アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】 (サイリウム(夕宙リウム))
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キャラ紹介(トレーナー編)

オリジナルキャラとしてトレーナーが出てきたのでまとめ用に作成。
見なくても問題はないので飛ばしていただいても結構です。

キャラが増えるごとに追記予定
(現在あと二人の追加が予定されています。)


 

 

  NAME  :不明

  TEAM  :個人

MAIN PARTNER:ハルウララ

 

アプリ版トレーナーである俺らの集合体みたいなもの。

いつも黄色い被り物をしていて、素顔を知ってるのはごく一部。最近はTやトがお気に入り。

育成能力は異端の一言。どこに見聞きしたものすべてをトレーニングに変換できる奴がいるんだ。

例の構文を使いこなす化け物と考えていただいてよい。

最近は理事長秘書のたづなさんと同期の桐生院トレーナーと仲がいいらしい。

こいつらうまぴょいしたんだ!

 

 

「その時、ふと閃いた!

 このアイディアは、ハルウララとの

 トレーニングに活かせるかもしれない!」

 

 

〇現在、ハルウララを決戦の地、有馬記念に連れていくため奮闘中。彼が頑張れば頑張るほど走者のチャートが崩壊して、血を吐くことになる。感想欄で投稿者が表記していないはずなのに勝手に閃きだすから厄介。いいぞもっとやれ。

 

 

 

 

  NAME  :赤田

  TEAM  :個人

MAIN PARTNER:キングヘイロー

 

過去の育成ウマ娘にはシンザンが挙げられる。

リギルがトップになる前の世代、日本のウマ娘界を引っ張り続けた英雄。

寄る年波には勝てず、チームの運営はできないと考えて個人に移行。

個人になってからも関わったウマ娘はスターと呼ばれるまで成長している。

その経験と知識からどのトレーナーからも先生呼びされるが本人はちょっと嫌。

服装は赤い帽子がトレードマーク。

 

 

「追いつけるまでは仕上げてやる、そっからはお前さんの仕事だ。」

 

 

 

〇キングヘイローをどこかのチームに所属させる気も起こらず、またハルウララと同室であるためできるだけあの黄色い奴に影響を与えないで済むように、と考えてできたキャラクター。最初は名がなかったが、感想欄の例のポッケにモンスターを入れるゲームの初代主人公みたい、というコメントから赤をつけたお名前に。

 

 

 

 

 

 

  NAME  :緑川

  TEAM  :アークトゥルス

MAIN PARTNER:セイウンスカイ

 

過去の育成ウマ娘にはギャロップダイナが挙げられる。

いつもは細目だが切れると開眼する。

自分で考えて実行、を信条に育成を行うが、それは莫大なデータを渡し、

考えさせることで初めて意味を成す。データの収集、整理にかけてはトップ。

色が似ているせいかたづなさんと仲が悪い。

服装は緑の上着を愛用、ゆったりとしたワンピースをよく着ている。

 

 

「情報を集め、思考し、実行する。これでできないことはまぁないでしょうね~。」

 

 

 

 

〇赤が来たなら、緑だろう。と思いこちらを作成。セイウンスカイのトレーナーに落ち着いたが、今後の活躍や登場は不明。出来れば赤田さん同様出してあげたいがメインはウマ娘、見失ってはいけない。

 

 

 

 

  NAME  :Coming Soon

  TEAM  :Coming Soon

MAIN PARTNER:Coming Soon

 

Coming Soon

 

 

 

  NAME  :Coming Soon

  TEAM  :Coming Soon

MAIN PARTNER:Coming Soon

 

Coming Soon

 

 



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オリジナルスキル紹介

オリジナルスキル
アルスぺちゃんを進めていくうちで生えてきたスキルをまとめておきます。

増えたら順次追加していく予定



【空駆ける英雄】

分類:固有スキル

 

効果:最終直線で後方に位置しているほど速度が上がる

 

説明:ディープインパクトの固有スキル。一番最初の継承枠として出したもの。もう片方はルドルフ会長のスキルだったが、何故ここでオリジナルを出したかというと単純に他の継承ウマ娘が思い浮かばなかったから。

 

 

 

【ゲートの支配者】

分類:赤スキル(改は金枠赤スキル)

 

効果:自分以外に出遅れを発生させやすくする

 

説明:ゲートでプレッシャーを放ち、スタートを鈍らせる技。進化前は全員がゲートに収まったときにプレッシャーを掛け始め、スタート前には自身のプレッシャーでゲートを塗りつぶすもの。進化後、【改】になった後はプレッシャーを掛け始める動作を短縮し、ゲートが開く瞬間にすべてを塗り潰すものになっている。スキルとして強力過ぎるため、プレッシャー耐性を持っている場合、対抗しやすい。持ってないと盛大な出遅れをしてしまう。最悪ゲートから出れない。お姉ちゃんが考案しスぺに教えた。

 

 

 

【プレッシャー耐性】

分類:緑スキル

 

効果:プレッシャー関連の赤スキルの効果を弱める

 

説明:効果そのままの意味。【ゲート】が強すぎるため対抗として作成。〇、◎と進化する。なんでも欧州、特にイギリスウマ娘がよく持っているらしい。なお、セクさんにスぺの初期【ゲート】が通用しなかったのは実力差が離れていたことと、単にセクさんの防御力が高かったせい。

 

 

 

【逢魔時】

分類:赤スキル

 

効果:中盤を過ぎたころに全体を掛かりやすくする

 

説明:感想欄からアイデアを頂いたスキル。中盤を過ぎたころに全体にプレッシャーを掛けることで全体を掛かり状態に、つまり強制的にレースペースを上げてスタミナを削るスキル。スタミナ減少量はそこまで多くなく、またプレッシャー耐性を持っているとはじかれるので持っていてもいいが、進んで取ろうとはしないスキル。スぺちゃんはお姉ちゃんの指示で走ってたらなんかできて覚えた。

 

 

 

【Je suis les circonstances】

分類:固有スキル

 

効果:最終直線で大幅に速度が上がる

 

説明:ブロワイエの固有スキル。アニメで出て来たけどゲームで出てないので考えた。元ネタはナポレオンの名言から頂きました。たぶんクラシック級ジャパンカップでしか出で来ないスキル。

 

 

 

【あなた≪ワタシ≫のためだけに】

分類:金枠赤青スキル(パワプロのポーカーフェイス、悪球打ち枠)

 

効果:全体に与える効果を一点に集中させる

 

説明:グラスワンダーがスぺに見られたいというドロドロした思いがスキルになった。誰かに強い執着を見せると習得できる可能性があるスキル。分散するはずの効果が一点に集中するためこれを使用したスキルの効果は絶大になる(本来10人以上に分散するスキルが一点に集まるため効果は単純に考えても10倍以上、さすがのスぺでも影響を受けた)。

 

 

 

【灰かぶりのサルビア】

分類:不明

 

効果:不明

 

説明:スペシャルウィークが姉を失った時の情景を思い浮かべ、自身の原点と走る意味を再確認することで発動するスキル。単純に速度、加速力が上がる以外の効果がありそうだが詳細は今のところ不明である。何らかの代償を払い、発動するスキルのためその効果は絶大であるが代償の詳細がはっきりしていないので多用は控えた方がよさそうである。

 



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エイプリルフール

今日は11日、つまり1日だ!

つまり今日はエイプリルフール!


 

私は一緒に戦い抜いてきたスぺちゃんと共にあの子の前に立つ。あの子は隣にいるスぺちゃんとは違うスぺちゃんとわかっていても、やはり戦う気にはなれない。

 

世界を滅ぼそうとして、他のウマ娘たちを消してきたヒドイ人、っていうのはわかるけど、それを食い止めるために一緒に戦ってきた隣にいるスぺちゃんと全く同じ顔にふいんき。

 

 

私は戦えないかもしれない、隣にいるスぺちゃんも同じみたいだ。

 

 

「私は、全てのウマ娘を消し、すべてを正常に戻す。そうすればこの忌々しい世界がリセットされる。素晴らしいとは思わないのか?」

 

 

その言葉に思わず叫んでしまう。

 

 

「思わないよ! スぺちゃん! 何でこんなことするの!」

 

 

「……貴様にはわからないだろうな。私の時代には現れず、ただ走ることしか考えられなかったお前には。」

 

 

とっても苦しそうな顔。タキオン博士に聞いたけど、あのスぺちゃんのいた時代には私はいなかったらしい。

スぺちゃんと一緒に競い合う友達はいなかったらしい。

 

 

「なんで、なんでですか! あなたも私なら気持ちは同じだったはず!」

 

 

隣にいるスぺちゃんは私たちの時代のスぺちゃん、私たちと競い合って走ることが大好きだったスぺちゃん。

このスぺちゃんが目の前にいる絶望に呑まれた顔をするなんて信じられない。

 

 

「過去の私か、お前はよかっただろうな、競い合う友がいて。敗北は知らずとも違う道があったことは驚嘆に値する、だが私は変わらん。おとなしく消されるがいい。」

 

 

「……戦わない道はないんですか?」

 

 

「ない、それが定めだ。」

 

 

 

戦えない、だけど止めないといけない。これまでに消えてしまった仲間のためにも。私を戦えるようにしてくれたトレーナーさんのためにも!

 

 

「わたし、ハルウララはあなたを! スぺちゃんを助けます!」

 

 

「私も、自分を止めるために戦います。 走者さん、ラストランです、付き合って下さい!」

 

『OK! YOUR ENGINE FULL THROTTLE!!』

 

 

「いくよ! スぺちゃん!」

 

 

これが最後の変身、最後の戦いだ!

 

 

  『『変身!!』』

 

 

「魔石の戦士に、異世界の力か……、いいだろう私に見せてみるがいい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライダーキック!」

 

……あれ、ここは?

 

 

「ウララさん、大丈夫ですか! すごくうなされていたみたいですが?」

 

 

気が付いた場所は自分が昔住んでいた寮の部屋。

それよりも、この声は!

 

 

「キングちゃん!? 死んじゃったはずじゃ!」

 

 

「死んでませんわよ!? どんな夢見たんですか……。」

 

 

ゆめ、夢かぁ。あれはほんとに夢だったのかなぁ?




これは本編と全く関係ないネタ枠ダヨ~。


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祝・水着スぺちゃん!!


「夏、だなぁ。あつぅい! ……そういえばアプリの方なんか新しいガチャ始まるとか……」



スぺちゃん新衣装。水着。爆誕。



「これは、引くしか……」



「やって見せろよ!」


「ふぇ?」


「やって見せろよ! マフティー!」

「なんとでもなるはずさ!」

「ガンダムだと!」

 ~♪


「やっちゃいなよ! そんな偽物なんか!」

 
  閃光のハサウェイ


「身構えているときには死神は来ないものだ、ハサウェイ」



と、いうわけで

番外編・水着の時間だぁ!
(ギャグというかネタというかメタというか、まぁカオスです。)


全部まるっきりやりたかっただけです。




 

 

「夏だ! 海だ! 浜辺だ! 水着だ! そう、スぺちゃん! 水着の時間だぁ!!!」

 

 

「お、お~???」

 

 

え、なして???

 

 

昨日まで有馬前の冬だったよね?

 

そろそろ雪が降りそうなんて言ってたよね??

 

それがなんで夏? 蝉が鳴いてるし外は暑いし、本当になして???

 

 

 

「どうしたスぺの字! そんな調子じゃこの夏乗り切れないZOI!」

 

 

「え、えっと……、昨日まで冬だったよね? なんで夏?」

 

 

 

「…………更新が思いっきり夏なのに冬の時期にやる有馬をやってるこの作品に言っちゃう?」

 

 

 

あ、これメタ視点だ。

 

たぶんこの回終わったら全部記憶消えちゃうやつ。ギャグ時空だな、これ。

 

 

 

 

「と、いうわけで水着買いにイクゾイクゾイクゾ!」

 

 

「お、お~!」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

「ってなわけでやってきました近場のショッピングモール! だいぶ前にスぺちゃんがみんなと遊びに行ったところですかな?」

 

 

「うん、結局ボウリングに行ったけど……、そういえばボウリング場の人たちどうしてるんだろ。結局途中でやめちゃったしなぁ。」

 

 

「レースや練習あったから致し方なし、あとたしかアイネスフウジンちゃんに勧められていったんですよねぇ。なんやかんやよくしてもらいましたし、こんどあったらお礼言いましょうね。」

 

 

「は~い。」

 

 

 

そんなことを姉と話しながら移動する。

いつもなら周りを気にしてこんな人がいっぱいいるところで話したりなんかしないが、今はメタ時空だから大丈夫なようだ。普通、周りから見れば虚空に向かって話している人がいれば距離を取るぐらいしそうだけどそんなことはない。

 

いつも結構頑張って隠してるので、ちょっとフクザツ。

 

 

 

「お、着きましたねぇ! ……お姉ちゃんからしたらどれも過激で自分なら着ないようなものばっかりなんですがこれが今の普通なんですかい?」

 

 

「? 普通だと思うけど?」

 

 

「う~んジェネレーションギャップ! そりゃ8年、10年近く時間が空けばそうなるか! まぁ私ら北の出身で余裕もなかったから海なんて行く機会ほとんどなかったですけど。」

 

 

「だよねぇ……、でもお姉ちゃん着れるサイズあるの? だってB71でしょ? あ、72だっけ?」

 

 

「グボアァ(致命傷)……ス、スぺちゃん成長期でよく育ったから80近くあるもんね……、しかもまだ大きくなるんでしょ?」

 

 

 

項垂れる姉に向かって胸を張る。

 

まな板とは違うのだよ、まな板とは!

 

 

 

「…………燃え尽きたぜぇ、真っ白にな。血は同じはずなのに妹に大差で負けるとは……。」

 

 

 

近くに置いてあった椅子に座り込んで真っ白になっている姉をほっといて水着を見る。胸のことで落ち込んでいる姉はほっときゃ治るので大丈夫だ。

 

 

 

 

「へー、最近はこんなのあるんだ。……あ、オレンジの奴かわいい。」

 

 

 

様々な種類、色の中から目についたオレンジの水着を手に取り、胸元で合わせてみる。サイズも合ってるし買ってもいいかも。

 

 

 

「お、いいの選んだわね!」

 

 

水着を試着しようか悩んでいると後ろから誰かが声をかけてきた。なんか聞いたことある気がする?

 

 

 

「たしか、初対面だよね? どうも~! 私、マルゼンスキー。よろしくね、スペシャルウィーク!」

 

 

「あ、初めまして! スペシャルウィークです。ご活躍はかねがね……」

 

 

「いいのいいのそんな堅苦しいの! 息詰っまっちゃうじゃない! にしてもいいの選んだわね! バッチグーよ! 早速試着しちゃいましょ!」

 

 

 

どうしてだろ、なんかおばあちゃんって呼んでしまいそう。

 

絶対キレるから口が裂けても言えないけど。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

そんなこんなで試着室で着替えさせられた私はさっき見てた水着を身にまとっている。あとマルゼンスキーさんもいつの間にか着替えてた。そのハート形のサングラス、ここに置いてあったのかな?

 

 

「う~ん、イケイケね! マブイわ! スぺちゃんも私もいい感じ! チョベリグね!」

 

 

 

なんだろ、確かに似合ってるんだけどセンスが古いというか、遅れてるというか、尖ってるというか。

滅茶苦茶似合ってはいるんだけど時代が違うというか。

 

え、この人まだトレセン学園に在籍してたはずだから高校生だよね?

なんでこんなセンス古いの?

 

 

なんか70、80年代の人が無理やり今風にしようとしてる感じが凄いんだけど。と、とりあえずお礼言っとこ。

 

 

「ありがとうございます、マルゼンスキー先輩。試着も手伝ってもらって。」

 

 

「いいのよ~、あとマルゼンって呼んで頂戴! 硬いのはナッシング、よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、店員さんにわざわざチェキってもらって水着を買って帰った。

 

 

 

「んで、これがその写真、と。」

 

 

「うん、マルゼン先輩とのツーショット写真。なんか大事な気がしたから枠に入れて飾ってるの。」

 

 

「あ~、大事にしたらいいと思うよ。にしてもなんだろ。おばあちゃんが孫のために無理やり若い文化に手を出したという感じがしますね。史実血縁のせい、何ですかねぇ?」

 

 

 

 

 

 

世の中解らないことばかり。

 

明日はもっといい日になるよね、ハムタロ。

 

 

 

 

 ヘケッ!(迫真) 

 

 

 

 

 

 

 





何の成果も、得られませんでしたぁ!
(爆死、石なし)

これも全部、乾巧ってやつの仕業なんだ!

いやゴルゴムかもしれないし、クライシスかもしれないし、ディケイドォ! のせいかもしれない。



君は仮面ライダーが大好きなのかな?

うん、大好きさ! あとロボットアニメも大好きさ!



あ、あと明日本編の方更新しますのでよろしくお願いいたします。



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シニア期、スタート前に(PART87.5)

『ではでは~、結構時間空いちゃいましたし、現状の把握という意味を込めて、振り返りしちゃいましょう! 進行はわたくしお姉ちゃんことオースミキャンディと!』

 

 

「補佐を担当させていただくエアグルーヴだ。………正直なんで呼ばれたんだ私。」

 

 

『なんでも作者にとってネタはゴルシ、真面目はグルーヴみたいな感じで使い勝手のいいキャラになってしまっているとのこと。まぁここにゴルシぶっこんだらただのカオスになるから致し方ないね!』

 

 

「……そうか。いつか地獄を見せてやるとしよう。」

 

 

『南無南無~、ってなことで早速やっていきましょうか! まずは主人公、我らがスぺちゃんの現状から見ていきましょう。』

 

 

【スペシャルウィーク】

 

>スピード:A

 スタミナ:A

 パワー :A+

 根性  :B+

 賢さ  :B

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.4

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.4

 【空駆ける英雄】    Lv.3

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.3

 (【灰かぶりのサルビア】)

 

 【ゲートの支配者:改】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 【プレッシャー耐性〇】

 【全身全霊】

 【率いるもの】

 

 

戦績:7戦7勝

ホープフルS 無敗三冠 ジャパンC 有馬記念

 

負けたレース:セクさんとの模擬レース

 

現状:現在北海道に帰省中。ちゃんと自分と周りに向き合うため、お姉ちゃん病院に搬入されています。

 

 

 

『ってな感じですね。』

 

 

「見てて思うのだが……、かなり化け物になってきたな。いや会長に勝ったのだしこれぐらいあってしかるべきなのだろうが、いやでもこれアプリの方の育成だと下手したらSクラス行きそうなステータスだぞ。」

 

 

『ま、物語進行上の致し方のないインフレというやつですな。』

 

 

「これとやりあわないといけない同期+αの奴らには同情しざるをえん状況になってきたな。」

 

 

『周りもその分強くなるから大丈夫だぜぃ! あ、あと君もその+αに入ってるから他人事じゃないよ。』

 

 

「……………死力を尽くそう。」

 

 

 

 

 

 

 

『んじゃ、次に同期組が今何をしているか見ていきましょう! 一応これで確定なんでよろしく! あ、あと投稿者が前回の応募企画でいろんなご意見いただけて非常に助かったと言っていたゾ!』

 

 

「あのように反応していただけることや、感想やコメント付きの評価、本当に助かっているそうだ。続けてほしかったらもっとよこせ! と言っていたが傲慢が過ぎるな。あとで締めておく。」

 

 

 

 

 

〇エルコンドルパサー

現在世界に向けて練習中。次走は大阪杯。このレースでスぺちゃんに勝って世界に羽ばたくつもり。負けても武者修行として世界に出る。再会はスぺが世界に出てくるまで!

 

〇グラスワンダー

現在ジャパンCでのけがを療養中。復帰後は宝塚記念に出走し、スぺについていく形で世界に出る予定。目標はスぺちゃんに完膚なきまでの勝利をすることでその目に自身を焼き付けさせること。ただ、前みたいに狂わず、ケガをしないで。

 

〇キングヘイロー

グローバルSCに挑戦するためオーストラリアに飛んだ。高松宮記念やスプリンターズステークスで国内に帰ってくるときはあるが11月後半あたりまでは海外で走り抜ける。たぶん向かった各国で強豪たちに野良レースを仕掛けるため中長距離でも覚醒して帰ってくる。

 

〇セイウンスカイ

香港に移動して香港三冠を狙う。何かと強豪が集まりやすい地であるためこちらもかなり成長して帰ってくる予定。香港三冠自体は早めに終わるが彼女がスぺに勝てる確信を抱くまでは帰ってこないだろう。まぁ今年以内に彼女は理想を手に入れるだろうし、心配はいらない。

 

〇トウカイテイオー

現在リハビリ中。大阪杯にてスぺに決戦を挑む予定。所謂自身の固有スキル二枚重ねが祟りケガをしてしまったが、マックとの友情トレーニングにおかげで回復、改善の兆しが見えた様子。皇帝から帝王へ、そのバトンは必ず渡される。

 

〇メジロマックイーン

名優、マックイーン。この世界線のクラシック期ではあまりぱっとしない成績ではあったが、シニア級は別。彼女の走る目標である天皇賞はシニアにある。テイオーとの二枚重ね固有スキルの交換ノートで対策はバッチリ。全力でスぺちゃんを叩き潰しに行くぞ!

 

〇ウオッカ

ダービーに路線変更しなかったためこっちではダスカとティアラ路線で鎬を削った。結果としてはオークスとエリザベス女王杯をウオッカ、桜花賞と秋華賞をダスカ、という風に分け合う形になった。シニアではマイルを走る予定のようだが、彼女がスぺとの対決を逃げ続けるはずもなく……

 

〇ダイワスカーレット

ティアラ路線はウオッカと分け合うことになったが、永遠のライバルである彼女たちの絆を深める結果につながった。史実で有馬記念を勝ち抜いた彼女。長距離への適性は十分以上にある。一番を求め続ける彼女がスぺとの戦いに背を向け続けるはずもなく……

 

〇テイエムオペラオー

今までちょっとだけしかお名前が出てこなかった彼女。作者が忘れていたとかそういうことでなく、史実通りになっただけである。同学年であるが一年参戦をずらした彼女。二年連続でクラシックは見ものである。スぺとの対決はジャパンC、有馬記念あたりだろう。

 

〇メイショウドトウ

この世界に海外ウマ娘に対する規制はほとんどない。ドトウとオペラオーの対決はクラシックから始める。個人的にはアドマイヤベガなども出したかったが今から出すと作者がパンクするのでしない。お許しを。

 

〇マヤノトップガン

こちらもこれまで登場しなかったウマ娘。たぶん「マヤ、解っちゃた!」で一年ずらしたのだろう。スぺがシニアで暴れる間、クラシックではこの三人が暴れ回る。残念ながらモブに救いはないようだ。

 

〇ミホノブルボン

サクラバクシンオーの海外遠征に付き合っていち早く世界を経験した彼女。感想欄でもあったが溶鉱炉に沈んでいくような奴みたいな肉体になって帰ってきた。こちらも大阪杯に出走予定。……大阪杯から魔境過ぎない?

 

〇ライスシャワー

マックイーンではなく、スぺをついていく対象にしたライス。ステイヤーの彼女が勝負を仕掛けるのは春の天皇賞あたりだろう。もうすでに、鬼は宿っている。

 

〇ナイスネイチャ

ダービー終わりから表記がなくなってしまった彼女。理由がない限りレースに出ないという選択はしないであろう彼女。次に出てくるときは滅茶苦茶強くなって出てくるに違いない。

 

〇ツインターボ

セクレタリアトの等速ストライド走法を自身だけの走法、ターボストライドにするため日夜特訓中。セクさんの見立てではそろそろ完成してもおかしくないのだが……

 

〇ハルウララ

言わずと知れた、感想欄ですでにラスボス認定されている彼女。スぺのクラシック有馬を見たことで次の有馬への出走を決意。目標に向かって邁進するようである。そういえば最近ダートで化け物みたいな活躍をしているウマ娘がいるそうだが、いったい誰だろうか。

 

 

 

 

 

『と、まぁこんな感じですね。』

 

 

「……正直、多すぎないか? さばききれる気がしないのだが……、しかもまだ元々シニアで戦ってたやつらも参戦するのだろう?」

 

 

『秋の天皇賞で対戦を予約しているサイレンススズカ、私のせいでスぺに思うところがあるマチカネフクキタルなんかもいますし、あと金色一家。』

 

 

「……あぁ、アイツらな。……あと私も出すつもりらしいが……やるとしたら秋天か?」

 

 

『ま、そんな感じでしょうね。でも基本的には同世代との勝負を中心にやっていく予定みたいですし、そこまで大変にはならないかなぁ、と。あとは世界編のKGVI & QES、凱旋門賞ですが、こっちも色々とヤバくなりそうですよねぇ……。』

 

 

「ブロワイエは勿論リベンジしに来るだろうし、セクレタリアトも来るだろうな。あと前々から言っていた奴もいるし……。」

 

 

『ま、先のことはそん時の作者が考えるでしょ。』

 

 

「ふむ、それもそうか。」

 

 

『では、長々となってしまいましたがこの辺でおしまいにさせていただきます。明日からまたゆっくりとなりますが本編の方続けていきますので、よろしければ応援の方、よろしくお願いいたします。』

 

 

 

『「では、またお会いしましょう。」』

 

 



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過去編
二度目の同じ日


大変申し訳ないのですが本編の方の作成が滞っており、書き上げれていません。
そのため、本作の過去編としてこちらを投稿させていただきます。PART71まで読んでいただけた方向けのものとなっているのでご注意ください。
一応こういうのが嫌い、本編以外読みたくない、という方のためにこっちを読んでないと本編の方で解らない事柄が出てくる、というのはないようにしています。

この章は本編が再開した時にページ上部に移動させますのでご注意を。

過去編で出来上がってるストックが三話分あるのでそれまでには本編を書き上げてきます。

また、今後はこのようなご報告を活動報告の方に上げていこうかと思うので、お手数ですが見て頂ければありがたいです。

長々と失礼しました。







 

 

夜、誰もが寝静まった時間帯。

 

 

 

本来聞こえるはずのない音と、においで目が覚める。

 

 

 

人よりも優れた感覚器官のおかげか、それとも今暮らしている寮がボロ屋であったからか、自身のいる場所が燃えていることは解った。

 

 

 

今すぐここから逃げないといけない

 

 

 

 

そう思い、飛び起きようとしたのだが何故か体が動かない。

 

まるで何かが、"運命"が私を押さえつけているように、ここで私は死ぬべきだと言うように。

 

 

 

 

びくともしない自身の体に抗いながら、何とか隣に寝ている子の方を見れた。

 

 

 

 

 

 

見なければよかったかもしれない。

 

私も彼女もいっしょ。

 

 

 

 

 

"運命"からは逃れられない。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

朝日。

 

 

もう二度と見ることができなかった日の光が顔にかかり、目が覚める。

 

 

 

 

「朝、か……。」

 

 

 

 

隣を見れば同室のあの子がまだ寝ている。時計を見るに朝練をしない限り起きないような時間だ。まぁここにはそんなもの好きなんてほとんどいないのだけれども。

 

 

隣を起こさないようにゆっくりと行動を始め、幾分か小さくなった体に戸惑いながら今から2年後に習慣化するルーティーンを開始する。本来なら"この体"は覚えていないはずなのに、体が覚えていたかのようにスルスルとできた。この分ならレース時の技術関連もどうにかなるのかな?

 

 

 

「よし。」

 

 

 

軽く髪を整え、ジャージに身を包んだ。あとは靴をどこにやったか、なのだがあいにく入学したての頃の記憶なんてかなり薄れてきている。……たぶん下駄箱に放りこんでいるだろう。

 

 

ゆっくりと自室のドアを閉め、下駄箱まで移動する。自身の場所を確認すると案の定靴が二足。私がいらないと言ったのに「せっかくの入学式にスニーカーで行くのかい? こういう時は、お金のことは気にしないで素直に甘えればいいんだよ!」と笑いながら母に買ってもらった革靴と、スぺの落書きがある学校配布のトレーニングシューズ。

 

たしか見つけたときはつい怒りそうになったんだけど、スぺの「お姉ちゃんが早く走れるようにおまじないしといた!」なんて言われて逆に褒めちゃったんだっけ。

 

 

 

「……懐かしいなぁ。」

 

 

 

私の学年が上がるごとにスぺも大きくなっていって、買い替えるころにはもう恥ずかしがって書いてくれなくなったんだよね。もっと大事に使えばよかったってすごく後悔したのを覚えてる。

 

 

 

「今回はもっと大事に使わないと、だね。………よし!」

 

 

 

思いっきり顔を叩いて気合を入れなおす。次の最期がいつ来るのかわからない私にとって時間は金よりも貴重。今の体でどれだけできるのかを把握する必要もあるし、さっさと朝練を始めてしまおう。

 

出来るだけ丁寧に靴を履き替え、走り出す。

 

 

 

 

さぁ、二度目を始めようか!

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

と、意気込んでみたものの私は私。このトレーニング中に考え込んでしまう癖はやっぱりある。

 

まぁとりあえず自身の現状を確認しながらやっていきますかね。

 

 

 

 

私の名前はオースミキャンディ、家族構成は育ての母と妹のスペシャルウィーク。妹の出産時に他界してしまった生みの母の記憶は私が幼かったこともあり、そこまで残ってはいない。ただ、やさしい人であったことだけはぼんやりと覚えている。

 

現在通っている学園は門別トレセン、所謂地方トレセンだ。一応中央のトレセンも受験して受かったのは受かったんだが、妹のスぺが私と離れ離れになることを知って大泣き。私もわざわざ東京に出てまで勝負しに行きたい! って奴ではなかったため合格通知を破り捨て、そのまま地元のトレセンに入学することになった。

 

また、理由として学費などの問題があったことも挙げられる。やっぱり中央に進むには結構なお金が必要で、経済的に厳しい我が家にこれ以上負担を掛けるのを気にしたということもあった。

 

 

 

そういえば地方に進むにしてもどっちみち寮生活だからスぺが結局一緒じゃないことで大泣きしてたっけ。慰めるために毎週の休日に必ず帰ることを約束してたんだよね。

 

 

んでまぁなんやかんやあって、レースに負けたり勝ったりしながら中等部最高学年。スぺも来年からこっちに進学してくるなぁ、ってことで色々と張り切ってる時に私は死んだ。

 

 

 

あとから、というか死んでから聞いた話だが、住んでいた寮の電気系統が老朽化していたため発火、また建物自体が古く木造だったためすぐに火が広がり建物全体が全焼。火事が起きたのが深夜帯だったこともあり、住んでいた生徒全員が死亡。という事件だったらしい。

 

 

実際死んだ人の感想としては燃えてることには気が付けたんだが、何か不思議な力に押さえつけられているような感じで全く動けず、ただ終わりを待つしかない、っていう最悪なもんだったんですけどねぇ。

 

 

う~ん、思い出してたら気分悪なってきた。この話はここらへんでやめやめ。

 

 

 

 

んで、死んだあと私は全く気が付いてなかったんだけど地縛霊みたいなのになってたみたいで、このトレセンに憑りついてたみたい。そこを何故か女神に見つかってヘッドハンティングされましたのだ。

 

 

何でも妹のスペシャルウィークに付けるトレーナーを探してたんだけどいい奴がいない。んで血縁で色々探していた時にここで死んでる姉居るやん! せや、地縛霊になってるみたいだしトレーナーの知識ぶっこんでスペシャルウィーク専属トレーナーしちゃおう! というわけだそうだ。

 

 

正直に言う。

 

 

 

頭おかしいとちゃいますかね?

 

 

 

 

 

まぁ自慢の妹が三女神に見初められている、ってのはその時だけは正直嬉しかったし、スぺともう一度話せるかもしれないと思ってその話に乗った。即決っていうやつ。

 

 

あちらさんも神なので、こっちの返答が解っていたみたいでして、早速トレセンから見たことのない真っ白な空間に瞬間移動、そこで無理やりトレーナーに必要な知識を頭の中にぶち込まれるという拷問が始まった。

 

霊でも無理やり何かを押し込もうとすると激痛が走るということを知れたのは僥倖だった。二度としたくないが。

 

 

 

 

それで地獄のような研修が終わり、ようやくスぺと再会できる、ってなったときに問題というか女神側のうっかりがあったようで、スペがもうレースから引退を考えるようになる時期まで時間が経っていたらしい。

 

なんでも私の知識の吸い込みの様子が見てて面白かったので忘れてたらしい、サディストかよお前は。

 

 

それで時間が思いっきり過ぎちゃったことに対する対処法は、神サマらしいやり方で時間を巻き戻すというものだった。私としては引退したスぺでももう一度会わせてくれるのだったらそれでよかったんだが、何かあちらさんも目的があるらしくそれを実行したようである。

 

 

 

んで気が付いたら生前の私、私のトレセン入学直後まで時間が巻き戻ってました、ってことだ。

 

 

 

まぁ長々と考え込んでしまったのでまとめると

 

 

私、火事で死んだ!

 ↓

地縛霊になったら、三女神にトレーナーになれって言われたぞ!

 ↓

受け入れて、勉強してたら時間かかりすぎちゃった!

 ↓

女神たちが時間巻き戻したら、私の生前まで時間を引き戻しちゃったぞ!

 

 

ということだな。

 

 

まぁここら辺はさっき起きる前の夢の中で色々技の女神から説明を受けたんだが……

 

 

 

そういえば三女神についてまとめてなかったな、それもしておこう。

 

ウマ娘の神、三女神というのがいる。

個神名がそれぞれあるみたいだけど知らないのでとりあえず、力の女神、知の女神、技の女神がいるとだけ覚えておけばいはずだ。

 

力の女神は名の通りウマ娘の力を司る女神。レースの勝敗とかを見極める神でもあるらしいんだが、会ったことないからどんな奴なのかは知らない。

 

知の女神はサディスト野郎。私に知識ぶち込んで喜んでた奴。正直顔も見たくない。女神間の仲裁などもやってるらしいがあいつに任せてほんとにいいのか?

 

技の女神は私と接点が一番多い神。地縛霊になった私に初めて話しかけてきたのはこいつだし、女神関連の情報も教えてくれるのもこいつ。あと自分で遊戯の女神って名乗ってるのでそっちで呼ぶと喜ぶ。

 

という感じで女神サマが三人もいらっしゃるっていうわけだ。

 

 

 

んで、さっきまで色々と夢枕で私の現状を教えてくれてたのが技の女神っていうわけだ。

 

 

 

 

『ん~、ってなわけで時間巻き戻したのはいいけれど、世界自体に変な影響を与えちゃったみたいでね、戻りすぎちゃったみたい。時代的にはキャンディ君がトレセンに入学した直後くらいだねぇ。……まぁ君がもう一度死ぬことは確定してるんだけどこの世界自体に異変が起きている以上、そのタイミングが前回と同じとは限らない。まぁ君に依頼した妹ちゃんのトレーナー業のお仕事の契約はまだ残っているわけだし、色々とやってみればいいんじゃない? 君のお仕事が始まるのは君が死んで霊になってからだし、それまでに準備を整えるもヨシ、生前出来なかったことをするのもヨシ、家族との時間を楽しむのもヨシ。ま、ちょくちょく様子は見に来てあげるし、楽しく過ごせばいいんじゃないかな?』

 

 

 

 

 

まぁまとめると次、いつ死ぬのかは解らないが、それまで後悔のないように好きに生きろと言うことだ。

 

 

 

 

「ふぃ~、こんなもんか。にしてもやっぱり衰えてるなぁ……。いや、この場合は元に戻ってる、か。」

 

 

 

 

昔していたなじみのトレーニングを終え、体がまだ成長途中であることを実感しながら休憩に入る。

 

 

ま、どれだけ時間があるかはわからないんだ。

 

思い残すことがないように、好きなことをするに限るかね。

 

 

 

過去改変、って奴をさ。

 

 




あとがき


契約

神と人との契約は神優位である。
しかしながら、神は自身の神性を保つため、その契約を違えることはない。


また人が神に契約を求めるとき。
その求める結果は人によって成し遂げられないものである。


結果が大きく、もたらされるのは確定している。




そのため、人に課される試練は極めて困難である。


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羞恥の味と再定義

感想や活動報告の方でも指摘していただいていましたが、不自然に思える各キャラクターの年齢設定などは一応舞台装置の一つで、今後使っていこうと思っていました。皆様、色々と考えてくださったようで、ご迷惑をおかけし、本当に申し訳ありませんでした。今後も疑問に思うところがあるとは思いますが、できるだけ早く答えをお届けできるように精進してまいります。


朝起きたら同室の子が顔真っ赤にしながらベットに蹲ってた。

 

 

 

「何カッコつけてんだ私! 恥ずか死にそうッ!」

 

 

 

一体全体どういうことなの???

 

 

 

 

 

あ、どうも初めまして。キタノセイドリと申します。

門別トレセン中等部、一年生です。まぁ、昨日からなんですけど……。

 

何もかもが初めての学園生活、昨日初めて会った同室のオースミキャンディちゃんも良さそうな子だったし、これから楽しみだなぁ、と思っていたその翌日。

 

目覚ましを掛けていた30分ぐらい前に、誰かが叫んでるような声が聞こえたので目を覚ましてみればこの光景。

 

 

 

「何カッコつけて『過去改変、って奴をさ。』だ! もう厨二は過ぎてんだアタシは! ウガッ~~!!」

 

 

 

昨日まで普通そうな女の子だったキャンディちゃんが枕に顔を埋めて思いっきり叫んでる。

 

 

……私はどうすればいいんだ???

 

 

と、とりあえず……。

 

 

 

「あ、あの……、キャンディちゃん? お、おはようございます???」

 

 

 

「ッ!!!!!!」

 

 

 

う、うわ。すごい目で見られた。……これは治まるまで静かにしておいた方がよかったのかも。

 

 

 

「お、起きてたの?」

 

 

「あ、いや、うん。その、さっきの声で……。」

 

 

「………………ふぅ。いえ、本当にごめんなさい。つい叫んでしまって、起こしてしまったみたいで……。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

ヤ、ヤッベ、やらかしたッ! ついあの例のクッソ恥ずかしい独白を思い返して憤死しそうだったのをドリちゃんに見られた! ついつい自室に戻ったことで気が緩んでいた!

 

私にとってはキタノセイドリちゃん、通称ドリちゃんは3年間一緒に過ごした同室の親友だけれども、今この現在においては昨日初めて会ったばかりの、ほぼ初対面!

 

 

お、終わった! 私の二度目の学園生活、完!!!!!

 

 

焦りすぎて逆に冷静になってきたぞ、こいつは! と、とにかく我が親友(予定)の下がりに下がり切った好感度をどうするか考えねばならない!!!

 

 

 

「あ、あはは……、た、確かに叫びたくなることもあるよね。……そ、そうだ! ジャージに着替えてるってことは朝から練習してたんだよね? 昨日はそんな感じじゃなかったけど努力家さんだったんだね、すごいなぁ。」

 

 

 

 

………ふぅ、天使か、こいつ? いや天使だったわ。

 

 

さ、さすが3年後には”気遣いの鬼”とも呼ばれるわが友ドリちゃん! このやさしさに、惚れてまうやろ!

 

 

 

 

「うん、いつもの癖で走ってきちゃった。……あの、ほんとに起こしちゃってごめんね。」

 

 

「ん? あぁ、いいのいいの。キャンディちゃんの意外な一面が見れてうれしかったし、早く起きられたから余裕をもって準備できるしね。ありがとう、キャンディちゃん。」

 

 

 

 

 

 

あっ(浄化)

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

ふぃ~。このオースミキャンディ、一度死を体験していなければドリちゃんのやさしさに浄化され、また天に召されるところであったわ。うむ、首一枚つながらなかったな。

 

というわけでやさしさに包まれながら学園内にある食堂で朝食をとり、登校。教壇に立つ教師の話を聞き流しながら色々と考える。所謂板書は取るが、話は聞いていない状態だ。

 

フマジメな生徒であるが、さすがにこの時期の勉学程度で躓くほど勉強してなかったわけでもあるまいし、いいだろうと思いながら隠れてサボる。

 

 

 

「……というわけで国内には中央を除いて15か所、ローカルシリーズに参加するトレセンが……」

 

 

 

それにしても生き返ったというか遡ったことに対するうれしさというか、肉体の暖かさに再開できたことに対する喜びからかテンションが有頂天になってて、あれは恥ずかしかったなぁ……。

 

これは黒歴史ですな、うん。

 

 

 

ま、忘れたいことは脳内から消去しまして、今後のことを考えましょう。

 

 

とりあえず今の授業を聞き流しながら考えていた目標を並べていこうと思う。

 

まずは「自分以外の全員生存」。このトレセンで今後、全焼レベルの火事が起こるのは必須。たぶんだけどこれの原因を排除しても、同じことが起きると思う。つまり建物の老朽化を何らかの方法で防ぎ、火元となった電気系統を全部入れ替えたとしても、違う理由で発火し、結果は同じになると思う。

 

私は死んだとき、意識はしっかりしてたけど何かに押しつぶされるような、ここから絶対に抜け出させない、そんなものが感じられた。たぶんそういうものなんだろう。

 

私の死後はスぺの霊トレーナーという席が用意されてるが、他のみんなは違うだろう。女神サマにも聞いたが私以外は霊になっていなかったようだし、そのまま何もできず死んでしまうしか道はないのかもしれない。

 

元々の規模が小さいのもあるが、三年もここで過ごせば大体の子は顔見知りだし、仲がいい子も多かった。そんな子たちをただ死なせるのは正直言ってイヤだ。あの私たちを押さえつけていたものは何なのか、そしてそこから逃げ出すにはどうすればいいのか。女神サマにでも聞いて、色々準備していく必要があるだろう。取り合えずできることは火事が起きたときの対処法を正しく伝えていくことからかな。

 

 

 

二つ目としては「トレーナーの勉強」。忌まわしい知の女神のせいで無理やり詰め込まれたトレーナーをするために必要な知識は頭の中にある。しかしながらあのサディストのことだ、この知識が本当に使い物になるかわからないし、私が担当することになるのは自慢の妹であるスペシャルウィーク。些細な間違いが取り返しのつかない事件に繋がってしまうかもしれない。そのため、できるだけ新しく、正しい情報を手に入れて私が持たされた知識とすり合わせをしていく必要がある。

 

これをしていく方法としてはまずは校内にある図書館で色々調べながら勉強していく必要があるだろう。ここ自体古い学校だし、蔵書も新しいものは少ないかもしれないがないより別だ。新しい教本とかは今後、買うなり借りるなりしていこうと思う。

 

 

 

三つ目、今のところ最後だが「お金集め」だ。つまりできるだけ多くのレースに出走してその賞金をできるだけもらっていく。理由としてはスぺのためだ。死後、私がどのタイミングまでスぺのトレーナーとして存在できるかは女神サマたちの御気分次第。どうなるかは全く持ってわからない。

 

何らかの理由でスぺが働けなくなった時のことも考えてお金をためておく必要がある。一応実家も総資産だけ見れば結構あるはずなのだが、スぺというオオぐらいのせいで結構傾いているのでそこまで安心できない。まぁ言ってしまえば将来のスぺの食費を稼ごうとしている。………まぁ一応ウチは農場なので設備投資とかやりだすと金がいくらあっても足りない。そこらへんにうまく使ってもらえればいいなぁ、と思ってのこともある。

 

また、二つ目の理由でもあった知識のすり合わせのために必要な情報。これを入手するためにはやっぱり本やネットに頼らないといけない、そのためには色々と買いそろえる必要があるので金が要る。

 

 

 

ま、長々と考えたがたくさんレースに出て勝ちましょうというわけだ。

運よく、というべきか出走してくるライバルたちの作戦や癖は一度目に大体研究し終わっている。時間が経つごとに違いは出てくるだろうが最初の方は何とかなるだろう。また、多くのレースに出走するということは、そのための調整やトレーニングが必要になっていき、頭の中にある知識を、自分を実験台にすることで確かめていけるという利点もある。

 

 

 

 

と、まぁこんなところか。

 

纏めてみると「私以外生存ルート確立」「トレーナー勉強」「資金調達」と言ったところか。

 

並べてみると三つしかないが、どれも大変になりそうですなぁ。

 

 

 

 

ま、できるだけやってみましょうかね。

 

 




〇オースミキャンディ

栗毛のスレンダーボディ。本人よるとスズカよりはあるらしい、B71だが。

やらかしウマーマン。生身の体に戻れると思ってなかったので、普通に生き返れて精神がはるか彼方に行ってしまった。そのせいで羞恥心に悶えているところを発見されてしまう。目標に「自分以外の全員生存」「トレーナーの勉強」「スぺの未来の生活のためにお金集め」の三つを設定し頑張る様子。ちなみに結構なオタク趣味を持っている様子。まぁ死後に動画投稿し始める奴ですし……。特に80、90年代のロボット系が好きな模様。


〇キタノセイドリ(オリジナル)

葦毛のウマ娘。とある部分の成長の余地がないキャンディとは違いある方。

過去?未来?ではキャンディと親友だった様子。普通に性格のいい子なため、キャンディの奇行をスルーし、やさしさをプレゼントした。シンデレラグレイのベルノポジション。


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既知のまだ見ぬ好敵手

「あねうえ! あねうえはちゅうおーというところにはいかないのですか?」

 

 

「えぇフロート。私はこの地に残って戦います。せっかく頂いた推薦ではありましたが、ね。私はこの地に残ることで目標を達成しようと思います。……まぁ近くのトレセンに進学し、そこで走るということですよ。」

 

 

 

 

中央からの推薦、それ自体はこの道を進む者からすれば喉から手が出るほど欲しい物であることは解っている。そして、それを断るというのがどれだけ失礼であるか、ということも。

 

しかしながら自身の力量を考えれば、このまま中央に進むことは何もなせずに埋もれてしまう可能性が非常に高い。親に頂いたこの体、健康な体に不満はないが、少しだけ早熟でありすぎたこの身を恨めしく思ってしまう。何故だかわかってしまったのだ、一度自身の体が大きく成長し、その力量も大きくなった時、もうこれ以後、このように大きく成長できることはない。一度限りの早熟、私の伸びしろがほとんど残されていないことを。

 

おそらく、中央に入学したとしてもあそこは魔境。通用するのも最初の一年。死に物狂いで努力したとしても二年目、クラシックの春ごろには埋もれてしまうだろう。

 

私の夢は寂れてしまったこの街に活気を戻し、豊かにすること。そして、もはや形すら残っていないツバキ家の流れを再興させること。そのためにはどうしても勝利が必要だ。

 

 

自身の成長型を考え、その勝利は中央の勝利とは比べ物にならないかもしれないが、私の夢を叶えられる道である地方に残ることにした。申し訳なさはあるが、後悔はみじんもない。

 

 

 

 

「じゃあフロートもいっしょにはしりたい!」

 

 

「あら、ありがとうフロート。でも私よりも速くなれるあなたはこんなところで小さく走っては駄目よ。もし私と同じ道に進みたいのであれば、もっと大きな目標を持たないとね。」

 

 

そう言いながらフロートの頭をやさしくなでる。

 

 

 

地方で名を挙げるには数多くの勝利が必要だ。

私が生まれ、育ててくれた街に活気を戻すためには中央の奴らに負けないくらい輝かしい成績を治めないといけない。誰もが忘れてしまったこの血筋に日を当てるためには、私達が優秀であることを示さないといけない。

 

幸い、私と違って妹は優秀だ。

私が同じくらいの年齢の時よりも体力があり、速度があり、気概がある。

 

フロートなら私が諦めるしかなかった中央での活躍も簡単なことだろう。

 

 

 

そのためにもまずは私が妹に恥じない走りをしなければならない。

 

 

 

 

 

さぁ、まだ見ぬ者たちよ。

 

 

蹂躙して差し上げましょう。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「んで、なんで夢枕に立たれておるので?」

 

 

『ん~~!! 厳しいお言葉! あ、キャンディ君、私ら神を敬う気ないデショ。私は別にタメでいいけど他の二人はもうちょっと気持ちを込めて話した方がいいよ。』

 

 

「それは憎しみとか怒りとかの感情でしょうか?」

 

 

『うむうむ、やっぱり君、知の奴嫌いだねぇ! そうじゃないと面白くないない。』

 

 

「それで? 今日は何のために来られたので? 正直夢枕に立たれると寝た気がしないので嫌なのですが。」

 

 

『正直でいいねぇ! ま、今回こっちに来たのはアニメ鑑賞会をしようと思っててね。ゴソゴソっと、ジャジャジャジャーン! ウマ箱全巻! 一期+OVA+ニ期の全部をこれから毎日一話ずつ見ていくよん!』

 

 

「これは……スぺ?」

 

 

『お、さすがお姉ちゃん! 成長した姿でも解るんだねぇ! こちらはなんと君が存在しなかった世界をアニメ化したものですねぇ! 一期は君の妹が主人公してるし、普通にアニメとしても面白いから楽しんでね!』

 

 

「いやまぁ私もオタク趣味なのでそれはいいんですけど……、まぁこういうのは見た方が早いか。」

 

 

『うんうん、そういう物わかりのいいとこは私好きだぞぉ。 あ、これ見終わったら【技の女神が教える史実の歴史!】講座もあるから早めに見終わった方がいいよ~。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝

 

 

 

「……どうしたのキャンディちゃん? 見るからに寝不足そうだけど……。」

 

 

「いや、寝たはずなんだけど寝た気がしなくて……。(あ~結局1期全部見てしまった。)」

 

 

「う~ん夢見が悪いのなら安眠効果があるアロマでも使ってみる?」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

いや~、マジか。こことは違う世界みたいだけど私の自慢の妹はアニメになってるとは知らなんだ。あと普通にアニメとして面白かったし一気見してしまった。

 

 

あ、どうも。

 

 

私達のいる世界がアニメ化していることや、自分たちが住んでいるこの世界以外にも平行世界みたいな別世界があること、あと私たちの元が謎の4足歩行生物だったりと、色々なこの世界の真実を知らされてしまい、混乱しまくってるキャンディちゃんだぞ!

 

 

今も混乱しすぎて大体中学二年生ぐらいの子たちが発症する、自身の考えを読まれている前提で話し出すという頭おかしいことをしているぞ! 多分これも黒歴史行きだぞ!

 

やったねキャンディちゃん! 黒歴史が増えるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

…………とまあ色々と変なこと考えたが収穫は二つ。

 

一つ目は例のアニメのおかげでスぺが通ることになる道をある程度知ることができたということ。おかげで色々と目標を設定しやすくなるし、スぺがどれくらいまで強くなれるのかの指標も得れた。……にしてもうちの妹がダービーウマ娘かぁ、ヤバいなぁ……。

 

これは「資金稼ぎ」程度に思っていたレースを、かなり真面目にやって成績残してないとスぺに合わす顔がなくなりそうですなぁ、頑張らねば。

 

 

二つ目は見せられたアニメとは関係ないけど、私のが死んだときに感じていた“押さえつけられている感触”。あれについて技の女神に調査を依頼することができた。あれが何だったのか、また何故私たちが死んだのか。その理由が解るかもしれない。

 

まぁ相手は女神だしちゃんと教えてもらえるかはわからんのであんまり期待しないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

と、それよりも今日は選抜レースがある日だった。これからのことを考えるのもいいけど、一応今を生きているウマ娘ですし、そこらへんもちゃんとしとかないといけませんねぇ!

 

 

 

……それに私のライバルだった"あいつ"との初顔合わせもこのレースだしね。

 

 

 

 

「キャンディちゃん~! そろそろ始まるらしいよ~!」

 

 

「は~い! 今行く~!」

 

 

 

 

さぁ、競い合おうか、ツバキプリンセス。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

選抜レース。中央でも地方でも開催される理由は同じであるが、その力の入れようは全く違う。

 

 

 

この選抜レースに限って言われてしまうことがある。

 

中央で行われるのがレースだとすれば、地方で行われるのはお遊戯だ。

 

 

特にこの門別トレセンでは地域のウマ娘の母数の減少により、生徒数が毎年減少。箱と教員はいるが、生徒がいないという状態に陥りかけている。ここで走る子たちにとってはどのような結果であってもトレーナーが付いてくれるという状態になっているため、気のゆるみが非常に大きい

 

 

史実とは違い、この世界で駆ける者たちはウマ娘。強く、気持ちの差が出てしまうのは仕方ないのかもしれない。

 

 

 

 

 

ただ、そこに中央で戦う者たちと同じほどの熱量を持ったウマ娘を二人。

 

 

 

一人は落ちぶれた姫。

 

人が少なくなり、活気がなくなってきたこの街を、この学園を、自身の走りによって盛り上げようと決意した者。

 

美しい青髪を靡かせながら、戦姫が今、ターフに降り立つ。

 

 

 

一人は亡者。

 

一度死に、蘇ったとしても終点が見えている者。終わりが見えているからこそ輝ける、出し切れる。

 

燃え尽きたはずの亡者が冥府より這い上がる。

 

 

 

 

こんな面白そうな二人を一つのレースに放りこんだらどうなると思う?

 

 

 

 




〇ツバキプリンセス(オリジナル)

青髪のウマ娘。胸部装甲ヨシ!

中央に推薦枠で合格するも、自身の早熟さと中央の厳しさを理解していたため断念。元々の目標であった地方を盛り上げる、という目標を”中央で活躍して”、から”地方で活躍して”に変更。自身が早熟であることは理解しているが、それが努力しない理由にはならないと言い張る強い子。実際地方では負けなしなのだが、戦法や癖が一度目の生で学習してきたキャンディにすべてバレている模様。今のところお嬢様キャラだが後々キャンディに文化侵食される予定がある。


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本編
PART1


初投稿なのでやさしい目で見てください。


ほーい、じゃあウマ娘プリティーダービー 栄光のウイニングライブをやっていきますぞ。

こちらのゲーム2021年にスマホゲームとして世に出されたウマ娘プリティーダービーの据え置き版です。

 

このゲームアプリ版のスペック向上、FPS向上、シナリオの大幅追加、オリキャラの作成など

なんで据え置き版でやらせてくれないんですか!、というユーザーの我儘を余すことなく詰め込んでくれた今世紀最大の神ゲーでございます。

 

まぁそんなことこの動画を見ている方は知っていると思うので早速やっていきます。

あ、それとこの動画は攻略であってTASとかRTAとかはしないから注意してくれよな!

 

今回からやっていくシナリオはストーリーシナリオの幼少期編から始めていきますぞ!

こちらのストーリーシナリオはトレーナー目線の学園入学から始めていく学園編と幼少期からウマ娘を操作していく二つのパターンがあります。ちなみにトレーナー編をクリアすると、学園編をウマ娘の視点でもプレイすることができるようになります。

 

ま、今回は幼少期から始めますがね、この理由は単に最終的なステータスが幼少期から始めた方が強くなりやすいからですな、たまに三女神がニャル様化してひっくり返ることはよくありますが…

 

そして、今回使用していくキャラはこちら、日本総大将ことスペシャルウィークです。

アニメ一期の主人公ということもあり、どのシナリオで始めてもイベント盛りだくさんで楽しい子です。

 

 

今回のプレイでは<称号:日本の総大将>の上位互換、<称号:無敗の総大将>をめざして走っていくぞ! こちらの称号は日本の総大将の条件にプラスしてその名の通りすべての参加した公式のレースで一着を取った上に

 

凱旋門賞を勝利する必要があります。

 

 

…は?、凱旋門賞なんて勝てるわけないだろ!いい加減にしろ!

 

 

なんて言っていますが育成次第では何とかなると思います、多分……

 

それでは継承はシンボリルドルフとディープインパクトを選択して開始だ!

 

では長ったらしいスキップ不可のOPを後ろに流しながら継承について説明していきましょう。

ちなみにこのゲームのOPはスキップ不可です、何しろ膨大な量のデータを裏でロードしないといけないので、仕方がないことですが、このゲーム唯一の欠点ですね。

 

ホイ、それで継承なのですが色々と過去の育成の結果スピードと芝に補正のかかるシンボリルドルフと差し特性とスタミナに補正のかかるディープインパクトをご用意しております。

 

アプリ版では権利関係で出せなかったディープですが今作では登場してますな、権利関係者に感謝感激雨あられ。

 

このシナリオでは継承の恩恵が得られるのはトレセン入学以降のためこのような形としました。

スペシャルウィークはパワーと根性に成長補正がかかっているので入学までに成長させる予定です。

 

なお、大事なスキルに関してですが会長の方は皆様ご存じの終盤に追い抜くことで加速する【汝、皇帝の神威を見よ】という逃げ適正以外には大助かりなスキルを、ディープちゃんの方は【空駆ける英雄】という最終直線で加速するスキルをご用意しております。

 

いやほんとにこの継承のため、星3を集める地獄の周回は来るものがありました……

こちらの画像を見ていただけるとわかると思うのですが、殿堂入り画面に所狭しと並ぶ会長と英雄……

 

どんだけ時間がかかったのか考えたくありませんね

 

はい後ろでOPが終わりましたね、ここから皆様お待ちかねのリセのお時間です。

 

ここではスぺちゃんの個性のリセを行っていきます、アプリ版ではコンディションとされていたのがそのキャラごとに特性をもって生まれてきます、これは良い方も悪い方もついてくる可能性があるのでリセ地点となるわけですね、解りにくい方は某国民的二頭身野球するより恋愛した方が強くなる野球ゲームの育成で天才を引くまでリセ、だと思っていただければよいかと。

 

ちなみにトレセン入学後にはなりますが個性の消去や入手が可能になります。しかしかなり練習の時間が取られるので、ならばここでリセしてしまおうという魂胆です。

 

今回走っていくスペシャルウィークはパワーに補正のある[過食]や根性に補正がかかる[ド根性]などを持ちやすいですが、今回狙っていく個性は[練習好き]と[愛嬌]と[丈夫な体]です。

 

[練習好き]はケガ率が低下する[練習上手]とは違い、[なまけ癖]の習得率が下がり、確率で練習時に調子が上がるようになります、[愛嬌]はアプリ版でもありましたが他のキャラの好感度が上がりやすくなります。

アプリ版とは違いサポートカードが廃止されましたが、変わらずこちらも必須コンデションとなります。最後に[丈夫な体]ですが引退や長期休養しなければならないような故障の発生率が低下します、このゲームアプリ版とは違い、ケガが悪化したり運が悪かったりすると沈黙の日曜日などの悲劇が発生することがございますので十分な注意を払わなければなりません、もうあんなものは見たくない……

 

 

 

長々と話してしまいましたがそれでは記念すべき第1回目の個性ガチャ……ドン!

 

 

一回目

個性:[過食]、[太り気味]

 

あら、外れですね、まぁ最初ですからこんなもんでしょ、次行きますよー

 

 

二回目

個性:[練習嫌い]

 

う~ん、反対次!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

277回目

個性:[愛嬌][練習好き][鉄人][大食漢]

 

うん……?

 

オゥ! 思ったより早く来ましたね! 個人的に4桁はかかるのでないかと思っていましたが、こいつは幸先がよし!

ちなですが[鉄人]は[丈夫な体]の完全上位互換ですね、基本的にケガしませんので大安心です。

 

 

 

はい、まぁわかってますって、こちらの[大食漢]ですが皆様何となくわかってる方もいると思いますが[過食]の上位互換にして、下位互換の非常にまず味な個性です。

 

こちらの個性はまず、[過食]がパワーに10%の補正のところ、パワーに30%、スピードに-20%の補正が付きます、スぺちゃんは差しウマ娘ですがスピードがないと最後の直線で速度が出し切れないので、どうしても一定量は必要です……、RTAではないですが一応チャートとか作ってたんですけどねぇ……、一応言っておきましょうか。

 

 

あぁ、もうチャートが崩れちゃう~

 

 

はい、なんか違う気がしますが、大始祖から伝わるお家芸をすましました。まぁこの個性の凶悪なところはステータスだけでなく、他にもありますがとりあえず2点ご紹介、一つ目はかなりの頻度で[太り気味]を習得します、こちらの[太り気味]はパワー系やスタミナ系の練習をこなすことで解消はできますが、憎むべきはその発生率、なんと毎ターンに30%の確率で発生します。

 

はい、もうぶっ壊れですね、おへそミッフィーちゃんandおなかミルタンクちゃんの完成です。

wiki君によるとスぺちゃんやオグリなどの大食い系のウマ娘は一定で発生するようです。

 

そしてもう一つは家庭財政の悪化です、このゲーム家庭財政のステータスが存在していて4段階に分かれています。

富豪、裕福、普通、貧乏ですね、例としてはメジロ家のウマ娘は富豪になります。

スぺちゃんちの基本は普通ですが、あら不思議、この[大食漢]のおかげでワンランクダウン!

貧乏になります、悲しいなぁ……、家庭財政は毎月もらえるお小遣いやトレセン学園の入学にもかかわってくるので

非常に大事なのですが……、大丈夫かな、これ……

 

 

まぁ貧乏でも一応利点はありますのでその利点が出てきたときにでも説明します。

 

 

じゃ、このスぺちゃんで始めて行きましょうかね…

 



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PART2

はーい、皆さまおはこんばんちわ、投稿者です。

前回はリセだけで終わってしまいましたが今回からはバリバリ進むぞー

 

現在はプレイしていくスぺちゃんが決まり、小学校入学から始めていきます。

今は入学式中ですね、小さい彼女たちを見られるのもこのゲームの強みかと思います。

 

ま、画面見てもらえばわかると思いますがど田舎の小学校、新入生はスぺちゃんだけで

入学式に集まっている全校生徒も10人程度です、マジで少ないな…

ちなみにアニメ版と同じようにウマ娘はスぺちゃんだけ、練習相手が居りませぬ。

 

さて、ここら辺は特にイベントがないので入学式終わりで帰宅まで倍速していきましょう。

 

>帰宅中…

 

 

ほい、帰宅、ここでお母ちゃんから入学祝として豚の貯金箱と百円をいただきました。

ここから毎月いただけるようになります、ちなみに家庭財政が普通で500円、裕福で1000円、富豪で3000円です。お小遣いの使い方は、トレーニング用品や体力回復用に食べ物を買ったりするのが基本ですが、

ここはド田舎、買えるものは特にありません。まぁそれでも通販とかで買えないことはないですが…

 

ちなみに家庭財政が普通以上だとお手伝いでお金がもらえることもありますがうちのスぺちゃんには関係ありません、悲しいなぁ

 

じゃここからスぺちゃんの日常を過ごしていきましょうか

基本方針としましては[大食漢]のこともありますので、幼少期はスピードの育成をあきらめようかと思います。

トレセン学園で何とかなるし…、そんなわけで行うトレーニングは専ら、畑のお手伝いです。

運よく?、スぺちゃんの実家は農家さんなので足腰を鍛えやすい農作業が簡単にできます。

 

もう少し年齢が上がればおもりを持ちながら、などの加重トレーニングも行っていきますが、[鉄人]をもっているとはいえまだ幼子、それはやめておきましょう。

 

 

というわけで、お母ちゃん、オラ、畑仕事すっぞ! 手伝わせてけれ!

 

>トレーニング中…

 

 

はい、お手伝い終了です、ご飯の時間ですぞ!

通常なら食事の量などもこちらで決めることができますが[大食漢]のせいで超盛から変更不可です。

 

>食事中

>食べ過ぎてしまった!

>[太り気味]を獲得!

 

 

はい、来ました、早速出てきやがったな、です、はち切れそうなお腹をだして寝転がってますね

ウシ娘かな?、ほらお母ちゃんもあきれてっぞ!

 

こんな風に食べ過ぎが重なっていくと[太り気味]を入手していきます、前回言ってた3割はこのことだったんですねぇ、

 

あと、スぺちゃん、飯食ったから眠いの解るけどこれから勉強タイムだぞ、スぺの重い体を引きずって教科書を開きます、メジロ家だったりすると家庭教師なんてものが付きますがスぺちゃんちでは無理です。参考書とかもお小遣いを使用して購入するので、当分無理ですね。なので当分は教科書に頼りながら賢さを上げていきます。一応ゲーム内にて、最低値の上り幅ですが全体的に上がるのでウマ味です。

ウマだけに。

 

そういえば賢さについての解説を忘れていたのでしますぞ!、賢さはレースに関係するものと学校成績に関連するものと二つあります、動画内では面倒なのでまとめて賢さと呼んでいると思いますがそちらはご容赦を…、幼少期、つまり小学生時代は4教科、トレセンに上がると5教科になります。参考書やその他のアイテムなどは学校成績の方の賢さは上がりますが、教科ごとに買いそろえる必要やレースで使う賢さを微減させてしまうものもあります。ちなみに教科書は入学時に手に入るもので、全ての強化、レース時の賢さも上昇させてくれるのでお助けアイテムでもあります。それと賢さ上昇系の練習すべてにおけることですが体力も微回復してくれるので助かりますな。

 

>勉強中…

>眠くなってきた…

 

 

ファ!不味いですよ、ここは連打で叩き起こすのだ!

 

>寝てしまった…

 

 

あちゃー、寝ちゃいましたね、こんな風に自身の賢さが使用したアイテムの基準値より低めだとこのように眠っちゃいます、ま、現在最低値だからしかたないね。

お母ちゃんが眠ってしまったスぺちゃんを寝室まで運びまして本日は以上となります、次回も見てくれよな!

 

 

 

 

 

 

 

【お母ちゃんの日記】

 

今日からスぺも小学生になった、地元の小さな学校で、新入生もスぺだけだったから入学式がどうなるかと思っていたけど、思ったよりもちゃんとしたもので安心した。

 

最初にあの子を引き取ったときは親友の娘、としか思ってはいなかったけども、今では私の自慢の娘だと胸を張って言える。想像以上の大食らいで、色々と大変だったけどここまで大きくなってくれたことにすごく感謝してる、あんたがずっと体の弱さに悩んでいて、結局レースに出る前にあきらめるしかなかったからか、スぺもそうなんじゃないかと思っていたけどここまで大きなけがやカゼ知らずの健康体でびっくりしたよ。あんたが見守ってくれていたからかもしれないね。

 

あの子の晴れ姿をあいつにも見せてやりたかったよ。

 

 

スぺも小学生に上がり、なにか変化があったのか、今日は自分から仕事の手伝いをすると言い出した。これまでは頼んだとしても途中でやめてしまったり、少なくとも自分からするなんてことはなかった、しかも今日は頼んだこと以上なことをやっていたし、本当に驚いた、子供っていうのは気が付いた時にはこんなにも成長するもんなんだねぇ。

 

もっと驚いたことはいつも通りどこに入ってるんだ?というぐらい食べた後に、教科書を開いて勉強し始めたことだ、自分の目を疑ってしまったよ、いつも食べた後はテレビ見てぐだぐだしていたのに。

 

ま、そのあと今日色々あって疲れていたのかすぐに眠っちゃったけどね

ちょっと面白かったから笑っちゃった。

 

今日はまだうまくいかなかったかもしれないけど、明日はもっとうまくできるようになるよ

だから今日はゆっくりお休み、スぺ。

 

 



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PART3

ほいほい、最近リアル競馬で大爆死した投稿者ですよ~、今回もよろしくお願いします。

 

前回からで、勉強中に眠ってしまったスぺちゃんが次の日に起きるところからですね。

スぺちゃんのお家は農家さんなのでかなり早めの時間にたたき起こされます、そこからお手伝いです。

 

ここで真面目にしているとちゃんとした練習だとみなされてごく微量ですがステータス上昇が期待できます。

オラ、今日も朝からお手伝いすっゾ!

 

>お手伝い中…

 

 

ほいほい、無事にできましたね、じゃ、こっから通学です、このゲーム時間管理もしっかりしているので学校までの距離と自身のステータスから比較してかかる時間を計測しています、もちろんハイペースで移動したりすることで時間短縮も可能です。

 

 

それで登校しようと思うのですが自宅から学校までの距離はランダムなので一体どれほどかかるのか…

 

 

>学校まで15㎞です

>ペースはどうしますか?

 

 

え…、15キロですか…

 

いや、ちょっと待ってくださいよ!、わたくし、試走でも遠くて2キロぐらいでしたよ!

それが何で15キロって、今何時だ!

 

>7時です(8時30までに登校しましょう)

 

 

ということは1時間半ですか、まあそれぐらいあれば…、不可能ですね! 予定ではこの通学時間中に普通ペースで登校しながら歩きながら教科書を読むつもりでしたが(歩きながらの読書とかスマホとかは危ないからやめとくんだゾ!)不可能ですね、コレワァ…

 

諦めて軽いジョギングペースで行きましょう、これなら何とか間に合うはずです。ある程度成長したあとではこの距離も比較的短い時間で走り切ることはできると思いますが、今のスぺちゃんはピカピカの一年生、いくらウマ娘といってもかなりギリギリなラインです。

 

 

>登校中…

 

 

さて、まだ学年も低く持っていく教科書類も少ないので何とかなりそうですが、体力の減り方がやばいですね。このままだと授業中に寝てしまいそうです、視聴者の方々の中には、親に送ってもらえよ、とコメントをしている方もいるとは思いますが、ここは頑張って徒歩で行きます。

 

想定では1㎞ほどでしたが、15㎞ともなるとかなりのステータスアップが望めます、体力の消費量が大きく、授業を集中して受けることができずに、学力の問題が立ちはだかりそうですが、そこは何とかしていきましょう。最悪放課後の練習時間をすべて勉強時間に充てれば、最低限度ぎりぎりで耐えると思います。

 

 

>学校に着いた!(現在8時27分)

 

 

うおぉい!、かなりギリギリですな、しかも予想通り体力が激減してますねこれは耐えられるかなぁ

 

 

>授業中…

>うとうと…

>寝てしまった…

 

 

案の定寝てしまいましたね、う~んこれはステータスがある程度伸びるまで悪循環から抜け出せそうにないなぁ。

うーん、今回はここまでかな、次回は少し時間を飛ばしていこうと思います、ではまた!

 

 

 

 

 

 

 

動画時間が思ったより短かったのでちょっとばかしお話を、こちらのゲームですが決められたシナリオ中継地点や終了地点はなく、プレイヤーの自由で育成を終了することはできます。まぁ一応トレセン学園卒業までという区切りはありますが。まぁつまりアプリ版のように学園入学からジュニア級、クラシック級、シニア級の3年間だけで育成を終えることは可能ですし、メイクデビューだけ出走して育成をやめることもできます。

 

この実況ではジュニア級~シニア級+海外遠征の1年までを育成期間にするつもりです。

 

 

それでこの後流すものなのですが、育成終了時にエンドロールが流れるのですがそれがまたカッコいいんです! JRA風のCMみたいな感じだと言えば解りやすいでしょうか?

