IS Brotherhood (magnumheat)
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転生

 

主人公X「はぁ、はぁ、俺はもうすぐ死ぬのか。」

 

ここはとある病院の中。高校受験で見事第一志望校に合格し、卒業間近な彼は、不治の病にかかり、一転して「人生」を卒業することになった。

 

X「まさか、たった15年で死ぬとはな。俺はまた人として生まれ変われるのか。」

 

息も絶え絶えになり、彼は静かに息を引き取った。

 

 

in死後の世界

 

X「ここは…。」

 

目がさめるとそこは真っ暗だった。

 

X「なんだよ!死後の世界はこんなにも真っ暗なのか?生まれ変われる気がしないぜ!」

 

暗闇の中彼はのたうち回る。その時、

 

声「人の子よ、聞こえますか?」

 

声が聞こえる。それはまさに女神のような清らかな声だ。

 

X「?、誰だ。」

 

声「あなたは、大いなる使命を持っています。それは、世界を変える使命です。」

 

X「使命だと?」

 

声が途切れると、目の前に一本の白い光の道ができた。

 

X「これを進んでいけというのか?」

 

導かれるままに進んで行く。すると、だんだん暗闇が開けていき、トンネルから出るかのごとく光の出口が広がり、静かに白い光に包まれて再び意識を失った。

 

 

目を覚ますと、そこは医務室のようだ。だがさっきとは明らかに内装が違う。まるでSFの世界にある医務室のようだ。

 

X「あれ、ここどこだ?もしかして助かったのか?」

 

何が起こったのかはわからないが、とりあえず顔を洗おう。ベッドの近くの洗面台に向かう。すると、鏡には映るべき自分の顔がなかった。その顔は明らかに自分とは別人である。

 

X「な、何だ?病気のせいで顔が変わったのか?いや、そんなことは。」

 

少し混乱したが、落ち着きを取り戻して考える。

 

X「もしかして、生まれ変わったのか?ならどうして前世の記憶が残っているんだ?」

 

首を傾げて考える。すると、突然医務室のドアが開き、医者らしき人と、1人の美しい女性が入ってきた。

 

医者「よかった、織斑君気が付いたのですね!」

 

女性「一夏、大丈夫か!」

 

織斑君?一夏?もしかして今の俺のことか?じゃあやはり転生したってことか。まてよ、て事はここはIS(インフィニット・ストラトス)の世界なのか?すると彼女が織斑千冬か。

 

千冬「よかった、一夏。本当に手のかかる弟だな。」

 

一夏「・・・・。」

 

千冬「・・・、一夏?どうしたんだ?」

 

うーん、何と言ったらいいのか、まさか生まれ変わりましたなんて通じないだろうしな。ここはとりあえず記憶を無くした事にするか。

 

一夏「あの、あなたは一体?」

 

千冬「っ⁉︎一夏?」

 

医者「どうやら想定した以上のことが彼の身に起きたみたいですね。」

 

千冬「先生、まさか。」

 

医者「彼は爆発により脳にかなりの衝撃と損傷を受けていました。生還してもある程度の記憶障害は出ると思っていましたが、どうやらほぼ完全に記憶を無くしているみたいです。ここまでくると、もう手の施しようがありません。」

 

千冬「そ、そんな。」

 

ショックを隠せない千冬。そりゃそうだよな。

 

医者「こんな事を言うのはなんですが、どうか現実を受け止めてください。本来なら死んでもおかしくない状態から助かっただけでも奇跡なのですから。」

 

千冬「・・・・・。」

 

静かに医務室を出る千冬。その背中を見て主人公X、否、一夏は申し訳ないと思った。

 

一夏「とりあえず元気を出してもらわないとな。これからの事もあるし。」

 

とりあえずベッドから立ち上がり、医務室を出る。あの様子だと恐らく屋上に出ているだろう。

 

 

屋上に出ると、やはりそこには千冬がいた。

 

一夏「あの、すみません。」

 

千冬「一夏、起きて大丈夫なのか?」

 

一夏「千冬さん、でしたっけ。こんな事を言っても、気休めかもしれませんが、元気を出してください。」

 

千冬「一夏、そうだな。生きていてくれただけでも喜ぶべきだな。改めて、私は織斑千冬。お前の姉だ。」

 

一夏「よろしくお願いします、千冬さん。」

 

千冬「千冬さんはよせ、寂しいではないか。」

 

一夏「じゃあ、姉さんで。」

 

千冬「シンプルだな、まあいい。あと、敬語はいいぞ。」

 

一夏「わかったよ、姉さん。」

 

千冬「ふふっ、何だか新鮮だな。(我が弟ながら以前よりいい男に感じるな。)」

 

 

こうして、織斑一夏として転生した彼は、新たな人生を歩むのであった。

 



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新たな生活の幕開け

退院してから1週間、一夏は新しい生活に慣れるために色々と身の回りの状況を整理していった。まず、今の世の中はインフィニット・ストラトス、通称ISの出現により、世界のパワーバランスが著しく偏っている傾向にあるとのこと。その理由は、ISは人類史上最も強力な兵器とされ、扱えるのは女性だけだという。そのため、世の男性の多くはISに乗れないだけで不当な扱いを女性から受けている。話を聞いていると色々不安になってきたが、それを感じ取った千冬は、そんな一夏を励ました。

次に、一夏が記憶を無くす原因となった事故だが、当時はISの世界大会「モンド・グロッソ」に出場する千冬を応援すべく会場に来ていた一夏を、突然ある組織の一員が拉致し、千冬に追い詰められた犯人は一夏を道連れにするために爆発物を使ったという。

 

一夏「何か色々と物騒だな。」

 

千冬「全くだ、だが安心しろ。私がお前を守る。」

 

一夏「姉さん…。」

 

一夏は事の重大さを感じ、この世の中を精一杯生き抜こうと思った。

 

一夏「そういえば夕食まだだったよな。俺作るよ。」

 

千冬「出来るのか?」

 

一夏「任せてくれって。」

 

こう見えても前世は孤児院で子供達にほぼ毎日食事を作っていたしな。

 

千冬「すまないな、では頼むぞ。」

 

早速料理を開始する。開始から10分程で一通り完成し、食べる。

 

千冬「何だか以前よりうまくなったな。」

 

一夏「そうか、よかった。」

 

千冬「(それに、心なしか以前より男前になってるな。)」

 

一夏「ん?姉さん、どうかした?」

 

千冬「いや、なんでもない。」

 

そんな一時を過ごし、眠りについた。

 

 

その夜…

 

夢の中

 

一夏「…。」

 

声「大いなる使命を背負いし人の子よ。」

 

一夏「な、何だ?またこの夢か!」

 

声「あなたはこれから、思いもよらぬ事に幾つも出会うでしょう。」

 

一夏「誰だ?それに何で先の事がわかるんだよ!」

 

返事はなく、代わりにまた光の道が開かれた。

 

一夏「しょうがない、行くか。」

 

走り出す一夏。しばらくすると、壁一面真っ白な部屋のような空間に入った。

 

一夏「ここは…。」

 

辺りを見回す。

 

すると突如、白い人影が目の前に現れた。

 

人影「あなたは、多くの同志と世界を変える使命を果たしていく運命にあります。しかし、使命を果たす上では避けられない対決もあるでしょう。」

 

一夏「そりゃあ、人は皆違うからな。考えが対立するのは当たり前だろ。」

 

人影「同時に人は皆、信じるものが無ければ生きる方向を見失います。あなたには、すべての人の子を導いていく力が宿っているのです。」

 

一夏「…導く、か。」

 

人影「今はまだわからないかも知れませんが、必ずその時がやってきます。」

 

その言葉と同時に人影は消え去っていった。

 

 

翌日、午前8時

 

声「…夏、一夏。起きろ。」

 

一夏「うん、あれ?」

 

一夏は夢から目覚めた。

 

千冬「起きたか。今日は学校は休みだが、起きてくれないと朝食に入れないからな。」

 

一夏「ごめん姉さん、今作るから。」

 

慌てて起きて朝食を用意する一夏

 

千冬「そういえば一夏、起こす前に何かブツブツ言ってたな。どんな夢を見ていたんだ?」

 

一夏「いや、なんと言うか、すげえ不思議な夢だったな。」

 

千冬「そうか。そういえば退院してからまだ知り合いに顔を合わせてないな。」

 

一夏「ああ。まずどこから行こうかな。」

 

千冬「まずは五反田食堂に行くといいぞ。あと、篠ノ之道場にもな。そこにはお前の同級生がいるからな。」

 

一夏「わかった、じゃあ食べ終わってから行ってくるぜ。(まずは弾と箒か。)」

 

身支度を済ませ、一夏は自宅を出る。

 

 

五反田食堂

 

一夏「ごめんください。」

 

声「はーい。」

 

玄関から赤い髪の少女が出てくる。この子は弾の妹の五反田蘭だな。原作では一夏に一秒足らずで一目惚れしてたんだっけか。

 

蘭「あっ、い、い、一夏さん⁉︎」

 

一夏「はじめまして。織斑一夏といいます。」

 

蘭「ご、五反田蘭です。(記憶喪失は本当だったんだ。)」

 

一夏「えっと。」

 

蘭「い、今お兄呼びますから。お兄、一夏さん来たよ!」

 

「マジか⁉︎」

 

階段をドタドタ降りてくる音が聞こえ、赤い髪のロングヘアーの少年が来た。

 

一夏「はじめまして。」

 

「よ、よう一夏、俺は五反田弾ってんだ。よろしくな。(こりゃ間違いなく記憶喪失だな。)」

 

一夏「よろしく、五反田くん。」

 

弾「弾でいいぜ。しかし、これから日常生活に慣れるまで大変だと思うけど、できる限りのことはするからな。」

 

一夏「ありがとう、弾。」

 

弾「立ち話もなんだし、昼飯食ってけよ。」

 

一夏「悪いな。」

 

五反田食堂での昼食に入る。食事中、弾には中学での俺(一夏)について色々聞き、そこから話が弾んでいった。途中蘭も会話に入り、賑やかな昼食になった。蘭は顔を赤くしながらこちらを見ていたが、その理由は知っていた。ちなみに俺はこう見えても前世では割と鋭いほうだった。(自称)

 

さて、腹も膨れたし、次は篠ノ之道場だな。

 

 

 

 

 



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篠ノ之箒との出会い

五反田食堂を後にし、一夏は篠ノ之道場へと向かう。篠ノ之道場は、全国的に有名な名門道場であり、日本一クラスの選手を数多く育て上げてきた。篠ノ之箒も、中学時代には全国大会で優勝を果たした程の実力者である。

 

ちなみにここは、一夏の実家の町から少し離れた所にある。

 

一夏「ここが篠ノ之道場か、やっぱ雰囲気あるな。なんか緊張してきたぜ。」

 

門前に立ち、まさに武者震いする一夏である。深呼吸して、

 

一夏「ごめん下さい。」

 

「はい。」

 

門が開き、原作メンバーの一人、篠ノ之箒が出てきた。

 

箒「い、一夏⁉︎」

 

一夏「はじめまして、織斑一夏です。」

 

箒「あ、ああ。私は篠ノ之箒。お前の幼なじみだ。私の事は箒でいい。」

 

一夏「…箒、姉さんから聞いてるとは思うけど。」

 

箒「…その、記憶喪失と聞いたが、本当なのか?」

 

一夏「ああ、間違いない。」

 

箒「そうか。(ここにいるのは以前の一夏とは別人なんだな。)」

 

話を聞き、落胆する箒。それを見た一夏は不意に彼女の手を取る。

 

箒「っ⁉︎」

 

一夏「こんな事を言っても駄目かもしれないけど、元気を出してくれ、箒。」

 

箒「一夏…(記憶を失ってもこの優しさは変わらないな。)」

 

箒「そう言えば、千冬さんを千冬姉と呼んでいたが、今は普通に姉さんと呼ぶのか。」

 

一夏「ああ、姉さんはすげえ美人だから軽い呼び方じゃ駄目だと思ってな。」

 

箒「そうなのか。(今の一夏は千冬さんみたいな女性がタイプなのか。これは難儀だな。)」

 

一夏「ん、どうかしたか?」

 

箒「あっ、いや、何でもない。それより、稽古をしてみないか?以前のお前は剣道をしていたからな。」

 

一夏「そうだな、せっかくだからやってみよう。今後の役に立つかもしれないし。」

 

道場に入り、以前の一夏が着ていた道着に着替える。ちなみにこれは、一夏が入院中の間、箒が大切に保管していた。

 

一通り箒に剣道を教えてもらい、軽く手合わせした後、箒は以前の一夏について色々教えてくれた。

 

箒と知り合ったのは小学生時代で、クラスの男子から不当な扱いを受けていたところを一夏がかばってくれたのがきっかけだという。それ以来一夏とはたまに剣道で手合わせするようになったという。もともとは一夏の実家のある地域に住んでいたが、中学に入る前に引っ越してしまい、今日までまったく会えなかったという。

 

一夏「にしても、箒は剣道に相当思い入れがあるな。手合わせして負けたから尚更だ。」

 

箒「いや、なかなかいい勝負だった。」

 

一夏「じゃあそろそろ帰るぜ。姉さんに夕飯作らなきゃならないし。」

 

箒「そうか、ではまた会おう。(記憶を失っても相変わらず甲斐甲斐しいな。)」

 

篠ノ之道場を後にし、一夏は自宅へと戻っていった。



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運命の時〜IS学園入学

一夏に転生してから早一ケ月、この世界にもだいぶ慣れてきた。中学では弾を中心に色々な友人と、前世とはまた違った充実感ある生活ができた。

 

そんな日々も後わずかなこの時期、そう、俺は今受験という人生の岐路に立っている。俺は今、一夏が第一志望校にしていた藍越学園の受験会場に来ていた。前世に続いて受験とは、また不思議なものである。

 

一夏「とりあえず余裕を持って来てみたぜ。しかし寒いな、早く中に入るか。」

 

いち早く控え室に来て、座ってゆっくり待つことにした。ちなみに開始一時間前である。

 

すると、

 

声「人の子よ。」

 

聞き覚えのある声がした。

 

一夏「またこの声だ。おい、あんたは一体何者だ。ってゆうか、ゆめの中でなくても聞こえるのかよ。」

 

声「声のする方に向かいなさい。あなたの使命を果たすべき場所へと導きましょう。」

 

一夏「…。とりあえず行くしかないか。」

 

声は控え室の外に遠のいていく。一夏は控え室から出て、声が聞こえる方に向かう。

 

廊下を渡り、階段を登り、奥へと進む。そして、とある部屋に着いた。

 

一夏「この部屋に何かあるのか?」

 

恐る恐る入ってみる。するとそこには、見覚えのある物体が。

 

一夏「えっ、これって。」

 

そう、かの有名なISだった。千冬から聞いた話では、これは打鉄という訓練機である。

 

声「さあ、人の子よ、それに触れるのです。」

 

まあ触れても何も起きないだろう、多分。

 

一夏「まさかな。」

 

冗談半分に触れてみた。すると、機体が音を立てて光りだした。

 

一夏「うわっ、マジかよ⁉︎どうなってんだこりゃ⁉︎」

 

その瞬間、俺の運命は大きく変わった…。

 

 

3ヶ月後…

 

一夏「…。」

 

春うららかなる4月の今日この頃、俺、織斑一夏はIS学園に半強制的に入学することが決まり、今に至る。

正直に言えば、肩身がかなり狭い。それもそのはず、IS学園には基本女性ばかり。大抵の男は今の俺の状況を羨むだろうが、女尊男卑のこの時代でそれはかなりきついものがある。周りの女子は皆ギラギラした目で俺を見てくるし、どう思われているのかわからないから尚更緊張感が増してきた。箒が一緒のクラスにいることがせめてもの救いだが。

 

そんな中、教室のドアが開き、教師らしき女性が入ってくる。

 

女性「皆さん、この度はIS学園にご入学おめでとうございます。私はこの一年一組の副担任の、山田真耶です。よろしくお願いします。」

 

山田先生、原作を読んで知ってたけど、いざ近くで見てみるとやっぱり巨乳だなあ。歩いてるだけでたゆんたゆんしてたし。

おっと、いかんいかん、つい見とれていた。集中せねば。

 

山田先生「それでは、出席番号順に自己紹介をお願いしますね。」

 

自己紹介が進み、自分の番が来る。最初が肝心だからな、ビシッと決めねば。

 

一夏「織斑一夏です。学園唯一の男子ということで、色々苦労をかけますが、どうかよろしくお願いします。」

 

よしっ、言えた。すると、

 

「世界初の男子だから気になってたけどメチャクチャカッコいい!」

 

「この時期に入学してよかった!」

 

「今年は運があるぞー‼︎」

 

予想外の歓迎ぶりに戸惑っていると、

 

「騒ぐな、自己紹介が進まないだろう!」

 

鋭い一喝と共に千冬が教室に入って来た。

 

「諸君、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。入学して浮かれているようだが、これから過酷な訓練が待っているのを忘れるな!今のうちに覚悟を決めておけ!」

 

圧力のある自己紹介をする千冬、しかし、

 

「きゃー‼︎本物の千冬様よ‼︎」

 

「ブリュンヒルデに会えるなんて夢みたい‼︎」

 

静まるどころか逆にヒートアップしてきた。千冬は世界中の女性に崇められる程の存在だからである。

 

一夏「ね、じゃなかった。織斑先生、すみません。」

 

千冬「うむ、よく言い直したな織斑。」

 

うっかり姉さんと呼びそうになったのを見て、千冬は少し苦笑いした。

 

「あれ、織斑君って千冬様と知り合い?」

 

「そういえば苗字が同じだ。」

 

千冬「コホン、織斑一夏は私の弟だ。」

 

「そうなんだ、いいなあ。」

 

「千冬様の弟ならイケメンなのは当然よね。」

 

一夏「( 凄え言われようだな。)」

 

その後、各自、自己紹介が終わり、最初の授業に入る。

 

 



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初授業〜クラス代表

入学の翌日、最初の授業に入る。この学園は五教科とは別にISの専門知識も勉強していくので、普通の高校生より遥かに大変だ。なお、俺は原作一夏と違い必読書を読んでいたので、全てとはいかないがある程度はついていけた。

 

山田先生「このように、ISの武装システムは…」

 

一夏「……。」ジッ

 

真剣にスクリーンを見る一夏。ちなみに彼の席は真ん中の列の一番前である。

 

山田先生「(お、織斑君。真剣な眼差しがカッコよすぎます。流石は織斑先生の弟さんですね。)」

 

千冬「(一夏、真剣に頑張っているな。)」

 

専門用語が多く出る中、一夏は聞き漏らすまいと必死になっていた。

 

1限目が終了し、休憩に入る。

 

 

「見て、あの子よ。世界初の男子IS操縦者。」

 

「千冬様に似て素敵!」

 

「アンタ、話しかけてみなさいよ。」

 

「えぇ〜、どうしよっかなぁ。」

 

休憩時間、一夏を一目見ようと言わんばかりの人だかりが廊下にできていた。その中には1年生だけでなく、2、3年生の姿も。そんな状況をよそに、一夏は先ほど習った所の復習をしていた。

 

一夏「(とにかくスタートが大事だからな。)」

 

すると、

 

箒「一夏、ちょっといいか?」

 

箒が声をかけてきた。

 

一夏「おう、箒か。じゃあ屋上に行こうぜ。」

 

箒と一緒に屋上に向かう。

 

「誰?あの子。」

 

「織斑君の知り合いみたいよ。」

 

「幼馴染か〜、いいな〜。」

 

 

屋上にて…

 

箒「まさかお前がこの学園に来るとはな。」

 

一夏「ああ、何か成り行きでこうなったけど、これからよろしくな。」

 

箒「しかし、この学園に男一人は寂しくないか?」

 

一夏「まあその点はアレだけど、でも、この学園に入れた事には、何か意味があると思うんだ。だからこそ頑張ろうと決意できるしな。」

 

箒「そうか、何か私にできる事があれば言ってくれ。」

 

一夏「ありがとう、じゃあそろそろ戻るとするか。」

 

箒「ああ。」

 

休憩を終え、教室に戻る2人。

 

 

2限目後の休憩中…

 

「あなた、ちょっとよろしくて?」

 

 

一夏「ん?何か用か?」

 

「まあ、何ですのそのお返事は!? イギリス代表候補生であるこの私、セシリア・オルコットに向かって!」

 

セシリア・オルコット。原作でわかってはいるが、いざこうして見るとやっぱり高圧的だ。

ロールのかかったブロンドに青い瞳、唇の薄いリップが印象的だが。

 

一夏「見た所、君は俺が気にくわないようだな。」

 

セシリア「当然ですわ、男が存在するだけでこの学園の名が廃ります!あなたが織斑先生の弟でなければ追い出す所ですわ!」

 

普通なら言い返すが、なるべく騒ぎにならないようにしよう。

 

一夏「オルコットさん、その気持ちは分からなくもない。君のように相応の努力をしてきた人から見れば俺は紛い物同然だ。」

 

セシリア「あら、意外に素直ですのね。」

 

一夏「だが、俺には俺なりの理由があって、俺はここに入る事を決めたんだ。たとえ来るなと言われてもここにいるつもりだぜ。」

 

セシリア「なっ、生意気ですわよ!」

 

一夏「悪いがもうすぐ3限目だ。話なら昼休みにでもゆっくりやろう。」

 

セシリア「…わかりましたわ。逃げないで下さいまし!」

 

捨て台詞を言ったところで、セシリアは席に戻った。

 

3限目

 

千冬「これから3限目だが、その前に決めねばならない事がある。それは、このクラスの代表を務める者だ。平たく言うと、学級委員のようなものだ。クラスでのとりまとめはもちろん、生徒会での仕事も請け負う。」

 

一夏「(結構大変なんだな。)」

 

千冬「候補は自薦他薦を問わない。」

 

一夏「(まあおそらく大半はセシリアを推薦するだろうな。)」

 

そう思っていると、

 

「はい、織斑君を推薦します!」

 

「私も!」

 

「せっかくの唯一の男子だし。」

 

マジかよ。しかし、

 

セシリア「お待ち下さい、納得がいきませんわ!」

 

机を叩くと同時にセシリアが立ち上がる。

 

セシリア「クラス代表はクラスの価値を表すものと言っても過言ではありません!そんな重要な役目を素人同然の、しかも男が務めるなんて!」

 

箒「(何だあの女は、さっきから一夏に向かって!)」

 

セシリア「ISの実力で考えれば、代表候補生の私が務めるのが理にかなっています!こんな極東の島国の猿に代表を務められては困ります!」

 

流石にヒートアップするセシリア。箒は眼を細めてセシリアを睨むし、他の日本人の女子もいい顔をしていない。

 

山田先生「オルコットさん、その言葉はあんまりです!」

 

一夏「いいですよ、山田先生。オルコットさん、ひとつ言っておこう。人間の価値に性別も人種も身分も関係ない。第一、この世にISをもたらしたのは、君が嫌う極東の島国の女性だ!代表候補生ならそれくらい知ってるだろ!!」

 

セシリア「ッ‼︎」

 

一夏の言葉に少し動揺するセシリア。だが、理解できても彼女は引き下がらなかった。

 

セシリア「あなたに、決闘を申し込みますわ!」

 

一夏「いいぜ、この国の人間として戦わせてもらおうじゃねえか。織斑先生、よろしいでしょうか?」

 

千冬「許可しよう、では2週間後に対戦し、クラス代表を決める。」

 

こうして、セシリアとの決闘が決まった。



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クラス代表決定戦

急遽、セシリアとのクラス代表決定戦が決まり、2週間後に向けて一夏の特訓が始まった。

訓練機「打鉄」に乗り、操作を確認する。

 

一夏「おっと、こりゃあ気を抜くとイメージから外れた動きになってしまうぜ。」

 

最初は空を飛ぶのが少し怖くもあったが、操作に慣れてくるにつれ、訓練機との一体感を掴んでいく。

 

次は武器の使用法。打鉄の装備は刀であり、この間箒と剣道をしたおかげで少しは扱える。しかし、それでもまだ不安要素があるので、箒にさらなる剣技を教えてもらう。

 

箒「一夏、接近戦ではなるべく振りを小さくしろ!」

 

一夏「わかった!」

 

このような調子で箒に鍛えてもらっている。

 

千冬「(あんなに剣技にこだわる一夏は見たことがないな、機会があれば私も教えよう。)」

 

操作や戦闘訓練の他にも、操縦に必要不可欠なトレーニングを急ピッチで進め、肉体的にもかなりの負担がかかったが、それでも一夏は執念深くついていった。

 

千冬「織斑、クラス代表決定戦にそれほどの執念を見せるとはな。」

 

一夏「…クラス代表になるためというより、さっきセシリアに言ったことを証明するためですね。」

 

千冬「そうか、まあ理由はどうあれ、いい勝負が出来るよう、武運を祈るぞ。」

 

一夏「はい‼︎」

 

訓練を終え、昼食に入る。

 

食堂はかなり広く、それにすごく綺麗だ。

 

一夏「さて、ここで食うかな。」

 

とりあえず中央の丸テーブルに座る。

 

箒「一夏、隣いいか?」

 

一夏「ああ、いいぜ。」

 

箒が隣に座る。すると、一組の生徒が何人か座ってきた。

 

「ねえねえ、私たちもいいかな?」

 

「織斑君のこともっと知りたいし!」

 

「私もおりむーと食べる〜。」

 

自称、クラス一の情報屋の谷本さん、谷本さんの相棒的な鷹月さん、学園一の癒し系の布仏さん(通称のほほんさんby一夏)が

 

テーブルに来た。

 

一夏「もちろん。いいよな箒。」

 

箒「あ、ああ。(流石に二人きりにはなれないか…。)」

 

箒が一瞬ヘコんでたが、何だろう?

 

谷本「それにしても織斑君えらいことになったよね。」

 

鷹月「代表候補生相手じゃ勝ち目はないと思うけど、日本人として応援してるからね。」

 

一夏「ああ、勝負の行方はともかく、日本に恥じない戦いをするよ。」

 

箒「私も精一杯手伝わせてもらう。」

 

のほほん「おりむー、ファイトだよー。」

 

一夏「ありがとな、みんな。」

 

谷本「そういえば織斑君の部屋ってどこかな?」

 

鷹月「もしよかったら寄らせてもらってもいい?」

 

一夏「部屋は織斑先生の隣だからやめといたほうがいいぜ。」

 

のほほん「う〜ん、残念だよ〜。」

 

箒「まあ当然だな。一夏は織斑先生の弟で、ただ一人の肉親だからな。」

 

こんな感じで話が盛り上がり、昼食後再び訓練を行っていく。

 

こうして、2週間が過ぎていった。

 

 

そして、クラス代表決定戦当日…

 

試合用アリーナのギャラリーには、全校生徒が大観衆となっている。史上初の男性IS操縦者と、代表候補生の戦いには、データ取得も含め、かなりの興味を引くようだ。

 

一夏はプレッシャーの中、アリーナに入る。

 

そこには燻んだ白の機体が置かれていた。

 

山田「これが織斑君の専用機、『白式』です。」

 

 

千冬「すまないが織斑、これが届いたのは今朝方だったからな。時間がないから試合中でモノにしろ。」

 

一夏「はい!」

 

箒「一夏、自分を信じて頑張ってくれ。」

 

一夏「おう!行ってくるぜ!」

 

アリーナへと飛行していき、そこで待っていたセシリアと対峙する。

 

セシリア「あら来ましたの?未経験の専用機まで身につけて、度胸だけは一人前ですわね。」

 

一夏「自分で言うのも何だが、臆病風とは無縁でな。」

 

試合開始のブザーが鳴る。

 

セシリア「私のブルー・ティアーズの前に散りなさい!」

 

始まりと同時に彼女は距離を開け、ブルー・ティアーズの装備の一つ、スナイパーライフル「スターライトmkⅢ」で攻撃を仕掛ける。かなりの弾数だが、一夏は最小限の動きでかわしていく。装備を確認すると、原作通りブレード一本のみだ。

 

セシリア「この私にそのような武器だけで勝てるはずがございませんわ!」

 

一夏「勝負は武器の数で決まるわけじゃないぜ!」

 

放たれるレーザー光をブレードで掻き分けながら徐々に接近し、連射攻撃の一瞬の隙を狙い、ブレードをセシリアの手元に当てた。

 

一夏「まずは先制をいただいたぜ。どうやら接近戦は苦手みたいだな。」

 

セシリア「やりますわね、でもまだ手はございますわ。」

 

セシリアはまたも距離を開け、今度はミサイルを発射してくる。それに加え、4機のビット兵装により、全方位からの攻撃を仕掛ける。

 

一夏「(ここまで来るとは、どうやら本気になったようだな。)」

 

ビットからの攻撃をかわしても、回避先にはミサイルの爆風があり、回避だけではシールドエネルギーを維持し切れない状況となった。

 

一夏「(ここはダメージ覚悟で行くか。)」

 

一夏は咄嗟にビット兵装の一つに一直線に向かい、それを破壊する。まだ3つ残っているが、一つ空きができたことで移動範囲が広がり、そこから再びセシリアに踏み込んでいく。間合いを詰められ、焦ったセシリアは必要以上のミサイルを放ち、それを一夏がかわしたことで残りのビット兵装を、自らの手で破壊する展開となった。

 

モニタールーム

 

山田先生「お、織斑君にこれ程の力があったなんて。2週間前から機体を操作し始めたとはとても思えません!」

 

箒「(一夏、凄い。それにかっこいいな、いや待て、あそこにいるのは私の知る一夏ではないんだぞ。何故こうも胸がドキドキする⁉︎)」

 

千冬「白式はまだフォーマットとフィッティングが完了していない。その時で全てが決まる。」

 

 

白式「フォーマットとフィッティングが完了しました。確認ボタンを押してください。」

 

一夏「(そうか、これで例のアビリティが発動可能になるのか。)」

 

ボタンを押すと、白式の燻んだ白は光り輝く純白となり、背面からは天使を思わせる翼が生えた。持っているブレードは青白いオーラを纏い、大剣「雪片弐型」となる。

 

セシリア「ファーストシフト!まさかあなた、今まで初期状態で戦っていたのですか⁉︎」

 

一夏「ここで決めるぜ!」

 

セシリア「くっ、インターセプター!」

 

弾数がほぼ空となったセシリアは、近接武器を出し応戦する。しかし、剣技を鍛え上げてきた一夏の一撃を止めることはできなかった。一夏の雪片弐型の光刃がセシリアの肩を直撃し、アビリティ「零落白夜」により、彼女のシールドエネルギーをゼロにした。

 

「勝者、織斑一夏‼︎」

 

一夏「いよっしゃあ!!!」

 

その瞬間ギャラリーは大興奮する。試合を終えて着地後に白式を解除した途端、急に身体に痛みと重みがくる。

 

一夏「くっ、やっぱり慣れないことは急にするもんじゃないな。」

 

片膝を着く一夏、そこに箒と千冬が駆け寄る。

 

箒「一夏、大丈夫か⁉︎お前の大勝利だぞ‼︎」

 

千冬「素人ながらよくやったぞ織斑、流石は我が弟だ。」

 

一夏「…ありがとうございます。」

 

身体を箒に支えてもらいながら一夏はそのまま医務室へと向かった。



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クラス代表就任パーティー

一夏「…。」

クラス代表決定戦での戦いのダメージを医務室で回復し、自室で一夏はベッドに寝ながら色々考えていた。

セシリアは代表候補生に違わぬ力を持っており、本来なら負けていた試合で勝てたのだから、多少の疑問は抱かざるを得ない。

 

一夏「まあ、言ってみりゃコイツのおかげだよな。」

 

待機状態の白式を見つめながら呟く。ちなみに白式の待機状態は、白い金属のリストバンドに二枚の翼が付いたものである。

 

ふと、部屋のインターフォンが鳴る。

 

一夏「誰だろ、姉さんか箒かな。」

 

ドアを開けると、そこにはセシリアが立っていた。

 

一夏「…オルコットさん?」

 

セシリア「一夏さん、具合はいかがですか?」

 

一夏「ああ、もう大丈夫。」

 

セシリア「よかったです。一夏さん、私のことはセシリアで構いませんわ。あなたは私に勝利したのですから。」

 

セシリア、彼女からは険が取れており、あの時の高圧的なものはなくなっている。

 

セシリア「今日は、一夏さんにお詫びを申しに来ましたの。」

 

一夏「…とりあえず中に入ろうか。」

 

セシリアを部屋に招き入れる。

 

セシリア「その、初めてお会いした頃は、本当に申し訳ございませんでした。」

 

一夏「いいよ。でもあれには何か訳があったんじゃないのか?」

 

セシリア「えっ?」

 

一夏「人間、歪んでるときは大抵心に傷を負ってるもんだ。あの時興奮こそしていたが、お前の目を見ればそれが何となくわかったんだ。」

 

セシリア「…一夏さん。」

 

それから、セシリアは自分の過去について話し出した。両親はイギリス貴族の中でも有数のオルコット家であり、両親共に立派だったが、ISの出現を機に両親の関係が歪み、父親は母親の顔色を伺うばかりになったことから、男に対して少しずつ不信感を抱いてきた。

そして、彼女の男性不信にさらに拍車をかける事件が起きた。両親が列車の事故により亡くなってしまい、残された財産の所有権をめぐって多くの親戚の男性が争ったのだ。審議の結果、最終的にはセシリア直属のメイドに渡され、事態は解決したが、セシリアの心には、世の男性は皆弱く醜いという偏見が生まれてしまったのだ。

 

一夏「やっぱり、悲しい訳があったんだな。」

 

セシリア「一夏さん、私は、その、ただ寂しくて。」

 

一夏「大丈夫。この学園にいれば、その寂しさもきっと乗り越えられる。」

 

一夏は強い気持ちでセシリアを諭した。

 

セシリア「(この輝いた瞳、女尊男卑のこの時代でも、これ程の男性がいたなんて、このお方はまさに私の理想の男性そのものですわ。)」

 

一夏「ん?セシリア?」

 

セシリア「あっ、その、えっと、そ、そうですわ。これから食堂で、一夏さんのクラス代表就任パーティーが開かれる事になりましたの。」

 

パーティーか、何だか大袈裟な気もするが、悪くないな。

 

一夏「そっか、そりゃ楽しみだぜ。じゃあ行こうか。」

 

セシリア「はい。」

 

セシリアと一夏は部屋から出る。すると、そこにはタイミングが悪い事に箒がいた。

 

箒「なっ、オ、オルコット⁉︎一夏の部屋で何をしていた⁉︎」

 

セシリア「あら、御機嫌よう篠ノ之さん。私、一夏さんのお見舞いに来ていましたの。」

 

そう言うなりセシリアは俺の腕に手を回す。

やべえ、こりゃ修羅場になる。

 

箒「くっ、まさか一夏を馬鹿にしていた尻軽が抜け抜けと見舞いに来るとは。」

 

セシリア「なんですってー⁉︎」

 

箒「一夏から離れないか!」

 

箒は一夏のもう片方の腕を引っ張る。

 

一夏「な、なあ2人共、今は食堂に行かないか?皆が待ってるし。」

 

箒「…そうだったな。」

 

セシリア「そうですわね。」

 

とりあえず食堂に向かうが、移動中も2人は睨み合いを続ける。

 

一夏「2人共、できれば笑顔でいて欲しいんだが、その、せっかくの美貌なんだし。」

 

箒・セシリア「一夏(さん)❤︎」

 

何とか収まったな。しかし2人は顔を見合わせるなり、

 

箒・セシリア「ふんっ‼︎」

 

この有様である。この先どうなるかな。

 

 

食堂に着くと、皆が拍手で迎え入れてくれた。奥のテーブル席の中央に座り、両サイドにはそれぞれ箒とセシリアが座った。

 

谷本「それでは、織斑君のクラス代表就任を祝って、乾杯!」

 

「かんぱーい‼︎」

 

クラッカーが鳴らされる。めちゃめちゃ祝福されてるな。

 

それにしてもさっきから箒とセシリアは俺の腕を強く抱き締めてる。まるで俺を取られたくないと言わんばかりに。それに、2人とも胸が大き目だからその柔らかい感触がもろに伝わってくる。

 

胸の感触に顔が緩むのを何とか堪える一夏であった。

 

「はいはーい、新聞部でーす。今話題の男性IS操縦者の織斑君にインタビューさせていただきまーす。私は黛薫子、名刺をどうぞ。」

 

一夏「ど、どうも。(この学園にも部活があるのか。)」

 

名刺を受け取る。ちなみにこの黛薫子は3年生だ。学年は制服のリボンの色で区別されており、1年生は青、2年生は黄色、3年生は赤色である。

 

黛「さてさて、織斑君。今回のクラス代表決定戦の感想を一言!」

 

一夏「今回勝てたのは、白式のおかげと言った方がいいな。事実セシリアは代表候補生に違わぬ力を持っていたし、正直勝てる気はしなかった。でもそんな中でセシリアといい勝負ができた事を誇らしく思う。」

 

箒「(一夏…。)」

 

セシリア「(一夏さん…。)」

 

鷹月「(素敵。)」

 

のほほん「(おりむーカッコいいよぅ。)」

 

黛「うん、謙虚な答えだね。」

 

一夏「それに、セシリアはある事を証明してくれた。それは、人は変われるということ。彼女のおかげで俺はこの女尊男卑の世の中でも、希望を持って生きられると思えた。」

 

セシリア「一夏さん。」

 

谷本「なんか、感動したかも。」

 

黛「では最後に、今後の目標を聞かせてもらえるかな?」

 

一夏「俺はまだISを始めたばかり。レースで言えばまだ最下位だ。俺はもっと強くなり、いつか織斑先生を越えたい‼︎」

 

「おぉー!!」

 

千冬「大きく出たな織斑、その言葉を覚えておこう。今後も楽しみにしているからな。」

 

セシリア「一夏さんはもっと強くなれます!私もお手伝い致しますわ!」

 

箒「私にも何かできることがあるなら言ってくれ!」

 

のほほん「私も〜。」

 

黛「じゃあ最後に、インタビューの記念写真を撮らせてもらおうかな。織斑君、オルコットさんと握手して。」

 

セシリア「ままままぁ、一夏さんと2人で写真なんて。」

 

箒「むっ。」

 

黛「2人共注目の専用機持ちだからね。」

 

なんか照れるな。しかし、シャッターが押される瞬間、箒をはじめ、周りの皆が入ってきた。

 

セシリア「何故全員入っていますの⁉︎」

 

谷本「セシリア、抜け駆けはダメだよ〜。」

 

箒「私もそう思うな。」

 

セシリア「むうぅ〜。」

 

一夏「…ハハハ。」

 

こんな感じでパーティーを過ごした。

 

パーティーを過ごした後、一夏は帰り際に箒とセシリアと3人になったタイミングに、2人に声をかけた。

 

一夏「…確かめたい事があるんだけど…。」

 

箒「うん?」

 

セシリア「どうしましたの?」

 

一夏「2人とも、俺に好意を抱いてるんだろう?」

 

箒・セシリア「!!」

 

一夏「箒は知ってるけど、俺は最近記憶喪失になってから、初めての事だらけでまだ落ち着けてないんだ。その、今すぐには答えが出せないけど。」

 

セシリア「今すぐでなくても大丈夫です、一夏さん。」

 

箒「ああ、想いに気づいてもらえただけでも嬉しい。だから安心してISに励んでくれ。」

 

一夏「2人共、俺を好きでいてくれてありがとう。これからもよろしくな。」

 

箒・セシリア「ああ(はい)‼︎」

 

修羅場からほのかに甘い雰囲気になり、そのまま部屋に戻った。



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鳳鈴音との出会い

IS学園に入学してから1ヶ月近く経ち、一夏は大分この学園に馴染めてきた。はじめは女子ばかりの環境に戸惑うばかりであったが、ISの実戦を重ねていくうちにすっかり慣れていた。特に箒やセシリアとは、想いに気付いたことをきっかけに仲良くなり、互いに訓練し合うまでになった。一夏は、箒に剣術の訓練を、セシリアにはISの知識を教わり、日に日にモノにしていく。その関係が羨ましいからか、同級生だけでなく、上級生までもが一夏の訓練を手伝いたいと言い出し、一夏を巡る修羅場がしょっちゅう起こる。これには一夏も千冬も頭を悩ませている。

 

そんな中、今日も一年一組は一夏を中心に賑わっていた。

 

鷹月「でさ、最近はこのISスーツが今世界的にトレンドなのよね!」

 

谷本「そういえば、織斑君のスーツは変わったデザインだよね。」

 

一夏「ああ、あれは箒の姉の束さんが作った特注品だからな。」

 

「篠ノ之さんはあの博士の妹か。よく考えたら、世界一の操縦者とISの開発者の身内がこのクラスにいるって事だよね!」

 

箒「…。」

 

セシリア「箒さん、どうかしました?」

 

箒「あ、いや、何でもない。」

 

箒は複雑な表情だ。まあ、実際束さんに対してあまりいい感情を抱いてないからな。ここは話題を変えるか。

 

一夏「ところで、もうすぐクラス代表対抗戦があるが、聞くところによると優勝したら特典があるらしいな。」

 

谷本「そうそう、食堂のデザート半年フリーパス券だよ!」

 

鷹月「それは大きいわね!頑張って、織斑君!」

 

のほほん「デザート食べ放題なのだ〜。」

 

一夏「それは俺も欲しいな。」

 

箒「しかし、最近二組に中国代表候補生が転校してきたと聞いたぞ。」

 

セシリア「それは要注意ですわね。」

 

一夏「そいつはなかなか興味深いぜ。強い奴と戦えるのは一番の楽しみだしな。」

 

「でも、二組のクラス代表はその前に決まってたし、まず大丈夫だよ!」

 

声「それはどうかしらね。」

 

教室の入り口から誰かの声がした。そこにはツインテールの少女が立っていた。

 

谷本「あっ、あの子よ。転校してきた中国代表候補生。」

 

声「そうよ!中国代表候補生、鳳鈴音よ!クラス代表は専用機持ちのあたしになったから!その方が盛り上がるじゃない!」

 

自信たっぷりに話す鈴。なかなかの元気ぶりだな。

 

鈴「久しぶりね一夏!まさかアンタがこの学園に来るとはね。しかも代表候補生に勝ってクラス代表になったんでしょ⁉︎」

 

一夏「あ、ああ。(心苦しいが、記憶喪失の事話さなきゃな。)」

 

箒「むっ、あいつは一夏の知り合いなのか?」

 

セシリア「誰ですの?一夏さんと親しそうに。」

 

一夏「…昼休み、ちょっといいか?大事な話がある。」

 

鈴「そうなの⁉︎楽しみにしてるわね一夏!」

 

顔が明るくなる鈴。

 

千冬「おい。」

 

鈴「何よ、今一夏と…って、千冬さん⁉︎イタッ!」

 

鈴は千冬から拳骨を受けた。

 

千冬「織斑先生だ、もう授業が始まる。とっととクラスに戻れ。」

 

鈴は逃げるように二組に戻っていった。

 

 

 

 

 

 



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クラス代表対抗戦

箒「一夏、あの中国代表候補生とは知り合いなのか⁉︎」

 

セシリア「説明してくれませんこと⁉︎」

 

一夏「落ち着いてくれ、よく考えたら俺の小学校時代の幼なじみの箒が知らないって事は、恐らく中学時代からの知り合いだと思う。箒には話したが、俺は記憶喪失になったからあの娘の事は覚えてないんだか。」

 

箒「確かに中学はお前とは別だったな。」

 

セシリア「そうだったんですか。」

 

谷本「記憶喪失か、何か色々大変だよね。」

 

一夏「ああ。(たまに聞こえる声の主も気になるしな。)」

 

鷹月「織斑君、記憶喪失のこと、あの子には…。」

 

一夏「心苦しいけど、いつかは知ることになるしな。昼休みにでも話に行くよ。」

 

箒「それなら私もついて行こう。(二人きりはまずいしな。)」

 

セシリア「私もついて行きますわ。(二人きりはまずいですわ。)」

 

一夏「そっか、助かるよ。」

 

 

そして昼休み、一夏は意を決して鈴を屋上に呼ぶ。

 

鈴「…一夏、その二人誰?」

 

鈴は一夏の左右にいる箒とセシリアを見るなり不機嫌になる。

 

一夏「その、クラスメイトで俺のISの訓練相手でな。」

 

鈴「ふうん、ま、いいわ。話って何?」

 

一夏「鳳さん、実は俺、入学前に事件に巻き込まれたせいで、記憶喪失になったんだ。」

 

鈴「は⁉︎マジ⁉︎」

 

一夏「ああ、残念だがこの学園に入る以前の記憶は全く残ってない。だから君の事も全く覚えてないんだ。」

 

鈴「じゃ、じゃあ、あたしとの約束も綺麗さっぱり忘れたって事⁉︎」

 

一夏「すまない。」

 

鈴「…そう、いいわ!この憂さはクラス代表対抗戦で晴らさせてもらうわ!当日は覚悟しなさいよね一夏‼︎」

 

鈴は怒りに震えながらその場を離れた。

 

一夏「(わかってはいたが、心が痛むな。)」

 

箒「一夏、気持ちはわかるが、今はクラス代表対抗戦に集中しよう。」

 

セシリア「箒さんの言う通りですわ。」

 

一夏「そうだな、見る限り鳳さんもプライドが高いと見える。全力でのぞまなきゃな。」

 

その場を影から千冬が見ている。

 

千冬「(…一夏、とりあえず最善の選択をしたな。気まずいかもしれないが頑張れよ。)」

 

 

そして、クラス代表対抗戦の日がやってきた。アリーナのギャラリーはいつも以上に盛り上がっており、特に1組は激しい声援を一夏に送る。

 

箒「一夏、戦いに集中するんだぞ!」

 

セシリア「私達がついていますわ!」

 

一夏「おう、そんじゃ行ってくるぜ!」

 

白式を纏い、ビットから飛び出して鈴と対峙する。鈴は専用機甲龍を纏っている。

 

鈴「随分と余裕ね一夏。」

 

一夏「一応こういうの経験済みだからな。」

 

鈴「あたしはあのイギリス代表候補生のようにはいかないわよ!」

 

アナウンス「それでは、両者ともに位置について、始め!」

 

ブザーと共にお互い動き出す。

 

鈴「行くわよ!」

 

鈴は甲龍の近接装備「双天牙月」を繰り出して襲いかかる。だが、少々大振りなので一夏は雪片弍型で難なく受け流し、持ち前のスピーディーな動きで翻弄する。

 

鈴「逃げ足だけは速いわね。」

 

一夏「そりゃどうも、行くぜ!」

 

一夏は変則的な軌道により、空振りの隙を狙い鈴の肩に雪片弍型の一太刀をくらわす。

 

一夏「刀剣類なら俺の方が上手だな。」

 

鈴「やるわね、ならこの武器を使うわ!」

 

鈴は一気に距離を開ける。その瞬間、見えない衝撃に襲われる。

 

一夏「くっ、射撃の弾道が見えない!」

 

鈴「今度はこっちの番よ!」

 

鈴は甲龍の射撃装備の「龍砲」を一夏に浴びせる。一夏はフルスピードで広範囲を動き、かわせない時は雪片弍型の刀身でガードする。

 

箒「まずいぞ、白式は近接格闘のみだから不利だ。」

 

セシリア「一夏さん!何とか接近して下さい!」

 

ギャラリーから二人は応援する。

 

鈴「ほらほら、近づかなきゃ一方的よ!」

 

一夏「くっ、こうなったら賭けに出るか。」

 

一夏は覚悟を決め、その場に止まる。

 

鈴「これで決まりよ!」

 

一夏は龍砲のタイミングを見計らい、雪片弍型を構える。

 

一夏「これでどうだー‼︎」

 

一夏は力の限り雪片弍型を振り、龍砲の衝撃を鈴に弾き返した。

 

鈴「嘘⁉︎なんて力!きゃあ‼︎」

 

不意を突かれ、反応が遅れた鈴に、跳ね返ってきた衝撃が命中した。

その瞬間、一夏はすぐさま間合いを詰め、零落白夜でとどめを刺した。

 

アナウンス「勝者、織斑一夏‼︎」

 

アナウンスが流れる、すると、どこからか爆発音が聞こえた。

 

 

 

 



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無人機襲撃〜鈴との過去

アナウンス「異常事態発生!異常事態発生!外部からの侵入者を発見!生徒はすみやかに避難して下さい!」

 

一夏「(ここで来たか。)」

 

山田「織斑君、鳳さん、聞こえますか⁉︎謎の機体があなた達を狙っています!今すぐそこから避難して下さい!」

 

千冬「無理だ。アリーナのビット口はもう非常ロックがかかってる。こうなっては戦うしかあるまい。」

 

箒「一夏と鳳は試合後ですよ!」

 

セシリア「なら、私がお二人のもとへ行きますわ!」

 

千冬「オルコット、本当なら避難させるが、専用機持ちが一人でも多くいれば少しはマシだろうな。行ってこい‼︎」

 

セシリア「はい!」

 

箒「くっ、私にも専用機があれば…。」

 

ブルーティアーズを纏い、セシリアは一夏と鈴を助けに向かう。

 

一夏「おう、セシリアか!助かるぜ!」

 

セシリア「鳳さん、ここは私達に任せて避難して下さい!」

 

鈴「まだやれるわよ!」

 

一夏「その状態じゃ無茶だ。あいつは俺たちが必ず仕留めるから避難しろ!」

 

鈴「…無事に帰って来なさいよね、一夏。」

 

そう言いながら鈴はアリーナを後にする。

 

一夏「セシリア、恐らく奴は無人機だ。」

 

セシリア「そんな!でも確かに人の気配がしませんわね。」

 

一夏「ここは俺たちの連携プレーで決めようぜ!」

 

セシリア「はい‼︎」

 

一夏はすぐさま無人機に接近し、雪片弍型を振りかざす。

それを無人機がかわすように誘導し、回避先にセシリアがスターライトmkⅢを撃ちまくる。

射撃によりダメージを蓄積させてよろけたところに、すかさず一夏の零落白夜が決まった。

 

セシリア「やりましたわね!一夏さん!」

 

一夏「ああ、俺たちの勝ちだ!」

 

千冬「二人ともよくやった、無人機については後の報告を待つように。」

 

こうして事態は終結した。

 

 

放課後、一夏は自室に戻って寝転んでいた。クラス代表対抗戦と、不測の事態での戦闘が重なり、肉体疲労はかなりのものであった。

 

一夏「何とかなったな、それにしても何故無人機が来たんだろう。なあ、白式。」

 

一夏はしきりに白式に声をかける。気のせいか、それに反応するように待機状態の白式が光ったような気がした。

 

ピンポーン

 

部屋の呼び鈴が鳴ると同時に一夏は起き上がる。出てみるとそこには…

 

一夏「鳳さん。」

 

鈴「一夏、ちょっと話聞いてくれる?」

 

一夏「あ、ああ。」

 

鈴「その、あんたとあたしとの過去の事なんだけどさ。」

 

鈴はそれから以前の一夏との事を全て話してくれた。一夏と知り合ったのは中学の時に、中国人であるためにイジメにあっていたところを助けてくれたのがきっかけだったという。

それ以来鈴は、一夏と弾をよく自分の家である中華料理店に招待し、そのうちに一夏に対して恋心を抱いた。

しかし、両親が離婚し、親権は父親側にあったために中国に戻る事になり、その時に一夏との約束を交わした。

 

一夏「…そうだったのか。」

 

鈴「うん、だから、IS学園に入学できた時は、またアンタに会えて嬉しかったのよ。それなのに、それなのに…。」

 

一夏「鈴。」

 

鈴「やっと会えたのに記憶喪失だなんて!しかもあたしとの約束もなくなって、じゃああたしこれからどうすりゃいいのよ‼︎」

 

鈴はついに泣き出した。

 

一夏「…。」ガバッ

 

鈴「!」

 

一夏思わず鈴を抱きしめた。鈴はそれによって余計に感情が込み上げ、より大きな声で泣いた。

 

一夏「(すまない、だが今の俺は以前の一夏じゃないんだ。)」

 

こうなってくると、転生して良かったのかどうか疑問に思えてきた。

 

しばらくして、鈴は落ち着きを取り戻した。

 

鈴「ふう、泣いたら何かスッキリしたわ。改めてよろしくね一夏、あたしの事は鈴でいいわよ。」

 

一夏「…鈴、俺はお前が好きだった一夏には及ばないかもしれないけど、それでも俺はお前の事を大事に思ってるからな。」

 

鈴「ふふっ、なんかアンタがモテる理由が改めてわかったわ。記憶を失ってもカッコ良さは変わんないわね。」

 

一夏「いや、俺は別に…。それより、夕食に行かないか?なんか腹減ったし。」

 

鈴「そうね、今晩何にする?」

 

一夏「ラーメンでも食うか。」

 

鈴と部屋を出る。するとそこには箒とセシリアがいた。

 

セシリア「一夏さん、鳳さん、その。」

 

一夏「話が聞こえてたんだな。」

 

箒「すまない。聞くつもりは…。」

 

鈴「いいの、もう全部話したしね。改めてよろしくね二人とも。あたしの事は鈴でいいわよ。」

 

セシリア「私もセシリアでかまいませんわ。」

 

箒「私は箒だ。」

 

鈴「うん、よろしくねセシリア、箒。」

 

つかの間の自己紹介の後、一夏達は夕食に向かった。



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貴公子と銀の少女

一夏「ふ〜、この学園のラーメン中々本格的な味だったな。さて、事態もなんとかおさまったし、明日に備えて寝るとするか。」

 

夕食を終えた一夏は、無人機との戦いによって疲れた身体を癒すべく、自室に戻っていた。

 

一夏「それにしても、この事件を起こす事には何の意味があったんだろうな。」

 

思いもよらない事件が起きた原因がよほど気になるらしく、いつになく考え込む一夏である。

 

一夏「ま、考えてもしょうがねえな。寝よ寝よ。」

 

疲れた身体をそのままベッドに預け、眠りについた。

 

 

夢の中

 

声「人の子よ。」

 

一夏「…またこの声か。」

 

声「あなたはこれから、己の力を深く知る事になります。そして、己の力を深く知った時、その力をどのように使うか、それはあなた次第です。その選択により、世界は大きく変わる事でしょう。」

 

一夏「(それはこの俺がISを使える事と關係があるのか?)」

 

またしても不可解な予言めいた声を聞き、静かに朝を迎えた。

身支度を済ませ、部屋を出る。

 

一夏「…。」

 

一組に入り、席に着いても心ここに在らずの一夏。

 

箒「おはよう一夏。」

 

セシリア「おはようございます、一夏さん。」

 

鈴「一夏、おはよう。」

 

一夏「ああ、おはよう。」

 

箒「一夏、朝からボーッとしてるが何かあったのか?」

 

一夏「いや、なんでもない。それより、昨日は散々だったな。」

 

セシリア「調べたところ、無人機が襲撃してきた事自体前例がないみたいですわ。」

 

箒「姉さんにもあの無人機の出処はわからないらしい。」

 

一夏「…となると、創始者である束さん以外にISを意のままにできる人間がいる可能性も考えられるな。」

 

谷本「えーっ、それはないんじゃない?」

 

一夏「だが、現に今も不可解な事は起きている。男の俺がISを使えて、しかも、自慢じゃないが今の所無敗だなんて想像出来たか?」

 

鷹月「確かにそれらを考えたら、ISに関しては何が起こっても不思議じゃないのかもね。」

 

のほほん「うーん、難しい話だよ〜。」

 

朝からクラスは昨日の事件の話で持ちきりだった。

今回の無人機襲撃事件により、クラス代表対抗戦は完全に中止となった。当然デザートフリーパスの特典も無し。

それはさておき、現在一夏は箒とセシリアに加え、鈴とも日々トレーニングを行っている。

箒、セシリア共に今の一夏とは飽くまで友達である鈴とは仲が良く、良く模擬戦も行っている。

 

山田「はい皆さん、席に着いて下さい。ホームルームを始めますよ。」

 

山田先生の声とともに席に着く。

 

山田「今日は転校生を紹介します。」

 

2人の生徒が入ってきた。

 

山田「では、自己紹介をお願いします。」

 

1人目の金髪の少年(少女)が前に出る。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。こちらの学園に僕と同じ境遇の方がいると聞いています。」

 

一夏「(原作でわかってるけど、こう見ると男にも見えるな。)」

 

「キャー‼︎可愛い!!」

 

「男子、2人目の男子‼︎守ってあげたくなる系の‼︎」

 

千冬「騒ぐな‼︎静かにしろ‼︎」

 

シャルルを見るなり女子たちの歓声が爆発する。こうなると世の女尊男卑を疑いたくなる。

次に、銀髪の小柄な少女が前に出る。

 

「…ラウラ・ボーデヴィッヒ、以上。」

 

ラウラは素っ気なく挨拶を済ませると、一夏の方を向き、彼に歩み寄る。

 

ラウラ「…貴様が織斑教官の弟か。」

 

一夏「ああ。」

 

ラウラ「なら一つ言っておこう。私は貴様など認めない‼︎」

 

一夏「…。」

 

ラウラは一夏にそう言うと、自分の席に座る。彼女からは負のオーラ

が強く感じられる。

 

千冬「…これからISの実戦訓練に入る。各自スーツを着てアリーナに集合。織斑、同じ男子として、デュノアの面倒を見てやれ。」

 

一夏「はい。じゃあ行こうか、デュノア。」

 

シャルル「うん、僕のことはシャルルでいいよ織斑くん。」

 

一夏「じゃあ俺の事は一夏でいいぜ、シャルル。」

 

2人は急いで更衣室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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操縦訓練〜シャルルとの昼時

一夏とシャルルは急いで更衣室へと向かう。というのも、教室から更衣室までが遠いからだ。途中シャルルの噂を聞きつけた新聞部や他の女子たちに捕まりそうになるも、なんとかかいくぐった。

 

シャルル「どうしてみんな興奮してるの?」

 

一夏「そりゃあ、数少ない男子IS操縦者だから珍しいんだろ。入学当初は俺も大変だったからな。」

 

シャルル「なんか色々複雑だね。」

 

更衣室に着くと、すぐに着替えを始める。しかし、

 

一夏「シャルル、どうした?忘れ物か?」

 

シャルル「いや、ちょっとね。」

 

一夏の上半身を見た瞬間、シャルルはドギマギしている。

 

一夏「俺トイレ行くから先に行っててくれ。(まあ正体が女だしな。)」

 

シャルル「うん、わかった。(ほっ)」

 

準備を済ませてアリーナに着くと、もうみんな並んでいた、遅刻寸前である。

 

千冬「2人ともギリギリだったな。後ろに並べ。」

 

一夏・シャルル「はい。」

 

セシリア「随分とゆっくり来られましたね。」

 

一夏「途中新聞部の連中が絡んできてな。」

 

箒「無理もない。2人とも希少価値ある存在だからな。」

 

一夏はなるべく顔から下を見ないで話す。ISスーツは体にピッタリ目にできているため、女子の胸や尻が強調されている。

それが1組と2組合わせて60人前後おり、特に箒やセシリアはグラマラスなので一夏は正直目のやり場に困っていた。

 

千冬「ではこれより、ISの操縦の基本訓練に入る。まずはデモンストレーションを専用機持ちに行ってもらおう。

鳳、オルコット、前にでろ。」

 

鳳「はあー、何であたしが。」

 

オルコット「どうせなら一夏さんと行いたいですわ。」

 

いつになくテンションの低い2人。どちらも一夏に負けた者同士だからか、気乗りしないようだ。

 

千冬「オルコット、あいつにアピールするチャンスだぞ。鳳、実力を見せるいい機会だぞ。」ボソッ

 

セシリア・鈴「‼︎‼︎」

 

千冬に何か吹き込まれ、一気にモチベーションが上がる2人。

 

一夏「何て言ったんだ?」ヒソヒソ

 

シャルル「さあ。」

 

セシリア「やはりここは、イギリス代表候補生の私の出番ですわね!」

 

鈴「ここであたしの実力を見せなきゃね!セシリア、お互い全力よ!」

 

セシリア「はい、鈴さん!」

 

千冬「慌てるな、お前たちの対戦相手はもう決めて・・・」

 

山田先生「キャーっ、誰か止めてくださいー!!」

 

山田先生が真っ逆さまで突っ込んでくる。避けようとしたが、一夏は逃げ遅れた。

 

一夏「ぐわっ!!」

 

そのまま倒れてしまう。その瞬間、一夏は両手に何か柔らかな感触を覚えた。

 

一夏「っ!?」

 

何と一夏は山田先生の巨乳を鷲掴みにしていた。

 

山田先生「あん、織斑君駄目です、そんな大胆な!」

 

一夏「だーっ、すいません!」

 

慌てて離れるが時すでに遅し。箒やセシリアは一夏を睨み、鈴は暗い顔で自分の胸を見ていた。

 

一夏「(すまん2人とも。でも凄い柔らかさだったな。)」

 

千冬「織斑、色ボケしているんじゃない‼︎」

 

拳骨を食らった。

 

一夏「す、すみませんでした。」

 

千冬「コホン、では気をとりなおして、2人には山田先生相手に2対1戦ってもらう。まあ今のお前たちでは負けるがな。」

 

セシリア・鈴「むっ!!」

 

プライドに障ったのか、入れ込む2人。

 

デモンストレーションが始まった。セシリアは遠距離射撃、鈴は接近戦中心に山田先生にかかる。

両方の距離から攻められ、一見不利に見えるが、山田先生は2人の作戦を見抜いていたかのように上手くさばいていく。

2人が回避行動でお互い混乱したところにグレネードランチャーが炸裂し、あっさりと決着が着いた。

 

鈴「セシリア、アンタ回避先全部読まれてるわよ!」

 

セシリア「鈴さんこそ、でたらめに攻撃しすぎですわ!」

 

地に伏せられ、言い争う2人。

 

千冬「山田先生はこう見えてもと代表候補生だ。以後敬意を表するように。」

 

それから、グループ毎に分かれての操縦訓練が行われた。グループリーダーは専用機持ちが務める事になり、出席番号の小さい順に組まれた。

 

「やったあ、織斑君とだ!」

 

「デュノア君とだ!ラッキー!」

 

運良く一夏やシャルルのグループに入れた女子は大喜び。一方、ラウラのグループはやりにくそうな雰囲気だ。

 

一夏「それじゃあ、番号順に歩行や操作の練習をしよう。先ずは」

 

「はいはいはーい!出席番号1番の相川清香。ハンドボール部、趣味はスポーツ観戦とジョギングだよ、よろしくね。」

 

一夏「あ、ああ。」

 

「ああっ、ずるい私も!」

 

「「「「「第一印象から決めてました!」」」」」

 

「そ、そりゃあどうも。(やっぱ照れるな。)」

 

箒「(むう、先に想いを伝えられているとはいえこれは。)」

 

箒は何だか不満そうにしている。

 

打鉄を装備し、歩行の訓練に入る。

 

一夏「次は箒だな。」

 

箒「ああ。しかし、これでは乗れないぞ。」

 

「あっごめん、篠ノ之さん。」

 

前の女子が直立のまま降りてしまい、そのままである。打鉄は固定式のため展開装備ができないのだ。

これではコクピットまで届かない。

 

一夏「よし、俺が乗せよう。」

 

箒「い、一夏!?運ぶのか、私を。」

 

一夏「いいから、遠慮するな。」

 

一夏は箒をお姫様抱っこする。その際、箒の胸が一夏の胸に押し付けられる。

 

一夏「(くう、これはなかなかいい感触。ってさっさと運ぼう。また色ボケって言われるしな。)」

 

箒「(これが伝説の、お姫様抱っこというものか。ん?気のせいか、一夏が私の胸を意識しているように見える。お前は大きい胸が好きなのか?コンプレックスだったが、大きくなった事には感謝だな。)」

 

「いいなー、お姫様抱っこ。」

 

「織斑君、まさに白馬の王子様だよね。」

 

「あっ、それピッタリ!」

 

一夏「(白式が白馬って、なんか大袈裟だな。)」

 

それを遠くから見ていたセシリアは、

 

セシリア「むう、(今回ばかりは自分の立場が恨めしいですわ。)」

 

悔しそうに箒を見る。

 

千冬「(まったく、モテ過ぎにも程があるぞ王子様。だが、今はまだ私の物だからな。)」

 

 

 

訓練が終わり、昼休みに入る。屋上には一夏、シャルル、箒、セシリア、鈴が五人で座っており、そのほかにのほほんさん、谷本さん、鷹月さんがいる。

 

一夏「改めて、よろしくなシャルル。」

 

シャルル「うん。皆さんもよろしく。」

 

鈴「よろしくね、あたしは鈴。」

 

箒「私は箒だ。」

 

セシリア「セシリアでございますわ。」

 

和やかに自己紹介が進む。

 

一夏「それじゃあ鈴、アレを出そうか。」

 

鈴「うん。」

 

一同「?」

 

一夏「実は俺たち、シャルルの歓迎のために料理を作ったんだ。」

 

鈴「はいこれ、一夏も好きな酢豚よ。」

 

タッパーに酢豚がぎっしり詰まっている。

 

シャルル「うわあ、美味しそう。」

 

谷本さん「織斑君料理できるの!?」

 

セシリア「素敵ですわ!料理は苦手ですけれど頑張りたいですわね。」

 

箒「私も負けてられないな。」

 

 

燃える2人。箒はまだしもセシリアは原作ではとてつもない料理をしてたからな。

のほほん「おりむー料理できるんだ〜。おりむーの奥さんになれたら絶対幸せだよ〜。」

 

のほほんさんがさらりととんでもない発言をする。

 

箒•セシリア「(奥さん‼︎)」

 

2人はしばらく妄想にふける。

 

鈴「おーい2人とも、帰っておいで。」パシパシ

 

箒•セシリア「はっ!?」

 

一同「クスクス」

 

顔を赤くする2人。嬉しいけど妄想は程々に。

 

しばらくの間、一夏とシャルルを中心に盛り上がっていった。

 

 

 

 

 

 



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ラウラとの一触即発

シャルルとの昼食の後、一夏は午後の授業のため教室に戻っていく。

 

一夏「シャルル、よかったら放課後模擬戦やらないか?シャルルの専用機にも興味があるんだよな。」

 

シャルル「うん、いいよ。」

 

一夏「箒やセシリア、鈴も入れるか。」

 

そんな話をしていると、何やら廊下で大声が響く。

 

ラウラ「教官!答えてください!あなた程のお方が、何故現役を退いてこんな所で教師など!」

 

千冬「織斑先生だ。訳は聞くな、早く教室に戻れ。」

 

ラウラ「やはり、織斑一夏が原因なのですね。」

 

千冬「弟は関係ない。」

 

何やらラウラは納得できない表情を浮かべている。

 

一夏「・・・。」

 

シャルル「一夏。」

 

一夏「気にするなシャルル、彼女もまた間違いなく心に傷を負っている。」

 

一応原作である程度は理解できてるしな。

 

午後の授業が終わり、模擬戦をしにアリーナへ向かった。

 

シャルル「いくよ、一夏!」

 

一夏「おう、男子同士遠慮は無しだぜ!」

 

シャルルの専用機「ラファーム•リヴァイブ・カスタムⅡ」は武装が多く、近距離遠距離のどちらにも対応できるようになっている。それに対して白式は近距離のみで、アビリティーの零落白夜によりシールドエネルギーが消費しやすい。一見すれば圧倒的に一夏が不利である。

 

シャルル「その動きじゃ僕のアサルトライフルの弾幕は防げないよ。」

 

一夏「ならこの動きはどうだ!」

 

一夏は正面から斜め上に行き、イグニッションブーストでシャルルの左脇に入る。しかし、

 

シャルル「それも想定内だよ一夏。」

 

シャルルはアサルトライフルを瞬時にショットガンに切り替え、迎え撃つ。が、

 

一夏「それはこっちのセリフでもあるぜ!」

 

一夏はショットガンに切り替わる瞬間、真下に急降下し、雪片弐型をそこから突き上げるように攻撃する。

シャルルは慌てて真下に構えるも、銃身がブレードに弾かれてしまい、そこに零落白夜が炸裂し、決着が着いた。

 

シャルル「あちゃー負けちゃったよ。さすが代表候補生を2人も破っただけの事はあるね。」

 

一夏「いやいや、にしても武器が幾つもあるのはいいよな。」

 

シャルル「一夏の白式は射撃武装が無いんだよね。」

 

一夏「雪片弐型で拡張領域全部使ってるからな。基本的に俺はいつも悪条件だ。」

 

シャルル「でも、一撃必殺の破壊力はいいよね。」

 

まあそれ相応のリスクはあるけどな。

 

ラウラ「友情ゴッコはそこまでにしたらどうだ。」

 

一夏・シャルル「!?」

 

振り向くとそこには、専用機「シュヴァルツェア・レーゲン」を身に纏ったラウラがいた。冷たい目線で一夏を睨んでいる。

 

ラウラ「代表候補生を倒したと聞くが、所詮私の敵ではない。だが、このまま見過ごすのも気にくわんからな。今すぐここで戦ってもらおう。」

 

シャルルは険悪な表情でおもむろにアサルトライフルをラウラに向ける。

 

シャルル「随分なご挨拶だね、ボーデヴィッヒさん。訓練をごっこ遊び呼ばわりするのは聞き捨てならないな。」

 

一夏「シャルル、よせ。」

 

一夏はシャルルをなだめると、改めてラウラのほうを向く。

 

一夏「ボーデヴィッヒさん、俺が気に入らないのは恐らく姉さんの事だろうが、決着なら学年別トーナメントで着けようぜ。

ドイツ代表候補生ほどの大物なら、ここでやるのは美味しくねえだろ。」

 

ラウラ「ふん、怖気付いたか。だが私と戦う意思があるのがわかっただけでもよしとしよう。」

 

その捨て台詞とともにラウラはその場を後にする。

 

千冬「・・・・。」

 

 

所変わって、食堂では学年別トーナメントの話で持ちきりだった。

 

箒「ボーデヴィッヒと何かあったそうだな。」

 

セシリア「一夏さんにかなり高圧的でしたわね。」

 

一夏「ああ、恐らく俺の誘拐事件による姉さんのモント・グロッソの二連覇破綻が原因だろう。」

 

鈴「でもそれは不可抗力よ。恨むなら相手が違うじゃない。」

 

一夏「姉さんを誰よりも尊敬しているが故にああなっているんだろう。彼女の気持ちも理解できない事はないぜ。」

 

シャルル「はあ、一夏は大人だよね。僕も見習わないと。」

 

ラウラの話で場は真剣な空気に包まれる。だがそれも次の瞬間に終わった。

 

ガタガタガタガタ、テーブルが凄く揺れる。

 

箒「何だ、地震か?」

 

鈴「それと同時に声も聞こえるんだけど。」

 

バタン、食堂の扉が勢いよく開くと、大多数の女子生徒が雪崩れ込んできた。

 

セシリア「皆さんどうしましたの、血相変えて?」

 

「これ見て!!!」

 

何やら書類を渡される。

 

シャルル「なになに、緊急連絡、学年別トーナメントは急遽、タッグマッチ形式となった。すみやかにペアを組むように、決まらない場合は抽選により決まる。」

 

「それだけじゃないの。優勝者は、織斑君とデュノア君のどっちかと付き合えるんだって!」

 

箒「はぁ⁉︎」

 

セシリア「納得がいきませんわ!」

 

鈴「ちょっと、それ2人に悪いでしょ‼︎」

 

一夏「おい。って事は。」

 

シャルル「まさか。」

 

「とにかく、私と組もう織斑君!」

 

「お願いデュノア君!私とペアを組んで!」

 

みんな必死な表情だ。気持ちはわかるがここは最善の選択を取らせてもらう。

 

一夏「みんな悪い。俺はシャルルと組むって約束してる。な、シャルル。」

 

シャルル「うん、だからごめんね。」

 

箒・セシリア「(ほっ。)」

 

「まあ仕方ないか、誰かにとられるよりマシだよね。」

 

「男同士のコンビも絵になるし。」

 

ふう、何とか場が収まったな。

 

鈴「あんた達大変よね。色んな意味で。」

 

鈴は他人事みたいに言う。

 

一夏「こうなったら絶対優勝しなきゃな、負けた上に人生決められるんじゃ、プライドが許さないぜ!」

 

シャルル「そうだよね、僕も頑張る!」

 

箒「2人ともがんばってくれ。」

 

セシリア「これは正式な試合です。恋愛は抜きで堂々と戦いましょう!」

 

鈴「そうとなったらあたしたちもペアを決めなきゃね。」

 

急展開になったが、何としても優勝して見せると誓った一夏とシャルルであった。



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シャルルの正体

学年別トーナメントが決まってからは、一層訓練に気合を入れた。今回は自分とパートナー以外全員ライバルという状況なのだから、皆ピリピリしていた。大半は一夏かシャルルと付き合う事が目的だが。

 

一夏「それじゃシャルル、もう一度行くぜ!」

 

シャルル「オッケー一夏!」

 

一夏とシャルルは今日も訓練に明け暮れていた。

時折箒やセシリア、鈴も参加して、お互いを高め合っていく。ちなみにセシリアは鈴とタッグを組む事になった。

 

一夏「それじゃ今度は、タッグマッチ形式の模擬戦だ。」

 

シャルル「鈴、セシリア、よろしくね。」

 

鈴「オッケー、セシリア、行くわよ。」

 

セシリア「はい、鈴さん!」

 

箒「それでは両チーム、所定の位置について、始め!」

 

このような感じで進めていく。時々パートナー編成を変えて行う事で、対応力を身につけていく。

 

模擬戦を行った後、一夏はシャルルと共に汗を流しに自室へと戻った。

 

一夏「・・・・。」

 

ふと、一夏はベッドに寝そべって考え事をしていた。ラウラの事が気になっていたのであった。

 

一夏「(あの事件について調べたが、IS関連のテロ組織が存在してるって話だったな。姉さんやラウラの事を考えたら、できる事なら潰してやりたいが。)」

 

ちなみに一夏を誘拐したのは、元代表候補生で、千冬に敗れた事で地位を失った逆恨みに一夏を誘拐したという。

 

一夏「(あの声の主が言っていた、避けられない戦いに少なからず関係してくるのかもな。時期を見て姉さんと話してみるか。)」

 

一夏はシャワーを浴びるべく、起き上がった。

 

一夏「そういえばシャンプー切れてたかもな。持って行こう。」

 

洗面所のドアを開ける。原作を読んだとは思えない程迂闊に。その結果、

 

一夏「あ•••••。」

 

シャルル「い、一夏。」

 

そこには、見事な裸体の少年、ではなく少女がいた。

 

一夏「え、えっと、どちら様で?」

 

シャルル「誰って、シャルル•••だよ。」

 

しばし固まっていた。シャルルはとっさに手で胸を隠したが、その前に一夏は隅々までしっかり見てしまった。

 

シャルル「うわああああ!」

 

一夏「はっ!?シャルル、すまん!」

 

バタン!

 

勢いよくドアを閉めた。

 

一夏「(いつかは知る事になってたんだが、これはあまりにもタイミングが・・・。)」

 

シャルル「い、一夏。お、お先に。」

 

一夏「お、おう。とりあえずシャワー浴びとく。(落ち着け、俺。)」

 

数分後、シャワーを浴び終えた一夏は、改めてシャルルの方を向く。

 

一夏「あのさ。」

 

シャルル「な、何かな?」モジモジ

 

一夏「どうして、男のふりしてこの学園に?」

 

シャルル「そ、そうだよね。それじゃあ話そうか。」

 

それからシャルルは全てを話した。まず、この学園に入った目的は、シャルルの父が経営するデュノア社に白式のデータをおくりこむことであった。わざわざ男装させたのは、より確実に一夏と接触できるようにするためである。

他にも、学園内の設備システムや、学園管理のISデータを少しでも集め、より進んだISの技術を開発しようと目論んでいたらしい。ちなみにシャルルは、父親の愛人が産み、そのせいで本妻からは幼い頃から冷遇されてきたのだ。

 

シャルル「というわけなんだ。」

 

一夏「なるほど、俺の時みたいに男性IS操縦者として世間に報道されなかったのはそのためか。納得できたぜ。」

 

シャルル「ごめんね一夏。騙しちゃったみたいで。」

 

一夏「シャルル、お前は悪くない。俺は私利私欲のためにシャルルをここに送った奴らが許せない。」

 

シャルル「一夏?」

 

一夏「シャルル、お前はどうする?この学園に残るか、フランスに帰るか。」

 

シャルル「・・・・。」

 

一夏「これはお前の意思で決めればいい。俺にはどうする事も出来ないからな。」

 

シャルル「うん。」

 

一夏「とりあえず今この事は黙っておく。」

 

シャルル「一夏、ありがとう。お陰で少し気が晴れたよ。」

 

一夏「さて、明日も早いし寝るか。」

 

シャルル「うん。でもね一夏。」

 

一夏「何だ?」

 

シャルル「襲ったりしないでね。」

 

一夏「い、いや当たり前だろ。」アセアセ

 

シャルル「エッチ。」クスクス

 

一夏「いいから、先に寝るぞ。」

 

学年別トーナメントに集中するため、早めに就寝した。

 

 

 

 

 

 



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学年別トーナメント

今日は朝からピリピリした空気が食堂に漂っている。それもそのはず、今日は待ちに待った学年別トーナメントのなのだ。

操縦者としての実力を発揮し、認めてもらうことはもちろん、優勝し一夏とシャルルを手に入れんと皆奮闘している。(若干名を除く。)

 

女子生徒1「優勝したら私の恋が実る!」

 

女子生徒2「絶対に負けられないわ!」

 

箒・セシリア「(一夏(さん)は渡さない(しませんわ)!!!)」ジロッ

 

一夏「・・・はあ、何か喉の通りが悪いんだが。」

 

シャルル「それ凄くわかるよ一夏。」

 

鈴「朝からみんなこれだもんねー。(友人として2人を守んなきゃね。)」

 

箒「2人とも、腹が減っては戦はできぬぞ。」

 

セシリア「お二人なら十分優勝できますわ。」

 

一夏「そうだな、空気に飲まれてる場合じゃねえな。」

 

シャルル「とりあえずは試合のことに集中しよう。」

 

気持ちを押し殺して一夏とシャルルは食べ進める。

 

千冬「色恋話はその辺にしておけ!トーナメントは11時開始とする。出場者は遅れないように!!」

 

「はいっ‼︎」

 

千冬の一喝に場は引き締まった。

 

一夏「そういえば、箒はボーデヴィッヒさんと組むことになったんだってな。」

 

箒「ああ、かなり複雑だが仕方ない。」

 

シャルル「箒、気にしなくてもいいよ。正式な試合である以上、お互い真剣にいこうよ。」

 

セシリア「そうですわ、これはお互いを高め合うためのものです。」

 

やりにくそうにしている箒を見て、シャルルとセシリアが諭す。

 

鈴「2人の言う通りよ箒、剣道だって真剣勝負でしょ。」

 

箒「そうだな鈴、その通りだ。」

 

専用機持ち達は互いに真剣な気持ちを持たせていった。

 

 

午前11時、アリーナはいつも以上にギャラリーがいる。学園の関係者だけでなく、IS関連の企業や報道陣も生徒達のデータを見て今後の発展に繋げるためにやってきたのだ。特に注目は一夏である。

 

1回戦、一夏・シャルルペア、セシリア・鈴ペア、箒・ラウラペアは初戦を難なく突破し、トーナメントはベスト4にまで進んだ。ベスト4第一試合で、一夏・シャルルペアはあっさり勝利し、決勝まで進んだ。

 

ベスト4第二試合、セシリア・鈴ペア対箒・ラウラペアを迎え、アリーナの空気は騒然とする。

 

セシリア「箒さん、お互いに頑張りましょう!」

 

鈴「いい試合ができるよう全力を出すわ!」

 

箒「ああ!」

 

ラウラ「ふん、忌々しい友情だな!」

 

箒・セシリア・鈴「!?」

 

ラウラ「雑魚どもの筆頭と組まされた上に、あの男に敗れた代表候補生たちとわざわざ戦うことになるとはな!」

 

箒「ボーデヴィッヒ、対戦者に敬意を払わないか!!」

 

鈴「アンタのその余裕、いつまでも続かないわよ!!」

 

2人はラウラの言葉に食ってかかる。

 

セシリア「2人とも落ち着いてください。ボーデヴィッヒさん、確かに私は一夏さんに敗れましたが、みんなその時のままではございません!甘く見ないことですわね。」

 

ラウラ「ふん、力の差を思い知るがいい。あのお方(千冬)に最も近いのはこの私だ!」

 

しばしの口論を経て、試合開始のブザーが鳴った。

 

鈴「先手必勝よ!」

 

鈴はすぐにラウラの方に衝撃砲で攻撃を仕掛ける。

 

攻撃は命中したかに見えたが、ダメージはほとんど無い様子。

 

鈴「飛び道具が駄目なら接近戦よ!」

 

すぐさま接近するが、AICという停止計画に阻まれ、逆にシュヴァルツェア・レーゲンのワイヤーブレードを食らってしまう。

 

ラウラ「無駄だ。シュヴァルツェア・レーゲンのAICの前には物理系統の攻撃は通じない。」

 

鈴「くっ!」

 

セシリア「鈴さん!」

 

セシリアはスターライトmk IIIでラウラを狙い撃ち、鈴をAICから脱出させる。

 

セシリア「どうやらそのAICはエネルギー系統には効果が薄いようですわね。」

 

ラウラ「ふん、性能を見破ったところで、お前たちに私は倒せん!」

 

箒「(強い、かつて千冬さんにISを教えられただけの事はある。)」

 

ふとラウラは箒の方を向く。その瞬間、

 

ラウラ「戦場に足手纏いは不要だ‼︎」

 

箒「なっ!?」

 

ラウラはパートナーである箒を攻撃し、リタイアさせた。

 

セシリア「箒さん!」

 

鈴「何てことすんのよアンタ‼︎」

 

友人を叩きのめしたラウラに怒りを増す2人。

 

その後、2体1での激しい戦闘が続き、結果はラウラの勝利となった。

 

シャルル「一夏」

 

一夏「・・・。」

 

圧倒的なラウラの力を目の当たりにし、一夏はしばらく言葉が出なかった。

 

 

セシリア「一夏さん、シャルルさん、申し訳ございません。」

 

鈴「全く歯が立たなかった。」

 

鈴は暗い表情で唇を強く嚙みしめる。

 

シャルル「2人ともよく頑張ったよ。」

 

鈴「いいわよ慰めなんて。」

 

一夏「ま、こーなったら後は俺らに任せろ!!」グッ

 

セシリア「(一夏さん、とてもカッコいいですわ。)」

 

鈴「(以前とはまた違ったカッコよさね、これは反則よ。)」

 

シャルル「じゃあそろそろ行こうか。対策を考えないとね。」

 

数十分の休憩を挟み、いよいよトーナメント決勝戦。

 

アナウンス「これより、学年別トーナメント決勝戦、織斑・デュノアペアVS篠ノ之・ボーデヴィッヒペアを始める。両チーム前へ。」

 

 

モニタールーム

 

山田「いよいよですね。織斑君達は大丈夫でしょうか?」

 

千冬「厳しい戦いにはなるだろう。特に一夏にとってはな。まあ恐らく一夏はボーデヴィッヒとの一騎討ちに出るだろうがな。」

 

山田「では篠ノ之さんはデュノア君に任せるってことですね。」

 

千冬「その辺は見るまでもないがな。」

 

 

ラウラ「織斑一夏、ここまでよく来たと褒めておこう。だが、貴様はここで終わりだ。」

 

シャルル「一夏を甘く見ない方が身のためだよ、ボーデヴィッヒさん。」

 

一夏「落ち着けシャルル、ボーデヴィッヒさん、姉さんを超えることを目指す俺には、君が姉さんを尊敬する気持ちがよくわかる。」

 

ラウラ「黙れ!!貴様がいなければあのお方のモンド・グロッソ連覇は達成されていた!!」

 

激昂するラウラ。しかし一夏はそれには動じなかった。

 

一夏「まあいい、勝負だ‼︎」

 

始まりのブザーが鳴り、一夏はいつも通りのスピード戦法でいく。一夏には接近戦以外に活路を見いだせないため、AICに対しても果敢に攻めなければならない。

 

シャルルは千冬達の予想通り、すぐさま箒との一騎討ちに出て、数分で箒を仕留めた。

 

シャルル「ふう。(一夏、作戦通りこの後は手を出さないけど、大丈夫かな?)」

 

ラウラ「ふん、ブレード一本で来るとは愚かな。」

 

一夏「生憎これしかないんでね‼︎」

 

一夏は変速機動でスキを伺うも、ラウラのAICの牙城を突き破るのは容易ではない。

停止させられている間は、ラウラのワイヤーブレードによる集中砲火を浴びてしまう。

 

モニタールーム

 

山田「織斑君、やはり苦戦していますね。」

 

千冬「ああ。さて、これをどう打開するのか見せてもらおう。」

 

鈴「これじゃああたしの二の舞よ。」

 

セシリア「一夏さんならきっと打開策を見つけますわ。」

 

固唾を呑んで試合を見る2人。

 

ラウラ「どうした。これでは私に傷一つつけられないぞ!」

 

一夏「(まずい、このままじゃジリ貧だ。だが、接近しなければ奴にはダメージを与えられない。・・・!、そうか‼︎)」

 

一夏は何かを思いついたのか、急にラウラと距離をとる。

 

ラウラ「フッ、ついに諦めたか。」

 

一夏「誰もそんな事言ってないぜ。ここからお前を倒す!」

 

ラウラ「くたばり損ないめが‼︎」

 

ラウラはワイヤーブレードをフルに繰り出し、雪片弐型を絡め取る。

 

一夏「よっしゃ狙い通りだぜ!」

 

ラウラ「何?」

 

一夏はワイヤーブレードに雪片弐型を絡め取られる瞬間に、零落白夜を発動させ、雪片弐型をラウラに向かって蹴り飛ばした。

 

ワイヤーブレードは力強く引っ張っていたため、勢い余って雪片弐型がラウラのAICを突き破り、機体に突き刺さる。

その瞬間ラウラのシールドエネルギーはゼロになった。

 

この方法にはギャラリー中が驚きの声をあげた。

 

アナウンス「勝者、織斑・デュノアペア。」

 

一夏「いよっしゃあ‼︎」

 

シャルル「凄いよ一夏‼︎」

 

大勝をおさめ、達成感に浸る。しかし、この後思わぬ事態が起こる。

 

 



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ラウラ救出〜波乱の暴露

ラウラ「ぐうう、なぜだ!?この私が、貴様如・・き・・・に。」

 

シャルル「一夏、ボーデヴィッヒさんの様子が変だよ。」

 

言い終わらないうちにラウラの機体が変形し、漆黒の異形の像のようなものへと変貌した。

その姿は、さながら悪魔のように見える。

 

モニタールーム

 

山田先生「織斑先生、あれはまさか!?」

 

千冬「ああ、VTシステムだ。」

 

VTシステム、かつてISの開発実験で、モンド・グロッソの優勝者のデータをコピーし、

被験者の肉体的負荷により起こった事故によって出現した禁断のシステムだ。

全世界でこれは危険視されており、開発は禁止となっている。

 

一夏「マズイことになりそうだぜ。」

 

シャルル「一夏、よく見たらあれ、かつて織斑先生がモンド・グロッソに出た時の姿に似てない?」

 

一夏「何!?」

 

シャルル「あれはおそらく能力コピーのVTシステムだよ。操縦者の肉体的な負荷によって出現するらしいんだ。」

 

一夏「すると、あれはボーデヴィッヒさんの感情から出たものか。」

 

シャルル「コピーとはいえ織斑先生の能力には僕らじゃ太刀打ちできないよ。」

 

一夏「・・・・・。」

 

シャルル「一夏?」

 

少し考えた後、一夏は意を決した。

 

一夏「やつは俺が倒す!やつの内部からボーデヴィッヒさんを出すから、シャルルはみんなの避難を頼む!」

 

シャルル「そんな、いくらなんでも危険だよ!」

 

箒「シャルルの言う通りだ!」

 

セシリア「一夏さんも避難してください!」

 

鈴「2人とも速く!」

 

千冬「皆、ここは織斑に任せておけ!」

 

箒・セシリア・鈴・シャルル「そんな!」

 

山田先生「先生気は確かですか⁉︎」

 

千冬「やつの目を見てみろ、止めても無駄のようだ。」

 

一夏「悪い皆、必ずやつを倒してみせるぜ!」

 

シャルル「ちょっと待って一夏、零落白夜でシールドエネルギーほとんどないでしょ。僕のを分けてあげる。」

 

シャルルは白式にラファールを接続し、僅かながらエネルギーを充填する。

 

一夏「ありがとうシャルル。とりあえず片腕展開でなんとかもたせるぜ。」

 

白式の右腕と雪片を展開し、VTシステムと対峙する。

 

一夏「待っててくれボーデヴィッヒさん、今この悪魔から助けるからな!」

 

果敢に飛び込む一夏、すぐさま強力な斬撃が襲い来る。

部分展開のため、右腕以外は無防備な一夏には、とてつもないダメージだ。

 

一夏「ぐはあっ!」

 

上半身には深い切り傷ができ、出血と吐血が同時に起こった。

 

一同「一夏(さん)!!!!」

 

一夏「くっ、能力が姉さんとはいえ所詮偽物、絶対に負けるわけにはいかない、うおおおお!!!」

 

なりふり構わずエネルギー全開で零落白夜を発動し、VTシステムを上下真っ二つに切り裂いた。

その中から、昏睡状態のラウラが出現した。

 

一夏「今だ!」

 

全身血塗れになりながらラウラを引きずり出し、止血の間も無くアリーナから脱出した。

 

千冬「織斑、ボーデヴィッヒは無事か!?」

 

一夏「・・・はい。」ハァ、ハァ、ハァ。

 

千冬「急いで織斑を医務室に運べ!!!」

 

その声を聞いたのを最後に、一夏は意識を失った。

 

 

数時間後

 

一夏「・・・・う・・ん!?」

 

千冬「一夏、起きたか。」

 

一夏「・・・織・・斑先生。」

 

千冬「今は姉さんでいい。」

 

珍しく校内での名前呼びを許す千冬、だがその目には涙が浮かんでいた。

 

千冬「ボーデヴィッヒは無事意識を取り戻した。」

 

一夏「そうか、よかった。」

 

千冬「何が『よかった』だ馬鹿者!!!」

 

一夏「っ!?」

 

いつも以上に大声で怒鳴られた一夏。

 

千冬「どれだけ心配したと思ってる!」

 

涙声で一夏に抱きつく千冬。

 

一夏「姉さん、ゴメン。(体が震えてるのが凄く伝わってくる。)」

 

しばらく抱きしめて、千冬は落ち着きを取り戻した。

 

千冬「一夏、無茶はしたが、よくボーデヴィッヒを救ってくれた。 」

 

一夏「いや。」

 

千冬「それじゃ、デュノア。織斑の看病を頼む。」

 

シャルル「はーい♪。」

 

一夏「シャルル、そのカッコ。」

 

シャルルはナース服で一夏の元へ駆け寄ってきた。

 

一夏「ね、姉さん。これかなり恥ずかしいんだけど。(原作じゃこんなシーンなかっただろ。)」

 

千冬「フッ、私を泣かせた罰だ。」

 

一夏「うう、わかりました。」

 

千冬は医務室を後にする。

 

 

シャルル「はい一夏、あーん。」

 

一夏「あ、あーん。(嬉しいけどめちゃくちゃ恥ずかしい!)」

 

このやりとりが数分続き、一夏はすっかり気が滅入っていた。

 

シャルル「あのね、一夏。話があるんだけど。」

 

一夏「おう、改まってどうしたんだ。」

 

シャルル「僕ね、この学園に残ろうと思うんだ。」

 

一夏「そっか、ようやく自分の意思で道を決めたんだな。」

 

シャルル「会社からは色々言われると思うけど、お父さんと真剣に向き合って話してみる。」

 

一夏「大丈夫か?」

 

シャルル「大丈夫だよ。それとね、僕の名前なんだけど、僕は『シャルロット』。これが僕の本当の名前。」

 

一夏「シャルロット。いい響きだな。」

 

シャルロット「女の子で僕っていうのは変かな?」

 

一夏「いや、それも立派な個性だと思うぜ。実際似合ってるしよ。」

 

シャルロット「ありがとう、あとね、この学園に残る理由はもう一つあってね。」

 

一夏「・・・もしかして、シャルロットは俺に好意があるのか?」

 

シャルロット「えっ一夏気づいてたの!?」

 

一夏「うん、まあ。」

 

多少気まずい空気になる。

 

シャルロット「そっか、気づいてくれてありがとう。一夏、僕は貴方が好きです。僕のことは『シャル』でいいよ。」

 

一夏「ああ、今後ともよろしくな、シャル。」

 

改めて告白されると何かグッとくるなあ。

 

一夏「それじゃ、そろそろ寝るかな。シャルも早く部屋に戻った方がいいぜ。」

 

シャルロット「あっ、そうだね。じゃあおやすみ一夏。」

 

一夏は傷だらけの体を癒すべく眠りにつく。

 

 

翌日、いつものようにホームルームではトーナメントの話で盛り上がっていた。

 

鷹月「にしても織斑君、よく大変な目にあうよね。」

 

谷本「あんな強敵に命がけで行くなんて。」

 

のほほん「おりむー心配したよぅ。」

 

箒「勇敢すぎるのもどうかと思うぞ。」

 

セシリア「全くですわ。」

 

一夏「悪い悪い。」

 

 

チャイムが鳴り、山田先生が入ってくる。しかし今日は何だか足取りが重く見える。

 

山田先生「おはようございます。き、今日は皆さんに転校生を紹介します。」

 

一夏「(うわー、忘れてたぜ。このイベントがあること。)」

 

山田先生「それではどうぞ。」

 

シャルロット「はい。」

 

女子一同「?」

 

シャルロット「改めまして皆さん、シャルロット・デュノアです。どうぞよろしくお願いします。」

 

山田先生「えっと、その・・・、デュノア君は、デュノアさんという事でした。(ああ、名簿の書き換えやデータ改正の仕事が一気に来る。)」

 

箒「・・・は?」

 

セシリア「えっ?」

 

谷本「つまり、美少年じゃなくて、美少女だったって事?」

 

鷹月「待って、そう言えば織斑君と部屋が一緒だったよね!?」

 

のほほん「なるほど〜、おりむーと一つ屋根の下だったのか〜。」

 

「きゃー!ずるいぃぃ‼︎」

 

「ちょっと織斑君、説明してよ!」

 

一夏「(ヤベエ、覚悟はしていたが、つーかのほほんさん表現ストレートすぎるぞ!)」

 

そのとき、一夏はふと、両肩をがっしり掴まれた。これが誰かは言うまでもない。

 

箒「一夏、同棲とはふしだらな。その根性叩き直してくれる!」ギリギリ

 

セシリア「一夏さん、説明して頂けますわよね?」ギリギリ

 

2人ともすごく肩を握ってくる。それに目がすわっている。

 

一夏「は、はい。」ガクガク

 

声「やめないか!」

 

鋭い声がする方を見ると、そこにはラウラが立っていた。

 

一夏「ボーデヴィッヒさん、無事だったんだな!」

 

ラウラ「私の事はラウラでいいぞ、嫁よ。」

 

一夏「へ、嫁?」

 

タタタタ、ギュッ、ラウラは一夏に思い切り抱きつき、頰にキスをした。

 

一同「あーっっっ!?」

 

ラウラ「一夏は私の嫁にする、決定事項だ!異論は認めん!」

 

一夏「(ああ、もうこれ助からないな。)」

 

シャルロット「一夏。」

 

一夏「お、おうシャル。」

 

シャルロットは黒いオーラを出しながらニコニコしていた。ある意味一番怖い。

 

シャルロット「大胆だね、人前でキスされるなんて。」

 

一夏「いや、これはその。俺にも何が何だか。」

 

箒「い〜ち〜か〜。」

 

セシリア「い〜ち〜か〜さ〜ん。」

 

一夏「わかった、とりあえず放課後俺の部屋に集まろう、な。」

 

箒「むう、わかった。」

 

セシリア「わかりましたわ。」

 

シャルロット「うん、そうしよう。」

 

ラウラ「嫁の願いとあらば。」

 

千冬「織斑。」

 

いつの間にか千冬が苦笑いしながら立っていた。

 

一夏「お、おはようございます先生。」

 

千冬「まあ当然だな。モテ過ぎなお前が悪い。」

 

一夏「そんな〜。」

 

千冬「さて、話はまとまったようだし。授業に入るぞ。」

 

とりあえずその場はおさまった。

 



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新たなる出会い

シャルロットの正体暴露、ラウラの嫁宣言により起きた嵐の後、

いつも通りに授業を受けた一夏は、いつになくぐったりしていた。

しかし、放課後は自分に想いを寄せる4人を部屋に招き入れ、今後の事について話さなくてはならなかった。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「・・・・。」ツカツカ

 

四人は一夏を取り囲んだ状態で歩く。

 

一夏「はぁ。(何か周りの視線が痛い。)」

 

そんな中で、ようやく部屋にたどり着く。

 

一夏「とりあえず、説明するから。」

 

箒・セシリア「ああ。(はい。)」コクリ

 

まずはシャルロットが男装して学園に入ってきた事について話す。

事情を話していくうちに、理解したのか、箒とセシリアは納得してくれたようだ。

どうやってシャルロットが女とわかったかは流石に話せなかったが。(いろんな意味で大変な事になりそう。)

 

箒「そうだったのか。世の中何があるかわからないものだな。」

 

セシリア「シャルロットさん、私達は友人としてあなたを大切にしますわ。」

 

シャルロット「ありがとう。」

 

箒「さて、もう一つの問題だが。」ギロッ

 

セシリア「そうですわね。」ギロッ

 

シャルロット「そうだね。」ギロッ

 

一夏「だから、そんなに凄まないでくれって。」

 

ラウラ「大変だな、嫁よ。」

 

一夏「とにかく説明を頼む。(お前のせいだろ。)」

 

ラウラ「うむ。」

 

ラウラは説明を始めた。

一夏を好きになってしまったのは、試合中に起きたVTシステムから救い出してくれたこと。

始めはこの意味がわからなかったが、意識を取り戻した後に、千冬から一夏の人柄について色々教えられ、

そこに感銘を受けたのが決定打となった。ちなみに嫁宣言は、ラウラが隊長を務めるドイツIS特殊部隊の

クラリッサという人物に吹き込まれたのが理由だという。

 

一夏「その人何か色々ズレてねえか?」

 

箒「告白とプロポーズが同じ扱いになってるぞ。」

 

シャルロット「しかも一夏を婿じゃなくて嫁って。」

 

セシリア「ラウラさん、少しは慎ましくしなければダメですわよ。」

 

ラウラ「そうなのか。」

 

一夏「ラウラ、俺も聞きたいことがあるんだが。」

 

ラウラ「うむ。何だ、嫁、いや、一夏。」

 

一夏「姉さんとはどういう関係なんだ?」

 

ラウラ「そうだな、話すと長くなるが説明しよう。」

 

 

ラウラはドイツでのIS開発の実験に適応した受精卵により生まれた、所謂試験管ベビーである。

幼くして高い能力を持ち、特殊部隊での過酷な訓練を受け成長したが、いざISに乗ると、底知れない潜在能力が

暴走を始め、コントロールができないことから、出来損ないとされ、周囲からは散々な扱いを受けた。

 

ラウラ「これを見て欲しい。」

 

ラウラは左眼の眼帯を外した。すると、金色の眼が露わになった。

 

一同「!?」

 

ラウラ「これが、私が出来損ないである何よりの証拠とされたのだ。周囲からの眼は厳しかったが、そんな中で唯一私を支えてくれたのは、織斑教官だったのだ。」

 

一夏「そうだったのか。」

 

箒「そうとも知らずに済まなかった。」

 

ラウラ「いや、私も皆に酷いことをしてしまった。」

 

セシリア「ラウラさん、あなたは出来損ないなんかじゃありません!」

 

ラウラ「オルコット。」

 

セシリア「セシリアで構いませんわ。」

 

シャルロット「そうだよラウラ。僕のこともシャルロットでいいよ、ラウラ。」

 

箒「私のことも箒でいい。」

 

ラウラ「セシリア、シャルロット、箒、ありがとう。」

 

ラウラは眼に涙を浮かべた。理解者が増えた事は彼女にとって大きな事である。

 

その後、一夏をめぐる問題については、むやみに一夏の部屋にはいかない事。

また、抜け駆けをなるべくしない事が決められた。

特にラウラはズレた常識がまだまだありそうなので、シャルロットがルームメイトになる事に。

 

箒「とりあえず、これで学業には支障が無いようにしたな。」

 

セシリア「運命は、一夏さんの決断に託しますわ。」

 

シャルロット「逆に一夏は、僕らの部屋にいつでも来ていいからね。」

 

ラウラ「今後ともよろしくな一夏。」

 

一夏「おう、そんじゃ、おやすみ。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「おやすみなさい。」

 

今までで一番疲れたのか。一夏はそのまま眠りについた。

 

 

夢の中

 

声「人の子よ。」

 

一夏「久しぶりだな、この声を聴くのは。」

 

一夏はまたしても夢の中で謎の空間にいる。

 

一夏「んで、今日は何が見えるんだろな。」

 

とりあえず声のする方に進む。

しばらく歩いていると、突如人影が現れた。

見た目は、三つ編み長髪の美少年である。

 

人影「やあ、初めまして。」

 

一夏「お、おう。」

 

人影「君も『選ばれし者』の1人だね。」

 

一夏「選ばれし、者?」

 

人影「忘れたのかい?君は世界を導く使命を背負っているんだよ。」

 

一夏「(そういやあそんな事言われてたっけか。)」

 

人影「僕は君と世界を導いていきたい。今の世をあらたな『秩序』によって。君と一緒なら叶えられると思うんだ。」

 

一夏「って言われてもなあ。」

 

人影「いつかわかる時が来るよ。それじゃあ、また会おう。」

 

一夏「あっ、おい。」

 

人影は消えていった。そして、また目の前に道ができ、一夏はさらに奥へと進んだ。

 

進んでいくと、またあらたな人影が現れた。今度はとても屈強な肉体の少年である。

 

人影「よう。やっとご対面だな。」

 

一夏「お、おう。」

 

人影「お前も運命に選ばれたんだな。俺は、今の世界を変えていきたい。そのためには、強くなって相応の『力』を手に入れるべきだと思うんだ。お前と一緒なら、その答えがきっと見つかる。」

 

一夏「答え、か。」

 

人影「今はわからなくていいさ。どうせ後で知る事になる。じゃあな、また会おうぜ。」

 

一夏「・・・・。(これは何かの兆しか?)」

 

少年は姿を消し、目の前が真っ白になっていく。

 

 

一夏「・・・・。」

 

気がつくと、一夏は目覚めていた。

一夏はどこかスッキリしないながらも起き上がり、朝食に向かう。

 

朝食を済ませ、いつものように教室に向かうと、何やらガヤガヤしていた。

 

谷本さん「あっ、織斑君おはよう!実はね、さっき聞いたんだけど。」

 

この後、一夏は目を疑う光景に出くわす事となる。

 

 



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3人の選ばれし者

谷本「これこれ、あたしがよく見てる情報誌なんだけど。」

 

一夏「どれどれ?」

 

記事をみると、そこにはこう書かれていた。

 

 

『これは運命か偶然か!?奇跡の第二、第三男性IS適合者あらわる!!!』

 

一夏「こっ、これは・・・まさにタイトル通りのコメントしか出ないぜ。」

 

箒「実は姉さんにも聞いてみたんだが、今の所何もわからないらしい。」

 

セシリア「まさか、一夏さん以外にもISを動かせる男性がいますとは。」

 

シャルロット「ホント、この世は不思議だよね。」

 

ラウラ「これには教官も首を傾げているようだからな。」

 

まあ、こんな大事件は俺の時以来だもんな。

 

鷹月「でも、どんな人かな、織斑君みたいにカッコいいといいなー。」

 

谷本「それそれ、そこは大事よね〜。」

 

一夏を慕う数名を除く女子は皆それに対してウズウズしている。

 

一夏「まあ見た目はこの際置いといてだな、俺としてはそいつらの強さに興味あるな。やっぱ男同士の勝負もやってみたいしよ。」

 

のほほん「おりむー熱いねー。やっぱり男の子だもんね。」

 

鷹月「ほんとよね〜。」クスクス

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「(カッコいい(ですわ))。」

 

一夏はこれまでにない闘志を燃やしている。

 

谷本「ニュース、ニュース!さっき話してた男子が今日転校してくるって、しかも、このクラスよ!!」

 

「キャー!!!!!」

 

教室中に黄色い声が響く

 

一夏「(耳痛え。でも、同じクラスか。何か縁があるな。)」

 

「このクラスでよかったー‼︎」

 

「今年は運があるぞー‼︎」

 

暫く騒いでいると、千冬と山田先生が来た。

 

千冬「さあ、とっとと席に着け。ホームルームを始めるぞ。」

 

山田先生「おはようございます、今日は2人の転校生を紹介します。」

 

一夏「この感じ、シャルとラウラのとき以来だな。」

 

デジャヴを感じる一夏、そしていよいよご対面の時。

 

一夏「!?」

 

一夏は目を疑った。彼らは、一夏が昨夜夢で出会った2人の少年そのものであったからだ。

 

一夏「(やっぱりあれは夢じゃなかったのか!?)」

 

山田先生「それでは、自己紹介をお願いします。」

 

三つ編み美少年が前に出る。

 

美少年「初めまして、エクトル・ベレンです。スペインから来ました。特技はマタドールで趣味はピアノとバイオリンです。これからよろしくお願いします。」

 

キラキラ光るような爽やか顔で自己紹介をしたエクトル。その瞬間、

 

「いやー!可愛すぎる‼︎」鼻血ブー

 

鼻血の噴火が起きた。

 

一夏「(声的には少年だが、念のためシャルに男かどうか確かめさせよう。)」

 

千冬「騒ぐな!まだ自己紹介は終わっていない‼︎」

 

山田先生「それでは、お願いします。」

 

もう1人の筋肉隆々の少年が前に出る。

 

筋肉隆々少年「俺は、アルゴス・イリアディス。ギリシャ出身だ。

特技はマーシャルアーツ、趣味はスポーツ観戦だ。よろしく頼むぜ。」

 

エクトルとは正反対に、クールさたっぷりに自己紹介をキメたアルゴス。

 

「すっごい男らしい‼︎」

 

「あたしのことを守って‼︎」

 

千冬「静粛に‼︎織斑、同じ男子として、クラス代表として彼らの面倒を見るように。」

 

一夏「はい!喜んで!」

 

千冬「うむ。(フフ、男友達が出来た嬉しさに満ちているな。可愛い奴め。)」

 

一夏「これからよろしくな。俺は織斑一夏、一夏でいいぜ‼︎」

 

エクトル「よろしく、一夏。僕もエクトルでいいよ。」

 

アルゴス「俺もアルゴスでいいぜ。よろしくな一夏。」

 

互いに握手をする。その光景を女子たちは興味津々な眼差しで見つめる。

 

山田先生「それでは授業に入ります。(ああどうしましょう、3人とも前の席で近いから気になっちゃう❤︎)」ルンルン

 

千冬「はぁ。(これはまた先が思いやられるな。山田先生、顔がしまりきってないぞ。)」

 

こうして、ここにISに選ばれし男子3人が集った。

 

 

 



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同志歓迎〜模擬戦

授業が終わって昼休みに入ると、一夏は一年生の専用機持ちと共に、アルゴスとエクトルを屋上へ呼んだ。

噂を聞き付けた新聞部や上級生達も、2人を一目見ようと屋上に押し寄せてきた。

他にも、教室の窓から双眼鏡で見たり大声で名前を呼ぶなどする者もいる。

予想外の歓迎ぶりに2人は戸惑っていた。

ちなみにこの前には、エクトルがシャルロットと同じではないかという疑惑があったが、男装経験のあるシャルロットにボディチェックをさせたところ、間違いなく男であることがわかった。

 

アルゴス「一夏、この学園っていつもこんな感じなのか?」

 

エクトル「織斑先生出身の学校だから、厳格なイメージがあったけど、思いの外明るいね。」

 

一夏「・・・まあ、ここはもともと女子校だから、俺たちがいる事でこうなったんだけどな。」

 

箒「それはそうだ。2人も一夏同様稀有な存在だからな。」

 

セシリア「今の世の中においてあなた達は貴重ですもの。」

 

シャルロット「新聞部からすれば、これ以上ない特ダネだもんね。」

 

ラウラ「場合によっては研究対象にもなるからな。」

 

鈴「まあいろいろあるけど、2人ともこれからよろしくね。」

 

エクトル「ありがとう。」

 

アルゴス「ありがとな。」

 

そんな中、新聞部が割って入ってくる。

 

黛「はいはーい、新聞部でーす!注目の新しいIS男子のお二人にインタビューをお願いしまーす!」

 

「それではまず、自分がISを使える事についてどう思いますか?」

 

エクトル「突然の事で、少々戸惑いがあるけど、でも僕は、この学園に入れた事を誇りに思う。」

 

アルゴス「俺は、ISをとてもやりがいのあるものだと思うぜ。己の持つ力を存分に発揮できるしな。」

 

黛「うんうん、いい事だねー。織斑君、2人が来てくれてどう思った?」

 

一夏「男友達ができたらやっぱり嬉しいです。それに、これには、何か運命を感じますね。」

 

黛「なかなかロマンチックなコメントだね。それじゃ3人で写真を撮りましょう、織斑君とこの2人の出会いを記念して。」

 

右にアルゴス、左にエクトル、センターに一夏が立ち、写真を撮った。

 

鷹月「しかし、男子3人で並ぶと何かいい感じだよね。」

 

谷本「うん、3人とも学園のアイドルだしね。」

 

のほほん「よろしくね、アルアルにエックー。」

 

エクトル「エックー?」

 

アルゴス「アルアル?」

 

のほほん「うん、2人のニックネームなのだ〜。」

 

アルゴス・エクトル「・・・・ハハハッ。」

 

一同「クスクス」

 

こんな感じで2人の歓迎は終わった。

 

午後の授業が終わり、放課後を迎えると、一夏は2人に模擬戦を持ちかけた。

 

一夏「そういえば、2人とも専用機が届いたらしいな。一回俺と模擬戦してみないか?」

 

エクトル「そうだね、少し試させてもらおうかな。」

 

アルゴス「ま、お互いの能力を知っておくのも大事だしな。」

 

3人は実戦用アリーナへと向かった。

 

まずはエクトルとの模擬戦。

 

エクトル「お手柔らかに、一夏。」

 

エクトルは専用機「ケイローン」を展開する。

機体の色はゴールドだ。

 

一夏「おう、遠慮はいらないぜ。」

 

模擬戦が始まった。

 

エクトル「こっちから先に仕掛けるよ‼︎」

 

エクトルは大型の弓矢のような武器「アルテミス」を構え、一夏を狙い撃つ。一度に5本の矢を放つ事ができ、

通常の矢とエネルギーの矢の2種類に使い分けられる。

 

一夏「そうきたか。」

 

一夏はさすがに射撃への対処が慣れているため、矢の雨を難なく切り抜け間合いを詰める。

 

エクトル「速いね、でもまだこれがあるよ!」

 

左手に装備した近接武器「ラストロス」で雪片弐型を受け止める。

 

一夏「なかなかやるな。これならどうだ‼︎」

 

一夏はイグニッションブーストの勢いに乗せて雪片弐型を振り下ろし、ラストロスを弾き飛ばす。

 

エクトル「うわっ、しまった!」

 

体勢を大きく崩され、零落白夜を決められた。

 

エクトル「負けたよ、さすがはブリュンヒルデの血族ってところだよね。力負けしちゃったな。」

 

一夏「いや、なかなか有意義な模擬戦だったぜ。」

 

アルゴス「そんじゃ、次は俺だな。行くぜ一夏‼︎」

 

アルゴスはすぐさま専用機「セイリオス」を身に纏った。

機体の色は紺色。

 

一夏「おう、どっからでも来い‼︎」

 

エネルギーを補充し、再び白式を展開する。

 

アルゴス「マーシャルアーツの威力を見せてやるぜ!」

 

始まった瞬間すぐに間合いを詰め、籠手と具足型の近接武器「アポリオン」による拳や蹴りのラッシュを仕掛ける。

 

一夏「さすがに手数が多いな。」

 

一夏は珍しく近接格闘で苦戦する。雪片弐型を拳で受け止められ、弾き返されるも、

ラッシュをいつものスピード機動でなんとかかわしていく。

 

アルゴス「さて、いつまで逃げ切れるかな?」

 

一夏「もう逃げないぜ‼︎」

 

一夏は雪片弐型を逆手に持ち、白兵戦のナイフ戦術のような戦いに切り替える。

ちなみにこれは、ラウラから教わったものである。

 

アルゴス「それじゃこいつを使わせてもらうぜ。」

 

アルゴスは不意に距離を開け、構えた両腕からエネルギー波を繰り出した。

 

アルゴス「いくぜ、俺のワンオフアビリティ、『テロス・フラス』‼︎」

 

高威力のエネルギー波が一夏に炸裂する。一夏は何とか刀身でガードし、ダメージを抑える。

 

その後、間合いを詰め、手数に手数で対抗し、アルゴスのガードの隙間に雪片弐型を突き刺し、零落白夜を決めた。

 

アルゴス「くーっ、結構保たせたんだがなー。」

 

一夏「いや、なかなかスタミナを消費したぜ。長丁場なら俺が負けてたかもな。」

 

 

パチパチパチパチ

 

アリーナのギャラリーから拍手が聞こえた。

 

箒「3人とも中々だったぞ。」

 

セシリア「凄く勉強になりましたわ。」

 

シャルロット「2人とも一夏と対等に渡り合えるなんてすごいよ。」

 

ラウラ「私も模擬戦がやりたくなった。」

 

一夏「じゃあみんなもやるか。」

 

その後、ランダムに対戦相手を決め、模擬戦を重ねていった。

 

山田先生「ベレン君もイリアディス君も凄いですね。」

 

千冬「一夏程ではないが中々素質がある。一夏とあの2人が代表候補生になる日もそう遠くはないだろう。」

 

模擬戦を終え、一夏はアルゴスとエクトルを自室に案内した。

今日からこの部屋を3人でシェアするので、協力して部屋を模様替えする。

 

エクトル「なかなかいい部屋だね。」

 

アルゴス「至れり尽くせりだぜ。」

 

一夏「だろ、今日からよろしくな。それじゃ、明日も頑張ろうぜ、おやすみ。」

 

アルゴス・エクトル「おやすみ。」

 

これからを楽しみに思う一夏であった。

 

 



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休日に臨海学校の準備を

声「使命を背負う選ばれし人の子達よ。」

 

一夏「・・・・!?」

 

エクトル「・・・ここは?」

 

アルゴス「何だよ、これ・・・。」

 

3人は目が覚めたが、そこは自分達の部屋ではなく、どこかわからぬ未知の空間であった。

 

一夏「なあ、部屋にいないって事は。」

 

エクトル「・・・ここは夢の中って事なのかな?」

 

アルゴス「だとしても、3人で同時に同じ夢を見るなんて事があるのかよ?」

 

声「どうやら、皆出会えたようですね。」

 

一夏「おい、アンタ。そろそろ姿を見せてくれてもいいんじゃないか!?」

 

エクトル「一夏、君この声の主と知り合いなの?」

 

一夏「ああ、まだみんなには話してないけど、俺は何故かこの声に導かれてるんだ。しかも、それによってIS 学園に入る事になってな。実を言うとお前ら2人にもこの空間で会ったんだ。」

 

アルゴス「じゃあ、俺たちの出会いや、俺たちがISを使えるようになったのも、運命って事なのかよ!?」

 

3人「うーむ・・・・。」

 

すると、3人の目の前に、3つの光の玉が現れた。

一つは青、一つは赤、そしてもう一つは緑だ。

 

声「この光は、人の子の世界における力を意味します。

青の光は『導き』、赤の光は『支配』、そして緑の光は『調和』です。

人の子の世界は、この3つがある事によって存在します。」

 

アルゴス「支配・・・・。」

 

エクトル「導き・・・・。」

 

一夏「調和・・・・。」

 

声「あなた達は、それぞれの力を司る者です。あなた達によって人の子の世界は動いていく事でしょう。」

 

一夏「・・・何か難しいな。要するにどういう事かと言うと、」

 

エクトル「何だか僕たちは、何か重大なものを背負わされてる気がする。」

 

アルゴス「よくわからねえけど、俺たち3人がどうするかによって、

世界のバランスが良くなったり、崩れたりしちまうって事か?」

 

声「これから先あなた方には、色んな試練が降りかかってきます。そしていつかは、決断を迫られる時が来るでしょう。」

 

3人「決断・・・・。」

 

その声を最後に、3人の目の前が眩しくなっていく。

 

 

そして、3人は部屋で同時に目が覚めた。

 

一夏「2人ともおはよう。」

 

エクトル「う、うん。」

 

アルゴス「お、おう。」

 

一夏「もしかすると、2人ともさっきの夢を覚えてたりするか?」

 

エクトル「うん、鮮明にね。」

 

アルゴス「お前に同じ質問をするとこだったぜ。」

 

一夏「だよなぁ。」

 

3人はしばらく考え込んでいたが、時間だけが過ぎていく。

 

一夏「とりあえず起きるか。」

 

エクトル「そうだね、考え込んでいたらお腹が空いたし。」

 

アルゴス「先ずは朝飯、朝飯っと。」

 

身支度をして部屋を出る。

 

ちなみに今日は休日で、食堂はいつも以上に賑わっている。

 

のほほん「あ、おりむー、エックー、アルアル、おはよ〜。」

 

パンを口いっぱいに入れながらのほほんさんが挨拶する。

 

一夏「おはようのほほんさん。」

 

エクトル「あはは、朝から元気だね。」

 

アルゴス「おいおい、口からこぼしてんぞ。」

 

谷本「ああもう、本音口拭いて。」

 

一夏「そういや箒達はまだか?」

 

鷹月「もう来ると思うけど。」

 

箒「おはよう皆の衆。」

 

セシリア「おはようございます、皆さん。」

 

鈴「おっはよー。」

 

シャルロット「おはよう、3人同時に来るとはさすがに仲良いよね。」

 

ラウラ「流石は私の嫁の友だな。」

 

アルゴス「ラウラは朝から愛の宣告か。」

 

エクトル「シャルロットは保護者並みに大変だろうね。」

 

シャルロット「そうなんだよー、ラウラ結構ズレて知識を覚えてるから。」

 

笑い話をしながら朝食を食べる専用機一同。

 

朝食後、一夏は専用機持ち全員を部屋の前に集めた。

 

一夏「もうすぐ臨海学校だよな。折角の休みだし、みんなで買い物にでも行かないか。」

 

箒「ああ、いいぞ。」

 

セシリア「皆さんとお買い物は初めてです。」

 

アルゴス「地域散策も兼ねて行きたいぜ。」

 

エクトル「そうだね、少なくとも僕らヨーロッパの人間にとっては、日本の勉強にもなるし。」

 

シャルロット「僕もそう思う。」

 

ラウラ「日本の文化か、興味あるな。」

 

鈴「じゃあお昼は、みんなで弾の家に行きましょ。」

 

一夏「そうだな、しばらく会えてないし、行くか。

じゃあみんな、10:00に校門の前に集合しようぜ。」

 

久々の休日にテンションが上がる皆であった。

 

 

 

 

 



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みんなで買い物〜昼食

一夏「よし、みんな揃ったな。」

 

箒「一夏、一番に来てるとは流石だな。」

 

エクトル「ごめんね、みんな待った?」

 

セシリア「時間通りですわよエクトルさん。」

 

鈴「こんな大勢で出かけるのって初めてよね。」

 

アルゴス「その大勢をまとめる一夏はもうすっかり一年専用機のリーダーって感じだな。」

 

ラウラ「うむ、いつかは一家の大黒柱となるには相応しいな。」

 

シャルロット「もうっ、ラウラまたそういう事言う。」

 

校門前に集合した専用機一同は、ここから電車で数十分の町にあるショッピングモール「ミレニアム」に行く事に。

 

駅に着くと、電車に初めて乗るというヨーロッパ組を、一夏、箒、鈴が案内する。

 

セシリア「私は国ではリムジンでの移動が多いですわね。」

 

エクトル「僕もそんなところかな。」

 

シャルロット「僕も1人で出かけるなんて事はできなかったね。」

 

一夏「へえ、エクトルも金持ちなんだな。」

 

鈴「お嬢様にお坊っちゃまは大変よね。」

 

ラウラ「これが電車か。部隊を乗せる軍用車両よりよほど便利だな。」

 

アルゴス「俺もこれは初めて乗るな。つーかラウラ、軍用と公共は違うぞ。」

 

数十分の乗り継ぎを経て、「ミレニアム」についた。

 

一夏「さあて、着いたぞ。」

 

箒「ここは久しぶりだな。」

 

鈴「中学時代は一夏や弾とよく行ったわね。」

 

セシリア「これがショッピングモールですのね。」

 

セシリアは興味津々である。

 

エクトル「広くて迷いそうだね。」

 

ラウラ「色々物がある、興味あるな。」ワクワク

 

ラウラは見た事のない世界に目を輝かせる。

 

シャルロット「ラウラ、迷子にならないようにね。」

 

アルゴス「こりゃあどこから行こうか迷うぜ。」

 

せっかくなので、まずはみんなでミレニアムの全域を散策する。

 

一夏を先頭に皆で足並み揃えて行くその様は、やはり目立つのか、周りからかなり注目を浴びている。

 

「ねえ、あれってIS学園の生徒じゃない?」

 

「うわー、可愛い子ばっかじゃねえか!」

 

「確かあの男子達IS使えるんでしょ?すっごいイケメン‼︎」

 

「クーッ、男子いなけりゃ声掛けるのによー。」

 

男性客、女性客共に興味津々だ。幸い、男女混ざっている事でナンパは免れている。

 

一夏「さてと、一通り見て回ったし。そろそろ水着を買いに行くか。」

 

箒「そ、そうだな。」

 

セシリア「え、ええ。」

 

シャルロット「そ、そうだね。」

 

箒、セシリア、シャルロットが急に恥ずかしそうになる。

 

エクトル「ここは男女別で行こうか。」

 

アルゴス「そうだな、女子の水着姿は当日の楽しみにしとくべきだな。」

 

箒・セシリア・シャルロット「ほっ。」

 

ここからは男女別行動となった。

 

 

男子side

 

一夏「さてと、どれにすっかなー。」

 

エクトル「最近の男性水着もデザインが豊富だね。」

 

アルゴス「とはいってもよ、女子の水着みたいにオシャレな感じはあんまし無いけどな。」

 

3人は色々言いながらも水着をじっくり見る。

 

 

女子side

 

セシリア「日本にはこんなに水着の種類があるのですわね。」

 

鈴「選ぶ楽しみ満載ね。」

 

シャルロット「結構可愛いものもあるね。」

 

箒「こ、これは大丈夫なのか?全体的に大胆な気もするが。」

 

ラウラ「箒、それは私もよくわかる。だが一夏はきっと私達の水着姿を楽しみにしてるぞ。」

 

箒・セシリア・シャルロット「‼︎」

 

ラウラ「は、恥ずかしくても、い、一夏のためならどんな水着も・・・・。」プシュー

 

鈴「まあ、特別な日くらいハメ外してもいいんじゃない?一夏も男の子だし、大胆すぎるくらいがいいと思うわよ。」

 

鈴の一言が、一夏を慕う女子達のハートに火を付けた。

 

箒「よし、一夏のため、一夏のため。」

 

セシリア「一夏さんに喜んでいただけるなら。」

 

シャルロット「うん、ここは思いっきり攻めていかなきゃね。」

 

ラウラ「クラリッサ、私だ。水着で一夏を喜ばせたいのだが・・・・。」

 

鈴「(はあ。一夏、当日はいいように褒めてあげなさいよね。)」

 

その後、更衣室に何度も出入りを繰り返し、恥ずかしそうにしながら選んだ水着をレジに持って行った。

 

昼になり、一行は五反田食堂に向かう。

 

一夏「こんちわー。」

 

弾「よう一夏、鈴。暫くぶりってあれ?き、今日は随分大勢だな。」

 

蘭「お兄、デレっとしないでよ恥ずかしい。」

 

弾「しょーがねーだろ、あのIS学園の女の子となりゃ興味わくぜ。(初めて会う女の子達すっごい可愛いぜ!スタイルもいいな。一夏と他の男子2人が羨ましいぜ)」

 

鈴「弾、アンタ変なこと考えたでしょ。」ジトー

 

弾「なっ、何言って、イテっ!」

 

蘭に尻を蹴られる弾。

 

一夏「ハハハ、相変わらずだな。紹介するよ。俺の親友の五反田弾と、妹の蘭だ。」

 

箒「そうか、彼がお前の中学時代の友人か。」

 

セシリア「なかなかパンクな感じですわね。」

 

シャルロット「よろしくね弾君。」

 

ラウラ「弾と言ったな。昼食をお願いできるか?」

 

弾「はい!ただいま‼︎」ルンルン

 

蘭「(ちゃっかりしてる。)」

 

エクトル「初めまして蘭さん。」

 

アルゴス「よろしくな。」

 

蘭「は、はい。(うわあ、一夏さん同様ISを使える人達。2人とも一夏さんとはまた違った意味で素敵。

って、いやいやそんな、私は一夏さん一筋だもの。)」

 

鈴以外の女子「(ここにもライバルが。)」

 

アルゴス「一夏、お前行く先々でモテるな。」

 

エクトル「大変だよね。」

 

一夏「え、そうかな?」

 

弾「はあ、お前相変わらずだな。」

 

鈴「でも以前ほど鈍感じゃないわよ。明らかな好意には気づけるし。」

 

弾「マジかよ、もっとうらやましいぜ。俺もIS使えたらなー。」

 

鈴「アンタじゃ無理よ。」

 

蘭「同感です。」

 

弾「何だよ〜。」

 

思いっきりヘコむ弾。

 

男子一同「・・・・ハハハ。」

 

それからは昼食のついでに奥の部屋で色々な遊びをし、

夕方に出発して何とか門限までに学園に戻ることができた。

 

 

 

 

 

 

 



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臨海学校初日

ギラギラと太陽が照りつける今日、IS学園の前には大型の特注バスが停まっている。今日は待ちに待った臨海学校の日だ。

 

「楽しみだねー。」

 

「あたし昨日この水着買っちゃった!」

 

「うわっ、大胆」

 

「だって、この夏に恋を実らせたいし。」

 

女子の大半は、男子に自分の水着姿を披露するとあって、みな真剣である。

 

千冬「恋も結構だが、臨海学校の本来の目的を忘れるんじゃないぞ!(一夏だけはまだ渡さないがな。)」

 

「はいっ‼︎」

 

バスが出る。ちなみに原作と違い、専用機持ちは1台のバスに一緒である。

 

バスの席でそれぞれの男子の隣を巡って大騒ぎになったが、千冬が3人ともうしろの5人席に座るようにし、その前の列の5人席に箒と専用機持ちが座るという事でおさまった。

 

出発してから数時間後、目的地の臨海学校の海が見えてきた。

 

一夏「おっ、来たぜ来たぜ!」

 

箒「広い海だな。」

 

鈴「しかも貸切だからいいわよね。」

 

エクトル「日本にこんな綺麗な海があるんだね。」

 

セシリア「私の家のプライベートビーチ程ではございませんが、なかなかですわね。」

 

アルゴス「プライベートビーチあるのかよ、すげえな。」

 

ラウラ「これが海か。」

 

シャルロット「綺麗だね、ラウラ。」

 

やがて、臨海学校の駐車場に到着する。

 

まずは旅館にご挨拶に行く。

 

旅館の女将「本日は、ようこそおいでくださいました。当旅館でどうぞ心ゆくまでおくつろぎ下さい。」

 

千冬「今回は男子が3人いるため少し予定が変わりましてすみません。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「よろしくお願いします!」

 

女将「いえいえ、3人とも凛々しいこと。」

 

女将の周りの女性も彼らに興味示す。

 

千冬「まあ、問題を起こすような奴らではないので、その点は安心です。(女子が絡むとどうなるかはわからないな、特に一夏だが。幸い3人とも私と同じ部屋になっているが。)」

 

女将「あら、織斑先生が信頼してるとは、よっぽどしっかりなさってるのね。」

 

男子3人は照れ臭そうにする。

 

午前から夕食前まで自由時間となり、各自の部屋に行き、更衣室で水着に着替える。

当然ながら男子3人はすぐに海に出られた。

 

一夏「いい天気だな。」

 

エクトル「気持ちいいよね。」

 

アルゴス「砂が熱いのがアレだけど、悪くねえな。」

 

3人とも準備運動を始める。

しばらくして、女子達がやってきた。

 

鷹月「あっ、織斑君たちもう来てるよ!」

 

谷本「うう、いざってなると緊張する。」

 

のほほん「だいじょうぶ。おりむー達喜んでくれるよ。」

 

アルゴス「おーっ、みんななかなかいいじゃねえか。」

 

エクトル「よく似合ってるよ。」

 

一夏「バッチリだな。ってのほほんさん海で着ぐるみってのはどうかと。」

 

のほほん「だいじょうぶ、これは通気性抜群なのだよ〜。」

 

他の女子達もぞろぞろと来た。

 

「織斑君体かっこいー!バランス完璧かも。」

 

「イリアディス君ムッキムキだね!」

 

「ベレン君細くていいなあ。」

 

一夏「何かみんな意外と大胆だな。」

 

谷本「そりゃあみんな必死だもんね。」

 

アルゴス「今日は目のやり場に困るぜ。」

 

鷹月「ずっと見てても大丈夫だよ、きっと。」

 

エクトル「そういえば、箒や専用機の娘達まだだね。」

 

エクトルが首を傾げていると、

 

セシリア「い、一夏さん。」モジモジ

 

セシリアはブルーのビキニだ。色はまさにこの場にピッタリだ。

 

一夏「セシリア、ブルーティアーズを見て思ったけど、セシリアは綺麗な青がとてもよく似合うよ。」

 

セシリア「あ、ありがとうございます。」

 

鈴「あらあら、以前のアンタなら絶対あり得ないセリフ決めたわね一夏。」

 

鈴はオレンジ色のスポーツタイプだ。元気いっぱいな感じが出ている。

 

アルゴス「鈴もなかなか明るくていいじゃねえか。」

 

エクトル「うん、鈴らしくていいよね。」

 

鈴「そう?ありがと。」

 

箒「い、い、一夏。」

 

一夏「お、おう、箒。」

 

箒は黒のラインの縁取りの白ビキニを着ていた。豊満な胸がプルンプルンと揺れ、今にもこぼれ落ちそうである。

 

箒「ど、どうだ?」

 

一夏「最高だぜ箒!」グッ

 

エクトル「箒、攻めたねー。」

 

アルゴス「一組のグラビアクイーンと言ってもいいかもな!」

 

箒「さ、最高か!そうかそうか。(やはり一夏は大きい胸がいいのか。この水着にしてよかった!)」

 

箒はみるみる顔を真っ赤にする。

 

シャルロット「箒、落ち着かないと倒れちゃうよ。」

 

シャルロットは黄色のセパレートタイプ。比較的露出は控えめだが、それがまた色っぽい。

 

一夏「シャルもなかなか色気あるな。」

 

シャルロット「えへへ、そうかな?」テレテレ

 

エクトル「ラウラがまだみたいだけど。」

 

シャルロット「うん、それがね。」

 

シャルロットは自分の後ろを指差す。そこには何やらバスタオルが巻かれた物体が。

 

アルゴス「おいシャル、何だそのバスタオルお化けは?」

 

シャルロット「ラウラさっきからずっとこのままなんだよ。」

 

一夏「もしかして恥ずかしいのか?だったら無理しないほうが。」

 

ラウラ「い、いや。一夏に見せるために着たんだ。だから見てくれ!」

 

意を決したラウラはバスタオルを取る。黒のビキニは彼女の細身なスタイルを強調しており、それに加えて、普段のクールさと今の恥じらいのギャップは反則的な可愛さがある。

 

一夏「ラウラ、とても似合ってるぞ!期待以上だ!」

 

ラウラ「しゃ、社交辞令はいい。」カアア

 

男女互いに開放的な状態で、お互い意識してしまう。

 

のほほん「みんなー、何かして遊ぼ〜。」

 

谷本「ビーチバレーしようよ!」

 

一夏「おっしゃ、じゃあチームどうしようか?」

 

エクトル「取り敢えず僕ら男子は別々だね。」

 

アルゴス「そうだな。」

 

話を進めていると、千冬と山田先生が来た。

 

山田先生「ビーチバレーですか。いいですね。」

 

山田先生はレモン色のビキニ。さすが学園で1、2を争う巨乳。

しかし、それをはるかに超える存在があった。

 

千冬「織斑、楽しんでいるか?」

 

千冬は深いブラックのビキニ。全体的にシャープでなおかつ大人の色気が溢れている。

他を圧倒する完璧なスタイルに男子は視線が釘付けになる。

 

エクトル「先生、とてもお美しい!」

 

アルゴス「これがブリュンヒルデの魅力か!圧倒されるぜ!」

 

一夏「まさに、女神に会っているような感じですよ。弟冥利に尽きますね。」

 

千冬「コ、コホン。我が弟ながら完璧な褒め言葉だ。(ここまでグッとくるセリフを言われたら、余計誰にも渡したくなくなるではないか。)」

 

「お姉さま素敵‼︎」

 

「まさに芸術よねー。」

 

「男子全員織斑先生に夢中じゃん。」

 

「頑張らなくっちゃ!」

 

箒「(くう、これは勝ち目がないな。)」

 

セシリア「(天地の差ですわ。)」

 

鈴「(むむむ、一夏のシスコンぶりは相変わらずね。)」

 

シャルロット「(一夏は織斑先生が好みなのか。頑張ろう!)」

 

ラウラ「(流石は教官、感服する。)」

 

束の間の水着ショーの後、それぞれの男子をリーダーにチームを組んでビーチバレーを行った。

男子一同は、自分のチームやネット越しに見える敵チーム女子のジャンプ時の胸揺れをもろに意識してしまい、精神的にきついながらも何とか試合を運ぶ。

 

他にも海に入って泳いだり水を掛け合ってはしゃぎ、休憩にはなんと女子達が、自分たちが指名した男子にサンオイルを塗ってもらうという行為に出た。

 

「あたし、織斑君がいい❤︎」

 

「ベレン君、後でベレン君にも塗ってあげる❤︎」

 

エクトル「えっ、それはちょっと。」

 

「イリアディス君お願い❤︎」

 

アルゴス「わ、わかった。(マジかよ、ラッキー‼︎)」

 

鈴「一夏、あたしもお願いするわ。」

 

箒「わ、私にも頼む。一夏。」

 

セシリア「一夏さん、お願いしますわ。」

 

シャルロット「僕もお願い。」

 

ラウラ「私にも頼む。」

 

一夏「い、いいのか?(これ一生の思い出だな。)」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「コクリ。」

 

顔を赤くしながら女子達にサンオイルを塗る一夏達を見て、千冬は終始苦笑いが止まらなかった。

 

昼食後もしっかり動き、夕食の時間を迎えると、皆旅館に戻っていった。

 



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夕食〜ガールズトーク

夕食は旅館の大宴会場で行われた。みんな旅館の浴衣に着替え席に着く。この時も、男子の隣あるいは男子2人の間に座りたいという女子達が騒いだが、10人のテーブル席に専用機男女が向かい合わせで座るという事で事態はおさまった。

 

アルゴス「ほー、これが刺身ってやつか。」

 

シャルロット「初めて食べたけど、なかなか美味しいね。」

 

セシリア「お魚を生で食べる事を考えた日本は素晴らしいですわ。」

 

一夏「そっか、それを聞いたら日本人として嬉しいぜ、なあ箒。」

 

箒「うむ、全くだ。」

 

エクトル「それにしても箒、浴衣着てるからか凄く絵になってるね。」

 

箒「そ、そうか?」

 

鈴「いわゆる、大和撫子って感じね。」

 

ラウラ「誰だそれは?」

 

一夏「人名じゃないぜラウラ、簡単に言えば落ち着いた美しさがあるって事だ。」

 

ラウラ「成る程、教官のような女性か、納得。」

 

食事の間はこのように日本の文化が話題になっていった。

 

千冬「専用機達は他の者達に比べると落ち着いているな。」

 

山田先生「みんな仲がいいですものね。」

 

 

食事が終わり、入浴の準備に各自部屋へと向かう。

 

のほほん「ね、ねーおりむー、エックー、アルアル。」ヒョコヒョコ

 

一夏「あれ、のほほんさん?」

 

鷹月「みんなの部屋ってどこかな?」

 

谷本「遊びに行ってもいい?」

 

それを聞いた途端、周りの女子達が目を光らせる。

 

エクトル「来てくれるのは嬉しいけど。」

 

アルゴス「あいにく俺たち織斑先生と一緒なんだよ。」

 

「えーっ、そんなぁ!」

 

「先生ずるい!」

 

箒「まあ当然だな。」

 

セシリア「私達は納得してますわよ。」

 

鈴「こればっかりはねー。」

 

シャルロット「織斑先生のところに行くのは勇気がいるよ。」

 

ラウラ「教官なら問題ない。」

 

「がっくり」

 

女子達はうなだれて部屋へと向かう。

 

入浴が終わり、男子3人は部屋に戻ると、そこには浴衣姿の千冬がいた。

 

千冬「3人とも温まったか?」

 

一夏「はい。」

 

エクトル「おかげさまで。」

 

アルゴス「先生も湯上り後だけあっていいですね。」

 

千冬「イリアディス、教師をからかうんじゃない。」

 

一夏「織斑先生、せっかくだから今は名前で呼び合いませんか?」

 

千冬「まあいいだろう、一夏。それと、エクトルにアルゴス、お前達も特別に名前で呼び合う事を許そう。」

 

エクトル「じゃあ、千冬さんで。」

 

アルゴス「俺もそれで行きます。」

 

千冬「フッ、無難だな。」

 

何やらほんのり照れ臭い空気になる。

 

一夏「姉さん、せっかくだからマッサージするよ。俺達3人で。」

 

エクトル「えっ!?」

 

アルゴス「おいおいマジかよ。」

 

千冬「じゃあ頼むとしよう。」あっさり

 

千冬はうつ伏せになる。

 

3人「失礼します。」

 

3人はマッサージを始める。

 

一夏「姉さん、だいぶ凝ってるね。」

 

エクトル「どうですか?千冬さん。」

 

千冬「お、お前達意外とうまいな。あっ、そこはもう少し優しく頼む。」

 

アルゴス「す、すいません。」

 

千冬は一夏意外の男に触れられたことがないためか、妙な気持ちになる。

 

 

一方、女子達も入浴を済ませ、部屋に戻るのだが、約数名は姑息なことに一夏の部屋へとこっそり向かう。

 

ラウラ「みんな、静かにいくぞ。」

 

ラウラがこのこっそり作戦を立てた張本人である。軍の隊長とあってさすがの指揮である。

 

シャルロット「はあ、でもやっぱり一夏に会いたいしね。」

 

セシリア「本音は1人で行きたかったのですが、仕方ありませんわね。」

 

箒「ま、まあこういうのも悪くはない。」

 

一夏を想う4人は抜き足差し足で部屋へと向かう。

 

鈴「何やってんのよアンタら。」

 

4人「ビクッ!」

 

鈴「大方予想はつくけどね。暇だからあたしも行くわ。」

 

鈴も加わり、部屋へと辿り着いた。

 

ラウラ「しっ、静かに。中の様子を聞いてみよう。」

 

襖に耳を当ててみる。

 

千冬「あっ、一夏、そこは勘弁してくれ。」

 

一夏「大丈夫、すぐ楽になるから。」

 

箒「こっ、これは!?」

 

千冬「エクトル、くすぐったいぞ。」

 

エクトル「我慢してください千冬さん。」

 

セシリア「いっ、一体何を!?」

 

アルゴス「千冬さんでもそんな顔すんだな、ハハハ。」

 

千冬「言うんじゃないアルゴス。」

 

シャルロット「さ、3人とも織斑先生に何を!」

 

ラウラ「この教官の喘ぎ、まさかこれは。」

 

鈴「何想像してんのよアンタら!見なきゃわかんないでしょ!」ツッコミ

 

ラウラ「もう少し聞いてみよう。」

 

5人は一斉に襖に体を預ける。すると、重みで襖が外れた。

 

ガタンッ

 

「あっ‼︎」

 

バタン!!!

 

派手に室内へと倒れてしまった。

 

一夏「あれ、お前ら来たのか?」

 

エクトル「やあみんな、いらっしゃい。」

 

アルゴス「お前らだけってことは、こっそり来たのか。」

 

千冬「はあ、何をやってるんだ馬鹿どもが。まあいい、入れ。」

 

5人「お、お邪魔します。」

 

5人は気恥ずかしそうに入る。

 

 

シャルロット「マッサージだったんですか。」

 

鈴「そんなことだと思った。」

 

一夏「姉さん日頃疲れてるからな。」

 

箒「そ、そうか・・・。」

 

エクトル「どうしたんだい、顔を赤くして。」

 

ラウラ「うむ、てっきりお前達と教官が、男女のムグッ!」

 

ラウラの口を4人が塞ぐ。

 

セシリア「な、何でもありませんことよ、ホホホ。」

 

アルゴス「フハハッ、お前ら何てモン想像してんだよ。」

 

シャルロット「エヘヘ。」

 

千冬「そうだ、おい男子陣、少し外してくれるか?」

 

一夏「はい。(そういうことか。)」スッ

 

エクトル「そういうことなら。」スッ

 

アルゴス「下のゲーセンで遊んできます。」スッ

 

男子3人は出て行った。

 

千冬「さてと。」

 

千冬は冷蔵庫から缶チューハイを取り出した。

 

千冬「プハーッ!!どうしたお前ら、いつもの感じで話してみろ。」

 

セシリア「い、いえ。」

 

シャルロット「こんな形で織斑先生とお話しするのは初めてですし。」

 

箒「(緊張するな。)」

 

千冬「本題に入ろう、お前ら一夏のどこがいいんだ?」

 

5人「えっ!? 」

 

千冬「まああいつは男前だし、器用で家事万能、人付き合いもいい。ISにおいては天性の才能を持っている。優良物件だろうな。」

 

鈴「それに、今のあいつは鈍感じゃないしね、誰もほっとかないわ。」

 

千冬「どうだ、欲しいか?」

 

箒「はい!」

 

セシリア「是非!」

 

シャルロット「もちろん!」

 

ラウラ「今すぐにでも!」

 

千冬「フン、やるか馬鹿者。」

 

4人「えー。」

 

千冬「ん?1人反応がないな。」

 

千冬は鈴を珍しいと言わんばかりの目で見る。

 

鈴「え、あたしはその。正直言うと、記憶を失う前の鈍感な一夏が好きでした。」

 

千冬「成る程、まあどっちにしても簡単にはやらんがな。せいぜい女を磨けガキ共。(一夏の心を私から離さない限り渡さん。)」

 

千冬「ところで、話は変わるが、エクトルやアルゴスも一夏に負けず劣らずモテモテだが、一夏を好きなお前らにはどう見えている?」

 

鈴「エクトルは一夏以上に優しいですけど。」

 

セシリア「紳士的な方に思えますわ。」

 

シャルロット「だけどちょっと物足りないかな?」

 

箒「うむ、線が女性並みに細いのが気になるな。」

 

ラウラ「一夏ほど強くは見えないですね。」

 

千冬「そうかそうか。」

 

シャルロット「アルゴスは男らしいけど。」

 

セシリア「ちょっと圧力がありますわね。」

 

箒「柔軟性に欠けてるイメージですね。」

 

ラウラ「力が強いのは認めますが。」

 

鈴「あたしはけっこういい線行ってると思うけど。」

 

千冬「成る程、要するに一夏はあいつらを足して2で割った感じってことか。」

 

この部屋ではしばらくガールズトークが止まらなかった。

 



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特別訓練〜束登場

臨海学校は2日目に入り、ここでの特別訓練が開始される。さすがに昨日とは打って変わり、緊張感あふれる雰囲気である。

皆海辺に集まり、整列する。

 

千冬「それでは、これより特別訓練に入る。まずはこの砂浜を一周する長距離走だ!」

 

「はいっ‼︎」

 

山田先生「それでは、皆さん頑張って下さい。」

 

一斉に走り始める。地面が砂である故、いつもの倍以上の負担がかかる。

 

千冬「しっかり足を動かせ‼︎砂に足を取られてるぞ‼︎」

 

気合を入れる千冬。炎天下での全力疾走はキツイものがある。

 

長距離走の後はハイペースでの筋力トレーニング。

 

千冬「遅い!始めからやり直せ!!」

 

時間内についていけなければもう一度長距離走からやり直しとなる。

 

実戦では命がけの長期戦もあり得ることからこのように過酷な訓練が行われているのである。

 

一夏達専用機持ちは日頃から自主的にトレーニングを積んでいたため、難なくついていけてる。

 

千冬「次は戦闘訓練だ。様々な敵に対応するため、各専用機持ちと連続で対戦してもらう。」

 

これは非専用機持ちにはきつい。強者に向かっていかなければならないのだから。

だが、一夏達に取っても同じである。何十人もの対戦相手を、休むことなく続けなければならない。

これはスタミナが大きく関わってくる。

 

山田先生「織斑先生、上から何かが来ます!」

 

千冬「!?」

 

高速で謎の物体が降ってくる。だんだん近づいて、大きくなり、そして、

 

ちゅどーん!!!

 

地面に思い切り激突した。

 

アルゴス「な、何だ!?」

 

シャルロット「今何かが落ちてきたよ!」

 

セシリア「敵機ですか!?」

 

ラウラ「教官、これは?」

 

エクトル「ねえ、これよく見たら。」

 

一夏「人参・・・だな。」

 

鈴「みたいね。」

 

突然のことに驚く専用機持ち、しかし、約1名を覗いて。

 

箒「はあ。」

 

何やら箒はため息をついている。すると、人参型の物体の上部が開き、何やらうさ耳のようなものをつけた女性が現れた。

 

声「ヤッホー!箒ちゃーん!束さんが会いに来たよー!」

 

箒「姉さん、相変わらずだな。」イライラ

 

一夏「もしかして、束さんか?」

 

セシリア「じゃあ、この方が!?」

 

エクトル「ISの創始者の、」

 

シャルロット「篠ノ之博士なの!?」

 

アルゴス「なんか全然イメージと違うぜ!」

 

鈴「あの人昔っからあの調子らしいわよ。」

 

ラウラ「教官、この変人は一体?」

 

千冬「すまんな、話せば長くなるが、こいつは」

 

束「天才IS博士の束さんでーす。ちなみにちーちゃんとは百合ヘブッ」

 

言い終わらないうちに回し蹴りを千冬からもらう。

 

千冬「いらんことをぬかすな‼︎」

 

束「いたた、あれ、いっくん、見ないうちにイケメンになったねー!」

 

タタタタ、ギュッ。

 

いきなり一夏を抱きしめる束。

 

一夏「ちょっと束さん!」

 

束「記憶喪失なんだって?束さんのラブラブパワーで思い出させてあ・げ・る❤︎」

 

バキンッ

 

箒は鞘に収めたままの日本刀で束を殴った。

 

束「いったぁーい!?」

 

箒「何がラブラブだ‼︎一夏に変な事を吹き込むな!」

 

アルゴス「なんか、全然笑えねえ漫才見てる感じだな。」

 

鈴「それわかるわ。」

 

セシリア「一夏さん。」

 

シャルロット「一夏、隙ありすぎだよ。」

 

ラウラ「一夏、あの女とどんな関係なのだ!?」

 

エクトル「一夏、どうやら君はあちこちで女性を落としてるね。」

 

一夏「ま、待ってくれ。箒、説明頼む。」

 

箒「あ、ああ、そうしよう。」

 

箒は一夏と束の関係についてできる限り説明した。

とりあえず皆納得してくれたようだ。

 

束「あっ、そうそう、今日は箒ちゃんにプレゼントがあるんだよ!箒ちゃんのために丹精込めて作った専用機がね!」

 

一同「えっ!?」

 

箒「私もついに専用機を。」

 

束「パッパラパッパッパーッパッパー、『紅椿』‼︎」

 

ド〇〇〇んみたく専用機を紹介する束。

 

束「これはねー、既存のISよりもさらに進んだものなのだよ。特徴その1、これは白式のシールドエネルギーを増幅する能力があるんだよ!特徴その2、展開装甲によって攻撃、防御、機動の面であらゆる対応ができるのだよー。」

 

一夏「そりゃすごい、白式は燃費が唯一の弱点だからな。」

 

千冬「逆に言えば、操縦者の腕によりその対応力は左右されるという事だな。」

 

束「うんうん、でも箒ちゃんなら大丈夫!」

 

箒「・・・・。」

 

セシリア「箒さん?」

 

アルゴス「自分が一夏の助けになれるのかって悩んでるんだろう。」

 

鈴「箒、あたし達に比べて専用機の経験皆無だしね。」

 

エクトル「オールマイティなのは逆に自己の力を活かし辛いって事もあるし。」

 

シャルロット「でも箒だって僕たちと経験を共にしてきたし、大丈夫だよ。」

 

ラウラ「シャルロットが言うのなら間違いないな。」

 

一夏「まあ、箒、俺が困った時は頼むぜ!」

 

箒「ああ!」

 

こうして、箒も晴れて専用機持ちの仲間入りとなった。

 



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銀の福音襲来

山田先生「お、織斑先生、大変です、緊急事態です‼︎」

 

千冬「どうした?」

 

山田先生「イスラエルで開発されたISが、外部からの不正アクセスにより暴走し、こちらに向かって来ているとの情報が入りました!」

 

千冬「何だと!」

 

千冬はすぐさま当局に連絡する。その機体は銀の福音という名の専用機で、他のISを全て敵とみなし攻撃する状態にあるという。

 

千冬「全員旅館内に避難しろ!専用機持ちは残れ!」

 

ただちに生徒を避難させる。専用機持ちは急遽、束のラボに入って作戦を立てる事に。

 

 

ラボ内には緊迫した空気が張り詰めている。

 

千冬「諸君、これから行う作戦は、極めて重要で危険である。だが、何としてもこの暴走機体を止めねばならない。」

 

一同「はいっ!!!」

 

山田先生「まず、この機体の特徴として、機動スピードがとても速いです。攻撃を当てるのは非常に難しいでしょう。」

 

エクトル「スピードがないと対抗できないってわけですね。」

 

ラウラ「AICでもこれは捉えにくいぞ。」

 

山田先生「次に、近接、射撃共に高威力です。一方的な状況になりかねません。」

 

セシリア「シールドエネルギーにいつも以上に気をつけるべきですわね。」

 

鈴「奴に対抗するパワーも必要って事ね。」

 

山田先生「最後に、機体そのものの耐久力、シールドエネルギーが非常に高いです。少し攻撃を当てたところでビクともしないでしょう。」

 

シャルロット「つまり、スピードが対等で、」

 

アルゴス「攻撃力は一撃必殺でないと倒せないって事か。」

 

箒「それが備わっている機体はこの中で、」

 

全員が一夏の方を見る。

 

一夏「俺が零落白夜で倒すしか方法は無いって事か。」

 

千冬「その通りだ。今回の作戦は織斑がカギを握っている。」

 

一夏はかつてない緊張感に駆られる。

 

束「これこそ箒ちゃんの紅椿の出番だよ!白式のエネルギーを維持できるのは、紅椿だけだからね。」

 

つまり、作戦はこうだ。

 

一夏は箒と共に銀の福音に近づき、タイミングを見て零落白夜を当てる。その他の専用機は奴の動きを牽制するためにひたすら攻撃するという形だ。

 

 

そして、作戦実行の時が来た。

 

皆体制を整え、出撃に備える。

 

一夏「それじゃ箒、失礼するぜ。」

 

箒「あ、ああ。」

 

白式はエネルギーを消費しやすいので、紅椿に背負ってもらう形で銀の福音に接近する事になる。

 

千冬「織斑、篠ノ之は何か気持ちが入りきっていない。どうにかフォローを頼むぞ。」

 

一夏「はい。」

 

専用機持ちが海の上まで一斉に出撃する。

 

ラウラ「標的を捕捉!これより作戦に入る!」

 

ラウラが牽制の指揮をとる。

 

ラウラ「撃て!!!」

 

セシリア「いきますわよ!」

 

鈴「ぶち当てるわ!」

 

一斉に射撃が始まる。

 

シャルロット「全然当たらない!」

 

エクトル「アルテミスの追尾も通用しないよ!」

 

アルゴス「チッ、ウロチョロしやがって‼︎」

 

射撃や飛び道具を繰り出すも、ことごとくかわされてしまう。

今度は銀の福音が皆に攻撃を仕掛ける。

 

ラウラ「AICで止めるぞ!」

 

ラウラは果敢に前に出るも、結界を強引に破ってきた。

 

アルゴス「こうなりゃ取り抑えてやるぜ!」

 

鈴「あたしも行く!」

 

ラウラ「よし!シャルロット、セシリア、追撃を頼むぞ!」

 

セシリア「わかりました!」

 

シャルロット「オーケー!」

 

アルゴスは射撃を当てられて減速した隙を狙い、後ろから羽交締めにする。

その後、鈴ラウラが両足を抑え、アルゴスは膝蹴りを連発する。

 

一夏「今だ箒、奴に接近してくれ!」

 

箒「わかった!」

 

箒は展開装甲で高速移動し、銀の福音に接近する。

 

一夏「よし、これで終わりだ‼︎」

 

零落白夜を最大限に発動し、機体を切り裂き、シールドエネルギーはゼロに・・・なる筈だった。

 

一夏「!?」

 

銀の福音は突然姿を変えていく。

 

ラウラ「まずい!これは第二形態移行だ!!!」

 

箒「一夏、来い!」

 

箒は一夏を連れて距離を置く。

 

銀の福音は取り抑えていたアルゴス、鈴、ラウラを振りほどいた。

 

鈴「きゃっ‼︎」

 

アルゴス「クソッ何て力だ‼︎」

 

ラウラ「これではキリがない‼︎」

 

銀の福音はふと、一夏の方を向き、一気に間合いを詰める。

 

シャルロット「危ない一夏!逃げて!」

 

セシリア「箒さん!」

 

箒「何故だ!?何故絢爛舞踏が作動しない!?」

 

一夏のシールドエネルギーは残り僅か。だが、肝心のエネルギー増幅の能力が発動しない。

 

一夏「こうなりゃ最後の一手だ!」

 

一夏は銀の福音に真正面から突っ込み、零落白夜を体当たりのごとく当てる。

 

それと同時に銀の福音の攻撃もヒットし、一夏は大爆発に飲み込まれた。

 

一夏「ぐわあああ!!!」

 

一同「一夏(さん)!!!」

 

エネルギーがゼロになり、意識を無くした一夏は海へと落下する。

 

 



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死線の一夏

一夏は海へと落下した後、何とかみんなで救出してラボ内の医務室に戻った。

 

箒「一夏・・・すまない、私が不甲斐ないばかりに。」

 

全身包帯の一夏を見ながら箒はそう呟く。

 

千冬「とにかく、今は一夏の意識が戻るまで待機しろ。」

 

 

全員医務室の外に出る。

 

一同「・・・・・・。」

 

医務室の外は沈黙のみが続いている。

 

エクトル「これから、どうしようか?」

 

鈴「どうするも何も、あいつが治るまで待つしかないじゃない。」

 

シャルロット「それはそうだけど。」

 

アルゴス「かといって、このまま何もしないでいるのもな。」

 

セシリア「さっきから箒さんはあの調子ですし。」

 

箒の方を見ると、箒はずっと窓の外を見ていた。

 

箒「(私は、一夏守れなかった。もう、私にはどうすることもできない。)」

 

ラウラ「・・・・私はもう一度奴に挑もうと思う。」

 

セシリア「ラウラさん、本気なのですか?」

 

シャルロット「ラウラ、気持ちはわかるけど無謀だよ!」

 

ラウラ「このまま奴を放っておけば、被害がさらに広がるだけだ。」

 

鈴「それもそうね、あたしは賛成よ。」

 

鈴は元々じっとできない性格ゆえに、ラウラに同調する。

 

エクトル「だけど、一夏無しで銀の福音を倒すのは難しいんじゃ。」

 

アルゴス「難しい=不可能じゃねえだろ。俺もラウラに賛成だ。」

 

躊躇いを見せたセシリア、シャルロットは考えこんだが、

 

シャルロット「わかったよ、とりあえずやってみよう。」

 

セシリア「バラバラになるよりはいいですし。」

 

箒「私は、戦えない。」

 

一同「!?」

 

箒はどこか怯えているようだ。

 

鈴「箒、怖いのはあたしたちも一緒よ。」

 

セシリア「皆さんで力を合わせれば」

 

箒「さっきも力を合わせただろう!その結果がこれだ‼︎」

 

箒は大きな涙声で吠えた。

 

シャルロット「箒、その、」

 

箒「す、すまない。」

 

アルゴス「箒、お前この状況で逃げる気か?そんなんだから一夏があんな目にあったんじゃねえのか?」

 

不意にアルゴスは箒にきつい言葉をぶつける。

 

箒「っ!?」

 

鈴「アルゴス、アンタちょっと言い過ぎよ!」

 

エクトル「そうだよ!!」

 

ラウラ「一理あるな、箒は己の力を信じきれなかったように思える。」

 

セシリア「ラウラさん!!」

 

ラウラ「とにかく私はもう行く。一緒に戦いたい奴だけ来るんだ。」

 

ラウラ行こうとすると、

 

箒「待て!私も行く!」

 

シャルロット「箒?」

 

箒「ラウラの言う通りだ。私も一緒に行こう!これこそ一夏のためになることだ。」

 

エクトル「よかった。これで何とかやれそうだね。」

 

アルゴス「箒、さっきは悪かったな。」

 

箒「いや、一夏はアルゴスやエクトルにとって、大事な友人なのだからな。」

 

鈴「ふう、まったく。一夏がいないだけでここまでチームワークが乱れるんだもの。」

 

シャルロット「しっかりしなきゃね。」

 

セシリア「それを考えれば一夏さんは凄いですわね。」

 

皆改めて、一夏のリーダーシップに敬意を表する。

 

ラウラ「それじゃ、リベンジといこう。」

 

「ああ(はい)(うん)‼︎」

 

一同はとにかく一夏が来るまで場をもたせることにした。

 

 

一方、一夏は今も死線を彷徨っていた。ほんの僅かに意識があるものの、殆ど昏睡状態である。

 

一夏「・・・・ここは。」

 

一夏はなぜか、見渡す限り青い空と雲の広がる空間にいた。足元は透明な水である。

 

声「人の子よ。」

 

一夏「またこの声だ。」

 

声「あなたは、力を欲しますか?」

 

一夏「力?」

 

一夏は訳も分からずただ周囲を見渡しながら歩く。ふと、目の前に人影が現れた。

 

一夏「!お前は!」

 

「よう。」

 

そこにいたのは、そう、本来の一夏であった。

 

原作一夏「俺の体で代わりに俺の人生を歩んでるみたいだな。」

 

一夏「お、おう。まさか今更体を返せとか言うんじゃないだろうな?」

 

原作一夏「そうしたいがそれは無理なんだ。あの事件で俺は本来死ぬことになっていたんだから。」

 

一夏「そうか、何だか悪い事してるな。」

 

原作一夏「千冬姉は元気か?箒や鈴に弾は?」

 

一夏「元気にしてるぜ。一応記憶喪失ってことにしてる。いくら何でもこの状況を信じろって言うわけにはな。」

 

原作一夏「そうか、よかった。ありがとう。俺はもう生きられないけど、最後にお前の力となりたい。」

 

原作一夏はそう言うと、全身を強く光らせ、一夏の肉体にその光を入れ込んでいった。

 

一夏「この力は・・・・・。」

 

原作一夏の魂が、一夏の生命に強大なパワーを与えていく。

 

原作一夏「信じてるぜ、もう1人の俺。俺の分まで生き抜いてくれよ。」

 

それを最後に原作一夏は目の前から姿を消した。

 

一夏「・・・・・・さようなら、本来の織斑一夏。」

 

 

一夏「!?」ガバッ

 

気がつくと一夏は医務室のベッドで起き上がった。

 

束「あっ、ダメだよいっくん!まだ寝てなきゃ!」

 

一夏「束さん、あれから銀の福音はどうなった!?あれからどれくらい時間が経ったんだ!?」

 

束「今は他のみんなが2戦目に入ってるところだよ。」

 

一夏「あいつら、無茶しやがって!」

 

一夏は飛び起きて、急いで着替える。

 

束「いっくん!」

 

一夏「こんな時に寝てられるかよ‼︎」

 

一夏はすぐさま白式を展開してみんなのもとへと向かった。



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一夏復活、そして・・・

アルゴス「クソッ!!これじゃさっきと変わりゃしねえ!」

 

マーシャルアーツを繰り出すも、ことごとくかわされる。

 

ラウラ「ここはみんなで全方向から包囲するんだ!」

 

上下前後左右と、あらゆる方向から近接攻撃、射撃を行う。しかし、それでも白式並のスピードに追従しきれない。

 

セシリア「きゃあ‼︎」

 

銀の福音はセシリアに急接近し、激しく攻撃する。セシリアは接近戦が弱点であることを察知しているかのようだ。

 

エクトル「セシリア、危ない!」

 

シャルロット「今助けるよ!」

 

箒「ここは私が行く!」

 

ラウラ「AIC起動‼︎」

 

箒とラウラが銀の福音の攻撃を受ける盾となり、セシリアを守る。その隙にシャルロットとエクトルが救出し、鈴が迎撃する。

 

鈴「ああもう、ちょこまかとウザいのよ!」

 

鈴は衝撃砲を乱射する。

 

不意に銀の福音は新たな武器を繰り出す。その名も「銀の鐘」。

見た目は36の砲口を備えている。

 

エクトル「これじゃあ、四方を固めてもやられてしまう!」

 

ラウラ「どうにかあれを凌ぐんだ!」

 

しかし、すでにそこからエネルギー波が発射され、みんなを打ち砕かんとしていた。

 

シャルロット「もうダメだよ!」

 

箒「これまでか、一夏が来てくれたら。」

 

全員を飲み込もうと迫るエネルギー波は命中・・・・する寸前で消え去った。

 

一同「!?」

 

何やら幾つもの白い光を放つ剣がいくつもみんなの目の前に壁をつくる。

 

声「ようみんな、待たせたな‼︎」

 

声のする方を見ると、そこには白式を見に纏った一夏の姿が。

 

一同「一夏(さん)!!」

 

一夏「みんな、大丈夫か?」

 

鈴「それはこっちのセリフよ!」

 

エクトル「怪我はどうしたんだ?」

 

一夏「白式が直してくれたんだ!」

 

箒「一夏、一夏‼︎」

 

箒をはじめ、みんな感極まって涙を流す。

 

一夏「何だよみんな、今泣くときか?」

 

アルゴス「馬鹿野郎!!!みんなお前の事心配してたんだぞ!」

 

セシリア「一夏さんがあんな無茶をなされるから!」

 

ラウラ「そうだぞ一夏!!」

 

一夏「すまない、だがおかげで白式には新たな力が加わったんだ。見てくれ!」

 

一夏は不意に銀の福音に向かって、先程の白い光の剣を飛ばす。

 

一夏「行け、「白影剣(びゃくえいけん)!!」」

 

白影剣は銀の鐘の砲口を塞ぎ、爆破する。

 

一夏「これでも喰らいな!!必殺、零落白夜光(れいらくびゃくやこう)!!」

 

白式の左腕の大口径の荷電粒子砲からエネルギー弾が射出される。その威力は零落白夜に近い。

 

アルゴス「す、すげえ!」

 

一夏「箒、エネルギー増幅を頼む!」

 

箒「あ、ああ!任せろ!」

 

赤椿は箒の決意に答えるが如く、絢爛舞踏を作動させる。

 

鈴「これで形勢逆転ね!!」

 

エクトル「いや、向こうもまだ奥の手があるみたいだ!」

 

銀の福音の翼から、広大なエネルギー波が飛ばされる。

 

一夏「これで受け止めるぜ!」

 

一夏はおもむろに突っ込み、左腕の大型の盾装備「白鋼(しろがね)」で受け止める。

 

セシリア「すごい、これって白式が進化したってことですわね!」

 

一夏「どうやらそうみたいなんだ。」

 

シャルロット「それじゃ、畳み掛けよう!!」

 

一夏を先頭に皆銀の福音に向けてイグニッションブーストを発動し、それぞれの渾身の一撃を喰らわせ、銀の福音は静かに停止した。

 

一夏「おっと、あの女性はパイロットか!?」

 

銀の福音から出た金髪の女性を一夏は受け止める。

 

女性「ありがとう。私はナターシャ。」

 

一夏「そうか、助かってよかった。」

 

ナターシャは無事に保護され、一夏達は旅館へと戻る。

 

 

数時間後、一夏達は旅館の一室で正座させられ、千冬から長々と説教されていた。勝手に抜け出して作戦を続行したのだから無理もない。

 

千冬「成功おめでとうと言うべきだろうが、お前達は無茶をし過ぎた。本来なら懲罰のトレーニングやレポートを課すところだが、作戦成功に免じてこの説教だけで済ましておく!」

 

一同「申し訳ございませんでした!!」

 

千冬「でもまあ、みんなよく無事でいてくれたな。」

 

一同「織斑先生・・・・。」

 

千冬はこれまでになく鬼の表情で叱るも、その目には涙が浮かんでいた。

 

山田先生「先生、みんな疲れてますからそろそろ。」

 

千冬「よし、今夜はゆっくり休むように。それと、この事件を他の生徒に口外するな、以上!!」

 

長い戦いと説教が終わり、ようやく解散となった。

 

谷本「ねえデュノアさん、何があったの?」

 

シャルロット「機密事項だから話せないの。」

 

鷹月「セシリア、専用機持ち達ずいぶん疲れてるけど。」

 

セシリア「いえいえ、何でもございませんわ。」

 

鷹月さんや谷本さんをはじめ、他の一年生は事件の真相を知りたがるも、専用機持ち達はみんなおし黙る。

 

アルゴス「おい、一夏が俺たち専用機に話があるってよ。」

 

エクトル「どうしたんだろ急に?」

 

鈴「さあ?海辺に来いって言われたけど。」

 

その頃海辺では、

 

箒「一夏、ここに私を呼び出すとは一体?」

 

一夏「箒、来たみたいだな。」

 

箒「一夏?」

 

一夏「少し歩かないか?」

 

箒「あ、ああ。」

 

珍しく一夏と2人きりなので、箒は凄くドキドキしている。

 

箒「い、一夏、その。」

 

一夏「ん?」

 

箒「すまなかった。私のせいで一夏があんな目に。」

 

一夏「気にすんな箒、今回は相手が強敵過ぎたんだ、怪我も白式の力で治ったしな。」

 

箒「お前が良くても、私の気がすまないんだ‼︎」

 

箒は心の底では感謝しながらも、申し訳なさからか、どこか素直になれないでいる。

 

一夏「わかった。じゃあ箒、一つだけ俺の言うことを聞いてくれ。」

 

箒「あ、ああ。わかった。」

 

箒は目をつむる。すると、

 

ヒュー、パアン、パアン!!

なぜか花火が飛んできた。

 

箒「な、何だこれは!?」

 

すると、

 

専用機一同「箒、誕生日おめでとう!!!」

 

花火にはhappybirthdayの文字が。

 

箒「い、一夏、お前、私の誕生日を!?」

 

一夏「前に姉さんに教えられてな。はいこれ、大したものじゃないけど、プレゼント。」

 

一夏はプレゼント箱を箒に渡す。箒が箱を開けると、中には綺麗な水色の髪留め用リボンが。

 

一夏「箒のトレードマークのポニーテールにぴったりだと思ってさ、実はみんなで話し合ってたんだ。」

 

鈴「ホント、一夏は男の鑑よね。」

 

セシリア「はい、さすがは私が見込んだ男性ですわ。」

 

シャルロット「いいよね。好きな人に誕生日覚えてもらえてるって。」

 

ラウラ「作戦成功は箒のおかげでもあるからな。」

 

エクトル「これくらいさせてもらわないとね。」

 

アルゴス「こういう誕生日パーティーも悪くねえよな!」

 

一夏「箒、誕生日おめでとう!」

 

パチパチパチパチ、拍手が鳴り響く。

 

箒「うっ、うっ、い、一夏、一夏、ありがとう!みんなも、ありがとう‼︎」ポロポロポロ

 

箒は大粒の涙を流して喜んだ。

 

その様子を端から千冬は見ていた。

 

千冬「フッ、いい絆ができたものだな。」

 

千冬は1人浜辺で佇んでいた。そこに束が歩いてくる。

 

束「どしたのちーちゃん?もしやついに私との愛に目覚め」

 

千冬「黙れ馬鹿者!まあいい、実はお前に色々と聞きたいことがあってな。」

 

束「うんうん、それで?」

 

千冬「一夏がISを使えることに関しては一つの仮説が浮かぶ。コアを調達し、調整できるお前が、白騎士事件でのデータをもとに、一夏に適合するコアを作ったとしたら?そしてそれを、アルゴスやエクトルにも応用した。」

 

束「いっくんはともかく、あとの2人についてもまだまだ謎が多いんだよねー。仮説なんていくらでも浮かんじゃうし、それじゃ頭がパンクしちゃうよ。」

 

それを聞いて千冬は、聞くだけ無駄かと言わんばかりにニヒルに笑う。

 

千冬「ふん、謎か。まあ言えてるな。姉ながら今の一夏のことも正直まだそんなにわかっているわけじゃない。

本当にこの世はよくわからんものだな。」

 

束「だからISは面白いんだよー!」

 

千冬「今回はお前に言い負かされたかもな。」

 

こうして、思わぬ事件がありながらも、臨海学校の2日目は幕を閉じた。

 

3日目の朝、朝食を済ませて帰り支度をした生徒はバスに乗る。

もちろん座席は行きと同じだ。

 

山田先生「それではみなさん、出発しまーす。」

 

運転手がドアを閉めようとすると、

 

声「待ってください!」

 

何やら女性の声が聞こえた。入ってきたのは何と、銀の福音のパイロット、ナターシャだった。

 

一夏「あれ、ナターシャさん?」

 

ナターシャ「あなたが織斑先生の弟さんね?」

 

箒「千冬さんの知り合いですか?」

 

エクトル「そうか、だから僕たちあの作戦に。」

 

アルゴス「なるほどね。」

 

ナターシャ「実はみんなにお礼を言いたくて来たの。特に、一夏君に❤︎」

 

セシリア「お礼、ですか?(この人、一夏さんを狙ってますわ!)」

 

シャルロット「お礼なら十分ですよ。(一夏、ちょっと顔が赤い。年上に弱いのかな?)」

 

ラウラ「お礼なら教官に言うべきなのでは?」

 

一夏「(何だろう、いやな予感がする。)」

 

ナターシャ「一夏君にこれをあげるわ。ISのエネルギー消費を抑える強化パッケージよ。」

 

一夏「ありがとうございます!(これで少しは燃費が良くなるぜ!)

