかったこの状況にベルがそう叫んだ途端、ベルの背中にあった剣が光り出した。

 

「グウウウウウウゥゥゥ!!」

 

その瞬間、レディはシックスを離す。衝撃のお陰か、アリーゼ達の呪縛は解けた。

 

「ベル!!」

 

「シックスちゃん!!」

 

二人はシックスとベルの元に向かう。しかし・・・

 

「・・・・・ッ!させるか、来なさい!!」

 

そうした瞬間、闇の中から仮面を付けた二人の黒影が出ていた。

 

「この二人って・・・」

 

「フェレライであった・・・ヤツとは違うけど、種類は同じだね・・・」

 

そうしている間にも二人の黒影は、アリーゼ達に斬りかかる。

 

「・・・・・ッ!強い・・・レディの本質的に暗闇だと活性化するけど・・・・・ッ!」

 

「ええ、今あの剣が光を出している場所は限定的、おびき出しましょう・・・」

 

「うん!」

 

そうして二人は黒影から逃げるが・・・

 

「・・・・・ッ!まだいるの?!」

 

他にも黒影がいた。ベル達はとりあえず明るい場所まで避難した。しかし・・・

 

「おのれええええええええ!!」

 

レディは明るいにもかかわらずシックスに深い執着心があったのか、明かりがある所でも強引にシックスめがけて向かってきた。

 

「シックスちゃん!!」

 

このままではまたシックスが、首を締められると思った。レディはシックスをめがけて浮遊しながら向かってくるが・・・

 

「フッ・・・・・ッ!」

 

「な・・・・ッ!?ぎゃああああああああ!」

 

シックスが鏡をレディに向かせたところ、レディは突然悲鳴を上げ、はじけ飛んだ。シックスは反動で後ろに飛んで倒れ込んだ。

 

「シックスちゃん!!」

 

「やっぱり・・・」

 

その瞬間、シックスは確信した声で立ち上がり鏡を持ち直す。そこで少し考えていた。そこにベルに声をかけた。

 

「ベル!!光を一旦消す事出来る!?」

 

「え・・・?」

 

「出来るの?!」

 

「分からない・・・でも、助けられるのなら・・・」

 

そう言ってベルは何とか念じてみた。すると・・・

 

「消えた・・・」

 

明かりは消える。レディはその間に持ち直していた。シックスも別の方に走り出す。

 

「今・・・もう一回つけて!!」

 

そこでベルはまた念じる。するとまた明かりがつく。

 

「チッ!!ちょこまかとおおおおおおお!!!」

 

そう言ってレディはまた勢いよくシックスに向かって来た。その方角に向かって鏡を向ける。

 

「ぎゃああああああああ!」

 

またレディは後ろに吹っ飛ぶ。シックスも反動で後ろに倒れ込むが・・・

 

「もう一度!!」

 

そう言ってベルはまた念じて明かりを消す。その間にシックス達は急いで移動する。

 

「クソ・・・ッ!この間に・・・」

 

「もう一度つけて・・・・・ッ!」

 

そうして明かりがついた。それによってレディが動き出す。

 

「よくもおおおおおおおおおおお!!」

 

「ハァ!」

 

シックスは負けじと、レディに向かって鏡を向ける。

 

「ぎゃああああああああ!」

 

それと同時に光が出てきてレディは後ろに吹っ飛んだ。シックスも後ろに倒れ込む。

 

「・・・・・ッ!ヒビが・・・・・ッ!」

 

ふと鏡にヒビが入った。

 

「シックスちゃん!!」

 

「大丈夫!!もう一度お願い!!」

 

そうしてベルはまた明かりを消す。レディはこのうちから一旦整える。そうしてシックスはまた、合図をした。

 

「つけて!!」

 

「ウグッ!」

 

ベル自身も体力が削られてきた。レディは仮面の目から鋭い視線で見つめる。

 

「これならどうだ!!」

 

「・・・・・ッ!フェイントか!!」

 

明かりの周りを回転し始めた。シックスは油断をせず鏡を構える。

 

「・・・・・ッ!消えた・・・」

 

しかし、レディは突然現れては消える。その次の瞬間、後ろからレディが来た。

 

「ウガアアアアアアアアアアア」

 

「・・・・・ッ!ハァ!!」

 

「アアアアアアアアアアアアア!!」

 

シックスは何とか鏡をレディの方向に向ける。レディは悲鳴を上げながら後ろに吹っ飛ぶ。

 

「ハァハァ・・・もう一度お願い!」

 

「うん!!」

 

そうしてベルは明かりを消す。レディはこの間に体制を整える。ベルも膝をついていた。

 

「つけて!!」

 

そうしてうなずき、ベルはまた明かりをつける。

 

シックスも体力の限界か膝をつく。レディの方もふらふらだった。やがてまたレディはフェイントをかけた。シックスもふらふらだった。やがてレディがシックスの後ろに来る。

 

「・・・・・ッ!ハァ!!」

 

「グアアアアアアアアアア!!」

 

レディはまた後ろに吹っ飛んだ。シックスもまた倒れ込む。

 

「よし・・・・ッ!」

 

シックスは立ち上がる。そして鏡を持った。

 

「アレ・・・?」

 

だがここで、腕の力が働かなくなった。鏡を持とうにも落ちてしまう。

 

(チャンス!!)

 

レディはこれを好機とみたか一気にシックスの方にめがけて突進してきた。さっきよりも勢いよく、そして鋭い威圧感だった。

 

「終わりだああああ!!」

 

レディはシックスに腕を伸ばす。

 

「あと・・・ちょっとなのに・・・・・ッ!」

 

そうしてシックスの身体は宙に浮かび始める。

 

「ハアアアア!!」

 

「なっ・・・ッ!」

 

事はなかった。ベルが鏡を持っていたのだ。現在、ベルは光の維持でかなり疲れているはずだった。鏡の負担は反動でものすごい体力を持って行かれる。それを同時にやるなどベルはどうなるか分からなかった。

 

「終わりだ!!レディ!!!」

 

そうしてベルは、思いっきり鏡をレディの方に向ける。

 

「ぎゃああああああああああああああああああ!!バカナアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

その悲鳴と同時に、鏡が割れた。

 

階段の方では・・・・

 

 

「な・・・・何だ?」

 

「まさか・・・ッ!」

 

アストレアファミリアのリューとライラが戦っていた二人組が突然、黒い煙が上がる。それと同時に身体の一部が崩れ去った。

 

「一体何が?!」

 

「もしかして・・・」

 

リューは何かを察した。それに答えるように二人組は喚くように叫び出す。

 

「そんなあああああああ!!」

 

「レディ様あああああああああ!!」

 

そうして段々と二人組の身体が消えていった。腕が炭のように落ちる。

 

「まさか・・・誰かレディを倒したのか・・・・・ッ!」

 

そうして輝夜は目を丸くする。さらなる疑問が飛び交っていた。

 

「一体誰が・・・」

 

「もしかして・・・」

 

そう口にしたが、三人はともかく怪我の治療を優先させた。アーディとも合流できていないのでとにかく捜索するのだった。

 

ベルが倒れたのか、周りは暗くなっていた。そばには、剣が落ちているアリーゼも戦った体力疲れか、倒れ込んでいた。しかし、レディにはもう暗闇でも活性化できないほどボロボロになっていた。そばにはレディの仮面が落ちている。

 

「クソォ・・・・・ッ!まだだ・・・幸い、あの小僧達は延びている・・・今のうちに・・・・・ッ!」

 

「やばい・・・・・ッ!逃げられる」

 

アーディ達はすぐレディを追いかけようとするがその体力はない。レディも起き上がれない状態だが匍匐前進で行くつもりだ。その時だった・・・

 

(グギュルルルル)

 

突然腹の虫が鳴いていた。こんな時にどうでも良いと思ったが、レディは何やら恐れていた。どうしたかと思ったがその腹の虫の音の正体が現れた。

 

「お腹・・・すいた・・・」

 

腹の虫の宿主はシックスだった。ベルはシックスが無事そうで安心する。シックスは立ち上がり、歩き出す。

 

「シックスちゃん、良かった・・・」

 

しかし、なぜかシックスはベル達の言葉を無視する。途端、シックスの口からよだれが垂れていた。それも異常なまでの量だった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

「ヒッ・・・・・ッ!止めろ・・・・・ッ!」

 

「シックスちゃん・・・?」

 

段々とシックスはレディの方に近づいていた。レディは酷く怯え急いで逃げようとする。しかしその身体では一歩位しか進めなかった。

 

(何が・・・そう言えばあの小人の死体は何なの)

 

アリーゼはシックスに出会う前のあの三角帽のような頭をした小人を思い出した。死体は何か食われたようなあとだった。今更なんだと思ったがシックスの状態で何かが引っかかった。最初はネズミかと思ったが、死体は暖かくまだ死んだすぐあとだった。ネズミは生きている肉は襲わない。そもそも歯形も合わなかった。

 

(アレは、ネズミじゃなかった・・・どっちかというと人の歯形をしていたし・・・)

 

そこで何かが引っかかった。人の歯形・・・それも小さい跡・・・ふと、アリーゼの頭に何かのピースがくっついた。

 

(あそこにいたのは、ベルと私、後にアーディが来て・・・そう言えば、シックスちゃんは大分痩せていた、しかも餓死寸前くらいの体系・・・まさか!)

 

アリーゼは何かを察したのか慌てて声を上げる。

 

「シックスちゃん!!ダメェ!!!」

 

しかし、シックスにはその言葉は届かない。やがてシックスはレディの首元に近づく。

 

「シックスちゃん・・・?」

 

ベルはシックスの方を見る。アリーゼは不味いと思いベルに近づきながらもその時は既に遅かった。

 

──―グチャッ!

 

「は・・・?」

 

「ああああああああああああああああああぁぁぁ!!」

 

その音と共に、シックスはレディを食べ始めた。レディの悲鳴が広間を包む。首元を生々しい音でむさぼり食う。辺りからは血が流れている。ベルはこの状況に村の事を思い出した。血のにおいが辺りに漂う。

 

「ヒッ・・・・・!!」

 

「シックスちゃん!止めてぇ!!」

 

アーディの言葉も無視してシックスは食べることを止めない。食べている音の生々しさが、ベルに恐怖心をあたえる。やがて、その生々しい音がやんだ。

 

「シックスちゃん・・・・・」

 

ベルがそう口にすると、シックスは黒い何かがまとわりついた。

 

「ヒッ・・・・・ッ!」

 

ベルが思わず声を上げる。それと同時にシックスは立ち上がり、やがてゆっくりとベルの方を向いた。それがベルの恐怖心の絶頂だったのか気絶してしまった。更に黒い何かのせいで、アーディも気絶した。

 

「アーディ!!」

 

その叫びが大広間に響く。その時か、急に物が倒れる音がした。

 

「アーディ!!」

 

そこにアストレアファミリアの輝夜とリュー、ライラが来た。

 

「輝夜!ライラに、リオンも!!」

 

「アリーゼ?!どうしてここに・・・」

 

「説明は後、でもシックスちゃんが・・・」

 

「シックスって・・・・・ッ!」

 

3人も驚嘆の顔を見せる。4人ともシックスがいる方を見た。しかし、そこにはシックスはいなかった。

 

「いないじゃないか・・・」

 

「ですが、アリーゼ・・・なぜシックスを・・・」

 

「3人とも知っているの?!」

 

「ああ、脱走者と指名手配されていたよ・・・」

 

「そう・・・」

 

「あの子は・・・」

 

ライラがベルを指した途端アリーゼはベルの方を見る。輝夜はなにかを察したようだった。

 

「アリーゼ・・・もしかしてあの子は・・・」

 

「うん、お察しの通りだよ」

 

そう言って全てのことを話した。ベルがあの村の生存者だと、自分がローゼと名乗ってベルと一緒に旅をしていることを、シックスがレディを食い殺したことも・・・それを聞いてリュー達は驚嘆の顔を浮かべる。

 

「まさかな・・・これが運命というヤツか・・・」

 

「とりあえず・・・これを」

 

ライラは悪態をつき、そう言ってリューはアリーゼに高等回復薬をかけた。アリーゼは立ち上がる。アリーゼはすぐ、アーディとベルのもとに駆け寄る。

 

「ベル!アーディ!しっかりして!!」

 

「アリーゼ・・・」

 

そこにアーディも起き上がる。

 

「アーディ!大丈夫?!」

 

「私は・・・でも・・・」

 

ベルの顔が青ざめたまま気絶をしていた。よほどトラウマだったのか、急いで抱き寄せる。

 

「ベル・・・ッ!ベル!」

 

ベルは一向に目を覚まさない。何も出来なかったアリーゼは無力感で涙を流す。アリーゼはベルと旅を初めた最初は罪滅ぼしのつもりだった。しかし、旅をするにつれてアリーゼは段々、何かが外れた。ベルといられる時はローゼ・アーリヴェルと名乗りながらも共に遊び、時に学び、時に喧嘩・・・は、なかったが充実した日々を過ごしていた。罪人であるアリーゼに唯一、安らぎを与えてくれたのはベルだった。旅を通してベルの事について良く知れた。この子は甘えん坊で、それでいて頼もしくて、優しい・・・いつの間にか大切な家族になっていた。守らなければいけないのに・・・アリーゼはベルを守れなかった。今回もベルのお陰で勝てたのだ。レディの戦いもベルとシックス頼みだった。彼らは子どもであるのに・・・守らなければいけないのにだ・・・それがアリーゼの心を打ち付けた。

 

「ごめんね・・・ベル・・・ごめんね・・・」

 

謝りながらアリーゼは何時ものように頭を撫でる。それでも一向に目覚めることはなかった。

 

「アリーゼ・・・」

 

「来ないで!!!」

 

急にアリーゼは大声でリュー達に怒鳴りつける。アリーゼはハッとしてうつむく。

 

「ごめん・・・」

 

「いえ、大丈夫です・・・」

 

そう言ってリューは一歩下がる。アリーゼはとりあえずベルを寝かそうとする。その時だった・・・

 

「ウ・・・ロー・・・ゼェ・・・」

 

ベルが口を開いたのだ。ベルは徐々に目を開ける。リュー達は物陰に隠れた。

 

「ベル!良かった・・・・・ッ!」

 

アリーゼはベルを抱きしめる。ベルはアリーゼがそばにいるのを実感し、胸に顔をうずくめる。そして・・・

 

「ローゼ・・・ウ・・・わあああああああ!!」

 

「怖かったね・・・よしよし・・・もう大丈夫だよ」

 

恐怖のあまりか泣いてしまった。それもそうだろう、9歳でこの光景はトラウマ並だ。アリーゼはそっとベルの頭を撫でる。暫く、ベルの泣き声が辺りに響いた。

 

リュー達は隙を見てこの広間から脱出した先にモウに脱出するための船を用意していたのだ。急いでその場所に向かう。アーディは暫くアリーゼと行動をすることにした。一応船は残していてはいる。ちなみにリュー達は窓から外に出たが・・・

 

暫くしてベルが泣き止み、とりあえずモウから脱出しようと広間を出た。アーディに安全な方を教えてもらい、暫く歩くと見たことある道が見えた。そう、ベル達が、モウに入って最初に来た道だった

 

「ベル・・・下がっていて」

 

アリーゼ達はゲスト達を警戒し、剣を抜く、しかし・・・

 

「襲ってこない?」

 

「食べている音もしないよ・・・」

 

不気味と言うほど静かだった。ベル達は大きな扉に向かう。ここは出口までの直線の廊下でもありゲストがかなり集まる場所である。

 

「じゃあ、行くよ!」

 

その合図と共に、ベル達は一斉に扉を開けた。そこに広がっていたのは・・・

 

「え・・・何これ・・・」

 

ゲストの山のような死体だった。奥には光がある。更にはカモメの音が聞こえた。そこに小さな人影が映る。そこには・・・

 

「やあ、ベル、ローゼ、アーディ・・・」

 

後ろ明かりで影が重なるが姿ははっきりしていた。

 

 

「シックスちゃん・・・」

 

ネズミのように小さく黄色いレインコートを着て何か黒いオーラのような物をまとっており手には手紙を持っていたシックスだった。




はい、今回はここまでです。次回でリトルナイトメア編最終回です。後日談のような物で2に関するネタバレ、考察もあるのでご注意ください。それではまた次回!

追記

例の二人組をリトルナイトメア風に紹介してみました。

二人組

レディの一部である彼らは,ただひたすらレディの為に働き続ける。

毎日、毎日、毎日

24時間365日、働き続ける。

それがどんな狂っていた事としても


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Chaptear10リトルナイトメア

はい、今回でリトルナイトメア編は完結です。正直ガバガバ考察ですがどうぞ!リトルナイトメア2のネタバレも含みますのでご了承ください。


胃袋の意味を持つ船、モウ。極東に伝わり農業の街、フェレライから食料を奪い住人の魂をくらっていた船が今終わろうとしていた。

 

「やあ、ベル、ローゼ、アーディ・・・」

 

「シックスちゃん」

 

代償に一人の小さな悪夢が生まれたが・・・今、小さな悪夢は自分のサイズと同じくらいの手紙を持ち太陽が後ろに照らし出してどこか神々しさを出している。シックスはどこにでもいる少女のような笑みを浮かべている。

 

「シックスちゃん貴方は・・・一体何者なの・・・」

 

アリーゼの言葉に少し悲しそうな瞳で見る。シックスは一呼吸置いて話を続けた。そうしてシックスはレインコートを脱ぐ。そこには・・・

 

「・・・?!尻尾?」

 

シックスの後ろに尻尾があったのだ。獣人ならよくあることだがシックスの頭には獣人には絶対ある耳がない。シックスはレインコートを着直し、また一呼吸置くと話を続けた。

 

「思い出したの・・・私の本当の名前はケルベロス。以前天界で封印された魔物だよ」

 

魔物、モンスターとは違い天界で生まれた知性のある生物。その力は神でさえ凌ぐモノだった。その強大さ故に封印されていたのだが、200年前、それが解放されたと神でささやかれていたが、ほとんど対処出来ていたらしい。しかし、中には人間で取り込んだものもいるというのだ。

 

「さっきの女も、分かれた私のもう一人の人格・・・正直怖かったよ」

 

その言葉に3人の身体が震えた。さっきのシックスとは違う・・・ベル達もケルベロスの話は聞いたことがある。ケルベロスは天界で多くの神をくらったと本に書かれてあった。恐ろしく、残虐なイメージを持っていたがそれは神話での話。実際に見たことはないため驚きを隠せなかった。

 

「怖い?そうだよね・・・私はそこまでのことをしたんだから・・・」

 

しかし、どうも彼女がケルベロスだとは信じられなかった。今の彼女は不気味ではあったがそれと同時に優しさに包まれている。そんな感じだった。しかし、船は揺れ始める。

 

「彼女の持つ力とモウは一心同体・・・この船も、もうすぐ沈む、速く逃げた方がいいよ・・・」

 

「でも・・・」

 

「安心して。私は、ローゼもアーディもベルも大好き。他の人間は別にどうでも良い、でもベル達は特別だよ・・・だから食べることもないから・・・」

 

「・・・・・ッ!」

 

そう言ってシックスはカゴメの鳴き声と共に外に出ようとする。それと同時にベルは思わずシックスの元に詰め寄る。

 

「待って?!シックスはこれからどうするの?!」

 

そう言った途端、シックスは足を止め、ベルの方を見る。すこし、悲しそうにベルのことを見ていた。

 

「私は・・・大丈夫、幸いこの力さえあれば何とか、生きられるから・・・」

 

「でも・・・」

 

シックスはこれから一人で生きようとしていた。目を見て恐らく、ベルを助けるためだろう。それもそうだ、シックスは普通の人間より遙かに小さく、それでいて化け物並の力を有している。もし、ギルドに目をつけられたらオラリオの冒険者を敵に回す。そしたら社会の目もベル達に向ける目は予想つく。シックスはそれを理解していた。

 

「私の目的も達成された、私も旅に出るよ・・・」

 

そう言ってシックスはいくらか肉を手にしていた。そして階段を上る。シックスは何かを思い出したようにベルの方を振り向いた。

 

「あのね・・・ベル、一つお礼を言いたいの・・・」

 

「・・・何?」

 

そう言ってシックスは涙を流す。その涙は夕日に当たり輝いていた。そうしてシックスはベルのそばによる。小さな身体で、ベルの足下まで来た。

 

「ベル・・・私に、生きる希望を与えてくれてありがとう・・・」

 

「・・・・・ッ!」

 

シックスは涙を流しながらレインコートのフードをかぶる。そうして階段を上がった。

 

「じゃあね・・・」

 

そう言ってシックスの姿は消えた。

 

???side end

 

 

 

ベルside

 

あれからフェレライでは新しい領主によりこの土地は豊かになった。飢えで苦しんでいる人々はいなくなり街は賑やかになった。

 

「ローゼ・・・」

 

「うん・・・」

 

あれから僕達はシックスがどうなったのか気になっていた。すぐに追いかけようとも思ったがそのうちに消えてしまっていた。恐らく、近くのボートを使ったのだろう。シックスはあれ以来、情報もなかった。きっと今でも懸命に生きているのだと思う。シックスに合う前の三角頭をした小人はシックスがやったのだという。しかし、外の世界でそういうニュースがないと言うことはきっとうまくやっているのだろうと思う。彼女は自由になったのだ・・・人を殺していない限り彼女の旅に口を出すのは出来なかった。ふと思う・・・もし、少しでも違えば、運命は変わったのだろうか・・・僕には分からなかった。だが、僕達は僕達の旅を続ける。それが、今の僕達だった。

 

「行こう・・・」

 

「ええ」

 

今日も僕達は旅を続ける・・・

 

ベルside end

 

シックスside

 

ベルと分かれて以来、私は森に入る。道中モンスターというモノは出たが、レディの力で余裕に対処をしていた。その後はそのまま食べたが・・・ふと、私は背中からとある手紙を取り出した。あの首つりの男だ。レディの力ですぐそこまで行きとったのだ。私は息をのみ手紙を開ける。そこには・・・

 

「モノ・・・」

 

以前、シックスと共に冒険をし、失った友人、モノの物だった。モノは以前、怪電波に捕らわれ、閉じ込められたシックスを助けてくれた少年である。しかし、最後モノは自らシックスの手を離しモノは落ちた。モノは自分自身を犠牲にして私を助けたのだ。それを忘れていた自分に怒りを覚える。

 

息をのんでシックスは手紙を読み始めた。

 

『シックスへ・・・

 

これを読んでいると言うことは、僕はもう死んでいるんだね・・・僕は君が大好きだった。一緒にいたかった。でも現実は何時も残酷だ。どうやってこの無限ループを終わらすのは分からなかった。でもようやく気が付いたんだ・・・僕が死ねばよかったんだ。シンマンになってどうすれば君を助けられるのかなって・・・傲慢だよね、うん自覚している。でも君を助けたかった・・・傲慢で狂っていたとしても・・・だからシックスは僕の分までしっかり生きて・・・愛していたよ・・・シックス

 

Ps オルゴール、壊してごめんね・・・

 

君の親友、モノことシンマンより・・・』

 

「ウ・・・・アアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

その瞬間、私の涙はダムのように崩壊した。

 

「なんでよ・・・・・ッ!なんでよ、バカ!!私も好きだったよ!大好きだったのに・・・・・ッ!モノと笑い合いたかったのに!!」

 

私は怒鳴りつけるように泣いて、地面に泣き崩れた。大切な人は傲慢だった。だとしても、一緒にいたかった。傲慢でも良い・・・あの時のように手を握って欲しかった・・・

 

「行かないでよ・・・モノ・・・」

 

そう言った瞬間、何やら紙袋が地面に落ちた。シックスはそれを拾う。

 

「これは・・・」

 

それは紙袋だった。しかも穴がついている。ちょうど私がかぶるのに最適な大きさだった。

 

「モノ・・・」

 

そう、これはモノの帽子だった。私はレインコートのフードを脱ぎ、帽子をかぶり近くの湖を見る。ちょうど月が反射している。その姿はモノのようだった。

 

「ふふ、おそろいだね・・・」

 

それを見た瞬間、私は旅の準備をする。どんなに離れていてもモノはいてくれるから・・・

 

「愛しているよ・・・モノ」

 

そう言って私は小さな身体で旅を始めるのだった・・・

 

小さな悪夢(リトルナイトメア)は旅を始める・・・いつか永遠の眠りが来るまで・・・

 




はい、僕自身の考察ではモノは自分でシックスの手を離したんだと思います。そしてシンマンとなってのちに首をつる。その後は分かりませんがどうでしょうか?次回は他作品の都市の話です。それではまた次回、お楽しみに!


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アルカンレティア
Chaptear11 水の街


こんにちは、今回は他作品の都市が出ます。そして・・・ベルとアリーゼが・・・それでは、どうぞ!


「ベル、見てヤマメだよ!」

 

「何処、何処?!」

 

「速く、速く!ホラ、あそこ!!」

 

モウとの一件が解決した後、ベル達は次の街へ移動していた。道中、船で川も渡ることがあったので、アリーゼ自身オラリオにいた頃はそういうのはなかった。そのため、新鮮で面白がっていた。後ろの老人はその光景を微笑ましく思っていた。

 

「見て、ベル!あそこに川鳥がいるよ!!」

 

「本当だ!!僕も初めて見た!!」

 

「おお、ここじゃよく見かける鳥だ。たまにとって食べるんだが・・・この時期は止めといた方がいいぜ・・・」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ、あの鳥はルーフリアと言ってな・・・この時期の鳥は身が甘くて旨いがその分デメリットがあってな・・・」

 

「毒・・・?」

 

しかし、老人が首を振るう。老人は少しにやつきながら、ベルの頭を撫でる。

 

「あの鳥は、繁殖期になると発情するフェロモンを出すんだ。男にはないがに女の効果がすごいらしい・・・当たるのは希だが当たれば最後、襲われるぞ。坊主、気をつけろよ」

 

「へ・・・へぇ~」

 

なぜだかベルは祖父に近い者を感じた。そこにアリーゼは無言でベルを抱き寄せる。アリーゼから謎の威圧感を感じ老人は大人しく食い下がる。

 

「ローゼ?」

 

「ベル・・・良い?今の話は忘れなさい」

 

「ア・・・はい」

 

そうしてベルは思わずうなずく。まぁ、ベルもそろそろ10歳になるのだが、それでもやはり心配なのである。

 

「そろそろつくぞ!」

 

暫くして、門が見えた。船は到着の準備をする。ベル達は、その都市の広大さに少し驚いていた。実際、フェレライよりも広く、サレルメスよりも活気があった。

 

ベル達は門をくぐる。

 

「ようこそ!水の街、アルカンレティアへ!!」

 

「ここが・・・アルカンレティア・・・」

 

ベル達は、温泉で有名な水の街アルカンレティアに足を踏み入れた。辺りには、屋台が大量に並んでおり、一見普通の街だが、実はこの街には一つの問題点があったのだ。それは・・・

 

「「「そこの二人組、是非アクシズ教にいいいいいい!!」

 

「「ウワアアアアアア!!」」

 

ここの街の住人の一部、アクシズ教の信者達がとてもやばいと言うことで評判なのだ。ここの都市は、アルカンレティアは二つの女神によって統治されている。それが、アクアとエリスという女神だ。この二人の女神は崇拝の対象としても親しまれているが、その中でアクシズ教は異常だ。旅行者を見つければすぐに布教。それもしつこく。更には詐欺まがいなこともしてくるのだ。例えば、ギルド報告書を入信の契約書に変えるなど・・・そういうのがわんさかいるらしい。旅行者曰く、

 

「とにかく、門に入ったらまっすぐ行った先にあるエリス領に向かえ、あそこなら安全に観光できる」

 

と言うほどだ・・・すぐにベル達は駆けだしたが・・・

 

「痛・・・・・ッ!」

 

「ア・・・大丈夫?」

 

小さな子どもにぶつかってしまった。少しして立ち上がると子どもは泣き出してしまう。

 

「ウワアアアン!!」

 

「ああ、ごめんね・・・大丈夫?」

 

そうして、ベル達はとりあえず子どもを介抱する。しかし、後ろからしつこくアクシズ教の信者が迫ってきた。

 

「やばい!とりあえず隠れよう」

 

そうして路地裏に隠れた。そこで子どもにポーションをかけ、怪我を治す。

 

「ありがとうお姉ちゃん。」

 

女の子は無邪気な笑顔で頭を下げた。ベルがそろそろエリス領に向かおうとすると・・・

 

「あ、待って!これあげる!!」

 

「え・・・ありがとう」

 

そうして女の子は紙を渡した。そこには・・・

 

「・・・って、これアクシズ教の入信契約書じゃん!」

 

その途端、壁の上から数人のシスターらしき者がこちらにやって来た。

 

「よくやった、リカ!!後は任せろ!!」

 

そうして男達も集まる。そして男達は血眼でベル達を追った。

 

「そこの貴方、是非入信をおおおお!!」

 

「ぎゃああああああああ!なんなんだよ、この街!!」:

 

「とにかく逃げるわよおおおおお!!」

 

そうして、アリーゼ達は逃げ惑う!アリーゼ達もまさか子どもまでやるとは思わなかったのだ。暫く町中を走り回りアクシズ教信者から逃げ出して、ようやくエリス領についた。その頃は、もうバテバテだったという。暫くして宿を取る。運が良いことに、今回は特別な日で安く良い宿が取れるというので行くことにした・・・

 

「おお、すごい・・・」

 

「広いね・・・」

 

そこには今まで泊まった宿とは全くもって違った。元々、観光で有名なのだがここまでとは思わなかったのである。

 

「あ、ローゼ!!見て、部屋にも温泉があるよ!!」

 

「本当だ、部屋にもあるなんて・・・」

 

ベルは色々見てはしゃいでいる。まあ、息抜きでこの街によろうと思ったのだが、まさかあの信者がここまで異常だとは誰も思っていなかったのである。そのせいかどっと疲れが現れた。

 

「はぁ~ってもう夜じゃん!」

 

「え・・・うわ!本当だ!!」

 

気が付けば夜だった。恐らくあの信者達のせいでほとんどの時間を費やしたのだろう。

 

「そう言えば、1階で食事が用意されているんだよね・・・行こうか・・・」

 

「うん!」

 

そうして二人は食堂に向かった。そこには様々な食材が広がっていた。ベル達もその光景に圧巻する。モウの様子を少し思い出すが、

 

「美味しい!!」

 

「本当だね!絶品!!」

 

二人はそれも気にしないように食べていた。その中の大きな肉には特にかぶりついていた。肉からは「ジュワッ」と音がして肉汁が出てきた。

 

「これ美味しい、ベル!食べてみなよ!!」

「本当だ!甘みがすごい!!」

 

そうしてベルもかぶりつき、肉を堪能する。暫くして食べ終わると温泉に入ることにした。今回は部屋の温泉にする予定だったため、部屋に入る。そして二人は服を脱ぎシャワーを浴びる。そうして二人は外にある露天風呂に入った。

 

「はぁ~生き返るわ~」

 

「本当、あの信者のせいで更に疲れが増したからね・・・こういう所って良いな・・・」

 

二人は楽しそうに雑談を始める。少し経つと二人は夜空を見上げる。空には満天の星があった。

 

「きれいだね・・・」

 

「うん・・・」

 

そうしてベルはアリーゼに寄りかかった。そうして肩に頭を乗せる。

 

「そう言えば・・・ローゼに助けられた日もこんな空だったな」

 

そう言ってベルは少し悲しい瞳をする。アリーゼはその目を見て罪悪感がよみがえってきた。何時ものようにそっと抱きしめる。

 

「・・・ローゼ・・・」

 

「・・・・・・・」

 

アリーゼはただ無言で抱きしめるしかない。こういうときはあえて何も言わないで抱きしめる方が良いのだ。ベルもそっと手を置く。その手にアリーゼは更に罪悪感がのし掛かる。忘れていた罪悪感が後ろからアリーゼに囁く。

 

(私は・・・・そうだ・・・本当はこの子にこの手を握られる資格もないんだ・・・)

 

そうしてアリーゼは少し涙目になる。贖えぬ罪が、何時もアリーゼにつきまとっていた。しかし、ベルと長く旅をしてしまいそれは忘れようとしていた。改めてアリーゼはそれを重く受け止めた。

 

(バカね・・・私は・・・本当に・・・最低だな・・・)

 

そうしてベルを強く抱きしめる。それを見てベルはそっと、アリーゼの顔に向ける。そして・・・

 

「ふふ、何時もありがとう・・・」

 

そう言ってベルは優しい笑みを浮かべた。それはどの女神より美しく、どの女より可愛らしい笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある食堂、女性の新人店員が調理場の後かたづけをしていた。そこにホテルのオーナーが来た。

 

「おい、新人。この肉使わなかったのか?」

 

「え・・・?使いましたよ?」

 

「は?いやだってここにあるぞ、ほら」

 

「え・・・?」

 

そうして新人店員はオーナーが指さしていた場所に向かう。そこには、使うはずだった肉がそこにあった。

 

「おかしいな・・・確かに使ったはずだけど・・・」

 

「もしかして、お前、あの肉使ったんじゃないだろうな?」

 

「あの肉って?」

 

そうしてオーナーは頭を抱える。そうして、オーナーは口を開いた。

 

「ルーフリアの肉だ・・・アレって確か数週間前にとったのだがギリギリあの時期かも知れないんだよなぁ・・・」

 

「それって、女性が食べると発情するヤツでしたよね?でも大丈夫じゃないですか?」

 

「まぁ・・・そうだな!当たるのは希だし、たとえ当たったとしてもラブラブなやつしか今回はいなかったから大丈夫だろ!」

 

「そうですね!」

 

「「アッハハハッハハー!」」

 

そうして厨房では、男女の笑い声が聞こえたとか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ッ!」

 

「ローゼ?」

 

その瞬間、アリーゼは急に顔を赤くした。そしてベルから目を背く。瞬間、アリーゼの身体が熱くなっていた。

 

(何・・・これ・・・身体が熱いし・・・心臓がバクバクする・・・)

 

「ローゼ?大丈夫?」

 

ベルは心配そうにアリーゼの顔を見つめた。ベルの顔を見てアリーゼはまた顔を赤くする。正体不明の熱さに、アリーゼは混乱した。

 

「何でもないわよ、ベル!そろそろ上がりましょ?のぼせそうだわ・・・」

 

「ア・・・うん・・・」

 

何やら、状況がつかめないベルだったがアリーゼは今にも感情が爆発しそうだった。

 

(何なの、これ!なんか変なんだけど?!確かに、ベルは可愛いし愛でたいけどここまででは・・・イヤあったこともあるけど・・・それでもこれだけで・・・・・ッ!)

 

爆発している感情に何とか、落ち着かせてはいる。が・・・それでも心臓の鼓動は収まらない。そのせいか、ベルを見ると邪な考えが、アリーゼを過ぎる。

 

いっそのこと襲ってしまえば?

 

その考えが、アリーゼに過ぎる。一瞬身を任せそうだったがアリーゼは急いで首を振った。

 

(いや、駄目よ!アリーゼ・ローヴェル!!私はもう大丈夫な年齢だとは思うけど、ベルは卒業するのはまだ早い・・・ここは何としても耐えないと・・・)

 

そう言ってアリーゼは自分の感情をしまい込む。しかし、アリーゼの受難は続く。

 

「ローゼ?」

 

ベルがベッドの上にいたのだ。しかも上半身裸で。白い肌に月日が射していた。着替えをおいていたらしい。シュチュエーションが整っていた。今、ヤるチャンスだぞ。と言っているようだった。

 

(駄目よ、駄目よ。耐えなさい、アリーゼ・ローヴェル。ここでヤってしまえば私、もうやばい女じゃない)

 

そうして頭をぶつける。邪念をとりあえず払おうとしていた。それを見てベルは大慌てをする。そしてどうすれば良いか分からず、ベルはアリーゼのそばに寄る。

 

「ローゼ・・・大丈夫?」

 

「ハウァ!」

 

白い肌と共に、可愛らしい瞳でアリーゼを見た。それが・・・アリーゼにとってのとどめだった。

 

(もう、我慢できない・・・)

 

そうしてアリーゼの何かが切れた。アリーゼはベルに口づけをする。

 

「グムゥ!!」

 

ベルは突然の事で驚き後ずさりする。しかし後ろにはベッドがあった。水音を立てながらアリーゼはベルを押し倒す。ベルとアリーゼの間には銀の糸が伸びている。

 

「ハァハァ・・・ロー・・・ゼェ・・・」

 

ベルの声に荒い息を発てるアリーゼはそれを聞かんとばかりに口づけをした。もう、彼女は獣だった。アリーゼのバスタオルは脱げる。ベルは兎のように怯えた瞳でアリーゼを見る。アリーゼも獣の目でベルを見た。

 

「ごめん・・・ベル・・・私・・・もう我慢できない・・・」

 

そうしてベルの服を脱がす。そうしてまた口づけをした。

 

「ム・・・ウゥ・・・」

 

「ごめんね・・・ベル・・・」

 

そうして二人の夜は始まった。星が見える中、部屋からは色っぽいあえぎ声によって包まれたのだった。

 




はい、と言うわけで今回はこのすばより「アルカンレティア」を出しました。アクアとエリスは出すのを考え中です。そしてアリーゼとベルが・・・


次回もお楽しみに!!


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Chaptear12想い

こんにちは、今回は少しの小話です。それでは、どうぞ!


「ン・・・もう朝か・・・」

 

朝日が昇り、少し肌寒さを感じながら私は起きた。草木の音が窓から入ってくる、なんとも気持ちよい朝だ。現在、とある街まで来ている。こうして宿も取れ、部屋の中には温泉がある。更には安かったのでここに泊まることにした。何時ものような朝で私は目を開ける。となりには何時も兎の彼がいる。寝間着は一応あり何時も、それを着ているのだが・・・

 

「アレ・・・?」

 

そこには何時もと違う光景が広がっていた。何時ものように寝間着ではなくて今回は裸だった。しかも、ベルの枕には涙の跡までついている。気が付けば私自身も裸だった。部屋には生臭い匂いがかすかにする

 

「ちょ・・・どうなってんの?!確か・・・私は・・・」

 

この状況に私は頭を抱え込む。二人一緒のベッド、そして互いに裸の二人。このシュチュエーション。これは、よく言う「朝ちゅん」というものである。私は自身も少しは知っていたのだが・・・まさかとは思い冷や汗を流す。

 

いや、これってあれよね?私達、しちゃったって事よね?しかもベルの枕には涙の後もある。つまりこれって・・・私、手を出しちゃった?

 

いやいや、どうしよう。確かにベルは可愛いし、天使のようだけど襲おうとは・・・イヤ何回かあったわ。でも、たまに一緒に水浴びするし今更、手を出すほど私の精神はもろいはずではない・・・どうして?

 

そうして私は焦り出す。とりあえず、状況を整理していた。まず、私が手を出したのか?もしかしたらベルの方が誘ってきたのかも・・・でもそうなると涙の跡は・・・やっぱりこれって私が手を出したわよね・・・やがて、記憶が蘇ってくる

 

「ア・・・」

 

しまったああああ!やばい、昨日なんか手を出したんだああ!!・・・そう言えば・・・

 

私はあの老人の会話について思い出す。まさかとは思うが・・・

 

「あの時の肉かあああああ!!」

 

ルーフリアの肉のことを思い出すと私は、あの時かと思いどうしようか悩んでいるところだった。だけど、私がベルに手を出したのは変わらない・・・とにもかくにもどうしようか悩んでいるところ・・・

 

「ウ・・・ン・・・」

 

「ア・・・・」

 

ベルが起きてしまった。ベルは、私の方を向くと顔をうつむかせた・・・うん、結構気まずい。

 

ベルは無言で布団に身体をかぶった。やっぱり怒っているのかな・・・

 

「ねえ、ベル・・・その、怒っている?」

 

「・・・・・・・・」

 

ベルは無言でそっぽを向いたままだ。かなり顔を赤くしている。

 

「ねぇ・・・ベル「大丈夫だよ・・・それより・・・シャワー浴びよう・・・」・・・えっと・・・」

 

「良いから・・・」

 

そう言って私達はとりあえずそのままシャワーを浴びた。シャワーを浴びている間も少し沈黙が続く。

シャワーからでた後、とりあえずバスタオルを巻く。気まずい雰囲気が辺りに流れた。

 

「ねぇ・・・ローゼ・・・その・・・昨日のことなんだけどさ・・・」

 

ベルは突然口を開いた。顔を赤らめ私を見てくる。・・・どうしよう・・・これで私のこと嫌いと言われちゃうと私、ショックで寝込んじゃう。いや、まぁほとんど無理矢理って感じだったしそう思うのも無理もないけどそれでも傷つくよ!

 

「あのさ・・・ローゼは、僕のこと好き・・・?」

 

「え・・・?」

 

ベルは私の目を真剣に見つめていた。それに私は困惑する。ベルが聞いていることは恐らく異性としてだろう・・・もちろん、ベルのことは大好きだ。他の誰よりも・・・でもそれは異性としてではなくてあくまで親愛で・・・あれ?でも、私ベルと旅をして、何だろうふわふわしていたし・・・・何だろう・・・それにこの感情、何回かはあった・・・今まで軽かったけど・・・もしかして、私は・・・

 

 

 

知らず知らずのうちに、意識していた?いつかこの、関係になることを望んでいた?

 

いやいやそんなことはない、だってベルは弟のようなもんだったもの・・・確かに頼もしくはあったし、妹らしいこともあった。あれ、なんか矛盾している気がする。弟だっけ?妹だっけ?まあいいや。・・・・いや、ベルって正直女っぽいもの・・・見た目とか特に・・・

 

「ローゼ・・・ちゃんと答えて・・・どうなの?」

 

ベルの目は本気だった。その瞬間まだ肉の効果があったのかいつの間にか私の身体は熱くなる・・・心臓の鼓動がうるさく私の呼吸が荒くなる・・・次の瞬間私はベルの身体を押し倒した。

 

(ああ、そうか・・・私は、きっと・・・)

 

その時気が付いた・・・私はベルが好きなのだと・・・心から、異性として・・・そうして私はベルの目を見る。そしてキスをした。

 

「ウムゥ・・・ローゼ・・・」

 

キスしている間ベルが色っぽい声を出す。それと同時にベルがとろけた目で私を見ていた。

 

「ベル・・・良い?」

 

そう言って私は問いかける。ベルの答えを返すように・・・それに気づいたのか、ベルはとろけた目と共に口を開いた。

 

「良いよ・・・ローゼなら・・・」

 

そうして、私達は二回戦を始めたのだった・・・

 

 

 

 

「フー、なんか疲れた・・・」

 

「もう、ローゼ、長すぎるよ・・・」

 

「だって、ベルが可愛すぎたもの~」

 

あれから暫くして、終わった後着替え朝食にすることにした。まぁもう昼ご飯なのだが・・・食事中、オーナーと料理人が来てなんか土下座をしていた。何やら、私の食べた肉があたってしまったらしいのでその謝罪をした。その後は料理人も反省し、対策をしたとか。何時ものように食事を頬張る。

 

「いらっしゃいませー・・・え?ローゼ様一向に用ですか?」

 

ふと、誰かがこちらに向かってきたようだ。私は警戒しながらそちらを見る。そこには・・・

 

「オッと警戒しないでくれ・・・俺だよ、俺・・・」

 

そこには、金髪で帽子を被っている神、ヘルメスだった。そばにはアスフィもいる。

 

「ヘルメス様!どうして?」

 

「実はアルミノ君が、君達がアルカンレティアに行くことを聞いてね・・・手紙を預かったんだ」

 

「アルミノ兄ちゃんから?!」

 

そう言ってベルはヘルメスの手紙を受け取る。そこには、確かにサレルメスで出会ったアルミノさんの字だった。

 

『ベルへ・・・

 

急な話だが実は、アルカンレティアに俺たちの同胞がいることが分かった。噂ではアルカンレティアでは、あの村の報告が出ていたみたいだ・・・とりあえず、そいつの元に行ってくれ!

 

アルミノより・・・』

 

手紙には一緒に地図も入っていた。そこにアルカンティアの地図と共に、女性の名前が載っていた。

 

「イシス・・・って名前の人・・・ベル?誰だか分かる?」

 

「イシスお姉ちゃんのこと?!」

 

「知っているの?」

 

「うん、よく遊ばせてもらった!」

 

そう言ってベルはとても嬉しそうだった。

 

「どうする、会ってみる?」

 

「うん、少しでも生き残りがいたのなら会ってみたいし・・・」

 

そう言ってベルは笑顔を見せる。私達はその、イシスって言う人のところまで行くことにした。

 

ヘルメスも行ってみるかと話してくれ私達は宿を後にする。そして地図に書かれていた場所まで行くのだった。

 

 

 

 

 

 




次回オリキャラ、イシス登場。果たしてその行方は?次回もお楽しみに!


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Chaptear13罪

こんにちは、今回はオリキャラ、イシスが出てきます。そして、あの女神も・・・それではどうぞ。


 ベル達は、宿を出た後イシスという女性の元に向かった。アルミノから生きている可能性が出てきたからだ。ヘルメスから聞けば、あの虐殺が起こっていたとき旅行中だったらしい。そのため、ベル達は急いでその女性の元に向かう。あの虐殺を聞いた後、アルカンレティアのギルドにその村の住人には無償で家を提供してくれたらしい。意外だったのがイシスにその対応を提案したのがこの街を統治する女神の一人で異常性を持つ信者が崇めている女神、アクアが提案したらしい。

 

「でも、大丈夫なんですか?あの女神、噂に聞いた所酒癖が強いらしく駄女神だと言われているらしいですが・・・」

 

ベルが不安そうに聞く。ベルは祖父から聞いたのだが、神にも色々いてその中でアクアは酒癖が強く、仕事もしない女神だと聞いていたからだ。ヘルメスは苦笑いする。

 

「確かに、彼奴は仕事をサボるわ、酒好きでダメダメなヤツだが、根は優しいんだ」

 

そう言ってヘルメスは、懐かしそうに口角を上げる。

 

「そうなんですか・・・」

 

そう言って、ベルは少し気になるような目でヘルメスを見る。少しだが二人は女神アクアにあってみたいと思っていた。

 

「ついたよ・・・」

 

暫く歩くと、例の家に着いた。二階建てで簡素的だが最低限の生活は出来るようだったので少し安心する。早速扉を開けてみようとした。

 

「あら?ヘルメスじゃない、なんでここに?」

 

その時、後ろから女性の声が聞こえた。ベル達が後ろを振り向くと水色の髪色で、全体的に青い服を着ており酒といくらかの果物を手にぶら下げている女性が姿を見せる。

 

「アクア?!どうしてここに?!」

 

「それはこっちの台詞よ!!イシスに何のよう?・・・ってその子は?」

 

女神アクアがヘルメスに言及していると、アクアは気になったのかベルの方を見る。

 

「何よこの子、可愛いわね・・・」

 

そう言って顔を近づける。ベルはアクアの言葉に少し顔を赤くする。アリーゼは謎の殺意を向けた。

 

「アクア、この子はイシスの同胞・・・あの村の生き残りの一人、ベル・クラネルだ」

 

「え・・・?」

 

ヘルメスは真剣な顔でアクアを見る。アクアはヘルメスの様子に本当のことだと悟り、ベルの方を見る。その顔はどこか、悲しそうだった。

 

「そう、良かったわ・・・あの子もきっと喜ぶと思う・・・」

 

そう言って、アクアは合鍵のようなものを取り出す。

 

「アクアはよくここに来るのか?」

 

「ええ、あの子、最初はとても明るかった子でね・・・ここの常連みたいな子だったのよ・・・観光に来たときはいつも楽しそうだったわ・・・でも・・・あの知らせがきた途端、彼女は変わってしまった」

 

そう言って、アクアはうつむく。震える手が彼女の感情を表している。

 

「とても・・・辛そうだった。次第にやつれてきてね・・・見るにも耐えない姿だったわ」

 

そうしてアクアは鍵を開け、扉を開ける。内装は、テーブルとキッチンがあったがほとんど使われていないと思うほどきれいだった。

 

「私とエリスで時々掃除に来るのよ・・・あんまり使わないようで楽だけど・・・」

 

アクアは階段を上りすぐ目の前にある扉に目を向ける。ベル達も後ろからついてきてアクアと共に扉の前に立つ。アクアは軽く扉をノックした。

 

「イシス・・・?入るわよ」

 

そう言って、アクアは扉を開ける。そこには・・・

 

「アクア様・・・」

 

白色の髪に、銀の瞳をしていてやつれていた女性、イシスがベッドで身体を置きあげていた。何時ものようにアクアはそばにある椅子に腰掛ける。

 

「イシス・・・今日はお客さんがきているわよ・・・」

 

「え・・・」

 

アクアがそう言った途端、ベルが扉の後ろから出てきた。

 

「イシスお姉ちゃん・・・」

 

「・・・ベル・・・?」

 

イシスはベルの姿を見て、身体が固まる。ベルはイシスに近づき頭を撫でた。イシスはベルの温もりを感じ、目から涙が出た。

 

「ベル!!」

 

次の瞬間イシスはベルに勢いよく抱きついた。イシスは涙を流しながら強く抱きしめる。

 

「よかった・・・よかった・・・・・・・ッ!ベル・・・ベル・・・・ッ!」

 

かすれた声と共に、イシスはベルの名前を呼ぶ。ベルはカサカサに乾いた手をそっと重ねた。

 

「イシスお姉ちゃん・・・ッ!」

 

そう言ってベルはイシスの身体を抱きしめる。暫く、二人の泣き声が辺りに響くのだった。

 

「本当によかった・・・ベルが生きていてくれて・・・」

 

「はは、本当死にそうだったよ・・・」

 

あれから暫く、涙が枯れるまで泣き続けた二人は落ち着いた後下のテーブルのある部屋まで連れて行った。そこで、イシスはアリーゼとも顔を合わせる。

 

「貴方がベルを助けてくれたのですね・・・話はベルから聞いています」

 

「いえ、私はたった一つの命しか守れませんでした・・・貴方の家族をお守りできず、申し訳ございません・・・」

 

そう言ってアリーゼは頭を下げる。アリーゼはただそうすることしか出来なかった。

 

「顔を上げてください・・・貴方はベルの命を助けてくれた・・・それをもうなんてお礼を言えばいいのやら・・・」

 

その言葉に、アリーゼは胸が刺さる。アリーゼにはお礼を言われる資格はない。それはアリーゼ本人が、一番分かっている。あの虐殺を起こしたのは、アリーゼ自身なのだから・・・

 

「ローゼさんでしたよね・・・ベルは私の息子のようなものでした・・・いえ、村全員の息子であり、弟だったんでしょうね・・・この子は私達にとっての希望だったんです、それを救ってくれたのは貴方本人なのですよ・・・」

 

「そう言っていただけるのも、ありがたいです」

 

そう言って、アリーゼはアクアが持ってきた酒を飲む。

 

「にしても、本当運がよかったわね・・・ローゼさんがいてくれなっきゃ、きっと私は・・・」

 

そう言ってイシスは小さな瓶が入った液体を取り出した。アクアが、液体を見ていると顔が固まる。

 

「これって・・・毒じゃない!!」

 

「ええ、今日自殺するつもりだったの・・・」

 

「「「・・・・ッ!」」」

 

全員は驚嘆の顔を浮かべる。そう、あと少し遅ければイシスは死んでいたのだ。アリーゼはこの女性を、死なせる寸前まで追い込めていたのだ。

 

「ア・・・アア・・・」

 

アリーゼは涙を流す。しかし、それは罪悪感の涙だ。自分がもっとしっかりしていれば彼女をここまで追い詰めたことはなかった。言えば、今回はただ運がよかっただけなのだ。もし、アルミノから連絡が無ければ彼女は死んでいただろう。現実がアリーゼに目の前の光景を打ち付ける。

 

「ローゼさん?」

 

「ローゼ・・・大丈夫?」

 

ベル達はアリーゼの様子に気をかける。ベル達はアリーゼが自分達のために泣いてくれたのだろうと思い、肩に手をかける。

 

「ありがとうございます・・・貴方は私の英雄です」

 

イシスはそうつぶやきベルも慰めるように抱きつく。彼女たちの泣き声が家の中で響くのだった・・・

 

 

 

 

 

「イシスさん・・・大丈夫ですか・・・?」

 

「ええ、お陰で立ち直れそう・・・ローゼさん、ベルをよろしくお願いします」

 

「はい・・・、お任せください」

 

そう言ってアリーゼはベルの手をつかみ、ベルの方を見る。イシスはベルの頭を撫でる。

 

ベルはそれを受け止めてゆっくり撫でられる。そうして馬車が出発する前の時間になった。

 

「ベル・・・」

 

「イシスお姉ちゃん・・・」

 

「幸せになりなさいよ!」

 

イシスは少しニヤニヤしながらベルの方を見た。ベルは少し首をかしげた。

 

「アクア様から聞いたんだからね!あなた達・・・したんだってね・・・」

 

「「・・・・・・・ッ!」」

 

それを聞き、アリーゼ達は顔を赤くした。ベル達はアクアに殺意を持っていた。アクアはそっぽを向く。

 

「まあ、ローゼさん!ベルをよろしくお願いしますよ!」

 

そう言って、イシスはニヤニヤとしながらベルを見つめる。

 

「ベル、さっきも言ったけど幸せになってよ!!」

 

そう言って馬車に乗るベルに大声で叫んだ。そうして馬車は出発する。イシスはまるで自分の娘を結婚した後の家に送られるような感覚で見送ったのだった。

 

それにベルは恥ずかしくなったのか顔をうつむかせるのだった。

 




はい、今回はここまでです。もう、ベル君ヒロインでいいかな?と思う、自分です。次回から更に物語が進みます。お楽しみに!

イシスのイメージはReゼロのエミリアです。


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狩り人
Chaptear14旅の一時


こんにちは、今回は閑話で少し短いです。それでは、どうぞ!!


あれから数ヶ月、ベルが10歳になった後何時ものように馬車に乗った後小さな村で一泊し、ベル達は再び山奥に進むことにした。アリーゼの提案でしばらくは小さな村を探そうと言うことになったのだ。ぶっちゃけ、現時点でほとんど金はない状態までなってきた。モンスターを倒そうにも魔石の量だって少ない。お陰でそこまで金がないのだ・・・と言うわけで暫く村を探し、何か、高価な物の情報を探すことにした。そして現在は・・・

 

「ベル~ご飯まだ~?」

 

「はいはい、とは言ってもほとんどジャガイモと山菜だけなんだけどね・・・」

 

食事の準備をしていた。手元にある食材は、さっきの村で買ったジャガイモと山で採れた山菜だった。ベルはアリーゼに返事をしながら鍋を用意する。大体準備が終わったあとベルは調味料とナイフで調理をする。ジャガイモをそれぞれ角切りにして、山菜を少しずつ切り木の実を輪切りにする。そして鍋がにだって来た頃にはベルは材料をいれ具材をかき混ぜる。次第にベルの料理の香りが辺りに漂う。

 

「出来たよ」

 

「待ってました!!」

 

そうしてアリーゼは食いつきながら鍋の方に向かう。

 

「はいはい、落ち着いて・・・全く子どもじゃないんだから」

 

そう言ってベルは苦笑いしながら鍋をよそっていた。アリーゼは目を輝かせながらベルの料理を食べる。

 

「美味しい~!!」

 

アリーゼは料理を食べた途端身体を震わせ勢いよく食べ出す。

 

「ハハハ、それはよかった。どうせなら肉もいれたかったけど・・・」

 

「大丈夫、大丈夫!!ベルの料理は肉無くても美味しいよ!!」

 

「ありがとう、ローゼ」

 

そう言って二人は笑い合う。暫くして食べ進める。その様子はまさに新婦が帰って来たばっかりの新郎に料理を振る舞い、それを食べて会話する。まさに夫婦そのものだった。

 

「ベル~おかわり~」

 

「OK、ちょっと待っていてね・・・」

 

アリーゼは器を差し出して、ベルはそれを受け取りまたよそい始める。そして、食べている様子を見ているベルは微笑ましく見守る。まぁこれは最初もあったことだ。変わったところと言えば・・・

 

「ベル、こっち来て」

 

アリーゼが鍋の最後の一口を食べたときにアリーゼはベルを呼びかける。

 

「なn「えい!!」ムグゥ・・・・・・・ッ!」

 

そうして水音が聞こえる。最近アリーゼはよく口移しをやり始めたのだ。最初ベルも困惑していたがやがて受け入れるようになった。とは言うものの口移しはもう当然のレベルまで達していたのだが・・・

 

暫くして互いに荒い息が出てくる。銀の糸が口から垂れていた。月の光と共にそれは美しく輝き出す。

 

「もう・・・びっくりするよ・・・」

 

「フフ、可愛い」

 

「聞いていないな・・・これは」

 

ベルはそうこぼすも普通に受け止めている自分もいるので抵抗はしない。アリーゼは再びベルに口づけをする。それは、口移しの時と同様激しく、大人の口づけだ。

 

「ハァ・・・ハァ・・・・」

 

激しいキスの後ベルはとろけた目でアリーゼを見る。それと同時にアリーゼはベルと指を絡ませる。アリーゼはそのままもう一度口づけをした。

 

「ムゥ・・・ウウウ」

 

ベルはされるがままにキスされた。一度目覚めた獣は自分の欲が満たされるまで続く。暫くキスをした後アリーゼはランタンをつけ火を消す。

 

「ベル・・・今日は小腹空いたわ。だから、デザートいただくね」

 

そう言ってアリーゼはベルをテントの中に入れ、そのまま押し倒す。そして・・・

 

「ま・・待って・・・」

 

「イヤで~す、待ちません♪」

 

そうして二人の夜が始まった。この山にいるのはある程度の動物だけであり人間はほとんどいない。そのためか、フクロウの鳴き声が聞こえるだけなのかそれに便乗するように二人の声が辺りに響くのだった。誰にも邪魔されない、そんな空間で見ていたのは月だけだった。

 

「ウ・・・ン・・・?」

 

「ア・・・おはよう・・・」

 

朝の鳥が鳴く頃に二人は起きた。辺りには服が散乱しておりテントからは光が漏れている。森の葉で光が照らす中アリーゼはヘルメスからもらった腕時計とやらをとって時間を見る。

 

「まだ、6時か・・・」

 

「どうする?朝ご飯にする?」

 

ベルも起き上がり身体を布で隠す。アリーゼ自身も身体を布で隠す。そうしてベルの身体をまじまじと見る。

 

「ローゼ・・・?」

 

そして再びベルの身体をさわり始める。

 

「ひゃっ!!」

 

ベルは身体を触られた。それに過剰反応して身体が震える。そして、アリーゼはベルを再びテントに入れ身体を押し倒す。

 

「ロー・・・ゼェ・・・」

 

「ふふ、まだ時間があるからね・・・」

 

そう言ってアリーゼは唇を舌でなめ回す。

 

「ローゼ・・・」

 

「じゃあ、二回目と行こうか・・・」

 

そう言ってアリーゼは二回戦を始めたのだった。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・もう、8時ね・・・」

 

「相変わらず長すぎるんだよ~」

 

ベルは横になり疲れ果てていた。アリーゼ自身は満足そうに大の字で寝転がる。テントから漏れる朝日が二人を照らし、ベルはそれを手で覆う

 

「ねぇ、ローゼ・・・」

 

「ん?何?」

 

ふと、ベルが口を開いた。アリーゼの顔を見た途端うつむく。

 

「そのさ・・・あの・・・僕、ローゼとであって本当によかった・・・その・・・」

 

顔を赤くし、布で顔を隠しながらベルはただ口を開く

 

「ふつつかな男だけど・・・よろしくね」

 

そう言って耐えきれなかったのかベルは顔をそっぽに向かせる。しかし、アリーゼはそれを見逃さなかった。

 

「させないよ・・・」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「ちゃんと見て・・・」

 

そして再びアリーゼはベルの顔に自分の唇を押し当てる。短いキスだったがとても長く感じた。

 

「私も大好きだよ・・・ベル・・・」

 

そうしてアリーゼはベルの上に乗る。それを悟ったように、ベルは全身の力を抜いた。

 

「ローゼって意外に変態だよね・・・」

 

「そうね・・・とは言ってもなんで私がこんなに変態だと思う?」

 

「・・・・」

 

ベルは全てが分かったようにアリーゼを見る。少し恥ずかしそうだった。アリーゼは荒い息を立てながらベルの耳元で囁く。

 

「貴方が・・・私がこの世で一番愛している男だからだよ・・・」

 

そう言ってアリーゼ達は三回目を始めたのだった。

 

彼女たちはただ深い海に沈む。行為と共に彼女たちは底なし沼のような海にただ沈む。依存という名の海に・・・テントから聞こえる声がそれを物語っていた。

 




はい、今回はここまでです。次回はある人気他作品キャラを出します。誰だか予想してみてください!