 

いまからご覧いただくのはテストプレイ時に完成したスペシャルウィークのエンドロールです。一応こんな感じになるよというのをわかっていただきたくて載せました。

今回も同じ道をたどるとは思いませんが一応参考までに…

 

 

 

 

 

 

 

皇帝、シンボリルドルフ

 

史上最強の7冠ウマ娘という壁はあまりにも高かった

 

名だたる英雄たちが挑み、不可能だと諦めてしまった

 

 

 

しかし「本当の敵は諦めだ」そうあざ笑うように

 

軽々と越えてしまったウマ娘がいる

 

 

スペシャルウィーク

 

その肉体は努力の塊

周りはただ、異常だと評した

 

 

皐月賞、日本ダービー、菊花賞

大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念

天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念

 

 

挑まれた勝負、そのすべてを制し

史上初の9冠を制した彼女は

新たな敵を求めて世界へ遠征し

 

 

KGVI & QES、凱旋門賞

 

 

芝の頂点を取った

 

ただ一度の敗走もなく、ただ、得るのは勝利のみ

 

人は彼女を、無敗の総大将と呼んだ

 



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PART4

今更だけど見切り発車してるから更新は遅めです
しかし失踪だけせぬ、その気持ちで頑張っていきます


こんにちアリーヴェデルチ! 出会ってすぐにさよならなウマ娘実況プレイやってくよー

今日は前回からかなり時間が空いて、スぺちゃんが小学3年生になったときからのスタートです。

ちなみにこの間の空白期間はダイジェストで見せていると思いますが、まぁ[太り気味]と睡魔との戦いでした。

 

学校に行けば、体力が減少し、眠り、授業中に寝て、帰宅し、お手伝いというトレーニングをし、飯食って勉強させようとすればすぐに寝る…

 

そして飯はほぼ毎日食べすぎ判定をくらい、[太り気味]が発生して、それを直すためのトレーニングを行ったせいで体力が大幅に減ってしまい、夕食後に勉強ができない…

 

この悪循環の繰り返しでした。おかげさまでご覧くださいこのステータス、開始時点と現在を比べるとスピードが全く伸びていない代わりにスタミナとパワーの上り幅がすごいことになっています

 

賢さは…、うん、お察しください、現在擁護することができないほどにおバカちゃんです。

ちなですが、この状態、非常にヤバいですよ!、状態でして皆様ご存じの通り、トレセン学園に入学するには試験がございます、当たり前だよなぁ!

 

 

んでこの試験3つの内容がございまして、筆記、面接、実技でございます、一つずつ解説していくと

 

筆記はその名の通り、学力筆記試験です、内容はそこまで難しくはなくプレーヤーキャラの学年に応じた難易度のものが出題されます、ですので地元の学校でよほどひどい成績を取っていない限りは大丈夫です。

 

ちなみにですがこの試験は最寄りの試験場、もしくは各学校で受験することができるのでわざわざ府中まで行く必要はありません、時間的なロスが出ないのがありがたいですね

 

お次は、面接、こちらはいたって普通の面接であり、そのウマ娘に輝くところ、所謂アイドル性があるかを見極められます。こちらは心配する必要がほとんどなく、ハルウララなどのレースがあまり得意でないウマ娘を入学させるときに使われる救済処置みたいなものです。

 

最後に、実技です。新入学生として受験するなら、各地にある地方レース場での試験、編入生として受験するなら、実際に走っているときの動画とタイムの提出が求められます。まぁゲームとしては新入学生の方は簡単な模擬レース、編入生の方はタイムアタックです。

 

こちらはそのウマ娘によって求められるものは違いますがかなり難しめに設定されており、最初の挫折ポイントですね

 

 

それでこの3つの試験のうち、一つでも合格できたならば入学はできるのですが、その結果によってバフ、デバフがかかります、例えば筆記で落ちると学園での授業についていけなかったり、面接を落とすと他のウマ娘との距離感がうまくつかめず孤立してしまったりします。

 

わたくし自作のチャートではこの試験を全クリすることでバフ全積みスタートダッシュを決める予定なので頑張りたいところなのですが、現在のスぺちゃんの様子を見てみましょう。

 

 

>スピード:F

 スタミナ:D+

 パワー :C

 根性  :D

 賢さ  :F+

 

>総合学力:F

 

 

 

えぇ、ご覧のようにやばい感じです、現在3年生なので6年になるまではオールBぐらいにしておきたいですね。

 

 

そういえばこの動画をご覧の方は既プレイ勢の方が多いと思うので説明しておりませんでしたが、一応未プレイ勢の方に説明を、しておきますとこの据え置き版ではG~SSまでステータスの範囲がありG、G+、F、F+~のように段階ごとに上がっていく感じです。アプリ版のように細かい数字を見ることも可能ですが、パッと見で解りやすいこちらを表記してます。なお、このステータスはトレセン学園入学時にすべて3段階下がるので、アプリ版からの方は高すぎぃ!、と驚かないでくださいまし、BだとD+まで下がる感じですね。

 

 

なお学力の方ですがFは大体小学1年生ぐらいです…、授業中寝てるからなぁ…

 

 

そんなアタマよわよわスぺちゃんに朗報です!、なんとですねステータスの上昇と年齢が上がったことによる体の成長がうまく重なり、登校時の体力減少が減り、授業中に眠らなくても何とかなるようになりました!

 

 

おかげさまで見てください!いつも授業中にねむねむしていたスぺちゃんがお目めぱっちりで受講しております!

これには先生もびっくり!

 

 

>授業中…

>???

>内容が難しすぎたようだ…

 

>先生が懇切丁寧に教えてくれた!

>何とか理解した!

 

 

この学校は生徒数が少ないのですべての学年をまとめて授業していくタイプの学校なので先生もつきっきりで面倒見てくれます。そのおかげで、「ありゃりゃ、授業態度は改善したけど内容の方はちんぷんかんぷんだったみたいですね、ま、2年分の遅れが存在してるし仕方ないね!」ということにはなりにくいです。小人数制のいいところですねぇ。

 

お、授業が終わったみたいですね、んじゃ帰りましょうね

 

 

>帰宅中…

 

 

ただいま!お母ちゃん!今からオラ、手伝いすっゾ!

 

 

>お手伝い中…

 

 

よしよし、普通にできるようになってきましたね。

 

そろそろですかねぇ…、よっしゃ、決めました、次回からは[太り気味]がついてない時はスピード練習をしていこうと思います。この時期で可能なのはダッシュですね。それではお母ちゃんに許可もらいに行きましょう。

 

オッス、お母ちゃん!明日からお手伝いの時間減らしていいか?

へ? 何するかって? オラもっと強くなりてぇ!、だからもっと走り込みをしてぇんだ!

 

>交渉中…

>交渉に成功した!

 

 

おっと、これは幸先がいいですね、明日からこれでスピード練習ができそうです。

んじゃ今回はこんなところで、次回も時間を飛ばしまして6年生に上がったときから始めていきましょう。

でわでわ~

 

 

 

 

 

【お母ちゃんの回想】

 

スぺは入学したあの日からずっと同じことを繰り返し続けている。

学校がある日は朝、仕事柄早く起きないといけない私と同じ時間に起き、私の手伝いをしてから走って学校に行く。これだけなら普通のいい子なのだが家から学校までの距離は15㎞近くある、いつも後ろからついていってはいるが毎日毎日、1年生の時から同じことをしている。いくらウマ娘といってもおかしいのではないだろうかと思う。

 

入学式の次の登校日、朝早くから仕事を手伝ってくれたし、家から学校までかなりの距離がある。ある程度学年が上がるまでは車で送り迎えをしようと思っていたとき、気がつけばスぺが家にいなかった。

 

家中探し回って、脱ぎ捨てられたスぺ用の作業服となくなったランドセルと用意しておいた服。これでスぺが学校に行ったことにやっと気が付いた。

 

学校へ連絡してスぺが学校に着いたら連絡してくれと電話してから、慌てて車に飛び乗ってスぺが通りそうな道を片っ端から探した。家から学校までちょうど中間ぐらいで見つけたとき、スぺは走りながら学校に向かっていた。

 

その姿を見たときひどく安心したのを覚えている。

 

 

「やぁ、頑張り屋のお嬢さん、乗っていきませんか?」

 

「あ、お母ちゃん! どうしたの、仕事は?」

 

「仕事は、って…、あんたが心配で見に来たんだよ。ほら、さっさと乗りな、送ってくから」

 

「大丈夫! 私走っていくから! もっと走って強く、速くなりたいの!」

 

 

そう言ってスぺはまた学校に向かって走って行ってしまった。

それから私の少しおかしな送り迎えは続いている。スぺが毎朝走って学校に行くのを車で後ろから追いかけ、帰るときには校門近くで待っていて、家まで車で追いかける。

 

いくら車で送っていくよ、と言っても聞かず自分で走って行ってしまうので説得するのはもうあきらめた。せめて何かあったときのために後ろからついていくことにしている。

 

ガソリン代が馬鹿にならないので友人からもらった原付にしたり、自分も一緒に走ったりしたが、その間に気が付いたことは日に日にスぺの学校に着く時間が早くなってきていることだ。ちょっとずつタイムが縮んでいるのに気が付くと次の日からはわざわざ時計で計り、メモをつけてみると一日進むごとに数秒単位で到着する時間が縮んでいるのだ。毎日、必ずだ。

 

空恐ろしいものだったが、よく考えれば私はウマ娘、というか子供を育てるのはスぺが初めてだったし、ちゃんとウマ娘を見たのもスぺの母親であるあいつぐらいだったのを思い出し、もしかしたらこれが普通なのではと思った。いやそうに違いない。詳しくはよく知らないがウマ娘は例の野菜人みたいに強くなっていくのかもしれない、もし違ったとしてもスぺの母親であるあいつは、ケガさえなければすごいウマ娘になっていたかもしれない、という話を聞いたことがある。つまりあいつ譲りのスぺの才能がすごかったというわけだ。

 

気づいたその時はそう思っていた。

 

 

いつの間に覚えたのか、スぺの持つ才能なのか、それともウマ娘としての本能がそうさせているのかはわからないがスぺは一度も休むことなく同じペースで毎日休むことなく走り続けている。

 

そんな、私が何か間違ってしまったのだろうか、朝いつも走っているし仕事の手伝いをしなくてもいいのではと思い、手伝うことはないよ、といっても私がやろうとしていたことを終わらせていたこともある。

 

ほかの保護者の方にも聞いたが、やはりこのぐらいの時期の子供は思いっきり遊んでいることが普通みたいだ。ウマ娘のことはわからないが、自分もそうだったし、自身の考えていることが間違っていないこともわかる。

 

スぺは何かがおかしい。年頃の女の子なんだ、もっと遊んでいてもいいんじゃないかと思う。

学校での生活を聞いてみれば、授業は真面目に聞こうとしているが、どこか疲れているらしくうとうとしていることが多かったらしいが、最近はそれも少なくなり、真面目にしているそうだ。

 

しかし、交友関係はそこまで良くないらしく、[愛嬌]があって誰からも好かれているらしいが、彼女自身はどこか壁があるように思える、放課後も誰かと遊ぶことはせずにすぐに帰り、休み時間も基本うとうとしているか教科書を見ていると担任の先生から聞かされた。

 

スぺは何か、焦っているのだろうか?

 

 

そんなことを考えながら、いつスぺにこのことを聞こうか、どのように話せばスぺが傷つかなくて済むか、どうすればスぺが幸せになれるのか、そんなことを考えていた時、スぺから大事な話があるといわれた。

 

 

話は明日からお手伝いをしなくてもいいか、ということだった。

このことに少し驚いた私だったが、この機を逃すか、と思い色々とスぺの思いをスぺが傷つかないよう、不安に思わないよう、やさしく聞いてみた。

 

スぺは速く、強いウマ娘になりたいそうだ。昔一緒にテレビで見た日本ダービー、それが頭から離れないらしい。

 

「あそこで走っている人たちみたいに速くなりたい、強くなりたい、カッコよくなりたい。

そのためには小さい時からたくさん練習して、たくさん勉強して、たくさん食べれば強くなれる、そう思ったの。それで毎日やってみたら、自分が毎日少しずつだけど強くなっている気がする。だから毎日続けるの!」

 

スぺは私が思っていたよりもずっと成長していたみたいだ。スぺは目標に向かってもう走り続けている。

ならば親である私が応援しないでどうするか。

 

スぺの夢がかなうように色々と私も考えてみることにした。まずはウマ娘のトレーニング方法について色々調べてみることにする。

 

気がつけば、思い悩んでいた私の心は晴れていた。




感想、評価の程お願いいたします。


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PART5

現在アンケートを行っております。
よろしければご参加ください。

追記:誤字報告してくださった怪猫蜜佳 様爆霊地獄₹97 様 幽綺様 様、ありがとうございます!
こんなに気が付かないものなんですね…
今後も注意していきます。


皆さま、どうもどうも、ど~も君、今日もスぺちゃんの育成始めていきますよ。

それにしても初めて実況上げてみたんですが、思ったよりも見てくださる方が多くて感謝感激雨霰でございます。

失踪しないように頑張るタイ!

 

んじゃ、今回もやっていきましょう。前回は3年生まで進んだスぺちゃんですが、今回も大きく飛ばして6年生からのスぺちゃんです。かなり単調な毎日でしたのでカットしちゃいました。一応どんなイベントがあったのかご説明すると、お手伝い以外の練習をし始めたおかげで、お母ちゃんのドキドキ!スパルタ練習が開始されました。アニメ版であった、タイヤ引きとか水風船避けとかですね。これのおかげでステータスの伸びがウマ味でした、ウマだけに…

 

失礼しました、会長の呪いが…、ま、そのおかげで結構いいステータスになっています。

 

 

>スピード:D+

 スタミナ:B

 パワー :B+

 根性  :C+

 賢さ  :D

>総合学力:D+

 

とこんな感じです、アプリ版と同じでCランク以上は上がりにくくなるので、遅いように感じる方もいるかとは思いますが、かなりいい感じですね。スピードが弱点になっていますが、それは残り一年で何とかしようと思います。

 

で、問題なのが学力の方です。ちょっと体力管理を失敗してしまったのかテストプレイ時よりもお母ちゃんの課す練習での体力消費が大きく、予定していた夕食後の勉強があんまりできませんでした。

これも私の調査力不足が招いたこと、本当に申し訳ない…、だが私は謝らない!

 

まぁふざけるのも大概にして、そろそろ総合学力の方を上げていきましょう。現在6年生になったばかりのスぺちゃんには来年の初めにトレセン学園の入試試験が待っています。

学力試験、筆記試験に無事、合格するには総合学力がC以上必要になりますが、入学後のとある予定を考えるともう2ランク上のB以上には上げたいところです。そのためには勉強するほかありませんが、スぺちゃんがとれる方法は一つしかありません。そう教科書で勉強です。

 

一応、毎月お母ちゃんから頂いているお小遣いですが、全く使ってないのですが月100円なのでスぺちゃんのお財布には6000円しかありません。こちらで参考書などの勉強用アイテムを購入してもいいのですが、こちらもトレセン入学後の使い道が決まっているので手を付けることができません。

 

そうつまりスぺちゃんは教科書だけを引っ提げてトレセン学園に入学する必要がございます。

いざ言ってみるとやばいこと言ってんな…

 

そんなわけでお母ちゃん!そろそろオラ、受験勉強すっゾ!だから練習は控えめでお願いするだ!

 

 

>交渉中…

>交渉に成功した!

 

 

おっしゃ、無事に成功しましたね、後顧の憂いもなくなりましたし、登校しましょうか。

そういえばですが登校時間のことですが、無事に授業中に眠らなくても済む体力消費&短時間での登校に成功しています。途中からちゃんと計ってなかったので詳しい時間は解りませんが、おそらく20分は切ってるんじゃないですかねぇ、んじゃ登校して、学力を稼ぎに行きますかねぇ

 

 

>登校中…

>無事についた

>早めについたが何をしようか…

 

 

はい、このように早めに学校に着くと自由時間が生まれます。投稿者がスぺちゃんと同じくらいの時は普通に遊んでいましたが、スぺちゃんは学力を上げるために勉強です。

 

>教科書を使って勉強することにした

>勉強中…

 

>勉強をしていると先生が話しかけてきた!

 

 

あれ、おかしいですね。何かイベントに引っかかったかな…

 

「スぺちゃん、今年、中央のトレセン学園の入試を受けるんでしょ。だったらこれを使ってよ!」

 

おぉ、担任の先生からアイテムいただきましたね、これは…

 

>参考書を手に入れた!

 

参考書じゃないですか!こいつがあればレース時に使用する賢さはちょっと減少しますが学力の上がり方は団地になりますよ!先生!ありがとナス!

 

「いえいえ、いいんですよ、スぺちゃんいつも頑張ってるから何か応援したくて。こんなことしかできないけど頑張ってね!」

 

いえいえ、先生、十分以上でごぜえます。この会話の裏でちょっとwiki見てたんですが、どうも好感度の影響みたいですね。学校の先生などのキャラ、一定以上の好感度を稼いでいるとこのように勉強に役立つアイテムを確率でくれるみたいです。小学校の先生とか友人とかはトレセン学園に行けば会う機会が消滅するので特に友好関係を結ぼうとかはしなかったんですが、[愛嬌]のおかげか好感度がたまっていたみたいですね。非常にウマ味です。

 

では早速こいつを使って勉強していきましょう。

 

ちょっと早い気もしますが今回はここまでです。次回はトレセン学園入学試験になると思います、ではまた~

 

 

 

 

【担任の先生視点】

 

私がこの学校に赴任してきてから今日でちょうど5年、6年目に入る。新任教師としてこの学校に就職したが、全校生徒数が両手で数えられるほどの小規模な学校に赴任するとは思わなかった。

 

最初は色々と不安だったが、少人数のおかげで生徒一人一人にかけられる時間の量が多いのが私にあっていたのか、生徒たちと楽しくやらせてもらっている。

 

不安なのはここ二、三年新入生が入ってきていないのでこの学校大丈夫なのかなということだが…

まぁ何とかなるだろう。

 

 

私が赴任した時に一緒に入学した女の子、ウマ娘のスペシャルウィークちゃんは私と一緒に成長してきた子であり、ちょっと手のかかる妹のように思っている。

 

スぺちゃんは今では真面目で、みんなに愛されるようないい子だが、入学した時はかなりの問題児だった。

 

何てったって、登校日初日にスぺちゃんのお母さんから「どこかに行ってしまった」という電話がくるんだもの。

そのとき電話を取った私も新任初日で迷子!? ってなって慌てふためいてしまったことは絶対に忘れられないだろう。

 

それで無事、お母さんと一緒に登校した時は安心したけど、そのあとの授業でほとんどウトウトしてるんだもの。

その日は色々大変だったし、仕方ないかなと思って、お母さん宛の連絡事項やスぺちゃんの様子などを書いて、明日からも頑張ってね、という感じだった。

 

先輩の先生からスぺちゃん担当に任命された、私の苦労はそこから始まった、スぺちゃんはそれから3年生になるまでほぼ毎日授業中にウトウトしてた、初めのうちはお家が遠いし、仕方ないかな、と思って彼女用のノートなんかも用意していたがそれが丸々2年間続くとは思っていなかった。

 

私はいったい何をしてるんだろうと思いながら過ごしていた3年目、あの時のことも忘れられない。

いつも眠そうで無理やり起きていたスぺちゃんが朝からお目目パッチリで私の話をちゃんと聞いてくれたのである。あの時の私の喜びようは傍から見たら、完全に変な人だったろうが、終わったことだし、どうしようもない。

 

それからスぺちゃんは今まで寝ていた分を取り返すようにちゃんと授業を受けてくれた。かなり遅れ気味だったカリキュラムも少し遅れ気味、普通、少し早め、と進んでいき、気がつけば彼女のカリキュラムは小学校で教える分を終えてしまった。

 

先輩から少し怒られてしまったが、私は非常にうれしかった。初めて持たせてもらった子がウマ娘で緊張していたが、無事何とか成長の手助けができたことに。

 

今日から6年生になるスぺちゃんは中央のトレセン学園への入学を目指しているらしい。入学に必要なレースの知識は私にはないけど、面接や筆記試験のお手伝いならできると思った私は、彼女のカリキュラムがもうすでに終わっていること、彼女なら中央のトレセン学園に入学することは可能だということを先輩に相談し、本来ならだめだが、今年からの授業は受験対策の勉強をしていくことを校長先生にも黙認してもらった。

 

そうと決まったとき、私はすぐにスぺちゃん用の参考書や過去問を買い込み、どうやれば万全な状態で彼女を送りだせるかを考えていた。

 

彼女の明るい未来を信じている。

 




感想、評価などいつでも受け付けております。
ほんの少しだけでも良いのでお願い致します。


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PART6

評価、感想お手数ですがよろしくお願いします。
それとアンケートのご参加もよろしくお願いいたします。


自転車操業のRTAとは全く関係のない実況プレイやっていきますよ~

いつもお世話になっております、投稿者です。

 

ではでは、早速やっていきましょうか。前回は6年生になり、担任の先生から参考書をもらったところからでしたね。今回はトレセン学園入学試験編となるのですが、一応この一年間何をしていたのかといいますと、とにかく勉強とスピード練習です。ま、とりあえずはステータスを見ていただきましょう、ホイっと!

 

 

>スピード:C+

 スタミナ:B+

 パワー :A

 根性  :B

 賢さ  :C

>総合学力:A

 

 

はい、このようになりました。いやー、スぺちゃん賢くなりましたねぇ。なんだか試走の時よりも学力が上がりすぎてる気もしますが、高ければ高いほどいいので気にしなくてもいいでしょう。ちなみにですが試走ではどんなに頑張ったとしてもB+が限界なのでは、と考えていました。やっぱスぺちゃん地頭良かったんだなぁ。

 

それでスぺちゃんの行っていた練習ですが、スピード練習を4割、勉強系を4割、[太り気味]解消のための練習を2割、てな感じでやっておりました。勉強では教科書と参考書を交互にすることで賢さの減少値を抑えるようにしてましたので何とか賢さのステータス減少を抑えて、上げることができた、という感じですかね。

 

ステータスを見たところでこれから試験を受けに行くのですが、ゲームの都合上落ちることは滅多にありません。だってお話進めるにはトレセン学園入学してないと、何も起きないもの…。

 

ならなんで試験のために学力などを上げる必要があったのかといいますと、入学後に受ける恩恵が非常に大きいからなんですね。入学すると通常の学校と同じように授業が進み、寮で生活し、どこかのチームに所属して育成を進めていくのですが、各試験の成績が良いとそれぞれにボーナスが入ります。

 

筆記試験だとその後の授業での理解度が深まりステータスが上がりやすくなり、面接がいいとクラスメイトや同室のウマ娘などの好感度が上がりやすくなったり、実技試験のレースでいい結果が出せるとその分いいチームに所属しやすくなったり、所属したのちにいい機材で練習できるようになります。この恩恵はメイクデビュー戦までの半年間のみの効果ですが、これがかなり重要なのはお分かりいただけたかと思います。

 

 

んじゃ早速、試験会場に向かいましょうか、試験場は札幌みたいですねぇ、スぺちゃんのお家は日高町にございますので電車で二時間ぐらいです。北海道での開催場所が札幌の一つしかないみたいなので筆記試験はお昼すぎから、翌日に面接、翌々日にレースという形で行うみたいですね。やっぱり受験人数が多いのか時間かかるみたいですねぇ。

 

スぺちゃんは初日は受験してからそのまま帰り、二日目からは札幌でお泊りするみたいですね。まぁレースするのにわざわざ2時間かけて移動するのは結構疲れると思うのでありがたいですね。それとお母ちゃんも全部についてきてくれるみたいです。では早速向かいましょうか。

 

お母ちゃん、ヨロシク、って、ん? 行く前に学校に寄る? はい、別にいいですがなんかイベントあったかな…

 

>移動中…

>学校に着いた!

 

>校門前には先生と他の生徒たちが集まっている

 お守りをもらった!

>調子が上がった!

 

 

おぁ、これはありがたいですね、これにはスぺちゃんもニッコリ。意気揚々と試験場に向かうことができますね。それにしてもこんなイベントがあるなんて知りませんでしたね。驚くべきは制作陣の作りこみの深さ、足を向けて寝れませんな。あとでwiki確認しとこ…

 

では気持ち新たに試験場に突撃!

 

 

デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 

ほい! 電車移動で二時間ほど、その他含めて計3時間ほどで試験会場に着きましたね。あとは受験するだけですし、現在の総合学力では試験中に寝ない限りは大丈夫でしょう、…寝ないよね(震え声)。

(震え声)。

 

初めて他のウマ娘を見て、ウキウキしているスぺちゃんには悪いけどちゃんと集中して受験しましょう。

 

 

>試験中…

 

>試験終了!

>どうやらうまくできたようだ!

 

 

ほっと一安心。大丈夫みたいでしたね。試験終了後のメッセージを見る限り、試験結果の方も大丈夫そうですね。

ここから帰宅して、また明日も面接を受けに行きますが特に見どころもないでしょうし、倍速ですかねぇ。

 

 

はい、一日たってお次は面接試験ですね。こちらの試験はプレイヤーが選択肢を選んでいくタイプのものですが、当たり障りのないものを選んでおけば大丈夫です。[愛嬌]もありますし、大体好印象で終わるかと。

んじゃ、面接の先生方、ヨロシクオナシャス!

 

 

>あなたが本校を受験した理由をお聞かせください

 

 

ここは「強くなりたいから」を選択ですかね、実際そうですし。

 

 

>入学後、あなたは何をしたいですか?

 

 

何を、ですか…、とりあえず「レースがしたい」と言っておきましょう。スぺちゃんの周りにはウマ娘がいなかったので競い合うというのに憧れて、とかでしょうか。ちな明日のレースが初レースです。

 

 

>入学したとして、どのようなチームに所属したいですか?

 

 

所属するであろうチームはもう決めてまして、アニメ版と同じようにスピカに参加する予定です。ですので「自分のしたいことができるチーム」としておきましょう。

 

>試験終了!

>どうやらうまくできたようだ!

 

 

うしうし、いけましたね。これで目標のうち二つはできました。あとは明日の実技試験、レースですね。スぺちゃんにとっても、この動画シリーズにとっても初めてのレースですがステータス的にもまぁ負けることはないと思います。

ちなみにですがこのレース、芝orダートの右回りで1000mのレースになります。場所は直線が短い札幌競馬場ですね。差しウマ娘で、長距離、中距離適正のスぺちゃんにはちょっと厳しいと思われるかもしれません。

 

そのためここでオリチャー発動!(言ってみたかっただけ)

 

まぁオリチャーでも何でもないですが先行策で行きます。スぺちゃんの適性は先行、差しにAなので大丈夫です。

 

では明日に備えて、軽く走ってからお泊りです。おやすみなさい、スぺちゃんしっかり寝るんやぞ。

 

 

おはようございます。スぺちゃんもしっかり睡眠がとれたようでいい感じですね。では勝ちに行きましょうか。

初めてのレースで浮ついてますが、まぁ何とかなるでしょう。

 

このレースはアプリ版のメイクデビュー戦と同じようにモブウマ娘しか出てきません。チュートリアルの側面もあるのか説明も出てきますが既知なのでスキップです。

ではでは先行策で走っていきましょう!

 

 

 

 

【模擬レースにて】

 

その日、私は絶望に遭った。

 

私は中央のトレセン学園に入学するために最後の試験である模擬レースに出走しようとしていた。

 

筆記と面接、思ったより上手くいき、あとはレースだけだった。3つの試験のうち、どれか一つでもいい成績を収めていれば入学はできるらしく、2つ上手くいった私はかなりリラックスして試験に挑むことができていた。

 

 

あいつが横に立つまでは…

 

 

私は奇数番だったので先にゲートに入った、そのあと、後ろから入ってきたあいつ。

忘れたくても一生忘れられそうにない。

 

ゲートに入る前、あいつはどこか浮ついた様子で、正直レース前の集中はできてないように見えた。地元で一番速く、負けなしで自信家だった私は、その時、自身の勝利を疑っていなかったし、そんな浮ついた奴がいることを軽蔑さえしていた。

 

 

奴の雰囲気はゲートに入った瞬間、激変した。

 

隣から襲い掛かってくるその圧に、同じゲートにいた他の奴も一瞬で呑み込まれた。

ここがどこだかわからなくなり、どうにかしてここから抜け出したいと感じさせられた。

誰かがその圧に耐え切れなくなり、声を上げようとしたとき、

 

 

その瞬間、ゲートが開いた。

 

 

地元で何度かレースをしていて、ゲート練習もできていた私は何とかゲートに反応することができたが、他の奴は無理だった。

 

あいつと私、それ以外は2、3テンポ遅れてのスタートだった。

 

 

あいつは速かった。追いつくのがやっとというほどの速さ。

学年が違うのではないかと思うほどだった。

どうにかして食らいつかないと巻き返せるものも巻き返せなくなる、そう思い全力でついていった。

 

 

元からそこまでの長さがないレース、最後の直線に入るのは速かった。

 

私はそこからいつも通りのスパートをかけようとした、が…

 

 

 

 

できなかった。もともと差しを得意とする私は、最後の直線までに脚を残しておき、ごぼう抜きしていくのが得意だった。だがあいつについていくことだけに必死だった私にはそんな力は残されておらずあいつを抜かすことはできなかった。そのことに気づいてしまった瞬間、

 

 

あいつが急激に加速し始めた。

 

 

一瞬であいつの背中は小さくなり、気がつけば私はゴールしていた。何バ身離れているかすらわからない、大差負けだった。

 

 

その現実をうまく呑み込めず、呆然としていた私にあいつはなんと声をかけたと思う?

 

 

 

 

「楽しかった、また走ろうね!」

 

 

 

 

まったく息が上がっておらず、レース前と同じ表情で私にそう言ったのだ。

何かが砕ける音がした。

 

それから家に帰るまでの記憶はない。

その後、走ることが全く楽しくなくなり、何もない日々を過ごしていた私に封筒が来た。

 

合格通知だった、筆記や面接がよく、実技でも一定の評価をされたため合格していたらしい。

 

だが、私が受かってあいつが受からないはずがない。

もし、中央に行けばまたあいつと走らないといけないかもしれない。

その恐怖に勝てなかった私はそれを蹴って地方に残った。

 

 

本当に高すぎる壁にぶつかったとき、人はただ膝を折るしかないのだ。




現在のステータス

>スピード:C+
 スタミナ:B+
 パワー :A
 根性  :B
 賢さ  :C

3段階下がって入学時のステータス

>スピード:D
 スタミナ:C
 パワー :C+
 根性  :D+
 賢さ  :E+


育成開始時にこれはヤバイ


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PART7

【アルティメットスペシャルウィーク】
 このSSの主人公。このSSの主目的が『無敗』であるため、絶対に負けることが許されない存在であるが、敗北を知ることができない、ある意味哀れな子でもある。どんなに頑張ろうともアニメのように同着という引き分けしかできない。
現在は普通に走ること、レースすることが大好きなウマ娘、投稿者としては幸せな世界にしたいが、最終的にどうなるかは投稿者もわからない。自転車操業の悪いところが出ている。
 ちなみに前回あった「楽しかった、また走ろうね!」は本当に本心から出た言葉、生まれて初めて他のウマ娘を見て、生まれて初めてのレースができて非常に楽しかったから、またやりたいと思ってこう言った。


はーい、どうも、いつもお世話になっております。投稿者です。

本日はですね、前回からの続きを行う前に、色々とコメントをいただいたのでその返答をしていこうと思ってます。そんなの見たくねぇ、早く本編見せろ! という方は飛ばしていただいても大丈夫です。

 

では一つ目、『スぺちゃん強すぎません? 同期の娘とか心折られないか心配!』

 

とのことですね。ご安心ください、大丈夫です。こちらのゲーム、スぺちゃんやスズカ先輩などのプレイアブルキャラクターは入学時のステータスは一定ですが、育成中のキャラに合わせて成長してきます。所謂、野菜人の王子みたいに「お前には負けんぞ! キャロット!」みたいな感じで追い上げてきます。

 

それでこの中で特に追い上げ、成長率が高いのは「ライバル枠」と言われておりまして、今回の育成キャラであるスペシャルウィークは育成可能キャラの中で一番ライバル枠が多いキャラとなっております。

 

こちらに挙げさせていただくと、サイレンススズカ、エルコンドルパサー、グラスワンダー、セイウンスカイ、キングヘイローの5キャラです。改めて並べるとやばいな……

 

 

気を取り直して、二つ目、『前回の試験のレースで固有スキル発動してました?』

 

はい、こちらはですね、発動しておりません。スペシャルウィークの固有スキル、[シューティングスター]の効果は『レース終盤に前の方でウマ娘を抜くと速度が上がる』というものです。前回のレースではずっと先頭だったので発動できませんでした。

 

まぁ確かに最後の直線で意味わからん加速してましたからねぇ。このゲームたまにスキル発動してるんじゃないの? というぐらいの走りを見せているのに発動していなかったり、スキルは発動してるのに効果がいつもより弱いな、なんてことが結構報告されています。おそらくマスクデータで何かが作用している、とwikiで説明されてました。公式の発表でも『より、リアルな競馬に近づけた』とされていましたし、何かあるんでしょうね。全く競馬の世界は奥が深いぜ……

 

ま、そんなわけで今回のコメント返しはこれまでとさせていただきます。返信できなかったのもちゃんと全部見てるから、これからもどんどんコメントしてくれよな!

 

 

 

てなわけでお持たせしました。本編です。

前回は無事すべての試験を受け終えたところからでしたね。ここからはゲームの都合上、展開が速いです。通知を受け取ったらすぐに学園入学と、それまでの準備期間などはカットされているのでご容赦を。

 

 

>試験結果が届いたようだ…

 

 

>結果:合格!

 筆記、面接、実技の点でよい成績を収めた!

 

 

ふぅー、よかったですね、無事合格です。筆記や面接はできた感触は良くても実際は悪かったということもあるので一安心です。これで入学後のバフはいただきましたね。

 

 

スぺちゃんもお母ちゃんと手を取り合って喜んでいますね。あらスぺちゃん、学校の先生にも連絡するの? なら参考書のお礼もついでにオナシャス!

 

 

 

 

そんなわけで時は流れて、地元を離れる時が来てしまいましたね。見送りに小学校時代の友人や先生方も来ているみたいですね。あ、もちろんお母ちゃんもいますよ。当分、もしかしたらこの育成中には帰省することがないかもしれないのでちゃんと挨拶しておきましょうね、スぺちゃん。

 

……ん、お母ちゃんが何か話しかけてきましたね。

 

>「スぺ、お前はどんなウマ娘になりたい?」

 

 

お! これは有名なあのシーンですね。答えは決まっているとも!

 

 

 

 

 

「私は日本一の…、ううん、世界一、世界一のウマ娘になりたい!」

 

「そっか…、なら全力で頑張っておいで!」

 

 

 

 

 

 

いやー、やっぱりいいシーンですねー、正直このシーンだけ切り取って実況なしで投稿したいぐらいです。担任の先生や小学校時代の友人たちからもエールをもらってますね。オラ、頑張ってトップに立つゾ!

 

 

では東京に向かいましょう、さらば我が故郷、待ってろ新天地です。

 

 

さぁ皆様お待ちかね、お祈りタイムです。ウマ娘の世界と史実の時間軸がごっちゃになっているのは周知の事実でございますが、ここで皆様に謝罪しなければならないことがあります。

 

こちらのゲームその時間軸を史実基準、アニメ基準など、色々と変更できるのですが、わたくしのガバでアニメ基準にしていたはずが、一部ランダムになっていました。本当に申し訳ありません。今回ランダムになってしまったのは中等部です。

 

育成キャラの先ほど説明したライバル枠は元のアニメ設定から変わりませんが、それ以外の子は別です。本来ならスぺちゃんの後輩だったウマ娘が先輩になってたりするかもしれません。

 

本当に申し訳ありません。これも全部スぺちゃんを先輩呼びするサイレンススズカがどうにか見れないだろうかと設定いじくっていたこの指が悪いんダァ!

 

 

それでなぜお祈りかといいますと、この同級生になるウマ娘たちが誰になるかでだいぶ難易度が変わります。いくらライバル枠ではないにしても育成キャラが強ければ強いほど他のキャラも強くなっていきます。切磋琢磨している姿は美しくていいのですが、その分勝利するのが難しくなる上に、レースでもらえる経験点などは変わらないという鬼畜スタイルなので……

 

願わくば同級生がライバル枠の4人だけでありますように……

 

 

>東京に着いた!

 

 

そうこうしている間に到着したようですね。アニメとは違い、ここからレース観戦ということはないのでそのままトレセン学園に突撃します。それと安心してください、ちゃんとのちにサイレンススズカとのイベントはありますし、同室です。

 

ではトレセン学園に向かいましょうか……

 

さあ祈りましょう、同級生となるのはだれか。本日入学式ということもあり、校門入ってすぐで、ざわざわと集まっています。そこで気になるウマ娘、としてアナウンスされるんですね。

 

>トレセン学園に着いた!

>入学式だからか校門の近くにたくさんのウマ娘たちが集まっている!

 

頼む三女神! どうかライバル枠だけを……

 

>いろんなウマ娘がいるみたいだ!

 

>目の周りを隠すようなマスクをしているウマ娘がいた!

>おしとやかそうなキレイなウマ娘がいた!

>高飛車でお嬢様みたいなウマ娘がいた!

>マイペースそうな銀髪のウマ娘がいた!

>元気いっぱいのポニーテールの小さいウマ娘がいた!

>どこかの令嬢みたいな薄紫のキレイな髪のウマ娘がいた!

>シニカルガール、そんな感じのするクリスマスカラーのウマ娘がいた!

>どこかカッコイイ髪の短いウマ娘がいた!

>ツインテールで頭にティアラを載せているウマ娘がいた!

>頭に王冠を載せた宝塚に出てきそうなウマ娘がいた!

>どこかネガティブな感じのする発育のいいウマ娘がいた!

>オレンジの髪を持つどこかおませな感じのするウマ娘がいた!

>なぜか機械みたいな雰囲気があるウマ娘がいた!

>青いバラを頭に乗せた自信のなさそうなウマ娘がいた!

>ピンク色の髪を持つ楽しい雰囲気を持つウマ娘がいた!

>青いツインテールを持つ逃げ馬みたいなウマ娘がいた!

 

>たくさんの個性豊かなウマ娘たちがいて、これから楽しい学園生活になりそうだ!

 

 

 

( ゚д゚)…  (つд⊂)ゴシゴシ  ( ゚д゚)…  ( ゚д゚ )

 

 

 

……はい、おめでとうございます。エルコンドルパサー、グラスワンダー、キングヘイロー、セイウンスカイ、トウカイテイオー、メジロマックイーン、ナイスネイチャ、ウオッカ、ダイワスカーレット、テイエムオペラオー、メイショウドトウ、マヤノトップガン、ミホノブルボン、ライスシャワー、ハルウララ、ツインターボ

 

以上、16名、スぺちゃん合わせて17名の出走です。

 

 

こんなん心折れるわ……

 

 




なぜ同学年がこんなに多くなったのはウマ娘における学年がマジでわからなかったから。わからないならみんな一緒にしてしまう! そうやってできたのがこの見るからにヤバイやつら。
ちなみにですがライスちゃんは公式では高等部だった気がしますが、どうしても先輩のように思えなかったので新入生になっていただきました。本当に申し訳ない。


※申し訳ありませんがアンケートにご参加いただけると幸いです。


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PART8

アンケートにご参加いただきましてありがとうございます。
皆さま蟲毒ルートがお好きなようでしたので、このまま走り抜けてやります。
ただし、誰も絶望させないように頑張っていきたいと思います。

まぁそのためこれからはかなり原作、史実とかけ離れたものになっていきますがそこはご容赦ください。


誤字報告感謝です。わざわざありがとうございます。


はいはい、皆さま、お世話になっております、投稿者です。

 

前回から皆様のお優しいコメントで元気づけられた私は帰ってまいりました。

はい、正直失踪するか、最初からやり直すか、それとも入学直前まで戻して、同級生のリセをしてやろうかと色々考えました。

 

でもね、こんなにコメントいただいちゃったら走り抜けるしかないでしょうよ!

俺が止まんねぇ限り、道は続く! だから止まるんじゃねえぞ!

 

 

んじゃ、早速やっていきましょうかね。

前回校門前で絶望した所からですね。ま、スぺちゃんはたくさんのウマ娘がいてウキウキしてますが…

入学式に参加するために移動しましょうか。

 

この後はちみっこ理事長とルドルフ会長のありがたい話が続きますので今後の方針などを説明していきたいと思います。ちなみにですが会長のお話の中にはいくつものダジャレが入っていることで有名でして、最高記録は3分の生徒代表挨拶のなかで23のダジャレが入っていたと報告されています。

 

一応わたくしもその動画を拝見いたしましたが、ものすごくニコニコして笑いをこらえながら挨拶している会長と式場がだんだんと凍り付いていく様子がとても面白い物でしたね。皆様もよろしければご覧になってください。

 

 

この式のあとはクラスごとの学校案内があり、そのあとで寮長による各寮の案内がございます。この時にトレセン学園のマップが公開されるんですね。トレーニングルームや各チームごとの部屋は何かと覚えておいた方がいいので覚えておきましょう。

 

案内が終わった後は同室のスズカ先輩にご挨拶をして、夕食を摂ってお休みです。

 

 

さて、今後のスぺちゃんの方針なのですが、同級生たちがヤバくても、ヤバくなくてもやることは決まっておりました。スぺちゃんは現在、クラシック級に放り出されても十分勝てるステータスをしておりますが、調子に乗って喧嘩を売りに行くと最初はよくても後々でやられます。

 

このゲームのシステム上、プレイアブルキャラクターと交流していくうちにステータスが引き上がってくるのは周知の事実でございますが、これレースでの勝ち負けだけでなく、日々の交流でもちょっとずつ上がっていくみたいなんですね。

 

なのでメイクデビュー戦までの授業として行われる模擬レースなどによるステータス上昇は仕方ありませんが、交流を深めることによるステータス上昇はいただけません。

 

他のキャラを育成しているときのことなのですがターボ師匠育成中、逃げ専用のスキルなどを取るためにミホノブルボンと放課後の練習などの交流を行っていたのですが、ライスシャワーのメンタルが木っ端みじんになりそうなスピードカンストサイボーグが出来上がっていました。あれは色々とヤバかったですね…

 

まぁもっとヤバかったのはそれに追いつくために化け物になって同じくスピードカンストしてきたライスシャワーでしたがね、ほんとこの世界は修羅の世界だよ…

 

 

ま、そんなわけでレースなどによる他キャラのステータス上昇は諦めるしかないので、それ以外の時間をどう過ごすのかですが、

 

ズバリ、バイトです。

 

はい、視聴者の方々が驚いているのが浮かびますねぇ、お願いですので驚きすぎてブラウザバックとかやめてくださいよ。

 

ま、なんでバイトかというと、スぺちゃんを育成していくうちに大量の金銭が食事によって消え去るからです。このスぺちゃんは[大食漢]という、「いっぱい食べる君が好き」なんて言ってる輩の財布を吸い尽くす、あのピンクの悪魔みたいな食欲をしているので食費がヤバいです。トレセン学園内では食堂を無料で利用することができますが、それ以外は別。外出時に気が付いたら両手に大量の食べ物を持ってることなんてざらです。

 

しかもこの行動、プレイヤーが制御できません。所持金がどんどん消えていきます。

スぺちゃんちょっと食欲抑えてもらっても…、あ、だめですか。

 

 

お金の使い道は色々あり、トレーニング用品も自費で買わなければなりません。しかもいいものはかなり値が張ります。しかも確率で壊れるので買い替えるために予備資金も欲しいところです。

 

レースで好成績を収めると賞金が出るのでメイクデビュー後は何とかなりますが、それまでの半年間は全力でお金を稼がないといけません。

 

 

それでスぺちゃん、入学式中で悪いけど、今お財布にどれぐらいあるのか教えてもらっても…

 

 

>現在の所持金:320円

 

 

…え、ちょ、なんで? あなた小学生時代一銭も使わずにトレセンまで来ましたよね。なんで半分以上使ってるんですか!? え、東京に来てからトレセンに着くまでにおなか減ってたから色々買って食べた!

すいません、ちょっとログ確認しますね…

 

 

 

はい、確認の結果、空港に着いた時に空腹を感じていたらしく、おいしそうで珍しいものを色々買って食べてみたそうですね…

 

まぁ初めて東京に来たし、色々と目新しい物ばかりでおいしそうに見えたんでしょうね…

しかも、トレセン内部では食費関係はほぼ気にしなくていいのもあってほとんど使い切ってしまったみたいですね。

 

お祈りとかで倍速しながら飛ばし飛ばししていたのが仇となりましたね…

これは早急に仕事探さないと…

 

ちなみにですが本来なら高校生以上にならないとバイトなんかできませんが、ゲームの仕様上なんかできます。お願いだからそこんとこ突っ込むのやめてくれよな!

 

推測ですが時間軸がずれまくってるサザエさん時空なのでそういった年齢関係の話は制限が甘いのかもしれませんね。

 

 

んじゃ、今回はこんなところで、次回は学園での授業か、バイトあたりの動画になりそうです。ではまたお会いしましょう。

 

 

 

 

 

【サイレンススズカ視点】

 

今日はなんだか人の出入りが多かったように思える。私は来月走る予定のレースのため定められたトレーニングをしていたため、気が付かなかったが 入学式の日だったらしい。

 

 

そういえば、エアグルーヴや寮長のフジ先輩からも聴いていたが今日入学してくる子が同室になるらしい。いったいどんな子だろうか…

 

 

コンコン

「失礼します! 入ってもいいですか!」

 

 

考えていれば、ちょうどやってきたらしい。先輩らしく振舞わなければ。

 

 

「はい、入っても大丈夫ですよ」

 

「失礼します! 初めまして、私、スペシャルウィークって言います! 今日からよろしくお願いします」

 

 

入って来たのは、元気そうなウマ娘だった。

 

 

私は自身の目を疑った。見た瞬間に思ってしまった、勝てるかどうかわからない、と。

 

これがまだ私の同学年や先輩方ならまだ理解できた、しかし、相手は入りたての新入生。理性は不可能と叫んでいる、だがリギルで多くの才能と触れ合った経験は目の前の相手が強敵であると告げている。

 

 

「あの…、私、何かやってしまいましたか?」

 

いけない! まだ挨拶すらしていなかった。さすがに後輩までに何か変なところがある人、なんて思われたくない!

何もなかったように、落ち着いて挨拶しないと…

 

「ごめんなさい、少し、ぼーっとしちゃって。初めまして、サイレンススズカといいます。スズカって呼んでください。」

 

 

「スズカ先輩っていうんですね! これからよろしくお願いします!」

 

「こちらこそよろしくお願いします。そう言えばもういい時間ですし、食堂の案内も兼ねて、一緒に夕食はいかがですか?」

 

「わぁ、一緒にですか! うれしいです! ぜひお願いします!」

 

 

私は彼女、いえスぺちゃん(彼女にスぺと呼んでほしいと強く希望された)と夕食を食べに行くことになった。彼女と一緒に食堂に向かいながら、私はこれからのことを考えていた。

 

 

スぺちゃんは新入生で私と互角かそれ以上、今のままでは近いうちに必ず追いつかれる。

 

彼女に勝つには何が必要だろうか、彼女が何を得意とするウマ娘なのかはわからないが、私が勝つ方法は一つしかない。速さを極めることだ。

 

極めるには今のリギル、東条トレーナーの下では不可能だろう、彼女が許してくれるとは思わない。ならば少し名残惜しいがどこかに移籍するしかない気がする。かといって私がしたいことをさせてくれるチームはあるだろうか、最近のトレーナー界の主流は東条トレーナーと同じ管理するタイプの人が多い。

 

どこがいいか悩んでいた時、食堂までの道に貼ってあるチラシが目に入った。はっきり言ってセンスがなく、勧誘するつもりがあるのか?という出来だったが、チーム「スピカ」か。

 

あまりいいうわさは聞かないが、確かあのゴールドシップが所属していたはずだ、あれだけ自由奔放なウマ娘がそのままなのだ。もしかしたら自由に練習させてくれるかもしれない。

 

そう思った私は、明日の放課後すぐに見学に行くことにした。東条トレーナーからは止められるかもしれないが、こういうのは早ければ早いほどいいだろう。

 

 

 

 

その後スぺちゃんと夕食をとったがあのオグリ先輩と同じぐらい食べているのではないかと思うくらい食べていた。

 

嬉しそうに、おいしそうに食べるのを見ていると餌付けしているみたいで少しほっこりしてしまったが、いつの間にかスぺちゃんの隣に座ってたオグリ先輩とフードファイトをし始めたことには驚くしかなかった。

 

オグリ先輩もすごく強いし、もしかして食事量は強さに直結するのでは…、そう思った私はいつもよりご飯を多く食べることにした。

 

 

ちなみにスぺちゃんもオグリ先輩も食べ終わった後はスイカでも入っているのか、というほどに膨れていたお腹が次の日には何もなかったように引っ込んでいた。

 

この謎についてはあまり考えないようにする。

 

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(サイレンススズカのスピカ合流が早まりました。)

(サイレンススズカのスピード成長率が大幅に増加。)

(サイレンススズカのパワー成長率が微増。)

(サイレンススズカのスタミナ成長率が微増。)

 

(サイレンススズカのイベント『最速は譲らない』が発生しました。)




ちなみにですがこのサイレンススズカは弥生賞でなぜか寂しくなってゲートをくぐっちゃったスズカです。

感想、評価、お気に入り登録お待ちしております。


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PART9

評価が真っ赤になっててびっくりしました。
本当にありがとうございます。


誤字報告ありがとうございます。
リゲルとリギル
スターテスとステータス
カタカナをよく間違える投稿者で本当に申し訳ない。


なーんか前回から寒気がしますね…、体調を崩してしまいましたかね。色々と大変な時期なので皆様もお気をつけて。んじゃ早速やっていきましょうか。

 

前回は無事、スズカ先輩に挨拶できて、今日から授業という感じですね。

にしてもスズカ先輩、なーんか考えてる表情してましたね。時期的に次の月の頭ぐらいにアニメ1期、1話でのレースが始まります。なのでリギルトレーナーとの方針の違いについて考えてたんでしょうか?

 

ま、どっちみちスズカ先輩にはある程度関わって好感度を上げないと、沈黙の日曜日が回避できなくなりますので積極的にかかわっていきます。その時にいずれ解るでしょう。

 

ちなみにですが蟲毒と化した同級生たちとは違い、スズカ先輩はシニア級で参加できるレースでしか対戦しませんし、ある時期からアメリカに遠征なさるのでそこまで心配する必要はありませんね!

 

 

 

それで今日から始まる学園生活ですが、その前にトレセン学園に入学してどんなステータスになっているか確認しておきましょう。では、ドン!

 

 

>スピード:D

 スタミナ:C

 パワー :C+

 根性  :D+

 賢さ  :E+

>総合学力:C+

 

>所持金:320円

 

 

という、感じですね。普通にクラシックでも戦える状態です。ちょっと賢さが低めなのが問題ですけどね。

学力の方はD以上あれば、1年は大丈夫です。ゲームの仕様上、D以上あれば補習、再テストなどに呼ばれることはありません。しかし1年がたつと自動的に2ランク分減少するので注意が必要です。ま、普通に授業と課題をこなしていれば、1年で2ランク分上昇するのでほとんど心配する必要はありません。

 

まぁ育成が進むうちにレースとかで忙しくなって、どうしてもおろそかになるから定期的に確認することが重要ですね。

 

 

はい、時刻は早朝、地元にいたときも朝からお手伝いとかしていたので、かなり早めに目が覚めましたね。ちょうど朝練するにはいい時間なので、この習慣をキープしていきましょう。

 

あ、ちょうどスズカ先輩が朝練しに行こうとしてますね。

おはようございます、スズカ先輩、今から朝練っスか?

 

 

>「ッ! お、おはようございます、スぺちゃん。ごめんなさい、起こしちゃったかしら?」

 

 

ありゃ、驚かしてしまったみたいですね。後輩を起こさないように静かに出ようと思ってたのね、やっぱいい先輩ですな、スズカ先輩。あ、返事していませんでしたね。

 

大丈夫っスよ先輩! 自分、実家農家なんで元から朝早いっス! 朝練頑張ってくださいね!

 

 

>「ありがとう、それじゃあ行ってきますね。」

 

 

いってらっしゃいですぜ、スズカ先輩、朝飯は一緒に喰いましょうや。

 

 

はい、そんなわけで同室のスズカ先輩が朝練に出発しました。RTA走者なら、今日から一緒に朝練しに行くんでしょうが、私は明日からやろうかな、と思います。さすがになんも約束せず、急に一緒に走ってもいいですか! と行くのは先輩に対して、スゴクシツレイなので注意していきましょう。

 

今日の就寝前に明日から一緒に走ってもいいですか? と聞いて予定を入れておきましょう。

んじゃ、ちょっと時間が早いですし、朝食を一緒に食べる約束? もできたので今日は部屋の中にいましょう。

スズカ先輩が帰ってくるまでやることもないので寮内の探検でもしましょうか。

 

お金があったら、テレビを購入して、過去のレースなどを見て賢さを上げることを考えましたが、320円じゃね何もできないね。バイトしてある程度稼いだら、買ってみましょう。

 

 

んじゃ、スぺちゃん、寮内を探検しに行きましょう。

この早朝の時間帯で起きていて、寮内をうろついている人に会いに行きましょう。あ、っゴルシちゃんではないですよ!

 

 

>「ん? 君は…」

 

 

あ、ロビーにいましたね、ご紹介いたしましょう。エアグルーヴ閣下です。会長と副会長は朝の早い時間帯に生徒会の仕事とか、寮内の見回りとかをやっているので朝方寮内をうろついているとかなり高い確率で会うことができます。ちなみにですが美浦寮の方でも早朝に会長がうろついているので何か相談があれば行ってみましょう。

 

では、挨拶。アイサツは大事だと古事記にも書いてあるので、大きすぎず元気なアイサツをいたしましょう。

オッス、おはようございます、先輩! アチキはスペシャルウィークと申すものでさぁ!

 

 

>「スペシャルウィークというのだな、よろしく頼む。私はこの学園で生徒会の副会長を務めているエアグルーヴというものだ。」

 

 

押忍! エアグルーヴ先輩よろしくお願いいたします!

 

 

>「それでこんな早くにどうしたのだ? 見たところ新入生のようだが…」

 

 

はい、それはですね。もともと早く起きる生活をしていたもんですから、時間が余ってしまって、寮内を探検していたんです!

 

 

>「…探検? まぁそれは結構だが、時間もまだ早い、他の生徒の邪魔にならないようにな。」

 

 

オッス、解りました先輩! ちなみにですが先輩は何してたんですか?

 

 

>「私か? 私はさっきも言ったが生徒会に所属していてな、その仕事をしていたのだが自室では少し気が滅入ってしまってな。この時間ならここで作業しても他の者にも迷惑が掛からないと思ってな。」

 

 

おぉ~、さすが副会長ですな。もしお邪魔じゃなかったら何かお手伝いさせてくだせぇ。

 

 

>「ありがとう。ほかの生徒に見せてはならない資料もあるから気持ちだけいただいておくよ。」

 

 

んじゃ、お邪魔ですし、あっしは他のところを探検しに行きます。先輩、失礼いたしやした!

 

 

>「あぁ、ではな。…あぁ、そうだスペシャルウィーク、もし何か困ったことがあれば教えてくれ。何か手伝えることもあるだろう。」

 

 

え! いいんですか! んじゃ早速で悪いんですが、私バイトをしたいんですけど、どこで申請したらいいんですかね、たしかバイトをするには学園の許可がいるはずだったと思うんですが…

 

 

>「バイトか、なら今日の放課後に生徒会に来てくれ、許可証を用意しておこう。」

 

 

え! いいんですか! ありがとうございます!

 

 

>「あぁ、大丈夫だ。では、他の者に迷惑をかけないように。」

 

 

オッス、ありがとうございました!

 

 

 

 

はい、これでバイト許可が出そうですね。本来なら放課後などに生徒会で申請した後、次の日に発行されることになるのですが、個人的なつながりを持っていると、わざわざ生徒会に行かなくても何とかなります。時間短縮ですね。もう少し探索をつづけてもいいですが、これ以上うろついているとゴルシちゃんに発見される可能性があるのですぐに自室に帰ります。

 

ゴルシちゃんはRTA走者などには忌み嫌われている存在でして、走者たちが命より大事にしているタイムやチャートをことごとく破壊していく存在として有名です。あんなかわいい顔して強いのに、やることなすことハジケリストなので、悪影響が出る個性や調子を絶不調まで下げたりと結構いやなイベントを引き起こしてきます。

 

なんかプレイヤーがついてるキャラに対してのあたりが異常に強いので第四の壁突破してんじゃねぇかこいつ、なんて言われてますが、まぁゴルシちゃんだし…

 

 

 

色々話しているうちに無事、自室に到着しましたね。

 

そろそろスズカ先輩も帰ってきそうですし、今回はこれぐらいにしておきましょうか。

思ったより進行が遅い気がするので、次回からはちょっとペースを上げていきましょうかね。

次回は初めての授業と同クラスとの交流、同級生たちと初めての模擬レースという感じになりそうです。

ではまた、次の動画でお会いしましょう。

 

 

 

 

【エアグルーヴ視点】

 

 

今日は面白いウマ娘にあった。あのようなやつは天然というのだろうか、新入生が寮内を探検していた。

 

スペシャルウィークというらしく、元気なやつではあったが、普通ではないだろう。

あの後、なにか問題や苦情が来た、ということはなかったので大丈夫な者かもしれないが、ゴールドシップのこともある。少し、気にかけておいた方がいいかもしれない。

 

 

彼女が求めていたバイトの許可証、彼女の母校からの資料や面接時の成績を見る限り、問題はなさそうであり、教員からの許可も出たので発行しているところだが、本当に出しても大丈夫なのだろうか。

 

彼女もまだ入学したばかり、一人だと色々大変だろう、お目付け役も兼ねて誰かに面倒を頼んでみるか…

 

面倒見がよく、バイトをしている者といえば…、アイネスフウジンはどうだろうか、あいつならば十分に頼むことができるな。あとで相談してみるとしよう。

 

 

 

その後、アイネスフウジンが快諾してくれたため、不安要素が一つ減り、安心していたところ、スペシャルウィークがゲートをくぐったあの天然のサイレンススズカと同室ということに気が付き、要注意のリストに彼女の名前が載ったのは言うまでもないことだ。

 

 




エアグルーヴ先輩に目をつけられたスぺちゃん。
エアグルーヴ先輩目線からすると天然と天然が合わさって何を引き起こすか全くわからない、怖いから見張っとこ、という感じ。


評価、感想、お気に入り登録をどうかよろしくお願いいたします。(強欲)


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PART10

プレイヤーが油断するとガバが乱立し、確率がバグる。
それが宿命なのだ。

誤字報告まことに感謝です。
色々とすごい間違いしてて、恥ずかしい…


オッス、オラ投稿者! いつもコメントワクワクしながら読んでっぞ! いつも応援ありがとうございます。

今回からペースを上げていきたいところですが、まだまだイベント盛りだくさん。

今日はちょっと長くなったとしても前回決めた、初日授業と模擬レースまでやっていくのでよろしくですよ。

 

 

現在はスズカ先輩と雑談しながら朝食中ですね。スぺちゃんはいつも通りのドカ盛り、スズカ先輩はいつもよりちょっと多い食事量ですね。いっぱい食べるのはいいことですが、スぺちゃんはちょっと抑えてくれるとありがたいんですけどねぇ。

 

前々回の裏でやっていたオグリキャップ先輩とのフードファイトのせいか、食堂の方々からすごい警戒されながらのお食事ですが、ここで特になにかイベントは起きることはないでしょう。

 

まぁ、関係を持ってるのがスズカ先輩、エアグルーヴ閣下、オグリキャップ先輩ぐらいですから、そんなものでしょう。これからスぺちゃんはどんどん交友関係を広げていくので、どんどんイベントも起きやすくなると思います。未来のスぺちゃんに期待ですね。

 

 

んじゃ、飯も食べたし登校しますか。スズカ先輩と別れて、自分の教室に向かいましょう。

 

 

と思いましたが、大事なこと忘れてたので教室に行く前にそっちを済ませます。

 

というわけでやってきました三女神像の前。ここで継承を済ませてしまいましょう。

アプリ版とは違い、すぐにステータスが上昇するわけではないですが成長率にバフがかかるようになるシステムです。また、本来ならそのウマ娘と仲良くなり、スキルを教えてくれるまでの好感度を上げなくてはならない固有スキルのもいただけます。

 

まぁこちらもアプリ版と違いまして、例えばこの会長のスキル、【汝、皇帝の神威を見よ】ですが、グレーになっているのが解ると思います。こちらの状態は、そのスキルを習得するのに必要なきっかけは得たが、技術としてはまだ使い物にならない、という状態です。これを使えるようにするには、スキル習熟練習や、実際にそのスキルの使用者を観察することで経験値を溜めていく必要があります。

 

ま、解りにくかったら、すぐに結果は出ないけど後々大切になってきますぜ、という感じで大丈夫です。

 

んじゃ三女神像の前でお祈りをしまして…

 

 

>シンボリルドルフから【汝、皇帝の神威を見よ】を継承した!

>シンボリルドルフからスピード補正を継承した!

>シンボリルドルフから芝適正を継承した!

 

>ディープインパクトから【空駆ける英雄】を継承した!

>ディープインパクトからスタミナ補正を継承した!

>ディープインパクトから差し適性を継承した!

 

 

シンボリルドルフとディープインパクトの走る姿をスぺちゃんが幻視いたしまして、継承終了。

ちなみにですが、アプリ版と違い、現在進行中の幼少期から育成を始めていくシナリオは継承は一回だけなのでご注意を。

 

 

 

無事、継承も終わりましたので教室に向かいましょうか、確かC組でしたね。

 

出来れば同じクラスのこはライバル枠以外で、ティアラ路線を進むウマ娘がいいんですが、多分無理でしょう。

諦めて頑張っていくしかありませんな。

 

アニメ版のスぺちゃんはちょっと失敗してしまいましたが、今回は私がいるので大丈夫。完璧に初対面の方々に対して失礼ではない上に、覚えていただける、RTAでもよく使われる初めての挨拶の仕方をお教えいたしましょう。

 

ちょうど教室の中に十数人のウマ娘がいるのが解りますね、ちょうどいいです、行きますよスぺちゃん!

 

 

 

まず、ドアの取っ手に手をかけて精神統一、この時にこのドアがどうすれば開くのか、確認しましょう。今回は引き戸ですね。

 

次に開ける方向に向かって力を溜めます。

 

その次は勢いよく、ドアを開けましょう。この時にドアを壊さないよう、力を掛け過ぎないこと、勢いよくやりすぎてドアが閉まってしまわないことに気をつけましょう。音が大きいほどgoodです。

 

最後にその音に驚いてクラス中の視線がこちらに集まった瞬間に大きすぎず、しかしクラス中に聞こえるように、ニッコリ笑って、クソでかアイサツ!

 

「おはようございます!」

 

 

 

はい、スぺちゃんよくできましたね。あとは静かに黒板前に貼ってある紙を確認し、自分の席に向かいましょう。普通なら完全にヤベー奴扱いされるところですが、ここはトレセン学園。個性があふれ出している場所なので、すぐに人が集まって……

 

あれ、来ませんね……

 

 

 

もしかして私、やっちゃいました?

 

 

 

いや、確かに好感度の稼ぎ過ぎは、同級生の成長を促してしまうから控えめに行きたいよ! でもね、スぺちゃんがボッチになるのはやめてください! スぺちゃんの精神衛生上にもやばいんですよ! 

 

あ! ほらスぺちゃんもやらかしてるの解ってるから、自分の席に座って顔真っ赤だよ! 誰か、誰か来てくれ!

 

 

 

>「わ~、すごい大きな挨拶だね! 私、びっくりしちゃった!」

 

 

 

あっ! この声は! あの素敵なsilhouetteは!

 

ハルウララ! ハルウララです! 私たちの希望!

 

ハルウララにつられて、他のウマ娘たちも集まってきました。

やった! ハルウララのおかげでボッチ化回避! 第3部完!

 

 

ま、ふざけるのは大概にして同じクラスの子たちを確認していきましょう。

では、左から行きましょう。

 

>「初めまして! ワタシ、エルコンドルパサーって言いマース! エルって呼んでくだサーイ!」

 

>「グラスワンダーです。よろしくお願いします。」

 

>「キングヘイローよ、覚えておきなさい!」

 

>「セイウンスカイだよー、よろしくー」

 

>「ターボもびっくりしたぞ! ターボはツインターボっていうんだ! よろしくなっ!」

 

 

おっ! ライバル枠の皆さんにウララとターボ師匠ですか!

ライバル枠の皆さんはクラスが一緒になりそうな気はしていましたが、この二人は予想外でした。

申し訳ないですけど、結構いい引きですね! いやー、今後見どころが少なくて悪いな視聴者の諸君。

 

では、こちらもニンジャの礼儀でお返ししましょう。ドーモ、ウマ娘のミナサン、スペシャルウィークです。

スぺと呼んでください。

 

と、無事に友達ができそうなスぺちゃんを裏に、ちょっとお話。

現在、スぺちゃんたちは、今日は各授業のガイダンスとか、チームに所属するための手続きとかを説明されると思いますが、ちょっと違います。

 

上記のことは、ちゃんとしますが、イベントがもう一つ。クラスの面々の実力を図るため、担任主催の模擬レースが行われます。どこぞのアカデミアは入学式でしていましたが、こっちの方が一日遅れな分、やさしいですね。ちなみにですが、担任を任されるような教師陣は大体トレーナーの資格を持っているそうなので、放課後に話を聞きに行くと簡単な指導ぐらいはしてくれます。チームに何らかの理由で所属できなかったとき用の救済処置ですね。

 

 

お、話しているうちに、いつの間にか授業が始まってますね。真面目に受講しているスぺちゃんの裏で今度はチームの説明でもしましょうか。

 

こちらのゲームはどちらかというとアニメよりなんだなぁ、と視聴者の皆様の方々は思っているかもしれませんが、ちょっと違いましてアニメ版とアプリ版が両立している形になっております。なのでスピカやリギルといった有名チームもありますし、一対一で指導するタイプのチームもございます。

 

基本的にこちらから何かアクションを起こさない限りはアニメ版のようにウマ娘たちが所属していきます。今回は別にIFチームが見たい、といった目標はありませんので動く予定はありませんが、視聴者の皆様方が望むのであれば、やってみようかな、と思ってるのでコメントください。

 

もちろん、チームごとに育成力の差がありまして、スピカとリギルが同じくらい、ちょっと落ちてカノープスというような感じです。たまーに、新人で化け物みたいな育成力を持ったトレーナーとかいますが、見つけることがほぼ不可能なので、今回は自由度が高く、しかも育成力の高いスピカに所属していきたいと思います。

 

前回のパートにて寮内探検をしていた時に発見したのですが、例のとても個性的でバッチグー、なチラシが張り出されていましたので、おそらく現在はゴルシちゃんだけのチームです。なのでリギルみたいにテストを受ける必要もないので、簡単に所属することができます。

 

ま、他にも理由がありまして、リギルに所属することは、現在のスぺちゃんからすれば簡単であり、実はおハナトレーナーに見つかるとスカウトされる程です。実際試走でもされてました。

 

しかし、何回か走った結果、リギルに所属しているとエルとグラスがえらいことなって、アルティメットスぺちゃんですら負けることをわからされたのでしません。気が付くと前に二人が走ってたとか普通にありましたからね…

 

なんでスピカに所属する必要があったんですね~。ま、その代わりテイオーやマックイーンと勝負する必要が出てきますが…、おそらくライバル枠でないことから成長率も幾分かましでしょうし、何とかなると思います。

 

 

お、ちょうど授業でもチームの説明なんかをしてたみたいですね。担任の先生が話してます。

ちょうど模擬レースを行うことを話してたみたいですね、皆さん驚きながらもワクワクしているのが解りますね。

スぺちゃんもレースができると知って大喜びですね。

 

 

知ってるかい、このスぺちゃんクラシック級の実力があるのにレースで走ったの入学試験の一回だけなんだぜ…

 

 

じゃけん、体操服に着替えて移動しましょうかねぇ、場所は共用レース場で行うみたいです。

 

 

 

 

 

はい、つきました。皆さん体操服に着替えて集まってますね。これから順番にレースしていくみたいで、先生がやる気を出させるためか、いい結果を出したものには各チームへの推薦状を書いてやる、と言ってますね。

 

周りもやる気だしてきたね、スぺちゃんもフンスフンス言ってます。スぺちゃんそれそんなに必要ないよ…

 

 

それでこの模擬レースですが、規模は芝orダートの右回りの1200m。芝状態は良、ですかねちょっと前回と比べて距離は伸びましたが、スぺちゃんなら余裕です。

 

前回は先行策で行きましたが、差し適性成長補正が継承で手に入りましたので、差し策で行きましょう。このレースの結果でもらえる経験点は少なめですが、負けるのは癪なので本気で行きましょう。

 

出走者は……、ウララちゃんとモブウマ娘の皆さんみたいですね。ウララちゃん君、ダートじゃなかったですか…? まぁいいか、ウララちゃん、同じ差しウマとして頑張りましょうぞ!

 

 

 

 

 

【ハルウララ視点】

 

今日から私もトレセン学園生! いっぱいお友達を作って、いっぱいレースするんだ!

 

初めてのクラスでも、もう一杯友達もできた!

マスクをつけたエルちゃん、キレイなグラスちゃん、お嬢様のヘイローちゃんにセイちゃん!、あとターボのターボちゃん! 

 

あとすごく大きな挨拶をしてたスぺちゃん!

 

みんないい人ばっかりで楽しい学校生活になりそう!

そう思っていた時に、担任の先生が今からレースをしてくれるみたい!

 

 

みんなでレース場に向かっているときも、レースをみんなで見てる時もすっごく楽しかった!

それで、やっと次は私たちの番みたい!

 

一緒に走る人たちの中で知ってる人は…、あっ!スぺちゃんがいる!

 

「スぺちゃん! 一緒に頑張ろうね!」

 

「あっ! ウララちゃん! 頑張りましょう!」

 

スぺちゃんも走るのがすごい好きみたい、あとでスぺちゃんから聞いたんだけど、住んでたところでは他にウマ娘がいなかったからレースをそこまでしたことがなかったみたい。

私もこんなにきれいな芝で走るのは初めてだったから初めてどうしだったんだね!

 

 

そんなスぺちゃんはゲートに入った瞬間にちょっと変わった気がした。

それまではなんだかぽわぽわした感じだったけど、急にビシッ、てした感じになった。

 

 

私もみんなもちょっと驚いちゃったみたいで少しだけスタートに遅れちゃった。

スぺちゃんの作戦はさいごに後ろからビューンってする、つもりみたいだから先頭に立つ気はないみたいだけどすごいきれいなスタートだったと思う。

 

他のみんなはスぺちゃんに追いつこうとしてる子と、先頭になろうとしている子がいて、すごい頑張って走ってたみたいでしんどそうな感じだったけど、スぺちゃんからは全然そんな感じはしなかった。

 

私も頑張って追いつこうとして走ったけど、うまくいかなくて後ろの方を走ってた。

 

 

結果はスぺちゃんが直線ですごいスピードを出して一番だった。先生が言うには10ばしん?ぐらい離れてたみたい。

 

他のみんながスぺちゃんを追い抜こうとして、頑張ってたせいか、疲れてたみたいで直線で力をうまく出せなかったみたい。

 

私はなんだかキレイな芝で走るのは苦手だったみたいで最後までうまく走れなくて、最下位だった。

けど、みんなと走れてすっごく楽しかった!

 

スぺちゃんもすっごく楽しかったみたいで、レースが終わった後にスぺちゃんと一緒にはしゃいじゃった!

 

スぺちゃんがすごく楽しそうで、うれしそうだったからなんでかって聞いてみたら

 

「誰かと一緒に走れるのがすごく楽しいです! それで一番にも成れたからすっごくうれしい!」

 

って教えてくれた! 先生もすごくスぺちゃんのことをほめてたし、私の新しい友達はすごかった!

 

 

私も誰かと走れるのはすごく好きだったけど、一番になってスぺちゃんみたいに誰かに褒められたいと思った!

だから、この学校で一杯練習して、もっとたくさん走って、スぺちゃんみたいにもっとレースを楽しみたいと思った!

