Q.もしも50万トン戦艦以上の戦闘艦として艦娘の世界に行けたらどうしますか? A.無双すると思います (やる気のない提督)
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プロローグ

 世界最大、もしくは世界一と聞いたら大抵の人は物凄い高い建物やダムと言った人工物、またはエベレストやナイル川の様な雄大な自然を思い浮かべるだろう。

 飛行機や船舶と言った乗り物にも、世界最大の物はあるのだがミリタリー界隈だと最新の原子力空母や原潜、軍用機に目が向くだろう。

 しかし、計画や試作段階でコストが見合わずに中止となった兵器は数知れずな訳で、特に海洋に浮かべる事ができる戦闘艦ともなればやたらと大きくなる傾向になる。

 

 その好例なのが、氷山空母のハボクックでその大きさは全長600m、全幅100m、排水量200万トンというトンデモ兵器である。

 まー、名前からもわかると思うが氷山で船舶を作ろうという事自体が無茶な発想な訳で、諸々の事情によって試作段階で中止になった空母なのだが、この規模の戦闘艦を日本も構想されていたのはあまり知られていない。

 一般的には、50万トン戦艦と呼ばれる物で構想が生まれた時点での技術レベルでは建造できなかったのだが、もしも現存されたら国家予算を食い尽くしながらも戦っただろう。

 

 とは言え、そんな戦艦に俺がなるとは1ミリも思っていなかったのだがね。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「………あ?」

 

 気が付くと、水面に1人で立っていた。

 その為、理解が追い付かずに辺りを見渡すと遠くの水平線まで何もない場所だったのと磯臭い匂いがしたため、ここはどこかしらの洋上らしい。

 この事を理解した後、身辺整理をしてみると背中から両脇に掛けてメカニックな装備が身に付けられていた挙句、装備の中から二頭身の小人が現れた時には驚きを隠せなかったな。

 

 そして、副長役の装備妖精と名乗る小人との意思疎通が可能だと分かったので話を聞いてみた。

 

「ここは?」

「ミッドウェー島から西に100キロの海域です」

「今の装備を報告してくれ。整理したい」

「わかりました。この艤装は   

 

 装備に関して、聞いてみると50万トン戦艦と同等の船体に51センチ砲の主砲を始めとする兵器や艦載機の発着艦を行う為の飛行甲板などがある。*1

 正直、50万トン戦艦よりもデカくねと思ってしまったのだが計画した時代が明治時代だったので、当時の建艦技術と未知の技術が組み合わさった結果、規模の割には約500名の乗員で動かせるレベルになっている。

 全く、どうしてこうなったと思いながら艤装の火を入れて稼働させると膨大の情報が頭に入ってきたため、少し混乱したがすぐに取り直した。

 

 そして、情報を整理していざ出発しようとした時に1つの通信が入ってきた。

*1
 ・武装

 50口径長51センチ3連装砲30基、65口径長15センチ単走速射砲60基、35ミリ6砲身ガトリング砲90基、VLS(垂直発射装置)180セル

 ・航空戦力 計66機

 戦闘攻撃機:32機 対潜ヘリ:6機 汎用ヘリ:8機 無人機:20機

 ・速力:42ノット

 



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第1話 初戦闘と遭遇

 艤装を動かし、移動しようとした所で1つの通信を受け取ったのだが、その内容は転生先の世界ではありふれた内容だと思う。

 何故なら、動かす前に妖精さんからの説明とネットワークなどの通信網から入手した情報から、架空艦として艦これの世界に転送したと推測できた。

 その為、傍受した通信内容は赤の他人同士がやり取りを行っているので無視する事もできたのだが、これをきっかけに人類側と接触できるかもと言う打算が含んでいるが、艦娘が危ないので救出する事にした。

 

「おぉ………やっぱ早いな」

「50万トン戦艦を設計して、最先端の技術を結衆して実際に建造した世界線の物ですからねぇ。少なくとも、この世界の技術ではそう簡単に沈める事はできませんし、航空戦艦という艦種の中では最速だと思いますよ」

