この火継ぎの薪王に休息を! (エリザベートベーカリー)
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原作編
プロローグ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【どこだよここ】

 

そんなつぶやきと共に行われた音の羅列は空気に溶けるとまた風のざわめきへと戻る、森だ。

歩こうとしても木々を抜けることはなくただひたすらに時間のみが、また空へと溶け合っていく

現在地も時も分からぬままに重装の騎士は困惑を頭に浮かべる、数歩にして千を数えて止まる。

 

【いや、どこだよここ】

 

再度行われる疑問符にこたえる存在はなく、隙を狙ってやってくる賊も敵対生物もいない。

無人、無動物、植物だけの場所、一体いつからこの騎士はこの場所に立っていたのだったか?

問われる自問自答に答える自問自答もなく、これではただの自問自問である、答えのないループ

 

【火継ぎしたら別世界に飛ばされた件について】

 

あまりに突拍子のない事であるがこの男、世界滅亡を一応救った英雄である、そんな覇気は無いが

紛れもない事実でありながらあまりにも背中には哀愁が漂っており竜殺し神殺しの英雄とは思えぬ

だがその騎士甲冑に刻まれし古傷共はその者を英雄たらしめんとする傷跡だ。

握りしめし二刀流は数多の怪物を屠り神殺しの武器にまで鍛え抜いた国宝級の怪物武具達

ソレを纏っている男が今まさに方向音痴で迷い続けているのはなんというかとても情けない話だ。

 

【何も出ねぇと思いきやって感じだな】

 

サラリと襲い掛かってきた謎の黒い獣を撫でる様に切り裂くと同時に驚愕と失望が襲い掛かる

あまりの強襲に無意識下で反撃して殺し尽したがあまりに弱く一太刀にてその生を終わらせていた

それもそうだろう、一介の獣如きと救世主殺しを成し遂げた刀、結果は火を見るよりも明らかだ。

 

【少なくとも噂や文献で聞く無人島とやらでない事は分かったな…】

 

とぼとぼと歩く足に意思を込めて獣が強襲を狙ってきた場所へと向かう

するとそこには驚くべきことに人間がいた、しかも生存している人間だ、何かあるかと睨むと

ある意味で言えば更に驚くべきことに頭から土の山に頭を突っ込んでいる、保存食にされかけて

いたのだろうか、いや先程殺した獣が下手人ならばもう保存食ではなくただの生存者であろう。

 

地上に出ている足を見るに女だろうか、艶ややかな水気の有る肌は若人の特徴と一致している

若さ特有の蛮勇か、それとも油断したからか、未だガサゴソと動く足はなんだか笑いを誘うが

早く助けた方がいいだろうという頭の判断と共に両足をしっかりとガッと掴み引き抜き

 

【あらよぉっと!】

 

そして真上に投げ飛ばした

 

「ぅぅぅぅぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!ぎゃーす!」

 

アンドキャッチ&リリース

 

「はぁ…はぁ…!もうちょっと落ち着いた助け方は出来ないんですか!?ちびりましたよ!?」

 

ぺたんと女の子特有の座り方で息を荒くする少女に無茶な注文をされる、そちらが軽いのが悪い

も言うが女性に対して体重の話を言うと斬り殺されるのは経験則だが褒める場合も含まれるだろう

 

【振り上げた時の君の顔が可愛くてビックリしてしまってなハッハッハ】

 

「もっ」

 

【おっと嫌な予感】

 

「もきゃあああああああ!!!エクスプロージョンッ!!!!!!!」

 

【クロコダアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!】

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【このすばギャアアアアア!!!!!】

 

「女の敵ぃぃいいいい!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【これほど不死で良かったと思える日が来るなんて思わなんだ】

 

余りの威力に一回くたばり熱波の継続ダメージで五回はくたばる計算式が我が身を襲っていた

先ほどまで潤沢にあった筈のエスト瓶は早くもゼロの数字を刻みつけられており回復は無し

宗教上の理由で取っておいた惜別の涙と断固奇跡が無ければ十回はくたばっていただろう

あまりにも自分の世界と違う魔術体系に度肝を抜かれた、実際は肝も込みで焼き尽くされたのだが

 

プスプスと焼きタマネギの様相になってしまった愛用の鎧と二刀の刃と共にジーっと下手人を

睨むがどこ吹く風の様相だ、まぁ悪いのは全面的に自分であるのでどうともならないのだがね。

 

「しらなーいでーす、セクハラしたそっちが悪いんですから私悪くないです」

 

【いや、まぁ確かにそうとしか言えねぇな】

 

頭甲冑をぽりぽりと癖で掻きながら感慨なくも焦げ付いた部分を指で擦りながら娘っ子を見る

 

純粋な魔術使いの印である魔女帽子、紅色を主軸にしているミニスカ型のワンピースに

黒色のケープはどこか魔術的な効果がある様に見えている、そして飾りであろう眼帯…純魔だろう

見た目と共に手に握っている杖は俺が持っている様なワンドではなくスタッフという大杖だ。

かなりの確率で魔術使いだとは思う、が一切立ち上がらない様を見るに集中力切れなのだろうか?

 

【んでなんで立ち上がらないんだ?】

 

「先ほどのエクスプロージョンは一発使ったら立ち上がれなくなるほどなので…」

 

【使い勝手が悪すぎる…いやあの破壊力だからバランスはとれてるのか?いや使い勝手悪いな】

 

「ふふふ、そこも愛すべきロマンです。」

 

【あー…まぁ…理解できるが普通ここぞという時に使わないか?セクハラを罰するのに使うか】

 

「だってこれ以外覚えていませんので」

 

【馬鹿だろうお前】

 

「そんな人類を全員見下す為に私は爆裂魔法使いになったのです!なんと言われようとも!」

 

薪の王は思った、コイツは話しかけたらいけないタイプの変態だったのでは?

サラっと手を伸ばしながら持っていけという希望をしている様を見るにその考えは間違っていない

だがここで見捨てるというのも彼の言う所の後味が悪くなる行為だろう、故に助ける。

ちょうど人里への道を知りたかったのだから、これで釣りが取れると考えれば悪くはないのか?

いやどうだろうと考えながら武器を宙へと溶かし爆裂魔法使いを背負いながら思う。

やっぱり帳尻当ってなくないか

 

【そういや小娘、名前はなんだ?】

 

「よくぞ聞いてくれましたね!我が名はめぐみん!紅魔族の生まれにして爆裂魔法使いの頂点に」

 

【背中で暴れるな落ちるぞ】

 

「あっはいすみません」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【このすば、いや素晴らしいのかこの世界は、いきなり黒い大虎に襲われる世界なんだが?】

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あ、じゃあこの辺で大丈夫です、ありがとうございました」

 

背中からすっと降りると同時に若干まだ千鳥足気味という感じで歩いて行くめぐみんを見送る。

 

これが、人の生きる世か、世紀末ばっかり見ていた自分には感動もひとしおである、素晴らしい。

ちゃんと人が生きているし存在しているという、この世界から見れば異端な考えの元で涙を流す

都合が良いのはカタリナの重装備故にその涙が人に見られない事だろう、異常者過ぎるのだ。

 

この世界から見れば不死という異端を持つ故に出来るだけ顔は見られたくない感じはある。

やはり暗い偽りの指輪でも装備するべきか、顔の半分が老人ではな…呪いって事で流せるか?