 

ナターシャ「あとこれも、お礼❤︎」チュッ

 

一夏「えっ!?」

 

一同「!!!!」

 

ナターシャは一夏の額にキスをした。うっすらとキスマークが残っている。

 

ナターシャ「ありがとう、優しいホワイト・ナイト。」

 

キラキラと笑顔でその場を去った。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「い〜ち〜か〜。(い〜ち〜か〜さ〜ん〜。)」ゴゴゴゴゴ・・・

 

一夏「い、いや、その、これはだな。」ガクガク

 

アルゴス「お前、ホントタイプ問わず女を落とすよな。」ハア

 

鈴「以前ほど鈍感じゃないからまだいいけど。」ハア

 

エクトル「君ってホント罪な男だね〜。」フウ

 

のほほん「おりむーもてもて〜。」

 

一夏「誰もフォローしてくれねーのかよ!!」

 

千冬「織斑、無情かもしれんが、女心とはこういうものだ。勉強しろ。」

 

一夏「・・・はい。(帰ったらお仕置き確定だな。)」シュン

 

今更ながら、本来の織斑一夏のルートを辿る大変さを思い知る主人公であった。

帰ってどんなお仕置きを受けたかは、想像に任せよう。



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夏休みをどう過ごすか

臨海学校で起こった事件は、数日後には世界中のニュースに取り上げられた。

この事件を解決した一員である一夏、箒、エクトル、アルゴスは特に注目され、ISの評議会での審議の結果、

この4人も自国の代表候補生と認定された。

それから月日が経ち、いつものように食堂で朝食をとっている中、夏休みの話が聞こえてくる。

 

「ねーねー、もうすぐ夏休みだけどさー、どこ行こっか?」

 

「臨海学校じゃ、恋のチャンスなかったけど、夏休み中なら可能性があるわね。」

 

「でも、うちの学校の男子に近づきたいならまず専用機持たなきゃね。特に織斑君の恋人候補はみんな専用機持ちで代表候補生だし。」

 

「それに織斑先生、臨海学校以来織斑君だけじゃなくベレン君やイリアディス君も弟のように可愛がってるし。」

 

「織斑先生に認めてもらう事も条件かー、厳しいわねー。」

 

夏休みに恋を実らせたい女子が多く、朝っぱらからこの話が続いている。

そんな女子達をよそに、一夏達専用機持ちは違う意味で夏休みの過ごし方について話し合っている。

 

一夏「そういえば、もうすぐ夏休みだけど、みんな何か予定はあるのか?」

 

鈴「何日かは父さんと国に帰るわ。」

 

箒「私は実家の道場で剣の稽古や、神社の夏祭りがあるな。」

 

セシリア「私は夏休みのはじめの何日かは国に帰りますわ。」

 

シャルロット「僕もそんなとこかな。」

 

ラウラ「私もだ。クラリッサにも色々と報告しなければな。」

 

女子専用機組は皆帰省予定がある。

 

鈴「そういうアンタらは何か予定があるの?」

 

エクトル「うん、だけど帰国の予定は無いんだ。」

 

箒「そうなのか?しかし夏休み中は寮は閉鎖されるのだぞ。」

 

セシリア「日本にご家族がいらっしゃるのですか?」

 

アルゴス「いや、実は俺たち2人とも、夏休み中は一夏の実家にホームステイする事になってんだ。」

 

シャルロット「ふーん、そうなんだ。(四六時中一夏と一緒なのか、いいなぁ。)」

 

ラウラ「夏休み中も教官と過ごすのか。(エクトル、アルゴス、羨ましいぞ。)」

 

それを聞いた周囲の女子達は男子3人のもとにワッと来た。

 

「えーっ!?2人とも織斑君の家にいるの?」

 

「織斑先生ずるーい!」

 

「男子独り占めするなんて!」

 

「織斑君、家どこ!?教えてくれない?」

 

「専用機のみんなは知ってるんだよね?」

 

箒「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ皆。」

 

セシリア「皆さんのお気持ちはわかりますが。」

 

夏休み中も男子に会いたいらしく、みんな迫ってきた。

 

千冬「朝から何を騒いでいるのだ‼︎」

 

「す、すみません‼︎」

 

千冬「理由は私から話そう。」

 

アルゴスとエクトルをホームステイさせるのは、一夏を含め彼ら3人は、ISを使える存在であるが故に、

多くのISの機関や組織に注目されている事から、下手に単独で行動するのは危険だからである。

 

シャルロット「これは仕方ないよね。実際僕の実家のデュノア社も3人には目を付けてるし。」

 

ラウラ「教官がいればまず問題ないだろう。」

 

エクトル「実家には母と妹がいるけど。」

 

アルゴス「うちは親父1人だけだしな。落ち着いた頃に顔を見せに行くぜ。」

 

鈴「それにしてもアンタら何か縁が深いわよね。」

 

一夏「ああ、まあどうにかなるさ。日にちを決めて皆で集まるのもいいしな。」

 

夏休み中はエクトル、アルゴスを実家に迎え入れる事になった。

しかし、この時一夏は夏休みを利用し、ある行動に出る事となる。

 

 

 

 

 



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世界革新計画

エクトル「これから、色々とご迷惑をおかけしますが、どうかよろしくお願いします。」

 

アルゴス「お世話になります、織斑先生、一夏。」

 

千冬「うむ、改めてよろしく頼む。(フフ、これなら普段の3倍は生活が楽だな。)」

 

千冬は自宅では一夏に任せっきりで、家事が苦手なのである。

エクトルは家事に関しては女性顔負けの器用さがあり、

アルゴスもその見た目とは裏腹に一夏に並ぶ生活力がある。

そんな2人を迎えたからか、千冬はどこか上機嫌であった。

 

一夏「自分の家だと思ってくれていいぜ!」

 

エクトル「お邪魔します。」

 

アルゴス「ここが一夏と先生の家か、いい所じゃねえか。」

 

一夏「とりあえず俺の部屋に行こうぜ。」

 

3人は一夏の部屋に入る。

 

それから3人は、一夏の部屋のスペースをうまく分配し、それぞれの寝床を作る。

 

アルゴス「寮でも部屋は一緒だけどよ、どこか違うよな。」

 

エクトル「普段の生活とは気分がガラリと変わるもんね。」

 

一夏「そうだろ、当初俺は部屋で独りぼっちだったからなぁ。」

 

3人はしばらく他愛のない話で盛り上がる。

 

エクトル「そう言えば一夏、僕らに話があるって言ってたよね。」

 

アルゴス「そうだな。んで、どんな話だ?」

 

一夏「改めて聞くけど、今の『女尊男卑』の世の中をどう思う?」

 

エクトル「えっ、どうしたの急に?」

 

アルゴス「いきなり深い話だな、おい。」

 

突然の話に2人は驚く。

 

エクトル「そうだね、女尊男卑は今までの歴史において女性が男性に虐げられてきたことへの反動だと思う。

だから、仕方ないといえば仕方ないけど、でもISを理由に男性を傷つける女性が多いという無秩序な状態は

放っておけないと思うよ、僕は。」

 

エクトルは女尊男卑にもそれなりの『秩序』を必要と見ている。

 

アルゴス「そうだな、エクトルが思う通り、仕方ない所もあると思うが、そこは俺たち男が奮闘し変わっていくことで、女性も変わっていけるんじゃねえか?それなりの力をつけていけば、女尊男卑も少しはマシになる可能性はあると思うぜ。」

 

アルゴスは女尊男卑をよくするには『力』が必要と見ているようだ。

 

一夏「お前らもそれなりに考えてはいるんだな。(2人とも、最初に会う前に夢で会った時と同じだ。)」

 

アルゴス「俺たちにこんな質問をするってことは、」

 

エクトル「君も女尊男卑について考えてはいるんだね。」

 

一夏「ああ、だが女尊男卑をよくする可能性はゼロじゃないと思ってる。

実際IS学園では、世の中が女尊男卑である事が嘘のように皆で仲良くできている。

これは、ある意味での可能性だと思うんだ。」

 

エクトル「一夏、それは僕らも凄く感じてるよ。」

 

アルゴス「一夏、要するにお前が考えてることは・・・。」

 

一夏「そう、俺たちの『仲間』を作る!!!」

 

一夏は真剣な眼差しで2人を見る。

 

エクトル「けど、仲間を作ると言っても、そう簡単な話じゃないよね。」

 

アルゴス「実際俺たちがISを使えることに関しては、未だに不明なんだぜ。」

 

一夏「そこなんだが、姉さんや束さん、専用機の皆と協力して、ISのコア研究を進めようと思う。」

 

エクトル「なるほど。」

 

アルゴス「マジかよ。」

 

千冬「お前ら、随分な計画を考えてるな。」

 

いつからそこにいたのか、千冬が部屋に入ってくる。

 

一夏「あっ、姉さん。」

 

エクトル・アルゴス「千冬さん。」

 

千冬「今話していたことについてだが、お前らのコアについてはあの束でさえも手こずっている。

操縦ができても、研究となれば膨大なものになるぞ。」

 

一夏「姉さん、無茶は十分承知してる。」

 

エクトル「でも、今の世を変えられる可能性が少しでもあるなら、」

 

アルゴス「俺らはそれにかけてみたい!」

 

千冬「・・・わかった、とりあえず今の話を束にもしてみよう。」

 

3人「ありがとう(ございます。)」

 

 

かくして、ここから彼らの物語は始まっていくのであった。

 

 

ーIS Brotherhoodー

 

 

 



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動き出す運命

一夏「・・・・?」

 

一夏は部屋でエクトルやアルゴスと眠っていたが、また彼は一人夢の世界で目覚める。

 

一夏「1人でこの夢見るの久しぶりだな。」

 

あたりは灰色の何もない世界だ。

 

声「人の子よ。」

 

一夏「またこの声だ。おい、いい加減姿を見せたらどうだ?」

 

声「あなたは、自身の使命に目覚め、世界を変える道へと進み始めました。

しかしその先の未来は、あなた自身に委ねられています。」

 

一夏「まさか、神様じゃあるまいし。」

 

すると、不意に三つの扉が出現した。

 

一つは空のような青い扉、一つはマグマのような赤い扉、もう一つは自然のような緑の扉だ。

 

一夏「これは?」

 

声「それぞれの扉を開いてごらんなさい。その中に、人の子が作り出し得る世界が描かれています。」

 

一夏「・・・。」

 

一夏はまず、青い扉開く。

 

一夏「!?」

 

その中には世界が映っていた。そこは、どこかの教会のようだ。

中には教皇らしき人物と、多くの信者らしき者が多くいる。

ただ、この教会にいるものは皆、ISらしきものを見にまとっており、どこか無表情であった。

そして、教皇の頭上には、巨大な天使の様な像が見える。

何故か首から上が見えないが。

 

一夏「これは、あの時聞かされた『導き』か?」

 

とりあえず扉を閉める。そして、今度は赤い扉を開く。

 

一夏「!?」

 

そこはどうやら広大な宮殿のようだ。しかし、どこか禍々しさを感じる。

王座には王が居座り、宮殿の中庭らしきところで人々が殺意のこもった形相で戦っている。

この世界にいる者も、皆ISを装備しているようだ。

そして、王の上には、悪魔のような像が見える。これもまた首から上が見えないが。

 

一夏「これは『支配』に相当するものなのか?さっきとは対照的だな。」

 

赤い扉を閉じる。そして最後の扉に手をかける。

 

一夏「じゃあ、こいつの中には『調和』の世界があるってのか?」

 

一夏は緑の扉を開けた。すると、

 

一夏「あれ?」

 

中には何もなかった。というのも、扉を開けても、灰色の空間の向こう側が見えるだけである。

一夏はその扉の反対側にまわってみたが、案の定、反対からでも同じ結果だった。

 

一夏「何故この扉だけ何も描かれてないんだ?」

 

声「それぞれの世界の意味は時期にわかるでしょう。」

 

一夏「・・・・・・。」

 

疑問が解けないまま目覚めの時を迎えた。

 

エクトル「おはよう、一夏。」

 

アルゴス「よう一夏、爆睡しちまったな!」

 

一夏「あ、ああおはよう。」

 

一夏はとりあえず起きて朝食にする。

ちなみに食事は3人で朝昼夜交代で作るように決めてある。

今朝の朝食はエクトルが作った。

 

千冬「おはよう諸君、いい匂いで目覚めさせてもらった。」

 

千冬は寝ぼけ眼で降りてくる。

ちなみに上下ジャージである。

 

千冬「しかし、エクトルもなかなかの料理を作るな。地元でもモテモテだったのではないか?」

 

エクトル「いえいえ、逆でしたよ。学校では男女両方にいじめられていた時期もありましたし。」

 

千冬「意外だな。」

 

一夏「そりゃ大変だったな。」

 

アルゴス「やっぱ、普通の男子とあまりにも違うところがあるからだろうな。」

 

2人がホームステイに来て数日経ち、毎朝このような楽しい会話が続いている。

 

朝食の後、千冬は束と会う確約をとって家を出発した。その間3人で留守番をすることに。

 

アルゴス「ふあああ。」

 

アルゴスは大きな欠伸をする。

 

エクトル「退屈かいアルゴス?」

 

アルゴス「だってよ、何かヒマじゃね?」

 

一夏「そりゃあ、宿題以外特にやる事ねえからな。」

 

午前中はある程度宿題を進めていくことにしているが、

さすがにこれは個人個人で行うため、ペースはバラバラである。

 

一夏「退屈しのぎに専用機女子のみんなを呼んでみるか。」

 

エクトル「そうだね、みんな一夏に会いたいだろうし。」

 

アルゴス「昨日の話、あいつらにも伝えとかなきゃな。」

 

一夏はスマホを取ると、片っ端から電話をかけていった。

 



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専用機持ち達の夏休み 前編

一夏「おっ、みんな我が家へようこそ!」

 

エクトル「いらっしゃい。」

 

アルゴス「よう、数日ぶりだな。」

 

箒「ああ、一夏もエクトルもアルゴスも元気そうだな。」

 

セシリア「一夏さん、お久しぶりですわ。エクトルさんにアルゴスさんもご機嫌よう。」

 

鈴「ホームステイ楽しそうね!」

 

エクトル「うん、お陰様で。」

 

シャルロット「いいなー、2人が羨ましいよ。」

 

ラウラ「うむ、一夏とは将来このような家に住みたいものだ。」

 

アルゴス「今日も早速大胆発言だな。」

 

一夏「そんじゃ、どうぞ上がってくれ。」

 

みんなをリビングに呼び、お菓子とお茶を出す。

 

箒「久しぶりに来たな。」

 

鈴「あたしも去年ぶりかしらね。」

 

セシリア「とても素敵なおうちですわ。」

 

シャルロット「そういえば織斑先生は?」

 

一夏「今日は束さんと会ってるぜ。」

 

ラウラ「うむ、そうか。これは何だ?結構美味いな。」パリパリ

 

煎餅を食べるラウラ、それがまた微笑ましい。

 

箒「聞くところによると、姉さんと共にISのコアの研究を進めるらしいな。」

 

一夏「ああ、俺たち3人の仲間を作ろうと思ってな。」

 

鈴「それはあたしも興味あるわね。」

 

セシリア「ですが、お三方がISを使える理由も未だに不明なのに。」

 

エクトル「だからこそ研究を始めたいと思ってるんだよ。」

 

アルゴス「俺たちの仲間が増えりゃ、学園内の恋の修羅場も大分なくなるだろ。」

 

シャルロット「それはそうだね。」

 

ラウラ「その研究については私も協力しよう。クラリッサに掛け合ってみる。」

 

コアの研究話で盛り上がってる中、千冬が帰ってきた。

 

一夏「姉さん、おかえりなさい。夕飯は何にする?」

 

千冬「ただいま一夏、って、お前達も来ていたのか?」

 

女子5人「お、お邪魔してます。」

 

アルゴス「そういや今日の晩飯は一夏が担当だったな。」

 

エクトル「僕らはこうして交替で家事をやっているんだ。」

 

千冬「非常に助かっている。」

 

箒「そ、そうなのか。(千冬さん、心なしか浮かれて見える。)」

 

セシリア「3人とも甲斐甲斐しいですわね。(私も一夏さんにお世話してもらいたいですわ。)」

 

鈴「まったく、アンタら専業主婦かっての。ちなみに一夏は昔からあんな感じよ。はたから見たら千冬さんと夫婦に見えるくらいだしね。」

 

シャルロット「それってちょっと普通じゃないよね。(僕も料理で一夏にアプローチしようかな。)」

 

ラウラ「一夏は日常では教官の身の回りの世話をしてるのか。(さすがは私の嫁に相応しい男だ。)」

 

千冬「そういえば篠ノ之、ここの所叔母さんと会っていないのだろう。休みの日くらい顔を見せに行ってやれ。」

 

箒「あ、はい。」

 

 

その後、今夜は専用機持ちみんな揃ったという事で、庭でバーベキューをしたことで思い出を一つ作り上げた。

 

 



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専用機持ち達の夏休み 中編

昨夜はバーベキューの後、一夏の部屋で夜遅くまで盛り上がり、

せっかくなので女子専用機持ちも一夏の家に泊まっていった。

 

そして翌朝・・・・

 

トントントン、一夏が器用に包丁を使う音が台所に響く。

 

一夏「今朝は和食でいくか。」

 

午前6時、今朝は一夏が朝食を作ることになっている。

 

メニューはご飯に味噌汁、焼き鮭といったシンプルなものだが、疲れた日の次の朝にはもってこいだ。

この時間他のメンバーはまだ寝ている・・・はずだったが、

 

シャルロット「おはよう一夏、僕も手伝うよ。」ヒョコッ

 

一夏「おはようシャル、早いな、準備なら1人で大丈夫だぜ。」

 

シャルロット「いいから、僕も手伝う。」

 

シャルロットはジッと一夏を見ながら言う。

 

一夏「わかった、じゃあ大根を切ってくれるか?」

 

あっさり押し負ける一夏。

 

シャルロット「任せて!(よし、これで一夏にアピールできたかも❤︎)」

 

出し抜けに自己アピールをするシャルロットだった。

シャルロットも手先が器用なためか、初めてとは思えない包丁さばきを見せた。

 

一夏「よし、大体できたな。そろそろみんなを起こすか。おーい、朝だぞー!!」

 

その声と同時に階段を降りる音がする。

 

千冬「おはよう一夏、デュノアも早いな。」

 

箒「おはよう、っておいシャルロット、何だそれは!?」

 

箒はエプロン姿のシャルロットを見るなり一気に目がさめる。

 

シャルロット「エプロンだけど、似合うかな?」

 

セシリア「そういう話ではございませんわ!」

 

ラウラ「シャルロット、ずるいぞ!一夏とふ、2人で料理とは!」

 

シャルロット「いやーたまたま早く目が覚めちゃって〜。」テヘペロ

 

鈴「アンタ、見かけによらず策士ね。」

 

エクトル「アハハハッ。」

 

アルゴス「まあいいじゃねえか。そんな事より、飯にしようぜ!」

 

みんなで朝食に入る。

 

エクトル「これが日本の朝食か。温かみがあっていいね。」

 

千冬「ほう、エクトルにもわかるか。」

 

アルゴス「この焼き鮭うまいぜ。」

 

ラウラ「この味噌汁とやら、クラリッサから聞いたことがあるが中々だな。」

 

鈴「さすが一夏ね。」

 

セシリア「ええ、何だか女性として危機感を覚えますわ。」

 

箒「うむ、まったくだ。」

 

和みのある雰囲気で朝食を終え、みんなは一夏の部屋に集まって今日をどう過ごすか話し合った。

 

一夏「そういえば、姉さんに聞いたんだけど、今夜は篠ノ之神社で夏祭りをやるらしいな。」

 

箒「ああ、叔母さんに会いに行く事も兼ねてみんなで行こう。(祭での舞でなら一夏にアピールできるかもな、頑張ろう。)」

 

エクトル「日本のお祭りかー。自国の祭との比較にもなるしいいよね。」

 

鈴「花火とか見たいわよね。」

 

シャルロット「お祭りだから美味しいものいっぱいあるもんね。」

 

ラウラ「そうなのか?早く行きたいぞ!」ワクワク

 

アルゴス「ラウラは食い物の話になると目がキラキラするよな。」

 

千冬「お前達仲がいいな。そうだ、篠ノ之、皆に浴衣を用意するよう叔母さんに連絡しておけ。」

 

箒「はい!(一夏の浴衣姿❤︎)」

 

夜に夏祭りに行く事が決まり、それまで皆はその分宿題を進めていった。

 

 

 

 

 

 



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専用機持ち達の夏休み 後編

時刻は17時、篠ノ之神社の夏祭り開始の1時間前に専用機一行は来ていた。

 

箒「みんな、こちらは私の叔母だ。」

 

「初めまして、篠ノ之雪子です。姪がいつもお世話になってるわね。」

 

一夏「初めまして、織斑一夏です。」

 

セシリア「セシリア・オルコットです。」

 

鈴「鳳鈴音です。」

 

シャルロット「シャルロット・デュノアです。」

 

ラウラ「ラウラ・ボーデヴィッヒです。」

 

エクトル「エクトル・ベレンです。」

 

アルゴス「アルゴス・イリアディスです。」

 

雪子「一夏君久しぶりね。あなたの事は箒ちゃんから聞いてるわ。相変わらず男前ね。」

 

一夏「いえ、それ程でも。」

 

雪子「海外の皆さんも素敵な方ばかりだわ。箒ちゃんにもいいお友達ができてよかった。」

 

海外組一同「いえ、こちらこそ。」

 

雪子「ささ、みんなに似合う浴衣を選んだから、どうぞ着て行ってね。」

 

一同「ありがとうございます。」

 

早速浴衣に着替える。

 

一夏「浴衣着るのいつぶりだろうなー。」

 

箒「一夏、よく似合ってるぞ。」

 

アルゴス「みんなもすげえ可愛いじゃねえか。」

 

シャルロット「そう?ありがとう!」

 

ラウラ「アルゴスも渋くていいと思うぞ。」

 

セシリア「これが浴衣ですか。風流ですわね。」

 

鈴「エクトル、アンタ女顔だから妙に馴染むわね。」

 

エクトル「似合ってるか、よかった。」

 

一夏「そんじゃ、行こうぜ。」

 

一同はまず屋台を回る事に。

 

ラウラ「シャルロット、食べ物がいくつもあるぞ!」ピョンピョン

 

ラウラは意外にも食いしん坊なところがあり、興奮している。

 

シャルロット「ラウラ、飛び跳ねないの。」

 

アルゴス「そうしてると母娘って感じだな。」

 

みんなでかき氷や綿あめ、焼きそば、たこ焼きなどを頬張る。

普段の学園生活ではあまり見られない、何とも微笑ましい空気である。

 

しばらくすると、射的屋に着いた。

 

鈴「射的屋かー、中学の時祭りでやってたわね。」

 

使えるおもちゃの射撃武器は、ライフル、アーチェリー、ハンドガンだ。

 

ラウラ「ここは私が行こう。」

 

ラウラは勇んでハンドガンを手に取る。

 

セシリア「ここは私の出番ですわね!」

 

セシリアはライフルを取る。

 

エクトル「僕もやってみようかな。」

 

エクトルはアーチェリー、皆普段慣れている武器を持った。

 

一夏「お前らにぴったりだな。」

 

箒「で、どれに当てるのだ?」

 

シャルロット「いろんな景品があるね。」

 

ラウラ「私はあの箱だ。」

 

見ると、ポテトチップス10袋入りの箱だ。大きさ的に倒れるのだろうか。

 

一夏「ポテチとはウケるぜラウラ!」

 

アルゴス「セシリアは何にするんだ?」

 

セシリア「私はあれです!」

 

セシリアは何やら青いクリスタルのペンダントだ。当てるのが難しそうだ。

 

箒「エクトルは何が欲しいのだ?」

 

エクトル「僕はあれかな。」

 

エクトルは最近流行りの便利な調理器具だ。

 

鈴「アンタは主婦かっての!」

 

ツッコミ入れる鈴。

 

一夏「みんな、頑張れよ!!」

 

少しの間沈黙が流れる。そして、

 

ラウラ・セシリア・エクトル「ファイアー‼︎」

 

3人同時に射撃された。見事に全部当てられた。

 

ラウラ「うむ、満足だ。」ホクホク

 

ラウラはポテチの箱を大事そうに抱える。

 

セシリア「我ながら腕が上がりましたわ!」

 

セシリアはペンダントをさっそく着けている。

 

エクトル「これで新しい料理ができる!!」

 

エクトルは便利な調理器具だけに心底嬉しそうだ。

 

しばらく店をまわっていると、箒は舞の準備のため途中で抜けた。

 

一夏「どんな催しか楽しみだなー。」

 

エクトル「日本の芸術の勉強にいいかも。」

 

アルゴス「きっとすっげー大和撫子な衣装なんだろうぜ!」

 

男子陣は楽しみな様子である。

 

鈴「まさか箒にそんな特技があったとはねー。」

 

ラウラ「シャルロット、日本の舞はどんなものだろうな。」

 

シャルロット「そうだねー。」

 

セシリア「皆さんで箒さんの成功を祈りましょう!!」

 

舞の時間が来て、皆席に着く。

 

箒「落ち着け私、落ち着け私。」

 

箒はいつになく緊張している。好きな人の前で踊るのだから無理もない。

 

そして、本番が始まった。箒は音楽とともに舞台の真ん中で舞う。

その姿はさながら天女のようだ。

 

一夏「おぉーっ!!」

 

エクトル「美しい!!」

 

アルゴス「こりゃあ貴重な映像だぜ!!」

 

思わず見とれる男子一同。

 

シャルロット「すごい!違う世界にいるみたい!」

 

ラウラ「これが日本の文化の一つなのか。」

 

鈴「優雅ね、箒。」

 

セシリア「日本の芸術を見るのは初めてですけれど、素晴らしいですわ!!」

 

皆箒の舞に拍手喝采であった。

 

こうして、専用機達の夏休みには大きな思い出ができた。

 



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二学期始動

「ねーねー、夏休みどーだった!?」

 

「宿題溜めてたから大変よ。」

 

「でも、今日からまた織斑君達と一緒だもんね!!」

 

「文化祭楽しみー!!」

 

夏休みも終わり、どこの学校も二学期に入る今日この頃、IS学園一年一組は今日も朝から賑やかである。

 

一夏「二学期か、こっからどうなるか楽しみだぜ!」

 

箒「フフ、燃えているな一夏。」

 

エクトル「二学期は特に濃厚な時期だからね。」

 

セシリア「また皆さんと一緒に授業を受けるのが楽しみですわ。」

 

ラウラ「うむ、教官にもまた世話になるぞ。」

 

谷本「そういえば始業式だけど、何か生徒会から発表があるらしいわよ。」

 

アルゴス「相変わらず情報早いな。」

 

千冬「さあ、すぐ席に着け諸君、ホームルームを始めるぞ!」

 

千冬の号令でビシッとなる。

 

 

ホームルームの後、生徒は始業式のため体育館に移動する。

この学園の体育館は、平均の2倍は優に超えるほどの広さがある。

 

生徒は全員整列し、壇上に千冬が登場して挨拶をする。

 

千冬「では次に、生徒会長から重大発表が行わ・・・・」

 

プシューッ!!!音と共に白い煙が壇上に吹き荒れる。

 

一夏「な、何だ!?」

 

その時、1人の水色の髪の女子生徒が現れた。

 

「ハロー!!みんな元気!?初めましてー一年生のみんな、このIS学園の生徒会長にして一番の美少女、更識楯無でーす!!」

 

彼女は扇子を広げポーズを決める。そこには「よろしく」の文字が。

 

千冬「くっ、相変わらずだなこのバカ者!!」

 

苛立つ千冬。楯無は彼女の頭痛の種の一つである。

 

楯無「おっと、今年の一年生は違うわねー!!何てったってISに乗れるイケメン男子が3人もいるんだから、一組の子達は特にお得よね!!」

 

箒「何なんだ、あれで生徒会長なのか?」

 

セシリア「品があまり感じられないですわ。」

 

シャルロット「てっきりのほほんさんのお姉さんが生徒会長かと思ったけど。」

 

ラウラ「フン、教官のような生徒会長を期待していたが、ハズレだな。」

 

鈴「まったくよね。」

 

専用機一同は特に呆れる。

 

千冬「更識、早く本題に入れ!!」

 

楯無「はいはーい!実は思ってたんだけどー、男子は3人とも部活には入ってないよね?

そこで、生徒会長命令として、3人に生徒会に入ってもらう事にしたわ!!」

 

一夏「えっ?」

 

エクトル「僕らがIS学園の生徒会役員に?」

 

アルゴス「唐突だなおい。」

 

楯無「大丈夫!結構楽しいわよ!お姉さん達は大歓迎だから♪」

 

箒「何か胡散臭いな。(性格は姉さんに近い。)」

 

セシリア「絶対に何か企んでいますわね。」

 

鈴「あれじゃあ本音のお姉さんも大変よね。」

 

ラウラ「あの女、明らかに一夏達を誘惑してるぞ。」

 

シャルロット「悔しいけどプロポーションは凄いからね。」

 

ふと、一夏達は楯無をまっすぐ見る。

 

エクトル「生徒会に入る事には何ら不満はありません。」

 

楯無「うん、そうこなくっちゃ。」

 

アルゴス「誰もタダで入るとは言ってないぜ、生徒会長さんよ。」

 

楯無「というと?」

 

一夏「一つ条件があります。それは、俺たちのある研究に協力する事です。」

 

楯無「それは興味深いわね、どんな内容なの?」

 

男子3人は壇上に上がり、マイクの前に立つ。

 

一夏「今、俺たちが研究しようとしている事。」

 

エクトル「それは、僕らがISを使える謎を解く研究です。」

 

アルゴス「その目的は、俺たちの仲間を作る事だ!」

 

一瞬の間の後、一気に黄色い声が発生した。

 

「それってつまり、男子が増えるって事!?」

 

「いいじゃないそれ、応援してるわ!!」

 

「頑張って、私達の恋の為にも‼︎」

 

一夏・エクトル・アルゴス「(わ、私達の恋って・・・。)」ズルッ

 

3人は思わずっこけた。

 

楯無「なるほどね、いいわ、全面協力してあげる!」

 

原作では一夏を巡って各部活対抗での争奪戦が行われるところだが、

今回は何とかいい方向に解決できたので、原作を知っている一夏はホッとした様子だった。

 

 

 

 

 



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コア研究〜実践

波乱の始業式を終え、生徒は寮に戻って寝支度をする。

その一方で、男子は夜更けに生徒会室で千冬や山田先生、楯無、のほほんさんの姉の虚とコア研究について話し合っていた。

 

山田先生「つまり、織斑君達がISを使える原理を応用して、男子に利用できるようにしようという事ですね。」

 

エクトル「はい、とりあえずは僕らのDNAがコアにどう適合しているのかを探っていこうと思います。」

 

楯無「それは、どういう事かな?」

 

一夏「銀の福音戦で、俺が死にかけた時、何故か白式が俺の肉体を修復したんです。」

 

アルゴス「この事から、ISが人体の組織と繋がっている可能性があると踏んだからです。」

 

千冬「なるほど、まあ何にせよ。学園に束を呼ばざるを得ないな。(こいつらの研究の為にも我慢するか。)」

 

一夏「すみません織斑先生。」

 

虚「それで、研究を進めたとして、問題は被験者の確保だけど。」

 

アルゴス「それなら頼む宛はあります。カナダに格闘関係での友人が1人いますので。」

 

エクトル「僕もイタリアに射撃が凄腕の友人がいます。」

 

一夏「俺にもISに乗せてみたい友人が1人いますので。(弾のやつ羨ましがってたからな。)」

 

千冬「わかった。早速束に連絡してみよう。来週の日曜日にでもその友人を連れてこい。とりあえずお前達はもう寝るように。」

 

一同「はい。」

 

千冬は携帯電話ですぐさま束に連絡した。

 

一夏達は寮に戻り、いつもよりやや遅く就寝する。

 

その夜・・・・。

 

 

一夏「!?」

 

エクトル「これは?」

 

アルゴス「またあの時の夢だぜ!」

 

3人は今また不思議な空間にいた。ふと前を見ると、入り口が2つある。

 

声「人の子らよ。これから汝らに幾つか問う。思う方に進みなさい。」

 

一同「・・・・・。」

 

「それでは汝らに問う。汝らは命がけの戦場で敵と戦い、勝利しました。しかしその相手は命乞いをしてきました。」

 

「その者を見逃すのなら右の道、とどめを刺し絶命させるなら左の道に進みなさい。」

 

エクトル「命乞いをされたら、やはり攻撃しづらいだろうな。僕は右に進もう。」

 

エクトルは右に進む。

 

アルゴス「命乞い自体が不意打ちかもしれないぜ。とどめを刺すのは戦場なら当然だろ。俺は左だな。」

 

一夏「俺は・・・・・。」

 

(一夏がどちらに進むかは読者に任せる。)

 

一つ目の部屋を抜け、次の部屋に着く。

 

声「汝らに問う。汝らはある国の王である。ある日、異国の者がやって来て、新しい文明を汝らの国にもたらさんとしている。それは国が豊かになるが、同時に国の行方を左右するものでもある。新たな文明を受け入れるならば右の道を、

国の安寧のために来訪者を強制送還するなら左の道を進みなさい。」

 

アルゴス「技術革新無くして新たな創造はないぜ。国の発展はいつも文明の発達によって決まるようなものだしな。俺は右に進むぜ。」

 

エクトル「アルゴス、新しい文明や技術は確かに有用だと思う。だけど、それまで進んできた方向から外れ、国民を混乱させてまで発展を進めていいものだろうか。僕は左に進む。」

 

一夏「俺は・・・・・。」

 

(一夏がどちらに進むかは読者に任せる。)

 

二つ目の部屋を抜け、三つ目の部屋に入る。

 

声「では、最後の問いである。汝らは、一生寝床から起き上がれず、生きるには延命治療をし続けなければならない病にかかった、かけがえのない人を目の前にしている。延命治療を一生涯かけて続けるなら右、その人に自然なままの最期を迎えさせるなら左に進みなさい。」

 

アルゴス「人はいつか死ぬものだし、死なせた方がいいって気もするが、でも、大切な人なんだよな・・・。

ダメだ、こればっかりはどうにも決められねえ。」

 

エクトル「珍しく同意見だなアルゴス、僕も答えを決めかねているよ。」

 

一夏「・・・・・・・。」

 

その部屋ではしばらく考え込む3人。

それにしびれを切らしたかのような感じで部屋から出され、夢から目覚める。

 

一夏「また夢だな。」

 

エクトル「なんだか、前に聞いた『決断』を迫られているかのような感じだったね。」

 

アルゴス「この夢が俺たちの進む道にどう関わるかわからねえけど、でも決めるのは俺達だ。

あまり深く考えない方がいいと思うぜ。」

 

一夏「(この2人、夢では意見が大きく違っていたが、今の所心配ないようだな。)」

 

アルゴス「ん?どうした一夏?」

 

エクトル「僕らの顔に何か付いてるのかい?」

 

一夏「あ、いや、何でもない。それより腹減ったから朝飯に行こうぜ!」

 

一夏はどこか心の片隅に引っかかるものがありながらも、いつも通り起きる。

 

今日は例の日曜日、彼らはそれぞれISのコア被験者として、束のラボに友人を1人ずつ連れてきた。

現場には女子専用機持ちや楯無、虚もいる。

 

束「ヤッホーみんな!今日は例のコア適合の検査をするよー!!(いっくんも中々面白い研究をしてくれるね。)」

 

一夏「よろしくお願いします。」

 

箒「はあ。やはりこの感じは苦手だ。」

 

箒はどことなくうんざりしている。

 

エクトル「ごめんね箒、こんな事になって。」

 

アルゴス「こればっかりは創始者がいないとマズいしな。」

 

箒「あ、いや、いいんだ。」

 

千冬「では、友人諸君、自己紹介を。」

 

弾「ご、五反田弾です。(これが噂のIS開発者か。)」

 

鈴「アンタ何緊張してんのよ。」

 

シャルロット「まあまあ。」

 

続いて、エクトルの友人。

 

「レオ・ディ・ステファーノです、よろしくです、束さん。」キラキラ

 

中々の容姿だが、イタリア人だけあって、いかにも軽そうなヤツだ。

 

セシリア「(エクトルさんと比べると少し見劣りしますわね。)」

 

最後はアルゴスの友人。

 

「ビリー・マイヤーズだ。よろしく頼むぜ束さん!」

 

見た目はどことなく不良っぽい感じである。

 

ラウラ「で、どうやって彼らにISを使えるようにするのだ?」

 

一夏「俺達3人のコアのタイプを調べて、俺たちのDNAとの適合率から、それを判断し、こいつらがどのタイプに適合しうるのかを見定める。」

 

エクトル「どれかに適合する場合、僕らのコアに近いものを束さんに、彼らに適合するように作ってもらうんだ。」

 

アルゴス「言ってみりゃ、俺たち3人のうちのどのタイプなのかがわかるってことだ。」

 

ラウラ「そこまで既にできるようになっていたのか。」

 

セシリア「もしこれが成功すれば、世の中が大きく変わりそうですわね。」

 

箒「女尊男卑の中でも男子がより活気付くことになるかもな。」

 

鈴「でもまあ、女尊男卑を重んじる女からすれば脅威でしょうね。」

 

シャルロット「うん、これがもし亡国機業に知られたら、恐らく向こうも動くと思うよ。」

 

虚「確かにその心配はありますが、」

 

楯無「みんなで力を合わせれば大丈夫よ、きっと。」

 

千冬「では始めるぞ、束、すぐに取りかかれ。」

 

束「あいあいさー!!」

 

すぐさま検査が始まった。

 

検査の結果、偶然にも弾は一夏、レオはエクトル、ビリーはアルゴスのタイプのコアに適合する形になった。

 

レオ「やったー、」

 

ビリー「ラッキーだぜ!」

 

弾「マジかよ!」

 

束「いっくん、お友達がまた増えたね〜。じゃあ束さんは彼らのコアを作るよ〜!!」

 

束は被験者のためのコアを作り上げた。

これらは元々あるものを参考に作り上げたことから、『フリーク・コア』と名付けられた。

 

楯無「これもまた世界初の開発よね!!」

 

虚「歴史に残る偉業を彼らは成し遂げましたね会長!」

 

翌日、被験者3人はIS学園に転校した。千冬は彼らに意思を確認したが、彼らもまた一夏達同様ISを使う願望が強かった。

 

3人とも一年一組に入ることになり、一組はますます賑やかになった。(他の組からは一組ばかりずるいと不満の声があったが。)

 

千冬「織斑、ベレン、イリアディス、友人として彼らの訓練に貢献するように、いいな!!」

 

一夏・エクトル・アルゴス「はいっ!!」

 

それから毎日放課後、3人はそれぞれの友人のIS操縦訓練に勤しみ、専用機女子達も彼らと実践を重ねていった。

早くも弾、レオ、ビリーに専用機が届いた。

 

弾「一夏、今日もよろしく頼むぜ!!」

 

弾は専用機『骸魔(がいま)』を見に纏う。機体のカラーはダークグレー。

 

主な装備は、先端にダイヤ型の刃が付いた鎖でできた鞭のような武器『魔葬鎖刃(まそうさじん)』に、

ブーメランのように投げて使う十字架型の飛び道具『聖封十(せいふうじゅう)』(投げるたびにシールドエネルギー消費)である。

 

弾は最初はすぐにヘトヘトになり、慣れるまでには相当かかったが、操縦の基本は覚え、あとは自分の専用機をものにできるかどうである。

 

レオ「エクトル、俺の早撃ちを見せてやるぜ!」

 

エクトル「僕の弓をしのげるかな?」

 

一方、レオはエクトルと模擬戦をする。彼の専用機の名は『アークイラ』、機体のカラーはブラウン。

装備は、先端に小型の近接ブレードが付いた2丁拳銃の『テスタ・ディ・ファルコ』であり、

マニュアル、トリプルショット、フルオートの3段階に打ち分けられ、実弾、エネルギー弾の両方を撃てる点は、

装備の少なさを補って有り余る特徴である。

 

ビリー「久しぶりだなアルゴス、リニューアルした俺の三節棍の技をとくと見やがれ!!」

 

アルゴス「リニューアルはお互い様だろ。まあいい、かかって来な。」

 

こちらではビリーとアルゴスが模擬戦を行っている。模擬戦というよりケンカに近いが。

 

ビリーの専用機は『ティガーファング』、機体のカラーは黄色だ。

主な仕様武器は、彼が得意な棒術に合わせて作られた三節棍型の武器『デルタライガー』。

形状が状況に応じて様々な変化をし、

近接時での攻撃範囲はピカイチである。

先端からはエネルギー波動を発射でき、構造上、攻防一体の技が多く出せるのだ。

 

激しい訓練の様子を山田先生と千冬は静かに見ていた。

 

山田先生「二学期から訓練し始めたのになじむのが早いですね。」

 

千冬「織斑達にも教えられる程の実力がついてきたとも言えるな。」

 

 

その後も、専用機女子とランダムに模擬戦を重ね、その日を終えた。

 

 

寮に戻り、男子達は部屋に入る。この間まで3人部屋だったのが、6人部屋となった。

 

弾「はー、毎日大変だけど、この学園に入れてよかったぜ、可愛い子がたくさんいるしよ!」

 

レオ「それは俺も賛成だね。」

 

ビリー「アルゴスとまた勝負ができて嬉しいぜ!」

 

エクトル「3人ともこれからよろしくね。」

 

アルゴス「お互い強くなっていこうな!」

 

一夏「そんじゃ、明日に備えて、お休み!」

 

ウキウキ気分で6人は眠りについた。



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文化祭考案、蠢く影

弾達が転校してきて早1ヶ月が過ぎ、彼らのIS搭乗成功は世界中の人間の注目の的になった。

というのも、本当なら秘密にするはずだったこの情報を束がリークしたことにより、大騒ぎとなったのだ。

これには千冬や箒も頭を抱えた。

 

箒「全く、あの人は本当にわかってるのか!?」

 

エクトル「箒落ち着いて。」

 

弾「そりゃ無理な注文だぜエクトル。」

 

箒は朝から愚痴をクラスのみんなの前でこぼす。

 

セシリア「あの方は騒ぎを起こすのが趣味なようですわね。」

 

ビリー「だとすりゃ迷惑な趣味だぜ。」

 

鈴「ほんとよねー。」

 

鈴はビリーに同調する。ちなみに鈴は、ビリーが以前の一夏のような雰囲気なので、気になっている。

本人は以前の一夏に似ているということで、すこぶる鈍感なため気づいていないが。

無論、他の専用機持ちも気づいていない。

 

レオ「箒、ストレスは肌に悪いよ。君、凄い美人なんだし。」

 

箒「う、うるさい!」

 

シャルロット「レオがそれ言うとちょっとねー。」

 

一夏「まあまあ。それより、今日ホームルームで文化祭について話し合うんだよな?」

 

ラウラ「一夏、文化祭とは?」

 

一夏「学校で行う一種のお祭りみたいなものだ。」

 

ラウラ「それは放課後が楽しみだ!」

 

ラウラは篠ノ之神社の夏祭り以来、祭りを気に入ったようだ。特に食べ物の出店が(笑)。

 

 

そして、放課後前のホームルーム、クラス代表の一夏が前に立ち、クラスの出し物について話し合う。

 

「やっぱり1組は男子をうまく活かすべきだと思うわ!」

 

「そうそう、ホストクラブ的なやつとか!!」

 

レオ「お、いいねーそれ!」

 

アルゴス「おいレオ、どうせお前、外部からの来客の女子まで口説くんだろ!」

 

レオ「ご名答〜♪」

 

ビリー「ケッ、くだらねえ!明らかに自分たちの満足のためじゃねえか。」

 

谷本「マイヤーズ君、その言い方はないよ。」

 

箒「ビリーの言葉はもっともだと思う。内容はまともに考えるべきだな。」

 

セシリア「他にはどんな案がありますか?」

 

エクトル「劇とかどうかな?」

 

シャルロット「それだと人数的に制限があるよ。」

 

弾「内容によっちゃ、一夏やエクトルのような王子様的なやつを巡って喧嘩になるぜ。」

 

ラウラ「それはマズいな。」

 

レオ「主役が恋愛に鈍感なビリーなら大丈夫なんじゃない?」

 

ビリー「レオ、そりゃどういう意味だよテメー。」

 

鷹月「ああもう、口喧嘩は止めてよステファーノ君、マイヤーズ君!」

 

とまあまとまりのない状態である。

 

一夏「まあまあ、何も俺達男子を中心にしなくても、みんなでできるやついくらでもあるだろ。」

 

一夏は改めてクラス代表の大変さを精神的に痛感した。

 

ラウラ「だったら、喫茶店ならどうだ?」

 

一同「えっ!?」

 

皆一斉にラウラの方を見る。普段のクールさから、あまりにも意外なことに驚かされた。

 

ラウラ「クラリッサから聞いたのだが、日本には『メイド喫茶』というのが存在するらしい。

これをみんなでやりたいのだがどうだ?」

 

皆少しの間注目したが、

 

「ボーデヴィッヒさんそれいい!」

 

「ナイスアイディア!」

 

弾「メイドいいよな〜。」

 

セシリア「弾さん、考えてることが顔に出てますわよ。」

 

アルゴス「ハハハ、クラリッサさんの吹き込みがこんなところで役立つとはな。」

 

セシリア「ラウラさん、とても楽しそうですわね。」

 

エクトル「メイド喫茶となると、僕ら男子はどうするのかな?」

 

レオ「メイドはご主人様に使える人だから、俺たちはお嬢様に使える執事をすればいいんじゃない?」

 

ビリー「執事〜?ガラじゃねーんだけどなぁ。」

 

アルゴス「お前、比較的人相悪いしな。」

 

ビリー「うるせーよ!!」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「(一夏の執事・・・・・!)」

 

一夏の恋人候補達は瞬く間に妄想の世界へ。

 

のほほん「おーい、しののん、セシィ、シャルシャル、ラウー、かえっておいで〜。」肩ポンポン

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「ハッ!?」

 

レオ「一夏、色男は大変だね。」

 

エクトル「君が言うセリフなのそれ?」

 

一夏「まあともかく、どうやらこれで満場一致だな。次はメイド喫茶での役割分担を決めようぜ。」

 

ラウラの思わぬ一言により、場はおさまった。IS学園は今日も平和である。

 

 

しかし、平和はどこにでもあるわけではない。

 

ここはとある薄暗い会議室。

亡国機業(ファントム・タスク)の各々が、男性被験者のIS搭乗成功を知り、

緊急集会を開いていた。

何を隠そう、この組織はモンド・グロッソの日に一夏を拉致した犯人の所属していた組織である。

主要人物のスコール、エム、オータムは小さな円卓に座り、話し合っている。

 

スコール「まさか織斑一夏以外にも男性IS操縦者が出るとはね。」

 

エム「これは由々しき事態です。」

 

オータム「ISをあんなガキ共に使われてたまるかよ!しかも男を増やすだと、冗談じゃねえ!!」

 

スコール「落ち着きなさいオータム、ハッキングで手に入れた情報によれば、奴らは今IS学園の文化祭に夢中よ。

当日は外部のお客様も入れるようだから。」

 

エム「オータム、学園に潜入していただけないでしょうか?男子の持つ専用機は非常に希少値が高いと思われます。」

 

オータム「文化祭に潜入して専用機を奪ってこいと。」

 

こちらも暗躍を見せつつある。

文化祭で大事件が起きてしまう事を、この時の学園生徒には知る由も無かった。

 

 

 

 

 



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文化祭〜学園内事件

今日は待ちに待った文化祭、朝から学園の校門には大勢の人が押し寄せている。

老若男女問わずかなりの人だかりである。そんな中に、

 

蘭「お兄、ちゃんとやっていけてるのかな?色々心配よ。

まあ一夏さんが一緒なら問題ないと思うけど。

そういえば今の一夏さんって以前より遥かに恋愛に敏感なんだよね。

一体何人に告られたんだろ、お兄の話じゃ一夏さん相変わらず千冬さんがタイプって事たけど。」

 

蘭は朝からソワソワしていた。女の子に比較的目が無い弾や、一夏の事が凄く気になっている。

 

「お待たせしました!!それでは、開場しまーす!」

 

声とともに校門が開き、すぐさまワッと入っていく。

 

一方、一夏達は、

 

一夏「おおー、皆可愛いじゃねえか!!」

 

箒「そ、そうか、よかった。」テレテレ

 

ラウラ「ま、まあこういうのも悪くはない。」モジモジ

 

セシリア「一夏さん達もとても素敵ですわ!(もちろん一夏さんが一番ですけど。)」

 

アルゴス「ありがとな!」

 

ビリー「エクトルもメイド服ならウケるけどな!」

 

エクトル「ビリー、勘弁してくれ!!」

 

レオ「その時は合わせてシャルロットも男装すればいいじゃん♪」

 

シャルロット「ちょっとレオ!僕だって女の子だよ!」プーッ

 

弾「ハハハッ、エクトルとシャルロットはなんか中性的だもんな!」

 

セシリア「確かにそれも可愛いかもですわねー。」

 

皆褒めあったり冗談を言い合ったりと、客を呼ぶ緊張感を感じさせないほど余裕である。

 

谷本「本音、アンタいつもと変わってないじゃん。」

 

鷹月「メイド喫茶で着ぐるみって。」

 

のほほん「えへへー。」

 

のほほんさんはいつもと同じ調子である。

 

一夏「のほほんさんは何というか、学園のマスコットとして活躍できるよな。」

 

箒「確かに、客引きにはかなり有効だと思うぞ。」

 

ビリー「もうそれで定着しちまってるし、無理にメイド服着なくていいだろ。」

 

鷹月・谷本「マスコットって・・・。」

 

アルゴス「女子高生にしちゃ珍しいよな。」

 

のほほん「ありがと〜、学園マスコット布仏本音、がんばるのだ〜!」敬礼

 

一夏「それじゃ、張り切っていこうぜみんな!!」

 

一同「おー!!」

 

文化祭が始まった。予想通り、IS男子のいるメイド喫茶はかなりの並びだった。

あまりの人数に、時間制限を設けざるを得なかった。

 

セシリア・シャルロット「おかえりなさいませ、ご主人様。」

 

箒・ラウラ「お、お帰りなさい、ませ、ご、主人様。(恥ずかし過ぎる)!!」

 

「スッゲー、可愛い子ばっかだなー!!」

 

「俺絶対あのポニーテールだぜ!」

 

「俺はイギリスのあの子だ!」

 

「フランスの子もなかなかだぜ!」

 

「俺あのドイツの子がいいなー!」

 

男性客の大半は鼻の下が伸びている。

 

一夏・弾・エクトル・アルゴス・ビリー・レオ「お帰りなさいませお嬢様。」

 

「世界有数のIS男子!織斑君イケメンねー!」

 

「ヤバイ!あのスペインの子凄く可愛い❤︎タイプかも❤︎」

 

「あたしはイタリアのあの子かなー。」

 

「あたしは断然ギリシャのあの子よ!」

 

「赤髪長髪の子もパンクでいいわね。」

 

「カナダのあの子もワイルドな感じでいいわ〜!」

 

しょっぱなから大繁盛だ。こうなると鈴の2組を始め他のクラスが気になるところだ。

 

千冬「フム、さすがは私のクラスだ。(一夏にお願いされて仕方なくメイド服を着たが、どうにも恥ずかし過ぎて困るな。)」

 

山田先生「あれ、織斑先生、やっぱり可愛い弟君のために着たんですか?

普段と違って凄く可愛いですよ。織斑君きっと喜んでますよ♪」

 

いつになく千冬をからかう山田先生。しかし、今の言葉に落とし穴が・・・

 

千冬「そ、そうか。っておい、今『普段と違って』と言ったな真耶。終わったら覚えておけ。」ゴゴゴゴゴ・・・・

 

山田先生「あわわわ。(しまったー!墓穴掘ったー!!)」ガクガク

 

暫くして、休憩に入った鈴と蘭がやってきた。

 

鈴「一夏ー、そっちはどう?あれ、蘭久しぶりじゃない。」

 

蘭「鈴さん、お久しぶりです。」

 

一夏「おう、鈴に蘭、よく来たな!」

 

エクトル「蘭さんこんにちは。」

 

ビリー「蘭っていうのか。俺はビリー、弾には世話になってるぜ。」

 

レオ「蘭ちゃんか、俺はレオ、よろしく!君可愛いね。」

 

箒「はあ、またナンパか、レオ。」

 

アルゴス「見境なく口説くな、レオ。」

 

レオ「おっと、こりゃ失礼!」ウィンク

 

蘭「は、はい。(うわあ、お兄と同時にIS学園に入ったっていうこの方々もかっこいい。って、私は一夏さんが一番なのに何で!?)」ドキドキ

 

弾「おい蘭、顔に色々出てるぞ、大丈夫かー!?」ケラケラ

 

蘭「うっさいバカお兄!!お兄こそ女の子のことばっか考えて、ISおろそかになってないでしょうね!?」ギロッ

 

蘭は、弾が自分より先にIS学園に入ったのが気に食わなかったらしい。

 

一夏「大丈夫、弾は俺が訓練してるからな。」

 

シャルロット「そこまで心配しなくても大丈夫だよ蘭ちゃん。」

 

蘭「ホント申し訳ないです皆さん!」ペコペコ

 

セシリア「そういえば鈴さんのクラスは何をなさってますの?」

 

鈴「2組はお化け屋敷ね。よかったらみんなも来ない?」

 

一夏「そうだな、行ってみるか!」

 

その後、男子は休憩中に代わる代わる女子とペアを組み、お化け屋敷や他のクラス、学年のところを回って行った。

 

一方、

 

オータム「こちらオータム、IS学園に潜入成功。織斑一夏のところに向かう。」

 

スコール「了解、あとは任せるわオータム。」

 

オータム「さて、どうやって織斑一夏や他の男子と接触しようか。」

 

オータムは普段とは全く違う、ごく普通の女性会社員のような格好をしてIS学園に潜入する。

慣れていないせいか、どこかぎこちない。

 

喫茶店で一夏待っていると、一夏達が帰ってきた。

 

オータム「こんにちは、織斑先生の弟さんですね。」ニコニコ

 

一夏「はい、そうですが。」

 

オータム「私は、インダストリアル社IS技術開発部部長のクレインといいます。もしよろしければ、

我が社の新開発IS製品をご覧いただきたいのですが。」

 

セシリア「インダストリアル社といえばかなりの大企業ですわね!」

 

箒「参考までに見るとしよう、もっと勉強したいしな。」

 

オータム「ありがとうございます。(とりあえず怪しまれてはいないな。手持ちのIDカードが偽造とバレなければ問題ない。)」

 

ビリー「新製品だったよな。どんなのがあるんだ?」

 

オータムはタブレットを取り出し小型の立体映像で様々なISの武装を紹介する。

 

シャルロット「うわー、デュノア社以上に力入れてるね。」

 

弾「何だ!?さっぱりわからねえぞ?どれがどうなってんだ?」

 

弾はまだ専門知識が苦手なようである。

 

ラウラ「ふむふむ、このパーツには興味あるな。」

 

レオ「しかし、開発部の部長さんがこんな美人とは驚きだね!」

 

アルゴス「こら、レオ!すいません、コイツ女性に目がないやつで。」

 

オータム「いえいえ。」

 

違和感なく話し合う専用機一同、だが、ただ1人彼女の正体に感づいた者がいる。

 

千冬「(あの女、一見社員に見えるが、あのIDカードは恐らく偽造だろう。少なくとも最近あの会社に顔を出した時点ではあの女はリストになかった。身分を偽ってここに来るにはそれだけの理由があるに違いない。)」

 

山田先生「織斑先生、どうしました?」

 

千冬「静かに。山田先生、出入り口付近の生徒に警戒態勢をとるよう伝えてくれ。」

 

山田先生「わかりました。」

 

千冬は携帯でこっそり一夏に電話をかける。

 

一夏「ちょっと失礼、はい、織斑ですが?」

 

千冬「織斑、小声で話せ。それと、今から言うことをよく聞け。」

 

一夏「わ、わかりました。」

 

千冬「今お前達と話してる女は恐らく侵入者だ。警戒しろ。」

 

一夏「・・・はい。(マジか、すっかり騙されてたぜ。)

 

オータム「何かお気に召されたものはございますか?もしよろしければ放課後にでも我が社間お越しいただければすぐにご用意致します。」

 

一夏「あー、折角ですが、それはまたの機会にお願いします。」

 

一同「?」

 

一夏がややドギマギしていたのに他の専用機は気付く。

 

オータム「そうですか、ではまた後ほど。(この様子、誰かが気づきやがったか。)」

 

オータムは静かに去っていく。

 

箒「一夏、急にどうしたんだ?」

 

アルゴス「電話の後何か妙に緊張してたみたいだぞ。」

 

ラウラ「教官から何か言われたのか?」

 

一夏「いや、何でもない。」

 

シャルロット「そう?ならいいけど。」

 

ビリー「にしても、俺たち相当注目されてるよな。」

 

セシリア「ええ、名誉なことですわね。」

 

エクトル「あれ、そういえば蘭さんは?」

 

弾「他のクラスに知り合いがいるからって会いに行ったんだが。」

 

「キャーッ‼︎‼︎」

 

一同「!?」

 

突然悲鳴が聞こえた。

 

それからすぐに、鈴が走り込んできた。

何故か甲龍を見に纏っているが。

 

鈴「た、大変よ皆!!」ハアハア

 

一夏「鈴、どうしたんだ?」

 

シャルロット「さっきの悲鳴、何か事件が起きたの!?」

 

鈴「蘭が、蘭が!!」

 

弾「蘭に何があったんだ!?」

 

セシリア「鈴さん、落ち着いてください!」

 

鈴「蘭が、OLのようなカッコした女に突然誘拐されたのよ!!」

 

箒「何!?」

 

エクトル「もしかして、さっき僕らが話してたあの人か!?」

 

鈴「しかもそいつはISを装着していたわ!!」

 

ビリー「マジかよ!?」

 

レオ「急いで蘭ちゃんを追うんだ!!」

 

アルゴス「見つけ次第叩きのめしてやるぜ!」

 

ラウラ「皆、ISを起動しろ!!」

 

専用機一同はすぐさまISを起動する。

 

千冬「専用機諸君!事件発生!犯人は亡国機業の一員であることがわかった!

直ちに追跡しろ!来客用の入校証には発信機が着いてる!」

 

全員「はい!!」

 

文化祭は思わぬ事態となった。

 

 

 

 

 

 

 



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救出

千冬「専用機諸君!敵の情報がわかった!奴は亡国機業の一員で、コードネームはオータム。」

 

一夏「亡国機業・・・・。」

 

箒「確か、去年一夏を拉致した組織だな。」

 

エクトル「一夏はあの事件の被害者なのか。」

 

セシリア「織斑先生とも関係が深いようですわね。」

 

レオ「蘭ちゃんが、そんな奴らに・・・。」

 

アルゴス「一夏にとっちゃ皮肉なものだな。自分を誘拐し、果ては記憶喪失にまで追いやった組織と

再び対峙するんだからよ。」

 

鈴「ホント、神も仏もない感じね。」

 

シャルロット「一体、そのオータムって女は何が目的なのかな?」

 

ビリー「さあな。本人に聞くしかねえだろ。」

 

弾「蘭、とにかく無事でいてくれ。」

 

一行はオータムの逃走先に着く。そこは、インダストリアル社のISの格納庫だった。

 

一夏「成る程、ここから会社の制服とデータを盗み出し、IDカードの偽造を行ったという訳か。」

 

すると、ISを纏ったオータムが現れる。

 

オータム「やっと来たか、あんまり待たせるなよガキ共。」

 

弾「てめえ、何で蘭を誘拐しやがった!?」

 

オータム「なあに、ちょっとした取引のためさ。」

 

箒「どういう事だ!?」

 

アルゴス「取引だと!?」

 

オータムは蘭を連れてくる。

蘭は首根っこを掴まれている。

 

レオ「蘭ちゃん、大丈夫か!?」

 

蘭「皆さん、来てくれたんですか!?」

 

オータム「この女の命が惜しけりゃ、織斑一夏、エクトル・ベレン、アルゴス・イリアディス、お前ら三人の誰でもいい、

専用機を寄こせ。」

 

一夏「何だと!?」

 

ビリー「てめえ汚ねえぞ!!」

 

鈴「アンタ、それを手に入れてどうするつもりよ!!」

 

オータム「お前ら三人は、この女尊男卑を変えるために、篠ノ之束と手を組み、『フリーク・コア』の開発を進めた。

それがあたしらにとっちゃ邪魔なものでね。元を断つにはオリジナルのコアを持つ男子をどうにかするのが一番だからな。」

 

エクトル「何を言う!女尊男卑が貴様のような無秩序な輩を出しているからこそ、僕らは男女間の平和のために戦っているのだ!」

 

セシリア「そうですわ!もし彼らがいなければ、私もあなたと同類になるところでしたわ!!」

 

オータム「ほう、その平和のためならこの女の命も犠牲にすると?」

 

蘭「あっ、うっ!!」

 

オータムは蘭の首をギリギリと絞めていく。

 

シャルロット「蘭ちゃん!!」

 

弾「止めろ!!」

 

オータム「返して欲しけりゃ専用機を寄こせってんだよ!!」

 

レオ「それじゃあ、奪い返させてもらおうか。」

 

オータム「何!?」

 

レオはテスタ・ディ・ファルコをオータムの腕にに向かって放つ。

蘭のギリギリ近くを狙われるとは思わなかったからか、オータムは蘭を盾にした。

 

弾「蘭、つかまれ!!」

 

弾は魔葬鎖刃を蘭に伸ばし、蘭が素早くしがみついたところで引き寄せる。

弾はオータムに命中しなかったものの、蘭を無事に保護できた。

 

蘭「お兄!!」

 

弾「蘭、もう大丈夫だ!!」

 

弾は蘭を抱きしめる。

 

ビリー「おいレオ、危ねえだろてめえ!弾の反応が遅かったら蘭に当たってたぜ!」

 

レオ「悪い悪い。ま、蘭ちゃん救えて結果オーライじゃん!」

 

シャルロット「はあ、この状況でよく軽い調子を崩さずにいられるよね。」

 

箒「だが、これで立場は逆転したな。」

 

アルゴス「これで心置きなく貴様を叩きのめせるぜ!クレイン、いや、オータムさんよ!!」

 

一夏「弾、蘭を連れて先に逃げろ!!後は俺たちがどうにかする!!」

 

弾「すまん!」

 

弾は蘭を連れて格納庫を後にした。

 

オータム「フッ、これで勝ったつもりか。」

 

オータムには追い詰められた表情がまるでない。

 

鈴「勝ったと思うわよ!!アンタがどれほどのものか知らないけど、10人の専用機を相手にどう戦う気!?」

 

その時、オータムの通信機から声がする。

 

スコール「オータム、作戦はもういいわ。一先ず撤退して!!もし織斑千冬にまで来られたらあなたに勝ち目はないわ!!」

 

オータム「チッ、わかったよ!お前ら、今回はこのへんで見逃してやる、覚えておけ!!」

 

ラウラ「フン、それはこっちの台詞だ。」

 

オータムはブーストをかけ、格納庫を出る。

 

鈴「アイツ逃げてくわ!」

 

ビリー「待ちやがれ!!」

 

鈴とビリーが追いかけようとする。

 

一夏「追うな!!」

 

鈴「ちょっと一夏、あのまま放っておく気!?」

 

ビリー「また何をするかわからねえぞ!何か起こる前に止めねえと!」

 

箒「いや、一夏の方が正しい。」

 

ラウラ「出方がわからないからこそ、迂闊に向かうのは危険だろうな。」

 

アルゴス「今は戻ろう、考えるのはそれからだ。」

 

シャルロット「2人とも、気持ちはわかるけど、弾と蘭ちゃんが待ってるし、ね?」

 

シャルロットが2人をなだめる。

 

鈴「・・・それもそうね、とりあえず千冬さんに報告しなきゃね。」

 

ビリー「文化祭ほっぽらかしたままじゃ、後味悪いしな。」

 

一行はそのままIS学園に戻った。

 

 

戻ってくると、すぐに医務室の方へ向かった。

 

弾「皆、無事だったか!」

 

鈴「医務室で大声出すんじゃないわよ!」

 

ビリー「鈴もな。」

 

鈴「何よ!」

 

一夏「まあまあ、蘭の様子はどうだ?」

 

弾「とりあえず寝てる。怪我もなくてよかったぜ。」

 

箒「それは何よりだな。」

 

セシリア「あれから文化祭の方は如何ですか?」

 

弾「事件発生で後味悪いから中止だってよ。」

 

エクトル「無理もないよ、こんな事件の後じゃ。」

 

ラウラ「・・・そうか。」

 

ガックリするラウラ。このメンバーの中で誰よりも楽しみにしていただけに、彼女の心への負担は大きい。

 

アルゴス「(ラウラ、相当残念そうだな。自分が皆のために発案したってのに。)」

 

ラウラの悲しそうな表情を見て、アルゴスは思わず拳を握る。

 

シャルロット「ラウラ、まだ秋はあるし、別の日にでもできるよ。」

 

シャルロットはヨシヨシと言わんばかりにラウラの頭を撫でる。

 

一方、生徒会室では、

 

千冬「今回の事件だが、奴らは束がフリーク・コアの情報を公開する前に一夏の動きを調べ上げていたようだ。」

 

山田先生「何だか、織斑君達が可哀相です。」

 

楯無「今後どうするか、よく考えるべきね。」

 

虚「学園のセキュリティについても見直しが必要かと思われます。」

 

こうして、IS学園の文化祭は思わぬ形で幕を閉じた。

 

 

 



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専用機達の今後

蘭の誘拐事件から数日後、この事件は全国ニュースとなり、亡国機業については一夏達の報告を基に報じられた。

専用機メンバーの家族や親戚が、蘭と同じ目に遭わないよう、亡国機業への警戒は益々強まった。

IS学園は、一時中断となった文化祭をニュースの次の日に再開し、

厳重なセキュリティのもとに行われた。

専用機は初日ほど自由時間を取れなかったが、それでも皆楽しそうに過ごし、特にラウラは嬉し泣きをした程だった。

この文化祭を機に、クラス代表の一夏はラウラを1組のレクリエーション係の1人に任命した。(メンバー構成は谷本さん、のほほんさん、鷹月さん、ラウラとなった。)

それからというもの、専用機メンバーは現在、生徒会室で楯無、虚、千冬、山田先生と、今後について話している。

 

千冬「この間の事件は、本当によくやった。おかげで亡国機業の動きも少しずつだが明らかになってきている。

だが油断するな、どんな手で奴らが近づいてくるかわかったものではないからな。しばらくは外出を控え、なるべく目立たぬよう行動しろ。止むを得ず外出する場合、できるだけ単独行動は避けるように。」

 

専用機一同「はいっ!!」

 

山田先生「みなさんは自国の代表候補生ともなっていますから、色々と不便なこともあると思いますが、私たち教師も全力でサポートします。」

 

楯無「でも、この間の事を考えると、外出を控えることや、学園を外から警護するだけじゃ限界があるわ。」

 

虚「万一に備え、専用機とは別に個人武装も必要となってくるでしょう。」

 

千冬「うむ、場合によっては護身装備が専用機だけというのはまずいな。」

 

ラウラ「では、個人武装については私からクラリッサに頼んでおきましょう。」

 

千冬「ああ、そうしてくれればこちらとしても助かる。」

 

ラウラはすぐさまクラリッサに連絡を取る。

 

数日後、一夏達の基に個人武装が届く。

ハンドガンをはじめとする武器が、それぞれのタイプに合わせて用意された。

 

一夏「ISもそうだが、まさか人生でこんなものを持たなくちゃならなくなるとはな。」

 

鈴「ホント、今の世の中怖いわよねー。」

 

箒「ううむ、どれも使用経験は皆無だな。」

 

エクトル「僕も弓矢以外で射撃したことはないしね。」

 

セシリア「大丈夫です、私達と練習しましょう。」

 

ビリー「気持ちはわかるぜ、一夏や箒が基本、剣一本であるように、俺も三節棍一本でやってきたからな。」

 

アルゴス「俺も拳と足が基本だ。ここは比較的銃火器に経験のあるやつと訓練していくしかないぜ。」

 

シャルロット「できる限りみんなに協力するよ、まあハンドガンにおいてはレオが一番だけどね。」

 

レオ「そういうことなら、任せてくれよな!」

 

一夏「ラウラ、クラリッサさんによくお礼を言っておいてくれ。」

 

ラウラ「ああ。」

 

普通の高校生活では考えられない状況に、専用機持ち一同は少なからず不安を感じていた。

 

その頃、亡国機業では・・・・・

 

 

スコール「今回の作戦は色々と誤算だったわね。」

 

エム「オータムも随分と手こずったものですね。」

 

オータム「う、うるさい!この間は油断したが、今度は絶対にあの専用機を奪い取る!!」

 

スコール「さて、次の手だけど・・・・・。」

 

彼女らは新たな秘策を考えている。

果たしてどうなることか。

 

 



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キャノンボール・ファスト(男子編)

文化祭が終わって、IS学園にはいつもの日常が戻った。数日前に起きた事件など忘れているのではと

思わせるほど、今日も平和である。

今朝も生徒は、いつものように和やかな朝食をとっている。

食堂中央のテーブルには、いつものように専用機持ちが集まっている。

 

アルゴス「ふわああ。」

 

アルゴスは大きな欠伸をする。

 

弾「おいおい、でかい口だな。」

 

箒「アルゴス、随分眠そうだな。」

 

アルゴス「だってよ、何かいつもの日常に戻ると、何つーか、こう・・・」

 

一夏「刺激がなくて退屈か、気持ちはわかるぜ。」

 

エクトル「無理もないよ、あんな事件に巻き込まれて、心身に疲労を感じずにはいられないもの。」

 

レオ「それは、弾が一番感じてるだろうな。」

 

シャルロット「文化祭もかなり盛り上がっていたからねー。」

 

ラウラ「終わった事で意気消沈というところだな。」

 

セシリア「ですわね、他にもイベントがあればいいのですが。」

 

ビリー「畜生!!何かでっかいイベントねーのかー!!」

 

この中の誰よりも退屈を感じると言わんばかりに声を張り上げる。

 

鈴「ビリー、朝っぱらからうるさいわよ!!」

 

その時、食堂のモニターがつく。

 

楯無「おっはよー、1年生のみんな!!」

 

一夏「生徒会長!?」

 

楯無「退屈を感じてるみんなにいいニュースよ!!今月にはこのIS学園恒例の一大イベント行われるわよー!!」

 

ビリー「マジかよ!?流石は生徒会長だぜ!!」

 

ビリーはテーブルから飛び上がって喜ぶ。

 

セシリア「また唐突ですわね。」

 

一夏「会長、そのイベントは一体?」

 

楯無「簡単に言えば、ISによるレースよ!!男女別々に行い、見事1位に輝いた生徒には豪華賞品が与えられるんだから♪」

 

ラウラ「豪華賞品!それは何なのだ!?」

 

ラウラは期待に胸を膨らませる。

 

楯無「見事1位になった男子には、生徒会副会長の座を、女子には男子6人のうち1人との1日デート権が渡されるわ!!」

 

それを聞いて女子たちは舞い上がる。

 

「聞いた!?1位ならデート権だって!!」

 

「これはチャンスだわ!!」

 

「だれにしようかな〜❤︎」

 

レオ「副会長の座よりも、俺は好きな女の子とのデート権が欲しいところだな!

俺はいつでもデートする気満々だぜ!」

 

弾「お前、あんまり露骨だと選ばれねえぞ。」

 

鈴「イタリア男はしょうがないわね〜。でも、実力を見せるいい機会だわ!」

 

負けず嫌いな鈴はやる気満々だ。

 

一夏「まあ賞品はともかく、速さを競うってのもまたいいかもな。自分がどれだけ乗りこなせているのかがはっきりするし。」

 

流石に一夏はまともな意見を言う。

 

箒「うむ、一夏の言う通りだ。(デート権、もし1位なら一夏とデート!!)」

 

ビリー「生徒会長に近づけるのか、こりゃあ見逃せないな!」

 

セシリア「一夏さんとデート!」

 

ラウラ「今回は本気を出さねば!」

 

シャルロット「これは絶対譲れないよ!」

 

一夏の恋人候補達は燃える。

 

エクトル「一夏と僕、それにアルゴスは元から生徒会の一員だからあんまり関係ないと思うけど。」

 

アルゴス「ま、これもまた力比べだぜ、望むところだ!」指ボキボキ

 

弾「待てよ、女子は専用機とそれ以外の生徒が競うから、性能的に専用機有利なんじゃねえか?

男子だって、専用機によって性能に違いがあるし、不公平じゃね?」

 

楯無「大丈夫よ弾君!条件はみんな共通して武器は使用不可、しかもコースは私が用意した様々な仕掛けがあるから、

そう簡単にはゴール出来ないわよ!」

 

そう、単純に速さを競うということにより、原作と違い、お互いに妨害し合うのではなく、妨害されやすいコースに徒手空拳で挑むことになるのだ。

 

楯無「今回は自分以外全員ライバル!みんな頑張ってね!」

 

そして、当日を迎える。

 

まずは、少数派の男子から行われることに。

 

コースはどんなに早くても20分はかかる長距離バーチャル空間で、これは主に飛行訓練で使用される通常の空間に楯無が手を加えたものである。

ギャラリーには全学年の女子達が集まり、皆それぞれ好きな男子を大声で応援する。

 

実況席には楯無と虚が座っており、楯無はテンションMAXで実況する。

 

楯無「さあ、世界各国から来たIS男子によるレースが始まろうとしています!

ここで、選手の紹介です。

カナダから来たイケてるヤンキー、ビリー・マイヤーズ!!」

 

ビリー「ヤンキーは余計だっての!!」

 

楯無「我が国日本2人目の男子、パンクな容姿が特徴的な五反田弾!!」

 

弾「(女の子達に注目されてる!こりゃあ勝たなきゃな!)」

 

楯無「イタリアから来た伊達少年、レオ・ディ・ステファーノ!!」

 

レオ「イエーイ!!」Vサイン

 

楯無「続いて、ギリシャ格闘界の一匹狼、アルゴス・イリアディス!!」

 

アルゴス「やってやるぜ。」指ボキボキ

 

楯無「スペインから来た美少女、いえ、美少年のエクトル・ベレン!!」

 

エクトル「今美少女って言いませんでした!?」

 

楯無「そして、何と言っても注目は、ブリュンヒルデこと織斑先生の弟で、1年生最強!男女問わず誰もが慕う、

我らIS学園一のプリンス、織斑一夏!!!」

 

「キャー!!!」

 

一夏「(妙にプレッシャーかけるなぁ。)」

 

虚「はあ、これって実況なんですか?」

 

千冬「あの馬鹿者、勝手な盛り上げ方をしおって!一夏がやりにくそうではないか!!」

 

山田先生「まあまあ織斑先生、織斑君が学園一の王子様なのは事実ですし。」

 

山田先生は千冬を茶化す。

 

千冬「コホン、ま、まあ、我が弟ながら立派なものだな。」

 

千冬は顔を少し赤くしながら話す。その様子を見て山田先生はクスクス笑う。

 

楯無「それでは、位置について、5・4・3・2・1、スタート!!!」

 

声と共にブザーが鳴り、男子達が勢いよくイグニッションブーストで飛び出しコースに入る。

 

先頭争いは一夏とアルゴス。

 

アルゴス「流石に速いな一夏、だがすぐに追い抜いてやるぜ!」

 

一夏「ヘッ、そいつはどうかな?」

 

中間にはエクトルとレオ。

 

レオ「エクトル、俺が勝ったらお前の妹とデートさせてもらうぜ!」

 

エクトル「懲りないな君も、だけど負けないよ!」

 

尻争いは弾とビリーだ。

 

ビリー「そら、前には行かせないぜ!」

 

弾「クソっ!!」

 

熾烈な争いが繰り広げられている。

 

途中、早速仕掛けが発動する。

 

楯無「さあ、最初の関門は爆撃ゾーンです!!」

 

いくつもの爆発に苛まれ、弾が最初にリタイアする。

 

弾「ぐわーっ!!」

 

楯無「あーっと、五反田君ここでリタイアです!!」

 

鈴「何やってんのよ。」

 

残るは5人。続いて第二の仕掛けに入る。

 

楯無「さあ、第二関門はマシンガンゾーンです!この弾幕をかいくぐれるでしょうか!?」

 

壁面から何丁もの機銃が出現し、弾丸の嵐を起こす。

ビリーは弾丸をかわしきれずに墜落した。

 

ビリー「ここで終わりかよチキショー!!三節棍さえあれば!」

 

箒「あの仕掛けは難しいぞ。」

 

楯無「マイヤーズ君が2人目の脱落者となりました!」

 

残るは4人。続いて、第三関門に入る。

 

楯無「続いては、レーザートラップゾーンです!

赤いレーザーポインターに当たった瞬間、レーザー砲で撃墜されます!!」

 

レーザーポインターはまるで雲の糸の如く張り巡らされており、1機がやっと通れるくらいの狭い隙間を探し出して通り抜けなければならない。

 

レオ「し、しまった!!」

 

レオは足がレーザーポインターに触れてしまい、レーザー砲の餌食となる。

 

セシリア「ちょっとした判断ミスが命取りですわね。」

 

楯無「ステファーノ君撃墜されました!!これで残りは半分です!!」

 

一夏、エクトル、アルゴスは猛スピードで疾走する。

ふと、目の前に3つの入り口が見える。

 

楯無「さあ、第四関門は運だめし!!一つは次のコースにつながっていますが、あと2つの行き先はコースアウトとなっていますさあ、どちらを通るか!?なお、誰か1人が通るたびに行き先はシャッフルされます。」

 

アルゴス「俺は左だ!!」

 

エクトル「僕は右に行く!!」

 

一夏「敢えてど真ん中だぜ!」

 

3人は一気に飛び込む。

 

エクトル「あれ、外に出てしまった!!」

 

楯無「残念、ベレン君お疲れ様でした!」

 

一夏とアルゴスは運よく次に進むことができた。

 

楯無「さあ、いよいよレースもクライマックス、ここからは織斑君とイリアディス君の一騎討ちです!!」

 

一夏「さて、あとはゴールするだけだ!!」

 

アルゴス「その余裕、いつまで続くだろうな!?」

 

楯無「さあ、それでは最後のステージです!」

 

進んでいくと、空間に突如無人機の大群が出現した。

 

一夏「何っ!?」

 

アルゴス「こいつらどっから湧いてきやがった!?」

 

楯無「最後はバトルゾーンです!迫り来る多種多様な無人機を倒し、先に進んでゴールできれば勝ちとなります!」

 

ちなみにこの無人機は、楯無が密かに束に頼んだものである。

 

一夏「こいつらを徒手空拳で倒せというのか。」

 

アルゴス「それなら俺は断然有利だぜ!」

 

2人は果敢に無人機に立ち向かう。

しかし、無人機は倒しても倒しても次々に現れ、中々通り道ができない。

一夏とアルゴスの均衡は中々破れず、ギャラリーも固唾を飲んで見守る。

 

一夏「これならどうだ!!」

 

一夏は逆走して距離を置き、回転しながら一気にイグニッションブーストで加速する。それは壁を貫くドリルのように、

無人機達を吹き飛ばした。

 

アルゴス「邪魔だー!!」

 

アルゴスは前方に縦回転する形で蹴りを放ち、無人機達を蹴散らす。

その後、一夏と最後のスピード勝負に出たが、わずかに一夏がリードし、一夏ゴールする。

 

楯無「決まったー!!勝者は織斑一夏!!彼が生徒会副会長となります!!」

 

一夏「やったー!!勝ったぜ!!」

 

アルゴス「負けた・・・、あと少しだったのにな。」

 

ラウラ「流石は一夏だ!!」

 

セシリア「一夏さん、凄かったですわ!!」

 

箒「うむ、見事だ!」

 

シャルロット「1年生最強は伊達じゃないね!!」

 

鈴「アンタ相変わらずやるわね!!」

 

一夏「いや、それほどでも、それよりお前らも頑張れよ!」

 

楯無「続いて、キャノンボール・ファスト女子部に入ります!!」

 

 



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キャノンボール・ファスト(女子編)

楯無「さあ、続いてはキャノンボール・ファスト女子の部です!!皆学園の王子様達とのデートのために真剣な表情になっております!果たして、栄光を掴むのは誰でしょうか?」

 

虚「・・・・。」

 

虚は最早、楯無の悪ノリにツッコむ気力もない。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「(デート、デート、デート!!)」ドキドキ

 

鈴「あたしも負けられないわ!(1位になったら、ビリーに・・・。)」

 

のほほん「私もおりむーといちゃいちゃしたいのだ〜。」

 

この空気でものほほんさんはいつもと変わらない。

神経の図太さはある意味一番強いかも知れない。

 

鷹月「私は、ベレン君と。」

 

谷本「私は、イリアディス君かな!!」

 

千冬「更織!もっとまともに実況しろ!!本来の趣旨からズレている!!」

 

山田先生「まあまあ、一夏君が狙われている事で神経質になるのは分かりますが。(織斑先生、やっぱりブラコン、クスッ。)」

 

千冬「山田先生、最後のあたり余計な事考えただろう。」ジトー

 

山田「いっ、いえ何も。(何で心読まれるんですかー!?)」アタフタ

 

一夏「先生達何話してるんだ?」

 

エクトル「さあ。」

 

アルゴス「まあ、大体の内容は予測できるがな。」

 

弾「千冬さん、幼くして親に見捨てられてから一夏を1人で守ってきたもんな。」

 

ビリー「マジかよ。それなのに家事が苦手とは、一夏は幼い頃からしっかりしてたんだな。」

 

レオ「それ、本人には言わないようにな。」

 

いよいよ、レースが始まる。

 

楯無「今回のコースは、男子時よりもっともっと複雑になっております!

幾たびの困難を乗り越え、王子様のハートを掴めるか!

では、位置について、5秒前、4・3・2・1・スタート!!」

 

スタートと共にイグニッションブーストの轟音が鳴り響く。

 

少し進むと、広い空間に出た。

あちこちに次に進むための入口らしきものが見える。

 

楯無「最初のコースは、『ファントムエグジット』!制限時間内に本物の出口を見つけ出して通り抜けなければなりません!

なお、出口は誰か1人が通った時点で消えますので。時間切れ及び出口がなくなり次第、取り残された人はリタイアとなります!」

 

早速出口を探してあちこち飛び回る。

 

「これじゃない!!」

 

「もう!どれが本物なの!?」

 

中々見つからない。そんな中、

 

箒「あったぞ!」

 

セシリア「やりましたわ!」

 

シャルロット「こんな近くにもあった!!」

 

ラウラ「フッ、私の目は誤魔化せない!」

 

鈴「お先にー!!」

 

流石に専用機持ちは勘が冴えている。

 

「あっ、取られちゃった!!」

 

「早くしないと時間が!」

 

だが、無情にも時間切れのブザーが鳴った。

 

楯無「続いては、『レジスティックゾーン』。幾つもの衝撃砲が襲い、強制的に後ろへと返されます。

見えない衝撃砲の雨を抜けて先に進めるでしょうか!?」

 

箒「衝撃砲、鈴の装備にもあったな。」

 

鈴「うん。」

 

セシリア「それが仕掛けとなると厄介ですわね。」

 

シャルロット「ルール上武器で防ぐ事もできないし。」

 

ラウラ「AICなら止められるものを・・・。」

 

意を決して皆飛び込む。その瞬間、衝撃砲の嵐が巻き起こる。

 

「キャー!!」

 

「これじゃ全然進めない!!」

 

大半はここで脱落し、生き残ったのは専用機持ちだけであった。

 

楯無「流石は専用機持ちです!さあ、レースはいよいよ最後を迎えようとしています!

・・・ごめん虚、ちょっと実況お願い!」

 

虚「えっ、ちょっと会長!」

 

楯無は突如、ISを装着し、空間に飛び込む。

 

レースも終盤、専用機持ちは熾烈なスピード争いをしている。

その時、突然広い空間に出た。

 

箒「今度は何が待っている?」

 

セシリア「これが最後ならゴールが近いですわ!」

 

鈴「ねえ、実況が止まってない!?」

 

シャルロット「そういえば・・・。」

 

ラウラ「見ろ!目の前に誰かいるぞ!」

 

ラウラが指差す方向を向くと、そこには専用機「ミステリアス・レイディ」を纏った楯無がいた。

 

楯無「皆、ここまでよく来れたわね、流石は専用機持ちってとこかしら?」

 

箒「会長!」

 

セシリア「何故あなたが!?」

 

楯無「最後の試練は、この私との戦いよ!!」

 

シャルロット「通せんぼとは随分なやり方ですね。」

 

ラウラ「まったくだ。」

 

鈴「会長、あたし達もあなたと同じ専用機持ちよ、それを5人同時に相手にするなんて、自信過剰じゃないの?」

 

楯無「あら、あなた達だって自分が勝つ自信があったからこそこのレースに参加したんでしょう?

なら、それに相応する困難はあって然るべきよ。」

 

専用機一同「・・・・・・・。」

 

楯無「ここからは武器を使えるわ。さあ、最後の戦いの始まりよ!!」

 

楯無はミステリアス・レイディの装備「アクア・クリスタル」によって作られるナノマシンの水で周囲に壁を作った。

 

皆果敢に楯無に攻め入るが、ミステリアス・レイディの力は凄まじいものだった。

近接武器「蒼流旋」は、ガトリングガンが備えられた槍のような構造で、遠近全てに対応できる。

ナノマシンの能力とも相まって、まさに攻防一体だ。

5対1で戦っているとは思えない程の力を楯無は見せつける。

 

箒「これが、学園生徒最強・・・。」

 

セシリア「桁違いですわ!!」

 

シャルロット「とてもついていけないよ。」

 

鈴「気に入らないけど、認めざるを得ないわね。」

 

ラウラ「AICでも僅かしか捉えられない。」

 

5人はあっという間に叩きのめされてしまった。

 

思わぬ展開で、キャノンボール・ファスト女子の部は終了した。

 

山田先生「これはちょっと強引なのでは。」

 

千冬「まあよかろう、まだまだ奴らには足りんものが多い。恋の成就はしばらく先延ばしにしておいたほうがいいだろう。

男子陣もまだまだ強くなってもらわんとな。」

 

改めて女子達は、現実を思い知る事となった。



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次なるイベント

キャノンボール・ファストは、男子は一夏が1位で終わったが、女子は誰1人としてゴールには至らなかった。

後にわかった事だが、キャノンボール・ファストを開いた本当の目的は、現時点での生徒達のデータ収集であり、

商品は生徒達の士気を高めるための建前であったらしい。そう、これは学園恒例の行事であり、本来は千冬や山田先生が取り仕切るはずだったのだが、悪ふざけ好きな楯無はこれを取り仕切る事で生徒会長としての自分を高めたいという名目でその役目を全面的に任せてもらったのだった。

 

さて、今は夕食の時間だが、食堂では一夏達男子専用機持ちが、女子専用機持ちの愚痴を聞いている。

 

一夏「データ収集なら、もっと普通にやればよかったのにあの会長は。」

 

箒「まったくだ、あの会長にはしてやられたぞ!」

 

セシリア「私達、恥を書かされましたの!」

 

鈴「同感よ!」

 

弾「あれ、鈴は誰とデートするつもりでいたんだ?」

 

ビリー「そりゃあ、幼馴染の一夏だろ。」

 

鈴「うっさい、違うわよ!!(確かに今の一夏もカッコいいけど・・・)」

 

ビリー「す、すまん、違うのか。」

 

レオ「ビリー、ストレートに言うなよ。」

 

弾「(そういや鈴、最近何かビリーと絡むな、ビリーの雰囲気が以前の一夏に似てるからか?)」

 

弾は鈴の気持ちに感づいたようである。

 

エクトル「唯一得したのは一夏だけだね。」

 

アルゴス「何と言っても、明日から生徒会副会長だもんな。」

 

ラウラ「一夏、あの会長には気をつけろ。(一夏があのお女に誑かされない事を祈ろう。)」

 

シャルロット「副会長として、会長をうまく抑制してよね。」

 

女子一同「うんうん!!」

 

一夏「わかったわかった。」

 

大変な1日が終わり、嵐は過ぎ去ったかのようだった。しかし・・・

 

楯無「ヤッホー!一年生の皆、キャノンボール・ファストお疲れ様でしたー!!

まずは一夏君、生徒会副会長就任おめでとう!!」

 

食堂のモニターが突然開き、楯無の姿が映される。

 

一夏「ど、どうも。(食事中に脅かすなよ。)」

 

アルゴス「また唐突だな。」

 

箒「噂をすれば・・・。」ハア

 

鈴「てゆーか、あたし達の話聞かれてんじゃないの!?」

 

レオ「プライベートもへったくれもないな。」

 

ビリー「待てよ、このパターンはもしかして。」

 

シャルロット「またイベントがあるって事?」

 

楯無「ご名答ー!」パチパチ

 

バッと開かれた扇子には「流石」と書かれている。

 

ラウラ「で、今度は何なのだ?」

 

楯無「次なるイベントは、以前事故で中止になったタッグマッチよ!! 2人1組になってチームワークを競い合ってもらうわ!!」

 

一夏「学年別トーナメントでは、俺はシャルと組んでたな。」

 

エクトル「今回はちょうどいい事に男子が偶数だから」

 

楯無「ベレン君、今回は男子同士で組むのはなしよ!!」

 

男子一同「ええっ!?」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!」

 

楯無「そういう訳だから、男子諸君は早くパートナーを決める事ね〜。」

 

アルゴス「マジかよ。」

 

すると、これを聞きつけた女子達が大勢やってくる。

それは、学年別トーナメントを思い出す。

 

「織斑君達皆女の子とペア組むの!?」

 

一夏「あ、ああ。」

 

「私と組もう、織斑君!」

 

「私と組んで、ベレン君!」

 

エクトル「ちょ、ちょっと待って。」

 

「イリアディス君、是非私と!」

 

アルゴス「おいおい、考える時間をくれよ。」

 

「私達は五反田君がいいなあ。 」

 

「ステファーノ君、是非私達の中から!」

 

弾「そ、そっか。」ヘラヘラ

 

レオ「参ったな、どの娘と組もうか迷うぜ!」ニコニコ

 

鈴「アンタ達ニヤニヤしすぎよ。」

 

比較的女好きの部類に入る弾とレオは嬉しそうだ。

 

「マイヤーズ君、私達と一緒に戦おう!」

 

ビリー「悪い、俺はもう組む相手決めてんだ。」

 

鈴「えっ!?」

 

一夏「早いなビリー。」

 

ビリー「鈴に頼もうと思ってな。」

 

鈴「あ、あたしに!?」

 

ビリー「俺、ほぼ接近戦しかできなくてよ。射撃ができる奴がパートナーだったら心強いと思ってさ。」

 

箒「なるほど。」

 

セシリア「無難ですわね。」

 

鈴「そ、そう。まあ組んであげてもいいけど、一つ条件があるわ。」

 

ビリー「条件?」

 

弾「(頑張れよ、鈴。)」

 

鈴「あ、あたしと組む代わりに、日曜日一緒に、出かけてもらうわ!」

 

流石に原作で箒が一夏に付き合ってもらうと言うようにはいかなかったが。

 

ビリー「何だそんな事か。いいぜ、日曜日な。」

 

ビリーは快諾する。鈴がどういう意味で言ってるのかは知らないが。

 

専用機一同「(そういう事だったのか・・・・。)」

 

流石にここまでくれば大体の事が見えてきたのか、弾以外の専用機一同も鈴がビリーに好意を抱いている事に気付いた。

 

兎にも角にも、タッグマッチ当日が楽しみである。

 

 



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タッグマッチパートナー選択

タッグマッチの日程が決まり、校内はペア決めを巡ってワイワイガヤガヤしている。

それもそのはず、今回男子は必ず女子をパートナーにするというルールなのだから。

ビリーは即決したものの、残り5人は中々決められずにいた。

特に一夏は一番モテモテなために大変である。

 

一夏「しょうがない、じゃあ今から俺がいくつか謎々を出すから、それに一番正解した奴と組もう、それでどうだ?」

 

箒「まあよかろう、ジャンケンなどよりはマシだ。」

 

セシリア「この私が知性で負けるはずがございませんわ!」

 

シャルロット「いいね〜謎々!」

 

ラウラ「ふむ、問題に正解すれば良いのだな?」

 

一夏「それでは問題、」

 

いくつか謎々を出し、結果は・・・

 

シャルロット「やったあ、僕が一番だ!」

 

箒「ぐぬぬ、やられたか。」

 

セシリア「流石にラウラさんの保護者役だけありますわね。」

 

ラウラ「謎々とやら、私は苦手なようだ。」

 

シャルロットは原作では最も常識あるヒロインとされている。

 

一夏「それじゃシャル、今回もよろしくな。」

 

シャルロット「任せて!」

 

千冬「(フッ、中々の解決法だな一夏。おかげであいつらにはストレスは湧かない。)」

 

原作では一夏の恋愛が頭痛のもとになっている千冬だが、この一夏はしっかりしてる方なので問題ないと感じている。

 

のほほん「ねーねーセシィ、私と組もうよ〜。」

 

のほほんさんがセシリアを誘う。

 

セシリア「わかりましたわ、布仏さん。」

 

セシリアはのほほんさんと組む事に。

 

ラウラ「箒、この際だから私と組まないか?」

 

箒「そうだな、他の専用機との連携の訓練も大事だろうし。」

 

箒とラウラが組む。この2人はISに対し、精神的にまっすぐな所が共通しており、ラウラは時々箒に箸の使い方を教わるほど、実はお互い仲がいい。

 

一夏の方も解決し、残りは4人。

 

アルゴス「そうだなー、いつも専用機持ち同士で訓練してるからな。たまには違うやつもいいかもな。

おーい、谷本さん!俺と組まないか?」

 

谷本「えっ、私と!?いいよ!」

 

アルゴスは谷本さんとペアに。

 

エクトル「それじゃ僕もそうしよう、鷹月さん、僕と組もうよ。」

 

鷹月「ホント!?やったー!」

 

エクトルは鷹月さんを誘う。

 

弾「決めたなぁ、じゃあ俺はあの娘にするか。」

 

弾もパートナーが決まり、残りはレオのみ。

 

レオ「さーて、俺はと。」

 

レオは1年4組まで見て回る。もちろんナンパも兼ねてだが。

 

「お、あの娘いいかもな。」

 

レオはある女子生徒に注目する。

彼女の名前は更識簪。更識楯無の妹である。

 

「あれ、ステファーノ君、珍しいね、4組に来るなんて。」

 

レオ「おう、ちょっとあの娘に用があってな。」

 

「簪?わかった、呼んでくる。」

 

女子生徒が簪を呼ぶ。

 

簪「何?ステファーノ君またナンパ?」

 

簪はどこか不機嫌そうだ。

 

レオ「そう怖い顔すんなって簪ちゃん、実はタッグマッチのパートナー探しててさ、俺と組まないか?」

 

簪「嫌。」

 

レオ「え、何で?」

 

簪「何でも。」プイッ

 

あっさり断られるレオ。

 

レオ「まあまあ、一応理由を聞かせてくれよな。」

 

簪「・・・・あなたが織斑君の友達だからよ。」

 

予想外の答えに一瞬戸惑うレオ。

 

レオ「えっと、それはどういう」

 

簪「そういう事だから。」

 

ぶっきらぼうに捨てゼリフを残し、教室に戻る簪。

 

「ごめんねステファーノ君、更識さんってば入学してからずっとあんな感じなのよ。」

 

レオ「そっかー、まいったな。こりゃ会長に事情を聞いた方が良さそうだぜ。」

 

レオは生徒会室へと向かった。

 

楯無「なるほどね。にしても、レオ君が簪ちゃんをパートナーに選ぶなんて、ちょっと意外かな。」

 

レオ「いやー、その。それより、見たところ簪ちゃんは一夏を嫌ってるみたいだけど、何かあったんすか?」

 

楯無「それがねー、」

 

楯無はレオに訳を説明した。

簪もまた、代表候補生の1人で、本来ならば専用機を持つはずが、一夏の白式の出現により彼女の専用機の開発が中断された事により、

独自の戦いができないジレンマに苦しんでいるのだという。

他にも、姉とよく比較された事から、コンプレックスにも苛まれており、そのせいで人を寄せ付けない空気を纏っている事から未だに友達がいないという。

 

事情を聞いたレオは、すぐさま4組に行った。

 

レオ「簪ちゃん、いるか?」

 

簪「また来たの?しつこいわね。」

 

レオ「会長に事情を聞いたぜ、そんなに一夏が気に食わねえなら、俺と組んで一夏と対戦しないか?」

 

簪「何言ってるの?」

 

レオ「実際に関わんなきゃわかんねえ事だっていっぱいあると思うぜ。引きこもってばっかいねーで、堂々といこうじゃん!」

 

簪「・・・・・。」

 

簪はレオの涼しげなキメ顔に少し見惚れる。普段ナンパな男とは思えないほどに。

 

簪「わかった。そこまで言うなら、この際組んであげる。」

 

レオ「おう、そうこなくっちゃ!んじゃ、よろしくな!」

 

こうして、タッグマッチのパートナー選択が終わった。



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ISタッグマッチバトル

楯無「さあ、やってまいりました!IS学園タッグマッチバトル!何と言っても今回は、男子が全員、自分以外皆ライバルという事で、今まで以上に盛り上がる事間違いなしです!尚、優勝したペアには、学食と、デザートの半年フリーパスが与えられます!」

 

一夏「マジか、そいつは絶対欲しいな。」

 

シャルロット「うん、そうだね!」

 

楯無「ギャラリーにいる不参加の1年生の皆様にも、特典がございます!どのペアが優勝するかを予想し、もし予想が当たれば、優勝者と同じ特典が貰えます!」

 

ビリー「俺たちは賭け馬かよ!!」

 

鈴「何かやりにくいわね、色んな意味で。」

 

ラウラ「フン、正直これはどうでもいい。」

 

箒「まったくだ。」

 

アルゴス「何かあの会長、場を変な形で盛り上げるな。」

 

谷本「だよねー。」

 

これを聞いたギャラリーは一気に盛り上がる。

 

「じゃあ、私は織斑君達に賭ける!」

 

「私はベレン君と鷹月さん!」

 

「私は五反田君達に!」

 

「私は、ボーデヴィッヒさんと篠ノ之さんに賭けるわ。」

 

「私はセシリアと本音に。」

 

学園の授業の一環であるバトルがギャンブルと化した。

 

千冬「今回は割とまともな特典を出したな。」

 

山田先生「見たところ、賭け率は織斑君とデュノアさんのペアがトップですね。」

 

千冬「そのようだな(今回も一夏はデュノアとペアとはな。)」

 

楯無「尚、ペアに非専用機持ちがいる場合、その人に対しては射撃武器及び遠距離のアビリティはお互い使用不可とします。」

 

エクトル「確かに、その方が公平だね。」

 

鷹月「うん、打鉄じゃ専用機持ちには基本的に勝ち目ないし。」

 

楯無「それでは、第一回戦スタート!!」

 

最初の試合は箒&ラウラVSエクトル&鷹月だ。

 

箒「いざ、参る!」

 

ラウラ「行くぞ!」

 

エクトル「鷹月さん、気をつけて!」

 

鷹月「オーケー!」

 

箒は赤椿の雨月・空裂の二刀流で果敢に攻める。

 

エクトルはアルテミスを盾にしながらラストロスで立ち向かう。

 

ラウラは打鉄で斬りかかる鷹月に対し、拳を叩き込む。

 

乱打戦の末、箒とラウラが勝利する。

 

一夏「箒、すげえ強くなったな。」

 

シャルロット「うん、攻撃に重みがあるもんね。」

 

アルゴス「エクトルの難点は、近接攻撃の威力が低いところだな。」

 

楯無「両者ともよく頑張りました。続いて第2回戦!」

 

第二試合はビリー&鈴VSアルゴス&鷹月だ。

 

ビリー「アルゴス、まさかてめえとやる事になるとはな。」

 

鈴「ま、そっちは1人打鉄だから射撃はできないけど。」

 

アルゴス「さて、格闘で俺に勝てるか試させてもらうぜ。」ボキボキ

 

鷹月「何か、こういうやりとり嫌いじゃないわ。」

 

試合は箒達以上の激しい乱打戦となった。

 

鈴は双天牙月で斬りかかるも、アルゴスの拳のスピードが上回る。

 

ビリーはデルタライガーを振り回し、鷹月を翻弄する。

 

試合展開は、最後にビリーとアルゴスの一騎打ちとなり、激闘の末アルゴスが勝利する。

 

楯無「これは何という大番狂わせ、なんとイリアディス君、1人で専用機持ち2人を倒しました!」

 

弾「うわー、マジ強え。」

 

レオ「こりゃ見応えあったな、なあ簪ちゃん!」

 

簪「・・・別に。」

 

楯無「盛り上がって来ました!それでは、第3回戦!」

 

一夏&シャルロットVSレオ&簪だ。

 

レオ「早速一夏と対戦だな。」

 

簪「・・・。」

 

一夏「よう、お互い頑張ろうな。」

 

シャルロット「2人ともよろしく。」

 

簪「織斑君、私はあなたなんか認めないから!」

 

簪はいきなり一夏に食ってかかる。

 

シャルロット「ちょっと更識さん!」

 

一夏「シャル、気にするな。簪と言ったな、どんな事情で俺が憎いか知らないが、その気持ちを思い切りぶつけて来いよ!

(原作では彼女のことはある程度知ってるからな。)」

 

試合が始まる。

 

一夏「シャル、ひとまずレオを頼む。」

 

シャル「任せて!」

 

レオ「それじゃ簪ちゃん、頼むな。」

 

簪「・・・!!」

 

ルール上、非専用機持ちに対して射撃ができないが、専用機持ち同士の一騎打ちなら射撃ができるようになっているため、

シャルロットとレオはお互い得意の銃撃で戦う。

 

一夏「簪、こっちから思い切り行くぜ!!」

 

簪「私は、負けない!」

 

簪との一騎打ちで一夏は雪片弐型のみでいく。

 

簪「くっ、さすがは織斑先生の弟ね!」

 

一夏「お前もやるじゃねーか!」

 

それぞれ力が拮抗している。この戦いには誰もが夢中になった。

 

楯無「さあ、この長い戦いを制するのは果たしてどちらか!?」

 

しかし、そんな有意義な時間も長くは続かなかった・・・・。

 

 



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亡国企業再び

楯無「おっと、会場に別のISが何機か入ってきて・・・・。」

 

山田先生「あれってまさか!?」

 

千冬「いかん!あれは無人機だ!!しかも前に来たものより大きい!!山田先生、皆をすぐに避難させろ!!」

 

山田先生「わかりました!」

 

10機の無人機達は試合中の一夏達に襲いかかる。

 

レオ「おいおい、」

 

千冬「更識!試合を中断し、専用機持ち達で奴らを撃墜するんだ!」

 

楯無「わかりました!」

 

楯無はすぐさまミステリアス・レイディを装着し、一夏達のもとへ向かう。それに続き、1年専用機持ち全員が出撃する。

 

楯無「簪ちゃん、ここは皆に任せて逃げて!」

 

簪「・・・お姉ちゃん、私は逃げない!私だって戦える!」

 

アルゴス「無茶言うなよ!」

 

シャルロット「更識さん、ここは僕らに任せて!」

 

だが、簪はその場から動こうとしない。

 

レオ「・・・しょうがねえな、じゃあ協力頼むぜ簪!」

 

簪「ステファーノ君!?」

 

一夏「皆、無茶かもしれないけど、今は彼女のプライドを尊重する。簪、一緒に戦おう!」

 

一夏の真剣な表情に簪は意外さを感じた。

 

簪「織斑君にステファーノ君、彼らは私に逃げろというどころか、一緒に戦うことを否定しない。

彼らはまるで、私の目指す、ヒーローみたい。」

 

簪はこの瞬間から、一夏やレオに対する考えが変わり始めた。

 

鈴「ちょっとアンタ達、敵がきてるわよ!!」

 

一夏・レオ・簪「はっ!?」

 

ビリー「ボーッとしてねーで手伝えっての!!」

 

一夏「悪い、じゃあ行くぞ、レオ、簪!!」

 

レオ「オーケー!」

 

簪「うん!!」

 

一夏、レオ、簪は無人機の一体に向かう。

 

本音「ほええー、こっちに来るよー!!」

 

本音のもとに無人機が突っ込む。

 

弾「危ねえ!!」

 

弾は魔装鎖刃で無人機を縛る。

 

弾「本音、気をつけろ、こいつらかなり強えぞ!」

 

本音「ごったん、ありがとー!」

 

箒「本音、一緒に奴を攻撃しよう!」

 

本音「しののん、了解だよー!」

 

箒と本音が無人機にとどめを刺す。

 

アルゴス「セシリア、こっちも応援を頼む。」

 

セシリア「お任せください!」

 

アルゴスが無人機と交戦するところにセシリアが援護射撃をする。

 

ラウラ「エクトル、援護を頼む。」

 

エクトル「了解!」

 

ラウラはAICをとワイヤーブレードを駆使し、エクトルはアルテミスで迎え撃つ。

 

鈴「ああもう、動きが多すぎるのよ!」

 

ビリー「シャルロット、奴の動きを封じるのを手伝ってくれ!」

 

シャルロット「わかったよ!」

 

ビリーがデルタライガーで足元を塞ぎ、シャルロットが後ろから上半身を抑え込む。

その隙に鈴が龍砲を命中させる。

 

戦争に近い激闘の末、専用機持ちは全10機の無人機を倒した。

 

その様子を、端から見る者がいる。

 

エクトル「あそこに誰かいる!!」

 

エクトルが指差す方を見ると、アリーナのライトスタンドの上に座っている人影が。

 

エム「皆、なかなかの力を持っているようね。」

 

ビリー「おい、この事態を引き起こしたのはてめえか!?」

 

弾「ひょっとしてアンタ、亡国機業の奴か?」

エム「ええ、そうよ。」

 

鈴「どういうつもりよアンタ!」

 

アルゴス「ちょっと待て、奴の顔誰かに似てねえか!?」

 

セシリア「あ、あれって。」

 

エクトル「織斑先生にそっくりだ!」

 

エム「顔を見て驚くとは随分失礼な子たちね。」

 

弾「誰でも驚くっての!!」

 

箒「貴様、何者だ!?」

 

エム「そうね、名乗るとすれば、『織斑マドカ』ってところかしら。」

 

一同「!?」

 



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織斑マドカ

一夏「織斑、マドカ・・・。」

 

千冬「・・・・。」

 

山田先生「織斑先生、これは一体!?」

 

エム「説明は私からするわ。私は織斑千冬のデータを盗用した技術者により、そのデータを込めたフリーク・コアを植え付けられたことによって生み出された、いわば織斑千冬の分身のようなものよ。」

 

シャルロット「フリーク・コアの作成データが盗まれていたっていうの!?」

 

レオ「どうやらそうらしいな。」

 

千冬「おい貴様、亡国機業は一体何を望む!?」

 

エム「そうねえ、言ってみれば、『絶対的な支配力』かしら?」

 

アルゴス「支配力?それはどんなものだ?」

 

アルゴスは少し話を聞く体勢に入る。

 

エム「あなた達ISに選ばれし遺伝子を持つ男性は、この世を支配できるほどの力を秘めているのがわかるわ。あなた達はフリーク・コアでいたずらに男子を増やそうとしてるようだけど、そんなことで世界は救われるかしら?」

 

アルゴス「・・・・。」

 

エクトル「それはどういう意味だ?」

 

エム「あなた達が行っていることは、結局は男女間の戦争の引き金に過ぎない。

今の私たちと、あなた達IS学園の関係のようにね。」

 

一夏「・・・・・。」

 

箒「何を言う!学園では私は彼らのおかげで救われた事もあるぞ!」

 

ラウラ「その通りだ!」

 

エム「けど、あなた達もISの存在によって、家族との絆がよくなかったりするじゃない?」

 

弾「それはそうかもしれねえけど。」

 

セシリア「私も寂しい思いをしなかった訳ではありません、ですが今は、一夏さんのおかげでまっすぐ進んでいますのよ!」

 

エム「そう、まあいいわ。本題に入りましょう。織斑一夏、エクトル・ベレン、アルゴス・イリアディス、選ばれし者であるあなた達と私達が組めば、 世界のパワーバランスをより安定させられる。それも、全てを制する『支配』によってね。」

 

山田先生「これって、取引じゃないですか?」

 

簪「ちょっと、卑怯よそれ!」

 

エクトル「貴様達と関わり合うつもりはない!消え去れ!!」

 

エクトルはすかさずアルテミスを構え、エムを狙う。

 

アルゴス「待ってくれエクトル。織斑マドカと言ったな。それはつまり、『絶対的な支配力』を持つ者なら誰でも、男も女も関係なく世界を変えられるって事か?」

 

エクトル「アルゴス、奴の言葉に耳を傾けるな!ISを悪用し、この世の秩序を乱す輩に、世界を支配はさせないぞ!」

 

エクトルは相手が生身である事にも構わずアルテミスを放った。

 

エム「フフッ。」

 

鈴「何がおかしいのよ!」

 

エムはアルテミスが放たれた瞬間、専用機を身につけ上空に舞い上がる。

 

一夏「何っ!?」

 

エム「今日はこの辺にしておくわ。今の世界をどうするべきか、じっくり考えることね。気が向いたらまた会いましょう。」

 

ラウラ「待てっ‼︎」

 

ラウラはワイヤーブレードを放つが、一瞬で全て弾かれた。

その後、エムは目にも留まらぬ速さでその場を後にする。

 

ビリー「クソッ、あいつら神妙な話をしやがって、何が言いてえんだよ。」

 

箒「奴らの狙いは一体・・・。」

 

しばらく沈黙が流れる。

 

千冬「諸君、とりあえず無人機の撃墜ご苦労だった。アリーナの整備をした後、寮に戻るように。

今日のところはゆっくり休め。」

 

一同「・・・・はい。」

 

皆でアリーナの整備する。そんな中、

 

アルゴス「(絶対的な支配力で世界を変える・・・。)」

 

アルゴスは一人、先程のエムの言葉について深く考えていた。

 

そして、彼らは後にさらなる災厄に見舞われる事になる。

それはいつの事になるか、それは誰にもわからない・・・・。

 



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束の間の休息、数人の恋愛事情

ビリー「あーあ、なんかこう事件が起きると、フラストレーションが溜まっちまうよな。」

 

鈴「ホントよねー。」

 

事件後、専用機持ち一同は休息がてら夕食をとっていた。

 

シャルロット「結局、タッグマッチバトルも中止になってしまったし。」

 

箒「ふむ、虚しいものだ。」

 

弾「ふああ、疲れたぜー。ん?」

 

弾は一夏、エクトル、アルゴスの方を見る。

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・・。」

 

弾「あの3人さっきからずっと考え事してるな。」

 

手元を見ると、彼らは料理に全く手をつけていない。

 

ラウラ「一夏、そんなにあの織斑マドカとやらが気になるのか?」

 

一夏「・・・まあな。」

 

一夏はISにおける自分の立場の意味について悩んでいるようだ。

 

セシリア「一夏さん、そうお気になさらず、一夏さんはご自分を信じた上で今頑張られているのですから。」

 

一夏「セシリア、ありがとう。」

 

レオ「アルゴス、お前はどうなんだ?」

 

アルゴス「厳密に言えば、奴が俺たちに言った言葉が気になっている。」

 

エクトル「アルゴス、奴の言葉について考えるのはよそう。」

 

アルゴス「あ、ああ。」

 

アルゴスはどこかぎこちない返事をする。

 

レオ「あっ、そういえば俺ちょっと用事があるんだ。」

 

弾「そう言えば俺も。」

 

エクトル「僕もちょっと失礼するよ。じゃ、また明日。」

 

一夏「おう。」

 

彼らは食堂を後にする。

 

シャルロット「何だかソワソワしてたね。」

 

ラウラ「恐らく、これは逢い引きだな。」

 

鈴「アンタ突然何言い出すのよ。」

 

ラウラ「クラリッサから聞いたことがあってな、人が突然用事を思い出す時、その用事は高確率で逢い引きであると。」

 

一夏「またクラリッサさんかよ。」

 

セシリア「変わった知識をお持ちですのね。」

 

ビリー「つーか、どこでどうやってそれを学んでんだよ。」

 

箒「もし当たってたら凄いがな。」

 

ビリー「そういや鈴、日曜の件だけどさ。」

 

鈴「えっ、あっ、うん、何?」ドキドキ

 

鈴は期待を込めてビリーの言葉を待つ。

 

ビリー「どこに買い物に行くんだ?」

 

鈴「・・・・は?」

 

何とも間の抜けた空気に変わる。

 

ビリー「だって、一緒に出かけるって事は、買い物を手伝えってことだろ?

そうだ、だったら他の奴らも誘おうぜ。人手が多い方が鈴も助かるだろ?」

 

鈴「・・・・・。」 

 

一夏「(いるよなぁ、こういう奴。確か以前の一夏もこうだったんだっけか。)」フゥ

 

箒「(鈴は難儀な者に惚れたのだな。)」ハァ

 

セシリア「(鈴さんが気の毒ですわ。)」ハァ

 

シャルロット「(先が思いやられるね。)」ハァ

 

ラウラ「(これは大問題だな。)」ジトー

 

ビリー「え、な、何この空気?」首傾げ

 

鈴「アンタ、どこまで鈍感なのよー!このバカー!!」ウガーッ

 

ビリー「どわーっ!?」

 

鈴はビリーにダイブして馬乗りになり、胸ぐらをつかんで思い切り揺らしたり、頭や体に拳骨をしまくる。

 

ビリー「お、おい待てやめろ!揺らすなって!イテテテ、拳骨は勘弁しろ!!」

 

鈴「うるさいうるさい!ホント一夏の恋人候補達が羨ましいわよ!!アンタも少しは一夏を見習いなさい!!」ムキーッ

 

一方、

 

Sideレオ

 

レオは1人女子寮へと向かい、ある生徒の部屋の前に止まった。そこは簪の部屋だった。

 

簪「お、お待たせ。」

 

レオ「おう。んじゃ、屋上にでも行こうぜ。」

 

レオは簪と2人きりで屋上に出た。

簪はモジモジしながらもレオに色々話し出した。

 

簪「その、この間はありがとう。あと、冷たくしてごめんなさい。織斑君にも謝っとく。」

 

レオ「いいって事よ、簪ちゃん。一夏なら気にしてないと思うぜ。あいつは誰にでも優しいからな。」

 

簪「・・・お願い、ちゃん付けせずに、簪って呼んで。」

 

簪は顔を赤くして、やや下を向く。

 

レオ「わかったよ、簪。簪も、俺のことはレオでいいぜ。」

 

簪「うん。」キュン

 

ほのかに甘い空気に包まれる。

その場を、楯無は陰から見守る。

 

楯無「(なるほどー、そういうことだったのね。先越されちゃったわ。)」

 

簪「あ、あのね、レオ、私・・・。」

 

レオ「簪、先に俺から言わせてくれないか?」

 

簪「えっ、う、うん。」ドキドキ

 

レオ「俺、実はお前の事、少し気になっててさ、最初は寂しげな娘ってほっとけねーなって感じだったんだけど、

いざ一緒に戦ってみてわかったんだ。俺はお前のような女と一緒がいいって。」

 

簪「!!」

 

レオ「更識簪、オレと付き合ってくれ!!」

 

簪「・・・・よろしくお願いします!」

 

屋上から見える夕日をバックに、2人はその場で抱き合った。

 

Side弾

 

弾「さて、生徒会室はここか。それにしても、布仏先輩急に呼び出しとは何だろうな?」ドキドキ

 

実を言うと、弾は虚に対して密かに好意を持っていたのだ。

 

弾は生徒会室のドアをノックする。

 

虚「どうぞ、五反田君。」

 

弾「失礼します。」

 

生徒会室にゆっくりと入る。

 

弾「えっと、話ってのは。」

 

虚「実はあなたにお礼を言いたくて。五反田君、事件では妹が危ないところを救ってくれてありがとう。」

 

弾「いえいえ。」

 

虚「五反田君もかなりISの才能があるわね。」

 

弾「いいえ、一夏ほどじゃないですよ。」

 

虚「お茶でもどうかしら?」

 

弾「・・・頂きます。(先輩のお茶、ラッキー!)」

 

しばし静かな空気が流れる。

 

虚「どうかしら?」

 

弾「めっちゃ美味しいです!」

 

虚「ありがとう。じゃあ私そろそろ寮に戻るわね。」

 

虚は生徒会室をあとにする・・・筈だった。

 

弾「あっ、あのっ、ちょっと待ってください!!(ここで行かねえと!!)」

 

虚「えっ!?」

 

突然呼び止められて虚はびっくりした。

 

弾「俺、布仏先輩が、す、好きです!!お、俺と、つ、付き合ってくだしゃい!!(や、やべえ、大事な時に噛んじまった!!)」

 

一瞬時間感覚が無くなった。

 

虚「・・・・クスッ。」

 

弾「ハ、ハハハハハ(終わった・・・。)」

 

虚「はい!私でよければ喜んで!」

 

弾「えーっ!?」

 

弾は歓喜に満ちた。

 

虚「じゃあ、今日からはあなたを弾くんって呼ぶわ。私のことは虚でいいから。」

 

弾「はい!虚さん!」

 

生徒会室の外には、偶然のほほんさんがいた。

 

布仏本音「(ほ、ほぇぇー!?ごったんとお姉ちゃんが!って事は、ごったんは将来私のお兄ちゃんだ!!)」

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「(今日こそは、あの人に思いを。)」

 

エクトルが小走りで向かい、たどり着いたのは、職員室だ。

そこに、エクトルが想いを寄せる人がいる。

 

エクトル「失礼します。」コンコン

 

千冬「ベレンか、珍しいな、職員室に来るとは。」

 

エクトル「山田先生はいらっしゃいますか?」

 

千冬「ああ、山田先生、ベレンが先生に用があるそうだ。」

 

山田先生「はい、どうぞベレン君。)」

 

山田先生はエクトルを見るなりほのかに顔を赤くする。エクトルに好意を寄せている証拠だ。

 

千冬「(なるほど、教師として生徒との校内での交際は見過ごせないが、一夏の友人であるエクトルの望みだ。

想いを伝えるくらいは許そう。)」

 

千冬は職員室を出て、2人きりにしてあげた。

 

エクトル「実は先生にちょっと相談が・・・。(どうにかして告白のタイミングを。)」

 

山田先生「はい、何でもどうぞベレン君、私も先生ですから。」

 

エクトル「ズバリ聞きますけど、生徒が教師と付き合うことって、本当に悪いことなのでしょうか?」

 

山田先生「えっ!?」

 

予想外の質問に山田先生は驚く。

 

山田先生「えっと、それは付き合い方によると思いますよ。学校ではきちんと節度を持っておかないとね。

でも、素敵な事だと先生は思います!」

 

エクトル「そうですか、それは良かった。(ここだっ!)」

 

山田先生「?」

 

エクトル「山田先生、僕、エクトル・ベレンは、山田先生を愛しています!!どうか、僕と付き合ってください!!」

 

山田先生「えっ、えーっ!?」

 

山田先生はしばらく固まってしまった。そして、次の瞬間、

 

山田先生「・・・・う、う、う、」涙ポタポタ

 

エクトル「先生!!驚かせてごめんなさい!!」

 

山田先生「ちっ違うの!嬉しいの!だって私もベレン君の事、好きだったから!!」

 

エクトル「山田先生・・・。」

 

山田先生「ベレン君、いえ、エクトル君、プライベートでは、私を真耶って呼んで。」

 

エクトル「はい、真耶さん!」

 

山田先生「ここは学校よ、でも、今は許します。」

 

2人はその場で激しく抱き合った。

 

千冬「真耶・・・、良かったな。」

 

こうして、IS男子の半分はカップルが成立した。

この幸せな時間がいつまでも続く事を祈るばかりである。



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一夏VS楯無

一夏「・・・・。」

 

一夏はまたしても不思議な夢を見ていた。

目の前には空中都市のような世界が広がっている。空中都市と呼ぶにはあまりにも田園が多いが。

そこでは、人々が賢明に働いている。

そして、その都市の中心には、様々な天使の石像が見られる。

 

一夏「何だこれは。」

 

声「人の子よ。」

 

一夏「ハア、またこの声か。」

 

声「あなたは神に選ばれし救世主。人々を導くべき者です。」

 

一夏「俺が、救世主だと?そもそもこの世界は一体・・・。」

 

声「神の導きからなる慈悲深き秩序がもたらす世界。この世界では、人々は皆、日々大切な事に勤しみ、永遠の安寧に身を置いています。」

 

一夏「俺がこの世界を見たから、何があると言うんだ?」

 

声「時期に全てわかります。あなたが神々の聖域へと辿り着く事によって。」

 

一夏「・・・・・。」

 

あたりがだんだん白くなり、フェードアウトしていくと、一夏は目を覚ました。

 

エクトル「おはよう一夏。」

 

一夏「ああ、おはよう。」

 

アルゴス「どうした、ボーっとして。」

 

一夏「いや、なんか妙な夢をまた見てさ。」

 

エクトル「それって、前に僕ら3人で見た夢のようなもの?」

 

一夏「ああ、またあの声を聞いた。」

 

アルゴス「今度は何が起きるんだろうな。」

 

3人は考え込みながら朝食をとりに食堂へ向かう。

 

食堂に入ると、何やら騒がしい。

 

「えーっ!五反田君、本音のお姉さんと付き合ってるの!?」

 

弾「ま、まあな。」

 

本音「じゃあ、ごったんは私のお兄ちゃんだね〜。」

 

弾「ハハハ。(本音が妹、蘭より遥かにいい妹ができたぜ。)」ニヤニヤ

 

「ステファーノ君、どうやって簪のハートを射止めたの!?」

 

レオ「そうだなー、どこから話そっかー。」

 

一夏「何だ何だ!?」

 

谷本「あっ、織斑君達おはよう!ねえ聞いた聞いた!?五反田君とステファーノ君、彼女できちゃったのよ!」

 

エクトル「そうなの?あのレオが!?」

 

アルゴス「マジかよ!?」

 

箒「つい昨日の事らしい。」

 

ビリー「だけど、知れ渡るの早くねえか?」

 

鈴「楯無会長がバラしたのよ。まったくプライベートにまでちょっかい出すんだから。」ハァ

 

一夏「そっか、そりゃあ副会長として一言言わなきゃな。」

 

セシリア「ですわね。」

 

すると、モニターがつく。

 

楯無「グッドモーニング!朝からみんな盛んに恋バナだねえ!!」

 

一夏「あなたが引き起こしたんでしょうが。」

 

シャルロット「どうしてそうすぐ人をからかうんですか。」

 

簪「もー、お姉ちゃんったら!」

 

楯無「朝からツッコミキツイねー。」

 

エクトル「あなた少しは遠慮すべきなのでは?」

 

ラウラ「同感だ。」

 

楯無「そういうエクトル君だってー、山田先生と禁断の恋に落ちちゃってるもんねー。」

 

エクトル「!!」

 

その途端、爆発が起こった。

 

一同「えーっ!?」

 

エクトル「耳が痛い!」

 

エクトルは一夏と1、2を争うほどの人気があったことから、多くの女子生徒はショックを受けた。

 

「ベレン君が・・・・。」

 

「まさか山田先生と!!」

 

「超ショックー!!うわーん!!」

 

多くの女子生徒が一斉に泣き出す。

 

エクトル「ちょっと会長!」

 

ビリー「エクトルを困らせるんじゃねえよ!」

 

山田先生「み、皆さん落ち着いて!」

 

箒「なんとかあの会長を黙らせられないか。」

 

セシリア「ですが、あの人は学園最強ですし。」

 

アルゴス「そいつはどうかな?学園最強と言うにはまだ早いぜ、まだ俺達男子との勝負が残ってる。」

 

エクトル「確かに。」

 

弾「お、おいおい、少なくとも俺じゃまず勝てねーよ。」

 

ビリー「勝負したいけどよ、まだ経験が浅いしな。」

 

レオ「なら、1年最強かつ男子最強の一夏が行くべきだな。」

 

鈴「ちょっとアンタら、無茶言わないでよ。いくら一夏でも」

 

一夏「やろう、俺の最大の目標は織斑先生だが、その前に学園最強に挑むぜ!」

 

いつになく鋭い目つきで楯無を睨む。

 

千冬「ほう。(いい目をしている、これは楽しみだ。)」

 

楯無「さすがは生徒会副会長!じゃあ今日の放課後、私とアリーナで対戦よ!」

 

そして、放課後を迎える。

 

楯無「やっと来たわね一夏君、待ちくたびれたわ。」

 

一夏「そいつはどーも。」

 

両者は専用機を纏い、位置につく。

ギャラリーからは凄い声援が飛ぶ。

 

ビリー「いけえ一夏!!」

 

鈴「負けんじゃないわよ!」

 

ラウラ「真のリーダーの力を見せろ!」

 

アルゴス「ぶっ潰せ一夏!!」

 

レオ「一夏、下剋上だぜ!」

 

簪「頑張れ一夏!」

 

箒「お前の一太刀を浴びせてやれ!」

 

セシリア「あなたなら勝てますわ!」

 

シャルロット「頑張れー!!」

 

楯無「さすがに人気ね一夏君。ちょっと羨ましいわ。」

 

一夏「さて、始めますか。」

 

楯無「その前に一つ賭けをしない?私が勝ったら、私と付き合ってもらうわ!」

 

箒「何だと!?」

 

セシリア「理不尽ですわ!」

 

ラウラ「一夏は渡さん!」

 

シャルロット「一夏、負けないで!」

 

一夏「いいでしょう、俺が勝ったら、俺が生徒会長の座に着くぜ!そして、メンバーにアルゴス、エクトル以外の専用機も加える!!」

 

楯無「フフフ、その賭け乗ったわ。」

 

千冬「それでは、始め!!」

 

合図とともにお互い距離を置く。専用機で唯一、一撃必殺のアビリティーを持つ一夏だが、エネルギー消費が激しいので迂闊に飛び込めない。

 

楯無「冷静な出足ね、じゃあこっちから仕掛けるわよ!」

 

楯無は蒼流旋で一夏に攻撃を仕掛ける。一夏は雪片弐型で斬り払う。

 

楯無「やるわね、これならどう?」

 

蒼流旋のガトリングが放たれる。一夏は盾装備白鋼で弾丸を防ぐ。

 

楯無「ふふん、今のはほんの小手調べよ。これを受けてみなさい!!」

 

楯無はミステリアス・レイディのアビリティ、「清き熱情(クリア・パッション)」を発動する。

ナノマシンの水を散布し、気化による水蒸気爆発でダメージを与える。

 

鈴「あの技、攻撃範囲が広いわよ!」

 

弾「あんなの強力すぎるぜ!」

 

箒「これは防ぎきれない。」

 

皆がそう思った時、

 

一夏「白影円陣!!(びゃくえいえんじん)」

 

白影剣を周囲に呼び出し、壁を作る。爆発を受けてもビクともしなかった。

 

ビリー「おーっ、すげーぜ!」

 

シャルロット「すごい、シールドエネルギーを消費し易い弱点を補うアビリティだよ!」

 

ラウラ「一夏がここまで強くなるとは。」

 

セシリア「一夏さんも攻防一体で対等ですわね!」

 

楯無は必殺パターンを破られたからか、少し動揺を見せる。

 

楯無「さすがに簡単にはやられないようね。」

 

一夏「あなたの技はとりあえず見せてもらった。今度はこっちの番だぜ!」

 

一夏はすかさず零落白夜光を放つ。それを楯無はナノマシン水で作るアクア・ヴェールで防ぐ。

 

楯無「残念ね、今の攻撃で白式はかなりのエネルギーを消費したわ。」

 

一夏「まだ攻撃は終わってないぜ!」

 

一夏はアクア・ヴェール取り払われた直後に零落白夜を発動した雪片弐型をブーメランのように回転させて投げていた。

だがそれも読んでいたかのように楯無はかわす。

 

楯無「なかなかの攻撃ね、でもツメが甘いわよ!」

 

一夏「さて、それはどちらですかね会長?」

 

楯無「!?」

 

楯無の足元には、いつの間にか白影剣が飛来し、楯無の動きをガッチリ拘束する。

 

一夏「後ろを見てください!」

 

楯無「えっ!?」

 

見ると、かわしたはずの雪片弐型が帰ってきた。

 

一夏「今じゃ雪片弐型は、遠隔操作もできるんですよ。」

 

雪片弐型は楯無の腹部に命中し、シールドエネルギーをゼロにした。

 

千冬「勝者、織斑!!」

 

一夏「やったああああ!!」

 

その瞬間、ギャラリーや校舎から怒涛の雄叫びがあがる。一夏の勝利を誰よりも喜んだのは、一夏の恋人候補達だった。

 

楯無「参ったわ、じゃあ私は副会長ってことでよろしくね。(一夏君、あなたにはますます興味が湧いてきたわ。)」

 

楯無は負けを認めるも、どこか含みのある笑いを見せていた。



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生徒会室にて

楯無「ささ、皆、ここが生徒会室よ。」

 

一同「失礼します。」

 

入ってみると、そこは普通の学園の生徒会室とはあまりにもかけ離れていた。

 

一夏「資料がたくさんあるな。」

 

箒「これは便利だ。」

 

パソコンの他、書籍や資料も全てデジタル化されたものばかりだ。

 

弾「何か、もんの凄いデジタルな部屋だな。」

 

鈴「アンタこういうの苦手だもんね。」

 

虚「すぐに慣れるわ、弾君。」

 

のほほん「うん、お兄ちゃんファイト〜。」

 

弾「よーし、頑張るぜい!」ニヤニヤ

 

一夏「顔がしまってねえぞ弾。」

 

鈴「何かイラッとするわね。」

 

エクトル「ここを1年生のうちから使えるなんて想像もしなかったよ。」

 

ビリー「それもそうだが、まさか一夏が生徒会長に就くとはな。」

 

セシリア「流石は一夏さんですわね。」

 

シャルロット「うん、織斑先生を超える意思は伊達じゃないよ。」

 

アルゴス「ま、とにかくここは今日から俺達の拠点ってわけだ。」

 

ラウラ「うむ、一夏を皆でサポートしていこう。」

 

ふと、簪は一夏をじっと見ている。

 

レオ「簪、どうした?」

 

簪「一夏がお姉ちゃんを私より先に倒したから、ちょっと悔しいなって。」

 

レオ「そっかそっか、まああいつは誰よりも前に進んでいってるからな。」

 

簪「うん、認めなきゃね。」

 

しばらくみんなで生徒会室を見た後、改めて皆席に着く。

 

楯無「では会長、早速何か話し合いましょうか。」

 

一夏「そうだな、じゃあまず俺たちの主な活動内容について皆の意見を聞こう。」

 

のほほん「おりむーが会長だと雰囲気違う〜。」

 

鈴「全くね。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「(カッコいい。(ですわ。))」

 

エクトル・アルゴス・弾・ビリー・レオ「(流石はリーダー。)」

 

皆で話し合った結果、主な活動内容は、表向きは生徒資料の作成や整理、様々な学園内企画を立てる事。

裏では、ISのコア研究や、千冬の提案により、IS関連の事件等の調査を行う方針となった。

 

虚「一夏君のおかげで有意義な討論ができたわ。更織会長、いえ、副会長とは大違いね。」

 

楯無「・・・返す言葉も無いわ。」

 

一夏「じゃあ皆、明日からよろしくな!」

 

一同「ああ!(はい!)(うん!)(は〜い。)」

 

こうして、ここに学園史上最大の生徒会ができた。

 

それから数日後・・・

 

谷本「みんなー、これ見て見て!!」

 

谷本さんは情報誌を見るなりこえを張り上げる。

 

一同「?」

 

タイトル「突然発見された謎の都市、これはもしや伝説の聖なる都市か!?」

 

一夏「こ、これは!?」

 

一夏はまたしても起きた偶然に驚かされた。そこは一夏が夢で見た都市が写真に写っていたからだ。



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遺跡調査

一夏「この都市はどこで見つかったんだ?」

 

谷本「ギリシャのゼノン遺跡だって。聞くところによると、この都市に繋がる入り口があるそうよ。」

 

一夏「ギリシャって言えばアルゴスの故郷じゃねえか!!」

 

アルゴス「この遺跡は知っていたが、こんな事が起きるとはな。」

 

箒「地球にこのような場所があるとはな。」

 

鷹月「噂じゃ、ここには伝説の天使がいるんだって。」

 

ビリー「天使?まさか、あの世じゃあるまいし。」

 

アルゴス「何かうさんくせえな。」

 

エクトル「僕は天使を信じたいな。」

 

ラウラ「天使とは何なのだ?」

 

シャルロット「うーん、言って見れば神様に使える人、かな?」

 

ラウラ「ううむ、想像できないな。」

 

レオ「ま、いろいろな解釈があるしな。」

 

セシリア「ええ、国によっても違いますし。」

 

箒「日本で言う天女に近いのかもしれないな。」

 

ワイワイ話しているうちに千冬が入ってきた。

 

千冬「全員席に着け、ホームルームを始める。」

 

いつも通りの時間が始まった。

 

放課後、生徒会メンバーは全員千冬に呼び出された。

 

千冬「さて、諸君を読んだのは他でもない。今朝ニュースになっていた例のギリシャの都市の調査に出向いてもらいたい。」

 

一夏「あの遺跡内都市が、ISと何か関係があるのですか?」

 

千冬「察しがいいな織斑、実は速報で見たところ、あの都市にはどうもISらしきものがあるらしい。このことについては束ですらわからんようだ。

そこで、1年専用機諸君に早速ここの調査をしてもらおうと思う。」

 

ビリー「へー、面白そうじゃねえか!」

 

シャルロット「ビリー、遊びじゃないんだよ。」

 

鈴「真剣に考えなさいよね。」

 

ビリー「へいへい。」

 

レオ「簪もようやく専用機が持てた事だし、ちょうどいいじゃねえか。」

 

簪「うん!私も頑張る!」

 

簪はこの間の事件後、IS学園整備科の協力により、専用機「打鉄弐式」が完成した事で、他の専用機持ちともすっかりコミュニケーションが取れるようになっていた。

 

一夏「わかりました、織斑先生。自分達にどこまでできるかわかりませんが、そこの情報を皆で多く持ち帰ってきます。」

 

千冬「うむ、頼んだぞ。金曜日の夜に出発するといい。」

 

こうして、IS学園一年専用機持ち達による遺跡調査が決まった。

 

 

そして当日を迎え、一行はギリシャに着いた。

 

アルゴス「ようこそ、俺の母国へ。」

 

一夏「クーッ、やっと来たぜー!!」

 

箒「疲れたな一夏。」

 

背伸びをする一夏と箒。普段ないからか、飛行機に長い事乗っていたので疲れたようだ。

 

弾「まさかアルゴスの国に行けるとはな。」

 

シャルロット「うん、そうだよね。」

 

セシリア「遺跡というものに触れるのは初めてですわ。」

 

ラウラ「私もだ。しかし、古代遺跡にISが関わるとなると気になるな。」

 

簪「本当に来たんだ。何か緊張する。」

 

引きこもりがちだった簪にとって、外国に来るというだけでかなりのものがあった。

 

レオ「心配ないぜ簪。調査が終わったら帰りに土産でも見ようぜ。」

 

レオはわりかし余裕な方だ。

 

ビリー「アルゴス、とりあえず案内よろしくな。」

 

アルゴス「おう、任せとけ。」

 

すると、一夏のプライベートチャンネルが開き、千冬が連絡を入れる。

 

千冬「諸君、無事に着いたようだな。調査中は報告を怠るんじゃないぞ。」

 

一同「はい!!」

 

一同はアルゴスの案内でゼノン遺跡へと向かった。

 

1時間後、ゼノン遺跡の正門前に着く。

 

アルゴス「あの都市への入り口は恐らくこの辺りだろう。」

 

見ると、遺跡の聖堂の奥には祭壇がある。

 

ビリー「けど、どこかに繋がってる気配がねえぞ。」

 

ラウラ「ここは手分けして内部を探ってみるか。」

 

弾「お、おいおい大丈夫か?何か出そうな空気が。」

 

弾はどうやら幽霊的なものが苦手そうだ。

 

鈴「今怖がってどうすんのよ。」

 

エクトル「皆がいれば大丈夫だよ。」

 

手分けをして探すが、入り口はどこにもない。

 

セシリア「新聞にはどうやってあの都市にいけたかは書いておりませんわね。」

 

シャルロット「開ける条件なんてあるのかな?」

 

レオ「だが、あの都市を見つけられたって事は、俺たちより先に誰かが入ってる訳だし。」

 

一同「うーむ。」

 

考え込む一同。その時、ふと一夏はあるものの存在に気づく。

 

一夏「おい、祭壇の周りにある3つの聖杯みたいなやつ気にならないか?」

 

箒「そういえばそうだな。」

 

ラウラ「みんな、床を見てみろ。何か書いてあるぞ。」

 

床を見ると、古代ギリシャ文字のようなものが刻まれていた。

 

アルゴス「何々?選ばれし人の子らが各々聖杯を掲ぐ時、天界の扉が開かれん・・・・。」

 

弾「て、天界って、あれか、天国か?」

 

シャルロット「まさか、発見した人は死んでなかったみたいだし。」

 

鈴「それより、『選ばれし人の子達』って誰の事?」

 

エクトル「この間織斑マドカが、一夏と僕とアルゴスは選ばれし者みたいな事を言っていたね。」

 

箒「それがこの言葉と関係してると言うのだろうか?」

 

アルゴス「まさか、偶然だろ?」

 

一夏「まあ考えててもしょうがない。試しにやってみようぜ。他に手がかりはないし。」

 

一夏、エクトル、アルゴスはそれぞれ聖杯の前に立つ。

 

一夏・エクトル・アルゴス「せーのっ!!」

 

同時に聖杯を上に掲げた。すると、天井から白い光が差し込み、大きな丸い入り口が開いた。

 

ビリー「あれが入り口か!」

 

簪「入ってみようよ!」

 

一同はISを起動し、入り口へと飛び込んでいった・・・・。



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伝説の天使達

一夏「・・・ここは。」

 

あたりを見渡すと、そこは夢で見た広い田園だった。

 

一夏「間違いない。あの都市だ。」

 

鈴「都市って言うにはちょっとね。」

 

ビリー「こんなとこに誰かいるのかよ。」

 

箒「見渡す限り田園だな。」

 

シャルロット「それにしても、建物がそんなにないからか、空が広く感じるね。」

 

あたりを見渡すと、人影が見えた。

 

弾「おい、あそこに誰かいるぜ。」

 

セシリア「ここに住まわれてる方でしょうか?」

 

見ると、そこには老人の男性がいた。

 

アルゴス「とにかく話を聞いてみるとしよう。」

 

一行は人影に近づき、尋ねようとする。

 

エクトル「あのー、すみません。」

 

村人「・・・っ!?もしやあんたら、天使様のいう『戦人(いくさびと)か!?』」

 

簪「え?」

 

レオ「イクサビト?」

 

簪とレオは揃って首を傾げる。

 

老人「おおお、恐ろしや!!誰かー!!」

 

ラウラ「おい、ちょっと待て!」

 

老人は一目散に逃げていった。

 

ビリー「何だったんだ?」

 

箒「私たちを見るなり戦人とは、どういう意味だ?」

 

一夏「1人目で失敗したな。こりゃ情報収集は困難だぜ。」

 

それから道行くところ人に会うたび尋ねるも、皆怯えて何も話そうとはしない。

 

シャルロット「みんな僕らを怖がっちゃってる。」

 

レオ「やれやれ、どうしたもんかな。」

 

アルゴス「こりゃあ、奴らのいう『天使様』とやらに会うべきだな。」

 

すると、シスターのような女性が声をかけてきた。

 

シスター「戦人達よ、天使様がお待ちかねです。私についてきてください。」

 

ビリー「おい、あんたら俺たちを戦人っつってるが、どういう事だよ?」

 

エクトル「ビリー、失礼だぞ。」

 

鈴「気持ちはわかるけどね。」

 

シスターの後についていくと、大きな教会のような建物に着いた。

 

庭には幾つもの石像が置かれている。

 

箒「この石像、ひょっとして。」

 

ラウラ「ああ、ISによく似ている。」

 

弾「ここはISの宗教団体か?」

 

シスター「天使様、ただいま戦人達を連れて参りました。」

 

声「ご苦労であった。」

 

一夏「・・・この声!」

 

エクトル「間違いない!」

 

アルゴス「あの夢の中の声だ!」

 

教会の扉がゆっくりと開く。そこには4人の女性がいた。皆どこか雰囲気が千冬に似ている。

 

女性A「ついに来ましたね。一夏、エクトル、アルゴス、主の御名のもとに選ばれし人の子よ。」

 

一夏「あなたが俺たちを。」

 

アルゴス「こりゃあ驚きだぜ。」

 

エクトル「あなた方は一体。」

 

女性A「申し遅れました。私は大天使セラフィム。」

 

女性B「私はクシエル。」

 

女性C「私はガブリエル。」

 

女性D「私はミカエル。」

 

レオ「こりゃあ凄え美人だな。」

 

簪「ちょっとレオ!」

 

レオ「悪い悪い。」

 

弾「彼女ができても相変わらずだな。」

 

鈴「アンタも顔が緩んでるわよ。」

 

ビリー「おいおい、天使様っていうが、どー見たって人間じゃねえか?あんたらのどこが天使なんだよ?」

 

シャルロット「ちょっとビリー!」

 

セラフィム「では真の姿を見せましょう。」

 

天使達は一斉に右手を上げ、ISを展開するように変身した。先程とはあまりにもかけ離れた姿に一同は驚く。

 

エクトル「こ、これは夢なのか?神話の天使達が、まさか実在していたなんて!!」

 

セシリア「これが、天使・・・。」

 

一同は終始見惚れる。

 

一夏「おっと、そろそろ本題に入ろうか。まずこの世界は一体何だ?」

 

セラフィム「ここは導きの地、『プロサナトリス』。」

 

クシエル「主の慈愛のもとに生まれし秩序の世界。」

 

ミカエル「ここに導かれし者は皆、自身のなすべき営みに勤しむ。」

 

ガブリエル「今日の平和、安寧は明日も続く。」

 

エクトル「素晴らしい事だ!皆導きと秩序に従い、平和に生きているとは、まさに理想郷だ!」

 

エクトルはいつになく興奮している。「秩序・安寧」は彼の信条であるからだ。

 

アルゴス「ところで、この世界と俺たちの世界が繋がったのは何故だ?」

 

鈴「そうそう、問題はそこよね。」

 

セラフィム「それは、我ら天使の同胞の堕天により起こったのです。」

 

ビリー「あんたら以外にも天使がいるってのか?」

 

ミカエル「かつて我ら天使は7体いました。しかし、3体の天使による反乱が起きたのです。そのうちの1人であるルシフェルが、この世界のあり方に反意を抱き、この世界を支配するために我らに戦いを挑んだのです。」

 

ラウラ「何故そのような事が起きたのだ?」

 

セラフィム「ルシフェルは天使達の中でも最高位の天使で、明星の輝きの象徴とまで言われていました。

その力からくる傲慢さが、支配欲につながり、全ての自由を求めて反乱に至ったのです。」

 

アルゴス「自由、支配・・・。」

 

セシリア「その天使達はどうなったのですか?」

 

クシエル「反逆の罪により、天使としての姿を失い、人の子同然の姿となって人の子らの世界に落ちていきました。

それにより、我らの世界と人の子らの世界は繋がったのです。」

 

レオ「なるほど、この間新聞にこの世界が載ったのは偶然じゃなく、その堕天使とやらが公にしたってわけか。」

 

簪「じゃあ、一夏にエクトル、それにアルゴスが選ばれたのは何故?」

 

セラフィム「ルシフェルは堕天使とはいえ、かつての力をまだ持っています。

再び我らに戦いを挑むため、今度は人の子らを大勢利用するつもりです。」

 

ガブリエル「あの者達を止めるには、我ら天使だけでなく、人の子の力も必要であるがゆえに、

一夏、エクトル、アルゴスを選んだのです。」

 

弾「じゃあ、一夏達がはじめからISに乗れるのは・・・。」

 

ミカエル「彼らの持つISのコアには、それぞれ我らのものと同じ力が備わっているのです。我らに選ばれし人の子は、そのコアに認められているのです。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・・・。」

 

3人は各々の専用機を見て考え込む。

 

箒「しかし、フリーク・コアでこの3人以外にも新たなIS男子ができたが。」

 

ガブリエル「彼ら選ばれし人の子らのコアに宿りし力は、彼らの意思で分け与える事ができます。」

 

セシリア「ですが、コアを開発したのは篠ノ之博士ですわ。」

 

セラフィム「コアは形に過ぎません、その力は魂が与えるもの。」

 

弾「魂・・・。」

 

一夏「大体話はわかった。とりあえず俺達はどうすればいい?」

 

セラフィム「いずれ全てわかる時が来るでしょう。あなた達に神のご加護があらん事を・・・。」

 

鈴「あっ、ちょっと。」

 

天使達は姿を消した。

 

気がつくと、皆ゼノン遺跡に戻っていた。

 

一夏「とりあえず学園に戻って報告するか。」

 

一同「ああ。(はい。)(うん。)」

 

一同は飛行機に乗り、ギリシャを後にした。



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災厄の前兆

一行は学園に戻り、事の一部始終を千冬に報告した。

 

千冬「そうか、とても信じられるような話ではないが。」

 

一夏「はい、報告は以上です。」

 

千冬「ご苦労。しかし、世の中不思議な事が起こるものだな。その天使や堕天使とやらがISに関係するとは。

まあ今のところ大きな動きはないようだ。今日は皆ゆっくり休むように。」

 

一同「はい。」

 

一同は寮へと戻る。

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・・。」

 

鈴「これからどうするべきかよね。」

 

箒「天使達の言う堕天使達の行方が気になるところだが。」

 

ビリー「そいつらも、あの天使達同様ISに関わっているとしたら、大事件が起きるぞ。」

 

弾「一番気の毒なのは一夏達選ばれし3人だな。」

 

簪「自分達に秘められたものが、少しばかりだけどわかったからね。」

 

シャルロット「一夏はあの天使達の言葉をどう考えてるんだろ。」

 

ラウラ「さあな、だが何があろうと私は一夏を信じる。夫を信じる事も妻の役目だからな。」

 

セシリア「ラウラさん、気が早いですわよ。」

 

レオ「まあまあ。とにかく今夜はゆっくり寝ようぜ。」

 

各々の部屋に入り、眠りにつき、そしていつもと変わらぬ朝を迎えた。

 

 

そして翌朝

 

一夏「おはよう。」

 

アルゴス「おう、おはよう。あれ以来もう夢で声かけられてねえな。」

 

エクトル「うん、そうだね。」

 

弾「しっかし、お前ら時々同じ夢の中で行動を共にしたんだろ?」

 

ビリー「それかなりの因縁だよな。」

 

レオ「でもまあ、これで一夏達の間に起こっていた特異的な現象に納得ができたわけだしな。」

 

とりあえず朝食に向かい、1組に入る。

 

谷本「ちょっとちょっと、聞いたわよー!!」

 

一夏「俺たちの調査の事か?」

 

鷹月「イリアディス君の国ギリシャはどうだった?」

 

箒「日本にはない神秘が幾つもあるって感じだな。」

 

ビリー「何か、天使様って呼ばれてる連中に会ったぜ。」

 

谷本「やっぱり伝説の天使がいたんだ!」

 

レオ「ああ、しかもすげえ美女だったぜ!」

 

ラウラ「うむ、雰囲気はどこか教官のようだった。」

 

セシリア「ええ、本当に驚きましたわ。」

 

のほほん「いいなー、私もアルアルの国に行きた〜い。」

 

シャルロット「問題が解決したら一緒に行こうね。」

 

千冬「速やかに着席しろ、授業を始める。」

 

いつも通りの日常が始まった。一方で・・・。

 

 

Side亡国機業研究室内

 

オータム「ゼノン遺跡のプロサナトリス開門の作戦は見事成功したな。」

 

エム「ええ、記事の偽装にまさかこうも簡単に引っかかるとはね。」

 

スコール「さて、次の作戦だけど、もう準備は出来てるわ。」

 

スコールは何かのリモコンを取り出す。

 

スコール「今度はこっちの世界に彼らを招き入れる時が来たわ。」

 

おぞましい笑みでスコールはリモコンのスイッチを押した。

 

 

数日後・・・

 

とある日曜日の昼間に、専用機持ち達は鈴の中華料理店に来ていた。

 

一夏「やっぱり酢豚はいいな。鈴が作ってくれたから余計上手く感じるぜ!」

 

鈴「ありがと、頑張ったかいがあったわ!(以前の一夏じゃありえないくらい嬉しいこと言ってくるわね。)」

 

箒「そういえば弾、以前の一夏とよくここに来ていたらしいな。」

 

弾「一夏は俺と鈴とは同じ中学だったからな。」

 

一夏、弾、箒は酢豚を食べている。

 

エクトル「ラーメン初めて食べたけど美味しいね!」

 

セシリア「そうですわね。」

 

鈴「そうでしょ!」エッヘン

 

エクトルとセシリアはラーメンに感動を覚えた。

 

アルゴス「この豚の角煮も最高だぜ!」ガツガツ

 

ラウラ「うむ、これは体力が付きそうだ!」ガツガツ

 

シャルロット「2人とも食べ過ぎない方がいいんじゃ・・・。」

 

鈴「遠慮しなくていいわよ、たくさんあるから!」

 

アルゴス、ラウラ、シャルロットは角煮を食べている。

アルゴスは専用機持ちの中で一番大食いだからか、山盛りの角煮を流し込むように食べる。

ラウラも見た目とは裏腹にかなりの食いしん坊からか、アルゴスに引けを取らない。

そんな2人に唖然とするシャルロットだった。

 

レオ「これがチャーハンか、中々上手いぜ!」

 

簪「美味しいね、レオ!」

 

ビリー「鈴はいい嫁になれるぜ!」

 

鈴「よ、よよよ、嫁だなんてそんな、何言い出すのよ!」アタフタ

 

ビリー「何慌ててんだ?」

 

鈴「な、何でもないわよ。」

 

一同「(褒めるくらいなら気づかないと・・・。)」ハア

 

TV 「それでは、次のニュースです。5日前から、各国の刑務所の囚人が相次いで失踪しています。

脱獄した形跡は全く見られず、警察側は、拉致事件として捜査を進めています。」

 

一夏「囚人がひとりでに消えていくなんて普通じゃねえな。」

 

シャルロット「うん、人間の仕業じゃないよね。」

 

レオ「それを言えば、俺たちは先日『天使』と会ってるもんな。」

 

エクトル「裁かれるべき人間を外に出すなんて、何を考えているのか。」

 

箒「だが、囚人が外にいるという目撃情報もないみたいだぞ。」

 

ビリー「それじゃあ、単に消されちまったって事か?」

 

ラウラ「その可能性は高いな。」

 

アルゴス「もっと問題なのは、そいつらが誰の手でどこにどうやって消えたか、それに生きてるかどうかだな。」

 

簪「何か、ホラーに近いね。」

 

弾「そりゃ勘弁して欲しいぜ!」

 

一夏「恐らくこの事件も調査する事になるだろうな。」

 

皆、心に引っかかるものが取れないまま、寮へと戻っていった。



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堕天使達との対峙

谷本「ねえねえ聞いた?」

 

鷹月「刑務所から人が消えてくやつでしょ?」

 

のほほん「ほえ〜、そんなことあるんだ〜。」

 

谷本「アンタ少しはニュース見なさいよ。」

 

一夏「やっぱり話題になってるな。」

 

箒「ああ、さすがに情報が早い。」

 

エクトル「不可解な事は誰でも気になるからね。」

 

シャルロット「大事にならなきゃいいけど。」

 

レオ「解決されなきゃ、また俺らの出番だな。」

 

ラウラ「そうだな。」

 

セシリア「はあ、色々と大変ですわね。」

 

一夏「とりあえず今日放課後生徒会室で姉さんや楯無先輩と相談しよう。」

 

放課後、一夏達は生徒会室で千冬、楯無と事件についての話をする。

 

一夏「早急に事件の真相を解明すべきだと思うのですが。」

 

千冬「まあ待て、気持ちはわかるが焦らない事だ。」

 

楯無「調査もいいけど、みんなはまだ高校生だからね。そんなに頻繁に行かせるのは学校側としてもまずいのよ。」

 

箒「そうでしょうね。」

 

エクトル「ですが、このままでいいのでしょうか?」

 

鈴「今のところ囚人以外には何の被害もないしね。」

 

すると、突如、生徒会室内のモニターに映像が流された。

 

ビリー「な、何だ!?」

 

セシリア「モニターに何か。」

 

千冬「どうやら何者かがハッキングしてきたようだな。」

 

声「フフフフフッ・・・。」

 

アルゴス「この声どっかで聞いたぞ。」

 

しばらくすると、画面に顔が映し出された。そこには見覚えのある人物の姿が。

 

オータム「よう織斑一夏、生意気にも生徒会長お勤めご苦労な事だ。」

 

一夏「亡国機業!!」

 

エクトル「また貴様達か!!」

 

弾「てめえら、今度は何の用だ!」

 

エム「プロサナトリスで天使共とご対面と聞いて、こっちもご挨拶の用意をしてたとこよ。」

 

シャルロット「そんな挨拶して欲しくないね!!」

 

アルゴス「今、プロサナトリスについて話したが、お前らはあの天使達とどういう関係だ?」

 

オータム「まあまあそう急かすなよ。素直に来てくれりゃ話してやるさ。三日後にスペインのインフィエルノ塔に来な。」

 

そのセリフを最後にモニターが閉じる。

 

一夏「今度はエクトルの国か。」

 

セシリア「またしても由緒ある場所ですわね。」

 

箒「ここ数日色んな事があるな。」

 

ビリー「これは放っておけないぜ!」

 

鈴「わざわざご挨拶してくるなら、あいつらのボスにも会えるしね。」

 

千冬「よし、外出を許可する。他の者には私から話しておこう。」

 

一行はスペインへと向かった。

 

インフィエルノ塔、そこはスペインで一番高い場所にある巨大な塔である。

 

 

そして三日後・・・・

 

一夏「ここか・・・。」

 

インフィエルノ塔の上空は不思議な事に暗雲が立ち込めている。

 

箒「今度はエクトルに案内を頼む事になるな。」

 

エクトル「うん、任せてくれ。僕の国にいる悪魔共を皆で倒そう!」

 

セシリア「そうですわね。」

 

ビリー「そんじゃ、早速入ろうぜ!」

 

アルゴス「・・・・・。」

 

アルゴスは1人妙に考え込んでいた。

 

鈴「アルゴス、ぼーっとしてどうしたのよ?」

 

アルゴス「いや、何でもない。」

 

一行は早速塔に入る。すると、いきなり何者かが襲ってきた。

 

ラウラ「皆、気をつけろ!!」

 

数十機の無人機が襲来した。

 

シャルロット「この無人機はあの時の!」

 

そう、キャノンボール・ファストやタッグマッチで学園を襲った無人機に似ている。

 

レオ「ヘッ、飛んだお出迎えだな!!」

 

簪「余裕かましてる場合じゃないよ!」

 

ラウラ「数が多い!ここは射撃と近接攻撃に分散して行くべきだ!!」

 

セシリア、シャルロット、レオ、鈴、エクトルが射撃で迎撃し、撃ち漏らした無人機は

 

箒、アルゴス、ビリー、簪、ラウラ、弾が接近戦で応戦する。

 

強力な対複数の広範囲攻撃は、専用機で唯一盾装備を持つ一夏が受け止める。

一夏はガードしながら白影剣で射撃組をカバーする。

 

数十分で全機を仕留めた。

 

ビリー「何とか片付いたな。」

 

鈴「いきなりこれじゃ、この先どうなるのよ。」

 

ビリーと鈴は少しうんざりしたようだ。

 

一夏「ん?」

 

一夏は、停止した無人機のそばに流れるものに気付く。

 

一夏「おい、これ本当に無人機か?」

 

箒「こ、これは!?」

 

機体から見覚えのある赤い液体。

 

弾「ま、まさか、血か!?」

 

セシリア「えっ、これが!?」

 

シャルロット「確かにそう見えるけど。」

 

アルゴス「・・・・。」

 

アルゴスは無人機の顔に手を当て、引っ張る。

すると、どこの誰ともわからぬ男の顔が・・・・。

 

ラウラ「なっ!?パイロットだと!?」

 

レオ「しかも男だぜ!!」

 

簪「じゃ、じゃあ、私達、ひ、人を・・・。」

 

箒「簪、それ以上言わないでくれ!!」

 

何人かは、自分達がどういう事をしたのかがわかったせいか狼狽する。

 

一方、冷静な者もいる。

 

エクトル「この顔、ニュースで見たことのある死刑囚だ!!」

 

シャルロット「じゃあ、囚人の失踪事件はやはり亡国機業が絡んでいたってこと!?」

 

一夏「だとすると、一つ腑に落ちないな。」

 

セシリア「一夏さん?」

 

アルゴス「何故俺たちがこいつらと意志の疎通が出来なかったのか、だろ?」

 

一夏「ああ。」

 

ラウラ「確かにそれは妙だな。フリーク・コアを利用して男をISに乗せるまではいいが、意志を持たずISを乗りこなすというのはどこか引っかかる。」

 

エクトル「考えられる方法としては、囚人を洗脳するってことだね。」

 

鈴「パイロットを洗脳!?」

 

箒「そんな恐ろしい方法があるのか?」

 

ビリー「考えただけでゾッとするぜ!」

 

一夏「今まで見てきたことを考えれば、もう何が起きても不思議じゃないってことだな。」

 

レオ「なら、気にせず早いとこ奴らのとこに行こうぜ。」

 

簪「そうだね、それで何かわかるかもしれないし。」

 

一行は塔の頂上へと向かった。

 

そしてついに、塔の頂上に到着する。

 

エム「皆、ご苦労様。」

 

オータム「ったく、待ちくたびれたぞ。」

 

一夏「まったく、飛んだ歓迎をしてくれたもんだ。」

 

スコール「それはごめんなさいね。」

 

箒「貴様、何者だ!」

 

スコール「そういえば皆私とは初対面ね。私はスコール。亡国機業のリーダーよ。」

 

ビリー「とうとうボスのお出ましか。」

 

エクトル「おのれこの悪魔め!」

 

エクトルは早くもケイローンを展開し、アルテミスを構える。

 

一夏「落ち着けエクトル、早速聞くが、プロサナトリスの存在を知らせるあの記事を出したのはお前らか?」

 

スコール「ご名答。」

 

セシリア「一体何のために?」

 

スコール「選ばれしものである一夏、エクトル、アルゴスに、果たすべき真の役割を実感させるためよ。」

 

シャルロット「そんな事のために、こんな大事件を起こすなんて。」

 

エクトル「法の導きをもとに裁きを受けるべき人間を無法に開放し悪用するとは神への侮辱に等しいぞ!」

 

オータム「導き?そんなの誰かが言い出したくだらねえ幻想だろうが!」

 

エクトル「何だと!?」

 

エム「私達が連れ去った囚人の多くは死刑囚。エクトル、ただ死刑を待つ彼らに、神の救いなどあるかしら?

優秀な手駒として命を有効に使う方が、彼らにとっての最大の救いであると私達は考えるわ。」

 

オータム「そうそう、さっきの機体の中にいた奴らはお前らが殺したわけじゃない。乗る前から死んでたから安心しな。」

 

簪「!?」

 

スコール「これは、私達がフリークコアをもとに開発したコア。これは死人を『悪魔』として蘇生させ、このリモコンで使役することができるの。このコアは言うなれば『デモンズ・コア』。」

 

鈴「アンタ達人の命何だと思ってんのよ!!」

 

アルゴス「・・・お前らはどうやってその力を手にしたんだ?」

 

スコール「この力は、『堕天』した事で得られたわ。煩わしい秩序に満ちたプロサナトリスから出ていくことで。」

 

箒「堕天、だと?」

 

レオ「ってことは!!」

 

セシリア「あなた達が、セラフィムの言ってた『堕天使』!?」

 

エクトル「貴様達が神に背いた者共か!!」

 

スコール「そうよ。」

 

スコール、エム、オータムは一斉に左手を上げ、鳴り響く雷鳴と共に、ISを展開するようにその正体を露わにした。

 

スコール「私は元大天使長ルシフェル。」

 

オータム「私はベリアル。」

 

エム「私はバラキエル」

 

弾「こいつらが、かつてはあの天使達と仲間だったってのか!?」

 

シャルロット「とてもそうは思えないよ。」

 

エクトル「正体を現したな悪魔共!!今ここで消し去ってくれる!!」

 

エクトルはアルテミスをルシフェルに向ける。

 

アルゴス「待ってくれエクトル。スコール、いや、ルシフェル。俺たちが果たすべき真の役割とは何だ?」

 

ルシフェル「前に話した、私達が目的とする『支配』を確立することよ。それも、強き者が全ての者に『自由』を与えることによる支配。」

 

アルゴス「自由による支配。」

 

一夏「・・・・・。」

 

簪「それが一夏達とどう関係するのよ!」

 

ルシフェル「そもそも私達が堕天する原因は、私達がプロサナトリスの住人に自由を与えるためよ。」

 

弾「・・・・・。」

 

アルゴス「・・・確かに、あそこの住人は皆、自分の意思で生きている感じはしなかったな。」

 

エクトル「アルゴス、奴らに同調してどうする!!」

 

ベリアル「安寧という名の束縛で生きることが本当の幸せか?」

 

ラウラ「・・・・・。」

 

バラキエル「女尊男卑の激しい今の世をあなた達はIS学園で有意義に生きてる。それは、織斑千冬が皆にとって絶対的な存在だからでしょう?それに、男女ともに仲良くできてるのは、男子がそれ相応の力を持っているからじゃないかしら?」

 

セシリア「・・・・・。」

 

鈴「・・・・・。」

 

ルシフェル「それらを考えれば、力こそが真の秩序・安寧を生み、人々を自由に、また幸せにすると言えなくもないでしょう?」

 

レオ「・・・・・。」

 

ビリー「・・・・・。」

 

エクトル「皆、何をしている。早くこの悪魔共を倒すんだ!」

 

エクトルはなりふり構わずアルテミスをルシフェルに放つ。すると

 

アルゴス「っ!!」ガキンッ!!

 

アルゴスはセイリオスを展開し、アルテミスの矢を叩き落とした。

 

一同「アルゴスっ!!!」

 

アルゴス「・・・・『待て』と言うのが聞こえないのかエクトル!!」

 

エクトル「なっ!?」

 

アルゴスはルシフェルの方に向き直る。

 

アルゴス「ルシフェルよ、人々に自由をもたらす支配。どうやればその力が手に入る?」

 

ルシフェル「いずれわかるわ。まずは私達の住む魔界『グリモヴァール』に来なさい。一夏、エクトル、アルゴス、今やISを中心とするこの世界の行方は、あなた達選ばれし者の手にかかってる。

私達に協力するか、セラフィム達に協力するか。いずれにしても、結論を待っているわ。」

 

一夏「あっ、おい!」

 

塔の上の暗雲から入口らしきものが開き、堕天使達はその中へ消えた。

 

 



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一夏のジレンマ

堕天使達との対峙後、一行はIS学園に戻り、千冬に事の経緯を報告した。

 

千冬「ギリシャでの調査に続きご苦労だった。これからどうなるか皆目見当もつかないが、皆無事で何よりだな。」

 

一同「はい。」

 

千冬「・・・・・。」

 

その返事はどこか空元気とも見られる。

 

千冬「幸い明日は日曜日だ。今日のところはゆっくり休んで、月曜日からの授業に備えるように。」

 

報告の後、取り敢えず食堂に行き皆で食事をするも、その間会話は一切なく、

他の生徒達もその妙な雰囲気を気にしていた。

 

専用機一同「・・・・・・。」

 

谷本「織斑君達会話ないね・・・。」

 

鷹月「現場で何かあったのかな?」

 

のほほん「みんな一緒なのに寂しそうだよ〜。」

 

楯無・虚・山田先生「・・・・・。」

 

ただゆっくりと時間が過ぎ、皆それぞれ寮に戻る。

 

Sideシャルロット・ラウラ

 

ラウラはベッドに横になり、どこか上の空だ。

 

シャルロットは気を紛らすためか、ずっと本を読んでいる。

 

ラウラ「なあ、シャルロット。」

 

声をかけられシャルロットは本を閉じる。

 

シャルロット「一夏が何を考えてるか気になるんだよね?」

 

ラウラ「それもそうだが、一夏の友であるエクトルとアルゴスの事もな。」

 

シャルロット「天使や堕天使に会ってからあの2人様子が変わってるよね。」

 

ラウラ「一夏がその事で頭を悩ませているとしたら、私はどうすればいいんだろうか?」

 

シャルロット「・・・・そうだよね。正直僕にもわからないよ。でも、今まで一夏は僕達も入れて、色んな人の心をよくしてきたし、ここはただ一夏を信じるしかないと思う。」

 

ラウラ「そうだな。シャルロットに話ができてよかった。」

 

シャルロット「今日はもう寝よう。おやすみラウラ。」

 

Side箒・鷹月

 

箒「・・・・・。」

 

箒は邪念を取り払わんと言うばかりに、部屋で木刀を振っていた。

 

鷹月「篠ノ之さん、篠ノ之さん。」

 

箒「(・・・・・一夏。)」

 

鷹月「篠ノ之さんってば!」

 

箒「はっ?」

 

鷹月「どうしたの? さっきから思い詰めてるようだけど。」

 

箒「いや、大丈夫だ。ちょっと考え事をしててな。」

 

鷹月「そう。まあ大方織斑君の事だと思うけど。あんまり1人で抱え込まないようにね。私にも何かできるかな?」

 

箒「ありがとう、だが大丈夫だ。寝れば少しは紛れる。」

 

鷹月「ふふっ、そうね。」

 

Sideセシリア

 

セシリア「(一夏さんはおそらくエクトルさんとアルゴスさんの事で悩まれてますわ。でもどうしたらいいのか私には・・・・。)」

 

セシリアは気持ちを落ち着かせるべく、1人でハーブティーを飲んでいた。

 

ルームメイト「セシリア、まだ起きてたの?」

 

セシリア「すみません、起こしてしまいました?」

 

ルームメイト「別にいいわよ。その様子だと、少なくとも恋の悩みじゃないみたいね。」

 

セシリア「いえ、その・・・。」

 

ルームメイト「夕食で全く会話がなかったのもそれが原因なんでしょ?」

 

セシリア「・・・はい。」

 

ルームメイト「小耳に挟んだんだけど、ベレン君とイリアディス君の様子がおかしいって?」

 

セシリア「ええ、2人とも一夏さんのお友達でありますし、心配ですの。」

 

ルームメイト「そうよね、すぐに答えが出るときばっかじゃないもんね。心配なのはわかるけど、もう遅いし、取り敢えず寝ようよ。ちょっとでも元気取り戻さなきゃね。」

 

セシリア「はい、おやすみなさいまし。」

 

Side鈴・簪

 

鈴「ねえ、簪。」

 

簪「何?」

 

鈴「あたし達が今してる事って、このまま続けて大丈夫なのかしら?」

 

簪「女尊男卑を変えていく事だよね。」

 

鈴「こんな事言っちゃ悪いけど、あの囚人達はあたし達がそれを始めた事で殺されたような気がって感じちゃうのよ。」

 

簪「それは違うと思うよ。少なくとも一夏は自分なりにこの世界をよくしていこうとしてるし。」

 

鈴「それはそうだけど、あの2人がね・・・。」

 

簪「エクトルとアルゴスだよね?」

 

鈴「うん。一夏はホント人がよすぎるところがあるから、あの2人について悩んでる事は間違いないわ。」

 

簪「多分答えが出しづらいんだと思う。」

 

鈴「ま、考えてもしょうがないわ。寝よ寝よ。」

 

簪「うん。そういえば鈴はビリーが好きなんだよね?」

 

鈴「ア、アンタ、知ってたの!?」

 

簪「丸わかりだよ。他のみんなも気づいてるし。でもビリーの鈍感ぶりは尋常じゃないよね。」

 

鈴「そーなのよ、聞いてくれる!?」

 

鈴と簪は、少しでも忘れようと互いに他愛のない話をする。

 

一方、男子達は・・・・

 

 

Side弾・レオ・ビリー

 

弾「なあ、ビリー。」

 

ビリー「・・・・。」

 

ビリーはベッドに横になり、漫画を読んでいた。

 

レオ「おいビリー、漫画読んでないで話聞けよ。」

 

ビリー「るせえな。じゃあてめえのその手に持ってるのは何だよ。」

 

弾「ん?」

 

見ると、レオの手には日本のグラビアアイドルの写真集が。

 

レオ「あ、いや。」

 

弾「やっぱお前らも悩んでるんだな。」

 

ビリー「エクトルとアルゴスがあれじゃあな。」

 

レオ「一夏は誰より友達思いで、リーダーだしな。」

 

弾「そういやあいつら、まだ帰ってこないな。」

 

ビリー「こないだの件で何か話してんだろ。」

 

レオ「そうだな、先に寝るか。」

 

レオ達は先に就寝する。

 

Side一夏・エクトル・アルゴス

 

一夏は眠れないらしく、1人で屋上に来て夜空を見上げていた。

 

一夏「・・・・・。(あの夢で見た事は避けられない運命なのか?)」

 

そのとき、後ろから声がした。

 

エクトル「一夏、起きていたんだね。少しいいかな?」

 

一夏「エクトル。」

 

一夏は複雑な表情でエクトルの方を見る。

 

エクトル「一夏、僕は君の女尊男卑革新の実現には、君や織斑先生のような絶対なる導きをもつ者が必要だと思う。大天使にまで認められている君なら、きっと神にもなれる。

僕と一緒に、天使達に協力しないか?」

 

一夏「・・・すまない。急な話で、まだ心の整理が。グリモヴァールの事も気になるし。答えはそれから考えさせてくれ。」

 

エクトル「そうか、君がそう言うなら待とう。じゃあお先に。」

 

エクトルは校舎へと戻っていった。

 

しばらくして、アルゴスが来た。

 

アルゴス「一夏、少し、話さないか?」

 

一夏「・・・・ああ。」

 

アルゴス「プロサナトリスの住人を見たとき思ったんだが、

自分の人生を全部導きに委ねる生き方は正直虚しいと俺は思う。

堕天使のやり口は荒っぽいけどよ、奴らにも一理あると思うんだ。」

 

一夏「・・・・・。」

 

アルゴス「俺は、女尊男卑もそうだが、多くの人間を不自由させる

支配を終わらせて、すべての人間に自由を与えられるような世界を支配したい。世界を変えるためにも、一夏、お前が必要なんだ。

俺と一緒に、ルシフェルの所へ行かないか?」

 

一夏「・・・・すまないアルゴス。エクトルにも言ったんだが、俺はまだ答えが出せないんだ。だが、今後のためにもグリモヴァールには行こうと思ってる。天使や堕天使の真意を知った上で答えを出したい。」

 

アルゴス「そうか、そりゃあそうだよな。世界に関わることなんだから。返事はいつでもいいぜ、じゃあ部屋に戻るか。」

 

一夏「ああ。」

 

グリモヴァールの調査実行を取り敢えず行うことに決めた一夏だが、

拭い去れない不安はまだ続いていた。

 

千冬「・・・・・一夏。」

 

千冬は、一夏がこれまでにない大きな悩みを抱えているのを見て

心配そうにしていた。

 



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グリモヴァール突入

翌朝、いつものように一夏は起床する。しかし、約2名のベッドはすでに空いていた。

 

一夏「おはようみんな、エクトルとアルゴスは?」

 

ビリー「何か先に起きてさっさと行っちまったぜ。」

 

弾「あの事件以来お互い気まずそうというか、やりにくそうというか。」

 

一夏「・・・・そうか。」

 

レオ「そういや一夏、昨晩は遅くまで起きてたけど、大丈夫か?」

 

一夏「ああ、心配ない。」

 

レオ「そうか。」

 

4人は食堂に向かう。

 

一夏「おはようみんな。」

 

鈴「おはよう、昨日は寝れた?」

 

レオ「俺達は、な。」

 

レオは弾とビリーを見て言う。

 

一夏「実を言うと、昨日はあんまり寝られなくて。」

 

セシリア「あらあら。」

 

箒「エクトルとアルゴスのことが気になっているからか?」

 

一夏「ああ。」

 

弾「そういやあいつらここにもいないな。」

 

シャルロット「何か妙にササっと済ませて教室に行ったよ。」

 

ラウラ「あの2人ここのところ会話が無いからな。」

 

レオ「・・・・。」

 

簪「以前は仲良くしてたのにね。」

 

いつもより少し寂しい朝食を終え、授業に入る。

 

授業中も一夏はエクトルとアルゴスのことが脳裏に浮かび、普通に授業を受けられてはいるものの、

どこかぎこちない感じである。その様子を見て千冬は授業後、一夏を職員室に呼び出す。

 

一夏「織斑先生。」

 

千冬「一夏、校内だが今は姉さんと呼ぶがいい。その方が悩みを話しやすいだろう。」

 

珍しく校内で身内として接する千冬。

 

一夏「・・・ああ。」

 

千冬「エクトルとアルゴスのことで悩んでいるようだが、大方あの2人は対立しているのだろう?」

 

一夏「・・・・はい。」

 

千冬「やはりそうか。お前達がまさか世界の命運に大きく関わる存在になろうとはな。」

 

一夏は悩みを知ってもらったせいか、余計に不安になる。

 

千冬「それで、お前はどうしたいのだ?」

 

一夏「・・・堕天使のいる魔界グリモヴァールを調査しようと思います。その世界と自分がどういう関係なのか。」

 

千冬「それは同時にエクトルとアルゴスの真意も理解することになるな。この問題は正直私にもわからん。だが一夏、私はお前ならこの問題を解決できると信じている。何があろうともお前は1人ではない。」

 

一夏「・・・ありがとうございます。」

 

そして1週間後・・・

 

 

生徒会室にて

 

一夏「みんな、話がある。」

 

エクトル「何だい一夏?」

 

ビリー「何か新しい事が決まったのか?」

 

一夏「ああ。俺達が今やるべき事は、グリモヴァールの調査だと思っている。」

 

箒「本気なのか?」

 

弾「魔界って聞くだけで危険なのミエミエじゃねえか。」

 

一夏「俺はこの調査で、プロサナトリスとグリモヴァールの関係を知る事で、今抱えている問題の解決の糸口を見つけたい。だが、仲間に協力を無理強いするのも気がひける。だから、参加するかどうかはみんなに任せる。」

 

一夏は全員を危険にさらすまいと、他のみんなの意思を尊重する言葉を言う。特に心配なのはエクトルだ。

 

アルゴス「そんなの決まってるぜ、俺は参加する!」

 

箒「お前が行くんだ。私もついて行くぞ。」

 

セシリア「一夏さん、私達は一夏さんを信じます。」

 

シャルロット「一夏とならどんな危険だって乗り越えられるよ。」

 

ラウラ「うむ、妻としてお前の側を離れる訳にはいかない。」

 

ビリー「ヒュー、流石一夏、モテる男は違うなぁ。俺も行くぜ!」

 

鈴「アンタもそうである自覚持ちなさいよ。」

 

ビリー「あ?そりゃあねえだろ?」

 

弾「やれやれ(コイツ一夏の鈍感さ超えてるな。)」

 

レオ「俺も行こうかな。やっぱ気になるからな。」

 

簪「レオ、危ないよ。」

 

レオ「心配すんな、一夏の恋人候補達みたいに俺を信じろよ。」ウィンク

 

簪「・・・・うん。(その言葉ずるいよ。)」

 

大多数は迷わず行くことに決める。しかし、

 

エクトル「・・・・。」

 

一夏「エクトル、無理はしなくていいんだぞ。」

 

エクトル「いや、僕も行こう。神の善意ある秩序を乱す輩を野放しにはできない。

それに、僕だけ行かないと言うのもどうかと思う。」

 

アルゴス「・・・・・。」

 

一夏「よし、決まりだな。」

 

かくして、再びスペインのインフィエルノ塔に行き、魔界グリモヴァールに訪れる事となった。

 

 

インフィエルノ塔屋上

 

一夏「さて、来てみたはいいが、どうやってグリモヴァールに入ればいいんだろうな?」

 

箒「ふむ、プロサナトリスの時のように、一夏達選ばれし3人が鍵なのではないか?」

 

すると、上からルシフェルの声がする。

 

ルシフェル「来たようね。一夏、エクトル、アルゴス。」

 

その声と共に空に裂け目ができる。

 

ビリー「おいおい空が割れてるぞ!」

 

セシリア「夢でも見ているみたいですわ。」

 

ラウラ「よし、突入するぞ!」

 

一行は、魔界グリモヴァールへと突入する。

そこは一体どのような世界なのか・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 



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魔界都市グリモヴァール

千冬「束、私だ。」

 

一夏達がグリモヴァールへ調査に向かっている間、千冬は束と連絡を取っていた。

束「ヤッホーちーちゃん!!」

 

千冬「その、お前に頼みたい事があってだな。」

 

束「何かな!?もしかして夜の」

 

千冬「またにするとしよう。」

 

電話を切ろうとすると、

 

束「ジョーク、ジョーク!!ちゃんと聞くから!!」アセアセ

 

千冬「フン、いいかよく聞け。ISの創始者であるお前に頼みたいことは、プロサナトリスで天使とされるIS、及び亡国機業の奴らが悪魔として従えるISの解析だ。これは一夏達の命運に関わることだからな。」

 

束「アイアイサー!!」ビシッ

 

その頃一夏達は・・・・・・。

 

ビリー「魔界っつっても、実際どんなトコか想像もつかねえな。」

 

鈴「それはそうね。」

 

一夏達は突入後、長い時空トンネルのようなものを通っているところだ。

 

シャルロット「一般では悪魔が巣食う世界とされてるけど。」

 

エクトル「・・・・・。」

 

セシリア「恐らくプロサナトリスとは正反対の世界ですわね。」

 

アルゴス「だろうな。」

 

一夏「皆、もうすぐ着くぞ。」

 

弾「くーっ、長かったぜ!」

 

レオ「やれやれ、やっと入るのか。」

 

ラウラ「レオ、少しは緊張感を持て。」

 

箒「うむ、心の準備をしておかねば。」

 

レオ「はいはい。」

 

時空トンネルを抜けると、そこは想像していた世界とは異なっていた。

 

簪「・・・ここが魔界、グリモヴァール?」

 

エクトル「何だこれは、魔界なのに人がいそうな都市だ。」

 

そこにはいくつものビルが建っており、神話に出てくるような世界とは違っている。

まるで夜の都会のようだ。

 

アルゴス「この雰囲気、どっかで見たことあるような・・・。」

 

鈴「これって、日本で言えば『東京』みたいなものね。」

 

箒「ああ、それに近い。」

 

ビリー「広さはアメリカのニューヨーク並みにあるぜ。」

 

一夏「とにかく、今は情報収集をしよう。」

 

地上に降りて都市に入る。

 

ラウラ「何だか、建物が多くてどこから回ればいいかわからないな。」

 

アルゴス「とりあえず人が多く集まってそうな場所に行こうぜ。」

 

街を歩くと、至る所に血の跡が。遠くから眺めるのとはまた違っている。

 

弾「街の通りのあちこちに血が・・・・。」

 

弾は顔がやや青ざめる。

 

簪「だ、大丈夫かな?私達帰れるよね?」

 

レオ「簪、あまり周囲を見るな。」

 

簪は嫌な予感に苛まれる。

 

セシリア「あの建物は、パブでしょうか?」

 

セシリアが指差す方を見ると、そこにはパブらしき建物が。

 

ラウラ「パブとは何だ?」

 

シャルロット「大人の人達がお酒を飲んで話す場所だよ。」

 

ビリー「そうだとしたら情報収集には最適だぜ。パブにはいろんな奴が通いつめるからな。」

 

弾「なるほどな。」

 

鈴「でもあたし達未成年よ。」

 

箒「雰囲気も何だか怪しいぞ。」

 

一夏「ここはひとまず行くとしよう。何、俺たちはすでに怪しい空間をさまよっているんだ。」

 

アルゴス「だよな。」

 

エクトル「あまり関心しないけど、他に手がかりがない以上行くしかない。」

 

一行はパブに入った。

 

一夏「あのー、すいません。」

 

すると、中にいたヤクザのような客数人が一斉に一夏達の方に向く。

 

「何だテメエら!?」

 

「ここはガキの来る場所じゃねえぞ!」

 

男性客の何人かが一夏達に罵声を浴びせる。

 

弾「いきなり何だよ!?」

 

セシリア「何ですかこの方々は!!」

 

シャルロット「すみません、僕たちはこの街について聞きたいことがあってここに来たんです。」

 

酔っ払い「ようかわい子ちゃん、だったら俺らに付き合ってもらうぜ、ヒック。」

 

酔っ払いの1人がシャルロットに言い寄ってくる。

 

シャルロット「!!」

 

鈴「ちょっとアンタ、シャルロットに手を出すんじゃないわよ!」

 

酔っ払い「邪魔すんなよこの貧乳、ぐわっ!!」

 

『貧乳』と言った瞬間、ものすごい一撃が酔っ払いを跳ね飛ばした。

 

鈴「何だって、よく聞こえなかったんだけど!?」ギロッ

 

シャルロット「り、鈴。」

 

鈴は甲龍の右腕を展開していた。

 

一夏「鈴、よせ!!」

 

鈴「はっ、ごめん一夏つい!!」

 

弾「まあ気持ちはわかるがな。」

 

ラウラ「うむ、全くだ。」

 

酔っ払いはかなりの形相で立ち上がる。

 

酔っ払い「おいおいこのアマ、やってくれるじゃねえか。あん!?」

 

ビリー「ケッ、自業自得だろうがオッサン。」

 

酔っ払い「何だとこのガキ!?ぐおっ!?」

 

ビリー「酒臭えんだよ!!」

 

ビリーは持っていた三節棍で酔っ払いを叩きのめす。それを見て、仲間らしき男性客もビリーに飛びかかる。

 

男性客「殺っちまえ!!」

 

ビリー「ヘッ、喧嘩上等だぜ!!」

 

ビリーはさらに暴れまくる。

 

鈴「手伝うわよビリー!!」

 

アルゴス「俺も加勢するぜ!」

 

鈴とアルゴスも加わり、大乱闘が始まった。

 

セシリア「ままままあ皆さん!!」

 

一夏「おいおい暴れたらまずいだろ!!」

 

簪「一夏、止めない方がいいと思う。」

 

レオ「どうせすぐ片がつくからな。」

 

箒「いや、そういう問題か!?」

 

数分後、乱闘に参加した男性客は皆ギタギタにされてしまった。

 

男性客「く、くそう。何て奴らだ。ゲホッ。」

 

弾「あーあ、全員完全に伸びてやがるぜ。」

 

一夏「ちょっと暴れすぎだな。」

 

ラウラ「これじゃ情報収集どころじゃないぞ。」

 

鈴・アルゴス・ビリー「・・・・面目無い。」

 

すると、奥から男の声がする。

 

声「おいあんたら、こいつらを叩きのめすとは中々やるじゃねえか。」

 

このパブのマスターだろうか、年配の男がこちらを見ている。

 

エクトル「すみません、騒ぎを起こしてしまって。」

 

一同「すみませんでした。」

 

マスター「いやいや気にするな。さっきの光景はここらじゃどこでも見られる。『悪魔』が加わりゃこんなものじゃねえ。」

 

アルゴス「この街に悪魔がうろついてるのか?」

 

マスター「ああ。」

 

一夏「・・・この都市について聞きたいことがあるのですが。」

 

マスター「いいだろう。」

 

パブのマスターは色々とこの都市について説明し出した。

この都市はほぼ無秩序な状態で、『支配』をめぐって人間や悪魔が争う事が日常茶飯事だという。

そのグループはあちこちに存在するという。

 

一夏「そういうことでしたか。」

 

エクトル「無法地帯である事を放っておくのはどうかと思いますが。」

 

マスター「なあに、ここで生きるにはそれなりの力が必要なのよ。それに、力と言っても、何も暴力だけじゃねえ。

知識、特技、才能といった力でも人や悪魔を支配できる奴もいる。ちなみに俺は店を出している事で争いを免れている。

何らかの強さを持ってりゃ何しようがOKなのさ。それがこのグリモヴァールのルールなのよ。」

 

アルゴス「成る程、お手頃でいいルールだな。」

 

箒「強さを持つ、か。」

 

簪「ここの悪魔も亡国機業の手駒になってる囚人がISに取り込まれた事で生まれてるの?」

 

マスター「そういう悪魔もいるが、中には争いに負けた事で悪魔にされた奴もいれば、自ら悪魔となった奴もいるぞ。」

 

セシリア「となると、囚人ばかりではないという事ですのね。」

 

エクトル「冗談じゃない、悪魔にされてしまうならともかく、何だって自分から悪魔にならなきゃいけないんだ?」

 

レオ「その理由は様々なものがあるだろうな。」

 

簪「人間の強さに対する意識って難しいよね。」

 

ラウラ「ところで、ルシフェル達はどこにいるのだ?」

 

マスター「ルシフェル?ああ、スコールさんの事か。彼女ならいつもはこの先にあるセントラルタワーにいる。

『レクトラート』って名前のな。」

 

一夏「ご協力ありがとうございます、よし、ルシフェル達に会いに行くぞ!」

 

一夏達はグリモヴァールのセントラルタワー『レクトラート』へと向かった。

 



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ルシフェルの真意

一行はルシフェルのいるセントラルタワー『レクトラート』へと向かう。

 

一夏「・・・・・。」

 

箒「一夏、どうかしたのか?」

 

一夏「いや、これからルシフェルの真意に迫るとなると、妙に緊張してな。」

 

セシリア「そのお気持ちはわかりますわ。」

 

エクトル「奴らが何を考えていようと、僕は奴らを倒すべきだと思う。」

 

ビリー「エクトル、さっきから妙に熱いな。」

 

簪「エクトルは天使達の方を信じるって決めてるのね。」

 

エクトル「僕らの世界もプロサナトリスも、そしてグリモヴァールも、秩序による安定化が必要なんだ。悪魔共を野放しにはしておけない。」

 

鈴「安定化ねえ・・・・。」

 

レオ「一理あるとは思うけどな。」

 

アルゴス「・・・・本当に、俺達はルシフェルを倒すべきなんだろうか?」

 

エクトル「アルゴス、君は本気でそう思っているのか?」

 

エクトルはやや声を荒げる。

 

シャルロット「ちょっと落ち着いてよエクトル。」

 

エクトル「・・・すまない。」

 

ラウラ「アルゴス、とにかく今はルシフェルに会いに行くぞ。」

 

アルゴス「わかってるって。」

 

数分後、レクトラートに着き、エレベーターで屋上まで登った。

 

 

ルシフェル「レクトラートへようこそ、譽れある代表候補生の皆。」

 

一同「・・・・・。」

 

バラキエル「グリモヴァールは気に入っていただけたかしら?」

 

アルゴス「まあな。」

 

エクトル「アルゴス!!」

 

ベリアル「アルゴスは完全に気に入ってるようだが、エクトルの方は駄目みたいだな。」

 

エクトル「残念ながら貴様達と関わり合うつもりはない。」

 

バラキエル「選ばれし3人の人の子のうち、2人はもうどうするか決めているようだけど、他のみんなはまだ選択に迷っているわね。

まあ大方は、一夏の選択を信じるんでしょうけど。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「・・・・・。」

 

少なくともこの4人はまさにその通りである。

 

ビリー「あのなぁ、これはすぐ決められるような事じゃないんだぜ。」

 

簪「選択で世界の行方が決まるんだから、考える時間はかなり欲しい。」

 

ベリアル「何をそんなに迷っている?」

 

鈴「迷うわよ、エクトルもアルゴスも大切な友達何だから。」

 

レオ「政治家でもないのに世界の行方どうこうってのもなあ。」

 

バラキエル「どうやら選択を聞く相手は一夏だけで充分のようね、ねえ一夏?あなたはどうなの?」

 

一夏「・・・・その前に、一つ聞きたい。お前らはどうしてISを悪魔に変えたんだ?ここでは死刑囚以外の人間も悪魔にされているようだが。」

 

バラキエル「絶対的な支配と全ての者の自由のためよ。」

 

一夏「だが、歴史を振り返ってみても、いかなる人間も全世界を統治するまでには至っていない。IS創始者の束さんだってそうだ。」

 

ルシフェル「ええ、人間に世界の支配は無理だわ。でも、人間より強い存在が人間を守るとなればどうかしら?」

 

アルゴス「人間より強い存在だと?」

 

ルシフェル「ええ、今私達が悪魔を想像しているのには大きな理由があるの。それは、支配の象徴にして、全ての悪魔を統べる者、『冥王』の復活。」

 

エクトル「馬鹿な!?そんな事をして何になる!?」

 

バラキエル「冥王が復活すれば、全ての悪魔を支配できる。その力を持ってすれば、人間も支配できるわ。人間の自由を尊ぶ者がその力を持てば、人間の楽園を作る事が可能よ。」

 

簪「・・・人間の、楽園?」

 

レオ「そんな事が・・・・。」

 

エクトル「皆、耳を貸すな!」

 

アルゴス「ならエクトル、お前は口を出すな!」

 

鈴「ちょっと2人とも!!」

 

一夏「・・・・・。」

 

ベリアル「まだ決心がつかないか?いいだろう、一夏、天使側に付くか私達に付くか、それはお前に任せよう。

もし私達の元へ来れば歓迎しよう。」

 

一夏「・・・・ああ、そうさせてもらうと助かる。」

 

一夏はまだ迷いながらもそう言い、レクトラートを後にした。

 

 



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迫り来る決断の時

一夏「・・・・・・。」

 

いつものようにIS学園で過ごす一夏だが、グリモヴァール調査から数日経っても浮かない顔をしていた。

 

千冬「このように、ISはアラスカ条約によって・・・。」

 

一夏「・・・・・。」

 

授業中も一夏はどこか上の空だ。

 

千冬「おい織斑、聞いているのか?」

 

一夏「あ、いや、すみません!!」

 

千冬「グラウンドを20周ほどしてこい。(これで少しでも気が紛れればいいが。)」

 

一夏「・・・・はい。」

 

一夏は教室を出て行った。

 

箒「(あの一夏がここまで思い悩むとは。)」

 

弾「(ありゃあ相当きてるな。)」

 

セシリア「(けれど私では・・・。)」

 

レオ「(どうしようもないぜこりゃ。)」

 

シャルロット「(一夏の悩みは僕達が抱えてきた悩みとは桁が違うしね。)」

 

ビリー「(一夏・・・、畜生、エクトルもアルゴスもあいつを悩ませやがって。)」

 

ラウラ「(今度ばかりは教官でも解決は難しいようだな。)」

 

エクトル・アルゴス「・・・・・・。」

 

Side2組

 

「見てみて、織斑君がグラウンド走ってるよ。」

 

「授業中何かあったのかな?」

 

「なんか珍しいよね。」

 

鈴「(・・・一夏、やっぱまだ悩んでるのね。こんな時どうすればいいんだろ。あいつには何度も助けてもらってたってのに。)」

 

Side4組

 

「あれ織斑君じゃない?」

 

「ずっと走ってて大丈夫なのかな?」

 

「簪、織斑君に何かあったの?」

 

簪「うん、ちょっとね。でもそっとしておいてあげて。(一夏は私達には想像もできない事で葛藤してるんだから。)」

 

Side一夏

 

一夏「・・・・・・。」

 

一夏はただひたすらグラウンドを全力で走っていた。

何もかもから逃げたいと言わんばかりに。

 

一夏「(何で、何でだ!?何故こんなにも悩まなきゃならないんだ!!)」

 

膝が笑うのも構わず走り続ける。

 

一夏「(人間にとって導きは何かを信じて生きるために必要だ。でも、支配もこの世界ではそれなりに意味をなしてる。

この二つのどちらとも大切にできる選択はないのか?それに、俺はコア研究ををこんな事態を引き起こすために考案したつもりはないんだ!だが、どうやってエクトルとアルゴスを和解させる!?俺はどうすれば!?)」

 

考えれば考えるほど答えがわからなくなる一夏は目に涙を浮かべながら走った。

 

一夏「っ!!」ドタッ

 

走り疲れた一夏はその場に倒れてしまった。

 

倒れてから一夏は夢を見ていた。

 

一夏「ここは・・・・。」

 

一夏は草原の上に立っていた。上には見渡す限り青空が広がっている。

 

一夏「ここは、グラウンドじゃないよな。」

 

一夏はひたすら草原を走っていく。しばらくすると、人影が現れた。

その姿は、右に白、左に黒の翼を持つ青年だった。

 

青年「人の子よ、迫る決断に立ち向かう時が来たようだな。」

 

一夏「お前は誰だ!?」

 

少年「汝は今、運命の天秤を目の前に苦悩している、そうだな?」

 

一夏「・・・・エクトルとアルゴスの事か?ああそうだよ、俺は正直どうすりゃいいかわからねえんだよ!!