 

 

 

それと心配だったんだけどエルちゃんやグラスちゃん、ヘイローちゃんにセイちゃんたちがすごい怖い顔してたけどどうしたのかな? お腹でもいたかったのかも…、あとで大丈夫か聞きに行こう!

 

 

(マスクデータを公開します。)

 

(エルコンドルパサーの成長率が増加しました。)

(グラスワンダーの成長率が増加しました。)

(キングヘイローの成長率が増加しました。)

(セイウンスカイの成長率が増加しました。)

 

(既定の四人の成長率が増加し、レースで圧勝したため条件が達成されました。)

(特殊イベント『栄光の世代』が発生しました。)

(エルコンドルパサー、グラスワンダー、キングヘイロー、セイウンスカイの成長率がさらに増加します。)

 

 

 

(ハルウララの成長率が微増しました。)

(ハルウララが一番に興味を持つようになりました。)

(学園内のプレイアブルトレーナーがハルウララに目をつけスカウトしようとしています。)

 

(ハルウララの固有イベント『目指せ一等賞』がプレイアブルトレーナーの影響で『目指せ有馬の一等賞』に変化しました。)

 




アルティメットハルウララ、始動します。

プレイアブルトレーナーはアプリ版での俺らです。



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PART11

誤字報告いつもありがとうございます。
感謝、感謝です。


なーんか新たに走者が増えた気がしますねぇ、な実況プレイやってくよー!

まぁ正確にはわたくしRTAを嗜んではおりますが、こちらの動画はRTAではないのでご注意を…

でも私以外に同条件で同目標を走っている人、見たことないので完走した時に実質一番…

 

つまりRTA? ま戯言はほっといて本編行きましょう。

 

いやー、大差、大差の大勝利。無事に勝利しましたね。みんなでスぺちゃんを称えましょう。

まぁデビュー前にクラシックレベルの子が負けたら、大問題ですからね。[太り気味]でない限りは大丈夫でしょう。

 

そういえば[太り気味]の最大デメリットについて話してなかった気がするのでいまさら説明します。ご存じの通り体重が増加して、走りにくい状態のことを指し、練習で手に入るはずのスピード経験値が0になるいやなやつですが、こちらレースにも影響します。腹が重くて動けねぇ…、というやつですね。

 

このスぺちゃんは非常に健啖家、[大食漢]なのでよく引き起こすので注意が必要です。

「本当の敵は諦めではなく、体重だ!」

 

 

 

ま、説明はこれぐらいで、適性外なのに一緒に走ったウララちゃんを称えながら、一緒に見学の方に回りましょう。お、次走にはターボ師匠が出走するようなのでいませんが、それ以外のライバル四天王の皆様がいらっしゃいますね。

 

 

…はい、お目目が怖いです。これはスイッチはいっちゃったみたいですねぇ。闘争心があふれ出てます。なんかオーラみたいなのでてるし…。

 

では覚悟きまっちゃった子たちから色々と聞きだされてるスぺちゃんを裏にライバル枠の4名がどうなっていくか説明していきたいと思います。

 

 

試走時のデータを参考にしながら説明していきましょう。

エル、グラス、ヘイロー、セイの四名は通常なら史実と同じルートを通りますが、スぺちゃんをライバル視した場合、基本GⅠでスぺちゃんに勝負を挑んできます。それだけならかかって来いといえるのですが問題が一つ。

 

ステータスがこちらに迫っていることが多いです。

例えばこちら、菊花賞でのセイウンスカイと試走時のスペシャルウィークですが

 

セイウンスカイ    スペシャルウィーク 

>スピード:B+    >スピード:C+

 スタミナ:C+     スタミナ:B+

 パワー :D      パワー :A

 根性  :C+     根性  :B

 賢さ  :B+     賢さ  :C+

 

 

とこのように、スぺちゃんが埋もれてしまったりすれば差し切れなかった相手でした。ちなみにですがセイウンスカイの入学時ステータスはオールG+といえば、この成長がヤバいことを理解していただけるかと。

 

んで何度か試走してわかったことですが、基本的に彼女たちはジュニア級では何もしかけてはこないです。メイクデビュー後もちょっとした調整としてGⅡ、GⅢを走るぐらいしか確認していません。

 

なので本格的にやりあうのはクラシックとなります。それまでにはこちらも十分以上に仕上げる必要があるので頑張っていきたいところですね。

 

 

 

 

はい、では模擬レースも終わり、放課後になりましたのでエアグルーヴ先輩にバイト許可証を頂きに生徒会室に行きましょう。ちなみにですがライバル枠からスぺちゃんが強い理由は才能と意味わからん努力という風に落ち着いたようです。まぁこのスぺちゃん小学一年生から準備してますもんね。

 

 

んじゃ、生徒会室に向かいましょうかね。

オッス、失礼します! エアグルーヴ先輩はいらっしゃいますか!

 

>「あぁ、スペシャルウィークか。すまない、今少し作業中でな、ちょっとだけ待ってくれ。」

 

オッス、解りました! んでそちらにスぺちゃんの知らない人が二人いますね。もちろん私は知っていますが、自己紹介はしておきましょう。オッス!オラ、スペシャルウィーク! 新入生でやらしてもらっています!

 

 

>「入学式以来かな? この学校で生徒会長を務めさせてもらっている。シンボリルドルフだ、よろしく頼むぞ。」

 

 

>「元気いっぱいでいいね! あたしはアイネスフウジン、よろしくなのー」

 

 

シンボリルドルフ会長にアイネスフウジンの姉貴ですね! 今後ともヨロシクオネガイシマス!!

 

>「うむ、よろしく。……スペシャルウィーク、間違っていたらすまないが過去にあったことはあるか?」

 

 

いえ、お会いしたのはこれが初めてのはずっス!

 

 

>「そうだったか、すまない。私の思い違いだったようだ。」

 

 

いえ、大丈夫っス! まったく構わないっス!

 

 

>「……こんなものか、よし。スペシャルウィーク、アイネスフウジン、すまないがこちらに来てくれ。」

 

 

お、呼ばれましたので行きましょうか。

 

>「スペシャルウィーク、今朝言っていたバイト許可証だ。トレセン外での身分証明代わりにもなるからなくさないように。それと学園と提携している場所では、学生証と許可証をお世話になる場所に渡せばそれで大丈夫だから覚えておいてくれ。詳しいところは私より、アイネスフウジンの方が知っているだろう。アイネスフウジン、後は頼んでもいいか?」

 

 

>「うん、大丈夫なの。じゃ、さっそく行こうかスぺちゃん!」

 

 

お、思ったより早く終わりましたね。さすがエアグルーヴ先輩、仕事が早い。感謝感謝です!

ではシンボリルドルフ会長、エアグルーヴ副会長、お忙しいところ失礼しました。退室いたします!

 

>「いやー、スぺちゃんも入ったばかりなのに大変なのね。何か困ったことがあったら、何でも言ってね。」

 

押忍! ありがとうございます、姉貴!

 

>「うん、いいお返事! それじゃスぺちゃんのために学園内外でのバイトについて説明しちゃいましょう!」

 

 

はい、ありがとうございます姉貴!

んじゃ私は姉貴がスぺちゃんに説明している裏で視聴者の皆様に解説さしていただきます。

 

トレセン学園でのバイトは学園内部でのものと、学園外部でのものです。まぁさらに細分化しますが、それはあとで。学園内部のものは体力消費が少なく、入手金額も低いですが、代わりにバイト中に関わった生徒たちとの好感度が上がりやすくなります。学園外部は入手金額が多い代わりに消費体力が多いです、またウマ娘としての知名度が上がりやすくなる、といった効果もあります。今回は完全にお金メインなので外に稼ぎに行きましょう。

 

というわけで姉御、アチキはお金乞食なんで外でおねげえしますだ。

 

>「なるほど、外部かぁ。うんわかったなの! いつもお世話になっているところでスぺちゃんにちょうどよさそうな場所があるの! 今から行こうと思うんだけど時間は大丈夫?」

 

 

おう! 早速! さすが姉御、仕事ができる。予定がなかったわけではないけど、優先度はバイトの方が上なのでぜひオナシャス!

 

 

というわけで連れてこられたのはボウリング場。姉貴はここの受付のお仕事をお勧めしてくれるみたいですね。しかもなんと、ひと月ぐらいは姉御がここでバイトしてるみたいなんで面倒見てもらえますね。

 

んじゃ、早速バイトしていきますか! 内容的には受付とシューズ貸出、後はボール磨きみたいですね。

成長するステータスはパワーと根性が微量、お給金はトレセンと提携してるので時給2000円ですね。

 

実際高いですね…、都内にしてもおかしいです。まぁ理由はトレセン提携店はお給金の半分をトレセンが学生への補助として出してるからなんですね。理事長が勉強やレースに少しでも集中してもらえるように、とのことでお金を出してるみたいです。

 

ま、もらえるもんはもらっときましょう。実際色々お金かかりますからねぇ。

 

んじゃ今回はここまで、初めてのバイト頑張ってるスぺちゃんを背にお別れです。ではまた次の動画で。

 

 

 

 

【シンボリルドルフ視点】

 

今年も桜が咲く季節となり、トレセン学園にも新たな仲間たちが入学してきた。未だ、入学したばかりの生徒たちであり、誰が飛び出してくるかはわからないが、才能ある子たちばかりであろう。

 

まだ名も顔も知らない子ばかりであるが、3名だけ気になる者たちがいる。

 

1人目はトウカイテイオー。昔、私がレース後記者会見を受けていた時に関係者以外立ち入り禁止なのにも関わらず、入ってきて私に思いを伝えてくれた子だ。あの子にはなぜか私を超えてくれるという確信に近い思いがある。なにが理由で私がそう感じているかはわからないが、入学試験時のレースを見る限り光るものがあるのは確かである。

 

 

もう一人はスペシャルウィーク。先ほど生徒会室にやってきた者だ。エアグルーヴによれば、何でも入学してすぐにアルバイトの申請をしたものらしい。色々と心配なのでアイネスフウジンをつけるようだ。アイネスフウジンはその道に詳しく、その判断に間違いはないと思うが、疑問には思わなかったのだろうか?

 

彼女の肉体がすでに完成しかかっているのを。ほんの2,3の会話しかしなかったが、その力量はすでにクラシック級に出走している者たちと遜色ないように見えた。未だデビューすらしていない者がだ。

 

これが才能というものなのだろうか? 現役時代も自身を超える才能は多く見てきた。生徒会長としてこの場に立ったのちも多くの才能を見てきた。

 

彼女は私が見たものの中でも別格であるといえる。

しかもあれは一つの形として完成しているのであり、成熟しているのではない、ということだ。まだ彼女は成長を残している。末恐ろしいものだが、いつか戦ってみたい、そう思えるウマ娘だといえるだろう。

 

 

最後にハルウララ、名前は後で調べたものだが彼女が一番気になっているものかもしれない。

ちょっとした用で三女神像の近くを通ったのだが、彼女とそのトレーナーらしきものが三女神像前で祈りを捧げていた。それだけなら信心深いもので終わったのだが、次の瞬間、

 

彼女の力量が大幅に増加した。

 

思わず足を止め、凝視してしまった。先ほどまではあまり特筆するものがないウマ娘だったが、今は彼女の同世代の中で頭一つ抜けているほどの力量だ。

 

彼女は神に愛されているのだろう。そうとしか考えられなかった。

 

 

 

 

トウカイテイオーよ、お前の世代は必ず荒れるだろう。どうか折れずに自身の道を進んでくれることを祈ろう。

 

 

 

 

 

 

それとなのだが、なぜハルウララのトレーナーは黄色いT字の被り物をしているのだ?




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Tレーナーは失敗だったかなぁ


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PART12

いつも誤字報告ありがとうございます。
感謝感謝です。


そろそろ挨拶のレパートリーがなくなってきた投稿者です。早速やっていきましょうか!

 

前回はスぺちゃんが初バイトをしているところでしたね。バイト終わりはスぺちゃんにトレセン学園まで全力で走ってもらったので何とか彼女が買い食いをすることは防げました。

 

ですが、商店街の入り口を通るときに完全にペースを下げてにおいを嗅いでましたので最大限の注意を払わなければいけなさそうです。スぺちゃんそれトレーニング用品とか買うように必要なお金だからね! 使っちゃダメなんだよ!

 

そのあとはスズカ先輩と夕食をご一緒して就寝。現在授業終わりの放課後でございます。

それにしてもなんかスズカ先輩のご機嫌がよかったような気がしますがなんかいいことあったんですかね?

 

それでは早速スピカの自室に参りましょうか。予定では昨日チームに参加する予定でしたが、バイト関連が思ったより早く進み、現在の所持金が致命的だったのでそっちを優先しました。

 

ちなみにですがチームに参加せずふらふらしていると確率でゴルシちゃんにドナドナされます。ご注意を。

 

 

授業中のスぺちゃんたちの様子を見る限り、交友関係にヒビが入っている、なんてことはなさそうで周りからは頭一つ抜けている同級生と思われてるぐらいのようです。ひとまずは安心ということですかねぇ。

 

さて、スピカの部室に向かっている途中ですが、なぜ今日にしたのかというと、単純に早ければ早いほど指導を受ける時間が増えるので早く入った方がよい、ということと、隣のクラスからマックイーンの叫び声が聞こえて来たからです。チャートブレイカーのゴルシちゃんがマックイーン勧誘に入ってるのが解りますねぇ、これは。

 

ゴルシちゃんはいつかは必ず会わなければなりませんし、色々と面白い上に好感度を稼いでおくと育成的にウマ味(ウマだけに)なので積極的に交流するつもりではありますが、今接触するとスぺちゃんがスピカに入るのを嫌がるかもしれませんので、後々ということでご容赦を。

 

ちなみにですが、走者の方々はゴルシちゃんのイベント関連はタイム的にまず味なので行かないだけであって、内容は面白いものが多いので誤解しないように。

 

 

んじゃ、早速部室に到着したので入室してみますか! ノックノック~、どもー、入部希望者でーす。入ってもいいですか~

 

>「はーい、どうぞ~」

 

ん? なんか女性の声でしたね。この時期はゴルシちゃんとスピカトレーナーしかいないはずですが。なんか裏でイベント起きてたんですかね? 

 

では失礼して、ってスズカ先輩!

 

>「あらスぺちゃん! いらっしゃい! スぺちゃんもこのチームに参加するの?」

 

ええ、はい。なんか自由そうな感じがしたので。そっちの方が楽しいかなぁ、と思って入ろうかと思ったんですけど。スズカ先輩って確かリギル所属じゃなかったでしたっけ? ほらすごく早そうですし、おすし。

 

 

>「ふふ、自由そうな所よね。けど面白くていいチームだと思うわ。」

>「確かに、私はリギル所属だったけど、やめてきちゃった。何故? そうねぇ、方針の違いかしら。リギルは完全に管理する方針だったけど、ちょっと私にはあっていなかったみたいで…、だから今は自由にやらせてもらえるスピカに所属させてもらってるの。」

 

 

ほへー、そうなんですね~。いやスぺちゃんの影響でスピカに所属するのはわかってましたが、こんなに早く移籍することがあるんですねぇ。スズカ先輩の話しぶりから結構移籍してから時間たってるのかな…?

移籍した時期はわかんないですけど、スぺちゃんが理由にならずに移籍するパティーンは初めて見ました。

 

それでなんですけど、確かチームに所属さしてもらうには担当トレーナーの許可が言ったはずっスよね。見た感じスズカ先輩しかいないんすけど…

 

>「あの人ならちょっと席を外しているわ。もうちょっとしたら戻ってくるはずだけど…」

 

 

現在、離席中みたいっすね。なら部室でちょっと待たせてもらいましょうか、ってん…?

 

>太ももに何か違和感がある…

>誰かに触られているようだ…

 

 

あっ(察し)

 

 

>「非常に引き締まっていて、弾力も申し分なし…。肉の付き方からして先行…、いや差しがメインだな。この学園にまだこんな逸材が眠っていたとは…。」

 

 

なーんか触りながらぶつぶつ呟いている不審者がいますねぇ! スぺちゃんが思いっきり蹴ろうとしてますがかわいそうなのでやめさせましょう。代わりに汚物でも見るような目で変態呼ばわりしてあげましょうね!

 

 

>「うぐっ、蹴られるよりもそっちの方がきつい…。」

>「自身の行いを振り返ってみては? トレーナーさん。」

 

お! スズカ先輩! トレーナー呼びということは…!

 

>「はい、この変態がスピカのトレーナーさんです。」

>「いや、変態呼ばわりはやめてほしいんだが。」

>「入部直後の私の足を狙った方はどなただったかしら? お次はスぺちゃんですか?」

 

 

はい、こちらでスズカ先輩に怒られているのが皆様ご存じスピカトレーナーさんです。基本的に第一印象が変態な可哀そうな人ですね、作中ではトップを争うほどの育成能力なんですが、まぁ仕方ありませんね!

 

ちなみにですがこの方、パワーカンストした足で顔面を蹴っても鼻血ですみます、お前ほんとに人間か…?

 

 

>「それで、君はスズカの友人か? 入部希望者なら大歓迎だが…。」

 

 

ほい! スズカ先輩の同室で新入生のスペシャルウィーク、っていうもんでさぁ。スぺって呼んでくだせぇ! このスピカに末席に加えていただきたく!

 

 

>「新入生! てっきりスズカの同学年かと思ったが…。」

>「すごいですよね、スぺちゃん。」

 

 

いやー、スぺちゃんを褒められるのは照れますねぇ、んで、あたい入っていいの?

 

>「あぁ大歓迎だ! ようこそスピカへ!」

 

 

 

 

 

 

ではではちょっと時間が飛びまして、こちらはスピカの練習場でございます。トレーナーが現在の実力を見たいということでやってきたわけですね。スズカさんも一緒ですが、今日は彼女は走らないみたいです。

 

じゃけんタイムアタックしましょうねぇ! 芝・右回りの距離2000、やっとスぺちゃんの適性距離で走れますね。ちなですが、距離は好きな距離でいいといわれたので、2000にさしていただきました。

 

 

ではイクゾー!

デツデツデデデデン! (カーン!) デデデデン!

 

 

ほい、ゴール! タイム的にはよかったんじゃないですかねぇ!

トレーナーさんもスズカ先輩も驚いてますねぇ! これはいい感じなのでは!

 

 

>「これは……、ひどいな。」

>「ひどいですね。」

 

 

え! 何でですか! 結構いいタイム出てたんじゃないすか!

 

>「あぁ、タイムはいい。新入生なら恐ろしいぐらいだ。」

>「だが、フォームがでたらめすぎる。今は自身のパワーで無理やり動かしてる感じだな。」

 

マジですかぁ…、スぺちゃんもちょっとしょんぼりしてますねぇ。

 

まぁ、それもそのはずでして、スぺちゃんの周りには幼少期からウマ娘なんていませんでしたし、走り方の矯正を行ってくれる人なんていませんでした。この油をさしてないガチガチの精密機械をパワーと根性で何とか動かしていた、というのが現状ですね。

 

本来ならこんなことしていたら体がボドボドダァ、なんて状態になりかねないんですけど、それは最初の個性ガチャの時に手に入れていた影の薄い[鉄人]クンが仕事してたんですねぇ。いい仕事するなぁ、君は。

 

ま、それでも限界はあるので早めにトレーナーに見てもらって修正する機会が必要だったんですね。(大始祖の構文)

 

走り方の矯正は結構時間かかりますので、フルで時間を使って半月。スぺちゃんの場合はバイトやら賢さ上げの作業などがありますので一か月半ほどかけてじっくり変えていきましょう。ほかにしたいこともありますしね。

 

ではトレーナーさんやスズカ先輩に走り方の矯正を受けているスぺちゃんを眺めながら、今回はここまでとなります。ではまた次の動画でお会いしましょう。

 

 

 

【スピカトレーナー視点】

 

今日はスピカに新メンバーが入った。昨日のサイレンススズカに続いて非常に幸先がいい。ゴールドシップにはかなり馬鹿にされたが、やはりあのチラシは正解だったに違いない。

 

スズカのことはおハナさんからも頼まれ、色々と資料をいただき、彼女の強い希望である逃げウマ娘としての成長はある程度は何とか出来ると思う。逃げの戦法を取り続けることは体に強い負担をかけてしまうのでそれに強く気を付けておくことにする。

 

 

問題は今日入ってきたスペシャルウィークだ。あいつは素人がよくする間違った走り方をしていたが、それでも異常なほどの速さだった。彼女が意識しているかはわからないがジュニア級中距離のGⅠ、ホープフルSと同じ距離で走っていて、おそらくだが今走ったとしてもレコードは余裕だろう、というほどのタイムだった。

 

今、スズカに教わりながらスぺに矯正させているが、少し時間がかかりそうだ。まぁ走り方を一から変えるようなものだから仕方ないだろう。

 

矯正後を100とするならば、矯正前はよくて75といったところか……、それでいてすでにレコードを余裕といえるだけの実力、末恐ろしいがトレーナーとしてはかなりワクワクしている。

 

トレーナーならだれでも思い浮かべる夢、『史上最強のウマ娘を育て上げること』。それを達成してくれそうな気がするウマ娘、できるならば自身のすべてをつぎ込んで育て上げたい。

 

だが、今俺はスピカのトレーナー、誰か一人にかまけていることはできないし、他の原石たちもスぺと同じ、『史上最強のウマ娘』になってくれる可能性を大いに秘めている。

 

ならばやるしかないだろう。自身のできる100%をスぺ、スズカ、ゴルシに100%ずつ、注ぐ。単純に考えれば3倍だが、やってやれないことではないだろう。これはもしスピカの人数が増えたとしても同じだ。

 

 

とりあえずは目の前のことを全力でやっていこう。スズカはスピード上げて、最後まで最速で走りぬけられるようにスタミナを鍛える。スぺは走り方の矯正をしながら、全身の力をうまく扱えるようにする。ゴルシは普通に練習させる。

 

 

 

 

 

ん? どうしたスぺ? 矯正と並行してゲートの練習がしたい? わかった用意しておこう、すぐには無理だが準備ができたら伝える。

もしかしたらゲートも苦手なのかもしれない、そう思い、ゲート使用の予約もしておくことにした。




それを見ている今日はト字の黄色い被り物をしているトレーナー……

その時、ふと閃いた!このアイディアは、ハルウララとのトレーニングに活かせるかもしれない!



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PART13

ちょっと短いけど許して、思ったよりうまくできた気がするから投稿したかった。
あといつも誤字報告ありがとうございます。


 

はーい、皆さま投稿者です。今日はスぺちゃんとゲート練習をしてますよー。

未だにスピカは3人しかいない弱小チームなので朝早くにしかゲートの予約ができなかったらしく、トレーナーに見てもらいながら、朝練としてゲート練習をしています。

 

ん? なんでスぺちゃんゲート得意なのにゲート練してるかって?

それはですね、なんとスぺちゃんにスキルのヒントが生えていたからですね。何でも前回のレース後にヒントを得ていたらしく、どんなレースでも必要なゲート関連のスキルは大変有用なので早めに習得しておきたいと思った次第です。

 

入手したスキルのヒントはこちら、【ゲートの支配者】です。こちらはデバフスキルで自分以外のスタートを失敗させやすくするスキルですね。文面だけならかなり強めですが、対戦が初めての相手には効きやすいが、二回目以降は成功する確率が低くなる。重賞レースで勝利している相手だと成功率が低くなる。などの欠点も多いので注意が必要です。

 

ですが結構使いやすいですし、汎用性も高いので今回は時間を使って取得していきましょう。このゲームではスキル入手には実際にスキルを使用してみながら経験値を溜めていく必要がありますので、どんどんゲート練習しましょうね。

 

スぺちゃん、やり方はですねこうゲートを支配するような感じで全体にプレッシャーをかけていく感じですよ…。

ちょうどゲートだけに影響が出るようにですよ…。

 

 

>「……スぺ、何をしてるんだ?」

 

 

何って、スキル取得のための練習ですぜ、親方! あ、好きなタイミングでやってもらっていいのでよろしくお願いしまーす!

 

 

>「いや、何かつかもうとしているのはわかるんだがもうちょっと解りやすくだな……」

 

 

えっとね、魔力を暴走させるの。え、解らない? ゲートをミーのプレッシャーで破壊するんダヨー!

 

 

>「なるほど、プレッシャーを与えるのを目的にしてるんだな。しかし自身のスタートがおろそかになるかもしれんが、それはどうする?」

 

 

にゃぴ! 努力でガンバるっぴ! スキルを習得すればそういった未収得のために発生するデバフはなくなるんで大丈夫っス!

 

 

>「回数をこなして何とかする、か……、わかった、技のタイプ的に事前に知られているとまずいよな。この朝の時間帯だとそれほど人もいない。スぺがよければ毎朝ゲートの予約を取っておくがどうする?」

 

 

マジで! いいですかい! ぜひお願いしますだ。このスキルレース前の練習とかで見られても一回と数えられるのでマジでありがたいですね。

 

 

>「わかった、予約しておこう。そういえばなんだが、スぺはスズカと同室だったよな。」

 

 

はい、同室でやらせてもらってますけど、先輩がどうかしましたか?

 

 

>「なら、ちょうどいい。スズカの様子がおかしいと感じたら教えてくれるか? スズカは逃げを得意として多用してるんだが、作戦柄どうしても体に負担がかかりやすくてな。こちらでも注意するつもりだが、どうしても抜けは出てくる。同室なら接する時間も多いだろうし、スぺがいいならお願いしたいんだが。」

 

 

大丈夫っス! スズカ先輩がケガとかしてしまうのは私もいやですし、朝練付き合ってもらうお礼としてもやらしていただきますよ。

 

 

>「そうか、ありがとう。」

 

 

いえいえ~、んじゃ。合法的にスズカ先輩のことを気にすることができるようになったので、例の日曜日回避していきましょうね~。

 

 

 

 

お、いい時間ですね。スズカ先輩も朝練帰りでしょうし一緒に朝飯を食べるためにそろそろ撤収しましょうか!

 

 

>「ん、帰るのか。片づけはやっておくから先に上がっていいぞ。」

 

 

お、マジっすか! ありがとうございます。ではお先に失礼しますよ~。

んじゃ今回はこれぐらいですかね。次回からはちょっとスぺちゃんのメイクデビューまで倍速&カットを多用して、見どころさんだけを見せる感じにしていきましょうかね。

 

一応倍速中の基本行動は朝にゲート練習、スキル取得後はスズカ先輩と朝のランニング。昼は授業で、放課後はバイトかチーム練習、それか賢さ上げ用の練習を行う、って感じですかね。

 

確定している見どころさんはスズカ先輩のレース観戦、ちょっとお買い物してみますか、の二つぐらいですね。

乱数くんのご機嫌次第でもうちょっと増えるかもしれませぬ。では今日はこれぐらいで、ではまた~。

 

 

 

 

 

【ゴールドシップ視点】

 

 

なんか最近静かですね…、この近くにはエアグルーヴもいないし、栗東寮とはえらい違いだ。

 

「いきなり何言ってるんですか、貴方。」

 

ああ、生徒会の戦力、軒並み部室に回してんのかもな。

 

「生徒会の戦力!? 何したんです貴方!」

 

いや、このゴルシちゃん地味に初登場だしさ! やっぱ最初は派手に行かないといけないだろ。

 

「まぁ確かに初登場時は色々と考えた方がいいと思いますが、生徒会の方々に一体何したんですか?」

 

ドア開けた瞬間にゴルシちゃん特製☆『パーペキ爆竹』が爆発してそいつだけアフロヘアになるようにした。

 

 

チュドーン☆

 

ゴールドシップゥウウウウ!

 

 

あ、やべ、エアグルーヴの旦那だ!

 

「ほんとに何やってるんです貴方!」

 

逃げるぞ、マックイーン! このゴルシちゃん号につかまれ!

 

「それってただの麻袋じゃボギャァ!」

 

なんかヤベえ音したな、まぁマックイーンなら大丈夫だろ!

 

イクゾー! 無限のかなたにさぁ進め!

 

 

あ、そだ自己紹介、こちら葦毛のパーペキ美人異世界オルガのゴールドシップことゴルシちゃんだぞ☆

スピカで名探偵やってんだけど、最近事件が多くてな……、だから助手のマックイーンとエアグルーヴの旦那から逃げるためにいま疾走してんだよ。

 

 

あ、トーセンジョーダンだ!

 

 

「……ッ! なんであんた出会い頭に蹴ってくんの! あとその麻袋誰!」

 

 

お~、さすがは我が永遠のライバル、ジョーダン。この麻袋の中身はメジロマックイーンだぜ☆

ほい、あげる。

 

 

「ちょ! 人入ってんのに投げるな! それにメジロ家のお嬢様じゃんか!」

 

 

隙あり! ゴルシちゃんスマッシュ! 相手は死ぬ☆

 

 

「ニギャァァアアアアアアアア!」

 

 

うん! 今日もトレセン学園は平和だな! 一件落着!

 

 

 

 

そういえば、なんでここで話してたんだっけ? ま、忘れちまったしどうでもいいか。

 

 

そう言って去っていったのはゴールドシップ。

残ったのは麻袋に包まれたメジロマックイーンと顔面に深刻なダメージを受けたトーセンジョーダン。

急いで駆けつけてきたアフロ姿のエアグルーヴであった。

 

 

おわり。




出来心でやった、後悔はしていない。


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PART14

ちょっと最近忙しくなってきたのでお休みをいただくかもしれません。
誤字報告の方、いつもお世話になっております。


ほうほい、皆さん、こんにちは。投稿者ですよー、今回は前回よりちょっと時間が飛びまして、今日はスぺちゃんとダンスとお歌の練習をしています。これをおろそかにすると会長にブチギレされますからねぇ~、真面目にやりましょ。でもまぁスぺちゃんは田舎住みだったのと、そういう華やかなものに触れてなかったのでやっぱ苦手みたいですよ…。

 

ほらスぺちゃん、そこはえい、えい、むん! ですよ。

 

 

>「スペシャルウィークさん! 違いますよ! もっとリズムを合わせてください!」

 

 

え…! 違うの…。投稿者もセンスないみたいですねぇ。先生に怒られちゃいました。

 

こういったダンスや歌の練習は、ライブに直接影響してくるのでしっかりやっておく必要があります。ライブが成功しているとファンが増加して、ファン投票などに影響してきますし、もっと後の話になりますがレースで勝ち続け人気が出ているとスぺちゃんのグッズが発売されて、お財布的にウマウマになってきます。

 

なので人気に直結するライブは成功させる必要があるんですね。(構文)

ですが、このままだとまず味になりそうですねぇ…、こんな時はダンスやお歌がうまいウマ娘なんかに指導してもらえば変わるんですが、できればあの子がいいんですけどねぇ……。

 

ちょっとイベントのために居残りして練習してみましょうかね。

 

 

>「もー、ヘタだなぁー、ちみぃ。そこはこうやるんだよ! 見てて!」

 

 

なるほど、そうするんですね! 教えてくれてありがとナス!

 

 

>「ううん、いいよー」

 

 

あっしはCクラスのスペシャルウィークっていうもんでさぁ。スぺって呼んでくだせぇ!

お名前お聞きしてもよろしいか?

 

 

>「へー、スぺちゃんっていうんだ。よろしくね! ボクはトウカイテイオーだよ! テイオーって呼んでね!」

 

 

おぉー、テイオーさんっていうんですね。なんか全部半角カタカナで聞こえてきますねぇ。なんででしょ。

とりあえず教えてくれて感謝ですよ~。あと申し訳ないんですけどまだわからないとこがありましてね。もうちょっとお時間いただいても?

 

 

>「うん! 何でも聞いて!」

 

 

んじゃ、もうちょっと教えてもらいましょう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ところ変わって現在部室でござい。先ほどのイベントだけだとちょっと短いのでもう一つ。今日はチーム練習、というか今日もゴルシちゃんがお休みみたいなのでスズカ先輩との練習です。

 

一応、ゴルシちゃんとのご挨拶は済ましましたが、なんか試走時よりもおとなしかったですね? 単に乱数がよかったのか、この後のために大きなことをやらかす準備をしているのか、新しい興味の行く先を探しているのかはわかりませんが、今は放っておいても大丈夫かな? チームメンバーがそろってきたらゴルシちゃんのイベントを進めるために行動を起こしてみましょうか。

 

 

スズカ先輩、そろそろ練習始めましょう!

 

 

>「えぇ、行きましょうか、スぺちゃん。今日から併走をやっていくんでしたっけ?」

 

 

へい! そうでさぁ! そろそろスズカ先輩もレース近いですし、あっしもお手伝いしますよ!

ちなみに何出るんでしたっけ?

 

 

>「プリンシパルステークスよ、東京で開催されるからよかったら見に来てくれる?」

 

 

勿論でさぁ! でもスズカ先輩ならその時期ならNHKマイルとかもありますけど、いいんですか?

マイル苦手でしたっけ?

 

 

>「ううん、長距離はちょっと苦手だけど、マイルと中距離は得意な方。リギルにいたときに調整のために登録していたの。今はもう調整の必要はないから出走しなくてもいいんだけど、一度決めたからにはちゃんと走らないとね。」

 

 

なるほど、えらいっすね~。

 

おそらくですが先輩の言っている調整、というのは先行策で走れるかどうかの調整だったんでしょうね。スピカに入って逃げしか使わないことに決めたのでいらなくなった、ということでしょうね。

 

ちなみにですがプリンシパルステークスは東京で行われるクラシック級でOP、芝左回りの2000mですね。重賞ではないですし、適正内の距離なので普通に圧勝しそうですね。

 

 

んじゃ、併走のお手伝いしていきましょうかね。未だ走り方の矯正は終わってませんのでその練習を兼ねながらやっていきましょう。ついでに差し適性とか会長とかディープのスキルの熟練度集めもしていきましょうかねぇ。

スズカ先輩! アチキもスキル練習をしながらなんで本気で行きますぜ!

 

 

>「えぇ、望むところよ。全力でお願い。」

>「いや、レース前に無理はしないで欲しいんだが…。」

 

 

お、トレーナーじゃん! 今日もよろしくお願いしますよ!

 

 

 

 

 

【ゴールドシップ視点】

 

どもども、ゴルシちゃんだぞー、二回目の登場じゃい、ほらそこ! 味を占めたなんて言わない!

マックイーンの部屋の前でパンツ一枚にして逆吊りの刑に処すぞ!

 

なんでも投稿者がテイオー視点の話を書こうとして、「なんかこいつテイオーじゃなくね?」ってなったからあたしになったみたいだぞ。

 

テイオーの代わりって言われてなんかムカついたからマックイーンの部屋の前に吊っといた。

ちゃんと別日にテイオー編は書かせるから安心してくれ。

 

 

んじゃ、頼まれてたこと早く終わらして、ジョーダンの顔をまたつぶしに行くか…

 

 

では一つ目、最近のスピカの状況についての紹介だな、

現在はゴルシちゃんとスズカ、あとスぺの3人だな。今日、ゴルシちゃんがお休みしていたのはマックイーンの勧誘に行っていたからなんだぜ!

ちなみになかなか受け入れなかったから、さっき気絶させて部屋に放り込んでおいた。

 

…ん? 入部届? それはゴルシちゃんがマックイーン名義でスピカに入ることで申請しておいたぞ!

さっすが、ゴルシちゃん! やっさし~!

 

 

ちなみに明日、スカーレットとウオッカがスピカに入ってくれたぞ!

トレーナーのチラシで入部するのは業腹だが、致し方なし、ラリアットで許してやろう。

 

 

お次はスズカの話だな。スズカのレース予定はアプリ版のクラシックを現在走っている、という感じだな。

クラシックの4月後半ってところだな。

 

それとこのSSのレースは大体アプリ版に合わせていくみたいだからそこは許してくれよな、だそうだぞ。

 

 

 

ま、こんくらいかな。じゃまたゲーム越しに会おうぜ! トレーナー!




>ゴルシちゃんの興味の対象に黄色い頭の奴が追加されました。
 なんでも、頭の形がお気に召したのこと。


そろそろウララ視点ですかね…

あと、”明日”は誤字じゃないよ。
ゴルシちゃんだもの。


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PART15

メイクデビューまでスぺちゃんの友人たちがどう思って、何をしていたのかを書いていこうと思います。ちゃーんと前々回言っていたイベントは回収するから安心してくれよな!

いつも誤字報告ありがとうございます。
感謝感謝です!


【ハルウララ視点】

 

最近は毎日たくさん走れて、たのしいんだ! 学校に入ってすぐに今のトレーナーさんからスカウトっていうのをされて、トレーナーさんに色々教えてもらいながら毎日走ってるの!

 

トレーナーさんは面白い人で毎日いつも黄色い被り物をしてるの。最初はそういう人なのかな?って、思ってたけど前にトレーナーさんの部屋で別の被り物に被りなおしてるのを見たから普通の人だと思う!

 

最近はTとかトの形をしたのがお気に入りみたいで私の練習に付き合ってくれてる時はいつも被ってるの。私も同じものを被ってみたい!って言ったんだけど、トレーナーの神聖な?被り物らしくて私は被っちゃダメなんだって! とっても不思議!

 

 

トゥインクルシリーズに参加するためにはトレーナーについてもらうか、チームに参加しないといけないらしくて、私もキングちゃんやセイちゃんみたいにチームを探そうと思っていたんだけど、トレーナーさんが私の模擬レースを見ていてくれたみたいでスカウトしてくれたんだ!

 

何でも私はダートで走るのが得意みたいで、『ダートで一緒に一番を目指さないか!』って言われたの!

その時私はスぺちゃんみたいに一番になりたい! そう思ってたからすぐにお世話になることにしたの!

 

その時、トレーナーさんにこう言ったんだ!

 

 

「私はスぺちゃんと一緒にもっと走りたい! それでいつかは私が一番になるんだ!」

 

 

トレーナーさんは色々考えた後、『かなり高い目標だけど頑張れるか?』って私に聞いたの。

 

 

「もちろん! いっぱい私頑張るよ!」

 

 

 

 

トレーナーさんの練習は不思議なものが多いみたい。いろんな道を走ったり、他のチームの練習を見に行ったりするのも楽しいけど、トレーナーさんのお話を聞くのも面白いんだ! 前なんか一日中トレーナーさんのお話を聞いていたんだよ!っておんなじ部屋のキングちゃんと話したらすっごく心配されちゃった。でも毎日すっごく楽しいよって言ったらキングちゃんも気になるみたいで今度見に来るんだって!

 

 

「本当に大丈夫かしら、騙されてなんかいないわよね…。もしもの時のためにうちのトレーナーに話をつけておかないと…。」

 

 

それと、トレーナーさんには仲良しな人がいっぱいいるんだって! 理事長さんの秘書のたづなさんや同期の桐生院っていうトレーナーさんと仲良しなんだって! 前の練習がお休みの時に桐生院トレーナーとお勉強会してたって言ってた!

 

トレーナーさんは他のチームの練習もよく見に行ってるんだって! 何でも新しい練習方法を探しに見学に行ってるらしいよ。前にスぺちゃんが参加してるスピカに行くらしいから私も連れて行ってもらったことがあったんだけど、その時は急にトレーナーさんが来られなくなって私だけで一緒に練習してもらったんだ!

 

「今日はよろしくね! スぺちゃん!」

 

(ウララちゃんのトレーナーが来てませんけど、どうしたんですかねぇ? まこんなこともあるんでしょうか。ウララちゃんは主戦場がダートですんで今後のレースで戦うこともないでしょうし、一緒に練習しても大丈夫でしょう。ウララちゃんのためにも芝とダートの両方で走ってみましょうか、いくら不得意でも一緒に軽く走るぐらいなら何とかなるでしょう。)

「うん! 頑張ろうね! ウララちゃん!」

 

 

毎日、いろんな経験ができて楽しいです! 私は今年の6月後半ぐらいにデビューするってトレーナーさんが言ってたからそれに向かってもっとウララ頑張るよ! えい、えい、おー!

 

 

 

 

【キングヘイロー視点】

 

あの時のスペシャルウィークさんのレースは私の目に焼き付いている。他の者はどうかは知らないが、あの模擬レースの時間、私は自身ならどこに付くか、どこを走るかを投影しながら観戦していた。

 

あのレースだけは全くそれができなかった。

 

まずはスタート乱れ、何が起こったのかはわからないがスペシャルウィークさんだけが飛び出し、それ以外の方々は飛び出した彼女を見てからのスタート、2,3テンポの遅れ。彼女が何かしたのは明白だが何をしたのかはわからない。おそらくプレッシャーの類だろうが……。

 

その後のレースは彼女の独壇場。後々知ったが彼女の主作戦は差し、そのレースでは当てはめるとすれば大逃げ、全くの適性外で大差をつけて勝利。当の本人はレースなんてなかったかのようにケロッとしている。

 

先行についても、差しで脚を溜めたとしても絶対に勝てない。そう思わせるほどの壁があった。

 

 

入学すぐにこの差、なにがキングか。

彼女に勝つためには何をすればいい。何を求めればいい。

私が先頭に立てるのは何か、私がわたしであるためには何が必要か。

 

 

才能の差はこうも恐ろしいものなのか。

 

 

才能に勝つには努力しかない。

私が彼女に勝つためには恥や外見を気にしている時間はない。

 

 

私は自身の力を完全に伸ばしてくれるトレーナーを探した。

効率の問題から、私ひとりに専念してもらうため、どこかのチームトレーナーではなく、個人でやっているトレーナーを。

 

 

 

運よく見つかった。高齢のため多人数を持つのは厳しく、マンツーマンでの指導を行っていて、去年担当されていた方が卒業なさったトレーナーが。担当されたウマ娘の方々もその世代のエースと呼べる方ばかりであった。

 

当然人気は高かったが、今年はお気に召す人がいなかったらしくフリーになるかもしれない。そう噂されていた。

 

 

私が担当になってもらうために頼みに行くと、何か光るものを見出してくれたらしく簡単に担当になってくださった。土下座も辞さぬ覚悟だったので正直拍子抜けだった。

 

 

「お前さん、目標は?」

 

 

「前までなら三冠ウマ娘になることでしたが、今は違います。どうしても勝てないと思った同期の子がいるのです。その子にどうしても勝ちたい。」

 

 

「いいじゃねぇか、よくわからん称号なんかを目指すよりはそっちの方がよっぽどいい。ちゃんとついて来いよぉ、そしたらせめて食らいつけるぐらいまでは仕上げてやる。そっからはお前さんの仕事だ。気張れよ。」

 

 

「……ッ、はい! よろしくお願いします!」

 

 

 

見てなさい、スペシャルウィークさん。すぐに追いついて、追い抜かして差し上げますからね。




評価、感想、お気に入り登録、いつでもお待ちしております。(強欲定期)


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PART16

特別編でございます。
エル、グラス、セイについてはまた次回以降に。

誤字報告、いつもお世話になっております。


皆さまお待たせいたしました!

 

見たかったでしょう? このお祭りを、もちろん今年も行います! 

 

食堂主催の大食い大会! 実況は私、イナリワンが務めさせていただきます!

 

この大会の開催に至って、食堂の方々が通常の5倍の食材を搬入したらしく、あとは「持ってくれよ、オラの体力…!」というくらい気合十分で調理してくださるそうです!

 

 

 

それでは参加する選手を紹介していきましょう!

 

 

まずはこの方! 小さい体に大きな食欲! ナニワのフードファイターは伊達じゃない!

 タマモクロス選手です!

 

「誰が小さいやねん! 後で覚えとけよ!  タマモクロスや、応援よろしくな!」

 

 

お次はこいつ! あふれる母性と胸部装甲! 食べたものはどこに行くんですか! 私、気になります!

 スーパークリーク選手です!

 

「応援よろしくね~」

 

 

続いて優勝最有力ぅ! 質量保存の法則? それはおいしいのか! 食堂職員の悪夢! 暴食の権化!

 オグリキャップ選手です!

 

「いつも食べ過ぎなのだろうか…、これでも抑えているのに…。」

 

 

最後はダークホース! 新入生ながらも初日にオグリ選手とフードファイトしたこの逸材! 期待の新人!

 スペシャルウィーク選手です!

 

「頑張ります! いっぱい食べるぞー!」

 

(優勝賞品が非常にウマ味なんで参加したんですが、これは[太り気味]確定ですね。スぺちゃん明日からダイエット頑張ろうね…。)

 

 

 

 

さぁ、選手紹介も終わり、場も温まってきたところで優勝賞品を発表いたしましょう。

 

 

今大会の優勝賞品は~~~

   『商品券10万円分』です!

 

ちなみにですが準優勝は同じく『商品券3万円分』です!

 

こちらの商品券、校内の購買は勿論、トレセン提携店でも使える優れもの!

これを見て、選手たちも気合が入ってますよ~!

 

 

「むっちゃええやん! 最近買いたいもんあったからちょうどええな!」

 

「いいですね~、何を買いましょうか?」

 

「あのお店のホットケーキに使おうかな…。」

 

「お金…、お金…!」

(スぺちゃんお目目がドルマークですやん。色々買いたいものあるしちゃっかりいただいて帰りましょう。)

 

 

 

ではルールを説明いたしましょう!

今回のルールは前回までと違いより、見ごたえのあるものになっております!

 

『ドキドキ! 魔の一時間! どれだけ多く食べられるでしょうか!』です!

 

今回のルールは前回のルールとは違い早食いではなく、一時間のうちに食べた重量勝負になります!

なお、出されるメニューは食堂側が全員に同じものが行き渡るようにしてくださるようです!

重量の測定はこちらに控えている委員長たちが行ってくださいます!

 

「バッチリ、きっちりと計って見せますよ! バクシン!」

 

 

では選手たちの反応を見ていきましょう!

 

 

「え、マジで…、早食いとちゃうの…。」

 

「これはやらかしましたか…?」

 

「好きなだけ食べていいのか!」

 

「ご飯! ご飯!」

(スぺちゃんさっきから語彙力が残念になってる、お労しやスぺ上…。)

 

 

おっと~、約二名が驚愕しておりますね! 直前のお知らせでは『食堂側の意向により変更されることがあります。ご注意ください。』とお伝えしていたので反論は認めません!

 

 

さぁここで一品目! 巨大かつ丼が選手たちの目の前に置かれました!

その重量、なんと2キロ!

 

お手製カツがきれいに卵で彩られ、艶々でおいしそうなご飯の上に鎮座している、まさに絶品です!

 

かつ丼の後ろでも続々と巨大な料理が運ばれてきます! 同じどんぶり系は勿論、ニンジンハンバーグなどのお肉系、サラダなどの野菜系もしっかり用意しています!

 

おっと~、並べられた料理を前に表情が二分された~!

タマモクロス、スーパークリーク選手は顔を曇らせ、オグリキャップ、スペシャルウィーク選手は顔を輝かせています!

 

 

ではでは、皆さまお待たせしました。こちらのビッグタイマーを起動させましょう!

60分に設定しまして…

 

ではカウントダウン行きますよ~! 3,2,1,スタート!

 

 

 

さぁ全員順調な滑り出し。タマモクロス、スーパークリーク選手は逃げ、先行といったところ、徐々にスピードを上げて食べ進めています。

 

「ごちそうさま、次お願いします。」

 

おっと~ここで早くもオグリキャップ選手が完食! 二品目に移行だぁ!

 

「あっ! 私もお願いします!」

 

スペシャルウィーク選手も遅れずについていく!

 

やはり、この二人は次元が違ったぁ!

 

タマモクロス、スーパークリーク選手はいまだどんぶりの半分も行っていない!

 

 

 

 

 

 

 

さぁ大会も終盤、残り時間も5分となりました!

タマモクロス、スーパークリーク選手は30分経過ごろに沈んでしまい、今は全く箸が動いていない!

お腹もすでにスイカ腹だぁ!

 

対して、オグリキャップ、スペシャルウィーク両選手は追い込みが激しい!

食べた品数、重量は全くの同じ、これからどうなるのか全く予想がつきません!

最初のころと比べると明らかに速度は落ちていますが、山盛りスパゲッティをフォークで岩のようにして食べています!

 

「おかわり!」

「おかわり!」

 

ここで両者同時におかわりだぁ!

すでに厨房も疲労困憊、死屍累々、作りだめはとっくの昔に出尽くしたようです!

 

ここで出てきたのは山盛りのニンジンサラダだ!

厨房側のできるだけ手間が少なくて、時間が稼げるものを、という意思が見え隠れしています!

 

おっと~ここでスペシャルウィーク選手スパートを掛け始めたぁ!

オグリキャップ選手も負けじと速度を上げてきたぁ!

 

「おかわり!!」

「おかわり!!」

 

さぁ時間的にも最後の一品でしょう!

 

 

出てきたのは…、10ポンドステーキ! 10ポンドステーキです!

 

学園内にも愛好者の多いメニューですが最後にこれはヒドイ!

両者さすがに一瞬手が止まった~!

 

両者ともにお腹は破裂するんじゃないかというぐらいの大きさ!

そこに10ポンド! 4.5キロが襲い掛かる!

 

しかもこれ、自分で切り分けて食べないといけない! 肉体的疲労とのダブルパンチだぁ!

 

スペシャルウィーク選手切り分けて、口に運びましたが……、飲み込めません!

もうすでに喉まで食べ物が詰まっていたのかぁ!

 

おっと、オグリキャップ選手、ゆっくり、ゆっくりとですが食べ進めています!

やっぱりオグリは強かった!!

 

 

おっと、ここで時間終了だ~!

結果はオグリキャップ選手が一着で、スペシャルウィーク選手がアタマ差で2着です!

残念ながらタマモクロス選手、スーパークリーク選手は脱落となってしまいました!

 

選手の皆さんの健闘を称えましょう!

 

 

さぁオグリキャップ選手への優勝賞品の授与に移ります!

 

運営側から生徒会の代表としてエアグルーヴ副会長から優勝賞品の『商品券10万円』が手渡されます!

 

「大会開催にかかった費用を考えればとても笑えないがおめでとう、オグリキャップ。」

 

「ありがとう、エアグルーヴ。」

 

そして次は計量係として働いてくれたサクラバクシンオーさんから準優勝賞として『商品券3万円』の授与です。

 

「おめでとうございます! よい食べっぷりでした! まさにバクシン!」

 

「おえっぷ…、あ、ありがとうございます。」

(さすがに食べ過ぎましたね…、何十キロ分食べてるんでしょ?)

 

 

大会もこれで以上になります。皆様ご声援ありがとうございました。

実況は私、イナリワンでお伝えしました! 機会があればまたお会いしましょう! バイバ~イ!

 




さぁみんなもオグリキャップが何キログラム食べたか一緒に考えてみよう!
少なくとも10キロ以上だぞ!


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PART17

ちょっと短いですので初投稿です。

キングのトレーナーの名前は感想で「前作主人公、レッドみたい」というものがあったのでレッドを頂き、赤田さんといたしました。

経験豊富な初老の男性です。


いつも誤字報告ありがとうございます。
感謝感謝です!

それとこの場で感想を書いてくださった方に感謝を。
いつも助けられてます。


【リギルトレーナー視点】

 

 

「なるほど、あれがスペシャルウィークか。」

 

 

私は今年新しく入ってきたエルコンドルパサーとグラスワンダーに超えるべき友、として教えられたスペシャルウィークを見に来ていた。

 

そこには最近リギルからスピカに移籍したサイレンススズカと併走している彼女の姿があった。

 

 

「予想よりも強い、いや強すぎるな。本当に新入生か?」

 

 

口ではそう言いながらも彼女のフォームの荒さやレース勘があまり養われていないこと、スピカのあいつの指導方針、過去の非公式レースの映像を考えると、新入生が持っていて学年が進むごとに矯正される癖が散見されるので間違いないと考えられる。

 

 

「そして、ただの早熟なのではなく成長途中、当てはめるとすれば晩成タイプか? フッ、全く笑えんな。」

 

 

才能あるウマ娘たちを見てきたからわかる。あれは時間をかければかけるほど強くなるタイプだ。

 

 

「そうなると、早いうちがいい。彼女たちが超えれるとすればクラシックになるのか? いやシニアの春でもまだいけるのか?」

 

 

悩む。本来ならもう少し時間をかけて育成していきたい二人だったが、あいつらはスペシャルウィークとの対戦を望むのだろう。ならばトレーナーである私もそれに合わせる必要がある。

 

 

「ならば今年のジュニアはできるだけ避けて、決戦は皐月かダービーのどちらか。」

 

 

いや、皐月は敗北覚悟で対戦させて、経験とやつの癖を把握させてから、ダービーで決戦を仕掛ける方がいいだろう。いや、二人ともマイルの適性があるからそちらでGⅠの舞台馴れをさせてもいい。

 

エルコンドルパサーはマイルと中距離で、グラスワンダーはマイルと長距離で力を発揮できるだろう。両者ともに中距離、長距離が不得意なわけではないがそのあたりも考えた方がよさそうだ。

 

 

「海外で成長させる方法もある、か。まったく、才能をもつものを任せられると考えることが多くて困るな。」

 

 

まぁ、その苦労が楽しいところもあるのだが、これは胸に秘めておいた方がいいな。

 

 

今年はあの赤田先生が本腰を入れて育成する、と言っていたキングヘイローや、期待の新人が担当するダートで活躍しそうなハルウララ。入部選抜テストに来るのならば入れていただろうセイウンスカイ。ルドルフが注目するトウカイテイオーにメジロの最高傑作メジロマックイーン。それ以外にも多数の才能たちがいる。

 

 

その中心にいるのはスペシャルウィークだ。彼女が先頭を維持し続けるのか、誰かが彼女を負かすのか。出来れば私が担当する二人がそれになって欲しい。

 

 

 

そんなことを考えながらスピカの練習場を後にした。

 

最初はスズカの様子を見に来るついでにスペシャルウィークを見に来たが、目的がいつの間にかに変わってしまっていたような気がする。だが、今日のスズカの走りを見る限り大丈夫だろう。スピカのトレーナーならば安心して任せられる。あいつも新しい世代に熱されたのかいつになく真剣だったしな。

 

 

さぁ、わたしも彼女たちのために頑張るか。

 

 

 

 

 

 

 

「スぺ~! またお前食べ過ぎて太っただろ! 体重管理のためにももっと走れ~!」

 

「お、おなかが重いです……、いつも楽しいはずの走るのがつらい……。」

 

 

「確かにスぺちゃん、またお腹出てきてますよね。」

 

「リバウンド横綱のスぺちゃんにはこちら! ゴルシちゃん特性の虹色に光るドリンクを進呈しよう!」

 

「(わたくしも最近ストレスで食べ過ぎてますし、人のこと言えませんね)そんな物騒なものどこで手に入れたんですか…。」

 

「タキオンにもらったの改良した。マックイーンも最近太ってるし飲むか?」

 

「何であなたが知ってるんですか!」

 

 

 

 

 

とりあえず体重管理だけはしっかりしよう。そう思う東条トレーナーだった。

 

 

 

 

 

 

【セイウンスカイ視点】

 

 

「セイちゃんはクールダウンですか?」

 

 

あぁ! トレーナーさんか。びっくりさせないでよ。うん、ちょっとだけ休憩。

 

 

「セイちゃんは自分で色々考えてくれるから楽でいいですねぇ~。」

 

 

もうちょっとはしっかりした方がいいんじゃないの、トレーナーさん。

 

 

「いえいえ~、私のやり方は自分で考えて実行する、ですから。トレーナーは皆さんの後ろでサポートするのが一番いいんですよ~。それにセイちゃんもそれが目的でウチに入ってくれたんでしょう?」

 

 

まぁね、でも最初にゲートになれるために、入部直後に丸一日ゲートに縛り付けたのは忘れないからね。

 

 

「あれはチーム:アークトゥルスの伝統行事みたいなものですから。セイちゃんの先輩方もみんなあれでゲートに慣れ親しんだんですよ~。」

 

 

おかげさまでもっとゲートが嫌いになったよ。

 

 

「……今からゲートに縛られたいですか?」

 

 

いや、大丈夫ですので、お願いですからそんな怖い顔しないでください。

 

 

「……まぁ、よしとしましょう。あぁ! それと頼まれていた資料、用意しておきました。記録に残ってるすべての逃げウマ娘と差しウマ娘のレース映像と私の解説付きの特別版ですよ~。大事に使ってくださいね~。」

 

 

うん、ありがとう、トレーナー。これでやっと私は始められる。

 

 

「今年は正直に言ってしまうと栄光の世代というより、蟲毒に近い感じがしますね~。セイちゃんが周りに勝ってあの子に挑戦するには作戦がすっごく大事ですよ~。」

 

 

解ってる。トレーナーも手伝ってよね。それじゃあ休憩もこれぐらいにして私も走ってくるよ。

 

 

「解りました~。これまで通りスピードとスタミナに注力しながらやっていきましょう~。では、行ってらっしゃい。」

 

 

 

 

 

「作戦が大事なのはその通りですが、それだけではトップは目指せませんね。セイちゃんの目標であるスペシャルウィークさんのデータを集めるのは勿論ですが、それ以外の方々のものも必要ですね。それとセイちゃんの練習メニューもあれだけでは足りないでしょう。彼女の気質的に時間を延ばすのは自分から言い出さない限り、悪影響でしょうし、もっと質を上げれるように考えてみましょうか。」

 

「やることは多く、大変ですが、他の方や今後の後輩たちのためにも必要なことですしね。頑張っていきましょうか~」




レッドが来たなら緑だろう

というわけでチーム:アークトゥルスのトレーナー、緑川さん

いつもはぽわぽわした感じだが怒ると人が変わる。
ウマ娘を支えることを信条としており、データを使って最適な作戦を立案してくる


そろそろ走者視点に戻します。


評価、感想、お気に入り登録いつもありがとうございます。


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PART18

いつも誤字報告ありがとうございます。
非常に助かっております。


最近ちょっとずつ短くなってきて申し訳ねぇ。


オッス! オラ投稿者! 最近投稿してるはずなのに投稿してないような気がしていてとっても不思議だぞ!

今日はスぺちゃんと一緒にお部屋でくつろいでます。ちなみにスズカ先輩は夜のランニングに行ってますぜ。

 

それで先輩とのランニングをせずに何を始めようとしてるのかというと、こちら、購買部が発行しているパンフレット。こちらを見ていこうと思ったからです。

 

 

こちらのパンフを見ながら購買部の方で注文するとその翌日に頼んだものが自室に届きます。簡単なトレーニング用品などは購買部で購入できますが、スぺちゃんに使いたいと思ってるようなものは注文する必要があるんですね。

 

 

ここではプレイヤーが選択して必要なものを買ってあげる必要がありますが、キャラの方が自分の好きなもの、欲しいものにチェックをつけたりしているので、お金に余裕があるときは買ってあげましょう。買ってあげるとキャラの調子が上がるし喜んでいるキャラも見れるのでとってもヨシです。

 

 

んで、私は全身に過重をかけるおもりとか、大リーガー育成ギプスの簡易版なんかを買おうとしているわけでして、最近スぺちゃんが頑張って稼いだお金(買い食いとかでそこまで時間をかけた割には貯まってない)と前々回の大食い大会で手に入れた商品券を使っていきます。

 

もちろん、スぺちゃんが欲しいものも値段によりますが買いますよ。

 

ほら、スぺちゃんおじさんに欲しい物教えてけろ。

 

 

スぺちゃんがパンフにしおりをしてペンでぐるぐるしてるのは……

 

 

 

炊飯器ですね。

 

 

 

……炊飯器ですか!? しかもこれ結構お高い奴じゃないですか。

 

 

これほんとに欲しいの? えぇ…、そんな笑顔で顔振らんでも……。いつでもおいしいごはんが欲しいんですか…、食堂で食べるっていうのは駄目みたいですね。スぺちゃんの目が絶対にこれは買う、って目をしています。

 

 

 

まぁ別に買うのはいいんですが、問題がお値段なんですよねぇ。この炊飯器、5万ぐらいしてるんですよ…。

全身を鍛えるためのギプスもそれぐらいしますし、加重トレーニングに使うおもりも買いたいので、スぺちゃん諦めてくれませんか?

 

あぁ、これは駄目みたいですね、このままだとおもちゃ売り場でほしいものを買ってもらえるまで寝転んで暴れまくるスぺちゃんが完成しそうです。

 

 

う~ん、でもここで買ってそろそろ育成を本格化させないと後々すごい苦労するんですよね。

ごめんねスぺちゃん、メイクデビューの賞金で買ってあげるから。

 

 

ということで商品券と稼いだバイト代を使いましてギプスとおもりを買いましょうか!

 

 

>買い物を終了しました。商品は翌日に届きます。

 

>欲しいものが買えずスペシャルウィークが拗ねました。

>調子が絶不調になりました。

 

 

 

ファ! ナンデ! ゼッフチョウナンデ!

 

えぇ~、そんなに欲しかったんですか。メイクデビュー後に買ってあげるって言ったじゃない!

 

 

はい、先ほどまで調子は絶好調でしたが、正反対の位置まで落ちましたね。自分泣いていいですか?

こうなってしまうと練習を行っても気が入らず、ケガしやすくなったり、経験値が入りにくくなったりするので非常にまず味ですねぇ。

 

これは早急にスぺちゃんのご機嫌直しをしなくてはなりませんねぇ。

 

ご機嫌直しに一番いいのは誰かと遊びに行くことですが、同室のスズカ先輩はもうすぐレースになりますし、同じクラスの子たちか、スピカメンバーの誰かと遊びに行きますか。

 

ちなみにですがお出かけはアプリ版であったお出かけを自由に選べるようになり、またその行き先が増えたものと考えていただいてもらえばOKです。クレーンゲームはお前、許さんからな。

 

 

んじゃ、スぺちゃん。あしたお友達とどこかに遊びに行きましょうね。ほら、元気出して、早速連絡して明日遊べるのが誰か確認しますよ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

【グループラインにて】

 

>明日、時間があったら一緒に遊びませんか?

 

 

  ごめんなさい、明日は練習があるからいけないわ<

 

 

>ワタシもデース、ゴメンネ

 

 

>私もパスー

 

 

>ちょっと私も難しいわ。また今度誘ってください。

 

 

>ウララは大丈夫~

 

 

>ターボも行けるぞ!

 

 

 

 

 

「よかったんですカ、練習がお休みの日に、せっかくのお誘いを断っテ。」

 

「それは貴方もでしょ、エル。」

 

 

明日はリギルで初めての休日、練習が忙しく大変だが毎日成長を確信できる。本来なら休日はゆっくり休んで疲れをとるべきなのだが…。

 

 

「にしてもおハナトレーナー、アレ、絶対わかってましたよネ。」

 

「そうね、私たちが何をしたいか、解ってらっしゃったんでしょうね。」

 

 

明日が休日だと発表されたとき、私たち二人は東条トレーナーに、休日に練習場を使わせてもらえるか頼みにいった。すると……

 

 

「解った、その日はトレーナー会議があるのでいけないが使えるようにはしておこう。一応監督として後輩のトレーナーに面倒を見させる、新人だが能力はある奴だ。」

 

 

とすぐに許可を出してくださった。

 

 

 

「……追いつけるんでしょうか、私たちは。」

 

「何とかなりますっテ、スぺちゃんたちが遊んでるうちに追い越せ、追い抜け、ですヨ!」

 

「ふふ、えぇ、そうね。弱気になったら勝てるものも勝てないわ。」

 

 

あの時、思ってしまった。絶対に勝てないと思わせるあの走り。

 

それに近づきたい、追いつきたい、追い抜きたい。

 

おそらく、エルもそうだろう。

 

 

「スぺちゃんもそうですが、貴方にも負けませんよ、エル。」

 

「望むところデース! 私の世界制覇の礎としてやりマース!」

 

 

そう言って私たちは笑いあった。おそらく、エルがいなければ私は折れてしまっただろう。

良き友人がライバルであり、同室であることに感謝しなければならないわね。

 

 

 

後日、練習を見てくれたトレーナーさんはウララさんの担当の方だったが、色々とすごい方だった。エルが何も言わなかったので指摘しなかったが、あの黄色いTの被り物は何なんだろうか。

 

指導はちゃんとしていたのでそこだけは安心できたが。




その時、ふと閃いた!
このアイディアは、ハルウララとの
トレーニングに活かせるかもしれない!


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PART19

誤字報告いつも大変お世話になっております。
助かります。


はーい、遊びにかまけてるウマ娘実況プレイやってくよ~!

遊んでて大丈夫かって? 我日本総大将ぞ!(デビュー前) ダイジョブダッテ!

 

 

今日は同じクラスのウララちゃんとターボ師匠、あと同じチームのスカーレット・ウオッカコンビにマックイーン。あと呼んでないのに来ているゴルシちゃんとお近くのショッピングモールに遊びに来てるぞ!

 

ゴルシちゃんが何でいるんですかねぇ?

 

 

「へっ! 水くせぇじゃねえか、スぺ! こと、遊びにかけてはこのゴルシ様の右に出るものはいないぜ!」

 

「確かにいなさそうですわね…。」

 

「へぇ~、ゴルシちゃんっていうんだ、私、ウララ! よろしく!」

 

 

はい、スぺちゃんが橋渡ししながら自己紹介しましょうね~。

 

こちら同じクラスのウララちゃんとターボ師匠、こっちはスピカのスカーレットとウオッカ。あと爺孫です。

 

んじゃ、早速遊びに行きましょうかね、前回絶不調になってしまったのを絶好調になるまで遊び倒しましょう。

先頭は遊びマスターのゴルシちゃんで行きますよ~!

 

 

 

 

はい、(遊びシーンは)カットです。動画時間的にも仕方ないよなぁ! 

別に録画してるのあげるから許してヒヤシンス。

 

かなり限界まで遊んだので体力が持ってかれてますが調子はちゃんと回復してますね。

今日の目的は達成できてるのでよきかなよきかなです。

 

 

お!部屋に帰ると荷物が届いてますね、スズカ先輩が受け取ってくれてたみたいですね。大丈夫でした? スズカ先輩、結構重かったと思うんですけど……

 

 

「大丈夫よ、でもいったい何を買ったの?」

 

 

これっすか~、これはですね服の内側に仕込むおもりと大リーガー育成ギプスならぬ大スターウマ娘育成ギプスですね。こちらのギブスは元ネタのアニメみたいにどう着てもバネが挟まりますよね…、というものではなくて全身タイツみたいなやつ、まぁ簡単に言ってしまうとトレーニングスーツの全身版です。

 

例のアニメみたいにあんまり加重トレーニングやこのスーツを着て練習しすぎると故障の原因になりやすく、通常の育成ではあんまり使われないですが、今回のスぺちゃんは違います。

 

そう、スぺちゃんの個性、[鉄人]ですね。こいつのおかげで普通ならケガ率危険率ですよ…、という練習やちょっとした無理もきいてくれるようになります。ま、そこらへんはお任せください、度重なる試走のおかげでちゃんとしたライン引きはできてます。スぺちゃんがケガや故障をすることはありません。

 

これ関係でのミスはガバではすみませんので細心の注意を払っているのでほんとにご安心を。

 

 

んじゃ、明日からは毎日これを着て生活しますよ~。最初は色々と日常生活に影響が出ますが一か月ぐらいしたら慣れてくるのでそこから服におもりを仕込んでいきましょうね~。

 

お? スズカ先輩どうしたんですか? すごい顔してますけど…?

 

 

「スぺちゃん、それほんとに着るの?」

 

 

はい、着ますよ! 毎日トレーニングです! あっ! ちゃんと脱ぐときは脱ぐんで安心してくださいね!

 

 

まぁ嘘ですが、スぺちゃんはこれからレース時以外はこのスーツを着続けますし、おもりもちゃんと付けます。そうでもしないとライバル枠においてかれるからね!

 

んじゃちょっとスズカ先輩に心配されながら、今回はここまでとなります。

最近動画時間が短くてすみません、メイクデビューがくるまでちょっとお待ちです。

ではまたお会いしましょう~。

 

 

 

 

【サイレンススズカ視点】

 

今日はスぺちゃんは新しく入部した子たちと遊びに行っていた。急な決定で昨日の夜にあたふたしながらみんなと予定を合わせていたが、なんでそんなに急に決めたのかしら? なにかみんなで遊ぶのを決めていて、直前までスぺちゃんが忘れていたのかしら?

 

スぺちゃんは私が行けないことを気にして申し訳なさそうにしていたが、私に気にせず楽しんできてと伝えると

 

「お土産話、いっぱい用意して帰ってきます!」

 

と、張り切って出発した。色々とお金に困っていて、バイトをしたり大食い大会に参加したりする子だから、なにか買ってきてもらうよりも、お金がかからない方が彼女のお財布にとっても、私の心情的にも安心だ。

 

 

元々、今日はスピカのチーム練習はお休みでレースが近い私の追い込みと、最近全然練習に参加していないゴールドシップさんとの二人で練習するはずだったのだけど、やっぱりゴールドシップさんは練習に来ず、最近メンバーが増えて忙しそうになってきたトレーナーさんが空に吠えていた。

 

スマホを見てみるとゴールドシップさんからスぺちゃんたちと遊びに行ったと連絡があったので面倒を見てもらうことをお願いしておいた。スぺちゃんの実力のせいかあまり学年が変わらないように思ってしまうが、彼女は新入生。一緒に行く子たちも同学年と聞いていたから、ゴールドシップさんがついていってくれるのは安心できる。

 

彼女は自由奔放なことが目につくが、そういった細かいところにも気が付くから意外と頼りになる。

決して練習が面倒だからそっちにいった、というわけではないはずだ、たぶん。

 

 

「トレーナーさん、叫んでても変わりませんし始めましょう。」

 

「あぁ、すまない。早速やるか!」

 

 

私も先輩として恥ずかしい姿は見せられない、次のレースに向けて頑張っていこう。

 

 

 

 

その日の練習の帰りに寮に帰るとフジキセキ寮長から私の部屋宛に荷物が届いていると伝えられた。何か頼んでいただろうかと思いながら渡されたものは大きさの割にはかなり重めな荷物だった。

 

運べなくはないが私はそこまで力がある方ではないので少し苦労しながら部屋まで運び、宛名を確認してみると学園が提携しているトレーニング用品店からスぺちゃん宛の荷物だった。

 

スぺちゃんのお財布事情的にそういえば最近スぺちゃんが熱心に購買のパンフレットを読んでいたのを思い出し、最近出場してまた太った大食い大会の賞品を使ったのだろうと考えた。

 

 

 

スぺちゃんが帰ってきてからわかったのだが、荷物の中身は服の中に仕込むおもりとトレーニングスーツ。おもりはまだわかるがスーツの方は取り扱いに気を付けた方がいい。

 

説明書を見る限り、市販されているものとは違い、ウマ娘用の特注品。体にかかる負担が大きい分、効果を大きく上げるものだった。そのことを伝えると

 

 

「ちゃんと考えてるので大丈夫です! あと私、体が丈夫なので!」

 

 

とのことだった。ちょっとやりすぎないように気を付けた方がいいかもしれない。明日からよく注意して見ておこう。そのあと、トレーナーさんにも連絡した方がいいと考えて、伝えておいた。当分はこれで大丈夫だろう。

 

 

スぺちゃんは最近走り方も安定してきたし実力も上がってきている。私ももっと頑張らないといけないが、スぺちゃんと私が戦うにはスぺちゃんがシニア級に上がるまで待たないといけない。それまでに故障してしまっては元も子もない、スぺちゃんのことも気にしないといけないが、自分のことにも注意しておこう。

 

 

そんなことを考えながら今日も終わっていく。スぺちゃんはもう眠ってしまったようだ。

 

 

「今日はとっても楽しかったね。明日は、もっと楽しくなるよね、スぺちゃん?」

 

 

 




最後の最後に耐えられなかった…

ネタ言わないと死んじゃう病が…



投稿者が貯めている話(今後書きます)
〇トウカイテイオー視点のおはなし
〇スズカ先輩のレース
〇スピカメンバー+αでお出かけ(new!!)


