神様転生自己満排球部 (YADANAKA)
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能力値

1年時 

身長175.6

指高216

最高到達点スパイク291 ブロック275

 

2年時

身長178.4

指高220.9

最高到達点スパイク304 ブロック293

 

3年時

身長180.1

指高222.2

最高到達点スパイク319 ブロック309

 

1年時能力バロメーター

パワー1

バネ3

スタミナ4

頭脳4

テクニック4(レシーブのみであとはザル)

スピード3

 

2年時能力バロメーター

パワー2

バネ3

スタミナ5

頭脳4

テクニック4

スピード3

 

3年時能力バロメーター

パワー3

バネ3

スタミナ5

頭脳4

テクニック4

スピード4

 

なお2.3年時のテクニックに関しては

 

前半・防衛時+1

後半・攻撃時 −1

 

あくまで暫定です。

 

今後も当作品での活躍や読者の皆様によるコメントに応じて変動します。

 

あとこの数値をハイキューのとある図にはめ込むと面白い事に……?

 

 

みんなの能本評価!

 

木兎→1番の親友!!でも時々辛辣

鷲尾→木兎と違って色々頼りになる

木葉→イジってくるけど楽しいヤツ

猿杙→いずれ主将・首相になりそう

小見→ノリが良くて面白い

白福→カッコいいし専属のシェフになってくれそう

雀田→守りたくなる弟?あと鈍感

 

中学のチームメイト→実はかなり熱いヤツ?

 

三軍キャプテン→アンダー上手いなぁ…

  チームメイト→スーパレシーブ製造マシーン?

 

二軍キャプテン→安定感があるようでないな

  チームメイト→負けらんない

 

一軍キャプテン→守護神には絶対になれないだろうな

  チームメイト→サーブ・スパイク・ブロック教えてやるよ

 

闇路建行監督・コーチ→うんいいかんじ

 

夜中司コーチ・監督→楽しみな子

 

他校の人達→???「なんか驚かれた」

      ???「なんでバレた?」

      ???「何故ここに来ない」

      ???「研磨と同類?」

 

能本鷹木の名前の由来的なヤツ

 

能ある鷹は爪を隠すから連想させました。

 

普段は全力を出さず、いざと言うときに全力で戦う。

 

※本気で戦っているが体力温存するのが常。

 

 

ハイキュー風プロフィール(絵・図は脳内変換)

 

能本 鷹木

(のりもと たかき)

私立梟谷学園高校 1年4組

バレーボール部 

ポジション:ミドルブロッカー

身長:175.6cm 体重:62.1㎏

(高校1年4月現在)

誕生日:8月18日

好物:マカロニ

最近の悩み:だんだん熱血系になってそうで心配

 

 

 

 

文字数が!色々小ネタ入れたのに足りない!

 

誰だ「塵も積もれば山となる」言ったヤツ!

 

あと最低1000文字って設定したヤツ!

 

お前設定を長く書く難しさわかるのか!?

 

わかる?分かってないからこうなってんだろうがぁ!?

 

 

あ!あと10文字切った!

 

やっと足りた……



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展開に合わない小ネタ集

ふと思いつきメモをするのを繰り返した結果、なんか大喜利っぽいのができた気がするので暇つぶしにどぞ


研究熱心白福さん!

 

「お!セミみーっけ!」

 

「…………」

 

「おわっと!ムカデかぁー久々に見たな」

 

「…………」

 

「ん?なんだハエか。ゴミ捨て場が近いからか」

 

「…………」

 

「これもしかしてゴキか?潰さないようにしないと」

 

「…………」

 

「うへぇっ!?!?はっはちぃぃぃ!?!?無理無理無理無理無理ぃいーーー!!!」

 

「…………蜂は無理っと」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

美人で若くて(23)のプロポーション抜群の先生がスカートではなく、ジャージで教室に来て授業を始める。

 

担当の授業は国語。今回はことわざとか、四字熟語の勉強がメインのようだ。

 

「はい。じゃあこの問題を能本君」

 

問題は「○の○に○○」に当てはまることわざを書くこと。

ヒントは最初の○から順に〜ま、〜み、〜つ、と必ず入る事。そして漢字を使うこと。この時俺は思った。正解は分かるがなんか巫山戯たいな、と。

 

先生がスカートで魅力的な格好だったら真面目にやる。しかし、彼女はジャージで教室に来た。大会とか部活とか木兎とか色々とか木兎、あと授業とか木兎で疲れてるのに、癒しがないのは頂けない。

 

というわけで俺は彼女を指さしながらこう書いた。

 

─────今の君に幻滅─────

 

「う、うん?どういうことかしら?」

 

「先生よ…なんでジャージなんだ!!美人なんだからお洒落しろよォ!!」

 

「はっはあああ!?!?!?」

 

「そーだそーだ!」

 

「何ジャージ着てるんだ!!」

 

「先生!俺はどんな先生も好きだぞ!!」

 

『えーーー……』

 

「悪くはないけど…」

 

「それなら彼シャツのがいいよな!!」

 

「そうそう!先生!俺のジャージ来ませんか!!」

 

「ぃ───」

 

「何言ってんだお前ら!ジャージこそ至宝だろうが!」

 

「いや!制服だろ!」

 

「いいかげんに─────やめ「あっ!チャイムだ!」え?」

 

「おーい鷹木ぃ!!遊びに行くぞぉ!!」

 

「男子皆言っちゃった~~……ね、先生」

 

「え?えと、何?」

 

「鷹木に手ぇ出さないでね〜〜〜〜……??」

 

「ヒッヒィィィィ!?!?」

 

正解は馬の耳に念仏

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ミッション小見からマカロニを奪い取れ!1

 

「鷹木ぃ今暇かー?」

 

「ん?どした小見」

 

「なんか面白い返ししてくれよ。そしたらお前の好きなマカロニグラタン奢ってやる」

 

「いいよー(絶対食ってやる)」

 

「(殺気?)キロバイト→メガバイト→ギガバイト→テラバイトって有るんだけど、このテラバイトよりも上のを面白く作って」

 

「よし、行くぞ!」

 

「(何こいつ。普段のダラダラ野郎はどこいった?)んじゃあどうぞ」

 

「キロバイト→メガバイト→ギガバイト→テラバイト→正社員!」

 

「……あ!バイトの階級ってことか!わりぃーわりぃー。なるほどって思っちまった」

 

「(メ・ん・)?」

 

「もっかい別のやつやろうぜ」

 

「………………」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

日夜研究能本君!

 

木兎の力を最大限に活かす方法を探していた、猿代と鷹木。実はこの2人がこの代の梟谷の安定剤的な役割を果たしている。

 

理由は簡単。

木兎→おぉれ!さーいきょー!!サイキョウバケモノ

小見・木葉→ヒャッホー!!五十歩ヒャッホオオオ!!

鷲尾→ブンブンッ!練習好き………あと、寡黙

だから猿代と鷹木は上3人を止めなきゃならない。

 

「少なくとも木兎を操縦する方法があればイイんだけどーー、さすがの鷹木でもキツイ?」

 

「んー…操縦するって言うより、しょぼくれないように出来るかどうかなんだよなぁ。調子の波はさすがにコントロール出来そうにないし──いや、ちょっとやってみるか」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「なぁなぁなぁ!これなんだ鷹木!!」

 

「レモンの蜂蜜漬けだよ。手作りしてみた。どうだ?」

 

「モグモグ……ゴクン────上手い!!ハムハム……!うめぇーー!!もっと食っていいか!?な!?いいよな!!」

 

「(声のトーンが食いますって言ってるよ)いいよ。それ食えば普段より体動くんじゃないのか?」

 

「!!おお!!なんかそんな気するぞ!!!うおっしゃーーー!!!やるぞやるぞぉー!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「今日の木兎凄いやる気だったけど、何渡したの?」

 

「このレモンの蜂蜜漬け(2日)だよ。」

 

「かっこ2日って───もしかして3日とかあんの?」

 

「そそ。良いプレーをした翌日は長く良いものを。逆なら短く悪いものを、ね」

 

「なるほどねー。それならある程度行けそう」

 

「因みにこれが俺が作ったやつ。でこっちが白福の」

 

「おー…白福のが上手いな」

 

「その通り。しかも俺のは最高傑作の4日漬けたやつ。対する白福のは半日…………なんなのやら」

 

「これも褒美に出すのね?」

 

「そーいうこと。これで少しはコントロールできると思う……そうだと信じたい────ていうか、白福に負けたのが悔しい」

 

「3人組とレモンの研究ってわけだ」

 

「そゆこと。だからこれから猿代には色々食ってもらうからな」

 

「…………(まずいのはない。うんダイジョーブ)」

 

「余りにも酷いプレーした時用のも作んなきゃな。食○のソーマ見てこよっと」

 

「!?!?!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

テストで1番怖いのは?

 

「木兎よ、お前なんであんだけ教えたのに点数が赤点なんだ?説明してみ?怒らないで聞いてあげるから。」

 

「おっおう!じ、実はな!先生から問題用紙が配布されるだろ?そして名前をちゃんと書いたんだ!」

 

「なるほど。ちゃんと書いたのか…。偉いじゃないか」

 

「だろ!?それから問題を解いてったんだ!そして全部埋められたんだ!」

 

「おおー。凄いじゃないか。確かに埋まってるもんな」

 

「だけどな!?裏がある事にテスト回収される時まで気付けなかったんだ!!!だって名前書くとこあったから表だと思ったんだもん!裏のこと忘れてたんだもん!」

 

「なんで不貞腐れてんだよ……だもんって…」

 

正解は テスト終わり 裏面に気づく あ、オワタ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「熱い時間帯に集中して遊んでたら症状に発展した」

 

「…う〜ん?もう元気そうだね?これなら授業出れるかな?戻っても大丈夫そ〜?」

 

そう言って部屋から出ようとする白福。うん心配してわざわざ来てくれたのにふざけてたら怒るわな。すんませんした。

 

「いやマジでかなり体怠いんでノート後で見せてください」

 

「ん〜〜?別に今能本のに書き写してあげてもいいよ〜〜?」

 

「マジで!?助かるよ。俺のノートは……どこに置いたか忘れたけど、多分勉強机の近くにある………はず、多分。見つけてくれると嬉しいナス」

 

「……………やっぱり〜〜能本ってどこか抜けてるとこあるよね〜。何も考えずに体動かして今動けなくなってたり、逆にプレーしてる時に考えすぎて動けなくなったり………中学の時みたいに」

 

「そんなにディスらんでもろても?オケ?」

 

「……じゃーあ、バレンタインでチョコを貰ったことある?それか告白された〜とか」

 

「………むかーしむかーしに一回だけ…なんでその話?」

 

「バレンタインチョコがカレールーだったり、マシュマロだったとか〜?」

 

「いや何その地獄。せめて美味しくないとかじゃないのかよ。失敗作とか」

 

「失敗作はないと思うよ〜?男子って馬鹿だから失敗作でも頑張って作った、って言えばそれで喜ぶし」

 

「(何も反論出来ぬ)」

 

「で、それ本当〜?どんな子にされたの〜?」

 

「それは…まぁ………個人情報なので」

 

「黙秘権ってこと〜?」

 

「そうそう、言えないことなんだよ」

 

なんとかでっち上げようにも今いい案が出るわけないな。頭怠いもん。

 

「沈黙って大体肯定だよね〜。それに、男子ってゼロの時にゼロじゃないって否定するけど〜…能本は本当に貰えたの〜?」

 

「…………」

 

もうやめて俺のライフはもうゼロだよ!

 

「私があげたの忘れたんだ」

 

「あっ、いや、そういうわけでは…義理だったろ?だからノーカンっていうか」

 

「私ノーカンって言った覚えないけど」

 

「え?」

 

「じゃあね〜〜」

 

「!?!?!?」

 

え?まじでどういうこと?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「寝る所を手込めにされかけたの〜」

 

「ほうほう」(ニヤニヤ)黒尾

 

「やるな」(真顔)牛若

 

「いや、してないから」

 

「あれ〜?私に抱きついてたよね〜?」

 

「ほー?」(ニヤニヤ)

 

「やるな」(真顔)

 

「最終的には激しくしたかもな」(ノリ)

 

「さっ!?さっ最後まで優しくしてほしいです……」(ガチ)

 

「ほうほう」(ニヤニヤ)

 

「ヤルな」(真顔)

 

「「ってちっがーーーう!!」

 

「息ぴったりだな」

 

「まるで長年ペアを組んで来た選手のようだな」

 

「バレーだと何だろうな?」

 

「難しいな…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「よう!鷹木今から!大喜利やろうぜー!」

 

「?大喜利?木葉出来んの?」

 

「舐めんなよ?話題くらいなら出せる!!」

 

「…………で、何すんの?」

 

「今から俺が言うやつにリズム合わせて言葉を埋めるんだ。OK?」

 

「リョーカイ。早くやろうぜ(眠い)」←深夜電話越し

 

「進んでするのが、人の上。真似してするのが、人の中。言われてするのが人の下。このリズムに合わせて最後もう一個作るってヤツ。イケるか?」

 

「少しは考えさせろよ。────おし、良いよ」

 

「よっしゃ行くぞぉ?あ、どうせなら俺が最初だけ言うから、お前は人の上中下言ってくれよ」

 

「なんでもいいから早くやろうぜ」

 

「おし、進んでするのが?」

 

「人の上」

 

「真似してするのが?」

 

「人の中」

 

「言われてするのが?」

 

「人の下。…そしてお前が人の屑!お休み」

 

「はァ!?誰が屑だ!?───って切りやがった……寝るか」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

ミッション小見からマカロニを奪い取れ!2

 

「じゃあ次のお題な作品のタイトルの数字から数字の3を引いて面白くしてくれ」

 

「アナと雨の女王」

 

「…………?いや、数字だぞ?」

 

「雪から下の3を取った」

 

「……あ!──ごめんもっかい」

 

「( º言º)」

 

「ラストなラスト!お題は……それじゃあこんなホラー映画は嫌だ!ってやつで」

 

「怖い事が起こる10秒前になると画面にカウントダウンが表示されるヤツ」

 

「合格!」

 

「あ?」

 

 

 






メモのコピペ疲れたー。


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中学生時代
第1話


初めまして皆さん、読みたいから書きました。

他になんか書くことないような…。

自己満やし。

そんなわけで見切り発車です。

よろしくです。



最初は良くある、ちょっとした好奇心だった。

 

幼い時に信号機を見て「あれなに?」と親に聞くのと同じ好奇心だ。

 

ただ信号機と違うのは……

 

「ライトライト!!」

 

「ストレート締めろ!!」

 

「ブロック3枚付け!!」

 

「ふんぎッ!!」

 

「上がった上がった!!」

 

「ぼくとさん!」

 

「っしゃああーー!!」

 

 

 

スポーツだということ。

 

ーーー

 

「俺とお前と皆んなで全国のトップに立つぞ!」

 

 

中学生の時にそう言われてから何年たっただろうか。

 

 

気付いたら小学生になっていたあの日、前世の記憶を思い出したその時に、おそらくはその日からストーリーはスタートしていたのだろう。

 

そして中学生の時に、あの言葉を言われた時に、完全に俺は戻れなくなったのだろう。

 

 

これは梟谷にとある転生者が存在するお話。前世の記憶を持って。

 

ーーー

 

俺の名前は「能本鷹木」(のりもとたかき)中学3年生だ。

 

今は夏休み前の期末テストの真っ最中で、クラス内がシーンとしている。

 

周りを見渡せば、寝ているもの、泣きながら解いているもの、まじめに解いてるもの、カンニングしてるもの、そもそも休んで欠席しているもの、鉛筆を転がすもの、そして他の事を考えたり、絵を描いているものがいる。

 

ちなみに俺はもう終わって暇なので、物思いに耽っている。

 

なんでかって?

 

それは「俺は天才だから」だ。

 

 

……とか言えたらカッコ良いが、俺はそんなんではない。

 

何を隠そう、この俺は転生者だ。

 

それも神様に会ったことのある、ね。

 

しかしながらチートではない。

 

ないったらない。

 

 

特典は貰えたが、そんなすごいものではない。

 

一つ目が服装が似合いやすい顔。(服選びが楽になるし)

 

二つ目がすごい精神力。(辛いこともなんとかできそう)

 

三つ目が高い身体能力。(怪我とか病気とかはやだし、勉強も楽したい)

 

 

まぁ、十分すぎるものなのは認める。

 

折角貰えるとの事だったし、欲張ったのは事実だ。

 

俺は昔から勉強するのは好きではないが、嫌いでもなかった。

 

だから頭の能力や運動神経を上げれるだけ上げてもらったんだ。

 

そうすれば手を抜いても種々のテスト(関門)をクリアできる。

 

今世はこの能力を使って、だらだらと暮らそうと思っていた。

 

 

しかしこの世界はそうは問屋が卸さない、と言うことに記憶を取り戻すと同時に気付かされた。

 

だって思い出した時、目の前に「みみずく」がいたんだもん。

 

なんなら思わず尖った部分をツンツン触って現実逃避しちゃったし。

 

記憶を辿って仲良かった事を知った時は絶望したよ。はっはっは……

 

 

それはともかくとして、前世ではこれでも大学1年生として1年間順風満帆な人生を送っていた。

 

因みに死因は溺死だったそうだ。

 

まぁ、風呂でのんびりしてからの記憶が無いからそう言う事なんだろう。

 

 

どうやって転生したかって?

 

神様が適当にルーレットで決めてくれましたよ。

 

神様って忙しいんだってさ。

 

 

そんでもってルーレットで決まった場所は漫画の世界。

 

テンプレ的展開で好きな漫画の世界に入れた以上、存分に満喫したいと思うのはファンとして当然。

 

その為にも俺はこまめに予習復習をしている。

 

勉強の補修で部活ができないとかは考えたくないからな。

 

主人公のようにはならん。それだけは絶対に。全ての面から俺のスローライフを守る!

 

そして勿論、ファンとして試合や練習の結果をあまり変えたくもない。

 

だから【補欠部員】の立ち位置となる事も必須だ。

 

結末をはっきりと覚えてるわけではないが、ここにいる面子を見ると中々に重要な場所だと理解させられる。

 

それ故に、俺はそっと補欠部員へとフェードアウトする事を望む。

 

 

だが、神様に物申したい事が一つだけある。

 

それは…

 

キンコーンカンコーン♪

 

 

「よっしゃあ!終わった!!」

「遊びに行くぞー!!」

「おーい鷹木ぃ!バレーしようぜ!」

「いや待てよ木兎!!休み時間はサッカーする約束だろ!!」

 

…………。

 

今のでお分かりだろうか?

 

 

「えーー!いいじゃんか!バレー楽しいじゃん!!」

「そうかもだけど、準備に時間かかるだろ?」

「ここはサッカーにしとこうぜ!な、木兎!!鷹木!!」

 

 

そう、ここは漫画の世界(ハイキューの中)であって漫画の世界(原作の場所)ではないのだ。

 

 

「おい、皆んな!急がないと場所取られちまうぞ!!」

「なにぃ!?急げぇーーー!!」

「お前らついてこい!近道だ!!」

「おう!…って!そっち(窓)から行けん(飛び降りれる)のはお前だけだ!!」

 

そう言ってクラスの男子全員が走り出す。

 

ここは2階だから誰でも飛び降りる事は出来なくは無いはず……多分。

 

そして先頭の子が廊下に出た瞬間、壁(先生)にぶつかった。

 

 

『あ……』

 

「お前ら……テスト当日じゃろうがぁぁ!!!」

 

『ギャァァァァ!!!!』

 

「テスト当日くらい!!勉強せえぇぇい!!」

 

『に、逃げろーーーー!!』

 

「逃がすかァァ!!」

 

 

言いたいことは、そう、

 

「なんでここに転生させるんだよーー!!」

 

と言うことだ。

 

今まで何度そう思った事か…

 

現世では俺の親はもうどちらもいない。

 

が、親が既に他界してる事に関しては問題ない。

 

前世の親に恩返しが出来なかった事は残念だったが、大学生活を1年間経験したこともあって一人暮らしでの生活に問題はない。

 

問題は俺が細かい設定までは知らないと言うことだ。

 

それはつまり木兎がどう言う経緯で原作のようになったのかを知らないと言う事だ。

 

これではどうキャラクターに接触すればいいか分かったもんじゃない。

 

だが、それはまだなんとかなる。

 

細かい事は分からなくても、木兎をバレー部に入れて梟谷にも入れればそれで大筋の問題はないはず。

 

あったその時からこいつはずっと「へいへいへいへい」言ってるし。

 

馬鹿だからそんなむずい話じゃないはずだ。

 

しかしそれよりも大きな問題がある。

 

それは「スローライフが出来ない」と言う事だ。

 

木兎がいるからといって別にスローライフができなくなるわけじゃないって?

 

 

お前舐めてるんじゃないのか?木兎の事を。

 

あいつがいるとクラスが180度変わるんだよ!

 

うちのクラスはな、最初はな?本当に、ほんっとうに、落ち着きある良いクラスだった…。

 

しかし今となってはクラス全員が運動大好き・熱血漢と化してしまっている。

 

木兎恐るべし。

 

 

だが俺はめげなかった。

 

それくらいは眠そうな顔とか態度をとれば、問題ないと思っていた。

 

健気に対抗していたんだ。

 

だがしかし俺のそんな甘い考えなどどこ吹く風。

 

毎日のように「あっそぼーぜーー!!」と声をかけられて、拉致られる。

 

そしてそれと同時に毎回先生や女子達から同情の視線を頂戴する。

 

どうせなら黄色い視線が良いと、何度思って何度諦めた事か。

 

飽きる事なく毎日のようにテストがない時は最低でも1日3回はそうなる。

 

だから俺としてはテストの類はウェルカムなのだ。

 

お陰で嫌いな勉強が好きになりました。ありがとうございます。

 

 

そんな事を考えていると、先生に首根っこ掴まれたみみずくがやってきた。

 

目をキラキラさせて…

 

捕まって説教をされたら普通、目がキラキラするはずがない。

 

相変わらず謎すぎる思考回路だ。

 

だが幸いなことに俺は、この学校のやつは、みんなこいつの考えが手にとるようにわかる。

 

「なぁ鷹木!!放課後バレーしに行こうぜ!!体育館今日空いてるってよ!!」

 

もう何度聞いたか分からないこの言葉。

 

こう聞くと俺は毎度こう返す。

 

「俺はのんびりしたいんじゃーーー!!!」

 

 

そして今日も後で拉致られるんだろう。

 

いつまで続くのやら…。

 

 

そんな事を考えていると本日5回目の先生と木兎のやり取りが目の前で始まる。

 

「木兎!お前今日が何の日か理解しとるのか!?」

 

「もちろん!昼から遊べる日だろ?」

 

「違うわ!!お前らは今日!テストじゃろうがい!!」

 

「もう受けたから良いじゃんかぁ〜!」

 

「まだ2科目しか受けてないじゃろうが!」

 

「えー!でも校庭で遊んでる人達めっちゃいるぞ!!」

 

「それは2年生じゃろうがぁ!今日球技大会なんだって昨日言ったじゃろうがい!!お前らも去年の今頃やったじゃろうが!!……ゼエゼエ……」

 

 

『ブーブー!』

「ちょっとぐらい良いじゃんかよぉ!先生!」

『そーだそーだ!!』

「叫びすぎると声枯れますよー!」

 

「じゃかわしい!!……ったく!ほら!お前らも席につかんか!3時間目のテストを始めるぞ!」

 

『えーー!?』

 

男子は俺以外全員が揃って不満だと口に出し始める。

 

そしてこれを収めるのは大抵、

 

「はーい、みんな〜席について〜」

 

間延びした可愛らしい声だ。

 

この声を聞いた時に男子がする事、それは一つ。

 

『はい!』

『木兎!!着席しろ!』

 

「な!?うっ裏切ったな!?お前ら!」

 

「お前も座らんかい!!」

「グェ!?」

 

 

ここまでがテストがある日のルーティンみたいなもんだ。

 

流石に飽きるし、疲れるんだが…。

 

いっそのこと別の高校に進学するか?

 

森然とか生川に行っても原作を生で見れるわけだし…

 

なんなら音駒にするのもいいな。

 

音駒なら俺もかなり埋もれるはず……

 

その上より原作を体験できるだろうし。

 

 

そんな事を考えながらも問題を片っ端から片付けていく。

 

気付けば残り時間は10分ほど。

 

意外にも時間がかかってしまったようだ。

 

まぁ、ながらでこんだけ早く終わったらいい方か。

 

因みに木兎は…?

 

 

案の定モノっすごく悩んでいた。

 

 

そんなに難しいのあるか?

 

興味が出てしまった俺は、思わず目を凝らして何処を解いているのかを見てしまった。

 

カンニングになるが、答えを見るわけじゃないからセーフだろう。

 

そぉーっと答案を見てみると、全ての欄が空欄になっていた。

 

 

 

………うそやろ?

 

 

自慢じゃないが俺は木兎に勉強をよく教えている。

 

時には同じクラスの白福と一緒になって、部員全員に教えることが多々あった。

 

特に白福が教えるとなると男子が真面目に受けるし、俺も楽になるから大歓迎。

 

ただ依頼料なのかなんなのか、めっちゃ俺ん家で食べて帰るんだよね。

 

木兎達にも見せたいくらいに。

 

多分軽く引くだろうし、そうなると俺の負担がデカくなるから教えないけど。

 

 

とはいえ、流石に昨日今日と木兎にしては真面目に勉強した(させた)のに、0点はいただけない。

 

もしこれが普通のテストとかなら問題ない。

 

だが今回のは期末テストだ。ここで赤点だと補修を最低でも1週間は受けなくてはならない。

 

その後テストを受けて80点を取って、1発クリア出来ればまだいい。

 

しかし、もし出来なければさらに2週間補修を受けて最低でも90点は取らなければならない。

 

 

木兎がそんな高得点を取れるはずがない。

 

今までの最高得点が40点のアイツが。

 

 

アイツはうちのエースだ。俺とは違い、チームの主力も主力。

 

これから大会が始まる以上、ストーリーの為にも、木兎には活躍して推薦をとって貰う必要がある。

 

 

ちなみに今の俺の部活での立ち位置は木兎の騎手係兼チームの冷却係兼アンダー得意なリベロ君だ。

 

前の2つは仕方ないとしても、最後のやつは不本意だ。

 

木兎の騎手は赤葦にいずれ任せられるから良い。

 

冷却係も木兎効果で全員が熱血漢になってしまったから仕方がない。

 

結果的にチームが強くなったからなんも言えんし。

 

赤葦が来たらそこもやってもらおう。

 

丸投げとでもなんとでも言え、俺はスローライフを望む。

 

 

ただ、最後のやつは不本意にも程がある。

 

だって誰もアンダーやらねーんだもん。

 

オーバーは痛くないし、攻撃にすぐ参加できるらしいからみんなやるけど。

 

ていうか、アンダーもオーバーも攻撃にすぐ参加出来ると思うんだが……

 

そんでもって俺はジャンプは疲れるからあまりしない。ブロックもスパイクもしない。そのかわりアンダーはする。

 

だってアンダーなら痛いだけで誰でも基本はできる、多分。

 

あとなんかバレーやってそうって思われそうだから、手を抜いてもバレなさそうだし。

 

だから目立たずに行けると思った。

 

 

その結果がチーム唯一のリベロという重要ポジションをよこしたのだ。

 

とりあえず過去の自分を殴りたいと思うね、うん。

 

そう言うわけで俺は音駒に行けばいいのでは?と思ったんだ。

 

あそこには俺なんかより何倍も上手いアンダーがわんさかいるし。

 

 

それは置いといてアイツはさっき言った通りエースだ。

 

だから何がなんでもあいつにはこの壁を越えて貰う必要がある。

 

といっても、今何かできるわけではない。

 

もうすでに賽は投げられた。

 

あとはもう神に祈る以外ない。

 

 

唯一の可能性があるとすれば、うちのテストは特殊だと言うこと。

 

なんと一問で30点、つまり赤点回避をさせるための問題が存在するのだ。

 

そして五科目のうち一つでも正解できれば全教科赤点回避となる。

 

流石は漫画の世界であり、スポーツが強い学校って所だろうか。

 

これは知識や教養を養うモノだったり、閃きを必要とするものだったりする。

 

これに関しては対策のしようがないのだが、日頃から注意して先生の授業を聞いていればわかる。

 

どの先生も必ずテスト前のどこかでさり気なく言うのだ。

 

もっともそれに気付けているのはクラスで俺だけのようだが。

 

だってうちのクラス白福とか女子除くとみんな脳筋だもん。

 

 

気づけるわけがない。

 

 

なら伝えてやれば良いって?

 

そこは暗黙の了解ってやつだよ。

 

現に仕組みがわかった他クラスの奴らも誰にも言ってない。

 

分からない奴らもそれは聞かない。

 

なんでそうなったのかは分からないが、清水潔子(サンクチュアリ)みたいなもんだ。

 

それになんかしら書けば15点は貰えるし。

 

 

そこだけでも解けてる事を祈って、俺は再びどこの高校に行くかを考え出した。

 

 

 

あれからテストが終わって家に帰ろうとしたら案の定、木兎や他の部員達に捕まってバレーをしたり、復習をしたり、色んな高校の練習を見に行ったり、生活必需品とかを買いに行ったり、部活をこなしたり、YouTuberとして活動したりしていると、あっという間にテストの返却期間がやってきた。

 

 

驚いたことに木兎のやつはクリアしていた。

 

「うそやろ?」

 

祈っといてアレだが、なんでだ?

 

答案を見ながら男子を見る。

 

めっちゃ喜んでいるが、なんで正解できたんだ?

 

 

今回のは引っ掛け問題。

 

正解は「     」 つまり空欄だ。

 

これは主に社会の時間に先生が言っていた奴で、かつて偉人が出した問題だ。なんならテレビでも取り上げられたりする良問だ。

 

問題文はこれ

 

「もし書くものが無くなったら、どうなる?」

 

と言うのものだ。

 

答えは空欄。

 

 

理由は「書くものが無くなったら何も書けない」からだ。

 

 

……まてよ、だから木兎がクリア出来たのか。

 

 

運良すぎるだろ…

 

 

俺が主要キャラの凄さを痛感していると白福が話しかけてきた。

 

「どしたの〜鷹木?なんか疲れてる〜?」

 

「白福…いや、運も実力のうちってやつを実感してるんだよ」

 

「ん〜〜…それは違うと思うよ〜?ほら、あれ」

 

「ん?」

 

白福が指さした方には何やらニコニコした教師達が、こちらに手を振っていた。

 

 

「…なるほど、先生の掌の上だったのか」

 

「みたいだね〜。でもお陰で助かったし、良かったよ〜」

 

「そういや白福はどうだったんだ?」

 

「ん〜?悪くはなかったよ。全部80ぐらいは取れたし〜」

 

「そいつは何より…んじゃあ部活行くか。木兎達は俺が連れてくから、鍵頼むよ」

 

相変わらず白福は声が間延びしてるなぁと思いつつ、俺はいまだにお祭り騒ぎをしてる奴らに声をかける。

 

「部活しねーの?」

 

俺の声はまさしく鶴の声。

 

 

 

 

ではないが、こいつらにはこれで十分だ。

 

      だって脳筋なんだもの。

 

俺がそういうや否や10秒後には1人目が走り出して行き、1分後には全員が体育館に向かって走って行った。

 

こう言うことができるから、チームの冷却係とか言われんだろうなぁと思いつつ、俺も体育館へと向かう。

 

そしてこうすると毎度あるイベントが発生する。

 

「あと5秒くらいか?」

 

のんびりと俺は歩きながら数える。

 

すると予想通りに怒声が校舎に響いた。

 

「廊下を走るなぁぁぁ!!!またお前らかぁぁ!バレー部!!!!!」

 

ところがこの声は俺の予想した声ではなかった。

 

普段ならここで怒鳴るのはうちの担任だ。

 

ちなみに彼はうちの担任になったお陰で声がよく通るようになったそうだ。

 

まぁ毎日のように喉を枯らしたらそうなるよな。さっきも枯れてたし。

 

彼は大体次のように怒鳴る。

 

「踊れらァァァ!!廊下は歩かんかい!!!」

 

しかし今回は違うようだ。

 

そしてこの声は恐らく…

 

「まったく、なんでバレー部は毎回こうなんだ?」

 

裏で正岡子規またはズラペリー(カツラがペリー似)って言われている教頭先生だ。

 

「テストが終わったから嬉しいと言うのはわかる。だが君達はいつでも元気だよな。なぜかな?元気なのは良いことだよ?間違いなくな?だがな、君達は最上級生なのだよ。そして我が校の中でも特に強い部活なんだよ。だからといって、好き放題していいわけではないことくらい理解できるよな?そもそも部活とは(クドクド)」

 

一方で校長先生よりも長く話す人としても有名な人だ。

 

具体的な時間で言うと最低30分ほどだ。

 

対して校長先生は10分ほど。

 

うちの校長先生が短いのかは分からないが、明らかに教頭先生のは長い。

 

これは部活の時間が半減するなと思いつつ、俺は別の道から体育館へと向かった。

 




はいどうも。

読んで頂きありがとうございました。

こんな感じでだらだら系の主人公を書くつもりです。

興味を頂けたら幸いです♪

ではさようなら。


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第2話

本日もよろしくです。




あの後練習が始まった時間は結局普段とあまり変わらなかった。

 

実際教頭先生はありがたいことに長々と話してくれているようだ。

 

その証拠に俺以外誰も3年の男子がきてないし。

 

 

俺はそいつらが来るまで何もしないつもりだったが、それでは普段通り来た後輩達や顧問の先生に顔を向けられない。

 

だからとりあえず白福ら3年マネチャンズとのんびりしながら準備して、来た後輩達とパス練してました。

 

個人的にはずーっとこれでも良かったんだけどもそうはいかない。

 

だってそれは顧問の先生に悪いし、何より後輩達に申し訳ない。(2度目)

 

夏の大会がすぐにまで迫ってるし仕方がない。

 

そんなわけである程度やったら普段の練習メニューをこなすことにした。

 

 

 

しかし1人しか3年がいないから、めっちゃ声出すことになってかなり疲れました。

 

おかげさまで声が鍛えられました。ありがとうございます。

 

これで俺も担任のように声が通る事を祈るよ(現実逃避)

 

 

他のクラスに3年は居ないのかって?