「だよなぁ」

 

 そう。戦艦の特徴と言えば、強力な火力と重厚な装甲なのだが第二次世界大戦を通して航空戦力の前では無力だと判明したので、終戦と同時に多くの戦艦が解体される運命となった。

 しかし、50万トン戦艦を拡張発展させた今の艤装に使われている火力は構想された物ものよりも向上し、装甲もそれまでとは全く違う特殊合金が開発された事で耐久力がかなり上がっている。*1

 その為、例えば戦艦大和が沈んだ坊ノ岬沖海戦では300機以上もの航空戦力を必要としたが、今の艤装の元になった航空戦艦では沈めるのにどれだけの数が必要になるのか、知れたものではないがな。

 

 そんな訳で、通信から聞こえてくる悲痛な叫びと共に得られた情報を元に、目的の方角へ舵を切るのと同時に艦載機の出動を命じた。

 何しろ、現在の場所からそこそこの距離があるので時速数百キロで進める戦闘攻撃機の方が早く行動できるからだ。

 その事から、艦娘への誤射を避ける為に装備したのは対艦ミサイルではなく、レーザー誘導型の精密誘導爆弾を複数発を装備させて発艦させた。

 

 

 

 艦娘side

 

「………なんなの? あれ」

「わからないわ。ただ、敵意は感じられないわ」

「理由があれば聞きたいけど?」

「あれほど、精密に爆撃できるなら私達は既に沈んでいる筈でしょ?」

「………それもそうだけど」

 

 戦闘攻撃機が発艦した一方、しばらくして艦娘達は空気を切り裂く様な音と共に数隻の深海棲艦が爆発と同時に撃沈していったのが確認できた。

 理解が追い付かず、周囲を見渡すと3機の航空機が耳障りな音を纏いながら再接近してきた為、何もできずに突っ立っているとまた深海棲艦が爆発しながら沈んでいった。

 そして、周囲の深海棲艦を殲滅すると戦闘機と思われる航空機は飛び去っていったので、一安心と言った所だが戦闘海域から抜け出せていないので警戒は必要だ。

 

 その為、恐る恐るではあるが移動を始めると水平線から移動してくる物体を確認できた。

 

「………何かしら?」

「深海棲艦?」

「今、戦っても勝てないっぽい」

 

 それを確認したのは、艦隊旗艦の艦娘以外にも出てきたので立ち止まったのだがある意味、正しい反応とも言える。

 何故なら、今の彼女達はそれぞれが中破から大破しているので修理しないと戦えない状況だからだ。

 その結果、彼女達は彼の艤装に驚く事になるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 艦息side

 

(なんとか、間に合った様だな)

 

 最大全速で移動中、艦載機からの戦果として当該海域にいた深海棲艦を殲滅したとの情報が入ったので、余裕を持って近づく事ができるな。

 全く、攻撃中にチラッと見てみたらかなりのダメージを受けてる様に見受けられたから、誰も沈まずに済んでよかったよ。

 そして、目視で確認できたので速力を落としながら接近して彼女達と会話ができる距離で止まった。

 

「………貴方は一体、何者なの?」

「俺は高天原(たかまがはら)級航空戦艦の1番艦、高天原だ。そっちだと50万トン戦艦と言った方がわかりやすいかな?」

「50万トン戦艦? 構想だけの戦艦だったと思いますが?」

「この構想を元に建造されたのが俺だって訳だ。造られた時期はずっと先だったがね」

 

 加賀の質問に、自己紹介をすると彼女達は不審者を見る目でこっちを見てきたのでそう説明した。

 なんせ、彼女達はボロボロなのに長ったらしい説明をしても混乱するだけだろうし、こちらとしても加賀達を指揮する提督に話した方が都合が良い。

 その事を伝えると、彼女達が所属している鎮守府へと向かう事になった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「横須賀鎮守府所属の杉原です」

「高天原級航空戦艦の1番艦、高天原です」

 