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PART20

THE 難産

いつも誤字報告ありがとうございます。
感謝感謝です!


さぁやってまいりました! スピカーズ+αによるお出かけ会! 投稿者がキャラ数の多さを内容をどうすればいいのか全く分からないけど早めに書いておかないと後々の展開に響きそうなので見切り発車でやってくぞ!

 

「一体誰に向かって話してるんですか……、というか投稿者って誰ですの。」

 

というわけでスぺ! イカれたメンバーを紹介してくれ!

 

「はい! では右側から! 私と同じクラスのハルウララさんです!」

 

「今日はよっろしく~! ハルウララです!」

 

 

「お次はツインターボさん!」

 

「おう! ターボはツインターボっていうんだ! よろしくな!」

 

 

「次に私の所属してるチーム:スピカから仲良しコンビ! ウオッカさんとダイワスカーレットさんです。」

 

「あたしらそう思われてんだな、ウオッカだ、よろしく。」

 

「ダイワスカーレットよ、よろしくね。」

 

 

「同じくスピカより、メジロマックイーンさんです!」

 

「メジロマックイーンです。よろしくお願いしますね。」

 

 

「最後に我らがスピカのリーダー! ゴールドシップさんです!」

 

うっむ! 紹介ご苦労、スぺ君。

 

 

 

「というかうちのリーダーってゴルシなのか?」

「どっちかというとスズカさんっぽいよね。そこんとこどうなの、スぺ?」

「スズカ先輩が入るだいぶ前にゴルシさんが入部していたので、多分そうかと。」

「いつの間にかに所属チームがスピカになっていた私はいったい…、まぁ、そこまで不満はありませんが…。」

 

 

 

「うわ~! とっても楽しそうな人たちが集まったね、ターボちゃん!」

「そうだな! これなかったあいつらの分も楽しむぞー!」

 

 

ところでスぺ、とりあえず学園近場のショッピングモールに集まってるわけだが、今日の予定は決めてるのか?

 

 

「いえ、全く!」

 

 

「「「「ズコーーー!」」」」

 

 

お、さすがはスピカの面々、ギャグ時空に吞まれているな!

ウララにターボ! このようにボケが来たときはうまくつなげるのがコツだぞ!

 

 

「ほへー」

「なるほど、次はウララもやってみるね!」

 

 

 

「やらなくていいですからね! スぺさんも同じクラスならば汚染される前に早く助けなさい!」

 

「す、すみません…。」

 

 

ならこのパーペキゴルシちゃんが今日の進行を務めてもいいんだが、主催者のスぺさんは何かいい案はあります?

 

 

「あ! ならいつもお世話になっているボウリング場なんていかがでしょうか!」

 

 

お、ボウリングか、投稿者の嫌いなカタカナでいいな! あたしは賛成だぞ!

 

 

「ボウリングか、いいな! 勝負しようぜ! スカーレット!」

「望むところよ! 吠え面かかせてやるわ!」

 

 

「ボウリングはしたことありませんが、何とかなるでしょうか?」

「ウララも初めてー!」

「ターボもやったことないぞ!」

 

「なら私が教えますよ! といってもバイトでお世話になってる時に教えてもらったのでうまくはないんですけど…。」

 

 

ならレーンを分けてやるか! 初心者と経験者に分けて、スぺは初心者の方に行く感じでいいか。

ならさっそくイクゾー!

 

 

 

 

 

さて、ついたわけだが、スぺ! 早速隣同士のレーンとシューズの貸し出しの申請を行うのだ!

 

 

「解りました! ゴールドシップさんは靴、どうしますか?」

 

 

ゴルシちゃんはこんなこともあろうかとMYシューズとMYボールを持ってきているので心配はフヨウラ!

 

 

 

 

さて、ゴルシちゃんはどう投げてもストライクだし、ウオッカとスカーレットもいい感じで接戦して引き分けだろうから初心者組の方を見てみましょうかね。

 

 

ふむ、スぺはいたって普通なスコア、投げ方も普通って感じだな。まぁ楽しめたらいいって感じだろうし、こんなもんか。

 

マックイーンは投げる動作もガタガタだし、手を離す位置も高いなぁ。スコアの方もボロボロ。

うん、お察し!

 

ウララはスぺや隣の二人組のやり方を見ながらだんだんと成長していく感じだな、時間が進むごとにうまくなっていく感じだな。スコアはスぺを追い抜きそうな感じだな。

 

ターボは全部ストライク狙いだな! 思い切りがよくてヨシ!

面白いぐらいにストライクとガターしかとってないな。

成績の方はあんまりよくないが、もうちょっと練習すれば伸びそうだ。

 

 

お!マックイーン! 苦戦してんナ! ゴルシちゃんが教えてやろうか?

 

 

「むぅ…。結構難しいですね。ゴールドシップさん教えてくださるのならちゃんと教えてくださいね。」

 

 

勿論ですとも、プロですから。

まぁちゃんと教えるんだがイタズラとして、さっき用意した大手洋服店のタグをちゃんと見えるようにくっつけておくんだけどな! わかる奴からすれば服の品質のレベルが違うからちゃんと見ればわかるけど、パッと見ただけならわからないしな!

 

 

結果はゴルシちゃんはパーフェクト。二人組は引き分け。

スぺは普通に終わらして、ウララはさいごの方に上げてきてかなりいいスコア。

ターボはガターか、ストライクのどちらか、スコアの方は残念ながら最下位。

マックイーンはゴルシちゃんが教えてから伸びてきて最下位から逃げ切った、っていう感じだな!

 

 

ちなみにマックイーンは寮に帰るまで気が付かなくて、見かねたフジキセキ寮長にエレガントに取ってもらってたぞ! やったのがばれてマックイーンのプロレス技を受けたけどゴルシちゃんは今日も元気です。

 

 

おわり。




マックイーンの洋服のタグについて

ウオッカ
「気が付いたけどゴルシに口止めされた。」
ダイワスカーレット
「上に同じ。」
スペシャルウィーク
「(走者がいるので)面倒になりそうなので言わなかった。」
ハルウララ
「そもそも気が付かなかった。」
ツインターボ
「大逃げ師匠の性か、マックイーンの後ろに立たなかったので気が付かなかった。」


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PART21

ストックしながら投稿してるんですが、やっぱり私には合わないのかもね。
あぁ、モウガマンデキナイ! 連続投稿だ!!!


誤字報告いつもありがとうございます。
誤字がなくなるように精進してまいります。



ホーイ、今日はレース場からウマ娘プリティーダービー、始めて行きますよ。本日は前回お話していたイベント回収編になりそうですね。そうです、スズカ先輩のレース観戦ですね。

 

今回のイベント、スぺちゃんにとっても大事なイベントでございまして、何とスぺちゃん初レース場です!

今回はスピカ他メンバーは先に場所取りをしていまして、スぺちゃんがちょっと遅れて向かってる感じですね。

 

まぁ言ってしまえばアニメ一期の一話をイベントに起こしたという感じですからみんなでスズカ先輩を応援して、スズカ先輩はっやーい! ってするだけですね。

 

 

何にしてもスぺちゃんは初めてのレース場、人もたくさん集まっていますし、色々と屋台も出てるみたいですね。案の定大量に食べ物を買い込んでいます。あの…、また所持金が減ってくんですが…。最近トレーニング用品を購入いたしましたしお財布が結構寂しいのでやめていただいても…。

 

あ、はい。無理みたいですね。お財布の残量が二桁まで喰われました。そんなに食うからお金に苦労するんやぞ、スぺちゃん。それにこの後…

 

 

>レース場に近づくほど歓声が聞こえてくる。私は憧れの場所に来ているのだ。

>感極まり、持っていたものを落としてしまった。

>ほとんどひっくり返してしまった、もう食べることはできないだろう。

 

 

あーあ、やっぱりね。せっかく買った食べ物を落としちゃいました。さすがに落としたものは食べれないのでごめんなさいしましょうね~。

 

スぺちゃんは食べ物をボッシュートしてしまったことよりも、初めてのレース場での興奮の方が勝ってるみたいで調子は下がっていませんが、お財布的には大打撃です。悲しいなぁ…。

 

 

ま、気を取り直してスピカメンバーが集まってる場所に移動しましょう。

 

ちなみにですが現在のメンバーはゴールドシップ、サイレンススズカ、ダイワスカーレット、ウオッカ、メジロマックイーンとスぺちゃんの6人です。我らがテイオーちゃんはまだ参加していませんね。一応今後のチャート的にもスピカに参入していただかないと困るのでメイクデビューがある6月までに入部してくれなかった場合はスぺちゃんに動いてもらって勧誘しに行きましょう。最悪ゴルシと麻袋です。

 

 

>「おぉ! スぺ! 遅かったな、このゴルシ様が場所をとっておいたぞ!」

 

 

お! ゴルシちゃん、ありがとナス! これで最前列でレース鑑賞できますねぇ!

んで、スズカ先輩のパドック入りはどんな感じでしたか?

 

 

>「見た感じ気合も入ってたし、緊張もしてないっぽかったから行けるだろ。あっそうだ! このルービックキューブもう一個あるけどやるか?」

 

 

結構ですたい! ならスズカ先輩が一着は確定でどんな勝ち方をするか、っていう感じですかね。ゴルシちゃんからおもちゃではなく、今日のレース新聞を頂きましてウオッカちゃんとスカーレットちゃんと一緒に見ましょう。

 

 

ふむふむ、なるほど。見た感じそんなに強い人はいないみたいですねぇ。スズカ先輩が一番人気で周りはOPでやってる方ばかり、もともとGⅠ狙える方ですし安心して鑑賞できますね。

 

 

>「まぁもともと調整で走る、って話だったらしいからな。そんなもんじゃねえの?」

>「でも、スズカ先輩が調整って、何に向けてのかしら? 宝塚記念とか?」

 

 

いや、元々は先行策で走れるかどうかの調整だったみたいですよ。今は逃げ一本で進むつもりだから、自分がどこまで走れるかの確認って、昨日言ってました。

 

 

>「なるほどなぁ、くぅ~! 俺も早く走りたいぜ!」

>「あら、私が先に走るに決まってるじゃない!」

 

 

おっと、このコンビがまたじゃれ合いを始めましたね。見てて楽しいですし…、このまま眺めているのもいいか。

 

 

>「あら、またやってますの?」

>「周りに迷惑かけないようにな~。」

 

 

お、マックイーンにトレーナーさんですね。見た感じ皆さんの飲み物を買いに行ってたみたいですね。

 

 

>「ほら、スぺ、適当に買ったやつだがこれでいいか?」

 

 

ニンジンジュースですねぇ、わざわざ感謝ですよ! さっき買ったものボッシュートしてしまったのでお口が寂しかったのでちょうどよかったです。

 

それとスぺちゃん、このレースは後々使えるので目に焼き付けておいてくださいね。

さぁ、そろそろ始まりますね。

 

 

 

 

【サイレンススズカ視点】

 

このレースに出走した理由は調整だったが、今は調整ですらない。

言ってしまえば私はここで走る理由もないし、資格もないだろう。

 

 

だが、それでも私は先頭を譲らない、譲りたくない。

その意味がなければ、作ればいい。

 

 

私が走る理由は見せつけるため。

 

新しくできた後輩たちに私がここにいることを。

エアグルーヴやフクキタルにまだ私が走れることを。

 

日々成長し続けるスぺちゃんに負けないためにも、ここで勝たなければならない。

 

 

 

私がすること、できることはただ前を進み続けること。

 

 

 

『各ウマ娘、無事ゲートに納まりました。』

 

 

 

 

『今、スタートです。』

 

 

 

 

スタートは上々、後は何も気にせず前を走り抜けるだけ。

少し前までは先頭で誰も周りにいない時の静寂、ゴールの先にあるあの光を求めていた。

 

 

けど、今は違う。

 

 

私は、あの子に、勝ちたい。

 

 

 

『速い! 速い! 速過ぎる! 前半1000m通過タイム、56秒2! こんなに速いレースがあったでしょうか! サイレンススズカが二番手に大きく差を引き離して独走状態!』

 

 

 

自分以外、なにもいない先頭、誰もついてこれていない。

 

だが、あの子と一緒に走ったら、必ず後ろについていただろう。

 

最終コーナーに入るあたりで、位置を整え、直線で爆発させてくる。

 

 

 

私を抜き、先頭に立とうとする彼女を思い浮かべ、私も加速する。

 

 

 

『サイレンススズカが最終コーナーを抜けた! 未だ後続は来ていない! ッ! ここで加速した! どこまで速くなるのか! 最強は、最速はここにあった!』

 

 

 

最速は私のものだ! 誰にも渡さないっ!! 

 

 

 

『サイレンススズカが独走で、いまゴールイン! タイムは……! レコード!、レコードです! 記録を大幅に縮めて、1分54秒3! 誰も寄せ付けない! 最速の機能美、ここにあり!』

 

 

 

走り終わり、速度を落としながら、息を整える。 体に違和感もない。

 

確信した、このままいけば彼女にも負けない。

 

 

 

 

「「「スズカ先輩~~!!!!」」」

 

 

 

 

あぁ、応援に来てくれていたスぺちゃんたちが呼んでいる。

自分の世界に浸るのもいいが、ライブもあることだし、まずは彼女たちに感謝の言葉を伝えにいこう。

 

 

そうだ、スぺちゃんに伝えなければ、

 

 

「私は負けませんよ。」って。




走者の感想
「チャートが壊れました。自分、疾走してもいいですか? スズカ速すぎんだろ…」

スぺちゃんの感想
「スズカ先輩ってやっぱりすごい! 私もいつか一緒に走るために頑張らないと!」


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PART22

誤字報告、いつもお世話になっております。
大変助かっております。


「どうだったテイオー、私のライバルは?」

 

 

うん、とっても速かった。

 

 

「だろう。ま、私を差し置いて最強呼ばわりされるのは癪だが、最速、という点ではあいつの方が上だろうな。」

 

 

エアグルーヴにそこまで言わせるなんて、やっぱりすごいんだね。

 

 

「あぁ! リギルに居たころは燻っていたが、元々奴はすごい奴だった。」

 

 

そっか、そうなんだね。 ……ねぇエアグルーヴ。ボクはどうすればいいのかな?

 

 

「……もう決めていることを私に聞くのか?」

 

 

え! なんでわかったの!

 

 

「顔を見ればすぐにわかる。ここに来る前は凄い顔をしていたが、今はずいぶんとましだぞ。」

 

 

……そんなにボクの顔ひどかった?

 

 

「ひどかったぞ。ひどすぎて会長が私に相談しに来るぐらいだ。帰ったら会長にお会いしに行くのだぞ。」

 

 

そっか、ありがと、エアグルーヴ。帰ったら会いに行くよ。

 

 

 

 

 

 

 

ボクが勝てないと思わせられた初めてのウマ娘、その子と会ったのはダンススタジオだった。

 

その時は忘れ物をしてしまって、放課後に取りに来たんだ。それで、スタジオに入ると、一人で練習している子がいた。その時はちょっと笑っちゃったよ、音楽からボクたちが初めに練習する簡単な曲なのはわかったんだけど、あまりにもヘタ過ぎたんだ。

 

それでちょっと見てられなかったから、色々と教えてあげた。その時に名前を聞いて、その子がスペシャルウィークっていうのを知った。

 

その時はただ、ダンスが苦手な子、というイメージしかなかった。

 

そのあと、チーム選びでいろんなところを見てきた帰りに、練習してるのを見た。

 

 

そこでは今日見に来ていたサイレンススズカさんとスペシャルウィークちゃんが併走していた。

 

 

目が離せなかった。単に強かった。

 

 

自分がその場にいると想像してみる、が、搔き消される。

二人のレベルが、いや、スペシャルウィーク、あの子の力が強すぎるんだ。

 

 

 

二人の練習が終わるまで、ずっと見ていた。自分があの子に勝つにはどうすればいいか考えながら見ていた。

 

思いつかなかった、思い浮かばなかった、考えられなかった。

 

ボクがあの子に勝つビジョンが。

 

 

ボクがどんな作戦をとったとしても、彼女がボクの前にいるのが見えた。

ボクがどんな技を使ったとしても、彼女が力技だけで勝つのが見えた。

ボクがどれだけ成長しても、彼女がボクよりも成長してくるのが見えた。

 

 

 

その後、自分がどうやって帰ってきたか覚えていない。

気が付いたら自室に戻っていた。

 

 

あれから、何も感じない日々が続いていたけど、今日、エアグルーヴに連れてきてもらって色が戻った。

 

 

レース場の熱狂した雰囲気、それがボクに熱を取り戻した。

あの時から格段に成長したといえるサイレンススズカを見て、自分がまだ成長できると感じた。

 

そして、あんなにキレイな勝ち方を見て、ボクもあの場に立ちたい、勝ちたいと思った。

 

 

 

「まぁ、大丈夫そうだし、安心したぞ。お前の顔を見たときは目を疑ったからな。」

 

 

あはは、ゴメンネ。

 

 

「そういえば、どこのチームに所属するのか決めたのか? お前のことだからもう決めてるのかもしれんが、もしリギルに入るのなら東条トレーナーに言付けしておくが。」

 

 

大丈夫! もう決めたから!

 

ボクが入りたいのはスピカ! あの練習を見たときからそこまで時間が経っていないのにあれだけ成長したサイレンススズカさんが証明してくれた。あのチームはボクを成長させてくれるって。

 

それに、ボクの一番のライバルになりそうなあの子もいることだしね!

近くで見て、色々と盗ませていただくことにしましょうか!

 

 

 

 

このあと、会長に会いに行ったときに教えてもらったんだけど、ボクのことを心配してマヤノが相談しに来て、ボクの変調を知ったんだってね。あとでマヤノにお礼しておこう!

 

 

そういえば、エアグルーヴにスピカに入るって言ったらすごい心配されたけどどうしてだろう?




短くてごめんね。

次回からはメイクデビュー編に入ると思います。


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PART23

誤字報告ありがとうございます。
いつも助かってます。


ハーイ! スズカ先輩が予定より強くなりすぎたみたいで絶望した実況プレイ、やっていくよー!

 

 

はい、さすがにちょっと泣きそうになりました。何ですかね、あのタァイムは? 先輩はRTA走者だったりしたんですかね? ちょっと後で確認してみたんですけど、あのタイム史実の日本記録を大幅に更新してるんですね。

 

やっぱりあいつ、おかしいや…。

 

まぁスぺちゃんの方はやっぱり凄い先輩なんだ! 私ももっと頑張らないと! みたいな感じでライドォ! になっていますがわたくし的には色々と大変ですね。

 

ま、頑張っていきましょうか。

 

 

 

時間はスズカ先輩のレースから数日たったチーム練習日でございます。スぺちゃんは例のトレーニングスーツを着て練習しています。ちょっと動きにくそうにしていますが、ちゃんとできてますね。経験値的にもウマ味です。

 

あ、それとレース翌日にテイオーちゃんが無事、入部してくれました。何でもスズカ先輩のレースがすごかったから入部したそうです。確かにすごかったからなぁ…

 

 

>「スぺ、ちょっといいか?」

 

 

お、トレーナーさんですねぇ! どうしたんですかい!

 

 

>「ちょっと部室まで来てもらってもいいか? 今後のレースについての相談なんだが…。」

 

 

りょ! んじゃ皆さんれんしゅ途中ですが失礼しますタイ!

 

 

 

 

>「それでスぺ、今後出走するレースのことだが、確認だが次の6月下旬でメイクデビューでいいんだな。」

 

 

そうですね、一年見送りなんてせずにこのままデビューしますよ。

 

 

>「解った、話を聞いてる感じクラシック路線で行くと思うんだが、入り方はどうする? 俺としたら来年のトライアル系に出るよりも今年のホープフルに出走して、その成績で招待される方がいいと思う。GⅠレースだが、お前の実力なら勝てると思う。どうする?」

 

 

お! そっちのルートできましたか。試走時では普通にトライアルを走るルートで行ったんですが、今回はホープフルに出走することもできるみたいですね。育成的にはGⅠを走れた方が経験値的にもウマ味ですし、冬から春までの全部を皐月に向かって練習に使えるのはとってもいいです。

 

というわけでホープフルステークスに出走するぞ!

 

 

>「わかった、そのように調整していこう。一応叩きとして他の重賞レースに出走することもできるが、どうする? 俺としてはどっちでもいい。」

 

 

たまに意味わからん強さの方(シニア級)が出てきて事故る可能性があるので回避しますぜ。

 

 

>「…よっしゃ、こんなもんか。スぺお疲れさん。悪いが次はマックイーンを呼んできてもらえるか?」

 

 

了解です! んじゃ呼んできますね。

 

にしてもホープフルルートですか、これはちょっとチャートを書き換える必要があるかもしれませんね。でもスぺちゃんの功績がまた一つ増えるので私的には、OKです!

 

んじゃ、次回はメイクデビュー走っていきましょうかね。次回の動画でお会いしましょう~。

 

 

 

 

 

 

 

【メジロマックイーン視点】

 

 

「それで、マックイーンお前はどうしたい? スぺよりも一年遅らせてデビューすることもできる。」

 

 

私たちウマ娘のレースはデビューした瞬間にジュニア級とみなされ、そこからクラシック、シニアと進んでいく。一度入ると途中でやめることはできない。

 

スペシャルウィークさんと戦うのを回避し、来年デビューすることで比較的楽な道を歩むか、ということを聞いているのだろう。

 

たしかに、スペシャルウィークさんは恐ろしく強い、かなわないと思うほど。

 

 

 

しかし、それを避けこの私が楽な道を歩むとでも!

メジロの令嬢を舐めないで頂きたい!

 

私はどんな壁にぶつかったとしても諦めはしない、負けはしない。

壁である限りは必ず飛び越えられる!

 

 

「ふざけないでください、私も今年デビューいたしますわ。」

 

「……そうか、解った。目標は春の天皇賞、それからの天皇賞連覇でいいんだな。」

 

「もちろんですわ。必ず、メジロにあの盾を持ち帰って見せます。」

 

 

 

ゴールドシップに無理やり入部させられたこのスピカでしたが、今は入ってよかったと思えます。 

自身の目標とできる方をすぐ横で観察し、競い合うことができますから。

 

 

それにちょっとだけこの雰囲気も気に入ってきましたしね。

 

 

 

私が提示された道は菊花賞からの天皇賞のルート、それまでにいくつかの重賞レースを走ることになるみたいですが、スペシャルウィークさんと競い合うのは菊花賞が最初になりそうですね。

 

そこでメジロの、いや私の意地をお見せいたしましょう。

 

覚悟しておいてくださいね、スペシャルウィークさん。

 

 

 

 

 

 

 

【トウカイテイオー視点】

 

「テイオー、お前も今年入りでクラシック路線か?」

 

「うん、もちろん! 目指すは会長と同じ三冠ウマ娘だよ!」

 

「…かなり厳しいが、解ってるんだな。」

 

 

スぺちゃんは確かに強い、でも戦う前に逃げるのはボクじゃない。

 

 

「うん、高い壁なのはわかってる。でも挑まずに逃げるのはね!」

 

「…そうだな。かなりキツイ道になるがついてこれるか?」

 

「もちろん、ボクは最強のウマ娘、トウカイテイオー様だよ! いくらでもかかって来いってんだ!」

 

 

ボクは一度折れてしまった、でも立ち上がった。

これから、ボクのレースがどうなっていくのかは誰にもわからない。

 

 

どんな壁にあたるのかはわからないけど絶対に立ち向かって見せる、もうボクは折れない。

 

 

目標は会長みたいなウマ娘、それは今も変わらない。

けど最近もう一つ増えた。

 

スぺちゃんに勝つこと。

 

 

 

これから一緒に練習する仲になったから近くで全部吸い取ってやる。それで成長してやる。

 

 

皐月賞で勝つのはこのボクだ!

 

 




はちみつ大好き


ボク黄色いくまさん。



感想評価、お気に入り登録いつもありがとうございます。
執筆意欲どんどんわいてくるはちみつのようなもの。


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PART24

誤字報告感謝です、いつになってもなくならなくて申し訳ございません。


ハーイ、スぺちゃんを限界まで強くしようとしたらスズカ先輩がめちゃくちゃ強くなりそうでチャートを組みなおすことになった実況プレイ、始めて行きますよ~。

 

今回はですね、お待たせいたしました、やっと公式レース出走ですよ。part20超えても公式レースに出走しない実況動画があるらしいぜ、笑えよ…。

 

んじゃ、気を取り直して現在のスぺちゃんのステータスをご覧いただきましょうかね。

 

 

>スピード:D+

 スタミナ:C+

 パワー :B

 根性  :C

 賢さ  :D

 

 

と、こんな感じですね。入学から出走まで、バイトや調子上げのイベント回収など丸まる練習につぎ込んでいませんでしたし、トレーニングスーツを導入したのも最近でしたのであんまり伸びてないです。

 

まあでも、トレーニングスーツの購入とメイクデビューの賞金でバイトの必要性が薄くなってきましたのでこの後は、全部の時間を練習に使えるようになってくるので安心ですね。

 

 

 

んじゃ、スぺちゃん、インナーとして着込んでるスーツを脱ぎまして、レース用の体操服に着替えまして、ゼッケンをつけましょうねぇ。

 

なるほど、今回は一番人気の一枠一番の内側での出走になるみたいですね。一が多くて縁起がいいですね! これなら……

 

 

>「スぺ、ちょっといいか?」

 

 

お! トレーナーさんじゃありませんか! 今から向かうところですし、緊張もしてませんぜ!

 

 

>「そうか、ならよかった。それと皐月賞まではゲート時のアレ、使うなよ。」

 

 

お~、なるへそ。温存するわけですねぇ。りょです!

 

 

>「よし! なら頑張ってこい!」

 

 

おっす、じゃあ行きますよ~。

 

 

んじゃ、皆さん集まってきましたし、ゲートに入る用意をしましょうね、スぺちゃん。

あ、それとここでオリチャーを発動しときましょう。スぺちゃん、お耳を拝借。

 

 

わたくしの趣味の部類になるのですが、メイクデビュー時は何バ身離して勝てるかな? というのをやってまして、今回もスぺちゃんに挑戦していただきたいんですね。

 

今回のレースは右回り・内の2000mのレースです。見たところプレイアブルキャラクターなどの警戒すべきウマ娘の方々はいらっしゃらないようですし、いつもは最後の直線or最終コーナーあたりで仕掛け始めるのがスぺちゃんの戦法になりますが、今回は半分あたり、1000m付近から仕掛け始めましょう。

 

それで、最終コーナーに入るあたりで先頭に立ちまして、後は後続を離して走り抜けましょうね。この前見たスズカ先輩のように走りましょう。解った、スぺちゃん?

 

 

お、理解してみてくれたみたいですね、実は最初は逃げで行こうと考えていたのですが、現在熟練度を上げている差し適性に経験値が入らないと気づきやめときました。

 

 

 

ではでは、スぺちゃん走っていきましょうね。

 

 

 

 

 

 

『各ウマ娘、ゲートに納まりました。』

 

 

『今、スタートです。』

 

 

 

「ふぅ、スタートは大丈夫みたいだな。」

 

「あれ、スぺちゃんゲート苦手だったの? トレーナー?」

 

「そういえば、スペシャルウィークさんはゲート練習をなさっていませんでしたね。」

 

「え! スぺちゃんゲート苦手だったの!」

 

「お、落ち着けスズカ……。スぺはどちらかというと得意な方だぞ、ただちょっとな……。」

 

「ふむぅ、このゴルシ様を前に隠し事かねぇ、チミ~。」

 

「……ま、スぺの切り札のことだな、この後にでもスぺに話してもいいか聞いてみるよ。」

 

「切り札、ですか……。」

 

「ふーん、ま、ボクはどんなものでも攻略してやるけどね!」

 

「切り札か、なんかカッコイイな! 俺もなんかそんなのが欲しいな!」

 

「確かにそういった決め技は欲しいわね……。」

 

 

「さ、みんな。そのことは後でトレーナーさんを尋問するとしてレースに集中しましょ。」

 

「尋問って……。」

 

 

 

『さぁ先頭がちょうど半分を通過、これからどうなるのか、 おっとここで一番人気、スペシャルウィークが後方集団から上がってきた!』

 

 

 

「ちょっと! 仕掛けるのが早すぎない!」

 

「これは持つか?」

 

「スぺの体力的には十分に持つ、がやはり早い。これは緊張で掛かったか?」

 

 

 

『スペシャルウィーク! 最終コーナー入ろうとするところ、後方から追い上げ、現在先頭です!』

 

 

 

「さぁ、こっからだな……!」

 

 

「「「「「「「ガンバレー! スぺ(ちゃん)ー!!」」」」」」

 

 

 

 

『現在先頭が最後の直線に入りまして、おっと! スペシャルウィーク加速していく!』

 

 

『後方ついていけない! 驚異の加速力! なんなんだこれは! なんなんだ君は! これは本当にデビュー戦なのか!』

 

 

『何バ身離れているのか! 後ろが見えない! どれだけ離せば気が済むのか!』

 

 

『スペシャルウィーク! 一番人気に応えて、いま勝利です! 本当に何バ身離れていたのか!』

 

 

『掲示板には大差の文字! 今こちらにデータがまいりました! 現在のレースでの2番手との差は……!! 20バ身! 20バ身差です!! 過去の日本記録、デビュー戦での18バ身差を大きく塗り替えまして、今!! 伝説が誕生しました!!!』

 

 

 

 

「「「やったーーー!!!」」」

 

 

 

「これは、挑みがいがありますわね……!」

 

 

「……見とれちゃった。でも、こうでなくちゃ! 壁は高ければ高いほどいい!」

 

 

「スぺちゃん……、ふふ。私も頑張らないとね。」

 

 

 

「(マックイーンにテイオーにスズカ、完全にスイッチ入ってるな。)……さ、次はライブだ! 移動するぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ゴルシちゃん思うんだけどさ。スぺってライブの練習してたか?」

 

 

「「「「「「あっ!」」」」」」

 

 




ライブはスぺちゃんは何とかなりませんでしたが、走者が頑張ったので何とか見れるものにはなりました。


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PART25

誤字報告ありがとうございます。
最近ウマ娘のSSが増えてきてうれしいぞ!
おもしろいのばっかで自分も頑張らないといけませんね。


ほい! 無事にデビュー戦を勝利した実況プレイやってくよ~。いや~スぺちゃんよかったですね。20バ身行けるとは思ってませんでした。まぁ伝説のあいつには負けますが、日本の新馬戦での記録は塗り替えましたね。

 

スぺちゃんも喜んでるようでよかったですが、油断は禁物。おそらくですがこのレースをライバル枠が見てるはずなので、また成長ブーストしてきます。ここで気を抜いていると普通に負けるので頑張っていきましょう!

 

 

んで、勝った賞金の使い道なんですが……、やっぱ炊飯器ですか、スぺちゃん?

 

あ~、前回欲しいと言っていた5万ぐらいのやつよりも上のグレードのが欲しいみたいですね。これでもか! というぐらいに丸を付けて、付箋をつけまくっています。本当は他に買いたい器具類があったんですが……

 

今度は拗ねすぎて泣きそうになってますね……、解りましたって。また拗ねて調子が下がるのは本意ではありませんし、いいの買いましょうね。

 

 

>炊飯器を買った!

>調子が絶好調になった!

 

 

おぅ!? 大喜びですね、こんなに喜んでるスぺちゃんは初めて見たかもしれませぬ。

これからお米代もかかると考えると賞金が入ったと考えてもちょっと厳しいですが、そん時はそん時で何とかしていきましょう。

 

 

んで、これからの方針ですが、ひたすらトレーニングですね。一応、現在が6月後半程ですのでそろそろ夏合宿が始まりますが、スピカは人数が集まったと言えどもまだ弱小チーム。学校側が用意している合宿場に入れるかは、解りませんので合宿後のことを決めていきましょう。

 

スぺちゃんの次走はホープフルSで今回と同じ芝2000mです。GⅠともなるとライバル枠や他のプレイアブルキャラクターが出てきてもおかしくないですが、ライバル枠の子たちとのステータス差が未だ大きいと考えられるので回避してくると思います。

 

ので、GⅠですが楽に勝てるか、なので目標はライバル枠が狙ってくるであろう皐月賞に定めていきましょうね。毎日インナーにトレーニングスーツを着て、服の下におもりをつけて生活しましょうねスぺちゃん。加重トレーニングですぜ。

 

 

 

 

時間が変わりまして、現在スピカのチーム練習の最中ですね。スぺちゃんは加重トレーニングをしながら他のデビュー戦を控えている子たちの併走をしております。

 

併走中ですが、実はスキルの熟練度上げもしてるんですよね。

スぺちゃんが持ってるスキルは自身の固有と会長、ディープのと【ゲートの支配者】ですが、支配者以外は終盤で誰かと競り合って抜かさないと発生しないスキルです。なので、併走に付き合ってると見せかけてこれらのスキルの熟練度上げをしてるんですね。

 

 

今、特に上げたいのはディープの【空駆ける英雄】です。こちらは最終直線までに誰かを追い抜いているときに加速する、というスキルなのですが、これの熟練度上げがかなり時間がかかります。

 

これはですね、会長や自身のスキルだとお手本を見たり、自身の思うようにやってみることで熟練度が上がりやすくなるんですが、このスぺちゃんがいる時代にはディープは学園にやってこないんですよね……。

 

なんでお手本なしで試行錯誤しながら熟練度を上げる必要があります。

 

 

 

ほら、スぺちゃん。最強の自分をイメージするんだ……、最終コーナーに入った瞬間、前にいる全員を抜き去って君が先頭に立つ瞬間を、そしてそこから後ろからくる圧を力にして、加速する。

 

ね、簡単でしょ? 

 

 

 

>【空駆ける英雄】を発動!

 

>……失敗した。

 

 

 

……まだ無理みたいですねぇ。

 

ま、気長にやっていきましょう。ディープのほうは難しくても自身の固有は上げやすいですし、会長のは過去のレース映像を研究していけばブーストがかかりやすいですしね。

 

 

スぺちゃんもそんなに気落ちなさんな、ほら、そろそろ練習も終わりみたいですしおすし、柔軟とかしっかりしておくんですよ。あ、それと部室のテレビで過去の会長のレースを見ていいかトレーナーさんに聞いといてくれるかい? 多分テイオーにも言ったら一緒に頼み込んでくれると思うので。

 

 

>「ん、部室のテレビか。使っても大丈夫だぞ、多分過去のレースを録画したのが残ってたはずだし、そこから探してくれ。」

 

>「おー! いいねぇ、ならボクが持ってる会長のレースコレクションも持って来るよ! 一緒に見ようね、スぺちゃん!」

 

 

ちゃんと許可取れたみたいですね。お、スカーレットとウオッカも一緒に見るみたいですね。みんなで研究しましょうか。

 

では、今回はこの辺で、レース鑑賞しているスピカメンバーを背にお別れです。ではでは~。

 

 

 

 

 

 

【スピカトレーナー視点】

 

 

「……うし、こんなもんか。」

 

 

今日、無事勝利したウオッカのレースについてまとめ終わった資料をまとめながら一息つく。

 

ウオッカが勝利したことで無事、今年入った奴らのデビュー戦がすべて勝利で終わった。入部した時から才能の塊みたいなやつばかりで色々と心配していたが、まずは何とかなったようで安心した。

 

 

そして、スぺの影響がよい方向に向かっていることにも非常に安心している。スぺは今、シニアやクラシックで走っている奴にとって劇薬になりうる。それが同世代にいることに絶望してしまうんじゃないかと思っていたが、いい刺激になったようで、いや刺激というには強すぎるか。

 

 

マックイーンは自身の目標に向かって強い意志を保っているし、テイオーはすでに壁に立ち向かう覚悟ができている。スカーレットやウオッカは路線が違うからかそこまで気にしていないみたいだが、その分いい刺激になっている。二人で高め合ってくれるいいコンビで安心して見てられる。

 

スズカは後輩に負けないように頑張っているし、ゴールドシップは練習していないように見えるが、メンバーの様子をかなり気にしてくれているのが解る。それで真面目にやってくれれば完璧なんだが……。

 

 

 

新人たちのデビューも終わった。あとは来週のスズカの宝塚記念だな。OPでレコードを叩き出していたし、体の調子もよさそうだった。今はスぺが併走に付き合っているようで、それがいい刺激になっているのか少しずつだが成長している。あとはケガさえ気にしておけば大丈夫だろう。

 

 

 

にしても、宝塚記念ということは、もう前期のシーズンは終わりか……。これから夏をどう過ごすかでこれからが決まる。どれ、もう少し頑張ってやっていきましょうかね。

 

 

「……ん? 夏?」

 

 

夏ということは、合宿。夏合宿の時期……!

 

 

「マズい! 合宿場の予約っていつまでだっけ!」

 

 

学園には専用の合宿場があるが、合宿場の定員にも限界があり、スピカのように弱小チームは、前もって予約しておいて、初めて抽選に参加できる。急いで確認しなくては……。

 

 

「……学園専用の合宿場の予約は先週までとなります、か。やらかしたなぁ~。」

 

 

マズいなぁ、これからの夏が大切だ、って言ってる時からこれか……。

 

いや、切り替えないとな。

 

大手のチームが合宿場に行くということは学園内の使われないトレーニング施設が使えるようになる。そこを使えるようにしてもらうように明日、頼み込む。そして、設備点検の日は毎年同じなので使えない日が解ってるから、その時期にどこかうまく使えそうな場所を探して、合宿を行う。

 

これならいけるか? 関東で素足でもランニングできるようにゴミが少なくて、キレイな砂浜がある場所を探して、その近くにある旅館を1週間ほど。うちは部費も少ないし、ある程度は自腹で出さないといけないのは覚悟するべきか?

 

 

そんなことを考えながら調べていると、思っていた条件に当てはまる場所があった。

 

キレイな砂浜があって、かなり小規模でお世辞でもキレイとは言えないが旅館がある地域があった。

 

 

「ここだな、早速予約できるか聞いてみよう……。あとウマ娘もOKなのか聞いておかないと……。」

 

 

 

電話してみると、人のよさそうな女将さんが対応してくれて、すぐにOKしてくださった。かなり大食らいがいるといったが、毎年ウマ娘を連れたトレーナーさんが来ているから大丈夫だという。大丈夫だといわれても、スぺのことなのでとりあえず人数+3人分で食事を用意してもらうようにお願いしておいた。

 

にしても、毎年来ているトレーナーとは誰だろうか? 話しぶりからしてかなりの常連のような話しぶりをしていた。女将は「赤さん」と呼んでいたが……。

 

いや、まさかな、あの人がくるとは思えないし、他人のことだろう。

 

 

何故かいやな予感を覚えながら予定を詰めていく。スズカの宝塚記念もあることだ、今はいまやるべきことに集中しよう。

 




評価、感想、お気に入り登録、感謝感激雨霰!



スぺちゃんゲートスキルお披露目の会はもうちょっとだけ後じゃよ。


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PART26

ウイニングポスト9 2021
体験版だけど結構遊んでしまった。


誤字報告いつもありがとうございます。


バクシン委員長の生誕を共に祝おうか!


順番間違えて投稿してしまい本当に申し訳ございません。


別ゲーだけどスズパレードでシンボリルドルフを打ち崩した実況プレイ、やってきますよ~。いや~皐月賞でスズパレードがルドルフを打ち負かしたIFは涙出ましたね。出来ればウマ娘でもしたいものです。

 

運営さん、スズパレードの実装はまだですか…?

 

 

前回ちょっと言い忘れてたことがあったのでそれから行きますねぇ~。

まず、スぺちゃんのスキル関係のことから。

 

スぺちゃんが改善していた走り方の件ですが、すでに改善し終わっています。ま、前回のレースを見てくださった方で解った方もいましたかね? デビュー戦始まるちょっと前に改善し終わっていたんですが見どころ君がなかったのでカットしました。申し訳なし。

 

お次はスキル、【ゲートの支配者】ですが、スぺちゃんの修行の結果。無事習得で来てます。なんで前回トレーナーさんが使うなと指示してくれたんですね。ちなみに余った朝の時間はスズカ先輩と朝のランニングしてました。

 

それでなんですが、こちらのような汎用スキル、ま、固有スキル以外のスキルにはレベル表記がなく、一度習得すれば終わりです。またアプリ版でもあったように固有スキルはレベルを上げることができましたが、こちらの据え置き版は、自身以外の固有スキルもレベルを上げることができます。ま、その分要求熟練度は多いですが。

ちなみに最大値はアプリ版と同じでレベル6です。

 

スぺちゃんは自身の固有のみしかアクティブになってないのでこれからどんどん熟練度上げしていきましょうね~。

 

 

 

 

 

 

んで、本来ならスズカ先輩の宝塚記念があるまで飛ばしていこうと思ったんですが、ちょっとイベントがあったんで見ていきましょうね~。

 

 

>「スぺ、ちょっと話があるんだがいいか?」

 

 

お、デビュー戦をきれいに勝利し、このわたくしのダンスが炸裂したスぺちゃんになにか御用ですか!

 

 

>「ゲートでのお前の技のことなんだが……」

 

 

【ゲートの支配者】ですねぇ! 一度見られると効果が下がってしまうので皐月まで封印しておくはずな奴ですな。その秘密兵器がどうしたんでい!

 

 

>「その、悪いんだが、口を滑らしちまってメンバーにばれちまった。詳しい内容はまだだがどうする?」

 

 

……そうですかー、ばらしちゃいましたかー。

 

 

 

スぺちゃん、そいつ東京湾に沈めに行こうぜ。

 

 

 

>「いまなんか、すごい寒気がしたんだが!」

 

 

ま、いつかはばれることでしたし、許してあげますか。一応スピカ内にはライバル枠はスズカ先輩以外はいませんし、スズカ先輩も戦うとすればシニア級、当分先です。そのころにはこのスキルも対策されてるでしょうし、ばらしてもまーもんだいないかな? 別チームにばれないようにだけ言っておくなら見せてもいいですよ。

 

 

>「ほんとか! ふぅ、よかった。」

 

 

どうせゴルシちゃんに言わなきゃ「ゴルシスマッシュだぞ!」なんて言われてたんでしょうね。見るからに安心してます。

 

 

んじゃ、今度の朝練にゲートでも借りて実演会しますか。

 

 

 

 

 

【ウオッカ視点】

 

スペシャルウィークが今後のために用意したっていうゲートでの技を見せてもらうためにみんな集まってる。

トレーナーの話しぶりからすると結構すげぇ切り札みたいで、見せてもらうのはちょっと悪い気もするがかなりワクワクする。

 

実際に感じてみた方がいいということでみんなでゲートに入って待ってみる。

本当に走り出しはしないけど、スタートの用意をする。

 

 

最後にスぺが入って構える。

 

 

その瞬間、世界が真っ暗になった。

ゲートの中から見える景色は変わらない、でも真っ暗のように見える。

 

自分がどうなったのかわからない。

 

 

 

ここから早く逃げ出したい。

 

そう思って足を動かそうとした。

 

 

 

動かない。

 

地面から無数の手が湧き出て自分の足をつかむ、ここから行かせるものかと言っている。

 

 

無理やり足を動かそうとするが、ピクリとも動かない。

 

 

 

もう、どうすればいいかわからない。

 

 

恐怖で頭が真っ白になってくる。

 

 

 

 

気がつけばスぺとゴールドシップがスタートしていた。

 

 

レースでもなかったし、どうしても走る気が起こらなかった俺はその場に座り込んだ。

 

 

 

その時は周りを見る余裕はなかったが、後で聞くとみんなそんな感じだったらしい。

 

なぜか、ゴールドシップが解説していたが、何でもスぺのプレッシャーが大きすぎて脳が混乱し、その人にとっての恐怖を幻視したのではないかということだ。

 

克服するには自身の実力を上げて、何回もアレを受けることで体に慣れさせるか、ゴールドシップ主催のマグロ漁に参加すれば何とかなるらしい。

 

 

正直、マグロ漁の方に惹かれたが、マックイーンとテイオーに止められたのでやめておいた。面白そうだったんだが……。

 

 

 

 

ま、今回は完全に負けちまったが、次はこうはいかねぇ。今回ので感覚は覚えた。つぎこそは克服してやる。

いつまでもスぺに負けてらんねえしな、カッコいい俺になるためにも今は力を溜めるところだ!

 

 

 

そういえばこんどゴールドシップが必殺技講習会をするって言ってたけどどんなのだろ?

面白そうだし行ってみるか……!

 

 

 

 

 

【ダイワスカーレット視点】

 

この学園に入ってから、『一番は私』から『一番になるのは私』になった。

 

競い合えるような相手がウオッカしかいなかったということもあった。昔の私は自信に満ち溢れていた。

 

 

 

けど、入学して。いや、正確にはあの子を見てから自分が井の中の蛙であることを理解させられた。

 

 

スペシャルウィーク、おそらく私たちの世代の中で一番強いウマ娘。

 

 

私やウオッカが何とかついていけるような練習を平気な顔して終わらせてくる。

私たちが息を整えている間にすでに走り出している。

 

世界にはこんなに強い人がいるのかと思わされた。

 

 

 

そんなときに、

彼女がクラシック路線、自分の走るティアラ路線とは違う道を走ると聞いて

 

 

 

私は安心してしまった。

 

 

 

 

安心した? この私が安心したのか?

 

 

彼女と戦わなくて済むことに安心したのか?

 

 

 

自分はすでに負けを認めていたというのか?

 

 

 

 

 

 

認められない、認めたくない。戦わずして負けを認めるなんてありえない。

 

 

知らずのうちに負けを認めてしまった自分が恥ずかしい。

 

 

私は『一番』になるんだ。

だから今の『一番』の近くでその技術を、力を自分のものにしてやる。

 

 

最初はチラシにひかれてはいったチームだったけど、本当に入れてよかったと思う。

 

ここには『一番』がいる、『最速』がいる、そして『好敵手』もいる。

言動や行動はアレだけど能力は確かなトレーナーがいる。

ゴールドシップは……、うん。

 

 

とにかく、ここには『一番』になるために必要なものが全部ある。

なら、後は突き進むだけ。 遅れるんじゃないわよ、ウオッカ。

 

 




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いつも大変お世話になっております。励みなります。。


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PART27

誤字がなくならず申し訳ない、精進してまいります。


【サイレンススズカ視点】

 

また、私たちの部屋宛に荷物が届いたようだ。最近スぺちゃんがカタログを見ていたし、トレーニング用品でも買ったのだろうかと思い、受け取りに行くとどう見ても家電の箱だった。しかもかなり大きい。

 

 

 

よくよく確認してみると、炊飯器だった。

 

さらに、メーカー、品種を確認すると10万近くする本格的でかなり大きめな炊飯器だった。

 

 

 

その場で怒りを爆発させなかったのは奇跡に近い。

いつもなら運ぶのに時間がかかりそうな重さだったが、その時だけは重さを感じなかった。

部屋に戻るのも早かった。

 

 

「スぺちゃん、正座。」

 

「おかえりなさい、スズカさん。 どうかしま…」

 

 

反応が遅いスぺちゃんにさらに苛立つ。床を指さし

 

 

「早くそこに座りなさい。」

 

「は、はい!」

 

「スぺちゃん、これは何ですか?」

 

 

重いはずの炊飯器が片手で持てた。自身の冷静な部分がそこを指摘する。

 

 

「す、炊飯器、です……。」

 

「なんで買ったの?」

「い、いつでもご飯がたべたかったので……。」

 

「いつも食堂であんなに食べるのに? いつも体重計の前ですごい顔してるのは誰ですか?」

 

食堂の方々を困らす程食べて、体重計の上で表情をあれほど変えるのはあなただけですよ。

オグリキャップ先輩は例外なので数には含めません。

 

 

「私です。で、でも…」

 

「口答えしない!」

 

 

「とりあえず、この炊飯器は食堂の方にお渡ししてきます。このサイズなら使えるでしょうし大丈夫でしょう。それでいいですね。」

 

 

「で、でも……」

 

 

「それでいいですね。」

 

 

「は、はい。」

(最近[太り気味]が頻繁に起こってましたし、これ以上の過食は止めるべきだったのでよかったですね。明日からスズカ先輩に頭が上がりませんねぇ、クォレワ。)

 

 

本当にスぺちゃんの食欲は色々と逸脱してるんだから。これからはもう少し厳しめに言った方がいいかもしれないわね。そんなことを思いながら私は食堂に向かう。

 

 

ちなみに食堂の方々には、かなりいい物だったようでお礼を言われた。スぺちゃんのことを話すと食欲のこと以外は悪く思われていないようで安心した。

 

それにしても食堂で使える炊飯器を買ったスぺちゃんはどれだけ食べるつもりだったのか。

あの子の食欲について考えるのが少し怖くなった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

>『サイレンススズカが先頭で今、ゴールイン! まさに最速だ!』

 

 

オッスオッス、おら投稿者! 今日は宝塚記念の応援にきてっぞ! 出走者はスズカ先輩、今一着でゴールインしたみたいっすよ!

 

お、こっちに先輩が来ましたね、GⅠ勝利おめでとうございます! 勝負服も似合ってますねぇ!

 

 

>「ありがとう、スぺちゃん。 みんなも応援ありがとね。」

 

 

いえいえ~。にしても、あの後、今期デビュー勢は全員かったし、スズカ先輩も勝ったし。いいことばっかですねぇ~。スぺちゃんもスズカ先輩みたいに勝てるように頑張りましょうね。とりあえずは、直近の夏合宿、頑張りましょう。

 

 

 

 

 

と、思っていたんですけど……

 

 

>「んじゃ、地図にルート描いておいたからここまで来てくれよな。お先に~。」

 

 

トレーナーさんが地図を渡して車で行っちゃいましたね。

 

 

今日は合宿に行く日っていうので、全員荷物を用意して、ジャージで来るように、と言われていましたから、もしかしたらと思ったら、悪い予感が当たりましたね。

 

ちゃっかりトレーナーさんが全員分の荷物を載せて先に行っちゃいましたから、みんなマジで何も持ってねぇ、って感じですね。財布もないから諦めて走るしかないですね、つらい。

 

 

>「おい、スぺ! お前の持ってるデカいリュックの中には何が入ってる!」

 

 

 

はい、ゴルシちゃんだけじゃなくて、わたくしも気になってました。スぺちゃんだけは荷物を預けずにかなりでかめのリュックを前後に持ってますが何持ってるん?

 

 

え、お弁当? 全部? マジ!?  あ、一応みんなの分のお弁当なのね。途中でお腹が減るかもしれないから食堂の方々に作ってもらったんですね。前に背負ってるのがみんなの分のお弁当で、後ろに背負ってる分が自分用ね。

いや、そんないい顔で言われましても……。

 

 

>「スぺ、お前ってやつは……。」

>「わ、わらえばいいのかな……?」

>「これはまた怒った方がいいのかしら?」

 

 

いや、一応みんなの分ももらってきたみたいですし、許してあげても……、ん? ということはこの何キロあるかわからないお弁当を、どこにあるかわからない合宿場まで、しかもインナーにトレーニングスーツを着て走ると? スぺちゃん行ける……、無理そうですね。今現実に気づいて顔が青くなってますやん。

 

 

>「じゃ、じゃあ地図を見る限り、途中で休憩できそうな場所があるし、そこでお昼にしましょうか。あ、スぺちゃんは責任をもって自分で運んでね。」

 

 

え! そんな殺生な!

 

 

>「最近またお腹出てきてるわよ。」

 

 

……スぺちゃん、あきらめて走りましょうね。スズカ先輩には逆らえませんよ。みんなもすごい憐みの目で見てますねぇ、悲しいなぁ。

 

 

 

んじゃ、あきらめて合宿場まで走りましょうね。

 

 

ちなみに行きはお弁当の重みで苦しみ、昼食後はリュックの中身を全部しっかり食べたので途中からはお腹の重みに苦しみながら走りました。一応それでも最後尾をちゃんと走ってきてるスぺちゃんはさすがだなぁと思いました。

 

マル。

 

 




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いつもほんとに助かってます。


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PART28

誤字報告いつもありがとうございます。


【スピカトレーナー視点】

 

女将さんが言っていた、「赤さん」、正直そこだけで気が付くべきだった。いや、気が付いていたとしても練習環境としてはここ以外いいところはなかった。つまりこうなるしかなかった、ということだろう。

 

 

「……ん、お前さんはスピカのとこのか。」

 

「どうもご無沙汰しております、赤田先生。」

 

「お前さんも近くの砂浜目当てかい? 去年までは貸し切りだったが、ま、いいか。にしてもいいとこに目をつけたな。」

 

 

愛想笑いしながら受け答えする。赤田先生とこんなところでお会いするとは…、自身の選んだ場所があの赤田先生と同じことに喜ぶべきか、トレーナー界の神と同じになったことを嘆くべきか。

 

にしてもあのシンザンを担当していた赤田先生がこんなところにいるとは……。

 

 

「ん、お前さんも俺がここに来るのが不思議と思ってんのか?」

 

「い、いえ。そんなことは。」

 

「別に怒ってなんかねえよ。ま、確かに学園がやってるとこの方が幾分かいいんだろうけどな。ここは俺がチームを持ってた時からお世話になっててな。ここでやらんと気が引き締まらんのよ。」

 

「そうでしたか……。」

 

「最近は女将に頼んで器具類も置かせてもらってるしな。今はうちも一人だけだし使うか?」

 

「いいんですか! ぜひ!」

 

「おう、その代わり、うちのお嬢と練習させてやってくれや。一人でやらせるのも限界を感じてたし、いい刺激になるだろ。」

 

「それはこちらからお願いしたいぐらいですが、お嬢というのは、先生が担当してらっしゃる?」

 

「ヘイローだな。そろそろ来るだろ。」

 

 

 

「トレーナーさん、用意してきました。って、そちらは?」

 

「よう、お嬢、準備できたみたいだな。こいつはスピカのトレーナーだ。あいつらもこっち来るらしいぞ。」

 

「スピカ、ということは……、いえ、失礼しました。キングヘイローです。」

 

 

挨拶を返しながら赤田先生が担当しているウマ娘、キングヘイローを見る。スぺには劣るがかなりなものを秘めている。今はまだスぺに届かないが、今後はどうかわからない。そう思わされた。

 

 

「じゃ、俺は先に練習場の方に行ってる。場所は女将も知ってるからそっちに聞いてくれ。」

 

「では、私も失礼します。」

 

 

トレーナーたちの間で神と崇められる赤田先生とスぺを倒しうるキングヘイロー。かなりのコンビだが経験を得れると考えればスぺのせいで財布が空になるのも痛くはない。そう思った。

 

 

いや、やっぱり痛い。

なんでスぺはあんなに燃費悪いかなぁ。

 

 

 

 

 

 

「お嬢、デビュー戦を見た感じ、あのチームは化け物だらけだ。盗めるもんは盗み尽くして自分のものにしろ。」

 

「解りました。キングの意地、見せてやります。……アイタ! 何をなさるんですか!」

 

「お前さんは気が張りすぎてんのよ。もう少しリラックス、ていうやつだ。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最近はちみつがおいしい実況プレイ、やってくよ~。

 

ほらスぺちゃん、動画始まってんだからどんなにお腹が重くても走るんだよ!

 

 

まぁ食べすぎもありますが、ジャージの内に着ているトレーニングスーツがキツくなってるんですかね。これから服の内側におもりとかつけていきますから、早く慣れてほしいんですが、ま、始めたばっかりですし、仕方ないかな?

 

 

ま、そんな風にぜぇぜぇいいながら、何とか地図に描かれていた宿泊地に着きましたね。

 

宿泊地は…、よく言って老舗、悪く言ってボロイ、って感じですかねぇ? ま、スぺちゃんはみんなとお泊りなんて初めてなんで、ワクワクが抑えられてませんね。代わりにお嬢様のマックイーンは凄い顔してますが。

 

 

>「おう、皆さんお疲れさん!」

 

 

お、トレーナーさんですねぇ。顔見せた瞬間にプロレス技食らってますがご愛敬でしょうね。

 

 

>「そ、それと、砂浜の方にうち以外のチームが来てるから挨拶だけでもしに行くぞ、失礼のないようにな。」

 

 

スピカ以外のチームですか? こんなイベント初めてですねぇ。コォレワ、wikiに情報提供するためにも調べつくしましょうかね。ほい、ウオッカにスカーレット、そろそろ勘弁してやれぃ! オラ、挨拶しに行くぞ!

 

 

>「おう、来たみたいだな。どうも、赤田だ。個人でやってるおいぼれだ。ま、合宿の間だけでもよろしくな。」

>「キングヘイローです。スぺちゃん以外は初めましてかしら?」

 

 

あ、ライバル枠のキングヘイローちゃんですねぇ。すいません、ちょっと退席します。

 

 

 

 

 

 

どうして?????????????

なんでなんでなんで??

 

私が何か悪いことしました??????????

 

 

 

 

 

 

はい、失礼しました。なんで経験値習得量が馬鹿でかい夏合宿でライバル枠と会うんですかねぇ!? わたくしのチャートにPASS AWAYされとおっしゃるか!

 

まぁここで発狂しても仕方ないですし、こうなればキングヘイローの成長率をわたくしのオリチャーと豪運で何とかするしかあるまい! スぺちゃん、ちょいと厳しくなるがついてきてくれ!

 

 

というわけで今回はここまで、次回からはオリチャーが火を噴くことを祈って。次回の動画でお会いいたしましょう。

 



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PART29

誤字報告いつも感謝!

ウイポすっごく面白いね。
みんなもやろう!


ではでは、チャートがぶっ壊れた実況プレイやってきますよ~。

 

今回はですね、何の因果か、ライバル枠のキングヘイローと一緒に夏合宿を過ごさないといけなくなったとこからですねぇ。

 

ライバル枠になっている子たちは育成キャラと一緒に練習している、そしてその育成キャラとライバル枠の子とのステータス差が大きい場合「なにくそ」、という感じで成長率が爆発し、意味わからん成長を遂げてきます。皆様に解りやすく言うならばアプリ版でのトレーニングにてトレーニングレベルが1と5ぐらい違います。もう爆速です。

 

そもそもライバル枠自体が成長しやすいようになってるのにこれ以上成長するなんて胃が痛くなってきますねぇ!

胃薬が欲しいです。なんでゲームで遊んでるはずなのにストレスを受けねばならないのか?

 

 

ま、でもわたくしの心は水たまりぐらいに広いので、許してあげます。(何に対して?)

 

というわけで、これまで試走などを繰り返しているときにケガ率が高く、総合的に見てまず味だった、スパルタ式練習方法をオリチャーとしてやっていきましょうかねぇ!

 

こちらはですね、夏合宿中に遠泳などの海を使うトレーニング以外はトレーニングスーツをインナーとして着た上にジャージを着用。そのジャージの中におもりを仕込んで素足砂浜ダッシュというものです。

 

元々、トレーニングスーツ自体がケガ率を上昇させる代わりに練習時の経験値が上がるものですし、今回はその上におもりと、素足で砂浜ダッシュです。体の負荷が半端なく、いくら[鉄人]持ちのスぺちゃんでもお祈りが必要なレベル。こうなったのも全部乱数、ってやつの仕業なんだ……。

 

 

愚痴はそこら辺に置いといて、始めますか。

 

ご覧くださいませ、スピカメンバ-たちが水着で練習している中、スぺちゃんだけかなり厚着してます。ま、ちょっと変な目で見られますが、減量と言っとけば何とかなります。実際最近[太り気味]が頻発していますのでちょうどいいダイエットになりますしね。

 

さぁ、スぺちゃん。ジャージが砂で汚れ過ぎないように足元をちょっとめくりまして、素足で走りますよ~。

あ、水分補給だけはしっかりしてくださいね。

 

 

では、スぺちゃんが裏で走ってる間に、他のメンバーが何をしてるか確認していきましょうか。もし、何らかの成長イベントやスキル習得のきっかけが得れるイベントがあればそっちの方を優先したいですし。

 

 

んじゃ、順番に。

 

スズカ先輩は……、スタミナ強化のために遊泳してますね。トップスピードを維持するための練習でしょうか?

でも、見た感じ、特にイベントは発生しなさそうなので次!

 

 

ウオッカとスカーレットは……、スぺちゃんとは反対方向に砂浜ダッシュしていきましたね…? いつもの勝負でもしてるんでしょうか。こっちはトレーナーさんがついてるので大丈夫そうですね。ま、イベントの気配はなさそうなので無視ですが。

 

 

ゴルシちゃんは……、何やってんだこいつ? 一輪車乗りながらスイカ三つでお手玉してますね。サーカスですかな? まぁゴルシらしいといえばゴルシらしいですが、なぜそれをしようと思ったのか。これがワカラナイ。

スぺちゃんを連れて行けば同じことを強要されそうなので無視しときましょう。次!

 

 

マックイーンは……、あれ? テイオーとキングとで何かしてますね?

近くにキングのトレーナーもいるみたいですし、一緒に練習でもするんですかね? イベントの香りがしますし、ちょっとこっちの練習風景を確認してみましょうか。

 

スぺちゃん~! Uターンして戻ってきて。うん、そのままキングちゃんのとこに行きましょう。マックイーンやテイオーもいるみたいですし、何をするのか聞きに行きましょう。

 

オッス! お三方、何をなされているのか! よろしければあっしも参加させていただきたく。

 

 

>「あぁ、スペシャルウィークさんですか、ちょうどよかったです。よろしければ簡単なレースをしませんか?」

 

>「え、いいの、マックイーン!」

 

>「私は構いませんわ、今のスペシャルウィークさんの実力をこの身で感じたかったところでしたし、キングさんもよろしくて?」

 

>「構いませんわ。トレーナーさん、タイムの計測をお願いしてもよろしいですか?」

 

>「それは大丈夫だが、お前さん、スペシャルウィークといったか? 着替えてこなくていいのか?」

 

 

お、よくわかりませんがなんかレースするみたいですね。イベントみたいですし、レースするみたいですから一応おもりだけは抜いておきましょうか。スーツの方はこれを着て毎日練習してますし、大丈夫でしょう。

 

ほら、スぺちゃん仕込んでるおもりをそこらへんにペイ、しておきましょう。

 

 

>「うわぁ、そんなの仕込んで走ってたんだ……。」

 

 

おっす、準備完了ですぜ。どこをどう走りますか?

 

 

>「ヘイローさんのトレーナーさんに聞きましたが、ここから海岸の端まで約1000m、レース場のようなコーナーはありませんが端まで行って帰ってくる、そのように走るつもりでしたが、いかがでしょう?」

 

 

いいですねぇ! んじゃ、やりましょうか。

 

 

>「なら、俺が合図とタイムを計る。合図はこのコインが落ちた瞬間だ、いいな。 なら行くぞ。」

 

 

思ったよりすぐですね。スぺちゃん、今回は普通に走りますぜ、Uターン後の残り800mぐらいで仕掛けていきましょう。ちゃんとしたコーナーでないので足に負担がかからないように曲がりましょうねぇ。

 

んじゃ、イクゾー!

 

 

 

 

 

【キングヘイロー視点】

 

砂という不安定な足場、行って帰るというレースではあったが、2着。差もそこまでなかったように思える。いままで、どれだけ練習したとしてもスぺちゃんに届いたという感覚はなかった。

 

この前見た彼女のデビュー戦、あの圧倒的な勝利で自分が本当に彼女に勝てるのか不安になった。

 

私もデビュー戦で勝利はしたが同じ勝利でも全く違う、そう思った。

 

 

だが、今回のレース。自身が成長できていること、彼女に近づいていることを実感できた。

 

 

このままいけば彼女に勝利することが……

 

 

「そこまでにしておきな、お嬢。」

 

「ッ! トレーナー!」

 

「その感じじゃ、気が付かなかったみたいだな。」

 

「気が付かなかったとは……?」

 

「あいつがインナーとして着ていたもの、トレーニングスーツだ。」

 

 

トレーニングスーツ? たしか普通の人用のトレーニング用品だったと記憶しているが…

 

 

「ウマ娘専用のトレーニングスーツ、その効果は絶大で全身を引き締め、鍛え上げる。」

 

「なら、私も……!」

 

「その代わり、ウマ娘に対して効力を発揮させるために引き締めも力が強く、普通の奴じゃすぐに体を壊しておしまい。ま、副作用が大きすぎて常人なら使えないし、上位勢は割に合わないから使わない。」

 

「なら、なんで彼女は!」

 

「……才能、ってやつだろうなぁ。尋常なく体が強くて、しかも強いか……。とんでもねぇ奴を目標にしたな、お嬢。お前さんもかなりのものになったと思ってたが、アレを着て何もないように走り、勝ってくる。あいつも周りにはこう思われてたのかねぇ……。」

 

 

トレーナーさんのいう、あいつとはあのシンザン先輩のことだろう。今は彼の元を離れて世界を走ってるらしい。

そんな大先輩を育てた人の下で鍛えてもらってるのに未だに勝てず、偽りの実力に届いたと思い調子に乗っていたとは……。あまりにも、あまりにも惨め。ただひたすらに悔しい。

 

 

「ま、そんな思いつめた顔をすんなって、この俺に任せておきな。あいつがどんなバケモンだろうと勝てるぐらいには仕上げてやるって言ってんだろ。最後の最後に勝つのに必要なお前さんがここで沈んでどうする! こんな時こそ上を向いて笑ってやれ!」

 

 

「そう、ですわね。わたくしはキング! こんなところでくじけてられませんわ!」

 

「おう! その意気だ!」

 

 

そう、わたくしはキング。最後の最後であなたに勝つのはこの私、キングヘイローです!

 

 

 

 

【トウカイテイオー視点】

 

「あ、マックイーンじゃん。」

 

「テイオーさんですか、貴方も眠れませんの?」

 

「……うん、ちょっとね。」

 

 

もうみんなは寝てる時間帯、旅館の外で座り込んで空を見上げていたマックイーンに近づき、ボクもその横に座る。そういえばちゃんと話したことなかったね。

 

今日やったレース、結果は散々。スぺちゃん、ヘイロー、ボクにマックイーン。もともと長距離が得意だったマックイーンに不利なレースだったし、ボクも砂浜を素足で全力で走るなんて初めてだった。二人とも初めてで苦手だった。

 

でも、ボクたちがスぺちゃん以外に負けるなんて思わなかった。

 

 

「考えていることは一緒のようですわね。」

 

「そう、だね。」

 

 

ボクたちの世代で挑むべき相手はスぺちゃんだけじゃなかった。もう一人いたということは多分あの子だけじゃない、スぺちゃんだけが特別だったわけじゃない。

 

 

「ほんと、世界は広いよね~、ボクびっくりしちゃった。」

 

「……そうですわね。井の中の蛙というのは私たちのことをいうのでしょうね。」

 

「確かに、ケロケロ~とでも言っておく?」

 

 

二人で笑い合う。

 

 

「それで、ボクたちカエルちゃんは諦めちゃうのかな?」

 

「こういうのを愚問というのでしょうね、諦めるわけないでしょう。」

 

 

ほんと、そうだよね。挑む壁は大きく、そして多い方がいい。

 

ボクたちは挑戦者だ。

 

 

 

「頂点に立つのはただ一人、そこに立っているのはこのわたくしです。」

 

「お、ボクのこと忘れてない? 頂点に立つのはこのボクだよ。」

 

 

 

お互いを高め合う相手、ライバルというのはマックイーンのことを言うのだろう。

 

 

一緒に高め合う友もいる、目指すべき目標はそばにいる。

 

 

 

「さ、明日も早いしもう寝ようよ!」

 

「えぇ、そうですわね。」

 

 

 

今日はなんだか気持ちよく眠れそうだ。

 

 

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(メジロマックイーンの成長率が大幅に上昇しました。)

(メジロマックイーンが個性:[諦めない心]を獲得しました。)

 

(トウカイテイオーの成長率が大幅に上昇しました。)

(トウカイテイオーが個性:[諦めない心]を獲得しました。)

 

(一定条件を達成したので特殊イベント『不屈と奇跡』が発生しました。)

 

 

(条件を達成しました。)

(メジロマックイーン、トウカイテイオーがスペシャルウィークの『ライバル』に昇格します。)

 

(新しく『ライバル』になったキャラクターの成長率が増加します。)

 

 

 




ゴールドシップ
「な~んかすっごく面白くなった気がするな! でもなんか足りない気がする……! そうだ! もっと引っ掻き回してやれば面白くなるんじゃね? そう思うだろ、トレーナー!」


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PART30

パート30の大台にはいってもまだ一年目が終わらないSSはここですか!
ってなわけで初投稿です。

いつも誤字報告ありがとうございます。


【スピカトレーナー視点】

 

 

「スぺの食欲は化け物か!」

 

 

あ、いかんいかん。ついに叫んじまった。いくら食費がえぐくても叫んじゃだめだな、うん。

 

……まぁ叫んでも仕方ないと思うんだよ。もともと俺はどうせスぺが滅茶苦茶食うんだろうと思って俺たちの人数分+3人分で予約したんだ。もともとウマ娘用っていう食事量多めのプランがあったし、そっち用のを頼んでいた。頼んでいたはずなんだが……

 

 

「すいません、トレーナーさん。おかわりしていいですか?」

 

 

自分の分+3人分、ペロリと平らげた上でおかわりを要求していた。

既に4人分食ってるのにだ。 他のやつらにとっては見慣れた様子だったみたいでそこまで驚いていなかったが、俺と赤田先生、あと女将さんも驚いていた。

 

 

スぺは食べ過ぎだとまたスズカに怒られていたが、できればおかわりを頼む前に止めてほしかった。

 

それが毎日続き、スぺの腹が風船みたいに膨らんだり縮んだりするのにも慣れてきたとき、夏合宿が終わった。行きと同じように帰りも走って帰るように指示し、先生のところのキングヘイローも参加を求めていたのでスズカとゴールドシップに後を頼んで先に出発させた。

 

 

それで、先生と共に支払いを済ませようとしたのだが……

 

「本当に申し訳ないのですが……、スペシャルウィークちゃんがものすごくたくさん召し上がっていただいたので、追加料金のほうを、これほど……」

 

 

そこに書かれていたのは予定していた金額の1.5倍ほど。

 

思わず二度見してしまった。確認してみたが、どこも間違っていない。

 

 

もともと部費と自費で何とか行けるか? だったものが大幅に超過してしまった。

 

 

「……ま、なんだ。いいもん見せてもらったし、追加分は俺が出すよ。」

 

「本当にありがとうございます、必ずお返しします。」

 

 

来月からもやし生活かな……。次、スぺを連れていくことがあったら、食べ放題のところにしよう。たぶん一度行ったら二度といけないが。

 

 

 

 

【リギルトレーナー視点】

 

夏合宿の合間、今年入学した生徒の中でリギルに入らず、見込みあり、としていた生徒のデビュー戦の結果が出たためその資料をまとめる。例年通りなら片手で済むのだが、今年は非常に量が多い。

 

まずはスペシャルウィーク、デビュー戦で2番手と20バ身差をつけ記録を塗り替えた期待の新人、いや化け物というべきか。部分的にだがシニア級に近い実力を持っている。現在この世代の頂点に立っている。もっとも注意を払うべき人物。また、一部の者が彼女を目指そうとして奮起し、これまでに考えられないほどの成長を見せている。彼女の付近も確認しておいた方がいいかもしれない。

 

 

次にキングヘイロー、あの赤田先生が担当しているウマ娘。爆発的に成長しているといえる。デビュー戦でも楽々と先頭を取り、そのままゴール。短距離から中距離までこなせるオールラウンダーでもある。どの路線で来るかわからないが注意が必要。

 

 

セイウンスカイ、デビュー戦は何とか一着といったところ。逃げウマ娘。世間はそこまで注目していないが、実力を隠すために力をセーブしていた可能性がある。おそらく、自分でレースを作る練習をしていたのだろう。緑川が担当であるためそういった戦略は怖いところがある。注意すべき。

 

 

トウカイテイオー、スペシャルウィークと同じスピカより。こちらも一着。総合力の高さと足の柔らかさが特筆できるだろう。スペシャルウィークと同じチームに在籍しているため彼女も爆発的に成長する可能性がある、注意。

 

 

メジロマックイーン、スペシャルウィークと同じスピカ所属、デビュー戦一着。メジロ家の最高傑作と称されるほどの才能を持っている。世代のトップに立ってもおかしくはなかった。まぁそれはここで挙げるすべての子に当てはまるのだが。おそらく長距離が得意、クラシック後半、シニア級で爆発してくるかもしれない。注意。

 

 

ハルウララ、主戦はダート。デビュー戦一着。主戦はダートのはずだが、彼女のトレーナーによると芝の方でも出走するらしい。日に日に成長が見えるスペシャルウィークとは違った意味で恐ろしい相手。どこまで成長するかわからない上に芝にでも出走してくる可能性があるので要注意。

 

 

 

その他にもテイエムオペラオー、メイショウドトウ、マヤノトップガン、ミホノブルボン、ライスシャワー、またティアラ路線ではあるがウオッカやダイワスカーレットといった才能あるウマ娘たちがいる。

 

 

 

正直に言おう。

 

何なんだこの世代。

 

 

本当に意味がわからない、なんでこんなにも才能あるウマ娘たちがいるんだ?

