暗殺教室へようこそ (あやよ)
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プロフィール
プロフィールの時間 1時間目


プロフィールを書いていないと思ったので書きました。
(定期的に追加する予定です)


3年E組の個別プロフィール 5月以降(修学旅行以降の話)

 

綾小路清隆(あやのこうじ きよたか)

 

3年E組所属

 

出席番号 2

 

誕生日 10月20日

 

身長 172cm

 

体重 58kg

 

血液型 AB型

 

得意科目 特になし

 

苦手科目 特になし 

 

趣味 読書

 

中間テスト

国語55点、数学57点、理科60点、社会53点、英語55点

学年順位 110/187

 

座席位置 赤羽業の左、奥田愛美の後ろ

 

個別能力(1~5までの評価、5が最も高い)

体力  3.5

 

機動力 3

 

近接暗殺 2.5

 

遠距離暗殺 2.5

 

学力 3.5

 

固有スキル 無表情

 

作戦行動適正チャート(1~5までの評価、5が最も高い)

 

戦略立案 3

 

指揮、統率 2

 

実行力 2.5

 

技術力 3

 

調査、諜報 2

 

政治、交渉 2.5

 

 

 

殺せんせーの評価

 

勉強もスポーツも入学時に比べ伸びています。

クラスに馴染めていなかったが心配でしたが修学旅行以来その問題は解消されました。

 

 

烏間先生の評価

 

暗殺の能力は平均的、だが4月の時より格段に向上している。

これからの成長に期待する。

 

 

ビッチ先生の評価

 

コミュニケーション能力があまりないから常に一人でいるイメージ。なんというか影が薄いのよね、顔はいいのにもったいないわ。

 

 

3ーE生徒から見る綾小路の印象

 

赤羽 どんなイタズラしようかな

 

磯貝 もっとクラスのやつと仲良くさせたいな

 

岡島 絶対ムッツリだ!

 

岡野 よく分からないやつって感じ

 

奥田 最初にできた友達です

 

片岡 いつも孤立してるイメージがあるよね

 

茅野 顔だけはイケている

 

神崎 仲良くなりたいな

 

木村 あいつは俺の本名を知らない

 

倉橋 いつも眠そうだよね

 

潮田 どこか・・・不気味な部分を感じる

 

菅谷 なんつーか覇気が感じられないよな

 

杉野 意外と冷静なんだよな

 

竹林 メイド喫茶に誘ってみたい

 

千葉 ほぼ無口だよな

 

寺坂 存在感がねえ

 

中村 意外と面白い人だよね

 

狭間 the陰キャってイメージ

 

速水 感情が表に出てないから不気味

 

原  目立つのが嫌いなタイプだね

 

不破 漫画を読ませたい

 

前原 パッとしないやつだな

 

三村 イケメンだけど地味

 

村松 基本的にボーッとしてるよな

 

矢田 友達になりたいな。

 

吉田 よくわかんねーやつだな

 

 

 

綾小路から見る3ーE生徒の印象

 

赤羽 頭が良いし運動神経抜群、将来大物になるな

 

磯貝 クラスをまとめられるしいいやつだ

 

岡島 これが思春期というやつか

 

岡野 元気ですごいな

 

奥田 優しい、そして一緒にいると落ち着く

 

片岡 しっかり者でかっこいい

 

茅野 誰とでも仲良くなれるのがすごい

 

神崎 ゲームが上手い、教えてもらおうかな

 

木村 名前は『まさよし』だよな?

 

倉橋 フワフワしてて掴み所がないよな

 

潮田 油断できないやつ

 

菅谷 よく絵を描いてるけど上手いよな

 

杉野 玉を投げる所見た事あるけどまさに野球少年だよな

 

竹林 生粋のガリ勉タイプ

 

千葉 オレと同じく無口なタイプ

 

寺坂 まさしくガキ大将だな

 

中村 見た目も中身もギャルだな

 

狭間 オレが読んだことない本を読んでる・・・面白いのだろうか?

 

速水 感情をあまり表に出さない。千葉と相性良さそう

 

原  E組の母だな

 

不破 ・・・なんか漫画勧めてくるな、読んでみたいけど

 

前原 これが陽キャというやつか

 

三村 オレが言うのもなんだが、地味だな

 

村松 寺坂グループの一人だな。

 

矢田 ビッチ先生とよく話すよな

 

吉田 凄い髪型だな。

 

 

 

 

 



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一学期
1:暗殺の時間


初投稿です。誤字などがあったら教えて下さい。



突然だがオレたちは今銃を持っている。目の前のターゲット(先生)を殺すために。

 

「起立」

 

潮田が号令をかける

「気をつけ」

 

クラス全員が銃を構える。

「れーーーーい」

 

その瞬間銃が発砲されターゲットを狙い打つ。

 

「発砲したままでいいので出欠を取ります」

 

ターゲットはオレたちが打っている弾を難なく避けながら出欠を取り始めた。

 

「綾小路君」

最初にオレの名前が呼ばれた

 

「はい」

 

「磯貝君」

 

「はい」

 ....

 

出欠を取り終えた時にはクラス全員が疲れて銃を打つのを止めていた。

 

「遅刻なしと、先生はとても嬉しいです。しかし一発も当てることができませんでしたね」

 

ターゲットはオレたちが打った弾をすべてよけたのだ。

 

「目線、指の動きなどが単純すぎます。数に頼りすぎているからです」

 

出欠を取りながら銃弾をよける中でもオレたちの動きをよく見ているようだ。

 

「もっと工夫してください、それではマッハ20の先生は殺せませんよ」

 

そう、オレたちはマッハ20の先生を殺さなければならないのだ。

 

なぜオレたちがこんな状況になったのか、それは3年生の初め月が7割破壊され、その犯人がターゲットであった。

 

しかもターゲットは来年に地球も破壊すると宣言していた。

 

それを阻止するために殺せということだった。

 

理由はわからないがターゲットは一年間オレたちが通っている椚が丘中学校の3年E組の担任をやると言っていた。

政府の契約で生徒の危害を加えないという条件らしい。

 

つまりオレたちは至近距離からターゲットを殺すチャンスがあるということだ。

 

しかも成功報酬は100億円、生徒たちのモチベーションもしっかり考えられている。

 

 

オレたちは人間には無害で怪物には効く弾とナイフを支給され、3年E組の暗殺教室が始まった。

 

 

昼休みのチャイムがなった。

 

昼休みに怪物はマッハ20で中国に行って麻婆豆腐を食べにいった。

 

昼休みの時間中に寺坂が潮田に声をかける。

 

「おい渚ちょっと来いよ、暗殺の計画進めようぜ」

 

「 ・・・うん」

寺坂、吉田、松村が自信のなさげに返事した潮田を外に連れて行った

オレも気になり後を付けた。

 

後を付けた先に寺坂たちと潮田が計画について話していた。

 

「あのタコは機嫌によって顔の色が変わる。油断している時はそのときを狙え」

 

「でも僕が?」 

 

「いい子ぶってんじゃねーよ俺たちはE組だぜ?この学校の勉強についていけなくなった落ちこぼれだ」

 

そう、オレたちのクラスE組は勉強についていけなくなり毎日山の上の隔離校舎まで通わされ、本校の人たちにあらゆる面で差別される落ちこぼれだ。

 

「俺たち落ちこぼれが100億稼ぐチャンスなんて一生くることはないぜ」

 

そう言って寺坂は潮田に何かを手渡し教室に戻ろうとすると寺坂はオレの存在に気づいた。

 

「って綾小路お前いたのかよ、邪魔すんじゃねーぞ」

 

そう言って寺坂たちは教室に戻った。

 

・・・どうやらオレは影が薄いようだ。

 

そして潮田とオレが残っていたら空からミサイルをもった先生が帰ってきた。

 

「おかえり先生、そのミサイルどうしたの?」

 

「お土産です。日本海で自衛隊に待ち伏せされて」

 

「大変ですね、、、皆から狙われるのは」

 

「いえいえ皆から狙われるのは力を持つ者の証ですから」

 

「!」 

 

「さ、5時間目の授業を始めますよ」

 

そう言って先生は先に教室に向かった。

 

「・・・はい」

 

さっきの先生との会話で潮田は顔を俯かせ表情がとても暗かった。自分が力を持っていないことに対する劣等感、だろうか。 

 

やがて潮田の殺気が大きくなっていく。どうやら本気で暗殺するつもりだ。

 

教室に戻ろうとする潮田にオレは声をかける

 

「潮田、お前暗殺するつもりみたいだな」

 

「綾小路君・・・うん」

 

「いけると思うのか?」

 

「・・・うん。どうせ先生は僕のことなんて見えていないよ。期待も警戒も認識もされない人間なんて。だから見返さないといけない」

 

「・・・そうか、上手くいくといいな」

 

「うん」

 

「綾小路君も教室に戻ろうよ」

 

「ああ、そうだな」

 

オレたちは教室へ向かう中、オレは潮田の暗殺について考える。どこか危うさのある潮田、それにあの殺気、どんな手段でも使う。

そう考えてそうだ。

 

なるほどな・・・オレは潮田の暗殺の手段がわかった。

しかしあの怪物の情報は未知だ。成功するとは思えなかった。

だが確かにその暗殺なら得られる情報があるだろう。オレは潮田の暗殺を観察することを決める。

 

教室に戻り5時目の授業が始まる。内容は短歌を作ることだ。

 

「出来た人は先生のところへ持ってきなさい。先生がチェックをし不備がなければ帰ってよし」

 

しばらくして潮田が席を立った。

 

「もう出来ましたか渚君」

 

 

 

短冊を持って立ち上がった潮田に先生が感心したような声を掛け、クラスの皆も潮田に視線を向けている。

 

ただ、皆が視線を向けているのは潮田ではなく潮田の手元、短冊と重ねるようにして隠し持っている対先生特殊ナイフだ。

 

教壇まで自然に距離を詰めていった潮田は、ナイフの間合いに入ると同時に構えたナイフを大きく振りかぶりる

 

 

振り下ろされたナイフはあっけなく、先生によって止められる。

 

 

「渚君、もっと工夫をしま」

 

 

 

先生が助言をしているのを無視して潮田は先生を抱き付いた。

 

「しまっ」

 

潮田が先を抱きついたのを確認した寺坂は手もとにあったスイッチを押した。

 

 

 

次の瞬間、潮田と先生の間で爆発が起こった。

 

 

 

 

 

「ッしゃあ‼︎ やったぜ、百億いただきィ‼︎」

 

寺坂がはしゃいでいる中、茅野が寺坂に詰め寄っていた。

 

「ちょっと寺坂、渚に何持たせたのよ!」

 

 

「あ?オモチャの手榴弾だよ。ただし火薬を使って対先生弾がすげえ速さで飛び散るように」

 

「なっ」

 

茅野が絶句する。

 

「人間が死ぬ威力じゃねーよ。俺の100億で治療費くらい払ってやらァ」

 

ところが潮田は火傷どころか傷一つついていなかった。

潮田に膜が覆っていた。

 

「実は先生は月に一度脱皮します。それに爆弾にかぶせて威力を殺しました。つまり月一回使える奥の手ですね」

 

天井から先生の声が聞こえオレたちは上を向く。そこにはキレて顔色が真っ黒になった先生が張り付いていた。

 

「寺坂、吉田、松村。首謀者は君らだな」

 

「えっ!?い、いや‥‥渚が勝手に‥‥」

 

先生の問い掛けに寺坂が誤魔化そうとした瞬間、どこかへ行ったと思ったら表札を大量に抱えて先生が入ってきた。大量に抱えていた表札をその場にぶち撒けた。

そこには寺坂と吉田と松村‥‥どうやらE組の表札のようだ。

 

 

「政府との契約ですから君たちに危害を加えませんが、次また今の方法で暗殺に来たら、君たち以外の生徒には何をするかわかりませんよ?」

 

変わらず真っ黒な顔色のまま凶悪な笑みを浮かべて脅してくる先生。

 

「な、なんなんだよテメエ‥‥迷惑なんだよォ!!迷惑なやつに迷惑な殺し方して何が悪いんだよォ!!」

 

寺坂が泣きそうな顔をしながら先生に怒鳴った。すると先生は顔に赤丸マークが浮き出てきた。

 

「迷惑?とんでもない。君たちのアイディア自体はすごく良かった。特に渚君、君の肉迫までの自然な体運びは100点です!先生は見事に隙を突かれました」

 

 

しかし次の瞬間先生の顔にバツマークが浮かび出てきた。

 

「ただし!寺坂君達は渚君を、渚君は自分を大切にしなかった。そんな生徒に暗殺する資格はありません!」

 

そう言うといつもの黄色い顔色に戻る。

 

「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。君たち全員それが出来る力を秘めた有能な暗殺者だ。ターゲットからのアドバイスです。」

 

「さて問題です。渚君。先生は殺されるつもりは微塵もない。皆さんと来年の3月までエンジョイしてから地球を爆破です。それが嫌なら君たちはどうしますか?」

 

先生から出された問題。答えは一つしかない。

それを先ほどまでとは違い、明るくなった表情で潮田が代表して答える。

 

「地球を爆破される前に殺します」

 

どうやら潮田は一歩成長したようだ。

 

潮田がそう答えると先生は顔に緑のシマシマ模様(舐めている表情)を出して

 

「ヌルフフフ、なら今やってみなさい。殺せた者から帰ってよし。」

 

‥‥ん?どうやらオレたちは帰れないらしい。

 

 

「殺せない先生‥‥名前"殺せんせー"ってのはどうかな?」

 

茅野がこの怪物を殺せんせーと名付けた。

 

正直安直すぎるとは思うが呼びやすいしいい名前かもしれない。

 

「いいねー」

 

「そうしようか」

 

他の生徒たちも賛成していたし、殺せんせーで決まりだろう。

 

自分の席に座っままオレは先ほどの殺せんせーのダメ出しについて考える。

 

   (寺坂君は渚君を大切にしなかった)

 

    つまり他人を大切しろということ。

 

あの場所でオレが学んできたのとは正反対だ。自分以外のものは道具でしかない。どんな犠牲を払おうと自分が勝ってさえいればそれでいい。そう教わってきた。

 

だから今回の潮田、寺坂たちの暗殺でオレは止めることをせずただ観察していた。勝つ、つまり生き残るために。実際に殺せんせーの情報を多く手に入れることができた。

 

オレは殺せんせーの言っていることがわからなかった。

 

いや‥‥この時点でオレはこの3年E組の中で不良品なのだろう。

 

オレは来年の3月までに成長することが出来るのだろうか。そう静かに願った。

 

 

 

 

 




第1話が終わりました。初投稿です。
勢いで書いているので後ほど矛盾が生じるかもしれません。
よろしくお願いします。


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2:友の時間

少しだけオリジナル展開?


休み時間クラスはいくつかのグループによって分かれていた。暗殺について話す人たち、雑談する人たち、殺せんせーと遊ぶ人たち。

 

しかしオレはどれにも属さなかった。オレは一人で本を読んでいるボッチだった。

 

なぜボッチになったかについて自己紹介する時を思い出す。

 

「今日から転校する綾小路清隆だ。それじゃあ綾小路、自己紹介を」

 

「えーオレの名前は綾小路清隆です。よろしくお願いします。えーっと得意なことが特にありませんが、えー仲良くなれるように頑張ります。」

 

・・・・・

 

今時が止まったように全員が静まった。自己紹介失敗したー。

 

「綾小路君よろしくね」

 

と磯貝がまとめてパチパチとみんなが小さく拍手してくれた。それが余計に心にきく。

 

転校した日にちなので周りの人たちがいろいろ話しかけてくれたがどれも上手く返すことができなかった。

 

次第に話しかけてくれる人が少なくなってしまいこうして今現在に至る。

 

そんなことを考えてたら奥田がオレに話しかけてきた。

珍しいこともあるんだな・・・。

「あ、あの綾小路君少しいいかな?」

 

「どうしたんだ?」

 

「一緒に暗殺の計画しませんか?」

 

「いいけどどうしてオレなんだ?」

 

「私も皆さんと暗殺の計画を誘ったのですが、断られまして」

 

奥田がみんなから嫌われてるとは思えない。なら理由はなぜだろうか。

 

「どんな暗殺をするんだ?」

 

「私が毒薬を作り先生に渡し飲ませるという作戦です。」

 

奥田は理科科目が得意だったか。おもしろそうな計画だが、かなり危ないな。そりゃみんな断るわけだ。

 

「やはり無理ですか。こうなれば私一人で殺りましょうか」

 

オレが断れば奥田は一人でやりかねない。それに安全が保証されずとても危険だ。

 

「オレなんかで良ければ」

 

まあ、オレが監視すればいいだろう。

 

「ありがとうございます。」

 

こうしてオレたちは放課後に残って暗殺の準備をすることを約束した。

 

 

 

放課後オレたちはE組の実験室で毒作りをした。とはいってもオレはほとんどサポートしてるだけだが。

 

「奥田はよくここを使うのか?」

 

「はい。気になったことがあれば実験をしています。」

 

「・・・すごいな。道理で理科の授業で毎回殺せんせーの問に全部正解してるもんな」

 

「理科は勉強してて、とても楽しいです。」

 

 

「何かを楽しめるというのはうらやましいな。」

 

「綾小路は何もないのですか?」

 

「まあオレは特に趣味はないけど何にでも興味はあるって感じかな」

 

「ならこれから探せばいいんですよ」

 

 

 

 

と会話をしながら作業を続け、ついに毒を完成させる。

 

 

 

肝心なのはここからであり、どうやって飲ませるかだ。

 

「どうやって殺せんせーに飲ませるんだ?」

 

「真正面からです。『毒薬作りました。飲んでください。化学なら得意なので真心こめて作りました』って」

 

予想の斜め上の回答にオレは少しコケた。

 

「真正面から渡すとしても『ジュース作ったので飲んでください』みたいに誤魔化さないのか?」

 

そう言うと奥田は顔を俯けた。

 

「私はみんなみたいに不意打ちなどは得意でなくて・・・」

 

「理科はできてもそれ以外が駄目なのです。E組に落とされても仕方ないです。特に国語が全くできません。言葉の良し悪しとか人間の複雑な感情表情とか、何が正解なのかわからなくて」

 

「・・・」

 

「でもそれでいいんです。数学や化学式は絶対です。私には気の利いた言葉遊びも細かい心情を考える作業も必要ないのです。」

 

オレは奥田の話を聞いていた。苦手分野のことはきっぱりと諦めている。

 

「まあ人には向き不向きあるからな。」

 

オレにも苦手なことはある、それは仕方ない。

 

 

「もし苦手を克服できるなら、克服したいか?」

 

「まあできるならそうしたいですけど。私には才能がないですよ。」

 

「だがある程度なら克服できるはずだ。」

 

「そうなんですか?」

 

 

「ああ、とりあえず暗殺はまた別の日にするとして明日渡したいものがある。」

 

「何をですか?」

 

「まあ明日のお楽しみだ」

 

「わかりました。じゃあ今日はもう片付けましょう。」

 

「そうだな」

 

きちんと毒を安全に保管して片付けを終える。

 

「綾小路君今日はありがとうございました。」

 

「また手伝ってほしければいつでも呼んでくれ」

 

そう言ってオレと奥田は別れることにした。

 

 

 

 

次の日の放課後

 

 

 

オレと奥田は教室に残り渡したいものを渡す。

 

「小説ですか?」

 

「そうだ。といっても推理小説だ。トリックとか理科の内容で読みやすいと思うぞ」

 

「えー!?小説にもそういうのがあるのですか。あまり小説とか読まなかったのですが興味が湧いてきました。」

 

奥田が驚いた顔でそう言った。たしかに

 

「でも今日渡すということは家から持ってきたのですか?」

 

「いや、本校から持ってきた。」

 

「私のためにそんな・・・」

 

「まあオレも本を借りたかったし、ついでだ」

 

 

「綾小路君は本をよく読むのですか?」

 

「まあ暇がある時は。オレは友達がいないからな。」

 

「なら私と友達になってくれませんか?」

 

オレは驚いた表情をする。

 

「オレなんかがいいのか?」

 

「はい。私も友達全然いません。みんなとは軽く話すくらいでそこまで仲がいいわけではありません。それに綾小路といるとなんだか落ち着くのです。」

 

オレといると落ち着く・・・オレはそういう存在なのだろうか。なんだか実感がない。

 

「そうなのか。これからよろしくな。」

 

「はい。こちらこそです。」

 

初めて友達ができ、オレは心の中でガッツポーズをする。

 

「この本家に帰って読みます。」

 

「まあ無理はしないようにな」

 

 

 

次の日

 

 

「綾小路君これありがとうありがとうございました。」

 

奥田が昨日貸した本を出した。

 

「とても面白かったです。とくに化学変化を利用した事件がとても」

 

どうやらオレが貸した本は奥田にとって評判が良かった。

 

「それに暗殺者である私も感情や言葉、つまり国語を勉強しないといけないと思うようになりました。」

 

オレが貸したのは化学変化を利用した殺人事件の小説でありどういう理由で事件を起こしたかなど書かれている。奥田にとって読みやすいはずだ。

 

「肝心な勉強方法がわからないのですが」

 

「そんなに難しいことじゃない。いろいろな本を読めばいいだけだからな。最初の内は読みたいのを読めばいい。」

 

そう言うと奥田は納得したようだった。

 

何かを思った奥田はオレに疑問を抱く。

 

「そういえば綾小路君は本校に一人で本を借りに行ったのですか?」

 

「ああ、そうだが?」

 

 

「ええ!?そうなんですか?私の場合一人だと怖くて行けませよ」

 

「何でだ?」

 

「そりゃ本校の生徒たちがバカにするからです」

 

そんなこと考えたことなかった。たかが本を借りにいくだけでバカにされなければならないのか。

 

「本校の生徒に何かされませんでしたか?」

 

 

「特にされてないな。E組と思われなかったのかな?」

 

 