 加賀達に連れられ、到着したのがまさかの横須賀鎮守府という事に内心、驚きつつもポーカーフェイスで表に出さずに上陸すると、報告を受けた提督と思しき白い軍服を来た女性と何人かの艦娘が待機していた。

 彼女達は一様に、俺に対して警戒心を持っているのはヒシヒシと感じるがここに到着するまでの間、加賀達からいくつかの話を聞いていたので全力でスルーする事にした。

 何しろ、この世界の男女比は1:30というあべこべな世界なので男は重宝されるし、そもそも俺のスペックを加賀達に頼んで提督に報告させたのだから当然の反応だ。

 

 その為、加賀達は入渠して戦闘での傷を癒しに行く一方で俺は個人用の携帯火器を取り出してから艤装を外し、提督達に連れられて執務室へと向かった。

*1
その世界線では、ニッケルやクロムなどを添加した特殊鋼の10倍もの強度を誇る特殊合金が開発され、主力を担う戦闘艦へ積極的に使用された



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第2話 話し合い

 執務室にて、俺は知っている事を話した。

 自分が男である事。気が付いたら洋上にいた事。主砲が51センチだという事。戦闘艦として通常の艦娘と違う事。装甲に使われている金属が特殊鋼ではなく、特殊合金だという事。

 戦闘の根幹となる部分、戦闘システムやレーダーの探知距離などはぼかしながらそれ以外の主砲や速力と言った機密性の低い部分は杉原提督に打ち明ける事にした。

 

 そして、彼女から話を聞いた。

 この世界の事。艦娘と深海棲艦の事。世界情勢の事。先月、深海棲艦からの大規模な攻勢によって全艦娘の3割以上を喪失し、再建途中だという事。可能なら俺も日本海軍の一員として働いてほしい事。

 ザッと説明を受けたが、ゲームとして艦これの世界を知っていたので思っていた以上に状況は芳しくない様子だと印象を受けた。

 

 まぁ、地球の7割が海洋で地下資源が極端に少ない島国である日本だと、海軍力の低下は国家の維持を考えた際に致命的な問題になる。

 現代と呼ばれる世界は、原油や各種鉱物などの地下資源に大きく頼っていると言っても過言ではなく、特に原油と呼ばれる物に至っては経済の根幹とも言える程に重要な物である。

 原油を生成すると、ガソリンから軽油や重油といった燃料になる物からプラスチック全般の原料となるナフサ、道路の舗装に使われるアスファルト、プロパンなどに使われる天然ガスと言った幅広い分野で使われている。

 

 前世では、プラスチックの再利用が叫ばれていたが再利用できるまでのコストを考えると、使い終わったプラは燃やして新しいプラを作った方が効率が良いのだが、今となってはどうでも良い事だ。

 それはともかく、石油を始めとした資源の殆どを船舶による輸入に頼っている日本にとっては、海上交通路(シーレーン)の寸断は国家の存亡に関わる事なのでそれを守るための海軍が必要になる。

 その海軍、特に日本が保有していた艦娘の3割を喪失したという事はかなりの被害を受けたという事になり、前線で戦っていた戦闘部隊の半分以上がくたばったと聞いた事がある。

 

 そんな状況でも、何とか維持してるのって何気にすげーなと思いながら現時点での情報のやり取りを終えて、ふと窓を見ると外は夕暮れになっていた。

 

「あら、もうこんな時間なのね。話が長引いちゃってごめんなさいね」

「いえ、お気になさらず」

「そうねぇ。施設の詳しい説明や今後の待遇に関しては明日にでも話し合いましょう。武蔵、彼に夕食を取らせる前に客室とシャワー室がある場所、後はお手洗いの案内しなさい」

「わかった。高天原、来てくれ」

 

 その為、杉原提督が傍に控えていた戦艦である武蔵にそう言うと彼女に促されて執務室を後にした。

 今後、艦娘の男バージョンとして戦場に立ち続けてその先で朽ち果てるのか、それとも普通の人間として社会貢献(意味深)を強いられるのか、現時点での俺にはわからない。

 ただ、折角の転生で戦える様になった以上は意思のある兵器として役割を全うしたいと考えているのは確かだ。

 