そもそもこの世界に呪いがあるべきなのかも分からず、とりあえず話を聞ける人物を探すとするか

 

しばらく歩きながら街並みを見ながら気づいたが、ここでは売買にソウルを使わないらしい

道中見れば子供を連れたご婦人が何か丸い…あれは硬貨だろうか?そんな物と野菜を交換している

 

つまりだ、この世界では硬貨制度が通常の商売なのだろう、ソウル=命、命=取引ではないのだ

 

幸せな世界なんだなと思ったがそういや森を歩いていたら黒い何かに襲われていたのだった

割とギリギリな、それこそ薪の王が燃えていた時くらいの物騒さは持っているらしい。

 

それでも人が生きているというのは素晴らしい事だろう、誰も一度も死んだことが無い顔をする

そんな事を普通の事象として常識に加えながら生きているのだ、不死ではない生身、本当の人間。

俺の世界ならレア中のレア、存在するかも分からない者達がここでは多数生きているのだ

なんと素晴らしい事だろうか、闇の世でも火の時代でもない暖かい人の時代。

 

【やっべぇ涙出てきた…】

 

「お、おいそこの騎士さんどうしたんだ?」

 

あまりに怪しいソフトモヒカン肩パッドの蛮族に話しかけられてもうれしさが…勝らねぇな。

 

【故郷…と呼べるか分からんがそこから出て来てからと言うもの世界があまりに平和で涙がな…】

 

「どんだけ世紀末な所から出て来たんだあんちゃん…まぁアクセルは確かに平和だが…」

 

【ところでなんだが…実は故郷から持ってきたソウ…金が使えないんだが換金所はないか?】

 

「だったらウィズさんの店かギルドだが…とりあえずギルドに行ってみたらどうだ?この道を右に

行ってドデカい建物がギルドってとこだからそこで話すといいぜ」

 

【おぉ、ありがとうソフトモヒカン肩パッドの男!早速行ってみるとするよ!】

 

「おいおい、俺の名前は…って行っちまったか」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【この世界はファッションセンスだけは火継ぎ時代みたいだな】

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

あまりに感動しっぱなしでそろそろ涙すら品切れになってきて口の中が渇いて来た

まるで連続テレビドラマ感動ど名付けられた作品を24時間周回させられているかのように甲冑の下

は既に涙でしばらく水たまり状態だ、胴体の下側に流れずにチャプチャプ言ってうるさい

 

「次の方どうぞー!」

 

【すみません、便所ってどこにあります?】

 

「そこの突き当りです」

 

【ありがとうございます】

 

「次の方どうぞー!」

 

 



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第一話 カエル

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【…カエルだなぁ】

 

「たすけわぷっあのすみまわぶんったすけてったすけてくださいタマネギの人ォッ!はふんっ!」

 

何度見ても巨大なカエルがめぐみんという名の娘を食ったり吐いたりを繰り返す絵面にしか見えぬ

悪い幻覚にでもかかってしまったのだろうか?いや、火のない灰は幻覚症にはかからない

つまりは現実なのだが、あまりに現実離れしている、グンダから黒いアレが生えた時くらい驚き。

 

と言いつつ見ていたら最終的にめぐみんがカエルに食われていた、消化には時間がかかりそうだな

金色の美しい装飾が成された赤を基調としたミニスカ型のワンピースには魔力も込められており

そこそこの防御力も携えているらしく、長旅や汚れ、水洗いにもばっちりだと本人から聞いた。

更に言えば膝下まである革製の長ブーツにおよそ体がすっぽり入る程の魔女帽子の先っぽには邪悪

な魂と呼ばれるゴーストモンスターモチーフらしく眼とギザ歯とポンポンが装飾されている

ここまで過激なファッションセンスは火継ぎたる我が世界には無かった代物だ、羨ましくもある。

 

【あらよっと】

 

薄皮一枚の向こうにはカエルの臓器が転がっていると考えれば鬼切と姥断に絶てぬモノは無い

仮に骨などにぶつかったとしてもソレごと一発両断してしまえばいいのだ

 

カエルの目の前に立ちながら行われた行為はただ刃を丸字に移動させただけ、それのみでカエルは

自身の臓器を吐き出しながら青い表面を更に真っ青にしながらくたばっていた。

ゾルリとウドン玉めいて出てきたそういう中身と一緒に丁度よく滑り台の様に出てきためぐみんは

返り血には塗れていなかったがカエルの粘液…と消化液に汚されており適度に臭かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「花も恥じらう乙女に臭いって言いましたね!?」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

何故我らが火継ぎの英雄様がカエル退治なんぞするかと言えば、その問題は数刻前に遡る

 

ギルドのトイレを借りて頭の甲冑に溜まった涙溜まりを洗面所に流しながらついでに顔を洗う

正面に設置された鏡にはざっくらばんと乱暴に切られた黒髪に燃え盛るような薄橙色が揺蕩う瞳

 

そして鏡餅の様な衝撃吸収だけを考えた結果でっぷりとした全身甲冑、見た目は可愛いがこの重鎧

カタリナシリーズはカタリナ国の粋を結集して出来上がった恐ろしいまでの鍛冶力が込められた。

間違いなく国宝級の逸品であり、それは火継ぎの旅路にて終わりから始まりまでついて来た結果が

証明している、本国の者にタマネギと言ったらキレるそうだがタマネギの愛称が広まり過ぎた。

 

最後にあるのは顔だ、枯れた若人という矛盾を内包した顔はいつも通り自分自身を睨んでいる。

亡者がいなかった、その事実は感動と共に自身への差別意識という奇妙な感覚を生み出している

 

【差別を受けるならそれも良しだ、この身は不死なればどこでも生きてられ…待てよ?そもそも

めぐみんと名乗った娘っ子に甲冑の中身見られてたんだから大丈夫なのでは?】

 

よく考えれば過ぎた心配事であった

 

【ナイーブになってたな、馬鹿みたいにはしゃいでいたあの頃を思い出さなくては…】

 

ちなみに彼の言うバカみたいな時とは初週とDLCである、楽死いと書いて楽煉と読むような死場。

正に地獄という形容に値するような、バカみたいに突破が難しい場所であった

だが得るものはそれ以上であったし失ったモノはソウルのみである、等価交換以上の働きをした

白霊闇霊契約、その全てが楽しかった、それは不死人にとって遊園地の煉獄庭園だっただろう

 

両の頬をペシンと叩き活を入れるとすぐさまにタマネギの様な全面甲冑を装着する

カチャリカチャリと金属音を響かせながらチリ紙にて手を拭き直し腰に刀を持ち直す。

 

【まずは金か、まさか不死人が金を欲する時が来るとはなぁ…】

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【このすば】

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【えぁー】

 

トイレから出るとそこには受付待ちの行列が店の外まで!という事はなく五人ほどが並んでいた

そこそこの待ち時間が取られるだろうなと考えている、その時よく見れば隣には全く人数が無い

おや?と怪しんでみるモノの特に何の特徴もなくただギルドの受付が増えているだけだ、なんで?

何故?なにゆえ?と思う事はあるものの、難しく考える必要は無いかと断定し隣の受付へ向かう

 

銀髪のショートカットに露出が多い服装だ、噂にしか聞かなかったソウル賭博場の女性マスターが

丁度情婦の様なイメージをしたこんな格好らしいが男の対応を緩ませるためなのだろうか?

それにしては胸元の布があまりまくってリボン結びにしているのであるが。

 

【一応聞くのだがここも受付なのか?】

 

「あ、はい臨時のバイトですけれど大丈夫ですか?」

 

【実は隣国からやってきて】

 

と言葉を続けようとした時、突如として半分ずつに離反する筈の白色と黒色を主とした台座があり

中央にベルが設置してある道具が一度だけチリーンと鳴った

何だこの道具はと悩む暇もなく受付の人がため息混じりに言葉を発する。

 

「これは神の奇跡を元にして作られた嘘発見器でして、複数鳴った者は対応できなくなりますよ」

 

【なるほど、信用第一の組織らしい道具だな…】

 

「嘘ついちゃだめですよ?」

 

可愛らしくウィンクを通して行われた苦笑い応酬はある意味火ぶたが切られたようなモノだろう。

ある意味で言えば闘争、嘘と真実を混ぜ合わせて自身が不死人であることをばれないようにする

奴隷騎士の様な扱いはもう懲り懲りである、ソウルは稼げるのだがあまり好んで死にたくはない

 

【一応聞くんだが違反者って何度も死んだり殺されたりミンチになったり焼けたりしないのか?】

 

「どんな世紀末を生きて来たんですか!?」

 

SEKAI NO OWARI、またはその言葉通りの世紀末ですと言って信じる人間がどれだけいるのか

例え嘘発見器に事実を認証されようとも信じたくない情報には蓋をするのが人間と言う生物だろう

 

【まぁ実は何度目かの世界を救った途端にこちらの世界に召喚されてな、端的に言うと金がない】

 

「こちらで出来るのは通貨のレートとアイテムの買取位ですが…」

 

【そうだなぁ…この長剣って買取できるか?ロスリックのだから質は良いと思うんだが】

 

取り出したのは無強化のロングソードだ、雑な強者から手に入れたコレは初めから持っていた剣と

銘を同じくしていた為に強化されずにずっと魂内でコケ被っていた代物だが

ロスリックにて作られたコレは尋常なる耐久力を誇っている、故にいい値買い取ってくれるだろう

 

「これは…!なるほど確かに…まさか本当に…?」

 

【強国ロスリックの雑兵が持っていた代物だ、あー、エリスか?、何エリスくらいになる?】

 

「そうですね…では十万でどうでしょう?」

 

【倉庫に何本もある代物だ、即金ならそれでいい。】

 

やったぜ

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「そうして手に入れた金で私を雇って冒険者になったわけですが、とりあえずご感想をどうぞ、

勿論の事、例え倍支払われても返品は受け付けませんがね」

 

【割と後悔気味だわ】

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あのすみませわぶっにひきっ!にひきめがぁ!あのぉ!ごめんなさっあやまりますのでっ!