2人とも、かけがえのない友達なんだ。そいつらが目の前で互いに対立してるんだよ!!!」

 

青年「ならば答えは既に得ているではないか。」

 

一夏「何、どういう意味だ!?」

 

青年「来るがいい。汝が力の示す先にある所へ・・・・。」

 

一夏「お、おい、ちょっと待てよ!!」

 

青年は意味深な言葉を残して消えていった。

 

 

気がつくと、一夏は医務室にいた。

 

一夏「・・・・あれ?何でここに。」

 

起きてみると、皆が医務室に入ってきた。

 

シャルロット「一夏、よかった、気がついたんだね。」

 

一夏「シャル、俺は一体?」

 

鈴「グラウンド倒れてるのが目に付いたから、みんなで一夏を医務室に運んだのよ。」

 

セシリア「無事で何よりですわ。」

 

一夏「そうか、ありがとう。」

 

ビリー「しかしビックリだよなあ、急に倒れるんだからよ。」

 

箒「ああ、何事かと思ったぞ。」

 

ラウラ「倒れてから3日も寝ていたのだからな。」

 

一夏「悪い悪い。」

 

千冬「倒れるまで走るとは。真面目過ぎにも程があるぞ。」

 

山田先生「まあ、そこが織斑君の良さですけどね。」

 

一夏「す、すみません」

 

ふと、皆をみると、本来一緒にいるべき2名がいない。

 

一夏「・・・・エクトルとアルゴスは?」

 

簪「一夏、すごく言いにくいんだけど。」

 

簪は悲しそうな表情を浮かべる。

 

レオ「いいよ簪、俺が言う。一夏、エクトルとアルゴスは、お前が倒れてから次の日から姿をくらましたんだ。」

 

弾「言ってみりゃ、失踪ってやつだよ。」

 

一夏「そうか、だが行き先は見当がついている。エクトルはプロサナトリス、アルゴスはグリモヴァールに行ったに違いない。だから、丁度俺も出ようと思ってたんだ。」

 

山田先生「まさか、織斑君までいなくなるなんてことは。」

 

山田先生が不安そうな顔をする。恋人のエクトルが失踪したのだから無理もない。

 

一夏「それはないですよ、実は夢で俺の悩みの答えを知るというやつに会いましてね。」

 

箒「何、それは本当なのか?」

 

一夏「俺の力が指し示す方向にある場所へ行けって。」

 

セシリア「それってもしかしたら。」

 

ビリー「お前の白式の事じゃねえのか?」

 

ラウラ「うむ、そう考えるべきだろうな。」

 

鈴「でも指し示すってどんな風に?」

 

弾「指し示す場所へ行けって事は、外に出りゃいいんじゃないか?」

 

一夏「よし、外へ出るか。」

 

一同は学園の外に出る。すると、待機状態の白式が光り輝き出した。

 

レオ「おい、白式の光り伸びて行くぞ。」

 

千冬「よし、更識、光の行方を学園内のロード・ビューで追ってくれ。」

 

楯無「はい。」

 

楯無はロード・ビューで光の後を追う。光の終点を発見し、千冬に報告する。

 

楯無「位置がわかりました。場所は東京の『モデレーション・タワー』の頂上です。」

 

千冬「わかった。」

 

一夏「よし、それじゃモデレーションタワーに直行します。行こう皆!」

 

一同「ああ!(はい!)(うん!)」

 

千冬「一夏、行くのだな?」

 

一夏「姉さん、今度ばかりは止めないでくれ。ようやく答えが出そうなんだ。」

 

千冬「一夏・・・。よし、行ってこい!皆も一夏を頼むぞ!!」

 

一同「はい!!!」

 

一夏達はモデレーション・タワーに向かった。



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決断〜それぞれの覚醒

Sideエクトル

 

エクトル「一夏の決断を待っている時間はない。間違いなくアルゴスはグリモヴァールに行き、冥王復活に協力する。

その前に僕が止めなくては。」

 

エクトルは1人、プロサナトリスへと向かった。

そんな中、エクトルは恋人山田先生との写真を見る。

 

エクトル「・・・・真耶さん、僕は行かなければならない。神の慈愛の導きによりあなたを幸せにするためにも、

僕は天使達の理想とする秩序を築かなければ。この戦いが終われば、僕はあなたと永遠の安寧の世界で暮らせる。」

 

エクトルはもう誰にも止められない勢いである。

 

しばらくしてゼノン遺跡に到着する。

入り口が閉じているが、エクトルは聖杯の台座に向かって叫ぶ。

 

エクトル「聞こえるか?天使達よ。僕はあなた達の理想のために協力する事を決意した。

僕をプロサナトリスへと導いてくれ!!」

 

すると、入り口が開き、エクトルは飛び込む。

 

プロサナトリスに着くや否や、エクトルは大聖堂へと向かった。

 

セラフィム「エクトル、誉ある選ばれし人の子よ。」

 

ミカエル「我らと共に戦いますか?」

 

エクトル「はい!」

 

ガブリエル「一夏や他の友がいないようですね。」

 

エクトル「・・・・・。」

 

クシエル「エクトルよ、聞くが良い。我らは、グリモヴァールと共に、人間界を消滅させることにしました。」

 

エクトル「人間界を消滅させる!?」

 

セラフィム「人間界は我ら導きの世界に収めるには余りにも不完全すぎます。」

 

エクトル「・・・・・。」

 

エクトルはどこか心配そうだ。

 

ガブリエル「案ずるなエクトル、我らは汝が信じる人間はすべて救っていきます。それがあなたの望みでもあるのでしょう?」

 

エクトル「はい!(よかった、真耶さんに一夏達は助かるのか。)」

 

セラフィム「アルゴスはグリモヴァールで堕天使達と力を合わせ、冥王をこの世に復活させようとしている。

それを討つには我らもその力を手にしなければなりません。」

 

クシエル「冥王に対抗できるのは、『神の代行者』の力が必要です。」

 

エクトル「神の代行者!?」

 

セラフィム「神の代行者を降臨させるには、我らの魂と、神の代行者を宿らせる選ばれし人の子の肉体が必要です。」

 

クシエル「つまり、あなたに神の代行者の力を授けるということです。」

 

エクトル「僕が、神の代行者に!?」

 

ガブリエル「しかし、私達と一つになり、神の代行者の力を宿したら最後、あなたは二度と人間には戻れません。

それは言わば、あなたに人間としては死を迎えさせるようなもの。」

 

エクトル「死ぬも同然・・・・。人間を辞める・・・・。」

 

エクトルはこれから自信に起きようとしてる事の意味を悟り、涙をにじませる。しかし、彼の決意は揺らがなかった。

 

エクトル「天使達よ、僕は迷いません。多くの民を救うための秩序をこの世にもたらすためなら、この身など惜しくはない。

僕は今日の安寧が明日も続く世界を、愛すべきもの達のために作り上げる!!」

 

ガブリエル「決まりですね。ではエクトル、力を授けましょう。」

 

この瞬間・・・・、エクトル・ベレンは・・・・死んだ。

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴス「一夏、悪いな。お前はまだ迷っているんだろうが、俺はもう行くぜ!エクトルは間違いなくプロサナトリスで天使達と手を組むに決まってる。」

 

アルゴスは1人、グリモヴァールへと向かっていった。

 

インフィエルノ島に着き、グリモヴァールに突入するや否や、レクトラートへと足を踏み入れた。

 

 

レクトラート頂上

 

アルゴス「ルシフェル、お前らに協力する決心が着いたぜ!」

 

ルシフェル「アルゴス、あなたはきっと来てくれると思ったわ。」

 

ベリアル「一夏や他の者は来ていないようだな。まあ一夏はまだ迷っているんだろうが。」

 

アルゴス「・・・・。」

 

バラキエル「アルゴス、すべての者に自由を与える支配を望む人の子よ。いよいよ支配実現の時を迎えるわ。」

 

アルゴス「ああ。」

 

ルシフェル「でもアルゴス、それには少々問題があってね。」

 

アルゴス「天使やプロサナトリスの存在だろ?」

 

ルシフェル「それもそうだけど、もう一つ問題があるの。それは人間界よ。」

 

アルゴス「どういう事だ?」

 

バラキエル「人間界はすべての者が思うように生きられるほど自由は保証されていないわ。中途半端なルールが少なからず存在しているし。」

 

アルゴス「それはそうだな。」

 

ベリアル「そこでだ、私達の手で、プロサナトリスもろとも人間界を抹消する事にした。」

 

アルゴス「抹消!?」

 

ルシフェル「心配には及ばないわアルゴス、あなたの意志のままに助ける人間を選ばせるつもりよ。何も気にしなくていいわ。」

 

アルゴス「よかった、なら一夏達とまた一緒になれるわけだ。」

 

バラキエル「本題に入るわ。私達の世界の支配を阻止するため、恐らく天使達はエクトルを使って、神の代行者を降臨しようとしてる。それに対抗するためにも、冥王の力は必要なの。」

 

アルゴス「成る程、で、どうやって冥王を復活させるんだ?」

 

ルシフェル「神の秩序への反意の象徴である私達の魂と、選ばれし人の子の肉体が合体する事で、冥王との契約が生まれるわ。

そして、契約者となった人の子の肉体に冥王の力が宿る。つまりアルゴス、あなたが冥王となるのよ。」

 

アルゴス「俺が、冥王になるだと!?」

 

バラキエル「ただ、契約者となり冥王の力を手にした人の子は、人間ではなくなってしまう。

簡単に言えば、人間としては『死ぬ』って事ね。」

 

アルゴス「死ぬ・・・・。人間じゃ無なくなる・・・・。」

 

アルゴスはふと考えた。人間ではなくなった事で、友である一夏達と、自分の支配する世界で暮らせるかどうかという事である。

 

アルゴス「(でも、一夏には差別も偏見もない。女尊男卑のこの世を良くするべくフリーク・コアを考案したんだもんな。

一夏ならきっとわかってくれる。)」

 

意を決してアルゴスは叫んだ。

 

アルゴス「ルシフェルよ!俺はもう迷わない!俺は冥王となり、一夏達と自由な世界を創造していくんだ!!」

 

ベリアル「決まりだな、じゃあ契約といこうか。」

 

この瞬間・・・・、アルゴス・イリアディスは・・・・死んだ。

 

 

Side一夏

 

一夏達は白式の光の指す方へと向かい、モデレーション・タワーへとたどり着いた。

そのままエレベーターに乗り込み、頂上に着く。

 

ラウラ「ここが光の終着点のようだな。」

 

弾「一体こんなところに何があるってんだ?」

 

すると、上空から一夏が夢で見た青年が現れる。

 

ビリー「何だよコイツ!?」

 

一夏「お前は一体?」

 

青年「我は、創造主クラスト。」

 

セシリア「創造主!?」

 

箒「イエス・キリストの親戚か何かか?」

 

鈴「そんな訳ないでしょ。」

 

シャルロット「一夏をここに呼び出した訳を聞かせてくれない?」

 

クラスト「皆も気づいているだろうが、エクトル、アルゴスはそれぞれプロサナトリスとグリモヴァールに向かい、

世界の行方を左右させるであろう戦いに身を投じようとしている。」

 

ラウラ「それはつまり、エクトルとアルゴスの戦争って事か?」

 

クラスト「エクトルは神の代行者、アルゴスは冥王となり、多くの天使や悪魔を従える力を持っている。それらがぶつかり合えば天使と悪魔の戦争が人間界で起こる事になる。」

 

簪「そんな!それじゃ大勢の人が犠牲になる!!」

 

レオ「何とかならないのかよ!」

 

クラストふと、一夏の方に向き直る。

 

クラスト「一夏よ、選ばれし人の子の一人であるお前は、導き、支配の2つを調和させる事を選んだ。」

 

一夏「当たり前だろ。エクトルとアルゴスは、何があろうと俺たちの友だ!!」

 

クラスト「調和は導きや支配よりも過酷で困難なものだ。それでも調和を望むか?」

 

一夏「二言はない!!」

 

クラスト「わかった。では、お前の肉体に我が創造の力を宿すとしよう。」

 

セシリア「一夏さんに創造主の力が宿るとどうなるのですか?」

 

クラスト「一夏は創造主となり、神の代行者と冥王に対抗できるようになる。」

 

ビリー「す、すげえぜ!一夏が神様みたいになっちまうってのかよ!?」

 

クラスト「神の代行者と冥王を倒せば、プロサナトリスとグリモヴァールは再び人間界と調和するであろう。」

 

鈴「再びって、じゃああの世界は元々人間界の一部だったって事!?」

 

クラスト「かつて人間界に神と天使、冥王と悪魔の概念が生まれた時、一部の信者達により世界は3分されたのだ。」

 

レオ「マジかよ、宗教的なやつは恐いよなあ。」

 

クラスト「神の代行者と冥王を倒す事で、3世界の人の子らが再び手を取り合う日が訪れるであろう。」

 

箒「何と素晴らしい選択だ!!」

 

簪「それこそ私達が探してた答えよ!!」

 

クラスト「一夏よ、我が力を受け取りし時、何時は人の子ではなくなってしまうが、それでも調和を望むか?」

 

一夏「・・・・。」

 

一夏はみんなの方を見る。

 

箒「心配ないぞ一夏。」

 

セシリア「私達はあなたを信じています。」

 

シャルロット「人間を超えたって、僕たちが一夏を好きな事に変わりはないよ。」

 

ラウラ「妻としてどんな時でもお前について行くぞ!」

 

鈴「一夏、だから迷わないで。」

 

ビリー「みんなでエクトルとアルゴスを助けるんだ!!」

 

簪「私達で力を合わせればいけるよ!」

 

レオ「一夏、だからお前も俺達を信じろ!」

 

一夏「みんな・・・・。創造主クラスト、俺に力を!!」

 

クラスト「では行くぞ!!」

 

クラストは大きな光の塊となり、一夏の肉体に宿った。

 

一夏「ぐっ、この力は凄すぎる!!」

 

鈴「一夏、大丈夫!?」

 

一夏の肉体に次第に変化が出た。背中から雄大な白の右翼と黒の左翼が3枚ずつ生え、右目の虹彩は青く、左目の虹彩は赤くなった。

 

箒「これが、創造主の力を宿した一夏!!」

 

弾「何か凄すぎるぜ!」

 

一夏「凄い力がみなぎってくる。これでISを使えばどうなるか。」

 

セシリア「夢でも見ているようですわ。」

 

シャルロット「一夏が人間を超えた存在になるなんて。」

 

一夏「大丈夫だ、心はいつも通りだぜ!」

 

ラウラ「一夏・・・強くなったな。」

 

ビリー「皆、織斑先生から連絡だ!一旦学園に戻るようにだとよ。」

 

一夏「よし、それじゃ行くか!」

 

一同はIS学園へと戻っていった。



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災厄の中での救助

一夏達は急いでIS学園に戻り、生徒会室へ直行する。

 

千冬「一夏!?その姿は!?」

 

一夏「姉さん、話は後だ!!それより何があったんだ?」

 

楯無「皆、これを見て!!」

 

一同「!?」

 

モニターを見ると、そこには信じられない光景が映っていた。

何と、東京のど真ん中で無数の白の無人機と黒の無人機が乱れ飛び、互いに攻撃し合っている。それはまさに戦争だった。

 

弾「あれは、よく見たら天使や悪魔じゃねえか!?」

 

シャルロット「いつの間にあんなに多く!?」

 

鈴「大変!!町や多くの人達に被害が出てる!!」

 

ビリー「一刻も早く奴らを止めねえと!」

 

画面を見るだけでも、多くの人々が怪我を負っているのがわかる。

それに加え、悪魔は人々に食らいつき、貪られた人間は悪魔へと変貌していった。

 

セシリア「悪魔が人々を・・・。」

 

レオ「捕食している!!」

 

簪「そんな!?嘘でしょ!?」

 

箒「ISが人を食するだと!?」

 

楯無「皆、ここは学園で総力をあげて救助に向かいましょう!!」

 

千冬「よし、私と山田先生も同行する!!」

 

虚は放送マイクを起動し、全校生徒に発令する。

 

虚「全校生徒の皆さん、緊急事態です!専用機が天使や悪魔を食い止める間、皆さんは救助にあたってください!!」

 

それに合わせ、ラウラは黒ウサギ舞台に応援を要請する。

 

ラウラ「クラリッサ、私だ!!全部隊直ちに日本に救助に来い!!」

 

自体はとんでもないことになった。

 

 

Side1年1組

 

「どうしよう!!私達あの化け物がいるところに行くんでしょ!?」

 

「でも、織斑君達も行くわけだし。」

 

「だけど怖いよ!!」

 

それも無理はない。今度ばかりは命懸けなのだから。

 

のほほん「みんな、ここは行くべきだよ!!」

 

一同「!?」

 

のほほんさんからはいつもにない気迫が漂っている。

 

鷹月「本音・・・。」

 

のほほん「みんな私達が助けに来るのを待ってるのに、じっとしててどうすんの!?」

 

谷本「・・・そうよ、本音の言う通りだわ!!」

 

「本音、アンタたまにはいい事言うじゃない!!」

 

のほほんさんの勇気ある一言で、クラスみんなが一丸となった。

 

鷹月「それじゃ、救助に向かうわよ!!」

 

一同「おー!!」

 

こうして、IS学園による救助が始まった。

 

 

町の人「助けてくれー!!」

 

子供「痛いよー!!」

 

「今助けます!!」

 

専用機以外の生徒は、打鉄を身につけ、住民の避難、怪我人の保護、搬送、治療補助にあたる。

 

千冬「みんな、気を抜くんじゃないぞ!!」

 

専用機一同「はいっ!!!」

 

山田先生「来ました!!」

 

クラリッサ「隊長、私も加勢します!!」

 

専用機持ちは天使や悪魔を食い止める役目に回る。

 

一夏「みんな、こいつらの中には人が入ってるが、躊躇うな!!」

 

鈴「わかってる!!」

 

ビリー「犠牲者を減らすには仕方ねえ!!」

 

次々と襲い来る天使や悪魔を薙ぎ払う。

 

箒「この数、きりがないぞ!」

 

弾「倒しても倒しても出てきやがるぜ!」

 

ラウラ「一体どうすれば・・・。」

 

楯無「一夏君、こいつらの発生源を断つ以外打開策はないわよ!!」

 

虚「私もそう思います!!」

 

一夏「・・・・やはり、エクトルとアルゴスを止めなければならないのか。」

 

一夏は躊躇いを見せる。

 

千冬「一夏、行ってこい!!」

 

一夏「姉さん!?」

 

クラリッサ「ここは私達にお任せを!!」

 

一夏「わかりました!!」

 

一夏は一人で向かおうとすると、

 

山田先生「織斑君、私もエクトル君のところに行きます!!」

 

一夏「山田先生!?」

 

セシリア「お待ちください!!私も行きますわ!!」

 

弾「いくらお前でも、一人で行くのは危険だ!」

 

シャルロット「僕も行く!!」

 

箒「私もだ!」

 

ラウラ「嫁を一人にはしておけない!」

 

ビリー「この状況での嫁宣言はともかく、一夏、俺達もエクトルとアルゴスのダチだ!」

 

鈴「あたし達で二人を説得するのよ一夏!!」

 

レオ「一夏、俺達も行くぞ!!」

 

簪「うん!!」

 

一夏「・・・・みんな。よし、行くぞ!!」

 

一行は急いでプロサナトリスへと向かった。

 



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聖域強行突破

プロサナトリスにつくと、その空間は以前とはうって変わっていた。

 

あたりは黄金の光が反射し、あちこちに天使の姿が見える。

 

ビリー「おい、あそこを見ろ!!」

 

ビリーが指差す方を見ると、教会には多くの人々がいた。皆白い装束を纏い、石像に向かって祈っている。

 

教皇「今こそ、神の代行者たるエクトル様を信じ、祈るのだ!」

 

信徒「エクトル様、どうか我らを悪魔共からお護りください。」

 

一夏「エクトルが神の代行者だと!?」

 

箒「あの石像・・・。」

 

鈴「顔がまんまエクトルじゃない!」

 

見ると、一夏が夢で見ていた大天使の石像にはなかった顔が付いていた。

それはまさにエクトルだった。

 

弾「エクトルが信仰の対象にされてるってのか?」

 

すると、教皇が一夏達を見つける。

 

教皇「お前達、エクトル様に何の用だ!?」

 

セシリア「皆さん、エクトルさんは一体どういう事に!?」

 

信徒「寄るな!!汚らわしき戦人達め!!」

 

信徒「エクトル様は天使達と共に、我らに永遠の安寧をもたらすお方だぞ!!」

 

ビリー「てめえら、その天使達が何してるか知ってんのか!?」

 

箒「戦争を引き起こすことが、安寧をもたらす者の行うことか!?」

 

教皇「黙れ!!これは我らが秩序のための聖戦であるぞ!!」

 

レオ「おいおいおいおい、聖戦なら仲間が死んでもいいってのかよ?」

 

簪「それじゃ戦前の日本と変わりないわね。」

 

教皇「むむむ、エクトル様を侮辱するとは、許せん!!行け天使達よ!!」

 

弾「来るぞ!!」

 

何機もの天使達が襲いかかる。

 

一夏「ラウラ、弾と連携して足止めを頼む。」

 

ラウラ・弾「わかった!!」

 

ラウラがAICを発動し、停止の後にワイヤーブレードと、弾の魔葬鎖刃で絡め取る。

 

一夏「セシリア、シャルロット、レオ、弾とラウラの後ろから奴らを迎撃してくれ!」

 

セシリア「わかりましたわ!」

 

シャルロット「任せて一夏!!」

 

レオ「よっしゃ、狙い撃ちだぜ!!」

 

セシリアはスターライトmkIIIとミサイルで狙い撃ち、シャルロットとレオはフルオート弾幕で牽制する。

 

一夏「箒、鈴、ビリー、簪、俺たちで前に出るぞ!!」

 

箒「ああ!!」

 

鈴「行くわよ!!」

 

ビリー「暴れまくるぜ!」

 

簪「任せてよリーダー!!」

 

一夏、箒、鈴、ビリー、簪は得意の接近戦で前に出る。

 

多少苦戦はしたが、何とか天使達を倒した。

 

教皇「バカな!?聖なる天使達が、こんな者達に!?」

 

一夏「さて、エクトルのところに行かせてもらうぞ。」

 

教皇「バカめ、貴様達はエクトル様の裁きの前に消え去るのだ!」

 

教皇と信徒達はそそくさと逃げていった。

 

一同は大聖堂の巨大な扉の前に立つ。

 

ラウラ「どうやらここにエクトルがいるみたいだな。」

 

弾「ここに入れば、エクトルが。」ゴクリ

 

箒「一夏、大丈夫か?」

 

一夏「ああ、心の準備はできている。」

 

ビリー「じゃあ突入といくか!!」

 

大聖堂の扉を開け、一同は中に入る。

 



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神の代行者

大聖堂の中に入ると、奥にエクトルがケイローンを身に付けて立っていた。

 

エクトル「待っていたよ一夏、それに皆も。」

 

一夏「・・・・エクトル。」

 

エクトル「天使から聞いたよ。その身体、創造主クラストの力を宿したんだろう?」

 

箒「エクトル・・・。」

 

エクトル「一夏、やはり君も己の信念を貫く事を選んだんだね。その力を肉体に宿しここへ来たということは、

僕の慈愛に満ちた秩序・安寧を拒むつもりかい?」

 

セシリア「エクトルさん・・・、何をおっしゃってますの?」

 

山田先生「エクトル君、織斑君はあなたを説得しに来たのよ!!」

 

エクトル「真耶さん、あなたは僕より一夏を信じるのですか!?僕は今神に代わって、あなたや一夏達のために

この世の真の平和をもたらそうとしている!何故それがわからない!?」

 

エクトルは普段見ない表情で声を荒げる。

 

山田先生「っ!?」

 

ビリー「エクトル、てめえ今の事態わかってんのか!?」

 

鈴「アンタとアルゴスのおかげでIS学園どころか、世界中が大変な事になってんのよ!!」

 

エクトル「君達が僕と共にアルゴスと堕天使達を倒せばこんな事にはならなかったと思うが。」

 

弾「・・・・そんな事できるかよ。」

 

レオ「なあ、エクトル、アルゴスは堕天使達の仲間かどうかと言う以前に、俺たちの友達だろ?」

 

簪「エクトル、お願いだから目を覚まして!!」

 

必死に説得するも、エクトルは微動だにしない。

 

エクトル「どうやらここまでのようだな。残念だが一夏、君も所詮は下等な生まれの人間に過ぎなかったようだな。

選ばれし者同士、決着を着けよう!神の意志と、君が抱く信念、どちらが勝るか!」

 

一夏「・・・ああ、そうしようエクトル!!」

 

すると、突然エクトルの体が光り輝き出した。

 

エクトル「見るがいい!!神の代行者の力を宿し我の姿を!我はもう、エクトルなる人の子を超えたのだ!!」

 

みるみるうちにケイローンは形態を変え、そして、エクトル自身の姿も変わっていった。

 

一夏「エクトル、お前。」

 

山田先生「エクトル君!!」

 

エクトルの三つ編みの髪は解け、エメラルド色だった目の虹彩は、

心を射抜くような鋭い金色となり、瞳孔が消えた。

そして、エクトルの背中には6枚の黄金の翼が生えた。

 

「我は、神の裁きの代行者、煌天使(こうてんし)セラフィエル。新たなる世界の秩序・安寧のために、汝ら汚れを我が光の前に消し去ってくれる!」

 

一夏「皆、気をつけろ!!!」

 

セラフィエルの攻撃が始まる。それは瞬く間に一夏達にダメージを与えた。

 

弾「ぐわっ!!絶対防御システムが効かねえぞ!」

 

セシリア「くっ、なんて凄まじい力!!」

 

箒「しかも、この痛みは!!」

 

普段はISの戦闘においては絶対防御のシステムにより、パイロットが命の危機にさらされることは殆どない。

しかし、一夏達の体には、傷が。

 

セラフィエル「無駄だ!!神より出でし我が力は、いかなるものでも阻むことはできぬ!!」

 

レオ「ゲホッ、こりゃいよいよ命懸けだ。」

 

レオは腹部に衝撃を受け、吐血する。

 

簪「レオ、大丈夫!?」

 

レオ「大丈夫だ!」

 

鈴「それなら攻撃あるのみよ!!」

 

鈴はセラフィエルに衝撃砲を放つ。

しかし、セラフィエルは一瞬で衝撃砲を消し去った。

 

鈴「嘘、全然効いてない!?」

 

シャルロット「これならどうかな?」

 

シャルロットがアサルトライフルの攻撃を命中させるも、機体には傷一つ付かない。

 

セラフィエル「そのようなものでは、神に授かりし我が肉体を貫くことなどできぬ!!」

 

ビリー「冗談じゃねえよ!!」

 

ビリーはなり振り構わずデルタライガーでガンガン叩きまくるが、

 

ビリー「ゲッ!?武器がイカれた!」

 

デルタライガーが一部破損する。

 

箒「馬鹿な!?元は同じISなのに、なぜ武器が効かない!?」

 

赤椿の雨月、空裂も刃こぼれが生じる。

 

セラフィエル「今度はこちらの番だ!裁きの光を受けよ!!」

 

セラフィエルの翼からエネルギー波動が発せられる。

 

セシリア「ミサイルで止めます!!」

 

ブルーティアーズのミサイルが当たるも、全く消えなかった。

 

一夏「皆、俺の後ろに来い!!」

 

一夏は白鋼で波動を受け止め、波動を消し去る。

 

ラウラ「一夏、大丈夫か!?」

 

一夏「心配ない!!」

 

一夏には殆ど傷がない。白式の肉体治癒の効果に加え、今の一夏には神に対抗できる創造主の力が備わっているからだ。

 

弾「どうにかして奴の弱点を見つけねえと!!」

 

レオ「でもよ、攻撃が全く効かないんだぜ!」

 

山田先生「とにかく色々やってみましょう!!」

 

一夏「ああ、煌天使とはいえ、ISに過ぎない!これでも食らえ!!」

 

一夏はセラフィエルに白影剣や零落白夜光を放つ。

すると、ほんの僅かだがセラフィエルにダメージが見られた。

 

セラフィエル「ぐっ、流石は創造主の力!!」

 

簪「ここは一夏を中心に攻めるべきね。」

 

一夏「箒、絢爛舞踏を頼む!」

 

箒「ああ、任せろ!!」

 

箒は絢爛舞踏で白式のエネルギーを増幅する。

 

シャルロット「僕らは箒にセラフィエルの攻撃が及ばないよう足止めだね!」

 

ラウラ「ああ、皆、一夏と箒を守れ!!」

 

一同「おう!(はい!)(うん!)」

 

一夏と箒を中心に、セラフィエルとの攻防は続く。

 

セラフィエル「・・・まだ倒れぬか。流石は創造主の力を宿し人の子。汝らに問う、神の絶対なる秩序に背き、且つ冥王の支配にも抗う。あまりに過酷なこの戦いを、誰がために、何のために行うのか?」

 

一夏「確かに、いつの時代でも人間は不完全で愚かで弱い者だ。でも、だからこそ人はどこまでも変わっていける!!

どこまでも強くなれる!!この戦いを行うのも、その信念を貫き、己の大切な人々を守りたいがためだ!!」

 

箒「女尊男卑の今の世でも、一夏は人を信じている!」

 

セシリア「私が殿方に対する考えを変えられたのも、一夏さんのお陰です!!」

 

鈴「だからあたし達も頑張れるのよ!!」

 

シャルロット「一夏はどんな人もありのままに受け入れる心を持ってる!!」

 

ラウラ「一夏の強さは力だけではない!!」

 

弾「どこまでも仲間を信じる心が、俺たちも強くしてくれるんだぜ!!」

 

ビリー「だからこそ、セラフィエル、エクトルをてめえから救うんだよ!!」

 

山田先生「あなたにとってエクトル君は神に相応しい人でも、私にとってはかけがえのない、愛すべき人よ!」

 

レオ「秩序とか安寧とか導きとか、偉そうな事は、誰か一人でも幸せにできてから言うもんだぜ!!」

 

簪「エクトル、今助けるからね!私達はあなたを信じてる!!」

 

セラフィエル「汝らは汚れし人の子の希望の光にでもなったと言うのか?

ならばその決意、我に示せ!!」

 

セラフィエルはアルテミスから無数の矢を放つ。

一夏は白影剣を飛ばし、矢を撃ち落とす。

 

一夏「食らええええぇぇぇーっ!!」

 

一夏は白式のほぼ全エネルギーを雪片弐型に込め、零落白夜を叩き込んだ。

 

切り裂かれた部分からは、ケイローンの一部が露出する。

 

セラフィエル「馬鹿な!?」

 

一夏「皆、あの部分を攻撃しろ!!恐らくセラフィエルはエクトルとケイローンを宿主にしている筈だ!!」

 

ラウラ「わかった!!皆、総攻撃だ!!」

 

一夏以外の皆はありったけの攻撃をその部分に命中させる。

 

破壊した部分からエクトルの姿が見えた。

 

一夏「弾、ラウラ、セラフィエルの動きを封じてくれ!!」

 

弾・ラウラ「任せろ!」

 

弾の魔葬鎖刃、ラウラのワイヤーブレードがセラフィエルをがんじがらめにする。

 

一夏「待ってろよエクトル、今出してやる!!」

 

一夏はエクトルの身体を抱え、引きちぎるようにセラフィエルから救出し、山田先生に預ける。

 

山田先生「エクトル君!!」

 

山田先生はエクトルに必死に声をかける。

 

エクトル「・・・・ま、や、さん。」

 

エクトルは元の表情に戻っていた。

 

セラフィエル「何故だ!?我は、神の代行者なるぞ!何故、人の子らに敗れた!?」

 

エクトルとケイローンを失ったことで、セラフィエルの全身が消滅し始める。

 

一夏「ISは神のものでも、悪魔のものでもない、人間のものだ!!貴様らにはわからないだろうがな。」

 

セラフィエル「ぐぬぬ、だが忘れるな!!人は過ちを繰り返す、その時こそ再び我は蘇る!!」

 

一同「・・・・・。」

 

セラフィエルは炎が燃え尽きるかの如く、消滅していった・・・・・。

 

 

 

 

 



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冥王との戦いへ

セラフィエルを倒し、エクトルを救出した一夏達は、急いでIS学園に戻り、エクトルを医務室へと運んだ。

現状では、セラフィエルが消滅したことにより、天使が激減し、悪魔の方が優勢になっている。

 

千冬「皆、無事だったようだな!!」

 

一夏「はい!それよりエクトルの手当てを!!」

 

エクトルを医務室のベッドに寝かせ、治療が施される。

 

ふと、一夏は医務室を出ようとする。

 

ビリー「おい一夏、どこ行くんだよ?」

 

一夏「アルゴスのところに行く。皆はここで休んでてくれ。」

 

シャルロット「待ってよ一夏、一人で行く気!?」

 

箒「一夏、お前も休んだ方が」

 

一夏「アルゴスも早く止めないと、セラフィエルを倒したことで悪魔の方が優勢になってるからな。

俺はもう身体が十分回復してる。」

 

弾「おい一夏、気は確かか?」

 

セシリア「さっきあれほど激しい戦いが終わったばかりなのに。」

 

ラウラ「今度はたった一人で行く気か?」

 

鈴「セラフィエルだって皆で戦って苦労したのに、無茶よ!」

 

皆が心配そうにする。

 

一夏「心配するな。アルゴスも必ず連れて帰る。皆は治療と救助に専念してくれ。特に、山田先生はエクトルのそばにいるべきだ。」

 

山田先生「織斑君・・・・。」

 

千冬「まったく、どこまでも無茶な弟だ。いいだろう、ただし、必ず生きて戻ってこい!!」

 

一夏「はい!!」

 

一夏が医務室を出ようとすると、

 

エクトル「・・・夏、一・・・夏、」

 

皆「!?」

 

エクトルは意識を取り戻した。

 

山田先生「エクトル君!!よかった、よかった!!」

 

エクトル「一夏、アルゴスのところに行くのなら、これを持っていってほしい。」

 

エクトルは待機状態のケイローンを指から外し、一夏に託す。

 

一夏「これはお前の」

 

エクトル「いいんだ、加勢しようにも、僕はこの通りだし、せめてこれくらいの協力はさせてくれ。」

 

一夏「・・・・ああ、わかった!」

 

一夏は左手指にケイローンをはめる。

 

一夏「じゃあな皆、行ってくる!!」

 

一同「おう!(はい!)」

 

一夏はいざ、単身グリモヴァールに向かった。

 

 

Sideエクトル

 

千冬「よし、専用機諸君、救助に向かうぞ!!」

 

一同「はい!!」

 

エクトルと共にしばらく休んでいた専用機一同は、救助へと向かう。

 

千冬「山田先生は残ってベレンの看病をする様に。」

 

山田先生「はい!」

 

医務室は、エクトルと山田先生の二人だけになった。

 

山田先生「・・・・・・。」

 

エクトル「・・・・真耶さん、その」

 

山田先生「っ!!」

 

パァン!!乾いた音が医務室に響く。

山田先生はエクトルの顔に平手打ちをした。

 

エクトル「!?」

 

山田先生「エクトル君の馬鹿ー!!どれだけ心配したと思ってるの!?」

 

いつになく大声で叫ぶ山田先生。

 

山田先生「あなた、恋人を残して行くなんて、男の風上にも置けないわよ!!

神の代行者とか、導きなんかより、今いる大切な人を幸せにする方がよっぽど立派でしょ!!!」

 

エクトル「・・・・すみません。」

 

山田先生「でも、生きててよかった!本当によかった!!」

 

山田先生はエクトルを思い切り抱きしめる。

 

エクトル「・・・・・。」

 

エクトルは山田先生の胸の中で涙を流し、これまでの自分を思い返す。

 

エクトル「(僕は今まで何を追っていたんだろう、何を求めていたんだろう?目の前に確かな愛があるのに。

きっと僕は幻を追っていたのかもしれない。神の導きも、冥王の支配も、所詮は空想の産物に過ぎなかったのだ・・・。

僕が求める導きは、こういう人を幸せにするものなのだ!それなのに、それなのに、僕は・・・!!)」

 

エクトル「山田先生、被害の方は。」

 

山田先生「怪我人こそ多く出たけど、死者は一人もいないわ。学園の皆が人々を守ったのよ。」

 

エクトル「そうですか、そんな彼らを、僕は・・・。」

 

山田先生「織斑君はこう言ってたわ、『この事態はエクトルやアルゴスのせいじゃない。二人を幻惑した邪悪なる者たちの仕業だ。どんな事があっても、俺は二人を信じる!!』ってね。」

 

エクトル「一夏、やっぱり僕もアルゴスも、君には敵わないようだね、こんな僕も、アルゴスも、友と信じてくれているなんて。」

 

エクトルは一夏が自身の理想を遥かに超えた存在と実感したからか、少し明るさを取り戻した。

 

山田先生「織斑君は今頃アルゴス君と戦っているわ。織斑君とアルゴス君の無事を祈りましょう。」

 

エクトル「はい!!」

 

そして、二人はまた抱き合い、キスを交わす。束の間の愛し合う時が流れた。

 

 

Side専用機一同

 

箒「せやああっ!!」

 

弾「食らえ!!」

 

ビリー「おらああぁぁっ!!」

 

鈴「皆、こっちに避難して!!」

 

シャルロット「もう大丈夫ですよ!!」

 

ラウラ「クラリッサ、医療班をこっちに!!」

 

専用機一同は現場で悪魔と交戦しながら人々を救助する。

 

ビリー「だーっ!!キリがねえぞ!」

 

鈴「ホント、こいつらゾンビ以上よ!!」

 

箒「斬っても斬っても湧き出てくる!!」

 

箒、鈴、ビリーは前線で悪魔達をなぎ倒すが、冥王の存在からか、不死身同然である。

少し休んだとはいえ、スタミナが大幅に削られ、疲労が半端ない。

事態は緊迫した状態である。

 

 

Side一夏

 

一夏は単身グリモヴァールに行き、レクトラートへと向かう。

 

一夏「アルゴス、待ってろよ!!」

 

レクトラートのふもとに着くと、そこには悪魔の軍勢が。

 

一夏「チッ、こっちは今急いでいるのに!!」

 

一夏は次々と襲い来る悪魔を斬りつけ、倒していく。

 

「ほう、さすがは冥王様が見込んだ人の子だ。」

 

一夏「!?何者だ!」

 

声のする方を向くと、そこには巨大な三頭犬がいた。

 

「我は、冥界の番犬ケルベロス!!創造主の力を身に宿し人の子よ。冥王様には指一本触れさせぬ!!」

 

一夏「こんな犬をペット従えるとは、冥王はとんでもない飼い主だな。」

 

一夏はケルベロスを挑発する。

 

ケルベロス「貴様、我や冥王様を侮辱するとは!!冥界の獄炎で焼き尽くしてくれる!!」

 

一夏「来いよ!!」

 

ケルベロスが炎を吐く。

 

一夏「熱い!!でもなんとか前に出るぞ!」

 

一夏は雪片弐型で炎を振り払いながらケルベロスに接近する。

 

ケルベロスは一夏に果敢に体当たりを食らわすが、一夏はひるまずに立ち向かい、雪片弐型でケルベロスの3つの首を全て

斬り落とした。

 

ケルベロス「ぬあっ!!」

 

一夏「そっちが地獄の炎なら、こっちは友情の炎だ!!」

 

ケルベロス「ぐぬぬ、流石だな、だが、貴様では冥王様を倒すことは出来ぬ!!ここが貴様の死に場所となるのだ!!」

 

首を斬られたケルベロスの体は、炎と共に消滅していった。

一夏はレクトラートのエレベーターに乗り、そして、最上階に着いた・・・・。

 



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対決!一夏VS冥王

レクトラートの屋上には、セイリオスを身に纏ったアルゴスが立っていた。

 

一夏「・・・・待たせたな、アルゴス。」

 

アルゴス「一夏、やはりお前も、自分の信念を貫き通す事を選んだようだな。

悪魔共から聞いたぜ、神の代行者を倒したんだってな。んで、今度は冥王に挑む気か?」

 

一夏「・・・・・ああ。そうする事で再び世界のバランスを戻す。」

 

アルゴス「よせよ一夏、秩序やバランスは崩されるためにあるようなもんだ。人間の本能の化身である悪魔を統べる冥王に、お前が勝てるわけがない。

創造主とやらがどれ程のものか知らねえが、俺はお前にだけは死んでもらいたくないんだ!」

 

一夏「死ぬ気はさらさらねえよ。だが、俺はお前を止めなければならない!!」

 

一夏は身構えた。

 

アルゴス「・・・・何を言ってもムダってことか。残念だな、友であるお前に、この力をふるう事になるとは!!」

 

一夏「・・・・アルゴス!!」

 

アルゴスは突然頭を抱え出した。

 

アルゴス「はっ、がっ、ぐああああぁぁぁぁ!!」

 

アルゴスの逆立てた髪は完全なオールバックになり、二本の長い角が頭に伸び、肌は灰色になる。

碧眼だった彼の虹彩は、凍り付くようなく白銀となった。

そして、背中からは6枚の禍々しい銀の翼が生えた。

 

「・・・・我は、冥王ルシフェウス!!完全なる自由と支配を拒む愚かな人の子よ。

創造主クラストとともに砕け散るがよい!!」

 

一夏「来い!」

 

一夏はルシフェウスに斬りかかる。イグニッションブーストで間合いを詰めるも、

ルシフェウスは素早く拳を突き出し、一夏に叩き込む。

その後、連続でキックを連発する。

 

一夏「ぐはっ!!」

 

一夏は強烈な拳と蹴りを喰らい、口から血が流れ出た。

胸からは焼けるような痛みが走る。

 

一夏「(こりゃ肋骨何本かいったかもな。)」

 

ルシフェウス「どうした、それで終わりか?」

 

一夏「うるさい!零落白夜光!!」

 

零落白夜光を放つが、命中した瞬間、そのまま自分に跳ね返ってきた。

 

一夏「ぐわっ!!」

 

ルシフェウス「愚かな。冥王の鎧を、ただの人の子の武器で砕けるとでも思っていたのか!?」

 

一夏「なら、白影剣!!」

 

白影剣を放つが、ルシフェウスの鎧を貫くことはできなかった。

 

一夏「畜生!!どうすれば!?」

 

ルシフェウス「ならば今度は我が行くぞ!!」

 

ルシフェウスは再び間合いを詰め、一夏を拳や蹴りでなぶり殺しにする。

 

一夏「ぐふっ!!ゴフッ!!」

 

ルシフェウス「とどめだ!!」

 

ルシフェウスは両腕から禍々しいエネルギーの波動を放つ。

 

一夏「白鋼で受け止めるぜ!!」

 

波動を受け止めた瞬間、白鋼は砕け散った。

そして、それと共に一夏の左腕が千切れて吹き飛んだ。

 

一夏「うああああっ!腕がっ、腕があああぁぁぁぁっ!!」

 

片腕を失い、一夏はそのまま地面に叩きつけられた。

 

 

Side専用機一同

 

千冬「このままでは埒があかない。専用機持ちは全員織斑の所に向かえ!!」

 

箒「先生、ですが、」

 

弾「救助の方は」

 

千冬「ここは私たちに任せろ、早く行け!!」

 

セシリア「・・・・わかりましたわ!」

 

シャルロット「行ってきます!」

 

ラウラ「クラリッサ、ここを頼むぞ!!」

 

クラリッサ「はい、隊長!!」

 

一行は一夏とアルゴスの元へ急ぐ。

 

 

Side一夏

 

一夏「くっそおおぉーっ!!」

 

片腕でもなんとか応戦する一夏。しかし、今度は

 

アルゴス「どうした創造主よ、もう終わりか?」

 

一夏「・・・・終わるのは、俺が死ぬ時だ!!」

 

効かないとわかっていながら、一夏はなおも雪片弐型で斬りまくる。

 

アルゴス「今一度汝に問う。神の代行者の秩序・導きを拒み、且つ我の理想たる支配・自由も望まない。

それでは汝は一体何を望んでいるのだ?」

 

血だるまになりながらも、一夏は答える。

 

一夏「ゴフッ・・・確かに、俺たち人間は生きる目的や方向を見失いがちだ。それに、何を信条とするかも違う。だが、どれほどの違いや隔たりがあっても、人はこの地球で共に生きてきたんだ!!例えどんなに過酷でも、俺は人間の善を、そして、友情を信じる!!故に、お前からアルゴスを救い出す!!」

 

ルシフェウス「愚かな、もはや貴様の力では我は倒れん!!アルゴスはとうに我との契約により死したのだ!!」

 

声「そいつはどうかな?」

 

一夏「!?」

 

見ると、そこには一夏が信じる仲間たちがいた。

 

ビリー「一夏、俺たちが来たからにはもう安心だぜ!!」

 

鈴「待ってて、今行くから!!」

 

ラウラ「ここは私たちに任せろ!!」

 

 

ビリー、鈴、ラウラは一夏の前に出る。

 

レオ「これが、アルゴスの手にした力なのか!?」

 

簪「これが、冥王・・・。」

 

弾「さっき俺らは神の代行者にも勝てたんだぜ!今更ビビったりしねえよ!!」

 

箒「一夏、お前の信念、しかと見せてもらったぞ!!」

 

セシリア「一夏さん、ああなんてひどい怪我を!!一先ず手当しなくては!!」

 

シャルロット「僕らがなんとかルシフェウスを止めるから!!」

 

一夏は箒の元へ行き、箒の絢爛舞踏で白式を回復させる。

 

その間、他の者はルシフェウスを多方向から攻撃する。

 

一夏「皆、まって、ろ、ガフッ!!」

 

箒「一夏、あまり喋らないほうがいいぞ!」

 

一夏「ほう、き・・・俺の、左腕を取ってくれ。」

 

箒「!?」

 

箒は落ちている一夏の左腕を見て驚愕する。

 

箒「一夏、お前、まだ戦う気なのか!?」

 

一夏「大丈夫だ、あれには、エクトルに託されたものがある。だから、取ってくれ。」

 

箒「・・・・わかった。」

 

箒は千切れた一夏の左腕を一夏のところに持っていく。すると、

 

箒「!?」

 

突然、一夏の左腕が光り輝き、同時に一夏の胴体に元どおりくっついた。

そして、左腕から全体にかけて、白式に黄金の筋が入り、零落白夜光の砲身にボウガンのようなものが付いた。

 

一夏「これは、ケイローンが俺に力を!?」

 

一夏は途端に力を取り戻し、ルシフェウスの元に行く。

 

ビリー「ぐはあっ!!」

 

セシリア「ビリーさん!!」

 

弾「ゲホッ!!」

 

鈴「弾!!」

 

ビリー、弾が瞬く間にルシフェウスの蹴りの餌食になる。

 

簪「やっぱり、一夏じゃないと倒せないのかも。」

 

レオ「おい、あれ見ろよ!」

 

シャルロット「一夏!?」

 

一夏が戦闘に舞い戻ってきた。その左腕には、ケイローンの力の込められた弓と一体化した砲身が。

 

一夏「ルシフェウス、これでアルゴスの中に巣食う貴様を貫いてやる!!」

 

一夏は雪片弐型をまっすぐ投げ、そこに零落白夜光を放つ。

それは、エクトルのアルテミスの大きな矢の形となって、凄まじい勢いでルシフェウスの胸に突き刺さった。

 

ルシフェウス「ぐぬっ、こ、これは!?」

 

ルシフェウスは身悶えする。

 

ルシフェウス「さすがは創造主と神の代行者の力、だがもう遅い。アルゴスは既に死した!!」

 

ラウラ「いいや、アルゴスは死んでいない!!」

 

鈴「あたし達がアルゴスを信じる限りね!!」

 

ルシフェウス「ほざけ、こうなれば貴様らだけでも始末してくれるわ!!」

 

弾「来るぞ!!」

 

シャルロット「アルゴス、僕たちの声が聞こえたら返事をして!!」

 

ルシフェウス「黙れ、これで終わ・・・・あ、がっ!?」

 

ルシフェウスは突如動きを止める。

 

レオ「奴の様子が変だぞ!?」

 

簪「見て、あいつの顔が!!」

 

ルシフェウスの顔の半分に亀裂が入り、崩れてきている。

 

ルシフェウス「うご、おご、うあああぁぁぁっ!!」

 

ルシフェウスは顔を押さえながら悶える。

 

ルシフェウス「何故だ!?貴様は我との契約によって死を遂げたはず!!何故まだ生きている!?」

 

ルシフェウスの顔を押さえた手が、無理やり引っ張られるかのように離れる。

押さえていた顔の部分は完全に崩れ、崩れたその中には・・・・

 

箒「!?、あの顔は!?」

 

一夏「アルゴス!!」

 

ルシフェウスの崩れた顔の部分から、本来のアルゴスの顔の一部が露出している。

 

アルゴス「一夏、それにお前ら、早く俺を抹殺しろ!!」

 

ルシフェウス「だ、黙れ、貴様は引っ込んでいろ。」

 

アルゴス「俺は何をしていたんだ、一夏、俺はお前と同じように、今の女尊男卑の世を変えていこうと、それを執念に生きていた。俺はいつも、人に認めてもらうには絶対なる力が必要と考えていた。だから俺は冥王の支配の力を・・・。」

 

一夏「アルゴス・・・・・。」

 

アルゴス「でも、それは間違っていた。俺は支配欲で自己を見失い、守るべきものを捨てていた!

大切なお前らとの友情、絆、そして、共に日々を過ごした思い出を!!」

 

ルシフェウス「黙れというのが聞こえぬのか!?」

 

アルゴス「皆、俺に構わずルシフェウスを殺せ!!」

 

一夏「皆、今がチャンスだ!!全員でルシフェウスを抑えろ!」

 

一同「了解!!」

 

弾、ラウラがそれぞれの武器でルシフェウスの足元をがんじがらめにする。

 

ルシフェウス「やめろ、くるなああぁぁ!!」

 

箒、簪がルシフェウスの両腕を抑え、ビリー、鈴がルシフェウスの左右の翼を捉える。

 

ルシフェウス「離せ、離さぬか!!」

 

セシリアとシャルロットがガラ空きになった腹部と背中を狙撃する。

 

ルシフェウス「うごおおぉぉぉ!!」

 

ルシフェウスの身体の半分近くが崩れ、アルゴスの肉体が出る。

 

一夏「アルゴス、捕まれ!!」

 

アルゴス「ああ!!」

 

アルゴスはルシフェウスから抜け出した右腕を一夏の方に伸ばし、一夏はそれをつかみ、ルシフェウスとアルゴスを引きちぎらんと言わんばかりに引っ張っていく。

 

ルシフェウス「まさか、死した契約者が再び我から肉体を取り戻すとは!!」

 

アルゴスはルシフェウスから完全に抜け出すと、すぐさまセイリオスを展開する。

 

一夏「アルゴス、決めろ!!お前自身の光で冥王を撃ち砕け!!」

 

アルゴス「ああ、いくぜ!テロス・フラス!!」

 

アルゴスの凄まじい波動が、ルシフェウスを飲み込む。

 

ルシフェウス「ぐおぉぉぉ!!・・・またしても我は堕天するか、だが忘れるな!!例え創造主がいようとも、人は同じ過ちを、歴史を繰り返す。

その時が来れば、再び我が降臨することを!!!」

 

ルシフェウスは老朽化した建物のように崩れ去っていった。

 

 



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事件後

ルシフェウスを倒し、アルゴスを救出した一行は、急いでIS学園へと戻っていく。一夏とアルゴスは重傷と疲労のため、他のみんなに肩を貸してもらっている。

 

一夏「ゴフッ、すまないな二人とも。」

 

一夏は弾と鈴に肩を貸してもらっている。

 

弾「何言ってんだよ。」

 

鈴「全く、無茶しすぎよ。」

 

一方、アルゴスはビリーとシャルロットに肩を貸してもらっている。

 

ビリー「アルゴス、てめえも随分とやられたな。」

 

アルゴス「・・・・・ああ。」

 

シャルロット「戻ったら、エクトルのところに行こうね。」

 

一行は重傷の2人を連れて元の世界に帰った。

 

 

Side千冬

 

クラリッサ「織斑教官、悪魔の動きに変化が!!」

 

千冬「!?」

 

見ると、悪魔の動きが鈍ってきているのがわかる。

 

千冬「一夏・・・、やったのだな。無事だといいが・・・。」

 

虚「織斑先生!!全員救出できました!!」

 

楯無「こっちも悪魔の掃討完了です!!」

 

千冬「よし!各自負傷者の治療にあたれ!!」

 

千冬はクラリッサ、楯無、虚と共に学園に向かった。

 

 

そして、月日が流れ・・・・

 

 

TV「ISによるテロ紛争から2週間が経ちました。IS学園の周辺をはじめ、世界各地でISの無人機の被害にあった場所の復興はまだまだ先になりそうです。」

 

一夏、エクトル、アルゴス「・・・・・。」

 

事件終結後、一夏、エクトル、アルゴスは一夏の実家での療養を余儀なくされていた。3人とも意識こそ正常になったが、

その肉体は以前のように元には戻らなかった。3人の背中にはそれぞれ未だに翼が生えており、

各々の肉体にはクラスト、セラフィエル、ルシフェウスの力が宿ったままだ。

幸いこの事や、事件当時の真相は伏せられており、エクトルとアルゴスの処遇については、全面的にIS学園に任せられる事になった。

 

 

そんなある日、3人はお互い一緒の部屋にいるものの、どこかお互い気まずいながらもテレビを見ていた。

 

 

一夏「・・・なあ、二人とも。」

 

エクトル・アルゴス「うん?」

 

一夏「・・・何か俺、二人に悪い事したな。」

 

エクトルとアルゴスは首をかしげる。

 

一夏「俺は自分なりに今の女尊男卑を変えるべく、お前らや弾達のような仲間を望んだんだ。

でも、こんな事になってしまって、俺のやった事は、間違いだったのかな?」

 

エクトル「一夏、君は間違っていないよ。君のおかげで僕は真耶さんに出会えたし。」

 

アルゴス「ここまでの事起こしといて何だけどよ、俺、一夏達とIS学園に通えて、凄く楽しいぜ。」

 

一夏「・・・お前ら。」

 

エクトル「お互い、人間からは少し離れてしまってるけど、これからもよろしく。」

 

アルゴス「もう金輪際亡国機業のような連中とは関わらないようにするぜ。」

 

一夏「ああ、それが一番だ!!二人ともありがとう!!」

 

3人はお互いの右手を出し、重ね合わせる。

 

 

Side IS学園

 

アリーナでは今回の事件について話すため、緊急集会が行われている。

 

弾「しっかし、この間も凄え大変だったな。」

 

箒「あの後しばらく疲労が抜けなかったぞ。」

 

鈴「そりゃあ、言ってみればあたし達戦争に行ったようなもんよ。」

 

レオ「まったくだぜ!」

 

セシリア「3人ともご無事でよかったですわ。」

 

ビリー「それにしても、あいつらが学園にいないと何か違うよな。」

 

簪「エクトルとアルゴス、仲直りできてるといいな。」

 

シャルロット「あの二人は、一夏がいれば大丈夫だよ。」

 

ラウラ「私もそう思う。どこまでも偏る事のない一夏だからこそ、セラフィエルとルシフェウスを倒すことができたのだな。」

 

一同はどこまでも偏りない一夏の心に感服していた。

 

千冬「諸君、先日はご苦労だった。あの3人についてだが・・・。」

 

ここから彼らの居場所と心の復興が進むであろう。

 



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戻ってきた日常

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・・。」

 

一定期間の自宅療養を終えて、彼らはIS学園に戻ってきた。

どこかぎこちない様子ではあるが。

そして、一年一組のドアまで来る。

 

エクトル「・・・何か、入りづらいなあ。」

 

アルゴス「最悪、俺達嫌われてるかもよ。」

 

一夏「でも、いつかはちゃんと話さなきゃいけない事だからな。」

 

ふと、担任の千冬の声が聞こえる。

 

千冬「織斑、ベレン、イリアディス、入れ。」

 

深呼吸し、教室に入る。

 

一組専用機一同「・・・。」

 

一組のクラスメート「っ!?」

 

クラスメイト達は人間から離れた3人の姿を見て驚く。

 

エクトル「・・・皆、その・・・心配をかけて申し訳ない。」

 

アルゴス「俺達、普通の人間じゃ無くなってしまったけど・・・。」

 

谷本「3人とも、背中に翼があるのは、飾りじゃないんだよね?」

 

一夏「・・・ああ。俺達は世界のあり方を示す3要素を司る力を肉体に宿すことになったんだ。」

 

鷹月「世界のあり方・・・。」

 

千冬「ベレンは人間に知識と秩序を示す『導き』。イリアディスは人間の自由意思とその影響力を醸し出す『支配』。

そして織斑は全てを総括する『調和』だ。」

 

エクトル「皆、本当にすまなかった!!僕は一夏やアルゴスと対立し、戦争を起こしてしまった!」

 

アルゴス「俺らのせいでみんなには命に関わる事態に巻き込んでしまった!皆のための理想を抱いたつもりが、いつの間にか皆を傷つけてしまうとはな。」

 

のほほん「エックー、アルアル、大丈夫だよ。」

 

エクトル・アルゴス「・・・本音。」

 

のほほん「二人もおりむーとおんなじように、女尊男卑をよくしたいと思ったんだよね?

おりむー達のお陰でこの学校が楽しくなったのは間違いないよー。」

 

一夏「・・・本音。」

 

弾「実際、俺らはお前らのお陰でこの学園に居られるしな。なあレオ、ビリー。」

 

ビリー「全くその通りだぜ!」

 

レオ「お前らがいなきゃ、俺は簪と出会うことはなかっただろうからな。」

 

箒「一夏、エクトル、アルゴス、女尊男卑をよくするのは実際大変だ。だが、」

 

セシリア「あなた達のお陰でよくなった事も沢山ございますのよ。」

 

シャルロット「僕達だって、時々道を外れそうになるけど、でも、みんなでいれば大丈夫だよ!」

 

ラウラ「何があろうとも、私は嫁である一夏と、友であるエクトルとアルゴスを信じる!」

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・皆。」

 

3人は目頭が熱くなっていくのが感じられた。

 

女子生徒「翼がある3人もカッコいいよ!!」

 

女子生徒「また私達にIS教えてほしいな!」

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・皆、ありがとう!!」

 

3人は改めて、互いに向き合い、絆を取り戻したように手を重ねる。

 

 

それから数日後・・・。

 

束「ヤッホー!!ちーちゃーん!無事でよかフグッ!!」

 

束は顔面を鷲掴みにされる。

 

千冬「いいからさっさと例の物を3人に渡せ。」ギリギリ

 

束「ふぁい。」

 

箒「はあ・・・。」

 

 

束「ジャジャーン!!これがいっくんとエッくん、アルくんへのプレゼントだよ!」

 

見ると、それはマイクロチップのようなものだった。

 

一夏「束さん、これは?」

 

束「これは、『トランスリミッター』なのだよ!」

 

アルゴス「トランスリミッター?」

 

束「うん。3人ともずっとそのカッコだとお外に出づらいでしょー?」

 

エクトル「ええ、まあ。」

 

3人とも瞳孔の色が普段と違う上に、背中に翼がある状態では目立って仕方がない。

 

束「これがあれば大丈夫。皆を普通の人間だった時に戻せるのだよ!!」

 

鈴「じゃあ、一夏達は元どおり人間として生きていけるんだ!」

 

千冬「鳳、残念ながら織斑達の力は根絶はできない。だからせめて、コントロール出来るようにならないか束に相談しておいたのだ。」

 

一夏「姉さん、ありがとう!」

 

千冬「織斑先生だ。コホン、まあ姉としては、弟が変貌したままでは困るのでな。」

 

束「でもちーちゃん、この間のいっくんも悪くないって」

 

千冬「束、何か言ったか!?」ギロッ

 

束「な、何でもナッシング!!」

 

箒「コホン、まあ何にせよ普通なのが一番だ。」

 

セシリア「確かに翼がある御三方も素敵ですが。」

 

弾「普通に外を出歩けねえのはかわいそうだしな。」

 

ラウラ「うむ、嫁とのデートを計画しているからな。」

 

箒「ムムッ!いつの間に!?」

 

セシリア「抜け駆けは無しですわ!!」

 

シャルロット「ラウラ、ずるいよ!!」

 

ビリー「一夏の見た目心配する理由はそれかよ。」

 

鈴「ま、わかるけどね。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「ハハハッ。(やっと帰ってきた感じだな。)」

 

いつもの日常が戻ったと感じた3人は思わず笑みがこぼれる。

 

千冬「まあいい、それじゃ頼む。」

 

束「あいあいさー!!」

 

束はトランスリミッターを一夏達の専用機に組み込む。

 

束「じゃあ3人とも、ISを展開してね。」

 

3人は専用機を起動する。すると、

 

「操縦者の肉体は現在リミットブレイク状態。操縦者の肉体還元の意思を確認。」

 

すると、瞳孔が元に戻り、翼が肉体の中に吸い込まれた。

 

レオ「おう、3人ともすっかり元どおりだな。」

 

簪「よかった。」

 

束「これなら大丈夫。変身したいと念じれば、いつも変身できるし、戻りたいと思えばいつでも戻れるよ。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「ありがとうございます。」

 

3人は肉体的にも精神的にも落ち着きをとり戻した。

 

神に匹敵するその力を背負い、これからどう生きるかが重要になってくるだろう。

 



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特殊実戦訓練、被災地の現状

天使と悪魔の戦争終結から1ヶ月が経ち、IS学園には再び平和が訪れていた。

一夏、エクトル、アルゴスはトランスリミッターの効力を試すべく、他の専用機持ちと特殊実戦訓練を行っていた。

強大で不可解な力故、データ解析は虚、クラリッサが行い、3人それぞれの訓練相手は、他の専用機のメンバーから3人ずつ相手になる。

 

まずは創造主クラストの力を一夏が試す。相手は箒、ラウラ、弾。

 

一夏「行くぞみんな!」

 

箒・弾・ラウラ「来い、一夏!!」

 

一夏「トランスリミッター解除!!来い、クラスト!!」

 

一夏はすぐさま変身し、創造主クラストの姿になる。

 

虚「解析開始、肉体のリミッター解除を確認。」

 

弾「改めて見るとすげえ迫力だ。」

 

箒「一夏がここまでになるとは・・・。」

 

ラウラ「来るぞ!」

 

一夏はすぐさまイグニッションブーストで3人にかかる。

 

ラウラ「AIC停止結界発動!」

 

ラウラは攻撃を受け止めるが、

 

一夏「零落白夜光!!」

 

零落白夜光によりものの数分で結界が破壊される。

 

箒「いざ、参る!」

 

箒は雨月で斬りかかるが、雪片弐型の重い一撃に弾かれる。

 

箒「創造主の力はここまで一夏の剣を重くするのか!」

 

弾「ならこいつはどうだ!」

 

弾は魔葬鎖刃でがんじがらめにする。素早い動きを封じればどうにかなると思ったのだが・・・。

 

一夏「甘いぜ、白幻剣!!」

 

一夏の周囲から白幻剣が出現し、弾を襲う。

弾は聖封十を投げるも、対応が間に合わなかった。

 

千冬「そこまで!!」

 

クラリッサ「リミットブレイク後、パワー、スピード、シールドエネルギー量、いずれも計測不能です。」

 

虚「逆に3人はものの数分で大ダメージの上にシールドエネルギーがほぼゼロの状態です。」

 

弾「これが、創造主って奴の力か。」

 

箒「これほど強大な力を操るとは・・・。」

 

ラウラ「さすがは私の嫁だ。」

 

圧倒的な力の前に3人は感服する。

 

続いて、セラフィエルの力を持つエクトル(相手はセシリア、鈴、ビリー)、ルシフェウスの力を持つアルゴス(相手はシャルロット、レオ、簪)の訓練が始まったが、この二人も同じような結果に。

 

千冬「さて、3人の力を見せてもらったが、まだ完全にはコントロールできていないようだな。計り知れない力を持つことの重さを忘れぬよう心に刻んでおけ。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「はい!!」

 

こうして特殊実戦訓練は終わった。

 

 

in生徒会室

 

TV「さて、天使と悪魔の戦争終結から月日が経ち、復興も大分進みました。ですが、また新たな問題が。

今まで決して見られなかった世界、1つはギリシャの『プロサナトリス』、もう1つはスペインの『グリモヴァール』。

この2つの世界が突如、自由に出入り可能となったわけですが、人々はこれを天使や悪魔の巣ではないかと疑っている模様です。」

 

弾「もう1ヶ月過ぎてるのにな。」

 

箒「何だか昨日のことのように思えるぞ。」

 

レオ「実際まだあの戦いが頭から離れないしな。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・・。」

 

一夏、エクトル、アルゴスは思い出しながら色々考え込んだ。何しろこの日から彼らは人間ではなくなったのだから。

 

鈴「でもまあ、あれから天使も悪魔も出てきてないし、そのうち何とかなるんじゃない?」

 

簪「でも、あそこに住んでる人も一応地球に住んでるわけだし。」

 

セシリア「もともとこの世に存在していたならなおさら助けるべきだと私は思いますわ。」

 

シャルロット「でも、どうしたらいいんだろう?」

 

ラウラ「ともかく、まずは彼らの生活の確保が先決だな。 」

 

千冬「諸君、わかっているだろうが、プロサナトリスとグリモヴァールはあの通り壊滅状態にある。

各国の自衛隊の一部が現地に物資を届けているようだが、追いつかないようだ。

そこで、今回はお前達に現地の復興を支援してもらいたい。」

 

一同「はい!」

 

 



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復興と新生

生徒会での協議の結果、専用機一同は被災地から天使と悪魔の爪痕を消すべく復興支援に向かう。

もちろん一年生だけでは心配されるので楯無と虚も同行する。ちなみに虚を手伝うべく本音も来ることに。

 

一夏「さて、復興支援に行くが、俺たちが知っている限りでは、特にひどいのが東京、プロサナトリス、グリモヴァールだ。

いつもなら全員で行動するところだが、今回は三手に分かれていったほうがいいと思う。」

 

鈴「そうね、その方が都合いいし。」

 

皆で相談した結果、一夏、エクトル、アルゴスを筆頭に3つのグループになることが決まった。

 

一夏筆頭の第一グループは、箒、セシリア、シャルロット、ラウラで東京周辺。

エクトル筆頭の第二グループは、レオ、簪、弾、虚でプロサナトリス。

アルゴス筆頭の第三グループは、鈴、ビリー、本音、楯無でグリモヴァールといったメンバー構成に。

 

 

一夏「じゃあな、エクトル、アルゴス、お互いに復興支援頑張ろうな。」

 

エクトル「うん。」

 

アルゴス「ああ。」

 

 

こうして、それぞれのグループは復興支援に向かう。

 

 

Side一夏グループ

 

 

一夏達は東京新宿区にやって来た。町のいたるところに交通事故現場のような箇所がある。

 

一夏「こりゃあかつて無い程の被害だな。」

 

建物はほとんどが崩れ、ガラスの破片が血痕に混じっている。

バスや脱線した電車も見られ、荒れ放題だ。

 

箒「全体的にシステムダウンしているぞ。」

 

セシリア「これが、戦争の結果なのですね・・・・。」

 

シャルロット「うん、悲しいよね。」

 

ラウラ「私達はこれほどの被害をもたらす可能性も秘めているという事だな。」

 

ふと、人影が見え、こちらに向かっってくる。

 

駅員「あ、アンタもしかして、織斑一夏か?」

 

一夏「はい、そうですけど。」

 

駅員「おーい、皆来てくれ!!」

 

すると、老若男女問わず多くの人が集まってきた。

 

男性「彼が、天使と悪魔の戦争終結をもたらしたっていうのか?」

 

女性「すっごいイケメンじゃない!?」

 

老人「彼が来てくれるとは、ありがたやありがたや。」

 

子供「あのお兄ちゃんすごいかっこいい変身してたよお母さん!!」

 

シャルロット「す、すごい人だかり。」

 

セシリア「注目の的ですわね一夏さん。」

 

ラウラ「うむ、さすがは私の嫁だ。」

 

箒「お前は本当に人を惹きつけるな。」

 

一夏「いやいや、まあとにかく今は、行方不明者の捜索・救出と、断絶された公共のシステムの復旧だな。

彼らが少しでも早く生活を取り戻せるよう頑張ろう!」

 

一夏はリミットブレイクで創造主クラストの姿になる。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「ああ(はい)(うん)!!」

 

 

Sideエクトルグループ

 

エクトルのグループはプロサナトリスへと向かった。かつてゼノン遺跡があった場所が、今はそのままプロサナトリスとなっている。

 

エクトル「もともとプロサナトリスはこうなっていたのか。」

 

すると、そこにはセラフィエルに仕えていた教皇と信徒達が。

 

教皇「エ、エクトル様!!ご無事だったのですか?」

 

エクトル「ああ、この通り元に戻ったよ。」

 

信徒「エクトル様がいなくなってから悪魔の軍勢が押し寄せました。ですが、しばらくすると悪魔も突然消えたのです!」

 

簪「一夏がセラフィエルを倒した後に悪魔の長である冥王ルシフェウスも倒したのよ。」

 

教皇「な、何と!あの少年が!?」

 

弾「あいつは創造主クラストに認められた凄え奴なんだぜ!」

 

虚「彼の人間を信じる心が、神も悪魔も超えたって事です。」

 

信徒「万物の創造主クラストの力を人間が持つとは!!」

 

レオ「さて、教皇さんよ。この地は今どういう状況だ?」

 

教皇「はい、戦争終結は迎えましたものの、あちこちで家屋や土地が被害にあい、食糧難にあっている民が多数おります。」

 

エクトル「教皇、僕らIS学園がプロサナトリスの民の生活の復興に力を貸そう。」

 

エクトルはそう言って、リミットブレイクをし、神の代行者セラフィエルの姿になる。

 

教皇「エ、エクトル様、あなた様の友に手をかけようとした我らをお救い下さるのですか!?」

 

レオ「当たり前だろ。」

 

簪「あなた達も地球に生きている事に変わりはないわ。」

 

弾「一夏もあんたらを認めてくれているぜ。」

 

虚「国は違えど、私達は手を取り合える筈です。」

 

エクトル「僕はかつて、絶対なる秩序、導きのために自ら神の代行者セラフィエルの殉教者となった。

でも、真の導きはすべての民を幸福にする事、そしてそれは、自分一人ではなく、信頼する友と一緒に行うものだと、

一夏とクラストに教わったんだよ。」

 

教皇と信徒は、エクトルの話を聞いて清々しい表情になる。

 

エクトル「さあ、みんなで家屋の修理や土地の再生に取り掛かろう!」

 

弾・レオ・簪・虚「おう(うん)(はい)!!」

 

 

 

Sideアルゴスグループ

 

 

アルゴス「・・・・これは。」

 

グリモヴァールの被害を見て、アルゴスは自らの罪の重さを感じる。

至る所に瓦礫や死体の山が築かれており、あまりにも変わり果てた景色となっていた。

 

鈴「ここは特にひどいわね。」

 

ビリー「おい見ろよ、あそこだけ奇跡的に残ってるぜ。」

 

ビリーが指差す方を見ると、パブの建物の1階部分と看板が残されていた。

 

声「おおあんたら、きてくれたのか!?」

 

のほほん「おじさん、だれ?」

 

マスター「あのパブのマスターだ。」

 

鈴「調査の時お世話になったのよ。」

 

マスター「いやー、まさかこの地域が地球に戻るなんてな。」

 

ビリー「ここはもともと地球の一部なのに、何でルシフェル達に支配されてたんだよ?」

 

マスター「スコールさん、いや、ルシフェルは自由と支配のために神に反逆して堕天したのさ。

あいつは秩序に縛られない完璧な自由と、それを人々に与えるための支配を求めた。その結果、もともと無法地帯であるここに目をつけたってわけだ。」

 

鈴「だからあんなチンピラもいたわけね。」

 

「おう、覚えててくれていたのか!?」

 

声の方を向くと、鈴とビリー、アルゴスが叩きのめしたチンピラがいた。

 

ビリー「まあな、にしても、てめえらも大変だな。この状況じゃゆっくり飲むどころじゃねえだろ?」

 

チンピラ「ケッ、その通りだよ!!ホントならあん時の借りを返してえトコだが、こう街が荒れてちゃな。」

 

アルゴス「なら話は早い。俺たちもこの街の復旧に協力する。」

 

アルゴスはそう言うと、リミットブレイクし、冥王ルシフェウスの姿になる。

 

チンピラ「マ、マスター!このガキまさか!?」

 

マスター「ああ、ルシフェルの力で冥王ルシフェウスとなっていたのさ。」

 

チンピラ「す、すげえ。でも、マジで俺らに協力してくれんのか!?」

 

鈴「まあね、この町ももともと地球の一部なわけだし。」

 

ビリー「天使と悪魔の戦争終結は、一夏がセラフィエルとルシフェウスを倒したからなんだぜ!」

 

のほほん「おりむーはおじさん達も助けたいって言ってたよ。」

 

チンピラ「マジかよ・・・。」

 

チンピラは少し考え込み、

 

チンピラ「・・・あん時の借りは、この街の復旧と同時に、あんたらの東京の復興協力で返す!」

 

アルゴス「おう、約束だぜ!」

 

鈴「(なんだ、こいつらもいいとこあるじゃん。)」

 

ビリー「そうこなくっちゃな!!」

 

かつて一悶着起こした者同士の間に、少しずつ絆が生まれる。

 

 

1ヶ月後・・・・。

 

TV「次のニュースです。戦争終結から早2ヶ月が経ちました。東京周辺は大分元どおりとなっています。

情報によりますと、東京、プロサナトリス、グリモヴァールには、復旧に協力したIS学園の生徒の像がたてられた模様です。」

 

写真を見ると、東京、プロサナトリス、グリモヴァールにはクラストの姿をした一夏、セラフィエルの姿をしたエクトル、

ルシフェウスの姿をしたアルゴスが、3人で手を取り合っている像がたてられていた。

復興を祈念して各地で彼らへの感謝を込めて作られたという。

 

この先もいつ新たな敵が出るかわからないが、彼らならきっと、どんな困難も乗り越えて行けるだろう・・・・。

 

 



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新任教師と転校生

復興がほぼ終わり、IS学園で一夏達は今日も平和な日々を送っていた。

 

そんなある日の事、アリーナで学年集会が開かれ、始まるまでの雑談の中、一組はある話題で盛り上がっている。

 

谷本「聞いた聞いた?今日カナダから新しい先生と転校生が来るんだって。」

 

鷹月「しかもその先生は織斑先生の友人で、モンドグロッソで織斑先生と対戦経験があるんだって。」

 

エクトル「それは凄いな。」

 

一夏「そういえば俺、弟なのに姉さんの人間関係についてはよく知らないな。」

 

箒「私達が知る限りでは、千冬さんの知り合いは姉さんとクラリッサさん、山田先生くらいだな。」

 

セシリア「カナダは確かビリーさんの出身国ですわね。」

 

ビリー「ああ。にしても誰が来るんだ?」

 

シャルロット「どんな人なのかな?」

 

ラウラ「教官の知り合いともなれば興味があるな。」

 

弾「おっ、そろそろ始まるみたいだぜ。」

 

 

千冬がマイクの前に立つ。

 

千冬「それでは、新しい教師と転校生を紹介しよう。まずはマイヤーズ先生。」

 

それを聞いた瞬間、ビリーはビクッとなった。

 

レオ「マイヤーズって、ビリーの親戚か?」

 

ビリー「あ、ああ。(まさかとは思うが・・・。)」

 

「始めまして、ジル・マイヤーズです。一年二組の担任をさせて頂く事になりました。どうぞよろしくお願いします。」

 

ビリー「あ、姉貴・・・。よりによってIS学園に来るとは。」

 

一夏「ビリーに姉さんがいたのか?」

 

弾「ひゃー、すっげー美人だなあ。」

 

箒「千冬さんと対戦経験があるなら相当の人だな。」

 

ビリー「あ、ああ、それはそうなんだけど。」

 

セシリア「ビリーさん、どうかしましたの?」

 

アルゴス「あー、実を言うとコイツ、ジルさんに頭が上がらねえんだよ。」

 

エクトル「ビリーにも怖いものがあったんだね。」

 

谷本「あの人確か、女子棒術の世界大会3連覇を達成した人よ。」

 

レオ「マジかよ。こりゃ並みの男じゃ近づけねえな。」

 

シャルロット「そこは織斑先生も同じだよね。」

 

ラウラ「うむ、教官の嫁は並の男には務まらないな。」

 

 

千冬「では次に転校生。」

 

転校生が挨拶する。

 

レオ「お、あの子可愛いな。」

 

一夏「レオ、静かにしろよ。」

 

転校生「初めまして皆さん、レベッカ・ミラーです。

カナダから来ました。ついでに言うと、ビリー・マイヤーズの幼馴染でーす!」

 

ビリー「お、おいレベッカ!!」

 

レベッカ「ビリー、久しぶりね!」

 

何ともいきなりな発言。その瞬間、

 

一組専用機一同「!?」

 

女子生徒一同「ええぇーっ!?」

 

鈴「な、ななな!?」

 

ビリー「レベッカもISに乗れたのか?」

 

千冬「騒ぐな、静かにしろ!!さて、ミラーには二組に入ってもらう。専用機もすぐに届くからな。」

 

一夏「あちゃー、あの様子じゃ間違いなくビリーの事好きだな。」

 

箒「幼馴染とはそういうものだろうな。」

 

弾「二組か、こりゃ鈴に強力なライバルができちまったな。」

 

セシリア「ですわね。」

 

シャルロット「当のビリーは唐変木だし。」

 

レオ「後で様子見にいかねえか?」

 

ラウラ「そうだな、同じ専用機持ちとして今後も関わる事になるだろうからな。」

 

学年集会は波乱の幕開けとなった。

 

 



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ビリーの難事

学年集会が終わり、昼食に入る専用機一同。

しかし、いつもとは空気が大きく違っていた。

 

千冬「ジル、まさかお前がこの学園の教師に採用されるとはな。」

 

ジル「試験3回目でやっと入れたのよ。」

 

ビリー「姉貴、3回も受けたのかよ。」

 

ビリーがジルを「姉貴」と呼んだ瞬間、

 

ジル「学校ではマイヤーズ先生でしょ?」ギリギリ

 

ビリー「イデデデデ!!」

 

アイアンクローをされた。

 

レオ「おっと、こりゃあ気をつけねえと。」

 

箒「一夏も最初はうっかり学校で千冬さんを姉さんと呼んでたからな。」

 

一夏「ああ、出席簿でスコーンってされて。」

 

弾「マジかよ。」

 

セシリア「まあケジメは大事ですもの。」

 

ふと、ジルは一夏を見る。

 

ジル「あんたが千冬の弟の一夏ね?」

 

一夏「あ、はい。はじめまして。」

 

ジル「ビリーがいつもお世話になってるわ。それにしてもいい男❤︎しかも学校で一番モテるんでしょ?

千冬ってば姉冥利につきるわね。」

 

一夏「いえ、それ程でも。(ジルさんも中々の美人だなあ。)」

 

一夏は年上には少し弱いのである。

 

ジル「これからよろしくね。学校以外では「ジル姉さん」でいいわよ❤︎」

 

一夏「はい、わかりました。」

 

簪「一夏ニヤニヤしてる。」

 

ついニコッとしてしまう一夏。

それを見て千冬が割って入る。

 

千冬「おいジル、うちの弟に色目を使うとはいい度胸だな。」

 

ジル「えー、だって一夏すごく可愛いんだもん!」

 

千冬「一夏、貴様も貴様だ。私以外の女も姉にするとは・・・。」

 

山田先生「お、織斑先生、落ち着いて下さい。」アタフタ

 

一夏「は、ははは。(参ったなこりゃ。)」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「むむう。」ジトー

 

エクトル「一夏、君本当に大変だね。」

 

アルゴス「大変といえばあっちもだろ?」

 

向こう側のテーブルでは、レベッカと鈴が話している。

 

鈴「レベッカって言ったわよね。あんたホントにビリーの幼馴染なの?」ヒクヒク

 

レベッカ「うん、突然IS学園に行っちゃうんだもの。追いかけてきちゃった。」

 

鈴「そ、そう。これからよろしくね。(それにしてもこのスタイルは腹立たしいわね。)」

 

レベッカ「うん、よろしく。(何この子、もしかしてビリーの事・・・)」

 

鈴とレベッカの背景に龍と虎のオーラが見える。

 

一夏「ビリー、あっちすごい事になってるぞ。」

 

ビリー「え、そうか?楽しそうに話してるだけだろ?」

 

シャルロット「あれのどこが楽しそうに見えるの?」

 

セシリア「何か禍々しいものが見えますわね。」

 

レオ「ま、何にせよ、ビリーがいけねえな。」

 

ラウラ「うむ、全くだ。」

 

箒「私も経験上彼女の気持ちは理解できる。」

 

ビリー「えっ、何で俺が悪いんだよ!?」

 

簪「これだもんねー。」

 

アルゴス「てめえ少しは気づけよ。」

 

すると、レベッカが一夏に近づいてきた。

 

レベッカ「あんたね?ビリーにISを授けたっていう織斑一夏は。」

 

一夏「ああ、これからよろしくなレベッカ。」

 

レベッカ「よろしく一夏!みんなもよろしく!!」

 

一同「よろしく。(これは毎日騒がしくなる・・・。)」

 

さて、どうなることやら。



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実力の差

新任教師でビリーの姉であるジル・マイヤーズと、ビリーの幼馴染レベッカ・ミラーが来てから数日が経った。

一夏においてはジルに興味を抱かれ、良好な教師と生徒の関係を築いた感じであり、一夏はジルから、モンドグロッソでの千冬の活躍や、世界のISについて色々教えてもらっている。

レベッカはとても気さくであり、お互いに実戦訓練を行うなどして、一夏達はすぐに友達になれた。

 

ただ、ビリーに対する恋は難航しているが・・・。

 

ちなみに今はジル担当の英語の授業の最中である。

 

ジル「はい、今日はここまで。」

 

一夏「起立、礼!」

 

ジル「(一夏、いい号令ね。流石はリーダーってところかしら。)」

 

 

放課後・・・・

 

ジル「マイヤーズ、久しぶりに相手するわ。あんたの棒術が鈍ってないかどうか見てあげる。」

 

ビリー「お、おう。」

 

ジル「返事は『はい』でしょ!!」

 

ゴンッ

 

ビリー「は、はい・・・。」

 

ジル「織斑先生、立会人をお願いできるかしら?」

 

千冬「うむ。」

 

ギャラリーには一夏達専用機メンバーが見学に来ている。

 

ビリーはアリーナに呼び出され、ジルと棒術の実戦訓練をする。

ジルは千冬と違い、現役のままなので専用機『キル・サイクス』でビリーの相手をする。

 

ビリー「行くぜ姉貴!」

 

ジル「マイヤーズ先生でしょ!」

 

千冬「始め!!」

 

ビリーはデルタライガーで果敢にジルに挑む。しかしジルはすべて予測しているように対応する。

 

ジル「技のキレは増したわね。でもまだ甘いわよ!」

 

ジルは装備『クラッシュ・テイル』で棒術の早業を見せる。

 

ビリー「俺だってそうすぐにはやられねえよ!!」

 

ビリーはどうにか応戦するも、ジルがリードしていき、ジルにアビリティを決められ敗れた。

 

千冬「それまで、勝者、ジル!」

 

ジル「まだまだね。」

 

ビリー「ちっきしょう!!」

 

ビリーは悔しがった。

 

一夏「すげえ、これがモンドグロッソ出場者の力か。」

 

箒「千冬さんと対戦できるだけあってかなりのものだ。」

 

セシリア「ビリーさんも経験を積んできましたのに。」

 

ラウラ「力の差は歴然だな。」

 

弾「見てるこっちもそれを感じたぜ。」

 

レベッカ「あたしもジルさんと実戦訓練したことあるからすごくわかる。」

 

シャルロット「本当に世界は広いね。」

 

エクトル「マイヤーズ先生、とても勉強になりました!」

 

レオ「マイヤーズ先生すごいっすね!」

 

ジル「いえいえ、織斑先生ほどじゃないわ。彼女には一度も勝ったことないし。」

 

アルゴス「マジっすか!?」

 

ジル「ええ、彼女は無敗で現役を退いてるもの。」

 

一夏「・・・・。」

 

千冬「どうした織斑?」

 

一夏「いや、俺はいつか織斑先生を超えたいって思ってましたけど、まだまだ世界を知らないなと思ったんです。」

 

千冬「そうか。」

 

ジル「じゃあ一夏、私と対戦してみる?」

 

専用機一同「!?」

 

一夏「えっ、いいんですか!?」

 

千冬「よかろう、世界の広さを知るにはいい機会だ。」

 

ビリー「姉貴一夏だけは下の名前で呼ぶのかよ。」ボソッ

 

ジル「何か言ったかしら?」ジロッ

 

ビリー「い、いえ、何でも。」

 

専用機一同「(怖い・・・。)」

 

一夏はモンドグロッソ出場者との実戦に緊張していた。

 

千冬「それでは始め!!」

 

一夏「マイヤーズ先生、お手柔らかに。」

 

ジル「一夏、遠慮は無用よ!」

 

一夏は早速イグニッションブーストで攻め入る。

 

ジル「なるほど、剣の一撃一撃に重みがあるわね。」

 

ジルはクラッシュ・テイルで弾くも、思いの外苦戦する。

 

ビリー「マジかよ。」

 

シャルロット「一夏、全然恐れていないね。」

 

アルゴス「心底勝負を楽しんでやがる。」

 

エクトル「彼の心の広さがその力の源だと思うよ。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「(凄い・・・・。)」

 

一夏の恋人候補達は見惚れる。

 

レベッカ「へー、一夏やるじゃん。」

 

鈴「あいつ学園では無敗よ。」

 

弾「何しろ世界初のIS男子で織斑先生の弟だからな。」

 

 

ジル「それじゃあこれを使わせてもらうわ!」

 

ジルはクラッシュ・テイルをバズーカ砲に変形させ、大量のグレネード弾にミサイルを放つ。

 

一夏「うぉっと、こりゃキツイ!!」

 

一夏は白鋼と白幻円陣で爆発の衝撃に耐えながら前進するも、シールドエネルギーを削られる。

 

一夏「こうなりゃこっちも大砲だ!零落白夜光!!」

 

一夏は一気にエネルギーを消費覚悟で放つ。ジルはかわそうとしたが、肩に直撃した。

 

ジル「凄い威力ね!」

 

この後一夏は、シールドエネルギーが残り少ない状態で接近戦に持ち込むが、長期戦の末シールドエネルギー0で一夏は敗れた。

 

千冬「勝者、マイヤーズ先生!」

 

一夏「先生、ありがとうございました。悔しいですがいい実戦になりました!」

 

ジル「こっちこそ、いい運動になったわ。にしてもあんた中々やるわね。負けるかと思ったわよ。これは将来楽しみね。」

 

アルゴス「負けはしたが、一夏がここまでやるとはな。」

 

シャルロット「学園最強でもまだ手が届かないとなると、」

 

箒「道は遠いものだな。」

 

簪「でも一夏、本当に強くなったね。」

 

ビリー「こりゃうかうかしてられねえな。」

 

レベッカ「大敗だったもんね。」

 

ビリー「う、うるせーな。てめえだって姉貴には勝ってねえだろ。」

 

鈴「はいはい、二人ともそこまで。ビリー、お疲れ様。」

 

鈴が割って入り、タオルとスポーツドリンクを渡す。

 

ビリー「おう鈴、サンキューな。」

 

鈴「どういたしまして♪」ニヤリ

 

レベッカ「(ムーッ。)」

 

上記三人以外の専用機メンバー「(やれやれ、修羅場ですなあ。)」ハア

 

その日、一夏は敗れた悔しさを感じながらも、どこか生き生きしていた。

 

 

 

 



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幸せはコンプレックスと共に

一夏とジルの対戦はすぐに学園中の話題になり、

放課後の食堂には新聞部が集まっていた。

他の専用機持ちも食事の手を止めて一夏の取材に注目する。

 

黛「はいはーい新聞部でーす!織斑一夏君の取材に来ました!」

 

一夏「ど、どうも。(何か久しぶりだな。)」

 

ビリー「校内で取材って何か珍しいな。」

 

レベッカ「だよねー。」

 

鈴「エクトルとアルゴスが来た時も凄かったわよ。」

 

エクトル「まあ、予想外の歓迎ぶりには驚いたよ。」

 

黛「では、モンドグロッソカナダ代表のジル先生と戦った感想を一言!!」

 

一夏「正直これまでにない悔しさだった。でも、差を見せられた事でまた新たな目標に繋がったから、凄く有意義だったと思う。」

 

エクトル「一夏、既に代表入りした選手みたいな雰囲気があるね。」

 

箒「うむ、流石は織斑先生の弟だ。(カッコいい❤︎)」

 

セシリア「持ってるものがありますわね。(素敵ですわ❤︎)」

 

シャルロット「日に日に強くなっているもんね。(カッコいいなあ❤︎)」

 

ラウラ「うむ、流石は嫁だ。(カッコいいぞ❤︎)」

 

簪「みんな、一夏がカッコいいのはわかるけど、置いて行かれないようにね。」

 

レオ「そうだな、やっぱ男としても負けてられねえし。」

 

弾「だよな。」

 

しかし、この後のレベッカの一言が場を騒がせる事に繋がるとは誰も予想だにしなかった。

 

レベッカ「そういえば一夏って、どんな女の子がタイプなのかな?」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!」

 

ビリー「お、おいレベッカ。」

 

鈴「アンタ唐突に何言い出すのよ。」

 

すると、その言葉を聞いた新聞部や周りの女子生徒も一夏に視線を集中させる。

 

黛「そういえばそうですね。ズバリ、織斑君の理想の女性のタイプは!?」

 

一同「!!!!!」注目

 

一夏「あまり具体的には答えられないんだが、絶対条件的なものはあるな。」

 

黛「ふむふむ、それは?」

 

一夏「女尊男卑に固執しない事、それが一番だな。俺はISに元から乗れる事で、普通の男子じゃ考えられない幸せを感じている分、女尊男卑に傷つく男子のためにISのコアを研究させてもらっているからな。」

 

黛「なるほどね、でももし今付き合うとしたらどんな女の子がいいかな?」

 

一夏「うーん、こう言ったらアレだけど、やっぱり同い年が一番かな。」

 

同級生一同「(これはチャンス!!)」

 

黛「ふむふむ、じゃあ年上年下は駄目って事?」

 

一夏「駄目じゃないけど、俺からすれば年上はよくて『姉的な存在』、年下はよくて『妹的な存在』ってところで終わりそうだな。」

 

黛「うーむ、これは年に差がある女性はがっかりでしょうねー。」

 

千冬「(なるほど、だからジルも姉同然に思っているわけか。ほっとしたが、どこか複雑だな。あいつの姉は私だけなのに・・・。)」

 

千冬は一夏がジルのような年上女性も恋愛の理想にしている可能性を危惧していたが、そうではない事にホッとしてる一方で、

自分以外の年上女性も姉同然に接する事に少しヤキモチをやいていた。

 

そんな中・・・・

 

 

アルゴス「・・・・。」

 

鈴「アルゴス、アンタさっきから全然喋ってないけど、どうかしたの。」

 

アルゴス「あ、いや、何でもない。じゃあ俺先に出るぜ。」

 

シャルロット「お疲れ。」

 

アルゴスはそのまま部屋には戻らず、バルコニーの方に出てから一人たそがれていた。

アルゴスはここの所、一夏に対して少しコンプレックスを抱いていた。

ルシフェウスの件で一夏に助けてもらい、一夏のおかげでその力を使えるようになったのだが、

それでも自分が目指すところに既に一夏がいるように思えてならないのだ。

 

アルゴス「不思議だなあいつは。誰とでもすぐに馴染めるし、どんな力も血肉にしていく。

何だろ、俺は・・・どうしたらもっと強くなれる?」

 

その時、

 

楯無「アルゴス君♪」耳フー

 

アルゴス「どああっ!!」

 

不意の刺激にアルゴスは驚いた。

 

楯無「いいリアクション!」

 

アルゴス「な、何だ副会長か!?脅かさないでくださいよ。」

 

楯無「楯無さんでいいわよ❤︎」

 

アルゴス「何か用すか?」

 

楯無「いやー、何一人でたそがれてるのかなーって。」

 

アルゴス「・・・・別に何でもないっすよ。」

 

楯無「一夏君の事でしょ?」

 

アルゴス「っ!?何でわかるんすか?」

 

楯無「アルゴス君、女の勘を甘く見ちゃダメよ。」

 

アルゴスは面倒くさいと思いつつも話す事にした。

 

楯無「ふーん、コンプレックスねぇ。」

 

アルゴス「あの事件以来俺、あんまり強くなれてない気がするんですよ。」

 

楯無「アルゴス君、人生にコンプレックスは付き物よ。」

 

アルゴス「でも一夏からはそれが感じられなくて。」

 

楯無「私見たんだけど、一夏君マイヤーズ先生との対戦後、陰で歯を食いしばって暗い顔してたわよ。」

 

アルゴス「あいつがですか!?」

 

楯無「そりゃそうよ、普段表に出さないだけで、みんなそれぞれ他人にはわからないコンプレックス持ってるんだから。

でもアルゴス君、あなただって一夏君に負けないくらいいい所あるのよ。」

 

アルゴス「気休めならやめてください。」

 

楯無「少なくともアルゴス君は、その、何てっったっけ、ルシなんとかに」

 

アルゴス「ルシフェウスです。」

 

楯無「そ、そう、それそれ。そいつに使われてた頃よりずっと強くなってるしカッコよくもなってるわ。」

 

アルゴスは普段おちゃらけな楯無がまともに人を褒めるのを見て意外に思った。

 

楯無「むっ、アルゴス君その顔、意外だとでも言いたそうね。」ジトー

 

アルゴス「いや、なんつーか、楯無さんでもまともな事言うんだなーって思って。」

 

楯無「アルゴス君、失礼だぞー、副会長に向かって〜。」

 

アルゴス「プッ、ハハハハッ!!」

 

楯無「もう、笑わないでよ!」

 

アルゴスと楯無はしばらくバルコニーで二人きりで盛り上がった。

 

アルゴス「でも、楯無さんのおかげで気持ち晴れました。明日も頑張ります!」

 

楯無「ふう、ようやく元気になったわね。じゃあもう行くね。」

 

楯無はバルコニーを後にした。

 

アルゴス「(楯無さん、最初はちょっと変わってると思ったけど、話してるとすげー励まされるな。

からかう所はアレだが、悪くねえな、ってあれ、なんで俺こんな事考えるんだろう?)」

 

今度は己の内に目覚めた気持ちに悩むアルゴスだった。

 

 

翌朝・・・

 

アルゴス「ふああ。」

 

アルゴスは大きなあくびをした。昨夜は楯無の事で頭が一杯になってしまっていたのだから無理もない。

 

一夏「何か、眠そうだな。」

 

箒「アルゴス、寝不足は体に毒だぞ。」

 

アルゴス「心配ありがとな、でも大丈夫だ。」

 

弾「そう言ってるけどそのコーヒー何杯目だよ?」

 

鈴「アンタ昨日から変よ。」

 

セシリア「何かお悩みですの?」

 

アルゴス「いや、大丈夫、気にすんな。」

 

アルゴスは心を落ち着かせようとする。しかし、

 

楯無「おはよーアルゴス君♪」耳フー

 

アルゴス「だああっ!」

 

アルゴスは今の刺激で一気に目が覚めた。

 

ビリー「すげー反応だな。」

 

レオ「つーか副会長いつからいたんだよ。」

 

楯無「アルゴス君、目覚めた?」

 

アルゴス「え、ええ、まあ。」しどろもどろ

 

ラウラ「ん?」

 

ラウラはアルゴスの反応に違和感を覚える。

 

楯無「そう、よかった。今日も頑張ってね❤︎」

 

アルゴス「あっ、あのっ、楯無さん!」

 

楯無「?」

 

アルゴス「き、今日の放課後、空いてますか?」

 

楯無「放課後?うん、空いてるよ。」

 

簪「・・・・?」

 

簪も楯無に違和感を覚える。

 

一夏「アルゴス、珍しいな。お前が個人的に人を誘うなんて。」

 

箒「しかも副会長を。」

 

アルゴス「え、そ、そうか?それより早く朝飯終わらせようぜ!」アセアセ

 

慌てふためくアルゴス。

その様子を見て、一同は確信した。

 

一同「(これってまさか・・・・。)」

 

 

放課後・・・

 

アルゴス「(楯無さんまだか?)」ソワソワ

 

楯無「アルゴス君、お待たせ!」

 

アルゴス「突然呼び出してすいません。」

 

屋上にアルゴスと楯無が二人きりになる。

ちなみに一夏達他の専用機持ち一同は密かに先回りして物陰に隠れていた。

 

楯無「何何?こんなとこに呼び出したりして、愛の告白でもするのかな?」

 

アルゴス「(ウッ、いきなりそこ突かれるか!?)」

 

一夏「た、楯無さん!?」

 

簪「ちょっとお姉ちゃん馬鹿なの!?」

 

箒「あれでは言いにくいではないか!」

 

ビリー「あちゃー、いつもの悪い癖だな。」

 

楯無「ウフフ、冗談よ、アルゴス君がそんな話するわけ」

 

アルゴス「ありますよ!!」

 

楯無「!?」

 

レオ「アルゴス、そうだ、勇気を見せろ。」

 

アルゴス「お、俺は、楯無さんが、す、好きなんですよ!!」

 

楯無「!!!!」

 

ラウラ「アルゴス、もう一息だ。」

 

アルゴス「俺、最初は、楯無さんの事、変わってるなとか、苦手だなとか思ってたけど、次第に気になり始めて、

しかも、昨日励まされた時はドキドキしてて。」

 

楯無「・・・・。」

 

弾「アルゴス、最後にビシッと決めろ!!」

 

アルゴス「更識楯無さん!お、俺と、付き合ってください!!(よし、言い切った!)」

 

セシリア「アルゴスさん、やりましたわね!」

 

楯無「え、えーと、どうしよっかなぁー。」

 

一同「え、そんな言い方!?」コケッ

 

アルゴス「っ!!」

 

楯無「冗談よ、アルゴス君、これからもあなたのそばにいてあげる❤︎」

 

アルゴス「楯無さん!」

 

アルゴスと楯無はキスを交わした。その瞬間、

 

一同「おめでとう(ございます)アルゴス(アルゴスさん)!」

 

楯無「!?」

 

アルゴス「い、いつの間に!?」

 

一夏「いやー悪い悪い。」

 

箒「つい気になったものだからな。」

 

セシリア「アルゴスさん、おめでとうございます。」

 

ビリー「よう、まさに青春だな!」

 

レオ「なかなかお似合いだぜアルゴス!」

 

簪「よかったねアルゴス、じゃなくって、『お兄ちゃん』!」

 

アルゴス「お、お兄ちゃん?」

 

エクトル「そうだね、将来結婚したらレオと簪はアルゴスと楯無さんの義理の弟・妹になるよね。」

 

シャルロット「簪、いいお兄ちゃんができたね。」

 

ラウラ「ふむ、家族が増えて何よりだ。」

 

鈴「お幸せに!」

 

レベッカ「あたしも負けないからね!」

 

アルゴス「・・・てめえら、何も隠れて聞くこたあねえだろ!!」

 

アルゴスは顔を真っ赤にする。

 

一同「アハハハ(ウフフフ)!!」

 

ちなみにこの事は、楯無を経由して新聞部に流れ、アルゴスは一日中質問責めにあい、精神的に疲れる日となった。



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レベッカとの実戦

谷本「イリアディス君、更識先輩と付き合ってるって本当!?」

 

鷹月「いつどうやって好きになったの!?」

 

アルゴス「いや、まあ・・・。」

 

とある日、一年一組はアルゴスの恋愛話で盛り上がっていた。

 

アルゴスも人気が高い方なのでかなりの人数がショックを受けていたほどである。

 

ちなみに全学年の女子生徒の間では、男子に内緒で人気アンケートが行われており、結果は

 

1位一夏、2位エクトル、3位アルゴス、4位レオ、5位ビリー、6位弾となったそうだ。

 

一夏「しかし、アルゴスにもパートナーができたんだな。」

 

谷本「昨日ショックで何人か倒れてたからね。」

 

弾「えっ、大丈夫なのかその人達!?」

 

鷹月「ベレン君の時も泣いていた娘がたくさんいたしね。」

 

エクトル「うっ、それは言わないでほしいな。」

 

エクトルは決まり悪そうに軽く頬を掻く。

 

箒「まあ、普段騒がしいあの人に、比較的冷静なアルゴスは丁度いいのかもしれん。」

 

セシリア「確かにバランスが取れていますわね。」

 

ビリー「バランスいいと言えばレオと簪もそうだろ。」

 

シャルロット「そうだね、比較的軽いレオと堅い簪もお互いの良い所を見習いあってるし。」

 

のほほん「アルアル、簪ちゃんとレオレオのお兄ちゃんになったんだね〜。」

 

レオ「そうだな、将来はよろしく頼むぜ、アルゴス兄貴!」

 

アルゴス「おう、よろしくな。義理の妹の簪泣かしたら承知しねえぞ。」

 

ラウラ「うむ、レオには釘を刺しておかねばな。」

 

レオ「おいおい、それはねえだろ〜。」

 

話していると、レベッカが一組に来た。

 

レベッカ「ねえ皆、話盛り上がってるとこ悪いんだけど、ビリー借りてってもいい?」

 

ビリー「何だよ唐突に。」

 

レベッカ「いいからいいから、ビリー早く来て。」

 

一夏「ようレベッカ、お前にも専用機届いたんだってな。」

 

レベッカ「そうなのよ。あとで一夏達にも見せてあげる。」

 

エクトル「それは楽しみだね。」

 

鈴「エクトルの言うとおりね。」

 

いつの間にか鈴も来ていた。

 

レベッカ「あれ、鈴。いつからそこに!?」

 

鈴「そんな大声で人を呼んでたら聞こえるわよ。」

 

レベッカ「むうっ。」

 

鈴とレベッカが小競り合いをする。

 

一夏「ま、そりゃそうだよな。」

 

ビリー「つーか、お前ら何で張り合ってんだよ。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「ハァ・・・。」

 

一夏・弾・エクトル・アルゴス・レオ「(何か、いい加減見飽きたなこのシチュエーション。)」

 

ビリー「何だよこの空気、まあとにかく行くか。」

 

ビリーは鈴、レベッカとアリーナに向かい、一夏達もその様子を見物しに行く。

 

 

inアリーナ

 

 

レベッカは専用機「ギガスマッシュ」を装着する。機体の色は黄緑色。

主な装備は大型のハンマー状の武器「クエイク」。

 

レベッカ「ビリー、ここであたしの力を見せるわ。せいぜい棒が折れないようにね!」

 

ビリーもティガーファングを装着する。

 

ビリー「へっ、一夏には劣るが、駆け出しのてめえに負けるかよ!!」

 

バトルが始まった。

 

ビリー「オラオラ行くぜー!!」

 

ビリーはいつも通り豪快な戦法でレベッカを攻める。

 

レベッカ「じゃあこれならどう?」

 

レベッカは頭を砕かんばかりの勢いでクエイクを振り下ろす。

重みのある一撃にビリーは少し怯む。

 

ビリー「こりゃ受けてばっかじゃやべえな。」

 

ビリーは一端距離を置く。

 

レベッカ「離れれば安全だなんて思わないでね!」

 

レベッカはクエイクをキャノン砲に変形させ、大型ミサイルやエネルギー波動を放つ。

 

ビリー「そう来るか。」

 

ビリーはデルタライガーで旋風を起こして防御する。

その後、レベッカの頭上にイグニッションブーストで行き、デルタライガーを回転させて投げつけることでシールドエネルギーを削り、打ち合いの末勝利した。

 

レベッカ「あちゃー、負けちゃった。」

 

ビリー「フウ、お前意外と力あるな。」

 

鈴「ま、当然の結果ね。ビリーだってそれなりに強くなってるもん。」

 

レベッカ「・・・何かその言い方ムカつくわね。」

 

鈴「何よ、ホントの事でしょ?」

 

鈴とレベッカは睨み合う。

 

一夏「はいはい、その辺にしとけよ二人とも。」

 

鈴・レベッカ「一夏。」

 

一夏「レベッカ、短期間で慣れるとはすげえな。今度は俺と模擬戦してくれないか。」

 

レベッカ「あら、光栄ね。学園トップの一夏からご指名なんて。」

 

その後、一夏をはじめ、専用機持ちは全員レベッカと模擬戦を行った。

 

 



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新たなる敵の予兆

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・・!?」

 

3人はどこか見知らぬ世界にいた。

 

一夏「エクトル、アルゴス。」

 

エクトル「これは、またあの時みたいに夢の中なのか?」

 

アルゴス「何かこの感じ、暫くぶりだな。」

 

すると、3人の前に創造主クラストが現れる。

 

クラスト「人の子らよ。」

 

一夏「クラスト、お前・・・。」

 

クラスト「すまない、実は汝らに伝えておかねばならぬことが。」

 

エクトル「どんな事だ?」

 

クラスト「汝らは互いの力を知り合い、共に手を取り合うようになった。しかし、それを狙うものがこの先また現れるだろう。」

 

アルゴス「つまり、また新たな敵が出るってのか?」

 

クラスト「汝らはいずれ、人知を超えた最大の戦に身を投じなければならなくなる。」

 

クラストはそう言い残して消えていった。

 

 

翌朝・・・

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・・・。」

 

3人は起床時間より早く目が覚め、しばしボーっとしていた。その後、いつもより早く朝の身支度をする。

 

弾「ふあああ、お、一夏、おはよう。」

 

一夏「ああ弾、おはよう。」

 

レオ「いつもより早いな。」

 

エクトル「うん、ちょっとね。」

 

ビリー「夢でも見て目が覚めたのか?」

 

アルゴス「まあ、そんなとこだ。」

 

男子6人は身支度を済ませて朝食に向かう。

 

一夏「おはよう皆。」

 

箒「おはよう一夏。」

 

鈴「おはよう、そういえば今日、京都への修学旅行についてホームルームで話すんでしょ?」

 

レオ「ああ、確か当日の自由行動についてだったな。」

 

ビリー「そーいやーそうだったっけか?」

 

ビリーは初めて聞いたというような顔をする。

 

アルゴス「お前昨日話聞いてなかったのかよ?」

 

アルゴスは呆れる。

 

エクトル「でも、秋の京都かー、風流だろうなあ。」

 

弾「エクトル、京都に興味あるのか?」

 

エクトル「うん、スペインにいる頃は日本について少し勉強したし。京都は日本の中でも特に文化が強いよね。

平安時代とか興味あるな。」

 

簪「エクトル、勉強熱心ね。」

 

一夏「そうだな、エクトルは俺たち男子の中では一番知識があるからな。」

 

セシリア「そうなんですの。」

 

レベッカ「へー、エクトルって頭いいのね。ビリーなんか勉強苦手な方だもんね。」

 

ビリー「う、うるせーな。これでも以前よりはマシだっつの!!」

 

シャルロット「京都は京野菜の料理でも有名だよね。」

 

ラウラ「そ、そうなのか?食べてみたいぞ!」ワクワク

 

のほほん「わたしも〜。」ワクワク

 

シャルロット「もう、ラウラったら。」

 

谷本「本音、アンタ出かける時必ず食べ物の事考えるわね。」

 

ラウラとのほほんさんはたまに一緒に外食するらしく、1組では食いしん坊ペアとして認定されているらしい。

 

今日もIS学園は平和であるが、その一方で・・・・。

 

 

 

ここは、かつて亡国機業が拠点としていた場所。

 

かつてインダストリアル社であったその場所は姿を変え、今は別の会社、通称「スタビリティックス」。

表向きは大規模な製薬会社だが、裏ではISを始め、様々な違法の開発や実験を行っている。

 

「フフフ・・・。」

 

白衣を着た、美しくも不気味な女性が何やら実験中だ。

彼女の名はアスタロト。かつては亡国機業でルシフェルら堕天使の下についていたが、

彼女たちが消滅して以降、支配欲に目覚め、ISのコア開発や、それに伴う人体実験を繰り返していき、

かの天使や悪魔よりもさらに強力な兵器を生み出そうとしている。

 

助手「アスタロト博士、実験は成功です!」

 

アスタロト「ご苦労様。」

 

果たして彼女の目的は一体・・・・。



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IS学園修学旅行京都の旅

今日は、IS学園恒例の修学旅行の日。いつものごとく、1組は一夏達男子の側に座りたいと騒ぎが起きるも、新幹線の3人席向かい合わせで男子6人が座るという設定で収まった。専用機女子達も同様に2人席の向かい合わせで座り、出発する。

 

千冬「全員乗れたようだな、これから京都に向かうが、くれぐれも周囲に迷惑をかけないように、現地でもハメを外さないようにしろ。」

 

全員「はい!」

 

千冬「それと織斑、お前にはこれを渡しておく。」

 

一夏「?、これは。」

 

一夏は千冬からカメラを受け取る。

 

千冬「皆も知っての通り、お前は記憶喪失で過去を失った。だから、織斑には写真係を命ずる。

悔いの残らぬよう思い出をしっかり収めておけ。」

 

一夏「・・・ありがとうございます、先生!」

 

千冬「では、出発する。」

 

新幹線が動き出した。

 

「織斑くーん、こっち写真お願い。」

 

「こっちも。」

 

一夏「はいはい。」

 

早速車内撮影を行う。

 

一夏「じゃあ、箒達も撮るぞ。」

 

箒「一夏、すまないな。」

 

セシリア「お願いしますわ。」

 

シャルロット「みんなで写真を撮るのはいいね。」

 

ラウラ「うむ、楽しいな。」

 

谷本「織斑君、撮ってばかりいないで、自分も写真に入れば?」

 

鷹月「私が撮ってあげるよ。」

 

一夏「ありがとう。」

 

レオ「んじゃ、まずは一夏とその恋人候補達で。」

 

一夏を真ん中にし、右に箒、セシリア、左にシャルロット、ラウラが立つ。

 

谷本「じゃあ今度は男子全員のやつね!」

 

男子6人全員の写真も撮れた。

 

のほほん「今度は、おりむーとのツーショット撮りた〜い。」

 

谷本「いいね、男子との一生の思い出だもん!」

 

鷹月「撮ろう撮ろう!」

 

一夏「わかったわかった。じゃあ専用機のみんなから順番に。」

 

一夏は箒から順にツーショットを撮っていく。

 

他の男子も頼まれるままツーショットを撮っていった。

 

山田先生「うーん、みんなモテますねー。」

 

千冬「フッ、山田先生、妬いてるのか?」

 

山田先生「いえ、エクトル君も楽しそうですし。(ああ、夜は2人で過ごしてみたい・・・❤︎)」

 

千冬「山田先生、夜は酒に付き合ってもらうぞ。ベレンには申し訳ないがな。」

 

山田「ええっ!?そんなあ!」ヘナヘナ

 

山田先生はうなだれる。

 

千冬「当たり前だ、教師と生徒の異性交遊を世間に見られてはな。」

 

山田「そ、そこまで不純なことは致しません!そういう織斑先生だって、本当は一夏君と夜2人きりになりたいんじゃないですか?」

 

山田先生はつい茶化してしまった。

 

千冬「・・・・・。」グリグリ

 

山田先生「はううう、すみませんすみません!!」

 

千冬は山田先生に拳でグリグリする。

 

アルゴス「先生達何やってんだ?」

 

ビリー「仲良いよなあの2人。」

 

箒「山田先生とは結構な付き合いらしい。」

 

弾「まあ仕事の同僚ってとこだな。」

 

一夏「すみません、先生達も写真に入りませんか?」

 

千冬「ふむ、では入らせてもらおうか。」

 

山田先生「では失礼しますね。」

 

山田先生は公認であるエクトルとツーショットを撮る。

 

レオ「じゃあ織斑先生は俺達男子6人が囲むってのはどうだ?」

 

ビリー「おっ、いいね!」

 

「えー、織斑先生贅沢じゃん!」

 

「逆ハーレムいいなあ。」

 

エクトル「それもまた貴重でいいじゃないか。」

 

アルゴス「俺達いつもお世話になってるしな。」

 

弾「先生みたいな美人と写真に映れるのはいい事だぜ!」

 

一夏「織斑先生はいつも俺達のために苦労されているんだ。このくらいの贅沢は当然だろ?ねえ織斑先生!」

 

千冬「フッ、まあ気持ちは受け取っておこう(一夏め、そんな風に言われたら、ますます誰かのものにしたくなくなるではないか。)」

 

向かい合わせの3人席をうまく使い、左右から千冬を男子が囲むように写真を撮る。

 

しばらくしていくうちに京都駅に着き、

 

千冬「では、各自自由行動に移るがよい、集合時間は17:00だ、以上!」

 

一同「はいっ!!」

 

 

一夏「それじゃ、俺達専用機も行きますか。」

 

シャルロット「鈴とレベッカも誘おうよ。」

 

レオ「簪も入れるか。」

 

グループごとの自由行動が始まる。専用機一同は基本的に仲がいいため、いつもと変わらず一緒である。

 

山田先生「織斑先生、専用機持ちのみんなは放っておいて大丈夫でしょうか?」

 

千冬「多少は考えたが、今のあいつらならテロリスト程度にはやられん。織斑、ベレン、イリアディスは特にな。」

 

山田先生「そうですね。」

 

千冬「では、私達も行こう。」

 

 

鈴「あんたら1組は相変わらず専用機で固まってるのね。(流石にビリーと2人は無理ね。)」

 

レベッカ「みんな仲良いもんね。(ビリーと2人が良かったけどしょうがないか。)」

 

簪「レオ、今日は楽しもうね。」

 

レオ「おう、簪。」

 

アルゴス「お前らだけだな。好きなやつとも行動できるのは。」

 

弾「アルゴスも俺も相手が先輩だしな。」

 

エクトル「僕なんて相手が山田先生だからね。」

 

箒「ふむ、それは確かに残念だな。」

 

セシリア「仕方ありませんわ。」

 

ラウラ「私も、一夏なしでは物足りないぞ。」

 

シャルロット「僕たちはいいけど、鈴とレベッカに至っては・・・その・・・。」

 

鈴「はあ、シャルロット、わかってくれる?」

 

鈴とレベッカの場合、好きな相手のビリーがいるのだが、思いに気づいてもらえず憂鬱なのだ。

 

一夏「でもまあ、2人にとっては逆にいいチャンスかもよ。もしもの時は俺も手伝うし。」

 

レベッカ「はあ、モテモテで恋人候補たくさんの一夏は余裕よね。」

 

男子一同「確かに・・・。」

 

一夏「あ、いやその、まあな、ははは。」テレテレ

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「一夏(さん)❤︎」

 

一夏「さて、気を取り直して行くか!」

 

京都の名所巡りを始める。

 

清水寺の音羽の滝に着く。

 

シャルロット「これが日本の名所の一つかー。」

 

ラウラ「水が3つ流れてるぞ。」

 

ラウラは見た事のない景色にはしゃぐ。

 

アルゴス「確かここ、何か言い伝え的なもんがあったよな。」

 

弾「こういうのって箒が詳しいんじゃないか?」

 

一夏「そうだな。箒、みんなにガイドを頼めるか?」

 

箒「う、うむ、一夏の頼みとあらば。」

 

箒は元々の性格からか、少々緊張する。

 

エクトル「じゃあ箒先生、お願いします。」

 

一同「お願いします!」

 

箒「うむ、説明しよう。この音羽の滝の3つにはそれぞれ効果があると言われていて、左は学問に、右は健康に、真ん中は恋愛に効果があると言われている。」

 

セシリア「まあ、そうなんですの。」

 

鈴・レベッカ「(真ん中が恋愛!!)」

 

一夏「じゃあ、飲んでみるとするか。」

 

一同は滝の水を飲む。

それぞれ何を飲んだかは以下の通り。

 

 

左:学問 レオ、ビリー、弾、箒、ラウラ

 

右:健康 一夏、エクトル、アルゴス、簪、セシリア、シャルロット

 

真ん中:恋愛 鈴、レベッカ

 

 

鈴「ねえビリー、アンタ恋愛に関心ないの?」ムスッ

 

ビリー「な、何だよいきなり。」

 

レベッカ「勉強と同じくらい恋愛についても考えてよね。」

 

ビリー「どういうことだよ?」

 

男子一同「(ビリー、本当に大丈夫だろうか?)」

 

鈴・レベッカ以外の女子「(2人が気の毒(ですわ))。」

 

ビリー「そんなことより、次行こうぜ次!」

 

ビリーは強引に空気を変えようとする。

 

 

しばらくすると茶店に着いた。

 

一夏「おっ、甘味処か。」

 

ラウラ「かんみどころ?」

 

シャルロット「甘いものが食べられるところだよ。」

 

ラウラ「甘いもの!皆、食べていかないか?」

 

ラウラは瞳をキラキラさせて皆に訴える。

 

アルゴス「ははっ、ラウラ、飛び跳ねるほど興味あるんだな。」

 

セシリア「そうですわね、少し休憩致しましょう。」

 

簪「(ラウラ、表情が可愛い。)」

 

エクトル「日本の和菓子、勉強させてもらおうかな。」

 

一同は甘味処に立ち寄る。

 

谷本「あれ、織斑君達だ。」

 

一夏「やあ、皆もお揃いで。」

 

鷹月「ここのわらび餅すっごい美味しいよ!」

 

のほほん「うんうん、おいひいのや〜。」

 

のほほんさんは口いっぱいにわらび餅を頬張っている。

 

弾「おいおい本音、大丈夫か?」

 

箒「喉に詰まらせないようにな。」

 

ビリー「うははっ、本音口すげー事になってんぞ。」

 

鈴「アンタ食べすぎよ(笑)」

 

ラウラ「うむ、ほれはにゃかにゃか」

 

ラウラも頬張っていた。

 

シャルロット「ラウラ、行儀悪くしないの。」

 

レオ「はは、お母さんと娘みたいだな。」

 

簪「確かに。」

 

皆でくつろいでいると、舞妓さん達がやってきた。

 

舞妓「あれ、一夏はんやあらしまへんか?」

 

舞妓「ほんまどすなぁ、一夏はんや!」

 

一夏「あ、どうもこんにちは。」

 

セシリア「箒さん、この方々は?」

 

箒「ああ、舞妓さんだ。」

 

アルゴス「舞妓?」

 

簪「京都で歌や踊りとかでお客をもてなす女性の事だよ。」

 

エクトル「そうか、実にお美しい。」

 

ビリー「本当だな。」

 

鈴・レベッカ「ムッ。」

 

舞妓「ご活躍はテレビでよう見さしてもろうてます。」

 

舞妓「本物に会えるなんて、嬉しいどすな。」

 

一夏「い、いやあ、何か照れますね。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「ムムッ。」

 

弾「はあ、アイツ行く先々でこれだもんなぁ。」

 

舞妓「よろしゅうございましたら、うちらの店に来とくなはれ。」

 

のほほん「おりむー有名人だね〜。」

 

レオ「ヒュー、一夏、綺麗な舞妓さん達にも好評じゃん。」

 

簪「学園一モテる男は違うわね。」

 

エクトル「女尊男卑の今においては向かうところ敵なしだからね。」

 

少し離れたところでは、

 

山田先生「一夏君、どこにいても凄い人気ですね。」

 

千冬「こっちを心配しておくべきだったな。」

 

山田先生「一夏君のために舞妓さんやってみればいいんじゃないですか?」ニヤニヤ

 

千冬「流石に無理がある。(それにしても一夏はモテモテだな。)」

 

一夏は改めて自分の置かれている状況を知るのであった。



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良くも悪くも注目の的

甘味処で束の間の休息の後、一夏達は清水寺に来ていた。高い場所からはいい眺めである。

 

一夏「ここが清水寺か、風流だなあ。」

 

弾「すげー、紅葉が一望できるな!」

 

箒「うむ、秋はいいものだ。」

 

セシリア「これが日本の素晴らしさですわね。」

 

シャルロット「紅葉が綺麗だねラウラ。」

 

ラウラ「本当だな。」

 

エクトル「キャンパスがあればこの景色を絵に描いてみたいところだね。」

 

アルゴス「さすが、男子で一番の芸術家だな。」

 

レオ「エクトルは小学生で絵画のコンクールでいくつか入賞してるしな。」

 

簪「へー、エクトルすごい。」

 

ビリー「なあ鈴、あの紅葉って奴は、広島のもみじ饅頭の原材料になってんのか?」

 

鈴「んなわけないでしょ、形を葉っぱに似せてんのよ。」

 

レベッカ「プッ、アンタそのボケ小学生でもしないわよ。」

 

ビリー「ゲッ、まじか?」

 

一同「・・・・。」

 

一瞬寒い空気が走る。そんな空気を変えるべく、紅葉をバックに写真を撮る。

 

ふと、下の方から黄色い声が聞こえてくる。

 

「見てあれ、IS学園の織斑君よ!」

 

「ホントだ!こんな所で会えるなんて夢みたい!!」

 

「他の男子もチョーイケメンじゃん!」

 

「キャー、こっち向いてー!!」

 

一夏「うわ、注目されてるな。」

 

一夏は照れくさくなる。すると、

 

箒「モテすぎだぞ一夏。」一夏の右腕に抱きつく。

 

セシリア「そうですわ一夏さん。」一夏の左腕に抱きつく。

 

シャルロット「もう、すぐこれなんだから。」一夏の右前に寄りよう。

 

ラウラ「お前は私の嫁なのだぞ。」一夏の左前に寄り添う。

 

一夏「あ、いや、その。(ごめん、ってか、胸当たってる!!)」

 

エクトル「まあ仕方ないよ。他校にも僕らのことは知られているしね。」

 

アルゴス「まあこの感じはもう慣れたけどな。」

 

レオ「おっ、あの娘達の制服もかわいいじゃん!」

 

弾「ホントだな。」

簪「むう。」

 

簪はむくれる。

 

レオ「悪い悪い、でも他の娘のいいところも認めないとな。」ナデナデ

 

簪「はわっ、レオ、恥ずかしいよ。」

 

ビリー「セーラー服か、あれもまたいいよな。」

 

鈴・レベッカ「ムムッ。」

 

モテすぎる男は周囲の女の子をヤキモキさせてしまいがちである。

 

 

17時頃になり、宿泊施設に着いて食事につく。

 

一方では・・・・・

 

 

Sideアスタロト

 

アスタロト「カイム、彼らのデータは集められたかしら?」

 

カイム「はい、こちらに。」

 

元亡国機業でルシフェルの元部下であるアスタロトは、デュノア社を始め、多くのIS関連企業に無痕跡でハッキングし、

一夏ら専用機のデータを集めていた。

 

カイム、彼は何故か普通の男でありながらアスタロトのもとにいる。それは、弁論が優秀で技術力、戦闘力を兼ね備えているのをアスタロトに見込まれたからである。

 

アスタロト「彼らを利用できれば、この世界は私のものになる!!ルシフェル様がかつてお望みになられた、

絶対なる支配による自由な世界!!」

 

彼女は取得したデータをもとに、新たな僕を作り出していた。

そうして作り上げたコアを彼女は「クローニクス・コア」と名付けた。

 

カイム「これで、優秀な手駒を量産可能です。」

 

アスタロト「後は、パイロットのクローンを作るためのDNAサンプルだけね。」

 

カイム「例の専用機持ち達は、IS学園の修学旅行で京都に来ている模様です。」

 

アスタロト「好都合ね、カイム、エキドナと一緒に現地に向かいなさい。」

 

カイム「御意。」

 

エキドナ「かしこまりました。」

 

ここに新たな組織の暗躍が始まる。



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奈良公園でのひと時

カイム「こちらカイム、DNAサンプルの回収方は話した通りに行う。。」

 

エキドナ「了解、脱出時は例の場所からね。」

 

カイムとエキドナは一夏達が宿泊している施設に、1日限定のアルバイトとして潜入していた。

 

旅館の女将「それじゃ、IS学園の生徒の布団のシーツ、枕カバーの回収をお願いね。」

 

カイム・エキドナ「はい。」

 

一夏達の起床時間、彼らが使用していたシーツ、枕カバーから毛髪等を回収する。

 

カイム「こちらカイム、IS学園男子専用機持ちのサンプルを回収した。」

 

エキドナ「こちらエキドナ、こっちも完了よ。」

 

こればかりは、流石に想定外であるため、誰も気付けなかった。

 

 

そうとは知らず、IS学園一行は修学旅行2日目に入る。今日は奈良公園まで行くのだ。

 

一夏「今日は奈良か、今度はどんな思い出ができるんだろうな。」

 

のほほん「鹿さんに会うの初めてだよー。」

 

セシリア「私、動物と触れ合うのは今日が初めてですの。」

 

レオ「大丈夫かな、俺動物苦手なんだけど。」

 

谷本「へー、意外。」

 

箒「レオ、鹿はいいものだぞ。」

 

アルゴス「俺、鹿肉食った事あるけど、結構いけるぞ。」

 

ラウラ「そ、そうなのか!?」

 

途端にラウラの目が輝く。

 

箒「・・・・ 。」

 

シャルロット「そっちの意味でいいものと言ったわけじゃないと思うんだけど(笑)。」

 

ビリー「アルゴスは基本、動物の価値基準が食ったら美味いかどうかだからな。」

 

弾「それ、何かずれてるよな。」

 

アルゴス「地元のサバイバル訓練とかで哺乳類爬虫類問わず色んなヤツの肉食ったからな。」

 

鷹月「それ、何か怖いね。」

 

千冬「静かに、もうすぐ奈良公園に到着だ。」

 

山田先生「鹿と触れ合う際は、係員さんの話をよく聞く事。」

 

一同「はい!」

 

千冬「それからイリアディス、ここの鹿を食す事は考えない事だ。」

 

アルゴス「そうですか、うーん残念。」

 

ラウラ「うむ、全くだ。」

 

一夏「食う気満々なのかよ!」ツッコミ

 

どうやら本気で食おうとしていたらしい。

 

一同「あはは・・・。」

 

奈良公園に到着し、これまた専用機で固まる。

 

鈴「鹿かー、確かに可愛いわね。」

 

箒「そうだろう、実に大人しいものだ。」

 

鈴は子鹿に鹿せんべいを与える。

 

レオもあげようとするが、子鹿は恥ずかしそうにする。

 

レオ「ハハッ、何かこの子鹿、簪みたいだな。」

 

簪「むっ、あんなに臆病じゃないもん。」

 

レオ「こぢんまりしてて可愛いって意味だ。」

 

簪「か、かわ、かわいい・・・・。」プシュー

 

簪は顔を赤くする。

 

セシリア「これが、鹿ですか。」

 

セシリアは恐る恐る鹿せんべいをあげてみる。子鹿は割と控えめに食べ始めた。

 

セシリア「フフッ、微笑ましいですわね。」

 

ラウラ「お前が鹿の隊長か、私は黒ウサギ部隊隊長のラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

ボス鹿「・・・・・。」

 

ラウラは大きなオス鹿と対面している。

 

ビリー「こいつら結構ヒトに慣れてるな。」

 

レベッカ「日本にこんなかわいいのがいるなんてねー。」

 

レベッカは子鹿の頭を撫でる。

 

のほほん「ふええー、ちょっと、そんなにいっぱい来たら困るよ〜。」

 

本音は鹿達に囲まれていた。頭をグイグイ押し付けられたり、服を引っ張られたりてんやわんやだ。

 

アルゴス「フハハッ、鹿せんべいより本音の方が美味そうなんだろうな。」

 

アルゴスは笑いながら雄鹿にヘッドロックをしていた。

 

シャルロット「アハハッ、それ何となくわかるかも。」

 

のほほん「私は食べ物じゃないよ〜。」

 

弾「いてっ、おい、俺の指まで噛むなよ!」

 

弾は鹿せんべいをあげた途端、持っていた手の指も噛まれた。

 

エクトル「うわわっ、髪を引っ張らないでくれ!!」

 

エクトルは綺麗なロングヘアが気に入られたみたいだ。

 

一夏「うわー、お前らかわいいなー、何か幸せだぜ!」

 

一夏は満面の笑顔で鹿を取っ替え引っ替え撫でくりまわす。

一夏のもとには多くの鹿が来ているが、本音とは違い、めちゃくちゃ歓迎されているようだ。

その光景には皆驚かされる。

 

エクトル・アルゴス・弾・レオ・ビリー「(一夏って、一体何者なんだ?)」

 

箒・鈴・セシリア・シャルロット・ラウラ・簪・レベッカ「(凄い・・・・。)」

 

係員「うーむ、彼のもとにいる鹿は何故か全部雌ですね。」

 

この光景には専門家も首を傾げる。

 

山田先生「一夏君、動物の女の子にも人気ですね。」

 

千冬「うーむ、不思議なものだ。(一夏、無垢な笑顔だな、可愛い・・・。)」

 

谷本「織斑君すごい笑顔。」

 

鷹月「いいなー羨ましい。」

 

奈良公園も大盛り上がりし、いい思い出となった。

 

 



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アスタロト襲来

カイム「アスタロト様、只今戻りました。」

 

アスタロト「ご苦労様、で、作品の方はどうかしら?」

 

エキドナ「はい、こちらに。」

 

エキドナは回収した一夏達専用機の毛髪から作り出した細胞の入ったアンプルを出す。

 

アスタロト「フフフ、これでいいわ。後はこの細胞を一級品のISパイロットに育て上げるだけね。」

 

カイム「今日IS学園は大阪に行くようです。」

 

アスタロト「あらそう、じゃあ挨拶に行くとしようかしら。」

 

 

一方IS学園は修学旅行最終日、今日は大阪巡りの日となっており、バスで大阪に向かっている。

 

弾「しかし昨日は奈良公園楽しかったな、にしても一夏は動物の雌まで引きつけるとは。」

 

のほほん「おりむーってホント不思議だよね〜。」

 

鷹月「特殊なフェロモンでもあるんじゃない?」

 

ビリー「だとしたらすげえな一夏。俺なんかそんなモン無いってのにな。」

 

一同「・・・・・。」

 

ビリー「え、何だこの空気?」

 

山田先生「マイヤーズ君、モテているって自覚が無いんでしょうか?」

 

千冬「全く、かつての一夏そのものだな。これはジルが苦労するのもわかる。」

 

ビリーは校内アンケートで5位とはいえ、持ち前の不良っぽさ、ワイルドさに反して親しみやすい事から、

実際には各学年からいろんなタイプの女子から好意を寄せる者が出ているのだが、当の本人は自覚が全くない。

 

 

一夏「それより楽しみだな。大阪は『天下の台所』と言われてるからな。」

 

セシリア「天下の台所と言いますと?」

 

箒「美味いものが沢山揃っているという事だ。」

 

エクトル「大阪はたこ焼きが名物だからね。」

 

レオ「さすがエクトル、博識だな。」

 

のほほん「おいしーものいっぱい食べるのだ〜。」

 

アルゴス・ラウラ「おー!!」

 

シャルロット「3人とも食いしん坊だなあ。」

 

アルゴス・本音・ラウラは言うなれば1組食いしん坊トリオだ。

 

千冬「浮かれるのもいいが、周囲に迷惑をかけないようにしろ。」

 

一同「はいっ!」

 

 

午前9時、無事に大阪に着いた。

専用気持ちはやはり合流して行くことに。

 

レベッカ「これが今話題の大阪かー。」

 

鈴「友達からたまに聞くけど初めて来たわね。」

 

一夏「さてと、ここは俺と箒、弾、簪で大阪をできる限り案内しないとな。」

 

簪「そうね。」

 

箒「日本人として、皆を案内するぞ。」

 

弾「俺も頑張るぜ。」

 

早速専用機持ち一行は大阪の街を巡る。

訪れたのは観光名所の通天閣。付近がレトロな街並みで有名なこの場所は、大阪府民の誇りである。

 

一夏達は定番のたこ焼きや串カツなどを食べ歩く。

 

エクトル「僕、食べ歩き自体が初めてだな、みんなと一緒だから凄く楽しい!」

 

セシリア「ええ、国にいる時ではできませんもの。」

 

シャルロット「僕も、この自由な感じがいいよね!」

 

ラウラ「うむ、たこ焼きとやらに串カツとやら、なかなかうまいな。」

 

一夏「そりゃあよかった!なあ箒。」

 

箒「ああ、みんなでここに来てよかったぞ。」

 

地元ではあまり自由が無いこの4人にとっては貴重な経験である。

 

レオ「にしても、ここの人達は面白いな!」

 

簪「笑いが溢れてていいわね。」

 

ビリー「関西弁ってヤツは何か響きが愉快だよな!」

 

レベッカ「ビリー、ここにいる間関西弁で喋ったら?」

 

ビリー「何でやねん!!ってあれ?」

 

弾「ぶっ、ククク。」

 

鈴「あははは、言ってるそばから!」

 

アルゴス「お前ホントその場の雰囲気にハマりやすいよな!(笑)」

 

ビリー「う、うるせーな!(笑)」

 

 

商店街をブラブラした後は、通天閣の展望台に登る。

 

のほほん「ほえ〜、いい景色だよ〜。」

 

谷本「本音、はしゃぎ過ぎ。」

 

一夏「よし、ここらで写真撮ろうぜ!!」

 

 

みんなで窓から見える景色をバックに記念の写真をとる。

そして、帰ろうとしたのだが・・・・。

 

 

鷹月「あれ?エレベーターが動かないよ?」

 

ボタンをいくら押しても作動しない。

 

弾「しょうがねえな、階段から降りるか。」

 

階段に向かうと・・・

 

 

係員「うわあぁぁぁっ!!」

 

突如、叫び声が。

 

一同「!?」

 

聞こえたのは階段の方からだ。

 

一夏「どうしたんですか、って、!?」

 

一同「!!!!」

 

そこには、血まみれになった係員が2人横たわっていた。

そして、そこにいたのは、何とISを纏った数人の少年と少女だ。

 

ビリー「何だてめえら!!」

 

セシリア「何てことを!!」

 

少年少女「・・・・・。」

 

彼らはまるで意思を持たぬ人形のような表情だ。

 

アルゴス「ちょっと待て、こいつら様子が変だぞ!?」

 

シャルロット「意思があるようには見えないよ。」

 

アスタロト「あら、IS学園の皆さんお揃いで。」

 

一同「!?」

 

声がする方を向くと、ISを纏ったアスタロトがいた。

 

箒「貴様、何者だ!?」

 

アスタロト「私はアスタロト、彼らを従えている者よ。」

 

レオ「こりゃまた随分な団体様だな。」

 

ラウラ「皆、ISを展開だ!!」

 

一同はISを展開する。

 

一夏「本音、鷹月さん、被害者を安全な所に頼む!!」

 

本音「わかったよ!!」

 

鷹月「しっかりして下さい!」

 

係員は彼女らや警備員とともに被害者を安全な場所へ移動させる。

 

一夏「アスタロトと言ったな。一体何の用だ!」

 

アスタロト「あなた達にご挨拶に来たのよ。特に、その子にね。」

 

アスタロトはアルゴスの方を向く。

 

アルゴス「何だよてめえ!」

 

アスタロト「あら、忘れたのかしら。あなたの身体にはルシフェル様の血が流れていることを。」

 

アルゴス「っ!?貴様、まさか、堕天使の仲間か!?」

 

アスタロト「ルシフェル様が望まれた支配、あなたはそれを達成しようとした。

でも、創造主クラストの力を持つ織斑一夏や他のものに敗れたことで、それが台無しになったわ。」

 

エクトル「貴様!!」

 

エクトルはアルテミスを構える。

 

アスタロト「フン、神の代行者の力を持つエクトル、あなたは特に目障りだわ。」

 

鈴「アンタ、ルシフェウスと同じようなことをしようとしてるわね。でも、あたし達が力を合わせれば

ルシフェルより下位のアンタなんてすぐやっつけるわよ!」

 

鈴は力一杯吠える。

 

アスタロト「同じこと?フフフ、私もそこまで馬鹿じゃ無いわ。ルシフェル様達はアルゴスを利用することで

事をなそうとしたけれど、今回は違うわ。重要なのはこの子達の存在よ。」

 

アスタロトは従えているISの少年少女を指差す。

 

ラウラ「どういう事だ!?」

 

アスタロト「不思議に思わないかしら?いつの間にIS学園の外でISを操る少年少女達が誕生したのか?」

 

セシリア「どうすればこれほどのパイロットが・・・。」

 

アスタロト「あなた達専用機のデータと、あなた達のDNAサンプルを使ってできた細胞を、私が生み出したクローン人間の彼らに移植したの。

いちいち適性を見極める煩わしいコア研究なんかとはわけが違うわ。それに、彼らは作り主である私の忠実な僕なの。」

 

一夏「何だと!!」

 

シャルロット「だから彼らには意思が無いんだね!」

 

レベッカ「てゆーか、そもそもどうやってあたし達のDNAを!」

 

一夏「恐らく、俺達が宿泊したところに残された体毛などから採取したという事だろう!」

 

アスタロト「ご名答。流石はリーダーね。まあ、実験の結果、死体となって終わったクローンもいたけど。」

 

簪「・・・解せないわ!」

 

アルゴス「チッ、こんな事は想定外だぜ!!」

 

アスタロト「さて、お話はここまでよ。さあ、私の僕たち、彼らを抹殺しなさい!!」

 

クローンISパイロット「・・・・御意!」

 

戦闘が始まった。一夏達のデータをもとに育てられただけあって、かなりの腕だ。

身に纏うISも、一夏達の攻撃にそれなりに対応している。

 

アルゴス「チッ、この雑魚どもが!!」

 

箒「皆、油断するな!」

 

レオ「くそッ、やり辛いぜ!!」

 

苦戦するも、何とか全員倒した。

 

セシリア「何とか片付きましたわ。」

 

一夏「さてアスタロト、今度は貴様だ!!」

 

アスタロト「やるわね、相手をしてあげたいけど、今日のところは退かせてもらうわ。」

 

ビリー「てめえ、待ちやがれ!!」

 

鈴「逃がさないわよ!!」

 

エクトル「悪魔め、そうはいくか!!」

 

攻撃を仕掛けるも、すぐにかわされ、アスタロトは姿を消した。

 

一夏「・・・とりあえず、ここから出よう。他にも被害者がいないか心配だ。」

 

一同「ああ(はい)(うん)。」

 

突如、壮絶な事件に遭遇したのであった。

 



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更なる脅威

大阪通天閣での事件後、修学旅行を終えた一行は、IS学園に戻った。

一夏達は生徒会室で事件当時の詳細を千冬や山田先生、ジル、楯無に話す。

 

山田先生「そうでしたか、皆さんが無事で何よりですが・・・・。」

 

千冬「そのアスタロトという者の言う事が本当なら、クローンパイロットの量産を放ってはおけないな。」

 

一夏「はい、俺たち専用機のDNAの情報は全て知られているようです。」

 

千冬「全く、人知を超えた事件が起きたものだな。」

 

一夏・アルゴス・エクトル「・・・・。」

 

3人ははアスタロトの言葉を思い返す。

アルゴスは、一夏との対決によりルシフェウスの魂は封じられ、力を制御できるようにはなったが、ルシフェルら堕天使との契約によって、その肉体には悪魔の血が流れているのだ。

エクトルも同様に、セラフィエルの魂を封じ力を制御できる代償として、その肉体には天使達の血が流れている。

そして一夏は、創造主クラストとは良好な関係ではあるが、既にその肉体は人間を超えてしまっている。

 

箒「3人とも、自分を責めているのか?」

 

アルゴス「・・・まあな。」

 

セシリア「皆さん、こればかりは仕方ありませんもの。」

 

ビリー「少なくとも一夏はこんな事を望んでIS男子の仲間を作ろうとしたわけじゃねえんだろ?」

 

一夏「もちろんだ、だが・・・。」

 

エクトル「ここまで大変な事が起きるのだと思うと・・・。」

 

鈴「元気出しなさいよ、3人とも。」

 

レベッカ「何が起きるかなんて全部予測はできないわよ。」

 

レオ「お前らがいなけりゃ、今俺はここにいないぜ。」

 

簪「うん、いいことだっていっぱいあったよ。」

 

弾「今はアスタロトを倒すことを考えようぜ。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「皆・・・」

 

皆に励まされ、少し落ち着いた3人。

 

楯無「でも、これは長期戦になりそうね。向こうにもかなりの仲間がいるわけだし。

今まで以上に皆強くなっていく必要がありそうね。」

 

一同「・・・・・。」

 

ジル「とにかく、向こうの出方を見て考えましょう。」

 

その後、千冬やジルの協力で、専用機一同は特殊訓練を行っていった。

 

 

Sideアスタロト

 

アスタロトは研究所で生産中のクローンパイロットを眺めながらつぶやいている。

 

アスタロト「フフフ、今回の戦闘で彼らの専用機のデータがよくわかったわ。」

 

カイム「しかし、彼らがこのまま変わらないとも思えません。」

 

エキドナ「織斑一夏、エクトル・ベレン、アルゴス・イリアディスは要注意です。」

 

アスタロト「その点は大丈夫よ。彼らに匹敵する最高の個体を用意しているから。」

 

アスタロトは右手に持った細胞の入ったアンプルを眺める。

 

アスタロト「待っててね、私の可愛い息子。あなたがこの世界を変えていくのよ・・・。」

 

アスタロトは、培養槽の中に眠る、少年に語りかける。

見た目的には一夏達と同じ位の年だ。

この少年の誕生が、果たしてどのような事になるのか・・・。

 

 



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誕生!最強のクローンIS少年

大阪での襲撃は、瞬く間に世界中のニュースとなった。

クローンがいつどこでどうやって生み出されているのか、

それらを阻止する方法はないものかと騒がれてはいるが、

アスタロトの行方は未だ掴めていない。

 

食堂では専用機持ちが皆集まっているが、修学旅行の思い出よりも、この事が話題になっている。

 

シャルロット「それにしても、アスタロトはあんなにクローンパイロットを生み出して、何をしようとしているんだろう?」

 

レオ「特に気になるのは、俺たちのDNAを使っている事だな。」

 

簪「クローンって、確か遺伝子をコピーしてるわけだから、つまり・・・。」

 

レベッカ「要するにあたし達のような敵も出る可能性があるってわけね。」

 

ビリー「考えてみりゃあ、自分(てめえ)の分身を殺さなきゃならねえって事か。」

 

鈴「想像しただけでぞっとするわね。」

 

弾「腕の立つパイロットの分身が来たらなおやばい気がするな。」

 

皆それなりに経験は積んできたが、今度来るであろう戦いは想像や人知を遥かに超えた

戦いとなる事を思うと不安になる。

余談だが、学内の公式戦では一夏が唯一の無敗である。

 

一夏「大きな力ほど、邪悪なものが手にすれば危険ってわけだ。」

 

箒「うむ、その通りだな。」

 

エクトル「僕らがISに乗れる事も、決して軽い事ではないな。」

 

セシリア「ええ、責任が問われますもの。」

 

アルゴス「まあ、事実現代最強の兵器と豪語されてるしな。」

 

ラウラ「いつ戦争が起こっても不思議ではない。」

 

千冬「専用機持ち共、気持ちはわかるが、授業に遅れぬよう食事を済ませておくように。」

 

専用機持ち一同「はいっ!!」

 

 

Sideアスタロト

 

 

アスタロトは自分の息子としているクローンISパイロット少年の実験に最後の仕上げを施している。

カイム、エキドナはその少年の専用機の作成を仕上げているところだ。

 

アスタロト「さあ、目覚めるのよ!私の息子『ネロ』!!」

 

ネロと名付けられた少年が、培養槽の中でゆっくりと目を覚ます。

 

カイム「間も無く、完了です!」

 

エキドナ「ネロ様、ここに誕生です!!」

 

培養槽から液が引き、扉がゆっくりと開かれる。

 

ネロ「・・・・・・。」

 

ネロは無言のまま辺りを見渡し、ゆっくりとアスタロトの方に向き直る。

 

アスタロト「ネロ、私があなたの母、アスタロトよ!」

 

ネロ「・・・母様、俺は・・・ネロ。」

 

生まれたばかりでまだ意識は安定していないようだ。

 

その後のネロの能力の拡張は眼を見張るものがあった。

数日でISの主要国の言語をマスターし、人間としての基本的な習慣も完璧に覚え、身体能力も常人を超えるほどに仕上がる。

 

程なくして、彼の専用機が仕上がった。

 

ネロ「カイム、俺の専用機が仕上がった様だな。」

 

カイム「はいネロ様、これがあなた様の専用機『サタナキア』でございます。」

 

ネロの専用機サタナキア。ダークな紫色の機体で、基本的なフォルム、性能は一夏の白式によく似ている。

ネロは早速装着し、試操縦をする。

 

ネロ「ふむ、いい使い心地だな。これがかつては女にしか使えなかったとはな。」

 

エキドナ「ネロ様、よくお似合いです!」

 

ネロ「母様、織斑一夏は何故か元からISを操縦できる様ですが、奴は一体?」

 

アスタロト「一夏はブリュンヒルデを姉に持つ男、そして、創造主クラストに選ばれし者よ。

彼は天使と悪魔で最強とされたセラフィエルとルシフェウスを制し、その力を宿すエクトル・ベレンとアルゴス・イリアディスを味方にしているわ。」

 

ネロ「奴にそれ程の力があるとは・・・。」

 

アスタロト「あなたが恐れる必要はないわ。あなたは織斑一夏に匹敵する潜在能力が備わっている。

試しにその力を一夏に振るってみるといいわ。」

 

ネロ「仰せのままに。」

 

ネロは研究所を出発し、IS学園へと向かう。

そんな中、ネロは独り言をつぶやく。

 

ネロ「・・・・それにしても、織斑一夏は何故自分以外の男にもISを使える様にしたのだろう。

母様達は奴を倒す事をお考えの様だが、正直殺すには惜しい。お手並み拝見といかせてもらおうか。」

 

 

 



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予期せぬ奇襲

一夏「んん?」

 

いつもの様に消灯時間に就寝したはずだが、気づくと一夏は、1人異空間に立っており、前にはクラストの姿が。

 

一夏「クラスト、何だよ人が寝てる時に。」

 

クラスト「一夏、汝に問う。汝にとってISの存在意義は?」

 

一夏「・・・そんなこと、束さんに聞けばいいだろ?」

 

クラスト「だが、同じ力でも使う者によっては災いとなっているであろう。」

 

一夏「別に今に始まった事じゃないし、考えてもしょうがないよ。」

 

死線をさまよう目にあってきたからか、一夏はすっかり慣れた様子だ。

 

クラスト「ふむ、まあ汝らしいと言えばらしいが・・。

だが、覚えておけ。汝らはこれから先も皆で多くの敵と戦い続ける。いずれこの兵器の存在そのものが、汝ら人の子にとって

どんなものなのかが問われる事であろう。特に一夏。いや、一夏に生まれ変わりし人の子よ。汝はなぜ一夏に生まれ変わりし

存在となったのか、その答えにたどり着く日も来るやもしれぬ。」

 

一夏「・・・それはそうだけど、でも俺は、己の選んだ道を歩いて行くつもりだぜ。いろんな事にぶちあたりはするけどよ。」

 

クラスト「ならばよい。このところの汝の様子を見て心配していたのだが、その必要はなかったようだな。

その命の輝きを失う事なかれ、一夏よ。」

 

一夏「・・・・。」

 

クラストはゆっくりと消えていった。

 

翌朝

 

 

一夏「・・・・。」

 

朝食を食べながら、一夏は昨夜のクラストとの会話について頭の中で色々考えていた。

 

セシリア「一夏さん、どうしましたの?」

 

弾「起きてからなんかボーッとしてるぞ。」

 

一夏「いや、実は昨日の夜寝てる間クラストと話してたから、何か変な感じでな。」

 

ラウラ「クラストとは、あの白と黒の翼の者の事か?」

 

一夏「ああ。」

 

アルゴス「夜中に妙に寝言を言ってたのはそれが原因か。」

 

エクトル「大変だね一夏。」

 

シャルロット「何だか不思議だよね、自分の身体の中に別人がいるなんて。」

 

一夏「ははは、そうなんだよなぁ。(正確に言えば俺も本来の一夏とは別人なんだが。)」

 

ビリー「平然と笑ってやがる。」

 

鈴「図太さは相変わらずね。」

 

レオ「よく落ち着いていられるな。」

 

簪「それって、取り憑かれてるのと同じじゃないの?」

 

箒「だが、クラストとやらのおかげで一夏も私たちも助けられた事もある。」

 

谷本「夢の中でお話か〜、何だか楽しそう。」

 

のほほん「私もおりむーの中にいる人とお話した〜い。」

 

鷹月「本音ったら何にでも興味持つわね。」

 

ある意味のほほんさんが一番図太いだろう。

 

 

Sideネロ

 

ネロ「ここがIS学園、織斑一夏の居場所か・・・。」

 

ネロは学園付近に来ていた。

警備は厳重であり、そう簡単には侵入できそうにない。

だが彼は、一夏を学園から引きずり出すべく、ある作戦を考案していた。

 

身につけている特殊なハンドヘルドコンピューターでカイムとエキドナと連絡をとる。

 

エキドナ「ネロ様、準備完了です。」

 

ネロ「よし。カイム、例のシステムの調子は?」

 

カイム「ご安心ください、VTウィルスのテストでは完璧な結果を出しています。」

 

VTウィルス、かつてラウラを苦しめたVTシステムから作り出された、いわゆるコンピューターウィルスのISバージョンだ。

一度感染すると、機能の低下や暴走を招く。

カイムはIS学園の格納庫内の訓練機の管理コンピューターにハッキングし、VTウィルスを作動させた。

IS学園のセキュリティをいとも簡単にかいくぐっていた。

 

ネロ「戦闘開始といこう。」

 

ネロはサタナキアを展開する。

 

 

Side一夏

 

一夏達1年1組は今日も普段通りに授業を受けている。

 

千冬「さて、もうすぐ冬になるが、冬期からはISの整備や技術開発について学び、実践していく事になる。

教わるだけでなく、己自身で新しいものを生み出せるよう励むように !

また、これは後輩を指導する上で最も重要な課題となる。学園の名に恥じぬよう研鑽しろ!」

 

一同「はいっ!」

 

冬が近づき、来年度は2年生になる一夏達は、みんな緊張感を持って千冬の話を聞く。

 

山田先生「織斑先生!異常事態です!!」

 

千冬「どうした、山田先生!?」

 

山田先生「格納庫の訓練機が突然暴走を始めました!」

 

千冬「何、暴走だと!?セキュリティアラームは鳴っていなかったが、どういう事だ?」

 

一夏「織斑先生!恐らくアスタロトの仕業かもしれません!」

 

千冬「・・・可能性は無きにしも非ずだな、専用機諸君、山田先生と共に暴走中の訓練機を止めに行け!!」

 

山田先生・専用機一同「はいっ!!」

 

急いで格納庫に向かう。現場にはすでに楯無と虚が対処していた。

 

楯無「皆、来てくれたのね!!」

 

アルゴス「楯無さん、大丈夫か!?」

 

弾「虚さん!!」

 

虚「弾君、こっちをお願い!!」

 

ラウラ「まさか、こっちのものを利用されるとはな。」

 

鈴「ビリー、一緒に倒すわよ!!」

 

ビリー「おらぁ!!」

 

レベッカ「えいっ!!」

 

皆で訓練機を攻撃する。すると、攻撃した機体から黒い霧が発生する。

 

箒「何だこれは!?」

 

エクトル「機体に吸い付いてくる。」

 

セシリア「えっ、そんな!?」

 

シャルロット「セシリア、どうしたの!?」

 

セシリア「装備が使えません!!」

 

見ると、ブルーティアーズのスターライトmkIIIから弾が発射されなくなっていた。

それどころか、ミサイルも一箇所かたしか発射されていない。

 

レオ「何だ、アビリティが使えないぞ!」

 

箒「紅椿も変だ!!」

 

レオはいつもの早撃ちができず、箒は赤椿が右腕しか展開されなくなっていた。

 

簪「ちょっと待って、何この警告!?」

 

皆の機体のモニターに『VT VIRUS 』の文字が。

 

弾「何だこれ、ウイルス!?」

 

楯無「訓練機を倒したら変な事に!!」

 

楯無は武器が勝手に暴走を始め、弾は飛行が出来なくなっていた。

 

シャルロット「うわっ、絶対防御システムが止まってる!!」

 

シャルロットが負傷する。

 

混乱の中、何故か一夏、エクトル、アルゴスには異常が見えない。

 

エクトル「皆、大丈夫か!」

 

アルゴス「どうなってんだこりゃ!?」

 

声「説明は俺からしよう。」

 

一同「!?」

 

上を見ると、そこにはネロの姿が・・・。



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似た者同士

一夏「誰だお前!!」

 

ネロ「申し遅れた、俺はネロ。そしてこれが俺の専用機『サタナキア』だ。」

 

エクトル「貴様、アスタロトの差し金か!?」

 

エクトルはアルテミスを向ける。

 

ネロ「ほう、母様と面識があるとはな。」

 

アルゴス「母様、だと!?」

 

鈴「じゃあアンタ、アスタロトの息子って訳!?」

 

ネロ「いかにも、織斑一夏、俺と勝負をしろ!」

 

一夏「何だと!?」

 

レベッカ「それよりアンタ、学園の訓練機に何したのよ!?」

 

ネロ「VTウィルス、俺の部下がVTシステムのデータを利用し作り上げたIS用ウィルスだ。

訓練機にはその媒体となってもらった。」

 

箒「すると、攻撃した瞬間、私たちの機体はVTウィルスに感染したのか?」

 

レオ「えげつないもの作ってくれるぜ!」

 

簪「これじゃあ戦いづらいわ!!」

 

セシリア「何故一夏さんやエクトルさん、アルゴスさんの機体は正常なままですの?」

 

ネロ「それは俺にもわからないが、恐らくそいつらの肉体に眠る力が機体への感染を防いでいるのだろう。

俺の肉体にも人知を超える力が宿っているのでな。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・.。」

 

この三人の専用機は、他の機体と違い、まだ謎が多く残されている。

 

一夏「勝負なら受けてやる。但し、ここから無事に帰れると思うな!!」

 

ネロ「よし、場所を変えよう。場所はモデレーションタワーだ。ついて来い。」

 

ネロは踵を返し、ブーストで格納庫を出る。

 

一夏「エクトル、アルゴス、2人ではきついかもしれないけど、何とか皆を守ってくれ!!」

 

エクトル「任せてくれ一夏。」

 

アルゴス「気をつけろよ。」

 

山田先生「皆さん、こっちに避難して下さい!!」

 

山田先生は戦闘不能の専用機持ちを避難させ、エクトルとアルゴスは残りの暴走訓練機を掃討する。

 

 

所変わって、一夏はネロを追ってモデレーション・タワーに着いた。クラストと出会った場所である。

 

一夏「・・・・。」

 

ネロ「ここなら邪魔が入ることもない。」

 

一夏「ネロ、と言ったな。アスタロトといいお前といい、何が目的だ?」

 

ネロ「目的?聞かなくてもわかるだろう。俺とお前は似た者同士なのだから。」

 

一夏「どういう意味だ!?」

 

すると、ネロは一夏にあるものを見せた。

 

一夏「それは!?」

 

それは紛れもなく束が作ったトランスリミッターだった。そして、ネロはリミットブレイクをし、

禍々しい姿に変わる。

 

「我が名はアスモデウス。すべてを無に帰するもの。」

 

一夏「・・・無に帰する、だと。」

 

ネロは元に戻って話を続ける。

 

ネロ「一夏、貴様はこの世でただ1人、純粋にIS、そして創造主クラストに選ばれし者。

お前は己の仲間を作ることで女尊男卑を変えようとしているだろう。

そのあたりは俺も貴様と同じだ。」

 

一夏「・・・・同じだと?」

 

ネロ「ああ、だが一つだけ違う所がある。お前は男性IS操縦者の存在により、男女間のパワーバランスに

調和をなそうとしている。だが俺は母様と共に男女ともに優秀なクローンパイロットを数多く生み出し、

人類の刷新を目指している。」

 

一夏「・・・つまり、この世に優秀なクローンパイロットの男女のみ残し、世界を変えるという事か?」

 

ネロ「その通り、お前はあくまで人の心が変わる事による平和を理想としているようだが、

所詮そんなものは焼け石に水、人間はそう簡単には変わらない。変わるのを待っていても埒があかない。」

 

一夏「・・・お前も、それなりに今の世の中の事を考えているようだな。」

 

ネロ「世界を数多くの優秀なクローンパイロットで満たせば、そこに真の平和を築ける!」

 

ネロは確信を持って言い放った。

 

一夏「ネロ、一部の優秀さだけでこの世を完全に統率することはできない、俺たちが乗るISの生みの親である

篠ノ之束博士でさえ、天才と言われていてもその力はこの世の平和にまで届いていない。

セラフィエル、ルシフェウスも同じような事をした結果、俺に倒された。」

 

ネロ「それは理想を完全に実現させる前だったからだろう。だが、俺も母様もそいつらと同じ轍は踏まない。

クラストの力を持つ貴様でさえ叶わないほどの力を持つ者が多くいれば、もはや誰も抗えないだろう。」

 

一夏「だったら、そうなる前にお前らを止める!!」

 

一夏はリミットブレイクをし、クラストの姿になる。

 

ネロ「さて、無駄話はこの辺にして、勝負といくか。」

 

ネロも再びリミットブレイクでアスモデウスの姿になる。

 

 

Sideエクトル&アルゴス

 

一方、エクトルとアルゴスはようやく感染した訓練機を倒し、停止させた。

念のためにコントロールルームのコンピューターも破壊しておき、感染経路を絶った。

 

エクトル「ふう、何とか片付いた。」

 

エクトルは汗だくな上に三つ編みのロングヘアが完全に解けていた。

 

アルゴス「しかしこりゃあ学園にとっちゃ大損害だな、後で箒に頼んで束さんに連絡しておこうぜ。」

 

エクトル「そうだね、あのVTウィルスの対策も必要になってくるし。」

 

この時点でまともに戦えるのは一夏、エクトル、アルゴスの三人だけであり、厳しい状況だ。

 

エクトルとアルゴスは専用機持ちのうち負傷した者の見舞いに医務室へと向かう。

 

in医務室

 

エクトル「失礼します。」

 

アルゴス「楯無さん、それにみんなも大丈夫か?」

 

楯無「アルゴスくぅ〜ん。」

 

弾「何とか生きてるぜ。」

 

シャルロット「いたた、起き上がれない。」

 

ビリー「ウィルスにやられてから袋叩きにあったぜ。」

 

ラウラ「くっ、あのような代物が出てくるとは、不覚!」

 

レオ「今は一夏とエクトル、アルゴスが頼りだな。」

 

エクトル「山田先生、皆の具合は?」

 

山田先生「安静にしていれば大丈夫ですよ。ただ、機体の方も重傷ね。」

 

アルゴス「そうですか。」

 

すると、箒、簪、鈴、レベッカが入って来た。

 

箒「失礼します。」

 

鈴「みんな、大丈夫!?」

 

エクトル「とりあえず安静にしていれば大丈夫だよ。」

 

レベッカ「よかった。」

 

山田先生「じゃあ、篠ノ之さん、簪さん、鳳さん、ミラーさん、看病をお願いしますね。」

 

箒・簪・鈴・レベッカ「はい。」

 

山田先生、エクトル、アルゴスは医務室を出て、状況報告に千冬の元へ行く。

 

アルゴス「あ、しまった。」

 

しばらく歩いているうちにアルゴスは何かを思い出す。

 

山田先生「イリアディス君、忘れ物ですか?」

 

アルゴス「いや、というより、箒と簪はいいけど、鈴とレベッカを医務室に残したのはまずかったんじゃないかと。」

 

エクトル「あー、そうだった。今頃、ビリーの看病で言い争う鈴とレベッカを箒と簪が止めてるかもしれない。」

 

山田先生「・・・ああ、そうでしたね・・・。」

 

アルゴスの勘は見事に当たっていた。

 

in医務室

 

鈴「ねえレベッカ、ビリーの看病はあたしがするから。」

 

レベッカ「まあまあ、ここは幼馴染みのあたしに任せてくれればいいわよ。」

 

2人とも顔が笑っているが、黒いオーラが見える。

 

箒「ちょ、ちょっと待て2人とも・・・。」

 

簪「医務室でケンカはよそうよ。」

 

箒と簪は懸命に止めようとするが、時既に遅し。

 

レベッカ「看病はあたしがするのよ!このペッタンコ!」

 

鈴「あたしがするって言ってるでしょーが、この胸デブ!」

 

ワーワー、ギャーギャー、ムキー!!