「高天原は」

「ん?」

「高天原は本当に男なのか?」

「この場で全裸になろうか?」

「いや、そこまではしなくていい。単なる確認だ」

「そか」

 

 そう思っていると、武蔵から話しかけられたのだが転生前は伝えたい事がない限り、自分から話さないタイプなので普段から聞き手に回りやすかった。

 その結果、話が続かずに気まずい雰囲気になってしまったのでどうしたものかと考えていると、廊下の向こうから加賀がやってきた。

 

「あら武蔵、話し合いは済んだのかしら?」

「いや、明日も多少ある。彼がこれからどうなるかは兎も角、我々の管理下にいる間は充分な支援をするのが提督の方針だ」

「そう。ならいいわ」

 

 武蔵の言葉に、彼女が頷きながらそう言ってから俺の方に向いて昼間の事について話してくれた。

 

「昼間の海戦の時は助かったわ。今の海軍は私達、艦娘の補充で大忙しだから本当ならあの時に沈んでいたもの」

「困った時には助け合う。シーマンシップの一環としてやっただけさ」

「貴方にとってはそうかもしれないけど、私やあの子達にとっては大きな借りになったと思うわ。いつか、返せると良いのだけど」

「こっちが危なくなった時に助けてくれりゃあ、問題ない。そう言うもんだろう?」

 

 船舶に関する仕事に就いた事がないから、シーマンシップの意味をよく知らないが人命救助もその一環だと思っているので問題はなかろう。

 そんな訳で、加賀を含めた3人で今夜の寝床である客室とシャワー室とトイレの場所を教えともらい、食堂でこの世界に来て初めての夕食を取った。



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第3話 鎮守府の飯の旨さを知る

 杉原提督 side

 

「つっかれた〜」

「お疲れ様です、提督」

 

 高天原が退室した後、杉原提督はそれまで引き締めていた雰囲気を緩めて本来の性格を露わにした。

 彼が男である事を聞いた時は、半信半疑ではあった物の実際に対面して話し合ってみると成人男性の声から本物の男である事がわかり、他人に接する際にも真面目で紳士的な印象を受けた。

 大半の男は、法律などによって守られているが故に傲慢で横暴なのだが、彼からはそう言った態度などは見受けられなかったので少なくともネコを被っているとは考えにくかった。

 

 その為、融通が効かない他の男よりも話が進みやすいと踏んだ彼女は思いっきり、背伸びをすると高天原を連れて行った武蔵の姉である大和がお茶を差し出してきた。

 

「彼が艦娘で、男だって聞いた時にはどうなるかと思ったけど何とかなりそうね〜」

「そうですね。他の人と同じだったら匙を投げてたと思います」

「えぇ、冷静と理解力が高くて助かったわ」

 

 そのお茶を飲みながら、高天原から聞いた内容を書き記したメモを見ながら思い出すと、今までの艦娘とは一線を画した存在である事は確かだ。

 

「………特殊鋼の10倍もの強度を誇る特殊合金なんてどうやって上に報告すれば良いのよ」

「暫く、記載しないとかですかね」

「いずればバレるわ。だったらもっと力を持ってる人に頼むしかないわね」

 

 ヤレヤレ、といった感じとそう言った杉原提督に大和がこう返した。

 

「叔父様の力っていう物ですか?」

「持つべきものはコネも含まれるわよ」

 

 その言葉と共に、杉原提督は机にある電話の受話器を取ってある人物に連絡を取った。

 

 

 

 高天原 side

 

「………うまい」

「そうだろう? ここのは他の鎮守府よりもうまいんだぞ」

「えぇ、鳳翔さん達には感謝しないと」

 

 一通り、鎮守府内を案内された後に食堂で夕食を摂っているのだが普通にうまくて食べた感想がそれしか言えなかった。

 食事番組など、食べる際にコメンテーターが色々と感想を述べているの普通だと思うんだが、個人的には食べ物の純粋な感想だけが欲しくて余計なセリフや演技、効果音などはいらないと感じてしまう。