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Chaptear15狩り人

こんにちは、今回はあの他作品キャラを出します。誰か予想してください。ちなみに作者の推しキャラです。


あれから数ヶ月、ベル達はある程度高価なものを手に入れ、いくらかの商人に売り、ある程度の金が手に入った。ちょうどいくらか街に行っても4泊出来るほどだ。現在とある村に来ていた。

 

「確か、シャッス村だったよね・・・どうしてここに?」

 

「ここは、狩猟民族と聞いてね、干し肉をもらえないかなって思ったの。最近肉を食べていないからね!」

 

「おお、流石ローゼ!食べ物に関しては鋭い!!」

 

「フフン!!もっと褒めても良いのよ!!」

 

褒めているどころか半分からからかわれていないのも気が付かない様子だったがとりあえずベルは早速高価なものを用意して取引に使えそうな所を探し始めた。アリーゼも捜索を開始する。

 

「もうちょっと!もうちょっと多く出来ない?」

 

「イヤ、嬢ちゃん・・・これでも十分多いと思うが」

 

アリーゼは二袋分の肉の量を見てもう少し負けてくれないかと頼むがなかなか店主が首を縦に振らない。

 

「ローゼ・・・いくら何でも無茶じゃ・・・」

 

「イヤ、せっかく肉が大量にあるんだし、こんな高価なものまで用意したのよ?!もうちょっともらいたいわ」

 

ベルはため息をつきながら苦笑いする。

 

(そう言えば・・・小さい頃あったお姉さんも・・・こうだったな)

 

ベルは村がある頃、とある場所で遭難した女性がベルの村にやって来たことがあった。その女性も、食事に執着があったのだ。その後、近くの都市のギルドでその女性は自分の村まで帰ったのだ。村の名前まで知らなかったが・・・

 

「元気にしているかな・・・お姉ちゃん」

 

ベルは小さくつぶやく。

 

そうしている間にもアリーゼは店主と口論していた。

 

「ローゼ・・・流石に迷惑だから・・・行こう?」

 

とりあえず何とかしようとベルはアリーゼを説得する。何とか引き離そうにも、なんとも食の執念なのか思いっきり突っかかってきた。

 

「もう少し!!もう少し!!」

 

「いい加減にしな、ローゼ!流石に迷惑だって・・・」

 

「ウウ・・・」

 

アリーゼは少し涙目になっている。よっぽど肉が恋しいのか店主の方を見た。しかし、店主も容赦ないのか二袋しか譲らない。と言うか二袋でも30cmが二袋なので妥当だとは思ったが・・・

 

「もう・・・子どもじゃないんだから・・・ってあれ?」

 

そう言った途端どこからか声が聞こえた。少し気になり、ベル達は声がする方まで行く。

 

「・・・・もうねえよ!今日は帰ってくれ!!」

 

「ああ、こいつまた肉を食いやがった!!」

 

「ハハハ!!相変わらずだなぁ!!」

 

賑やかな声と共に酒を飲んでいる住民がいた。名前を呼んでいるところは大声で聞こえなかったのでベルは近くに寄る。最初は人混みで、前に進めなかったが、やがてその中心が見えてきた。

 

「まだまだいけるで!!早くお肉、持ってこんかい!!」

 

「だから、もう無いって、これ以上出費を出さないでくれぇ!!」

 

その瞬間、ベルは急いで人混みをかき分けて進む。そしてテーブルの方を見た。

 

「大食いで勝ったのはこちらだ。文句言わないでせんと」

 

「ひぃ~」

 

「て・・・アレ・・・そこにいるのは」

 

そこには茶髪で茶色い目をしており身長が高めの女性が目の前にいた。

 

「サシャ・・・お姉ちゃん?」

 

「・・・・・・ベル?」

 

「やっぱり!!サシャお姉ちゃんだよね!?」

 

そう言ってベルは飛び込んできた。サシャと呼ばれる少女は一瞬何か分からなかったがやがてベルが来たということを理解して頭をなで始める。

 

「ベルじゃなねぇか~元気にしとったか?話はヘルメスから聞いたで、その・・・大変だったけな・・・」

 

そう言ってサシャという女性はベルの頭を撫でる。

 

「そこにいるんですか?ローゼさんでしたっけ?」

 

サシャはアリーゼの方を見た途端口調が変わる。方言から敬語になっていた。

 

「はい、私がローゼ・アーリヴェルです。貴方は・・・」

 

「サシャ・ブラウスです、ベルをお救いくださりありがとうございます」

 

そう言ってサシャは軽くお辞儀をする。アリーゼは尊敬の言葉を聞き胸が苦しくなったが顔には出さない。

 

「待っていました・・・貴方がここの村にくることはヘルメス様に聞いていたので・・・少し待っていてください、今終わらせるんで」

 

そう言ってサシャは最後の肉の塊をくらった後、テーブルを離れる。

 

「サシャお姉ちゃん・・・その、お金は・・・?」

 

「うん?ああ、大丈夫や。コレは店長の挑戦状みたいなものやったし・・・なにせ、30分食ったらただ飯食えるってな、それで挑戦したんよ。もちろん私の勝ちだがな」

 

そう言ってサシャは二人を連れて酒場を出る。その時の客の反応はと言うと「この店長、馬鹿だろ・・・」と言うような雰囲気だった。ベルはサシャの大食いっぷりは知っていたので同情の視線を送る。

 

「さてと・・・とりあえず入ってください」

 

サシャは家の鍵を開けとりあえずアリーゼ達を中に入れた。中は質素なもので何やら引っ越しの前のようだった。テーブルにはコーヒーと茶菓子を置き、ベルにはオレンジジュースを渡す。

 

「さっきも言いましたが、私はヘルメス様から聞いた通りあなた達がここに来るのは知っていました・・・とは言ってもヘルメス様が貴方達をここに来るよう仕向けたんですがね・・・」

 

「え、そうなの?!」

 

そう言ってベルは驚きの顔を見せる。そうしてサシャは少し間を開かせやがて口を開いた。

 

「以前私は、とあるものを作るように依頼していました・・・それが完成したのです・・・」

 

そう言ってサシャは少し頭を抱える。何やらベルも心配そうに見るが・・・

 

「大丈夫・・・ただ少し昔を思い出しただけやし・・・」

 

そう言ってサシャはベルの頭を撫でる。そうしてサシャは立ち上がりアリーゼを部屋に案内するようだった。アリーゼは黙ってサシャの後をついてくる。やがて、扉が開き何やら火薬の匂いがした。

 

「コレは・・・」

 

アリーゼ達は何やら壁に棒のような何かが飾られているような部屋に入った。サシャは壁に掛けられている棒のようなものを取り出しその近くにある机から何やら小さな箱を出してきた。

 

「コレは銃というものです。反動がすごい代わりにレベル5のモンスターを一発で倒せます」

 

「え・・・?ウソでしょ?!」

 

「一応、ヘルメス様がアスフィさんに作らせてレベル1の人に使い方を教えて使った結果もありますよ」

 

そうしてサシャは銃をアリーゼに渡し外に出る。

 

「とりあえず試し打ちしてください、威力はそれでも分かるでしょう・・・」

 

そう言ってサシャは何やら固めの皿を用意した。

 

「それじゃあ今から見せるのでとりあえず二人にはコレを・・・」

 

そう言ってサシャは何やら耳をふさぐようなものを渡した。ベル達はそれをつける。そしてサシャはちゃんとつけたのを確認すると銃を肩に乗せ、弾を込める。そして謎の間が開く。そして・・・

 

(バン!!)

 

「・・・・・・・ッ!」

 

突然の轟音と共に皿が割れた。その様子に二人は驚く。アリーゼは知っていたのだがあの皿は結構固く、レベル2のドワーフすらも壊れない代物だった。

 

「すごい・・・」

 

「もしよろしければ使ってみます?」

 

「良いんですか?」

 

「ええ、あ、ベルはまだ使えねえが特訓を重ねているうちに使えるようになる、すまんなぁ・・・」

 

「大丈夫だよ、それに今使うのは怖い・・・」

 

そう言ってアリーゼはサシャから銃を受け取る。

 

「こうやって・・・こうするで・・・」

 

そう言ってサシャはアリーゼに銃の扱いを教えてもらい、使えるようにする。

 

「あの・・・サシャさん?」

 

「ン・・・?何や?」

 

「その・・・何で最初は敬語だったのに、急に方言になったんですか?」

 

「私は信頼している人には故郷の言葉をつかうやし」

 

「そうなんですか・・・」

 

「ほな、続きや、続きや。お前さんにはベルを守ってもらわなっきゃやし」

 

そうしてサシャはアリーゼに銃の使い方を教える。その様子にベルも鍛錬する。アルミノにもらった剣で鍛錬する。二刀流も試したが子どものベルには重かったのか剣を落としてしまった

 

「ハハハ、ベルもう少し腕を鍛えたら良いんじゃないけぇ・・・それにまずは剣を一刀流が良いと思うで・・」

 

「はーい」

 

「ぎゃあ!!」

 

アリーゼは引き金を引いた途端少し吹っ飛んでしまった。

 

「ああ、ローゼさん。もう少し腰を低くしてや。下手すれば骨折するけ」

 

そう言ってサシャはベルの特訓も指摘しながらアリーゼに銃の使い方を教える。そして数時間後・・・

 

(バァン!!)

 

「もう大丈夫やし・・・後は練習あるのみだ」

 

「わざわざありがとうございます・・・お陰で使いこなせました」

 

「それはよかった、コレでベルを守ってくんろ」

 

アリーゼが完璧に銃を使いこなしていた。サシャも大丈夫だと思い何かしらと準備していた。そうして部屋に戻ろうと声をかける前サシャはベルの方を見た。

 

(ベル・・・貴方は・・・)

 

その瞳はただ心配そうだった。何かを思いだしているように。

 

 




はい、今回、進撃の巨人よりサシャを出しました。コレは作者も結構推しキャラです。サシャの方言が少し変ですが温かい目で見てください。(作者はアニメ勢)サシャが死んだときは泣きました。それではまた次回お楽しみに。


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Chaptear16 過去

こんにちは、今回はサシャの過去について話します。それでは、どうぞ!!


「こうしてっと・・・」

 

薄暗い中、私は銃弾を作り込む。火薬と独自に開発した、魔石を同時に合わせた弾を丁寧に納める・・・鉄の塊から鍛冶屋に作ってもらった型に鉄を注ぐ。冷やした後、魔石と火薬を分けた薬莢と鉄の弾を接着剤でつなぐ。そうした作業を何回も繰り返す。あ、皆さん、勘違いしているかも知れませんがこう見えても座学はまぁまぁだったんですよ。最低でも、コニーよりは上でしたし・・・まぁ、そんな風にどこにいる誰かでも分からない人に向けて話している状況で銃弾を作っていた。

 

「あれからもう5年が経っているんですか・・・」

 

ふと、私はこの銃弾を作り込む途中あの事を思い出した。

 

 

 

 

「サシャ!!しっかりしろ!!」

 

それは突然の事だった・・・私の仲間、エレンが突然マーレに向かって単独行動をした。私達はエレンを助けることにしたのだがその終わりコニー達と飛行船に戻ったとき私は一人の少女に撃たれてしまった。

 

「うるさいなぁ・・・ご飯・・・まだですか・・・・」

 

「おい、急げ、穴をふさぐんだ!!」

 

「サシャ、島まで耐えろ!!」

 

ジャンは私を見て急いで包帯を私に巻き付ける・・・段々と意識が暗くなっていた。

 

「お・・・肉・・・」

 

今思い返せば、なんともまあ自分が馬鹿に思えてくる。それが何時もの自分だったのだろうが・・・その時はもう前すらも見えていなかった。暗い闇がただ目の前に広がっていた。

 

「サシャ――――!!」

 

それを最後に私は意識を落とした・・・

 

「ウ・・・ン・・・ここは・・・」

 

気が付いた時は、私は小さな小屋にいた。目を覚ますと天井に木の匂いがする。暫く寝ぼけた後私は混乱していた。あれから何があったのだろうか、コニー達は無事なのだろうか・・・目が覚めた私はそれだけしか考えていなかった。

 

「コニー、ジャンは何処にいるんでしょうか・・・とにかく出ないと・・・うん・・・?」

 

そうして辺りを見渡した途端何やら湯気が出てきた。私はそれの匂いをかいだ。

 

「コレは・・・お肉!」

 

そうして私は扉を勢いよく開けた。そして・・・

 

「お肉ウウウウウウウ!!!!」

 

「「うわああああああああ!!」」

 

そこに肉があると分かった途端私は飛びついた。それに驚き二人の男女がこちらを見る。そうしてとりあえず食料を与えてくれた。

 

「ありがとうございまずぅ・・・生き帰りまじだ~」

 

「アハハハ・・・それはよかった・・・」

 

「私達が森を通ったとき貴方が倒れているのを見てヘルメス様が拾ったんですよ・・・」

 

どうやら私はヘルメス様が拾ってくれたみたいだ。それに私は再度お礼を言う。青髪の女性はアスフィと名乗った。暫くして、私は名前を伝えた後ここが何処なのか聞いた。ここは、エムデアと言う森らしい。

 

「え、パラディ島を知らないんですか?!」

 

「ああ、そんな島聞いたことがないよ、なぁアスフィ・・・」

 

「ええ、それにエルディア人とかマーレ人とか知りませんね・・・」

 

パラディ島のことを聞いたがそれは知らないと言い、私は驚いた。パラディ島は世界で悪魔の島と恐れられていた。更にマーレは世界で最大の軍国主義な為誰もが知っているはずである。そして銃も知らないと出た。タイムスリップしたのかと思い、ウォールマリアのこともきいたが知らない様子だった。

 

「もしかしたらサシャちゃん、転生者なのかもね・・・」

 

「転生者・・・?」

 

「異世界で死んだ人間がこの世界で生まれ変わることだ・・・でもまさか、記憶が残るなんて・・・普通はないんだけどね」

 

「となると、サシャさんは異世界から来たと言うことなんですか・・・」

 

「そうなるね・・・」

 

それを聞いた途端私はあの世界で死んだことを実感させられる。しかも、よくよく見ると私の身体は10歳まで若返っていた。それが、現実を突きつけられる。

 

「とりあえず、君はどうしたい?よければ僕のファミリアに入る?」

 

そう言ってヘルメス様は私にファミリアというものを勧誘してきた。

 

ファミリアは神の眷属らしくヘルメス様は神様らしかった。それに私は、驚きはしたが、ヘルメス様に聞いたところこの世界は神様がたくさんいると言うこと・・・それに私は悩んだが、ここの小屋は使われていないことが分かった。そのため、ここに住むという選択肢があった。幸いここは村に近いらしくここいらは動物が大量にいるらしい。幸い狩猟は私に合っていた。そして私はまだこの世界に馴れていないため後者を選ぶことにした。徐々にこの世界を馴れていきたいからだ。ヘルメス様もそれを承諾してくれてしばらくは共に生活していた。その間に種族、魔法についても教えられた。この時、私は銃とアレの製造方法を対価に教えてもらったのだ。幸い、なぜか銃等の兵器やアレの製造方法の知識と生前の体力が備わっていた。そのため、生活にもさほど苦労はしなかった。一応、恩恵はもらわなかったのだが・・・

 

私はとりあえず弓を作り様々な動物やモンスターを狩っていた。モンスターに関しては胸にある魔石を傷つけると灰になって消えるらしい。そこは、動物とは違った。何回か遭遇したときもあるが巨人より圧倒的に楽だった。少なくともあの時よりかは・・・

 

私は暫く狩猟生活を続け、村の人とも仲良くなり1年が経った後少しこの森から少しだけ旅立つことにした。この時だった、私はヘルメス様と森を越え、山を越え、様々な場所で歩いたのだが途中ではぐれ、遭難してしまった・・・私はどうしようかと歩き回りやがて倒れ込んだ。

 

「お腹すいた~死ぬ・・・うう、ヘルメスさまぁ~」

 

そして疲れた果てに、私は森に倒れ込んだ。このままでは不味いとも思ったがそれでも空腹で起き上がれない。その時だった・・・

 

「あの・・・大丈夫?」

 

この日、私は初めてベルに出会った。今でも覚えている。その瞳は優しそうで、純粋で、そして見た目に合うほど可愛らしい瞳だった。

 

「あの・・・だいz「そこの貴方!!食べ物を持っていませんか?!」・・・え?あ、あるけど、これだけだよ・・・」

 

そう言ってベルはふかした芋を渡してきた。私は勢いよく飛びつき、むさぼり食う。ちょうどベルのお弁当だったらしい・・・

 

「ありがとうございますぅ~貴方は神様ですか?!」

 

「いや、僕は神様じゃないし・・・僕は、ベル・クラネル・・・貴方の名前は?」

 

「サシャ・ブラウスです、ベル。見たところ子どもっぽいですがどうしてここに?」

 

「お爺ちゃんと薪を取りに・・・サシャお姉ちゃんはどうして?」

 

「知人と旅行していたんですがはぐれてしまって・・・」

 

そう言ってエヘヘと頭をかく。ベルは暫く悩んでいたがとりあえず何やら提案をしたようだった。

 

「じゃあ、お爺ちゃんの所まで連れて行きます。もしかしたら会えるかもだし・・・」

 

「わざわざありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて・・・」

 

祖父が近くにいると教えてもらい私はそこに向かうことにした。ついでに美味しい物が食べられると信じて・・・

 

「ベル~!うん?その子は・・・」

 

「お爺ちゃん、なんかこの人森で倒れていた~」

 

「サシャ・ブラウスです。ベルに拾われここに来ました!!」

 

そう言って私はベルの祖父に挨拶と自己紹介をした。祖父は名乗らなかったがとりあえずベルの村に行くことにした。その時だった・・・

 

「ブモオオオオオオ!!」

 

「・・・ッ!ミノタウロス?!」

 

突如私達の目の前で3mあるミノタウロスが現れたのだ。ベルはそれを見て怯えた。祖父も酷く焦っていたようだった。

 

「ベル、サシャちゃん!!ここは儂がなんとかする!!逃げろ!!」

 

そう言ってベルの祖父は斧を構え始める。恐らくだがこのままでは祖父が死んでしまうだろう。普通なら逃げ出してしまうかも知れない。

 

「いえ、お爺さんはベルを連れて逃げてください・・・」

 

「「・・・ッ!?」」

 

「サシャお姉ちゃん?!危ないよ?!」

 

そう言ってベルは止めようとする。私は斧と背中にある弓を手に取り戦闘態勢に入る。

 

「大丈夫ですよ、私こう見えても強いので!だから走って逃げてください!!」

 

「じゃが、お主は冒険者じゃ無いじゃろ?!ここは私に任せて速く逃げろ!!」

 

 

「良いから、黙って走ってください!!」

 

そう言って私はベルを逃がそうとする。それにベルは戸惑っていたようだった。祖父の方はまだ戸惑っていたようだった。私は斧を持ち構えていた。

 

「走らんかい!!」

 

その声に逼迫されたのか二人は少し固まる。そしてベルと祖父は私を見て何か悟ったのか祖父とベルは走り出した。

 

「行ったか・・・」

 

そうして私はミノタウロスの方を見た。ミノタウロスは私に向かって斧を振りかぶしてきた。自然武器だろう。しかし、ヘルメス様にはモンスターの特性を教えてもらっている。だからわかりやすいのだ。今更、巨人よりこわいものはないと分かっているからだ。それに、あいつらに比べたらこんな牛、大したことはない。

 

「遅い!!」

 

そうして私は避ける。背後に回りながら飛び背中を切りつける。アレがない分、少し動きづらいが訓練兵の頃の体術が役に立っているみたいだ。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

ミノタウロスは悲鳴を上げながら私の後ろに向き、拳を振るう。私はそれを避け、矢を構える。ミノタウロスは攻撃した後少し時間がかかる。その隙を狙って私は狙いを定める。そして胸の所を狙った。

 

「やはり、突進は厄介だろうけど・・・動きはもろい!!」

 

そうして私は矢を放つ。矢は勢いよくミノタウロスの胸に刺さり、ミノタウロスは倒れる。そうして灰になった。

 

「ふぅ~終わったと・・・」

 

そうして、私は矢を片付ける。魔石を回収し斧を拾った。

 

「こっち!!」

 

ふと、ベルの声が聞こえた。どうやら村の住人を呼んだらしい。しかし、私を見て村人とベルは絶句する。

 

「ウソ・・・地上では弱体化させられているとは言え、ミノタウロスを恩恵なしで、しかも一人で倒したのか?」

 

そうして村人が集まってきた。そして・・・

 

「サシャさん、見つけました!!どこにいたんですか?!」

 

「アスフィさん!」

 

アスフィさんがこちらを見つけてくれた。それにヘルメス様もこちらに向かってくる。

 

「サシャちゃん、探したよ・・・」

 

「ヘルメス様も!!」

 

アスフィさんがこちらに近づいて私の後ろを見た。ふと、ベルからミノタウロスが現れたことを聞くとアスフィさんは驚きの表情をしていた。

 

「ウソだろ・・・?外のモンスターとはいえ恩恵なしでミノタウロスを倒した・・・?」

 

「サシャさん・・・貴方は一体・・・」

 

ヘルメス様は呆気にとられていた。だが、正直コレは別に大したことはなかった。前世は日頃から強力な敵と相手をしていたのだから。巨体に見合わないほどの素早さ、弱点が一つしか無い、更に知性を持った存在があるならなおさらだった。訓練兵の時の経験が生きていた。

 

「まぁ良いじゃないですか!皆助かった事だし・・・」

 

「ああ、そう・・・だな・・・」

 

ヘルメス様は戸惑っていたようだが、ともかく私達はベルの村に行くことにした。

 

 村を訪れるとそこは優しい人たちでいっぱいだった。種族との間で差別もあると聞いたがここにはそんなことも無く、エルフやドワーフなど様々な種族が優しさ包まれていた。私は勘がよく目で見たら分かるほどだから何やら安心する。

 

「おいじぃ~ここは天国ですか~!!」

 

「コレはベルが作ったんじゃぞ!!」

 

「本当ですか!?ベル~貴方は天才ですか!?それとも天使ですか!?」

 

「そこまで言わなくても・・・」

 

「いいえ、ベルは優しいのできっと美味しいんですよ!!それにこの見た目、兎みたいで可愛いじゃないですか!!」

 

「ええ・・・(汗)」

 

そう言ってベルは少し戸惑っていた。私はその時気持ちが紅潮していたのか張り切って食べていた。その時、少し訓練兵の頃を思い出す。

 

「・・・?どうしたの、サシャお姉ちゃん・・・」

 

ふと、ベルは私の方を見る。懐かしそうに見ている私がどこか悲しそうだったのだろう。私はベルの頭を撫でる。

 

「大丈夫やし・・・少し昔を思い出しただけやて・・・」

 

「サシャお姉ちゃん・・・あれ、言葉が・・・」

 

その時だった・・・私が故郷のしゃべり方でしゃべったのが・・・

 

「あ、えっと・・・その・・・」

 

私は少し焦り出す。どこか恥ずかしがっているのだろう。

 

「いや~その、癖っていうか・・・変ですよね・・・やっぱり・・・」

 

そう言って私はごまかそうとした。その時だった・・・

 

「ううん、大丈夫。むしろ良いと思うよ!」

 

そう言ってベルは何の曇りもない目だった。こういったのは大体気を遣っていると思ったがベルは違った。その瞳は、私の・・・本当の自分を否定は絶対しないと言う目だった。

 

「あのさ・・・僕、サシャお姉ちゃんの事を知りたい。貴方の生まれた場所も、好きなものを・・・もちろん、今の言葉でも良いよ・・・それもサシャお姉ちゃんなら・・・」

 

そう言ってベルはぎゅっと私の手を握る。その途端、私は、今は無きユミルのことを思い出した。

 

(お前は作ってきた自分で生きていくつもりかよ!そんなのくだらいね!!良いじゃねぇか、お前はお前で!!)

 

その言葉を思い出し、なんとなくあの時はヒストリアがそれでもありのままの私だったから敬語にしたけれども・・・ここは新しい世界・・・なら私は・・・

 

「ははは、ベルは面白いな!前から、私の言葉を使えって仲間に言われたけども、こういわれるのは初めてやし!!」

 

「え・・・いや、その・・・」

 

そう言ってベルは少し顔を赤くした。私はそれに構わず、頭をガシガシとつかむ。

 

「ベル・・・ありがとな・・・なんか吹っ切れたやし」

 

そう言って私はベルを抱きしめる。それから私は、信頼する人には故郷の言葉を使うようになった・・・帰った後も徐々に村人にもこの言葉を使った。

 

それから、私は自分の住んでいる村が大好きになった。以来、2ヶ月ずつ私は狩猟をやりながら別の村でも交流するようになった。

 

そして3年が経ったあの夕方だった。私は何時ものように狩猟を終え、弓を片付ける。この時私は、もう一度ベルの村に行こうとしていた。そのための準備をしていたその時だった・・・

 

「やあ、久しぶりだね。サシャちゃん」

 

「ヘルメス様、アスフィ久しぶり。どうしたん?」

 

扉からノックが聞こえ、急いで出るとヘルメス様とアスフィが来てくれた。

 

「実はな・・・ベルの村についての話なんだが・・・」

 

「なんやし・・・ベルの村がどうした?」

 

そう言った途端ヘルメス様が口ごもった。私はその瞬間、何かとイヤな予感がした。そして少し、時が経った後ヘルメスは口を開く。

 

「ベルの村が・・・何者かによって虐殺され、滅んだ」

 

「え・・・?」

 

その瞬間、私の中の時間は時が止まったようだった。持っていたカップが、パリンと音を出しながら地面に割れる。

 

「ウソやろ・・・冗談はほどほどにしな!!ベルの村が滅んだ!?そんなんあり得へんやろ!!」

 

「落ち着いてください、サシャさん!」

 

私は混乱し、暴れようとする。そこをアスフィさんが何とか止めてくれた。そして暫くしてベルは無事と聞いて何とか落ち着いたがまず、今はベルが心配でしょうがなかった。

 

「ベルは・・・ベルは大丈夫やろな?!」

 

「ああ、ローゼという人に助けられてな・・・お陰でベル君は平気だよ。今では旅をしている」

 

そうして、私はほっと胸をなで下ろす。そこに新たな不安があった。ベルは今どうなっているのか、ベルは心が追い詰められてはいないだろうかと不安になった。

 

「いずれ、ベル君達がここに来る。そこで一つお願いなんだけど・・・」

 

「なんやし・・・」

 

そう言ってヘルメス様は少しいうのを戸惑う。暫く沈黙が続くがアスフィがそれを破った。

 

「貴方に、銃の使い方を彼女たちに教えて欲しいのです」

 

その言葉を聞いた途端、私は少し悩んだ。何せアレは、人を殺す武器だ。一度、殺った事がある私だから言える。ベルには使わせたくはなかった。

 

「もちろん、ベル君は教えなくて良い。ただ、ローゼちゃんだけは良いかな?大丈夫、あの子も強いから」

 

そう言って私は考えた。そして暫くして私は悩んだが・・・

 

「分かりました、とりあえずローゼさんに銃を使えるように教えときます。ベルを守ってくれるなら喜んで」

 

そうして私は引き受けた。一応、騒ぎは起こしておいた方がわかりやすいので何か、無いかと思ったがちょうどイベントがあったのでそれに参加してわかりやすくするようにした。そして・・・

 

「サシャお姉ちゃん・・・?」

 

「・・・・・・ベル?」

 

「やっぱり、サシャお姉ちゃんだよね!?」

 

ベルがやって来た。少し背も高くなって隣には赤髪の女性がいた。恐らくローゼだと分かる。私は必死に涙をこらえ、ベルに笑顔を見せた。ベルは何も変わっていなかった。

 

そう思っていた・・・

 

銃の訓練をしていた頃、ベルは二刀流で訓練していたが・・・その瞳を見た途端、私はベルが変わったのだと実感した。いや、似ていたのだ。かつての仲間、エレン・イェーガーに・・・復讐に燃える怒りの目。それが似てきた。そのせいで、私は不安に襲われた。また、あのようになるのではないか・・・もしそうならどうすれば良いのか分からなかった・・・

 

(ベル・・・貴方は・・・)

 

「サシャお姉ちゃん・・・?」

 

ふと、私は突っ立ていたのかベルは心配そうに見る。私は、はっとし大丈夫だと伝えた。

 

だが、不安になる。もし、ベルが何かあって一人になってしまったら・・・私はその時エレンが心配で仕方なかった。今でもそうだ。エレンはあの後、しっかり生きているのだろうか・・・戻ってくれたのだろうか・・・それが心配でならなかった。ベルにはエレンのように復讐にとりつかれ一人になって欲しくなかった。だが、復讐を止める権利は私には無い。それだけは分かっている。だが、この子の未来が心配でならなかった。そうして時は過ぎていく・・・

 

 

「サシャさん、ありがとうございます。わざわざ、弾の作り方まで教えてくださいまして・・・」

 

「街に行った後、鍛冶屋に作ってもらえるよう頼んでくんろ。型も10000発分はあるし、何より弾も結構あるから大丈夫やろ・・・後は組み立てさえ出来れば何とかなる・・・」

 

「ありがとうね、サシャお姉ちゃん!!」

 

ベル達は旅の出発準備をし終えて、出発するところだった。そして村を出ようとしたときベルは手を振る。

 

「ベル・・・ちょっといいか?」

 

「何・・・?サシャお姉ちゃん・・・」

 

私は我慢できずそう言った後、私はベルに抱きつく。小さな身体をそっと包み込んだ。

 

「良いですか、ベル。貴方の復讐を止める権利は私にはありません。でも・・・どうかせめて忘れないでください。貴方は一人ではない・・・私や、ローゼさんがいる・・・復讐は生きる大きな原動力になりますがそれは孤独になり破滅の繋がりと隣り合わせです・・・いつしか、大切なものを失ってしまうかも知れない・・・だから・・・それだけはどうか・・・忘れないで・・・」

 

いつの間にか敬語に戻っていた。不安のせいでもあっただろう。ベルは一瞬分からなかった様子だったがとりあえず「分かった」って言っていた。少しでも届いてくれたかと願ってはいる・・・

 

そうして私は小さな背中を見送った。重そうな何かを背負って、ただ辛い道のりを彼は歩むだろう。だから、願わせて欲しい。彼がいつか報われる日が来ると・・・

 

 

 

 




はい、今回はここまでです。アニメで見たときは本当、叫びそうになりました。死んで欲しくなかったです。サシャァァァァ!! それでは次回もお楽しみに!!


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ラキア
Chaptear17謎の存在


こんにちは、今回はベルに新たな秘密が出来ます。それでは、どうぞ!


あれから数ヶ月後、ベル達は森の中を歩く。以前より武器も増えていたためか、スムーズに進めている。暫く森を抜けると平原にたどり着いた。アリーゼ達はここでキャンプをとることにしたためテントを立てる。

 

「ふぅ~時々食料もてにいれるのに困らないから、本当助かるわ!!」

 

「音もサシャお姉ちゃんからもらったサプレッサって言うヤツで小さいから気にする必要ないね・・・」

 

「うん、最近は肉もたくさん食べられているし最高!!」

 

そうして、アリーゼはベルが作った料理を頬張る。今回は、肉を塩焼きにし、狩った肉でシチューを作る。そばにはパンもあり食事にはもってこいだった。

 

「久しぶりに、豪華な食事食べた気がする・・・」

 

「確かに~今までスープとかしか食べていなかったしね・・・いや、私はベルの料理なら何でも食べるからね!」

 

そう言って食事を頬張る。シチューを飲み込み、一息つく。アリーゼは火をともしながら二人は談笑をする。サシャの話題が二人の空間を明るくする。

 

「で、サシャお姉ちゃん。食べ過ぎてたまに来てくれたお姉さんに吹っ飛ばされちゃって・・・」

 

「あの人の食い意地って異常なまでほどすごいよね・・・」

 

「まぁ、食事のために命をかけているからね・・・聞いた話によると死ぬ気で走れとも言われてもそこまでやる気は出ないらしいけど食事抜きと言われた途端死ぬ気で走ったことがあるんだって・・・何でも昔兵士をやっていたらしく訓練兵の時、敬礼中、調理場から取ってきた芋を食べていたとか・・・」

 

「それはまた・・・(汗)」

 

そう言ってアリーゼは冷や汗をかく。一度サシャのあの姿を見た途端苦笑いが止まらなかった。

 

「ふぅ・・・じゃあ今日は良いかな・・・」

 

暫くした後待っていたかのようにアリーゼはベルを押し倒す。ベルは分かったように身を委ねた。

 

「そう言えば・・・最近していなかったね・・・良いよ、来て」

 

そう言ってベルはゆっくりと瞳を閉じる。それと同時にアリーゼはベルに口づけを始めた。それと同時にベルの声が漏れる。

 

「ン・・・ウゥゥゥ・・・」

 

そうして二人の唇から銀色の糸が、繋がり始める。アリーゼはベルの顔をそっと包み再び口づけをする。

 

「フゥ・・・ン・・・」

 

ベルの声が草原に広がり水音が響く。いつの間にかベルの服が乱れる。

 

「ウウウ・・・恥ずかしい」

 

「何を今更・・・もう何回もしていると思うけど?」

 

「そうだけどさ・・・やっぱり馴れないんだよ、こういうのは・・・」

 

そう言ってベルは顔を赤くする。それを見ていた獣は優しく包み、再び口づけする。

 

「ン・・・」

 

兎はそのまま獣になすすべ無く食われていく。アリーゼのゆっくりと、それでいて荒い呼吸がベルに吹きかかる。

 

「ヒャ・・・ッ!」

 

アリーゼはベルの顔をそっと撫でる。それに過剰反応したのかベルの身体はビクリと跳ねた。

 

「フフ、可愛い・・・」

 

そう言ってアリーゼはベルの服に手をかける。そうして少しずつ脱がせた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

「ベル・・・良いよね・・・」

 

そう言ってアリーゼはベルの顔を見る。ベルはそのまま力が抜けた瞳でアリーゼを見つめていた。

 

ただベルは分かっているようにうなずくだけだった。

 

そうして二人の時間は始まった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ッ!ベル・・・今の聞こえた?」

 

「う・・・うん・・・何か聞こえた気がする」

 

しかしそれは突如、遮られた。アリーゼ達の近くで何やら音が聞こえたからだ。草を踏みつけるような音、ガサガサと同時に何やら近づいてくるようだった。

 

「ねぇ・・・もしかして、今の聞かれていた?」

 

「そうかも・・・とりあえずとっ捕まえて、黙らせないと・・・」

 

「ローゼ、なんか怖いよ・・・」

 

そう言って冷や汗をかく。すぐに服を着直して、警戒した。暫くしてその足音はテントに近づいてくる。

 

「モンスターかも・・・ベルは隠れていて・・・」

 

「うん・・・」

 

そしてベルはテントに隠れる。アリーゼはゆっくりとテントから顔を出す。そこには・・・

 

「ぐぎゃああ・・・」

 

「ああああ・・・」

 

「オオオオ」

 

「・・・・・・・ッ!何・・・こいつら・・・」

 

その光景にアリーゼは絶句する。テントの目の前で3体のモンスターがこちらを見ていたのだ。それも全部、見たことがなかった。その中の二体がとても不気味だった。二体とも灰色の身体をしており、その二体には目らしき物は無く一体は触手のようなのがついていて、中央にはもう一つ顔があり、もう一体は首が三つあった。赤く、長い角が目立つ。もう一体は、姿は不気味ではなかったが青色の人型をしており宙に浮いていた。ダンジョンでも現れなかったモンスターにアリーゼ恐怖を覚える。思わず、テントの扉を閉め、身体を震わせた。

 

「ローゼ・・・」

 

ベルは心配そうにアリーゼを見つめる。アリーゼ自身逃げたい気持ちがあった。だが、一度守ると決めた子どもを見捨てる訳にはいかなかった。アリーゼはそっとベルを包み込む。

 

「グロロロロォォォォ!!」

 

その途端、さらなる雄叫びが上がる。何かと思い見て見ると顔に仮面を付けていて鉱石で出来ていたような竜がこちらを見ていた。

 

「・・・・・・・ッ!何・・・アレ・・・」

 

アリーゼは身体を震わせているとベルもチラッと見えたのだがベルは恐怖により地にへたる。

 

「ローゼ・・・怖いよ・・・」

 

「大丈夫よ・・・ベル・・・」

 

そう言ってアリーゼはベルを抱き寄せる。

 

「「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」

 

「「・・・・・・・ッ!」」

 

4体のモンスターが咆哮を上げる。その途端、テントが吹き飛んだ。

 

「ヒッ・・・・・・・ッ!」

 

ベルは4体のモンスターに顔を青くする。それに構わず、モンスターは近づいてきた。

 

「く・・・来るな!」

 

そう言ってアリーゼは剣を振るう。その途端、4体のモンスターがベルの方を見てきた。

 

「ヒッ・・・・・・・ッ!」

 

その途端、4体のモンスターが一斉にベルに襲いかかってきた。それにアリーゼは必死に止めようとする・・・が、それでもほかのモンスターがベルに近づいてくる。

 

「ベル・・・・・・・ッ!」

 

「う・・・ウワアアアアアア!!」

 

死ぬ・・・そう直感した。モンスター達は一斉に飛びかかってきた。

 

「ベルゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

アリーゼはベルを守るために駆け出す。しかし、スピードが速く、とてもではないが追いつけなかった。

 

(駄目・・・間に合わない・・・・・・・ッ!)

 

そう直感した途端、無慈悲にモンスターが一気にベルに向かって迫ってくるのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレ・・・?」

 

しかし、ここでアリーゼ達が予想もしていなかった事態が起こる。襲いかかって来たと思った途端、急にモンスター達が頭を下げ、まるで祈っているかのようにベルを見つめた。言うなれば、王の前に忠誠を誓う家臣のようだった。

 

「な・・・なに?」

 

そうして、二人は戸惑いを隠せなかった。アリーゼはベルを急いで引き離し、安全な場所に移そうとした。その時だった・・・

 

「怖がらせてしまい誠に申し訳ありません、我が主」

 

「え・・・ッ!」

 

突如、モンスター達が話しかけてきたのだ。それにアリーゼとベルは驚きのあまり走る足を止める。

 

「どういうこと・・・喋るモンスター?」

 

「モンスター・・・確かにここではそう呼ばれるんですね、私達は」

 

そう言って青い身体をしたモンスターはそう言って、宙に浮いたまま少し頭をかく。

 

「にしても、驚いたな!こんなガキがあの器だったなんて・・・」

 

「器・・・?」

 

灰色のモンスターはそう言ってケラケラと笑いながらベルの方を見ていた。

 

「こら、仮に子どもでも我が主だぞ!無礼な態度は慎め!!」

 

そう言って赤い角を持った、モンスターは灰色のモンスターを叱責する。

 

「こらこら、やめんか。我が主の前だぞ・・・」

 

鉱石で出来ているような竜のモンスターが二人をしずませる。ポカンとした二人の顔に4体のモンスターは少し戸惑いながらも何やら話を進めようとした。

 

「あの・・・あなた達は・・・」

 

アリーゼが聞くと、全員アリーゼの方を向いて何やら忠誠を誓うような姿勢をしていた。

 

「コレはコレは、ローゼ様でしたか・・・貴方には感謝しております」

 

青いモンスターがそう言うと、他のモンスターも頭を下げる。そうやられるとアリーゼは気まずいかと思い止めさせた。

 

「で・・あなた達は何者なんですか?」

 

ベルは気になったように聞くと鉱石の竜がベルを見て答える。

 

「我々は貴方の家臣です。今日からお供させていただくことになりました」

 

「え・・・?!家臣って僕そんな所に生まれたわけでもないし・・・」

 

「いえいえ、あなた様が持っているその剣は我々にとって主の証です。着々と覚醒しているのが何よりの証拠・・・」

 

「コレが・・・」

 

そう言って、ベルが持っている赤い剣に指を指す。ベルはその剣を握り少し撫でた。ふと、灰色のモンスターはベルに近づく。

 

「まっ、お前が俺たちの主になるかはお前次第だな・・・一応まだ名乗らないでおくぜ」

 

そう言って灰色のモンスターはベルの頭を黄色な触手のような物で撫でる。ベルはそれに少し戸惑っていたが許容範囲としてそのままにした。暫くすると、4体のモンスターが光り出す。

 

「そろそろ時間か・・・」

 

「え・・・?」

 

青色のモンスターは急にそう口にする。すると、モンスター達の身体がどんどの消えていった。

 

「ちょっと待って、君たちは何者なの?!僕が主ってどういうこと?!」

 

「それは追々話すことにします。いずれまた・・・」

 

「期待していますよ、我が主・・・」

 

「まっ、頑張れよ」

 

「いずれまた会えますから・・・」

 

そう言ってモンスター達は消えていった。いつの間にかテントは直っており、周りにモンスターや人がいない草原となっていた。

 

「何だったんだろう・・・」

 

「分からないわ・・・でも、あのモンスター達は味方と言うことは分かったわ」

 

そう言ってアリーゼはベルを抱き寄せる。ベルは不安そうにうつむく。

 

「主って、大丈夫かな・・・僕・・・」

 

そう言ってベルは、震え出す。急にあのモンスター達の主となれば身が重いだろう。それをアリーゼは暫く悩みこんだが突然、ベルをテントの中に入れ込む。

 

「フエ?!ローゼ?!」

 

「もう、ちんたら悩んでも仕方ないわ!さっきは邪魔されたけど、今度こそ邪魔されないはずだわ!!」

 

「え、ちょ、待って・・・ふあああああ!」

 

そうしてアリーゼは口づけをし、そのまま押し倒した。そして二人の夜が始まったのだった・・・

 




はい、今回はここまでです。この4体の何か、他作品なので予想してみてください。次回あの都市にベル達は向かう&物語が加速します。それではお楽しみに!!


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Chaptear18謎の資料

こんにちは、今回からあの都市に行くことになりました。そして、とうとう物語の歯車が・・・それではどうぞ!


ベル達は現在、とある都市にいた。賑やかな雰囲気で、屋台も大量にあり、様々な店が出回っている。

 

「ローゼ!コレとても美味しそう!!」

 

「え・・・ええそうね」

 

「・・・?ローゼ?」

 

アリーゼは少し戸惑っていた。そう、実は数週間前、ヘルメスによって頼まれこの都市に来ているのだ。

 

(ヘルメス様は何を・・・それにここって・・・)

 

「そこのお二人さん、ようこそラキア王国へ!!」

 

そうしてアリーゼは冷や汗をかく。そう、ここはオラリオにいたころでも因縁深い相手と言ってもいい都市であり、国であるラキア王国だからだ。

 

ラキア王国、軍神アレスが統治している軍事国家でありオラリオに何度も戦争を仕掛けてくる連中だ。この都市全体はアレスと団長兼ね国王であるマルティヌスが統治している。国全体が、眷属となっているため60万人もの軍人がいる。しかしダンジョンがないため、最高レベルは3、他の兵士達も平均より低いため烏合の衆のようなものである。

 

ラキア王国は元々、戦争をする必要も無いくらい豊かな国なのだがアレスと国王の意向で軍事国家になっているのだ。そのせいか、マリウス・ウィクトリウス・ラキアを中心とする側近からも呆れられ、反感を抱いている。とは言ってもそんな神が何で信仰されているかというと、「なぜか憎めない」や「子どもが好きそうな性格」など言っているらしい。

 

「ところで何で僕達、こんな格好をしているの?」

 

「ア・・・イヤね・・・国王がこの姿をしろと言っていたから」

 

ベル達は現在、ローブをはおっている。全体が黒く、顔が分からないほどだ。

 

ベル達は、三日後アレスに会いに行くため特別な宿で泊まることにした。ちょうど今、そこに向かっているのだという。ベル達は地図を見て目の前の建物を見る。

 

「ここ・・・だっけ?」

 

「うん・・・そうだけど・・・なんだか・・・」

 

「「家だね」」

 

そう、もはや一軒家のような場所であった。建物は二階建てで木で出来ており周りには少しツタがあり、緑に生い茂っている、ログハウスのようだった。

 

「もしかして、コテージってヤツかな?すごく広そう」

 

そう言ってベルは中に入った。中はとてもきれいで、木の香りがして窓にはうっすら日が射している。

 

「ここで3日も暮らせるなんて夢のようだね!」

 

「・・・うん、そうだね・・・」

 

「ローゼ・・・?」

 

ベルがはしゃいでいる中、アリーゼは顔を曇らせる。そう、ここは内装がアストレア・ファミリアのホーム、星屑の館の団長室に似ていたのだ。椅子、テーブル、紅茶を入れる容器、何もかもが似ていた。

 

ベルがアリーゼの袖をくいっと引っ張る。アリーゼは少し顔を曇らせていたが、すぐに顔を戻して、ベルの方を向いた。

 

「大丈夫よ、それにしても広いわね・・・普通に家にした方が売れると思うんだけど」

 

そう言ってベル達は宿・・・いや、コテージと呼ぶことにしよう。コテージの中を散策する。寝室には、時計や本などが並びまるで書斎のようだった。

 

「ローゼ!見て、英雄譚がこんなに!!」

 

「本当?!って英雄譚だけじゃないわよ!!こんな所に有名小説があるわ!!」

 

「マジで?!」

 

それを聞いた途端、ベル達は目を合わせ始める。暫く間が開いた途端二人は目を輝かせながらうなずいた。

 

「ベル・・・分かっているだろうけど良いわよね・・・コレ」

 

「うん、ローゼ・・・コレは」

 

「「久し振りの本読み放題だ!!」」

 

ベル達は片っ端から本棚から本を取り出し二人で一緒に読み始めた。英雄譚、論説文、魔法学、科学、歴史学、小説、いろんな本があった。(論説文、魔法学、科学は二人には理解できなかったが)

 

「ローゼ、コレ何?」

 

ふと、ベルは何やらボロボロの本を見つけた。すすがあり、長い間使われていたようだった。

 

「何だろう・・・ほこりでよく見えないわね・・・」

 

そうしてアリーゼは本をはたいた。次第に本の名前が浮かび上がる。

 

「コレは、研究書なのかしら、薄いし何やらそれっぽいのが入っている」

 

そう言ってアリーゼは本を開き始めた。好奇心に、ベルはアリーゼに寄りかかり読むことにした。

 

(ファイル1、私はとある伝説、『魔竜伝説』の事について調べることにした。)

 

「『魔竜伝説』って知っている。よく村に来てくれたお兄さんが読んでくれたんだ」

 

「へぇ~どんな物語なの?」

 

「昔、一体の魔竜が世界を滅ぼそうとしてそれを一人の勇者が倒し封印したって話だね・・・能力はそこまで詳しく書かれていなかったけど」

 

そう言ってベルは研究書をめくる。

 

(ファイル2、魔竜に関して、能力は凄まじくモンスターを操ることが出来るらしい。しかし、そんな竜はもうこの世にはいなく見つかるはずもないのに・・・アレス様は何時もいるわけ無いだろうと言ってくるが私は気にしない、あの脳筋クソアホ神が・・・そもそもお前だって勝てるはずもない戦争をバンバンやっているだろうが・・・それより私の方がよっぽど優れているわ)

 

「なんか、愚痴っているね・・・」

 

「うん・・・アレス様って本当に脳筋なんだね・・・」

 

(ファイル3一応私はこの研究を続けることにした。アレス様はそれよりも武器を作れとしつこかった。クソ、腹立つ)

 

「なんか、読むのも馬鹿らしくなってきた」

 

「ま、まぁまだ続きがあるよ・・・」

 

そう言ってベル達はため息をつきながらも、研究書を開く。

 

(ファイル4私は正しかった、魔竜は実在した。このラキアを世界最強に出来るに違いない。しかし、それには器が必要だ・・・それを見つければ、ラキア王国はオラリオを凌ぐだろう)

 

「え・・・?」

 

「何・・・コレ・・・」

 

ベル達は急な変わりように戸惑いが隠せなかった。文字も少し震えながら書いている。ベル達は驚きのあまりつばを飲み込む。

 

「ねえ・・・コレ、やばいんじゃない?」

 

「ええ、何かやばいことが乗っている気がする」

 

そう言ってベル達は少し手が震える。しかし、なぜか好奇心が勝ってしまったのかベル達は無言でページをめくる。何ページかは破れていた。

 

(ファイル8私は正しかった。だが、間違っていた。私の研究によればコレは目覚めさせてはいけない・・・絶対に・・・)

 

そうして研究書は終わっていた。それを読んだ後、ベル達は冷や汗をかく。途中から狂乱のような文字にもなっており少し、恐怖もあった。

 

「何だろう・・・魔竜って・・・分からないけど、アレス様はこの魔竜を知っていたのかな?」

 

「さぁ・・・?でもコレが本当なら危ないわね・・・」

 

そう言ってベル達は顔を青くする。何やらとんでもないことに巻き込まれたのかも知れないと思い不安になる。

 

「とりあえず、アレス様に聞いてみようかしら・・・」

 

「うん、魔竜が何者なのか知られるかもね・・・」

 

そう言ってベル達は書斎を出ることにした。ちょうど、夜になっていたので料理を始めていた。雨は降り、少し風も吹いていた。

 

「なんか、急に荒れているわね・・・」

 

「うん・・・」

 

そう言ってベルはシチューを作り終えベルはパンを並べる。

 

「「いただきます!」」

 

そう言って食事を始めた。ちなみに最近、サシャからも手紙が来るようでよく、弾も作ってくれる。

 

「すごいわよね・・・一応あの人頭はまぁまぁだし・・・」

 

「うん、お陰でスムーズに旅が出来るね!」

 

そう言って二人は談笑を始める。吹き荒れる嵐でも、それを遮るような笑い声が辺りに響いた。

 

 

 

(ドンドン!!)

 

「・・・?!」

 

「扉から?!何だろう・・・」

 

そう言ってアリーゼは剣を持ちながら、ゆっくりと扉に近づいていた。そうして扉を叩く音がバンバンと聞こえる。

 

「どなたですか?」

 

そう言ってアリーゼはゆっくり扉を開けた。すると・・・

 

「お願いします!私をかくまってください!!」

 

突然、青い髪をしておりロングヘヤーで片目が隠れている女性が詰め込んできた。

 

「どうしたの?!」

 

「ローゼ?!何が・・・」

 

「ベル!急いで布を持ってきて!!この人をどこかに隠して!!」

 

「分かった!!」

 

ベルはそれを聞き、急いで布を用意しアリーゼは扉を閉める。

 

「何処に行った?!」

 

「探せ!まだ近くにいるはずだ!!」

 

遠くから声が聞こえた。それを聞きアリーゼは扉にバリケードを張り銃を構える。暫くして、声が段々聞こえなくなっていた。

 

「ローゼ、さっきのは・・・」

 

「分からない、とりあえずシチュー用意しといて・・・」

 

そうして、ベルは布とシチューを用意する。青髪の女性は、ほっと一息をついた。ベルは女性をゆっくり腰かける。

 

「ありがとうございます・・・お陰で助かりました」

 

「いえ、当然のことをしたまでですよ・・・ところでお名前は?」

 

そう言ってベルは青髪の女性にホットコーヒーを入れる。暫くして、女性は落ち着きやがて名を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、カサンドラ・・・カサンドラ・イリオンです」

 

女性はそう、名乗った・・・

 

物語の歯車は進み始める・・・・

 




はい、今回はカサンドラを出しました。次回・・・ベル達はアレスと対面、そしてオラリオに来るときは近い・・・次回もお楽しみに!


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Chaptear19アレス

こんにちは、今回はアレスの秘密についてかきます。それでは、どうぞ!


「カサンドラさん・・・あの連中は一体・・・」

 

ベル達は現在、ラキア王国に用意された宿で謎の集団に襲われていた青髪の女性、カサンドラを保護して布をかぶせていた。雨で濡れたせいかカサンドラの身体は震えていた。

 

「あの人たちはアポロン・ファミリアの団員です・・・私はあの人たちに逃げてきたんです」

 

「アポロン・ファミリア?」

 

「・・・ッ!」

 

アポロン・ファミリアの事を聞き、アリーゼは少し驚きの顔を見せていた。

 

「アポロン・ファミリアって?」

 

ベルは首をかしげ、アリーゼは少しくらい顔をする。

 

「オラリオにあるファミリアです。ファミリアって知っていますか?」

 

「うん、お爺ちゃんから聞かされている」

 

「その中の男神アポロン様は、男でも女でも自分が見定めた人間を何が何でも手に入れる神なんです。それが国内外にいようがしつこくつきまとわされる。最終的にファミリアに入るまで続くんです。過去につきまとわされて無理矢理入らせた人を私は見ました」

 

「そんな・・・」

 

ベルはそのことを聞き怒りで拳を振るわす。カサンドラは涙ぐんでいたようだった。

 

「私もそれで追われ・・・オラリオに出ることにしましたが・・・それでも追ってくるんです・・・」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ベルは怒りの感情をそのままあらわにする。オラリオのことはよく祖父からも聞いていた。オラリオには富や名声、英雄など様々あると教えられてきたのだ。しかし現状は、何だ・・・オラリオには吐き気を催すほどの邪悪さがにじみ出ている神がいる事を知り失望をしていたようだった。

 

「分かりました・・・今日は泊まってください。明日私達三日後、アレス様に出会うのでそれまでいても構いませんよ」

 

「本当ですか?!ありがとうございます!!」

 

そうしてベル達は食事をしたのだった。不思議とベルの顔は不思議と曇っているのだった・・・

 

 

 

「ここが・・・ラキア王国の宮殿」

 

三日後、アリーゼ達はラキア王国の宮殿の前にいた。アポロン・ファミリアを軽快して事前にカサンドラも同行することにしたのだ。ヘルメス・ファミリアがいる事を聞きアポロン・ファミリアの連中は一旦退いたようだ。ベル達はアレス様は何を企んでいるのかと思いながらも門の前を通る。

 

「ローゼ・アーリヴェル様とベル・クラネル様ですよね?」

 

「はい・・・」

 

「アレス様がお待ちです・・・こちらに」

 

そう言ってベル達は王の間まで案内される。城の中は豪華で金箔が辺りに貼り付けられていた。

 

「すごい・・・」

 

「こちらです・・・」

 

「失礼します・・・」

 

そう言って門番は王の間への入り口まで連れ出す。そうしてベルは少し緊張しながらも扉を開けた。

 

「お目にかかれて光栄です・・・アレス様、マルティウス様・・・」

 

そこには二つの玉座があり、一人は赤い鎧を着ていて顔が整っていたアレス・・・そしてがたいの良い老人マルティヌスがいた。

 

「顔を上げよ・・・」

 

マルッティウスは低い声でベル達に問いかける。

 

「貴様がローゼ・アーリヴェルとベル・クラネルだな?」

 

「はい、その通りです」

 

そうしてベルが口を開く。ヘルメスが念の為ウソだとばれないようベルに喋らせているためばれないではいる。広大な宮殿はアレスを象徴としているような状態だった

 

「にしても、なぜ私達をお呼びになったんですか?アレス様」

 

アリーゼはそう言ってアレスを問いかける。その途端アレスは少し笑みを浮かべた途端アリーゼ達を見つめる。

 

「それはだなぁ、お前達には第5次オラリオ遠征に協力して欲しいためここに呼び出したのだ!!」

 

「お断りします」

 

「ええ?!いきなり?!」

 

そう言ってアレスは「ガーン」という音と共にベル達を見つめる。傍にいたマリウスはあきれ顔で見ていた。

 

「なぜだ、勝利したあかつきにはお主達に莫大な資産を渡すと伝えただろう?!」

 

「いや、そんなの一言も言われていませんが」

 

「ハァ?!だがヘルメスからは伝えとくと聞いたぞ!!」

 

「私達はただアレス様から用があるとしか聞いていませんが・・・」

 

そう言ってアレスは何やら戸惑っていたようだった。

 

「もうまどろっこしい言い方は止めないか?アレス」

 

その時だった。宮殿の中からヘルメスの声が聞こえた。その途端、ヘルメスが後ろから現れる。

 

「な・・・ヘルメス!!お前には報酬を与えると言うように約束したはずだぞ!!」

 

「大丈夫さ、そんなことをやらなくても彼らは聞いてくれる・・・」

 

「だが・・・」

 

アレスは何やら迷っていたようだった。それにベルは気になったのか首をかしげる。マリウスも何か知らないようで不思議と目を細めていた。

 

「ヘルメス・・・本当に信じても良いんだな」

 

「ああ、それは保証する」

 

そう言ってアレスは途端悩み出す。この時、アレスの姿はアリーゼには別人に見えた。何かに真剣に向き合っている様子。オラリオに戦争を仕掛けた時、アレスを問い詰めたときはいかにも戦争がやりたいだけで阿呆らしかった。だが、今のアレスは何かを背負っている。そんな感じだった。

 

「分かった・・・二人ともついてこい・・・」

 

そうしてアレスは玉座から立ち二人を部屋に案内するために宮殿の王の間から出て、右にある大きな扉を開けた。そこには・・・

 

「アレス・・・?」

 

「おお、セレン・・・元気か?」

 

人型で、しかし緑色も羽が生えており白い肌をしたモンスターの少女がそこにはいた。アレスに懐いているかのようなそぶりを見せる。アレスはセレンと呼ばれるモンスターの少女をただ優しく撫でる。

 

「アレス様・・・コレって」

 

ベル達は驚きを隠せないでいた。アレスが悲しそうな表情で見つめる。

 

「二年前だ・・・この娘、セレンがオラリオにいるファミリア、イケロス・ファミリアが密輸をしていたところを発見したんだ・・・」

 

「「・・・・・・・ッ!」」

 

それを聞き、二人は目を丸くする。アレスはそれを話した途端辛そうな目をしていた。マリウスも初めて知ったようで開いた口が塞がらない。

 

「私達は何とかセレンを助け出した。そりゃ驚いたさ、オラリオにいたファミリアがこんな小さな女の子を奴隷のように扱っていたなんて・・・」

 

「・・・・・・」

 

二人は黙り込む。アリーゼもコレは何も言い返せなかった。

 

「暫くして、セレンは異端児(ゼノス)という種族だとヘルメスは教えてくれた・・・それにダンジョンにはまだいると・・・そしてモンスターにも冒険者にも命を狙われていると知ってな・・・ほっとけなかったんだ。おかしいじゃないか・・・モンスターってだけで命を軽くあしらわれる。そんなことが・・・ギルドに言っても無駄だった・・・他の部下に話せば、この子は暗殺される。それでオラリオに戦争を何度も仕掛けた、だが・・・何も変えられなかった」

 

そう言ってアレスは涙を浮かべる。暫くして、アレスは泣き出した。

 

「アレス・・・」

 

セレンと呼ばれる少女は涙を浮かべながらアレスに抱きつく。その様子にベル達は戸惑うしかなかった。

 

「アレス様・・・」

 

マリウスも何やら拳を固めていた。それにベル達は呆然とその様子を見ていた。アリーゼは知らなかったアレスの姿に驚きを隠せなかった。そう、アレスはただ助けたかっただけだったのだ。脳筋と呼ばれた神はただ一人の少女の同胞を救いたかっただけ・・・それだけだったのだ・・・

 

「すまない・・・取り乱してしまったな」

 

そう言ってアレスは立ち上がる。途中セレンが心配そうに見ていたがアレスは大丈夫だと伝え、ベル達の元に近づく。そして・・・

 

「頼む!金なら私が何とかして用意する、この命をお前に捧げたって良い!!だから頼む!!セレンの同胞を・・・異端児を助けてくれ!!」

 

「ちょ・・・?!アレス様!?」

 

アレスはそう言って土下座をしてきた。その姿は屈辱的でもそうだとしても一人の少女を救いたいという気持ちが表れている。アリーゼはその姿に驚きを隠せなかった。やがて少しの間が開く

 

(私は・・・どうすれば)

 

アリーゼに迷いが生まれ始める。そう、コレはオラリオ、そしてアストレアファミリアを裏切る行為に等しいのだ。しかし、アレスの様子にコレは本当のことだと痛いほど伝わる。大切な人がいる・・・どうしても助けたい・・・アレスとアリーゼの間に何か似たもの同士だと思い始めた。どうしようか迷っているところベルの方を見つめた。

 

「・・・・・・・ッ!そう・・・だよね」

 

その瞬間、何かが吹っ切れたようだった。

 

「・・・分かりました・・・アレス様、その遠征・・・私達も協力します」

 

「・・・・・・・ッ!本当か?!」

 

「ただし条件があります・・・」

 

「それは・・・」

 

そう言ってアレスは息をのむ。暫くしてアリーゼの口が開いた。

 

「実は途中でカサンドラという人がアポロン・ファミリアによって追われています・・・イケロスファミリアと同時にアポロン・ファミリアと戦うことを約束してはくれないでしょうか」

 

そう言った途端アレスから涙を流しながらアリーゼを見た。

 

「それで・・・いいのか?」

 

「ええ、貴方と私・・・きっと同じなんです・・・貴方の決意・・・しっかりと受け止めました」

 

そう言ってアリーゼはそっと優しい笑みを浮かべる。そうして手を差し伸べた。

 

そう言ってアリーゼはそっと優しい笑みを浮かべる。そうして手を差し伸べた。

 

「おお、おお!」

 

その途端、アレスは涙を流しながらアリーゼの手を握った。

 

「ありがとう・・・ありがとう・・・ッ!」

 

アレスは喜びのせいか涙を流しそう言うのだった。その様子を見ていたマリウスも何やら吹っ切れていたようだった。

 

ここに、アリーゼはオラリオ、イケロス・ファミリアと戦う決意を握りしめたのだった。

 




はい、今回オリキャラセレンを出しました。イメージは一応原作で出ている異端児のレイで構いません。次回、更なる展開が・・・お楽しみに!!