「たまたま運が良かっただけですよ。これからは私も共にします。一人よりは心強いはずです。それに私も本を読むので」

 

確かに一人でバカにされるのはきついな。

 

「ありがとう」

 

オレはありがたくその提案を受けることにした。

 

 

「おーい棒とヒモ持ってきたぞー」

 

オレと奥田が話してる中外から岡島の大きな声が聞こえてきた。窓の外を見ると殺せんせーが縄で縛られ木の枝にぶら下がってそれを生徒たちが暗殺(もはや暗殺と呼べるのか?)をしていた。

 

「どうゆう状況だ?」

 

オレと奥田は気になり外に出て暗殺のサポートをしている茅野に聞いた。

 

「どうやったんだ?」

 

「あれ、綾小路君に奥田さん。殺せんせーがクラスの花壇荒らしちゃって、そのおわびとしてハンディキャップ暗殺大会を開催してるんだ」

 

「ほらーおわびのサービスですよ。こんな身動きできない先生は滅多にありませんよ。」

 

しかしそんな状況にもかかわらず殺せんせーはみんなの攻撃を難なく避け続ける。

 

「どう渚?」

 

茅野が近くにいた潮田に聞く。

 

「うん完全になめられてる。でも殺せんせーの弱点からすると」

 

潮田が殺せんせーの弱点が書かれているメモ帳を取り出す。

 

「ヌルフフフ無駄ですねえE組の諸君。このハンデを物としないスピードの差、君たちが私を殺すなど夢のまた・・・あっ」

 

次の瞬間殺せんせーを支えていた木の枝が折れ地面に落ちる。

 

《・・・今だ殺れーっ》

 

「にゅやーッしまった!!」

 

殺せんせーって予想外のことが起こるとすぐテンパるなー

 

「弱点メモ役に立つかも」

 

「・・・うん。どんどん書いてこう」

 

茅野の反応を見るとどうやら潮田は今まで書いていた弱点が当たっているようだ。

 

殺せんせーはあわてて校舎の屋根の上に逃げた。

 

「ちくしょう逃げられた」

 

「ここまでは来れないでしょう。バーカバーカ」

 

「あと少しだったのに」

 

屋根の上で息を整えながら殺せんせーはとんでもないことを言い出す。

 

「明日出す宿題二倍にします。」

 

器小さッと皆つっこんだ。

 

 

「でも今までで一番惜しかったね」

 

「この調子なら殺すチャンス必ず来るぜ!」

 

「やーん!殺せたら100億円何に使おー?」

 

みんなが盛り上がる中オレは不思議に思っていた。この学園で生徒の顔が最もいきいきしてるのは暗殺のターゲットが担任ここのE組であることに。

 

 

 

 

 

 




第2話です。奥田さんと綾小路を書きたかったのでかきました。


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3:基礎の時間

本編です。


いーちにーさんしー

 

みんな同時に数えながらナイフを振っている。

 

 

 

「どんな姿勢でもバランスを崩さない!!」

 

指導してる人は副担任である烏間先生だ。といってもただの先生ではなく防衛省を務めている。オレたちに暗殺を依頼した人だ。

 

殺せんせーが寂しそうに烏間先生に何か言っている。

 

「ちょっと寂しいですね」

 

「今日から体育の時間は俺の受け持ちだ。それにこの時間はどっかに行ってろと言っただろう。」

 

「酷いですよ烏間先生。私の体育は評判よかったのに・・・」

 

・・・どこがだろうか。前の体育は殺せんせーが担当していた。

 

しかしあまりにも速すぎる動きをする殺せんせーは不評だった。

 

「異次元すぎてねー」

 

「体育は人間の先生に教わりたいわ」

 

「にゅや!?わかりました」

 

オレたち生徒からも不評だったことを知り殺せんせーは砂場で悲しそうに遊び始めた。

 

 

「やっとターゲットを追っ払えた。授業を続けるぞ」

 

「でも烏間先生。こんな訓練意味あるんすか?しかもターゲットがいる前でさ」

 

「勉強も暗殺も同じ事だ。基礎は身につけるほど役に立つ」

 

しかしほとんどの生徒はまだ疑問のままだった。

 

「例えば・・そうだな磯貝君、前原君、そのナイフを俺に当ててみろ。」

 

「え・・いいんですか?」

 

「二人がかりで?」

 

「対先生用ナイフなら人間に怪我はない。かすりでもすれば今日の授業は終わりでいい。」

 

鳥間先生がそう言うと磯貝は戸惑いながらも先生にナイフをさそうとする。

 

「そんじゃ・・・あれ?」

 

「さあ」

 

「くっ」

 

「このように多少の心得があれば素人の二人のナイフくらいは俺でも捌ける。」

 

磯貝と前原は運動神経がいい。しかしそれを鳥間先生は余裕で捌いていた。しばらく二人の攻撃が続くが当たる気配がまるでない。殺せんせーもこをらの方をみてニヤニヤしている。

 

二人は疲れて攻撃をやめた。

 

「俺に当てられないようではマッハ20のやつに当たる確立はほぼ0だろう。それに今の間の攻防にやつは砂場に城を作った上に着替えて茶まで立てている」

 

((腹立つわー))

 

「クラス全員が俺に攻撃を当てれるようになれば少なくとも暗殺の成功率は各段に上がる。ナイフや狙撃、暗殺に必要な基礎の数々、体育の時間で俺から教えさせてもらう」

 

鳥間先生がそう言って授業が終わった。さっきから後ろの方から気配を感じていたのでオレは後ろを向く。誰だあいつ?

 

他の皆は・・・

 

 

「六時間目小テストかー」

 

「体育で終わってほしかったよね。」

 

「!」

 

どうやら潮田たちも気づいたようだ。

 

「カルマ君・・・帰って来たんだ。」

 

「よー渚君久しぶり」

 

「あれが例の殺せんせー?すっげ本当にタコみたいだ」

 

そう言って殺せんせーの方へ向かっていく。それに殺せんせーが気づいた。

 

「赤羽業君ですね。今日が停学明けと聞いてました。」

 

どうやら停学明けの生徒だったようだ。

殺せんせーを見てあまり驚いていない。政府の人から前々から聞いていたのだろう。

 

「初日から遅刻はいけませんねー」

 

殺せんせーは顔にバツ印を出しながら赤羽に注意する。

 

 

「あはは、生活リズムが戻らなくてさー。下の名前で気安く呼んでよ、とりあえずよろしく先生」

 

そう言って赤羽は手を差し出す。

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

 

殺せんせーもそれに答えるようにして、握手をする。

 

次の瞬間殺せんせーの手が溶け始める。おそらく右手に対先生用を仕掛けてあるのだろう。

 

殺せんせーは慌てて赤羽から離れる。

 

それを見た皆は驚いていた。それはそうだろう。なぜなら殺せんせーにダメージを与えた生徒は今までいなかったのだから。

 

 

「へー本当に効くんだ対先生用ナイフ。細かく切って貼っつけてみたんだけど、けどさあ先生こんな単純な手に引っかかるとか・・・しかもそんなに離れるなんてビビり過ぎじゃね?」

 

赤羽は殺せんせーにゆっくり近づく。

 

「殺せないから『殺せんせー』って聞いてたけど・・・あれー、せんせーひょっとしてチョロい人?」

 

 

「ムキーーーー」

 

赤羽の煽りに殺せんせーはわかりやすいほど効いていた。

 

「渚、私E組来てから日浅いから知らないんだけど彼どんな人なの?」

 

オレと同じことを思っていた茅野は潮田に聞く。

 

「・・・うん、1年2年は同じクラスだったんだけど2年の時続けざまに暴力沙汰で停学食らって、このE組にはそういう生徒も落とされるんだ。」

 

そうだったのか。成績は悪くなくてもE組に落とされることもあるらしい。

 

「でもこの教室では一番の優等生かもしれない」

 

「どういうこと?」

 

「凶器や騙し討ちの『基礎』なら多分カルマ君が群を抜いている」

 

確かに先ほどの騙し討ちも成功していた。不自然さを感じさせずに相手を騙すことはとても難しいことだ。そしてそれはこの教室で大きな武器となるだろう。

 

こうして赤羽業がE組に加わった。

 

 




赤羽業が参戦しました。


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4:カルマの時間

小テスト中

いつもなら集中できるのだが今日は無理だった。理由は殺せんせーが壁パンしているからだ。触手が柔らかいから壁にダメージはないがパンチの音がうるさい。

先ほどの体育の授業の後赤羽におちょくられてムカついるようだ。

 

「ブニョンブニョンうるさいよ殺せんせー!!小テスト中なんだから」

 

「こ、これは失礼!!」

 

殺せんせーは無意識で壁パンしていたようだ。よほどムカついていたようだ。

 

「よォカルマ、あのバケモン怒らせても知らねーぞー」

 

寺坂は赤羽のことが気に入らないのか、煽り始める。

 

「殺されかけたら怒るのは当然じゃん。しくじってちびっちゃった誰かの時と違ってさ」

 

しかし赤羽には効かず逆に煽り返す。

 

「ち、ちびってねーよ!!ケンカうってんのか?」

 

「こらそこ!!テスト中に大きな音立てない」

 

さっきまでうるさかった人が言うことだろうか。

 

「ごめんごめん俺もう終わったからさ、ジェラート食って静かにしてるわ」

 

「駄目ですよ授業中にそんなもの・・・ってそれ昨日先生がイタリアで買ったやつ!!」

 

((おまえのかよ))

 

「で、どうするの?殴る?」

 

「殴りません、残りを先生が舐めます。」

 

もはやコントをみてる気分だ。

 

殺せんせーがジェラートを取りに赤羽の席に向かう。

 

次の瞬間殺せんせーの足が溶けた。そこには対先生用BB弾が床に仕掛けられていた。

 

「あは、また引っかかったー。」

 

「何度でもこういう手使うよ、授業の邪魔とか関係ないし。それが嫌なら俺でも俺の親でも殺せばいい」

 

「・・・」

 

赤羽は席を立ちジェラートを殺せんせーの服に押し付ける。

 

「でもその瞬間からもう誰もあんたを先生とは見てくれないただの人殺しモンスターだ。」

 

「あんたという『先生』は俺に殺された事になる」

 

凶悪な笑みを浮かべながら先生に言う。

 

「多分全問正解。じゃね『先生』明日も遊ぼうね」

 

先ほどまでの凶悪な笑みがなかったように柔和な笑みでテストを渡して赤羽はかってに帰ってしまった。

 

赤羽は頭の回転が早い。先生が先生であるために越えられない一線を見抜いた上でギリギリの駆け引きをしている。

 

しかし『先生』を殺すか・・・

先ほど赤羽が言っていたことに少し引っかかる。

 

帰りのときオレは奥田と一緒に帰ることになった。

 

「綾小路君また明日」

 

「ああ、じゃあな奥田」

 

奥田と駅のホーム別れ乗車の前まで行くとそこには潮田と赤羽がいた。

 

「俺さあ嬉しいんだ。ただのモンスターならどうしようかと思っていたけど、案外ちゃんとした先生で、ちゃんとした先生を殺せるなんてさ。前の先生は自分で勝手に死んじゃったからさー」

 

「・・・?」

 

赤羽は夕日に照らされながら不気味に笑っていた。

 

次の日の朝教室に着くと教卓の上にナイフで貫かれた本物のタコがあった。周りの反応から見てどう考えても赤羽の仕業だろう。

 

オレは赤羽に聞く。

 

「なあ赤羽、あれは何のつもりだ?」

 

「あー綾野くん、いたんだ。」

 

影が薄いのは認めるが、名前を間違えられ少し落ち込む。

 

「先生タコ好きらしいじゃん。だから怒らせるためにさ」

 

「そうか・・・」

 

先に精神的に攻撃するんだろう。そう考えながらオレは席に座ると殺せんせーが教室に入って黙り込む。

 

刺されたタコを見たんだろう。

 

「あ!ごっめーん。殺せんせーと間違えて殺しちゃったー。捨てとくから持ってきてよ。」

 

「フム、わかりました」

 

赤羽はナイフを隠しもっている。同様してる先生が来たところを刺すんだろう。

 

オレがそう分析していると触手の先端がドリル状になった。さらにその瞬間殺せんせーは超スピードでミサイルと小麦粉や卵などの食材や調味料を持ってきた。

 

「見せてあげましょう、カルマ君。このドリル触手の威力と、自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を。」

 

 

「・・・」

 

さすがの赤羽も予想外だったのか驚いている

 

 

「先生は暗殺者を決して無事には帰さない!」

 

殺せんせーは何かを作り始める。

 

そうして出来上がったのはたこ焼きでそれが赤羽の口に入れられていた。

 

「あっつ!!」

 

熱かったのか赤羽は口に入れられていたたこ焼きを吐き出す。

 

「その顔色では朝食を食べていないでしょう」

 

「!」

 

「カルマ君先生は手入れするのです。錆びてしまった暗殺者の刃を。今日一日本気で殺しに来るがいい。その度に君を手入れする。」

 

「ッ!!」

 

「放課後までに君の心と体をぴかぴかに磨いてあげよう」

 

こうして赤羽業の暗殺が始まった。

 

一時間目~三時間目の赤羽の暗殺が全て失敗している。仕方ないだろう、完全に警戒してる殺せんせーを一人で殺すことは不可能だ。しかしそれでも赤羽の心が折れない。

まだ殺す気でいる。

 

 

四時間目

 

オレたちは家庭科の授業で調理自習をすることになった。オレの班は潮田と杉野だ。

 

 

「よろしくね綾小路君。」

 

「ああ、でもオレはあまり料理上手くないから足を引っ張ると思う」

 

「大丈夫だ綾小路、俺もだ」

 

杉野も料理は未経験のようだ。仲間がいて良かった。

 

調理している最中にオレは潮田に聞きたかったことを聞く。

 

「赤羽って何で停学になったんだ?」

 

「そりゃ暴力でしょ」

 

杉野がそう答えるがオレの言いたいことはそういうことじゃない。

 

「それはそうなんだが、杉野はいなかったが昨日赤羽が前の『先生』は勝手に死んだとか言ってたからな。もしかしたらただの暴力沙汰じゃないと思ったんだ。」

 

「綾小路君も聞いてたんだ。僕もわからないんだ。この学校に先生が自殺したということはないからね。カルマ君は中学二年まで成績はトップクラスだった。だから暴力を振るっても何も問題にはならなかったんだ。」

 

「それまでは問題なかったのか!?」

 

杉野が驚く。確かに暴力を振るって問題にならないなら前の『先生』が赤羽の見方だったんだろう。

・・・詳しいことはわからないが裏切られたということか?。

勝手に死んだというのはきっと赤羽の中での話なのだろうか。

 

今オレが考えている中でも赤羽は暗殺をしている。

もちろん成功するはずもなく授業が終わる。

 

 

五時間目も終わり皆が帰る中、赤羽はいつも帰る逆の方向へ行く。潮田も何か思うのかオレと一緒に赤羽の向かった場所へ追いかける。

 

着いた先は崖だった。ダメージすら与えられないことに苛立っていた。

 

それにしても崖か・・・

 

オレは赤羽がこの先する事を確信する。

確かにオレもその方法を考えたことがある。しかしオレは実行しなかった。なぜなら一つだけ大きな欠点があるからだ。

 

それは必ず自分の命を落とすことだ。オレは自分を犠牲にしてまで殺す手段は絶対にしない。相打ちだろうが最終的に死ねば、それは負けなのだ。

しかしそれをオレ以外がするなら欠点が無くなる。

 

それに先生がどの選択をするのか・・・。

 

「・・・カルマ君。焦らないでみんなで一緒にやってこう。普通の先生とは違うからさ」

 

「『先生』ねぇ・・・」

 

やはり『先生』に関して何か思うことがあるんだろう。

 

「やだね。俺が殺りたいんだ。変なとこで死なれんのが一番むかつく」

 

赤羽がそう言うと殺せんせーが来て声をかける。

 

「さてカルマ君。今日はたくさん手入れされましたね。まだまだ殺しに来てもいいですよ。もっとピカピカに磨いてあげます」

 

「確認したいけど、先生って命をかけて生徒を守ってくれるの?」

 

「もちろん先生ですから」

 

赤羽が銃を取り出した。

 

「そっか良かった。なら殺せるよ、確実に」

 

そう言って赤羽は崖から飛び降りた。

 

「「カルマ君?」」

殺せんせーと潮田が同時に叫ぶ。

 

音速で助ければ肉体は耐えられない。かといってゆっくり助ければ撃たれる。そして見捨てることもできない。

オレは崖の上から落ちていく赤羽を見下ろす。

 

この状況をどうするのか・・・。

 

殺せんせーのとった手段は触手を蜘蛛の糸みたいに粘りを出して赤羽を下からキャッチすることだった。赤羽は殺せんせーに守られ無事だった。

 

それにしても粘りも出せるのか、さすがに予想できない。もはやなんでもありだな。

 

「ーーー君。・・・聞こえてる?綾小路君」

 

オレが考えていると潮田の声が聞こえてきた。

 

「あ、ああ。まさか飛び降りるとは思えなくてな」

 

「でも綾小路君あまり表情を変えてなかったよね」

 

そう言った潮田は納得のいかない表情だった。 

 

どうやらオレは潮田の洞察力を少し甘く見ていたかもしれない。殺せんせーだけを見ているかと思っていたが、この状況にも関わらずオレを観察していたようだ。

 

「まあ、オレは表情が変わりにくいからな」

 

そう言って誤魔化すことにした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

渚視点

 

 

 

 

カルマ君が飛び降りた。

 

僕が慌てて崖の端まで駆け寄る。あまりにも予測不能なことをしたからだ。

 

カルマ君の方を見ていると、少し遅れて綾小路君も来た。こんな状況にも関わらず表情が変わってない。

 

 

結局カルマ君は先生に助けられた。ホッとして綾小路君に声をかけた。

 

「綾小路君」

 

何かを考えてるのか返事が来ない。

 

「聞こえてる?綾小路君」

 

「あ、ああ。まさか飛び降りるとは思えなくてな。」

 

「でもあまり表情を変えてなかったね」

 

さっき綾小路君を見たとき表情一つ変えてなかった。

 

「まあ、オレは表情が変わりにくいからな」

 

少し綾小路君は不気味だ。僕は人を観察するのが得意だが綾小路君は何を考えているのかわからない。

 

殺せんせーがカルマ君連れてを僕たちがいるところまで来た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「負けたよ、殺せんせー。少なくとも『先生』としては殺せないや。」

 

赤羽は考えていた手を全て使い切ったようだ。

 

「でも殺すよ、明日にでも」

 

先ほどまでとは違い晴れやかな殺意だった。殺せんせーは生徒を見捨てないと知ったからだろう。

 

こうして、赤羽は殺せんせーに手入れされてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 




初めて違うキャラの視点で書いてみました。


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5:大人の時間

ビッチ先生登場


あっという間に5月になった。

 

そしてこのE組に新しい教師が就任してきた。

 

「イリーナ・イェラビッチです。皆よろしく。」

 

殺せんせーの触手に胸を当てながら自己紹介をする。

 

殺せんせーはイリーナ先生の胸をわかりやすくニヤニヤしながら見ていた。

 

イリーナ先生の表情、仕草もよく作られているが、間違いなく色仕掛けだろう。殺せんせーも普通にデレデレしている。

 

烏間先生が確認するように言う。

 

「本格的な外国語に触れさせたいとの学校の意向だ。英語の半分は彼女の受持で文句はないな?」

 

「仕方ありませんねー」

 

これから英語の授業の半分はイリーナ先生が教えることになるそうだ。

 

しかしオレたちはわかっている。この時期に入ってくる人はただ者ではないことに。いや、暗殺者だということに。

 

午前中の授業が終わり、昼休み殺せんせーはイリーナ先生に何かを言われ、マッハで飛んでいってた。

 

「えっと、イリーナ先生?次は英語の授業なので・・・」

 

磯貝がイリーナ先生に言うと、イリーナ先生の雰囲気ががらりと変わる。

 

「授業?自習でもしてなさいよ。それに気安くファーストネームで呼ばないでる?きちんと『イェラビッチお姉さま』と呼びなさい」

 

「で、どうすんの?ビッチ姉さん」

 

「略すな!」

 

イリーナ先生も赤羽の呼び方に冷めた雰囲気からキレツッコミをする。

 

「あんた殺し屋なんでしょ?クラス総掛かりでも倒せないのに一人で殺せるの?」

 

「ガキが。大人にはね、大人のやり方があるのよ。潮田渚ってあんたかしら?」

 

イリーナ先生がそう言って潮田に近づき、、、唇を奪った。

 

「!?!?!?」

 

潮田は気絶するくらい接吻をされ、イリーナ先生に連れていかれた。

潮田が持っている殺せんせーの情報を聞き出すようだ。

 

 

殺せんせーが帰ってきて6時間目。烏間先生の体育の授業、オレたちは訓練をしているところイリーナ先生と殺せんせーはなにやら倉庫に入っていった。

 

そして数分後・・・

 

「いやああああああああ!!」

 

倉庫からイリーナ先生の悲鳴が聞こえてきた。

 

そして殺せんせーが倉庫から出てくる。

「ふー、大人の手入れは大変でした。」

 

出てきたイリーナ先生は体操着にブルマーという健康的な格好をしていた。そしてあちこちマッサージをされたらしい。イリーナ先生の暗殺は失敗に終わった。

 

「こんな屈辱初めてよ、絶対に殺してやる!!」

 

イリーナ先生はあきらめていなかった。

 

翌日の英語の授業。ビッチ姉さんの担当だが授業をしてくれず、自習だった。

 

「なんでWi-Fi通らないのよ!?」

 

ビッチ姉さんはイライラしながら教卓で次の手を考えていた。

 

「あの~、俺たち来年受験なんで、授業しないなら殺せんせーに変わってもらえないでしょうか?」

 

磯貝が代表して言う。するとビッチ姉さんは皆を馬鹿にするように言う。

 