 

確かにいる。

 

だけどそいつらも木兎効果を3年間たっぷりくらったから、あとは…まあご想像に任せるよ。

 

 

俺がそんな事を考えながら練習の指示や声出しをしていると顧問の先生が話しかけてきた。

 

 

「能本、ちょっといいか?」

 

「え、あ、はい。どうしました?木兎とか他の3年の件ですか?」

 

「ああ、それは想像つくから大丈夫だ。そうじゃなくてな、お前今高校迷ってるって聞いてたから、それに関しての話だ」

 

「あぁ…まぁ音駒にしようかなと思ってます」

 

「お!決めたのか!…って、音駒?なんでまたそこに?あそこのバレー部は強くないぞ?」

 

「(知ってるんだな…てかこの人生徒一人一人に優しいし良い人だよなぁ。サボっても許してくれるし)えぇ、でもそれがいいんです。正直言うとバレーを本気で続けるつもりではないので」

 

「なるほどなぁ…ま、お前が決めたことに俺はなんも言わないよ。楽しければそれで良いしな。で、その事はもう担任に言ったのか?」

 

「いえ、明日にでも言おうかなと。明日は祝日で叫び疲れたりしてなさそうですし」

 

「アッハッハッハ、あの人は毎日怒鳴ってるからな。分かった、俺は応援してるぞ!」

 

「どもっす」

 

本心で言っただけあったのか、顧問の先生は納得したようだ。

 

うちのバレー部は全国常連校で、去年は4位入賞すらしている。

 

そのチームのレギュラーである以上、俺も色々声をかけられた。

 

が、そこに行く気はない。

 

行くなら原作の舞台だけだ。

 

それに部活に入る気はあっても、ガチるつもりはない。

 

顧問の先生はそんな俺の本心を元々知ってたんだろうな。

 

多分今聞きに来てくれたのも、木兎がいると面倒な事になるって分かってたからだろうし。

 

ほんとにいい人だよこの人。

 

この人じゃなかったら、俺マネージャーやってたし。

 

意地でも。

 

 

それからしばらくして最後の練習メニューである練習試合が始まろうとした時。

 

体育館の扉が大きな音を立てて開けられた。

 

時間は5時を過ぎた所、とうとうやってきた。

 

「へいへいへいへーい!バレーーやるぞー!!!」

 

『おおーー!!』

 

木兎達俺以外の3年生だ。

 

「お!練習試合か!?よっしゃー!やるぞー!!」

 

開口一番バレーをしようとした木兎達だが、それを止めるのが彼女。

 

「はいはーい。ストップ〜。まずはストレッチしてきてね〜」

 

『はい!』

 

「えー!いいじゃんかよー白福!!」

 

「ダーメでーす。1週間後は大会なんだよ〜。バレーでスパイク決めたかったら従ってね〜」

 

「グゥ!!」

 

これもまた遅れてきた時のいつもの流れだ。

 

試合の中では俺が騎手だが、外だと白福がそれを自然と担っている。

 

正直言ってめっちゃ助かるし、なんなら全部やってもらおうと思って頼んだりもした。

 

 

もちろん、笑顔で断られたけど。

 

 

ちなみにうちの練習開始時間は16:00で終わりは18:00だ。

 

本来は上の通り2時間で終了となっている。

 

そう、「本来」は

 

 

俺らバレー部は他とは異なり、18:30まで特別に使わせてもらえてる。

 

俺らの代が入学する前は18:00だったんだ。

 

なのに変えたやつがいる。

 

言うまでもないだろうが木兎だ。

 

アイツは「練習もっとやりたーい!!」って言って人の話を聞いてくれない。

 

8時までやるって言ってその一点張りだったんだよ。

 

アイツ1人なら聴き流せるが、その1人が木兎だ。そう、木兎光太郎その人だ。

 

気づいた時には俺とマネチャンズを除いた全員が8時までやるって言い始めた。

 

そんでもって終いには体育館を占拠しやがった。

 

おのれ木兎シリーズめ(作品違い)

 

だから俺は先生と交渉してある事を取り決めて、木兎を抑える事にした。

 

一つ目が部活の終了時間を18:30にする事

二つ目が俺の家で19:30まで練習する事

三つ目が二つ目をする上で必要な設備費の用意

 

 

以上この三つを取り決めて、木兎と楽しいお話をして認めさせました。

 

単細胞っていいよね。

 

簡単にしょぼくとになるし。

 

思わず写真に収めてしまった。

 

 

んでもって、一つ目はそのまんまだ。特に苦労はしなかった。

 

言った瞬間「すくねー!!」とか「断固拒否だー!!」だとかギャーギャー言ってきたけど。

 

二つ目と三つ目はかなり大変だった。

 

まず俺の家は神様のお陰で結構広い。

 

50mプール1つとテニスコート2面あるし。

 

ただ部員全員で練習するだけの道具はなかった。

 

それらを揃える為に必要になるのが資金集め。

 

それがこの前言ったYouTuberとしての活動というわけだ。

 

投稿内容は主にゲーム実況と日常風景と歌ってみたってやつ。

 

この世界は不思議なことに前世と同じようにゲームやアニメ等はめっちゃある。

 

そのことに関しては神様にめっちゃ感謝したい。

 

だからゲーム実況に困る事はない。

 

そして日常風景ってのは学校での撮影が主だ。

 

先生が主体となってカメラを回し、定期的に面白い動画を投稿する。

 

要するに学校の宣伝だ。

 

因みに最も人気があったのは何故か卒業式だ。不思議なものである。

 

歌ってみたの方も音楽の先生や歌が得意な先生に色々教えてもらった。

 

お陰でカラオケで満点取れる曲が複数出来ました。やったね。

 

当初はうまく行かないと思っていたが、いい意味で裏切られたよ。

 

半年でチャンネル登録者が100万越えして、どの動画も120万回再生されてるし。

 

世の中甘すぎないか?

 

編集はかなり頑張ったとはいえ、ありふれた内容だと思う。

 

楽できていいけど。

 

一応言っとくと俺の生活費は神様が出してくれてます。

 

なんと毎年1億円くれます。(拍手)

 

理由は日本人が億に弱いと思ってるからだそうです。

 

 

 

なんでや?

 

 

 

ありがたいけどね。

 

 

長くなったけど、とりあえず木兎のことは白福に任せて目の前のチームを倒すことに集中する。

 

俺のモットーは手を抜きながら戦い、相手の体力が切れたところで一気に攻めるヤツ。

 

要するに青城の手を抜く子と同じような感じ。

 

俺は攻撃しないリベロだけど。

 

役割分担ってヤツだよな。相手に返すのは攻撃でもなんでも仲間に任せて、拾うのは俺がやる。

 

これが大事なんだよな。攻撃ってのは試合のいわば花形だ。

 

どのスポーツでもそうだろう。

 

もちろん試合でスーパーレシーブをすれば大きく盛り上がることは間違いない。

 

だけど俺はそれをしない。

 

そんな事をしたら攻撃をしない意味がない。

 

俺の目的はあくまでチームの中堅としてモブのように存在する事。

 

夢はハイキューを読者として見ることだ。

 

ずっとそれを目的に活動してきたし。

 

記憶が戻ってすぐに「木兎」を見ても俺は諦めなかった。

 

頑張ってバレーをやめて傍観者になろうともした。

 

まぁできなかったけどな。

 

 

そんなわけでおれは頑張れば取れるってヤツは取らない。

 

拾う為に飛び込むが、間に合わないようにしてる。

 

慣れるまでは大変だった。

 

狙っていけばスーパーレシーブしちまう時があるし、手を抜いてやると自分の体を痛めたり、あらぬ方向に飛んで観客に迷惑をかけてしまう。

 

だから必死になって練習した。

 

そしてなんとか2年の歳月をかけてある程度習得できた気がする。

 

コツを掴んだ瞬間になんか、こう、感覚があるんよね。

 

習得した今となっては立派にモブリベロとして存在出来ていると思っている。

 

まぁリベロは俺だけだから目立つけど。

 

実力は高校生レベルから見れば大した事ないはずだ。

 

だからこのまま音駒に行けば上手い具合に埋もれることができるはずだ。

 

あそこの監督は猫っぽくて優しそうな顔してたはずだし。

 

 

俺はそんな事を考えながら相手のスパイクの威力を吸収して丁寧に返す。

 

試合は15対17で俺らが2点リードされてるところ。

 

だが俺以外の奴らは大抵体力を気にする事なく、飛んで飛んで飛びまくってスパイクばかり打ってくる。

 

ツーアタックとかも一切してこない。

 

サーブとかでも思いっきり打ってくるし、良くも悪くも全力で全部吹っ飛ばす。

 

だから試合の中盤まで来て仕舞えば、あとはこっちの道断場だ。

 

俺がアンダーで返したボールをうちのミドルブロッカーのレギュラー君がしっかりと決めてくれた。

 

 

ちなみに俺は彼の事をどっかで見た事がある気がする。

 

どこか木兎と似てるんだよね。主に髪型とか。なんか逆立ってるし。

 

ただし性格は真逆も真逆で大人しく口数が少ない。

 

なんか君梟谷にいなかった?

 

気のせいって事にしておこう。

 

 

相手チームはブロックを3枚出せたはずだが、体力が無くなってきたのかどれも低くなってきている。

 

うちのメンバーも体力が切れてきているがスパイクが打てそうとなると話は別だ。

 

 

スパイクさえ打てそうならうちの中学は体力の概念がなくなる。

 

 

汗で転びやすくなっていても、ブーイングが飛んできていても、点数が絶望的でも、いくらでも飛ぶ。

 

しかし、レシーブとなるとそうではない。

 

だからこそここからはいつも俺がいるチームの独壇場になる。

 

そして顧問の声もいつも通りに相手チームに向けられる。

 

「お前ら足とめるなよー!止まったら負けるからなー!食らいついていけーー!!」

 

『ウス!』

 

しかし声ではそう反応していても、レシーブとなるとどうしても動きが止まる。

 

 

結果、俺のチームが25対17で快勝した。

 

 

「へいへいへいへーい!!鷹ぁ木!次は俺らと勝負だ!!!」

 

「いや無理だから、体力的にもルール的にも」

 

「いーじゃねぇかよー!まだまだ動けるだろぉ!!」

 

「んなわけあるかい、もう限界も限界」

 

そう言って俺はいかにも疲れましたとジェスチャーしながらマネージャー達に記録とドリンクをもらいに行こうとした。

 

「いやーでも、木兎先輩と能本先輩はどっちも体力が桁違いだよな」

 

すぐに戻ってきたけど。

 

できる限り目立つ事をしたくない俺はこう言った発言を訂正する必要がある。

 

こういう所で手を抜くかどうかで大きく変わるんだよ。

 

少しでも後々に楽できるように、ここは骨を折るとしようじゃないか。

 

「ちょい待て、木兎はそうだけど、なんで俺まで?俺はもうヘトヘトなんだぞ?立ってるのもやっとだし」

 

「いやいや、今もの凄い速度でここまできたじゃないすか。ヘトヘトなら出来ないっすよ」

 

「だよなぁ、休みは遠出して、登下校でも遠くからずっと歩きなのも体力を増やす為って知ってますし」

 

 

んんん?何を言っとるんだこいつは?

 

 

確かに遠くから通ってるけど、休みに出かけるのはこの世界について色々知る為だし。

 

登下校で30分以上かけて歩くのも原作キャラと遭遇する為だし。

 

だって原作キャラ達は皆んな部活をガチでやってるはずだから、朝早くとか夜遅い時間に会えると思ってやってるんですが。

 

「流石は能本先輩だって皆んな言ってますよ」

 

まずい、こんな風に言われてしまうと正直嬉しいがこれは本当に不味い。

 

目立たない為にもここで修正しなくては!

 

「そもそも俺は大事なだ・い・じ・な試合中に手を抜いてるんだぞ?こんな俺を尊敬なんかしちゃダメだって」

 

「でも、能本先輩のそれは怪我とかしないためですよね?それにそれのおかげで後半になってもチームの守備力が落ちることもないですし」

 

「だろぉ!鷹木はすげーんだぞ!!」

 

「改めて聴くと凄いよな」

 

「お!辰生(たつき)もそう思うか!!」

 

 

不味い!なんか知らんとこでめっちゃ評価上がってる!

 

なんでだ!?

 

このままでは俺のスローライフが崩れてしまう!

 

俺はストーリーを間近で眺めてたいだけなのに!

 

俺が入ったらストーリーを壊しちまう可能性がぎょうさんあるんやぞ!?

 

しっかりしろ能本鷹木!

 

何のための特典だ!

 

 

 

この時俺は否定することに必死である事に気づけなかった。

 

 

 

木兎が元気なのではなく、喜んでいた事に。

 

 

そしてここに梟谷のレギュラーがもう1人いた事に。

 

 

 

後になって白福に聞いて分かったが、木兎は俺の事を色々自慢していたらしい。

 

 

いやなんでやん。

 

 

確かに小学生の頃からの知り合いだけども、同じ学校じゃなかったし、週3であったバレー教室であってただけだぞ?

 

ちなみに記憶を取り戻した時はなんか目の前で動き回ってるやつがいました。

 

その子を最初は日向か影山かなって思ってたのに。

 

するとそれ見た瞬間に頭に電流が流れたような感じがしました。

 

そしてくらっときたので頭を体育館の壁に打ち付けました。

 

動き回ってたその子は良いやつで心配して見に来てくれました。

 

ただよく見ると頭がとんがってました。

 

 

 

いやほんとなんで?って思ったよ。

 

 

 

それからの腐れ縁です。

 

もちろん別の中学に行こうと思いました。

 

ただバレーはしたかったのでバレーがある所にしました。

 

するとそこは強豪校でした。

 

他に通えるところはありませんでした。

 

 

結果ゲームオーバーってわけです、はい。

 

そんな事を考えていると部活の時間が終わり、各々が俺の家に向かっていった。

 

俺やマネチャンズもそれに続く。

 

近所迷惑とか門限とかで怒られない事を祈りつつ、大会に向けて練習をした。

 

そしてついに中学最後の夏が始まる。

 

が、大会会場に行く前に俺は大声で木兎に文句を言った。

 

結果その日の最後の試合まで木兎がずーっとしょぼくとだったが問題はない。

 

うちのチームは木兎シリーズがわんさかいるしね。

 

市・都大会で問題なく優勝できたので2週間後には関東大会、そして全国大会が始まる。

 

今年こそは原作キャラを見つけるべく、俺は普段以上に視線を動かすのだった。

 




高評価を頂けたので、連日投稿をさせていただきました。

楽しんで貰えたら嬉しいです。


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第3話



皆様のお陰で日間50位になれました!ありがとうございます!

今後もよろしくお願いしますʅ(◞‿◟)ʃ


今日は関東大会の当日。

 

俺らはシード権を与えられているので、相手の調子を見極めていた。

 

「おーい!鷹木ぃ!こんなの見つけたぞー!」

「俺はこれを買ってみた!」

「俺はトイレに行ってきた!」

「俺は先輩と会ってきた!」

 

 

もっとも見極めていたのは俺とマネチャンズだけだが。

 

 

ちなみに顧問の先生は今役員としてお仕事をしている。

 

が、こいつらはいつもこんな感じで大声を出しているからどうしても目立つ。

 

俺としては一緒にいると俺が目立たなくなるから大歓迎だが、同じジャージを着ている以上1人だとどうしても俺にも視線が集まる。

 

別にその事に関しては問題ない。

 

騒ぐお陰で冷たいと言うか、そんな感じの視線を良く頂戴するがそこまでのものではないし。

 

厄介なのはこいつらが大会開場で毎回対戦相手等の試合を見ようとしない事だ。

 

木兎は春高とかで赤葦と日向達のを見てたのを覚えているが、どうやら中学時代は見なかったんだろうな。

 

流石は日向・主人公ってところか。

 

高校に行ってから見るようになるという事だとしたら、見させるようにした奴を褒め称えたい。

 

そして早く役目を擦りつけたい。主に騎手の方を。

 

 

てか、最後のやつなんて言った?

 

「先輩」って言ったよな?

 

普通先輩とか目上の方に会うときは全員で挨拶に行くべきじゃねえのか?

 

いやまあ先輩方も木兎効果で熱血系だから気にしないとは思うが。

 

こういうのは一応した方がいいだろう。

 

幸いにもこいつが会ってきたのなら、場所探しで時間もかからないだろう。

 

仕方ないとりあえずそっちが最優先だ。

 

初戦は上石高校附属中学か南泉中学校。

 

全ての選手がオールラウンダーで特筆した選手はいない上石が勝つか、明るさが取り柄の南泉が勝つか。

 

今のところ1セット目の10対11で拮抗しているし、長引くだろうから全員で挨拶に行くか。

 

荷物の見張りをマネチャンズに頼んで、俺は全員を連れて先輩に挨拶をしに行った。

 

 

そんで挨拶後、俺は部員全員をマネチャンズの元に行かせて、試合を見るように促した。

 

俺はと言うと今のうちにトイレに行こうと思い、トイレに向かった。

 

 

 

原作キャラと会うまでは。

 

 

 

「なんでここに……」

 

俺が会ったのは原作の春高の準々決勝で木兎と赤葦ら梟谷の前に立ちはだかる全国三大エースの1人・“悪球打ちの桐生”だ。

 

桐生は中学時代の何処かで牛若に負けた事以外知らないが高校は狢坂のはず。狢坂は大分県の高校だからここにいるわけがない。

 

どうなってるんだ?

 

もしかして中学時代は東京で、牛若に負けて逃げて大分にまで行ったのか?

 

なわけないよな。

 

あっでも観光とか偵察の可能性は十分にあるよな。

 

俺らと同年代のはずだから進路を決める為に見聞を広めにきたのかもしれん。

 

いやでもなんでここにいんのか、めっちゃ謎だな。

 

まぁいっか。

 

 

俺がそんな風に唸っていると不審に思ったのか話しかけてきた。

 

「なんや?お前?会ったことあったか?」

 

「いや、そうじゃねえけど」

 

「ほならなんでや?」

 

うん、なんか怖いなこの顔。

 

そんでもって俺が返答に困ってると桐生の隣にいる奴が助け舟を出してくれた。

 

「あ!もしかしてこの前の試合見とったんやないか?ほら、うちが牛島のチームにボッコボコにされたやつ!」

 

 

聞いたらわかる、ええやつやん。

 

お前名前知らんけどええやつやんか。

 

原作キャラかは知らないけどええやつやな。

 

 

てかボッコボコにされた事をなんでそんなに元気よく言えるんだ?

 

言っちゃアレだけどボロ負けした事を明るく言えんのって凄いな。

 

 

 

そんなこともあったがとりあえずトイレに行ってきました。

 

話してて忘れたせいでギリギリだったよ。

 

 

 

 

あと少しで試合に間に合わないところだった。フゥ……

 

 

 

で、最初の相手は上石の方だった。

 

ここは特段何もなく乗り越えていきました。

 

スコアは1セット目 25対15

    2セット目 25対11

    

最初いきなりしょぼくとになったのは驚いたけど、概ね問題なく勝てた。

 

なんでしょぼくとになってたのかは分かんないけど、だからって負けるわけじゃないし。

 

 

その後も順調に勝っていよいよ次は決勝戦。

 

相手はサーブが怠い駒勿(こまな)中学校。

 

特徴はスパイクサーブとかアンダーとか変なのばっか打ってくるとこ。

 

それぐらいかな。

 

策士がいるわけでもなければ、怪物がいるわけでもない。

 

いるのは変人サーバー達。

 

 

「しゃあああーー!攻め勝ーーーーーーつ!!!」

 

「はいはい、勝とうな〜」

 

「鷹木ぃ!?のってきて!?!?」

 

 

大した事なくこれもまた撃破できると思っていた。

 

 

 

俺はこの時完全に油断していた。

 

 

 

前世で何不自由なく暮らし、何かで苦戦する事もそうそうなかった。

 

そして神様に特典をもらい、まるで主人公のようだとどこか無意識に勝手に思っていた。

 

今世でも練習とかは大変ではあったが無意識のうちに「皆んなで頑張る」事を楽しく感じていた。

 

 

馬鹿だよな。

 

 

 

本当に。

 

 

 

 

馬鹿で阿呆で頓珍漢でどうしようもないやつなんだな。

 

俺は。

 

 

 

赤点回避の問題を周りに教えないのも、愉悦に浸りたかっただけだ。

 

何が鶴の一声だ。何がだらだらするだ。

 

アンダーをやるようになったのも、目立てるからだろうが。

 

骨折って訂正しようとしたのも謙虚な俺かっこよ!とか褒められたかっただけだろ。

 

 

 

笑っちまうよ。

 

 

 

もうわけがわからない。

 

 

 

駒勿side

 

「…上手く混乱させられたようだな」

 

「ええ、正直こんなんで上手くいくとは…」

 

「彼のプレーは基本的に思考してから始まる。何の意味もない数字の羅列や数式で勝手に沼にはまっていく。これで厄介なリベロがいなくなった。後は…」

 

「はい、ブロックを木兎に集中してそっちも押さえ込みます」

 

 

 

 

1セット目19対25 セットポイント駒勿

 

 

 

「ダイジョーブか?鷹木?」

 

木兎が副主将が白福が不思議そうに覗き込んでくる。

 

チームメイトもマネチャンズも応援団も俺に注目している。

 

普段なら黄色い視線かと喜んだかもしれない。

 

 

だけど違う。

 

これはそんなのではない。

 

理由は簡単。

 

俺はさっきのセットで何も出来なかったんだから。

 

相手が変なサーブを打ったからじゃない。

 

 

俺は相手の変な数字の掛け合いに混乱させられていたんだ。

 

相手のサーブの時に向こうのセッターが突然数式を口に出した。

 

当然こちらはそれの意味を考える。

 

正確には俺が。

 

俺だけがそれの意味を考えた。

 

木兎達にはわからないだろうと、勝手に思い込んで。

 

だけど何の意味か全くわからなかった。

 

最初は数式の答えが選手を表していると思った。

 

けど違った。

 

言葉遊びとか謎々かとも思った。

 

それなら普段からテストで解いてる。

 

でもわからなかった。

 

 

相手がサーブの時に毎度数式を言う。

 

それがヒントになると思って必死に相手の言葉を聞く。

 

だけどわからない。

 

 

その繰り返しだ。

 

 

気付いた時にはもう俺は、俺だけが思考の渦に飲み込まれていた。

 

 

 

俺は試合中に試合の事を一切考えられなくなって動けなくなったんだ。

 

 

 

 

 

 

結局チームは勝った。

 

 

木兎がエースとしての自覚を持って背中で皆んなを鼓舞したんだ。

 

「へいへいへいへーい!俺!サァァイキョォォォーーーー!!」

 

『へいへいへいへーい!』

 

「いよ!エース!」

「もういっぽーん!!」

 

この時は気づけなかったし、知らなかったけど赤葦がこの木兎に憧れたらしい。

 

 

鷲尾がジャンサーで無双して俺の代わりにアンダーもしっかりやった。

 

相変わらず無口ではあったが。

 

連携も完璧だった。

 

数式の意味なんか考える事なく、来たボールを上げて相手に叩き返す。

 

俺がいなくても問題なかった。

 

 

俺はこの時初めて気づいた。

 

木兎は馬鹿で単細胞だ。

 

暗号なんて解けるやつじゃない。

 

だけど主将のなんたるかを肌で感性で本能で理解していると言う事を。

 

実力で地力で相手の作戦を打ち砕く。

 

まさしくエースだ。

 

 

そして鷲尾が原作キャラだと言うことに。

 

アイツはあんなにオールマイティに強かったか?

 

いや、俺が目を背けてただけだ。

 

自分よりも上手いかもしれないって言うのを知りたくなかったから。認めたくなかったから。

 

 

 

俺って何なんだろうな。

 

 

 

結局俺は何をすることもなく全国大会も終わった。

 

結果は4位入賞。

 

俺がいなくてもアイツらは問題なく同じだけの結果を出して見せた。

 

 

よくわかった。

 

 

俺の力は何の役にも立たない。バレーが好きだからって意味がない。

 

 

「………本当にいいのか?音駒で」

 

「ええ、この前の大会でよく分かりました」

 

俺は今担任の先生と進路相談をしている。

 

今日は豪雨。

 

朝の予報が見事に的中したようだ。

 

ちなみに進路相談は6回目だ。

 

心配してくれてるんだろう。何せ俺の顔は酷いことになってるし。

 

学校に向かう途中のでっかい水溜りで確認したから間違いない。

 

それに今の俺の至る所から生気を感じられないだろう。

 

俺は絞り出すように声を出した。

 

「俺は……アイツらみたいに輝けません」

 

「………そうか。まぁお前の学力なら問題ないだろう。どこにでも挑戦できるだろうしな。だが、どうせなら進学校に行ってみることも視野に入れておいて欲しい。」

 

 

「進学校………ですか?」

 

「そうだ。学者としての道もお前なら切り拓ける。明後日になったらまた聞くから、考えておいてくれ」

 

「……わかりました」

 

力なくそう答えて俺は静かに教室を後にした。

 

帰り道の途中で雨がさらに強くなった気がした。

 

そのまま何も考えることなく家に帰ると傘を持ったある人物がいた。

 

 

 

「……なんでここにいるんだ?白福」

 

「ん〜?言わなくても、わかるんじゃな〜い?」

 

我が校トップクラスの美少女でバレー部のマドンナ的存在の白福だ。

 

青の傘を持って可愛らしくターンをしてこちらを見る。

 

フワッとスカートが浮いたが、中は見えませんでした。

 

 

白福と2人っきりで外で話す。

 

別段なんだかんだで珍しい事ではない。

 

なんなら一緒に俺の家でご飯を食べる事も多々あった。

 

しかしその仕草を見て思った。

 

 

何だかドキドキしてしまうではないか。

 

 

って、何考えてんだ?俺は

 

 

「……学校に行ってないことだろ?別に行かなくても受験期間だから問題ない」

 

「それ本気で言ってる〜?」

 

「…何怒ってるんだ?」

 

「べっつに〜…ただ、出来れば鷹木の真剣な顔…もう少し見たかったなぁって思ってるだけだよ」

 

その瞬間、俺達を強風が襲う。

 

俺は思わず片目を瞑り傘を落としてしまった。

 

だが白福はその風を一切気にせずこちらを両目でしっかり見てくる。

 

傘を片手で持ちながら。あら、お強い。

 

スカートを履いてるからかもしれないが…

 

 

「…………関係ないだろ」

 

「……今はそれでいいよ。けどミミズクヘッドがそろそろ暴発するよ?能本がいないとアイツずーっとしょぼくとになるって、気づいてないの?」

 

は?

 

そんなの知るわけないだろ。

 

俺がいない時に落ち込まれても分かるわけない。

 

「それに能本が木兎と違う学校に行こうとしてる事、アイツ気づいてるよ〜?」

 

は?

 

なんでだよ…

 

木兎がどうやってその事を…?

 

「木兎の野生の本能って馬鹿に出来ないよ〜?とにかく、ちゃ〜んと話、してきなよ?」

 

普段と異なる白福の語尾。

 

白福が本気で話してるってことが抑揚で口調で声色で分かる。

 

てかなんか圧凄いんですけど。

 

おっとりはどこに…

 

俺は気圧されながらも必死に言葉を言った。

 

「けど俺は、俺の実力じゃ、アイツを、皆んなを助ける事は出来ない。皆んなすげぇ強くなったからな。だから俺がアイツと話しても俺がバレー部に一緒に入ることはないよ」

 

 

俺がそんな事を言うと、白福のやつは急に機嫌が悪くなったのか俺に近づいてきた。

 

「あ・の・さ〜?能本はバレーしたくないの?したいの?どっちなの?」

 

 

至近距離で話すのは初めてだなとか、場違いな事を思いつつ俺は本心を口にした。

 

 

「…わからないんだよ。この前の関東大会の決勝の時、相手チームの作戦に見事にハマって俺は何も出来なかった。悔しかったし、辛かったよ。……けど木兎達は俺がいなくても問題なく勝った。それどころか俺がいた時よりもあっさりとベスト4入りした。その時に見えたんだよ未来が。そこに俺はいなかった。……あそこに俺の居場所は無いってわかった。だからー」

 

バシンッ!!

 

何か強力な痛みを感じた。

 

重い重いその一撃で俺はバランスを崩して水溜りに尻餅をついた。

 

 

「助けたいって何様?皆んな鷹木におんぶに抱っこだって思ってたの?それで皆んなが、木兎が、鷹木よりも強くなったから後は知らないって?私が聞いてるのはバレーをしたいか、したくないか!上手い下手じゃなくてバレーを続けたいかを聞いてるの!居場所なんか立場なんか関係ないでしょ!」

 

「白福………」

 

白福が泣いている。泣きながら叫んでいる。

 

 

 

 

ああ、俺は馬鹿だ阿呆だ頓珍漢だ。

 

 

 

笑えてくるよ。

 

女子にここまでさせといて、男子の俺がこんなんじゃあダメだよな。

 

女の涙の落ちる音がした。

 

だから俺は戦う。

 

なんて言ってられないか。

 

「…ありがとな白福。俺やっと分かったよ」

 

「…ハァ〜………まぁいいよ。また今度おいしいご飯作ってよね〜?」

 

 

 

俺は笑顔で返事をして走り出した。

 

荷物を白福に任せて木兎に会いにいく。

 

 

幸いにも木兎にはすぐに会えた。

 

ボールの音がしたら大体そこにいる。

 

ボールあるところに木兎ありってか。

 

 

そう考えてると木兎と鷲尾が公園でパス練をしていた。

 

 

「……いた……なぁ、ぼく…?」

 

 

あれ?俺なんでふざけた考えをして、あろうことかシリアスな時に白福に言ったんだ?なんで考えてるんだ?

 

んんん?

 

ていうか雨も小雨になってる…?

 

太陽も見えるし…

 

水溜りの俺は生気があるような気がする。

 

 

 

 

おいおい、もし俺の気分で天気が変わったんだとしたらまた勘違いしちまうじゃねえか。ハハハ…。

 

 

 

それでもいいな……。

 

 

「鷹木!今までどこ行ってたんだ!?俺は心配したんだぞーーー!!」

 

「木兎うるさい。あと俺梟谷行くから、よろしく」

 

 

「ファッ………!?!?!?」

 

「んじゃ、また明日な。俺は受験クリアする必要があるから…またな!」

 

「チョ、チョチョチョッとまt「をにさん?」違う!!」

 

 

なんだ違うのか懐かしいなぁって思ってのったんだけど。

 

 

せっかくのってあげたのになぁー!

 

 

「一緒に来てくれるのか!?」

 

「結果次第だけど、落ちるつもr「ぃよっしゃーーー!!!」って、うっせえ!」

 

木兎はそれからずーっと喜んで飛び跳ねて転んで走ってまた転んで側転して。

 

「俺とお前と皆んなで全国のトップに立つぞ!」

 

「はいはい」

 

めちゃくちゃ騒がしい。

 

けど、これがいいな。

 

「待ってるぞ」

 

「!おう!待っとけよ辰生!!」

 

 

それから俺は顧問や担任の先生に梟谷を受ける事を伝えて勉強をひたすらした。

 

裏設定なのかなんなのか梟谷の偏差値は68。

 

私立なだけある。

 

正直言ってめんどくさいけど、勉強もテストも誰かさんのおかげで嫌いじゃない。

 

白福も家に来てご飯作ってくれてる。

 

受験が終わったら半年ぐらいたかられそうだ。

 

でもそれがいい。

 

 

こうして俺は梟谷を受ける事になった。

 




今回も読んでくれてあざます!

今回は濃密なものにしてみました(多分)

キャラ崩壊してるとこがあったり、変なとこが有れば連絡おなしゃす。

ではまたお会いできる事を祈ってます。


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高校1年生
第4話



あきたいぬさん!誤字報告ありがとうございました!


今後もありましたら皆様お願いします!


本日も拙作ですがよろしくです。


 

今日は入学式。

 

俺はバレー部のみんなと来ている。

 

「おぉぉぉぉーー!!すげぇーーー!!なんだここーー!!!」

 

「はいはーい。落ち着こうね〜木兎。鷹木に怒られるよ〜?」

 

「東京でこれだけの敷地とは……」

 

「流石は私立って感じだな…あと木兎うるさい。推薦組は来たことあるだろうが」

 

春は桜が咲き、散る季節。

 

別れと新たな出会いの季節。

 

真新しい制服に身を包んで俺達は門をくぐる。

 

 

梟谷の制服はブレザーで、アニメと同じグレーの上着に黒のパンツ、ネクタイは青色。

 

制服って結構高いんだよね。

 

間違ってもこれでバレーをしないように見張らなくては。

 

 

推薦組は俺以外の3人だ。

 

木兎と鷲尾は梟谷から直接話しが来てたそうです。

 

白福は自己推薦って奴だ。

 

大学受験でしかないと思ってたけど、高校受験でもあるというね。

 

元世にあったのかはもう覚えてない!

 

 

突然だが1週間ほど前にクラスでの送別会を俺の家でやりました。

 

手料理振る舞いすぎて利き腕の右が腱鞘炎になりました。

 

おのれバキューム白福!

 

1クラス分大体40人分作ったのに、気付いたら無くなってたんだよ。

 

恐怖だよ、ほんとに。

 

 

ちなみに昨日は部活の送別会をやりました。

 

部活のみんなを集めて行ったやつで、またまた俺の家でずーっとどんちゃん騒ぎしてました。

 

あと木兎にジャンプとかで原作知識披露しました。

 

そしたらバレーが始まりました。

 

毎日バレーしててもなんか言われることなかったし、2回騒いでやっても問題無いだろうしな。

 

ああ、そうそう。

 

その夜の俺の家での練習とかYouTubeはこれからも続けるそうだ。

 

ただ、無料で家の施設貸すつもりは無いので、YouTubeでの収益の2割はもらうことにしました。

 

これくらいはいいでしょ。

 

 

そしてこの送別会で左手も腱鞘炎になりました。はっはっは……

 

許さぬぞブラックホールめ…!

 

この恨みはいつか必ず……!(涙)

 

 

ていうかあのスレンダーな体のどこに消えたんだ?

 

着痩せするタイプってことは中学のマネチャンズから聞いてたけど。

 

下手したらギャル◯根超えてんじゃねえのか?