 

簪「はぁ。」

 

箒「駄目か・・・。」

 

ラウラ「気持ちは理解できるが静かにしてくれないか。そろそろ寝たいし。」

 

鈴・レベッカ「あっ、ごめんラウラ。」

 

ビリー「・・・本当うるせ〜なてめえら。何だよ、看病くらいで。2人でやればいいだろ。」大あくび

 

鈴・レベッカ「!!」ジロッ

 

ビリー「な、何だよ。」

 

レオ「おー、怖え。」

 

シャルロット「ビリー、女の子には色々あるの。」

 

セシリア「全く、デリカシーに欠けていますわね。」

 

弾「体より鈍感さを先に治すべきだな。」

 

楯無「この際聞くけど、ビリー君ってどんな女の子がタイプ?」

 

楯無が修学旅行の空気感で面白半分にビリーに質問する。

 

簪「ちょっとお姉ちゃん。」

 

箒「副会長、火に油をそそいでどうするんですか。」

 

楯無「暇だからつい。でも見てる分には面白いし。」テヘペロ

 

アルゴスを恋人に持つが故の余裕だ。

 

鈴「それはそれは、気になるわねー。」ニコニコ

 

レベッカ「ビリー、ハッキリ答えてちょうだいね、でないと・・・。」ニコニコ

 

ビリー「な、何だよ急に。」

 

箒・簪「・・・・。」

 

箒と簪は、鈴とレベッカは放っておくべきと判断し、ビリー以外の専用機持ちの看病に努めた。

 

 

Sideエクトル・アルゴス・山田先生

 

千冬「ご苦労、にしても今回はしてやられたようだな。」

 

エクトル・アルゴス「・・・面目ありません。」

 

千冬「そう落ち込むな、そういえば織斑はどうした?」

 

山田先生「織斑君はネロと名乗る少年を追ってモデレーションタワーに。」

 

千冬「単独で向かうとは、相変わらず無茶な弟だ。ベレン、イリアディス、戦闘後で申し訳ないが、すぐ織斑のところに向かえ。何かあってからでは遅いからな。」

 

エクトル・アルゴス「はい!!」

 

エクトルとアルゴスは一夏とネロの元へ直行する。

 

 



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一夏VSネロ

モデレーションタワーでは、一夏とネロの一騎討ちが始まった。

 

一夏の雪片弐型による剣技を、ネロは同じ剣装備「ヘル・グラディウム」で応戦する。

遠距離では白影剣や零落白夜光を放つも、ネロは一夏の白鋼と同じ左腕盾装備「ファルサス」、白影剣に似た「セリスティス」、零落白夜光に似た「アガリアレプト」で打ち消す。

 

一夏「武器攻撃だけじゃ駄目だな。」

 

ネロ「フッ、お互いにな。」

 

似た者同士だけあって実力は互角。

 

一夏「ならここで切り札を出すぜ!!」

 

一夏は一撃必殺のアビリティ「零落白夜」を発動。

 

ネロ「ならばこちらも切り札だ!!」

 

ネロも白式同様一撃必殺の効果を持つ、サタナキアのアビリティ「ルキフゲ・ロフォカレ」を発動。

 

雪片弐型の青いエネルギー光刃とヘル・グラディウムの赤いエネルギー光刃が、砕けるような衝撃でぶつかり合うも

効果は互いに相殺し、どちらのシールドエネルギーもそのままである。

 

一夏「ヘッ、なかなか決まらねえな。」

 

ネロ「ああ。だが、面白くもある。」

 

一夏「奇遇だな、俺もそう感じていた所だよ。」

 

一夏とネロは敵対している筈なのに、お互い心底勝負を楽しむかのような戦いぶりになっている。

 

しばらくすると、エクトルとアルゴスがやってきた。

 

エクトル「一夏、大丈夫か!?」

 

アルゴス「俺達も加勢するぜ!」

 

一夏「手を出すな!ここは俺1人でやる!」

 

アルゴス「何言ってんだよ!」

 

エクトル「仲間を呼んでくるかもしれないぞ!」

 

ネロ「安心しろ、こう見えて強者とは一対一で勝負する流儀でな。」

 

エクトル・アルゴス「・・・・。」

 

エクトルとアルゴスは2人の戦いにただ呆然としていた。

 

 

Side千冬

 

VTウィルスの事態を見かねた千冬は、打開策を見つけるべく、束と連絡をとっていた。

 

束「なるへそ〜、大変だねえちーちゃん。いつでも束さんの胸に飛び込んできていいからね〜!」

 

千冬「やかましいわ!それより、VTウィルスに感染した機体の修復を頼む。それと、VTウィルスの解析と対策も早急に頼めるか?」

 

束「ほーい、了解です〜。」

 

程なくして、感染した専用機は束のもとに預けられる事になった。

皆待機状態の専用機を外し、千冬に預ける。

 

ビリー「くそー、これじゃ丸腰同然じゃねえか。」

 

箒「仕方ないだろう、私達ではどうしようもないのだから。」

 

シャルロット「それより、今一夏はあのネロって人と戦っているんだよね。」

 

弾「心配だな。」

 

鈴「アイツまた1人で行っちゃったもんね。」

 

セシリア「今は一夏さんの無事をお祈りしますわ。」

 

レオ「もっと問題なのは、俺達が専用機を取り戻す前にまた襲撃されたらどうするかだよな。」

 

簪「うん、流石にずっとあの三人に負担がかかるのは気が引けるもん。」

 

ラウラ「とりあえず今は訓練機を代わりに使うしかないな。」

 

楯無「VTウィルスの事は、篠ノ之博士に任せましょう。」

 

 

Side一夏

 

戦闘開始から2時間近く経つが、一夏とネロの力は未だに拮抗している。

だが、シールドエネルギーを大分消費しているため、中盤からはお互い剣一本のみで戦っている。

 

 

アルゴス「ここまでくると、後はもう根比べだな。」

 

エクトル「2人とも流石に疲労の色が見えるよ。」

 

エクトルとアルゴスは息を飲んで見ていた。

 

ネロ「一夏、貴様にとってISとは何だ?」

 

斬り合いの中、つばぜり合いになった所でネロは一夏に問いかける。

 

一夏「・・・クラストにも同じことを聞かれたが、答えはすぐには見つからねえよ!」

 

ネロ「・・・・成る程。」

 

一夏「俺もお前に聞きたいことがある。」

 

ネロ「何だ?」

 

一夏「大阪で見たクローンのパイロットはみんな人形同然だった。だがお前はクローンでありながら、確固たる意志を持った

普通の人間として生きているように見える。お前は強大な力を持っているが、アスタロトや他のクローンと違って、

眼に輝きが見える。」

 

ネロ「何が言いたい?」

 

一夏「・・・本当はお前もわからないんだろ。何故アスタロトの命ずるままに生きるのか。

この世の人類を刷新するために何故犠牲が必要なのか。」

 

一夏のこの一言にネロは少し動揺した。

 

ネロ「っ!黙れ!」

 

気に入らないとばかりにヘル・グラディウムを振りかざす。

 

 

Sideアスタロト

 

アスタロトは、モデレーション・タワーでの一夏とネロの戦闘をモニターで眺めていた。

 

アスタロト「・・・ネロ、今一瞬戦うことを躊躇したわ。どういう事かしら?」

 

アスタロトはネロの思わぬ動揺に疑問を抱く。優秀なクローン・パイロットである筈のネロに、

ある種の感情が芽生え始めているように見える。

 

アスタロト「カイム、ネロに帰還するよう連絡しなさい。」

 

カイム「かしこまりました。」

 

 

Sideネロ

 

ネロのハンドヘルドコンピュータに カイムからの通信が入る。

 

ネロ「カイム、今は戦闘中だぞ!」

 

カイム「ネロ様、アスタロト様がお呼びです。ここは一旦引き上げられた方がよろしいかと。」

 

ネロ「・・・わかった、すぐに戻る。」

 

ネロはそう返事をすると、一夏に背を向ける。

 

一夏「おい待てよ、逃げる気か!?」

 

ネロ「一夏、勝負は預ける。母様が呼んでいるのでな。」

 

ネロは変身を解除し、ブーストでその場から離れた。

一夏も変身を解除し、エクトルとアルゴスのもとに降り立つ。

 

アルゴス「一夏、大丈夫か?」

 

一夏「少し疲れただけだ。」

 

エクトル「ネロ、恐るべき力の持ち主だな。」

 

一夏「ああ、だが何故か奴からはそれほど敵意を感じなかった。」

 

アルゴス「何言ってんだお前?」

 

エクトル「彼はアスタロトの息子なんだぞ。」

 

一夏「わかってる、ただちょっと気になっただけだ。」

 

三人は急いでIS学園に戻っていった。

 

 

 



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一時休戦

ネロ「・・・・。」

 

ネロはアスタロトの元へ戻る途中、一夏の言葉を思い返していた。

思えば今まで自分の意思で決めたことなどないに等しい。

アスタロトの理想に何の疑いもなく、命ずるがままにアスタロトの息子として、また、

アスタロトにとって最大の兵器として育ってきた事に、今更ながら疑問に思えた。

 

また、何故か一夏を抹殺する事に関して、そうしなければならない理由がわからなかった。

一夏はISに選ばれし者であり、女尊男卑のこの時代においても屈することなく活き活きとしている。

そして何より、創造主クラストをその身に宿している事から、世界を変えるために利用する価値は

十分にあると、ネロは考えていた。

だがアスタロトは、自分の意にそぐわない者はすべて消し去るつもりでいる。

それが本当に平和に繋がるのか。

 

ネロ「・・・とにかく今は母様に従うべきだろう。」

 

ネロはアスタロトの研究所に戻った。

 

ネロ「只今戻りました。」

 

アスタロト「ネロ、一夏相手に専用機の力を十分に発揮できていたわ。」

 

ネロ「ありがとうございます。」

 

アスタロト「今日はもう休んだらいいわ。」

 

ネロ「はい。」

 

ネロは自室へと戻る。

その後、アスタロトはカイムとエキドナを呼び出す。

 

アスタロト「ネロなんだけど、一つ気になることがあるの。あの子は一夏との戦いを楽しんでいるように見えたわ。」

 

エキドナ「カイム、どういう事か説明したら?」

 

カイム「・・・はい、ネロ様の肉体は、基本的に織斑一夏のDNAを基盤としていますが故、潜在意識的なもので

何かと一夏に同調してしまうのではないかと。」

 

カイムは言いにくそうに憶測を語った。

 

アスタロト「・・・なくはないわね。」

 

エキドナ「いかがいたしましょう?」

 

アスタロト「・・・取り敢えずは様子見ね。事によっては再教育を施すのも手だわ。

ひとまず一夏達との戦いは一時休戦にしましょう、向こうも戦力を大きく削られてるけど、一夏、エクトル、アルゴスが残っているし、それに、あのブリュンヒルデやジル・マイヤーズといった強者もいるし。」

 

カイム「では、こちらも戦力の増強に専念いたしましょう。」

 

アスタロト「カイム、他のクローンの管理はどうかしら?」

 

カイム「今の所問題はありません、向こうがもたついている間に数多くの強力なクローンを作りましょう。」

 

一時休戦とはなったが、IS学園側からしてみれば、到底見過ごせない状況にある。

 

 

Side一夏

 

ネロとの戦闘後、一夏、エクトル、アルゴスはIS学園に戻った。

 

千冬「無事だったか、織斑!」

 

一夏「大丈夫ですよ、ネロとの勝負はつきませんでしたけど。」

 

エクトル「ネロ、彼の強さは間違いなく一夏と対等です。」

 

アルゴス「どうも奴はアスタロト以上に一夏に対して思い入れがあるようです。」

 

千冬「そうか。」

 

一夏「・・・・・。」

 

エクトル「それより、他のみんなの専用機は治りそうですか?」

 

千冬「束のもとに届いてはいるが、今回は束でも時間がかかるようだ。」

 

山田先生「VTウィルスは前代未聞のものですから。」

 

アルゴス「じゃあ、あいつら暫くの間丸腰って事っすか?」

 

山田先生「いえ、暴走を免れた訓練機を代わりに使いますよ。」

 

千冬「そういうわけで、お前達には申し訳ないが、暫くはあいつらの護衛をお前達に任せる。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「はいっ!!!」

 

三人は教室へと戻る。すると、

 

箒「一夏、無事だったか!」

 

セシリア・シャルロット・ラウラ「一夏(さん)!!」

 

一夏「おう、心配かけたな。」

 

谷本「もう、1人で行くなんて無茶だよ織斑君。」

 

鷹月「またすごい敵と戦ったんだよね?」

 

のほほん「おりむー、心配したよぅ〜。」

 

教室に入るなり一夏は取り囲まれた。

 

一夏「はははっ、悪い悪い。」

 

レオ「相変わらず無茶するよなあ。」

 

ビリー「しかしまあ、状況が状況だけに、仕方ないんだよな。」

 

弾「三人とも悪いな、専用機直したらまた戦力として頑張らせてもらうからよ。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「ああ。」

 

 

Side束

 

束「は〜、これは本当に嫌になるね〜、でも箒ちゃんの紅椿もあるし、ちゃっちゃとやっちゃわなきゃ。」

 

束はVTウィルスに感染した専用機の修復を行っていた。性格上、気に入らないことや興味のない事に関わる事を極度に嫌う。

だが、千冬の頼みであり、妹の機体が被害にあっているとなれば仕方がない。

 

 

Sideネロ

 

ネロ「・・・・。」

 

ネロは自室に戻っても、一夏の事が頭から離れなかった。

 

ネロ「・・・俺は母様のためだけに生きる身であると教わった。それだけが俺の生きがいだと思っていた。

だが、俺自身の目標とは・・・一体何なのだろう?この男性蔑視の世の中であれほど生き生きとしている男は

これまで見た事がない。奴も母様同様、この世界を変えていこうとはしているが、それならなぜ母様は一夏を敵視しているのだろう?俺は母様の命ずる通りやつと一戦を交えてみたが、奴が憎いわけでもないのに何故戦うのだろう?」

 

考えれば考える程わからなくなるネロであった。

 

 

そして、時は過ぎ・・・

 

 

Side千冬

 

千冬「束、機体の修理はどうなった?」

 

束「今日の午後には届けられるよー!」

 

千冬「そうか、それならいい。問題はVTウィルスとやらの事だが。」

 

束「大丈夫!それに対抗するシステムも作っちゃったから!」

 

千冬「フッ、たまにはまともな事をするな。」

 

束「『たまに』ってのはないんじゃないかな〜?」

 

後日、修復した専用機が各々のもとに届けられた。

 

 

 

 



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復帰後の訓練〜のほほんさんの初恋

アスタロト「ネロ、織斑一夏と戦った感想は?」

 

ネロ「・・・正直奴の潜在能力は計り知れません。人間でありながら創造主と肉体を共有する程ですから。」

 

アスタロト「そうね、でもネロ、あなたがアスモデウスと肉体を共有できるのも、言って見れば奇跡なのよ。」

 

ネロ「・・・どういう意味です?」

 

アスタロト「カイム、ネロに説明を。」

 

カイム「はっ。」

 

カイムの説明によると、この研究所を立てて間もない頃は、ISと共にアスモデウスが適合する肉体を持つ人間を作る事が最優先であった。かつてルシフェルらが拉致した死刑囚の残りを実験に使ったが、束同様に作ったトランスリミッターをもってしても、みんなアスモデウスのコントロールに失敗し、肉体が滅んだという。

 

ただの人間にコントロールは不可能と見限り、思いついたのが、クローン技術である。

ISのコアに適合し、高い潜在能力を秘めた肉体ならば、アスモデウスをコントロールできると踏んだアスタロトは、

ISに選ばれし者である一夏に目をつけた。早い段階でISを代表候補生以上に使いこなす彼らの潜在能力を期待し、遺伝子操作を伴うクローン技術によって、彼の細胞を、アスタロト自身の卵細胞に融合させたことで、

クローンでありながらオリジナルの人格を持ったネロが生まれたのだ。

その結果、ネロはISのコア、トランスリミッター、そして、アスモデウスにも認められたのであった。

 

アスタロト「ネロ、あなたは彼らの力だけでなく、私の力も受け継いでいるの。だから、一夏を恐れる必要はないわ。」

 

ネロ「・・・・はい。」

 

 

Side一夏

 

日曜日の朝、一夏はいつも通り専用機持ちのみんなと朝食をとっていた。

 

一夏「そういえば、箒達の専用機が治ったんだってな。」

 

箒「ああ、お陰様でな。」

 

弾「とりあえず前線に復帰だな。」

 

アルゴス「とりあえず、模擬戦で軽く肩慣らしするか。」

 

セシリア「ええ、お願いしますわ。」

 

朝食後、一同はアリーナへ行き、模擬戦を行っていった。

 

鈴「行くわよビリー!」

 

ビリー「来やがれ、鈴!」

 

鈴とビリーはじっとできない性格が根本的に似ているからか、妙に張り切っている。

途中からレベッカも乱入し、模擬戦というより乱闘に近くなったが。

 

一夏「一人対複数か。それもいいな、箒、セシリア、シャルロット、ラウラ。四人同時に俺と模擬戦をしないか?」

 

箒「すごい事を思いつくな。」

 

セシリア「この間の戦闘でお疲れなのでは?」

 

一夏「だからこそだ。ネロは恐ろしく対応力がある。だから俺も様々な状況に対応する力を付けたいんだ。」

 

ラウラ「いいだろう。嫁の頼みとあらば。」

 

シャルロット「遠慮はしないよ一夏!」

 

一夏は四人の専用機を相手に模擬戦を行う。

四人の攻撃が同時に襲うが、持ち前のスピードと機動力で難なく全てをかわしていく。

 

アルゴス「すげえな、俺もやってみよう!」

 

エクトル「じゃあアルゴスの相手は僕が。」

 

レオ「じゃあ俺も。」

 

弾「俺も。」

 

簪「私も。」

 

アルゴスはアビリティ「テロス・フラス」以外は基本的に飛び道具がないので、条件的には不利に思われたが、

徒手空拳に慣れているため、武器がもともと籠手・具足である分、スピードは一夏に並ぶため、射撃系は的を絞りづらい。

 

山田先生「みんな、休みなのに頑張りますね。」

 

千冬「皆一夏についていこうとしているのだろう。それに、一夏にとってネロは現時点で最大のライバルらしいからな。」

 

 

Sideのほほん

 

のほほん「ふんふふ〜ん♪」スキップ

 

専用機が自主訓練をする一方で、のほほんさんは普通に休日をまったり過ごしている。

今日は一人で個人的な買い物をする事になっているのだ。

新しい着ぐるみを作るべく、学園から歩いて30分程のホームセンターに向かう。

 

のほほん「新しい着ぐるみを作るのだ〜。」エイエイオー

 

ホームセンターに着き、早速生地を探す。

 

のほほん「う〜む、どれにしよっか〜。」

 

あれこれ色々な生地をあさっては考える。

色々買った結果、かなりの荷物になっていた。

 

のほほん「うー、重いけどなんとか頑張ろう。うんしょ、うんしょ。」

 

両手に重い買い物袋を持って学園へと戻るその道中には、彼女を付け狙う奴らが・・・。

 

「おい、あの子IS学園の女の子じゃねえか?」

 

「マジかよ、すげえ可愛い!!」

 

「ナンパしてみようぜ!」

 

3人の男子高校生が。しかも全員不良のようだ。

 

不良1「よお、そこのかわいこちゃん!」

 

のほほん「ほぇ?」

 

いきなり声をかけられビックリする。

 

不良2「荷物重そうだな、俺らが持ってやるよ!だから、ちょっと付き合ってくんね?」

 

のほほん「い、いえ、大丈夫です。学校にはすぐ戻るんで〜。」

 

不良3「そうつれねえ事言うなよ。」

 

そう言うと不良はのほほんさんを通せんぼする。

 

のほほん「(ほえぇ、どうしよう。)」

 

声「おい貴様ら、何をしている?」

 

不良1「あ?」

 

振り向いた先には、なんとネロが立っていた。

ネロはたまたま気晴らしに出歩いていただけなのだが。

 

不良2「なんだよてめえ、邪魔すんなよ。」

 

ネロ「彼女の邪魔をしているのは貴様らだろう。女性1人相手に男3人とは呆れたものだ。」

 

不良3「んだとコラ!!」

 

不良の1人がネロに向かって拳を振る。その瞬間、

 

ネロ「遅い!」

 

不良3「ぐわっ!!」

 

ネロは素早くその腕を掴み、そのまま投げて近くのブロック塀に思い切り叩きつけた。叩きつけられた不良は完全に伸びてしまっている。

 

不良2「やってくれるじゃねえか。」

 

ネロ「いや、それほどでも。」

 

不良「褒めてねえよっ!!」

 

残りの2人が同時にかかるも、ネロは片方の不良の脇腹に肋を砕く勢いで蹴りを入れ、もう片方の不良には顔面に拳をたたき込み、鼻と前歯をへし折った。

 

不良2「いててて、くそう。」

 

不良1「ゲフッ、お、覚えてやがれっ!!」

 

不良どもはすたこらさっさと逃げた。

 

のほほん「(ほ、ほえぇ〜、凄〜い!)」

 

ネロ「危ないところだったな。」

 

のほほん「ありがとだよ〜!!」

 

ネロ「君、IS学園の生徒だろ。その荷物学校まで持ってやるよ。」

 

のほほん「え、でも。」

 

ネロ「いいから。」

 

ネロは買い物袋を二つとも片手で持つ。

 

のほほん「あ、ありがと〜。(何だかかっこいー。)」

 

ネロとのほほんさんはIS学園まで歩く。

 

ネロ「さて、着いたな。」

 

のほほん「ありがとだよ〜。」

 

ネロ「じゃあ、失礼するぜ。」

 

ネロは足早にその場を去っていった。

 

のほほん「あっ、そう言えば名前聞いてなかった。また会えるかな・・・。」キュン

 

 

その日の夕食では・・・

 

のほほん「ぽ〜。」上の空

 

のほほんさんはあれからずっと、ネロの事が頭から離れなかった。

 

谷本「ねえ、本音さっきからぼーっとしてるけど何かあったの?」

 

のほほん「え、えっと、何でも。」

 

鷹月「ははーん、さては恋ね。」

 

のほほん「ほえ、何でわかるの〜?」

 

レオ「顔に思い切り出てたぞ。」

 

簪「本音嘘つけない方だもんね。」

 

のほほん「えっとねー、今日買い物の帰りに変な人に絡まれたところを、その人が助けてくれたんだよー。それに、荷物も途中まで持っててくれたし。」

 

ビリー「それだけで見ず知らずのやつ好きになんのかよ。」

 

レベッカ「ビリー、一目惚れも恋のうちなのよ。」

 

鈴「本当アンタわかってないわね。」

 

ラウラ「そいつはどんな容姿だったのだ?」

 

ラウラは意外にも他人の恋話に興味を持つ方だ。

 

のほほん「背はおりむーくらいで、長い薄紫の髪の毛だったよ〜。」

 

一夏「ふむふむ、ん?長い薄紫の髪?」

 

専用機一同「!?」

 

ネロの存在が専用機持ちの頭をよぎる。

 

エクトル「本音、その人はその髪を後ろに2本束ねていなかったかい?」

 

のほほん「うん。変わった結び方だよね。」

 

セシリア「そのお方ってまさか。」

 

一夏「本音、もしかしてそいつの腕には、紫色のこれがあったか?」

 

一夏は待機状態の白式を見せる。

 

本音「うん、そんな感じ。その人何だかおりむーと同じ匂いがしたよ。」

 

シャルロット「これは・・・間違いないよ!」

 

アルゴス「ああ、ネロだ。」

 

弾「本音、そいつはこないだ一夏と戦ったやつだぞ!」

 

それを聞いてのほほんさんは、

 

のほほん「ほえー、その人ネロって言うんだ。」

 

一同「驚くところそこ(ですか)!?」ツッコミ

 

鈴「本音、そいつとは関わらない方がいいわ!」

 

ビリー「鈴の言う通りだぜ、こないだ襲ってきたやつを信用できねえ。」

 

のほほん「・・・でも、悪い人じゃない気がするよ。」

 

アルゴス「本音、そういうのが一番危険なんだぞ!」

 

ラウラ「私も同感だ。」

 

箒「それは一夏が一番知っているはずだ。」

 

一夏「いや、本音の言うことにも一理ある。」

 

一同「一夏(さん)!?」

 

一同は一夏のネロに対する考えに驚いた。

 

一夏「確かにやつはこの間俺に勝負を持ち込んだ。だがやつはウィルスで戦闘不能になったみんなに手を下そうとはしなかった。もしやつが危険なら、今頃本音を人質に取っているだろう?」

 

セシリア「確かに、それはそうですが。」

 

レベッカ「考えすぎじゃないの?」

 

一夏「奴は他のクローンのような人形とは違って、目に輝きがあった。アスタロト側の人間である以上確かに簡単には信じられないが、奴は完全に悪に染まっていないように思える。」

 

一夏は確信を持って言い放った。

 

箒「一夏は昔から人の心の機微に鋭いからな、こういう勘はほぼ当たっている。」

 

弾「・・・確かにそうだな。」

 

一夏をよく知っている箒と弾は納得しているようだ。

 

セシリア「もしかして一夏さんは、彼を仲間に入れようとお考えですの?」

 

一夏「可能性があるならそうしたい。」

 

ビリー「何でだよ?」

 

一夏「奴も、俺と同じ理想を抱いているからだ。」

 

ラウラ「だが、そんな事ができるのか?」

 

シャルロット「まあ、一度は敵対したエクトルとアルゴスとの絆を取り戻したくらいだし。」

 

レオ「ま、ここは一夏に任せておこうぜ。」

 

簪「・・・私もそう思う。」

 

ネロを味方に引き入れるか否かで論争になるところだったが、一夏に任せるという事で話は丸く収まった。

それにしても、人の出会いとは不思議なものである。

 

 

Sideネロ

 

ネロ「・・・母様は、一夏達だけでなく、あのような純真無垢な少女の存在も消し去るつもりなのだろうか・・・。」

 

自室に戻ってから、暫くネロはおもわずのほほんさんを助けたことや、アスタロトの理想について頭を悩ませていた。

 

 

 



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葛藤と凶兆

ネロ「・・・・・。」

 

ネロは疲れた肉体と心を癒すべく、自室で眠っていた。

 

アスモデウス「ネロ、聞こえるか?」

 

ネロ「・・・アスモデウス。」

 

アスモデウスがネロの前に現れる。

 

アスモデウス「ここのところ、貴様は苦悩しているな。アスタロトと共にこの世界を変えていくことに何の迷いがある?」

 

ネロ「・・・・。」

 

アスモデウス「あの小娘がそんなに気になるか?」

 

ネロ「それは・・・。」

 

ネロは不意に聞かれた事に口ごもる。

 

アスモデウス「フッ、まあいい。いずれ貴様は重大な事実を知る事になる。それにより貴様は決断を下さねばならなくなるだろう。」

 

アスモデウスの姿が消えていき、それと同時に目がさめる。

 

ネロ「・・・何だ?重大な事実って。」

 

ネロは整理がつかないまま再び眠りについた。

 

 

Sideアスタロト

 

アスタロト「・・・・。」

 

アスタロトはクローンパイロットの量産の様子を眺めながらボンヤリしていた。

 

カイム「アスタロト様、心此処にあらずと見えますが。」

 

アスタロト「カイム、ネロにはいつか『あの事』を話す時が来そうな気がするわ。」

 

カイム「・・・・アスタロト様。」

 

アスタロト「ネロの心は言ってみれば振り子状態。私と織斑一夏の間で心が揺れているもの。」

 

カイム「・・・・・。」

 

 

Side一夏

 

一夏「(・・・ネロ、奴は今も恐らくアスタロトの事で葛藤している。本音の存在が大きいかもしれない。)」

 

食堂で、一夏はネロの立場について悩んでいた。本気で倒すつもりでいた相手が、のほほんさんの初恋相手となると少々やりづらい。

 

レオ「しかし、本音も厄介な奴に惚れたもんだな。」

 

箒「この間の襲撃者が友人の初恋相手となると複雑なものだな。」

 

セシリア「ええ。ですが油断はできませんわね。」

 

弾「虚さんも本音のこと心配してたからな。」

 

エクトル「相手が普通の人間でなければ尚更だよ。」

 

しばらくして、のほほんさんが入ってきた。

 

のほほん「ふあああ、おはよ〜。」ムニャムニャ

 

アルゴス「よう、なんか凄い眠そうだな。」

 

谷本「本音、例の初恋相手のことで頭がいっぱいみたいなのよ。」

 

ビリー「マジかよ、本音にしちゃ珍しいな。」

 

のほほん「う〜ん、ネロロンの事が忘れられなくって〜。」

 

いつも以上にトロンとした目で話すのほほんさん。

 

鈴「ニックネーム決めるの早っ。」

 

レベッカ「ってゆーかネロロンって・・・。」

 

鷹月「ほら本音、これ飲んで。授業中眠いの辛いでしょ?」

 

鷹月さんはのほほんさんに眠け覚ましのエナジードリンクをあげた。

 

のほほん「う〜、ありがと〜。」ゴクゴク

 

目がやや冴えて、少しマシになったようだ。

 

一夏「どのくらい寝不足続いてるんだ?」

 

谷本「3日くらいは経ってるわね。」

 

シャルロット「それはちょっとよくないよ。」

 

ラウラ「本音、しばらく私達の部屋で寝ないか?」

 

のほほん「ほぇ、ラウラウのお部屋?」

 

ラウラ「うむ、私も眠れないときはシャルロットに寝かしつけてもらっているのでな。」ドヤ顔

 

シャルロット「ちょ、ちょっとラウラ!」アタフタ

 

一同「(本当に親子みたい(だな。)(ですわ。))」

 

一同はシャルロットの母性に感心する。

 

のほほん「そうなんだ〜、じゃあ行こっかな〜。」

 

それからしばらくのほほんさんは、千冬の許可を得てシャルロットとラウラの部屋に泊まることに。

 

 

Sideアスタロト

 

アスタロト「カイム、準備はいいかしら。」

 

カイム「はい、クローン達も戦闘準備完了でございます。」

 

アスタロト「そう言えばネロの様子はどう?」

 

カイム「はい、よく眠っておられます。」

 

アスタロト「そう。」

 

カイムは新たに生み出したクローンパイロットと、新型の無人機「ガーゴイル」に隊を組ませる。

 

アスタロトはそのうちの第一隊の隊長として、エキドナとともに出撃する。

 

アスタロト「では、行きましょう。」

 

エキドナ「お供致します。」

 

エキドナは専用機「フォルネウス」を纏い、襲撃の目的地へと向かった。

 



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新たな対策〜デュノア社潜入

アスタロトとエキドナは、クローンパイロットとガーゴイルを率いてフランスに向かっている。

標的はシャルロットの実家でもあるデュノア社だ。

カイムはデュノア社のコンピュータにハッキングし、VTウィルスを送り込む。

 

エキドナ「アスタロト様、デュノア社と言えばIS関連の企業でも世界有数のものと聞きますが。」

 

アスタロト「そうよ、今回の目的はデュノア社の管理データを奪取する事。そうすればより機体を量産できるようになるし、

どの企業よりも強固な開発ができれば、今の世の支配に近づける。」

 

エキドナ「なる程、まずは足元を固めるわけですね。」

 

デュノア社に危機が迫りつつあった。

 

 

Side一夏

 

一夏「束さん、突然呼び出してすいません。」

 

束「いいよいいよー、いっくんや箒ちゃんの為なら束さんはいつでもOKさ!」

 

箒「(・・・少しは他の人の事も考えたらどうなんだ。)」ハァ

 

千冬「束、例のものは?」

 

束「はいはーい!」

 

束はコンピュータで一夏、エクトル、アルゴス以外の専用機にデータを送り込む。

 

束「それじゃあ、展開してみてね!」

 

展開すると、腰の部分にベルトのようなパーツが装着されているのがわかる。

 

箒「!?これは?」

 

束「これが対策装置『AntiVT』(アンチブイティー)なのだ!!これならウィルスを持つ奴らとも戦えるよ!」

 

ビリー「このベルトがあれば感染を防げるのか?」

 

鈴「これなら大丈夫ね!」

 

束「うん、でも動力は機体のシールドエネルギーだから、若干消耗が早まるよ。」

 

レオ「マジかよ。」

 

簪「いつも以上に気をつけなきゃね。」

 

束「大丈夫!それは自分のタイミングで発動できるから、模擬戦とかに支障はないよ!」

 

セシリア「それは助かりますわ。」

 

シャルロット「これでまたみんなで戦えるよ!」

 

ラウラ「うむ、3人に頼ってばかりではな。」

 

VTウィルスは一夏、エクトル、アルゴスの専用機には感染しないが、他の専用機には抗体がないのだ。

 

 

Sideアスタロト

 

エキドナ「それではアスタロト様、ご武運を。」

 

アスタロト「ええ、あなたもね。」

 

アスタロトはデュノア社の入社希望者を装い、エキドナとクローンパイロットは社内清掃員を装ってデュノア社に潜入する。

ちなみに、無人機のガーゴイルは、専用機同様小さな待機状態にできるので、それらはアスタロトのアタッシュケースに入れて持ち運びされている。

 

 

Sideネロ

 

ネロ「うーむ、少し寝過ごしたようだな、そろそろ起きよう。」

 

ネロは自室のベッドから起き上がって背伸びをする。

 

声「ネロ兄様、よく眠れましたか?」

 

ネロ「ああ、リリスか。」

 

リリス、ネロが生まれた後、アスタロトが愛する彼のためにネロの細胞から産み出したクローンパイロットだ。

だが、クローンであるネロの遺伝子を使っているため、身体能力、戦闘能力は量産型のクローンパイロットよりやや上である程度で、ネロに比べるとかなり低く、彼女の専用機もせいぜい学園の訓練機の2倍ほどの性能である。

だがネロはそんな事は気にせず、自身の妹リリスを大切に思っていた。

 

リリス「兄様、お母様の理想を実現すれば、私達家族の暮らしは誰にも邪魔されることはないのです。」

 

リリスはネロと違い、アスタロトの理想を完全に目指している。

 

ネロ「・・・そうだな。」

 

ネロはやや引っ掛かり気味に返事をしながらリリスの頭を撫でる。

 

 

妹を愛し、その一方で、一夏の存在に意味を感じるこの心の葛藤を、ネロはどう乗り越えるのか?

 

 



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アスタロトの正体

一夏「・・・。」

 

一夏は心の中がいつも通りではないながらも、食堂で朝食を食べていた。

 

箒「一夏、ネロの事が気がかりか?」

 

一夏「まあ、それもそうなんだが。」

 

一夏はどこか考えすぎているような表情だ。

 

エクトル「この間の襲撃以来から少し経ったけど。」

 

シャルロット「あれから何も起きてないから逆に気になるよね。」

 

アルゴス「確かに、俺たちが知らない所で動いてる可能性もあるな。」

 

アスタロトやネロから襲撃を受けて約1ヶ月、何も起きてないからといって安心できるわけではない。

専用機持ち一同に至っては、油断できない状況だ。

 

セシリア「こちらも次の事態に備えておく必要がありますわね。」

 

鈴「でも、あいつらがいつどこに現れるかわかんないし。」

 

弾「探しに行くわけにもいかねえしな。」

 

皆深刻な表情で深く悩む。

 

ビリー「アスタロトについて調べることってできねえかな?」

 

レオ「調べるっつってもどうすんだ?」

 

ふと、簪が閃く。

 

簪「確か、アスタロトってルシフェルの仲間だよね。グリモヴァールにルシフェルの記録が残っていれば、そこから調べられるんじゃない?」

 

ラウラ「なるほど、その手があったな。ルシフェルはあそこでは表向きは町の支配者だったからな。」

 

レベッカ「過去の記録くらいは残ってる可能性があるって事ね。」

 

グリモヴァールに調査をしに行くため、千冬に事情を話す。

 

千冬「なるほど、敵を詳しく知るに越したことはないな。よし、出国を許可する。調査の報告を待っているぞ。」

 

一同「はいっ!!」

 

こうして、一同は久方ぶりにグリモヴァールに行くことになった。金曜日の放課後に学園を出発し、空港からスペインへと向かった。

 

そして、グリモヴァールに到着する。

一夏と冥王ルシフェウスの戦いからしばらくの間復興が進み、それなりに住みやすくなっている。

以前は常に夜だったが、今は普通と変わらない。

 

一夏「今じゃここも、すっかり入りやすくなったな。」

 

箒「復興がだいぶ進んだようだな。」

 

セシリア「ええ、以前のように暗く荒んだ雰囲気は消えていますわ。」

 

アルゴス「・・・・。」

 

アルゴスはかつて自分が冥王ルシフェウスとしてここにいた事を思い出した。

セラフィエルとなったエクトルと対立した時、一夏はセラフィエルにもルシフェウスにも従わない選択をした事で今の自分がある。

 

町の中心であるパブに一行は入る。

 

シャルロット「昼間からここに入るのは初めてだね。」

 

マスター「おう、あんたらか。いらっしゃい。」

 

簪「こんにちは。」

 

エクトル「なんか、店の雰囲気も変わっていますね。」

 

マスター「ああ、この街にも太陽が戻ってきたからな、昼間はカフェ、夜はパブってなってるぜ!」

 

マスターも以前あった時より話しやすい雰囲気になった。

 

ラウラ「・・・・そういえば、空腹だな。」グーッ

 

ラウラはカフェのメニューを見た途端にお腹がすく。

 

一夏「せっかく来たんだし、何か食っていくか。」

 

鈴「そうね、ここで情報収集もできるし。」

 

ビリー「さーて、何にすっかなー。」

 

一同はこのカフェで食事をしながら情報収集をする。

 

弾「そういや、ルシフェルがいたあのレクトラートって建物はどうなってんだ?」

 

マスター「今はもう誰も管理していないぜ。ルシフェウスが倒されて以降手付かずだ。」

 

鈴「ほったらかしなら、中にまだ何かあるんじゃない?」

 

エクトル「その可能性はあると思う。」

 

一夏「よし、行ってみるか。」

 

食事後、店を後にし、レクトラートへと向かった。

 

途中、レクトラートの敷地の入り口手前に、かつてチンピラだった男たちがいた。呑んだくれていた時よりは落ち着いている。

 

元チンピラ「おう、あんたら、また会ったな。」

 

ビリー「よう、つーか何だそのカッコ?」

 

元チンピラは警官服の様なものを着ていた。

 

元チンピラ「いや、せっかく町が元に戻ったからな。俺たちも頑張らねえと。今はこいつらと街を巡回して安全確認を行ってるぜ。」

 

アルゴス「ガラじゃねーのによくやるな。」

 

鈴「本当よね。」

 

元チンピラ「何だよ、いいだろ!(笑)それより、あんたらここに入るつもりなんだろ?やめといたほうがいいぜ。」

 

一夏「忠告はありがたいけど、どうしても俺たちはあの中で調べることがあるんだ。」

 

セシリア「私達の身の安全なら、自分たちで行いますわ。」

 

元チンピラ「ま、そうだよな。本当は立ち入り禁止だが、特別に通してやるよ。」

 

エクトル「ありがとうございます。」

 

 

レクトラートに入ると、内部は当時のままである。悪魔の血痕が至る所に飛び散ったまま残っていたり、

戦闘時の衝撃でできた傷が壁じゅうにあった。

 

簪「うわ・・・・。」

 

簪は思わず顔をしかめる。

 

一夏「みんな、何があるかわからないから気をつけろ。」

 

中に入り、奥深くへと進む。

 

レオ「ここ、久しぶりに来たが、本当にあの時のまんまだな。」

 

箒「電気も通っていないところを見ると、誰もいない様だが。」

 

1階の廊下をしばらく歩いていると、上下に分かれた階段と、奥へと続く通路があった。

 

鈴「分かれ道が3つあるわね。」

 

アルゴス「ここは3手に別れて調べるべきだな。」

 

ここからはグループに分かれて調査をする。

 

一夏「よし、俺たちは上を調べる。」

 

一夏グループは箒、セシリア、シャルロット、ラウラとなる。

 

エクトル「僕らは中央の奥通路に進もう。」

 

エクトルグループはレオ、簪、弾の4人。

 

アルゴス「下は任せろ。お互い何かあったら連絡しようぜ。」

 

アルゴスグループはビリー、鈴、レベッカとなる。

 

 

Sideアルゴスグループ

 

アルゴス達は、地下の資料室に入った。

そこはIS学園の生徒会室よりはるかに広大で、見渡す限り書物やデータ資料が無数にある。

 

ビリー「これ全部調べんのかよ。」ハァ

 

ビリーは本が退屈で苦手なためか、うんざりする。

 

レベッカ「文句言ってないで、さっさとやるわよ。」

 

手当たり次第に資料を閲覧する。

 

鈴「にしても、変な本が多いわね。」

 

本やデータ資料に記載されているのは、かつて様々な国で行われた異常な人体実験のデータばかりである。

 

アルゴス「妙な文章にグロテスクな画像、人間がやったとは思えない程のものだな。」

 

調べていくと、奥に資料保管庫と書かれた扉が。

 

アルゴス「ここが一番怪しいな。」

 

アルゴスはドアの鍵をキックで強引にぶち壊して扉を開けた。

 

レベッカ「相変わらずすごいキック力ね。」

 

ビリー「この中もすげーオカルト的な本があるな。」

 

中には、先程とは打って変わり、神や悪魔の辞典や魔導書の様な書物がたくさんあった。

ワルプルギスの夜を彷彿とさせる儀式のようなものが行われた記録がいくつも記載されている。

 

鈴「ちょっと、この写真見て!」

 

ビリー「何だ?」

 

見てみると、その中にはルシフェル、バラキエル、ベリアルの3体の中央に立つ女性の姿が。

中央には血まみれで横たわる1人の女性の姿が。

 

レベッカ「何々、悪魔に捧げられし生贄となった人の子の肉体により、堕天使の後継者誕生する、その名は・・・?」

 

文章の終わりの単語を見て一瞬一同は絶句する。

 

アルゴス・鈴・ビリー・レベッカ「アスタロト!?」

 

 

Sideエクトルグループ

 

エクトル「みんな、周囲への警戒を怠らない様に。」

 

弾「あ、ああ。」

 

弾は若干震えながらも何とか進む。

 

奥に進んでいくと、何やら古びた病院の病室の様な場所に出くわす。

 

簪「こんなところに病室って・・・。」

 

簪は寒気を感じていた。

部屋に入ると、あるものが目に付く。

 

レオ「おい、これって・・・!?」

 

レオはいくつもあるベッドの上にあるものを見て驚愕する。

 

エクトル「ああ、間違いない。人間の・・・死体だ。」

 

簪・弾「うっ・・・・。」

 

簪と弾は思わず右手で口を抑える。原型こそ止めていないが、人体の一部と見られるものがいくつもベッドの上に転がっている。

 

エクトル「恐らく、ここに拉致した死刑囚や、自ら進んで悪魔になる者を収容していたんだろう。」

 

レオ「これが公にならなかったのは、ここがかつて表向きは病室だったからだろうな。」

 

周囲を探索し、診察室らしき部屋に入る。資料が保管された棚があり、机には大きめのデスクトップのパソコンが1台。

 

弾とエクトルはパソコンを、レオと簪は棚の資料を探る。

 

エクトル「見たところ、どこの病院でもある様な診察記録ばかりだ。」

 

弾「おい、これ怪しいんじゃねえか?」

 

弾はロックされたフォルダを見つける。しかし、パスワードがわからない。

 

簪「エクトル、それのパスワードってこれじゃない?」

 

簪は棚の資料で、記録カルテのファイルのポケットの隅に書かれた文字を見つけた。

入力すると、パスワードが一致した。

 

レオ「これは・・・、悪魔生産記録?」

 

その中にはこう書かれていた。

 

デモンズコア適性実験の記録:

 

9月11日、死刑囚Aにデモンズコアの適性実験を行った結果、上半身が破裂。

死刑囚Bに試したところ、意識障害となり、行動不能になったため、殺処分。

死刑囚Cは、適性がややあったものの、ISの操縦が肉体の限界の許容範囲を超えたために失敗、死亡。

死刑囚Dは・・・・

 

(省略)

 

結果:

 

死刑囚及び悪魔化志願者約10万名に施した結果、成功作約3万名、不完全作約2万名、失敗作約5万名となった。

 

実験担当:ウーゴ・アンデルソン

 

エクトル「このウーゴという者が、恐らくここで医者をしながらこの実験に協力していたんだろう。」

 

簪「何て事を・・・、こんなの人間がする事じゃないわよ!」

 

 

 

Side一夏グループ

 

一夏達は上の階に上って行った。

 

一夏「皆、足元に気をつけろよ。」

 

階段はやや錆びているところがあり、皆慎重に上った。

 

登りきったところには、部屋の扉が一つだけだった。

 

ラウラ「よし、入るぞ。」

 

ラウラがそっとドアを開ける。中に入ると、そこは何だか寂れた雰囲気の部屋だ。

椅子と机が一つずつあり、右には本棚が一つある。そこには文学、思想、科学、神話、そして、IS関連の書物がならんでいる。

 

セシリア「随分研究をなさっているお方の様ですわね。」

 

箒「これは、中々難しいものばかりだな。」

 

箒とセシリアは書物を手に取るも、首をかしげるばかり。

 

シャルロット「あ、こんな所に日記があるよ。」

 

シャルロットは机の引き出しから誰かの日記を見つけ出した。

 

ラウラ「日記か、これは、人の名前か?」

 

表紙の下側に、ベアトリクス・グルーバーと書かれている。

 

一夏「ベアトリクスっていうのか、まあとにかく読んでみよう。」

 

日記を最初から読み始める。時期的には6年前からだ。

 

 

日記:

 

6月11日

 

今日は、愛する夫ダニエルとの結婚記念日。

ダニエルは張り切っていろんな所に私を連れて行ってくれた。

プレゼントに貰ったペンダントは一生の宝物。

ダニエルはいつも私の心に寄り添ってくれるかけがえのない人。

 

一夏「・・・これは、ここにいた奴が書いたものにしては・・・。」

 

セシリア「何だか普通の日記ですわね。」

 

箒「ああ。」

 

シャルロット「読み進めていったらもっと色々わかるんじゃない?」

 

ラウラ「うむ、気にはなるな。」

 

 

日記:

 

6月20日

 

今日病院に行ったところ、妊娠していた事がわかった。

愛する夫との子供ができた事に私は嬉し涙が止まらなかった。

出産は来年の4月になる予定。愛しの子が生まれるのが待ち遠しい。

 

一夏「子供ができたのか。」

 

箒「幸せな限りだな。」

 

セシリア「ええ、そうですわね。」

 

しかし、読み進めていくに連れ、だんだんその幸せに翳りが。

そして、一夏達が驚くべきキーワードが登場知る事になる。

日記を読み進め、今年書かれたページに入る。

 

 

日記:

 

3月11日

 

最近夫の様子がおかしい様に思える。

いつも通りに話している様でも、どこか違和感が。

夜、夫が電話をしているのをこっそり聞いたところ、

夫が勤めていた技術開発社が、IS関連企業でも有数のデュノア社に買収される事になり、全ての権限を奪われてしまったのだという。

 

一夏「!?」

 

セシリア「デュノア社!?」

 

箒「何だと!」

 

ラウラ「シャルロット、これは本当なのか!?」

 

シャルロット「わからない・・・、僕もこれは知らなかった。」

 

 

日記:

 

4月2日

 

夫は精神的に疲れ果てていた。やっとの事で話を聞いたところ、夫はデュノア社によって配属された部署で、女尊男卑に固執する女性社員から嫌がらせを受けていたのだ。

もうすぐ愛しの子が生まれるというのに、何故夫がこんな目に・・・。

女尊男卑は、かの有名な篠ノ之束博士がISを創始した事がきっかけとなり、ISが女性にしか扱えない故に男性の存在が取るに足らないものとされる様になっていたのだ。ちなみに生まれる子は男の子であり、この子の将来も心配である。

 

 

シャルロット「・・・何だか、いたたまれないよ。」

 

シャルロットはどこか罪悪感を覚えた。

 

箒「・・・私もそう思う。」

 

箒もシャルロットと同じ様な心境だ。

 

ラウラ「何だか、読み進めるのが怖くなってきたぞ。」

 

セシリア「お二人とも、大丈夫ですか?」

 

一夏「読むのやめようか?」

 

箒「いや、続けてくれ。」

 

シャルロット「きっと、向き合うべき事実なんだと思う。」

 

一夏「・・・わかった。」

 

その後もひたすら読み進める。

 

日記:

 

4月10日

 

いつもの様に夕食を用意して待っていたのだが、夫は帰ってこない。

残業があるのかと思ったが、最近の夫を見て考えると、何だか嫌な予感がしてならなかった。

デュノア社に電話をしてみるも、夫はすでに退社していると言っていた。

いよいよ不安になり、只々帰るのを待っていた。

しばらくして、自宅に電話がかかってきた。夫からだと思ったが、かけてきたのは警察だった。

電話がかかってきて数十分後、私の元に夫が帰ってきた。自殺により帰らぬ人となって・・・・。

 

一夏「まさか、女尊男卑がここまでの事態を引き起こすとは・・・。」

 

セシリア「・・・・。」

 

セシリアは気持ちが滅入る。かつては自分も女尊男卑に固執していたのだから無理もない。

 

ラウラ「セシリア、自分を責めないでくれ。」

 

セシリア「で、ですが・・・。」

 

シャルロット「大丈夫だよセシリア。」

 

箒「私達はセシリアを信じるぞ。」

 

落ち込むセシリアを何とか励ます一同。

いよいよ最後のページに入る。

 

日記:

 

 

4月20日、夫がこの世を去ってから数日して、私は産気づいた。

この子と一緒にダニエルの分まで生き抜こうと、私は必死になって出産に耐えた。

しかし、この出産が、私の心を大きく変える事になろうとは・・・。

出産を終えても、一向に産声が聞こえない。先生によれば、死産とのこと。

これで私は夫も子供も失った。何故こんな事に!?どうして私が!?

私は世の中を憎んだ。特に、夫の自殺の要因となったデュノア社、何よりISをもたらした篠ノ之束は許せない。

しかし、産後で動けない間はどうすることもできず、只々憎むのみだった。

 

産後から回復するも、私の憎しみは消えることはなかった。そんな中、私に声をかけてくれたのが、スコール様だった。

スコール様は私の憎しみを受け止めてくださり、とても尊敬できるお方だった。

そんなある日、スコール様は私のデュノア社と篠ノ之束への復讐を手伝うとおっしゃられた。

スコール様はご自分が堕天使ルシフェルである事を私に明かし私に力を授けてくださった。

そう、私は人間を超え、復讐を果たす悪魔としてこの世に生まれ変わったのだ。

そして私は、ルシフェル様から悪魔としての自身の名を頂いた。名は・・・・『アスタロト』

 

シャルロット「アスタロト!!!じゃあこのベアトリクスって人は・・・。」

 

ラウラ「アスタロトの事なのか!?」

 

箒「何ということだ!!」

 

セシリア「元々人間だったなんて!!」

 

一夏「いや、それより早くみんなと合流してデュノア社に向かった方がいい、もしこの日記の通りなら、

デュノア社が襲撃されるのはほぼ間違いないぞ!!」

 

一夏達は急いで部屋を出て、他のグループと合流し、デュノア社へ直行した。

 

 

 



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デュノア社壊滅

アスタロトは昼間はデュノア社の社員として働く一方、社内に誰もいない夜間を狙い、カイムのシステムハッキングでセキュリティにかかることなく社内に侵入し、パソコン内の重要なデータを複製し、研究所へと送り込んだ。

セキュリティを一時的に停止させているため、情報漏洩があっても痕跡が残らないようになっている。

 

アスタロト「さすがは世界有数のIS企業ね、これらを全て手に入れれば・・・。」

 

かつての開発データから最新技術の開発過程のデータに至るまで盗み出していった。

 

 

Sideネロ

 

ネロ「カイム、母様は今どこにおられる?」

 

カイム「はっ、今はフランスのデュノア社の方に向かっておられます。」

 

ネロ「デュノア社といえば有数のIS企業だと聞くが。」

 

カイム「はい、アスタロト様はエキドナと共に社員として潜入されて、デュノア社内のデータを集めているところです。」

 

リリス「そんな所からデータを盗んで大丈夫なの?」

 

カイム「いえ、盗むのではなく、複製を持ち帰ります。アスタロト様がお帰りになられた頃に、社内に仕掛けたガーゴイルを暴走させる予定ですので。」

 

ネロ「まあその方が無難だな。事件が起きても、誰がやったかわからなければそれまでという事か。」

 

リリス「万が一疑われても証拠がなければ大丈夫って事ね。」

 

ネロ「IS学園の専用機連中、少なくとも織斑一夏は気づくだろうがな。」

 

ネロは再び一夏に会う気がしてならなかった。そして、全てのデータが集まった日、事件は起きた・・・。

 

 

Side一夏

 

一夏達は急遽、シャルロットの実家であるデュノア社に向かっている。

 

一夏「ネロを利用して学園を襲撃した事を考えると、デュノア社も危ないぞ!」

 

簪「うん、急ごう!」

 

 

グリモヴァールを後にし、スペインから飛行機でフランスに向かう。

 

デュノア社はフランスの空港からバスで2時間ほどの所だ。

 

そして、デュノア社に一行は到着したのだが・・・・

 

 

Side IS学園

 

のほほん「おりむー達大変だよね〜。」

 

鷹月「私達も専用機を持てたら行けるのに。」

 

谷本「皆命がけで敵と戦う事が多いし。」

 

楯無「(ここの所事件が多かったせいか、皆ちょっと不安そうね。)」

 

学園の食堂では食事のひと時が流れている。しかし、

 

 

TV「臨時ニュースです!フランスのIS企業のデュノア社が、先程何者かによる襲撃を受けたとの報告がございました!!

社員の多くに死傷者が出ており、社内は緊迫した模様です!」

 

楯無「!!」

 

鷹月「デュノア社が襲撃された!?」

 

谷本「ちょっと待って、確かデュノア社って・・・。」

 

のほほん「シャルシャルのお家だよー!!」

 

千冬「何という事だ・・・。」

 

 

Side一夏

 

一夏「こっ、これは!?」

 

デュノア社の今の光景を見て、皆愕然としている。

建物はかなり破壊されており、周辺にはおびただしい数の死体が転がっていた。

 

シャルロット「そ、そんな・・・何で・・・?」

 

アルゴス「ひでえ・・・。」

 

エクトル「これは、間違いなくアスタロトの仕業だ!!」

 

すると、建物から血まみれで瀕死の社員らしき人物が見える。

 

セシリア「大丈夫ですか?」

 

社員「ハァ、ハァ、何とか。」

 

鈴「一体何が!?」

 

社員「突然、社内から大量の・・・む、無人機、が。」

 

レオ「社内に無人機だと!?」

 

ビリー「何だってそんなもんが!?」

 

社員「わからない・・・、あれは、見た事もない姿だった。いや、それより・・・問題が起きた。社内のIS関連のデータが、全て抹消されている。」

 

ラウラ「データが抹消!?」

 

弾「おいおい、それってまずいんじゃねえの!?」

 

レベッカ「生存者は他にはいるの!?」

 

シャルロット「父さん、社長は!?」

 

社員「社長は・・・、無事・・・だ。ゴフッ」

 

箒「しっかりして下さい!!」

 

だが、この社員も致命傷を負っており、シャルロットの父の無事を告げて、絶命した。

 

一夏「・・・ともかく、今は社長に会おう。」

 

シャルロット「・・・うん。」

 

一行は社長の元に向かった。

 

 

Side アスタロト

 

 

カイム「アスタロト様、デュノア社のデータの複製のバックアップが完了しました。」

 

アスタロト「ご苦労様。」

 

エキドナ「社員データも全て破壊しておきましたから、アスタロト様がデュノア社にいた証拠は何一つ残っておりません。」

 

リリス「これでかなりのISの主要なデータを握れたわね。」

 

アスタロト「ええ、そうよリリス。(これでデュノア社への復讐は終わったわ。あとは邪魔者を全て消すだけ。)」

 

ネロ「しかし、これで織斑一夏達ISとの全面的な戦闘になるのでは?(母様がデュノア社を攻撃した理由は、他にあるのでは?)」

 

ネロはデュノア社について話すアスタロトの表情から違和感を覚えた。

 

アスタロト「それはネロ、あなたにかかっているわ。彼らと戦う時、あなたは彼らと戦う理由を知ることになる。」

 

ネロ「・・・・・。」

 

一夏達との決戦に直面し、自身の戦う理由を告げられた時、ネロはどんな選択をするのだろうか・・・・。

 

 

Side一夏

 

一同「・・・・。」

 

一夏達はデュノア社で事件の一部始終を聞き終え、IS学園に戻る途中まではほとんど話せなかった。

特にシャルロットに関しては、数年前のデュノア社の他社買収の裏側を聞き、複雑な気持ちに。

 

アスタロトの夫ダニエルの勤めていたIS技術開発社は、先進的に各国のISの開発に取り組んでおり、

世界中の一流パイロットを陰ながら支えてきた。しかし、そんな中ダニエルの会社は経営難に陥り、

その弱みに付け込むが如く、デュノア社は半ば脅しの形でダニエルの会社を買収したのだった。

デュノア社はダニエルの高い技術力を評価していたが、彼が周囲から冷遇されていたことにまでは気を回さなかったらしい。

 

IS学園に戻り、千冬に調査結果と事件の一部始終を伝えた。

 

千冬「・・・ご苦労だったな。今日はもう休んでおけ。」

 

一同「・・・はい。」

 

千冬「デュノア。」

 

シャルロット「はい?」

 

千冬はシャルロットの肩に手を置く。

 

千冬「今回の事件、お前にはあまりにも過酷な現実だが、気を落とさず織斑達と行動するように。」

 

シャルロット「・・・はい。」

 

自身の実家の裏事情は、十代半ばの少女にはあまりにも残酷なものだった。

 

 



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アスタロトの新兵器

カイムは研究所で、デュノア社から得たIS適正パイロットのデータを、培養槽で眠るクローンパイロット達に流入していた。

また、数種類の機体のデータを元に、アスタロトの新型専用機を開発している。

 

アスタロト「いい機体をお願いね、カイム。」

 

カイム「お任せください。」

 

リリス「母様、次はドイツのシュヴァルツェ・ハーゼを狙うのが得策だと思います。」

 

アスタロト「そうね、私の機体が完成次第向かおうかしら。」

 

カイム「そうとなれば完成を急がせましょう。」

 

カイムは張り切っている。

 

ネロ「・・・・・。」

 

リリス「(兄様?)」

 

アスタロトの行動に戸惑いを隠せないネロをリリスは心配する。

 

アスモデウス「小僧、お前も同行すればいい、アスタロト様がシュヴァルツェ・ハーゼを襲うことはおそらく織斑一夏も予測してくるだろう。そこでお前の知るべき真実が明かされるかもしれん。」

 

ネロ「・・・そうだな。」

 

 

Side一夏

 

シャルロット「・・・・。」

 

IS学園に戻ってもシャルロットは黙っていた。子供の頃からあまりいい思い出がなかったとはいえ、自分の家の人々が虐殺されたことに何も感じずにはいられない。

 

レオ「シャルロット、なあ。」

 

鈴「今はそっとしときなさいよ。」

 

ラウラ「・・・・。」

 

ラウラは、ルームメイトの悩みを解決できないかと心の中で思っていた。

 

箒「・・・・。」

 

箒に至っては、自分の姉が全ての元凶に思えてならなかった。

 

簪「箒、その、あんまり思いつめないでね。」

 

セシリア「簪さん、今はそっとしておいてあげましょう。」

 

弾「事実が事実だしな。」

 

箒の束における悩みもこれまでにない深さとなった。

 

アルゴス「しかし、こっからアスタロトがどう動くかだよな。」

 

一夏「恐らく、次はクラリッサさんのいるシュヴァルツェ・ハーゼが狙いだろう。」

 

エクトル「可能性は高いね。 デュノア社から得たデータを元に得た力を試すには向いている。」

 

レベッカ「確かに、いつかは狙われるかも知れないしね。」

 

ラウラ「・・・そんな事、そんな事、させてなるものか!!」

 

ラウラはクラリッサを始め、シュヴァルツェ・ハーゼは自分の家族同然に思っている。

 

ビリー「なら、ドイツ遠征と行こうじゃねえか!そこならネロとも会えるかも知れねえだろ?」

 

一夏「・・・そうだな。」

 

そう言って一夏は箒とシャルロットの方に向く。

 

一夏「箒、シャルロット。」

 

箒・シャルロット「一夏。」

 

一夏「本当なら一緒に来て欲しいが、無理はしなくていいからな。」

 

一夏は2人の悩みを感じつつ、彼女らを気遣う。

 

箒「いや、私も行こう、ラウラの家族を守るために!」

 

シャルロット「僕も行く!これ以上悲しみを増やしたくない!」

 

ラウラ「二人共・・・、いいのか?」

 

箒・シャルロット「ああ(うん)!」

 

二人の決意にラウラは心を熱くさせられた。そこに、話を聞いていたらしく、千冬が来た。

 

千冬「今回は私も同行しよう。」

 

一同「織斑先生!?」

 

千冬「お前達は皆辛く悲しい事実にも逃げずに向き合っている。そんな教え子を見ていて、何もしないわけにはいかないからな。アスタロトについて調べた事を詳しく話してもらおう。」

 

虚「私も同行します。弾君が戦っているのに行かないわけにはいきません。」

 

弾「虚さん。」

 

楯無「そういう事なら、私も一緒に行くわ。アルゴスと一緒に戦いたいし!」

 

アルゴス「楯無さん。」

 

山田先生「私も行きます。エクトル君と一緒に戦いたいです!」

 

エクトル「麻耶さん、じゃなくって山田先生。」

 

のほほん「私も行く〜、ネロロンに会えるかも知れないんでしょ〜?」

 

弾「本音、危険だぞ。」

 

虚「本音、気持ちはわかるけど。」

 

のほほん「お兄ちゃん、お姉ちゃん、私はおりむーとおんなじで、ネロロンを説得したいんだよ〜。」

 

弾・虚「・・・・・。」

 

一夏「連れて行こう、説得できそうな人間が一人でも多いほうがいい。」

 

アルゴス「なに、今回は織斑先生もいるんだ。なんとかなるだろ!」

 

 

 

Sideアスタロト

 

カイム「アスタロト様、ここに貴女の新機体『ハボリム』が完成です!」

 

アスタロト「ご苦労様、早速試させてもらうわ。」

 

アスタロトはハボリムを装着する。シミュレーションルームで使い捨てのガーゴイル数十体相手に性能を試す。

 

主力装備は、大型の死神の鎌状の近接武器『メフィスト』、手の指先から、指の曲げ方次第で他方向にレーザーと小型ミサイルを放てる『アンドラス』、両肩の火炎放射砲『イグニス』、そして、極め付けのワンオフアビリティーは、相手を炎の渦に巻き込み攻撃する『エラプション』。

 

それらを駆使し、一瞬でガーゴイルを焼き払った。

 

アスタロト「気に入ったわ。」

 

エキドナ「これは凄い!!」

 

リリス「素晴らしいです!母様!」

 

ここに、アスタロトの新たな力が生まれた。



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決戦準備

アスタロトはネロ、リリス、エキドナを始め、多数のクローンパイロットやガーゴイルの集団を率いてドイツへと向かう。

 

アスタロト「ネロ、再び一夏と会える気分はどうかしら?」

 

ネロ「・・・・複雑ですね。」

 

ネロは一夏との対決よりも、アスモデウスの言うネロ自身の真実が気になっていた。

 

リリス「兄様なら絶対に勝てますわ。」

 

エキドナ「同感です。」

 

アスモデウス「小僧、お前は俺と共にこの地球を変え、真の平和を気づくためにいる。それだけは忘れるな。」

 

ネロ「・・・ああ。」

 

 

Side一夏

 

楯無「それにしても、ここのところ海外に遠征ばっかりね。」

 

アルゴス「仕方ないですよ、俺たち自身に関わる事ですから。」

 

一夏「・・・・。」

 

一夏は複雑な表情を浮かべている。

 

虚「どうしたの一夏君?」

 

一夏「いえ、ちょっとネロの事が気がかりで。」

 

一夏はネロをこのまま倒してしまう事にいささかためらいがある。

 

簪「一夏、今は戦いに集中しようよ。」

 

ビリー「簪の言うとおりなんだろうが、迷うなっつーのは無理なんだろうな。」

 

箒「友が好きな相手であるとなると、やりづらいのだろう。」

 

レオ「まあそうだろうな。」

 

エクトル「一夏、ネロの事だけど。」

 

エクトルが何か言おうとすると、一夏はそれにすぐ答えるべく話し出した。

 

一夏「皆、勝手な事を言って悪いが、ネロとの戦闘は俺1人に任せてほしい。」

 

のほほん「・・・おりむー。」

 

一夏「心配するな本音、ネロも俺と1対1で戦うだろうし、お前の為にも、俺はあいつを見捨てたりしない。」

 

弾「・・・・一夏。」

 

セシリア「(どこまでもお心の広い方ですわ。)」

 

一夏はネロに希望を抱いている。

 

千冬「まあいいだろう、その代わり、絶対に倒されるなと約束しろ。」

 

一夏「もちろんです!」

 

シャルロット「一夏、絶対だよ。僕達も頑張るから。」

 

ラウラ「信じているぞ一夏。」

 

一夏「ああ。」

 

 

程なくして、一夏達は運良くアスタロトよりも先にシュヴァルツェ・ハーゼと合流できた。

 

クラリッサに会い、千冬が事の詳細を説明する。

 

クラリッサ「なるほど、かつて我々が戦った天使や悪魔を凌駕する者達が相手というわけですね。」

 

一夏「すみません、無理を言ってしまって。」

 

クラリッサ「いえ、よく知らせてくださいました。流石は隊長の惚れた方です。」

 

ラウラ「うむ、一夏には幾度となくときめいたからな。」エッヘン

 

レオ「ヒュー。」

 

のほほん「ラウラウは素直だね〜。」

 

一夏「そ、そっか。」テレテレ

 

箒・セシリア・シャルロット「ムムッ。」

 

鈴「今はラブコメしてる場合じゃないでしょ。」ハァ

 

レベッカ「(でも羨ましい。)」

 

 

早速作戦会議に入り、戦闘の準備を整える。

そして、いよいよアスタロトと対峙する・・・・。

 



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ネロの最終選択

アスタロト「あら皆、お揃いで。来てくれると思っていたわ。」

 

ネロ「(織斑一夏!それにこの間のあの少女も来ているとは!!)」

 

ネロは本音を見るなり驚く。

 

ビリー「チッ、歓迎なんざしてねえんだよ!」

 

アスタロト「それは残念ね。」

 

アスタロトはいつになく不気味な笑みを浮かべる。

 

一夏「アスタロト、いや、ベアトリクス・グルーバー。」

 

アスタロト「っ!?」

 

ネロ・リリス「母様?」

 

その名を唱えた瞬間、アスタロトは硬直する。

 

 

アルゴス「あんたの事、色々と調べたぜ。」

 

レベッカ「ネロ、それは本当は生まれるべき実の息子の名前だった。」

 

エクトル「夫も子も失ったあなたは、ルシフェル達と契約を交わし、ISをはじめ多くの知識と知恵を得た。」

 

エキドナ「何を言っている?」

 

セシリア「そしてあなたは、夫を奪った女尊男卑の元凶である篠ノ之博士に復讐するべく、クローン技術で多くのパイロットを生み、息子の代わりとすべくネロさんを産んだそうですわね。」

 

アスタロトの表情がだんだんと暗く険しくなる。

 

ネロ「俺が、母様の実の息子の代わりだと!?」

 

リリス「母様、兄様、耳を貸さないで!!」

 

ラウラ「あの病棟での人体実験を行ったウーゴは、お前の部下の1人だろう。」

 

アスタロト「・・・そう、知ってしまったのね、私の事・・・。」

 

ネロ・リリス「・・・母様。」

 

エキドナ「アスタロト様。」

 

アスタロトは目を大きく見開き、発狂した声で話し出した。

 

アスタロト「そうよ、私は人間をやめてでもあの篠ノ之束に復讐したかったのよ!!篠ノ之箒、貴方の姉がしたことは絶対に許せない!!」

 

箒「・・・・。」

 

箒も束の事を少なからず憎んではいたが、アスタロトが束に向ける憎しみの深さに愕然とした。

 

アスタロト「あの女がいなければここまでのことにはならなかった!この時勢の元凶であるにもかかわらず、平然としているあいつを見て、憎しみを抱かずに居られると思うの!?」

 

簪「・・・・。」

 

アスタロト「そのせいで夫はデュノア社によって自殺に追い込まれた。ISの存在が私の大切なものを次々と奪ったも同然よ!!シャルロット・デュノア、私の夫は貴方の父の会社に殺されたのよ!!」

 

シャルロット「・・・・・。」

 

シャルロットは何も言えなかった。自身も父とはいい関係ではなかっただけに、何も知らずにいたことを深く実感する。

そんなシャルロットを見て、アスタロトの怒りは頂点に達する。

 

レオ「だったら聞くが、ISが憎いなら、何故それを利用するんだ?」

 

アスタロト「篠ノ之束に、自身の愚かさを伝えるためよ。」

 

弾「・・・そのために多くの犠牲を出してきたってのか?」

 

鈴「いくらなんでもやりすぎよ!!」

 

千冬「・・・確かに、束は天才である反面、人間としては愚かだ。その点は私も同調できる。」

 

山田先生「ですが、 やはり貴方達の行いは間違っています。憎しみのままに多くの人々を殺してきたあなた方も、篠ノ之博士と同じなのでは?」

 

エキドナ「黙れ!我々は真の平和のために、この世を完全なる人種で新世界を築くのだ!!」

 

リリス「母様の侮辱は私が許さない。」

 

アスタロト「話にならないようね、ならここで消えてもらうわ。」

 

アスタロトは戦闘体制に入る。すると、

 

アスモデウス「アスタロト様、少しお待ちを。今の話でネロがどういう決断を下すかが重要になります。」

 

リリス「アスモデウス。」

 

ネロは一夏達の話が真実であると知り、どうするべきか悩みに悩んでいる。

 

アスモデウス「小僧、アスタロト様はお前とリリスのためにこの世を変えようとしている。だが、お前がどうするかはお前が決めろ。」

 

ネロ「・・・・。」

 

リリス「兄様、駄目です。織斑一夏達の話に惑わされては。」

 

エキドナ「その通りです!ネロ様。」

 

ネロ「・・・・。」

 

ネロの様子を見て、すかさず一夏と本音が声をかける。

 

一夏「ネロ、お前が本当に家族を思うなら、家族に正しい選択を示すべきだぞ!」

 

のほほん「ネロロン!!ネロロンはおりむーに負けないくらい強くて優しい男の子だよ!」

 

ネロ「・・・俺が・・・優しい?」

 

ネロは本音の言葉に僅かながら反応する。それを見たリリスは、本音に深い嫉妬の眼差しを向ける。

 

リリス「兄様!誰ですかあの女は!?どこで知り合ったのですか!!」

 

異常なまでにネロを愛するリリスは、声を荒げる。

 

リリス「死になさい!!この女!!」

 

本音「ふぇ!?」

 

虚「本音、危ない!!」

 

リリスは本音を殺そうと専用機「サマエル」を展開し、本音に襲いかかる。

 

ネロ「やめろ!!」

 

ネロはサタナキアを展開し、リリスを止めた。

 

のほほん「ほぇ?ネロロン?」

 

リリス「兄様!」

 

ネロは寸前でリリスの攻撃を受け止めた。

 

ネロ「リリス、お前が俺を愛してくれているのは充分わかっている。だが、俺は織斑一夏やこの少女のような良き心を持つ人間まで犠牲にはできない。俺もお前を大事に思ってる、だが、織斑一夏達はそれ以上の絆で固く結ばれているのがわかる!」

 

リリス「・・・兄様。」

 

ネロ「俺は・・・、母様達や、彼らのためにもこの世を変えるために、織斑一夏達と共に生きる!これが俺の、答えだ!!」

 

一同「!!!!」

 

ネロは雄叫びの如く決意を示した。

 



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清き愛と歪んだ愛〜ネロ覚醒

一夏「アスタロト、アスモデウス。ネロの答えを聞いただろう?ネロは、俺たちと共にこの世を変える事を選んだ!」

 

千冬「全員ISを展開しろ!!」

 

アスタロト「・・・・どうやら、終わりのようね。」

 

アスタロトはハボリムを展開する。

 

ネロ「母様、俺は。」

 

アスタロトとアスモデウスは失望したかのような表情を見せる。

 

アスモデウス「ふむ、どれ程の力を得ても、貴様も結局は織斑一夏のような不完全で不確かな平和を選んだか。」

 

エキドナ「そんな、何故?」

 

リリス「兄様・・・。」

 

アスモデウス「ならば、アスタロト様の真の平和のために、貴様に授けたその力を、我の元に返して貰おう!!」

 

アスモデウスはネロの肉体から離れ、アスタロトの肉体に宿った。その瞬間、

 

ネロ「うぐっ・・・なん・・だ?」ガクンッ

 

ネロは突然体に異常な重みと脱力感を感じる。すると、彼の肉体に所々裂け目が発生し、流血が始まった。

 

弾「何だ!?ネロのやつ大怪我してるぞ!!」

 

一夏「ネロ、大丈夫か!?」

 

アスタロト「ネロ、一つあなたに言い忘れていた事があるわ。あなたには唯一欠点があったの。それは、アスモデウスの力なしでは、肉体が劣化してしまうことよ。」

 

ネロ「なん・・・だと!?ゴフッ!!」

 

ネロは血を流しながらのたうつ。

 

本音「ネロロン!!」

 

リリス「兄様!」

 

アスタロト「リリス、ネロを始末しなさい。ネロは私を裏切った。つまりあなたも見捨てたのよ!」

 

リリス「!?」

 

鈴「アスタロト、クローンっていったって、ネロはあんたが産んだ子供よ!!」

 

アスタロト「私の意志にそぐわない時点で、もうその子は私の子ではないわ。」

 

エクトル「なんという事を!!」

 

アスタロト「さあ、リリス。ネロをやっておしまい!!」

 

アスタロトはリリスに命令するが・・・。

 

リリス「・・・出来ません。」

 

アスタロト「なんですって!?」

 

アスタロトはヒステリックな声をあげる。

 

リリス「母様、私は母様と同じくらい兄様を愛しています。例え母様のご命令でも、こればかりは。」

 

リリスは涙を流し震えながらアスタロトに反論した。

 

アスタロト「くっ、リリス、あなたまでも、なら貴方から死になさい!!」

 

リリス「っ!?あああああぁぁぁーーーーっ!!!」

 

アスタロトはアンドラスを構え、指からのレーザーでリリスを串刺しにし、イグニスでリリスを焼き払った。

 

ネロ「リリス!!」

 

一同「!!!!」

 

リリスは一瞬にしてこの世から消えてしまった。

 

ネロ「・・・母様・・いや、アスタロト!何故だ!?何故リリスを殺した!?貴様に忠誠を誓い、力こそ劣るが、愛しい妹を!!」

 

アスタロト「私は貴方達も含めた優れた人間でこの世を平和にしようとしたのよ。だけど、例え私が認めた人間でも、裏切りは許さないわ。」

 

レオ「信じられねえ、これが母親のする事かよ!!」

 

簪「酷い!!」

 

箒「最早貴様には、ベアトリクス・グルーバーという人間としての心は無いようだな!!」

 

アスタロト「エキドナ、クローンパイロット、ガーゴイル、彼らを抹殺しなさい!!」

 

エクトル「はっ!!」

 

エキドナとクローンパイロット達が襲いかかる。

 

クラリッサ「こちらも行くぞ!!」

 

ラウラ「クラリッサ、ガーゴイルの方を頼む!!」

 

千冬「クローンは私と山田先生が始末する!専用機持ちはアスタロトとエキドナからネロと布仏を守れ!」

 

専用機持ち一同「はいっ!!」

 

専用機持ちはアスタロトとエキドナに立ち向かう。一方で、

 

のほほん「ネロロン、しっかりしてー!!」

 

本音は必死に手当てをする。しかし、止血が追いつかない。

 

ネロ「ゴフッ、お、俺も、戦わせてくれ。」

 

山田先生「このままじゃ、ネロ君は確実に死にます!」

 

セシリア「何か手はございませんの!?」

 

すると、一夏の体からクラストが出現する。

 

一夏「クラスト!?」

 

クラスト「人の子らよ、少しの間時間を稼げ、ネロに我の力を分かつことで、肉体の劣化を止められるかもしれん。」

 

ビリー「そんな事できんのか!?」

 

レベッカ「今はクラストを信じるしか無いわね!」

 

一夏「すまん皆、大変だが持ちこたえるんだ!!」

 

クラストはネロのそばにより、両手を掲げ、ネロに波動のようなものを送り始める。

 

ネロ「・・・お前が、創造主クラストか。」

 

クラストが力を注ぎ入れ終わると、ネロの肉体は再生し始め、力を手にしたネロは立ち上がり、左目が赤くなり、背中に黒の翼が6枚生えた。

 

のほほん「ほえー、ネロロンが変身したー!!」

 

クラスト「一夏と共に歩む者の証として、我の力を半分汝に授ける。一夏に授けし我の力はその分半減するが、一夏は強大な力を信頼する友と持つ事を望んでいる。」

 

白の翼6枚となったクラストはそう言い残して再び一夏の肉体に戻る。

 

一夏「そういう事だネロ、病み上がりで悪いけど、加勢してくれ。」

 

一夏も白の右翼6枚に青の右目の姿に変身し、ネロに呼びかける。

 

ネロ「フッ、仕方が無い。」

 

ネロは一夏の元に寄った。

 

アスタロト「まさか、こんな事が!!」

 

アスモデウス「おのれネロ、それが新たな貴様の力か!あくまでも不完全な平和を追い求める愚者共め!!」

 

アスタロトはリミットブレイクを発動し、アスモデウスの姿となる。

 

一夏「それじゃ、本番といこうか、アスタロト、アスモデウス!!」

 

ネロ「リリスの仇、とらせてもらうぞ!!」

 

 



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激闘の果てに・・・

エクトル「アルゴス、僕らも変身しよう!!」

 

アルゴス「おう!リミットブレイク!!」

 

エクトルとアルゴスも変身する。

 

クラリッサ「あれは一体!?(こんなISがこの世にあるのか?)」

 

クラリッサはアスタロトや一夏、ネロ、エクトル、アルゴスの姿を見るなり、人知を超えたその存在に驚く。

 

ラウラ「クラリッサ、説明は後だ!周りの雑魚をどうにかしろ!!」

 

千冬「エキドナは私がやる!!織斑達はアスタロトとアスモデウスを!!」

 

千冬はかつての自分の専用機の1つ「暮桜」を展開し、エキドナに立ち向かう。

 

エキドナ「ブリュンヒルデ、貴様らにアスタロト様の邪魔はさせぬ!!」

 

エキドナはフォルネウスを装備し千冬を攻撃する。

 

 

一夏「さて、こっから本番といくか!!」

 

ネロ「アスタロト、最早貴様の心は人間ではない。せめて、この手で葬り去ろう。貴様の息子である俺からの、せめてもの親孝行に・・・。」

 

そのセリフを聞いたアスタロトの表情が歪む。

 

アスタロト「・・・フフ、母を殺す事が親孝行だなんてね。やはり貴方の育ち方は間違っていたわ。一夏の遺伝子を使った事が敗因かしら。」

 

箒「だろうな、一夏は簡単に悪に染まるような男ではない !」

 

セシリア「ええ。ネロさんは、そんな一夏さんのよき所をしっかりと身につけられていますわ!」

 

シャルロット「アスタロト、今ここで僕たちが過去の憎しみから解放してあげるよ!」

 

ラウラ「嫁の一夏が信じるならば、私もネロを信じる!」

 

アスモデウス「愛、友情、信頼、そのような生まれたあとにただ尽き果てるだけのものを大事にするがゆえに、真の永遠の平和に気づけぬ愚かな人間共!ここで貴様らはその虚しさを思い知る事になる!!」

 

アスタロトの肉体越しにアスモデウスが話す。

 

弾「・・・お前ら、ホントかわいそうだよな。」

 

アスタロト「何ですって?」

 

鈴「あんたは人間であった時に散々辛い思いをしたんでしょ?」

 

レベッカ「だからって、人間を辞めたからどうにかなるもんじゃないわよ。」

 

簪「アスタロト、辛いことから逃げたい気持ちはわからなくもないわ。」

 

レオ「でもな、人間生きてりゃそんなモンよ。」

 

ビリー「辛いこともありゃ楽しい事もあるのが人生ってヤツだぜ!!」

 

エクトル「かつて僕は一度人間を辞めた事があった。けど、そんな僕でも一夏は最後まで人間を信じる心で僕を救ってくれた!!」

 

アルゴス「俺もエクトルに同じだな。やっぱ、人間の世の中をよくするのは人間にしか出来ねえんだよ。 一夏のおかげで俺もそう気付いたのさ。」

 

皆のセリフを聞き、アスタロトはさらに表情を歪ませていく。

 

アスタロト「ふ、フフ・・・気休めのつもりかしら・・・ そんな言葉は、1文字も聞く価値は無いのよ!くらいなさい、エラプション!!」

 

アスタロトはイグニスで広範囲に火炎を発射する。

 

楯無「おおっと、消火しなくっちゃ!!」

 

楯無は蒼流旋とクリア・パッションでイグニスの炎を抑える。

 

アルゴス「サンキューっス、楯無さん!!」

 

一夏「皆、ここは飛び道具をなるべく使え!!」

 

一同はアスタロトと距離を保ちつつ飛び道具で攻撃していく。だが、アスタロトの灼熱の炎の壁を破るのは容易ではない。

アスタロトはイグニスとアンドラスをフルに使い、一夏達を翻弄する。

 

レベッカ「痛っ、あんな角度の攻撃反則でしょ!!」

 

弾「クソッ、あのレーザーとミサイル絶対防御システム完全無視だぜ!」

 

ハボリムの力は、アスモデウスの力も加わることで、絶対防御システムで回避不能の威力を持つようになっている。

一夏、ネロ、エクトル、アルゴスは各々の力で多少の傷は再生するが、他の専用機メンバーは、ダメージを与えていくも、所々流血する程の傷を負わされる。

 

楯無「早くアスタロトを倒さなきゃ、他の皆の身体が持たないわよ!!」

 

アスタロトのイグニスから放たれる炎を必死に抑えながら楯無は叫ぶ。

 

一夏「エクトル、アルゴス、アスタロトをどうにか足止めしてくれ!!」

 

エクトル・アルゴス「ああ!!」

 

一夏「ネロ、俺の傍から離れるな!」

 

ネロ「ああ、共に奴を倒そう!!」

 

エクトルはアルテミスでアスタロトの注意を自分に集中させ、アルゴスは後方からイグニスの砲身を中心に攻撃を加える。

しかし、アルテミスの矢はことごとく焼き払われ、アルゴスの拳は炸裂こそするものの、機体の頑丈さが飛び抜けており、

砲身を破壊するのに時間を要する状態に。

 

アスタロト「無駄よ!いくら神の代行者と冥王の力でも、この機体の装甲は破れないわ!!」

 

一夏「なら、俺とネロの力もぶつけるぜ!!」

 

一夏とネロは同時に自身のワンオフアビリティーを発動する。

 

一夏・ネロ「零落白夜(ルキフゲ・ロフォカレ)!!!」

 

一夏とネロはシールドエネルギーの残りをすべて注ぎ込む勢いでアスタロトに力をぶつけた。その瞬間、アスタロトの両腕の装甲と両肩の砲身が砕け、アンドラスとイグニスが使用不可となった。

 

アスタロト「ば、馬鹿な!?」

 

アスモデウス「何故だ!?ルシフェル様より生まれし我らがアスタロト様の機体が砕かれただと!?」

 

ラウラ「今だ!アスタロトに総攻撃!!」

 

専用機一同「ああ(おう)(はい)(うん)!!」

 

他の専用機の皆も、アビリティーをありったけ叩き込む。ハボリムのシールドエネルギーがゼロになり、地に落ちたアスタロトの機体が消滅し始める。

 

アスタロト・アスモデウス「・・・人間に負けた?我らが・・・!?」

 

ネロ「アスタロト、仮にも俺は貴様より生まれ、育てられた存在だ。」

 

一夏「子供は親を、弟子は師匠を超えるもんなんだよ!!」

 

ネロはゆっくりとアスタロトのもとに歩み寄る。

 

アスタロト「・・・・ネロ。」

 

ネロ「・・・・・っ!」

 

ネロは躊躇いなくアスタロトの腹部を、ヘル・グラディウムで切り裂いた。アスタロトは何処か、楽になったような表情でゆっくりと意識を失い、息絶える。

 

一夏「・・・・・。」

 

エキドナ「アスタロト様!!」

 

千冬「どうやら終わりのようだな。」

 

エキドナ「くっ!!」

 

千冬は暮桜の刀剣武器「雪片」を振りかざし、均衡の末、エキドナの腹部に雪片を突き刺した。

 

エキドナ「ガハッ!!くっ、流石はブリュンヒルデ!だが、我らは不滅だ!!」

 

千冬「フン、言いたいことはそれだけか?」

 

千冬は勢いよく雪片を引き抜く。エキドナは大量の出血により絶命した。

クラリッサの方も、多少の犠牲を払ったが、ガーゴイルやクローンパイロットを全滅させることに成功した。

 

 

戦闘後、重傷の専用機持ちは医務室で手当てを受け、疲労を回復すべくベッドに横になる。

 

エクトル「皆、今手当てするからね。」

 

箒「・・・何とか終わらせたな。」

 

ビリー「ああ。にしても、これだけの人数でかかってボロボロかよ。」

 

山田先生「仕方ないですよ、相手は人外の存在だったし。」

 

鈴「ホントよね。」

 

医務室では戦闘後の感想が飛び交う。

 

アルゴス「さてと、これで大体終わったな。」

 

一通り皆の治療を終える。

 

レベッカ「3人ともありがとね。」

 

簪「疲れてるのにごめんね。」

 

一夏「何、これくらい大丈夫だ。」

 

弾「しっかし、お前らもう治ったのかよ。便利な身体だよなー。」

 

ラウラ「うむ、不思議なものだ。」

 

創造主クラストの力を有する一夏は、肉体の再生が早いのである。

エクトルとアルゴスも彼ほどではないにしろ、肉体の回復力は常人離れしている。

 

シャルロット「あれ、そう言えばネロは?」

 

楯無「本音と外で話してるみたいよ。」

 

一夏「・・・・。」

 

 

Sideネロ

 

本音「ふんふふ〜ん♪」

 

ネロ「・・・・・。」

 

ネロは戦闘中に解けてしまった髪を本音に直してもらっている。

 

ネロ「悪いな、君。」

 

本音「いいの、この間のお返し。私の事は、『本音』でいいよ〜❤︎」

 

ネロ「ああ、すまないな、本音。」

 

何とも微笑ましい光景である。虚はそれを離れたところから見ていた。

 

 

Side虚

 

虚「・・・・・。」

 

一夏「虚先輩。」

 

後ろから一夏が声をかける。

 

虚「織斑君。」

 

一夏「ネロと本音が近づくのが心配なんですよね?」

 

虚「・・・ええ、彼はアスタロトの息子である以上油断はできないわ。」

 

千冬「無理もないな。私も正直危うく感じる。」

 

ネロは一夏と共に生きる道を選んだが、すぐに周りに信じてもらえはしないだろう。

 

一夏「織斑先生、虚先輩、ネロはしばらく俺に任せてくれませんか?」

 

虚「織斑君、気持ちは有難いけど。」

 

一夏「俺はネロを信じたいんです!もしもの時は、俺が責任を取ります!!」

 

一夏は意を決して言い放った。そんな一夏に千冬は内心苦笑いしながら軽い拳骨を食らわす。

 

一夏「あいてっ。」

 

千冬「ガキの癖にませた事を、本当に無茶な弟だ。」

 

一夏「い、いつもすみません。」

 

千冬「まあネロをどうするにしろ、他に頼れる者がいない以上、お前に任せておこう。だが、お前一人で抱え込むなよ。」

 

一夏「はいっ!」

 

こうして、大きな災厄と戦いが終結した。

 

その後、ニュースによれば、世界の所々にいたガーゴイルやクローンパイロットの残党をクラリッサ達が掃討し、

アスタロトの関係者で唯一生存していたカイムは、一夏達の調査と戦いから足がついたことにより、その存在を知られ、程なくして逮捕された末に、違法な研究による殺戮の元凶である彼には、終身刑が言い渡された。

 

 

 

 



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ネロ、IS学園に編入

アスタロトとの戦いから1週間後、各国の政府は唯一の個人意志を持つクローンパイロットであるネロの処遇について協議を重ねた結果、全責任をIS学園、厳密には一夏に任せるという事になった。なお、戸籍としては、アスタロト、もといベアトリクス・グルーバーが出産したということで、ネロ・グルーバーというオーストリア出身の人間とされた。

1年1組は、ネロの編入の話で持ちきりである。

 

「ネロ君っていうのは、織斑君のクローンなんだよね?」

 

「どんなひとなのかなー?」

 

アルゴス「そりゃあ、本音を見ればわかるぜ。」

 

本音はネロが1組に来ることを楽しみにしていた。今日は本音にとって特別な日である。

 

本音「ワクワク、ワクワク(ネロロンが1組だー、やったー❤︎)」

 

本音は一人で舞い上がっている。

 

弾「あらら、満面の笑顔だな。」

 

谷本「そう言えば本音の初恋の人だったわね。」

 

鷹月「本音、もしかしてもう告白した?」

 

質問するも、当の本人は夢中のようだ。

 

レオ「ありゃあ何も耳に入らねえな。」

 

ビリー「チッ、よく盛りあがれるな。正直俺はまだ奴を信用してねえってのによ。」

 

箒「ビリー、本音の気持ちを考えるべきだぞ。」

 

セシリア「今は一夏さんを信じるべきですわ。」

 

ビリー「そりゃまあそうなんだろうけどよ。」

 

ビリーはまだ納得できないようだ。ケンカっ早い彼にとっては、自分たちと敵対した人間をすぐに仲間と思うのは時間がかかりそうだ。

 

ラウラ「うむ、ビリーの言うことも最もだ。だが私は嫁、コホン、一夏が信じる物を信じる。」

 

エクトル「もうその嫁宣言も慣れたなぁ。」

 

シャルロット「ホント、ある意味勇気あるよね。」

 

しばらくして、山田先生と千冬が入ってきた。

 

山田先生「それでは、ホームルームを始めます。今日はこのクラスに新しい編入生が来ます。」

 

千冬「では編入生、中へ。」

 

千冬の声を合図にネロが教室に入る。

 

ネロ「改めて、ネロ・グルーバーだ。先日はこのクラスの専用機持ちに世話になった。一夏が俺を受け入れてくれた事には感謝している。どうぞよろしく頼む。」

 

本音「よろしく〜、ネロロ〜ン❤︎」

 

「わー、カッコいい!!」

 

「髪型超個性的だけどイケてる!!」

 

「これからよろしくね❤︎」

 

女子の大多数は歓迎している。

 

一夏「改めて、よろしくな、ネロ。」

 

ネロ「ああ、よろしくな、一夏。」

 

一夏とネロはかたい握手をする。

 

ビリー「(まあ、信じてやってもいいか・・・・。)」

 

ネロの誠実な自己紹介にビリーは少し納得したようだ。

授業の後、一夏はネロに校内を案内した。

 

昼食になると、お約束通り新聞部が押し寄せる。

 

黛「はいはーい、新聞部でーす!君が噂のネロ・グルーバー君だね?」

 

ネロ「・・・ええ、そうですが。」キョトン

 

ネロは取材が初体験なので、少し戸惑う。

 

一夏「ネロ、そんな硬くなるなって。」

 

一夏はネロの緊張をほぐす。

 

「グルーバー君は、織斑君のクローンだって聞いたけど、織斑君と比べて似てる所とかあったりする?」

 

ネロ「そうですね、一夏と似ているのは、性別を始め、体型、専用機のアビリティ、あと、理想の高さくらいですかね。」

 

「なるほどなるほど。これについて織斑君はどう思う?」

 

一夏「そうですね、似ている一方で対照的な所もありますね。例えば、俺は右利きですが、ネロは左利きです。

専用機の武装もそうですね。それと、髪型は俺がセミショートでネロはロング、後は俺が白の翼でネロは黒の翼、まあ今わかってるのはこれくらいですかね。」

 

ネロ「よく見てるな。」

 

黛「なるほどなるほど。」

 

取材はかなり濃い内容になっている。

 

鈴「何かあの2人、並ぶといい感じね。」

 

簪「一夏はネロを兄弟見たいに思ってるのかもね。」

 

楯無「そりゃあ、遺伝子的にネロ君は言ってみれば『一夏君』だもん。」

 

千冬「(ふむ、確かにそうではあるが・・・・。)」

 

千冬は複雑な表情だ。遺伝子的に似ているゆえに、弟が2人いる事になってしまっている。

 

ジル「でも、改めて見ると、2人ともいい男ね❤︎どっちも欲しいかも❤︎」

 

千冬「むっ、ジル!!貴様まだ懲りていないのか!?」

 

ジル「えー、いいじゃん!」プクー

 

山田先生「織斑先生にとっては、一夏君もネロ君も可愛い弟君ですもんね〜。」ニヤニヤ

 

千冬「・・・・。」ギリギリ

 

山田先生は千冬茶化した瞬間、アイアンクローをもらう。

 

山田先生「アイタタタタ!ごめんなさいごめんなさい!!」

 

千冬「・・・わかればいい。」

 

 

黛「じゃあ最後に質問、グルーバー君はどんな女の子が好みかな?」

 

ネロ「・・・俺は生まれてから多くの能力を身につける訓練を受けてきたが、生憎まだ俺は恋を知らないな。」

 

ネロはすました顔ですんなり答える。

 

本音「(恋を知らないんだ〜。)」

 

弾「あちゃー・・・これは、ひょっとすると。」

 

箒「うむ、以前の一夏の鈍感さも持ち合わせている可能性があるな。」

 

セシリア「本音さんも苦労しますわね。」フゥ

 

レベッカ「ビリー見たいに鈍感でなきゃいいけど。」

 

この後、一夏とネロは模擬戦を行い、それを多くのギャラリーは観戦した。学園最強とクローン最強の勝負は、引き分けに終わったが、今までのどの学園内の模擬戦よりも盛り上がったようだ。

 

 



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二年生進級に向けて

ネロがIS学園の一員となって早一週間が過ぎ、時期的にはもう12月に差し掛かるところ、今日は一年生が午前の授業の後、体育館にて、二年生進級における専科科目の選択について説明を受けている。

 

専科は大きく分けて、モンドグロッソ出場に向けて、専用機の入手や、さらなる実力向上のための『モンドグロッソ代表分野』、ISの専門技術や知識を数多く習得するための『IS整備・開発分野』の2つに分かれており、自分の目指す方向に合わせてその二つの分野から自由に科目を選択することができる。初めは一年生学年末テストの実力に応じてクラスが割り振りされるものの、努力次第で上級者のいるクラスに昇格も可能である。

 

千冬「諸君、説明は以上だ。後で質問のある生徒は私か山田先生、マイヤーズ先生に尋ねると良い。己を見極め、さらなる自己の向上を目指し、よく考えるように。専用機持ちは特にだ。」

 

一同「はい!!」

 

 

説明が終わり、昼食に入る。

 

 

鷹月「もうすぐ二年生かー、早いわね。」

 

谷本「専用機も欲しいけど、開発技術も興味あるし。」

 

昼食の話題は科目選択の事で持ちきりだ。特に専用気メンバーはこの話で盛り上がる。

 

ビリー「俺たちももうすぐ二年生になるんだよな。」

 

簪「科目選択、そういえばあんまり考えてなかったかも。」

 

レベッカ「そうよね、来年からは受ける授業によってみんなバラバラになるし。」

 

のほほん「うーん、それは寂しいよ〜。」

 

クラス数は1組から4組と変わらないものの、いつも同じ時間を過ごせるわけではないのだ。

 

一夏「友人との時間も大切だけど、一方で己の道を歩く事も大切だ。少なくとも俺は、迷わずモンドグロッソ重視で選択するぜ。」

 

ネロ「俺もそういうところだ。一夏とはモンドグロッソで決着をつけたいと思っているからな。」

 

一夏とネロはどうやら他のメンバーほど悩んでいないようだ。ちなみに彼らは模擬戦を含め、2人でしょっちゅう実戦をするほどの仲であり、お互いに勝ったり負けたりしている。人知を超えた力を持つ最強クラスのこの2人の決着は、学園のみんなが注目している。

 

鈴「あんたらは目標があっていいわよね。」

 

セシリア「お二人とも強い意志がおありですのね。」

 

ラウラ「モンドグロッソか、私も出てみたいものだ。」

 

ラウラは千冬が成し得なかったモンドグロッソの連覇を狙っている。

 

レオ「俺も出たいぜ。世界の名だたるパイロットに力を試してみたいし。(それに、世界中の女の子にもてたりするし♪)」

 

箒「うーむ、選択に悩むところだな。」

 

シャルロット「僕はバランスよく選びたいな。」

 

エクトル「僕もそう思う。力と知識を両方身につけられるのが一番だし。」

 

弾・アルゴス「・・・・。」

 

弾とアルゴスはどこか憂鬱そうだ。

 

レオ「お前ら、どうしたんだよ?」

 

一夏「来年は楯無先輩と虚先輩がいないからな。」

 

弾・アルゴス「・・・ああ、そうだよ。」

 

2人はがっくりとうなだれる。

 

レベッカ「でもまあ、仕方ないし。2人とも元気出しなさいよ。」

 

各々自分の進路、選択に悩みながらもお互いに励まし合う。

 



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新たなる組織

一夏「行くぞネロ!!」

 

ネロ「来い、一夏!!」

 

一夏とネロは今日も元気に模擬戦をしていた。この2人は特に他の誰よりも回数を重ねており、上級生も感心するほどだ。

 

「あっ、今日も織斑君とグルーバー君模擬戦してる。」

 

「2人ともすご〜い。」

 

「かっこいいわー、どっちもがんばれー!!」

 

実力はともに互角、互いに一撃必殺のアビリティを持っているため、一撃一撃の駆け引きが見るものを引きつける。

 

アルゴス「そこまで!!今回は引き分けだ!!」

 

同時にシールドエネルギーがゼロになる。

 

シャルロット「2人ともよくそんなに頑張れるね。」

 

箒「剣技においては飛び抜けたものを感じるぞ。」

 

セシリア「射撃での対応も目が追いつきませんわ。」

 

一夏「そっか、ありがとな。」

 

ネロ「一夏とは何度戦っても飽きないものだ。」

 

ラウラ「むう、その関係は少し羨ましいぞ。」

 

ラウラがそう言うと、他の一夏の恋人候補も羨ましがる。

 

一夏「わかったわかった、後でみんなともたっぷり模擬戦するからな。」

 

一夏とネロはこの間まで敵対していたのが嘘のように仲が良く、もはや兄弟以上の付き合いだ。

 

弾「にしても、ライバル同士なのに仲良くできるってのはいいもんだな。」

 

簪「そうだよね、ほんとに凄いと思う。」

 

レオ「それは、あいつらを見ればわかる気がするな。」

 

レオは親指で鈴とレベッカの方を差す。ビリーをめぐる恋のライバル同士だが、一夏の恋人候補たちと違い、当人に思いを気付かれないせいでゴタゴタしがちだ。ちなみにビリーは今、2人に専用機で追いかけ回されている。

 

ビリー「いや、ちょっと待てっての!!」

 

レベッカ「ビリー、待ちなさいよ!!」

 

鈴「今すぐに殺してやるわ!!」

 

ビリー「くっそー、何でこんな目に!?」

 

ビリーはダッシュで2人からの攻撃から逃げている最中だ。

 

エクトル「あー、そういえばビリー、とんでもない事態を引き起こしたんだったね・・・・・・。」

 

それは3日前にさかのぼる。

 

 

 

Side3日前・・・・

 

ビリーはコンビニで手に入れた応募券で、ランダムに商品が当たるキャンペーンに応募した。その結果、何と、新しくできたばかりのアミューズメントパークでの一日ペアチケットが2枚も当たったのだ。

 

ビリー「ペアチケットかー、どうすっかなー。」

 

考えた末に取った行動は、

 

ビリー「そうだ、今度鈴とレベッカでも誘うか。」

 

ビリーはまず鈴の部屋へ向かう。

 

ビリー「おーい鈴、いるか?」

 

鈴「はーい、ってあれ、ビッ、ビリー!?」

 

鈴は不意に部屋に来たビリーに驚く。

 

ビリー「何ビビってんだよ。実はさ、こいつが当たったからさ、一緒に行かねえか?」

 

鈴「えっ、これって新しくできるアミューズメントパークのペアチケットじゃん!!」

 

鈴は思わぬ誘いに舞い上がる。

 

鈴「いいわ、じゃあ今度の日曜日に行きましょ!9時に集合ね!(やった、ビリーとデート♡これってもしかして・・・・。)」

 

ビリー「おう、じゃあな。」

 

ビリーは2枚目のチケットをレベッカにも渡した。ビリーは三人で遊ぶつもりだったのだが、この男、うっかりそのことを鈴レベッカに話すのを忘れていたのだ。

 

 

そして当日・・・

 

鈴「・・・・・何でアンタがいるわけ?」

 

レベッカ「それはこっちのセリフよ。」

 

鈴「レベッカ、まさかと思うけど。」ワナワナ

 

レベッカ「うん、ビリーと2人でデートする予定だったのよ。」ワナワナ

 

ビリーはまだ来ていない。その時、鈴の携帯が鳴った。

 

鈴「・・・ビリーからメールだわ。」

 

鈴はメールを開いた。

 

 

メール内容

 

悪い、急に姉貴に呼び出し食らっちまった。断ったら殺されちまうから今日は遊びに行けねえ、すまん!!

 

 

鈴「はあぁぁぁっ!?」

 

レベッカ「なんて書いてあったの?」

 

鈴「ビリー、急用で来れなくなったって・・・(あの金髪ホルスタインやってくれたわね。)」

 

レベッカ「・・・ってことは何、今日は?」

 

鈴「アタシとアンタとでデートするしかなくなっちゃったのよ!!!!!」

 

レベッカ「何ですってー!!??」

 

雄叫びから数秒の間が空く。

 

鈴「・・・こうなったらもうヤケクソよ!レベッカ、付き合いなさい!」

 

レベッカ「ええ、そうさせてもらうわ。」

 

こうして、2人の乙女の夢をビリーはぶち壊しにしてしまったのだった。

 

 

 

Side現在

 

一夏「そりゃあまたとんでもねえ事をしでかしたな、ハハハッ。」

 

本音「おりむー、笑い事じゃないよ〜。ビリビリーはしょうがないね〜。」

 

アスタロトとの激闘からしばらく経ち、ネロをIS学園に迎え入れてから時はもう11月の下旬に差し掛かる。

2年生進級に向け、生徒たちは皆自分の道について真剣に考えている。

そんな平和がしばらくは続いていたが・・・

 

 

Side another people

 

 

ここはプロサナトリスに最近建てられた空中都市ビルの最上階の会議室。そこの円卓には十二人の人物が。

彼らは「12神座」という組織で、エクトルを神の代行者としたあの4天使を生み出した者たちである。表向きは現地の宗教法人であるが、その実態はまだ誰も知らない。

 

クリーオス「どう思う、ここのところのIS学園は?」

 

クリーオス、この組織のリーダーであり、一夏同様コアの研究を進めている。年齢は一夏たちと同じで専用機持ち。

 

タウロ「やはり一夏の存在が大きいですね。」

 

タウロ、この組織の参謀役。

 

デュモイ「奴の遺伝子のクローン体であるネロまで味方に付けたからな。」

 

デュモイ、表向きはプロサナトリスの宗教法人会長。

 

キャンサー「学園にはブリュンヒルデもいる事ですし、簡単には行かないでしょう。」

 

プロサナトリス宗教法人の指導者。

 

リオン「なら核ミサイルでも撃ち込めばいいだろ?」

 

リオン、プロサナトリス自衛軍の総監。

 

ビルゴ「それができれば苦労はしない。」

 

ビルゴ、表向きはISの機体製造企業の女社長。裏では組織のために違法に機体を生産している。

 

ジュゴーン「何と言っても神の代行者、冥王、果てはアスタロトでさえ倒されたのだからな。」

 

ジュゴーン、表向きはプロサナトリスの教会図書館の司書で、組織では最年長。

 

スコルピオ「しかし、他の勢力を消し去ってくれたおかげで、こちらはかえって好都合なものですよ。」

 

スコルピオ、表向きはプロサナトリス裁判所の裁判長。

 

サジ「我々が織斑一夏を消し去る日が来るのも時間の問題だ。」

 

サジ、表向きはプロサナトリスの病院院長。裏ではISに応用する科学技術を開発・実験している。

 

カプリ「そうとも、奴を倒す切り札を持っているのは今や我々だけだ。」

 

カプリ、表向きはプロサナトリス警備局の局長。

 

アクアン「我ら十二神座の何かけて、神々の領域に踏み込む彼らを始末すべきでしょう。」

 

アクアン、表向きはプロサナトリス協会の修道女の筆頭。

 

ピスケ「一つ気になるのはブリュンヒルデの存在ですね。彼女をどうするかが鍵となるでしょう。」

 

ピスケ、表向きはプロサナトリス報道局の局長。あらゆるルートで世界中の情報を得ている。

 

彼らの存在が、後に一夏達を史上最大の戦いに巻き込んでいくことになる。



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冬休みの予定、千冬の密かな想い

学園生活も12月を迎え、その年もあと数週間となったこの頃、一夏達は期末テストを終えて一息付いてるところである。

 

一夏「いやー、期末テストも無事終わったなー!」

 

ネロ「まあ、そこまで苦労はしなかったがな。」

 

一夏とネロはまんべんなく勉強していたので、操縦テスト、筆記試験共にトップクラスの結果に。

 

箒「今回のテストはなかなか難しかったな。」

 

箒は何とか平均より上を取れた。

 

エクトル「みんなお疲れ様だね。」

 

アルゴス「ああ、全く疲れたぜ。」

 

エクトル、アルゴスは一夏、ネロには劣るが、学年では上位の方に。

 

セシリア「それにしても一夏さんは素晴らしいですわ。」

 

ラウラ「うむ、さすがは嫁だ。」

 

シャルロット「僕も頑張ったんだけどなー。」

 

鈴「やっぱ一夏天才だわ。」

 

この四人はエクトル、アルゴスと同等の結果といったところで、一夏の成長ぶりには驚かされた。

 

弾「あー、やっぱ俺筆記は苦手だわ。」

 

レオ「俺も、射撃だけならトップクラスに行ける気がするがな。」

 

ビリー「教科書の活字を読むだけで結構苦労すんだよな。」

 

弾、レオ、ビリーは操縦の飲み込みは早いが、専門知識を覚えていくことが苦手だ。位置的には箒よりやや下側といったところ。

 

のほほん「う〜ん、疲れた〜。眠いよー。」

 

簪「本音はいつも眠そうな顏してる。」

 

レベッカ「全くその通りね。」

 

本音、簪、レベッカは逆に筆記試験はまあまあだったが、操縦技能にまだブレがあり、改善の余地がある。

 

 

試験の結果を見たあと、いつも通り夕食を食堂で食べる。

 

「そういえばさー、もうすぐ冬休みだよね。」

 

「あー、今年ももう終わりかー。」

 

「冬休みに何かやりたいよねー。」

 

話題は冬休みをどう過ごすかという内容である。

 

一夏「冬休みか、エクトルとアルゴスは夏休みは俺の実家で過ごしたけど、冬休みはどうするんだ。」

 

エクトル「う〜ん、それなんだけど。」

 

アルゴス「実を言うと、また厄介になろうかって思ってんだが。」

 

一夏「もちろんいいぜ!ネロも来るか?」

 

ネロ「・・・俺も行っていいのか?」

 

一夏「大歓迎だ!いいですか、織斑先生?」

 

千冬「うむ、許可しよう。」

 

エクトル・アルゴス・ネロ「ありがとうございます!!」

 

ネロは先日のアスタロトとの戦いで帰る場所がないため、特に来るべきだろう。

 

箒「3人は冬休みも一夏の家にいるのか。」

 

セシリア「羨ましいですわ。」

 

ラウラ「国に一旦帰ったらまた会いにいくぞ一夏。」

 

簪「エクトルとアルゴスとネロは一夏の家にいるんだ。何だか楽しそう。」

 

シャルロット「そういえばレオとビリーはどうするの?」

 

ビリー「ああ、俺とレオは弾の実家に世話になる予定だ。」

 

レオ「ま、そういうことだ。そっから一夏の実家にも行けるしな。」

 

簪「そうなんだ。(よかった、冬休みもレオに会える。)」

 

簪は嬉しそうだ。しかし、

 

鈴「ビリー、あんた弾の家に泊まんの!?(これはチャンスだわ、レベッカは弾の家を知らないし!)」

 

ビリー「お、おう。」

 

レベッカ「何でカナダに帰らないの?」

 

ビリー「しょーがねーだろ、姉貴が冬休み中は実家をリフォームするっつってんだからよ。」

 

鈴「あー、それは仕方ないわね。」ニヤニヤ

 

レベッカ「ムーッ!!」プクー

 

一夏「はいはいもうその辺にしとけよ。」

 

平和な時間は今日も続く。

 

 

夕食後、皆が寝静まった頃に一夏は1人バルコニーで佇んでいた。

 

一夏「・・・ネロが学園に来てから信じられないくらい平和だ。」

 

一夏はしばらく続く平和な時間に呆けていた。そんな時、

 

クラスト「おい一夏、ちょっといいか?」

 

クラストが一夏の前に思念体で現れる。

 

一夏「どわっ、何だよクラスト、脅かすなよ。」

 

クラスト「すまんな、ネロに我が力を分け与えた事の影響からか、汝の肉体から離脱が可能になってな。」

 

一夏「そういやお前、前は俺がリミットブレイクしないと出てこなかったもんな。」

 

クラスト「汝は我とは同じ1人の肉体を共有し合っているからな。それより、さっきから1人でボーっとしてるが、何かあったのか?」

 

一夏「いや、なんかここんところすげー平和でさ。災難にもあって来たけど、それらにも意味はあったんだと思えただけだ。」

 

一夏はこれまでの過去を振り返る事で己の存在の意味を改めて認識しようとしていたのだ。

 

クラスト「フッ、今の世にそこまで考えられる輩はそういない。やはり汝は特別なのだ。」

 

一夏「大袈裟だっての。」

 

一夏とクラストは兄弟のように話し合っている。そんな様子を垣間見る者が1人。

 

千冬「・・・・・。」

 

千冬は一夏がクラストと話しながら生き生きしてるのを見て不思議な気持ちになっていた。

 

千冬「・・・クラストか。一夏が強く入られるのも、あいつのおかげという訳か。感謝せねばな。」

 

千冬はそう考えながらもドキドキしている。

 

千冬「・・・何だろう、感謝するにしては、何故こんなにドキドキするのだ・・・・。」

 

クラストに対して芽生えた想いの意味を、この時千冬は分かっていなかった。

 

 

 



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聖夜のIS学園〜動き出す12神座

TVニュース「続いては、クリスマスの特集です。今年は様々な商品が出回っています。」

 

12月20日、もうすぐクリスマスを迎えるとあって、どこもかしこもクリスマスムードに。

無論、IS学園でもそれは話題となっていた。

 

一夏「クリスマスか、子供の頃はプレゼントとか楽しみに待ってたのかもな。」

 

一夏もとい一夏に転生した主人公はクリスマスの過去を振り返っていた。

 

箒「クリスマス、話は聞くが、プレゼントをお願いしたことはないな。」

 

箒はこの学園に来るまで海外発祥のイベントには全く関心がなかったらしい。

 

エクトル「僕は地元のクリスマスでは教会でパイプオルガンを弾いたりしたね。」

 

セシリア「私も、クリスマスでは聖歌隊で歌を歌ったことがありますわ。」

 

アルゴス「そりゃ楽しそうだな。」

 

弾「クリスマスか、中学時代は一夏や鈴と過ごしたな。そん時の一夏は鈍感だったから鈴はプンプン怒ってたな。」

 

鈴「ちょっと弾!アンタ人の過去の変なとこ言うんじゃないわよ!」

 

一夏「・・・そりゃあなんか悪いことしたな。」

 

苦笑いしながら鈴に謝る一夏。

 

鈴「い、いいわよ別に。過去のことだし。(笑)」

 

レオ「クリスマスっていやあ、プレゼントは『可愛い女の子』をお願いしたな♪」

 

簪「幼い頃からそんな軟派だったの?」

 

簪は呆れる。

 

ラウラ「クリスマスとは何なのだ?」

 

シャルロット「12月24日にある冬の楽しい日だよ。家でパーティーを行ったりするし子供はサンタさんにプレゼントをお願いしたりするよね。」

 

ビリー「俺はクリスマスにエレキギターがもらえたのが嬉しかったな。」

 

レベッカ「アタシは靴とかお願いしてたわね。」

 

のほほん「ネロロンはサンタさんに何お願いするの〜?」

 

ネロ「・・・願いか。そうだな、強いて言えば『家族』が欲しいところだな。」

 

のほほん「かっ、家族!?」

 

本音はネロの意外な言葉に驚き顔を真っ赤にする。

 

のほほん「(ほえぇ〜、ネロロンと、けっ、結婚すれば、叶えてあげられるよね〜、でもまだ早いかな〜?)❤︎」

 

ネロ「おい本音、顔が赤いぞ、熱でもあるのか?」

 

のほほん「ほ、ひぇ!?」

 

ネロは本音の額に自分の額をくっつけた。

 

のほほん「だ、だだだいじょぶだよー!!」アタフタ

 

谷本「本音、アンタすごい妄想したでしょ。」

 

鷹月「大変ねー。」

 

ネロ「?」

 

もともと鈍感だった一夏の遺伝子をもとにできたクローンだからか、ネロは鈍感なそぶりを見せる。

 

ビリー、ネロ、本音以外「もう1人鈍感がいたか(いましたか)。」

 

 

そしてクリスマス当日・・・・・

 

 

一同「メリークリスマス!!」

 

食堂にはみんなで作ったクリスマスツリーが置かれ、沢山のケーキや料理(by一夏&エクトル)が並んでいる。

 

のほほん「どれもおいし〜。」モキュモキュ

 

鷹月「織物君とベレン君、女子顔負けの腕よね。」

 

箒「うむ、流石だ。(夏休みに叔母さんに料理を教わったが、まだまだだな。)」

 

セシリア「一夏さんもエクトルさんも素晴らしいですわ。」

 

谷本「山田先生将来絶対幸せ太りするわね。」

 

ラウラ「ガツガツ、これは美味いな!」

 

アルゴス「ガブガブ、やっぱクリスマスはこれだよなぁ!」

 

ラウラとアルゴスは凄い勢いでレッグチキンを何本も貪る。取り皿には骨があっという間に山積みに。

 

シャルロット「2人とも食べ過ぎないようにね。(笑)」

ビリー「このケーキも美味いぜ!!」

 

レオ「俺も料理はたまにするけど、あいつらには敵わねえな。」

 

簪「私も。見習いたいわね。」

 

レベッカ「料理ねえ、今度一夏かエクトルにでも教わろうかしら?」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ・「!!!!」

 

レベッカ「冗談よ、友達の恋人候補を利用したりしないわよ。(笑)じゃあシャルロット、今度アタシに教えてくれないかしら?」

 

シャルロット「うん、いいよ。」

 

鈴「だったらあたしも教わりたいわね。」

 

のほほん「私も〜。(ネロロンの為に。)」

 

レベッカ「何で入ってくるのよ。」

 

鈴「アンタこそ何こっそり特技増やそうとしてんの?」

 

2人ともビリーに料理をしたいのだ。

 

シャルロット「ふ、2人とも、平等に教えるから、ね?」

 

のほほん「そうそう、仲良くだよ〜。」

 

シャルロットと本音は心配そうにする。

 

鈴・レベッカ「あっ、ごめん。」

 

 

料理を楽しんだ後はプレゼント交換をはじめ、有志で様々な出し物を披露。手品や妙技で盛り上げ、メインイベントは専用機持ち達によるアカペラ合唱。

パート構成としては、女声パートのうち、セシリア、シャルロットがソプラノ、ラウラ、鈴、簪がメゾソプラノ、箒、レベッカがアルトを歌う。

男声パートのうち、一夏、ネロ、エクトルがテノール、レオとビリーがバリトン、弾とアルゴスがバスを歌う。

 

山田先生「クリスマスキャロル、いい歌声ですね〜。」

 

千冬「今まで女子だけを相手にしていた分、新鮮だな。」

 

ジル「今年のクリスマスは楽しく過ごせたわね。」

 

教師陣はシャンパンを飲みながら鑑賞した。

 

今年のIS学園のイブは、彼らによってかつてない楽しさを感じるものだ。

 

 

Side12神座

 

クリーオス「ビルゴ、新兵器の開発の方はどうだ?」

 

ビルゴ「順調ですクリーオス様。」

 

ビルゴはプロサナトリスのIS企業の地下室で新兵器となる機体を開発していた。機体の名は「ベルゼビュート」。

カラーはヘドロの様だ。

 

リオン「ところでその機体、誰に装着させるんだ?」

 

サジ「この機体は完全なる兵器故、装着する人間も危険な状態にしてしまい、最悪の場合死ぬ。」

 

この機体は通常の機能に加え、科学的、生物的な効果を持ち合わせているが、操縦者自身の命を削らなければならない。

 

ジュゴーン「それを使うには『生贄』が必要という事ですか。」

 

クリーオス「ああ。それもただの人間ではなく、人知を超えた能力を持つものでなければダメだ。」

 

アクアン「具体的にはどのような者を生贄に?」

 

ビルゴ「織斑一夏やネロ、エクトル、アルゴスのような者といったところだな。」

 

キャンサー「しかし、彼らはIS学園にいますし、連れ出すのはほぼ不可能では?」

 

カプリ「なら拉致する為にこちらから出向けばいいのでは?」

 

スコルピオ「馬鹿な!それでは素性がバレて、かえってこちらが不利になる。」

 

デュモイ「だが、大天使様達はおろか、堕天使も消滅してしまってはあてになる物がこちらにはないぞ。」

 

しばし沈黙が続いた。しかし、ピスケがあることを思い出した。

 

ピスケ「・・・いや、1人いる。生贄にふさわしい可能性のある者が!」

 

クリーオス「誰だそれは?」

 

タウロ「そうか、カイムだ!奴は悪魔アスタロトに認められた者であり、ISの開発にも関わっていた!」

 

リオン「だけど奴は終身刑の身だぞ。どうやって連れ出すんだよ。」

 

そう、カイムは終身刑でアメリカの最高レベルの凶悪犯専用刑務所に収容されている。

 

カプリ「ここは自分が行きましょう。あの刑務所の所長とは知り合いですから交渉してみます。」

 

クリーオス「よし、カイムの件はカプリ、お前に任せる。ビルゴ、サジ、引き続き機体の開発を進めてくれ。ピスケは一夏達の様子を探れ。」

 

カプリ・ビルゴ・サジ・ピスケ「はっ。」

 

 

 

 

 

 



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終業式〜千冬とクラストの対面

虚「只今より、IS学園冬季終業式を行います。」

 

IS学園はとうとう冬休みを迎え、今は二学期の終業式が始まったところである。

はじめに山田先生から、学園の冬休みについての説明がなされた。

 

山田先生「皆さんもご存知だとは思いますが、夏休み同様寮は閉鎖となりますので、実家に帰られない生徒はホームステイ先のご迷惑にならないようにしてくださいね。(エクトル君は織斑先生の実家にいるって聞いたわ。先生に頼んで会いに行こうかしら♡)」

 

千冬「(真耶の奴顔が若干緩んでるぞ。大方ベレンの事だろうが、後でよく言い聞かせておこう。)」

 

 

一方、生徒側では・・・・

 

Side一組

 

一夏「は〜、今年もあと僅かだなぁ・・・。」

 

アルゴス「過去に色々あったが、全部いい思い出だな。」

 

エクトル「(冬休み中も真耶さんに会えるといいな・・・・。)」

 

ビリー「エクトル、お前何呆けてんだよ。(笑)」

 

エクトル「はっ、えっと、その・・・。」

 

エクトルは我に返った瞬間顔を紅潮させてあたふたする。

 

箒「ふっ、まあ恐らく山田先生の事だろうが、千冬さんが酒に付き合わせるために家に呼ぶ日くらいはあるだろう。」

 

シャルロット「あははっ、教師を恋人にすると大変だよね。」

 

箒とシャルロットは苦笑いしながらエクトルを諭す。

 

ラウラ「恋人といえば、弾とレオはどうなのだ?」

 

弾「できれば俺も冬休み中虚さんに会いたいぜ。」

 

レオ「まあ、俺も冬休み中に簪に会う予定ではいるけどな♪」

 

セシリア「ホームステイができるのはいい事ですわね。」

 

本音「わたしも〜、冬休みは〜ネロロンと過ごすのだ〜。」

 

side二組

 

 

鈴「はぁ〜、今年もあとちょっとで終わりか〜。(冬休み中に絶対ビリーを少しでも振り向かせるんだから!)」

 

レベッカ「(どうにかして弾の実家を突き止めなきゃ。)」

 

この2人は終業式でも終始野心を抱いたままだった。

 

 

終業式を終えて、一同は今年最後の寮での就寝時間を迎える。

 

一夏「さてと、それじゃあ寝るとするか。」

 

寝ようとする一夏だったが、ドアからノックの音がした。

 

弾「あれ、こんな時間に誰だ?」

 

千冬「済まない、私だ。織斑に用がある。」

 

一夏「はい、今行きます。みんな、先に寝ててくれ。」

 

一同「ああ、おやすみ。」

 

一夏は寝間着のまま外へと出た。

 

千冬について行くと、屋上に着いた。

 

千冬「こんな時間にすまないな。今は姉さんでいいぞ一夏。」

 

一夏「ああ、姉さん。にしてもこんな夜中にどうしたんだ?」

 

千冬「・・・お前はこの一年で、幾度も人知を超えた試練に立ち向かっている。それでも弱気にならないお前は、どこか人間離れしているように思えてな。」

 

千冬は一夏が弱みを見せず、さほど自分を頼らないことに密かに寂しさを感じていたのだ。

 

一夏「心配ないよ姉さん、俺には姉さんだけじゃなく、仲間がいる。確かに色々大変な事はあったけど、俺はこの学園に入ってよかったと思ってるぜ。」

 

千冬「・・・フッ、お前は本当に珍しい感覚だな。」

 

一夏「クラストにも同じような事を言われたぜ。」

 

一夏と千冬は互いに苦笑いする。

 

千冬「・・・その、クラストといったな。良ければそいつと話をしてみたいのだが。」

 

千冬は珍しく言いにくそうにする。

 

一夏「いいぜ、今呼び出すから。(クラストに話があるようだな。少しの間クラストに身体を貸しといてやろう。)」

 

一夏は目を閉じて、心の声でクラストを呼ぶ。

そして、一夏の体は、クラストの姿となった。

 

クラスト「・・・ブリュンヒルデか。」

 

千冬「その名前は使わなくていい。創造主クラスト、貴様は何故一夏を選び、強大な力を与えた?」

 

クラスト「・・・選んだ理由か、それは恐らく汝が一夏をIS学園に入れた理由と同じであろう。」

 

千冬「・・・そうか。(考えてみればそれは正直私にも分からない。)」

 

クラスト「一夏の事が心配でならぬ様だな。」

 

クラストはどこか不敵な笑みを浮かべている。

 

千冬「っ!?」

 

不意に自身の心中を言明された事に千冬は少し驚いた。

 

クラスト「一夏は大いなる使命を背負いし存在故に、セラフィエルやルシフェウス、アスタロトのような輩と戦う運命にあった。しかし一夏はその意味を僅かながら自覚しつつある。」

 

千冬「その使命とは何なのだ?」

 

クラスト「いずれ分かる時が来るであろう。今は良き姉として、一夏を見守る事だ。」

 

千冬「・・・。」

 

クラストの眼差しは強さを感じさせるも、どこか暖かである。それに千冬は思わず言葉が出なくなった。

やがて、クラストは一夏の姿へと戻った。

 

千冬「あっ。(感謝の言葉を伝え忘れてしまったな・・・・。)」

 

千冬は右手で胸を押さえながら考え込む。これまで千冬は特定の人物を強く意識した事がないためか、クラストに対する自身の気持ちの意味がわからず戸惑っている。

 

一夏「おっと、戻ったか。姉さん、クラストと話してみてどうだった?」

 

千冬「い、一夏。ん、コホン。中々骨のある奴だとは思ったな。一夏も見習うといいぞ。」

 

どこかぎこちない感想を述べる千冬。

 

一夏「? そっか、じゃあもう遅いし、寝るか。」

 

千冬「うむ、しっかり休むのだぞ。」

 

千冬はどこか己の気持ちを悟られまいとしていた。その様子を陰で見ていたネロは・・・

 

ネロ「・・・かのブリュンヒルデも、やはり愛を求めるものなのだな。」

 

鈍感ではあるが、ビリーとは違い他人の恋心には鋭いネロなのであった。

 



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一夏達の冬休み〜進められる実験

冬休みに入り、生徒たちは帰省、ホームステイ先に向かった。夏休みに比べて期間は短いものの、ホームステイをするものにとっては楽しみである。

 

Side一夏宅

 

一夏「冬休みも遠慮なくうちで過ごしてくれ。」

 

エクトル「織斑先生、今回もお世話になります。」

 

千冬「ここでは千冬さんで構わん。(今回生活は4倍楽だな。)」

 

アルゴス「そうだったな、世話になるぜ千冬さん。」

 

ネロ「ここが一夏の実家か。」

 

ネロは一夏の家に温かみを感じる。

 

3人の滞在者を迎え入れ、夏休み同様一夏の部屋のスペースをうまく分けて就寝スペースを増やす。

 

ネロ「なかなかいい部屋だな。以前俺がいた場所にはない雰囲気だ。」

 

アスタロトの元にいた頃の彼の無機質な部屋とは全く違う。

 

一夏「そっか、気に入ってくれてよかったぜ。」

 

エクトル「夏休みの時は僕らは一緒に宿題を進めたりしていたんだ。」

 

アルゴス「今回も計画的に進めていこうぜ。」

 

4人の強者は和気あいあいと冬休みの計画を立てていく。

 

 

Side弾宅

 

一方、弾の家でもホームステイの準備をしていた。

 

弾「そんじゃ、冬休みの間よろしくな。」

 

ビリー「おう、ホームステイなんざ初めてだぜ!」

 

蘭「お二人とも、いつもお兄がお世話になってます。」ペコッ

 

蘭は丁寧に挨拶する。

 

レオ「ご丁寧にありがとな蘭ちゃん♪蘭ちゃんの好きな一夏の事、いっぱい聞かせてやるぜ」ウィンク

 

蘭「あ、あわわ、いえ、その・・・・。(赤面)」

 

レオの発言にに蘭は戸惑う。

 

ビリー「レオ、てめえ受け入れ先の人に失礼だろうが。」

 

レオ「悪い悪い、ユーモアが大事かなと思ってよ。」

 

蘭「い、いえ、その、聞かせていただけますか?」

 

レオ「おう、何でも。」

 

3人は弾の部屋をうまく分けて就寝スペースを作る。その後、夕食の時間まで少しの間部屋で過ごすことに。

 

ビリー「おっ、この漫画俺の国でも大ヒットしたぜ。」

 

弾「へー、海外にも伝わってんだな。」

 

ビリーは弾の部屋の漫画雑誌を読む。

 

レオ「ほほう、これはなかなかいいぜ❤︎」

 

弾「だろ?」

 

レオは弾のグラビアアイドルの雑誌を物色する。

夕食を終えた後は、冬休みをどう過ごすかを話し合っていった。

 

 

Side箒

 

箒「ふんっ!はっ!!せやっ!!!」

 

冬休みに実家に戻った箒は朝から剣の稽古をしていた。来年二年生になることから、己の剣技にさらに磨きをかけていく。

何より、誰よりも強くなっていく一夏を強く意識している。

 

箒「(一夏は本当に凄い、IS学園に入学した当初に比べれば信じ難いほどの成長だ。以前は私が剣技を教えていたが、あいつは私にはないものを数多く持っている。それに・・・・)」

 

箒は顔を赤くしながら、リミットブレイクにより変身する一夏の姿を思い出す。

 

箒「(あの雄々しき姿・・・普段もカッコいいが、あれもまたいい❤︎)」

 

その時、

 

雪子「・・・ちゃん、箒ちゃん!」

 

箒「はっ!?お、叔母さん、おはようございます!」

 

雪子に呼ばれて箒は我に帰る。

 

雪子「どうしたの、一人で顔を赤くして?ひょっとして一夏君の事?」

 

箒「いや、その、これは。」

 

雪子「ふふふっ、わかるわよその気持ち。でも想いに気づいてもらえてよかったわね。聞いた話だと候補は多い見たいだけど、頑張ってね。」

 

箒「・・・はいっ!」

 

 

Sideセシリア

 

セシリアはイギリスに帰国後、バイオリンの練習に励んでいた。料理はメイドのチェルシーに教わっていることもあり、少しずつではあるが、進歩している模様。代表候補生として、来年の二年生に向けて日々奮闘する。

 

セシリア「(一夏さんは本当に素晴らしいお方ですわ。IS学園に入学された時とは比べ物にならない程成長なさっています。誰よりもお強いですし、それに・・・)」

 

セシリアはふと、顔を紅潮させる。

 

セシリア「(6枚の翼を持つあの神々しきお姿、まさに私にふさわしい殿方の証ですわ・・・❤︎)」

 

セシリアは部屋の窓辺から空を見上げながら一夏の事を想う。

 

チェルシー「・・・様、セシリアお嬢様。」

 

セシリア「はうっ、チェ、チェルシー、いつからそこに!?」

 

チェルシー「先程からお呼びしていたのですが、恐らく一夏様の事をお考えになっていると思いましたので。」

 

セシリア「い、いえ、その、おほほ。」

 

チェルシー「(あの男性嫌いだったお嬢様をここまで変えるなんて。一夏様に一度お会いしてみなければ。そして、ゆくゆくは是非ともお嬢様の婿に・・・。)」

 

セシリアが幼くして両親を亡くしてからもずっと仕えていたチェルシーは、一夏の人間性に興味を感じた。

 

 

Sideシャルロット

 

シャルロットはフランスに帰国後、壊滅したデュノア社の復興を、新しい社員と共に進めていた。

ちなみに彼女の父親は、アスタロトによる事件後、心労が災いした事で患った病気により亡くなった。

関係がよくはなかったものの、一応家族である人間を失ったシャルロットはその心の重荷を下ろし、今は新たな目標に向かっている。

 

社員「シャルロット様、機材は一通り揃えられました。」

 

シャルロット「オーケー、じゃあ今度はプログラムの方にうつろうか。」

 

シャルロットはパソコンを使い、新しいIS開発のプログラムを作成していく。

 

シャルロット「(一夏は本当にISが好きだから、この会社を将来一夏とやっていけたらいいな。いつかは一夏と・・・・♥)」

 

社員「(?どこか上機嫌ですね。)」

 

 

Sideラウラ

 

隊員1「隊長、おかえりなさいませ!」

 

隊隊員2「その後、一夏さんとはどうですか?」

 

ドイツではラウラの学園生活について隊員がしきりに尋ねる。

 

クラリッサ「その辺にしておけ、隊長はお疲れなのだ。」

 

ラウラ「構わん、クラリッサ。一夏とは良好な関係だ。ライバルが多いが負けてはいないぞ。」

 

ラウラは上機嫌に話す。

 

クラリッサ「(隊長がここまで笑顔を見せるとは、流石は織斑教官の弟君だ。)」

 

ラウラにかつてない笑顔と饒舌さをもたらした一夏にクラリッサは感心する。

 

 

 

Side 十二神座

 

ピスケ「ご報告いたします。現在IS学園は冬休みのために閉鎖されており、織斑一夏はエクトル・ベレン、アルゴス・イリアディス、ネロ・グルーバーと共に実家で過ごしているようです。襲撃にはもってこいかと。」

 

クリーオス「そうか、だが下手に襲撃するのはよそう、いきなり出向いては大きく目立ってしまうからな。」

 

タウロ「それならば、彼らの関係者を狙うのが良いかと。」

 

クリーオス「・・・成る程、関係者の拉致なら直接出向かずともあちらから出てくるだろうな。」

 

一夏達をいかにしておびき出すかを考える一同。一方で、

 

 

Sideカプリ

 

カプリは単身アメリカの最高レベルの刑務所に出向き、知り合いの署長と話をしていた。

 

カプリ「署長、カイムの事なのですが。」

 

署長「カイム?ああ、あのISクローンパイロット事件の。実はここだけの話、どうやら奴は癌らしいんだ。」

 

カプリ「おや、それはそれは。」

 

署長「署内での検査でわかってから、病室でずっと治療中だ。だが進行状況が悪かったみたいでな。もしかすると長くないかもしれん。」

 

カプリ「それでしたら、私の国の病院に預けていただけないでしょうか?実は最近、知り合いの医師が最新の癌治療薬を開発しましたので、その治験に是非彼を。(しめた!)」

 

カイムを刑務所から連れ出す口実が都合よく浮かび、内心ほくそ笑むカプリ。

 

署長「そうか、それは素晴らしい!あんな奴でも人の役に立つならいいだろう。」

 

カプリ「ありがとうございます。」

 

数分後、カイムを刑務所から連れ出し、プロサナトリスへと戻っていった。

 

 

Sideクリーオス

 

クリーオス「こいつがあのクローンパイロットの生みの親か?」

 

カプリ「はい、クリーオス様。」

 

カイム「この度は私の癌の治療をお引き受けくださりありがとうございます。」

 

カイムは、これから自分がベルゼビュートの生贄にされるとも知らず喜ぶ。

 

クリーオス「いや、お安い御用だ。おいサジ、ビルゴ、準備はできているか?」

 

サジ「はっ、整っております。」

 

カイムは実験室へと連れていかれる。

 

実験室に入ると、そこには機体ベルゼビュートの姿が。

 

カイム「?何故病室にISが。ウッ!!」

 

カイムが首をかしげた瞬間、ビルゴはカイムの首の後ろにチョップを叩き込み、気絶させる。

 

ジュゴーン「準備が整ったようだな。では降臨の儀を。」

 

ジュゴーンは何やら怪しげな呪文書のようなものを出す。

 

そして、デュモイ、スコルピオ、キャンサーは各々の血でベルゼビュートの足元に六芒星を描き、カイムの肉体をそこに置いた。

 

ジュゴーン「さあ、降臨せよベルゼビュート!汚らわしき肉体を喰らい、世に真の秩序をもたらすのだ!!」

 

ジュゴーンは念を込めた呪文を唱える。

すると、ベルゼビュートの背中から触手が飛び出し、カイムを取り込むかのようのその機体を装着させた。

触手はカイムの頭に深く突き刺さり、カイムを完全洗脳して行く。カイムの顔色、全身はみるみる青ざめていった。

 

カイム「ウガッ、ウゴゴッ、我ハ・・・・、異界ノ君主、ベルゼ・・・・ビュート!」

 

クリーオス「ベルゼビュート、私がわかるか?」

 

カイム「・・・クリーオス、様・・・。」

 

ここに、IS史上最も恐ろしく、最も汚れた機体が誕生した・・・・。

 

 



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年末は大忙し

ネロ「・・・・。」

 

ネロは夜中になっても寝付けないまま一夏の部屋で考え事をしていた。ちなみに一夏、エクトル、アルゴスはぐっすり眠っている。

 

ネロ「・・・・何故だろう、こうも平穏が続くと逆に不安になるのは。」

 

ネロは過去の自分と今の自分の状況の違いに正直戸惑っていた。精神的な影響からか、いつの間にか6枚の黒い翼が背中に出ている。その時、一夏の肉体から思念体のクラストが出てくる。

 

クラスト「おい、ネロ。」

 

ネロ「・・・クラストか、こんな夜中に何の用だ?」

 

どことなく無愛想に返事をするネロ。

 

クラスト「汝の様子を見てふと気になったのでな。」

 

クラストはネロの態度に苦笑いしながら答える。

 

クラスト「その様子だと、まだ今の己の心を保っていないようだが。」

 

ネロ「・・・別に何でもない。」

 

クラスト「ふむ、そうか。だが忘れるなネロ。どんなことがあろうとも我と一夏は汝を信じている。これから先も如何なる災厄が降りかかろうともな。

 

ネロ「・・・・・。」

 

クラストは静かに一夏の肉体に戻る。

 

 

翌朝

 

一夏「う〜ん、寒いがいい朝だ。よし、朝飯の準備をするか。」

 

一夏は背伸びをしながら布団から出る。

 

一夏「あれ、ネロ。もう起きてたのか?」

 

ネロ「・・・ああ、何だか眠れなくてな。」

 

一夏「そうなのか?まあ、ベッド変わると寝られないって人がいるくらいだしな。とりあえず朝飯作るぜ。」

 

一夏は部屋着に着替えて台所に降りる。

 

ネロ「待て、俺も手伝おう。」

 

一夏「えっ、いいぜ朝くらい。」

 

ネロ「この家に置いてもらうからには相応の仕事をしなければな。」

 

一夏「そうか、じゃあ頼む。」

 

一夏とネロは二人で朝食の準備に取り掛かる。

ネロは一夏のデータを基に作られた人間からか、妙に調理が出来る。

 

ネロ「こんなもので良いだろうか?」

 

一夏「おう、上出来だぜ。」

 

千冬「ほう、美味そうだな。にしてもネロ、お前が料理とは意外だな。」

 

ネロ「それなりの生活力は叩き込まれたからな。」

 

アルゴス「おはよう一夏、ネロ。」

 

エクトル「さすが、手早いな一夏。」

 

食卓を5人で囲み、朝食に入る。

 

 

一夏「そういえばもう年末近いよな。正月を迎える用意しとかなきゃな。」

 

千冬「ふむ、そうだな。」

 

エクトル「大掃除、年越し蕎麦、おせち料理など、用意しなければね。」

 

千冬「やけに詳しいなエクトル。」

 

アルゴス「それなら他の奴らも呼んでやればいいんじゃねえの?」

 

ちなみに今は12月26日である。

 

 

それから4日後、織斑宅には主なメンバーが勢ぞろいした。

 

一夏「みんな、来てくれてありがとな。」

 

箒「礼には及ばん、私達も手伝おう。」

 

セシリア「ええ、喜んで。」

 

シャルロット「料理なら任せて!」

 

ラウラ「嫁の頼みとあらばいつでも。」

 

どんなに離れていても、一夏のもとにはすぐに行く恋人候補たち。

 

ビリー「しかしまあ、まさかこの面子が揃うとはな。」

 

鈴「・・・・それはこっちのセリフよ。(ビリーったら結局レベッカ呼んじゃうんだから。)」

 

レベッカ「へー、一夏の家って凄く綺麗ね!(ビリーに弾の家教えてもらったし、これで抜け駆け阻止だわ!)」

 

ビリー「やっぱ大掛かりな準備は全員でやったほうが楽だろ。」

 

こうなることは大方予想はついていたであろう。

 

アルゴス「・・・その代わり別の意味で大掛かりなことになりそうだがな。」ハア

 

アルゴスはため息をつく。

 

楯無「ふふっ、その時はお姉さんも手伝うわよアルゴス君。」

 

簪「レオ、年末年始楽しみだよね。」

 

レオ「ああ、初詣とか興味あるな!」

 

山田先生「エクトル君、ここでのホームステイはどう?」

 

エクトル「お陰様で。真耶さんと年末年始を過ごせて嬉しいです。」

 

弾「虚さんも来てくれたんですね。」

 

虚「ええ、年末年始を弾君と過ごしたいし、蘭ちゃんにもご挨拶しようと思ったから。」

 

蘭「初めまして、妹の蘭です。(この人がお兄の恋人、なんかお兄にはもったいない気もするけど。ううん、それより一夏さんの恋人候補って言われてる4人の人達に負けないようにしなきゃ!)」

 

学園公認カップル三組はご機嫌である。

 

ネロ「本音も来たんだな。」

 

本音「ネロロン、会いたかったよ〜。」

 

本音はネロにくっつき、ネロの髪をマフラーにする。

 

ネロ「ん?何だ?」

 

本音「ネロロンの髪の毛あったか〜い。」

 

側から見ると半バカップル化しているように思える。

 

一夏「はいはい、イチャつきたいのはわかるけど、その辺でな。」

 

その後、一夏を中心に料理ができるメンバーは年越し蕎麦やお節料理のための買い出しに行き、他のメンバーは一夏の実家の大掃除を、千冬の指揮のもと行っていった。

 

 

 



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初詣

年が明け、今日は待ちに待った元旦。今日は皆で篠ノ之神社に初詣に行くことになった。

なお、女性陣は全員振袖を着たいとのことで、早朝に篠ノ之神社に集合し、着付けを行なっている。

 

簪「振袖着るの何だか久しぶり。」

 

楯無「簪ちゃん、手伝ってあげる。」

 

ラウラ「むっ、これは意外ときついものなのだな。(今朝雑煮や御節料理とやらを食べ過ぎたせいか。・・・)」

 

箒「まあ慣れるまでが大変だがな。」

 

シャルロット「ていうかラウラ、今朝お雑煮食べ過ぎたでしょ。」ハァ

 

本音「だってぇ〜、おりむーの料理が美味し〜んだもん。」

 

虚「まったく、腹八分ってものを覚えなさい。」

 

シャルロットと虚は呆れる。

 

千冬「よし、できたぞ。」

 

山田先生「みなさん、よく似合ってますよ。」

 

千冬と山田先生はセシリアやレベッカの着付けを手伝った。

 

セシリア「これが日本の振袖なのですわね。」

 

レベッカ「なんか、胸がちょっと苦しいかも。」

 

箒「それは私もよくわかる。」

 

学年でも特に胸が大きいこの三人は振袖で胸元がきついようだ。

 

鈴「あたしは結構楽な方ね。(箒もそうだけど、セシリアにレベッカも何気に大きいのよね・・・。)」

 

そう言いながらも、鈴はその三人の胸を羨ましそうに見る。

 

 

着付けが終わった頃にちょうど、男性陣が篠ノ之神社に到着する。

 

一夏「明けましておめでとう!みんな振袖がすごく似合ってて綺麗だぜ!」

 

一夏は顔を少し赤くしながらみんなを褒める。ちなみに一夏達男子は、それぞれのイメージカラーのロングコートでキメている。

 

箒「一夏、それにみんなも明けましておめでとう。(白のロングコートか、かっこいいな❤︎)」

 

セシリア「明けましておめでとうございます。(一夏さんに喜んでもらえましたわ!)」

 

シャルロット「明けましておめでとう!一夏もロングコートがカッコいいよ!(振袖初めてだけど、似合うって言われた❤︎)」

 

ラウラ「今年もよろしく頼む。(一夏、少し意識しているようだな、嬉しいぞ!)」

 

 

エクトル「真耶さん、明けましておめでとうございます。(振袖ってこんなにも可愛らしいものなのか。)」

 

山田先生「明けましておめでとう、エクトル君。(エクトル君、今日は何だか大人っぽいわ❤︎)」

 

 

楯無「あけおめ!アルゴス君!どう?お姉さんの振袖は?」

 

アルゴス「す、すげえ綺麗でたまらねえっすよ!」

 

いつもクールフェイスなアルゴスも、思わず赤面する。

 

 

レオ「おう簪、あけおめ!」

 

簪「あ、明けましておめでとう、レオ。(レオ、やっぱりおしゃれすると本当にかっこいい❤︎)」

 

レオ「いやー、振袖って素晴らしいぜ!今日は何だかめでたいよなあ!」

 

簪「・・・・馬鹿。」シュン

 

レオは簪を褒めてるそばから他の女子の振袖にも目を向ける。いつもの癖だが。

 

 

虚「弾君、明けましておめでとう」

 

弾「虚さん、おめでとうございます・・・(うわぁ、虚さんやっぱりしとやかでいいよなあ❤︎)。」テレテレ

 

蘭「もうお兄!しゃんとしてよね!すみません虚さん。」

 

一夏「おう、蘭。明けましておめでとう。」

 

蘭「あっ、明けまして、おめでとうございます。(一夏さんやっぱりかっこいいわ。でも私は、箒さん達と比べたら・・・。)」

 

蘭はコンプレックスを感じた。そんな蘭を見て一夏は苦笑いしながら励ます。

 

一夏「大丈夫だぜ蘭、すごく似合ってる。」

 

蘭「あ、ありがとうございます。」

 

のほほん「おーい、ネロローン!明けましておめでとう〜。」

 

ネロ「おめでとう、っておい、その格好で走ったら危ないだろう。」

 

ネロは転びそうになった本音に寄り添う。

 

虚「本音、はしゃがないの。」

 

本音「は〜い❤︎」

 

本音はネロの黒のロングコートの袖にくっ付く。

 

ビリー「ハハハッ、本音子供扱いされてんな!」

 

鈴・レベッカ「ビリー、明けましておめでとう!!」

 

ビリー「おう、明けましておめでとう。にしても、鈴はともかくレベッカが振袖を着るとは、意外だよな。」

 

鈴「・・・意外って何よ。」

 

レベッカ「・・・他に言うことがあるんじゃないの?」

 

思わずムッとする鈴とレベッカ

 

ビリー「いや、思った事をそのまま言っただけなんだがよ。」

 

 

シャルロット「ビリー、女の子にはちゃんと言葉を選ばなきゃダメな時もあるの。」

 

アルゴス「てめえには美的センスってモンがねえのかよ。」

 

箒「以前の一夏でもその辺はちゃんとしていたぞ。」

 

一夏「(あれ、そうなのか?)」

 

ビリー「って言われてもなあ。」

 

ビリーは首をかしげる。

 

一同「(ハァ・・・・。)」

 

千冬「皆揃ったようだな。それでは行くぞ。」

 

 

それから一同は、篠ノ之神社でお参りをし、賽銭をして各々願いを込めて祈る。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ・蘭「(今年は一夏(さん)と結ばれますように・・・。)」

 

鈴・レベッカ「(ビリーに気づいてもらえますように・・・。)」

 

エクトル・アルゴス「(一夏やネロに負けないくらい強くなれるように・・・。)」

 

弾・レオ・ビリー「(去年よりいいパイロットになれるように・・・。)」

 

楯無「(アルゴス君の願いが叶いますように・・・。)」

 

山田先生「(エクトル君の願いが叶いますように・・・。)」

 

虚「(弾君の願いが叶いますように・・・。)」

 

簪「(レオの願いが叶いますように・・・。)」

 

本音「(ネロロンといつも一緒にいられますように・・・。)」

 

ネロ「(いつかこの俺にも家族ができるように・・・。)」

 

そして一夏は・・・

 

一夏「(ここにいるみんなの願いが叶うように・・・。)」

 

なんとも友達思いな願いである。一方千冬は

 

千冬「(一夏が幸せになりますように・・・。)」

 

あいも変わらず自分より一夏である。

 

それからというもの、境内でおみくじを引いたり、甘酒を堪能するなど、皆で初詣を楽しんでいった。

 

 



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3学期〜卒業式

リオン「状況をご報告します。現在織斑一夏達ですが、共に行動をしているままで関係者の拉致にはまだ時期尚早かと。」

 

クリーオス「ふむ、そうか。」

 

十二神座は一夏達の動向を観察しながら、いつ対峙するかを考えていた。

 

カプリ「そういえばビルゴは神社で奴らの様子を探る際に妙な格好をしていたな。」

 

ビルゴ「うるさい、私だって好きであのような格好をした訳ではない。」

 

ビルゴは元旦の会社の休みを利用して来日し、日本人に扮して篠ノ之神社の境内でおみくじを売る巫女のバイトをしていた。完璧な変装ゆえに誰も気づかなかったが。

 

タウロ「だが、少なくとも3年生の奴らは卒業後、必然的に織斑一夏と離れることになる。狙い目はおそらくその時期だろうな。」

 

ジュゴーン「しかし、3年生にはあの更織楯無や布仏虚のような優秀な者もいますぞ。」

 

ピスケ「それに関しては対策を練っている。カイムの所持品から見つけたクローンパイロットの製造データと、織斑一夏達のDNAデータ、それに亡国機業に保管されていたデモンズ・コアのデータを元に、より改良された兵士を、サジが生産していますからな。」

 

サジ「ええ、データを解析したところ、より強化できる方法を編み出すことができました。」

 

クリーオス「それは手早いな。しかしクローンだけで軍を編成すればこれまでと変わらないぞ。」

 

アクアン「心配は要りませんクリーオス様。私の修道院の優秀な娘達をISのパイロットに仕立て上げることも進めております。」

 

クリーオス「なるほどな。よし、そのまま作業を続けろ。」

 

 

クリーオスはそう言うと、自室に戻っていった。

 

 

 

Side一夏

 

IS学園は新学期を迎え、食堂では進級の話題を中心に盛り上がっていた。

 

谷本「私達ももうすぐ二年生かー。」

 

鷹月「なんだか色々あったけどあっという間だったわね。」

 

一夏「ああ、本当にそう思う。(結局この身体に転生してから1年を過ごしたわけだしなぁ。)」

 

ネロ「俺は後から入ったが、短いながらいい思い出にはなったな。」

 

箒「特にエクトルとアルゴスが来てから色々日常に変化があったものだな。」

 

箒は普段想像もしないような出来事が続いたことで、この世は不思議であるとしみじみ感じていた。

 

エクトル「僕も正直ここまでの事になるとは思わなかったよ。」

 

アルゴス「ああ、全くだ。」

 

エクトルとアルゴスは互いに目を合わせながら苦笑いする。

 

シャルロット「そういえば、これから新しく入ってくる一年生がどれだけの人か気にならない?」

 

ビリー「言われてみるとそうだよな。」

 

弾「その時は、蘭の奴も来るはずだな。(あいつ一夏の事諦めてねえからなぁ。)」

 

ラウラ「シュヴァルツェ・ハーゼの後輩も1人来るぞ。」

 

エクトル「その時は僕の妹のミレイアも来ると思うよ。(もしかしたら蘭とライバルになるかも知れないな。)」

 

※ミレイアについては番外編の2話参照。

 

相川「でもさ、次の新入生にもかっこいい男の子がいたらいいよね。」

 

レオ「俺ら男子からすれば、どんな可愛い女の子が来るかも楽しみだよな。」

 

レオ以外の男子「(・・・お前(君)(テメエ)(貴様)と一緒にするなよ。(しないでくれよ。)(するな。))」

 

簪「もう、レオ相変わらず。」

 

鈴「全くよね。(どんな後輩がビリーに付く悪い虫になるかわからないわ。)」

 

レベッカ「そういえば一夏、アンタって自分の仲間を増やしたいとか言ってたらしいけど、どうなの?(後輩にもイケてる男子がいればビリーに悪い虫が付くリスクが減るわ・・・。)」

 

一夏「ああ、実は俺とネロは姉さんや束さんの協力を得て、俺たち7人の機体のコアのデータをもとに、コアの生産を進めてもらってるんだよ。」

 

ネロ「そのコアは弾やビリー、レオに仕組まれているフリーク・コアには若干劣るが、生産性が高いらしい。」

 

セシリア「まあ、そうなんですの。」

 

一夏とネロは互いに創造主クラストの力を共有し合っているからか、妙にこの計画に意気投合していた。

ちなみに、新しく試作されたそのコアを、ギリシャ語で「光」を意味する単語を文字って「フォース・コア」と名付けた。

 

その話を聞いて、女子生徒たちがワッと押し寄せる。

 

「次の一年生にも男子来るの!?」

 

「織斑君、グルーバー君、私達の恋のためにそこまで!!」

 

「今年こそは、今年こそは!!」

 

女子生徒たちはウズウズしている。

 

一夏「落ち着けってみんな、少しでも俺たち男子の仲間は増やしたいが、そんなに多く出せる保証はいまのところないぜ。」

 

ネロ「フォース・コアに認められ、なおかつ通常の入学試験に合格する事が条件だ。そのような逸材を探し当てるだけでも苦労するし、それに並の男ではパイロットは務まらないだろう。」

 

千冬「その通りだ。」

 

そこにはいつの間にか千冬が立っていた。

 

一同「織斑先生。」

 

千冬「実際織斑とグルーバーがやろうとしている事は全世界に影響を与えると言っても過言ではない。あくまでこれはこいつらなりに女尊男卑をよくするためだ、あまり浮かれるな。」

 

「はいっ!!」

 

 

そして、時は流れ・・・・

 

 

一夏「3年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます!」

 

一同「おめでとうございます!!」

 

3月1日、IS学園は遂に卒業式を迎えた。

在校生代表を一夏が務め、卒業式が厳かに進められている。

 

卒業式終わると、しばらくの間卒業生と在校生の最後の時間を過ごす。

 

楯無「みんな、今まで本当にありがとう!アルゴス君、お姉さんがいなくなってもしっかりね♡それと、義兄として簪ちゃんの事もよろしくね。」

 

アルゴス「あ、いえ、その(赤面)」

 

簪「アルゴスお兄ちゃん、しっかりしてよ。」

 

虚「弾君、くれぐれも他の女の子に目移りしちゃダメよ。それと、本音の事もよろしくね。」

 

弾「はっ、はい!!」

 

本音「弾お兄ちゃん、よろしく〜。」

 

一同「あははは(うふふふ)。」

 

楯無「それと、一夏君、生徒会は貴方に任せたわよ。」

 

一夏「任せてください。」

 

 

こうして、一夏は多くの同志と共に、貴重な一年間に幕を降ろすのであった・・・。

これから先、いかなる未来、はたまたいかなる敵が来ようとも、彼はどこまでも強く進んでいく事だろう・・・・。



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新生活の始まり

4月、IS学園には新たな春が訪れていた。

一夏達新二年生は、入学式を終えて早速新たな授業を受ける。

 

一夏「起立、礼、着席!!」

 

一同「おはようございます!!!」

 

千冬「おはよう、新2年生諸君。選択した科目により学年、クラス共に大きく変わった。そして何よりお前達は『先輩』として、己を高めるだけでなく、後輩の育成という責務を担う身である事を自覚しておけ!」

 

一同「はいっ!!」

 

二年一組、一夏は去年に引き続き、皆の信頼もあってかクラス代表をそのまま続ける事になった。

ちなみにこのクラスは、受ける授業により分かれるものの、基本的に専用機持ちメンバー全員と、その他の1年次成績上位者26名の生徒で構成されている。ちなみにのほほんさん、谷本、鷹月は下位3名でギリギリ一緒のクラスに。

 

授業が終わり、休憩時間に入る。

 

 

一夏「いやー、よかった。まさか俺たち専用機持ちが全員同じクラスでいられるとはな。」

 

箒「うむ、その通りだ。」

 

セシリア「皆さん、今年もよろしくお願いしますわ。」

 

シャルロット「うん、よろしくね。」

 

ラウラ「この方がライバルを意識しやすいしな。」

 

弾「そういや去年は、鈴とレベッカだけクラス別だったもんな。」

 

鈴「そうね、でも専用機持ち同士お互い負けないようにしなきゃね。(今年こそはビリーを・・・・!)」

 

レベッカ「今年は負けないわよー。(ビリーは絶対手に入れて見せるんだから!)」

 

鈴とレベッカはビリーの方を向く。

 

ビリー「ふあぁ〜。」

 

ビリーは呑気に大欠伸をする。

 

レオ「呑気な奴だな。(鈴とレベッカが恋に燃えてんのによ。)」

 

アルゴス「コイツ授業の後は決まってこうだしな。(当の本人がこれじゃ、今年も危ういぜ。)」

 

ビリーの鈍感さだけは変わる気配がない。

 

エクトル「そういえば新一年生にも数名の男子が入ったようだけど。」

 

簪「どんな男子が入ってきたの?」

 

ネロ「ああ、俺と一夏による試験で厳選した奴らだ。」

 

一夏「合格者は10名で、各国から1名ずつだ。」

 

国としては、アジア圏から日本、韓国、タイ、ヨーロッパからロシア、トルコ、スウェーデン、

 

南アメリカからはブラジル、北アメリカからはメキシコ、オセアニアからはオーストラリア、そして、アフリカ大陸からエジプト

 

のほほん「ほえ〜、いろんな国から来たんだ〜。」

 

谷本「ねえ、昼休みにでも会いに行ってみない?」

 

鷹月「賛成!!」

 

「どんな子かな、かっこいいかな?」

 

女子生徒達はウズウズし始める。

 

千冬「おい、もう授業が始まるぞ、浮かれていないで着席しろ!」

 

一同「はいっ!!」

 

千冬「織斑、グルーバー、新一年生男子の入学試験、ご苦労だった。男子専用機持ちを中心に、彼らを皆で協力して育成していくように。」

 

一夏・ネロ「はいっ!!」



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新たな刺客の登場

クリーオス「ビルゴ、新型の開発はどうだ?」

 

ビルゴ「全て順調です、クリーオス様。」

 

IS学園が新たな春を迎えていた頃、12神座は新たな行動に出ていた。

かつてアスタロト達の手駒であったクローンパイロットはさらに改良され、互いに意思疎通ができるレベルに達した事でより確実に自律行動が可能となった。

それに加え新型の無人機「オルトス」を量産していき、かつての「ガーゴイル」よりもさらに高性能で、彼らの目線で見れば美しいフォルムに仕上がった。

 

サジ「クリーオス様、こちらが我々の新たなる戦力となるオリジナルパイロット達でございます。」

 

男性陣はキャンサーが選んだプロサナトリス宗教法人の信徒達から、女性陣はアクアンが選んだプロサナトリス修道院の修道女達からそれぞれ選ばれたもの達である。

その人数はIS学園の1クラス程度で、年齢は十代から二十代までの範囲である。

 

クリーオス「ふむ、見た所どいつもなかなかのものだな。」

 

クリーオスは仮面から覗く目でじっくりと見ている。

 

キャンサー「さあ、信徒達よ。クリーオス様にご挨拶を。」

 

信徒・修道女「我らが主クリーオス様、我らに力を与えてくださり感謝します。」

 

アクアン「あなた達は偽りの神を倒し、真の神となるべきクリーオス様に選ばれたもの達です。」

 

修道女「アクアン院長、偽りの神とは?」

 

アクアン「あなた達も知っている、かのIS学園に君臨する織斑一夏の事です。」

 

信徒「織斑一夏というと、創造主クラストの力を宿しているという・・・」

 

デュモイ「そうだ。奴はクラストの力を利用し、この世を自身の理想通りにしようとしている。女尊男卑を良くするためと言いながら、結果的にはそれ故に悲劇を起こしている。それどころか、自身の仲間とできる者はかつて敵であった奴も味方に引き入れる程の男だ。それをこの世の調和と宣い、この世に汚れをもたらしている。」

 

信徒「成る程。しかし、何故創造主クラストはそんな男に力を貸すのでしょうか?」

 

クリーオス「それについてはまたの機会に話そう。(クラストめ、貴様の犯した罪は決して忘れぬぞ・・・・。)」

 

クリーオスは拳を握り締める。そんな中、参謀役であるタウロが戻ってきた。

 

タウロ「クリーオス様、我らにとって好都合な者を連れてまいりました。」

 

クリーオス「ふむ、誰だそいつは?見た所何の変哲も無い女学生だが。」

 

女学生「・・・・。」

 

女学生の名はダリル・ケイシー。そう、彼女は元IS学園の生徒で、卒業を機にプロサナトリスの大学に進学。だがその正体は、かつての一夏達の宿敵亡国機業の一員で、IS学園に在学中は、一夏が入学した当時から彼を暗殺しようと試みていた。

だが、予想外の能力の高さに加え、亡国機業が倒された事で、生き残りは自分1人となってしまったが故になりを潜めていた。

プロサナトリスの大学に進学したのも、一夏への復讐のためである。

 

クリーオス「元IS学園の生徒か、これは確かに好都合だ。」

 

ダリル「アンタ、織斑一夏について知ってんの?」

 

ダリルは不遜な態度でクリーオスに話しかける。

 

タウロ「貴様、失礼だぞ!」

 

クリーオス「タウロ、落ち着け。このような態度や口調は別に嫌いではない。ダリルよ、聞いたところ貴様は織斑一夏に復讐心を抱いているようだな。目的は違うが一夏を抹殺する意思は俺にもある。ここは一つ俺達に協力しないか?」

 

ケイシー「ふーん、ま、いいわよ。アンタとは利害が一致してるようだしね。」

 

12神座はここから大きく動くことになる。

 

 

Side IS学園

 

一夏達は食堂で夕食をとりながら、互いに自身で選択した授業について語り合っている。

 

一夏「モンド・グロッソの実践訓練だけど、あれは本当に大変だったな。」

 

ネロ「ああ、限界値を無理やり押し上げられているようだ。」

 

箒「それは凄いな。」

 

エクトル「織斑先生を超えるとなると、相当だよね。」

 

シャルロット「ラウラもお疲れだね。」

 

ラウラ「ああ、本当に疲れた。」

 

ラウラは若干やつれていた。その分いつも以上に食欲が出ている。

 

鈴「凄いわね、痩せの大食いってやつ?」

 

アルゴス「だろうな、俺もマジで疲れたしな。」

 

ビリー「ありゃ地獄だぜ!」

 

レベッカ「まったく、そんなんじゃ先が思いやられるわよ。」

 

ビリー「うるせえなてめえ、大して選択してねえからって他人事みたいに言うなよ。」

 

モンド・グロッソ重視のカリキュラムにしたのは、一夏、ネロ、ラウラ、アルゴス、ビリーの5人である。

 

箒「それを言うならこっちも大変だぞ。整備関係の授業は覚えることが多すぎて大変だ。」

 

箒は束の事もあってか、モンドグロッソ関連の授業と整備科の授業を半々で受けている。

 

簪「頭使う方もそれはそれで苦労するわよ。」

 

のほほん「う〜、眠いよ〜。」

 

簪と本音は完全に整備、開発重視で授業を選択している。

 

弾「簪の言う通りだぜ。」

 

エクトル「そうかなぁ、僕は有意義に感じてるよ。」

 

レオ「コイツ本当に勉強に関しては余裕だからなぁ。」

 

弾とレオは箒とほぼ同じ選択をしており、エクトルに至っては6:4でモンドグロッソ寄りに授業を選択した。

整備科関連の授業に至っては、選べなかった授業内容を独学で補うほどである。

 

レベッカ「そういえば、新一年生の間でとんでも無いことが起きてたわね。」

 

ビリー「ああ、それに蘭とミレイアの事もな。」

 

一夏「おいビリー、その話に触れるなよ!!」

 

ビリー「あっ、わりい。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「・・・・。」ジトー

 

一夏「(・・・・スンマセン。)」

 

鈴「はあ、アンタって本当に大変よね。」

 

※何が起こったかはanother storyの方で。

 

 

新二年生を謳歌していた彼らだが、それもこの後大きく変わっていくことに。



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簪の決意

一年生との交流後、午後の授業に勤しむ二年生は、夕食を迎え、これまでの感想を語り合う。

 

鷹月「そういえば機体開発技術の授業どうだった?」

 

谷本「既にある装備を覚えるだけでも大変よ。」

 

相川「それを考えたら、専用機持ちのみんなが羨ましいわ。」

 

整備科の科目の一つ、機体開発技術では、既存の装備を始め、束が公開する範囲での技術を習得していく。

この授業は、モンドグロッソ重視の生徒も選べる、比較的中級の技術開発の授業とは違い、ISの整備士を目指す者のみ選択できる上級科目である。

ちなみにこの科目を選択している専用機持ちは簪ただ1人で、それ以外のメンバーは、自身の機体の装備強化程度の技術を学ぶ程度である。

 

一夏「簪は、やっぱり整備士を目指すのか?」

 

簪「うん、一応専用機は持ってるし、大会出場よりこっちの方がいい。それに、一夏が望む男子の育成にも貢献したいし。」

 

簪は閉じこもっていた自分の心を救い、レオという恋人に巡り会えたのも一夏のおかげと考え、恩返しも兼ねて男子への機体開発も進めようと決意したのである。

 

レオ「そういえば、今度の技術開発試験にトップ合格したら、特別に1機機体を作れるんだってな。」

 

そう、1学年でただ一人、学園にいながら世界に一つだけの機体を作れるのだ。

 

箒「それは凄いぞ、私も応援する。」

 

ビリー「整備士かー、俺にはさっぱりわからねえけど、頑張れよ。」

 

ネロ「簪ならやれるだろう。お前は既にその雰囲気を纏っているように思えるな。」

 

ネロは簪の目標の大きさに感心する。

 

セシリア「ですが、簪さんは既に専用機をお持ちですわ。」

 

簪「うん、だから他の人のために専用機を作る予定。」

 

弾「そりゃ一体誰なんだよ?」

 

簪はある人物を指差す。それは・・・・、

 

本音「ほえ、私なの?」

 

本音が反応してから、数秒後、

 

一同「えーっ(何ーっ)!?」

 

鈴「簪、本気で言ってんの!?」

 

簪「うん、だって本音、独り言で、『私もネロロンと一緒に戦いたいのだ〜。』って言ってたし。」

 

セシリア「ですが、本音さんは戦闘にはあまり向いておられないのでは?」

 

シャルロット「そうだよ、絶対大変だと思うよ。」

 

レベッカ「確かに、この風態が既にそんな感じだもんね〜。」

 

のほほん「ほえ、なあに、「ふうてい」って?」

 

普段の間のびした姿から見ても、とても戦いに適しているようには見えない。

 

ラウラ「おもい切った発想だが、教官はどう思うか?」

 

簪「相談したら許可してくれたわよ。無茶じゃない範囲でとは言われてるけど。」

 

アルゴス「ネロ、お前はどう思うんだ?」

 

ネロ「何故俺に聞く?というより本音、そもそも何故専用機を持ちたがる?」

 

ネロはのほほんさんの一緒に戦いたい理由をわかっていないようだ。

前にも説明したが、一夏ベースの人間のため、恋愛には鈍感な方なのである。

 

一夏「・・・まあ、要は本音も役に立ちたいって事だ。俺はいいと思うぞ。(ネロが好きだからって言うのは流石にまずいしな。それよりかはコイツの鈍感さを直さないと。)」

 

一夏は本音の想いをバラさない表現で何とか納得させる。

 

後日、簪は無事に試験をトップの成績で終えて、本音の専用機開発に取り掛かっていった。

 

 

 

 



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のほほんさんの専用機

簪は本音や専用機メンバーをアリーナに呼び、自らが開発した本音の専用機を見せる。

 

簪「はい、これが本音の専用機、その名も『九尾狐(きゅうびこ)』よ!」

 

簪は本音に可愛らしい狐の耳のカチューシャを渡す。

 

のほほん「ほえー、これが私の専用機か〜、かんちゃんありがとだよ〜。、」

 

本音は早速それを頭に付ける。

 

一夏「なんか本音らしさを重視した感じだな。」

 

鈴「ってゆうかさー、普段通りじゃないの?」

 

簪「みんな、可愛い見た目に騙されちゃダメだよ。この専用機は他に見ない能力が備わってるんだから。」

 

箒「まあ、タイトルが妖怪の九尾の狐に因んでいる事を考えればそうだが。」

 

のほほん「よーし、展開なのだ〜!」

 

本音がそう言うと、瞬く間に期待が展開された。

機体はきつね色をしており、腰から後ろにかけて9本の尻尾のようなものが伸びている。

武器は神社のお祓い棒のような武器「玉藻(たまも)」が一本のみである。

 

のほほん「わー、これが私の専用機ー!」

 

本音は玉藻を振って喜ぶ。

 

シャルロット「なんか、想像してたのと違うかも。」

 

エクトル「簪の事だからきっと特撮ヒーローに因んだものかと思ったんだが。」

 

アルゴス「戦闘用の機体にはまず見えねえぞ。」

 

簪「まあ見た目はね。本音にはヒーローの格好良さの表現が難しいから、違う路線で行ったのよ。」

 

ラウラ「試しに模擬戦をやってみればわかるであろう。」

 

のほほん「じゃあネロロン、おねがい〜。」

 

ネロ「ふむ、いいだろう。」

 

とりあえずネロが相手をする事に。

 

エクトル「ネロ、最初は手加減してやれよ。」

 

ネロ「そのくらいわかっている。」

 

セシリア「どんな性能なのか気になりますわね。」

 

弾「想像もつかねえな。」

 

 

そして、本音とネロの模擬戦が始まった。尚、簪はモニタールームから本音とネロに指示を出す。

 

簪「ネロ、とりあえず持ってるその剣で本音に攻撃してみて。」

 

ネロ「・・・大丈夫なのか?」

 

簪「大丈夫、防御性能は保証するわ。」

 

ネロ「わかった。行くぞ!」

 

ネロはヘル・グラディウムを振りかざし、本音に向かう。

 

のほほん「う、うわー!かんちゃん、どうすればいいの〜!?」アタフタ

 

簪「本音、右腕にあるハッチを開けて4番のボタンを押して!」

 

本音は言われた通りにする。すると、後ろの9本の尻尾が前を向き、先端がファンのようになって大風を起こす。

 

本音「ふわー、台風だよー!!」

 

ただ、コントロールはできていないが。

 

ネロ「ぐわっ、物凄い風圧だ。真っ直ぐ突っ込めないぞ!」

 

ネロは後ろに押し戻された。

 

ビリー「なっ、何だよ今のは!?」

 

レベッカ「凄いハリケーンね!」

 

レオ「簪、これが九尾狐のアビリティーの一つか?」

 

簪「そうよ、九尾狐にはその尻尾9本の通り、9つの力が備わっているの。」

 

弾「マジかよ!」

 

簪「ネロ、今度はその大砲を放って。」

 

ネロ「今度は飛び道具か。まあいい、喰らえ!!」

 

ネロはアガリアレプトを放った。すると、

 

簪「本音、7番を押して!!」

 

本音はさっきの右腕のスイッチのうち、6番を押す。

その瞬間、9本の尻尾が本音の前側を包み込んでガードし、吸収する。

 

一夏「アガリアレプトを吸収した!!」

 

のほほん「ほえー、危なかったー。」

 

簪「本音、今度は攻撃してみて。1番を押すのよ。」

 

のほほん「りょ〜か〜い。ネロロン行くよー!!」

 

本音が1番のボタンを押すと、左右の尻尾2本ずつ、先端が銃口となって弾丸やレーザーを放った。残り5本は先端がコンバットナイフのような刃が飛び出し、近づくネロを翻弄する。

ネロは盾装備ファルサスで弾丸やレーザーを凌ぎ、刃は持ち前の剣技で応戦する。

 

残り6つの能力はまた後に紹介するとしよう。

 

 

箒「まさかここまでの機体を作り出すとは、流石は簪だな。」

 

一夏「ああ、だがやはり使いこなすには相当時間がかかりそうだ。それに、機体の特性上の弱点もいくつかあったしな。」

 

エクトル「本音は今日から特訓だね。」

 

のほほん「えー、そんなぁー!!」

 

簪「文句言わないの!!」

 

一同「(笑)」

 

 



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戦力補充

クリーオス「それではダリル、貴様に一つ任務を遂行してもらおう。」

 

ダリル「はいはい。それで、私はどうすればいいの?」

 

クリーオスは早速ダリルに任務を与えていた。

 

タウロ「IS学園に潜入し、織斑一夏をはじめとする専用機持ちどものデータを収集するのだ。」

 

ダリル「何よそれ、あいつらを如何にか殺す方がいいんじゃないの?」

 

ダリルは不満そうに喚く。

 

クリーオス「まあ待て、その辺は時を待って実行するとしよう。とにかく今は敵を知る事だ。成功した暁にはビルゴとサジに頼んで貴様の機体を作らせよう。どうだ?」

 

ダリル「・・・それなら話は別ね、わかったわ。」

 

その後、タウロの提案により、IS学園卒業生であるダリルは教育実習生として現地に赴くこととなった。

 

 

一方、学園では・・・

 

 

のほほん「む〜、結構難しい〜。」

 

本音は専用機持ちの皆の専用機九尾狐の操縦訓練を授業時間外に行っていた。

機体に秘められた9つものアビリティーは凄まじいが、当の本人がイマイチ使いこなせていない。

ちなみに種類としては、攻撃3、防御2、自身や仲間の機体のステータス強化3、シールドエネルギーの回復や充填が1の割合で備わっている。

 

一夏「やはり、弱点としては、1つのアビリティーを発動している間他のアビリティーは使用不可になるところだな。俺とネロのワンオフアビリティー同様、使用にはかなりのエネルギーを必要とするものもあるし。何よりインターフェースでないぶん、判断の速さが求められるな。」

 

ネロ「ああ、敵に通用しないものを引き当てて不発に終われば隙が生じてしまうどころかガス欠に陥る。少なくとも単独で敵と戦うにはまだ危険なようだ。これからもし戦闘に関わるなら、常に誰かが側にいないとまずい。」

 

最初こそ手間取ったものの、一夏とネロはすぐに九尾狐の弱点に気づき、攻略してしまったのだ。

アビリティーの作動は一応任意で止められるが、判断が鈍い方である本音は、状況に応じて使いこなすのが難しいようだ。

 

のほほん「ほへ〜、なるほどだよ〜。(わかるような、わからないような〜。)」

 

鈴「ハァ、アンタホントにわかってんの?(予想以上に鈍臭いところあるわね。)」

 

箒「虚先輩がいない今、私達でサポートしていかねばならないな。」

 

鈴と箒は手のかかる子供の保護者のごとく心配する。

 

シャルロット「まあまあ、実践しながら覚えていくしかないよ。(虚さん、大変だったんだろうなぁ。)」

 

虚がいなくなってからは、開発者である簪をはじめ、比較的常識的で教えがわかりやすいシャルロットと鈴が本音をサポートする事にしている。

実践訓練の相手は、一夏を中心に専用機持ちでローテーションしていく。

 

アルゴス「しかしまあ、こんだけの機体を使えたら大したもんだぜ。」

 

ビリー「俺らも負けてられないぜ。装備強化は一応勉強してるけどよ。」

 

レオ「ま、いざとなったら本音の将来の義兄の弾が守ってやればいいさ。」

 

弾「おう、そのつもりだぜ。」

 

レベッカ「はぁ、手のかかる妹ができちゃったわね、弾。」

 

簪「ごめん本音、使いやすさを重視したぶん多少の欠陥は出ちゃったけど。」

 

のほほん「だいじょぶ〜、そのうち出来るのだ〜。」

 

エクトル「本気なのか、それとも呑気なのか?」

 

本音のパイロットの腕が上がるにはまだ時間を要するようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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教育実習生・不穏な知らせ

ダリル「・・・・・。」

 

クリーオスからIS学園潜入の命を受け、ダリルはプロサナトリスの空港から飛行機で日本に向かっている最中である。

 

ダリル「ったく、何でこんな事に。」ハァ

 

溜息をつくダリル。

 

そして数日後・・・・

 

谷本「今日の授業から教育実習生が来るけど、どんな人なんだろう?」

 

鷹月「それはこの学園の卒業生よね。」

 

相川「なんでも、ギリシャの大学から来るらしいよ。」

 

食堂は朝から教育実習生の話で持ちきりである。

 

ビリー「アルゴスの国から教育実習生か。」

 

箒「また随分と遠くから来るものだな。」

 

レオ「さて、どんな美人さんが来るんだろうねぇ?」

 

簪「・・・・レオ。」ジトー

 

レオ「冗談だって!」ウィンク

 

シャルロット「でも、実際初めてらしいよ、この学園に教育実習生が来るのは。」

 

ラウラ「教官がいれば十分だとは思うが、まあどれほどの者か見ておこう。」

 

セシリア「アルゴスさん、その方の通われてるギリシャの大学はどのようなものですか?」

 

アルゴス「ああ、その大学は元々航空機専門の大学だったんだが、ISが誕生してからは学部にIS関連のものが追加されたらしい。確かプロサナトリスから近い場所だったな。」

 

鈴「プロサナトリスっていうと、あれよね?」

 

エクトル「ああ、僕が神の代行者である煌天使セラフィエルと契約した場所だ。」

 

エクトルはかつての自分を思い出したのか、どこか表情が暗くなる。

 

レベッカ「それってアタシがこの学園に入る前に起きたギリシャの事件の事よね?」

 

レベッカは興味本位でエクトルに当時の事を尋ねようとする。

 

弾「レベッカ、詮索すんのはやめとけ。お前は知らねえけど、実際あの事件は本当に大変だったしな。」

 

弾はレベッカを諭す。そんな中、約2名は・・・・、

 

 

一夏・ネロ「・・・・。」

 

一夏とネロは食事の最中、二人して新聞と睨めっこしていた。

 

のほほん「おりむー、ネロロン、新聞真剣に読んでるね〜。」モキュモキュ

 

谷本「何か面白い情報でもあったの?」

 

一夏・ネロ「いや、何でもない。」

 

一夏・ネロ以外の一同「?」

 

一夏とネロは悟られまいと言わんばかりの雰囲気で返事をする。

彼らは、新聞のある記事が気になっていたのだ。

 

記事の内容は、アメリカの刑務所で終身刑とされていたカイムが、プロサナトリスの病院での治験失敗により死亡したというものだ。しかもその事が発表されたのは、教育実習生が来校する話を聞いた日でもあった。

一見何の関連もなさそうだが、重大な出来事に加え、異例の教育実習生派遣の発表が、偶然にも同じプロサナトリスで起こっている事に一夏とネロは不穏なものを感じていたのだ。

 

一夏「どう考えても偶然じゃあねえよな?」ヒソヒソ

 

ネロ「ああ、嫌な予感がする。」ヒソヒソ

 

一夏は己の肉体内にいる状態のままのクラストに念じて声をかけてみる。

 

一夏「おいクラスト、お前はどう思う?」ヒソヒソ

 

クラスト「汝らの考えだが、当たらずとも遠からず、だろうな。」

 

一夏「とりあえず姉さんにもこっそり伝えておいてくれ。」

 

クラスト「わかった。」

 

一夏とネロはとりあえず食事を済ませる。

 

 

 



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獅子身中の虫

千冬「・・・なるほど、確かにそれは妙なタイミングだな。」

 

クラスト「カイムの治験死と教育実習生の派遣が同日に起こっている。幸い一夏とネロは気付いているようだが、皆を混乱させぬ為か、他の者には黙っている。折を見て我から皆に伝えよう。」

 

教育実習生が来校する日、クラストは千冬に一夏とネロの疑問を伝えていた。

 

千冬「とりあえず今は予定通り教育実習を行う。何かあれば私も手を貸すことにしよう。」

 

 

Side12神座

 

タウロ「報告いたしますクリーオス様、ダリルは無事にIS学園に着いたそうです。」

 

クリーオス「ふむ、計画通りだな。」

 

タウロ「しかし、あの小娘一人で大丈夫なのでしょうか?」

 

クリーオス「問題ない、奴は一夏達やクラストに爪痕を残す為の捨て駒。ここまでくればもう用済みだ。」

 

タウロ「・・・・。」

 

タウロは不思議そうな顔をする。

 

クリーオス「(さてダリル、お手並み拝見といこう。)」

 

 

 

Sideダリル

 

空港に着いたダリルはバスや電車を乗り継ぎ、IS学園に到着する。

 

ダリル「さて、とりあえず学園には着いたわ。」

 

ダリルは受付を済ませて校内に入る。

 

 

Side一夏

 

予期せぬ事態を予測した一夏、ネロ、千冬は専用機一同にジル、山田先生を臨時に呼び出し、状況を説明する。

 

アルゴス「つまり、今日来る教育実習生が何か起こす可能性があると言う事か。」

 

箒「しばし静かな時が続いていたが、またしても災厄の時が来るのか。」

 

レベッカ「でも、考えすぎじゃないの?海外の事件と実習の日が偶然同じだからって。」

 

ジル「何もないんならそれが一番だけど、その、クラストとか言ったかしら?何か起こりそうなのは本当なの?」

 

一夏「今呼び出しますんで。(クラスト、皆に説明を頼む。)」

 

一夏が心の声で呼ぶと、クラストが思念体となって現れる。

 

山田先生「この人が、クラスト、さん?」

 

山田先生は呆気にとられる。

 

ジル「へえ〜、いい男じゃない。」

 

ジルは一目で気に入ったようだ。

 

ビリー「姉貴、惚れっぽいとこあるよなあ。」

 

ジル「マイヤーズ、何か言ったかしら?」ゴゴゴゴゴ

 

ビリー「・・・いえ、失礼しましたマイヤーズ先生。」ビクビク

 

ネロ「とりあえず、今日行うべき事としては、教育実習生の監視と、万が一の事態に備えての対処だ。俺たち以外の生徒に悟られないよう、平生を装うんだ。」

 

鈴「成る程ね、確かに相手が一人だからって油断は出来ないわ。」

 

シャルロット「戦闘体制は整えておかなきゃね。」

 

ラウラ「教官、その教育実習生とはどのような者なのですか?」

 

千冬「学園の卒業生の一人でダリルという。実力は更識に勝るとも劣らない。」

 

簪「お姉ちゃんに並ぶ人・・・。」

 

弾「それは要注意っすね。」

 

レオ「でもよ、クラスト。災難が起こるの知ってるなら何か対策立てられるんじゃないのか?」

 

セシリア「全てを話されてもよろしいのではなくて?」

 

クラスト「それはいずれまた話そう。一夏とネロはともかく、エクトル、アルゴス、お前達にも後に為すべきことが降りかかる事になる。」

 

エクトル・アルゴス「・・・・・・。」

 

クラストは意味深な言葉を残し、一夏の身体に戻った。

 

一夏「まあみんな、ややこしい話で悪いけど、今日は警戒を怠らないでくれ。」

 

専用機一同「ああ。(はい。)(うん)」

 

程なくしてダリルを迎えた教育実習が始まった。

授業内容は機体の操縦術である。

 

山田先生「皆さん、今日は卒業生のダリルさんを教育実習生に迎えての授業です。」

 

ダリル「改めて、ダリル・ケイシーです。よろしくお願いします。」

 

生徒たちは彼女を拍手で迎える。彼女からはこの学園で学んだことや、今現在通っている大学の事について話を聞いたりしていた。一方専用機一同はなるべくダリルと長く視線を合わせず、悟られないようにしていた。

 

一夏「(今のところ変わった動きはないようだが・・・・。)」

 

ダリル「(とりあえず狙いは織斑一夏ね。あとはクリーオスから渡された新兵器を使うタイミングだけど。)」

 

ネロ「(あの表情、間違いなく何か企んでいる。)」

 

一通り授業を終えて昼食に入る。

 

「ケイシー先輩、大学はどんな感じですか?」

 

「ギリシャって、過ごしやすいですか?」

 

ダリル「そうね、ちょっとごめん、お手洗いに行って来るわ。」

 

ダリルはそう言って食堂を出る。時間差で一夏達専用機持ちは気づかれないように分散しながらダリルを尾行する。

 

 

Sideダリル

 

ダリル「(・・・・この様子じゃ、若干名は気づいてるみたいね。タイミングが悪いけどここで新兵器を使うわ。)」

 

ダリルは尾行されるのも構わずトイレに入る。そこからは箒、セシリア、ラウラ、鈴が入っていく。

しかし、そこにはダリルの姿はなかった。

 

箒「(一夏、聞こえるか?ダリル先輩がいないぞ。)」

 

一夏「(何っ、どこに行ったんだ?)」

 

その時、トイレにたまたまいた女子生徒数名がが突如苦しみだした。

 

「ううっ、うっ、あっ、」

 

セシリア「皆さん、大丈夫ですか?」

 

「何か、苦し、いっ!」

 

すると、女子生徒の身体が裂け、裂け目や口の

中から赤黒い液体がドロドロと出始めた。

 

鈴「ちょ、ちょっと何よこれ!?」

 

赤黒い液体は女子生徒の身体を包み込み、無人機の形を成していく。

 

ラウラ「これは、まさか!?VTシステムか!?」

 

かつてラウラの身に起きたVTシステムの出現に似ている。

 

形を成したそれらは一気に箒達に襲いかかった。

 

ラウラ「逃げろ!!」

 

4人は一斉に女子トイレの外へ飛び出した。

 

エクトル「みんな、大丈夫か!?」

 

一夏「先生、緊急事態です!校内に無人機が出現しました!」

 

千冬「何っ、ダリルはどうした!?」

 

箒「トイレから行方をくらましました!」

 

千冬「くっ、山田先生、生徒を全員校外へ避難させろ!」

 

山田先生「はいっ!!」

 

山田先生は校内に避難勧告を出した。

 

 

Side12神座

 

タウロ「新兵器?」

 

ビルゴ「ああ、今度の兵器はかつてのクローンパイロットや無人機ガーゴイルよりも強力なものだ。」

 

サジ「VTウィルスとベルゼビュートのデータをもとに、寄生した人体組織により形成される兵器だ。」

 

そう、ダリルが使用した新兵器、その名も「パラサイトVTシステム」、通称PVTである。

老若男女問わず人体に寄生する事で、寄生された人間はVTシステムのように無人機へと変貌する。

寄生体は黒いヒルのようなものである。

一度寄生された者は、無人機へと変貌しながら新たな寄生隊を撒き散らしながら戦闘を行い、倒されるまで戦い続け、最悪の場合、死に至る。

 

クリーオス「これでIS学園に爪痕を残しておけば、あの織斑一夏とて憎しみを抱かずにはいられまい。かつてクラストにこの身を裁かれた俺のようにな。」

 

 

Side学園

 

 

 

校内では千冬とジル、専用機持ちがPVT無人機と交戦していた。

 

弾「くそっ、キリがねえぞ!!」

 

シャルロット「とにかく倒してしまわなきゃ!」

 

被害拡大を防ぐために必死に応戦する。

 

 

鈴「ああもう、面倒なのよ!」

 

一夏「ここは大砲で一気に倒すんだ!!」

 

セシリア「はい!!」

 

一夏とネロは零落白夜光、アガリアレプトを放ち、セシリアはミサイルをありったけ放つ。

鈴は衝撃砲をひたすら射出し、校内の壁が壊れるのも構わず攻撃する。

 

長期戦の末、PVTを倒した。しかし・・・・・、

 

 

レオ「取り込まれた女の子はどうなった!?」

 

すると、PVTが溶け出し、中から寄生された女子生徒の姿が。

 

簪「・・・・息がない!!」

 

ビリー「ウソだろ、死んじまったってのか!?」

 

寄生された女子生徒達は皆虚ろな目で横たわっている。

 

千冬「いや、脈はある。気絶しているだけのようだ。」

 

エクトル「そうですか、にしてもこれは一体・・・・。」

 

結局のところ、ダリルが姿を消したその日、行方を掴むことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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封印を解くとき

教育実習生ダリルの引き起こした事件は瞬く間にニュースとなり、世間からはISを恐れ、批判する声があがっている。

そんな中、クリーオスは1人テレビでこのニュースを見ていた。

 

クリーオス「ふむ、ダリル、捨て駒にしてはよくやってくれた方だ。今頃は最早人の子で無くなっているだろうがな・・・。」

 

クリーオスは計画通りだという顔をしている。

 

クリーオス「織斑一夏、偽りの神となりし人の子よ。貴様が望む理想など所詮は絵空事なのだ。俺は貴様を、そしてクラストを倒し、完全なる世界を創生し、真の神となって見せる!」

 

クリーオスは世界を変えたいという点では一夏と共通しているが、今ある世界を全て破壊し、新たに作り出す事こそ理想的だと思い込んでいる。

 

クリーオス「ビルゴ、サジ、計画は順調だ。この勢いでさらなる兵器を創り出せ!」

 

ビルゴ・サジ「仰せのままに。」

 

タウロ「ISに不信が抱かれつつある今、我らの味方を作るチャンスであるぞ!人材確保は抜かりないであろうな、デュモイ、キャンサー!」

 

デュモイ「はっ、法人の会員から選りすぐりの者をパイロットに仕立て上げております。」

 

キャンサー「現在ではかのグリモヴァールからの入信者も続出しております!」

 

クリーオス「フフフ、ここからだな。」

 

 

 

Side学園

 

教育実習生ダリルの引き起こした事件から数日後、IS学園では生徒会室で緊急集会が行われた。卒業生である楯無、虚も念のため召集されている。

 

虚「そう、事件は本当だったのね・・・・。」

 

楯無「あのダリルが・・・・。」

 

2人はかつての同級生の起こしたことにショックを覚えている。

 

千冬「さて、今回の事件だが、織斑、クラストを呼び出せ。」

 

一夏「はい。」

 

一夏は念じてクラストを呼び出す。

 

クラスト「ふむ、話す時が来たようだな。」

 

ビリー「勿体ぶってねえで早く話せよ。」

 

クラスト「今回の事件だが、これにはかつてお前達も対峙した天使や堕天使、それに亡国機業の者が絡んでいる可能性が高い。」

 

簪「・・・どういう事?」

 

クラスト「一夏がエクトル、アルゴスと共に同志を作り、世界を変えていかんとしてから災厄が続いてきた。そして、煌天使セラフィエル、冥王ルシフェウスが復活した事で、世界の行方がどうなるか危ぶまれる状況に陥ったであろう。」

 

エクトル・アルゴス「・・・・・・。」

 

クラスト「しかし一夏は己を、そして汝らを信じ、共に戦い、それを通じて調和を世界に知らしめたのだ。」

 

レベッカ「立派な事じゃない。」

 

クラスト「しかし、悲しき事にそれをよく思わぬ者達が現れたのだ。」

 

箒「何者だそいつらは!」

 

セシリア「一夏さんの大きな理想をよく思わないなんて!」

 

クラスト「その者達は12神座と言われる存在であり、一夏同様今の女尊男卑の世界を変えようとする者達だ。」

 

弾「ちょっと待てよ、考える事が一緒なら何でIS学園を襲撃するようなマネすんだよ!」

 

クラスト「一夏は我と共になった事で、人の子を超越した事でセラフィエルとルシフェウスを制した。そのためか、一部では一夏を神と崇める者も出始めている。おそらくそれが最大の原因であろう。」

 

シャルロット「それは一部の人が勝手にやってる事でしょ!」

 

レオ「第一、一夏は神になりたくて今の世を変えるなんて図々しい事をする奴じゃないぜ!」

 

クラスト「一夏と12神座の最大の違いは、変革と破壊再生。一夏は今の世を変えていこうとしているが、奴らは新たな世界を創生するため、今の世を消し去らんと考えている。」

 

ラウラ「ならば今すぐにでも倒すべきであろう!一夏の敵は私達の敵だ!!」

 

ラウラは怒りで思わず眼帯を外す。

 

千冬「落ち着けボーデヴィッヒ。」

 

クラスト「残念だが、奴らに対抗するためには、人の子を超えた力が必要となってくる。奴らの強さはかのブリュンヒルデたる千冬をも凌駕するのだ。」

 

ネロ「・・・・全員が織斑先生以上だと。」

 

クラスト「ああ、一夏、ネロ。今度の敵は汝らと同等の者を少しでも多く持たねばならないであろう。そこで・・・。」

 

クラストは徐ろにエクトルとアルゴスの方を見る。

 

エクトル・アルゴス「何だ(何だよ)?」

 

クラスト「エクトル、アルゴス、汝らの肉体にはそれぞれセラフィエル、ルシフェウスの力が宿っている。」

 

エクトル「ああ、だが一夏達との戦いでセラフィエルは封印された。」

 

アルゴス「ルシフェウスも同様だが、それがどうしたんだよ?」

 

クラストは難しい顔をしながらも言い放った。

 

クラスト「エクトル、アルゴス、汝らにはセラフィエルとルシフェウスを再び復活させてもらいたいと思っている。」

 

エクトル「え?」

 

アルゴス「は?」

 

その他一同「はあぁぁぁっ!?」

 

あまりに突然のことで全員が驚いた。

 

 

レベッカ「それって、ひょっとしてアンタが一夏やネロと共に生きてるように、エクトルとアルゴスにその化け物を使えるようにしろって事!?」

 

クラスト「ほう、察しがいいなレベッカ。」

 

楯無「ほう、じゃないでしょ!?またアルゴス君に辛い思いさせる気!?」

 

山田先生「エクトル君達がどれだけの思いをしたかわかっているのですか!?