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Chaptear20話

こんにちは、今回は作戦会議?のようなものです。それではどうぞ!


「さてと・・・戦うことになったのは良いけど、これから先どうすれば良いのかしら?」

 

アリーゼ達が、歌人鳥(セイレーン)異端児(ゼノス)セレンの同胞とアポロンファミリアからカサンドラをを助けるためにオラリオと戦う決意をし、現在はその作戦会議中だ。

 

「オラリオの冒険者はここよりも遙かに強いです。正直、現在の戦力じゃ勝ち目は・・・」

 

「しかもあっちにはいくらでも強くなれるダンジョンがある・・・ダンジョンがない我々は明らかに不利だ・・・」

 

「できる限り減らしたいですね・・・オラリオには戦争遊戯がありますからイケロス・ファミリアとアポロン・ファミリアだけ相手にするのも可能ですけど・・・それでも・・・」

 

「ああ、差は歴然だ」

 

ダンジョンがある・・・この事はどうも抗えない事実だ。ダンジョンは外のモンスターより遙かに強化されている。イケロス・ファミリアだけでも最高レベル5。対してラキア王国には最高レベルは3、それを戦うのなら一目同然だろう。正直勝てる見込みはほぼゼロだった。

 

「一体どうすれば・・・」

 

「そのことなんだけど・・・ちょっと良いかな?」

 

そう話している間にヘルメス割って入ってきた。その途端、門兵がヘルメスを囲む。ヘルメスもオラリオのファミリアな為アリーゼ達はヘルメスを警戒しながら見つめる。

 

「そう怖い顔しないでくれ、僕は君たちの味方だよ」

 

そう言ってヘルメスは両手を挙げる。それと同時にアスフィが入ってきた。

 

「私達も直接ではないですが協力しますよ・・・大丈夫です。裏切るようなまねはしません」

 

アスフィの言葉にウソをついていないことが分かるとアレスは少し悩んだが剣を下げるよう命令し、解放されるとヘルメスは懐からとある紙を出し、テーブルの上に置く。

 

「コレは・・・」

 

「彼女達に教えてもらった技術さ・・・コレがあればオラリオにも対抗できる」

 

そう言ってヘルメスはアスフィに合図を送ると何やら大きな箱を二つ取り出した。ベル達が不思議そうに見つめる。それに答えるように箱を開け始めた。

 

「コレは・・・」

 

「コレを量産できれば、レベルに関係なしで戦えるだろう・・・それに、それを作った本人も参戦してくれるらしい。使い方と適性はその人たちに任せてある」

 

「ありがとうございます、ですがコレを量産は可能でしょうか?」

 

「うちには鍛冶師はいるが・・・人数がな・・・コレを量産するには鍛冶師に建築士も大量にいる」

 

それを聞いた途端、全員がまた頭を悩ませる。それを見ていたベルは何かを閃いたようだった。

 

「サレルメスに頼めば良いんじゃない?あそこの腕なかなかだし・・・」

 

「だが、動いてくれるか・・・戦力も多い方がいい・・・できる限り同盟が欲しいものだ・・・だが我々に人望はないし、セレンの事を我々が話せば反感を買うだけ・・・なんか無いのか」

 

アレスの言葉に全員がため息をつく。暫く悩みこむが、なかなか良い案が思い浮かばなかった。沈黙が辺りを覆う。

 

「あの・・・私から良いでしょうか?」

 

しかし次の瞬間マリウスが手を上げる。その時ラキア組は驚きを隠せなかった。ここまで、作戦会議に消極的だったマリウスが直接参加するなんて思いもしなかったのだ。

 

「マリウス・・・言うのも何だが・・・大丈夫か?」

 

「勘違いしないでください!!私はただ子どもを見捨てたくないだけです、あんたの為じゃありませんよ!!」

 

そう言ってマリウスは顔を赤くする。それを見た途端アレスは少し笑みを浮かべながらも何時ものような反応をした。

 

「良かろう!発言を許す!!」

 

それと同時に、マリウスは一つの写真を撮りだした。そこにはマリウスと一人の男が写っていた。髪色は白黒で分からなかったが、少しひげは生えており長身的な男だった。

 

「この人って・・・五年前急に現れ始め、今では人脈も広い噂のあの貴族の・・・」

 

「はい、実は二年前私達は偶然知り合い友人になった人物です・・・」

 

「ああ、なんかマルティウスが暇だからと他国のヤツを呼んでパーティしたときか」

 

それを聞いた途端全員はマルティヌスを見つめる。もちろんマルティヌスはそっぽを向いて口笛を吹く。少しあきれ顔をしつつもマリウスは続きを話す。

 

「彼は、人脈も深く演説がとてもお上手です・・・彼に頼めば・・・」

 

「味方を増やせるって事か!」

 

それを聞き、アレスは笑みを浮かべ早速準備に取りかかろうとしていた。

 

「待ってください、面識がある私が話を進めますので待っていてください。面識があった方が成功しやすいです」

 

「それじゃあその人に頼んで多数の国を味方につけると言うことでいいですね」

 

そう言って全員がうなずいた後マリウスは荷物を用意し、馬車を用意するよう門兵に命令をする。その前に手紙を用意し、送ることにした。

 

「後、彼女たちは明日来るらしいから準備していてね」

 

ヘルメスがそう告げると同時に会議は終わりにすることにした。そうして会議室にいた者は全員各自の部屋に移る。そうして最後にヘルメスがアリーゼとベルに話があると言うことでベル達はヘルメスの部屋に入りそして一夜が明けたのだった。

 

「それでは、行って参ります」

 

「マリウスさん、お願いしますよ」

 

「ええ、彼女のためにも頑張ります」

 

そう言ってマリウスは馬車を発車させる。それと馬車は壁を突っ切り街道に入るのだった・・・

 

「ベル・・・」

 

「ローゼ・・・悪いけどこれだけは譲れない・・・」

 

昨日の夜、ヘルメスの部屋で言われたのはローゼ達に伝えられたのは衝撃の言葉だった。

 

「ベル君・・・君が泊まったあの家・・・あそこはね・・・カストルの家だったんだ・・・」

 

「・・・ッ!」

 

「カストルさんって?」

 

アリーゼは首をかしげている。しかしベルは驚きの顔を隠せていないくらい怯えていた。

 

「僕の村に時々遊びに来てくれたお兄さん・・・優しくて魔竜伝説を読んでくれた・・・」

 

「覚えてくれて何よりだ・・・それでね・・・カストル君は・・・村が壊された後にね・・・」

 

そうして少し間が開く。ベルはなんとなく予想はついていた。だから耳をふさいだ。アリーゼも悟ったらしく聞きたくない様子だった。

 

「自殺したんだよ・・・」

 

その途端、ベルの涙腺は崩壊した・・・優しかった兄のような存在がいなくなった。それが重くのし掛かる。

 

それはアリーゼにも響いた。自分が大きな過ちによって苦しませ、挙げ句の果て自殺まで追い詰めてしまった・・・自分のせいでまた、死んだ。その現実がアリーゼに背中にのし掛かられ、辛く涙が止まらなかった。

 

(ベルがあんたに会えて良かった)

 

(貴方は私の英雄です)

 

(違う・・・私は・・・)

 

急にアルミノとイシスの言葉がアリーゼの頭に過ぎる。違う・・・そんな人間ではない・・・それはアリーゼが一番分かっていた。

 

「アア・・・アアアア!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ベルは泣きだしうずくまる。それにアリーゼはただ抱き寄せる。涙の温もりが手に染みこむ。それはなぜか暖かいはずなのに冷たく感じた。

 

「さて・・・本題に移ろうか」

 

しかし、それは突然遮られる。ヘルメスがベルに真剣なまなざしで見つめていた。ベルはそれを見てなぜか聴けずにいられなくなった。

 

「何ですか・・・ヘルメス様」

 

「君は・・・皆の仇を取りたいとは思わないかい?」

 

「え・・・?」

 

その途端、その一言によりベルは目の色が変わった。それに動じてローゼ顔を上げる。

 

「僕は君の仇を調べてね・・・分かったんだよ、ついに・・・」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

それを聞き、ベルはヘルメスの肩をつかむ。

 

「誰だ・・・どこのどいつだ!!」

 

「落ち着けベル君・・・今話す」

 

そう言ってベルを落ち着かせ椅子に座らせる。やがて一呼吸着きヘルメスは口を開いた。

 

「アストレア・ファミリア・・・オラリオにいる・・・正義と呼ばれているファミリア・・・それが君の仇だ」

 

「アストレア・ファミリア・・・覚えたぞ!!」

 

そうしてベルの目は段々と黒く染まっていく。仇を取る・・・皆殺しにする・・・ベルの目にはそれしかなかった。

 

「ベル君・・・君はこの戦争に参戦するかい?」

 

ヘルメスがベルに問いかける。恐らく覚悟を確かめたいのだろう。ベルの答えは一つだった。

 

「ああ、もちろんだ!!」

 

そうしてヘルメスはにやりと笑いベルの頭を撫でた。

 

「良かった・・・大丈夫そうだ」

 

そう言ってヘルメスは去る。

 

ベルはアストレア・ファミリアに復讐を誓うのだった・・・それをローゼはただ見ているだけだった。

 




はい、今回はここまでです。次回はマリウスととある貴族との会話と謎の何かが登場です。お楽しみに!


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Chaptear21悪夢

こんにちは、今回は他作品のキャラが出てきます。そうしてベルは・・・


気が付けば僕は暗闇の中にいた。冷たく恐ろしく村を思い出させる。そして・・・

 

「アガァ・・・・・・・ッ!」

 

「ローゼ!!」

 

そこには今でも鮮明に覚えている、アストレアファミリアの女達がローゼを囲っていたのだ。そうしてローゼにむかって残虐非道な行為をしていた。

 

「ローゼェ!!」

 

「ベ・・・ル・・・逃げ・・・て」

 

「ローゼェエエエエ!!」

 

僕は急いでローゼの元にかけもむが女達によってそれは遮られる。

 

「ガハァ!!」

 

僕は黒い極東風の女により身体を蹴られる。その顔に僕は吐き気が出そうなくらいに笑っていた。

 

「くっそおオオオオオオ!!」

 

僕はアルミノ兄ちゃんからもらった剣で対抗するもそれはあっさり弾かれ終わってしまう。そうして僕をあざ笑うかのように刃を突き立てる。しかし何やら僕のことを何やらまじまじと見つめていた。ふと、極東の女が僕の身体の上に乗る。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

この後の展開なんて分かる。男女の立場が逆転しているがコレはお爺ちゃんが読んでくれた英雄譚で胸くそ悪い展開になることが目に見えていた。

 

「止めろ・・・クソ!!」

 

何とかどかそうにも力の差がありすぎてそのまま押し倒される。次第に服が乱れてきた。

 

「ベ・・・ル・・・」

 

「ローゼ!!・・・クソ!どけ、どけ!!」

 

ローゼの声が聞こえる。急ごうにも、力の差があるため動けない。ふと、女の後ろからローゼが見える。それは・・・

 

「あ・・・」

 

血にまみれたローゼだった。やがて、ピンク色の髪の小人族に心臓を一突きされ、ローゼは絶命する。

 

「あ・・・アアア・・・よくも・・・よくもおおおオオオオオオオ!!」

 

そうして反撃しようともするが、そのまま押し倒され段々顔が近づいてくる。

 

そして水音と共に僕の意識は落ちたのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ここは」

 

ふと、僕はまた暗い空間にいた。辺りを見渡しても闇は深く、走っても出口はない。疲れて倒れ込んだ後、一条の光が現れる。赤く毒々しい光だった。ふと、黒い影が現れる。大きく、三つの頭を持つ竜のようだった。

 

「起きたか・・・良い夢を見たようだな」

 

僕はそれに腹が立ち、睨み付ける。良い夢なわけあるか・・・愛する人を仇に惨めに殺され、僕はそれを見ている事しか出来ず、挙げ句の果てには犯された。(口づけらへんで終わったが)何処が良い夢だ。確かに普通の男なら喜ぶかも知れない。だが僕はそんな単純な男ではない。この身体はローゼのものだ。他の女に渡す気なんて毛頭ない。そう思い僕は睨み付け、影を見つめる。

 

「そうか・・・貴様我が力を共にする覚悟はあるか・・・」

 

「それで何になる・・・」

 

僕は怒りにまかせて声を出した。しかし影は何も動じず淡々と口を開く。

 

「あの未来を回避することが出来るぞ」

 

「・・・・・・・ッ!分かった、その力をよこせ!!」

 

僕はアレが夢ではなく未来に起こることだと悟ると、いてもたってもいられなくなった。すぐに僕は影に手を伸ばす。

 

「ローゼは殺させない、殺させてたまるか・・・絶対に・・・ローゼを殺すヤツは僕が裁く、それが正義であっても何であろうとも、そのためになら悪魔にもなってやる!!」

 

そうして僕は竜の影を見つめる。竜は僕を見て何やら笑っているようだった。

 

「ククク、良いだろう。我が相棒よ、契約だ」

 

そうして僕は手を伸ばす。赤い光が手に集まり、僕の身体に入る。やがて僕の胸の中に赤い光が照らす。

 

(我は来るべき日に覚醒する・・・その時まで・・・待っているぞ)

 

そうして僕の意識は途切れた。

 

 

 

目が覚めると僕はローゼの腕の中にいた。彼女の温もりが僕を安心してくれる。

 

昨日の夜は不安の中、僕達は互いを求め合っていた。今日は、ヘルメス様が言っていたアレの使い方を教えてくれる人たちが来るようだ。それを思い出して起き上がろうとするもやはり温もりにはかなわなかった。

 

「ローゼ・・・暖かい」

 

僕はそう言ってローゼの身体にうずくまる。

 

「ン・・・ベル?」

 

「ローゼ・・・」

 

ローゼも起きたようだ。ローゼは僕のことをジーと見つめる。暫くして僕が起き上がろうとすると・・・

 

「ン・・・」

 

「ムグゥ・・・ウウウ」

 

何時ものようにキスされた。僕は少し暴れながらも受け入れる。コレがもう日課のような物だった。

 

「おはよう、ベル・・・朝のチューだよ」

 

「フフ、いつも通りだね」

 

そう言ってローゼは僕を押し倒す。そうして再度キスをする。銀色の糸が僕達をつないだ。

 

こうして僕達はまた深い海に沈むんだ。深く、逃れられない深さ。でも、なぜか悪い気がしない・・・だってこの海は君がくれたんだから・・・それなら、溺れて良い。いや、溺れたい・・・これから先もずっと・・・ずーっと・・・

 

「ローゼ・・・」

 

「ん、な~に?」

 

「愛してる・・・」

 

「・・・・・・私もだよ」

 

そうして僕達は再び求め合う。

 

この何気ない日々を僕は守る・・・ローゼを絶対に殺させはしない、壊させたりしない・・・絶対に・・・絶対に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、

 

ぜーったいに・・・守ってあげるからね・・・

 

 

 

ソノタメニナラダレデアロウトコワスカラ・・・・

 

ベルside end

 

???視点

 

ローゼとベルが起き上がったところ何やら城の中が大きな声で鳴り響いていた。

 

「どうしたんですか?アレス様」

 

ベルは思わずアレスに問いかける。

 

「ああ、もう来たんだといってな・・・迎える準備をしなくてはと思ったんだが早くてな・・・そろそろ出来る頃だから彼女たちに会ってくれ・・・」

 

そうしてベル達はため息をつきながら奥の扉に進む。少し豪華な扉がたっておりベルは圧倒されながらも扉を軽く三回ノックする。

 

「入ります・・・」

 

「どうぞ・・・」

 

何やら男の声が聞こえた。30代くらいの男性だろうか、他にも女性や男性の声が大量に聞こえる。僕達は少し緊張しながらも扉を開けるのだった。

 

「失礼します・・・え?!」

 

ベルの驚嘆の声が部屋から響いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど・・・それで私が呼ばれたのか・・・」

 

「はい、どうか力を貸してくれないでしょうか?無理を承知なのは分かります。ですが私には小さな女の子を見捨てられません」

 

マリウスはとある館に来ていた。豪華な内装に、大量の家具、そして様々な絵が飾られていた。

 

「・・・私は昔、虐げられていた民族の一人だった。世界から嫌われ、憎まれ、辛い経験がある同胞を何度も見てきた・・・だが私は名誉ある貴族でそれから逃れた。言うなればそれで同胞の根絶まで願ってしまったのだから・・・だが、気持ちは分かる。彼女も生まれてきたのだから」

 

そう言って金髪の男はコーヒーを飲みながら悲しそうな目をする。茶菓子をつまみ後悔の言葉がただ彼の口から出ていた。

 

「彼女は・・・彼女たちは生まれることを望まれていなかった・・・そう思っているはずだ。でも生まれてしまってはやはり死にたくはない。それは、私にも痛いほど分かる」

 

「じゃあ・・・」

 

「ああ、協力しよう・・・彼女たちが生まれてきたのを望まれるように、そのために・・・」

 

そうして金髪の男はマリウスに手を差し伸べる。

 

「感謝する・・・共に頑張ろう・・・彼女たちのために」

 

「ああ、私も彼女たちのために戦うよ。我が友、マリウス・ウィクトリクス・ラキア!」

 

「そうだな、彼女たちを救う為にも戦おう、我が親友、ヴィリー・タイバー!」

 

こうしてマリウスと前世の記憶を持つ男、ヴィリー・タイバーは夕日の中、固く手を握るのだった。

 




はい、今回はここまでです。進撃の巨人よりヴィリー・タイバーが出ました。次回はオラリオについてもかきます。そして、アレの正体は何なのか予想してください。それでは次回もお楽しみに!


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Chaptear22宣戦布告

こんにちは、今回はオラリオのこともかきます。そしてついに戦いの火蓋が・・・


ここはオラリオ、世界で唯一ダンジョンがあり冒険者と神があふれる街だ。ここには金、名誉、出会い、全てが手に入るとされている。この街では実力者が多いため英雄が生まれるとされている。この街ではそれぞれ四つのファミリアが代表されている。

 

一つは道化の神、ロキ・ファミリア。

 

二つ目は美の女神の寵愛の為に動くフレイヤ・ファミリア。

 

三つ目は象の神でありオラリオを守る、ガネーシャ・ファミリア。

 

そして正義をまつわるファミリア、アストレア・ファミリア。

 

現在このファミリアがオラリオを代表する四大派閥だ。幹部にはレベル6が複数いる。しかもフレイヤ・ファミリアには唯一のレベル7『猛者』のオッタルがいる。都市の強さはこの世界で最強と言ったところだろう。

 

ファミリアとは神の眷属であり家族とされている。背中に『神の血(イコル)』を垂らすことにより『恩恵』というものが手に入る。

 

ファミリアにはランクがあり、Dとなるとギルドから『遠征』の義務が課される。

 

『遠征』・・・ダンジョンの攻略階層を増やすためにギルドが出している強制任務だ。

 

ダンジョンは謎が多く、未開拓な場所は多くある。奥に進むにつれて広くもなり、モンスターも強くなるのだ。現在は58階層までである。

 

恩恵とは地上で神が地上に降りた時、使うことが許された少ない神の力だ。

 

恩恵によりその人間の身体能力は莫大に上がる。それにより人間は初めてダンジョンに潜れるのだ。

 

そして恩恵には、恩恵ならではの差が存在する。それがステイタスだ。

 

ステイタスはレベルと力、耐久、器用、魔力、俊敏等のアビリティとそれと同時に

『剣士』や『鍛冶師』、『耐異常』などの発展アビリティ、スキルだ。

 

特にレベルは重要だ。コレに一つでも差があれば、特別なスキルでもない限り勝てるのはほぼ不可能と言われている。大体の冒険者はレベル1から始まる。レベルを上げるには単にモンスターを倒すのではなく何か、偉業と呼ばれるほどの冒険をしなければならなくなる。

 

そしてランクアップした者にはそれぞれ二つ名が与えられる。『神会(デナトゥス)』という者が存在しそれぞれ神が話しあい決めるものだ。しかし大半の神は娯楽に飢えておりろくでもない二つ名が与えられる。主にイタい名前で・・・

 

とまぁ、そんなこともあってかオラリオは今日も冒険者がダンジョンを攻略する日々が続いている。そんな中ダンジョンから会話が聞こえた・・

 

「アイズ~遠征終わったね・・・」

 

「うん・・・正直今回はどうなることかと思っていたけど・・・」

 

「何がともあれ、犠牲者は出ずにすんだから大丈夫じゃない?」

 

ダンジョンの一階層、ここではとある集団が

 

彼女はアイズ・ヴァレンシュタイン、レベル5であり『剣姫』という二つ名を持っているロキ・ファミリアの幹部だ。金色の髪と瞳を持ち美しい容姿に他の男性冒険者から好かれる、アイドルのような存在だ。

 

そこに隣で友達のように接しているのは同じくロキファミリアの幹部のレベル5で、『大切断(アマゾン)』の二つ名を持っているティオナ・ヒュリテ、彼女はアマゾネスだが特徴的な恋愛には興味はなく胸の大きさもそこまでない。

 

その姉でティオナとは対照的な体格を持ち同じくレベル5の『怒龍(ヨルムガント)』の二つ名を持つ尼アゾネス

 

「アイズさん、今日もまた美しい・・・」

 

アイズ達の後ろで少しソッチの気を出しているエルフはロキファミリア準幹部でありレベル3で『千の妖精(サウザンド・エルフ)』という二つ名を持っているレフィーヤ・ヴィリディス。入った頃からアイズには姉として憧れを抱いている。

 

「ベートさん、荷物持ちますよ」

 

「イヤ、いい。雑魚がこんなもの持てるわけないだろ」

 

少し気性が荒ぶっており、鋭い目つきの狼人はロキファミリアの幹部でありレベル5で『凶浪(ヴァナルガンド)』と呼ばれているベート・ローガ。それに何やら恋心を抱いているのはヒューマンであり、眼鏡をかけている長髪な女性リーネ・アルシェ。彼女は『道化の侍者(ロコライト)』と言う二つ名を有しており遠征でサポーターをしている。

 

ベートはよく弱者を罵っては雑魚と言う。そのせいで周りの冒険者から忌み嫌われており人望もない。

 

しかしそれは彼の優しさである事に気が付いたリーネは彼に恋心を抱くようになったのだ。彼女は今、ベートに必死に追いつけるように努力をしている。

 

「全く、今回は想定外だった・・・」

 

「精霊とはのぅ・・・」

 

「ともかく戻ったらギルドに報告だ・・・ロキにも説明しておこう」

 

そうしてそれぞれ、ドワーフ、ハイエルフ、小人族の三人が話しあっていた。この三人はロキ・ファミリアが開設された後すぐ入り、今ではレベル6の幹部である三人組である。左から順に『重傑(エルガルム)』のガレス・ランドロック、ロキ・ファミリアの副団長であり『九魔姫(ナイン・ヘル)』のリヴェリア・リヨス・アールヴ・・・そして団長で『勇者』と呼ばれているフィン・ディムナである。

 

ロキ・ファミリアは遠征がありここでは省くとするがダンジョンで異常事態が発生したため遠征は失敗に終わった。今は地上に帰る事になっているが正直冒険者達は疲労がたまっていた。

 

「そう言えば、リヴェラの噂でまたラキアが戦争しかけてくるらしいっすよ」

 

「懲りない連中だね・・・あそこレベル3までしかいないでしょ」

 

「アレスってかなり脳筋だからねぇ・・・」

 

ヒューマンと猫人、エルフのレベル4でロキ・ファミリア準幹部の冒険者、順に『超凡夫(ハイ・ノービス)』ラウル・ノード、『貴猫(アルシャー)』アナキティ・オータム、『純潔の園(エルリーフ)』アリシア・フォレストライトはが遠征の帰還中、少し気が抜けたように会話する。

 

ラキア王国はオラリオに度々戦争を仕掛けているが犠牲者は出ていないものの(ロキ曰く、こんな戦争ごっこに子ども達の手を汚したくはないらしい)どれも負け続きでオラリオでも呆れられている。

 

「でもなんか最近ラキア王国、謎の取引しているようだって噂が後を絶たないッすね」

 

「最近は『エルディア人』って言われる種族が生まれたって聞いたし、本当なんなんでしょうね」

 

「いずれにしろどうせまた勝つでしょ」

 

そう言って3人もため息をつく。正直遠征続きで疲れているため正直面倒くさいのである。

 

「まぁそれについては後で話しましょう・・・今は帰ることが優先だわ」

 

そう言って3人は笑みを浮かべながら頷く。それは他の皆も同じであった。このファミリアは基本誰でも受け入れそして人も大体はいい。何時もロキ中心に馬鹿やって楽しく幸せな毎日を送っていた。

 

「アキ・・・」

 

「ん?どうしたのよ、ラウル」

 

「俺、このファミリアにはいれて良かった」

 

「・・・私もよ」

 

そうして彼らは地上に帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、ヘルメスよ・・・本当に実現できるのか?」

 

暗い空間で、数人の人間とヘルメスを含む3人の、神が話し合いをしていた。1人はオラリオの治安を守るファミリアの主神、ガネーシャ。もう1人はギルドを仕切る大神ウラノスである。傍にいるのはガネーシャファミリアの団長であり、レベル6で『象神の杖(アンクーシャ)』の名を持つ、シャクティ・ヴァルマ。

 

もう一人は副団長でありシャクティの妹である、アーディ・ヴァルナである。それと同時に複数のガネーシャ・ファミリアの幹部、異端児の存在を知っている者達の集まりだった。

 

「本当に異端児(ゼノス)との共存が実現できると・・・」

 

「ああ、そのためにウラノス・・・鏡の使用を許可して欲しい」

 

ヘルメスは少し間を開けつつウラノスに懇願する。それにウラノスは頭を悩ませていた。

 

「ヘルメス・・・貴様には世話になってはいる。しかし鏡など、戦争遊戯に使われているものが何の役に立つ」

 

ギリギリ女性の声を出しているが声にエコーが入っているのか、性別が分からずフードを被っている魔道士、フェルズはヘルメスを睨めつけるように問いかける

 

「ある人の演説さ、その人の演説は魅了みたいに人々を心酔するように彼を支持するんだ、ああ大丈夫、実際反発する人もいるから決して魅了のように洗脳するわけじゃないよ。ただその人の実力ならきっと大半の人間を納得させられるさ」

 

そう言ってヘルメスは笑みを浮かべウラノスを見る。

 

「ヘルメスよ、我々は確かに異端児(ゼノス)との共存は望んでいる。しかし、それはもっとゆっくりやるべきではないか?急にそんなことをすれば民衆に混乱が生じるのでは・・・」

 

「何時までそうして問題を後回しにするつもりだい?」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ガネーシャの言葉にヘルメスが反論すると全員が黙り込む。ヘルメスは再び口を開いた。

 

「君たちはいつだってそうだ。何時も何時も、共存を目指し怪物祭をやってモンスターに少しでも執着を持たせようとした。だが、実際はどうだ?民衆はそれをただ楽しみ、娯楽でしか見てない。君たちがやっていることは無駄だよ。イケロス・ファミリアのアジトが分からない状況がその証拠さ・・・むしろいざ異端児を目にすれば何するか分かったものじゃない、結局君たちは無能の集団さ」

 

「貴様・・・ッ!」

 

「お姉ちゃん!」

 

シャクティはヘルメスにつっかかろうとするがアーディが止める。

 

「・・・だからウラノス、ここは彼に賭ける価値はあると思うよ」

 

そう言ってヘルメスはウラノスの目を見つめる。そうしてウラノスはヘルメスに対して少し目を見つめたが暫くしてウラノスは目をつぶる。そして・・・

 

「分かった・・・許可しよう」

 

「ありがとう・・・感謝するよ、ウラノス」

 

しかしウラノスは知らない。この先オラリオにどんな未来が待っているのかを・・・この時はまだ知らなかった・・・

 

一方ラキア王国ではベルが来てから2年・・・宮殿でパーティーが開かれていた。広く黄金の壁が立ち並び大きなシャンデリアの中、音楽と共にダンスを楽しんでいる神と貴族、そして一般市民が集まる。

 

「まさかアレスがこんなものを用意してくれるなんてナ」

 

「ああ、しかも一般市民も参加させるとは・・・今回は何を企んでいるのか」

 

それぞれの神が小言を口にしている

 

そんな中ベル達は

 

「モグモグ・・・コレ美味しい!」

 

「はは、ローゼ・・・それは良かった」

 

「ぬぅん!!美味しいいいいいいいいい!!コレ作った人誰ですかぁ!!」

 

「サシャお姉ちゃん・・・(^_^;)」

 

少し間があるため料理を口にしていた。ベル達はパーティーの途中でサシャにも会い一緒に食べ物を回ることにしたのだ。サシャは当然のように食べ物を見つけるとすぐに飛びつき噛みつく。そうして食事を一気にほおばった。それにベル達は苦笑いする。

 

「おお、ベル!また大きくなったなぁ」

 

「アルミノ兄ちゃん!」

 

「私もいるよ」

 

「イシスお姉ちゃんまで・・・」

 

そうしていた途端ベルの村の同胞のアルミノ、イシスが酒を片手に持ちながら話しかけてきた。

 

「ちょっと!私を忘れているんじゃないでしょうね!!」

 

「先輩・・・少しはお酒を自重してください」

 

「アクア様・・・と貴方は・・・」

 

そこに酒瓶を持って少し顔が赤くなっているアクアとシスター服を着ていて少し顔に傷がある女性が隣で冷や汗をかきながらアクアと同行していた。

 

「私はアルカンレティアで統治している神、エリスです。貴方がベルさんで?」

 

「え、あっはい!!貴方がエリス様?」

 

ベルはエリスの容姿に少し懐かしさを感じる。エリスの服装はシスター服の為どこか母親のような感じがするのだ。

 

「話はアクア様から聞いています・・・辛かったんですね」

 

そう言ってエリスはベルを抱きしめる。母のような温もりがベルを優しく包み込む。

 

「ありがとうございます・・・もう、大丈夫ですから」

 

しかし、ベルはすぐにエリスを離す。エリスは少し戸惑っていたがイシスは何やら察したらしくエリスの肩を叩きローゼの方に向かせた。それは・・・

 

「ガリガリガリガリガリ」

 

「ア・・・なるほど」

 

どうやらエリスも察したらしい。最もベルはそれだけが理由じゃないが・・・

 

「にしても、アレスったらこんなパーティー開いてくれるなんて気前がいいわね」

 

アクアは酒を飲みべらべらと酔っ払いながらエリス達に訪ねる。ベル達は分かっているように目をそらした。

 

「ベル・・・?」

 

「イヤ・・・何でもない」

 

そう言ってベルは再び料理を口にする。サシャは別のところで料理をほおばっていた。それに二人組が流石に抑え何やら止めているようであった。

 

「ハァ・・・」

 

ベルは少しため息をつく。暫く宴が続いた。

 

「皆さん・・・今日はお集まりいただきありがとうございます」

 

しかし、本当の宴が幕を開ける。大きな扉が開き中から金髪で長身的な男で、少しひげが生えていて水色の服を着たヴィリー・タイバーが姿を現した。

 

「アレって、ヴィリー・タイバーだよな?!」

 

「どうしてここに?!」

 

突然の大物人物に客達は戸惑いを隠せなかった。辺りがざわつき始める。

 

 

一方オラリオでも・・・

 

「なんや?急に鏡が出始めたで?!」

 

「本当だ・・・」

 

「彼奴は・・・誰だ?」

 

突如、オラリオの上空に鏡が現れ始める。紅の短髪に細目の女の神、ロキも驚嘆の表情が現れる。同行していたラウルとアキもそれを見て驚きを隠せないでいた。それはオラリオ上空だけではない・・・

 

「何?!」

 

「鏡が・・・戦争遊戯でもないのに!」

 

ギルドでも同じようなことが起きていた。受付嬢のエルフ、エイナ・チュールとピンク色の髪をした小柄のヒューマン、ミイシャ・フロットも驚きの声が漏れる。ギルド中にざわつき始めた。

 

「なんなんにゃー!鏡がぁ!!」

 

「どうしたんだい?!って彼奴は・・・ヴィリー・タイバー?!」

 

「ミア母さん・・・知っているの?!」

 

豊穣の女主人でも同じようなことが起きていた。アーニャ・フローメルが騒いでいるところ店員のシル・フローヴァは店主のミア・グラントの言葉に驚きと疑問の声を上げる。

 

「少し前、会ったことがあってね。チラッとだがな。7年前急成長した貴族だよ」

 

「そんな人が何で鏡に?!」

 

同じく店員のクロエ・ロロも戸惑いを隠せない様子だった。その点に関してはミアも分からない様子だった。

 

「今回の話を進める前に、少し私の昔話をさせてください」

 

そうして辺りがシンと静まる。オラリオでもヴィリー・タイバーの演説に少し興味があったのか聞いてみることにした。

 

「私は、『転生者』と呼ばれる者です。神ならこの事を分かると思います。そこで私は以前こことはまた違う世界でタイバー家に生まれ、そしてやがてとある事があって私は死に妹と共にこの世界でまた生まれました」

 

「転生者やて・・・?」

 

「ロキ・・・どういうことッスか?」

 

「転生者は異世界で死んでここに来たとされている人間のことや・・・普通は記憶がないんやが・・・まさかあるなんてなぁ」

 

そうしてロキは驚嘆の声を上げるもどこか興味がありそうだった。パーティ会場でも神達の驚きが隠せなかった。

 

「私は、同じく死んだ妹と共に再びタイバー家を立ち上げました。そして7年、私はこの舞台に立ちました」

 

そうしてヴィリーは少し間を開け再び口を開く。後ろにはヴィリー・タイバーの人生を暗示している役者がいた。

 

「前世の私の民族は虐げられていた民族でした。世界中から嫌われ、収容区から出れば石を投げられ、家畜のように扱われていました。しかし、私は歴代の当主の戦績のお陰でそれは免れていました。私はそれを虐げる民族になれ変わり最終的には同胞の根絶を願ったほどです。それは今でも後悔しています」

 

そうしてヴィリーは後悔の表情が見える。それに感化されたのかパーティ会場には涙ぐんでいる者もいた。

 

「そして私はずっと思い悩んでいました。本当にすべきことは何だろうと・・・正しいのは何なのか・・・それはこの世界で生まれ変わってからもです。そして、私は今日、ついに見つけました!!」

 

「何だ・・・?」

 

そうして辺りがざわつき始める。その途端、後ろの扉が開き始めた。そこには・・・

 

「モンスター!?」

 

「おいおい、嘘だろう?」

 

セレンがドレスを着た状態で姿を現した。歌人鳥の特徴を残しながらも彼女の美貌が全員に集中する。

 

「彼女は異端児と呼ばれる種族で我々と同じく知性があり、笑ったり泣いたり、時に怒ったり・・・人間と全く変わらない小さな女の子です。ここ最近、貴族との間でこの子の同胞が今日も悲鳴を上げています」

 

そうしてパーティー会場は戸惑いの声が上がる。しかしヴィリー・タイバーは続けた。

 

「そして、それはオラリオが知っていてあえて黙秘している状況にあります!!」

 

「「「・・・・・・・ッ!」」」

 

「私は確かにこの世界を知ってモンスターの根絶を願いました。しかし、彼女のような小さな少女が、人間と同じ気持ちを持つ少女がオラリオによって虐げられている!!」

 

パーティー会場中ざわつき声が次々と現れる。オラリオでも驚きの声が上がっていた。

 

「モンスターと言うだけで、オラリオの冒険者は一人の少女、そして子ども達を無残に殺していく!!この子はもう一人の私達のようです。世界から生まれることを望まれなかった存在と思ってしまっている哀れな心を持っている。そんな彼らに、私は生まれてきたことを望まれたと言うことを教えてあげたい!!彼らは生きていてもいいんだと思えるようになってもらいたい!!そのために、どうか力を貸して欲しい!!どうか彼女の同胞を、異端児を、子ども達を、オラリオから救って欲しい!!そのために力を合わせてオラリオと戦って欲しい!!」

 

そうしてヴィリー・タイバーは涙を流す。それに動じてパーティーにいる者全てが感動したのか拍手を送る。そうしてヴィリー・タイバーは手を広げ今まで以上に壮大な声で宣言した。

 

「私、ヴィリー・タイバーはラキア王国代表としてここに宣言します!!」

 

そうして会場が盛り上がり始める。ヴィリーはそれを見込んだかのように高らかに声を上げた。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラリオ勢力に、宣戦布告を!!」

 

「「「オオオオ!!」」」」

 

会場はここで一気に大盛り上がりを見せた。

 

「俺も参戦するぞ!!」

 

「俺もだ!!」

 

こうしてラキア王国含む連合軍がここに集結しオラリオに宣戦布告をするのだった。

 




はい、今回はここまでです。次回はオラリオ編がスタートします。それではまた次回お楽しみに!!


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Chaptear23混乱

こんにちは、今回は開戦前をかきました。それではどうぞ!


「オイオイ、こりゃあどういうことだ?」

 

「分からねぇがラキア王国が・・・宣戦布告をしたってか?」

 

オラリオでは戸惑いの声が相次いで聞こえた。突然鏡が出たと思いきやラキア王国がオラリオに宣戦布告をしてきたからだ。ラキア王国とは戦争していたとはいえ、ここまで派手にやることもなかった為住民達は戸惑いを隠せない。

 

「アレス、とうとう気が狂っちまったのか?」

 

「確かに・・・と言うかあのモンスター何?演出?」

 

「にしてはリアルだったな・・・アレは本当なのか?」

 

住人達は次々アレスへの陰口を口にする。誰もオラリオの勝利を確信しているからだ。しかし神達は更なる戸惑いを見せた。

 

「アレがモンスターって・・・」

 

「ああ、本物だったな」

 

神が地上で許された力の一つ、人間の嘘を見抜く力。コレにより神は人間が嘘をついているか分かるため嘘ではないことが分かる。

 

「ロキ・・・アレって」

 

「ああ、本物のモンスターや・・・恐らく異端児って言うのも本当やろ」

 

そう言ってロキは顔を曇らせる。それはロキファミリアの全員が同じだった。

 

「何よ・・・アレ、まるで私達が悪者みたいじゃない」

 

「勝手に判断しやがって・・・ふざけるな!」

 

ほとんどの冒険者がラキア王国に怒りを見せていた。それは他の冒険者だって同じだ。異端児の存在は一部のファミリア以外知られていない。更にモンスターは人類の敵と言う概念が存在し、ラキア王国が言ったことは悪その者であると踏んでいるからだ。

 

「ともかく明日緊急の神会もあるだろう・・・当然、後で会議は開くがフィン・・・お前はどう思う」

 

リヴェリアは演説を聴いた後、少し悪態をつきながらフィンに問いかけた。フィンは机に肘を置き両手のこうを顔に置きながら口を開く。

 

「正直・・・コレは僕も想定外だ。驚きが隠せないよ」

 

「ああ、まさかこのタイミングで宣戦布告じゃからのぉ」

 

それぞれ、威圧感がある雰囲気が辺りに漂う。常人であればすぐ逃げ出したいところだ。それは気にしないのかフィン達は話を進めた。

 

「ともかく、また防衛戦か?」

 

「ああ、何時もならそうするだろう・・・だが今回は少し妙だ」

 

「アレスがただ脳筋なだけじゃないの?」

 

ティオナは少し怒りがこもりながらも落ち着いて話を進めていた。それにアイズは険しい顔つきをしていた。

 

「アイズさん・・・」

 

「何時もの事よ・・・まぁ私達もモンスターは恨んでいるからねぇ」

 

オラリオではほぼ毎日ダンジョンを攻略するため当然、モンスターによる犠牲者が出るのは日常茶飯事だ。それにより両親を失い孤児になる子どもも多い。オラリオではモンスターは憎しみの的でしかなかった。それは誰だって同じだ。モンスターの共存なんて彼らは死んでもごめんだろう。

 

「でも・・・その異端児(ゼノス)って人たちと話しあうことが出来たらこの戦争もなくなるのかな?」

 

しかしそこにとある男の声が聞こえる。全員にその男に視線が集まった。

 

「マルコ・・・君は自分が何言っているのか分かっているの?」

 

アイズは鋭い視線で黒髪の男、マルコ・ポッドに話しかける。

 

マルコ・ポッドは7年前、ロキ・ファミリアに入り以来レベル4の第二級冒険者になった人物の一人である。周りの人間からは優しく好印象であり人気者だ。二つ名はかつて兵士の経験があることから『天使兵』となっている。もう、まんまだ。

 

「もちろん、モンスターを恨むのは分かっているよ・・・でも、話し合えるなら話し合った方がいいんじゃないかなって」

 

「マルコ・・・君が無駄な争いをしたくない気持ちは分かる。だが、人間とモンスターの共存は不可能だ。モンスターは絶対悪。それがこの世界の全てさ。共存などそれは単なる御伽噺にすぎないんだよ」

 

「でも・・・」と言ってもマルコが何やら言おうとしてもそう言ってフィンはマルコを冷たくあしらう。いくら人望があってもこの事に関しては皆フォロー出来ない状況であった。それと同時にティオネがこれ以上反論するなと圧をかけてくる。マルコは反論しようにも周りのせいで反論出来なくなっていた。やがて作戦のための会議が開かれようとしていた

 

(なんで皆・・・そんなに急ぐんだよ・・・)

 

会議の中マルコはただそう思い拳を握りしめあの時を思い出すのだった・・・

 

一方、ギルドのとある空間。ここでガネーシャ、ウラノス、フェルズ、シャクティ、アーディ達が一斉に集まりだし怒りと驚きの声を上げながら話しあっていた。

 

「クソ・・・ッ!どういうつもりだ、ヘルメス!!」

 

「まさか、こんなことになるなんて・・・」

 

突如、オラリオに宣戦布告が出てきたことに全員に怒りが生じる。もちろん、宣戦布告が出た途端ヘルメスを探したが既に逃げられていた様子だった。

 

「ヘルメス・ファミリアはラキア王国の内通者だったのか・・・」

 

徐々にそのことが明らかになりシャクティは怒りのあまり拳を握りしめ壁に当てる。それにアーディも不安に襲われた。

 

「ともかく、全ファミリアに対しすぐに強制任務を出しましょう」

 

「ああ、オラリオを守り抜くための盾とならなければ」

 

そうしてウラノスはフェルズに強制任務を出すように指示する。それによりシャクティ達もそれぞれ団員達に呼びかけたのだった。

 

一方ここは『星屑の館』・・・アストレア・ファミリアのホームである。こちらも先ほどの宣戦布告により準備が進められていた。

 

「まさかまたラキア王国が仕掛けてくるなんてな」

 

「今度は何を企んでいるでしょうね」

 

そうしてアストレア・ファミリアの幹部と一人の栗色の髪をした小人族、リリルカ・アーデは突然の事に驚きは隠せなかったがすぐに冷静に対処してこれからの方針を決める。

 

リリルカ・アーデは以前ソーマ・ファミリアにより環境が劣悪で仕方なく悪事を働いていたが、アストレア・ファミリアから助けてもらい恩返しをするためアストレア・ファミリアに入りサポーターをしている。頭脳が高く時々指揮官もやっているのだ。

 

「とにかく、防衛戦は私達も参戦ですね・・・皆も回復しているし」

 

「全く、少しはマシになった途端コレか」

 

あれからカウンセリングをして徐々に精神も回復していきアストレア・ファミリアの団員達は戦えるようになったらしい。しかし時々罪悪感で吐くことが多々ある。それにはディアンケヒト・ファミリアも苦労しているらしい。

 

「にしても・・・何であんな風に派手にやったんでしょうか・・・」

 

「分からん・・・だが、何やら企んでいるように見えた」

 

「今回は・・・なんか何時もより違う気がするぜ」

 

星屑の館にも不穏な空気がなだれ込んでいたのだった。

 

 

 

「オーライ、オーライ」

 

一方こちらはとある港、ここでラキア王国側はとある準備をしていた。大きな歓声が辺りに響く。

 

「とりあえず、これでいいかな?」

 

「何とか二年間で終わらせましたが・・・正直、大丈夫でしょうか?」

 

アスフィ達率いるヘルメス・ファミリアも協力してある物を運び出している。少しして作業が終わりヘルメス達は休憩を取っていた。

 

「ああ、彼らならきっとオラリオを打ち負かすだろうさ・・・」

 

「だとしても少し戦力が足りない気が・・・」

 

そうしてアスフィはヘルメスを見る。その様子にアスフィはゾッとした。

 

「もうすぐだ・・・もうすぐ・・・もう少しで目覚める」

 

何やら狂信的に崇めているような雰囲気を出していたのだ。その目は、狂っているような目で恐怖を煽るような目つきだった。

 

「ヘルメス様・・・」

 

「ん?なんだい?」

 

「・・・いえ、何でもありません」

 

アスフィは見たことにせずそのままスルーすることにした。しかし、ヘルメスの様子にアスフィは忘れられないようだった。

 

(ヘルメス様は、何を企んでいるのでしょうか・・・)

 

アスフィは流れゆく作業の中そう思うのだった。

 

 

やがて二ヶ月が経った。オラリオではラキアが攻めてきたという報告がなく現在はそれぞれ配置についており壁から見下ろしていた。

 

「あんだけ派手にしたのに全然来ねぇな・・・」

 

「やっぱ口だけじゃねぇか?」

 

しかし全く来ないからか他の団員達も次々と不満を口走っていた。それにロキファミリアの幹部達も来るが待てど待てど、ギルドからは何も報告させられていない。

 

「暇ねぇ・・・」

 

「ああ、最近、ダンジョン攻略は禁止されているからな・・・」

 

ラキア王国との戦争が起きた中、ギルドは強制任務を出し、一般人の避難、そして冒険者はオラリオを防衛をするようにと言われている。もちろん24時間態勢のため誰もダンジョンへは行けない。そんな中、複数の冒険者はいらだちを覚えていた。

 

「クソ・・・ギルドのせいでうまくダンジョンにいけねぇから商売まで出来ねぇじゃないか」

 

イケロス・ファミリア、ディックス・ペルディクスは悪態をつきながら小声で愚痴を言った。

 

イケロス・ファミリアは闇派閥(イヴィルス)とつながっており、異端児の密輸をしている張本人だ。本来ならこんなことしないのだがここで異端児の密輸経路がラキア王国にばれてしまえば自分の商売は影響しかねないため参戦することにしたのだ。

 

「ディックスの兄貴、落ち着け・・・ここで聞かれちまったら何もかもお終いだろうが」

 

そこにスキンヘッドで顔に入れ墨をいれている男、グランに諭されディックスは落ち着く。

 

「クソ・・・元はと言えば彼奴らがあの歌人鳥を逃がさなければこんなことにはならずにすんだのによ」

 

ディックスはそう言って槍を投げ、壁に刺す。それに驚いたのか他の団員達も怯え離れていった。

 

「まぁ、いざという時は俺たちで乗り込めればいい・・・そしてあのモンスターを狩れば終わりだ」

 

「・・・ああ、そうだな」

 

そう言ってディックスは落ち着き壁から槍を抜き城壁の下を眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備はいいか?神ヘルメスよ」

 

とある場所で一人の男がヘルメスに連絡する。ヘルメスが用意した魔道具により遠距離で話をつけている。

 

「ああ、問題ないさ・・・」

 

「ならいい、ともかくこちらも準備は整っている。後はアレを出すだけだ」

 

「ああ、まずは戦力をここで減らさないとね・・・正直、君の作戦は驚いたが、彼女達の反応からして大丈夫そうだね・・・作戦の成功を願うよ」

 

そう言ってヘルメスは通信を切る。遠くの丘でオラリオの様子をうかがっていた。やがて顔には狂気的な笑みを浮かべる。ヘルメスは誰にも聞こえないような場所で笑っていた。

 

「さぁ、始めようか・・・オラリオを舞台とした復活の儀式を!!」

 

誰もいない場所でヘルメスの笑い声は夜空の虚空に響いたのだった。

 

 

 

 

 




はい、今回はここまでです。次回は本格的に戦争が・・・そして次回あのキャラ達が・・・お楽しみに!


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Chaptear24襲撃

こんにちは、今回はついに開戦です。それでは、どうぞ!


 

宣戦布告から二ヶ月、オラリオは現在でも壁で防衛に努めていた。シャクティ達、ガネーシャ・ファミリア、輝夜達、アストレア・ファミリアが今も緊張の空間が流れている中、ロキファミリア含む殆どのファミリアはダンジョンに潜れないいらだちで怒りを貯めていた。

 

「ああ、もう!!いつになったら来るのよ!!」

 

ティオナがなかなか来ないことに怒りを見せる中、フィン・ディムナ達は何やら顔を曇らせていた。

 

「リヴェリア・・・マルコも、やはり気になるか?」

 

「ああ、おかしい・・・ここまで慎重なのは明らかに今までとは違う」

 

「うん、なんかイヤな予感がする」

 

そうしてリヴェリア達は壁の奥の方角を見つめる。壁には地平線が広がっており何もない様子がうかがわれる。リヴェリア達はこの状況に違和感を覚えながらも警戒を解かない。

 

「クソ!カサンドラを逃してからこの状況だ!!アポロン様を愚行しやがって許さんゾ!!」

 

アポロン・ファミリアの団長、レベル3であり『太陽の光寵童(ポエブス・アポロ)』ヒュアキントス・クリオは普段の冷静さを捨て怒り狂う。

 

「ハァ・・・いい加減諦めれば良かったのにな」

 

そこに『月桂の遁走者(ラウルス・フーガ)』の二つ名を持つレベル2の女冒険者、ダフネ・ラウロスはため息をつきながら呆れているようだった。

 

ダフネ・ラウロスはアポロンに見添えられ無理矢理入らされた人物の一人である。アポロンの行動に何時も恨みがでていた。今までアポロンに逃れた者はいない。しかし、今回初めてラキア王国によって逃がしてしまった。その後もレベルが自分より強いヤツがいると確信し逃げたのだがアポロンは怒り狂いなんとしても連れて来いと命令したがそれでも今日まで捕まえられない事になっていた。

 

「まぁいいや・・・どうせ勝つし」

 

そう言ってダフネも諦めていた様子だった。

 

「おい、早く来ないのかぁ~。男がよらないじゃないか~!!」

 

一方、ギョロギョロとした目に短い手足、しかし身体は大きヒキガエルと思わせる容姿のレベル5の冒険者で『男殺し(アンドロクトノス)』フリュネ・ジャミールは性欲に満足できずいらだちを覚えていた。

 

「たく・・・大人しくそのまま奥の部屋でじっとしてれば良いのに」

 

そこにレベル4のアマゾネスの冒険者『麗傑(アンティアネイラ)』アイシャ・ベルカはため息をつきフリュネを見る。アイシャはそのまま壁の外を見つめるが何もない。

 

「速く終わらせて男を食いたい!!」

 

フリュネはそう大声で叫ぶ。イシュタル・ファミリアの団員達は呆れるが同調の反応もあった。

 

「確かに、私も男が恋しいわ」

 

そう言って元気の良いアマゾネス、レナ・タリーはそうして愚痴をこぼす。

 

「終わった後とっ捕まえてみるか」

 

そこに白髪のアマゾネス、サミラもため息をついて壁の外を眺めていた。

 

「まぁ・・・すぐ終わるだろ・・・突っ込んできた途端返り討ちだ」

 

そう言って全員は同調するように頷いた。誰も、オラリオの勝利を疑わなかった。暇すぎてあくびをしていた冒険者もいた。宣戦布告が出されてもオラリオは平和であった。

 

何時も活気であふれているオラリオは今日も平和だった。こうしているのが一番だと誰もが願う。

 

ダンジョン攻略して、仲間と酒を飲み笑い合う。トラブルはあるものの誰もが憧れる街は平和であって欲しいと願う。そう思っていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変です!!」

 

突然、ガネーシャ・ファミリアの団員が城壁にやって来た。生きを荒げ、全員その団員達の視線は一気に集中する。

 

「何があった?!」

 

フィンは団員を落ち着かせ、話を聞く。しかし団員は冷や汗が止まらない。そうして団員は口を開く。

 

「ラキア王国が・・・ラキア王国が・・・」

 

「どうした、オラリオに攻めてきたのか?!」

 

周囲がざわつく。ようやく攻めてきたと思い全員すぐに準備し、いつでも戦闘するようにした。しかし、団員の口からは予想に反したことが口から出た。

 

「メレンが攻められ、占領されたようです!!」

 

「「「なっ・・・ッ!」」」

 

それに周囲は驚きを隠せなかった。急いでフィンは団員達を落ち着かせる。しかし、フィンも予想外の報告に親指をなめる。

 

「なぜメレンに・・・」

 

「分からん・・・だがイヤな予感がする」

 

フィン達は腕を組みながら状況を整理していた。

 

メレンはオラリオを出て最速で30分でつく港町であり魚介類や貿易などでオラリオを支えているのだ。ニョルズ・ファミリアがその中心にいるのだがニョルズはオラリオ側であったがオラリオ本拠地だと思いそこを叩くのだと思ったがその予想が覆された。

 

「オッシャアアア!!お前ら、ラキア王国をここで終わらせてやろうぜ!!!!」

 

「「オオオオオ!!」」

 

しかし、殆どの冒険者はストレスがたまっていたのかすぐにメレンへ向かう準備をする。

 

「まて、落ち着け!何か変だ!!」

 

「うるさいねぇ、勇者さんよ!!アタイ達はもう我慢できないんだ!!今からでもラキア王国をぶっ倒していつも通りのオラリオに戻りたいだろう!?」

 

「そうだ、我々もアポロン様が待っているぞ!!」

 

「俺も速くダンジョンに行かなきゃなんねぇだ!!邪魔すんじゃねぇ!!」

 

そう言ってディックス達はそれぞれの武器を持って門に出る。コレにロキファミリアは少し焦りを見せる。フィンの親指のかゆみが抑えられないのだ。コレは、何か強い敵が来る。フィンの勘だ。主に悪い方に当たってしまう。

 

「フィンさん、自分も行くっす」

 

「なっ・・・ッ!ラウル、貴方何を言っているのか分かっているの?!」

 

そうした中ラウルが突然メレンに行くと言いアキはラウルがメレンへ行くのに必死で止める。しかしラウルの意思は変わらなかった。

 

「大丈夫ッスよ・・・状況を伝えるための役割をするだけッすよ・・・それに俺のレベルなら一人で倒せるし・・・」

 

「でも・・・」

 

そう言ってアキは口ごもり顔をうつむかせる。

 

「やっぱり駄目!!行っちゃだめ!!今日は何かおかしいから・・・彼奴らにまかせよう」

 

そう言ってアキはラウルを止めようとした。実はと言うとラウルとアキは同期でありアキはラウルに思いを寄せているのだ。今回のラキアは何かがおかしい・・・そう思いアキはラウルを行かせたくなった。

 

しかし・・・

 

「やっぱり俺は行くっす・・・何も役に立てないんじゃ情けないっすから・・・」

 

そう言ってラウルは門に行きを出る準備をした。アキはそんな背中を見守るしかなかった。

 

「私も行く・・・」

 

しかしそれはラウルだけではなかった。ロキファミリアの団員、レベル3で『道化の魔書(ロモワール)』エルフィ・コレットがラウルに次いで言い出した。

 

「エルフィ・・・貴方まで・・・」

 

「要はラウルを守って欲しいって所でしょ?大丈夫、ちゃんと生きて返すよ。なんせ、私は「誰とでも仲良くなれる美少女かつムードメーカーで火炎魔法が得意な才媛」だからね!」

 

そう言って何時ものお調子者の性格を出す。そして自身の杖を持ち、オラリオを出て行ったのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐメレンにつくぞ・・・」

 

「ようやく終わるのか・・・長かったぜ・・・」

 

それぞれの冒険者はやれやれとラキア王国を愚痴っていた。コレが終わった後、絶対に賠償金を払ってもらおうと意気込んでいた。

 

「お・・・見えてきた」

 

やがてメレンの港が見えてきた。見た感じ何も変わっていないようだった

 

「ロキファミリア?なぜここに?!」

 

そこにニョルズがやって来た。それに全員驚いていたようだった。何事もなかったかのように振る舞っていたのだ。

 

「え・・・なんで」

 

「どうした?もう闇派閥と取引してないぞ?」

 

ニョルズは以前、自分の海を守るために闇派閥と取引していた。しかしだまされたことに気が付き闇派閥を倒すことに成功したのだ。

 

「あの・・・ラキア王国が攻めてきたと聞いたんですが・・・」

 

「ハァ・・・?そんなことないぞ?それにホラ、今日も漁は続いているぞ」

 

そう言って港に行き指を指す。船が大量に来て貿易等で港は賑わっていた。

 

「本当だ・・・」

 

「デマだったのか?」

 

「だったら誰がなんのために?」

 

そう言ってラウル達は頭を抱え、辺りを見回す。それと同時に全員がっかりしたような声が聞こえた。

 

「ハァ・・・」

 

「なんだよ・・・つまんねぇな」

 

「クソ!ようやく彼奴らを殺せると思ったのに」

 

そう言ってディックス達は座り込み石を投げる。ようやく、ラキアを潰せると思っていた冒険者はいらだちを隠せなかった。ニョルズは何やら戸惑っておりどうしようかと迷っていた。

 

その時だった・・・

 

 

 

 

 

 

「なんだ・・・アレ」

 

ラウルが何かを見つけた。大きな音が聞こえ、ゆっくりと何かが迫ってきた。

 

「船!?でも帆がついていない・・・しかも鉄?木じゃない」

 

現れたのは数隻の鉄で出来ていた船が現れた。通常、船は軽くするため木を使う。更に進むためには帆がいる。しかし、その船にはなかった。代わりに黒い煙がもくもくと炊き上がっている。ラウルは不思議に思いながらも双眼鏡で船の旗を見つめる。そこには・・・

 

「・・・・ラキア王国が来たぞ!!」

 

「・・・・・・・ッ!ようやくか!!ここで終わらせてやる!!」

 

「アポロン様のため、ここで散れ!!」

 

ラキア王国の旗だった。全員それを聞くと、武器を構え始めた。しかし海の上のため魔道士が必要である。全員それを理解し、魔道士達は配置についた。

 

だが突然の様子にラウル達は戸惑いを隠せない。

 

「船で来るなんて・・・なんのつもり?」

 

「でも・・・船で行くにはある程度近づいて弓で攻撃が必要っす。そうじゃなっきゃ殺せないっすからね・・・その前に倒せば・・・」

 

そうしてラウルも攻撃の準備をしていた。ようやく窮屈な時間が終わるのだとほとんどの団員達の気が抜けている中、準備が進められた。やがて魔道士達が配置につき終わり攻撃する・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」

 

「え・・・?」

 

しかしその瞬間、赤い液体がラウル達の顔についた。それと同時に何か轟音が聞こえた。ラウル達は急いで目の前を見る。

 

「何・・・?!」

 

その瞬間魔道士達の場所が爆発した。轟音と共に冒険者達の悲鳴が聞こえる。同時に冒険者の腕がラウルの足下に落ちた。

 

「・・・え・・・?」

 

突然の事にラウルは戸惑いを隠せなかった。ふと、ラウル達は船の方に目を向ける。複数の船が何か筒がこちらを向いていた。

 

「第三班、撃てぇ!!」

 

その瞬間筒から火が出たと思った瞬間、轟音が鳴り響く。それと同時に砂浜が爆発していった。

 

「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」

 

それと同時に砂浜に鉄の匂いが辺りに漂う。それと同時に赤い血が砂浜を染める。ラウル達は信じられない状態に膝をついていた。爆発音と共に血が飛び散り砂煙に混じれ赤い煙が宙に舞うのだった。

 

「何・・・コレ」

 

地獄の足音がすぐそこまで近づいてきたのだった・・・

 




はい、今回はここまでです。次回はあのキャラが・・・お楽しみに!!


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Chaptear25地獄

こんにちは、今回は地獄の戦闘です。実際にあった戦いをイメージしています。それでは、どうぞ!