 

 

ついでに言うと学校全体のはもっと前に体育館でやりました。

 

あれは本当に最初はさ・い・しょ・は平和だった。

 

うちは他校というか元世と違い、送別会でボタンを渡すんだとか。

 

カッコよかろうが、そうでなかろうが「バレー部」だと襲われます。

 

全国大会出場ってそんだけ凄いのね。

 

家に着いた頃には上着が消えていたよ……

 

おかしいなぁ…(グスン)

 

みんなも気をつけてね。

 

 

そして本日の予定はこちらです。

 

1 入学式

2部活紹介

3部活体験教室

4クラス発表

5校歌斉唱

 

一つ目入学式

 

 

「………え〜…であるからして、この度皆さんが我が校に来てくれた事を大変嬉しく思います。我が校の特色は主に大学にて行われている「アクティブラーニング」を使用しての教育と成績優秀者並びに部活動等で著しい成果を上げた者に対する学費全額免除制度です。この制度は…」

 

 

 

長ったらしいことこの上ない。

 

ここまでくるのにもう30分は経ってる。この人の話だけで。

 

予定だともう入学式は終わっているはずなんだがね。

 

てかこんだけ長いのに寝てるやつが「グォーー………」……木兎以外いないのは流石だな。

 

 

普通は寝てたら注意されるだろうが、「私立」しかも義務教育じゃないから良いのだろうか?

 

そんなこんなで入学式はほぼほぼ木兎がいつ怒られるか、とか誰が同じクラスかな、とか腱鞘炎早く治んないかな、とか原作キャラ探してたら終わりました。

 

二つ目部活紹介

 

ここはまあバレー以外に興味はなかったから、バレー以外は知らん。

 

 

あ、でもなんかバク転したのは驚いた。

 

ブレイクダンス部ってのがあるんだって。

 

生で見たのは初めてだけど頭が将来寒くなりそうだって事はよく分かった。

 

 

てかここのバレー部、春高4年連続で出場って普通に考えて凄いよな。

 

初戦敗退とかもあるっぽいけど、安定して全国に出続けてるのってなかなかできることじゃないよなぁ。

 

 

三つ目部活体験教室

 

で、その後それぞれ興味がある部活がある人はそこに行って軽く体験する。

 

ここでやっと原作キャラ達に会えるのな。

 

さーてどこだ?

 

確か残りの3年メンバーは

 

後輩思いのチャラ男木葉秋紀、常に笑顔・猿顔の猿杙大和、静かな的確突っ込み小見春樹、はっきり発言雀田かおり

 

だったはず。

 

今から始まるレシーブ練は1人ずつやるやつだし、その間に見つけられるだろう。

 

 

と思って探しているとどこからか目の前にボールが迫ってきた!

 

俺は咄嗟にバックステップをしてアンダーであげる。

 

もちろん手首に当たらないように慎重に腕に当てました。

 

うまく上がったなと満足していたが、ボールは誰もいないところに。

 

「あ、やべ」

 

いつもの癖で意図せずセッターの位置に送ってしまった。

 

俺が後悔してるとそのボールをトスした人がいた。

 

さっきなんか紹介の時に話してた先輩だ。

 

練習変わったのかな?

 

先輩がトスするって事はそういうことじゃあ……

 

 

 

「あ、間違えた」

 

癖というのは怖い物だと理解させられました。

 

体を張った指導ありがとうございます。

 

 

別に恐くはないけど。

 

 

俺が習慣の凄さを再認識していると、右側から何かが走り出した。

 

スパイクが打てそうなボールを見ると突っ込むやつは母校にわんさかいた。

 

だがこの場で走り出すやつは1人しかいない。

 

「ドラァァァ!!!」

 

ドズンッ!!

 

木兎だ。

 

めっちゃ目がキラキラしてるなぁ……

 

そんでもって良い音。

 

叩きつけられたボールは高ぁく上がって2回の観客席に落ちました。

 

へぇーここって観客席まであるんだ。

 

凄いなぁー。

 

 

 

てか打つなよ。

 

 

 

…まぁ無理もないか。

 

俺みたいにダラダラする奴とは違って、バレーが1分1秒でもやりたいのがアイツだし。

 

最近できてなかったら我慢しきれなかったんだろう。

 

「なあなあなあ!鷹木どうだった!?この前の部活の送別会で鷹木が言ってたやつ初めてだけどなんとなくでやってみたんだ!!今のどう!?ジャンプの仕方と腕の振り方!!!」

 

 

え?

 

いまそれ?

 

 

 

ちょっとTPOについてお話ししようか。

 

慈悲?こいつにそんなのいる?

 

お灸を据える時は出来事が起こった時以外にあるまい。

 

 

「木兎ちょっとここに来なさい…」

「おう!なんだなんだ?凄いか!?グワッてきたか!?」

「ハウス」

「凄かっただろー?足の親指に体重かけて、体全体を鞭のようにしなr「ハウス」…ハウスってなんだ?」

「……そこに…」

「どこに?」

 

コンニャロ…

 

本気で不思議がってるからよりタチが悪い……!!!

 

「…後でお話ししようか」

「あっはい……」

 

とりあえず肩を掴んで無理やり正座させました。

 

 

 

 

 

あー…早く死刑宣告(赤葦)来ないかなぁ……(失礼)

 

 

 

 

 

四つ目クラス発表 

 

 

この学校はなんでもクラス替えがないそうで、1年のクラスのまま卒業するんだそう。

 

理由は知らない。

 

お偉方の考えは分からない事って良くあるよね。

 

 

1組 木兎 雀田

 

2組 猿杙 小見

 

3組 木葉

 

4組 能本 白福

 

5組 鷲尾

 

 

で、これが決められたクラスだ。

 

最初木兎と鷲尾が俺らと違うクラスだと知ってめっちゃテンション下がってたけど。

 

木兎なんか捨てられた子犬みたいになったし。

 

これだから憎めないんだよなぁ……

 

 

あ、ちなみに俺としては心配要素がなくてホッとしてる。

 

だって雀田の姉御がいらっしゃるんやぞ?

 

あのはっきりした発言が有れば木兎の制御もなんとかしてくれるはずだ。

 

そう考えていると目の前を雀田が通って行った。

 

さっき少し話したんだけどいやぁ〜…めっちゃかっこ可愛いかったです。

 

 

しっかし雀田さんも結構な別嬪さんやなぁ…

 

 

おっとり系の体現者のような白福もかなりの美少女な事は間違いない。

 

だが活発系で頼り甲斐のある姉さん女房も良くない?

 

少なくとも俺はかなり良いと思う。

 

 

と俺が邪な考えをしていたら白福に襟を引っ張られました。

 

結構苦しかったです。

 

でも見かけによらずなかなかのマシュマロが当たったのでチャラどころかぶっちぎりでプラスです、はい。

 

あとなんかフローラルな良い匂いもしました(変態)

 

 

 

 

そんな事を考えているとこの時間も終わっていた。

 

 

あれ?早くない?

 

入学式が長引いたから巻いてるのかな?

 

 

まぁいっか。

 

 

 

五つ目校歌斉唱

 

どうでも良いんだけどさ私立学校の校歌って独特な歌詞のイメージない?

 

俺はある。

 

案の定梟谷の校歌もなかなかインパクトがあります。

 

これなら忘れそうにないな。楽させてくれてありがとうございます。

 

校歌覚えるのに時間をかけさせないためですよね。分かります。

 

 

 

いや良い歌詞だと思いますよ?

 

ただちょっとだけ、本当にちょっとだけ「負けない」って言うフレーズ多くないですかね?

 

1番だけで5個あるんですが……

 

あと梟谷っていう名前なわけだから、なんか梟を連想させる歌詞とかあるのかと思って期待してたのに。

 

 

よくこれで採用したと思う。

 

俺なら何がなんでも採用しない。

 

もし歌うことになったとしても、出来る限り歌わないようにしよう。

 

俺はそう心に強く誓った。

 

 

が、木兎はめちゃくちゃ気に入っていた。

 

帰り道でもう覚えたのか俺の隣で口ずさんでいる。

 

 

ちなみにこの場に鷲尾もいる。

 

当然静かだが。

 

なんなら校歌はなんか気に入らなかったらしい。

 

俺がそれを聞いた瞬間抱きついたのは言うまでもない。

 

 

 

白福は雀田と一緒に帰ると言っていた。

 

1日で仲良くなるって流石だな。

 

 

それから1週間後。

 

俺の腱鞘炎も治ったこの日が一年にとって初めての部活。

 

 

木兎と鷲尾、白福は当然、俺も既に紙を出して入部している。

 

3人は入る前提で入学したが俺はこの前のアンダーの一件で勧誘されたからだ。

 

 

そんなわけで今日は練習だ。

 

ただし午前のみの。

 

一軍は一日中で2軍は午後。

 

で俺らは「今は」3軍ってわけだ。

 

どこの中学バスケ部なのやら。

 

 

すぐ上がってやるけどな。

 

ダラダラしたいが置いてかれるわけにはいかん。少しでも原作を体験せねば!

 

でもメリハリをつけて家で思いっきりダラけるつもりだ。

 

本気=全力じゃないしな。

 

そう考えながら歩いていると耳に間延びした声と大人しそうな声が届いてきた。

 

 

ん?

 

なんで2人の声が?

 

アイツらって仲良かったっけ?

 

 

 

まぁいいか。

 

 

 

付き合ってんなら応援するだけ…だしな……

 

 

 

 

そんなこんなで目の前にはデッカい体育館が。

 

さあ着いた。

 

今日から高校スタートだ!

 

 

 

現在ランニング等々も終わってミーティング中。

 

「よし、じゃあ練習始めよっか。…って言いたい所なんだけど、先に自己紹介してもらおっか。まずは俺たちからやるからその後に一年な。その後すぐ試合やるからそのつもりで。皆んな試合やりたそうだし。」

 

『うーっす!』

 

3軍キャプテンの先輩から説明を受けて各々自己紹介を始める。

 

先輩方の紹介が終わったから次は俺たちの番。

 

てか原作キャラ達って全員推薦組だったのな。

 

 

「俺は木兎光太郎だ!エースやってました!」

 

「鷲尾辰生、ミドルブロッカーです」

 

「俺は能本鷹木、一応リベロでした。よろしくお願いします」

 

「木葉秋紀、ウイングスパイカーでした。お願いシマス」 

 

「猿杙大和、ウイングスパイカーやってました。今日からお願いします」

 

「小見春樹、リベロです。お願いしあっす」

 

 

「ご苦労さん。んじゃチーム分けだけど……リベロ2人いるし、どうすっかな……?交代で入ってもらってセッターは2年からにするか?」

 

 

あ、原作と違って俺がいるからか。

 

 

でもまぁセッターも出来なくはないはず。

 

オーバーは別に苦手じゃないし、なんなら木兎のスパイク練とかブロック練でもやった。

 

あくまで親睦を深めるためのやつだし問題ないだろ。

 

 

そこまで考えて俺が答えようとした時に遮る奴がいた。

 

 

当然、木兎だ。

 

 

「なあなあなあ!鷹木ならセッターもいけるよな!?」

 

「…いや、まあ出来なくはー」

 

「先輩!鷹木がリベロからセッターにチェンジします!」

 

「いや勝手に進めんな」

 

俺はそう言って木兎にチョップする。

 

 

「木兎はそう言ってるけど、いけるか?」

 

これでまだ腱鞘炎だったら断ったんだけどなぁ。

 

いや治ったばかりだから断れなくはないか。

 

てかすぐ治ったんだよな。特典のお陰か?なんか医者も「興味深い」とか言ってたし。

 

 

 

それは置いとくとして、まぁ断らないけど。

 

「やれるだけやってみます」

 

あの後サインの確認を軽くしたらすぐ始まった。

 

スターティングオーダー

木兎WS  能本S 猿杙WS

 

木葉WS 小見LI 鷲尾MB

 

 

サーブ権は譲ってくれたからジャンサーが出来る鷲尾から。

 

木兎も出来るけど聞いたらスパイク打ちたいってうるさかった。

 

 

ピーッ!

 

 

さあてどう戦うか。

 

 

 

「鷲尾ナイッサー!」

「ナイッサー!」

 

「シッ!!」

 

鷲尾が打ったサーブがまさかジャンサーだと思ってなかったのかノータッチエースである。

 

「ナイスキー!!」

「スゲェ!」

「かっこいいねー」

「すご!」

 

続けて打ったボールはネットインで見事相手を崩しチャンスボールで帰ってきた。

 

「チャンスボール!」

「俺によこせぇーー!」

「いや俺だァーー!」

「俺にちょーだい!」

 

セッターってこんな感じなのな、とか思いつつ俺はとりあえずボールを…

 

 

「ツー!?!?」

 

「よし」

 

「えー、打ちたかったのにー…」

「クソぅ…目があったから来ると思ったのに…!」

「ヒュー…めっちゃ強気なのな」

 

「いや〜すまん。ツーってやると気持ちいいって聞いてたから」

 

「確かにそうだな」

「うんうん」

「で、どうだった?」

 

俺はボールを拾うために自分より目線が低くなった先輩方を思い出す。

 

 

「控えめに言って…最高!」

 

 

 

その後は俺はとにかくいろんな奴にボールをあげたり、木兎がしょぼくとになったり色々あったけど楽しかった。

 

 

ただ気になることがある。

 

 

部活は終わったから帰ろうってことになった。

 

新一年同士で仲良くなったから、全員で遊ぼうってことになった。

 

 

ここまではいい。

 

皆んないい奴で仏のような顔をする奴もいないし。

 

 

だが何故、何故…

 

 

「おーい!鷹木ぃ!ご飯まだかぁーー!?」

「楽しみだなあー♪」

「何が出てくると思う?俺は肉」

「いや肉は出ないわけないダロ?」

「どんな料理なのか楽しみだね」

「期待してていいよ〜」

 

 

 

なんで俺ん家なんだよ!!!

 

遊ぶのはいいよ!?午前練しかなかったし!

 

でもね!?

 

なんで俺ん家なの!?

 

後なんで白福と雀田もいる!?

 

雀田はいい。居てくれてありがとうとすら思う。

 

だってもうすでに木兎の操作役やってくれてるし。

 

 

だがしかし白福!!

 

何故お前までいる!?また俺を腱鞘炎にしたいのか!?

 

 

あと鷲尾!!食器を丁寧かつ完璧に準備すな!!!

 

 

俺がヤケクソ気味にご飯を作っていると、白福がエプロンをしてキッチンにやってきた。

 

 

え?

 

 

「なんでこっちに?」

 

「ん〜?だって2度も腱鞘炎になってるし、今日は慣れないセッターをやったわけだし〜。これぐらいはね〜」

 

 

なんっだと!?

 

2度あることは3度あるって思ってたのに…

 

白福…お前…実はいいやつだったんだな(失礼)

 

 

 

そんなこんなで本日もワイワイやりました。

 

 

ちなみに俺達は3日後の練習試合次第で2軍に上がれるんだとか。

 

 

それどころか1軍にも入れるんだとか。

 

 

 

ちょっと待って俺リベロなんすけど。

 

セッターじゃないんですけど。

 

赤葦きたらそっこーで負ける自信しかない。

 

 

 

 

これはまずいなぁ。

 

 

 

いやほんとどうしよ。

 





本日も読んでいただきありがとうございます。

なんとか今日出せました。

これからもよろしくお願いします。


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第5話

皆さんおはよーございます。


本日もよろしくお願いします。


今日は初めての対外試合だ。

 

なので朝から学校に集合してそこからでかいバスで向かう。

 

なんて言うんだっけ?シャトルバスってヤツ?だと思う。

 

 

今回の相手は「戸美学園」

 

 

言わずと知れた東京の強豪校の一つ。

 

たしか原作だと東京都ベスト4だったはず。

 

プレースタイルは覚えてなかったが、実際に中学の頃練習を見た感じだと「堅実」

 

なんか「審判にだけ良い子ちゃん」とか言われてたかもしれないが、それを抜きにしても安定した強さを持ってる。

 

音駒ほどではないにしろ、粘り勝つのが基本っぽい。

 

 

ちなみに今回の練習試合はどちらも一年が中心のチームになってる。

 

他の三軍の先輩方は残って練習だそうだ。

 

あと白福も向こうに残ってる。

 

若干寂しくもあるが俺の手首の安全は保証された!

 

しかしなんか顔暗かったな、アイツ。

 

間延びした声が普段よりも短くて暗めだった。

 

でも誰も気づかなかったらしい。お前らどんな耳してんの?

 

 

 

あと原作キャラ以外の1年もいるにはいる。

 

嬉しいことにセッターも数名いらっしゃったのだ!

 

今日はセッターをやる必要ないと言うわけだ。

 

いやー良かった良かった。

 

 

俺はリベロですから(大事)

 

 

俺が自分のポジションの保護に成功?して頷いていると三軍のキャプテンが話しかけてきた。

 

 

「能本!今日はミドルブロッカーとして頼んだぞ!」

 

 

 

 

……………

 

 

…………え?

 

 

 

なんておっしゃいました?

 

 

「お!鷹木は今日ミドルブロッカーか!てことは小見と出れるからダブルリベロだな!」

「いいねー♪頼もしい」

「相手ブロックを気にせず打てるってワケダ」

「拾うもの同士頑張ろうな!」

 

ちょっとまてお前ら。

 

俺はまだ納得してない。

 

勝手に話を進めないOK?

 

 

この前の気付いたら俺の家でレッツパーレーしてたことの反省から俺は疑問を強めに発言する。

 

 

「いや、待ってください!俺ブロックはそんなに出来ませんよ?」

 

「ん?なーに言ってんだ。この前の試合でセッターとしてブロックもしてたろ?だいじょーぶ大丈夫!これはあくまで練習だからな」

 

 

えーー…

 

 

まじで言ってらっしゃる….

 

「大丈夫だって鷹木なら!」

 

 

「木兎……お前の明るい声は頼りになる…けど今はいらない。むしろ邪魔。うるさい」

 

「下げるなら上げないで!?」

 

木兎がなんかしょげてるけど今はそれどころではない。

 

どうせすぐ復活するし。

 

 

なんで俺は毎度毎度ポジションが変わるんだ?

 

 

正直言って俺に攻撃を求めないで欲しい。

 

だって俺そんなにタッパないしパワーもないんやぞ?

 

この前の練習試合でも俺のブロックは吹っ飛ばされましたやん。

 

 

 

だからリベロやってたのに…

 

 

俺がわけわからないと思っている事が分かったのかキャプテンが苦笑いしながら説明してくれた。

 

「いいか?能本の1番の武器はなんだ?」

 

原作知識という名のカンニングです。

 

 

 

とは言えないので、

 

「…アンダーレシーブですかね」

 

「そう、それに関してはもう一軍でも通用するレベルなんだよ」

 

「マジすか?」

 

「うん、間違いないよ。ついでに言うと鷲尾のサーブ、木兎のスパイクとかもね。それ以外の推薦組の1年生も総合力なら1.5軍。今年はかなり豊作なんだよ」

 

「はぁ……」

 

たしかに梟谷は原作で春高準優勝してた気がするしそうなのかもしれん。

 

 

「で、君の身長、指高、最高到達点は?」

 

「ええと、身長は175.6で指高216、最高到達点がスパイクなら291で、ブロックだと275です」

 

「それぐらいあれば十分ブロックできるでしょ?」

 

「…どうなんでしょうか……(え?出来るの?)」

 

「監督達は現時点で君と小見で後ろを守り、攻撃時には小見と……例えば木兎を交代させる。って言うのを考えているらしいよ?まぁ木兎は見たところ調子にムラがあるから挙げたんだけど」

 

 

えぇ…なにそれ。

 

つまりどういうことだってばよ。

 

「あと君達が3年になった時に優秀なセッターが来ない限りは君がセッターになる可能性もあるよ?専門外を鍛える選手はその分数段上にいけるんだ。だから頑張って!」

 

 

いやそんな簡単に…

 

 

主要キャラならともかく、一般人の俺には厳しいと思うんですが。

 

 

とは言っても選択権はなさそうだしなぁ。

 

 

やるしかないか。

 

 

「一つだけ聞いてもいいですか?」

 

「おう、なんでもいくつでも」

 

「俺は基本下で戦って体力を温存しつつ、ゲームの後半からヌルッと攻撃って感じですか?(スパイク打つの何年振りだろ…打てる気がしない)」

 

「そそ!まぁ今日は失敗を好きなだけしていいから!!どんどん交代させるしね。ただブロックは飛ぶだけ飛んでくれよ?指示は出すから」

 

 

 

それならまあいっか?

 

いい…のか?

 

 

とりあえず頑張るか。

 

 

 

 

『しあーーーーーす!!』

 

 

戸美学園スターティングオーダー

 

沼井WS 高千穂WS 先輩MB

 

広尾MB 先島S 大将WS

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

鷲尾MB 先輩S 木兎WS

 

木葉WS 能本MB 猿杙WS(小見LI)

 

梟谷スターティングオーダー

 

 

 

サーブ権はこちらから。

 

木兎がなんかジャンケンでもぎとってた。

 

 

とってくれたことはありがとう。

 

 

でも勝手に決めるのはやめようか?

 

 

ね?

 

 

俺が一通り木兎に注意していると猿杙が話しかけてきた。

 

 

「俺今ジャンサー練習してんだけどさやってみていい?」

 

「まじ!?すげぇじゃん。なぁ鷲尾!」

 

「ああ」 

 

「でもまだ安定感ないんだよねー。それでもいい?」

 

「じゃあ狙い気にせず思いっきり吹っ飛ばす感じで頼むわ。ミスったら俺らでチャラにする」

 

 

《鷹木カッケェェェーー!!》

 

 

なんか羨望の眼差しを感じる。

 

嬉しいんだけどもこれ多分パクリなんだよなぁ。

 

ごめんなさい。

 

 

てかブロックどーしよ。

 

 

とりあえず幅は肩幅くらいにして皿を意識しよう。

 

横っ飛びとかは極力しないように。

 

 

 

ピーッ!!

 

たっぷり時間かけて猿杙が開始の号砲を打ち鳴らす。

 

「ほんじゃまぁーいくか……フンッ!!」

 

 

猿杙のジャンサーは上手くいったが、運悪くリベロのとこにいってしまった。

 

「ほいさ!」

 

「ナイスレシーブ!」

 

綺麗にレシーブされたボールは寸分違わずセッターへ。

 

「レフトォォー!」

「よこせぇぇー!」

 

セッターはレフトにトスを上げる。

 

レフトにいるのは音駒との戦いでいきなりフェイントを使ってきた「大将 優」

 

 

ならワンチャン来るな。

 

「猿杙フォローの準備!」

 

「?オッケー」

 

「ブロック2枚!」

「クロス閉じろ!」

 

 

「(いきなり来るとは思ってないっしょ)…よっと」

 

「なっ!?」

「いきなり!?」

 

そして予想通り大将はフェイントをかましてきた。

 

まさか本当に来るとは。

 

そんじゃ野菜王子のセリフを聞かせてもらおうか。

 

 

「フンッ!」

 

「な!?」

 

「鷹ぁ木ナイスレシーブゥ!!」

 

言葉とは裏腹に木兎はなんか悔しそう。

 

いやなんでだよ。

 

フェイントにつられたからか?

 

 

それはともかく俺はなんとかフェイントの処理をしたがボールは右斜め後ろへ。

 

あれ?そういやあいつ「クソゥ」って言わないのか?

 

 

つまらん。

 

 

 

「猿杙!」

 

「あいよ!」

 

「ラストラスト!」

 

「木葉!」

 

「ッシャアァァ!!」

 

 

ズドンッ!!

 

 

『ナァイスキィィィ!!!』

 

 

 

「すげぇすげぇ!!お前ら3人すげぇ!!!」

 

「木兎うるさい。次行くよ」

 

「ん?鷹木耳赤くね?」

 

「うっさい!」

 

 

その後はとったり取られたりで膠着して20対20。

 

 

だがここからは離させてもらう。

 

 

皿ブロックの仕方もわかってきたし。

 

なんとかなるだろ。

 

とか考えてたら交代させられました。

 

そんでもってあろうことかそのまま1セット目終わりました。

 

27対25で俺らが取ったからいいけど。

 

 

そして2セット目。

 

最初の得点はまたもや木葉。

 

拾うのも安定している。

 

 

どうでもいいがなんでこいつチャラいんだろ。

 

チャラくなかったらも少しモテるんじゃね?

 

ただ見てるのは暇だから一緒に中を見てる小見といじることにする。

 

スパイクが出来て、アンダーも出来る!打つも拾うも器用貧乏な木葉!

 

「誰が器用貧乏だ!!あと雑過ぎんだろ!!!」

 

「小見。木葉の言う通りどうせならもっと長くナレーション入れてやろうぜ」

 

「そうすっか!じゃあもう一度…」

 

「やめろ!!!」

 

 

強面にして寡黙!無言のブロックで黙らせる!プレッシャーを与える事なら誰にも負けない!最近の悩みはふれあい動物園で一匹も触れ合えなかった事!鷲尾辰生!!

 

 

「……………」(ズーン)

 

 

「ごめん鷲尾悪かった!!」

 

「つい調子に乗っちまったんだ!!!」

 

「……猿杙…いつも笑顔にするコツ…教えてくれ」

 

「教えてやるから泣くなって」

 

 

俺達がこんな感じでやってるのには理由がある。

 

それは向こうさんが最初っから予想よりは少ないけど煽ってきてるからだ。

 

 

 

まぁ俺らはさっきから上みたいにやって無視しまくってるけど。

 

存外これが楽しい。

 

 

「…ッチ!…おい広尾」

 

 

すると相手はジャンフロを打ってきました。

 

 

 

そして木兎は拾えませんでした。

 

 

「ごっめーん!!ミスった!!」

 

「どんまいどんまいあれはしゃーないよー」

 

途端に「うがぁーー!」と頭を抱える木兎。

 

 

ただ俺は頭の角?というかあの尖ったやつの形が気になってしまう。

 

今までなんだかんだで聞いてなかったけどあれって寝癖なのか?

 

まあいっか。

 

 

これでしょぼくれモードになんなきゃいいんだけど。

 

そうそう、1年組はもちろん、部員全員が「しょぼくと」について知っている。

 

だからもしなっても対処は可能だ。

 

 

流石に今のでならないだろうけど、どこでなるか分からんし。

 

 

 

さてさて俺がまた入りました。

 

今の得点は17対21でリードされてます。

 

現在のポジションは前衛に推薦組以外の中でデカいのが揃ってて、後ろは左から小見、鷲尾んで俺。

 

 

せっかくデカいのが揃ってるわけだけどだからこそ、ここはディグやるか。

 

ディグってのはスパイクをレシーブすること。

 

ブロックとかなんもせずにただ打たせたのをレシーブするってやつだ。

 

メンバーにそのことを伝えて早速実行に移る。

 

 

《捨てた!?》

 

案の定スパイクを打ってきたヤツの目にはそう映ったのか甘いのがきた。

 

 

「鷹木!」

「オーライ!」

 

俺が丁寧にセッターに返して、後は前衛がしっかり決めて最終的には25対22で逆転勝ち。

 

 

俺はドシャットは出来なかったが皿ブロックでワンタッチをとにかくしまくった。

 

が、サーブとスパイクは一本も入りませんでした。

 

その事を木兎と木葉に笑われたので校舎裏に連行してきました。

 

 

 

俺がスッキリして後片付けを手伝っていると今日帯同していた雀田とキャプテンが話しかけにきました。

 

 

 

「よし、じゃあこれから能本はミドルブロッカーな!」

 

 

うんなんかもう予想できてたわ。

 

 

でも一応理由を聞かせてもらおう。

 

 

「理由を聞いても?」

 

「もちろん、まず今日のお前のアンダーの成功割合が8割強。ミスったのは厳しいコースのだけ。流石は“元”リベロだな」

 

あははー…もー“元”ってついてやがる。

 

「で、オーバーはノーミス。セッターが牽制された時だけしかやってないしな。精度はまずまずの及第点だ」

 

そこは及第点ではなく届かなかった事に出来るのでは?

 

 

「次にブロックだがあれは皿ブロックだな?咄嗟に言われたにも関わらず見事な対応力だ」

 

 

まぁ今まで色んな事に遭遇してきましたから。

 

いやほんとに。

 

具体的には……思い出さんとこ。

 

 

「最後にサーブとスパイクだが……まぁこれはおいおいパワーをつけて入るようにしてくれればいい。お前は後半から攻撃に参加してもらう。だから前半はとにかくボールを落とさない事を意識して欲しい」

 

パワーに関しては上がる気がしないんですけど。

 

ちっさい頃から筋トレしてきたけど上がったのは体幹だけ。

 

少なくとも3年以上鍛えてこれだから泣きたくなるね。

 

 

そんでもってキャプテンの説明はまだ続いてる。

 

「具体的には前半はブロックでワンチしたりアンダーでしぶとく。後半はドシャットしたりスパイクを打つ感じで」

 

えーっとつまり、俺は前半は防衛のみでとにかく繋いで、後半は攻撃中心で攻め込むってことかな?

 

 

 

「それとお前にはもっと持久力をつけてもらいたい。具体的には全国トップクラスのものを」

 

 

そうなりますよね……。

 

俺が心底嫌そうな顔をしてたのが伝わったのか、雀田の姉御が肩を叩いてくる。

 

「自信持てって!鷹木ならやれるさ!!」

 

 

あ、姉御ぉ……!!

 

クソゥ…姉御に言われたらやるしかねぇじゃねえか!

 

 

因みに合計で7回も練習試合をしました。

 

結果は7戦5勝2敗。

 

どれも一度はデュースになった事もあってかなり疲れた。

 

いくら人数がいるからってやり過ぎだと思います。

 

帰りのバスに乗ったら皆んな爆睡してたらしいし。

 

かく言う俺も記憶がないからそう言う事だと思う。

 

 

ただ翌日俺と推薦組全員が2軍昇格になったのは驚いた。

 

キャプテンが言ってたのはマジだったのな。

 

とはいえインハイ予選が始まるのは6月。

 

まだ4月とはいえそんなに時間はない。

 

1年目から果たしてインハイレギュラーに成れるのかどうか…。

 

 

まぁ厳しいだろうけど狙ってやるしかないな。

 

皆んなそのつもりだし。

 

ちなみに2軍は2軍で5月中頃にあの「井闥山学院」の2軍と練習試合をするそうだ。

 

たしかそこには「全国三本指のエース」と「高校No.1リベロ」が来年とかに来るはず。

 

ただ「飯綱掌」が同学年だった気がする。

 

それ以外は覚えてないけど2、3年連続で全国大会でベスト4以上だ。

 

 

正直2軍とは言っても戦いたくない。

 

絶対疲労度が桁違いなはずだ。

 

 

だがその前に祭りが迫ってきている。

 

そう、本来なら学園ものの中で必ず何かが起こる「体育祭」だ。

 

俺はもちろん皆んな強制参加なわけだが怠すぎることこの上ない。

 

なんでこの時期にやるんだよ!

 

バレーに集中させてくれよ!

 

 

とか言いたいなとか思ってたら木兎のクラスから木兎の声が聞こえてきました。

 

もしかしたら「体育祭よりもバレーだ!」とか言ってくれたのかと期待して、その日の部活でその事を聞いたらアイツはなんて答えたと思う?

 

 

「鷹木!バレー部のいるクラスでどこがトップになれるか勝負だ!!」

 

 

とか言いやがったんだぞ!?!?

 

 

期待した俺が馬鹿だった!

 

何してんだよ、姉御ぉ!

 

そうじゃないだろぉぉ!?!?

 

とか思いながら体育祭の練習してたら学級委員長に怒られました。

 

理不尽なり。

 




ちっちきしょう!

連続更新出来なかった……!!

てなわけで本日も来てくれた方ありがとうございます♪

またお会いしましょう!


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6話

お久しぶりです♪

本日もお願いしあーす!


ドンッ!

ドンッ!

 

晴天に見舞われた本日。

 

梟谷学園は凄まじいまでの熱気に支配されていた。

 

 

少なくとも俺にとっては。

 

バレーじゃないのに体動かすのは怠いんです。

 

いやなんです。

 

とりあえず話は聞いとこ。

 

 

 

 

「えー…只今より第100回私立梟谷学園体育祭を始めさせていただきます」

 

学園長だか校長だかどっちかわからない人が宣言する。

 

 

今日は体育祭。

 

すなわち喜劇と悲劇を生む1日。

 

何処ぞのラブコメ漫画ならばキュンキュンする場面があったり色々なイベントが起こるのだろうがここはそんな世界ではない。

 

そしてそれを証明するかのような暑苦しい宣言が行われる。

 

『選手宣誓!!』

 

「俺達は!」

「私達は!」

「正々堂々と!」

「戦う事を!」

『誓います!』

 

まぁ彼らはそこまで熱血系じゃないようだ。

 

いやほんと助かった。

 

だってもしこれが木兎だと思うと嫌な予感しかしない。

 

俺の気も知らず当人はクラスの仲間となんか騒いでるけど。

 

「へいへいへいへーい!やるぞお前らぁ!!!」

 

『おぉー!!』

 

平常運転で何よりだ。

 

そんなわけで始まったんだけどもあっという間に進みました。

 

お陰で俺は放送席で椅子に座って扇風機の風を浴びて寛げています。

 

抜かりなく保冷剤等の冷気を送らせてます。

 

猫がいれば完璧なのに…

 

 

 

それは置いといて何故俺がここにいるのか。

 

理由は簡単。

 

学級委員長に怒られた後で「何ならやる?」と言われたんですよ。

 

怠い事はしたくなかったので座ってられるやつがやりたいって言いました。

 

そしたらここに座ってなさいと言われました。

 

QED。

 

 

いや違くね?

 

競技の話じゃ無いの?

 

「競技は強制参加って言いましたよね?」

 

アッハイ

 

俺が回想していたら突如後ろから学級委員長が現れた。

 

いや、後ろから急にくるなよ。

 

あと心の声読むな。

 

お前は何処のサイキックだ。

 

「そんなことよりもこれは何です?」

 

「俺の私物」

 

「……扇風機ですよね?」

 

「いいじゃん、ほら!」

 

そう言って俺は風を向ける。

 

これで共犯だ。クックックッ…

 

 

因みに俺ら1年の競技はもう全部終わった。

 

あっという間だったな。

 

だって木兎らのクラスがドチャクソ強いんだもん。

 

綱引きも徒競走も大玉転がしもクラス対抗リレーもやる気が違い過ぎる。

 

十中八九木兎効果だろうな。

 

うん、間違い無いわ。

 

雀田の姉御が上手く誘導したって事がよく分かる。

 

ご苦労様です。そして余計なお世話です。

 

原作だとそんな描写ないんだけども、もしかしたらなってたのかもしれん。

 

だって中学の頃もそうだったし。

 

 

あっでも俺は最後の部活対抗リレーはガチるつもりだ。

 

堂々とライバルを蹴落とせるからね。

 

サッカー部と野球部には絶対に負けん。

 

 

 

何故に奴らばかり声援を受ける?