 

楯無と山田先生はクラストに憤慨する。

 

クラスト「しかし、相手は人の子を凌駕する者共だ。ならばこちらも人の子を超える必要がある。」

 

千冬「随分な話だが、ベレン、イリアディス、お前達はどう思う?」

 

エクトル・アルゴス「受けて立ちます!!」

 

ビリー「マジかよ!」

 

クラスト「本人達はやる気のようだな。」

 

一夏・ネロ「・・・・・・。」

 

クラスト「ではエクトル、アルゴス、セラフィエルとルシフェウスの復活のために立ち上がってもらおう。言っておくが、これは汝らの試練だ。他の者は一切手出しをするでないぞ。」

 

楯無「待ってクラスト、この2人は、」

 

楯無は2人を止めようとするが、一夏が楯無の肩に手を置く。

 

楯無「一夏君。」

 

一夏「楯無さん、ここはクラストを信じましょう。」

 

山田先生「ですが、」

 

ネロ「山田先生、今回ばかりは俺たちじゃどうしようもないですから。本人達を信じて祈るしかない。」

 

楯無・山田先生「・・・・・。」

 

クラスト「ではエクトル、アルゴス、我について来るがいい。」

 

エクトル・アルゴス「・・・・・・。」

 

強大な新組織に立ち向かうため、エクトルとアルゴスは意を決した。

 

 

 

 



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調和

12神座に対抗するため、エクトルとアルゴスは不完全な力を100%解放すべく、セラフィエルとルシフェウスの復活に挑むことになった。エクトルとアルゴスはアリーナに連れて行かれた。強大な力を伴うため、ある程度広く頑丈な場所がいいと、千冬に協力を求めて借りたのである。

尚、彼らだけで行うため、他の専用機持ちは一切手出しはできないので、解決するまでの間アリーナは立ち入り禁止となっている。

 

エクトル「それで、どうやってセラフィエルとルシフェウスを復活させるんだ、クラスト?」

 

クラスト「エクトル、アルゴス、汝らにはある試練を受けてもらう、それを乗り越えられたならば、セラフィエル、ルシフェウスと共に生きられるようになる。」

 

アルゴス「何だそんなことか、どんな試練か知らねえが、さっさと終わらせてやるぜ。」

 

クラスト「では試練に入るとしよう。」

 

クラストはそう言って何かを念じた。すると、アリーナの中央に二つのオブジェが現れた。

一つは、四肢を拘束する十字架、もう一方は壁面に六芒星の描かれた拘束具付きの壁。

 

エクトル「これは、一体?」

 

クラスト「かつて汝らが目指した導き、支配の一部を具現化したものだ。これに身を委ね、眠りについてもらう。」

 

アルゴス「夢の世界で試練を受けろってのか?」

 

クラスト「人の子らの言葉で言えばそういう事になるであろうな。」

 

エクトルは十字架に、アルゴスは六芒星に身を委ね、拘束され、眠りについた・・・・・。

 

 

Side一夏達

 

一方、エクトルとアルゴスがいなくなってからは、専用機持ち達が話し合っていた。

 

ビリー「あいつら大丈夫か?本気であの化け物手懐けるつもりかよ。」

 

弾「実際大変だったよなあの時。」

 

箒「ああ、同級生であのような戦いをする事など想像もしなかったぞ。」

 

レベッカ「それ、どんな話か詳しく教えてくれる?」

 

一夏「ああ、そういやレベッカはこの事、ニュースで聞いた程度しか知らないもんな。」

 

一夏はレベッカに当時の事を詳しく聞かせる。

 

レベッカ「そうだったの、にしてもあのエクトルに、アルゴスがねえ・・・。」

 

セシリア「異なる思想、信条が対立するのはいつの時代も変わりませんわ。」

 

レオ「だが、それでも一夏はあいつらを信じ、俺たちを信じ、自分を信じて戦ったんだよな。」

 

シャルロット「一夏は確か、『調和』を司るって言ってたよね。」

 

ラウラ「一方でエクトルは『導き』を司り、」

 

ネロ「アルゴスが『支配』を司る存在となった。」

 

鈴「一夏は、それらも全部調和の中に留めようとしたのよ。かつてのあの2人のように、意に反するものを排除するんじゃなくてね。」

 

一夏「ああ、元々人種が異なる俺たちが、今こうして共に戦えるのも、互いを受け入れる心が芽生えている証拠だ。あの時は流石に深い傷を負ったが、今となってはそれも思い出の一つだ。」

 

そう言って一夏は制服の上着を脱ぎ、ルシフェウスとの戦いで千切れた左腕の繋ぎ部分の傷痕を見せる。

 

一夏、レベッカ以外「・・・・・・。」

 

レベッカ「うわぁ、腕が千切れるってどんだけ・・・。」

 

楯無「っていうかその傷、クラストに頼めば治るんじゃないの?」

 

一夏「いや、この傷痕は残しておこうと思うんだ。俺が目指すものには、想像もつかない困難があるって事を忘れないためにも。だからこそ、あいつら2人の力も必要なんだ。」

 

楯無「(相変わらず心が広いわね。アルゴス君、一夏君のためにも頑張るのよ。)」

 

Side職員室

 

専用機持ち達同様、職員室でも教師がエクトルとアルゴスの話で持ちきりである。

 

山田先生「・・・・・。」ソワソワ

 

山田先生はいつになく落ち着きがない。恋人であるエクトルの事が気掛かりで仕方がないのである。

 

千冬「落ち着け真耶、今はあいつらを信じるしかないであろう。」

 

山田先生「ええ、ですが。」

 

ジル「あの2人もそうだけど、1番心配なのは一夏の方じゃないかしら?」

 

千冬「そうだな、あいつは優しいが故に悩む。おそらく、内心1番不安なのであろう。だが今はクラストを信じよう。」

 

ジル「千冬、やけにクラストを信じてるわね。そういえばこの前クラストと2人でいい感じで話してなかった?」

 

山田先生「あら、そうなのですか、千冬さんにもついに恋が訪れたのですね。」ニヤニヤ

 

ついうっかり茶化してしまう山田先生。

 

千冬「・・・・麻耶、何だ今の発言は?そうかそうか、恋人を持ってるが故の上から目線か。」ボキボキ

 

山田先生「はわっ!?い、いいえ、そんな!」

 

ジル「今のセリフは私でもカチンとくるわね。」ニコニコ

 

千冬「ジル、ちょっと麻耶へのお仕置きに協力してもらえるだろうか?」

 

ジル「ええ、任せて。」

 

山田先生「い、いやあぁぁぁーーー!!」

 

 

兎にも角にもエクトルとアルゴスの試練勝利を願うばかりである。

 



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エクトルの試練

一夏達が心配しているのを余所に、エクトルとアルゴスはクラストから課せられた試練を乗り越えるべく、深淵の世界へと入っていった。

 

Sideエクトル

 

 

エクトル「・・・・ん、ここは・・・。」

 

気付くとエクトルは、どこかの家庭の寝室にいた。ベッドには誰かが横たわっている。その人物は・・・・

 

エクトル「これは・・・・僕?、という事はここは・・・。」

 

そう、そこにいたのはエクトル自身だった。つまりここはエクトルの実家である。部屋の時計を見たところ、今から3年程前になっている。

 

エクトル「これは、僕の過去。一体何が始まるんだ?」

 

※ここからは現在の本人と区別するため、「過去エクトル」の名前で設定しておきます。

 

 

過去エクトル「はぁ・・・、今日も学校か。行きたくないけど、母さまに心配かけたくないし。」

 

エクトル「・・・・・。」

 

イサベル「エクトル、おはよう。」

 

ミレイア「兄様、おはよう!」

 

過去エクトル「母さま、おはようございます。」

 

過去エクトルはどこか空元気で挨拶する。

 

朝食を終えて、学校に行く。

 

エクトル「・・・・・。」

 

学校に着くと、過去エクトルを数人の男子生徒が取り囲んだ。

 

男子「ようベレン、今日もご機嫌だな。」

 

過去エクトル「うっ・・・おはよう。」

 

過去エクトルがぎこちなく挨拶すると、

 

男子「お前ん家金持ちなんだろ?少しくらい俺らに金よこせよ。」

 

過去エクトル「何を言ってるんだ、そこを退いてくれ。」

 

男子「何だと、このマザコンが!!」

 

そう言って過去エクトルの襟首をグッと掴む。

 

男子「っていうか、何なんだこいつのこの髪?」

 

男子は後ろからエクトルの母譲りの三つ編みの長い髪を引っ張る。

 

男子「コイツ女みてえなツラしやがって。オカマ野郎が。」

 

教師「コラッ!!何をしている!!!」

 

男子「チッ、先公が来やがった。」

 

 

教室に入ってからは・・・・

 

女子生徒「ちょっとベレン、アンタさー、いい加減その髪切ったら?」

 

過去エクトル「僕の勝手だろう、ほっといてくれ!」

 

女子生徒「男のくせに何でこんなに綺麗なわけ?」

 

女子生徒「時代が女尊男卑だからじゃない?」

 

過去エクトル「僕に聞くな、それにこの髪は母様に似ているんだ!」

 

女子生徒「母様だって、キモーいマザコン。」

 

 

 

エクトル「・・・そうだ、僕は中学の頃に虐めを受けていたんだ。」

 

エクトルは自身の辛い過去を見つめながら呆然としていた。

 

エクトル「だが、これが試練とどう関係するんだ?」

 

過去のトラウマに唇を噛み締めて震えるエクトル。

 

過去エクトルは休み時間に図書館に入り浸り、1人神話や宗教の本を読みあさっていた。

 

過去エクトル「・・・神の前では男も女も同じだというのに、何故いつの時代も人間は無秩序なんだ。何故僕はこんな目にあわなければならない?」

 

エクトル「・・・・・。」

 

不意に、背後にクラストが出現する。

 

クラスト「エクトル、一つ聞くが、何故汝が一夏やアルゴス同様に生まれながらにしてISを動かせられると思う?」

 

エクトル「・・・・わからない。」

 

クラスト「人の子で言えば機体への適性があるか否かだが、それは形に過ぎぬ。汝は心優しく信心深い故に、世界に絶対なる導きと秩序を求めたのであろう。その意思に機体が応えたのだ。」

 

エクトル「・・・そうなのか?」

 

クラスト「そして汝は天使達のために殉教者となり、神の代行者セラフィエルとなったが、同時に人の心を失ってしまったであろう。」

 

エクトル「・・・・・要するに、セラフィエル復活のためには、僕が人としての心を完全に取り戻す必要があるという事か?」

 

クラスト「その通りだ、エクトル、人の子として強くなるには、自身に勝つ事。さあ、戦うのだ!!」

 

クラストが念じると、エクトルの前にもう1人エクトルが現れた。つまり、かつての自分との戦いである。

過去が写っていた世界は真っ白に塗りつぶされ、エクトルともう1人のエクトルの2人きりに。

 

過去エクトル「この世界に光をもたらすには一切の汚れを無くすのだ!神こそが全て!!神の意志に反するものは、全て消え去るのみだ!!!」

 

エクトル「くっ、まさか本当に自分と戦うことになるとは。」

 

2人のエクトルは専用機ケイローンを装着し、いざ勝負する。

 

過去エクトル「一夏の唱える調和など、戯言に過ぎぬ!完全こそ平和である!」

 

エクトル「黙れ!僕の姿で一夏を侮辱するな!!」

 

互いに激しい攻撃を行うも、同じ機体であるが故に拮抗する。

 

過去エクトル「アルゴスは堕天使と共に地に堕ち、一夏は腑抜けた選択をした!行き場のない人間なら神を、そしてその代行者である僕を信じるべきであろう!」

 

エクトル「人は意志を持った生き物、全てを強いることなど誰にも出来ない!!」

 

アルテミスの矢を射尽くした所で互いに接近戦をする。ここでも拮抗するかと思われたが、エクトルが過去エクトルを押していく形に。

 

過去エクトル「グフッ、馬鹿な、貴様は同じ僕だ!何故こうも差が出る!?」

 

エクトル「教えてやろう、僕はいつも一夏やアルゴスを始め、みんなと共にあるから成長できた!導きや秩序に執着していた頃こそ敵対したが、今ではかけがえのない友だ!!」

 

エクトルはかつて苦手だった接近戦も、みんなと切磋琢磨して磨きをかけていったのだ。

過去エクトルの機体には亀裂が生じ、顔には疲労が浮かぶ。

 

エクトル「くたばれぇぇっ!幻を追うかつてのエクトル・ベレン!!」

 

エクトルは近接武器ラストロスの鉤爪で過去エクトルの喉を貫きトドメを刺す。すると、過去エクトルの姿が変わっていき、正体をあらわにする。

 

そう、現れたのは・・・・

 

セラフィエル「・・・見事だエクトル、だが今度は我が相手になろう、我を従えたくば打ち勝って見せよ!!」

 

エクトル「よし、望むところだ!」

 

今度はセラフィエルと戦うことに。

 

エクトルは早速仕掛けるも、セラフィエルはアルテミスの矢を全て叩き落とす。

 

エクトル「みんな、あの時は大変だったんだろうな。」

 

エクトルは自身のせいで危険な目にあった専用機メンバー達に心の中で謝罪する。

 

セラフィエル「どうした、我が怖いのか?」

 

エクトル「今の僕はあの時とは違うぞ!!」

 

エクトルはダメージ覚悟でイグニッションブーストで正面から突っ込む。全身には黄金の波動が広がっていき、

セラフィエルは両手で受け止めたが・・・・。

 

セラフィエル「馬鹿な!?何故ここまで?」

 

セラフィエルの両手は砕け散っていった。

 

セラフィエル「我は一夏とその仲間に敗れはしたが、力は消えていない!何故貴様1人にここまでの力が!?」

 

エクトル「それは、僕の心にみんながいるからだ!信じるとは、何かに身を委ねる事じゃない、苦楽を共にできる絆を守る事だ!一夏の思う調和こそが、真の導きに繋がると、今なら確信を持てるんだ!!」

 

エクトルは大きく吠えるように心の叫びを声に出し、セラフィエルを叩き伏せた。

 

クラスト「エクトル、よくやった!汝は己に勝ち、そして一夏達との絆を心に宿すことができた!」

 

エクトルは歓喜の表情でガッツポーズをする。

 

セラフィエル「見事だエクトル、その心を信じ、我もお前達やクラストと共に行こう。」

 

セラフィエルは体の再生に伴い、その見た目を変えていった。

 

エクトル「セラフィエル、君にもそんな姿があったんだね。」

 

セラフィエル「汝が我に人の心を教えたが故だ。」

 

エクトルとセラフィエルは握手を交わす。

これにてエクトルの試練は終わった。

 

 

Sideアリーナ

 

エクトル「ハァ、ハァ、無事に現実に帰ってこられたな。」

 

十字架の高速が解けた瞬間、疲労からか、エクトルはそのまま倒れ、眠りについた。



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アルゴスの試練

アルゴス「ん・・・、ここは?」

 

アルゴスが目を覚ました場所は、どこかのスポーツジムである。

そこでは少年が1人サンドバッグを叩き続けていた。その少年は・・・、

 

アルゴス「これ、俺じゃねえか。」

 

ジムの時計を見ると、2年前の時刻を刻んでいる。つまり、このサンドバッグを叩く過去のアルゴスは14歳である。

 

※ここからは現在の本人と区別するため、「過去アルゴス」の名前で設定しておきます。

 

過去アルゴス「いつか俺は、絶対に親父を超えて見せるぜ!」

 

アルゴス「・・・・懐かしいな、だけど、これが俺の試練とどう関係があるんだ?」

 

首を傾げながらもアルゴスは己の過去の映像を見つめる。

そして時は流れ、とある闘技場にたどり着く。

そこではマーシャルアーツの世界戦が行われていた。

 

 

過去アルゴス「親父!頑張ってくれー!!」

 

アルゴス父「おう、任せておけ!」

 

アルゴス父は意気揚々とリングインする。

激しい激闘の末、見事に勝利を収め、新世界チャンピオンとなった。

しかし、その栄光は・・・・、

 

翌日の新聞でわかった事だが、アルゴス父のあまりの強さに疑問を持った敵側から、ドーピング疑惑を持たれ、検査の結果陽性反応が出た。アルゴス父は全く見に覚えがないと主張するも、連盟側は認めず、アルゴス父は世界タイトルとライセンスを剥奪された。

その後にわかった事だが、アルゴス父の水分補給用のボトルに何者かが禁止薬物を混入させたようだ。

不可抗力とはされたものの、ライセンスを取り戻すには至らなかった。

 

納得のいかない過去アルゴスは連盟に直談判をしに行く。

 

過去アルゴス「おい、どういう事だ!!親父の気持ちも考えねえで!!」

 

連盟メンバー「アルゴス君、今回の件だが、もうこれ以上詮索しないでほしい。」

 

過去アルゴス「はぁ!?ふざけんじゃねえよ!第一薬物混入の犯人は誰なんだよ!?」

 

連盟メンバー「・・・・・。」

 

そのセリフを聞いた途端に連盟メンバーは黙り込む。

 

過去アルゴス「それは、知っているってツラだな。誰なんだ、言え!!親父に代わって俺がそいつをボコボコにしてやる!」

 

連盟メンバー「すまない、だが名前を公開すれば家族に危害を加えると脅されていてね。」

 

過去アルゴス「くっ、だからって、このまま黙って泣き寝入りしろってのかよ!」

 

連盟メンバー「アルゴス君、長い物には巻かれろという事だ。世の中にはどうしようもない場合だってあるのだよ。」

 

過去アルゴス「・・・結局は金と権力がものを言うのかよ。そんな支配を許してたまるかよ!」

 

過去アルゴスは部屋を出た。

 

アルゴス「そうだ、あの事件で親父は自暴自棄になったし、そのせいで両親は離婚した。

俺は親父を見捨てたくないから親父と生きるって決めたんだ。」

 

アルゴスは苦い過去を振り返って、血が流れるほど拳を強く握りしめた。

 

ふとそこに、クラストが出現する。

 

クラスト「アルゴスよ汝はこの事件から、世の中のありとあらゆる支配や権力を憎むようになった。そして、この世の支配の概念そのものを変えんと心に強く抱いたが故に、汝はISを動かせるようになったのだ。」

 

アルゴス「俺の意思が、ISを・・・、って事は、エクトルもそうなのか?」

 

クラスト「うむ、どうやら何時とエクトルは互いに似ているのかも知れぬな。」

 

アルゴス「・・・そうかもしれねえ、一度は完全に敵対したが、俺もあいつも自分なりの正義感を持っていただけで、1番大切なものを見失いかけた。そのせいで一俺は一夏を、みんなを・・・・・。」

 

クラスト「アルゴスよ、堕天使達にその身を捧げ、冥王の力を手にした汝がなすべき事はこれだ。」

 

クラストがそういうと、アルゴスの目の前にもう1人のアルゴスが出現した。

 

アルゴス「・・・成る程、かつての自分に勝てと言うことか。」

 

クラスト「その通り、汝と一夏の大いなる差異は、どれほどの力を得ようとも、人の子であらんとするか否かだ。改めて汝に問う、汝は何者だ?」

 

アルゴス「俺は・・・アルゴス・イリアディス!1人の人間で、一夏、エクトルの友だ!!」

 

クラスト「その心が本物か、奴を倒し我に示せ!!」

 

アルゴスと過去のアルゴスの戦いが始まった。

互いにセイリオスを展開し、間合いを詰める。

 

過去アルゴス「世の中は力ある奴が一つのものを支配してる!政治も、業界も、宗教も!!だから俺は、世の全ての支配をなくし、人間の求めた自由を守る支配をする!!」

 

アルゴス「人間に全てを支配するのは無理だ。全てを支配しようとすれば必ず反発されるぜ。」

 

過去アルゴス「うるせえ!てめえは世の中が憎くはねえのか!?一夏とてISという力を得て女尊男卑となったこの世界を支配しようとしてるじゃねえか!」

 

アルゴス「あいつは自分一人で世界をどうこうしようって思うような奴じゃねえ、あいつはISという男女間の差異を超えて、男女共に愛し合える世界を作ろうとしてんだ!それこそクラストが言ってた「調和」って奴の意味だろ!」

 

過去アルゴス「くだらねえ!調和も導きも戯言だ!俺は力によって強さを示し、証明する事で確かな支配を作るためにルシフェウスとなったのだ!!人間は人知を超えたものに心惹かれ、信じる生き物だから、その人間どもを支配するには、人間を超えた存在になる必要があるんだよ!!」

 

アルゴス「力を得たところで、人々の心を動かさなけりゃ意味ねえよ!かつての俺やエクトルは、力を得ても人の心を動かすまでには至らなかった。だが一夏は違う、一夏は多くの人々と心を繋ぎ、そうして出来た仲間と共に世界を変えようとしている!」

 

過去アルゴス「心の力なんざ無力だぜ!冥王となったこの俺に、そんなものは何の意味もなさないぜ!」

 

アルゴス「ならてめえをぶっ倒して証明してやるぜ!」

 

アルゴスと過去アルゴスは激しく殴り合い、蹴り合う。

手数こそ互角なものの、後半になってアルゴスが過去アルゴスを押していく。

 

過去アルゴス「くそッ、くらえ!テロス・フラス!!」

 

過去アルゴスはセイリオスの必殺アビリティを放出する。

 

アルゴス「うおぉぉぉぉ!!」

 

アルゴスは発射されたエネルギー波動に右拳を思い切り叩きつけた。

すると、アルゴスの右腕がエネルギー波動を吸収した。

 

過去アルゴス「なんだと!?」

 

アルゴス「言っただろ、心の力は凄えってな。今の俺の心には一夏とその仲間の存在がある!」

 

そして、アルゴスは渾身の力と思いを込めたテロス・フラスを過去アルゴスに放った。

 

過去アルゴス「ぐああっ!・・・・ここまで強いとは、これが人の子の力なのか?だが、我の力の前では、無力だ・・・・、あ、ガ、グ!」

 

過去アルゴスの顔に亀裂が走り、機体は粉々に砕け散り、冥王ルシフェウスが現れた。

 

 

ルシフェウス「我をここまで追い込むとは、流石はかつての我の僕。我を使いたくば、我に勝って見せよ!!」

 

アルゴス「行くぜ、一夏やクラストのためにも、てめえは必ず倒す!!」

 

ルシフェウスとアルゴスは激しくぶつかり合う。ルシフェウスが序盤は優勢だったが、徐々に均衡が崩れ、そして遂に・・・・・。

 

アルゴス「この一撃に俺の全てを賭ける!テロス・フラス!!!!」

 

アルゴスは全エネルギーをテロス・フラスの波動発射に注ぎ込み、ルシフェウスの胸を貫いた。

 

ルシフェウス「ぐっ・・・、我の負け・・・か・・・。

いいだろう、貴様に力を与えよう。」

 

ルシフェウスはそう言うと、姿が変わっていった。かつての悍ましい姿から一変し、アルゴスの新たな力となってここに再臨する。

 

アルゴス「そんじゃ、改めて、よろしくなルシフェウス。」

 

ルシフェウス「うむ、我が友アルゴスよ。」

 

アルゴスとルシフェウスは硬い握手をする。

 

クラスト「アルゴス、汝は見事試練を乗り越えた。ルシフェウスよ、アルゴスをよろしく頼む。

 

ルシフェウス「ああ。」

 

 

Side現在

 

アルゴス「ブハッ、ハァ、ハァ、俺、生きてるよな?」

 

アルゴスは六芒星のオブジェの拘束から解放された。

 

エクトル「アルゴス。」

 

横を見ると、エクトルが決まり悪そうに立ちすくんでいた。

 

アルゴス「・・・エクトル。」

 

二人は改めて握手をした。無言ではあるが、その表情にはどこか温かみあふれるものだ。

 

クラスト「エクトル、アルゴス、我が友一夏をどうか頼むぞ。」

 

エクトル・アルゴス「ああ、任せてくれ!!」

 

 

 

 



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力を求めて

エクトルとアルゴスは、無事にセラフィエルとルシフェウス復活の試練を終えて皆の元へ戻っていった。

 

弾「二人とも、無事だったか!」

 

エクトル「ああ、おかげさまで。」

 

アルゴス「心配かけたな。」

 

ジル「あら、その二人は誰?」

 

セラフィエル「我は神の代行者、煌天使セラフィエル。」

 

ルシフェウス「我は冥王ルシフェウス。」

 

ジル「へえ、二人ともいい男じゃない。」

 

ジルはセラフィエルとルシフェウスに興味深々である。

 

ビリー「姉貴、すぐこれだもんな。未だに彼氏いないからってよ。」

 

ジル「・・・・・。」ギリギリギリ

 

ビリー「ぎええあああ、割れる、割れるって!!」

 

鈴「ビリー、アンタねえ。」ハァ

 

ビリーが茶化した瞬間ジルはビリーにアイアンクローをする。

 

箒「それにしても、あの時とは姿が違うようだが。」

 

セラフィエル「エクトルとアルゴスから人の心をこの身に授かったが故にこのような姿になったのだ。」

 

セシリア「お二人とも、クラストさんにも負けない雰囲気ですわね。」

 

弾「でも、立体映像みてえな状態だな。」

 

ルシフェウス「うむ、我らもクラスト同様、宿主の肉体を借りねば実態を現すことが出来ぬのだ。」

 

 

ネロ「さて、とりあえず役者が揃ったわけだが、これからどうすべきか考えるとしよう。」

 

Side12神座

 

クリーオス「・・・・・そうか、わかった。ご苦労だったな。」

 

通信機器でリオンから報告を受けたクリーオスは、部屋で一人窓を眺めながら下唇を強く噛んでいた。

 

タウロ「クリーオス様、いかがなさいました?」

 

クリーオス「クラストめ、どうやらセラフィエルとルシフェウスを味方に付けたらしい。」

 

タウロ「何と!?煌天使に冥王が復活したのですか!?」

 

クリーオス「いや、厳密に言えば、奴らは人の子の心をその身に宿した事でクラストのように擬人化したようだ。」

 

ジュゴーン「どちらにしてもこれはゆゆしき事態ですぞ。」

 

クリーオス「心配するな、まだ手はある。こうなればこちらもベルゼビュートの他に強い味方を作るまでだ。そうなれば否応無しに連中の方から出向いてくれよう。」

 

ビルゴ「流石はクリーオス様。」

 

クリーオス「サジ、ビルゴ、回収したダリルの死体を例の兵器に組み込んでおけ。」

 

サジ・ビルゴ「はっ!!」

 

先日の襲撃事件の後、ダリルは自らの体内のPVTにより自我を失ったところを、IS学園の偵察目的で来日していたリオンとカプリによって殺処分され、死体のまま持ち帰られていた。

 

クリーオス「タウロ、アクアンを呼べ。今回の作戦には奴に協力してもらうからな。」

 

タウロ「はっ、すぐにお呼びいたします。」

 

タウロに呼ばれたアクアンがクリーオスの前に来て跪く。

 

アクアン「お呼びでしょうか、クリーオス様?」

 

クリーオス「うむ、一夏達をここに呼ぶためにお前の力が必要なのでな。」

 

アクアン「何なりと・・・。」

 

果たして彼らの作戦とは・・・・。

 

 

 



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クラストの過去

一夏「さてクラスト、とりあえずこれからの事も考えて、12神座についてもう少し詳しくみんなに話してくれないか?」

 

クラスト「ふむ、それでは話すとしよう。」

 

一同「・・・・・・・。」

 

※ここからはしばらくクラストの回想録となります。

 

 

この世に人間が生まれる時代より遥か昔の事、かつて宇宙は限りなく無の状態であった。

 

そこから誕生したのが理を司る12の星、そしてその体現者が神々となり生まれた。

 

『謀略』のタウロ、『戒律』のデュモイ、『信仰』のキャンサー、

 

『闘争』のリオン、『神器』のビルゴ、『知恵』のジュゴーン

 

『審判』のスコルピオ、『神癒』のサジ、『守護』のカプリ、

 

『教導』のアクアン、『先見』のピスケ

 

12の断りのうち11は一つの理につき一人の体現者がいたが、ある一つの理だけ、他とは違っていた。

 

その理は『創世』であり、それを司る体現者が双子であるという事だ。

1人はクリーオス、そしてもう1人がクラスト。

2人は共に宇宙に創世をもたらす者同士であり、お互いにそれぞれの力で今の宇宙を気づいていった。

様々な星、生命を作り出し、生命からはあらゆる種族が生まれ、宇宙に存在するようになった。

 

しかし、ある種族を巡ってこの2人は対立することになった。それは、『人間』である。

 

 

クリーオス「人間を地球に住まわせるだと!?クラスト、貴様何を考えている!?人間は他の種族と違って不完全で愚かな生き物だぞ!」

 

クラスト「クリーオス、創世を続けて行くのに我々や、創造が出来ぬ種族だけでは限界がある。

人間は他の種族と違い、常に新たなものを作り出すことができる。これは我らが目指す創世につながっているだろう。」

 

それぞれの理の体現者が全員集まった場所で、人間の存在の是非が話し合われていた。

 

クリーオス「考え直せクラスト!そのような者は創世には不向きである!仮に新たなものを想像したところでそれは不完全で愚かなものだぞ!」

 

クリーオスは人間の存在を認めようとしない。

 

クラスト「他の種族のようにただ何も考えず本能のまま生きるだけなのもまた愚かな事ではないか。一つの秩序として現状を維持することはあっても、そこに新たなものは生まれない!」

 

クリーオス「種族の各々は自分達に定められし事に忠実であるだけだ。人間は感情や欲によってそれを忘れてしまうものなのだぞ!」

 

クラスト「創世は我らだけのものではない。だからこそ人間が必要なのだ。確かに人間には多くの感情があるが、全てが悪ではない。人間が想像力を持って生きるためには地球に住まわせることが一番なのだ。」

 

クリーオス「・・・・それ程までに人間を愛するか、どうやら貴様とは袂を分かつ時が来たようだな。ならば戦いで決着をつけよう!この私と貴様、どちらが真の創世に相応しいか!!」

 

クラスト「望むところだ!」

 

こうして、人間の生誕をめぐるクラストとクリーオスの創世の戦いが始まった。

 

クリーオスは11人の理の体現者を全員味方につけてクラストに挑む。それに対してクラストは、人間と、それまで想像してきた種族たちを味方につけてクリーオスを討たんとする。

 

激しい戦いの末勝利を収めたのはクラストだった。

 

クラストはこの戦いに勝利した事で創造主としての力を覚醒させた。

 

対してクリーオスは、クラストへの怒り、憎しみから「創世」の理を捨て、クラストの持つものすべてを消し去らんという思いから、「破壊」の理を司る者へと変貌を遂げた。

クラストは創造主の力により、クリーオスと彼に味方した11人全員に「肉体」を与え、人間の発展に力を注ぐべき存在とさせた。」

 

クリーオス「クラスト、貴様許さん!!!いつか必ず、我らをこのような不完全な存在とさせた事を後悔させてやるぞ!!!!」

 

クラスト「・・・・・。」

 

ここから全てが始まっていった・・・・。

 

 

Side現在

 

クラスト「今話した出来事が、奴らの起源である。」

 

ビリー「マジかよ、その出来事がなけりゃ、俺たちは存在すらしてなかったって事だよな。」

 

簪「でも、同時に人間同士でいろんなことが起きたよね。」

 

クラスト「そうだ、そして奴らは現在に至り、人類の支配元となりつつあるISに目を付けたのだ。」

 

シャルロット「人類の支配元・・・・。」

 

クラスト「奴らは人間の世界を破壊せんがために、新たな2つの理を作った。一つはエクトルの司る「導き」、

もう一つはアルゴスの「支配」。二つの理が同じ目的を巡って惑い、迷い、争うことを恐れた我は、「調和」という理をこの世に作り出した。これら三つの理を司る事が出来るのは、これらに相応しい心を持つものだけ。」

 

セラフィエル「そう、そして我とルシフェウスは司る断りに相応しい者を選んだ。

 

箒「それが一夏、エクトル、アルゴスだというのか。」

 

ルシフェウス「その通りだ。」

 

鈴「話がぶっ飛びすぎてついてけないわよ。」

 

一夏・エクトル・アルゴス「・・・・・。」

 

レオ「じゃあ、俺たちが事件に逢い続けたのもそいつらが元凶なのかよ。」

 

セシリア「何とも理解しがたいですわね。」

 

弾「全くだ、どうやったらそんな事になったんだよ。」

 

ネロ「クラスト、貴様のいう創世だが、今の世はそれを感じられなほどのものだぞ。」

 

レベッカ「今でも狂信めいた連中がテロを起こしたりもしてるしね。」

 

クラスト「確かに、人間は果てしなく争うものだ。悪にも果てはない。けれども、我は人間を信じる。正義にもまた、果てはないのだから・・・・。」

 

セラフィエル・ルシフェウス「・・・・・。」

 

そう言い残し、クラストはセラフィエル、ルシフェウスと共にそれぞれの宿主である一夏、エクトル、アルゴスの肉体に戻っていった。



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一夏の決意、創世を巡る戦いの火蓋

一夏以外の専用機一同「・・・・・。」

 

千冬「・・・・・。」

 

クラストと12神座の過去の因縁を知り、一同は今の状況から、一夏が危険視されている事に複雑な思いを抱いていた。

一夏が皆のため、自身の理想のために動けば必ず敵に遭うその宿命に、千冬はどこかいたたまれない表情になる。

 

クラスト「皆の気持ちは察しよう、しかしこれは一夏に課せられた使命、そして、一夏が歩むと決めた道なのだ。」

 

セラフィエル「一夏は人の子でありながら人を超越し得る。」

 

ルシフェウス「故に、一夏の背負う宿命は大きいのだ。」

 

千冬「・・・・・。」

 

山田先生「ですが、これはあまりにも・・・・、織斑君は、まだ高校生なのに。」

 

ジル「そもそも、『創世』ってもの自体どうなのよ?」

 

ビリー「姉貴落ち着けって。」

 

ビリーが諭すも、ジルは心配そうに一夏を見る。

 

一夏「織斑先生、山田先生、マイヤーズ先生、心配をかけるようで申し訳ありません。ですが、例え孤独になろうとも、人生の全てを投げ打ってでも、俺は、ISを巡って揺れ動くこの世界を、この時代を、本気で変えたいと思っています!」

 

ジル・山田先生「・・・・・。」

 

千冬「(相変わらず覚悟を決めたいい目をするのだな。)」

 

どこまでも己の信念を貫き通すことに一切の迷いがない一夏に、皆は複雑な思いを抱く。

 

一方で、

 

 

Side12神座

 

 

クリーオス「アクアン、『生贄』となるべき修道女達は集めたか?」

 

アクアン「はい、クリーオス様。どの子も素質に優れた希少な者ばかりです。」

 

クリーオス「ふむ、ようこそ諸君、我ら12神座の元へ。我らの手で偽りの創世に終止符を打ち、この世界に真の創世をもたらすのだ!」

 

修道女「はい、クリーオス様の仰せのままに。」

 

修道女達は不気味な事に、皆同じような虚ろな目をしている。

 

クリーオス「サジ、ビルゴ、この間IS学園に散らせたPVTシステムだが、試作段階としてはよくやった方だ。データの解析と改良を急いでほしい。資格ある手駒は多いに越したことはないからな。」

 

サジ・ビルゴ「はっ!!」

 

サジはこの間の襲撃でのデータを元に、PVTシステムの組織改良をし、より人体のDNAに適合しやすくする事で、ISへの適性を人工的に高めて行くことに成功の兆しを見せている。

 

ビルゴはそれに基づき、未だ世に出ていないような技術開発を進め、ベルゼビュートをはじめとする特殊な機体を製造して行く。

 

クリーオス「ジュゴーン、キャンサー。アクアンと共にこの者達を教育していくように。!」

 

ジュゴーン・キャンサー「お任せください。」

 

クリーオス「リオン、カプリ、お前達は戦闘訓練の指導を任せる!」

 

リオン・カプリ「はっ!!」

 

クリーオス「ピスケとスコルピオは引き続き奴らの情報収集に様子見を頼む。その後の作戦をタウロと立てるようにしろ!」

 

ピスケ・スコルピオ・タウロ「はっ!!」

 

クリーオス「真理の父の導きがあらん事を。」

 

一同「真理の父の導きがあらん事を!!」

 

ここからいよいよ、時を超えた因縁からの、一夏達と12神座による史上最大の戦いが始まろうとしていた・・・・・。



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特殊訓練〜ブリュンヒルデの恋

一夏が12神座との戦いに身を投じる決意を示した事で、他の専用機持ちの皆は複雑な思いを持ちながらも普段以上の実戦訓練を行うようになった。

特に一夏、ネロ、エクトル、アルゴスに至っては、クラスト曰く超人的な力を持つが故に対12神座の切り札とされており、

ISの訓練だけでなく、通常では考えられない訓練も行うことに。

 

箒「本当に大丈夫か?」

 

セシリア「流石に危険ですわ!」

 

一夏「大丈夫だ、この状態なら傷はすぐ治る。遠慮せずいつも通り本気で頼むぜ!!」

 

シャルロット「う、うん。でも無理はダメだよ。」

 

ラウラ「この訓練は私でも経験がないぞ。」

 

一夏は、リミットブレイクで変身状態であるが、無謀にも機体を装着せず、生身の状態で専用機持ち4人を相手に戦っているのだ。これは自身の力のコントロールも兼ねて行われる訓練であり、ネロ、エクトル、アルゴスに至っても同様の訓練がなされている。

 

セシリアがミサイルを放てば、一夏はそれを掴んで投げ返す。

 

セシリア「そんな、ミサイルを投げるなんて!!」

 

箒の雨月や空裂の斬撃を素手で受け止めて跳ね返す。

 

箒「くっ、刃を素手で!こんな事が出来るのか!?」

 

シャルロットが弾幕を張れば瞬間移動に等しいスピードで弾丸を回避し、接近時に体当たりをする。

 

シャルロット「ええっ、いつの間に!? 速すぎるよ!!」

 

ラウラがワイヤーブレードを放てば6枚の翼でガードする。

 

ラウラ「この翼は意外に硬いぞ!!」

 

超人的な一夏の力には皆驚きを隠せない。

 

アルゴス「どぅおらっ!!」

 

アルゴスはレベッカのクエイクを右フックで弾き飛ばす。

 

レベッカ「キャッ!機体なしでこんな力出せるの!?」

 

ビリー「ならこれでどうだ・・・ってうおぉぉっ!?」

 

ビリーがデルタライガーで攻撃を仕掛ければ先端を掴んで投げ飛ばす。

 

鈴「これならどう!?」

 

鈴は衝撃砲を放ったが、アルゴスの蹴りで跳ね返された。

 

エクトル「来い!」

 

レオ「よっしゃ、撃ちまくるぜ!!」

 

レオはエクトルにテスタ・ディ・ファルコの実弾を撃つが、回避や翼によるガードで通用しない。

エネルギー弾に切り替えるも、全て吸収されてしまう。

 

簪「銃撃がダメなら斬撃で!」

 

簪は夢現で切りかかるが、素早く手首を掴まれ、受け流されてしまう。

 

弾「動き封じりゃ何とか!」

 

弾は魔葬鎖刃でがんじがらめにしようとするが、6枚の黄金の翼を羽ばたかせて起きる突風に阻まれる。

 

ネロ「本音、遠慮せずに来い!これはお前の操縦訓練も兼ねているのだからな!」

 

本音「うん、わかったよ〜!」

 

谷本「グルーバー君、機体なしで戦うの!?」

 

鷹月「危ないんじゃ。」

 

ネロ「心配するな、俺はかつて生身でパイロット数人を倒す訓練を受けている。」

 

山田先生「わかりました、でも無茶はダメですよ。」

 

ネロは本音の九尾狐の操縦訓練も兼ねて本音と谷本、鷹月、山田先生を相手にしている。

 

山田先生がグレネードを放つも、爆発をものともせずに急接近する。

 

山田先生「うわっ、速い!!」

 

谷元「同時に行けば!!」

 

鷹月「ガッテン!!」

 

谷元と鷹月が同時に斬りかかるも、パンチやキックで武器を叩き落とす。

 

本音「え、えーと、これだぁ!!」

 

本音はアビリティにより9本の尾でガードするも、ネロの体当たりにより思い切りガードが壊される。

 

この他にも、一夏VSネロ、エクトルVSアルゴス、といった形で機体なし、リミットブレイク状態同士で直接戦う訓練もこなす。

今までにない過酷な訓練であり、その疲労は変身を解除した瞬間に重くのしかかる。

 

一夏「ハァ、ハァ、ハァ、思った以上の負担だな。」

 

ネロ「だがこの程度で音をあげるわけにはいかない。」

 

エクトル「体が、重い・・・。」

 

アルゴス「全身に痛覚が残ってるぜ。」

 

千冬「しかしお前たち、本当に大丈夫なのか?」

 

セラフィエル「今度の相手はISのパイロット以上の存在だ。」

 

ルシフェウス「人知を超えた戦いともなれば、ISが通用しない事も考えられる。」

 

あまりに過酷な訓練を続けているため、時には4人とも医務室で一日を過ごすような事も。

 

 

その夜・・・・

 

一夏・ネロ・エクトル・アルゴス「・・・・・。」

 

千冬「・・・・・。」

 

4人とも医務室で深い眠りについているのを見て千冬は心配の表情を浮かべていた。

 

そんな時、クラストが目の前に現れる。

 

クラスト「こんな時間に見舞いか?」

 

千冬「・・・・クラスト。」

 

クラスト「何か話したそうだな。散歩でもしながらどうだ?」ニコッ

 

千冬「・・・・・。」

 

クラストの不意な笑顔に千冬は顔を赤くする。

クラストは一緒に歩くためにひとまず一夏の身体を借りる。

 

千冬とクラストは校舎周辺を歩きながら話をすることにした。

 

クラスト「しかしこの学園の景色はいいものだな。」

 

千冬「そ、そうか。」

 

千冬は冷静を装うもドキドキを隠せないでいる。

 

クラスト「一夏の事が心配で仕方がないのだな。」

 

千冬「・・・そこまで私は心配性じゃない。」

 

クラスト「千冬、今は周りに誰もいない。時には思っていることを素直に話したらどうだ?」

 

千冬「・・・・。」

 

千冬はその言葉を聞くと、そこから話し始めた。

 

千冬「正直なところ、一夏の事は心配で仕方がない。幼少期から見守ってきたことを思えば信じがたいほどにあいつは力を付けていく。だが、ここのところ一夏は録に相談もせず戦いに身を投じているように思えてならない。ましてや普通の人間ではなくなってしまったことには正直戸惑っている。このままあいつの人生はどうなてしまうのかと思うと・・・・。」

 

千冬の目には一筋の涙が流れ出ていた。

そんな千冬をクラストは抱きしめる。

 

千冬「!!」

 

クラスト「心配なのはわかる。だがあいつは決して孤独ではない。汝を始め、一夏は多くの友と一緒に、家族同然に生きている。」

 

千冬は感じたことのない温もりに心が揺れ動く。

 

千冬「・・・・・離してくれ。」

 

クラスト「それは出来ぬ、我は汝の心を少しでも癒したいのだ。」

 

千冬「・・・・クラスト、私は。(言うなら今だ。)」

 

クラスト「うむ、だが先に我に言わせてくれ。我は汝を愛している。」

 

千冬「!?」

 

千冬は思いがけない言葉に度肝を抜かれた。

 

クラスト「一夏と出会い、我は創世において、この世界を愛に満ちたものにしたいと思っている。そのためにも、千冬、我には汝が必要なのだ。」

 

千冬はこの瞬間、自分の想いに確信を持った。そして・・・・・。

 

千冬「クラスト、その、私でよければ、付き合ってやってもいいぞ。」

 

クールな照れ隠しをしながら彼女なりに告白をする。

 

クラスト「感謝する、これからもよろしく頼むぞ。」

 

クラストと千冬はキスを交わした。

 

 

Side一夏

 

一夏「・・・・う、ん。あれ、この感じ。」

 

目がさめると、一夏は自分が肉体から離れている事に気付いた。

 

一夏「クラストの奴勝手に俺の身体を!」

 

一夏は慌てて外に出てクラストを探す。しばらくすると、

 

一夏「いたぞ、ってあれ?姉さんと一緒だ。何してんだ?」

 

一夏は物陰に隠れて様子を見る。

そして、クラストと千冬がキスを交わす瞬間をその目で見てしまった。

 

一夏「・・・そう言う事だったのか。」

 

クラスト「おお一夏、勝手に身体を借りてすまぬ。」

 

千冬「!?」

 

一夏「げっ、気付いてたのかよ!」

 

千冬「待て一夏!」

 

一夏「姉さん、おめでとう!お幸せに!!」

 

一夏はそそくさと逃げ帰った。

 

千冬「はぁ、あの様子じゃ黙っててくれと言っても無駄だろうな。」

 

クラスト「観念しろ、どうせいつか知られるのだからな。」ニコニコ

 

千冬「う、うるさい!」

 

 

そして翌朝、一夏が千冬の恋路を伝えるや否や、学園内で大爆発が起きた。

 

「「「「「ええええええぇぇぇぇぇーーーーーっっ!?」」」」」

 

谷本「織斑先生に恋人が出来たんだって!?」

 

鷹月「それどんな人!?」

 

黛「これは特ダネになるわ!!」

 

学園中大騒ぎだ。新聞には、『ブリュンヒルデ、遂に恋に落ちる!!』と、でかでかと書かれていた。

 

アルゴス「マジかよ!あの千冬さんに恋人ができるなんてな!!」

 

鈴「想像もつかなかったわよ!!」

 

レオ「しかし相手がクラストとはな。」

 

箒「でもお似合いだと思うぞ。」

 

セシリア「織斑先生が選ばれたのなら間違いないですわ。」

 

シャルロット「そうだよね、ってラウラ、どうしたの?」

 

ラウラ「きょ、教官に恋人、教官に恋人・・・・・・。」

 

ラウラは多少なりともショックだったようだ。

 

レベッカ「だけど一夏、この事話して大丈夫なのアンタ?」

 

一夏「どうせいつかわかる事だし、早めに言っとこうと思ってさ。」

 

弾「知らねえぞ、怒られても。」

 

一夏「まあその時はその時だ。」

 

簪「じゃあクラストは一夏の将来の兄って事だよね。」

 

エクトル「凄い家族構成になりそうだなぁ。」

 

ビリー「うちの姉貴にも早く恋人ができたらいいけどな。」

 

一夏「(他人の心配してる場合じゃねえだろ。)」

 

ネロ「やはりこうなったか。」

 

本音「あれ、ネロロン気付いてたの?」

 

ネロ「まあな。」

 

千冬「騒がしいぞお前達!!」

 

一同「お、おはようございます!」

 

一同は気を引き締め締めて挨拶する。

 

千冬「まあいい、早く授業の準備をしろ。」

 

千冬はどこか表情が少し穏やかになった。

 

山田先生「織斑先生、遂に恋が実ったわけですね。」

 

ジル「今夜飲みにでも行かない?」

 

こうして、また一つの愛が生まれた。



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拉致

黛「はいはーい、新聞部でーす!今最も話題となっているあのブリュンヒルデこと、織斑先生の恋人のクラストさんにインタビューしようと思いまーす!!」

 

クラスト「ふむ、インタビューとは『問答』の事か?」

 

一夏「まあそんな所だ。」

 

千冬「・・・・・。」

 

クラスト「まあよい、とりあえず答えよう、人の子よ。」

 

クラストは席に着く。

 

千冬がクラストと恋人同士になったことで学園はしばらくこの話で持ちきり状態である。

 

黛「ズバリ、クラストさんが織斑先生を好きになったその要因は!?」

 

クラスト「話せば長くなるが、一夏との契約によってこの世界に入った時、一夏の肉体越しに色々見ていたのでな。

その中で千冬を見た瞬間から気にはしていた。」

 

黛「なるほど、つまりそれは『一目惚れ』って事ですね!」

 

アルゴス「まさか奴にそんな時があったとはな。」

 

鈴「でもまあ、仕方ないんじゃない?」

 

セシリア「織斑先生は本当にお綺麗ですし。」

 

ラウラ「うむ、間違いないな。」

 

千冬「・・・・・・。」

 

一夏「(姉さん、ここは我慢してくれ。)」ボソボソ

 

千冬「(わかっている、というよりそもそもこれはお前のせいだぞ一夏!)」

 

一夏「(まあまあ、俺は姉さんの幸せを知らせたくてだな。)」

 

千冬は喚こうにも、一夏に宥められる。

 

黛「では次に、もう織斑先生とはキスを交わしましたか!?」

 

クラスト「ああ、一夏の身体を借りて実体化してな。」即答

 

千冬「!!」

 

「キャーーーーーーーー!!!」

 

箒「な、き、キスを交わしただと!?」

 

シャルロット「しかも、一夏の身体を借りたって・・・。」

 

セシリア「それってつまり・・・・。」

 

ラウラ「い、一夏と教官のキスでもあると言う事か!?」

 

ビリー「落ち着けよお前ら、身体借りたっつっても姿が違うんだから、一夏に関してはノーカウントだろ。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「ほっ・・・・。」

 

レベッカ「ていうか、身体の貸し借りって、なんかややこしいわね。」

 

エクトル「そこは僕やアルゴスも同じことだよ。」

 

のほほん「ネロロンもクラクラ(クラスト)に身体を貸すことあるのー?」

 

ネロ「いや、どうやら俺は無理みたいだ。もともと契約者は一夏だし、それ以前に俺の身体は人工のものだからな。(とりあえず肉体劣化を防ぐために力の一部を借りてはいるが・・・・。)」

 

一夏「先輩達、すみませんがもうその辺で。」

 

黛「おっと、それじゃあまた取材よろしく!」ササッ

 

セラフィエル「しかし、創造主たるクラストが人の子の女と結ばれるとはな。」

 

ルシフェウス「うむ、それもそうだが、この学園はこんなにも和やかなのか・・・。」

 

学園内は大いに盛り上がっている。

 

それから数週間後・・・・、

 

TV「おはようございます、本日の特集はこちら!『世界第二のIS学園、ノイモス学園誕生』」

 

一同「!?」

 

TV「ギリシャ政府は、日本を除く他の国々が試みようとしなかった事を成し遂げようと、また、IS技術で日本に遅れを取りたくないと、研究所を改装し、この学園を設立する事を決めたそうです。」

 

ラウラ「ほう、アルゴスの国にIS学園と同じ学校が建つのか。」

 

ネロ「うーむ、政府は思い切ったな。」

 

アルゴス「俺も今初めて知ったぞ。」

 

セシリア「世界も動き出しつつあると言う事ですわね。」

 

シャルロット「そこはIS適性のある男子の受け入れはどうなんだろう?」

 

ビリー「どうだろうな、まあ俺たちの仲間が増えるならそれはいい事だぜ。」

 

TVでは、楯無と虚が通うギリシャ航空機専門学校の教授がインタビューに答えている。

 

教授「実は我が大学の生徒にIS学園の出身者に、あのブリュンヒルデの血族にして世界初のIS男子の織斑一夏君の事を聞きましてね。彼の大いなる理想に我々も力を注ぎたいと思ったのです。」

 

レオ「おい一夏、お前やっぱ世界的に有名だな!」

 

一夏「あ、ああ。にしてもまさかここまでの事になるとはな。」

 

箒「流石は一夏だ。理想が他国にまで伝わるとはな。」

 

弾「つーか、一夏の事喋ったのは楯無さんで間違いなくねえか?」

 

簪「うん、きっとそうだと思う。お姉ちゃんお騒がせな所あるし。」ハァ

 

エクトル「しかし、この学園に何人くらい進学希望を出す生徒がいるんだろう。」

 

レベッカ「それに、建物もそうだけど、色々とお金がかかりそうじゃん。」

 

鈴「一回現地に行ってみたいわね。」

 

 

TVでは明るい未来を思わせるような映像が流れている。しかしその裏で・・・・・、

 

ピスケ「クリーオス様、放映完了です。」

 

ピスケは報道の力を使って全世界にノイモス学園の宣伝をした。クリーオスは拠点の自室のテレビを通して現地を見ている。

 

クリーオス「うむ、ご苦労。IS関連の学校を建てるとなれば政府も気前がいいものだな。」

 

タウロ「我らの計画の遂行には寧ろこのような施設があった方が都合がよろしいかと。」

 

そう、つまりそれは、ベルゼビュートを生み出した施設を、学園という名目でカモフラージュする事であった。

ビルゴ「アクアンの修道女達も含め、『生贄』を確保するにはもってこいかと。」

 

クリーオス「ふむ、ん?」

 

クリーオスは、ふと画面の角の方を見る。僅かではあったが、そこには楯無や虚の姿が。

 

クリーオス「よし、次の作戦が決まった!リオン、カプリ!」

 

リオン・カプリ「はっ!!」

 

何やら次の作戦にうつったようだ。

 

 

Side楯無・虚

 

楯無と虚はニュースのあった日に教授とは別行動でノイモス学園の見学に来ていた。

 

楯無「へー、ここが第2のIS学園かー。」

 

虚「もともとここは研究所だったらしいわよ。」

 

楯無と虚はゆっくり校舎内を見てまわる。

 

リオン「よし、今だ!!」

 

カプリ「おお!」

 

リオンとカプリは2人だけになったところを狙い、楯無と虚を後ろから襲った。

 

楯無「あっ、んんん、う、ん・・・・。」

 

虚「楯無さん!?うっ、ん・・・・。」

 

楯無と簪は麻酔銃で撃たれ、その場に倒れた・・・・・。

 

2人はリオンとカプリに確保されてしまった・・・・・・・。



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12神座からの挑戦状

楯無「・・・う、ん?」

 

虚「あれ、ここは・・・。」

 

気づくと、楯無と虚はどこかわからぬ無機質な部屋で椅子に拘束されていた。そんな中、数人の人物が部屋の中に入ってきた。

 

サジ「・・・お目覚めか、2人とも。」

 

楯無・虚「!?」

 

ビルゴ「クリーオス様から貴様らへの言伝を預かっている。」

 

虚「クリーオス、って事は貴方達は12神座の!!」

 

楯無「随分な招き方をしてくれたものね!」

 

リオン「おいおいそう喚くなよ。心配しなくても、お前らの愛しの恋人にすぐに会わせてやるから。」

 

その言葉を聞いた途端に、2人の脳裏にIS学園にいる恋人のことが過った。

 

楯無「貴方達、アルゴス君達に何を!?」

 

ビルゴ「だから喚くなって。心配しなくても、IS学園の連中は無事だ。これから潰しにかかるところだがな。」

 

虚「それがクリーオスとやらの言伝ってことかしら?」

 

サジ「その通りだ、見るがいい!」

 

サジのその言葉とともに部屋の壁一面のモニターに映像が映る。

 

アクアン「さあ、我が忠実なる信徒達よ!今こそ偽りの神のもたらす調和に終止符を!!」

 

信徒「・・・・はい。アクアン様、真の創世神の仰せのままに。」

 

アクアンが従える信徒には、修道女達を始め、その家族や恋人の男性も何百と取り入れている。

しかも全員どこか目が虚だ。

装備されたISは、束のデータをもとにビルゴが独自にシステムを手がけた量産型の高性能の機体だ。

 

楯無「な、何よこれ、いつのまにこんな手勢を!?」

 

虚「それに、子供から大人まで、しかも男性も多いわ!どうしたらここまで男のパイロットが!?」

 

ビルゴ「かつての貴様達の友であったダリルを覚えているだろう、あの事件の発端となったPVTシステムによって、帰省した人間の体組織をISに人工的に適合させることに成功した結果がこれだ。そしてこの量産機には洗脳システムが搭載されている。」

 

虚「洗脳!?」

 

楯無「・・・・外道ね、意思を奪ってまでパイロットを増やすだなんて。」

 

しばらくすると、タウロとクリーオスが中に入ってきた。

 

タウロ「外道とは心外だな、我々は新世界のために、この世から一切の汚れをなくさんとしている。」

 

虚「・・・・貴方達こそこの世の汚れではないの?」

 

タウロ「黙らんか!!」

 

クリーオス「タウロ、落ち着け。だが人の子よ、クラストと一夏の目指す調和のために、貴様らの愛する者は苦しめられたのだぞ。どれだけの惨劇に至ろうとも尚、人の子が変われるものと信ずる事に何の意味がある?」

 

楯無「何が言いたいのよ!?」

 

クリーオス「我らもまたこの世の調和を求める、だが一夏と違い、我々は完璧なる生命のみを残し、完璧な導き、支配を調和させるのが目的である。どれだけ時が経とうとも拭えぬ汚れをなくすべく、世界を新たに作り直すことこそ真の平和なのだ!!」

 

タウロ「わかるか小娘共、クリーオス様はクラストに代わって新たな創世の神となるお方なのだ!!」

 

楯無「ふん、貴方達がどれだけの事をしても、アルゴス君は倒れないわ!」

 

虚「弾君も、一夏君を信じています!貴方の兄弟であるクラストこそ、世界には必要です!!」

 

クリーオス「それほどまでにこの世が良いか?では貴様達には究極の苦しみを与えてやろう!」

 

すると、サジは注射器のようなものを取り出した。そしてそれを楯無と虚の専用機に差し込む。

 

楯無「何をする気!?」

 

クリーオス「貴様達も我らの僕となってもらう。」

 

虚「そんな、やめ、ううっ!!!」

 

楯無と虚の専用機にPVTシステムが組み込まれ、機体が強制的に展開された。

そして、PVTシステムにより、2人もまた、信徒同様に洗脳されてしまった。

 

楯無・虚「・・・・・クリーオス様、何なりと。」

 

クリーオス「フフフ、上等な僕が手にはいったものだ。」

 

 

数日後・・・・

 

一夏「ふあぁ・・・。」

 

一夏は珍しく朝から大アクビをする。

 

セシリア「一夏さん、眠そうですわね。」

 

一夏「いやー、実は昨夜姉さんに夜通し説教されてな。」

 

鈴「こないだ千冬さんの恋路をバラしたからじゃない?」

 

一夏「ま、まあ、そうなんだが。」

 

箒「大騒ぎになったのだから当然だろう。」

 

アルゴス「でもお前、心なしか嬉しそうじゃねえか?」

 

一夏「そりゃ嬉しいさ、自分の家族が増えたんだから!」

 

レベッカ「それにしたってすっごい兄貴ができたものね。」

 

エクトル「未来が楽しみでもあるけどね。」

 

レオ「そうそう、クラストと先生の子供とかな!」

 

ラウラ「き、教官の、こ、子供・・・・。(その子を教官や一夏と一緒に育ててみたいぞ!)」

 

簪「ちょっとレオ、気が早すぎ!」

 

弾「お前まで説教くらうぞ下手すりゃ。」

 

シャルロット「まあ何にしても、よかったね一夏。(僕も一夏との子供が欲しいなぁ。)」

 

ネロ「ふむ、創造主とブリュンヒルデの血を引く子か・・・・・。」

 

ビリー「よく考えたらすげーな、強い子が生まれそうだぜ。」

 

のほほん「ねーねー、ネロロンは子供何人欲しい?」

 

鷹月「ほ、本音!?あんた何て質問してるのよ!」

 

ネロ「そうだな、相手が望むだけ欲しいってところだな。」

 

のほほん「へー。(よーし、いつかネロロンと結婚したら、いっぱい産むぞ〜。)」

 

 

こちらはいつにも増して楽しそうに過ごしている。しかし、平穏な日々に必ず災厄が付いてくる。

 

TV「ニュースです、ギリシャのプロサナトリス航空大学の学生2名が、行方不明となっており、現在捜索中です。」

 

捜索中の2名の写真は・・・・、

 

一夏「!?楯無さん、虚さんが行方不明だと!?」

 

アルゴス・弾「何ぃ!!??」

 

のほほん・簪「お姉ちゃん!?」

 

一同「!!!!」

 

TV「なお、現在のところ、手がかりは一切見つかっておらず、捜、さ、く、は・・・、こん、な、ん」

 

突然テレビのモニターがバチバチと音を鳴らし、画面が砂嵐となった。

 

声「フフフ、手がかりなら私が特別に教えてやろう。」

 

妙な声とともに画面が付き、1人の男の姿が。

 

一夏「誰だ!?」

 

声「おっと、申し遅れた。私はピスケ、クリーオス様に仕えし12神座の一員である。この学園の通信をジャックさせてもらった。」

 

箒「ということは貴様が楯無さんと虚さんを!!」

 

アルゴス「おい、てめえら一体何の真似だ!?」

 

弾「虚さんと楯無さんをどうした!?」

 

ピスケ「狼狽えるな、あの女どもは生かしてある。」

 

鈴「本当でしょうね!?」

 

ピスケ「女達を助けたければギリシャまで来い、場所は先日設立されたノイモス学園付近だ。」

 

クラスト「ピスケ、貴様!!」

 

ピスケ「クラスト、神となるべき存在であった貴様が、よもや人の子の女と恋に落ちるとは、落ちぶれたものだな。」

 

クラスト「黙れ!」

 

ピスケ「もちろん貴様にも来てもらう。クリーオス様がお待ちかねなのでな。」

 

そう言って、ピスケはテレビ画面から消え去った。

 

 

 

千冬「話は聞かせてもらったぞ、専用機全員、出動だ!!」

 

一同「はい!!!!」

 

千冬「山田先生、マイヤーズ先生、留守の間授業を頼むぞ。」

 

ジル「気をつけるのよ、千冬。」

 

山田先生「先生、みんなもどうかご無事で。」

 

セラフィエル「では我々も行くとしよう。」

 

ルシフェウス「ああ、我が友の愛する者のために。」

 

 

こうして、彼らは再びギリシャへと赴くのであった。

 

 



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神域への入り口

 突如拉致された楯無と虚を奪還すべく、専用機一同と千冬はギリシャへと向かい、プロサナトリスにあるノイモス学園へと向かう。ただ、約一名連れてきてよかったのかどうかという者が一人・・・・。

 

ネロ「本音、これは単なる実践訓練の類ではないのだぞ。」

 

のほほん「わかってるよ、だけどお姉ちゃんが心配だもん。」

 

簪「本音、気持ちはすごくわかるけど・・・・・。」

 

弾「今回は間違いなく死闘なんだぜ。」

 

本音はまだ専用機をもって間もない状態であり、訓練でも満足な操縦ができないほどである。

そんな本音をよく知っている簪をはじめ、心配する者がいるが、本音はどうしても行くと言ってきかなかったのである。

 

現在は飛行機の中で、重苦しい空気の中静かに戦いの始まりを待っている。

 

レベッカ「ねえ一夏、一つ聞いていい?」

 

一夏「どうしたレベッカ?」

 

レベッカ「あたしがIS学園に来る前にも、アンタはこんな命に関わる戦いに身を投じてきたわけ?」

 

一夏「・・・・ああ。」

 

箒「レベッカ、どこか浮かない顔だな。」

 

レベッカ「だってさ、死にそうになってまで世界をよくしようとするのって、並大抵の人間がすることじゃないじゃない。だから心配で。」

 

セシリア「それは確かにそうなのですが・・・。」

 

レオ「でもまあ、織斑先生と一夏がいるなら大丈夫だろ、俺たちのリーダーならアイツらにまけやしないぜ!」

 

ビリー「おいレオ、お気楽なセリフで一夏に重圧かけるなよ。」

 

レオ「んだと?俺は一夏を励まそうとだな、」

 

鈴「はいはい、もういいから静かにしてなさいよ。」

 

どこか落ち着かない空気の中、シャルロットが話を切り替える。

 

シャルロット「12神座がどう出てくるか気になるところだよね。」

 

ラウラ「全員が教官以上の力を持つものとなれば、厳しい戦いにはなると思うな。」

 

エクトル・アルゴス「・・・・・・・。」

 

エクトルとアルゴスは思わず、かつて自分達が起こした出来事を思い返す。

 

一夏「エクトル、アルゴス、あの時の事なら気にするな。」

 

エクトル「・・・・だが、」

 

アルゴス「俺は、お前を。」

 

千冬「お前たちは一夏の良き友として生きている。それだけで十分な償いだ。」

 

エクトル・アルゴス「・・・織斑先生。」

 

 

数時間後、ようやくギリシャに着き、ノイモス学園へとたどり着いた。

ノイモス学園はとても高い建物で、天に届きそうな気さえする規模だ。

 

中に入ると、そこはIS学園とは似ても似つかぬ無機質な空間だった。

 

一夏「・・・これが、第二のIS学園・・・。」

 

すると、玄関にはカプリの姿が。ただし、立体映像だが。

 

のほほん「ほえ、あの時のおじさんだよ〜。」

 

カプリ「フフフ、諸君、よく来てくれたな。」

 

アルゴス「挨拶はいい、楯無さんと虚さんはどこだ!」

 

カプリ「クリーオス様が丁重に扱っている、心配するな。」

 

弾「おい、てめえ!こんな事してタダで済むと思うなよ!?」

 

カプリ「やれやれ、血気盛んだな今時の若者は。」

 

一夏「貴様達の目的は何だ!?こうまでして何故俺達をここに呼んだ!?」

 

クリーオス「それは我が説明しよう。」

 

カプリの姿がクリーオスの立体映像に変わる。

 

クラスト「・・・クリーオス!!」

 

クリーオス「我が兄弟よ、久しぶりだな。貴様に人間にされたあの時から我々はずっと貴様を殺すことを考えていた。」

 

クラスト「・・・・。」

 

クリーオス「まあいい、昔話は後にして、一夏を含めそこにいる人の子らに説明しよう。」

 

ビリー「けっ、とっとと説明しやがれ!」

 

クリーオス「この学園は13の階層から成っている。我はその最上階で貴様達を待つ。」

 

鈴「随分高みの見物染みてるじゃない。」

 

クリーオス「各階層では我が12神座の僕(しもべ)達が待っている。その者達と戦い、勝利し、無事に我の元までたどり着けばあの2人の女子に合わせてやろう。」

 

レオ「何だそんなことか、随分とわかりやすいルールだな。」

 

簪「でも、油断は出来ないよ。」

 

箒「ああ、だがどんな状況だろうと、私達は勝たなければならない!」

 

セシリア「どんな敵でも、私達で倒して見せますわ!」

 

クリーオス「ほう、威勢のいいことだ。だが我の僕達を殺すのは簡単ではないぞ。」

 

シャルロット「難しいイコール出来ないじゃないよ。」

 

ラウラ「とにかく、やるべき事はわかったからな。」

 

クリーオス「フフフ、一つ言っておこう。各階層での戦いは、貴様達に条件がつけられるようになっている。」

 

レベッカ「条件?アタシ達だけに!?」

 

エクトル「フェアじゃないだろう、貴様正々堂々と出来ないのか!?」

 

千冬「ベレン、ミラー、落ち着け。悔しいが向こうに分がある。」

 

クリーオス「そういう事だ、人の子らよ。」

 

クリーオスはふと、セラフィエルとルシフェウスの方を見る。

 

クリーオス「貴様達も、創世における1つの理を司る者でありながら、結局は人の子の手に落ちたか。」

 

セラフィエル「フン、落ちたつもりはない。」

 

ルシフェウス「強い者に従う事は貴様らの世界にも言える事だ。」

 

クリーオス「では最上階で待っているぞ。果たしてここまでたどり着けるかな?」

 

そう言って、クリーオスの立体映像が消えた。

 

一夏「・・・首を洗って待っていろクリーオス、このふざけたゲームに必ず勝って、楯無さんと虚さんを奪還してみせる!

行くぞ皆!!」

 

一同「(ああ)(はい)(おう)(うん)!!!!」

 

果たして一夏達は、無事に天空の最上階へとたどり着けるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 



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第一層

かくして、12神座との戦いに挑むことになった一夏達は、第一層へと向かう。

 

クリーオス「ふむ、では戦いに入る前に改めて説明しよう。先程申した通り、各階層での戦いには条件が課せられる。

その条件の中身は、どの者が戦うか決まった時に課せられるようになっている。」

 

一夏「・・・成る程な。」

 

箒「私達のうち誰が戦うかによって決まるのか。」

 

クリーオス「尚、その選択をする指令者は貴様達で決めるが良い。」

 

ビリー「指令者?」

 

鈴「そいつが誰を出すのか決めるって事ね!」

 

ネロ「ふむ、では誰が指令者になるべきか・・・・。」

 

ネロがそう言い出す瞬間、全員がある男の顔を見る、それは言うまでもなく・・・・、

 

一夏「・・・俺か。」

 

アルゴス「当たり前だろ、お前は俺たちのリーダーなんだからよ!」

 

レベッカ「そうね、アンタなら問題ないわ。」

 

一夏「だがいいのか?指令者なら姉さんの方が、」

 

千冬「私は構わんぞ。」

 

一夏「ですが、」

 

ラウラ「嫁よ、私はお前を信じるぞ!」

 

シャルロット「そうだよね!一夏が一番だよ!」

 

レオ「ま、リーダーであり切り札のお前は最後にとっとくのがいいだろ。」

 

簪「一夏、序盤は私達に任せて欲しいの。」

 

弾「いつもお前には世話になってるしな。」

 

のほほん「おりむーファイトだよー!」

 

セシリア「私達にお任せください!」

 

エクトル「どんな敵が来ようとも、僕らは負けないぞ!」

 

一夏「・・・わかった!」

 

アルゴス「決まりだな。」

 

即決で指令者は一夏となった。

 

クリーオス「フッ、予想通りだな。まあ良い。せいぜい生き延びる事だな。では第一層に挑む者を2名決めるが良い。」

 

一夏「よし、じゃあまずは本音とシャルロットだ。」

 

シャルロット「よし、任せて!!」

 

のほほん「ほ、ほえぇ、いきなり!?」

 

単独で戦うにはまだ不安がある本音に、タッグマッチでチームワークの良さを見せてきたシャルロットを組み合わせた。

 

クリーオス「では、第一層の間に入るが良い。」

 

一行は、大きな扉がゆっくりと開いたその部屋の中へと入る。

 

シャルロットと本音は部屋の中央に立ち、他の者が余計な手出しができないようにと、彼女らの周囲に透明な壁が出現した。

 

クリーオス「では条件を言おう、それはこの者達を残らず抹殺する事だ!」

 

クリーオスの言葉と同時に、どこからともなく洗脳された信徒のISパイロットが10、20と出現する。

 

ビリー「おいおい、幾ら何でも数多すぎじゃねえか!?」

 

箒「しかも、男のパイロットも数多く存在するぞ。」

 

クリーオス「この者達は、我ら12神座に忠誠を誓った信徒達だ。我々の洗脳技術をもってすれば、IS学園などとは育成率が違うぞ。」

 

千冬「くっ、まさかここまでの技術力があるとはな・・・・。」

 

そして、すぐ様戦闘開始となる。

 

のほほん「シャルシャル、どうしよ〜。」

 

シャルロット「取り敢えず僕から離れないで!」

 

シャルロットは四方から向かってくる敵をアサルトライフルで迎え撃つ。

しかし、弾幕をモノともせずに次から次へと向かってくる。

 

セシリア「これじゃあキリがありませんわ!」

 

弾「本音、兎に角九尾狐の力でどうにかしろ!」

 

のほほん「え、えっと、これだぁ!!」

 

本音は4番を押し、防御アビリティの竜巻台風を起こす。

 

シャルロット「その調子だよ本音!!」

 

吹き飛ばされたパイロットにグレネードを撃ち込んで追い討ちをかけるシャルロット。

 

すると、台風をかいくぐって真上から攻めるパイロットが数人襲ってくる。

 

本音「こ、今度はこれだよ!」

 

1番のボタンを押し、弾丸とレーザーで上空に対応し、接近されれば刃の尾で薙ぎ払う。

 

ネロ「この間の訓練より上達したみたいだな。」

 

30分の死闘の末、パイロット集団を殲滅する事に何とか成功した。

 

本音「ほへ〜、お、終わったよ〜。」ヘナヘナ

 

シャルロット「ハァ、ハァ、どうなるかと思ったけど。」

 

一夏「すまない、苦しい采配だったな。」

 

ラウラ「いや、序盤で本音が出たのは正解だったと思うぞ。」

 

エクトル「確かに、敵の小手調べにはなったね。」

 

クリーオス「フン、辛うじて勝利したようだな。だが浮かれるな、我らの力はまだこんな者ではないぞ。」

 

ビリー「能書き垂れてねえで、次の階層に案内しやがれ!」

 

クリーオス「よかろう。」

 

第一層をどうにか突破し、第二層へと続く・・・・・。

 

 



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第二層

クリーオス「では第二層に進む者を決めるが良い。今回も2名だ。」

 

一夏は誰を出すか深く考える。

 

一夏「2名となればやっぱりステータスバランスとチームワークを考えなければ・・・。」

 

考えた末に出した答えは、

 

一夏「よし、ここはレオと簪で行こう!」

 

レオ「さてと、行きますか。」

 

簪「レオ、少しは緊張感持ってよ。」

 

銃撃に長けたレオとスピーディーな接近戦に長けた簪の組み合わせで行く。

 

クリーオス「ふむ、そうきたか。では第二層での貴様達の相手を見せてやろう。」

 

部屋に入って来たのは、リオンとビルゴだ。レオと簪の特徴に合わせたような2人である。

 

クリーオス「この階層での条件、それは『エネルギー系武装・アビリティの使用禁止』である。」

 

レオ「ゲッ、マジかよ!?レーザーとかが使えねえのか?」

 

簪「つまり、通常の物理攻撃のみで戦えって事ね。」

 

ビルゴ「そういう事だ、今のうちに死ぬ覚悟を決めておくのだな。」

 

レオ「そっちこそ、俺の新装備で風穴を開けてやるぜ!」

 

リオン「フッ、精々吠えておけ。」

 

こうして、レオ&簪VSリオン&ビルゴの戦闘が始まった。

 

レオ「簪、ここは二手で行くぞ、俺がリオンをやる!!」

 

簪「オッケー、ビルゴは任せて!」

 

リオンの装着する機体「ピスティ」は、陸軍兵士並みの動きができるほどの機動性と操作性に優れており、特に接近戦ではその真価を発揮する。

 

レオはすぐ様テスタ・ディ・ファルコのフルオート射撃で攻撃するも、アサルトライフル「ピスティ」のフルオート射撃でことごとく相殺されてしまう。

 

リオン「甘いな!」

 

リオンは隙をついて一気に間合いを詰め、白兵戦に持ち込む。

レオは、接近戦ではテスタ・ディ・ファルコの先端のブレードで応戦するも、あまり早く立ち回れない。

 

レオ「くっ!1つ封じられただけでここまで苦戦とはな。」

 

リオン「フン、どうやら白兵戦はあまり得意ではないようだな。」

 

一方簪は、

 

簪「えいっ、このっ!!」

 

ビルゴ「遅い、余りにも予測がつきすぎる。」

 

ビルゴの機体「ドロフォン」は、移動能力に長けており、その速さは瞬間移動といっても過言ではない。

 

簪の夢現での斬撃や、春雷での射撃をビルゴは軽い身のこなしでかわしていき、

 

ビルゴ「フン、面倒だ!」

 

ビルゴはレオに標的を変更し、チャクラムのような形状の近接装備「シリープス」をレオに投げる。

 

レオ「ぐわっ!背中から食らっちまったぜ!」

 

レオは挟み撃ちに遭う。

 

箒「おい貴様ら、卑怯ではないか!」

 

リオン「外野は黙っていろ!!」

 

ビルゴ「我らの戦いには掟などない!」

 

レオ「グッ、ゴフッ!!」

 

レオは前後左右から斬撃、打撃を受ける。

 

セシリア「これじゃレオさんがなぶり殺しですわ!」

 

ビルゴ・リオン「トドメだ!!」

 

ビルゴとリオンはレオの息の根を止めにかかる。

 

レオ「ヘッ、調子に乗るなよ!俺の装備が二丁拳銃である意味を今教えてやるぜ!!」

 

レオはテスタ・ディ・ファルコをリオンとビルゴの二方向に向ける。

 

ビルゴ「フン、それがどうした?」

 

レオ「行くぜ、俺の新装備!『アルティグリオ』!!」

 

レオがそう唱えた瞬間、両手のテスタ・ディ・ファルコが大型のリボルバータイプのガンブレードに変形した。

 

レベッカ「何よあれ、いつの間に作ったの!?」

 

リボルバーガンブレードのモードにより、通常の状態とは違い、ブレードが引き金の引き加減により伸縮自在となり、接近戦を大幅に補えるようになった。弾丸とエネルギー弾もグレードアップし、フルオート時の秒間威力も倍増した。

 

簪「凄い、こんな技があったなんて!」

 

レオ「おう簪、惚れ直すなよ!」ウィンク

 

シャルロット「空気無視して口説いてる場合じゃないでしょ。」ハァ

 

レオはブレードを目一杯伸ばし、フルオート全開で剣の舞の如く乱舞する。

 

ビルゴ「クッ、生意気な!」

 

リオン「このデータは予想外だ!」

 

簪「感心してる場合かな?」

 

リオン・ビルゴ「!?」

 

簪はさっきのお返しと言わんばかりに、背後から間合いを詰め、夢現をリオンの首に突き刺し、春雷でビルゴの頭部を撃ち抜いた。

 

勝利を収めたレオと簪は、機体を解除し、肩を貸し合いながら皆の元へ戻る。

 

ラウラ「レオ、簪、見事だったぞ!」

 

レオ「グッ、ちょっと手こずったけどな。」

 

ビリー「レオ、お前もやるときゃやるんだな。」

 

ビルゴとリオンは、それぞれ頭部と首筋から血を流しながら呻く。

 

ビルゴ「ぐっ・・・、これで、勝ったと思うな。」

 

弾「何だよ負け惜しみか?」

 

リオン「フフフ、我らを殺す事で、貴様達の命運もつき・・・る。ゴフッ!」

 

千冬「・・・・・・。」

 

千冬はこのセリフにどこか違和感を覚えた。

 

クリーオス「ふむ、貴様達にもそれなりの技術はあるようだな。次の階層でも、ほんの少しだけだが期待するとしよう。」

 

一夏「(コイツ・・・、仲間が殺されたっていうのに。)」

 

ネロ「さて、次の階層に行くとしよう。」

 

 



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第三層 part1

クリーオス「では第三層に進むものを2名選ぶがよい。」

 

一夏「(今回も2名か。ここはなるべく組み合わせ的に無難な方がいいだろう。)」

 

考察の末に選んだのは、セシリアと鈴。

 

セシリア「お任せ下さい、一夏さん!!」

 

鈴「セシリア、アンタと組むのは去年以来ね!」

 

クリーオス「ふむ、ではこちらからはこの者達を出そう。」

 

クリーオスが出すのは、アクアンとカプリだ。

 

カプリ「フン、我々の相手はこんな小娘共か。」

 

鈴「それは悪かったわね。」

 

アクアン「偽りの神である織斑一夏に仕える愚かな者達に裁きを下しますわ!」

 

セシリア「一夏さんに偽りの心などありません!」

 

ネロ「それで、今回はどういう条件なんだ?」

 

クリーオス「今回は『射撃系装備・アビリティの禁止』が条件だ。」

 

それを聴くと、一気にギャラリーからブーイングが。

 

弾「おい、何だよその取って付けたような条件は!?」

 

レベッカ「明らかに不利な条件じゃない!卑怯だわ!!」

 

ビリー「無茶苦茶だぜ!鈴は衝撃砲を封じられただけだがよ。」

 

簪「セシリアの装備はほとんど射撃系で占められているのよ!」

 

そう、この条件により、セシリアは今回唯一の近接武器「インターセプター」のみで戦わなければならないのだ。

 

レオ「まあ落ち着けよ、少なくとも本人は何ら動じていないようだぜ。」

 

セシリアはほとんどの手を封じられたにもかかわらず、どこか落ち着いている。

 

セシリア「皆さん、大丈夫です。私は、たった1つの武器で多武装のパイロットに勝ったお方を知っていますから!」

 

鈴「そう言えばいたわね、そういう奴が。」

 

シャルロット「それって・・・、あっ!」

 

一夏、千冬以外のギャラリー一同「!!」

 

全員一夏の方を見る。そう、彼は初期では雪片弐型一振りでセシリアや鈴、ラウラと言った代表候補生を倒してきたのだ。

 

千冬「ふむ、あの時一夏はセシリアに『勝負は武器の数で決まるわけではない』と言っていたものだ。」

 

箒「確かに、一夏はクラストに会う以前から強かった。」

 

のほほん「おりむー凄いよねー。」

 

ラウラ「流石は嫁だ。」

 

一夏「い、いや、そんな事は。」テレテレ

 

カプリ「ふっ、そのような理で気を持たせるとはな。だが貴様達にそこまでの力があるかどうかはまた別の話だ。」

 

鈴「言ってなさいよ、吠え面かかせてやるんだから!」

 

 

クリーオス「では始めろ!」

 

悪条件下での戦いが始まる。

 

アクアン「聖なる水の力の前にひれ伏すのです!!」

 

アクアンの専用機「ミティラ」は、楯無のミステリアス・レイディ同様、水の力によるアビリティを持つ機体だ。

アクアンはすかさずミティラの武器「カタラクティス」で、水の大波を起こす。

 

鈴「うわっ、ちょっと!!」

 

セシリア「回避しなくては!!」

 

鈴とセシリアはやっとの事で波をかわすも、部分的にダメージを受ける。

 

鈴「飛び道具が使えない以上、離れたら不味いわね。」

 

セシリア「ええ、お互いに。」

 

鈴とセシリアはなるべく離れないよう、背中合わせで対応する。

 

カプリ「どうした、近づかなければ話になるまい。」

 

鈴「うっさいわね!!(どうにか近づかないと!)」

 

そうこうしているうちにシールドエネルギーが減少していく。

 

セシリア「・・・・このままでは。(かつては一夏さんもこうだった。でも私は一夏さんではない・・・、どうしたら。)」

 

鈴「セシリア、あたしの後ろに掴まって!」

 

セシリア「鈴さん!?」

 

鈴「あたしが盾になるから、近づいたら思い切りお願い!」

 

セシリア「ですが、それでは。」

 

鈴「他に方法がないし、このままジリ貧で負けるよりマシよ!!」

 

鈴は自爆覚悟で行く気である。

 

セシリア「・・・わかりましたわ。」

 

ビリー「おい、マジかよ!?」

 

レベッカ「鈴、無茶はやめなさいよ!!」

 

鈴は心配の声に耳を貸さず、双天牙月を斜め十字に構える。

 

鈴「セシリア、イグニッションブーストであたしを後ろから押して!」

 

セシリアは鈴の後ろにつき、ブーストで一気にアクアンに突っ込む。

 

アクアン「フン、愚かな。いかにも愚者の考えそうなことですわ!」

 

アクアンはカタラクティスで水波動を起こす。しかし・・・・

 

鈴「ぐっ、ううううぅぅーっっっ!!!」

 

セシリア「!!!!!」

 

力の限り押し出す勢いでのイグニッションブーストで、水の波動を除雪車の如く押しのけて行く。そして、鈴は思い切り体当たりをくらわせた。

 

アクアン「っ!?」

 

セシリア「行きますわ!!」

 

セシリアは懐に飛び込んだ瞬間、インターセプターをアクアンの喉元にグサリと突き刺し、切り裂いた・・・・・。

 

カプリ「アクアン!!」

 

アクアン「うう、私とした事が、こんな下等動物に!!」

 

アクアンは首から大量出血し、息絶えた。

 

セシリア「やりましたわ、鈴さ・・・・・、!!!?」

 

鈴「・・・・。」

 

鈴が行った体当たりの衝撃で、甲龍は所々破損し、双天牙月は片方折れ、鈴はアクアンの体に覆いかぶさるように倒れた。

 

弾「おい、鈴!」

 

箒「大丈夫か!?」

 

鈴「・・・セシリア。」

 

セシリア「鈴さん!」

 

鈴「あたしは、ここまで、後はお願い。」

 

鈴は双天牙月のうち、折れていない方をセシリアに託す。

そして、疲れたのか、そのまま気絶してしまった。

 

クリーオス「ふむ、一夏よ。その女を貴様らの元へ戻すが良い。

相棒もその方が良いであろう。」

 

一夏「・・・そうさせてもらうぜ。」

 

一夏は気絶した鈴を抱き上げてギャラリーに避難させる。

 

セシリア「・・・鈴さん、必ず勝ちますわ!!」

 

セシリアはグッとカプリの方に向き直る。

 

カプリ「・・・友を犠牲にして勝利をもぎ取るとは。」

 

レオ「そっちが難癖付けるからだろ!」

 

ラウラ「こんなもの、もはやISでの戦いではない!」

 

クリーオス「これは我らと貴様ら人の子の戦争だ。戦争にあるのは勝利と敗北。それ以外のものは無意味なのだ。」

 

クリーオスはそう言ってせせら笑う。

 

セシリア「・・・その言葉が絶対ではないと、この私が証明してみせますわ!!!」

 

セシリアはいつになく目を鋭くし、闘志を燃やす。

 

敵も残るはカプリ一人、この一騎打ちにセシリアは挑む。



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第三層 part2

鈴が戦闘不能となったものの、アクアンを倒す事に成功した。

ここからはセシリアとカプリの一騎打ちである。

 

カプリ「ふむ、では改めて始めるとしよう。アクアンが死んだのは誤算だったが、まあいい。」

 

カプリはどこかナメた表情でセシリアを見る。

 

セシリア「ええ、正々堂々と。(一夏さんもあの時はこんなお気持ちだったのですわね。)」

 

セシリアは双天牙月の切先をカプリに向ける。

すぐさま次なる戦闘が開始され、カプリは自身の専用機「タクティコス」の両肩に備えられたレーザー砲「アクティナ」で攻撃を仕掛ける。

 

セシリアは双天牙月を盾にレーザーを回避していき、間合いを詰めていく。

 

一夏「・・・・・。」

 

一夏は戦いを見てふと考え込んだ。

 

シャルロット「どうしたの一夏?」

 

一夏「いや、何でもない。それより、セシリアは近接格闘での距離の詰め方が上手くなったな。

 

箒「そうだな、確かセシリアは長期休暇の間はフェンシングをやっていたらしいぞ。」

 

アルゴス「なるほど、あいつの苦手克服にはもってこいだな。」

 

セシリアは前後左右にステップを踏むような動きでカプリを翻弄する。

 

カプリ「くっ、小娘如きが。」

 

カプリはフィールドを広く丸く移動しながら攻撃する。

 

ビリー「これじゃ、いつまでたっても一方的だぜ。」

 

弾「この距離じゃ完全にあいつのペースだぞ。」

 

一見一方的な戦いだが、

 

ラウラ「・・・いや、待て。ひょっとして狙いは。」

 

ラウラはふと何かに気づいたようである。そして、その答えが遂に・・・・。

 

カプリ「!?」

 

カプリはセシリアの動きによっていつのまにか移動範囲を狭められていた。

 

レベッカ「成る程、こういう事だったのね!」

 

クリーオス「・・・・やるな。」

 

セシリアはカプリを袋小路に追い詰める。

 

カプリ「姑息な手を!!」

 

セシリア「あなたに言われたくありませんわ!さあ、行きますわよ!!」

 

セシリアは先ほどの鈴と同じように、両手の武器を十字に構えてイグニッションブーストで一気に間合いを詰める。

 

カプリ「くっ、ならばこちらも行くぞ!!」

 

カプリはレーザーのほかにミサイルやグレネードを放つ。

セシリアはブルーティアーズの破損や肉体的ダメージを負うものの、その目は鈴を思う気持ちに満ち溢れていた。

 

セシリア「これで終わりですわ!!」

 

セシリアは双天牙月をカプリの腹部に、インターセプターを額に深々と突き刺し、そのまま壁に叩きつけた。

 

カプリ「グッ、ゴボッ、な、何故だぁぁ。」

 

カプリは壁に貼り付けられた状態で息を引き取る。

 

セシリア「ハァ、ハァ、ハァ。」

 

セシリアはダメージと疲労でその場に仰向けになった。

 

のほほん「セシィ、やったねー!!」

 

簪「大丈夫!?」

 

防壁が解除されると、一夏はすぐさまセシリアを抱き上げる。

 

一夏「セシリア!」

 

セシリア「一夏、さん、やりましたわ。」

 

レオ「ヒュー、ナイスなお姫様抱っこだな!」

 

箒・シャルロット・ラウラ「むっ!」

 

一夏「ああ、その、すまん、思わず。」

 

千冬「フッ、相変わらず天然だな。」

 

クリーオス「ふむ、思ったよりも強者だったな。」

 

ネロ「では第4層に向かわせてもらう。」

 

クリーオス「よかろう。」

 

 



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第四層 part1

クリーオス「では第4層に招き入れよう。ここからは1名ずつとなる。次の手駒を出すが良い。」

 

一夏「わかった。(ここからだな、選択により気をつけねえとな。)」

 

今回戦う専用機メンバーは、

 

レベッカ「あらアタシ?いいわよ、まっかせなさい一夏!!」

 

レベッカを選択した。近接では箒やラウラ以上の力を誇る彼女を出す。得意の一対一のためか、レベッカはどこか余裕である。

 

クリーオス「よかろう、ならばこちらは、行け、キャンサー。」

 

キャンサー「御意。」

 

キャンサーは専用機「ティモリア」を装着し、フィールドに降り立つ。

 

レベッカ「それで、アタシにはどんな条件が課せられるわけ?」

 

クリーオス「貴様に課せられるのは、飛行の禁止だ。翼をもがれた鳥の如き苦しみを貴様に与えてやる。」

 

レベッカ「えーっ、何よそれ!?飛べないんじゃ半分パイロットじゃなくなってるようなものじゃない!」

 

レベッカはその場で地団駄を踏む。

 

ビリー「落ち着けレベッカ、とりあえず装備は通常通り使えるだけマシだろ。」

 

レベッカ「うっさいわね、わかってるわよ!」

 

今回レベッカは通常と違い、地面に足をつけていなければならないのだ。

 

ラウラ「飛行が不可か、こうなると飛び道具に左右されるな。」

 

千冬「幸い飛び道具はあるものの、地上からの狙い撃ちで対抗しなければならない。」

 

レベッカ「うーん、射撃機能ははっきり言ってお飾りなのよね。」

 

レベッカはやりにくそうな表情をする。

 

キャンサー「フン、悪条件下での戦いに恐れをなしたか?」

 

レベッカ「誰が怖がってるってぇ!?」カチンッ

 

レベッカは挑発に乗る。

 

アルゴス「みんな、知らないだろうけど、アイツは本気で怒ったら手が付けられねえぞ。」

 

一夏「そうなのか?」

 

 

かくして、レベッカとキャンサーの戦闘が始まった。

 

レベッカ「これで何とかしてやるわよ!!」

 

レベッカはクエイクをキャノン砲に変形させ、なりふり構わずミサイルやグレネードを放つ。

 

しかし、キャンサーには命中どころか爆風すら通用しない。

 

キャンサー「甘いな、これでは地上から放たれる花火のほうがまだ正確だぞ。」

 

レベッカ「逃げてばっかの奴に言われたくないわよ!」

 

レベッカはなおも撃ちまくる。

 

キャンサー「ならばこちらも行くぞ!」

 

キャンサーはティモリアの武装「カルマニオン」を手に持ち、レベッカに襲いかかる。その武器の特徴はt

 

レベッカ「!!」

 

レベッカは近付かれた瞬間に危機感を覚えて回避するも、頰に血が滴る程の切り傷が。

 

キャンサー「ククク、よくかわしたものだ。」

 

カルマニオンは、見た目は巨大なハサミのような武器で、まるで人の首をはねるために作られたような構造である。

キャンサーはその先端に付着したレベッカの血を、おぞましい表情で舐め取る。

 

弾「うえっ、なんつーえげつねえ武器使ってきやがる!」

 

ラウラ「貴様ら、どこまで残酷なものを!!」

 

キャンサー「何を今更、ISは兵器として認識されている。我々が今行っているのは、その兵器による『殺し合い』だ!!」

 

エクトル・アルゴス「・・・・・。」

 

ビリー「おい、てめえ!!俺らをテロリストといっしょにすんじゃねえよ!!」

 

キャンサー「だが貴様達が信ずる織斑一夏の存在が、ISによる秩序、統制を乱したのは事実だ!」

 

一夏「・・・・・。」

 

簪「言うに事欠いて一夏のせいにする気!?」

 

弾「訳わかんねー事抜かすなよ!!」

 

キャンサー「フン、ならば友の死をもって貴様らの愚かさを解らせてやろう!!」

 

キャンサーはティモリアを構えると、それをボウガン状に変形させ、射撃アビリティ「エマ・ヴェロナ」を発動し、何本もの太い槍のような針の雨を降らす。

 

レベッカ「こんなの撃ち落としてやるわ!」

 

レベッカは迎え撃つも、弾数の差が大きく、先にレベッカが弾切れとなった。

やむなくレベッカはクエイクを通常時のハンマー状に戻すも、降下する針の山を回避できず・・・・・、

 

レベッカ「っ、ああっ!!」

 

レベッカの身体に針が10本近く突き刺された。

 

千冬「ミラー、大丈夫か!?」

 

キャンサー「どうやらこれで手詰まりのようだな、己の無力さを知り、憂いなく死ぬがよい。」

 

キャンサーはレベッカにとどめをさすべく、さらに多くの針を射出した。

 

レベッカ「くっ、どうすれば・・・・・ゴフッ!」

 

レベッカ、絶体絶命の危機!!

 



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第四層 part2

キャンサーとの一戦で、手負いの身となったレベッカ。

キャンサーはなおもエマ・ヴェロナで攻撃を仕掛ける。

 

対空手段を失ったレベッカは、一先ず回避に徹する。

しかし、飛行が禁止されているため、当然ブーストも出来ず、ダッシュ力に頼るしかない。

 

一夏「レベッカ、大丈夫か!?」

 

箒「無理は危険だぞレベッカ!」

 

レベッカ「心配かけてごめんみんな、でも、アタシは逃げない!!」

 

弾「気持ちはわかるけどよ。」

 

シャルロット「このままだと保たないんじゃないの!?」

 

レベッカは流血しながらも、側転やバック宙で何とか回避する。

 

レベッカ「(くっ、あちこち針が落ちてるじゃない、何本撃てば気がすむのよ。)」

 

レベッカは逃げ惑いながらも対策を考える。

 

キャンサー「いつまで逃げ回るつもりだ?」

 

キャンサーはニヤリとした表情でレベッカを追う。

 

レベッカ「(飛行さえ出来れば・・・・、あっ、そうだ!!飛行ができないなら・・・・!!)」

 

レベッカは何かを思いついたようだ。

 

レベッカ「もうこうなったらやぶれかぶれよ!!」

 

レベッカはクエイクの柄の端を握り、ハンマー投のようにクエイクを振り回す。その高速回転により粉塵が発生する。

 

キャンサー「目くらましのつもりか?無駄な事を。」

 

レオ「レベッカのやつ、ヤケになっちまったか?」

 

ラウラ「いや、あの表情は何かを思いついたようだぞ。」

 

レベッカは勢いを止める事なくただただ振り回す。

 

キャンサー「ええい目障りだ!串刺しにしてくれる!!」

 

キャンサーはエマ・ヴェロナをレベッカの頭部めがけて放つ。

 

レベッカ「好きなだけ撃ってきなさい!!」

 

レベッカはクエイクを振り回しながら微妙にその角度を変え、針を四方八方に弾き飛ばす。弾き飛ばされた針は、壁に何本も突き刺さる。

さらに、クエイクを床に何度も叩きつけ、亀裂が入り、床を瓦礫状にし、周囲に積んでいく。

 

キャンサー「見世物のつもりか?くだらぬわ!!」

 

キャンサーはエマ・ヴェロナを射出し続けるも、レベッカの止まらぬ回転力の前に弾かれ、そして、キャンサーの方も弾切れとなった。

 

キャンサー「ちいっ、弾切れが狙いだったとはな、だがその程度で貴様に勝算がある訳ではない!!」

 

レベッカ「それはどうかしらね?」

 

キャンサー「?」

 

セシリア「皆さん、周りを見てください!!」

 

全員フィールドをよく見てみると、驚きの光景が。

 

キャンサー「うぬ!?これは!!」

 

フィールドを見てみると、レベッカの飛ばした瓦礫は周囲の壁に段々に積み上げられており、さらに高い場所には、エマ・ヴェロナの針がパチンコの釘のような感じで刺さっている。

 

千冬「そうか!!四方位に瓦礫で高台を作り、さらに奴の放った針を逆に利用し、高所に足場を作ったのか!!」

 

ビリー「すげえぜレベッカ、よく思いついたな!!」

 

レベッカ「そう、アタシの狙いは弾切れだけじゃなかったって事!

アンタも今じゃ接近戦しかできないんじゃ、いくら飛べても意味ないわね。」

 

キャンサー「(くうっ!!まさかこのような事になるとは!)」

 

レベッカ「じゃあいくわよ!!」

 

レベッカは全力疾走で瓦礫を駆け上り、針で作った足場を移動していく。

壁際だけでなく、中央付近にも山を作ったので、ジャンプで飛び移る形での移動が可能。

 

キャンサー「フン、だがこっちは飛行で移動が可能だ。貴様の攻撃など届かぬ!!」

 

レベッカ「いちいちうるさいわね、ハエだってもっと静かよ。」

 

レベッカはクエイクで瓦礫の山をすくい上げ、キャンサーに向かって打ち上げる。

 

キャンサー「ぬお、くっ!!」

 

キャンサーは飛行で回避するも、レベッカの飛ばす瓦礫が広範囲で弾け飛んでくるので避けきれない。

そして遂には、大きな塊がキャンサーの胴に直撃し、キャンサーは大きく体勢を崩した。

 

レベッカ「はあぁぁぁっ!!」

 

レベッカはキャンサーに思い切り体当たりして壁に叩きつけ、クエイクを思い切り振り上げ、キャンサーの頭部に一直線に振り下ろし、頭部を割った。

 

キャンサー「ふぐうおおおぉぉっ!!」

 

キャンサーは瓦礫の山を転がるように転落し、力つきる。

 

レベッカ「ハァ、ハァ、ハァ、やっと終わった〜。」

 

レベッカはその場に大の字になる。

 

千冬「急いでミラーの手当てをしろ!!」

 

戦いが終わった瞬間、みんなでレベッカを手当てする。

 

レベッカ「い、ちか、やったわ。」

 

口から血を流しながらも笑顔になるレベッカ。

 

一夏「レベッカ、今は喋るな。ゆっくり寝ておいてくれ。」

 

クリーオス「ふむ、思ったよりやるようだな。」

 

一夏「クリーオス、勝負はまだ始まったばかりだ。」

 

一夏は鋭い目つきでクリーオスを睨む。

 

クラスト「クリーオス、貴様は少し人間を甘く見ているようだな。」

 

クリーオス「逆に貴様は人間を買いかぶっているであろう、クラストよ。まあいい、次の階層に来るがよい。

 

死闘はまだ始まったばかり、果てしなく続くのである。

 



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第五層 part1

レベッカ「ハァ、ハァ、痛っ。」

 

レベッカは刺さった針を体から抜き取り、しゃがみこんだ。

 

箒「大丈夫か、抜かないほうが。」

 

レベッカ「大丈夫、止血すれば何とか。」

 

一夏「すまん、大変な思いをさせたな。」

 

レベッカ「気にしなくていいのよ、勝ったんだし。」

 

レベッカは明るい表情を見せる。

 

鈴「ん・・・・、ふあぁ。」

 

鈴は気がついたようだ。

 

弾「お、起きたか鈴?」

 

鈴「うん、状況は?」

 

一夏「セシリアは無事に勝利したぜ、それに、ついさっきレベッカが敵を倒したところだ。」

 

鈴「そっか。」

 

クリーオス「では、第五層に挑む者を決めるがよい。」

 

一夏「ああ、じゃあ今回はビリーの出番だ。」

 

ビリー「よっしゃー、待ってたぜ!」

 

ビリーは専用機ティガーファングを展開し、近接装備デルタライガーを振り回す。

 

クリーオス「行け、ピスケ!!」

 

ピスケ「はっ、お任せを!」

 

ピスケは専用機「プロフィティア」を展開し、互いに戦闘に入る。

 

クリーオス「貴様に課せられる条件、それは・・・。」

 

クリーオスがパチンと指を鳴らすと、フィールドは途端に暗闇に包まれ、ピスケの姿も見えなくなった。

フィールドの外にいる一夏達からも、確認できるのはビリーの姿のみだ。

 

ビリー「何だこりゃあ!?一体どういう条件だよ!」

 

ピスケ「フン、鈍いようだから教えてやろう、この暗闇で私と戦うことが、貴様に課せられた条件なのだ!」

 

シャルロット「そんな、でもちょっと待って、暗闇なら敵にも見えないはずじゃ?」

 

ピスケ「こっちからは姿がよく見えるぞ。私の目は暗闇の中でも可視化できるようになっているからな。」

 

弾「何だよそれ、汚ねえぞ!!」

 

一夏「見えない状態での戦いか。」

 

ラウラ「私もこんな経験はないぞ。」

 

箒「これじゃあいくら装備が整っていても足りないぞ。」

 

ビリーは、いわば盲目のような状態で戦わなければならないのだ。

 

ビリー「・・・面白えじゃねえか、やってやるぜ!このイカサマ試合をな!!」

 

レベッカ「ちょっとビリー、アンタ大丈夫なの!?」

 

ビリー「こうなりゃもう出たとこ勝負だぜ!!(ホントの事言やあ不安だけどよ。)」

 

鈴「・・・アンタらしいわね、でもビリー、絶対勝ってよね!」

 

ビリー「おう鈴、任せとけ!」

 

ビリーは悪条件ながらも何とか自分を奮い立たせる。

 

ピスケ「フン、動きも読めずどう戦う?」

 

暗闇の中、ビリーとピスケの戦闘が始まった。

 

ビリー「レベッカに習って、ここはヤケクソだ!!」

 

一夏「いきなりヤケクソかよ!」ツッコミ

 

セシリア「ビリーさんらしいですわね・・・。」

 

ビリーが広範囲にデルタライガーを振り回すも、手応えがない。

 

シャルロット「・・・ちょっと待て、何かおかしいよ。」

 

レオ「ああ、奴のISの飛行音が聞こえない。」

 

ピスケ「教えてやろう、私の機体プロフィティアは、ビルゴが独自に開発したサイレントエンジンが搭載されている。」

 

千冬「そんなものが開発されているとは・・・」

 

千冬は自身も知らない技術の存在に感心する。

 

ビリー「(クソッ、これじゃどうしようもねえ。視覚、聴覚共に封じられるなんてな・・・・。)」

 

ビリーはいつ来るかわからない攻撃に身構える。

 

ピスケ「(ククククッ、怯えているな。それはやがて貴様の死への恐怖となるだろう・・・・。)」

 

そうこうしているうちに、ピスケの攻撃が始まる。

 

ビリー「うおっ!?」

 

構えていたデルタライガーに衝撃が走る。

 

レオ「ビリー、大丈夫か!?」

 

ビリー「あ、ああ。何とか。(フィールド中央はまずい、コーナーに移動すりゃ攻撃範囲は限られる筈だ。)」」

 

ビリーはすぐさまフィールドのコーナーへと移動する。

 

簪「成る程、あそこなら攻撃方向が絞られるわ。」

 

クリーオス「(フフフ、甘いな、我らに人の子の観念が通ずるものか、これだから人の子は浅はかなのだ。)」

 

ビリー「おーし、来るなら来やがれ!!」

 

ビリーは前方でデルタライガーを高速回転させ、迎撃態勢をとる。

 

ピスケ「(甘いな、その程度の浅知恵はお見通しだ。)」

 

プロフィティアにはもう1つ、恐るべき特殊能力が備わっている。

 

ビリー「(どうした!?攻撃してこい!!)」

 

すると、突如身体が締め付けられるような感覚が襲う。

 

ビリー「うげ、ぐ、がっ!?何だこりゃ!?」

 

千冬「マイヤーズ、まさか奴の身体にまとわりついているのは!?」

 

クリーオス「ご名答、VTシステムの力によるものだ。」

 

そう、プロフィティアには、かつてラウラを取り込んだVTシステムを、制御可能な状態で備えており、これによりパイロットは身体を自在に変化させる事で、死角からの攻撃が可能となっている。

 

ピスケ「喰らえ、我がアビリティ、『アポリトス・ドロフォニア!!』」

 

ビリー「ぐぎぎ、クソッ!!」

 

ビリーはイグニッションブーストで何とか引き剥がした。

 

ビリー「ゲホッ、ゲホッ!!クソッ、地上でも空中でも変わらねえんじゃ、どうすりゃあいいんだ!!」

 

ピスケ「(よく脱出したな、だがいつまでもつかな?)」

 

視覚聴覚を遮られ、どこに逃げようとも攻撃が届く絶望的な状況にどう立ち向かうのか・・・・。



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第五層 part 2

ビリー「ちきしょう、見えねえし聞こえねえし、どうすりゃあいいんだ・・・・。」

 

ビリーは攻撃を当てられないもどかしさと、予測できない攻撃に対する恐怖から、どこか精彩を欠いた状態である。

 

簪「どうにかしないと、このままじゃ一方的よ!」

 

中央に逃げれば死方向から近接、射撃で攻められ、壁際では背後からの奇襲攻撃、

 

ビリー「視覚、聴覚で追えねえ。となれば・・・・、!! そうだ!!」

 

ビリーは再び壁際による。何かを思いついたようだが。

 

弾「ビリー、どうするつもりなんだよ。」

 

セシリア「壁際にいても死角からの攻撃が!」

 

ピスケ「(クククク、どう足掻こうとムダだ!!)」

 

ピスケはその不気味な笑みとともに姿を異形化し、ビリーに遅いかかる。

 

ビリー「(奴は背後からの攻撃で必ず急所を狙ってくる!)」

 

ビリーは一瞬の判断に全神経を集中させる。そして、自身の体に触れた瞬・・・・、

 

ビリー「っ!!」

 

ビリーは咄嗟に機体の両腕部分のみを解除し、素手でピスケの機体の一部を掴む。

 

ピスケ「(愚かな。)」

 

ビリーは思い切り引っ張ったが、掴んだ部分がブレード状に変化していたため、二の腕と手の平に深い傷を負い、出血する。

 

ビリー「ぐああっ、クソッ!!」

 

ビリーは血まみれの両腕を振り回し、自らの血を撒き散らす。両腕を再び展開し、中央へと戻った。

 

アルゴス「・・・・成る程、その手があったな。」

 

箒「どういう事だ?」

 

ビリー「・・・・・」

 

ビリーは何やら匂いを嗅ぐ動作をしている。

 

ビリー「そこか!!」

 

ビリーは血の匂いのする方向にデルタライガーを瞬時に突き出し、ついにピスケに攻撃を命中させた。

 

ピスケ「何っ!?馬鹿な!!」

 

一夏「まさか、自分から血を流したのは、敵に血の匂いをつけるためか!?」

 

アルゴス「ああ、そうだ。アイツは不良時代、ケンカに明け暮れていたせいか、血の臭いに敏感になったんだ。」

 

レベッカ「そういえばそんな時期あったわね。それでアイツは地元じゃ狂犬って言われてたのよ。」

 

ラウラ「これはまさに苦肉の策だな。」

 

ピスケ「くっ、こんな浅知恵で状況を変えるとは、だが貴様の体力もそうもたないだろう!!」

 

ピスケは戦法を破られたことに憤怒し、声を出してしまう。

 

ビリー「行くぞ!散々手こずらせた礼をたっぷりしてやるぜ!!」

 

ビリーは縦横に動きながら匂いを頼りにピスケを追う。ピスケは、ビリーが壁に寄らないようになった事で、アポリトス・ドロフォニアを封じられた。

 

ピスケ「くそっ、このアビリティは空中では使えん!!」

 

ビリー「よお、そろそろケリつけようぜ、隠れんぼやってんじゃねえぞコラァ!!」

 

ピスケ「よかろう、貴様のその肉体を引き裂いてくれるわ!!」

 

ピスケはイグニッションブーストで接近し、ビリーに体当たりをする。しかし、ビリーは咄嗟に手でピスケを掴み引き寄せ、手触りでピスケの頭部を確認する。

 

ビリー「ようやく捕まえたぜ、覚悟しろ!!」

 

ビリーはデルタライガーの形状を変え、ピスケの首に巻きつけた。

 

ピスケ「ぐがっ、は、離せ、はなせえぇぇっ!!」

 

ボキッ!!!!

 

ビリーはそのままデルタライガーを締め、ピスケの首をへし折り、トドメに頭部を叩き割った。

 

ピスケ「へげぇああっっ!!」

 

ピスケはその場に倒れた。

 

ビリー「ハア、ハア、ゲフッ、ど、どんなもんだ!!」

 

鈴「ビリー、大丈夫!?」

 

シャルロット「かなり出血してるよ!!」

 

ビリー「へ、へへ、どーって事ねえぜ。」

 

急いでビリーの手当てを行う。

 

クリーオス「成る程、執念深いものだな。」

 

一夏「当たり前だ。」

 

ネロ「さて、次は第6層、ちょうど半分まで来たな。」

 

クリーオス「ふっ、まさかピスケが敗れるとは、少し甘く見ていたようだ。」

 

千冬「ヤワな鍛え方はしていないのでな。」

 

クリーオス「フッ、だがブリュンヒルデ、貴様の力も無に帰するのは時間の問題だ。」

 

悪条件を自虐的な奇策で打開し、見事勝利を収めたビリー。

 

しかし、ここまでの死闘が続く中、階層はようやく半分にたどり着くところである。



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第六層 part 1

クリーオス「では、第六層で戦う者を決めよ。」

 

一夏「・・・・その前に一つ聞いていいか、クリーオス。」

 

クリーオス「ん?」

 

一夏「ここまで勝ち進んではいるんだが、どうにも納得出来ないことがある。お前、仲間が俺たちに殺されているのに、平然としているのは何故だ?」

 

千冬「ふむ、確かに妙だな。」

 

クリーオス「その答えはいずれわかる。我のところにまで来られればの話だがな。」

 

ネロ「・・・・随分勿体ぶるな。」

 

一夏「まあいい、とりあえず次は・・・、よし、ここは箒で行こう!」

 

箒「私か。」

 

クリーオス「成る程、ではこちらからは、行け、スコルピオ。」

 

スコルピオ「はっ!!」

 

スコルピオは専用機「ディリティオ」を纏う。

 

クリーオス「さて、今回の条件だが、それは、戦いが始まるとともにその小娘に直接教えるとしよう。

 

ビリー「ってことは、俺らには一切わからねえってのか?」

 

鈴「また随分とせこい真似するじゃない。」

 

スコルピオ「何とでもほざけ。まあ1つ確かなのは、この小娘にとっては最も苦しいものという事だ。」

 

箒「(私にとって最も苦しい?)」

 

箒は若干不安になる。

 

一夏「箒、どんな条件かわからないが、気をつけろ!」

 

アルゴス「心配すんな、俺たちがついてる!!」

 

レベッカ「箒、頑張れ!!」

 

箒「ああ、わかった!!」

 

クリーオス「では、始めよ、スコルピオ!」

 

スコルピオ「はっ!!」

 

スコルピオは戦闘開始とともに、指から黒い糸のようなものを放つ。

 

箒「手から糸か、だがその程度のもの、切り裂いてくれる!!」

 

千冬「篠ノ之、迂闊に行くな!」

 

スコルピオ「おやおや、随分単純だな。」

 

スコルピオが放った黒い糸は、箒の頭に刺さるようにつながる。

 

箒「!?、何だ、これは、抜けない!!」

 

スコルピオ「フフフ、地獄へ案内しよう。」

 

箒「!?」

 

箒の身体は、捨てられた操り人形の如く力が抜け、目からは輝きがなくなった。

 

弾「おい、何だよこれ!?」

 

レオ「箒に何しやがった!?」

 

クリーオス「あの小娘なら、スコルピオが作り出した幻想の中だ。」

 

簪「幻想、どういう事なの!?」

 

クリーオス「我は仮にもクラストと同じ創世を司る者。故に人の子の弱さを見ることが可能だ。」

 

エクトル「じゃあ、その精神世界は!」

 

クリーオス「そう、人の子の心の弱さを元に作られたものだ。あの小娘は、見かけによらず精神面が脆いと見える。」

 

千冬「・・・確かにそうだ。」

 

そう、箒は疎外感、姉への嫌悪感、コンプレックスと言った過去のトラウマから、「孤独」に弱い方であるとされる。

 

クリーオス「今頃奴は、精神世界で悲痛な叫び声を上げているだろう。」

 

セシリア「・・・箒さん。」

 

セシリアは心の中で箒の無事を祈る。

 

ラウラ「こんなもの、ISでの戦いの次元ではないぞ。」

 

シャルロット「箒、大丈夫かな。」

 

一夏「大丈夫だみんな!俺たちの思いはきっと箒に届く!」

 

 

Side箒

 

箒「・・・ここは、どこだ?」

 

箒は暗闇の中に一人立っている。すると、離れたところにスコルピオの姿が。

 

スコルピオ「ようこそ、精神の幻想世界へ。」

 

箒「・・・・精神の幻想世界?」

 

箒は訳がわからないという表情を隠せない。

 

スコルピオ「この力は、クリーオス様に授かったものでな、ディリティオのアビリティ「カコフィモス」は、貴様ら人の子の弱さを見抜き、それによる精神ダメージを与えるアビリティだ!」

 

箒「私の、弱さだと。」

 

スコルピオ「わからぬようだな、では試すとしよう。」

 

スコルピオが指を鳴らすと、そこには束の姿が。

 

箒「姉さん!?」

 

スコルピオ「そうだ、お前の心の中に潜む心の弱さの元が具現化したのだ。」

 

束「ヤッホー、箒ちゃーん!」

 

それはいつもの束そのものだった。だが、何か不穏なものを感じる。

 

※本人と区別するため、幻影の束という名前設定にしておきます。

 

幻影の束「それにしても、専用機まで持たせてあげたのに、全然強くならないねー。」

 

箒「くっ。」

 

箒は唇を強く噛みしめる。

 

幻想の束「そんなんじゃいっくんは振り向いてくれないよ、まあこの束さんがいっくんをもらうかも、だけどね。」

 

箒「っ、黙れ!貴方に、何がわかるんだぁぁぁっ!!!」

 

箒は殺意が湧き、幻影の束を殺そうとする。

 

束「いいねー箒ちゃん、でも、相手は私じゃないでしょ!」

 

箒「ぐっ!?」

 

箒はいつのまにかスコルピオの攻撃を受けた。さらに、幻影の束は、無人機を召喚する。

 

スコルピオ「ハハハッ、貴様にこの障壁が超えられるであろうか?」

 

箒「うぐっ!がはっ!!」

 

スコルピオの攻撃に加え、無人機の容赦ない近接攻撃に箒はよろめく。

 

箒「ぐっ、こんな事で、負けるわけには・・・。」

 

箒は膝をつきながらも何とか立ち上がる。

果たして箒は、自分の心の闇を、自らの力で打ち払う事が出来るのか・・・・。



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第六層 part 2

第六層での戦いは、スコルピオの作り出した精神世界、 その中で箒は孤軍奮闘する。

 

Side現実世界

 

簪「みんな見て、箒の身体が!!」

 

一同「!?」

 

箒を見ると、彼女の口からは血が流れ出ており、身体にも所々傷が。

 

ビリー「おい、このままだと箒やべえんじゃねえか!?」

 

エクトル「まさか、精神世界で受けたダメージが、全て現実になるのか!?」

 

鈴「何それ!?そんな条件あんまりよ!!」

 

クリーオス「甘いぞ人の子らよ!今我らがいるこの戦場は、生か死か、その2つしかないのだ!戦いは、どちらかが死を迎えるまで終わることはない!」

 

 

一夏「くっ・・・・(箒、大丈夫か。)」

 

セシリア・シャルロット・ラウラ「(箒(さん)・・・・・。」

 

ネロ「今は彼女を信じるしかない。」

 

 

Side精神世界

 

みんなが心配する中、箒は想像以上に手こずっていた。

 

箒「ハァ、ハァ。」

 

幻影の束「ふふん、少しは強くなったね箒ちゃん!でもまだまだだよー!!」

 

箒「ぐっ、はああぁぁぁっ!!せいやっ!!!」

 

箒はがむしゃらに無人機に斬りかかり、強引ながらも次々と真っ二つにしていく。

 

スコルピオ「さて、ザコの役目が終わったところで、今度は私が行こう!!」

 

箒「初めから堂々と勝負したらどうだ!?」

 

スコルピオ「これはまた死を急ぐ小娘だ。食らうがいい!!」

 

スコルピオはディリティオの武装を展開させる、両手指の先からは先程の糸が出てきた。しかし、その先端には・・・

 

箒「!?」

 

箒は驚愕した。そこには左右それぞれの手から放たれた糸で繋がれたISが出現した。

それらは言うなれば操り人形である。そして、驚くべきことはそれだけではない。

それらは段々と姿形を変えていき・・・・・・、

 

箒「い、一夏!?それに、千冬さん!?」

 

スコルピオ「フハハハハッ、驚いたか!これが私のディリティオのアビリティ『クロノス』だ。先端に繋ぎ止めた機体やそのパイロットを、意のままの機体、人物に変えることが出来るのだ!そして、その人格や能力をコピーし、忠実な僕として使役できる!!」

 

箒「何だと!?」

 

幻影の束「おー、ちーちゃんといっくんのお出迎えだね!家族団欒だよ!!」

 

箒「・・・ふざけるな。」

 

※本人達と区別するため、名前の後ろに「コピー」を付けます。

 

一夏コピー「よう箒、せっかくこの世界で会えたのに、ムスッとするなよ。」

 

千冬コピー「篠ノ之、一夏はそう簡単にはやらんぞ。欲しければ私から奪い取ってみせろ!」

 

箒「やめろ・・・・、やめてくれ!」

 

箒は耳を塞ぎ、その場にしゃがみ込んだ。

 

スコルピオ「貴様の心に巣食う障壁、それは恐らくこの二人も関係しているのだろう。幼き頃から慕う男と、それを守ってきた唯一の肉親の存在。貴様は、己がこの姉弟愛の間に入り込める程の者ではないように思えてならないのだろう?」

 

スコルピオは歪んだ笑みで箒を見下す。

 

箒「・・・黙れ。」

 

スコルピオ「肉親からの愛に逸れ、他者と距離を置いてきた貴様は、一夏と出会った事で愛を心に宿した。だが、己の素直でない性が、愛を伝えることは愚か、一夏を守りし存在である千冬に立ち向かう心を殺している。」

 

箒「だまれぇぇぇっ!!!」

 

箒の表情は引きつっている。

 

スコルピオ「やれやれ、猪突猛進だな、行け一夏、千冬、力の差を思い知らせろ!」

 

千冬コピー「行くぞ篠ノ之!!」

 

一夏コピー「剣道ではお前に負けたが、ISじゃどうかな!?」

 

千冬コピーと一夏コピーは箒に斬りかかる。

箒は雨月や空裂でそれぞれの攻撃を受け流すが、

 

千冬コピー「甘い!!」

 

箒「ぐっ!!」

 

コピーといえど、仮にもあの千冬を一夏に加えて相手をするので、通り切らない。

 

一夏コピー「ほら、どうしたよ!?」

 

箒「一夏・・・・。」

 

箒、絶体絶命の状況の中、外にいる者達の心の叫びが届くのだろうか・・・・。

 

 



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第六層 part 3

箒以外「・・・・・・。」

 

箒とスコルピオの戦いは長引く一方、現実世界で皆は息を呑んで箒を見守る。

 

クリーオス「フン、何という顔をしているのだ人の子らよ。それほどまでにあの小娘が心配か?」

 

ビリー「・・・・テメエ。」

 

簪「何を今更。」

 

クリーオス「人の子は常に希望があると臆面もなく考える。だが、時には希望のない現実に打ちひしがれるものだ。これを見ればそれが分かるであろう。」

 

クリーオスは、スコルピオの精神世界の映像をモニターに映す。

 

ネロ「こっ、これは一体!?」

 

レベッカ「ってゆうか、なんであそこに一夏と織斑先生が!?」

 

弾「おい、これって箒が一夏と織斑先生相手に戦ってるってことかよ!?」

 

鈴「はあっ!?こんなの勝てるわけ」

 

一夏「大丈夫だ!箒は絶対に勝つ!!」

 

他のみんなが絶望的に思うのを振り払うべく、一夏が一喝する。

 

セシリア「そうですわ!箒さんがこんな事で負けませんもの!!」

 

ラウラ「あそこにいるのは偽物だ。」

 

シャルロット「箒、頑張って!!」

 

クリーオス「フン、あの小娘をどう言おうと、貴様らには何も出来ぬ!」

 

エクトル「それはどうかな、宗教でも『祈りは届く』という教えがある。」

 

アルゴス「・・・・てめえが何故クラストに敗れたのか、何となくわかった気がするぜ。」

 

 

 

Side精神世界

 

箒「ハァ、ハァ、ま、まだだ・・・・・。」

 

一夏コピー「しぶといな箒、流石、俺に惚れただけの事はある。」ニヤニヤ

 

箒「黙れ、偽物風情が!!」

 

千冬コピー「貴様こそ黙らんか!!」

 

千冬コピーの一撃が箒の頭に直撃する。

 

箒「うあっ!!」

 

箒の髪のリボンが切れ、ポニーテールが解けてしまいながら、箒は床に倒れた。

 

箒「くっ・・・・(今の私では、歯が立たないというのか。)」

 

幻影の束「箒ちゃーん、もうお眠?」

 

箒「・・・・・。」

 

箒は、気を失いかける程のダメージを受けた。

 

箒「・・・このまま、死ぬ、の、か・・・・・。」

 

声「・・・き、・・・うき、・・・ほうき、箒!!」

 

重傷の箒の頭に、誰かの声が響く。

 

箒「・・・・だ、誰の声だ?」

 

一夏「箒、諦めるな!!」

 

箒「一夏!?」

 

箒は意識を少し取り戻す。

 

ネロ「箒、何を躊躇っている!?」

 

セシリア「箒さん、負けないで下さい!!」

 

シャルロット「僕たちがついてるよ!!」

 

ラウラ「箒、立ち上がるんだ!!」

 

エクトル「箒、心の闇に打ち勝つんだ!!」

 

アルゴス「こんな奴、お前の太刀でぶった斬れ!!」

 

鈴「箒、こんなとこで倒れんじゃないわよ!!」

 

弾「箒、奴に意地を見せろ!!」

 

レオ「自分を信じるんだ!!」

 

簪「どんな壁も私達で越えよう!!」

 

ビリー「お前は決して弱くねえぜ!!」

 

レベッカ「大和魂を燃やすのよ箒!!」

 

のほほん「しののんファイト〜!!」

 

千冬「信じているぞ、篠ノ之。」

 

箒「・・・・皆」

 

箒は立ち上がり、気がつくとその手には、一夏からもらったリボンを握りしめていた。

 

箒「・・・そうだ、私には、一夏が、同志ががいる!!」

 

箒はリボンを結び直し、トレードマークのポニーテールを結ぶ。

 

スコルピオ「そんな体で何ができる?」

 

箒は空裂を両手で握りしめて構え、スコルピオに向き直る。

その目は、燃え盛る炎の如く輝く。

 

スコルピオ「ほう、まだ力を残していたか。まあいい、そろそろこの人形劇もお開きとしよう。行け、一夏、千冬!!」

 

一夏コピー・千冬コピー「・・・・・。」

 

コピーに命令するも、どうしたことか、微動だにしない。

 

スコルピオ「何をしている!?かかれ!!」

 

スコルピオはしきりに命令するも動かず、それらは水をかぶった泥人形の如く崩れていく。

気がつくと、幻影の束も消え始めた。

 

スコルピオ「馬鹿な!?何故私の精神世界でこんな事が!?」

 

箒「・・・ここには、私の知り得る者はおらん!!」

 

叫び声と共に、スコルピオと箒は現実世界に戻った。

 

スコルピオ「ぐっ、貴様。」

 

箒「ハァ、ハァ。」

 

一同「箒(さん)(篠ノ之)!!!!」

 

箒「さあ、いざ尋常に勝負!!」

 

スコルピオ「小癪な!!」

 

箒とスコルピオの斬り合いが始まる。

 

クリーオス「何っ、スコルピオの精神世界を抜け出すとは!!」

 

クラスト「クリーオス、1つ教えてやろう。人の子らには、心の力、『祈り』がある。その祈りが、箒を奮い立たせたのだよ。」

 

クリーオス「・・・くっ!!」

 

箒「トドメだ!!」

 

箒は空裂でスコルピオの右肩から腰までを切り裂き、真っ二つに。

 

スコルピオ「うぐぅおあああっっ!!」

 

切断された体からは大量に血が飛び散り、スコルピオはおぞましい断末魔と共に死んだ。

 

一夏「箒、よく頑張ったな。」

 

箒「一夏!!」

 

箒は思わず一夏に抱きつく。

 

一夏「うおおっと、大丈夫か?(うはっ、改めて思うけど、箒すげえ胸だなぁ。)」

 

セシリア・シャルロット・ラウラ「むっ!!」

 

レオ「ヒュー、一夏!ラッキーだな!」

 

鈴「はいはい、ラブコメは後。」

 

一夏「どうだクリーオス、もう半分突破したぜ!」

 

クリーオス「・・・面白い、ならば残りも制してみるがよい!!」

 

長い第六層の戦いが終わり、第七層へと向かう。



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第七層 part 1

12神座との戦いは半分を終え、後半戦に入ろうとしていた。

 

クリーオス「では、第七層に挑むものを決めるがよい。」

 

一夏「後半の最初か・・・、じゃあここは、弾で。」

 

弾「俺か、このタイミングで大丈夫か?」

 

鈴「アンタね、いつかは出番来るのわかってたんだから。」

 

弾はこれまでの戦いを見てきた事から、若干の緊張感に襲われる。

 

クリーオス「では行け、ジュゴーン。」

 

ジュゴーン「はっ。」

 

ジュゴーンは弾に歩み寄り、専用機『イルシオ』を装着する。

弾も専用機骸魔を装着し、すぐさま戦闘を開始する。

弾は魔葬鎖刃で攻撃を仕掛け、ジュゴーンから先制をもらう。

 

弾「おいオッサン、その年でパイロットたあ不相応じゃねえの?」

 

ジュゴーン「侮るな小僧。イルシオのアビリティ発動!!『フルクトゥス』!!」

 

その言葉と同時に、ジュゴーンは周囲を驚かせる行動に出た。

 

弾「な、何だ!?」

 

レベッカ「どうなってんのよあれ!?」

 

何と、ダメージを受けた筈のジュゴーンの機体が再生し、シールドエネルギーも回復して行く。

 

エクトル「クリーオス、このシステムは何なんだ!?」

 

クリーオス「フフフ、我らは貴様たち以上にISの研究開発を進めているのでな。貴様たちには想像もできぬ力を、こちらはいくつも持っているのだよ。」

 

ネロ「つまり、今回の条件は、不死の力に勝てということか。」

 

ビリー「こんなアビリティ汚ねえぞ!!」

 

一夏「くっ、ここに来て最悪の条件だ!」

 

ジュゴーン「さて、始めるとしよう。」

 

弾「そ、そんな虚仮威しにビビるかよ!!」

 

シャルロット「弾、気をつけて!!」

 

弾はやや萎縮しながらも果敢に攻撃を仕掛ける。

 

弾「おらっ、回復される前に攻撃だ!」

 

魔葬鎖刃による連続攻撃を行うも、被弾のダメージより回復の方が早い。

 

ジュゴーン「その程度か小僧、それだけでは吾輩には勝てぬぞ。」

 

弾「うるせぇ!!コイツならどうだ!!」

 

弾は飛び道具である聖封十を投げ、頭部に直撃させるも、同じであった。

脳の断面が見えるほど切り裂かれた頭部は、瞬く間に元どおりである。

 

エクトル「馬鹿な!?致命傷を負って何故生きている!?」

 

レベッカ「アイツ化け物!?」

 

レオ「ありえねえだろこんなの。」

 

弾「ぐっ、どうすりゃいいんだ・・・・。」

 

ジュゴーン「フフフ、この力は選ばれたもののみ扱えるもの。この不死の力をもってすれば、選ばれた者たちによる、我らが目指す完全なる新世界を築けるのだぞ!!」

 

ネロ「・・・・外道が。」

 

クリーオス「だが、人の子らは皆不老不死を望む者。際限のない欲望は、時に自然の摂理にも背く。我々の望む新世界は、愚かな人の子らの望む楽園となるのだ。」

 

再生能力を使われることにより、弾にとっては圧倒的に不利なデスマッチである。

果たして、ジュゴーンを攻略する術はあるのだろうか・・・・。

 



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第七層 part 2

ジュゴーンの驚異的な再生能力を目の当たりにし、弾は苦戦を強いられることに。

 

ジュゴーン「どうした小僧、貴様の力はそれまでか?」

 

弾「ちっ、うるせぇ!!」

 

一夏「熱くなるな、弾!!」

 

一夏の声も虚しく、弾はひたすら攻撃を繰り返す。

 

箒「このままじゃ埒があかないぞ。」

 

レベッカ「あの再生能力をどうにかできれば・・・。」

 

苦戦する弾をただ固唾を呑んで見守るしかない一同は歯痒さを感じていた。

 

ビリー「ラウラ、経験あるお前ならああいう時どうする?」

 

ラウラ「済まないが、あの手のシステムは私でも解らん。」

 

レオ「クソッ、打つ手なしかよ!」

 

 

ジュゴーン「そらっ!!」

 

弾「ぐわっ!!」

 

ジュゴーンはイルシオの武器『シーフォス』で弾の額と左頬を斬りつけた。咄嗟に回避したものの、かなりの流血である。

 

セシリア「弾さん!!」

 

シャルロット「大丈夫!?」

 

弾「ぐっ、どーって事ねえぜ!」

 

そう話しているものの、かなり精神的に追い詰められている。

 

千冬「くっ、こんな時束が居れば!」

 

 

数分で弾はかなりの出血をし、体力気力共に瀕死の状態に。

 

弾「ぐっ・・・く、そ、があ。」

 

弾はやけになってジュゴーンに体当たりを食らわせる。

 

ジュゴーン「フン、そこまでとはな。」

 

ジュゴーンの身体はまたしても再生する。が、この時弾は違和感を覚えていた。

 

弾「どういう事だ、さっきから奴の身体と機体が再生するのはまだしも、エネルギーまで減った気配がないのは気のせいか?」

 

かなりの長丁場にもかかわらず、ジュゴーンのシールドエネルギーが減っていない。

 

弾「?何だ、この音は。」

 

弾は戦闘の最中、ある音が気になっていた。それは、ジュゴーンの再生能力が働いている間に小さいながらも聞こえており、

その音が再生能力と関係しているのではないかという推察に至る。

 

弾「・・・(この音、授業で習ったことがあるぜ。確かエネルギー供給時に発生する、一種の通信音だ。

あいつの回復時に聞こえてくるこの音もそれだとしたら・・・・)」

 

弾は一旦ジュゴーンから離れて、旋回しながらジュゴーンだけでなく、部屋の隅々まで攻撃を当てる。

 

 

ビリー「おい弾、どこ狙ってんだよ!?」

 

ジュゴーン「やけになったか小僧、だが貴様に勝ち目はない。」

 

弾「この空間のどこかに、再生能力の供給源があるとしたら、どこかに。)」

 

 

一夏「・・・弾、どうやらあの再生能力の原理がわかったようだな。」

 

レベッカ「えっ、そうなの!?」

 

セシリア「ということは、あの再生能力はジュゴーンの機体のアビリティではないという事ですの?」

 

ネロ「確かに、有り得ない話じゃない。」

 

 

しばらく弾の攻撃を平然と受けていたジュゴーンは、

 

ジュゴーン「(・・・・まさか、この力の源を嗅ぎつけたか!?)」

 

ジュゴーンは焦りを見せてしまい、まだ攻撃されていない部屋の一部の前に出ようとするが、

 

弾「どうやら、答えはそこにあるみてえだな!!」

 

弾は部屋の天井を思い切り攻撃した。すると、天井が崩れ落ち、そこには装置のようなものが。

 

弾「こんなもんぶっ壊してやるぜ!!」

 

弾は魔葬鎖刃で装置を巻き込み、引きちぎった。

 

千冬「成る程、あの装置から再生能力のためのエネルギーを供給させていたのか。」

 

レオ「何だよそれ、全然フェアじゃねえぜ!!」

 

アルゴス「汚ねえぞこんなやり方!!」

 

ジュゴーン「ちいっ、こんな小僧に見破られるとは!!」

 

ジュゴーンは再生機能を失い、弾はこれまで以上に攻撃を加える。

 

弾「こいつで引導を渡してやるぜ!!」

 

弾は聖封十を握り、新たなアビリティ「断罪十字封」を発動した。

 

弾「いくぜ、断罪十字封!!」

 

聖封十の長い方が急速に伸びて尖り、レイピアのようなその先端は、ジュゴーンの眼を貫いた。

 

ジュゴーン「うぐうううおおおおおっ!!」

 

ジュゴーンは悶絶し、その場に伏せてしまう。弾はとどめに魔葬鎖刃で首を締め付け、骨をへし折った。

 

ジュゴーン 「く、そ、我ら聖なる十二神座が、こんな汚れ共に・・・・。」

 

ジュゴーンは倒れた。

 

 

弾「ハァ、ハァ、あっぶねー!!ウエッ!!」

 

シャルロット「弾、あんまり喋っちゃダメ、とりあえず休んでね。」

 

 

一夏「どうだクリーオス、下手な小細工で勝てるほどISでの勝負は甘くねえぞ!!」

 

クリーオス「せいぜい吠えていろ、そのまま第八層まで来るがよい。」

 

 

予想外かつ前例のない能力に苦戦するも、なんとか勝利を収めた弾であった。



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第八層 part 1

クリーオス「では、第八層に挑む者を決めよ。」

 

一夏「よし、ここはラウラでいこう!」

 

ラウラ「任せろ一夏!」

 

クリーオス「ふむ、ではこちらからは、行け、デュモイ。」

 

デュモイ「はっ。」

 

デュモイとラウラが対峙する。

 

クリーオス「ここまで来るとは正直侮っていた。だがその悪運もここまでとなるだろう。デュモイはISのパイロットとしては世界屈指の経験を積んでいる。」

 

一夏「さて、どうだかな。ラウラは生徒の中じゃ飛び抜けてキャリアがあるぜ。ナメてるとそっちこそ痛い目見るぞ。」

 

ラウラ「(い、一夏が私の事を、褒めてくれている♡)」

 

千冬「ボーデヴィッヒ、恋する乙女モードは今解除しておけ。」

 

ラウラ「はっ、教官!!失礼しました!!」

 

一同「・・・・・。」

 

程なくして、ラウラとデュモイは中央でISを装着する。だが不思議なことが。

 

ビリー「何だ?今までの奴らとなんか違うような・・・・。」

 

簪「あの機体、武器らしきものが一切見当たらない。」

 

弾「はぁ?何だそれ。」

 

レベッカ「ナメてるのかしら?」

 

ラウラ「貴様、どういうつもりだ。」

 

デュモイ「真の神でありしクリーオス様に逆らう愚か者達よ、偽りの神である一夏共々、貴様達に我らが裁きを下す!!」

 

ラウラ「黙れ、一夏は私の嫁だ!貴様らの神話めいた戯言で一夏を侮辱する事は、この私が許さんぞ!!」

 

ラウラは本気モードで行くと言わんばかりに、眼帯を外して鋭い眼を向ける

 

デュモイ「我が愛機『ビブリオ』の力を見せてやる。」

 

デュモイは何やら低い声で呪文を唱え始める。

 

レオ「何だ、戦闘中に何ゴニョゴニョ言ってんだよ。」

 

デュモイ「食らうがいい!!」

 

その瞬間、

 

ラウラ「!?」

 

床から槍のようなものが現れ、ラウラめがけて襲いかかる。

 

ラウラ「くっ、AICでなんとか!!」

 

デュモイ「ムダだ。」

 

その槍はAICをものともせず、ラウラの機体に直撃する。

 

ラウラ「うああっ!!」

 

ラウラは思わず腹を抑え込む。

 

デュモイ「ビブリオのアビリティは、周囲の物体の一部を抽出し、それらを意のままに形状変化させることができる。」

 

ラウラ「ぐううっ!!」

 

シャルロット「ISのアビリティなら、何でAICで停止させられないの!?」

 

クリーオス「人の子らによるISの技術は知り尽くしてある。

我らの技術は人の子らによるものとは次元が違うのだよ。」

 

デュモイ「これはクリーオス様に授かりし知の力。武装という小細工など必要とはせぬ。」

 

箒「今回の条件は、身の回りのものが全て的になると言うことか。」

 

 

 

ラウラ「(距離を開けるとまたあの攻撃がくる。ならば接近戦だ。)」

 

ラウラはイグニッションブーストで一気に間合いを詰める。だが、

 

デュモイ「小賢しい!!」

 

ラウラ「うっ、がっ!!」

 

ラウラをすぐさま激しく殴り、蹴り飛ばす。

デュモイは見かけによらず近接格闘に長けている。

 

アルゴス「経験は伊達じゃねえようだな。」

 

鈴「冷静に言ってる場合!?」

 

ラウラ「くっ、攻撃をかいくぐって近づけばこの有様か。」

 

デュモイ「どうした、人の子よ。その程度か?」

 

箒「・・・切り札が通用しないとなると、これはかなり厳しいぞ。」

 

セシリア「ラウラさん・・・。」

 

 

これまでにない苦線を強いられるラウラ。人間とそれを超えし者の差を見せられた今、どう戦うのか・・・・・。



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第八層 part 2

デュモイとの戦闘では、ラウラは防戦一方に陥りやすく、どこへ逃げても、周囲の物体がデュモイのビブリオのアビリティにより、武器と化してラウラにダメージを与える。

 

デュモイ「どうだ!これが我が機体ビブリオのアビリティ『デフォルマ』だ!!」

 

ラウラ「くっ、姑息な手を・・・・。」

 

ラウラは興奮しているせいか、金色の隻眼が鋭くなっている。

 

デュモイ「どこへ行こうと貴様を追い詰めて行くぞ・・・・・。」

 

 

 

Sideギャラリー

 

弾「くそっ、あんな攻撃汚すぎるぜ!!」

 

ネロ「だが、これまでの敵の特殊能力にも根拠となるものがあった。恐らくあの能力も技術によるものだろう。」

 

レベッカ「そうだとしても、どうやってそれを突き止めるわけ?」

 

千冬「それは本人次第だろう・・・・。」

 

 

Sideラウラ

 

ラウラ「(一先ず奴のアビリティを見極めなければ・・・・。)」

 

ラウラは回避優先でデュモイの交易を観察する。

 

デュモイ「ふん、いつまで逃げ続けるのだ?。」

 

ラウラ「くっ!!」

 

逃げ場のない檻の中を駆け回るがごとく、ラウラはデュモイの攻撃を回避していく。

回避しきれない場合はワイヤーブレードとAICで攻撃を受け止めて、ダメージを最小限にとどめる。

 

だが、デュモイの力はこんなものではなかった・・・・・。

 

デュモイ「逃げ足だけは誉めてやろう。だが、それもここまでだ!」

 

デュモイは不意に地面に掌をあてる。すると、地面から見覚えのある黒い影が。

 

ラウラ「何っ、これは!?」

 

デュモイ「フハハハハハッ、私の力は単に武力を増すだけではない!この力をもってすれば、いくらでも忠実な僕を作り出せるのだ!!」

 

 

一夏「あれは、まさか、この間学園で騒ぎになった、」

 

ネロ「間違いない、PVTシステムだ。」

 

簪「だけど、あれって人体に寄生する者なんじゃないの?」

 

クリーオス「学園での実験に使われたのはまだ試作段階だった、ダリルはいい捨て駒を

演じてくれたものよ。」

 

千冬「・・・貴様、生徒の命を!!」

 

クリーオス「ほう、ただ一人の肉親をはじめ、生徒にISの知識と力を与え、危険な戦いに赴かせてきた貴様が言うか?」

 

千冬「っ!?」

 

千冬はその言葉にわずかながら動揺をみせる。

 

クラスト「クリーオス、貴様!!」

 

デュモイ「何を憤っている、それは事実であろう。すべては篠ノ之束から始まり、貴様という存在が今の世を作り出したのだからな。その因により、ここにいる人の子らは戦うことになっている。」

 

 

デュモイのセリフを聞いた途端、ラウラの中で何かが爆発した。

 

ラウラ「・・・・・教官を侮辱するとは、許せん!!!」

 

箒「ラウラ、落ち着け!」

 

今まで回避に徹していたが、突然真っ向から勝負を挑むように。それは、いつもの冷静なラウラではないが。

デュモイとの間合いを一気に詰め、近接格闘で畳みかける。

 

デュモイ「ふん、自棄になったか。」

 

 

アルゴス「珍しくヒートアップしてるな、ラウラの奴。」

 

セシリア「ご自分の信じる人を侮辱されれば当然ですわ。」

 

レベッカ「だけど、あんなにまっすぐ突っ込んで大丈夫なの?」

 

ビリー「思うんだけどよ、本当の『強さ』ってやつは、追い詰められた時にこそ出せるもんなんじゃねえか?」

 

レオ「ま、時には馬鹿みたいに突っ込むのもありってことだな。」

 

 

戦況はそれほど変わらないが、ラウラ本人からすれば、精神的に大きな一歩を踏み出したところだ。

 

デュモイ「こざかしい!!」

 

ラウラ「ぐぶうっ!!」

 

容赦なく殴られ、口を切り、腹部を強く蹴られたことで血反吐を吐く。

 

弾「おい、これじゃなぶり殺しだぜ!!」

 

のほほん「ラウラウ、大丈夫!?」

 

シャルロット「ラウラ、無茶はやめて!!」

 

ラウラはボロボロになりながらも、デュモイとの間合いを何度も詰める、一見何の意味もなさそうだが。

 

 

一夏「・・・もしかすると、ラウラのねらいは・・・・。」

 

ネロ「ああ、間違いない。」

 

千冬「・・・・そういうことか。」

 

この三人は気づいたようである。

 

 

デュモイ「まだ懲りぬか小娘。人の子の力など、もはや我には通用せぬ!」

 

デュモイは召喚したPVTシステムとともにラウラを苦しめる。

 

ラウラ「ぐっ、ま、まだだ・・・・・。」

 

デュモイ「しぶといな、ならば貴様にもっとも相応しい死を与えてやろう!!」

 

デュモイはラウラにとどめを刺そうと近づく。だがその瞬間、

 

 

ラウラ「ふんっ!!」

 

デュモイ「な!?」

 

何と、ラウラはデュモイの右手を自らの腹に深々と突き刺した。

 

 

デュモイ「貴様、何の真似だ!?」

 

ラウラ「貴様の力は無機物にも有機物にも働くPVTをもとに作られている、無機物なら思うが儘にできるが、

意志を持った者にその力が及べばどうなる。」

 

アルゴス「どういうことだ?」

 

一夏「ラウラ、ここで思い切った賭けに出たんだな。」

 

ネロ「奴の能力のもとであるPVTシステムは、寄生した者を安定してコントロールできる、だがラウラは、以前VTシステムに侵されていたことがあったな。」

 

千冬「つまり、宿主がPVTシステムに対し、抗体、あるいは高い適合性をもっていれば、逆に利用できる可能性があるということか。」

 

千冬の仮説は見事に的中した。

 

 

ラウラ「あいにく、VTシステムの経験が私にはあるのでな、その気になれば。」

 

ラウラにPVTが寄生し、以前のような黒い悪魔のような姿へと変貌する。ただ、以前のように暴走せず、本人の意思はしっかりと残っている。

 

 

ラウラ「ここからだ、行くぞデュモイ!!」

 

ラウラは急激にステータスアップしたかのように攻撃を連続して繰り出す。

 

デュモイ「おのれ、そうまでして一夏のために戦うか、愚かな人の子よ!!」

 

ラウラ「一夏への愛は、貴様らのような狂信めいたものではない!!!」

 

ワイヤーブレードが鋭さを増し、召喚されたデュモイの僕のPVTを抹殺する。

デュモイは無機物の武器で応戦するが、それをラウラはすべて消し去った。

 

デュモイ「何、私の力が、人の子の力に敗れるだと!!」

 

ラウラ「覚悟しろ!!」

 

ラウラはワイヤーブレードをデュモイの全身に巻き付け、大きく振り回し、天井、壁、床へと何度も叩きつけた。

 

そして、それを繰り返したことで、デュモイの頭部が粉砕され、遂には首が折れ、断末魔をあげる間もなくデュモイは力尽きた・・・・・。

 

ラウラ「はぁ、はぁ、どうだ・・・ゴフウッ。」

 

PVTを無理やり体に寄生させ、コントロールしたツケが大きかったのか、ラウラはそのまま気を失って倒れた。

 

一夏「ラウラ、しっかりしろ!!」

 

ネロ「ひとまず手当だ!!」

 

急いで手当をする。クラストの治癒の力を借りるが、

 

クラスト「一命はとりとめたが、しばらくは動かないほうがいい。体内にPVTがある状態ではさすがに不安だろう。」

 

千冬「・・・・ああ、そうだろうな。」

 

 

クリーオス「くっ、悪運の強いものを出したな一夏。」

 

一夏「・・・言っただろ、痛い目を見るのはそっちだってな。」ギロリ

 

一同「・・・・・。」

 

一夏はラウラの受けたダメージの大きさと、千冬への侮辱が相まって、今までにない怒りと憎しみをクリーオスに向ける。それはもちろん、仲間たちも同じだった。

 

クリーオス「・・・次の階層に来るがよい。」

 

流石にクリーオスも少し憔悴し始めた。

 

 

 



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第九層 part 1

クリーオス「では、決めるが良い。」

 

一夏「うーむ。(とりあえず姉さんを除いて女子は全員戦ったな)」」

 

残るはエクトル、アルゴス、千冬、ネロ、そして一夏。

 

レベッカ「世界最強と学園上位クラスが残ったわね。」

 

箒「だが、向こうも切り札を隠している可能性もあるのでは。」

 

ビリー「それは言えてるぜ。考えてみりゃ奴の手駒は異質なもんばっかだしな。」

 

一夏「よし、じゃあエクトル、頼むぞ。」

 

エクトル「ああ、わかった!」

 

セラフィエル「では、我も行こう。」

 

エクトルはケイローンを装着し、その身にセラフィエルを宿す。

 

クリーオス「では、サジよ、行け!」

 

サジ「御意」

 

サジは専用機「デスペランダ」を装着する。

 

エクトルもケイローンを装着する。

 

クリーオス「エクトル、貴様はここにいる人の子らの中でも生粋の賢者と言われるほどだ。今回の条件は、そんな貴様にふさわしいものであろう。」

 

エクトル「何?どういう意味だ?」

 

サジ「これを見ろ。」

 

エクトル「!?」

 

エクトルとサジは迷宮のような空間に包まれ、互いの姿が見えなくなる。

 

エクトル「な、何だここは!?」

 

辺り一面マス目が見られる空間になっている。

 

そして、エクトルの周囲には、

 

エクトル「こ、これは!?」

 

味方一同「!?」

 

そこにはエクトル本人を含め、千冬を除く15人のメンバーにそっくりなISとパイロットがいた。といっても、人形同然だが。

一方で、サジの方にも15体のISを模した人形がある。

 

すると、エクトルのプライベートチャンネルにサジの顔が映る。

 

クリーオス「今回の条件は、『謀殺』だ。」

 

エクトル「・・・なるほど、僕たちは互いに自身を含め、仲間とともに敵を倒していくという事か。」

 

サジ「小僧、なかなか察しが良いな。だが、戦いは今までとは違うから説明するとしよう。」

 

 

ルール

 

15対15で行うゲーム形式の戦闘。(ファイアーエムブレムに近い。)

サジ、エクトルは互いに自身を含め、仲間を模した人造ISパイロットを駒として操り、迷宮を進みながら敵を倒し、最終的にお互いのどちらかを倒した方が勝者となる。

エクトルとサジを除いて、各駒にはそれぞれステータスが決められており、攻撃力、防御力、移動歩数、射程範囲・距離の項目で分けられる。

 

 

 

続いて、駒の進め方だが、マス目を歩いて進んでいくシステムとなっており、お互い交互に一体ずつ選んで駒を進めていく。

駒を操作する際は手元のチャンネル式のリモコンを使う。

なお、互いの駒の姿は、お互いのプライベートチャンネルの画面に丸印で表示されるのみで、駒の情報はお互いに知らない状態である。

 

続いて戦闘システムだが、戦闘時もお互いの駒をリモコンで操作し、基本的にお互いの駒は戦闘を行うたびに互いに一回ずつ攻撃を行う。攻撃される際にはダメージを減らすガードや回避、カウンター攻撃などで対応することになる。

なお、攻撃する際に装備・使用できる武器は1種類のみ。攻撃後、次のターンがまわってくるまでは装備変更は行えない。

通常のIS同様、駒は戦闘によるダメージなどでシールドエネルギーが減少する仕組みになっており、0になった時点で消滅する。

 

 

次に、戦闘において意識すべきなのは、攻撃範囲や射程距離である。これは、駒の武器やアビリティの種類によって変わるが、

基本的にタイプは大きく分けて3つある。

 

 

1.近接格闘タイプ

 

縦横斜め、自分から周囲1マスの敵にのみ攻撃可能。

反面、遠距離からの攻撃に対し、カウンター攻撃はできず、回避も距離が開くほど成功確率は低い。

 

2.射撃タイプ

 

縦横斜め、自分と敵の間に1マス以上の距離がある敵に攻撃可能(武器により距離の上限は異なり、銃弾には限りがある)。

反面、自分の周囲1マスの範囲にいる敵には攻撃できず、敵の攻撃に対するカウンター攻撃もできない。

 

 

3.遠近両用タイプ

 

全ての距離において攻撃可能(攻撃範囲や距離の上限は駒によって異なる)。

 

 

サジ「この戦いの概要はこんなところだ。」

 

エクトル「なるほど。だが僕が操る駒は仲間を模している。戦力は十分なものだ。」

 

クリーオス「その言葉、いつまで吐けるか。」

 

 

Sideギャラリー

 

千冬「これまでとは大きく変わったな。」

 

一夏「戦略が問われるのは間違いない。」

 

ネロ「ああ、奴の腕の見せ所とも言えるな。」

 

箒「要は、大将であるサジの首を取ればエクトルの勝利という事だな。」

 

ビリー「俺たちゃ駒扱いかよ。」

 

簪「それもそうだけど、ステータスがどうなってるのか気になる。」

 

弾「ああ、言ってみりゃ駒は俺たちの分身だもんな。」

 

 

ここでエクトルは各駒のステータスを確認する。詳細に関しては後に話すが、各ステータスにおいて最上位と最下位は以下の通りである。

 

 

攻撃力・・・同率1位で一夏とネロ

 

防御力・・・ラウラ

 

移動範囲・・・アルゴス

 

射程距離・距離・・・同率1位でセシリアと鈴

 

一夏・ネロ「・・・・・。」

 

レオ「結構的を射たステータスになってるな。」

 

セシリア「ええ、私もそう思いますわ。」

 

レベッカ「けど、1位じゃないとなんか複雑よね。」

 

簪「・・・・私、攻撃力最下位だ。」

 

アルゴス「・・・・マジか。」

 

本音「か、かんちゃ〜ん、大丈夫だよ〜。」

 

シャルロット「けど、向こうの駒が気になるよね。」

 

ラウラ「ああ、ある程度の予測は必要だろうな。」

 

 

クリーオス「では、始めるとしよう。」

 

こうして、エクトルの戦いは始まった。



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第九層 part 2

クリーオス「では始めよ!」

 

エクトルとサジによる戦略ゲームが始まる。

 

※順番については、Sideエクトル、Sideサジ、で表記する。

エクトルが動かす駒の表記は、本人たちと区別するため、駒〇〇と書く。

 

Sideエクトル

 

まずはエクトルが駒を進める番である。

通路はいくつか分岐しているので、分散させていく作戦に出る。

 

エクトル「よし、ここはまず前衛に立たせやすい仲間を動かそう。」

 

まずは移動力がトップの駒アルゴスを動かす。

続いて駒ネロ、駒ビリー、駒レベッカ、駒弾、駒鈴、駒ラウラを、駒レオ、動かす。

 

反対側の通路には、駒一夏を前衛に、駒箒、駒簪、駒セシリア、駒シャルロット、駒本音

そして、エクトル本人が向かう。

仲間を2つのグループに分けたところで、エクトルのターンは終了。

 

Sideサジ

 

サジ「ふむ、とりあえずは予測通りだな。」

 

サジは正体不明のISパイロットの駒を、エクトルとは違い、あまり人数を固めずに分散させていく。

各駒どれも移動範囲が広いようだ。

これによりサジのターンが終了する。

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「(やはり、ステータスは向こうの方が上のようだな。)」

 

エクトルは敵の動きを確認し、再び駒を進めた。

ここでエクトルは先に仕掛ける。

 

エクトル「よし、ここは狙撃や中距離射撃で消耗させるとしよう。」

 

通路の曲がり角に駒セシリアを進め、斜め一直線の敵に照準を合わせ、狙撃する。

 

エクトル「よし、命中だ!!」

 

 

※駒セシリア:攻撃範囲が広く、遠距離装備中心の駒では攻撃力が高い。反面移動範囲はチームで最短である。

 

スターライトmkⅢ:遠距離タイプ。縦横斜め、2〜10マス先の敵を狙撃できる。

 

インターセプター:近距離タイプ。

 

ミサイル:遠距離タイプ。縦横斜め5〜10マス先の敵複数を攻撃可能。駒セシリアの装備で最大の威力だが、装弾数に限りがあり、発射後、次のターンは移動不可になる。

 

次に駒シャルロットをセシリアの斜め前に移動させて、アサルトライフルでトドメを刺す。

敵の駒はシールドエネルギーが0になり消滅した。

 

※シャルロットの駒:移動力、攻撃範囲、攻撃力などのステータス全てにおいてバランスがとれている。

 

アサルトライフル:中距離タイプ。縦横斜め2〜5マス先の敵に攻撃可能。

 

ショットガン:近距離〜中距離タイプ。縦横斜め1〜3マス先の敵に攻撃可能。距離が近いほど威力を増すが、弾数に限りあり。

 

エクトル「まずは1機撃破。」

 

エクトルのターン終了。

 

 

Sideギャラリー

 

一夏「よし、その調子だエクトル!!」

 

千冬「うむ、特性をうまく生かしているな。」

 

 

Sideサジ

 

サジ「フッ、痛くもかゆくもない。」

 

サジのターン、駒を進め、駒一夏の陣営を視界に入れたところで攻撃する。

 

サジ「こちらも小手調べといこう。」

 

サジはグレネードランチャーを装備した駒で駒簪をターゲットにする。

 

※駒簪:テクニカルで扱いやすいが、全体的に攻撃力が低い。

 

夢現:近距離タイプ。最大の特徴は横なぎ払いで前方と左右斜め1マスの敵に1回ずつダメージを与える。

 

荷電粒子砲:遠距離タイプ。縦横斜め、2〜7マスの敵に攻撃可能。当てやすいが威力は低い。

 

 

サジ「そこの小娘を爆撃だ!!」

 

大きなグレネード弾が撃ち込まれる。

 

エクトル「簪、迎え撃て!!」

 

エクトルは駒簪にカウンター攻撃の命令を下す。駒簪はすかさず荷電粒子砲でグレネード弾を迎撃。

クリーンヒットこそしなかったが、近距離で爆発したため、爆風によるダメージを少々受けた。

 

サジ「苦し紛れに対抗したか。次はこいつだ!」

 

今度は近距離タイプの武器を装備した駒を進め、駒本音を狙う。

 

駒本音:特殊なアビリティで仲間のサポートを可能とする。サポートに優れている分単独での戦闘には向いておらず、防御力が最も低いので、被弾のダメージを一番受ける。

 

玉藻:近距離タイプ。扱いによりさまざまな面で仲間をサポートするが、武器そのものとしては最弱で、近距離武器の中では、斜めの敵に攻撃できないデメリットがある。

 

 

今度の敵の駒の攻撃方法は特殊で、ターゲットのところまで瞬間移動し、攻撃してダメージを与えた後、移動前の位置に戻る。

斜めから攻撃し、駒本音は一方的にダメージを受けた。

 

 

エクトル「くっ、早くも急所を見抜かれたか!」

 

サジ「甘いぞ小僧。陣形のとりかたで強さを悟ることができてしまう。次はこいつだ!」

 

サジはスナイパーライフルを装備した駒で今度は駒ビリーを狙い撃つ。

 

 

駒ビリー:近距離に特化しており、肉弾戦での耐久力が高い方である。反面、男子の中で唯一武器が1つだけである。

 

デルタライガー:近距離タイプ。三節棍なので攻撃範囲が広く、振り回すことで全方位1〜3マスの範囲にいる敵に

ダメージを与えられる。

 

 

エクトル「させるか!ビリーの防御アビリティ発動!!」

 

駒ビリーはすかさずデルタライガーを自分の前で振り回して旋風を起こし、弾丸を弾く。

遠距離に対する対策にも抜かりがない。

 

サジ「小癪な。」

 

サジのターン終了。

 

 

Sideギャラリー

 

一夏「とりあえず先制をいただいたみたいだな。」

 

ネロ「ああ、だが同時に弱点も露呈してしまったようだ。」

 

レベッカ「やっぱり、本音が狙われやすいみたいね。」

 

本音「むぅ〜。」

 

レオ「仕方ねえよ、それぞれ一長一短あるしな。」

 

箒「模造とはいえ自分自身を見るのは何だか複雑だな。」

 

セシリア「ましてや駒扱いだなんて。」

 

弾「ま、頭脳派のエクトルなら大丈夫だろ。」

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「・・・とりあえず一体倒したが、これは事実上痛手を負ったに等しい。本家は戦略の鍵の1つを握っているようだからな。」

 

エクトルは本音の守りを固めるため、一旦防御の陣形を立て直すことにした。

 

 

本音の周囲に駒一夏、駒ネロ、駒ビリー、駒ラウラ、駒箒、駒シャルロット、エクトルが付くことで、指令を出すエクトル自身が常に本音に目を向けられるようになった。

 

駒簪に関しては、攻撃力の低さを考慮して、ひとまず彼女の前に駒アルゴス、駒弾、駒レベッカを置き、後ろを駒セシリア、駒鈴、駒レオで固めていった。

 

これでエクトルのターンは終了、次のサジのターンからどう動くかである。



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第九層 part 3

エクトルとサジの戦いは、現在エクトルが敵を1機撃破し、サジのターンを迎える。

 

Sideサジ

 

サジ「ふむ、では行こう。」

 

サジは駒を動かし、エクトルの作る陣形に迫る。

 

サジ「行け、我が僕よ!!」

 

サジの駒の一体がミサイルで駒弾と駒鈴に攻撃を仕掛ける。

 

駒弾:駒ビリー同様近接攻撃における攻撃範囲が広い。反面、攻撃力は男子で最低である。

 

魔葬鎖刃:近接タイプ。振り回す事で全方位1〜2マスの敵に攻撃可能。

 

聖封十:遠距離タイプ。投げ方で攻撃範囲が決まり、敵1体を狙う場合は直線2〜6マス先の敵に攻撃可能。複数を狙う場合は、斜め右前、正面、斜め左前2〜4マスの、最大三ヶ所の敵に攻撃可能。(ただし、複数へのダメージを狙う場合は、それぞれの敵が同じ距離に揃っていなければならない。例えば、三ヶ所のうち右斜め2マス、正面2マスといった具合に敵がいる事が条件。)

 

 

 

駒鈴:駒弾同様、近接攻撃、遠距離それぞれ1つずつで、比較的高威力であるが、命中率は少し低め。

 

双天牙月:近距離タイプ。両手に1つずつある武器なので、1ターンに2回攻撃ができる。

 

衝撃砲:遠距離タイプ。全方位2〜8マス先の敵1体に攻撃可能だが、距離が離れると威力が下がる上に命中精度も落ちる。

 

 

駒弾はまともに受けてしまい、大ダメージを被り、そばにいた鈴にもダメージが及ぶ。

 

サジのターン終了。

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「くっ、ここは2人で行くぞ!!」

 

エクトルは先程駒弾と駒鈴に攻撃した敵にまずは鈴で攻撃を仕掛けるが、

 

サジ「甘い!!」

 

敵の駒は鈴の衝撃砲をかわす。

 

続けて駒弾の魔葬鎖刃で攻撃するが、あまりダメージを与えられなかった。

 

程なくしてエクトルのターン終了。

 

サジ「ではとどめだ!!」

 

サジは先程の駒で鈴を攻撃し、別の駒で弾を狙撃する。

その後、エクトルのターンで駒鈴は双天牙月で2回攻撃するも、1発はかわされてしまい、カウンター攻撃で破壊される。

 

駒弾は別の敵から射撃による集中砲火を浴びてしまい、消滅してしまった。

 

エクトル「くっ、やられたか!!」

 

これで仲間は残り13体。サジが本気を出し始めたところで、エクトルは一気に仲間を2人も失ってしまった。

 

 

Sideギャラリー

 

弾「おい、俺と鈴の出番終わるの早くねえか!?」

 

鈴「自分がやられる瞬間を見るのは嫌な感じね。」

 

一夏「大きく返されたな。ここからどうなるんだ・・・・。」

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「・・・・一気に戦力を削がれたか、あの機体をどうにかしないと。」

 

エクトルは弾と鈴の駒を失った事で少し動揺したが、何とか落ち着いて残りの駒のアビリティを確認する。

 

エクトル「なるべく切り札は後にとっておきたいが、ここは一気に行こう!!」

 

 

ここでエクトルは、最強クラスの駒一夏と駒ネロを一気に進め、ミサイル搭載の敵駒に攻撃を仕掛ける。

 

駒一夏:盾装備がある事で、近接攻撃、射撃、防御と、様々な局面に対応でき、アビリティにも優れているが、近接、射撃共に技の威力を上げるためには、自身のシールドエネルギーを削らなければならない。

 

雪片弐型:近接タイプ。シールドエネルギーを大きく削れば全メンバー最強クラスの威力を出すことができる上に相手の防御力を無視できる。

 

零落白夜光:遠距離タイプ。全方向2〜9マス先の敵一体に攻撃可能。シールドエネルギー消費により威力が上がる。

 

白鋼:盾装備。防御に成功すれば大きくダメージを抑えられる。

 

白影剣:遠近両用タイプ。シールドエネルギー消費により、最大で全方位1〜8マスの敵複数に同時にダメージを与えられ、敵一体に対しては、この武器によるアビリティ『白影円陣』で敵にダメージを与える上に1ターンだけ敵を行動不能にする。

 

駒ネロ:駒一夏と同じである。

 

ヘル・グラディウム:雪片弐型と同じ。

 

アガリアレプト:零落白夜光と同じ。

 

セリスティス:白影剣と同じ。

 

ファルサス:白鋼と同じ。

 

 

エクトル「行け!一夏、ネロ!!」

 

駒一夏は駒鈴を倒した敵を雪片弐型で切り裂き、駒ネロは駒弾を倒した敵をアガリアレプトで消し去った。

シールドエネルギーこそ大きく消費したが、一気に敵を2対撃破。互いに一進一退の戦況である。

 

サジ「ほう、少しはやるようになったか。」

 

 

Sideギャラリー

 

レベッカ「流石ね、学園最強クラスのコンビは!!」

 

箒「だが、序盤で使うと後が怖いぞ。」

 

アルゴス「さっきの2体の敵は厄介だからな、ミサイルを封じただけでも大きいぞ。」

 

千冬「問題は、いかに力を温存するかだな。

 

 

苦肉の作であったが、またもエクトルがリード。敵は残り12体。

 



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第九層 part 4

エクトル「うーむ、仲間を二人失っているからな。ここは的確に行動するべきだ。」

 

サジとの戦略ゲームに大分慣れてきたエクトルは、次の行動に移るべく作戦を考える。

 

サジ「長考するのも良いだろうが、結末は決まっている。行け!!」

 

サジは新たな刺客を出してきた。その駒はかなり大きな体格の機体で装甲も頑丈そうな印象を受ける。

 

エクトル「装甲が厚いようだな。ならば、行けアルゴス、レベッカ!!」

 

エクトルは駒アルゴスと駒レベッカで勝負に出る。

 

 

駒アルゴス:通常攻撃やアビリティがまんべんなく高威力であり、防御力は盾装備のある駒一夏・駒ネロよりやや低い程度。装備の軽さとスピードから、移動範囲と回避率がメンバーで最大である。また、武器が籠手と具足であることから、近接格闘での攻撃回数はパンチとキックが2発ずつ、合計4回。弱点は装備が一つ故に敵一体にしか攻撃できない点と、メンバーで唯一近接で斜めの位置の敵に攻撃できない点である。

 

セイリオス:肉弾戦における攻撃力は最大クラス。アビリティ「テロス・フラス」により最大5マス先の敵に攻撃が可能。(ただし、撃つ度にシールドエネルギー消費で1ターンに1回。)

 

 

駒レベッカ:攻撃力は女子の中で最強。近接武器のクエイクは全方位1マスの敵にダメージを与えるだけでなく、振り下ろしたマスの前方・左右1マス隣の敵にも衝撃を与えてダメージを与えられる。変形させる事でグレネードキャノン砲となり射撃も可能だが、範囲は全方位2〜5マスと射撃系の中ではかなり短い方である。(装弾数に限りあり。)

 

 

サジ「そんな小娘にこの装甲が破れるか!!」

 

エクトル「レベッカのパワーは侮れないぞ!」

 

レベッカのクエイクが力強く振り下ろされるが、ビクともせず、逆に駒レベッカがダメージを受ける。

続いて駒アルゴスがパンチやキックをお見舞いする。ダメージは与えられたが、あまり効いていない。

 

サジ「フン、子供騙しだな。」

 

今度はサジの駒が反撃に入り、アルゴスとレベッカを吹き飛ばしてダメージを与える。

 

 

Sideギャラリー

 

レベッカ「何あれ、硬いわね。」

 

ラウラ「あの敵は手間がかかるぞ。」

 

レオ「にしてもレベッカ、女子の中で最強なんだな。」

 

一夏「模擬戦でも実際レベッカは女子でトップのパワーだからな。」

 

レベッカ「褒めてくれるのはいいけど、それだと女らしさが消えちゃうわよね。(笑)」

 

 

Sideエクトル

 

 

エクトル「くう、こうなったら斬撃も追加だ!行け、箒!!」

 

 

駒アルゴスと駒レベッカの遠距離攻撃に続き駒箒を加勢させる。

 

 

駒箒:レベッカに次ぐ攻撃力を持ち、肉弾戦では二刀流を生かした戦法が取れる。それ故鈴同様1ターンに2回攻撃が可能。また絢爛舞踏によりシールドエネルギーを、自身に近接する仲間に分け与える事ができる。