たすけてくださっぶっぽぁ!」

 

【学習能力というか本当に魔術ぶっ放した後に出来る事がゼロなのか…!でもなぁ!こいつの魔術

ならば俺の唯一の弱点である文字通りの大いなる必殺技が使えるんだよなぁ…!】

 

不死人の弱点、それは全てが自分で賄えるゆえに起きる決定打の少なさである

無論の事であるがそれ以上の継続戦闘能力によりあらゆる生命体であればいつかは不死人に負ける

だがそれは大いなる巨人や同族相手、もしくは敵対生物を一発で狩り尽せるという事ではないのだ

継続戦闘能力のそのイコール、死の可能性が低く成る訳はなく長所でもあり短所でもある。

時間をかければかける程にこちらの手も少なくなっていく、言わばフルで行われるババ抜きだ

 

ソウルの奔流?あれは対人戦じゃ当たんねぇしなぁ…

 

それに比べて爆裂魔法はどうだろうか?最早全生物特攻魔術と言っても過言ではないだろう。

範囲威力放射までの長さどれを取っても極悪の一言に尽きる、尽きてしまう魅力のロマン技だ

ローリングで避ける事もできず耐える事も難しい、生命力極振りでなければ一撃死は必須。

 

俺?まぁくらった時に我慢して熱波の継続ダメージはエスト瓶がぶ飲みで何とかなった。

 

【まーったくしょうがねぇなぁ】

 

カエルの腹に刀をズップシと刺し込み丸字に切り刻んでしまえばあとは自動的にめぐみんが排出

やったぜ爆裂ボーナス確定だとも言いたげに杖を手に持ったままだが真横にクレーターがあるので

既に爆裂済みの一日一回限定の確定演出だ、無論の事二回目はない。

 

なんというか、実にマヌケじみた大の字ポーズのままに滑り落ちてきためぐみんを見ながら思う

パーティに誘ったのは失敗半分成功半分だなぁとも考えるが失敗が七割だとも考え始めた

どちらにしろ成功には違いないのだが、その成功も誘う為の確立がおよそ確定とも考えると若干と

惜しい金を払ったかもしれない、三日飯を食ってなかったらしいので恵んだのはあるが…

 

まぁそのあれだ、今後のめぐみんの働き次第だろう。

 

【とりあえず動けねぇだろうから先に聞いとくがカエルぶっ殺した後どこに行きたい?】

 

「風呂場でおねがいします。」

 

【了解】

 

 

スルリと手に握りされし得物は鬼切と姥断、鋭利+10の大業物は通常営業通りにカエルを惨殺した

 

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第二話  風呂

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【あーぁー…お湯っていいな…】

 

初めての銭湯はとても気持ちが良いものだった、何と言うかコレを魂から求めていた気がする。

何でもニホンジンという種族の者が始めてアクセルに作り出し王国にも広がっているらしい

遥か前の記憶を無くす以前の自分はニホンジンだったのだろうか?

めぐみんといい自身と名前が似ている存在がそこそこいる中で大体がニホンジンというらしい。

黒髪で赤い目に近しいからか最初は紅魔族という者達と間違えられたが、何故だ?

噂に聞けば魔力が多くそして常識外で狂っている、らしいがこちらで言う純魔なのだろうか

確かに情報だけ聞けば火のない灰は大体正解に近しい程の距離感だろうが。

 

閉店間際に番台さんと交渉して入らせてもらったが実に良いものだ、閉店後の掃除を受けたといえ

流石に亡者の状態で大衆の眼に留まる事は避けねばなるまい、仮に同じ人間だったとしてもだ

外見があまりに違ってしまえば自然と人間と言うのは排他的に見るもの、めぐみんと番台は別だが

逆に呪いを解くためにはエリス様に助言頂くのはどうでしょうなどと勧められてしまった。

 

【宗教か、確かに信仰ステータスは高めだが神を信じるのはあまり気が乗らんな】

 

理力信仰共に数値は同じく45、全ての武器魔術に最低値精通している独特のソウルレベルは想定を

考えうる全ての継続戦闘能力を高めた代わりに決定打がない、レドの大槌?重すぎて趣味じゃない

別にやろうと思えば全てを99まで振れたはずなのに何故やらなかったのか、大きな疑問だろう

我ながらにしながらも、カッコつけて世界を壊すほどのバランスを危惧していたのだろうか?

 

【我ながらカッコつけがすぎる、というか何で俺は独り言を言ってるんだ…湯のせいにしておこ】

 

背伸びをしながら湯から上がろうとするがいささか足元がふらついてしまう。

これはあれだ、呪術の火で遊んでいた時に起こった脱水症状の一つと同じ感じだなぁと思い出し

流しの湯へと近づき道具屋から買い取ったハベル以上の硬さを誇るコップをソウルから取り出すと

そのまま湯を入れてグイっと飲み干す

 

とりあえず上がれる分の水分は補給できたし早く上がるかと出口へと歩いて行った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【掃除終わりの牛乳うっま】

 

 

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朝、それは火継ぎの世界においてついぞ現れなかった幻の常識現象の一つだった存在だ

太陽は黒き涙を流し、ただ夜と朝ではない時間がただ過ぎ去っていくだけの世界では何も育たず

最終的には全人類が餓死し、その全人類が新しい不死人になり沼へと沈み深淵が溢れていく。

詰んでいる世界線だったのだ、ただそれが顕著に表れたのが輪の都というだけ、いずれは…

 

だがこの世界は違う、正しく太陽が現れそして沈むと月が現れまた太陽が、ただ普通の事が起きる

それだけで不死人は涙を枯らすまでひたすら泣き続けるだろう、いずれは慣れるかもしれないが

今回に限っては朝日初日であるのだから、既にベッドの上は涙でずっぶぬれだらけだ。

 

とりあえず干せるだけ干しとくかと一カ月契約を行った宿泊所のベランダに出て背伸びを行う

 

【あぁ、いい朝だな】

 

不死人にとってあまりに常識外の会話を独り言ちてしまう、それ程までに太陽が美しい。

伝説の太陽戦士が見たらどれほど太陽賛美を行うだろうか?日が出ている最中は永遠と行うだろう

しかし本当に太陽が美しいな、道すがらに教えてもらったクリエイトウォーターで水を飲みながら

考えてしまうが、やはり火継ぎの世界は悲しくも詰んでいたのだろうな

お嬢様の絵から飛び出た焼き払う火で世界の腐れを全て燃やし尽くされてしまえばよいのだが。

 

【ただ俺一人がいないロイドの絵か、惜しいな】

 

それは哀愁か孤独か、どちらとも取れない静かな笑顔を共にコップの水を飲み干した

 

【さて掃除でもするか】

 

筋力60と技量60から振り回される大竜牙は見事な布団叩きへと生まれ変わり神器としての権能を

見事なまでに布団へと叩きつけられていた、最早永遠と解除される事のない火耐性と魔力耐性。

無駄に祝福された掛布団と敷布団は不死人が契約を解除された時にもお客様を癒すだろう

今の所は不死人を癒すための道具だ、無駄のない無駄な祝福で低反発に生まれ変わっている。

 

暇すぎて祭祀場を不死人の遊戯場にした我らが火継ぎの王にとって部屋の改造は日常茶飯事だった

 

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【祝福された布団セット+10】

 

 

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ギルド、それは国家規模で運営される対モンスター討伐人族混合組織である