他の世代に居れば普通にトップになれるような奴ばっかだぞ?

 

ほんとになんで? 神はそこまで信じていない人間だったが三女神は何を考えているんだ?

 

 

頭を抱えて叫びたくなる。

 

 

特に、なんでスペシャルウィークはあんなに強いんだ?

本当に意味がわからない。

 

 

どうすればエルとグラスを勝たせてやることができるんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、私がいくら悩んでも何も始まらないな。本当に悩んでいるのはあの二人だ。

指導する私が弱気になってどうする。

 

 

私は、いつも正しく、強く見せないといけない。

ついてきてくれる子たちのためにも、心配させるわけにはいかない。

 

 

さぁ、気を引き締めよう。必ずあの子たちの夢を叶えさせてやるんだ。

 




いつもはちみつありがとうございます。


そろそろまた加速させていきますよ~!


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PART31

最近ちょっとスランプ気味でしてね、
ネタでも挟まないとやっていけなかったんです。

お許しください、ボルガ博士!




いつも誤字報告ありがとうございます。助かります。


ハーイ! スぺちゃんが強くなった代わりに周りもさらに強くなっていく実況プレイ、やってきますよ~。

お時間は前回より飛びまして、夏が終わり、9月が始まった感じですねぇ。

 

最近スぺちゃんはステータスの方はある程度仕上がったと思ったため、スキルの習熟、成長をメインに頑張ってます。重点的にやってるのは依然話していたディープのスキルの取得ですね。な~んにもお手本なんかありませんのでこのわたくしがスぺちゃんに教えるしかないんですが……

 

 

>【空駆ける英雄】を発動!

 

>……失敗した。

 

 

ん~、ちょっと難航してますねぇ。いや、スぺちゃん、謝らんでもいんですよ。こういったものは時間が解決する問題ですしおすし、数をこなすしかありませんね。

 

でも、その代わりにスぺちゃん固有のスキルと会長のスキルの熟練度上げは順調です。固有スキルは普通に頑張ってれば何とかなりますし、会長の方は部室のテレビで過去のレースを見れば、そこにお手本があるので何とかなります。

 

 

んじゃ、スぺちゃん、あんまり根を詰めすぎるとよくないですし、休憩代わりに会長の過去レースでも見ましょうか。……あれ、スぺちゃんの動きが止まっちゃいましたね。

 

……? 飽きた? 飽きた、飽きたかぁ~、ま、結構同じもの見てますしねぇ。飽きるほど見ちゃったということは研究し終わったとみていいでしょう、これ以上やっても熟練度は上がらないでしょうね。と、なると見るものがなくなっちゃいましたね。

 

 

ディープの方も行き詰ってますし、上げるスキルがなくなっちゃいましたね。と、いうことは……、

 

 

皆様! お喜びください! 学校探検のお時間です!

 

そう、上げるスキルがないのなら、新しいスキルを見つけに行ってしまえばいいじゃない! の精神で目ぼしいスキルを持ったウマ娘たちを探しに行こうと思います。

 

放課後の学園内はイベントの宝庫、どこに行ってもイベントが起きてますし、スぺちゃんの知らないウマ娘たちもたくさんいます。誰に会うかは完全にランダムですが、持ち前の運で夏合宿を乗り切ったわたくしなら大丈夫ですね。

 

ちなみにわたくしが会いたいと思っているウマ娘はナリタブライアン辺りでしょうか、彼女の固有スキルは差し策をとるなら必須といえるもの。ま、お会い出来たら色々と説明していきましょうね。

 

んじゃ、スぺちゃんには悪いけど早速制服に着替えてもらって……、あ、スぺちゃんちゃんと服の内側におもり仕込んどくのよ。ちょっとしたところが大事ですからね。

 

 

 

よし、着替えましたね。んじゃ早速部室のドアを蹴破って、イベントを探しに行きましょう!

 

 

>開けようとした扉が突然開かれる。

>目の前にいたのはなぜか漁師の恰好をしたゴールドシップだった。

 

>「お! ちょうどいいところにスぺがいるじゃねぇか! 今からサンマ漁に行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………は? いや、ご遠慮しますけど……。

 

 

>「そうかそうか! なら、今から行くぞ!」

>ゴールドシップが麻袋を持って近づいてくる……。

 

 

ま、マズいですわよ!! スぺちゃん! 早く逃げるのだ!

 

 

>スペシャルウィークは逃げようとした!

>しかし、回り込まれてしまった!

 

>「スぺ、知らなかったのか? ゴルシちゃんからは逃げられないのだよ!」

>捕まってしまった!

>視界がふさがれ何も見えない!

>ゴールドシップに担がれ、どこかに運ばれるようだ……。

 

 

 

 

 

えー、はい。ということでね。本実況プレイはここまでとなります。

残念ですがスぺちゃんはゴルシにドナドナされてしまいました。皆様、長らく応援してくださって本当にありがとうございました。また、お会いできる日を心待ちにしております……。

 

 

 

 

ま、茶番はこれぐらいにいたしまして、イベントを探しに行こうとしたら、イベントからやってきましたね。う~ん、さすがのゴルシクオリティ。カオスが極まってますなぁ……。

 

スぺちゃんも混乱するのはわかりますが、まぁゴルシだし、の精神で落ち着くしかありませんぜ。ほら、激流に身を任せて同化する、って言うでしょ、その精神です。

 

 

はい、こんな風にスピカに所属していたり、ゴールドシップの好感度が高かったり、トーセンジョーダンだったりするとこのようにたまに拉致されます。連れてかれる場所は時期とゴルシちゃんの気分によって変わりますが、今回はサンマ漁と言っていたので北海道、ですかねぇ?

 

いきなり北海道ですか!? という方もいらっしゃるかと思いますが、ゴルシちゃんのイベントの中ではまだましな方ですね。運が悪いと「地軸と一体化しに行くぞ!」なんて言われて南極か北極に連れてかれます。だからRTA走者に嫌われるんだぞゴルシちゃん。

 

わたくしとしましてはスぺちゃんのスキルの方も行き詰ってましたし、このイベントが終わればゴルシちゃんの固有スキルがいただけるのでちょうどよかったですね。しかも漁なので肉体労働をこなすことで結構ステータス上がると思います。

 

 

 

>「おーい、スぺー。着いたから降ろすぞ~。」

>気が付くと目的地に着いていたようだ。

 

 

お、ついたみたいですねぇ!

 

 

>担がれた状態から降ろされ、麻袋を取られる。

>視界が開けると、そこは船の上、海上だった。

 

 

 

…………は? いや意味わからんのですが?

 

 

 

 

 

【サイレンススズカ視点】

 

 

「ふぅ、今日はこんなものかしら」

 

 

秋の天皇賞に向けての練習、タイムもよくなってきているし、自分の成長も感じられる。このままいけば順調に勝つことができるだろう。

 

そういえば、今日はみんな、早めに上がっていったが何かあっただろうか。考えながら部室に向かう。

 

まぁ、自室に帰ればスぺちゃんがいるだろうし、一緒にご飯を食べながら話でも聞こうかと思っていたのだが、

 

 

「あら、これはスぺちゃんのカバンね。」

 

 

スぺちゃんがカバンを忘れて帰ってしまったようだ。何故か入り口付近に放り投げられている。

 

 

「これはテイオーちゃんのカバン、こっちはマックイーンちゃんの。あそこにはスカーレットちゃんのと、ウオッカちゃんのが……。」

 

 

部室の中にみんなのカバンが置かれている、おかしい。

 

みんなが全員忘れ物をするなんてことはないだろうし、今日何かイベントがある、ということは聞いていない。

 

少し不安になり、いつものように回り始めた時、机の上に何か書かれた紙が置いてあるのに気が付いた。

 

 

 『いつも頑張ってるスズカさんへ

 

  練習頑張っているところを

 

  陰ながら応援していました。

 

  なにかお力になりたいと思い

 

  今日から行われるサンマ漁に

 

  参加してきます。

 

  おいしいサンマを食べて

 

  いただけるよう頑張ってきますね。

 

  あと、人手が足りないから

 

  スピカメンバー連れていくぞ。

 

  あ、一応トレーナーに

 

  許可取ってあるから。

 

 

      黄金の不沈艦より。』

 

 

 

 

…………とりあえず、トレーナーさんに話を聞きに行こう。

 

 

 問い正さねば。

 

 



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PART32

悲報!
スピカトレーナー、無残な姿で発見される!!


取材によると彼はゴルシ一人だけでサンマ漁に行っていると思っていたらしいが、実はスズカ以外全員だったらしい!
レース前だから仕方ないけどちょっと寂しかったスズカさんはトレーナーをボロボロにすることでその鬱憤を晴らしたみたいだぞ! コワい!


オッスオッス! 投稿者ですよ! 今日もスぺちゃんと頑張る実況プレイ、進めていくのでよろしくお願いします。いや~、今回のイベントは強烈でしたね……、まさにゴルシちゃんワールドでした。

 

 

サンマ漁をしていたと思えば、海底から悪の秘密結社イーン・マックの巨大潜水艦が現れて、世界征服の野望に必要かなんかでマックイーンが誘拐され、それを助けるために単身ゴールドシップが素潜りで追いかける。

 

どうしようもなくなったため、近くの漁港に戻ったら実は北海道の近海まで来ていて困惑していたら、なぞの葦毛ウマ娘、マスターGにスぺちゃんが誘拐されて、ゴルシ神拳の継承者に選ばれ、マックイーン救出に向け、山のてっぺんで夕日を見ながら修行。

 

継承が終了したと思ったら改造され、誰かわからなくなってしまったお母ちゃんとの戦闘、最後に倒してしまった時、仮面が割れて正体がわかったときの、

 

 

「I AM YOUR MOTHER.」

 

「NOooooooooooo!!!!」

 

 

のシーンは涙なくては見れませんでしたね。その瞬間までわたくしも正体がわかっていなかったため全力で戦闘してしまい、内心ではかなり冷や汗ものだったんですけども。

 

その後、並み居る強敵をなぎ倒し、秘密結社イーン・マックの本拠地である巨大潜水艦に到達し、潜水艦を破壊、沈みゆく潜水艦の中で、なぜかイーン・マック総帥に就任していたゴルシちゃんとの最終決戦かと思いきや、ここまでガチ戦闘してたのにここだけレースで決着を決めることになり、札幌レース場に肝心のマックイーンを置いて、なぜか復活していたお母ちゃんを含め、みんなで移動。

 

そこでタイマン勝負のレースをしましたが、ゴルシちゃんがゲートを蹴破ろうとして自爆、後ろから追い上げようと加速してきますが、いつの間にか単身で泳いで帰ってきた海藻まみれのマックイーンがゴルシちゃんを強襲、その隙にスぺちゃんゴールインで無事勝利でした。

 

その後、マックイーンのプロレス技によって、上半身を地面に埋められたゴルシちゃんをほっておいてみんなでスぺちゃんちに帰省。みんなでおいしく暴食しておしまいという感じでしたね。

 

 

 

 

 

口にしてみると何なんでしょ? これ?

 

ま、いいや。現在は学園に帰るために新幹線に乗ってるところですね。お母ちゃんからたくさんお土産持たされたのでお友達にも分けてあげましょう。お母ちゃんも最近家庭財政がまともになってきたから、毎月ニンジンボックス送ってくれるって言ってましたし、自分の分が少なくなるからって独り占めとかはなしですからね、スぺちゃん。 え、そんなことしないって? ほんとかなぁ?(茶色いくま)

 

 

あ、そういえば今回のイベントで手に入れたスキルについて説明していませんでしたね。

 

今回手に入れたスキルは【不沈艦、抜錨ォッ!】と【食いしん坊】ですね。前者はマスターGことゴルシちゃんとの修行時に、後者はイベント後半のおいしく暴食してた時にお母ちゃんから

 

 

「相変わらずスぺは食いしん坊だねぇ、学園でもたらふく食べてんだろ。」

 

 

と、いわれてスキルが生えてきました。今まであんなに食べてたのに、なんでこの瞬間に生えてくるんですかね?食いしん坊とはいったい何なのか……? 

 

ま、先行用スキルなのでいらないちゃいらないんですが、これの熟練度は食事の量によって勝手に上がります。つまりスぺちゃんの場合、爆速で上がるんですね。先行策使わなければならなかったとき用に、ってことで置いときましょう。

 

 

ゴルシちゃんのスキルは正直、ここで頂けるとは思ってませんでした。かなり強いスキルですし、ゴルシちゃんのことだからもっと時間がかかると思ってたんですけどねぇ。

 

でもちょうど育成できるスキルを探してましたし、ちょうどよかったです。これからはこのスキルを練習していきましょう。時期的に現在9月前半なので、12月後半の次走、ホープフルSまでにスキル獲得を目標にしていきましょう。頑張りましょうぞ、スぺちゃん!

 

 

 

【サイレンススズカ視点】

 

私の次走は秋の天皇賞、たった2000m、今の私なら新しい世界、最速のその先を見れるかもしれない。

 

たった一人でターフを走っているとそんな思いが浮かんできた。

 

 

 

正直に言って、今の私に勝てる人はかなり少ない。スぺちゃんに負けないよう、強い先輩であれるよう頑張ってきたが、あのエアグルーヴでも私と競り合ってくれるとは言えない。そこまで私は速くなってしまった。

 

それがうれしくもあり、悲しくもある。

 

 

 

みんながなぜか北海道に行き、これまでのスピカでは考えられないほど静かな、私だけのターフ。静かな光景が好きだったはずなのに、どこか寂しい。

 

そんな寂しさから、スぺちゃんが私と戦えるまで私は一人になってしまうかもしれない、と考えてしまう。

 

 

 

日本でただ、スぺちゃんを待っているだけでは私は腐ってしまうかもしれない。

スぺちゃんは必ず成長してくる、私が日本に残り、停滞したままであればすぐに抜かされてしまうだろう。

 

 

 

「やっぱり、トレーナーさんから勧められたアメリカ留学、考えてみるべきかしら。」

 

 

 

私の前走、宝塚記念を見たURAがアメリカ留学を勧めているらしい、費用もあちら持ちらしいが、話を聞いた時は行く気になれず、とりあえず保留にしてもらった。

 

 

でも、気が変わった。

 

アメリカ、いや海外は日本よりも競技レベルが高い。海外ならば私が挑むべき相手や、競うべき相手が見つかるかもしれない。あちらで英雄と呼ばれる方たちに挑んでみてもいいかもしれない。

 

 

 

そんなことを考えているとなんだか楽しくなってきた。

 

スぺちゃんの挑む壁であれるよう、スぺちゃんに負けないよう、頑張ってみよう。

 

 

 

 

 

そうと決まれば、話は早い方がいい。もう少し軽く走ったらトレーナーさんに言いに行こう。スぺちゃんたちが帰ってきたら留学のことをすぐに伝えよう、どんな顔をするのだろうか。

 

きっとすごく驚くのだろう、その顔を見るのがちょっと楽しみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ、左膝か……。」

 

 

 

左膝に軽い痛みを覚える。いつの間にか、オーバーワークになってしまったのだろうか?

とりあえず、走るのをやめて冷やして置こう。

 

スぺちゃんと勝負する前にケガなんかで引退してしまうのは絶対に避けたい。

体は大事にしないと……。

 

 

 

 

 

その後、膝の痛みを感じることはなかった。

たぶん、気のせいだったのだろう。

 




次回、日曜日。


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PART33

【サイレンススズカ視点】

 

 

「スズカ先輩、足は大丈夫なんですか?」

 

 

今日は秋の天皇賞、アメリカに留学するのが正式に決まったので、日本で走ることは当分ないだろう。そんなことを思いながら、朝の自室で気を引き締めていた時、スぺちゃんからそんなことを言われた。

 

アメリカに留学するといった時のこんなに驚くのか、というすごい顔とは打って変わって、何かこれから悪いことが起きるのではないか、それに対しておびえている顔だった。

 

 

 

「大丈夫よ、スぺちゃん。最近はタイムもいいし、体の調子はバッチリ。そんなに心配しなくてもいいわ。」

 

 

 

彼女の実力は抜きんでている。だが、実力以外にも不思議なことがあり、なにか未来を知っているかのような動きをしていることがある。ウオッカやスカーレットが入部してきたとき、私は自分で入っておきながら『そのチラシで入ってきていいのか?』なんて思っていたが彼女は驚かなかった。マックイーンがゴールドシップに無理やり連れてこられた時もそれをなぜか知っているようだったし、テイオーの時もそんな感じだった。

 

日常生活の中でもまるでその先を知っているかのような、必ず自分の力になるようにしている節があった。

 

 

 

たぶん今日もそんな風に先を見てしまったのだろう。

 

それで、この先、私がレースに出れば、何か起こるのだろう。

 

 

 

 

 

彼女にとっても、私にとっても悪いことが。

 

 

以前の私ならばそれにおびえ、レースに出るのを避けていただろう。

 

 

だけど、今の私は違う。 私は逃げたくない。

私の目標はスぺちゃんに負けないこと。彼女の壁であり続けること。

 

 

 

 

 

なんだか、ここでこのレースを避けてしまったらそれはもうできないように思う。

ここで逃げてしまえば、この先、逃げてしまうことを許してしまいそうな自分がいる。

 

 

 

私がなりたいのは、そんな私じゃない。

 

 

 

 

 

不安でつぶれそうな、そんな顔をしているスぺちゃんをこちらに引き寄せ、抱きしめる。

 

 

 

「大丈夫ですよ、スぺちゃん。私に悪いことなんか起きませんし、起こさせません。だから安心して、私が勝つのをちゃんと応援してね。」

 

 

 

 

スぺちゃんは泣いていた。納まるまで少し時間がかかるだろう。

 

 

もうちょっとだけ、こうしていようか。

 

 

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

んじゃ、今回も実況プレイ、やっていきましょうか。今回はスズカ先輩が秋の天皇賞に出走するみたいで、その応援に来ています。ほら、スぺちゃんそんな不安そうな顔しないで、先輩大丈夫そうでしたよ。ほら毎日スズカ先輩のこと見てたでしょ、それで足を痛めたとか、ケガしたとかなかったですし、大丈夫だって。

 

実際、何か悪いことが起きる場合はこのゲームでは教えてくれますから、あんな日曜日なんて起きないに決まってます。私、あんなの見たくないですし。

 

ほら、そんな顔してたら起きないことも起きちゃいますよ。ほら! しゃんとして、全力で応援しましょ。

 

 

 

>「おーい、スぺー! そろそろ始まるから早く来いよー!」

 

 

 

ゴルシちゃんも呼んでますし、応援しに行きましょうね、ほら。

 

 

 

>「お~、すっごい顔してんなぁ。そんな顔してたら幸せ逃げちまうぞぉ!」

 

 

 

ほら、ゴルシちゃんも慰めてくれてますし、しゃんとしていきましょう。

さ、レースが始まりますよ。

 

全力で応援しましょう、スぺちゃん。

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『さぁ、秋の天皇賞、栄光の盾を手に入れるのはどのウマ娘か。やはり、注目はサイレンススズカといったところでしょうか?』

 

 

『そうですね、秋シニア三冠のはじめということで、名だたるウマ娘が出走していますが、やはり彼女は格が違います。2番人気と大きく差を開いての堂々の一番人気ですからね。』

 

 

『まさにそうかと。宝塚記念をレコード勝ちで飾った、異次元の逃亡者。今回は一枠一番一番人気という幸先の良い形で出走となります。』

 

 

 

 

体の調子は絶好調、いつでも行ける。

今日も始まりから終わりまで、ずっと先頭に立ち続ける。

 

先頭の景色は譲らない。

 

 

 

 

『各ウマ娘、ゲートに収まりまして……、今、スタートしました!』

 

 

『サイレンススズカがスーッと上がってきて先頭をキープ! 期待に応えて早くも先頭!』

 

 

 

 

 

 

「うし、いいスタートだ!」

 

応援に来た他のスピカメンバーからも喜びの声が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

『サイレンススズカ! いつも通り後続をグングン離していく! 影は踏ませない!』

 

 

『10バ身ほど後続と離れているでしょうか! かなり縦長の展開、まもなく三コーナーの手前、果たして1000mの標識をどのぐらいで通過していくのか!』

 

 

『1000mの通過タイムは54秒8! 54秒8です! 未だに速くなる! どれだけ速くなれば気が済むのか!』

 

 

 

 

 

「54秒8だって!」

 

「どんだけ速くなるんだ!!」

 

「「スズカ先輩! いけー!!」」

 

 

 

(スズカ先輩はやっぱり、すごい! これなら聞いていたことも…)

 

 

 

 

 

 

『何馬身離れているのか全く分かりません! 会場の盛り上がりは最高潮、これを見に来たんだ!』

 

 

 

 

 

 

気力も、体力も、そしてこの速度も

 

今までで最高。まだまだ私には先がある、走れるんだ!

 

 

 

 

 

『おっとー! さらに加速していく! 後続は全くついてこれない! 大欅を超えて、ラストスパートだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やった! 大欅を超えれた! 4コーナーを迎えられるんだ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、最終コーナーを超えまして、最後の直線です!』

 

 

 

 

 

 

最後の直線、少しだけ息を入れる。

さぁ、ここからだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左足が、思うように動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……な、なんで……、コーナーは超えれたはずじゃ………。」

 

 

 

 

 

 

『サ、サイレンススズカ、サイレンススズカに故障発生です! なんということでしょう! 神はいないのか! サイレンススズカ大丈夫でしょうか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(左膝に軽い痛みを覚える。いつの間にか、オーバーワークになってしまったのだろうか?とりあえず、走るのをやめて冷やして置こう。)

 

 

 

 

……あの時のか、多分速さに体がついていけなかったのだろう。

 

今朝のスぺちゃんの様子からやめておけばよかった。棄権しておけばよかった。

 

 

どこか冷静な自分がそう言っている。

 

 

 

 

 

 

諦めるわけないだろう、逃げられるわけないだろう。

 

 

 

 

このレースのあと、私の足がどうなっているのかわからない。

 

 

後続とはまだかなりの差がある。

幸い、まだ右足は残っている。

左足も、速度に乗ってるこの状態ならまだ走れる。

 

 

 

府中の直線は約500

 

あと、500。短くて、遠い。

 

 

 

せめて、せめて、このまま最後まで。

 

私だけの先頭を、私だけの景色を。

 

 

 

ここで走るのをやめてしまえば私は一生後悔する、これでおわりになってもいい。

 

ここからが、私の最後のレース、最後の直線。

 

 

 

 

スぺちゃん、ちゃんと最後まで見ててね。

 

 

 

 

 

 

未だ最速は、私だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『サイレンススズカ止まりません! 故障した足で走っています! お願いだ、止まってくれ!』

 

 

 

 

『後続のオフサイドトラップ、キンイロリョテイが上がってきた! サイレンススズカはかなり減速していますがゴール目前! サイレンススズカが逃げ切るか、後続が差し切るか!』

 

 

 

 

 

 

足が痛い。

 

ゴールまであと何歩だろう。

 

よくわからなくなってきた。

 

 

 

 

 

 

『後続が全力で追いかけてきます、先頭との差はほんの5バ身。オフサイドトラップか、サイレンススズカか! 減速しているがサイレンススズカが有利か!』

 

 

 

 

 

後ろから来ている。

 

逃げないと

 

進まないと……

 

 

 

 

『サイレンススズカ、いま執念のゴールインです! 二着のオフサイドトラップとは1バ身差といったところ! それと救護班は何をしてる、早く来てくれ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

おわった

 

 

さいしょからさいごまでわたしがいちばんだった

 

 

 

 

『スズカ先輩! スズカ先輩! しっかりしてください!』

 

 

 

 

あぁ、すぺちゃんがだきかかえて、ねかしてくれた

 

ふふ、けさとははんたいね

 

 

 

ちゃんとわたしはちゃんとさいごまではしりましたよ、すぺちゃん。

 

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

病院の手術室前、ドラマなんかでよく見る風景。

 

自分がそちら側に立つなんて思ってもみなかった。

 

いつもは騒がしすぎる面々も口を閉ざしてうつむいている。

 

 

 

ランプが消え、担当医の方が出てくる。

 

みんな、おびえて何も言えない。

 

 

俺も悪い言葉なんて聞きたくなかったが、聞くしかないだろう。

 

 

「先生、スズカは大丈夫ですか、また走れるようになるんでしょうか。」

 

 

 

「正直、奇跡といってもいいでしょう。スズカさんは無事です。」

 

「ほ、ほんとですか!」

 

「えぇ、折れてからあれだけ激しい動きをしていたので、もっとひどくなっていてもおかしくはなかったはずなのですが、大丈夫でした。ちゃんと骨がつながって、リハビリすればまた走れますよ。」

 

 

「「「「「「よ、よかったぁ。」」」」」」」

 

 

 

みんな一斉に息を吐く、本当に良かった。

時間はかかるだろうけど、スズカの走る姿がもう一度見られるんだ。

 

あぁ、本当に良かった。

 

 




悩んだ末、こうなりました。
栄光の日曜日にするべきかと思い、そちらの方も書きましたが、現在投稿している方がいいのではないか、そう思いこうなった次第です。

自身の未熟な文章力でうまく表現できたかわかりませんが、『執念の日曜日』ルートとさしていただきます。


最後まで読んでくだざって、ありがとうございました。
これからもスぺちゃんもアルティメットロードは続いていきますので応援していただければ幸いです。


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PART34

誤字報告いつも感謝です、救われます。


 

どうも、投稿者です。今日も頑張ってやっていきたいと思いますが、まず謝罪を。

史実よりは幾分かましですが、沈黙の日曜日回避に失敗したことをお詫びいたします。

 

前回の動画にて、我らがスズカ先輩は天皇賞に勝利したものの、左足の骨折、入院となってしまいました。これはわたくしがスズカ先輩の不調イベントの回収に失敗したことが理由かなと……。正直こんなイベントあるなんて知らなかったですし、試走時に回避できてたので油断していたのかと。

 

とりあえずwikiさんに投げておいたし、参考資料としてはこの動画を使っていただき、あとは解析班の皆様にお預けしようかと思います。

 

 

 

 

 

 

ま、暗い話はここまでで。実はですね、今回の失敗を糧に、チャートを組み替えて、さらにアルティメットなスぺちゃんを行こうと思ってます。ま、皆様へのお詫びですね。

 

変更点は二つ、一つ目はクラシック級にてジャパンカップ、有馬を制覇することですね。今までのチャートではクラシックでは3冠以外は他の重賞レースで経験点を稼ぐつもりでしたが、こちらに変更。シニア級でも狙いますので連覇してしまおうというわけですね。

 

もう一つは、今までのチャートだと海外遠征で狙っていくのは2つだけでしたが、もうこうなったら無敗のまま行けるところまで行ってやろうと考えております。つまり、シニア級後の世界遠征編で可能な限りGⅠをスぺちゃんと一緒に荒らしてやろうというチャートですね。

 

 

ま、色々と厳しそうですが、今回のスぺちゃんはわたくし史上、最強のスぺちゃん。まぁ行けるだろと考えております。詳しくはその時にご説明していきましょう。

 

 

では、スぺちゃん。視聴者の皆様方に説明も終わりましたし、スズカ先輩の面会許可が下りたということなのでお見舞いに行きましょう。何を持っていくか決めました?

 

あ~、お母ちゃんから送られてきたニンジンですか。1箱まるまるニンジンが入ったやつを持っていくんですか……。うん、それもいいとは思いますが、食べ物系は病院に持ってっちゃうとだめなこともありますし、退院してからお渡ししましょう。それ以外にないようでしたら、近くのお花屋さんにでもよって行きましょう。

 

 

 

 

お、お見舞い品も選び終わって、無事病院までついたみたいですね。んじゃ、声は控えめにオッス、スぺちゃんだぞ! お見舞いに来ました!

 

 

>「あら、スぺちゃん。わざわざありがとう。」

 

 

お、元気そうで何よりっす! 足の方はどうでしょうか?

 

 

>「えぇ、順調みたい。あの時はもう走れないかもしれないと思ってたけど、何とかなるものね。これなら来年の頭には留学できそうよ。」

 

 

え、縁起でもないこと言わないでくださいよ……、でもやっぱりアメリカ留学なさるんですか?

 

 

>「決めたことだしね。リハビリも兼ねてあちらに行くつもり。なんでも日本よりも進んだ設備があるみたいで、国内でリハビリするよりもそっちの方がよさそう、ってトレーナーさんにも勧められたの。」

 

 

なるほどなぁ、トレーニング設備とかもアメリカの方が整ってるって聞きますし、そっちの方がいいのかもしれませんね。でも、来年からさみしくなりますねぇ。

 

 

>「ふふ、そうね。……ねぇ、スぺちゃん、お願いがあるのだけどいいかしら。」

 

 

お願い? いいですぜ、何でもやりまさぁ!

 

 

>「ならスぺちゃん、負けないでほしいの。あなたがシニア級に上がって私と戦えるようになるまで、誰にも。最速は私のものだけど、おそらく最強になるのはあなた。2年後の秋の天皇賞、最速と最強でどっちが勝つのか勝負しましょう。だから、私以外に負けちゃだめよ。」

 

 

お、宣戦布告ですか! いいですねぇ! 受けて立ちますぜ。でも、私が負けちゃダメならスズカ先輩も負けちゃだめですよ!

 

 

>「えぇ、そうね。私もすぐに足を治して、元に戻って、さらに速くならなくちゃ。」

 

 

 

>「スぺちゃん、負けませんよ。」

 

 

 

 

「はい、望むところです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(特殊イベント「負けない誓い」が発生しました。)

(スペシャルウィーク、サイレンススズカが公式レースにて敗北しない限りこのイベントの効果が続きます。)

 

(スペシャルウィークの成長率が上昇しました。)

 

(サイレンススズカの復帰時期が早まりました。)

(サイレンススズカの成長率が上昇しました。)

 

 

 

 

(育成キャラの成長率が規定値まで上昇したため、イベントが成立しました。)

(次のGⅠレースにて勝利した後、イベントが開始されます。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「病室の前で、待つなんて失礼だし、他の方に迷惑では?」

 

 

そう怒るなよ、マックイーン。今、いいところみたいだからさ。

 

 

「? どなたかスズカ先輩に面会してらっしゃるのですか?」

 

 

おう、スぺと話してるみたいだな。でもこりゃ長引きそうだし、下の売店で何か買ってからもっかいこよう。

 

 

「同室で仲がよさそうなお二人でしたし、大事なお話でもされていたのでしょうか? あ、あとなんで解るのか、ということはもう突っ込みませんからね。さすがに少し疲れました。この前の北海道でも色々とやられましたし……。」

 

 

お、なんか色々考え始めてるな。こうなったら周りが見えなくなるから注意してやらんとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

にしても、まだ強くなるつもりかあいつら……

ま、世界にいる化け物ちゃんたちに勝とうと思ったら自分も化け物にならんと勝てないから仕方ないのかもな。

せめて、精神的につぶれないように気をつけてあげましょうかね。

 

にしても膝やらかした後にあれだけ走って、普通に回復可能って、色々とすげよなぁ。今度山盛りのお供え物でも、しに行きませんとねぇ。

 

 

 

 

 

「ゴールドシップ、ゴールドシップさん! 聞いてますか、貴方!」

 

 

ん、わりぃ。聞いてなかった。

 

 

「あなたねぇ…、はぁ。 スズカ先輩にお渡しするお菓子、どちらがいいか意見をくださいます? こちらのふわふわのパン生地に餡子と生クリームをふんだんに使った和風なお菓子か、しっとりとしたチョコレートの生地にチョコクリームをこれでもかと使ったロールケーキ。」

 

 

 

うわぁ、キングサイズで、カロリー爆弾。あとなんで病院の購買にこんなの置いてあるの……

この名探偵ゴルシ様にもわからない難題がこんなところにあったとは思いもよらなかったぜ。

 

マックイーン。うん、両方持っていけばいいと思うよ、ゴルシちゃんは。

スズカが嫌いだったら私らで食べればいいし、スぺもいるから食べきれない。ってこともないだろ。

 

 

 

あ~あ、目を光らせてよだれたらしてる。うん、あとで揶揄う用に写真とっとこ。

 

明日はスぺと一緒に減量ダッシュ。マックイーン様、ご招待~

 




哀れ

明日のターフには叫びながら減量のために走る、総大将と名優の姿があった。


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PART35

いつも誤字報告助かります。
なんで減らないんでしょうね…


ホイっと、今日もやっていきましょう。ウマ娘実況プレイ始まるよ~!

 

前回スズカ先輩のお見舞いから帰り、スぺちゃんたちは真面目に練習してます。たぶん、これはスピカ全体に対してバフでもかかってんのかな? 先輩は足が完治した後はリハビリも留学先のアメリカでするみたいですし、あと二年くらいは日本で走ることはないからでしょうか、今までスピカの先頭はスズカ先輩だったが、次は私の時代だ! そのためにも頑張らないと! って感じでしょうかね。

 

 

んで、おそらくスぺちゃんにもいくつかバフがかかってんのか、成長値がえらいことなってます。ほらご覧くださいませ、

 

 

>【空駆ける英雄】を発動!

 

>……成功した! 今後このスキルが使用可能になります。

 

 

 

>【不沈艦、抜錨ォッ!】を発動!

 

>……失敗したがもうすぐでものになりそうだ!

 

 

 

という感じでスキルの取得がものすごくはかどってます。正直怖いぐらいです。お願いだから今後、ガバとかしないでくれよ(戒め)。この調子なら不沈艦の方も年末のホープフルまでには習得できそうですね!

 

 

ま、こういった固有スキルは熟練度上げるのがね、とっても大変ですし、習得した直後のLv.1ではそこまで強くないです。なので今後もスぺちゃんと一緒に頑張っていきましょう。

 

 

それとですね、以前の説明不足で視聴者の方々に混乱を招いていたようで訂正をさせていただきます。

こちらのゲームに『スキル』というものがあるのはご存じだと思いますが、種類に分けると3種ございます。まずは一つ目、そのキャラ固有のスキルです。スぺちゃんの場合だと【シューティングスター】ですね。こちらはそのキャラクターが初めから持っているスキルで、熟練度が上がりやすいものとなっております。限界レベルはLv.6となっております。

 

 

二つ目は現在育成しているキャラクター以外の固有スキル、今回の場合だと【空駆ける英雄】や【不沈艦、抜錨ォッ!】ですね。こちらはそのスキルを持っているキャラクターとの好感度を稼いだり、そのキャラ特有のイベントをこなすことで、きっかけ、所謂Lv.0を習得できます。その後、練習や元の所有者の動きを見ることで熟練度を貯めてLv.1にすればレースなどで使えるようになります。限界レベルは固有と違い、Lv.5までとなっております。

ちなみにですがLv.5とLv.6には大きな隔たりがありまして、そのスキルの効果も段違いです。ま、本物は超えられない、ってことでしょうね。

 

 

三つ目は汎用スキル、スぺちゃんの【食いしん坊】や【ゲートの支配者】がそれにあたります。こちらにはレベル表記はなく、一度使用可能な熟練度まで貯めると使えるようになります。固有スキルより効果は薄めですが、日常生活で手に入ったり、レース後にキャラクターが勝手に閃いてくれたりするので入手難度は簡単です。

 

 

ま、こんな風に三種類あるんですね。アプリ版と違い、他キャラの固有スキルのレベルが上げられたり、ポイント制から熟練度制に変わってたりしますのでご注意の方をよろしくお願いいたします。

 

 

>「お~い! スぺちゃん~! 併走しよ~!」

 

 

お、テイオーが練習に誘ってくれてますね。こういった付き合いも大事ですし、熟練度上げやステータス上げにもウマ味なんで、喜んで引き受けて頑張りましょう。

 

 

では、今回も短めですがここまでとさせていただきます。次回はホープフルをホープレスに……、失礼しました。ホープフルSをスぺちゃんと一緒に蹂躙していきたいと思うのでそこんとこ、よろしく。

 

ま、多分私強いムーブができるのがここまでになってきそうなので、思いっきりやろうということですね。

 

 

 

 

【トウカイテイオー視点】

 

 

ボクの強さはなんだ。

 

 

これまでなら総合力と答えた。

 

今なら体の柔らかさと答える。

 

 

 

この長所でもあり欠点でもあるボクだけのもの。

 

このことだけならスぺちゃんにも負けない。

 

 

総合力で勝負するのはちょっと難しい、でもこれなら勝てるかもしれない。

 

 

 

 

 

ボクの欠点でもあるこの柔らかすぎる足、これを武器にする。

 

柔らかさをそのままに、バネのような瞬発力を、鋼のような頑丈さを。

 

 

 

併走で横を走るスぺちゃんを見る、明らかにキープしている。

 

合わせてもらっている。 これじゃだめだ。 もっと強くならなきゃ。

 

 

 

 

元々考えていたボクだけのステップ、テイオーステップ。

 

 

これだけじゃまだ足りない。

 

 

 

 

諦めるな、ただ自分が勝つ瞬間を、あの子の前にいる瞬間をイメージしろ。

 

 

 

 

 

 

絶対は、ボクだ。

 

 

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(トウカイテイオーが育成キャラのライバルとなったため、イベントが発生しました。)

 

(トウカイテイオーの固有スキル【究極テイオーステップ】が強化されました。)

(スキル発動時、最終直線での速度がさらに増加します。)

 

(トウカイテイオーが新しい固有スキル【絶対は、ボクだ】のきっかけを習得しました。)

(なお、このスキルは他の固有スキルと併用できます。)

 

 

 

 

 

 

【メジロマックイーン視点】

 

 

サイレンススズカ先輩が骨折による長期休養、休養明けにはアメリカ留学。今現在、スピカには柱となる選手がいません。次の柱、チームのエースとなる人物、わたくしたちの力量を数値化して並べてみれば、おそらく誰でもスペシャルウィークさんの名を挙げるでしょう。

 

確かに、彼女の実力は誰もが知るところ、結論を出すのは簡単。

 

 

 

 

でも、それは少し、 いえ、かなり気に食わないです。

 

 

今の実力を比べてみれば彼女の方が強いこと、理解はできますが納得はしたくありません。

 

 

 

ならば、どうするか。

 

 

 

勝つしかないでしょう。

誰もがわたくしが勝者であると認めるような勝ち方を。

大舞台で圧倒的な勝利を。

 

 

 

彼女に勝つためにはどうすればよいのか。

彼女に勝てる道を見出すとすれば、距離。

 

 

わたくしは自他ともに認めるステイヤー、勝負を仕掛けるとすれば長距離レース。

 

 

長さをもってスタミナを削り

 

時間をもって集中力を削る。

 

 

 

策をもって制するのも考えましたが、やはり私には合わない。

 

勝つならば、力をもって勝つべきです。

 

 

 

あのスズカ先輩のように、最初から最後まで彼女の前に居続ける。

 

 

 

 

必要なのはスタミナと集中力。

 

さぁ、始めましょう。

 

 

 

 

メジロという名にかけて

 

盾の栄光を、勝利を譲るわけにはいけません。

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(メジロマックイーンが育成キャラのライバルとなったため、イベントが発生しました。)

 

(メジロマックイーンの固有スキル【貴顕の使命を果たすべく】が強化されました。)

(スキル発動時、最終コーナーでの速度上昇率がさらに増加します。)

 

(メジロマックイーンが新しい固有スキル【最強の名にかけて】のきっかけを習得しました。)

(なお、このスキルは他の固有スキルと併用できます。)

 

(また、【最強の名にかけて】の強化イベントが発生しました。)

(スキル効果が大幅に変更される可能性があります。)

 

 




ねぇ知ってる?

このSSでは評価、感想、お気に入り登録のことを『はちみつ』って呼ぶんだよ。

いつもありがとうございます。励みになります。



この誤字はひでぇや…、いつもありがとうございます。


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PART36

やっとジュニア級が終わり、クラシックが始まります。
最初はもうちょっと短くするつもりだったんですがこうなっちゃいました。


盛大な誤字というガバをした男、反省ですねぇ!
マックイーンのみイベントが発動してるのはそういうことです。(どういうこと?)
まだ、経由しないといけないイベントがあったんですね。


【レース雑誌記者視点】

 

 

「先輩! ついに始まりますね~、ジュニア級の大舞台。ホープフルステークス! いや~、先輩に教えてもらわなかったら有馬の方に集中していたところでした。」

 

 

「年末の大舞台ってことで、そっちは誰でも注目するし、出来上がってるスターも多い。どこの雑誌でも必ず狙ってくるからな。それに代わってこっちはそこまで多くない。来年につながる新星達を決める大舞台だが、有馬に比べれば話題性は劣る。」

 

 

「そこを、数ページしかもらえない俺たちが担当するってわけですね~。」

 

 

「そういうこった。俺たちは星を見上げればいいってことじゃない。ここで活躍する、今後目が出てくるであろう選手を発見し、つなぎを作っておく。」

 

 

「運が良ければ、そのウマ娘の担当記者にもなれるってわけですね。」

 

 

「そういうこった。んでお前は誰を注目する。」

 

 

「そうですね~、やっぱり、スペシャルウィークでしょうか。戦績はデビュー戦のみですけどあの日本記録となった20バ身大差勝ちは忘れられませんよね。」

 

 

「ま、本命はそれで、勝者も彼女だろうな。実力が一人だけおかしい。でもレース屋としては正しくても俺達にとっては減点だ。」

 

 

「やっぱり他も狙ってきますか?」

 

 

「必ずな、レース後の会見はえらいことになると思うぞ。それで俺たちが狙うとすれば、本来注目を浴びない子たち、再戦に燃える子たちだ。」

 

 

「先輩は誰になると?」

 

 

「可能性がありそうなのはミホノブルボン、ライスシャワー、ツインターボあたりだろうな。本来ならもっといたはずなんだが、明らかに避けてきてる。」

 

 

「噂になってたエルコンドルパサー、グラスワンダー、セイウンスカイ、キングヘイローの4人ですね。」

 

 

「そうだな、全員トレセンの名トレーナーがついてる新星達だ。おそらくだがスペシャルウィークのデータ集めに集中して、決戦はクラシックにするつもりだろう。」

 

 

「……荒れそうですね、来年は。」

 

 

「本当にな、さて誰が初めに彼女を倒すことになるのやら。」

 

 

 

 

 

  ーーーーーーーー

 

初のGⅠレースで気合がえい、えい、むん! な、スぺちゃんと一緒に中山レース場で今日もやっていきますよ~。にしてもスぺちゃん、勝負服似合ってますねぇ! デフォルトだけどかわいいです。

 

はい、こちらのゲームですね。勝負服の変更及び改造ができるようになってましてね。いろんなものを着ることができます。スぺちゃんにスズカ先輩のを着せることだってできちゃいます。

 

ま、わたくしはデフォ服の方が好きなので変更はしていきませんが、ちょっとした改造はしていきます。それはまた後程……

 

 

 

んで、今日のレースの出走表を見ていたんですが、やっぱりプレイアブルキャラクターの皆様がいましたねぇ。今回参戦してきてるのは、ミホノブルボン、ライスシャワー、ツインターボ師匠の3人ですね。アプリ版超強化ブルボンをご存じの方は彼女を見ただけで震えあがってそうですがご安心を、ステータスも確認しましたがよくてEぐらいですね。これは簡単に勝てそうですねぇ!

 

スぺちゃんのも公開しときましょ。

 

 

>スピード:D+

 スタミナ:C+

 パワー :B

 根性  :C

 賢さ  :C

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.2

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.2

 【空駆ける英雄】    Lv.1

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.1

 

 【ゲートの支配者】

 【食いしん坊】

 

 

 

と、こんな感じですね。やっぱりスキル熟練度上げに奔走していたためかステータスが上がってません。ま、それを補って余りあるスキルがありますしダイジョブでしょ。

 

 

でも、今回使うチャートでは大体のスキルはお蔵入りなんですよねぇ!

 

ではスぺちゃん耳を貸せぇい! 我が秘策を伝授いたそう!

 

 

 

今回の作戦はとっても簡単! 最初から中盤まではターボ師匠についていき、中盤を超えたころに師匠を抜き、そっから先頭で最後まで行くぞ!

 

何! スぺちゃん! そんなことすれば作戦も大逃げになっちゃうし、手に入れたスキルもクラシックまで【ゲートの支配者】を封印してるから、【空駆ける英雄】ぐらいしか使えないだって!

 

それでいいのだ! このレースはいわば勝ち戦! どうやって勝つかが問題であり、スぺちゃんが実は逃げもできちゃうんです! と思わせるブラフなのだ!

 

 

……え、なんか嘘ついてるみたいでイヤ? いや、イヤじゃなくてですね、そこを何とかなりませんでしょうか…、うん、ほら今お部屋にスズカ先輩いないし調理器具買えるよ、毎月ニンジン送ってもらえるようになったからチンできるいいレンジ買ってあげるから……。

 

うん、まぁばれたらまた怒られますけども……、そこを何とかなりませんかね? ほらスズカ先輩と同じ走り方ですよ。今回だけでいいのでどうか、やってくれませんか……

 

 

 

>スペシャルウィークはしぶしぶ頷いた。

>レース後にレンジを買うことが確定した!

 

 

 

ふぅ、何とか交渉成立ですね。うまくいってよかったぜぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お、ゲートまで移動してたらターボ師匠がこっちに気づいて近寄ってきましたね。

今日は途中までついてきますし、ご挨拶しときましょう。

にしても師匠の勝負服可愛いな。スぺちゃんも着てみない? 着ないか、あぁそう……

 

 

>「おぉ~! スぺも一緒に走るんだな! 勝負だぁ!」

 

 

オッス、勝負っす! んでもなんか出走するメンバーのこと知らない雰囲気でしたね。なんででしょ?

 

 

>「ん? なんかうちのトレーナーが出れるし、出といたほうがいいって言ってたから走りに来たぞ! ま、勧められなくてもGⅠの大舞台だし走りに来てたけどな!」

 

 

なるほどね、師匠はチームカノープスでしたっけ?

 

 

>「そうだ! ネイチャと一緒にターボ毎日頑張ってる!」

 

 

おぉ~、そうなんですね~。んじゃ、そろそろゲートイン始まりそうですし、頑張りましょうね。

 

 

>「おう! じゃ~な~!」

 

 

なるほどなるほど、カノープスにネイチャとターボ師匠が既に入っててホープフルを進めてきたということですか。あの南坂ってやつの仕業だな……。あの人は指導力はおハナさんや我らがスピカトレーナーに劣りますが、それでも作中トップクラス、マネジメント能力もある上に、奇策も打ってきますから結構注意が必要ですねぇ。

 

今回はターボの経験積みということでしょうが、今後も師匠を通じて情報収集した方がいいかもしれません。

 

 

 

ま、そんなことは置いといてレースしましょう!

 

 

 

ではではゲートにスっ、と入りまして。何もしません。

 

 

あ、そうだミニRTAしよ。

 

はい、ヨーイドン。

 

 

 

 

はい、スぺちゃん。いつもならここで速度落として後方に付きますが、この速度のまま前に行きましょう。

 

 

横からターボ師匠が前に出てきますので~、その後ろにピッタリ、セットしましょうね~。

 

 

このまま中盤まで暇なので周りに、ゲートの要領でプレッシャー放ちながら~、

 

 

はい、残り1000mの標識が見えたので加速しましょうねぇ!

 

 

後は誰も寄せ付けずに、最終コーナーで少し息を入れまして、直線で爆発させましょう。

 

 

 

>【空駆ける英雄】発動!

 

 

 

 

はい、直線からスキルであげていきますよ~、バリバリ~!

 

 

んで、ゴールインしてタイマーストップ。

 

タイムは1分57秒3、といったところですね。スズカ先輩の記録には届きませんでしたが、大差勝ちなのでよしとしましょう。

 

 

 

んじゃ、勝利ポーズでも決めましょうか。

 

応援してくれた皆さんにおじぎして、Ⅴサイン!

 

 

 

 

 

 

 

(GⅠレースに勝利しました。)

(特殊イベントが発生します。)

 

 

 

 

 

(お楽しみいただけていますか?)

 

 



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PART37

ブルボンとライスが活躍し始めるのはシニア級になってからです。
表記するのはかなり後になりそうですが、もう火はくべられているのでご安心を。

これからはゆっくりとクラシックを進めていきましょうねぇ~。


【キングヘイロー視点】

 

 

好敵手である彼女がGⅠレースに出走する。そう聞き、自身の目標を再設定するためにトレーナーさんと共にレース場に来ていた。

 

 

 

 

 

「あの子は逃げもできるのですかッ!」

 

 

逃げもできるとなると彼女が使える戦法は逃げ、先行、差しの3つ。

 

これほど恐ろしいことはない。

 

 

 

逃げという作戦は、そのレースのペースを決める。

 

あれだけの実力を持ったあの子が自分の意思でレースを作ることができる。

 

それを意味している。

 

 

「……なぁ、お嬢。奴さんは策をめぐらしたりするような奴か? 日常生活で感じたことでいい。」

 

 

「スぺさんですか? ……いえ、そのようなことをする人ではないと思います。」

 

 

「なら、ブラフだな。帰ってから映像で見直す必要があるが、逃げをやる奴は最後のコーナーであそこまで息を入れない。見た感じ、お手本がいいだけの突貫工事だ。」

 

 

「お手本というと、やはりサイレンススズカさんでしょうか。」

 

 

「だろうな。ま、お前さんは気にせずいつも通りのことをやっとけばいい。こういったものを考えるのは俺の仕事だ。さ、帰って早速練習!」

 

 

「き、急に押さないでください!」

 

 

 

(しかし妙だな、スピカんとこの小僧はそんな小細工を用意するやつじゃねぇし、そもそも彼女には策なんて用意しなくてもいいほどの強さがある。いったい誰の入れ知恵だ? 明らかに俺らのような挑戦者を惑わすような意図が感じられた。……もしかしたらもう一人、厄介なトレーナーが付いてんのかもしれねぇな。注意する必要があるかもしれん。)

 

 

 

 

【セイウンスカイ視点】

 

 

「おーい、トレーナーさーん。聞こえてる?」

 

 

 

(マズいマズいマズいマズい、どうすればいい、どうすれば勝てる。あの逃げ策は今の時点では明らかにブラフ、しかし今はブラフというだけで、今後はどうなるのか全く分からない。あちらにはサイレンススズカがいる。現在彼女は休養中で手が空いてる。その空いてる手を彼女の逃げ策の成熟に使われたら? そもそもあの走り方、中盤までは自身の走り方を先行策に当てはめたものだということはわかる、問題は後半の逃げ方、明らかにサイレンススズカのもの。近くで見たものを模倣したのか、教わったのか。どっちでもかなり不味い。前者ならばあの実力の上に自身の走り方を確立しているのにかかわらず、他人を模写して自身のものにできる怪物。後者なら速度という怪物が新たな才能の塊に自身の持てるものすべてを教えようとしているということ。どちらであっても、現在考えていた長距離でレースを操るという菊花賞に焦点を当てた作戦は意味をなさなくなる。考えろ、自身の思いつく限り、セイが彼女に勝てる道筋を……。)

 

 

「聞こえてないなー。なら遠慮なくほっぺでも抓らせてもらいましょうか。」

 

 

むちーー

 

「あ、思ってたよりも柔らかい。」

 

 

「……何してるんですか、セイちゃん。」

 

 

「お、戻ってきたね。トレーナーさん。すごい顔で固まってたよ。」

 

 

「そうでしたか~、それはごめんなさいですね~。」

 

 

 

 

「……ね、トレーナーさん。私、頑張るよ。今までよりずっと。取れる選択肢をもっと増やすために。だからさ、これからもお願いしてもいいかな。」

 

 

 

(……そうですね、これは私だけの問題じゃない。あ~あ、教え子に諭されるなんてトレーナー失格ですねぇ。この失敗は成果で、自分のできることを精一杯やるだけです。)

 

 

 

「もちろんです。限界まであなたのために頑張りましょう。早速、帰って練習。私は分析です。」

 

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 

 

 

 

【リギルトレーナー視点】

 

 

「完全にブラフ、とも言い切れないのが難点だな。」

 

 

「そう……ですね。」

 

 

「逃げもできるかもしれない。ほんとに怖いですネ。」

 

 

 

例のあの子が出走すると聞き、グラスワンダーとエルコンドルパサー。二人のスケジュールを調整してこのレースをともに見に来ていた。収穫はあったといえるが、見つかったのは思ったより大きかった。

 

 

 

「スピカにはスズカがいる。ゆえに今後、逃げを習熟してきてもおかしくはない。」

 

 

「逃げにも対応できる必要……。」

 

 

「ただ、ついていくだけでは勝てそうにありませんネ……。」

 

 

 

差しが基本で、先行もできる。もしかしたら逃げも。さて、どうやって攻略すればいいのか。細かいことはまた帰ってから映像を見ながら自室で悩むとしよう。今は、指導者だ。

 

 

「さて、レースも終わった。今日はフリーだし、顔出しでもしてくるか? 話は通してあるし、控室まで行くことができるぞ。」

 

 

「そうですね、今日は友人としてお祝いに行きましょうか。」

 

 

「お、いいですネー! 行きまショ!」

 

 

 

 

  ーーーーーーーー

 

あ、スぺちゃん勝利者インタビューがあるみたいですし、ちゃんとしましょうか。

ま、スぺちゃんなら大丈夫そうですし、後ろにトレーナーが控えてます。

ちょっとした指示ぐらいでいいですかね。

 

 

「スペシャルウィークさん、GⅠレース勝利。おめでとうございます。」

 

 

「ありがとうございます! 応援してくださった皆さんのおかげです!」

 

 

「デビュー戦の次走にGⅠレースということでしたが、どのようなお気持ちで挑まれたのでしょうか? やはり、緊張などしたんでしょうか?」

 

 

「いえ、特に緊張はしていませんでした。友人のターボさんがいたからでしょうか?」

 

 

「そ、そうでしたか。では今日は前走とは違い、大逃げをしていたツインターボさんの後ろに付いていましたがどのような意図があったのでしょうか?」

 

 

「…いえ、何も考えていませんでした。ただ、あのように走ればいいかなと思っていたぐらいです。スズカ先輩のようになりたいと思っていたので、それが行動に出てしまったのかもしれません。」

 

 

「スズカ先輩というと同じスピカ所属ということでしたが、どのようなご関係ですか?」

 

 

「尊敬している先輩です。同室なのでよくしてもらってます。」

 

 

 

ま、ファンへの感謝も忘れてませんでしたし、このままほっといても大丈夫ですかね。実況中すみませんがちょっと離席して、飲み物でも取ってきましょうかね~。最近なんかのど渇くんですよね……

 

 

 

 

 

 

「……今回のレースではスペシャルウィーク選手以外の注目選手が出走していませんでした。それで、同世代の中で一番戦ってみたい、ライバルはいらっしゃいますか?」

 

 

 

「いえ、特には。」

 

 

 

 

  ーーーーーーーー

 

 

 

「くす、そこまでなめられていましたか……ふふふ。」

 

 

「本心、なんでしょうネ。……なら!この世界最強のエルコンドルパサーの覚悟!見せつけてやるのデース!」

 

 

「ふーん。言われちゃいましたねぇ。」

 

 

「視界にすら入ってませんか。ならば目にものを……。」

 

 

「ボク、忘れられてるね。……思い出させてやる。」

 

 

「……私の意地を見せてさしあげましょう。」

 

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(特殊イベント【その一言で】が発生しました。)

 

(ライバルの6名に特殊スキルが付与されます。)

 

 

(グラスワンダーが特殊スキル【対スペシャルウィーク〇】を獲得しました。)

 

(エルコンドルパサーが特殊スキル【対スペシャルウィーク〇】を獲得しました。)

 

(セイウンスカイが特殊スキル【対スペシャルウィーク〇】を獲得しました。)

 

(キングヘイローが特殊スキル【対スペシャルウィーク〇】を獲得しました。)

 

(トウカイテイオーが特殊スキル【対スペシャルウィーク〇】を獲得しました。)

 

(メジロマックイーンが特殊スキル【対スペシャルウィーク〇】を獲得しました。)




「……今回のレースではスペシャルウィーク選手以外の注目選手が出走していませんでした。それで、同世代の中で一番戦ってみたい、ライバルはいらっしゃいますか?」



スペシャルウィーク

(別に何も言われてないですし、好きに答えていいんだよね。なら、私が一番戦いたいのはスズカ先輩! 同級生のみんなとも戦ってみたいけど、一番じゃないし、嘘ついたらダメだよね……。あ! 考えこんじゃって言うのが遅くなっちゃった。早く言わないと!)


「いえ、特には。」


(あ! 声が思ったより大きく出ちゃった! 大丈夫かな……)










レース場、とある場所で。
「トレーナー! スぺちゃんすごかったね~!」

「閃いた!」


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PART38

誤字報告感謝です。
誤字がなくならないことを反省するためにマックイーンと阪神応援しに行きます。
このまま、このまま! 今年こそ行ってくれ阪神!


すみません、帰ってきましたっと。お、記者会見終わってますね。スぺちゃん、どうでした? うまくできましたか? ……う~ん。スぺちゃんの顔はバッチリなんですが、トレーナーさんのお顔がそこまでよろしくありませんね。なんかやらかしたかね?

 

んま、終わったことですし、インタビューで変なことしてても多分、癖のあるウマ娘は強い、理論で何とかできますので、よしとしましょう。ではではスぺちゃん、ウイニングライブの時間だぁ! 今回はちゃんと練習してきたから歌えるし、踊れるぞ!

 

 

では、スぺちゃんがライブしてる裏で、勝負服の改造についてご説明いたしましょう。GⅠレースでしか着れない勝負服ですが、こちらの手で改造や、新規を作ることができます。作成にお金と時間がかかりますがDLCの購入次第では全く新しいものが作れます。ま、かといって私にデザインの才能なんかないので新規ではなく、スぺちゃんのデフォをちょっとだけ改造していこうかな…、ということですね。

 

この動画の目標は<称号:無敗の総大将>を入手することですが、最近できた副目標に海外GⅠをできるだけ荒らすというものが増えました。それで、スぺちゃんの勝負服にトロフィーみたいなものをつけたいなぁ…、と思いました。

 

会長とかだったらじゃらじゃらした勲章をいっぱいつければ済んだんですが、スぺちゃんの勝負服には合わないだろうと思い、スぺちゃんがGⅠで勝利するごとに背中に星を入れてもらおうと思います。固有スキルともマッチしてるのでいいかなぁって。

 

 

というわけで、新たな副目標! 背中に一杯星をつけよう! です。目指せ合衆国!

てな感じですね、ハイ。長々と失礼しました。

 

 

 

んじゃ、多分これ以上目標は増えないし、できないので、ジュニア級を制したということでまとめなおしてみましょうか。

 

 

『主目標』

 

<称号:無敗の総大将>の獲得。

 

条件:日本ダービーを1番人気かつ5バ身差以上で勝利し、天皇賞(春)、天皇賞(秋)、ジャパンC、凱旋門賞を勝利する。また公式レースにて無敗であること。

 

 

 

『副目標』

 

クラシック級でジャパンC、有馬記念を制覇。

 

シニア級後の海外遠征でできるだけ多くのGⅠレースを勝利する。

 

GⅠレースで勝利するごとに背中に背負う星を増やしていき、目指すはGⅠ50勝!

(国内では普通に走るので、背負える星の数は12。その後、海外遠征をおこなうのは1年の予定のため、どう考えても不可能。ま、目標はできるだけ高くってことね!)

 

 

 

 

って、感じですかね? ま、こうゆう感じでやるよ、ってことで軽く見てもらえればと。

 

 

 

 

 

 

お、お話してたらスぺちゃんのライブも終わったみたいですね。お疲れ様やで~。んじゃ、学園に帰りながら今日のレースのリザルトを確認していきましょう。

 

今回のレースでは苦手というか、初めて逃げ策を使用したため、逃げの適性値がちょっとだけ上がってますね。まぁ、今後使いませんが。あとはスキル系統も状況的に使えないものばかりだったので熟練度がたまったのは【空駆ける英雄】ぐらいですか。ま、こちらもどの作戦でも使えるんですが、適性が差しなのでそこまで貯まってないですね。ま、こんなもんでしょう。

 

ステータス増加もいつも通りの上り幅で……、お! 新スキルのきっかけをつかんだみたいですね! えらいぞ~スぺちゃん。どれどれ…

 

 

【逢魔時】

効果:残り1000mを経過した時に加速していると発動。レースを一段階ハイペースにし、全体を掛からせる。

 

 

 

……やばいわよ! なデバフスキルですね。ぶっ壊れてやらぁ! ま、性能自体はいいんでしょうけど発生条件が難しくて、【ゲートの支配者】みたいに何度か使うと効果が薄くなってくるタイプでしょう。

 

でも、使えそうですし、習得してみましょうか。次走の皐月まではこれの習得と他、固有スキルの熟練度上げに費やしましょうかね。

 

にしても、知らないイベントやスキルが盛りだくさんですね。これもwikiさんの方に投げときましたが、もしかしたら裏でなんかイベント起きてるのかもしれませんね~。 でも、ま、大丈夫じゃろ。

 

 

んじゃ、今回はここまででごわす。次回も、ってスぺちゃんいまご挨拶中だから後に……、あ、レース前に言ってたレンジ? うん買っていいから、締めだけさせて。

 

では次回の動画でお会いしましょう~。

 

 

 

 

【ウオッカ視点】

 

 

「う、ぐす。。 えぐ。。うえ~ん。。。。」

 

 

 

 

 

「……なぁ、スカーレット。なんでスぺが泣きながら走ってるか知ってるか?」

 

 

「なにそれ、ってほんとね。あんなに号泣してるの初めて見た。」

 

 

「その感じなら知らないみたいだな、なんでだろ……。」

 

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーングル、呼んだ?」

 

 

「「呼んでない。」」

 

 

「お、真面目にそういわれるとさすがのゴルシちゃんもダメージ頂いちゃうぞ!」

 

 

「んで、ゴルシちゃんは知ってんの?」

 

 

「お、ついに後輩から先輩呼びされなくなった、悲しいなぁ…! これは私も号泣しながら走り出すべきか……、んでなんで泣いてるかだったな。何でも、うん十万した高性能レンジを買ったけど、スズカに見つかって没収、前回のように食堂に寄付されたらしいぞ。」

 

 

「あー、、例の炊飯器と同じやつね。」

 

 

「まぁ~た、やったんかい。懲りないなぁ…。」

 

 

「んで、無茶苦茶怒られた後に体重増加が発覚してさらにお怒りモード爆発。こってり絞られてああなったみたいだな。」

 

 

「「自業自得(だな)ね。」」

 

 

「だよなぁ……、おっ! ジョーダンじゃん! あっそぼ~!!」

 

 

 

あ、なんでこっちに来たのかわからないけどジョーダン先輩が襲われてる。かわいそ、でもオレたちにはなんもできないしなぁ……。

 

 

 

「「南無南無~~。」」

 

 

ジョーダン先輩に幸あらんことを。 あ、蹴られた。

 

 

 

 

 

 

 

【ツインターボ視点】

 

 

「う~~~!! くやしい~~! ターボくやしいぞ~~!!!」

 

 

あのホープフルS、ターボは真っ先に逃げた! でも差しのはずのスぺにずっと後ろに付かれて大逃げできなかったし、中盤ですぐに抜かれた!

 

 

「でもよかったじゃん、掲示板に入ってたし。ほら4着だったんでしょ。」

 

 

「1着だったネイチャに言われたくないぞ!」

 

 

「ほら、私はGⅢだったし、他の目ぼしい人もいなかったしね。それで負けちゃったらダメでしょ。」

 

 

「でも、ネイチャの方が上だ! くやじい~~!」

 

 

「にしても、5人組のうち、一人しか出てこなくてそれがトップ。これはみんな見に回ったのかねぇ。」

 

 

「ん、ネイチャ! 5人組ってなんだ?」

 

 

「最近噂になってるうちの学年のトップ層ってやつ。上から順にスペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダー、キングヘイロー、セイウンスカイって感じみたいね。ちなみにその下にトウカイテイオー、メジロマックイーン、ミホノブルボン、ライスシャワー。」

 

 

「ターボたちは! ターボたちはどこにいるの!」

 

 

「残念ながら圏外。重賞では勝ててもGⅠじゃ掲示板に残ればいいほう、って思われてるみたいよ。ほら、さっき買ってきた雑誌、見る?」

 

 

「見る!」

 

 

ジュニア級のランキングが載ってる! ターボは……ずっと下! ランキング圏外で光るものはあるけどそれしかないって書いてる!

 

 

「くやじい~~!!! 来年はターボたちが一番になってやる~~!!」

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました、って何ですかこの空気、お通夜ですかこれ……。」

 

 

「トレーナー! ターボたちがもっと強くなる方法ってないの! 秘密特訓とかないの!」

 

 

「そんな都合のいいことなんて「ありますよ。」え、あるの!」

 

 

「はい、私だけでは難しいかなと思っていたところ、先方からいいお返事を頂きまして、カノープスのサブトレーナーとしてこちらに来てくれるみたいですよ。」

 

 

「え! 誰が! 誰がくるの~!」

 

 

「それはですね……」

 

 

 

 ー東京、某空港ー

 

『パスポートお預かりしますね、ってセクレ、むぐっ!』

 

 

『騒ぎになっちゃうから、秘密、ね。』

 

 

『は、はい! あ、あのサインとかは……。』

 

 

『もちろん! ここに書けばいいのかしら?』

 

 

 

 

さて、スペシャルウィークだっけ。どれだけのものか見せてもらいましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

赤い英雄、来日。




クラシック、それは一生のうち、一度しか挑戦できない場所。

ゆえにそこには眩い光があり、また大きすぎる影もある。


さぁ、ウイニングライブの時間だ。






ー追い上げてくる強力なライバルたちー


「差は縮まってきている、これなら……!」

「……必要なのは強い私だけ。」

「たとえ血を吐き、泥を啜っても勝利して見せます! それが私の在り方です!」

「さーて、どこまで通用するか、やってみるとしますか。」



ー直面する課題ー


「なんで、なんでうまくいかないの! もう中途半端は嫌なんだ!」

「……ボクは何のために走ってたんだっけ。わからなくなってきちゃった。」

「諦めちゃった、その言葉が一番正しいのかもね。」



ー動き始める未知の敵ー


「ごめんなさいスぺちゃん。私、負けちゃった……。」

「ふーん、やっぱ大したことないな、日本は。」

「やっと見つけたかもしれない、私と戦える相手。」



ー牙を研ぎ始めた相手達!ー


「……お父さん、私の新しい目標。聞いてくれますか?」

「見つけた、ついていくべき相手。」

「あれは、私か……。面白い、いつの間にかに挑戦者になっていたのかもな。」


ー積み上がる幾千ものガバ!ー

「……すいません、自分。取り乱してもいいっスか?」

「あぁ~!チャートの壊れる音ォ~!!」

「(返事がない、ただの屍のようだ。)」










そして……


「へぇ~! 今年はいろんなところにたくさん走りに行くんだね! すっごく楽しそう! ウララ、頑張るよ!」

「閃いた!」








さぁ、飛翔の一年が、始まる。


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PART39

誤字報告いつも感謝です。


前回のあとがきで消えちゃう子いるんじゃ…って心配してた方々が居りましたが。
名前が出てきているウマ娘は引退は致しません。

そこんとこよろしく。


スピカ部室、楽しそうな声が途切れない騒がしい場所だが今日は一段とうるさい。

ま、新年だし許してやるか。

 

さて、他も見回らんとな。にしてもブライアンの奴はどこでサボっているのやら。

 

 

 

にしても、会長から新年祝いとして渡されたこのダジャレTシャツ。

『信念をもって新年を迎えよう!』、うん。非常に達筆だが着れないな、コレ。

 

既に自分で着ていて、あんなにいい笑顔で渡されたら断れんしなぁ~。

貰い物だから捨てるなんてできないし、実家に送るのは論外。

またタンス行きかぁ、タンスの一段がそろそろTシャツ群で埋まりそうだし、そろそろ解決策を考えないと……。

 

 

「……ハァ。」

 

 

最近ため息が増えたなぁ……。

 

 

新年というめでたい日のはずなのに、エアグルーヴの背中は疲れていた。

 

 

 

 

 

  ーーーーーーーー

 

 

 

「「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」」

 

 

「いや~、去年はどうなるかと思ってたけど無事、新年会できてよかったな! そう思うだろ、トレーナー!」

 

 

「それは解るが、なんで俺は料理させられてるんだ?」

 

 

 

あまり大きくない部室の中で所狭しと置かれた料理たち。約一名のせいで食事の消費量がすごいことになっているため、さっきから休める暇が全くない。食堂の方々の偉大さを再確認しながら手を動かす。あぁ、もうスぺ用の鍋が食いつくされた……。スぺ用とそれ以外とで分けたのは正解だったがその分スぺが気兼ねなく食べるせいで回転率がヤバい。誰か助けてくれ……。

 

 

 

 

「生徒の食生活を管理するのもトレーナーの仕事でしょ。」

(と、言っても相変わらずスぺがヤバいわね。手伝った方がいいのかしら……?)

 

 

「むぐむぐ!」

 

 

「そうそう、いつも仕事してねぇんだし、今日ぐらいは働けよな~。」

(これで巨大土鍋何杯目だ? そろそろ誰か止めてあげた方が……。)

 

 

「むぐむぐ!」

 

 

「……ねぇ、スぺちゃん?」

(((来た! スぺの保護者だ! これで止まる!)))

 

 

「たくさん食べるのはいいけれど、食べながら喋るのはやめましょうね。」

(((そっちかよ!!!)))