青く美しい港町、メレン・・・ここでは漁業や貿易で毎日活気がある場所だ。オラリオから観光に来る者も多く毎日賑わっている。漁師の雄叫び。貿易での活性・・・観光客も良く訪れ、ダンジョンもないため毎日が平和であった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそれも唐突に終わりを告げる。

 

 

 

「「「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」

 

船から放たれる轟音と共に爆発が起き、冒険者の血が砂煙に混じりながら赤く染まる。それと同時に死体が打ち上げられた。

 

「何・・・アレ、魔道具?!」

 

「だとしてもこんなの見たことないよ!!」

 

見たこともない攻撃にラウル達は戸惑う。魔道具だとしても、コレはリヴェリアの魔法と同等の威力だった。

 

「撃てぇ!!」

 

船から聞こえる声共に再び轟音と共に砂浜に爆発が起きる。

 

「退避!退避ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

ラウルは全員に急いで撤退を促す。しかしその声も轟音にかき消され悲鳴が響く。

 

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

女にも容赦はなく悲鳴が響き魔道士達はほぼ全滅だった。唯一残ったのはエルフィくらいであった。

 

「逃げろ!オラリオに報告だ!!」

 

そう言って全員が退避する。しかし、船が徐々に砂浜に近づいてきた。やがて、船からボートが出てくる。それと同時に兵士が砂浜に上陸しようとしていた。

 

「クソ・・・ッ!『我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ!我が名はt・・・ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

アポロン・ファミリアの団長、ヒュアキントス・クリオは魔法を詠唱し撃退しようとするも轟音と共に悲鳴が聞こえた。気が付けば身体が二つに分かれていた。内臓が飛び出ており肉片も広がっていた。

 

「ヒュアキントス!・・・・ッ!」

 

ダフネがヒュアキントス・クリオを見て舌打ちする。ダフネは逃げようとした。もう上陸することはもうわかりきっていたことだった。

 

「すすめぇ!!」

 

「クソ・・・上陸された。撃退しろ!!」

 

そうしてオラリオ勢力は剣を抜きラキア連合に反撃する。しかし・・・

 

 

「グァ・・・ッ!」

 

轟音と共に頭から血が流れていた。よく見ると銃を使っていた。しかし、オラリオにいた冒険者は初めて見る武器な為それに混乱し、ドンドン血が砂浜に散乱する。

 

「また人が・・・」

 

そうしていると段々と人が死んでいく。

 

「こんな・・・こんなことって」

 

「今・・・ッ!」

 

「グァ・・・・・・・ッ!」

 

ふと、一人の少女が引き金を引く。そこにはアポロン・ファミリアのリッソスが頭から血を流して倒れていた。

 

「リッソス?!」

 

アポロン・ファミリアの団員達はリッソスを見つめる。しかし、リッソスは返事をしない。

 

「おい・・・返事をしろよ・・・リッソスウウウウウウウウウウウウウウ!」

 

仲が良かった団員、ルアン・エスペルは涙を流す。ふと、ルアンが少女の方を向く。そこには・・・

 

「彼奴は・・・カサンドラ?!」

 

そう、アポロン・ファミリアが散々追い回していたカサンドラ・イリオンだった。黒い服を着ており、体中に弾を仕組んでいた。

 

「貴様アアアアアアアアアアア!!よくもおおおオオオオオオオオオ!!」

 

そうしてルアンが、カサンドラの方に向かうが・・・

 

「がぁ・・・・・・・ッ!」

 

「危なかった・・・」

 

サシャに左胸を打ち抜かれていた。ルアンはそのまま砂浜に倒れる。自然と砂が赤く染まっていた。

 

「ありがとうございます」

 

「気にするなやし・・・ほな、サッサといくで」

 

「ハイ・・・」

 

そうしてサシャ達は森へと向かう。その途中、アポロン・ファミリアの団員と思われる団員の死体があった。カサンドラは追われていた立場ではあったが、殺すほどまでになるとは思わなかった。自分だけ安全というわけにも言わず、参戦したがやはり罪悪感がわく。憎んではいた・・・それにコレは戦争・・・仕方のないことだ。オラリオはくだらなすぎて忘れていたが、本当の戦争はこうなのだ。だからカサンドラは通る際・・・

 

「ごめんなさい」

 

そう言ってカサンドラは立ち去っていくのだった。

 

 

 

「クソ・・・逃げないと・・・」

 

リッソスがやられているのを見てダフネは森の中へと消えていった。

 

「クソ・・・ッ!エルフィ!!大丈夫ッスか?」

 

「ええ、なんとか・・・」

 

エルフィはそう言って立ち上がるも腕から血を流す。

 

「ともかく、逃げないと・・・」

 

「うん・・・」

 

魔道士達が壊滅してラウル達は逃げようとする。しかしその瞬間空からも何かがやって来た。

 

「アレは・・・」

 

白く大きな船のような物が空を飛んでいた。風船の下に何やらつけたような物でこの戦いを大きく象徴しているようだった。やがてそこから何やらしたから穴が開く。そして二人の人間が落ちてきた。

 

「なんだ?」

 

ラウル達は二人の人間を凝視する。しかし次の瞬間・・・

 

「・・・・・・・ッ!雷?」

 

「違う!!」

 

雷のような物が落ちてきた。それは二人の人間に落ちる。その瞬間地面から何かが落ちてきた。

 

「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」

 

二体の大きな人間が姿を現れた。一人は白い仮面を付けており茶色い髪があり、大きな牙がついていた。もう一人は黒い目と髪で小さい目がぎょろりとしている感じだった。二体とも四つん這いだった。

 

「モンスター・・・クソガアアアアアアアアアアアア!!」

 

グランは急いでモンスターらしき生物を剣で突き刺す。

 

「ア・・・・!」

 

その瞬間、グランがバラバラになったからだが地面に散乱していた。それにディックス達も恐れていた。更に目の前には大勢の兵士、威圧感がすごくオラリオ側が後ずさりするほどだ・・・

 

「クソ・・・ッ!グランがやられた」

 

そう言ってディックス達は舌打ちをし、ディックスは手を広げる。呪詛の詠唱を始めるためだ。

 

「『迷い込め、果てなき悪夢』」

 

それと同時に彼は自分の呪詛を放とうとする。

 

「『フォベートール・ダイダロス』」

 

それと同時にディックスの周りから赤い電流が流れてきた。この呪詛の効果を受けた者は幻覚を見せ混乱状態にし同士討ちさせる魔法だ。通常、魔道具がなければ防げない・・・

 

 

(コレで終わるだろ・・・ザマァないぜ脳筋が!)

 

そうして赤い電流が散らばる・・・やがて同士討ちを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通ならば・・・

 

「グロロロロロロォォォォォォ!!」

 

「なんだ・・・?紋章?」

 

空から二つの紋章が光り出していた。一つは翼の形をしており、もう一つは首輪のようだった。それと同時に鉱石で出来た竜の化け物が咆哮していた。首輪の方が光り出す。そして・・・

 

「・・・効いていない?!」

 

ディックスの魔法は効いていなかった。傍にいた白髪の少年と赤い女はそれを見て同時に何やら合図を送っているようだった。そして・・・

 

「・・・・・・・ッ!またあの光が・・・」

 

さっきの2体の化け物と同じように大きな光が出てくる。それと同時に何やら人型の身体が足の方から生えてきた。

 

「な・・・」

 

その大きさは15m、モンスターの超大型を遙かに超えていた大きさだった。身体は白い鎧で出来ており隙間からは目だけが写る。鎧で包まれており、まるで騎士のようだった。

 

「なんだ・・・こいつは」

 

そう言ってディックス達は戸惑いを隠せなかった。それと同時に白い人型の化け物は片手の平を開く。そして光が現れる。

 

「何・・・」

 

やがて武器が精製され、巨大なハンマーが現れた。やがて白い化け物はハンマーを肩に乗せる。全員、何をするのかは察していた。

 

「逃げろおおおおおおおおおおおおお!!」

 

そうしてオラリオの勢力は逃げ出す。死ぬ・・・そう直感したからだ・・・

 

「ウオオオオオオオオオ!」

 

しかし、それも時遅し・・・既にハンマーは振り下ろされていた。オラリオの冒険者は次々と潰れていく。

 

「何よ・・・ここ・・・メレン・・・だよね?」

 

エルフィは逃げながらもその光景を目にする。もう、全員が知っているメレンではなかった。美しく、青い海、白い砂浜、活気のある声が・・・それが今、焼き尽くす炎、そして犠牲になった血により赤く染まっていた。

 

メレンは地獄になっていたのだった。

 

「我が主・・・ディックスの魔法は不発に終わったようです」

 

「ああ、うまく出来たね。じゃあ、行こう!」

 

ベルとローゼは鉱石の竜と3体の化け物と共に丘の上で眺めていた。当然、銃を所持しており、来る冒険者を射殺し、ここまでやって来た。やがてベル達も丘から降りる。

 

「ベル・・・」

 

ローゼはベルの事をとても心配に思っていた。当然だ、誰だって人は殺したくない・・・もしそれでベルが不安に押しつぶされるのではないかと不安になる。しかし・・・

 

「ローゼ、大丈夫・・・僕は君のためならいくらだってこの手を血で汚すから」

 

だから安心して・・・その声と共にベルは丘を降りる。それはローゼにとって狂気にも聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、ここまでとはね・・・流石は、エルヴィン・スミスと言ったところか」

 

「だが、主要部隊は来なかったか・・・やはり一筋縄ではいかないな、フィン・ディムナという男は・・・」

 

一方、船の上ではヘルメスと一人の男が双眼鏡を持ちその光景を眺めていた。

 

エルヴィン・スミス・・・金髪の髪と整った顔立ち。そして青い目を持つ容姿であり前世では巨人の脅威を排除するため、そして壁外を調査するための兵団、『調査兵団』団長であり高い指揮能力にヘルメスは目につけていた。

 

この作戦はエルヴィンが考えた物だった。凄まじく、天才、悪魔とも呼べるような圧倒的な存在にヘルメスは再度、自分の目に狂いはなかったというような目線を送る。ヘルメスはサシャに聞きエルヴィンにこの戦いで勝てば地下室のことを教えると告げ取引し、現在にいたっているのだ。

 

「心は傷むかい?君はまた多くの人を殺した」

 

ヘルメスは少し嫌みを言うようにエルヴィンに話しかける。エルヴィンからは無言が続く。

 

「そう・・・作戦は成功しそうだよ・・・顎の巨人兄妹もうまくやれているし」

 

そう言ってヘルメスは悟り余裕そうにエルヴィンに話す。ヘルメスは少しつまらなそうだった。

 

「君も・・・悪魔だね」

 

そう言ってヘルメスはエルヴィンの肩を叩く。エルヴィンはただ黙って振りのけた。

 

「我々は勝利をつかむまで・・・それだけだ」

 

エルヴィンはただそう告ぐのだった・・・悲鳴と大砲が鳴り響く中、ヘルメス達は眺めているだけだった

 

「あ、そうそう。君はベル君のステイタスはどう思う?」

 

何かを思い出したかのように、洋紙を渡す。エルヴィンはこの世界を知り、ステイタスという物を覚えた。それは標準レベルも知っている。

 

「・・・アレは異常だ・・・ましてやあんなヤツ、お前は見たことがあるか?」

 

「いや、僕も始めてさ・・・まさか、ここまでとはね・・・想像以上だよ・・・ベル君は」

 

ヘルメスは再度、ベルのステイタスを見た。そこに書かれていたのは・・・

 

ベル・クラネル

 

レベル:error

 

力: error

 

耐久:error

 

器用:error

 

俊敏:error

 

魔力:error

 

発展アビリティ不明(文字化けしている)

 

『魔法』

 

なし

 

『スキル』

 

復讐者(アヴェンジャー)

 

早熟する

 

憎しみの丈ほど効果上昇

 

憎しみが続く限り効果持続

 

【終■を■■も■】

 

6cvtl,769;.x4v7t/c9b97g87v.l6x86c87iv69b07i6v;.v6;6

 

Rurcitiktirielfygtigkcrkcykbkur

 

Frkyrvuyvtlcvblluhvtcexrt

 

(文字化けしている)

 




はい、今回はここまでです。なぜ、エルヴィンを出したか・・・自分が好きなだけです。はい、すいません・・・次回は他のキャラも登場させます。お楽しみに!!ちなみに文字化けは適当に作りました。


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Chaptear26覚醒

こんにちは、今回はなんと、ベルの力の真実が!それでは、どうぞ!


「逃げろおおおおおおおおおおおおお!!」

 

そうして冒険者達は一人の巨人から逃げる。胸に一突きしても死なず、剣を手放し逃走する。しかし、スピードが高くそのまま悲鳴も聞こえず、肉片だけが残る。

 

(全く・・・この世界でも変わらないな・・・)

 

戦いながら(アギト)の巨人、ユミルはただそう思っていた。

 

ユミルはサシャの同期であり、サシャが心配でこの戦争に参加したのだ。

 

最初は断ったがヘルメスからサシャも出るとなると仲間となるとそうも行かなくなったのだ。仲間が・・・サシャが大切だからだ。(ヒストリアが一番だとするとサシャは二番だが)この世界に転生してユミルは自分の為に生きると決めていたがやはりサシャ、仲間が大切で心配なのだ。そしてなんとなく察してはいたがサシャがこの世界にいると言うことは前の世界でサシャは死んだと言うこと。それを知った途端ユミルは悲しみにくれた。それと同時に喜びもあったのだ。また会えると・・・アレスから収集されたときは、泣きながらサシャに抱きついてしまった。

 

「馬鹿野郎・・・速すぎるんだよ、芋女」

 

最初に出た言葉はそれだった。やはり心配していたのだ。そばには見慣れない人物もいたが空気を読んでくれたのか暫く泣きながらサシャに抱きつく時間が流れたのだった。

 

「そうか・・・お前は・・・」

 

「ええ、戦争で油断していたらそのまま」

 

サシャの経緯を聞いた後、ユミルはどうしようか頭を抱えていた。ユミルとしてはもう戦争には行かせたくなかった。出来ることならもう人を殺して欲しくなかったのだ。説得もした。だが、それは一言によって無駄だとさとる。

 

「私には・・・息子のような大切な子が出来たんです、ヘルメス様からの決定で戦争参加は免れないようなんです。もし、逃がせばあの子も殺すと言われ・・・それにあの子も・・・」

 

そう言ってサシャはベルのことを話し始めた。サシャはベルの事が大切だと。そして彼の村は戦争する相手・・・オラリオに殺されたのだと・・・止めれば精神崩壊が起きる可能性もあることがあった。実はこの時ヘルメスから彼女達、アストレア・ファミリアは今でも正義と名乗ってのうのうと生きていることが伝えられ、全員が怒りに燃えていた。それはサシャも同じである。

 

「そう・・・か」

 

そう言ってユミルは少し迷った後参戦することを決めた。幸い九つの巨人は健在だったらしい。そのため、重要な役割が与えられた。他にも3体いる巨人と共に敵を殲滅するために選ばれた。(始祖の方のユミルの呪いは解除されていたらしい)

 

ユミルはただ黙々と戦闘を行っていた。冒険者をかみ砕き、引き裂き肉片と化していく。

 

「ハァ!!」

 

(取った!)

 

そこに剣を持ったエルフィが剣をつきたてユミルの胸を射してきた。しかし・・・

 

「なんで・・・」

 

エルフィは胸を一突きしたが消えないのに戸惑っていた。ユミルは巨人はうなじにやらなきゃ無駄だと言うことは理解しているため哀れんでいた。冒険者達は、モンスターは魔石を傷つければ死ぬと思っている為、エルヴィンは巨人に対応するには時間がかかると踏んだのだ。

 

(すまない・・・)

 

そうしてユミルはエルフィに向かって腕を振りかぶる。そしてエルフィの身体も肉片とかした。

 

「ヤァ!!」

 

(・・・・・・・ッ!)

 

しかしそれは防がれた。ラウルがユミルのウデを切り裂いたのだ。

 

(チッ!!)

 

「ラウル?!」

 

「速く逃げてくださいっす!!こいつらは謎・・・今の俺たちが到底かなうものじゃない」

 

(クソガ・・・だがまだもう一本ある)

 

そう言ってラウルは何とかしてユミルを押さえていた。ユミルはもう一つの腕で振り上げラウルを仕留めようとするが・・・

 

「ハァ!!」

 

(な・・・?!)

 

ラウルがもう一本の腕を切り落とした。すぐにラウル達はユミルのそばから離れる。

 

(クソガ・・・ッ!)

 

そうして急いで腕を再生しようとするがそばには冒険者がいた。全員、剣を出しユミルの周りに立つ。そして次の瞬間・・・

 

(・・・・・・・ッ!)

 

体中を刺し始めた。足、頭、顔に手当たり次第刺していた。すぐに再生使用とするもすぐ切られてしまう。

 

(クソ・・・ッ!このままじゃ・・・)

 

やがてうなじを攻撃され死ぬことが見えた。足も切られ、逃げられそうにもなかった。

 

(不味い・・・このままじゃうなじを!!)

 

やがて全員、うなじの方を差し始めようとしている。このままでは死ぬ。そう直感した。

 

「後はここだけだな!」

 

「死ね!!」

 

そう言って冒険者達はユミルのうなじを切り落とそうとした。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「な・・・!?しまった!!」

 

だがそれは防がれた。それと同時に茶色い髪をしており、白い仮面をした巨人が冒険者達を潰したからだ。

 

(マルセル・・・)

 

マルセル・ガリアード・・・マーレの戦士でありもう一人の顎の巨人の継承者だ。ユミルが無垢の巨人であった頃、ユミルに食べられた男である。ヘルメスの招集により呼ばれた巨人の一人だ。強さで言うならマルセルが上である。

 

(クソ・・・冒険者を少し侮っていた・・・だが!)

 

「しねぇ!!モンスター!!」

 

そうして冒険者達はマルセルの腕を切ろうとする。しかし・・・

 

「な・・・ッ?!俺の剣が!!」

 

瞬間何か水晶のような物・・・硬質化でマルセルの身体を守る。剣は折れ、冒険者は丸腰だった。

 

「しまッ・・・・」

 

それから冒険者は喋る前に身体がなくなっていた。血が地面に散乱する。

 

「ひいいいいいいいいいいいいいいい!」

 

「助けてぇぇぇぇ!!」

 

冒険者の悲鳴が辺りに響く。しかし、それはむなしく全身から血が流れながら死んでいった。

 

やがて、マルセルは周辺の冒険者を殲滅し、ユミルを守る。ユミルは安全を確認したのか一旦出ることにした。

 

「助かったよ・・・マルセル」

 

「ここはあらかた片付いた・・・さっさと戻るぞ」

 

「ああ」

 

そうして、マルセルは信号弾で場所を伝える。暫くするとラキア王国の軍勢がこちらにやって来た。

 

「戦槌の方は?」

 

戦槌の巨人、ヴィリー・タイバーの妹、ラーラ・タイバーが継承している巨人である。通常、巨人はうなじが弱点だが戦槌は地中に身体が埋まっているため、うなじを攻撃しても死なない。さらに硬質化を利用し様々な武器を作り出す。先ほどディックス達を潰していたのはこの巨人である。

 

「私ならここに・・・」

 

そうして水晶体から出てきたラーラはアスフィ達と合流する。ヘルメスファミリアは全員ラキア王国側についているのだ。先ほどルルネからも敵は森に逃げたことが伝えられており巨人達により逃げ道はバラバラだと伝えた。

 

「とりあえず、一旦メレンに戻る?」

 

「ああ、そうした方がいい・・・」

 

そう言ってアスフィ達は艦隊に戻ることにした。遠くから歓声が聞こえる。

 

「やったあああああ!!」

 

「俺たちがオラリオに勝った!!」

 

連合軍はオラリオに勝ったことにより歓喜に包まれていた。もちろん、カサンドラも参戦しており、そのような者は暗い顔をするも宿命なのか手を握りしめる。

 

「まだ油断をするには早い!コレより、逃亡者の捜索に当たる!生き残りは絶対に逃がすな!!」

 

エルヴィンの指示により全員が動き出す。謎のカリスマ性というものか全員がエルヴィンを信頼し行動に移す。その時だった・・・

 

「報告です!!」

 

「なんだ?!」

 

一人の兵が、エルヴィンに詰め寄る。それに全員が驚いていた。エルヴィンは急いで状況を整理させる。

 

「何があった?!」

 

「実は・・・ベル・クラネル一同が、イシュタル・ファミリアによって捕らえられました!!」

 

「「「・・・・・・・ッ!?」」」

 

時は少し遡る・・・

 

「ローゼ・・・アレって」

 

「イシュタル・ファミリア・・・娼婦系だけど・・・レベル5がいる」

 

ベル達はイシュタルファミリアを途中で見つけ、どうしようか探っていた。草むらに隠れ様子をうかがっていた。

 

「どうしますか?我が主・・・」

 

「アレは今の俺達じゃ敵わねぇ・・・巨人がいてくれると助かったが・・・どうも無理そうだ」

 

そうして全員どうするべきか議論をしている中、マルセルの信号弾が現れ全員一旦戻ることにした・・・のだが・・・

 

「若い男の匂いがするよぉ・・・」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「そこかぁ!!」

 

突然鼻をひくつかせ、猛スピードでベルの元に向かってきた。ベル達は急いで逃げようとする。しかし・・・

 

「逃がさないよオオオオオオオオオ!!」

 

レベル5のスピードな為すぐに追いつかれてしまった。フリュネは両手に斧を持ち振り回している。

 

「チッ!!」

 

「ここは私が!」

 

そうして竜型の化け物はフリュネに向かって光線をぶつける。しかし・・・

 

「後ろ忘れていないかなぁ?!」

 

「グァ・・・・・・・ッ!」

 

ローゼがアイシャによって不意打ちを受け倒れる。

 

「ローゼ!クソ・・・・・・・ッ!」

 

そうしてベルは剣を引き抜き、アイシャを攻撃する。しかし・・・

 

「遅い!!」

 

「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「我が主!!」

 

「邪魔だぁ!!」

 

戦闘経験もないためベルは敵うはずもなく倒れ伏す。それにフリュネが竜型の化け物に接近すると斧で攻撃する。竜型の化け物は翼が折れ倒れる。

 

「・・・ッ!貴様ぁ!!」

 

残りの3体もフリュネに攻撃を仕掛ける。しかし・・・

 

「ガァァ!!」

 

「クソ・・・ッ!」

 

「グゥ・・・・・・・ッ!」

 

それぞれの化け物も刃が立たず、そのまま倒れ、気を失ってしまう。

 

「皆・・・ッ!」

 

「ベ・・・ル」

 

「ローゼェ!クソ!!」

 

そうしてベルは剣を引き抜く。フリュネ達は一斉にベルの方を見てすぐに武器を手に取りそのままかける。

 

「グァ!!」

 

ベルはレベルと戦闘経験の差もあってそのまま地面に突きつけられる。

 

「ゲゲゲ、坊や。どうやらアタイ達の強さが分かっていないようだね。アタイ達の種族は戦闘民族・・・それにレベル5だ。どう考えたって勝てねぇんだよ!!」

 

「ゴホォ!!」

 

そう言ってフリュネはベルの腹を蹴り出す。ベルは口から血を出しており地面に散らばる。息も荒くなり、口元は赤く地面にたれていた。

 

「貴様・・・ッ!!」

 

そうしてベルはフリュネを睨み付ける。ヒキガエルの瞳で気色が悪く吐き気を催す目でフリュネはベルを見つける。

 

「ほぅ・・・よく見たら可愛い顔つきしているねぇ」

 

そうしてフリュネは何かを思いついたようにベルを見つめる。ローゼは助けようとするもイシュタル・ファミリアの団員により囲まれていた。フードは血で赤くなり、ローゼも動けない状況だった。

 

「ン・・・?こいつ」

 

ふと、アイシャは何か気になったようだが気にしないでおいた。ローゼの顔はフードで隠れている。やがてフリュネは口を開く。

 

「アイシャ、その女は殺しておけ。この小僧は食ってから殺すことにするよ」

 

「・・・ッ!」

 

そうしてフリュネはベルの上に乗り出す。ベルは察した。コレは夢で同じである。アイシャはそっと頷きローゼに剣を突き立てた。

 

「悪く思うなよ・・・こっちも仕事なんだ」

 

「ベ・・・ル・・・逃げ・・・て」

 

「ローゼ!クソ、クソ!!」

 

その一言によってベルはフリュネの身体を押し出し、ローゼを助けようとする。しかし腕を捕まれる。フリュネの瞳からベルの背中から悪寒が、走る。こんな不細工に犯される。そう直感したからだ。いや、それはどうでも良かった。このままじゃ夢と同じだった。

 

「・・・ッ!このままじゃ・・・」

 

そうしてベルは暴れ出す。しかし腕の力から動けずにいる。このままではローゼが殺される。そう直感し、どうにか助け出さないといけない。だが、重いのだ。

 

(クソ、クソ!!速く、速くしないと・・・ッ!)

 

「暴れんなよ、全くアイシャさっさと殺せよ」

 

「あいよ・・・」

 

そうしてアイシャは、剣を振りかぶろうとした。それにローゼは死ぬと直感する。

 

(このままじゃ・・・!!)

 

そうしてベルは暴れ出すも力で抑えられて抜け出せない。やがて服も乱れていた。

 

「さぁ・・・食うとするか」

 

そうしてフリュネはベルの服を脱がそうとしたのだった・・・

 

(ああ、同じだ・・・)

 

目の前の光景は、夢と同じだった。ローゼが殺されて、ベルが犯される悪夢・・・

 

ベルは何も出来ず、弱いままだった。ずっと・・・英雄譚には憧れていた。強くてかっこいい英雄になりたいと思っていた。アルゴノゥト・・・アンタレス・・・いろんな英雄がいた。だけど少年は、なれなかった。そのせいで祖父達は死んだ・・・あのアストレア・ファミリアによって・・・ローゼを守るために・・・皆の無念を果たすために、ここに来た。しかし、力が足りなかった。ベルには後悔が続く

 

(僕は・・・弱い、ままなの?)

 

やがてヒキガエルがこちらに迫ってきた。

 

(これから、僕は犯されて死ぬのかな?ああ、死ぬのもいいかもしれない・・・そしたら皆に会えるから・・・)

 

そうして少年は諦めたようとしていた。腕の力を抜き、そのまま脱力する。

 

(お爺ちゃん・・・今行くよ)

 

そうして少年は目をつぶった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ベルよ・・・お前がなりたい英雄とはなんだ?)

 

(強くてかっこいい人)

 

突然記憶が思い浮かぶ。走馬灯という物かベルは懐かしんでいた。

 

(そうじゃ、そしてそういう者はどんな困難を打ち破ってきた・・・なんのためか、分かるか?)

 

(な~に?)

 

そうして祖父はベルの頭を撫でる。そうして、お爺ちゃんは笑みを浮かべながら言った。

 

(それはな・・・大切な人を守るためじゃ)

 

(大切な人?)

 

(ああ、人は誰しも大切な者を守ろうとするから英雄になれるんじゃ・・・それが、例え悪魔でもな・・・)

 

(悪魔でも・・・?)

 

そうしてベルは首をかしげる。当然ピンとこなかった。悪魔と英雄は対極の立場。ベルにとっては分からなかった。

 

(ああ、誰しも大切な者を守るからこそ英雄になるんじゃ!だから悪魔にだってなる。ベルよ、お主も大切な者を守りたいなら、英雄になれ!悪魔になれ!!女を守れ!!それがこの世で一番かっこいい男じゃ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

 

無意識にベルの意識は覚醒した。それと同時に、赤い光が出てくる。フリュネ・ジャミールは風圧を受け後ろに下がる。イシュタルファミリアの団員達も後ずさりしていた。

 

「僕は・・・僕はローゼを守るんだ!!そのために僕は力を欲した!!もう、失いたくはないから!!おい、いるんだろ?!そこに!!あるんだろ!!こいつらを、アストレアファミリアを、悪を滅ぼす力が・・・悪魔の力が!!その力を・・・貸せええええええええええええ!!」

 

 

そうして少年の叫びが森に響いた。その気迫にフリュネも武者震いをする。

 

「・・・・・・・ッ!なんだ?アタイの身体が震えて・・・」

 

「アイシャ・・・なんか怖いよ」

 

それと同時に、ベルの持っていた剣が光り出した。赤く、毒々しい色が辺りを包み込む。やがて空に魔方陣が出てきた。

 

「なんだ?!」

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

少年の・・・竜の・・・悪魔の咆哮が森を一掃する。それと同時にオーラが、殺意がイシュタルファミリアを襲った。

 

(ククク、気に入ったぞ。やはりお我が目に狂いはなかった・・・良かろう、力をくれてやる、我が相棒(バディ)よ!)

 

どこからか声が聞こえた・・・低く恐怖を感じる声が・・・全員、身体が震えていた。恐怖していたのだ。普段強い男には好意をよせるアマゾネスが本気で恐れていた。そんなのは殆どない。以前あったとするなら闇派閥だろう。しかし、今回はそれを優に超していた。

 

やがて魔方陣から竜の姿が現れる。赤く、三つの首を持ち、禍々しいオーラを放つ、竜がそこにいた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ッ!」

 

バベルの最上階。オラリオ四大派閥の一つ、フレイヤ・ファミリアの主神フレイヤが突然ベッドから起き上がる。悪夢を見ていたように身体が震えていた。

 

「どうしました?!フレイヤ様?!」

 

フレイヤはただ唇をカタカタさせ、震え、涙を流していた。やがて口を開く。

 

「ヤツが・・・復活した・・・の?」

 

「フレイヤ様?!」

 

「あり得ない・・・でも、そうなら・・・」

 

そうしてフレイヤは汗を大量に流す。オッタルとメイド達は落ち着かせようにもフレイヤは震えが止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ・・・」

 

とある森の一角、ヘルメス達はベルを観察していた。団員達はその姿に恐怖し座り込むしかし、ヘルメスは何やら狂気的な笑みを浮かべる。

 

「アハハハハハハハハハハハハァ!!ついに復活した!!ゼウスよ!!やはり彼は器だった!コレが証拠だ!オラリオよ!!俺はついにやってのけたぞ!!本当の神を、僕は目覚めさせた!!アハハハハハは!!」

 

突然ヘルメスは笑い出した。それに他の団員達は引いてしまった。もはや今のヘルメスは狂っている。そうでしかなかった。

 

「アスフィ・・・コレって」

 

「・・・ええ、私達はとんでもない・・・パンドラの箱を開けてしまったのかも知れません・・・」

 

ヘルメスファミリアの団員達はその光景にへたりつく。いくらかは恐怖で涙も出ていた。それでこそ、その者は絶対であり本物の神であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなのよ・・・あれ」

 

禍々しい竜にアイシャ達は恐怖で震える。赤いからだが絶対感を出し恐怖を煽る。姿は禍々しく、しかしどこか神とも思わされた。それは自分の知っている神が偽物ではないかと思えるほど。やがて竜は名乗った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が名は、終焉魔竜 アジ・ダハーカ!全てを滅ぼし、破壊し、創造する神である!!」

 

そうして神も恐れた竜、終焉魔竜 アジ・ダハーカはここに復活した。少年はここに悪魔となったのであった。

 




はい、今回はフューチャーカード!バディファイトより、終焉魔竜 アジ・ダハーカを登場させました。バディファイトは僕にとって最初に始めたカードゲームなので思い出は結構深いです。これからドンドン出番を与えるのでお楽しみに!!


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Chaptear27女戦士の意地

こんにちは。今回、更にあの4体の正体が・・・ちなみにバディファイトではありません。しかし、共通点があります。それは何か予想してみてください。それでは、どうぞ!


「何・・・アレ」

 

イシュタル・ファミリアのいる場所から少し離れた場所、メレンから戦線離脱し少し休憩を取っていたラウル達は赤く、禍々しい竜を目にした。首は三つあり、中央にはもう一つの顔、悪魔を彷彿とさせる。いや、アレは悪魔だ。到底、自分達の敵う相手ではない。下手すれば隻眼の黒龍より強いオーラだった。遠くでも目の中に入る。

 

「は・・・はは・・・エルフィ・・・俺達、夢でも見ているんすかね」

 

「ハハ・・・私もそう思いたいよ・・・」

 

二人は涙を流しながら、竜を見る。それはまるで・・・

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

オラリオの破滅を予言するような威圧、オーラだったからだ。

 

 

 

 

「終焉魔竜・・・?」

 

「何よ・・・アレ・・・」

 

イシュタル・ファミリアは全員、涙を流しそのまま脱力する。目の前にいる化け物は、化け物の中でも段違いだった。彼女達は遠征もしており深層は体験済みで階層主は何回も相手をしていた。しかしそれはもはやその粋を超えている。

 

「ベ・・・ル・・・」

 

「大丈夫・・・待っていて」

 

ベルは急いでローゼのもとに駆け寄る。そうして竜が近づくと何やら光が出始めた。

 

「傷が・・・」

 

瞬間、アリーゼの身体が次第に癒えてきた。傷口はなくなり、血も止まった。

 

「ローゼ・・・下がっていて」

 

そうしてベルはローゼを自分の後ろに連れ込む。ローゼはベルの背中を見ているしかなかった。

 

「ベル・クラネル・・・よくぞ我を解放させたな・・・褒めてやろう」

 

そうしてアジ・ダハーカは、ベルを見下ろした。ベルはただアジ・ダハーカを睨み付け、アジ・ダハーカは笑い声を、漏らす。

 

「ククク・・・そうだな・・・そうでなくてはな・・・」

 

そうして、アジ・ダハーカ達はフリュネの方を見る。やがて口を開いた。

 

「喜べ・・・貴様ら、我々が貴様を直々に相手してやるのだ・・・貴様らは我々が葬ってやろう・・・オラリオと共に!!」

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

 

アジ・ダハーカに同調するように、他の化け物が咆哮する。それは何やら宴のようであった。

 

「ハハハハ!!やりやがったぜ、我が主!!」

 

「正直、驚きましたよ」

 

「だが、コレでようやく本当の力が使える・・・」

 

「ええ、この汚らわしい存在に裁きを!!」

 

やがて、4体の化け物達に光が宿る。そうして化け物達は宙に浮かんだ。

 

「なんだ?!」

 

「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」

 

鉱石で出来ている竜は黄金の光で、灰色と赤い角と青い身体をした人型の化け物は黒と赤と青い光をそれぞれだし、やがて3体は混ざり合い鉱石の化け物は雷が落ちる。

 

「「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」

 

瞬間竜の化け物の仮面が崩れ始める。そこから一つの顔が見え始めた。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――裁きの紋章が揃うとき、正義を執行する竜が今現る!!来い!!」

 

ベルは天に手を掲げ、詠唱らしき言葉を発する。それと同時に裁きの紋章が光り出し黄金の光がベルの元にもやってくる。それと同時に竜の仮面が全て剥がれ落ちた。

 

「出でよ!!」

 

そうして竜の化け物は本来の姿を見せる。

 

「煌龍 サッヴァーク!!」

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

それと同時に爆発が起きた。雷の衝撃で、全員立っていられないような風圧が森から吹き荒れた。

 

「キラゼオス・・・サッヴァアアアアアアアアアアアアアアク!!!!!!!!!!」

やがて『サッヴァークDG』の真の姿が現れる。鉱石で出来た身体に身体の中央には悪を逃がさぬ意思が込められた目、後ろには金色の剣と共に生える翼、青色の鉱石を持つ正義のドラゴン、『煌龍 サッヴァーク』がここに現れた。

 

「なんだよ・・・コレ」

 

イシュタルファミリアはその姿に驚きを隠せない。二体の竜がこちらに殺意を向き出してきた。

 

「こんなやつ・・・どうすれば・・・」

 

「悪いが・・・まだ終わりじゃない・・・」

 

「――――――ァ」

 

しかし、イシュタルファミリアは忘れていた。まだ覚醒していない化物がいたことを。絶望が更に襲ってくる。

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

 

「時は来た!3体の怪物が揃うとき、死を運ぶ悪魔の竜が今、ここに誕生する!!」

 

そうして三体はゆっくりと近づき咆哮する。それと同時にベルが再び覚醒の詠唱を唄う。

 

「サイキック・リンク!!出でよ!!死海竜ガロウズ・デビルドラゴン!!」

 

「「アアアアアアアア!!」」

 

そう叫んだ瞬間赤い角が目立つ『ハイドラ・ギルザウルス』、灰色の身体を持ち黄色い触手のような者を持つ『竜骨なる者ザビ・リゲル』が前に立ち球体になる。

 

「オオオオ!」

 

やがて青い身体をした人型の怪物『ガロウズ・セブ・カイザー』がその球体を包み込んだ。

 

「・・・・・・・ッ!何・・・?!」

 

突然爆発が起きた。それと同時に紫の煙が辺りに漂う。爆発の衝撃で吹き飛びそうだったがなんとか耐え、全員爆発の方を向いた。

 

「ぬぅ!!オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「え・・・?」

 

瞬間、煙から口が出た途端、白と紫色の身体をしており顔が三つあり、両肩には白い皮に紫色の花のような物、身体の中央には不気味な口があり、爪は鋭く紫色・・・そして戦槌よりもでかい大きさをした悪魔竜、『死界竜ガロウズ・デビルドラゴン』が姿を現した。

 

「何よ・・・アレ?」

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

 

3体のドラゴンが咆哮し森を揺らす。遠くにいたエルヴィン達にも既に目の前にいるような感じだった。

 

「アア・・・アアア」

 

イシュタル・ファミリアのレベル2以下の団員達は直ぐに察した。

 

駄目だ・・・こいつには勝てない・・・と

 

「イヤアアアアアアアアアアアアア!!」

 

瞬間、レナが逃げ出した。しかし・・・

 

「ぬぅ!!サッヴァアアアアアアアアアアク!!」

 

サッヴァークがレナに向かい、光の剣を投げてきた。その早さは尋常じゃなく、直ぐにレナに追いつき目前まで迫ってきた。

 

「ァ・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間、レナの腹部に黄金の剣が刺さった。

 

「アがぁ・・・・・・・ッ!」

 

「レナァ!!」

 

「アレ・・・?」

 

しかし、レナの腹には血が流れていなかった。だが次第に皆はレナの身体の異変に気が付いた。

 

「・・・ア、私の身体が・・・・」

 

レナのからだが徐々に石になったのだ。レナは自分の身体を見て震えが止まらなかった。

 

「イヤアアアアアアアアアアアアア!!」

 

悲鳴を上げるも、レナの身体は無慈悲に石となってゆく。イシュタルファミリアはそれを見ているしかなかった。

 

「助・・・けて・・・」

 

そう言葉を発した瞬間レナは完全に石となって宙に浮いた。紋章が刻まれ、後ろにある

『命翼ノ裁キ』、『暴輪ノ裁キ』、『断罪スル雷面ノ裁キ』と共に刻まれた。しかも、知らずのうちに二人追加され、6枚の紋章が姿を現す。

 

「レナ!!クソ・・・ッ!」

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

ガロウズ・デビルドラゴン咆哮し、やがて魔力が三つの箇所から集まる。

 

「・・・・・やれ」

 

ベルは手を上に出し、そのまま振る。それが合図なのか光がイシュタルファミリア目がけて放たれた。

 

「「「イヤだアアアアアアアアアアアアア!!」」」

 

そうして大きな光が、イシュタル・ファミリアの団員に降り注いだ。それと同時に悲鳴が聞こえる。やがてそこは更地になった。跡形も残らず、あったとしても首や身体の一部分だった。

 

 

「・・・・・・・ッ!春姫!!アタイに魔法をかけろ!!」

 

フリュネは焦りからか、隠れていた狐人、サンジョウノ・春姫を呼び出した。春姫の、魔法は対象の人間をレベルアップ出来る魔法を持っている。しかし、春姫は恐怖で震え魔法を口に出そうとはしない。いや、恐怖のあまり口が開けないのだ。

 

「ヒッ・・・・・・・ッ!」

 

「速くしろぉ!!速くしないとアタイ達が死ぬんだよォ!!」

 

そう言ってフリュネは焦り出す。直ぐ目の前で恐ろしい怪物達(クリーチャーと魔竜)が自分達に襲いかかり本能が命の危険を知らせている・・・その極限状態にフリュネは我忘れ叫んでいた。

 

「・・・・・・・ッ!ごめんなさい!!」

 

しかし、レベル5で恐れているなら言うとおりにするのも無理である。春姫は恐怖で逃げようとしていた。

 

「春姫!!」

 

そこにアイシャが春姫の目の前に立つ。

 

「アイシャ様・・・」

 

「アイシャ、いいぞ!!そのまま使わせろ!!」

 

そう言ってフリュネはアイシャに向かって春姫に魔法を使わせるように促す。

 

「え・・・?」

 

しかし、アイシャはフリュネの思ってもいなかった行動に出る。なんと、アイシャは春姫についていた首輪型の魔道具を壊したのだ。コレは一種の束縛魔法を発動させる物で今まで自由に行動は出来なかった・・・しかし、コレが壊れたことによって今、春姫は自由になった。

 

「アイシャァァァァァァ!!なんのつもりだい!?」

 

怒り狂うフリュネにアイシャはフリュネを見ず、春姫の肩に手をおいた。

 

「春姫・・・良く聞け」

 

「アイシャ様・・・?」

 

ふと、アイシャは口を開く。春姫は目を丸くしながらアイシャを見た。

 

「いいか?お前はコレで自由だ。もう、好きなところへいけ。ラキアについても構わん、ただ、一つだけ約束してくれ・・・」

 

そう言って肩から手を離す。暫く手を震わせながら数秒の間が開く。そして・・・

 

「生きろ!!」

 

「・・・・・・・ッ!アイシャ様!!」

 

そう言った途端、アイシャは春姫を押して落ちても死なない程度の高さの斜面に落とした。斜面は死にはしないもの、急であり、戻ることは不可能だった。

 

「アイシャ様ァァァァァ!!」

 

斜面からは春姫の声がこだまする。木が生い茂っている中、アイシャは背を向け、目の前のドラゴンに立ち向かったのだった。

 

 

 

「ちくしょう!!アイシャ、お前!!」

 

「気が付かないのかヒキガエル、もう私達しか残ってないよ・・・それにレベルが一つや二つ上がったところで敵わねぇさ・・・」

 

気が付けばイシュタル・ファミリアの殆どは残っていなかった。残っていたのはフリュネとアイシャ、サミラだけだった。

 

「アイシャ・・・」

 

「サミラ・・・逃げるなら今だ。正直、勝てる気がしない・・・多分、足止めも長くは出来ないだろうからな・・・」

 

そう言ってアイシャはサミラを逃がそうとする。しかし・・・

 

「ハハ、何水くさいこと言っているんだよ・・・」

 

「サミラ・・・」

 

笑みをこぼし、アイシャを見つめた。

 

「私達は・・・逃げたとしてもいつかは殺される。きっとオラリオも勝てるかどうかあやしいレベルでな・・・ナァ・・・アイシャ・・・最後に一ついいか?」

 

そう言って本来の恐怖心が少し漏れるも震えた声と共にアイシャの方を見つめる。そして口を開いた。

 

「最後に・・・私の悪あがきに付き合ってくれ」

 

そう言って剣を構える。アイシャはやれやれと首を振り、アジ・ダハーカ率いる怪物を見つめた。

 

「アア、女戦士(アマゾネス)の最期の意地、見せつけてやろうぜ!!」

 

そう言ってアイシャ達は怪物達(死神)に最期の足掻きとして立ち向かって駆け出したのだった・・・

 




はい、と言うわけで『デュエル・マスターズ』より、死海竜ガロウズ・デビルドラゴンと煌龍 サッヴァークを出しました。理由はただ単にかっこよかったからです。ガロウズ・デビルドラゴンって、アニメで結構かっこいい登場してたので出しました。サッヴァークもかっこいいです。厨二心をくすぐるあの姿・・・感動でした。次回はイシュタルファミリア&メレン襲撃完結です


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Chaptear28 絶望

こんにちは、今回はイシュタルファミリアとの決着です。それでは、どうぞ!!

注意

今回は原作キャラが死にます。イヤだという方は、すいません。


「クソ!!どこにいるんだよ!!」

 

イシュタル・ファミリアの団員にベルがさらわれたと報告を受けたサシャ達は望遠鏡を頼りにベル達を探す。ベルはヘルメスから重要人物だといい、急いで探し出す。

 

「どこにいるんだ・・・?」

 

団員達は焦りながら探した。特にサシャは必死にベルを探していた。車力の巨人がいてくれればスムーズに出来るが、いないため顎の巨人達が総出で探し始めていた。

 

「ベル・・・・・・・ッ!」

 

「落ち着いてください、サシャさん」

 

カサンドラがサシャをなだめるもサシャの顔は変わらないままだった。

 

「サシャさん!!前方より赤い光が見えてきました!!」

 

その時だった。一人の団員があの光を見つけたのだ。覚醒した竜の光を・・・

 

「もしかしたら、ベル・クラネルがあそこにいるかも知れません、行ってみる価値はあると思います」

 

団員達はそう言いサシャを見つめる。

 

「分かりました・・・信煙弾を撃ち込んどいてください。エルヴィン団長もついてきてくれるはずです。今すぐ生きましょう」

 

そうしてサシャは急いで装備を持ち、森を駆け抜けた。

 

「待ってください、サシャさん!!」

 

急いで団員達も後を追う。サシャは必死な顔つきで光の元に向かっていた。

 

(ベル・・・無事であってください!!)

 

サシャは走っている中、たった一つの想いを抱きながら光の元まで向かっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無意味な・・・勝てることなど知らずに立ち向かうとは・・・実に愚かだ」

 

「ああ、そうかい!!でもこっちも必死で抗うんでね、覚悟しな!!」

 

そう言ってアイシャはベルの間合いに詰める。もちろんそれを見逃すはずもなくサッヴァーク含む、竜達は一気にアイシャに向かって攻撃する。

 

「オオオオオオオオオ!!」

 

ガロウズ・デビルドラゴンがアイシャの噛みつこうと、口を開きながらアイシャに近づく。

 

「ハァアアアアアアアアアアアア!!」

 

そこに、ガロウズ・デビルドラゴンの口元を自分の愛武器で切りつけ、攻撃を回避する。もちろん、それだけで倒れるわけではないがダメージは受けているようだった。

 

「ヌゥゥゥゥ!!」

 

「へ・・・ッ!少しは、効いたか」

 

そう言ってアイシャは地面に着地し、ベルの間合いに詰める。

 

「させるか!!」

 

だが、そこにサッヴァークが黄金の剣と共にアイシャの武器に火花を散らす。もちろん、アイシャはそれを受け止め、反撃しようともするが跳ね返されてしまう。

 

「アイシャ!!」

 

そこにサミラもやってきた。サミラはガロウズ・デビルドラゴンがひるんだ隙を狙ってベルトの間合いを詰めるも、ガロウズ・デビルドラゴンによって苦戦している。手を出せない状況だった。

 

「クソガ・・・やっぱりただじゃ通らないか」

 

そう言ってアイシャはサッヴァークと距離を置く。その隙に、ベルが剣の先をアイシャ達に向けていた。

 

「まさか・・・サミラ、避けろ!!」

 

「え・・・?」

 

「遅い・・・」

 

瞬間、赤い光線がアイシャ達に目がけて飛んできた。アイシャ達は直ぐに避ける。しかし・・・

 

「がぁ・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・ッ!ヒキガエル!!」

 

木のそばで隠れていた、フリュネに直撃した。フリュネの身体はバラバラになり、地面から赤い血が染みこむ。

 

「レベル5を一撃で・・・?」

 

「あの剣・・・魔剣か・・・それに、何か力がつながっているように見える、クロッゾの魔剣以上か?」

 

「よそ見をしている場合か?」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

そうしている間にもサッヴァークが、アイシャに向かって斬りかかった。アイシャは必死に受け止めるもその攻撃は重かった。

 

「・・・・・・・ッ!不味い・・・このままじゃ」

 

そう言ってアイシャが攻撃しようにも、サッヴァークの攻撃が重く受け止められてはいるものの手が震えていた。

 

「グゥ・・・・・・・ッ!」

 

逸れも当然である。自分よりでかい相手で、しかも力が強い斬撃により、受け止めている手はもう、震えており、剣を持っていられるのがやっとになっていた。

 

「・・・終わりだ!!」

 

そう言って、サッヴァークが黄金の剣と共に、アイシャを切りつけていた。

 

「アイシャ!!」

 

しかしその瞬間、サミラがフリュネが持っていた斧を投げる。サッヴァークはもちろん弾き飛ばした。しかし・・・

 

「しまった!!」

 

その瞬間、アイシャはサッヴァークの隙を狙いベルに、間合いを詰め始める。もちろん目の前にはガロウズ・デビルドラゴンがいたが・・・

 

「チッ!!」

 

サミラはもう一つの斧を投げて、ガロウズ・デビルドラゴンの動きを封じる。やがて一歩手前まで来ていた。

 

「ベル!!」

 

「終わりだ、小僧!!」

 

そうしてベルの元に、仲間の敵だと想わせるような刃でベルに降りかかってきたのだった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愚かな・・・」

 

「なっ・・・ッ!?」

 

その声と共に、ベルの周りから結界が現れ始めた。アイシャの刃は握る手も限界を迎えており、地面に刃を落とす。気が付いていたらベルに回し蹴りで反撃されていた。

 

「グァ・・・・・・・ッ!」

 

アイシャはその場で倒れ込む。アイシャは確かに間合いに詰めていた。取れるはずだった。しかしそれは、無意味に終わる。アイシャはその場から離れるも、もう戦えない状態だった。

 

「なんで・・・」

 

「『終焉魔剣 アクワルタ・グラルナフ』・・・アジ・ダハーカの力を秘めた力・・・」

 

「何・・・?」

 

「故に・・・貴様の攻撃は届かない!!」

 

「終わりにしよう・・・今こそ破滅の時だ!」

 

その声と共に、竜達はアジ・ダハーカの近くに寄る。それと同時にアジ・ダハーカは更なる殺気と共に力を貯めた。

 

『我の前に立てるもの、我の後に生けるものなし。恐れよ、崇めよ・・・ひざまずけ!!』

 

「――――――ァ」

 

その声と共に光がアジ・ダハーカによって集められる。詠唱が耳の奥まで聞こえる。アイシャは瞬間死を察知した。本能か、アイシャは逃げ出す。

 

『イラージュオブ・ヒストリー!!』

 

瞬間、辺りに光線が勢いよく放たれる。それは、ガロウズ・デビルドラゴンの比では表せないほど強かった。森が焼け払われる。

 

「イヤアアアアアアアアアアアアア!!」

 

サミラの悲鳴と共に、アイシャの身体が燃え上がる。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

苦しい悲鳴はベルの元には届かない。コレは裁きであり、正義の執行であった。そう、ベルは想い、ただ目の前の光景を見つめる。

 

「何・・・?!」

 

サシャ達もその轟音に気が付き、物陰に伏せる。ちなみに、範囲外ではあったため助かっていた。(ベルがそこで感知していたため)

 

「アレは・・・」

 

サシャはその姿にどこか、不安に襲われたのだった。・・・

 

 

 

「エルフィ!逃げるっすよ!!」

 

「うん!!」

 

一方、ラウル達はイシュタル・ファミリアに巻き込まれていた。アジ・ダハーカの攻撃がラウル達まで届いた。死の音が近づいてくる。エルフィ達は逃げようにも光はラウル達の目の前までやってくる。

 

「エルフィ!!」

 

瞬間、ラウルはエルフィの身体を押した。先は斜面であり、落ちても死なない程度で避けられる程度だった。

 

「ラウル!!」

 

「後は・・・頼んだ」

 

その瞬間、ラウルの声は途切れた。腕だけが、エルフィの元に落ちてくる。

 

「ラ・・・ウル?」

 

エルフィは目の前の光景に信じられずにいた。エルフィが涙を流す。

 

「ラウルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

 

少女の叫び声が、辺りに響くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘルメスは丘の上で、アジ・ダハーカを見下ろしていた。アジ・ダハーカの攻撃に再び狂気の笑みが浮かび上がる。

 

「ハハハハハ!!やっぱり素晴らしい、ナァ?アスフィ!?」

 

そう言って他の団員達に強要するも全員震え、ただその様子を見ているだけだった。

 

「は・・・はは」

 

アスフィは、ただ絶望に笑うしかなかった。察していたのだ・・・こいつには勝てないと。そしてもう一つ分かっていた。

 

この竜はオラリオを壊すと・・・そう直感した・・・自分達は背負えきれないほどの禁忌を犯したのだ。アスフィ達はそれを突きつけられる。

 

(私達は、もう後戻りはできない・・・)

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

竜の雄叫びが森の中に響くのだった。

 




はい、今回はここまでです。戦闘シーン難しい。ラウルとアイシャはここで退場です。次回は後日談とオラリオ編です。お楽しみに!!


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Chaptear29道化の後悔

こんにちは、今回は後日談のオラリオ視点です。それでは、どうぞ!


迷宮都市オラリオ、ラキアの、メレン襲撃から数時間が経った後、事件が起きた。メレンヘ行った冒険者の殆ど恩恵が消えたのだ。恩恵は神と眷属の繋がり、死ぬときは消える仕組みである。そう、殆どが死んだと言うことだ。

 

「どういうことだ?なんで・・・」

 

神や一般市民が騒ぎ出す。直ぐに神会も開かれ、ラキア王国の事について話された。ガネーシャは自分達の選択に後悔が残り、神会でも普段ならうるさいガネーシャも今回は静かだった。神は眷属を全て奪われ、天界送還をしたものもいたのだ。

 

「ウソダアアアアアアアア!リッソス、ルアン、ヒュアキントスゥゥゥゥ!!」

 

それを知ったアポロンは涙を流しながらうなだれていた。眷属を失ってカサンドラを追わせたことに後悔し部屋にこもっていた様子であった。

 

「嘘よ・・・こんなはずでは」

 

イシュタルも春姫以外を失い、戸惑いを隠せないでいた。冷や汗が、イシュタルに伝わる。

 

「へへ、こりゃあ面白くなってきたなぁ」

 

一方、イケロスはにやつき何やら楽しんでいたのだ。イケロスにとって娯楽優先な為、眷属はただの娯楽としての道具をしているためあまり、関心を持っていなかった。

 

「クソ・・・ッ!まさかここまで強くなっているなんて」

 

輝夜は拳に壁をぶつけ怒りをあらわにしていた。まさかここまで死者が出るなんて思いもしなかったのだ。

 

「このままじゃ・・・」

 

「ああ、恐らくオラリオが火の海になる・・・」

 

アストレア・ファミリアは全員、懸念を見せる。ロキ・ファミリアでも死者が出た事に戸惑いを隠せない状態であった。

 

「直ぐに対策を!!オラリオの市民の避難を促さなければ!!」

 

「ああ、急ぐぞ!!」

 

そうして正義のファミリアは武器を構え、壁に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

罪が刻々と迫ってくることも知らずに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまん・・・すまんなぁ・・・ラウル・・・」

 

カランという氷の音と共にロキはうずくまり泣いていた。

 

ロキは現在、酒場にいた。ロキの行きつけの店、『豊穣の女主人』に来ていた。ラウルが死んだことが分かっていたからだ。アキは見回りにいるためまだ気が付いていない。ロキはアキが帰ってくる前に酒場に走って行った。逃げたのだ・・・今のロキにはアキに会わせる顔もなく、ここに逃げ込んできたのだ。

 

「ロキ・・・」

 

店主のミアただ見守っていた。眷属を失った悲しみから、明るい酒場も暗くなっていた。涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらただ、ラウルに謝り続けていた。

 

「ロキ様・・・」

 

その様子にアーニャ達はただ見守るしかなかった。ロキの声に胸の奥が締め付けられ、アーニャ達も涙を流しそうだった。

 

「ミア母さん・・・」

 

「そっとしておきな・・・酒、いいやつを渡しておいてやってくれ」

 

「分かったにゃ」

 

そう言ってアーニャはソーマ・ファミリアが作っている、『神酒』を棚から持ってきてそれを酒瓶ごとおいていった。

 

「ああ、ありがとうな・・・金、はらっとくで」

 

「良いにゃ、今回は金はいらないにゃ」

 

そう言ってアーニャは立ち去る。ロキはグラスに入っていった酒を一気に飲み干す。

 

「ウウ・・・アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

瞬間、辛くなったのか大声で泣き始めた。ラウルを行かせなければ、もっと自分が慎重になっていたら・・・その後悔がロキの胸に鳴り響く。

 

「うちのせいや・・・うちのせいで・・・・・・・ッ!」

 

ロキは自分の眷属を死なせてしまったことに罪悪感がのし掛かる。今はアキにも会いたくもなかった。会えばきっと自分を憎むだろうから・・・

 

「ロキ・・・」

 

その酒場には子どもに身長でたわんだ果実・・・通称『ロリ巨乳』のヘスティアも来ていた。

 

ヘスティアはヘファイストスに居候していたが、あまりのぐうたらさに追い出されバイトをしながら廃教会に住んでいる女神である。

 

「よぉ、ドチビ・・・なんや、笑いにきたんか?」

 

ロキとヘスティアは犬猿の仲であり、良く口げんかをしていたのだが今回は両者ともそんな気すらも起きなかった。ヘスティアも黙って酒を飲み始める。

 

「そんなことはしないさ・・・その気持ちは僕にも分かる・・・」

 

「・・・・・・・ッ!なんや!お前に何が分かる?!お前は眷属いないくせに!!分かった気をして!!ふざけんなや!!」

 

「・・・・・・」

 

ヘスティアは黙って受け止めていた。ロキの暴言を、悲しみを、後悔も、ただひたすら黙って受け止めていた。泣きじゃくるロキに対してただヘスティアは聖母のように優しく受け止めていた。暫く、怒鳴り声が響いた。酒場、いやまちの周辺はシンッと静まる。

 

「あんたに、あんたなんかに、・・・私の何が分かるって言うんや!!」

 

そうしてロキは思わず、拳を振りあげる。バンという音と共にヘスティアは倒れ込んだ。ロキはハッとしヘスティアに近づいて大丈夫かと声をかける。この時、普通ならドチビと呼んでいたが今回はヘスティアと呼んでいた。

 

「痛いな・・・ロキ・・・流石にきつすぎるよ」

 

そう言ってヘスティアは起き上がる。ヘスティアは優しく微笑みかけていた。

 

「すまん・・・ヘスティア・・・うち・・・」

 

「いいや、きっと僕も同じ立場なら、そうしていたかもだからね・・・」

 

そう言ってヘスティアは手を差し伸べる。ロキはただ、顔をうつむくことしか出来なかった。

 

「ハハ・・・ヘスティアには敵わんなぁ・・・」

 

そう言ってロキは立ち上がる。暫くしていると、何やら騒ぎが起きていそうだった。

 

「なんにゃ・・・街で騒ぎが・・・」

 

そう聞いた途端、何が起こったのか聞いてみることにした。一人の男性が答える。

 

「ロキ・ファミリアの『道化の魔書(ロモワール)』が帰って来たんだってよ!!」

 

それを聞いた途端、ロキは酒場を飛び出した。ヘスティアは金を置き、後を追う。

 

城門を見下ろしている見回りの冒険者は酷く驚いていた。ロキ・ファミリアのレベル3がこんなにもボロボロで帰って来たのだ。腕からは血が流れており、装備は壊れかけ寸前、何かを必死に持っているようで泣きながらそれを抱えていた。

 

「エルフィ!!」

 

仲の良かったアキがエルフィのそばによる。しかし、エルフィはどことなく避けていた。・・・が、レベル4の俊敏に敵わず追いつかれてしまっていた。

 

「・・・アキ・・・」

 

エルフィは今にも消えそうな声でアキに声をかける。アキは治療しようとするもエルフィは涙を流しながら、アキに顔を見せるのをためらっているようだった。

 

「エルフィ・・・?」

 

そうしてアキは布に包まれている何かに目が移る。エルフィはそれを見て涙が更に出てきた。

 

「ごめん・・・ごめんなさい、アキ!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

何かイヤな予感がして、アキは直ぐ布を解き中身を確認した。そこにあったのは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何時も知っている同期の腕だった。

 

「私は・・・守れなかった・・・・約束したのに・・・ごめんなさい・・・ごめんなさぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

大きい声と共に、泣き叫ぶ声が聞こえた。アキはただ泣き崩れ足の力を失っていた。アキは目をつぶる、しかし現実は逃がしやしなかった。現実はアキの身体にそっと抱きつき、つぶやいた。

 

『ラウル・ノールドは死んだ』

 

その声と共に再び、彼の腕が目に入る。

 

「イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

悲痛の叫び声が迷宮都市の壁を突き抜け、街全体に響くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラキア・・・王国・・・・・・・ッ!」

 

ロキ・ファミリアの一室、ロキからラウルが死んだと言うことが伝えられ、オラリオが混乱に満ちていた頃、同期であったアリシアは普段の冷静さを忘れ怒りで満ちていた。何時ものような落ち着きはない・・・

 

「なんでよ!!なんでラウルが死んだのよ!!」

 

幹部でありながらもティオナは怒りのあまり怒鳴っていた。他は落ち着いていたようだったが怒りと悲しみが表情に表れていた。

 

「・・・・惜しい人材をなくしたな・・・」

 

「ああ、僕の責任だ・・・」

 

「今回は、殺すのを第一に考えた方が良さそうじゃの・・・」

 

そうして三人は黙り込む。全員、ラウルを行かせたことに後悔をしていた。そして、油断をしていて大丈夫だろうと慢心していた自分への怒り・・・三人の間に流れていたのはそれだけだった・・・

 

「エルフィから聞いたが、敵は新兵器を使っているらしい・・・」

 

「ああ、気を引き締めないといけないかもな・・・」

 

そう言って三人はアキから届いた腕を見つめていた。ふと、扉からノックがなった。

 

「入ってください・・・」

 

「失礼します・・・」

 

そこにいたのはラウルの母親だった・・・ラウルが死んだことに早馬で駆けつけたのだ・・・ラウルの母はラウルの腕を見つめていた。

 

「では私はコレで・・・」

 

そう言ってラウルの母親はその一言以外何も言わず、部屋を出て行ったのだった・・・フィン達はただ拳を振るわせる。

 

「リヴェリア、ガレス・・・僕達は・・・いつから忘れていたんだろうね・・・」

 

そう言ってフィンは声を震わせる。今までモンスターや闇派閥とは戦ってきた。戦力はあったものの、人数は少なかったためなんとか勝てた。しかし、今回は60万という兵士が襲ってくる・・・しかも新兵器で強化された兵士が・・・その恐怖がフィン達を襲った。

 

コレが戦争だと改めて知ったのだ・・・・

 

「分からない・・・だが・・・いつかは起こる・・・そんな気はしていた・・・」

 

「・・・ああ、今がその時だな・・・リヴェリア、ガレス・・・準備するぞ」

 

「・・・そうじゃな・・・一時の感情にまかせてはおれん」

 

そう言って会議の準備をするのだった・・・その時フィンは拳を振るわせてたのだという・・・

 

 

 




はい、今回はここまでです。次回は、エルフィ以外で生き残った人たちの物語を書きます。それではまた次回、お楽しみに!!