稀にモンスター側の冒険者もギルドに来るという噂を耳にしてからは外も混合してるじゃねぇか

とツッコミを入れたがよく考えれば話の通じる人外なんぞ火継ぎにおいてもそこそこいたな

そう考えれば別に不思議な事もないのだろう、きっと狂霊の家族作戦みたいなものなのだ。

 

何かが致命的にずれている気もするが気にすることは無いだろう、

 

「あ、カズマさん」

 

【やぁルナさん、何かありました?】

 

本名サトウカズマ、我らが火継ぎの英雄の名前である、それは本来この世界に降り立つはずの名称

だが生憎と同名同性の別世界の偶々同じような人生を歩んでいた人類の名だ

全責任を負った女神は現在アクシズ教徒のトップを狙って爆進中だが現在ではあまり関係のない話

面倒臭がらずにちゃんと上司に報告をしていればよかったらいい物を面倒臭がって強硬したのだ。

その結果が別世界の本人のパルプンテ召喚であった

 

「何度も聞いて申し訳ないのですが…本当にクラスは冒険者で良かったのですか?ギルドとしても

やはり上級職を越えたステータスを持つ貴方を低位クラスの職業に置いておくのはちょっと…」

 

【そう言いましてもなぁ、そちらでいうステータスで色々やってきた手前もう遅いというか、

あれですよ、弱点を消してこれ以上中途半端になるより尖るとこもっと尖らせた方が】

 

突如として響く爆音、ギルドより外のアクセル全体を揺らす衝撃、続けて来た和やかなぬるい熱波

イコールの考えはつまり火のない灰の現状の相棒が我慢できずに爆裂魔法で討った証明である

ちなみに今の時刻は十一時半、約束の十二時よりも更に三十分前倒しにて行われたらしい。

 

【先に聞くんですけど罰金っていくらほどになります?】

 

「え、あ、そうですね…まだ厳重注意って所でしょうか…?」

 

【やったぜ馬鹿を回収に行ってきますわ】

 

「あ、はい、いってらっしゃいませ?」

 

すんと冷たい対応を取ってしまったルナだがそれもそうだろう、一方は爆裂魔法を一日一回馬鹿

そしてもう一方は初日のカエルを街から行って帰ってを繰り返し79匹討伐した馬鹿である。

つまりは有能でありながら同時に馬鹿の大馬鹿コンビなのだ、困惑気味な対応も仕方ないと言える

 

欠点ばかり語ってしまったが実際ギルド的に言えば彼らの評価は割と高い方である

塩漬けクエストと呼ばれる超高難易度のクエストや犬の散歩やどぶさらい、果ては建築の手伝いに

至るまでの雑用と言って過言ではないお手伝いクエストも差別なく受けるカズマの評価は高い

 

めぐみんの方はどうか?彼的にいえば必要不可欠と呼ばれており未確認の情報であるが悪魔をも

仕留める事が可能という爆裂魔法のみを鍛える性質上ジャイアントキリング専門冒険者

とも言い換えることが出来るだろう、継続戦闘能力と一撃必殺、ベストマッチのコンビだろう。

 

実用的かと言えば冒険者カズマのみで事足りるのだがコンビを解消してくださいとギルドから

言える訳もなく、特にギルドに対して裏切り行為を働いている訳でもない、故の放置だ。

 

出来る事と言えば爆裂魔法への注意喚起くらいだろう、それくらいカズマは冒険者しているのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【あの馬鹿】

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「カエルがぁ…カエルそのものがぁ…」

 

【だから言った…いや言ってねぇか、いや経験してんだから言う必要もねぇじゃねぇか】

 

案の定カエルに咥えられていためぐみんを前回とは違う手法で助けた後に背負っているのが現在だ

とりあえず着替え持たせて風呂場に突っ込ませようと考える、状況から見ればそれがベストだろう

 

打撃以外の属性が全て倍率で入るカエル、そして魔力切れで突っ伏すめぐみん、イコールアレ。

 

一撃必殺のめぐみんとその辺に埋まっている数だけは大量にいるカエルの相性は最悪と言える

これ以上の無いくらいの最悪だ、例えいるならば一発限りのジャイアントキリングと無双ゲー雑魚

前世からの付き合いの反語の例えに出来そうなくらいの組み合った相性であった

 

【他の魔術を覚えればいいのにな】

 

「それは十宿十飯の恩義がある貴方でも言語道断な相談ですね。」

 

【やっぱりコイツ馬鹿だ、それもかなりの大馬鹿だ】

 

初対面の相手が見ればコンビ解消の危機かもしれないが十日間続けてこれである

最早町の風物詩として生まれ変わった爆裂冒険者コンビはアクセルの悪い意味で名コンビとしての

名を割と馳せている方であった、彼の耳に届けば最悪という一言が飛んでくるだろう。

 

 

 

 

 

 

「あー!やっと見つけたわよ!」

 

 

 

 

 

 

【おん?】

 

「はい?」

 

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目の前に現れた謎の存在、その正体とは!

それは次回に分かる


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第三話 女神

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自称女神に絡まれたといったら火継ぎの時代の友人達はどんな感じで笑い転げただろうか?

実際何人かそういうのはいたがソレを真面目に信仰していた信者にボロクソにボコボコにされてた

そんな目の前にいるアクセルにて話題の自称女神アクアさんだ、曰く女神像にはそっくりらしいが

そもそも女神アクアを知らない自分にはネタが通じないままに話をぶち込む空気の読めない馬鹿に

しか思えてならないのだがそこんとこを目の前の神はどう思っているのだろうか

 

【人に伝わらないネタで会話するのは駄目だぞ小娘】

 

「はん、何よ挑発?悪魔かアンデッドか分からないけど何言っても私は気にしないわよ?」

 

【めぐみん、女神アクアってのは人を悪魔呼ばわりするのか?】

 

「そもそも自称女神の頭がおかしい人と普通にお茶している時点で割とあなたもおかしいですよ」

 

そう、現在火継ぎたちはギルドの中に設置されている酒場にてお茶と朝飯を食っている

無論火継ぎの奢りでありその値段は現在目の前で昼間から酒を飲み干している女神のせいで

膨れ上がり続けている訳だが最早塩漬けハンターとなった貴方の財布はこの程度で揺れる事はない

火の無い灰は黙々、ではなく偶に喋るが基本的には納豆パスタを喰ろうているのみ、飲み物は水。

目の前の女神は昼間っからシュワシュワと呼ばれている由来不明の酒とツマミをかっ食らっている

アクシズの宗教経典に昼酒最高と書いてあるので主神らしいと言えばらしいのだろう

 

女神アクア、それはこの世界における水の女神アクアと同一の存在と思われる神の一柱だが知能が

平均よりも下でありかなりの悪魔&アンデッド嫌いであり金にがめつくアルコール中毒である

信者もそれを追従として本能で暴れまわり、さしもそれが善い行いであると信じ切っている狂人だ

常識外の行動を当然の様に繰り返す、だがまぁ、裏を見せずに人を騙す者よりかはマシだろう

 

こんな世界である、犯罪をしない限り欲望を我慢する方が馬鹿という言い分は分かるのだが…

それでもアクアと誓約を行っている者達、アクシズ教というのは悪い噂しか聞くことがない。

 

【この世界じゃ神は地上に出ないと本に書いてあったんだが嘘だったんだなぁ】

 

火継ぎの世界、つまるところ火のない灰であるサトウカズマが蘇った時には神は無名の神を抜いて

他の神はそのほとんどが死去、または殺害されている状況下だった、正に世紀末と言うに相応しい

貴方自身も無名の神と暗月の神グウィンドリンの亡骸を手にしたエルドリッチを討伐した

由来の分からぬ偉大なる戦神と切磋琢磨獅子奮迅するおよそ十分も行かない短時間

だが実に火の無い灰らしい有意義な時間であり、彼の竜狩りの剣槍はかなり使いやすい武器だった

 

故に言ってしまえば貴方にとって神と言うのはあくまでもただの一種族という事に他ならず

それに対して信仰をするというのはあまり分からないものだったりする

一応天地創造や人々を守る神様に対しては一定の信する心はあったりするが、一定だけである。

人生全てを費やす事ではないだろうと心でも体でも頭でも考えていたりする。

 

【まぁそんな女神様が何の用事なんで?】

 