反面、総合的に攻撃範囲はメンバーで最低である。

 

 

雨月・空裂

 

2回攻撃が可能な近接攻撃武器で、状況に応じて1ターンで敵一体に2回、敵2体にそれぞれ1回ずつ同時に攻撃できる。

通常攻撃範囲は1マスだが、エネルギー消費により刀身からレーザー、エネルギー刃を放出する事で1〜2マスとなる。

 

 

駒箒は装甲の僅かな亀裂に的確に刃を入れ、敵機を真っ二つにする。

 

エクトル「よし、斬撃と打撃のコンビネーション成功!!」

 

サジ「そうきたか、少しナメていたようだ。」

 

サジはエクトルの的確な連携攻撃の指示に少し驚く。

 

敵は残り11体。

 

 

Sideギャラリー

 

 

一夏「よし、いいぞエクトル!!」

 

セシリア「やりましたわ!!」

 

簪「一刀両断、流石箒!!」

 

箒「いや、それ程でもないぞ。」

 

シャルロット「これでまた敵が減ったね!」

 

レオ「このまま押し切れりゃあいいんだがな。」

 

 

Sideエクトル

 

エクトルのターンは終了し、サジのターンに入る。

 

エクトル「ふう、どうにか重装甲の敵は撃破したが、ダメージも大きいな。」

 

駒レベッカ・駒アルゴス・駒箒はかなりシールドエネルギーを費やしている。

 

サジ「ただの道具に情けをかけるとは、呆れたものよ。」

 

エクトル「そう言いながらも僕の方が押している。」

 

サジ「いい気になるなよ小僧、次はコイツだ!!」

 

 

サジは次の敵を用意するも、今度は2機同時に出撃させてくる。

一体は両腕にキャノン砲があり、先端には銃剣が装着されている。腹部にも何やら仕掛けが。

もう一体は一見何の装備もないように見えるが・・・・、

 

サジ「受けるがいい!!」

 

もう一体の全身からワイヤーブレードが出現し、駒箒を強く縛って絡め取る。そしてそのまま箒はブレードで串刺しとなり消滅。

 

エクトル「ああっ、箒が!!」

 

サジ「これでこの小娘は封じ込めた。次はこちらの番だ!!」

 

キャノン砲装着の機体の腹部が開き、両腕から強力なレーザー、腹部からは青白い稲妻が放出される。

しかもそれらの標的は、

 

 

エクトル「そ、そんな・・・。」

 

キャノン砲装着の機体は三方向に同時攻撃が可能であり、駒アルゴス、駒レベッカ、そして駒セシリアを攻撃。

この三人は消滅してしまった・・・・。

 

サジ「ふはははは!!どうだ、仲間を一瞬で多く失う気分は!!」

 

 

これによりエクトルの陣営は残り9体、逆転を許してしまった。

 



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第九層 part 5

エクトルは一気に仲間を失い、一転して不利な状況に。

 

サジ「さて、こちらも攻めていくぞ!!」

 

 

サジはもう一機を前進させる。先ほどの機体とは違い、今度は巨大な斧を持った機体である。

 

サジ「行け!ネロに攻撃しろ!!」

 

サジはここに来て一気に切り札を排除する動きに出る。

 

エクトル「ネロ、盾で受け止めるんだ!!」

 

駒ネロは盾装備ファルサスを構えてガードするが、威力が高くダメージをゼロにはできない。

 

サジ「まだだ!次はその小僧を攻撃する!!」

 

次に出てきた機体は全身に鋭いスパイクがある。ダッシュ力により距離を詰め、駒ビリーに体当たりをした。

駒ビリーはデルタライガーでガードするが、体当たりの衝撃でのダメージはかなり大きい。

 

かなり大きな攻撃を繰り出したところでサジのターンは終了。

 

 

エクトル「・・・玉砕覚悟の特攻は危険だな。ここは一度距離を置いて攻撃だ!!」

 

エクトルは駒レオと駒簪を向かわせる。

 

 

駒レオ:男子の中で射撃範囲と命中精度はピカイチ。反面、近接攻撃に対する耐久力は男子の中で最低である。

 

 

アクイーラ:二丁拳銃タイプの射撃装備。それぞれ違う方向に銃口を向けられるので、全方位の中から同時に2体まで攻撃可能。また、シールドエネルギーを消費することで弾の威力をあげられる。

 

 

エクトル「レオ、前方と左の敵に攻撃しろ!」

 

駒レオはシールドエネルギーを消費して弾丸の威力を上げ、二方向の敵に銃撃を行う。キャノン砲の機体に対しては、左腕のレーザー砲を破壊する程度のダメージを与え、全身スパイクの機体は駒簪が荷電粒子砲でとどめを刺し完全撃破した。

これで敵は残り10体。

 

Sideギャラリー

 

レオ「おっ、さすが俺だな!!」

 

シャルロット「エクトルの判断にもよるけどね。」

 

アルゴス「となりの簪にも感謝すべきだぞ。」

 

レオ「おう、ありがとうな簪!!」

 

簪「あ、あれは駒だし。」テレテレ

 

簪は思わず照れる。

 

一夏「どうにか一矢報いたが、問題はこの後だな。」

 

ネロ「ああ、苦肉の策ながらリスクも高い。」

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「行け、シャルロット!!」

 

エクトルはキャノン砲の敵に駒シャルロットを向かわせる。

駒シャルロットは接近してショットガンを放ち交戦するも、キャノン砲の機体も最後の力で駒シャルロットを撃破し共倒れとなった。

 

これでエクトル側は残り8体、サジは残り9体となる。

 

サジ「友を犠牲に道連れにするとはな。」

 

エクトル「ギャラリーのみんなが本当の仲間だ。こんなゲームはさっさと終わらせよう。」

 

サジ「・・・・フン。」

 

 

サジのターンを迎える。

 

サジ「終わりを急ぐなら応えてやろう。」

 

先程駒箒を抹殺したワイヤーブレードの機体に続き、今度は幅広い両刃の大剣を両手に持つ機体が出現した。その機体は駒箒や駒鈴同様二回攻撃が可能。

 

サジ「行け、雑魚どもを蹴散らせ!!」

 

まずはワイヤーブレードの機体が駒簪に襲いかかり、がんじがらめに縛ってブレードを胸に突き刺して仕留める。

 

両手大剣の機体は駒レオに襲いかかり、巨大な刃をレオにお見舞いした事で駒レオの首をはねた。

 

 

エクトル「ぐっ!!」

 

駒とはいえあまりに無残な殺され方にエクトルは自身の采配を悔やんだ。

 

これでエクトルの駒は残り6体に。戦力の大半を失ってしまった。

 

サジ「ふははははっ、先程の威勢はどうした!?」

 

サジは醜くあざ笑う。これでサジのターンは終了。

 

 

Sideギャラリー

 

レオ「あちゃー、即死だな。」

 

簪「駒だけど、自分が殺されるのを見るのは辛い。」

 

ネロ「簪、戦いとは無情なものなのだ。」

 

一夏「とにかくエクトルを信じようぜ。」

 

一同「・・・・。」

 

 

普段は冷静なエクトルが感情的に取り乱すのに周囲は心配の色を隠せなかった。

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「・・・・ここで落ち込んでも仕方がない。」

 

エクトルが次に命令を下した相手は駒ラウラである。

 

 

駒ラウラ:全女子の中でステータスバランスが良い。最大の長所は防御力の高さであり、敵の攻撃にかなり耐えられる。また、ワイヤーブレードを駆使する事で、攻撃だけでなく味方のフォローも可能。

反面、シールドエネルギーを消費して自身のステータスを上げるなどの術を一切持たないため、場合によっては決定打に欠ける。

 

装備

 

レールカノン:射程距離 全方位2〜10マス

 

ワイヤーブレード:攻撃範囲 全方位に1〜5マス

 

エクトル「ここは奴を封じるとしよう。」

 

駒ラウラが向かったのは巨大両手大剣の機体。レールカノンで攻撃して多少のダメージを与えた後、ワイヤーブレードで両手首と両足を締め付けて行動不能にする。

 

サジ「ほう、まだ切り札を隠し持っていたか。」

 

行動不能になったところを駒ネロがヘルグラディウムでとどめを刺し、両手大剣の機体は消滅した。

次にワイヤーブレードの敵を討つ作戦だが、

 

エクトル「ここは僕自ら行くぞ!!」

 

エクトルはついに自分の力を発揮することにした。

 

エクトル自身は駒ではないため、基本現実そのものである。

 

アルテミスの矢をワイヤーブレードの機体に集中的に放ち、ダメージを与えていく。とどめは駒一夏が刺した。

これでサジの機体は残り7体。

 

サジ「先に動いたのは貴様の方か、なかなかいい腕をしている。」

 

エクトル「まだ勝負はこれからだ!!」

 

エクトルの死闘はまだ終わらない・・・・・。



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第九層 part 6

サジ「小僧、思ったよりはやるようだな。流石はかつての『神の代行者』。だが貴様にも終わりの時が近づいている。」

 

エクトル「・・・・・。」

 

エクトルとサジの戦いが始まってからかなり時間が経った。

 

激戦の中互いに駒の数こそほぼ対等だが、戦況的にはエクトルが不利である。

 

現在残っているのは駒一夏、駒ネロ、駒ラウラ、駒ビリー、駒本音、そしてエクトル本人である。

残っている駒は皆多少ながらもダメージを負っており、それに対してサジには自分を含め万全の機体がまだ残っている。

 

Sideギャラリー

 

 

千冬「接戦に見えるが、ベレンは圧倒的に不利だな。」

 

ネロ「ああ。だが数は変わらない、戦略にもよるが数が多ければ絶対に有利という訳ではないと思う。」

 

一夏「エクトル、最後まで自分を信じろよ。」

 

他一同「・・・・・。」

 

お互いどう動くかわからない緊迫した空気が続く。

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「ここは、固まっていくべきだろうな。」

 

 

エクトルは駒ラウラと駒ビリーを前衛に立たせ、その右後ろに駒一夏、左後ろに駒ネロを配置。

後衛に駒本音、そしてエクトル自身という布陣。

 

ここは攻撃に向かわずエクトルのターンを終了する。

続いてサジのターン。

 

 

サジ「フン、死に損ないどもの守りなど脆いものだ。順番に蹴散らしてくれる。行け!!」

 

サジが向かわせた機体は一体だ。一見するとIS学園の訓練機打鉄に近いが。

 

エクトル「ビリー、迎え撃て!!」

 

エクトルは駒ビリーによるカウンター攻撃で撃退する事を試みる。

カウンター攻撃は成功した、のだが・・・・、

 

 

サジ「甘いな、この機体は他とは違うぞ。」

 

駒ビリーはカウンター攻撃を成功させた瞬間、無残に切り刻まれて消滅した。というのも、

 

エクトル「馬鹿なっ、機体の影が攻撃するだと!?」

 

サジ「我らの機体は貴様たち人の子らの想像をはるかに凌駕する。この力は篠ノ之束とて持ち得ぬものだぞ。」ニヤリ

 

駒ビリーは打鉄似の機体の本体からの攻撃には対抗したが、その機体の影が瞬時に襲いかかったのだ。

 

これでエクトルの機体は残り5体。

 

Sideギャラリー

 

弾「おい、あれって反則じゃねえのか!?」

 

レベッカ「あれじゃ2対1って事じゃない!!」

 

箒「これじゃますますエクトルは不利だぞ!」

 

 

Sideエクトル

 

エクトル「くっ、こんな事が。」

 

サジ「次はこの機体だ!!」

 

今度はアルゴス以上の豪腕と拳、脚力が特徴である機体を向かわせる。

 

エクトル「ラウラ、防いでくれ!!」

 

エクトルは駒ラウラに防衛命令を出す。

駒ラウラはワイヤーブレードを相手の両腕に絡みつかせるが、

 

サジ「そんな小娘に何ができる!!」

 

豪腕の機体はワイヤーブレードを引きちぎり、駒ラウラをなぶり殺しにする。駒ラウラはとっさにレールカノンを発射した事で多少のダメージを与えながらも、ラッシュに耐えきれず粉砕された。

 

エクトルの機体は残り4体。

 

サジ「まだまだいくぞ!!」

 

今度は先端が十字の刃である大槍を構えた機体が向かう。

 

エクトル「ここは、一夏とネロで受け止める!(本音はなんとしても守らないと)」

 

駒一夏と駒ネロは盾で十字刃のサイドを受ける事で防ぐ。

 

エクトル「この隙に攻撃だ!!本音、強化を頼む!!」

 

ここでエクトルが攻撃に転じる。本音のサポートアビリティでアルテミスの矢の威力を上げ、大槍の機体の首元に矢を貫通させる。

 

これが即死効果となったのか、大槍の機体を撃破した。

 

サジの機体は残り5体。

 

サジ「苦し紛れの抵抗にしてはまあまあだな。」

 

エクトル「やられっぱなしでいると思わないでくれ。」

 

サジのターンはこれで終了。

 

 

Sideギャラリー

 

千冬「いいコンビネーションだ。」

 

一夏「本音のアビリティが鍵を握ってるみたいだな。」

 

ネロ「本人の機体も強力な事は間違いない。」

 

本音「え、えへへ、そう?」

 

本音はネロに褒められたのが嬉しくて照れる。

 

ラウラ「だが、ここから巻き返せるのか?」

 

セシリア「ここまでくるといよいよ心配ですわ。」

 

アルゴス「だな、だがエクトル自身も攻撃に転じている。覚悟は決めているだろう。」

 

 

Sideエクトル

 

 

エクトル「ここはもうなりふり構っていられない!!」

 

エクトルは駒ネロに攻撃命令を下し、本体と影の機体の撃破を図る。

 

駒ネロは全速力で突進し、本体にヘルグラディウムの刃、影にアガリアレプトを放つ。

 

激しく衝突したが、敵の本体を撃破した事で影も消滅した。

代償にシールドエネルギーが3分の1未満になった上に盾が砕けてしまったが。

 

 

エクトル「一夏、頼むぞ!!」

 

駒一夏は豪腕の機体に突進し、駒ネロと同じように攻撃を仕掛ける。

豪腕の機体はラッシュで駒一夏を攻撃するが、駒一夏の全速力での体当たりの前に拳と装甲が砕け、雪片弐型の刃が頭部に突き刺さり消滅した。

 

駒一夏もシールドエネルギーを大幅に減少させた上に盾装備を破損してしまったが。

 

これでサジの残りの機体は自分を含め3体に。

 

エクトル「今度は僕が行くぞ!!」

 

エクトルはサジに動かされる前の残り2体の敵機に攻撃を仕掛ける。

 

本音のサポートで威力を最大にまで上げたアルテミスの矢を雨のように振らせてサジと2体の機体にダメージを与えた。

 

サジ「ぐっ、小癪な!!」

 

エクトルのターンはこれで終了。

 

 

Sideギャラリー

 

簪「凄い、また対等になったよ!!」

 

鈴「ここまでくれば後は出たとこ勝負ね!!」

 

レオ「さて、向こうがどうくるかだな。」

 

 

Sideサジ

 

 

サジ「小僧、私より先に自身の行動を起こしたことは褒めてやろう。だが、それが仇となった。こちらも行くぞ!!」

 

サジはデスペランダで残る2体の機体とともに攻撃を仕掛ける。

 

2体のうちの1体はレベッカのハンマーをも凌駕する大斧を装備しており攻撃力が高い。

その機体で駒ネロに攻撃する。

 

駒ネロはヘルグラディウムで応戦し、互いに激しい斬り合いをした後、玉砕覚悟の体当たりでその機体と共に消滅した。

 

エクトル「ああっ、ネロ!!」

 

サジ「消し去られたか、だがまだこの機体がある!!」

 

もう一方はセシリアのようにミサイルを放ち、駒一夏を撃つ。

 

ミサイルをエクトルがアルテミスで撃ち落としつつ駒一夏は零落白夜光でミサイルの機体を狙い撃つが、撃ち合いの末にミサイルの機体を撃破したと同時に自身のシールドエネルギーを全て消費した事で自滅する事になった。

 

遂にサジは自分自身のみとなったが、

 

サジ「これで終わらせてくれる!!」

 

サジのデスペランダは近接と遠距離の装備が一つずつあり、どちらも可変式で、さまざまな形状にできる。また、一夏同様一撃必殺のアビリティを持っている。

 

サジ「これで貴様も終わりだ!!」

 

サジはエクトルに向かっていく。

 

エクトル「迎え撃つ!!」

 

エクトルはアルテミスを放つが、ダメージを効率よく与えられず、懐に入ってきたところでアルテミスを破壊された。

エクトルはそれに物怖じせずに近接武器ラストロスで対抗するも、自分の方が先にダメージを受けてしまっているため、長くは持たないようだった。

 

エクトル「くっ、本音済まない!!!」

 

エクトルは駒本音を自分の前に立たせてサジの攻撃を防がせる。

駒本音は九尾狐の防御アビリティでガード体制をとるが、蓄積されたダメージもあり防ぎきれず、そのまま消滅することに。

 

だが、決して無駄ではなかった。サジの遠距離装備も弾切れとなったのである。

 

これでエクトルも自分自身のみとなった。

 

ここからはサジとエクトルの一騎打ちとなる。

 

サジ「ここまでくるとはな。最早小手先ではない最後の勝負だ!!」

 

エクトル「望むところだ、セラフィエル、いくぞ!!」

 

セラフィエル「うむ!!」

 

エクトルはリミットブレイクで黄金の翼を広げる。

 

サジ「遂に神の代行者の力を出してきたか。ならば、導きと共に冥府へと送ろう!!」

 

エクトルは普段見せない接近戦でサジに挑む。

ラストロスを振りかざしてサジの機体にその爪を立て、アルゴスとの戦いで身につけた蹴りを浴びせる。

 

サジ「舐めるな!!」

 

サジも近接武器である刀状の武器「テスタメント」で切り結ぶ。

 

その最中、エクトルは頰を切りつけられるが、エクトルは物怖じせずに向かっていき、サジの喉元にラストロスの鉤爪を突き刺した。

 

セラフィエル「エクトル、トドメをさせ!!」

 

エクトル「これで、終わりだっ!!」

 

サジ「ぐっ、がっ!?」

 

サジの首から血液が流れ出し、エクトルはそれにも構わず喉元から横向きにラストロスで首を切り裂いた。

サジの首から血液が噴水の如く吹き出し、そのまま息絶えた。

 

 

Sideギャラリー

 

 

簪「やった!エクトルが勝った!!」

 

一夏「エクトル、大丈夫か!?」

 

エクトル「ああ、何とか。」

 

エクトルは頰から血を流しながらもホッとした表情を見せる。

 

 

クリーオス「・・・・ここまで来るとは。」

 

一夏達は次の階層へと向かった。



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第十層 part 1

長期戦をエクトルが制し、第十層に登る一行。

敵は十二神座のうち残るはクリーオスとタウロ、最上階でクリーオスが待つことを考えれば実質最後の部下となる。

 

クリーオス「では、次の手駒を決めるが良い。」

 

一夏「最後の手下は、アルゴスに任せよう。」

 

アルゴス「いよいよ出番だな。」指ボキボキ

 

アルゴスはいつになく気合が入っている。

セイリオスを展開して、肉体にルシフェウスを宿す。

 

クリーオス「かつての冥王が来るか、いいだろう。タウロ、行け。」

 

タウロ「はっ!!」

 

タウロは機体「プラエリス」を展開する。

 

それと同時にタウロの側には、全身ローブのものが二人いるが。

 

アルゴス「何だそいつらは?」

 

クリーオス「さて、先程は神の代行者に余興を披露させてもらったが、冥王である貴様にも用意してある。」

 

アルゴス「・・・・勿体ぶらねえでさっさと始めようぜ。」

 

クリーオス「やれやれ、せっかちな男だ。タウロに付き従いし者達よ、その姿をあらわせ。」

 

二人の従者はローブを脱ぎ捨てた。その正体は・・・・・、

 

アルゴス「・・・・なっ!?」

 

一夏「何だと、これは!?」

 

弾「嘘だろ!?」

 

一同「!!!!」

 

その二人は、アルゴスの恋人である更識楯無と弾の恋人の布仏虚だった。

二人はPVTシステムによって洗脳された状態であり、タウロの命ずるままに動く人形となっている。

 

※普段と違うので、二人の名前の前に「洗脳」とつけておきます。

 

 

洗脳楯無「・・・・ターゲット確認、戦闘態勢。」

 

洗脳虚「敵、警戒レベル最大。よって抹消対象とする。」

 

二人の表情には学園にいた頃のような輝きはなく、冷酷さを帯びた瞳をしている。

 

タウロ「どうした、愛する者に会えたのだぞ。もっと嬉しそうな表情を見せてみたらどうだ?」

 

アルゴス「・・・・てめえら!!」

 

弾「ふざけんな!」

 

ネロ「これは、洗脳か!!」

 

クリーオス「その通りだ、今までは仲間のコピーや駒に戸惑ったろうが、これほど心苦しいものはないだろう?」

 

一夏「・・・・これがアルゴスに課せられた条件だというのか!!」

 

簪「卑怯者!お姉ちゃん達を解放して!!」

 

本音「ふえ・・・・、お、お姉、ちゃん。」

 

本音は泣きそうな表情でその場にへたり込んでしまう。

 

千冬「貴様ら・・・・どこまでも外道な!!」

 

一同は加勢したいところだが、ステージには結界が張られていて参加者以外は介入できない。

 

強敵に加え、自身と友の愛する者を相手にアルゴスは戦わなければならない。

 

 

タウロ「では行くぞ、冥王!!」

 

楯無と虚も機体を展開する。

 

アルゴス「くっ、やるしか、ないのか・・・・。」

 

アルゴスはとてつもない心の重圧に苦しむことになる。

 

 

戦闘が始まり、タウロは3人がかりでアルゴスに襲いかかる。

アルゴスもすぐさま向かい、ターゲットはもちろんタウロに絞るが、

 

 

タウロ「遅い!!」

 

洗脳楯無・虚「・・・・。」

 

アルゴス「ぐっ、がはっ!!」

 

タウロの攻撃は大口径リボルバー装備「タナトス」と大型の両刃ナイフの「モルス」に加え、手数に優れた体術でアルゴスを圧倒する。

それに続いて楯無と虚が追撃を行い、アルゴスにダメージを与えていく。

 

Sideギャラリー

 

箒「くっ、これではなぶり殺しだ!!」

 

ビリー「アルゴス、どうにか耐えてくれ!!」

 

レオ「せめて自分の武器だけでも貸してやれたらいいが。」

 

基本的に徒手空拳同然のアルゴスにはこの戦闘展開はあまりにも辛い。

 

 

アルゴス「くっ、クソが!!」

 

アルゴスは強引にタウロとの間合いを詰めようとするも、楯無のミステリアス・レイディのアビリティに阻まれる。

 

アルゴス「楯無さん、俺だ!アルゴスだ!!」

 

だが、それ以上に大変なのは虚への対処だ。

虚の装備している機体「マリオネット」だ。

本人の意思だけでなく、タウロの意思でも動かすことができるため、まさにその名の通り操り人形同然である。

 

洗脳虚「!!」

 

アルゴス「うぐっ、だめだ虚、さん!!」

 

どうしても彼女達に拳をふるうことはできないでいる。

そうこうしているうちにまたしてもダメージを受け、

 

アルゴス「うぐっ、がああっ!!」

 

アルゴスは3人から同時攻撃を受けて壁に叩きつけられた。

その衝撃で頭から流血が。

 

レベッカ「アルゴス、大丈夫!?」

 

シャルロット「楯無さん、虚さん、もうやめて!!」

 

セシリア「お二人とも目を覚ましてください!!」

 

必死に叫ぶもその声が届くことはない。

 

タウロ「フン、無様だなアルゴス、愛する者達に阻まれ私には触れる事すらかなわん。」

 

アルゴス「ゴフッ、う、うるせえよ!!」

 

アルゴスは頭から血が流れるのも構わず前に出る。

 

アルゴス「かわせばなんとか!!」

 

アルゴスはあらゆる方向にイグニッションブーストで瞬間移動しながら近づいていく。

 

タウロ「愚かな・・・・。」

 

アルゴスの拳が当たる瞬間、虚を盾にする。

 

アルゴス「ぐうっ、ダメだ。」

 

洗脳虚「!!」

 

当てるのを防ごうとした隙を突かれて虚の武器「リトルギア」がアルゴスの脇腹に炸裂。この武器は巨大な医療用メスの形状で斬れ味が高い。

 

アルゴスはとっさに身をよじってダメージを抑えたが、浅くも痛々しい傷を負う。ISスーツの上から切り裂かれ、そこからも血が垂れ流しに。

 

アルゴス「痛え(危ねえ、冗談じゃないぜ、下手すりゃ骨や内臓まで切られちまう。)」

 

アルゴスは傷を抑えながら一旦距離を置いて立て直す。

 

 

Sideギャラリー

 

ラウラ「あの武器は危険だ!!」

 

ネロ「・・・・殺戮においては高い技術らしい。」

 

一夏「・・・畜生っ(代われるものなら・・・。)」

 

危機と苦しみに満ちた戦いをアルゴスは乗り越えられるのか。



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第十層 part 2

タウロと楯無、虚の3人を相手にアルゴスは苦戦する。

人数での不利もそうだが、洗脳されているとはいえ恋人と友の愛する者に攻撃し辛い。

 

タウロ「フン、これがかつての冥王か。人の子の『情け』によりその力も無に帰したのだろうな。」

 

アルゴス「うぐっ、がっ!!」

 

洗脳楯無・洗脳楯無「・・・・」

 

アルゴスはなおも攻撃に転じる事が出来ないでいる。

 

アルゴス「(どうにか洗脳を解除できねえか。)」

 

 

Side

 

箒「アルゴス、楯無さんと虚さんに攻撃しづらいみたいだぞ。」

 

レベッカ「それもそうだけど、虚さんにあんな戦闘力があったなんて。」

 

普段見せない虚の動きに一同は驚く。

 

本音「お姉ちゃん、何であんなに。」

 

ネロ「あれは恐らく機体にも秘密があるはずだ。少なくとも、今虚さんが装着しているあの機体は正規のものじゃない。」

 

弾「どういう事だよ!?」

 

エクトル「洗脳された人間があそこまで正確な攻撃ができるのは、タウロがコントロールしているからだろう。」

 

ビリー「それって、操り人形同然じゃねえか!!」

 

箒「くっ、卑劣な!!」

 

ネロとエクトルの憶測は当たっている。

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴス「・・・・そういうことか。」

 

アルゴスも虚の機体について確信を持ったようである。

 

タウロ「貴様ら人の子が信じる愛や友情といったものが障害になる気分はどうだ?」

 

アルゴス「う、る、せえっ!!(彼女達を助けるなら、機体そのものをぶっ壊すしかねえ!!)」

 

アルゴスは虚に向かっていき、心中苦しみながらもいつもの調子で攻撃を仕掛ける。

 

洗脳虚「ターゲットの攻撃による被弾、ダメージレベル、B。」

 

Sideギャラリー

 

簪「アルゴスお兄ちゃん!?」

 

本音「アルアル!?」

 

弾「アルゴス、何してんだよ!?」

 

アルゴスが突然虚を激しく攻撃した途端に驚く三人。

 

一夏「みんな落ち着け!!」

 

弾「落ち着いてられるかよ!!」

 

本音「お姉ちゃんが!!」

 

セシリア「皆さん、お気持ちはわかりますが、」

 

ラウラ「今あの2人を救えるのはアルゴスしかいないんだぞ!!」

 

シャルロット「アルゴスだって苦しいんだよ!!」

 

千冬「その通りだ、落ち着け五反田、布仏、更識。」

 

弾・本音・簪「・・・・・。」

 

複雑な感情が蠢いているが、どうにか気をおさめた三人。

 

 

Sideアルゴス

 

タウロ「やっとその気になったようだな。戦いに犠牲はつきものだ。憂いなく冥王の力を振るうがよい。」

 

アルゴス「うおらあああっ!!」

 

アルゴスは虚を壁に押さえつけて、なるべく肉体ではなく機体の部分にダメージを与えていく。

途中にタウロと楯無が割り込んでくるが、

 

アルゴス「ぐっ、虚さん!!」

 

アルゴスは虚を羽交い締めにして自分の前に突き出し、盾のようにする。

 

洗脳虚「ダメージレベルC。」

 

タウロ「ほお、そこまでするか。」

 

アルゴス「・・・・・・。」

 

アルゴスは心が折れそうになる。だがそれでも虚への攻撃を止めなかった。

 

アルゴス「だああああっ!!」

 

アルゴスは虚を地面に叩きつけた後、虚の両腕の装甲を粉砕する。

 

洗脳虚「機体損傷、ダメージレベルD。」

 

アルゴス「うがあああああ!!」

 

アルゴスは抵抗する虚からダメージをもらいながらも、虚の機体の装甲を攻撃し続ける。

マリオネットは、両肩、両足と破壊された事で徐々に戦闘力が低下していく。

 

洗脳虚「ダメージレベルE、警告レベル。」

 

ここまでくると、流石にタウロも少し驚く。

 

タウロ「楯無、援護するぞ!」

 

洗脳楯無「承知、援護射撃準備。」

 

アルゴス「来るなら来い!!」

 

アルゴスは虚を片腕で担いだままイグニッションブーストで楯無とタウロに向かう。

 

タウロ「愚かな。」

 

タウロと楯無は抱えられている虚に構う事なくアルゴスを迎撃する。アルゴスは被弾しながらも突っ込んでいき、虚にそのダメージを与えていく。

 

アルゴスの攻撃に加えてタウロと楯無の攻撃も受け続けた虚は、機体の胴体にも大きな亀裂ができるほどに。

 

アルゴス「くっ!!」

 

アルゴスはマリオネットの亀裂に手を突っ込み、地面に虚を叩きつけた後、亀裂を手で無理やりこじ開けて虚を機体から引き離した。

 

 

アルゴス「これでどうにかなるか・・・・・。」

 

洗脳虚「・・・ダメージ、本機破壊、修復、不、可、能。任、務・・・・・し・っ・ぱ・い。」

 

機体から完全に話された虚は、ISスーツ姿のままゆっくりと目を閉じて倒れる。

 

クリーオス「・・・・アルゴスよ、その小娘は返すが良い。」

 

アルゴス「・・・・・そのつもりだ。」

 

タウロ「チッ、使い物にならなくなったか。」

 

楯無「・・・・ターゲット、危険レベル上昇。速やかに、抹殺。」

 

 

Sideギャラリー

 

戦いに敗れた虚は、ギャラリーの方で預かることに。

 

本音「お姉ちゃん、お姉ちゃんっ!!起きて!!」

 

ネロ「心配ない、気絶しているだけだ。」

 

本音「ほ、本当?」

 

本音は泣きながらも少し落ち着いた。

 

一夏「すぐに傷の手当てだ!!」

 

ギャラリー一同「はい(ああ)!!」

 

虚を横に寝かせて手当てを行う。

 

 

Sideアルゴス

 

 

アルゴス「ゲホッ、た、楯無、さん、すぐ助ける!!」

 

アルゴスは血反吐を吐きながらも立ち上がり、再び立ち向かう。

 

タウロ「どうやら覚悟を決めたようだな、ならば望み通り愛の名の下に死をくれてやろう!!」

 

洗脳楯無「・・・・攻撃再開。」

 

1人救ったとはいえアルゴスの不利な事には変わりがない。

 

タウロ「その小娘は先程の者とは違うぞ。洗脳されていてもある程度自立思考で行動できるからな。」

 

アルゴス「(今度はどうすればいいんだ。)」

 

アルゴスはターゲットを楯無に絞り、立ち向かっていく。



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第十層 part 3

タウロとの戦いで、どうにか虚を取り戻したアルゴス。

だが、洗脳された楯無を救う手立てがわからず、ひたすらタウロの攻撃をかわしながら楯無に立ち向かう。

 

アルゴス「ハァ、ハァ・・・・。」

 

タウロ「フフッ、苦し紛れに一人倒すのが精一杯か、もう少しマシに戦ってもらいたいものだな。」

 

アルゴス「・・・・ゴチャゴチャうるせえっ!!」

 

アルゴスは楯無への思いとタウロへの怒りで頭に血がのぼる。

精神が不安定になっているが、そのお陰か肉体のダメージはルシフェウスの力も相まって回復しつつある。

 

アルゴス「くたばれオラァッ!!」

 

アルゴスは強引にタウロに突っ込み、蹴り込もうとするが、

 

楯無「・・・・・。」

 

楯無の蒼流旋がアルゴスの左腿の外側に炸裂する。

 

アルゴス「うぐうっ!!」

 

深い傷口からは何やら白い破片が。

 

Side ギャラリー

 

一夏「アルゴス、大丈夫か!?」

 

ビリー「おい、今のって・・・・。」

 

床に落ちた白いかけらをレベッカが拾う、それは・・・・、

 

ネロ「これは、骨だ!!」

 

レベッカ「・・・ほ、ほほ、骨ええっ!?」

 

一同「!?」

 

赤黒い血に塗れた白い破片、それはアルゴスの大腿骨の欠片だった。

レベッカは腰を抜かした。

 

 

千冬「こんな事まで起きてしまうのか・・・・・・。」

 

 

Sideアルゴス

 

 

アルゴス「クソがあっ!!(左足が利かねえ、骨いったかこりゃ!!)」

 

ルシフェウスの力による再生が追いつく前に傷口を広げられてしまう。

 

アルゴス「くそっ、やっぱり楯無さんも倒さなきゃダメなのか!?」

 

 

アルゴスは苦しい心を押し殺して楯無に攻撃を集中させる。

 

洗脳楯無「・・・・・。」

 

楯無はアルゴスが接近する瞬間に清き熱情(クリアパッション)を発動する。

しかし、このアビリティも恐ろしいものだった。

 

アルゴス「ぐっ、ん?う、うあああぁぁぁ!?」

 

霧がかかったアルゴスの右腕の装甲が白い煙を出しながら溶け出し、

そこから焼けるような感覚がアルゴスを襲う。

 

アルゴス「熱い、腕がぁぁぁぁっ!!」

 

 

Sideギャラリー

 

簪「アルゴスの腕が!!」

 

セシリア「あれは、まさか硫酸の類の液ですか!?」

 

弾「それって、ひでえ火傷を負わせるやつだろ!?」

 

千冬「馬鹿な!?薬品や生物兵器を武装として機体に装着するのは条約で禁じられているはずだ!!」

 

クリーオス「フフフ、その小娘の機体には、ビルゴが作り上げた異端の兵器を多数仕組んである。篠ノ之束をはじめ正規の技術者による機体ではそう太刀打ちできぬぞ。」

 

箒「・・・あの人でも作らないものが。」

 

箒は重傷を負う友を見て震える。

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴス「チイッ、くだらねえ真似しやがって!!」

 

アルゴスは焼けただれた右腕の痛みに耐えながら楯無を攻撃していく。再生の力で何とか傷が深まるのを食い止めてはいるが、痛みは想像を絶するものだ。

 

楯無「ターゲット捕獲。」

 

楯無はアルゴスに蒼流旋を振りかざし、ガードも構わず立て続けにダメージを与えていく。

 

アルゴス「ぐっ、畜生っ!!」

 

アルゴスは一度距離を開け、遠くから全速力でイグニッションブーストをする。

 

アルゴス「(直接攻撃し続けるのは厳しいぜ、とりあえず武器を減らさねえと!!)」

 

アルゴスは蒼流旋に右拳を全力で叩き込み、体当たりで楯無を吹き飛ばした。

その瞬間、顔の右側に蒼流旋がヒットし、4本のえぐり傷ができる。

 

アルゴス「痛つうううっ、あああぁぁぁっ!!」

 

顔に深手を負うも右拳の力を抜く事なく振り抜き、蒼流旋を粉々に砕き、楯無にダメージを大きく与えた。

 

洗脳楯無「蒼流旋大破、ダメージレベルB。」

 

アルゴス「楯無さん、俺だ!アルゴスだっ!!」

 

アルゴスは必死に叫んで楯無を説得する。

 

タウロ「無駄な事を。」

 

武器を一つ破壊できたものの、まだ楯無には余力がある。

 

ここからどうなるだろうか・・・・。



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第十層 part 4

タウロ「どうした小僧、苦し紛れに武器を粉砕するのが精一杯か!?」

 

アルゴス「ぐ・・・・、テメェっ!!(さっきの火傷で右腕が効かなくなってきてやがる。)」

 

アルゴスは所々に深手を負うが、楯無を止めるべくミステリアス・レイディの武装破壊に徹底する。

 

アルゴス「(今のあのクリアパッション、迂闊には近づけねえ。)」

 

洗脳楯無「・・・攻撃、再開。」

 

楯無は再びアルゴスに接近する。

 

アルゴス「楯無さん、俺だ!わからないのか!?」

 

アルゴスは説得しながらも攻撃を仕掛ける。

 

だが、一つ装備を失ったからか、先ほどより動きが俊敏になっている。楯無は宙返りでアルゴスのラッシュをかわしながら再び攻撃を仕掛ける。

 

アルゴス「クリアパッション、もしかすると、あのクリスタルじゃないか?」

 

アルゴスは楯無とよく模擬戦を行うことから、彼女の機体の異変に気付く。

彼女の機体には、水の力の源であるクリスタルが左右対称にあるが、その色は普段の澄んだ水色ではなく、黒曜石を思わせるような漆黒である。

 

 

Sideギャラリー

 

レベッカ「アルゴス、大丈夫、かな?」

 

レベッカは涙目でアルゴスの身を案じる。

 

エクトル「機体の損傷もかなりきてる。ルシフェウスのお陰で身は持っているが。」

 

箒「楯無さんにアルゴスの説得が届いてくれれば・・・・。」

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴス「楯無、さ、ん!俺だ、アルゴス・イリアディスだ!!」

 

洗脳楯無「・・・・・。」

 

楯無はアルゴスの負傷部分に攻撃する。

 

アルゴス「ぐうあっ!!」

 

タウロ「フン、愛する者が障壁となり、私に触れることすら叶わぬとはな。」

 

洗脳楯無「・・・・・。」

 

アルゴス「・・・・おい、楯無、覚えてんだろコラ。」

 

アルゴスはもどかしさからか急にタメ口になる。

 

アルゴス「言葉がダメなら身体に聞くぞ!!」

 

アルゴスは楯無の頭を思い切り殴る。

 

洗脳楯無「・・・・ダメージレベルC」

 

楯無は平気なのか殴られながらもアルゴスを攻撃する。

 

アルゴス「・・・・・馬鹿野郎、思い出せ。」

 

アルゴスは意識が朦朧としながらも出せる力で楯無に反撃する。

 

その後も強引に攻撃し続けた結果・・・・・・、

 

 

アルゴス「・・・・うぉぉぉおらああああっ!!!」

 

ボキッ、ブチィッ!!

 

 

アルゴスの体から鈍い音が聞こえた。

 

ギャラリー一同「!!!!」

 

アルゴスは焼けただれた右腕を楯無に思い切り叩きつけたが、その衝撃で右腕は肩からえぐり取れてしまった。

 

洗脳楯無「・・・・・。」

 

タウロ「いやはや、ここまでだな。」

 

 

 

Sideギャラリー

 

レオ「げえっ!?アルゴスの腕が吹き飛んじまった!!」

 

一夏「アルゴス、大丈夫か!?」

 

シャルロット「こんなの、無茶苦茶だよ!!」

 

ネロが千切れ飛んだアルゴスの右腕を拾う。

その腕は見るも無残に焼けただれており、溶けた機体の金属と血肉が混じって腐蝕している状態だ。

 

弾「うっ、ぐっ!!」

 

ラウラ「ここまでの威力が・・・・・。」

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴス「くっ、片腕が。だが俺もかつて一夏の片腕をブチ切ったんだ。これでおあいこになってくれりゃ。」

 

アルゴスは残った左腕でなんとか楯無に応戦する。

 

洗脳楯無「ターゲット、ダメージレベル重症化。」

 

タウロ「腕を無くしたか。(あの気迫、覚悟はできていたようだな。)」

 

タウロはアルゴスの精神的打たれ強さに感心する。

 

アルゴス「おい楯無、右腕くれてやってんだからヨォ、さっさと思い出しやがれコラァ!!」

 

洗脳楯無「・・・・・・。」

 

楯無は大怪我を負ったアルゴスの体を見て、一瞬体が硬直したが・・・・。



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第十層 part 5

アルゴス「はぁ、はぁ、楯無・・・・。」

 

アルゴスは右腕を失い、左足の機能も低下した状態で楯無と交戦する。

 

洗脳楯無「・・・・・。」

 

だが、重傷を負ったアルゴスはいつものスピードが出せず、楯無の攻撃をかわしながら迎え撃つのが精一杯だ。

 

タウロ「そこまでの傷を負ってなお愛の力を信じるか。哀れな、冥王の力を得ても所詮は人の子よ。」

 

洗脳楯無「・・・・攻撃、再開。」

 

楯無はアルゴスの頭を狙って攻撃する。

その武器は蛇腹の剣「ラスティー・ネイル」。

いつもは高圧の水流だが、それにも高濃度の硫酸が仕組まれている。

 

アルゴス「っ!!」

 

アルゴスはとっさに身を翻したが、右目の上に硫酸水流を込めた刃がかすり、焼き切られたその傷口からは流血する。

どうにか失明は避けたが、アルゴスの右目は赤いカーテンで覆われる。

 

Sideギャラリー

 

 

ラウラ「アルゴス、無茶はよせ!」

 

レオ「一旦距離とって回復を待つべきだ!!」

 

千冬「そうできればいいのだが・・・・。」

 

ネロ「・・・・。」

 

皆が心配するもアルゴスの頭には後退の文字はない。

 

そんな中、

 

虚「・・・・ん。」

 

戦闘不能になり、気絶していた虚が目をさます。

 

弾「う、虚さん!?」

 

本音「お、お姉ちゃん!!」

 

一夏「虚さん、気がついたんですね!」

 

箒「大丈夫ですか!?」

 

 

虚「ここは、あれ?」

 

虚はアルゴスと洗脳楯無の方を見る。

 

虚「な!?副会長!!痛っ!!」

 

千冬「待て、急に動くな!!」

 

虚は動こうとするも、洗脳による脳のダメージと肉体疲労で立ち上がれない。

 

虚「・・・・でも。」

 

セシリア「お気持ちはわかりますが、今はアルゴスさんを信じましょう。」

 

シャルロット「アルゴス、頑張って!!」

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴス「虚さん、よかった!無事だったんだな!!」

 

タウロ「チッ、死に損ないが。」

 

アルゴス「・・・・そりゃてめえだ!!」

 

アルゴスは虚が目を覚ました安心感とタウロへの怒りからか、アドレナリンが体に活力を与えていくのを感じる。

 

洗脳楯無「ターゲット、アドレナリンの増加傾向にあり。闘争本能感知。」

 

アルゴスのメンタルはバースト状態になり、楯無にそれが伝わったようだ。

 

アルゴス「ああ、そうだよ楯無!!今俺はなぁ、嬉しさと怒りで狂っちまいそうなんだよ!!」

 

アルゴスは自身の傷の痛みも分からなくなるほど怒りに燃え、楯無めがけて突っ込んでいく。

 

アルゴス「オラアァァ!!」

 

アルゴスは楯無の心に響く一撃を与えるべく攻撃を始めた。

 

洗脳楯無「っ、迎撃!!」

 

先程まで人形のような顔つきだった楯無の表情に僅かに歪みが生じた。

 

タウロ「とうとう壊れたか。」

 

 

Sideギャラリー

 

弾「す、凄え!」

 

鈴「アルゴス、さっきより手数増えたんじゃないの!?」

 

ネロ「あれは恐らく、アドレナリンによるものだ。」

 

本音「それってスマホのあれかな?」

 

虚「それはアンドロイドよ。」ツッコミ

 

千冬「アドレナリンが極限まで分泌されると、その者の闘争心を掻き立てると聞いたことがある。」

 

レオ「それって、どんな状態なんだ?」

 

エクトル「まあ、端的に言えば、『ブチ切れ』状態だね。」

 

一夏「わかるぜ、俺もルシフェウスと戦った時、後半は興奮状態で感覚がわからなくなったからな。」

 

ビリー「なるほどな。確かにアイツは一度キレたら手がつけられねえぜ。」

 

レベッカ「アタシとビリーで何度も止めるの苦労したもんね。」

 

 

Sideアルゴス

 

洗脳楯無「ターゲットスピード増加、捕捉困難。」

 

タウロ「こんな事が起きるとはな。」

 

タウロはブチ切れたアルゴスの形相に内心たじろぎながらも対応する。

 

アルゴス「たぁーてぇーなぁーしいぃぃぃっ!!」

 

アルゴスは楯無にマーシャルアーツによるコンボ攻撃をお見舞いする。

 

楯無はアクア・クリスタルでさらに硫酸の霧を発生させるが、

 

タウロ「何だと!?」

 

 

アルゴスの体からは熱気と禍々しいオーラが発せられ、その熱で硫酸霧が蒸発し、アルゴスはアクア・クリスタルを全て粉砕した。

 

洗脳楯無「っ、ア、アクア・クリスタル破、損、ダメージレベルB!!。」

 

棒読みだった楯無のセリフにもガタが。

 

アルゴス「楯無、虚さんも心配してるぞ!いい加減目ェ覚ませぇぇぇ!!」

 

アルゴスは残った左腕と右足を生かしながら楯無を攻撃し続ける。

 

楯無は最終手段でセックヴァベックを発動し、アルゴスを拘束するが、

 

アルゴス「まだコイツがあるんだよぉ!!」

 

アルゴスは片腕でアビリティ『テロス・フラス』を発動させ、エネルギー波を繰り出す。

 

それが楯無の頭部に思い切り直撃した事で拘束が解け、アルゴスはトドメを刺す勢いで楯無に体当たりをする。

 

洗脳楯無「機体、ダメ、ジ、レベル、ア、アアア!!」

 

タウロ「クッ、この小娘もここまでか!」

 

洗脳楯無「アアア、ア、ルゴ、ス、く、ん。」

 

アルゴス「!!」

 

楯無は頭部に大打撃を受けた事で洗脳状態が崩れ、恋人であるアルゴスの名前をわずかながらに口にした。

 

アルゴス「ああ、そうだよ楯無、俺だ!!アルゴス・イリアディスだ!!戻ってこい更識楯無!!」

 

アルゴスの渾身の叫びは彼女の心を呼び覚まし・・・・。

 

楯無「ううう、ああ、アルゴス君!!!!」

 

楯無は遂に意識を取り戻した。

 

アルゴス「楯無、よかった!よく戻ってきてくれた!!」

 

アルゴスは血だらけの身体で楯無を抱きとめた。

 

 

Sideギャラリー

 

 

一夏「やった!!」

 

ネロ「どうやら意識が戻ったな。」

 

簪「お姉ちゃん!!」

 

一同「!!!!!」

 

Sideアルゴス

 

楯無「アルゴス君、大丈夫!?」

 

アルゴス「ああ、大丈夫だ!!あとは俺がやる!!」

 

楯無「駄目よ!!私も戦うわ!!」

 

アルゴス「けどお前も重傷だろ!!」

 

タウロ「・・・・構わん、そのままかかってこい。」

 

アルゴス・楯無「!?」

 

タウロ「貴様達はまとめて葬り去るまで!!」

 

 

そういうとタウロは機体の形態を変え始めた。

 

形状だけでなく、体格が大きくなり、人型であったタウロの姿は異形のものへと変えていく。

その姿はさながらミノタウロスを彷彿とさせる。

 

タウロ「見よ!!人の子を超えし我の力を!これが我の真の姿『クリシタウロス』!!」

 

 

アルゴス「こりゃまた大層な姿だ。」

 

楯無「・・・・やるしかなさそうね。」

 

 

意識を取り戻した楯無と共同戦線を張ることになったアルゴス。

愛するものを取り戻した喜びに浸るのはもう少し後のようだ。

 



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第十層 part 6

楯無は意識を取り戻し、アルゴスは異形化したタウロに楯無と共闘する形で立ち向かうことになった。

 

タウロは洗脳が解けた楯無を見て呟く。

 

タウロ「・・・・どれだけの力を施そうと、所詮人の子は人の子か。道具となるにはあまりに劣っているものよ。」

 

楯無「あら、ごめんなさいね。道具になれなくって!」テヘペロ

 

アルゴス「楯無は俺の大事な人だ!誰のものにもなりゃしねえよ!!」

 

タウロ「ならばその小娘を貴様の冥土の土産とするまでだ!!」

 

タウロは両手に巨大な斧状の武器を振りかざして襲いかかってくる。

 

 

アルゴス「ぐわっ!!くそ、両腕さえ揃ってりゃ・・・・。」

 

楯無「アルゴス君、ひとまず私が前に出るから!!」

 

楯無は前線に出るが、どこか動きがぎこちない。

 

楯無「あ、あれ!?うまく操作できない!」

 

タウロ「貴様は洗脳された事によりPVTシステムに適合していたのだ。だが、洗脳が解けたことにより今の貴様は不適合なものとなっているのだよ。」

 

楯無は意識こそ取り戻せたが、ミステリアス・レイディにはPVTシステムがあり、洗脳状態だった楯無だからこそ適合できたのだ。

 

楯無「くうっ、気持ち悪い事してくれるじゃないの!!」

 

 

アルゴス「楯無、待つんだ!!」

 

アルゴスは急いで楯無のもとへ向かうが、

 

タウロ「貴様は用済みだ。失せろ!!」

 

タウロは巨大な両刃の斧状の武器「セキュリス」を振りまわす。

この武器は柄の両端に斧の両刃が装着されている。

 

楯無「ああああっ!!」

 

重く素早い刃が楯無の右肩を深々と切り裂く。

その衝撃でミステリアス・レイディは完全に機能停止となり、装着状態が解除された。

 

楯無は再び意識を失い、場外へと飛ばされる。

 

アルゴス「楯無!!」

 

 

Sideギャラリー

 

虚「楯無!!」

 

簪「お姉ちゃん!!」

 

千冬「更識!!」

 

エクトル「出血がひどい!すぐに手当てだ!!」

 

すぐに応急処置に入るも、止血が追いつかない。

 

本音「ど、どうしよう、血が止まらないよう!!」

 

一夏「クラスト、どうにかならないか!?」

 

エクトル「セラフィエル、力を貸してくれ!!」

 

クラスト・セラフィエル「ああ!!」

 

クラストとセラフィエルはすぐさま治癒の力を楯無に施す。

少しずつ治癒していくものの、楯無は一夏、エクトル、アルゴス、ネロとは違い常人なので回復にはかなりの時間を要する。

その上彼女の肉体にはPVTが寄生しているため、なおさら体の機能を妨げる。

 

クラスト「どうにか止血は間に合ったな。」

 

弾「楯無さんは助かるのかよ!?」

 

セラフィエル「それは、この女子の気力にかかっている。」

 

レベッカ「ちょ、ちょっと待ってよ!!助からないかもしれないっていうの!?」

 

レオ「おい、どうなんだ!?」

 

ネロ「落ち着け!!気持ちはわかるが、今俺たちにできることは、信じて祈るだけだ。」

 

鈴「アンタねえ、簡単に言わないでよ!!」

 

ビリー「そうだぜ!そんな軽いもんじゃねえだろ!!」

 

箒「おい、二人ともネロに怒りをぶつけてどうする!?」

 

セシリア「箒さんのおっしゃる通りですわ!」

 

シャルロット「今は楯無さんの回復を待とうよ!」

 

ラウラ「それに、一番苦しいのは今戦っているアルゴスだぞ!」

 

 

数名はクラストとセラフィエルに苛立ち、一方で彼らをなだめる者も。

 

一夏「落ち着けお前ら!!ここで言い争って何になる!?」

 

一夏がいつになく一喝すると、一同は黙った。

 

一夏「・・・・興奮してすまない。だが今はアルゴスの勝利と楯無さんの生還を信じよう。」

 

一同「・・・・ああ(はい)(うん)。」

 

 

千冬「まったく、あまりリーダーに世話を焼かせないことだ。」

 

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴス「楯無、さん・・・・。」

 

タウロ「フン、アルゴスよ。冥王ルシフェウスの力を得た貴様ならわかるであろう。所詮人の子は弱き者だ。神々の道具にすらなり得ないのだからな!」

 

タウロは完全に人間を見下す言葉を吐いた。

 

 

アルゴス「・・・・・。」

 

タウロ「フッ、もはや言葉すら出ぬか・・・・。」

 

 

アルゴスは黙って俯くが、その顔は歯がすり減るのではないかと思うくらいの歯ぎしりをしながらこわばり、怒りに満ちていた。

 

 

ルシフェウス「・・・・アルゴス。」

 

アルゴス「・・・・テメェ・・・・、ふざけんじゃねえぞコラアアアアァァッ!!!」

 

 

アルゴスの目は激しく血走り、全身の筋肉が盛り上がっていく。

 

ルシフェウス「・・・この闘気、まだ望みはある!!」

 

ルシフェウスは力でアルゴスの肉体と機体を回復させる。

右腕は千切れて腐敗しているのでそのままだが、アルゴスは怒りで恐れを払いのけ、タウロに立ち向かっていく。

 

 

タウロ「ほう、これが冥王の闘気か。面白い、だが所詮我の敵ではないわ!」

 

アルゴスのイグニッションブーストとラッシュをタウロは全て受け流し、セキュリスで牽制する。

 

 

アルゴス「うおおおおああっ!!!」

 

アルゴスは先程以上の負傷をするのも構わず戦っていく。

 

 

Sideギャラリー

 

虚「アルゴス君、無茶はやめて!!」

 

簪「お兄ちゃん!!」

 

レオ「くそッ両腕揃ってりゃ・・・・・。」

 

戦況はアルゴスに不利な状態が続く。

 

 

その時、不意にラウラが膝をついた。

 

ラウラ「うっ、ぐっ、な、何だ!?」

 

ラウラは突如、体に暑さと痛みを覚える。

 

シャルロット「ラウラ、大丈夫!?」

 

シャルロットは心配するが、この症状が起きたのは彼女だけではなかった。

 

虚「うううっ、頭が、痛い!!」

 

本音「お、お姉ちゃん!?」

 

弾「虚さん、どうしたんだ!?」

 

さらには、意識不明の楯無の体にも異変が起きる。

 

簪「お姉ちゃん!?ちょ、熱い!!お姉ちゃんの体が!?」

 

三人は激しく痙攣したのち、体から何かが出てきた。

 

ラウラ「ぐあああああっ!!」

 

虚「ううううっ!!」

 

楯無「こほっ、ケホッ!!」

 

 

一夏「な、これは!?」

 

出てきたのは、禍々しい黒い液である。その液は一つにまとまり、塊となってアルゴスのところに飛んでいく。

 

 

Sideアルゴス

 

 

アルゴス「くそっ、これでもか、?、ぐあああっ!!」

 

アルゴスは右肩に強い衝撃と痛みを感じた。黒い塊がアルゴスの右腕付け根に吸着し、長い棒状に伸びながら形を変えていく。

 

そして、最終的には・・・・。

 

 

アルゴス「ん、なっ、何だよこれ!?どうなってんだ!?」

 

ルシフェウス「これは!?」

 

ギャラリー一同「!!!!」

 

見ると、アルゴスの千切れた右腕付け根から黒い腕が生えてきた。その形には禍々しい印象を受ける。

同時にセイリオスの右腕部分も復活し、アルゴスの肉体は復活を遂げた。

 

タウロ「な、貴様!PVTを取り込んだだとぉ!?何故そのような!」

 

アルゴス「俺に聞くんじゃねえよ!!」

 

すると、クリーオスが口を開いた。

 

 

クリーオス「このPVTはかつての堕天使、悪魔のデータをもとに作られている。アルゴスはルシフェルと契約して冥王となった事から、PVTがアルゴスを認めたのかも知れぬな。」

 

 

ギャラリー一同「!!??」

 

アルゴス「つまり、ラウラや楯無さん達を苦しめたこいつを、俺は使えるってことか!!」

 

アルゴスは右腕に力を込める。

 

タウロ「小僧、貴様もはや人の子ではないようだな。」

 

アルゴス「んな事はどうだっていい。この力でテメエをブチ殺してやるまでだ!!」

 

アルゴスはすぐさま右腕を武器にタウロに立ち向かう。

 

タウロ「くっ、人の子でありながら悪魔の力を使うとは!不完全なるものよ!!」

 

タウロはセキュリスでその腕を切ろうとするが、

 

アルゴス「オラアッ!!!」

 

アルゴスは右腕で刃をはじき返す。

 

 

タウロ「ぐぬぬ、これでどうだ!!」

 

タウロは思い切り前方から突進してアルゴスに体当たりを仕掛けるが、

 

アルゴス「おりゃああっ!!」

 

タウロ「ふぐうっ!?」

 

アルゴスは右腕をタウロの腹部にねじ込む。よろめいたところを狙い、タウロの角を掴み、へし折った。

 

 

タウロ「ぐああっ、この我が人の子に傷を負わされるだと!?」

 

 

タウロはセキュリスで応戦するが、アルゴスの腕は先程とは桁違いである。

 

アルゴス「まさか右腕が生えてくるとはな、この力できっちりお返しするぜ!!まずは楯無さんの分だ!!」

 

アルゴスはタウロに接近していき、タウロのセキュリスによる応戦にも動じずに懐に飛び込み、

 

アルゴス「オラァ!!もう一本!!」

 

 

タウロ「ぐああっ!!」

 

アルゴスはタウロのもう一本の角を折る。

 

アルゴス「次は虚さんの分だ!!」

 

アルゴスはタウロに接近し、右拳に力を込めて顔面を殴り、目玉を潰した。

 

タウロ「うぐおっ、がっ!!」

 

タウロは大きく体勢を崩す。それでもアルゴスは容赦しなかった。

 

アルゴス「次は弾の分だ!!」

 

アルゴスは残ったもう片方の目玉も粉砕する。

 

タウロ「ぐおおおっ!!」

 

アルゴス「最後は・・・・、この俺の怒りの限りを尽くした一撃だあっ!!!」

 

アルゴスはタウロからセキュリスを取り上げ、それを真ん中で折って斧の二刀流となり、一方の斧はタウロの脳天に、もう一方でタウロの首を切断した。

 

 

タウロ「ゴウフッ、な、が、なぜ、だ・・・・。」

 

アルゴス「テメェにゃ永久にわからねえよ、化け物が。」

 

タウロは首と胴が離れてもなお言葉を口ずさむが、そのまま息絶える。

 

アルゴス「いよっしゃああっ!!」

 

ギャラリー一同「やった!!(やりました!)」

 

 

クリーオス「ぐぬぬ、我が僕で最強であるタウロまでも。貴様らを甘くみすぎたようだ。」

 

クラスト「ようやく悟ったか、わが兄弟よ。」

 

一夏「お前の思う通りにならないぜ!!」

 

 

こうして、クリーオスの部下は全滅したが、次の戦いではどのような敵が待ち受けているのか・・・・。



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第十一層 part 1

アルゴスの勝利により、一夏達は楯無と虚を取り戻した。

 

そして、これから第十一層に向かうのだが、

 

 

一夏「楯無さん、虚さん、二人はしばらくここで休んでいてください。」

 

 

ネロ「上策だな、二人ともまだ本来の状態ではないだろう。」

 

 

虚「・・・悔しいけど、そのほうがいいみたいね。」

 

 

楯無「え、待ってよ。私もまだ戦うわよ!」

 

 

アルゴス「楯無、やめといたほうがいい。」

 

 

楯無「アルゴス君、痛っ!!」

 

 

楯無は大声を出した途端体が疼くのを感じる。

 

 

千冬「無茶をするな、適性のあるイリアディスとボーデヴィッヒはまだいいが、お前たちはPVTシステムに侵された上にケガを背負っている。」

 

 

楯無・虚・千冬以外「・・・・・。」

 

 

 

一夏「とはいえ、敵の基地で二人をこのまま残していくのも心配だ。みんな、急で悪いが、何人か二人のそばにいてやってくれないか?」

 

 

虚「そんな、私たちのために戦力を削がなくても。」

 

 

一夏「いえ、大半はもう戦いを終えました。残りはネロと姉さん、俺の三人だけです。」

 

 

二人の看病・護衛のために、弾、レオ、簪、本音が残ることに。

 

 

一夏「すまない、頼んだぞ。」

 

 

簪「うん、こっちは任せといて。アルゴスお兄ちゃんも気を付けてね。」

 

 

アルゴス「ああ、必ず帰ってくる。」

 

 

レオ「気にせず行ってきな、リーダー。」

 

 

本音「おりむー、ネロロン、先生も頑張ってね!」

 

 

 

ここで、仲間を4人離脱させることを一夏は決断した。

 

ちなみにこれから先の一夏達の状況は、簪専用の携帯コンピュータと一夏達のプライベートチャンネルによる通信で共有することとなる。

 

 

 

Side一夏

 

 

一夏「さて、行くとするか。」

 

 

鈴「こんな時になんだけどさ、やっぱアンタがリーダーでよかったと思う。」

 

 

シャルロット「うん、そうだよね。」

 

 

一夏「そうか?」

 

 

ラウラ「うむ、状況における判断力に秀でているな。」

 

 

ビリー「ああ。それによ、俺同期に命令されるの、一夏なら許せるな。」

 

 

レベッカ「あら、ビリーが素直なの珍しいわね。」

 

 

 

千冬「話ならその辺にしておけ、着いたぞ。」

 

 

第十一層に一行は到着する。

 

 

 

クリーオス「では次の駒を選ぶがいい。」

 

 

 

一夏「次は、そうだな。ネロ、行ってくれるか?」

 

 

ネロ「フン、問題ない、すぐに片付ける。」

 

 

箒「随分余裕だな。」

 

 

セシリア「そうですわね、ですがネロさんは一夏さんと互角ですし。」

 

 

シャルロット「でも、次はどんな敵が出てくるのかな。」

 

 

ラウラ「部下はすべて倒してはいるが、奴ら以上の者が出てこないとは言い切れんな。」

 

 

ネロはフィールドに一人立つ。

 

 

クリーオス「では、こちらの手駒を送ろう。」

 

 

クリーオスがそう言うと同時に、ネロの目の前には大きな鏡が出現した。

 

 

ネロ「・・・・?」

 

 

ビリー「何だ、どんな奴かと思ったら今度は鏡か?」

 

 

鈴「てっきり無人機とかそういうのを予想したけど。」

 

 

 

一見確かに普通の鏡に見える。だが・・・・、

 

 

エクトル「ちょっと待て、鏡にうつってるネロの様子が変だぞ。」

 

 

千冬「・・・これは、現実なのか!?」

 

 

一同「!?」

 

 

 

見ると、鏡の中のネロは不気味な微笑みを浮かべている。はたから見れば気味の悪い光景だ。

 

ネロが思わず後ずさりすると、それに合わせるように鏡の中のネロはゆっくりとネロに向かって歩みよっていく。

そして、鏡の中のネロは、鏡の中からその姿をさらけ出し実体となった。

姿かたちはまさにネロそのものだ。

 

 

ネロ「・・・・貴様、何者だ?」

 

 

鏡のネロ「何を驚いている。まさか貴様、今まで鏡を見たことがないのか?俺は貴様だ。」

 

 

一夏「間違いない、あれは実体だ!!」

 

 

レベッカ「噓!?こんなことあり得るの!?」

 

 

クリーオス「ネロよ、真の己を見た気分はどうだ。」

 

 

ネロ「・・・真の、俺、だと?」

 

 

鏡のネロ「そう、俺は完成型クローンパイロット第一号、『ネロ・インテグルム』!!」

 

 

ネロ・インテグルムは機体を展開する。その機体の名は、「ペルフェクトゥス」。

機体の色は鈍色だが、構造はネロのサタナキアそっくりである。

 

 

 

クリーオス「我々に忠実なクローンパイロットは優秀だが、ネロ・インテグルムは格が違う。真の完成型ゆえに人の子同様自立意思を持ち、完全無欠の兵器なのだ!!」

 

 

Side簪

 

 

簪達は画面越しの光景に驚く。

 

 

本音「ほ、ほええっ、ネロロンが二人!?」

 

 

レオ「完成型ってのが納得できるくらいそっくりじゃねえか!!」

 

 

弾「そ、それじゃ、俺らが知ってるネロは何なんだよ!?」

 

 

簪「一言でいうと、プロトタイプ(試作品)。」

 

 

楯無「ネロ君は確か不完全な個体よね。」

 

 

虚「これは、苦戦必至だわ。」

 

 

Sideネロ

 

 

ネロ「・・・クリーオス、貴様、こざかしい真似をしてくれたものだな!!」

 

 

ネロはサタナキアを展開し、ネロ・インテグルムを鋭く睨む。

 

 

ネロ・インテグルム「好きに吠えていろ、この『出来損ない』が。」

 

 

ネロ「!!!!」ギロリ

 

 

ネロはその言葉を聞いて何かが切れたのか、

 

 

ネロ「はああああっっ!!」

 

雄たけびをあげながらイグニッションブーストでネロ・インテグルムに切りかかる。

 

 

ネロ・インテグルム「フッ、ぬるい。」

 

 

ネロ・インテグルムは機体の大剣の刃先でネロの一撃を軽く受け止めて跳ね返す。

 

 

ネロ「ぐっ、これは、すぐには終わらせそうもないな・・・・。」

 

 

 

もう一人の自分の予想以上の力にネロはどう立ち向かっていくのか・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十一層 part 2

ネロ・インテグルム「どうした?失敗作。」

 

ネロ「黙れ!!ぐっ!!」

 

ネロとネロ・インテグルムの一騎討ちは、一方的にこそならないものの、やはり試作品と完成形の差は否めない。

一度鍔迫り合いが起きれば、ネロはネロ・インテグルムに押し負け、機動力においても、元が同じだからか簡単に予測されてしまう。

 

一夏「ネロ、落ち着け!!」

 

箒「お前の剣技は不完全ではないぞ!!」

 

セシリア「ネロさん、頑張って下さい!」

 

ネロ「ぐっ、クソッ(ついていくのが精一杯だ。)」

 

ネロ・インテグルム「つまらん、あまりにも予測がつきすぎるぞ。」

 

ネロ・インテグルムは専用機ペルフェクトゥスの大剣装備「ヘル・ジュディシウム」の暗い紫の光刃でネロのヘル・グラディウムの赤い光刃を容易く受け止める。

 

ネロ「それならこれはどうだ!!」

 

ネロは大砲「アガリアレプト」から真紅のレーザーを放つが、

 

ネロ・インテグルム「甘い。」

 

ネロ・インテグルムは盾装備「テルミヌス」で防御し、大砲「マルコシアス」で迎え撃つ。

禍々しい紫のレーザーが飛んでくるが、

 

ネロ「そうきたか!」

 

ネロはセリスティスで自身の前に防御壁を作りガード。

だがそれを見越したのか、

 

 

ネロ・グラディウム「まだだ、食らうが良い!!」

 

紫色の剣状の幻影で出来た飛び道具「アドラメレク」が襲ってくる。

 

 

Side簪

 

本音「あの人、全部ネロロンそっくりだよ〜!」

 

簪「・・・そっくりどころか、それ以上かも。」

 

この戦いを簪はコンピューター越しに解析していた。

 

レオ「簪、何かわかったのか?」

 

簪「あの男、見た目はネロそっくりだけど、はっきり言って戦闘ステータスは、一夏とネロを足した感じと言えるわ。」

 

弾「マジかよ!?」

 

 

 

Sideギャラリー

 

千冬「完成型クローンの力がここまでとはな・・・・。」

 

一同「・・・・・。」

 

しばし見守っていると

 

ネロ・インテグルム「さて、遊びはここまでにしておこう。そろそろ貴様を葬らなくてはな!」

 

ネロ・インテグルムは何やら力を解放しようとする。

 

ラウラ「奴に変化が!!」

 

ネロ・インテグルム「見せてやろう、俺のもう一つの力をな!!」

 

ネロ・インテグルムの背中から6枚の禍々しい翼が生えてきた。それはネロや一夏にとって、どこか見覚えのあるものだった。

 

一夏「・・・・まさか!!」

 

ネロ・インテグルムの背後には、思念体のアスモデウスがいた。

 

 

Sideネロ

 

 

ネロ「・・・・アスモデウス!?」

 

アスモデウス「小僧、久しぶりだな。元我が宿主ながら無様なものよ。」

 

Sideギャラリー

 

 

ビリー「ちょっと待てよ!!あいつ確か俺たちで倒したよな!?」

 

鈴「何で生き返ってんのよ!?」

 

 

クリーオス「人の子らよ、神々に並びし者を召喚することなど我には造作もないことだ。なあクラスト?」

 

クラスト「クリーオス、貴様!!」

 

 

Sideネロ

 

ネロ・インテグルム「貴様はアスモデウスに認められし者でありながら、一夏同様不完全な世界の再生の道を選ぶ愚かな者だ。例え我が同胞であろうと新世界には裏切り者は必要ない!!」

 

 

ネロ「・・・・リミット・ブレイク!!」

 

 

ネロはリミットブレイクで6枚の黒の翼を背中に生やし、ダメージ軽減と力の増強を図る。

 

 

なおもお互いにせめぎ合う戦いを繰り広げるが、

 

ネロ「ハァ、ハァ、畜生。」

 

ネロ・インテグルム「無駄だ、今の貴様に宿し力は創造主クラストの半端のもの。不完全な肉体と力で、俺とアスモデウスの力に敵うはずもあるまい。」

 

一夏「・・・・。」

 

 

そう、ネロのはクローンとして不完全な状態である事から、力の供給がなければ肉体の崩壊が進んでしまう。

 

一夏は、自ら得ていたクラストの力を半分ネロに渡す事でネロの肉体を維持させたのだ。

 

ネロ「一夏、案ずるな!貴様から分け与えられた力は決して無駄ではない!」

 

一夏「ネロ。」

 

ネロ「さて、行くぞ!!」

 

ネロはイグニッションブースト全開でネロ・インテグルムとの距離を詰める。

 

 



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第十一層 part 3

ネロとネロ・インテグルムは互いに力を解放した状態で戦いを繰り広げる。

はじめに比べれば力の差が縮まったが、それでもやはりネロ・インテグルムの攻撃にネロは押され気味である。

 

ネロ「ぐっ!!」

 

ネロ・インテグルム「少しはやるようになったか。だが遅い!」

 

ネロ・インテグルムは肉弾戦でもかなりの力を発揮する。

 

ネロ「ゴフウッ!!」

 

一瞬で距離を詰められ、腹部にネロ・インテグルムの膝蹴りを受けたネロは大きく体勢を崩され、地面に叩き落とされた。

 

千冬「グルーバー、大丈夫か!?」

 

一夏「ネロ!!」

 

ネロ「ぐ、こんな痛みなど・・・、」

 

ネロ・インテグルム「死ね!!」

 

ネロ・インテグルムは上空から思い切りイグニッション・ブーストをかけ、ヘル・ジュディシウムの切っ先を振り下ろす。

 

一同「(危ない!!)」

 

ネロは咄嗟に身を翻し、盾装備ファルサスを構えた状態で体当たりをした。その瞬間、

 

 

ネロ「ぐああっ!!」

 

ネロ・インテグルムとアスモデウスの力が一つになったその一撃は、盾を砕き、ネロの左腕を貫く。

これによりアガリアレプトも損傷し、使用不可になる。

 

 

ラウラ「不味いな、一度に武装を二つ失ったぞ。」

 

 

幸いだったのは、かわそうとしたお陰で左腕が切断を免れた事だ。

 

 

ネロ・インテグルム「命拾いしたようだな。だが次は貴様の肉体をズタズタに切り裂いてやるぞ!」

 

ネロ「ハァ、ハァ。」

 

 

Side簪

 

 

簪「あの一撃、絶対防御不能のレベルよ!!」

 

弾「お、おい、それって。」

 

レオ「最悪死ぬんじゃねえか!?」

 

本音「!!!!」

 

本音はネロの戦況を見て言葉が出てこない。

 

虚「グルーバー君、頑、張れ。ゴホッ、ゴホッ!!」

 

本音「お、お姉ちゃん!!」

 

虚は興奮するあまりに咳き込む。

 

楯無「虚、まだ喋ったらダメ!!」

 

 

 

Sideネロ

 

 

ネロ「・・・・。」

 

ネロは両手でヘル・グラディウムを構え、ネロ・インテグルムに向き直る。

 

ネロ・グルーバー「どうした、怯えて声も出せないか?」

 

ネロ「・・・・好きに吠えてろ!!」

 

 

ネロは果敢にネロ・インテグルムに向かっていく。

 

武器を二つ失ったハンデは大きいが、装備が減ったことで寧ろ動きが速くなってきているようにも感じられる。

一夏もそうだが、ネロも基本的には剣一つで敵に立ち向かうスタイルなのだ。

 

一夏「いいぞ、ネロ!!」

 

千冬「武装を無くしたことで逆に開き直れたようだな。」

 

 

ネロ・インテグルム「ほう、少しはやるようになったか。」

 

ネロ・インテグルムは余裕からか、ワザとネロを懐に潜らせている。

 

ネロ「くっ、ナメやがって!!」

 

両手でヘル・グラディウムに渾身の力を込めた一撃を放つも、ネロ・インテグルムはそれを、ヘル・ジュディシウムを持つ片腕で軽々と受け止めて弾き返す。

 

 

ネロ・インテグルム「フン、そんなものか。」

 

 

Sideギャラリー

 

 

ビリー「あいつ(ネロ・インテグルム)余裕だな、何かムカつくぜ。」

 

レベッカ「絶対ワザとね、あのスタンス。」

 

 

ラウラ「ネロ、あまり挑発に乗るな!」

 

Sideネロ

 

 

ネロ「ぐっ!!(ここは一度距離を置くか。)」

 

ネロはクラストの力による傷の治癒を待つため、ネロ・インテグルムから離れる。

 

ネロ・インテグルム「時間稼ぎのつもりか?そんな暇は与えん!!」

 

ネロ・インテグルムは傷の治癒を察知し、ネロに一気に詰め寄る。

 

その瞬間、

 

ネロ・インテグルム「ぐっ、これは!?」

 

ネロの周りに赤き幻影の剣が何本も立ちはだかり壁を作る。

 

ネロ「何を呆けている?この程度の使い道は思いつけるだろう、貴様も「俺」なのだからな。」

 

ネロ・インテグルム「小癪な。」

 

ネロの飛び道具「セリスティス」のこの応用方は即ち、

 

 

Sideギャラリー

 

アルゴス「あれは、一夏の白影剣の技じゃねえか!!」

 

箒「ああ、白影円陣だ!!」

 

ビリー「なるほど、借り物で対応とは凄えぜ!!」

 

レベッカ「さすがは一夏と似た者同士ね!!」

 

エクトル「一夏、技を盗まれてるけど。」

 

一夏「光栄だぜ!ライバルなら尚更だ!!」

 

 

Sideネロ

 

 

ネロ・インテグルム「ふむ、どうにか凌いだようだが、どこまでもつかな?」

 

ネロ「誰もこれで終わりとは言っていないぞ。」

 

ネロは傷を治癒させ、一息つけたからか少し落ち着いた表情だ。

 

 

ネロ・インテグルム「!?これは!!」

 

ネロ「ヘル・サキュラス!!」

 

ネロ・インテグルムの足元をセリスティスが囲み、それらが一気に突き刺さる。

 

ネロ・インテグルム「ぐっ、このような使い方は想定外だ!!」

 

不覚にも足を負傷した。僅かながら、初めてネロ・インテグルムが血を流した瞬間である。

 

アスモデウス「ネロ、貴様。」

 

 

Side簪

 

簪「これは、もしかしたら行けるかも!!」

 

弾「どういう事だ?」

 

レオ「いいか、ネロ・インテグルムは一夏とネロのデータをもとに作られた完全型クローンだ。」

 

本音「ふんふん、そうだね。」

 

レオ「だけど、よく考えてみろよ。『完成』っていう事はよ。」

 

弾・本音「?」

 

弾と本音はイマイチわからないようだ。

 

楯無「つまり、コピーはできてもそれ以上のものは持ってないって事ね。」

 

虚「要するに、一夏君やネロ君と同じような『成長』はできないって事だわ!!」

 

 

簪の分析により、ネロ・インテグルムの思わぬ死角に気づけた。

 

 

Sideギャラリー

 

簪の分析に一同は希望を見出す。

 

ビリー「何だよ、結局アイツ(ネロ・インテグルム)も言ってみりゃ『出来損ない』なんじゃねえか!」

 

鈴「そうね!!所詮は偽物だわ!!」

 

千冬「成長、か。教えてきた甲斐があるものだな。」

 

千冬は一夏とネロの成長に頷く。

 

セシリア「全て揃っていないとなれば、チャンスはありますわ!!」

 

一夏「ネロ!!アイツ(ネロ・インテグルム)が何と言おうが、お前は『本物』だ!!」

 

シャルロット「ネロ、頑張って!!」

 

 

クリーオス「馬鹿な、神の技となりしこの我らの力による授かりし者に「欠陥」が生じるだと!?」

 

クラスト「忘れたかクリーオス、かつて貴様たちはこの地球で『人の子』として生きたことを。」

 

 

クリーオス「!!!!」

 

クリーオスはその言葉に触発されたからか、これまでにない苛立ちを見せる。

 

 

Sideネロ

 

 

ネロ「さて、ここから勝負と行こう。同じ『出来損ない』同士決着をつけてくれる!!」

 

ネロ・インテグルム「ほ、ほざけ!!そのような屁理屈に俺は動じぬ!!」

 

アスモデウス「ネロ・インテグルム、冷静になれ。」

 

 

アスモデウスのその言葉に耳を貸さず、ネロ・インテグルムはネロに斬りかかる。

 

 

ネロ「さて、傷が治った分暴れさせてもらうとしよう!!」

 

ネロはイグニッションブーストで距離を詰め、さっきまでとは違う剣さばきでネロ・インテグルムと渡り合う。

 

 

ネロ・インテグルム「これならどうだ!「ヘル・ケラート」!!」

 

ネロ・インテグルムは先ほどの不覚から学んだのか、飛び道具アドラメレクでネロの「ヘル・サキュラス」をコピーする。

 

ネロ「おっと、そうくると思ったぜ!!」

 

ネロ・インテグルム「かわしたか!」

 

ネロ「技を盗む事くらい想定できる。何せ貴様も『俺』だからな。」

 

ネロ・インテグルム「ぐっ!!」

 

ネロ・インテグルムの目が激しく血走る。

 

 

ここからいよいよお互い先を読み合う展開となる。

果たして勝つのは・・・・。

 



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第十一層 part 4

一夏の技を借りたことにより、ネロ・インテグルムの思わぬ弱点を見つけたネロは、攻め方に幅と変化をつけて翻弄する。

 

ネロ・インテグルム「喰らえ!!」

 

ネロ「おっと。」

 

ネロは、セシリアがカプリとの一騎打ちで見せたフェンシングのステップ動作を基に、レーザーをヘル・グラディウムで受け流しながら間合いを詰めていく。

 

セシリア「あれは、私の習得した動きですわ!」

 

レベッカ「嘘、あれを見てからまだそんなに時間経ってないのに!!」

 

アルゴス「大した学習能力だぜ!」

 

 

ネロが間合いを詰めた瞬間、

 

ネロ・インテグルム「くっ、ここは退くか。」

 

後ろに下がってネロのヘル・グラディウムの切っ先を空振りさせようとしたが、

 

ネロ「こっちだ!!」

 

ネロは真下に急降下し、そのまま急上昇してヘル・グラディウムの刃をネロ・インテグルムの頰にかすり傷をつける。

 

ネロ・インテグルム「・・・こんな型破りができるのか?」

 

 

この時、ヘル・グラディウムの持ち方は、逆手持ちである。

 

Sideギャラリー

 

 

ラウラ「む、あれは私が一夏に教えた技だぞ!」

 

シャルロット「教わってないのに咄嗟にできるなんて!」

 

千冬「なるほど、これはおそらく一夏の過去の記憶が遺伝子に記録されているためだろうな。」

 

 

Sideネロ

 

 

 

ネロ・インテグルム「くっ、何故だ!?何故それほどまでに戦える!!」

 

 

アスモデウス「ネロ、貴様は一体・・・。」

 

 

ネロ「フッ、たしかに貴様は俺とは違い、完成型クローンパイロットだ。だが、俺と貴様の違いはどうやらそれだけではないようだ。」

 

 

ネロ・インテグルム「・・・・何?」

 

 

ネロ「貴様は一夏と俺のデータを参考に強化された個体だが、言い換えれば貴様は『俺と一夏』しか見てこなかったということだ。」

 

 

ネロ・インテグルム「・・・・どういう意味だ?」

 

 

ネロ「貴様の最大の欠陥は、己の中で強者とされる者の力を過信し、それ以外を求めなかったことだ。

貴様は一つの完成型にこだわるあまり、人間としての更なる『成長』に目を向けなかった。」

 

 

ネロ「・・・・屁理屈を!!」

 

 

ネロ・インテグルムの表情が徐々に歪んでいく。初めのころの余裕はいずこへ消えたのかと思えるほどだ。

 

 

ネロ「屁理屈、結構なことだ。屁理屈は人間の特技の一つだ。人間ではない貴様らには永遠に理解できないだろうな。」

 

 

ネロ・インテグルム「貴様とて人外の者であろう!!人ならざる力の供給なしでは生きていけぬその不完全な肉体が何よりの証だ!

忌まわしき存在でありながら、一夏ら人の子と結託したところで、貴様の存在意義は変わらぬ!!」

 

 

ネロ以外「・・・・・。」

 

 

 

ネロは少し黙り込んだが、意を決して言い放つ。

 

ネロ「・・・俺が人外なのは事実だ、それは認めよう。だが、俺も貴様と同様に意思を持ったクローンパイロットだ。ならば俺の存在意義は俺自身で決められるということだ。少なくとも貴様らに決められる筋合いはない!!」

 

 

ネロは一気に加速し、ネロ・インテグルムに切りかかる。

 

ネロ・インテグルム「いくら綺麗ごとをほざこうと、俺と貴様の違いは変わらぬ!!」

 

アスモデウス「ネロよ、我らの前に散るがよい!!」

 

 

 

ネロは仲間たちと切磋琢磨したことで覚えた技を繰り出し対抗するも、やはり力の差はあるようだ。

アスモデウスの力をもって強化されたネロ・インテグルムの力はすさまじく、

 

 

ネロ「ぐっ、がっ!!」

 

一夏「ネロ!!」

 

本音「ネロロン!!」

 

 

クリーオス「どうやら勝負あったようだな。」

 

 

ネロ・インテグルムは反撃を受けながらも強引に立ち向かい、ネロの首をつかんで壁に叩きつける。

 

 

 

ネロ・インテグルム「ハァ、ハァ、俺に血を流させたことは誉めてやろう。だが所詮出来損ないである貴様に、この俺は倒せん!!死をもってその意味を教えてやる!!!」

 

 

 

ネロ「ぐううぅっ、ぐふうっ!!」

 

ネロの口と首元から血が流れ出る。ネロは首をつかむネロ・インテグルムの腕を放そうとするが、

 

 

ネロ・インテグルム「止めだ!!死ねぇぇぇっ!!」

 

 

グサッ、と鈍い音が響く。

 

 

一同「!!!!」

 

 

ネロの腹部に、ネロ・インテグルムが奪い取った

 

ヘル・グラディウムの刃が突き刺さり、刃は背中を突き抜けて壁に深々と刺さっていた。

 

 

さらにネロ・インテグルムは、自らの武器であるヘル・ジュディシウムでネロの心臓を貫いた。

 

 

ネロ「・・・・・ここまで、か・・・・カハッ・・・・・・。」

 

 

ネロは無残な串刺しとなり、力が抜けたその肉体はガクッと萎れる。

 

 

Sideギャラリー

 

 

一夏「・・・・お、おい、嘘だろ、ネ、ネロ!!」

 

エクトル「・・・・これではもう。」

 

アルゴス「・・・・畜生!!」

 

千冬「・・・・グルーバー、そんな。」

 

 

箒「・・・・こんな残酷なことが。」

 

 

セシリア「・・・どうしてこんな。」

 

 

シャルロット「駄目だよ、ネロ!!」

 

 

ラウラ「ネロ!!おのれ、ネロ・インテグルム!!」

 

ビリー「ふざけやがって!!」

 

レベッカ「ううぅぅぅっ、ううっ!!」

 

鈴「・・・・ひどい。」

 

一同はあまりに無残な光景をみて嗚咽する。

 

 

Side簪

 

 

簪「・・・・・ネロの生体反応、なくなりかけてる。」

 

レオ「お、おい、それってつまり。」

 

 

弾「致命傷ってことじゃねえか!!」

 

楯無「まさかそんな!!」

 

虚「・・・本音?本音!!」

 

 

本音「・・・・・・。」ドサッ

 

本音はショックのあまり気を失ってしまった。

 

 

 

Sideネロ

 

 

ネロ・インテグルム「フハハハハハッ!!俺の勝利だ!!俺こそが最強なのだ!!」

 

アスモデウス「人の子らよ、どれだけの力をもってしても、神々の領域にいる我らにあらがうことなどできないのだよ。」

 

 

一夏「・・・・黙れっ!!ネロはまだ死なない!!(簪によれば生体反応はまだわずかに残っている)」

 

クリーオス「死してなお奇跡を望むとは、愚かなり。」

 

 

 

致命傷を負ったネロ。このまま消え去る運命なのだろうか・・・・。

 

 

 

 



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第十一層 part 5

ネロ「・・・・・ん、ここは?」

 

致命傷を負って意識を失ったネロは、どこかわからぬ世界にいた。

このとき、自身の姿はISスーツを着ただけの状態だった。

 

 

ネロの目の前にあるのは、ヨーロッパの一般家屋に近い一軒家だ。

草花の色めく庭では、見知らぬ人々がいる。

 

庭を走っているのは、幼き少年。父親らしき男と遊んでいるようだ。

 

その光景を、微笑みながら窓際から眺めているのは母親のようだが・・・・・・。

 

ネロ「・・・・あの母親は、はっ!!」

 

ネロは目を疑った。そこにいたのは、ネロの生みの親であるアスタロト、もといベアトリクス・グルーバーだった。

 

ネロ「これは、どういう事だ!?」

 

 

ベアトリクス「あなた、ネロ、そろそろお食事にしましょう。」

 

ダニエル「おお、そうだな。ネロ、ママが呼んでるぞ!」

 

※ネロと区別をつけるため、少年には「少年ネロ」と名付けておきます。

 

少年ネロ「はーい!」

 

少年ネロはトテトテと走る。

 

ダニエル「おいおい転ぶなよ。」

 

 

 

ネロ「・・・・・。」

 

ネロはその光景を、心ここにあらずという感じで只々見つめていた。

 

 

「ネロ。」

 

ネロ「!?」

 

目の前に何やら人影が出現する。その者はローブに身を包んでおり、フードを被った顔は口がやっと見える程度だ。体格からして男だろう。

 

 

ネロ「何者だ、貴様。何故俺や母様、いや、アスタロトを知っている?」

 

 

ネロが問いかけると、男はゆっくりとフードから顔を見せる。

その顔は先程見た幼子達の父親だ。

 

ネロ「!?」

 

「私はダニエル・グルーバー。お前の父親、いや、正確にはお前のオリジナルの父親だ。」

 

ダニエルは少しやつれた表情ながらもどこか穏やかな印象だ。

 

ネロ「あの少年が、本来のネロという人間として生まれるべきだったという事か。」

 

ネロは納得しながらも、どこか寂しい気持ちになり複雑だった。

 

 

ネロ「俺もリリスも、兵器ではなく人間として生まれていたならば、愛する家族になれた。だが俺は、この幸福の犠牲によって生まれた。」

 

 

「自分を責める必要などない。お前が生まれた事は決して無意味ではない。私にとっても、ベアトリクスにとっても。」

 

 

ネロ「・・・・俺は、生きるべきなのか?それとも今ここで死すべきなのか?」

 

ダニエル「それはお前次第だ。死を受け入れるもよし、死に抗うもよし。 最も、今から起こる事を目の当たりにした上で、だがな。」

 

 

ネロ「!!!!」

 

ネロはダニエルの指差す方を見る。そこにはネロ・インテグルムと瀕死のネロが、そして一夏達の姿が。

 

 

リリス「兄様!行かないで!!」

 

エキドナ「ネロ様!あの者達のもとへ行く必要はありません!」

 

ネロ「リリス!!」

 

ダニエルのそばにリリスの姿が、そして・・・・

 

 

アスタロト「ネロ、やっと私達家族が揃ったのよ!」

 

ネロ「・・・・・・。」

 

アスタロトもといベアトリクス・グルーバーの姿もそこにあった。だが、ネロはその名を口にはできず、母と暮せば良いと言う事もできないでいる。何せ自らの手で最期を遂げさせたのだから。

 

 

ダニエル「私達の魂はアスモデウスの力によって、冥府で共に暮らしている。」

 

 

リリス「兄様お願い、帰ってきて下さい!」

 

アスタロト「そうすればこの戦いともお別れできるわ。」

 

ネロ「・・・・・。」

 

ネロは深く考え込んだ。

この戦いに死をもって終止符を打ち、一夏を信じて後のことを託すか。

それとも死に抗い、一夏と共に生きていくのか。

 

 

ダニエル「答えは決まったか?」

 

ネロ「俺は、家族と共に生きたい。」

 

アスタロト「ネロ!!」

 

リリス「兄様!」

 

アスタロトとリリスは歓喜の表情を見せる。だが、

 

ネロ「但し、一夏と共に現世を生き抜いてからだ!!」

 

ダニエル「・・・・・なるほど。」

 

アスタロト「ネロ!あなた、まだ一夏を信じるの!?」

 

リリス「そんな、どうして!?」

 

ネロ「案ずるな。クローンといえど俺も人間だ。寿命は必ず来るだろう。それに、俺の完成型とのたまうネロ・インテグルムとの決着もある。アスモデウスもこの俺が必ず葬り去る!」

 

ダニエル「アスモデウスを倒せば冥府の私達も散り散りになってしまうぞ。」

 

ネロ「聞こえなかったか?俺は、家族と共に『生きたい』と言った。冥府は死者の世界だ。それに、アスモデウスが俺の求める温もりを与えられる筈がない。

そんな虚しい世界より、こんな俺を家族兄弟同然に受け入れた一夏とともに生き抜く事を、俺は選ぶ!!!!」

 

 

ダニエル「・・・・・それがお前にとって最善ならば、それもよかろう。」

 

アスタロト「あなた!!」

 

リリス「父様!!」

 

ダニエル「いいだろう、再びこの世で生きていくがいい。」

 

そう言うとダニエルは強い光を放ち、アスタロト、リリスと共に消え去る。

 

そして、ネロの意識が再び肉体に戻り・・・・・、

 

 

Side現世

 

 

ネロ「・・・・・ん。」

 

ネロは再び目を覚ました。

 

 

ネロ・インテグルム「馬鹿な!?この傷で意識を取り戻しただと!!」

 

一夏「・・・・ネロ、お前意識が!!」

 

ギャラリー一同「!!!!」

 

 

Side簪

 

簪「本音、起きて!!」

 

虚「本音!」

 

 

本音「う〜ん、あれ、ネ、ネロロン!?」

 

 

レオ「気がついたみたいだな!」

 

弾「本音!ネロは無事だぜ!」

 

 

本音「ほ、ホントだ!よかったーわぁーん!!!」

 

本音はあまりの嬉しさに号泣する。

 

Sideネロ

 

 

ネロ「待たせたな!そらっ!!」

 

ネロは壁キックと同時にイグニッションブーストでネロ・インテグルムに体当たりをする。

 

 

ネロ・インテグルム「ぐあっ、貴様!!」

 

ネロ・インテグルムはネロの体に刺さっていたヘル・ジュディシウムを引き抜く。

 

ネロ「ぐうっ、どうせならこれも抜け、気の利かない奴だ!」

 

ネロは痛みに顔を歪めながら体に刺さっていたヘル・グラディウムを抜いた。

 

ネロ「さて、本番といくか!!」

 

ネロは6枚の黒い翼を羽ばたかせ、肉体の治癒と力の供給を始める。

 

 

千冬「グルーバーの体が再生していくぞ!」

 

クラスト「これは、白騎士と同じ回復能力だ。」

 

アスモデウス「ネロ、貴様、我の力で家族に会わせたのだぞ!!」

 

ネロ「ああ、確かに見た。だが所詮は幻のようなものだ。俺が求めるのは確かな温もりだ。一夏達こそが、今の俺にとってかけがえのない家族だ!!」

 

 

ギャラリー一同「ネロ(さん)!!」

 

一同はネロの言葉に心打たれる。

 

 

ネロ・インテグルム「ただの下等な人間たちと共に生きるか。ならば永遠の眠りにつかせてやろう!貴様を殺し、俺こそがネロである事をわからせてやる!」

 

ネロ「上等、勝者が本物だと言うことで決着をつけてやるぜ!」

 

 

再び戦いが始まった。果たして勝者は・・・・・。



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第十一層 part 6

やっと本編が進みました!


ネロとネロ・インテグルムの戦いから、もうどれくらい経っただろうか。

致命傷を負い、死の間際から立ち上がったネロは未だに死闘を繰り広げている。

 

だが、始めに比べると対等な感じになっている。

 

ネロ・インテグルム「ハァ、ハァ、くたばり損ないが!」

 

ネロ「俺はまだ死なん!一夏を残して先に逝く訳にはいかない!」

 

 

一夏「・・・・ネロ。」

 

 

ネロはどこか徐々に力を取り戻しているように感じられる。

一方ネロ・インテグルムは肉体に疲労を感じ始め、機体のペルフェクトゥスもだんだんとボロが出始めてきている。

 

 

アスモデウス「ネロ、何故だ。何故そうまでして生に執着するのだ?」

 

 

ネロ「生に執着する?違うな。俺が生きる理由を見つけたからだ。」

 

 

ネロ・インテグルム「生きる理由だと?貴様のような背徳者にそれを口にする資格などない!」

 

 

ネロ「資格など求めてない、これは俺のただの意地に過ぎない、今こそそれを貫かせてもらう!」

 

 

ネロ・インテグルム「ほざけ!ならばその心を砕いてくれる!!」

 

ネロ・インテグルムは武装の多さを活かし、それらを駆使してネロを追い詰める。

 

だがネロは、大分慣れたのか、ネロ・インテグルムの攻撃をかわしていけるようになっていた。

 

それだけではなく、サタナキアにも異変が。

 

 

Side簪

 

簪「これは、どういうことなの!?」

 

レオ「どうした簪?」

 

 

簪「これは、一夏の白式と同じ再生能力がはたらいてる!それに大きなエネルギー反応もある!」

 

 

弾「それって、どういう事だ?」

 

虚「おそらく、一夏君との戦闘経験が影響してる。」

 

本音「え、えっとー、どゆこと?」

 

楯無「まあ見てればわかるわよ!」

 

 

Sideギャラリー

 

一夏「ネロ、お前。」

 

クラスト「強大な闘気を感じる。」

 

ネロに生えた6枚の黒い翼が激しく羽ばたいているのがわかる。

 

千冬「この反応、これはサタナキアの形態移行だ!」

 

一同「!!!!」

 

 

Sideネロ

 

ネロ「何だ、サタナキアが変わっていく。」

 

サタナキアは散らばった装甲や武装の破片を引き寄せ、再生しながら形態を変化させていく。

その姿は、あの機体を彷彿とさせるものだった。

 

 

ネロ・インテグルム「これは!?」

 

アスモデウス「何だと!こんな馬鹿な!!」

 

それは、母アスタロトの専用機ハボリムに似ている。

 

 

ネロ「これは、母様。」

 

一夏「・・・・そういうことか。」

 

一夏は確信を得たようである。

 

シャルロット「一夏?」

 

一夏「ネロ、やっぱりお前はアスタロトに愛されていたんだ!アスタロトの愛が、この力を生んだのだとしたら納得できる。」

 

 

ネロ「・・・俺が、愛されている?」

 

 

千冬「確かに、理屈で語るより筋が通っているな。」

 

 

アスモデウス「アスタロト様、何故?」

 

アスモデウスは動揺する。

 

ネロ・インテグルム「何故だ、貴様のような出来損ないを、アスタロト様が愛するだと?」

 

ネロ「ゴチャゴチャ耳障りだ!とにかく俺は再び力を得たようだ、今ここで見せてくれる!」

 

 

ネロはすぐさまイグニッションブーストで接近し、ヘル・グラディウムを振るう。するとその瞬間、刀身から激しい炎が吹き出た。

 

 

ネロ・インテグルム「ぐわああっ!!」

 

 

ヘル・ジュディシウムで刃を受け止めたが、ヘル・グラディウムの炎が顔の左半分を焼き払う。

 

ネロ「喰らえ!」

 

ネロは怯んだネロ・インテグルムの顔面に至近距離からアガリアレプトを発射した。

ネロ・インテグルムの顔左半分は大きく焼けただれ、肉が削ぎ落とされる。

 

 

ネロ・インテグルム「かっ、き、貴様!!よくもこの顔に傷を!」

 

ネロ「ようやく俺と区別がつくツラになったな!」

 

アスモデウス「ええい!ネロ・インテグルム、何をしている!」

 

 

ネロ・インテグルムは激昂し、最後の力を振り絞る勢いでネロに襲いかかる。

ネロは炎を纏ったヘル・グラディウムを振りかざし、ネロ・インテグルムと激しい鍔迫り合いになる。

 

 

両者ともにおびただしい出血を伴いながらぶつかり合い、

 

ネロ・インテグルム「これが最後だ!死ねえぇぇっ!!」

 

ネロ「この炎で消し炭にしてくれる!」

 

お互いイグニッションブーストで正面から体当りする勢いで剣を振るう。もはや小細工は一切ない。

 

 

そして、激しい衝撃音と共に衝突した。

 

お互いの刃先が双方の肉体を貫く。

 

 

ギャラリー一同「!!!!」

 

 

ネロ・インテグルムのヘル・ジュディシウムはネロの心臓付近を貫いていた。

一方、ネロのヘル・グラディウムは・・・・・・・・・。

 

 

ネロ・インテグルム「・・・・あ、が。」

 

その刃は、ネロ・インテグルムの右目に深々と突き刺さり、刃先が後頭部を突き抜けていた。

 

アスモデウス「・・・・・。」

 

 

ネロ・インテグルム「な、何故だ。」ハァ、ハァ

 

 

ネロ「今一度言う、ネロは、俺一人だ!」

 

ネロは自分に刺さっていたヘル・ジュディシウムを抜き、それをネロ・インテグルムの心臓に突き刺した。

 

 

ネロ・インテグルムの体からは大量に血が流れ、ガクガクと痙攣した体は、そのまま動かなくなった。

 

 

クリーオス「ネロ、勝者は貴様だ。」

 

ネロ「・・・・・。」ネロはその場に力なく座り込んだ。

 

 

一夏「や、やったぞ、ネロが勝った!!」

 

一同「やったあ(やりましたわ!)(よっしゃあ!)」

 

 

クリーオス「アスタロトも所詮は人の子に過ぎなかったか。だが、そのようなものの愛が力を生むとは。」

 

アスモデウス「・・・・・・。」

 

 

クリーオス「アスモデウス、貴様はもう用済みだ。」

 

クリーオスはそう言って左手を上げると、天井から稲妻が発生し、アスモデウスとネロ・インテグルムの死体を溶かす。

 

溶けたネロ・インテグルムの肉体からは奇妙なものが

 

ネロはそれを拾う。

 

 

ネロ「これは、何だ。」

 

それはともかく見た目がとてもグロテスクなもので、形としては強いて言うなら果実だ。

 

 

クラスト「これは、ネロ・インテグルムとアスモデウスの肉塊からできたものだな。」

 

 

クリーオス「それを食せば貴様の肉体の劣化は完全になくなる。ここまで来たせめてもの祝だ。」

 

 

一夏「おいおい、あんな得体のしれないもの食うのか?」

 

ビリー「うえっ、なんだか気持ちわりいな。」

 

 

箒「こんなもの食べて本当に大丈夫なのか?」

 

皆がそんなことを考えていると、ガブリという音が聞こえた。

 

 

ネロ「・・・・・。」モグモグ、ゴクリ。

 

 

セシリア「ネロさん!?」

 

アルゴス「もう食ったのかよ!」

 

ネロは肉体劣化を止めると聞いてすぐにそれを食べた。

 

 

クラスト「どうやら効果は本物だ。心配ないぞ。」

 

 

千冬「はあ、それにしても人外の者にはついていきづらい。」

 

千冬はグロテスクな果実を食べるネロに渋い表情を見せた。

 

 

クリーオス「次の階層が最後だ。」

 

 

一同「・・・・・・。」

 

緊張の面持ちで第十二層へと向かう。

 

 



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第十二層 part 1

今回は千冬が戦います。彼女の専用機は原作の背景を考慮して、新たなオリジナル専用機にしました。


ネロの長きにわたる死闘を無事に勝利で終え、一行は最上階のフロアに到達する。

 

一夏「ネロ、さっき妙なもの食ってたけど、あれから体はどうだ?」

 

 

ネロ「問題ない、特に違和感はないぞ。」

 

 

シャルロット「けど、よくあんな気持ち悪いもの食べたね。」

 

 

アルゴス「さすがにあれは食えると言われてもなあ。」

 

ラウラ「うむ、その通りだ。」

 

 

つかの間の雑談はさておき、本題に入る。

 

 

レベッカ「そういえば、あとは織斑先生と一夏だけだから、すぐ終わるんじゃない?」

 

 

ビリー「そういやそうだな、早く決着付けて帰ろうぜ!」

 

 

鈴「何か妙に安心しちゃうわね。」

 

 

 

何名かは安堵しているようだが。

 

 

千冬「油断するな、まだ戦いは終わっていないのだぞ。」

 

エクトル「・・・次に織斑先生が戦うとなると、向こうも相当な切り札を出してきそうだよ。」

 

 

箒「それは確かに計り知れないな。」

 

 

クラスト「・・・・・。」

 

 

クラストは神妙な表情だ。

 

 

セシリア「クラストさん、どうかされたのですか?」

 

 

クラスト「・・・千冬よ、次なる戦いだが、くれぐれも気を付けてくれ。」

 

 

千冬「・・・・ああ。」

 

 

ラウラ「教官、ご武運を祈ります!!」

 

 

 

かくして、一同はフロアに入る。

 

 

 

クリーオス「・・・まさかここまで来るとはな。貴様たちを甘く見ていたようだ。」

 

 

一夏「今頃そんなセリフか。」

 

 

クリーオス「だが、お前たちの命運もここに尽きるであろう。」

 

 

鈴「織斑先生を相手にしてよくそんなことが言えるわね。」

 

 

 

クリーオス「ならばその目に焼き付けるといい、ブリュンヒルデの敗北を。」

 

 

一夏「ならお前には姉さんの新たな雄姿を見せてやるぜ!!」

 

 

ネロ「新たな雄姿?」

 

 

一夏「実を言うと、束さんに頼んで姉さんの新型専用機を作ってもらってたらしいんだ。」

 

 

一同「ええっ!?」

 

 

千冬は待機状態の専用機を見せる。それは大ぶりなクリスタルのアミュレットペンダントだ。

 

 

千冬「黙っていて済まない。外部に知られるのを避けるために内密にしていたのだ。」

 

 

千冬は新たな専用機「神騎士(かみきし)」を展開する。純透明の水晶をふんだんにあしらった鎧のような見た目であり、荘厳な雰囲気を感じられる。

性能はかつての彼女の専用機「白騎士」、「暮桜」のデータを融合させた究極最上のレベルだ。

 

千冬「(こうして機体を身にまとうのは現役引退後は今日が初めてだ。)」

 

 

千冬は身の丈よりも大きくて長い両刃大剣状の装備「天照(アマテラス)」を構え、振り回す。

刀身が広く厚みがあり、攻撃・防御ともに優れている。

 

 

ビリー「すっげー!!」

 

 

ラウラ「教官、なんと勇ましきお姿!!」

 

 

シャルロット「うわあ、こんなすごい専用機だなんて。」

 

 

箒「やっぱり織斑先生にはかなわないな。」

 

 

一夏「ああ、思わず今すぐ勝負してみたいくらいだぜ。」

 

 

ネロ「奇遇だな一夏、俺もそう感じていた。」

 

 

 

クリーオス「なるほど、大層なものだ。では行け、ベルゼビュート!!」

 

 

 

クリーオスの命令が下ると、奥から物凄い地響きが来た。

 

 

奥の壁に亀裂が入り、砕けると同時に得体の知れない巨大な兵器が出現した。

 

それは、ISと呼ぶにはあまりにも大きく、醜いものだった。

 

 

どことなく黒い巨人のような見た目だが、全身には赤黒い無数の目玉があり、昆虫を彷彿とさせる巨大な羽が生えており、顔に当たる部分は、ブリッジワームのような裂けた口とおぞましい数の牙が。

 

 

 

千冬「・・・・・。」

 

千冬はこれまでに相手をしたことのない敵の大きさと見た目に少し動揺する。

 

エクトル「うっ、何だこれは!?」

 

 

鈴「うええ、気持ち悪い!!」

 

 

ビリー「バケモンじゃねえか!!これほんとにISかよ!?」

 

 

ラウラ「こんな醜悪なもの、ISを冒涜しているぞ!!」

 

 

クリーオス「吠えておくがいい人の子らよ。」

 

 

 

一夏「で、姉さんに課せられる条件は?」

 

 

クリーオス「条件、か・・・。ククククッ、もはやそれは無用だ。一夏、ブリュンヒルデ。貴様たちには徹底的に力で応える。」

 

 

 

アルゴス「・・・それって、俺らは遊ばれてたってことじゃねえか。」

 

レベッカ「何かいよいよムカつくわね。」

 

 

一夏「落ち着け、とにかく姉さんが勝つことだけを考えよう!!」

 

 

 

最強のISパイロットとクリーオスの持つ最大の兵器が、いま戦う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十ニ層 part 2

千冬「・・・・・。」

 

ベルゼビュートを目の当たりにした千冬は、その姿をじっと睨む。

 

クリーオス「どうしたブリュンヒルデ、ベルゼビュートがそれ程までに恐ろしいのか?」

 

千冬「馬鹿言え、最悪の気分になっているだけだ。こんなものがISだとはな。」

 

 

クリーオス「ほう。ならば聞くが、ISはもともと汝ら人の子が生み出した兵器であろう。我々は、今その兵器による殺し合いをしているのだぞ。」

 

 

千冬「・・・・・。」

 

生徒一同「・・・・・。」

 

 

クリーオス「先程『ISを冒涜している』という言葉が聞こえたが、汝らのISは兵器でありながら神聖なものでもある、とでも言うのか?」

 

千冬「誰もそんな事は言っていないぞ。」

 

千冬はそう言いながらも少し体が強張っていた。

 

 

クリーオス「人の子らよ、汝らはわかっておらぬ。否、わかろうとしておらぬのだ。人の子らがいかに愚かなものであるかを。」

 

 

千冬「それは・・・・・。」

 

 

クリーオス「いつの世も人の子らは、互いに大義を唱えては争う事を繰り返してきたのだ。そしてそれは、人の子らがいる限り永遠に続く。我ら十二神座は、その螺旋から人の子らを開放すべく、新世界を創造することを決めたのだ!」

 

クラスト「クリーオス、詭弁を抜かすな!人の子らは愚かなだけではない!人の子は皆平和のために生きている!だからこそ我は人の子を、一夏を信じることを選んだのだ!」

 

クリーオス「平和、だと?詭弁なのは貴様だクラスト!!人は生まれてから今まで平和を手にしてはいない!一体いつになれば人の子らは平和を手にするのだ!?」

 

その言葉にその場にいる者の殆どが口をつぐむ。だが、

 

 

一夏「痛いところを突いてくるじゃねえか、クリーオス。確かにお前の言葉にも一理ある。」

 

 

一夏以外「!?」

 

クリーオス「ほう、クラストと共に生きていながら随分素直だな。」

 

 

一夏「お前の言うとおり、いつ平和になるかなんて誰にもわかりゃしない。目標にしたところで絶対に叶うとは限らない。だが、それなら逆もありだな。」

 

 

クリーオス「何?」

 

 

一夏「平和を手にする保証はないが、同時に平和が絶対に訪れないとも言えないってことだ。お前があとどのくらい生きるか知らないが、その間に平和が訪れない事が、なぜお前にわかるんだ!?

お前こそ未来がわかりきったような口を叩く気狂いな人間と変わらねえだろ!」

 

一夏は物怖じせずにクリーオスに大声で吠え続けた。

 

 

クリーオス「ぐっ、我を愚弄するか貴様。人の子の分際で!!」

 

 

クラスト「どうやら、痛いところを突かれたのは貴様も同じようだな。我らに でさえ、人の子らの未来や行く末などわからぬのに、人の子らにそれがわかるわけがなかろう。」

 

 

千冬「フッ、全くその通りだな。(改めて思うが、一夏は信念ある男だ。私でもここまでは言えなかっただろな。)」

 

 

生徒一同「さすが一夏(さん)!!!!」

 

張り詰めた空気がほぐれたようだ。

 

 

クリーオス「ブリュンヒルデ、ベルゼビュートの前に朽ちるがいい!」

 

ベルゼビュートの顔の目がギョロリと開き、不気味な口が開く。

 

千冬「さて、油断はできぬな。」

 

 

いざ、ブリュンヒルデとベルゼビュートの一騎打ちに千冬は打って出る。



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IS Brotherhood The Another Story
New Brotherhood


「ここがIS学園、あの織斑一夏さんのいる学園か・・・。」

 

彼の名は、冴神 悟狼(さえがみ ごろう)。彼は史上初、このIS学園の厳しい入学試験をただ1人制した、入学志望者でただ1人の日本人である。

 

校門をくぐり、教室に入ると、早速ながら女子生徒達が興味を持つ。

 

「見て、あの子よ。日本人でただ1人一夏先輩に選ばれた男子。」ヒソヒソ

 

「かっこいい、声かけちゃおうかな。」

 

悟狼「はあ、やっぱりそういう目で見られるよなあ、他にも男子がいるぶんマシだけどよ。」

 

悟狼は女の子が苦手な方である。そんな中、声をかけて来た者が。

 

「よう、悟狼!!」

 

悟狼「あっ、サガン!お前もここに!?」

 

声をかけて来たのは、イ・サガン。韓国出身で来日経験があり、悟狼とは小学生時代の馴染みである。

 

サガン「しっかしこの学園は基本的に女子が多いよな。大丈夫か?」

 

悟狼「まあ、なるようになるぜ。」

 

 

ホームルームが始まり、自己紹介が進む。ちなみにこの一年一組には男子が5人いるので、悟狼、サガン共に初対面である残り3人を紹介しておこう。

 

 

「ホルス・ネフェルト、エジプト出身だ。数少ない男子で色々と世話になるが、よろしく頼む。」

 

ホルスは一夏の持つ創造主クラストの力に興味を持ち、それを知るべくこの学園に来た。

 

「ダーマード・デニス、トルコ出身だ。日本はアニメを通じて知った。ISにもすごく興味があるからよろしく!」

 

ダーマード、日本のアニメをこよなく愛しており、日本語を猛勉強し、その中でISにも興味を持った。

一見能天気だが、潜在能力は計り知れない。

 

ロシア「ユーリ・アンドレフ、ロシア出身だ。この学園に来れたことを誇りに思っている。どうかよろしく頼む。」

 

ユーリ、とてもクールな印象を受ける。女尊男卑を心底憎んでいた故に、一夏に対する忠誠心が厚い。

 

「すごい出身国!このクラスでよかった!!」

 

「みんなイケてる!!」

 

「これからよろしくね!」

 

一年一組にはこのような男子が。

 

 

Side一年二組

 

一年二組でも同じような雰囲気で自己紹介が進んでいた。

 

 

「ロベルト・マルコス、ブラジル出身だ。特技はカポエラ、趣味はサッカーだ。よろしくな!」

 

ロベルト、ブラジルのノリの良さで自己紹介をする。サッカーは日本でも行ったことがあるらしく、サッカー好きの日本人の友達を持つ。

 

「ディエゴ・ガルシア、メキシコ出身だ。我が一族の代表としてこの学園に入れた事を嬉しく思っている。」

 

ディエゴ、彼はネイティブアメリカンの中でも稀少なガルシア族の末裔。自然で育ち、地元で林業を手伝っていたからか、アルゴスに匹敵する体格の持ち主である。

 

「ブルーノ・グランフェルト、スウェーデン出身です。趣味は料理です。よろしくお願い願いします。」

 

ブルーノ、北欧唯一のIS適合男子で、細い体が特徴的だが、エクトルと違い、少年っぽさ満載である。

 

「ジミー・ファーラング、タイ出身だ。特技はムエタイだぜ、この学園でそれを試せるのは夢のように感じてるぜ。よろしくな!」

 

ジミー、十代ながらムエタイで地元のチャンピオンになる程の実力者だ。若干喧嘩っ早い性格だが、根はいい奴だ。

 

「ノア・メイソン、オーストラリア出身だ。趣味はミュージカルの鑑賞だ、よろしく。」

 

ノア、オーストラリア初のIS適合男子で、演劇をこなせるからか、ずば抜けた身体の柔軟性が特徴的である。

 

 

「二組にもいい男子ばっかじゃん!」

 

「これなら一組とも渡り合えるわ!」

 

 

個性的な新一年生たちの登場である。

 



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先輩後輩

悟狼は幼馴染のサガン以外のクラスメイトである男子3人ともすぐに打ち解けることができ、初めの緊張感が嘘のように感じていた。

 

悟狼「ふあぁ〜。」

 

悟狼は授業が終わるや否や大アクビをする。

 

サガン「やれやれ、やっと昼飯の時間だな。」

 

ダーマード「そういやここの食堂は各国のグルメが存在するらしいぜ!」

 

ホルス「他学年との数少ない交流の場でもあるようだけど。」

 

ユーリ「ふむ、それなら皆で一夏様にご挨拶も兼ねて行こう。」

 

悟狼「ああ、隣のクラスの男子も来るだろうしな。」

 

一同は食堂へと向かった。

 

 

Side 一年二組

 

ジミー「くーっ、流石に座学は疲れるぜ!」

 

ジミーは勉強がやや苦手なためか、授業終了と同時に大きく背伸びをする。

 

ロベルト「そういや午後は機体操縦の訓練だよな。早くやりたいぜ!」

 

ロベルトは自身の挌闘技をアピールしたいらしくウズウズしている。

 

ディエゴ「それもそうだが、俺は早く一夏先輩に会ってみたいぜ。」

 

ディエゴは人種問わず分け隔てなく接する一夏を尊敬している。

 

ノア「それじゃあ、俺達も打ち解けたしよ、昼飯食いに食堂に行こうぜ。」

 

ブルーノ「そうだね、一組の男子も気になるし。先輩方にも会ってみたいしね。」

 

 

二組男子陣も行くことに。

 

 

in食堂

 

 

一夏「さてと、何にするかな?」

 

アルゴス「メニューはほぼ全て制覇したけどよ、やっぱりどれもうまいよな。」

 

ラウラ「うむ、全くだ。」

 

ビリー「にしても箒は和食メインだな。」

 

箒「ああ、他国の料理も気分によっては食すが、私は基本的にこれが多いな。」

 

エクトル「和食の美味しさは一夏のお陰でわかったよ。一夏に色々教わったし。」

 

シャルロット「エクトルずる〜い。」

 

セシリア「羨ましいを通り越して悔しいですわ。」

 

レオ「エクトルは本当に器用なやつだからな。俺もそれなりには料理できるけどよ。」

 

簪「そうなんだ、今度私にも教えて。」

 

一同はメニューを得て席に向かう。

 

 

鈴「あそこに新しい男子達がいるわよ。」

 

ネロ「ふむ、なかなかのメンツだな。」

 

一同は男子10人を前に座る。新一年生男子と一夏達は互いに挨拶をしていった。

 

一夏「そういや悟狼、一組のクラス代表はもう決まったのか?」

 

悟狼「いや、まだなんですよ。」

 

ディエゴ「二組もそんな感じですね。」

 

ホルス「一夏先輩の時はどうやって決めてたんですか?」

 

セシリア「立候補者である私に勝利したことでなりましたわ。」

 

ロベルト「マジっすか!?先輩そん時からもう凄え人だったんすね!」

 

ユーリ「流石は一夏様です!」

 

一夏「いや、そういうわけじゃない。」

 

レベッカ「でもアンタマジ天才よ一夏!!」

 

鈴「でも、去年と違って今年は男子多いから逆に決めづらいんじゃない?」

 

ブルーノ「そうですね。男子にやってもらいたいって声もありますけど。」

 

ノア「それに納得できない女子生徒達と言い争いにもなりました。」

 

アルゴス「それ、下手すりゃ決闘で決めるんじゃねえの?」

 

ダーマード「そこなんですが、今度の月曜日に男子5人vs女子5人の5番勝負が決まりました。」

 

ロベルト「二組も同じとこっすね。」

 

悟狼「ユーリ言い出した女子に相当ブチ切れたもんな。」

 

ユーリ「・・・すまない。」

 

セシリア「それは大変でしたね。」

 

ラウラ「うーむ、これだけの男が来ても女尊男卑はまだ拭えぬようだな。」

 

話は悟狼達のクラスの代表話で持ちきりである。そんな中、

 

 

蘭「・・・一夏さんに会える。合格できてよかった!」

 

蘭は一夏を見つけると、声をかけようとする。だが、

 

ミレイア「一夏様ー♡♡♡!!」

 

ミレイアは一夏を見つけるや否や正面から抱きつく。

 

一夏「お、おいミレイアちゃん、ここ食堂だって。」

 

ミレイア「ミレイアで結構ですわ一夏様、お会いできて嬉しいですぅ♡」スリスリ

 

蘭「なっ、ななななな!?」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!」

 

ミレイアの大胆なアプローチに周囲は固まる。

 

エクトル「こらミレイア、一夏が困ってるぞ。」

 

ミレイア「はぁい、兄様。」

 

蘭「あ、あのー。一夏さん、その人は?」

 

蘭はワナワナとしながら一夏さんに声をかける。

 

エクトル「僕の妹のミレイアだよ。一夏がスペインに来た時に会った瞬間に惚れちゃってさ。」

 

レオ「ああ、将来は一夏様と結婚するとか言ってたしな。」

 

レオが爆弾発言をすると、食堂から驚きの声が爆発的に広がった。

 

専用機以外の女子全員「えええぇぇぇーっっ!?」

 

簪「ちょっとレオ!とんでも無い事言わないでよ!!(耳が・・・。)」

 

蘭「・・・一夏さん、どういう事ですか!?結婚するって・・・」ワナワナ

 

一夏「蘭、落ち着け。後で説明するから。」

 

ミレイア「一夏様、誰ですかこの人?」

 

蘭「・・・・五反田蘭です。私も一夏さんの事が好きです!!」キッ

 

ミレイア「なっ!?(ライバル!!!)」

 

蘭「一夏さんから離れて!!(ただでさえライバル多いのに・・・!)」

 

ミレイア「何ですかあなた!?」

 

蘭とミレイアの間に火花が散る。

 

弾「ミレイアちゃん、こいつは俺の妹の蘭だ。コイツ一夏の事になるとこうだからよろしく〜。」

 

蘭「うっさい大馬鹿お兄っ!!!」

 

ビリー「弾、てめえ火に油注いでどうすんだ。」

 

のほほん「全くだよ〜。」

 

アルゴス「一夏、お前ほんと恵まれてるな。」

 

レベッカ「アンタ大丈夫なの?」

 

ネロ「お前の優しい所が災いの元だな。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「・・・・。」ジトー

 

一夏「・・・返す言葉もありやせん。」

 

谷本「織斑君、絶好調だね。」

 

こうして、ここに一つの人間関係が生まれたのである。

 

 

 



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デモンストレーション

新一年生が入ってから一週間が経ち、後輩ともすっかり打ち解けていた2年生。

今日は朝から新一年生との合同訓練が行われている。

 

千冬「ではこれより、ブレードタイプの武器による近接格闘の実戦訓練に入る。新一年生諸君、よく見て学ぶ様に!」

 

新一年生「はいっ!!」

 

千冬「ではまず、手始めにデモンストレーションを二年生に行ってもらう。織斑、グルーバー、前に出ろ。」

 

一夏・ネロ「はいっ!!」

 

この2人が出る瞬間、一年生から黄色い声が飛び交う。

 

「きゃー!織斑先輩とグルーバー先輩よ!」

 

「かっこいいわー!!」

 

千冬「騒ぐな馬鹿者!!」

 

アルゴス「やれやれ、しょうがねえな。」

 

鈴「こんな調子で大丈夫なのかしら?」

 

黄色い声をよそに、一夏とネロは互いに所定の位置に着き、機体を展開する。今回は一夏、ネロ共に一つの武器のみで模擬戦を行う。

 

一夏「展開、雪片弐型!」

 

ネロ「展開、ヘル・グラディウム!」

 

千冬「それでは、始め!!」

 

一夏とネロはすぐさま接近し、互いに斬りつける。光刃がぶつかり合う音が何十、何百と響く。

 

ビリー「こりゃすげえ戦いだぜ。」

 

簪「2人とも全然隙を見せないよ。」

 

箒「一太刀一太刀の重みが半端ではないな。」

 

一夏が斜め上から雪片弐型を振り下ろすと、ネロはいとも簡単にかわし、反撃に出る。

しかし、一夏はそれを予測し雪片弐型の刀身で防御する。

 

悟狼「これは凄え、今度の女子達との対決のための参考にしたいぜ。」

 

ジミー「ああ、マジで燃えてきたぜ!」

 

悟狼を始め、一年生男子は一夏とネロの卓越した剣技に見惚れていた。

 

蘭「(一夏さん、やっぱりかっこいい♡)」

 

ミレイア「(素敵ですわ♡まさにナイトですわ♡)」

 

 

サガン「おーい2人とも、帰ってこーい。」

 

ユーリ「サガン、放っておけ。」

 

 

終盤は激しい鍔迫り合いとなり、周囲も思わず緊張するほどの空気になったが、結果は引き分けとなった。

 

一夏「ふう、いい汗かいたぜ!」

 

ネロ「フッ、俺達も周りも、退屈しないで済んだようだな。」

 

模擬戦が終わり、互いに握手する一夏とネロ。

 

山田先生「一年生の皆さんには、少々ハイレベルな模擬戦でしたね。」

 

千冬「両名共にご苦労だった、下がっていい。次は射撃のデモンストレーションを行う。オルコット、デュノア、前に出ろ。」

 

セシリア・シャルロット「はいっ!!」

 

今度は二年生女子から射撃メインのこの2人が出る。

 

レオ「ちぇっ、俺やエクトルだって射撃メインだってのによ。」

 

レオは若干不満そうにする。

 

エクトル「君はどうせ一年生にかっこいいところ見せたいだけだろ。それに僕らの射撃は特殊な方だから、初めは参考にならないよ。」

 

アルゴス「確かにな、基本的に俺ら男子の専用機は特殊な武装だからな。」

 

 

程なくして、射撃のデモンストレーションが始まる。

セシリアはスターライトmkIIIやミサイルで狙い撃ちをするが、シャルロットは飛んでくる弾をアサルトライフルの弾幕で消し去る。

次にセシリアがビット兵装でシャルロットを取り囲み、動きに制限をかけたと思いきや、シャルロットはショットガンを複数の方向に乱射する技で切り抜ける。

距離や状況に合わせて銃器を切り替える両者のテクニックは学年の中では飛び抜けている。

 

結果は先ほどのように引き分けに終わった。

 

ノア「凄い、シャルロット先輩のあの柔軟さは高いセンスだ。」

 

ブルーノ「セシリア先輩のライフル射撃の取り回しの早さも凄いよ!」

 

 

続いては近接格闘のデモンストレーションだ。

 

マーシャルアーツを始め、様々な格闘技に長けたアルゴスと、シュヴァルツェ・ハーゼでの訓練で近接格闘技を身につけたラウラが行う。なお、今回は両者共にパンチやキックのみで戦い、他のアビリティー及び武器は一切使用しない。

 

アルゴス「お手柔らかに・・・ってか。」

 

ラウラ「嫁の友といえど手加減はしないぞ。」

 

始まると、アルゴスは一気に間合いを詰めてオーソドックス、サウスポーと切り替えながらラッシュを仕掛ける。高速連打をラウラは何とかかわしていき、

隙を見てアルゴスの手首を掴み、投げる。

アルゴスは投げられた瞬間にその体制からイグニッションブーストで再び接近し、縦に高速回転するかかと落としや回し蹴りを連続で繰り出し、ラウラにヒットさせる。

 

ロベルト「アルゴス兄貴、凄えぜ!!」

 

ロベルトは一格闘家としてアルゴスを知り、兄の様に尊敬しているからか、凄く見惚れてしまう。

 

ジミー「ラウラ先輩も体格の差をものともしないな。」

 

アルゴスは専用機持ちで一番の体格であり、対照的にラウラは最も小柄であるが、互角の戦いからか、パワー、スピード共にその差をほとんど感じない。

 

これもまた引き分けとなり、両者やりきった表情でお互いを讃える。

 

千冬「今回のデモンストレーションは以上だ。各分野において、二年生はしっかり一年生に指導する様に!!」

 

二年生一同「はいっ!!」



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クラス代表決定戦に向けて

新一年生のクラス代表決定戦が決まり、悟狼達は兎に角急ピッチで操縦訓練を進めていく。

上級生からは彼らを手伝うべきではという声もあったが、一夏は全男子のリーダーとして彼らの可能性を信じ、敢えて手出しをしないよう皆に呼びかけている。

 

Side1年1組

 

悟狼「はぁーっ、クラス代表決める決闘だけど、正直何の勝算もない気がするんだよなぁ。」

 

悟狼は寮の部屋でため息をついていた。ちなみに部屋は一夏達同様、1組男子の5人部屋となっている。

 

ユーリ「悟狼、お前も一夏様を尊敬しているならここは勝つ気で行くべきだぞ。」

 

サガン「幸いな事に、使用する機体は互いに同じ訓練機なんだし、どうにかなるだろ。」

 

今回のクラス代表決定戦は、互いに訓練機「打鉄」を使用してのフェアな勝負である。

 

ホルス「操縦に慣れるまでが大変だけど、こっちは短期間でものにしていくしかない。」

 

ダーマード「そうそう、前進あるのみだぜ。」

 

ダーマードは比較的飲み込みが早いためか、かなり余裕な様子を見せる。

日本のアニメの中でもロボット系が好きな事が1つの要因とも言えるが。

 

サガン「元気だせよ悟狼、それとも女子相手じゃ戦いにくいってか?」

 

サガンは悟狼を奮い立たせるため若干茶々を入れる。

 

悟狼「なっ、んなわけねえだろ!」

 

この戦いを機に女子への苦手意識が克服できるといいが・・・・。

 

Side1年2組

 

彼らの部屋は1組の隣で同じく5人部屋である。

 

ロベルト「1組の連中も大変だよな、訓練用とはいえ操縦にかなり練習が必要だしな。」

 

ディエゴ「一夏先輩も去年は俺たち以上に苦労してたんだってな。」

 

ノア「幸い一夏先輩と知り合いの五反田さんにベレンさんは違うクラスだから気兼ねしなくていいよな。」

 

言い忘れていたが、蘭は1年3組、ミレイアは1年4組に所属しており、女子の中では1、2を争う実力で入学したことから、

そのまま推薦されてクラス代表となった。

 

ブルーノ「一夏先輩は短期間で操縦訓練を行なった上に当日不完全だった専用機で代表候補生に勝ったんだよね。」

 

ジミー「そりゃまたすげえ話だ。」

 

ロベルト「さすがは一夏兄貴!アルゴス兄貴が認める人だけあるぜ!」

 

 

Side二年生

 

セシリア「1年生の殿方は大丈夫でしょうか?」

 

箒「それは正直わからん。」

 

ビリー「ま、あいつら次第だし。ここはひとつお手並み拝見ってとこだな。」

 

ラウラ「しかしいいのか一夏?私達から彼らに何もしなくても。」

 

一夏「問題ないぜ。期待してる以上、この程度の苦境は自力でどうにかしてもらう。特に、悟狼にはな。」

 

一夏は悟狼に対しては実の弟のように思っている節がある。

 

シャルロット「なんか一夏、悟狼のお兄さん的な感じだね。」

 

弾「つい数年前までシスコンだった時とはえらい違いだな。」

 

アルゴス「それより問題なのはあいつら1年男子の能力についてだが。」

 

鈴「実際入試でのあいつらの能力はどうだったの?」

 

ネロ「タイプ、個人差はあるが、どいつも高い戦闘能力が備わっている。中でもあの悟狼という奴は能力自体において最もバランスが取れているからな。」

 

シャルロット「そういえば、去年の夏休み明けに男子が3人増える時、一夏とエクトル、アルゴスの3人を基準にしてたね。」

 

今回もそのタイプで分けた結果は、以下の通りとなった。

 

一夏(ネロ)タイプ・・・悟狼、サガン、ホルス

 

エクトルタイプ・・・ノア、ブルーノ、ユーリ、ダーマード

 

アルゴスタイプ・・・ロベルト、ジミー、ディエゴ

 

 

ビリー「成る程な。んで、実際のところあいつらに勝算は?」

 

一夏「俺vsセシリアの時と違ってお互い訓練機だからな。」

 

レベッカ「能力的には五分ってところなのね。」

 

本音「でも、ゴロゴローかなり不安そうだったよ〜。」

 

谷本「そりゃあここは日本だし、一番プレッシャーだもんね。」

 

日本人である悟狼にとって、今回の試合はかなり緊張するのである。

 

 

Side悟狼

 

悟狼「・・・・・。」

 

クラス代表決定戦前夜、他の男子が就寝している中、悟狼は一人眠れずにバルコニーに立っていた。

一通り訓練を終えて、ようやく皆と実践ができるほどの力をつけたのだが、やはり敗北を喫した時の事を考えてしまうのだ。

 

悟狼「・・・ちっ、何なんだよ一体、この感じは。」

 

悟狼はバルコニーの手すりを強く握りしめていた。そんな時、後ろから声がかかる。

 

「やっぱり起きてたか、悟狼。」

 

悟狼「!!」

 

振り向くと、そこには一夏が立っていた。

 

悟狼「織斑先輩。」

 

一夏「『一夏』で構わねえって。俺はお前たち後輩も兄弟同然に思ってるしよ。」

 

どんな相手にも見せる真っ直ぐな一夏の表情に、悟狼は思わず口を開く。

 

悟狼「・・・一夏先輩、俺、強くなれるんでしょうか?」

 

一夏「・・・そりゃあお前次第だぜ。俺だって周りから色々言われてるけどよ。実際入学当初は俺も強くなれるかどうかなんてわからなかったし、考えもしなかったぞ。」

 

悟狼「・・・・。(この人もかつてはそうだったのか。)」

 

悟狼は信じられないと言わんばかりの表情を見せる。

 

一夏「何のために強くなるか、その答えは人それぞれだ。ただ、これだけは言える。女尊男卑のこの世界でも、自分一人の力だけで強くなった人間なんざいないって事だ。

実際俺も、俺の姉さんも、束さんがこの世にいなかったらどういう存在になってたか、何のために生きるのか、その答えを見つけられたかどうかなんてわからねえしな。」

 

悟狼「・・・・。」

 

一夏「悟狼、お前、家族や友達は大事にしてるか?」

 

悟狼「勿論です!!」

 

一夏「なら大丈夫だ、その心を絶対忘れるな。」

 

悟狼「はいっ!!」

 

一夏はバルコニーから出ようとする。その間際、

 

一夏「結果はどうなるかわからねえけど、最後は意志の強い方が勝つ。それだけ言い残しとく、じゃあな、明日も早いし、ちゃんと寝ろよ。」

 

悟狼「はい、おやすみなさい。」

 

 

悟狼は一夏に激励されたお陰か、少し前向きになれたようだ。

 

千冬「・・・ふっ、あの一夏がここまでの男に成長するとは。この学園の未来はあいつになら託して間違いないだろう。」

 

いよいよ明日は一年生達の決戦である。



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クラス代表決定戦

今日はいよいよ、待ちに待った新一年生クラス代表決定戦。アリーナのギャラリーには学園の全生徒達の他に、デュノア社をはじめとするIS関連企業の関係者達が続々と集まって来ていた。一夏の理想の第一歩となるこの歴史的イベントは、多くの人が興味を抱かざるを得ない。

 

Side二年生

 

ギャラリーの最前列には、一足先に一夏とネロ以外の専用機メンバーが集まっていた。

 

簪「始まるね、いよいよ。」

 

ビリー「さてと、お手並み拝見といこうか。」

 

箒「一夏が信じる彼らがどれ程の力を持っているかだな。」

 

ラウラ「うむ、そういえば一夏はどこに行った?」

 

シャルロット「織斑先生やネロとモニタールームで見るって。」

 

一夏とネロは新たな男子の入学試験の試験管を務めた事もあり、モニタールームで観戦する事に。

 

エクトル「さてと、僕らヨーロッパ圏の後輩にも注目かな。」

 

セシリア「ええ、そうですわね。」

 

鈴「何にせよこの勝負、見ものね。」

 

アルゴス「勝負条件が一緒なら予想しづらいとこだがな。」

 

レベッカ「男子達が未知数だもんね。」

 

弾「注目はやっぱり悟狼だよな。」

 

専用機持ち一同は落ち着いた見方をしているが、他の女子生徒達は、

 

谷本「冴神君、カッコいいよね!」

 

鷹月「他の後輩男子もいいし!」

 

相川「恋の幅が広がったのも、織斑君のおかげだよね!」

 

後輩男子達との恋にも期待する始末である。

 

 

Sideモニタールーム

 

山田先生「織斑先生、ひとまず準備完了です。」

 

千冬「うむ、ところで織斑、このクラス代表決定戦だが、予想はどうだ?」

 

一夏「今のところ、実力的には五分に近いでしょう。個人的に気になるのは悟狼の実力ですね。」

 

千冬「ほう、やけに冴神に思い入れがあるようだな。」

 

ネロ「他国の男子達もかなりのセンスがありますが、悟狼の能力は俺たちに近いと感じました。」

 

千冬「成る程な、まあ期待して見ておこう。」

 

たった今、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

Side一年一組

 

新一年一組の試合運びは共に五分であり、互いに拮抗し合う内容となっていた。

5試合中4試合までが終了し、結果は男女共に2勝2敗という結果に。

そのうち勝利を収めた男子は、ユーリ、ダーマード。敗北を喫したのはホルス、サガンである。

つまり、最終決着は悟狼に委ねられたということだ。

 

悟狼「・・・いよいよだな、俺で全てが決まる。」

 

悟狼は意を決してアリーナへ入場する。

 

蘭「(冴神さん、頑張って。一夏さんのためにも!)」

 

蘭は心の中で一夏の弟同然の悟狼を応援していた。

 

「冴神、まさかアンタとやるなんてね。でも勝つのはあたしだから!ぽっと出のアンタ達には負けないからね!」

 

彼女の名は北条院紗羅(ほうじょういん・さら)。由緒ある北条院家の令嬢で、両親は共に政界の重役を担うほどである。

 

悟狼「・・・・お前が俺をどう思おうと知った事じゃないが、友人まで侮辱した罪の重さを知ってもらうぜ。」

 

悟狼は鋭い目つきで紗羅を睨む。

 

Sideモニタールーム

 

一夏「悟狼、落ち着いていけよ。」

 

一夏は悟狼を強く応援する。

 

ネロ・千冬「・・・・・・。」

 

 

緊張が高まる中、いざ試合がスタートした。

 

まずはお互いに距離を置いて様子を見合う感じで少しずつ接近する。

 

紗羅「こっちから行くわよ!」

 

紗羅が先に仕掛けてきた。標準装備のアサルトライフル焔備で弾幕を張る。

 

悟狼「こっちも行くぜ!」

 

悟狼も焔備で応戦し、互いに打ち合い続けるも弾切れとなり、近接ブレード葵で斬り合う形に。

 

紗羅「あんた、思ったよりやるじゃない。」

 

予想以上に悟狼がついてこれているので、少し動揺する紗羅。

 

悟狼「操縦こそ素人だが、戦い自体はそれなりに経験してるんでな!」

 

悟狼は一気に間合いを詰めて紗羅に斬りかかる。

互いの葵が刃こぼれするまで斬り合いは続き、シールドエネルギーも互いに残りわずかとなったところで、悟狼は思い切った戦法を繰り出した。

 

悟狼「おりゃあぁぁっ!!」

 

なんと悟狼は弾切れとなった焔備を紗羅に思い切り投げつけた。不意を突かれた紗羅は思わず葵で受け止めて体勢を崩してしまい、そこに素早く悟狼がイグニッションブーストで接近して葵の刃を力いっぱいに叩きつけた。

 

紗羅のシールドエネルギーがゼロになり、悟狼は勝利を勝ち取った。

 

「勝者、冴神悟狼!よってこの試合は男子の勝利!!」

 

悟狼「いよっしゃあ!やりましたよ先輩達!!」

 

紗羅「・・・・負けた。」

 

紗羅は機体を解除した瞬間、その場に崩れ落ちる。

 

悟狼「・・・ほら、立てよ。」

 

悟狼は紗羅に手を差し伸べる。

 

紗羅「べ、別にそんなことしなくても、でも、ありがと。」

 

紗羅は顔を赤くしながら手を取ってもらう。

 

悟狼「おい、顔赤いぞ、大丈夫か?」

 

紗羅「う、うるさいわね!何でもないわよ!」

 

 

Sideモニタールーム

 

一夏「よっしゃあ!よくやったぜ悟狼!!」

 

一夏は嬉しさのあまり興奮する。

 

千冬「どうやらお前達の見る目は確かだったようだな。今後も後輩の育成に励むが良い。」

 

ネロ「全力を尽くします!」

 

千冬「(冴神悟狼、なかなか面白い男だな。)」

 

 

Sideギャラリー

 

ビリー「おーっ、やったじゃねえか悟狼!」

 

箒「流石は一夏の見込んだ男だ!」

 

シャルロット「やったね!」

 

セシリア「誇り高い勝利、おめでとうございます!」

 

ラウラ「うむ、私の将来の義弟としてふさわしいな。」

 

アルゴス「一夏が嫁で、弟同然の悟狼が義弟かよ!」ツッコミ

 

鈴「ラウラ、気が早すぎよ。でもまあ、ホントどうなるかと思ったけどよかったわね。」

 

レオ「そういやあの紗羅って女の子、なんか悟狼に惚れたように見えるな。」

 

簪「そうね、でも悟狼はパッと見る限り鈍感そうね。」

 

弾「こりゃまた新たな修羅場のスタートか?」

 

ちなみにこの後の新一年二組のクラス代表決定戦も、男子側の勝利で幕を閉じた。

一夏の望む理想の実現に向けた大きな一歩が踏み出されたのであった。

 



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祝勝会

新一年生のクラス代表決定戦は、1組、2組どちらも男子側の勝利で幕を閉じた。

その後の協議で、1組のクラス代表は悟狼、2組はノアが務める事になった。

 

そして今、放課後の学園では彼らの勝利を祝う祝勝パーティーが行われている。

 

一夏「それでは、新一年生男子の勝利を祝して、乾杯!!」

 

一同「乾杯!!!」

 

丸テーブル席の中央には、五郎とノアの2人が座っている。

 

アルゴス「しかしお前ら、よく頑張ったな。」

 

箒「うむ、互いに見事だったぞ。」

 

谷本「いやー、織斑君達には感謝だよ!」

 

鷹月「この学園にいい男が10人も増えたし!」

 

「新しい恋がここから始まるかも!!」

 

ネロ「・・・・随分色恋沙汰に飢えているな。」

 

のほほん「ネロロン、女の子には色々あるんだよ〜。」

 

ネロ「?」

 

その時、紗羅が悟狼のところにやって来る。

 

紗羅「その、冴神・・・。」モジモジ

 

紗羅は顔を赤くしながら悟狼を見つめる。

 

悟狼「?」

 

紗羅「き、今日の所は、負けを認めるわ。でも、次はないわよ。(ごめんって言えない、何で?)」

 

悟狼は紗羅の内心を悟ったのか、穏やかな表情になる。

 

悟狼「北条院、無理に言わなくてもいいぜ、俺たち男子のことを少しでもわかってくれてりゃそれでいい。」

 

紗羅「・・・・・・ごめん。(何だ、いいヤツじゃん・・・。)」

 

紗羅は胸が熱くなるのを感じる。

 

紗羅「その・・・・、アタシに勝ったんだから、アタシのこと、『紗羅』って呼んでもいいわよ。」

 

悟狼「何だ急に?まあいい、なら俺の事は『悟狼』って呼んでくれ。」

 

二年生専用機一同(ビリー、ネロ以外。)「(成る程、そういう事か(でしたか。)」

 

ノア「北条院さん、女尊男卑がまだ拭えない時代だけど、これからよろしく。」

 

紗羅「あ、うん、よろしく、メイソン。他のみんなも。」

 

男子一年一同「ああ、よろしく。」

 

黛「はいはーい、新聞部でーす!注目の新一年生男子のみんなにインタビューしたいと思いまーす!」

 

ホルス「随分賑やかなんだな。」

 

ディエゴ「インタビューね、面白そうじゃん。」

 

男子一同は順番にインタビューに答えていく。

 

黛「それでは織斑君、全男子のリーダーとして、彼らに一言お願い!!」

 

一夏「うむ、みんなよくやった!だが今回の勝敗に一喜一憂せず、今後もしっかりISに励んでくれ。」

 

一年男子一同「はい!!」

 

山田先生「織斑君、みんなのお兄さんみたいですね。」

 

千冬「うむ、我が弟ながら大きくなったものだ。」

 

紗羅「(・・・織斑先輩、この人が世界初のIS男子。こんなにカッコよくていい人がいるんだ・・・・。)」

 

紗羅は一夏の貫禄ある姿に、女尊男卑を重んじる自身を恥じた。

 

黛「それでは、一番白熱した試合だった冴神君、北条院さんのツーショット撮るわね!」

 

悟狼「おい紗羅、近くないか?」

 

紗羅「うっさいわね、いいでしょ別に!」

 

ツーショットを撮る瞬間、他のみんなも入った。

 

紗羅「ちょっと、何で全員入ってんのよ!」

 

一夏「ハハハ、なんかデジャヴな光景だな、なあセシリア!」

 

一夏は笑いながらセシリアを見る。

 

セシリア「ええ、懐かしいですわ。(あの日から私の恋は始まったのですわ。)」

 

セシリアは一夏にときめきを覚えた当時を振り返った。

 

ビリー「しかし悟狼のヤツ、案外鈍いヤツなんだな。」

 

レベッカ「アンタ人のこと言えないでしょ。」

 

その後は和やかにパーティーが行われた。



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番外編
登場人物を女神転生に例えると


 

ピコピコ、ピコピコ、

 

一夏「よっしゃ、また強い悪魔が合体で生まれたぜ!」

 

エクトル「一夏、何やってるんだい?」

 

アルゴス「ゲームか。日本はアニメやゲームとかに力入れてるもんな。」

 

一夏がやっているゲームは「真・女神転生」。独特の世界観から、

多くのファンを生み出した、知る人ぞ知る名作である。

 

鈴「それ、けっこう売れたわよね。」

 

シャルロット「へー、これが一夏の好きなゲームか。」

 

箒「ゲームか、見てみると結構世界に入り込めるものだな。」

 

セシリア「神話に出るものが独自のタッチで描写されてるのがいいですわね。」

 

ラウラ「ほう、これがゲームというものか。」ジーッ

 

皆、一夏が好きなものには敏感に反応する。

 

一夏「このゲームの醍醐味はいろんな種族がいる事だぜ。日本の神話や海外のあらゆる神話や物語に出てくる奴が多いからな。」

 

箒「では、タケミカヅチやアマテラスといったものも出るのか?」

 

一夏「おう、ビジュアルはゲームオリジナルだけどな。」

 

箒は学園屈指の大和撫子であり、日本神話には詳しい。

 

セシリア「では精霊や妖精も存在するのですか?」

 

エクトル「天使や堕天使もいるのかい?」

 

鈴「竜王もいたりする?」

 

一夏「おう、盛りだくさんだぜ!」

 

シャルロット「そうなんだー、面白そうだね。」

 

ふと、ラウラはある提案をした。

 

ラウラ「一夏、ふと思ったんだが、私達をこのゲームに例えるとどうなるのだろうか?」

 

一夏「えっ?」

 

アルゴス「それは確かに気になるよな。」

 

セシリア「一夏さんに決めていただきたいですわね。」

 

鈴「面白そうじゃない、答えてあげなさいよ一夏。」

 

一夏「そうだなー、じゃあまずは箒はこれだな。」

 

箒「どれどれ、地母神キクリヒメか。」

 

一夏「こういう衣装が似合うやつって、この学園じゃ箒以外考えられないと思うんだ。」

 

一同「確かに。」

 

箒「そ、そうか。」テレテレ

 

次はセシリア。

 

一夏「セシリアはこれだな。」

 

セシリア「水の精霊ウンディーネですわね。」

 

一夏「セシリアは専用機もそうだけど、イメージカラーがブルーだからな。ブルーといったら水って感じでいくと、

こういう綺麗な精霊が似合うと思うぜ。」

 

セシリア「まあ一夏さんたら❤︎」

 

次は鈴

 

一夏「鈴はこれだな。」

 

鈴「魔獣ネコマタ?」

 

一夏「鈴はしなやかですばしっこいイメージがあるし、どこか悪戯っぽい可愛さがあるから、ネコマタが一番当てはまると思ったんだが。」

 

アルゴス「確かに雰囲気そんな感じだもんな。」

 

エクトル「猫耳とか似合いそうだもんね。」

 

鈴「ま、まあ悪くはないわね。(さらりと可愛いって言われると照れるわね。)」

 

次はシャルロット

 

一夏「シャルロットはやっぱりこれだろ。」

 

シャルロット「えっ、僕って天使なの?」

 

エクトル「ラウラの保護者役やってるからか、母性あるイメージが強いからね。」

 

アルゴス「ゲームとかだったら回復とかしてくれそうだもんな。」

 

シャルロット「天使かー、嬉しいなぁ。」

 

次はラウラ

 

一夏「ラウラはこれがいいと思うぜ。」

 

ラウラ「これは、夜魔リリム?」

 

鈴「結構悪魔っぽいわね。」

 

一夏「ラウラはギャップ萌えとか、結構魔性を兼ね備えてるからな。

専用機が黒だし、銀髪が夜に輝くイメージがあるから、夜魔が似合うと思ったんだ。」

 

ラウラ「夜魔か。よくわからないが。」

 

エクトル「それだけ魅力的だって事だよラウラ。」

 

アルゴス「一夏も結構大胆なイメージするよなー。」

 

ラウラ「み、魅力的、私が?」プシュー

 

一夏「エクトルはこれだな。」

 

エクトル「これは、幻魔タム・リン?」

 

一夏「エクトルってさ、男らしからぬ美貌で、それで結構強いだろ。そこがぴったりだと思ってな。」

 

女子一同「うんうん。」

 

エクトル「へー、こんなキャラクターもいるのか。」

 

一夏「アルゴスは紛れもなくこれだろ。」

 

アルゴス「破壊神アレスか?」

 

一夏「まず、かなり筋肉隆々で、しかもそれは学学年トップクラスとなりゃ、これくらいの強さはあって当然だろ。」

 

鈴「確かに、ISにおいても破壊力ある技を出すもんね。」

 

一同「うんうん。」

 

アルゴス「結構な事じゃねえか。破壊力もまた強さの一つだしな。」

 

最後は一夏自身だ。

 

アルゴス「ここはみんなで決めようぜ。」

 

箒「そうだな。」

 

色々選んだ結果、

 

一同「大天使メタトロン」

 

一夏「ええっ、そう見えるのか?」

 

セシリア「白式を纏った一夏さんはまさにこれですわ。」

 

箒「大天使だけあって、まず誰にでも優しいし、」

 

エクトル「誰よりも強く美しい。」

 

アルゴス「属性で言ったら光だよな。」

 

鈴「アンタならこれくらい当然でしょ。」

 

ラウラ「流石は嫁だ。」

 

一夏「いやー、どうだろうなー。」

 

 

流石は専用機持ち達のリーダーである。

 



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エクトルの実家

IS学園に男子が増えてから月日が経ち、落ち着いてきたこの頃、あたりはすっかり秋めいていた。

そんな中、エクトルは学校の電話から実家の母親のイサベルと、妹のミレイアに電話をかけている。

 

エクトル「母様、僕は大丈夫です。学園の皆さんは凄く優しい人たちですから。」

 

イサベル「そう、よかった。一夏さんって、あのブリュンヒルデの弟さんなんでしょう?凛々しくて素敵な子よね。」

 

ミレイア「兄様、たまにはうちに帰ってきて!」

 

エクトル「はいはいミレイア。」

 

イサベル「そうだ、今度の学園のお休みにお友達を連れてきたら?」

 

エクトル「はい、声をかけてみます。」

 

食堂

 

エクトル「今度の休みなんだけど、もしよかったらスペインに来ない?僕の家族がみんなに会いたいって言ってるし。」

 

一夏「いいねー、俺海外行ってみたかったんだー!!」

 

箒「うむ、今の時代国際交流は大切だからな。」

 

レオ「とかなんとか言って、ホントは一夏と行きたいからだろ?」

 

箒「う、うるさい!!」

 

シャルロット「レオ、言葉悪いよ。」

 

ビリー「スペインか、俺は闘牛に興味あるぜ。俺の三節棍で牛を倒してみたいぜ!」

 

ラウラ「闘牛とは何だ?」

 

セシリア「闘技場で牛と1対1で戦うスペインの競技ですわ。」

 

アルゴス「ちなみに、やっつけた牛は食肉になるらしいぜ。スペインの牛肉はうまいぞ!」

 

ラウラ「ほ、本当か!?」キラキラ

 

鈴「ラウラ、よだれ垂れてるって。」フキフキ

 

弾「ラウラ、食べ物には目がないからなー。」

 

一夏「それじゃ、みんなでエクトルの家にお邪魔するか。」

 

こうして一夏達はエクトルの家に行くことになった。

ちなみに、専用機持ちに護衛として千冬が赴き、その間の学園の留守は山田先生に任された。

 

千冬「さあ、着いたぞ。」

 

エクトル「空港からはバスで移動になるから。」

 

エクトルの実家はバルセロナのほぼど真ん中にある大豪邸だ。

 

一夏「すっげー!!」

 

箒「うむむむ、これはなかなか。」

 

弾「つーかまんまお城だな!!」

 

シャルロット「何かロマンがあるよね!」

 

アルゴス「さすがだな。」

 

ラウラ「おー!将来は一夏とこんな家に住みたいぞ!」

 

セシリア「それならば私が一番ですわ!!」

 

鈴「ちょっとアンタら・・・。」

 

エクトル「じゃあバスから降りよう。」

 

バスはエクトルの屋敷の門の前で止まる。

 

執事達「お帰りなさいませ、エクトル様。」

 

エクトル「ただいま、みんな。今日は僕の友人を手厚くもてなしてくれよ。」

 

執事達「はい。」

 

一夏「おー、まさに貴公子様だな。」

 

セシリア「ええ、さすがは一夏さんのお友達です。」

 

鈴「何か世界が違うわね。」

 

シャルロット「執事けっこういるね。」

 

早速中に入ると、広い庭を通り、屋敷に着く。

 

メイド達「お帰りなさいませ、エクトル様!」

 

エクトル「ただいま。」

 

すると、メイドが何人も一夏に寄ってくる。

 

「あなたが一夏様ですね。」

 

「エクトル様からお話は聞いております!」

 

「お話通り素敵な方!」

 

一夏「ど、どうも。(何かこのパターンよくあるよな。)」

 

千冬「(むう、さすがに一夏はどこにいってもモテるな。)」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「(一夏(一夏さん)・・・・。)」

 

一夏は人種問わず学園どころか、現代のすべての女性に人気があるため、危うさを感じる千冬と恋人候補である。

 

レオ「エクトルのメイドさん達、みんな可愛いねー!」

 

レオは早速ナンパする。

 

「あっ、レオ様!」

 

アルゴス「出た、レオの悪い癖。」

 

鈴「はあ、イタリア伊達男これだもんねー。」

 

「あの、アルゴス様ですよね?私いつもアルゴス様のマーシャルアーツの試合を見ておりました!!」

 

アルゴス「そ、そりゃあどうも。」

 

「ビリー様ですよね、私、ビリー様の棒術試合を見てます!」

 

ビリー「おっ、ファンがここにいるとは嬉しいぜ!」

 

鈴「・・・アンタもレオと変わんないわね。」

 

ビリー「あ?何か言ったか?」

 

鈴「別にー。」ムスッ

 

ビリー「何だよ。」

 

一同「はあ、鈍感。」

 

「それではどうぞお入りください。」

 

玄関が開くと、そこにはイサベルとミレイアが立っていた。

 

エクトル「母様、ただいま戻りました。」

 

イサベル「お帰りなさいエクトル、初めまして皆さん、エクトルの母のイサベルです。織斑先生、それに皆さん、息子がいつもお世話になっております。」

 

イサベルは40歳だが、とてもそうは見えないほど若々しく麗しい。

 

ミレイア「妹のミレイアです。いつも兄様がお世話になっております。」ペコリ

 

ミレイアは1つ下の妹だ。

 

一同「いえ。」

 

さっそく応接間に案内され、長テーブルに着席する。

 

弾「何か、俺場違いな気が。」

 

ビリー「気があうな、俺もだ。」

 

弾とビリーはパンクな雰囲気からか、屋敷にいることに違和感を覚える。

 

エクトル「あはは、そんなに硬くならなくてもいいよ。」

 

レオ「しかし、ここに来れたのも、一夏のおかげだな。」

 

一夏「えっ?」

 

箒「うむ、一夏とここに来れてよかった。」

 

セシリア「一夏さんがエクトルさんとお友達になったおかげですわ。」

 

一夏「いやいやそんな。」

 

シャルロット「それにしても、エクトルのお母さん綺麗な人だね。」

 

レオ「おう、人妻もいいもんだな。ミレイアちゃんもかわいいし!」

 

鈴「レオ、アンタ友達の家族までナンパする気?少しは遠慮しなさいよ。」

 

弾「確かに、蘭もあれくらいおしとやかならいいんだが、同じ妹でも全然違うぜ。」

 

箒「それを本人には言わぬ事だな。」

 

一夏「・・・・・。」

 

ふと、一夏は黙り込んだ。

 

ラウラ「どうした一夏?具合でも悪いのか?」

 

一夏「いや、俺さ、記憶喪失で自分のお母さんを知らなくて。お母さんに愛されてるエクトルが、何だか羨ましくてな。」

 

千冬「無理もないな、一夏は私が育ててきたが、やはり母親にはかなわないだろうな。」

 

一同「(一夏(さん)・・・・・。)」

 

イサベル「そうだったの。」

 

ミレイア「母様、大丈夫だよ!一夏様にもいいお母様ができるから!一夏様、どうかお元気を出して!」

 

一夏「ミレイアちゃん、ありがとう。」

 

一夏はミレイアに励ましの言葉を受け、心が温かくなる。だが、次の瞬間、

 

ミレイア「だから私、将来は一夏様と結婚する!!」

 

一夏・エクトル「えっ!?」

 

イサベル「あらあら、ウフフ。」

 

箒・セシリア・鈴・シャルロット・ラウラ「ええええーーっっ!?」

 

弾・ビリー・レオ・アルゴス「なにーっ!?」

 

千冬「はあ、またライバルを増やしたな。まったく困った弟だ。」

 

ミレイア「私、一夏様の事兄様から色々聞いていたの!是非一度お会いしたいと思ってたんだけど、こんな素敵な人なかなかいないわ!ねえ、いいでしょ母様!」

 

ミレイアはそう言うと、一夏にぴったりくっついた。

 

一夏「ちょ、ちょっと待って。(何かいやな予感が。)」

 

イサベル「うん、一夏さんなら問題ないわね。」

 

鈴「随分あっさりね。」

 

あっさり認めたイサベル、かなりのほほんとしてるが。

 

千冬「まあそれは事実なのですが。」

 

エクトル「じゃあ僕は一夏の兄って事か。一夏と兄弟になるのもいいかもね。」

 

エクトルは半ばからかうように話す。

 

箒「いーちーかー。」 ゴゴゴゴゴ

 

セシリア「どうしてあなたはいつもいつも。」 ゴゴゴゴゴ

 

弾「一夏、何でお前ばかり!!」

 

一夏「ちょ、ちょっとみんな落ち着けって。」

 

シャルロット「へー、一夏は年下にも人気なんだね。」ニコニコ 

 

ラウラ「どうやら嫁としての自覚が足りないようだな。」 

 

一夏「お、おい誰か。」

 

アルゴス「これはもう無理だろ。」

 

ビリー「あちこちで大変だな一夏。」

 

レオ「羨やましいねえ、俺もお前くらいモテたいねえ。」

 

鈴「ごめん一夏、フォローできないわ。」

 

専用機一同は誰もフォローしてくれない。

最後の頼みの綱である千冬に助け舟を求めるも、

 

千冬「一夏、全面的にお前が悪い。」

 

一夏「(八方塞がりかよ!!)」ガーン

 

この後、一夏は恋人候補達をなだめるのに散々苦労した。

 

それからみんなでスペインの街を回り、買い物やアトラクション、芸術鑑賞など、充実した時間を過ごしていった。

 



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IS学園ハロウィンパーティー

秋のとある日、IS学園ではいつものように勉学と訓練が行われており、今日も平和である。

 

その日の夕食

 

TV「今年もハロウィンの時期がやってまいりました。町は仮装した人々で賑わっております。」

 

一夏「ハロウィンかー、記憶には無いけど、きっと楽しいんだろうな。」

 

ラウラ「ハロウィンとは何だ。」

 

シャルロット「仮装してお菓子をもらいにいく行事だよ。」

 

ビリー「最近じゃお菓子交換より仮装に重点が置かれてるけどな。」

 

ラウラ「そうなのか、お菓子がたくさん食べられるのはいいな。」

 

鈴「アンタ食いしん坊ね。」

 

ラウラは文化祭以降、パーティーなどのイベントが大好きになった。

 

箒「仮装というと、どんなものがあるのだ?」

 

アルゴス「まあ主に怖い系のものが多いな。」

 

セシリア「最近ではファンシーなものもありますのよ。」

 

簪「そうなんだ、楽しそう。」

 

レオ「ま、可愛い女の子達の仮装なら俺は何でもいいがな。」

 

弾「ホントかよ。」

 

エクトル「でも、たまにはそんなイベントもやってみたいよね。」

 

一夏「じゃあ今度の休みの夜に学園の皆でハロウィンパーティーするか?」

 

谷本「いいねー!」

 

のほほん「やるやる〜。」

 

鷹月「流石は生徒会長!!」

 

 

こうして、IS学園内でのハロウィンパーティーが始まった。

 

食堂にはかぼちゃを使った様々な料理が置かれ、ケーキやお菓子が山になっているテーブルもある。

 

のほほん「わー、どれもおいしそ〜。」ヨダレ

 

ラウラ「本当だな。」ヨダレ

 

アルゴス「後は仮装だけだな。」

 

谷本「これ全部織斑君とベレン君で作ったの!?」

 

一夏「ああ、昨日エクトルと二人で買い物に行ってきたしな。」

 

エクトル「うん。」

 

鈴「アンタら二人で買い物って・・・。」

 

弾「お前らは主婦か!」

 

シャルロット「普通の男子高校生のする事じゃないよね。」

 

ビリー「なんかお前ら並ぶと夫婦に見えんぞ。」

 

一夏・エクトル「えっ?」

 

レオ「エクトルが女顔だから余計にな。」

 

簪「レオ、からかわないの。」

 

千冬「(むう、実家では家事面で色々助かっているとはいえ、何か悔しい。)」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「ムーッ。」

 

家事が全くできない千冬や一夏の恋人候補は、家事で一夏と並べるエクトルに少し妬いてしまう。

 

鷹月「でも、ベレン君の恋人の山田先生はいいなー、結婚したら毎日ベレン君の料理が食べられるんだもん。」

 

山田先生「えっと、その、・・・。」

 

エクトル「それはまだ先の事だからね、真耶さん。」ニコッ

 

山田先生「はうぅ・・・。」

 

顔を真っ赤にする山田先生。

 

アルゴス「何か、お菓子必要なかったかもな。」

 

鈴「ほんっと甘ったるいわよ!」

 

弾「自販機のブラックコーヒー買い占めたいくらいだぜ。」

 

一同「ごちそうさまでした。」

 

エクトル・山田先生「あ、いえ。」

 

空気を変えるべく一夏が切り出す。

 

一夏「じゃあ皆、仮装しに各部屋に戻ろう、皆揃ったらパーティーの始まりだ!!」

 

一同「はーい!」

 

各々は部屋に戻り、仮装をする。

 

 

数十分後

 

「見てみて、あたしこんな感じにした!」

 

「可愛い!!」

 

「男子のも楽しみよね!!」

 

魔女を始め、最近流行りのゆるキャラ等の仮装も目立つ。

 

一夏「お待たせ皆!トリックオアトリート!!」

 

一夏は定番のドラキュラ。

 

「カッコいい!!」

 

「織斑君やっぱり何でも似合う!!」

 

「織斑君、私の血を吸って!!」

 

アルゴス「よう、みんな似合ってるな!」

 

アルゴスは狼男。

 

エクトル「今日は楽しいね。」

 

エクトルはフレディ。

 

弾「何か童心に帰ってるな。」

 

弾は死神。

 

レオ「今日は楽しもうぜ皆!」

 

レオはジェイソン。

 

ビリー「俺はこれだ!」

 

ビリーはゾンビの格好だ。

 

鷹月「なるほど、ビリーとゾンビで、ゾンビリーって事ね。」

 

谷本「うまい!」

 

ビリー「それどうつっこみゃいいんだよ。」

 

箒「い、一夏。」

 

一夏「ん?」

 

箒は雪女の格好だ。どこか恥ずかしそうにしている。

 

一夏「箒、なかなかのチョイスだぜ!」

 

箒「そ、そうか、」

 

セシリア「一夏さん、私も。」

 

セシリアは定番の魔女。手にはジャックランタンを持っている。

 

一夏「魔女か、いいな!」

 

鈴「ビリー、どう?」

 

鈴はキョンシーの格好。

 

ビリー「似合うぜ、でも何かニュアンス的に俺と一緒だな。」

 

鈴「え、そ、そう?偶然でしょ?」

 

アルゴス「(アイツ、鈴が好きな人に合わせたい気持ちわからねえのかよ。)」

 

簪「レオ、その、お待たせ。」

 

レオ「簪は妖精か、小柄なお前にぴったりだ。」

 

簪「むっ、小柄で悪かったわね。」プクー

 

レオ「可愛いって意味に決まってんだろ。」

 

レオは簪の頭を撫でる。

 

簪「あ、ありがと。」

 

シャルロット「ほらラウラ、行こうよ。」

 

ラウラ「ま、まだ心の準備が。」

 

臨海学校の場面を思い出させる。

 

エクトル「やあ、シャルロット、ラウラ。」

 

一夏「天使か、シャルロットにぴったりだ。」

 

シャルロット「えへへ、ありがとう。」

 

一夏「ラウラは黒猫か、お菓子いっぱいあげたいくらい可愛いな。」

 

ラウラ「い、一夏も、その、かっこいいぞ。」

 

のほほん「ラウラウ、私も動物だよ〜。」

 

本音はいつもの着ぐるみだった。

 

アルゴス「本音、お前ハロウィン関係なくいつもそのカッコだろ。」

 

のほほん「アルアル、これはいつもとは違うのだよ〜。色がかぼちゃ色なのだ〜。」

 

一同「わかり辛いよ!!」全員ツッコミ

 

山田先生「エ、エクトル君、どうかな?」もじもじ

 

エクトル「ま、真耶さん?」

 

山田先生は牛柄の大胆な衣装だ。彼女の巨乳を強調するにはぴったりだ。

 

一夏・アルゴス・弾・レオ・ビリー「(うわー、何か違和感ねえ。)」

 

エクトル「凄く似合ってますよ!」

 

楯無「ハローみんな!!あれ、簪ちゃーん!かーわいい!!」

 

簪「ちょ、ちょっとお姉ちゃんそのカッコは危ないよ!!」

 

楯無はラ◯ちゃんを彷彿とさせる格好だ。しかも胸や尻の露出が激し過ぎる。

 

一夏「楯無さん、あなた恥ってものを知らないのか!?」

 

箒「何とふしだらな!」

 

セシリア「程をお考えくださいまし!」

 

シャルロット「むう、あのスタイルはないよ。」

 

ラウラ・鈴「全くだ!(ホントよ!)」

 

楯無「えーいいじゃん、何たって今日はハロウィンなんだから❤︎」

 

アルゴス「リオのカーニバルじゃねえんだぞ!」

 

弾「でもすげーな・・・。」

 

レオ「ああ。」

 

弾とレオは釘付けになる。

 

ビリー「てめえら、鼻血垂れてるぞ。」

 

弾・レオ「はっ!?」

 

鷹月「そういえば織斑先生は来ないのかな?」

 

千冬「諸君、待たせたな。」

 

千冬は日本神話のアマテラス大御神を思わせる衣装だ。威厳に満ちていながら女性としての魅力も半端ない。

 

男子一同「おおー!!」

 

女子一同「素敵です!!」

 

千冬「(一夏のために来たのだが、よかった。喜んでもらっている。)」

 

一夏「それじゃあ、パーティーの始まりだぜ、トリックオア、」

 

一同「トリート!!」

 

仮装の見せ合いの後は食事や出し物で盛り上がり、特別な夜を過ごした。

 



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IS男子の休日

とある夜、学園寮の消灯時間前のこと、一夏達IS男子6人衆は

密かなボーイズトークを行っていた。

 

一夏「しかしまあ、この学園に男が6人もできるとはな。」

 

エクトル「うん、一夏がこれを言い出した時、始めは驚いたよ。」

 

アルゴス「ああ、全くだ。」

 

レオ「マジか。俺だったらハーレムを楽しむ所なのに。」

 

ビリー「あのな、誰もがてめえみたいな奴じゃねえんだよ。」

 

一夏「女の子と仲良くできる事に比例して、男友達に会えない寂しさも増していったんだよ。それに、女尊男卑にはどうしても納得できないものがあるし。」

 

弾「まあ訓練はきついけど、一夏のおかげで可愛い女の子達と関われてるから、一夏には本当に感謝してるぜ。」

 

実際、IS学園では女尊男卑が嘘のように男女共々仲良くできている。

 

ビリー「そう言えば、俺たち男子だけで過ごした事ってないな。」

 

エクトル「言われてみるとそうだね。」

 

弾「普段そんなに外出できないしな。」

 

一夏「今度の土日に俺たちだけでどこか行こうぜ。実はそんな事もあろうかと、姉さんに土日に外泊許可もらっておいたんだ。。」

 

アルゴス「マジかよ、手早いな。」

 

エクトル「織斑先生よく許可してくれたね。」

 

弾「まあ一夏のお願いとなればな。」

 

レオ「女の子達との時間もいいが、そういう男だけの時間も大事にすべきだな。」

 

一夏「じゃあ、今からどこに行くか決めようぜ。」

 

男子6人で話し合った結果、一夏の案内で温泉旅行に行く事になった。

 

一夏「じゃあお休み、みんな土日楽しみにして頑張ろう!!」

 

エクトル・アルゴス・弾・レオ・ビリー「おう!!」

 

 

しかし、この時からすでに学園のある人物に筒抜けであった事を、彼らは知る由もなかった・・・・。

 

そして土曜日

 

 

一夏「おはようみんな!」

 

アルゴス「やっとこの日が来たな!」

 

エクトル「温泉でゆっくり疲れを取りたいね。」

 

ビリー「お互い気兼ねなく色んな事やろうぜ!」

 

レオ「行き先で可愛い子ナンパするのもいいかもな!」

 

弾「おっ、それもいいな!」

 

早速彼らは出発しようとする。

 

箒「おや、一夏。それにみんなも今日はどうしたのだ?」

 

一夏「ああ、俺たちこれから温泉旅行に行くんだよ。」

 

アルゴス「それも、俺たち男子だけでな。」

 

鈴「へー、珍しいわね。」

 

エクトル「一夏が日本のいい温泉を案内してくれるんだよ。」

 

シャルロット「えー、いいなぁ。」

 

セシリア「羨ましいですわ。」

 

ラウラ「一夏、私の嫁でありながら内緒で旅行とは感心せんな。」プクー

 

弾「嫁って・・・。」

 

一夏「悪い悪い。でもたまには男だけでしたい事もあるんだ。わかってくれよ。」

 

箒「まあそうだろうな。知り合ってまだそこまで日が経っていないし。」

 

谷本「でも皆仲良いよね。」

 

鷹月さん「男同士の裸の付き合いって事か。」

 

ビリー「ま、そんなトコだな。ちなみに帰ってくるのは日曜の夕方くらいだ。」

 

話していると、他の女子生徒も食いつく。

 

のほほん「えー、おりむー男の子達だけでお出かけするの〜?」

 

「いいなー、私達も行きたい。」

 

「今日明日男子いないの?寂しいな〜。」

 

レオ「心配すんなって、可愛い皆のためにお土産用意してやるからよ!」ウィンク

 

「やったー、楽しみにしてるね!!」

 

男子一同「それじゃ、行ってきまーす!!」

 

男子一同は旅立った。

 

 

楯無「皆おはよう、あれ、元気ないねー。」

 

箒「生徒会長。」

 

ラウラ「実は・・・。」

 

ラウラは事の経緯を楯無に話す。

 

楯無「なるほどー、男子だけで温泉旅行か。羨ましいわね。」

 

セシリア「ええ、でもせっかくの休みですし、たまには一夏さんにゆっくりしていただかないと。」

 

シャルロット「うん、そうだよね。」

 

楯無「でも皆、これは私達にとってもチャンスよ!」

 

鈴「何がですか?」

 

楯無「後で皆生徒会室に来てちょうだい。」

 

 

Side男子達

 

 

一夏達一行は、学園からバスを乗り継ぎ、新幹線で北海道まで向かう。

 

一夏「ちょうど3人席が2列空いててよかったな。」

 

弾「自由席でこれはなかなかないぜ。」

 

エクトル「これが日本の新幹線か。」

 

アルゴス「こないだの電車よりはるかに速いな!」

 

ビリー「日本の鉄道技術は優れてるんだな。」

 

レオ「車内の売り子さんも美人ばっかだな。」

 

一夏「温泉は夜に入るから、それまで色んなとこ回って遊ぼうぜ。」

 

新幹線では男子達の他愛ない会話が響く。

 

 

Side女子達

 

楯無「さあ皆、生徒会室にようこそ!」

 

箒「これが生徒会室か。」

 

セシリア「広くていいですわね。」

 

シャルロット「生徒会長、さっき言ってたチャンスって何ですか?」

 

楯無「フフフ・・・。聞いて驚くわよ、実は、彼らの旅行の様子をリアルタイムで見られるようにしちゃったんだー!!」

 

楯無はそう言ってモニターをつける。そこには新幹線で楽しそうに会話する一夏達の姿が。

 

一同「えええぇぇぇーっっ!?」

 

ラウラ「い、一夏、楽しそうではないか!」

 

鈴「・・・ちょっと待って、リアルタイムでって事は、その、」

 

谷本「温泉旅行だから、つまり・・・。」

 

楯無「そう、彼らの裸も見放題よー!!」

 

一同「キャーッッッ!!!」

 

シャルロット「な、ななな、は、裸!?」

 

セシリア「そ、それはまずいのでは!?」

 

箒「そ、そんな、ふ、不潔ではないか!!」

 

ラウラ「私は大いに興味があるな。」

 

鈴「いやアンタ、何冷静なのよ!?ってゆーか会長どうやってあいつらの情報を!?」

 

楯無「いやー、実は篠ノ之さんのお姉さんにこの事話しちゃってー、そしたら「いっくんの貴重な映像の為に!!」って張り切りだしちゃってさー、アハハ!。」

 

箒「この間私に姉さんの連絡先を聞いたのはそのためか!」

 

セシリア「何という事を!」

 

シャルロット「いくら生徒会長でもこれは!」

 

楯無「あれー?一夏ラバーズの皆は一夏君の裸に興味ないのぉ?」

 

箒・セシリア・シャルロット「えっ!?それは・・・。」

 

楯無「折角のチャンスよ。逆の立場なら問題大有りだけど、これはまだいい方よ!」

 

箒・セシリア・シャルロットの3人は苦悩の末・・・。

 

箒・セシリア・シャルロット「・・・見たいです。」

 

楯無「だよねー、皆もそうでしょう?」

 

一同「コクコク」

 

楯無「じゃあ改めて、旅行映像鑑賞スタート!!」

 

結局皆、そそられる興味、好奇心に打ち勝つことはできず、モニターの前に座る。

 

ちなみに彼らの計画は、楯無が情報を盗聴器で聞いた後、その詳細を束にリークした事で筒抜け状態にされてしまったのだ。

 

 

Side男子達

 

リアルタイムで見られてるとはつゆ知らず、男子達一行は目的の北海道に着いた。

 

一夏「んーっ、着いたぜ!やっぱり空気が違うな!」

 

弾「長時間新幹線にいるの結構疲れるな。」

 

エクトル「ここが北海道か。いいところだね。」

 

アルゴス「北海道には美味いものがたくさんあるらしいな。」

 

ビリー「マジかよ、おれ寿司食いまくりたいぜ!」

 

レオ「それと同時にナンパもしまくりたいぜ!」

 

一行は北海道の札幌に行き、テーマパークで遊び、観光スポットで記念写真を撮り、

 

有名な商店街で買い物をするなど、普段できない自由気ままに過ごした。

 

途中レオがやりたいと言っていたナンパだが、彼らはISを使える男子として既に有名なため、

逆ナンに会う方が多かったという。

 

当然ながらこの様子もみっちり撮影されているわけだが・・・。

 

Side女子達

 

のほほん「うわー、楽しそだよ〜。」

 

箒「むむ、一夏はどこにいてもモテる。」

 

セシリア「一夏さんに悪い虫がつかないよう祈らなくては!」

 

シャルロット「はあ、ホント一夏ってズルいよね。」

 

ラウラ「全くだ。」

 

鈴「てゆーかナンパしたりされたり好き放題ね。」

 

谷本「皆モテモテね。」

 

鷹月「織斑君なんか、何もしなくても女の子が寄ってくるもん。」

 

楯無「あちゃー、皆揃っていい男だからしょうがないわね。」

 

 

Side男子達

 

一夏達は散々北海道の名所をめぐり、遊び疲れた頃に温泉に向かった。

 

一夏「ここが北海道で一番と言われる温泉旅館だ!」

 

弾「ここかー、俺一回行きたかったんだよなー。」

 

エクトル「料理とか楽しみだよね。」

 

早速部屋に向かった。

 

アルゴス「なかなかいい和室だな、和むぜ。」

 

ビリー「すげー、窓から海が見えるぞ!」

 

レオ「とりあえず休憩してから入ろうぜ。」

 

彼らはテーブルの饅頭を頬張る。温泉に入る前にエネルギーを摂ると、湯当たりしにくくなるらしい。

 

脱衣所に向かい、露天風呂に出た。ちなみにこの旅館は団体予約で一部の露天風呂が貸し切りにできるのだ。

 

弾「すげー広いぜ!」

 

ビリー「ヒャッホー、俺が一番湯だあ!」

 

レオ「いや、俺だ!」

 

エクトル「おい二人とも、走ったら危な」

 

言い終わる前にこける。

 

ビリー・レオ「いってぇぇぇーっ!!」

 

アルゴス「バカかお前ら、まずは体洗ってからだろ!」

 

一夏「ハハハッ、貸し切りにしてるからゆっくり楽しもうぜ。」

 

自分たち以外いないので当然ながらタオルを腰に巻いてはいない。つまり・・・・。

 

 

Side女子達

 

「キャーッ❤︎!!!!」鼻血ブー

 

「いやーッ❤︎!!!!」鼻血ブー

 

「ついに見ちゃったー❤︎!!!」鼻血ブー

 

「生徒会長、ありがとうございます❤︎!!」鼻血ブー

 

のほほん「ほ、ほえぇぇー❤︎ !!」

 

生徒会室は鼻血のオンパレードだ。

 

楯無「あらあらすごい、皆それぞれ違うわね❤︎」

 

箒「い、今私は、一夏の、一夏の、」

 

セシリア「一夏さんの裸体・・・芸術的ですわ❤︎!」

 

シャルロット「こ、これが男の子の裸・・・❤︎!」

 

ラウラ「ほ、ほう、これが、クラリッサの言っていた男の✖️✖️✖️に✖️✖️✖️✖️というものか・・・❤︎。」

 

ラウラは一夏の股間に釘付けだ。

 

鈴「ラウラ、女の子が露骨に✖️✖️✖️とか✖️✖️✖️✖️って言葉使ったらダメでしょ!(でも一夏逞しいわね・・・❤︎。)」

 

彼女達は至福の時を迎える。しかし、それも長くは続かなかった。

罪を犯せば裁かれるのが世の常である。

 

千冬「貴様ら、何をしている?」

 

一同「!!!!!」

 

千冬の声を聞いた瞬間、全員真っ青になり、背筋が凍った。

 

千冬「多人数が生徒会室で何をしてるかと思って来てみれば、貴様ら、卑猥な事をして楽しそうではないか・・・。

しかも、私の許可なく一夏の裸体を拝むとは、えぇ!?」ゴゴゴゴゴゴ・・・・

 

千冬はどす黒いオーラを放ち、怒りに震える。

 

箒「あの、その、」ガタガタ

 

セシリア「ええと・・・」ブルブル

 

シャルロット「(いや、もうこれ助からないよ・・・。)」

 

ラウラ「きょ、教官!これはその、そう、いわゆる『性教育』の一環といいますか・・・。」

 

一同「(その言い訳無理があるって・・・・。)」

 

楯無「え、ええ、ボーデヴィッヒさんの言うとおりで・・・、エヘヘ。」

 

千冬「こんな教育方があるか馬鹿者どもぉ!!全員ISスーツに着替えてグラウンドに出ろ、

特別訓練で地獄を見せてくれる!!!」

 

こうして、男子達の禁断の映像を見てしまった生徒達は、千冬の地獄の特訓で精魂尽き果てる事となった。

 

 

そして、日曜日の夕方、男子一同は旅行から帰ってきた。

 

一夏「皆、ただいま!お土産いっぱい買ってきた、ってあれ?」

 

山田先生「皆さん、お帰りなさい・・・。」

 

一同「・・・・・。」チーン

 

皆死んだ魚のような状態で食堂のテーブルに上半身を寝かせていた。

 

エクトル「おいおい皆どうしたんだ?」

 

レオ「さては、俺たちがいない寂しさでどうにかなっちゃったってか?」

 

アルゴス「いや、明らかに違うだろ。」

 

ビリー「山田先生、あいつらどうしたんすか?」

 

山田先生「いえ、その、私からは言いにくいから、その」

 

弾「織斑先生に聞けばいいんすか?」

 

山田先生「はい、そ、そうしてください・・・。」

 

一夏「?」

 

山田先生の様子が気になるも、とりあえず千冬の所に行く。

 

一夏「織斑先生、ただいま戻りました。これ、先生方にお土産です。」

 

北海道の銘菓を千冬に渡す。

 

千冬「長旅ご苦労。む、これはなかなかいい土産だ、ありがたく頂こう。」

 

エクトル「所で、一組の生徒と役何名かが食堂でダウンしているのですが。」

 

アルゴス「何か皆死にそうな顔でしたけど。」

 

千冬「コ、コホン、実に言いにくいのだが、話すとしよう。(不可抗力ながら私もこいつらの裸を見た訳だしな。)」

 

千冬は事情を洗いざらい話した。

 

エクトル「エッ、僕たちそんな目にあってたんですか?」

 

ビリー「つーか、生徒会長と箒の姉ちゃんタチ悪いな。」

 

レオ「ま、俺はいいけどね、肉体美を可愛い娘にアピールできたって事で。」

 

弾「は、ははは。」

 

千冬「まあ、こんなわけだが、彼女達を許すかどうかはお前達に任せる。」

 

一夏「大丈夫ですよ織斑先生。許してますから。」

 

アルゴス「これもモテ要素だと思えば。」

 

千冬「ふう、全くお前は人が良すぎるな。」

 

レオ「ま、お返しに1日だけ学園内でビキニ姿でいてくれるとかしてくれりゃいいんだけどな♪。」

 

エクトル「レオ、調子に乗らない。」

 

レオ「冗談だって。」

 

千冬「ふむ、まあ何はともあれ、貴重な時間を過ごせたようだな。明日からまた頑張るように。」

 

男子一同「はいっ!!!」

 

男子一同は長旅の疲れを癒すべく部屋に戻った。

 

ちなみに翌日、レオの言った冗談が千冬の命令により実現されていた。

 



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クイズ 織斑一夏の100の事 part1

とある休日の朝9時、一夏は突如楯無に生徒会室に呼び出される。

 

一夏「あの、今日はどういった用で?」

 

楯無「何、簡単な事よ。今からいくつか質問するから、それに答えてくれればいいだけだから。そこ座って。」

 

そこには不自然に1人用ソファーがあった。

 

一夏「はあ。(何かありそうだけど、まあいいか。)」

 

 

一方で、

 

箒「楯無副会長に突然呼ばれて来たはいいが。」

 

弾「ここ、視聴覚室だよな。」

 

ビリー「休みなのに呼び出しかよ、ダリいな。」

 

一夏を除く専用機一同は、視聴覚室に呼び出されていた。すると、突如モニターに生徒会室が映る。

 

簪「あれ、お姉ちゃん?それに一夏も。」

 

レオ「二人で何やってんだ?」

 

ラウラ「一夏、まさか、私達に内緒で副会長と!?」

 

箒・セシリア・シャルロット「!!」

 

エクトル「いや、まだそうと決まったわけじゃ。」

 

その時、室内にアナウンスが流れる。

 

アナウンス「織斑一夏を、もっと知りたい!」

 

アルゴス「何だ何だ?」

 

アナウンス「クイズ 織斑一夏の100の事。」

 

鈴「・・・クイズ?」

 

ビリー「おい皆、手元見てみろ。」

 

座っている席を見ると、そこにはタブレットとタッチペンが。

 

アナウンス「このコーナーは、織斑一夏に対する質問に、一夏がどう答えるかを当てていくクイズです。」

 

箒「なるほど。」

 

弾「これ、一夏と付き合い長いやつ有利じゃね?」

 

鈴「そういえばそうね。」

 

ラウラ「一夏について改めて勉強し直せるのか、将来のために頑張らねば。」

 

エクトル「でも、記憶喪失になってる事を考えると、過去に対する質問はほぼないんじゃないか?」

 

簪「それは言えてるわね。」

 

アナウンス「優勝特典は、一夏の得意料理フルコースです。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!」

 

レオ「こりゃあ一夏の恋人候補は頑張らなきゃな。」

 

アナウンス「それでは、第1問。一夏の特技は?」

 

一同「!?」

 

一同は困惑する。

 

箒「まあこれじゃないか?」

 

セシリア「ですわね。」

 

鈴「こっちの線もあるわよ。」

 

弾「そういやあいつこれよくやってるしな。」

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

箒・セシリア・アルゴス「剣」

 

鈴・弾・シャルロット・ラウラ・エクトル「料理」

 

ビリー・レオ・簪「リーダー役」

 

アナウンス「それでは、本人に聞きます。」

 

 

楯無「一夏君の特技は? 」

 

一夏「特技、ですか。うーん、まあISを除いて考えたら、料理ですかね。」

 

一夏は別室にいるため、自分の答えが聞かれているとは知らない。

 

エクトル「やはりこれだったか。」

 

アルゴス「そっちかー。」

 

箒「ううむ。」

 

 

アナウンス「第2問、一夏の好きな色は?」

 

レオ「これ、幾つか思い当たるんだが。」

 

ビリー「イメージ的にこの色じゃねえの?」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「白」

 

ビリー・簪「青」

 

アルゴス・鈴「黒」

 

弾・レオ・エクトル「赤」

 

 

アナウンス「それでは、本人に聞きます。」

 

楯無「一夏君の好きな色は?」

 

一夏「凄いベタですけど、青ですかね」

 

ビリー「おっしゃ。」

 

簪「白式があるから白の可能性もあったけどね。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「(結構難しい。(ですわ。))」

 

 

アナウンス「第3問、一夏が最近食べた料理で、一番美味しかったのは?」

 

弾「えっ?」

 

アルゴス「最近?」

 

鈴「あいつ何でも食べるからわかりづらいわね。」

 

箒「学園でもほぼ全てのメニューを食べているしな。」

 

ビリー「最近っつったら、まあここ1週間弱ってとこか?」

 

セシリア「そう考えるのが妥当ですわね。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

 

箒「肉じゃが」

 

シャルロット「唐揚げ」

 

セシリア「パスタ」

 

ラウラ「サンドイッチ」

 

鈴「ラーメン」

 

アルゴス「ヒレカツ」

 

エクトル「チーズリゾット」

 

弾「エビチリ」

 

レオ「ビーフカレー」

 

ビリー「炒飯」

 

簪「天ぷら」

 

これは全員バラバラになった。

 

 

箒「やはり日本人として考えると、これではないか?」

 

アルゴス「そりゃそうかも知れねえけどよ。」

 

エクトル「基本的に彼は何にでも興味を示すからね。」

 

ラウラ「以外にシンプルなものを答えると思ってな。」

 

ビリー「けど、中華の可能性も十分あるぜ。」

 

鈴「以前の一夏はよくあたしの店に来てたし。」

 

 

楯無「一夏君が最近食べた料理で、一番美味しかったのは?」

 

一夏「最近ですか、そういえばこの間北海道に行った時食べた海鮮丼美味かったですね!」

 

 

ここは全員不正解。

 

男子一同「あー、それがあったか!!」

 

箒「これは知らないから当てようがないぞ。」

 

セシリア「北海道を知らなければなおさらですわ。」

 

シャルロット「可能性の広さを考えたら難しいね。」

 

簪「普段よく食べてるものとは限らないって事ね。」

 

 

アナウンス「第4問、一夏の好きな音楽のジャンルは?」

 

箒「ん!?」

 

セシリア「音楽ジャンルですか?」

 

弾「あいつ普段何聴いてんだろ?」

 

鈴「そういえば知らないわね。」

 

エクトル「まあ、今時の少年を基準に考えると、これかな?」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

箒・鈴・シャルロット「J-POP」

 

セシリア・簪「クラシック」

 

ビリー・エクトル・弾「ロック」

 

アルゴス・ラウラ「ヘビメタ」

 

レオ「アイドル」

 

 

楯無「一夏君の好きな音楽のジャンルは?」

 

一夏「やっぱロックが一番ですね。」

 

弾「よっしゃ、正解。」

 

レオ「エクトル、凄い推察だな。」

 

簪「エクトル頭いいもんね。」

 

 

アナウンス「第5問、一夏が住んでみたい都道府県は?」

 

ビリー「これは、さっきの食い物の話で考えたら、やっぱりな。」

 

アルゴス「まあ俺もそう思ったけど。」

 

鈴「でも、あいつの好みって実際わかんない事多いし。」

 

簪「一夏の普段の性格考えてみるといいかも。」

 

弾「千冬さんも連れて行くって考えたらある程度絞れるんじゃねえか?」

 

ラウラ「なるほど、一理あるな。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

アルゴス・ビリー・レオ・セシリア「北海道」

 

エクトル・鈴・箒・簪「沖縄県」

 

シャルロット・ラウラ・弾「山梨県」

 

 

楯無「一夏君が住んでみたい都道府県は?」

 

一夏「うーん、何歳からかにもよるけど、まあ沖縄かな。」

 

 

鈴「ま、そりゃそうよね。」

 

箒「よし、正解だ。」

 

簪「一夏、けっこうのんびりしそうだもん。」

 

エクトル「でも、理由が気になるよね。」

 

アナウンス「では理由を聞いてみましょう。」

 

 

楯無「一夏君は何で沖縄がいいの?」

 

一夏「周りにいい人がいっぱいいそうなイメージあるからかな。」

 

弾「そういう理由か。」

 

アルゴス「千冬さん関係なかったみたいだな。」

 

ラウラ「うーむ、嫁の事はなかなか読めんな。」

 

レオ「プッ、今のダジャレか?」

 

 

その後、25問目まで終えたところで昼休憩に入る。

休憩時は楯無が作った弁当を食べる。

 

簪「お姉ちゃん普段あんな性格だけどこういうところしっかりしてるから、時々変な気分になるのよね。」

 

箒「簪、その気持ちは私にもわかるぞ。」

 

アルゴス「くーっ、長時間座りっぱなしは疲れるな。」

 

シャルロット「頭も使うから余計にね。」

 

レオ「しかし、午前中でまだ25問か。」

 

ラウラ「まだ残り75問か。」

 

セシリア「午後から長くなりそうですわね。」

 

ビリー「こんなもん、日が暮れちまうぞ。」

 

 

午後からはまた長い戦いである。

 

 

 

 



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クイズ 織斑一夏の100の事 part2

昼休憩を挟み、26問目から再開する。

 

ちなみに成績は以下の通り。

 

 

箒・・・13ポイント

 

セシリア・・・10ポイント

 

シャルロット・・・14ポイント

 

ラウラ・・・11ポイント

 

鈴・・・12ポイント

 

弾・・・9ポイント

 

エクトル・・・15ポイント

 

アルゴス・・・13ポイント

 

レオ・・・8ポイント

 

ビリー・・・7ポイント

 

 

アナウンス「第26問、一夏が行ってみたい国は?」

 

アルゴス「国か。」

 

箒「これは、もしかしたらここじゃないか?」

 

ラウラ「恐らくここだろう。」

 

シャルロット「でも、僕はここだと思うな。」

 

ラウラ「ヨーロッパの可能性が高いと思う。」

 

レオ「じゃあここにしようかな。」

 

簪「行ってみたいって事は、経験ない国ってことだもんね。」

 

弾「あいつ中学の時はそんな話してなかったけどな。」

 

ビリー「案外こういうとこじゃねえのか?」

 

鈴「どうかしらねー。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

箒・ラウラ「ドイツ」

 

セシリア・アルゴス「イギリス」

 

エクトル・レオ「イタリア」

 

シャルロット・鈴「フランス」

 

ビリー・弾・簪「アメリカ」

 

 

皆、結構主要な国を書いている。

 

 

楯無「一夏君が行ってみたい国は?」

 

一夏「パッと浮かんだのは、ドイツですね。」

 

ラウラ「おお、やった!」

 

箒「千冬さんが行ってるからな。」

 

弾「あー、ここで千冬さん要素か。」

 

鈴「ISに対する熱意が凄いもんね。」

 

 

アナウンス「第27問、一夏が好きな歴史上の人物は?」

 

 

箒「これは、全世界のって事か?」

 

レオ「あいつの感性で考えると、もしかしたら。」

 

鈴「案外国内なんじゃない?」

 

ラウラ「いや、一夏の事だからズバリこう答えるだろう。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

箒「伊能忠敬」

 

セシリア「エジソン」

 

シャルロット「アインシュタイン」

 

レオ「ベートーヴェン」

 

簪「吉田松陰」

 

鈴「坂本龍馬」

 

ビリー「リンカーン」

 

アルゴス「ライト兄弟」

 

エクトル「モーツァルト」

 

しかし、約1名凄い解答をした。

 

ラウラ「教官」

 

一同「織斑先生!?」

 

ラウラ「うむ、皆も知っての通り、一夏は教官を尊敬しているからな。モンドグロッソ優勝の偉業はまさに歴史に残るものだったからな。」

 

アルゴス「あーそういう事か。」

 

弾「盲点だったな。」

 

箒「確かに。」

 

 

楯無「一夏君の好きな歴史上の人物は?」

 

一夏「うーん、やっぱりエジソンかな。」

 

 

セシリア「やりましたわ!!」

 

ラウラ「むっ、技術的な面か。」

 

ビリー「あー、そういう意味じゃ束さんの可能性もあったかもな。」

 

箒「あの人を偉人と一緒にはしないほうがいいと思うぞ。」

 

鈴「それは何となく同意できるわね。」

 

エクトル「こりゃ予測不能だなあ。」

 

 

アナウンス「第28問、一夏が飼ってみたい動物は?」

 

エクトル「飼ってみたい動物?」

 

弾「そういやあいつペット飼ってないな。」

 

鈴「普通に考えたら、2、3には絞れるけど。」

 

箒「ここは下手に考えず無難にいこう。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

箒・セシリア・弾「犬」

 

鈴・エクトル・簪「猫」

 

アルゴス・レオ・シャルロット「鳥」

 

ビリー「ハムスター」

 

ラウラ「ウサギ」

 

 

楯無「一夏君が飼ってみたい動物は?」

 

一夏「実は俺、フクロウ飼ってみたいんですよ。」

 

フクロウ、つまり鳥。

 

シャルロット「やった!」

 

アルゴス「にしてもフクロウかー。」

 

レオ「理由が知りてえな。」

 

 

楯無「何でフクロウがいいの?」

 

一夏「いやー、一回フクロウで手紙届けてみたくて(笑)」

 

ビリー「そんな理由かよ!!」ツッコミ

 

簪「面白い理由ね。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「アハハハ(うふふふ)。」

 

 

アナウンス「第29問、一夏が好きな小説のジャンルは?」

 

鈴「あいつ読書するの?」

 

弾「確かに、以前じゃ考えられないな。」

 

箒「私が知る限り以前の一夏は読書はしてなかったと思うぞ。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

 

セシリア・シャルロット・レオ「推理」

 

箒・アルゴス・弾・鈴「物語」

 

ビリー「ノンフィクション」

 

簪・エクトル・ラウラ「恋愛」

 

 

楯無「一夏君が好きな小説のジャンルは?」

 

一夏「んー、サスペンスですかね。犯人がどう追い詰められるかってのが面白いですし。」

 

全員不正解

 

 

レオ「あー、それもちょっと思ったんだけどな。」

 

エクトル「よく考えたら普段モテる人が恋愛小説読むなんて聞かないよね。」

 

ラウラ「そうか、迂闊だった。」

 

 

アナウンス「第30問、一夏の好きなスイーツは?」

 

 

シャルロット「スイーツ?」

 

鈴「これまた広い選択肢ね。」

 

アルゴス「スイーツ食ってるとこそんな見てないけどな。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

 

箒・簪「餡蜜」

 

鈴「杏仁豆腐」

 

セシリア・シャルロット「マカロン」

 

ラウラ「シュークリーム」

 

エクトル・アルゴス「パフェ」

 

レオ「シフォンケーキ」

 

弾「プリン」

 

ビリー「ガトーショコラ」

 

 

鈴「何かピンポイントな解答もあるわね。」

 

セシリア「予想がつきませんもの。」

 

弾「料理得意でも案外スイーツを知らないって可能性もなきにしもあらずだしな。」

 

 

楯無「一夏君の好きなスイーツは?」

 

一夏「好きなスイーツ? そーだなー・・・シフォンケーキかな。」

 

 

レオ「うおぉ!?」

 

シャルロット「びっくりした!」

 

アルゴス「ピンポイントできたな!」

 

鈴「あいつ結構広く知ってるじゃない。」

 

 

その後も問題に答え続け、ようやく半分の50問目を終えたところで休憩に入る。

皆若干疲れてきているのか、テーブルのお菓子をいつも以上に頬張る。

 

箒「さて、ここまでの傾向としては。」

 

エクトル「興味があるのは場所でいうとヨーロッパ方面。」

 

ラウラ「歴史でいうと技術的な偉業の関係。」

 

セシリア「食べ物は割とピンポイントでお答えされるということですわね。」

 

レオ「でも結構こっちの予想の裏を行くからなー。」

 

シャルロット「考えれば考えるほどわからないよね。」

 

アルゴス「これはいつも以上に頭使うからな。」

 

ビリー「それよりも、これ100問終わるまでに晩飯も挟むかもよ。」

 

鈴「せめてお風呂の時間までには終わりたいわね。」

 

時計をみると、すでに午後4時を過ぎていた。

残り50問、100問目までみんなの体力はもつのか?