 そう。モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……、と言うゴローちゃんのセリフみたいな気分になる。

 

 そして今、食べているのは地鶏定食(刺身付き)と言う物なのだがこれが中々の物で、焼いた鶏肉の食感と衣がマッチしている上、ワサビと醤油も絶妙にマッチして刺身の旨味を引き立たせている。

 前世において、しがない社会人として会社に勤めていた際は社員食堂なんてない支社だったからコンビニ弁当か、近くのチェーン店に行っていた。

 今でも、コンビニ弁当やチェーン店の飯も悪くはないと思っているがここの食事の方が圧倒的に上だなと思うぐらいにおいしかった。

 

「はぁ〜………結局、一言も喋らずに食べ切ってしまって申し訳ない」

「いや、大丈夫だ。それに、あんなに旨そうに食べる姿を見せられたら邪魔する方が無粋って物だろう?」

「そうね。貴方が来た事で他の子達が落ち着いていないもの。隅に座ってくれて助かったわ」

「あぁ」

 

 男が少ない事は、前にも話したが30人に1人しか男がいないとなれば軍隊という危険な仕事となれば、女所帯になるのが当たり前なので事前の連絡がなければ落ち着いていられないのも当然だな。

 例えるなら、男子校に女アイドルがいきなり現れて食堂で飯を食べている状況だな、と思いながら武蔵達と雑談していると遅れながら杉原提督が大和と共に食堂に来た。

 

「いや〜、交渉が大変だったけど何とかなりそうよ。高天原」

「はぁ、何がです?」

「ほら。話し合いの時に戦えるなら戦いたいって言ってたじゃない。だから私の(ツテ)である人に頼み込んだら何とかなりそうなのよ」

「そうですか。なら良かったです」

 

 どうやら、彼女と話し合いをしている時に戦闘艦として戦うのが本望と言った感じの事をポロッと言ったら、それを真剣に受け止めてくれた様だ。

 その結果、その場にいた大和以外の武蔵達を含めた艦娘が驚きの声を上げた為、杉原提督から事情を説明してもらう事にした。

 

「彼の名前は高天原って言って、超大型の航空戦艦よ。正式な配属は明日以降になるけど、一緒に戦う事になるのは確定事項になるから他のみんなにも周知しておいてね?」

『は〜い』

 

 その言葉に、艦娘達が返事をしたのだが余計にソワソワし始めたので自己紹介をしてから質疑応答に移るとしますかね。

 

「あー、杉原提督に紹介された高天原だ。正式名称は高天原級航空戦艦で、基準排水量は55万トン超の巨艦さ。性別は男………なんだが、質問は?」

 

 その言葉に、その場にいた大半の艦娘達から質問を受ける事になった。



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第4話 武器弾薬の生産

「くはぁ………ねっむ………」

「昨日は夜遅くまで遊びに参加させられたしね」

「女世帯だからって想定以上だったぜ」

 

 朝、盛大な欠伸と独り言反応して杉原提督から俺の護衛役に指名された駆逐艦の時雨(改二ver)がそう言ってきた。

 実際、昨夜の食堂で発生した質疑応答は2時間ぐらいで終わったから良かったもののシャワー室で汗を流したり、用を足したりして寝るかと言った時に充てがわれた客室でも問題が発生した。

 それは、部屋の前でも艦娘達が待ち構えていて遊びたがっていた為、付き合った結果として午前0時を過ぎるまで遊んでしまった。

 

 その結果、杉原提督に怒られたのでお開きとなって寝たのが午前1時前で、自然と目を覚ましたのが朝の7時前。

 もっと寝たかったのに、と思いながら身支度を整えて部屋を出ると丁度良く、時雨と遭遇して今に至るという訳だ。

 

「さて、朝飯を済ませたらどうするか聞いてる?」

「一先ず、提督に聞けばいいんじゃないかな? ある程度の予定は組んでるはずだよ」

「それもそうか」

 