結局何をしに来たのか、会話という緩やかな平和、それとも神如きで我が身の呪いを祓いに来たか

前者であれば幾らでも構わない事柄だ、火のない灰にとって平和と味わう場所は少ない

それが増える事は有意義な事、故に後者ならば何の躊躇いもなく暴力という剣を引き抜く所存だ。

 

「ねぇ貴方神をも恐れずに殺そうとする気配がするんだけど冗談よね!?よね!?」

 

【エリス教の狂信徒からぶち殺しても構わないって言われてるからなぁ】

 

ちなみに事実である、その誓約レベル+四をぶっちぎっていそうな神父は異教徒全員皆殺しらしい

中々に自身とは正反対の性格だが貴方と同じくらいの古強者であった、マジで強そうだった。

話で聞いたが彼もまた転生者らしいのだがアクアに絶望してこの世界にてカエルに喰われていた時

彼が言うエリスとそっくりな者に助けられたらしい、その時から彼はエリスにゾッコンらしい

案に言うとアクアの対応がクソだったせいらしいがまぁうん、コイツを見ていると理由も分かる。

 

【神がこんなんだとそりゃ絶望して精神錯乱にもなろうものよ…】

 

「なによその顔は」

 

ひたすら飯を掻っ込むめぐみんを尻目にアクアを見る、美しい薄い空の様な髪の毛が風に揺れる

言われてみれば言われる程に神様という情報に信頼を寄せる程の美しさを周りにばら撒いており

乱暴に酒を飲むという行為ですら絵画になる書きたくなるほどの構図へと変化させている

 

その気はないだろうが水の女神を象徴する薄い紫色の羽衣は自身を神器に連なる物ぞと主張する

不死である火継ぎに対して毒状態の様にジワジワと聖なる力にて生命力をジワジワと回復させつつ

呪いの温床である貴方の身体を白アリに食いつくされる木屑の様に少しずつだが確実に削っており

更に彼女の纏う青色の衣服はただの布にも関わらず聖遺物にする程の力を持っているのだ

 

女神アクアという信じられない情報に対する信頼度を爆上がりさせている

 

この際には何故白いローブではなく青色で厚手のタンクトップにミニスカートなのかという事は

気にしないでおくに限るだろう、不死者にも同じことが言えるが女神様だっておしゃれしたいのだ

 

【んでその女神アクア様は何をしに来たんだ?言っとくが誓約を受け取る以外の事は却下だ】

 

「あらアンデッドにしては殊勝な心掛けね、じゃあこれにサインを…じゃないわよ!あんたのせい

で下界に降り立つことになっちゃったんだから慰謝料よ!慰謝料!」

 

【ほーん、俺には全く心当たりがないんだがまぁ神本人が言うなら仕方ねぇ…のか?】

 

「いや、なんで貴方は貴方でタカリ屋に払おうとしているんですか、ゆんゆんですか貴方は」

 

【とりあえずお前がゆんゆんとやらに飯をたかってたのは理解出来たぞ】

 

幾ら貧乏生活だとしても友人に訳を話さずに飯をたかるのは駄目だと思うのだが…

めぐみんはどう考えているのか、金銭要求ではなく弁当要求だったらしいのでセーフなのだろうか

いや論理的にアウトだろう、家庭環境を訳に去れようともそれは立派な窃盗罪と脅迫罪だ。

 

【もう妹ごとこっちに住んだらいいんじゃないか】

 

「あなたの頭の中で一体何が起きたんですか」

 

「さらりと私を無視して二人の世界に行かないでくれる!?」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「私は女神アクア様なのよー!?」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「カズマしゃぁぁっぁあああああああああばばばばっアアアアア!!!!!」

 

【見事にカエルに返り討ちくらってて草生えるわ】

 

現在何の因果か女神アクアとのクエスト中、拳一つでカエルに食われて無事返り討ちをくらう女神

実に笑えてくる見た目である、カエルの口から女体の下半身が飛び出ては食われるを繰り返す様は

正に一流の喜劇と呼んで差し支えないだろう、不死人でも笑いをこらえるのが無理な程と言えば

伝わる人間には伝わる程の褒め言葉だ、本来感情の無い者が転げる程の歓喜は才能と言える

 

実のところ女神アクアとは水ではなく宴会芸の女神ではないかとも考えたが

自身で水の女神と呼んでいるし、そう呼ばれることを希望しているのだから水の女神で良いだろう

まぁ頭に自称という概念が付くのだが彼女の今の様を見れば高まった筈の信頼度はダダ下がりだ。

 

「客観視すると自分が実にマヌケな様を貴方に見せていたのか分かりますね」

 

【杖を胃へのつっかえ棒にして半身食われてるお前がそれを言うのか。】

 

「割と温いので大丈夫です、私はあとでブクウブク」

 

【口元まで食われるじゃねぇか】

 

ザクリとカエルの心臓部に黒刀をぶっ刺しながらアクアの方へと向き直ると同時に手に槍を握る

幽鬼のジャベリンと呼ばれるソレは槍というには短く、そして太い、東洋のモリかスパルタ戦士の

大槍に酷似した特徴を併せ持ったジャベリンは投げるという事に特化した、曰く投擲槍だが

飛距離が下手な弓よりも長く威力を持ったそれはカエルを即死させるのに十分な威力を持っている

 

【チェストォッ!】

 

知恵捨ての言葉と共に肩から手というカタパルトから発射された槍は見事にアクアの髪の毛数本を

犠牲にしながら真後ろに迫ったカエルへを撃墜させその勢いままに地面へと縫い付けていた

 

しかも後ろにいた三体諸共串刺し公のヴァリキュリアである、見事な刺し口には貴方もニッコリだ

投擲にて吹っ飛ばされたカエルの口からアクアも排出されると同時にこれまた恐怖と怒りの表情を

アクシズ教主神アクアの名のもとに発揮しながら真っすぐ貴方に向かって走り出しすと

 

「ヘアスタイルが崩れたんですけど!?ねぇカズマ!?」

 

「ようやくくたばってくれて脱出できました、ありがとうございますカズマ」

 

【呼び捨てスタイルが二人に増えちまったな】

 

苦情にも珍しい正論の一言だった、反省の余地がある常識を狂人代表とも言われるアクシズ教の

主神に咎められるというのは実に珍しい事柄ではないだろうか、火の無い灰が奉仕活動の様な。

これは貴方の世界である火継ぎ世界で言えば日常の様に行われる味方貫通という作戦の一つなのだ

 

味方の攻撃は味方に当たらない

 

亡者の一般常識であるが神には適応されないという事を忘れていた、結構なピンチだったらしい。

 

ちなみにこの戦法をめぐみんにした時は突発的なゲリラ爆裂により貴方は吹っ飛んだ、懐かしい

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「このすばらしい爆裂すばらしいでしょう!」

【感極まり過ぎて口が空回りしてるわ】

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ぬめぬめ…ぬめぬめよぉ…」

 

「このぬめりを利用して金稼ぎでも出来ないものでしょうか」

 

初日の火継ぎの様に涙を流し続けるアクアと裏腹にめぐみんはたくましくもコレりぬめりを商売に

利用できないか考えている様だ仲間になった際に火継ぎ世界を話してから吹っ切れたらしい

世紀末でも人は生きられるという考えの元、更に爆裂魔法に職業ポイントを突っ込む事に対して

後悔がなくなってきたらしく全てを威力上昇に突っ切っていた、アレが更に倍率ドン!である

恐らく今は惜別の涙以外の方法では生き残る事は不可能だろう、アレが更に倍率ドン!なのだ。

そもそもの問題で一度の死を無かったことにする惜別の涙があまりに乱用できる性能なだけだろう

 

【既にカエル肉っていうのがあるから難しいだろうな】

 

健全な会話、健全な世間話、そして体に纏わりつくカエルのぬるぬる、新人冒険者ならありがちな

事だと思われるためかアクセルの住民の顔は中々にまたか…という顔をしている。

実のところ今や塩漬けハンターと化した火継ぎのサトウカズマでなければ確実の何かの噂の温床と

なっているだろう、鬼畜のカズマだとかクズマさんだとかと言われるに決まっている。

確実にそう、部分的に出なく全面的にはいの選択肢だ、火継ぎの英雄たる勘である、バッド回避。

 

【だがぬめり…ぬめりかぁ、うちの世界じゃナメクジくらいしかいなかったな】

 