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Chaptear30娼婦と遁走者

こんにちは、今回はダフネと春姫の話です。それでは、どうぞ!


「チッ・・・・・・・ッ!ここは何処だ?!」

 

ダフネ・ラウロスは現在、森を彷徨っていた。あの襲撃から逃げ延びたものの、方角が分からなくなってしまい、道中モンスターを倒しながら木の陰で休んでいた。雨が激しく降り、肌から冷たい感触が流れてくる。

 

「ハハ、あの変態神・・・どんな顔をしているかな?」

 

そう言ってダフネは、少し仮眠を取ろうと目を閉じる。

 

ダフネは元々別のファミリアであった。小さい頃、母親からオラリオのことを教えられ14歳の頃オラリオに着いた。そこでは大切な仲間がいて、毎日が充実していた。時に励まし、時には衝突し、時には馬鹿騒ぎをしていた。

 

だが、それも唐突に終わりを告げる。突然、あの太陽神がやって来たのだ。アポロンはこの頃から有名であり、ダフネは警戒していた。

 

(太陽神が・・・なんのようですか?)

 

そう言ってダフネは睨み付ける。アポロンはのらりくらりと躱し薄汚い笑みでダフネを見つめていた。

 

(ダフネ・ラウロス・・・我がファミリアへ入れ)

 

それを聞いた途端、ダフネは直ぐ断った。離れたくなかったからだ。それからアポロン・ファミリアの団員が日常茶飯事追いかけてきた。ファミリアの団員達も巻き込み、無関係の一般市民まで被害が出るという始末だった。

 

最終手段としてダフネ自身がオラリオを出るということもした。しかし、現実は無情かアポロンは直ぐに追ってきた。

 

それでも逃げ続けた。絶対入りたくない。その一心だった。しかしとある事を耳にした。

 

(アポロンが人質を取っている)

 

その瞬間、ダフネは選択を強いられた。仲間を見捨て、自分は逃げるか・・・或いは大人しく入るか・・・その二択であった。

 

結果は後者であった・・・仲間を見捨てる訳にはいかなかった・・・そう思っていた・・・

 

 

しかしダフネの心は直ぐに踏みにじられた。そう、元の派閥の仲間達は以前からダフネを邪魔な存在として扱っていたのだ。成長のスピードは他の団員より優れていたからだ。それにより・・・他の団員達はアポロンと協力してダフネを追い詰めていた。ダフネはそれに失望していた・・・大切な仲間だと思っていたのに・・・それ一心にダフネは唇を噛みしめた。

 

やがて、ダフネはアポロン・ファミリアに入った。唯一の救いはアポロンはダフネをいれた後、何もせず、ある程度自由に過ごせた事だけだった。アポロンも流石に申し訳なかったと思いコレには気を使ったそうだ。

 

だが、それでもダフネの心の傷は癒えなかった。生きている意味すらもなくなった。足からの痛みがダフネの傷を更に深めていく。

 

「ハハ・・・コレで、終わるのか?」

 

そう言ってダフネは木によりかかったまま、眠ることにした・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ッ!誰?!」

 

瞬間、どこからか音が聞こえた。草木が揺れる音だ。ダフネは剣を構える。やがて、木の陰から一人の少女が出た。

 

「カサンドラ・イリオン・・・ラキア王国か・・・・・・・ッ!」

 

そこには、アポロンが気に入って手に入れようとし、それに返り討ちにあったカサンドラだった。銃をダフネの方に向け、引き金を構えていた。ダフネは立ち上がろうとするも、メレンでの戦闘で足を負傷しており立ち上がることが出来なかった。もう自分に体力が残っていないことに気が付きダフネはもう駄目かと思いながら諦めたように剣を置いた。

 

「ハハ・・・良いよ、どうせウチはもう終わりだ・・・やるならひと思いにやれ・・・」

 

そう言ってダフネは目をつぶる。

 

(ああ、コレで楽になるんだ)

 

そう思い、走馬灯のような思い出がダフネに過ぎった。小さい頃の母の温もり偽りだったとしても楽しかった思い出がダフネに過ぎる。ダフネは目を閉じたまま永遠の眠りにつこうとした・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は・・・?」

 

だが、ダフネは直ぐに目覚めた。銃の音は鳴らず、足に謎の感触があった。目を開けてみると、なんとカサンドラがバックパックみたいなものから包帯を取り出しダフネの足に巻き付けていたのだ。

 

「あの・・・大丈夫ですか?立て・・・ますか?」

 

カサンドラは包帯を巻き終えるとダフネに手を差し伸べた。ダフネは開いた口が塞がらず、カサンドラを見つめる。

 

「何してんのよ、あんた、ウチは敵で貴方を散々追い回したアポロンファミリアなのよ!こんなことしてもあんたにメリットはないでしょ?!馬鹿なの?!」

 

思わずダフネは叫び出す。それもそうだろう。普通、敵であれば警戒するはず、イヤ殺すくらいするはずだ。だが目の前の彼女はそうしない。むしろ自分を助けようとしていた。それにダフネは戸惑う。カサンドラは、そのことを言われた途端少し迷っており間が開くが、途端カサンドラはダフネの肩をのせ、歩き出した。

 

「貴方を捕虜にします・・・捕虜とは言っても拷問はしないので安心してください。」

 

そう言ってカサンドラはダフネを自分達の基地に連れて行く。雨の中、冷たい中カサンドラは歩き出す。

 

「あんた・・・なんで」

 

ふと、ダフネはそうこぼした。カサンドラはそのことに何も言わずただ自分達の基地に歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

薄暗い中、極東風の狐人、サンジョウノ・春姫は逃げていた。恐ろしく、恐怖を具現化した竜から・・・

 

アイシャから背中を押され、春姫は逃げ出す。解放された身から自由・・・そして罪悪感を抱きながら走っていた。

 

春姫は貴族であった。小さい頃は母親から英雄譚など様々なものを読ませてもらった。友達が少ない春姫にとって楽しみの一つであった。そこで出てくるオラリオは憧れがあった。貴族である自分はいけないのだと悟ってはいたものの憧れを持ちいつか自分を救ってくれる英雄が来る。そんな幻想を抱いていた。

 

 

 

だがそれも唐突に終わる。ある日、春姫は神のお供え物を寝ぼけて食べてしまったと言う理由で小人族の男によって売られたのだ。だが途中、モンスターに襲われ盗賊によって捕まえられ、処女だと分かると春姫はイシュタル・ファミリアに売られた。

 

それから暫く、教育を受けながらすごしてきた。ある日、春姫は自分に新しい魔法が発現していた事が判明した。それにより、春姫は将来生け贄になる事が決定された。それを、春姫を妹に思っていたアイシャは失敗させ数日が経った。

 

そこに、ラキアがやって来た。春姫もアイシャ自身がいない間にイシュタルに心配だからついていくことにしたのだが、それを後悔していた。まさか、あんな竜が出てくるとは思ってもいなかったからだ。春姫は何も出来ず逃げた。ただひたすらに逃げ続けた。

 

「あっ・・・・・・・ッ!」

 

だが体力の限界か春姫は木の枝に足が突っかかり転んだ。春姫は起き上がろうにも、体力が残されてはいなかった。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ふと、足音が聞こえた。瞬間、銃を持った黒髪の男がやって来た。装備からしてラキア王国なのは間違えなかった。

 

(アア・・・私は・・・)

 

春姫は死を悟った。もう、起き上がる気も起きなかった。やがて意識が暗くなる。

 

(アイシャ様・・・今そちらに・・・)

 

そうして春姫は意識を落とすのだった・・・・・・・・

 




はい、今回はここまでです。最後の男は誰なのか予想してください。それではまた次回お楽しみに!


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オラリオ
Chaptear31覚悟


ベ「おい作者・・・」

作「はい、なんでしょう」

ベ「なぜこんなに投稿が遅れた」

作「それは・・・その、テストが酷く勉強に熱心になっていました」

ベ「そうか、うん、勉強は良いことだよね・・・でもさ、楽しみにしてくれている読者に待たせるのはどうかと思うんだよな・・・」

作「あの・・・勘弁してください」

ベ「アジ・ダハーカ」

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

作「ぎゃあああああああああ!!」

投稿遅れてしまい申し訳ございません。次回はなんとか早めに投稿します。


「コレは・・・」

 

エルヴィン達はただ息をのんだ。一人の少年が3体の恐ろしい竜と共にいることを目にし、周りには死体が散乱していた。腕や足だけが残っており無残な姿で地面に転がっていた。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ベルは力の使いすぎか倒れる。それと同時に竜達がそれぞれ元の姿に、アジ・ダハーカは顔が三つだけ映った姿になった。

 

「「ベル・・・・・・・ッ!」」

 

ローゼとサシャは直ぐにベルのもとに駆け寄る。アスフィも同行しており、ベルの様子をうかがう。

 

「気絶・・・ですね、他に異常は見られないので大丈夫だと思います」

 

アスフィの言葉を聞きサシャとローゼは安堵する。エルヴィン達は周辺の捜査をすることにした。ベルはサシャ達に懐抱されていたがこの間はまだ目覚めなかった。

 

「驚いた・・・ヘルメス・・・貴様は知っていたのか?あの竜を」

 

「ああ、そのためにこの戦争に協力したんだ」

 

ヘルメスは隠すつもりもなかった。瞳の奥に狂気の気配を感じさせ、それはエルヴィンをも後ずさりさせるほどだった。

 

「なぜ・・・貴様はあの竜を復活させた?」

 

エルヴィンは気になっていた。アジ・ダハーカの力を見て、このままでは全ての冒険者を凌駕するほどの力を得てしまう。それはこの世界の終わりを意味しておりヘルメスにとってもデメリットなはず・・・そう考えていた。しかし・・・

 

「なぜって・・・?それはあの御方が本当の神だからさ!!俺は天界にいた頃から何度も、腐ってきた神を見てきた・・・恥ずかしかったよ・・・堕落した神が大勢いてさ・・・だが、そこにあの御方は現れた!!俺に真の神は誰なのか教えてくれたんだ!!あの御方こそが世界を支配するに相応しい神なんだ!!」

 

もはや狂気的な動機に兵士、ヘルメスファミリアの団員までもがヘルメスに対して鳥肌を立てた。

 

「ヘルメス・・・」

 

エルヴィンはただそうつぶやくと、右手を挙げる。拘束すると言う合図だ。直ぐに兵士達は銃を手に持ち、ヘルメスのほうに向ける。それは、アスフィ達も同じだった。

 

「おやおや、そうかい・・・良いよ、拘束するさ・・・俺の理想は、エルヴィン君にも理解してもらえる」

 

ヘルメスは両手をあげる。空気を察したのか大人しく、ヘルメス達は捕まったのだった。

 

 

???視点end

 

ベルside

 

(イヤアアアアアアアアアアアアア!!)

 

悲鳴がどこからか聞こえた。女の人だ。サミラという人の声だろうかさっきまで強かった女がこうも無残に悲鳴を上げながら死んでいく。暗い中それが耳に響いた。

 

(ラウルウウウウウウウウウ!!)

 

誰・・・?男の名前だろうか・・・彼奴らの仲間だったのかな・・・まあいいや、見たところ敵だったし・・・

 

でもなんだろう・・・胸が痛い・・・

 

ズキズキとなる胸の痛みが僕を襲った。ローゼに向ける感情とはまた違う痛み・・・その痛みは分からなかった。コレがなんなのか、分からない・・・後悔はしていない・・・コレが僕の選んだ選択なら・・・ローゼを守るためなら、彼奴らを殺せるなら・・・この手をいくら汚してもいい。そう思っていた。それなのに

 

「・・・痛い」

 

これくらいの痛み、どうって事もないのに・・・なぜか、苦しい・・・

 

「お目覚めかな・・・」

 

気が付くと僕は暗い中、アジ・ダハーカの目の前にいた。後ろには、たくさんの竜達が僕を見ている。アジ・ダハーカは僕を見下ろして、他の竜は僕に向かって頭を下げている。

 

「まずは我を復活させたことを賞賛しよう・・・おめでとう」

 

アジ・ダハーカはそう言いそれに僕は黙る。僕の目的はローゼを守ることだから、別に賞賛されるほどではない。それよりも僕の目的は他にある。

 

「ふむ、どうやら貴様は復讐だけに生きているようなものか・・・あまり嬉しくはなさそうだ・・・それとも、あの女か?」

 

アジ・ダハーカも察したのかそのまま黙り込んだ。しんとした空気が辺りに流れ込んでいる。

 

「ベル・クラネル・・・イヤ、我が相棒よ。いずれ、お前はこの世界を滅ぼすほどの力を手に入れるだろう・・・その力を受け入れる覚悟はあるか?」

 

アジ・ダハーカは僕にそう問いかける。世界をこの手で滅ぼす力、その力が僕にあると思い知らされ、その大きさに僕は手が震える。僕は・・・この力を持つに値するのだろうか・・・何かの拍子に暴走するのではないか・・・それにより僕は不安に押しつぶされそうになる。

 

「不安か?」

 

「・・・うるさい」

 

アジ・ダハーカはそう言って僕は睨み付けながら返す。アジ・ダハーカは、ただ黙っているだけだった。

 

「この力さえあれば・・・ローゼを守ることが出来るんだね?」

 

「・・・ああ、そうだ」

 

そう言って、アジ・ダハーカ僕の隣に立つ。包み込むような声で、僕の横に顔を近づける。

 

「そしたら、セレンを・・・異端児を救えるんだね・・・」

 

「そうだ・・・と言いたいがそれはお前次第だ」

 

そう言って僕は黙り込んだ。頭の中では、まだ彼女達の・・・敵の悲鳴が耳に響いている。だけど・・・コレで全てを救えるなら・・・もう二度と失わないですむなら・・・僕は・・・僕は・・・・・・・ッ!

 

「ああ、受け入れるさ・・・頼むよ・・・僕の相棒(バディ)

 

「・・・・・・クククッ!そうだな・・・改めて我が相棒(バディ)、ベル・クラネル・・・受け取るが良い。我らの終焉の力を!!」

 

そうして僕は赤い光に包まれたのだった。僕が殺した彼女達の悲鳴は、頭の中ではもう何も響かなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ン・・・・」

 

「ベル・・・ッ!」

 

「良かった・・・目が覚めたのね」

 

気が付けば僕は砂浜にいた。下には布が敷いてあり、上にはテントの天井が見える。横にはランプも置いてあり、サシャお姉ちゃんとローゼがいた。

 

「ベル、もう心配したんだから!!」

 

そう言って、ローゼは僕を抱きしめる。次いで、サシャお姉ちゃんも僕を後ろから抱きしめる。

 

「良かった・・・本当に良かった」

 

サシャお姉ちゃんはそう言って涙を流しながら僕を抱きしめる力を強くした。

 

「ローゼ・・・サシャお姉ちゃん・・・」

 

「どうしたん?」

 

僕はそっと口を開く。サシャお姉ちゃんとローゼは泣きながら僕を見つめていた。

 

「僕・・・絶対守るから・・・異端児もローゼも・・・サシャお姉ちゃんも、サシャお姉ちゃんの仲間も・・・守ってみせるから」

 

そうして僕は誓った。恥ずかしながらも顔を赤くして僕はうつむく。

 

「それはこっちの台詞よ・・・私も貴方のこと守るから・・・」

 

「そうやで・・・それに・・・コレは秘密な・・・他の皆には悪いけど・・・ベル、お前が一番特別や・・・絶対に死なせたりはしない・・・そのためにならどんなことでも私はやるで」

 

そう言って暫く間が開くと僕達は再び笑い出した。明るく、家族のような感じだった・・・僕とローゼが夫婦でサシャお姉ちゃんは僕のお母さん・・・そんな姿が目に浮かぶ・・・僕とローゼの間で子どもが出来たら、おばあちゃんになるのかな・・・そんなような感じだった。それをサシャお姉ちゃんに言ったら、こめかみをやられた。痛かったけどなんか嬉しかった。まるで家族のようで・・・

 

僕はこの日常を守るためならなんにでも出来そうだった、・・・この日常を守る・・・絶対に・・・

 

「ねぇ・・・ローゼ、サシャお姉ちゃん・・・」

 

「うん?なんや・・・どうしたん?」

 

「どうしたの、ベル?」

 

二人は優しい笑顔で僕を見つめる。

 

「あのさ・・この戦争が終わったら三人で旅しよう・・・そして家を見つけて、三人で暮らしたい・・・」

 

僕は少し恥ずかしく、うつむいた。ローゼとサシャお姉ちゃんは少し恥ずかしくなったのか顔を赤くする。

 

「うん・・・そうだね・・・コレが終わったら、一緒に暮らそう」

 

「私も、同じや。地獄だろうがなんだろうが一緒にいくで!!だから・・・死ぬなよ・・・ベル」

 

「うん、ローゼも、サシャお姉ちゃんもね」

 

そうして僕らは、星が見守る中、互いに生き残ることを誓い合ったのだった。

 




はい、今回はここまでです・一応、遅れた分頑張りますので皆さん気長に待っていてください・・・ですが勉強のほうもあるので投稿も遅れるかも知れません。すいません。次回もお楽しみに!


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Chaptear32そして少女は救われる

こんにちは、今回はカサンドラの話です。それではどうぞ!


ラキア王国の軍艦、『マルテリオス・ラキア』・・・大きな外見に外には海で陸を制圧できるほどの威力を持つ大砲。中身は食堂、兵士の寝室、操縦室、牢屋、会議室など様々な部屋が揃っていた。食堂は全員が一気に食べられるような広さに、操縦席は最高責任者だけが操縦するのを許され、会議室は、アレスとマリウスなどの指導者が立つ場所やテーブルに地図があり牢屋に関しては捕虜を閉じ込めておくのに使うのだ。牢屋の中は、少し暗く、だが清潔感があった。人体に疫病が蔓延しないように船内では掃除は徹底しているようだ。エルヴィン曰く、古き友人が潔癖症な為、掃除には少し細かいらしい。サシャも何やら過去の記憶から掃除には熱心になっていたという。静かな雰囲気が漂っていた。

 

「えっと・・・食事・・・です」

 

「・・・・」

 

そんな中、一人の青髪の少女、カサンドラは捕らわれている赤髪の少女、ダフネに食事を持ってきた。ダフネの元に届いたのは普通のシチューとパン。だが、骨付き肉があり牢屋にしては少し豪華であった。それにダフネは黙って受け取りそのまま頬張った。

 

カサンドラは食事を届けた後見張りを任されているため、檻の前にある椅子に座っている。よく見たらレベル1がレベル2の冒険者を捕らえているのはとてもシュールな光景だ。通常、レベルは一つ上であれば何か特殊なスキルがあることを除き圧倒できる強さだ。

 

だが、今カサンドラは銃というモノを手に持っている。この世界では銃という物は存在しない。更に弾の威力はレベル5だった物が今ではレベル8までいけるとのこと。火薬の中に魔石を混ぜることによる威力上昇らしい。そのせいでレベルが5の冒険者も捕らえられたらなかなか手も出せないのだという。軍艦、銃、大砲・・・人類の技術はハイエルフの魔法・・・イヤ、神と同等の力を手に入れようとしたことが思い知らされた。

 

さて、その話はここまでとしよう。少し静寂によって辺りが包まれる。聞こえるのは食器の音、そして咀嚼音そして、ランプが揺れる音だけであった。明かりは少なく、見張りと捕虜も眠りについている者もいた。しんとした空気が辺りに漂う。

 

「どうして・・・ウチを助けた・・・」

 

ふと、ダフネがあの雨の中カサンドラが自分を助けたことに疑問を投げかける。カサンドラの姿はどこか悲しげだった。

 

「あんたは・・・私が憎いはずだ・・・ウチラのファミリアでようやく訪れたオラリオにも離れなくちゃいけなくなった・・・あんたは私を殺したいほど、アポロン・ファミリアが憎いんじゃないの?」

 

ダフネはただ、カサンドラに自分の疑問を投げかけられる。カサンドラはそのことに身をかがめていた。少し方を震わせ、息づかいも僅かに荒くなる。

 

「後悔・・・しているんです・・・私がこの戦争に参加したことを」

 

カサンドラの言葉にダフネは目を丸くする。カサンドラは涙拭みながら話を続けていた。

 

「私は・・・最初は自分を助けてくれるのに、何も出来ないのがイヤだったから参戦したんです。辛い訓練もあり、ローゼさん達からも止められました。私はただ・・・守られているだけのお姫様にはなりたくなかった・・・そんな傲慢な思いが当時の私にはありました・・・」

 

そうしてカサンドラは、銃を手にかけ、そっとなでる。カサンドラは震える声で続けた。

 

「でも、メレン上陸作戦を見たとき・・・軍艦の大砲の音と共に自分の過ちに気が付いたんです!あの悲鳴が今でも耳に残っているんです・・・その惨劇はダフネさんも知っているでしょう・・・」

 

「アア・・・」

 

ダフネは、あの惨状が今でも鮮明に覚えていた。船から出される砲台の音、女も混じる悲鳴、そして血が混じった赤い砂煙・・・メレンは地獄となっており一般人が見たら吐くほどだろう・・・いや、確実に吐いている。内臓がもろむき出しの死体、地面を染め上げている赤い血・・・そして何より残酷だったのが、銃弾で死んだ人間の死体が踏みつけられる事だった。その死体を見てみれば脳もむき出しだったほどだ。

 

「私も、ここまで生きる為に何人も殺しました・・・確かにアポロンファミリアには入りたくはありません・・・でも、そのせいで多くの人が死んで・・・今はコレで本当に良かったのかなんて思うほどあの感触が残っています。特に小人族の男の叫び声と怒号が忘れられません」

 

そう言ってたえきれなくなったのか、カサンドラの膝に水滴が落ちていった。暖かく、それで冷たい水が・・・

 

「あんた・・・」

 

ダフネはそれを見て戸惑っていた。ここにいるのは敵同士であった少女・・・だが、少女はただ守られるだけではイヤ・・・それだけの思いで参加した。だが、現実はまた違った。

 

17歳の少女には速すぎた罪であったのだ・・・彼女には自分が殺した者の叫び、怒りが彼女の耳に伝わる。

 

「・・・・・・・」

 

「ダフネさん・・・?」

 

ふと、ダフネは思わずカサンドラの頭に手を乗っける。そして慰めるようになで始めた。

 

「ウ・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

カサンドラは耐えられなくなったのか、大声で泣き始めた。檻を通してダフネはカサンドラを抱きしめる。それに気が付き他の看守、捕虜もいたが看守が、他の捕虜に文句を言わないようにしていた。看守はその空気を読んでただ見守っていることにしたのだ。

 

「私は・・・・・・・ッ!私は・・・・・・・ッ!」

 

「大丈夫だよ・・・悪いのはあの、変態神だから・・・貴方は何も悪くない・・・・・・・ッ!」

 

そうして、なんも根拠もない理論を出しながら泣いているカサンドラを抱きしめる。17歳の少女は同い年である少女に救われたのだ。それも敵であった少女に・・・カサンドラの泣き声は暫く続いたのだった・・・

 

「ありがとうございます・・・お陰で楽になりました・・・」

 

そう言ってカサンドラは自分の顔を拭い、再び椅子に座る。捕虜の就寝時間はとっくに過ぎていた。

 

「良かった・・・元々あんたがこうなってしまったのはウチラのせいだから気にしないで」

 

「あの・・・」

 

「ん・・・?どうしたの?」

 

カサンドラは突然、顔を赤くする。就寝時間も過ぎているため早く寝なくてはならないのだが何やら言いたそうだった。やがてカサンドラは勇気を振り絞ったのか次の瞬間、突然顔を上げる。そして・・・

 

「これからダフネちゃんって呼んで良い?」

 

そうしてカサンドラは顔を赤くしながらダフネに向かって敬語ではない、ただの女の子のカサンドラの姿だった・・・

 

「ア・・・イヤだったらやっぱり良いです」

 

そう言ってカサンドラは次の看守に変わるため、牢屋を後にしようとする。

 

「ふふ、カサンドラって見たまんまだね」

 

そう言ってダフネは静かに笑い声を出す。カサンドラはそれに顔が茹で蛸のように赤くなかった。ダフネはそれに構わず笑い続けた。

 

「良いよ、そう呼んで・・・ウチには敬語を使わなくても良いよ」

 

そう言って、ダフネは檻越しからカサンドラの頭を撫でる。そして・・・

 

「うん、よろしくね!ダフネちゃん!!」

 

そう言ってダフネは笑みを見せた。その様子をサシャを含む看守達が安心するように見守っていたのだった。

 




はい、今回はここまでです。次回はオラリオ襲撃を書こうかと思います。ちなみに軍艦の名前はそこまで深くありません。それではまた次回!



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Chaptear33正義の衝突

皆様、大変お待たせいたしました。遂に33話からリメイク版を出すことが出来ました。長く待たせてしまい申し訳ございません。次回から再び投稿を始めます。楽しみにしている方々今まで、待たせてしまって申し訳ございません。これから再び、投稿していくのでよろしくお願いします。

注意(37話くらい)

原作キャラが死にます。苦手な方は曲がれ右。


オラリオの、町並みは恐怖によって包まれていた。メレンがラキアに占拠され、それに向かった連合軍の殆どが戦死して生き残った者も捕虜にされ帰って来たのはエルフィだけという絶望のさなか空から船が飛んできたとのエルフィの報告があり、オラリオにいるアストレア・ファミリアやガネーシャ・ファミリア、ロキ・ファミリアは壁周辺の見張りを交代制でしている。指揮官はフィン、リヴェリア、ガレス、シャクティ、輝夜と交代性だ。本来、ラウルも加わるはずがそれはもう実現できいのだ。そのため負担も大きい。そしてファミリアの団員が死んだことに対する怒りが城壁を包み込んでいた。

 

「ラウル・・・」

 

アイズ・ヴァレンシュタインはそんな中、一人花束を持っていた。花はシロツメクサで所々にクローバーが入っている。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

アイズは花束を置くと、唇を噛みしめ血を流し、手を震わせていた。エルフィから聞いた話によればラウルは謎の竜種のモンスターに殺されたと伝えられた。

 

アイズ・ヴァレンシュタインは元々、英雄に憧れた少女であった。幼い頃、母親に読ませてくれた英雄譚でアイズは毎日がそれで満たされていた。アイズはこの頃、今とは比べられないほど笑顔であった。

 

ある日、アイズは父親と母親がキスをしているところを見た。アイズはそれが羨ましく自分にもして欲しいとねだり父親の近くに来た。

 

それに父親は、「それは出来ない」と言い、アイズの頭を撫でた。父親はアイズの頭を撫でながらキスは自分の英雄にしてもらう物だと伝えられ父親はアイズに自分の英雄を探せと言っていた。アイズはそれに頬を膨らませながら父をポカポカと叩いた。それにアイズの父親は笑って受け止めていたらしい。とても・・・幸せな日常であった・・・

 

 

 

だが、それも唐突に終わる。

 

ある日、一体の竜によって家族全員が殺された。家族は、彼女の目の前で殺されたのだ。

 

黒い鱗、右目の傷、禍々しい口・・・『隻眼の黒龍』によって・・・

 

アイズに英雄は来なかった。誰も助けてはくれなかったのだ・・・間一髪で、自力で逃げ、助かったのだがそこにモンスターの憎しみが生まれた。特に竜種に・・・そうして誓ったのだ・・・必ず仇は取ると・・・両親を取り戻すと・・・

 

それからロキ・ファミリアに引き取られ、7歳の頃冒険者となった。その頃から強くなることだけに固着していたアイズはダンジョンに潜り込み感情をも消し、憎しみにあふれモンスターを殺した。この頃のアイズは『人形姫』と呼ばれ、人々から少し気味悪がられていた。だが8歳になってからレベル2になり、一気に注目を浴びた。だが、彼女の感情は変わらなかった。唯々、モンスターを突き刺し、切り刻み、憎しみで動いていた。

 

そんなアイズの元に現れたのが、ラウルとアキであった。彼らは、アイズにどうしても笑って欲しく、アイズに歩み寄りと遊んだり話したりしていた。最初は心を開かないアイズであったが、次第に受け入れるようになり笑えるようになったのだ。ラウルは掛け買いのない仲間であり、最高の友であった・・・

 

だが、それすらも奪われる。ラウルは竜によって殺された。よりにもよって自分が憎んでいる竜種のモンスターに・・・アイズには黒龍に家族を殺されたこともあり、怒りが抑えきれなかった。再び少女は黒い炎に覆われる。

 

「何時まで・・・私の大切なものを奪い続ければ気が済むの・・・」

 

そう言ってアイズは花を置いた後、怒りで拳を振るわせる。そこには血が流れていた。

 

「アイズ・・・」

 

リヴェリアとマルコはそれをただ見ているしか出来なかった。アイズは少し涙を流した後、自分の配置場所に戻ろうとしていた。

 

「待っていて・・・仇・・・取るから」

 

そう言って少女の黒い炎は燃えさかる。僅かに白くなった彼女は何処にもおらず、黒い彼女が再び戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェルズから連絡を取ったが・・・まさかこんなことになるなんてな」

 

ここはダンジョンの20階層、未開拓領域とも呼ばれるこの空間で、複数のモンスターが人の言葉を喋っていた。

 

「しばらくは、ここでじっとしろとフェルズがな・・・」

 

「まぁ、そうだろうな・・・地上の人間達も恐らくだが私達に深い恨みがあるだろう・・・」

 

そう言って、ミノタウロスのアステリオスは腕を組み悩んでいるように頭を抱えた。

 

「なんでこんなことに・・・おれっち達は・・・こんなこと望んでいないのに・・・」

 

蜥蜴人(リザードマン)のリドは、悲しそうな瞳で座り込み話す。

 

リド達はセレンと同じ異端児(ゼノス)であり、ダンジョンの中で隠れ家を見つけ、暮らしてきた。もちろん、モンスターなので冒険者に殺されたり、ダンジョンも異端児達の存在に気づいているのか、ほかのモンスターに襲われる。特に、イケロス・ファミリアには自分達の同胞を捕らえられ奴隷のように扱われ、数も減ってきた。だが、それでも彼らは逃げるだけだった。いつか、日の光を浴びれることを信じて・・・

 

「ナニヲ言ッテイル!コレハ好機ダ!今のウチに、地上の人間ヲ殺せば・・・」

 

「グロス!!」

 

そこに片言な言葉を話しながら石竜(ガーゴイル)のグロスは大声で、異端児達に呼びかける。だが、それはリド達によって止められた。

 

「リド・・・いい加減気づけ!イママデ我々は多くの同胞を殺され、ツレテカレ、酷い仕打ちをウケテキタ!ソレガ、ツイニ報ワレルトキがキタノダ!」

 

「グロス!いい加減にしろ!!コレじゃあ、死んでいった仲間達を踏みにじる行為に値するんだぞ!」

 

「黙れ、アステリオス!!人間と共存ダト?フザケルナ!!イママデドレホドノ同胞が殺サレタ?!ドレホド、我々の同胞がクルシンダ!?リド、貴様も本心はソウナノダロウ!!」

 

「グロス・・・・・・・ッ!テメェ!!」

 

耐えきれなくなったのかリドはグロスと殴り合いを始めた。それに気が付いたアステリオス達は直ぐに止める。だが二人の怒号は止まらなかった。

 

「レィ・・・怖いよ・・・」

 

「よしよし、大丈夫ですよ」

 

そこに新人の竜女(ヴィーヴル)、ウィーネがレイに寄りつく。リド達の怒号でまだ幼い精神のウィーネにはリドとグロスの殴り合いに恐怖を与えたのだった。

 

暫くして、アステリオスはグロスを見詰める。やがてアステリオスは口を開いた。

 

「グロス・・・憎むなとは言わん・・・だが、決して忘れるな。こんな方法では、我々の真の目的・・・『異端児と人間』の共存には達成しないと・・・」

 

そう言っていくらかの異端児はグロスの元を離れる・・・グロスは暫く経つと、周辺にあった石を投げた。

 

「クソ・・・ッ!」

 

そう言ってグロスは座り込んで悪態をつくのだった。だが、グロスに共感していた異端児はそのまま残っていたのだった・・・

 

 

 

 

一方、オラリオではロキ・ファミリア含む、オラリオの冒険者は今日も壁で見張りをしていた。

 

緊急時のため、ダンジョンはレベルによって日帰りで出来る範囲までと限られており、そこに見張りもついていた。

 

「来ないね・・・」

 

フィンはそう言って親指をなめる。エルフィから空飛ぶ船のことを聞いてから、フィン達は空を警戒し、飛龍も何体か調教していた。いざとなれば攻め落とすためだ。どんな高い壁も空を飛んでいては意味がない。なんとしても打ち落とそうとしていた。

 

冒険者達に緊張が走る。今日も殺伐とした空気だった。

 

「来ないな・・・今日もか?」

 

「フィン、時間だ」

 

「ああ、そうか」

 

そう言ってフィンはため息をつく。やがて交代制にリヴェリアがやって来た。フィンは壁から降りようとする。

 

 

瞬間、どこからか爆発音が聞こえた。全員、何が起きたかと爆発が起きた場所まで向かおうとする。

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

「な・・・?!」

 

だが、その瞬間別の方角で爆発音が聞こえた。フィンは急いで爆発地点まで行こうとするが全方向で爆発が起きた。

 

「何が・・・・・・・ッ!」

 

「リヴェリア!!」

 

「『舞い踊れ大気の精よ、光の主よ。森の守り手と契りを結び、大地の歌を持って我等を包め。我等を囲え大いなる森光(しんこう)の障壁となって我等を守れ--我が名はアールヴ』」

 

「『ヴィア・シルヘイム』!」

 

フィンの指示により、リヴェリアが魔法を展開する。壁の一部にある結界が魔道士達を守る壁となった。流石の謎の爆発もリヴェリアの魔法には敵わなかったようだ。爆発の原因に見える鉄の塊は弾き飛ばされる。

 

「助かった・・・でも一体何が・・・」

 

「分からない・・・だが、コレが続けば」

 

そう言って、リヴェリア達の顔が曇る。例え、リヴェリア達だけが守れても壁に穴が開けられては、敵の侵入を許すようなことになってしまうため壁だけは壊すわけにはいかないのだ。全員が頭を悩ませる。

 

「・・・・・・・ッ!なんだ?!」

 

その瞬間、雷のような二つの光がフィン達の目の前に現れた。

 

「・・・・・・・ッ!なんだ?!」

 

「この光・・・まさか」

 

エルフィとマルコはそれを見て身体が震え始めた。そう、二人は見たことがあるからだ・・・それは二人、特にマルコにとって忘れがたい物だった。

 

「巨人だ・・・」

 

「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」」

 

顎の巨人が結界の目の前に現れた。全員がその姿に恐怖を覚える。普通のモンスターより圧倒的にでかい身体、そして強靱な顎と爪・・・全員がその姿を恐れたのだった。

 

 

 



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Chaptear34 開戦

「コレが、ヴィリー・タイバーが言っていた『装甲列車』という物か・・・凄まじい威力と共に線路があれば一気に機動性も上がる・・・翻弄するには十分な代物だ」

 

エルヴィン・スミスはヴィリー・タイバーによって開発された兵器、『装甲列車』を丘の上で見つめながら、そうつぶやいた。

 

装甲列車は、前世の記憶を持つヴィリー・タイバーによってヘルメスに作ってもらった兵器である。元々、対巨人用に作られた物であり鎧をも粉砕する力を持っているため中性レベルの壁など当てれば大損害を出すほどであった。

 

「にしても、ヘルメスからは聞いてはいたが・・・フィン・ディムナ・・・知力は俺並だな・・・」

 

そう言って、エルヴィンは壁のほうを睨む。同時に少し笑みがこぼれていた。

 

「面白い・・・フィン・ディムナ・・・俺とお前、どっちが上か決めようじゃないか!」

 

そう言ってエルヴィンは次の指示に移行する準備をしていた。

 

壁のほうでは、現在苦戦を強いられていた。装甲列車の砲撃は、普通の徹甲弾でも歯がたたないほどの堅さ、威力は鎧の巨人を簡単に砕く威力・・・それを魔石などで改良しているため威力は上級冒険者が撃つ魔法並の威力である。

 

「こんなのまで隠し持っていたなんて・・・」

 

「それに、あのモンスター・・・本当に胸に魔石がない。新種か?」

 

「どちらにしろ、このままでは我々は全滅だ・・・なんとかせねば・・・」

 

そうして、フィン達はそれぞれ戦闘態勢に入る。エルフィからは他にも新兵器があると聞いており、他にも何かが来ると懸念があったからだ。

 

エルフィに聞けば空飛ぶ船という物があるらしく、それを使われれば壁なんか意味が無いため、飛竜を各自用意していた。

 

「何か・・・弱点は・・・」

 

フィンが親指をなめながらそうつぶやく。このままでは全滅は免れない・・・何か策はないかと、必死に考えていた。

 

「団長!僕・・・彼奴らの弱点を知っています!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

そこにマルコが大声で叫びながらフィンに近づく。

 

「なんだと?!お前、知っているのか!」

 

「はい、僕達は彼奴らと何度も戦って来ましたから」

 

そう言って、マルコの記憶が蘇り始める。仲間とすごした思い出、そして裏切られた記憶・・・それが今、全部マルコの頭に入ってきた。

 

「マルコ?!大丈夫か?!」

 

それに影響しているのかマルコはその場で吐き始めた。アリシア達、マルコの同期が心配して駆け寄る。

 

「大丈夫・・・です・・・とにかく、あのモンスター・・・巨人はうなじが弱点です・・・うなじを大きく損傷すれば・・・」

 

そう言って、マルコは巨人達に指を差す。

 

「マルコ・・・どうして知っているの?」

 

そう言って、アイズ達はマルコを見つめるがマルコは自分の双剣を持ち、巨人に立ち向かうため駆け抜けるのだった。

 

「総員、巨人のうなじを狙え!そうすれば、そいつらはモンスターと同じように消滅する!」

 

((・・・・・・・ッ!))

 

(まさか・・・)

 

(向こうにもいたと言うことか・・・なら)

 

「取った!!」

 

アイズ達が首もとまで近づく。そうして、全員うなじを削ごうと刃を構えユミル達顎の巨人二体に向かって飛び上がりうなじまでたどり着き削ごうとした。

 

「・・・・・・・ッ!刃が通らない」

 

だが、その瞬間水晶のような石がうなじを守った。

 

アイズ達はユミル達のうなじを攻撃するがばれてしまった以上、うなじを硬質化し自分の身を守ったのだ。

 

「ヌオオオオオオオオオオ!」

 

「――――――ァ」

 

そうして、アイズ達は離れるが一部の冒険者が顎の巨人のスピードに追いつかれ爪で体中がバラバラになった。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

アイズ含む上級冒険者が距離を置こうにも、顎の巨人はアイズ達に迫ってくる。

 

「速い・・・・・・・ッ!」

 

アイズは屋根に飛び上がるがマルセル巨人(以降マルセル)は自身の爪で家の壁を伝って上る。

 

「・・・・・・・ッ!なら!!」

 

そうしてアイズは何か思いついたように屋根から降りる。

 

(・・・なんだ?)

 

マルセルがそれに気が付き、建物の頂上までついたところでもう一度アイズを追おうとする。

 

「ハァ!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「隙ありぃ!」

 

そこに褐色色の肌を持つアマゾネス、ティオネ・ヒュリテとティオナ・ヒュリテがマルセルの腕を愛武器で切る。マルセルはすぐに腕を再生しようとしていた。

 

(・・・・やはり硬質化しているから・・・)

 

「やっぱりそのようだね・・・」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

そう言ってアイズは屋根に飛び移り、マルセルがいる建物についた。そして、アイズはマルセルの足を切る。

 

「アアアアァァァァ!!」

 

マルセルは足を切り裂かれ、声を上げる。

 

「こうしていれば・・・いずれ、再生に手一杯でその結晶?も解けるでしょ?」

 

そう言ってアイズは表情を変えず、目、腕、足、顎の筋肉を切る。それに、他の団員達も少し引いていた。

 

「ウオオオオオッッッォォォォォオ!!」

 

「させるか!」

 

そこにユミル巨人が助けに入ろうとするが、フィン達によって遮られる。同時に腕と足が切られた。

 

(クソ・・・・・・・ッ!)

 

二体とも身動きが取れない状態だった。その隙にフィン達は腕や足を切り裂く。やがて、腕が全く生えなくなってきた。硬質化も弱くなってくる。

 

「どうやら、終わりみたいだね・・・」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

マルセル達は暴れるが。だが、腕も足が無い状態で動けない状態だった。その隙にうなじに、フィンは槍を突き刺す。

 

「アアアアァァァァアアアアアアアア!!」

 

それはユミルの身体にも刺さり痛みから悲鳴が聞こえる。

 

「本当のようだね・・・マルコには後でじっくり聞かないと・・・」

 

そう言って、フィンは槍を構えた。躊躇もせずうなじを削ぐ気だ。そう直感した。

 

 

「ウアアアアアアッッッッアアアアァァァァ!!」

 

「チッ!うるせえな」

 

傍にいたベートはそのまま、ユミル達の頭をふむ。それは憎悪もあり、怒りがその足に伝わった。フィン達はとどめを刺す準備をした。

 

「それじゃあ、さようなら・・・」

 

そう言って、フィン達は槍などを突き刺しそのまま肉をそぎ落とした・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「総員、離れろぉ!」

 

その瞬間、何かが地面に刺さった。フィン達はそれに気が付き急いで離れる。

 

「ぎゃあああああああああ!!」

 

だが、フィン達が離れた途端地面に刺さっていた物が雷のような音と共に爆発した。一部の団員達は爆発に巻き込まれそのまま燃えていった。

 

「何が・・・・・・・ッ!」

 

「グァ・・・・・・・ッ!」

 

そこに他の団員達が頭から血を流し倒れる。更に何かが刺さる音が聞こえた。

 

「・・・・・・・ッ!アレは・・・」

 

「ウソだろ・・・?」

 

マルコ含むロキ・ファミリアはその姿に驚きを隠せなかったのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせましたね、ユミル、マルセル!」

 

「後は、私達にまかせてください!!」

 

そこには二つの剣を持つ者と銃を持ち、所々変わった槍を持っており・・・そして、胸にはラキア王国および自由の翼の紋章をつけた兵士だった・・・

 

 

 

 



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Chaptear35 襲来

「ウソだろ・・・?立体起動装置?」

 

辺りが混乱している中、マルコは唖然と彼らを見つめる。そこには、自分が知っている武器がそこにあるからだ・・・いつでも自分にお世話になって、そしてその恐ろしさを何より知っている武器が・・・

 

「なんでここに・・・」

 

「マルコ、危ない!」

 

「え・・・?」

 

だが、彼に傍観する時間は彼に与えなかった。彼のそばに、あの爆発する槍が突き刺さる。アリシアが直ぐにそれに反応し、マルコをそこから引っ張り出し、物陰に隠れる。その瞬間再び雷の音と共に、爆発する。

 

「・・・ッ!馬鹿!ボーッとしている場合じゃないわよ!!」

 

「アリシアさん・・・」

 

「・・・・その様子だとあのことを知っているみたいね・・・」

 

「ハイ・・・全てではありませんが」

 

マルコはうつむきながらそう言葉にする。

 

「ともかく・・・このままじゃ、全滅よ!とりあえず、団長達と・・・」

 

そう言って、アリシアは物陰から出ようとする。その時だった・・・

 

「――――ッ」

 

「え・・・?」

 

急に轟音がマルコの耳に入った途端アリシアが頭に血を流しながら倒れたのだ。幸い、少し掠っただけのようだった。驚いただけだったのか、後ろに倒れる。

 

「アリ・・・シア・・・さん?」

 

マルコは一瞬何が起きたのか分からなかった。数秒間、動くことが出来なかった。

 

「アリシアさん!しっかりしてください!!」

 

マルコはアリシアの目を覚まさせようと肩を揺らす。暫くしてアリシアは目を覚ました。

 

「大丈夫・・・でも、今の何?見えなかった・・・」

 

そう言って、アリシアは自分の手に持っている包帯を頭にくくりつける。少し彼女の頭に痛みが現れる。

 

「アリシアさん、マルコさん、大丈夫ですか?!

 

「レフィーヤさん!」

 

瞬間、マルコは危ないと感づき直ぐにレフィーヤの身体を引き寄せ、物影に身を隠す。やがて再び轟音が聞こえた。

 

その地面から小さい穴が開いた。よく見ると、小さな金属の弾が地面にあった。

 

「コレは・・・・まさか」

 

マルコは、ともかくそばにある物を運び入り口をふさいだ。

 

「アレって・・・」

 

「多分だけど・・・弓・・・違う、まさか」

 

そう言って、マルコは少しある隙間から覗く。

 

「やっぱり・・・」

 

マルコが見た先には、前世にあった銃という武器を持った兵士がいた。予想より遠くにいるため顔は分からない。

 

「レフィーヤさん・・・あそこに狙撃手がいます・・・あそこに魔法を打てますか?僕が囮になります・・・」

 

マルコは僅かな隙間から、指を差す。レフィーヤはマルコが指を差す方向を凝視する。そして位置を確認する。

 

「でも、危ないですよ!」

 

「大丈夫です・・・それに、あの兵器のことは僕が一番理解できています」

 

そう言って、マルコは武器を構える。自分の剣を構え、タイミングを見計らう。

 

「分かった・・・」

 

「アリシアさん?!」

 

「でも、私も行くわよ・・・まかせっきりは許せないからね」

 

そう言って、アリシアは武器を構え準備をしていた。レフィーヤは心配そうに見つめる。

 

「アリシアさん・・・」

 

「レフィーヤ、私達の命・・・貴方に預けるわよ」

 

それを見て、アリシアはレフィーヤの肩に手をかける。レフィーヤは暫く迷いが出来る。

 

「レフィーヤさん・・・」

 

マルコは少し戸惑う。プレッシャーという物は、とても重いものである。それは本来の力だって出せない・・・なんとかフォローをしようとする。

 

「分かりました、マルコさん、アリシアさん・・・死なないでくださいね」

 

そう言って、レフィーヤはマルコの背中にカツを入れる。マルコとアリシアはそれに安心したように頷いた。

 

「それじゃあ・・・行くよ!!」

 

そう言って、二人は戦場に向かう・・・信じる仲間と共に・・・

 

「・・・助かった・・・サンキュウ、カサンドラ」

 

「無事で何よりです・・・それより・・・」

 

「ああ、絶讃ピンチだな」

 

カサンドラはマルセルとユミルを巨人の身体から引き離した後、立体起動装置を構え、建物の頂上から見下ろす。正直、マルセル達も想定外だったそうだ・・・

 

「時間は・・・」

 

「私達だけでも手一杯です・・・となれば・・・」

 

そう言って、カサンドラは小さな銃を手に持つ。そして、片耳を抑え引き金を引いた。

 

「なんだ?」

 

フィン達は煙に紛れながら頭上に出る緑色の煙を目にして、何が起ききるか警戒して、武器を構える。

 

「・・・ッ!また巨人化・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間、再び雷が降ってくる。フィン達は、直ぐに武器を構え始めた。全員、雷が落ちた方向を見つめる。

 

「な・・・?!でかい・・・・・・・ッ!」

 

全員、その大きさに驚きを隠せないようであった・・・大きさは15m・・・モンスターの超大型を遙かに上回っている大きさ・・・それに、白い鎧を身に纏っており顔が何やら騎士のような巨人、『戦槌の巨人』が現れた

 

「こんな・・・・・・・ッ!」

 

「なんだ?!」

 

フィン達が状況を飲み込めない中、戦槌の手に光が集まってくる。やがて、それは徐々に大きくなっていった。

 

「総員、避けろおおおおおお!!」

 

フィンは全員に撤退命令を出す。その瞬間、巨大なハンマーがロキ・ファミリアに向かって振り下ろされた。

 

「ぎゃあああああああああ!!」

 

「グゥッッッゥ・・・・・・・ッ!」

 

ぐしゃり、と言う潰れた音と同時に逃げ遅れたものは肉片と化していた。生き残った者はそれを見て恐怖心が湧き上がる。

 

「不味いな・・・」

 

「ああ、まさか巨人がまた来るなんて・・・」

 

「しかもあやつ、武器をつくっておるぞ・・・」

 

戦槌を目の前にして、恐れるを超えて笑ってしまうほどだ。それほどの恐怖がフィン達を襲う。

 

「リヴェリア・・・」

 

「ああ、分かっている!」

 

「総員、あの巨人を討ち取るぞ!!この戦いにはオラリオの命運がかかっている!!諸君達の覚悟がオラリオを救うのだ!!」

 

「「「「「オオオオオオオオオオ!」」」」」

 

戦いはまだ始まったばかりだ・・・・

 

 

「オラァ・・・・・・・ッ!」

 

「ヌゥ・・・・・・・ッ!」

 

「チッ・・・・・・・ッ!」

 

一方、オラリオの西側の方ではフレイヤ・ファミリアが戦闘をしていた。

 

「クソ・・・さっきからすばしっこい!!」

 

「「「それな!!」」」

 

「急げ、フレイヤ様を守るためなんとしても打ち落とすのだ!!」

 

気迫のある、王者の声が辺りに鳴り響く。立体機動で飛んでいる兵士は次々と倒れた・・・

 

『猛者』オッタル・・・フレイヤ・ファミリア団長であり、オラリオで唯一のレベル7の冒険者であり、屈強な身体の持ち主だ。その身にあう力と見た目に合わないほどの、素早さを持っている。

 

(先日のフレイヤ様は終焉魔竜という名を与えられているモンスターを恐れている・・・どれほど恐ろしい者か・・・分からないが、だがなんだ?この違和感・・・何かが変だ・・・)

 

オッタルは何かが引っかかっていた・・・だが、それを与える暇もなかった・・・

 

「よそ見してるんじゃねぇよ!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

謎の発砲音と共に、地面に散らばった穴が出る。オッタルはそれを避け、撃たれた方を見ていた。

 

「貴様・・・なかなかやるようだな・・・」

 

発砲音と共に、屋根の上でオッタルタチを見下ろしている帽子をつけた中年の男がオッタルタチを睨む。

 

「やれやれ、流石世界一強い男には流石の俺も手が焼くぜ、まさか、アッカーマン家とやり合えるとはな・・・」

 

中年の男は、やれやれと首を振りオッタルを見つめている。アッカーマン家という名を聞きオッタルはその男の名を凝視する。

 

「・・・問おう、貴様の名はなんだ」

 

「・・・ケニー・・・ただのケニーだ」

 

そう言って中年男・・・ケニー・アッカーマンは他の兵士と違う銃型の立体機動装置で宙に舞った・・・それと同時に、アンカーが飛び出し、壁に刺さる。その瞬間、発砲音と共に地面から小さな穴が複数開く。

 

「・・・・・・ッ!」

 

オッタルはそれに少し、ひるみながらも二つの大剣を構えながら迎え撃つのだった・・・

 

「行くわよ!!」

 

「はい!!」

 

アリシアとマルコは、あの作戦会議の後数分間覚悟を決めた後、物陰から出た。辺りから煙がもくもくと上がっていて目の前が見えなくなる。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

屋根にいる狙撃手は、舌打ちをして再び引き金に指をかける。

 

「・・・よし!」

 

それと同時にマルコは自分の武器を投げ、狙撃手に向かい飛んできた。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

狙撃手は驚いたものの、撃ち抜いた。一度、空の薬莢を外に出し再び引き金に手をかける。

 

「ハァ!」

 

「・・・・・・・ッ!チッ!!」

 

舌打ちしながらも投げられる武器を撃ち抜く。すぐに薬莢を取り出し、再び引き金に指をかけようにも、また武器を投げられる。どうやら無げナイフをありったけ用意していたのだろう・・・

 

だがその数だって限りがある・・・それを察ししているのか見つけては投げられては撃つの繰り返しだった。

 

だが、マルコ達の手に持っている武器は石も使っていたが尽きようとしていた。

 

「見つけた・・・」

 

そう言って、狙撃手は再び引き金を引こうとする。

 

「・・・・・・・ッ!もう一人は・・・・・・・ッ!」

 

だが、狙撃手は気が付いていなかった。そこに一条の光があると。

 

『解き放つ一条の光、聖木の弓幹(ゆがら)。汝、弓の名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢』

 

「『アルクス・レイ』!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

光の矢が、狙撃手の元に放たれた。狙撃手は必死に撃ち抜こうとするが魔力の塊みたいなものであるため意味が無かった。

 

「チッ!」

 

狙撃手は屋根からおり、立体起動で避ける。所々壁を盾にして、レフィーヤの魔法を防ぐが、生半可な堅さでは防ぎきれなかった。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

やがて目の前まで、光の矢が迫ってきた。狙撃手は、、避けるもレフィーヤの追尾は止まらない。

 

「コレは・・・不味い!!」

 

狙撃手はすぐに、体勢を立て直す。その時だった・・・

 

『光散』

 

その途端、一気に爆発した。狙撃手はその衝撃で吹き飛び、地面へと激突する。

 

「ウグゥ・・・・・・・ッ!」

 

うめき声のような悲鳴と共に、全体のみを隠していた、灰色のローブが落ちていた。

 

「止まりなさい!あなた達は私達が完全に包囲しました!」

 

その声と共に、レフィーヤとアリシアは自分の持っている予備のナイフを顔を見せた狙撃手に向けられる。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ギリッと唇を噛みしめながら狙撃手はレフィーヤ達を見つめる。そこに駆けつけたマルコがやって来た。

 

「ありがとうございます、レフィ・・・ア・・・さん」

 

だが次の瞬間、マルコは固まっていた。氷のようにピクリとも動かず・・・そのままポカンと豆鉄砲を当てられたように・・・

 

「ウソ・・・だろ?」

 

「マルコ・・・?」

 

 

固まっている口からかすかに聞こえる声が二人を不穏な空気に連れ込む。暫くそこで時が経っていた。やがて氷のように閉ざしていた彼の口から、かすかに動く・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サ・・・シャ?」

 

「マルコ・・・」

 

そこから出たのはかつて、マルコと共に苦楽をともにした仲間、サシャ・ブラウスだったからだ。

 

 

 

 



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Chaptear36 巨人





「クソ・・・こいつ、かなり器用だぞ!」

 

「ああ、それなりの能力を持っているだけはある」

 

ガレス達は、戦槌の猛攻に耐えながら反撃をしていた。フィンの指揮により、的確に動き互角に戦えていた。

 

「ウグゥ・・・・・・・ッ!」

 

だが、一つだけ大きな壁があった。そう、戦槌に纏われている鎧だ。いくつもの兵士がうなじに攻撃するも、硬質化のせいかとても頑丈であった。

 

「どうする・・・」

 

リヴェリアは、自分自身前線には向いていないため後方で眺めていることしか出来なかった・・・

 

だが、その隙すらも与えない・・・

 

「・・・・・・・ッ!」

 

飛んでくる、雷の槍がリヴェリアを襲った。先ほどの、顎の巨人の中身、ユミルからだ・・・更に他の兵士達も、後方支援に向かって雷槍を放つ。

 

「グゥウウウウウッッッッ!」

 

爆発の威力もあるためか、リヴェリアはその爆発から出てくる大きな破片を受け止める。だが、痛みは尋常ではなかった。

 

「このままでは・・・」

 

「リヴェリア!!」

 

ティオネは戦槌からの戦闘を離脱しており、リヴェリアの防衛に徹していた。だが、どの兵士もエルヴィンにより精錬され、立体起動などの兵器による技術で苦戦を強いられていた

 

「・・・・・・・ッ!調子に乗るんじゃねぇぞ、雑魚がぁ!!」

 

ティオネは遂に我慢の限界か、武器を手に取りやけになったのか、ラキアの兵士に目がけて、ナイフを投げる。もちろん、防がれそのまま引き金に指をかける。

 

「危ない!」

 

それにいち早く気がつけたのかリヴェリアはティオネを引き戻す。その瞬間、ティオナの頬に銃弾が掠った。

 

「・・・ありがとう、リヴェリア・・・」

 

「落ち着けティオネ・・・このままでは奴らの思う坪だ」

 

そう言って、ティオネを諭すリヴェリアだったが苦戦と言うには十分であった。正体不明の巨人に苦戦し、ロキ・ファミリアも死傷者が出てしまっていた。戦槌と顎で三分の一の兵士達が戦闘不能状態まで落ちていた。

 

「クソ・・・このままでは」

 

その瞬間、地響きが鳴り響く。ティオネ達がいる場所も狙われているようであった。

 

「グゥ・・・・・・・ッ!」

 

「リヴェリア!!」

 

なんとか避けつつも、瓦礫により腕から、血が流れる。ティオネはすぐにポーションを取り出した。

 

「ティオネ!」

 

そこにアイズもやってくる。アイズもティオネ達が心配で見に来たのだ。

 

「あの巨人・・・今までの巨人とは明らかに違う・・・」

 

「ああ、強い・・・しかもうなじをがっちりと守られているな・・・」

 

そう言って、リヴェリアは戦槌をじっと見つめる。戦槌は容赦なく、剣を生成して振り回していた。

 

「ハアアアアアアアアアア!」

 

女性っぽく、それでいて低い声と共に剣を振りかぶる。更に、地上には巨大な針が出てきて下級の冒険者は串刺しにされる。

 

恐ろしい光景であった。辺りは、血まみれだった・・・中には身体の残骸すら残らずバラバラに砕けていた。

 

「ハァ!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

突然、全身黒い鎧の兵士が黒く炎の模様の剣を持ち、リヴェリアに振るった。

 

「貴様は・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・」

 

鎧の騎士は無言を貫いていた。そっと、自分の持っている剣を構えリヴェリアに立ち会う。

 

「リヴェリア・・・ここは私が」

 

「久し振りですね、剣姫」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

アイズが相手にしようと、デスペレートを引き抜いた途端どこからか、聞き慣れた声が聞こえた。ふと、上空を見上げる。

 

「『万能者(ペルセウス)』!?」

 

そこには、立体起動装置をつけておりオラリオのファミリアであった『ヘルメス・ファミリア』のアスフィがいた。

 

「貴方の相手は・・・私がさせてもらいます」

 

そう言って、アスフィは立体起動装置のアンカーを出す。それと同時に、銃を撃った。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

アイズは銃の弾を避けきるも、所々掠っていた。

 

「強い・・・」

 

技術の力は時にレベルを超えるとアイズは聞いたことがある。今がそれだった。レベル4の相手に苦戦しているのだから。

 

「アイズ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「・・・チッ!」

 

アイズに加勢しようにも、目の前にいる鎧の騎士によって阻まれる。

 

「ヘルメス・ファミリア・・・確かギルドも言っていたが・・・本当だったんだな」

 

そうして、リヴェリアはアスフィ達を睨み付ける。アスフィはただ無情に、雷槍を構える。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

雷槍はアイズに目がけて、放たれた。瞬時に引き、爆発を避けるが読まれ、そのまま銃を向けられる。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

銃の発砲音と共に、掠ったのかアイズの頬に傷がついた。

 

「ク・・・ッ!」

 

「ハァ!!」

 

アスフィはそのまま、壁を伝いアイズに蹴りを入れた。

 

「ウ・・・ッ!」

 

少し後ろに向かうもすぐ態勢を整える。

 

「アイズ!!」

 

そこにティオネが割って入ってくる。

 

「貴方は、あの巨人を!あの巨人は貴方にまかせるから行って!」

 

「でも・・・」

 

「速く!」

 

「・・・分かった」

 

「逃がすか!」

 

アイズは戦槌に向かって、走り出す。それをアスフィは追おうとした。

 

「あんたの相手は私よ!」

 

だが、ティオネがそれを阻む。アスフィは舌打ちしながら銃を構えた。

 

「・・・すぐに終わらせます」

 

そうして、二人の戦いは始まるのだった・・・・

 

リヴェリアのほうも謎の騎士によって苦戦を強いられていた。前線に向いていないリヴェリアは一応接近戦の武器で応戦するが、互角に渡り合えていた。

 

(思ったよりやるな・・・それに)

 

リヴェリアは感じていた。何かの魔力を・・・強化されているのだろうが顔が隠れていて不気味であった

 

「貴様は・・・何者だ?」

 

「・・・煉獄騎士」

 

どこか、懐かしい声と共に煉獄騎士は自ら持っている『煉獄剣 フェイタル』をリヴェリアに向かって振るうのだった。

 

 

 

戦槌の巨人の能力で小さな針山が、地面から出る。冒険者はそれに、苦戦を強いられ中には串刺しにされたものもいたほどだ。

 

「ハアアアアアアアアアア!!」

 

「ヌゥウウウウウウウウウウウウウ!」

 

ガレスが、戦槌の一撃を受け止める。ドワーフの身体でなんとか持ちこたえてはいたが、足の下の地面が割れる。

 

(不味い・・・・・・・ッ!)