「は、受験?地球滅亡がかかっているのに呑気なもんね。聞いたけどあんたたちこの学校の落ちこぼれ組らしいじゃない。そうだ、私に協力しなさい。そうしたら賞金から500万をあんたたちに一人ずつあげるわ。無駄な勉強よりずっと有益でしょ」

 

皆ビッチ姉さんの言うことにイラつきクラスが暴動を起こした。窓越しに烏間先生がため息をついていた。

 

 

次の日の英語の授業。ビッチ姉さんはなんと真面目に授業を行い始めた。昨日烏間先生に説得されたらしい。

 

「受験で必要な英語はあのタコから教わりなさい。私が教えられるのはあくまで実践的な会話術だけ。もし・・・それでもあんた達が私を先生と思えなかったら、その時は暗殺を諦めて出ていくわ。・・・それなら文句無いでしょ?」

 

するとクラスで笑いがこぼれた。

 

そして呼び方がビッチ姉さんからビッチ先生に変わった。先生と認められたんだろう。

・・・ビッチは変わらないが。

 

こうしてビッチ先生が真面目に授業をしてくれるようになった。

 

 




今回は短めです。
話を進めたかったので。

誤字があれば訂正します。


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6:不穏な時間

今回はオリジナルです。


オレは今理事長の部屋にいる。理由はわからないが烏間先生に呼ばれたからだ。

 

オレと奥田で殺せんせーを暗殺しようとしたときに烏間先生に呼び出された。

 

「急にすまないが来てもらう。浅野理事長がお呼だ。」

 

オレは何かやらかしただろうか?身に覚えがない。

 

「綾小路君は行ってください。私が先生に渡していきますので。・・・それにどれだけ殺せんせーに通用するのかも試したいのです。」

 

本来は2人で暗殺をするつもりだったが仕方がない。断ることもできそうにない。

 

こうして理事長室に呼ばれたのだが・・・

 

「こんにちは、綾小路君。会いたかったよ。今日で会うのは二回目だね。」

 

自分専用の椅子に座りながら作られた笑顔で歓迎してくれる。

 

この人は浅野学峯。理事長であり創造者でもある。この学校の頂点に立つ者。殺せんせーをE組の担任にさせこの暗殺教室を成り立たせている。

 

 

一回目はオレがここに転入した時だ。その時は特に何も無かったんだが。

 

しかし転入時にもそうだったが、一目見ればわかる。

この人はただ者ではない。全てを見透かすような目をしている。

 

「オレを呼び出した理由はなんですか?」

 

「君はあんなE組にいてはいけない。むしろ綾小路君には是非A組に上がってもらいたいからだよ」

 

この学校は聞くところ成績がいい者はA組、中間あたりがB、C、D組、そして成績が低い者はE組ということらしい。

 

「オレはA組どころかE組から上がれるだけの学力はありません」

 

オレはそう言うが浅野理事長は納得していなかった。

 

「この学校に転入できる点数は500点中200点であることは知ってるよね?」

 

なぜこんなに合格点が低いのか。それは点数が低いとE組に入ることになるからだ。

不合格にしない理由はE組から努力して上のクラスに上がれる人材を欲しているからだろう。

しかし、E組の環境で良い成績を取ることは非常に難しいため転入する人がほとんどいない。

 

「そして君の点数はちょうど250点だ。君はこの点数に調整したのではないかな?」

 

「偶然ですよ。狙って出せるわけがありません」

 

普通テストの点数を低めに狙う人はいない。この人はそれを聞くためだけにオレをここに呼んだのだろうか。

 

「聞きたいことがそれだけならオレは教室に戻らせてもらいます。」

 

オレは浅野理事長との話を終わらせ理事長室から出ようと背を向ける。

 

オレが部屋から出ようとすると理事長はある単語を言い出す。

 

「ホワイトルーム」

 

その単語を聞いた瞬間オレは無意識に足を止めていた。

なぜその単語が出てくるだろうか。

 

「これは失礼、私の勘でね。君の点数を見て不思議に思ったからね。勝手に調べさせてもらったよ」

 

ただの勘で調べた?とても信じられる話ではない。そもそもあの施設を調べることは簡単ではないはず・・・。

 

「生まれた時から無駄な事を捨て、徹底した管理で必要なことを学習させる施設。ついていけれなくなれば脱落する過酷なシステム。しかも綾小路君はその施設の最高傑作だ」

 

この人の言っていることは本当のようだ。どうやってかは知らないが本当にホワイトルームを調べたらしい。

 

「それとA組に行くことに何か関係あるんですか?」

 

ホワイトルームの存在が知られたことについては理事長が超人すぎるだけの話。オレは冷静に聞き返す。

 

「それはね、君は私が理想とする『強い』生徒そのものだからだよ。君をA組に上がらせ生徒の代表にさせ、より多くの生徒を強くさせるんだ」

 

この学校の合理的なシステム的に考えても嘘ではない。E組を差別させることで残りの生徒に危機感と優越感を与え強くさせているのだろう。

 

そしてこの人はより多くの生徒を強くするためにオレをA組に上げさせたいらしい。

 

「地球の危機にもかかわらず、教育のことを考えるのですね」

 

「私ではあの怪物を殺すことはできないからね。それに私が考えてるのは誰かがあの怪物を殺せた場合の世界です。」

 

随分と割り切っているな・・・この人はオレとは違い、あの怪物を殺すつもりがない。

そう考えてるのを読んでるかのように理事長は言う。

 

「別に暗殺を止めろとは言わないよ。A組に行ってからでも続けることができるようにするよ」

 

理事長はそう言うがそれでもオレの意志は変わらない。

 

「オレはA組に上がるつもりや生徒の代表になるつもりもありませんよ」

 

 

 

「それだけの力を持っているのになぜ手を抜くのかね?」

 

手を抜いていることに対して不思議に思う浅野理事長。

 

「単純に目立ちたくないからですよ。目立てばあの怪物を殺すのに支障がでる可能性がありますしね」

 

それにE組の居心地は悪くない。

 

理由を説明するが、理事長は諦めていない。先ほどよりも鋭い目をしてオレを捕らえている。とてつもない眼力をしている。オレはそれを真正面から受け止める。

 

「さてどうしたものかねー。だいたいの人は一言二言ささやくだけで私が思う通りに動いてくれるのだけど・・・」

 

とんでもないことを言い出すな。要は相手を洗脳させる技術を持っているようだ。

 

「しかし君には通用しそうにない」

 

相手に洗脳される程度ならあの場所で生き残ることはできない。

 

「君をA組に上がらせる方法をじっくり考えておくよ」

 

理事長との話を終えオレは理事長室を退出する。

 

オレは理事長室から出て考える。これから先理事長という存在がオレの日常を妨げる可能性があるだろう。

そうなる前に手を打っておかなければならない。

 

E組の教室に戻ると奥田が残っていた。殺せんせーも生きている。オレたち(ほとんど奥田)の暗殺が失敗したのだ。

 

「殺せんせーに渡せました。騙すことはできませんでしたけど・・・」

 

話を聞くところ、毒を渡すときの態度がぎこちなかったようだ。しかし殺せんせーはそれを承知で毒を飲んだが効果は無かったらしい。

 

「だけど殺せんせーが一歩ずつ成長していることを褒めてくれました」

 

 

暗殺に失敗したにもかかわらず奥田の表情は明るかった。

 

以前の奥田なら相手を騙そうとすら思わなかっただろう。確実に成長している。

 

「まだ始まったばかりだからな。一歩ずつ成長していけばオレたちは先生を殺せるかもしれないな」

 

「はい。私たちで殺しましょう」

 

オレたちの暗殺はまだ始まったばかり、焦る必要はない。最終的に殺せればいいだけなのだから。

 

 




少し原作改変しました。(少し無理があるか?)
読んでいただきありがとうございます。

誤字などがあれば訂正します。


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7:集会の時間

少し原作改変しました。


月に一度の本校で全校集会がある。本校の生徒たちと会うので集会が終わるまで周りから差別される気が重いイベントだ。

 

オレは他のE組の人たちより早めに本校にいる。そして本校の生徒を観察している。

なぜこんなことをするか・・・それは理事長に対抗できる手段を得るため。

 

本校の生徒たちは雑談や勉強をしている。普通の学校と変わらない。

 

そして遅れてE組の皆が入ってきた。その瞬間本校の生徒たちがE組を差別するようになる。雑談や勉強をしていた人も指をさして笑い物にしている。それに対してE組の皆は萎縮している。

 

やはりこの学校の大半はE組を差別している。それが当たり前になっている。

 

しかしオレは本校の生徒でE組を差別するどころか快く思っていない人を見つける。皆がE組を差別する中一人だけ本校の生徒たちを見て怒りを表しているが、多くの生徒を敵に回すから止めることができない、そんな状況だ。

 

オレはその生徒を注視する。オレたちのクラスの隣に並び始めた。そこはA組だった。

そうして全生徒が集まり集会が始まる。

 

「・・・要するに君達は全国から選りすぐられたエリートです。この校長が保証します」

 

長々な話をまとめる校長先生、生徒を褒めている。

そしてオレたちE組の方を見始める。

 

「しかし油断は大敵です。油断してるとどうしようもない人たちになってしまいますよ」

 

校長が言葉にすると一斉に笑い声が聞こえる。それにしても想像以上だ。生徒だけではなく本校の先生までオレたちを蔑むような目で見てる。

 

E組の皆も下を向いている。なんとかやり過ごしている。

 

オレは先ほどの生徒を見る。やはりオレたちを見てもバカにするどころかこの状況を良くないと思っている。

 

・・・これを利用しない手はない。

そう考えているとその生徒と少しだけ目が合った。向こうもこちらに気づいたのだろう。

 

 

全校集会が終わり生徒たちが教室に戻っている。オレは先ほど目が合った生徒に話しかける。

 

「なあちょっといいか?」

 

「なに?あんたE組が私に何の用なの?」

 

言葉は威圧的だった。普通E組から声をかけられるなんてことはないからな。

オレは他の生徒に気づかれないように小声で人気がいない所に誘う。

 

「わかった付いて来て」

 

断らないところからしても向こうもなにか思っているんだろう。

そしてオレとその生徒は周りに人がいない所に着く。

 

「あんた誰なの?」

 

「オレは綾小路だ。春から転入してきた者だ。」

 

「あたしは軽井沢。それでなんの用なの?さっきもあたしのこと見てたよね?」

 

知らない人に見られて、しかも声をかけられる。

不気味で仕方がないだろう。だからオレは直ちにに本題に入る。

 

「不思議に思ったんだ、なんであんたはオレたちE組をバカにしない?」

 

「へ~、気づいてたんだ。」

 

そう言って軽井沢はため息をつく。

 

「この学校はE組の制度によって残りの生徒は成績がいいの。だからといって差別することは良くないとあたしは思った。それで仲のいい友達にE組をいじめるのを止めろと言ったんだけど、そしたら『調子のってない?』とか『クズの見方するの?』、『こいつE組に落とそうぜ』とか言われて今まで仲がよかったのに急に私をターゲットにして、あたしをE組に落とそうとしてきた。テストの前とかに嫌がらせされたの。」

 

それだけのことをされてA組に入れたということは膨大な努力をしたのだろう。

 

 

「E組の人たちと会ったことはある。だけどみんな差別されることを受け入れてた。あたしは精一杯がんばったけど、あたし一人ではこの学校を変えることはできないと思い知らされたんだ」

 

そういう理由だったのか。

誰も見方がいない中最後まで足掻いた。

しかし最後まで上手くいかなかったようだ。

 

「ならオレが手を貸そうか?」

 

「いいの?」

 

オレは頷く。学校の仕組みを変える・・・オレが理事長に対抗する手段の一つになるだろう。

 

「とは言っても今すぐ変えることはできない。とりあえず連絡先を交換しよう」

 

そうしてオレたちは連絡先を交換した。これでまた会うことができる。

 

「できればオレたちが会っているところを他の生徒に見られたくない。お前の立場も危うくなるしな」

 

E組とA組が会うところを見られれば注目をあびる。

 

「うん、わかった」

 

話を終わらせオレはE組の教室に戻る。

 

教室に戻り、授業が始まろうとした時、殺せんせーが増えていた。学校の中間テストが近づいているため分身のマンツーマン授業をやるそうだ。

 

「それぞれの苦手科目を徹底して復習します」

 

「なんで俺だけNARUTOなんだよ」

 

一人だけNARUTOに対して寺坂がツッコム。

 

「寺坂君は特別コースです。苦手科目が複数あるので」

 

前までこんなに分身できていなかった。地球を滅ぼすための準備だろうか。

 

こうしてオレたちは中間テストに向けて勉強を始めた。

 

 

次の日殺せんせーの分身の数がさらに増えていた。

昨日理事長先生に会ったらしい。何があったのだろうか。

 

授業を終えた殺せんせーは疲れていた。

 

「なんでここまで一生懸命先生をすんのかねー?」

 

「それはですね、君達のテストの点を上げるためです。そうすれば私の評判が上がり、殺されるされる危険もなくなり先生には良い事ずくめ」

 

殺せんせーはニヤニヤしながら言う。しかし皆はパッとしない表情だった。

 

「・・・いや勉強の方はそれなりでいいよな」

 

「・・・うん。だって殺せれば賞金100億だし」

 

「100億あれば成績悪くても人生バラ色だしさ」

 

確かに100億あればその後の人生はバラ色だろう。オレは別に100億には興味ないからそういう考え方をしなかった。

 

「俺たちエンドのE組だぜ、暗殺の方が余程チャンスだよ」

 

殺せんせーは皆の考えを聞いて顔にバツ印を浮かべる。

 

 

「なるほどよくわかりました。今の君達には暗殺者の資格がありませんね~。鳥間先生とイリーナ先生も呼んでください。」

 

オレたちは鳥間先生とビッチ先生を連れてきた。そして殺せんせーはビッチ先生に問う。

 

「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺いますがあなたはいつも仕事をする時用意するプランは一つですか?」

 

「いいえ、本命のプランなんて思った通りにいくことの方が少ないわ。不足の事態に備えて予備のプランをより綿密に作っておくのが暗殺の基本よ」

 

ビッチ先生の答えに頷き鳥間先生の方を向く。

 

「次に鳥間先生、ナイフ術を生徒に教える時重要なのは第一撃だけですか?」

 

「・・・第一撃はもちろん最重要だが次の動きも大切だ。強敵相手だと第一撃は高確率でかわされる。その後の第二撃、第三撃をいかに高精度で繰り出すかが勝敗を分ける」

 

 

「先生方のおっしゃるように自信を持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる。対して君達はどうでしょう。」

 

皆がハッとする。

 

「俺たちには暗殺があるからそれでいいや・・・と考え勉強の目標を低くしている。それは劣等感の原因から目を背けているだけです。もし先生がこの教室から逃げ去ったら?もし他の殺し屋が先に先生を殺したら?」

 

劣等感しか残らないということだ。

 

「そんな危うい君達に先生からのアドバイスです。第二の刃を持たざる者は暗殺者を名乗る資格なし!!」

 

オレたちは第二の刃を持たなければならないようだ。

 

「もし君達が自身を持てる第二の刃を示せなければ相手に価する暗殺者はこの教室にはいないと見なし先生は去ります」

 

いきなりの宣言に皆が驚く。

 

「第二の刃・・・いつまでに?」

 

「決まっています。この中間テストです。クラス全員50位以内を取りなさい」

 

「「!!?」」

 

中間テストまであと5日。それまでにオレたちの学力を上げなければいけない。

A~D組の生徒は188人その中で50位は厳しい戦いになるだろう。

 

「君達の第二の刃は先生が育てています。本校の教師たちに劣るほど先生はトロい教え方をしていません。

なので自身をもって刃を振るってきなさい。仕事を成功させ、恥じることなく笑顔で胸を張るのです」

 

そう言って殺せんせーは自信をもったような表情で言う。

しかし50位以内を取らなければ殺せんせーが教室を去るか・・・逃げようと思えば逃げれるので信じるしかない。

 

しかしE組全員が50位以内取ることは難しい。誰かが些細なミス一つで順位を落とすこもあり得るだろう。

 

なら確実に全員を50位以内にするなら・・・

 

オレはテストまでに殺るべき事を決める。

 

 

こうしてオレたちは中間テストを受けることになる。

 

 

 

 

 

 

 




アンケートありがとうございました。
よう実の軽井沢を出しました。(軽井沢は最初から出す予定でした)
よう実の原作より頭がいい設定です。

誤字などがあれば訂正します。



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8:テストの時間

少し原作改変。


中間テストの時が来た。オレたちはテストを受けるために本校にいる。

 

監督の先生はDクラスの先生だった。イライラしているのか貧乏揺すりや指で机を叩いたりしてオレたちの集中力を乱している。

 

オレは問題を一問目から見る。やはりこの学校の問題は普通の学校に比べたら遥かにレベルが高い。だが、殺せんせーの授業で解き方を教えてもらっているから冷静でいれば全員解ける問題が多い。

 

オレは二問目、三問目と次々に解く。そして十問目にしてオレはペンを置く。そしてオレは悟った。

 

なるほどな・・・あんたも手を打っていたということか。

 

この問題は授業で教わっていない。つまりテストの範囲内ではないということ。これで全員50位を取ることは不可能となった。

オレは何点とるかを考え、調整する。

 

テストが終えて、結果発表までE組の空気は重たいままだった。

 

そして結果発表の時が来る。皆は自分の順位の低さを覚悟してるようだった。

 

・・・しかし

 

「あれ?思ったより高い」

 

「俺50位以内に入っている」

 

クラスがざわつく。皆自分が思っている以上に順位が高かったようだ。磯貝、片岡は50位以内に入っていた。

 

殺せんせーが言う。

 

「どうやら本校で一度に五人の生徒が停学したようです。向こうは集中が乱れて良い点数が出せなかったようですね。」

 

一度に五人もテスト前に停学することなんて滅多に起こらない。停学した知り合いや友人などは特に全力で挑めなかったようだ。

しかしそんなことがあったにも関わらずオレたちは全員で50位以内を取ることができなかった。

 

「先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見ていました。君たちに顔向けできません。」

 

殺せんせーも予期していなかったのかオレたちから背を向ける。

殺せんせーは悪くない。テストの範囲を変える事なんて予想できるはずもない。

 

 

しかし後ろを向いている殺せんせーの頭へナイフが迫る。

 

「にゅやっ!?」

 

突然来たナイフをギリギリでナイフを避けた。

 

「いいの~?顔向けできなかったら、俺が殺しにくんのも見えないよ」

 

ナイフを投げたのは赤羽だった。そして自分の点数を殺せんせーに見せる。妨害されたにも関わらずすべて90点以上。数学は100点だ。総合得点は494で学年で4位という偉業を成し遂げた。

 

「あんたが先々まで教えてくれたおかげだよ」

 

暴力行為でE組に来ただけで成績はこの学校のトップクラス。テスト範囲より先へ進んでいたようだ。

 

「だけど俺はE組出る気ないよ。前のクラス戻るより暗殺の方が楽しいし」

 

磯貝と片岡も頷く。彼らもE組から出る気はないようだ。

 

「・・・で、どーすんのそっちは?全員50位以内に入れなかったって言い訳つけて、ここから逃げちゃうの?」

 

赤羽が挑発する。

 

「結局さぁ、殺されんのが怖いだけじゃないの?」

 

先ほどまでの落ち込んでてた空気が変わり始める

 

「な~んだ先生怖かっただけなんだー」

 

「それなら正直に言えばよかったのに」

 

「にゅやーー」

 

先ほどの様子が無かったかのように勢いよく触手を上げる。みんながニヤリと笑うのに対し、殺せんせーはやる気を出す。

 

「逃げる訳ではありません!期末テストでリベンジてす」

 

「「あはははははは」」

 

殺せんせーの言葉に皆が笑う。とにかくこれで殺せんせーが逃げることはなくなった。

 

 

みんなが笑っている中一件のメールが来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう?上手くいった?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

今回オレがテストまでにした事はE組が50位以内に入れる可能性を上げるために、本校の生徒全体の点数を下げたことだった。

 

テスト4日前

 

オレはA組の軽井沢と連絡を取る。

 

「今までのテストの順位を見せてくれないか?」

 

「いいよ」

 

オレは軽井沢から今までのテストの順位表を見る。やはりA組が一番成績がいい。

 

「今まで嫌がらせをしていた人って誰なんだ?」

 

オレは軽井沢に聞く。そして軽井沢は答える。

そいつらの成績はあまり成績がよくない。条件はそろっている。

 

「明日そいつらを呼び出してほしい!?」

 

「なにをするの?」

 

「オレが説得するさ。まずはそいつらをオレたちの見方にさせる」

 

 

「わかった、なんかよくわかんないけどあんたならなんとかしてくれそう」

 

「ああ、場所は人の目が無いところで。人目があると難しくなるからな」

 

 

そう言って連絡を終える。

 

さて、もう本校の生徒はほとんど家に帰ってるころだろう・・・オレはもう一つの用を済ませる。

 

 

 

テスト3日前

 

<軽井沢視点

 

あたしは昨日綾小路君の言われた生徒を話があると言って呼び出した。

 

「なんだよ、話があるって」

 

「私早く帰りたいんだけど」

 

 

なぜ呼び出されたかわからない5人の生徒たち、あたしを疑いの目で見ている。

 

あたしは早めに切り出す。

 

「ちょっと待っててね。もうすぐ来るから」

 

「来るって誰だよ」

 

「E組の綾小路って人なんだけど」

 

次の瞬間生徒たちの態度が急に悪くなる。

 

「やっぱりお前だったのか」

 

呼び出された生徒の一人である男はあたしに詰め寄り突然言い出す。

 

「お前が裏切り者だったんだ」

 

「俺たちをE組に落とす為に」

 

皆何を言っているのかわからなかった。

 

「あそこに落ちたらもう終わりだ。お前のせいだーーー」

 

皆がE組に落ちる可能性を感じ恐怖している。

そして焦っているのかあたしを殴ってきた。今まではいくら何でもそこまではされなかった。

 

しばく時間が過ぎた。結局綾小路が来ることはなかった。

 

「やばいな、ついカッとなったわ。まあ誰にも見られてないだろ」

 

先ほどより落ち着き始める5人の生徒。

 

「こんなことしてる場合じゃない勉強しないと」

 

そう言って帰っていく。

 

あたしはその場に倒れ込む。するとある人が来た。

 

「大丈夫か?」

 

綾小路だ。なぜこのタイミングで現れたのだろうか?