 

不公平にも程があるだろう。

 

サッカーも野球もするのも見るのも大好きですよ?

 

 

でもねバレー部だってかっこいいんだぞ?

 

なんせ人間離れしたヤツにも会えるんだからな。

 

最高………ではないかもしれないが。

 

 

とにかくバレー部に入れば良いことがあります。

 

上から人を見れるし、思いっきりものを叩いていいし、大声も出せる。

 

こんなに楽しい事はない(断言)

 

 

そして普段ダラけてる俺がやる気を出す唯一無二のスポーツやぞ?

 

どんなに無気力な子でも明るくなれます。

 

バレー部はそんな素晴らしい部活なのです。

 

 

だから頑張る。

 

バレー部をもっと広めるために!

 

可愛いマネチャンズを増やすために!

 

黄色い声援を貰うために!

 

プライドをかけて!いざ勝負!

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁまだ始まらんけど。

 

 

そんな風にテキトーに仕事をしていると次の競技がまた始まる。

 

プログラムNo.13

 

「Flower Garden〜女子による花畑」

 

 

何これ?

 

初めて聞くなこのタイトル。

 

なんか話してたのかもしれないけど俺基本寝てたし知らんのも当然か。

 

 

内容は…え〜っと…「全学年の女子によるダンス。可愛らしくも元気ハツラツな女子のダンスをお楽しみください」

 

 

ほぇ〜…白福達こんなんやるんや。

 

全然知らんかったな。

 

パンチラでも期待してお仕事しますか。

 

 

プログラムNo.13はこの音楽か

 

ポチッとな

 

 

しーん……

 

おろ?

 

もいちど、ポチッとな!

 

 

「ありゃ?流れない」

 

仕方がないこうなったらマイクで…

 

 

「あ、あー…マイクテストマイクテスト…場内の皆様にお知らせします。何処かにパソコンのお医者様はいらっしゃいますでしょうか?」

 

別に治せると思うけどね。

 

叩いたりすればどうにかなりそうだし。

 

だがしかし暑い中働きたくないんです。

 

早く終わらんかなぁ……

 

 

そしてついに最後の種目。

 

「位置ついて〜〜……」

 

パァン!!

 

その瞬間部活対抗リレーが始まった。

 

2年の部では野球部が一位を取った。

 

バレー部は3位でサッカー部が二位。

 

 

これは負けられない。

 

俺の順番はアンカーの前。

 

アンカーは運動において安心安全の木兎だ。

 

俺の前に走る木葉がサッカー部を睨みつけて前に出ると…

 

「…………」(じーーー)

 

「な、なんだい?」

 

睨みつけながら前を走り続けた。

 

いや、それ田中の…

 

 

てか木葉…お前のそういうところがモテない理由なんじゃないのか?

 

しかし気持ちはよく分かる。

 

お前の思いを俺が受け継いでやる!

 

「野球部とサッカー部には死んでも負けん」

 

俺がふと呟いた言葉に反応したのは白福。

 

いや君なんでここに?

 

いつ来たので?

 

あとなんか距離近くないっすか?

 

「なんで〜?負けても楽しければいいと思うよ〜?体育“祭”なんだし」

 

「(どっから出てきた?)……男には色々あるのさ…」

 

「ふ〜ん?」

 

 

 

結果を言うとバレー部は一位だった。

 

3年生が。

 

 

まさか木兎がゴールの場所とコースを間違えるとは……

 

 

アイツってあんな馬鹿だっけ?

 

能力バロメーターには頭脳3って書いてあったよな!?

 

なんでそうなんの!?

 

 

 

そんなこんなで体育祭の幕が降りた。

 

間話

 

「………涼しいわね…これ」

 

「だろぉ?」

 

「むぅ〜〜……」

 

「ハァ……」

 

間話終了

 

 

「いいか能本。リベロとはなんだ?」

 

ところ変わって翌日の部室の会議室。

 

会議室あるのって不思議だけどあるんだからそういうもんなんだろう。

 

「え〜〜…守護神でチームの屋台骨的な存在ですかね?」

 

「その通りだ。リベロが安定しているかどうかでチームの戦い方は大きく変わる。本題は、何故お前がリベロではないかだが…」

 

一軍キャプテン・部長に突然呼び出されたから何かと思えば俺のポジションについてのお話だった。

 

「さっき言った通りリベロはチームの守備の要。故にどっしりと構えている必要がある。いるだけでチームに安心感を与える存在。お前はそれに成れると俺含め誰も首をたてにふれない」

 

「それは何故に?」

 

「それは自分で考えろ」

 

ええ……

 

「この記録を見れば少しは分かるだろう。分かれば2軍戦に行く事を許可するが分からなければそれまでだ」

 

マジですかい……

 

 

なして俺だけこんな目に?

 

な〜んか俺にだけ当たりが強いんだよなぁあの人。

 

声をかけられたり怒られるのはそれだけ期待されてるって事なんだろうけど。

 

 

あの人に限ってそんな気がしない。

 

 

それから1週間が経ったが俺は今だに部長に言われた事が分からないまま部活をこなしていた。

 

「レシーブ練いくぞー!」

 

『ウイッス!!』

 

梟谷のレシーブ練ははっきり言ってかなりきつい。

 

原作の烏野の練習がどれほど厳しいのかは見た事しかないから分からんがそれに匹敵しているのは間違いない。

 

 

レシーブしたらその後はそのままボールが落ちるまでひたすら2対2を行う。

 

1人目がアンダーでレシーブする

2人目がトスをする

1人目がスパイクを打つ

 

反対のコート側の人がレシーブする

もう1人がトスをする

最初にレシーブをした人がスパイクを打つ

 

これをボールが落ちるまで永遠と行う。

 

 

 

ん?よく分からない?

 

とにかく辛い練習って事だよ(放棄)

 

 

俺はその練習の最中に小見や他のリベロを見ていた。

 

 

何が違うんだ?

 

俺はさっきの練習の時にレシーブでミスる事はなかった。

 

見事にスーパーレシーブ(飛びつくの)も決めたのだ。

 

我ながら調子がいいと思う。

 

スパイクは相変わらずだったけどな。

 

 

俺が悩んでいると後ろから間延びした可愛いらしい声が。

 

「お〜い、聞いてる〜?」

 

「…………」

 

「能本〜?」

 

「…………」

 

「の・り・も・と〜?」

 

「…………」

 

呼ばれた方に目を向けるとそこには白福がいた。

 

しっかし白福って改めて美人だよなぁ。

 

覗き込んでくる姿なんか男を殺しにきてますよ、これ。

 

 

「ノリモト……?」(脅し)

「ヒェ…」

 

 

ただ可愛いなって思って見つめてたら怒られたんですが。

 

酷くない?

 

「練習の順番回ってきたよ〜?」

 

「え?わ、わるい」

 

 

どうやらもう一周したらしい。

 

とりあえず切り替えて練習をこなすとしよう。

 

 

 

あれからだいぶ経って今は最後の練習の時間。

 

今日は対外の練習試合が迫ってきてることもあり3人1組の総当たり戦が繰り広げられている。

 

 

俺のチームは俺と木兎と先輩リベロ。

 

この先輩は今は2軍にいるが元々1軍だ。今は怪我が直ったばっかでここにいる。

 

この期にしっかりプレーを見させてもらおう。

 

 

そんな事を考えながら戦ってきて次で5戦目。

 

現在の勝敗は5勝0敗。

 

しかし今やってる相手とはなかなか差がつかない。

 

「なあなあ、なんで全然ラリーが終わらないんだ?」

 

「俺もそう思ってたよ。あんなに木兎のスパイクを取るなんて初めてじゃないか?」

 

「ですね。小見が上手いことはわかってましたけどまさかここまでとは………」

 

 

いやほんと驚いてる。

 

俺らの相手は先輩×2と小見のチーム。

 

先輩達はタッパがめちゃくちゃある人ではないし、木兎の調子も良いからそう何度も取れるはずないのだが…

 

俺と先輩が考えていると木兎が何やら燃え出した。

 

「なんか打つ時に打つ場所がないって感じがするんだよな〜!負けらんねぇぞぉー!」

 

 

ん?【打つ場所がない】ってなんだ?

 

別にないとは思えないけど。

 

 

「木兎、打つ場所がないってどういう事だ?」

 

「うん?えーっとだな…なんか、こう…クロスもストレートもどっち打っても小見に取られるっていうかそんな気がするんだよ」

 

 

 

ほえ?

 

分からん。

 

俺がわけわからんって顔をしていると先輩リベロが何か分かったかのような顔をしていた。

 

「先輩分かったんですか?」

 

「ああ、ブロックをうまく利用してるってことだろう。ストレートを締めてクロス側に構えたりその逆も然りってわけだ。相手選手を良く観察してるんだろうな。そうしなきゃ先を呼んでコースを絞らせて取るだなんて出来るわけがない」

 

それにっと言って先輩リベロは小見を見てさらに続けた。

 

「小見の柔らかくどっしり構えてやるレシーブの仕方は仲間にとって安心感を与えるものだ。能本のレシーブは飛びつきが多いだろ?だから能本の方が上手く見えてたけど、アイツは静かに確実に上げてるってわけだ」

 

なるほど。

 

そりゃ確かにスッキリ打てる場所がない上に安定してレシーブをし続けられるんだな。

 

 

ん?

 

 

 

これか!

 

 

 

部長はこの事を俺に理解させたかったのか!!

 

 

まずリベロは安定安心で飛び込まずに柔らかくどっしりととる。

 

そうするとみんな安心出来るからな。

 

勿論出来たら飛び込んで取れたほうがいいんだ。

 

成功したらスーパーレシーブになるし。

 

だけど俺はちょっとしたのも飛び込んでレシーブする事が多々ある。

 

中学時代に手を抜いていたあの癖だな。

 

その結果があのスコアってわけだ。

 

俺のレシーブ成功率は8割強。

 

対する小見は10割だ。

 

俺のレシーブはそもそも厳しいコースのは取れてないし上げても精度が悪い。

 

対して小見はスーパーレシーブにならないように、なったとしてもそこに先回りできるようにして確実に上げる。

 

 

そりゃ俺にはリベロが向いてないわけだ。

 

別に今から変える事は出来なくはない。

 

けど癖ってのはなかなか抜けるもんじゃない。

 

ならこのままこれを極めて小見が隠れて俺が目立てば、今の俺たちみたいにさせられるかもしれん。

 

 

 

 

やってやろうじゃん。

 

疲れたから今日はもう練習せずにまっすぐ帰るけど明日からはやろうじゃん、多分。

 

 

 

そう思ってたよ。

 

 

思っていたんですよ。

 

 

 

「よっしゃーー!もう一本いくぞー!」

 

 

うん、もう分かりきってた事だよね。

 

木兎の自主練って体力度外ししてるよね。

 

赤葦の気持ちがよく分かるよ。

 

 

嬉しくねぇ……

 

とは言え理由も分かって部長から許可をもらえた。

 

これで俺も2軍戦に参加できる。

 

 

皆んな喜んでくれたことも嬉しかったけど、何よりマネチャンズに褒められたのがメチャクチャ照れ臭かったです。

 

いや、可愛い女子に褒められたら……ねぇ?

 

 

まぁそれは置いといてブロック&スパイク練だ。

 

これはただひたすらブロックしたりスパイク打ったりの繰り返し。

 

中学時代あんまりジャンプしなかったことも影響してるのか、俺はあまり最高到達点が高くないんだよな。

 

 

それは仕方ないにしても新しい技を身につけたい。

 

サーブだとジャンフロだな。

 

俺には強烈なサーブを打つだけのパワーはない。

 

今後は付けられるかもしれないがそれは歳を重ねる中で少しずつ付けばそれでいい。

 

急につくわけないしな。

 

 

二つ目は母子級で飛ぶやつだ。

 

正直言って出来る気がしないけど、木兎はなんかそれっぽいのをすぐ習得した。

 

軽く「こんなことできたらねぇ〜」って言ったのをすぐに実行してほぼほぼ成功してそうに見えるのはおかしい。

 

後は体を柔らかく使うぐらいかな?

 

柔らかく使えればその分遠心力とかで威力が上がるはず。

 

困った時の遠心力だな。

 

だって誰でもわかるし。

 

 

レシーブとかスタミナ、スピードも鍛えたいがそれらはやってる内に意識すればその分上がると思う。

 

意識が変わるとだいぶ変わるもんなんだよ。

 

 

そうして月日がすこし経った。

 

いよいよ2軍戦だ。




本日も呼んで頂きありがとうございました!

またお会いしましょう〜!


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第7話〜とある排球部員のお話 なお排球描写はない模様〜

いやほんと、お久しぶりでございます



ONE PIECEもあるけれどそれ以上にフォトナにハマって投稿できませんでした。    ごめんなさい

因みに今回の話から展開早くなるかも…しれないです。


 

朝練がてら体育館にて仲間達と軽く汗を流していると外から騒音が聞こえた。どうせ木兎が騒いでんだろうなぁ。

 

てか「今日も朝練したい!さーせーろ!さーせーろ!」ってうるさかったから俺が部長とか顧問の先生方に頼み込んだってのにアイツはまだ外にいるのかよ。

 

 

これは由々しき事態ですなぁ?この俺や二軍のメンバーにはさせといて?自分は外で遊ぶ?……ふざけるなよ?

 

俺は寝坊しかけてめっちゃ急いで来たんだぞ!?普段なら深夜のアニメとか、危なそうな夜会とか個人と大勢の壁とか夜更かし見てたのに!

 

え?朝から見過ぎだって?親はいないよ?そして俺の家だよな?つまり俺が家長、すなわちルール。

 

だからいいのだ!………って話がずれた。

 

 

とにかく俺はまだ眠いのにジャンプしたり腕を振ったりしてる。なのに言い出しっぺのヤツがやらないのは納得いかん。

 

だから俺の代わりに木兎に今から練習させる。

 

 

「キャプテン(二軍の)!外のうるさいのを捕らえてきます!!」

 

「おーー…頼んだ。––––––––けど、逃げるんじゃあ?ないよなぁ?」

 

 

わ、わかってますよ。わかってます。

 

   俺って信用ない………?

 

 

 

「ごらぁーーー!!木兎ぉーーー!!!何しとんねん!?!?」

 

「お!鷹木!!見ろよあれ!でっけぇよなー!!」

 

木兎が目を輝かせながら見る方向には巨大なバスが一台。所謂シャトルバスみたいなのがいた。

 

中学の頃のやつとかこの前のバスよりもデカイ。…そういや先輩がこれだって言ってたっけ。そんなに時間かからないけど高速使うから何とかかんとか。

 

男として気持ちは分かる。こういうのには何故か惹きつけられるんだよな。うん、分かるぞ。  じゃなくて

 

「それよりも、少しぐらいはやれよ?今やっとけばアップになるし」

 

「分かった!席どこにする!?俺は1番後ろが良い!なんか偉そうだ!!」

 

わーー…いつも通り話聞いてねぇ…

 

こういう時は適当に合わせるのが大事だ。

 

「はいはい、そーですねー。バレー少しでもやりたくないのか?」

 

「!!やるぞー!今日もクロスをバンバン決めてやるからなぁ!!」

 

そう言って腕を振り回しながら体育館に入ってった木兎。

 

転生して結構経ったけど木兎の扱いばかり上手くなってる気がする。どうせなら可愛い女子とイチャイチャする為の話し方とか身につけたかった……

 

 

そんなこんなでバスに乗り込む時間となりました。

 

しかしいざバスに乗ろうとすると待ったがかけられた。

 

バスに乗る時は必ず行われると言っても過言ではない【座席争奪戦】が突如始まったからである。

 

俺としては早く寝たいから早く終わらせてほしい。

 

 

ぼーっとしてたら俺の周りに集まってきたのは3学年のほぼ全員のマネチャンズ。

 

何故ここに?一緒に行くのは同学年の子達だけじゃなかったっけ?

 

 

「ねーねー能本。能本って好きな女子いないの?」

「あ!それ気になる!」

「いるのいないの?いるよね?」

 

わーお…恋愛脳なんだなぁ…好きな子ねぇ…可愛いと思う子はいてもいないかな。だって今はバレーが最優先ですから。

 

 

 

嘘です。最優先はダラダラすることです。家で何も考えずにぼーっとしてたいです。将来の夢はフリーライダーで、特に料理はしたくないです(トラウマ)

 

俺が沈黙を貫いているとマネチャンズの1人が食い下がる。いや本当にいないんすけど

 

「いないかぁー。まぁそうそう口を割らないとは思ってたけど」

 

割るも何もいないんですが。

 

「じゃあ今から色んな名前出してくからYESかハイで答えてね」

 

よくあるやつーーー…俺に選択権が無いのにどう判断するのやら。

 

 

「じゃあまずはアタシ!」

 

名前じゃないのね、まぁとりあえず黙っておこう。ただでさえ眠いから変なこと言わないように注意しなくては

 

「私かな?」

 

「ヒント頂戴よ。ヒントー!」

 

「それなら…年上年下だっちが良い?」

 

 

しつこい。

 

てか木兎達長くn「ッ!うおーーっし!!!……勝ったー!!!!」

 

「クソォ…!まさかグーだったとは…ッ!!」

「揺さぶったはずなのに……!!!」

「心理戦で木兎が1抜けなど…!信じられん!!」

 

ああはい、お疲れ様。終わったのなら早く行こーぜ。さっきから顧問の先生から圧を感じるし。

 

「あ、私わかった!雪絵ちゃんでしょ!」

「あー!たしかに!」

「よく一緒にいるしねー!」

 

あーはいはい、そうですねー。………白福とは腐れ縁みたいなもんだよなぁ。雀田の姉御の方が頼りになるから嫁さんなら姉御がいいな。仕事しなくてよさそうじゃん。

 

〜〜〜

 

「ただいま!!家事やっといてくれた?」

 

「おーう。なんてったって専業主夫ですからな」

 

「ふふ、鷹木が家にいると本当に助かるな」

 

「そう言って貰えると嬉しいねぇ」

 

〜〜〜

 

うん。雀田の姉御なら凄い良さそうだ。家でダラける俺としっかり者の姉御。理想のカップルじゃねえか。

 

少し想像してたら顔に出てたのか、軽く引かれました。解せぬ

 

 

 

そんなこんなで俺らはバスに乗り込む。俺は問答無用で1番前の先生の隣に座った。本当は俺だって友達と座りたいよ、うん。

 

だけども静かに寝るには先生の隣以外に存在するだろうか?

 

答えは否。

 

にしても後ろがうるさい。ここは先生に頼まなくては。

 

「……いい加減に…静かにしような?」

 

俺が言うまでもなく先生により木兎達は沈められた。心なしか角もしんなりしてる。良きかな良きかな。さーて寝ますか。

 

ーーーーーー

 

トゥントゥントゥントゥーーン♪

 

「おーい!赤葦ぃー!ここだぞー!」

 

「!お久しぶりです。鷹木さん、白福さん」

 

「赤葦またおっきくなった〜?」

 

「かもしれないです。それとお出迎えありがとうございます。……ところで、鷹木さんバレーを辞めたって本当ですか?」

 

「あーー…まぁ、な。俺も身を固めたし安定した収入の方が魅力的だからな」

 

「身を固めたって……え?まさか––––」

 

「そーだよー。婚約したんだー!ついこの前にね〜!!」

 

「!!おめでとうございます。結婚式はまだなんですか?」

 

「その通り、結婚式はまだ日程合わせてるから赤葦も日程教えてくれ、知り合い全員が居た方が嬉しいし」

 

ーーーーーー

セダン車の中にて

 

「にしても驚きました。まさか鷹木さんがバレーをやらないなんて」

 

「そんなに驚くことか?」

 

「ええ、お二人が付き合っているどころか婚約もしている事以上にですよ」

 

「でも高校の頃から付き合ってたのは知ってるよね〜〜?」

 

「それはもちろん、ただでさえ2人は側から見たら付き合ってるようにしか見えませんでしたし。…付き合ってからはモザイク案件でしたから」

 

「それは違うと思うが?特に高1の頃はそんな気配無かったはずだが…」

 

「それは多分鷹木さんだけですよ。付き合いだしたらどうなるのやら、と皆当時から思ってましたから。案の定空気がメチャクチャ甘かったですし」

 

「失礼だな、おい」

「ね〜〜…そんな事ないと思うよ〜〜〜?」

 

「いや付き合ってから外出るたびに……今現在も恋人繋ぎってなかなかだと思いますが………事故はしないでくださいね」

 

鷹木と白福は目を見合わせて同時に手を見て……

 

「「普通じゃない?」」

 

至極当然とばかりに返した。

 

「……まぁいいです。それにしても何故鷹木さんは今の仕事に?」

 

「ん〜?そりゃ…まぁ……好奇心だよ。あっなんか面白そうな仕事だなって思ったからさ。何事も始めるのに必要なのは少しの好奇心なんだよ。………俺がバレーをやったのも最初は単なる好奇心だったからな」

 

「…そうですか。個人的にはかなり惜しいんですが………ていうか白福さんは反対しなかったんですか?」

 

「反対〜〜?…多分最初はしてたんじゃ無いかな〜?けど私は鷹木がしたい事をして欲しいし、応援したかったから………あの鷹木をもう見れないのは残念だけどね〜」

 

ーーーーーー

 

「–––––––––ぃ!ぉ–––––ぃ!!」

 

誰かが俺の体を揺すってる。だが不思議と嫌な感じはしない。草原にポツンとハンモックを置いて風に身を任せる。まるでそんな感じの心地よい揺れ。

 

「おーーきーーてーー!」

 

「…んあ?……ふわぁー……」

 

なんか目の前で揺れているものが2つ

 

水色の物も時折見えている。

 

これは………新手の催眠術か!?

 

 

なわけないよな。でも眼福です。

 

「おはー……着いたぁー…?」

 

「もうとっくに着いてるし〜なんならもう試合始まってるかもよ?」

 

おーそーかー…なんか夢を見てた気がするんだが…試合ならもう行かなきゃなぁ––––––––––––––––––––え!?試合!?!?!?

 

「不味くね!?」

 

微睡んだり堪能したり余韻に浸ってる場合じゃねぇ!?

 

ていうか寝たら体リセットされるよな!?たしか!

 

 

てことは…また最初っからアップするのか?俺は……1人で?

 

「私も手伝ってあげるから、早く行くよ〜?」

 

し、し、白福様ぁーーー!!もう一生ついて行きます!!!

 

ご希望ならどんな料理でもお作りしましょう!!

 

「ほんと〜?じゃあ宜しくね〜?」

 

おう!……ん?声に出てた、のか?

 

いや今はそれどころじゃないな。俺は頭を切り替えてバスを飛び降りて2人で走って向かうのだった。

 

バスの人本当にすみませんでした。

 





またちょくちょくあげますので宜しくお願いします。

寄宿学校のはすとか、政宗の2枚葉を誰か書いてくれんかのぅ…

––––––––––––はっ!これはまた俺の出番なのでは?(フラグ)


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8話

原作キャラとの交流会!の巻

ここからいきなりはっじまっるよー!


イタチとの練習試合を終えてそれから少し。俺達梟谷はインターハイの時期に入った。

 

6月1日から3週間かけて行われるこの大会。夏休み前最後の大会が今始まろうとしている。

 

「こぉこかぁーーー!!!」

 

バスから飛び降りて早速大声を出す木兎。願わくばその大声でこの蒸し暑い季節を吹っ飛ばして貰いたい。

 

いや、逆効果だな。暑苦しいことこの上ない。武◯壮とか、松◯修造に匹敵しそうで甚だ嫌である。

 

最近木兎の暑苦しさが増してきたと思ったので、近所迷惑(周りの視線)だからやめなさいと言おうと思ったが、俺の口は姉御に塞がれた。

 

「いいから、いいから!木兎は皆んなに任せなって。雪から聞いたぞ?昨日の夜ランニング中にコースを外れた木兎を追っかけて、捕まえて戻ってきた上に、今日の朝少しでも練習したいって懇願した木兎と練習して、学校に行く途中でナンパをしてた木葉を連れ戻し、コンビニでカロリーと睨めっこしてる白福を引っ捕まえる………いくらなんでも頑張りすぎだぞ?肩貸すから休んどけって」

 

そう言いながら俺の肩を支えてくれる雀田の姉御。

 

あぁ〜〜⤴︎いい匂いだぁ〜〜…(変態)

 

変態とでも、なんとでも言うがいい!されど人間の本心は正直なのだ!皆んな美人さんに世話されたいだろぉ?イケメンにヨシヨシされたいだろぉ?

 

つまり俺は普通。決して変態ではない(必至)

 

そんな邪な考えをしていると、俺の荷物を持ってくれてる白福に二の腕をつねられた。

 

「痛いよー白福ーー」

 

「………(ニコッ)」(2割増)

 

「あの、痛いんすけど……」

 

「………(ニコニコ)」(5割増)

 

「痛い痛いぃぃ!!ちょっと待ってごめんなさい!!」

 

「こらこら!やめなよ雪ちゃん。鷹木は雪ちゃんの為に頑張ってこうなったんだから(大丈夫。狙ってないから)」

 

「は〜〜い。ありがとね〜能本。(信じてるってば〜。ただデレデレしてんのが嫌だっただけだよ〜)」

 

そう言ってつねられて跡になってる部分を優しく撫でてくれる白福。そんなことで俺の恨みは晴らされんぞ!!………最高なんでもっとしてください。

 

暫く撫でコリ(頭もしてくれる)を堪能してると、周りからの殺気を感じたが俺は気にしなかった。

 

もっともキャプテンに睨まれて自重はしたけど(やめるとは言ってない)

 

そんなこんなで俺達も会場入りをしたわけだが、全国常連の梟谷ということもあって視線がすごい。

 

気迫というか圧というか、そんな感じのをひしひしと感じる。あとなんか嫉妬らしきものも感じる。   

 

「フッ…(羨ましいだろう?)」

 

「あの野郎……!」

 

「調子に乗りやがって……!!」

 

俺が軽く鼻で笑うとカチーンときたのか、ざわめき出す野次馬ども。すまないが、これくらいは良いだろう?

 

こちとら普段から滅茶苦茶大変なんだからな!!代わってくれるなら、喜んで代わってやらァ!

 

「いい加減にしろ…!!」

 

「ハイ!!」

 

なんか部長に怒られたんすけど…。ただでさえ顔が怖いんだからそういうのやめていただきたいってのに。

 

ーーーーーー

 

観客席にいるOBや応援団の人達がとってくれた場所に荷物を預けて、必要な物を持って試合前練習をしにみんなで向かう。

 

普段おちゃらけてる奴も、物静かな奴も、やる気のない奴も、声のうるさい奴も、のほほんとしてる奴も、特徴の薄い奴も、会場に踏み込むと同時に雰囲気が変わる。

 

「ふくろうだにーー!!…行くぞぉ!!!!」

 

『おぉーー!!』

 

 

そんな彼らの姿を上から見るモノ達がいた。原作で【ゴミ捨て場の決戦】と言われていた片割れである。

 

「なあなあ黒尾!あれみろよ!あれ!」

 

「ん?なーに?どしたの夜久クン?自分よりも小さい子でもいた?」

 

「息をするみたいに煽んな!!……ったく、あれだよな!俺達が参加してるグループのやつ!!」

 

「???……あー、梟谷のことか。皆んな強そうだねぇ。──それに比べて夜久クンときたら……相変わらず小さいねぇ…(ん?あいつどっかで………?)」

 

「哀れなものって感じで見んな!!俺の身長はまだまだこれからだろうが!!」

 

「…いやいや(笑)望み薄でしょ……」

 

「何を根拠に言ってんだァ?あぁ!?」

 

話しかけられると息を吹くように煽る彼とそれに応戦する者。

 

トサカのような髪型をしている方、「黒尾」と呼ばれた者の視線は梟谷のメンバーのある1人に定まる。昔どこかで会ったような、そうでないような。

 

普段は無表情のようだが、時に怪しげな薄い笑みを浮かべる彼。掴みどころがなく、原作では「食えない奴」と評される存在。

 

ここまで言えば、誰でも気付くことだろう。

 

彼こそ、後の音駒高校排球部主将【黒尾鉄朗】である。

 

音駒は原作当時は序盤から終盤にかけて主人公らの強力なライバルだが、今の段階ではそうでは無い。

 

今回の大会でどこまで行けるのか、それは誰にも分からない。

 

「おーいお前ら。俺らもそろそろ試合行くぞ」

 

そんな彼らに寄ってきたのは一見すると仏のような顔をしていて、長距離移動で新幹線に乗れるのかが気になっていた者である。

 

「おっけー…ってごめ〜ん。小さすぎて視界に映んなかった(笑)」

 

「…………」

 

向かおうとした黒尾がさっきから煽っていた夜久とぶつかってまた煽る。これが引き金となり夜久が物理による仕返しを始めた。

 

「いっ!?イデデデデェェエエ工!?!?!?ギブギブ!!」

 

流れるようにクロの後ろを取った夜久が全力のヘッドロックをかます。「身長差があっても関係ない」とばかりに無理やり腕を伸ばしてやってるため、重量もかかり見事に締まる。

 

「ングェ………!!ーーー!!」

 

あっという間に息が出来なくなる黒尾とブチ切れている夜久。そんな2人をみて海は早々に離脱することにした。

 

「あ〜〜…夜久、ここだと目立つし、邪魔になって色々と迷惑になるから、それやるなら階段の踊り場とか人気のないところでやって」

 

「(海!?)たすけ……!!!」

 

 

彼らが鷹木と会うのはまだ少し時間がかかりそうである。

 

ーーーーーーー

 

ネット越しにそれぞれ試合に出るメンバーがコートに並び、審判の指示に従って試合が始まる。

 

初戦(2回戦)の相手は第3瑞(ずい)高校。特徴としては足技が上手いくらいだと思う。

 

イタチとか戸美とかの原作キャラと話してて、少ししか試合は見れなかったから詳しくは分からないんだけどな。

 

ちなみにうちの(梟谷の)一軍ってのは10人。ガチの精鋭だけが入れる。二軍が俺ら含んで20人。基本ベンチメンバーで、ベンチに入れるかどうかはその時次第。三軍はそれ以外で上で応援するだけ。

 

で、今回の試合のスターティングメンバーは俺や木兎といった原作キャラが全員入ってる。

 

やれる所まで行って、ヤバくなったら交代するんだとか。…ってことは危なげなく勝てば、ずっと出来るわけか?

 

…………疲れるのは嫌だからある程度したら自主交代しよっと。

 

バレーは好きだぞ?ずっとしたいとも思う。けど、実際はそんなの嫌に決まってる。

 

俺の好きなことは楽しく楽をすることだ。休む時は休む!その時間を減らす訳にはいかんのだ!

 

俺は基本体力を温存して戦うのだが、ここは最初っから飛ばそうじゃないの。そうすりゃ早くのんびりできるし、監督にアピールもできるだろう?

 

よってこれ以上の行動はないということだ。

 

そこまで考えて俺は口を開く。

 

「よっしゃお前ら!初めっから飛ばしてくぞ!最後まで俺らで勝ち切るぐらいにな!」

 

「おお、珍しく鷹木が気合い入ってんねー」

 

「明日は槍でも降るんじゃねえか?」

 

「……泊まり込みなのか?」

 

「それならずっとバレー出来るな!!」

 

「ソイツは却下だ!!」

 

なんでそうなるのやら。そこは普通に「おー!」とかじゃないんかい。

 

 

そんなわけで高校初の公式戦試合の開始だ!願わくば早く終わることを所望する。

 

 

ーーーーーネットーーーーー

鷹木S 猿代MB 鷲尾WS

 

木兎WS 小見LI 木葉MB

 

 

うんまあ、セッターがいないから仕方なくね。小見はもちろん交代する時が有るけれども、出来る限り俺らだけで挑む為には仕方ない。

 

サーブは相手チームからだ。お見合いとか無駄な事で点を落とさないように、しっかりセッターとして働くから頑張って拾ってくれ。

 

相手が打ったサーブはフローターサーブ。それを小見が拾い俺に綺麗に返ってくる。

 

周りを見ると鷲尾と木兎がそれぞれ飛ぶ準備をしていて、木葉が拾う構えを、猿代がフォローの構えをしてる。

 

一方の相手は鷲尾の前に立ちブロックの構え。後は木兎の対面にディグの構えをしてる。

 

っていうか前後3人体制で移動してる気がする。気のせいなのかも知れんけど。

 

まぁここは木兎でいいか。しっかり警戒させてこいよ?

 

「木兎!!」

 

「っ!しゃあ!!───ぬん!!」

 

木兎の打ったスパイクは飛びついてきた相手のブロックを素通りし、ストレートに上手く決まった。

 

「うっしゃあああ!!へいへいへいへーい!」

 

『いぞいぞ木兎!押せ押せ木兎!』

 

『ナァイスキー!!』

 

「よし!ナイス木兎!お前ら次行くぞ!」

 

『おう!』

 

 

その後も試合は終始俺たちのペースで進み、俺もサーブとスパイクを3本ずつだが決めて勝利。

 

(サーブ成功率:スパイク成功率=35%:40%)←高いよな?

 

 

試合の後は水分補給とかしながらミーティング。

 

俺としては嬉しいことにこの後の試合から少しずつ先輩が入るんだとか。これで休み休み楽しく楽にバレーが出来るってわけだ。

 

「……能本がやる気いっぱいあるっぽいし長く試合出れるようにしてやりませんか?」

 

「どうやってかな?」

 

「ずっと試合に出してたら早く交代して休めるとか思ってそうですし、ちょくちょく交代させて最後まで働いて貰うのはどうです?」

 

「それはいいな。よし!そうしよう」

 

ちょっと待って、俺顔に出てた?