人サイズのナメクジが数多存在する毒沼、どこの世紀末かと言われればウチの世紀末ですと言える

正に詰んだセーブデータとエリス教の狂信者に言われた世界である、ついでにとても引かれた

 

火継ぎに言わせれば、モンスターの危険度に関して言えばこの世界と早々変わらないくらいだが

この世界はファンシーだから許されているのだろうか、全くとんだ世界差別である

めぐみんもうぇーって顔をしている、アクアはぬめぬめに泣いている、泣き過ぎだろう。

 

「信者も入ったし私アルカンレティアに帰りたい…カエルはもういやぁ…」

 

何でもこちらに来た際に酒を浄化してしまったらしく、弁償を余儀なくされた際に幸いにも冒険者

として登録していたためにカードを預けた代わりに返済の猶予を貰ったらしいのだが

今回の稼ぎで十分の一の返済が可能になったらしく、少なくともあと十回ほどだろうか、頑張れ。

 

火継ぎとしてはカエル討伐時に何事なしに掛けられたセイクリッドハイネスヒールにて呪いが一つ

だが確実に減ったのでアクアの借金を全て肩代わりしても足りないくらいの事をやったのだが

それは女神の為にならないだろう、そもそもアンデッドと断定しておいて敵対行動である回復魔術

を使ったのだからどちらかと言えばこちらが金を貰う立場である、下手すりゃ死ぬくらいの祝福だ

 

【はぁ、今日は疲れたな】

 

それは本来ないはずの人間的な精神構造である精神疲れであった

 

一般的には火のない灰も変人であるが、それは気にしてはいけない問題である。

 

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第四話 キャベツ

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素晴らしい朝、とも言い難い曇り模様は若干と火継ぎのテンションを下げつつも朝の用意をさせる

曇りと言うのは実に憂鬱な気分にさせる、それは火継ぎの世界を思い出させるからだろうか

恵みの雨でもなくサンサンとした晴れ模様でもない中途半端な天気、皆既日食、光り亡き闇の世界

実にトラウマを思い出させる所業ではないだろうか、神無き所業に相応しい天気と言える。

あぁ実に憂鬱である、火継ぎは停滞している曇りが大嫌いだった

 

「カズマ!今日は実に良い爆裂天気ですよ!早く湖まで行きましょう!」

 

反対にめぐみんは曇りと言う天気が大好きであった、なんでも大気中の魔力がドーたらこーたら

火継ぎには分からない単語ばっかりであった、集中力が切れない限り魔術をぶっ放す火のない灰に

この世界の魔術体系は実に難しい問題ばっかりである、火継ぎは感覚派なのだ、故に無知である。

 

【お前はいつでも元気だなめぐみん】

 

いや、爆裂をぶっ放したらぶっ倒れるんだから元気じゃないとおかしいのだろうか?

少なくとも火継ぎがめぐみんとコンビを組んでからと言うもの彼女が爆裂魔法を撃った後に

立ち上がった姿を見た事がない、カエルに食われている回数の方が多い、三回に一回のペースだ

 

どちらにしろ出掛ける予定にはなるらしい、扉の開けてフンスフンスと鼻息を荒くするめぐみん

これは断れない奴ですやんと火継ぎは感じたのだ、最早何回目かも分からない習性だ

そして大体そう言う時に断ると目の前でエクスプロージョンの詠唱を開始する女なのだコイツは。

実に困った習性である、自称であるが爆裂魔法を一日一回使わないとボンッとなるらしい。

 

そんな欠陥種族がいてたまるかと思ったが、火継ぎの世界には自主的に爆発する者もいたので

冗談か本気なのか分からない二択~三択問題へと変貌していたりする、実に困ったモノだ。

 

貴方としては朝の散歩と言う殺意に対しての気を張る必要も、矢も、剣も、武具は何もいらない

火継ぎにとってそれは平和という事象を体験できる唯一の事柄だ、甲冑を纏うのは趣味なので

夜寝る時以外の全ての時間においてタマネギとデブと呼ばれるカタリナ防具を装備する

ちなみにそう呼んだ冒険者や火の無い灰は火継ぎによってかなりひどい状態まで追い込まれた。

 

厳密には十回ほど殺したり殺されたりした

 

あの時見た彼の格好はロングコートの衣服に飛び上がる翼のカラスを想像させる鍔帽子と黒い獣革

の防護服だったが、あの時に狩人と名乗った男は元気なのだろうか?奇妙な気配を携えた男だった

手に握りしめていたのは二面性を露わにした外にノコギリ、内に鉈の特性を合わせた複合型の武器

本来であれば技量が幾らあっても火の無い灰には使いこなせない代物を十全に使いこなす益荒男だ

きっと死んでも生き返るからという勘も併せているが何処に居ようとも死ぬことは無かろう。

それこそ自分くらいの不死の化け物でも無ければ殺す事は叶わぬ化け物であった。

 

そう、それこそ今隣のベランダにて寛いている、あの鳥の様なマントをした…奇妙な…男…

 

あいつじゃん

 

あ、隣の奴も俺に気づいて汗かいてら、アッハッハ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【いやまさか聖杯で会ったあのタマネギの男か?いやまさかな、まさかだよな、うんアイツだわ】

 

 

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まさかの異世界にて知り合った友人が隣の宿部屋に住んでいたという事実に困惑をしつつ

現在はアクセル街の外、つまる所モンスターのテリトリーに片足を突っ込んでいる状態である。

半径5キロもない近場に大き目の湖が何故か自動的に発生したおかげで環境に対する慈悲と自身の

面倒臭さをうまい具合に中和する事が可能となったのでめぐみんは二日に一回のペースから一日に

一回と言う天文学的な爆裂中毒となったのだ、毎日は面倒臭い、本当に面倒臭い、実際にやったし

 

「黒より黒く略称エクスプロージョン!」

 

火継ぎの真後ろで行われる冒涜的所業により湖の水分は全て上空へと大瀑布しながら水滴となって

自身の甲冑を余すところなく濡らしていく、文字通りの水蒸気爆破は湖を一瞬で干上がらせていく

なんという破壊力なのだろうか、と最初は感動していたが古今東西一か月同じことが続くと飽きる

 

まぁ火継ぎは誓約上昇アイテムの入手を狙う為に五時間と同じ敵を殺し続けた者である

 

飽きと言う事象に対しての防御力は通常の冒険者のソレを軽く上回る性能を持っているので

これくらい火の無い灰ならば耐えきれてしまう、故に彼らがアクセルの目覚ましになる日は近い

 

「快…感ッ!ぐふっ…」

 

背後にて文字通りに体の全てを使い倒しぶっ倒れるめぐみんを気配で察しながら目の前の池を見る

実に素晴らしい爆裂であったと言えよう、一発で池の水分を全て空中にぶっ飛ばしたのだ

 

火継ぎ世界の魔術ではこうはいかないだろう、信仰極振りの雷の杭でもこうはいかない筈と言える

 

いや99振りならばあるいは…?早くロザリア様に青い舌を捧げて振り直しをしなければと考えたが

そういえば元の世界に帰る手が今の所なかったという事を思い出しどうにもならない問題だった。

 

やはり憂鬱である、初めての火継ぎ世界にてグウィンドリンをぶっ殺しおっぱいを見れなくなった

時と同じへこみ方をする火継ぎを友人が見たらどう思っただろうか?

同意か軽蔑か、はたまた復讐者誓約だからとぶっ殺しにかかってきたのか、それは分からない。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【おっぱいは正義】

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

はてさて野菜とはなんだろうか?