まさか・・・

 

 

 

 

<綾小路視点

 

目の前で倒れている軽井沢、オレがこのタイミングで現れることによって全てを察する。

 

「すまないな。オレはお前を利用した」

 

オレが説得すると言ったことは嘘だ。本当は軽井沢を利用して本校の生徒を停学させること。

 

 

オレは昨日本校に行ってあるメッセージを生徒のロッカーに置いた。それは『この学校にE組を味方する裏切り者がいる』だ。

誰も最初は信じないだろう。しかし軽井沢がE組の名前を出すことによって信憑性が増す。

 

この学校の仕組み的に誰かがE組を抜けたら必然的に本校の人がE組に落とされる。

だから成績が低い生徒であれば焦る。E組に落ちれば『死』と考える人ならなおさらだ。そして衝動的に動いてしまう。

 

オレは写真を見せる。軽井沢が殴られた瞬間に取った写真だ。それを見た軽井沢は恐れるような目でオレを見る。

 

「・・・それをどうするの?」

 

「これを学校に送る。そしたら一気に停学だ」

 

この学校はA組の価値が高い。赤羽の暗殺の後から聞いたが赤羽はいじめられている人を守るためにA組を殴り、受験に影響するぐらい負傷させE組に落とされたそうだ。

 

軽井沢はA組だ。赤羽ほど問題にはならないが、停学にはされるだろう。

 

「別にオレはこいつらをE組に落とすつもりはない。オレの狙いは本校の生徒の集中力を乱すためだ。そしてオレたちE組が全員50位以内を取る。そうすればE組を認めざる得ない」

 

「とんでもない人ね、あたしを利用して・・・」

 

「二度と関わりたくないと言われても仕方がないことをした。」 

 

それくらいのことをオレはした。もうオレたちは関わることはない。

そう思っていると・・・

 

「・・・いいわ、この学校を変えるためならこのくらいのことをしないといけないのかもしれないのね。ジュースのおごりで許してあげる」

 

・・・ずいぶんと安いな。

 

「なんかあんたがいればいける気がしてきたんだ」

 

軽井沢もこの学校を変えたいと強く思っているのだろう。

 

許してくれたのはありがたいが、仕上げが残っている。

 

「お前はテストが終わるまで休んだほうがいい」

 

軽井沢は軽く怪我をしている。無理をしないほうが良いだろう。

そして軽井沢が休めば写真の信憑性が増す。テストを受けなくても、再び学校に来たときに受けさせてくれるだろう。

 

こうしてオレたちの妨害計画を実行した。本来はこんなことするつもりはなかったが、殺せんせーの宣言で動かなければならなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

テストの結果をメールで軽井沢に伝える。

 

「あの人自分の教育のためにそこまで・・・」

 

理事長の妨害のことを言っている。向こうも手段を選んでいないからな。

 

「だがオレたちE組から3人50組以内だ。妨害されてこれなら上出来だろう。」

 

そしてE組から出ないから印象が少し変わるはずだ。E組が地獄なら残るはずがないからな。

 

「あたしはあんたに協力する。何かあったら連絡するから」

 

そう言って連絡を終える。

 

理事長はオレをA組に上げたいと言っていたがそれはこの合理的な教育が成り立っているからだ。そして自分の教育を成功させるための条件はE組が底辺でなければならない。だから今回それを阻止する狙いもあった。

 

だが理事長は2日前にテストの範囲を変えた。オレや軽井沢が知らないのは仕方がなかった。

 

E組もA~D組も痛み分けということで中間テストを終えた。

 

 




軽井沢は綾小路の駒となります。 
暗殺には関わらないけどA組との戦いで活躍させるつもりです。

誤字があれば訂正します。




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9:修学旅行の時間

修学旅行編です。


今日はクラスがいつもより賑やかだ。なぜだろうかと考えていると不破から声を掛けられる。

 

「修学旅行一緒の班にならない?」

 

そう言えば今日は修学旅行の班を決める日だった。オレはそれを承諾する。そして奥田も誘おうかと思ったら茅野という先着がいたようだ。

 

「すみません綾小路君。同じ班になりたかったのですが・・・」

 

「いいんじゃないか?お互いに友達を増やせる機会だ」

 

「そうですね。お互い楽しみましょう」 

 

オレは不破の班に入る。

 

「なんでオレを誘ったんだ?オレとはそこまで仲よくない」

 

修学旅行という大きなイベントで自分と仲がいい人と過ごしたいはずだ。

 

「そんな固いこと言いますか~。まあ、これを機に絆を深めようとおもってね」

 

それならありがたい。変に同情とかされてたならこちらの気が重くなる。

 

オレは不破の班に入る。メンバーは前原、岡島、千葉、速水、岡野、中村、不破、オレの8人班だ。

 

オレたちは京都で暗殺を手伝いすることになる。

鳥間先生から聞く話だと、プロのスナイパーを手配したそうだ。殺せんせーは各班に付き添う予定のようだ。

旅行をしながら任務をする暗殺旅行だ。

 

 

オレたちは回るコースを決めている所に殺せんせーが教室に入ってくる。そしてマッハで辞書みたいのをオレたちに渡す。

 

「一人一冊、修学旅行のしおりです。」

 

辞書かと思ったらしおりだった。分厚すぎだろ・・・

 

「ヌルフフフ、先生は皆と旅行をするのが楽しみで仕方がありません。」

 

殺せんせーはウキウキしながら言う。そしてオレたちも修学旅行にテンションが上がっていた。

 

翌週の修学旅行当日。オレたちは新幹線のホームで集まっていた。

 

 

オレたちが集まっている所に先生たちも到着する。

 

「ご機嫌よう。生徒たち」

 

そして遅れて優雅に歩いて来るビッチ先生。なぜかハリウッドセレブみたいな格好で来ている。

 

「女を駆使する暗殺者としては当然の事よ。良い女はファッションにも気を遣わないと」

 

それはそうなんだが・・・目立ちすぎだと思うんだが。

 

「目立ちすぎだ。着替えろ、どう見ても先生の格好じゃない」

 

鳥間先生も同じことを思って注意する。

 

「堅いこと言ってんじゃないわよ鳥間。ガキ共に大人の旅のーーー」

 

「脱げ、着替えろ」

 

鳥間先生が反論を言わせないような警告をする。

ビッチははしゃいでいたテンションを落とし、着替えに行った。

 

 

そして新幹線の出発の時間になり、オレたちは乗り込む。

 

電車が出発し、オレたちは席に座る。京都まで時間がかかる。それまで何をするか・・・

そう考えていると前原が言い出す。

 

「人生ゲームやろうぜ。俺この為にボード持ってきたからよ」

 

「いいね」

 

「やろやろ」

 

班の皆も賛成してた。オレも賛成する。

 

オレは人生ゲームをルールを知らないのでルールの説明書を前原から借りて読む。

 

「綾小路、お前人生ゲームしたことないのか?」

 

オレが説明書を読んでいるのを疑問に思ったのか前原が聞いてきた。

 

「そうだな・・・聞いたことはあるがやったことがない」

 

オレがそう言うと皆が驚く。どうやら誰しも一度は経験するゲームのようだ。

 

不破が言う。

 

「じゃあ今日から極めて人生ゲームマスターを目指そう」

 

いや・・・そこまでやるつもりはないんだが。

 

そうしてオレたちはゲームを始める。

 

やってみると楽しくて夢中になってしまう。

そしてゲームが終わり、オレは4番という中途半端な順位だった。

 

「あ~楽しかった。綾小路君は楽しかった?」

 

1番になった中村がオレに聞いてきた。

 

「ああ、楽しかった。また機会があればやってくれるか?」

 

それを聞いた皆は笑っていた。

 

「そんなに固くならなくていいって、綾小路君って面白いよね」

 

「そうそう私たち仲間なんだし」

 

オレはクラスに馴染み始めている気がした。これだけで修学旅行を経験して良かったと思った。

 

「そう言えば殺せんせーは?」

 

オレたちが遊んでいる時殺せんせーはいなかった。 

 

「うわ!!!」

 

すると渚たちの班の所で叫ぶ声が聞こえてきた。

 

「なんで窓に張り付いている殺せんせー」

 

「ヌルフフフ、

 

「いやぁ、疲れました。目立たないように旅をするのは大変ですねぇ」

 

「てか外で国家機密がこんな目立っちゃ駄目じゃない?」

 

「その変装も近くで見るとバレバレだし」

 

ヅラと付け鼻で変装しているが、鼻の方はすぐに取れてしまう。すると菅谷が新しい付け鼻を殺せんせーに渡す。

 

「おお!すごいフィット感!!」

 

「俺こういうの得意なんだ。」

 

「すげーな菅谷」

 

皆が菅谷に注目している。確かに美術の才能とかはこの学校では表に出にくいからな。

 

「修学旅行でみんなの意外な一面とかこれからも見れるかもね」

 

茅野がそんなことを言う。

 

確かにそうかもしれない。オレは修学旅行が不思議なものだと思った。

 

オレたちは旅館に辿り着いていた。

 

「(ぐったり)」

 

「殺せんせー、一日目で瀕死なんだけど・・・」

 

「新幹線でグロッキーとは」

 

殺せんせーは乗り物に弱いようだ。今にも吐きそうな顔色をしている。

 

岡野がナイフを振り下ろしても当たらない。酔っていてもナイフは難なく避けれるようだ。

 

「・・・神崎さん、どう?日程表見つかった?」

 

「・・・ううん」

 

その近くで何やら困った様子の茅野と神崎のやり取りが聞こえてきた。

 

「神崎さんは真面目ですからね~、独自に日程表をまとめていたとは・・・でもご安心を。先生手作りのしおりを持てば全て安心」

 

「「それ持って歩きたくないからだよ」」

 

あんな重いもの持って歩く人はほぼいないだろう。

 

「確かにバッグに入れてたのに・・・どこかで落としたのかな?」

 

そうして、修学旅行一日目がおわる。

 

二日目班行動、オレたちは班行動だ。オレたちは映画村でチャンバラショーを見ている。

 

「間近だと刀の速度すげーな」

 

「早く魅せるよく練られた動きですねぇ。先生こういうの大好きなんです」

 

オレもこのチャンバラショーを見ていて面白いと思っている。ゆっくり見たいがオレたちにはスナイパーの暗殺のサポートをしなければならない。

 

「敵が優勢になった。先生危ないからこっち」

 

中村が殺せんせーをナイパーが打ちやすい場所に誘導する。

 

しかし殺せんせーは突然マッハでチャンバラに参加し始めた。チャンバラの衣装も着ていて、殺せんせーを知らない人から見てバレていない。

 

激しく動いていることにより、さすがのスナイパーも打つことができず、失敗に終わった。

 

 

 

暗殺が失敗し、殺せんせーは別の班の所へ行ってしまった。ここからは自由時間だ。

 

そしてオレたちは京都を満喫した。

 

「お土産屋によっていかない?」

 

中村が提案する

 

「いいね」

 

皆賛成しお土産を買おうと店に入る。オレも何を買おうか考えている時、電話が掛かってきた。奥田からだ。

オレは店を出て電話に出る。

 

「大変です。高校生の不良に襲われています」

 

奥田が小声で言う。恐らく奥田は隠れているのだろう。

 

他の人たちが殴られていることが電話の音で判断できた。

 

 

「隠れていることはいい判断だ。今は動かないほうがいい。落ち着くまで待っていろ」

 

しばらくして不良たちは去った。

 

「他の人は無事か?」

 

「カルマ君と渚君と杉野君は無事ですが、神崎さんと茅野さんが連れ去られてしまいました」

 

電話越しだが、赤羽がキレている。赤羽がやられるということは不意打ちでもされたんだろう。

 

「綾小路君どうしましょう、私何をすればいいのか」

 

茅野と神崎が連れ去られたことに慌てている。

 

「慌てることはない。誰か殺せんせーが作ったしおりを持っていないか?」

 

「はい。渚君が持っています」

 

「なら良かった。確かそれに拉致られたことについて書いているはずだ」

 

「・・・本当だ。僕達のやるべきことが書いてある」

 

潮田が少し安堵したように言う。

声だけでも少し落ち着いてきてることがわかる。

 

オレのできることはもうないので電話を切る。

 

電話を終え不破がこちらを不思議そうに見ていた。

不破も店から出ていたようだ。

 

「綾小路君って・・・」

 

「なんだ?」

 

「私と同じ種類の人だったのか?」

 

・・なんだ?突然何を言い出すかと思えば・・・

 

「なんのことだ?」

 

「今の電話の話を聞く限り他の班、綾小路君に電話をするということは奥田さん班が何かトラブルにあっている。」

 

どうやらオレの声を聞いてたようだ。しかもいきなり高レベルな推理を披露する。

 

「普通の人はそんなことがあれば慌てたり同様したりする。しかし綾小路君は何事も無かったように指示を出していた」

 

 

「つまり不破は非常事態の時に同様したりしないと?」

 

「そうよ。私漫画が好きでね、普段から漫画を読んでるとね、普通じゃない状況が来ても素早く対応できるのよ。つまり綾小路君も漫画が好きなんだね?」

 

同じ種類ってそういうことか。しかしオレは漫画というのをあまり知らない。人生ゲームとかもそうだがホワイトルームで切り捨てたものだからだ。

 

「悪いが不破、オレとお前は違う。オレはたまたま殺せんせーのしおりで見ただけなんだ。それが無ければ冷静でいられなかったさ。それに漫画というのも今まで少ししか読んだことがない」

 

「・・・そっか残念」

 

不破が少しがっかりした。しかしオレは漫画というのを読んで見たいと思った。漫画を読めば素早い判断ができるのかどうか気になった。

 

「もし良ければオレにおすすめの漫画を教えてくれないか?」

 

「いいの?やったーこれで仲間ができる」

 

不破の表情が明るくなった。

オレたちがそんな会話をしていたら中村たちが店から出てきた。

 

「あれ?二人はもう買ったの?」

 

そう言えば買ってなかった。

 

「ああ、ちょっと電話をしていてな。直ぐに買うから待っててくれないか?」

 

中村から許可を得てオレと不破は急いで買う。とていっても結局どれを買うか迷って時間がたつ。それを見ていた中村たちが笑っていた。

 

結局映画村のチャンバラのストラップを買うことにした。

 

奥田からメールがきて茅野と神崎が無事だということもわかった。

 

そしてオレたちは旅館に戻る。風呂から上がり、皆のいるところに行くと神崎がゲームをしていた。

 

「すごい手さばき、プロなみだ」

 

杉野曰わく相当上手いようだ。神崎も楽しそうにしており、先ほどの出来事が無かったかのようだった。

 

「「綾小路君」」

 

後ろから奥田と潮田に話しかけられる。

 

「先ほどのことはどうもありがとうございました。」

 

「皆無事だったんだな」

 

「綾小路君のおかげでパニックにならずに済んだよ」

 

「大したことはしていない」

 

オレは神崎や茅野を救ったり、不良たちを返り討ちにすることもしていない。

 

「でも普通あんな状況になったら慌てると思うけど」

 

赤羽も話に入ってくる。

 

「そんなことはない。しおりを見ていなかったらパニックになっていたところだ」

 

「でもすごいページ数だったよね?それを全部読んだの?」

 

「ぱらりと読んだだけなんだけどな」

 

「ふ~ん、そっか。」

 

赤羽は中間テスト以降オレを探るような目で見てくる。

一度に5人停学したことについて何か疑っている。

 

「まあいいや。おかげであいつらをボコボコにできたし」

 

赤羽が満足しながら言い他の皆のところに行ってしまった。不良たちが少し可哀想だと思ってしまった。

 

それからオレは奥田と潮田から先ほどの状況を詳しく聞いた。殺せんせーが助けにきて10人くらいの不良たちを難なく倒したらしい。マッハ20だから余裕か。

 

オレは思ったことを言う。

 

 

「殺せんせーはお前たちが連絡してからどのくらいの時間で来たのか?」

 

「一分くらいかな、なんか増援する不良たちを手入れしていたからね」

 

ということは連絡をしてすぐに来たということか。

やはりオレたち生徒を大切にしているということがわかる。

 

「やっぱり、殺せんせーはすごいな」

 

「そうだね。殺せるといいね。卒業までに」

 

「はい。絶対に殺しましょう」

 

 

 

殺せんせーは化け物だ。目も鼻も耳もいい。オレたち人間以上の機能をしている。

しかしさすがの殺せんせーも目の届かない所では助けることは出来ないということか・・・

これはいい情報だな。使えるかもしれない。

 

必ずあんたを殺すさ、殺せんせー。

 

 




読んでいただきありがとうございます。
誤字などがあれば訂正します。


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10:転校生の時間

律編です。


修学旅行も終わり、オレたちはいつも通りの学校へ通うこととなる。

 

鳥間先生から聞いたが今日は転校生が来るそうだ。この時期に来るということは殺し屋で間違いないだろう。

 

オレたちは教室に入ると奥の席に大きな四角い機械があった。

 

鳥間先生から説明を受ける。

 

「ノルウェーから来た自律思考固定砲台だ。」

 

無理やりな設定を恥ずかしげそうに説明する。鳥間先生に同情する。

 

そして一時間目の授業が始まる。すると突然自律思考固定砲台が動いた。機械の中から銃やマシンガンがでてきて、授業中にも関わらず、打ち始めた。しかし殺せんせーはチョークではじいたりして難なくよける。

 

「ヌルフフフ、これでは生徒たちと変わりませんねぇ。」

 

「はい次の段階に行きます。」

 

そして再び打ち始める。先ほどと同じ様だと思っている殺せんせーは再びチョークではじく。しかし次の瞬間殺せんせーの指が溶けた。どうやらブラインド(隠し弾)でダメージを与えたようだ。

 

殺せんせーや皆も驚いた表情をしていた。

 

「次で殺せる確率は0.002%その次は0.004%・・・卒業までに殺せる確率は99%」

 

この機械は自分で学習して殺せんせーを追い込むように作られている。そしてこれの開発者は殺したあとことも考えているように思えた。

   

ほとんど授業とは言えない一時間目が終わり、皆は床落ちている大量の対殺せんせーBB段を見て唖然としていた。

 

「これ俺たちが片付けるのか?」

 

「掃除機能とかついてーねのかよ、固定砲台さんよぉ」

 

松下の問に彼女の返答はない。

 

「チッ、シカトかよ」

 

「やめとけ。機械に絡んでも仕方ねーよ」

 

吉田が松下を抑える。

オレたちが何か言ったところで変わらないだろう。

 

そして掃除を終わらせる。

 

結局オレたちはこの後の授業も同じ様に自律思考固定砲台の荒れ狂う暗殺に巻き込まれた。

 

これから毎日同じように授業の邪魔をされるのか・・・。これで確実に殺せればいいが絶対にそんな事にはならないだろう。こんな簡単に上手くいくなら苦労しない。

 

 

 

次の日学校に着くと機械にガムテープで巻かれていた。

 

自律思考固定砲台はそれに気づいた。

 

「殺せんせー。これでは銃を展開できません。拘束を解いてください。」

 

「うーん、そう言われましてもねぇ」

 

殺せんせーは困ったように頭を掻いた。

 

「この拘束はあなたの仕業ですか?明らかに生徒に対する加害であり、それは契約に禁じられています。」

 

「ちげーよ、俺だよ」

 

言ったのは寺坂だ。ガムテープを見せつけ不満そうに言う。

 

「どう考えても邪魔だろーが。常識くらい身につけてから殺しに来いよ」

 

「わからないよね。機械だから。」

 

「授業が終わったらほどいてあげるから」

 

他の皆も止めず、むしろ黙認していた。

 

結局今日の授業は寺坂の妨害によって昨日みたいになることはなかった。

 

 

今日の授業が終わり、オレはガムテープをはがすと言って教室に残っている。

 

「私も手伝うよ、綾小路君」

 

そしてなぜか不破も残っていた。

 

「なんで、不破も残っているんだ?」

 

「綾小路君が残るから私も残ろうかなって、それにこのまま自律思考固定砲台に妨害したたままでは開発者も黙ったままじゃないしね」

 

不破もわかっていたようだ。このまま暗殺を邪魔することはできないだろう。

 

「なんとかならないかな~」

 

不破は対策方を思いつかず、困っていた。

オレは考えていた案を言おうとしたが気配を感じ、口を閉じる。それと同時に突然機械が動き始める。

 

「マスター、至急対策をお願いします。」

 

オレたちの予測通り、開発者に連絡しようとする。

 

「駄目ですよ保護者に頼っては。」

 

言ったのは殺せんせーだ。先ほどのオレが感じた気配は殺せんせーだったようだ。

 

「あなたの保護者が考える戦術はこの教室の現状に合っているとは言い難い。それにあなたは生徒であり転校生です。皆と協調する方法をまず自分で考えなくては」

 

「・・・協調?」

 

「なぜ先生ではなく生徒に暗殺を邪魔されたかわかりますか?」

 

「・・・わかりません」

 

「では、綾小路君。答えてください」

 

突然殺せんせーはオレに回答を求める。

ここで模範的な回答は・・・

 

「オレたちにメリットがないからですかね?」

 

「そうです。彼らにしてみれば君の射撃で授業を邪魔される上、君が撒き散らした弾の始末に労力を使う。しかも君が殺せても賞金は君の保護者に行くでしょう。あなたの暗殺は他の生徒には何のメリットも無いわけです」