 

 

「むぐむぐ……うん! わかりましたスズカ先輩! あとトレーナーさん、おかわりいいですか!」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってろよ~、はぁ。」

 

「……さすがに手伝うわ、自分たちの分は自分たちでやるし。」

 

「……俺も手伝うよ。あとスぺ、これで最後にしておけよ~。」

 

「お、お前ら……、ぐす、いいやつだなぁ。」

 

「ほら、泣くなって、トレーナーだろ……。」

 

 

 

 

 

 

「ほら~、マックイーンもちゃんと食べろよ~。全然箸が進んでないのう。もしや昨日深夜にシュークリームをドカ食いしたなぁ~!」

 

 

「だから何でわたくしのプライベートを知っているのですか! ストーカーですの、貴方!」

 

 

「でも、ボクも知ってるよ! ほら、みんな見てよー。大量のお菓子買い込んでる変装マックイーンの写真、面白くてつい撮っちゃったんだ~。」

 

 

 

テイオーのスマホに映っているのは女物のサングラスを掛け、帽子を深くかぶったマックイーンの写真。変装しているのは解るがバレバレである。そのマックイーンが両手に大きなビニール袋、中にはシュークリームを中心としたコンビニスイーツの数々……。

 

 

 

 

「おー! すげぇじゃねぇかテイオー! パパラッチの才能あるんじゃねぇか!」

 

 

「本当にきれいに撮れてますね! でもマックイーンさん、お家の人に頼めばよかったんじゃ? わざわざ変装なんてしなくても……。」

 

 

「たしかにスぺちゃんのいう通りだね~、なんでこんなことしたのかなぁ? ねぇマックイーン、ボクたちに教えてよ~、証拠は挙がってるんだしさぁ~。」

 

 

「うぐ。……その、さすがに買ってきてもらうのは恥ずかしかったですし、一人でじっくり見てみたかったですし……。しかも行ってみたら色々たくさんありすぎて買ってしまいましたし……。」

 

 

「確かに色々あるみたいだから、仕方ない……のかな?」

 

 

「ですよね! 先輩!」

 

 

「ちょっと怖いわ、マックイーンちゃん……。」

 

 

「おぉ~~、ガンギマリマックイーン、相手はケガ人だぞぉ! そんな悪い子にはゴルシちゃん特製虹色ニンジンジュースを飲ませてやろう!」

 

 

「ちょ! やめてくださいまし! その色の奴はやばいですわよ!」

 

 

 

 

 

 

今日もスピカは平和です。

 

 

 

「全然平和じゃないですわよ! ちょ、ゴルシ! 飲ませないでくださいまし!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【スピカトレーナー視点】

 

 

洗い終わった食器の重なる音が誰もいない深夜の食堂に響く。

 

 

「ふぅ、これで終わりか。にしても食堂を借りれてよかったなぁ…。」

 

 

スぺの炊飯器事件に続き、電子レンジ事件のおかげでスぺに対する食堂職員の印象はかなりいいらしく、新年会の話をしたらすぐに貸してもらえた。それはいいことなんだが、一体いくらのレンジ買ったんだ? 食堂で喜ばれるものってかなりの値段してそうなんだが…

 

 

スぺの印象といえば、例の勝利者インタビューの時は怖かったなぁ~。寿命が何年か縮まった気がする。

『いえ、特には。』かぁ、あの場ではインタビュアーのお姉さんがうまくまとめてくれたおかげで、スぺの普段の性格のこともあり、世間では緊張していたか、パフォーマンスのどちらかって言われてる。

 

 

あいつは誰かと走ること自体を楽しんでる。勝ち負けに興味がないわけではないが、根本はそこだ。たぶん話をちゃんと聞いてなかったせいで、あんな回答になったんだと思う。

 

やっぱり初めてのインタビューだったし緊張してたのかねぇ。

 

 

 

 

 

 

にしても、今年は色々と大変になりそうだ。

クラシックはスぺが直通で皐月賞。テイオーは今月末の若駒Sと3月の若葉Sを挟んで皐月賞。阪神JFで一着だったウオッカと二着のスカーレットはチューリップ賞を挟んで桜花賞。マックイーンは秋までは長距離を選んで走る感じで行く。ゴルシは……、うん。好きに走るだろ。

 

 

そして何よりもスズカのアメリカ留学、来年の秋までらしいが大丈夫だろうか。

現地にも優秀なトレーナーはいるだろうが、やはり自分で指導できないのは不安だ。

 

……そうだ。そういえばあの人、今、アメリカでやってるのか。

今のうちに頼んで、スズカを見てもらえるように頼んでおかねば。

 

 

 

さ、今年も忙しくなりそうだ、頑張らないとな。

 

 




最近の会長の趣味

思いついたダジャレをシルクスクリーンで白無地Tシャツに書くこと。
うまくできたのはグルーヴやブライアンにあげる。


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PART40

誤字報告いつもありがとうございます。

スぺちゃんのお金事情ですが、レースでの賞金でお金を手に入れております。


【サイレンススズカ視点】

 

 

「8A、8A……、あ、ここね。」

 

 

今、私は飛行機の中。空港でみんなに見送られた後、アメリカに向かうところ。

それにしても、走れはしないけどもう普通に歩けるのにみんな心配しすぎなんじゃないかしら?

スピカのみんなだけじゃなくて、グルーヴやタイキ、フクキタルやドーベル。それにおハナさんまで来てたんだもの。

別に今生の別れでもないのにあんな心配そうにしなくてもね。

 

 

手荷物を棚に移し、みんなから餞別に送られたものを見ながら席に座る。

ちなみにスぺちゃんからの物はない。実家から送られてきた大きな段ボールに大量のニンジンが入ったものを渡されそうだったが、グルーヴに止められていた。

 

それを見て、彼女なら大丈夫だと思い、

 

 

「グルーヴ、悪いんだけど私がいない間、スぺちゃんのことお願いしてもいいかしら? いらない調理器具買ったりとか、食べすぎちゃったりしちゃうから……、調理器具系は食堂の人たちに渡せば何とかなるわ。」

 

 

って言ったら、グルーヴもスぺちゃんもこの世の終わりみたいな顔してたけど大丈夫かしら?

 

 

……まぁ二人なら大丈夫でしょう、なんか仲良さそうだったし。

 

 

 

 

 

さ、スぺちゃんたちもクラシックで頑張るのだから、私がいつまでもリハビリにかまけている暇はないわね。あちらに着いて、手続きが終わればすぐに始めましょう。

 

 

……そういえばご挨拶しなければいけない人がいるって、トレーナーさん言ってたわよね。

 

確か……、ミスターシービーさんのトレーナーさんだったかしら?

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

いや~、最近このゲームをプレイしていると寒気というかなんというか、何か大事なものを見落としている。そんな気がするんですよねぇ? ガスの元栓は締めてるし、何なんでしょ? な実況プレイ、やっていきますよ~!

 

いや~、スズカ先輩のガチ怒りは凄かったですね~。ホープフルSで手に入れた賞金をドボンして買ったレンジがまた寄付されました。前回の炊飯器とは違い、レース前に購入が決められていたためスぺちゃんが勝手にあんな高い物を買っていて、慄きましたがまぁ問題はそこまでないです。ホープフルはGⅠですし賞金もすごいんだぁ…。

 

ちなみに一度、似たようなことを経験しているせいか調子の変化はありませんでした。前もって結果が見えていたからでしょうが、なんで没収されるとわかっていながら購入しちゃったんですかねぇ?

 

 

 

では気を取り直してやっていきましょうか。

つい先日、スズカ先輩がアメリカに旅立ってしまったのでお部屋も一人。ちょっと寂しくなっちゃったスぺちゃんと一緒に今日も頑張るタイ! ほら、スぺちゃん。アチキもいるんだし、これから本気で頑張っていかないと勝てなくなっちゃいますから頑張りますよ~!

 

 

 

「そうだよね、落ち込んでちゃだめだ。うん、頑張る!」

 

 

 

ではでは、今年からクラシック。ですので他陣営がどんな感じになりそうか予想しまして、それに対応したどのようなスぺちゃん育成計画を用意しているかご説明していきましょう。

 

まずは、リギルチーム。おハナさんとこですね。

所属してるのがエルコンドルパサーとグラスワンダー、マイルから長距離までできるつよつよちゃんたちです。作戦もスぺちゃんと同じように先行と差しを使ってくることが多いのでレース中の場所取りとかで戦うことがありそうですね。

 

おハナさんの育成方針的には総合力を鍛えた上で自身の強みも伸ばすというなんか意味わからん育成力してますがスピカも同じなので無視します。ま、大事なのはおそらく皐月賞ぐらいまでにはオールCぐらいには仕上げてきそうだなぁ、って感じです。運が悪いとやられますのでご注意しましょう。

 

 

お次はキングヘイロー、合宿で一緒になったあの赤い帽子のトレーナーさんに師事してるみたいですね。一応wikiに記載があったのでわかりましたが、なんでも育成力はおハナさんたちよりも上だが、トレーナーを引き受けてくれないことの方が多いのでマズ味ということだそうです。

 

……なんでそこにライバル枠が入ってるんですかねぇ?

 

まぁそこらへんは運なのであきらめるとしますか…。ちなヘイローちゃんは短距離適性がよく、距離が延びるほど苦手になってくるウマ娘で、先行もできますが、差しを得意にしている子ですね。

またレース中のポジション争いが大変になりそうですが、頑張りましょう。

 

 

 

最後にセイウンスカイ。スぺちゃんによると彼女はアークトゥルスというチームに所属しているみたいですね。こちらのチームはデータと戦略を重視してくるチームなので、戦略眼を持ち、逃げでレースを引っ掻き回すセイウンスカイとはピッタリなチームですね。花丸をあげちゃいます。

 

と、言っても例のカノープスの奴よりはまともな策ですし、メタを張りやすいです。育成力も高いみたいですが、ま、大丈夫なんじゃねぇの? 知らんけど。

 

 

 

とまぁこんな感じですね。ちなですが同じチームのテイオーはクラシックルートに、マックイーンは秋までは他重賞をメインにしていくみたいです。たぶんマックは神戸新聞杯からの菊花賞ですかね。

 

 

 

 

このつよつよライバルたちに対抗するため、スぺちゃんの練習方針は基礎ステータス強化をメインにやっていこうと思います。スキル育成にかまけてたのでちょっとそこらへんが不安でしたので強化していこうかと…

 

特に未だにスピードがCになっていないのは致命的な気がします。

 

ま、そんな感じですかね。

んじゃ、スぺちゃん。今日もバリバリ行くぞー!

 

 

【現在のステータス】

 

>スピード:D+

 スタミナ:C+

 パワー :B

 根性  :C

 賢さ  :C

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.2

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.2

 【空駆ける英雄】    Lv.1

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.1

 

 【ゲートの支配者】

 【食いしん坊】

 (【逢魔時】) 

 

 

 

 




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PART41

誤字報告いつも感謝感激雨霰です。

<ちょこっとだけネタバレ>
スぺちゃんはプレイヤーのことを認識しています。
解りやすく言ってしまうと彼女の周りに守護霊みたいなのがついてる
そう思っていただければ


【ハルウララ視点】

 

 

「え~と、お洋服は入れたし、歯ブラシも入れた! 持っていくものはこれで全部だっけ?」

 

 

「ただいま戻りました。あら、ウララさんどうしたんですか?」

 

 

「お帰りなさい、遅くまでお疲れ様! 明日からウララ、えんせい? ていうので高知に行くんだ!」

 

 

「なるほど、地方遠征ですね。何か忘れ物があれば大変でしょうし、お手伝いしましょう。」

 

 

「やっぱりキングちゃんはやさしいね~。」

 

 

そうやってキングちゃんが私の荷物を一緒に用意してくれたんだ!

やっぱり私、忘れ物してたみたいでキングちゃんにちょっぴり怒られちゃったけど、二人で旅行の用意をするみたいでとってもたのしかった! 最近元気なさそうだったキングちゃんも元気になったみたいでとっても良かった!

 

そうだ! あしたは朝早くに出発するから早く寝ないとね!

おやすみなさ~い!

 

 

 

【キングヘイロー視点】

 

練習終わりの帰り道、門限まで余裕がないので早く帰らないといけないが、足が重い。

 

 

トレーナーさんから渡されたメニューを淡々とこなす。自身の実力が上がっていることは理解できるが、彼女の走りを見せられたあの時からずっと私の不安は消えない。

 

このままで本当に大丈夫なのだろうか? 私の担当になってくださった赤田先生はこの学園の中でトップのトレーナー、その指導に間違いはない。そのはずなのに不安になる、本当に私は勝てるのだろうか。先生の汚点になってしまわないのだろうか。私に彼女に勝てる力はもともとあるんだろうか。

 

そんな思いがじわじわと心に溜まる、気分が沈む。

練習終わりの疲れもあるが、気分が落ち込んでるのもあるのだろう。

 

 

何とか門限までに寮にたどり着いた。寮に入ってしまえばどこに誰の目があるかわからない、いつもの私らしく”キング”でないといけない。気を引き締め寮に入る。

 

運よく今日は自分の部屋まで誰とも会わなかった。結果的に無駄に力んでしまった自分を笑う。結果論だが、誰にも会わないのに自分のちっぽけな意地を保とうとしていたことが非常に滑稽だった。

 

 

自室のドアノブに手をかけ、思いとどまる。同室のウララさんはどこか抜けている方だが、よく物事を見ている。こんな気が抜けた状態で彼女の前に出てしまえば、すぐに不調を見抜かれ、心配されるだろう。

 

彼女を心配させないためにも気を引き締め直し、ドアを開ける。

 

 

「ただいま戻りました。あら、ウララさんどうしたんですか?」

 

 

「お帰りなさい、遅くまでお疲れ様! 明日からウララ、えんせい? ていうので高知に行くんだ!」

 

 

いつも通りの挨拶、いつも練習で遅くなってしまう私を気遣ってくれるやさしい言葉。話しぶりから気づかれてはいないようだ。少しだけ安心する。

 

 

彼女は自身の持ち物すべてを自身のベッドの上に放り出し、半ばその中に埋もれながら荷造りをしていた。あまり整理が得意でなく、私物も多いため整理するために並べようとしたが途中で目的が二転三転しながら用意したのだろう。明らかに必要なさそうなものが彼女のカバンからはみ出ている。これは手伝う必要がありそうだ。

 

 

「なるほど、地方遠征ですね。何か忘れ物があれば大変でしょうし、お手伝いしましょう。」

 

 

「やっぱりキングちゃんはやさしいね~。」

 

 

彼女のトレーナーもうまく用意できないことを危惧したのか、彼女がうまく用意できるようにカラフルな配色とイラストが描かれた旅のしおりのようなものを用意してくれたおかげで荷造りは比較的早く終わった。

 

いつの間にか彼女のカバンに入っていたぬいぐるみなどを二人で笑いながら除いたり、レースをしに行くはずなのにシューズを忘れていたウララさんを叱ったりとそんな他愛もなく、楽しい時間を過ごしているうちに私の心にあったものはなくなっていた。

 

明日、早くから出発するらしいウララさんに合わせて、私も早めに就寝する。

いつもは疲れに任せて無理やり寝ていたような感じだったが、今日は気持ちよく寝れそうな気がする。

 

 

 

 

夜が明け彼女のトレーナーと一緒に旅立ったウララさんを見送った後に、私のトレーナー、赤田先生から食事のお誘いを受けた。どうやら私の不調はバレバレだったらしい。

 

昨日、ウララさんのおかげでリフレッシュできたこともすぐに見抜かれてしまったが、笑って食事に連れて行ってくださった。やはり私は恵まれている、これからも頑張ろう。

 

 

 

 

【シンボリルドルフ視点】

 

 

最近私に新しい趣味が増えた。そう、シルクスクリーンだ。ブライアンに貸してもらった立川で救世主二人が生活する漫画の中で、主人公がしているのを見て気が付いてしまったのだ!

 

私のジョークをこのように服に描いて、その服を着ればとても面白いということを!

 

 

思いついてしまったからにはすぐに行動しなければ気が収まらない。借りていた漫画をブライアンに返し、私に新しい道を教えてくれた聖書をネットで全巻購入した。

 

過去最速で生徒会の業務を終わらせた私は、早まる足を抑えながら近場のショッピングモールに移動し、シルクスクリーン一式と大量の生地が厚めの白地Tシャツを買い求めた。

 

 

その後、買い求めた品を持ちながら自室までつい走ってしまったが、その速度はシービーと競い合ったあの有馬の時よりも速度が出ていたかもしれない。次回の練習時に取り入れることができるようにメモをしておく。

 

 

 

自室に着いた瞬間、私は自身の机の引き出しの中からネタ帳を引っ張り出し、ネットでシルクスクリーンの行い方を検索し、研究し、実践した。

 

 

作業中、思いついたジョークの冴えも抜群に切れていて、思いついたらシャツに書き出し、思いついたら書き出しを繰り返した。かなりの数があったTシャツのすべてに文字を書き入れた時、気がつけば夜が明け、朝日が昇っていた。徹夜してしまったようだ。しかし私の脳は冴えており、目も閉じることを知らない、絶好調だ。

 

 

全てのTシャツに書き入れ終わった達成感と数々の素晴らしいジョークを生み出すことができた幸福感に包まれながら朝日を浴びる。

 

 

そうだ! 今日は早朝から生徒会の会議があったはずだ! 朝早くから集まってくれる彼女たちのためにもここは笑いを届けないといけない!

 

そう思った私は身だしなみを整えながらすべてのTシャツを確認し、面白く、朝というタイミングに合っているものを制服の上から着用した。

 

今日一日はこれで過ごすとしよう。

  『朝食抜かれて超ショック!』だ!

 

 

 

 

 

 

その後、彼女は意気揚々と生徒会室に向かったが、運よく誰とも出会わなかった。

生徒会室に先に来ていたエアグルーヴだけがその姿を見たらしい。

 

その日からエアグルーヴの引き出しには胃薬が常備されるようになった。

スピカの新年会よりも少し前の話である。




会長は深夜テンションでちょっとだけおかしくなってます。

エアグルーヴは泣いていい。



今更だけどキングお誕生日おめでとう。
不屈の王の生誕を祝おう。


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PART42

誰もいない部屋、グラスは今日、おハナさんとの話があるらしく帰りが遅い。

 

練習で汚れた服を着替え、顔を洗うためにマスクは外す。

 

 

自身の顔が目の前に映る。鏡の向こう側には弱い私。

 

 

そういえば最近一人でいる時間がなかった、"マスク"を脱ぐ時間がなかったことに気が付く。

 

 

 

心に封じたはずの感情があふれ出てくる。

 

焦り、不安、そして恐怖。

 

 

 

感情に押しつぶされそうになり、慌ててマスクをつけなおす。

 

ちょっとだけましになった。

 

 

 

 

今年いっぱいは日本で過ごし、来年から海外に、ヨーロッパに行く。

 

おハナさんと私が出した結論、それに不満はない。

 

 

彼女と戦えるのは今年だけ。

彼女を超えれるのは今年だけ。

 

 

もうちょっと、もうちょっとだけ頑張れ、エル。

 

 

 

 

 

 

 

 

【リギルトレーナー視点】

 

 

 

「……それでは、失礼します。」

 

 

「あぁ、しっかり休むように、エルにも伝えておいてくれ。」

 

 

 

グラスが退室する、少しだけ息を入れるためにいつの間にか冷たくなってしまったコーヒーを口に含む。

 

エルもそうだが、グラスも海外への思いが見え隠れしている。

つい最近まではシニアも国内で走ってもらうことを考えていたが、グラスに意思があるのならエルと同じように海外で走ることも考えないといけない。

 

 

目標があるのはいいことだ。彼女に勝った後のことまで考えているのは好感が持てる。

話を聞くに、例の彼女はシニア級は一年、国内で過ごしたのちに海外に出るというし、それ以前に海外に出ることで慣れておき、彼女と海外で戦おうとすることも考えているのかもしれない。

 

 

 

彼女たちは驚異的な速度で成長していっている。彼女たちだけ見ればこの世代の頂点を決めるのはこの二人のどちらかだけであるといえる。少なくともこれ以前の世代ならそうだった。

 

 

先日、校内にあるジムの前を通ったとき、スペシャルウィークが一人で練習をしているのを見かけた。

寮の門限まで時間があまりなく、片づけは私がしておくから早く帰るように、と言うと感謝を述べ慌てて帰っていった。それだけなら可愛らしいものなのだが、使用していた機具、よく自身のスピードを鍛えるために使うランニングマシンの設定を確認すると思わず声が出てしまった。

 

 

設定速度が速すぎた、とてもジュニアから上がったばかりの子が練習で使う速度ではない。少なくともエルやグラスには過度なトレーニングになるため、設定させない速度だった。機器についているタイマーから長時間やっていたこともわかる。

 

 

彼女はただ門限の時間に慌てていただけで、息は上がっているように見えなかった。

つまり彼女たちが走れないような速度を息を切らさずに走ることができるということだ。

 

 

 

焦りを感じた。このままでは間に合わないと。

 

私は目標の上方修正を余儀なくされた。

当たり前の話だった、こちらが成長すれば、あちらも成長するのだ。

 

 

 

二人の練習内容はかなり厳しくなってしまっている。何とかついてきてくれているが、どうしてもオーバーワーク気味になっている気がする。休ませるタイミングもよく考えないといけない。

 

精神的な負荷も取り除かねば……、私でこれなのだ。当事者たちの不安は大きいはずだ。

 

 

それとなく、友人と遊ぶように勧めてみることにする。

少しでも気が晴れればいいのだが……。

 

 

 

 

 

【カノープストレーナー視点】

 

 

『いや~、悪いですね。わざわざ日本まで来て指導もしてもらうなんて。』

 

 

『別にいいわよ。元々あの子のことは気にしていたけど、日本の資格なんて持ってなかったからね。』

 

 

『トレーナー免許を持つものが監督する場合、他地域の免許を持っていてもサブトレーナーに就任することができる。まぁ他にもありますが何とか通ってよかったです。色々と面倒事が起きそうなので偽名での活動は申し訳ないですが。』

 

 

『仕方ないでしょ、さすがに私がこっち来てるって知られたら色々とうるさいでしょうし。』

 

 

『世界最強ですもんねぇ。』

 

 

『ま、最近ちょっと怪しいけどね。私に勝てる子たちを探すために色々と出張しているとあの子みたいなヤバイ子は出てくるしね。』

 

 

『あなたもそのやばいのでしょうが……。それで、スペシャルウィークさんはあなたから見てどうです?』

 

 

『あら、そこは自分の担当の子を聞くのが普通じゃない?』

 

 

『自分の教え子のことはちゃんと把握していますよ、もうあんなことは引き起こさせませんし……。ま、あなたを呼んだのも一種の自信付けですしね。』

 

 

『そんなに軽く私を呼べるのはあなただけでしょ。まったく、こんなことならトレーナー資格を取るのは別の学校にすればよかったわ。そうすればあなたとの接点なんてできなかったし……。 それで、彼女についてよね。たぶん行けるとこまで行けるんじゃないの? 彼女が世界に出てくれれば結果は変わってくるかもしれないけど。』

 

 

『変わってくる、じゃなくて変えてやるでしょう。まだあなた現役ですよね。』

 

 

『ありゃ、ばれたか。』

 




南坂トレーナー
 トレーナー免許取得の過程でアメリカに留学、その時たまたま彼女と知り合った。自信を付けるためなんて言ってるが冗談であり、普通に指導してもらう予定。


赤いお姉さん
 アメリカの赤いお姉さん、"セ"から名前が始まる赤い英雄。南坂トレーナーとは腐れ縁。ちなみにまだ現役。最近は出走せず、世界中をめぐりながら強いウマ娘を見つけ出し、育成したりしている。選手としての目標は無敗であり続けること、トレーナーとしての目標は自分に勝てる子を育成すること。
 え?ウララ? ごめんわからないわ。

(アメリカ版アルティメットスぺちゃん。史実よりも強化されており、現在無敗記録を更新中。勝ちすぎて闇落ちしそうになったが、自分より強い子を育てればいいと考え直してトレーナーもしている。最近イギリスで"フ"から始まるウマ娘と出会ったらしい。)














あ! そうだ! トレーナーさんに言われてた三女神様へのお祈り忘れてた!
えんせい? に行く前にちゃんとしておかないとね!


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PART43

誤字報告及び、いつものはちみつ。
いつも本当にありがとうございます。


同志諸君! こんなもの読んでる場合じゃないぞ!
はやくゴルシウィークを堪能しに行くのだ!


『トウカイテイオー! 見事な先行力! 年初めの勝利を大差勝ちで収めました!』

 

 

 

ふぃ~。ちゃんと勝ててよかった。

うん、やっぱりボク強い方だよね? ちゃんと強いよね?

 

スぺちゃんもそうだけどスピカは強いコばっかだしちょっと自信なくなっちゃうよね~。

 

 

 

勝てたのは良かった。でも、出走していたコには悪いけど勝てて当然だったレースでもある。

 

 

ボクたちの世代は色々とおかしい。

世代に一人だけだったら絶対的エースであっただろう人たちがいっぱいいる。

 

 

スペシャルウィーク、現在の世代最強。その実力は圧倒的だけど性格はいいこ、無邪気と言ってもいい。ボクたちに火をつけたあの発言も彼女にとっては本当に何でもないのだろう。ただ走ることを楽しんでいるだけだからたちが悪い。ま、そこがいいとこでもあるんだけどね。

 

 

エルコンドルパサー、世間では二番手の怪鳥さん。先行、差しもできてマイルから長距離までできるコ。自分の得意な位置を取るのがうまく、先行力に長けているといえる。ダートも出来るみたいだけど、出走してるレースが今のところ芝だけなので何とも言えない。

 

 

グラスワンダー、お淑やかだけど何か怖いものがあるコ。ダートができなくて先行よりも差しの方が得意なエルコンドルパサー、そう言える。けどその末脚は全然安心できない。スぺちゃんには及ばないけどもその爆発力、前に行こうとする執念は同じターフに居なくてもわかった。

 

 

キングヘイロー、ボクとマックイーンを負かした相手。夏の合宿で会ったおかげでこの世代はスぺちゃんだけじゃない、もっと他も知る必要がある。それを教えてくれた相手。彼女も差しで、末脚に気をつけないといけない。根拠はないけどそこまで長い距離は得意じゃないように感じる。ついているあのトレーナーさんも怖い。

 

 

セイウンスカイ、一番厄介かもしれないコ。逃げが得意で、自分でレースを組み立て周りを引っ掻き回すことができるコ。出走したレースを見たけど、元の能力が高い上に作戦もあったらどうなるのか、その結果を見せつけられた気がする。

 

 

メジロマックイーン、同じスピカでボクのライバル。ステイヤーだけど中距離でも強い。先行の方が得意みたいだけど逃げもできる。出走するレースは長距離に絞っていくみたいで重賞を走るのは秋からになるみたい。自分の目標が決まっていて時間もある。

 

 

他にもミホノブルボン、ライスシャワー、ナイスネイチャ。ボクが把握できてない強いコもいるかもしれない。

 

 

 

 

 

そんなエースになりうる人たちが出走していないレースで負けてたら……ね。

 

 

それに、今回のレースで何かつかめた気がする。

ほんとは一つしか使えないものを二つ使うような感じ。

 

体にすごい負担がかかりそうだから多用はできないけどこれを極めればいけるかもしれない。

 

 

とりあえず、直近の目標は見えた。

なら、後はどこまで仕上げられるか、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ナイスネイチャ視点】

 

 

私には才能がなかった。

 

この一年でどれだけそれを思い知らされたか。

 

 

 

新星と呼ばれるような人たちのメイクデビュー。

 

特にスペシャルウィークのメイクデビュー戦。

 

 

 

私はあんなことできない。どんなに頑張ってもそこに行きつくことができない。

 

単なる有象無象の一人。

 

 

 

ほ~んと、とんでもない時代に生まれちゃったよね。そう言って口で諦めるのは簡単だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけない。

 

どうしようもなく、くやしい。

 

有象無象の一人、そう見られるのがたまらなく悔しかった。

 

世間は私を見ない。次の時代を作る子たち、そこに私の名はない。

 

 

 

私はナイスネイチャ、それを証明してやりたい。

私のことを見向きもしなかった奴らを見返してやりたい。

この名を忘れられないようにしてやりたい。

 

 

いつの間にか、その思いに取りつかれた私はすぐに行動に移していた。

 

 

 

無理をした。トレーナーから提示されたメニューの倍をこなそうとした。

 

真似をした。食事を変え、無理やり多く食べるようにした。

 

観察をした。戦うことになりそうな人を徹底的に調べた。

 

研究をした。過去のレース、自身の糧になりそうなものは何でも見た。

 

 

まわりを見ていなかった。止めてくれる人もいたが私の目には入らなかった。

 

とにかく、前を見続けようと、進み続けようとした。

 

 

 

 

 

結果、私は壊れかけた。

 

 

 

その時はターボもいなくて、私とトレーナーだけの部室。

 

いつも通りのトレーニングを始めようとして、急に体から力が抜けた。

強く体を床に打ち付けてしまったようだが何も感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと病室だった。

 

横には心配そうにこちらを見つめるトレーナー、見たことのない機械に、多分初めてされただろう点滴。

 

 

そうか、私は倒れたのか。倒れてから自身が無理をしていたことに気づいた。

 

 

 

 

泣きながらトレーナーに謝られた。

 

 

私の不調に気がつけなかったこと、私の気持ちを考えられなかったこと、自身がするべきことを私に任せるような形になってしまっていたことを気がつけなかったこと、他にもたくさん、たくさん。

 

 

全部私のせいなのに、ずっと謝られた。

ただ、申し訳なかった。

 

 

 

 

私が倒れたのは、過労と強いストレスによるものだったらしい。

そこまで長く入院することはなかったけど、いろんな人がお見舞いに来てくれた。

 

ターボもそうだった。

 

私のことを心配して止めてくれようとした相手、その時は名前すら気にしてなくて、前に進むのに邪魔だと思ってしまい、強く当たってしまった私なんかを心配して、一番早くお見舞いに来てくれた。

 

「ネイチャは強くなりたかっただけだろ、ならすごくいいことだ!」そう言って笑って許してくれた。その優しさに何も言えなくなって顔を伏せてしまったら、泣いてると思われて「ネイチャ大丈夫か!? どっか痛いのか!?」と心配されてしまった。やっぱりターボは凄いや。

 

彼女はそれまでは違うチームにお世話になろうとしてたみたいだけど、私のことが心配になってカノープスに入るって言ってくれた。

 

 

 

それから、退院してから私の生活は全部変わった。私とトレーナーだけだったチームにターボが増え、トレーニングもまるっきり変わった。他の人のレースや、過去のレースについても私が調べようとした時にはトレーナーが用意してくれていた。私がつらくなった時はターボが一緒にいてくれた。

 

 

 

全部、全部いい方に変わったんだ。

 

 

だからね、

 

 

面と向かっては、恥ずかしくて絶対言えないけど、二人にすごく感謝してるんだよ。

 

だから、私は二人のために走るんだ。

 

 

私のためにも、二人のためにも、絶対に負けられないんだ。




思いを背負った人はとっても強うと思うんだ。

ネイチャは新馬戦には勝てたけど、周りがあれ過ぎて見向きもされなかった。見返してやるぞ!って無理しすぎちゃって体壊しちゃったけど、ちゃんと間違いに気付けて、新しい仲間と共に頑張ろう! って感じですかね。

私が表現しきれてなかったら申し訳ございません。


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PART44

誤字報告いつもお世話になっております。

アプリ運営が頑張ってんだ、おいらも頑張らないと…


思い出すのはあのレース。

 

 

私は当初の作戦通り、作戦:逃げを遂行。

スタートは成功。

 

正確にはスタートのみ成功。

私のペース配分は途中までは正確だった。

 

一番人気のスペシャルウィーク、警戒すべき相手なのはわかっていたが、大逃げで有名になっていたツインターボと同じように大逃げを選択することは私の予測パターンの中にはなかった。

 

最初はツインターボの大逃げにつられたと考え、当初のペースを維持した。

 

それは間違い、いえ、当時の私の能力では結果を変えることは不可能。

なるべくしてなったと考えられる。

 

中盤から彼女が驚異的な加速を行い、これ以上逃げられては勝利することは不可能と考え、無理やりペースを上げた。同じことを考えたのは私だけではなかったようで、レースの動画を確認したところ、全員が掛かっているという状態になっていた。

 

大逃げを選択していたツインターボが状態:逆噴射になったため抜かすことは難しくなかったが、その先にたどり着くことはできなかった。結果は2着。

 

 

 

3勝2敗、敗北したホープフルSも2着。

 

世間は良い成績だという。私も一度も負けずにいられるほど甘くないのは解っている。

 

 

 

問題は私の達成目標:クラシック三冠の達成への道筋が全く見えないことだ。

どれだけの思考を経てもあそこにたどり着ける過程が見えない。

 

 

学園に入学して一年、私の夢を応援してくれるマスターにも出会い、スタミナを鍛え、マイルを超えて何とか中距離までペースを崩さずに走れるようになった。

 

自分がどこまでやれるのか、それを確認するために、また世代で頂点を獲ろうとしている彼女の実力を見るために私は出走した。マスターにも勧められていたためそこに疑問はなかった。

 

 

 

この状態をなんと表せばいいのだろうか。

何をしていてもあの時追いつけなかった背中が脳裏に浮かぶ。

 

だんだんと遠くなっていく背中、どうしても追いつけない自分。

 

自身の心に何かが溜まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

普段のトレーニングにも支障をきたしていた時、マスターが私に言った。

 

 

 

「ブルボン、お前に客が来ている。気晴らしにもなるだろう、会ってくるといい。」

 

 

「……わかりました、マスター。」

 

 

 

マスターに伝えられた場所に向かうと、そこにいたのは彼女だった。

 

 

 

「バックシーン! おや、ミホノブルボンさんですね! お待ちしておりました!」

 

 

「お久しぶりです、サクラバクシンオー先輩。」

 

 

 

私に短距離の道を勧めていてくれたサクラバクシンオー先輩だ。

 

 

 

「とても暗い顔をしてますね! でも大丈夫です! トレーナーさんから頂いたアメを差し上げましょう! これを食べれば気分上々、桜満開です! トレーナーさんがそう言ってました!」

 

 

「……頂きます。」

 

 

 

先輩から頂いたアメを口に入れる。ほんのりとした甘みと桜の風味が口に広がる、おいしい。

 

 

 

「お! とてもいい顔です! そうだ! 忘れるところでした。この度、私サクラバクシンオーはグローバル・スプリント・チャレンジに挑戦いたします! それで世界中を走りながら巡るのですが、ミホノブルボンさん、私と一緒に行きませんか!」

 

 

「世界……ですか?」

 

 

「はい、そのとおりです! あなたのトレーナーさんに伺いましたが、何でも最近スランプのご様子! でしたら私と一緒に世界中を股にかける武者修行に行こうと思ったわけです! 私が走るのは短距離とあなたの求めるものとは違いますが、きっと何かあなたのためになるとお誘いしたわけです!」

 

 

「……少し、考えさせていただいてもいいですか。」

 

 

「もちろんです! こちら、私が乗る飛行機のチケットです! 最初はオーストラリア! お返事はいつでもお待ちしておりますので! バクシンバクシン!」

 

 

 

そう言って、私に飛行機のチケットを渡して去って行ってしまった。まだ行くとは言っていないのだが。

私が呆気にとられていると

 

 

 

「ブルボン、どうだ? 行ってみないか?」

 

 

 

いつの間にかにマスターが後ろにいた。

 

 

 

「確かにお前の夢を挑む前にやめてしまうことになってしまうかもしれない。だが、国内でクラシックに挑むよりも得るものは大きいはずだ。世界はお前が思ってるよりも広く、強い。幸いバクシンオーのトレーナーは俺の恩師だ、きっと俺よりもうまくお前を導いてくれる。」

 

 

「……しかし、マスター。」

 

 

「あいつが頭から離れないんだろ。言ってしまうがこのまま燻っていたら絶対に勝てない相手だ。勝つには新しい何かがいる。世界をめぐってそれを見つけてこい。」

 

 

「………。」

 

 

「別についていくのを途中でやめてもいい。何か見つけたら帰ってきてもいい。そういう気楽なもんだ。」

 

 

「……解りました、行ってみることにします。」

 

 

 

マスターが私にこれだけ言葉をかけてくれることは少ない。いつも態度で示す方だった。そんな方がこれだけ言ってくれている。ならば行ってもいいかもしれない。そう思った。

 

 

 

「そうか、頑張って来い。手続き関連は俺がしておく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おやっさん、すみません。俺が不甲斐ないばっかりに。』

 

 

『気にすんなよ、黒沼。仕方ないとこもあるんだから。ま、バクシンオーのついでにブルボンも見てやるよ。それで海外レースに出走はさせてもいいんだな。』

 

 

『はい、お願いします。』

 

 

『うし、なら化け物に対抗できる精密機械、育ててみっか。お前も落ち着いたらこっち来いよ、ブルボンのトレーナーはお前なんだからさ。』

 

 

『……すいません、ありがとうございます。』




サクラバクシンオー
 現在国内最強スプリンター。アプリならURAファイナルズ突破後距離適性を伸ばしていきそうだがこちらでは世界にバクシンします。高等部で去年シニア一年目終了、今年からグローバルSC挑戦という形ですね。


坂路の申し子は他の同世代の子たちの中で一番早く世界に出ることになりました。
彼女はいったいどんなサイボーグになって帰ってくるか……


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PART45

誤字報告いつもありがとうございます。

実はゴルシちゃんウィークだから連日連続投稿しようとしたけどストックが心もとなすぎるからやめる、ごめんね。


(お、スぺちゃんどうしましたか?)

 

 

「友達に一緒に遊園地に行かないかと誘われちゃって……、明日、行ってもいい?」

 

 

(遊園地ですか~。ま、最近頑張ってますし、大丈夫だと思いますよ。ただ明日練習しない分、他の日の練習内容が増えちゃうけど頑張れる?)

 

 

「うん、頑張る!」

 

 

(なら、思いっきり遊んでおいで。それとちゃんとお休みの報告をトレーナーさんにしておくんだぜ!)

 

 

「解ってる~。じゃあ準備してくるね~。」

 

 

(あ、それとミーはお留守番しておくからみんなと楽しんでおいでな~。)

 

 

「は~い! わかった~。」

 

 

(これは楽しみすぎて聞いてないですね、こりゃ。)

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「わぁ~! ここが遊園地! 初めて来た~!」

 

 

「え、スぺさん、あなた初めてなんですか!」

 

 

「うん! 近くにこんなすごいところなかったし、あんまりお金もなかったから……」

 

 

「オゥ……、スぺちゃんも苦労してるんですネ。」

 

 

「ま、まぁ、その分今日は楽しみましょう、ね。」

 

 

「そうですわね……、ってセイさんどこ行きました! いつの間に消えたんですか!」

 

 

 

私たち、スぺちゃん、エル、キングさん、セイさんの5人で遊園地に来ています。

おハナさんから勧められてみんなに遊びに来たのですが、早速セイさんが消えてしまって……。

 

 

 

「あ、セイちゃんからメッセージ来てる! 先に優先チケット買いに行ってるって。」

 

 

あら、先に行ってくださったのですね。とりあえず迷子じゃなくてよかったです。

 

 

「では、セイさんだけに行かせても悪いですし、私たちも向かいましょうか。」

 

 

「そうですネ。あ、グラス、あそこにあるパンフ取ってきますネー。」

 

 

「すいません、お願いします。あ、スぺさん! そんなにフラフラしてたらはぐれますわよ!」

 

 

 

なにか面白い物でもあったのかフラフラと中に進んでしまうスぺちゃんを追いかけてキングさんが走っていく。結構奥まで進んでいったみたいなので私はここで待っておいた方がいいだろう。

 

 

 

「おっまたせしましタ~! アレ、みんなは?」

 

 

「スぺちゃんは何かに惹かれてフラフラと、キングさんはそれを追っていきました。」

 

 

「アリャ、でもスぺちゃんらしいですネ~。でもキングちゃんなら任せても大丈夫でしょうし、セイちゃんと合流してしまいまショウ!」

 

 

 

そんなことで笑い合いながらセイさんが先に向かったであろう券売所に向かう。

 

 

 

「……エル、あの時のおハナさんの顔、見た?」

 

 

「あ~、あれですね! 『んん! 最近お前たちも疲れがたまってきたのではないか? 貰い物なのだが近場の遊園地の割引チケットがあってな、どうだ、いるか?』ですもんネ。」

 

 

「ふ、ふふ! エル、すごいにてる。」

 

 

「そんなに笑われるとなんか自信出ますネ! にしてもすごい赤面しながら言ってましたよネ~、普通に渡してくれていいのに。」

 

 

「そ、そうですね。」

 

 

「さすがに笑いすぎですヨー、グラス~!」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

「お~い、ゴルシ~。スぺが来てないんだけどなんか知ってるか~。」

 

 

あ、わりぃ。今日休みってこと伝えんの忘れてた。わざわざトレーナーのところに言いに行こうとしてたから代わりに伝えておく、って引き受けたんだった。

 

そのあとにマックイーンがまた変装してスイーツを買いに行こうとしてるのを発見していじり倒してたら忘れちまってたな。

 

 

「そういうのはもっと早く教えてくれ……。はぁ、それでマックイーンはまた食べてたのか?」

 

 

食べてましたね、がっつりと。

おいしそうに暴食するスぺの影響で完全にスピカのエンゲル係数が爆上がりですねぇ!

 

 

「スぺだけでもやばいが、スぺに影響されてみんな食事量増えてるみたいだもんな。それ自体はいいんだがなぁ……。」

 

 

ちと、カロリー取りすぎですな。

 

 

「とりあえず、追加で走ってもらうか……、あとスぺも。」

 

 

スぺもまた太ってきてるからな、実は裏で結構[太り気味]判定くらってるんだが、あんまりやりすぎんのもだめだし、カットしてますもんねぇ!

 

とりあえず、スぺ。明日ダイエット確定みたいだぞ。

 

 

 ーーーーーーーー

 

「あれ、スぺちゃんそんな青い顔してどうしたの?」

 

 

「なんか寒気がして……。」

 

 

「え! 大丈夫なの?」

 

 

「うん、大丈夫。心配しなくていいよセイちゃん。たぶん気のせいだし……。」

 




正直うまくかける気がしなかったので中途半端でごめんなさい。
史実黄金世代がわちゃわちゃしてるのをご想像していただければ…


ウララ
 絶賛遠征中
ターボ
 セクさん来てるから無理!



明日はちょっと長めよ。


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PART46

オッスオッス、オラ投稿者! 今日もバクシンしていきましょうねぇ!

現在スぺちゃんは重点スピード強化月間(皐月賞まで)なのでスピードトレーニング中ですねぇ! スピカのチーム練習としてテイオーと併走しております。

 

なんか最近スぺちゃんがテイオーと仲がいいのか、よくあっちから併走を持ちかけられるんですよね、なんででしょ

? スぺちゃんなんかしました? ……してないみたいですね。

 

まぁなんか変な乱数引いてるか、イベント引き起こしちゃったかのどちらかでしょうが、ま大丈夫でしょ。

 

 

>「お~い、スぺ~! ちょっとこっち来い~!」

 

 

ありゃ、珍しくゴルシちゃんが呼んでますね、ちょっと行ってみましょう。テイオーちゃん、申し訳ありませんが席外しますぜ、先に行っててくだせぇ!

 

 

>「りょうか~い、先走ってるよ~!」

 

 

んじゃ、お言葉に甘えまして、移動! んでゴルシちゃん何の御用だ!

 

 

>「お~、最近また速くなってきてんじゃねえか? うんうん、このゴルシ様を満足させるとは感心感心! んでよ、悪いんだけど今下に着てるそのスーツとおもり、取ってきてくんねぇか?」

 

 

ん? なんかのイベントですかね。確かにスぺちゃんはいつも通りにトレーニングスーツとおもり(最近増量済み)を付けてますね。模擬レースでもするんでしょうか? ま、とにかく言われたとおりにしましょうか。

 

スぺちゃん、着替えに行きましょう。

 

 

ん~む、にしても順調に成長してるからこそゴルシちゃんが何をしでかすのか怖いところではありますよ。前回のゴルシちゃんイベントも急に拉致されましたし、何が起こるのやら。まぁ事前に何かするって言ってくれてるようなもんですから、まだ心の準備ができますね。

 

お、スぺちゃんもう着替え終わりましたか? 考えていたらすでに部室に移動して着替えててくれたみたいですね。では元のところに戻りましょうか。

 

 

>コンコンと部室のドアを叩く音がする。スピカメンバーやトレーナーさんはノックをしないので他の誰かだろう。

 

 

ありゃ、来客ですかね。とりあえず開けたげましょう。どちら様ですかい!

 

 

>『ここがスピカの部室ね! あら、早速会えたわねスペシャルウィーク。初めまして、私のことはセクって呼んでね。よろしくね!』

 

 

 

うん? 深くキャップを被った赤髪の女性?

ちょっと悪い予感が…… と、とりあえず返事しましょう。

 

 

 

>スペシャルウィークは慌てている。

>急な英語で驚いているようだ。

 

 

「あい きゃんのっと すぴーく いんぐりっしゅ!」

 

 

 

……スぺちゃん!?

 

 

 

>「アハハ、ゴメンナサイネ。ワタシ、"セク"ッテイイマス。ヨロシクネ。」

 

 

 

"セク"って言いましたか、この人……。いやなんで日本にいるんですか貴方! あなたアメリカのダートでしょ、主戦場! 早くお帰りになりやがりくださいませ!?

 

 

 

>「ネ、スペシャルウィークサン。ワタシトショウブシマセンカ?」

 

 

 

へ、勝負? 勝負ですか……。

どうしましょう、たぶんイベントなんでしょうが受けるべきか受けないべきか……。

 

 

 

「ショウブですか? レースですね、ぜひ!」

 

 

 

ちょ! スぺちゃん勝手に受けないで!

 

 

 

>「ジャア、サッソクハシリマショウ。アナタノレンシュウシテルトコ二イキマショウ。」

 

 

 

あぁ……、わたくしの手が及ばないレベルでイベントががが!? ……ま、まぁお相手がですね! 例の真っ赤な方じゃない可能性もありますしね! まだ慌てるような時間じゃないですよね!

 

 

 

「ここでいつも練習しています! セクさん、走るのはここで大丈夫ですか?」

 

 

>「ダイジョウブデスヨ、デハサッソクハシリマショウ!」

 

 

 

あ、あの~。走る前にそのお帽子、走るのに邪魔じゃないですかね? 取っていただいてもよろしいでしょうか?

 

 

 

>『あら、そうね。ならセクレタリアトとして相手さしてもらうわ。』「ヨロシクネ、スペシャルウィーク。」

 

 

 

バサッと広がる特徴的な赤い髪。そこをいたのはセクレタリアトでした。

 

 

 

 

 

ナンデ! セクレタリアト、ナンデ! なんでこんなところに赤い英雄がいるんですか!!

 

ウゥ~~~ン、めまいと吐き気がしてきて、目の前が真っ暗に……。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

あ~、やっぱ化け物来てましたやん。早速スぺに目をつけてやらぁ!

 

 

「ちょ! ゴルシさん! あ、あれって、セクレタリアトですか!」

 

 

お、マックイーンか。そうだぞ、あれが今のてっぺんですたい。スぺになんか用があるみたいですねぇ!

 

 

「うわ~、初めて見ましたわ! 後でサインとか頂けるのでしょうか……?」

 

 

たぶん言ったら書いてくれると思うぞ。あ、でも色紙取りに行くのは後にした方がいいぞ。あいつらレースするみたいだし。

 

 

「え! スぺさんとレースですか! ちょっとうらやましいですわ。」

 

 

ま、世代頂点のご褒美みたいなもんだろうな。マックイーンも一緒に走ってもらえるように頑張らないと。

それとみんな呼んで来ようぜ、絶対得るもんあっから。

 

 

「そ、そうですね! 皆さん呼んできます!」

 

 

頼むぞ~。

 

さ、スぺ。相手は世界最強だ。盗めるもん全部盗んでいけよ。

お前の世界一の夢を達成したお手本が横にいるんだもんな。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

さ、始まってしまいました。赤い英雄セクレタリアトとの模擬レース。一対一でのタイマン勝負です。

始まってしまったからにはやるしかねぇ! 公式戦じゃないからもし負けたとしても本動画の目標、称号入手に問題は起こらぬ! 日本の意地を見せてやるぞ、スぺちゃん!

 

 

「はい! 頑張ります!」

 

 

相手は世界最強でおそらく作戦は逃げで来るはず。さすがにあの31バ身差の爆逃げをされたら終わる。得意の差しで行っても差し切れない可能性の方が高い! ゆえに取るのは先行策。今日ばっかりはスキルの出し惜しみなんてしてらんねぇ! 全部使って食らいつくぞ!

 

 

 

>「お、準備できたみたいだな。んじゃルール説明な。ここから右回りで2000m。ゴール地点はあのヒシアマパネル付近だ。OK?」

 

 

>『大丈夫だ。』

 

 

「解りました。いつでも行けます。」

 

 

>「んじゃ、合図はゴルシちゃんが。ちょうどピストルあるし、これでやるぞ。じゃ、ヨーイ……。」

 

 

 

 

 

【セクレタリアト視点】

 

 

芝2000m、本業はダートだけど芝が苦手なんてことはない。むしろ芝も得意だ。

日本の新星の力、見せてもらいましょう。

 

 

スタートの準備をする。すると隣にいる彼女の雰囲気が変わった。

おそらくプレッシャーをかけているのだろう。

 

 

……まぁ、並みのウマ娘なら怯むぐらいはするだろう。

感覚は解る。そら、プレッシャー返しだ。

 

 

「うぐッ!」

 

 

彼女から放たれていたものを自分のもので塗りつぶす。なめるんじゃねぇぞ、若造。

 

 

 

 

 

 

破裂音。

 

 

 

 

 

 

 

スタートだ。私に呑まれて遅れてスタートした彼女は先行策で来るみたいだ。

ま、今日は観察に来てるんだし、本気だけど全力でやるのは勘弁してあげましょうかね。

ちょうど彼女の前につく感じで、直線までは見させてもらいましょうか。

 

 

ふ~ん、まぁ近くで見た感じ、そこまでかな?

いや、まだジュニアから上がったばかりのクラシック級の子だったら強い方か。

 

 

 

さて、そろそろ中盤ですかね。まぁこんなもんなら来る意味がなかったかも……

 

 

お? 中盤から上げてきたな。思ったよりも加速している。

早とちりだったみたい、この子は後半戦に強い感じだな。ま、抜かさせる気はないけどね。

 

 

 

さ、最後の直線。まぁ見るものはあったし、特別に全力。見せてあげましょうか。

どんだけ食らいつけますかね。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

セクレタリアト、世界最強のウマ娘。

教えてもらうまでは知らなかったけど、私の目標に立ってる人。

 

 

とっても強いだろうけど、負ける気なんてない。

 

 

 

自分のできるすべてのことをする。スタート前には力を込めて周りに……

 

 

「うぐッ!」

 

 

何! このプレッシャー! 怖い、怖い! どうしよう! 助けて!

 

 

 

 

 

 

 

破裂音

 

 

 

 

 

気がつけばすでにセクさんは前にいた。

マズい! 早く私も!

 

明らかに出遅れた! どうする、どうする……。

 

とりあえずはうん、先行策で行くんだよね。頑張ってセクさんの後ろに付くんだ!

 

 

 

よし、何とかついていけてる。

セクさんは何度かこちらを確認してるけど、私は気にしないで走るんだ。

よし! 残り半分! ここでゴルシさんから教えてもらった技でスパートを掛けて、最近練習してたスタートの時と同じようにプレッシャーをかけて走る!

 

 

これで少しでも差を縮め……られない。

私が加速したら、セクさんも加速してる!

 

 

どうしよう、追いつけないかもしれない。

ほんとはもうちょっと脚を溜めるんだけど、セクさんについていくためにあんまり残ってない!

 

 

でも、諦めない! 直線での加速は得意なんだ!

 

直線、ちょくせんで……

 

 

 

直線に入った途端、急に離れるあの背中。

 

私が急激に遅くなった気がする。でも私の足はさっきと同じ。いや、さっきより速くなってるはず。

 

 

 

 

なのになんで遠ざかっていくの!

 

 

このままじゃだめだ!

 

 

 

 

 

星のように走る自分を幻視する。

 

 

背中が小さくなる。

 

 

 

 

空を駆ける自分を幻視する。

 

 

背中がもっと遠ざかる。

 

 

 

 

体中に残ったすべての力を足に込める。

 

 

赤い髪ははるか向こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、勝てないや。

 

ごめんなさい、スズカ先輩。私、負けちゃいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(汎用イベント『初めての敗北』が発生しました。)

(一時的に成長率が減少します。)

(また、敗北を克服した時に効果が反転し、上昇します。)

 

(セクレタリアトとの模擬レースに敗北したため、分岐シナリオが確定しました。)

(特殊シナリオ『混沌した世界』に分岐します。)

 

(特殊シナリオに分岐したため、国内と海外の競技レベル差が増加。)

(海外ウマ娘のレベルが上昇しました。)

 

(世界中に眠る英雄たちの育成開始時期が変更されました。)

(スペシャルウィークと対戦可能な時期に変更されます。)

 

 

(セクレタリアトの特殊イベント「英雄を育てる英雄」が発生しました。)

(セクレタリアトと交流したキャラクターの成長率が増加します。)

 

 

 

 

 

う~ん、さすがにセクレタリアトとの対戦は早かったみたいですねぇ。致し方あるまいか。

ほら、スぺちゃん。負けちゃって、悔しくて辛いのは解るけど、ちゃんと前を向きましょう。

 

勝った人を称えて、次の戦いに向けて闘志を燃え上がらせましょう。

ほら、涙を拭って、精一杯の笑顔で言ってやりましょう!

 

 

 

「……セクさん! 今日は負けましたけど次は絶対勝ちますからね!」

 

 

>『OK、世界で待ってるわよ。いつでもおいで。』

 

 

 

うん、ちゃんと言えてえらいですね。さ、ゴルシちゃんが慰めに来てくれてますし、お胸を借りて思いっきり泣いていいよ。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

スペシャルウィークが背の高い方の葦毛の子の胸に顔を埋めて、わんわん大泣きしている。

 

 

……ちょっとやりすぎたか? 悪いことしたみたいでなんだかなぁ。

 

ま、彼女の実力も見れましたし、よしとしましょうかね。

 

 

 

走り終わって後ろを振り返った時、思ったより近くに彼女がいたことに驚いた。

やっぱりこの子は見込みがある、これからが本当に楽しみだ。

 

 

 

再戦希望で次は絶対勝つ、ね。泣いてはいたけど闘争心は消えちゃいない。

たぶん、次に戦う時にはとんでもない成長を見せてくれる気がする。

 

 

今は、負けた悔しさに自分が驚いてしまって心が揺れてしまってるって感じかな。

気持ちの整理を付けるためには私は不必要だろうし、さっさと退散しますか。

 

 

 

あら、スピカのトレーナーさんも見てたのね、一応挨拶と詫びだけは入れておきましょうか。

 

 

……日本に来た意味は十分あったわね。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

ん、スぺ。もう大丈夫なのか?

 

この大聖母ゴルシ様の胸、もっと使ってもいいんだぞ。

 

 

 

そっか、大丈夫みたいだな。

 

ほら、これ。セクレタリアトからの伝言な。

 

 

世界で待ってるってことと、もしよかったら夏休み期間中にアメリカに来ないかだってさ。

あっちで一緒に練習しようぜ、ってことらしいぜ。

 

うん、そだな。今年のスピカの夏合宿はアメリカで、だ。

スズカもいるだろうし、あっちでみんなで練習しようぜ!

 

 

わざわざ、あっちから誘ってきてるんだしいっちょ行ってみましょうか!

 

 

……ん? 旅費? 多分セクさんが出してくれるんじゃね?

出してくれなかったらうちのトレーナーが頑張るだろ。

 




心配させてごめんなさいね。ちゃんと続けますよ。
ただ、自身のモチベーションがそこまで高くない上に、進行を書き直してる途中なので、前みたいに毎日投稿とかはできません。

ご容赦頂ければ幸いです。



はちみつ乞食
真っ赤になったゲージがもう一度みたいです。
え、傲慢? そうだね…


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PART47

感想、評価、お気に入り登録いつもありがとうございます。
誤字報告も感謝です。


「……うん、私だって負けちゃったことはたくさんあるわ。でも大事なのはそれをどう活かすか、よ。スぺちゃんだってわかってると思うけど、その悔しさを自身の糧にするの。」

 

「そうね……うん。切り替えられた? ならよかったわ。……うん、うん。私も体に気を付けるからスぺちゃんも食べすぎたりしないようにするのよ。うん、なら切るわね。スぺちゃんも頑張って。」

 

 

 

 

「……後輩のスペシャルウィークからか?」

 

 

「あ、シービーさん! ごめんなさい、うるさかったですか?」

 

 

「いや、大丈夫さ。せっかく同室になったんだ。そういうことは気にしなくてもいいぞ。……それで聞こえてしまったから聞くが、彼女は誰に負けたんだ? 今の日本でGⅠはなかったと思うし、皐月賞のトライアルのどれかか?」

?」

 

 

「いえ、何でも日本に来ていたセクレタリアトさんに負けたそうです……。」

 

 

「あ~、セクさんかぁ……。あの人ね。セクさん決闘者(デュエリスト)みたいなとこあるから、見込みある子がいたら勝負挑んじゃうんだよね。私もこっち来た時挑まれたし。」

 

 

「そ、そうなんですか。(決闘者(デュエリスト)ってなんだろう?)」

 

 

「まぁ強い相手と戦いたい、ってのは私たちウマ娘の本能みたいなとこあるからわかるんだけどね。でも、人を見る目は確かだし、負けて折れちゃいそうな子には絶対勝負挑まないから。彼女も立ち直ってたんでしょ?」

 

 

「はい、スペちゃんも『明日からもっと頑張る』と言ってました。」

 

 

「だよね。……んじゃ先輩のスズカは簡単に抜かされないように早く元に戻さないとね。さ、早速私たちも走りに行こうか!」

 

 

(リハビリも思ったより早く終わり、シービーさんのトレーナーさんからの指示で全力で走ることはせずに体を丈夫にするための基礎トレをしていた。昨日でそれも終わり、今日から本格的に私の走りを取り戻していく。スぺちゃんも日本で頑張ってるみたいだし、私も頑張らないと。)

 

 

「……それで、聞いていいのかわからないんですが、そのTシャツ……」

 

 

 

比較的厚めの白地Tシャツに達筆で大きく書かれた文字

 

『シービーの走りにしーびーれーたー』

 

 

 

「ん、これか? いいだろ。ルドルフが送ってくれたんだ。まったく、私の走りに痺れたのなら電話でもしてくれたらいいのに、わざわざTシャツにして送ってくるなんてな。」

 

 

「いや、それってダジャレなんじゃ……?」

 

 

「ダジャレ? 何がだ? さ、スズカも早く準備して走りに行こうぜ。」

 

 

(あ、気が付いてないのね……。)

 

 

 

その後、アメリカの友人たちに『イケてるTシャツだ!』と褒められて、ルドルフからもらったんだ!と自慢しているシービー先輩を見てなおさら指摘できなくなったスズカだった。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「え~! セクさん、スぺとレースしたのか! いいないいな~! ターボもレースしたい~!」

 

 

『いや~、ターボはまだ早いって。私みたいに大逃げしようとするならもっとスタミナ付けなきゃ。』

 

 

「う~! すっごくレースしたいけど、ターボ偉いから我慢するぞ! セクさん! ターボ走ってくるから見てて! 目指せ一着だ~!」

 

 

『はいよ、姿勢に気を付けながらね。ズレたら指摘するよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、ターボとセクさん仲良しだねぇ。ネイチャさん、嫉妬しそうだわ〜。」

 

 

「あはは、それは大変ですね。それで、ネイチャさん、体の調子はどうですか?」

 

 

「も~、トレーナー、心配しすぎだよ。調子もいいし、仕上がりは万全ですよ。……さ、私もターボに追いつかれないように頑張りましょうかね。セクさ~ん、私も見てもらっていい~?」

 

 

『OK! おいで、ネイチャ!』

 

 

 

「……彼女も無事に馴染めてるようですし、二人とも順調に強くなってますね。来てもらって正解でした。さて、彼女が見てくれているなら、私は別のことをしましょう。二人の出走レースの調整に、他選手の情報収集。セクさんがスピカもアメリカ合宿に呼んだみたいですから、スピカの方に連絡と、アメリカのトレセンに2チーム分の申請を出しとかないといけないですね。」

 

 

「さ、私も頑張りますか。」

 

 



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PART48

次の日

 

 

トレセン学園、食堂。朝のこの時間帯は、生徒たちの憩いの場であるはずのこの場所に食べ物でできた山が乱立し、食堂職員の悲鳴が響き渡る。もともとウマ娘自体、普通の人より多く食べる上に、朝練帰りの子も多いので朝はその悲鳴と山の数が多い。

 

 

だが、今日は一段とそれが多い気がする。

 

というか目の前に反対側の人物が見えないほどの料理を盛った、山を吸引しているのではないかという速度で平らげている奴がいる。ほら、運ばれてきた時には見えなかった奴の顔が既に見えた上に皿から料理が消えようとしている。

 

 

我が学園が誇る(誇らないでほしい)フードモンスターが一人、スペシャルウィークだ。ちなみにまだオグリキャップという上がいることを忘れてはならない。

 

 

 

 

 

もぐもぐもぐもぐ……ごくん。

 

 

「すいませーん、おかわりいただいてもいいですか?」

 

 

「は~い、お待ちどおさま。こっちの食器は持って行ってもいいかい?」

 

 

「はい、お願いします!」

 

 

 

 

オグリキャップもそうだが、大食いの二人の料理は食堂職員によって運ばれてくる。

 

何でもオグリキャップの「トレーをもって料理を運んでいるうちにお腹が減るのでいくらでも食べられる。」という発言を基に、わざわざ運ぶ手間と奴らがお腹を減らした分の料理を作るのとどっちがいい? ということで運ばれるようになったそうだ。

 

まぁ食堂職員の方々はとてもやさしい方々ばかりだから、行ったり来たりするのが可哀そうだと思ってそうしているのだろう。オグリの言葉は冗談だ、……そう思いたい。

 

 

 

 

もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ……

 

 

 

「……なぁ、スペシャルウィーク。どれだけ食べるんだ?」

 

 

「きょほは、うつふぁよりふぉたふさんたふぇます!」

 

 

「うん、ちゃんと飲み込んでから喋ろうな。」

 

 

 

今日はいつもより彼女の箸の進みが速い。食べる量が多くなっている気がする。

 

スズカに頼まれてからスズカがいなくなってブレーキが利かなくなることを危惧し、食事量を直接確認した方がいいと思い時間があるときはこうして食事を共にしているが、やっぱり量が多い。

 

調理室の方から悲鳴みたいなのも聞こえてきているし、ここは食べるのをやめさせるためにも会話で時間を稼いだ方がよかろう。今のうちに休んでくれよ。

 

 

 

もぐもぐもぐ……ごくん!

 

 

「はい! 今日からはもっと食べることにしました! たくさん食べて強くなります!」

 

 

「……食べすぎると、また太って泣くはめになりそうだがいいのか?」

 

 

「大丈夫です! 食べた分だけ走るので実質ゼロです!」

 

 

 

悪魔のような言葉が聞こえ、軽いめまいのせいで会話が途切れてしまった。

その隙に、料理に手を付けようとしている。

 

マズい、時間をそれまで稼げていない。ここはなにか繋げねば……

 

 

 

「ま、まぁ考えているのならいい。それで何か理由があるのか? 急に増やしたように思えるが。」

 

 

「はい! もっと強くなりたいので、もっとたくさん食べて、もっとたくさん走ればいいと思ってやってみることにしました!」

 

 

「そうか、それはいいことなんだが、何かあったのか?」

 

 

「……はい、実は初めてレースで負けちゃいまして……。それで、何か変えないと! と思ったんです。」

 

 

 

 

負けた? スペシャルウィークが負けたのか……。

 

他のことに気を取られ過ぎて、あまり気にしていなかったがこいつはかなり強い。私も負ける気はないが、立ち止まっていると抜かされそうな恐ろしさがある。そんなこいつが負けた相手というから、高等部の誰かだろうが……。

 

 

 

 

「……それで、スズカ先輩に泣きながら謝っているときに、怒られちゃいまして……。『泣いて私に謝ってる暇があったら練習しなさい』って。それで目が覚めまして、まずは食事から始めてみたわけです。」

 

 

「そうか……。それで誰に負けたんだ? お前に勝てそうなのは高等部の奴らぐらいだろうが。」

 

 

「セクさんって方です。」

 

 

「セク?」

 

 

そんな奴、学園にいただろうか?

 

 

「セクってどんな奴だ?」

 

 

「えっとですね、背が高くて赤髪で……」

 

 

……ん? 赤髪? 

 

 

「……一緒に走ってた時は逃げをしていました! ん? なぁに……。あ、そうだ、ありがとう。セクレタリアトさんです!」

 

 

「セ、セクレタリアトぉ!?」

 

 

 

こ、こいつ今、セクレタリアトと言ったのか! あの赤い英雄と戦ったというのか!

なんて羨ましい……って! 日本に来てるの! ナンデ!?

来た理由は何なのか、何故誰にも知られずにトレセン学園に侵入出来てるのか?

彼女ほどのビッグネームだ。日本に来ているとしたら学園に情報が来ていないとおかしい。しかもスペシャルウィークは勘違いはするだろうが、嘘はつかないやつだ。

 

と、とにかくこれは私一人だけで対応してはいけない案件だ、会長たちと話し合わなければ……

 

私は生徒会室に急いで移動するために残っていた食事をかき込み、勢いよく立ち上がる。

 

 

「スペシャルウィーク!」

 

 

「ひゃい!」

 

 

「私は急用を思い出したのでこれで失礼する、今の話の内容は絶対に誰にも言わないように。あと食事はそれぐらいにしておけ、食べ過ぎだ。返事は?」

 

 

「りょ、了解しました、エアグルーヴ閣下!」

 

 

 

彼女の返事を聞き、足早に食堂を後にする。

 

解ってはいたが、世界は私にやさしくないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、スペシャルウィークか。おはよう。」

 

 

「あ、おはようございます。オグリキャップ先輩! 先輩も朝ごはんですか?」

 

 

「うん、朝練帰りだからおなか減った。そこ、座ってもいいか?」

 

 

「はい! ぜひどうぞ!」

 

 

その後、スぺはエアグルーヴの言いつけをちゃんと守り、おかわりをしなかったが、オグリキャップとスペシャルウィークが同じ机に向かい合って座ったせいで、食堂は阿鼻叫喚の騒ぎになってしまったという。

 

 

 

 

 

「お~! 今日も食べてますなぁ! スぺ君! そんなに食べたらスズカに怒られちまうぞぉ!」

 

 

「あ! ゴールドシップさん! おはようございます!」

 

 

「うむ、おはようなのじゃ。んでスぺ、ちょっと耳貸せよな。」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

「……なるほど、URAは発表せずにいく方針なのですね、会長。」

 

 

「そうだ。と言ってもこの話が私のところに来たのもついさっきでな。上の方針としてはどこで漏れるかわからないので、学園にも伝える気はなかったようだ。」

 

 

「まぁ彼女ほどのビッグネームですから、来日していることが知られると厄介な記者たちが大挙してやってきそうですしね。話は解るんですが……。」

 

 

「私も同じようなことを言ったのだが、上としてもアメリカから『国外にいることをばらしたくない』というお願いがあったみたいでな、慎重にせざるを得なかったそうだ。」

 

 

「なら、仕方ない...のですかね...?」

 

 

「といっても、彼女がスペシャルウィークと練習でもレースをしたことは想定外だったみたいでな。慌ててこちらでうまくまとめてほしい、と話が飛んできたというわけだ。」

 

 

「うまくまとめろって、どうすれば……。」

 

 

「彼女の方にも注意というか、正体をばらさないように、という連絡は行っているようだし、所属しているカノープスでは口外しないようにしているようだから大丈夫だろう。」

 

 

「では、スピカの方は?」

 

 

「なぜかは知らないが、ゴールドシップの方から『口外しないように言っといたから大丈夫だぜ』と、今さっき連絡が来てな。しかもちょうどグルーヴが食事を終えた後にスペシャルウィークに伝えたそうだ。」

 

 

「……何者なんですかね、アイツは。」

 

 

「まぁ彼女のことだ。そういったもの、としてとらえておけば大丈夫だろう。……それで、話は変わるが、エアグルーヴ。セクレタリアトと勝負をしてみたくはないか?」

 

 

「急ですね。……したくない、と言えば嘘になります。」

 

 

「実はだな、彼女が帰国する時期は3月末の予定だそうだ。来日理由はカノープスでの指導であり、彼女が走ったのはスペシャルウィークとの一戦だけ。……わざわざ日本に来てもらったのに一度も同年代の私たちとレースをせずに帰るのは色々ともったいないと思ってね。帰国ギリギリになるが、3月末に模擬レースという形で勝負を挑もうと思う。」

 

 

「……なるほど。」

 

 

「あちらが受けてくれないと始まらない話ではあるが、場だけは整えたいと思う。表向きは高等部上位陣での技術交流会、裏ではセクレタリアトとの対戦。あまり人は呼べないが、あちらから許可をもらえた時に学園内で一般公開できるように撮影機器だけは準備しておこうと考えている。まだ企画段階で粗削りだがどうだろうか?」

 

 

「……いいですね。やりましょう。」

 

 

「同意してくれてありがとう。自分でもあまりよろしくないということは解っているのだけどね。」

 

 

「戦ってみたいという欲求を抑えきれなかった、と。」

 

 

「そういうことだ。」

 

 

「まぁ、私も同じ気持ちなので解ります。出走するメンバーは私が選びましょうか?」

 

「あぁ、実力者たちを集めてくれ。彼女への連絡と会場の準備は私がやっておく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『へぇ、面白そうじゃない。こっちから挑もうかと思ってたけど手間が省けたわね。』

 

 

「ん~? セクさん、何見てるの?」

 

 

『ターボか、挑戦状だよ。』

 

 

「お~! 挑戦状! 見せて見せて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネイチャさん、聞いてもいいですかね?」

 

 

「ん、どしたのトレーナー?」

 

 

「いえ、すごく今更ですが、ターボさんって英語できましたっけ? ネイチャさんができるのは知ってるんですけど……。」

 

 

「あー、私も疑問に思って聞いてみたんだけど、言葉の意味はよくわからないみたいだけど何となくで話してるみたいよ。雰囲気で解るんだって。」

 

 

「……エスパーか何かですかね?」

 

 

「ま、ターボだから。でいいんじゃない? 私もそれで納得したし。」

 

 

「そういうものなんですかねぇ?」

 

 

「そういうものなんですよ~。」




誤字報告いつもありがとうございます。
はちみつもありがとうございます。

それと評価欄で一言付けれるようにしてみました。
よければよろしくお願いいたします。


アンケートのご参加ありがとうございました。
いる、いらない結構分かれていたので両方のに期待に応えられるように次回は模擬レースと皐月賞前の両方やっちゃいます。


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PART49

 

『私のためにわざわざレースを開いてくれるなんてありがとうね、ルドルフ。』

 

 

『いや、礼には及ばないさ。私たちとしてもあなたと勝負ができることに感謝しているしな。しかしだが、芝の2000で、という指定だったが、それでよかったのか?』

 

 

『いいのいいの、こっちの主流は芝なんでしょ。私はどっちでもできるし。……にしてもすごいメンバー集めたねぇ、これは面白くなりそうだ。』

 

 

『ははは、まぁ挑ませてもらうよ、セクレタリアト。』

 

 

『OK、かかっておいで。』

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

職員の人からもらった参加者が記入された紙とゲート前で準備している先輩たちを見比べる。

観戦者か、競技者か、どちらの私の感情か分からないけど口角が上がるのを自制できない。

 

 

 

『出走メンバー』

 

セクレタリアト

シンボリルドルフ

エアグルーヴ

マルゼンスキー

ナリタブライアン

オグリキャップ

タマモクロス

スーパークリーク

ゴールドシップ

ヒシアマゾン

フジキセキ

ビワハヤヒデ

ウイニングチケット

ナリタタイシン

メジロライアン

メジロドーベル

マチカネフクキタル

アイネスフウジン

 

 

 

 

 

「うわ、すごい人ばっかり。こんな夢のようなレースを見られるなんて私ら幸せだよ、ターボ!」

 

 

「………。」

 

 

「ん? どうしたの、ターボ?」

 

 

「……ターボ、今集中してるから。ごめんネイチャ。」

 

 

「あっ…、その、私こそごめん。黙っておくね。」

 

 

 

セクレタリアトの指導を受けていた、という理由で私たち、カノープスはこのレースの見学を許されていた。本当なら出走メンバーと撮影を行う職員しか見ることができなかったレースだけど、セクさんが私たちに見て欲しいといったらしく観戦出来ている。

 

学園の最高メンバーと言っても過言ではない人たちが参加するレースということではしゃいでしまったが、ターボは違った。非常に集中してレースを見ようとしている。

 

 

 

 

セクさんからターボに対してある課題が出されていた。それは等速ストライドの習得。

私は体質的に全く向いてないらしく、それを取得する時間をかけるより基礎能力を上げて、最後の直線での加速力を上げた方がいいといわれ挑戦していなかったが、ターボには素質があったようだ。

 

未だにうまくできてないみたいだけど、このレースでターボは何かをつかもうとしている。

 

 

 

そうだ、私も浮かれてる場合ではない。この観戦で何かつかまないと。

私の走り方から考えると注目すべき人は会長やオグリ先輩、ブライアン先輩あたりだろうか。

見て盗めるもの全部もらっていかなくちゃ。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

『んじゃ、ターボには私の必殺技を教えちゃおっかな。』

 

 

「お~! 必殺技! すごくカッコイイ! どんなのどんなの!」

 

 

『その名も、"等速ストライド"!』

 

 

「コ、コンスタン……?」

 

 

『あ~、さすがに伝わらんか。南坂、私も日本訳わからんから教えたって。』

 

 

「ターボさん、"等速ストライド"ですよ。高いスタミナと強力な足のバネ、それと神がかった歩幅の調整によって生み出された彼女だけの技術です。」

 

 

「お~! なんかすごそう! ……でも難しそうだし、ターボできるかな?」

 

 

『大丈夫、大丈夫。このセクさんが教えるんだよ! それにターボが出来そうになかったら私も教えないって!』

 

 

「そうか……な。うん、ターボ頑張ってみる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで、ターボに目指してほしいのはあなただけのストライド技術。私の技術は言ってしまえば私用に改良してしまったもの。あなたの糧にはなるだろうけど、最適にはならない。ターボのための、ターボだけのストライド。さしずめターボストライドかな? 時間もかかるし難易度も高い、けど完成すればあなたは爆発的に強くなれる。どう、やってみる?』

 

 

「ターボの……、ターボのためだけのストライド。ターボストライド。」

 

 

『そ、とりあえずは私が等速ストライドを生み出した状態、その一歩手前まで習得する。そこからは自分で調整。途中までは私も手伝えることはあると思うけど、国から早く帰って来いって言われてるから長居はできないし、最後の調整は自分でしかできない領域になってくる。』

 

 

「……ターボやってみる! ターボもみんなに勝ちたい!」

 

 

『いい返事ね。じゃとりあえず、やってみようか、まずは私がどういった形で走ってるかなんだけど……。』

 

 

 

 

 

ターボはまだ、セクさんに言われた一歩手前。それが全然できてない。

とっても難しかった。セクさんやトレーナーにそんなに簡単にできるもんじゃないといわれたけど悔しい。

 

 

セクさんはこのレースのあとにアメリカに帰っちゃう。

夏の合宿でアメリカに行くまで会えない。

 

当分教えてもらうことはできない。

 

 

 

ならこのレースを、目に焼き付けるんだ!