 

瑞々しく色鮮やかであり種という物質から成長と言う変化を促し大きく成長し大抵の場合であれば

土に埋まっているか大人の腰ほどの植物の茎から取る事で食物へと変化する、あと美味い。

 

植物とはなんだろうか?それは意思を持たず動く事もなくその場に根を張り得物を待ちながら耐久

に優れており灰になろうとも他の栄養素となり成長を助ける、いわば究極の協力生命体と言える。

 

それが野菜だ、それが植物だ、何だろうとも動くことはなく、そして害意も存在しない。

 

目の前にて自身が両の手で握りしめている瑞々しい良い色をしているキャベツもそうだと良かった

だがそうはいかないのが異世界事情と言うものだろう、そうだ、ここは火継ぎ世界とかなり違う。

 

ギルドからの緊急収集にて言い渡されたのはキャベツの収穫だった

 

大量の野菜の収穫なんて農夫がやる仕事であり冒険者がやる必要性などないだろう、と勘繰った

 

だが違った

 

【瞬間凍結!瞬間凍結!あぁクソ瞬間凍結!冷たい武器でチェストォ!!!!】

 

野菜は飛ぶ、人間を襲い食物にする肉食、しかも大抵群れであり大量にいるという不死人殺し

実に素晴らしいじゃないか、存分に狩り殺したまえよ、と狩人は言っていたが彼はキャベツとの

相性が悪く得物はキャベツを粉砕し殺害、彼独自の呪文は威力が高すぎてキャベツを粉砕し殺害

如雨露のような機械仕掛けの火炎放射器から繰り出される焔は良い感じに焼きキャベツになる為に

彼は永遠と焔を発射するだけの道具となり果てていた、これではどっちが主体か分からないだろう

 

実のところを言えば火継ぎたる貴方も同じようなモノであるが少なくとも魔術が通じる分マシだ。

 

瞬間凍結を空中にぶっ放しながら冷たい武器を付与した大網にてキャベツを一網打尽をしながら

ギルドに手渡すを繰り返す貴方は片手間に偶々キャッチできたキャベツを見ながら考える

一玉一万エリスという大金は実にこの時間が有意義なモノだろう?と語りかけてきている様だが

これでも重さはキャベツ分の物でありそれが空を飛び続けており体当たりもするのだ

無論貴方から反対側に飛ぶキャベツはいないが当たれば相当の痛みが体を襲うだろう

現在群れで襲われているダクネスはどれ程の体力振りなのだろうかと畏怖と尊敬の念で見るが

なんだか若干頬が赤の色に支配されつつある、あれ実は発情してないだろうか?

同僚の残念な面を見てしまった火継ぎは見ないようにするがキャベツの群れに襲われているという

状況だけ見ると…

 

【…瞬間凍結】

 

「あひゅうううううう!!!!!」

 

【やっぱりそういう趣味かよ】

 

火継ぎが放った瞬間凍結で少なくないダメージを与えられているに限らず歓喜と法悦に浸っており

同時に彼女に襲い掛かったキャベツの全ては地に伏し全てが火継ぎのポケットマネーへと変化する

彼女の仲間であろう銀髪の女盗賊が静かに貴方に恐怖を抱いているがキャベツに群れられて何も

しなかった彼女が悪いのであって自身はそれを助けただけである

ともかくとしてアレ、ダクネスを仲間と思いたく無かったためか攻撃はクリーンヒットしたが

無言で太陽の光の癒しを使ったので許して欲しい、逆に奇跡を使った瞬間にダクネスからの眼は

実に残念であるという顔をしていた、ドが付くほどのマゾヒストらしい、貴族がそれでいいのか

 

それとも異世界の貴族と言うのはマゾしかいないか、であれば王族とはどうなるのか?ドマゾか?

実に異なる次元らしいカルチャーショックを与えた所で火継ぎには何も関係がないだろう。

ただ静かに目線からそういう人間を逸らすだけだ、火継ぎはサディスト側の人間なのでそういう

人種から求められるという可能性がある為にそういう属性をひた隠しにせねばと考えた。

 

ダクネスに魔術を使った時点で手遅れであるが火の無い灰には分からない問題であったのだろう。

 

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第五話 ウィズ

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日にちは不明だし日記を記すという趣味もなく、ただ自身の追憶に記される素晴らしい日付だった

と記憶することが唯一無二のの事柄と言えるだろう、不死人はいつか記憶を忘れるが

自身は不死人ではなく火の無い灰という存在にアップデートされているのだから忘却の彼方に

飛ばされることは無いのだ、素晴らしい事である、狩人が聞けば憎まれたる古物商に推薦されるに

違いないだろう、彼は歴史と言う代物と全てを解読することに生涯をかけているのだから

まぁ、これも本人と紅茶を飲みかわしながら雑談した欠片から推理していることに限ってしまうが

どちらにしろ自身と似たような境遇を持つ狂人だ、勝手に推理した所で完璧に近い回答に決まって

いると火継ぎは考えた、雑談時間はおよそ九時間ほどであり休日は潰れ酒場と化したギルドでは

頭が割れるように痛むという酔いにも似た啓蒙病人が数多の被害者発生してしまった

 

誰が悪いかと言えばテンションが上がって個々のふるさと納税ならぬ故郷自慢をした両雄が悪い。

片やが火継ぎ、片やが狩人の世界に共通する事はどちらも終末世界を生き抜き救済を執行した

という二人そろって救世主なわけなのだがそれを感じさせない慎みと親しみやすさがあると自負し

てはいるもののそれは二人の個人個人の性格内で分析されただけであるので実際彼らは冒険者と

ギルド職員の各位からかなり恐れられている、特に彼らの税を回収する時になってしまったら…!

 

雇われる熟練冒険者と衛兵、そしてベルゼルグ王国の騎士の人数が魔王軍とは比べ物にならない程

殺し尽されるだろうとギルドは考えているが、彼らは金を持っているので回収しないと王国の担保

と財政がアウチ某悪魔の加護を受けし占い師によると死人は出ないが精神は死ぬのでどちらにしろ

諦めた方が国のためなのだろう、言ってしまえば神VS人なのだから。

 

片や初週で王の火を簒奪した由来正しい闇の王にして最後の薪の王

片や獣と人と涙を流す神の全てを許す為にこの次元ならざる神の赤子に成りし者

これに勝てる存在なんて別の時空間に位置している頭の可笑しい元素騎士か、異次元の爆裂使いか

こう考えるとそこそこいるのではと思うかもしれないが二人共この世界の住人にあらず故に

現在時刻において世界救済と滅亡のカウントダウンを止める存在はいないの詰んでると言える。

 

【紅茶って奴はうめぇなぁ…】

 

【やっぱり英国の飲み物って最高だわー】

 

そんな休暇に偶々出会った二人のお茶会に使われているアクセルの魔法商店はいったいどういう店

なのだろうか?少なくともただの魔法商店であれば二人がばったり会う事もなく、普通ではなく

異常を常識と捉えている二人にとって共通の居場所となれば、それは一種の世紀末と言っても

おかしくはない、実際個々の店主の商才はかなり狂っているし、ここで火炎壺を一つ爆破すれば

確実にアクセルを焦土と巻き込んで二人の命をゼロへと巻き戻すだろう、おめでとう世界を救った

普段であれば時を巻き戻して蘇る訳だが、幸いなのは個々の次元ではなく他神が運営している緩い

狂戦士的異世界なので時を弄ることは無いが即座に蘇る権能は二人の常と位置を決定打。

 

つまるところ封印以外で彼らを殺す事が出来るのは現時点で…いや結構いるのであった。

最悪棒を持った子供十数人に囲まれれば二人は死ねる、究極の雑魚と例えることが出来る存在だ

ジャイアントキリングという概念を煮詰めて出来た二人組だ、面構えが…あまり違いは無かった。

 

「二人って兄弟なんですか?」

「確かに見れば見る程顔の作りがそっくりだな、同じ国の出身なのか?」

 

まるで実家の様に他人の店先でくつろぐ二人とは反対側の椅子に座っている

これまた性別も反対に位置しているダクネスと呼ばれている大貴族の一人娘であるララティーナと

爆裂半径1キロのめぐみんは大人しくという普段の絵面を知っている者からすれば違和感バリバリ

すなわち目の前に位置している二人の人外から見れば目を疑い次に医者に診てもらうレベルに

成人した女性の如く大和撫子めいて水をチビチビと麗しくも艶やかなる様で飲んでいた

グイっとしたらドンっとコップを叩きつける様は正に鬼武者としての資質を感じるに相応しい。

 

サラリと流してしまったが現在双方にとって顔を隠している人間がいないという描写がされた

故に火継ぎも亡者顔を晒している訳だがそれでも似ていると言われるあたり、大量に、それこそ

深海の様に溜まりに淀み続けた呪いが若干溶けて来たために老人くらいの顔つきになっているのか

もしれない、狩人は普段通りにマスクをしていたが紅茶の欲に負けたために首へと掛けられている

顔だけは若人と老人だが双方共に似たような場所からの出身なのではないかと四人の共通認識へと

変化していた、そう、四人である。

 