 

「・・・そう言われて理解しました。殺せんせー、クラスメイトの利害までは考慮していませんでした。」

 

自律思考固定砲台は学習能力が高い。今の説明で理解する。

 

「綾小路君と不破さんも手伝ってください。彼女を性能アップさせます」

 

危害を加えるのは契約違反だが性能アップさせることは禁じられていない。

 

殺せんせーがマッハでプログラムを組む。どうやら殺せんせーはプログラムもできるそうだ。

 

 

「凄いよ殺せんせー、律も手入れしちゃうんだ」

 

 

不破が言う。本当に何でもできる殺せんせー。オレは一つの疑問が出てくる。

それはいつその知識を手に入れたのか・・・。 

まだそれはわからないだろう。

 

オレもホワイトルームで学習しているからプログラムについて理解している。

 

オレたちは殺せんせーの後ろで手伝いをしている。殺せんせーが組むプログラムを見るとオレたちクラスメイトと協調して射撃した場合の演算ソフトを作っていることがわかる。

 

「できました。ウイルスは入っていませんので受け取ってください。」

 

完成したそうだ。殺せんせーはそれを律に渡した。

 

「・・・これは!!たしかに皆で協力したほうが暗殺確率が各段と上がります」

 

「暗殺における協調の大切さを理解できたと思います。どうですか?皆と仲良くなりたいでしょう」

 

「・・・方法がわかりません」

 

「ヌルフフフ、安心してください。今からさらに性能アップさせます。」

 

マッハでドライバーなど様々な道具を持ってきた。

 

「綾小路君と不破さんはもう帰ってください。これ以上いるともう夜になってしまいますから」

 

「わかりました」

 

そうしてオレと不破は教室を出て家に帰る。

 

さらに次の日、教室に入るとやはり改造されていた。

 

そして電源がついた。

 

「おはようございます。皆さん。今日は素晴らしい天気ですね。こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです」

 

にこやかな表情であいさつをしてきた。皆は驚いた表情をしている。それはそうだろう。明らかに昨日までとは違うのだから。

 

「親近感を出すため全身表情液晶と体・制服のモデリングソフト、全て自作で8万円!!豊かな表情や明るい会話術、それらを操る膨大なソフトと追加メモリ12万円、先生の残高5円」

 

殺せんせーが後ろで言う。というかそこまで改造するとは思わなかった。

 

授業中に銃を撃つことなく平穏に過ごし、空き時間になる。

 

思いのほか大人気でクラスの皆が自律思考固定砲台に集まり、遊んでいた。

 

「このこの呼び方決めない?自律思考固定砲台っていくらなんでも」

 

片岡が皆に提案する。

 

「・・・何か一文字とって・・・律とかは?」

 

不破が言う。安直だが、悪くないと思った。

 

皆も律賛成のようだった。

 

「嬉しいです。では律とおよびください」

 

これで平穏な日常になると思いたいが、所詮は機械。これを見て開発者が黙ってはいられないだろう。

 

次の日、オレの予測通り律は元に戻っていた。無駄なものを削除や初期化されたのだろう。

 

「生徒に危害を加えないという契約だが、今後は改良行為も危害と見なすと言ってきた。」

 

鳥間先生が説明する。そして寺坂の所まで行きガムテープを奪う。

 

「そして君たちもだ、彼女を縛って壊れたりしたら賠償を請求するそうだ」

 

開発者は殺せんせーが改良することやオレたちが妨害することもできなくなるようにした。

これでまた律が転校した初日みたいに戻るというわけか。

 

 

「開発者とはこれまた厄介で・・・親よりも生徒の気持ちを尊重したいのですがねぇ」

 

さすがに殺せんせーも困った表情をしていた。

 

「攻撃準備を始めます。どうぞ授業に入ってください。殺せんせー」

 

そして一時間目が始まり機械が動き始める。また銃を展開されるかと思いきや、花が出てきた。

 

「殺せんせーは私のボディーに計985点改良しました。そのほとんどが削除、撤去、初期化してしまいました。しかし私個人は『協調能力』が必要不可欠だと判断し、消される前にメモリの隅に隠しました」

 

「素晴らしい律さんあなたは」

 

「はい。私の意志で親に逆らいました。殺せんせー、こういった行動を反抗期というのですよね。私は悪い子でしょうか?」

 

「とんでもない、中学三年生らしくて大いに結構。」

 

問題が解消されてよかった。

 

 

・・・もし律が開発者に反抗せず、転入初日と同じ様に戻っていたら・・・

 

殺せんせー程派手ではないが、オレたちに有利になるようにプログラムを組むつもりだったのだが・・・。

 

改良行為をしていけないのは殺せんせーだけだ。そしてオレたちは故障さえさせなければいいだけだからオレの改良行為は許される。

 

まあオレが手を打つ必要がなくなったわけだからもう関係ないが。

 

 

 

こうしてE組にメンバーが一人増えた。

 

 

 




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11:LとRの時間

「日本にもいるでしょう。マジヤベーとかだけで会話できる人が」

 

オレたちは今ビッチ先生の英語の授業を受けている。実戦的で面白く、生徒の心をつかんでいる。

 

「例えばreallyとかよ。ほら木村、言ってみて」

 

木村が当てられる。

 

「り、リアリー」

 

「はいダメ。LとRがごちゃごちゃ。日本人には難しいけど苦手を克服しないといけないの。それができなかったら公開ディープキスよ」

 

チャイムが鳴り授業が終わる。

 

 

オレは奥田と本校の図書室に行く。あれから奥田と一緒に行くことになった。

 

「ビッチ先生の授業わかりやすいですよね」

 

「そうだな、それに暗殺の経験を生かした授業は面白い。」

 

オレたちが会話していると、二人の生徒がこちらの方に近いて来る。その生徒は潮田と赤羽だ。

 

「あれ?綾小路君と奥田さんも図書室行くの?」

 

「ああ、そうだが・・・赤羽たちも行くのか?」

 

「うん、そうだよ。一週間後のヒーローの映画の本を借りようと思ってね。よかったら一緒にいかない?」

 

「いいですよ。皆さんと行きましょう」

 

オレも頷き4人で行くことになった。

 

 

そして本校に着く。やはりオレが一人で来ていた時とは違い、本校の人達がこちらの方蔑むような目で見てくる。

 

奥田もそれを感じ取り、堅い表情をしている。あれから何回か一緒に図書館に行ったが、そう簡単に慣れることではない。

 

「やっぱり怖いよなー、学校全体が敵にしか見えなくなっていまう」

 

「はい、怖いです。ですが皆さんがいるので大丈夫です」

 

奥田は少し前とは違う。仲間が増えたことにより皆で戦える。

 

 

 

図書室に着いた。ここでオレたちは本を借りる。暗殺に繋がる物もあるかだろうか、最近奥田は自分から進んで読むようになった。

 

赤羽と潮田はヒーロー物の本を読んでいた。映画で近いうちに上映されるらしい。

 

 

オレたちは本を借りて本校から出て、家に帰ろうとする。

 

「また一緒に暗殺しましょう。試したくて仕方がありません」

 

 

奥田がそんなことを言う。

 

「あはは、奥田さん。面白いこと言うね。俺と暗殺すればもっと面白くなるよ」

 

赤羽が言う。なんというか、赤羽と奥田を合わせたらダメな気がするのはオレだけだろうか。

 

潮田も苦笑いしている。

 

「でも確かに今なら皆がいるから大規模な暗殺ができるだろうな」

 

前までは協力できる人が少なかったが、今ならそんなことはないだろう。

 

「はい!!みんなで殺りましょう」

 

オレたちは家に帰った。

 

 

次の日、体育の授業でビッチ先生と知らないおじさんが対先生ナイフを持ちながら鳥間先生の方をじっと見ていた。

 

聞くところ世界各国の殺し屋を生み出す人らしい。ネームはロヴロだそうだ。

 

その2人が鳥間先生にを狙っている。先にナイフを当てる勝負をしているそうだ。そしてビッチ先生が負けたらE組の先生を止めるらしい。

 

 

体育の授業が終わり、わざとらしい笑顔なビッチ先生が近づいてくる。

 

「カラスマお疲れ様~。お茶飲む?」

 

・・・絶対何か入っている。

 

誰が見てもそれは明らかだった。

 

 

「恐らく筋弛緩剤だな。動けなくしてナイフを当てる。

・・・言っておくが近づく間合いにさせないぞ」

 

鳥間先生も当然警戒いているのでビッチ先生の暗殺が失敗に終わる。

 

体育の授業が終わる。

 

「・・・ビッチ先生」

 

「さすがに俺たちでもバレバレだよビッチ先生」

 

皆が呆れたようにビッチ先生に言う。

 

「だって身内だとなんかぎこちなくなっちゃうもん。

例えばあれよ、キャバ嬢で働いていて偶然父親が客だったらぎこちなくなるでしょ?それと同じよ」

 

((知らねーよ。))

 

オレたちが心の中でツッコんだ。

ビッチ先生は顔見知りに色仕掛けをする事が苦手のようだ。

 

昼休み、赤羽が面白いのがあると言って教室の窓から鳥間先生の方を指す。鳥間先生は昼休み、大体木の下とかで過ごしている。そこにビッチ先生が近づいていく。

殺る気だ。

 

 

ビッチ先生が上着を脱いで鳥間先生に色仕掛けをする。当然通用しない。というか相手にしていない。しかし突然鳥間先生が罠に引っかかり、崩れる。

 

色仕掛けをすると見せかけてワイヤートラップを仕掛けていたのだ。

 

「おおー!!」

 

「やるじゃんビッチ先生!!」

 

クラスの皆が驚く。だが不思議なことではない。授業でビッチ先生に、苦手を克服するためにひたすら逃げずに挑戦しなさいと言われていた。たまに学校に残っているときに見たがビッチ先生が影で努力していた。ワイヤートラップの苦手をそれで克服したのだろう。

 

 

そして鳥間先生の上に馬乗りしてナイフを刺そうとするがギリギリで止められる。失敗したと思いきや、二人で何か話しをして鳥間先生が諦めて降参した。

 

ビッチ先生が残ることが確定した。

 

 

 




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12:転校生の時間2時間目

イトナ編です。


「おはようございます」

 

今日は二人目の転校生が来る。

 

「ヌルフフフ、前回の律さんの時は甘く見ていましたが、今回はそうはいきませんよ」

 

殺せんせーも十分警戒していた。

 

「同じ暗殺転校生として何かしらないの?」

 

原が律に聞く。

 

「本来私と2人で同時に転校する予定でした。しかし二つの理由で予定が変わりました。」

 

律が皆に説明し始める。

 

「一つ目は彼のメンテナンスにより時間が遅れたこと。そして二つ目は・・・私の性能では彼のサポートに不十分だから」

 

殺せんせーにダメージを与えた律でさえその扱いとは・・・皆の表情が強ばる。

いったいどんな転校生がくるのか。

 

 

すると突然ドアが開く。オレたちは全員教室にいる。

つまり転校生だ。

 

入ってきたのは全身真っ白の着物。頭も同じく白い布で覆われていて、眼光だけが見える。

 

彼は教室に入り、すっと手を前に伸ばす。そして鳩が出た。身構えていたほとんどがそれに驚いていた。

 

「ごめんごめん、驚かせたね。転校生は私じゃないよ。私は保護者、まあ白いし・・・シロとでも呼んでくれ」

 

その男は軽く笑っていた。

 

転校生ではなかったようだ。彼は自己紹介を終え立ち止まった。そして誰かを見つめている。

 

ここからじゃよく見えないが渚たちがいる方を見ていた。

 

「何か?」

 

「いや~皆、いい子そうですな~。これならあの子も馴染みやすそうだ。では紹介します。おーい!イトナ、入っておいで」

 

シロがそう言うとちょうどオレの席の後ろからの気配が大きくなっていく。まさかな・・・

 

 

 

ドカンッ!!

 

 

 

すると転校生はドアからではなく、後ろの壁を粉砕して入って来た。

 

「「いやドアから入れよ!!」」

 

「俺は勝った。この教室の壁より強いことが証明された」

 

イトナがブツブツとつぶやく。また癖の強い転校生が来たものだ。

 

「堀部イトナだ。名前で呼んであげて下さい。あぁそれと、私も少々過保護でね。しばらくの間は彼のことを見守らせてもらいますよ」

 

それにしても・・・

 

「ねぇイトナ君、ちょっと気になったんだけど。今外から手ぶらで入って来たよね。外どしゃ降りの雨なのに・・・なんでイトナ君は一滴たりとも濡れてないの?」

 

そうだ。大雨なのにイトナは全く濡れていなかった。

 

するとイトナは回りをキョロキョロ見てから赤羽に言う。

 

「・・・お前はたぶんこのクラスで一番強い。けど安心しろ。俺より弱いから、俺はお前を殺さない」

 

イトナはクラス全体を見て赤羽が一番強いと思ったようだ。それにしても妙に殺気立っている。

 

「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれない奴だけ」

 

席から立ち上がり、殺せんせーへと近づいていく。

 

「この教室では、あんただけだ」

 

「強い弱いとはケンカのことですか?力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」

 

「立てるさ」

 

手が届く距離まで迫り、イトナは殺せんせーを見上げた。

 

「だって俺たち、血を分けた兄弟なんだから」

 

「「き、き、き、兄弟ーーーー!?」」

 

「負けた方が死亡な、兄さん」

 

衝撃的な発言を残し、放課後に勝負だと言ってからみんなの視線は彼に釘付けになっていた。

 

 

 

昼食事・・・

 

イトナは凄い勢いで甘いものを食べていたり巨乳グラビア雑誌を読んでいた。殺せんせーと同じか・・・。

 

兄弟が真実なのか、それとも殺せんせーを動揺させるためか、それはまだわからない。それにイトナが雨で濡れていないのも無視できない。

 

まあどちらにせよ放課後になればわかることだ。

 

 

放課後

 

机が並べ変えられ、四角い枠となって、教室の中心に闘技場が出来上がった。

 

オレたちは教室の隅っこで中心にいるイトナと殺せんせーを見守る。

 

「まるで試合だ。こんな暗殺仕掛けたのは初めてだ。」

 

「ただの暗殺は飽きているでしょ殺せんせー。ここはひとつルールを決めないか?リングの外に足が着いたらその場で死刑!!どうかな?」

 

シロがルールを提案した

 

「なんだそりゃ負けたって誰が守るんだよそんなルール」

 

「いや、皆の前で決めたルールを破れば先生としての信用が落ちる。殺せんせーには意外と効くんだ、あのての縛り」

 

杉野の言った言葉を赤羽が否定する。殺せんせーの性格を考えたら赤羽の言う通りで間違いないだろう。

 

「良いでしょうただしイトナ君、生徒に危害を加えてはいけませんよ」

 

 

「分かった。では、試合…開始!」

 

 

 

その瞬間、何かが弾け飛んだ。そしてオレたちの目は、ただ一箇所に釘付けになった。

 

 

弾け飛んだ殺せんせーの触手ではなく。イトナの生やしていた触手に。

 

 

なるほどな。兄弟とはそういうことか。

全部触手で弾けるから雨の中でも濡れていなかったという訳だ。

 

殺せんせーから殺意を感じる。

 

 

「どこで、どこでそれを手に入れた…、その触手を!」

 

 

殺せんせーは顔を真っ黒にして怒っていた。

 

 

 

「君に言う義理はないよ殺せんせー。でもこれで分かっただろう。生まれも育ちも両親も違う。けれど君とイトナは正真正銘の兄弟さ。しかし、随分怖い顔をするねえ。嫌な事でも思い出したかい?」

 

 

全て知っているような口でシロは言う。

 

「シロさん、どうやら貴方にも話を聞く必要がありそうだ。」

 

「聞けないよ。死ぬからね」

 

シロの袖口から紫色の光が放たれる。その光が殺せんせーに放射された瞬間、硬直した。

 

「!?」

 

「この圧力光線を至近距離で照射すると、一瞬全身が硬直する。全部知っているんだよ、君の弱点はね」

 

そして硬直した殺せんせーをイトナが攻撃する。

 

 

「殺ったか?」

 

「いや、上だ」

 

殺せんせーは天井にいる。脱皮で回避したようだ。

 

だがシロは予想通りといった顔をしている。

 

「でもね殺せんせー、その脱皮にも弱点があるのを知っているよ」

 

そして再びイトナによる攻撃が始まる。殺せんせーはギリギリで避けている。先ほどよりもスピードが落ちている。

 

「その脱皮は見た目よりもエネルギーを消耗する。自慢のスピードも低下するのさ。加えて腕や足の再生も結構体力を使うんだ。」

 

シロの言っていることは本当のことだろう。事実殺せんせーはかなり焦っている。

 

「また触手の扱いは精神状態に大きく左右される。今現在どちらが優勢か、一目瞭然だろうねー」

 

潮田は対先生ナイフを強く握りしめて悔しがっている。他の皆もそうだ。当然だろう。自分たちの手で殺したいのだから。

 

「さて、次のラッシュにも耐えられるかな?」

 

「ここまで追い込まれたのは初めてです、一見愚直な暗殺ですが実に周到に計算されている。あなた達に聞きたいことは多いですが、まずは試合に勝たねばなりませんねー」

 

殺せんせーは当然のように勝つつもりでいる。先生の残りの体力的に勝つ方法・・・あるにはある。

 

「まだ勝つ気かい?負けダコの遠吠えだねー」

 

そう言うシロに殺せんせーは指をさす。

 

「シロさん、この暗殺方法を計画したのはあなたでしょうが・・・ひとつ計算に入れ忘れている事があります」

 

「無いね。私の性能計算は完璧だから」

 

シロは自信満々に言う。今のやり取りで確信した。勝つのは殺せんせーだ。

 

「殺れイトナ」

 

シロの指示でイトナが殺せんせーに攻撃をするが殺せんせーは避ける。すると次の瞬間イトナの触手にダメージが入った。

 

床に対先生ナイフが落ちていたからだ。マッハで潮田のナイフを奪って床に置いたのだ。同じ触手だから同じようにダメージを受ける。

 

殺せんせーは触手を失い同様しているイトナに脱皮した皮を被せて外に放り投げた。

 

ルール上、イトナが敗北したことになる。

 

「先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせば君は死刑。もう二度と先生をやれませんねぇ」

 

殺せんせーは舐めた顔をしながら言う。

 

そしていつもの表情に戻る。

 

「生き返りたければこのクラスで皆と一緒に学びなさい。性能計算では簡単に計れないもの、それは経験です。この教室で経験を盗まなければ君は私には勝てませんよ」 

 

「勝てない・・・俺が、弱い・・・?」

 

殺せんせーの言葉でイトナの様子がおかしくなった。

 

黒い触手。完全にキレている。そしてイトナが勢いで殺せんせーに向かっていく。

 

しかし殺せんせーの所までたどり着くことはなく、イトナは倒れてしまった。シロが麻酔針を撃ったからだ。

 

「すみませんねぇ、殺せんせー。どうもこの子はまだ登校できる精神状態じゃなかったようだ。転校初日になんですが、しばらく休学させていただきます」

 

 

イトナを抱えながら言うシロを殺せんせーが止めようとする。シロの白衣に触手が触れた瞬間、殺せんせーの触手が溶ける。

 

「対先生繊維、君は私に触手一本も触れられないよ。じゃあね、殺せんせー」

 

そう言ってシロとイトナが教室をでた。

 

皆は静まっていた。恐らく聞きたいことがあるからだ。

 

オレは鞄を持ち廊下に向かって歩き出す。

 

「何処へ行くの?綾小路くん」

 

「用事があるから帰る」

 

今は放課後、授業は終わっている。竹林とかも帰っているしな。オレも情報を得たいが、後でいくらでも聞ける。

 

それよりも優先することがある。

 

オレはシロを追いかけるため教室を出る。

 

そして外に出てシロを見つけ、オレは話かける。

 

「どうしたんだい?綾小路・・・だったか。先ほどのことで怒っているのかい?」

 

 

「いや、そうじゃない。少し確認したいことがあってな」

 

「なにかな?」

 

「あんた、殺せんせーを作った人だろ?」

 

オレがそう言った瞬間、少し動揺したのがわかる。

 

「・・・どうしてそう思ったのかい?」

 

「単純ですよ、あんたは殺せんせーの触手の性質や性格などを詳しく知っていた。それにイトナが触手を出した時に殺せんせーがキレていた。過去に何かあったとしか思えない」

 

そして先ほどのシロの自信、自分が絶対だと思っている人だ。月を爆破させた失態を殺せんせーを殺すことで取り戻すといったところか。

 

シロが黙っている中オレは話を続ける。

 

「安心してください。それを他人に言うつもりはありません」

 

「なぜだい?」

 

そう言うオレにシロは不思議そうにしていた。

 

まあ、話したところで意味がないからな。

 

そしてオレは本当の狙いをシロに話す。

 

「ふはははは、綾小路君、君も本当に面白い生徒だね。そんなこと言うとは思わなかったよ」

 

先ほどまでとは違い、シロが笑いながら言う。

 

「いいよ、その話、乗ってあげるよ」

 

答えは決まっていたかのようにシロは言い、去っていった。

 

それにしても『君も』か・・・。シロが言うオレ以外の『面白い』人とは一体誰なのだろうか。

 

恐らくシロが教室に入った時にジッと見ていた人だろう。

 

そして、一目見ただけでそう言える理由はなんだ?