 

結局その後さらに俺2試合に半分ずつ出場して次戦は完全に休み。

 

というわけで俺は音駒のメンツを探しに行くことにした。トーナメント表には書かれてるけど、未だに見たことが無いからな。早いうちに会っておけば主人公らの事も色々聞けるだろうし探さねばなるまい。

 

ちなみに先輩方には梟谷グループに会ってみたいって言ってきた。嘘は言ってない。

 

ただ驚いたことに森然と生川は東京の高校では無いらしい。てっきりここで会えると思ってたんだがな。

 

そんな俺が音駒を探していると目に入ったのは、今どき珍しいモヒカン頭の男。

 

見た瞬間俺は思った。そうだ回れ右をしよう、と。

 

「む!?なにか視線を感じたぞ!さては女子マネージャーか!?!?」

 

何も聞こえなかった俺はすぐさまそこから離れて再び音駒の捜索に出た。すると遠くの客席でゲーム?らしき物(PSPみたいな?)奴で遊んでいる奴を見つけた。

 

その辺を見ると会場で試合をしているチームを応援しているようだ。というか、あれって間違いなく【孤爪研磨】だよな。

 

てことは応援(ゲーム)しているチームは音駒以外有り得ないな。んじゃあ俺も見さして貰いますか。

 

確か原作キャラが3人はいるはずだ。試合に出てるかどうかは分からないけど────

 

「俺だ!」

 

「イヤ俺んだ!」

 

相手のスパイクをブロッカーがブロックしてそれを上げようと飛び込む2人。

 

コートのど真ん中に落ちそうになっているからか、他の人はお見合いが怖くて突っ込めない中2人は突っ込んで行く。

 

「「ぃ!?」」

 

ゴッチーン!っといい音を奏でてボールは落ちたけど、ね。

 

「あれはリベロの俺のボールだろうが!」

 

「いーや!場所的に俺のだね!」

 

「んだとぉ!?」

 

「小さいんだから無理しちゃダメだよー?」

 

「お前こそ手長いってんならしっかり拾えよ!」

 

「そりゃおr「そこまでにしよう、な?(威圧)」」

 

ヒートアップしていく2人を宥めた?のは仏みたいなやつ。坊主頭で音駒ってことはあれが【海信行】か。

 

怒鳴りあってる奴らのうち、トサカの有る方が【黒尾鉄朗】で、ちっこいのが【夜久 衛輔】か。

 

あの二人ってあんな仲悪かったっけ?そんな話聞いたこと無かったけどなぁ。

 

まあ主要キャラを見れたし個人的には大満足だ。俺は踵を返して仲間の元に帰った。そして次から次へと試合が行われていき、気づいた頃には決勝に臨んでいた。

 

「次の試合の相手は言うまでもないが井闥山学院だ。今まであそこに勝った事は練習試合以外ない。だからといって向こうが油断してくれるわけもない。かなり厳しい戦いになるだろうが、楽しんでいこう。決して下を向かないようにな」

 

『アス!!!』

 

「それと木兎と能本」

 

「「!はい!」」

 

「お前らは試合の途中で必ず出てもらうから何時でも出れるように用意しとけ」

 

「「アス!!」」

 

俺と木兎はそう応えて相手のチームのある1人をみる。

 

1年生でありながら、チームのガチの主力。試合では散々に翻弄してくれた奴。性格は真面目も真面目。努力家で、品行方正。この前の練習試合で彼もまたレギュラーを勝ち取ったそうだ。

 

彼こそが井闥山学院の不動のセッター。【飯綱掌】 後の JOCベストセッター賞受賞者だ。

 

向こうも俺たちのことを見てニヤリと不敵な笑みを浮かべる。あの時仲良くなった彼と、今の彼はまるで違う。

 

一体どこまで互いが成長しているのか、いつどのタイミングでそれそれが試合に出るのか。

 

それぞれのスターティングメンバーがコートに並ぶ。ベンチの俺達も気をつけをする。

 

さぁ、絶妙に残されてしまった体力を全部使ってこの戦いに臨もう。

 

インターハイ予選最終戦の始まりだ。

 




今回から新章?1年の夏が開幕です!

原作キャラと沢山絡んでもらいましょう!

いつか東北に白福付けてグルメ旅にでも出したろかな。そしたら主人公らに会えるだろうし(笑)

ではバーイ!


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9話

原作キャラよ、もっと来い!



インターハイ予選最終日。3週間かけて行われていたこの予選、そのトリを務める試合が今、始まろうとしていた。

 

記者や関東ローカルテレビの撮影陣等、多くの報道機関の者たちもいる。

 

スポーツをやる者なら誰もが憧れるだろう、会場のセンターコート(中心)で行われるこの試合。

 

両チームの応援団や関係者のボルテージはもちろん、その会場に足を踏み込んだ者はもれなく全員が、テンションを爆上げされている。

 

それは観客席に居るこの者達も例外ではない。

 

 

「なぁ桐生。いくら俺達の予選が早く終わったからって、ワイらなんでもうここに来てん?ワイらが東京入りするんは7月の第二週やろ?それをお前、なんでまた東京の予選を見るん?」

 

「…いや、この2校のどちらかと当たるかも知れんし……見といて損はなそうやし…レベルが桁違いに高いとかありそうやし…あと、雰囲気に飲まれそうやし……」

 

「相変わらず暗いやっちゃなぁ。ネガティブ過ぎんか?」

 

 

ーーーーーー

 

「なぁ猛虎、なんで今日も俺たちここにいるんだ?6月の休み全部返上して見にくるって……バレー好きなのは知ってるけどさぁ───ところで来週の月曜日から中間テストだけど、お前勉強してんの?」

 

「─────サア!シアイヲミニイクゾォ!!」

 

「ハァ、やってないのかよ」

 

「アッ!アレハマネチャンデナイカ!?!?」

 

ーーーーーー

 

「ワカトシ君、まだ戦うかどうかも分からない連中の試合なんか見てどうするの?それに練習しなくていいの?」

 

「?練習ならこの後でいくらでも出来るだろう。まだ午前中だ。あと10時間は出来る」

 

「あー…(バレー馬鹿だったの忘れてた)それもそうだネ。そんでなんでコイツらの試合見んの?」

 

「………昔全国で戦った奴がいる。俺の攻撃を悉く拾い上げた奴が何故ここにいるのか、聞いておきたい」

 

「そんなすごい子がどっちかのチームに?(痛かったろうなぁーー…)あ、それじゃあその子に会いに来たんだ?」

 

「ああ、上手いやつなら同じとこに来ると思ってたが……アイツは来なかったからな────アイツはウチに来るべきだった」

 

口調からは判断できないがきっとテンションが上がっていることだろう。

 

ーーーーーー

 

『『お願いっシャーーーっす!!!』』

 

今全国大会のシード権をかけた戦いの幕が上がった。東京は強豪校の数と質が他県よりも平均的に高い。それ故にどちらも全国への出場権はもう既にある。

 

しかしそれで満足する気などサラサラない。

 

「ナイッサー!!」

 

「っしゃあ頼むぞキャプテン!!」

 

「ああ、後輩たちが見てるんだ。情けない姿は見せられないな」

 

第一セットはイタチサーブから始まる。先輩達は強烈なサーブに備えて臨戦態勢をとる。

 

「強烈なの警戒しとけ!」

 

『おう!!』

 

相手サーバーはたっぷり8秒使ってジャンサーを打ってきた。

 

「ぃよし!俺だ!」

 

サーブは先輩リベロの元に飛んでいく。手始めは挨拶がわりってことだろうか。

 

「ライトライト!」

 

「俺によこせ!!」

 

「!頼むぞ!」

 

前衛の2人がセッターに声をかけて飛ぶ姿勢に入る。先に動いたライトの先輩が相手のブロックを2枚引き付けて、空いたスペースを狙ってレフトの先輩が打ち込む。

 

ズドンっと重い一撃が決まった。

 

『ナァイスキー!!!』

 

『行け行け梟!押せ押せ梟!』

 

途端に湧き上がる応援と歓声。

 

その声で空気が揺れて俺たちベンチメンバーの体が震える。

 

「鷹木」

 

「ん?どした木兎」

 

「俺も早くやりたい……!」

 

そう言った木兎はグッと握りこぶしをして闘志を露わにする。この歓声を、応援を、視線を、注目を浴びて戦いたいと、ヒシヒシと伝わってくる。

 

普段はただ煩くて、面倒くさいコイツだが、今の状況だととても頼もしい。俺一人だと押し潰されそうで到底無理だ。

 

「ああ、俺も皆もそうさ」

 

早くバレーがしたい。スパイクを打ちたい。ドジャットしたい。サービスエースをしたい。スーパープレイをしたい。そして皆で勝ちたい。

 

出来る出来ないは関係なく、目の前で行われている戦いを見て、俺も確かにテンションが上がっている。

 

 

試合は取ったり取られたりを繰り返して、カウントは梟谷(26)ーイタチ(26)。互いに1歩も譲らず一進一退の攻防が続いている。

 

その近郊状態を破ったのは、彼だった。

 

イタチがメンバー交代で飯綱掌をこの局面で投入してきたのだ。正直いってこの場面でいくら【飯綱掌】と言っても投入するとは思わなかった。

 

少しでもどちらかが気を抜けば、それだけで1セットが取られる。そんな場面で投入する。

 

相手チームはこのセットを捨てた訳では無いだろう。むしろ、一種の秘密兵器として投入したはずだ。

 

とはいえ、この場面で交代することを相手チームのメンバーが驚かないのは、それだけ彼の実力を知っていて、信頼しているということだろう。

 

そう考えて俺はコートを見た訳だが、彼はボールを持っていた。それもサーブを打つための場所で。

 

「なぁ、鷲尾。アイツのジャンサーってかなり強かったっけ?」

 

「……いや少なくとも、入るか微妙な木葉のジャンサーと同じくらいだ」

 

「おい!なにそこでナチュラルに俺をディスってんだ!?」

 

そうだ。鷲尾の言う通りアイツのジャンサーはそこまで威力が有る訳では無い。

 

ジャンフロを習得してる訳でもない。使えるならあの時の試合で使ったはずだ。この大会でも見てないし。

 

まさか今日までの数ヶ月の短期間で習得出来るとは思えないが……

 

そんなふうに視線をアイツに向けると一瞬、ほんの少しだけ目線が重なった。そしてアイツは不敵に笑う。

 

「(何するか分かんないだろうな。鷹木は良くも悪くも思考が硬い。俺があの時と同じなわけないだろ?あの時は武器を増やすためにジャンサーを試したんだ。俺の1番の武器はコレさ!)────悪いね」

 

トントンとボールを軽くまるで話しかけるかのように優しく触る。

 

丁寧に上げられたボールは綺麗な弧を描き、打ちやすいところに飛ぶ。

 

「──フッ!!」

 

放たれたボールは緩くネットギリギリを超えてこれまた白線のギリギリに落ちた。

 

「のっ…ノータッチエース!!」

 

誰かがそう叫ぶと途端に会場が沸く。その声は全て飯綱掌にだけ向けられていた。

 

その後も飯綱掌がジャンフロを決めて1セット目は26-28でとられた。

 

ーーーーーー

 

「クッソ…あの場面で1年にやらせるとはなぁ」

 

「ああ、だがあれは任せるだけの価値があるサーバーだ。問題は次をどうするかだ。能本は見ててどう思った?」

 

「そうですね……向こうは全体的に能力が高いですけど、攻撃力は俺らの方が上だと思います。防御力に関しては同じくらいかなと、その代わりに連携を淀みなくやってて……って感じだと思います。ただ、最後に使ってきた彼。セッターとしての能力は桁違いに高いです。多分ですけど今の相手の正セッターよりも……あ、タオルどうぞ」

 

「サンキュ。となると俺達の選択肢は2つだな。───よし!全員集合!!」

 

「お前達の意見を聞かしてくれ…次は攻撃特化(殴り合い)で行くか、防御を固くして堅実で要領良く行くか」

 

 

彼らが選択したのは─────

 

ーーーーーー

 

「っしゃあああ!!行くぜ行くぜぇぇー!!!」

 

俺達が選択したのは【木兎の投入】(攻撃特化)だった。

 

カウントは梟谷(8)ーイタチ(10)の場面。木兎は元気よくMBとして投入された。そう、MBとしてである。

 

「俺にドシドシ寄越して下さいよーー!!」

 

もっともあくまでポジション上のことである。当たり前だがレシーブとかもする。しかし木兎のミッションは点を取ること。

 

せっかく攻撃の面で勝っているのなら、火力で押し切る方が精神的にスッキリする。特に木兎はそういうタイプ。

 

自分がやりたいことを好きなようにやらしてくれるわけだから、気分が薬中並に上がっている(キメている)のである。

 

「ドラッシャアァァーー!!」

 

早速スパイクをぶち込んだ木兎。そのボールは恐ろしい事にクロス、それも超インナーのアタックラインの前に着弾した。

 

「へいへいへいへーい!!!おぉれ!さーいきょー!!!」

 

決まると同時に自分の体をめいっぱい大きくして喜ぶ木兎。子供のように無邪気に楽しんでいるようだ。もっとも、テレビカメラの超至近距離で叫ぶのは頂けないが。

 

説教をするのは確定として、その後はやや梟谷優勢で試合が進んで行き、カウントは梟谷(22)ーイタチ(20)の梟谷が2点リードしてるこの局面。

 

梟谷メンバーチェンジ先輩WS×2→能本and猿代

 

とうとう俺の出番がやってきた。このセットも終盤に差し掛かっている。このままこのセットをとるためには、ミスを減らす方が大事。

 

と、監督が言っていたのでMBだが実質WSの木兎とWSキャプテン、この2人のアタッカーを残して、俺と猿代がWSの場所にMBとして入ることになった。

 

つまり最初のオーダーのこれから、

ーーーーーーネットーーーーーー

木兎MB 先輩S 先輩WS

 

先輩WS 先輩(キャプ)WS 先輩MB(先輩LI)

 

 

ーーーーーーネットーーーーーー

木兎WS 先輩S 猿代MB

 

鷹木MB 先輩WS(キャプ) 先輩MB(先輩LI)

 

こうなったということだ。しかし、大事な場面で使われるのは嬉しいが、何故1年を使うんだろうな。

 

そうして俺はコートに向かってった。

 

 

ーーーーーー

 

鷹木はゆっくりとコートの白線の前に立つ。この先は別の空間。熱気渦巻く死闘の場所。

 

鷹木は自分の体が十分に温まってることを再確認して意を決して一歩踏み込もうとした。

 

その瞬間鷹木を襲う凄まじい圧。周りから試されるかのような圧。この圧に鷹木は不敵な笑みを浮かべ、冷や汗をかく。

 

(!……ハハッ!!中学一年以来の感覚だな。あの時も、接戦はいつも、こうだった)

 

しかし鷹木はまだコートの前で足を止めていた。その姿を仲間は不思議に思うのは当然だ。

 

猿代は既に入って木兎らコート内の選手と話している。

 

そんな様子を下に入れなかったメンバーと共に、上から見ていた白福は的確に言い当てる。

 

「?能本動かないけど…まさか、緊張してるのか?」

 

「ううん、あれは違うよ〜〜。あれはきっと––––––」

 

(こんな楽しいバレーが出来るってのに、何を出し惜しみする必要がある?最終日最終戦。今日まで3週間少しずつ試合に出されたせいで、体力を完全に回復なんて事は出来なかった。だけど、この試合を走りきるのに必要な分の体力はある。なら––––––––)

 

「「体力の使い切りがいがある」って思ってるんだと思うな〜〜」

 

コートに入ることで研ぎ澄まされていく感覚、体が熱くなるのに対して落ち着く思考、相手チームと観客から感じる視線。

 

それら全てを自分の力に変えて、鷹が木から飛び立ち本当の能力を発揮する。

 

「締まっていきましょう」

 

こういう時相手は何をしてくるか、その事を念頭に思考する。この時点で鷹木の耳には雑音が一切入らなくなっていた。

 

 

ーーーーーー

 

こっちのサーブを向こうが拾って、セッターの彼が俺らから見て左にセットアップする。

 

それに反応してブロックをしようと木兎らが立ちはだかろうとする。後衛の俺らもレシーブの為に構える。

 

(普通に考えたらそのまま打ってくる。けど、今の俺達は防御をより固くしてる。この状況でも撃ち抜こうとしてくるか?向こうのスパイカーは言っちゃあなんだが、誰も全国5本指とかじゃない。手探りをしてくるような場面でもない。なら、もしかしたら─────)

 

相手のスパイカーはブロックが来たのを、まるで待っていたかのように空中姿勢を保っている。

 

それから思いつくことは1つだった。

 

ーーーーーー

 

「(クッソ…コイツらもデケェな…俺らはイタチの歴代メンバーの中でもパンチ力が無い。最弱とまで言われた事もある。そんな俺達だからこそ、色んなことを習得してきた。────それを今こそ使うべきだ)ドヤさっ!」

 

「「!!」」

 

フワリと放られたボールは木兎らブロックを嘲笑うかのように、ゆっくりと宙を舞ってコートに落ち───

 

「フンギッ!」

 

──なかった。そう簡単に点を渡すつもりはないとばかりに、鷹木が飛び込んで真上に上げた。

 

そのスーパープレイに歓声を上げようと、皆一様に声援を出そうとした。しかし、他ならぬ鷹木がそうはさせなかった。

 

「ン木兎ォォ!!!!」

 

鷹木が大声を出したその時、木兎は助走なしで高く跳躍した。まだまだ完璧ではないが、星海が行っていた「技」を咄嗟に使ったのだ。

 

いきなりのカウンターに相手側は誰も反応出来ず、木兎のスパイクの音が会場に響き渡った。

 

そして今度こそ歓声が湧き上がった。

 

『ナァイスキー!!!!』

 

カウントは梟谷(23)ーイタチ(20)。ここに来て梟谷がやっとリードを3に広げた。

 

続く梟谷サーブを打つのはコントロール重視のジャンサーを放つ猿代。誰もが入ることを確信していたし、まさか後頭部に直撃する等思ってすらいない。

 

「ナイッサー頼むぞ!」

 

「狙う必要は無い。コートに入れることだけを考えろ。…………出来ればネットインを期待している」

 

「いや、何言ってんすか」

 

だからこそ皆が細かく言わないし、キャプテンですらジョークを言う。その事に信頼されてる事を感じ取り、猿代は嬉しそうにスパイクを放った。

 

「「俺だ!──え?」」

 

放たれたスパイクは運良く相手チームのお見合いを成功させた。しかし彼らもまたそう簡単にボールを落とさない。

 

「ングゥ!!」

 

お見合いで足が止まってしまった2人の間を縫うように、飯綱掌が飛び込んで上げた。

 

しかし上げたものは鷹木のとは異なりジャンサー。リベロでなく、セッターで経験がまだ少ない彼では上げるのが精一杯。

 

ボールはコートの後ろへと飛んで行く。これは点を取れるかと、梟谷が思ったその時お見合いで足が止まった2人のうち、手足の長い方が足で蹴りあげてネット近くまで返してきた。

 

その上、もう片方がそれに合わせて跳躍し、スパイクを打ってきたのだ。梟谷メンバーの誰もが反応出来ず、失点したと思った。

 

ボールはコートの右奥へ。苦し紛れで帰っ来るだろうから、前のめりになっていた梟谷側は誰もそこにはいなかった。

 

だが、予測こそ出来なかったものの、人一倍ダラケられるかどうかに敏感な男・鷹木はそうではなく飛び込んで上手く拾って見せた。

 

原作にそこまで出なかったとはいえ、主要キャラの1人が綺麗に上げた。それ即ち返って来る事と鷹木は考えていたからだ。

 

しかし鷹木はそのままベンチメンバーの元にフライングで突っ込んで行ってしまったが故に直ぐには打てない。

 

だが、そんな事は関係ない。何せ彼はレシーバー。後は俺達の仕事と言う感じで先輩セッターがボールの下に入る。

 

そして先輩セッターがキャプテンへとセットアップし、キャプテンが見事なバックアタックをして、ボールは相手コートの角にギリギリで入った。

 

カウントは梟谷(24)ーイタチ(20)梟谷ゲームポイント。

 

「うぉぉ!!なんだ今の!!」

 

「どっちもすげぇ!!」

 

「……これプロの試合だっけ?」

 

眼下で行われている壮絶な1点の取り合いに応援団以外の者たちもざわめき出す。

 

「イヤーー流石は強豪校って感じだなぁ〜〜」

 

「ああ、俺達とは違うな。けど合宿では負けねぇ。その為にも一旦張り合うのはやめにしようぜ…黒尾」

 

「んそーだね。ま、俺は張り合うなんて幼稚な事、した覚えは無いけどね」

 

「…それじゃあ、練習をしに行こうか」

 

『アス!!』

 

一方でそんな彼らを見て触発される者達もいる。彼らと会うまでのカウントダウンもまた、迫ってきていた。

 

だが、彼らと会うのはまだまだ先である。

 

「よし!このままこのセット奪うぞ!!」

 

『オオォ!』

 

サーブは再び猿代から。猿代は自分で終わらせる気満々で全力の1発を放った。

 

そのサーブはコートのど真ん中に陣取っていた相手のリベロに拾われる。そして飯綱掌にボールが渡り、エーススパイカーにボールが託される。

 

「鷹木!お前後ろで構えろ!!」

 

「!?ウッウス!」

 

前衛全員でブロックをするが相手のボールは止められず、木兎の腕が弾かれてボールが飛んでくる。

 

鷹木は先輩の指示に従って下がっていた為に、確実に飛び込んで上げた。飛び込まずに取れるほど甘いとこには飛んでこなかったようだ。

 

そうして上げられたボールは、落ちることなく先輩セッターへと飛んで行く。ここでキャプテンに預ければ、確実に点を取れると思ってトスを上げた。

 

どんな場面でもミスをエースがキャプテンがしてはダメだが、終盤でこそ点を取る事を託されるのがエースであり、キャプテンだ。

 

キャプテンは気持ちを込めた渾身の一撃を放つ。バックアタックを得意とする事もあり、強烈な一撃が相手コートを襲った。

 

しかし、相手も気持ちで負けていない。その重い一撃を相手のリベロが何とか上げる。ただ、威力は殺せずボールは梟谷コートにネットインしてきた。

 

それにすぐさま反応した先輩リベロが、片腕を伸ばし拳で吹き飛ばす。速い速度でボールが後ろに飛んでいく。

 

だが、それに追いつく者がいた。

 

「ンギガァ!!」

 

声にならない声を上げて顔面を床に叩きつけた男・鷹木である。

 

何とか追いつかんと飛び込んだのはいいものの、このまま上げようとしても精々少し上に上がるだけ。

 

それならば自分の顔面を見捨てて、腕をこれまた両手を合わせた拳でかっ飛ばした。

 

打ち上げられたボールは木兎の元へ。タイミングをとるのが難しいが、そんなもの関係ない。

 

「!打たせるな!」

 

「ブロックブロック!」

 

打てそうなボールが近くにあるなら、打たない・飛ばない・打ち込まない等ということをする木兎では無い。

 

「オッラァ!!!」

 

芯を捉えた一撃は相手のブロックを打ち崩し、ブロッカー2人諸共コートに叩きつけた。

 

カウント梟谷(25)ーイタチ(20)

 

第2セット 梟谷の勝利





この大会の間にどんどん原作キャラ呼び込むぜよ!

次は誰にしよっかな〜


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10話

つ、続き……だと

作るだけ作った合計で5つのルートから、このルートを選びました。
他のルートは気が向けば小ネタ集の下とかに現れます。

今回はパソにて投稿してみましたなりwww
なんかめっちゃかけた


梟谷がセットを取り返すことに成功した第2セット。それを見て観客からは拍手が両チームに向けられておこる。選手達はその拍手を聞きながらも、特に顔を変えることなくベンチへと下がって行く。その目は互いの目を捉え離さない。「次は俺たちが取る」「次も俺たちが取る」と、今まで何度も戦ってきた2、3年を代表するように、キャプテン同士は睨むことなく心の中で言い放っていた。

 

実際にその場にいなければ決して感じることはないであろう言葉。最後に頭を叩きつけたことも相まって、今の俺は熱いような、寒いような、奇妙な感覚に包まれながら周囲を尻目で見渡しながら座る。椅子に腰をかけることで、足にかかっていた重圧が解放され、一斉に疲れが押し寄せてくる。疲労回復の効果もある、スポドリを流し込んで予想以上に体力を持ってかれた体に取り込むとしよう。

 

目を閉じて「五臓六腑」を実感していると、眠気のようなものを僅かながらに感じる。大会の決勝戦のように重要だからこそ「もう一度がない戦い」を実際に体験出来るわけだが、その所為で体力がごっそりもってかれてる。高校入りたての時に言われた、「体力をつけろ」ってことを今更ながら、本当の意味で理解できた気がする。

 

俺が思考の海に沈んでいると、周りの声が徐々に入ってきた。多分少し離れたとこでで3年の先輩方が会話をし始めたんだろう。しっかりとは聞こえないが、互いに意見を出し合ってるのはなんとなくわかる。ところがキャプテンの声が聞こえない。あのthe・イケメンって感じの声はどこだ?そう思ってその声を探すと、隣でいきなりその声が聞こえた。

 

「木兎と猿代は、ブロック、の、時に、・・・ゴクゴク・・・早く跳びすぎたり、反応が遅い時が、ある、から・・・グエップ・・・隣の奴とタイミング合わせて跳べ、それから、木葉は───」

 

キャプテンが矢継ぎ早に1、2年生を中心に反省点を挙げていく。俺みたいに外から見て考えるのではなく、試合中に戦いながら仲間の動作や改善点について考える。・・・こういったところがキャプテンのキャプテンたる所以なのだろう。中学の頃にあったこと以来、プレー中に何かを考えることには抵抗感がある俺からしてみれば、キャプテンは間違いなく常人じゃないと言える。それはもう声高に。

 

というか、飲むか話すかどっちかにしろよ。木兎が真似しちゃったらどう責任取るんですかい?先輩がそんなことをして、アイツが飲みながら話すなんてことを習得したら、静かになる時間が完全に無くなっちまうじゃねえか!!それは周りへの衛生状大変よろしくない。考えてみればすぐわかる。

 

想像してみよう。隣に座った人が、電話しながら飲み始めたらどうだろうか?なかなか嫌な現象だと思うし、俺が耐えられないし、普通引くと思う(偏見)。それがただでさえうるさいことに関して、定評の塊である木兎に起こるんだ。それはまさしく、起きてる時間ズーーーっと話してるということだ。わかりやすく言えば、年中蝉が耳について泣いてるようなものだ。

 

少し話がずれた気もするが、外から見て考えるか試合中の得点時とかでの小休止の時なら、今の俺でも思考することはできる。だが、まず間違いなくキャプテンみたいのは、今の俺では不可能だ。かといって木兎のように突っ込むだけというのも俺に出来ることではない。というかなりたくない。今まで「木兎シリーズ」を止めてきた俺が、そうなったら綺麗に「ミイラ取りがミイラになる」を体現することになっちまう。

 

「そしてお前は、寝ててもいいから、血を止めろ!」

 

「ィグゲェッ!?」

 

鼻をつねられて変な声を出した俺氏。すっかり忘れていたが顔面をぶつけた結果、鼻血がダバーって感じて口元まで流れてるんだった。意識すると鼻はかなりジンジンして流ことがわかるが、つねられても感覚がない。おかげで気づきませんでした☆

 

その際たる原因は白福である。白福に起こしてって言うと毎回されてるんですよ。え?なんで白福に起こされてるかって?それは俺も知らん(おい)だって知らないうちに家の合鍵持ってるんだぜ?今更だよな(危機管理)

 

怒られたので目を開けて周りを見ると、目の前には無駄にイケボなことがどうしてもムカついてしまうキャプテンがいた。初対面の時思わず「絵に描いたようなイケメンボイスですかこの野郎」っていったっけ。コンプレックスなのか、かなり怒られたけど忘れた時に言っては楽しませてもらってる。

 

「黙ってないで、早く血を止めろ!」

 

「早口を止めろ?」

 

「はいはーい。そこまでそこまで!鷹木くんこっち向いて、アンタは指示出ししなさいよ?」

 

目の前にキャプテンがいる状態で煽ればどうなるかは分かっているので(経験則)、言わないように捻って出したのだがそれでも結局煽ってしまったようだ。俺別に煽りマンじゃないんだがな・・・もしや、キャプテンと話すときは煽ってしまうのか?なんかこう、デッドロック状態になってしまうのか?それかキャプテンがそう言う体質なんだな。

 

「なに考えてるかは分からないが、馬鹿にされてるのは分かった」

 

キャプテンがなんか言ってるが、非常に申し訳ないけども、もう視界と耳には入ってない。だって目の前に桃源郷があるのだから。鼻血を止めるにはどうするべきだろうか?答えは簡単。前から鼻に栓をしてもらうことだ。そしてそれをしてくれるのは、可愛い先輩マネチャンズ、さらに彼女がきてるのはジャージ・体操服。結果、前屈みになれば見えるモノは?・・・言うまでもない。

 

「あ、あれ?なんか鼻血が急にいっぱい・・?」

 

途端に溢れ出す真っ赤な血となったパトス(情熱)。瞬時に原因を理解した周囲の猿。こうしてはじまる男子による戦争。せっかくの休憩だと言うのに、誰も休むことなく次セットに挑むことになる事がどんな影響を起こすのだろうか。もっとも、そんなことは関係なしとして監督とコーチ、審判、敵チームは試合をさせるのだった。そしてこの態度に不快を覚えるものがいたとか、いなかったとか。

 

 

 

 

 

第三セット イタチサーブ

 

血が止まらない&体力を使いすぎた鷹木は負傷者として万屋・木葉と交代してベンチスタートとなった。昔からなんでもそつなくこなすタイプの彼。スパイクの強い木兎ほどでなければ、鷲尾ほどのサーブも打てない。さらにレシーブも平々凡々の木葉。きっと無難にこなしてくれるだろう。

 

「?何か木葉のやつ、変な感じしません?」

 

珍しく動きが固い?硬い?木葉に俺や小見が訝しむなか、試合は3セット目に入り中盤。ここから最後まで勝つことを優先しつつも、首脳陣は選手団と別のことを考えていた。

 

「監督、春高でより活躍してもらうためにというのは、分かりますが……」

 

「心の底から正しいことだとは思っていない……だが、賭けてみたくなったんだ」

 

なんならこの後に控えている全国は捨てることも視野に入れながら。それぐらい木兎や鷹木の新世代には期待しているのだ。もちろん今日までのトーナメント戦でも出場させたてきたし、相応の結果も出してきている。しかし、そこで出した結果や実力をそのまま全国の舞台で発揮できるか?そう聞かれて「はい!」と答えられるのは木兎ぐらいだろう。

 

入部してからまだ一年も経ってないどころか、大して仲がいいわけでもないのに、首脳陣は木兎について深く理解しているようだ。これは首脳陣の観察眼がすごいのか、はたまた木兎がすごいのか。間違いなく後者だと言いたいものである。

 

話が逸れたが、だからこそこの場面から1、2年を出す。メンタル強化ほど時間のかかるものはない。それが首脳陣の哲学地味た結論である。実力があるだけで、メンタルが弱ければ「全国で戦う」だけで止まってしまう。それは彼らを率いるものとして納得できない。

 

現2、3年の彼らも間違いなく全国でもっと高く飛べる。「全国で勝ち抜く」それが出来ると、そう信じてやまない首脳陣から与えられた「殻を破る機会」。果たして彼らはこの殻を破れるのだろうか?答えは分からない。その一環として、抜き打ちでの「ターニングポイント」でのメンタル測定が始まった。

 

 

そしてここで監督達と選手陣では、目標に相違があると言うことも明らかになった。

 

 

そうして始まった試合のカウントは(梟谷)10-12(イタチ)。特に流れが変わることなく、ただただカウントが刻まれていく。このままズルズルと進むのは避けたい梟谷側。そこで梟谷はピンチサーバー・鷲尾を投入するかどうかで悩んでいた。

 

「このままの流れではまずいな・・・・」

 

「ええ、うまく噛み合ってないですし・・・・」

 

静かにしてないとまず聞こえないぐらいの声でそう呟く監督たち。安静にしてろとの事でアップする事なく、マネチャンズの1人と共にその話を座って聞いていた者がいた。当然、鷹木である。

 

「・・・確かに、このまま最後まで行っちゃうと・・・・」

 

「・・ですね。流れを変える為にも何かしないと。・・・・・・・俺はアップしといたほうがいいですよね?」

 

「あ、それはだめ」

 

鷹木が立とうとするも、華奢な見た目からは想像出来ない圧力で押さえつける先輩マネチャンズ。その目はキラリと光り、ハンターと化している。マナージャー目線から見ても、コートに出てるメンバーの流れが悪く感じる。とは言っても、イタズラに行動することは出来ないし、させない。

 

何が原因で試合が動くか分からない以上、下手に歯車を加えたり、外すことは躊躇うもの。選ぶ時に少しでも問題がない、と思える者を選ぶ必要も有り、監督達も鷹木は体力が回復するまで使う気はなかった。

 

「1つでも良くなれば御の字、だな…」

 

「リセットか流れるか……行かせましょう」

 

そうしてボールを受け取ったのはこの大会で人知れず高評価を受けている鷲尾。チームメンバーも誰一人気付いてなかったが、1年ながら放たれる豪腕サーブは、実はサービスエースをリベロからばっかり奪っている。無口なことも相まってその事に気付く者はいない。いても少したつと忘れている。

 

「っしゃあ!頼むぜ鷲尾!」

 

「………ああ」

 

ハイタッチをしてボールを受け取った鷲尾。たっぷり時間を掛けて、彼はスパイクと見間違う音と速度で相手コートサーブを放った。そのサーブは相手のリベロを弾き飛ばし、チームの期待通りに結果を出した。しかし、本人はまだまだ納得言ってなかった。鷲尾はメンタル面に関しての問題は無い。が、本人としてはノータッチエースを取る気しか無かった。

 

今回のサービスエースもリベロから奪っていた。だがそれでも納得はいかない。彼の目標は「中学の頃のように」相手に反応すらさせないサーブを打つこと。リベロからサーブで点を取れば周りは盛り上がるが、触れられれば鷲尾にとっては盛り上がらない。

 

中学の頃の進路で梟谷を選択したのは運命だとか、原作のルートとかでも無い。彼がそうした理由は「2人に勝つ為」その一点だけである。中学までは負け知らずだった彼に、初めて全ての面で勝ったのがその内の一人・木兎である。実力差はかなりのもので、スパイクとかスタミナではまるで歯が立たなかった。

 

そんな中唯一歯が立ったのがサーブだった。中一だったがどちらも打てたスパイクサーブ。その時点では木兎の方が上だったが、これしかないと考えた鷲尾は人知れず腕を振り続けた。そうして続けること暫くして、今では全国に通用するリベロでさえも取りきれないサーブを打つようになった。

 

しかし、それでも先に言ったように彼は満足してない。ここで足を停めれば必ず木兎に抜かれる。途方もない差を付けられる。それは嫌だ。認められない。それどころか、

 

「鷹木」からまだ1度も点を取ったことがなかった。

 

 

 

「───ひえぇー…何度見ても怖いなぁ」

 

「だね。けど鷹木は練習とかで全部拾ってなかった?」

 

「練習ですから、調整してたんですよ……鷲尾ナイッサー!!」

 

「……ああ」

 

木兎と交代でベンチに戻る鷲尾。結果は(梟谷)13ー13(イタチ)の同点。2本のサービスエースで点をもぎ取り、追いついて追い抜くも、追いつかれ交代となった。1人で追いつくだけでなく、試合がダラダラと進むことを阻止した彼。そんな彼はベンチでまだ座っている目標と、ハイタッチをしながら耳元でこう言った。

 

 

 

────いつかお前からも取る────

 

 

 

知らぬ間にライバル視されていた鷹木。なぜに?と本人が混乱してる中、鷲尾はメンバーの元へと戻って行った。背中から溢れ出る闘志を木兎に、鷹木に浴びせながら。

 

 

 

 

鷲尾のサーブでダラダラした流れが切られ、スッパリとした空気になった試合。欲を言えば流れを持ってきたかった梟谷だったが、そうはさせじと同点にしてみせたイタチ。イタチがタイムアウトを取り、流れが完全に止まった今、勢いに乗って突き放そうと双方が円陣を組んだ。

 

「飯綱掌、無理してもいい。ーーー全員で点をもぎ取るぞ」

 

『オス!!!』

 

 

「木兎が乗ってきてるし、鷹木の血が止まってきたか・・・」

 

「攻め時だな・・・・・・レシーブは極力リベロと、出られたら鷹木でいけ」

 

『オオ!!!』

 

「それと……猿代!セッターで入れ」

 

「ウスッ!!───あぇ?」

 

さぁここから突き放すぞ!っと思っていた時に、まさかの猿代のセッターへの抜擢。木葉は入れ替えない上に、木兎が出続けてしまいには猿代のセッターとしての起用。

 

(今日はやたらと1年をコートに立たせるな・・・・勝ってるどころか薄氷の上にいるような時だが・・・実力があるとはいえ、遜色ないと思うが)

 

キャプテンら1部の勘のいい者達が違和感を覚えるのも当然のことであり、そこから始まる奇妙な試合は、様々な問題を残しながら進んでいく。さらに、攻撃重視の意識は時に身を滅ぼすきっかけとなり得ることを誰もが忘れていた。

 

 

 

 

 

 

「ッ!!!───グァ“ァ“ァ”ァ“…………!?」

 

「へ?」

 

「……!直ぐに治療だ!急げ」




時間かかってごめんなシャイニングビーム!