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

今回のレースを開催した理由、単に私が世界最強に対してどこまで通用するのか、というのが気になって挑んだ、そのことも確かにある。強い相手と競い合いたいという気持ちは嘘ではないが、もう一つの理由に日本の競技レベルを引き上げたいというのがある。

 

このレースに参加してくれた者たちが、世界に自身がどれだけ通用するのかを肌で感じ、さらに成長してもらいたい、このレースを見た者に世界に挑もうとする気概を持ってもらいたい。そう思っている。

 

 

 

なぜ、そのようなことをしようとしているかというと、

私たち、日本のウマ娘が世界と比べ弱いと思われているからだ。

 

 

国内のレベルは確かに低くはないが、日本のウマ娘が海外に出たとき、その勝率は大きく下がる。確かに芝やダートの違い、気候の違いなども理由として上がるだろう。確かにそれは大きな要因だ。

 

 

しかし、ではなぜ海外からやってきたウマ娘たちに国内のレースで負けるのか。慣れ親しんだ土地を離れてわざわざ遠征してきた彼女たちが格段に強いことは解る。しかし、それにしても、だ。

 

 

 

 

日本が世界に誇るウマ娘の祭典、ジャパンカップ。世界中から強者を集めて行うため、「世界一のレース」「ウマ娘のオリンピック」などともいわれるこのレース。日本で開催されており、私たちに有利なはずなのに開催されてから勝てたのは私の一勝だけ。他のウマ娘たちが弱いとは言わない、むしろ私と並び、競い合ってくれるよきライバルたちだ。

 

三冠ウマ娘になり調子に乗っていた私を叩きつぶしたあのジャパンカップで負け、その再戦に燃えていた私が勝った次の年のジャパンカップ。勝利を収めることはできたが、その年は運よく海外から有力ウマ娘がやってこなかった年であり、私としても満足のいくものではなかった。

 

 

 

私がまだ学園に入って間もなかったころの第一回ジャパンカップ、勝利したのはアメリカからやってきた成績の目立たないウマ娘だった。あの日からずっと、私たちは「日本のウマ娘は永遠に世界に勝てないのではないか。」と言われ続けてきた。

 

 

 

 

 

言い返したいんだ、私たちは強いって!

 

私たちは十分世界に通用するんだって!

 

 

 

 

このレースは彼女にとっては単なる力比べなのだろうが、私たちは違う。

 

アメリカ最強に対して、日本がどこまで戦うことができるか、食らいつくことができるか。

 

 

 

もし、及ばなかったとしてもまだ次がある。私たちの世代がだめだったとしても、スペシャルウィークやテイオーたち、次の世代がある。

 

 

 

 

「会長、大丈夫か? また何か考えているようだが。」

 

 

「……オグリキャップか、いやすまない。私としたことが余計なことを考えていたようだ。ありがとう。」

 

 

 

そうだ、今は今後のことを考えている場合ではなかった。

目の前の勝負に集中しなければいけない。

 

相手は挑んだことがないような高い壁、雑念があれば超えれるものも超えられなくなる。

 

 

 

意識を切り替える、今の私は“皇帝”でも“会長”でもない。

 

ただのシンボリルドルフ、ただの“挑戦者”だ。

 

 

 

さぁゲートに向かおう。

 

目指すのはただ、ゴールのみ。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

全員がゲートに収まる。

 

私はいつも通り大逃げする。その戦法に変わりはないが、同時にターボに一つの完成形を見せようと思っている。

 

 

さ、今日もやりますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートが開く。今回は最初から全力だ。

 

どこまでついてこれるかか、見せてよね。ルドルフ。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

ゲートが開いた瞬間、前に赤髪が既にある。

 

 

 

やはり、最強の名は伊達ではないようだ。スタートからして違う。

 

 

私は彼女についていくためにも先行策を選び、中央に位置するように動く。

 

 

 

等速ストライドと言ったか。

中距離の2000mだが、ピッチがスプリンターのそれだ。

 

普通なら掛かっている、そう表現するのだろうが彼女のスタミナには関係ないのだろう。

 

これについていくとスタミナを大幅に削られて最後の直線辺りでスタミナ切れを起こしてしまうのだろう。

作戦としてはついていかず、スタミナ切れを起こすまで待つのが最善だが、相手はセクレタリアト。

 

 

 

 

 

彼女の背中を見ていると、あの時の敗戦を思い出す。

第4回ジャパンカップ。

先頭にいたのはイギリスからやってきたベッドタイムだった。

 

私とカツラギエース先輩がどんなに前に行こうとしても抜かせなかった。

 

 

 

あの時の悔しさが、調子に乗っていた自分への怒りが、湧き上がってくる。

 

 

セクレタリアトの背中と、あの時のベッドタイムとの背中が重なる。

 

なぜか、彼女の背中に嘲笑われている気がする。お前はその程度なんだな、と。

 

解っている、自分の不甲斐なさがそう思わせていると。

 

 

 

 

あぁ、やってやる。ついてやってやる。

 

普段より早く、足を使い始める。

 

 

位置は残り1000mといったところ、前にいたマルゼンやフウジンを抜かし、前に行く。

 

 

 

 

私は、シンボリルドルフだ! 負けてたまるものか!

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「すっご……。」

 

 

思わず口にしてしまう。

 

レース進行はセクさんの圧勝になる、そう思っていた。

 

 

 

でも、でも違った。

 

 

 

レース中盤から会長が急激な追い込みを見せて、それにつられるように後方に位置していたオグリ先輩やブライアン先輩たちが追い上げてきた。なんだか、すごい執念みたいなのを感じた。すごかった。

 

 

結果としては一着セクレタリアト、4バ身ほど離れて二着シンボリルドルフ、クビ差で三着オグリキャップ先輩だったけど会長の走りは、うまく言葉にできないけど、一着になるよりもすごいものがあった。

 

 

ほんとにすごかった。……うん、私が目指すべきもの。解った気がする。

私もあんなふうに、会長みたいに走ってみたい。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

『いや~、私があれほど追い込まれるとは。こりゃ鍛えなおさないといけないね。』

 

 

『……あなたにそこまで言ってもらえるとは。光栄だな。』

 

 

『いや、ね。正直日本はそこまでかな? と思ってたけど私が甘かったよ。ごめんね。』

 

 

『……そうか。それでなんだが……。』

 

 

『うん、このレースの公開のことでしょ。いいよ、どんどんしちゃって。こんなにいいレースをしてもらったんだもの、広めなきゃ損でしょ。』

 

 

『いいのか? てっきり公開は控えるように、と言われると思っていたのだが。』

 

 

『んー、いいのいいの。どうせ、いつかバレるし、婆さんから怒られるのは確定してるからいいでしょ。』

 

 

『そういうものなのか?』

 

 

『そういうもん、そういうもん。ま、いいレースのお礼ってことで。』

 

 

「セクさん~~!」

 

 

『あ、ターボが呼んでる、ちょっと行ってくるね。また勝負しようぜ、ルドルフ。』

 

 

 

 

 

 

「会長、手を見せてください。」

 

 

「グルーヴか。どうした救急箱なんて持って。」

 

 

「その、血が……。」

 

 

そういわれて、自身の手を見る。どうやら強く握りしめすぎたせいで血が出てしまったようだ。

……私もまだまだ、だな。

 

 

「あぁ、すまない。気が付かなかったよ。」

 

 

「手当てをしますので、動かないでくださいね。」

 

 

「すまないな、頼む。」

 

 

 

届かなかったが、これで終わりということではない。

今回は負けたが、次は勝たせてもらうぞ。

 

 

 




この世界線での第4回ジャパンカップはベッドタイムが勝ってます。せん馬というものが存在しないウマ娘の世界なので、多分彼女はイギリスでバクシンして強化されてたんだろうなぁ、と思ったり。

ちなみに
1,セクレタリアト
2.シンボリルドルフ  4バ身
3.オグリキャップ   クビ
4,ナリタブライアン  アタマ
5,ゴールドシップ 1バ身

というつもりでした。5着は正直誰でもあり得たので……
(追記。ゴールドシップをゴールデンウイークに誤字りましたね。恥ずかし。)


誤字報告、はちみついつもありがとうございます。
非常に助かります。

それと、皐月賞前の話は明日投稿しますね。
お待たせして申し訳ございません。


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PART50

前回のレース解説はスぺちゃんたちがそのレースを見たときに、ダービー前ぐらいかな?


ウララさんも地方遠征ばかりでほとんど一人部屋のようになってしまっている。

そんな一人ぼっちの部屋で、トレーナーさんから頂いたレース雑誌をペラペラとめくりながら眺める。

 

 

『怪鳥エルコンドルパサー、快勝!』

 

『グラスワンダー、皐月賞への第一歩!』

 

『セイウンスカイ、トライアル無事勝利、次は皐月だ!』

 

 

 

皆さんが出走するのは知っていたが、順調に勝利している。

私もトライアルではないが無事重賞に勝利し、皐月賞への出走はできるだろう、彼女たちと競い合えるのが楽しみだ。そんなことを思いながらページをめくる。

 

 

「有力ウマ娘予想、へぇ。こんなのもあるのね。……あ、私も載ってる。」

 

 

今回の有力ウマ娘ということで見開きを6分割されて、私たちの名前が載っている。

 

スペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダー、セイウンスカイ、トウカイテイオー、そして私。

 

 

 

世間ではスぺさんはホープフルS以降出走していないため注目度が幾分か下がり、雑誌では私たちは均等にスペースを分けられているが、私たち、挑む側からすればスぺさん対私たち、という構図だろう。

 

 

ずっと貴方に負けている。そんな気持ちでいっぱいだった。

 

そんな私を、変えてやる。

 

絶対に勝ってやる。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

ほいほい皆様おはようございます、今日もスぺちゃんとウイニングロードを走っていきましょうね。

現在は3月後半まで時間が進みまして、皐月賞間近となっております。

前回のセクさんとの敗戦が1月の後半ぐらいだったので2か月分もカットしたということですね。

 

育成状況としてはスキル【逢魔時】をアクティブにしましてスピード練習を重点的にしようと思ってたんですが、何故かスぺちゃんの食事量が徐々に上昇してしまい、[太り気味]の対処に追われたのでそこまで成長できてません。悲しいなぁ……

 

 

>スピード:C

 スタミナ:B

 パワー :B+

 根性  :C+

 賢さ  :C

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.2

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.2

 【空駆ける英雄】    Lv.1

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.1

 

 【ゲートの支配者】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 (【末脚】)

 

 

ま、結構見れるものにはなってきたので大丈夫でしょう。他の子たちがどれほどなのか把握できてませんが……。それとこの【末脚】ですが、セクレタリアトとのレース後に発現しました。時間がなくてアクティブにすることはできませんでしたが、秋までには取っておきたいですね。

 

あ、そういえば他キャラのステータスの見方について言ってませんでしたね。

こちらのゲームではアプリ版と同じように、レース直前のパドックでのみ他キャラのステータスを確認することができます。前回のホープフルでも見ることはできましたが、ライバル枠がいなかったので確認しませんでした。

 

次回の皐月賞ではライバル枠がいっぱい出てくるでしょうし、ちゃんと確認しますのであしからず。

 

 

 

 

んで、今スぺちゃんが何をしているのかというと……、

 

レース前のインタビューを受けてます。アニメ版でもあったあれですね~、レースの枠番なんかを抽選した後に勝負服を着てインタビュー受けてます。やっぱり、スぺちゃんは人気みたいで記者の方々の熱意が違いますねぇ!

ちなみに史実と同じ、8枠18番の大外でした。ま、仕方ないね。

 

 

あ、スぺちゃん。返答はミーの考えたものをお願いね。

 

 

>「スペシャルウィークさん! クラシック三冠の第一歩となる大事なレースですが、どのような意気込みをもっと挑まれますか?」

 

 

あいあい、そうゆうのね。まぁいつも通り頑張って勝利しまさぁ! 強い人ばっかりだけど頑張りまっせ!

 

 

「はい、出走なさる方は強い方ばかりですが、いつも通りの実力を出せるように頑張りたいです。」

 

 

 

>「今回のレースで一番注目している選手はどなたでしょうか?」

 

 

う~ん、ここは出走する皆さんということにしておきましょうかね。あ、スぺちゃんが言いたい子のことがあったらそれでもいいよ。

 

 

コクコク

 

「今回のレースでは同じクラスのグラスワンダーさん、エルコンドルパサーさん、キングヘイローさん、セイウンスカイさんや、同じスピカのトウカイテイオーさんも出走します。皆さん強い方ばっかりですので油断できない、そう思います。」

 

 

>「スペシャルウィークさん、こちらもよろしいでしょうか。……では、前回のホープフルSの勝負服と違い、背中に星を付けていらっしゃいますが、どのような意味でしょうか?」

 

 

ん~、これは普通に言っていいですかね。どうぞ、スぺちゃん。

 

 

「……私が誰かの星になりたいと思って付けることにしました。ウマ娘としての大一番、GⅠレースで勝利して、誰かの星になれたときは、自分が星で在り続けれるよう、誰かの希望で在り続けられるように、応援してくださった方にも、私と競い合ってくださった方にも、光り続けれる星で在れるように。そう思って付けることにしました。……すいません、纏まってない上に長くなってしまって……。」

 

 

>「……なるほど、そうなのですね。」

 

 

「まぁ、私を見てくれてる人は星をたくさん増やしてほしいみたいなので、多分大舞台のレースで勝つとまた背中に星が増えると思います。どれだけ私が星を背負えるか、ですね!」

 

 

うん、満点ですね! いい回答ができたスぺちゃんをほめてあげましょう! ん、そろそろインタビューの時間が終わりそうですね。

 

他の方のインタビューもあるみたいで時間も押してますし、お立ち台から降りて次の方に変わりましょうね。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「お~、スぺちゃんお疲れ様~! にしても背中の星にそんな意味があったとは!」

 

 

「あはは~、なんか恥ずかしいですね。」

 

 

「にしても、スぺちゃん。すっごく緊張してたね~。ガチガチですっごく硬かったじゃん。全部カタカナで話してるかと思ったよ! 前回のホープフルでもそうだったし、実はスぺちゃんインタビュー苦手だなぁ~?」

 

 

「も~、テイオーさん。やめてくださいよ~。」

 

 

 

 

「お~い、テイオー。そろそろお前の番だぞ。準備しとけよ~。」

 

 

「あ~い、了解~。んじゃ、スぺちゃん。このテイオー様のインタビューを見て勉強するといいよ!」

 

 

「はい、頑張ってくださいね、テイオーさん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、スぺ。"見てくれてる人"って誰だ?」

 

 

 

 

「う~ん、家族みたいな人っていうか、なんていえばいいんだろ。でもとっても良くしてくれている人です!」

 

 

「そうか、まぁなんだ。もしよかったら今度会えるか聞いといてくれ。」

 

 

「…………はい! わかりました。聞いておきますね。」

 

 

 

 

スぺの話しぶりからして、かなり長い付き合いの人なんだろう。スぺがチーム練習後に追加で練習してるのは聞いていたし、多分その人が指導していたんだろうな。

 

その人に師事しないでわざわざスピカに参加してるのは……、もしかして相手方は中央の免許を持ってない人なのか? スぺの地元は北海道と聞くし現地のトレーナーなのかもしれん。

 

とにかくスぺがオーバーワークにならないように調整する必要があるだろうし、すでにトレーニングメニューが決まっているのならばこちらでも設備の使用申請とかで、できることはあるかもしれん。

 

まぁ顔合わせて話してみないことにはな。

 

 

 

 

 

(いつも一緒にいるのに、ね。)




はちみつ、誤字報告いつもありがとうございます。
すっごく助かる。

次回はまだ書けてないのでもうちょっとお待ちを。


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PART51

北海道 日高

 

 

「写真を置いて、っと。おし、これで大丈夫かな。」

 

 

さ、二人ともスぺの大舞台が始まるよ。

一緒に見ようか。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

皐月賞。

 

中山の芝、2000の旅路。

 

クラシックの初めにして、最も速いウマ娘が勝者と呼ばれるもの。

 

 

 

 

様々な者たちの思惑をはらみ、

 

 

 

「大丈夫ですか? ネイチャさん。」

 

「うん、いける。行ってくるねトレーナー、ターボ!」

 

「ネイチャなら絶対に勝てるぞ!」

 

 

 

「セイちゃん~、作戦の方は頭に入ってますか~?」

 

「うん、ばっちし。掴んでくるよ。」

 

 

 

「行ってきな、お嬢。」

 

「……はい!」

 

 

 

「勝ちに行け。」

 

「はい、もちろんです。」

 

「エルが世界最強だってこと、証明してやりマース!」

 

 

 

「おっしゃ、スピカ。行くぞー!」

 

「「おー!」」

 

 

 

 

 今、始まる。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「「「「スぺちゃん(さん)」」」」

 

 

 

「あれ、みんな。どうしたの?」

 

 

 

「せっかくですから宣戦布告でもしようかと思いまして。」

 

 

「そゆこと、負けないよ。」

 

 

「クラシック三冠路線の大事な初戦、勝負ですよ。スぺちゃん。」

 

 

「いくらスぺちゃんが強くても、ワタシが勝ちマース!」

 

 

 

 

「……うん! 私も負けないよ。勝負だね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネイチャはいいの、何か話さなくて?」

 

 

「私? いやいいよ。彼女とは接点ないしね。それこそテイオーは言わなくていいの?」

 

 

「ボクはいつも言ってるようなもんだしね。大丈夫だよ。」

 

 

「そういうもんですか。」

(まぁ私としてはあそこにいる人たちに注目されることは避けておきたいし、話しかけない方がベストだよね。)

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『さぁクラシック初戦の大一番! 皐月賞が始まります!』

 

 

『最も速いウマ娘が勝つといわれていますが、今回はどのようなレースになるとお考えですか?』

 

 

『今年は今までにない豊作の年、と言っていいでしょう。ジュニア級覇者のスペシャルウィークを始めとして、無敗中のウマ娘が合わせて7人もいます。トライアルで圧勝したエルコンドルパサー、グラスワンダー、セイウンスカイもそうですが、キングヘイローやトウカイテイオーも注目したいところですね。今回の人気順も出てはいますが、現在上げたウマ娘たちは非常に僅差ですし、そこまで参考になりませんね。』

 

 

『なるほど、大変予想が難しいレースということですね。ちなみに一番人気はスペシャルウィーク、二番人気にエルコンドルパサー、三番人気にトウカイテイオーとなっております。』

 

 

 

 

 

 

 

(ふ~む、ホープフルSで勝ったおかげか一番人気ですね。ま、人気なんてスぺちゃんにはそこまで関係ないですし気にせんでええでしょう。さ、久しぶりの公式戦、頑張りましょうぜ、スぺちゃん!)

 

 

 

! コクコク。

 

 

 

(見た感じライバル枠の皆さんは得意ステータスがD+かC、それ以外がDぐらいですかね。クラシック初期ではかなり強い方ですが、事故が起こらない限り大丈夫でしょう。それで今回大外の8枠18番ですから外からぶち抜いていきましょう。壁ができて前に行けない、なんてないように外を走ることを意識していきましょう。)

 

 

………?

 

 

(そういえば今回から【ゲートの支配者】解禁ですけど使います? ですか。う~んどうしましょ? コメ欄の方々から称号達成のためにもダービーで使った方がいい。ってご意見も頂いてましたし、そうしますか?)

 

 

……コク。

 

 

(あー、セクさんにプレッシャー返しされたからちょっと使うのが怖くなってる感じですか。確かにそのこと忘れてましたね。ではこのレース後にその感覚をリセットすることを目標に入れておきましょう。んじゃ、今日は普通に走りましょうか。……そういえば師匠以外の同じクラスの子と公式レースで走るのは初めてですかね。楽しんでいきましょう!)

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ各ウマ娘、ゲートに収まりました。』

 

 

 

(……あれ、プレッシャーがこない。トレーナーの話ならもう使ってもいい、って話なんだけど……。もしかしてまだ温存してるのかな? うん、なら好都合かな、まだアレを気にせずスタートする自信はないし。)

 

 

 

 

 

 

 

『いま、一斉にスタートしました。いいスタートを切れたのはセイウンスカイといったところか。』

 

 

 

(よし、うまくできた! わざわざゲートに縛られて練習したかいがあったよ。このままペースを乱さずに先頭を維持しなきゃ!)

 

 

(セイさんは逃げ、エルさんとテイオーさんは先行。グラスさん、スぺさんは速度を落としてるから差し。私は言われたとおりにグラスさんとスぺさんの前に位置できるように走る。壁になりつつ後半に位置が悪くて加速できない、なんてことがないようにしないと。)

 

 

 

『先頭を行くのは依然としてセイウンスカイ、3,4バ身後ろにエルコンドルパサー、トウカイテイオーが来ています。また後方集団にはキングヘイロー、グラスワンダー、スペシャルウィークが来ている。』

 

 

 

(う~ん、思いっきり真後ろに付かれてますネ。気にせず走るのが最適デスがやっぱり気になりまス。)

 

 

(ゴメンね、エルコンドルパサー。先行策で勝つために、最後まで脚を残さないとね。)

 

 

(スぺちゃんは……後ろですか。外側につかれてますし、ちょっとマズいかもしれませんね。前もキングさんがいますし、これは無理やりコーナーで抜かす必要があるかもしれません。)

 

 

 

 

『レース進行はセイウンスカイが飛ばしていましてかなりのハイペースといったところ。さぁ先頭がちょうど折り返し地点につきまして、先頭は依然としてセイウンスカイ。』

 

 

 

 

(ん、にゃぴ。そろそろ中盤ですね。ちょっくらペース上げてきましょう、スぺちゃん。行きますよ~。)

 

 

「はい、スペシャルウィーク、行きます!」

 

 

>【不沈艦、抜錨ォッ!】を発動!

>【逢魔時】を発動!

 

 

 

 

『おっと、スペシャルウィーク! 折り返し地点から爆発的な加速を始めたぁ!』

 

 

 

(ッ! スぺちゃん、思ったより仕掛けるのが早い! ……これは無理やりにでもついてかないと置いてかれる! ハイペースなせいで脚を残せるかわからないけど、ついて行かなければ!)

 

 

 

『スペシャルウィーク、キングヘイローを抜いた! グラスワンダーもそれに続くッ!』

 

 

 

(スぺさんだけでなく、グラスさんにまで! どうする? 作戦では最終直線まで脚をためる予定だけど、本当にこれで勝てるのか? 最後の直線だけで足りるのか?)

 

 

 

『キングヘイローも続いて加速していきます!』

 

『かなりのハイペース、そこに加速です。スタミナが最後まで残るか不安ですね。』

 

 

 

 

(………ここだ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『スペシャルウィーク、徐々に速度を上げて先頭を抜かそうとしております。おっとここで先頭のセイウンスカイが最終コーナーに入ろうとしているところ!』

 

 

 

(後ろから来てますネ。セイちゃんが思いっきり飛ばしてるせいでそこまでスタミナが残ってませんガ、抜かされるわけには!)

 

 

(スぺちゃんが上がってきてる、そろそろボクも仕掛けないと……。前のレースで編み出した技、使うなら直線で。真後ろに居続けても位置が悪いし、前に出ないと!)

 

 

 

『ここでトウカイテイオーがエルコンドルパサーを抜いたぁ!』

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

『スペシャルウィーク、スペシャルウィークここでさらに上がってきたぁ! 暴力的な加速ぅ! 彼女もエルコンドルパサーを抜いてトウカイテイオーと並ぶ、並ばない! 並ばない!』

 

 

 

(まだ、まだ直線で追い返せる、焦るな、焦るな! そこで仕掛けるんだ!)

 

 

 

 

(テイオーちゃんで終盤3人目ですかね? んじゃ会長のスキル、行っちゃいましょう! あとついでに固有の方も行っちゃいましょうか。)

 

 

>【汝、皇帝の神威を見よ】を発動!

>【シューティングスター】を発動!

 

 

 

 

『スペシャルウィーク、さらに後続を突き放し先頭のセイウンスカイに迫る!』

 

 

 

(マズい、予想よりもかなり速い! スぺちゃん対策で無理やりハイペースにしたせいでもうほとんど足が…。)

 

 

 

『スペシャルウィーク先頭に躍り出たぁ! そして加速はいまだ止まらず!』

 

 

 

(スぺちゃん、ギア上げますよ~。)

 

 

…コク。

 

 

 

>【空駆ける英雄】を発動!

 

 

 

 

『スペシャルウィーク独走状態、陰すら踏ませません! ああっと加速だぁ!』

 

 

『後ろからは何にも来ない! 後ろからは何にも来ない! 後ろからは何にも来ない!』

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

(足を回せ! もっと動け! もっと動け! ボクはまだまだいけるんだ! 大差負けなんてやらせるもんか!)

 

 

 

『ここでエルコンドルパサー、トウカイテイオーも加速し始めました! 2番手はいったい誰の手に!』

 

 

 

(負けない負けない負けない!)

 

 

(脚はまだ残ってる! せめてこの中で勝利を!)

 

 

 

『スペシャルウィークに連れられたグラスワンダー、キングヘイローも2番手争いに加わっている!』

 

 

 

(逃げろ、逃げるんだ! 動け、私の足!)

 

 

 

『セイウンスカイ、必死に逃げる! このまま逃げ切れるのか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

(……うまくいった! バレなかった! これなら、これだけ脚を残せれば! 十分勝負できる!)

 

 

 

 

 

 

『………! 上がってきた! 上がってきた! ナイスネイチャが上がってきて、2番手争いに加わる! いつの間に上がってきたのか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………え。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『スペシャルウィーク、今独走でゴールイン! クラシック三冠のはじめを華々しい大差勝ちで収めました!』

 

 

『……大きく遅れまして2着にトウカイテイオー、3着にナイスネイチャ。 セイウンスカイ、グラスワンダー、キングヘイローはまとまってゴールイン、写真判定となります。』

 

 

『……今、掲示板に出ました! 4着にグラスワンダー、5着にキングヘイローとなりました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スピカでワンツーフィニッシュじゃん。桜花賞に続いてやってんねぇ!」

 

「二人とも、おめでとう。お疲れ様。」

 

 

「トレーナーさん。ありがとうございます…。」

 

「お、スぺ~? 勝った時はもっと無理やりにでも喜ぶんだぞ~!」

 

 

「ちょ! ゴールドシップさん! 持ち上げないでくださいぃ~!」

 

 

 

 

「お疲れ様でした、テイオーさん。」

 

「マックイーン。…………………クソッ! 次こそ、次こそ勝って見せるから!」

 

「えぇ、私もお手伝いします。あの技、もっと極めましょう。」

 

 

 

 

 

「ネイチャ~! 3着だったけどすごかったぞ~!」

 

「……ありがと、ターボ。出来ることは全部やったし、運もよかった。……でもやっぱ悔しいや。」

 

「ネイチャさん、それをうまくバネにしましょう。あなたならやれます。」

 

「うん、……ありがと。トレーナー。」

 

「あ! そうだ! セクさんもテレビ電話で一緒に見てたんだよ! それでねそれでね……」

 

 

 

 

 

「入賞おめっとさん、お嬢。」

 

「トレーナーさん。私は、私は……、もうしわ」

 

「謝んなや。」

 

「ですが、私は!」

 

 

「お嬢、誰にでも負けはある。だがな、俺に謝んのは頂けん。お前のことだから俺の経歴に傷がつく、なんて思ってんだろうが、そんなもんどうでもいい。勝てなかったのは俺の責任だ。」

 

「しかし……。」

 

「気にすんな、それよりも次のこと考えるぞ。ダービーまで時間がない。次こそは、だろ。」

 

 

 

 

 

「お疲れ様、セイちゃん。」

 

「……うん。」

 

「何かつかめましたか?」

 

「……うん、でも悔しい。」

 

「そうだね。今は、思いっきり泣いていいよ。」

 

「うん、ありがと。」

 

「次はもっと練習して、作戦考えて、今回得たものを絶対に生かしましょうね。」

 

 

 

 

 

「お疲れ様だ、グラス。いい走りだった。」

 

「……ありがとうございます。」

 

「これで終わりではない、次につなげれる負けだ。……私もできる限りのことをやろう。」

 

「……はい。私も、もっと頑張ります。」

 

「それでエルはどこに?」

 

「さっき、顔を洗いに行くと言っていました。」

 

「そうか、すまないが待っていてくれるか。行ってくる。」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

逃げるように手洗いに駆け込む。

 

洗面台に両手をかけ、倒れそうになるのを防ぐ。

 

座ってしまえば立てないから、倒れてしまえばもう動けないから。

 

体重を前に預け、無理やり足を立たせ続ける。

 

 

 

このままじゃいけない、どうにかして切り替えないと。

 

顔を洗うためにマスクを外す。

 

マスクがあっても、マスクがなくても変わらない私。

 

 

溢れそうになる何かを止めるために無理やり顔を洗う。

 

手に貯めた水を顔に強く触れさせ、そのままにする。

 

手を顔に触れさせたまま。

 

 

手で押さえておかないと何か出てきてしまうような気がして無理やり抑える。

 

 

 

 

 

 

足音が聞こえた。

 

 

急いで外していたマスクをつけなおす。

 

たぶん、おハナさんだろう。

 

 

出来るだけ鏡を見ないようにその場から立ち去る。

 

 

 

「ごめんなさい、トレーナー! ちょっと目にゴミが入ってしまっテ洗いに行ってましタ!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「勝つって、難しいね。今まではただ、走ることが楽しかったけど、みんないろんなものを背負って走ってるんだね。……勝てたとき、後ろを振り向いたらみんな、悔しそうだった、苦しそうだった。」

 

 

(……私に彼女たちの気持ちはわからないけど、スぺちゃんがそんな顔をするのは駄目だよ。スぺちゃんはみんなに勝ったから、このレースで走ったみんなの気持ちを背負う必要が出てくるんだよ。それはとっても大変でしんどいことだけど、とっても大事なこと。)

 

 

「そうだよね。それで私は星を背負うんだ。」

 

 

(星はキラキラしてまぶしいもの。スぺちゃんはみんなのためにも、背負わせてもらってるものをきれいに見せるためにも、思いっきり笑わないとね。)

 

 

「うん、私。頑張る。ウイニングライブ、思いっきり笑顔で頑張るよ。」

 

 

(いってらっしゃい、スぺちゃん。頑張ってね。)

 





誤字報告、はちみつ、いつもありがとうございます。

次回は皐月賞後の各陣営とスぺちゃんについてになるかと。
あと今回のレース解説なんかもやります。


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PART52

 

 

『……では、今年の皐月賞解説に移っていきましょう。

 

 

まずはスタート部分からですね。

 

 

クラシックに入ったばかりの時期ですのでゲート関連がうまくいかないことも多い皐月賞ですが、今年は目立ったミスをする子も少なく、そろってよいスタートをとれていると言えます。

 

 

なかでもこの後、ハイペースでレースを引っ張ることになるセイウンスカイがよいスタートを切れていると言えますね。映像でもわかるように、頭一つ抜けていいスタートが切れています。逃げ策だとスタートを失敗して先行寄りの位置になってしまい、後々大変になる、ということもあり得たでしょうからこれはいいポイントですね。

 

 

その後、折り返し地点まではセイウンスカイがかなりのハイペースでレースを牽引、後続のウマ娘たちには苦しい展開でした。彼女の考えとしては、今レースには差し策、後半戦で脚を残して戦う子たちが多いことも考えてのものでしょうが、作戦は正しくとも結果が振るわなかったということになってしまいました。

 

 

また、この先頭集団の中ごろにいるトウカイテイオーですが、うまくエルコンドルパサーの後ろに付くことでスタミナを温存していますね。エルコンドルパサーもそれに気が付いているようでしたが、動じず自分の走りをしています。ここで変に動いてしまうとペースを崩したり、位置が悪くなってしまったりすることもありますのでよい選択でした。

 

 

折り返し地点、ここから今レースの勝者、スペシャルウィークが動き始めます。今回、大外ということでかなり外側に位置しながら走っていましたが、その不利を気にせず、逆に誰もいない外側を利用することですいすいと順位を上げて行っています。

 

 

また、ここでグラスワンダー、キングヘイローもそれに続いて速度を上げて行っていますね。ここで速度を上げていないと後半で埋もれていた可能性もあったでしょうから正しくはありました。ですが、先ほども述べたようにかなりのハイペースで進んでいたレースでしたのでスタミナの温存が難しくなっていることもあり、難しい選択だったといえるでしょう。

 

 

そして、ここ。三着になったナイスネイチャの動きを見てみましょう。キングヘイロー、グラスワンダーの後ろにうまく隠れながらゆっくりと加速し始めているのが解ります。前評判でそこまで人気が高くなかった彼女ですが、注目されなかったことを逆手に取り、残り200m付近までその存在感を消していたのが勝因と上げられるでしょう。

 

 

後半戦に移ると、スペシャルウィークに抜かされた有力ウマ娘達が置いていかれないように加速していく、といったレース運びになります。トウカイテイオー、エルコンドルパサーですね。

 

 

スペシャルウィークはハイペースを何のその、最後まで独走状態でゴールイン。

 

その後はかなりの混戦となっています。

トウカイテイオー、グラスワンダー、キングヘイロー、セイウンスカイ、エルコンドルパサーが塊となってゴールに向かい、その少し後ろにナイスネイチャ。末脚でトウカイテイオーが何とかバ群を振り払い、二着。ナイスネイチャは塊の間をうまく抜けて、うまくスタミナ管理をし三着。ここでグラスワンダー、キングヘイロー、セイウンスカイがなだれ込んで、エルコンドルパサーがほんの少し遅れてゴールインとなっています。

 

 

 

前評判にてかなり人気が分かれ、珍しいレースとなってしまいましたが、結果としてはスペシャルウィークの圧勝という形に終わりました。今後、スペシャルウィークの独走となるか、他のウマ娘たちが食らいつくのか。非常に楽しみな一年になりそうです。

 

 

 

 

では、次のニュースです。URAがタイムオーバーの制度を見直すと昨日公式に発表しました。理由としましてはレコードタイムの大幅な短縮を行ったサイレンススズカ、スペシャルウィークやハ……』

 

 

 

 

 

息抜きのためにテレビをつけていたが思ったより長く見ていたようだ。

電源を落とし、時計を確認しながら並べていた資料をまとめ始める。

 

 

エルコンドルパサーとグラスワンダーだが、今のところは何事もなくダービーに向けた調整をしているように見える。いや見せているというべきか。今のところはルドルフやグルーヴに面倒を見てもらいながら、何とか精神的負担を減らせるようにやってみてはいるが、そこまで結果はよろしくない。

 

 

何をしていても彼女のことを考えてしまうのだろう。本来なら何かと気分転換をさせるのだが、目を離したすきに何か爆発してしまう、休みなのにオーバーワークになりケガを誘発する、などの危険があるので得策とはいえない。こちらで何とか管理をしているがどこまで持たせることができるか…

 

 

なんとしても次回のダービーでは彼女との差を縮めさせないといけない。自分が少しでも前に進んでいる、差が縮まっていると思わなければ折れてしまう可能性も出てくる。どうにかして手を考えなければならない。

 

 

 

………そういえば学園の方から動画データが送られてきていたな。確か"例"のレースだと思うが、どうしようか。

あの高い壁にぶつかっていく、というルドルフたちの思いは彼女たちに響くだろうか? このデータは高等部のスターたちの技術を盗める貴重なデータでもあるし、二人に見せてみるとするか。この動画の研究という体で、休ませることもできるだろう。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

ハローエブリワン! 投稿者だぞ! 今日も実況始めていくゾイ!

前回は無事皐月賞に勝利いたしまして、三冠ロードの第一歩を歩み始めていたところですね。

 

いや~スぺちゃん、お疲れ様でした、それとおめでとうございます。見事な大差勝ちでしたねぇ!

 

ですが、今後は全く安心できません。ここからどんどんライバルちゃんたちが強くなってきますので注意が必要ですねぇ! ……に、してもライバル枠でもないテイオーちゃんやネイちゃんが掲示板に入ってきたのはどうしてじゃろ? もしかして裏でなんかヤバェイ! イベントでも回収しちゃいました?

 

 

ま、まぁ、スぺちゃんとわたくしは最、強、ですからぁ~(イキリ紫まな板)

裏で回収しちゃったガバもパワーでぶっ壊してやりますタイ!

 

 

と、いうことで、裏で起きてしまったイベントは確認しようにも方法がありませんし、その断片を知るために学園中を走り回るのも時間がもったいないので早速練習だぁ!

 

スぺちゃんにはとにかく速さが足りない! なのでスピード練習していきましょうねぇ。

 

 

 

>「お! こんなところにいたのか、スぺ!」

 

 

お、ゴルシちゃんじゃん。どうしたん? 今からスピード練習しにちょっくら走りに行こうと思ってたんですが。

 

 

>「にゃるにゃる。練習もいいけどゴルシちゃんの雄姿もちゃんと見ないと駄目だぜ。今日はゴルシちゃんが前出てたレースの鑑賞会だ! 他の奴らはもう部室に来てるし早く来るんだぜ! ん? それともゴルシワープで移動するか? 多分 いしの なかにいる 状態になると思うけど。」

 

 

それなんのトラップですかい!? ま、まぁ何かのイベントでしょうし、ゴルシちゃんのスキルの経験値も頂けるみたいでしょうからちゃんと行っときますか。

 

 

 

>移動中……

 

 

 

部室に着きましたね。お、皆さんお揃いで、お待たせいたしました。

 

 

 

>「よし、全員そろったな。ゴルシの参加したレースを見るってことで集まってもらったが、まぁ見てもらった方が早いだろ。」

 

 

 

 

 

視聴後☆

 

 

…………なぁにこれぇ?

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「トレーナー! おみあげ買ってきたよ!」

 

 

「おー、たくさん買ったね。」

 

 

「うん! みんな落ち込んでたから、いっぱいあげるの!」

 

 

「そっか、ウララは偉いなぁ。……そうだ、これから東京まで時間かかるし、この動画を見といてくれる?」

 

 

「いいよ~! あ! レースの動画だ! 会長さんたちが走ってる!」

 

 

 

 




ふぅ、何とか書き終わったぜ。予定ならあと2,3話ぐらいダービー前の準備期間に当てて、そっからダービーに行きましょうかね。

にしてもちょっと疲れたな。皆様に送ってもらったはちみつでも食べながら休憩しようかなぁ……。


「ごくごくごく………けぷ。」


けぷ?


「ごちそうさまでした。トレーナー、はちみつ美味しかった。……おかわり。」


そこには頂き物のはちみつをそのまま飲んでいたオグリキャップの姿が…





誤字報告いつもありがとうございます。
こういうのちょっとやってみたかったの。


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PART53

お待たせして申し訳ない。
それでは、どうぞ。


ぷいぷい! みなさまこんにち大明神。投稿者です。

 

前回は衝撃的なビデオを見せられましてね、うん。スぺちゃんは"すごい!"、"カッコイイ" "私もあんな風に走ってみたい!" な感想だったんですけど、わたくしはねぇ、うん。どうしようかと。

 

短期的に考えればスぺちゃんのスキル育成や新規スキルの入手に非常に役立ちそうでうれしい映像なんです、うん。ちゃっかりゴルシちゃんとトレーナーさんに確認を取りまして映像を頂きました。それと皐月賞の賞金でお部屋にパソコンを設置したのでいつでもその映像を見ることはできます。

 

あ、スぺちゃんあんまり遅くまでパソコン見てたら明日に響くからそろそろやめましょうね。

 

 

「はーい。」

 

 

ま、経験値の宝庫ではあるんですけどもね。内容があれでして……。

 

 

 

 

序盤から大逃げかましてるセクレタリアトとそれに何とかついていっている日本勢。中間地点過ぎたあたりでこのまま圧勝かと思いきや、会長をはじめとしたヤベー奴らが速度アップ。ゴルシちゃんもちゃっかり後方で抜錨。そのままあれよあれよと会長が3人抜きまして固有スキル発動。やっぱ本家は違うのか猛烈な速度でバクシン、したと思ったら続いていたブライアンやオグリも普通に速度上げて続いていく。

たぶんなんか日本勢にかなりのバフを掛けるスキルでも使ったのだと推測しますが、そのままみんなで猛追してゴールイン。差は4バ身とはなりましたが、あの31バ身差のセクレタリアトにそれだけついていけてる時点でヤバイのら。あとちゃっかり5着に入ってるゴルシちゃんもやばいのだ。

 

 

ま、結論を言ってしまうと……。

 

なんでセクレタリアト相手に結構いい勝負してるんですかね、会長?

 

いや、いいことなんですよ。元々日本は海外とのレベル差が大きすぎて「海外ウマ娘には勝てない。」なんていわれてたのでそこんところはいいんです。でもね、スぺちゃんクラシック後のシニア級でぶつかる可能性があるの。

 

 

これ、勝てるん……?

 

 

普通に考えて会長とかシャドーロールの怪物とか葦毛の怪物とか、負けたら絶対次勝つために頑張りますやん。ステータス上がりますやん。シニア級での難易度上がりますやん。しかも挑戦するって言っちゃった今年のジャパンと有馬どうすんの。

 

いくらこれまでがんばってくれてるスぺちゃんでも彼女たち相手に戦って勝つのは結構難しいですよね……。

 

う~ん、どうしたものか。

 

 

 

 

作戦といたしましては、ケガ率を低下させるこれまでにお世話になりまくっていた[鉄人]様だよりにかなりのオーバーワークによってドラゴンボールみたいな超回復目指してやってみるぐらいしかない気がしますよね。

 

もちろん、上のヤベー世代が出走しないレースを狙う、ってのも作戦にはありましたけど、そんなの見たく無いですし、スぺちゃんもよく思わないでしょうから却下です。

 

 

と、いうことで練習方針、チャートを次回までに練り直しておきます。次回からは練習地獄になっちゃうかもしれないのでそこんとこよろしく。

 

 

 

……スぺちゃん~! もういい時間やからはよ寝んなさい~。

 

 

 

「ふぇ! ほんとだ! お、おやすみなさい~。」

 

 

 

はい、お休み。んじゃ、今回はこんなところで、また次回お会いしましょう~。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

き、気まずい……。

 

 

時刻はお昼時。今日もみんなでお昼を食べようとしていつも通りの席に座ったけど、どうしよう、この何とも言えない雰囲気。

 

絶対に無理に笑ってるエルちゃんに、異様に静かで目が座ってるセイちゃん。グラスちゃんはなんか殺気立ってるし、キングちゃんがお葬式帰りみたいなテンション。

 

いつもお昼はこの5人で食事することが多くて、今日も何も考えずにいつもの席に座っちゃったけど、失敗だったかも……。いや、でも急に違う人とご飯食べるようになったらそれはそれで避けてるみたいになっちゃうし……。

 

今は無理やりエルちゃんと会話できてるけど、微妙に会話がかみ合ってないし、このままだと会話が途切れて沈黙になっちゃう。

 

 

だ、誰か助けて……。

 

 

 

「た、だいま~。お~! みんな一緒だね! 私もここで食べていい?」

 

 

「「「「「ウララちゃん(さん)!」」」」」

 

 

「お、お帰りなさい。帰ってきてたのですね。」

 

 

「うん! さっき帰ってきたの! あ、これおみあげね~!」

 

 

うわ~、すっごく大きいリュックからどんどん出てくる……。UFOみたいなマスコットの人形や木彫りのワンちゃん。カツオ?のフィギュアに提灯? しかも全員分ある。

 

 

「あとお菓子もいっぱい買ってきたよ! スぺちゃん用にも一杯買ってきたからね~!」

 

 

「わ~! ありがとう! これ食べ終わったら早速頂くね!」

 

 

「スぺちゃん……、文字通り山みたいなカレーを食べた後でまだ食べるの……?」

 

 

「ん? まだまだ足りないからおかわりするけど、何かおかしいかな?」

 

 

「いや、おかしいデショ普通! そんな食べられませんテ!」

 

 

「ふふ、そうね。スぺさん、かなり食べ過ぎではなくて?」

 

 

「そうだね~。まぁ~たお腹がぽんぽこりんになりそう。」

 

 

「お~、ポンポコリン! スぺちゃんはたぬきだったの!」

 

 

「む~、ひどいですよみんなぁ~!」

 

 

 

そう言ってみんなで笑い合う。少し前までの雰囲気とはすごい違いだ。

……ありがとね、ウララちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、話も進み、ご飯がおいしく、たくさんおかわり+ウララちゃんから頂いたお土産のお菓子(一番大きいサイズ)を全部食べちゃったと。

 

 

「……はい。」

 

 

それで、無事、[太り気味]獲得で、おなかがポンポコしてるわけですね。

 

 

「……はい。」

 

 

………ハァ。ま、練習方針とか考えてて席を外してた私も悪いんだろうけどね、スぺチャン。

 

 

「ひゃい!」

 

 

ハシリマショウネ。

 

 

「ひゃい! 行ってきます!」

 

 

 




そういえば、何ですが前回のオグリはネタで本編とは関係ない、ということを一つ。


いつもはちみつ、誤字報告いつもありがとうございます。助かります。
ちょっと更新ペース落ちてきてるので前みたいにできるよう頑張りますね。


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PART54

トレセン学園 服飾課

 

 

「……はい! それでお願いします!」

 

 

「解りました。あとはこちらでやっておきますので完成すればお部屋の方に送らせていただきますね。」

 

 

「お願いします、それでは失礼しました!」

 

 

 

 

「先輩、あの子ってスペシャルウィークちゃんですか?」

 

 

「そうそう、勝負服の調整で来てたの。」

 

 

「そういえば皐月賞前のインタビューで背中に星を増やすって言ってましたね。」

 

 

「うん、その星のことだけど、多分これからもっと星の数増えそうだよね。」

 

 

「あー、確かにあの強さならどんどん増やしそう。そういえば課長が『シンザンの再来だ!』なんて言って騒いでましたもんね。……そうするとやっぱり大幅に変えちゃう感じですか?」

 

 

「そうなのよねー、あんまり重さを増やしすぎるのはあれだけど、もともと背中の面積が狭いタイプの勝負服だから学ランみたいにちょっと面積広めるのも考えてる。あとは取り外しできるマントとか。今のところは星の中に星を入れることでごまかすつもりだけど、大幅に変えるなら、申請のこととか考えて数か月は預かっとかないといけないかも。」

 

 

「あー、少しでも重量変わると規定引っ掛かって再申請ですもんね~。自由にやらしてほしいよな、全く。」

 

 

「うむうむ。……そういえばさ、できたら紫のジグザグ模様を追加してほしいって言われたけど理由わかる? 彼女の先輩とかの誰かでそんな意匠してた子いたっけ?」

 

 

「紫ジグザク? どうでしょ? 少なくとも私が持たしてもらった子にはいませんでしたね。でもそれしようとしたら……。」

 

 

「うん、間違いなく再申請。」

 

 

「ですよねー。」

 

 

「ま、今回は無理だけどクラシック明けの冬の時期にまた新勝負服として仕立て直すことになりそうですなぁ。その時に合わせて背中の改造もしていきましょう。さ。仕事仕事。あんたもはよ始めなよ~。」

 

 

「へ~い。」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

(どうです? スぺちゃん、加重トレーニング用のおもり増やしてみましたが、それで動けそうですかね?)

 

 

「む、むぅ……、ちょっときついかも。」

 

 

(そっか~、ちょっと重くしすぎたかも…。うん、なら今日の練習は走らずに歩く感じでいきましょう。その重さに体を慣らしていく感じですね。併走やマシンを使った練習の時はいつも通りのおもりの数でいきましょう。)

 

 

「はーい。いっちに、いっちに、いっちに……。」

 

 

 

「ヤッホー、スぺちゃん!」

 

 

「ごきげんよう、スぺさん。今日は走らないんですのね。」

 

 

「テイオーさんに、マックイーンさん! はい、今日は歩いて頑張ります! ちょっとおもりを増やしすぎちゃいまして……。それに慣れるためにもまずは体を慣らそうと思ってます。」

 

 

「うえ~、また増やしたの~。よくそんなので動けるなぁ。」

 

 

「なるほど、いつもなされている加重トレーニングですわね。……そういえばスぺさんは夏の合宿でも使われていた棒状のおもりを使っているのですか? もしよろしければわたくしが使っている通常より重い蹄鉄を使ってみますか?」

 

 

「蹄鉄、ですか?」

 

 

「はい、お婆様に勧められまして。見た目は普通の蹄鉄と同じですが、重さは段違いです。どうです?」

 

 

「…………はい。う~ん、ちょっと今の私には合ってない気がしますし、膝への負担も大きそうなので遠慮させていただきますね。んじゃ、私は練習に戻りますね! 行ってきま~す。」

 

 

「がんばってね、スぺちゃん~。」

 

 

「お気をつけてですわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、マックイーン。ボク、ちゃんと喋れてたかな?」

 

 

「えぇ、大丈夫でしたよ。」

 

 

「そっか、ふぃ~。うん、何とかなったかな。いや~、どうしてもスぺちゃんの前にいると顔が硬くなっちゃってね。引きずるのがよくないのは解ってるんだけどな~。」

 

 

「テイオー……。」

 

 

「そんな心配そうな顔しないでよ。大丈夫、だからさ。……さ、マックイーン。ボクたちも負けないように練習しないとね。今日も付き合ってくれるんでしょ!」

 

 

「……もちろんですとも、いくらでもお手伝いいたしますわ。それと、テイオー。」

 

 

「うん、なぁに?」

 

 

「いつでも頼ってくださいね。」

 

 

 

 

 

 

「うん……、ありがと。」

 

 




短くて申し訳ない。次はちゃんと長めです。
次回は黄金世代のダービー前、その次にダービー出走、てな感じになると思います。


いつも誤字報告、はちみつありがとうございます。
本当に励みになります。


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PART55

「つまり、菊花賞。3冠阻止のためにダービーを使いたいということ?」

 

 

「うん。その作戦で行きたいと思う。どうかな、トレーナー?」

 

 

練習終わり、この時期の子たちにとっては明らかにオーバーワークとなる量のトレーニングを終わらせた後、セイウンスカイに真剣な顔で相談された内容はダービーを捨てるという決心だった。

 

 

「皐月賞でも、誰からも注目されてなかったナイスネイチャが伏兵として私たちを抜いていった。あれで解ったんだ。人は予想外のことが起きると動揺する。特にレースという極限状態にある時、その一瞬の隙は馬鹿にできない。だから、今度は私がそれを……」

 

 

「セイちゃん、本当にわかってるの。あなたにとってダービーはたった一度だけのレース。そんな選択は……」

 

 

「うん、解ってる。私にとって一生に一回だけの大事なレースだってことは。でも、でもね。トレーナーにダービートレーナーをあげられないのは申し訳ないけど私はスぺちゃんにどうしても勝ちたいんだ。同世代に比べてどうしても実力で劣ってる私がどうにかして彼女に勝つにはこれぐらいしないと、ね。」

 

 

「セイちゃん……。」

 

 

 

そうだ、トレーナーである私が何を弱気になってるんだ。彼女がここまで覚悟を決めて、ダービーをただ一つの一勝にかけようとしてるんだぞ。それを、それを、私は何をしているんだ。私がするべきはここで燻ることか? 超えられない壁の前で蹲ることか?

 

違う、違うだろ。私の教え子がどんな思いをもってこの決断を下したのかを考えろ。

 

 

私の、私のできることを、それ以上をあなたのために。

 

 

 

「えぇ、解りました。セイちゃんの決断、全力でサポートさせていただきます。任せてくださいよ~! 私の持てる限りを、私のすべてをセイちゃんのために使います。」

 

 

「トレーナー。うん、ありがとう。」

 

 

「気にしないでください! さ、今日はもう遅いですし門限も近いですよ。さ、早く帰って休んでおいで~。」

 

 

「……うん。お疲れ様でした、また明日ね。」

 

 

 

 

 

セイちゃんの顔が今にも泣きそうなことは解っていた。

 

私を心配させないよう、自分の気持ちに蓋をするように無理やり笑っていた。

 

 

彼女に二度とあんな顔をしなくて済むように。彼女が勝利をとれる道を探さなくては。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

私は自身の思いを整理するために、東条トレーナーに頼み、学園の道場を貸し切ってもらった。対価として道場の掃除を任されたがちょうどいい。自分を見つめ直すのに掃除は最適だった。

 

 

道着で身を包み、座して薙刀を前に置く。

 

 

学園に来てからできていなかったが、私の精神統一だ。

 

 

 

自身の深層に潜り込み、本当に私が望むものを模索する。

 

 

日常の風景、友人たちとの交流、初めての勝利、圧倒的な敗北、悔しさ

 

 

思い浮かぶ余計な感情を排除し、根幹を探す。

 

ダービーウマ娘、…違う。 三冠、…違う。 海外GⅠ制覇、…違う。

 

 

 

 

私が望むものは、ただ一つの勝利。スペシャルウィーク、スぺちゃんに勝利すること。

 

 

彼女はいい友人であるが、同時にライバル。超える壁でもある。

 

忘れられないあの模擬レース。どうしても勝てない、超えられないと思わされた。

 

 

同時に私の闘争心に火がつけられた。私にとって挑むべき強者が現れたことは素晴らしいことだった。

 

 

 

それなのに私は何をしていた。ただ一度負けたぐらいでめそめそとして、その敗戦を後に引いた。

 

私は恥さらしだ。

 

 

 

あのような態度は挑む側として、レースをするものとして不適切。

 

勝者は決しておごらず、敗北したとしても首級がそのような態度ならば末代までの恥。

 

 

 

 

ゆっくりと息を吐き、座を解く。

 

立ち上がり、体に染み込んだ型をなぞる。

 

 

 

彼女との勝負は一度きりのものではない。

 

勝てるまで、勝つまで、私は挑み続ける。

 

 

そして、敗者となったときは敗者に相応しい態度を。

 

そして、勝者となったときは勝者に相応しい態度を。

 

 

 

 

型をなぞり終わり、構えを解き、ゆっくりと息を整える。

 

 

雑念は消えた。あとは邁進するのみ。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「……にしても変な被り物してんのに腕は化け物って何者なんだろうな。スピカの坊主も変というか異様な耐久力してるし、ウマ娘と同じように癖のある奴はトレーナも強いんかね。」

 

 

今日はお嬢の友人であるハルウララってやつとダートで併走練習を指示している。キングヘイローはダートはできないが練習にはちょうどいい。ハルウララもかなり高く能力がまとまっているし、練習相手としてはこれ以上ない相手だといえる。

 

 

「キングちゃん~! 早く早く~!」

 

 

「ウ、ウララさん。ちょっと待ってくださぃ…。」

 

 

苦手なダートとはいえこの時期のウマ娘としては非常に高いレベルで纏まっているといえるお嬢を楽々と追い抜いてまだ息切れなしか。……ちょっと休ませるか。

 

 

「お二人さん! そろそろ休憩だ、水分補給しとけよ。」

 

 

「は、はぃ。思ったよりきついですわね。」

 

 

「お~! 休憩だ~! お水お水!」

 

 

 

「にしてもハルウララ、だったか? お前さんも速いねぇ。さすがニューダートクイーンって言ったところか?」

 

 

「ほんと、すごいですよね。」

 

 

「……ぷはぁ! お水美味しい! ん? なにかウララのこと話してたの?」

 

 

「いや、あんさんがすごいなって話をしてたんだ。そうだ、すまんがお前とお嬢の分のスポーツドリンクを買ってきてくれないか? つりは好きに使っていい。」

 

 

そう言ってお嬢と話すためにウララに多めに紙幣を握らせ購買へ向かわせる。

 

 

「うん! わかった! 行ってくるね~!」

 

 

 

 

 

 

「それで、どうだ。うまくいけそうか?」

 

 

「……焦燥感、というのでしょうか。ウララさんのおかげで心は軽くなりました。ですが何かをつかめたかというと……」

 

 

「そうか。……ま、気にすんなや。実力はちゃんとついてきてる。気を張りすぎたら勝てるもんも勝てなくなるし、もう少し気楽にやってもいいんだぜ。」

 

 

……思ったより自信を無くしている。いや、それも仕方ない話なのかもしれないな。うまく自信を付けさせるためも短距離でGⅠ狙わせてみるか? NHKマイルは出走登録時期が過ぎちまったし、ダービーに出ることも考えると控えておきたい。なら夏明けのスプリンターズステークスだが……、それまでお嬢はもつのか? それ以前にあのバクシンオーが出走するのは確定している、必ず勝てるとは言い難いレースだな。と、なると難しいな。

 

あとはどこかと合同練習させる方法もあるが……、今のところ実力的にもウララが最適か? リギルやカノープス、緑川のとこでもできるように頼み込んでみるのもいいかもしれん。

 

 

 

まぁ色々考えてみたがウララとやらせるのが一番よさそうだな。適性はダートだが実力は申し分ないし、お嬢の精神的負担をおそらく無意識のうちに減らすように動いている。彼女のトレーナーに聞いた話だと近いうちにまた地方遠征に向かうみたいだが、それまではウチと合同練習できるように頼んでおこう。

 

 

 

「たっだいま~! はい、キングちゃん! スポーツドリンク買ってきたよ!」

 

 

「ありがとうございます、ウララさん。」

 

 

「はい、あと帽子のおじいちゃんにも!」

 

 

「お、おう。ありがとよ。……そっか、傍から見たらもうじじいなんだなぁ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、おじいちゃんどうしたんだろ?」

 

 

「あ~、黄昏てますね。ああいう時は声を掛けると逆に傷つけてしまうのでそってしていただけると……。そういえば今日はウララさんのトレーナーさんが見えておられませんがどうされたのですか?」

 

 

「え~とね、今日は確かたづなさんとお出かけしてるって言ってたよ! あ、それと昨日は桐生院さんともお出かけしてた!」

 

 

「え……、それは色々と大丈夫なのですか?」

 

 

 

 

 




次回、ダービー。

無理に高く飛び上がり続けたコンドルは、星に何を思うのか。


傷つき、再び羽ばたくあなたは美しい。


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PART56

 

 

 

パタリ。

 

中にいるものを驚かせないようにゆっくりとドアを閉め控室から観客席に戻るため、移動し始める。

 

 

仕上がりは上々。彼女と張り合える、とまではとても言えないが食らいつけるまでは成長してくれた。そう、肉体面だけ見れば、だが。ほとんど私が関われない部分、精神的な面ではかなり危うい。この日までそれを解決してやることができなかった。同室のグラスは自身で何とか立ち治り、外側からでもうまく干渉できるまで回復してくれたが、エルはそうではなかった。私から言ってしまうと負担になってしまう可能性を考えルドルフやグルーブ、ヒシアマゾンに頼み込み、気分転換などを色々させてみたが駄目だった。

 

 

先ほども口は笑っていたが、目は怯えていた。

 

 

彼女が何に怯えていたのか、詳しいことは解らないが推測することはできる。

推測でき、その対応を行ったとしても取り除くことができなかった恐怖。

 

 

 

もう今の私には祈り、応援することしかできない。

どうか、どうか彼女の心が救われますように。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

鏡を見ながら勝負服を整え直す。

 

GⅠ、ダービーという晴れ舞台、キレイにしておかないといけない。

 

 

 

……最近は鏡を見ることが怖くて見れてなかったが今日ばかりはそう言っていられない。

 

無理やり顔を向け、鏡を覗く。

 

弱弱しく、今にも壊れそうな私がそこにあった。

 

 

 

こんなのは私じゃない。

 

 

 

 

マスクの紐をもう一度きつく結び直す。

 

 

鏡を中からこちらを見てくる、私でなく『私』はこういった。

 

 

「世界最強はこの私、エルコンドルパサー。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

(いやー、ダービーてのはすごいですねぇ。人の集まりもやばいですし、よっぽど注目されてるなぁ。にしてもよかったですね、スぺちゃん。広告のチラシとかにスぺちゃんが走ってるのが使われてますし、今回も一番人気。)

 

 

「うん、本当にすごいよね。使ってもらえたのはありがたいし。」

 

 

(ま、今回もそこまで緊張せずに、いつも通り走れば大丈夫ですよ。前回より皆さん追いついてくるでしょうが本格的にヤバくなってくるのは菊花賞ぐらいから。)

 

 

「私はいつも通り気にせず走ればいいんだよね、……わかった。」

 

 

(……最近のエルちゃんたちのことで色々思うところがあるのは解るけど、今はレースに集中しよう。あとのことは終わってから、ね。)

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

『さぁ、一国の宰相になるよりも難しいといわれるダービー制覇! その栄冠を手に掴むのは誰なのか! 最も運のよいウマ娘が勝つといわれる東京優駿ではありますが今年に限っては違います! 世代にたった一人であれば絶対的な王者になっていたであろう者たちが結集し、ダービーという王冠を手に入れようとしています!』

 

 

『一番人気には皐月賞ウマ娘、スペシャルウィーク。ジュニア王者でもある彼女はどういった走りを見せてくれるのか。二番人気にはトウカイテイオー、皐月賞では二着となりましたが今回はどうなるか! 三番人気にはエルコンドルパサー、前走の皐月賞では難しい結果となりましたが実力は確かです。』

 

 

『さぁゲートの準備が整い、続々と収まっていきます。』

 

 

 

 

(トレーナーにも言われたけど今回の目的は周りに私がついていけないと錯覚させること。前回の作戦でハイペースで逃げたことをうまく使って今回も大逃げする。私が大逃げしかできなくてついていったら後半の勝負で力尽きてしまう、私についていったら駄目だということを植え付けるんだ。)

 

 

「さぁ、私情を殺せ。」

 

 

 

(あ~、さすがに今回はかなり警戒されてるね。スペシャルウィークさんやテイオーに比べればましだけど視線が痛いや。やっぱり今回は前みたいに伏兵はできないか。ま、期待してなかったから大丈夫。今回は正真正銘私自身の実力で勝負する。)

 

 

「やってやる。」

 

 

 

(理解はしていましたがそこまで注目されてませんね。ま、いいでしょう。ウララさんがあれだけ頑張って地方で活躍しているのです。私が、キングが輝かなくてどうするのか。私の勝利を信じてくれた、応援してくれた人たちのためにも。)

 

 

「見せてあげましょう、王者というものを。」

 

 

 

(冷静に実力差を考えると未だ届かず、しかしながらそれに諦め全力で戦わないのは愚の骨頂。出走するからには本気で、全力で。)

 

 

「グラスワンダー、参ります。」

 

 

 

(マックイーンに手伝ってもらって出来上がった"あの技"、体に負担がかかりすぎるから使いすぎないように注意されたけど、出し惜しみをしてスぺちゃんは勝てる相手じゃない。元々ボクが考えていた"テイオーステップ"、それとボクの"負けない気持ち"で無理やり前に行く。本当は分けて使うようなものなんだろうけど一緒に使う。皐月賞の時はまだ出来上がってなかったけど今ならできる。)

 

 

「よし!」

 

 

 

(さ、今回も作戦は変わらず差し。3枠5番と内側からの出走ですが、進行としましては中盤まで後方。ここで無理に内側に行くぐらいならコーナーで外側に行ってしまうのも手です。ま、そこらへんは臨機応変に、です。それで中間地点超えてからは加速していく感じでいきます。スキルも忘れずに使っていきましょう。……あ、それとバ群に囲まれないように注意していきましょうね~。)

 

 

「(コクコク)頑張ります!」

 

 

 

 

 

『さぁ、各ウマ娘。全員がゲートに収まりました! 様々な思惑を背負ったダービーが、今、始まります!』

 

 

 

 

 

 

 

(あ、【ゲートの支配者】のトラウマ消しするの忘れてた。今回使えないじゃん。……ま、何とかなる……か?)

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『一斉にスタート! 前走の皐月賞と同じようにセイウンスカイ! いいスタート!』

 

 

 

(よし! うまく出れた! ここから前回よりも速度を上げていく! 前回より私は成長したんだ、速度を上げてもスタミナは持つはず!)

 

 

 

(セイさんは大逃げ。……前回のようにハイペースで進むと後半でスタミナが持たなくなる。周りもついていかないようですし私もそうしましょうか。)

 

 

 

『セイウンスカイがただいま独走状態! 他の面々はこのハイペースについていかず後方からレースを窺います。大きく離れて後続には先行策をとっているトウカイテイオー、エルコンドルパサーが来ている。』

 

 

 

(んー、さすがに同じことを二度もさしてくれないか。後ろに付かれちゃったや。でも今回は前と比べてこの集団のペースも遅いし、今のボクならスタミナは十分残せるかな。)

 

 

 

『後方集団にはキングヘイロー、スペシャルウィーク、ナイスネイチャ、グラスワンダーと固まってきている! 先頭のハイペースに飲まれず歩を進めていきます!』

 

 

 

ありゃ、セイちゃんがターボ師匠してますね。ターボエンジン搭載しちゃったのかな? ステータス見た感じこのペースで進んでいるとスタミナ切れちゃいそうですね。まぁ夏開けたら普通にこのペースで走り抜けそうですけど……。ま、今日はこのままゆっくりペースで行きましょう。

 

 

コクコク!

 

 

お、先頭が折り返し地点を通りましたね。んじゃ、そろそろ準備始めますよ~!

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

(そろそろ、ですね。折り返し地点過ぎたころにスぺさんは加速し始める。)

 

 

(問題はついていくか、いかないか。)

 

 

(まぁここでついていかずに最終直線で差す、そのイメージが全く沸かないからやらないんだけど。)

 

 

 

『ここで後方集団が折り返し地点にたどり着き、ッ、ここでスペシャルウィークが加速! それにつられて後方集団も加速! 皐月賞と同じようにスペシャルウィークが後続を引き連れて前へと進みます!』

 

 

 

さ、ここからどんどんスキル使っていきますよ~!

 

 

 

>【不沈艦、抜錨ォッ!】を発動!

>【逢魔時】を発動!

 

 

 

(ッ! やっぱりここだね。……ここで抜かされないように速度を出すのもいけるけど、やっぱり最終直線で勝負するしかない。そこで全力を出すためにもスタミナはできるだけ残しておかないといけない。ボクの脚を、"技"を使うならそこだ。ここは堪えないと。)

 

 

 

 

『スペシャルウィークが率いる団体が先頭集団のエルコンドルパサー、トウカイテイオーを抜いて加速していく

! おっと、ここでエルコンドルパサーも負けじと加速していく!』

 

 

 

『スペシャルウィークを先頭とした集団がセイウンスカイに追いつこうとしています! かなりのハイペースで彼女の一人旅となっていましたが、ここで終わりとなってしまうのか!』

 

 

 

 

(作戦ではここで埋もれることで私からのマークを外して、私のイメージを大逃げしかできない注目しなくても大丈夫なコ、って変更させるのが目的だったんだけど……、ただで負けて、抜かされるなんて気に喰わない。)

 

 

 

『おぉ! ここでセイウンスカイ! 追い抜かれまいとここで力を振り絞り速度を上げてきた……、がここで抜かされた! 現在先頭はスペシャルウィーク!』

 

 

 

 

『現在スペシャルウィークが先頭! 最終直線に入ろうとしている! 後方に続いていた集団を引き離し独走だ! おっと、ここで静かに後方で待機していたトウカイテイオーがスタート!』 

 

 

 

(よし! ここだ!)