 艦娘、と一言で言っても戦闘だけで日常生活が成り立っている訳ではなく、座学から練度上げ(レベリング)、挙句は兵器の開発から生産まで多岐に渡る。

 特に、大規模な戦闘で熟練の艦娘がかなり減った以上は最低でも減った分の数を補充しないと、同じような戦いが起きたら防ぎ切れないのは確実だ。

 そのため、今の日本は国を挙げて艦娘の建造と練度上げを行なっているので、俺もその一員として働く事になると推測する。

 

(転生しても組織に属して実働部隊で働く。いくら、チート能力が付与されても根っこが変わらんと転生先での仕事に大した差はないか)

 

 そんな事を思いつつ、食堂に向かうと艦娘達から挨拶されたので挨拶しながら食事を摂り、朝食後は適当に時間を潰してから執務室に向かうと杉原提督は待っていたかの様に話し始めた。

 

「今日は一先ず、開発工廠に行って装備に必要な兵器の開発を行なって頂戴。いくら優秀な戦闘艦でも武器弾薬がないと戦えないでしょ?」

「至極真っ当な指令だな。了解した」

「あぁ、それと………」

「ん?」

「燃料なんかの各種消費材の最大消費量を教えて頂戴。その数値によって出撃する際のコースを変える必要があるから」

「了解した。正確な数値をあとで出すよ」

 

 彼女の言葉に、そう答えたのだが現代の戦闘艦や戦闘機のスペックは搭載されている電子機器に大きく依存している事から、燃料の搭載量に関する機密性は皆無と言っても過言じゃない。

 どんなに高性能でも、動力源となる燃料がなければ少しも動かないのは確かなので最大搭載量よりも、一回の任務でどのぐらいの燃料を消費するのかが重要視されている。

 その量によって航海のルートが決まるし、戦闘艦などに搭載する弾薬だって生産できる設備と適切な補給がなければ、単なる豪華な乗り物になる。

 

 素人は「戦略」を語り、プロは「兵站」を語ると言う言葉があるが兵站、つまりは適切な補給を怠った為に失敗した戦闘や戦争と言うのは数え切れない程にある。

 しかし、適切な補給は事前に用意できる物なので杉原提督は俺が扱う艤装の弾薬や燃料の正確な数値を把握して、消費した分を補給できる体制を整えようとしているのだ。

 その事から、書類が作成できる場所を聞いてから工廠へと向かった。

 

 

 

 〜〜 工廠 〜〜

 

「………作れはしますが、かなりの量を消費する事になりますね」

「まー、仕様は伝えますので作ってみてください」

「わかりました。やってみます」

 

 工廠にて、武器弾薬の生産について説明をすると工作艦の明石が眉間に皺を作りながら見積もりを提示してくれた為、そう返すと彼女は工廠にいる妖精さん達に指示を出して作業に取り掛かってくれた。

 今回、工廠で生産するのはミサイルや精密誘導爆弾などの電子機器を搭載した兵器がメインとなる。

 ミサイルや精密誘導爆弾などは、電子機器を搭載するのが前提なので搭載しなかったら命中率がガタ落ちする一方、搭載したら同規模の物と比べてコストや値段が跳ね上がるのがネックだ。

 

 その結果、明石はあまり乗り気ではなかったのだが提督からのお墨付きという事で引き受けてくれて、開発を行なったら普通に生産できたので各種資源に余裕があれば問題ないだろう。

 後は、艤装に搭載されている様々な電子機器の生産が進んでいけば戦力として万全だな、と思いながら明石とこれから生産されるであろう装備などを話し合っていった。

 

 

 

 〜〜 執務室 〜〜

 

   以上が各種消費資材となります」

「………そう。思ってた程、消費しなくて済んで助かったわ」

「はぁ。それでも、既存の艦娘よりも遥かに戦闘効率が悪いですが?」

「それでもよ。政府としてはいい加減、現状の膠着した戦況を打破したいと考えているし、私もその考えに賛成だわ」

 