いやほんとすんませんした。

上の知ってる人……いる?


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11話

前話を読んでいただいた方は思ったことでしょう。

“鷲尾強すぎないか?”と。

お答えしましょうその疑問。

鷲尾は木兎シリーズの研究成果です(QED)

なんなら鷹木も


激しい戦いの続くフクロウVSイタチ。

 

自然界でこの両者が戦うことがもしあるのなら、本当にこんな白熱したものになるのだろうか。

 

イタチ(鼬、鼬鼠)とは、ネコ目(食肉目)イヌ亜目クマ下目イタチ科イタチ属(Mustela)に含まれる哺乳類の総称である。

 

オコジョ、イイズナ、ミンク、ニホンイタチなどがイタチ属に分類され、 ペットとして人気のあるフェレットもイタチ属である。

 

フクロウは、夜行性であるため人目に触れる直接の機会は多くないが、その知名度は高い。

 

「森の物知り博士」、「森の哲学者」などとして人間に親しまれている。

 

木の枝で待ち伏せて音もなく飛び、獲物に飛び掛かることから「森の忍者」と称されることもある。

 

Wikipedia参照

 

ここから見るとフクロウの方が強そうである。

 

まぁ、勝敗は自然界に詳しい専門家に聞くとして、眼下で目下行われている戦いは一方が崩れ始めていた。

 

 

 

カウントが進みフクロウ14ー15イタチの大事な局面。両者ともに流れを無理矢理にでも奪わんと、ボールに齧り付いていく。

 

その最中の出来事だった。

 

イタチが打ってきたスパイクを、手が長い猿代がブロックして弾く。

 

前衛のブロックで弾かれたボールがフラフラとコートの真ん中辺りのライン上に落ちかける。

 

しかし、そうさせないと飛び込んで先輩リベロが上げる。

 

ボールが上がるのを視界の端で捉えた他の選手が、全員対応するために動き始める。

 

何故かセッターになってしまった猿代が下に入り、

 

万事屋・木葉が助走距離を確保するために下がり、

 

イケイケどんどんの木兎がボールに向かって猪突猛進していく。

 

それ以外の先輩方も皆一応にフォロー等に移っていた。

 

 

そうして猿代が素人目にしては上手な、プロからしたら下手っぴな、両チームメイトからしては微妙なセットアップをする。

 

 

 

 

 

 

 

その時であった。

 

飛び込んで拾い上げた先輩リベロが、全速力で駆け出していた木兎と思いっきり交錯してしまった。

 

 

 

「ッ!!!───グァ“ァ“ァ”ァ“…………!?」

 

「へ?」

 

「……!直ぐに治療だ!急げ!」

 

飛び込んだが為に、コートの床に手をついていた先輩リベロ。

 

アタッカー達に助走距離を取らせる為に、横に避けようとした結果、ボールだけを視界に入れた木兎が迫る。

 

先輩リベロがその事に気づいた時にはもう遅かった。

 

木兎は先輩リベロの手を思いっきり踏んでしまい、加えて顔に膝がめり込ませてしまった。

 

予期せぬ強烈な一撃に先輩リベロが叫び声を上げながらのたうち回る。

 

痛みに跳ねながら苦しむその姿は、まるで何処かの鯉を連想させ、駆け寄る者達も含めて、

 

「…コイキング?」

 

「・・・・何言ってるの?」

 

と思ってしまったそうな。

 

 

 

と、そんな巫山戯てる場合ではなく、すぐさま治療の為にプレーを中断して運び出す。

 

それを尻目に見ながら、鷹木は木兎をベンチに呼び出す。

 

「…………」

 

「…………」

 

見るからに気落ちしている木兎。原作で誰かと交錯して、怪我をさせるという描写は無かったが、無かったからと言って起こらないわけが無い。

 

一方、監督達は代わりのリベロをどうすべきか話し合い、先輩達も共に真剣な話し合いをしている。

 

鷲尾や木葉といった、原作登場キャラの彼らも心配そうに先輩リベロを話し、続いて木兎を見て何か出来ないか、ともどかしそうにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況を見て呼び出した鷹木は思った。

 

(…………めんっどくせぇッッ!!)

 

彼は真面目である。しっかり者でもある。バレーも好きだし、皆とわちゃわちゃするのも好きである。

 

だがしかし、ダラダラするのが1番好きである。

 

具体的には前世の死因が風呂でダラけていた事、ぐらいにである。

 

試合の時であれ、勉強の時であれ、どんな時でも力を抜くことが前世から好きというか、本人の知らない“癖”なのである。

 

ボールの起動で取れるか、取れないかの人外……超人的な判断力を身につけられたのも、それ故にである。

 

手を抜く為にダラケたいという、彼の見えない本質が大きく影響を与えた。故に身につけられたのである。

 

でなければ、例え神様に特典を貰ったからと言って、知らず知らずのうちに木兎シリーズの1人になってたと言って、こんな特殊能力のようなもの

を身につけられるはずもない。

 

因みに、彼の体力が少ないのはボールの起動予測に体力をごっそり持ってかれるからである。

 

人……超人的な技術を身に付けても、燃費が良くなることはなかったようだ。

 

 

それはそれとして、鷹木は木兎を呼ぶ。

 

目の前でしょんぼりしている木兎も、何かフォローをしてやるかと思い呼んだ、が……こういう時何を言うべきか、何も思いついてない。

 

知らない内に参謀ポジにいるが、参謀ポジの誰かさんのように、チームの方針を進言してきた鷹木だが、コイツはまだタダの1年坊主である。

 

原作通りに進める事で見られるであろう、原作展開が大好きで今でもそれを求めている、だからこそ今までそれを目指して行動している。

 

なんなら原作の舞台に引っ越そうかと、割と本気で思うぐらいには原作を愛しているし、積極的に行動している。

 

種々の事情で梟谷にこそいるが、何時でも部活を辞めて、赤葦に譲る気マンマンである。

 

バレーは好き、木兎も梟谷のメンツも色々置いといて、好き、原作を見る為に必要な事を何だかんだしてきた、彼。

 

今ここで木兎を励まして何とかすれば、取り敢えず良さそうだと、あくまで原作を見る為に鷹木は、呼んだのであった。

 

「──はい、木兎君。今何考えてる?」

 

「……ゴメンなさい」

 

実際にはなってないはずだが、見た感じ3分の1くらいちっさくなってる気がする。

 

「(・・・なんか可愛い)……謝って欲しいんじゃないんだよ。大体なんで俺に言う?俺じゃなくて先輩に言うべきでしょ?」

 

「……はい」

 

「俺はこういうの苦手なの。誰かに本気で叱るとか、まず俺のタイプに合わない。──てか、そもそも俺が怒るのは違うし」

 

「……はい」

 

鼻血が止まってもなお、両鼻にティッシュを詰め、締まらない鼻血面をしている鷹木。

 

普段なら木兎も食いつく要素だが、残念な事に下を向いてるので見えていない。

 

「と、言うわけで一言だけ言わせろ。────バレーをしたら命取られるのか?Yes or No…は分からない「No!」……答えれるのか」

 

「……取られません?」

 

サラッとYes or Noという簡単な英語も出来ないと、馬鹿にしようとしたが、それに反応するくらいには元気なようだ。

 

それが分かったため、鷹木は名言を言うのをやめる事にした。

 

「まぁ、普通はそうだよな。で、後で「誠心誠意」先輩に謝るとして、命取られないのに、この後のプレーでビクビクして失点するとか……分かってるよね?」

 

「お、オォォッス!!」

 

落ち込んだ人に言うべきことなぞ、名言以外に思いつくことも無く、長年かけて調k……教えこんできた関係を利用しての説教に終わった。

 

鷹木自身は対して脅してないつもりだが、普段怒らない人間ほど、怒ると怖いものである。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そんなこんなで1波乱あったが、リベロが他にいなかった為に小見が投入された。

 

お陰で現在のコートメンバーのうち、木兎・木葉・猿代・小見が入っているという、中々なパワープレイをかましている。

 

もっとも最低限の実力は誰もが身につけてるので、大きな隙は中々現れないのだが、どうしても技量・連携の両面で差が出てしまっている。

 

「コッチだー!」

 

「よこせー!」

 

3球目をスパイクで返すために猿代がセットしようとして落としたり

 

「──クッソが!」

 

判断が遅れて木葉のブロックフォローが間に合わなかったり

 

「っし!……え?タッチネットォ!?」

 

焦りまくっている木兎が距離感を間違え触れてしまったり

 

「ォッラァァ!!」

 

「ブヘッ!?!?」

 

木兎がサーブを味方の後頭部に叩き込んだり

 

 

 

散々である。

 

 

何とか小見が拾い上げ続けるおかげで、決定的な差は出来ていないが流れが悪いのは明らかだった。

 

カウント梟谷19ー22イタチ。

 

サーブをレシーブし3球目でしっかり打ち込む。

 

相対するブロッカーがブロックし威力を落とす。

 

レシーブし相手のポジショニングからトスを決める。

 

そうしてスパイクを放つ。

 

そして拾われる。

 

イタチはじっくりと崩すのが目的なのか、梟谷の連携を露骨に崩そうとはせず、各選手の癖を把握するかのようにネットりと繋ぐ。

 

折角鷲尾が流れをスッパリと切ってくれた後だと言うのに、不幸な出来事が起きた為、梟谷は中々流れを呼び込めない。

 

ある時からイタチのスパイカーは、徹底的に木兎と小見を狙い始めた。猿代のブロックはさして脅威にはならない事もあって、スパイクでしっかりと狙える。

 

「──ぅん!!」

 

「…アァ!!──ックソ!!」

 

小見がスパイクを取り切れず失点。

 

クロスが得意な木兎に対して、クロスをタッチラインの前さえ狙えないように閉める。結果甘いストレートに精度の悪いスパイクしか打てない。

 

“打たされている”という初めての感覚に、初めて感じる“屈辱”とも言える所業に、木兎は今、自分が何をすべきか段々わからなくなっていった。

 

ビビるなと言われて、普段通りスパイクを打とうとするとブロックに捕まり、気持ちよく決められない。それどころかドシャットされる。

 

その状況がラリー中に暫し発生し、ついに木兎は発症してしまった。

 

「─────おれ、普段どうやって打ってたっけ?」

 

『ッッ!!!!』

 

 

 

 

カウント梟谷19ー25

 

 

第3セット 勝者イタチ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…う〜ん。流れ悪いねぇ〜」

 

「鷲尾のサーブが決まってからコッチに来ると思ってたんだが、ね」

 

ここまで上から試合を見ていた2人のマネージャーが、第3セットの結果を見て残念そうな顔をする。

 

彼女らだけでなく他の上で見ている人達もまた、空気が重くこんな時に何をすべきかまるで分からなかった。

 

「───そういえば、なんで雪絵は能本の事が好きなんだ?」

 

結果、たまたま姉御の目に入った鷹木に関する話が始まった。恋バナというキュンキュンを生み出す行為。

 

それを白福に出してもらうことで活力にしようと、姉御は興味本位で聞いてみることにした。

 

「ん〜〜ん?えっとね〜…」

 

尚、白福が鷹木を好いている事は周知の事実だったりする。

 

知らないのは鷹木だけであり、木兎でさえ気付いてる節があるとか。

 

 

では、何故白福は『能本鷹木』が好きなのだろうか?

 

 

それは彼が両親を亡くしたときに…つまり中学生の時に遡る。

 

 

 

 

 

ある昼下がりのとある日。

 

中学1年生の白福は普段のルーティーンである、散歩の帰り道を歩いていた。

 

(ふ〜んふ〜んふ〜ん♪)

 

頭の中で軽やかにステップを刻みながら、ニコニコ笑顔で歩くのが彼女。

 

何か良いことが有ろうと無かろうと、彼女は常に笑顔なのである。

 

そんな彼女の目にあるひとりの人物が写った。その人物は苦しそうに胸を押さえている。

 

時間帯がちょうど人が少ない時という事もあり、周りには自分しかいない。

 

もっとも白福は周りに人がいるかどうかなぞ、まるで気にしていなかったが。

 

白福雪絵 彼女は困ってる人を助ける事が大好きな可愛子ちゃんである。

 

「大丈夫ですか〜?」

 

「…あら、ありがとうね」

 

白福が声をかけながら肩を貸す。苦しんでいたのは買い物帰りの主婦のようで、近くには幾つかの買い物袋が落ちていた。

 

「ゴメンなさいねぇ。どうにも夫婦揃って身体が弱くって……」

 

「いえいえ〜。困った時はお互い様ですよ〜。これは私が運びますね〜。お家はどちらですか〜?」

 

助けられた主婦は申し訳なさそうに白福に話すが、当人は迷惑とは思っておらず、寧ろ人助けが出来て少し嬉しそうであった。

 

それから2人は連れ立って歩き出した。女性二人がいたら黙っている事なぞなく。自然と色々な話をした。

 

曰く、主婦には一人っ子の息子がいて、遅まで部活をしているんだとか。

 

曰く、最近夜遅くまで勉強していて、身体が心配だとか。

 

曰く、洗濯やご飯など、家事をかなりやってくれるんだとか。

 

曰く、息子のために手に入れた家がとても大きいだとか。

 

曰く、今の家はオークションでプレゼンにて競り落としたとか。

 

曰く、新築の家の使い勝手を不動産屋に報告する代わりにタダ同然で住めているとか。

 

 

そんなふうに話すこと10数分。

 

 

話に出ていた豪邸に到着した。

 

 

「ふわぁ〜…おっきいですね〜」

 

「外も中も広いからねぇ。掃除だけでくたびれるんだよ」

 

家の大きさに白福は子供らしく、可愛らしい反応をしたのに対して、主婦は大きさゆえの苦労に苦笑いする。

 

正面玄関から入るとキッチンへは遠いとの事で、勝手口から2人は入っていった。

 

扉を指紋認証で開けると、そこには大テーブルと作り置きされているご飯が。

 

部活を頑張っている一人息子か、夫さんのためのものだろう。

 

 

「ありがとうね。ここまで運んでくれて本当に助かったよ。───良かったらなんか食べてくかい?」

 

「───はっ!す、すいません。…………お願いします」

 

美味しそうなご飯を前に、ヨダレを垂らしていた白福。

 

頬を赤く染めて恥ずかしがりながらも、その目はご飯を捉えて逃がさない。

 

2人のちょっと早い食事会は、こうして始まりずっと続くことに……なるはずだった。

 

 

 




1年目終わったら、書きたくて仕方ない3年生編に行きます(笑)

もうそっちばっか書いてますね、ええ。

2年生編も出来次第追加しますんでよろしくです。

遅れましたが、皆さん新年明けましておめでとうございます!

これからもよろしくお願いしますm(_ _)m


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12話


気合のー連投!


2人のちょっと早い食事会は、数ヶ月後にある事件を発生させた。

 

元々これは一人息子の為に用意されていたものだが、それを白福が食べたからと言って、一人息子が食べれない……などではなく。

 

この家は広く、勝手口と正面玄関があるように入口も複数存在している。

 

その上中は広くかつ、複雑な設計になっている。

 

とはいえ、道に迷うくらいで距離が遠すぎて、行くのが不便とかでは無い。

 

それでもトイレに行くのがリビングからだと、5分はかかるのだが極端に遠いという訳では無い。

 

主婦と白福がいつも通り食事会をしていた所、ある人物が普段通り、上半身裸で大テーブルにやってきた。

 

一人息子は風呂上がりは上半身裸なのである。逆だったらエライことである。

 

特段イケメンではなく、特段優しいのでもなく、特段運動が出来る訳でもない。

 

しかし、それでいて誰にでも分け隔てなく接する姿と、頭の良さは知れ渡っており、木兎の被害者としてその名は轟いていた。

 

誰あろう……やつである。

 

能本鷹木なのである。

 

「かーさん……メッシーーとスポっとドリー。あと軽く食べたくなっt…………」

 

「──キャーーーー!?!?」

 

「こら!鷹木!風呂上がりはちゃんと服きなさいって何度も言ったでしょ!?」

 

大テーブルにこんもりと乗った料理を見て固まった鷹木、割と腹筋がついてることに驚きガン見する白福、またこの子は言う事を聞かないと叱る主婦・改め母。

 

そして、こんもりと乗った料理を見た後に、悲鳴に気づいて白福という原作キャラがいることに驚愕する鷹木。

 

これが鷹木と白福の馴れ初めである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最初こそ鷹木も動揺したし、白福もまさか鷹木の家だと思っていなくて、驚きはした。

 

が、そういえば勝手口を使ってたし、表札とか苗字を聞いた事が無かったな、と白福は思い出した。

 

同じ中学とはいえ、普通に仲良く飯を食べる鷹木と白福。

 

その2人を見て母は思った、これはワンチャンあるのでは、と。

 

そんなことを知ってか知らずか、2人はのんびり食事を楽しむ。

 

「んで、白福はいつから俺ん家に入り浸ってたん?」

 

「う〜んと〜…3ヶ月ぐらい前?」

 

「確か、半年前ね」

 

そんな前から!?……まるで気づかんかった、と自身の鈍感具合いに呆れる鷹木。

 

出来る限り関わらないで原作を堪能しようと考えていた彼にとって、寝耳に水どころか寝耳に熱湯の事案。

 

驚いている鷹木をよそに白福は家の鍵である、指紋認証まで登録しているんだとか。

 

なんなら権限の大半を白福が握ってるのである。もっとも料理に関する所だけだが。

 

しかし、鷹木はある事に気づく。そういえば白福、バレー部のマネージャーやってないな、と。

 

(まずい……白福は梟谷のマネージャーで、セリフもそれなりにある。なんとかしないと)

 

部活のマネージャーになるのに、特段条件は無いが、梟谷は強豪校という事もあり、未経験でマネージャーをやるのはかなりキツイはず。

 

(早いうちに経験をしておいた方が、良い───ってか、原作でもそうだったのでは?)

 

そこまで考えて鷹木は、自身の思い込みに気づく。

 

自分は本来ならこの世界にいないはずの人間。だが、木兎がバレーをしないだとか、そんな事はしていない。

 

それどころか何も問題を起こしてないし、寧ろ原作よりも木兎が強くなってるぐらい。

 

だから、鷹木というイレギュラーがいるにしても、さして物語に影響は与えてないと思うし………少なくとも悪くは。

 

「なぁ白福。良かったらバレー部のマネージャーやってみないか?」

 

「え〜?やらないよ〜」

 

 

 

答えは却下。それも即答。

 

 

「バレーって授業とかでもするし、楽しいけど〜〜準備面倒くさくない?」

 

(──否定出来ねぇ)

 

 

「全くもってその通りです」

 

そう言って鷹木は用意されたスポドリ等の飲み物を持って外に出ていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

白福はそれからも鷹木の家に通った。家事を手伝う事もよくあったし、ご飯を食べるだけ食べて帰る日もあれば、友達と一緒に来て勉強をする時もあった。

 

鷹木もバレーをする時間以外はそれに混じって、母子、時には父も含めて仲良く楽しく暮らした。

 

その後に夜遅くまで鷹木は練習をしていた。その練習は多岐にわたり、白福達も遊び半分で手伝うようになった。

 

ある時白福は鷹木にこう聞いた。

 

 

「なんでそんなに地味な事が出来るのか」と。

 

それに鷹木はこう答えた。

 

「木兎を全国に連れていくため」と。

 

また白福は鷹木に尋ねた。

 

「なんで部活は手を抜くのか」と。

 

その問いに鷹木は答えた。

 

「手を抜かないと木兎に拉致られる」と。

 

 

 

白福は思った。鷹木は意味不明だと。それか木兎が謎なんだと。

 

今どき思考回路がしっかり繋がってない人なんているんだなぁ〜と、普段話すことない木兎のイメージ像を完成させていく。

 

 

 

そうして帰ったら白福が家にいるという事が日常となったある日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母が倒れた。

 

 

 

身体が弱いにも関わらず、最近は体の調子が良いと言って鷹木の練習に付き合っていた彼女。

 

ただでさえ大変な家事。

 

ここで家事を普段からやっている作者から一言。

 

家事は慣れていようが、慣れてなかろうが、滅茶苦茶大変である。

 

実際に経験すると、如何に大変かは分かるだろう。

 

話を戻す。

 

鷹木はおかしいとは思っていた。

 

病弱で身体が弱かった母が、最近は“元気過ぎる”と。

 

だが言えなかった。否、母が言わせなかった。

 

親にとって、息子の頑張っている姿ほど見たいものは無い。

 

折角それが見えていると言うのに、何故それの妨害をさせるというのだろうか。

 

 

 

 

しかし、悪い事は重なるもので、父もまた亡くなってしまった。

 

 

母が亡くなった事もあって、今以上に頑張ろうと仕事量を増やした彼は、疲労に体が耐えられず亡くなった。

 

一度に両親の両方を失った悲しみ、それは血の繋がっていない白福であっても辛いものだ。実の息子となれば辛さは比にならない。

 

 

 

葬式場にて受付をしている鷹木に白福が話しかけてきた。

 

ちなみに難しいことや、怪しい親戚だとか、銀行員とかも学校の先生方や友達が全部やってくれている。

 

木兎には頼んでない。いるだけで暑苦しいからである。正確にはちょっと構うだけの元気がないからであるが。

 

 

 

「……大丈夫?」

 

「──何が?…………まぁそりゃ辛いもんは辛いよ。けど、いきなりいなくなったからさ、実感がわかないんだよね」

 

そう言うが言葉の節々に悲しさが現れている。何とかしてあげたい、白福はそう思ったが、何をすればいいか分からなかった。

 

故に───

 

「私の胸で慰めてあげよっか?」

 

「──何言ってんの?」

 

腕を広げてwelcome〜と構える。クラスのマドンナ的存在の白福雪絵にそんな事をすれば、後日何を周りから言われるのやら。

 

「付き合ってからな」

 

「……そか。生活とかは大丈夫なの〜?」

 

「家はタダ同然で買えたらしいし、もう不動産屋への報告もしなくていいって店の人が言ってた。2人ともお金を使うのは控える人種だから、貯金も結構溜まってる。あと、保険とかも降りたから、白福に50年分毎日ご馳走を用意できるぐらいには…貯えがあるよ」

 

「……大金を持つ人って身を滅ぼすらしいよ?」

 

「そんときゃそんときだな」

 

「ハーレムパーティーみたいに、色んな娘を囲うの?」

 

「ハーレムをするだけの精根がないなぁ…」

 

「ちっさそうだもんね」

 

「女の子が言う言葉じゃありませんっ!」

 

珍しく饒舌に普段のように話す鷹木。あまり思い出さないようにしてるのか、目を閉じて台詞を棒読みしているようにも見えた。

 

その姿に白福の心がキュッと締め付けられる。

 

 

子供が大人になるのにかかるお金は公立の場合はおよそ3000万だったり、私立なら1億だったりと、まちまち。

 

神様が毎月問題ないようにしてくれる(多分)と、鷹木は思っているためそれに関してはそれっぽい事を言っておく。

 

50年分と言われても実感のわかない白福は、問題ないという事だけを受け取って次の話をする。

 

「ゴメンなさい」

 

「なんで俺振られてんの」

 

一応付き合えない旨は伝えて置かないとと、腰を90度に曲げる白福。振られた鷹木にしてみれば、なんでやねんと突っ込みたいところ。

 

白福は何とか鷹木を笑わそうと若干躍起になっていた。しかし、下の話に繋がる事だとか、さっきみたいに恋愛の話をしても効果は薄い。

 

「能本ぐらいの「──なんで同情するんだ?」…え?」

 

あーでもない、こうでもないと、慰めの言葉をかけようとする白福に、鷹木は冷えきった言葉を投げかけた。

 

目をぱちくりしている白福を尻目に、鷹木は淡々と受付業務をこなす。

 

目線を合わさず下を向いて話す鷹木。

 

「白福が俺の親にお世話になったのは知ってる。でも、俺の親が白福に構ったのは別に俺に同情して欲しいからじゃない。俺の事を慰めようとしてくれているのは、ありがとう。素直に有難いよ。でも───俺には要らない」

 

語られたのは鷹木の本心。

 

 

「目先が真っ暗になったって、未来が不透明だからって、過去に現実逃避なんかしないさ。“今”何かしなきゃダメなんだ。こう言う時だからこそ、下を向いてられないんだ」

 

そこにあったのは彼なりの決意。

 

「俺がそう思って足を踏み込んでるのに、邪魔はしないでくれ。白福の優しさは嬉しい…けど、それが俺に思い出させるんだ。楽しかった日々を」

 

白福に感謝をしつつも拒絶する。

 

態度に表そうとしたのか、目を覆ってまで拒絶をする。

 

 

 

その日、この言葉以外に二人の間に会話は無かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

数日後、白福は鷹木の元を訪れていた。

 

勝手知ったる我が家のように、指紋で鍵を開けて入っていく。

 

そして彼の姿を外のテニスコートで視認し、息をたっぷり吸ってこう言い放った。

 

 

 

「今日から!アンタの面倒!!私が!!!見る!!!!」

 

 

「・・・・ハァッツ!?!?」

 

 

「もう決めたから!」

 

「イヤイヤイヤッ!どういう風の吹き回しだよ!!」

 

「鷹木は言ったよね?こういう時だからこそ、下を向いてられないって」

 

「言ったけども……」

 

「こうも言ったよね?同情するなって!」

 

「あーー……多分」

 

「だから決めた。同情はしない。その代わりに、下を向かないように、私が手を貸す」

 

「お、おう?」

 

 

ここぞとばかりに畳み掛ける白福。普段のおっとりした口調が、嘘のように掻き消されている。

 

 

この前葬式場で鷹木は言った。

 

“目先が真っ暗になったって、未来が不透明だからって、過去に現実逃避なんかしないさ”

 

“今何かしなきゃダメなんだ。こう言う時だからこそ、下を向いてられないんだ”

 

この言葉は、今まで白福が接してきた人からは、まず聞いたことの無い言葉だった。

 

かなり衝撃だった。

 

自分は決して同情しようとした訳では無い。が、それを同情と捉えられたことは分かる。

 

たが、下を向かないように、という言葉が納得行かなかった。

 

白福は普段、笑顔な時が多い。それは下を向かないようにするためだ。

 

暗い気分になんかなりたくない。その想いが白福に冒頭での脳内鼻歌を生み出している。

 

が、周囲の鷹木以外の人間は大なり小なり暗くなる。

 

白福はその彼らに対して、バブみというか、母性本能をくすぐられる。

 

だから慰めたり励ますことも多いし、そうすることが普通で好きだった。

 

しかし、そこに鷹木が現れた。

 

彼は今まで白福がしてきた事をさせてくれない。

 

その姿を見た白福はカッコいいと思い、凄いとも思った……訳ではなく、目を奪われ、対抗心が宿った。

 

拒絶しているくせに、その声色は人肌を求めているようだったし、その上、鷹木は思い出したくないなどと抜かしたのだ。

 

あの楽しかった日々を忘れる?少なくともそう考えているだと?

 

 

 

巫山戯るな。

 

 

白福にとって、自身の欲求である慰めと、自分との楽しい記憶まで忘れるというのは、到底受け入れられなかった。

 

この男も慰めたい、慰め倒してやりたい。

 

そんな不思議な思いが溢れ出してきて、鷹木に構いたいという気持ちが大きくなった。

 

別にイケメンでもなければ、特別優しいわけでもない。

 

頭は良いが天才ではないし、運動もバレー部の分強いが、木兎には劣る。

 

しかし、彼のその考えに自分には無い、特別な何かを感じた。

 

人は自分にないものを持つ者を羨ましがるが、それは恋にも当てはまる。

 

少なくとも白福はそうだった。

 

中2のある日、白福は気付いた。

 

鷹木ともっと話したいと、もっと一緒に居たいと、強く願っている自分がいることに。

 

 

 

そして自覚した、自分はこの能本鷹木とかいう男が──

 

 

─────好きなんだと─────

 

 

「へぇ〜〜…んじゃあ最初は好意無かったんだ」

 

 

「そうそう…でも、なんか、いつからか一緒にいるのが当たり前になって、他の女子と話してるのを見るのが嫌になったんだよね〜」

 

対して恥じる素振りもなく、懐かしみながら楽しそうに語った白福。気付けば他の男子共も目がうるうるしている。

 

木兎の影響なのか、部員のほぼ全員が感情に敏感になった。それの賜物であろう。

 

「喧嘩とかしたことないのか?」

 

「ん〜〜…あ、中3の時に1回だけあったかな〜あの時は鷹木がなんか意味不明に落ち込んでてね〜。慰めようと思ったんだけど、なんかシャキッとしてない鷹木を見たくなかったから………吹っ飛ばしちゃったんだ〜」

 

 

ぶっ飛ばした時はスカッとしたなぁ〜と、楽しそうに述べる白福を見ながら、姉御は確信した。

 

(鷹木は尻に敷かれるな)

 

 

 

 

「───ひっキショい!…ひっキショい!」

 

「いや、どんなクシャミだよ」

 

「はっ鷹木らしいな」

 

 

「お前ら、試合始めるぞ」

 

「「「オス!!」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

崖っぷちに立たされて食らい付かんとする梟谷と、ここで決めてしまおうと勢いづくイタチ。

 

始まってまず展開されたのは両チームの主砲による撃ち合い。

 

互いに3球目をえぐい効果音と共に振り抜く。

 

時間を取ったことで落ち着けたのか、梟谷チームの動きが噛み合いだしている。

 

それぞれがそれぞれの成すべきことをなし、チーム内に好循環が生み出されている。

 

しかし、相手もさるもので、飯綱掌を中心にギアが数段上がってきている。

 

最初と比べると数センチ高くセットアップしてのアタックは、猿代というテナガザルがいなければ、今頃差がついていた事だろう。

 

 

試合はカウントを見れば梟谷5-5イタチ。

 

序盤から飛ばし合う両チームの熱気は、会場の外にまで届きそうな程である。

 

そうして激突してる中、梟谷の監督がカードを切り始める。

 

ここに来て先輩方だけで試合が行われ始めたのだ。

 

ブロックで開眼しつつある猿代と小見を残し、その他の1年生は全て交代させたのである。

 

本来ならまだまだ木葉を見ていたかった監督だが、流石に“飯綱掌”という怪物と、それに匹敵する怪物集団“井闥山学園”の攻勢を見て、木葉を抜くのが最適解だと判断した。

 

(まさかあそこまで綺麗なセットアップをどこからでもしてくるとは……うちの1年生といい、今年は飛んでもない子が多いな)

 

木兎ともまた“しょぼくと”になったが為に交代していて、戻ってきた先輩リベロに平謝りしている。

 

そしてカウント梟谷10-10イタチの場面になった時、ついに我らが主人公・能本鷹木が満を持して投入された。

 

「おっし…やるだけやるぜぃ!」

 

気合十分で入った鷹木に対して、煽るは疲れ果てて交代する小見。

 

「足引っ張るなよー」

 

「お前は足滑らすなよ?」

 

 

 

つまりリベロ(交代が)である。

 

 

 

 

そう、リベロ(ポジションが)なのである。

 

 

 

 

試合が再開されて鷹木は思った、

 

「取るだけって楽しい!!」と。

 

そこからはまさに鷹木劇場であった。

 

 

 

相手の放った強烈なスパイクを先輩がなんとかあげる。

 

が、取り切れなかったボールは高く後ろへと飛んで行く。

 

ボールの威力・軌道・レシーブから、鷹木がどこに飛びそうかを判断して全速力で駆け出す。

 

中学時代に身につけた、立ち位置やボールの威力で取れるかどうかを判別できる技法。

 

当時は頑張れば取れるボールを取らないように身に付けたものだが、今では体力をごっそり持ってかれる代わりに、どれがアウトで、どれがインかも大体分かる。

 

5割もいけばいいほうだが。

 





もういっちょ!