 

一方で、生徒会室では一夏と楯無が二人で優雅に休憩していた。

この時は視聴覚室のモニターは切れている。

 

一夏「楯無さん、このハーブティーなかなか美味しいですね。」

 

楯無「そう、よかったわ。あと50問頑張ろうねー♩」

 

一夏「はあ、何か気が遠くなるな。」

 

楯無「データ収集に必要なのよ。」

 

一夏「(質問のほとんどが無意味に思えるんだが、言ったら面倒になりそうだから言わないでおこう・・・。)」



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クイズ 織斑一夏の100の事 part3

小休止を挟み、51問目からのスタートになった。

しかし、ここからは楯無の悪ノリが始まる事を皆は知ることになる。

 

アナウンス「第51問、一夏は織斑先生のどんな所が好き?」

 

一同「!?」

 

箒「これは如何なものか?」

 

鈴「シスコン要素は以前よりは全然マシだけど。」

 

弾「好きって言葉をどう捉えるかにもよるよな。」

 

ラウラ「うむ、敬意という可能性もある。」

 

シャルロット「そ、そうだよね、あはは。」

 

セシリア「まさか一夏さんに限って変な答え方は。」

 

レオ「でも案外女としての評価を答えるかもよ。」

 

簪「日頃モテるから案外褒め上手ってこともあるかも。」

 

ビリー「わかんねーな。姉と弟って喧嘩しやすいイメージなんだがよ。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「指導力」

 

鈴・弾「一夏を大切にしているところ。」

 

エクトル・簪「容姿」

 

ビリー・アルゴス・レオ「強い所」

 

 

楯無「一夏君は、織斑先生のどういったトコが好きなの?」

 

一夏「うーん、これは皆知らないと思うんだけど、案外照れ屋なんですよ姉さんって。

クールな照れ隠しがいいなって思うかなぁ。」

 

 

全員不正解

 

 

箒・セシリア・シャルロット「・・・・。」

 

ラウラ「むっ、教官にそんな一面が?」

 

弾「どんな見方だよ!」ツッコミ

 

簪「照れ隠しがいいって。」

 

アルゴス「まあ日頃よく見てるからな。」

 

エクトル「一夏、やっぱり多少シスコンなのかも。」

 

鈴「はあ、やっぱりそんな感じよね〜。」

 

 

アナウンス「第52問、一夏がお風呂に入って、最初に洗うところは?」

 

弾「最初に洗う所?」

 

エクトル「時々一緒にシャワー浴びたり入浴したりするけど。」

 

アルゴス「チッ、考えたくもないぜ。」

 

レオ「女の子ならともかく。」

 

ビリー「第一それ知る意味あんのかよ?」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「・・・・❤︎。」ポッ

 

簪「何妄想してるの?」ジトー

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「はっ!?」

 

鈴「はあ、しょうがないわねー。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

 

箒「髪」

 

セシリア「顔」

 

シャルロット「脇」

 

ラウラ「腕」

 

鈴「首」

 

アルゴス・弾「足」

 

エクトル「背中」

 

若干名悪ノリ解答が。

 

レオ「✖️✖️✖️」

 

ビリー「✖️✖️✖️✖️」

 

弾「・・・ぶははははっ!!」

 

鈴「アンタら馬鹿じゃないの?(あの時のこと思い出しちゃったじゃない!!)」

 

簪「もう、そんな答え出さないでよ。」

 

ビリー「ハハハ、悪い悪い。」

 

レオ「ジョークだジョーク。」

 

箒・セシリア・シャルロット「限度がある!!(あるよ!!)(ありますわ!!)」

 

ラウラ「うむ、一夏のそれらは凄かったからな。」

 

エクトル「ラウラ!」

 

 

楯無「一夏君が、お風呂に入って、最初に洗うところはどこ?」

 

一夏「いつも髪から洗ってますよ。」

 

 

箒「よしっ、正解だ!」

 

ビリー「まあそうだよなー、ハハハ!」

 

レオ「あー腹が痛い(笑)!」

 

アルゴス「てめえら笑いすぎだろ。」

 

 

第60問に差し掛かったところで、若干名の間に遺恨を残す質問が。

 

 

アナウンス「第60問、一夏は、女の子の胸のサイズで、何カップが好き?」

 

一同「!?」

 

これは男子的にも女子的にも一気に答えにくい質問だ。

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

箒・セシリア・シャルロット「Eカップ」

 

ラウラ・鈴・簪「Cカップ」

 

レオ・ビリー「Gカップ」

 

アルゴス・エクトル「Dカップ」

 

弾「Fカップ」

 

ラウラ「一夏が巨乳好きでは私は不利ではないか!!」

 

鈴「そんな事ないでしょ、気持ちは大いにわかるけど。」

 

レオ「大体男は巨乳が好きって言うしな。」

 

エクトル「それは偏見だろう?」

 

アルゴス「一夏のことだ、バランスを考えて答えるだろ。」

 

 

楯無「一夏君は、何カップが好きなのかな?」ニヤニヤ

 

一夏「えっ、えっと・・・・。」

 

一同「・・・・・。」注目

 

一夏「うーん、言っちゃっていいのかな、正直なところ、Fですね。」

 

 

アルゴス「あー、言っちまったかー。」

 

弾「あ、やべ、当てちまった・・・・。」

 

レオ「流石一夏の中学時代からのダチだな。」

 

箒「おい弾、知っていたのか。」ジトー

 

セシリア「説明してくれますわね。」ジトー

 

シャルロット「ボクも聞きたいなー弾君。」ニコニコ

 

ラウラ「弾よ、一夏はFが好みなのか?」

 

弾「あー、いや、その。」

 

鈴「知ってるわよ、アンタ一夏と家でグラビア雑誌読んでたってことくらい。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!!!」

 

簪「・・・・エッチ。」

 

エクトル「そういうことだったのか。」

 

弾「はい、すんません。」

 

ビリー「まあまあ許してやれよ、別にいいじゃねえか。」

 

 

アナウンス「第65問、箒、セシリア、シャルロット、ラウラの中で、お姫様抱っこをしてみたいのは?」

 

弾「この質問若干名は答え辛いだろ。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「・・・・。」

 

鈴「はあ、何か一夏が気の毒ね。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

箒「箒」

 

セシリア「セシリア」

 

シャルロット「シャルロット」

 

ラウラ「ラウラ」

 

弾・レオ・「セシリア」

 

ビリー・弾・「箒」

 

アルゴス「シャルロット」

 

簪・鈴「ラウラ」

 

 

予想通り、一夏の恋人候補は自分を書いた。まあ無理もないが。

 

 

楯無「箒ちゃん、セシリアちゃん、シャルロットちゃん、ラウラちゃんの中で、お姫様抱っこをしてあげたいのは?」

 

一夏「・・・・全員ですね。」

 

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!?」

 

男子一同「全員かよ!!」

 

鈴「一夏、結構言うわね。」

 

簪「意外かも。」

 

 

 

楯無「成る程、一夏君から見れば全員お姫様に見えるって事?」

 

一夏「はい!皆絵になる魅力がありますから!」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「❤︎」

 

弾「以前の一夏じゃ絶対こんな事言わねえ!」

 

鈴「これは破壊力があるわね。」

 

ビリー「何だろう、レオと違ってあざとい所がねえからイラッとしねえな。」

 

レオ「何だよあざといって。」

 

エクトル「君もともとナンパ癖があるからね。」

 

簪「そこは本当に直して欲しい。」

 

アルゴス「ま、当然だな。」

 

 

アナウンス「第70問、一夏は、チェスの駒になるとすれば、何?」

 

セシリア「チェスの駒ですか?」

 

エクトル「まあ、ポーンはまず選ばないよね。」

 

鈴「男だからクイーンもないわよ。」

 

アルゴス「これはもう、これしかねえだろ。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

 

一同「ナイト」

 

初めて満場一致の解答が。

 

 

楯無「一夏君が、チェスの駒になるとすれば、何かな?」

 

一夏「そりゃあやっぱビジュアル的にナイトが一番ですよ。」

 

 

一同「!!!!」

 

全員正解。

 

 

 

アナウンス「第80問、エクトル、アルゴス、弾、レオ、ビリーのうち、二人で酒を飲むとしたら?」

 

鈴「また妙な質問ね。」

 

箒「これも全員オチではないのか?」

 

レオ「いや、案外選ぶかもよ。」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「全員」

 

鈴・簪・ビリー「弾」

 

弾「ビリー」

 

レオ「エクトル」

 

エクトル「アルゴス」

 

アルゴス「レオ」

 

 

偶然にも男子全員バラバラで自分以外だ。

 

 

楯無「エクトル君、アルゴス君、弾君、レオ君、ビリー君の中で、二人でお酒を飲みに行くなら?」

 

一夏「男二人はちょっとないですね。やっぱり全員で行きますよ、二人で飲むんなら姉さんが一番ですよ。」

 

 

男子全員「また全員かよ!?」

 

簪「しかも二人飲みの相手は織斑先生って。」

 

鈴「どんだけ姉を推すのよ!」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「やった(やりましたわ)!」

 

 

夕食を挟み遂に100問目を迎える。

 

アナウンス「第100問、一夏の理想の結婚相手は?」

 

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!!!」

 

アルゴス「最後こんな質問かよ。」

 

レオ「まああいつまだ決断下してないけどな。」

 

鈴「理想の結婚相手って考えてんのかしら?」

 

簪「どうなんだろ?」

 

 

アナウンス「解答、オープン。」

 

 

箒「家庭的な人。」

 

セシリア「子供好き。」

 

シャルロット「料理上手な人。」

 

ラウラ「自分」

 

弾「優しい」

 

エクトル「聞き上手」

 

アルゴス「織斑先生みたいな人。」

 

レオ「年下。」

 

一人珍解答が。

 

ビリー「それはまだ言えない。」

 

箒「ビリー、まだ言えないとは?」

 

ビリー「ノーコメントの可能性もあるかなって。」

 

鈴「まあ、この解答を副会長がバラさないとも限らないしね。」

 

シャルロット「ああー、そうかー。」

 

弾「そりゃそうだよな。」

 

 

楯無「一夏君理想の結婚相手は?」

 

一夏「んー、・・・言いません。」

 

ビリー「よし来たー!!」

 

セシリア「まさか本当にノーコメントとは。」

 

ラウラ「何故だ、何故私と言わぬ一夏!」

 

シャルロット「もう、すぐそういう事言うんだから。」

 

アルゴス「でも、何はともあれお疲れだな。」

 

 

アナウンス「皆様、お疲れ様でした。それでは結果発表です。優勝者は・・・・。」

 

 

一同「・・・・。」

 

皆息を飲む。

 

アナウンス「なんと、まさかの4人です!箒、セシリア、シャルロット、ラウラ、同率一位で4人優勝!!」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「えええぇぇぇーっ!?」

 

男子一同「何ーっ!?」

 

鈴「ウソ!?じゃああんたら一夏の手料理フルコース食べられんの!?」

 

簪「皆、おめでとう!!」パチパチ

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「よかったー!!」

 

4人は抱きあって喜んだ。

しかし、次の瞬間、場が凍りつく一言が。

 

アナウンス「なお、最下位の方には、罰ゲームが用意されています。」

 

一同「!?」

 

アナウンス「最下位は・・・・、ビリーです!!」

 

ビリー「な、何だとぉぉぉーっ!!」

 

アルゴス「マジかよ・・・。」

 

アナウンス「罰ゲームの内容は、『タイキック』!!」

 

すると、音楽とともに千冬が現れた。

 

ビリー「も、もしかして、タイキックを執行するのは・・・。」

 

アナウンス「そう、織斑先生です。」

 

千冬「うむ、マイヤーズ、覚悟しろ。」

 

ビリー「いや、マジで待ってくれって、こんなのシャレになんねえだろ!!」

 

簪「うわあ、ビリー災難ね。」

 

鈴「骨は拾うわ。」

 

ビリー「いや、マジ勘弁しろっての!!」

 

千冬「おい貴様ら、マイヤーズを抑えろ。」

 

アルゴス「ビリー、もう諦めろ。(笑)」

 

エクトル「うん、これはもうどうしようもないしね。(笑)」

 

レオ「逃げたら余計あぶねえぞ。(笑)」

 

弾「一瞬で終わるから大丈夫だろ。(笑)」

 

ビリー「一瞬でも無理だっつーの!!」

 

 

千冬「ふんっ!!」

 

ドゴォッ!!

轟音とともにビリーの尻に千冬のタイキックが炸裂した。

 

ビリー「ギャー!!ハアッ、イダーッ!?」

 

ビリーはあまりの痛みに周囲を走り回り、転がった。

 

鈴「ビリー、大丈夫!?」

 

簪「生きてる?」

 

ビリー「・・・下半身がなくなったかと思った・・・ぜ・・。」

 

一同「(怖い・・・・。)」

 

こうして、長いクイズ大会は幕を閉じた。

 

 

 

 



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IS男子、バンド結成!

とある日、IS学園ではある事が話題になっていた。

それは、一夏を始め、IS男子がどの部活動に所属するべきという事である。

 

一夏「そういえば俺たち部活には入ってないな。」

 

エクトル「ISの訓練で手一杯だから考えてなかったよ。」

 

アルゴス「つーか、入ったとしても、場合によっちゃ女子の中に男一人の可能性もあるしな。」

 

弾「部活かー、定番からユニークなやつまであるんだけどよ。」

 

ビリー「自分に合う部活が何なのかわかんねえしな。」

 

レオ「まあどの部にも可愛い女の子がいっぱいで魅力はあるけどな。」

 

6人ともどうしようか迷っている。

 

「織斑君は絶対剣道部だよね、篠ノ之さんもそう思うでしょ?」

 

箒「そうだな、入ってくれればもっと剣技を教えられるし、或いは教わるかもしれない。」

 

セシリア「一夏さんならテニス部でも活躍できますわ!」

 

セシリアは一夏がテニス部に来る事を望んでいる。

 

シャルロット「一夏は料理ができるから料理部こそ相応しいよ!」

 

シャルロットは料理部に一夏を入れたいようだ。

 

ラウラ「一夏、是非茶道部に。顧問は教官だぞ。」

 

ラウラは意外にも茶道部所属。

 

一夏「ちょ、ちょっ待ってくれみんな。」

 

「イリアディス君、合気道部で力をつけてみない?」

 

「合気道か、ちょっと違う様な気がするんだが。」

 

格闘技に長けているアルゴスは合気道部からスカウトが。

 

「ベレン君、専用機装備に弓矢があるんだし、弓道部はどう?」

 

「うーん、どうしようかな。」

 

エクトルは弓道部にスカウトされる。

 

「ステファーノ君の腕ならクレー射撃部も安泰だよ!」

 

レオ「おっ、お目が高いね!」

 

簪「ちょっとレオ!」

 

レオ「冗談だって。」ウィンク

 

IS男子のガンスリンガーと言われるレオはクレー射撃部も注目している。

 

「五反田君、お洒落なとこあるし、ファッション部に来ない?」

 

「でも俺女の子の服はわからねえしな。」

 

弾は普段パンクな出で立ちからか、ファッション部の気をひいている。

 

鈴「ビリー、アンタ棒使えるんだからラクロス部に来なさいよ!」

 

レベッカ「それなら陸上部の方がいいわよ!ビリー棒高跳び得意そうだし。」

 

鈴とレベッカは特にピリピリしている。

 

ビリー「おいおい、俺に選ぶ権利はねえのかよ。」

 

鈴・レベッカ「・・・・。」ジトー

 

ビリー「はあ、お前らなあ。」

 

収拾がつかない状態でその日は終わった。

 

夜、男子の部屋では・・・。

 

弾「歓迎されてんのは嬉しいけどよ。」

 

エクトル「どうにも決めかねるよね。」

 

アルゴス「何かしっくりこないんだよなあ。」

 

レオ「早いとこどうするか決めようぜ、女の子待たすのはよくねえしな。」

 

ビリー「それはてめえだけの問題だろ。俺なんか鈴とレベッカが駄々をこねるのを止めるハメになってたんだぜ。」

 

エクトル・アルゴス・弾・レオ「(鈴とレベッカを子供扱い、こんな事だから想いに気づけないんだろうな。)」

 

ビリー「一夏、お前も箒たちからせがまれたろ?」

 

一夏「・・・・まあな。 」

 

そう言いながら一夏は一人、部屋のテレビでニュースを見ている。

 

TV「さて、今注目のバンド、『ロスト・プラネット』、ニューシングルはオリコン3週連続1位です!」

 

一夏はそのニュースを見るなり閃く。

 

一夏「閃いた!これだ!!」

 

エクトル「うわっ、びっくりした!!」

 

アルゴス「急に大声出すなよ。」

 

一夏「バンドだよバンド、今の俺たちにピッタリだ!!」

 

レオ「どういうことだよ?」

 

一夏「部活なら俺たち男子で作ればいいんだよ!それなら皆納得するだろ!?」

 

弾「確かにな、にしてもバンドか。」

 

ビリー「俺エレキギターできるぜ!」

 

レオ「俺も弾けるぜ。クラシックギターと両方な。」

 

アルゴス「俺実はドラムやってた。ビリーとつるんでた頃よく演奏したしな。」

 

エクトル「僕の場合、ピアノ弾けるからキーボードあたりかな?」

 

弾「俺はエレキベースできるけど。」

 

アルゴス「一夏、お前は楽器できるのか?」

 

一夏「記憶喪失だから楽器ができるかどうかはわからない。でも俺、お前らが来る前の時は、

時々一人カラオケで歌ってたんだ。」

 

ビリー「じゃあもうほぼポジション決まりじゃねえか。」

 

エクトル「何か凄い偶然だね僕達。」

 

レオ「ナイスアイディアだぜ一夏!女の子達の声援を浴びたいよな!」

 

弾「じゃあ、明日の全校集会で発表するか。」

 

男子6人でバンド結成を決心し、朝を迎える。

 

そして全校集会になり、

 

一夏「皆に重大発表がある。」

 

女子一同「ワクワク」

 

一夏「せーのっ!」

 

男子一同「男子でバンドを組む事になりました!!」

 

女子一同「ええぇーっ!?」

 

山田先生「皆さんお静かに!」

 

一夏「みんな、俺たちを歓迎してくれるのは凄くありがたいけど。」

 

エクトル「僕らをめぐって喧嘩になるのは気がひけるし。」

 

アルゴス「どうせなら俺たち自ら部を立ち上げようと思ってな!!」

 

弾「皆音楽において得意分野があったんで丁度いいし。」

 

ビリー「普段男子だけで過ごせない事を考えりゃ、いい案だろ?」

 

レオ「可愛い皆のためにいい曲作るぜ!!」

 

一夏「バンド名は『インフィニティ・ソウル』だ!」

 

イニシャルにするとIS、まさにISに因んだ名前だ。

 

楯無「編成はどんな感じなの?」

 

ビリー「俺がリードギターだ。」

 

鈴・レベッカ「ビリーのギター、聴きたい!!」

 

レオ「俺はサイドギターだな。」

 

簪「レオの演奏、見てみたいな。」

 

アルゴス「俺がドラムだ。」

 

楯無「おー、アルゴス君にピッタリだね!」

 

エクトル「僕はキーボードをやるよ。」

 

「さすがベレン君!」

 

山田先生「エクトル君の演奏、いいわね〜❤︎」

 

弾「俺はベース担当だ。」

 

虚「弾君、ベースできるなんてカッコいいじゃない。」

 

一夏「そして、ボーカルは俺が努めるぜ!!」

 

「キャー!!」

 

流石に人気No. 1の歌声は期待される。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「一夏(さん)の歌声!!聴きたい(ですわ)!!」

 

千冬「ほう、男子だけで部を結成とはいいご身分だな。(一夏の歌声、ああ、是非とも独占したいものだ!)」

 

ジル「千冬、口元がにやけてるわよ。弟君の歌が楽しみなのよね!」ニヤニヤ

 

ジルに茶化され、顔を赤くする千冬。

 

千冬「コ、コホン。まああいつらの行動力には敬意を表するな。楽しみにしている。」

 

それから、男子のバンド結成について審議の結果、顧問はジルが努める事になった。

これを新聞部は特ダネとして取り上げ、何と彼らの演奏音声や映像を昼休みに流すまでになった。

彼らIS男子の結束力は、他の部も見習うべきであろう。



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ゲームセンター日和

IS男子が6人になり、すっかり慣れたとある日の放課後、専用機持ちはいつものように模擬戦でお互いの技術を磨いていた。

普段から学園内で専用機持ちが行動を共にするのはもはや日課となっている。

模擬戦後、みんなは食堂で夕食を取っている。

 

一夏「それにしても、男子が増えたことで模擬戦が一層楽しくなったな!」

 

以前は自分以外全員女子だった一夏は、今の日々に熱くなる。

 

箒「うむ、自身の知らない戦法も学べるし、有意義なものだ。」

 

箒は他者をよく知るようになった事で、剣術以外にも戦闘の知識が得られるようになった。

 

アルゴス「俺にしてみりゃ、少なくとも自国じゃ女子と戦うなんて事は出来なかったしな。」

 

アルゴスはISを通じて己の格闘技に深みが増した。

 

エクトル「互いの国の知識や文化も理解し合えるしね。」

 

エクトルは学園に入ったおかげで、ISを中心に色々な分野で博識になった。

 

セシリア「こうして殿方と過ごしやすくなったのも、一夏さんのおかげですわ。」

 

セシリアは一夏以外の男子に対しても、淑女然として接する事が出来るようになった。

 

鈴「一夏がここまでの存在になるなんて、以前なら考えられないわね〜。」

 

鈴は以前とは違う一夏に初めは慣れないながらも、友人として信頼を寄せるように。

 

シャルロット「そうだね、一夏がいなかったら僕は今ここにはいないし。」

 

シャルロットは一夏のおかげで、自身の居場所を見つけられた。

 

弾「本当、一夏には感謝だよな。」

 

弾は学園に入ったのをきっかけに、実家では蘭と対等に話せるようになったという。

 

レオ「実際、一夏の理想である男女の認め合いがリアルになってきてるしな。」

 

レオは女性へのアピールにISが加わったことで、とても嬉しそうだ。

 

簪「一夏のおかげで、男の子に対する目が変わったと思う。」

 

人見知りな簪は、一夏の行動から自身の視野の狭さを知り、のちにレオと恋人同士になった。

 

ビリー「にしても、ISって面白えよな!何かこう、ゲーセンのロボット大戦みたいでよ!」

 

ビリーは女尊男卑の世の中に日々退屈していたらしく、学園生活をエンジョイしている。

 

ラウラ「一夏、ゲーセンとは何なのだ?」

 

ラウラはISに関しては筆頭の経験者である一方、聞き慣れない事はみんなに尋ねるくらい素直になった。

 

一夏「ああ、ゲームセンターと言ってな、みんなで様々なゲームで遊べる場所だ。」

 

エクトル「日本の娯楽には結構力が入ってるよね。」

 

ビリー「ゲーセンは楽しいぜラウラ」

 

鈴「あたしと弾はよく一夏とゲーセン行ったわね。」

 

ラウラ「そうなのか?それは一度行ってみたいものだ。」ワクワク

 

ラウラは目をキラキラ輝かせる。

 

シャルロット「(ラウラ、子供みたい。)」

 

一夏「それじゃ、今度の日曜にみんなで行くか。」

 

弾「おっ、いいねー。」

 

のほほん「私も行く〜。」

 

 

 

そして日曜日・・・

 

一夏達はショッピングモール「ミレニアム」内のゲームセンターに着いた。

 

ラウラ「ここがゲームセンターというものか!」ワクワク

 

箒「私も初めて来たぞ。」

 

簪「私も。」

 

セシリア「何だか独特の雰囲気ですわね。」

 

シャルロット「すごく楽しそう!」

 

のほほん「いーっぱい遊ぶのだ〜。」

 

一夏「よし、それじゃ遊ぶぜ!」

 

お金を100円玉に両替し、一同はいろんなゲームをして回る。

 

 

まずは、パンチングマシーン。

近接格闘が得意なメンバーがやってみる。数値は平均500〜600と、まずまずの結果に。そんな中、

 

一夏「アルゴス、これお前なら記録塗り替えられるんじゃねえか?」

 

アルゴス「・・・任せろ。」

 

格闘専門のアルゴスはパンチングマシーンの前に身構える。緊張の空気。

 

一同「・・・・・。」ゴクリ

 

アルゴス「どぅりゃあぁぁっ!!」ドゴォーン!!

 

強烈なスクリューブローが炸裂し、マシンが壊れるような轟音が響いた。

その結果、数値は800が出た。店内の最高記録を大きく上回る結果に。

 

ビリー「すげー!!」

 

箒「流石だな!」

 

鈴「アンタ、これ高校生のパンチ力じゃないわよ!」

 

アルゴス「いや、それほどでも。でもこれ、千冬さんがやったらどうなんだろ?」

 

弾「・・・ぶっ壊れるぞ、多分。」

 

余談だが、のちに千冬が試した結果、計測不能という結果に。

 

 

続いては、制限時間内にアームでお菓子の山を崩して取るゲーム。

 

のほほん「うわ〜、お菓子がいっぱいだよ〜。」目キラキラ

 

ラウラ「夢のようだ!!」目キラキラ

 

中にはチョコやらキャンディやらラムネやらドームいっぱいに積み上げられている。

 

のほほん「ラウラウ、いっぱい取ろう!」エイエイオー

 

ラウラ「うむ!作戦開始だ!」エイエイオー

 

シャルロット「もう、食いしん坊だなあ。」

 

シャルロットがしょうがないなあと言わんばかりの表情で2人を見る。

 

エクトル「これ全部取れたら凄いよね。」

 

ラウラと本音は協力してプレイする。すると、2人の食い意地が力となったのか、物凄い奇跡が。

息のあった連携プレイで、お菓子の山が雪崩となって取り出し口にほぼ全部入る。

 

ラウラ「おおっ、凄い数だぞ!」

 

のほほん「うわー、止まらないよー!」

 

弾「嘘だろ!?」

 

景品持ち帰り用の袋2袋にいっぱいに詰める。

 

のほほん「えへへ〜、大漁だよ〜。」ホクホク

 

ラウラ「作戦大成功だ♩」ホクホク

 

ハイタッチをするラウラと本音。

 

箒「・・・まさか、この量を2人で食べる気なのか?」

 

ビリー「そりゃ砂糖のとり過ぎになるだろ。」

 

のほほん「大丈夫、みんなにもおすそ分けするよ〜。」

 

セシリア「あ、ありがとうございます・・・。」唖然

 

 

続いてはUFOキャッチャー。可愛いぬいぐるみがたくさんある。

 

簪「(・・・可愛い❤︎)」

 

簪は中のぬいぐるみに釘付けである。

 

一夏「どうした、簪?」

 

簪「これって、本当に取れるものなの?」

 

鈴「うーん、操作の慣れと、狙いの見極めが問われるかもね。」

 

簪は100円を入れて、いざチャレンジ。まずは横ボタンで横に動かす。

 

簪「あ、あれ?横に動かない。」カチカチ

 

鈴「ああ、それは横一回縦一回しか押せないのよ。」

 

弾「簪、本当に初めてなんだな。」

 

縦に動かし、狙いを定めたが、取れない。

 

簪「むぅ、取れなかった。」

 

レオ「よし、俺がとってやろう。」

 

レオは簪の狙っていたぬいぐるみを見事キャッチ。

 

レオ「ほらよ。」

 

簪「あ、ありがとう。」キュン

 

簪はレオに惚れ直した感じだ。その様子を見て他一同は

 

一同「ニヤニヤ(ニコニコ)」

 

簪「ちょ、ちょっとみんな!!」アタフタ

 

レオ「ハハハッ!」

 

レオは顔を赤くした簪の頭をナデナデする。

 

続いては、音楽ゲーム。7鍵盤とターンテーブルの構造のDJゲームだ。

 

エクトル「僕これやってみよう。」

 

セシリア「私も。」

 

エクトルとセシリアはピアノが弾けるので、音楽の技量を競い合った。その指さばきには皆驚く。

 

 

続いてはステップダンスタイプの音楽ゲーム

 

フットワークの軽い鈴と、シャルロットがやってみる。

 

シャルロット「鈴、これ楽しいね!」

 

鈴「そうでしょ!」

 

続いては、ロボット大戦ゲーム。ISをもとに作られた、今話題の新作アーケードゲームだ。

ロボットを自由にカスタムし、戦うところが魅力である。

 

ビリー「一夏、これで勝負しようぜ!」

 

一夏「おう、他のみんなもいるから交代しながらな。」

 

ラウンド1が始まった。

 

ビリー「オラオラオラー!!」

 

一夏「あたたたたたーっ!!」

 

物凄い速さでボタンとレバーを操作する。激闘の末一夏が勝利する。

 

一夏「おっしゃ勝った!!」

 

ビリー「だーっ、チクショー!」

 

その後、みんなで交代しながら大戦して盛り上がった。

 

 

夕方になり、一行はゲームセンターを後にして、IS学園へと戻る。

その帰り道では、

 

エクトル「今日は楽しかったなあ!」

 

セシリア「貴重な経験でしたわ。」

 

箒「いい気分転換になったぞ。」

 

アルゴス「またみんなで行こうぜ!」

 

ラウラ「うむ、あらゆるゲームセンターのお菓子を捕獲したいものだ!」

 

のほほん「ラウラウ、はまっちゃったね〜。」

 

シャルロット「あはは。」

 

レオ「そのうち入り禁になるぞ。」

 

簪「言えてるかも。ん?」

 

一夏「・・・・。」

 

ふと、一夏は物思いに浸る。

 

ビリー「一夏、どうしたんだよボーッとして?」

 

一夏「いや、こんな時間がいつまでも続いたらなって思ってさ。」

 

弾「どうしたんだよ急に。」

 

一夏「記憶喪失になって初めてわかったんだよ、思い出の良さってヤツが。

これから先も、みんなでかけがえのない思い出をつくっていけたらいいなって。」

 

一同「・・・一夏(さん)。」

 

一夏「悪いな、しんみりしちまって。明日からも頑張ろうな!!」

 

一同「ああ(おう)(はい)(うん)!!」

 

こんなひと時があるからこそ、彼らは頑張れるのであった。

 

 

 



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デート?いえいえ、姉弟水入らずの時間です。

エクトルとアルゴスが学園に入って1週間、一夏は彼らとすっかり馴染み、女子達も彼らと打ち解けていった。

 

そんなある休日のこと、食堂ではいつも通り朝食をとる生徒で賑わう。しかし、いつもならいるはずのあの男がいない。

 

シャルロット「あれ、一夏は?」

 

エクトル「そういえば今朝からいないね。」

 

鈴「寝坊してるの?」

 

アルゴス「いや、俺とエクトルがいつも通り起きた時点でいなかったぜ。」

 

箒「朝食も取らずに出かけるとは珍しいな。」

 

セシリア「それに、休日にお一人で出かけられるのも珍しいですわね。」

 

ラウラ「私達に内緒とは、怪しい。まさか、浮気をしているのでは?」

 

箒・セシリア・シャルロット「!!」

 

『浮気』という言葉に反応する一夏ラバーズ。

 

アルゴス「浮気ってお前、根拠がねえだろ。」

 

鈴「気持ちはわからなくもないけど、それはないんじゃない?少なくともアイツはナンパなんかしないし。」

 

エクトル「まあ本人が帰ってから聞けばいいと思うよ。」

 

のほほん「おりむーなら情景町まで出かけたよ〜。」

 

箒「情景町?」

 

のほほん「うん、おりむーすっごいオシャレしてた〜。」

 

情景町は、歴史的な景観溢れる観光地区の一つで、学園の職員がたまに寄っていく場所だ。

 

谷本「行き先が情景町で、しかもオシャレかー。これはもしかすると・・・。」

 

鷹月「うん、なんかデートっぽいよね。」

 

アルゴス・エクトル「!?」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「デート!?」

 

その瞬間、4人から黒いオーラが。

 

ラウラ「一夏、私の嫁でありながら他の女とデートとは、浮気者め。」ゴゴゴゴゴ

 

箒「一夏、モテすぎとは思っていたが、逢いびきとはな・・・。」ゴゴゴゴゴ

 

セシリア「一夏さん、後でお仕置きですわよ。」ゴゴゴゴゴ

 

シャルロット「一夏、まさか他の女の子とデートするなんてね。」ゴゴゴゴゴ

 

鈴「はぁ、一夏大変ね。でもそんなに気になるんならついて行かない?あたしもどうせ暇だし。

隣町ならあたしもある程度知ってるわよ。」

 

エクトル「心配だから僕も行こう。」

 

アルゴス「なら俺もお供するぜ。」

 

こうして、一夏の出かけ先に行くことに。

 

 

Side一夏

 

一夏「さてと、今日のプランはあの人のためにいろいろ考えたからな。早く来ないかな。」

 

一夏は情景町の駅を出たところにある時計塔の近くで誰かを待っていた。

 

Side専用機持ち一同

 

一行は一夏のいる情景町の駅まで電車で向かっていた。鈴の情報によれば情景町には駅が1つだけなのですぐに追いつけるとのこと。

1時間ほどして、一夏のいる駅に到着した。

 

アルゴス「あそこにいるぞ。」

 

鈴「声かけてみる?」

 

ラウラ「いや、ここは様子見だ。」

 

一夏にばれないよう時計塔付近の幾つかの店にバラバラに入り、客を装いながら窓から様子を見る。

 

エクトル「誰か来たみたいだよ。」

 

箒「どんな女だ、ってあれは?」

 

セシリア「織斑先生ではないですか?」

 

ラウラ「う、うむ、確かにそうだ。」

 

シャルロット「でも、いつもと雰囲気が違うよね。」

 

千冬はいつもの黒スーツではなく、どこか大人の色気がある服装で来ていた。

 

千冬「一夏、待たせたな。」

 

一夏「いや、俺が早いんだよ。今日の姉さんは特別な綺麗さがあるな。」

 

千冬「ふむ、まあまあな褒め言葉だな。(一夏もカッコいいな。今日は姉弟水入らずの時間を楽しむぞ!)」

 

一夏「それじゃあ行こうか。」

 

一夏と千冬は出発した。

 

鈴「なーんだ、千冬さんとお出かけならいつものことじゃん。」

 

ラウラ「ふむ、教官なら納得だ。」

 

エクトル「でも織斑先生、どこか楽しそうだよね。」

 

シャルロット「うん、なんかただの姉弟関係には見えないよね。」

 

アルゴス「まあここまで来たんだし、もうちょっとついて行かねえか?」

 

箒「アルゴス、それはマズイのでは?」

 

アルゴス「あんなに楽しそうな織斑先生は滅多に見られねえし、みんなも興味あるだろ?」

 

エクトル「まあ、言われてみれば。」

 

ラウラ「うむ、私も教官の新たな一面には興味あるな。」

 

セシリア「あのお2人のご関係をよく知るいい機会ですし。」

 

鈴「まあ、電車代がもったいないしね、行きましょ。」

 

結局最後まで尾行する事にした一行。

 

 

Side一夏

 

一夏「ここだよ、姉さん。」

 

千冬「ほう、ここを案内してくれるのか。」

 

一夏と千冬は、情景町の中で一際文化が豊かな地区に来ていた。

2人で色々な店を回り、他愛のない会話を弾ませる。それは端から見ればカップル、あるいは夫婦のような雰囲気だ。

 

千冬「一夏、ベレンとイリアディスとはうまくいってるか?」

 

一夏「ああ、そりゃもう。念願の男の同志だからな!最初の頃のハーレム状態も楽しかったけど。」

 

千冬「フフ、モテる男は大変だものな。(そう簡単に小娘共にはやらんがな。)」

 

 

Side専用機持ち一行

 

一同「(あの2人は夫婦なの(なのか)(なんですの)!?)」

 

一同は一夏と千冬の仲の良さに度肝を抜かれた。

 

箒「一夏、駄目だ。確かに千冬さんは美人だが、姉弟でそういう関係は良くない!」

 

セシリア「一夏さん、姉弟で禁断の関係になられるのはマズイですわ!」

 

シャルロット「一夏、いくら姉弟でもこれはデートでしかないよ!」

 

ラウラ「一夏、教官はあくまで姉であり、教師なのだぞ、もっと言えば将来の私の義理の姉だ!」

 

エクトル「君たち大丈夫?」

 

鈴「はぁ、一夏の事になるとこれだからね。あたしもかつてはそうだったけど。」

 

今の一夏は以前とは別人であるからか、鈴はそれほど気にならないようだ。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「デートは是非私と(僕と)!えっ?」

 

4人とも同じ事を同時に行ってしまった。それにお互いムッときたようだ。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「何だと(何ですってー)(何だってー)!」

 

アルゴス「おい、聞こえちまうぞ!」

 

 

Side一夏&千冬

 

一夏「じゃあ、そろそろ次に行こうか。」

 

千冬「ああ、ついでに尾行などする馬鹿者共もな。」

 

一夏「えっ?」

 

専用機持ち一同「ギクッ!」

 

千冬「貴様ら、とっくにバレているぞ!」

 

専用機持ち一同「す、すみません。」

 

一夏「全然気付かなかった・・・。」

 

完全に尾行がバレてしまった。ついてきたものはしょうがないので、午後からはみんなで一緒に行動する事に。

皆で昼食をとった後は、絶景スポットを目指してながら地域を散策し、最後は絶景スポットである丘の上でみんなで写真をとった。

 

 

楽しいひと時をみんなで過ごし、IS学園に戻る。

 

千冬「一夏、今日はいい時間を過ごさせてもらった。」

 

千冬は一夏に感謝しつつも、こめかみがヒクヒクしている。

その理由は言うまでもない。

 

一夏「それはよかった。じゃあ俺先に戻るから(うわー、こりゃみんな説教くらっちまうぞ〜。)」

 

 

千冬「さてと貴様ら、覚悟はいいな?」

 

専用機持ち一同「・・・・・はい。」

 

この後、尾行した専用機一同は、姉弟水入らずの時間を潰したということで、千冬からこっぴどく説教を受けた。

終わった時点で皆足がひどくしびれてしまい、えらい目に遭ったと実感したのであった。



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どっちにハンドルを切るか?いいとこ突いてGoGo!一夏を悩ませるゲーム part1

とある日曜日、IS学園のアリーナではレクリエーションが行われていた。

 

楯無「第一回IS学園、どっちにハンドルを切るか?いいとこ突いてGoGo!一夏君を悩ませろゲーム!!」パチパチ

 

いきなり長いタイトルコールだ。

 

女子一同「?」

 

アリーナの席で女子一同は首をかしげる。

 

箒「休みの日に呼び出しがあると思ったら。」

 

セシリア「何ですの、一夏さんを悩ませるというのは?」

 

鈴「また何か変な企画じゃないでしょうね?」

 

レベッカ「それより、一夏もそうだけど、他の男子達はどこ行ったの?」

 

シャルロット「手元には5つのスイッチがあるし、フィールドにはバイクが一台あるよ。」

 

ラウラ「一夏以外の男子の名前が書かれているぞ。」

 

すると、アリーナの入り口から一夏以外の男子達がが出てきた。

 

アルゴス「説明は俺たちからしよう。実は、俺たちは一夏に対する2択問題を1人10問作った。」

 

エクトル「それで一夏がどっちを選ぶか、少しでも深く悩めるかどうかを僕ら男子で競うんだよ。」

 

弾「画面に出る問題に対して、一夏はあのバイクにまたがって、ABのうち、自分の答えの方にハンドルを切るんだ。

皆の手元のスイッチは、いわば投票だ。俺たちのうち誰が一番一夏を悩ませる問題を作っていたかを皆んなに選んでもらうってわけだ。」

 

ちなみに、このバイクは本物ではなく、右か左に傾けるだけの模型同然のもの。

 

鷹月「要するに私達は審査員ってわけね。」

 

谷本「私も織斑君に問題出したいなー。」

 

レオ「まあまあ、参加してくれる代わりに、俺たちの国のグルメをご馳走するからよ。」

 

のほほん「わ〜い、やった〜。」バンザイ

 

ビリー「問題に対する一夏の出す答えに注目だぜ!」

 

彼らはギャラリーとは別に5人掛けの横長テーブルに腰掛ける。

 

楯無「それでは、一夏君どうぞ!!」

 

フィールドにライダーの格好をした一夏が現れた。

 

一夏「・・・どんな問題出されんだろ?」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「かっこいい(ですわ)!」

 

一夏はバイクにまたがる。

 

 

弾「まずは俺からの問題だぜ!」

 

楯無「3、2、1、Go!!」

 

合図とともにエンジン音が鳴り、バイクの後ろの大画面には動く道路の映像が流れる。

 

 

アナウンス「1問目、出来るようになるならどっち? A 時速最大100㎞でダッシュ B 高度最大10000メートルまでジャンプ」

 

一夏「何だ?」

 

箒「これは男子ならではの発想だな。」

 

レベッカ「ダッシュ力とジャンプ力どっちが欲しいんだろ?」

 

一夏「うーん、A!」

 

弾「ダッシュ力か。」

 

 

アナウンス「2問目、沢山食べるならどっち? A ローストビーフ B ローストチキン」

 

アルゴス「これは悩むな!」

 

ラウラ「どっちも美味いとクラリッサには聞いているが。」

 

一夏「うーん、ローストビーフかなぁ。」

 

シャルロット「あー、僕はわかるかも。」

 

鈴「これまあまあの問題ね。」

 

 

アナウンス「3問目、義理の姉にするならどっち? A マイヤーズ先生 B 山田先生」

 

エクトル「一夏年上ウケがいいもんね。」

 

一夏「これは100パーセントマイヤーズ先生だろ。」

 

レオ「あー、やっぱ織斑先生に雰囲気近い方がいいんだな。」

 

簪「らしいと言えばらしいけど。」

 

ビリー「つーか、聞くまでもねえだろ?」

 

 

アナウンス「第4問、世界中の人にニックネームで呼ばれるならどっち? A おりむー B いっくん」

 

一夏「・・・笑」

 

鷹月「うわー、これ悩むんじゃない?」

 

谷本「世界中に通り名として残るわけだし。」

 

一夏「んー、まあ、いっくんの方がまだいいかな。」

 

 

のほほん「おりむーじゃあ恥ずかしいのかな?」

 

ビリー「そりゃそうだろ。下手すりゃオッサンからも呼ばれんだぞ!笑」

 

 

アナウンス「第5問、一年中頭につけるならどっち? A ネコ耳 B イヌ耳」

 

アルゴス「ぶははははっ!」

 

弾「一年中だからなぁ。」

 

箒「これは嫌がらせではないのか?」

 

一夏「・・・んー、ネコの方かな。」

 

鈴「あいつ以前、買うなら犬より猫って言ってたわね。」

 

セシリア「そうなんですの。」

 

 

アナウンス「第6問、なれるならどっち? A 北斗神拳伝承者 B ジェダイマスター」

 

エクトル「これ、どっちを選ぶんだろう?」

 

レベッカ「どっちも凄いけどね。」

 

一夏「まあでも、俺はこっち(ジェダイマスター)かな。ライトセーバー使いたいし。」

 

弾「あー、そうか。」

 

箒「ライトセーバーか、持ってみたいものだ。」

 

 

アナウンス「第7問、一日中閉じこもるならどっち? A サウナ B かまくら」

 

シャルロット「これは、キツイよどっちも。」

 

レオ「つーか、弾何気に無茶な質問だな。」

 

一夏「うーん、まあサウナの方がいいかな。」

 

アルゴス「マジか、俺はかまくらの方がまだいいかな。」

 

 

アナウンス「第8問、蚊に刺されて痒くなったら嫌なのはどっち? A ふくらはぎ B 首筋」

 

鈴「これは、どっちも嫌ね。」

一夏「やっぱすぐ掻きたくなるのは、ふくらはぎかな。」

 

箒「意外と効くものだからな。」

 

 

アナウンス「第9問、一生食べられなくなったら嫌なのはどっち? A 和菓子 B 洋菓子」

 

エクトル「これかなり悩むんじゃないかな。」

 

箒「私なら絶対和菓子だが。」

 

一夏「そりゃまあ、洋菓子かな。」

 

弾「あれ、あっさり選んだな。」

 

簪「誕生日にケーキ食べられないの嫌だもんね。」

 

 

アナウンス「第10問、肉体に改造を施すならどっち? A 額からビーム B 手の指からミサイル」

 

鈴「メチャクチャな問題ね(笑)」

 

ビリー「これ、一夏どっちだろうなー。」

 

一夏「まあ、ビジュアル的に、手の指からミサイルだな。」

 

 

全問終了したところで、一夏が休憩がてらみんなのもとに来る。

 

弾「一夏、お疲れー。」

 

レベッカ「ライダーの一夏もカッコいいじゃない。」

 

シャルロット「弾君の問題だけど、そこまで悩んでなかったね。」

 

一夏「まあ、ある程度好みはハッキリしてるしな。」

 

 

休憩後、次はビリーの番だ。

 

ビリー「俺結構自信あるぜ!」

 

 

アナウンス「3、2、1、Go!」

 

ビリーはどんな問題を出すのか。

 

 

アナウンス「1問目、操縦するならどっち? A 戦闘機 B 戦車」

 

レベッカ「一夏どっちがいいんだろ?」

 

一夏「まあ、やっぱ戦闘機かな。」

 

ビリー「ありゃ、早かったな。」

 

 

アナウンス「2問目、1ヶ月洗えなかったら嫌なのはどっち? A 髪の毛 B 歯」

 

鈴「変な問題思いつくわねー。(笑)」

 

レオ「1ヶ月かー。」

 

一夏「これはまあ、歯だよな。」

 

ラウラ「歯を選んだな。」

 

シャルロット「そりゃそうだよ。」

 

 

アナウンス「3問目、一生住むならどっち? A スイス B オーストラリア」

 

アルゴス「北半球と南半球どっちが好みか?」

 

箒「外国に一生住むのはちょっと。」

 

一夏「うーん、どっちもいいけど、オーストラリア。」

 

ラウラ「ほう。」

 

セシリア「暖かい所を選ばれましたね。」

 

 

アナウンス「第4問、嫌な体はどっち? A 無駄毛が多い B 汗っかき」

 

一夏「あー、なるほどね。まあ嫌なのは汗っかきだな。」

 

ビリー「えっ、俺無駄毛の方選ぶかと思ったぜ。」

 

レベッカ「無駄毛は一回処理したらすぐには戻らないしね。」

 

箒「汗が多いのは大変だぞ。」

 

 

アナウンス「第5問、嗅ぐならどっち? A ドリアン B ラフレシア」

 

一夏「うえぇっ!?」

 

レオ「うわー、どっちも嫌だなー。」

 

セシリア「これはある意味悩みますね。」

 

一夏「まあ、ドリアンかな。」

 

アルゴス「あれすっげー臭えけどな。」

 

 

アナウンス「第6問、手に入れるならどっち? A 絶対に怪我をしない身体 B 絶対に病気をしない身体」

 

弾「こりゃ夢のようだな。」

 

レベッカ「どっちも捨て難いけどね。」

 

一夏「怪我はまあ耐えられる方だしな、やっぱ病気しない身体かな。」

 

箒「まあわかるな。」

 

ラウラ「病気の方が苦しさがある。」

 

 

アナウンス「第7問、自分の妹にするならどっち? A のほほんさん B 簪」

 

一夏「ん!?」

 

のほほん「おりむーがお兄ちゃんかー。」

 

簪「悪くはないかも。」

 

一夏「うーん、どっちだろうなー。」

 

ビリー「おっ、悩んでるぜ!」

 

箒「意外に迷うのだな。」

 

一夏「どっちもいいけど、簪で!」

 

レオ「決めにくそうな顔してたなー。」

 

エクトル「まあ簪の方が手がかからなそうだけど。」

 

アナウンス「第8問、やってみたい仕事はどっち? A 医者 B 警察官」

 

シャルロット「優しさと、正義感に触れてるね。」

 

セシリア「どちらもお似合いだと思いますわ。」

 

一夏「うーん、どっちがいいんだろう?」

 

ビリー「よっしゃ、迷ってるぞ!」

 

一夏「ここは、警察官で!」

 

ラウラ「なるほど。」

 

 

アナウンス「第9問、織斑先生を、『姉さん』以外で呼ぶならどっち? A ちー姉ちゃん B 千冬お姉様」

 

一夏「・・・どっからその発想出てきたんだよ。(笑)」

 

箒「前者はうちの姉みたいだな。」

 

鈴「どっちにしても一気に一夏のキャラ崩れそうね。」

 

一夏は物凄くためらう。

 

弾「これいい問題だな。」

 

アルゴス「こういう事かー。」

 

一夏「うーん、B!!」

 

レオ「フハハハハッ!!」

 

谷本「マイヤーズ君、人が悪いわね。」

 

 

アナウンス「第10問、食べるならどっち? A タバスコにたっぷり漬け込んだピザ B スープが鷹の爪100個分の辛さのラーメン」

 

一夏「はぁ!?」

 

鷹月「どっちもキツイわよこれ。(笑)」

 

弾「殺す気か!」

 

一夏「えー、どっちか食わなきゃいけねえんだろ?うーん・・・。」

 

ビリー「さあて、どっちを選ぶかな?」

 

苦悩の末、

 

一夏「うーん、A!」

 

セシリア「ピザですか・・・。」

 

レオ「タバスコにドボンと漬けるとか考えられねえ・・・。」

 

 

こうして、ビリーからの出題10問が終わった。

あと残り30問、次はどんな問題が出されるのか。



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どっちにハンドルを切るか?いいとこ突いてGoGo!一夏を悩ませるゲーム part2

一夏を悩ませるゲーム、続いてはレオの問題

 

エクトル「レオ、変な問題作ってないだろうね?」

 

レオ「大丈夫だって。」クククッ

 

明らかに怪しい。

 

アルゴス「何か嫌な予感がするんだが・・・。」

 

 

楯無「3、2、1、Go!」

 

 

アナウンス「第1問、好きなパスタはどっち? A ミートソース B カルボナーラ」

 

一夏「うわっ、これどっちも好物だしな。」

 

レオ「お、悩んでるな。」

 

簪「シンプルだけどいいわね。」

 

一夏「うーん、カルボナーラ!」

 

シャルロット「カルボナーラ美味しいよねー。」

 

ラウラ「そうなのか、興味あるな。」

 

 

アナウンス「第2問、デートをするならどっち? A 遊園地 B 水族館」

 

一夏「これは相手にもよるなあ。」

 

ラウラ「どっちも行ってみたいぞ!」

 

箒「私も行った事はないな。」

 

一夏「まあ遊園地だな。」

 

ビリー「無難だな。」

 

 

 

アナウンス「第3問、自分に香りをつけるならどっち? A バラの香り B シトラス系の香り」

 

一夏「ん?」

 

エクトル「ホストじゃないんだから。」

 

鈴「あいつ香りなんて意識しないでしょ。」

 

レベッカ「でも、素敵だと思うわ。」

 

一夏「うーん、まあバラで。」

 

レベッカ「バラの香りがする一夏なんて反則でしょ。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「確かに・・・❤︎」

 

 

アナウンス「第4問、一緒に寝るならどっち? A ゴールデンレトリバー B セントバーナード」

 

一夏「なるほどな。」

 

のほほん「おりむーどっちが好きなんだろ?」

 

箒「犬と寝るのか。」

 

シャルロット「可愛い質問だね。」

 

ビリー「俺、犬はちょっと苦手だな。」

 

一夏「うーん、ゴールデンレトリバーかな。」

 

弾「なるほどね。」

 

 

アナウンス「第5問、使いたいマグナムはどっち?A デザートイーグル B コルトパイソン」

 

一夏「マグナムか。」

 

エクトル「オートとリボルバーの違いだね。」

 

箒「?よくわからないが。」

 

ラウラ「私ならコルトパイソンだ。」

 

一夏「まあ、装弾数とスピードでデザートイーグル。」

 

レオ「なるほどなるほど。」

 

 

アナウンス「第6問、自宅を改装するならどっち? A 室内にエレベーター B 階段がエスカレーター」

 

一夏「あったら便利だけど、まあエスカレーターで。」

 

弾「早かったな。」

 

しかし、7問目から変な雰囲気に。

 

 

アナウンス「第7問、ISスーツの女子の体で意識するのはどっち? A 胸 B お尻」

 

一夏「!?」

 

弾「うわー、これ皆の前で選ぶのか?」

 

鈴「これ聞いていいの?」

 

一夏「うーん・・・。」

 

レオ「お、悩んでるねー。」

 

アルゴス「そりゃそうだろ。」

 

一夏「・・・胸で。」

 

谷本「織斑君顔真っ赤よ。」

 

鷹月「でも、ある意味いい問題ね。」

 

「織斑君も意識するんだー。」ヒソヒソ

 

 

 

アナウンス「第8問、年齢とともに衰えたら嫌なのはどっち? A 食欲 B 性欲」

 

一夏「・・・嫌なのはやっぱ食欲だな。」

 

レオ「マジかよ。」

 

ビリー「レオ、おめーな。」ハァ

 

レベッカ「いや、じーさんになっても下半身快調はまずいでしょ。」

 

 

アナウンス「第9問、女装するならどっち? A メイド B ナース」

 

一夏「じょ、女装!?」

 

レオ「フハハハハッ!」

 

シャルロット「レオ、タチ悪い。」

 

谷本「織斑君の女装かー。」

 

鷹月「興味あるわね〜。」

 

一同注目の中、一夏が出した答えは

 

一夏「ぐっ、ここは、メイドで!」

 

アルゴス「まあ、あいつの顔なら似合わない事もねえと思うが。」

 

一同「うんうん。」

 

千冬に似ているためか、皆納得する。

 

しかし、次はもっとタチが悪かった。

 

 

アナウンス「第10問、揉むならどっち? A 箒の胸 B 山田先生の胸」

 

一夏「ぶっ!?」

 

一夏は目を見開いた。

 

箒「なっ、ななな!?」

 

アルゴス「レオ、てめえ何て問題作ってんだよ!!」

 

レオ「いやー、つい。ハハハッ!」

 

弾「でもこれ、迷うなぁ。」デレデレ

 

鈴「弾、ヨダレ垂らすんじゃないわよ!」

 

ビリー「こりゃ悩むと逆に引かれるぞ。」

 

一夏「迷わず箒で!」

 

箒「こ、これは、喜ぶべきなのか?」カァァ

 

箒の顔が完熟トマトのように真っ赤になった。

 

事故とはいえ、一夏は山田先生の胸を揉んだ事があるのだ。

 

「やっぱり織斑君大きい方がいいんだ。」

 

「あたし結構自信あるわ!」

 

「胸大きくできないかなー。」

 

セシリア・シャルロット・ラウラ「ムーッ。」ジトー

 

一夏「(うっ、スマン皆!)」ペコペコ

 

谷本「織斑君も男の子だしね。」ニヤニヤ

 

レベッカ「まあしょうがないし、許してあげてもいいんじゃない?」ニヤニヤ

 

簪「もう、レオったら。」ハァ

 

 

10問終えたところで、一夏が休憩に入る。

 

一夏「レオ、マジでお前何つー問題作ってんだよ!」

 

レオ「いやー、一夏お疲れ。」

 

弾「ナイスランだったな。」

 

一夏「何がナイスランだよ。(笑)」

 

エクトル「次は僕だね。」

 

エクトルの問題に入る。

 

 

楯無「3、2、1、Go!」

 

一夏「エクトルはちょっと予測しづらいな。」

 

 

アナウンス「第1問、弾けるならどっち? A ピアノ B バイオリン」

 

一夏「楽器演奏かー。」

 

箒「一夏に楽器か。想像がつかないな。」

 

セシリア「エクトルさんらしいですわね。」

 

一夏「うーん、バイオリン!」

 

弾「弦楽器選んだな。」

 

シャルロット「かっこいいかも!」

 

 

アナウンス「第2問、一生タダで食べられるならどっち?A キャビア B フォアグラ」

 

一夏「これ凄え選択だな。」

 

レオ「どっちかタダか。」

 

簪「凄い贅沢ね。」

 

一夏「うーん、フォアグラで!」

 

アルゴス「フォアグラか。」

 

箒「キャビアの塩気を考えたらそうかもな。」

 

 

アナウンス「第3問、自分に似合うと思う花はどっち? A 赤いバラ

B 白いバラ」

 

一夏「考えた事もねえぞ。」

 

鷹月さん「どっちも凄く似合うと思うわ!」

 

のほほん「おりむー、かっこいいからねー。」

 

一夏「うーん、白いバラで!」

 

エクトル「白か。」

 

箒「色的にはいいな。」

 

 

アナウンス「第4問、織斑先生に着て欲しいのはどっち? A 着物 B ウエディングドレス」

 

一夏「姉さんの結婚かー。」

 

箒「私なら着物がいいと思うが。」

 

セシリア「ウエディングドレスも素敵だと思いますわ。」

 

レオ「これリアルな話どっちだろうな。」

 

一夏「うーん、やっぱウエディングドレスが見たい!」

 

弾「あー、そっちか。」

 

鈴「へー、着物選ぶかと思った。」

 

 

アナウンス「第5問、家に飾るならどっち? A 織斑先生の肖像画 B 織斑先生の彫像」

 

一夏「うっ、これは。」

 

レベッカ「確かに織斑先生絵になるけどね。」

 

ビリー「どっち選ぶかでシスコン度がわかりそうだな。」

 

一夏「うーん、彫像で!」

 

セシリア「一夏さんのお家に織斑先生の像ですか。」

 

ラウラ「いいと思うが。」

 

 

アナウンス「第6問、タイムマシンで過去の自分を見られるならどっち? A 幼稚園児の頃の自分 B 小学生の頃の自分」

 

一夏「あー、その発想はなかったな。」

 

レベッカ「エクトル凄いじゃない、さすがね。」

 

弾「タイムマシンか、いいじゃん。」

 

一夏「ここは、幼稚園児の頃の自分!」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「確かに見たい(ですわ)・・・。」

 

 

アナウンス「第7問、自分の家からなくなったら嫌なのはどっち? A エアコン B テレビ」

 

鷹月「これいい問題ね。」

 

一夏「嫌なのは、やっぱテレビだな。」

 

箒「早かったな。」

 

レオ「まあ暑さは扇風機で何とかなるしな。」

 

 

アナウンス「第8問、嫌なのはどっち? A 一日中絶叫マシン乗り継ぎ。B 一日中お化け屋敷巡り。」

 

一夏「うーん・・・。」

 

アルゴス「それぞれの怖さを考えるとなー。」

 

シャルロット「僕お化けは苦手だなあ。」

 

一夏「嫌なのは、おばけ屋敷!」

 

弾「あ、そっか。普段ISで空中飛び回ってるから絶叫マシンはいい方なのか。」

 

 

 

アナウンス「第9問、色気を感じるコスチュームはどっち? A シスター B 巫女」

 

一夏「うっ、これは。」

 

鈴「答え辛そうね・・・。」

 

ビリー「選んだほうが趣味って思われちまうのかよ。」

 

一夏「うーん、巫女かな。」

 

鷹月「なるほどね〜。」ニヤニヤ

 

 

アナウンス「第10問、抱きしめられるならどっち? A 篠ノ之博士 B マイヤーズ先生」

 

一夏「はい!?」

 

簪「どっちも人の姉ね。」

 

アルゴス「これはどっちだ?」

 

一夏「これは、マイヤーズ先生で!」

 

ビリー「俺の姉貴の方かよ!」

 

ラウラ「迷いがなかったな。」

 

 

エクトルの問題が終了した。

 

エクトル「一夏、お疲れ様。」

 

一夏「いやー、不意を突かれた。」

 

シャルロット「今までで一番悩んだんじゃない?」

 

弾「エクトルだけは敵に回したくねえな。」

 

簪「ホントよね。」

 

アルゴス「さて、最後は俺の問題だな。」

 

アルゴスはエクトル以上に悩ませられるのか?

 

 

楯無「3、2、1、Go!」

 

 

アナウンス「生身で立ち向かうならどっち? A 虎 B 鮫」

 

一夏「うわっ、どっちも怖えな。」

 

鈴「陸上の強者と水中の強者ね。」

 

エクトル「武器があるにしても生身じゃかなりキツイよ。」

 

一夏「うーん、虎で。」

 

ラウラ「陸上の方か。」

 

 

アナウンス「第2問、1年中障害を体験するならどっち? A 盲目 B 難聴」

 

一夏「うーん・・・。」

 

箒「一年間見えないか聞こえないか。」

 

セシリア「辛そうですわ。」

 

弾「これよく思いついたな。」

 

一夏「うーん、難聴で!」

 

レベッカ「まあ、見えた方がいいわよね。」

 

 

アナウンス「第3問、飲むならどっち? A 苦さが通常の100倍のセンブリ茶 B 酸味がアセロラ100個分の水」

 

一夏「うげっ!」

 

のほほん「どっちも嫌だよ〜。」

 

エクトル「無茶苦茶だなあ。」

 

一夏「うーむ、酸っぱい方で!」

 

セシリア「苦味の方が残るイメージが強いですわね。」

 

 

アナウンス「第4問、一日中学園内でその格好でいるならどっち? A ブリーフ1枚 B ふんどし一丁」

 

一夏「・・・・。」笑

 

ビリー「どんな罰ゲームだよ!」

 

箒「これは精神的にどうだ?」

 

レオ「どっちも嫌だな。トランクスならまだしも。」

 

鈴「何にしても見てらんないわね。」

 

一夏「うーん、ブリーフ1枚!」

 

弾「まあ今風に合わせりゃあな。」

 

 

アナウンス「第5問、1ヶ月間続いたら嫌な体の不調はどっち?A 鼻詰まり B 口内炎」

 

一夏「うわー、嫌だー。」

 

エクトル「1ヶ月ずっと続くわけだろう?」

 

セシリア「どちらも辛いですわ。」

 

一夏「まあ、我慢しづらいのはやっぱ口内炎だな。」

 

ビリー「口内炎場合によっちゃ飯が食いにくくなるもんな。」

 

簪「食べたいのに痛いのは嫌ね。」

 

 

アナウンス「第6問、自分の娘にするならどっち? A ラウラ B のほほんさん」

 

一夏「む、娘!?」

 

のほほん「ほえー、おりむーがパパかー。」

 

ラウラ「私は親を知らないな。」

 

2人とも個性的な可愛さで、一部マニアにはたまらないくらいだ。

 

一夏「うーん、タイプで考えると、ラウラかな。」

 

ラウラ「一夏のような父親がいればいいんだがな。」

 

 

アナウンス「第7問、会えるならどっち? A エジソン B 坂本龍馬」

 

一夏「これはどっちも興味あるな。」

 

エクトル「発明家か幕末の偉人だね。」

 

箒「坂本龍馬には会ってみたいな。」

 

一夏「うーん、やっぱ規模で考えたら、エジソン!」

 

レオ「発明家を選んだか。」

 

 

 

アナウンス「第8問、頭に乗せるならどっち? A サソリ B タランチュラ」

 

一夏「どっちも危険じゃねえか!!」笑

 

鈴「アルゴスサバイバル要素強すぎよ。」笑

 

弾「頭だろ、怖えなあ。」

 

一夏「うーん、サソリで!」

 

ビリー「まあ見た目はサソリカッコいいけどな。」

 

簪「それはマニアだけでしょ?」

 

 

アナウンス「第9問、携帯の着信音にするならどっち? A おなら B 赤ちゃんの泣き声」

 

一夏「はあぁぁ!?」笑

 

アルゴス「フハハハハッ!」

 

シャルロット「どっちも恥ずかしいよ!」

 

箒「マナーモード解除できないぞ・・・。」

 

弾「これは引かれるぜ。」

 

一夏「うーん、ここはおならで!」笑

 

ビリー「ダッハハハハッ!!」

 

レオ「あー腹痛え。」

 

セシリア「もう、お下品ですわ。」

 

 

アナウンス「第10問、『一夏』から名前を変えるならどっち? A 武蔵 B 小次郎」

 

一夏「アルゴス、意外とマニアックな日本人名知ってんだな・・・。」

 

箒「これは苗字との組み合わせ、響きで考えるべきだな。」

 

セシリア「武蔵さんか小次郎さんですか。」

 

シャルロット「呼びにくいなー。」

 

 

一夏「こりゃもう、断然小次郎がいいぜ。」

 

簪「織斑小次郎・・・。」

 

谷本「まあ悪くはないよね。」

 

鷹月「実際居そう。」笑

 

 

10問全て終了、これにて全50問を終えた。

 

 

一夏「あー、何かある意味今までで一番疲れた。」

 

アルゴス「お疲れ!」

 

鈴「悩ませるって意味じゃ結構良かった方じゃない?」

 

楯無「一夏君、お疲れ様!それではギャラリーの皆さん、誰が一番一夏君を悩ませていたか、ボタンを押して決めて下さい!!」

 

ギャラリーは全員で100名

 

投票の結果、

 

弾・・・・10ポイント

 

ビリー・・・・ 14ポイント

 

レオ・・・・ 29ポイント

 

エクトル・・・・17ポイント

 

アルゴス・・・・30ポイント

 

楯無「優勝は、アルゴス君です!」

 

アルゴス「うっしゃあ!!」

 

一夏「レオといい勝負だったな。」

 

レオ「惜しかったな。」

 

簪「まあ、とりあえずおめでとうアルゴス。」

 

アルゴス「んで、優勝特典は?」

 

楯無「優勝したアルゴス君にはこちら!ステーキ専門店の無料券です!!」

 

ビリー「マジかよ!」

 

シャルロット「いいなあ。」

 

ラウラ「羨ましいぞ!」

 

楯無「なお、最下位の弾君には、罰ゲームがあります。」

 

弾「えっ!?」

 

途端に顔が青ざめる弾。

 

楯無「罰ゲームは、名づけて、『プロレス固め技メドレー!!』執行人は、マイヤーズ先生です!!」

 

マイヤーズ「フフフ、弾、覚悟はいいかしら?」

 

弾「いーっ!?」

 

箒「マイヤーズ先生プロレス技もできるのか?」

 

ビリー「ああ、過去に散々な目にあったからな。」

 

レベッカ「あたしもやられた事ある。」

 

鈴「弾、骨は拾ってあげるわ。」

 

弾「えーっ、ちょっとー!!そうだ、一夏、マイヤーズ先生説得してくれ、頼む!!(一夏なら何とかしてくれる!!)」

 

弾は最後の頼みの綱である一夏に助けを求めるが・・・。

 

一夏「・・・すまん、マイヤーズ先生相手じゃ説得は無理だ。」合掌

 

弾「Noーーーーーっ!?(ああ、終わった・・・・。)」

 

その後弾はジルの固め技を何種類も食らってしまい、翌朝まで寝込んでしまった。



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一夏の誕生日パーティー

ISの世界に織斑一夏として転生し、多くの仲間との出会いにより、充実した日々を送っている。

そんなある日のこと、学園で昼食をとっていた一夏は、ふと、こう呟いた。

 

一夏「・・・・そう言えば、俺の誕生日っていつだったっけか?」

 

一同「!?」

 

途端に周囲はびっくりする。

 

箒「そう言われれば、私も覚えていないな。」

 

鈴「うーん、いつだったっけ?」

 

幼馴染である箒と鈴も覚えていないようだ。

 

ビリー「まあ無理もねえ。お前、この学園に入る前に記憶喪失になってんだしよ。」

 

レベッカ「えっ、そうなの一夏!?」

 

レベッカは目を丸くする。

 

一夏「ああ、事故で脳に致命傷寸前の怪我を負ってな。病院で目覚める以前の記憶は一切なくしてしまって、もう二度と戻らないんだ。」

 

レオ「そりゃ、何だか心苦しいな。」

 

シャルロット「でも、生きていく上での基本的な事は失わなくてよかったね。」

 

セシリア「確かにそうですわね。」

 

弾「でも、生きてくれててよかったぜ。思い出をなくしちまったのはちょっと残念だけどよ。」

 

アルゴス「全くだぜ、臨海学校の時は無茶をして死にかけてたもんな。」

 

エクトル「それでもこうして生きているんだから、君の強さには謎が多いよ。」

 

一夏は特に秘められた力がまだまだ眠っているのだ。

 

弾「そういや俺も一夏の誕生日覚えてねえな。」

 

簪「幼馴染の箒と鈴、友達の弾も覚えてないとなると。」

 

ラウラ「唯一の肉親である教官に聞くべきだろうな。」

 

食事の後、一同は千冬に会いに職員室へ。

 

 

千冬「何だ、専用気持が揃いも揃って来るとは。」

 

一夏「姉、いや、織斑先生、俺の誕生日はいつでしょうか?」

 

千冬「唐突だな、お前の誕生日は9月27日だ。」

 

一同「ありがとうございます。」

 

取り敢えず誕生日がわかった。しかし、

 

一夏「うーん、仕方なかったとはいえ、後二日後か。」

 

すると、

 

「ねー、聞いた聞いた?織斑君明後日誕生日なんだって!」

 

「えー、急じゃない!?」

 

「プレゼント用意しなきゃ!!」

 

「最悪、あたし自身をプレゼントってのもありかしら❤︎」

 

「ずるい、それならあたしだって!!」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!!!」

 

一夏がタイプである女子生徒達がざわつく。それを恋人候補達は警戒する。

 

ビリー「おいおい、他人の誕生日であそこまで騒ぐか普通?」

 

レベッカ「ビリー、女心ってのは本当に厄介よ。」

 

鈴「あんたも気をつけなさいよね。」

 

2人はビリーの腕にくっつき、可愛らしくウィンクするが、

 

ビリー「俺?まさかー、それは絶対ないだろ?」

 

飄々とした反応を示す。

 

鈴・レベッカ「・・・・!!」ムカッ

 

簪「・・・ビリー、本当に大丈夫かしら?」

 

アルゴス「あいつ恋愛に関しては本当に馬鹿だからな。」

 

格闘関係でビリーとつるんでいた事のあるアルゴスはそれをよく知っている。

 

レオ「まあまあ、それより今は、一夏の誕生日に何をするかだろ?」

 

のほほん「じゃあ、みんなでおりむーの誕生日パーティーをしようよ〜。」

 

エクトル「そうだね、みんなですれば一夏も僕らも楽しいし。」

 

こうして、一夏の誕生日パーティーが計画された。

 

 

パーティー当日

 

一夏「うわあ、これはすげえな!」

 

派手な飾りに豪勢な料理で、いつもの食堂は普段とは全く違う雰囲気になっていた。

 

谷本「いやー、急な計画で大変だったわ。」

 

鷹月「間に合ってよかったよね。」

 

山田先生「それでは、織斑君。」

 

一同は一斉にクラッカーを持つ。

 

一同「誕生日おめでとう(ございます。)!!!!」

 

パン、パパンとクラッカーが弾ける。

 

一夏「みんな、急で本当にごめん、本当にありがとう!!」

 

千冬「16歳か、大きくなったものだ。」

 

各生徒から、様々な誕生日プレゼントが贈られる。特に専用気持が凄い。

 

箒「一夏、その、私からは、これだ。」

 

箒のプレゼントは特注の木刀。

 

セシリア「一夏さん、おめでとうございます。」

 

セシリアからはおしゃれなスカーフ。

 

鈴「はい、おめでとう一夏!」

 

鈴はカッコいい腕時計。

 

シャルロット「はい、一夏、おめでとう!」

 

シャルロットは料理やお菓子のレシピ本。

 

ラウラ「嫁よ、これを受け取ってくれ。」

 

ラウラはドイツ特注の一夏専用ISスーツ。

 

弾「はいよ、一夏。おめでとう!」

 

弾は金属のメンズネックレス

 

アルゴス「俺からはこれだ。おめでとう一夏。」

 

アルゴスはトレーニング用兼おしゃれアイテムのメタルグローブ。

 

エクトル「僕はこれ、おめでとう一夏。」

 

エクトルはスペインの高品質の革製の財布。

 

レオ「俺はこれだぜ、おめでとう一夏。」

 

レオはイタリアのブランドの男性用ブーツ。

 

ビリー「俺はこいつだ。おめでとうよ、一夏。」

 

ビリーはハリウッドスターも御用達の高級なジーンズ。

 

簪「私からはこれ、おめでとう一夏。」

 

簪はおしゃれな上着。

 

レベッカ「あたしからはこれよ、おめでとう一夏!」

 

レベッカは地元で人気のあるキャップ

 

一夏「みんな、本当にありがとう!!」

 

次は千冬とジルからだ。

 

千冬「織斑、おめでとう、私からはこれを贈る。」

 

千冬はオーダーメードの紳士スーツ。

 

ジル「私からはこれよ、おめでとう一夏。」

 

ジルは質のいいメンズのカバン。

 

一夏「ありがとうございます!!これからもがんばります!!」

 

こうして、一夏、もとい、一夏に憑依した主人公は、久々の誕生日のお祝いに心温まった。

 

 

 



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モンハンの世界へ part1

とある日、食堂では和やかに朝食がとられていた。時々ではあるが、朝のテレビ番組をみんなで見ながら食べるときもある。

 

TV「今話題のモンハン最新作が世界中の注目を浴びています!!何と言ってもこのバーチャルシステムが・・・・。」

 

 

一夏「おっ、モンハンかー、面白そうだな。」

 

弾「俺結構やり込んだぜ。」

 

鈴「あたしも、一夏と弾の三人でよくやったわ〜。」

 

ビリー「俺も小学生の時から結構やったな。」

 

レベッカ「私も、ビリーとはよくゲームするし。」

 

アルゴス「知らない奴と一緒に狩りに行くのもまた面白いしな。」

 

簪「強くなりたいって気持ちが自然に出るもんね。」

 

専用機持ちのうちの若干名はこの話で盛り上がれるが、

 

ラウラ「モンハンとは何なのだ?」

 

シャルロット「正式にはモンスターハンター。簡単に言うと、狩猟を楽しむゲームだね。やったことないけど。」

 

ラウラ「狩猟がゲームか、日本には不思議なものが多いな。」

 

レオ「俺もよく知らねえな。俺ゲームは大体ガンアクションだったな。」

 

箒「うーむ、ゲームとは無縁だからよくわからんな。」

 

セシリア「私もそうですわね。」

 

エクトル「僕もゲームはやったことがないなあ。」

 

この学園の大半は女子なので、知らない者のほうが多いのだ。

 

一夏「じゃあ今度の休日みんなでこのモンハンやりに行こうぜ!」

 

 

そして休日、バーチャルシステムのモンハンができる施設へとやってきた。

 

先ずは武器選び、皆それぞれ自分に合うだろうと思う武器を選ぶ。

 

一夏「俺は絶対大剣だな、専用機のメイン装備がこれに近いし。」

 

一夏は大剣を選ぶ。一撃あたりの威力が高く、攻撃範囲が広いこの武器が馴染むようだ。

 

箒「私は武器といえばこれしかない。」

 

箒は太刀を選ぶ。普段使い慣れている故に迷うことなく選んだ。

 

エクトル「僕も箒と一緒で、一つに絞れたよ。」

 

エクトルは専用機の主力装備同様に弓を使う。

 

鈴「あたしは断然これね。手数多い方がいいし。」

 

鈴は双剣を選んだ。

 

ラウラ「私はこの防御に長けた装備が気に入った。」

 

ラウラはランス。重厚な盾装備が専用機の高い防御性能と似通っているからだろう。

 

シャルロット「僕はこれがいいかも。」

 

シャルロットは通常攻撃に加え、砲撃も可能なガンランスを選ぶ。

 

セシリア「私はやっぱり射撃の方がいいですわ。」

 

セシリアはヘビィボウガンを選ぶ。

 

レオ「俺はスピードありきの射撃がいいぜ。」

 

レオはライトボウガンを選ぶ。速射機能もつけられるので早撃ちが得意な彼にピッタリだ。

 

弾「俺はこいつだな。」

 

弾はエレキギタータイプの狩猟笛。

 

簪「うーん、これがしっくりくるかな。」

 

簪は定番の片手剣。

 

ビリー「やっぱこの武器すっげー馴染むぜ!」

 

ビリーは棒高跳びのようにジャンプ攻撃が可能な操虫棍。まさに彼にピッタリだ。

 

レベッカ「攻撃力ならこれが一番よ!!」

 

レベッカはハンマーを選択。豪胆な性格にピッタリだ。

 

アルゴス「こいつでどんな敵もぶっ倒すぜ。」

 

アルゴスはチャージアックス。斧を振り回すパワフルなアクションが気に入ったみたいだ。

 

一夏「それじゃみんな、一狩り行こうぜ!!」

 

一同「ああ(はい)(おう)!!」

 

隠して、専用機メンバー達による狩が始まった。



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モンハンの世界へ part2

武器を選び、一通り装備が整った一夏達は、グループに分かれて飛龍討伐に向かう。

なお、このモンハンは最大5人のグループを組むことができる。

メンバー構成は全体のバランスを考え、普段見ない取り合わせとなった。

 

一夏「よし、じゃあこのメンバーで行くか!」

 

簪「思い切り戦う!」

 

エクトル「精一杯援護するよ。」

 

セシリア「援護射撃はお任せください!」

 

攻撃範囲と威力に長けた一夏と、素早さに長けた簪。射撃に特化したセシリアとエクトルの4人メンバーで非常にバランスが取れている。

 

 

箒「いざ、出陣だ!」

 

アルゴス「腕がなるぜ!」

 

レオ「百発百中の援護をするぜ!」

 

シャルロット「防御なら僕に任せて!」

 

箒とレオはそれぞれ近接、射撃攻撃に長けている分ガードができないので、グループでガード可能なシャルロットとアルゴスでカバーをするという組み合わせになった。

 

 

ラウラ「最前で戦うぞ!」

 

ビリー「頼りにしてるぜ、ラウラ隊長!」

 

鈴「あんたも頑張りなさいよ。」

 

レベッカ「どんな奴だって倒してやるわ!」

 

弾「狩猟笛の力でサポートしてやるぜ!」

 

リーチに優れ、グループで唯一ガード可能なラウラを筆頭に、手数に長けた鈴と攻撃力に長けたレベッカが主力となり、

音色により様々なサポートができる弾と、唯一場所を選ばずジャンプ攻撃が可能な操虫棍のビリーが組むことで、攻撃にはほぼ死角がない組み合わせとなった。

 

 

Side一夏グループ

 

 

エクトル「ところで、このゲームのルールはどんな感じなんだい?」

 

一夏「目的としては、ギルドから依頼されるクエストを選んで、それを達成するという流れだ。」

 

セシリア「ギルドと言いますと、お仕事を引き受ける場ですの?」

 

簪「まあそんなとこ。狩猟に採取といった仕事を依頼されるの。」

 

一夏「今回は飛龍「リオレウス」の討伐を行うぜ。」

 

クエストを選んで、リオレウスの画像を皆に見せる。

 

セシリア「これが飛龍・・・、童話に出てくるドラゴンみたいですわ。」

 

エクトル「そうだね、僕らヨーロッパの目で見るとそれに近いかな?」

 

簪「リオレウスは空の王者って言われてるから強いよ。」

 

早速討伐に向かう。ステージは森と丘。

 

 

セシリア「今のゲームはこんな世界を描けますのね。」

 

大自然豊かな景色にセシリアは心が澄む。

 

エクトル「地球もかつてはどこもこんな感じだったんだろうね。」

 

簪「恐竜時代にタイムスリップしたみたい。」

 

束の間の自然鑑賞の後、ベースキャンプに行く。

 

一夏「よし、まずは支給品を分け合おう。」

 

皆それぞれ地図、応急薬、携帯食料、無線機を持つ。

 

セシリア「い、いよいよ出発ですのね。」

 

セシリアはどことなく緊張する。

 

一夏「緊張しなくても大丈夫だって、俺がついてるから。」

 

セシリア「あ、ありがとうございます。(一夏さん、頼もしい。ご一緒できて幸運ですわ。)」

 

簪「ま、楽しんでいきましょう!」

 

エクトル「そうだね、みんな頑張ろう!」

 

エリアが広く、ターゲットを見つけるまでが大変なので、一夏とセシリア、エクトルと簪の二手に分かれてリオレウスを探すことに。

 

Side一夏

 

一夏「さて、とりあえず地図で東側を探すか。」

 

セシリア「ええ、そうしましょう♡」

 

セシリアは一夏と2人きりなためか、物凄く楽しそうにする。

 

一夏「とりあえず見つけ次第エクトルたちに連絡だな。」

 

エリアを探していると、小型の肉食モンスターが3、4頭襲ってきた。

 

セシリア「キャッ!一夏さん!」

 

一夏「任せろ!」

 

一夏は大剣を縦に横に振り回し、次々と倒す。

 

一夏「セシリア、俺の後ろに来るヤツを頼む!」

 

セシリア「はい!」

 

セシリアはヘビイボウガンで一夏の攻撃範囲の死角に入り込んだ敵を狙い撃ちする。

それに気づいて接近する敵を、一夏は大剣でのガードで守る。

敵を殲滅後、再びリオレウスを探しに。すると、

 

一夏「セシリア、空を見ろ!リオレウスだ!」

 

セシリア「見つけましたわ、エクトルさん達に連絡を!」

 

セシリアは無線機でエクトル達に連絡をする。

 

 

Side エクトル

 

簪「エクトル、結構森が深いね。」

 

エクトル「うん、弓の照準に影響が出るかもしれない。逆に飛龍から身を隠せるぶんには最適だな。」

 

エクトルと簪は一夏達とは反対に森が多い西側を探している。

 

森を進んでいくと、大型の飛行虫の大群が。

 

簪「わっ、気持ち悪い!!」

 

エクトル「大丈夫撃ち落とすから!」

 

エクトルは弓を構え、何本も矢を放つ。

 

簪「凄いねエクトル、私も頑張らなきゃ!」

 

簪は片手剣で飛び込み攻撃を行なったり、突っ込んでくる飛行虫を斬撃で迎え撃つ。

 

 

エクトル「とりあえず片付いたね。」

 

その時、簪が持っていた無線機が鳴る。

 

簪「セシリアからだ、どうしたの?」

 

セシリア「こちら、リオレウスを見つけましたわ!エリア3です!」

 

エクトル「わかった、すぐに向かう!」

 

 

そして、彼らはエリア3で合流し、リオレウスに立ち向かう。

 

一夏「よし、俺が前に出る!」

 

一夏はすぐにリオレウスの頭を斬りつける。

 

簪「懐に潜ればなんとか。」

 

簪は足元を切りつける。

 

リオレウスはよろめきはしたが、すぐに立て直し、回転攻撃で一夏と簪を吹き飛ばした。

 

一夏「ぐわっ!!」

 

簪「きゃっ!!」

 

セシリア「これならどうですの!?」

 

セシリアは徹甲榴弾を撃つ。

 

エクトル「よし、効いている!」

 

しかし、リオレウスはエクトルの方に猛ダッシュする。

 

エクトル「しまった、間に合わない!」

 

エクトルにリオレウスが迫り、攻撃が当たる瞬間、

 

一夏「おりゃあぁぁっ!!」

 

一夏は段差からジャンプ攻撃を仕掛け、大ダウンを奪った。

 

エクトル「助かった。」

 

その後、なんとかリオレウスを討伐し、クエストクリアとなった。

 

一夏「ふう、やったな!!」

 

セシリア「みなさん、お疲れ様です。」

 

エクトル「いやー、これは面白いゲームだなあ。」

 

簪「他のみんなもクリアできてたらいいわね。」

 

一夏グループはこれにてクエスト達成となった。

 



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モンハンの世界へ part3

アルゴス「よし、今回のクエストはこれで行こうぜ!」

 

アルゴスグループがターゲットに選んだのは、「雷狼龍」こと「ジンオウガ」である。

 

レオ「なかなかカッコいい奴じゃん。俺のボウガンで狙いうちだぜ!」

 

箒「うーむ、日本の伝説上の動物にいそうな感じだな。」

 

ジンオウガの姿を見るなり箒は興味を示す。

 

シャルロット「雷狼龍ってことは、雷の力を使うってことだね。」

 

アルゴス「まあそんなとこだ。チームワークを生かせば何とかなる。」

 

アルゴスグループはジンオウガ討伐へと向かった。

 

舞台は広大で深い密林である。

 

箒「これはいわゆる、ジャングルのようなものか、凄い世界だな・・・。」

 

箒は架空の世界でありながらあまりのリアルさに目を丸くする。

 

シャルロット「何だか緊張するね。」

 

シャルロットは密林に入っていく前から緊張気味である。

 

レオ「なーに、すぐに見つけてみんなでぶっ倒せば終わりだろ?」

 

レオは余裕綽々と言わんばかりの様子だ。

 

アルゴス「よし、とりあえず俺と箒、レオとシャルロットで手分けして奴を探し出そう。連絡は支給品の無線でとるか。」

 

箒・レオ・シャルロット「ああ(オッケイ)(うん)。」

 

 

Sideアルゴス&箒

 

アルゴス「とりあえず箒、俺から離れるなよ。」

 

アルゴスはチャージアックスが剣モードの時にガードができるため、箒のフォロー中心の戦いになる。

 

箒「ああ、お互いにな。」

 

箒はもともと素直ではないためか、アルゴスに対して少し強がる。

 

少し進むと、小型肉食恐竜の集団に出くわした。

 

箒「よし、いざ参る!!」

 

箒は太刀を振りかざし、次々と切り倒していく。

 

アルゴス「流石だな、っておい、俺の獲物も残しといてくれよ!」

 

アルゴスも箒に続き、チャージアックスを斧モードにして敵をなぎ倒して行く。

 

 

Sideレオ&シャルロット

 

レオ「さてと、とりあえず行くかな♪」

 

レオは呑気に口笛を吹いている。

 

シャルロット「ちょっとレオ、少しは緊張感持とうよ。」

 

レオ「大丈夫だって。俺こういうの得意なんだからよ。」

 

少し歩くと、そこにはブルファンゴの集団が。

 

シャルロット「わっ、これは、イノシシ?」

 

レオ「おっと、団体さんのお出ましか。」

 

レオはさっそくブルファンゴを撃ちまくる。ブルファンゴが突っ込んでくるも、軽い身のこなしでかわしていく。

 

シャルロット「あちこちから突っ込んでくるよ!」

 

シャルロットはガンランスの突きや砲撃で対応するが、前方からの対応で精一杯だ。

 

レオ「ちょっと背中借りるぜ!」

 

レオはシャルロットの背中にくっつき、散弾でブルファンゴを迎え撃つ。ほどなくして全滅に成功。

 

シャルロット「あ、ありがと。」

 

レオ「どういたしまして、パートナーが一夏じゃなくてわりいな♪」

 

シャルロット「な、なに言って・・・。」

 

シャルロットは顔を赤くする。

 

レオ「冗談だって!」ウィンク

 

シャルロット「もう!」

 

はたから見れば痴話げんかのようなやり取りをしていると・・・

 

ジンオウガ「・・・・・。」

 

シャルロット「う、嘘!?このタイミングで!」

 

レオ「やれやれ、一難去ってまた一難ってか。」

 

シャルロット「ことわざ言ってる場合じゃないよ!」

 

シャルロットはアルゴスと箒に連絡する。

 

 

Sideアルゴス&箒

 

アルゴス「おっと、どうやら向こうはエリア7で鉢合わせしたみたいだな。」

 

箒「地図だと、この辺りだな。すぐに向かおう。」

 

アルゴスと箒はレオたちのところへ向かい、合流する。

 

 

シャルロット「アルゴス、箒、こっちだよ!」

 

シャルロットはジンオウガの攻撃を必死に受け止める。

 

箒「ジンオウガ、いざ勝負!!」

 

箒はサイドから思い切り斬りつけ、ジンオウガがひるむ。

 

レオ「よし、貫通弾をおみまいするぜ!」

 

レオは背後から射撃し、ダメージを与える。しかし、ジンオウガは身をひるがえして攻撃する。

 

箒「うわっ!」

 

レオ「ちぃっ!!」

 

箒とレオは回転攻撃をもらって飛ばされる。

 

アルゴス「まかせろ!!くらえぇぇぇっ!!」

 

アルゴスは近くの岩場からジャンプし、ジャンプ攻撃で背中に乗り、ヘッドロックで抑え込む。

 

シャルロット「アルゴス、さすがだね!」

 

アルゴスに抑えられたジンオウガにシャルロットが竜撃砲を放ち、大ダウンをうばったところに全員の攻撃を叩き込み、とどめを刺した。

 

 

アルゴス「いやー、一仕事終えたってとこだな!」

 

シャルロット「みんな、お疲れ様!」

 

レオ「こいつはなかなかタフな奴だったぜ!」

 

箒「ISでの戦闘とはまた違ったものだな!」

 

 

こうして、ジンオウガの討伐に見事成功した。

 

 

 



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モンハンの世界へ part4

ラウラ「さて、我々が受けるクエストとやらだが。ここはモンハンをよく知るみんなの意見を聞こう。」

 

弾「人数的に一番多いし、それに合ったクエストがいいと思うぜ。」

 

鈴「だったらさ、これなんかどう?」

 

鈴が出したのは「覇王竜」こと、「アカムトルム」のクエストだ。

 

ビリー「これって結構高難度のクエストなんじゃねえの?」

 

レベッカ「だったら尚更やり甲斐があるじゃない!覇王なら相手にとって不足はないわ‼︎」

 

レベッカはやる気満々だ。

 

弾「俺は賛成だな。」

 

ビリー「弾に同じだ。」

 

鈴「じゃあ決まりね!」

 

一同は意を決して覇王竜アカムトルムに挑むことになった。

 

 

クエストを契約し、いざ決戦場へ。

 

ラウラ「ここが決戦の舞台か・・・・。」

 

ラウラはアカムトルムのステージのマグマ地帯のリアルさに言葉を失う。だが、次の瞬間どこからともなくマグマの火柱が立ち始めた。

 

ビリー「どわっ!?あちっ、・・・・って、熱くねえ。」

 

鈴「プッ、バーチャルで熱いわけないでしょ。」

 

ビリー「う、うるせ〜。反射的に言っちまったんだよ。」

 

レベッカ「アンタ時々ビビリーよね。」

 

ビリー「てめえその言い方やめろよな。」

 

ビリーは短気な性格上臆病者扱いを嫌う。

 

弾「おい、お前ら前を見ろよ。」

 

ラウラ「敵はすぐ向こうにいるぞ。」

 

前方を見ると、そこにはアカムトルムの姿が。

 

 

ビリー「で、でけえ・・・。」ゴクリ

 

鈴「初めて見たけど、ここまでとはね。」ゴクリ

 

威圧感に気をとられていると、アカムトルムはいきなりトルネードブレスを吐いてきた。

 

レベッカ「危ない!!」

 

弾「どわっ、避けろ!!」

 

全員すぐさま緊急回避で左右に分かれた。

 

ラウラ「とにかく先ずは接近だ、私が行こう!」

 

ラウラはすぐさまランスの突進攻撃を繰り出す。

 

弾「よし、俺はひとまず演奏でステータスアップだ!」

 

弾は狩猟笛で攻撃力上昇のメロディーを奏でる。

 

ビリー「おっしゃ、ラウラ隊長に続くぜ!!」

 

ビリーはアカムトルムのサイドに駆け込む。

 

鈴・レベッカ「滅多斬り(滅多打ち)にするわ!!」

 

思わず同時に鈴とレベッカは正面から立ち向かった。

 

アカムトルムは攻撃を受けてもなお突進する。

 

ラウラ「ぐっ、これは防御しきれない!」

 

ラウラはガードの上から立て続けに攻撃を受け、スタミナが削られていくもなんとか耐えきる。

 

鈴「この隙に攻撃よ!」

 

鈴は攻撃後の隙を狙い、腹部を乱舞で切り刻む。

 

ビリー「おっしゃあ、俺の特技を受けてみやがれ!!」

 

ビリーは操虫棍のジャンプ攻撃をアカムトルムの背中に叩き込んだ。

 

アカムトルム「!!」

 

アカムトルムは不意のジャンプ攻撃にダウンを喫する。

 

弾「レベッカ、今だ!」

 

レベッカ「オーケー、弾!!」

 

弾とレベッカはダウン中のアカムトルムの頭部にハンマー攻撃を力の限り叩き込んだ。

 

この後、アカムトルムから怒りを買うも、激闘の末、息のあった連携プレーでアカムトルムを地に沈めた。

ちなみに制限時間1分前にクエスト達成となった。

 

 

ラウラ「任務完了!みんな、ご苦労だったな。」

 

弾「ふー、危ねえ危ねえ。」ゼイゼイ

 

鈴「一瞬たりとも手は止めなかったわ。」ハアハア

 

ビリー「やっぱデカい奴へのジャンプ攻撃は苦労するぜ。」ヘロヘロ

 

レベッカ「あんなに強いとは思わなかったわ。」ヘトヘト

 

 

こうして、3つのグループは無事にそれぞれのクエストを達成した。

 

モンハンのバーチャル施設を後にし、帰路に着く。

 

一夏「いやー、楽しかったな!」

 

エクトル「ゲームの世界で自分の特技を活かせるのはいいね。」

 

箒「ふむ、己の剣技をあの様な世界で活かせるとは思わなかったな。」

 

セシリア「私も、射撃の腕を活かせて楽しかったですわ。」

 

レオ「そいつは俺も感じたな。」

 

シャルロット「ISにはない武器が使えたのはいい経験だよね。」

 

簪「整備科に行ったらあんな武器をIS用に作りたいわ。」

 

弾「おっ、そいつはいいアイディアだな!」

 

ビリー「操虫棍の機能が俺のISにも欲しいところだぜ。」

 

鈴・レベッカ「(じゃあ、ビリーのために整備科の勉強を頑張らなきゃ!)」

 

 

こうして、また新たな経験を積んだ専用機持ち一同なのであった。



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IS男子の痴漢撃退作戦(前編)

とある日、IS学園は今日も平和かと思いきや、食堂内であることが話題となっていた。

 

谷本「ホント許せないわねそいつ!」

 

鷹月「こないだのは捕まったけど、また別の人にされた娘がいたんだって。」

 

相川「どうにかできないかしら?」

 

クラス内で悪口が飛び交っている。

 

一夏「おはよう、どうしたんだ皆。」

 

箒「何だか朝から険悪だがどうかしたのか?」

 

谷本「実はね、先週の日曜日に3人で買い物に行ったんだけど。」

 

鷹月「電車内で痴漢に遭ったのよ!お尻触られた!」

 

セシリア「まあ!それは本当ですの!?」

 

エクトル「それは嫌な思いをしたね。」

 

アルゴス「そういやニュースになってたな。」

 

シャルロット「うん、ここ最近IS学園の女子生徒に痴漢をはたらく男が後を絶たないって。」

 

レオ「マジかよ。そりゃどうにかしねえとな。」

 

ラウラ「痴漢とは何なのだ?」

 

簪「主に電車とか、公共の場所で女性に性的な嫌がらせをする悪い男の事よ。」

 

ラウラ「ふむ、それは許せんな。」

 

ビリー「俺ならそいつらを見つけ次第三節棍でぶっ殺してやるけどな。」

 

喧嘩っ早いビリーは優しさが極端な方向に行きがちである。

ちなみにビリーの三節棍は特殊な金属加工を施しており、破損やサビに強い。

 

弾「おいおいビリー、物騒な事言うなよ。」

 

鈴「アンタまで捕まっちゃうじゃない。」

 

レベッカ「気持ちはわかるけどね〜。」

 

箒「私なら木刀で叩きのめしていたかもしれない。」

 

のほほん「ほえ〜、しののんかっこいね〜。」

 

アルゴス「威力が凄えからやめといたほうがいいぜ。」

 

エクトル「しかし、このまま放っておくわけにはいかないな。」

 

一同はしばしの間考え込む。そんな中、一夏がとんでもない作戦を思いつく。

 

一夏「よし、ここは俺たち男子が一肌脱ぐぜ!」

 

弾「何か思いついたのか?」

 

一夏「ああ、痴漢をおびき出して逮捕に繋げる作戦を思いついた。」

 

レオ「さっすがリーダー、頼もしいぜ!」

 

アルゴス「んで、どんな作戦だ?」

 

 

翌日、一夏達男子と一年生専用気持ち、及び谷本、鷹月、相川は痴漢の出没する電車のホームに集合した。ただ、その作戦の内容だが・・・

 

一夏以外の男子「・・・・。」

 

一夏「よし、準備オッケーだ!」

 

作戦は、何と一夏達IS男子が全員女子の制服を着るという内容だった。

 

一夏は千冬に化粧をお願いし、千冬の髪型に近いカツラを被ることで、クール系の女子生徒になりきっている。

 

箒「にしても一夏、よくこんな作戦を思いついたな。(一夏、綺麗だな。)」

 

セシリア「ええ、本当に凄いですわ。(お化粧がよくお似合いですわ。)」

 

シャルロット「まさかここまでやるなんてね、他のみんなもよく似合ってるよ。(一夏、女の子の格好似合う。)」

 

ラウラ「うむ、流石は嫁だ。(一夏にこんな魅力があったとは。)」

 

ビリー「・・・おい一夏、何で俺らこんな格好しなきゃなんねーんだ?」

 

レベッカ「プッ、あはははっ!(笑)」

 

ビリーはオレンジの髪を黒く染めてヘアピンをつける事で不良っぽさを抑えている。

当然三節棍は持ち込まない。

 

弾「一夏、本当にこんなんで大丈夫なのか?」

 

鈴「よく似合ってるわよ(笑)」

 

弾は虚に化粧をお願いし、ヘアバンドを外してロングヘアーをポニーテールにしている。

 

アルゴス「これめちゃくちゃ恥ずかしいじゃねえか。・・・」

 

アルゴスは楯無に化粧をしてもらい、普段ワックスで逆立てている髪を降ろすことで顔はどうにか女子っぽく仕上がった。

筋肉質の体はきつめの腕サポーターやコルセット(胸元に詰め物あり)、足元は太腿の見えない長さのスカートとニーソックスで誤魔化すようにしている。

 

レオ「はぁ、一夏とエクトルはよく似合うからいいけどよ〜。」

 

簪「レオも充分似合ってるわよ。」

 

レオは短めのツインテールに花の髪飾りをしている。

レオは当初女装を渋ったが、簪と数人の女子で取り押さえられて無理やり化粧と女装が施されたらしい。

 

エクトル「確かにこれ以上ない作戦だね。」

 

エクトルはもともとの美貌と髪型が三つ編みのため、服さえ着れば違和感なく女子っぽくなるのだ。

 

谷本「凄い、全く違和感ないわ・・・。」

 

鷹月「ベレン君綺麗・・・。」

 

相川「ベレン君となら百合も・・・・。」

 

一夏「それじゃ、作戦開始!!」

 

一同は電車に乗り込んだ。



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IS男子の痴漢撃退作戦 (後編)

女装した男子一同と私服姿の女子達は、被害があった列車の車両に入り、一夏達が囮になり、その隙に女子達が通報し、逮捕に繋げるという作戦で行くことに。ちなみにこの車両は丁度6両あるため、男子達は女子数人とグループを組んで6手に分かれる。

 

一夏「(こっちは準備完了だ。じゃあうまくやろうぜ。)」

 

ラウラ「(了解だ。見つけ次第ターゲットを確保する。)」

 

ラウラが軍で用いていた無線を使い、一夏達女装男子グループと私服女子は連絡を取りあう。

 

 

乗車して10分経った頃・・・

 

Sideエクトル・シャルロット&ラウラ

 

エクトル「(こちらエクトル、こっちに男が接近中。様子を見て見る。)」

 

シャルロット「オーケー、気をつけてね。」

 

男「(お、この子めっちゃ美人じゃねえか。どこのお嬢様かな。)」

 

男は周囲を見渡し、エクトルに背中を向けた状態でエクトルの尻に手を触れようとする。

 

エクトル「(ラウラ、今だ!)」

 

ラウラ「(よし!)」

 

エクトルは男の背中に思い切り肘鉄砲をする。

 

男「ぐわっ!!」

 

怯んだところをラウラが背負い投げで叩きつけ、シャルロットが通報する。

 

 

Sideアルゴス・谷本&鷹月

 

アルゴス「(よし、痴漢行為をした瞬間俺がぶっ倒すから通報と加勢を頼む。)」

 

谷本・鷹月「(任せて!)」

 

男「(おっ、IS学園の女の子だぜ。ちょうど陰に隠れられるところだ、いいよな。)」

 

男は他の乗客の陰にうまく隠れ、気づかれないように尻に手を伸ばした。

 

アルゴス「(よし、今だ!!)」

 

アルゴスはとっさに身を翻し、強烈な右ストレートを腹部に打ち、ふくらはぎにローキックをお見舞いした。

 

男「へぶっ!!」

 

加勢した谷本と一緒に拘束し、鷹月が通報した。

 

 

Side弾&鈴

 

弾「(こんなんで大丈夫なのか?)」

 

鈴「(文句言ってないで、さっさと捕まえるわよ。)」

 

男「(あのポニーテール、IS学園の生徒だな。へへへ、いっちょやりますか・・・。)」

 

明らかに変態な男が少しずつ近寄ってくる。そして、弾の髪に触れた瞬間、

 

弾「(鈴、今がチャンスだ!!)」

 

鈴「(了解!)」

 

弾は男の顔を鷲掴みにし、座席の角に頭を叩きつけた。男は都合よく気絶したので、鈴と弾は持っていたロープで縛る

 

 

Sideビリー&レベッカ

 

ビリー「(上手くいくかわかんねえけど、まあ頼むわ。)」

 

レベッカ「(気をつけてよね。)」

 

男「お、あの女の子可愛いじゃねえか。そういやこの間も尻触っちまったんだよなあ。」ペロ

 

この男は運良く逃げ延びた者だ。そして、性懲りも無くこの列車に来たのである。

 

男「お嬢ちゃん、背中にゴミがついてるぜ。」

 

ビリー「あ、どうも。」

 

男は背中を軽く叩くふりをして、尻を触った。男であるとも知らずに・・・

 

ビリー「ありがとう、あともう一つ、・・・・ゴミはてめえだコラァ!!」

 

男「(いっ、こいつまさか男か!?)」

 

ビリーは顔面に蹴りを命中させ、仰向けになったところで腹に思い切りのしかかった。

そして、鈴が通報する。

 

 

Sideレオ&簪

 

レオ「(ふぅ、こんな趣味はないんだがなぁ。)」

 

簪「(いいから周りに集中して。)」

 

レオは余裕からか、大欠伸をする。すると、中年くらいの男がレオの足元にしゃがみこんでいた。

 

レオ「?」

 

中年オヤジ「ああ、ごめんよ。携帯電話落としちゃったみたいでな。(でへへへ、スカートの中撮影成功だぜ。)」

 

レオ「はあ。(おい簪、こいつの様子はどうだった?)」

 

簪「(落としたふりしてこっそり撮ってたよ。)」

 

レオ「(ようし。)」

 

レオは中年オヤジに向き直ると、後ろから首にチョップを叩き込んだ。

 

中年オヤジ「うっ!!」

 

気絶させた後に携帯電話を調べる。その中にはレオのスカートの中がバッチリ映っていた。

証拠を抑え、簪が通報する。

 

 

Side一夏&箒・セシリア

 

一夏「(箒、俺が犯人を抑えたら加勢を頼む。セシリアは通報を頼むな。)」

 

箒「(ああ、任せておけ。)」

 

セシリア「(了解ですわ。)」

 

万全の体制で痴漢を待ち伏せする。

すると、金髪の長身の男が一夏の背後からゆっくり近づいてくる。

 

長身の男「(へへへ、今日はこの子の胸元を撮るかな。)」

 

この男は大胆にも、長身を活かした背後の上部からの撮影で、女子生徒の胸元(主に谷間が見える)を盗撮していたのだ。

カメラはどうやら動画タイプのものらしい。

 

一夏「(・・・来たか。)」

 

一夏は敢えて気付かないふりをして、男の隙を伺う。

 

セシリア「(一夏さん、その男の手には小型カメラが。)」

 

箒「(今だぞ、一夏!!)」

 

一夏「(わかった!!)」

 

一夏は突如、後ろを振り返り、一瞬驚いた男の手から小型カメラを取り上げる。

 

男「なっ、てめえ何すんだよ!?」

 

一夏「それはこっちの台詞だ!!」

 

一夏は男の股間を蹴り上げ、体がくの字に折れたところで頭に膝蹴りを食らわせた。

 

完全に倒れ込んだところを、箒と協力して取り押さえ、セシリアが警察に通報。

 

 

こうして、合計6人の痴漢を逮捕できた。のちにわかった事だが、この6人はグループを組んで盗撮や痴漢を働く者たちであり、調べによって他のメンバーも一人残らず逮捕された。

 

ちなみに、自分たちが被害を与えた女子生徒が、実は女装した男子だということがわかると、その日は終始顔が青ざめたままだったという。

 

 

一夏「作戦成功、みんなお疲れ様!」

 

箒「これでしばらくは大丈夫だろう。」

 

アルゴス「ある意味一番疲れたかもな。」

 

エクトル「そうだね、できればもうやりたくないかな。」

 

レオ「エクトルに同じ。」

 

谷本「でもみんなとっても似合ってたわよ。」

 

弾「いや、そういう問題か?」

 

ビリー「まあとにかく、無事に終わってよかったじゃねえか。」

 

鈴「そうそう。」

 

男子一同が着替えようと部屋に戻ろうとすると・・・・

 

 

千冬「男子共、ちょっと待て。」

 

セシリア「あ、織斑先生」

 

千冬「今回は見事な作戦ぶりだったな。だが、着替えるのはよせ。」

 

シャルロット「?」

 

一夏「え、何でですか?」

 

千冬「その・・・、お前たち、意外と女装がよく似合っているからな。明日までその姿で授業を受けてもらおうかと。」

 

ビリー「えーっ、マジっすか!?」

 

アルゴス「勘弁してくださいよ!」

 

千冬「皆も知っての通り、IS学園は元々女子校だからな。たまには去年までと同じ女子校だった頃の雰囲気に戻ってみたいのだ。」

 

女子一同「成る程。」

 

エクトル「女性諸君、納得しないでくれ!」

 

レオ「じゃあその代わり入浴時間に女の子達と混浴しても・・・❤︎」

 

弾「そうか、そういうメリットがあるなら❤︎」

 

千冬「・・・ステファーノ、五反田、何か言ったか?」ジロリ

 

レオ・弾「あ、いえ、何でもございません・・・。」

 

一夏「はあ、わかりました。(こりゃ逆らえないな・・・。)」

 

エクトル・アルゴス・弾・レオ・ビリー「(一夏、君(お前)(てめえ)の作戦のせいだぞ!)」

 

一夏「(すまん!)」

 

翌日、その日は一日中久々の女子校の雰囲気となっていた。



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IS学園ペット物語

一夏「ふう、今日もハードな訓練だったなぁ〜。」

 

一夏は大きく背伸びしながら歩く。

 

エクトル「確かに・・・でも一夏すごい勢いで強くなっているよね。」

 

アルゴス「ああ、俺もウカウカしてらんねえな。」

 

訓練アリーナから寮までの道を歩いていると、なにやら建物の通気口がカタカタと音を立てている。

 

エクトル「ん?」

 

アルゴス「通気口の中に何かいるぞ。」

 

一夏「ちょっと見てみようか。」

 

通気口を開けると、そこには一匹の白いまん丸な子猫がいた。

どうやら迷い込んできたらしい。

 

一夏「・・・可愛いな。連れて帰ってあげたいぜ。」

 

一夏、もとい一夏に憑依し主人公は、大の猫好きである。

 

エクトル「でも、学園でペットは飼えないんじゃ。」

 

アルゴス「だけどこのままほっとくわけにもいかねえだろ。」

 

 

とりあえず連れて行くことにした。

 

 

 

in食堂

 

箒「一夏、その猫は一体?」

 

一夏「さっき寮の近くで拾ったんだ。」ニコニコ

 

セシリア「まあ、そうなんですの。」

 

鈴「でもこの子よくこの学園に入れたわね。」

 

エクトル「一夏ってば妙にこの子を気に入っちゃってさ。」

 

シャルロット「一夏、猫が好きなの?」

 

一夏「ああ、凄く!」

 

谷本「へー、意外かも。」

 

ラウラ「これが猫という動物なのか。」

 

ラウラは過去に動物を見たことがないので、興味津々だ。

 

山田先生「織斑君、ダメですよ。動物を学園に持ち込んでは。」

 

一同「山田先生。」

 

山田先生「学園はペット禁止の規則があります。」

 

一夏「でも先生、この子寂しそうでしたよ。俺が責任持って面倒見ますし。」

 

山田先生「そういう問題ではありません。」

 

山田先生はきっぱり断る。その瞬間、

 

一夏「そんな・・・ウッ・・・グスッ・・・ウッウッ。」

 

一夏は突然泣き出した。

 

山田先生「お、織斑君!?(えっ、ちょっと待って。)」

 

一夏「こんなに可愛いのに・・・、見捨てろというんですか?・・・・・、ウウッ、グスッ。」

 

エクトル「あーっ、山田先生が一夏を泣かした!!」

 

アルゴス「先生、アンタ何で一夏を泣かしてんだよ!!」

 

女子一同「!!!!」ジロッ

 

みんな一斉に山田先生を睨む。

 

山田先生「あ、いえ、ですからその。」

 

慌てふためく山田先生。しかし背後にはいつの間にか千冬が・・・

 

千冬「山田先生、ちょっとよろしいですか?(一夏を泣かすとはいい度胸だな。)」

 

ガシッ、山田先生の頭を鷲掴みにする。

 

山田先生「ひぃっ!?織斑先生!」

 

千冬「織斑、その猫の飼い主が現れるまでの間特別に許可しよう。(一夏が猫好きとは、可愛いものだ。)」

 

一夏「いいんですか、ありがとうございます!」

 

鈴「立ち直り早っ。」

 

山田先生はそのまま職員室まで連れていかれた。

 

 

後日・・・

 

始業前の教室では、

 

一夏「だっはっはっはっ!嘘泣き作戦大成功!!」

 

一夏は猫を飼えるようになって上機嫌だ。

 

シャルロット「あれ嘘泣きだったの?」

 

エクトル「全然分からなかったよ!」

 

ラウラ「教官も見事に信じ込んでいたぞ。」

 

箒「にしても一夏、猫のためにそこまでやるとはな・・・。」

 

一夏「いや、どうしても飼ってみたくて、咄嗟に思いついてな。」

 

アルゴス「・・・コイツ敵に回すと絶対厄介だろうな。」

 

セシリア「ええ、そう思いますわ・・・。」

 

一同は一夏の思わぬ策士ぶりに唖然とする。

 

のほほん「ねーねーおりむー、その猫ちゃんの名前はー?」

 

一夏「ああ、実はもうつけてあるんだ。名前は『ユキ』っていうんだ。」

 

丸い見た目が雪見大福みたいだと感じたらしく、そこから考えたらしい。

 

アルゴス「なんかベタな名前だなぁ。」

 

エクトル「らしいと言えばらしいけど。(笑)」

 

一夏「ユキ、これからよろしくな!」

 

ユキ「ミャ〜。」

 

ユキは一夏を大変気に入ったらしく、一夏の頭の上に乗る。

 

セシリア「まあ、可愛らしいですわね。」

 

箒「大人しいな。(うーむ、羨ましいな。)」

 

シャルロット「ユキちゃん、ずるいよ〜。(僕も一夏に可愛がってほしいな。)」

 

ラウラ「さすがは嫁だな。」

 

その他の女子一同「(可愛い・・・・。)」

 

 

座学の授業中では、

 

千冬「このように、世界でのISの技術開発は・・・。」

 

一夏・ユキ「・・・。」ジッ

 

一夏の頭の上のユキは、一夏同様モニターを円らな目でジッと見ている。千冬はそんな一夏の状態が気になるらしく、どこかぎこちない。

 

千冬「・・・織斑。」

 

一夏「あっ、先生すみません。」

 

一夏がユキを頭から降ろそうとすると、

 

千冬「いや、そのままでいい。何だか新鮮な光景だと思っただけだ。(可愛すぎて集中出来ないではないか・・・。)」

 

千冬は顔が緩みそうなのを必死に堪えながら授業を続ける。

 

機体の実戦訓練では、休憩の合間にみんなでユキと触れ合ったりしていた。

 

食事の時間に至っては・・・・

 

一夏「どうだユキ、美味いか?」

 

ユキ「ウミャ〜。」

 

一夏「そうかそうか。」ナデナデ

 

テーブルで一夏のすぐ側に座るユキに、一夏はおかずの魚を分けてあげたりしていた。

 

エクトル「・・・僕のもあげよう。」

 

アルゴス「・・・俺も、やろうか。」

 

エクトルとアルゴスも思わずおかずをユキに与える。

 

鈴「・・・なんか、ほっこりするわね。」

 

のほほん「おりむー優しいのだ〜。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「(・・・可愛い。)」

 

後日、飼い主が学園を訪問しユキを返してあげると、飼い主からは凄くお礼を言われた。

一夏は飼い主にユキを返した後、数日寂しそうな表情でいた。

そんな一夏の意外な面を見て、一夏を好きな女子たちは、猫が一夏攻略のポイントだと勝手に自覚したらしい。

本人には内緒で、一夏がユキと一緒にベッドで寝ている姿の写真が女子たちの間で裏取引された。

特に千冬はその写真を職員手帳の中に納めたらしいが。



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一夏VS専用機男子5人ボウリング対決

とある休日、学園ではある催しが行われようとしていた。

 

楯無「第一回IS学園、一夏VS専用機男子5人ボウリング対決ー!!」

 

男子一同「・・・・。」

 

アリーナには何故かボウリングのレーンが二つ用意されていた。

 

簪「お姉ちゃん、また何か変な企画じゃないわよね?」

 

一夏「っていうか、そもそも何で俺一人VS他の男子なんです?」

 

楯無「まあまあ、生徒会長として、男子のリーダーとしての強さを確かめるためよ♪」

 

アルゴス「とか何とか言って悪巧みしてんだろ。」

 

ビリー「まあ面白えっちゃ面白えけどよ。」

 

 

ルールを説明しよう。一夏と他のIS男子5人のチームがボウリングで競う。

ただし一夏以外の男子5人チームは5人揃って同時にボールを投げなければならない。

言わずもがな、負けた方には罰ゲームが待っている。

 

箒「またえらく奇妙なルールだな。」

 

セシリア「ですわね、まあでも私は一夏さんを応援いたしますわ。」

 

ラウラ「ボウリングとは何なのだ?」

 

シャルロット「ボウリング場って場所でやるスポーツで、ボールを投げて10本のピンを倒した得点で勝負するんだよ。」

 

レベッカ「まあ普通は1レーンで5人同時に投げるなんて事はあり得ないけどね。」

 

鈴「にしても、これ明らかに一夏不利じゃないの?」

 

簪「でも一夏はどんな悪条件下でも強いし。」

 

ちなみに女子は全員観戦者だが、負けた方への罰ゲーム執行人となる事ができる。

 

 

エクトル「何だかやりづらい気もするんだがなあ。」

 

弾「しょうがねえ、悪いが一夏、更識先輩の罰ゲームが怖えから、勝たせてもらうぜ!」

 

レオ「そういう事でよろしくな一夏。」

 

一夏「おう、全力でかかって来い!」

 

男子一同はボールを投げやすくするため、ISスーツに着替える。

 

 

多くの女子が見守る中、対決が始まる。

 

第1フレーム1投目、先攻は一夏。

 

一夏「とりゃっ!!」

 

レオ「うわ、思ったより上手いな。」

 

コントロールは良かったが、7本。右側に3本残った。

 

箒「7本か、まずまずだな。」

 

アルゴス「ここでスペア取られると、ちょっと先が怖えな。」

 

続けて投げる一夏。ボールは上手い具合に残りのピンを倒した。

 

一夏「よっしゃ、スペアだー!」

 

シャルロット「流石一夏!」

 

レオ「うわー、スペア取ったか!」

 

続いて、男子5人チームの一投目。

一番ガタイのいいアルゴスを真ん中にバランスよく並んだが、

 

アルゴス「これ思ったよりやり辛いな。」

 

エクトル「僕とビリーは端だからガターしやすいよ!」

 

ビリー「レオ、てめえもうちょっと詰めろよ。」

 

レオ「いや、ンなこと言われても・・・・。」

 

レベッカ「開始早々揉めてるし。」ハァ

 

谷本「そりゃ一人用のレーンに5人だもん。」

 

アルゴス「とりあえず投げようぜ、身をかがめたら少しはマシだぞ。」

 

弾「腰深く落とせ。」

 

ビリー「ほらよ。」

 

レオ「よし、これなら何とか。」

 

エクトル「じゃあ、投げるよ。」

 

5人「せーのっ!!」

 

5人は同時にボールを投げた。身を深くかがめているぶんスピードは出ないが。(※実際にボウリング場で真似をしないでください。)

 

一夏「これ普通じゃまず見ねえ光景だな。」ケラケラ

 

鈴「あっ、でもけっこういいコース行ってんじゃない?」

 

5色のボールはゆっくり互いに押し合いへし合いしながら確実にピンを倒して行く。

 

ビリー「あ、これストライクじゃねえか!?」

 

最後の1ピンをエクトルのボールが倒した瞬間、

 

5人「よっしゃー(やったー)!!!!」

 

一夏「うわ、ストライク来たか!!」

 

簪「これ、どう考えてもずるい気が。」

 

ラウラ「一回で全部倒したらストライクなのか。」

 

一夏「ちょっとこれは油断できねえな。」

 

シャルロット「でも一夏は一人で投げる分精神的には落ち着けるよね。」

 

続けて2フレーム目に入る。

 

一夏「一気に行くぜ!!」

 

一夏は少しでも差を広げんと奮闘する。そして、意地のストライクを出した。

 

一夏「おっしゃ、序盤ストライク!!」

 

セシリア「素晴らしいですわ!!」

 

箒「頑張れ一夏!!」

 

アルゴス「スペアのあとストライクか、一気に得点増えるぞ。」

 

レオ「なーに、さっきの要領ならダブルいけるだろ。」

 

のほほん「ほえ〜、私もやってみたいよ〜。」

 

続いて5人チーム2フレーム目。

 

アルゴス「さっきのよく思い出しとけ。」

 

ビリー「いけるぜダブル!!」

 

エクトル「落ち着いていこう!!」

 

5人「せーのっ!!」

 

5人はまた同時に投げる。

 

弾「あ、悪い、ガター行っちまった!!」

 

エクトル「ごめん、僕も!!」

 

ビリー「何やってんだよ!」

 

アルゴス「落ち着け、よく見ろ。」

 

アルゴスとビリーのボールが5本倒し、レオのボールが最後に行くも、記録は8本。

 

レベッカ「あちゃー、スペアすら取れてないわね。」

 

簪「さっきの調子を続けるのは無理か。」

 

一夏「よーし、こっから突き放すぜ!!」

 

レオ「やべえな、どっかで取り戻さねえと!」

 

その後も両者調子にアップダウンがあるも、ゲームは大接戦となり、最終フレームを迎えた時点で得点は下記の通り。

 

 

一夏・・・173ポイント

 

5人チーム・・・178ポイント

 

男子5人チームが5ポイントリードしている。

 

箒「ここまで来て逆転されたな。」

 

一夏「・・・これは、俺逆に不利だな。」

 

鈴「とりあえず一夏はスペアは取っておくべきね。」

 

シャルロット「確か10フレーム目はストライクかスペア取れないと2投で終了だもんね。」

 

ラウラ「うむ、だが一夏ならきっと大丈夫だ。」

 

セシリア「ええ、まだわかりませんもの。」

 

最終フレーム、緊張の1投目

 

一夏「行けえぇぇぇぇっ!!」

 

雄叫びとともにボールを投げる。その念が通じたように見事ストライクを取った。

 

一夏「いよっしゃぁぁぁっ!!」

 

レベッカ「やだ嘘!?ここで出すの凄いじゃない!!」

 

アルゴス「うわー、これはヤベエぞ!!」

 

鈴「あいつやっぱ凄いじゃない!」

 

弾「そういやあ一夏と鈴とでボウリング行った事あるんだが、最後まとめて3連発ストライク取った事あるんだよな。」

 

エクトル「うわ、それされたらいよいよ厳しくなるよ。」

 

そう、ここでもし一夏が後の2投ともストライクを出してしまうと、5人チームは1投目でストライクを出せなかった時点で負けが決定してしまうのだ。

 

一夏は最終フレーム2投目でストライクを逃したが、スペアはきっちり取って193点で終了した。

 

一夏「ふう、とりあえず出来るだけの事はしたが。」

 

箒「一夏、お疲れだったな。」

 

セシリア「はい、一夏さん。スポーツドリンクです。」

 

一夏「おう、ありがとな。」ゴクゴク

 

シャルロット「向こうは大丈夫かな?」

 

5人チームは落ち着くために一旦話し合う。

 

アルゴス「ここで、ストライク、あるいはスペア逃したら、2投で強制終了だからな。」

 

エクトル「1、2投目でどちらかを絶対出さないと行けないよね。」

 

弾「そういやまだ罰ゲームの内容は聞いてねえけど。」

 

ビリー「弾、今その話はやめとけ。」

 

レオ「余計緊張しちまうだろ。」

 

 

そして、5人は意を決して1投目に入る。

 

5人「せーのっ!!」

 

同時に投げたボールはゆっくり真っ直ぐ進む。

 

アルゴス「おし、これいいかもよ!!」

 

ビリー「俺のボール残れ!俺のボール残れ!あとエクトルのボールもだ!!」

 

エクトル「もうちょっと右に行け!!」

 

9本倒すも、ど真ん中に1ピン残してしまった。

 

弾「あー、逃した!!いよいよヤベエぞ!!」

 

簪「これどうなるかな?」

 

ラウラ「どっちに転ぶかわからんぞ。」

 

2投目でスペアを取り、その後3投目で5ピン倒せばこっちのチームの勝利。

 

アルゴス「よし、気合い入れてくぞ!!」

 

弾・ビリー・レオ・エクトル「おう!」

 

5人「せーのっ!!」

 

決死の思いでボールを転がす。

 

 

弾「あー、俺ガター行っちまった!!」

 

レオ「やべ、俺も!!」

 

ビリー「つーか全員方向ずれてんじゃねえか!?」

 

エクトル「あっ、ダメダメ、もっと左行って、左行って!!」

 

5人中4人のボールがガターに落ちた。そして・・・

 

アルゴス「俺のは・・・、あっ、やべっ!!スルーしちまう!もっと真ん中寄れ!!」

 

最後の頼みの綱であるアルゴスのボールは無情にもピンの横を通りすぎて行った。

 

5人「あああぁぁぁーーーーっっ!!!!!」

 

悲嘆の叫び声をあげて5人はへたり込んだ。

 

一夏「おっしゃあ、やったー!!勝ったー!!!!」ニンマリ

 

こうして、IS男子の戦いは幕を閉じた。

 

楯無「勝者、一夏君に決定!!というわけで男子5人チームは、罰ゲーム!!」

 

その内容は・・・・

 

楯無「罰ゲーム、そ・れ・は♡」

 

楯無がパチンと指を鳴らした瞬間、一夏の恋人候補である箒達を除く女子生徒が各男子に群がり、押さえにかかる。

ちなみに全員ISスーツに着替えている。

 

「かかれー!!」

 

アルゴス「な、何だ何だ!?」

 

アルゴスがタイプの女子達は飛びかかるようになだれ込む。

 

エクトル「うわっ、ちょっと待って!」

 

エクトルは細い体格ゆえに抵抗力はそれほど出せなかった。

 

ビリー「おい鈴、レベッカ、何すんだよ!?」

 

鈴・レベッカ「いいからいいから!!」

 

ビリーがタイプの女子は鈴とレベッカを先頭にビリーに襲いかかる。

 

レオ「おい待て簪、何を!?」

 

簪「・・・日頃のお仕置き。」

 

レオがタイプの女子は恋人である簪を先頭にレオを取り押さえる。

簪は軟派なレオをお仕置きする気満々である。

生来の女好きの彼に取っては一見楽園にも思えるが。

 

弾「ぐわっ、みんな思ったより力あるぜ!!」

 

弾はレオ程ではないが、軟派な質なので、むしろレオ同様女子達に押し倒される事に少なからず喜びを感じていた。

 

一夏「大勢であいつら抑えてどうするんだ?」

 

楯無「フッフッフッ、よくぞ聞いてくれました。これから執行される罰ゲーム、それは・・・・、よーい、スタート!!」ニヤニヤ

 

 

女子生徒達「コチョコチョコチョコチョコチョ〜!!」

 

そう、原作で楯無が特技としていたくすぐりの刑である。

アニメでその描写がなかったのは残念に思うが。

 

アルゴス「ぐはははははっ!!あーはは、やめろ、やめろぉぉぉーっ!!」

 

「キャー、イリアディス君腹筋凄〜い♡」

 

アルゴスは力の限り暴れようとするも、かなりの人数で抑えられているため、無力である。

 

 

エクトル「あははえへへへへっ!!もうダメダメ!!お願いやめへはははははっ!!(小さい頃は母様によくこれでお仕置きされてた!!)」

 

「(可愛い♡)」

 

エクトルは敏感な肌質のためか、くすぐりが死ぬ程苦手なのである。

過去のささやかなトラウマも蘇り、激しく絶叫する。

そんなエクトルを、女子達は貪るような勢いでくすぐりまくる。

 

ビリー「ぐふっ、クククククッ、お、おいやめろよテメエら!!」

 

ビリーは歯を食いしばって何とかもたせる。

 

鈴「何よ〜、ほれほれ、もっと笑いなさいよ!」

 

レベッカ「みんな、もっと激しくお願い!」

 

「了解!!」

 

ビリーは意外にも我慢強い方だった。

 

レオ「!!!!(やべえ息できねえ、声出せねえ!!)」

 

簪「さあレオ、お仕置きはこれからよ♡」ニヤニヤ

 

大口が開くも、レオはあまりのくすぐったさに声が出せなかった。

 

弾「ぎゃはははははっ!!あーはは!!い、一夏、助けてくれぇぇぇーっ!!」

 

「五反田君、ここかな?ここがいーのかなー?」ニヤニヤ

 

 

一夏「・・・(そういや楯無さんは原作でこれを得意としてたな。勝ってよかったぜ。)」

 

箒「あれは辛いぞ。」

 

セシリア「一夏さんも負けていたらああなっていたって事ですわね・・・。」

 

ラウラ「あれは本当にきついぞ。寮の部屋でシャルロットにやられた時は死ぬかと思ったぞ。」

 

シャルロット「あははー、そう言えばそうだったね〜。」

 

すっとぼけた様な返事をするシャルロット。

 

くすぐりの刑は3分程だったが、終わった頃には5人ともぐったりしていた。



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IS Biohazard part1

IS学園に男子が増えて世間的にもすっかり定着した頃、巷ではこんなニュースが流れていた。

 

ニュース「今話題の最新作、バイオハザードVRがアーケードゲームに導入されました。」

 

一夏「おっ、あのバイオがVRで出たのか!?」

 

弾「バイオか、そういや一夏とよく協力プレイしたな。」

 

鈴「あたしもよくこれやってたわね。」

 

簪「この間のモンハンに続いて今度はバイオがVRに出たんだ。」

 

箒「バイオハザード、言葉は聞いたことがあるような気もするが。」

 

セシリア「どんなゲームなんですの?」

 

アルゴス「これはいわゆるウィルスや生物兵器が蔓延するステージから生き残るサバイバルホラーアクションだ。」

 

エクトル「ホラーとなると、かなり物騒な感じだけどね。」

 

セシリア「それは・・・、何だか恐ろしいですわね。」

 

ビリー「でもよ、このゲームの面白さは、銃でゾンビとかクリーチャーをやっつけるところにあるんだぜ。」

 

一夏「出てくる武器はハンドガンやライフルを中心にいろいろあるしな。」

 

ラウラ「銃器を用いるゲームか、私ならうまくできそうだな。」

 

シャルロット「僕もアサルトライフルならできるよ。」

 

セシリア「スナイパーライフルでしたら私の出番ですわね。」

 

レオ「こういうゲームじゃ、ハンドガンに長けてるこの俺が一番だと思うがな。」

 

軍で訓練されたラウラを始め、銃射撃専門のメンツにはいいゲームだろう。

 

一夏「それじゃあ、明日休みだし、行ってみようぜ!」

 

 

翌日、一同はゲームセンターに足を運んだ。

受付を済ませ、ゲームシステムの確認を行う。

 

モンハンの時同様、最大5人のグループを組むことができ、ゾンビ集団やBOWに挑むシステムである。

なお、多人数でいく代わりに、使える銃は基本となるハンドガンと、その他の銃1つと決まっており、本家のように数多くは持てない仕様となっている。ちなみに歴代のバイオハザード作品の銃の中から選択する。

 

各々自身の特徴に合わせて選んだ結果。

 

一夏「俺は白式に合わせてみてこれらにしたぜ。」

 

選んだハンドガンはコルトガバメント、そしてマグナム『S&W M500』だ。

いずれも威力は高いが弾丸の大きさゆえにどちらも装弾数が少ない。

白式の一長一短に敢えて合わせてみたようだ。

 

箒「私はとりあえず日本製のもので近距離で有効なものを選んだ。」

 

ハンドガンは日本初の自動拳銃である南部式拳銃、もう一方は近距離で有効なショットガンの日本版である猟銃を選んだ。

普段銃には慣れていないので、あまり命中精度を意識しないで済む散弾を発射する猟銃が適している。

 

ビリー「やっぱリーチある武器に慣れてるし、これだな。」

 

ハンドガンは飛距離が長い方であるソーコムMk23を選び、もう一方は長い銃身のアサルトライフルAK47 に銃剣を付けたものだ。

 

レオ「やっぱり俺は二丁がいいぜ。」

 

レオは二丁モードに切り替え可能なハンドガン『ウイングシューター』、そして、二丁のサブマシンガン『イングラムM11』。

 

アルゴス「とりあえず俺はこいつでいくぜ。」

 

アルゴスのハンドガンは威力が高い『SIG P226』、もう一方の武器は体格を意識してか、大型のガトリングガンだ。

 

セシリア「私はこれで行きます!」

 

セシリアのハンドガンは定番の『M92F』、もう一方はセミオートスナイパーライフル『ドラグノフ』である。

 

弾「とりあえず俺はこんなもんかな。」

 

弾のハンドガンは貫通性能のある『パニッシャー』、もう一方は片手打ちも可能なショットガン『ハイドラ』である。

 

エクトル「まさかこのゲームにも似た武器があるなんてね。」

 

エクトルは火薬付きの矢を射てるクロスハンドボウガンに、パイルボムを付加した矢を射てるコンパウンドボウ。他のメンバーとは一線を画すチョイスとなった。

 

鈴「これなら間違い無いわ!!」

 

鈴はハンドガン『ブラックテイル』に、マグナム『デザートイーグル』と、威力と連射速度のバランスに優れたものを選んだ。

 

シャルロット「僕はこれを選んだよ。」

 

シャルロットはハンドガン『ブローニングHP』に、1発だけ榴弾を装填可能な『アサルトライフルBC』を選んだ。

 

ラウラ「ふむ、なかなかよく出来ているな。」

 

ラウラはドイツ出身からか、ハンドガン『モーゼルC96』と、アサルトライフル『H&K G3』をチョイス。

 

レベッカ「どうせならこれくらいの武器使わなきゃね!」

 

レベッカはハンドガン『ピカドール』にグレネードランチャー『アーウェン37』と、破壊力のみを追求した組み合わせだ。

 

簪「ここはレオに近いものにしとこう。」

 

簪は3発バーストが可能なハンドガン『マチルダ』に、マシンピストル。どちらも専用ストックで射撃の精度が安定しており、装弾数にも長けている。

 

一夏「それじゃ、武器も揃ったことだし、グループを組んだら行こうぜ!」

 

こうして、彼らは悪夢の世界へと足を踏み入れるのであった。

 

 

 

 

 



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IS Biohazard part2

一通り武器を揃えた一夏達は、互いの武器の性能を考慮して、バランスの良いグループを組むことに。

メンバー編成は以下の通りとなった。

 

第1グループ・・・・一夏、箒、ビリー、レベッカ

 

一夏「それじゃ皆、よろしく頼むぜ!」

 

箒「得意武器ではないが、頑張る。(今回は一夏と一緒だ、頑張るぞ!)」

 

ビリー「おう、ってレベッカ、何ニヤついてんだよ?」

 

レベッカ「べっつにー♪」

 

高威力のパワーバランスが取れたグループになった。

 

 

第2グループ・・・・弾、鈴、セシリア、アルゴス

 

弾「とりあえずバランスは良い方だよな。」

 

セシリア「狙撃ならお任せください!」

 

鈴「アルゴス、アンタがいると安心ね。」

 

アルゴス「そりゃあどうもな。」

 

状況に合わせて対応しやすいメンバー構成となった。

 

 

第3グループ・・・・ラウラ、エクトル、レオ、簪、シャルロット

 

レオ「人数もそうだが、弾数もこのグループが一番じゃね?」

 

簪「とりあえず皆、よろしくね。」

 

ラウラ「最前線は任せておけ。」

 

エクトル「流石は隊長だね。」

 

シャルロット「僕も頑張るよ。」

 

全員の装弾数では他のグループを圧倒する構成となった。

 

 

そして、各グループはそれぞれ異なったステージへと向かう。

 

一夏率いる第1グループは、定番の洋館ステージが出迎える。

目的は謎や仕掛けを解き、敵を倒しながらこの洋館から脱出する事である。

 

一夏「それじゃ、二手に分かれようぜ。俺と箒は2階から上を調べるから。」

 

レベッカ「了解!」

 

一夏と箒、ビリーとレベッカの二手に分かれて洋館内を探索して行くことに。

 

 

Side一夏&箒

 

箒「洋館、この手の家屋は馴染みがないぞ。それに、不気味なほど静かだ。」

 

箒は自分の家とは正反対の環境に戸惑う。

 

一夏「場所もそうだが、どんな敵が来るかわからないからな。兎に角いろんな部屋を調べていこうぜ。」

 

すると、そこには人影が。

 

箒「ん?誰かいるぞ。」

 

しかし、よく見るとそこにはおぞましい光景が・・・・。

 

箒「っ!?」

 

何と、人が人を食っている。しかも一人を3人が。そして、その人食い人間はゆっくりと一夏達の方を振り向いた。

 

人食い「・・・・!!」

 

一夏「出たぞ箒、これがゾンビだ!」

 

箒「うっ、これは!」

 

一夏「とりあえずハンドガンで撃て!!」

 

一夏と箒はハンドガンでひたすらゾンビを撃つ。ちなみにこのゲームではハンドガン弾数は無限仕様である。

数分後、ゾンビを仕留めることができた。

 

箒「ハァ、ハァ、何とか倒したか。」

 

一夏「箒、大丈夫だ。俺が付いてる」

 

一夏は箒を励ます。

 

箒「ああ、だがこの先にもこのような敵が出るのか?」

 

未知の恐怖に恐れおののく箒。

 

一夏「この恐怖がバイオの醍醐味なんだぜ。」

 

しばらくすると、部屋のドアがいくつかある場所に出た。

 

一夏「箒、開けるぞ。」

 

箒「あ、ああ。」

 

開けるとそこから、通称リッカーと言われるクリーチャーが数体出現した。

 

箒「わわっ!!何だこの得体の知れないものは!?」

 

一夏「とりあえず三階に逃げるぞ!」

 

二人は慌てて階段で3階に登る。入り口付近で迎え撃つ体制をとる。

 

一夏「箒、俺がハンドガンで足止めするから猟銃でぶっ飛ばしてくれ!」

 

箒「ああ、任せろ!」

 

箒は開き直ったように猟銃を構える。一夏はハンドガンでひたすらリッカーに少しずつダメージを与え、急接近してきたところを箒が猟銃を炸裂させる。

程なくしてリッカーを全滅させた。

 

一夏「ナイスだ箒!この調子なら行けるぜ!」

 

箒「そ、そうだな。(一夏と一緒なら♡)」

 

続いて二つ目の部屋を探索すると、

 

箒「一夏、これは?」

 

一夏「ああ、それはショットガンの弾だ。お前の猟銃に使うやつだな。」

 

箒「猟銃の方は弾に限りがあるのだな。大事に使おう。」

 

続いて一夏もなにかを見つける。

 

一夏「おっ、マグナムの弾だ、やったぜ!ついでに焼夷弾も発見だ。」

 

箒「その焼夷弾はどうやって使うのだ?」

 

一夏「ああ、こいつはレベッカのグレネードランチャーに使うんだよ。」

 

箒「成る程、他の仲間の弾薬も拾っておいた方が良いのだな。」

 

そう言った箒はアサルトライフルの弾を拾っておいた。

 

その後も部屋を探索すると、キーアイテムのようなものを発見した。

 

箒「これは、狼?」

 

一夏「狼のメダルか。そういえばさっき二つのメダルを使う扉があったな。」

 

箒「2つ、となればもう一方はビリー達が見つけるのだろうか?」

 

一夏「この流れで行くとその可能性が高いな。とりあえず無線で連絡しておこう。」

 

一夏は無線でビリー達と連絡を取る。

 

 

Sideビリー&レベッカ

 

ビリー「そうか、わかったぜ一夏。」

 

ビリーはそう言って無線を切った。

 

レベッカ「何かあったの?」

 

ビリー「一夏達がキーアイテムを1つ見つけたらしいぜ。多分俺らもこっちで見つけるんじゃねえか?」

 

レベッカ「ふーん、ま、行きましょ。」

 

この二人は余裕な方だ。

 

洋館の1階を調べ、食堂に出る。

 

レベッカ「誰もいないのに料理が並んでるわね。ちょっとだけ・・・。」

 

ビリー「バカ、やめとけ。こんな時に食ってる場合じゃねえよ。」

 

そんなやりとりをしていると、匂いにつられてやってきなのか、突然窓ガラスをぶち破って猟犬が何匹か入ってきた。

 

猟犬は料理を食い散らかし、ビリーとレベッカの方に向き直り、襲いかかる。

 

ビリー「来やがった、撃て!」

 

ビリーはハンドガンで応戦するも、次々に猟犬が向かって来てキリがない。ビリーはAK-47に切り替えて一気に掃討する作戦に出た。

 

レベッカ「ああもう、めんどくさいのよ!」

 

レベッカはグレネードランチャーで榴弾を打ちまくり、一気に撃退する。

 

ビリー「ナイスって言いてえけどよ、お互いかなり消費したな。」

 

レベッカ「いや、だってさ、一気に片付けたかったし。」

 

ビリー「ハンドガンと違ってもう一方の武器は有限なんだぜ、拾うにしてもあるかどうかわからねえし。」

 

弾薬の残りに不安を残したまま1階を探索し、そのまま地下へ降りる。

広い地下室に入った瞬間、入り口に鉄格子がかけられた。

 

ビリー「おい、マジかよ閉じ込められちまった!」

 

レベッカ「ちょっとビリー、あれ見てよ!!」

 

レベッカが指差す方を見ると、そこには蛇が。と言っても異常なまでに巨大な蛇だ。

 

ビリー「何じゃあ!?こんなデカイ蛇見たことねえぞ!」

 

レベッカ「兎に角倒さないと!」

 

ビリーはAK-47で蛇に向かってありったけの弾丸をぶつける。しかし、

 

ビリー「やっベー、弾切れだ!!」

 

ビリーはすぐさまハンドガンを撃つも、焼け石に水だ。

 

レベッカ「こうなったら全部使ってやるわ!!」

 

レベッカはグレネードランチャーの弾を各種類力の限り放つ。

打ち続け、逃げては打ち続ける。ヒット&アウェイでどうにか蛇を仕留めた。

 

ビリー「フゥ、どうにかやったか。レベッカ、グレネードランチャーの弾後何発だ?」

 

レベッカ「榴弾が1発あるだけよ。」

 

ビリー「マジか・・・。俺も弾切れだしな。」

 

すると、死んだ蛇の口からメダルのようなものが出て来た。

 

ビリー「これは、鷲のマークのメダルだな。」

 

レベッカ「ねえ、これが一夏の言ってたキーアイテムじゃない?」

 

ビリー「かも知れねえな、とりあえず合流した方が良さそうだ。」

 

蛇を倒したことで鉄格子が開き、そのまま地下室を後にした。

 

 

Side全メンバー

 

一夏「よう、お前ら無事だったか。」

 

レベッカ「何とかね。キーアイテムは見つかったわよ。」

 

ビリー「いやー、コイツもそうだが俺も後先構わずアサルトライフルとグレネードランチャーを消費しちまってな。」

 

箒「心配ない、お前達の弾薬は拾っておいたぞ。」

 

レベッカ「サンキュー!」

 

ビリー「助かったぜお前ら!」

 

一夏「さて、キーアイテムをこの扉に使用してと。」

 

キーアイテムの狼のメダルと鷲のメダルを使い、開いた扉の向こうには直通エレベーターが。

 

レベッカ「これって上に行けってこと?」

 

ビリー「もしかしてこれで脱出完了ってか?」

 

一夏「いや、油断するな。屋上に最終ボスがいるかも知れないぜ。」

 

箒「何もないならそれが一番だが。」

 

一行はエレベーターで屋上に出る、そこには鋭い爪を右手に備えた長身の人型クリーチャー『タイラント』がいた。

 

ビリー「マジかよ、ここでボスか!」

 

そういうや否やタイラントは一夏達に襲いかかる。

 

箒「来た、避けろ!!」

 

全員四方に散った。

 

一夏「よし、コイツの出番だな!!」

 

一夏はM500を取り出し、タイラントを撃つ。頭に命中させるとタイラントは大きく体勢を崩した。

 

箒「その銃、物凄い威力だな。」

 

レベッカ「威力ならこっちも任せて!!」

 

レベッカは榴弾と焼夷弾を駆使してタイラントの動きを止める。

 

ビリー「オラオラー!!」

 

ビリーはAK-47で頭に集中砲火を浴びせる。

 

箒「来るなら来い!」

 

箒は接近して来たタイラントに至近距離で猟銃を放つ。

 

4人がかりでかなりの長期戦の末、最後は一夏のM500の一撃でとどめを刺した。

 

箒「やったな一夏!」

 

ビリー「これで終わりにしてほしいところだぜ!」

 

レベッカ「あれ、一夏?どうしたのよ?」

 

一夏「・・・・どうやらこれで終わりじゃなさそうだな。」

 

一夏が見る方には、お馴染みのあの男が・・・・。

 

男「フフフ、タイラントをよく倒したものだな。私の計画の邪魔をした以上生きては返さんぞ!」

 

一夏「お前・・・、アルバート・ウェスカーだな!!」

 

ウェスカー「いかにも、ここから生きて出たいなら私を倒す事だ。」

 

ビリー「ならとっととくたばれ!!」

 

ビリーはハンドガンでウェスカーを撃つが、その瞬間、

 

ウェスカー「フン、遅い!!」

 

レベッカ「何なのコイツ!?」

 

箒「瞬間移動か!?」

 

ウェスカーは瞬時にキックでビリーのハンドガンを蹴り飛ばす。

 

一夏「こりゃあ四人がかりでもキツイぞ。」

 

程なくしてウェスカーとの最終決戦が始まった。

4人はお互いに距離を取りながらウェスカーを狙撃するも、なかなか当たらない。

 

箒「これならどうだ!」

 

箒は猟銃でウェスカーを撃つが、広範囲の散弾すら回避する。

 

レベッカ「コイツなら!!」

 

レベッカは榴弾の爆風でダメージを与えようとするも、瞬時に接近されて体術を食らってしまう。

 

ウェスカーは次の瞬間一夏に掴みかかり、壁に押さえつける。

 

一夏「グッ、くそ、離せ!」

 

箒「一夏!!」

 

ここで箒は果敢にもウェスカーにタックルを仕掛ける。一夏に気をとられていたせいか、反応が遅れたウェスカー。

 

ビリー「よし箒、加勢するぜ!」

 

レベッカ「アタシも!」

 

ビリーが足を抑え、レベッカが羽交い締めに。

 

ウェスカー「貴様ら!!」

 

ウェスカーは振りほどこうと暴れる。

 

一夏「今だ!コイツを喰らえ!!!」

 

一夏は一瞬の時を狙ってウェスカーの額にマグナムを撃った。

体制を崩したところで続けざまにマグナムを打ち続け、屋上から突き落とすことに成功した。

 

ミッションを終えて、現実世界に4人は戻った。

 

一夏「いやー、みんなお疲れ!」

 

箒「かなり怖かったが、達成したこの安心感は凄いな。」

 

初めは恐怖を感じていた箒も慣れたようだ。

 

ビリー「他の奴らも頑張ってるかな?」

 

レベッカ「気絶してなければいいけどね。」

 

 



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IS Biohazard part3

一夏達第1グループが洋館ステージをクリアした一方で、アルゴス率いる第2グループは研究所のステージに進んでいる。

 

セシリア「ここは・・・、研究所でしょうか・・・はっ!?」

 

セシリアは培養槽の中の生物を見るや否や驚く。

辺りには実験材料となった人間の成れの果てが多くいる。

 

弾「うわ、コイツは本格的にヤバイな。」

 

鈴「でもこっちはいい武器が揃ってるわ。特にアルゴスがね!」

 

アルゴス「おう、任せておけ!」

 

 

研究所をしばらく進むと、広い部屋に入った。

その時、突然真ん中のシャッターが上から閉じてきた。

 

アルゴス「危ねえ、避けろ!!」

 

とっさに皆避けたお陰で助かったが、状況は一変した。

 

弾「危なかったぜ、大丈夫か皆?」

 

セシリア「ええ。あら、アルゴスさんは?」

 

アルゴス「悪い!俺だけ反対側に来ちまった!」

 

シャッター越しにアルゴスは伝える。

 

鈴「えー、ちょっと!一番の戦力が、ってゆうかそもそもアンタ一人で大丈夫なの!?」

 

アルゴス「ガトリングの残弾数に気をつけながら進む。」

 

弾「3:1かー、せめて2:2だったらな。」

 

セシリア「アルゴスさん、どうかご無事で。」

 

状況は思わぬ方向に。弾、セシリア、鈴の3人とアルゴス1人はそれぞれ別のルートを辿って合流する事に。

 

 

Side弾・セシリア・鈴

 

弾「とりあえず進むしかなさそうだぜ。」

 

セシリア「アルゴスさん、お一人で大丈夫でしょうか?」

 

鈴「まあ、アイツなら問題ないでしょ。」

 

そう言いながら歩いていると・・・

 

ドドドド・・・・、後ろから大勢の人が走って来ている。しかもその正体は・・・・、

 

セシリア「な、なななな何ですの!?」

 

弾「ゲッ、ありゃあマジニじゃねえか!」

 

鈴「とりあえず一旦逃げるわよ!」

 

一同は急いで奥へと逃げ込む。狭い路地についたところで弾が秘策を思いつく。

 

弾「そういえばスナイパーライフルやマグナムって貫通性能があったよな。それを生かせばあの人数でも勝てるんじゃねえか?」

 

セシリア「狭さを利用して一撃で複数倒せばいいという事ですわね!」

 

鈴「アンタたまにはいいアイディア出すじゃない!でも接近された時は対処しなさいよ!」

 

弾「おう、任しとけ!」

 

 

狭い路地の奥まで進んだところで構える3人。

 

弾「来たぞ!」

 

セシリア「私の出番ですわね!」

 

曲がり角から姿が見えたタイミングでドラグノフを連射する。なるべく頭部を狙い、クリティカルヒットを叩き出す。

 

鈴「この距離なら行けるわ!」

 

鈴はハンドガンで牽制しつつ、複数が中距離で重なった瞬間にデザートイーグルをお見舞いする。

 

弾「喰らえ!」

 

接近してきたマジニ達には弾のハイドラによる散弾射撃で撃退する。

 

数分の戦闘の末、全滅させる事に成功した。

 

鈴「結構マグナム使っちゃったわね。」

 

弾「しょうがねえだろ、あの集団じゃ。」

 

セシリア「この先の事を考えると少し不安ですわ」

 

3人のハンドガンではない重機の方は残弾数が10発もない状態である。

 

しばらく進むと、弾があるアイテムを拾った。

 

弾「何だこりゃ?カードキーα?」

 

鈴「ねえ、それってここで使うんじゃない?