 明石と話し合い、昼食を挟みながら消費する資材に関する書類を作成してから報告に上がると、杉原提督はそう言いながら近づいてきた。

 

「確かに、艦娘は深海棲艦に対して有効な手段であるのと同時に国家の存続に貢献してくれた存在だけど、決定的な差が欲しかったのよ。貴方の様にね」

「つまり、なんです? 勝つ為なら手段を選ぶな、と言う格言をモットーにしていると?」

「物分かりがよくて助かるわ。私は貴方を使って深海棲艦に勝ちたいし、貴方は私達を利用して生活の保証と戦闘への積極的な参加。ある意味、対等な取引だと思うけど?」

 

 身も蓋もない事を言うと、互いに利用し合っているという事と明確に述べている訳で、それを不快に思うかは別にして現在の関係は互いの利益がマッチしていると思っている。

 

「その認識で合っていますし、現在は人間側に立っているので提督の期待に応えられる様に努力しますよ。ただし   

「?」

「ちょいと近すぎます。離れてくれませんかねぇ、杉原提督?」

「あら残念。折角だからハニートラップに掛かってくれると思ったのだけど」

 

 その為、自分の意思を伝えたのと同時にかなり密着されたので指摘を入れると、悪戯をした時の笑みを浮かべながら離れてくれた。

 

「生憎、身持ちは硬い方ですのて」

「そう。一先ず、今日はここまでにしますが明日は出撃してもらいます。明朝9時に出撃場所に集合しなさい。艦隊を組んであるわ」

了解(アイサー)

 

 その言葉と共に、堅苦しい雰囲気は霧散したので用がなくなった俺はその場を立ち去る事にした。

 報告する事がなくなったし、秘書艦でもないのに居座る度胸や勇気はないから居続けるつもりはなかったしねぇ。

 そう感じた一方、時雨は夕立達と遊びに行ったのでこの後の予定はどうするのかと言う事に頭を使うのだった。



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第5話 技術革新による取捨選択は軍艦も同じ

 杉原提督に報告した後、鎮守府内を適当に散策してその場で会った艦娘達と話をしたのだが、この世界はあべこべだという事を改めて実感した。

 俺の姿を見かけるだけで小声で話し、ウィンクなんかをすればぎこちなくなり、話しかければ頬を染め、近すぎるとオーバーヒートした挙句に固まって何も喋れなくなる。

 あべこべ世界に行って、ちやほやされたいと思ったりもしたのだが男子校の生徒みたいに、異性に耐性がないとここまで面倒になるとは転生時には思っていなかった。

 

 その為、昨日の質問責め時の勢いはなんだったんだろうなぁと思いながらも工廠に向かい、艤装のメンテナンスを行なっていると背後で足音がして声を掛けられた。

 

「高天原か、丁度良かった」

「………どうしました?」

「なぁに、明日の作戦についてだ」

「あぁ」

 

 その声で、振り返ると改二である長門がいて用紙を持っていたので受け取ってから、書かれている内容を読んで確認していく。

 

「………敵基地の偵察と可能な限りの殲滅?」

「あぁ。しかも、艦載機の攻撃は最低限として砲雷撃によるを戦闘をメインにしてくれとの事だ」

「また、随分と難儀な任務をくれたもんだ。まぁ、上位下達の軍隊だから命令があればやるしかねぇんだが」

 

 敵基地の偵察と殲滅、と言う素人目からすれば簡単な様に見えるが実際には難しく、偵察はともかくとして殲滅となれば程度にもよるが激しい戦闘になるのは間違いない。

 

「男なのに苦労をかけるな」

「別に構わんよ。今の実力を確かめるにはもってこいの任務だから」

 

 そういった背景から、長門は済まなそうにしていたが俺としては全力で戦えると思っているから気にしていない。

 その為、長門と軽い雑談をして彼女の気を紛らわせてからお開きとなり、改めて俺の艤装について確認していった。

 俺の艤装、もとい戦闘艦は構想のみで終わった50万トン戦艦を下地に当時の技術に合わせた改造が行われている。

 