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13話


ラァストー!


先輩があげ損ねたボールはフェンス近くにまで飛んでいき、それを鷹木がすんでのところで蹴り飛ばす。

 

 

その後フェンスに突っ込んだのはご愛嬌だ。

 

 

ネット近くに飛んできたボールを猿代がアタックする。

 

しかしそれは容易く拾われてしまう。再び相手が強烈なスパイクを放ってきて、それを壁3枚でブロックする。

 

ブロックしたボールはユラユラと落ちていき、コートに着く前に鷹木が今度は拳でかち上げる。

 

何故かフェンスに転がっていく鷹木を尻目に、猿代がアンダーレシーブで相手コートのセッター飯綱掌に取らせた。

 

対する相手は、飯綱掌が渾身のスパイクを放ってきた。誰もいないそこに、フェンスから飛び出した鷹木が、ラインギリギリのボールを左前に弾く。

 

そのボールは普通に先輩方がアタックして返した。ところが次のスパイクが猿代の顔面にストライクでめり込んでしてしまう。

 

弾かれたボールは後ろでびっくりしていた鷹木の所へ。

 

驚いた鷹木はびっくりして手で弾き、たまたま手のひらの硬い部分で捉えたことにより、ボールは相手コートのギリギリ「外」に落ちた。

 

 

『……いぞいぞイタチ!いぞいぞイタチ!!』

 

ワンプレー中に2度もフェンスに突っ込むという離れ業?をかました鷹木だったが、最終的には点を取られてしまった。

 

その事に残念がるギャラリーだが、その中で1人だけ、鷹木のフェンスへのダイブに恐怖を感じている者がいた。

 

誰あろう、天童覚である。

 

「うっひぇーーー!よ〜くあんなこと出来るネ〜〜!」

 

そしてもう1人、鷹木がフェンスに飛び込むだけでなく、フライングする時にさえ怯える者がいた。

 

誰あろう、白福雪絵である。

 

「ん〜〜〜んと、だ、大丈夫かなぁ〜……」

 

 

しかしそんな2人をそれぞれ励ます存在がいた。方や淡々と、もう片方は暑く語る。

 

「中学時代もしていたな」

 

※鷹木は試合に出たくないがために、ワザと飛び込む事が多々ありました。

 

「まぁ鷹木だし、大丈夫だよ!」

 

 

 

そんなこんなで実はカウント梟谷15-10イタチ。

 

マジかよと思わずにはいられない得点差。

 

うち一つ一つのプレーで鷹木が随所にスーパープレイをかましている。

 

 

彼は体を酷使する度に思う。なんで俺はこんなに頑張っているのだろうか、と。

 

 

それは久々のリベロ(と交代するポジション)だからである。

 

それ以上でもそれ以下でもない。

 

 

たったそれだけの事実が、鷹木に自身の実力の限界以上のプレーを体現させていた。

 

たとえリベロになれなくても、その位置に立つことだけで気分が反り返るように上がりに上がる。

 

そうして戦い始めて少し、試合を決定づける瞬間がやって来た。

 

 

 

カウント梟谷18-16イタチ

 

鷹木はこの時自分の調子がかなり良いと思っていた。事実たしかにここまでは良かった。

 

ところがイタチが差をじわじわと詰めてきている。

 

それは飯綱掌がここに来てギアを数段上げてきたからだ。

 

知り合いで、それなりに付き合いのある能本鷹木が、目の前でコートを縦横無尽に動き回っている。

 

そんな姿を見て負けてられないという気持ちが大きくなった。

 

そこは流石は原作キャラと言うべきか、あっという間に成長した。種々の動作が洗練され、トスの高さは明確に高くなった。

 

スパイクを打つ人のギリギリ限界まで上げることで、チーム全体の実力を引き上げる。

 

こうしてイタチが梟谷の背中に次第に追いついてきた。

 

その事に梟谷は焦る。ここまでリードは最大で5点差まで広げていたのだ。それが今やあと少しまで来ている。

 

このままでは追いつき、追い抜かれる。その事が梟谷メンバーの動きを固くした。

 

 

つまり、ギアが数段階上がった飯綱掌の完璧なセットアップの前にずらされてしまったのである。

 

それでも鷹木は止まらない。自分の好調が木兎ではないが伝播している事を実感しているから。

 

点差をつけたし、自分の調子がかなり良いと思っていたから、思い込んでいたから。

 

だから食らい付かんと人一倍以上に体を無我夢中で動かしていた。

 

そもそも今この時点で止まることなど許されない。その事を本能的に理解して、必死に喰らい付かんとしてさえいた。

 

 

 

その結果、「好調」が「焦り」となったのだ。

 

そして現実は非情だ。

 

 

 

再び飯綱掌が高くセットアップする。それにいち早く反応した鷹木が相手スパイカーの利き腕側に立ち、変わらずリードブロックをする。

 

今度は両足・両腕を伸ばしてではなく、右手だけを伸ばしてブロックを試みる。足りない高さを少しでも補う。当たらなくても良い。後ろには信頼できるリベロがいる。

 

そう考えて鷹木は動いていた。………本人の中では。

 

この時の鷹木は間違いなく焦っていた。普段ならこんなことは絶対にしない。そもそも試合中に鷹木はここまで思考しながら動かないし、動けない。

 

中学の頃の一件からなんでも理解しようとするのをやめた。考えてから動くのではなく、考えながら少しの思考をする。それが今の鷹木のプレースタイルだ。

 

しかしそれでも相手のスパイクを止めることは出来ず、鷹木の指の上から叩きつけられたボールは「バチィッッ!!」と鈍い音がして後方へ。

 

この時1人だけ異変に気付いていた者がいた。

 

「ダメ!!」

 

思わず身を乗り出そうとしたところを姉御に止められる。それはそうだ、ここは二階席。飛び降りる事は出来ても、試合中にプレーの邪魔をしてはならない。

 

それでも、どうしても今すぐに彼女は鷹木の元に行きたかった。強く握られた手摺は悲鳴を上げるほどに力が入っている。しかしその思いは叶わない。

 

後方へ飛んでいったボールはキャプテンがしっかりと時間を取る為に、明らかに焦っているチーム全体を落ち着かせる為に、彼にしては珍しく高く、高く上げた。

 

普段よりも明らかに高く上げた時のキャプテンと目があった鷹木は、その意味を不思議と一瞬で汲み取ることができた。

 

それが何故なのかは分からない。ただ、焦りが消えて思考が、視界がクリアになるような予感がした。

 

するとコートメンバーが、それぞれの自身の場所、仲間の立ち位置、相手の位置、ボールの位置を見ずに見えた気がした。

 

迫るイタチによって目先の一点と、相手の勢いに呑まれていたチームが、にわかに活気付く。

 

そこから鷹木は、メンバーはただ無心に体をなんとなくで、こうしたら良さそう、という感じで動かした。

 

不思議とそれぞれの考えが伝わり、理解される。

 

この時、今、1番良いのが打てるのが誰かも雰囲気で伝わる。それを受けて鷹木は自分の助走路を導き出し、ボールを呼び、セットアップに最適な位置と確実に点が取れるであろうコースを見つける。

 

打ち込むべきコースへ打つ為に、相手のブロックを避ける為に、少し斜めに高く跳躍する。体をピンと張り、グッと力を込める。

 

(完・璧!!!!)

 

今まで練習で一度も出来なかった、斜め飛びでの全力スパイク。

 

練習では一度も成功してない打ち方。そもそも普通のスパイクでさえ、確率は低い。

 

それなのに、疲労も痛みも雑念も無い、全てがクリアな状態で打ち込まれたそのボールは狙った所に一寸のズレもなく決まった。

 

地面に降り立つと同時に湧き上がる歓声。駆け寄ってくる仲間。盛り上がるベンチ。その中で唯一1人だけ、白福だけが違う表情をしていた。

 

その表情と視線に気付いた鷹木は1度は疑問符を浮かべる。しかしその視線の先を見ると、突如、鷹木に激痛が走った。その強烈な痛みに鷹木は呻き声を上げながら倒れ込む。

 

歓声が無くなり、寄って来る仲間たちの顔からも笑顔が消え、ベンチもまた不安げになる。

 

「!爪が……!!」

 

相手のスパイクを無理してブロックしようと右手を伸ばした時に響いたあの鈍い音。

 

アドレナリンのせいで気づかなかったが、あの時もうすでに鷹木の爪は剥がれていた。

 

辺りを見渡せば血がまばらに落ちてる。極限まで集中力が高まっていたからか、あの瞬間に誰も気づかなかったのだ。

 

ワンタッチの時に鷹木は下から、ボールは斜め上から、それぞれぶつかりあった。

 

その結果がこれである。

 

いつの間にか下にやってきた白福と雀田が鷹木を治療室へと連れていく。

 

よりにもよって試合終盤のこの時に、流れを掴み取った男が、絶好調でチームを引っ張っていた鷹木が、このタイミングで離脱。

 

それの影響力は言うまでもない。ただでさえ流れを持ってかれ始めていただけに、ちょうど今取り返しただけに、流れを取り戻すのはほぼ不可能だ。

 

 

そう、あくまで「ほぼ」である。

 

 

何せこういう時に力を発揮するのが、発揮するものこそが、主要キャラであり、木兎なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それはまだ先の話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、木兎と先輩方だけで試合が行われ、食い下がらんとしたが及ばず。

 

 

 

最終ゲームカウント 梟谷19-25イタチ

 

第1セット 梟谷 26-28 〇

第2セット 梟谷 25-20

第3セット 梟谷 19-25 〇

第4セット 梟谷 19-25 〇

 

東京都 大会 優勝 井闥山学園

 

 

 

「いや〜〜〜いぃ戦いだったネェ〜〜…わざわざ来た甲斐があったよ。さ、ウシワカ君神奈川に戻ろうよ。東京入りは十分でショ?」

 

「…………そうだな」

 

彼らは後日神奈川県で行われる全国大会に出る為にやってきたのだ。つまり、本来なら東京は通過する場所である。

 

寄り道をして激闘を見届けた者達は1人……また1人と、帰って行く。これから彼らは全国からやって来る強豪達と練習試合をすることになっている。

 

先にやって2人で来た為、明日にならないとチーム全体が集まらないから、今日は自主トレがメイン。

 

「……どこかに入れてもらうとしよう」

 

「・・・・え?」

 

だがそれで満足なぞ出来るわけがない。あの試合を見せられたら、バレー馬鹿のこの者が我慢なぞ不可能な話だった。

 

彼ら以外にも見て刺激を受けた者達が自然と一つの場所に集まり、バレーを夜通しするのは、また別の話。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

表彰式が行われている体育館の外、廊下にて鷹木は白福の手当を受けていた。

 

 

「あいった!!──爪と骨が殺られちまったなぁ……カルシウムに嫌われたみたいだなってか?」

 

「……以外に元気なんだね〜」

 

「まぁね。試合はまだ終わってないし、ガチガチに固めれば何とかn「ならないよ」……え?」

 

「片付けの音が聞こえないの〜?それにこれ相当酷い怪我だよ〜………ホントに…酷い…怪我」

 

耳をすませば聞こえてくる片付けの音。それはつまり、梟谷が敗北した事を意味する。

 

「し、白福?ま、負けたって言うのか?───ンな馬鹿な」

 

「……まさか、間に合うなら出ようとか、思ってないよね?」

 

「そりゃ出るに「やめてッ」──し、白福雪絵さんっ!?」

 

目の前の男に、自ら傷つけられに行く男に、いつまでも気づきそうにない男に、白福は限界だった。

 

「……離さないから」

 

「へっ?」

 

「鷹木が言うまで話さないから」

 

“抱きしめて”離さないではなく、“話さない”。そう言って指を触れないように避けて抱きつく白福。

 

「…えと、試合に治るまで出ません?」

 

「…………それと?」

 

「ここまでして分からないの?じゃあキスとかもっと先のことすれば………分かるの?」

 

「ホァッ!?!?!?」

 

顔真っ赤に染めながら呟いた言葉。それが意味するのはたった一つ。その意味が分かった鷹木は軽く思考が止まった。

 

「もう嫌なの。後ろで助けるぐらいじゃ。私は……あなたの隣に立ちたい……!!」

 

「っ……!!」

 

鷹木とて、鈍感なだけで馬鹿ではない。白福から告げられた言葉を正確に読み取った。

 

故に……

 

 

 

 

「か、考えさせてください………」

 

 

 

 

チキッた。

 

 

 

後日、2人が仲良く同棲を始めるのは別の話。

 

 

 

もっとも白福は鷹木の家に前から良く行ってた為、さして変わらなかったそうだが。

 

 

尚、周囲の人間がコーヒーをブラックで飲むようになるのもご愛嬌だ。

  

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

試合か終わって数日後、木葉が鷹木を呼び出した。

 

空気はどこか重く、普段のパッパラパー感が無くなっている。

 

到底木葉には似合わない雰囲気である。

 

そんな重い空気の中木葉は口を開いた。

 

「俺さ・・・・・・・・バレー・・・・・辞めようかなって、思ってんだ」

 

「ホァっ!?!?!?」

 

「木兎はスパイク、鷲尾はサーブ、小見はレシーブ、猿代はブロック、鷹木はボールの落ちる場所を見分けれるし・・・・・・・なのに俺にはなにもない」

 

自嘲するかのように自身のことを卑下して話す木葉。その姿はとても痛々しい印象を与える。

 

そんな木葉を見て鷹木は思った。

 

 

(ヤッベェェェェッッッ!!!)

 

こんな展開聞いてないと。最近は部活に勉強に彼女にと、青春を謳歌している鷹木。

 

幸せの絶頂に辿り着いたとも取れる今の鷹木に、真反対の内容と雰囲気を放つ木葉。

 

そこで鷹木はとりあえず、なんかそれっぽい事を言ってみる事にした。

 

木兎には言えなかったが、今なら、今この時なら灰色の脳みそかが役に立ちそうだと。

 

「何か一つ秀でてなきゃだめって………誰が決めたんだ?ていうか、なんでそんな事分かったんだ?これが分かるって、木葉には観察眼があるって事になるんじゃないのか?」

 

「観察眼?」

 

部員の特技なんぞ、全部把握出来てるわけじゃない。

 

鷲尾や猿代なんかはサーブとブロックで割りとわかりやすい。

 

が、まして鷹木の特技は普通分かるものじゃない………中学の後輩にはバレていたかもしれないが。

 

「そうそう木葉はさ、周りの誰も気付いてない事に気づいたわけだし、突然の起用にも答えられてじゃん。あんな風に連携を先輩方と取れるって、俺には無理だよ」

 

「………そうか?」

 

落ち込む人間ってのは大なり小なり、周りと比べる事で発生するものだ。

 

そう言う時は「自分は自分」と線引きする事が大事…………な気がした鷹木。

 

あとは自分らしく感情を表にだすとか。

 

と言うわけで、鷹木はただひたすらに木葉を褒めちぎった。もうひたすら褒めまくった。

 

「木葉は潤滑油なんだよ!ないと困るくらい大事な!」

 

「木葉がいると楽しいんだよ!ないと困るくらい大事な!」

 

「木葉はイケメンだし、カッコいいし!バレー部の花なんだよ!」

 

「木葉にはすごい観察眼があるんだ!それはホントに素晴らしいものが!」

 

「木葉にしか頼めないんだよ!木兎とか、いじりとか、お笑いとか、残念イケメンとかは!」

 

 

 

「お前馬鹿にしてんだろ!?」

 

「お、元気になった?」

 

 

無理だった。相手が木葉である以上、鷹木はどうしてもいじり体質へと変貌してしまうらしい。

 

「なったと言うかヨォーー…なんかアホらしくなってきたわ。まぁ、俺は俺らしくやるしかないか?」

 

「おう!是非これからも我らのお笑い担当でいてくれ!」

 

「いるかぁ!!」

 

こうしてアッサリと木葉は退部を撤回した。

 

これが俗に言うチョロインである。

 





次回は一気に飛んで3年生にしちゃおうと考えてます笑


ではではまたこんどー


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高校3年生(原作開始)
14話


はっじまるよー


キュッキュッ!と、室内競技特有の音が響く体育館。寒い外とは異なり室内というだけ暖かい中で、中学生たちがアップをしている。

 

初めてレギュラーにやった子や、再び体育館に来た子、勝ちを疑わない子、緊張しまくっている子などなど……それ以外にも様々な様相の「子」がいる。

 

 

 

そう、「者」ではなく「子」である。

 

そんなまだまだ小さく実力が付きつつある、「子」を謂わば発展途上の彼等を、値踏みするかのように、または楽しみに見ている「者」達が観客席にいた。

 

 

「……………」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

「「…………………………………………………………」」

 

「──息止めてるの〜?」

 

1人はバレー界1の仏頂面と名高い男・牛島若利。

 

「……常に話さなくてはならないのか?」

 

「いや〜そういう事じゃなくてさ〜……鷹木ぃ〜何とか言ってくれない〜?」

 

「……コイツが話さないのが悪い」

 

もう1人は梟谷の元操縦士 兼 現謎の異名を持つ男・能本鷹木。

 

 

全国大会で幾度となく激闘を繰り広げている、白鳥沢と梟谷の要の2人である。

 

方や全国三本指に数えられるスパイカーと、方や全国何本の指にも数えられないミドルブロッカーである。

 

攻撃の花形………競技の花形であるスパイクを打つ彼は全国にその名を轟かせてるのに対して、もう1人は彼の本拠地東京でも知らない者がいる。

 

 

そんな彼らが何故一緒に居るのか、そして何故彼女まで引き連れて居るのか。

 

 

それは前述のに関しては「牛島若利」という男だからである。

 

 

牛島若利、彼は己の実力に絶対的自信とプライドを持っており、弱者等に代表される「興味の無い」モノに関しては、ガチで興味を持た無い男だ。

 

ストイックな性格で、どんな時も大好きなバレーをやる事を考え、時間を見つけてはバレーをやる、バレー馬鹿である。

 

その一方で相手の皮肉を真に受けたり、真面目過ぎて冗談が通じないといった、天然の権化?手本?のような面がある。

 

また、チーム1のくせ者・天童の適当な発言にも逐一反応するなど、呆れるほどに律儀である。

 

強者には彼なりに敬意を払っているそうだが、話し方がどこか「上から目線」で対等な存在としては見ていない、と良く思われる。

 

もっとも、本人は完全に無自覚なのだが。実力を認めている強選手に対しても、あくまで「優秀な選手」として評価しており、ライバルとは考えていない。

 

これは木兎光太郎に対してもそうであり、負ける事や実力が抜かれる事なぞ、微塵も考えていない。

 

しかし、そんな牛島若利が中学生の時、彼は自身のスパイクを尽く拾った「能本鷹木」に出会う。

 

今まで何度も敵を力で「正面」から捩じ伏せてきた牛島若利にとって、能本鷹木の存在は彼に少なくない衝撃を与えた。

 

取れそうにないコースに打っていれば、鷹木は取らなかった事だろう。しかし、牛島は鷹木のド正面から捩じ伏せようとした。

 

その結果、取らなきゃおかしいレベルのコースで、取れたらおかしいレベルの威力で、スパイクやサーブが鷹木を狙い撃ちにした。

 

全力の一振を上げられ「間違えた」と、「何故俺ばかり」と、冷や汗かきまくっていた鷹木を、獲物を見つけたかのように彼は喜んだ。

 

その後の試合でも対戦する時は徹底的に狙い続け、知らず知らずのうちに鷹木を鬼強化していたのである。

 

そのせい(おかげ)で、鷹木は鷲尾のサーブを取りまくるようになったのだが、それはまた別の話。

 

牛島は強い鷹木がポジションが違うこともあってか、鷹木の事を気に入り次対戦した時に勧誘しようとすら思っていた。

 

が、次対戦した時に鷹木が参戦してこなかった為、鷹木は彼の「優秀な選手」枠から外れたので、それは実現しなかった。

 

ところが高一のとある大会で彼は復活どころか、1歩も2歩も成長したかのような、そんな活躍をして見せた。

 

そうして知らないうちに再び彼の「優秀な選手」枠に入った鷹木に、彼は言った。

 

 

     「何故ここ(白鳥沢)に来ない」と。

 

 

言われた鷹木は正に「鳩に豆鉄砲」のような顔をしていたそうな。

 

 

 

そんなわけで高一のある大会以来、彼等は良く連絡を取り合うようになった。

 

頻度で言えば、牛島に鷹木の妻が嫉妬するくらいである。

 

 

「むぅ〜〜〜〜〜」

 

「──でさぁ…木兎の奴と来たら──」

 

「むぅ〜〜〜〜!」

 

「──今度そっちの練習に行こうと思っててさ〜〜」

 

「むぅ〜〜〜〜〜!!!!」

 

「───ん?雪絵?ど、どうし───!!!!ツーツーツーツー……」

 

 

この日以来鷹木は電話を10分以内と決められた。

 

 

 

 

 

そして何故彼女まで引き連れて居るのか。

 

 

それは梟谷の不思議な制度の存在である。

 

 

 

「木兎〜、俺 辞めるわ」

 

授業が終わり木兎・木葉・鷹木らで揃って部室向かっていた時。

 

学校という名の牢獄から解放される、放課後の時間になって、校内が俄に活気付いている時に。

 

ちょうど近道になる、下級生の教室を通って向かってるその時に。

 

喧騒に消えるような静かな声で、主人公・能本鷹木は突如発した。

 

「…ハイィィッッ!?!?」

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイ「オイオイうるさいぞ木葉」オイオイ…!!!」

 

途端に騒ぎ出す元気印の二人組。

 

いくら鷹木がやる気がない事に定評があるとは言え、バレーが好きだから辞めるはずがないと思ってるし、

 

なんなら終身一緒にやると思ってる木兎には、寝耳に水もいいとこである。

 

木葉に至っては退部を説得してきた鷹木が、突然言うのだから焦るのも当然だ。

 

「どうかしたんですか?」

 

そんな爆竹並みにギャーギャー言ってる2人に話しかけたのは赤葦。

 

入学当初いきなり鷹木に「木兎操縦士」なるものを認定された男である。

 

綺麗なワッペンに書かれた言葉を見て、?を浮かべつつ受け取った事を後悔している彼。

 

面倒臭い先輩の扱いが上手くなると、バレーも上手くなると、ボールの扱いが良くなると言われて、信じちゃったピュアボーイでもある。

 

「「聞いてくれよ赤葦!!!鷹木g」ーーーー!で、「こなたばなーーー!!」「辞めるt」なまさまら!!!「ーーーーー!!!」

 

「…………」

 

 

「「────ってなわけなんだよ!!!!!!」」

 

 

常人どころか、聖徳太子でも不可能なぐらいわちゃわちゃ叫ぶ元気印の二人組。

 

赤葦も正直言って何をいってるかは、さっぱり分からない。

 

が、2人が騒いでるのに対して、鷹木は落ち着き払っている。

 

そこから察するに、鷹木が言った事が原因であろう。

 

そして、ここまで騒ぐという事は、それだけ衝撃的な事だということ。

 

そこまで考えて赤葦は推測を元に発言する。

 

「もしかして、鷹木さんが辞めるって言ったんですか?」

 

「「そうなんだよ!!!!」」

 

そしてそれは見事に正解であったが、その瞬間に元気印の二人組に耳元で叫ばれる。

 

赤葦は梟谷に来てからというもの、耳を毎日「キィーン」とされ、毎日のように叫ばれながら推測をしている。

 

お陰でだいぶ当てられるようになったし、セッターとしての技量も上がった気がする。

 

 

バレーにおいて、司令塔であるセッターには高い思考力が求められる。それも正確なだけでなく、高速でなければならない。

 

その世界中のセッターの誰もが羨むような教育環境にいる赤葦は、このポジションを変えたいと思わなくなっていたりする。

 

 

とはいえ、高速で思考するのは疲れると思いながら、この環境がバレー中に役立ってる事に半ば諦めながら、赤葦は鷹木に聞こうとして──

 

「自主練を辞めるって事か!?」

 

「違う」

 

いつもなんだかんだ鷹木は付き合ってあげてます。

 

「こ、この後の練習に出るのを辞めるって事だよな!?」

 

「違う」

 

サボることも有りません。

 

「手を抜くのを辞めるって事か!?」

 

「違う」

 

手を抜くのがもはや生き甲斐です。

 

「ぽ!ポジションだ!ポジションを変えたいって事だよな!?」

 

「違う」

 

もう彼はリベロに成れない事を諦めてます。

 

「俺らの面倒を見るのを辞めるって事か!?」

 

「そうかも?」

 

「──見捨てるってのか!?嘘だよなぁ!?!?」

 

「うーん……」

 

「マネチャンズ・ファンクラブを抜ける気か!?」

 

「それはない」

 

梟谷グループのマネージャーの親衛隊のことで、鷹木の会員番号は1、つまり創設者である。

 

因みに0は何故か白福雪絵である。

 

「ま、まさか……学校を辞めるのか!?学費が無いのか!?出すぞ!!!」

 

「違う」

 

 

 

 

流石にそろそろ騒ぐのを辞めさせないと、周りからの視線に耐えられなくなった赤葦が言った一言。

 

「先輩方、別に鷹木さんは部活を辞めるなんて、一言も──」

 

 

それが答えだった。

 

「あ、それ」

 

 

 

その瞬間、周囲を静寂が包んだ。

 

「「どーいう事だ!?!?鷹木ィィィィ!!!!」」

 

抱きついて説明を求めてくる二人組。重いし、何より制服が伸びる。

 

そう判断して赤葦がマスコット化してる2人の首を掴んでヒョイと持ち上げる。

 

「そういうわけだから、白福と一緒に北陸観光してくるわ。先生方には許可もらってるから安心しといて」

 

「出来るかぁ!!ーーーそ、そうだ!学校出ないとソツギョー出来ないんだぞ!?」

 

「そ、そうだそうだ!学校を長期間休んだら、シュッセキニッスーが……う!ウンタラカンタラなんだぞ!!!」

 

いまだにマスコット化している2人を吊し上げながら、赤葦も気になったので聞いてみる。

 

「……その辺は大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫だぞ。俺、成績優秀者だから。知らないか?学費全額免除制度ってやつ」

 

「確か、部活か勉強で凄い成績をした人がなれるやつでしたっけ?」

 

「そうそれ。俺は全国常連のレギュラーで、かつ、勉強でも全国模試5回連続トップ50入りしてんのよ」

 

そう、入学式で説明されたあの学費全額免除制度。

 

あれはどうも片方だけ、つまり部活か勉強を達成した時の褒賞なんだと。

 

で、両方達成すると学校への登校が自由になる。

 

行かなくなるなら学費を払う理由もないだろ、との事。

 

だから、年中休みになるってわけである。

 

これで成績が下がったら、目も当てられないが。

 

因みに、白福は先生方を論破したとか、してないとか、知らず知らずのうちに一緒に行くことになっていたらしい。

 

北に行くと行った翌日に先生方を仕留めたとか、ナントカカントカ。

 

どうやったのかは明かされてないが、愛の力とだけ言っておこう。

 

そこまで説明すると赤葦は理解できたようで、うるさい二人組の事を任せて下さいと、頼もしい事を言う。

 

赤葦京治。彼は能本鷹木が大好きなのである。

 

 

 

そう言うわけで、鷹木は白福とだいぶ早い新婚旅行に向かった。

 

 

「そ〜言えばぁ〜。なんで白鳥沢に行くの〜?折角なら海外とか選択肢に無かったの〜?」

 

「それも考えたんだけどねぇ…。英語習得のためにもそうしよっかなって思ったんだけど、シンプルに海外じゃ通用しない気がしてさ」

 

「ふ〜ん。……じゃあ実力が付いたら行くの〜?」

 

「そうだね。卒業したらそうするつもり。勿論、雪絵にも来て「行くよ〜?」…だよね。だから頑張んなきゃ」

 

「あ……てか、2週間後授業参観日じゃなかった?木兎大丈夫かなぁ〜〜」

 

「………まぁ、先生にわかる人は右手、分からない人は左手を上げさせるように伝えてあるから………大丈夫だと信じたい、な・・・・不安になってきた」

 

 

どんな時も木兎達のフォローを欠かさない、それが能本鷹木の根幹である。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あ、俺飲み物買いに行くけど、いる?」

 

「……ハヤシライス」

 

「カップルジュース〜!」

 

今の彼は木兎よりも原作だったが。

 

 

 

 

「学校の名前に乗っかってんじゃねえよ」

 

「すっすいませーーん!!」

 

先輩に怯えながら駆け抜けていく後輩3人。

 

怯えさせている元凶の先輩。

 

同学年だけどビビりまくってる身も心も小さい子。

 

そして先輩と思われる者に怯えながら、駆け抜けていく3人組を見て、可哀想に思う鷹木。

 

原作キャラの中心オブ中心を見れた事に、若干感動しながらも鷹木は平然と飲み物を買う列に並んだ。

 

 

「体調管理もできない──」

「あのーすいません。ハヤシライスってここ売ってますかね?」

「え?いやぁー流石にそれは……」

 

「なんだとぉ!?」

「そうですか…んじゃあカップルジュースとかは有りそうですね」

「有りませんよ!?」

 

「思い出作り───」

「勝ちに来たに決まってる!!」

「東北だと品揃え結構違うんですなぁ」

「いや、東北以外も同じだと思いますけど…」

 

「随分簡単に言うじゃねえか」

「結構大変なんですけどね?目についた自販機は写真撮ってるんですよ。………ほら」

「うおっ!?凄い…東京ってこんな羽が生えるやつがあるんですか!?いーなー俺も飛んでみたいです」

「俺は飛べる!」

 

「いっぱい試合するんだ!俺達は!!」

「あ!このほうじ茶とか、ここのオススメですよ。なんか配合が凄いらしくて、いっぱいどうです?