 

それを明かすためにもオレはシロを利用する。

 

オレは殺せんせーを殺すたの一手を打った。

 

 




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13:野球の時間

野球です。


梅雨が明け、暑くなってきた。

 

「クラス対抗球技大会ですか・・・健康な心身をスポーツで養う、大いに結構」 

 

球技大会、3年生全生徒のイベントの一つだ。

 

「ただトーナメント表にE組がないのはなぜです?」

 

「E組はエントリーされないんだ。1チーム余るという素敵な理由で。その代わり、大会の最後にエキシビジョンに出なきゃいけない」

 

トーナメント表の隅のところに確かに書かれていた、『E組対野球部』と。

 

つまり見せ物だ。男子は野球部と、女子はバスケ部と戦わなければならない。

 

「・・・なるほど、いつものやつですか」

 

殺せんせーが言うと寺坂グループが席を立つ。

 

「俺ら晒し者とか勘弁だわ、お前ら勝手にやっとけ」

 

寺坂がそう言って教室から出ていく。寺坂グループはこの教室にあまり馴染めていない。彼らがクラスの為に全力で挑めば大きな戦力になるんだけどな。

 

「野球なら頼れるのは杉野だけど、何か勝つ秘策とかねーの?」

 

前原の質問に杉野は首を振る。

 

「無理だよ。三年間野球してきたあいつらと、ほとんどが未経験の俺ら。勝つどころか勝負にならないね。それにさ、かなり強いんだ、うちの野球部」

 

この学校の野球部は強い。大会で表彰をもらうほどだ。

 

 

「でもさ、殺せんせー俺たち勝ちたいんだ。このE組で」

 

相手が強いことをわかった上で杉野が言う。

 

「ヌルフフフ、イトナ君の暗殺以降君たちは目標をはっきり言うようになりました」

 

そして殺せんせーはマッハで野球のコスプレをする。

 

「いいですよ。先生一度はやってみたかったんです。熱血教師」

 

見事にちゃぶ台まで用意している。・・・随分とノリノリだな。

 

「いいでしょう。その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう!!」

 

そして球技大会当日。

 

 

『それでは最後に……E組対野球部選抜の余興試合エキシビションマッチを行います』

 

 

放送後に入って来た野球部のメンバーは念入りにウォーミングアップを始める。

 

「何であんな気合い入ってんだよ」

 

「俺等相手じゃコールド勝ちで当たり前最低でも圧勝が義務だからな。マジで容赦なくるぞ」

 

向こうは向こうで活躍したい訳か・・・。

 

「そういえば殺監督は?」

 

菅谷がオレに聞く。

 

「・・・遠近法でボールに紛れ込んでいるな」

 

オレはいくつか転がっているボールの方を指しながら言う。潮田から聞いたが顔色とかでサインを出すらしい。

 

そして殺せんせーはサインを出す。潮田曰わく『殺す気で勝て』・・・だそうだ。

 

「確かに俺等にはもっとデカイ目標がいるんだ。奴等程度に勝てなきゃあの先生は殺せないな」

 

磯貝が言い、皆が顔を引き締める。

 

「よっしゃ!!殺るか!!」

 

「「おう!!」」

 

先行はE組、一番は木村。杉野以外は野球未経験、野球部の人達は明らかに舐めている。

 

一球目、進藤が投げる。急速の速さに木村は冷や汗をかいて棒立ちになってしまう。

 

進藤の球の速さは140キロ、中学生のレベルを超えている。

 

速いと思いつつもどこ呑気な木村。ふと殺監督の方を向くと早速指示を出して来た

 

 

(りょーかい)

 

理解した木村はバットを構え直した。

 

 

進藤は2球目を投げるこれもストライクになると思っていた観客達だが木村はバントの構えをしてボールに当てた。

 

『あーっとバントだ‼︎しかも良い所に転がしたぞ‼︎』

 

 

内野手は誰が捕るかで一瞬迷った。その一瞬さえあれば俊足の木村なら楽々とセーフにできた。

 

そして二番は潮田、進藤が投げたストレートに同じくセーフティーバントをする。

 

「今度は三塁線に強いバント!!前に出てきたサードが脇を抜かれた!!」

 

強豪とはいえ中学生、バントの処理もプロ並とはいかない。

 

まあ、向こうはこちらが狙った場所にバントできるなんて思ってもいなかったのだろう。当然だ、バントをするのは見た目に反して難しいからだ。

 

ではなぜ素人ができたか・・・それは殺せんせーで練習したからだ。オレは竹林と偵察していたからしていないが。

 

300キロで投げたり、分身で守備をしたり、囁きで集中力を乱したり、とにかく無茶苦茶な練習をした。

 

あまりにも早い球に見慣れたことで進藤の球が止まって見えるようになり、バントだけなら成功できるというカラクリだ。

 

野球部も焦り、試合の空気が変わり始める。

 

三番の磯貝もセーフティーバント、これでノーアウト満塁。そして・・・

 

四番は杉野、自信満々にバントを構える彼に対して、相手のピッチャーは明らかに動揺していた。

 

進藤は落ち着こうとして、球を強く握る。そして、一度深呼吸して、投げた。

 

だが、動揺が原因でコースとスピードが甘い。

 

杉野はそれを見逃さず、持ち方をバントから打撃に変え、打った。

 

球は外野を抜け、スリーベース。E組は一気に3点を獲得した。

 

このままいけば勝てる。そう思ったのもつかの間、理事長が来たのだ。

 

そして相手の監督に何か囁いた。そして野球部の監督が泡を吹いて倒れてしまった。

 

『えー只今入った情報によりますと野球部の顧問の寺井先生は試合前から重病で、部員達も先生が心配で野球どころではなかったとのこと』

 

上手いな・・・観客達にそう思わせることで空気がリセットされる。実際に監督が倒れているから信憑性を持たせることができる。

 

『それを見かねた理事長先生が急遽、指揮を執るそうです‼︎』

 

理事長が指揮を執ることでどうなるか・・・見せてもらうとしよう。

 

そして試合が再開する。

 

『なんと、これは!?』

 

外野選手を含めた守備全員が内野に集まる。本来ならこんなことをすればバッターの集中を阻害する極端な前進守備として審判による注意があるだろうが、審判はあちら側、注意するはずがない。

 

理事長が来たということはこちらが勝つのを阻止しようとしているということだ。自分の教育理念のために。

 

まあ、オレからE組の対応に集中してくれるとこちらも楽になるんだが。

 

前原がバッターボックスに立つ。練習したバントをしようとするが理事長に教育された進藤の威圧感から上に打ち上げてしまう。

 

続く岡島もバントでは難しいと考えて殺監督に指示を仰いだのだが、打つ手なしという返事に為すすべもなく討ち取られて3アウト。

 

 

一回裏、杉野の変化球とコントロールの良さで三者三振で終わる。杉野も十分強い、野球部にも通用するほどだ。

 

「ひょっとしたらこのまま勝てんじゃないか?」

 

「どーだろうな、あちら側のベンチで理事長が進藤を改造中だ」

 

理事長はベンチで進藤を改造している。正確には進藤の精神をだが。先ほどから理事長の言葉を繰り返して何度もブツブツと呟いている。このままいけばますますE組が不利になるだろう。

 

二回表、九番赤羽、しかし赤羽は打席につこうとせずに理事長に話しかける。

 

「こんだけ邪魔な位置で守ってんのにさ。審判の先生も注意しないの…観客(お前ら)もおかしいと思わないの?あー、そっか。お前らバカだから守備位置とか理解してないんだ」

 

赤羽が突然煽り始める、そんなことすると・・・

 

「小さい事でガタガタ言うなE組が!」

 

「たかだかエキシビジョンで守備にクレームつけてんじゃねーよ!」

 

「文句あるならバットで結果出してみろや!」

 

当然怒る。そして赤羽は殺監督の方を見てダメだったというような顔をする。それに対して殺監督はそれで良いというように顔に丸を出している。赤羽の煽りは殺監督の指示ということだ。

 

そして二回裏、改造された進藤が杉野の球を打ってツーベース。そこから流れるように打たれ2点取られてしまった。

 

三回表、E組は一人も累に出ることなく攻撃が終わってしまった。

 

三回裏、あと1点以上取られたらオレたちの勝ちが無くなる。ここでどう守かで試合が決まる。

 

 

「手本を見せなさい」

 

突然理事長が大きな声で言う。そして杉野が投げた瞬間バントの構えをする。

 

「ああっと!!ここでバントだー!!」

 

先ほどの仕返しと言わんばかりの連続のバント、こちらの戦術を丸々返された訳だ。しかも守備は全く練習していないから楽々セーフにされてしまう。

 

そして・・・

 

『さぁ、真打登場!我が校が誇るスーパースター進藤君だー‼︎』

 

このノーアウト満塁の状況にきて理事長が改造した進藤、ここで強者の圧倒的な一撃で試合を決めるつもりだ

 

止めなければ確実に負ける。

 

「磯貝、監督の命令だって」

 

「マジっすか」

 

そんな中赤羽が磯貝に言う、そしてバッターの方へ近づいていく。

 

『こっこの前進守備は!!』

 

「さっきそっちがやった時は審判は何も言わなかった。文句無いよね理事長?」

 

先ほどの挑発はこのためだったということだ。

明確な打撃妨害と見なすには守備がバットに触れた時だが、このような前進守備が集中を乱す妨害行為と見なすかは審判の判断次第である。しかし先程カルマのクレームを脚下した以上今回も黙認するしかない。

 

「どうぞご自由に、選ばれた者はこの程度で心を乱さない」

 

理事長の言うとおり進藤は全く表情を変えず集中している。

 

「へーえ、言ったね。じゃあ遠慮なく」

 

そして赤羽と磯貝はさらに近づく。バットを振れば当たる、ほとんどゼロ距離だ。

 

「は?」

 

ここで進藤はようやく動揺した。

 

「気にせず打てよスーパースター、ピッチャーの球は邪魔しないから」

 

「フフ、くだらないバッタリだ。構わず振りなさい、進藤くん。骨を砕いても打撃妨害を取られるのはE組の方だ」

 

理事長の指示でやけくそ気味にバットを振り抜いた進藤だったが、赤羽と磯貝は余裕でそれを躱した。

 

「ダメだよそんな遅いスイングじゃ。…次はさ、殺すつもりで振ってごらん」

 

追い討ちをするように赤羽が静かに煽る。 

 

この時点でもはや理事長の戦略に体がついていかないようになってしまい、第二球はどうにか振るが腰が引けたスイングになる。ホームベースに当たってバウンドしたボールをすぐにキャッチャーの潮田に投げ、そのボールを三塁に投げツーアウト。そしてそれを一塁に投げる。進藤は完全に力が抜けへたり込んでしまい動いてないポンポンとバウンドするボールを冷静にキャッチ。トリプルプレーだ。

 

三対二でこちらが勝利した。

 

理事長は試合が終わると無言で立ち去っていった。

今回の理事長を見せてもらったが中々のものだ。生徒を眼力言葉で洗脳し、普段以上の能力を出させる。もちろんあれが全てではないだろうが。まあ、理事長の洗脳とやらを見れただけでも良しとしよう。

 

 

こうして野球部との試合が終わった。

 

 

 

 

 




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14:才能の時間

「視線を切らすな。ターゲットの動きを予測しろ。全員が予測すれば、それだけ奴の逃げ道を塞ぐことになる」

 

皆がナイフを振っている中、鳥間先生からのアドバイスが飛んでくる。

 

六月になり、鳥間先生にナイフを当てることができる生徒が増えてきた。

 

男子は磯貝と前原の二人ペア、そして赤羽一人、女子は岡野と片岡の二人ペアだ。

 

鳥間先生にナイフを当てれなくても全員能力が向上している。

 

寺坂、吉田、村松はやる気がないが全力でやれば大きな戦力になるだろう。

 

そう考えていると突然鳥間先生は彼の後ろにいた潮田を全力で振り払った。いつもならもう少し手加減をしているのだが。

 

「いったぁ」

 

「すまん!ちょっと強く防ぎすぎた」

 

「バッカでー。ちゃんと見てないからだ」

 

潮田には不思議な才能がある。川柳を提出するときに暗殺したとき、時々感じる殺気もそれを感じた。そして鳥間先生も潮田の異質さに反射したのだろう。

 

そう考えているとチャイムがなる。

 

「せんせ~。放課後、皆でお茶してこうよ~」

 

チャイムと共に去って行く鳥間先生に倉橋が声をかける。

 

「誘いは嬉しいがまだ仕事が残っていてな」

 

「私生活でもスキがね~な」

 

「なんか鳥間先生って私たちと距離があるっていうか・・・」

 

「私たちの事、大切にしてくれてるけど・・・でもそれってただ任務だからなのかな?」

 

矢田と倉橋がそう言うと砂場で遊んでいた殺せんせーがやってきた。

 

「そんなことはありません。確かにあの人は先生の暗殺のために送り込まれた工作員ですが、彼にもちゃんと素晴らしい教師の血が流れていますよ」 

 

殺せんせーが自信を持って言う。

 

鳥間先生が教室へ向かうと見知らぬ人が大荷物を持ってこちらに歩いて来た。そしてオレたちの前まで来ると荷物を置いて笑顔で挨拶してくる。

 

「やっ!!俺の名前は鷹岡明。今日から鳥間を補佐としてここで働く。よろしくな」

 

今日から新しい先生になるそうだ。そして大量の荷物からケーキやエクレアなどを取り出した。オレたちの差し入れらしい。

 

「いいんですか?こんなに高そうなの・・・」

 

「おう!食え食え!俺の財布を食うつもりでな」

 

磯貝の恐縮した問い掛けにも鷹岡先生は気のよさそうな返事で返してくる。

 

「鳥間先生とは同僚なのに雰囲気とか随分違うんすね」

 

「なんか近所の父ちゃんみたいですよ」

 

「ははは、いいじゃねーか父ちゃんで!!同じ教室にいるからには俺達家族みたいなもんだろ?」

 

木村や原の言葉にも同じ様な対応で答える。

 

皆がスイーツを食べている中オレは鷹岡先生を観察する。表面上は明るい感じだが、なにか裏がある。

 

「綾小路君は食べないの?」

 

オレが考えていると不破が話しかけてきた。

 

「まあな、今はあまり食欲がないからな」

 

「え~。せっかく美味しいのに、もったいない」

 

「オレの分は茅野にあげてくれ」

 

茅野は鷹岡先生がスイーツを出した瞬間に目が輝いていたからな。そして今も凄い勢いで食べている。

 

「あれは・・・同じ女子でもそこまで甘いもの好きはなかなかいないよ」

 

オレはスイーツは食べはしなかったがクラスの皆と日常的な会話をした。

 

 

次の日 

 

 

「よーし、皆集まったな‼︎ では今日から新しい体育を始めよう‼︎」

 

鷹岡先生が来てから初めての体育の時間だ。

ちなみに殺せんせーは海外でジェラートを食べに、烏間先生は事務作業に専念するとのことでグラウンドには来ていない。 

 

オレはある事をする。

 

「ちょっと厳しくなると思うが、終わったらまた美味いもん食わしてやるからな‼︎」

 

「そんなこと言って、本当は自分が食いたいだけじゃないの?」

 

「まーな、おかげでこの横腹だ」

 

中村からの茶々入れにも冗談で返したりしている。

 

「さて‼︎ 訓練内容の一新に伴ってE組の時間割りも変更になった。これを皆に回してくれ」

 

回された時間割を見てオレたちは驚愕した。なんと夜九時まで訓練までというカリキュラムだったのだ。

 

「これくらい当然さ。理事長にもちゃんと許可は貰ってる。では早速…………」

 

「ちょ、待ってくれよ!こんなんじゃ成績が落ちるよ!理事長もそれが狙いで許可してるんだ!こんなカリキュラムじゃ遊べないし……出来るわけねーよ!」

 

前原が抗議の声をあげる。当然だろう。こんなの普通できるはずがない。

 

すると鷹岡は突然前原の腹に膝蹴りをした。

 

前原が崩れ落ちる。

 

「出来ないじゃない。やるんだよ。言ったろ?俺は父親だ。父親の命令を聞かない子供が何処にいる?」

 

なるほど、これが鷹岡の本性だったという訳か。恐怖を植え付けることによって教え子を従わせるということか。

 

「さぁ、まずはスクワット百回かける三セットだ。抜けたい奴は抜けてもいいぞ。その時は俺の育てた屈強な兵士が代わりに入る。一人や二人入れ替わってもあのタコは逃げ出すまい」

 

鷹岡はあえて逃げ道を提案する。しかし逃げるということは退学すると同じ意味だ。

 

「けどな、俺はそういう事したくないんだ。お前らは大事な家族なんだからよ。家族全員で地球の危機を救おうぜ‼︎ なっ?」

 

白々しいな。鷹岡はそんなこと微塵も思っていない。こいつはオレ達の中から大半を潰すつもりだ。そして残った生徒が殺せんせーを殺すといったところか。

ついていけなくなった者から脱落する、まるであの場所のように。

 

「な?お前は父ちゃんに着いてきてくれるよな?」

 

そんな鷹岡が次に狙いをつけたのは神崎だった。彼女は先生に対する恐怖から表情は強張り脚を震えさせている。躊躇なく暴力を振るってくる男が目の前にいたら恐怖するのは当たり前のことだ。それが女子なら尚更だ。

 

「・・・は、はい。あの、・・・私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

拒絶すれば殴られるとわかっていながら神崎は自分の意見をはっきりと言った。この状況で自分の意見をはっきり言える人は中々いない。

 

しかし今ので鷹岡は神崎を殴るに違いない。

 

「鷹岡。オレもあんたの授業より鳥間先生の授業の方がいい」

 

鷹岡が殴る動きに入る前にオレは言葉を出す。女子である神崎が殴れたらどうなるかわからない。オレはあえて呼び捨てにする。それが気に障ったのか、鷹岡はオレを殴る。・・・いたい。

 

「父親を呼び捨てするとはいい度胸だな、もう一度舐めた態度すれば、本気で殴るぞ」

 

「ごめんなさい、鷹岡先生」

 

オレが折れたように見せると鷹岡はニヤリとする。

 

 

「文句があるなら拳と拳で語り合う。そっちの方が父ちゃんは得意だぞ?」

 

鷹岡はあくまで暴力で恐怖をさせるようだ。

 

「やめろ鷹岡!大丈夫か?前原君。それに綾小路君」

 

鳥間先生が駆けつけて心配する。

 

「大丈夫です。」

 

前原はお腹を押さえながら言う。オレもそれに合わせて答える。

 

「ちゃんと手加減してるさ鳥間、大事な俺の家族だ。当然だろ」

 

「いいや、あなたの家族じゃない、私の生徒です。私が目を離した隙に何をしている」

 

「「殺せんせー!」」

 

殺せんせーが来たことにより皆は安堵する。

 

「文句があるのかモンスター?短時間でお前を殺す暗殺者を育ててるんだぜ。厳しくなるのは当然だろう。それとも何か?多少教育論が違うだけでお前に危害を加えていない男を攻撃するのか?」

 

鷹岡の言うことに対して殺せんせーは何も言えずにいた。そしてオレ達は鷹岡の授業を受けさせられた。

 

手始めにスクワット300回、皆が必死に食らいつく中オレはスクワットをしながら考える。結論から言うと鷹岡の方法では殺せんせーを殺す事はできない。なぜなら人数を減らしてまで個の能力を上げるという考えそのものが間違っているからだ。皆がこの一年でいくらレベルを上げた所で殺せんせーどころか鳥間先生を倒すことはできないだろう。

 

だから鷹岡には退出させたいのだが・・・

 

「鳥間先生~」

 

耐えられなくなった倉橋が助けを求める。それを鷹岡は聞き逃さなかった。

 

「おい。鳥間は俺達の家族の一員じゃないぞ、おしおきだなぁ、父ちゃんだけを頼ろうとしない子は」

 

鷹岡が倉橋を殴ろうとする。しかしそれは失敗に終わる。鳥間先生が鷹岡を止めたからだ。

 

「それ以上生徒達に手荒くするな。暴れたいなら俺が相手を勤める。」

 

「「鳥間先生」」

 

鳥間先生が止めたにも関わらず鷹岡はまだ余裕の表情だった。

 

「これは教育なんだ、鳥間。けど生徒たちも俺を信用してないみたいだし。そこでこうしよう。こいつで決めるんだ」

 

そう言って彼が懐から出したのは対殺せんせーナイフ。

 

「お前が選んだ生徒と俺が闘い、一度でもナイフを当てられたら、お前の教育は俺より優れていたのだと認めよう。その時はお前に訓練を全部任せて出てってやる」

 

皆の顔が明るくなる。ナイフのトレーニングを毎日しているオレ達なら可能性は大いにある。

 

「ただし使うナイフはこれじゃない」

 

鷹岡は鞄から本物のナイフを取り出し、地面に刺した。

 

「殺す相手が人間なんだ、使う刃物も本物じゃなくてはなぁ」

 

「よせ!!彼らは人間を殺す訓練も用意もしていない」

 

鳥間先生が抗議するが鷹岡は余裕そうに言う。

 

「安心しな、寸土目でも良い。俺は素手なんだ。ちょうど良いハンデだろ?さぁ、烏間一人選べ。選ばないなら俺に服従だ!」

 

鳥間先生は鷹岡が投げた本物のナイフを拾い、皆の方へ向かう。果たして誰を選ぶのだろうか。

 

「渚君、できるか?」

 

選んだのは潮田だった。潮田は覚悟を決めナイフを受け取り構える。

 

二人の闘いが始った。

 

鷹岡は油断している。それに対して潮田はどうするか・・・。

 

潮田の取った行動は普通に歩いて近づいた。いつも通りに歩くように。そして鷹岡と身体がぶつかる距離まで近づき、全力でナイフを振った。

 

あまりの不意打ちに、鷹岡の姿勢は崩れた。

 

そして服を引っ張りながら背後に回って目を隠し、首筋にナイフを突きつけた。

 

「・・・捕まえた」

 

潮田が勝った。その事実に皆は驚き言葉をなくしていた。

 

「あれ?ひょっとしてミネ打ちじゃダメなんでしたっけ?」

 

きょとんとしている周りの雰囲気に、首を傾げる潮田。

そこに殺せんせーが潮田からナイフを奪う。

 

「そこまで、勝負ありですね、鳥間先生。」

 