 まず、武装面は51センチ砲や速射砲、ガトリング砲による近接防空火器や多数のミサイルを搭載し、装甲も特殊合金によって並大抵の攻撃に対して高い強靭性を有している。

 航空戦艦として、航空機による偵察や奇襲攻撃も可能なのだが高性能なレーダーと戦闘システムによって、ほぼ全ての兵装が自動化されている点だ。

 第二次世界大戦には、装填装置の自動化が始まっていたがレーダーとの連動ができる兵装はそこまでなかった。

 

 しかし、この戦闘艦の兵装は砲弾の装填から正確な照準まで人の手を借りずに自動で行い、後はトリガーを引けば勝手に砲撃できる様に構築してある。

 その為、船体の規模の割には航空要員も含めても800人にも満たない人員で戦闘に突入しても、全力で戦える程に省人化されている。

 また、人が少なくなった事で艦橋にも変化があって3つの艦橋から前後2つの艦橋にして効率化し、八角垂の形に整えてレーダー反射断面積を減らしつつ、その頂上部にはレーダードームの様な球体のレーダーが設置された。

 

 その上、基本的にはCIC(戦闘指揮所)においてレーダーなどの各種センサーで集めた情報をイージスシステムに類似した戦闘システムで、処理して画面に表示するので戦闘になれば艦長や艦隊司令官などの偉い人達がCICに入る。

 一方、戦闘になれば前後の艦橋は無人になるかと言うとそうならず、航行などを担当する航海科の要員が詰めて周囲の状況に合わせて船の進路を決める事になる。

 いわば、21世紀に入って急速に発達した機械とシステムをフル活用して効率化を目指した結果、1,000人にも満たない人数でフルスペックの戦闘が行える様になったのだ。

 

 そんな戦闘艦の艦息として、初の任務で試されているのなら光栄な事として2つの返事で了承したのだから後は戦地に向かうだけだ。

 その為、一通りのメンテナンスで異常がない事を確認できた頃にはそれなりの時間が経っていたので、夕飯などを食べてダラダラとするかと考えて工廠を出た。

 

 

 

 〜〜 翌日 出撃用の港 〜〜

 

「全員、集まったわね? 作戦概要を伝えるわ」

 

 その言葉と共に、杉原提督は作戦の概要を俺を含めた出撃するメンバーに伝えていくが聞けば聞くほど、無茶な作戦としか言い様のない作戦だ。

 何しろ、出撃先が深海棲艦の根拠地となっているミッドウェー諸島であり、その数は偵察衛星からの情報によると4桁を超える深海棲艦がいるのだから無謀にも程がある。

 そして、出撃に参加するメンバーもそう思っていた様で一通りの内容を伝えた提督は最後にこう言った。

 

「まぁ、偵察と殲滅と言ったけどあくまで威力偵察と言う面が強いわ。だから、無理だと思ったら撤退して頂戴。貴方達まで失ったら私の責任問題に発展するからね。特に高天原の場合は」

「あぁ、良かった。たった2個艦隊、12人で大量の深海棲艦と戦って討ち死にする羽目になったのかと思ってたぜ」

 

 その事に反応して、参加メンバーの艦娘達はクスリと笑って緊張がほぐれた様なので出撃する事になった。

 因みに、今回の出撃で参加するメンバーは次の12人になる。

 

 前衛艦隊:高天原、金剛改二丙、大井改二、北上改二、朝潮改二丁、浦波丁改

 空母艦隊:赤城改二()、加賀改二護、摩耶改二、秋月改、涼月改、照月改

 

 この12人で、威力偵察を行なうので出撃前に顔合わせをしていると加賀が話しかけてきた。

 

「また、貴方と行動をともにするとはね」

「偶然は重なる物だな。いざとなったら頼む」

「必要になるとは思えないけど?」

「必要になったらの話さ」

「わかったわ」

 

 とまぁ、会話の量はそこまで多くないが一定の信頼をされているので期待に応えたいな、と思いながら出撃していた。



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