「おー!ありがとうございます!……ふぅ〜〜…なんか、旅行先の旅館みたいな味ですねぇ。リラックス出来ますよ、これ」

「…勝ってコートに立つのはこの俺だ…!」

 

 

盛り上がってちっとも見聞き出来なかったようだが。

 

邂逅に失敗した事に残念がりながら、買った飲み物を持って鷹木は戻って行った。

 

 

戻って渡されたものを見て眉毛をピクリと動かした牛島と、ありがと〜と言って受け取る白福。

 

面白そうな子はいたかと聞いた鷹木だったが、彼らの眼鏡にかなう者は居なかったようだ。

 

「…………特に見当たらないな」

 

「可愛い子ならいたぞ?「……………」  痛たたたた!!!」

 

「ヨ〜シヨ〜シ〜…痛かったね〜〜」

 

「グスン。痛かったでず」

 

「………仲良しだな」

 

「「・・・違うよ?」」

 

「?」

 

「「夫婦だよ♪」」

 

「…………」

 

 

そんなフワフワした空気感だったが、眼下で試合を行なっているある1人の人物の覇気で、その空気が一変する。

 

 

「まだ、負けてないよ?」

 

「「!!」」

 

その声の主は小さなオレンジの髪の子であった。鋭くそして大きく見開かれた眼光は、恐ろしさを滲ませるものだった。

 

その後、その子はセッターのトスミスをカバーするかのように、反対側へ高速で駆け抜けていき、見事な「ブロード」をしてみせた。

 

アウトとなり負けた彼らだが、その子の身体能力と勝利への執着という、強烈な印象を残した。

 

「……いたじゃん。面白そうなの」

 

「………敗者に興味はない」

 

「可愛いのにギャップあるねぇ〜」

 

「お、おれは!?俺はギャップ無いのか!?雪絵!!」

 

「う〜〜ん?鷹木はそんなのなくてもチョ〜〜カッコいいよ〜〜?」

 

「聞いたか若利!雪絵がカッコいいって!」

 

「………いつも言っているな」

 

「お前にか!?」

 

「なわけないじゃ〜〜ん」

 

「…………そろそろバレーしをしに行くぞ」

 

「「はーい」」

 

折角バレーの試合を見に来たのだが、最後まで観るつもりはなく、白鳥沢の体育館で普段通り練習をしに向かった。

 

 

そんなこんなで色んな試合を見ていた3人組を、知ってか知らずか、見えるような場所から試合を見ている黒ジャージの者達がいた。

 

 

「コート上の王様か」

 

「高校に上がってきたら厄介な敵になりそうだな」

 

「あのチビも楽しみっすね」

 

彼らもまたそれぞれの思いを胸に抱きながら、体育館を去って行った。

 

 

 

 

遂に、原作が動き出した瞬間だった。




なんか書きたい衝動を抑えられなくて


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15話

諸事情で期間が恐ろしく空いた為の前書きです。


鷹木と白福が白鳥沢に行ってた。(終わり)


 

久々に感じる都会の空気を吸いながら、1ヶ月と少しの新婚旅行から鷹木と白福は帰ってきた。

 

本当はもっと居ても良かったのだが、バレーはあくまでチーム戦。個人の技術だけを伸ばし続けても、連携が出来ないと本当に強くなったとは言えない。

 

白鳥沢の監督はそれこそ個人技を重要視しているが、鷹木としてはやはり個人技よりも連携技の方が大事であった。

 

もっとも、このままだと伸び続ける木兎の実力に匹敵出来ないから、個人技を鍛えるために白鳥沢に行ったのだ。

 

 

 

「──決して(原作を)見たかったからだけでは無い。うん」

 

「なんか言った〜?」

 

俺が1人頷いていると、不審に思った女性が覗いてくる。俺の隣を歩くのは、当然のように白福である。にしても、アニメで見た時もそうだったが、リアルになるととんでもない美人だよな。

 

健康的な肌色に、スラットした手足で、出るとこは出ているプロポーション。制服を着ている今はハッキリ分からないが、ラフな格好になると破壊力は凄まじいの一言に尽きる。

 

唯一の欠点としては、暴飲暴食ってところだろうか。だが、彼女の場合はそれすらも魅力に見える。

 

部活をゴリゴリにしている人間は、自然と食べる量が増える。この時彼氏だけしか沢山食べないとなるよりも、彼女も一緒になって沢山食べてくれた方が精神的に食べやすい。

 

見られながら食べるよりも、一緒に食べる方が何かと楽しいしな。

 

あの細身のどこにあれだけの量が入っていくのかは、分からないが特に問題では無いのだろう。もしかしたら、どこぞのガールズバンドのようにカロリーとかを送ってるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

(相変わらずカッコイイねぇ〜…)

 

横目で盗み見ながら私はそう心の中で呟く。隣の男は私の唯一無二の彼氏・能本鷹木。体の大きさに合う、イケメンではないが小さく整った顔と、白鳥沢に行ったことで付いた(強制)、逞しい筋肉。

 

スポーツ選手にしてはやや細身な彼だが、その実、体の中にはぎっしりと筋肉が詰まっている。なんせこの前聞いた時、体脂肪率が1桁だったのだ。

 

色々とおかしい。いや、スポーツ選手としては普通なのかもしれないけど〜…。元々ここまで体脂肪率が低かった訳では無いのだ。良くも悪くも技術でカバーする鷹木は、体脂肪率や筋肉量に関してズボラで、適当だった。

 

それが白鳥沢に行ってから、練習の合間に筋トレするようになったのだ。なんでも「力をパワーに」とかなんとか。私としてはマッスルよりかは、細マッスルが好きなんだけど〜……これはこれでアリなんだね。筋トレを勧めた牛若に感謝しなきゃ。

 

 

 

いい彼女(彼氏)を持ったなぁ、と考えながら、彼らは本拠地・梟谷へ向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

「「ただいま戻りましたァ〜〜」」

 

「おぇーーい!」「おかえりー!」「いよ!ご両人!」「……待ってたぞ」「タァカァキィー!」「神だ……」「助かった……」「ッッッッィィィィイイイイヨッシャアアアアァァァァ!!!!」「コンニャク根性!」

 

 

 

俺らが体育館に入ると出るわ出るわ歓迎の言葉。皆笑顔で寄ってきてくれて嬉しいゾ。……なんだ最後の。

 

 

 

 

なんか1つおかしいのが聞こえたが、皆気にしてないしきっと空耳なんだろう。そう思いながら俺が手荒い祝福をされてると、涙をほろりしている赤葦が。

 

 

 

 

 

……うん?───木兎だな。あとは任せとけ。

 

 

 

 

背中をバシバシと叩かれて、今だに痛いと思いながら練習が始まった。今日帰ってきた事もあって、監督達からは少し休めと言われたが、久々に皆とやるのもあってか、不思議と身体が軽い。

 

長距離移動したし、筋トレもかなりしてきたから、嬉しい誤算だ。白鳥沢に行って、原作を追体験?みたいな事をしてたある日、牛若に言われたのだ。

 

「ただのスポンジよりも、鍛えられた盾の方が強い」と。

 

そんなわけで筋肉を付けたのだが、重くなるどころか非常に動きやすい。加えてレシーブで後ろに転びながら取ることが中心の俺が、そうせずとも牛若のスパイクを取れるようになったのだ。

 

元々派手に動くための受け身で、体力の燃費も良かったやり方なんだが、素早い攻撃をするかどうかは関係なく、レシーブした後にすぐ動けた方が良いのは間違いなかったな。

 

牛若に感謝しなくては。

 

まぁ、向こうもレシーブが急激に成長したけどナ。おかしいな〜〜アイツ、レシーブは下手なイメージがあったのになぁ〜。原作でレシーブほぼしてなかったと思うんだけど……オカシイナア。

 

てか、レシーブしまくったせいで牛若のスパイクを鬼強化してしまった……。俺もかなりレシーブ上手くなったけどさ、俺の成長幅がノミのように感じられてしまう。

 

ウチには木兎がいるし?なんとかなる。うん。それにウチは木兎を引っ張るチームだ。素の力で勝てなくても、連携で勝てば良い。

 

 

 

 

 

 

勝てるかな……。

 

 

 

 

 

 

「──いやぁー久々だなぁ。鷹木がここにいるのって」

 

「だな。で、有意義に過ごせたのか?コチトラさらにユーティリティに溢れてるぞ」

 

そうして時間が進んで練習終わりの片付け中。各々素早く片付けている中、掃除道具を持ちながら猿杙大和と木葉秋紀がやってきた。

 

 

ちなみに、猿杙の最近の悩みは、笑っていないのに「笑うな」と言われる事だとか。まぁ、黒髪の猫っ毛で常に口角が上がってるし、しょうがないんだろうけど。だから鷲尾が教わろうとしたわけで。

 

そしてもう1人は我らが「からかわれ役」にして、いじられ界の頂点に座る者であり、その座に甘んじて決して動こうとしない軟弱者、木葉秋紀である。

 

 

 

どうでもいいな、これ。

 

 

 

「……黙って聞いてりゃあ好き勝手いいやがって」

 

「「ッ!?あの木葉が冷静だと!?」」

 

「鷹木はともかくなんでサルまで驚く」

 

「そりゃあ……お前だから」

 

「そんな場合じゃないだろう?───アレ、なんとかしないと不味いだろうが」

 

珍しくツッコミをしてこない木葉が、持ち前の広い視野で気付いて俺らに告げたのは、暗がりに座り込む謎のミミズクだった。

 

全く掃除時間だと言うのに掃除しないとは。それでも3年生か?お?

 

それともあれか?今日の練習終わっちゃってサミシィーとかか?

 

はたまた自分で言うのはあれだが、鷹木と練習出来なかったぁーとかか?

 

そういや練習の時にしつこく誘って来てたな。帰って来ていきなりガソリンタンクを限界まで積んでる男と練習なんざするわけないだろうが。

 

しつこく粘っこく食い下がるから最終的には赤葦に丸投げしたけどな。いやホント赤葦様々だわ。

 

 

 

今日も迷惑かけてごめんな。後でアイスでも奢るよ。

 

 

 

え?いらない?

菜の花のからし和えが良い?なにそれ。

 

 

 

 

心の中で何言ってんだ俺。

 

 

で、そのミミズクはその体躯に見合わないほど縮んでおり、その後ろ姿は親に置いてかれた小学生のそれ。

 

なんてことは無い。ただの「しょぼくと」だ。

 

先程まで、それもホントについさっきまでの練習では、元気一杯、猪突猛進、という感じだった為に、俺と猿杙は首を傾げる。

 

 

「なんで木兎がしょぼくれてんだ?」

 

「さぁ?」

 

「鷹木が強くなりすぎてた、とかじゃね?」

 

「マジで?俺そんなに強くなっちゃった?いやぁーごめんなぁ───なわけねぇだろ」

 

「つまんな」

 

うっさい!…にしても、本気でなんだ?アイツが落ち込むようなことが練習中にあったか?いや、もしかして俺がいない間のやつがぶり返したか?

 

木兎の現操縦係は赤葦だから聞いてみようとして探すと、何やら監督とかマネージャー達とスコアを見ながら話してる。少しは休め。木兎の操縦で疲れてるだろうに…………俺だけか?

 

 

 

 

 

「そういや、なんで木兎は鷹木が大好きなんだろうな」

 

掃除道具を片して赤葦の所に向かう。話しながら歩いてたら、猿杙が俺にとっても謎な言葉を発した。

 

「そらぁーー……なんでだ?」

 

「なんで本人がわかんないかねぇ」

 

「聞いたことないしな」

 

だってアイツに対して、俺がなにか特別な事をした覚えはないぞ?初対面の時にミミズクの部分を触ったぐらいで、特に何かをした訳じゃないしな。

 

ずーっと一緒にいるから、自然と仲が深まったとかじゃね?

 

「ふーーーん………考えられるとしたら、同じくらい強いから、とかじゃね?」

 

「それは無い無い。俺とアイツが同等ってお前の目は節穴かよ」

 

「いや、木葉の言う通りかもしんないぞ?──ほら」

 

「……小見……何この雑誌。………えぇと『梟谷が誇る天の矛・木兎光太郎!』って書いてあるけど?」

 

俺らの前にやって来たのは、別のところの掃除をしてたはずの小見。部室によってきたのか、手にはいくつかの雑誌が握られている。時期はバラバラで、だいぶ読み込まれたのかヨレヨレだ。

 

「そこじゃねぇよ『梟谷を支える地の盾・能本鷹木!』って書いてあるじゃん」

 

「あぁー!その記事かぁ!この記者さん煽り文句上手いよな。まるで“別の世界の人”みたいな感覚持ってるよな」

 

「……にしてもこれ、大分ボロボロじゃねえか。──て、これ木兎が汗だっくだくのまま、興奮しながら読んでたやつか」

 

ヨレヨレではなく、ボロボロでもなく、ヌレヌレかよ。後で木兎は部室の使い方を教えないとな。部室に入る前にシャワー行くように順路とか作っとかないと。

 

アイツは基本イノシシだが、指示があればチャントそれに従うのよな。赤葦に伝えたら、泣きながら抱きつかれたの今でも覚えてるぞ。最初のあの頃は、振り回されっぱなしだったからなぁ〜〜…

 

 

 

で、そこには何やら見た事のあるフレーズが書かれていた。木兎のもつ異名『天の矛』と、俺が持つ『地の盾』である。

 

マッッッジでこの言葉を聞いた時本気でビビったからな!

 

 

 

 

「……俺は認めない。認めないからな!(っていか!大和怖ぇよ!なんだよ別の世界の人みたいって!───まさかこの記者も転生を?…いや、そんな馬鹿なはずが──)」

 

「なんでだよ。にしても別の世界の人みたい…ね。確かに、この人あれだろ?一日で日本縦断したって噂だもんな」

 

(───殺せ〇せーやないかい)

 

「それマジなのか?飛行機で北海道から沖縄に移動したんじゃないの?」

 

「それがだな、この記者 日本の名所をしっかり写真に収めながら横断したんだよなぁ。それにお菓子は買い占めてった聞くし」

 

(───殺せ〇せーやないかい!)

 

「うーん…となると……ますます謎だなぁ。……あぁでもよ。この人極度の巨乳嫌いだったよな」

 

(───違うんかい!!」

 

「「?」」

 

「いや、なんでもない」

 

危ない危ない……なんか前世で好きだった漫才が出てしまった。あの人達の俺好きなのよ。初めてテレビで見た時、腹抱えて笑ったなぁ…。

 

お陰で翌年のその番組がつまらなく感じたよ。何でだろうね。

 

 

「おう…………にしてもこの人異常だよなぁ。なんでも手がものすんごい数あるんだろ?」

 

(─────殺せ〇せーやないかい)

 

「うん?そうだっけ?俺は確か全身金というか、やや光沢のある黄色だって事は聞いてるけども……」

 

(───だから殺せ〇せーやないかい!!)

 

「なに言ってんですか、先輩方。それ千手観音の写真の時に尾ひれが付いただけですよ」

 

「───ほな違うか〜〜……じゃないわい!!」

 

「さっきからどうかしたんで?」

 

「いや……なんでもない」

 

 

いつの間にか赤葦の所に来てたようで、監督やマネちゃんずが不思議そうな顔をして俺の顔を見ている。そんなに注目しなくても、俺はここにいますよ?

 

君たち俺の事が好きなのは分かったからさ、そんなに俺を見つめないの。そこの君なんか、若干うるうるしてるし……

 

 

そんな憐れむような、悲しそうな目で見ないでください。

 

 

 

 

「鷹木は白鳥沢で何かあったのか?ストレスとか」

 

「う〜〜ん〜〜……特には?」

「ありません。まだ旅行のテンションなだけですので、お気になさらず」

 

 

いやホントに。頼むから忘れてくれ。段々惨めになるから。あ、もうなってるな。

 

 

 

 

「───で、皆さんどうかしましたか?」

 

「いやぁ、あそこで、こじんまりした奴が気になったんだよ。何か知らない?」

 

 

割と付き合いの長い俺たち3年生が分からなくて、まだそこまで長い関係じゃない2年の赤葦に頼む我ら。

 

なんか情けない。

 

「多分ですけど、鷹木さんを牛若に取られたとか思ってるんじゃないですかね?ほら、鷹木さん行く前よりも明らかにガッシリして、強くなった感じしますし。木兎さんはそういう野生の勘が鋭いですから」

 

そして完璧な答えをくれたよ。

 

ホントに君2年生?

 

年齢詐称とかしてない?

 

頼りになるし、安心感もあるけど……その哀愁漂う瞳はなに?やっぱり詐称してない?

 

え?これは疲労とか諦め?

 

 

 

 

 

それは大変だな(すっとぼけ)

 

 

「じゃあどうやったら治る?」

 

少しは考えろ器用貧乏。

 

「鷹木が木兎に大好きーとか言えば解決するでしょ」

 

頭沸いてんのか猿顔。

 

「バレーに誘えばよくね?」

 

今片付けしてたろうが。

 

「ったく、お前ら揃いも揃ってそれでも3年か?赤葦赤葦って頼りすぎだろ?もっと俺らで解決しないと」

 

「そういうなら鷹木はなんか案があるのか?」

 

さて、帰るとするか。

 

「「「させるか!!」」」

 

おいコラ話せ無 脳or能 共!ここで立ち止まってないで、今すぐ木兎を何とかしてこい!もう少しで夏のインハイが来るんだぞ!?巫山戯てる場合じゃねぇぞ!?

 

「お前が言うな!」

 

「大体鷹木が1番仲良いだろうが!」

 

「ほら!行ってこい!しょぼくと がお呼びたぞ!」

 

ヤダヤダヤダヤダ!!練習終わりで、旅行帰りで、慣れない体に苦労してるんだもん!めっちゃ疲れてんだもん!

 

「いつもこの後家で練習してるじゃねぇか!」

 

「監督に言われても進んで練習してたろうが!」

 

「お前身体が軽いとか言ってたじゃねぇか!」

 

 

それはあれだよ!言葉の綾なんだよ!だからその肩を掴む手を話せ!俺は白福と帰るんだ!今日はもう終業してるの!シャッター下ろしてんの!

 

 

「……あのぉ〜〜〜」

 

「「「「なんだ!?」」」」

 

「そのまま言い合ってると〜体育館閉めれないし〜〜電車無くなるかもしれないよ〜?」

 

「「「「なら泊まればいい!!」」」」

 

「……もう既に〜〜赤葦が木兎を立ち直らせたみたいだよ〜〜?」

 

「「「「───え?」」」」

 

 

その白福の一言で俺らは軍隊もびっくりなシンクロを見せた。ギギッとなる首をゆっくり回しながら見ると、そこには元気に飛び跳ねている木兎と、苦笑いを隠しきれてない赤葦が。

 

ポーカーフェイスの赤葦が苦笑いなんて。

 

 

 

 

こんな珍しい日が来るとは………今夜は赤飯だな。

 

 

じゃなくて、ホントに迷惑かけて申し訳ない。これからも頼むわ()

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

「影山 なんか凄くなってたよな」

 

「うん。空回ってた天才が才能の行き場を見つけちゃったんだから、もう凡人は敵わないんじゃない?」

 

「へぇ お前でも敵わないのかよ」

 

「トスは……ね。トス回しで飛雄に敵う奴、県内にはいないんじゃない?──まぁ、サーブもブロックもスパイクも負けないけどね」

 

「ただでさえアイツにレシーブ完敗なんだから、「トスも負けない」って言えよクソ及川!テメェセッターだろうが!」

 

「痛ァッ!……だってホントの事だもん。──それにアイツを出すのは卑怯デショ。俺とアイツのレシーブなんて比べるのが烏滸がましい。だから他のところで崩すんデショ。どんなに優れてたってそこまで、そこから、繋がらなかったら意味ないんだから」

 

「…………」

 

「レシーブめっちゃくちゃに乱してマトモにトス回しする機会なんか与えずに、「1人だけ上手くたって勝てないんだよドンマイ」って言いたい!! 言いたい〜〜っ!!!」

 

「……引くわ」

 

「?エ何?だって天才とかムカつくじゃん」

 

「俺は女にキャーキャー言われてる方がムカつくっ」

 

「痛ァーっ!僻みはみっともないぞ岩ちゃん!それに彼女ならアイツもめっちゃ可愛い子だったじゃん!……痛っ痛ァッ!!」

 

ーーーーーーーーーーー

 

「あのヒゲちょこ……1年生が怖がってんじゃねーか…!」

 

「あー…こっから見ると親子みたいに見えますねぇ」

 

「俺には誘拐犯に見えます」

 

「……」

 

「あの」

 

「…………」

 

「…スゲー見られてんスけど」

 

「スンマセン…目 合わせない様にしてもらえれば、大丈夫だと思っ──「3番さんレシーブ凄かったっス。うちのエースのスパイクあんなにちゃんと拾える人初めて見ました。あんだけ全員レシーブのレベルが高いチームでリベロにいる実力。やっぱスゲェと思いました。」…………」

 

「俺も負けないっス!失礼します!」

 

「あっコラ!そんな一方的に……」

 

「…………」

 

「な……なんかスミマセ…「ヤバいッスね」…え?」

 

「彼だって相当レベルの高いリベロなのに、慢心するどころかひたすら上だけを見てる…恐いッスねェ。───俺も彼みたいに上だけ見ていかないと……“アイツ”を越えられるように」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

どこかとは異なり、学校数がアホみたいに多いここ東京で行われる種々の大会は、どうしたって終わるまで時間がかかる。

 

そのため、地方なら3日間で終わる大会出会っても、東京となると3週間かかる。市大会や県大会を通ってやっと……という所と、いきなり本戦に出れるところでは、どうしたって実力差も生まれる。

 

加えて今年はインハイが始まるのが若干遅く、梟谷のメンバーはもとより、時間にまだ余裕のあるところでは、少しでも得点を取るために、少しでも強くなるために、練習試合も盛んに行われていた。

 

そうして迎えた夏のインハイ予選。

 

今回もぶつかり合うのは梟谷と井闥山学園。

 

ここまで何度も戦っている、東京の二頭(ツートップ)。

 

たとえ梟谷がずーっと負けているからと言って、その試合を見れば「どうせまた梟谷が負ける」等という言葉は出なくなる。

 

 

「…………負けた…か」

 

案の定、何度目かの敗北を味わう我ら梟谷。

 

ホントなんでイタチに勝てないのやら。

 

まぁ、全国でアイツらよりも上に行けばいいだけだ。

 

 

 

 

 

「…………負けた」

 

はいどうも。強化された牛若達にボコられました梟谷です。

 

いや、アイツら強いのなんのって。

 

 

頑張ったんだよ。頑張ったんだけど、最後突き放された。

 

スコアとかもさ最後以外デュースにもつれ込んだんだよ。

 

 

でも、牛若を最後まで乗せ続けることになっちゃったんだよね。

 

俺がいくらでも拾ってやるって感じでやってたら、何度でも叩き潰すって目で返されたよ。ハハ…怖すぎ。

 

レシーブ教えただけで、なんでスパイクも進化してるんですかねぇ……そもそもアイツは試合でレシーブしないから教えたってのに。

 

これじゃ鬼に金棒やんけ……

 

折角俺が飛ばない鷹から、空飛ぶ鷹になったってのに、盾で持って殴りまくったのに、負けちまった。

 

 

うーーん。木兎含め、皆良かったんだけどなぁ〜〜。

 

 

まぁいいさ。次ので最後なんだ。次こそは、最後の春こそは、俺らが上に立ってみせる。

 

覚悟しとけよ?牛若。

 

お前が強くなっても、俺らがそれを上回ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、主人公達来れるかな?

 






飛ばしすぎ?

でもこの辺りからがメインな感じもしたw

ていうか、牛若達は最後の大会全国来れないはずだから、梟谷のが上になるのでは?と、今気づいた。

まぁいいか


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16話

聞きましたか皆さん!?
某記事抜粋
『ハイキュー!! フェスタ 2023 -大壮行会-」が9月24日、武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)で開催されることが分かった。完全新作の2部作の劇場版「ハイキュー!! FINAL」に向けた“大壮行会”』

ですって!
卒論で忙しいんですけど、そんなこたぁしらねぇってね!



 

7月

 

それは汗と涙の季節。

 

新学期が始まって、高校デビューを決めた者や、決められなかった者関係なく、一夏に想いを馳せて漫画のような展開を求めて行動を起こす季節。

 

起こした結果が吉と出るか凶と出るかは分からないが、夏のインターハイを終えた北のとあるバレー部員達は、春のインターハイに向けて東京の地を踏む。

 

 

 

 

その少し前に、暑さを受けて体感温度10倍くらいの熱量を誇る男・木兎光太郎は意気揚々と過去を語る。

 

「鷹木と会った時の話?なんでそんなこと聞くんだ?」

 

「…えぇと」

 

「俺と鷹木は親友だからな!会った時から大親友だ!」

 

「なんで初対面から下がってんだよ……あぁすいません記者さん。コイツいつもこうなんで、お気になさらず」

 

「あは、あはは…で、では能本鷹木選手!今回の日本ユースの打診を受けた時、どのような気持ちになりましたか?」

 

「そうですね、中学時代から戦っている白鳥沢の牛島若利君と同じユニホームを着るのが楽しみです。隣にいる木兎光太郎もエースは渡さないと、打診を受けた日からずっと気を吐いてます」

 

「───鷹木と会った時は……そう!その場にいた他の奴らの誰よりもバレーが上手そうで!今度2人でやろうって言ったら、律儀に来てくれたんだ!それからも呼んだら必ず律儀に来てくれたんだ!今までのヤツはすーぐに来なくなっちゃったけど───鷹木は───律儀で───それで───」

 

「覚えたばっかの難しい言葉使いすぎるな……頭悪く見えるだろうが…」

 

「・・・仲が良いんですね!」

 

場所は合宿が行われる梟谷の学校の教室。原作でもそうだったかはハッキリ覚えていないが、今年1回目の合宿はウチ、梟谷で行われる。

 

期間は土日の2日だけだか、この後のは1週間やるし、その後にも2日だけやる予定だから非常に楽しみだ。

 

梟谷の部長として真っ先に主人公達に会えるし、原作読者側の人達にはここで初登場なわけだから、しっかりインパクトを残さなきゃな。

 

「……では、ユースでも是非活躍してきて頂きたいんですが、ズバリ、代表としての目標を教えてください」

 

 

 

 

「「優勝です(だ!)」」

 

 

打ち合わせなんか一切していないなか、完璧にハモった俺と木兎の声。少しだけ、時間が止まったような不思議な感覚に包まれた中、目の隅に得意げな顔をしている木兎が見えて現実に引き戻された。

 

少し驚いてる俺をよそ目に、「俺と鷹木は親友で──」とまた話し始めた木兎と、今まで見た中でいちばん微笑ましい顔をしている記者の人。

 

楽しそうに話す木兎とは裏腹に、俺は若干の気恥しい思いをしながら、その後軽く木兎をしめることにした。

 

 

「鷹木〜?タ・カ・キ〜?…ターカーキー?…………サーターアンダギー?」

 

「誰が穴なしドーナツだ……あれ、2人は?」

 

サーターアンダギーとは、沖縄県の伝統的な揚げ菓子。

 

※サーターアンダギー……名前の由来は首里方言からきていて、「サーター」は砂糖、「アンダ」は油、「アギ」は揚げるという意味。要するに穴なしドーナツ。

 

「取材の人はもう退出してるし、木兎は廊下を駆け抜けようとして先生に怒られてるよ?」

 

言われて当たりを見渡せば、もう既に俺以外の2人はいなくなっている。一体いつの間に……。

 

ところで、目の前の雪絵は大量の荷物を持ってるのは何で?もしかして昨日の続き?

 

 

 

まぁ、いいか。

 

「雪絵」

 

「ん〜?」

 

「これからも宜しくな」

 

「?…………フフッ………変なドーナツ〜」

 

だから俺はサーターアンダギーじゃねえよ。

 

 

 

 

赤葦といい、コイツら物語の登場人物ってのは不思議な奴らだ…………。

 

普通の人達じゃあ「物語」と呼べるような人生では無いだろうし、前世の俺しかり、ね。

 

 

 

いや、色んな変人がいるから物語が「面白く」なるんだ。

 

じゃなきゃ、前世の俺を完全に否定することになるしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所はとある学校。その中でも日頃から多くの室内競技が行われている体育館に、多くのバレー選手が集合していた。各校が数十人引き連れて来ており、広い体育館ではあるが、人数のせいで少し狭く感じられた。

 

「ここが…お台場?」

 

「さすがノヤっさん!」

 

「違うだろうが!」

 

その建物の門の外から外観を見て、海が近いお台場と勘違いした男はローリングサンダーの西谷夕。

 

ちっちゃい背中にでっかい守備の要としての責任を負う、レベルの高いリベロである。

 

そんな彼を尊敬する男、田中龍之介。平凡ではあるが能力は高く纏まっていて、烏野に不可欠な攻撃的選手である。変な奴でもある。

 

そして問題児を纏める、烏野の排球部の部長・澤村大地。1年の問題児がいなくてもこの2人のせいでいつも気苦労が絶えなさそうに見える男である。もしかしたら作中ナンバーワンの苦労人かもしれない。

 

「まぁまぁ、大地、初めての東京なんだ、緊張するより賑やかな方が良いだろ?」

 

「……そうだな、だが、デカくて髭が濃いアイツが周りをビビらしまくってるんだが?」

 

そんな苦労人に声をかけたのは、なんか結構女性人気がありそうな男、菅原孝支。優しい優しいイケメンである。

 

その後ろでウロウロソワソワしてる男、東峰旭。人とチラホラとすれ違う度に、恐怖を植え付けている。なお、めちゃくちゃ気が弱い。

 

「あれはッあれはもしや──スカイツリー!!??」

 

「いや、あれは普通の鉄塔だね」

 

そんな彼らを見て爆笑してるのが、音駒のキャプテン・黒尾鉄朗。加えて副将である、海信行。道案内のためにわざわざ来たのである。

 

「なんか人足んなくねーか」

 

「実は──」

 

そんな会話をしながら進んでいき、目当ての高校の門を彼らがくぐった時、待ち構えている者がいた。

 

「?あなたは?」

 

炎天下の中両手にクーラーボックスを2つずつ持ち、上半身は裸で下半身は黒のショートパンツ。頭にはテンガロンハットにキャピキャピしたグラサン。よく見ると背中にも大きな荷物を背負っていた。

 

「おれか…暑いし、簡単に自己紹介しようか。───俺だ、よろしく」

 

「みじか!?だから誰!?」

 

「俺が誰か?そんなことはどうでもいい、暑いからな」

 

「ええ…?」

 

「さぁついてこい。ここは俺の庭みたいなもんだ」

 

((梟谷の人、なのか……?))

 

「……なんか変なやつだな」

 

「シティボーイにとっちゃ、田舎モンには名乗る名前すらねぇってのかァ!?」

 

「落ち着け田中…黒尾、今のは?」

 

「あぁ……ククク………ククク……ブフォッ……アハハハハハハ!!!………ふぅ、アイツな、アイツはな…梟谷の部長だよ」

 

「!?」

 

「能本鷹木、雑誌でも紹介されそうで、されない。そんな地味だけどヤバい強さの奴だよ」

 

ズッシリズッシリというような効果音が聞こえてきそうな重装備で軽やかに歩いていく前の男、彼こそが能本鷹木である。

 

何故彼がこんな格好をしているのか、それは合宿の前日に遡る。

 

 

「バストが大きくて嫌なことは〜まず肩こり。次に、大きなバストのせいで、若くても中年太りに見えちゃうし〜。似合う服ないんだよぇ〜。合うブラジャーもないし〜若い頃からオバサンブラとかやだよねぇ〜。胸元をチラチラ見てくるのも不快だし〜。テレビで巨乳アイドルを見かけると、若い今は仕事で武器にできるけど、将来垂れるって分かるから同情しちゃうなぁ〜」

 

「…………そ、そのぅ……」

 

場所は鷹木の家のリビング。テレビには巨乳グラビアモデルさんが映り、男として鷹木は目をかっぴらいて見入っていた。

 

簡単に言うと、そんなだらしない彼氏を見た、彼女白福雪絵による報復措置である。

 

「あせもが大変でねぇ〜毎年夏になると、胸の谷間やアンダーバストに汗がたまってかゆくなる。いつでも汗を拭きとれる場所ではないしね〜」

 

「あの」

 

「胸が大きすぎて、胸の下や足元が見えない人もいるんだよ〜?歩いている時に転ぶ、食事中にお腹のあたりにソースが飛んでも、見えないので服にシミができたなどという例も珍しくないんだって〜」

 

「ホントにすいませんでした」

 

思いついた事を言い切ると、テレビに齧り付くかのように見入っていた鷹木が、白福の足元で土下座をしていた。

 

今まででいちばん綺麗なThe・土下座である。

 

心做しか普段より一回りも二回りも小さく見える。

 

これがあの全国大会常連の強豪校、梟谷の部長だというのだから驚きだ。情けない姿だが、これでも立派に部員を纏めている男なのだ。

 

ゲームキャプテンを任されてる木兎と、副部長の赤葦、そして部長の能本鷹木。

 

この3人が梟谷のリーダー達であり、他校からも恐れられている強力な3人組である。

 

その1人が目の前で敗北宣言。普段と違う上下関係。足を乗っけやすい大きな背中。白福が無言の間一切動かないことから見える忠誠心。

 

それらを加味して、白福雪絵は目覚めてしまった。

 

そう。

 

 

 

「あの格好はな、彼女を怒らせたからなんだと」

 

「怒らせた?」

 

「彼女だと!?」

 

「田中、ステイステイ」

 

 

 

「私がご主人様ってどう〜?」

 

「………………え?」

 

その日のことを、後に鷹木はこう語る。

 

「なんかよかった」

 

と。

 

 

 

 

場所が変わって時も進んで練習が始まった。

 

「お願いしあス!」

 

「しアース!」

 

「ウェーイ!」

 

「オェーイ!」

 

体育館の至る所で掛け声が出始め、ボールの弾む音が練習の始まりを待ってたかのように木霊する。

 

生川、森然、梟谷……。

 

関東に拠点を置くバレーの強豪校達が少し遅れて入ってきた烏野に視線を送る。

 

その視線は一見、歓迎していないように見えて、その実どれ程の強さなのかを立ち振る舞いから見定めるかのようだった。

 

「プフー!!鷹木どうしたその格好!さっきまでピシッと決めて『記者さんと話してくるぜッ!』とかイケボで言ってたのによー!」

 

「どーさまた白福に怒られたんだろう?まーったく、学習しねぇよなぁ鷹木は」

 

「勉強ができる頭の良さと、私生活での頭の良さは比例しないな」

 

「…………プッ」

 

そして烏野を引き連れた男、能本鷹木は仲間からも他校からもめちゃくちゃ面白がられていた。

 

「だーー!うっせぇ!お前ら全員試合で地獄見せてやるからな!!」

 

「おー!やってみろぉ!」

 

「返り討ちにしてやらぁ!」

 

血気盛んな若者達。そのうるささときたら、夏の鬱陶しいセミの声をかき消して騒音被害となるほど。

 

烏野のキャプテン・澤村に練習の説明を終えた黒尾までもがその喧騒に加わっている。

 

そんな男子達の姿を見て「ガキだなぁ」と呆れながら微笑むマネージャー達。

 

東京合宿の始まりである。

 

 

 

 

「西谷ナイスレシーブ!」

 

「レフトレフト!」

 

「クッソ!」

 

練習試合が始まってしばらく、負け続けている烏野の姿があった。特に梟谷は圧倒的に強く、スコアは9-25である。(※原作は16-25)

 

「じゃあフライング1周…!」

 

負けた側の罰を淡々とこなしていく烏野の、どこか威厳があるフライングの掛け声を聞きながら他の高校の選手たちは話していた。

 

「あいつら何敗目?」

 

「平凡……だよな」

 

「音駒が苦戦したヤバい1年てどれのことだよ」

 

 

そんな烏野の実力に少し期待はずれな雰囲気を出し始めた時、

 

「おっまだやってんじゃん、間に合ったね。上出来」

 

「主役は遅れて登場ってわけか?ハラ立つわー」

 

日向と影山が到着した。

 

 

 

 

 

2日目の合宿にて、烏野の排球部の顧問とコーチはマネージャー達と各校を見ていた。

 

生川高校…『サーブこそが、究極の攻め』

森然高校…コンビネーションの匠

 

「そして……」

 

「こら研磨!逃げんな!」

 

「腕もげる…」

「もげない!」

 

強力なスパイクは当たれば腕が消し飛ばされるのでは無いかと、そう思っても仕方がないほどの重低音を奏でる。

 

「さすが……ウシワカ同様、全国5本の指に入るエースか…」

 

「本当にありがたいです…」

 

“全国優勝を狙う”大エース擁するチーム・梟谷学園。

 

その圧倒的な攻撃力をどのチームも1番に警戒する。

 

強いチームはその次の強力なサーブと高いブロックにも警戒する。

 

全国レベルとなると潤滑油にリベロ2人組に立ち向かう。

 

優勝を狙う超強豪校は矛と盾と真っ向勝負を挑む。

 

そんな梟谷の部長が烏野の会話を盗み聞きしていた。

 

 

「空中での最後の一瞬まで自分で戦いたい」

「あの速攻にお前の意思は必要ない」

 

「うんうん…」

 

「あの速攻は十分凄い。あれを軸に他の攻撃を磨いていくのがベストだと思う」

「あの一瞬を空中でどうこうしようってのも、正直難しい話だと思うぜ」

 

「うんうん…!」

 

「“向こう側が見えました”頂からの景色が見えました」

 

 

(神業的セットアップから繰り出される速攻…それを空中で日向が自分の意思で捌くことが出来れば…………いやいや出来るかそんなもん────)

 

「いやいや出来るさそんなこと」

 

「「!?」」

 

声がした方を見ると、扉の前に腕を組んで両足に拘束具を付けている変人がいた。

 

「机上の空論、大いに結構!ウチには机上どころか考える事を放棄しかけてる奴がいるからね!」

 

ニカッと歯を見せて笑うその男は、身長と段差の上に立ってることもあって、より異様さと存在感を発していた。

 

「さっきの変な人!」

「コラ!日向!」

「梟谷の部長だよな」

 

彼は思わず彼を指さした日向に微笑み、怒ることは一切なく彼らと同じところに降りてきた。

 

「その通り、君たち烏野のことは青城と白鳥沢の知り合いから聞いてるよ。改めて──」

 

彼はそう言って大きな手を日向に差し向けた。

 

「俺の名前は能本鷹木。梟谷の部長をやってる者だ」

 

 

 

「ちなみに足のコレは、俺の趣味じゃない」

 

そう弁明する鷹木だったが、初対面のインパクトを消すことは出来なかった。

 

 





一日で書き上げてやったぜっ!

上でも書いたけど、卒論が鬼大変なので更新はものっそい遅いけど、良かったら待っててね!


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