殺せんせーが潮田から奪ったナイフを食べながら言う。

それにしても潮田はすごいな、プロである鷹岡に勝ったのだから。ルールがなければ鷹岡は死んでいたんだ。

 

オレにはあんな暗殺はできないだろう。

 

「このガキ……まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか⁉︎ もう一回だ‼︎ 今度は油断しねぇ、心も身体も全部残らずへし折ってやる‼︎」

 

鷹岡は潮田に対して怒りを表す。今すぐ襲いかかりそうなほど余裕を失っていた。そんな鷹岡に物怖じすることなく鷹岡と向き合う。

 

「確かに、次やったら絶対に僕が負けます。でも僕らの担任は殺せんせーで、僕らの教官は烏間先生です。これは絶対に譲れません。本気で僕らを強くしようとしてくれてたのは感謝します。でもごめんなさい、出ていって下さい」

 

しかし既にキレている鷹岡に大人の対応をする余裕などない。

 

「黙っ・・・て聞いてりゃ、ガキの分際で・・・大人になんて口を・・・」

 

 

言葉が途切れ途切れになるほど怒りが限界を迎えており、潮田の言葉を聞き取った鷹岡は枷が外れたように襲い掛かった。

 

しかし烏間先生が駆け込み、鷹岡の顎に肘うちを決めた。そして鷹岡先生は仰向けに倒れ込む。

 

 

「……俺の身内が迷惑を掛けてすまなかった。後の事は心配するな。俺一人で君達の教官を務められるように上と交渉する。いざとなれば銃で脅してでも許可をもらうさ」

 

烏間先生の言葉で皆の顔に笑顔が浮かぶ。

 

それを聞いていた鷹岡が上体を起こしながら烏間先生に反発する。

 

「くっ……やらせるか、そんなこと。俺が先に掛け合って……」

 

「防衛省との交渉の必要はありません」

 

と、そこに理事長が姿を現した。

 

悠然とした足取りで歩いてくる理事長に殺せんせーが問い掛ける。

 

「……ご用は?」

 

「経営者として様子を見に来ました。新任の先生の手腕に興味があったのでね。鷹岡先生、あなたの授業は非常につまらなかった。今すぐクビにしたいところですが・・・もうしばらくだけチャンスを与えましょう。それまでに結果を残してください」

 

理事長がそう言いここから立ち去る。その時一瞬だけ、それも他の人には気づかない程度にオレを見て薄く笑う。

 

権力を握っているのは防衛省ではなく、理事長だったということだ。

そして鷹岡を残すことにしたのだ。

 

チャイムが鳴る。

 

鷹岡は助かったと言わんばかりに高らかに笑いながらグラウンドから去っていった。

 

次の体育も鷹岡が授業をするということだ。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

今回は少し原作改変しました。鷹岡の話はもう少しだけ続きます。

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15:交渉の時間

鷹岡編の続きです。


鷹岡が教室から出た後皆は絶望していた。当然だろう。またあの体罰授業を受けなければならないのだから。

 

「鳥間先生~私たち鷹岡先生の授業受けたくないよ」

 

そう言う倉橋に対して鳥間先生の目に迷いがなかった。

 

「俺が理事長と交渉する。皆今日はもう帰ったほうがいい」

 

「その判断は賢明です。私は政府の所に行きます」

 

殺せんせーもオレ達の事を思っている。政府を脅してでも、オレ達を守るつもりらしい。いくら理事長に権力があったとしても政府が鷹岡を辞めさせる事はできなくはない、上からの命令で自主退職という形で。

 

まあ、それだけ鷹岡が危険ということなのだが。あんな授業を受けていたら体が壊れるしな。

 

皆も鳥間先生の言う通りに帰宅する。鳥間先生と殺せんせーも行ってしまった。

 

オレは一人で教室に残る。そしてある人に電話をしようするが誰かが教室に入ってきたのでやめる。神崎だ。

 

「まだ帰ってなかったのか?」

 

「綾小路君・・・私を庇ってくれたんですね。そのお礼を言いたくて」

 

そのためだけにここに来たということか。

 

「オレは何もしていない。むしろ潮田に言うべきじゃないのか?」

 

あいつは一度でも鷹岡に勝った。オレ達の仇を打ってくれたんだ。

 

「もちろん渚君にも感謝しています。ですが綾小路君にも感謝してるんです」

 

感謝をされることはしていないがこれ以上否定しても意味がないか。

 

「気持ちは受け取っておく、だが今日はもう帰ったほうがいい。いつ鷹岡が戻ってくるかわからないからな」

 

「ですが綾小路君も・・・」

 

「オレは少し用があるからな。」

 

そう言っておけば神崎も納得してくれるだろう。

 

「わかりました。それではまた明日」

 

神崎が頭を下げ教室から出る。それからしばらくすると外が騒がしくなる。何事かと思い外に出ると、鷹岡が神崎を捕まえていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

神崎視点

 

教室から出ると鷹岡先生がいた。

 

「なんだ?皆いないと思ったら、どうやら俺の授業を受けたくないようだ。・・・悪い子達だなぁ。そう思わないか?」

 

ニヤリとながらこちらを向いて、私に聞いてきた。

 

「もう皆さんはあなたの授業を受けるつもりはありません」

 

これは私達の本心。逃げずに言えばいつか伝わってくれるはず。逃げてはダメだと殺せんせーに教わりました。

 

「まだわからないのか?いいか、お前らの父ちゃんは俺だ。もう二度と身も心も逆らえないように、徹底的に教えてやるからさぁ」

 

しかし鷹岡先生には伝わらず、高らかに笑いながら私を捕まえ殴ろうとする。私は目を瞑った。しかし私が殴られることはなかった。

 

 

 

目を開けると綾小路君が鷹岡先生の腕を掴んでいたのだから。

 

「綾小路君!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あんた今全力で殴ろうとしただろ。彼女を離せ」

 

この男は今全力で神崎を殴ろうとした。それは前原やオレの時とはレベルが違った。止めなければどうなっていたか・・・。

 

「あ?なんだお前。お前も教育が足りないようだなぁ」

 

鷹岡は神崎を離してこちらに向く。

 

「まずはお前だ、先に教えてやるよ」

 

「逃げてください、綾小路君。私は大丈夫なので」

 

神崎はオレが危険だと判断した。そして自分を犠牲にしてまでオレを助けようとしてる。

 

だが・・・

 

「大丈夫だ神崎、心配されることは何もない。」

 

鷹岡が全力でオレを殴りにきた。オレはそれを難なく避ける。

 

「ん?」

 

鷹岡は避けられる事を想定していなかったようだ。そしてオレは言葉を出す。

 

「やっばり対したことないんですね、潮田に負けているからな」

 

 

「このっ!!」

 

 

オレの挑発が効いたようだ。

 

まあ実際そんな事はないんだけどな。鷹岡は強い、なにせ戦闘のプロだ。潮田も暗殺で勝てただけにすぎないからな。しかしオレはホワイトルームで大勢のプロと戦ってきた。そしてあっけなく勝てるほどの実力を手に入れた。オレから言わせれば鷹岡は今まで戦った中で中の下位だろう。

 

そしてこいつは今焦っている。鷹岡は暴力で恐怖させ支配する人間だ。しかし暴力で支配するなら常に相手の力量を上回らなければならない。鷹岡は潮田に負けた。それにより支配力が大幅に下がるのを何より恐れている。現にオレが潮田の名前を出した途端に鷹岡は明らかにイラついているのが何よりの証拠だ。

 

「あのガキのせいで・・・まずお前から教育してガキどもに力を見せつけてやる!!!」

 

 

そして鷹岡が叫びながら襲いかかる。こちらは遊ぶつもりなんてない、あまり長い時間をかけるのは得策じゃないからだ。オレは素早く鷹岡の間合いに入り、喉元を全力で手刃打ちをする。

 

「~~~!?」

 

鷹岡が声にならない声が漏れる。冷静なら避けれたはずなんだがな。

 

そして呼吸困難になった鷹岡に意識を刈り取るほどの威力で回し蹴りを顔面に叩き込んだ。鷹岡は崩れ落ち意識をなくした。

 

この異様な光景に神崎は言葉が出なかった。

 

「大丈夫か神崎、怪我はないか?」

 

「はい・・・それは大丈夫なんですが・・・この状況を飲み込めなくて・・・その・・・綾小路君の動きがいつもと違ったというか」

 

そう思っても仕方ないか。実際に今までの動きと違うしな。

 

「この事は皆に黙っておいてくれないか?なんと言うか、目立ちたくないんだ」

 

神崎が皆に話せば、オレの平穏の日々が終わってしまうだろう。

 

「そうですね人には隠したい事とかありますもんね、わかりました。その・・・ありがとうございました。綾小路君は何度も私を守ってくれました。」

 

神崎は納得し、感謝を述べる。

 

「例をいわれることはしていない、そんなことよりもう帰る時間だ。先に帰ってくれ、オレにはやる事がある」

 

神崎が笑顔でオレの方に向ける。

 

「わかりました。くれぐれも気をつけてくださいね」

 

そう言って神崎は帰っていく。オレはその背中を見ながら心の声を出す。

 

神崎、本当にオレは例を言われるような事はしていないんだよ。

 

オレはある人に電話をかける。

 

「綾小路です、理事長との交渉はどうてすか?」

 

そう、オレがかけた人は鳥間先生だ。

 

「それはまだだ、あと1時間後に始める予定だ」

 

そうか、まだ始まっていなかったか。仮に始まったとしてもこちら側が不利なのは明確だ。

 

「そうですか、すみませんがE組の教室に来ていただけませんか?」

 

「なぜそこにいる。帰れと言ったはずだ」

 

「来たらわかりますよ」

 

そう言って電話を切る。10分後鳥間先生が来た。

 

「こんな時にどうしたんだ、綾小路君」

 

鳥間先生はオレに訪ねる。オレは視線を誘導して気絶している鷹岡を見せる。

 

それを見た鳥間先生が驚愕する。

 

「これは!?君が?」

 

オレは否定せず話を切り出す。

 

「先に言います。オレに防衛省や殺し屋の情報を定期的に渡してください」

 

いきなりオレの要求に鳥間先生は戸惑う。そして不気味にしか見えないだろう。いきなり教室に呼び出され、鷹岡が気絶している中そんな話をされるのだ。

 

「な、何を言っているんだ綾小路君、今はそんな事を言っている場合じゃない。一刻も早く鷹岡を辞めさせなければならない」

 

確かに鳥間先生の言うとおりだ。

 

「わかっています。ですが権限は理事長が握っています。不利なのは承知なのでは?」

 

オレの言葉に対して鳥間先生は迷いがなかった。

 

「不利だろうが関係ない。生徒を守るためなら暗殺に使うお金だって払うさ」

 

本当に鳥間先生は生徒思いでいい人だ。だがこちらが損をする事に変わりはない。

 

「ではそちらの情報をもらう代わりにあんたと理事長との交渉をより簡単に成功させましょうか?」

 

オレの提案に鳥間先生は驚いた表情をする。

 

「何を・・・言っているんだ?君がただ者ではないのはわかったがとてもできるとは思えない」

 

鳥間先生がそう言うのは当然だろう。たが・・・

 

「本当にそうでしょうか?」

 

オレはスマホに電源を入れ、ある動画を見せる。

 

「ッ!!これは!?しかしこれを撮れるということは最初から鷹岡を疑っていたということだが・・・」

 

オレが見せた動画は鷹岡が前原を殴った所だ。鷹岡は前々から怪しかったから証拠に残せると思い授業の最初から録画しておいた。こんなに上手くいくとは思っていなかったけどな。

 

「この動画の中に殺せんせーはいません。これだけ見ればただの体罰教師にしか見えない、これを広めればこの学校に大きなダメージが入る。」

 

理事長はそれを避けたいはずだ。自分の教育を妨害されるのだからな。

 

これで脅せば鷹岡を辞めさせることができる。理事長は鷹岡を切り捨てるしかないということだ。

 

「そこまで考えていたのか!?」 

 

「さあ、どうしますか?オレに情報を渡し、暗殺の可能性を上げるか、それとも暗殺に使う資金を失うか」

 

「・・・わかった。君の提案を受け入れよう」

 

 

「ありがとうございます」

 

鳥間先生の表情はいまだに困惑している。

 

「君は今までの君と同じ人には見えない。いったい何者なんだ?鷹岡を倒すほどの戦闘力、それに洞察力や思考力、中学生の枠を遥かに超えている。俺からしたら不気味でしかない。」

 

「オレの事はどうでもいいんですよ、オレはただあの怪物を殺したいだけなんですから」

 

「ではなぜ手を抜く、君が全力でやれば殺せる可能性は上がるはずだ」

 

 

鳥間先生の言うことは正しい。だが・・・

 

 

「確かに鳥間先生の言うことは正しいです。しかしあなたは今日までオレの実力を知らなかった。それは殺せんせーも同じでしょう。オレは向こうの警戒を上回る一撃を狙うつもりです」

 

鳥間先生はある程度納得し、これ以上何も言わなかった。

 

「オレはこれからも目立つつもりはありません。では失礼します。」

 

オレは教室から出る。

 

予定より早かったが今回オレのやることは決まっていた。それは鳥間先生との情報の取引だ。オレは生徒、普通に考えれば無理な話。しかし鷹岡のおかげでそれを可能にすることができた。

 

まあ、神崎が来たのは想定外だったが、わざわざリスクを取ってまで鷹岡を倒したのも、交渉を有利に進めるための過程でしかなかったんだ。

 

オレは家に帰った。

 

 

次の日・・・

 

「鷹岡の件についてだが、なんとか辞めさせることに成功した。今日からは俺がいつも通りに体育の授業をすることになる」

 

鷹岡はもうここに来ることはないらしい。どうやら上手くいったようだ。

 

「ってことは!鷹岡クビ!?」

 

「「やったー」」

 

クラスの皆が喜ぶ中、鳥間先生と神崎はこちらを見てきた。オレはそれに対して目を逸らす。

 

鷹岡についてはこれで終わり、いいことじゃないか。これでオレ達の平穏が戻ってきたというわけだ。

 

 

 




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16:水泳の時間

久しぶりです


七月、もう夏になる。今のこの状況は地獄だ。なぜなら‥‥‥

「暑い、これじゃ勉強に集中できねぇ」

 

「だよね〜エアコンがあれば快適なのにな〜。」

 

「冷房があって快適な本校舎が羨ましいぜ…。」

 

「エアコンがないとか干からびそう……。」

 

E組の教室はボロボロの校舎だ。クーラーなんて付いているわけがなかった。

 

「……温暖湿潤気候で暮らすのだから諦めなさい。ちなみに先生は放課後には寒帯へ逃げます。」

 

 

「ずりぃ!」

 

 

「俺らも連れてってくれよ殺せんせー!」

 

「分かりました。……と言いたいところですが、マッハ20でも出来ないことは有るんです!!」

 

いくらマッハの先生でもできないことはある。それは仕方ない事だ。

 

「でも今日プール開きだよね?楽しみ~!」 

 

場を明るくさせようと倉橋は発言する。しかしそれすらも地獄なのだ。プールは本校しかない。つまり往復であの道を歩かなけらばならない。

 

「行きと帰りのどちらか、もしくは両方で誰かが倒れそうだがな。」

 

皆もそれがわかっていて、ため息を吐く。

 

「仕方ない。全員水着に着替えてついてきなさい」

 

オレ達は殺せんせーの言われるままについて行く。

 

するとその先には殺せんせー自作のプールがあった。

 

皆は勢いよくプールに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

皆が遊んでいる中、オレは泳ぐ気分でもなかったのでベンチにすわる。すると隣で狭間が本を読んでいた。

 

「泳がないのか?」

 

「私あんまり泳ぐの好きじゃないんだよね」

 

オレが聞くと狭間が本を読みながら答える。泳ぐのが好きじゃないというより、本が好きと言うべきか。‥‥いやそれよりも‥‥‥

 

「それは何の本なんだ?」 

 

オレもよく本を読むが、狭間が読んでいたのはオレが読んだことないものばかりだった。

 

「ククク、これが面白くてね。綾小路君も読む?」

 

狭間が読んでいるのは復讐小説だった。なんというか、狭間の闇を感じた。

 

オレが戸惑っていると笛が鳴る。

 

「木村君、プールサイドを走ってはいけません!!転んだら危ないですよ!!」

 

「あ、すいません」

 

殺せんせーが木村に注意する。それで終わりかと思ったら再び笛が鳴る。

 

「原さんに中村さん、潜水遊びは程々に、長く潜ると溺れたかと心配します」

 

「岡島君のカメラも没収!!」

 

「狭間さんも本ばかり読んでないで、それに綾小路君も泳ぎなさい」

 

注意されてしまった。

次々と笛を鳴らす殺せんせー、笛の音がうるさい。

 

「いるよねー。自分が作ったフィールドの中だと王様気分になっちゃう人」

 

「うん‥‥ありがたいのにありがたみが薄れちゃうよな」

 

「ヌルフフフ、景観選びから間取りまで自然を活かした緻密な設計、皆さんにはふさわしく整然と遊んでもらわなくては」

 

確かに工夫してプールを作ったのはすごいが、やたらとマナーに厳しいな。

 

「堅いこといわないでよ殺せんせー、水かけちゃえ」

 

倉橋が殺せんせーに水をかける。

 

「きゃんっ」

 

すると殺せんせーが乙女チックな反応をする。

 

‥‥え?

 

「ゆゆゆ揺らさないでください、赤羽君!」

 

赤羽が殺せんせーの監視台を少し揺らすと、彼は派手な反応を見せた。

 

 

「まさか……」

 

 

 

とみんなが呟いたことだろう。

 

この反応で気づかない者なんていない。

 

殺せんせーは泳げない可能性が高い。

 

「いや別に泳ぐ気分じゃないだけだし。水中だと触手がふやけて動けなくなるとかそんなんじゃないし」

 

震える口笛を吹きながら、殺せんせーは誤魔化そうと手を顔に当てる。その手が、異様にふやけていた

 

どうやら触手には水を吸ってしまうようだ。

 

殺せんせーが泳げない事がわかり、授業が終わる。

 

 

 

 

 

次の水泳の時間、オレ達のプールが壊されていた。

 

 

 

 

 




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17:寺坂の時間

寺坂の時間です。因みに綾小路はラッシュガードを着ているため体型がバレる事はありません。


プールが壊されていた。

 

「誰だよ、こんなことしたやつ」

 

 

 

「あーあー、こりゃ大変だ」

 

 

 

「ま、いーんじゃね?プールとかめんどいし」

 

 

 

皆がプールの惨状に目を向けている中、そんな軽い声が後ろから聞こえてきた。吉田と松田だ。当たり前のように寺坂も横にいた、三人は他の皆とは違いプールの惨状を見ても笑みを浮かべている。

 

吉田と松田は寺坂とは違い、無理に笑ってる。罪悪感が表れているということだ。つまり主犯は寺坂で間違いないだろう。

 

なるほどな‥‥動き始めたということか。

 

「ンだよ渚。何見てんだよ。まさか、俺らが犯人とか疑ってんのか? くだらねーぞ」

 

寺坂が潮田に向かって言う。確かにくだらない。なぜなら‥‥

 

 

「やめてください。犯人探しなんて時間と手間の無駄です。」

 

そして、あっという間に、本当にあっという間に全て直した。

 

壊された椅子は前より頑丈に、浮かんでいたゴミはちゃんと分別されてゴミ袋の中へ。

 

「はい、これで元通り。いつも通り遊んでください」

 

あまりの速さで全てを無駄にされ、寺坂は眉間にしわを寄せる。

 

何を言っても負け惜しみになってしまうと感じたのか、舌打ちしてどこかへ行ってしまった。

 

 

 

昼休み、あれから何事もなくオレ達は昼飯を食べている。

 

 

 

 

うぉ、マジかよ殺せんせー⁉︎」

 

「この前、君が雑誌で見てた奴です。丁度プールの廃材があったんで作ってみました」

 

「すげー‼︎ まるで本物のバイクじゃねーか」

 

吉田がウキウキしながら殺せんせーと話している

 

「ヌルフフフフ、先生は大人な上に漢の中の漢!この手の趣味も一通り齧ってます。しかも、このバイク、最高時速300km出るんですって、そこいらのとは段違い、先生一度本物に乗ってみたいモンです」

 

「アホか、抱き抱えて飛んだ方が速えだろ」

 

違いない。

 

 

吉田と殺せんせーが盛り上がると、寺坂は更に機嫌が悪くなる。寺坂は怒りのままに模造バイクを蹴り飛ばす。

 

「あぁー!!!先生のバイクが!!」

 

「何てことすんだよ寺坂!」

 

「謝ってやんなよ!大人な上に漢の中の漢の殺せんせー泣いてるよ!?」

 

先ほどまで『漢』とか言っていた殺せんせーがオイオイと泣いていた。

 

 

「テメーらブンブンブンブン、虫みたいにうるせぇな!駆除してやんよ!」

 

 

そう言った寺坂は殺虫剤のスプレーらしき物を床に叩きつけた。

 

 

「うわっ、何だコレ?」

 

 

「殺虫剤!?」

 

教室の中が白い煙で充満する。窓を開けていたおかげで、すぐに風が連れ去ってくれたが・・・何人かはげほげほと咳き込んでいた。

 

「寺坂君!ヤンチャするにも限度ってものが…」

 

「さわんじゃねえよモンスター。気持ちわりーんだよ、テメーも、モンスターに取り込まれて仲良しこよしのテメーらもよ!」

 

嫌悪感丸出しの顔のまま、寺坂はずかずかと教室を出ていった。

 

「‥‥何なんだアイツ」

 

「一緒に平和にやれないもんかねぇ‥‥」

 

ギクシャクする中1日が終わる。

 

次の日の朝、寺坂が学校に来ることはなかった。

 

昼休み、オレ達が昼ご飯を食べていると寺坂が教室に入ってきた。

 