 

鈴が指差す方を見ると、そこには左右にカードリーダーが備えられた扉がある。

 

セシリア「ですが、もう一方のカードキーが見当たりませんわ。」

 

弾「多分、アルゴスが別の所で拾ってくるんじゃねえか?」

 

 

一方、アルゴスは・・・・

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴス「しかしまあ、この研究所細部までよくできてるよなあ。」

 

アルゴスは1人呑気に研究所を探索していた。

その中の部屋で、ふと、机からアイテムを入れられるサイドパックを発見する。

 

アルゴス「ん?これは?」

 

中を確認すると、入っていたのはライフルにのみ使用可能なサーモスコープであった。

しかし、肝心のライフル所有者であるセシリアがいない・・・・。

 

アルゴス「とりあえず持っとくか、後々必要かも知れねえし。」

 

しかし、アイテムを手に入れて数分後、天井から巨大な昆虫のようなクリーチャーが続々と現れた。

 

アルゴス「ぐわっ、気持ち悪い!とりあえず部屋から出るぞ!」

 

アルゴスは急いで部屋を飛び出し、囲まれない場所を確保してクリーチャーを迎え撃つ作戦を実行する。

 

アルゴス「オラオラオラー!ガトリングで全員ブッ殺してやるぜ!!」

 

アルゴスはただ1人、ガトリングガンをひたすら打ちまくる。弾幕の凄さからか、クリーチャー近づけないどころか死骸がバラバラになるほどの状態で倒されていく。数分打ち続けてようやく全滅させたところで、残弾数を確認する。

 

 

アルゴス「残り65%か、ってこれじゃ実際何発かわからねえな。」

 

ふと、クリーチャーの一匹の触手に何かが絡まっているようだ。

 

アルゴス「これは、カードキーβ?」

 

アルゴスはもう片方のカードキーを手にした。先に進んでいく道中では幸運にもガトリングガンの弾を85%まで補充でき、

 

アルゴス「あれ、こんなとこにアイツらの弾薬があるぜ。」

 

アルゴスは研究室の棚からショットガンの弾にスナイパーライフルの弾、マグナムの弾を入手した。

サイドパックを拾ったお陰で全て持ち歩ける。

 

數十分して、ようやく合流できた。

 

アルゴス「悪い、待たせたな!!」

 

鈴「アルゴス、遅いわよ!」

 

弾「まさかお前がやられてるんじゃねえかと思ったぐらいだ。」

 

セシリア「でも良かったですわ。」

 

アルゴス「そういや俺、カードキーβを拾ったが。」

 

弾「やっぱお前が持ってたんだな。こっちはα波を見つけたんだぜ。」

 

これで2つのキーアイテムが揃った。

 

アルゴス「そうだ、お前らの弾を拾っておいたぜ。」

 

鈴「ありがと、助かったわ。」

 

アルゴス「それからセシリア、お前ならこれ使えるだろ。」

 

アルゴスはサーモスコープをセシリアに渡す。

 

セシリア「これは、サーモグラフィーをスコープに応用したものですのね。」

 

弾「それが手に入るってことは、あとあと必要なんだろうな。」

 

 

2つのカードキーを使って扉を開けると、無機質な広い部屋に入った。辺りにはさまざまな生物が入った培養槽がいくつも並んでいる。そして、その奥には研究者らしき人影が。

 

研究者「やあ諸君、よくここまで辿り着いたものだ。」

 

アルゴス「俺たちと会話できるのはAIのおかげか。最近のVRは凄えな。」

 

鈴「ンな事より、誰よアンタ?」

 

研究者「私の名はマーカス、君達には私の実験材料になってもらおう。」

 

アルゴス「そんなつもりはさらさらねえよ!」

 

セシリア「人を生物兵器の材料にするなど、許せませんわ!」

 

マーカス「ハハハハハ、この私を止められる者などいない!!」

 

弾「おいおい、状況考えろよ。こっちは4人だぜ、アンタ一人でどうなるってんだよ?」

 

弾はカマをかけてみる。

 

マーカス「・・・これを見てもそんな台詞が吐けるかな?」

 

マーカスは注射器で自らの身体に何かを注入した。すると、見る見るうちに彼の身体は異形を成していき、

巨大化していく。

 

弾「な、何じゃあこりゃあ!?」

 

その巨大化の影響で、周りの培養槽が破損したことで敵が一気に増えていき、状況は逆転した。

 

セシリア「ど、どど、どうしましょう!?」

 

アルゴス「とりあえずかわせ、セシリア、俺についてこい!」

 

鈴「弾、あたし達はこっちへ行くわよ!」

 

弾「うお、ちょっと待ってくれ!」

 

とりあえず二手に分かれて攻撃する。しかし、全く効いていないのか、攻撃した部分が再生する。

 

弾「何だよこいつ、全然倒れねえぞ!!」

 

鈴「周りの雑魚もどうにかしないと!」

 

弾はハンドガンとハイドラで雑魚を倒していき、鈴はデザートイーグルで色々な箇所に攻撃していく。

 

アルゴス「こいつはどうすれば・・・、あっ、そう言えば!!セシリア、ライフルのサーモスコープで見つけた弱点を狙撃してくれ。周りは俺たちで何とかする!!」

 

セシリア「お任せください!」

 

セシリアはしっかりと狙いを定め、サーモスコープで見つけた心臓部を撃ち抜いた。

すると、再生機能がなくなり始めた。

 

弾「セシリア、よくやったぜ!」

 

鈴「このまま一気に決めるわよ!」

 

周囲の敵を全て倒した後は、弾薬がある限りの銃撃を行い、マーカスは完全に倒れた。

 

 

そして、敵を倒した直後、彼らは現実へと戻った。

 

セシリア「はぁ、はぁ、恐ろしかったですわ。」

 

鈴「大丈夫?」

 

鈴はセシリアの背中をさする。

 

弾「まあ、無事に勝って良かったぜ!」

 

アルゴス「セシリアには過激だったかもな。」

 

セシリア「いえ、スリルを味わうというのが少しはわかりましたわ。」

 

セシリアは息切れしながらも達成感を覚えた。

 

第2グループも無事に終了。

 

 



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IS Biohazard part4

第3グループは軍の隊長でもあるラウラを中心にステージ攻略をしていく。ちなみにこのグループはかのラクーンシティによく似たアメリカの大都市をモチーフにした、屋内と屋外のステージである。

 

レオ「やっぱ最近のVRはマジスゲエよなあ。」

 

ラウラ「ビルや家屋がいくつもあるようだな。」

 

エクトル「こういう都市はビリーとレベッカが慣れていそうだよね。」

 

シャルロット「この街が普通なら、みんなで買い物したり遊んだりできるんだけどなぁ。」

 

簪「そうだよね、なんかこの街はちょっと・・・。」

 

時間帯は夜になったばかりで、あたりに人影はなく、鬱蒼とした雰囲気と不気味なまでの静けさが恐怖を煽る。

 

 

ラウラ「さて、どこに進めばいいか・・・。」

 

5人はただ歩くばかり。しばらくすると、何やら物々しい現場に出くわす。

 

簪「あれ、交通事故かな?」

 

エクトル「こりゃあ大変だ。」

 

車が5、6台ほど横転しており、周囲は炎上していた。漏れたガソリンの匂いがこちらにまで伝わってくる。

 

シャルロット「人が何人も倒れてるよ。」

 

シャルロットは心配そうに見ていた。

 

レオ「いや、待てよ。このパターンはひょっとして・・・・・。」

 

レオが嫌な予感がすると思うや否や、現場に倒れていた人々が血塗れながらも、うめき声をあげ、白眼をむいて立ち上がり始めた。そう、ゾンビ達である。レオの勘は見事に当たった。

ゾンビ達はこちらに気づいた瞬間、発狂しながら駆け寄って来た。

 

エクトル「やっぱりゾンビか!」

 

シャルロット「しかも凄い人数だよ!」

 

簪「どうするラウラ!?」

 

ラウラ「うむ、とりあえず迎撃するぞ!」

 

全員ハンドガン(エクトルのみクロスボウガン)で応戦する。ここはハンドガンを得意とするレオを中心に戦う。

 

ラウラ「怯まず撃て!!」

 

レオ「任せろ隊長!!」

 

レオは無限仕様でしかも唯一の2丁型なので余裕である。四方から襲ってくるゾンビを両腕の使い方を変えることで対処する。

 

簪「さすがレオ!!」

 

エクトル「でもこれじゃ埒があかない!」

 

倒していくもゾンビは次々に押し寄せてくる。

 

レオ「おい、あれを見ろ!車が残ってるぜ!」

 

カーショップのウィンドウを見ると、まだ使われていない車が。

 

ラウラ「よし、ここはひとまず脱出だ!」

 

全員でカーショップに逃げ込む。急いでその車の鍵を探し出し、レオの運転で車を出す。ゲームセンターでの経験からか、運転が妙に上手い。

 

簪「レオ、かっこいいけどこれって無免許運転に窃盗罪だよね。」

 

エクトル「この緊急事態じゃそうも言ってられないだろう。」

 

しばらく走っていると、何やら別の車が走って来ている。そして、レオ達の車に近づいた瞬間、 窓から手榴弾を投げて来た。

 

ラウラ「まずい、手榴弾だ、避けろ!!」

 

レオ「どわっ!今度は敵さんも車かよ!」

 

レオはハンドルを左右に回転させながら振り切ろうとする。

 

シャルロット「反対からも来たよ!!」

 

エクトル「っていうか、乗っているのはゾンビじゃないみたいだが。」

 

敵集団はゾンビと違い、互いに意思疎通をしているように見える。

 

簪「あれ、もしかして『ジュアヴォ』じゃない?」

 

ジュアヴォ、彼らはCウィルスによって凶暴性をましたが、知能は維持されるためチームワークも可能である。

言わずもがな、非感染者には容赦なくおそいかかるのは他のウィルス同様である。

 

ラウラ「ここは任せろ!」

 

ラウラは車内のジュアヴォや車をアサルトライフルで迎え撃つが、次から次へと出てきてキリがない。

 

シャルロット「任せてラウラ!!」

 

ここでシャルロットはアサルトライフルBCの榴弾を放ち、車ごと敵を葬り去る。

 

なんとかジュアヴォの集団を振り切り、一行は車でひたすら安全な場所へと走行する。

 

 

簪「何とか振り切ったけど、これからどうしようかな?」

 

エクトル「確かに、咄嗟のことで行く当てを考えてなかったね。」ハァ

 

暫く走っていると、車がガス欠になり、一行は車から降りた。

 

レオ「畜生、こんな時にガス欠かよ!」

 

レオは車のボディを蹴った。仕方ないのでたどり着いた街を探索する事に。

 

ラウラ「この街も寂れてしまっているな。」

 

寂れた街を歩いていると、ダーツバーの店があった。

 

レオ「丁度いい、ここで休もうぜ。」

 

寂れたダーツバーの店に入り、休息をとる。

 

一息ついたところで、ふと、エクトルがテーブルの新聞を読む。

 

エクトル「この新聞、この事件について書いてるな。」

 

シャルロット「何々、中国人観光客が突然発狂して殺人テロを起こす。

彼らを射殺した後、解剖してみた結果、新たなウィルス、通称「Cウィルス」が原因と判明。

彼らの相違していたCウィルスのアンプルの製造元は、中国ターチィの製薬会社であると政府は発表。

工場に関与していたシモンズは、事件発生の直後に消息不明。今もなお現場ではBOWが続出している。」

 

 

レオ「中国と言えば鈴の国じゃねえか!」

 

簪「このシモンズって人が事件の犯人なのかな?」

 

シャルロット「生物兵器もかなり強そうだね。」

 

バーチャルとはいえ、事の重大さを感じる一同。

ここで隊長のラウラが提案を出す。

 

ラウラ「これは、アリウス追跡とBOW掃討の二手に分かれる方が賢明だと思うが。」

 

エクトル「うん、そうだね。どう分けようか?」

 

話し合いの結果、レオと簪の二人でアリウスを追跡し、ラウラ、シャルロット、エクトルでBOWの掃討に向かう事に。

 

中国へ渡航するため一同は空港へと向かい、中国行きの便に搭乗する。

 

 

レオ「ふう、これが普通の旅行なら十分楽しめるんだがな。」

 

簪「呑気なこと言わないでよ。」

 

飛行機の中で一行は気持ちを落ち着かせる。

 

エクトル「とりあえず残弾数を確認しておこうか。」

 

各自装備を確認していると、突然機内に青いガスが発生した。

 

ラウラ「何だこのガスは!?」

 

乗っていたほかの乗客や乗務員はガスにより咳き込み、そして・・・・、

 

エクトル「乗客がゾンビに!このガスはやはりウィルスか!」

 

簪「誰がこんなもの撒き散らしたの!?」

 

すると、奥からクリーチャー「レポティッツァ」が出現した。身体中の孔から青いガスを吹かせている。

 

シャルロット「何これ、気持ち悪いよ!」

 

レオ「クソッ、こんな狭いとこで戦闘かよ!」

 

一同は一斉に四方から射撃するも、耐久力があり、ハンドガン程度ではビクともしない。

 

エクトル「よし、これならどうだ!!」

 

エクトルはコンパウンドボウでパイルボムの矢を放った。爆発によりクリーチャーは大きくよろめき、そこから一気に総攻撃を仕掛けたことでレポティッツァは四散した。

 

ラウラ「ふう、何とか倒したな。」

 

簪「でも弾が少なくなって来てるよ。」

 

すると、突然飛行機が大きく揺れ始めた。

 

レオ「どわっ!何だよ急に!?」

 

エクトル「しまった、パイロットもやられたから操縦が!」

 

シャルロット「急いでコクピットに行かなきゃ!」

 

一同はコクピットへと向かう、しかし、後方から討ちもらしたゾンビ達が押し寄せて来た。

 

ラウラ「操縦は任せろ、援護を頼む!」

 

エクトル「ラウラ、飛行機の操縦がわかるのか?」

 

ラウラ「軍にいた頃に訓練を受けたからな。」

 

レオ「流石隊長、雑魚は俺らに任せろ!」

 

ラウラは飛行機を立て直そうと必死に操縦し、レオ達は向かってくるゾンビを倒していく。

程なくして全滅したものの、飛行機は不安定なままだ。

 

ラウラ「済まない、これ以上上昇できない!このまま胴体着陸する事になるぞ!!」

 

簪「みんな、掴まって!!」

 

ラウラは胴体着陸の衝撃を少しでも抑えようと、レバーを力の限り引く。

飛行機は都合よく空港の滑走路で胴体着陸した。

 

レオ「ふう、死ぬかと思ったぜ。」

 

シャルロット「何だかVRだって事忘れちゃってたよ。」

 

一同は現実並みに危機感を覚えた。

 

エクトル「さてと、それじゃあさっき決めたとおりに二手に分かれようか。」

 

ここからは二手に分かれて別行動をとる。

 

 

Sideレオ・簪

 

レオ「さて、俺たちはシモンズを追うとするか。」

 

簪「うん、そうね。」

 

周囲の人に聞き込みをし、ターチィへと赴く。

 

レオ「しかしまあ、ゲームだから翻訳されるけど、中国語全然わからねえな。」

 

簪「うん、鈴がこっちのグループなら良かったかも。」

 

レオ達はターチィの街を探索していると、後方からジュアヴォの集団が追って来た。

 

簪「もう、しつこいわよ!」

 

レオ「多勢に無勢か、ここは逃げるぞ!」

 

後ろを振り返る事なくひたすら走る。するとそこには大型のバイクがあった。

 

レオ「簪、後ろに乗れ!」

 

簪「うん、援護は任せて!」

 

レオはバイクにまたがり、そのまま前進していき高速道路まで逃げる。

途中ジュアヴォもバイクで向かって来たが、簪がうまく援護した事で撒く事ができた。

 

レオ「ん、あいつは!」

 

隣を走っていた車にはシモンズの姿が。

 

簪「張本人発見ね!」

 

シモンズはレオに気づくと、一気に加速して逃げて行く。

 

レオ「逃すかよ、簪、掴まってろ!」

 

レオもバイクのアクセルを限界まで回し、スピード違反上等な走りでシモンズを追う。

 

しばらくチェイスを続けて高速道路を抜けた先の工場にシモンズは逃げ込み、レオ達も追う。

 

工場内のジュアヴォを倒しながら、屋上にたどり着いたところでシモンズと対面する。

 

レオ「お前、シモンズだな!」

 

シモンズ「やれやれ、しつこいな貴様ら。私の邪魔をするようなら消えてもらうぞ。」

 

シモンズはそう言って、注射器を取り出すと、自らに強化型のCウィルスを投与した。

シモンズの全身に亀裂のようなものが走り、瞬く間に巨大なBOW となっていった。

 

簪「な、何よこれ!?どうやったら倒せるの!」

 

レオ「とにかく攻撃しろ!」

 

簪とレオはクリーチャーとなったシモンズに応戦する。

 

 

Sideラウラ・エクトル・シャルロット

 

ラウラ達はレオ達とは別ルートで工場に向かっている。

ターチィとは別の街で人にBOWについての聞き込みを行う。

 

エクトル「とりあえず工場の情報は大方集まったな。」

 

シャルロット「うん、そうだね。」

 

ラウラ「では行くとしよう。」

 

しかし、一息ついたのも束の間、突然後ろから巨人のようなクリーチャーが向かって来た。

このクリーチャーは「ウスタナク」。Cウィルスの実験により生み出されたクリーチャーの1つで、

さまざまな武器を体に装着しながら戦える。なお、今作では足が車並みに速い設定である。

 

エクトル「速い、避けろ!!」

 

一同はすぐさま真横に駆け出し、建物を経由しながら逃げて行く。行った先にBSAAの機銃付きの車があった。

 

ラウラ「よし、ひとまずこれで逃げるぞ!」

 

ラウラが運転席に乗り、シャルロットが機銃を使う形に。

 

車で高速道路まで逃げ込み、後ろから追ってくるウスタナクを機銃とエクトルのパイルボムで迎え撃つが、怯まず追ってくる。

 

ラウラ「このままじゃ追いつかれるぞ!」

 

エクトル「よし、こうなったら、シャルロット、アサルトライフルの榴弾を使うんだ!」

 

シャルロット「うん、わかった!」

 

橋に差し掛かったところでエクトルとシャルロットはパイルボムと榴弾を放ち、橋を破壊した事でウスタナクは下の海へと落ちて行った。

 

エクトル「これならもう追ってこないだろう。」

 

一同はレオ達が向かった工場にたどり着き、屋上で合流する。

 

 

ラウラ「二人とも無事か!?」

 

レオ「無事だが生憎苦戦中だ!」

 

簪「みんな、これはシモンズよ!」

 

エクトル「この化け物が・・・、よし、倒すぞ!」

 

シャルロット「足を狙って動きを止めよう!」

 

全員で一斉に射撃を足に集中させ、ちぎれてダウンしたところで頭にパイルボムや榴弾をお見舞いする。

ダメージを受けて元の姿に戻ったシモンズをレオ、ラウラ、簪がフルオート射撃で一気に総攻撃を仕掛けた。

 

この繰り返しを数十分繰り返し、トドメを刺す。

 

こうして、全グループ無事にミッションが完了した。

バーチャル空間から現実へと戻る。

 

一夏「いやー、刺激的だったぜ!」

 

ビリー「ああ、マジで面白かった!」

 

レベッカ「ホント、映画に出てる気分だったわ!」

 

アルゴス「やっぱ銃撃戦はいいよな!」

 

弾「一時はどうなるかと思ったけどな。」

 

鈴「ホントそう思ったわ。」

 

レオ「我ながら腕が上がった気分だぜ!」

 

ラウラ「バイオハザード、気に入ったな。」

 

ゲーム慣れしてるメンツとラウラはいいが・・・・、

 

一夏「あれ、箒、セシリア、どうした?」

 

簪「シャルロット、エクトル、大丈夫だった?」

 

エクトル「あ、ああ。僕には刺激が強すぎたかも知れない。」

 

箒「ハァ、ハァ、あんなに怖いとは思わなかったぞ。」

 

セシリア「世の中にこんな恐ろしいものがありますのね。」

 

シャルロット「怖かった、けどいい体験だったかも・・・・。」

 

何名かは精神的に疲れたようだ。

こうして無事に一同は悪夢の世界から脱出したのであった。

 

 



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IS男子、メイド喫茶に行く

とある日の夕方、レオは学園の男子部屋で自分宛の郵便物を見ていた。彼は数日前にあるものを応募していた。

 

レオ「よっしゃ!当たった!!」

 

一夏「うわっ、なんだよレオ大声出すなよ。」

 

レオ「いやー、悪い。懸賞に当たってさ!」

 

アルゴス「何が当たったんだよ?」

 

すると、レオは一枚のチケットらしきものを出した。

 

ビリー「何だ何だ?『萌エンドレス』ディナー無料招待券?」

 

オープン記念のサービスで、応募者の中から選ばれた1名のみに手渡される招待券だ。

 

エクトル「それって、近々情景町にオープンするメイド喫茶じゃないか?」

 

弾「マジかよ!レオ、ツイてるじゃねえか。」

 

弾は羨ましそうにする。

 

レオ「フフフ、心配ないさ諸君、ここを見てくれたまえ!」

 

チケットの角には、当選者が友人連れでお越しの場合、特別サービスを受けられると書いてある。

 

一夏「ひょっとして、俺たちも一緒に行こうって事か?」

 

レオ「ご名答!」キラーン

 

弾「いいじゃねえか!こんなチャンスまたとないぜ!」

 

ビリー「そうだな、せっかくだから行くか。」

 

アルゴス「どうせ明日休みだしな。」

 

エクトル「コンセプトはアレだけど、どんな料理があるのか見て見たいし、僕も行く。」

 

一夏「けど、男子全員でここに行くって言ったら引かれる気もするが。」

 

レオ「ノンノンノン、そういう時は、男子で外食する男子会って名目にしときゃいいのさ!」

 

一夏「・・・そういう事なら、行くか。(若干嫌な予感がするが、でも個人的には興味あるしな。)」

 

こうして、IS男子6人衆は、メイド喫茶へ行く事になった。

 

 

翌日の夕方・・・・

 

一夏「よーし、それじゃ行くか!」

 

5人「オー!!」

 

箒「ん?一夏、それに皆も揃ってどこへ行くのだ?」

 

のほほん「おりむー達、また男の子だけでお出掛けなの〜?」

 

一夏「ああ、俺たちで外食しようと思ってな。」

 

簪「へー、珍しい。」

 

シャルロット「えー、僕たちも誘ってよー。」プーッ

 

レオ「悪いなシャルロット、これは所謂日本の女子会ならぬ、男子会ってやつだ!」

 

セシリア「そんな文化がありましたの?」

 

一夏「たまには男だけで気楽に過ごしたい時もあるんだ、わかってくれ。」

 

ラウラ「むう、嫁の頼みとあらば仕方ない。」

 

弾「そういう事だから、今日は遅くなる。」

 

レベッカ「ふーん、まあいいけど。(私もビリーと出かけたいけど、仕方ないわよね。)」

 

エクトル「ごめんねみんな、その代わりそこで覚えた料理を作るから。」

 

鈴「じゃ、期待してるわよエクトル。(ハァ、ビリーとデートしたいなぁ。)」

 

しかし、またしてもその気楽な時間に魔の手が伸びている事を、この時の一夏達には知る由もなかった。

 

 

楯無「あらあら、またしても男子だけでお出掛けとはね。でもみんな、いいものがあるわよ!」

 

箒「副会長、まさか。」

 

そう、そのまさかである。

 

楯無「今回もリアルタイムで覗いちゃうぞー!」

 

簪「それタチの悪い嫌がらせなんじゃ・・・。」

 

シャルロット「もうやめましょうよ!この間の温泉旅行で僕たちエライ目にあったんですから!」

 

レベッカ「えっ、どういう事?」

 

※詳しくは番外編『IS男子の休日』を参照。

 

ラウラ「ふむ、しかし今回は温泉とは言ってないし、遠征という程でもないみたいだが。」

 

楯無「でも、どこのお店に行くかを言わなかったのは怪しいと思わない?」

 

その言葉と同時に一同の表情が複雑になる。

 

セシリア「それは・・・、確かにそうですわね。」

 

箒「うーむ、気にならなくはないが。」

 

楯無「だよねー?だから、視聴覚室で見られるようにしといたから!」

 

一同は視聴覚室に入った。ちなみに虚も呼んでいる。

 

モニターには6人の姿が映っていた。

 

 

楯無「どうやら行き先に着いたみたいね。」

 

簪「あれ、ここって・・・・、メイド喫茶『萌エンドレス』?」

 

谷本「ここって、最近オープンしたメイド喫茶じゃない?」

 

鷹月「確か抽選で特別サービスが受けられるって。」

 

レベッカ「特別サービスって、どんな?」

 

相川「さあ。」

 

箒「特別サービス、だと・・・・・?」

 

箒は頭の中で妄想する。

 

シャルロット「ほ、箒、いくら何でもそれはないと思うよ!」

 

セシリア「そ、そうですわ、法的に考えてもそれは!」

 

箒「あ、いや、その・・・・。」

 

箒は恥ずかしくて顔を赤くする。

 

ラウラ「何にせよ、一夏、私の嫁でありながらそのような場所へ行くとは・・・・。」ゴゴゴゴゴ

 

セシリア「・・・そういえばそうですわね。」ゴゴゴゴゴ

 

箒「一夏、モテるだけでは飽き足らずそのような如何わしい店に行くとはな・・・・。」ゴゴゴゴゴ

 

シャルロット「これはもう相当なお仕置きが必要かな。」ゴゴゴゴゴ

 

一夏の恋人候補達は黒いオーラを出す。

 

鈴「・・・・よし、殺そう!!」ゴゴゴゴゴ

 

レベッカ「ビリー、行く先々でどうしてそうなのかしらね。」ゴゴゴゴゴ

 

ビリーを思うこの2人も黒いオーラを出す。

 

簪「・・・・・・。」

 

虚「・・・・・。」

 

レオの恋人の簪と弾の恋人の虚はオーラこそないが、虚な目で無言のままだ。

 

のほほん「ほえぇ、かんちゃん、お姉ちゃん怖〜い。」

 

アルゴスの恋人の楯無に至っては・・・・・、

 

楯無「これは、帰ったら地獄を見せてあげなきゃね。」ニコニコ

 

含みのある不気味な笑みを浮かべていた。

 

Side男子

 

一方、男子一同はメイド喫茶「萌エンドレス」に到着した。

 

レオ「おお、ここだここだ!」

 

メイド達「お帰りなさいませ、ご主人様♡」

 

中に入ると、早速可愛いメイド達がお出迎え。

 

メイドA「レオ・ディ・ステファーノ様ですね、当選おめでとうございます!」

 

メイドB「お友達お連れでのご来店、ありがとうございます!」

 

レオ「やあ、可愛いねえメイドちゃん達♡」

 

エクトル「レオ、舞い上がりすぎだって。」

 

メイドC「レオ様がお友達連れなので、今宵は特別サービスでご奉仕いたします♡」

 

ふと、メイドの一人が一夏を見る。

 

メイドD「あら、もしかして、IS学園の織斑一夏様ですか!?」

 

一夏「は、はい、そうですが。」

 

メイドE「やっぱり!一夏様にご奉仕できるなんて、私達は幸せです♡」

 

一夏「ど、どうも。」

 

メイドF「それに、他の方々もなかなか素敵なお方ばかりですね!」

 

アルゴス「はははっ、なんか照れるぜ。」

 

弾「特別サービス、どんなやつかなー。」デレデレ

 

ビリー「人前で妄想しながら涎垂らすんじゃねえよ弾。(笑)」

 

エクトル「まあ、とりあえず料理をお願いしようか。」

 

男子達は店内へと入る。

 

特別サービスその1、通常の料理のメニューに加え、このサービス限定の料理が出される。

しかも、複数のメイドから「あ〜ん」で食べさせてもらえるのだ。

 

メイド「はいレオ様、あ〜ん♡」

 

レオ「あ〜ん。」ニンマリ

 

メイド「弾様、あ〜ん♡」

 

弾「うっはっはっは、あ〜ん、もぐ、美味いぜ♡」

 

メイド「エクトル様、あ〜ん♡」

 

エクトル「あむっ、ん、これ美味しいね、味覚えたから今度作ってみよう。」

 

メイド「え〜、それはダメですぅ♡」

 

エクトル「(うっ、この表情は手強いな。)」テレテレ

 

メイド「ビリー様、あ〜ん♡」

 

ビリー「おう、あ〜ん、美味え!でも、なんか照れるぜ。」

 

メイド「うふふ、いい表情ですわ♡」

 

メイド「アルゴス様、沢山召し上がって下さいませ♡あ〜ん♡」

 

アルゴス「おう、じゃんじゃん頼むぜ、あ〜ん。」

 

メイド「一夏様、あ〜ん♡」

 

一夏「あ、あ〜ん。おっ、美味いなこれ!」

 

メイド「ありがとうございます♡」

 

メイド「じゃあ次は私が♡」

 

メイド「私も一夏様に!」

 

メイド「ここは私が!」

 

一夏「あ、あはは。じゃあ俺が順番を決めてあげるよ。(思った以上に賑やかになったな。)」デレデレ

 

 

Side視聴覚室

 

ラウラ「おのれ一夏、よくもデレデレと、だがどの料理も美味そうだな。」

 

一夏への想いと食欲が入り乱れるラウラである。

 

箒「何が「あ〜ん♡」だ!!け、けしからん!(私だって一夏に料理を食べさせたいぞ!!)」

 

セシリア「一夏さん・・・、やはりお料理ができる女性が好みなのですね・・・。」ワナワナ

 

シャルロット「メイドに囲まれるのが趣味なんだ、へー、そうなんだ。」ゴゴゴゴゴ

 

レベッカ「ビリー、アンタ私や鈴の前ではそんな顔しない癖に・・・・。」

 

鈴「さーて、どうやって殺そうか・・・・。」

 

簪「レオ・・・、帰ったらお仕置き。」

 

虚「弾君、女の怖さを教えてあげなきゃね。」

 

真顔のままさりげなく怒る簪と虚。

 

楯無「アルゴス君、今のうちに楽しんでおいてね、帰ったらもおっと楽しいわよ。」ゴゴゴゴゴ

 

その時、千冬と山田先生が入ってきた。

 

千冬「おい貴様ら、こんな時間に何を。って、何だこれは!?」

 

山田先生「何を見てるのですか、って、エクトル君!?」

 

モニターを見るなり驚く2人。楯無から事の全てを聞くと・・・・・、

 

千冬「・・・ほっほ〜う、そうかそうか、一夏め、モテすぎるとは思っていたが、ここでも女を侍らせるとはな。」ボキボキ

 

山田先生「・・・エクトル君、浮気をするとどうなるか教師として教えなければいけないですねぇ。」眼鏡キラーン

 

唯一無事かと思われたエクトルにも災厄が訪れる事になった。

 

 

特別サービスその2、メイド達と好きなシチュエーションでの写真撮影。

 

レオはメイドに壁ドンで迫るという設定に。

 

レオ「・・・・。」壁ドン

 

メイド「はうっ♡」ドキンッ

 

エクトルは一緒にタンゴを踊るという設定に

 

エクトル「踊ると楽しいね。」

 

メイド「そ、そうですね♡」

 

アルゴスは力の強さから、お姫様抱っこをするという設定に。

 

アルゴス「ほらよっと!」

 

メイド「キャッ♡」

 

ビリーは一緒に歌を歌うという設定に

 

ビリー「へー、いい声してるじゃねえか、さすが萌えだな!」

 

メイド「ありがとうございます♡」

 

弾はメイドをハグするという設定に

 

メイド「弾様、暖かいです♡」

 

弾「むっふっふっふっ。」

 

そして、一夏はというと、

 

メイド「一夏様、どうぞこちらにお乗りください!」

 

一夏「これは、白馬か?」

 

何とそこには白馬の像が。

 

メイド「一夏様はステキな王子様ですから♡」

 

メイド「是非お願いします♡」

 

逆に設定を頼まれた。これで舞い上がったのか、一夏は、

 

一夏「よーし、こうなりゃ何でも言ってくれ!」

 

楽しさのあまり若干暴走気味に。

 

 

この後は一緒にゲームをしたりなど、アクティブに楽しくメイドと過ごした。

 

そして帰り際、

 

メイド達「ありがとうございました、またのお帰りをお待ちしています、ご主人様♡」

 

男子一同「ありがとう(ありがとな)」

 

こうして、メイド喫茶を堪能した男子一同は学園に戻る。これからお仕置きされるとも知らずに・・・・。

 

 

一夏「ただいま、遅くなった、って、あれ?」

 

女子一同「・・・・・。」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・。

 

食堂に戻るや否や、そこには黒いオーラをまとった女子達の姿が。

 

レオ「何だ、そんなに寂しかったのか〜?」

 

アルゴス「いや、明らかに怒ってねえか?」

 

エクトル「え、えっと、皆さん、何にお怒りで?」

 

簪「・・・・モニターを見て。」

 

弾「モニター?ってこれ、俺たちじゃねえか!」

 

ビリー「しかもメイド喫茶に入ったとこからだぜ!」

 

一夏「・・・全部バレてたのか。」

 

千冬「その通り、覚悟はできているな貴様ら?」

 

男子一同「・・・・・・はい。」

 

その夜、男子一同はたっぷりとお仕置きされてしまった。

 

 

そして翌朝、

 

レオ「ウッ、ウプッ、ゲップ、は、腹いっぱいだ・・・・。」

 

簪「少しは懲りた?」

 

レオ「お、おう、悪かった。」

 

レオが受けたお仕置きは、

 

 

Side昨晩(レオ)

 

簪「レオ、あ〜ん。」

 

レオ「あ、あ〜ん、ウプッ。」

 

レオは椅子に拘束された上に簪に料理を無理矢理食べさせられるという満腹地獄の刑にあった。

 

 

弾「ISの装備の基本は、学園の規則第25項目は・・・・。」ヘロヘロ

 

Side昨晩(弾)

 

虚「これの答えは?」

 

弾「・・・、すいませんわからないです。」

 

虚「わかるまで帰さないわよ。」

 

弾「そんな〜、目が回る〜。」

 

弾は椅子に腰へのロープ掛けで固定され、ISの学科問題を叩き込まれた。

 

 

エクトル「う〜ん、足が、足がぁぁ。」

 

Side昨晩(エクトル)

 

山田先生「まったく、エクトル君もスキがありすぎます、IS学園の生徒としても、もう少し節度ある行動を・・・、」

 

エクトル「(ううう、これは辛いよ。)」

 

山田先生「エクトル君聴いてますか?」

 

エクトル「は、はいぃ。」

 

エクトルは部屋に正座されられ、山田先生に一晩中説教された。

 

アルゴス「うぐぅ、ボウリング対決で受けたあれをまたやられるとは・・・・。」グッタリ

 

Side昨晩(アルゴス)

 

アルゴス「うぎゃはははははは、あひゃひゃはははははは!!!」

 

楯無「アルゴス君、今夜は寝かせないわよ、コチョコチョコチョコチョ♡」

 

アルゴス「あーはははははは、も、もう許してくれぇぇぇ!!!」

 

アルゴスは楯無の部屋のベッドにボクサーパンツ一枚で拘束され、一晩中くすぐりの刑に処された。

 

 

ビリー「くそう、すけこまし野郎(レオ)のせいで、痛え、全身が、クソッ。」

 

Side昨晩(ビリー)

 

ビリー「ぎいやああああ、お、折れる折れる、ギブ、ギブアーップ!!!」

 

ジル「まだまだ、レベッカ、鈴、手伝って!」

 

鈴・レベッカ「はい!」

 

ビリー「も、もう勘弁してくれぇぇぇーっ!!」

 

ビリーはジル、鈴、の模擬戦相手を連続で行った上、彼女達からプロレス技をくらうハメに。

 

 

のほほん「あれ、おりむーまだ来てないよ。」

 

一夏「・・・・おはよう。」

 

その時、一夏が恋人候補達と共に食堂に来た。箒達は皆満足した表情である一方、一夏は箒から借りた木刀を杖代わりにして体を引きずるように歩く。

 

谷本「おはよう織斑君、ってどうしたのその顔!?」

 

一夏「い、いやあ、その、何といいますか。」

 

一夏は顔中キスマークだらけになっていた。

 

Side昨晩(一夏)

 

一夏は部屋に連れられ、千冬と恋人候補達に問い詰められ、ついには・・・・

 

千冬「たまには貴様にもお仕置きが必要だからな。」

 

一夏「・・・・・はい。」

 

千冬は箒達の方に向き直り、こう言い放った。

 

千冬「貴様ら、今夜限り一夏を好きにして構わん。ただし、これは絶対に使え。」

 

千冬が用意したのは、何と大量の✖️✖️✖️ー✖️だった。

 

一夏「!?」

 

箒「こ、これは!?」

 

セシリア「お、織斑先生!?」

 

シャルロット「いいんですか!?」

 

千冬「構わん、散々ヤキモキさせられたお前達の気持ちを考えればこれくらいいいだろう。だが程々にな。」

 

ラウラ「教官!感謝します!!」

 

千冬「さて、私は失礼するぞ。」

 

千冬は部屋を出た。

 

一夏「み、みんな、その・・・これは。」

 

ラウラ「かかれー!!」

 

箒「うおぉぉ、一夏ー!!」

 

セシリア「一夏さん♡」

 

シャルロット「今夜は寝かせないよ!!」

 

一夏「うわぁぁぁー!!」

 

※この先のシチュエーションは流石に書けないので、皆様の想像にお任せします。

 

 

一夏「・・・というワケでして。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「♡♡♡♡」

 

アルゴス「なるほどそういう事か。」

 

弾「何だよ、お前1番美味しいじゃねえかそれ!」

 

鈴「アンタ、一晩で4人も抱くなんてやるじゃない・・・・・。」

 

一夏「は、ははは、もう何が何だか。(実際気持ちよすぎたしな。)」

 

 

その後、彼らはメイド喫茶入店禁止令を下された。

 

 



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バレンタインフィニット・ストラトス 事前会話編

ネロが学園に入って早3ヶ月が経ち、2月に入った今日この頃、寒い季節を熱くするようなイベント、そう、バレンタインデーを迎えようとしている。

男女に分かれての授業の終わり際に、男女それぞれの間では、この事が話題となっていた。

 

Side女子

 

「そういえばもうすぐバレンタインよね!」

 

「織斑君達ってどんなチョコが好みなんだろ?」

 

「アピールのためにも気合い入れて作らなくっちゃ!」

 

多くの女子がワイワイ話してる中、専用機の女性陣は、

 

箒「(ううむ、一夏がどのようなチョコを好むのか。それより、そもそもチョコを作った事などないぞ・・・。)」

 

セシリア「(どうしましょう、殿方にチョコを作った事のない私は圧倒的に不利ですわ。どうにかして誰かに作り方だけでも教われれば・・・・。)」

 

ラウラ「(クラリッサから聞いた情報だと、バレンタインとは好きな男にチョコレートとやらを作るイベントらしいが、どのようにして攻略すべきなのだ・・・・。」

 

チョコ作り経験のない箒や、チョコはおろか料理もした事のないセシリアにラウラは大きなハンデを感じている。

 

そんな中、役一名余裕なのは言うまでもなく、

 

シャルロット「(えへへー、これは大チャンスだよ♡、僕が一番に渡すんだ♡)」

 

シャルロットは上々の気分でいた。

 

鈴「(ビリーにチョコを作りたいけど、レベッカがいるし、一夏ほどじゃなくてもアイツはモテる方だから意外とライバル多いのよね、どうしよっか。中学時代に一夏には作った事あるけど・・・・。)」

 

レベッカ「(ビリーにチョコを作った事あるし、幼馴染ならとりあえず有利よね。ほかの女子達の実力は未知数だけど。)」

 

ビリーに恋する鈴とレベッカは離れた距離から火花の散る視線を交わす。

 

のほほん「(ネロロン、チョコ作ったら食べてくれるかな〜。他の女の子には負けないぞ〜。)」

 

本音は初恋相手のネロにチョコを渡そうと躍起になっている。

 

簪「ねえ、みんなどうしたの?」

 

専用機女子一同「・・・・・。」ジトー

 

簪以外の専用機女子一同は簪を羨ましそうに見る。それもそのはず、簪は一年生で唯一特定の恋人を持っており、悩む必要がないからだ。

 

簪「?」

 

鈴「・・・ハァ、アンタはいいわよね。」

 

セシリア「羨ましいですわ。」

 

簪「あ、えと、その、気を悪くしたならごめんね。」アタフタ

 

箒「いや、大丈夫だ。」

 

ラウラ「簪、もし可能であれば私と箒、セシリアにチョコレートの作り方を教えてくれないか?」

 

箒・セシリア・シャルロット「!?」

 

簪「いいけど、私なんかでいいの?」

 

ラウラ「頼む、やはり少しでも条件が他の者と五分に近い方がよいと思うのだ。それに、日頃嫁として世話になっている一夏にチョコレートをあげられないのは寂しい。」

 

ラウラの素直な言葉に、周囲は殺伐とした空気が温まったのを心に感じる。

 

箒「・・・そうだな、お互い頑張ろうラウラ、セシリア。」

 

セシリア「ええ、皆さんで一夏さんを喜ばせましょう。」

 

3人は手をとりあう。それまで余裕だったシャルロットは、

 

シャルロット「・・・僕も手伝うよ。みんなで一緒に作りたくなっちゃった。」

 

シャルロットも手伝う事になった。

 

簪「わかった、じゃあ後で家庭科室に来てね。」

 

互いを尊重し合う一夏ラバーズとは反対に、ビリーラバーズは、

 

鈴・レベッカ「(・・・絶対に負けないんだから!)」

 

Side生徒会室

 

楯無「さてと、アルゴス君にどんなチョコを作ろうかなー。」

 

楯無は本を見ながら考える。

 

虚「副会長、中に何か良からぬものを仕込まないように。」

 

虚は楯無に釘を刺す。

 

楯無「何も入れないって、それより虚も弾君にあげるチョコ作るんでしょ。」

 

虚「・・・ええ、まあ。」

 

特定の相手がいるこの二人は生徒会室で和やかに話す。

 

Side職員室

 

山田先生「・・・・・。」

 

山田先生は真剣にチョコレシピを読んでいる。

 

ジル「あら真耶、何読んでるの?」

 

山田「はわっ!?」

 

山田先生は慌てて本を閉じる。

 

ジル「チョコのアレンジレシピ?ははーん、さてはエクトルに作るのね。」ニヤニヤ

 

山田先生「あ、その、はい。」

 

ジル「フフッ、頑張ってね。」

 

山田先生「マイヤーズ先生は作る予定は?」

 

ジル「もちろんあるわよ、一夏に。」

 

千冬「!!」ピクッ

 

ジルが一夏にチョコを作ると聞いた途端、千冬は反応する。

 

山田先生「あれ、ビリー君じゃないんですか?」

 

ジル「まさか、馬鹿にあげるチョコはないわよ。誰かさんと違ってブラコンじゃないし。」

 

山田先生「(・・・本人が鈍感とはいえ、これはかわいそうですね。)」

 

千冬「・・・ジル、誰がブラコンだ?」ワナワナ

 

ジル「聞かなくてもわかるでしょ。それにアンタ、実家じゃ一夏に家事任せっきりらしいじゃない。チョコなんて作れるの?」ニヤニヤ

 

千冬「それは私に対する挑戦か?」

 

余裕の表情で上から目線のジルに千冬は食ってかかる。

 

千冬「・・・いいだろう、作ってみせようじゃないか!」

 

ジル「ま、せいぜい頑張ってね♡」

 

ジルは鼻歌まじりで職員室を出た。

 

山田先生「じゃあ私もそろそろ」

 

ガシッ!!

 

不穏な空気を感じた山田先生は職員室を出ようとしたが、千冬に肩を掴まれる。

 

山田先生「ち、千冬、さ、ん?」汗ポタポタ

 

千冬「・・・真耶、チョコの作り方を教えるのだ。断ればどうなるかわかるな?」ゴゴゴゴゴ

 

山田先生「・・・・はい、喜んで。(ああ、やっぱりこうなりますか。)」

 

このようにそれぞれの場所でバレンタインが話題となっていた。

そんな事態が起きているとはつゆしらず、男子達はというと、

 

Side男子

 

一夏「バレンタインかー、記憶がないからなー。貰えたら嬉しいけど。(前世じゃ一個ももらった事ねえし。)」

 

弾「一夏、お前貰えない可能性0パーセントだから安心しろ。(コイツ絶対一番多く貰うだろ。)」

 

エクトル「確かに、一夏なら世界中からチョコを貰えてもおかしくないよね。」

 

レオ「下手すりゃ全部本命だったりしてな、ハハハハハッ!!」

 

アルゴス「いや、それシャレにならねえだろ。」

 

ビリー「つーかそもそも何でバレンタインくらいで世間が騒ぐんだ?チョコなんて誰から貰ってもおんなじようなもんだろ?」

 

ビリー以外「・・・・・。(これじゃ当日危ないぞ。)」ハァ

 

ネロ「バレンタインとはどういったものなのだ。」

 

一夏「ああ、そういやネロは知らないよな。」

 

一夏がバレンタインを簡単に説明すると、

 

ネロ「ふむ、成る程な。だが生憎俺は恋を知らないからな。俺などにくれる者などいないだろう。(リリスが生きていたらリリスも俺に作ったのだろうか?)」

 

ネロ、ビリー以外「(こっちもこっちで難儀だな。)」

 

果たして当日はどうなる事やら。

 



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バレンタインフィニット・ストラトス 前日編

バレンタインデーのチョコレート作りに向けて、女子一同は朝からチョコレートの材料を調達しに街に出かけて行った。

流石に前日となればどの店も混み混みである。

バーゲンセールの如き買い物を無事に済ませた女子たちは、喫茶店で一旦休憩を取ることに。

 

セシリア「ハァ、ハァ、こんなにもお買い物が大変だなんて。」

 

箒「やはり近日ともなれば人が多いな。」

 

簪「取り敢えず一通り揃えたけど、足りない分は分け合っていけば何とか。」

 

シャルロット「そうだね、でもあっちはそうはいかないかも・・・。」

 

シャルロットが目をやった先では、

 

鈴・レベッカ「・・・・・。」バチバチ

 

この二人に限っては大変そうである。

 

のほほん「ほへ〜、これ美味しいよー。」

 

ラウラ「うむ、美味いな。」

 

本音とラウラは和やかにチョコケーキをパクパク食べていた。

 

虚「本音、食べ過ぎたらダメよ。」

 

楯無「ボーデヴィッヒさん、チョコ作りの事忘れないようにね。」

 

ラウラ・のほほん「は〜い。」

 

少し離れた別の喫茶店では、

 

山田先生「取り敢えず一通り材料は揃えました。」

 

千冬「うむ、ご苦労。」

 

山田先生「(買い物したのほとんど私ですけどね。)」

 

ジルに至っては・・・

 

ジル「悪いわね蘭、食堂の調理場借りちゃって。」

 

蘭「いえ、マイヤーズ先生は誰にあげるんですか?」

 

ジル「そうねえ、まあ取り敢えずビリーにあげとこうかな。(本当は一夏だけど、黙っておかないとね。)」

 

蘭「弟思いなんですね。」

 

ジル「そんなもんじゃないけどね。」

 

ジルはビリーが冬休みにホームステイしていた弾の実家を利用し、すでに先手を打っていた。

 

 

Side男子

 

一方男子たちは、女子がいなくなった学園内で暇を持て余していたため、一夏の実家で呑気に過ごしていた。

現在は、みんなで人生ゲームをやっている。

 

一夏「だーっ、またマイナスだ!借金膨らみ続けてるぜ!」

 

一夏は始めてから金銭を支払うマスに止まり続け、最下位になる事態に。

 

エクトル「一夏、珍しく不運続きだね。」

 

エクトルは逆に現在トップで億万長者に。

 

弾「コイツ基本女運以外の運勢は不運な時があるからな。」ケラケラ

 

弾は現在3位。

 

アルゴス「一夏にそんなデメリットが。」

 

アルゴスは2位の富豪に。

 

ビリー「まあいい方じゃねえか、俺女運ねえし。」

 

ビリー以外「(鈍感だからそう思うんだろ。)」

 

ビリーは4位。

 

レオ「にしてもこのゲーム面白えな。今度女の子達ともやってみようぜ。」

 

レオは現在5位に。

 

ネロ「このゲームは金銭感覚を刺激するな。」

 

ネロは6位と、一夏ほどではないが不運な方である。

 

女子達が大変な中、呑気に遊んでいる男達だった。

 

 

Side女子

 

話を本題に戻し、現在は2月13日。バレンタイン前日を迎え、いよいよチョコ作りに入る。

 

簪「それじゃあ始めるよ。」

 

シャルロット「みんな、用意できたかな?」

 

箒・セシリア・ラウラ・のほほん「ああ(はい)(うむ)(は〜い。)」

 

鈴・レベッカ「・・・・・。」

 

鈴とレベッカは離れた場所で無言で作ることに。

 

虚「・・・あの二人には声をかけないほうがいいでしょうね。」

 

楯無「当日は肝心のビリー君にかかってるわよ。」

 

 

Side千冬

 

一方、千冬は山田先生の自宅にお邪魔してキッチンを借りるという形でチョコ作りをする。

 

山田先生「それでは、始めましょう。」

 

千冬「う、うむ。(わかってはいるが、この格好はやはり受け付けないな。)」

 

生まれて初めて家庭用エプロンを付けた千冬。

 

 

みんなそれぞれ一生懸命だが、ある人物に至っては・・・・・・、

 

束「フフフ、この束さんはISだけではないのだよ〜、こう見えて料理もできるのだぁ!」

 

束はラボ内のキッチンで独り言を言いながら器用にチョコ作りをしている。

あげる相手は言うまでもなく・・・

 

束「このチョコでいっくんも私にメロメロになる事間違いなし♡」

 

束は何やらチョコの中に怪しげな薬品を混ぜ合わせて行く。

果たして一夏はどうなる事やら。



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バレンタインフィニット・ストラトス 当日編

ついに迎えたバレンタインデー当日、それぞれの男子を巡って女子生徒達の間では平和だったり熾烈な戦いであったりする。

 

Side一夏

 

女子生徒「織斑くーん!」

 

「ハッピーバレンタイン!」

 

「受け取ってー!!」

 

一夏を好きな女子生徒達がチョコを我先に渡そうと一気に群がる。

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!!!」

 

一夏「そんな慌てなくても大丈夫だって。箒達のから先に受け取るから。」ニコッ

 

セシリア「まあ、一夏さん♡」

 

箒「ありがとう一夏、その、大した出来ではないが。」

 

ラウラ「食べてくれ、嫁よ。」

 

シャルロット「えへへ、ハッピーバレンタイン!」

 

一夏は自身のモテに甘んじず、恋人候補達のチョコレートから先に貰ってあげた。

そしてそれらを食べて、

 

一夏「箒のは宇治抹茶のチョコレートか、深い味わいが箒らしくていいな!」

 

箒「そうか、よかった!」

 

一夏「セシリアのはレーズン入りか、このほろ苦さとチョコがベストマッチだな!」

 

セシリア「ありがとうございます!」

 

一夏「ラウラのはベイクチョコか、サクサクの食感が良く出来てるな!」

 

ラウラ「う、うむ、気に入ってもらえてよかった。」

 

一夏「シャルロットのはオレンジチョコか、甘酸っぱさが心も満たす感じだぜ!」

 

シャルロット「ホント!?ありがとう一夏!」

 

しばらくすると、千冬とジルがやってきた。

 

ジル「あらあら、モテモテね一夏。私達も混ぜてもらうわ。」

 

千冬「うむ。」

 

一夏「先生方、おはようございます。」

 

ジル「突然ごめんね、はい、チョコレートよ!」

 

一夏「えっ、先生そんな!申し訳ない!」

 

ジル「あら、私のはダメなの?」

 

一夏「いえ、そんな、ではお言葉に甘えて、いただきます。」

 

ジル「フフッ、ありがとう♡」

 

一夏「ホワイトチョコレートですね、ミルクが濃い感じで美味しいです!」

 

ジル「うん、中に私の母乳を入れといたから!」

 

一夏「なるほど・・・・、って、ええっ!?」

 

女子一同「!!!!!」

 

ジル「やーね、冗談よ。(リアクションが可愛い♡)」

 

一夏「は、ははは。」

 

一夏は思わず顔を赤くする。

 

千冬「織斑。(全く、デレデレしおって。ジルもタチの悪い言い方を。本気で信じるところだったぞ!)」

 

一夏「あっ、織斑先生、すみません。」

 

千冬「あまり浮かれるなよ、と言いたいところだが、いつもお前には世話になっているからな。たまには私からもプレゼントをしよう。

 

一夏「ありがとうございます!・・・これは、ちょっと苦いですね。」

 

千冬「!!(しまった、カカオの分量を間違えたか!?)」

 

一夏「でも、マイヤーズ先生のチョコの後だからいい口直しですよ、大人の味って感じが先生らしいですね。」

 

千冬「お、おだてても何も出んぞ!」

 

ジル「もうすでに出してるのに?」

 

千冬「う、うるさい!!」

 

一夏「先生方、ありがとうございました!これからも頑張りますので、よろしくお願いします!!」ペコッ

 

千冬・ジル「よろしい!」

 

しかし、こういう事ではほぼ必ず嵐を呼び寄せるのはこの男の宿命である。

 

ガシャーン!!

 

窓ガラスと壁が壊れる音と共に束が乱入して来た。

 

束「ヤッホー、いっくーん♡♡♡♡♡」

 

一夏「た、束さん!?どっから入ってんすか!!」

 

束「窓からだよ!」

 

ジル「わかってるわよそんな事!それより危ないでしょアンタ!!」

 

千冬「何の用だ束!?」

 

束「今日は何の日かなー?」

 

箒「・・・・まさか。」

 

束「ジャジャーン!束さん特製のいっくんLOVE LOVEチョコレート!!」

 

ジル「図々しいわねアンタ。」

 

束「ささ、いっくんどーぞ!」

 

一夏「・・・あの、束さん。まさかと思うけど何か妙なもの入れてませんよね?」

 

束「え、そんな事ないっすよー。」

 

明らかに目が横に行ってる。よもや見抜かれるとは思わなかったからだろう。

 

生徒一同「(・・・・・怪しい。)」

 

千冬「その顔、図星か!」

 

ジル「流石一夏ね、危険察知能力もすごいじゃない。」

 

千冬とジルは機体を展開する。

 

束「さ、さいならー!!」

 

千冬「こら、窓ガラスと壁を直していけ!!」

 

束はそそくさと出て行った。

 

ジル「ふぅ、危ないところだったわね。」

 

千冬「全くだ。」

 

 

Sideレオ

 

 

「ステファーノ君、受け取って!」

 

「私のもどうぞ!」

 

簪「・・・・・」ジトー

 

恋人がいても変わらずモテるレオに簪は頰を膨らませる。

 

レオ「まあ待て、簪が最初な。」

 

簪「・・・レオ、その、これ。」

 

レオ「可愛いラッピングだぜ、ありがとな!」

 

レオはチョコを受け取ると、簪にキスをする。

 

簪「はわっ、ちょっと、レオ!」

 

レオ「機嫌なおしてくれたか?」

 

簪「・・・・・。」コクン

 

「いいなー、ステファーノ君のバレンタインデーキス。」

 

レオ「心配すんな!お返しは必ずするぜみんな♪」ウィンク

 

「絶対だよ!」

 

Side弾

 

 

弾「さてと、屋上で待ってるんだっけな。早く行かねえと。」

 

弾は虚と屋上で待ち合わせる約束をしており、急いで向かう。

屋上に着くと、そこには既に虚が立っていた。

 

弾「待たせてすんません!!」

 

虚「大丈夫、今さっき来たところよ。はい、チョコレートをどうぞ。」

 

弾「ありがとうございます!!これは人生初ですよ!(あー、生きてて良かったぜ!!)」

 

虚「ウフフ、大袈裟ね。」

 

虚は面倒見のいいお姉さんのような微笑みを見せる。

 

虚「よかったらこれもどうぞ、本音の義理チョコならぬ義兄チョコよ。」

 

弾「マジっすか!後で本音にも礼を言っときます!(蘭とは大違いだよなぁ♡)」

 

Side蘭

 

蘭「っくしゅんっ!!もう、誰よ噂してんのは!?」

 

 

Sideエクトル

 

「ベレン君待って!」

 

「チョコもらってちょうだい!」

 

ベレン「ごめん、後にしてくれ!」

 

エクトルは女子生徒達を回避しながら職員室へとダッシュする。

そう、恋人である山田先生のもとへ。

 

エクトル「し、失礼します!」

 

山田先生「ベレン君、大丈夫?」

 

エクトル「ハァ、ハァ、何とか。どうしても先生のチョコを一番最初に貰いたかったから。」

 

一息ついたところで、いよいよ本題へ。

 

山田先生「はい、エクトル君。」

 

ベレン「ありがとうございます、真耶さん!」

 

山田先生「学校では、山田先生でしょ。」

 

ベレン「・・・そうでしたね、でも、今は2人きりですから。恋人としてお礼もしたいので。」

 

山田先生「しょうがないですね、エクトル君。」

 

そうして2人は職員室で密かにキスを交わす。人生で最も甘い瞬間である。

 

 

Sideアルゴス

 

アルゴスは楯無と生徒会室で2人きりでいた。

 

楯無「はい、アルゴス君にチョコレート。ついでに簪からの義理チョコならぬ義兄チョコよ。」

 

アルゴス「楯無さん、ありがとうございます。にしても義兄チョコって、簪の奴気が早えな。」

 

楯無「お姉さんのチョコレートは高くつくわよ!」

 

アルゴス「必ずお返しはします!」

 

楯無「もしも忘れたら・・・・。」

 

楯無は含みのある笑顔で手をワキワキさせる。

 

アルゴス「うっ、それだけはマジで勘弁してください。(絶対忘れねえぞ。)」

 

 

Sideネロ

 

「グルーバー君!!」

 

「貰って貰って!!」

 

「ちょっと、私が先よ!!」

 

ネロ「・・・ハァ、どうしてこうなる。」

 

ネロは少々面倒くさそうにする。

 

本音「(うぅ〜、ネロロンモテモテだよ〜。)」

 

本音は物陰から渡すタイミングを伺っていた。

 

ネロ「まあ、とりあえず貰えるものは、ん?」

 

不意にネロは髪が軽く引かれる感覚をおぼえる。

 

本音「わーい、一番に渡したよ〜!」

 

本音は背後からネロに近づき、ネロの二束の髪にチョコレートの箱を結びつけたのだ。

 

「ああっ、本音ずるい!」

 

ネロ「(背後に忍び寄るとは、意外にやるな。)」

 

感心しながらネロは本音のチョコレートを食べた。

 

本音「どお?」

 

ネロ「・・・食べた事のない美味さだ。ありがとう本音。」

 

ネロは思わず本音の頭を撫でる。

 

本音「えへへ〜、美味しく出来てよかったよ〜。」

 

そして、今日一番の問題は・・・・・、

 

 

Sideビリー

 

 

ビリー「・・・・・・。」

 

そう、この唐変木である。

 

鈴・レベッカ「・・・・・。」バチバチ

 

そのほかの女子達「・・・・・。」バチバチ

 

ビリー「・・・ハァ、この空気何なんだよ。」

 

ビリーは二組の教室の隅に追いつめられ、逃げられない状態にある。

 

鈴「アンタの所為でしょ!」

 

レベッカ「誰のチョコを最初に受け取るの?」

 

ビリー「ンなこと拘らなくったって、食っちまえばおんなじだろ?」

 

鈴・レベッカ・女子生徒たち「・・・・・・。」ゴゴゴゴゴ・・・・・・・、

 

ビリーにさらに詰め寄る女子達である。

 

ビリー「わかったわかった、じゃあ模擬戦で決めりゃいいだろ。」

 

「えー、それ絶対専用機有利じゃない!」

 

ビリー「鈴とレベッカも訓練機で戦えば済む話だろ。」

 

鈴「そういう事なら仕方ないわね。」

 

レベッカ「絶対に勝つんだから!」

 

その後、トーナメント式で戦い、決勝では鈴とレベッカは引き分けとなった。

よって、ビリーは鈴とレベッカのチョコを同時にもらう事に。

 

鈴・レベッカ「・・・・」ムスッ

 

ビリー「しょうがねえだろ、お前らなあ。」ハァ

 

ビリーは2人のチョコを食べる。

 

鈴「・・・どっちが美味しかった?」

 

レベッカ「そうね、美味しかった方がお返しをもらえるって事にすれば。」

 

ビリー「まだ張り合う気かよ。どっちも美味かったに決まってんだろ。」

 

女子一同「ま、そう答えるわよね。」

 

ビリーがあっさり期待外れの答えを出した瞬間、

 

鈴・レベッカ「さっきの模擬戦全く無意味じゃないのー!!」グーパンチ

 

ビリー「ぐほっ!?」

 

挙げ句の果てに殴られた。鈍感もここまで来ると、同情のしようがない。

 

 

それぞれ色々あったが、こうしてバレンタインデーは幕を閉じた。

 



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登場人物にぴったりなゲームは

とある休日、一夏は一人でゲーム雑誌を読んでいた。

 

一夏「最近は色んなゲームがあるな。」

 

のほほん「おりむー、何読んでるの〜?」

 

アルゴス「これ、有名なゲームの雑誌じゃねえか。」

 

レベッカ「あたしこれ読んだことある。」

 

鈴「これ、一夏と弾で読み漁ったことがあるわ。」

 

レオ「お前ら仲いいんだな。」

 

シャルロット「一夏、ゲーム好きなところが男の子って感じだね。」

 

一夏「そうか?普通だろ。」

 

箒「うーむ、しかし実際色んなゲームがありすぎるな。」

 

セシリア「どれが自分に合ってるかわかりませんもの。」

 

簪「2人とも、ゲームに縁ないもんね。」

 

ラウラ「ふむ、だが1作品くらいはやってみたいものだな。」

 

ビリー「じゃあ、どういったゲームが向いているか一夏に判断してもらえばいいんじゃねえか?」

 

一夏「えっ、俺がタイトルを選ぶのか?」

 

弾「そりゃあ俺たちのリーダーなら、俺たちの事よく分かってるしな。」

 

一夏「そうだな、ちょっと待っててくれ。」

 

一夏はパソコンでゲームのタイトル一覧を見て考える。

 

一夏「箒ならこのゲームがいいと思うな。」

 

箒「これは、『源平討魔伝』?」

 

源平討魔伝、鎌倉時代の源平合戦を元に作られたアクションゲーム。

 

一夏「箒といえば和のテイストだからな。刀一振りで敵を倒しながら進めて行くこのゲームが向いてると思う。」

 

箒「なるほど、この世界観は馴染みやすそうだな。」

 

箒は内容に興味津々だ。

 

一夏「セシリアはイメージ的にこのゲームだな。」

 

セシリア「こちらは、『アンジェリーク』?」

 

アンジェリーク、女王候補に選ばれた少女アンジェリークが、守護聖と言われる美男子達と共に過ごしながら女王を目指す女性向け恋愛シミュレーションゲーム。

 

一夏「セシリアは気品ある聖女のようなイメージがあるからさ、こういった世界観が似合うと思ったんだ。」

 

セシリア「まあ♡でもこのゲームの殿方はどれも一夏さんには及びませんわね。」

 

一夏「マジか、そりゃあ嬉しいぜ!」

 

続いてシャルロット

 

一夏「シャルならこのゲームだな。」

 

シャルロット「これは、『スペースハンター』?」

 

スペースハンター、主人公の美少女が、あらゆる惑星で人類に反乱を起こすサイボーグを破壊するために戦う。

 

一夏「シャルはカッコよく戦う女の子ってイメージがある方だから、このゲームだと思ってな。」

 

シャルロット「僕、戦いがカッコいいんだ!そうか、ありがとう一夏!」

 

一夏「さて、ラウラは性格的にこのゲームだろう。」

 

ラウラ「・・・『ファイアーエムブレム』?」

 

ファイアーエムブレム。プレイヤーは軍師となってキャラクターを動かし、敵軍を倒して国の平和を勝ち取るゲーム。いくつものタイトルが存在するほど、定番になっているゲームだ。

 

一夏「ラウラは隊長が務まるくらいだし、こういった戦略を問われるゲームがぴったりだと思ってな。」

 

ラウラ「確かに、これは面白そうだな。」

 

まずは一夏の恋人候補達にぴったりなゲームを選んだ。

 

一夏「さて、それじゃあ鈴はこれが一番だな。」

 

鈴「このゲームあたしもよく知ってるわ。」

 

鈴に進めたのは『ストリートファイター』。

 

アーケードから各ゲーム機に渡ってシリーズ化された名作格闘ゲームである。

 

一夏「鈴って、IS使わずに素で戦ったら春麗みたいになりそうだなって。」

 

一同「確かに。」

 

鈴「それよく言われたことあるわ。」

 

一夏「レベッカはこのゲームかな?」

 

レベッカ「何々、『ランブルローズ』?」

 

ランブルローズ、女子プロレスラーが戦う知る人ぞ知る対戦型格闘ゲームだ。

 

一夏「レベッカは専用機持ちの女子では力が強い方だし、ガンガン攻める方だからこういうのが一番しっくりくると思ってな。」

 

レベッカ「そういえばよくプロレスやらないかってスカウトされたわね。」

 

一夏「簪はゲームが得意な方だからこれかな。」

 

簪「これは、『ロックマン』ね。」

 

ロックマン、Dr.ライトによって作られた主人公のロボット、ロックマンが、平和のために戦う物語。

さまざまな武器、能力を状況に応じて使いこなすところが魅力の一つ。

 

一夏「簪はヒーローやロボットが好きだから、その両方の要素があるこのゲームがいいと思ったんだ。」

 

簪「アニメは見たことあるけど、原作はそこまでやってないから、今度やってみよう!」

 

一夏「本音は2つ当てはまるものがあったな。」

 

本音「ほえー、『どうぶつの森』に『星のカービィ』なんだ〜。」

 

一夏「ほら、本音はいつも狐の着ぐるみを着てるから、動物が似合うイメージがあるだろ?」

 

一同「確かに!」

 

一夏「カービィを勧めたのは、本音がなんかカービィっぽい感じがするんだよな。丸くて可愛いとことか、食いしん坊なところが。」

 

本音「ぷ〜、私が太ってるみたいに言わないでよ〜。(笑)」

 

一夏「ごめんごめん。(笑)」

 

 

女性陣にぴったりなゲームを選んだところで、次は男性陣。

 

一夏「アルゴスは結構候補があったけど、一番はこれだろ。」

 

アルゴス「これ、『ファイナルファイト』じゃねえか。」

 

ファイナルファイト、荒廃した街メトロシティを舞台に主人公が大切な人を救うべく、単身ギャングに立ち向かうベルトスクロールアクションゲーム。

 

一夏「アルゴスってさ、ケンカで何人もぶっ倒しそうなイメージあるしな。」

 

一同「確かに。」

 

アルゴス「まあ実際中学時代はビリーとつるんでよくケンカはしてたな。」

 

ビリー「そういえばそうだったな。」

 

鈴「マジ?話聞かせてよ!」

 

アルゴス「また今度な。」

 

一夏「エクトルは雰囲気的にこのゲームかな。」

 

エクトル「これは、『ワンダと巨像』?」

 

ワンダと巨像、主人公ワンダが少女の魂を取り戻すべくやってきた古の地で、剣と弓を武器に巨像と戦うゲーム。

 

一夏「エクトルは雰囲気的に古の地が似合うと思ってさ。」

 

エクトル「このアンティークな世界観がいいね。」

 

一夏「レオは絶対このゲームだろう。」

 

レオ「おっ、『タイムクライシス』か。」

 

タイムクライシス、ガンコンが特徴のガンシューティングゲームだ。

シリーズによっては状況に応じて様々な銃器を使い分けられる。

 

一夏「弾は専用機の雰囲気からこれだな。」

 

弾「『悪魔城ドラキュラ』か。実際俺も使ってる武器は鞭だしな。」

 

悪魔城ドラキュラ、ベルモンド家の主人公が、鞭を片手に単身ドラキュラに立ち向かう難関アクションゲーム。

ハイクオリティーなBGMもまた魅力の一つである。

 

一夏「ビリーはアルゴスに近いイメージだから、これだな。」

 

ビリー「これは、『ダブルドラゴン』?」

 

ダブルドラゴン、荒廃したニューヨークを舞台に主人公がさらわれた恋人を救うべく、双子の兄弟が悪の組織に立ち向かうアクションゲーム。

 

一夏「ビリーはアメリカ方面の出身だし、ストリートファイトが強いイメージがあるからな。」

 

ビリー「まあ、売られたケンカは買う方だな。」

 

一夏を除く男性陣も選び終わる。

 

一夏にぴったりなゲームは、みんなの意見をまとめた結果、次のタイトルになった。

 

一夏「これは、『アクトレイザー』だな。」

 

アクトレイザー、主人公である神はサタンによって荒廃した人間の住む地上の世界を取り戻すべく、魔物に立ち向かうアクションゲーム。バトルパートとクリエイションモードの二つがある点が、当初は珍しいものだった。

 

箒「剣一振りで単身戦うところは一夏のイメージだな。」

 

エクトル「何と言っても、一夏は神のイメージが強いし。」

 

アルゴス「実際、この世界を良くするって事も理想にあるしな。」

 

本音「おりむーが神様なら何でもお願い聞いてくれそうだよ〜。」

 

一同「確かに。」

 

一夏「いやいや、そこまではないだろ。(笑)」

 

後にみんな、それぞれのゲームをやってみたところ、大好評だったようだ。

 

 



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IS学園⇨IS幼稚園 part 1

IS学園に男子が増え、少数派ながらも歓迎された事ですっかり馴染んでいた今日此の頃、今日もIS学園は平和で活気ある日常を送る・・・・はずだった。

 

ワーワー、キャッキャッ、

 

ある日の事、学園では普段聞き慣れない声色の叫び声が何重にもなって聞こえる。

 

一夏「・・・・・、ハァ、どうしてこうなった・・・。」

 

一夏は、この騒ぎの中一人でため息をついていた。

それもそのはず、実を言うと、一夏以外の生徒が全員5歳児となっていたのだ。

この様な事態を引き起こせる人物は、この世界ではたった一人しかいない・・・・。

 

千冬「束の奴、また面倒を起こしてくれたな・・・・。」

 

ジル「幸い、一夏だけ無事だったけど。」

 

山田先生「多分それも考えたんじゃないでしょうか?」

 

教師陣も頭を悩ませる。

さて、どうしてこうなったのを話すとしよう。

 

 

Side一昨日

 

一夏「うーん、難しい問題だよな。」

 

一夏は時事問題の学習がてら、学園の新聞を読んでいた。

 

ビリー「よう一夏、えらく真剣に読んでるな。」

 

一夏「ああ、ちょっとこの問題が気になってな。」

 

一夏が読んでいたのは、所謂待機児童の問題について書かれている記事だ。

 

箒「待機児童か、そういえば最近よく聞くようになったな。」

 

エクトル「そうだね、保育園に行くのは当たり前のように思ってたけど。」

 

アルゴス「社会、家庭ともに事情が変わって来てるもんな。」

 

ラウラ「保育園、私はよく知らないな。」

 

シャルロット「小さい子供を持つ親が、お仕事の間とかに子供を預けるところだよ。」

 

セシリア「職員が不足したり、許容が一杯になったりして、そこに入れない子供を待機児童と言うのですわね。」

 

鈴「よく考えたらホント大変よね。」

 

ラウラ「成る程、将来一夏と子供を作る頃には解決してほしいものだな。」

 

箒・セシリア・シャルロット「(い、一夏(一夏さん)との子供!?)」

 

途端に妄想劇が始まる。

 

レオ「おいラウラ、気持ちはわかるけど露骨過ぎんだろ(笑)」

 

簪「おーい、箒、セシリア、シャルロット、帰っておいでー。」パシパシ

 

箒・セシリア・シャルロット「はっ!?」

 

レベッカ「保育園かー、そういえばあたしとビリーの地元の保育園が職員不足で合併したって話があったわね。」

 

弾「何て言うか、色々大変なんだよな。」

 

のほほん「でも〜、私は保育園で働いてみたいな〜って思ったことあるよ〜。」

 

一夏「本音が保育園か、多分間違いなく大戦力だろうな。着ぐるみ姿が子供受けしそうだし。」

 

本音以外「確かに・・・・。」

 

一夏「子供かー、大変かもしれないけど、俺はたくさん欲しいなー。(前世の孤児院を思い出すぜ。)」

 

ラウラ「本当か!?ならこれから私と・・・。」

 

一同「こらこら!!」ツッコミ

 

千冬「ボーデヴィッヒ、それはまだ許さんぞ・・・・。」ボキボキ

 

ラウラ「きょ、教官!!失礼しました!!」アタフタ

 

 

Side束

 

束「ふっふーん、成る程。」

 

実を言うと、束は定期的に学園の様子を密かに見る時があり(主に一夏)、この日はたまたま見ている日だったのだ。

 

束「いっくん、子供がたくさん欲しいんだね、いいよいいよー。束さんに任せたまへー。」

 

束は何やら怪しげな薬を作り、それを、後日一夏の全生徒のマイボトルに混入させた・・・・。

トリックはこの際省略しておこう。

 

束「明日はいっくんの一日保父さんが見られる、グヘヘ・・・・。」

 

そして次の日の朝・・・・、

 

一夏「ふあぁぁ、おう、みんなおはよ・・・んん!?誰だ君達は!?」

 

一夏が起きると、そこには見知らぬ幼い男の子たちの姿が。しかも何も着ていない。

 

「おはよう、って、お兄ちゃん誰?」

 

「あれ、ここどこかな?」

 

「ここ、俺の家じゃない!」

 

「父さんと母さんは?」

 

「お腹すいた〜。」

 

一夏「お、おはよう、とりあえず落ち着こう。」

 

一夏は落ち着いて深呼吸をする。そんな時、千冬からの電話が来た。

 

千冬「お早う織斑、今そっちはどんな状況だ?」

 

一夏「あの・・・、よくわからないんですけど、俺たち男子の部屋に、幼稚園児くらいの男の子が5人いて。」

 

千冬「やはりそっちも同じ状況か。とりあえずそいつらを連れてアリーナへ来い。」

 

一夏「・・・わかりました。(この子達、まさかとは思うが。)」

 

とりあえず服を着替え、男の子達にはとりあえずタオルを身体に巻いてもらい、連れて行くことに。

 

 

 

 



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IS学園⇨IS幼稚園 part 2

アリーナに全員集合した一夏と教師陣は、一先ず状況を整理する。

 

一夏「うーん、信じられない事ですが、ここにいるのは全員学園の生徒なんですね。」

 

千冬「ああ、間違いない。」

 

山田先生「それにしても、篠ノ之博士のイタズラには困ったものですね。」

 

ジル「ホントよ、うちのバカ(ビリー)が子供になったら益々手がかかるし。(一夏も子供だったら良かったのにな〜。)」

 

※幼児化した生徒にはそれぞれ名前の後ろに(5歳)とつけておきます。

 

 

一夏「考えてもあれだし、とりあえずお互い自己紹介しとこうか。」

 

一夏は幼児化生徒に向き直り、キャッキャ、ワイワイする中自己紹介をする。

 

一夏「みんな、初めまして。僕は、一夏って言います、よろしくお願いします。」

 

妙に緊張しながら自己紹介を終えた一夏。

 

一同「よろしくおねがいします!!」

 

一夏「それじゃあ、みんなのお名前を、僕に教えてくれるかな?」

 

山田先生「一夏君、なんか妙にサマになっていますね。」

 

千冬「うむ、流石だな。(こんな一夏は新鮮だ、癒される。)」

 

ジル「いい保父さんね。」

 

一夏の子供への声かけに感心する教師陣。

 

弾(5歳)「おれ、弾って言うんだ。」ニッ

 

エクトル(5歳)「初めまして、エクトルです。」ペコリ

 

アルゴス(5歳)「アルゴスだぞ、腹減った。」グデっ

 

レオ(5歳)「レオだぜ!俺ってイケてるだろ〜。」キラーン

 

ビリー(5歳)「俺はビリー、バトル大好きだ!」シャキーン

 

一夏「男の子達元気だね〜、じゃあ次は女の子。」

 

箒(5歳)「は、初めまして、ほ、ほうき。」モジモジ

 

セシリア(5歳)「セシリアでございます。」ペコリ

 

シャルロット(5歳)「シャルロットです。」ニッコリ

 

ラウラ(5歳)「ラウラだ、よろしくたのむ。」ジーッ

 

鈴(5歳)「りんよ!よろしくね!!」キラッ

 

簪(5歳)「えっと、か、かんざし。」カアァァ

 

レベッカ(5歳)「レベッカよ、遊ぼうお兄ちゃん!」ピョンピョン

 

のほほん(5歳)「わたし〜、ほんねっていうの〜。」ポヤ〜

 

一夏「(本音だけ違和感ないな・・・・。)」

 

とりあえず一通り自己紹介を終え、次の問題に入る。

 

一夏「とりあえず着るものだよな。どうしようかな。」

 

すると、上空から束が飛んで来た。

 

束「ヤッホーい、いっくーん!!」

 

一夏「た、束さん!?」

 

束「どお?いっくんが願ってた通り、たくさん子供が出来たよー!」

 

一夏「これアンタの仕業かよ!!」

 

束「はい、みんなのお着替えだよ〜。」

 

一夏「ああ、助かりました。・・・って、そうじゃなくて!!」ツッコミ

 

千冬「束、生徒を幼児化させるとはどういう事だ!?」

 

束「いんや〜、いっくんの保父さん姿を見たくなっちゃったから、てへ!」

 

ジル「てへ!で済む問題じゃないでしょアンタ!!」

 

山田先生「そ、そんなことより、どうすれば皆さんを元に戻せるのですか?」

 

束「大丈夫!明日の朝には元に戻るよー、だから、今日一日頑張ってねー!」

 

そういうと、束は去っていった。

 

ジル「・・・・どうすんのよ、アタシ幼子の面倒なんか見た事ないわよ。」

 

千冬「いや、私に聞かれても・・・・。」

 

一夏「そういう事なら、俺に任せてください。(前世での孤児院じゃ幼子の面倒見てたしな。)」

 

山田先生「織斑君、子供のお世話の経験があるのですか?」

 

一夏「そういうわけじゃないけど、将来子供はたくさん欲しいと思ってたのは事実なので。」

 

千冬「そ、そうか。(一夏が子供好きとは、家事に加えてまた一つ苦手な事を任せてしまうな。)」

 

ジル「じゃあ任せたわよ。」

 

アルゴス5歳「なー、一夏兄ちゃん、俺たち腹減った。」

 

のほほん5歳「わたしも〜。」

 

一夏「そうだね、とりあえず朝ごはんにしようか。」

 

一夏はみんなを食堂に集める。普段の学食は幼児には重たいので、一夏は山田先生と一緒に食堂で子供達のための料理を作る。

 

山田先生「それにしても、織斑君は料理上手ですね。」

 

一夏「いえ、山田先生も手伝ってくれて助かります。(姉さんに頼むわけにはいかなかったからな。)」

 

料理を完成させ、テーブルにみんなを座らせる。

 

一夏「みんな、手を合わせて、さんはい!」

 

5歳一同「いただきます!」

 

山田先生「織斑君、保父さんみたいでいいですね!」

 

千冬「うむ、流石だな。」

 

ジル「いいわあ、将来一夏と結婚したら絶対苦労しないわね!」

 

千冬「むっ、貴様、一夏と子供を作る気か!?」

 

ジル「もちろん、一夏がアタシを選んでくれたらね。」

 

ビリー(5歳)「おねーちゃん達、一夏兄ちゃんが好きなの?」

 

千冬「っ!?いや、何というか、その。」

 

千冬は子供からの不意の質問に戸惑う。

 

ジル「ええ、そうよ!(ビリー、案外可愛かったのね。)」

 

レオ「えー、一夏兄ちゃんモテモテじゃん!」

 

一夏「ま、まあな、ハハハッ。」

 

山田先生「ふう、近頃の子はませていますね。あら?」

 

山田先生が向く方には、頰を膨らませた一夏の恋人候補四人の姿が。

 

箒(5歳)「ふ、ふんだ!別に羨ましくないもん!」

 

セシリア(5歳)「むぅ、私がいますのに〜。」

 

シャルロット(5歳)「プゥ〜、負けないもん!」

 

ラウラ(5歳)「一夏にいちゃんと結婚するのは私だよ!」

 

千冬「・・・どうやら好意はリセットされていないようだな。」

 

食事の後は自由時間に入る。

 

のほほん(5歳)「一夏お兄ちゃんと遊ぶのだ〜。」

 

弾(5歳)「鬼ごっこしようぜ!」

 

一夏「じゃあ、俺と先生達が鬼だ!」

 

山田先生「えっ、私たちも?」

 

ジル「いいじゃない、でも千冬、子供泣かしちゃダメよ!」

 

千冬「余計なお世話だ。」

 

鈴(5歳)「わー、逃げろー!」

 

レベッカ(5歳)「ここまでおいでー!」

 

子供達は逃げ足がとても早い。

 

一夏「待て待てー!!」

 

エクトル(5歳)「わわっ、捕まっちゃった!」

 

一夏はついて行けたが、

 

千冬「ハァ、ハァ、意外とかわされるな。」

 

ジル「一夏よく捕まえられるわね。」

 

山田先生「織斑君がいなかったら、もっと大変だったかもしれませんね。」

 

教師陣はクタクタになった。

 

そして夕方になると、お風呂の時間に。勿論男女別々だが。

 

Side男子

 

ビリー(5歳)「いっちばーん!!」

 

弾(5歳)「泳ごう!!」

 

アルゴス(5歳)「おりゃー!!」

 

浴槽に飛び込む数名。

 

一夏「こら!お風呂はプールじゃないんだぞ!」

 

レオ(5歳)「わー、一夏兄ちゃんの✖️✖️✖️✖️でっけ〜!」

 

エクトル(5歳)「ホントだ、象さんみたい!」

 

一夏「こらこら、変なこと言わないの!」

 

賑やかだが、少人数なのでまだいい方である。一方で、

 

 

Side女子

 

のほほん(5歳)「う〜み〜は〜ひろい〜な〜、おおき〜い〜な〜!」

 

千冬「ハァ、交代で入るから大変だぞ。」

 

簪(5歳)「山田せんせーの体洗ってあげよう!」

 

シャルロット(5歳)「ぼくもー!」

 

セシリア(5歳)「わたしも〜!」

 

山田先生「やっ、ちょっと、あははっ、くすぐったい!!」

 

多くの5歳児に石鹸塗れの体を手で洗われる山田先生。

 

レベッカ(5歳)「いったーい、転んだ〜!」ビエーン

 

鈴(5歳)「だいじょうぶ〜?」ナデナデ

 

ジル「あら、いつもなら修羅場なのにね。」

 

いつもはビリーを巡って張り合う二人も、今は普通に仲良しだ。

 

こっちはこっちで手がかかるようだ。

 

色々とあったが、無事にその日を終え、翌朝、みんな無事に元に戻っていった。

ちなみにみに、今日1日の映像を束はしっかり録画して保存し、保父さん同然の一夏と、5歳の箒をじっくり見て堪能したという。

 

 

 

 



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一夏の密かなお楽しみ

千冬「今日の授業はここまでだ、課題を来週までに各自達成してレポートを提出するように!!」

 

一同「はい!!」

 

iS学園では今日も濃密な授業が行われていた。月末には大抵の者はクタクタになる。

 

ビリー「はーっ、やっと終わったぜー。」

 

のほほん「うーん、疲れたよ〜。」

 

弾「にしても、ここまで大変だとはなあ。」

 

レベッカ「ホントよね。」

 

だが、皆疲れている中で、一人様子がおかしい者が一名。

 

一夏「よう!今週もお疲れ!!」ニコニコ

 

皆がクタクタの中、この男だけは、ここ最近週末を迎える度に笑顔になる。

 

箒「一夏、お前疲れていないのか?」

 

一夏「おう、全く。」

 

鈴「ホントアンタは余裕ね。」

 

セシリア「流石は一夏さんですわ。」

 

一夏「いや、それ程でも。」

 

エクトル「・・・君、最近週末迎える度に笑顔じゃないか?」

 

エクトルが神妙な顔で質問する。

 

一夏「いや、そんな事ないぞ。」

 

ラウラ「何だ?嫁が隠し事とは感心しないな。」

 

シャルロット「嫁の隠し事って・・・・。」ツッコミ

 

アルゴス「そういやお前、最近週末迎える度に翌日の休みに一人で出かけてるよな。」

 

一夏「ああ、時々買い物に行くのが楽しみでな。」

 

簪「買い物でそんなニコニコするの?」

 

一夏「いや、いつもこんな感じだぞ。」

 

レオ「買い物とか言って実は誰かとデートとかじゃねえのか?」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!!!」ギロッ!!

 

一夏「馬鹿、買い物中にデートする訳ねえだろ。(レオの奴妙な事言いやがって!)」

 

一同「(怪しい・・・・・。)」

 

一夏「とりあえず今週末も買い物に行くから、そういうことで!」

 

一夏はそう言って足早に部屋に戻る。

 

 

そして翌日・・・

 

一夏「ようし、張り切って行くか!!」

 

皆に詮索される前に早起きして学園を出た。

 

1時間後、

 

 

エクトル「みんなお早う、あれ、一夏は?」

 

箒「まだ来てないが、部屋にいないのか?」

 

アルゴス「いや、俺らが起きた時にはもういなかったぜ。」

 

セシリア「随分お早く出られましたのね。」

 

ラウラ「ううむ、行き先も言わずに言ったとなると・・・・。」

 

シャルロット「怪しいよね。」

 

簪「でも、一夏の日頃の性格考えたら、デートの可能性はないと思うけど。」

 

ビリー「俺もそう思うな。あの野郎に限って恋愛の秘密はありえねえだろ。」

 

鈴「そうね、どっかの馬鹿とは違うもん。」

 

弾「・・・・ああ、そうだな。」

 

レオ「全くだぜ。」

 

レベッカ「・・・・・。」

 

みんなビリーの方を向く。

 

ビリー「ん?どうしたんだ妙な面して?」

 

一同「いえ、別に・・・・・。」

 

千冬「おはよう諸君。む、織斑はいないのか?」

 

一同は一夏が一人で朝早く出て行ったことを千冬に話す。

 

千冬「ふむ、たしかに妙だな。」

 

楯無「だったら、確かめてみない?」

 

楯無が唐突に現れる。

 

アルゴス「楯無さん、脅かさないでくれよ。」

 

セシリア「お待ちください、このパターン何処かで。」

 

シャルロット「まさかまた覗き見するの?」

 

楯無「鋭いわね!そう、一夏君を監視できるシステムを作っておいたのよ!!」

 

弾「プライベートもクソもねえなおい。」

 

簪「お姉ちゃんいつか捕まるわよ。」ハァ

 

楯無「でもー、一夏君の秘密って、気にならない?」

 

エクトル「気にならなくはないですけど。」

 

レベッカ「確かに、アイツいつも飄々としてるし。」

 

鈴「弱みを見せないから逆に気になるわよね。」

 

レオ「ま、少なくとも一夏ラバーズは気になってるようだしな。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「!!!!」コクコク

 

千冬「更識、何をしでかした、と言いたいが、コホン、姉としても気になるな。」

 

楯無「てな訳で、視聴覚室にレッツゴー!!」

 

その頃一夏は、

 

 

Side一夏「(さてと、買い物を始めますか。終わったらあそこに行こう!!)」ルンルン

 

監視されているとも知らず、上機嫌で買い物をする。

 

 

Side 視聴覚室

 

ビリー「なんだよ、本当に買い物じゃねえか。」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「ほっ。」

 

レベッカ「ま、そうよね。アイツが自分を好きな女の子を蔑ろにする筈ないでしょ。」

 

アルゴス「楯無さん、あとで一夏に謝りましょうね。」

 

楯無「まあまあ、最後まで見てみましょうよ。」

 

弾「まだ続けるんすか?」

 

簪「時間の無駄よこんなの。」

 

鈴「本当よね、ってあれ?」

 

モニターを見ると、買い物を終えて一度帰宅した筈の一夏が、再び外出した。

 

エクトル「これは、また別の用事で出かけてるのかな?」

 

レオ「だが、電話で誰かと話してる様子はねえから、デートじゃねえな。」

 

Side一夏

 

一夏「よーし、今日もここで疲れを癒しますか!!」

 

一夏は何と、最近自分の町内にできた猫カフェに通っていたのだ。

 

店員「いらっしゃいませ。あっ、一夏さん!いつもご贔屓にありがとうございます!」

 

一夏「こんちわーっす!今日はどの子にしよっかニャー?」ニコニコ

 

 

Side視聴覚室

 

箒「これは、最近できた猫カフェというものでは?」

 

アルゴス「あー、そういやアイツ猫好きだ!!」

 

弾「マジかよ!初めて知ったぞ!」

 

エクトル「そういえば、まだ男子が3人の時に一夏が校内で猫を拾って飼ったことがあったね。」

 

レベッカ「そうなの、アイツ可愛いところあるじゃん!」

 

ビリー「そんな珍事があったのかよ。」

 

千冬「(・・・・成る程、そういう事だったのか。)」

 

シャルロット「一夏、幸せそうだね。」

 

セシリア「見てるこっちも癒されますわ。」

 

ラウラ「猫カフェか、行ってみたいぞ。」

 

レオ「こりゃあかなりのギャップ萌えだな。」

 

鈴「レオ、アンタよくそういう言葉知ってるわね。」

 

簪「いいなあ、猫に好かれるのって。」

 

 

Side一夏「やあショコラ!今日も可愛いにゃ!」

 

一夏はショコラの頭をなでなでする。

 

ショコラ「ミャー。」

 

すると、別の猫が一夏の顔に頭を擦り付ける。

 

一夏「わっ、バニラ。くすぐったいニャー!」

 

バニラ「ウミャ〜。」

 

頭の上に飛び乗る猫も。

 

一夏「おう、トラ吉、頭上がお気に入りなのかにゃ?」

 

トラ吉「ニャニャッ。」

 

そうこうしているうちに一夏の席には次々と猫が寄ってくる。

 

一夏「にゃはは〜、こりゃパラダイスだにゃ!」ホクホク

 

Side視聴覚室

 

千冬「(一夏、この可愛さは反則だろ。)」

 

千冬は鼻血を垂らしそうになった。

 

鈴「語尾がニャーって(笑)」

 

楯無「これは特ダネね!」

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「可愛い♡(ですわ♡)」

 

一夏の恋人候補はうっとりする。

 

レベッカ「アンタら、わかるけど鼻血拭きなさいよ(笑)」

 

簪「でも、どうする?秘密を覗いちゃったし。」

 

簪は申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

レオ「心配すんなって、アイツなら快く許してくれるだろ。」

 

ビリー「だといいがな。」

 

エクトル「ま、その時は楯無さんに責任をとって貰えばいいし。」

 

楯無「えー、ちょっと!?私だけ!?みんなも見たでしょ!」

 

千冬「発端は貴様だ馬鹿者。織斑が戻ってきたら謝罪するよう命ずる。」

 

癒されながらもちゃっかりいつもの調子に戻る千冬。

 

楯無「アルゴスくうーん。」ウルウル

 

アルゴス「楯無さん、アンタが悪い。」

 

簪「お姉ちゃん、アルゴスお兄ちゃんのいうとおりよ。」

 

楯無「・・・・はーい。」

 

 

翌日、事情を知った一夏は顔を真っ赤にして恥ずかしがったが、後日みんなを猫カフェに連れて行く事で解消した。

 

ちなみに尾行を考案した楯無は、反省文を山ほど書かされたらしい。

 



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異世界での冒険 part1

一夏「ん・・・・もう朝か、今日もがんばろう、ってあれ?ここどこだ!?」

 

 

 

一夏はいつものIS学園の寝室ではなく、木と煉瓦でできた、どこか素朴な田舎の民家のような部屋にいた。

変わっていたのは部屋だけでなく・・・

 

 

一夏「ん?何だこの格好。」

 

RPGの主人公の初期状態のような服装に身を包んでいることに気づく。何より問題なのは、愛機白式がその腕に無いことだ。

 

 

部屋の壁には剣と盾、鎧、それと不思議なペンダントがあった。

 

 

一夏「ここってまさか、異世界か?いや待て、死んでもないのにそんな事、あ、そういや俺はもともとISの世界に転生したんだっけ。」

 

 

色々と状況が飲み込みづらいところだが、とりあえず支度して家を出ることに。

 

 

外に出ると、オープンワールド感あふれる青空の下に森と草原が。

 

 

 

一夏「とりあえず腹減ったな。こういう時は狩猟や採集だな。」

 

 

モンハンの経験を活かし、狩猟で肉、採集で山菜や果物を得た。

 

飲み水の確保も兼ねて川で釣りをし、魚をゲットすると、焚火をして一息つく。

 

 

一夏「そういやほかのみんなはどうしてんだろうな。」

 

 

ぼんやりと考えながら肉や魚を焼いていると、草陰から音がする。

 

 

一夏「誰だ、そこで何をしている?」

 

 

一夏が声をかけると、そこから黒い影が飛び出してきた。

 

 

「シャアアアッ!!」

 

 

出てきたのは・・・・・

 

 

一夏「・・・あれ、ラウラ?」

 

 

ラウラ「い、一夏!?」

 

 

なんとそこにいたのはラウラだった。ただ一つ疑問なのは彼女の格好である。

 

 

一夏「ラウラ、こんなところで何やってんだよ。それにその可愛い格好はどうしたんだよ。」

 

 

ラウラ「いや、その、これはだな。」モジモジ

 

 

ラウラは黒猫の耳と尻尾、肉球入りの手足というコスプレ同然の格好だった。

 

 

一夏「これ、本物だったりするか?」

 

尻尾を軽く握ってみる。

 

ラウラ「ギニャァ!」

 

一夏「すまん、つい。」

 

気を取り直して本題に入る。

 

ラウラ「朝起きたら、なぜかこの姿で、『ケット・シー』という種族の一員となっているのだ。」

 

 

一員「それゲームでよく聞くな。ってことはやっぱり俺たちゲームの世界に来てしまったわけだな。」

 

 

ラウラ「ゲームの世界か。だが今回は突如こうなったぞ。それにISもない。どうしてだ?」

 

 

一夏「俺にもさっぱりだ、とりあえず他のみんなと合流しよう。」

 

 

ラウラ「そうだな、だがまずは、その、」ギュルルルル

 

 

ラウラはお腹を空かせてここまでやってきたようだ。

 

 

一夏「おう、遠慮なく食ってくれ。」

 

 

ラウラ「ありがとう、はむ、もぐもぐ、うまいな!!さすがは私の嫁だ!!」

 

 

腹ごしらえを終え、出発することに。

 

 

ラウラ「それで、どこに行けばいいのだろうか?」

 

 

一夏「今は手掛かりがないし、とりあえず村か街を探そうぜ。」

 

 

ラウラ「ふむ。」

 

 

ラウラは森の木の上に素早く登り、遠くを見渡す。ケット・シーだからか、素早く登れた。

 

 

ラウラ「このまままっすぐ行くと町がありそうだぞ。」

 

 

一夏「よし、そこを目指すか。」

 

 

森をまっすぐ進もうとしたその時、そこにモンスターたちが出現。

 

 

ラウラ「敵襲だぞ!!」

 

 

一夏「ちっ、数は向こうが上だな。」

 

 

一夏は剣を抜き、ラウラも身構える。

 

 

どうにか応戦するも、敵が次々と襲い掛かってくる。

 

 

一夏「くっ、きりがない!!」

 

 

その時、どこからか矢が飛んできた。見事な弓さばきで次々と敵をとらえる。

 

別のところからは、斧がブーメランのような軌道で飛来し、敵を倒す。

 

 

エクトル「一夏、ラウラ!!」

 

 

レベッカ「アタシたちも加勢するわよ!!」

 

 

 

一夏「エクトル、レベッカ!!」

 

 

ラウラ「助かるぞ!!」

 

 

4人になったことで勢いづき、そのまま敵を鎮める。

 

 

エクトル「いやーよかった、ここで会えるなんて!!」

 

 

エクトルは気品あるアーチャーの姿だ。

 

 

レベッカ「いきなり変なトコにきたからびっくりしたわよ。」

 

 

レベッカはアマゾネスのようなワイルドセクシーな姿である。

 

 

 

一夏「4人パーティーはRPGじゃ定番だな。」

 

 

エクトル「そうだね、とりあえずバランスはとれてるかな。」

 

 

レベッカ「ていうかこの組み合わせも珍しいわね。」

 

 

ラウラ「むう・・・・。」

 

 

ラウラはさっきからレベッカの胸を凝視している。

 

 

レベッカ「ラウラ、かわいいわね!」

 

 

レベッカは思わずラウラを抱きしめる。

 

 

ラウラ「ぎゅむむ。」

 

 

一夏「(レベッカ、エロイなあ。ビリーの奴、なんでレベッカの魅力がわからないのか不思議だぜ。)」

 

 

一夏はレベッカのセクシーな格好が気になるようだ。

 

 

エクトル「一夏、わかるけどほどほどにね。」

 

 

レベッカ「イヤン、一夏ったら!」ニヤニヤ

 

 

ラウラ「一夏、何を見ているのだ。」ジトー

 

 

一夏「悪い悪い、じゃあ急ごう。」

 

 

 

珍しい組み合わせながらもここから冒険が始まる。

 

 

 

 

 

 



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異世界での冒険 part 2

一夏、ラウラ、エクトル、レベッカの4人は森を抜けて街につく。そこは中央に大きな城がそびえ立つ王都のようだ。

街だけでなく田舎の地区や地下もある。

 

一夏「来たぜ、RPGといやあ王都は定番だな!」

 

レベッカ「うんうん、この雰囲気はテンション上がるわ!」

 

比較的ゲーム好きな一夏とレベッカはノリがいい。

 

エクトル「とりあえず宿屋に行こう。」

 

ラウラ「私も少し休みたいぞ。」

 

一行は宿屋に行こうとするが、ある事に気づく。

 

一夏「そういや俺、金持ってねえな。」

 

エクトル「あ、僕も。」

 

ラウラ「そもそもどうやって手に入れるのだ?」

 

レベッカ「武具以外の持ち物は一夏の作ってくれた携帯食料以外ないわね。」

 

 

どうしたものか。するとどこから喚き声が。

 

 

「おいテメエ!何しやがんだコラァ!」

 

「うっせー!テメェが悪いんだろうが!」

 

「杖を返して貰えないかな?」

 

 

一同「?」

 

 

声のする方を見ると、そこにはガラの悪い男数人がおり、それに対する相手は男一人と少女が一人だった。

 

 

一夏「あっ、ビリーじゃねえか!」

 

レベッカ「後ろには、シャルがいるわ!」

 

ビリーは海賊のような格好をしており、シャルロットは白いローブを纏っている。

 

 

ビリー「オラァ!」

 

男「グフッ!」

 

ビリーは問答無用とばかりに持っていた槍で攻撃した。

 

男「野郎!やっちまえ!!」

 

 

ラウラ「乱闘が起きだぞ。」

 

エクトル「よし、加勢しよう!」

 

 

一夏達も武器を抜いて戦闘に加わる。数は多かったがものの数分で敵を全て追い払った。

 

 

ビリー「一夏!それにお前らも無事だったか!」

 

一夏「ああ、にしてもビリーは海賊でシャルは白魔道士か。二人共よく似合うぜ!」

 

シャルロット「えへへ、そうかな?」

 

レベッカ「それより大丈夫だった?」

 

ビリー「ああ、実はシャルの白魔法の杖を金目の物と思ったのか、取り上げやがってよ。」

 

シャルロット「ビリーが来てくれなかったら大変だったよ。」

 

ラウラ「なるほど、ここでは荒くれ者に気をつけるべきなのだな。」

 

合流したところで、一夏達は事の経緯とこれからの事を話し合う。

 

 

ビリー「宿屋代か、俺一応海賊だけどまだそんなに持ってねえぞ。」

 

シャルロット「僕も、教会から出るとき司教様に頂いたくらいしか。」

 

二人の額を合わせても、とても全員の生活を賄える額ではない。

 

 

「心配するなよ、俺らがいるぜ。」

 

一同「?」

 

振り返るとそこにはレオと鈴がいた。

 

一夏「鈴、それにレオも!」

 

レオ「ようみんな!お互い変わったカッコだな。」

 

鈴「アタシは行商人で、レオはシーフなのよ。」

 

ビリー「なるほどな、お前ららしいぜ。」

 

 

レオはシーフのスキルにより悪党から金品を盗む事ができ、鈴は現実世界で客商売を手伝っていた経験から行商人で稼いでいたのだ。もちろん二人共戦闘スキルも兼ね備えている。

 

二人の稼ぎにより、とりあえず数日は宿屋にいられる事になり、一同は旅の疲れを癒やす。

 

 

 

翌日、一同は装備を整えるべく武具屋に行く。

 

 

武具屋の主人「いらっしゃい!さあ見ていってくれ!」

 

中にはRPGならではの武器や防具がズラリと並んでいる。

 

 

一夏「さーて、どれにするかな?」

 

鈴「どうせならいいの買いなさいよ。アンタが一番お金かかるけど。」

 

ラウラ「そうだな、私やレオは軽装で済むし。」

 

 

一夏はRPGでいう勇者のポジションなので、武具への出費は多い方である。

 

 

武器を選んでいる中、ある事に気がつく。

 

ビリー「これ、明らかにこの世界のものじゃねえな。」

 

よく見ると、RPGではなかなか見かけない日本刀が置かれている。

 

 

武具屋の主人「おお兄ちゃん、それはなかなかお目にかかれねえレア物だぜ。最近うちに来た鍛冶職人が作ったのさ。しかもそいつはあんたらくらいの年の女だが、スジが良くて驚いたぜ!」

 

日本刀を作るとなると、思い当たる人物は一人しかいない。

 

一夏「店主、ちょっとその鍛冶職人を呼んでくれないか?詳しく話を聞きたい。」

 

 

種人に呼ばれて奥から出てきたのは、

 

 

シャルロット「あ、やっぱり箒だ。」

 

箒「みんな!まさかここで会うとはな!」

 

鍛冶職人の姿の箒だった。ちなみに日本刀で戦う侍の戦闘スキルも兼ね備えている。

 

主人に事情を説明し、箒を借り出す事に。

 

 

さらに回復アイテムを販売する薬屋では、

 

 

簪「いらっしゃいませ、ってみんな!どこに行ってたの?」

 

レオ「それはこっちのセリフだ。」

 

箒「どうやら皆異なる状況に置かれていたらしいぞ。」

 

 

街で薬剤師兼店長の簪は、従業員にしばらく店を留守にすることを伝え、一行に加わる。

簪は妖精の種族スキルがあり、高い知性で仲間をサポートできる。

 

一夏「これで大分見つかったな。」

 

残るはネロ、アルゴス、弾、セシリア、本音の五人だが。一体どこにいるのだろうか。

 

 

 



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異世界での冒険 part 3

セシリア「ん・・・・もう、朝ですのね。そろそろ、あら?」

 

セシリアは目を覚ますと、あたりの異状に気づく。

そこはIS学園の寮ではなく、王族の寝室のようだ。

 

セシリア「ここは、イギリスではございませんわね。これは夢でしょうか。」

 

セシリアはベッドから出て身支度を済ませる。

 

「王女様、おはようございます。」

 

部屋を出ると、数人のメイドと、大臣らしき男が出迎えた。

 

セシリア「王女、私がですか?」

 

セシリアは夢にしてはあまりにも出来すぎた世界観に戸惑う。

 

大臣「おや、どこか具合でも?」

 

セシリア「あ、いえ、何でもないですのよ。」

 

とりあえず話を合わせることにした。

 

朝食を済ませ、午前の勉学を終えたあと、王と王妃に連れられ、会議室に。ちなみに勉強内容はセシリアの習ってきたののではなかった。

内容からして、セシリアはここが別の世界である事がわかり、

 

セシリア「(ここが異世界なのでしたら、一夏さんもいらっしゃるのでしょうか。)」

 

早くも一夏に会いたくなる。

 

王「セシリアよ、今朝もご苦労だな。」

 

王妃「今日はあなたにも会議に出てもらいたかったの。」

 

セシリア「いえ、お父様、お母様。」

 

とりあえず話を合わせていくことに。

 

 

Side一夏

 

異世界に来て二日目、一夏達は残る4人の捜索をすべく情報収集を行っていたが、未だ手がかりがない様子。

 

一夏「ふう、なかなか見つからないもんだな。」

 

簪「そもそも、アルゴスお兄ちゃん達はどんな職業かわからないし。」

 

ビリー「街とは違う場所にいるってのも考えられるよな。」

 

 

そう、基本的にこの世界では出会うまでお互いの情報を確認できない。

 

 

 

箒「だが、別の場所と言ってもどこから行けばよいのだ?」

 

シャルロット「そうだよね、順番に行くにしても、あまりに広すぎるし。」

 

鈴「だったら、ギルドに行けばいいんじゃない?」

 

レオ「依頼内容に手がかりがあるかもな。」

 

一夏「そうだな、この街でずっと彷徨うよりはマシだな。」

 

 

一行はギルドに向かうことに。

 

 

クエストボードに色々な依頼があり、めぼしいものを探していると、ひとつ気になるものが。

 

 

 

 

依頼主 魔物使いの男

 

依頼内容 狼男の捕獲

 

 

『このあたりに狼男が出るらしいんだ!手懐けようにも凶暴すぎて俺一人じゃ手に負えないかもしれない!誰か助けてくれ。噂によると、そいつの普段の姿は昼間は白髪の屈強な男らしい。』

 

 

 

一夏「白髪の屈強な男って、これはアルゴスの可能性が高いな。」

 

 

レベッカ「だとしたら、狼男のアルゴスとやり合わなきゃなんないわけ?」

 

 

ビリー「それは大変じゃねえか?」

 

 

エクトル「でもそれは変身した後の話だろ。そうなる前に見つかりゃそのリスクはないだろう。」

 

 

箒「それはそうだな。」

 

 

鈴「ま、とりあえずは依頼主に会うのが一番ね。」

 

 

 

一同は依頼主である魔物使いの元へ向かう。その魔物使いは、

 

 

レオ「あれ、弾!?」

 

弾「おお、一夏たちじゃねえか!助かるぜ!」

 

弾は手懐けたモンスターを駆使して戦う魔物使いであり、自身は対魔物用の鞭で戦う。

 

弾「いやー、それにしても変な世界に飛ばされたな。」

 

一夏「ああ、おそらく俺たち専用機持ちが全員このゲームをクリアしなきゃならないようだ。」

 

簪「弾、依頼にある狼男は多分アルゴスだと思うの。」

 

弾「マジかよ、この世界であいつが魔物じゃ強いのは間違いねえな。」

 

箒「恐れるのも最もだが、私達で説得すればいいと思うぞ。」

 

レオ「そういや弾、俺たち以外に誰か見なかったか?」

 

弾「ああ、見たといやあ見たんだが。」

 

弾はなんだか気まずそうにしている。すると、

 

 

「あれれ~、おりむー達だー。」

 

ポンッと音がすると、そこには狐のきぐるみを着た本音の姿が現れた。

 

 

鈴「本音、アンタそのカッコ。」

 

ラウラ「いつもと変わらないな。」

 

 

本音「いや〜、気づいたらこの姿で、私、どうやらごったんのペットみたいなんだよ〜。」

 

シャルロット「ぺ、ペットって、まさか。」

 

ビリー「弾、てめえまさかその鞭で。」

 

あらぬ想像をしたメンバーは全員引く。

 

弾「ま、待て、誤解だ!女の子を鞭で叩いたりなんかしねえっての!」アタフタ

 

本音「そだよ〜、ごったんは私にご飯をくれたり散歩に連れて行ってくれるんだよ〜。」

 

 

一夏「なおさらペット扱いじゃねえか。」

 

弾「待てったら!」

 

一夏、本音以外「・・・・・。」ジトー

 

 

一夏「とまあ冗談はさておき、アルゴスらしき狼男を探しに行こうぜ。」

 

弾「冗談きついぜ一夏〜。」

 

こうして弾と本音が加わり、ほぼ全員が揃う。

 

 

その夜、一同はアルゴスを探しに出た。

 

弾「おい、何でわざわざ夜に探すんだよ。」

 

レオ「しかも満月だぜ。」

 

鈴「仕方ないでしょ、昼だと他の人が被害にあうかもしれないし。」

 

夜の中森に入り、アルゴスを捜索する一同。時々他の魔物に出くわすこともあるが、

 

一夏「どりゃあっ!」

 

箒「せやっ!」

 

 

武具屋で最上級の装備を揃えた一夏と箒を前衛に進んでいく。

 

ちなみに一夏はドラゴンアーマー、箒は源氏の鎧を装備している。

 

エクトル、鈴、レオ、ビリー、弾、レベッカは胸当てタイプの装備で素早さを活かす。

 

シャルロットと簪はローブを着ており、ラウラ、本音は獣人系なので人型の装備はできない仕様になっている。

 

 

ビリー「しっかし出てこねえなアルゴスの奴。」

 

簪「闇雲に探しても見つからないね。」

 

一夏「それじゃ、餌を置いてみるか。」

 

 

一夏は仕留めた動物と、肉系の食料をあちこちにばら撒き、その後、全員分散して隠れる。しばらく待つと、

 

「グルルル、ガアッ。」

 

 

狼男らしき魔物が手当たりしだいにむさぼり食う。

 

一夏「よし、今だ!」

 

 

前衛組で狼男を取り押さえる。

 

「グルルアァァ、ガウ!」

 

その顔はアルゴスだった、狼の耳と尻尾があるのを除けば。

 

シャルロット「任せて!」

 

シャルロットは白魔法で荒れるアルゴスの精神を鎮める魔法を使う。

 

 

アルゴス「ガアア、ああ、い、一夏?」

 

一夏「ふう、正気に戻ったな。」

 

簪「アルゴスお兄ちゃん、大丈夫?」

 

アルゴス「ああ、しかし何だこの世界は。」

 

一連の事を話すと、アルゴスは納得したようだ。

 

 

アルゴス「そうか、ありがとな。」

 

レベッカ「気にしないで。」

 

一夏「さて、依頼も達成したし、あとはセシリアとネロだな。」

 

アルゴスが加わり、物語は後半へと続く。

 

 

 

 

 



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異世界での冒険 part 4

少々変更しました。


セシリア「はあ、退屈ですわ。一夏さんに会いたいですわ。」

 

 

セシリアは自分の部屋の窓辺でたそがれていた。王女という立場故に行動範囲が限られており、外へ出るにも国王や王妃の許可が必要である。

 

城から出られないだけならまだいいのだが、セシリアはそれ以上に大きな問題に直面している。

 

国王は隣国との同盟を結ぶに当たり、隣国の王子との結婚をセシリアに勧めているのだ。

 

しかもその隣国の王子はなんと四つ子という極めて稀な家系である。

容姿も能力もそれぞれながら優れていると、国民からは評判なのだが、

 

大臣「王女様、いかがでございましょう?」

 

大臣が4人の王子の肖像を見せる。

 

王妃「まあ、すてきな王子様で何よりだわ!ねえセシリア。」

 

 

セシリア「・・・・・。」

 

国王「どうした、気に入らないのか?」

 

一夏を一途に想うセシリアが気にいるはずはない。

 

 

セシリア「私にはどの殿方も同じように見えてならないですわ。そもそも、同盟のための政略結婚なんて、ロマンがありませんもの。」

 

大臣「何をおっしゃいまする、この婚姻は国々の平和の象徴となるべきものでありますぞ。」

 

セシリア「それなら尚更簡単には決めかねますわ。世界が広いことを勉学で学んでおきながらこの選択肢はあまりにも狭すぎます。」

 

 

王妃「困りましたわねぇ、あなた。」

 

 

国王「うーむ、だがセシリアの心を無碍にはできぬのもまた確かだ。」

 

 

暫し考えた末、国王はある決断をする。

 

国王「よし、ならばこうしよう。我が国の闘技場にて強さを競わせ、最強の男となった者と、5人の王子とで決闘をさせよう。王子たちのうち誰か一人でもその最強の男に勝利すれば、王子と結婚、王子たちが負ければ、その最強の男と結婚、これならどうだ?」

 

 

大臣「そんな無茶な。」

 

セシリア「闘技場での最強の殿方、ですか(もしかしたらこれに一夏さんが参加するかも知れませんわ。ここはこれに賭けるべきですわね。)」

 

王妃「セシリア?」

 

 

セシリア「わかりましたわ、その条件を飲ませていただきますわ。」

 

 

国王「うむ、決まりだな。では早速闘技場にて候補の男を募って来るのだ!」

 

大臣「はっ、手配いたします。」

 

 

Side一夏

 

アルゴスと合流後、一夏達はクエストを次々とこなしていき、街の人々からの信頼を得ていく。

 

 

一夏「大分稼いだな、これでまた装備を強化するぜ!」

 

アルゴス「いいよなあ、カッコいい武具が装備できるのは。」

 

アルゴスはラウラ、本音同様獣人系なので人間用の武具は装備できない。

 

 

箒「だが戦闘能力や回復力が高いのは大きいぞ。」

 

簪「そうだよアルゴスお兄ちゃん、それに、もふもふがあるし。」

 

簪はアルゴスの尻尾をもふもふする。

 

 

アルゴス「はあ、まあいいか。」

 

エクトル「まあ人それぞれだよ。」

 

 

クエスト後の休憩で一夏たちは談笑する。

そんな中、街ではざわざわと人だかりができており、大臣と家来たちが演説を行う。

 

 

大臣「国民諸君、我々は国王陛下からの伝言を預かっている!よく聞くように!

 

陛下は我が国と隣国との同盟をお考えになられた。だが同盟には王女様が5人の隣国王子と結婚しなくてはならないとの事だ!」

 

 

エクトル「この国以外にも国があるとは驚きだね。」

 

レベッカ「そう考えたらこの世界広すぎない?」

 

 

大臣「だが、王女様は王子達以上の強さを持つ男を求めておられる!そこで、闘技場で力を示し、王子を倒した男には賞金が与えられ、さらにその男を王女様の婿とする!」

 

 

ビリー「マジか、そりゃあすげえ話だな。」

 

シャルロット「でも、王女様ってどんな人なんだろう?」

 

 

大臣「志願するものは闘技場へ参るように!以上!」

 

 

その話を聞いて、何十人もの男が闘技場へと走っていく。

 

弾「王女様の婿か、ゲームでもそれは憧れるぜ。」

 

鈴「少なくとも賞金は見逃せないわね。」

 

一夏「とりあえず行ってみるか。」

 

 

一夏たちも闘技場に向かう。

 

そこには屈強な男たちが密集しており、ピリピリした空気を感じる。

 

しばらくすると、演壇に国王があらわれる。

 

 

国王「よくぞ集まった!この戦いにおいて真の男を決する!力あるものこそ王にそして我が娘にふさわしいと余は思っている!それでは、我が娘の美しき姿を披露しよう!」

 

 

国王の合図とともに奥の出入り口の幕が下りる。そこには、美しいドレス姿のセシリアが。

 

 

アルゴス「王女様って、セシリアか!」

 

エクトル「何となく予想はしていたけどね。」

 

レベッカ「へー、ピッタリじゃん!王女様!」

 

簪「いいなあ、ドレス。」

 

 

男衆「おお、美しい!」

 

男衆「絶対に勝つぞ!」

 

 

一夏「・・・・・綺麗だな。」

 

一夏は思わず見とれてしまう。

 

箒・シャルロット・ラウラ「・・・・・一夏。」ジトー

 

一夏「はっ、すまん、つい!」

 

その時、セシリアは一夏達の存在に気づいた。

 

 

セシリア「あっ、一夏さんですわ!それに皆さんも!一夏さーん♡」

 

セシリアは大声で一夏を呼ぶ。」

 

一夏「セシリア!無事だったか!」

 

一夏は手を振って答える。

 

 

国王「む、セシリア。あの男と知り合いなのか?」

 

セシリア「はい、お父様。私は是非とも一夏さんと結婚したいのです!」

 

 

それを聞いた瞬間、国王と男衆全員が一夏を睨む。

 

男衆「何だあのガキは?」

 

男衆「王女様自ら結婚を申し込むだとぉ!?」

 

本音「ほえー、みんなおりむーを睨んでるよー。」

 

男衆「おいこら、テメエどうやって王女様と知り合ったんだ!」

 

男の一人が一夏に突っかかってくるが、

 

 

一夏「ちっ、面倒くせえ。」

 

男が掴みかかりそうになった瞬間、一夏はその手首を掴み、千切れんばかりにひねる。

 

 

男「ぎゃあぁぁぁぁ!?」

 

ボキッと音がした瞬間にその男は倒れ込んだ。その瞬間一夏はその男を蹴り飛ばす。

 

セシリア「素敵ですわ♡」

 

国王「むう、それなりに力はあるようだな。容姿もいい方だ。良かろう!もしあの男が勝利を収めたならば、結婚を許そう!」

 

セシリア「ありがとうございます、お父様!」

 

 

ビリー「こりゃあ、出るしかねえな一夏。」

 

弾「参加したいのは山々だが、相手が相手だしなあ。」

 

レオ「ここは譲るぜ勇者様。」

 

エクトル「そうだね〜、僕らが出る幕じゃないな。」

 

アルゴス「頑張れよ、リーダー。」

 

男性陣は苦笑いしながら一夏に譲る。

 

箒「ふう、まあいい。これはゲームだからな。」

 

シャルロット「変なこと考えないでよ一夏。」

 

ラウラ「お前は私の嫁なのだぞ。」

 

一夏「わかったわかった。」

 

簪「みんな、そんなに嫉妬しなくても。」

 

鈴「仕方ないでしょ、セシリアと合流するためなんだから。」

 

レベッカ「とりあえず観客席に行こ。」

 

 

一夏は単身闘技場での予選に挑むことに。

 

 

一夏「オラぁ!」

 

男「ぐへっ!」

 

一夏「次来いよ!」

 

 

男「ぶっ殺してや、はうっ!?」

 

一夏「弱いぜ!こんな程度か?」

 

男「野郎!」

 

男「こうなりゃ全員でやっちまえ!」

 

一夏に男衆全員が嫉妬したからか、戦いは急遽大乱闘形式に。

だが、日頃の訓練と過酷な戦火をくぐり抜けてきた一夏は、そんな彼らをまるで恐れない。

 

驚くべき事に、全員を一人で、しかも剣を使わず素手でなぎ倒していったのだ。

 

あっという間に男達は叩きのめされ、一夏が勝者となった。

 

国王「うむ、見事だ。だが王子達とはどうだろうか?」

 

闘技場の奥から4人の隣国王子が現れる。

 

王子1「ほう、平民にしてはなかなかだな。」

 

王子2「だが、貴様ではセシリア王女様には釣り合わないな。」

 

王子3「力も品格も私のほうが上だ。」

 

王子4「我々王族にかなうと思うのか風来坊。」

 

 

セシリア「まあ、なんて不遜な!王子とは名ばかりですわね。それに引き換え一夏さんは魅力的ですわ♡」

 

一夏「おい王子様達よ、さっさと始めようぜ。それと、調子に乗ってデカい口を叩かねえほうがいいんじゃねえか?」

 

王子一同「何だと!」

 

 

こうして、一夏と4人の王子との決闘が始まった。

 

 

 

 



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異世界での冒険 part 5

 王女セシリアの婿をめぐる闘技場での大会に飛び入り参加した一夏は、あっさりと男衆を叩きのめし、王子との勝負に挑むことになった。

 

 

国王「勇者一夏よ、これからお前には4王子それぞれとの一騎打ちを行ってもらう。見事全ての王子を倒したならば、セシリアとの結婚を許そう。だが、4王子の誰か一人にでも勝利できなければ、全て無に帰す。よいな?」

 

一夏「それはつまり、引き分けすら許されないという事ですか?」

 

国王「ふむ、その通りだ。お主なかなか鋭いな。」

 

 

国王は一夏のキレ者ぶりに多少なりとも感心する。

 

 

国王「では大臣に立会人をつとめてもらう。」

 

大臣「仰せのままに。では、4王子との決闘だが、一夏はそれぞれの王子が得意とする勝負に望んでもらう。王子はそれぞれ卓越した強みがございますからな。」

 

一夏「なるほどね。で、コイツらはそれぞれ何が得意なんだ?」

 

王子1「俺は剣術だ!」

 

王子2「私は知恵だ。」

 

王子3「僕は馬術だね。」

 

王子4「自分は、芸当です。」

 

 

一夏「ふむふむ、なんとなくイメージは湧いたな。」

 

 

Sideギャラリー

 

ビリー「一夏のやつ、いつになく余裕だな。」

 

簪「セシリアの心は既に一夏に向いてるしね。」

 

ラウラ「うーむ、一人目くらいなら私が戦ってもよい気がするが。」

 

箒「確かに、武力はどうにかできても、それ以外は自信がないぞ。」

 

アルゴス「だが、一夏は基本的にステータスバランスが取れてるしな。」

 

弾「案外あっさり終わるんじゃねえの?」

 

鈴「けど油断はできないわね。」

 

 

そんな話をしていると、観客の中から女性のひそひそ声が。

 

「ねえ、あの一夏って子、カッコよくない?」

 

「素敵な勇者様だわ!」

 

 

「それに、あの子のお友達の男の子もいい男ね♡」

 

「あの子達が王子になってくれないかしら?」

 

どうやら女性陣はほぼ全員一夏側の味方のようだ。

 

 

レオ「ま、一夏はイケてて当然だが、俺たちもあの王子たちよりイケてるのは間違いねえな。」キラーン

 

 

レベッカ「レオがそう言うと、なんか逆に説得力あるわね。」

 

 

 

Side一夏

 

 

大臣「では、まずはどなたから行きますか?」

 

第4王子「自分が行きます!兄弟の手を煩わせるまでもないでしょう!」

 

 

大臣「では、こちらで技を競っていただきます。」

 

そこにはジャグリングのボールが用意されていた。

 

また、大臣は何やら精霊のようなものを呼び出した。

 

大臣「この玉を使った曲芸を披露し、どちらが優れているかを、この芸事の妖精が審査し、評価が高い者が勝者です!」

 

一夏「なるほどね。」

 

第4王子「よし、自分から行かせてもらおう!」

 

第4王子はすぐさまボールを手に取り、高速での両手ジャグリングを披露する。

 

鈴「速っ!あの個数であれはなかなかできないわよ!」

 

さらに王子は体を180度翻し、後ろ向きでジャグリングする。

 

第4王子「どうだ!」

 

第4王子の出番はこれで終了。

 

箒「あの男、なかなか器用だぞ。」

 

エクトル「思ったより手強いね。」

 

大臣「では一夏よ、そなたの出番だ。」

 

一夏「ようし、そらっ。」

 

一夏はボールを手に取り、すぐに投げ上げる。そして、

 

一夏「ホイホイっと」

 

何と、一夏はすべてのボールを左手一つでジャグリングし始めた。

 

弾「マジかよ。」

 

簪「どこで覚えたの?」

 

観客は息を呑む。

 

 

更に一夏はボールを全て高く投げ上げ、

 

一夏「そおらっ、これでキメるぜ!」

 

右手に持っていた剣の刃の先端に、落ちてきたボールを乗せる。しかも縦一直線に重なった。

 

国王「何と!このような芸当は見たことがない!」

 

セシリア「素敵ですわ!」

 

第4王子「ぐ、武器まで使うだと!?」

 

そして、芸事の精霊の審判が下る。

 

精霊は一夏のそばに近づき、褒め称えた。

 

 

大臣「技の勝負、勝者は一夏!」

 

一夏「よし、まず一人!」

 

第4王子「ま、負けた、こんな馬鹿な。」ガクッ

 

 

シャルロット「すっごーい!サーカスみたいだよ!」

 

ラウラ「こんな特技があったとは!」

 

鈴「圧倒されたわね。」

 

第四王子に勝利した一夏。

 

 

大臣「続いて、第二の勝負だが、」

 

第3王子「僕が相手だ!」

 

第3王子と馬術の勝負をする事に。

 

 

大臣「馬術の勝負は、乗馬による一騎討ちである!」

 

 

一夏「なるほどね、意外とシンプルだな。」

 

 

第3王子「余裕でいられるのも今のうちだぞ。」

 

 

馬に乗って長い棒を持ち、お互いを攻撃しあい(ただし、馬への攻撃は不可)、最終的に相手を落馬させた方が勝ちとなる。

 

 

一夏と第3王子はそれぞれ自分によく懐く馬を選び、定位置につく。

 

 

セシリア「一夏さん、お馬がとてもよくお似合いです♡」

 

 

箒「一夏、何ともサマになっているものだ♡」

 

 

ビリー「一夏、気を付けて行けよ!!(棒を使うなら俺が行きたいけどな。)」

 

 

シャルロット「頑張って一夏!!」

 

 

ラウラ「自分の馬を信じろ一夏!!」

 

 

仲間の声援を受け、一夏はみんなに手を振る。

 

 

 

大臣「それでは、始め!!」

 

 

鐘の音でスタートを切り、一夏と第3王子の戦いが始まった。

 

第3王子「君がどこまでやれるか知らないが、経験の差を思い知らせてあげよう。」

 

第3王子はナルシー全開で話すが、

 

一夏「さて、少しの間よろしくな。」

 

馬「ブルルッ。」

 

一夏は第3王子ガン無視で自分の馬と会話をしていた。

初めて乗るにも関わらず、懐かれている。

 

ちなみに色は清純な白である。

 

ビリー「だっはは!スルーされてやがるぜ!」

 

鈴「これ恥ずかしいわよね。」

 

 

第3王子「くっ、どこまで愚弄するのだ!」

 

第3王子はカッカする。

 

大臣「それでは、始め!」

 

 

戦いが今始まる。

 

第3王子「イヤッ!」

 

一夏「行くぜ!」

 

互いに間合いを詰め、攻撃を仕掛ける。

 

 

第3王子「そらっ!」

 

第3王子は棒で速い連続突きを繰り出す。

 

 

一夏「おおっと。」

 

一夏は体の前で棒を回転させながら弾いていく。ビリーとの模擬戦が生きているようだ。

 

 

簪「一夏、普段使わない武器なのによく対応できるね。」

 

 

エクトル「彼は戦いにおいて天賦の才能があるからね。」

 

 

国王「ふむ、なかなかやるな。」

 

セシリア「流石は一夏さんですわ!」

 

 

一夏は剣の要領で第3王子に攻撃を仕掛けるが、

 

第3王子「甘いな。」

 

上、左右、斜めと振るも、全て受け止められる。

 

 

互いに一進一退を繰り返し、互いに距離をあける。

 

 

第3王子「そろそろ決着をつけるぞ!」

 

第3王子は遠くから一気に一夏のもとへ走る。

 

一夏「上等だ!来い!」

 

一夏も一直線に走る。

 

お互いに一突きで仕留める姿勢に入り、距離が詰まったところで第3王子は攻撃した。その瞬間、

 

馬「ヒヒーン!」

 

 

第3王子「何っ!?」

 

なんと、一夏は寸前で馬に前足を高くあげさせ、第3王子の突きをかわしたのだ。

 

不意を突かれた第3王子の上体が崩れる。

 

 

一夏「おりゃあっ!」

 

一夏は棒を上から思いっきり振り下ろし、第3王子の頭部に渾身の一撃を与えた。

 

その瞬間、第3王子は完全にノックアウトされ、馬から転げ落ちた。

 

 

大臣「この勝負、一夏の勝利!」

 

 

一夏「イエーイ!」

 

馬「ヒヒーン!」

 

一夏と馬は声高らかに勝利の雄叫びをあげる。

 

 

鈴「最後は結構強引に行ったわね。」

 

エクトル「一夏は思い切った戦法を取れる方だからな。」

 

ビリー「くそー、棒を使うんだったら俺もやってみたかったぜ。」

 

レベッカ「あら、ビリーも馬に乗りたかったの?」

 

 

国王「ふむう、なかなかやるものだな。」

 

セシリア「はい、一夏さんは武術に天性の才能がおありですもの。」

 

 

 

大臣「まさかここまでとは。ウホン!では第2王子との知恵の勝負にまいろう!召喚士が呼びし精霊の問いに、見事正解した者が勝利となる。」

 

大臣に呼ばれた召喚士は、魔法陣を描き、知恵の精霊を召喚する。

その見た目はエジプトのスフィンクスを彷彿とさせる。

 

精霊は一夏と第2王子の目を見ながら話す。

 

 

「我は知を司りし聖獣なり。我が問に答えんとする人の子らよ、どちらが優れし知恵の持ち主であるか。」

 

 

第2王子「私は世界を統べるべくあらゆる知識を学んできたのだ!どこの馬の骨ともわからぬ者の頭などたかが知れている。」

 

箒「むっ、一夏を侮辱するとは!」

 

弾「落ち着けって箒。」

 

レオ「おうおう、大層な自信家だねえ。」

簪「一夏は柔軟な思考ができるからきっと対抗できるよ。」

 

一夏「さて、どんな問題が出るかな。」

 

これまでとは違い少し緊張する一夏。

 

 

 

聖獣「その者達は遥か彼方に在りて、対をなすものなり。一人は不滅の力をもって恵みを与える者、もう一人は時に姿形をかえ、偽りの力を持つ者。それらの名を答えよ。」

 

 

第2王子「むっ、意外と難しいな。」

 

一夏「これは、少し頭をひねるかもな。」

 

 

アルゴス「これは、いわゆるなぞなぞクイズってやつか。」

 

 

シャルロット「対をなすって事は、二人一組かな。」

 

 

ラウラ「うーむ、対をなすものは以外と多くあるからな。」

 

 

本音「ほえー、よくわかんないよ〜。」

 

 

数分考えた末、お互いに答えが決まった。

第2王子が先に答える。

 

聖獣「では答えてみよ。」

 

第2王子「決まった、答えは『神』と『悪魔』だ。」

 

聖獣「何故に?」

 

第2王子「神は信仰において永久不滅のものであり、我らに恵み、加護をもたらす!悪魔は多くの姿があり、人を欺くものだからだ!」

 

 

聖獣「・・・・・愚か者、そのような答えではない!」

 

第2王子「くっ、違うのか!」

 

 

続いて一夏の番、

 

聖獣「さあ、答えてみよ。」

 

一夏「これ以上ない回答があるぜ!答えは、『太陽』と『月』だ!」

 

 

ギャラリー一同「?」

 

 

一夏「太陽も月も宇宙にあって、俺たちからは遠く離れている。太陽は朝、月は夜。これが対をなすと言われる理由だ。太陽は常に光輝いていて、自然が育つのに必要だ。

月は日によって満月だったり、三日月だったりするし、光は月そのものではなく太陽のもの。これが欺きを意味する!」

 

 

一夏は確信を持った目で聖獣の目を見る。

 

 

聖獣「・・・・・見事なり。」

 

 

大臣「正解!勝者は一夏!」

 

 

一夏「良かったぜー!なんとか正解した!」

 

第2王子「なん、だ、と。知恵で誰にも負けたことのない私が・・・・・。」

 

 

エクトル「流石だ!ちゃんと納得のいく理由まで付けて答えてるよ!」

 

 

ビリー「すげえな、俺全然わからなかったぜ!」

 

 

箒「なるほど、そういう事か。」

 

レオ「しかし王子の方はトンチンカンだったな。」

 

 

シャルロット「何ていうか、デタラメだったよね。」

 

 

第2王子にまで勝利した一夏。残るは第1王子のみ。

果たして決着は・・・・・・。



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異世界での冒険 part 6

4王子との勝負のうち、第2王子までを倒した一夏。

次は最後の相手である第1王子と、剣での一騎打ち。

 

一夏「さてと、残るはアンタだけだな。」

 

第1王子「貴様の力はそれなりに認めてやろう。だがここまでだ。この最強にして長兄である俺が相手なのだからな!」

 

 

お互いに戦いの場に入る。フィールドは鉄格子に囲まれており、逃げることはかなわない。

 

大臣「ではいよいよ最後の戦いに入る!剣での一騎打ちだが、どちらかが相手を打ちのめすか、降参させる事が勝利条件である!」

 

ビリー「なんだよ、意外と簡単じゃねえか。」

 

シャルロット「でも、相手も強そうだよ。」

 

箒「うむ、侮れんな。」

 

第1王子の体格はアルゴス以上だ。

 

大臣「では両者とも前へ。」

 

 

互いに剣を抜く。

 

第1王子の剣は大型のバスターソードで、体格に見合う重厚感である。

 

対する一夏の剣はドラゴンキラー。刃の大きさ、長さでは相手に少し劣るが、その刃はドラゴンの硬い鱗をも切り裂ける切れ味と硬度を持っている。

 

 

大臣「では、両者位置について、始め!」

 

第1王子「うぉぉぉぉっ!」

 

一夏「おりゃあぁぁっ!」

 

 

開始と同時に互いに斬りかかる。刃がぶつかった瞬間、

 

 

ガキィンッ、

 

第1王子「ぬうっ!」

 

一夏「おっと!」

 

どちらも弾かれた衝撃のあまり、後ろに下がる。

 

アルゴス「どうやら互角みたいだな。」

 

簪「今凄い音がしたよ!」

 

のほほん「ほええ、なんだか怖いよ〜。」

 

 

一夏「この衝撃、とてもゲームの世界とは思えないな。」

 

第1王子「くっ、こんな小僧にこれほどの力があるとは。」

 

 

お互い距離を取りながら斬りむすんでいくが、全くスキがない。

 

 

セシリア「一夏さん、頑張ってくださいまし!」

 

一夏「おう、必ず勝つ!」

 

第1王子「くっ、貴様!」

 

第1王子は心底セシリアに惚れているのか、セシリアが一夏を応援するのを聞いて嫉妬をあらわにする。

 

弾「怖え戦いだなおい。」

 

レオ「斬られたら終わりだぞ。」

 

ラウラ「一夏、気をつけろ!手数が増えている!」

 

 

一夏「ああ、わかったぜ!」

 

 

一夏は第1王子の攻撃をなんとか受け流す。

 

第1王子「ふん、受けてばかりで俺の鎧にすら傷一つ負わせられんのか?」

 

一夏「あいにくこっちもまだ無傷だぜ!」

 

ガードだけでなく、身を翻して襲いくる刃をかわす戦法もとる。

 

レベッカ「よくあそこまで動き続けられるわね。」

 

 

エクトル「だが、いつかは均衡が壊れる。」

 

箒「それは多分一撃で決まるだろうな。」

 

 

切り合いから時々鍔迫り合いになると、

 

 

第1王子「貴様ほど骨のある男は我が軍にはいない、褒めてやろう。」

 

一夏「そりゃどうも、兵士になるつもりはないがな。」

 

 

互いに言葉をかわすまでに認め合うようになった。

 

 

国王「うむ、どちらが勝者となるのか・・・・・。」

 

 

周囲が固唾をのんで見守るのも忘れるほどお互いに相手を見ている。

 

 

第1王子は不意にバスターソードを高速で振り回す高速回転斬りを繰り出した。

 

第1王子「はぁぁぁぁ!!」

 

刃がぶつかると、大きく火花が散った。

 

一夏「ぐっ、腕に衝撃が。」

 

第1王子「この技をかわしきれるか!?」

 

 

角度、高さを変えながら回転斬りを繰り出す。

 

 

壁際まで追い詰められたが、

 

 

一夏「これでどうだ!」

 

一夏は壁キックジャンプし、空中から斬撃を繰り出した。

 

 

第1王子「小癪な!」

 

第1王子は空中に向かってバスターソードを振るが、その一撃を放つ際、両腕が軽く感じられた。

 

 

第1王子「なっ、これは!?」

 

一夏「ふう、なんとかやったぜ。」

 

 

第1王子の手には、バスターソードの鍔から上がなかった。

 

回転斬りを放った際、一夏は一瞬のスキをついてドラゴンキラーを振り抜き、その刃でバスターソードの柄と鍔の間を切り裂いたのだ。

 

鈴「嘘、あんな狭いところを斬れたの!?」

 

一夏「斬ったのはそれだけじゃないぜ。」

 

第1王子「何だと、うっ!」

 

第1王子の右腕のガントレットが砕けていた。

 

 

一夏「ちゃんと鎧にも傷を負わせたからな。」

 

ビリー「すっげー!さすがドラゴンキラーだぜ!」

 

第1王子「くうっ、武器も防具も破壊されるとは。この勝負、俺の負けだ。」

 

第1王子はガックリと膝をついた。

 

 

大臣「勝負あった!一騎打ちを制したのは一夏!!」

 

 

一夏「いよっしゃあっ!!」

 

一夏は声高らかに雄叫びをあげる。

 

国王「うむ、見事だ。ん、セシリア?」

 

いつの間にか国王のそばからセシリアが消えていた。

 

セシリア「一夏さぁん♡」

 

セシリアは一夏の元へとかけより、思いっきり抱きついた。

 

一夏「うおぉ、セシリア、ぎゅむっ!(胸、胸が!)」

 

セシリアは胸の開いたドレスを着ていたので、その感触が一夏の顔にモロに伝わる。

 

箒「こら、離れないか!」

 

シャルロット「セシリアずるいよ!」

 

ラウラ「一夏は私の嫁なのだぞ!」

 

他一同「はぁ、やれやれ。」

 

 

国王「セシリアがあそこまで笑顔になるとはな。」

 

王妃「うふふっ。でもあのお方は素敵だと思います。」

 

 

国王「うむ、勇者一夏よ、そなたの力、存分に見せてもらった!そなたこそセシリアの婿に相応しい!

よって、結婚式を今夜執り行う!」

 

一夏「え?」

 

セシリア「まあ♡」

 

箒・シャルロット・ラウラ「むっ!!」

 

 

レオ「マジかよ。」

 

弾「羨ましいぜ。」

 

鈴「まあまあ、一夏が戦ったんだし。」

 

エクトル「ヤキモチはわかるけど、今はゲームだからね。」

 

鈴とエクトルが箒達をなだめる。

レベッカ「結婚式ってことは、パーティーよね!」

 

アルゴス「なら、うまい料理が食えるんだよな!!」

 

本音「わ~い、やったー!!」

 

エクトル「パーティーに出るならおしゃれもしなきゃね。」

 

ビリー「めかし込むのもたまにはいいよな。」

 

 

そして夜を迎え、城の最上階のパーティー会場で結婚式が行われた。

 

一夏とセシリアは特別席で国王と王妃と共に過ごしている。

 

他の皆は別で食事を堪能している。

 

本音「もぐもぐ、おいし~。」

 

ラウラ「はぐはぐ、うまいな。」

 

アルゴス「うまいぜ!さすが王国だな!」

 

 

箒「ふう、まあいい。今は忘れよう。」

 

シャルロット「そうだね、ラウラもすっかり食事に夢中だし。」

 

本音「それにしても〜、ネロロンはどこにいるんだろ?」

 

ビリー「おっと、そうだったな。」

 

 

 

 

 

 

 

 



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異世界での冒険 part 7

急遽もう一人仲間が加わります。



結婚式を終えて、一夏とセシリアは二人で朝を迎え、

その後皆を城に集めて状況を整理する事に。

 

 

一夏「さてと、これからの事だが。」

 

エクトル「僕らがこの世界にどうやって来たのかは、未だにわからないね。」

 

 

 

アルゴス「それもそうだが、もっと問題なのは、」

 

簪「どうやったら元の世界に帰られるかだよね。」

 

箒「だな。皆と一緒とはいえ、いつまでこのままなのか。」

 

ラウラ「うむ、行く当てはないが、いつまでもここにはいられないだろう。」

 

セシリア「そうですわね、IS学園に戻らないと、織斑先生達も心配されますわ。」

 

 

ビリー「そういやあ、ここに来る前は俺たち自分の部屋で寝てたんだよな。だったら寝てる間に俺たちの身に何かあったと考えるのが妥当じゃねえか?」

 

レオ「お、ビリー珍しく冴えてるじゃねえか。」

 

 

シャルロット「寝てる間に僕達に何かできるとしたら、」

 

 

レベッカ「織斑先生達くらいじゃない?」

 

 

弾「だけどよ、先生たちが断りもなく俺たちに何かするわけねえよな。」

 

 

 

鈴「そりゃあいくらなんでもないでしょ。」

 

 

一夏「となると外部の人間か、そうなれば無条件でIS学園に入れるのは一人しかいない。束さんだ。」

 

 

 

一同「!!!!」

 

 

 

疑念が確信に変わる。

 

 

箒「姉さんなら間違いない、いつも唐突だからな。」

 

 

 

エクトル「だとしたら束さんに文句を言いたいのはやまやまなんだが、今の僕らには外部への連絡手段がない。」

 

 

アルゴス「ISどころか携帯電話もないからな。」

 

 

簪「連絡もだけど、この世界から脱出する手立てもないよ。」

 

弾「それじゃあ、俺達このまま永久にこの世界に居ることになるじゃねえか。」

 

 

一夏「こりゃあ早いとこ、このゲームをクリアする以外にないな。」

 

本音「ネロロンにも早く会いたいよ〜。」

 

一夏「ああ、そうだな。」

 

ネロは唯一、会うための手がかりがない状態である。

 

 

翌日、一夏達は国王に呼び出される。

 

一夏「陛下、今日はどのような御用で?」

 

国王「うむ、一夏よ。お前の腕を見込んで頼みがある。

実は遠国から便りが届いたのだが。」

 

一夏は手紙を読んでみる。

 

一夏「世界を揺るがす大事あり。古の伝承により語り継がれし伝説の邪竜が蘇らんとしている。邪竜を滅ぼす力を持ちし勇者を向かわせてほしい。」

 

 

ビリー「邪竜って、なんかラスボス的なやつか?」

 

レベッカ「まあそんな感じよね。」

 

 

 

国王「邪竜は古の伝承に伝わる島にいると言われているが、その島は魔物たちの巣窟と言われている。

これまで向かわせた兵士たちはおろか、勇敢なる戦士たちもその島から誰一人として生きては帰ってこられなかったのだ。」

 

アルゴス「なるほど、それで俺達のもとに依頼が来たってわけか。」

 

エクトル「邪竜となると、かなり巨大な生物に戦いを挑むことになりそうだね。」

 

国王「勇者一夏よ、どうか引き受けてくれぬか?」

 

一夏「わかりました、幸い仲間は大勢いますし、何とかしてみせます。」

 

国王「そうか、ありがたい。」

 

鈴「それで、その邪竜はどこにいるのですか?」

 

国王「伝承によると、邪竜が封印されているのは我が国から遠く離れた孤島であるとのことだ。そこで、我が軍の海域防衛の船を出そう。」

 

一同「ありがとうございます。」

 

国王「それからセシリアよ、そなたも一人前になるべきときが来た。勇者一夏と共に向かうが良い。」

 

セシリア「お父様、よろしいのですか?」

 

国王「うむ、これまで培った魔術の成果を、一夏とその仲間達を手助けする形で得るが良い。」

 

セシリア「解りましたわ、お父様。必ず戻ってまいります!」

 

この瞬間、セシリアは魔術師のスキルを習得する。

 

 

 

戦闘準備を済ませ、国王軍の船で孤島に到着した一行は、邪竜討伐へと向かう。

 

本音「ふえぇ、何だか不気味だよ〜。」

 

島全体に暗雲が立ち込めており、どこからともなく魔物が出てきそうな雰囲気だ。

 

一夏「とりあえず、魔法が使えるやつの力は温存しよう。

物理攻撃に特化したメンバーで魔物を退けるんだ。」

 

前線には一夏、箒、ビリー、レベッカ、アルゴス、が立ち、後方支援をラウラ、エクトル、弾、レオが行う。

 

魔法スキルのあるシャルロット、セシリア、簪はできるだけ力を温存させ、アイテムでのサポートを鈴が行う。

 

 

一行は島の中心に建つ巨大な塔に辿り着いた。

 

中はホラー感ある雰囲気で、ゾンビを始めとするアンデッドの巣窟である。

道中の魔物達を倒していき、塔の最上階付近へと向かう。

 

扉を開けると、そこには一人の男が。

 

人間にしては顔が青白く、どこか強そうな雰囲気である。

 

一夏「誰だ?」

 

一夏がそう尋ねるや否や、男は無言で剣を抜き、一夏に襲いかかってきた。

 

一夏「ぐわっ、いきなりかよ!」

 

エクトル「貴様、これでも喰らえ!」

 

エクトルが矢を射るが、全て叩き落される。そこには、

 

セシリア「これは、結界が張られていますわ!」

 

アルゴス「それって、俺たちは入れないってことか?」

 

レベッカ「これじゃあ加勢できないじゃない!」

 

箒「くっ、剣を使う身でありながら助太刀できぬのか。」

 

鈴「一夏、頑張って!」

 

一夏「おう、何とかしてみせるぜ!」

 

一夏も負けじと反撃する。するとその男顔は突如豹変し、背中には悪魔のような翼を生やし、牙をむき出しにした。

 

一夏「これは、吸血鬼か!?」

 

簪は妖精のスキルのひとつ、ライブラリングで敵を分析する。

 

簪「あれは、ヴァンパイア騎士みたい!斬殺して血を残らず吸うらしいよ!」

 

ビリー「ひええ、一夏、血を吸われるなよ!」

 

両者ともに激しく切り合い、一夏がヴァンパイア騎士の剣を砕く。

 

弾「やったぜ!一夏の勝ちだ!」

 

ラウラ「いや、どうやらまだ終わらんらしい。」

 

ヴァンパイア騎士「ギェアアアア!」

 

奇声をあげながら一夏に噛みつこうとする。

 

一夏「くそっ!」

 

一夏は組み伏せられ、ドラゴンキラーを落としてしまった。

 

シャルロット「ああっ、一夏!」

 

レオ「やべえ、噛まれるぞ!」

 

ヴァンパイア騎士は大きな口を開けて迫る。その瞬間、

 

一夏「これで、どうだ!」

 

一夏はヴァンパイア騎士の口に右手を突っ込み、噛まれながらも牙の一本を折りとる。

 

そしてそれをヴァンパイア騎士の脳天に深々と突き刺した。

 

ヴァンパイア騎士「ガアアアッ!」

 

ヴァンパイア騎士はその苦痛に悶え、一夏から離れてうずくまる。

 

一夏「はぁ、はぁ、何とかなったぜ。」

 

ヴァンパイア騎士が倒れると同時に結界が解除された。

 

セシリア「一夏さん、大丈夫ですか!?」

 

シャルロット「すぐ手当するよ!」

 

仲間からのちりょうを受け、一安心する一夏。

 

すると、何やらヴァンパイア騎士に変化が。

ヴァンパイア騎士から黒い煙が出始め、身体が小さくなっていき、一夏と同じ位の体格になった。

 

そして、その顔にも変化が。

 

 

一夏「お、お前、ネロ!」

 

一同「!?」

 

ネロ「う、ん、一夏?それに、お前たちも、ここはどこだ?」

 

本音「ネロローン、会いたかったよ~!」

 

本音はすぐさまネロに抱きつく。

 

ビリー「ネロ、てめえ一夏に何しやがんだよ!」

 

ラウラ「貴様どういうつもりだ!」

 

ネロ「すまない、俺も何がなんだか。」

 

アルゴス「落ち着けよ!俺も最初は無意識だったんだぜ!」

 

ビリー「あ、そういやあ。」

 

ラウラ「そうだったな、すまないネロ。」

 

箒「しかし、こんなところで再開するとは。」

 

ネロ「この世界は一体どうなっているんだ?」

 

エクトル「ああ、話せば長くなるんだが。」

 

事の流れをエクトルが説明し、ネロは納得する。

 

ネロ「なるほど、じゃあ俺はその邪竜のいるこの塔を守るべく召喚された可能性があるな。」

 

ネロは先程と同様、この世界ではヴァンパイア騎士として存在している。

 

一夏「これで全員揃ったな、後は邪竜討伐だけだ!行くぞ皆!」

 

一同「ああ(おう)(はい)(うん)!」

 

 

一行は最上階へと向かい、屋上に出た。

 

 

そこでは邪教徒らしき者たちが、怪しげな儀式を行っていた。

 

邪教徒「蘇れ、集いし我らの力によりて、大いなる邪竜

「アマルティア」よ!!」

 

一夏「止めるぞ!」

 

一夏以外「ああ(はい)(おう)!!」

 

一夏達は儀式を中止させようとしたが、結界が張られており、手出しが出来ない。

 

邪教徒「貴様ら、ここに来るとは!」

 

邪教徒「ヴァンパイア騎士ネロ!貴様寝返ったか!」

 

ネロ「貴様たちに仕えた覚えはない。」

 

闇の司祭「性懲りもなくここへ来る輩がまだいたとはな。だがもう遅い!今ここに邪竜アマルティアが降臨するのだ!」

 

 

邪教徒の叫びとともに地震が起き、空から無数の稲光が発せられる。そして・・・・・、

 

邪竜「グワオォォォォォォッ!!!!」

 

 

そこに現れた邪竜は、とてつもなく巨大な黄金の体に7つの異なる属性の竜の首がついている。

 

その7つの竜の首は、それぞれ属性が地、水、火、風、光、闇、神となっている。

 

 

 

一夏「これが、邪竜か。」

 

セシリア「なんと恐ろしい。」

 

 

観察する間もなく戦闘が始まる。

一気に決着をつけるべく胴体を総攻撃するが、びくともしない。

 

箒「くっ、体には傷ひとつつかないぞ!」

 

ネロ「やはり各々の首を倒さなければならないか。」

 

一夏「よし、ここは分散してそれぞれの首を相手にするんだ!」

 

戦闘態勢は以下のとおりである。

 

 

地竜の首VSレベッカ、本音

 

 

水竜の首VS鈴、アルゴス

 

 

火竜の首VSビリー、箒

 

 

風竜の首VSレオ、簪

 

 

光竜の首VSエクトル、弾

 

 

闇竜の首VSシャルロット、ラウラ

 

 

神竜の首VS一夏、ネロ、セシリア

 

それぞれの首を倒すべく全員で分担して戦うことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりの投稿です!

長くなりますが、どうぞよろしくお願いします!


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異世界での冒険 part 8

大分遅くなりました。
これから再開いたします!


 

 

邪竜アマルティアとの戦闘が始まり、各々分散して戦う。

 

Sideレベッカ&本音

 

本音「うわー、ゴツゴツしてるよ~。硬そう。」

レベッカ「硬いなら砕いてやるわ!本音、アタシが前に出るから魔法でフォロー頼むわよ!」

 

本音「うん!」

 

レベッカは先端が斧とハンマーの一体型武器「グランドクラッシュ」で攻撃する。だが地竜の鱗は思った以上に硬い。

 

地竜「ゴアアアッ!」

 

地竜の口から数発の岩石が大砲の如く発射される。

 

本音「わわっ、あたったらどうしよう!」

 

レベッカ「任せて!えいやっ!」

 

レベッカはバッターのようにハンマーアックスで岩石を打ち返す。

その後もレベッカは地竜の攻撃をかわし、好きを見てハンマーアックスの刃を振り下ろし、多少のダメージは与えられるが、地竜が怯む様子はない。

 

レベッカ「ああもう、キリがないんだけど!でも魔法は持ってないし。」

 

本音「えっと、えっと、私の魔法は〜。」

 

本音は自分のアビリティを必死に考える。だがその間に地竜はレベッカを容赦なく攻撃し、

 

レベッカ「痛あっ、ううっ!」

 

 

岩石がレベッカの足を直撃し、レベッカは倒れる。

 

その後地竜は標的を本音に変え、岩石のブレスを放つ。

 

 

レベッカ「本音!危ない!」

 

本音「えっと、これだあ!尻尾を使うやつだよ!」

 

本音は尻尾を複数生やし、それらを扇風機の様に回転させて風を起こす。すると、

 

 

地竜「グガ、ゴ、ゴ。」

 

地竜は大風を浴びると、少し動きが鈍くなり、鱗にいくつも亀裂が入っていく。

 

レベッカ「これは、風化してるのね!でかしたわよ本音!」

 

 

レベッカはハンマーアックスで亀裂に衝撃を与え、鱗を砕いていき、守りがなくなった体表にアックスの刃を振り抜く。

 

地竜「グアアアアッ!」

 

地竜の首は切断され、それは砂となって消えた。

 

レベッカ「やったわ!」

 

本音「よ~し、他のみんなも助けるのだ~。」

 

 

Side水竜

 

アルゴス「鈴、俺が前に出る!サポート頼むぞ!」

 

鈴「任せなさい、アルゴス!」

 

アルゴスは狼に変身し、水竜にかかる。

 

水竜「ゴオオオッ!」

 

水竜の口から滝のような水のブレスが放たれる。

 

アルゴス「ぐわっ、ガボガボ!」

 

鈴「アルゴス!キャア!」

 

正面から水のブレスを受け、二人共流されそうになるが、アルゴスは狼の姿で何とか泳いで鈴を助ける。

 

アルゴス「鈴、大丈夫か?」

 

鈴「う、うん。なんとかね。」

 

アルゴスと鈴は体勢を立て直し、水竜の首に再び向かう。

 

水竜の攻撃をかわしながら懐に飛び込み、

 

アルゴス「オラアッ!!」

 

鈴「えいっ!」

 

アルゴスの鋭い爪と鈴のダガーナイフで水竜の顔を攻撃するも、硬い鱗で傷一つつかない。

 

水竜は鈴に水のブレスを放つが、アルゴスが体を張ってガードする。

 

アルゴス「ぐうっ、このままじゃもたねえ。鈴、何かアイテムはないか?」

 

 

鈴「ちょっとまってて、えっとー、あ、これかも!」

 

鈴が取り出したのは、少しの間攻撃に雷属性の効果を付与する魔法薬だ。

 

鈴「アルゴス、これ飲んで!」

 

アルゴス「おう!」ゴクゴク

 

魔法薬を飲むと、アルゴスの牙と爪に稲妻が発生した。

 

アルゴス「よし、これでどうだ!」

 

アルゴスは再び水竜の懐に飛び込み、稲妻を纏った爪を首元の鱗の隙間に突き刺し、稲妻の牙で噛みつく。

 

 

アルゴス「ガウッ!グウウッ!」

 

水竜「ギアアアア!」

 

アルゴスのこの攻撃により、水竜の首元の鱗が引き剥がされる。

 

鈴「行くわよ!これでキメる!」

 

鈴は鱗が失われた部分にダガーナイフを深々と突き刺し、横に切り裂く。

トドメはアルゴスの牙と爪でズタズタにし、水竜の首が地に落ちる。

 

アルゴス「よっしゃあ!」

 

鈴「ったく、バケモノの相手は大変よ!」

 

アルゴス「残りの首ももぎ取ってやろうぜ!」

 

 

Side火竜

 

火竜「グルルル。」

 

ビリー「おっしゃあ、突っ込むぜ!」

 

箒「いざ、参る!!」

 

 

ビリーと箒はすぐさま火竜に掛かる。箒は名刀「政宗」、ビリーは大槍「ゲイボルグ」で攻撃するが、火竜から放たれる灼熱の炎のブレスに阻まれる。

火竜から放たれる灼熱の炎のブレスに阻まれる。

 

 

ビリー「あっちい!!」

 

箒「くっ、正面からは危険か!」

 

ここで二手に分かれることに。サイドから同時に頭を狙うが、思いのほか火竜の首の取り回しが速く、ビリーと箒の二方向に的確にブレスを放つ。

ビリーと箒の二方向に的確にブレスを放つ。

 

ビリー「両サイドからでもきついか!!」

 

箒「ぬう、どうすれば。」

 

 

 

ビリー「箒、俺が囮になるから隙を見て攻撃頼むぜ!!」

 

箒「よし、わかった!!」

 

ビリーは火竜のサイドから向かい、火竜の首と胴体の境目にゲイボルグを突き刺す。

 

火竜「グオオウウ!!」

 

火竜はビリーの不意打ちに気を取られ、ビリーを攻撃しようとするが、

 

ビリー「ここはさすがに攻撃できねえだろ!!」

 

箒「なるほどそういうことか!!」

 

 

 

ビリーがゲイボルグを突き刺した箇所は胴体と首の境目、つまりここを攻撃すると、火竜だけでなく、このアマルティア全体にダメージを負うことになる。

このアマルティア全体にダメージを負うことになる。

 

 

火竜は踏みとどまってブレス攻撃を中止し、直接嚙みついてビリーを攻撃しようと首をゆがめる。

 

ビリー「おっと、これるもんなら来てみやがれ!」

 

ビリーは首の根本周りで動き回ったり、ゲイボルグで首元を突きながら翻弄する。

 

その隙に箒はタイミングを見て火竜の頭に飛び乗り、

 

 

箒「この一の太刀にて貴様を斬る!!必殺、『一刀一閃』!!」

 

 

箒の力のこもった一太刀が、火竜の首の中央あたりを両断した。

 

火竜「ギアアアア!!」

 

切断された火竜の首は地に落ち、そのまま炎となって燃え尽きる。

 

 

ビリー「よっしゃあ、首一つ落としたぜ!!」

 

 

箒「火竜の首、討ち取ったり!!」

 

 

 

Side風竜

 

 

風竜「ギエエアア!」

 

風竜はレオと簪に風のブレスを放つ。

 

簪「きゃあっ!」

 

簪は吹き飛ばされそうになるが、

 

レオ「おっと、簪!」

 

レオが簪の手を掴み、なんとか堪える。

 

レオはすぐさまリボルバー銃で反撃するが、強力な風のブレスの前に弾道が反れ、なかなか命中しない。

 

レオ「畜生!当たらねえ!これじゃ弾切れになっちまう!」

 

風竜の風のブレスは更に勢いをましてレオたちに放たれる。

 

レオ「ぐっ!」

 

簪「レオ、大丈夫!?」

 

簪は魔法でレオを回復出せるが、それでも耐えきれそうにない。

 

これまでかと思われたが、その瞬間後ろからも風が。

 

本音「えーい!これでどうだ〜!」

 

本音の風魔法で向かい風を起こし、風竜のブレスの威力を抑える。これによりレオと簪は吹き飛びにくくなった。

 

レオ「よし、これで弾が前に進むぜ!」

 

 

風竜は本音に的を絞って攻撃を集中させるが、

 

簪「レベッカ、お願い!」.

 

レベッカ「任せて!いっけー!」

 

レベッカは風竜に向かってアックスを投げる。

 

簪の妖精スキルの魔法により威力と命中率を上げたことで、

投げたアックスは風竜の口の中に入る。

 

風竜「ガウウ、ウ」

 

 

その瞬間、風のブレスが一瞬止んだ。

 

簪「レオ!今だよ!」

 

レオ「オーケー、この炸裂マグナム弾を喰らえ!」

 

レオは風竜の口の中に狙いを定め、マグナム弾を放つ。

 

それは風竜の口の中に着弾した瞬間爆発し、風竜の頭は跡形もなく木っ端微塵になった。

 

レオ「おっしゃあ!これで過半数やっつけたぜ!」

 

鈴「うわー、何か死に方が残酷だけど。」

 

箒「それでも、邪竜の首はまだ残ってる。」

 

アルゴス「残りの3つの首はかなり強そうだぞ!」

 

レベッカ「特に真ん中の首は一番強そうね!」

 

簪「早く助けに行かなくちゃ!」

 

残る邪竜の首は、光竜、闇竜、神竜の三つ。

 

果たして最後まで倒せるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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AFTER STORY
IS Wedding  一夏✕箒


番外編でアフターストーリーを簡単に書いてみました。

あくまでイメージなので、本編の完結はまた深いものにしていきたいと思っています。


IS学園の屋上で、一人の少年と少女が向き合っていた。

 

一夏「箒、遅くなったけど、俺は、お前が好きだ!」

 

箒「い、一夏!?」

 

学園生活を通して決断を下した一夏は、自分が18歳となった日に箒に告白する。

 

一夏「お前は、記憶を失った俺を受け入れてくれて、いつも俺を信じてくれた。IS学園に入っていろんな人に会ったけど、俺は箒が一番好きだ!」

 

 

箒「その、私なんかでいいのか?私は人付き合いは下手な方だし、世間一般の感覚もそんなにわかっていない。」

 

一夏「それは大丈夫だ。俺と一緒に克服していこうぜ。だから、俺と付き合ってください!」

 

 

箒「一夏・・・・・。」

 

箒の頬には涙が流れていた。学園生活や幾多の死闘を乗り越え今日まで生きてきた事がこれ以上無く嬉しく感じた。

 

箒は頬を赤くしながらも答える。

 

自分で良ければ、あなた(一夏)の恋人に・・・・・・。

 

 

 

 

一夏と箒が恋人同士となってから、月日はあっという間に経った。

 

IS学園卒業後、一夏と箒は専用機持ちの友人と共にIS専門の大学に進学し、大学卒業後に一夏はモンド・グロッソで史上初の男性ISパイロット優勝者となり、目標だった千冬を超える偉業を成し遂げた。

 

それは新聞やニュースで連日報道され、これを機に男性ISパイロット志願者が急増し、今では普通の高校と変わらないほどの男女比となった。

 

 

 

その後、一夏は千冬や束の助けにより、母校IS学園の教師として就職し、箒は剣道部の顧問となった。

 

それから一年後に一夏と箒は結婚し、IS学園の付近に新居を構え、一児の父母となる。

 

 

一夏「そういや、明日姉さんが家に来るって言ってたな。」

 

箒「千冬さんもか、私の姉さんも来ると言っていたな。正直呼びたくないが。」

 

箒は相変わらず束を快く思っていないようだ。因みに現在二人目を妊娠している。

 

「千冬おばちゃんと束おばちゃん来るの? 」

 

そう言っているのは一夏と箒の息子の織斑錬冶(おりむら れんじ)。現在4歳。

 

一夏「ああ。けどくれぐれもおばちゃんと呼ばないようにな。」

 

 

錬冶「?」

 

 

一夏達は家の用事をひと段落させて縁側に座る。

 

 

一夏「・・・・本当に、あっという間だな。みんなもそれぞれの道ですっかり大人になったし。」

 

箒「ああ。いつかまた皆で集まって懐かしい日々を振り返ってみたいものだ。」

 

 

ふと、一夏の携帯電話が鳴り響く。出てみると、エクトルとアルゴスから同時にかかってきていた。

 

 

一夏「おう、エクトル、アルゴス、久しぶりだな!!」

 

エクトル「やあ、二人とも元気にしてるかい?」

 

アルゴス「親になってからお互い色々大変だよな。」

 

箒「ああ、今度また一緒にあつまらないか?」

 

 

エクトルは山田先生、アルゴスは楯無と結婚し、二人とも父親として日々奮闘している。

 

二人はISパイロット引退後、現在はそれぞれの国に設立されたIS学園で教師を務めている。

 

 

山田先生「一夏くんお久しぶりですね!」

 

山田=ベレン=真耶は結婚を機にIS学園を退職し、エクトルとともにスペインに移住。現在は息子のルカの母親で、専業主婦となっている。

義母のイサベルと義妹のミレイアとの仲も良好だ。

 

 

 

楯無「いやー、学園一のプリンスがまさか一人を選んで結婚するなんてねえ!」

 

一夏「それはもういいですから。」ツッコミ

 

 

更識=イリアディス=楯無はアルゴスとともにギリシャに在住し、娘のクロエの子育ての傍ら、レオと結婚してイタリア在住中の簪とテレワークをやっている。

 

IS学園の三銃士と言われた一夏、エクトル、アルゴスは日々の幸せをかみしめていた。

 

常人をはるかに上回る存在となりながらも、決して人の心を失うことなく生きてこられたのは、信頼する仲間とともに生きてきたからであろう。

 

 

セシリア、シャルロット、ラウラのその後だが、IS学園の男子が急増したのちに後輩のIS男子と結婚し、それぞれの国でそれぞれの活躍をみせている。

一夏が箒に告白した当時は大変な状況だったが、それを乗り越えて立派な婦人となっていった。

 

卒業後はしばらく会うことがなかったが、いまはすっかり落ち着いている。

 

 

みんなとの他愛ない話が終わり、再び二人きりになった一夏と箒。

 

一夏「箒、俺と結婚してくれてありがとう。かわいい子供たちをありがとう。」

 

箒「一夏、わたしこそ、心から礼を言う。本当にありがとう。」

 

 

彼らの日常はこれからも続き、彼らの子孫が次世代を担っていくことだろう・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 



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IS Wedding  一夏✕セシリア

早くも二つ目です。キャラクターによって大きくその後の状況を変えており、前の話に出てないサブキャラも書きます。


IS学園の屋上で、一人の少年と少女が向き合っていた。

 

 

 

一夏「セシリア、遅くなったけど、俺は、お前が好きだ!」

 

 

 

セシリア「い、一夏さん!?」

 

 

 

学園生活を通して決断を下した一夏は、自分が18歳となった日にセシリアに告白する。

 

 

 

一夏「お前は、男嫌いな自分を変えて、いつも俺を信じてくれた。IS学園に入っていろんな人に会ったけど、俺はセシリアが一番好きだ!」

 

 

 

 

 

セシリア「嬉しいのですが、その、私などでよろしいのですか?私は他の方と違って心の器が小さいところもありますのよ。」

 

 

 

一夏「それは大丈夫だ。俺と一緒に克服していこうぜ。だから、俺と付き合ってください!」

 

 

 

 

 

セシリア「一夏さん・・・・・。」

 

 

 

セシリアのサファイアのような青い瞳からは涙が流れていた。学園生活や幾多の死闘を乗り越え今日まで生きてきた事がこれ以上無く嬉しく感じた。

 

 

 

セシリアは頬を赤くしながらも答える。

 

 

 

自分で良ければ、あなた(一夏)様の恋人に・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

一夏とセシリアが恋人同士となってから、月日はあっという間に経った。

 

 

 

IS学園卒業後、一夏とセシリアは専用機持ちの友人と共にIS専門の大学に進学し、大学卒業後に一夏はモンド・グロッソで史上初の男性ISパイロット優勝者となり、目標だった千冬を超える偉業を成し遂げた。

 

 

 

それは新聞やニュースで連日報道され、これを機に男性ISパイロット志願者が急増し、今では普通の高校と変わらないほどの男女比となった。

 

 

 

 

その後、一夏はセシリアとともにイギリスに移住し、千冬や束の助けによりロンドンにIS学園と拠点を設立する。一夏は現役引退後、その学園の教師として就職し、セシリアはその学園の一室を借りてバイオリン教室を開いた。

 

 

 

それから一年後に一夏とセシリアは結婚し、イギリスIS学園の付近に立派な新居を構えた。

 

チェルシー「旦那様、奥様、お客様がお見えです。」

 

チェルシーはセシリアの婿となった一夏のために日本の料理や文化を覚えるなど、

メイドとしてさらに向上していった。

 

そんなある日、一夏達のもとにエクトルと真耶、アルゴスと楯無、レオと簪が訪問する。

 

みんなそれぞれヨーロッパ圏に住んでいるので、時々顔を見せに来る。

 

 

レオ「いやーしかし、まさか一夏がセシリアと結婚するなんてな。」

 

簪「それもそうだけど、一夏がイギリスに住むって言ったときは結構な人が引き留めようとしたよね。」

 

一夏「はははっ、その節は、ありがとう。」

 

学園一モテモテだったために一夏が日本から出る際には多くの女子が涙を流したという。ちなみに千冬は日本のIS学園の仕事があるので一夏とは別居となっている。

実家には千冬一人かと思っていたが、千冬は家事が苦手なので箒と束が同居し世話をしている。

 

 

アルゴス「でもお前、こっちに来るまで大変だったろ、語学とか生活スタイルとか。」

 

一夏「それはセシリアとお前らのおかげで助かったぜ。」

 

 

一夏は生活圏が変わることから、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ギリシャ語、スペイン語を仲間の力を借りて必死に学び、今では日常会話や買い物もできる程度になった。

 

エクトル「そうだ、実は一夏達におみやげがあるんだよ。」

 

山田先生「はいこれ、シャルロットさんからお祝いの品ですよ。」

 

一夏・セシリア「ありがとうございます!!」

 

 

楯無「うわあ、おいしそうなお菓子がたくさんあるわね!」

 

シャルロットは現在、地元フランスでIS関連企業の社長として活躍しており、失恋してからは当分仕事でキャリアを積むとのことらしい。ちなみにラウラは故郷の黒ウサギ部隊の隊長としての役目をクラリッサに託し、軍を除隊後は副社長としてシャルロットを支えており、学園当時と変わらぬよき相棒となっている。

 

 

この後みんなでホームパーティーを開き、学生時代を振り返る話で盛り上がった。

 

 

 

そして、それから数年後・・・・・・、

 

 

 

鈴「いくわよー、それっ!!」

 

 

「わー!!」

 

レベッカ「かわいいわね!さすが一夏とセシリアの子だわ!!」

 

「キャッキャッ!!」

 

一夏とセシリアは子を授かり、仲睦まじい父母となっていた。

 

双子の男女で男の子の名はジェイク、女の子はリリー。

 

旅行できていた鈴とレベッカに遊んでもらっている。ちなみに二人はいまだ未婚。理由は言うまでもなくビリーである。

 

ビリーはのちに後輩のイギリス出身のIS学園生と結婚し、現在イギリスのIS学園の軽音楽部の顧問になっている。紆余曲折あったが、あの唐変木も今ではよき夫となっていた。

 

レベッカ「はー、それにしても先越されちゃったわね。」

 

鈴「まさか早めに結婚するなんてね。」

 

 

 

セシリア「お二人とも、あきらめないでください。」

 

一夏「そうだぞ、俺たちだって応援してる。そうだ、今度社交パーティーを開いてみないか?」

 

 

 

鈴「そうね、正直焦ってるし。」

 

レベッカ「いい男紹介してほしいわね!」

 

 

 

一夏にとってかけがえのない仲間であるこの二人の幸せも願うばかりである・・・・。

 

 

 

 

 

 



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IS Wedding  一夏✕シャルロット

妄想アフターストーリー三作目です。


IS学園の屋上で、一人の少年と少女が向き合っていた。

 

 

 

 

一夏「シャルロット、遅くなったけど、俺は、お前が好きだ!」

 

 

 

シャルロット「い、一夏!?」

 

 

 

 

 

学園生活を通して決断を下した一夏は、自分が18歳となった日にシャルロットに告白する。

 

 

 

 

 

 

 

一夏「お前は誰に対しても優しくて、いつも俺を信じてくれた。IS学園に入っていろんな人に会ったけど、俺はシャルロットが一番好きだ!」

 

 

 

シャルロット「あ、その、嬉しいよ。けど、僕なんかでいいの?僕、みんなと比べて女の子っぽくなかったりするし。」

 

 

 

 

 

 

 

一夏「周りがなんて言おうと、俺はお前を愛している!。俺と一緒に乗り越えていこう!だから、俺と付き合ってください!」

 

 

 

 

 

シャルロット「一夏・・・・。」

 

 

 

 

 

シャルロットの琥珀色の瞳からは涙が流れていた。学園生活や幾多の死闘を乗り越え今日まで生きてきた事がこれ以上無く嬉しく感じた。

 

 

 

 

シャルロットは頬を赤くしながらも答える。

 

 

 

 

 

 

 

自分で良ければ、あなた(一夏)の恋人に・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏とシャルロットが恋人同士となってから、月日はあっという間に経った。

 

 

 

 

 

IS学園卒業後、一夏とシャルロットは専用機持ちの友人と共にIS専門の大学に進学し、大学卒業後に一夏はモンド・グロッソで史上初の男性ISパイロット優勝者となり、目標だった千冬を超える偉業を成し遂げた。

 

それは新聞やニュースで連日報道され、これを機に男性ISパイロット志願者が急増し、今では普通の高校と変わらないほどの男女比となった。

 

 

 

その後、一夏はシャルロットとともにフランスに移住し、千冬や束の助けにより、パリで新規のIS関連企業を立ち上げ、一夏は社長、シャルロットは副社長になる。

 

 

そして、それから一年後に一夏とシャルロットは結婚し、会社付近に立派な新居を構えた。

 

 

社員「織斑社長、お客様がお見えです。」

 

 

 

そんなある日、一夏達のもとに弾と虚が旅行ついでに訪問してきた。

 

 

弾「よう、一夏社長!儲かってるか?」

 

虚「あなた、いきなり失礼ですよ。」

 

一夏「いいんですよ虚さん、今は仕事中じゃないんで。」

 

シャルロット「弾、虚さんも久しぶりですね。」

 

「一夏おじちゃんこんにちは!」

 

弾と虚の息子の五反田 仁(ごたんだ じん)が元気に挨拶する。

 

「仁ちゃん、あそぼー!」

 

仁と仲良く遊ぶのは一夏とシャルロットの娘のコレット=デュノア=織斑である。

 

 

弾「いやーしかし、まさか一夏が起業するとはなぁ。」

 

 

 

虚「フランスに慣れるまで色々大変だったでしょう。」

 

 

 

一夏「はい、シャルロットのおかげです。」

 

一夏は生活圏が変わることから、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ギリシャ語、スペイン語を仲間の力を借りて必死に学び、今では日常会話や買い物もできる程度になった。

 

 

 

弾「そうだ、実は一夏達におみやげがあるんだぜ。」

 

 

虚「はいこれ、ラウラさんからお祝いの品ですよ。」

 

 

 

一夏・シャルロット「ありがとうございます!!」

 

 

ラウラは現在、故郷の黒ウサギ部隊の隊長としての役目をクラリッサに託し、軍を除隊後は日本にいる千冬の世話をしている。

 

 

この後みんなでホームパーティーを開き、学生時代を振り返る話で盛り上がった。

 

 

 

そして、それから十数年後・・・・・・、

 

 

 

鈴「仁、まだまだ甘いわよ!」

 

仁「くっそー!!」

 

 

レベッカ「コレット!この技はこうするの!」

 

コレット「はい、ミラー先生!」

 

 

コレットと仁はIS学園に入学し、教師となった鈴とレベッカに教わっている。ちなみに二人はいまだ未婚。理由は言うまでもなくビリーである。

ビリーはのちに後輩のイギリス出身のIS学園生と結婚し、現在イギリスのIS学園の軽音楽部の顧問になっている。紆余曲折あったが、あの唐変木も今ではよき夫となっていた。

 

 

 

レベッカ「はー、それにしても先越されちゃったわね。結局ビリーも結婚しちゃったし。」

 

 

 

鈴「まさか一夏が早めに結婚するなんてね。」

 

 

 

鈴とレベッカはIS学園で仕事を終えた帰りにバーで、女二人で飲んでいた。

 

 

蘭「あの、私もご一緒していいですか?」

 

 

鈴「あっ、蘭じゃない!!」

 

レベッカ「久しぶりね!!もちろん付き合いなさいよ!!」

 

 

蘭も一夏への恋に破れていまだ独身であり、弾と虚の結婚もあってかちょっとむしゃくしゃしていた時期もあったが、今は落ち着いている。

 

 

蘭「そうだ、今度みんなで婚活パーティーにでも行きませんか?」

 

 

鈴「いいじゃない、いこうレベッカ!」

 

 

レベッカ「そうね、いつまでも立ち止まってられないし!!」

 

 

 

彼女たちにも幸あれと願うばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 



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IS Wedding  一夏✕ラウラ

IS学園の屋上で、一人の少年と少女が向き合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「ラウラ、遅くなったけど、俺は、お前が好きだ!」

 

 

 

 

 

 

 

ラウラ「い、一夏!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園生活を通して決断を下した一夏は、自分が18歳となった日にラウラに告白する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「お前とは姉さんを巡って色々あったが、お前はいつも俺を信じてくれた。IS学園に入っていろんな人に会ったけど、俺はラウラが一番好きだ!」

 

 

 

 

 

 

 

ラウラ「・・・・嬉しいぞ。だが、私なんかでいいのか?ほかのみんなと比べて普通の女っぽくなかったりするし、その、胸だって小さいぞ。」

 

 

ラウラは思わず眼帯を外す。

 

 

 

 

一夏「女の子はスタイルだけじゃない、俺は心の底からお前を愛している!!だから、俺と付き合ってください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラ「一夏・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラの赤と黄色の量目からは涙が流れていた。学園生活や幾多の死闘を乗り越え今日まで生きてきた事がこれ以上無く嬉しく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラは頬を赤くしながらも答える。

 

 

 

 

 

 

自分で良ければ、あなた(一夏)の恋人に・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏とラウラが恋人同士となってから、月日はあっという間に経った。

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園卒業後、一夏とラウラは専用機持ちの友人と共にIS専門の大学に進学し、大学卒業後に一夏はモンド・グロッソで史上初の男性ISパイロット優勝者となり、目標だった千冬を超える偉業を成し遂げた。

一夏はモンド・グロッソ制覇を機に、この競技に男女ペアや男女混合団体の競技も加え、ISにおける絆を深めることとなり、それは新聞やニュースで連日報道され、これを機に男性ISパイロット志願者が急増し、今では普通の高校と変わらないほどの男女比となった。

 

 

 

 

 

その後、一夏はラウラや千冬とともにドイツに移住し、千冬や束の助けによりISによる特殊防衛隊「ブルダシャフト」を結成し、一夏は総司令官、ラウラは副官となる。この部隊には、かつての黒ウサギ部隊と多くの優秀な男性ISパイロットがここに集結した。

千冬が日本のIS学園理事長辞任後は、千冬の戦友であるジルが行っており、副理事長はネロが行っている。ネロは本音と結婚し、日本に住んでいる。

 

 

そして、それから一年後に一夏とラウラは結婚し、基地付近に立派な二世帯住宅を構えた。

一方には千冬と束がルームシェアをしている。

 

 

そんなある日、千冬たちやビリーも誘ってホームパーティーを開く。

 

 

 

一夏「よーし、できた!!みんな、ご飯だぞ!!」

 

 

ラウラ「ああ、今行く。ゲオルク、ヘレナ。」

 

 

「はーい!!お兄ちゃん、いこう。」

 

「うん。」

 

一夏とラウラは息子のゲオルクと娘のヘレナを授かりいい夫婦、両親となっている。

 

 

千冬「相変わらず料理の腕は大したものだ。ラウラ、お前も少しは一夏を見習うべきだぞ。」

 

 

ラウラ「はっ、きょう、いえ、あ、姉上。」

 

 

束「ぷぷっ、まさかの姉上!!」

 

 

一夏「お前けっこう日本慣れしてたもんな。堅苦しくなくていいんだぞ。」

 

ラウラ「し、しかしだな、ね、『姉さん』はさすがに。」

 

緊張と恥ずかしさからかあわあわするラウラ。母親になっても千冬の前では相変わらずである。

 

 

ビリー「千冬さんとは相変わらずの仲だな。」

 

クラリッサ「隊長はずっとああだぞ。」

 

 

「ラウラおばさん、なんか慌ててるね。」ポヤー

 

 

ビリーは以外にもクラリッサと意気投合し、数年の交際を経て結婚。息子のハンスを授かり父母となった。

現在ビリーはクラリッサと共にブルダシャフトの訓練教官を務めている。

 

余談だが、ビリーがクラリッサと結婚することを宣言した際、鈴とレベッカがクラリッサに勝負を挑んだが、あえなく敗れたとのこと。

 

現在この二人はジルを筆頭に「IS学園女子会」を結成したとか。

そこには一夏とラウラのかつての友、箒、セシリア、シャルロットも加わっている。

 

 

 

その後、ゲオルクとヘレナ、ハンスは日本のIS学園に入学し、卒業後はそれぞれの道を歩んでいった。

 

 

 

その後、ブルダシャフトにて・・・・・・

 

 

 

アリーナの上空では、二機の機体が訓練機と共に飛び交っていた。

一つは輝きに満ちた白、もう一つは存在感ある黒。

 

一夏とラウラはモンド・グロッソの男女ペアの部門も制覇し、彼らの愛機「白式」と「シュヴァルツェア・レーゲン」は男女における双璧の象徴とされた。

 

 

一夏「まだまだ甘いぞ!これくらいついてこれないでどうする!!」

 

 

ラウラ「遅い、隙だらけだぞ!!戦場を思い浮かべて気を引き締めないか!!」

 

 

隊員たち「イエッサー!!」

 

 

 

一夏とラウラは現役引退後、訓練教官としてブルダシャフトの隊員の育成に勤しむ。

お互い千冬を意識してきたからか、気合が半端ない。

 

 

ビリー「よーし、てめえら今度はチームを組んで対戦だ!!」

 

クラリッサ「負けたものは訓練アリーナの整備・清掃をしてもらう!!」

 

 

千冬「フフッ、あいつらも大きくなったものだな。IS学園で生徒だったあの頃が懐かしい。」

 

 

千冬はブルダシャフトの座学の講師として、教え子たちの大きな成長を穏やかに見守っている。

 

 

一夏と仲間たちが築いたこの平和を守る次の後継者たちを信じて・・・・・。

 

 



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IS Wedding 一夏✕ジル

IS学園に入学し、信頼できる仲間とともに戦ってきて早三年、ついに彼らは卒業した。

その後はIS関連の大学に進学し、一夏は史上初の男性ISパイロットとしてモンド・グロッソ連覇をの偉業を成し遂げた。

 

千冬をも凌駕するこの伝説により、世の中の青少年達の士気は高まり、母校IS学園への志願者が急増し、それから数年後IS学園の男女比は、普通の高校と変わらない程にまでなった。

 

 

その後、一夏は千冬と束の助力もあり、日本にIS学園関連の企業をIS学園の近辺に設立し、若くして社長となった。

 

 

会社を設立して1ヶ月後・・・・、

 

 

一夏「ジル先生、俺とお付き合いいただけないでしょうか?」

 

ジル「一夏・・・・・。」

 

一夏は会社の屋上でジルに告白する。

 

 

ジル「一夏、アタシもう28のアラサーよ、歳の近い専用機持ちの子達のほうがいいんじゃない?ましてやアタシはモンド・グロッソでアンタに敗れたんだし。」

 

 

一夏「そんな後ろ向きな言葉、先生らしくないですよ。俺は、IS学園にいる間に、先生のこと好きになったんです!」

 

ジル「・・・・・・一夏。」

 

 

一夏の真剣な眼差しを見て、ジルは自分も当時から一夏が好きでいた事をよかったと思い始めた。

 

実際彼女は地元カナダやここ日本でもかなりの男性から言い寄られていたにもかかわらず、一夏を想い続けていたのだ。

 

教師と生徒という社会的立場の違いや、一夏との年齢の差から、半分諦めているところもあったが。

 

 

ジル「・・・・わかったわ、こんなアタシでよければ。」

 

 

自分で良ければ君(一夏)の恋人に・・・・・・・・。

 

 

それからは色々と大変だった。

 

まず千冬に報告すると、千冬はどこか渋っていながらも説得をして了承を得るのに、かなり苦労した。

 

付き合い始めてからも、

 

千冬「ジル、貴様は今一夏とどこまでいってるのだ?」

 

笑顔と怒りが混じっている表情だ。

 

ジル「さあ、それはご想像にお任せするわ♡子供ができたらその時はよろしくね、千冬おばさん♡」

 

千冬「くっ!!その時は覚えていろよ!」

 

相変わらず売り言葉に買い言葉だ。そして千冬は矛先を一夏に向ける。

 

千冬「一夏、観念して正直に吐け。」

 

一夏「姉さん、俺達にもプライバシーがあるんだぜ。」

 

千冬「弟のプライバシーは姉のものだぞ!ジルの色目にのせられるとはなぁ、このエロ弟が。」ニヤニヤワナワナ

 

一夏「はあ。(いつまで続くんだこのくだり。)」

 

実際は一線を超えているのだが、この時は、それはまだ言えずにいた。

 

毎日のようにその後の関係の深さを尋ねられる。

 

 

同級生からは、

 

ビリー「まさか一夏が姉貴と付き合うなんてな。一夏、姉貴のどこを気に入ったんだよ?」

 

一夏「いや、まあ、その・・・・・。」

 

アルゴス「いつになく顔真っ赤にしてやがるぜ。」

 

エクトル「無理もないよ、身内からも同級生からも問いただされてるんだから。」

 

レオ「でもまあ、こうなる可能性もあったよな。」

 

弾「つーか、将来一夏はビリーの兄貴じゃねえか。」

 

簪「そうだね、いい感じかも。」

 

 

ビリー「そういやそうだな!あんな姉貴だがよ、よろしく頼むぜ一夏兄貴!」

 

一夏「おい気が早いっての!」

 

 

ちなみにビリーはまだ独身である。

 

レベッカ「あらあら照れちゃって〜、かわいいお兄ちゃん!(ビリーと結婚できればアタシは一夏の妹ね!」

 

鈴「ジル先生と幸せになってね!一夏お兄ちゃん!(ビリーと結婚して一夏の妹ポジションもゲットするわよ!)」

 

一夏「お前ら、わかるけどまだそれは恥ずかしいって!(どっちが義妹でも俺はいいけど。)

 

箒・セシリア・シャルロット・ラウラ「はぁ。」

 

 

一夏を慕っていた彼女たちだが、ジル相手では諦めるしかなかったようだ。

 

 

それから、一夏とジルは結婚して3人の子供を授かった。

 

一人目の子供は長男のロイ。二人目は長女のルーシー。3人目はルーシーの双子の妹のカレンだ。

 

ロイ「パパ!ママ!ビリーおじちゃんからお手紙来たよ!」

 

 

一夏「おお、ありがとうな。」

 

ジル「あら、珍しいわね。」

 

 

ビリーからの手紙を開くと、驚くべき内容が書かれていた。」

 

 

ビリーの手紙「俺には今、付き合って3ヶ月の彼女がいるぜ!」

 

 

一夏「あいつも遂に恋人ができたのか。」

 

ジル「どれどれ相手は、あら意外!」

 

 

ビリーはかつてのIS学園でのクラスメートである谷本さんと意気投合し、交際に至った。近い将来結婚も考えているとのこと。

 

 

ジル「あのバカも少しは成長したわね。」

 

一夏「いや、かなりの成長だよジルさん。」

 

ルーシー「ねえねえ、ビリーおじちゃんの彼女ってどんな人?」

 

一夏「そうだな、元気があって何でも調べちゃうような人だったな。」

 

カレン「ビリーおじちゃんの結婚式にはみんなで行こうね!」

 

 

ジル「もちろんそうするわ!」

 

 

こうして一夏とジルは、結婚後も苦労があったが、幸せに日々を過ごしている。

 

 

彼らの子孫が次世代を担うであろう存在になるのを見守る日が来るまで・・・・・・・・・。

 



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