「あのぉー…そろそろこちらを向いていただけないでしょうか…いえ強制では無くて…助けて欲し

いといいますかぁー!やめてくださいアクア様!涎が!涎がヒリヒリしますぅ!」

 

【魔王軍幹部がぬかしおるわ】

 

【流石に女神の抱き枕にされながら死ぬっていうのはヤーナムでもない死に方だがな】

 

そんな様子を実に面白い物を見る目で見物客となっている二人は実に息があっていると言えよう。

ただ興味に引かれてアクアに近づけば片方は浄化され片方はゴッドブローの効果範囲で死ぬ。

実際何度か火継ぎはアンデット特攻により合意の上とはいえ酒の取り合いで何度かくたばっている

だが合計スコアであれば火継ぎの勝利数がダブルスコアめいて多いので安心だろう

ちなみにその際に火の無い灰の不死性が時戻しではなくその場に復活するという結果になっていた

という事が分かり、同時にアクアのゴッドブローは彼女の独自スキルであり即死プラス復活であり

火継ぎはかの技を大見えを括ってくらった大馬鹿というレッテルが一時期の酒場で貼られていた

アクアが女神と自信を誤解しているのはゴッドブローという王族にも似た勇者スキルの一種を

持っている為と人間に対してだけ復活という効果があるという事になった。

ちなみに火継ぎはちゃんとゴッドブローにて頭を吹っ飛ばされて一度エリス様に謁見した為に死ん

だし狩人も興味本位で喰らって死んでいた、そして同時に独自スキルとして習得していた

 

ゴッドブローは効果範囲が狭く悪魔族やアンデッドに対する即死率が高いのでとてもよくつかわれ

ており、大量の悪魔やゾンビを一匹ずつ丁寧に即死&成仏させていく様は雑草刈りの様であった

絶対に女神独自の技に使われる様相と二つ名ではないが使っている連中がギルドや同業者からの

好感度が低いのが原因に当てられている、自業自得としか言いようのない事態だろう。

どちらも血まみれのままにギルドに報告を果たしてから風呂に行く汚染源なのだから仕方ない。

理由は二度手間になるから面倒臭いという理由である。

 

「滅殺人殺しビイイイイイイイイイム!!!!!!」

 

【【ぐあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!】】

 

突如として扉から現れた仮面の男の交差した腕から放たれたビームによって二人は仲良く貫通した

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「悪感情とかそういう所の話ではないわァ!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ええい馬鹿か!馬鹿かお前は!抵抗くらいせんかバカ者!貴様らもだ!分かるか!ここでこの

商売気運がマイナス面に天元突破しているおバカ店主を殺せばバッドエンドルート直行なのだぞ!

分かっておるのかご同輩モドキのクソ野郎共!えぇ!?分かるか!?こっちを見ろ!こっちを!」

 

まるで生徒を叱る先生みたいだなと思うめぐみんは売り場にあった魔法防御力が紙になる代わりに

魔力をエグイ程に高めるスナック菓子を食いながら目の前で正座をする強さトップ4の三人を見る

実に面白い光景である、こめっこがいればどんなコメントを残していただろうか?

きっとこれ以上ない素直なナイフの様を醸し出す言葉を刺し出すに決まっている、きっとそう。

あの子は今もぶっころりーに変な言葉を教えられているのだろうか、流石に注意したから大丈夫…

とも言えない感じに思えて来た、実家に帰ろうと思うめぐみんであった。

 

目の前に出来事にちょっとでも興味を沸かそうとする気はないのだろうか?

いや違う、関わりを持つことを出来るだけ避けたいのだ、流石に成人男性二人と女性一人の正座を

真正面に見るのは中々にきつい、それが我がコンビとアクセルの冒険者の頂点に爆裂パワーを私の

次に極めているであろう自称お飾り魔王軍幹部のリッチー…それを正座させてるのは悪魔らしい

しかも公爵クラスだ、紅魔族のめぐみんが運命の悪戯にて対峙してきた上級の更に上の倍率ドン。

 

【だって魔王軍幹部やし…】

 

「人類側としてその行為が悪いとは言わんし正しいだろうが元凄腕の英雄急冒険者で近所付き合い

も良いコイツを殺せばそのまま貴様の評価に直結しそれをギルドからの好感度がかなり低い貴公ら

二人組の弐セットはそのまま王都からの調査官をなます斬りにしながらベルゼルグを魔王軍諸共

ぶっ殺しながらパーティをする者らへと進化するのが何故分からぬ!?ええいこっちを見んか!」

 

なんだろうか、ありありとそれをする未来が見えるのは流石だと言えるだろう

王都に爆裂なんて凄いロマンがある話ではないか、魔王軍も国家とすればダブルコンボ国家転覆だ

素晴らしいじゃないか、ついでに至高のマナタイトを強奪すれば何発のも爆裂を叩き込む事も…!

妄想が止まる事がない、実に良い爆裂日和になるだろう、ダクネスの妄想症も中々に理解出来る!

 

「まさか悪魔と意見が合う日が来るとはな…まさか本当にそこまでやる気がある者らだったとは…

ん?そうなると矢面に立つのは私に…んんっ!いいぞ!実に素晴らしい!この暴虐の塊共が!

私だけを見るだと!?実に勿体なさ過ぎる!一度の死ではなお足りぬ!こうしてはおれぬ!早く!

ハリー起きろアクア!楽しい暴力の為に私を蘇生させろ女神の名を持つ娘よ!ハリー!ハゥリイ!」

 

「ぐぇ!なに!?何なの!?何濃すぎる悪魔とアンデット臭!臭いし揺れる!臭いし揺れるわ!」

 

ダクネスが顔を初夜のウブ娘の様に紅潮させながらテンションをフロアガン上げしまくっている

その様は正に悪魔の所業と言って相応しいだろう程までに、欲求に正直になった人間というのは

実に恐ろしい怪物の様にも見える、というか顔が感極まり過ぎて怖い、本当に怖すぎる。

眼は血走り声は荒げ、口は頭蓋の関係でこれ以上は広がらないであろう程に三日月を浮かべており

戦狂いとかバーサーカーとかそういうあだ名を付けられるであろう顔つきは正に騎士の鏡と言える

無論皮肉であるがベルゼルグ王国では最前線に王族が出張るという国の代表がバトルマニアであり

実際この国の貴族としては間違っていなかったりする、実に嘆かわしいと言えばいいのか?

それは火の無い灰にも分からないが現在のダクネスの様子はちょっと怖い、それは事実である。

誰だって目をギンギンに光らせて最早顔が真っ赤な鬼にも見える絶妙な笑顔なのだ、とても怖い。

 

【言いたい事は分かった、とりあえずこの娘っ子は倒さなくていいんだな】

 

ちょっと残念でもある、このウィズというボンキュッボンの緩やか美女のソウルを使えばどんな

魔術か武器が出来ていたのか好奇心が尽きないが世界と一つの武器を取れば…武器の方が上では?

流石に本人の目の前では言わないが火の無い灰とはそういうものである、あのビームでまたもや

貫通させられたくはない為にそのまま無言を貫くわけだがそういう性格なのだ。

世界の命運が最初から決まっていた運命線の出身者にて多くみられる独自的な性格形成故に。

 

だが同時に何回ほど死ぬかとも考えた、狩人とのコンビだとしてもおよそ百回は超えるだろう。

大体の死亡理由はめぐみんとダクネスとアクアを守ったためだろうがそんな状況になろうとも

ピラミッド弱者とも言える三人に手を出すとも思えない戦士の眼をしているウィズ

同時に二人がどれだけ真剣に魔王がぶっ殺しにかかっているのがダクネスやめぐみんが理解する

 

「あの、二人はなんで魔王さんを倒そうと…?」

 

「どうせ碌な理由ではないだろうが一応この私も聞きたい所だ、貴様らの運命は見えなさすぎる」

 

魔王幹部二人の質問としてはダクネスとめぐみんも聞きたい質問だったために黙る。

それに反英雄的勇者である対面の二人が答えたのは三拍後であった。

 

 

 

【【暇つぶし】】

 

 

 

何度も世界線をやり直し一つの救世主となった者にしか許されない答え、それは人間的であった。

 

 

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