 

このままでは押しつぶされることは目に見えていた。ガレスは押し返そうにも巨人の力にドワーフの力でさえ劣るようであった。

 

「ガレス!!」

 

ティオナの声と共に自分の愛武器、大双刀を振るう。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

だが、無意味であった。武器の耐久力が、戦槌よりももろかったのだ。大双刀は折れ、地面に刺さる。

 

「このままじゃ・・・」

 

ティオナは見ているしかなかった。圧倒的な力の差を見せつけられて・・・見下していた相手がここまで強くなった事に驚きを隠せなく、更には恥ずかしさ・・・そして力不足で仲間を死なせた悔しさが、ティオナを絶望へと突き落とす。ラウルの死が頭に過ぎった。

 

「お願い・・・やめて」

 

ついには懇願までしてしまった。もちろん、相手はそんなのお構いなしに押しつぶそうとしている。

 

「やめて・・・・お願いだから・・・」

 

ガレスの腕も限界を迎えたのか震え始めた。やがてガレスは膝をつき始める。彼の死はもう目前だった。

 

「やめてえええええええええええ!!」

 

その叫びも、むなしく力は強くなるばかり。ガレスは全てを諦めたかのようにティオナ達を見つめた・・・

 

「後は・・・頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『紅牙』・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

男の声と共に巨大な紅蓮の炎が、戦槌に向かって放たれる。戦槌は、耐えるが突然の事に力を緩める。

 

「・・・ウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオ!」

 

「しまっ・・・・・・・ッ!」

 

「ぬぅん!!」

 

それと同時に、戦槌のハンマーは折れた。戦槌は少し、ひるむが新しくボウガンを作る。

 

「遅いわ!!」

 

同時に再び、紅蓮の炎によって阻まれる。そのうちにガレスの体力も回復されていた。

 

「よう、ガレス!久し振りだなぁ!!」

 

「椿!」

 

アマゾネスだと思われるような肌の色に、長身的で刀を持っているヘファイストス・ファミリア団長、椿・ゴルブランドがそこにいた。

 

「今の・・・魔法か?でも誰が・・・」

 

「ふん、エルフなら分かるだろう?」

 

「まさか・・・っ!」

 

「そのまさかだ・・・」

 

そう言って、椿は指を差す。

 

「チッ!まさかコレを打つときが来たなんてな」

 

そう言って、赤髪の男、ヴェルフ・クロッゾが何本もの剣を持って舌打ちをしていた。

 

ヴェルフ・クロッゾ・・・代々、ラキアで第一級魔法使いにも劣らない『クロッゾの魔剣』を打てることで名誉をえていたがある日を境にその力はとあることにより使えなくなった。

 

「おら、お前らも受け取れ!」

 

「なっ!?我々に魔剣を使えと言うことか!」

 

エルフは、ヴェルフが渡そうとする魔剣を拒否する。実はクロッゾの魔剣によりエルフの森が焼かれたことがあるのだ。それは昔のことだが今でも根に持っているエルフもいるそうだ。

 

「ふざけるな!我々は断じて貴様らのようなヤツには・・・「ありがとう・・・ありがたく使わせてもらうよ」な・・・?団長!!」

 

「総員、今はその考えを捨てろ!それとも、一つの恨みだけで仲間を死なすつもりか!!」

 

フィンの圧力にエルフ達は、渋々と魔剣を受け取った。

 

「オイオイ、勇者様・・・良いのか?」

 

「僕は小人族だからね・・・それに、今は恨みなど関係ないさ!」

 

そうして、魔法の雨が戦槌に向かって放たれた。あるものは雷、あるものは風、あるものは氷だった。

 

だが、どれもうなじに当たってもなかなか削れずにいた。

 

 

「巨人だろうが・・・もう弱点は分かっているんだよ!!」

 

ベートは屋根の上を走りながら魔剣を自分の装備、『フロスヴィルト』に当てる。魔剣からは炎が出ており、燃え上がる。同時に、スピードが上がった。

 

「コレが、クロッゾの魔剣か・・・重ぇ」

 

「ヌゥウウウウウ!!」

 

戦槌はベートのスピードに追いつけないのか、剣を振り回す。だが、ベートはそんなものには当たらず、遂に屋根から戦槌のうなじの目の前まで来た。

 

「オラアアアアアアアアア!!」

 

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

戦槌の悲鳴がオラリオ中に、響き渡る。動じに首は完全に折れていた。鎧は壊れうなじの肉がむき出しになっている。

 

「今だ、アイズ!!」

 

「『目覚めよ』」

 

アイズは、自身の脚力で、宙に舞いうなじまで飛ぶ。そして、自身の武器に風の力を貯めた。

 

「『リル・ラファーガ』!」

 

ロキに教えてもらった必殺技と共にうなじが大きく傷ついた。うなじの肉片が地面に落ちる。

 

うなじにも大きく損傷し、戦槌は死んだように倒れ込む。それにラキアの兵士達は気がついたのか、黒い煙弾が宙に舞った・・・

 

「よっしゃあああああああ!」

 

「コレで、ラキアも終わりだろ!!」

 

戦槌の死体を見て、全員喜びを見せる。フィンもコレには喜びを隠せなかった。

 

「ウソだろ・・・クソォ!!」

 

ラキアの兵士達も戸惑いを見せる。絶望の声がフィン達まで聞こえた。

 

「へッ、今までのつけが回ってきたようだな・・・」

 

そう言って、ベートは兵士達の目の前に立つ。カサンドラは、ビクリと震え銃をベートに向ける。

 

「テメェ・・・さっきは良くもやってくれたなぁ!!」

 

「――――――ッ!」

 

それと同時に憎しみからかカサンドラを蹴り飛ばす。カサンドラの口からは血が流れていた。

 

「テメェらのせいで・・・何人、死んだと思っているんだ!」

 

他の冒険者も次々と集まる。憎しみの感情がカサンドラ含むラキアの兵士に向けられる。

 

「よくも・・・よくもラウルを!!」

 

特に、ラウルと親しかった冒険者は特に恨みが大きかった。全員でラキアの兵士に殴りかかる。もちろん立体起動で逃げようとしたが、その前に戦槌の攻撃による建物倒壊が目立っていた。そのせいで立体物がない。だから、剣で攻撃しようにも立体物が無い限りレベルは1か2である。

 

「よくも・・・よくも!!」

 

そう言って、カサンドラ達に殴りかかってくる。一部の団員からは血が流れており、倒れそうであった。

 

だが、そんなことはお構いなしにベートを除く幹部達以外の一方的な暴力が兵士達を襲った。

 

(・・・なんだ?なんなのだ・・・この違和感は)

 

だが、フィンは何かの違和感が頭の中を渦巻く。そう、何故巨人の弱点を知られたはずなのに主力の巨人を出してきたのか・・・なぜ、あそこで撤退しなかったのか・・・あの煙弾・・・恐らく何かしらの合図・・・だがその合図はなんだ?なんの合図だ?ばれてしまった後なら何故巨人を出した・・・ばれてしまったら巨人は控えるはず・・・なのに・・・

 

「まさか!!」

 

その瞬間、フィンの目は戦槌へと向けられた。

 

「総員、そこから離れろぉぉぉぉぉ!!」

 

フィンの声と共に、全員が後ろを向く。

 

「ハ・・・?」

 

その瞬間、金属音と共にグシャリと言う音が鳴り響いた。

 

「ウウウっぅっぅぅぅうううううう!」

 

「ウソ・・・だろ?」

 

全員が、絶望という名の絶対零度の空間で氷のように固まる。そこにいたのは・・・

 

「復活している・・・?」

 

うなじをすっ飛ばし、死んでいたはずの戦槌の巨人が復活していたのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 



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Chaptear37破壊

注意

今回サシャが悪役っぽいです。(作者は好きなキャラをとことん悪役にしたいという変態思考)苦手な方は回れ右。



「サシャ・・・サシャなのか?」

 

「・・・久し振りですね、マルコ」

 

「マルコさん・・・この人、知り合いなんですか?」

 

レフィーヤの言葉に驚嘆と絶望で全く返事をしないマルコ。マルコは身体を震わせながらサシャに歩み寄る。

 

「まさか貴方がロキ・ファミリアだったなんて・・・お陰で作戦は狂いましたよ」

 

そう言って、少し口角を上げるが彼の知らない彼女の冷たい瞳と共に静寂が流れる。

 

「サシャ、もう止めよう!僕、きみと戦いたくはないよ!!」

 

マルコは何時もの冷静さを失いながら、必死に訴えた。泣き叫ぶように、そして懇願するようにサシャに訴える。

 

「無理ですよ・・・コレはもう決まった事なんです」

 

「どうしてだよ!僕達は・・・仲間じゃないか!!」

 

「仲間・・・確かにそうですね・・・かつて私と貴方は仲間でした・・・」

 

「だろ?だから・・・」

 

そう言って、マルコはサシャに歩み寄ろうとする。マルコの中にはまだ話し合えるという希望を信じていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、それは前の世界での話ですよね?」

 

その瞬間、サシャは持っていたブレードを引き抜いた。そのまま、居合切りをする。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

マルコは咄嗟の判断で避け、後ろに下がった。

 

「確かに貴方は昔、頼れる仲間でした。ええ、もし前の世界で共に戦えたならきっとシガンシナ区奪還も、レベリオ区襲撃も容易に出来たほど・・・私が死ぬこともなかったでしょう・・・でも、それは昔とは関係ない話・・・」

 

そう言って、サシャはマルコに刃を向けながら一瞬だけベルを脳裏に思い浮かべる。少し目をつぶって呼吸を整えた。

 

「もし・・・貴方が私のかけがえのない宝物を傷つけるなら・・・私は、過去の仲間であろうと、恩人だろうと大虐殺者になろうとも・・・私は・・・貴方を殺す!!」

 

「『解き放つ一条の光、聖木の弓幹(ゆがら)。』」

 

そう言った途端、後ろからレフィーヤが魔法を放とうと詠唱を始めていた。

 

「レフィーヤさん、危ない!」

 

「ハァ・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

だがその隙を与えないためか、サシャは刃を投げた。レフィーヤは杖を盾にしながら防ぐ。

 

「ハアアアアァァッッッッアアアアァァァァ!」

 

だが、次の瞬間レベル2とは思わせられないほどのスピードでレフィーヤに向かって来た。もう一方の刃でレフィーヤを切ろうとする。

 

「ゥ・・・・・・・ッ!」

 

レフィーヤはすぐに杖で防ぐ。・・・が、徐々に押されて言っていた。

 

「止めろぉ!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

そこに、アリシアは魔法を放とうと詠唱する。サシャはそれに気が付いたのかアンカーを射出し、壁の上に上る。

 

「へぇ・・・どうやら良い仲間を持ったみたいですね、マルコ」

 

そう言って、サシャはマルコを見つめる。そこで更に哀れなむような瞳でマルコ達を見つめた。

 

「ですが・・・残念ですね、もう私達の勝ちです」

 

突然サシャがそう言った。全員、驚嘆の声が聞こえる。

 

「ハァ・・・?戯れ言もいい加減にしなさいよ!!」

 

そう言ってアリシアは怒り狂ったのか、再び魔法を放とうとしていた。

 

「危ない!」

 

「え・・・?」

 

その瞬間、発砲音と共に赤い血が飛び散る。だが、その血はアリシアのものではなかった。

 

「ぐぅううううううッッッアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッアアアアァァァァ!」

 

マルコの太ももに銃弾が貫いたのだ。彼の太ももが赤く染まる。サシャは

 

「マルコ!」

 

「マルコさん!!」

 

二人はすぐ運び物陰に隠れていた。だがそうしている間にもオラリオ敗北の足はすぐそこまで迫っているのを彼らは知るよしもなかったのだった・・・

 

 

 

 

「・・・第四主砲、撃てぇ!!」

 

エルヴィンの声と共に轟音がなり、壁を大きく傷つける。壁上にいる魔道士達は壊滅状態だった。その時だった・・・

 

「・・・・・・・ッ!来たか!!総員準備にかかれ!!」

 

突然、黄色い煙弾が宙に上がった。それを見てエルヴィンも黄色の煙弾を宙に撃つ。それを見ていたアレスギュッとペンダントを握りしめていた。

 

「セレン・・・もうすぐだ・・・もうすぐ、お前の同胞を助けるからな・・・」

 

そう言って、丘の上から望遠鏡を覗きそう、つぶやくのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、落ち着いて避難してください!!」

 

エイナ含むギルドの職員達の声が辺りに響く。逃げ惑う人々は、慌てる声を出しながら、それぞれの避難場所まで逃げていた。

 

「おい!アレはなんだ?!」

 

「なに・・・?あれ」

 

突然、街にいるものは声を上げる。ミイシャの声もあったのかエイナは指を差す方向を見つめていた。そこには・・・

 

「ウソ・・・でしょ?」

 

彼女達にとって信じられない光景が広がっていたのだった・・・

 

 

「クソ!うなじじゃなかったのかよ!!」

 

戦槌の復活に冒険者は混乱していた。弱点だと思われた箇所を破壊したのにもかかわらず、生き生きと動いていた戦槌に絶望すら抱いていた。

 

「ともかく、態勢を整えないと・・・」

 

 

「なんだ?」

 

ロキ・ファミリアが戦槌の巨人と戦闘する中で、急に一人の冒険者が空を見上げた。

 

「アレは・・・まさか!!」

 

フィン達もそれを見つめ身体が震える。

 

 

 

「悪いな・・・どうやら俺達の勝ちみてぇだ・・・」

 

急にケニーはそう、こぼした。それにフレイヤ・ファミリアはカチンときたのか全員からの殺気を受ける。

 

「ふざけんなよ・・・俺達がテメェのような奴等に負けるというのか・・・?冗談も大概にしなよ!」

 

「アレン、落ち着け・・・確かに怒るのは分かるが取り乱してはフレイヤ様に顔向けできないだろう・・・」

 

「我らを侮辱するとは・・・その度胸だけは褒めてやろう・・・だが、許せん!その身を破滅し、後悔するがよい!!」

 

フレイヤ・ファミリアのアレンとヘグニは怒り狂い、ヘディンがそれを抑える。

 

「まだ分かっちゃいねぇのか・・・まあ良いや、俺はコレで撤収するからじゃあな」

 

「待て!!」

 

そう言って、ケニーは建物を伝いそのまま壁の外まで逃げようとする。

 

「逃がすな、追え!」

 

そう、オッタルは指示した。全員がケニーに向かって殺気を込めて追おうとする。

 

「おい、アレはなんだ!?」

 

しかし一人の団員によりそれは止められた。一人の、団員が空を見上げていた。

 

「アレは・・・まさか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『空飛ぶ船』・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレは・・・まさかエルフィが言っていたアレか!」

 

白く大きな風船のようなものが複数、大海原にこぐように空を舞っていた。オラリオ住人が全員、驚嘆と恐怖に襲われていた。

 

「おい・・・誰か落ちてきてないか?」

 

一人の冒険者が、宙にいる人影を指さす。

 

「落ち着け!飛竜の準備を!アレをうちおt・・・・・・・ッ!」

 

シャクティは落ち着いて飛竜を出すよう命令していた・・・だが、シャクティは目の前の光景に驚きを隠せなかった・・・そう・・・

 

「ウソ・・・だろ?!」

 

そう、飛竜達が全員灰と化していたからだ。雷槍の跡も見えることからラキアが殺したと分かる。

 

「そうか・・・・・・・ッ!やられた!!総員、一時撤退だ!逃げろおおおおおおおおおおおおお!!」

 

シャクティは急いで撤退命令を出した。だが・・・少し遅かった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼奴らが・・・フレイヤ・ファミリア・・・よし、位置と場所は確認した・・・でも・・・」

 

一人の男、ベルトルト・フーバーが、ゴーグルで地上を見下ろす。ゴーグルは、度数が変えられ、標高200mまでまるでそこにいるように見えるような代物である。それと同時に、男はゴーグルを取り外す。

 

「また・・・壁なんだね」

 

そう言いながら、彼はナイフを取り出した。そこにはためらいも見せながらも、自分の手に置く。

 

「壁はもう、うんざりだ!!」

 

その瞬間稲妻が走ると同時に、赤い光が空を包んだのだった・・・

 

「ウウウっぅっぅぅぅうううううう!」

 

「グッッッッッアアアアァァァァ!!」

 

「何・・・コレ・・・・・・・ッ!」

 

「「「「「「「「「ウウウっぅっぅぅぅううううううアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

赤い光に包まれると同時に、風圧が冒険者達を襲った。オラリオの建物は壊れ燃え、炎が町中に広がる。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「フレイヤ様ァァァァァ!!!」

 

「グッ・・・どうかお許しを・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

「「「「ちくしょおおおおおおおおおおう!」」」」

 

フレイヤ・ファミリアは炎に包まれ悲鳴を響かせながら、死の音を出す。彼らの音は地下にいるフレイヤに伝わった。

 

「ウソ・・・でしょ?」

 

「どうしたん・・・フレイヤ・・・」

 

傍にいたロキが、フレイヤを見つめる。ヘスティアはそれを見て何かを察したようだった。

 

「まさか・・・・・・・ッ!」

 

その声と共に、フレイヤは口を開いた。

 

「フレイヤ・ファミリア・・・オッタルを除く全ての冒険者が・・・全滅」

 

「「「「・・・・・・・ッ!」」」」

 

その声と共に、全員が固まった。だがそれはオラリオが絶望に包まれた瞬間の一部に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッッッッッアアァァァァ!!」

 

「ウウウっぅっぅぅぅうううううう!」

 

「熱い・・・?!」

 

アリシアは吹き飛びそうな身体を必死に持ちこたえる。マルコにポーションをかけ怪我を治していたところ謎の下級と共に熱風も襲ってきた。

 

「何が・・・・・・・ッ!」

 

マルコは起き上がりそれを見つめた。

 

「ア・・・・」

 

「どうしたの・・・?」

 

「ヤツだ・・・」

 

マルコはそうこぼし、愕然とそれを見つめていた。かつて、自分達の脅威と共に間接的に死に追いやった化け物が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超大型巨人・・・」

 

 



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Extra edition1娼婦と戦士

こんにちは、今回は番外編第一話・・・春姫とあの男の絡みです。それでは、どうぞ!


夜の静けさの中、小刻みに揺れるランプがキィキィと、音を立てる。ここは以前も紹介した『マルテリオス・ラキア』・・・ここの牢屋でもう一人の少女が目覚めようとしていた。

 

「ウ・・・ン」

 

サンジョウノ・春姫・・・とある事からイシュタルファミリアの世話になっていたが現在、この船の牢屋にいた。

 

「ここは・・・」

 

数時間前に倒れていたこともあり、記憶が混乱している。暫くして記憶が元に戻ってきた。

 

「そうだ・・・私は・・・・・・・ッ!」

 

「ア・・・気が付いた?!」

 

春姫が少し記憶を整理している頃に、一人の男が牢屋の見張りにやって来た。長身的で細く、気弱そうな雰囲気を漂わせ、それでいて強く、特別のような感じだった。

 

「初めまして・・・僕はベルトルト・フーバー・・・ここは、ラキア王国の軍艦の中だよ」

 

「ラキア・・・王国・・・」

 

春姫はそれを聞き、突如怒りがわき上がってきた。それもそうだ・・・自分の姉の立場だったアイシャを殺したのがラキア王国だったからだ・・・当然だろう・・・

 

「あなたが・・・・・・・ッ!」

 

瞬間、牢屋の柱の間から、ベルトルトの胸ぐらをつかむ。ベルトルトは大人しくそれを受け入れた。春姫は涙を流しながら怒りをあらわにする。

 

「あなたの・・・あなた達のせいで・・・アイシャ様は!!」

 

怒号の音と共に、泣き叫ぶような声が辺りに響く。それは痛ましく悲しみに暮れていた。だが春姫は完全には恨めなかった。

 

実は、イシュタル・ファミリアは闇派閥と裏で取引をしていたのだ。その目的はフレイヤファミリアに抗争するためのだった。その取引していたアイテムは『殺生石』・・・狐人専用の禁忌とされている魔道具だ。コレは、一人の狐人を犠牲にして、石を砕かせ持っている者にその狐人のスキル、魔法が、使えるようになる。狐人はその後石を集めてもよくても廃人になってしまうのである。

 

春姫は、一定時間レベルを上げられる魔法を持っている為イシュタルはそれに目をつけ近頃、取引をしてフレイヤ・ファミリアを襲撃しようともくろんでいたがフリュネ達が死んでしまいその計画も出来なくなった・・・

 

つまり、アイシャ達を殺したラキア王国には本来命の恩人、英雄みたいな立ち位置だったのだ。少なくともラキア王国によって自分の命は助かったと言うこともまた同じであった。アイシャ達の犠牲によって・・・

 

更に言うなら今回は完全にアイシャ達が、悪いのだから・・・命令だとしてもベルの大切な家族を傷つけてしまい、殺されても仕方ない状況であった・・・

 

「・・・・・・・ッ!」

 

だから、春姫は手を離した・・・この思いが複雑だから・・・自分の姉のような人物を奪った人間は憎い・・・だが、助けられた・・・正直、感謝と憎悪、そして罪悪感がグシャグシャと混じり合っていたから・・・春姫はなにをすれば良いのか分からなくなってしまった。

 

「食事、置いとくね・・・」

 

「春姫・・・」

 

「・・・?」

 

「サンジョウノ・春姫・・・私の名前です」

 

そう言って食事に手をつけた。ベルトルトは、少しほっとしたように監視用の椅子に座り持ってきたコーヒーを飲みながらその様子を見守っていた。

 

「美味しい・・・」

 

そう言って、春姫は少しホッコリとしていた。

 

余談だがコレはベルが作ったものである。魚介類な為、いつも以上に料理が出来るのだ。メニューは焼き魚にレモンソースを入れた料理や海などのシーフード系だった。ローゼ達も食べていたがうますぎて発狂したヤツも出たらしい。

 

「あの・・・少し良いですか?」

 

「ド・・・どうしたの?」

 

春姫はふと、手を止めベルトルトを見つめた。ベルトルトは少し戸惑いながら春姫を見つける。

 

「どうして・・・貴方は戦争に参戦したのですか?貴方は、正直向いていない気がしていますが・・・」

 

そう言って暫くベルトルトはだまりこんだ。何か迷っているようだった・・・言うべきか、言わないべきかと言ったところだろう・・・

 

「あの・・・何か失礼な事を話しましたでしょうか?」

 

「あ、イヤ・・・ただ、少し昔話で長くなるだけなんだけど話して良いかな?」

 

そう言ってベルトルトは手に持っているカップを置きうつむく。

 

「大丈夫ですよ・・・あ、先に私の話をしましょうか?流石にベルトルトさんの話を聞くだけでは不公平ですし・・・」

 

「うん、じゃあお願いしようかな・・・」

 

そうして春姫の昔話が始まった。

 

春姫が元は貴族だった事、自分が神に与えるお供え物を寝ぼけて食べて自分が勘当されたこと、小人族につれて彼途中でモンスターに襲われ、イシュタル・ファミリアによってオラリオに流れ着き、世話になった事。そして自分は生け贄にさせられかけたことも

 

「・・・・・・・ッ!なんなんだよ、それ・・・神は娯楽に飢えていると知っていたけど・・・そのためだけに・・・・・・・ッ!」

 

ベルトルトは話を聞いた途端、ベルトルトは怒った。怒りながら手を震えていた。

 

「大丈夫ですよ・・・オラリオには憧れていましたし、もう生け贄にもならずにすんだので・・・」

 

少し皮肉ぽく言ったが、それでもどこか春姫は嬉しかった。自分の過去を知って怒ってくれていることに・・・

 

「ア・・・ごめんね、話をそらしちゃって」

 

「いいえ、少し嬉しかったです・・・ありがとうございます」

 

そう言って、春姫はそばにあったベッドに座りだした。ベルトルトは少し深呼吸をすると落ち着いたような瞳で春姫を見つめていた・・・

 

「それじゃあ、僕のお話をしようかな・・・少し、長いから飽きたら寝て良いよ」

 

そう言ってベルトルトは自分の過去を話し始めるのだった・・・

 

???視点 end

 

ベルトルトside

 

僕の話は・・・何が良いかな?僕はある収容区で生まれた。お母さんとお父さんはとっても優しかった。聞いた話によれば、僕はその時は小さかったんだ。小さい頃はよく本を読んでくれた・・・普通の家庭だったら僕達の場合歴史書だったんだけれどね・・・だけど、母親は別の本を見せてくれた。童話、科学、良く聞かれている物とは違う別の歴史・・・いっぱいあった・・・僕はその時憧れていたんだ。外の世界に・・・いつか、この収容区をお母さんと出るんだって・・・

 

「いつか・・・お母さんと、一緒に外の世界で暮らせるのかな・・・」

 

お母さんは僕の頭を撫でながら

 

「ええ、きっと出来るわよ・・・貴方なら・・・」

 

そう言ってくれた。僕は外の世界の憧れが強くなっていったんだ。僕は、いつか外の世界に出るんだと日に日に夢に見たんだ・・・

 

ある日、とあることで一度だけ外の世界に出られるようになったんだ・・・お父さんの仕事でね・・・僕のお母さんと僕は一緒に行くことにしたんだ。

 

「お母さん、楽しみだね!!何があるのかな?!」

 

「ええ、そうね・・・きっといっぱい見られるわよ・・・きっと・・・」

 

僕はその時は途轍もなくわくわくしていた。どんな景色が広がっているんだろう・・・どんな場所があるんだろうって・・・

 

 

 

でも・・・現実は残酷だった・・・

 

「ア・・・・・・・ッ!」

 

「・・・どうぞ」

 

一人の女の子が、僕の前から物を落としたんだ。僕は直ぐ拾ったんだけどそばにはその子の母親らしき人がいた・・・

 

「悪魔の末裔が!!ウチの娘に・・・宝物に汚らわしい手で触らないで!」

 

「え・・・?」

 

その一言で、僕は完全に凍り付いた。その瞬間、周りの大人から子ども・・・挙げ句の果てには他の子どもには親切にしていた老人までが僕に石を投げてきた。

 

「出てけ、エルディア人!」

 

「また子どもを作りやがって!とっとと消えろ、エルディア人!!」

 

「え・・・何!痛い!!止めてよ!!」

 

「ベルトルト!!」

 

お母さんは僕を抱きしめて、ただ黙って僕を守ってくれた・・・周りの怒号が僕の耳から聞こえてくる・・・そんな一日だった。

 

「怖い・・・痛いよ・・・・・・・お母さん」

 

「大丈夫よ・・・」

 

お母さんは僕を抱きしめて、慰めてくれた。それが唯一の救いだったよ・・・帰って来た後、僕の幼なじみは僕を励ましてくれた。優しい友人だったよ・・・

 

家に帰ってから、僕のお母さんは皆に知られている・・・エルディア人の歴史についての本を読まされた。エルディア人は過去に大きな過ちを犯した悪魔の民族だと・・・僕達の同胞の一部は、パラディ島に逃げ、壁を作り暮らしていると・・・当初、残ったエルディア人は殺すように命じられたが偉大なマーレはそれを撤回し、この収容区で暮らすようにしてくれたと教えられたよ・・・僕達はその罪があるから、こんな仕打ちを受けているんだと思って納得していた僕だけどお母さんは本を閉じた後、頭を撫でてこういってくれた。

 

「良い、ベルトルト?歴史って言うのはね・・・その国それぞれなのよ・・・確かにこの国ではエルディア人否定の歴史かも知れない・・・だけどね、真実はその民族にしか分からない・・・それと同じで、どこか受け入れてくれる人たちも必ずいる・・・だから・・・そういう人たちを探しなさい・・・」

 

そして・・・僕を抱きしめてくれた・・・あの時はとても温かかったよ・・・この温もりは今でも忘れていないよ・・・

 

そんなあるとき、戦士候補生の訓練が始まった。収容区のエルディア人の唯一、優遇される地位、『名誉マーレ人』の称号をもらえるから・・・そして、それは家族にも与えられる。

そうすればいつか、お母さんを外の世界に連れて行けるから・・・

 

13年しか生きられないのを代償に外の世界へとつながれるんだ・・・僕はあの約束を守れるかも知れないと思って戦士になることを決めた・・・お母さんは反対したよ。でも僕は連れて行きたかったんだ・・・外の世界に・・・僕は友達と一緒に戦士になると、決めた日から訓練に勤しんだ。必死に走って必死に勉強して・・・それでこの力が手に入った・・・超大型巨人の力を・・・

 

お父さんは、泣きながら喜んでいたよ。お母さんは泣きながら抱きしめて謝っていたけどね・・・超大型巨人は一回の爆発で凄まじい破壊力だからね。かなり、マーレの人たちからも優遇されたよ・・・知人も僕を褒めて抱きしめてくれた。友達も巨人を手に入れて喜んでいた・・・

 

あるとき、パラディ島を征服し壁内にいる始祖の巨人を奪還せよとの命令が出たんだ・・・出発する数時間前にお母さんと会ったんだけど、その時、お母さんは僕をあの時のように抱きしめてくれた。そして、こういってくれた

 

「いい?ベルトルト、私はマーレが間違っていると思う・・・貴方がもし、壁の中の人類を愛したいなら愛しなさい・・・それで全世界が敵に回っても私は味方だから・・・だからお願い・・・生きのびて・・・」

 

それが・・・・お母さんの最期に話した会話だった・・・・

 

あれから、僕はパラディ島で友人達と一緒に壁まで行った。でも・・・一人の仲間が巨人に食われた・・・僕達は作戦を中止にしようとしたけど・・・ひとりの友人が止めたんだ・・・

 

それにもう一人の女の子が反発してボロボロになるまで蹴り上げたんだけど・・・友人は我慢強すぎて、そのまま首を締め始めた・・・その姿を今でも覚えているよ・・・彼はそのまま首を締め続け、自分は死んでその仲間になるからって言っていた・・・

 

「ライナーは死んだ・・・マルセルが必要なら俺がマルセルになるから・・・帰ろう・・・故郷に」

 

正直恐怖を感じたよ。そこには僕の知る友人はいなく何か亡霊のようだった。血まみれの顔面で首を締めたんだ・・・

 

「もう・・・止めてくれ」

 

僕はそう言いながらそれを泣きながら見ているだけしか出来なかったんだ・・・

 

そしてその日が来た。僕は、超大型巨人になって壁の扉を破壊した。僕達は壁にいるのは悪魔がいると言われていた。でも・・・違った・・・

 

壁にいたのは人だった・・・それも、僕と同じエルディア人だ・・・その中、僕は5年間壁ですごした。僕はその時から罪を感じていた。一人の少年は母親を食われたと言われ、その時はとても心が痛んだ・・・兵士になっていた頃は少しだけ楽だと思ってしまったほどね・・・最低だよね・・・でも、あの頃は楽しかった時期かも知れない・・・馬鹿な友人に囲まれて、苦楽をともにして・・・楽しかったなぁ・・・

 

でも、そんな幸せな時間は長くならなかった。

 

女の子が一人捕らえられちゃったんだ・・・助けようにも任務もあり見ているだけしか出来なかった。

 

それから暫く経ったんだけどとうとう僕達も来てしまったんだ

 

ある日、僕の兵団仲間に賢い人がいてさ・・・怪しまれちゃって・・・最終的に正体をばらしちゃったんだ。その後から僕達の戦いは始まった・・・・

 

最終的に死んじゃったんだけどね・・・最期は情けなくも前の仲間に助けを求めてね・・・

 

それで、気が付いた時とある街で目覚めたんだ。この世界に・・・最初は混乱したんだ・・・ここはマーレなのか・・・故郷なのか焦ったよ・・・でも、違った・・・僕はその後少しずつ記憶が戻ってきて僕は死んだと言うことが理解できた。

 

「僕・・・は・・・」

 

その瞬間、悔しさが最初に出たね・・・だましておいて、母親の約束を守ることが出来ないなんて・・・駄目なヤツだなって思ったよ・・・

 

でも、いつまでもそうするわけにはいかないって思って僕は新しい生活が始まったよ。畑を耕して、少しの労働の生活だけどね・・・家は、いろんな依頼で稼いだよ・・・幸い超大型巨人は残っていたから破壊系は得意だったよ。その後はゆっくりだけどね・・・

 

それから7年経った後・・・あの話が来た・・・

 

「すいません・・・ベルトルトさん、いませんか?」

 

「はい・・・」

 

その日僕は何時ものように寝ていたんだけど、突然扉がなってね・・・そこにはヘルメス様がやって来たよ・・・ヘルメス様はかなり有名だから驚いたからね・・・僕はとりあえず、中に入れた後コーヒーを入れといたよ・・・ヘルメス様は僕に商談のような雰囲気を出していた・・・

 

「君の力が借りたい・・・協力してくれないかな・・・」

 

僕はその時なんとなく予感していた・・・もしかして超大型巨人の力を知ってここに来たのかなって・・・最初は断ろうと思ったけど異端児の件を聞いた途端、彼らが僕達に見えたんだ。他の人たちに虐げられている姿が話から想像できたんだ。

 

「どうだい?やってみる価値はあると思うけど・・・どう?」

 

僕は悩んだよ・・・もう、人は殺したくない・・・でも今まで僕はマーレの言いなりで同胞を殺してきた・・・それはとても罪深いことだった・・・人殺しよりもっと重い罪・・・どうやって罪を滅ぼせる?いや、そんな話ではないと百も承知だ・・・でも、今ここで僕達と同じ、差別に苦しんでいる・・・いわば僕達の亡霊だ・・・そもそもの間違いを僕は気が付いていなかった・・・本来なら巨人の力でマーレに反抗して、足掻くべきだったんだ・・・それをしてこなかった・・・その結果がコレだ・・・母親を悲しませ、仲間をだます酷いヤツに成り下がった・・・そのせいでどれほど同胞を殺したか・・・ならば、僕のやることは一つ・・・

 

「分かりました・・・僕もやりましょう・・・彼らを・・・異端児(ゼノス)を救うために!」

 

僕はこの戦争で僕の・・・罪滅ぼしをするために、異端児(過去の自分達)を救うために、僕は僕自身の意思で戦うことを決めたんだ・・・

 

 

 

ベルトルトside end

 

???視点

 

「と言うのが、僕の話だけど・・・ごめんね、長い話聞かせちゃって・・・」

 

ベルトルトは少し、笑いながら春姫を見た。きっと、憎しみで自分の話はどうでも良いかなと思っていると感じ春姫を見た・・・だが、ベルトルトの予想は大きく外れた・・・

 

「ヒッグ・・・・・・・ッ!エッグ・・・・・・・ッ!」

 

泣いていたのだ・・・春姫は・・・全てを聞いて、敵国の相手に・・・ベルトルトは驚きを隠せず、春姫を見つめる・・・

 

「あ・・・あの・・・」

 

「辛い・・・思いをしてきたんですね・・・」

 

春姫は一緒に悲しんでくれた。敵国で、自分の姉という存在を殺した仲間に、だ・・・春姫はそっと折りの隙間に手を伸ばしできる限り抱きしめる・・・

 

「ウ・・・アアアァァァ!」

 

ベルトルトは泣き出してしまった。身長に似合わず泣き出してしまったのだ・・・

 

「大丈夫です・・・ベルトルトさん・・・貴方に助けられたご恩・・・私が貴方の味方になることを誓い貴方に返しましょう・・・」

 

そう言って春姫はそう誓いながら檻越しから優しく抱擁するのだった・・・

 




はい、今回はベルトルト×春姫でした・・・次回からまたオラリオに戻り、その後番外編2話出す予定です!それではまた次回!


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Chaptear38唐突

また・・・この景色を見るなんて)

 

超大型巨人となったベルトルトは、少し歩き燃え広がる建物を手にも地中に向かって投げた。同時に、悲鳴も聞こえる。

 

「後は・・・・」

 

ベルトルトは少し終わると、うなじから蒸気を発しながら上を見つめる。そこには飛行船があった。

 

ベルトルトは立体起動で飛行船まで上る。同時に、出口のほうから一人の少年が待っていた。

 

「頼んだよ・・・ベル・・・」

 

「・・・・・まかせてください」

 

そうして、少年ベル・クラネルは飛行船の下を見つめる。同時に、コホンと息を整える。

 

そして・・・・

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

その叫びと共に、オラリオの断罪への剣が振り下ろされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ・・・?」

 

「おい、アレは!」

 

「何・・・?」

 

市民と冒険者がその叫びに気づく。市民は再び空を見つめる。そこには・・・

 

「魔方陣・・・?」

 

空に無数の魔方陣が広がっていた。冒険者と一般市民が、気になるのか見つめていた。やがて、何かの影が現れる。

 

「おい・・・アレって・・・」

 

その姿は次第に鮮明に目に映る。そう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「モンスターだあああああああああああああああ!!」

 

大量の、竜のモンスターが空から降ってきたのだった・・・・

 

 

「何・・・アレ!?」

 

アナキティ・オータムは戦闘には参加できなかった状態のためギルド職員達と共に避難指導をしていたが、目の前の状況が理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ク・・・まさかここまで、策を練っていたのか」

 

フィンは、次々と振ってくるモンスターに親指をなめながら戦槌の巨人を見つめ、怒りの感情をあらわにする。範囲外ではあったものの、強風で少し動きが鈍ってしまい、隙を与え、戦槌は身体を修復していた。

 

「ここまでだなんて・・・よほど司令官は、頭が切れるヤツなんだね」

 

その声には悔しさも出ていた。ここまで、やられたのにフィンも予測できていなかった。フィンは、戦槌を何とかしようとしたが上から竜のブレスが降ってくる。

 

「「「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」

 

「「「助けてぇえええええええ!!」」」

 

「痛い、痛いよぉおおおおおおお!!」

 

いつの間にか、戦槌はいなくなっていた。だが、それはどうでも良いほど場は混乱していた。炎、風、氷、雷の魔法が雨のように降ってくる。ヴェルフも魔剣で撃退するも、竜のブレスはやむことがなかった。

 

「クソ・・・・・・・ッ!このままじゃ・・・」

 

「・・・おい、アレ!」

 

それと同時に、竜が地上に降りてきた。三つの光と共に、巨大な竜が降ってくる。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

「なん・・・だ、あのモンスターは」

 

咆哮の覇気と共に、フィン達は、目の前にいる白く触手の竜『ガロウズ・デビルドラゴン』を目の前に後ずさりしていた。だが、ガロウズ・デビルドラゴンは目の前のフィン達を見逃さない。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

「・・・総員、撤退!!」

 

ガロウズ・デビルドラゴンから紫色の光が集まる。それにやばいものが来ると直感し指示をし、全員がその場から離れる。

 

「アグゥ・・・・・・・ッ!」

 

「アッ――――――」

 

上級の冒険者は一気に逃げるもレベル1の冒険者が少し反応が遅れたのか取り残された。

 

「待って、置いていかないで!!」

 

「イヤアアアアアアアアアアアアアアア!助けてえええええええ!」

 

必死に下級冒険者が、助けを求める。中にはプライドの高いエルフもいたが泣き叫び顔がグシャグシャとなっていて、プライドを捨ててまで助けを求めていた。

 

「・・・・・・・ッ!今、いk」

 

「駄目だ、アイズ・・・もう・・・」

 

「でも・・・ッッッッ!」

 

アイズとティオナが助けようにもフィン達が引き留める。

 

「やめてぇええ!」

 

「お願いだ、おいでいがないでぇぇぇぇ!!」

 

必死な命の叫びが聞こえた。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「ベートさん・・・・・」

 

ベートは唇から血を垂らしながら、後ろを向く。その姿は重く、とても辛そうであった。リーネはそれをただ見守ることしか出来なくなった。

 

そして・・・

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

紫色の光が、城壁の外まで貫いた。

 

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「あづい・・あづいよおおおおおおおおおおおお!!」

 

後ろから紫色の光が出るのと同時に悲鳴と、生々しい声が聞こえた。アイズ達はその生々しさに涙を流す。やがてそこには黒く焦げた死体と、小さな石ころが転がっていたのだった。

 

「ウ・・・グゥ・・・・・・・ッ!」

 

オッタルは地面に倒れ込んでいた。レベル7と体格のお陰なのか、超大型巨人の爆発を乗り切ったようだった。だが、全身に火傷を負っている状態だった。

 

「一体何が・・・」

 

「オッタル!」

 

そこにガネーシャ・ファミリア達が現れる。ポーションをいくつか持ってきて、オッタルにかける。

 

「全滅と聞いたが・・・まさか本当だったなんてな」

 

シャクティはそう言って辺りを見渡した。目の前には大量の住宅が置いてあった住宅地とは違い更地と化していた。

 

「念の為、地下の避難を優先させたが、正解だったな」

 

「・・・ああ、フレイヤ様の提案だったがまさか役に立つなんてな」

 

そう、コレはフレイヤの提案である。フレイヤはいち早くアジ・ダハーカの存在を知っており、地下にすべきだとの意見を出してきた。フレイヤは焦りながら提案したのと納得も行く理由だったので一般市民と神が地下に避難することが出来たのだ。

 

「急いで、態勢を立て直さなければ・・「よもや・・・生きていたのだな」・・・・・・・ッ!」

 

 

どこからか、声が聞こえた。オッタルはすぐに、声がする方向に目を移す。そこには鎧を纏った竜と共に、複数の竜が武器を持っていた。

 

「流石は・・・オラリオ最強の武人と言うべきか・・・あの爆発に耐えられるなどなかなかおらん」

 

「何者だ・・・?」

 

そうしてオッタルは殺気を放つ。やがて一体の竜が前に立ち、一段とでかい、鎧と兜を纏っており白い鱗を持っていた竜が誇らしげにしゃべり出す。

 

「我々は『煉獄騎士団』!『武装騎竜』一族、『ダークネスドラゴンW』の偉大なる騎士団である!」

 

「そして、この御方こそが我々煉獄騎士団、団長『ディミオスソード・ドラゴン』様である!」

 

煉獄騎士団の一体である竜がそう名乗り、ディミオスは前に進む。

 

「猛者、そして・・・象神の眷属か・・・良いだろう、我々が相手だ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

それと同時に竜達が武器を構え、圧力がかかる。

 

「良いだろう、受けて立つ・・・勝負だ!!」

 

二体の戦士がぶつかり合う瞬間であった。

 

 

「グゥ・・・・・・・ッ!」

 

一方、後方でガロウズ・デビルドラゴンとは反対方向にいたリヴェリアとティオネは煉獄騎士とアスフィと抗戦していた。鎧の強化もあり互角の戦いである。

 

(煉獄騎士・・・この動き、どこか見覚えがある。所々大剣の扱いにも慣れていないようだが・・・何故だ・・・なんなのだ、この違和感は・・・)

 

リヴェリアは煉獄騎士の動きに少し疑問が生じていた。そう、どこか懐かしいのだ。煉獄騎士の動き、剣捌きが全て、リヴェリアの脳内の誰かに似ているのだ。

 

(ともかく、さっきの魔法も気になる、しかもモンスターも大量発生している・・・不味いな)

 

「ハァ!!」

 

「グゥ・・・・・!」

 

剣の重みで、リヴェリアは少し押し負けるがレベル6のスピードで、背後に回る。

 

「もらった!」

 

リヴェリアは隙だらけの背中を、突き刺す。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「クッ・・・・・・・ッ!」

 

だが、瞬時の反応で大剣を背後に回す。リヴェリアの短剣を弾き、回し蹴りをくらわせた。

 

「ガハァ・・・・・・・ッ!」

 

リヴェリアは、壁にぶつかり口からは血も出る。

 

「終わりだ・・・」

 

「リヴェリア!!」

 

そう言って煉獄騎士は、大剣をリヴェリアに振るう。ナイフは落ちており、取ろうにも殺される、そう実感した。リヴェリアは覚悟を決めたのかリヴェリアはそっと目をつぶっていた。

 

 

 

 

 

「『アルクス・レイ』!」

 

「カハァ・・・・・・・ッ!」

 

突如光の矢が、煉獄騎士に向かって放たれる。煉獄騎士は大剣で防ぎつつも吹き飛ばされ鎧にも傷がつく。

 

「助けに来ました、リヴェリア様!ティオネさん!」

 

「レフィーヤ、なんでここに!?」

 

そこにはレフィーヤが武器を手に持ち立ち向かっていた。その隙にリヴェリアはナイフを拾う。

 

「あの後、一旦撤退してマルコを避難所で治療して向かった後その途中、この騎士に襲われているのを見かけて・・・助けることにしました」

 

「・・・・そうか、気をつけろ・・・彼奴は近接では、私と互角だ」

 

「下手したら私より強いかも知れないわね」

 

そう言って一旦距離を詰める。リヴェリアもうなずき煉獄騎士を見つめる。

 

「だが、上にいる竜も・・・・・・・ッ!」

 

「サッヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアク!!」

 

瞬間、鉱石で出来た竜『輝龍 サッヴァーク』が降りてきた。振動と共に雄叫びが聞こえる。

 

「なんだ・・・こいつは」

 

見たこともない化け物に身体を震わす。黄金の剣を持ち、リヴェリアを見つめていた。

 

「・・・・・・」

 

煉獄騎士は、無言でリヴェリア達を見ていた。何も喋らず、じっと・・・それが不気味で仕方なかった。だが、レフィーヤにも謎の違和感がある。

 

「何故でしょうか・・・少しだけですが・・・私、あの人に会っているような感じがします」

 

「・・・ああ、だが誰なんだ?覆面で見えん」

 

そう言って、煉獄騎士から距離を離す。煉獄騎士はそっと、剣を構える。

 

「ヌゥ・・・・・・・ッ!」

 

サッヴァークは背中に浮いている黄金の剣を取りながら、レフィーヤに向かい投げつける。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

レフィーヤはそれを避け、魔法を放とうとするがそんな暇を与えないのかサッヴァークがもう一本構え、レフィーヤに迫ってきた。

 

「ク・・・ッ!」

 

「レフィーヤ・・・クソ・・・ッ!」

 

「よそ見している場合か!」

 

鎧から発せられる声と共にリヴェリアに向かって煉獄騎士は剣を振るう。リヴェリアはナイフで受け止めようとしたがナイフの耐久度的に厳しそうだった。

 

「調子に乗るなよ、岩やろう!!」

 

「ヌゥ・・・・・・・ッ!」

 

だが、ティオネによって防がれる。更にレフィーヤは、そのうちに詠唱を始めた。

 

「『アルクス・レイ』!」

 

そうして、サッヴァークとアスフィ、煉獄騎士に向かって放たれた。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

煉獄騎士とサッヴァーク、アスフィは気が付きサッヴァークが光の矢を跳ね返そうとする。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

だが、弾き返そうにも光の矢は止まらない。追尾式だったのだ。アスフィはそのまま撤退しようとするが光のスピードはアスフィの距離をあっという間に詰める。

 

(駄目だ、振り切れない!)

 

アスフィは避けきれないことを悟る・・・がその表情は落ち着いていた。

 

「サッヴァーク!」

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

アスフィが叫ぶと光の矢が当たったのか爆発した。

 

「やったか?!」

 

そう言って爆発した方角を見つめる。

 

「危なかった・・・」

 

「「「・・・ッ!」」」

 

だが、アスフィは生きていた。そばには石の破片が転がっていた。段々と石が灰になる。

 

「一体何が・・・」

 

「・・・アレか・・・・・・・ッ!」

 

上には竜の顔と、翼、首輪、そして人型の模様をした紋章であった。中にはあのイシュタル・ファミリアの団員もいた。

 

「終わりだ!」

 

「サッヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアク!!」

 

「ハァ・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間、一斉攻撃がレフィーヤ達を襲った。

 

「『ルミノス・ウィンド』!」

 

その瞬間、数多の風が吹き荒れた。風のせいでアスフィは吹き飛ばされる。その時、吹く風によって致命傷になりかねないため紋章が犠牲になる。

 

「『疾風』!」

 

「リューさん?!」

 

そこにはアストレア・ファミリア、レベル6『疾風』のリュー・リオンであった。

 

「マルコさんから聞きました、コレで少しは戦況も傾くと思います・・・」

 

そう言ってリューは、自ら持っている木刀を構え煉獄騎士の方に目を向ける。

 

「煉獄騎士といったものよ・・・これ以上私達の領域に踏み込むのなら、容赦はしない・・・今すぐに立ち去れ」

 

「・・・断ると言ったら?」

 

「・・・・力ずくだ!!」

 

そうして、風が吹き抜けるように煉獄騎士に攻撃を仕掛ける。

 

「ヌゥ・・・・・・・ッ!」

 

少し押されていたが煉獄騎士は、謎の炎を出しながらリューを押し返す。

 

(なんだ、この魔法・・・こいつ、どこかで)

 

リューも違和感を抱きながらも、攻撃をし続ける。

 

「『今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤(ちりば)む無限の星々。』」

 

リューは詠唱を始める。斬撃と共に詠唱はドンドン加速していった。

 

「『愚かな我が声に応じ、今一度星火(せいか)の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を。』」

 

詠唱を続けながら煉獄騎士の鎧に傷をつける。もちろん、煉獄騎士はフェイタルで反撃する。

 

「『来れ、さすらう風、流浪の旅人(ともがら)。空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾(と)く走れ——星屑の光を宿し敵を討て』・・・」

 

そうして、リューは隙を突き距離を離し、風を集める。そして・・・

 

「『ルミノス・ウィンド』!」

 

風を纏った、大光玉が煉獄騎士を襲った。

 

「・・・・」

 

煉獄騎士は無言で、リューの魔法を見つめていた。だが、それは広範囲に起こっているためサッヴァークは少し焦っていた。

 

「逃げられると思うな・・・」

 

そう言って、リューはそのまま煉獄騎士、アスフィ、サッヴァークに向かって魔法を放つ。

 

「ハァ!」

 

「え・・・?」

 

だが次の瞬間、煉獄騎士は魔法の大光玉を切り裂いた。それと同時に、煉獄騎士はリューを切り裂こうと刃を振るう。

 

「え・・・?」

 

突然の事にリューは押される。その時であった。一つの光がリューの目に入った。

 

(嘘・・・まさか・・・いや、そんな)

 

リューの顔に絶望が見える。イヤな、予想がリューを襲った。

 

「疾風、どうした」

 

「あの方が・・・いや、そんなはずは・・・」

 

「リュー・・・さん?」

 

レフィーヤはリューの顔に不安が宿る。煉獄騎士はその隙を突いてリューの間合いまで詰める。

 

「させない!」

 

ティオネがそれをなんとか防ぎ、煉獄騎士を睨む。隙もあり、回し蹴りで煉獄騎士を蹴る。

 

「リュー・・・一体どうしたの?」

 

その瞬間、ティオネはリューの顔に驚きを隠せなかった。前の冷静な顔はない。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

「何よ・・・アレ」

 

その時だった・・・三つの首を持ち、身体の中央にも顔がある、赤い身体を持つ竜、アジ・ダハーカがそこにいた。その姿は、禍々しくティオネ達は恐怖によって蝕まれる。

 

「まさか・・・アレが・・・・・・・ッ!」

 

ティオネはその姿に、エルフィが行っていた特徴に似ていたためラウルを殺した少年だと結論付いた。だが、恐怖で身体が動かなかった。やがて、アジ・ダハーカはティオネ達を見つけたのか地上に降りてくる。

 

「誰かいる・・・・・・・ッ!」

 

竜の後ろに、魔方陣に乗りながら白い髪と赤い瞳で剣を持っている少年がティオネ達の目に映った。それと同時に、リューの顔は青くなる。

 

「ア・・・・・」

 

「久し振り・・・いや、覚えていないか、なんせ三年前だもんなぁ・・・・・・・ッ!」

 

忘れるわけない、リューにとっては忘れられない少年であった。それは自分の罪であり、傷つけてしまった人物であったからだ。

 

「貴方は・・・」

 

リューは顔を青ざめる。やがて、少年の瞳は赤く光り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと見つけた・・・アストレア・ファミリアァ!!!覚えているか?この瞳を、この顔を!随分良い思いをしていたんだなぁ、正義と唄われてなぁ!でも、コレで終わりだぁ・・・今日ここで、貴様らの息の根を止めてやる!!」

 

白髪の少年、ベル・クラネルがリューを、ティオネ達が鳥肌を出すほどの殺気を出しながら見つめている。その瞳は、少年とは思わせられない狼の瞳であった・・・

 

 




はい、ここまで待たせて皆様誠に申し分けありませんでした。次回から再び復活していきます。できる限り早く投稿するのでお楽しみに!


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Extra edition2宴会

こんにちは、今回は番外編です。活動報告でもお知らせしたように一回オラリオ編を改変します。しばらくは番外編なのでよろしくお願いします。


青い晴天下の真下・・・所々赤い血の染みたこの砂浜・・・地獄と化したメレンは終わった後物静けさを出していた。あの、メレン上陸作戦は成功・・・一日で決着がついた。それもあっけない形に・・・

 

結果はラキア王国の死者数は何と0・・・オラリオは数百人という数であった。そこに追い打ちをかけるのが捕虜の存在だ。オラリオは約千人の数でラキア王国の兵士を向かい撃ったが、帰って来た者は一人という事実・・・オラリオでは氷のような空気が漂っている中、ラキア王国は現在、祝勝祝いの宴会の準備だった。

 

だが、一人の男が暗い顔をしていた・・・

 

「ハァ・・・」

 

ベルトルト・フーバー・・・先ほどでも紹介した、超大型巨人の継承者だ。唐突だが、彼には悩みがあった。

 

「サシャ・・・」

 

そう、前世でまだ兵士時代の仲間でベルトルトが裏切った仲間の一人、サシャ・ブラウスが再び共に戦うことになったのだ・・・

 

だが、ベルトルトは正直気が重くなるばかりであった・・・普通はそうだろう・・・なんせ、一度裏切った仲間だ・・・更に言えば、一度は殺そうとした相手・・・気まずいレベルの話ではないだろう・・・

 

もちろん、ベルトルトは、それは自分が悪いと割り切っていた。なんせ、サシャだけではなく他の仲間の心まで踏みにじったのだから・・・特にエレンの顔と言葉はベルトルトにとって忘れがたいものであった。

 

(お前らは兵士でも戦士でもねぇよ・・・ただの人殺しだ・・・なんも罪のない人々を殺した大量殺人鬼だ!)

 

「分かっている・・・・分かっているんだ・・・」

 

ベルトルトはエレンを連れ去った後、巨大樹の森で休憩している時のエレンの顔を思い出し、自分がサシャと共に笑うことは許されないと言い聞かせ、その場を後にしようとしていた。

 

「隣、良いですか・・・?」

 

「え・・・?」

 

「無言なら良いですね・・・」

 

突然、サシャが隣にやって来た。ベルトルトは豆鉄砲をくらった表情で見つめる。サシャはお構いなしにベルトルトのとなりに座った。座った途端、くすねてきたのかふかした芋を頬張る。何時もどうりな雰囲気に正直ベルトルトは不思議でしかなかった。

 

「半分・・・食べますか?」

 

そう言って、サシャはベルトルトに半分(どう見てもベルトルトのほうが小さい)ふかした芋をベルトルトに渡す。

 

ベルトルトは困惑しながらも受け取り、それを食べる。サシャはまるで何時ものようにふかした芋を頬張りながら空を眺めている。

 

「あの・・・サシャ・・・」

 

「ん・・・?なんりぇすか?」モッキュモッキュ

 

「僕が・・・憎くないの?」

 

ベルトルトは、戸惑いながらも勇気を出しサシャに問いかけた。それもそうだ・・・サシャにとってベルトルトは裏切り者・・・敵意をむき出しても良いのに、なぜかそれを全く感じられなかった。

 

「どうしてそんなこと聞くんですか?

 

「・・・・・・・ッ!だって、僕達は君を裏切ったあげく殺そうとしたんだよ?!それなのに・・・・」

 

サシャはそれを聞いて何やらため息と少しの笑みをこぼした・・・それはどこか優しい雰囲気に満ちていた。

 

「確かに、私は以前貴方を憎んでいました・・・貴方が壁を壊したせいでよそ者が獲物を横取りして、私達は森を明け渡す羽目になりましたよ」

 

その途端、ベルトルトは顔をうつむかせて何かを察したようだった・・・いや、正確に言うなら自分への怒りだろう・・・

 

(やっぱり・・・僕は許されるべきではないんだ・・・)

 

「でも、それは前の世界での話ですよね?」

 

「・・・・・・・え・・・・?」

 

しかし、サシャのその言葉が出た瞬間サシャはベルトルトを自分の胸元に預けた。

 

「確かに、私は恨んでいました・・・なんで裏切ったのかって・・・でも、それはもう前の世界の話です・・・今は、ベルに手を出さないというなら関係ありません・・・それに・・・」

 

そう言ってサシャはベルトルトの背中を撫で、優しい母のように抱きしめていた。

 

「春姫さんに話したあの話・・・聞いていましたよ・・・」

 

「・・・・・・・ッ!僕は・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間、あの思い出が二人の頭に過ぎる・・・サシャ達に正体をばらし、ベルトルト達がエレンを連れ去り、鎧の巨人に守られ、状況が硬直している間のあの言葉だ・・・

 

(誰か僕らを・・・見つけてくれ・・・・・・・ッ!)