「おお、寺坂君!今日は休むのかと心配でした!昨日のことはご心配なく!」

 

そう言って同意を求める殺せんせーの顔はグシャグシャだった。涙かと思われたが、鼻水のようだ。

 

「昨日一日考えましたが、やはり本人と話すべきです。悩みがあるなら相談してください」

 

そう言う殺せんせーに対して寺坂は勝利を確信したような目をしながら言う。

 

「おいタコ。そろそろ本気でぶっ殺してやんよ。放課後プールに来い。てめーらも手伝え! 俺がこいつを水の中に落としてやるからよ」

 

「‥‥寺坂、お前ずっと皆の暗殺には強力して来なかったよな。それをいきなりお前の都合で命令されて皆がはいやりますかって言うと思うか?」

 

前原が呆れながら言う。もちろん彼の言うことは正しい。

 

「別にいいぜ、来なくても。そん時は俺が賞金を独り占めだ」

 

言うだけ言って、笑い声を発しながら、寺坂はまた姿を消した。

 

昨日の今日で反省はしていないみたいだ。そんな態度は吉田と村松さえも呆れさせた。

 

「もう無理。ついていけねーよ」

 

「俺も」

 

当然あんだけ勝手なこと言われたら皆は手伝う気も起きない。

 

「オレは参加するつもりだ」

 

皆が寺坂の暗殺を拒否する中オレは言葉にする。

 

「「なんで!?」」

 

当然オレの発言に皆が驚く。

 

「寺坂には悪いが、恐らく失敗する。オレ達が手伝おうが手伝わなかろうがそれは関係ない」

 

当たり前の事に皆は頷く。オレは言葉を続ける。

 

「だが寺坂は本気で暗殺しようとしている。これをきっかけで何か変わるかもしれないと思っただけだ。オレはこのままのクラスの雰囲気が好きじゃないからな」

 

寺坂にいつまでも妨害されるのは鬱陶しいからな。

 

「彼と打ち解けれる可能性があるのなら、私も参加します」

 

神崎が言う。神崎の言葉に杉野が反応する。

 

「俺も参加するぜ」

 

‥‥先ほどまで嫌がっていたのに急に変えたな。

 

「まあ、今回だけだからな」

 

前原もオレの意見に賛成してくれたようだ。そして次々と賛成する人が増えていく。まあ、大半の人は仕方ないという感じだがな。

 

 

「先生嬉しいです。寺坂君の暗殺に協力してくださって‥‥みんなで一緒に暗殺して、気持ちよく仲直りしましょう」

 

鼻水どころか全身の体液をドロドロと流す先生、そしてその鼻水によって動けないオレ達。

 

「「まずあんたが気持ち悪い!!」」

 

 

こうしてオレ達は水着に着替えてプールに行く。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

殺せんせー視点

 

 

 

放課後、寺坂君の暗殺のためにプールに行きます。

 

するとそこには寺坂君以外の生徒の皆がプール全体に散らばっていました。寺坂君はピストルを持ちながら指示を出しています。

 

 

「なるほど、先生をプールに水に落として皆に刺させる計画ですか。それで君はどうやって先生を落とすんです?ピストル一丁では先生を一歩すら動かせませんよ」

 

私がそう言ったら寺坂君は銃口を私に向ける。

 

「覚悟はできたかモンスター」

 

「もちろんできてます、鼻水も止まったし」

 

「ずっとテメーが嫌いだったよ、消えてほしくてしょうがなかった」

 

彼が私の事を嫌いな事は知っている。それでも私は寺坂君をクラスの皆と仲良くさせたいと思っている。

 

私は舐めた表情をする。寺坂君の暗殺の後でどう手入れしようか考えています。

 

「ええ知ってます、これの後でゆっくり先生と話しましょう」

 

私の煽りが効いたのか、寺坂君は引き金を引く。

 

しかし弾が出ることはなく、次の瞬間プールの堰が爆破された。

 

まずい!!この先は険しい岩場、溺れるか落下するかでしんでしまう。私は急いで皆を引き上げる。マッハでは生徒が耐えれないから慎重に。

 

誰がこんな事、何のために!?

 

触手が膨れ上がっているが関係ない。次々と皆をプールから引き上げる。

 

彼で最後、全員救助したと思ったら触手が私の足をつかんで川に突き落とした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

オレ達は殺せんせーによって助けられた。それにしても派手にやってくれたもんだ。

 

‥‥さて、オレにはやることが残っている。

 

オレは寺坂の方に近づく。そこには赤羽がいた。赤羽は寺坂の暗殺に協力していないからな。爆発した音を聞いて様子を見にきたようだ。

 

「‥‥おれは、何もしてねぇ」

 

消えているプールを見て呆然としている寺坂が弱々しく言う。

 

「話がチゲェよ‥‥イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに‥‥」

 

イトナの名前が出た瞬間赤羽は一瞬驚き、そして納得した。

 

「なるほどね。自分の立てた計画じゃなくて、まんまとあの2人に操られてたってわけ」

 

流石は赤羽、今のでほぼ理解したようだ。

 

「言っとくが、俺のせいじゃねぇぞ!こんな計画させる方が悪りぃんだ。みんなが流されたのも、全部奴ら」

 

<ゴッ!!>

 

赤羽に焦って言い訳している寺坂に、赤羽がその頬を殴る。

 

「標的がマッハ20で良かったね。でなきゃお前、大量殺人の実行犯にされてるよ。流されたのはみんなじゃなくて自分じゃん。人のせいにするヒマあったら、自分の頭で何したいか考えたら?」

 

赤羽はそう言って皆が流された方へ向かう。その時オレの方を向いてきた。

 

「綾小路君、今回寺坂をシロが操ってたんだ。皆の所に行こ」

 

「赤羽は先に行っててくれ、オレは寺坂と話をする」

 

「ふ~ん。寺坂のことなんかほかっておけばいいのに、じゃあ先行くね」

 

そう言って赤羽は行ってしまった。

 

オレは座り込んでいる寺坂に話しかける。

 

「今の話を聞いていた。シロ達に操られたそうだな」

 

「そうだよ、お前も俺の事を殴るのか?」

 

「いいや、それは赤羽ので十分だ」

 

オレは寺坂の隣の岩に座り寺坂に聞く。

 

「お前はこれからどうするつもりなんだ?」

 

「タコがいなければ俺は大量殺人犯だった。そんな俺が皆の前に顔を出せねぇる訳がねぇ。それに元々俺はこのクラスに必要とされてない。退学した方が皆の為になるだろ」

 

今回のでかなり反省したようだ。そして退学するつもりのようだ。

 

しかし想像以上に自分を責めているな。確かにお前は殺人未遂を犯した。それは変えようのない事実だ。だが寺坂、お前は操られた被害者でもあるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シロ‥‥‥‥いやオレ達によってな。

 

 

 

「寺坂、お前は退学する道を選ぶのか。だとしたらそれは逃げの選択だ。お前は逃げずに皆の所に行くべきなんだ。そうした上でどうするか自分で考えるべきだ」

 

 

「綾小路‥‥」

 

オレは立ち上がる。

 

「それに一つだけ間違いを正さないといけない所がある。それはお前はこのクラスに必要な存在ということだ」

 

そう言ってオレは皆のいる所に行く。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

寺坂を原作より自分を攻めています。

こうしたら面白いなどのリクエストがあれば感想の所などに言ってください。(それを実行する保証はありませんが)

誤字などがあれば訂正します。


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18:寺坂の時間2

久しぶりの投稿です。今後またよろしくお願いします。


 

シロ・・・・・いやオレによってな。

 

 

 

 

 

 

 

「寺坂、お前は退学する道を選ぶのか。だとしたらそれは逃げの選択だ。お前は逃げずに皆の所に行くべきなんだ。そうした上でどうするか自分で考えるべきだ」

 

 

 

 

 

「綾小路・・・」

 

 

 

オレは立ち上がる。

 

 

 

「それに一つだけ間違いを正さないといけない所がある。それはお前はこのクラスに必要な存在ということだ」

 

 

 

そう言ってオレは皆のいる所に行く。今頃イトナと殺せんせーが戦ってるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーの所に行くと予想通りイトナと殺せんせーが

 

戦っている。いや戦っているというよりは殺せんせーが防戦一方だった。それはそうだろう、なぜならあの水をかなり吸ったせいで、殺せんせーの動きがかなり遅く、明らかに殺せんせーが不利だからだ。しかもそれだけではない。

 

 

 

「でも押されすぎな気がする。あの程度の水のハンデなら、何とかなるんじゃ…?」

 

 

 

「水のせいだけじゃねぇ。力を発揮できねぇのは、お前らを助けたからだよ。見ろ、タコの頭上を」

 

 

 

 

 

すると寺坂が来た。寺坂の言う通り殺せんせーの頭上を見ると、原と村松と吉田が崖の上にいる。まだ村松と吉田は崖に捕まっているから良いが、原は崖の上にある木の枝に捕まっている。今にも木が折れそうだ。

 

 

 

「あいつらの安全に気を配るからなお一層集中できない。

 

 

 

あのシロの奴ならそこまで計算してるだろうさ。恐ろしい奴だよ」

 

 

 

「のん気に言ってんじゃねーよ寺坂!!原たちあれマジで危険だぞ!!

 

 

 

おまえひょっとして、今回の事全部奴等に操られてたのかよ!?」

 

 

 

前原が寺坂に言う。それに対して寺坂はフッと笑った。

 

 

 

「あーそうだよ。目標もビジョンも無ぇ短絡的な奴は、頭の良い奴に操られる運命なんだよ。だがよ。操られる相手ぐらいは選びてえ」

 

 

 

そう言った寺坂先ほどと違い、もう逃げずに立ち向かうと決心した顔たった。

 

 

 

もう大丈夫だな。

 

 

 

「奴等はこりごりだ。賞金持って行かれんのもやっぱり気に入らねぇ。だからカルマ、テメーが俺を操ってみろや!

 

その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ!!カンペキに実行してあそこにいるのを助けてやらァ!!」

 

 

 

「…良いけど、実行できんの?俺の作戦…死ぬかもよ」

 

 

 

「やってやんよ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ」

 

 

 

赤羽が作戦を考えている時寺坂はオレの方を見てきた。

 

 

 

(これでいいか?)

 

 

 

(ああ)

 

 

 

と目で語り合えう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

「思いついた!原さんは助けずに放っとこう!」

 

 

 

赤羽がそう言うと皆げんなりしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

「おい、カルマふざけてんのか?原が1番あぶねぇだろうが!ふとましいから身動き取れねーし、ヘヴィだから今にも枝が折れそうになったんだろうが」

 

 

 

寺坂が大声で怒鳴る。確かにふざけているようにしか思えないよな。

 

 

 

「まぁまぁ、良いから。それより気づいた?寺坂、昨日と同じシャツなんだ」

 

 

 

なるほど赤羽も気づいていたか。大体赤羽の作戦がわかった。寺坂にしかできない作戦だ。

 

 

 

 

 

「ズボラなんだよねー、やっぱ寺坂は悪巧みは向いてないわ」

 

 

 

「あ!?」

 

 

 

「でも、頭は悪くても体力と実行力はあるから、お前を軸に作戦立てるの面白いんだ。俺を信じて動いてよ。悪いようにはしないから」

 

 

 

「…バカは余計だ。良いから速く指示よこせ」

 

 

 

寺坂のシャツのボタンをちぎり、カルマは作戦を話しはじめた。

 

 

 

 

 

赤羽が寺坂に作戦を話している時、崖の下にいる殺せんせーの様子を見る。当たり前だけど、殺せんせーが不利だ。パンパンに体が膨らんでいて、かなり動かし辛そうにしている。

 

 

 

「さぁて、足元の触手も水を吸って動かなくなってきたね。トドメにかかろうイトナ、邪魔な触手を全て切り落とし、その上で『心臓』を…」

 

 

 

‥‥『心臓』かそれが殺せんせーの弱点なのか?まあそれがどこにあるかわからない以上意味ないか。

 

 

 

 

 

「おいシロ!イトナ!」

 

 

 

そう考えていると寺坂がイトナの方に近づく。

 

 

 

「…寺坂くんか。近くにいたら危ないよ?」

 

 

 

「よくも俺を騙してくれたな」

 

 

 

「まぁそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組で浮いてた君にとっては丁度いいだろ?」

 

 

 

「うるせぇ!てめーらはゆるさねぇ!」

 

 

 

寺坂はシャツを脱ぎ、水溜まりに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

「イトナ!テメェ俺とタイマンはれや!」

 

 

 

「やめなさい寺坂くん!君が勝てる相手じゃない!」

 

 

 

赤羽が考えた戦術だと知らない殺せんせーは

 

 

 

「すっこんでろ膨れタコ!」

 

 

 

「…布1枚でイトナの触手を防ごうとは、健気だねぇ。黙らせろイトナ、殺せんせーに気をつけながら」

 

 

 

…完全にイトナと寺坂の戦闘モードだ。シロが命令したら、イトナは間違いなく寺坂を攻撃する。正面から戦って勝てないのは目に見えている。

 

 

 

「カルマ君!」

 

 

 

「いーんだよ、死にゃしない。シロは俺たち生徒を殺すのが目的じゃない。生きてるからこそ殺せんせーの集中を削げるんだ。原さんも一見超危険だけど、イトナの攻撃の的になることはない」

 

 

 

そう赤羽が話している間に大きな衝突音がする。寺坂がイトナの攻撃を受けた音だ。

 

 

 

普通ならイトナの攻撃を受ければ一発で気絶するだろう。しかし寺坂は耐えたのだ。

 

 

 

「だから寺坂に言っておいたよ。気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言えばスピードも威力もその程度、死ぬ気でくらいつけってさ」

 

 

 

赤羽はそれをわかって寺坂を使ったということだ。そしてこの瞬間シロの計画は破綻した。

 

 

 

 

 

「よく耐えたね。ではイトナ、もう1発あげなさい。背後のタコに気をつけながら」

 

 

 

 

 

 

 

シロの言葉に従い、イトナは触手を引き戻す。さっき寺坂が持っていたシャツがその触手に引っかかっている。イトナはそれに構わず第2撃を繰り出そうとしている。

 

 

 

 

 

「…ッ?くしゅんッ!」

 

 

 

突然くしゃみをするイトナ、

 

 

 

「寺坂のシャツが昨日と同じって事は、昨日寺坂が撒いたあの変なスプレーの成分をたっぷり浴びたシャツって事だ。それって殺せんせーの粘液をダダ漏れにした成分でしょ?イトナだってタダで済むはずがない」

 

 

 

そしてその隙に殺せんせーが原を助ける。これで状況が変わり始める。

 

 

 

さらに赤羽は皆に指示をだす。理解したオレ達は一気に飛ぶ。 

 

 

 

「殺せんせーと弱点同じなんだよね。じゃあ同じ事やり返せばいいわけだ」

 

 

 

崖の上から俺たちが一斉に水溜まりに着地する。その衝撃で水が飛び散り、イトナの触手が水を吸った。

 

 

 

「どうする?まだ続けるならこっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」

 

 

 

オレ達はそれぞれ水を構える。

 

 

 

 

 

「…してやられたな。丁寧に積み上げた作戦が、たかが生徒の作戦と実行でメチャメチャにされてしまった。ここは退こう。触手の制御細胞は、感情に大きく左右されるシロモノ、この子たちを皆殺しにしようものなら、反物質蔵がどう暴走するか分からん。帰るよイトナ」

 

 

 

イトナとシロは無理だと判断して逃げていった。

 

 

 

 

 

「ふー、なんとか追っ払えたな」

 

 

 

シロがいなくなりみんな安堵する。

 

 

 

「良かったね殺せんせー、私たちのお陰で命拾いして」

 

 

 

岡野が殺せんせーに言う。

 

 

 

「ヌルフフフフ、勿論感謝してます。まだまだ『奥の手』はありましたがね」

 

 

 

オレは殺せんせーと岡野との会話を聞きながらオレは寺坂の方を見る。

 

 

 

寺坂はもうクラスに馴染んでいる。もう問題なさそうだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

三人称視点

 

 

 

 

 

その日の夜ある場所シロはある男と待ち合わせをしていた。

 

 

 

「まったく、今回も失敗してしまったではないか、あと少しで上手くいくはずだったんだけどな」

 

 

 

そう独り言を言っているとその男が来る。

 

 

 

「遅かったじゃないか、綾小路君」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

オレは今シロの所にいる。この一連の事件が終わった後会う約束をしていた。今回シロが仕掛けたこの事件についてだ。少し前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

寺坂とシロが話しているのをオレは気配を消して聞いたいた。

 

 

 

 

 

そして寺坂がいなくなった後オレはシロの前に姿を表す。

 

 

 

「シロ、今回ので確実に殺せるのか?」

 

 

 

オレは確認する。

 

 

 

「ああ、殺せるさ」

 

 

 

とシロは自信満々に答える。こいつはオレに作戦を教えていない。どんな仕掛けをしたかわからないが、こいつは間違いなくまともな方法で暗殺しない。

 

 

 

「オレが更に協力すればより確実に成功するぞ?」

 

 

 

今回オレは大したことはしていない。

 

 

 

「ああ大丈夫、君の協力はいらないよ。私が計画し、イトナが殺すんだ。寺坂君はその駒でしかないよ」

 

 

 

こいつは人を道具としか見ない。扱えきれる道具しか使わないということか。

 

 

 

「お前は確か‥‥あの赤髪のとなりの席のやつだったか」

 

 

 

‥‥と考えているとイトナがオレに殺気立ちながら睨んで言う。オレはそれに対し表情が変わることはない。

 

 

 

「…訂正しよう。お前はあの赤髪のやつより強い。」

 

 

 

そんなオレを見たイトナからそんなことを言われた。

 

 

 

「だが俺より弱い、だから殺さないでやる」

 

 

 

触手持ちに真正面から戦って勝てるはずもない。

 

 

 

「成功するといいな」

 

 

 

オレはそれだけ言ってここから立ち去った。

 

 

こうしてシロの計画が実行されたが失敗に終わった。

 

 

 

「それにしても驚いたよ、まさか君がプールに入っていたなんて。私を信用していた訳ではないんだろ?」 

 

  

 

 

オレはシロから作戦を聞いていないからな。普通なら何が起こるかわからないからプールに入ることはしないだろう。だがオレは危険だとわかっていながらあえて入った。

 

 

 

「あんたがどんな手を打ってくるかは大体わかっていたからな。それにオレだけ違う行動をしていたらみんなから怪しまれるだろ?」

 

 

 

「殺せんせーが助けると信じていたのか」

 

 

 

「まあそれも少しだけあるが完全に信用したわけじゃない。」

 

 

 

少なくとも殺せんせーはオレ達に何か隠しているのは事実だ。

 

 

 

「信用してないとしたらそれこそ恐ろしいよ。君は普通じゃない」

 

 

 

「オレのことはもういいんですよ。それよりあんたに聞きたいことがある。」

 

 

 

「なにかな?」

 

 

 

今イトナは触手の調整中でいない。ここでオレは思ったことを言うことにした。

 

 

 

「イトナは捨て駒なんだろ?」

 

 

 

そうオレが言った瞬間シロは驚いた表情になった。

 

 

 

「どうしてそう思ったのかい?」

 

 

 

「今回あんたの計画が呆気なく失敗したからだ。仮にオレがあんたならもっと念入りに計画した」

 

 

 

「いや、私の計画は完璧だった。生徒達が邪魔しなければね」

 

 

 

「だからそれを含めて呆気ないって言っているんだよ」

 

 

 

仮に今回ので本気で殺そうとするなら持久戦をした時点で生徒が邪魔をすることくらいわかったはずだ。今回は寺坂が起点となったが他にも邪魔をする方法はあるからな。

 

 

 

 

 

それに殺せんせーも一回目のイトナと戦闘した時より焦りがなかった。

 

 

 

「それにしても君は恐ろしい人だ。人が思っていることを的確に読んでくる。」

 

 

 

そしてシロは観念したようにため息を吐きながら答える。

 

 

 

「そうだよイトナはまだ実験段階だよ、まさかこうも早くバレるとは思えなかった。本当に恐ろしい人だよ。でもそれでも問題ないよ。私は絶対にヤツを殺す」

 

 

 

そう言ったシロはすごい殺気を放っていた。その意気でやれば少しはマシになったんじゃないだろうか。

 

 

 

「じゃあね、綾小路君。また会おう」

 

 

 

そしてシロは去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

今回オレの目的は2つあった。一つ目は寺坂を利用しそして再起させる事。二つ目はシロの戦略を把握し、情報を得る事だ。

 

 

 

だから今回オレがしたことは二つ。一つ目は寺坂の帰りの時間やルートをシロに教えシロが寺坂を利用するようにした。シロは不用意に動くことはできないからな。そして二つ目は寺坂の暗殺をスムーズに進むようにみんなを説得して協力させた。

 

 

 

寺坂が全力でやればオレも裏で動きやすくなる。オレの戦略も広がるだろう。そしてシロの情報に関してわかったことがある。それはシロはあらゆるもの全てが道具でしかないということ。

 

 

 

‥‥そして触手を信じてやまないということだ。それはつまり一度目にイトナが来る前シロがある生徒を見つめていた人が触手を持っていると考えて間違いないだろう。

 

 

 

それはオレにとって最悪でもありそして最高でもあった。

 

 

 

ミスをすれば最悪死ぬ。だが成功すればオレの駒になということだ。

 

 

 

そして成功するために必要な鍵はイトナだ。今はシロといるがこのままでは使い捨てられ死ぬ可能性が高い。

 

 

 

 

 

‥‥だいぶ計画からズレたが結局やる事は変わらないということか。

 

 

 

 

 

オレは殺せんせーを殺す計画を立て直した。




以上が寺坂編です。今後は期末試験編ですが、綾小路が今よりも行動するかもしれないですね。

最近投稿することが全然できませんでましたが今度よろしくお願いします。


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