 

「ようやく・・・貴方を見つける事が出来ましたよ・・・ベルトルト・・・」

 

「ウ・・・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

ベルトルトは再び泣き出してしまった。もう枯れたのかと思っていた涙が再び目の前の海のように流れた。

 

「大丈夫ですか・・・?もう、お陰で胸元がぬれましたよ・・・」

 

「ああ、ごめんね・・・情けない姿を見せちゃって・・・」

 

「オーイ、皆!そろそろ宴会だよ!!」

 

「お、ベル!分かった、今いくで!!」

 

そう言ってサシャは、ベルの元に向かった。だが途中で立ち止まりベルトルトを見つめる。

 

「・・・早く行きましょう。料理、冷めちゃいますよ」

 

そう言って、サシャの笑顔が夕日に当たり輝いていた。

 

「・・・ああ、今行く」

 

(今度は・・・僕が君を・・・君たちを守るよ。仲間として・・・)

 

そう言ってベルトルトは仲間の元に向かう。今度こそ、仲間を守るために・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~さあ、始まったぞ。メレン上陸作戦成功を祝う宴会、名付けて『メレン上陸成功やったー宴会』!」

 

「「「いや、まんまじゃん・・・」

 

「まぁそれは良いとして、今回は我のために戦ってくれてありがとう・・・諸君には感謝してもしきれないほど諸君達に感謝しているのだ・・・これからオラリオ征服に向けて再び、厳しい戦いなるかも知れない・・・・だが、兵士なら休むときは全力で休め!コレは主神命令である!!そして、今回は捕虜も参加を許可した!」

 

 

辺り一面、夜のメレンで占領した領域の酒場の中でアレスは兵士から突っ込まれながらも酒の入ったジョッキを持ちながら、エルヴィンと並び演説をする。中には捕虜もおり、殆どは捕虜同士で食べるが春姫とダフネはベル達同じ場所で食事をすることにした。兵士達の目の前にはメレンで取れた海鮮類、大きな肉・・・そして様々な料理が並んでいた。

 

「アハハ、もう肉で驚かなくなりましたよ・・・」

 

そう言いながらよだれを垂らしながらも全部噛みつくようなことはしていなさそうだ。それに知っている者はやれやれとため息を吐いている。

 

「今回、戦いでたまった疲れを癒やすために今回は最高級の『グラトニー』という品種の肉を用意した!」

 

「「「・・・・・・・ッ!」」」

 

その瞬間、全員が驚きに包まれる。全員肉を凝視する。

 

『グラトニー』・・・以前ベルがモウで死闘を繰り広げた都市、フェレライで手に入る牛肉である。

 

以前からレディがこの肉を好んでおり、領主しか食べられないようにしたのである・・・その味は上品なうまみと油・・・しかも食べるだけで美容にも良いと言われている。しかも餌もかなり上品で、モウがなくなってもなかなか手に入らない代物である。アレスはそんなことも気にしないのか、ジョッキを持って杯を上げる

 

「それでは、オラリオ征服の健闘・・・・そしてメレン上陸成功を祝ってかんp」

 

「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」」」」

 

「ええ?」

 

だがその瞬間、アレスの乾杯を無視して全員雄叫びを上げながら肉をとりわけ、イヤ争奪戦が始まった。

 

「おい、落ち着け!均等に分けろ!!」

 

「おめぇ、そりゃ多いだろ!俺によこせ!!」

 

「うるさいわね!あんたは立体起動も魔法も底辺だから黙っていなさいよ!!」

 

「なんだとぉ!」

 

兵士達の怒号が、辺り一面に響く。

 

「ヌゥウウウウウ!!」

 

だが、サシャはそれを聞いた途端肉の塊を全部に噛みついた。それに、全員で取り押さえようとする。

 

「テメェ、ふざけんなよ芋女!!自分がなにをしているか分かっているのか!?」

 

「止めてくれ、サシャ!僕、君を殺したくないよ!!」

 

「ああ、クソ!テメェ、一人で全部食うヤツがあるかよ!」

 

ベルトルトも押さえつけ、なんとかサシャを止めようとする。ユミルはその隙を突き、サシャから肉を取り上げる。

 

「ぬぁああ!!」

 

「・・・・・・・ッ!痛ええええええええええ!!こいつ、私の手を食ってやがるぅうううううう!!」

 

「やべええええええええええ!ユミルが・・・ユミルが巨人化しちまううううううううううう!」

 

「とりあえず、こいつを外で巨人化させろ!」

 

「いや、そんなことで力を使うかぁ!!」

 

「駄目だ!サシャ、それはユミルの肉だ!忘れちゃったの?!」

 

「とりあえず、サシャさん!落ち着いてください!」

 

だが、サシャは我を忘れたのかユミルの手を思いっきりかみ始めた。それを見て、巨人化のやばさを知っている者達は直ぐに離そうとする。そこにカサンドラが焦りながらも制止に入ろうとする。

 

「ヌン!」

 

「「「「ア・・・・・・」」」」

 

「・・・・キュウ」

 

「カサンドラアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

カサンドラが制止しようとした瞬間サシャはカサンドラの顔を殴ってしまいカサンドラは気絶しダフネの絶叫が響く。

 

 

 

「ともかく、ベルトルト!なんとかしろ!そいつを超大型巨人のちからで何とかしろ!!」

 

「分かっているよ!でも、サシャ・・・意識ないのに、動いているんだよ!!」

 

「ちょ、それやばくないかしら!?」

 

「食の執念って・・・すごい」

 

「コ・・コン」

 

 

「おい、なんで、あの肉にした」

 

「アレス様が兵士の士気を高めるためらしいです」

 

「おいおい、コレは士気どころの騒ぎじゃないと思うぞ」

 

「・・・なんか、この光景どこかで見たことあるな」

 

サシャをそのテーブルにいる全員が抑えている中、エルヴィン達は少し微笑みも出し肉を頬張りながら見ているのだった。

 

「ハァ・・・ようやく押さえられた」

 

「と言うより、力が尽きたんだと思う」

 

それから約10分後、なんとか抑えられ壁に縛り付けられていたサシャであった。ちなみにその後ベルの提案でサシャにも肉を食べられるようにしたのだった・・・

 

「はぁ~疲れた・・・」

 

「本当、サシャさんは手がかかるわね・・・」

 

「でもそれは、ローゼも同じじゃない?」

 

「な・・・?!ちょっと、それはどういうことよ!?」

 

「だって、昔お腹がすいたからって得体の知れないキノコを食べようとしていたよね?あれ、毒キノコじゃなかったからよかったけど毒キノコだったら危なかったよ」

 

「ウグゥ・・・何も言い返せない」

 

そうしてベルが昔話をしていると聞こえたのか大爆笑が辺りに響く。ローゼは怒りながらも笑っていたのだった。

 

「ねぇ・・・ベル」

 

「何・・・?」

 

ふと、ローゼはベルの手をきゅっと握りだした。

 

「・・・・・・絶対生きて帰ろうね」

 

「うん・・・」

 

そうしてお互い誓い合った後、自分の席に戻るのだった・・・

 




はい、今回はここまでです。ちなみに皆さん、ご存じの方もいると思いますが、今回進撃の巨人のあのシーンをいれました。次回はとあるやばいネタをやろうと思います・・・何が出るのかお楽しみに!


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Extra edition3 二次会の一時

こんにちは、今回はとある、自分の中で超禁断ネタをやります。なんなのか・・・それではどうぞ!


 

「オーイ、お前ら!」

 

「どうしたんですか?ユミルさん」

 

宴会での一騒ぎの後、ユミルが笑いながらベル達に話しかける・・・サシャ、カサンドラ達もどうしたのか首をかしげた。ふと、サシャの肩を組み、酒を持ちながらベル達を呼びかける。

 

「二次会しようぜ!!」

 

 

 

 

「と言うわけで、二次会するけど・・・なんで急に?」

 

と言うわけでとある空き家で泊まることになったベル、ローゼ、サシャ、ユミルは二次会の準備に鍋といくつかの食材を持ってきた。

 

「イヤー、随分前にな、ヘルメス様から肉をもらったわけよ・・・それで、暫く置いといて鍋にしたらうまいって聞いてさ・・・それで、ちょうど良いと思って出したわけよ!」

 

「ヘルメス様・・・?」

 

ヘルメスの名前を聞き、少し怪しむ。なにせ、あのヘルメスだ・・・あの男神は何を企んでいるか本当に分からないと言う疑心暗鬼が起きているため少し不安なのである。と言うか、現在投獄中の神だから信用が出来ない。

 

「大丈夫だ!エルヴィンに調べてもらった後だから毒は無いぞ!」

 

それを聞いて全員は安堵する。

 

「エルヴィンさんなら・・・」

 

「まぁ良いか」

 

信用の差は天と地の差のようだ。それを聞き、全員は早速料理の準備をする。

 

「じゃあ僕が料理するよ」

 

「お、待っていました!!」

 

そうしてベルは料理を始める。今回はとても単純で、肉を捌き、ネギやキノコなどをいれる。

 

「そして、メレンで取れたコレを・・・」

 

それにメレン産の『カツオ』という魚で作った『カツオ節』という物で出汁を取る。出汁の匂いが部屋で充満した。

 

「良い匂い・・・」

 

「本当、小僧は料理がうまいんだな・・・サシャも認めるわけだ・・・」

 

「当然よ、私のお嫁さんだからね!フフン!」

 

「いや、僕は男だからね!?」

 

そう言って笑いながら、調理を進める。少し出汁が出た後まずは野菜をいれる・・・そして次に肉をいれた。

 

「よし、後は待つだけだね」

 

「いや~どんな肉か楽しみだね!!」

 

「うん、それじゃあ待とうか・・・おや?」

 

「うん、どうしたの?」

 

「いや、雨が降っているなって・・・」

 

「ついていてよかったけね~今頃びしょびしょやで・・・」

 

「吹き込んでくるから閉めとくね」

 

そう言ってベルは窓を閉める。そして雨の音に紛れながらベル達は少しの間肉が煮込むまで雑談をしたのだった。

 

「ベルゥ~そろそろ出来たかぁ?」

 

「うん、もうそろそろ食べられそうだよ・・・」

 

そう言って、ベルは全員に取り分ける。後からカサンドラが来るようにも残しておいた。

 

「それにしてもコレ、独特の匂いがしますね・・・」

 

「うん・・・コレって食べられるものなのかしら?」

 

「大丈夫だろ・・・食っても死なないってさ・・・」

 

「お肉♪お肉♪」

 

そう言って、全員がとりわけ終わった。そうして皆器を持ちながら、鍋を食べ始める。

 

「なんか・・・変」

 

ふと、ローゼを見たベルがそうこぼした。ベルは一旦目をこする。再びローゼを見る。

 

(どう見ても・・・)

 

そう、ベルの目に映るローゼは・・・

 

(ローゼが何時もより・・・色っぽい)

 

何時もより、色っぽいローゼだった。汗は少し出ており、それが衣類にも染み付いている。

 

「大丈夫か?ベル?」

 

「ア・・・」

 

サシャは心配したのか、ベルを見つめたが暑かったのか胸元を少し開けていた。そのため衝撃で胸が一部あらわになる。汗もあり色っぽさが増す。

 

「おっと、胸元が・・・」

 

(この芋女・・・スケベすぎる)

 

ローゼはそれを見てゴクリとつばを飲み込み、サシャをじっと見つめる。

 

「ウ・・・ッ!」

 

そこにユミルの声が重なる。何があったと思い全員がユミルを見つめる。

 

「頭が・・・クラクラしてきた・・・」

 

「大丈夫?!ユミルさん!」

 

「横になってください、今すぐに!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

全員がユミルを寝かせる。心配そうに・・・少し興奮しているように服に手をかける。

 

「胸元を開けて、楽にした方がいいで!」

 

「下も脱がせましょう・・・イヤ全部、全部よ!」

 

そう言って、必要な所だけを残して服を脱がせようとする。だが、次の瞬間ガラリと扉の音が聞こえた。

 

「うううう・・・ぬれちゃった・・・ヘックション!あ、皆さんお待たせしました~」

 

そこからぬれた上着を脱ぎながら、色気を出しているカサンドラがやって来た。

 

「「「カ・・・カサンドラ・・・」」」ゴクリ

 

その姿に、ゴクリと固唾を飲み込む。カサンドラは座り、鍋を食べ始める。

 

「すいません、二次会があると聞いたんですが、ダフネちゃんが酔い潰れちゃって・・・遅れちゃったんです~それより~」

 

余談だが、サシャに殴られた後カサンドラは数分間気絶したが、ダフネのお陰で直ぐ回復したダフネは心配したせいか、やけ酒になってしまい結局カサンドラに運ばれることになったのだとか・・・

 

まぁその話は置いといて、カサンドラは暫く食べた後、そう言って何時もとは違う、普段見せない色気のある雰囲気でベルを見つめた。

 

 

「ベルさん・・・貴方、少し見ない間に・・・その・・・可愛くなりましたね・・・」

 

そう言って、カサンドラは顔を赤くし指を口元に置き色っぽい顔で見つめた。

 

「よしてよぉ・・・」

 

(可愛い!)

 

(可愛い~)

 

(結婚しよう)

 

ベルは恥ずかしかったのか顔を隠す。それが三人とも愛おしく見えた。

 

「カサンドラも、前より可愛くなったんじゃないかしら・・・」

 

「そんな~照れますよ~でも、そう言われると・・・サシャさん、どうですか?」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

(なんなん、この感情・・・抑えきれない・・・・・・・ッ!)

 

(こんな気持ち・・・初めて・・・じゃないけど・・・、抑えきれない・・・どうやって発散させれば)

 

「・・・・・」

 

肉の匂いが辺りに充満する。雨のせいで密室な為その匂いは刻々と濃度を増していった。

 

「駄目・・・僕・・・もう、我慢できない!」

 

そうして、ベルは上半身をあらわにする。更にベルは水着姿のような服装で、自分の後ろを手でパンと叩く。

 

「対人訓練をしよう!!」

 

「「「「なるほど、そうか!!」」」」

 

その瞬間、四人の対人訓練が始まった。対人訓練とは言っても極東で伝わる相撲というような雰囲気だった。

 

家からはあえぎ声が聞こえ、そうして暫く時間が経った後全員力尽きたのか寝転がる。

 

「「「「「ごちそうさまでした」」」」」

 

そうして、力尽きた少女達(一人男の娘あり)は眠りにつき朝日が昇るのを待つのだった。

 

 

翌日・・・

 

「雨・・・やみましたね」

 

「昨日はなんか盛り上がっちゃたわね・・・」

 

「うん・・・」

 

「結局なんの肉だったんだ?」

 

「さぁ・・・?」

 

全員気が付いたところで、服を着替えて外に出ていた。既に丘から朝日が見え始める。

 

「皆・・・誰にも言わないでね」

 

「「「「イエッサー」」」」

 

そうして全員がそう朝日に誓った後5人はそれぞれの役目に戻るのであった。

 




はい、今回は『ゴールデンカムイ』よりラッコ鍋ネタを出しました。はい、ただ単にやりたかっただけです。反省はしている、後悔はしていない。

次回もお楽しみに!


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Chaptear39 降臨

ベ「おい、作者」

作「はい・・・」

ベ「リメイク版を作るとは聞いていたが、どうしてこんなにも遅くなったの?」

作「それは・・・勉強が忙しかったからです」

ベ「そうか・・・勉強が忙しければ、そりゃあ、仕方ないよな・・・」

作「違う、違うんだベル!投稿が遅くなったのも、全部俺が文を書くのが下手なせいだ!」

ベ「作者、良いんだ・・・」

作「え・・・?」

ベ「僕は進み続ける・・・この作者を血祭りに上げるまでは!」

作「アーウ」

はい、皆様お待たせしました!リメイク版は33話からなのでまだ読んでいないよって人はChaptear33から、どうぞ!






「ヌゥ・・・・・・・ッ!」

 

「ハァ・・・・・・・ッ!」

 

ディミオスはオッタルと剣を交えていた。互いの剣が火花をまき散らし、建物は崩壊する。

 

「なかなかやるな・・・」

 

そう言ってディミオスは翼を広げ、大空を舞う。

 

「だが、コレならどうだ!」

 

そのまま、ディミオスは降下してオッタルに向かって地面へと激突する。

 

「甘い!!」

 

だが、オッタルも負けていない。そのままオッタルは避け、ディミオスに、大剣を振りかぶる。

 

「ヌゥ・・・・・・・ッ!」

 

無論、ディミオスはそのまま剣で受け止めるが、力はオッタルが一枚上手だった。

 

「ヌウウッゥウウウウウウウウウ!」

 

ディミオスはそのまま、押され続け後ずさりをする。地面がめり込むほど力はオッタルが上であることをあらわにしている。

 

「ヌオオオオオオオオオオ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

だが、その前に翼で風圧を起こしオッタルの力を一瞬だけ弱らせ間合いから離れる。

 

「どうやら、力は俺の方が上であるみたいだな、大口を叩いていたほどではなかったか」

 

オッタルはディミオスを煽る(無自覚)ような口調でディミオスを見つめる。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ディミオスはそのまま上空へと飛びオッタルの回りを飛んで間合いに詰める。

 

「スピードも、どうやら俺の方が上であるみたいだな」

 

だが、オッタルはそれを見切りディミオスの剣を受け止めそのままもう一本の大剣でディミオスを切りつける。

 

「ヌゥ・・・・・・・ッ!」

 

いちおう、スピードはオッタルには劣るものの、ディミオスは後ろに下がり上空でオッタルとの距離を離す。

 

「避けたか・・・だが、貴様は剣姫よりは、上だ。褒めてやろう・・・だが、俺の敵ではない」

 

そう言って、オッタルは再び大剣を構え突如獣化する。

 

彼のスキル『戦猪招来』・・・獣化して全アビリティをあげるスキルである。その荒々しい見た目と共に、煉獄騎士らはざわめく。

 

「ハァ・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

スピードが上がり、瞬間ディミオスの後ろに大剣を向ける。ディミオスは受け止めるも、その強さは先ほどとは段違いだった。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「ハァ・・・・・・・ッ!」

 

ディミオスは再びオッタルの周りを低空飛行する。シャクティ達では、目に追えぬスピードであった・・・

 

「遅い!!」

 

だが、オッタルハそれを見抜きディミオスの身体に傷をつけた。

 

「ヌォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

ディミオスは悲鳴を上げるも、距離を離れ、傷を負いながらもオッタルを睨む。

 

「終わりだ・・・」

 

そう言って、再び大剣を構える。ディミオスは起き上がると手に魔力を集中し始めた。

 

「なんだ・・・?貴様の魔力など見た感じ俺より下だぞ?」

 

そう言って、オッタルはそのままディミオスを大剣で突き刺そうと走り出す。

 

その時だった・・・

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ボソボソと何かをつぶやいていた瞬間、ディミオスの身体から魔力が上がりだした。突然の事にオッタルは後に下がる。

 

「なんだ?!」

 

シャクティ達も突然の事に驚きを隠せないでいた。ディミオスから炎が現れ、そしてオッタルを見つめる。

 

「さぁ・・・第二ラウンドを始めようか」

 

「・・・・・・・ッ!いない!!」

 

そう言った途端、ディミオスの姿が消えた。オッタルは、ディミオスを探す。

 

「何処に行った・・・・・・・ッ!」

 

「オッタル!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

シャクティの声がする方向を見ているとディミオスの姿がそこにあった。

 

「ヌゥ・・・・・・・ッ!」

 

(重い・・・・・・・ッ!さっきとはまるで違う)

 

「どうした、そんなものか?」

 

そう言って、ディミオスは攻撃の手を緩めない。

 

「なにをした!?」

 

オッタルは、一旦距離を離れディミオスを睨み付ける。ディミオスは口角を上げる。

 

「ディミオス様、アレを使ったんですね!じゃあ、次は・・・」

 

そう言って、煉獄騎士団の一員で槍を持つ『シルバースタッフ・ドラゴン』が姿を現す。

 

「良いだろう、シルバースタッフ・ドラゴンよ!勝利のために命を捧げよ!」

 

そう言って再び手に魔力を貯める。そして・・・

 

「『カロナス・カサルテリオ』!」

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

その瞬間、シルバースタッフ・ドラゴンから炎が現れる。シルバースタッフ・ドラゴンは段々と灰と化していた。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

「また・・・・・・・ッ!」

 

その時ディミオスのからだが光り出す。オーラと共に雄叫びを上げながら、オッタル達を見つめる。

 

「まさか・・・」

 

「その通りだ・・・コレは『煉獄魔法』・・・かつて、我が故郷『ドラゴンワールド』で禁じられた、禁忌の魔法・・・仲間を犠牲にすることで、自身を強化する魔法だ・・・貴様らで言う、『強化種』というものだろう・・・」

 

「そんな魔法が・・・・・・・ッ!」

 

「だが、我が魔法は強さや弱さとは関係なく、倍以上の力を手に入れられる」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

それを聞いた途端、オッタル達の顔は青くなる。つまりディミオスはさっきの強さの4倍と言うことだから今まで格段に強いと言うことに違いがなかった。

 

「ヌゥン・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

さっきよりもスピードが速く、攻撃も重くなっていた。オッタルは、大剣で受け止めるもさっきとは違う、強者の威圧感がオッタルを襲う。

 

「ヌゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

だが、オッタルは負けじと押し返す。獣の姿にシャクティ達は震え上がった。獣の雄叫びがオラリオを包み込む。

 

「ヌゥゥゥゥゥ!」

 

「ちょ・・・アレ押されていないか?!」

 

だが、押されているだけであった。ガネーシャ・ファミリアの団員が気付くころには獣化も徐々に解けてきている。

 

「やはり・・・そうだったか」

 

そう言って、ディミオスは哀れむ目で見つめる。

 

「貴様のそのスキルは体力と精神力を大幅に減らす・・・さっきの超大型巨人で体力も奪われたというのに・・・」

 

「黙れ・・・・・・・ッ!」

 

そう言ってオッタルは、ふらふらと立ちながらもディミオスを見つめていた。ディミオスは、再びオッタルを見つめた後再び手に魔力を集める。

 

「ディミオス様、今度は我をお使いください!」

 

そう言って、クロスボウを持つ竜『クロスボウ・ドラゴン』が前に出る。

 

「うむ、その意思をしかと受け止めた。その命、我に捧げよ!『カロナス・カサルテリオ』!」

 

「ヒャハハッハハハハハハハハ!!キタキタキタァ!!」

 

不気味な笑みと共にクロスボウ・ドラゴンは灰となってゆく。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

ディミオスの身体から再び魔力があふれ出る。ディミオスは再びオッタルを睨んだ。

 

「・・・行くぞ!!」

 

ディミオスはオッタルの周りを低空飛行し始めた。先ほどよりもスピードは上でもはやオッタルでも目に追いつけるのがやっとだった。

 

「クソ・・・ッ!何処だぁあああああ!

 

圧倒的な差を見せつけられ、オッタルは普段の冷静さを見失っていた。

 

「そこかぁ!!」

 

オッタルは一本の大剣を投げる。だが、それも当たるはずもなく・・・

 

「終わりだ・・・『猛者』、オラリオ最強の戦士よ!」

 

「何・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間、オッタルの後ろに現れる。オッタルは受け止めようにも、大剣は弾かれる。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「さらばだ・・・」

 

オッタルは諦めようともせず、再び剣を取ろうとするももう距離もありとてもいけぬ状況であった・・・そして、ディミオスのスピードはオッタルには追いつけないものとなっていた

 

もう、オッタルはディモミオスに勝てることは出来なかった

 

「『ディミオス・エグデルスィ』!」

 

瞬間、オッタルの身体は二つに引き裂かれた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アア・・・アアアア」

 

一方リューは身体をガクガクさせながら、白髪の少年ベル・クラネルを見つめる。ベルの目は殺気が凄まじくリヴェリアも手を震わせるほどであった。

 

「フフフ・・・でもまだ一人か・・・まあいいや、ここで殺してやる!その後、あの女達もいずれ・・・」

 

少年の瞳は一言で言うなら悪魔であった。それほどの殺気がリヴェリア達を襲い恐怖心を煽る。

 

(でも・・・彼がそうなら・・・でも、よりによってあの人が・・・)

 

リューは同時に戸惑いを感じた。リューの状態を見て、リヴェリアは何かをつかんでいたようであった。

 

「貴様・・・もしかして『紅の正花(スカーレット・ハーネル)』・・・なのか?」

 

「「・・・・・・・ッ!」」

 

リヴェリアの言葉にリューはビクンと震える。その予想がリヴェリアにも分かってしまった。

 

「そんな、アリーゼさんは誰よりも優しく正義を貫いた人ですよ!こんなことするはずがありません!!なんてたって・・・」

 

「『千の妖精(サウザンド・エルフ)』駄目だ!!」

 

そうして、リューは止めるも遅かった。それは、彼にとって最も重い事実であり彼の逆鱗に触れるような言葉だったからだ・・・

 

 

 

 

 

「あの正義を司る、アストレア・ファミリアの団長ですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、空気が凍った。辺りは殺気までとは比べものにならぬほどの殺気が辺りを漂わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前・・・今・・・なんて言った?」

 

目を移すと、そこには今までにない怒りを放っており魔王と恐れられても良いほどのオーラを放ったベルであった・・・・

 




はい、次回・・・とうとうあの瞬間を・・・次回もお楽しみに!


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Chaptear40 知りたくなかった真実

はい、今回は遂にこの瞬間が来ました!!それではどうぞ!!


リヴェリア達は恐怖した。レフィーヤのあの一言により、少年の殺気が後ろの竜と共に、ビシビシと伝わる。

 

(なんなの・・・この殺気・・・普通じゃない!)

 

(こんな殺気・・・初めて・・・怖い)

 

(震えている・・・私が・・・この少年に・・・恐怖をしているのか?)

 

リヴェリアでも、武器を持つ手が震えている。レベル6であり、4代派閥の副団長であり、ハイエルフである彼女でも彼の殺気に震えているのだ。

 

それでレフィーヤが耐えられるはずもなくへなへなと倒れ込む。涙まで流し、座り込んでしまった。

 

「おい、そこのエルフ・・・もう一度言ってみろ」

 

「ひぃ・・・・・・・ッ!」

 

ベルの声にレフィーヤは震える。しかし、ベルはそんなことも知ったことではないかのようにレフィーヤに近づいた。

 

「おい、もう一度言ってみろと言っているんだ・・・なんて言ったテメェ・・・・・・・ッ!」

 

「やめて・・・来ないで」

 

レフィーヤは後ずさりするも、腰が砕けたように立ち上がることも出来ずにいた。

 

(動いて、動いて私の身体!このままじゃ・・・「貴様に言っているんだぞ・・・エルフ」ヒ・・・・・・・ッ!」

 

ベルは容赦せず近づいてくる。ジワジワと迫り来る恐怖が、レフィーヤの心を蝕む。

 

「ローゼが、あのクソ女共の団長ってか?そんなわけあるかよ!ローゼは誰よりも優しいんだ!!あの女達と一緒にするなんて・・・・・・・ッ」

 

「ウ・・・ッ!」

 

そう言って、ベルはレフィーヤの首を手にかけ壁に打ち付ける。

 

「アア・・・・・・・ッ!」

 

「さっき言ったよな?アストレア・ファミリアは正義のファミリアだってな・・・ちげぇよ、彼奴らは正義じゃねぇよ、彼奴らは僕からしてみれば闇派閥と同じなんだよ!」

 

「どう・・・して?」

 

レフィーヤは、首をつかまれながらもベルの言葉に問いかける。

 

「知らないのか・・・?アストレア・ファミリアがどんな所業をしてきたか!」

 

そう言って、レフィーヤの首をつかむ手を強めた。

 

「アガァ・・・・・・・ッ!」

 

レフィーヤの口からは血が出てしまう。だが、ベルが首を締める力を緩めない。

 

「僕の村は、アストレア・ファミリアに壊されたんだよ!」

 

その瞬間、ベルの瞳からは悲しみと怒りが伝わってきた。

 

「僕は・・・ただ、お爺ちゃんと一緒に住んでいたかったのに・・・!アルミノ兄ちゃんは立派になった姿を見てもらいたいだけだったのに・・・イシスお姉ちゃんは、彼奴らが村を壊さなかったら、自殺寸前まで行かず今でも笑顔で旅行に行っていたのに・・・カストロお兄ちゃんは自殺せずにすんだのに!!そこにいるアストレア・ファミリアのせいで!」

 

そう言って、ベルは頬から涙を流しながら叫び出す。

 

「僕は全て失った。そのせいで、あのクソ女共に殺されかけた・・・でも、彼女が・・・ローゼが、手を差し伸べてくれたんだ!!」

 

殺気がますます大きくなった。上空には、アジ・ダハーカもいるため威圧感がレフィーヤにビシビシと伝わる。

 

「そんな、僕の愛する人を、侮辱するなら僕は許さない!」

 

そう言って、ベルは目が赤く光り出す。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない」

 

殺気の強さが増していく。ベルの目は狼から竜と化していた。レフィーヤの首を締める強さは更に強まっていき、レフィーヤの身体は宙に浮いた。

 

「ウゥ・・・・・・・ッ!」

 

レフィーヤは必死にもがくも、レベルが下だとは思わせられないほどの力だった。このままでは死ぬと、リヴェリア達が助けに入ろうとも恐怖で身体が動かない。

 

(急げ、急げ、急げ、急げ、急げ、急げ!このままでは・・・・・・・ッ!)

 

 

「ベル・・・」

 

その時だった。レフィーヤの首を締める力が強まり首の骨も折れかけたところ煉獄騎士・・・アリーゼがベルの肩に手を置いた。その瞬間ベルは手を離した。

 

「ローゼ・・・?」

 

「ベル・・・後は私にまかせて・・・貴方はやるべき事があるでしょう?こんな事で魔力を消費しちゃ駄目よ」

 

そう言ってベルを諭すようにベルの手にふれる。その声は、もはやリュー達が確信する程はっきり聞こえる。

 

「・・・・分かった」

 

ベルはレフィーヤの首を離し、ローゼの方を見つめる。そうしてアリーゼはベルの頭を撫でた。

 

「私は、大丈夫よ・・・ありがとう、私の為に怒ってくれて・・・」

 

「ごめん・・・もう、大丈夫だから」

 

その瞬間、ベルの殺気は少しだけマシになった。少しだけ兎のようになっていた。

 

「ほら、貴方は自分の使命を果たすんでしょう?大丈夫、貴方なら出来るわよ」

 

「うん・・・」

 

そう言って、ローゼはベルをリューの方向へ指さす。

 

「行ってくる・・・」

 

「・・・・・ええ、行ってらっしゃい」

 

ベルは再び、アクワルタ・グラルナフを手にリューのもとまで走る。

 

「アリーゼさん・・・・もしかして・・・私を・・・」

 

「・・・・・」

 

アリーゼは、レフィーヤの言葉にフェイタルを持つ手が震えていることに気づいたのはリューだけであった・・・

 

「何・・・あのモンスター!」

 

「なんという・・・禍々しいモンスターなの」

 

上空に浮かび上がるモンスター、アジ・ダハーカに全員恐怖を覚える。ロキ・ファミリア団長フィン・ディムナは親指をなめながらアジ・ダハーカを凝視する。

 

「彼奴・・・です・・・」

 

「え・・・?」

 

小さくエルフィの声が聞こえる。エルフィは恐る恐るアジ・ダハーカに指を差した。

 

「あのモンスターが・・・ラウルを・・・殺したモンスターです!」

 

トラウマが蘇りだした。エルフィはその場では吐き涙を流した。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間、アイズの殺気が膨れ上がった。

 

(彼奴が・・・・・・・ッ!)

 

「『目覚めよ(テンペスト)』!」

 

「待て、アイズ!!」

 

「私が追います!!」

 

アイズは怒りで我を忘れ、アジ・ダハーカの元まで走り出すあらかじめ、シャクティと別行動していたアーディがアイズの後を追うのだった。

 

 

 

 

「ガレス・・・あの作戦をやるぞ」

 

「・・・・なんとなく察しがついたわ」

 

ガレスとフィンは準備するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「オラリオの冒険者よ、お前らの力を見せてみよ・・・さもなくば、破壊するまでだ」

 

ふと、上からリューの耳に低く恐怖を煽る声が入ってきた。そう、終焉魔竜アジ・ダハーカの声だ。

 

「アジ・ダハーカ、お前は手を出すな・・・僕は自分の手で、ヤツをやる」

 

「・・・分かった・・・その望み、叶えてやろう」

 

そう言ってアジ・ダハーカは空で待機しベルは、リューの元に刃を向ける。瞬間、アクワルタ・グラルナフから魔力がたまりこむ。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

リューは直感した。アレに当たったら間違えなく殺される。恐らくだが、リヴェリアの魔法でも防げるかどうかであった。リューはその魔力と殺気でその場から動けないでいた。

 

「まずは一人目・・・」

 

そう言って、ベルは剣を振るう。その瞬間、紫色の光が勢いよくリューの元に目がけて放たれた。

 

「アッ・・・・」

 

それは、震えている足と謎の安心感のせいで動けなくなっていた。リューはベルが放った光がスローモーションに見える。

 

(私・・・死ぬのかな?)

 

リューは自分が死ぬと感じ、急に記憶が鮮明に現れる。

 

リュー・リオンは昔、『リュミルアの森』と言う大聖樹を守る一族であり、戦士として修行をしていた。

 

だが、エルフは排他的で他の種族、特にクロッゾ家を蔑視しているのに嫌悪し、11歳に森を出てオラリオへ行った。ある日アリーゼにアストレア・ファミリアに入ることを誘われたのだ。その時はまだ彼女は荒れ狂っていた。

 

 

エルフの風習を嫌っていたはずなのに、自分もその風習が身についてしまっていて最初はなかなかなじめずにいた。だが、それでもアリーゼは見捨てないでくれた。一緒に苦楽をともにし、自分に向ける優しさがいつしかリューにとって憧れの存在であった。

 

だが、そんな日もあることで一瞬にして砕けてしまう。

 

最初は、ルドラ・ファミリアを追い詰めたとこだった。火炎瓶などを使い私達を殺そうとしたが、失敗し捕らえようとした。だが、その時ダンジョンがあのモンスターを生み出した。

 

それは『悪夢』と呼ばれてもおかしくはない、強さと見た目であった。幸いにも、全員生還できたが、私達は恐怖心でいっぱいになっていた。そのせいか、ギルドの情報を信じ切って私は襲撃し、早く終わらせたかった。

 

だが、それが私達を狂わせた。そう、あの情報は間違いで襲撃していたのは少年の村だったのだ。

 

それにリュー達、アストレア・ファミリアは自らの罪に後悔した。私がもっと冷静であったら、私が気づいていたら・・・そんな声が上がっていた。酷いときは自殺をしようとしていた団員もいたほどだ。気持ちは分かる。アリーゼは全ての責任を自分に向けさせオラリオから追放された。

 

苦しかった、辛かった、冷静に見えても彼女はもう限界であった。リューは自分の死を直感して、自らの武器を手放した。

 

(ああ、ようやく・・・・楽になれる)

 

「アリーゼ・・・せめて・・・貴方だけは・・・幸せになってください」

 

そう彼女はこぼしそっと目を閉じるのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャスト!『ドラゴンシールド 黒竜の盾』!」

 

その瞬間、黒い竜の形をした盾がリューを守る。突然の事にベルは驚きを隠せない。

 

「ローゼ!!なにをするの!!」

 

魔法を使ったのはアリーゼであった。コレは、ベルが万が一のためにアリーゼに防御魔法を渡しといたのだ。コレは4回まで使える代物である。それを自分の仇に使われ怒りを覚える。

 

「あ、ごめん・・・間違えて使っちゃた」

 

はっとし、アリーゼはそのまま顔をうつむかせる。

 

「もう、しっかりしてよ・・・たく、あと3回だから気をつけてね・・・」

 

ベルは少し戸惑いながらも、アリーゼを守るように立つ。レフィーヤはいつの間にかリヴェリアの傍にいた。

 

「疲れたの?ローゼ・・・少し休んでいた方がいいよ・・・大丈夫、君がアストレア・ファミリア団長なわけあるはずが無いんだから・・・」

 

ベルがそう言うと、アリーゼはそのまま立ち尽くしていた。

 

「そうか・・・私、つかれていたんだ・・・」

 

 

そうこぼした瞬間、突然アリーゼがベルの前に立ちはだかった。

 

「どうしたの・・・ローゼ?」

 

「・・・・・・・」

 

「どいてよ!ローゼ!!僕は仇を取るんだ!!そこをどけ!!」

 

そう怒鳴るもアリーゼはどかない。それどころか、ベルに刃を向けてきた。やがてアリーゼの口が開く。

 

「はは、なんでこうなっちゃたんだろ・・・きっと・・・貴方と長く一緒にいたせいかしら」

 

「ハ・・・?」

 

「もう・・・・私には正義が分からなくなっちゃた・・・こんな優しい子だって知らなければ・・・貴方に会わなければ私は・・・こんな、最低な女にはならなかった!」

 

「何を言って・・・」

 

そう言っている間、アリーゼは自身の鎧を脱いだ。やがて、リューたちがよく見る服装をした彼女が姿を現す。

 

「でも、今私がやるべき事は・・・『紅の正花』として・・・最期まで責任を果たす!!それだけよ!!」

 

「――――――ァ」

 

その瞬間、彼女がアリーゼだと分かった・・・分かってしまったのだ・・・自分の村を壊し、大切な人たちを殺した張本人。ヘルメスから聞いていた・・・ファミリアの最終決定権は団長と主神であると・・・

 

つまり、あの惨劇の主犯者でもあるのだ・・・その真実が彼にのし掛かる。

 

「アア・・・アア・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

その瞬間泣き叫ぶように吠えた。

 

(僕は・・・騙された?全部・・・ウソ?)

 

ベルの頭には今までの記憶が蘇る。共に旅をして、共に笑って、共に危機を乗り越えた彼女の思い出が彼の中に渦巻く。

 

「嘘だ・・・・・・」

 

そう言って、ベルは膝を地面に突く。

 

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダ・・・嘘だぁ!!」

 

涙を流しながら怒りの感情があらわになった。ベルは壊れた人形のようにそう連呼する。

 

「ベル・・・と言ったか・・・悪いが、真実だ」

 

リヴェリアが最期にとどめの一言を放った。その瞬間、ベルの何かがガラスのようにパリンと壊れた。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

ベルの悲痛な叫びが聞こえる。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

レフィーヤは少年に何か同情してしまっていた。レフィーヤだけではない。リヴェリアもであった。二人は敵でありながらも歩み寄ろうとしていた。

 

「は・・・はは」

 

(後は・・・私が彼に)

 

そう、アリーゼはここでベルに殺される事を決意していたのだ。アリーゼは目を閉じてただ自分が殺されるのを待つ。

 

その時だった。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

アジ・ダハーカに異変が起きた。アジ・ダハーカのからだに紫色の電流が流れ徐々に紫色に変色していった。

 

「何が・・・・・・・ッ!」

 

「許さない・・・」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

ベルがそうつぶやくと紫色の電流が流れ、アジ・ダハーカは更にでかくなっていった。

 

「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ・・・ユルサナイィ!」

 

 

 

リヴェリア達もアジ・ダハーカの様子に驚きが隠せない。姿は禍々しくなり殺気も大きくなって行った。

 

「殺して・・・殺してやる!アリーゼ・ローヴェル!!アストレア・ファミリアァ!!」

 

(良いぞ・・・我が相棒(バディ)よ!!その憎悪、その憤怒、その負の感情が我を更なる姿へと蘇らせる!!)

 

その瞬間、リヴェリアが何かを察した。

 

こいつは生かしておけない・・・生かしちゃだめだと・・・そう、こいつを生かせば世界が壊れる。それが、リヴェリアだけでなく遠くにフィン達も分かった。

 

「おい、『疾風』、『紅の正花(スカーレット・ハーネル)』!お前達の裁きは後だ!あのモンスターだけは・・・消さなければならない!!」

 

「「え・・・?」」

 

それは終焉が舞い降りた事を意味した竜、今まででも強かった竜が今少年の絶望、憤怒、憎悪によって進化を遂げたのだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終末の大魔竜 アジ・ダハーカ』へと・・・

 

「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」」

少年と竜の怒りの咆哮がオラリオを包み込んだのだった・・・・

 




はい、遂にアリーゼの正体がベルに知られました。次回、フィンのトンデモ作戦も・・・お楽しみに!!


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Chaptear41 魔神

こんにちは、次回でオラリオ編は終了します。それでは、どうぞ。

ベ「なんでこんな前書き適当なの?」

作「ネタ切れ」




「クソ・・・・・・・ッ!」

 

シャクティ達は現在必死に逃げていた。オッタルが敗北したのだ。オッタルの身体は血まみれで倒れていた。

 

オラリオ最強が敗れたとなるとこの集団では勝てないと踏んでいるからである。

 

「逃がすか!!」

 

だが、ディミオスのスピードにシャクティ達は追いつかれる。必死に逃げるも、ガネーシャ・ファミリアの団員達は撃退しようにも避けられ攻撃した者は真っ先に葬られた。

 

「ヌ・・・・・・?」

 

だが、突然ディミオスは止まりだした。何かを見上げているように立ち止まっていた。

 

「なんだ・・・?」

 

「団長!チャンスです!!今のウチに」

 

「ア・・・アア・・・」

 

そう言って団員達は路地裏を経由しディミオスから逃げた。

 

「なんとか逃げ切れましたね・・・」

 

「アア、だが一体・・・」

 

「シャクティ!!」

 

その時だった・・・後ろから聞き慣れた声が聞こえる。

 

「輝夜!ライラも・・・無事だったか」

 

「ああ、リオンはマルコからリヴェリアが取り残されていると聞いて飛び出したが邪魔者がいてな・・・見失った。」

 

「そうか・・・彼奴なら大丈夫だろうが・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間、謎の殺気が辺りを包む。シャクティ、輝夜、ライラもこの殺気で鳥肌が止まらない。

 

上空から何かが見えた途端、全員の身体が震える。そこには・・・

 

「何・・・アレ・・・・・・・ッ!」

 

巨大な竜がそこにいた。闇の力が冒険者の身体に伝わる。そのせいか竜は紫色の身体を纏い禍々しいオーラを出していた。

 

「あの・・・モンスターは・・・」

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

オラリオ全体に竜の咆哮が響く。

 

「あのモンスターは・・・・・・・ッ!」

 

「・・・今までのとは・・・確実に違う・・・」

 

そう言って、シャクティが後ろに下がりながらそうつぶやく。アジ・ダハーカは禍々しいオーラを放ちながら真下を見ていた。

 

「どこか見ている?」

 

「逃げ遅れた冒険者達かも知れん、私とハシャーナが向かう!お前達はここで待機していろ!」

 

 

そう言って上級冒険者達はアジ・ダハーカの元まで走り抜けるのだった。

 

 

「殺す・・・」

 

「ウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

ベルの一言でアジ・ダハーカは雄叫びを上げる。ベルはアジ・ダハーカの後ろに浮き、アリーゼを見下ろす。そこにはアリーゼの知っているベルはいなかった。

 

「レフィーヤ、ティオネ・・・『疾風』『紅の正花(スカーレット・ハーネル)』・・・構えろ、このままでは我々は全滅だ・・・一時ここから撤退してフィンと合流する・・・恐らく例の作戦が遂行しているようだからな」

 

「例の・・・作戦?」

 

「それって、最終手段のアレですか?」

 

それをレフィーヤが言った途端、リヴェリアは頷いた。レフィーヤもここまで来たかと驚きの顔が隠せないでいた。だが、その暇を与えないようにアジ・ダハーカは威圧感を与える。

 

「冒険者よ・・・その力我に示せ・・・さもなくば、破壊するまでだ」

 

その瞬間アジ・ダハーカの左手に魔力が集まる。黒い球が雷を纏いながら、アジ・ダハーカの手に集まっていった。

 

「『デストラクト・オールレイン』!」

 

「危ない!!」

 

「ちょ・・・なにをしているの!!」

 

アジ・ダハーカの出した黒い球は地面へ激突し、建物の残骸が現れる。そこにレフィーヤは走り出し、アリーゼを抱きかかえながら避けた。

 

「離して!あの子の狙いは私!私さえ死ねばこの子は「それでは貴方の仲間を殺すことになってしまいますよ!それに・・・あの状態、きっとあなた達を殺したとしても恐らく、暴走して世界を壊しかねません」・・・・・・・ッ!」

 

そう言って、レフィーヤは背中に持っていた自身の武器『森のティアードロップ』を構え魔法の準備をする。

 

「なんで・・・私はもう、正義が・・・」

 

「正義とか、そう言うのは知りません・・・ただ私は、人を殺されるのを・・・見たくはありませんから・・・それに・・・」

 

レフィーヤは一瞬、ベルを見つめる。

 

「アリーゼさん・・・あの子、何歳ですか?」

 

「え・・・?」

 

「良いから答えてください」

 

レフィーヤの質問にアリーゼは謎の気迫に押され、レフィーヤは戸惑いながら答える。

 

「・・・12歳だけど・・・」

 

「・・・・・・そうですか」

 

そうつぶやいた途端、レフィーヤはそのまま杖を構え魔力を貯め始める

 

「させるか!」

 

アスフィとベルはそれに気づき止めに入る。

 

「やらせねぇ!!」

 

だが、ティオネによってそれは防がれた。ベルはアクワルタ・グラルナフによってティオネ攻撃が弾く。アジ・ダハーカも片手に魔力をため、レフィーヤに向かって放とうとしていた。

 

「『解き放つ一条の光、聖木の弓幹(ゆがら)。汝、弓の名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢』」

 

「『デストラクト』」

 

アジ・ダハーカの片手に黒い球が出来る。レフィーヤからも魔力があふれていた。

 

「なめやがって・・・・・・・ッ!」

 

ベルもアクワルタ・グラルナフに魔力を貯める。だが、レフィーヤの詠唱が先であった。

 

「『アルクス・レイ』!」

 

「『オールレイン』!」

 

その瞬間、光と闇が激突した。辺りから、衝撃波のようなものが半径数十キロまで広がる。

 

「グウウウゥゥッゥゥゥウウッッッッ!」

 

「ヌゥアアアアアアアアアア!!」

 

リヴェリアとティオネは吹き飛びそうになり建物に、しがみつきながらレフィーヤを見つめる。

 

「ウウウウウウウウウっぅっぅぅぅうううううう!」

 

もちろんそれはベルも例外ではなかった。アクワルタ・グラルナフは結界を出現させるがそれでも、風圧には対応仕切れておらず空中に浮いていたため結界ごと吹き飛ばされてしまう。

 

「・・・・我が主!」

 

そこにディミオスが飛んできたのか、ベルの身体を支えそのまま地面に降りる。

 

「我が主・・・お怪我は」

 

「問題ない!良いから離せ!僕は彼奴を、アリーゼ・ローヴェルを!!」

 

そう言って、ベルは殺意を持った声を上げながらディミオスからおりようとする。

 

「いけません・・・魔力がもう底をつきそうです」

 

そう言って、ディミオスはベルをこのまま眠らそうとした。モンスターの召喚とアクワルタ・グラルナフは多大な魔力を消費する。それを数百体出し、オラリオを占領する為に魔力を消費していたため、ベルは眠りにつこうとしていた。

 

なお、精神枯渇(マインドダウン)になってもモンスターは残り戦い続ける。だが、無理をすればいざという時、魔法が使えないので厄介である。

 

「今はお休みください・・・我が主」

 

「うるさい・・・僕は彼奴を殺す・・・殺さなければ・・・」

 

そう言って、ベルはアリーゼがいるであろう方向へと向く。

 

「大丈夫です・・・アストレア・ファミリアに関しては我々が生け捕りにしましょう・・・後で我が主が存分に痛めつけて大丈夫ですので・・・」

 

そう言ってまるで子どもをあやすようにディミオスはベルを寝かせる。

 

「うるさ・・・ウグッ・・・」

 

「ホラ、無理しないでください・・・今は、ゆっくりとお休みください・・・我が主(哀れな少年)

 

そう言ってディミオスはベルを寝かせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

レフィーヤも魔力がつきそうで足下がふらつく。

 

「レフィーヤ!」

 

「リヴェリア様・・・」

 

リヴェリアとティオネはレフィーヤにポーションを渡し、飲ませる。

 

「全く、無茶するわね」

 

そう言ってティオネはクスリと笑う。魔力も回復し、レフィーヤは暫くして立ち上がれた。

 

「レフィーヤ!!」

 

そこに駆けつけたアイズもやってくる。

 

「大丈夫?!」

 

アイズはレフィーヤに近づく。

 

「あっは・・・はい、大丈夫です!」

 

「よかった・・・」

 

そう言って、アイズは胸をなで下ろす。アーディもほっとしていた。

 

「アリーゼ!?」

 

瞬間アーディの目には、アリーゼが映っていた。アーディは2年ぶりの再会に驚きを隠せない。

 

「ベルは、どうしたの?」

 

「アーディ・・・ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

「わわ、どうしたの?」

 

アリーゼが子どものように泣きじゃくる姿にアーディは驚きを隠せない。

 

「『九魔姫(ナイン・ヘル)』・・・コレは、それに・・・」

 

そこにシャクティがやって来た。

 

「あのモンスター・・・だろ?彼奴は、倒さなければならないが・・・フィン達は」

 

「ああ、最悪の事態だったために作戦を遂行している」

 

「やっぱりか・・・」

 

「我々も行かなくてはならない・・・すぐに準備w「逃がすと思っていたか?!」・・・・・・・ッ!」

 

恐ろしく、威圧のある声に全員の身体が震える。後ろを見ていると、アジ・ダハーカがそこにいた。

 

「我がそんな簡単にやられると思っていたか、甘い連中達だ」

 

そう言って、アジ・ダハーカは呆れの声を出す。アジ・ダハーカの手には再び、黒い球ができあがる。

 

「化け物が・・・・・・・ッ!」

 

「我に刃向かったことを後悔するが良い、『デストラクト・・・』」

 

そうして、アジ・ダハーカは黒い球をレフィーヤ達に向かって放とうとする。

 

「『紅牙』!!」

 

「何・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間、燃えさかる炎がアジ・ダハーカを襲う。アジ・ダハーカが放とうとしていた黒い球が消え去る。

 

「貴様・・・・・・・ッ!」

 

「間に合ったようだな・・・」

 

「椿?!と・・・」

 

「ヴェルフ・クロッゾだ・・・名前を聞いたら分かるだろうよ」

 

そう言って、赤髪の青年ヴェルフ・クロッゾはアジ・ダハーカを睨む。

 

「ほう・・・貴様、どうやら他の冒険者と比べてみれば弱い方か・・・」

 

そう言ってアジ・ダハーカは見下すように、ヴェルフを見た。

 

「なめやがって・・・・・・・ッ!」

 

「そして・・・お前が来るのも分かっていた・・・」

 

「アイズ!!」

 

一瞬でアイズはアジ・ダハーカの後ろにいた。だが、アジ・ダハーカはそれに気が付いており、そのまま黒い球を再び発生させる。

 

「『デストラクト・・・』」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「アイズ!」

 

「『オールレイン』!」

 

「・・・・・・・ッ」

 

「クソ・・・ッ!『紅牙』!!」

 

紅蓮の炎がアジ・ダハーカの黒い球の軌道を変える。アイズはそれに驚き思わず、後ろに下がる。

 

「たく・・・馬鹿かテメェ・・・今じゃ勝てないって分かっているだろ?!」

 

ヴェルフは少し怒る。アイズはそれを無視してアジ・ダハーカの元まで駆けようとする。

 

「馬鹿者!今は逃げることを優先しろ!!ここで死んでしまってはどうにもならん」

 

「急げ、煙が晴れるまでに!!」

 

だがリヴェリアに止められてしまった。アイズは渋々うなずき、全員そこから逃げるのであった。

 

やがて、オラリオは静寂に包まれた。上級冒険者はいくらか殺され、冒険者も混乱し、どこか逃げたようであった。中には捕虜にもなった者もいた。

 

「そろそろですか・・・」

 

サシャはそろそろかと、信煙弾を打つ。それはエルヴィンにも見えた。

 

「サシャ・ブラウス、冒険者は?!」

 

エルヴィン達率いるラキア王国の兵士は既に、壁のそばまで待機していた。信煙弾を受け、立体起動で上がる。

 

「戦闘がやみました・・・恐らく竜達がケリをつけたんでしょう・・・念の為、ディミオス、ガロウズ・デビルドラゴン、サッヴァークが見回りしています」

 

「分かった・・・とりあえず、我々も入り、ギルドまで行くぞ!」

 

「了解!!」

 

そうしてエルヴィン達は立体起動に移る。建物からから飛び移り、ギルド方面まで向かう。

 

「なんだ・・・?」

 

「どうしましたか?エルヴィン分隊長」

 

「止まれ・・・」

 

「・・・」

 

「これは・・・」

 

カサンドラ達は突然の事に首をかしげる。だが、エルヴィン、ケニー、サシャ、は、聞こえていた

 

「何か・・・」

 

「静かに・・・・・」

 

そう言って、サシャは耳を地面につける。

 

「この音、サッヴァーク達ではない・・・人の足音がします!!」

 

「「「・・・・・・・ッ!」」」

 

その瞬間、全員が驚嘆の顔を見せる。

 

「恐らくオラリオの冒険者・・・でも、どれも低レベルの・・・イヤ、一般市民、神も含まれています」

 

「なんで分かるんですか!?」

 

「足並みとかでなんとなくや・・・だが、この先は確か・・・まさか!!」

 

サシャは驚きの顔を隠せない。いや、まさか・・・そんなことあり得るのかという顔で見つめていた。サシャは驚嘆で動けないでいた。

 

「サシャ、その足音の連中は何処だ!どこに向かっている!!」

 

「正しいかどうか知りませんが・・・恐らくですが・・・」

 

サシャは固まった唇を震わせ、指を差した。

 

「なっ・・・そんな・・・そんなことをするんですか!?」

 

カサンドラは特に、驚きを隠せないでいた。だが、あの団長ならやりかねないという事もどこか納得している顔であった。

 

「だが・・・あり得るのか!?そんなことが・・・」

 

「とにかく追うで!!エルヴィン分隊長は、ギルドに!」

 

「分かった、よし我々はこのままギルドに向かうぞ!!」

 

「「「は・・・はい!」」」

 

兵士達は立体起動で速やかに移動する。途中、エルヴィンは険しい顔をする。

 

「だが、フィン・ディムナ・・・彼奴は何を企んでいるんだ?」

 

そう言って、エルヴィンはある方向へと目に移す。そう、そこは全冒険者になじみがあり、一般市民はほぼ中に入ることはない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオ中心の塔『バベル』であったからだ・・・

 




はい、今回はここまでです。ここでのエルヴィンは分隊長にしました。

次回、フィンら含むロキ・ファミリアの作戦が明らかに!


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Chaptear42 移住

はい、皆さんこんにちは・・・すいません、オラリオ編がもう少しだけ続きます。本当は今回で終わらせるつもりでしたがもうちょっとだけ続くことになりました。次回で必ず新章まで突入するのでお楽しみに!!


 

「急げ!ラキア王国が来る前に!!」

 

少年らしき叫びが、バベルの近くを覆う。それに揃って何百、何千万人程の市民、冒険者、ギルド職員、神がぞろぞろとバベルの中央へ入っていく。

 

「ママ・・・」

 

「大丈夫よ・・・」

 

市民達は上級冒険者達に引かれながら、ダンジョンに入って行く。

 

コレはフィンが提案した『ダンジョン移住計画』・・・大勢の人間、そして上級冒険者が次々と死に、オラリオが最大の危機の時最終手段として残されていた。

 

コレは上級冒険者とその側近らがダンジョンの安全階層、18階層までの道を開き移住するという計画だ。

 

現在、ガレスらがその道を開けさせ一般市民らを18階層まで避難させ、そこで徹底抗戦させる作戦だ。

 

一般市民は冒険者が護衛し、更に、一般市民には自動的に恩恵を与えある程度戦えるようにしていたのだ。最悪を想定しており、ロキ・ファミリアの主神ロキ、そして眷属があんまりいない神など(中には眷属が0のヘスティア)更に恩恵は授けないと決めていたウラノスも関係せずそれぞれ恩恵を持たせギルドが定期的に一般市民達を訓練していた。

 

また、神には上級冒険者が護衛する手はずになっておりダンジョンでは一切神威を放たないようにしている。

 

ダンジョンは神を嫌っている。更に異常事態もおかしくない現状だ。それに神威が出てしまえばダンジョンの怒りを買う。

 

『ダンジョンは生きている』それが常識のため何が起こるか分からない・・・だからこそ、リスクもあり最終手段として残されていたのだ。

 

降伏の声も上がったが、エルフィが伝えていた竜がフレイヤでも脅威に感じるモンスターなら倒さねばと言うことで降伏はあり得ない形へとなってしまっているのだ。

 

「こちらへ、落ち着いて行動してください!」

 

ギルド職員と上級冒険者の声があちこちで聞こえる。市民の周りにはまだ生き残っている中級冒険者達がいた。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「嗅ぎつけてきたか!」

 

大勢の人の中、竜達が人の雪崩に向かって一直線で飛んでくる。

 

「向かい討て!!」

 

オラリオ側も魔法などで、応戦する。ロキ・ファミリアのベートが先陣を切り、回し蹴りで葬り去る。更に後ろには、アリシアとエルフィもいる。マルコは火傷のせいで治療をし、銃のせいで、ダンジョンで運ばれているためいないが、アリシアとエルフィ、リーネが支援魔法を送っておりベート達も動きやすくなっていた。

 

無論、中級冒険者達もおり迫り来る竜は殺した。だが、通常のモンスターより遙かに強かった。中にはそれで死んだものも出たのだから・・・

 

冒険者はラキアの兵士によって体力も奪われていたため呼吸が荒い。

 

「クソ・・・・・・・ッ!」

 

そう言って、比較的弱いモンスターを殺していく。だが、倒してもキリがなかった。

 

「数が多い・・・うん?」

 

そこに一体の影が見える。竜、つまりモンスターの影であったがどこか人間らしさを感じられた。

 

ダンジョンでも人型のモンスターはいるが、このモンスターは服装、そして雰囲気が人間に似ていたのだ。服はどこか魔道士を思わせるような服をしている。

 

「なんだ・・・あのモンスターは?」

 

「この匂い・・・あのでか物と近い匂いがするぜ」

 

その言葉に、冒険者達はざわめかせる。でか物、それはアジ・ダハーカで、間違えなかった・・・アジ・ダハーカのちからは分からないものもいたが、姿を見ただけで今までで一番強い敵だとは確信を持てたため、恐怖する。

 

「焦るな、我々には魔剣もある!応戦するのだ!!」

 

そう言って、冒険者は武器を構える。直前、ヘファイストス・ファミリアによって『クロッゾの魔剣』が配られた。ヴェルフがラキアに向けて渋々打ったものである。

 

だが、その竜は冒険者が全く予想しなかった行動に出る。

 

「『闇よ・・・』」

 

「なっ!?モンスターが詠唱?!」

 

モンスターが詠唱を始めたのだ。以前、ロキ・ファミリアが遠征で魔法を使うモンスターがいたが片言であった。だが、このモンスターは人の言葉をまるで母国語みたいに詠唱を始める。

 

一部の異端児を知っているガネーシャ・ファミリアでも魔法を使う異端児はいないという。

 

つまり、このモンスターはただ者ではないことが分かる。また、ベートが言ったようにアジ・ダハーカの匂いが強いと言うことはそれほどアジ・ダハーカの魔力が高いと言うことだ。

 

「『光を殺し、新たな世界へと創造を・・・光を消し、この世界に終焉を・・・我は魔竜の眷属であり、魔竜の下部であり、魔竜の分身』」

 

(このままでは不味い!)

「総員、かかれぇ!!」

 

「おい、待て!!」

 

ベートと中級冒険者は制止に入るが、下級冒険者と一部の中級冒険者達は詠唱を止めようと走り抜ける。

 

「『黒き深淵が世界を包み込み、破壊し、全てを滅せよ』」

 

「今だ、魔剣を撃て!!」

 

そう言って、クロッゾの魔剣が火を噴く。氷、雷、炎、風、全てが魔道士の竜に降り注ぐ。

 

「やったか?!」

 

瞬間爆発が起き、全員その場から離れていた。煙が立ち、魔道士の竜は見えない。

 

「はは、ざまぁみろ!」

 

そう言って、安心したかのように冒険者は笑いだす。

 

だが、ベートの顔は優れない。煙のせいで匂いが混合しているためだ。アジ・ダハーカに近い匂いは周辺を漂っているため分からないでいる。

 

「・・・・・・・ッ!おい、テメェら、そこから離れろ!!」

 

「え・・・?」

 

その瞬間煙が晴れてきた。そこには・・・

 

「『来たれ、来たれ、闇より来たれ終焉の炎よ!忌まわしき歴史と光が消え去るとき、我らの主は神へと上り詰める』!」

 

「「「な・・・?!」」」

 

「嘘でしょ?魔法が効いていない?!」

 

先ほどの竜が、無傷で詠唱を続けていた。魔法は、ドンドン大きくなっていった。

 

「『魔竜の眷属 アハト・ナハトの名に誓う・・・滅びよ!!』」

 

「お前ら!逃げろ!!」

 

ベートがそう呼びかけるが、時は既に遅く、魔力は大きくなり今にも放たれそうだった。

 

「『ダーク・インフェルノ・ヒストリー!』」

 

その瞬間黒い炎が一直線に中級冒険者に向かって放たれる。

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

そして、中級冒険者達がいた場所は爆発し地面から火の海ができあがる。

 

「やっぱり、変わらないか・・・」

 

そう言って、『魔竜の眷属 アハト・ナハト』は手に持っている杖を見つめ、ため息をつく。

 

(どうなってやがる・・・クロッゾの魔剣だぞ!アレをくらってただで済むわけが・・・・・ッ!)

 

そう言って、ベートとアリシアは目の前の灰とモンスターの装備らしき者が目に映る。

 

(まさか・・・・・・・ッ!)

 

それを見て、アリシア、エルフィ、リーネは怒りを感じた。

 

「いや~助かったよ・・・なんせ、こいつらが俺をかばってくれたんだから」

 

そう言って、アハト・ナハトは笑いながら灰のほうを見つめる。

 

「あんた・・・・・・・ッ!」

 

そう、さっきの攻撃は防がれていたのだ。モンスターが盾になって・・・あの一瞬のすきにだ。

 

「仲間を盾にしたって言うことか・・・・・・・ッ!」

 

「酷い・・・」

 

「そうだが?何か問題でも?」

 

全く悪びれもせず、アハト・ナハトは笑いながらそう口にする。

 

「別に良いだろ、どうせ蘇るんだから、つー訳で頼んだわ、アインスト」

 

「了解した・・・」

 

そう言って、今度は年老いている魔道士らしき竜『魔竜の眷属 アインスト』が赤い宝石をつけている杖を構える。

 

「『戦え、竜の化身よ・・・我らの戦いはまだ始まりに過ぎない。倒れることは許さず、死ぬことは許さぬ・・・我ら主の剣となり、我らが主の盾となりて、敵を討ち滅ぼせ・・・偉大な竜アジ・ダハーカの眷属、アインストが告げる・・・戦え、竜よ・・・魔竜の眷属よ』」

 

アインストが詠唱を始めると、灰は魔方陣に囲まれる。そして・・・

 

「『リターン・アポカリプス』」

 

次の瞬間灰が光の粒子、浮かび上がり身体を構成する。やがて子どものようで灰色で目の紋章が腹部にある竜と背中に赤い盾のような甲羅を持っている竜が灰から復活した。

 

「ウウ・・・」

 

「な・・・嘘でしょう?!」

 

「蘇生魔法・・・」

 

蘇生魔法・・・未だかつて誰も成功した事がない幻の魔法だ。魔道士達なら・・・特にエルフにとっては忘れがたい魔法であった。コレは世界でたった一人の賢者でさえも成功できなかった魔法である。そんなものを見せつけられ、全員は驚きを隠せない

 

「オラ、ジュニア、アビス!さっさとたてよ、なんせお前は俺達のたて(・・)なんだからな、何つってハハハハハ!!」

 

アハト・ナハトはしゃれを言って笑いながら子どもの竜『魔竜の眷属 カース・ドラゴンJr』と盾を持つ、小さな竜『魔竜の眷属 アビスシールド・ドラゴン』は傷が少しあり、血も流れていた。

 

「・・・やめて・・・もう、痛いのイヤだよ」

 

泣きながら、カース・ドラゴンJr(以降ジュニア)は懇願していた。アビスシールド・ドラゴン(以降アビス)は気絶している。

 

「黙れ・・・貴様らは弱く、クズだ!だが、ありがたいことに貴様は一度命を落とすことでどんな攻撃も受け止められる力があるのだ。それだけのための存在なのだから、我々の盾となれ」

 

そう言って、アインストは冷たい視線でジュニアを持ち上げる。

 

「痛いよぉ・・・やめて」

 

「うるさい、貴様は我が主の為に戦えば良いのだ」

 

「そんな・・・我が主は・・・」

 

「主の意思は『アストレア・ファミリア』の抹殺、そうだよな?」

 

「ウウ・・・」

 

「それだけの命令が、俺達をここまで強くする。まぁ呼ばれた故に行動は制限されるが、我が主はガキで助かったぜ・・・が、この命令の穴を見つけて、お前を使った戦法が真っ先に浮かんだ!コレで俺達は更なる力をもらえる!!普通、我が主に見つかれば命はないかもしれん幸い、我が主は眠りについているからなぁ!!だから、テメェはゴミらしく俺達の盾となるんだよ!」

 

大声で笑いながら、アハト・ナハトはジュニアの首をつかみアビスを踏みつける。アハトの笑い声がオラリオに響いた

 

「やめろぉ!!」

 

「ア・・・?」

 

その瞬間、リーネの怒りが限界だったのかそのまま突っ込みアハト・ナハトを殴った。だが一瞬で杖をしまい、拳を片手で受け止められる。

 

「オイオイ、何やけになっちゃってんだよ嬢ちゃん、当然のことだろ?弱いヤツは強いヤツの奴隷になる・・・当たり前のことじゃねぇか」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

アハトは、腕をつかみリーネを宙に浮かせる。

 

「ウグ・・・・・・・ッ!」

 

「そこにいる、ええとなんだっけ・・・アアそうだ、『凶浪(ヴァナルガンド)』だったけ?そいつも同じじゃねぇか。」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「そいつは雑魚をゴミだとかクズだとか罵っていたんだろ?同じじゃねぇか、ゴミをゴミと言って何が悪い・・・もっと言えば俺はゴミを有効活用しているんだよ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

そう言って、アハトはリーネをつかんでいる腕の力を強くする。

 

「アアアアァァァァ!!」

 

「この世にはな、持てる者と持たざる者がいるんだよ!つまり俺達は持てる者!こいつらは持たざる者なんだよ!!そいつをゴミと言わずなんだという?アア?!なぁ、そうだろう、『凶浪(ヴァナルガンド)』!?」

 

「ガァ・・・・・・・ッ!」

 

アハトは握る手を強くする。鋭い痛みがリーネを襲った。

 

「おい、『凶浪(ヴァナルガンド)』・・・取引だ!俺達と共に来い!お前と俺達、お互い強さを求める者だ!俺達と組めば最高の力を手に入れられる!!もう一度言うぞ、俺達と来い!!共に強さを極めようではないか!」

 

そう言って、アハトはベートに仲間に入れるのを誘う。ベートは真顔で睨み付けていた。

 

「だまれ・・・」

 

「ア・・・?」

 

その時であった・・・リーネは拳を振るわしながら、何かをつぶやいた。アハトは聞こえなかったのか顔を近づける。

 

「だまれぇ!!」

 

「グボォ!!」

 

リーネはアハトに回し蹴りをくらわせた。アハトはその衝撃で、地面に倒れ込む。

 

「あんた達が・・・ベートさんを語るな!!!」

 

「何・・・・・・・ッ!」

 

リーネは感情のまま叫びだした。怒りが彼女からあふれ出た。

 

「ベートさんは・・・確かに口が悪くて、弱い人には罵るなどして嫌われてはいるけど・・・本当は優しくて、強い人なんだ!!あなた達、雑魚と違って、落ちぶれていない!同じ、魔道士として・・・人間として・・・ベートさんを語るな!!」

 

「誰が雑魚だと・・・テメェ、どうやらお仕置きが必要かも知れねぇな・・・」

 

そう言って、アハトは手に魔力を込める。

 

「調子に乗るなよ、クソガキがアアアアア!!」

 

「させない!!」

 

「ゴヴェア!!」

 

そこにアリシアが殴りかかる。アハトは地面に倒れ込む。

 

「アハト!!」

 

「私達もいるよ!」

 

「グハァ!!」

 

アリシアもアインストに蹴りを入れる。その間に、二人はアビスとジュニアを奪い取った。

 

「いててて・・・なっ!?しまった!!」

 

アハトは焦りだし、エルフィ達を睨み付ける。アインストも傷を負わせたことに不快感を得た。

 

「許さぬ・・・」

 

「テメェら、俺を怒らせたらどうなるか分かっているよなぁ!!」

 

二体は杖を構え始める。その瞬間、炎がエルフィ達の元まで飛んできた。

 

「なっ!?」

 

「無詠唱?!」

 

二人は急いで避けようとするも一歩アハト達のほうが速く、炎はエルフィの目前までやって来た。

 

「チッ・・・さっきから黙ってみていれば」

 

だが、それは防がれた。ベートがリーネ達を守ったのだ。

 

「何!?」

 

「我が炎を受け止めた!?」

 

二体の竜は驚きを隠せないでいた。彼らはアジ・ダハーカの魔力を受けていたからこそ、強化された竜である。彼らの故郷『マジックワールド』では、そのお陰で同胞では負けなし、上級者にも勝てたほどだ。それを防がれたことに驚きを隠せない。

 

「へッ・・・世の中、相性という物があるんだよ!!」

 

彼の足についてある防具、『フロスヴィルト』は魔法を吸収し、特殊攻撃に変える武器だ。

 

「チッ・・・!交渉決裂か!」

 

そうしてアインスト、アハトは二体とも杖を構え直す。

 

「おせぇよ!!」

 

だが、ベートは持ち前の俊敏でアハトのうしろに回る。

 

「なっ・・・・・・・ッ!」

 

「オラァ!!」

 

「アハト、クソ「よそ見していて良いのかよ!!」ヌァ・・・・・・・ッ!」

 

アインストもベートの回し蹴りで吹き飛ばされる。アインストは被っていた帽子が吹き飛ばされた。それと同時にベートは手に持っている魔剣を手に持ち再び魔法を吸収する。

 

「良いか、良く聞け!確かに俺は強さを求めている。だがな、テメェらが雑魚のくせに雑魚を痛めつけるのは俺の趣味じゃねぇ!あの世でよく覚えておけ!!それによぉ・・・・・・・ッ」

 

そう言って、ベートはアハトの距離を詰める。

 

「俺は、守らなきゃいけないヤツが・・・いるんだよぉ!!」

 

右足の炎が一気に燃え上がり、アハトの身体を貫く一撃が繰り出された。それは爆発し、周辺が煙で覆われた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィン!」

 

「リヴェリア、アイズ、ティオネ!」

 

「団長、副団長、ご無事でしたか!」

 

「ああ、それより市民は?」

 

「ほぼ避難完了だ。後はギルド職員と、ベート、リーネ、エルフィ、アリシアだけだ」

 

一方、バベル付近ではフィン達がリヴェリアと合流していた。無事が確認できたところ、フィンは少しほっとする。だが、その暇も与えず竜は襲いかかってくる。

 

「『火月』・・・クソ!団長、大丈夫か?」

 

「ああ、感謝する、ヴェルフ・クロッゾ。君の魔剣のお陰で、市民達は無事にダンジョンへ入れている。済まない、君の信念を曲げてしまって」

 

「礼は良い、ヘファイストス様は?!」

 

そう言って、ヴェルフは辺りを見渡す。

 

「ヘファイストスなら無事だ・・・ガレスとティオナ、アストレア・ファミリア、ミア達が護衛している」

 

「そうか・・・」

 

「他の皆は?!」

 

「ベート、エルフィ、リーネ、アリシア以外はダンジョンにいる。ベート達は今あっちで戦闘中だが、こちらも手が離せない・・・・・・・ッ!」

 

「なら・・・私が『目覚めよ』!」

 

そう言って、アイズは風を纏い、ベートがいる方向へと向かう。

 

 

 

 

一方、ダンジョン・・・

 

「ヌォオオオオオオオオオ!!」

 

「「「「グギャアアアアアアアアアア!!」」」

 

ガレスは巨体な身体に見合わないほどのスピードを出しながら、モンスターを灰へとする。地面からは魔石を拾う。強化種が出来るだけ現れないためだ。

 

「相変わらず、すごいなぁ~ガレスは」

 

ロキは護衛している、ガレスを労う。

 

「ロキ・・・お主も気をつけるのじゃぞ」

 

「分かってるって、ア~酒を飲みたいなぁ~」

 

「暫くは飲めんぞ」

 

「え~そんなぁ~」

 

そう言って、ロキは何時もの対応をしていた。そこに、ガレスは笑いながら安心する。

 

「にしても、地上は大丈夫かな?」

 

ヘスティアがそう言って、アストレアに聞く。

 

「大丈夫よ、リューもいてくれているし・・・」

 

「おい、君たち、呑気だなぁ!私は怖くてたまらないよ!ヘスティアよ!!頼む、この恐怖を忘れる為に熱い一夜を・・・」

 

「「「黙れ、変態」」」」

 

「(´・ω・`)ショボーン」

 

後ろにはアポロンもいた。

 

「アポロンよ・・・今はそれどころではないだろう。お前も、眷属を多数失っている状態だ」

 

「だって、怖いんだもん!!」

 

「ガキか・・・」

 

そばにはミアハ、タケミカズチはアポロンに飽きられているところであった。

 

「アミッドォォォォォ!!頼む、生きていてくれぇ・・・じゃないと金がぁ・・・」

 

「「「はぁ~」」」

 

ディアンケヒトの発言にアミッドに同情するものが多かったそうな。ディアンケヒトのことは殆ど飽きられている状態であった。

 

「なんで私がこんな目に・・・」

 

「ククク、面白いことになってきたぁ・・・」

 

イケロスはにやりと笑いながら、先へ進みイシュタルは不満を言う。

 

ダンジョン内でも神がいつも通りにしているのを見て、少し冒険者はほっとする。

 

「・・・・・・ッ!」

 

「ロキ・・・?どうしたの?」

 

「ロキ・・・?」

 

だが、突然ロキの顔が青くなる。

 

「待てよ・・・そうなるとウチがとっておいた酒は・・・」

 

「「「終わってるな」」」

 

「マジかぁ~」

 

ロキはそう言って、頭を抱える。それに、神は笑うのであった。

 

「ロキ・・・」

 

だがそれを見て、ヘスティアはどこか胸騒ぎがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かこの辺に・・・」

 

アイズは砂煙が舞い上がっている中、ベート達がいる場所を探す。

 

「ベートさん!!」

 

「エルフィとリーネの声・・・一体何が」

 

アイズはリーネ達の声を聞きつけ、声がいる方向へと向かう。

 

「アイズさん!?」

 

「一体何が起きたの?」

 

アイズは問いただす。アイズは剣を構え撃退する準備をしていた。

 

「ベートさんが、モンスターと戦ったんですが・・・爆発が起きて、分からない状態です」

 

そう言って、エルフィ達からは不安の声を聞く。アイズは黙って砂埃から、目の前を見つめる。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

だが、次の光景にアイズは固まってしまった。そう・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ア・・・ガァ!」

 

「期待外れだったな、ベート・ローガ・・・」

 

そこにあったのは身体を金属類で貫かれ、地面に血だまりが出来るほど出血していたベートであった。

 




はい、今回はここまでです。次回こそ、オラリオ編完結させます。ちなみにバディファイトで登場する魔竜の眷属の中でいちばん好きなのは今回出てきた、アハト・ナハトとアインストの二体です。魔法使いで、ドラゴン・・・よくないですか?(作者は好きなキャラほど悪役にさせたい変態)

次回、ベートの運命はいかに!


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Chaptear43凶浪

こんにちは、今回でオラリオ編は終了です。次回から18階層編がスタートします。

注意

原作キャラが死にます。苦手な方は回れ右。


「ベート・・・さん?」

 

「ウガァ・・・・・・・ッ!」

 

「おいおい、さっきまでの威勢はどうした?おら、俺達をあの世に送るんだろ?」

 

アハトはいつの間にか手に持っている剣を手に持ち、刺していた。そこからは血が出ており、だらだらと地面にたれていた。更にアハトの手にも血が染みこむ。

 

「アハト、貴様!なんなのだ、その魔法は?!」

 

「え・・・?」

 

アインストもこの魔法はしらない様子であった。アハトは、にやりと笑いながらベートを見つめる。

 

「ああ、アインストには秘密にしていたな・・・錬成魔法・・・俺が開発したもう一つの魔法だ・・・コレさえあれば俺が魔力のある限りいくらでも作れると言うことだよ」

 

そう言って、アハトはグリグリと持っている剣をひねる。

 

「アアアアッッッッアアアアァァァァ!!」

 

「オラァオラァ!どうした?さっきの威勢はよ!」

 

「やめろぉ!!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

あまりの痛みにベートの悲鳴が、バベルにいるフィンまで聞こえた。それに二人は我を忘れて、アハトに向かって走り出す。

 

「無駄だ!!」

 

その瞬間、魔法陣が形成されたのと同時に氷の壁が立ちはだかった。

 

「嘘・・・魔法は三つまでしか使えないはず・・・・・・・ッ!」

 

「あのさぁ・・・リーネだっけ?クソガキ、いつ俺が魔道士だって言った?」

 

アハトはにやりと、壁の奥から見る。

 

「俺達は『魔術師』という存在だ。俺達の故郷『マジックワールド』では、当たり前に存在していた職業でもある・・・」

 

「それとなんの違いが・・・!」

 

「俺達はここから別の世界から来た・・・つまりこの世界にとってイレギュラーな存在だ。その中にある、マジックワールド・・・魔法に特化した世界だ。だから、お前達と違って魔法なんて10個や20個持っていて当たり前なんだよ!その中の魔術師は特にずば抜けているからなぁ!当然、それより俺達は大量の魔法を使う!」

 

そう言って、アハトは剣を引き抜いた。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

ベートの悲鳴が、壁越しから聞こえる。

 

「・・・・・・・ッ!やめろ!!ベートさん、待っていてください!今助けますから!!」

 

「『目覚めよ(テンペスト)』!」

 

二人は自らの武器を取り、壁を攻撃する。だが・・・

 

「・・・なんで!」

 

氷の壁は、アイズのデスペレートでも小さな傷が出来る位だった。

 

「当然だ!俺はアジ・ダハーカ様の加護を受けている!!テメェらのようなクソ女神みたいな恩恵とはちげぇんだよ!!」

 

そうして、氷の壁によってアイズ達の進路を阻む。しかもご丁寧に、頂上には細かい針。更に滑りやすくなっていた。

 

「エルフィ!!」

 

「『・・・荒れ狂う炎よ、我の矢の刃となれ』!」

 

「『バーニング・レイ』」

 

「無駄だ!」

 

エルフィの火炎魔法が入るも氷は溶ける兆しもなくそびえ立っていた。

 

「そんな・・・」

 

「その程度か・・・やはり、お前ら弱いな」

 

そう言った途端、杖を持ちベートを傷口の方まで踏む。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアァァァァアアアアアア!!」

 

「オオ、良い声出すね」

 

そう言って、腕に刃となった杖がベートの腕を突き刺す。

 

「ッッッッ!」

 

もはや声にも出なかった。腕から血が出て顔も青白くなっていた。

 

「やめろぉ!」

 

リーネは耐えられなくなったのか、氷の壁を壊そうと武器を振るう。だが、壁の固さ上か武器は折れ拳には血が流れていた。

 

「おい、アハト・・・我の傷を治せ」

 

「ああ、後でなアインスト・・・まぁこいつを痛めつけてからやってやるよ」

 

そう言って壁により掛かっていたアインストの言うことを先送りにしてアハトはそのままベートを痛めつけていた。

 

「やめろ、やめろ、やめろ!!」

 

リーネは吠えた。それはかつてのベートのように・・・だが、そんなリーネの叫びは知ったことではないようにアハトはベートを痛めつけていた。

 

「うるせぇな・・・」

 

だが、リーネの叫びに次第にいらだちを覚える。暫く、アハトはベートを痛めつけては四股を刺し、蹴るなどしていたがやがてリーネの方を見ていた。

 

「耳障りだ・・・」

 

アハトは舌打ちをし再び杖を構え魔力を溜め始めた。

 

「良いぜ、そんなに死にたきゃ先に死なせてやるよ・・・・!」

 

そう言って、杖に魔力を込め詠唱を始める。

 

「『闇よ・・・』」

 

(・・・やべぇ!!)

 

ベートは直感した。この魔法は追尾性を有している。先ほどの魔法で、追尾性の魔力を感じていたからだ。

 

「『光を殺し、新たな世界へと創造を・・・光を消し、この世界に終焉を・・・我は魔竜の眷属であり、魔竜の下部であり、魔竜の分身』」

 

杖の先から黒い炎が集まる。魔力も増大しレベル5でも同じくらいであった・・・

 

「『黒き深淵が世界を包み込み、破壊し、全てを滅せよ』」

 

段々と炎は、魔力を上げ大きくなって行く。黒く禍々しい炎は、リーネに向かって放とうとする。このままではアイズでも死ぬ可能性が出ていた。

 

「『来たれ、来たれ、闇より来たれ終焉の炎よ!忌まわしき歴史と光が消え去るとき、我らの主は神へと上り詰める』」

 

ベートは踏まれながらも必死でもがく。リーネは魔法を撃つも構わず叫び続ける。

 

「や・・・め・・・ろ」

 

ベートは思わずそうつぶやく。いや、のどが潰れているのだ。

 

(クソガ・・・・・・・ッ!)

 

ベートは身体を動かそうとする。が、それでも痛みで身体が動かせなかった。

 

「『魔竜の眷属 アハト・ナハトの名に誓う・・・滅びよ!!』」

 

やがて、詠唱の最終段階に入る。黒い炎がもう、ベートの身体が熱を感じるように大きくなった。

 

(クソ・・・このままじゃ!!)

 

ベートは必死にもがく。だが、痛みによってそれは叶わない。

 

(あの時と・・・同じじゃねぇかよ)

 

瞬間、ベートの中の記憶が鮮明に現れた。

 

???視点end

 

ベートside

 

(良いか、ベートよ・・・この世は弱肉強食だ・・・だかろこそ、牙を磨け)

 

そう・・・親父から教えられた。

 

俺の生まれは平原だった。俺達の一族は、平原を放浪する狼人の一族であった。親父はその族長で俺は親父からそう教えられてきた。一族の間ではコレが普通だからだ。

 

だが、そんな中俺の幼なじみは一族の中で一番弱い少女であった。彼女は弱い自分から抜け出そうと必死に努力しようも落ち込んでいた。俺はその姿を見て放ってはいけなくなった。ある本で読んだ。

 

男という者はか弱い女子を守るためにいるんだと・・・

 

だから俺は彼女を連れてこういった

 

(お前は弱くて良い!俺がお前の弱い分強くなる!)

 

(・・・・うん!)

 

それ以来彼奴は笑顔が増えた。それでいい、この笑顔のためなら俺は強くなれると・・・

 

だから、俺は強くなるために必死に努力した。どんな辛い修行も必死に耐えてきた・・・それで彼奴が笑っていられるなら・・・俺は努力した。

 

だが、弱肉強食の意味をこの頃の俺はまだ知らなかった・・・

 

12歳の頃だった。突然竜の谷から来た怪物に全てを奪われた・・・家族は全員俺を置いて死んでいった。

 

それは幼なじみも一緒だった。幼なじみの姿は腕だけで跡形もなくなっていた。

 

(親・・・父・・・みん・・・な)

 

(ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!)

 

俺は絶望した。コレが親父の言っていた弱肉強食なのかと改めて実感した。

 

それ以来俺は、力だけを求めて彷徨っていた。そのときだ・・・オラリオに着いたのは・・・

 

オラリオに入ってから入団したのは『ウィザール・ファミリア』だった。

 

獣人が多く、俺にはもったいないほど良いファミリアだった。俺は、そこで実力をつけファミリアの団長まで上り詰めた。その時だ・・・彼女と出会ったのは・・・

 

そいつは、ファミリアの副団長だった。馬鹿で真面目で、それでいて幼なじみの彼奴にどこか似ていた。

 

俺はいつの間にか彼奴に恋をしていた。他でもない、彼女に・・・

 

だが、それも一瞬で終わった。

 

俺は十分なレベルとなり、あの竜の谷で現れた竜を殺すため俺はオラリオに出た。俺はあの竜を殺しオラリオに帰ったとこ事件は起きた。

 

「おい・・・どういうことだよ・・・・・・・ッ!」

 

「すまない・・・・・・・ッ!ベート・・・俺は、彼女を助けられなかった!あの人は、俺達を逃がすために・・・・・・・ッ!」

 

俺は絶望した。強者がいなければ弱者は何も出来ないのか・・・俺が強いだけじゃ・・・駄目なのか・・・

 

(なんで・・・お前らはそんな弱いんだ)

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

俺は吠えた・・・守れなかった・・・また・・・俺だけが強くても、弱いヤツは指の隙間からこぼれ落ちる。

 

もう、これ以上失いたくなかった・・・だから、俺は雑魚を嫌った。雑魚を侮辱した。それで折れてくれれば、死なずにすむのなら、例えダサくても、嫌われてでも守りたかった。

 

あれから、俺はウィザール・ファミリアから離れロキ・ファミリアに入ることになった。ここで再び強くなるため・・・そしてもう誰も大切な人間を死なせないために・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう・・・誓った・・・俺が死ぬまで・・・だから・・・

 

「『ダーク・インフェルノ・ヒストリー』!」

 

「させるかよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

今度はテメェを守ってやるよ・・・

 

リーネ・・・

 

ベートside end

 

???視点

 

「何・・・・・・・ッ!」

 

突然だった。アハトは魔法を撃とうとしたところ、いきなり身体から刃が見えた。それと同時に鋭い痛みに襲われる。

 

「ヌアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ」

 

竜の悲鳴がオラリオを包む。アハトは口から血を吐きながらもベートを魔法で刺すなどして剣をを引き抜こうとする。

 

「貴様ぁ・・・・・・・ッ!」

 

「やらせるかよ・・・雑魚が!」

 

アハトが剣を引き抜こうとしても、ベートは相手の骨などに引っかけ、抜けなくしていた。ベートはそのまま剣を握り、アハトの急所を狙う。

 

「ヌァアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!」

 

「ウオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッアアアアァァァァアアアア!!」

 

一匹の狼と一匹の竜が互いに悲鳴を上げながらも戦い続ける。声ももう出ないところまで・・・ベートの口からはもうあふれんばかりの血が出ていた。それでもなお戦い続けている。

 

圧巻した。言葉に出来ないほどの凄まじい戦いだった。死を前にしてまで、狼は家族を守ろうとしている姿はまさしく英雄その者であった。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

やがてアハトからもあふれんばかりの血に顔を青白くする。もう、両者は限界に近かった。アハトは地面に倒れ込む。ベートはその隙にもう一つの武器、『デュアル・ローラン』で後ろから突き刺す。

 

「ぬぁああああああ!!クソガ・・・・この俺があああああああああああああああ!!」

 

「くたばれええええええええええええええええ!!」

 

ベートは激しい痛みに耐えながら剣をひねる。

 

「――――――――ァ!」

 

その瞬間、アハトは灰となった。

 

「やった・・・」

 

「「「やったあああああああああああああああああああああ!!」」」

 

「すごい・・・」

 

「ベートさん!」

 

歓声の声が聞こえた。同時に氷の壁が消えた。ベートは荒い息をたてながら、ベートは壁に寄りかかる。

 

「油断は出来ねぇぞ・・・一体逃がした」

 

アインストは、逃げられていた。どうやら自力で歩けるまでは回復し、立ち去ったのだろう。

 

「分かっています・・・今すぐポーションを持ってきます」

 

そう言って、リーネにポーションを持ってくるよう伝える。

 

「おい、リーネ・・・」

 

「なんですか・・・?」

 

ベートは突然、何かをつぶやこうとした。ボソボソと聞こえて、何を言っているか分からない様子であった。リーネはそっと、顔を近づける。

 

「・・・・・・・ッ!危ねぇ!」

 

「え・・・??」

 

突然、ベートはリーネの身体を覆う。その瞬間、ベートの背中が黒い霧のような魔法で貫かれる。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

「ベートさん!!」

 

何があったのか分からず、リーネは混乱する。後ろにはアハトの灰から魔力が流れていた。

 

「ゆるさねぇ・・・ガキが・・・せめて貴様だけはぁ・・・道連れにぃ!!!」

 

「・・・・・・・ッ!『目覚めよ(テンペスト)』」

 

アハトの最期の声がリーネ達の耳に聞こえる。アイズはすぐに、闇を切り魔力の流れが完全に止まる。

 

だが、ベートは再び口から血が流れる。殺気までの傷が更に悪化した。

 

「エルフィ!速く、ポーションを!!」

 

「ウ・・・ウン」

 

そう言ってエルフィはポーションをリーネに渡しリーネはそれをかける。だが、ベートの怪我は治ることはなかった。

 

「どういうこと?!」

 

「ハハ・・・毒・・・だな、クソ・・・雑魚のくせにやるじゃねぇか」

 

そう言ってベートは苦笑いする。リーネ達はそれを聞き絶望した。アミッドはこれからの重要人物のため先に18階層まで行っているためそれでは間に合わないのだ。

 

「そんな・・・待ってください!私の回復魔法があれば・・・」

 

「無理だ・・・こいつ、かなり複雑に作ってあるからな・・・リヴェリアも解けるかどうかの魔法だ・・・ゴボォ!!」

 

「ベートさん、もう良いです!喋らないで!!」

 

そう言って、リーネはベートを運ぼうとするがベートはそれを払いのけ、壁により掛かる。

 

「ベート!!」

 

そこに、フィン達もやってきた。ある程度片付いてベートの元までやって来たのだ。

 

「リヴェリアさん、ベートさんを・・・ベートさんを助けてください!!」

 

リヴェリアは急いでベートの様態を見る。だが・・・

 

「残念だが・・・無理だ・・・この毒は、私と・・・恐らくアミッドでも直せない・・・」

 

そう言って、リヴェリアは拳を振るわせる。毒がもうベートの身体全体を蝕んでいた。

 

「そんな・・・ベートさん!しっかりしてください!!ベートさん!!」

 

「うるせぇな・・・静かにしろ・・・そうだ・・・言い忘れていたぜ」

 

ベートはそうこぼしながら、リーネの頬を触る。ベートの身体が徐々に冷たくなって行くのが分かった。

 

「良いか、リーネ・・・お前がその蜥蜴共を助けたんだ・・・お前が最後まで守れ」

 

そう言って、ベートはジュニアとアビスを見つめる。

 

「分かりました・・・分かりましたから・・・お願いですから、生きてくださいよ!私はまだ・・・何も貴方に伝えていないのに・・・貴方に何も返せていないのに!」

 

リーネは泣きじゃくりながら、ベートの手を握り必死に懇願する。リーネの顔は涙で普段の顔の面影はなかった。

 

「・・・・うるせぇよ、もう・・・十分だ・・・」

 

そう言って何時もの口調に戻るも、もう彼に体力は残されていなかった。

 

「ありがとよ・・・俺は・・・お前の手に救われたんだ・・・だから・・・生き・・・ろ」

 

「ベートさん!!」

 

「最期に・・・守れたのが・・・お前・・・で、良かった・・・・」

 

その瞬間、彼の手が冷たくなって行く。

 

「べー・・・ト・・・さ・・・ん?」

 

ベートの瞳が閉じる。心臓の音も止まっていた。

 

「ベートさん・・・ベートさん?!起きて・・・起きてくださいよ!」

 

必死に呼びかけるも彼の瞳は開くことはない。それでも必死にリーネは揺さぶり、呼ぶのだった。だが、冷たいからだ、閉じた瞳、止まった心臓・・・それが、彼女を絶望に落とす。

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

今、ここに勇敢な孤高の一匹狼は息を引き取った・・・それと同時に、少女の悲しみに満ちた叫びがオラリオを包むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行こう・・・」

 

「ウ・・・ウン」

 

あれから数時間後、リーネは二体の竜をつれてダンジョンに向かう準備をしていた。エイナはリヴェリアと共に行くということにしており最後まで残っていたため、バベルに向かう。

 

「リーネさん・・・」

 

実はエイナはリーネのアドバイザーでもあった。心配だから最後まで残ったのだが、ベートが死んだことに驚きを隠せなかった。ベートに恋をしていたリーネにとってコレは残酷な未来であった。アリシア達もどう声をかけるか、分からなくなっていた。

 

「エイナ・・・すまない、こんなことに巻き込んでしまって・・・」

 

「いいえ、私は大丈夫です・・・でも・・・」

 

そう言ってエイナは服を握りしめる。わなわなと震わせ涙も出ていた。

 

「なんで・・・こんなことになってしまったのでしょうか・・・」

 

エイナは涙を流してしまった。コレまで多くの冒険者を見送っては帰ってこなかった冒険者を数多く見てきた。だが、今回は目の前で見てしまったのだ。その残酷さに胸が締め付けられる。

 

「分からない・・・もしかしたらだが・・・」

 

リヴェリアは一呼吸置く。そこにはヴィリーの姿、ベルの涙。そして、あの異端児の目・・・それが、リヴェリアの脳裏に過ぎった。

 

「正義・・・なのかもな」

 

そう言ってダンジョンに入るエレベーターまで歩くのだった。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

だが突然、バベルが揺れる。同時に天井にヒビが入った。

 

「クソ・・・ッ!まだか!!」

 

そう言っている間にもエレベーターがつく。

 

「急げ!乗るんだ!!」

 

リヴェリアがエレベーターに乗るよう、指示する。全員がエレベーターに乗り込もうとするが・・・

 

「ア・・・・ッ!!」

 

「・・・・・・・ッ!エイナ!!」

 

エイナは天井の瓦礫に埋もれてしまう。リヴェリアは必死に手を伸ばしたが届かなかった。

 

「駄目だ、リヴェリア!!もう、彼女は・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

リヴェリアはあまりの悔しさに、唇を噛みしめエレベーターに乗るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日経った。この戦いで、オラリオは完全にラキアの統治下に置かれることになった。オラリオのかつての賑やかだった町並みは今では静けさを出している

 

「リュー・・・」

 

アストレアはダンジョンの18階層入り口で待機していた。まだ、リューが戻ってきていないからだ。

 

当然だろう・・・親が子どもを心配するのは当たり前だからだ・・・あの事件以来、アストレア・ファミリアは一変してしまった。

 

明るかったファミリアは暗くなり、自殺しようとした団員も数多くいるからだ。

 

彼女自身、怖くて仕方なかった・・・アリーゼが離れたことにより、団員達全員は元気がなかった。毎日、アミッドらのカウンセリング、自殺の引き留め・・・地獄であった。数年経ってましになれどやはりあの頃のアストレア・ファミリアは戻らなかった。それでも、幹部達は折れなかった。輝夜ガ団長を引き継ぎ、ライラが副団長・・・そしてリューも責任を果たし、今のアストレア・ファミリアが出来たのだ。彼女達のお陰で、アストレア・ファミリアは元の明るさに戻った。だからアストレアも頑張れた。この子達のために精一杯支えようと・・・

 

だから、不安なのだ・・・また失ってしまうのが・・・もう一人かけてしまえばアストレアの精神は限界に近かった。

 

だからこそ戻って欲しい・・・新しい場所でも、明るいファミリアにして欲しい・・・そう願っている。

 

だから待っている。彼女が帰ってくる事を・・・

 

「アストレア様・・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

その時入り口から声が聞こえた・・・リューの声だ。アストレアは必死で、入り口を見つめる。

 

「アス・・・トレア・・様」

 

「リュー!」

 

アストレアは思わず抱きついた。戻ってくれたのが嬉しかったからだ。リューも泣いてしまった。暖かさが彼女の涙腺を崩壊させる。その時であった。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

「え・・・?」

 

アストレアの目に、見慣れた冒険者の姿が見えた。それはもう会うことがないと言っていいほどの大切な人・・・アリーゼ・ローヴェルだった・・・

 

「アリーゼ!!」

 

アストレアは大きな声で叫ぶ。久しぶりに会った眷属に思わず抱きしめた・・・

 

「アリーゼ・・・どうしてここに?!」

 

そう言ってアストレアはアリーゼを見つめる。だが、アリーゼの反応はアストレアを困惑させた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方・・・・誰?」

 




はい、今回はここまでです。アリーゼの身に何が・・・多分、次回でアリーゼをなんのキャラに似せたか分かります。

そして、ベートはここで退場です。ベート好きの皆様申し訳ございません。

次回もお楽しみに!!



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Chaptear44 人格

こんにちは、今回はアリーゼがなんのキャラに似せているか答えを出します。誰なのか、予想してみてください。それではどうぞ!


 

「ウ・・・ン?」

 

ほのかに外から焦げ臭い匂いと共に、ふかふかなベッド・・・イヤ、病人が寝るようなベッドで茶髪のハーフエルフ、エイナ・チュールは目を覚ました。

 

「ここ・・・は?」

 

エイナは周辺を見渡す。そばには花束もあり、背中は少し痛んでいた。

 

「どうして私は・・・」

 

エイナはそう言いながら頭を抑えていた。なぜ、自分がここにいるか・・・その経緯を頭の中で模索していた。

 

「そうだ・・・私は!」

 

段々とその記憶を思い出す。あの後、リヴェリア達と避難しおうとしたが途中瓦礫で押しつぶされて自分は死んだと思っていたが、エイナは今ここで生きている。そのことに驚きを隠せないでいた。

 

「どうしてここに・・・」

 

エイナは困惑し、頭を抱える。

 

「失礼する」

 

だがそうしている間突然、扉をコンコンと叩く音と聞き慣れた声が聞こえ、扉が開いた。

 

「アレス・・・・・・・ッ!」

 

「良かった・・・そこまで重傷じゃないな」

 

そう言って、エイナに近づいたのはあの脳筋と言われていたラキアの主神アレスであった。エイナはそれを目にして警戒する。

 

「体調は大丈夫か?瓦礫に埋もれているのを見つけてなんとか助けたが・・・痛いところはないか?」

 

「え・・・?」

 

だが、今目の前にいるアレスはエイナ自身のイメージとは違う脳筋と呼ばれる神ではなくどこか安心出来るような雰囲気だった。

 

「あの・・・」

 

「アレス、そのエルフの少女は目を覚めたのか?」

 

そこに金髪で30代の男、エルヴィン・スミスが手に花を持ちながら扉を開ける。

 

「ああ、エルヴィン・・・一応目覚めたが・・・・」

 

「ふむ・・・混乱しているようだな、エイナと言ったか・・・何人かのギルド職員の捕虜から名前は確認している・・・どうだ?体調は?」

 

「あ、いえ、特に・・・腰が少し痛むくらいです」

 

エイナは思わず答えてしまった。エルヴィン達は笑顔でエイナを見る。

 

「そうか、なら良かった」

 

そう言ってエルヴィンは手に持っている花を渡す。エイナは戸惑いを隠せず、口をパクパクとさせた。

 

「あの・・・一つ良いでしょうか」

 

「・・・・なんだい?」

 

エイナは、アレスの様子とエルヴィン達を見て思わず問いかけてしまう。駄目かと思ったが大丈夫そうであった。

 

「どうして、私を助けたんですか?」

 

それを聞きアレスは、少し悲しそうな顔と怒りを表す表情をしながらも息を整え答える準備をしていた。

 

「我々は一般市民には最低限の被害に抑えようと努力をしていた、一般市民にできる限り被害は出て欲しくはないし、なんも罪はないからな・・・今回の作戦も一般市民には被害が出ないようにするためだ」

 

そう言って、アレスは拳を振るわせる。だがエイナはどうも納得できていない様子ではあった。

 

当然だ。ベートが死んだことは知っており、エイナはリーネの涙が忘れられず怒りでいっぱいだった。納得しないかのようにエイナは続ける。

 

「だったら・・・なんでこの戦争を起こしたんです!!そのせいで、どれほど多くの人たちが・・・・・・・ッ!」

 

「それはお前らが、イケロス・ファミリアの残虐な行為を黙認していたからだ!!」

 

アレスは、怒りをあらわにしながら怒鳴った。エイナはそれに驚きビクリと身体を震わす。

 

「お前達ギルドやガネーシャ・ファミリアに問いただしても、お前達はそれを無視してセレンの同胞が苦しんでいると分かっていながら、何も出来ない悔しさが分かるか?!ガネーシャは共存を夢に見たと聞いていたが所詮は臆病者!ギルドのウラノスもだ!!口だけはなんとでも言えるがもう我慢ならなかった!!なら俺がやる!そう心に誓った!!だから俺はこの聖戦を度々起こしていたのだ!!」

 

そう言って、息を荒げながらエイナに怒鳴った。その姿はエイナが知っているアレスではない。何も考えていない愚王だと思っていた神はただ一人の父親としての心があることをエイナは実感する。途中でリヴェリアの言葉を思い出した。

 

(この戦争が起きた原因は、もしかしたら・・・正義・・・なのかもな)

 

「アア・・・」

 

エイナは心の中で嘆いた。彼はただ、あのモンスターの・・・小さな女の子の父親として彼女の同胞を救ってやりたかったのだと・・・嘘偽りのない瞳に今の彼女はそう思うことしか出来なかった。

 

なんて残酷なのだろうか、なんて辛いのだろうか・・・誰かが言っていた・・・世界は残酷なのだと・・・この世界が残酷だと改めて知った。

 

「落ち着け・・・」

 

「・・・・すまない」

 

エルヴィンがなんとか、落ち着かせるように促す。エイナはもう何も言うことが出来なかった。

 

「暫く安静にしていろ・・・何かあれば、外にいる衛生兵に聞くと良い・・・」

 

そう言って、アレスは病室から去る。やがて病室は静かになっていった。

 

「・・・・・・・ッ!」

 

(リヴェリア様・・・私、どうすれば良いのでしょうか・・・・)

 

エイナはアレスの姿に何も言えずただ、涙を流すのだった・・・

 

「貴方・・・・誰?」

 

「え・・・・?」

 

一方18階層では戸惑いの声が聞こえる。アリーゼの様子が変であったからだ・・・突然、アリーゼがアストレアを見てそう言ったのだ。さっきまではアストレアのことは覚えていたはず。だが、今の彼女にはそのような雰囲気はなかった。むしろ、今目の前にいるのは別人のように思えた。

 

「どうしたの・・・アリーゼ・・・!まさか記憶喪失?」

 

「そんなはずは・・・」

 

この事に全員は頭を悩ませていた。フィンは親指をなめ、リューは驚嘆で身体が固まる。だが、リヴェリアが閃いたように口を開いた。

 

「もしかしてだが・・・君、名前は?」

 

「・・・・ローゼ・アーリヴェルです・・・」

 

その瞬間、全員は再び身体が凍るように動かなくなる。リヴェリアは再び口を開いた。

 

「良いか?お前はローゼ・アーリヴェルではない・・・・・・・・・・お前は、アストレア・ファミリア団長のアリーゼ・ローヴェルだ・・・・」

 

「私が・・・?イヤそんな・・・私は騎士で旅人です!それに・・・っ!」

 

「なら、お前はここにいるはずもないだろう・・・?」

 

その瞬間、ローゼは息を荒げる。

 

(やめて・・・やめて!!)

 

今まで思い出したくない記憶が鮮明に彼女の頭に入っていった。

 

「そう・・・でしたね」

 

瞬間、ローゼはアリーゼに変わった。そのことに、アストレア達は驚きを隠せないでいた。

 

「やはりな・・・」

 

「どう言う・・・こと?」

 

そう言ってリヴェリアはアミッドを呼ぶよう指示する。アリーゼは泣きながら地面に座り込む。暫くしてアミッドがやって来て戸惑いながらも仮入院施設に入れられたのだった。

 

「女神アストレア・・・今から言うことを落ち着いて聞いて欲しい」

 

リヴェラの街の建物の一角で紅茶を餅ながらリヴェリアはアストレアの前でそう言う。アストレアも覚悟をして聞いていくことにする。

 

「『紅の正花』・・・アリーゼは・・・恐らく二つの人格に分かれているのだと思う」

 

「と言うと・・・?」

 

「彼女とともにいた少年、あの事件の生き残りとともにいたのは知っていたか?」

 

「え・・ええ、ローゼと名乗って一緒にいるってアーディ達から聞いていたけど」

 

アストレアは輝夜達にベルの事を聞いていたため、理解は出来ていた。

 

「恐らくだが、あの少年の前ではローゼと名乗っていた。そのため騙している罪悪感から彼女は自分がそうであると無意識に思ってしまう・・・二重人格になってしまう病になってしまったんだろう」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

リヴェリアの言葉に、アストレアは自分のやるせなさに怒りを感じる。本当なら、私達が総出でアリーゼを支えなければならなかった。本来、コレは自分達の責任だから・・・だが、彼女達はアリーゼの優しさに甘えてしまったのだ・・・そのせいで彼女がここまで追い詰められる事になってしまったのだから・・・アストレアは涙が出てしまった。

 

「ともかく、しばらくはアミッドのカウンセリングを受けさせる。今では戦力が乏しい位だからな・・・疾風にも同じような処置を施そう・・・くれぐれも他の団員達には伝えぬように」

 

そう言ってリヴェリアはそのまま紅茶のカップを皿に置く。アストレアはそれを聞いて、ただそう頷くしかなかった・・・

 

???視点 end

 

アリーゼside

 

「はい、今回は以上です」

 

「ごめんなさい、アミッド・・・私のせいで」

 

「確かにそうかも知れませんが、今はゆっくりしていてください・・・話はそれからです」

 

そう言ってアミッドは私に休むよう促された・・・私は、自分お部屋の扉を開ける。

 

部屋に戻った私は罪悪感に襲われる。

 

私はなんて最悪な女なのだろう・・・私にはもう正義はないのに・・・本当はであった時から私はあの子に殺されるべきであった・・・なのに自分の都合で、騙して、犯して、挙げ句の果てには裏切って・・・

 

薬品の匂いがする病室の中、私はベルの事が頭に離れない・・・あの子は今どうしているだろうか・・・身体、悪くしてはいないだろうか・・・ちゃんと、食べてはいるのだろうか・・・・

 

思ってはいけないのは分かる・・・でも、私はどうすれば良いの・・・

 

私は・・・ッ!

 

「最低ね・・・私って」

 

そう言いながら、私は涙を流す。暫く私は、自分に怒りを感じていながら私は不思議と眠りについたのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・」

 

気が付けば、私は知らない場所に来ていた。私はソファのような物に座っていて、全体的に広く、青い空間で所々木造の長机が置いてある。所々ステンドガラスがあり、左には60ほどある椅子に黒い影が私を見つめていた。

 

すぐ真横には、青い帽子に憲兵のような服装をしている人・・・らしき生き物が座っていた。少し、極東の食べ物の寿司の匂いが漂う。何かつかんでいるようで私はそれに目を移す。

 

「・・・・・・・ッ!何・・・コレ・・・」

 

持っていたのは縄であった。それをたどっていくと私には手首に拘束器具が取り付けられている。更に足には鎖と共に足かせがあった。

 

「オラ、立ち上がれ」

 

「い、行くよ・・・大人しく・・・ね?」

 

そう言って寿司の香りを漂わす、魚らしきモンスターが私を引っ張る。隣には黄色く背の低い蜥蜴のモンスターがおどおどしながら私を見つめていた。私はなされるがままに、ある場所へ連れて行かれた。そこは、円形の台に前方には木の柵で囲まれていた。

 

「ニェニェニェニェ・・・」

 

突然に聞こえてくる個性的な笑い声に私は驚きを隠せない。すると左側にはスパルトイとは違う、骸骨系にモンスターがいた。右にも少し太った骸骨のモンスターがいる。うっすらと笑みを浮かべながら私を見ていた。

 

私は戸惑っていた。知らないところに連れて行かれ、挙げ句の果てには見たことのないモンスターがいたからだ・・・私は何が何だか分からずじまいで頭を悩ませる。

 

カン、カン、カン・・・

 

突然、建物中に響いた。私は咄嗟に音がした方を見る。そこには奇妙な顔、神は白髪で目はギョロギョロ・・・鼻は異常に長く、不気味な雰囲気の老人が目に入った。とても不気味だ・・・

 

誰だ・・・?何処なんだここは・・・あの老人は何者なのだと、私はそれで頭がいっぱいだった。

 

暫くして、老人は私を見てにやりと笑い一言おいてこういったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ・・・ベルベット・ルームへ」

 




はい、今回はここで終了です。さて、アリーゼを誰に似せたかというとそう、ライナーです。理由、僕は前にも好きなキャラは悪役、闇堕ちさせたいと言う思考の持ち主なんですが・・・実は同時にライナーみたいに苦しませたい、と言う歪んだ愛情の持ち主でもあるのです。なんか、モチーフとして書くと結構魅力的ですよね・・・ライナーって・・・特に銃フ○ラは良かったです(悪い笑み)。ちなみに、似せていると言ってもすこし違うかもしれませんが作者はアニメ勢なのでご了承を・・・

と言うわけでアリーゼにはこれからドンドン苦しませていきます。苦手の方は申し訳ございません。

次回もお楽しみに!


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Chaptear45 青い部屋

こんにちは、今回はベルベットルーム回です。それと同時に他作品キャラも出ます。それでは、どうぞ!


「誰・・・?」

 

最初に出た言葉はそれしかなかった。突然、見知らぬ場所まで連れてこられ気が付けば自分は縛り付けられていた。よくよく見たら、自分の服装も違っていた。その姿は、まるで囚人服のようであった。

 

「気が付いたか、被告人よ!よくぞ来た、我らがベルベット・ルームへ。俺様はグレートな弁護士、パピルスだ!覚えておけ!!」

 

「現実のあんたは、今はおねんねしている最中だ・・・要するに、これは夢としての体験というわけだな、オイラはサンズ・・・検察官だが、オイラは怠け者でね、骨休めに弁護側に回っている。オイラ、スケルトンだけど・・・」

 

ツクテ―ン

 

「サアアアアアアアアアアンズ!!またしょうもないギャグを!!」

 

「まぁ良いじゃねえか、パピルス・・・それよりオイラ達は被告に主を紹介しなきゃじゃね?」

 

「サンズの言うとおりだ。おい被告人、この御方が我が主である!!姿勢を正せ!!」

 

「ククク、ようこそお初にお目にかかる、ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所、何かの形で契約を結んだ者のみが訪れる部屋・・・私は主を務めているイゴール、覚えていてくれたまえ・・・」

 

話している最中、私は周りを見渡す。天井はステンドグラスで出来ており青い空間が幻想的だ。

 

「仕方あるまい・・・突然の事だ、すぐに理解できるのは難しいことだろう」

 

白髪の奇妙な老人、イゴールは笑いながら頬杖つきながら足を組んで話しかけてきた。不気味な低い声と共に、私はどこか恐怖心が出る。

 

「今回、お前を呼び出したのは他でもない。お前の命に関わる大切な話をするためだ」

 

そう言って、イゴールはそのまま話を進める。だが、私には状況が飲み込めず呆然と突っ立ている。

 

「しかし、今回は裁判所か・・・なかなかこういう者はいないのだがな・・・この部屋はお前自身の心をありよう。そうとう、あの少年のことで引きずっているようだな」

 

「・・・・ッ!」

 

ベルの事を聞いて私は驚きを隠せない。イヤ、今はこの老人が不気味でしょうがなかった。

 

「お前はまさしく運命の囚われ・・・近いうちに破滅がもたらせるゆえに相違ない・・・」

 

突然そんなことを言われ私は驚きと同時に諦めが来ていた・・・当然だ、私はそれまでのことをした・・・破滅して当然だと・・・そう思ってしまった。

 

「今、自分が破滅した方がいいと思っただろう?だが、そんなお前に残念な知らせが一つある・・・」

 

「え・・・・」

 

私のことを見据えたように老人は口を開く。私はそれに反論出来ずそのまま顔をうつむかせていた。

 

「どう言う・・・」

 

「お前の破滅は世界の破滅・・・つまり、お前が破滅することで罪もなき民まで破滅することになる、無論あの少年も死ぬことになるがな・・・」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

私が死ねば、世界は壊れるって事?それじゃあ、アーディもリオンも輝夜もライラもアストレア様もベルも・・・皆そうなるって事?そんな・・・

 

「そんな・・・・・・・ッ!」

 

「そうなら、お前をここには呼び出していない」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

その瞬間なんとなく察してしまった。私はベルの家族を殺し、そして憎しみから、あの魔竜・・・アジ・ダハーカを復活させてしまった・・・

 

それが世界の終焉を意味すると言うこと・・・つまり、私のせいで世界の存続が危ぶまれる事になったのだ・・・

 

「お前は既にこの世界の運命を握る存在となった・・・なに、安心したまえ・・・抗う術はある、更正をするのだ、自由への更正・・・それがお前の・・・世界の破滅を回避する唯一の道」

 

イゴールさんはそう言って私を指さす。それと同時に、サンズは笑いながら私を見た。

 

「だそうよ、どうだ?あんたに世界の破滅を相手にする覚悟はあるかな・・・」

 

サンズさんはただニヤニヤとしながらそう問う。

 

正直、分からない・・・世界の破滅とか、契約とか・・・そんなの急に言われて・・・でも、この出来事は全て私のせいだ・・・私のせいでこの世界は壊れかけている・・・なら、私の中でやるべき事は一つだった・・・

 

「・・・・・やります、私のせいでこうなったのなら・・・」

 

私は、世界を・・・ベルを救うことを決めた。

 

「フフフ、その意気だ・・・お前の更正、拝見させてもらうとしよう」

 

そこで、私の隣にいる二人?は私の前に立ち、睨み付けている。

 

「ああ、紹介が遅れてしまったね・・・青い方がアンダイン、黄色い方は、アルフィー。共に看守を務めている」

 

「ふん、せいぜい無駄に足掻くんだな」

 

「よ・・・よろしくね、看守って本来は囚人や被告人を守る存在だから・・・貴方が従順なら良いけど・・・」

 

「この者らの役割については、いずれの機会で良いだろう」

 

そう言って、イゴールはにやりと笑うと突然鐘が鳴る。

 

「どうやら、お前が現実で目を覚める・・・ではなさそうだ」

 

そう言った途端、どこか爆発が起きた。

 

「何・・・・・・・ッ!」

 

突然の事に私は驚きを隠せない。

 

「どうやら、この世界の破滅を望んでいる者がいるようだ・・・詳しくは後々話すが、一つ忠告しよう・・・その者はお前に偽りの力を授けようとしていると・・・何、焦ることではない、我らは正しい力でお前を導くのだからな・・・安心したまえ、いずれまた会う日が来るからな・・・ヤツが来たようだ」

 

そう言った途端、私の意識は段々と暗くなって行く。だが、爆発の衝撃で建物が崩れる。残骸が目の前までやって来た。やがて、一人の人影が姿を現す。

 

「来たか・・・」

 

最後に見たのは黒いローブを纏っていた少年の横顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ・・・・・・・ッ!」

 

私は目を覚ました。あの病院でだ・・・夢かと思ったがどうも忘れられなかった・・・あの光景、あの会話・・・全てが私の脳裏に宿る。

 

「アレは・・・」

 

汗でびしょびしょの顔を拭って私は着替えようと起き上がる。もし、アレが夢じゃなければ急がなければならない・・・速くしないと、ベルが死ぬと思ってしまうから・・・

 

そう思い私は、シーツから出ようとする。その時であった・・・

 

「何・・・?」

 

突然、私の隣に何かがいた。なんかぷにぷにしていてそれでいて温かった。私は恐る恐るシーツを覗く。そこには・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅぅぅん?」

 

ゴーグルのような物をつけ赤い髪の小さな身体をした竜がいた。

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

突然の事に私は悲鳴を上げるのであった。

 




はい、今回はここまでです。Undertaleより、サンズ、パピルス、アンダイン、アルフィーが参戦です。次回はリーネとあの二体の竜の絡みを入れますそれではまた次回、お楽しみに!


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Chaptear46 子竜達の過去

ベル「おい、作者」

作「はい」

ベ「今日、何年何月何日だ?」

作「2023年02月16日です」

ベ「ふ~ん、で?最後に投降したのは?」

作「2021年9月11日です」

ベ「おい、もう1年半は経っているぞ。どうなってんだ」

作「だって・・・だって受験が忙しかったもん!!」

ベ「よろしい、許してやろう」

作「ホッ・・・・・」

ベ「と言ったな?アレはウソだ」

作「うわぁぁぁ」

デデーン

はい、皆さん。この場を借りてまず謝罪します。

投降、かなり遅れて申し訳ございませんでした。自分自身、何も言わず、半分失踪状態になりましたがこの度投稿を再開することにしました。

皆さんご存じの通り僕は受験生でしたが見事、受験が終わったのでこれからまた投稿していくので楽しみにしていて下さい。

なお、かなりの間が開いてしまったため駄文が更に駄文になっていると思いますがあたたかい目で見守って下さい。

また、新たな作品も出そうと思っているので何卒よろしくお願いします。

最後に・・・

リコリコ素晴らしい。

ベ「死ね」

作「うわあああああ!!!」チーン




「アリーゼさん!どうしたのですか?!」

 

「アリーゼ?一体何が・・・」

 

ドタドタとリヴェラで建てられた仮療養施設が鳴り響く。突如、アリーゼの悲鳴が聞こえアミッドとアストレアはすぐにアリーゼの元まで走る。

 

「アリーゼさん・・・だい・・・じょうぶ・・・?」

 

だが、そこに移っていたのは意外な光景だった。

 

「美味しいバル~」

 

「大丈夫・・・?まだ、あるわよ!」

 

「へ・・・?」

 

元気はないが、アリーゼは持っている果物を剥きながら謎の小さなモンスターに食べさせている・・・まるで親子のような光景であった。それを見た一同は・・・

 

「「えええええええええええええええええええええ!?」

 

ただ、悲鳴をあげるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、君達が知っていることはこれで全てかい?」

 

「はい・・・」

 

一方、フィンはジュニア達の取り調べをしていた。魔竜の眷属ともあって重要な参考竜であり取り調べは慎重に始められた。精神安定のためリーネ達が傍にいる。

 

「分かった・・・明日からリーネ達と共同生活させるが、リヴェリアにも監視してもらうことになっているから余計なことはしないように」

 

そう言って、フィンは書類を机に置きリーネ達に命令する。リーネ達はそっと頷き、尋問室から出てリーネの部屋まで行く。

 

「ごめんね・・・長い質問で疲れたでしょ?」

 

「あ・・・ああ」

 

ジュニアは戸惑いつつも、冷蔵庫にあるジュースを飲む。アビスにも同じ物を与え、そのまま座っていた。

 

「なんだ・・・?」

 

ふと、ジュニアは一つの本を手に取る。それはオラリオが誰でも知っている英雄の物語であった・・・

 

「『アルゴノゥト』・・・?」

 

「ああ、それ?オラリオでは有名な御伽噺よ・・・」

 

アリシアはニコニコしながら、ジュニア達のそばによる。読んで欲しいのか、少し準備していたのだ。

 

実はと言うと、無理を言ってリヴェラの街である程度売っていた本を買い集めていたのだ。更にギルドも子ども達の娯楽用に本などをいくらか持ち出していたためリーネはその一部を借りていた。ジュニア達が喜ぶかと思っていたのだ。

 

だが、ジュニア達は意外な反応をした・・・

 

「御伽噺って何?」

 

「ええ?!もしかして、御伽噺って言う概念すら知らないのですか?!」

 

レフィーヤはそれに驚きを隠せないでいた・・・アリシアは静かにと言うようにレフィーヤの口を手で覆う。ジュニアは少し悲しそうな顔をしていた。

 

「アビスは知っていた?」

 

「イヤ、僕も初めて・・・?」

 

「彼らの故郷にはないのでしょうか・・・」

 

そう言ってエルフィ達は頭を悩ませる。

 

「俺達には・・・そんな暇なかったんだ・・・」

 

その途端、急にジュニアが語り始めた。アビスは心配そうに見るが、ジュニアは続ける。

 

「俺の一族、カース族はドラゴンワールド中で、指で数えられるくらい、強い一族だった・・・俺は物心ついた頃から戦いだけを教わってきたんだ・・・」

 

「僕も同じ・・・一族はただ強さを求めていたんだ」

 

アビスもジュニアも突然暗い表情をしていた

 

「親父は将来、その中で特に強い、ジャックナイフ一族とドラムバンカー一族を超えるため強くなれって・・・でも、俺達は一番弱くて・・・ある日を境に追放されたんだ、「お前のようなクズは一族の恥さらしだって」・・・」

 

「「「「・・・・・・・ッ!」」」」

 

「僕も同じだった・・・お父さんから追放されて、もう家族とも会えなくなった・・・この世界ではそれが常識だったんだよ」

 

それを聞き全員は絶句してしまう。幼い子どもにここまでの仕打ちが出来るのかと・・・少なくともこの世界ではいるのかも知れないが、厳格なエルフもここまでのレベルではない。

 

「その時だった・・・アジ・ダハーカに出会ったのは・・・」

 

そして、遂にアジ・ダハーカの名が出てきた。ここで尋問の内容だが、彼らは魔竜の眷属にスカウトされたというのだ。魔竜の眷属になることによって力が手に入るようになると有名であり断る者はいなかったようだ・・・

 

「それで、俺は最初彼奴らを見返してやるって思ったんだけどさ・・・でも結果はこの身代わりただ一つ・・・俺は再び眷属内でも虐げられた・・・」

 

アビスも黙るしか出来なかった。

 

「ハハ、情けないよな・・・結局強くなることなんて出来なかった・・・親父の言ったとおり俺は生まれるべきではない・・・クズだったんだな」

 

ジュニアは自嘲をしていた。しかし、彼自身大きな傷を残しているのだろう。彼は強くなれなかった・・・弱者のままであった。それが今の彼を作り上げてしまった。

 

アリシア達はどうして良いか分からなかった。自分は恵まれていた環境で強くなっていった。愛されてきたから強くなれたのもある。もちろん強くなるにはそれだけではないが、それでも自分達とは全く違う修羅の道を歩んできた彼らにどう声をかければ分からなくなっていた。沈黙がただ続いた。

 

「・・・・そんなこと、あり得ませんよ」

 

「え・・・?」

 

突然、リーネがそう言いジュニアを抱きしめる。

 

「少なくとも、私はそう思いませんよ・・・生まれるべきではないと言う人はこの世に存在しませんよ・・・・」

 

そう言って、ジュニア達を撫でた。ジュニアは少し照れ隠そうに、顔を赤らめた。

 

「読みましょう!きっと楽しいですから」

 

そこにレフィーヤ達も乗ったのか、ジュニア達を膝にのせ本を読むのであった・・・

 

 

 

 

「で、アリーゼ・・・?そのモンスターは、何?」

 

「バルはバルバル!」

 

一方、アミッド達はアリーゼに悲鳴を聞き走ってきたのだが何故か親子のような風景が見られた。

 

「えっと、なんか生まれていたわ!」

 

「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええ?!」」

 

混乱が起きていた。

 

 

 

 

 

「見つけた・・・あそこが」

 

(我が相棒よ・・・準備は良いか?)

 

「ああ、行くよ相棒!」

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」」」

 

だが、着々と地獄の足音は近づいてくる・・・・竜の雄叫びがそれを物語っていた。

 

 

 

 

「これって・・・・」

 

一方一人の少女は真実を追っていた・・・

 

近い・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククク、もうすぐ・・・もうすぐだ」

 

「我らの偉大なる目的のために」

 

「アハハハハァ・・・アハハハハハッハハハハハハ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと少し・・・

 



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