 

 

 【究極テイオーステップ】

 

 【最強はボクだ!】

 

 

(最終直線こそボクが勝負すべきところ! スぺちゃんとの差はかなり離れてるし、加速もすごい。でも諦められるもんか!)

 

 

 

『トウカイテイオー、ぐんぐん速度を上げていく! スペシャルウィークに続いていた集団に迫り追い抜かそうとしている!』

 

 

 

「ハァ……ハァ……、くッ!」

 

 

(体力がキツイ。脚が全然残ってない。ハイペースで大逃げしたのは皐月でも同じだったけど、距離の差はやっぱりか。ダービーは皐月賞よりも長いってことは解ってたつもりだけど思ったよりキツイや。しかもスぺちゃんについてきたみんなは比較的体力が残ってるような感じ、多分直線じゃ私はついていけない。残している体力の差から絶対に沈んでしまう。……ここまで、かな。ハイペースで大逃げして、沈んでしまう。そう見せれたはずだし目的は達成できたはずだけど、悔しいや。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで………。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

ん~、そろそろ最終直線ですね。既定の3人抜いてますし、スキル使っていきましょうね~。

 

 

>【汝、皇帝の神威を見よ】を発動!

>【シューティングスター】を発動!

>【空駆ける英雄】を発動!

 

 

 

ほいほい、スぺちゃん加速していきますよ~!

 

……ん、後続が皐月賞の時と比べてかなり近づいてきてますねぇ、これは夏を挟んだ菊花賞難しくなりますなぁ。

 

ま、今回は普通に大丈夫そうですね。

 

 

 

 

はい、ただいまスぺちゃんがゴールしました。後続と7バ身差で勝利です。

大差勝ちとはいきませんでしたが称号に必要な5バ身差以上であるため大丈夫ですね。

んじゃ、ウイニングライブに行ってみましょう!

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

一着 スペシャルウィーク

二着 トウカイテイオー

三着 グラスワンダー

四着 キングヘイロー

五着 ナイスネイチャ

 

六着 エルコンドルパサー

七着 セイウンスカイ

 

 

 

 

 

結果はこのようになった。

 

実力だけを考えればエルはグラスよりも上、いくらこの世代の者たちが強かったとしても、運が悪かったとしても、掲示板にのるぐらいはできたはずだった。

 

だが、それは叶わなかった。

 

体は出来上がっていっているとしても精神は追いついていなかった。

 

 

 

レース直後、私は入賞したグラスをほめることよりもエルの方に駆け寄ってしまった。まだよかったのはグラスも彼女の異変を感じていたため私と共に彼女を心配してくれていたことだが。

 

 

エルは何も話してくれなかった。

 

 

そして………

 

 

 

 

 

「東条トレーナー! 東条トレーナーはいらっしゃいますか!」

 

 

「グラスか、どうした、そんなに慌てて。」

 

 

「エルが、エルが部屋にいないんです!」

 

 

 

 

 

レースの次の日、エルは学園から消えていた。

 

彼女にとって大事なマスクを残して。

 




次回、エルコンドルパサー。

折れたコンドルはもう一度空を目指す。


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PART57

 

 

 

 

私は何をしているのだろうか。

 

 

 

わからない。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「グラス、とりあえず落ち着け。」

 

 

「でもっ!」

 

 

「慌てたところでエルが見つかるというわけではない。とりあえず昨日は自室にいたんだな、その時から今に至るまでを話してくれ。」

 

 

 

おそらく、グラスの錯乱具合から学園側に連絡などはしていないだろう。

彼女の話を聞きながら学園と生徒会の方に連絡し、人手を集めておかねば。

 

 

 

「……昨日は就寝時には一緒にいたんです。それで起きたらとなりのベッドで寝ていたはずのエルがいなくて……、洗面台のところに彼女のマスクがありました。……あ、あと! エルの靴がなくなっていたので寮内にはいないと思うんです!」

 

 

「わかった。とりあえず学園側と生徒会の方に連絡を入れておいた。グラスはエルがいそうなところを探してきてくれるか。」

 

 

「は、はい!」

 

 

 

そう言ってグラスは飛んで出ていった。

 

 

 

……学外に出ていることも考えないといけない。

警察に連絡する必要もあるな。

 

 

 

そう考え私は電話を手に取る。

 

 

どうか無事でいてくれよ、エル。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

(んじゃ、朝練いきましょうかね~。今年の夏合宿はセクさんの御好意でアメリカ行きが決定してますからそっち向けの調整とかもしておきましょう。ま、何をするのかと言いますと加重トレーニングの一時停止ですね。)

 

 

「え、やめるの! 確かに今日はスーツもおもりもしないように、って言ってたけど。」

 

 

(そうそう、まぁ、なぜかというと走法の調整が主になります。スぺちゃん、ダービーの時、体が異様に軽くなってませんでしたか?)

 

 

「そういえば確かにすっごく軽かったなぁ、羽が生えたみたいだった。」

 

 

(そうなんですよねぇ、スぺちゃんの走法は一般的なタイプ。ま、トレーナーさんやスズカ先輩に教えてもらってたのはそれなんですが、身体能力向上によって大跳びになりかけてるんですよね。スぺちゃんに合った走法は一般的なものが一番合っていたので今まではそれでよかったんですが、このままアメリカで走ってしまうと芝の違いと慣れない走法によってさすがのスぺちゃんでもケガをする可能性が出てきます。)

 

 

「ふぇ! ほんとう?」

 

 

(マジマジのマジなんですよね~、というわけでアメリカ合宿までに大跳び走法を身に着けるか自分流にアレンジする、のどちらかをしてしまいましょう。)

 

 

「それで今日は制限しないで走るんだね、わかった!」

 

 

(ま、詳しいところは大跳びの先輩であるテイオーちゃんやトレーナーさんに教えてもらいながらやっていきましょう。今日は自分がどうなっているのかを再確認していく感じですよ~。……ん、あれは?)

 

 

 

 

 

 

 

「スぺちゃん!」

 

 

「あれ、どうしたのグラスちゃん? すごく急いでるけど。」

 

 

(ありゃ、ずっと走ってた感じですね。息も絶え絶えですし、トレーニング用に持ってきていたお水をお渡ししましょう。ほらスぺちゃん、お渡しして。)

 

 

「飲みます?」

 

 

「わ、私は大丈夫だから。そ、それよりもエルを見てない?」

 

 

「エルちゃん? 見てないけど……。」

 

 

「朝起きたときからエルがいないの……、そうだ、屋上! ごめんスぺちゃん、エルを見たら連絡して!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

(あなたのせいじゃない。)

 

 

 

「でも! ……でもね。」

 

 

(きっかけはあなたが思っている通りかもしれない。そしたら、どうするの? 今、あなたがすることはここで立ち止まること?)

 

 

「……ううん、ちがう。」

 

 

(なら、探しに行かないとね。友達として、ライバルとして。)

 

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

周りを、自分を騙し始めたのはいつからだっただろうか。

 

 

私は「世界最強」だと『私』に言い聞かせた。

 

 

 

 

まぁ、もう終わったことだが。

 

 

 

 

今日の朝、マスクをしないまま鏡を見てしまった。

 

私が封じ込めていた『私』が、その感情が限界だったみたいであふれ出てしまった。

 

 

 

不安、焦り、そして恐怖。 苦しかった。

 

 

 

今の自分が本当に『私』なのか、という不安。

 

 

スぺちゃんたちに全く勝てない焦り。

 

 

自分が世界最強どころか何者にもなれず消えていくかもしれない恐怖。

 

 

 

 

 

全部あふれ出てきた。

 

 

 

 

 

 

気がつけば私は走り出していた。

 

ただひたすらにこの場所から、この気持ちから逃げたいと思った。

 

 

ただがむしゃらに走り続けた。

 

 

 

 

気がつけば、海。崖の上から水平線を一望できる場所にたどり着いていた。

 

 

 

 

私は、ただ、海を見ていた。

 

何かが変わってくれることを、どこか期待しながら。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

いた! エルちゃんだ!

 

 

 

(スぺちゃん。先にグラスちゃんに連絡を送りましょう。……それとなんと声をかけるのか、考えてますか?)

 

 

 

………わからない。もしかしたら私の言葉がエルちゃんを傷つけてしまうかもしれない。

 

彼女の夢を阻む私なんて見たくないかもしれない。

 

 

 

 

(自分の思うまま、しっかりと思いを伝えなさい。大丈夫、あなたの思いはちゃんと伝わる。)

 

 

 

うん。

 

 

 

「……エルちゃん、隣。いいかな?」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

もう日が沈みそうなころ、そこにいたのはスぺちゃんだった。

 

 

 

「スぺちゃん……。」

 

 

「よいしょ、っと。う~ん、夕日がきれいですね。」

 

 

「そう、ですね。」

 

 

「いや~、勧められてきましたけどいいところですね、ここ。好きになっちゃいました。」

 

 

「……なんで。」

 

 

「あ、そうだエルちゃん。のど渇いてません? さっき買ってきた……」

 

 

「何で来たんですか!」

 

 

 

なんで、なんでこんな私を追ってきたんですか。

 

私と対極にいるあなたが、

 

私みたいな嘘つきで弱くて何もできない落ちこぼれを

 

マスクで隠さないと何もできない私を

 

 

 

 

世代の頂点に立ってるすごいあなたが

 

 

 

なんで私なんかを見つけてくれたんですか。

 

 

 

 

「だって、友達ですから。」

 

 

「え……。」

 

 

「エルちゃんがどう思っているのかはわからないけど、私はね、エルちゃんと一緒に走るのが楽しかったんだよ。エルちゃんが一緒にいてくれたことはすごくうれしかったし、楽しかった。レースだけじゃなくてね、クラスで一緒に話してくれたり、遊んでくれたり、色々一緒に過ごしてくれた。」

 

 

「トレセン学園に来るまで、ウマ娘の友達がいなかった私は、すごく救われたんだよ。ウララちゃんに、グラスちゃんに、キングちゃんに、セイちゃんに、ターボちゃんに、そしてもちろんエルちゃんにも。」

 

 

「だから、さ。また一緒に走ろうよ。」

 

 

 

 

 

「でも……、マスクがないと何もできなくて、あっても何もできない私にスぺちゃんと一緒に走る資格なんて。」

 

 

 

 

 

「資格なんていらないよ。」

 

 

 

彼女が私の手を引き、立たせる。

 

 

 

「私は、エルちゃんと走りたいんだ。」

 

 

 

そう言って彼女は私の手を引き走り出す。

 

 

とてもゆっくり、ゆっくりと私の手を引くあなた。

 

 

それにつられて動き出す私の脚。

 

 

スぺちゃんがこっちを見ながら笑いかけてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

なんだか暖かい、な。

 

それで、なんだか楽しい。

 

 

 

気が付けば、私たちは思いっきり走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだった。私は最初、走るのが好きだったんだ。

 

最強であることの夢を持つ前、ただ、誰かと走ることが好きだった。

 

 

 

目標を目指すうちに忘れていた根本を思い出した。

 

 

 

なんだか、がむしゃらに、むちゃくちゃに、ただ思うままに走っていると悩んでいたことが、苦しんでいたことが、馬鹿らしく思えてきた。

 

 

 

「スぺちゃん! 行きますヨ~!」

 

 

「お~!」

 

 

 

ただ、思いっきり走る。あの時、走ることを覚えたときのように二人で思いっきり走った。

 

 

 

 

走るのって、楽しいね。

 

ありがとう、スぺちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

それから、色々大変だった。

 

 

思ったより私は遠くまで来ていたらしくおハナさんの車でやってきたグラスと、おハナさんに「どこまで行っているのか」と、泣きながら怒られた。

 

怒られちゃったけど、二人のやさしさが伝わってきてありがたかった。

 

 

 

たらふく怒られた後、グラスちゃんから部屋に置いてきたマスクを渡してくれた。

 

 

 

 

これまで、このマスクは私の仮面だった。

 

弱虫な自分を隠すためのマスクはいつしか心の内から湧き出てくる負の感情に蓋をするものに変わった。

 

 

 

でも、今は元の理由で、ううん、新しい自分であるために、もっと強い自分であるために。

 

 

そして彼女の隣を、その前を、その先を走る私になるために。

 

 

 

慣れたはずの動作が、どこか新鮮に思えた。

 

いつもよりマスクの紐を縛る手に力が入る。

 

 

さぁ、高らかに宣言しよう。

 

 

「ワタシが、ワタシこそが! 世界最強! 史上最強の!」

 

 

「エルコンドルパサーーーーーーーッ!!!!」

 

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(エルコンドルパサーが特定のイベントを経験したため固有スキルが変化します。)

(エルコンドルパサーの固有スキル【熱血☆アミーゴ】が【プランチャ☆ガナドール】に変化しました。)

 

(エルコンドルパサーが特定イベント『原初の思い その先へ』を経験したことにより、これまでに発生していた成長率低下、レース時確定調子低下が消去されます。)

 

(エルコンドルパサーの特定イベント『再臨! 飛翔! エルコンドルパサー!』が発生。現在スペシャルウィークのライバル枠として設定されているため、【対スペシャルウィーク〇】を獲得しました。)

(【対スペシャルウィーク〇】をすでに獲得しているため【対スペシャルウィーク◎】に変化しました。)

 

 

 

(お久しぶりですね。ここだけ見ればエルちゃんだけ強化されてるように見えますが実はダービー前の時にエルちゃん以外は勝負服入手時の星3固有スキルに切り替わってるんです。ちょっとタイミング的に入れにくいかなぁとおもってやってなかったのでここで言っておくわね。ん~、にしてもスぺちゃんも強くなってきてるし周りもいい感じ。彼女に任せてよかったわねぇ。……ん、そろそろ会議の時間か。3人もいるから1人ぐらいサボってもいいと思うんだけどなぁ。ま、仕方ないね。)




これでダービー編は終了となります。
次回からはアメリカ合宿編! お久しぶりなスズカ先輩やセクさんも出てきます。

ちなみにカノープスも一緒に行くみたいですねぇ

……書ききれんのかな?

ま、頑張っていきます。


あと、誤字報告、はちみつ(感想評価お気に登録など)ありがとうございます。
とても励みになります。


それと誤字報告などは感想欄ではなく専用の欄がありますのでお手数ですがそちらでしていただけるとこちらも対応しやすいのでよろしくお願いいたします。


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PART58

アメリカ合宿編といったな。
すまない、少し息抜きの回を入れらせていただく。


>スピード:C+

 スタミナ:B

 パワー :A

 根性  :B

 賢さ  :C+

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.3

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.2

 【空駆ける英雄】    Lv.1

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.1

 

 【ゲートの支配者】(使用不可)

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 (【末脚】)

 (【率いるもの】)

 

 

 

 

(ステータスの上りはダービーも超えましたし予定以上、って感じでいいですね。これから、というか夏の間はスキルの充実、成長に当てた方がいいかもしれないなぁ。最終的に頼りになってくるのはスキルですしお寿司。たま~にどうしようもないステータス差をスキルでひっくり返してくる子たちのことを考えたらそっちの方がよさそうですね。真似てしまいましょう。)

 

 

(それと、エルちゃんを迎えに行った後に生えたこの【率いるもの】ってなんだ?)

 

 

「ねーねー、何してるの?」

 

 

(ん、スぺちゃんですか。今後の予定を考えていたの。見る?)

 

 

「うん! ……"技"っていえばいいのかな? その練習が多いんだね。」

 

 

(そうそう、基礎的な力はついてきましたしそっちメインにしようと考えててね。あ、それとチーム練習の時はフォーム再築をメインでやっていくようにトレーナーさんにお願いしといてくれた?)

 

 

「あ! …………。」

 

 

(……その顔は忘れてましたねぇ? そんなんだからトレーナーさんを「俺、いるのかなぁ……。」なんて悲しませちゃうんですよ。)

 

 

「そうなの!?」

 

 

(そうそう、しくしく陰で泣いてましたよぉ。……ま、そこは嘘ですけど。強くなることに、走ることに夢中になるのはいいですが、こういったトレーナーさんや友達との関係をないがしろにしたらだめですよ。)

 

 

「わかった!」

 

 

(ま、そういうわけで早速トレーナーさんに相談してきなさいな。「走法が崩れてきちゃったけど自分じゃ直し方がよく解りません。このまま新しく走法を確立するか、そのままにするか、大跳びに変えた方がいいのか」って言ってね。あのトレーナーさんのことだから、もう色々と考えてくれていると思うよ。)

 

 

「はーい。行ってきます!」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「と、言うわけで、走法が崩れてきたからどうにかしてほしい、ってことだな。」

 

 

「はい! よろしくお願いします、トレーナーさん!」

 

 

 

スぺのフォームが身体能力、この場合は行き過ぎた過重トレーニングのせいだろうが、そのせいで入学したときに覚えた走法が合わなくなってきている、か。……把握はしていたが俺に振られるとは、な。

 

 

あれからスぺのもう一人のトレーナーについての話は進んでいない。ちょくちょくスぺに確認を取っては見るが、何か考えこんだ後に『たぶん無理』という内容の返答がいつも返ってくる。まぁそういった秘密主義のトレーナーはいないことはないが連絡すら取らせてくれないのはなんでかねぇ? もしかして俺、嫌われてる?

 

スぺのチーム練習後の自主練にも時間がある限り顔を出すようにしていたが、その内容はスぺの異常なほどの体の丈夫さに裏付けされた内容であったし、もし俺がメニューを提示するならば同じものにしていただろう、というものばかりだった。

 

まぁいつもそんな感じであちらさんの指示にそってやっているようだったから今回の件もそうなると思ってたんだが……

 

 

「……スぺ、一応聞くがあちらさんはなんて言ってたんだ?」

 

 

「? ………! はい! トレーナーさんにお願いします、だって。」

 

 

 

と、言うことは任された。ということかね。

 

テイオーとマックイーン、スカーレットとウオッカ。あいつらは自分たちでどんどん高め合っていくし、ゴルシは好き勝手走るし。ちょっと俺いるのかなぁ? って思ってたところだったんだ。ちょうどいい、ちょっくら頑張ってみますかね!

 

 

「お~し、やるぞぉ、スペぇ!」

 

 

「お~!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

んでさ、最近出番なくて哀しみのゴルシちゃんなんだけどさ。

 

スぺ、なんかグルーヴのおやっさんが呼んでたぞ。生徒会室に来てほしい、ってな。

 

 

ゴルシちゃんみたいになんかイタズラでもしたのか?

 

ほら、生徒会室に花火設置したり、ダートで砂の城作ったり、ターフでニンジン栽培し始めたり……

 

あ、もしかしてプールにゼリーのもと、でも入れてゼリーパーティでもしたのか?

 

 

 

「ふぇ! してませんよ、そんなこと! でもなんでだろ? なんか悪いことしちゃったかなぁ? ……あとゼリーは普通にやってみたいです。」

 

 

ま~た家電でも買ったのか? ほれ、例の炊飯器とかレンジとか、さw

 

 

「む~。私も学習しましたからもう買ってません! せいぜいカタログ眺めてるぐらいです!」

 

 

と、いうことは隙をみてまた何か買うつもりだったんだなぁ?

 

 

「ギ、ギクッ!」

 

 

アハハ。ま、今回はお怒りの閣下、ってなわけじゃないみたいだし。気楽に行っていいと思うぞ。

ほれ、ダッシュダッシュ。

 

 

「は~い。行ってきます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえばゴルシちゃんの宝塚記念終わったらアメリカ合宿だよな。

 

……ちょっとなんか用意しておこうかな、面白そうだし。

 




明日も投稿する予定です。

いつもはちみつありがとうございます。
助かります。

あと金色の方も更新しました。


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PART59

2021/06/01 追記
最近私事で忙しく更新が止まってしまい申し訳ありません。
来週の頭には投稿できるはずです。もうしばらくお待ちください。


 

(にしてもグルーヴに呼ばれるなんて何でしょうね? わたくしも呼び出される理由なんて知りませんし、なんかわたくしが知らないうちにスぺちゃんやらかしちゃんたんですかねぇ?)

 

 

「な、何もしてませんよ! ……たぶん。」

 

 

(ま、行くだけ行きましょうね。……ん、あれは。)

 

 

 

 

「お、スぺちゃんじゃん。スぺちゃんも呼ばれたの?」

 

 

「セイちゃん! はい、エアグルーヴ先輩に呼ばれて。」

 

 

「と、言うことは授業中に寝すぎてお叱り、ということはなさそうだねぇ。うん、よかった。」

 

 

 

 

「よかった、じゃありませんよセイちゃん。」

 

 

「グラスちゃんにエルちゃんも! 二人とも呼ばれたの!?」

 

 

「そうなのデス! ……グラス、私もちょっと危ういので言わないで頂けると……。」

 

 

「エルもちゃんと授業受けましょうね、もうノート貸してあげませんよ?」

 

 

「ウ! 努力しまス。」

 

 

 

 

「あら、ごきげんよう。皆さんも呼ばれたんですか?」

 

 

「キングちゃん! ということはみんな呼ばれたんだね!」

 

 

「ええ。にしてもこのメンバーが呼び出される、ということは……。」

 

 

 

 

 

「「「「「レース」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「みんなと走れるなんて楽しみだね!」

 

 

「えぇ、本当に。……血が滾ります。」

 

 

「フフフ、再誕したエルコンドルパサー。見せてやりマース!」

 

 

「ま、キングの立つ舞台に相応しいのかは解りませんがやるからには全力で!」

 

 

「みんな気張りすぎだよ~、……気持ちは解るけど、ね。」

 

 

 

 

 

 

「ん、どうしたお前ら、そんなレース前みたいな顔して……、まあいい。集まっているならちょうどいい、入ってくれ。」

 

 

「ブライアン先輩! はい、失礼します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レースと意気込んで闘志を燃え上がらせていた私たちを待っていたのはレースではなかった。

 

死屍累々、ある意味死にかけているお二人と生徒会室なのに思いっきり食事をしている人だった。

 

タマモクロス、スーパークリーク。そしてオグリキャップだった。

 

 

 

 

「おえぷ……ヤバイ。何やこれ……いまだに腹ん中に残ってる。なんも食う気にならんぞ……。」

 

 

「オ、オグリちゃんはよくまだ食べれますよね……。」

 

 

「ん? そうか? 確かに昨日はたくさん食べたけど、いつも通りだぞ?」

 

 

 

 

「急に呼び出してしまって申し訳ない、知っているとは思うが生徒会長のシンボリルドルフだ。集まってくれてありがとう。」

 

 

「あ、どうも。」

 

 

「本来ならグルーヴが対応するはずだったんだがゴールドシップのイタズラの対応で追われているみたいでな。私が代わりというわけだ。……まぁ早速本題なのだが、君たち5人には大食い大会に参加してもらいたい。」

 

 

「お、大食い大会、ですか?」

 

 

「うむ。実はだな、ここにいる3人が参加するはずだったテレビ局が主催する大食い大会があったのだがその連絡がうまくいっていなかったようでな、別の局の大会にすでに参加してしまっていたのだ。まぁそのせいでここで二人がやられてしまっているというわけだ。」

 

 

「す、すまんなぁ。う、ヤバ、声出したら出てきそう……。」

 

 

「本当にごめんなさいね。……ウ、わたしも。」

 

 

「二人ともそんなに食べていただろうか? 不思議だ。」

 

 

「そろそろ君は自分の食事量を自覚してくれ、オグリキャップ。食堂からのお声が上がってきているんだ。……まぁそれは後で話すとして、このように二人とも出場できなくなってしまっている。君たちがクラシックの大事な時期、というのは理解しているのだがあちらからの強い希望でな。この3人がだめならば君たちに参加してほしいということだ。」

 

 

「そ、そうなんですね。」

 

 

「どうだろう、ゴールデンタイムで放送されるらしいし、かなり有名な番組だそうだ。君たちの新しいファンの獲得にもつながると思うのだが……。」

 

 

「はい! はい! 私、やりたいです! 大食い大会出たいです!」

 

 

「「「「ス、スぺちゃん!?」」」」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『さぁ始まりました春の集大成、今日ばかりは脚ではなく胃袋で戦っていただきます! 春の団体戦! 大食い大会の開催でございます!』

 

 

『今回の出場者たちにご出場頂きましょう! クラシック戦線を戦い抜いたこの5人組が登場だ!』

 

 

 

「いっぱい食べます!」

(ちゃーとないなった。たいじゅうこわい。こんにちはふとりぎみ、さようならすぴーど。)

 

 

「とりあえず恥じない戦いをしようかと、はい。」

 

 

「エルも頑張りますヨー!」

 

 

「キングとして挑まれた勝負は買いますわ!」

 

 

「正直スぺちゃん以外のわたしらがなんで参加してるか、わけわかんないんだよね~。」

 

 

 

 

『今回の出場者であるスペシャルウィーク選手は学園内の大食い大会であのオグリキャップ選手としのぎを削った実力者と噂されています! 注目の選手です!』

 

 

 

『さぁお待たせいたしました! この大会を初めてご覧になる方のためにも、忘れちゃったという方のためにも、今大会のルールをご説明いたしましょう! ルールは簡単食べる側と作る側の暗黒デスマッチ! 一時間の時間制限の中でどちらかが倒れてしまった方の負けとなります! なお、調理側は勝負開始一時間前から調理と材料の搬入を行っております!』

 

 

『今回の調理陣として胃袋たちに挑戦する方々は、なんとドリームチーム! 日本全国のトレセン学園から腕利きの強者たちが集まっております! それでは今回のチーム代表を務める、あのオグリキャップ選手と毎日壮絶な戦いを繰り広げ覚醒したカサマツトレセン学園食堂料理長にお話を伺っていきましょう!』

 

 

 

「今回は各地の学園食堂で戦い抜いてきた猛者、各地のトレセン食堂の看板を背負った16名が集まっております。"みんなをお腹いっぱいで笑顔にする" このためにも今日も全力でおいしいものを作っていきますよ!」

 

 

 

『調理側の意気込みも聞けたところで、そろそろ調理側に残された準備時間である一時間が無くなろうとしています! このタイマーが0になった瞬間、もう一度一時間タイマーが起動し、壮絶な戦いが繰り広げられることでしょう! さぁ厨房から続々と料理が運ばれてきております! ファイターたちの目の前に所狭しと並べられていく料理たち! すでにこちら側からでは顔が見えなくなってしまいました!』

 

 

『さぁタイマーが再スタートしようとしています!』

 

 

『……3,2,1,スタート~!』

 

 

 

 

 

 

はい、え~とここからはわたくしが解説というか進行というか? まぁやらせていただきます。あ、投稿者ですよ。はい、今回のイベントはですね所謂ファン獲得イベントなのですが引きがよろしくなかったようで大食い大会になっちゃいました。完全にコメディ枠として扱われてますよね、スぺちゃん……。運が良いと写真集の発売だったりミニライブ開催だったりいろいろあるはずなんですけどねぇ? スぺちゃんの有り余る食欲がこの惨状を引き起こしてしまったようで、はい。

 

ま、実況していきましょうか。

 

今回はなぜか団体戦、ライバル枠のみんなと、まぁ黄金世代5人衆となぜか各地にいるトレセン食堂職員との対戦です。ほら、例のチャーミングなカサマツ料理長も参戦していますね。

 

今回のチームでスぺちゃん以外に戦力になりそうなのはグラスちゃんとエルちゃんぐらいですかね? グラスちゃんは最近スぺちゃんにつられて食事量が上がってきているみたいですし、エルちゃんはもともとの食事量が多めで、最近覚醒してくれたみたいなので頑張ってくれると思います。キングちゃんは例の5分アニメの方でキング盛り、を平らげていましたが今回戦力になるかどうか……、王者の意地に期待ですね。おそらく戦力外なのはセイちゃん。マウンテンと化した料理たちにちょっと顔を青くしてるので難しいかもしれませんね。

 

 

ま、スぺちゃんは完全にお太りになられるのでもう吹っ切れました。

パクパクですわ~!、してるマックイーンと減量がんばってください。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「む! どこかで馬鹿にされた気が……。」

 

 

「どしたのマックイーン? あ! どうせゴルシじゃない?」

 

 

「いえ、さすがにすべて彼女のせいではないでしょう、きっと別の方……。」

 

 

 

 

 

 

「待てぇーーーッ!!! ゴールドシップッ!」

 

 

「そうカッカするなよエアグルーヴのダンナ。せいぜいトレーニングプールにゼラチン入れて固めただけじゃないか! なんも問題ないだろ?」

 

 

「問題しかないわ、このたわけが! 今日こそおとなしくお縄につけぇい!」

 

 

「でもさでもさ、オグリキャップにシロップでも持たせて突撃させれば大丈夫じゃね?」

 

 

「………確かに、か?」

 

 

「隙あり! じゃあな、とっつあん! あばよ~~~~~!!!」

 

 

「くっ! やられた! 待てぇいッ!」

 

 

 

 

 

「いえ、ゴールドシップでしょうね。」

 

 

「だよね~。」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

と、言うわけで大会の実況をしていくのですが、各選手ペースが違いますね。

 

 

我らがスぺちゃんはスピードなんか気にしない。おいしいものは味わって食べる! を実行しています。おそらくですがこれは前回の大食いでオグリンに敗北したことから学んでおいしく食べた方がたくさん食べれる、を実行しているようですね。君の胃袋と満腹中枢はイカれてるので???

 

グラスちゃんとエルちゃん、キングちゃんはスピード重視のようでとりあえず目の前の山を減らしてしまおうという魂胆のようです。満腹中枢が仕事してしまう前にできるだけ逃げたい作戦のようですね。

 

セイちゃんはもともとの胃袋や大量に積まれた料理たちに圧倒されているらしくそこまで速度は出せていません。ここからうまく抜け出すことができるのか、期待ですね。

 

 

ま、まぁ恐ろしいことに味わっておいしく食べているはずのスぺちゃんの消費スピードと速度重視したはずのみんなとのスピードがそこまで変わらないというのは悪魔たん……ですね。

 

スぺちゃんの個性:[大食漢]が[暴食]になりそうで怖いですね、七つの大罪が始まりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は進みまして試合も終盤戦。

 

はい、そこ。描写サボった、なんて言わない。

 

 

残り時間10分となったところ、いまだ健在なのはスペシャルウィークただ一人ですね。

 

 

30分経過ごろまでは何とかみんなついてきてたんですけど、最初にセイちゃんが寸胴鍋クラムチャウダーに敗北。続いて二度目の対戦となったキング対キング盛りに、キングちゃんが敗戦し一勝一敗で敗退。

 

その少し後にグラスちゃんは大好きなはずの和菓子を攻めていましたが、もう当分見たくない、と残し敗退。エルちゃんも得意な辛口料理と激戦を繰り返していましたが辛さと量のダブルパンチでカウントをとられ、そのまま机に伏せてしまい敗北。

 

そんな周りの惨劇に、ここにいる誰よりも多く食べているだろうスぺちゃんは「まだそこまで食べてないのになぁ、なんでだろ?」なんてことを考えながらバクシンしている感じでございます。

 

 

そして、気になる厨房の調理側なのですがほとんど死屍累々。残っているのは16名中たったの2名、毎日オグリとスぺの二大巨頭を何とかさばいている中央スタッフと最近里帰りしたらしいオグリキャップと互角の争いを繰り広げたカサマツ食堂料理長。両者ともに疲労困憊という感じですが目は死んでおりません。本来チームで対応しているはずの相手ですがたった2名で戦線を維持しています。

 

 

「おかわり!」

 

 

おっとここでスぺちゃんの悪魔コール!

気が付けばテーブルにはお皿の山、料理はすべて彼女に平らげられてしまっている! 調理陣が必死に補給していたはずの料理が既に彼女のお腹に収まってしまっていた!

 

 

ここで間髪入れずにトレセン名物ニンジンハンバーグが飛び出したぁ!

どこのトレセン食堂に行っても存在している人気メニュの超ド級バージョン、合計5キロだぁ!

 

 

しかし、あーっと! 解説している間にもうすでに皿が半分がブラックホールに吸い込まれたぁ!

いったいこいつの腹はどうなっているのか!

 

 

 

おっと! ここで厨房から連絡です!

 

今のハンバーグでこの大会のために用意していた食材がなくなってしまったようです!

そして現在の時間は55分! ……ということはぁ!

 

調理チーム逃げ切れず、食材という体力をすべて食い尽くした勝者は!

 

黄金世代チームです! 半分ぐらいスペちゃんが食べていたけど!

 

 

 

 

と、いうわけでスぺちゃんが大きいお腹をさらしながら司会者の方に勝利コールをされているのをバックに今日はここまでとなります。次回からはお待たせしましたアメリカ合宿編ですね。

 

うん、それまでに絶対に太りまくっているスぺちゃんの体重を絞っておきます。

 

では、またお会いしましょう~。

 

 

 

 





オグリキャップ
「夢に見たことが実現してはしゃいでしまった。全部同じ味と思っていたけど、レーンごとに味が変わっていておいしかった。プールゼリー、できたらもう一回食べたい。」


ゴールドシップ
「ちゃんと衛生面に気を使って作成したぞ! レーンごとに味を変えるのは大変だったけどやってみたらなんかできた。ちなみにあの後グルーヴにつかまってオグリが完食した後にプール掃除をやらされたぞ☆」


エアグルーヴ
「もともと点検日で使用できない施設だったのだが奴の存在を失念していた。奴が掃除を終えた後に確認してみると点検する部分や備品の補充など仕事を全部終わらしていて、よくよく考えると仕事が減っているからたちが悪い。手伝うならもう少し真っ当にやってくれ。」



ーーーーーーーー


やっぱりネタに走った方が筆の進みが速いや、でした。
次回からは真面目にやっていきます。

いつも誤字報告、はちみつ、大変ありがとうございます。


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PART60

 

 

ハーイ、皆さまお久しぶりでございます。投稿者ですよ~。今日もね、スぺちゃんと一緒に頑張っていきましょう、そうしましょう。

 

 

えー、本日はですね。夏合宿、アメリカ出張編!、の間、何をしていくのかと、その準備をしていこうと思います。そうそうスぺちゃん、わたくし皆様に説明しているのでパスポートの受け取りに行ってきてください。この前申請しに行ったときに説明したから覚えてますよね?

 

 

「はーい、行ってきま~す!」

 

 

……大丈夫ですかね? ま、申請自体は終わらせてますし、もろもろ必要のものを持って行ったはずなので大丈夫でしょ。

 

 

んじゃ、アメリカにいる間の方針を説明してきまショータイム!

 

今合宿の目標は3つ。

 

1,セクレタリアトからトラウマになってしまい使用不可になっている【ゲートの支配者】のトラウマ消しに付き合ってもらう。

2,海外遠征の経験を積む。

3,現地にいる日本勢を探す。

4,太らない!!!

 

 

の三点です。ん? 四つあるって? んなもん知らねぇ!

 

 

というわけで一つずつ解説していきましょうかね。

 

一つ目、トラウマ消しですが、前回までこれをするのを思いっきり忘れていたというガバをやらかしていたのでそれのリカバーに走ります。今回のアメリカ合宿に呼んでくれたのはセクさんですし、トラウマにしやがったのもセクさんです。なのでご本人に手伝ってもらってもらいましょうねぇ! と、いうわけです。あと普通に彼女滅茶苦茶強いので、一緒にトレーニングしてもらうことも考えています。次の菊花賞ではスぺちゃんのゲート技が火を噴くぜ!

 

 

お次の二つ目! 海外遠征の経験積みです。シニア後になりますがスぺちゃんには世界中のGⅠレースを荒らしに荒らしてもらう予定ですので、海外の経験というのはとっても大事。アプリ版にはなかったコンディションですが[時差ボケ]、[気候合わず]などのバッドコンディションが引き起こされたり、各地の芝に対応できなかったりと海外遠征にはいろんな不安が付きまといます。んで、今回の合宿でできるだけこういった経験を積んでほしい、というところがあるんですよね。

 

特にですが今回は海外芝に対しての理解を深めてもらうつもりです。先ほど調べてみたところ、今回お世話になる予定のセクさんが所属しているトレセンですが(アメリカさんはとっても広いので日本で言う中央レベルのトレセンが結構数があるそうです。ちなみにスズカ先輩がお世話になっているトレセンと同じところみたいですよ。)、色々な芝のコースがあるみたいでして、軽めとか普通めとか重めとかが集められた室内練習場みたいなのがあるみたいでして、そこで頑張ってもらおうかなぁ、と考えております。やっぱ土地があって金がある米帝は違うなぁ、と。

 

 

んで、三つ目。こちらも海外遠征時に必要になりそうなやつですね。これは単純に海外遠征時にサポートしてくれそうな人を探しておく、ということになります。海外遠征の時期になってしまうとスぺちゃんの能力もほとんど完成しているのでトレーナーさんはいらないんですが、レース登録などの管理をしてくれるマネージャーさんが必要になってきます。まぁわたくしがやってもいいのはいいんですがやっぱり本業の人がいいでしょうと言うことですね。

 

現在お世話になっているスピカトレーナーさんは国内に残るスピカメンバーのために離れられませんし、実はですが国内でフリーであるそういった海外で対応できる技能を持っている人がほとんどいなくてですね。(と、言うのも日本勢があんまし海外に出て行っていないのが理由になります。まぁこの時期日本は海外で勝てないといわれてましたし、縮こまってしまうのは仕方なし。) 

 

というわけで海外で見つける必要があるわけですねぇ!(例の構文)

 

 

ま、でもこの目標はそこまで重要じゃありませんし、運が良ければ見つける。という感じですかね。

最悪わたくしが担当できますからね。

 

 

 

んで、最後。太らない。

 

 

コメント欄の方で気が付いていた方も若干んにゃ、いましたがアメリカの食事はやばたにえん、です。

 

カロリー爆弾がごろごろしてます。

 

 

まぁもちろん節制したり、その分動いたりはするんですけど、やっぱりアメリカの食事で育ったアメリカウマ娘と違って、スぺちゃんはそういった食事になれてないと思います。

 

つまり、「ん~ちょっと物足りない! カロリー高いけど食べちゃえ!」になってしまう可能性がマシマシなんですよねぇ。……なんか言ってたらマジでそうなる気がしてきたな。頼むから毎食毎食[太り気味]連発とかやめてくれよ(n敗)。

 

 

んま、こちらでできる限り注意喚起して、後はトレーナーさんとかスズカ先輩に何とかしてもらいましょう。

 

わたくしにスぺちゃんの暴食を止める力はないので……。

 

 

 

 

こーんな感じですかね。ま、色々とありますが頑張っていきませう。

 

んじゃ、また次回。でわでわ~。

 

 

 

 

(あ、スぺちゃんにあっちで手に入らないかもしれないから今使ってる靴と蹄鉄を多めに買って持って行かせないと。帰ってきたら一緒に買いに行きませんとねぇ。……そういえばあっちの芝用に蹄鉄も変えないといけないのかな? "知っている"けど実際どうかは私にはわからないからなぁ。一応そういったことも調べ直しておかないとね。一応あっちでも買えるように予定よりも多めに換金させておかないと……。)

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

ピスピース! ウマ娘宣伝担当の……、あ、いけね。こっちじゃまだやってなかったわ。

 

 

ま、とりあえずゴルシちゃんだぞ~!

 

 

 

今日はだな、スピカとカノープス(マチタン、イクノ加入済み)で行くアメリカ合宿について説明していくぞ!

 

 

ちなみにカノープスは重賞ウィナーが二人も出てきた、ってことで例の二人が加入したみたいだぞ。後輩、ってことになるけどこの世界の時間軸は色々と狂ってるから、まぁそこらへんは仕方ないな、うん。

 

 

んでさんでさ、アメリカに行くんだけどよ。やっぱり乗るならカプコン製の飛行機だよな! ヘリコプターに乗ろうと思ったけどさすがにアメリカまではいけないみたいだからおとなしく飛行機にしたぞ! ゴルシちゃんてば、えっらぁい~!! 道中何が起きるか知らんけど。

 

セクレタリアトから送られて来た飛行機のチケットは普通で面白くなかったから、ゴルシちゃんだけ特別に変えておいた! なんか行き先が静岡とかラクーンとか書いてあったけど、最終的にはアメリカにつくみたいだし大丈夫だろ!

 

 

いや~、ゴルシちゃんだけ楽しそうな特別便なんて、全くワクワクが止まんないぜ!

 

 

 

 

 

んで、アメリカ合宿なんだけどさ。なんでも8月を丸々使って行うみたいでな。一応交通費とかはセクさん持ちで、宿泊地とかはあっちのトレセンがいろいろしてくれるみたいだな。たぶんあっちにある日本ウマ娘寮とかに入るんじゃね? スズカとかシービーとかに会えるから楽しみだよな。

 

 

あ、言うの忘れてたけどここで言う"投稿者"はシービーのこと知らないからスゲーびっくりしそうで楽しみではある。まぁあいつ、結構おめめ節穴、みたいなとこあるから仕方ないよな。とんでもねぇ見落とししてっし。

 

 

 

「あ! ゴールドシップさん、こんにちは!」

 

 

「お? スぺじゃねぇか! パスポートか?」

 

 

「はい。出来上がったそうなので今から受け取りに行くところです! あ、それと宝塚記念三連覇! 本当におめでとうございます! すごいですよね! 三連覇なんて!」

 

 

「いや~、照れるでゴルシ。」

 

 

「次は凱旋門賞を目指すんですよね! うわ~、すごいなぁ! わたしもいつか走ってみたいなぁ。」

 

 

「うんうん、スぺなら2年後ぐらいに走ってると思うぞ。……あ、それと凱旋門でゴルシちゃんに金賭けるんだったらやめといたほうがいいぞ。」

 

 

「ふぇ? なんでですか? それとお金? 賭ける?」

 

 

「いや、ほんとだったら爆発しそうなもんを無理やり押さえつけて宝塚勝っちまったからな、多分次ぐらいにはゴルシちゃん耐えきれずに爆発しそうな気がするのよ。一応凱旋門までなにも走らない予定だったから、な。」

 

 

 

 

 

 

 

(『おお~っと、どうしたゴールドシップ! 凱旋門という大舞台なのにゲートから一歩も出てこないぞ! 何故か両手をあげて万歳している! すでにゲートは開いている! 走ってくれゴルシ!!!』)

 

 

(「……なんか走る気失せたでゴルシ。」)

 

 

 

 

 

 

 

「むむ!? なんか今みえちまったぞ!? あいつフランス観光に行っただけとか言われちまいそうだ! こうしちゃいられねぇ! この未来を回避するためにもタイムトラベルすっぞ! さらばだ、スぺ!!!」

 

 

「ふぇ????」

 

 

 

そういってワームホール的なものを急に開いてゴルシちゃんは未来に消えていった。

 

彼女を見た者は…

 

 

 

「あ、そうだ。アメリカに行く前に今使ってる靴と蹄鉄買い込んどけよ。んじゃ。」

 

 

閉じかけたワームホールを無理やり開き直し、顔だけ出してそういった彼女は、今度こそ未来に向かった。

 

彼女を見た者は、もういない。

 

と、書こうとしたが彼女のことだ。明日には帰ってくるだろう。

 

 

 

「あれ? なんかメモみたいなのが落ちてる。」

 

 

 

『ゴルシちゃんからみんなへ。ネタ注意、だぞ☆』

 

 

 

 

 

いまさらである。

 

ちなみに未来改変を起こし、未来ゴルシは凱旋門を普通に走れたようだ。





ゴールドシップ
「は? タイムスリップ? ……おいおいトレーナー。ついにボケちまったのか? このゴルシちゃんでもそんなもんできねーし、そもそも大それたこと実現できるわけねーだろ。まったく近頃のトレーナーときたらダメダメですのぅ。そんな空想に浸る時間があるならさっさとトレーニングしようぜ。」



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PART61

いや~、最近の飛行機は思ったより快適ですねぇ! あ、投稿者です。

 

現在われわれスピカ&カノープスはアメリカ行きの飛行機の中です。カノープスの方もいつの間にかフルメンバーになってますし、結構な大所帯ですね。

 

あ、それとなぜかゴルシちゃんだけが違う飛行機に乗っていきましたけど何なんでしょうね? その飛行機カプコンって書いてたけど大丈夫なんかな?

 

 

あ、そうそう。ゴルシちゃんと言えば面白いことがありまして。今年行われていたゴルシちゃんも出走していた宝塚記念のことなんですけど……。

 

わたくしもスぺちゃんと応援に行っていましたがあのゴルシが120億事件を引き起こしてはいませんでした。つまり三連覇クンですね。……お前本当にゴルシか? 真面目に走らないことよりも真面目に走った後の反動の方が怖い彼女ですが……、スぺちゃんに被害が出ないことを祈りましょう。

 

 

なんか最近祈ってばっかだな、私。

 

 

 

 

 

それでね、スぺちゃん。

 

 

いくら約一月ぐらい日本食からおさらばするって言ってもラウンジであんなにワシャワシャと食べなくてもいいと思うの。

 

 

(う! でもスズカ先輩から食べといたほうがいいって……。)

 

 

まぁ、ね。確かに出発前の連絡とかで色々喋ってるうちにそんな話してましたけどもねぇ。あっちでまともな日本食にありつけるか解りませんからそう言ってくれたんだと思いますけどね……。体重管理する側の気持ちも、ねぇ。トレーナーさんがまた顔に手を当てて「あちゃ~」って顔してましたよ。

 

 

(いや~、照れますね~。)

 

 

いや褒めてねぇし。……ま、あっちについたらかなりの減量練習&食事メニューになるので覚悟しておいてくださいよ。

 

 

(え~!)

 

 

はい、そこ! 文句言わないの。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「ターボ、アメリカに行くのも初めてだしみんなと旅行行くのも初めて! う~、ワクワクしてきたぁ!」

 

 

「ほらほら、他のお客さんもいるから静かにしなきゃ。でもあたしも初めてだし興奮しちゃう気もすごく解るんだけど、さ。」

 

 

「……それにしても面識のない私たちが参加してもよかったんでしょうか?」

 

 

「そうそう、なんか悪いなー、って。」

 

 

カノープスの新しいメンバーであるイクノディクタスとマチカネタンホイザが不安そうに尋ねてくる。先輩後輩、って感じはあんまり好きじゃなくて、同級生みたいに接してたから忘れてたけど、二人はセクさんと面識がなかったんだった。

 

 

「大丈夫だと思うけどな~。それにダメだったらわざわざ二人分のチケットなんて用意しないでしょ。」

 

 

「そうそう! セクさんいい人で太っ腹だから大丈夫! そうだよねトレーナー、……って、あれ? どこ行った?」

 

 

「先ほどスピカのトレーナーさんにあちらに着いてからの相談、ということで移動されてましたよ。……ですが入ったチームの最初の合宿がアメリカで、招待してくれたのがあのセクレタリアトというのはなんというかすごい恵まれていますね、私たち。」

 

 

「だよね。う~、ちょっと緊張してきた。」

 

 

まぁ確かに私も初めて会った時は色々と緊張してたけど、結構フレンドリーだしそこまで心配しなくてもいいと思うんだけどねぇ。

 

 

 

 

前走の日本ダービーの結果はよろしくはなかった。全力を出したと胸を張って言えるレースではあったが5着。皐月賞での3着がまぐれ、伏兵効果、世間にいろいろ言われた。

 

自分でも理解はしている。私たちの先頭を走っている人たちに私が太刀打ちできるものがないということは。今はまだよくてもこれから引き離されることは目に見えてる。

 

 

だけど、こんなところで諦めるのは間違ってる。

 

 

わざわざ呼んでもらったんだ。結果が見えていたとしてもやれるだけやってみなくちゃ、ね。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

ところ変わって日本トレセン学園、美浦寮の一室。

 

 

 

「くぇ~~~、今日も疲れたデース。ただいまマンボ~。」

 

 

「ほらエル。自室について気が緩むのも解りますが大きい声を出したらだめですよ。もう遅い時間ですし。」

 

 

「おっと! そうでしたネ。 マンボも静かにしてますし、アタシもそうしなければ! ……そういえばマンボのご飯がまだでしたネ、ちょっと待っててくださいヨ~。」

 

 

 

そう言いながらペットである鷹のマンボのエサを取りに行ったエル。皐月賞が終わったときから、特にダービー直前まで見ることのできなかった元気なエルが見れてうれしく思う。

 

この前なんか無表情で淡々とマンボにエサをやり続けるエルを見たときはなんて声かければいいかわからなかったんですもの。彼女が追い詰められてしまうほどまで、何もできなかった自身を恥じ入るばかりですが、元の彼女に戻ったことを喜ぶくらいは許されるでしょう。

 

 

 

「おぉ~! 今日はいつもよりガツガツですネ! 待たせてたみたいでごめんね、マンボ。」

 

 

 

エルに元気がなかった時、彼も心なしか元気がなさそうでしたが今は違うみたいですね。

 

 

 

「そういえばエル、そろそろ合宿時期が迫ってるけど準備はできてるの? 去年みたいに前日に準備を手伝うのは嫌ですよ、私。」

 

 

「さすがに今年はダイジョウブですって。もう準備は進めてマース!」

 

 

「ほんとですか~? 直前に泣きつかれても手伝いませんよ。」

 

 

「うっ、それは困るのデスガ……。あ、そういえば今年はセイちゃんも合宿場の方でするみたいですヨ。なんでもレース勘を鍛えるのとあそこの設備を使いたいから、って。」

 

 

「あら、そうなのですね。確か彼女が所属しているチームは情報の秘匿とかで別の場所で行うのが恒例だったと聞きますが何かあったのですかね?」

 

 

「う~ん、たくさん人がいるところがいい、って言ってましたケド、何でしょうね。エルにはサッパリ。」

 

 

「まぁ一緒に練習できるのはうれしいですし、今は単に喜びましょうか。……ということは私達とセイちゃんは学校の合宿場、キングちゃんは去年行った場所と同じところ。スぺちゃんたちスピカはアメリカですか。」

 

 

「海外合宿なんてすごいですよネ。これ以上差を広げられないように頑張らないと。……でもおハナさん不思議そうにしてましたよね? 『どこからそんな金出してるんだ?』って。」

 

 

「スピカは部費のほとんどが食費とゴールドシップ先輩の後始末に使われている、って有名ですもんね。ほんとにどこから出してるんでしょう?」

 

 

 

ほんと、不思議ですよね。おハナさんも『あいつの飲み代立て替えてやったの何回目だったけ?』って愚痴ってましたし、スピカトレーナーさんは資金繰りに苦労なされているイメージがあったんですが……。あちらに何か伝手でもあるのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

「そういえばエル。今年もマンボにはついてきてもらうのですか?」

 

 

「いえ! 今年のマンボはお留守番です! マンボのエサを作ってくれてる食堂の方が面倒見てくれるんデス!」

 

 

「あぁ、道理で。マンボのエサが最近豪華になったのはそれででしたか。」

 

 

「帰ってきたときにスぺちゃんみたいになってないか心配ですが、あの人なら安心して任せられマス!」

 

 

 

 

 

まぁ案の定というべきか、合宿から帰るとマンボは太っていた。

アメリカから帰ってきたスぺちゃんも心なしか丸くなっていた。

 

二人して大笑いしてしまったことは秘密である。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

(お、空港が見えてきましたね。ほらスぺちゃん窓見てみ。)

 

 

あ、ほんとだ! う~ん、やっぱり日本と違う感じがするなぁ。北海道から東京に来た時もすごい! って思ったけどなんだかそれ以上な気がする。

 

 

(ま、経済規模が違いますし、そんなもんじゃないですかね。……それとスぺちゃん、英会話はちゃんと頭に入れてきましたか?)

 

 

うッ! ちょっとまだ不安です。

 

 

(ま、まだ2年生ですし大丈夫ですよ。トレーナーさんやスズカ先輩がある程度ついてくれるでしょうし、最悪私が出張りますから安心しなさいな。)

 

 

お~、なら安心だね。アメリカ観光楽しむぞ~!

 

 

(観光もいいですけどちゃんと練習もするんですよ。)

 

 

解ってるって! 私、負けないもん!

 

 

(セクさん。)

 

 

うぐぅ! あ、あの人はちょっと……。

 

 

(はいはい、プレッシャー返しされたので苦手意識持ってるのは解りますけどこの合宿の間は色々とお世話になりますからちゃんとするんですよ。)

 

 

は~い。

 

 

 

 

(ちと調子乗り始めてる、のかな? この合宿がタメになるといいんだけど……。)




スぺはセクさんに『お忍びで来てたのがバレちゃうから名前出さないでね』と言われてるので走者くんちゃんに教えてもらいながら、うまく名前を出さないようにしています。なのでアメリカ合宿の資金元がスピカトレーナーだと勘違いされてるんですね。


〇スピカの出費

ゴルシの後始末     45%
食費(スぺ)      25%
食費(マックのスイーツ)10%
食費(テイオーはちみつ) 5%
食費(その他)     25%

練習機材などの雑費   30%


稼ぎ柱が多いこのチームでもこのありさま。マックはお嬢様なのでお高いスイーツを要求しますし、テイオーははちみーを毎日補給せねばなりません。ダスカやウオッカもウマ娘なので食は多い方ですし……。

なお予算オーバー分はトレーナーの自費です。かなりの高給取りのはずなのに彼のお財布には5円玉しかなかったのだった……。


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PART62

 

 

「セクさんだぁ!」

 

 

そういいながらこちらに向かって走ってくるターボ。

まったく、変装して迎えに来てるから気を付けてほしいところだけど、まぁそれが彼女のいいところだしね。

半年前よりも速くなっている足で全力タックルしてくるターボエンジンを受け止めるために姿勢を低くする。

 

 

 

 

 

 

今日は待ちに待った”彼女たち”が到着する日。自分の教え子であるターボとネイチャ、その後輩たち。迷惑をかけたお詫びとして呼んだスピカ、そしてスペシャルウィーク。

 

彼女たちがどこまで成長しているか、純粋に楽しみだ。

 

同じチームメイトということでうちのトレセンに留学しに来ているスズカも連れてきたが、物静かな雰囲気の彼女の耳としっぽがしきりに動いていることを見るに正解だったようだ。主戦場が芝の彼女とはそこまで話したことはなかったが、彼女の知られざる一面を見れたようだ。

 

 

 

 

 

 

思っていたより大きめの衝撃に驚きながら片足を少し後ろに下げて力を逃がす。何とか後ろに倒れることだけは避けられたようだ。よくドラマとかで見る受け止める側を中心としてくるくる回るのをしてやろうと思ったができなかった、無念。

 

 

 

「セクさん久しぶり! 元気してた!?」

 

 

『相変わらず元気だなぁ、ターボは。もちろん元気にしてたよ。』

 

 

 

「もぅ、ターボ~。結構強めなタックルでしたけど大丈夫でしたか?」

 

 

『お、ネイチャも久しぶり。大丈夫、鍛えてますから。それよりネイチャはいいの、飛び込んでこなくって?』

 

 

「わ、わたしはいいですってぇ、恥ずかしいですし。」

 

 

『む、そりゃ残念。』

 

 

 

ターボにつられてネイチャ。その他の面々も集まってきたようだ。隣にいたはずのスズカも少し離れたところでスピカメンバーに囲まれている。……もう少し時間がかかりそうだし周りにそこまで人もいない。なら私たちももうちょっと話し込んでもいいかな。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

たぶん、このチームのことだから空港についたらすぐに囲まれると思って連れてきてもらったセクさんから離れてたけどやっぱり正解だったみたい。

 

案の定囲まれちゃいました。

 

 

昔はこういった騒がしいのは好きではなかったけど、スピカのはまた別ね。

 

 

頼りないけどちゃんと私たちを見てくれているトレーナーさん。

 

いつも競い合っているウオッカにスカーレット。

 

日本で見た時よりも何周りも強くなっているテイオーにマックイーン、

 

 

 

そして

 

 

「お久しぶりですスズカ先輩!」

 

 

 

スぺちゃん。

 

 

 

明らかに強くなっている。ともに走らずとも見ればわかる。

 

先輩で、彼女より長く走っているはずの私が危機を覚えるほどに。

 

 

 

確かに以前の私、留学する前の私なら確実に負けていただろう。

 

だが、私も確実に階段を上がっている、強くなっている。

 

 

今すぐにでも彼女と競い合いたい気持ちはあるけれど、今はすることじゃない、よね。

 

 

 

「久しぶりね、スぺちゃん。」

 

 

 

今は再会できたことを喜ぼう。競い合うのはまた今度だ。

 

 

 

 

 

 

「そういえばゴールドシップは来てないのかしら?」

 

 

「なんだか違う便に乗ったみたいで、現地集合らしいです。」

 

 

「えぇ…?」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

どもどもみんなのアイドルウマ娘、ゴルシちゃんだZO!

 

 

実は今日から実況風小説の中で実況をやってやろうとしたけど感想欄でさすがに怒られそうだからやめておくのだ。おら、もっと褒めろよ。

 

 

ちなみにやろうとしてたのは静岡三部作とバイオな危機のラクーンの奴を実際に体験しながらやろうとしてた。

さすがにクロスオーバーのタグ付けしないといけなさそうになるから止められたんだよな……。

 

 

んでさ、いまさら? なんだけどお前たちの言う走者くんちゃんの正体ってどこらへんでオープンしたらいいんだろうな? 一応作者の頭ン中覗いてみたところブレブレだったのがようやく固まったみたいだったから出そうと思ったら出せるんだよな。

 

予定では今年の有馬記念のところぐらいで出すつもりらしいから待てる奴は待って、待てないやつは「オラ、あく出せよ。」ってあいつの尻蹴っ飛ばしたらいいんじゃねぇの。私知らんけど。

 

 

あ、それとお詫びなんだけどテイオーのケガフラグのこと全く持って失念していたみたいで申し訳ないのでゴルシ。本来はダービー後にしようと思ってたんだけどエルの描写してるうちに全部忘れちゃってたんだよな。

 

これも全部自分の身の丈に合わない群像劇に手をだした投稿者ってやつの責任なんだ……。あとで溶鉱炉に沈めとくから許してやってな。

 

まぁそのせいで次の菊花賞はすっごく荒れそうだよ、ということを覚悟しておいてくれよな、とのことだぞ。

 

 

 

んじゃ。またな。次回のためにちょっと用意がんばったのでちゃんと見てくれよな。明日も同じ時間に投稿するらしいぞ。

 

 

 

 

 



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PART63

 

「こちらがこのトレセン学園校舎でございます。我々は夏合宿の間のみの滞在となりますのでほとんど行くこともないかと思いますが、担当トレーナーがこちらの職員室にいることもあるかと思いますのでとりあえずはそこまでのルートを頭に入れておけば大丈夫かと思われます。」

 

 

ほへー

 

 

「お次はこちら、室内練習場です。と、いっても日本の物とは違い、ドーム内にあるターフ、と言えば解りやすいでしょうか。そのままでは育成しにくい各地の芝を取り扱っておりまして、ここだけで世界中の芝に対応できると言っても過言ではありません。海外レースに興味のある方は担当トレーナーを通じて本部の方に連絡していただければ使用できると思われます。またチームでの練習は割り振りが決まっておりますので先ほどお渡ししたパンフレットの方をご覧くださいませ。」

 

 

そうなんだー!

 

 

「あちらは屋外練習場。日本にあるものと似ておりますがこちらはダートの割合が多いのが特徴です。ダートも砂と土などのバリエーションもありますので初めて見る方も多いのではないでしょうか? 日本では砂が一般的ですもんね。ちなみにこちらのトレセン学園はダートに強いウマ娘が多く在籍しているせいか特にダートに力を入れている練習場とも言えますね。」

 

 

すっごーい!

 

 

 

 

あ、どうも投稿者です。

 

現在アメリカに無事到着し、スズカさんやセクさんとも再会できたのでこちらのトレセンを見学させていただいております。本来ならスズカさんやセクさんが引率しながら紹介してもらう予定だったんですが、空港から出ると急に出てきた葦毛のキレイなお姉様が待ち構えておりまして、彼女に連れられて見学しております。

 

 

「日本トレセン学園のスピカ、カノープス御一行様、お待ちしておりました。今回引率を担当させていただきます”船金”と申します。よろしくお願いいたします。」

 

 

空港にわざわざ全員乗れる中型バスと運転手と引率のお姉さん用意してるとはセクさんも準備いいですねぇ(すっとぼけ)、まぁセクさんもスズカ先輩も『あれ、そっちで何か用意してくれてたのかな?』て顔してましたけど。

 

 

 

(ねーねー、あのお姉さんどこかで見た気がするんだけど知ってる?)

 

 

ん? スぺちゃんあの人わからんの? まぁ周りのみんなほとんどわかってないみたいですけど……、あ、スピカトレーナーさんは解ってるみたいですね。

 

 

(うん、知り合いだったっけ?)

 

 

まぁ確かにキレイにおめかししてますもんね。服もどこで手に入れたのか観光会社の引率のお姉さんですし、髪型も後ろで纏めて話し方もまともですもんね。

 

 

ま、ぜんぜんわからん状態のスぺちゃんをほっとくのも悪いですし教えちゃいましょうか。あ、解っても声上げたりしちゃだめだぞ。たぶん最後にドッキリ成功! とかすると思うので。

 

とりあえずあのお姉さんの髪を下した状態を想像しましょう。

 

 

(うん。)

 

 

お次にサングラス。

 

 

(うん?)

 

 

最後にあの何とも言えない特徴的な帽子。

 

 

(帽子?)

 

 

あとはお洋服を真っ赤に染めればはい完成、ゴルシちゃんですね。

 

 

(ふぇ、ゴルシ先輩なの!?)

 

 

そうそう、ゴルシちゃん。まともにしてたら誰かわからんウマ娘ランキング堂々1位の彼女です。

 

今日は引率の方に化けてなんかやらかすつもりですね。

 

 

 

「では最後に滞在中の宿泊施設となります海外寮のご説明をさせていただきますね。こちらの建物は寮、という名はついておりますが実質的には海外からやってくるウマ娘たちの宿泊施設になります。皆様のように短期の留学や年単位の長期留学の方もここを使用されます。今月の団体宿泊予定はスピカ、カノープスの皆様のみとなっておりますが、個人で宿泊されている方もいらっしゃるので、他の方のご迷惑にならぬようお気をつけください。」

 

 

「ちなみに、となりますが現在日本から留学されている方はサイレンススズカ様、ミスターシービー様のお二人となります。スズカ様はこちらにいらっしゃるようですので後ほどシービー様にもご挨拶なされるのはいかがでしょうか。」

 

 

ファッ! シービーおんの!? デジマ!?

 

ふぇ~、こんなこともあるんですねぇ。はい、このようにルドルフと同時期、以前の英傑の皆様は基本的に海外の各地にランダムで散らばっています。まぁ理由としましてはいまだに国内でのドリームシリーズの開催がなされていないことと海外で腕試しじゃ! してる人が多いからですね。海外遠征時に会えたらいいなぁ、程度に思っていましたがまさかここで会えるとは……、これは予定の書き直しですねぇ!

 

ちなみに会長は生徒会長として学園を引っ張るのとURAからのお願いによって国内に留まっているそうです。まぁスターみんなが国外に行っちゃうと困るもんね。ん? マルゼン? すまない、チョベリグさんのことは良くわからないんだ……。なんであの人まだトレセンに在籍してるんですかね? スぺの祖父母世代なんだけどなぁ。

 

 

 

「それでは、私からは以上となります。皆様がよき時間を過ごされることを勝手ながら祈らせていただきます。」

 

 

「あれ? ゴルシ先輩は参加しないんですか?」

 

 

「「「「「「「えっ?」」」」」」」

 

 

 

あ~、スぺちゃん口に出てますよ。

 

 

「え、あっ! そ、その~。」

 

 

 

 

「フッフッフ、ばれてしまったのは致し方なし! そう、引率の”船金”とは仮の姿! そう、私の正体とは!」

 

 

着ていたおべべを思い切りつかみ、勢いよく投げ捨てる!

 

 

「そう! 完全無敵のゴールドシップ様のご登場だ!」

 

 

そこには何故か真っ赤な勝負服に身を包んだゴールドシップの姿が!

 

 

 

 

 

と、いうわけで? 今回はここまでです。

 

華麗な登場に拍手しているカノープス+セクさんとなんか余計なこと言ったみたいでスピカメンバーの襲撃を受けているゴルシちゃんを背にお別れです。

 

 

あ、そうだスぺちゃん。セクさんと一緒に練習できないか今のうちに頼んどいてください。

出来るだけ早めに目標を達成してしまいたいですしね。

 

ではでは~。



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PART64

 

「あら、フクキタル。何見てるの?」

 

 

「あぁ、ドーベルさんですか。今年のダービーを、ちょっと。」

 

 

「ど、どうしたのフクキタル! すごく元気がないけど!?」

 

 

「あはは、すみません。レースとか、走ることに関してならまだよかったんですけど。……ほんとはこんなこと言ったら。いえ、思うことすら駄目な気がするんですが、……彼女がうらやましいな、と。」

 

 

フクキタルが見ていたのは今年、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアンに続いて新しく三冠になろうとしているスペシャルウィークの動画だった。

 

 

それを見るフクキタルの顔は私が見たことがないような顔をしていた。

 

ただ、すごくつらそうな顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シラオキ様、私、私たちの魂の御先祖様。

 

辿った道は違うけど、あなたと私は似ている。

 

だから考えてしまう。

 

 

 

 

「彼女がよくて、何で私は駄目なんですか。」

 

 

 

 

もう自分の中で区切りがついたと思っていたけどそうじゃなかったみたい。

 

 

お姉ちゃん、あなたは私を見てくれていますか?

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

『んじゃ、早速始めましょうか。申し訳ないけど付き合える時間はそこまでないからペースはやめで行きましょ。』

 

 

『はい! よろしくお願いします!』

 

 

『それで、練習内容は……、ゲート内、というかプレッシャー関連か。私とのレース時に私がやらかしたプレッシャー返しが原因でその後うまく使えなくなった、と。……なんか本当にごめんなさい。そこまで響くとは思わなくて……。』

 

 

『い、いえ! 私の問題なので大丈夫です。』

 

 

『そう言うなって。明らかに私が原因だし、おもいっきし迷惑かけてるからその改善全力で手伝わせてもらうよ。それじゃあ私との練習はプレッシャーのかけ方の再習得とプレッシャーをかけられた時の対処法。あとあの時みたいにプレッシャー返しをされたときにどうするか、ってのをしていきましょうか。』

 

 

 

 

 

どうも皆様ごきげんよう、投稿者ですぜ。きょうはスぺちゃんがセクさんと一緒にプレッシャー関連のスキルについての再履修をしているところを裏に始めて行きますね。

 

 

ちなみに表記が変わっているところから解ると思いますが現在会話で使われている言語は英語です。いくら成績がいい方だといっても現在中学2年生のスぺちゃんにはちょっとばかし英会話、しかもこういったレース関連の専門用語とかも出てくる場では理解できないことも多いのでわたくしの方からもいくらかサポートしてます。

 

こういった言語関連のサポートはある程度の英語成績を修めたまま高等部に上がれば改善されますが、まぁそこまで我慢ですね。実はシニア級2年目から海外遠征を始めるのもこういった理由があったり……。このサポート普通に英語に対する理解が求められるのでつらたんなのです。

 

 

ま、そんな話は置いといてプレッシャーについての説明がまだだったと思うのでしていきましょうか。

現在発見されているのは3種類。全体散布型、一点特化型、反撃型の3つです。

 

全体散布型はスぺちゃんが保有している【ゲートの支配者】のようなレース出走者全員に影響を与えるタイプのスキルですね。こちらは分散するため威力が出にくかったり、対応されやすかったりしますが全体攻撃なので便利です。有志諸君(wiki)の調査の結果、総合ステータス差によって効果に差が出る【ゲートの支配者】も例にもれず回数を重ねるごとに効果が薄れていきますね。

 

 

お次は一点特化型。例としてはアニメでもあったマックイーン対ライスでの”ついていく”戦法ですね。自身ができるプレッシャーの容量をすべて一つにぶつけるわけですから効果も大きいですし対応もされにくいです。ただ、その相手がキャラ固定、となったりしやすいので使い勝手は悪め。ライバル枠の子たちや特殊な進め方をしているプレイヤー以外は持っていたり使用しているところはそんなに見ません。あとスぺちゃんに取得してもらうことは多分ないと思います。

 

 

最後に反撃型。スぺちゃんがセクさんに食らったやつです。相手からプレッシャーをかけられた時、と使用条件は限られますが効果は非常に高め。スぺちゃんがスキルを使用不可に追い込まれるほどなのでそういったデバフも撒ける高性能だったりします。ま、その分習得難度も高めですね。

 

 

 

 

んで、今合宿でスぺちゃんにやってもらうのはトラウマを克服してもらうだけの予定でしたがセクさんも結構乗り気みたいですし、プレッシャー関連のスキル獲得とプレッシャーになれる作業の両方を手伝ってもらいましょう。

 

と、いうわけでよろしくオナシャス!

 

 

 

 

『……なるほど今やってるのは全体にかける感じか。んじゃ、それメインでサブにプレッシャー返しね。』

 

 

 

 

うむうむ、いい感じで指導してくれてますね。このままほっといても大丈夫そうです。

 

その間にわたくしはスぺちゃんが渡された夏合宿の間のスケジュールの確認でもしておきましょうか。

 

 

ではでは皆さんこの辺で、次回はスぺちゃんがスズカ先輩と併走の約束をしていたのでそこら辺からだと思います。

それではごきげんよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

録画終了、っと。

 

 

早めに予定決めとかないとスぺちゃんも困るだろうし早速確認しましょうか。

 

なんでもセクさんが色々考えて作ってくれたみたいですしちょっと楽しみですね。

 

 

 

ん、最終日の夜にキャンプファイヤー、ですか。楽しそうでいいんですけど……。

 

 

 

 

火、火だよなぁ。

 

さすがにあれの前でいつも通り話せる気はしませんし、別行動かな。収録も何かでごまかそう。

 

スぺの方も何か理由を付けて不参加にしてもらいましょう。

 

 



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PART65

「ここは……」

 

気が付くと草原、小高い丘の上。見慣れた故郷の地。

小さいころに何度も走り回った私だけの遊び場で練習場。

 

 

「懐かしい、なぁ。」

 

 

口からこぼれ出た言葉に驚きながらも、自身が既にホームシック、というものになっているだろうかと思案する。まだアメリカに来てから数日でこれだ。この先私は大丈夫だろうか。

 

 

そんなことを考えながら昨日までのことを思い出していると、ふと自分の手に目が行った。

 

手が透けており、うっすらと輪郭を保っている。着ていたはずのパジャマもいつの間にか勝負服だ。

 

 

「あぁ、いつものか。」

 

 

 

"私"の記憶。私が見たこともないその記憶を見る時間が始まったことを理解する。

 

ここでの私はただの傍観者。こちらから出来ることは何もない。

 

ただ、流れに身を流すのみ。

 

 

 

 

 

 

 

「おねーちゃん! おねーちゃん! はやくはやく!」

 

 

 

小学校に入る前ぐらいの私だろうか。

写真でしか見たことのない小さな私がこちらに向かって走ってくる。

 

 

 

「お! スぺは速いですねぇ。 こりゃ将来は私らみたいにスプリンターですかな?」

 

 

 

栗毛のどこか私に似た女の人がこちらに向かって歩いてくる。"お姉ちゃん"らしい。

 

 

 

「だっておかーさんのこどもで、おねーちゃんのいもうとだもん! ……それですぷりんたーってなに?」

 

 

「ん~? キャンペン母ちゃんや私みたいに短い距離を走るウマ娘のことさ。」

 

 

「???」

 

 

「ふふ、まだちょっと難しいか。ま、とっても速いやつのことだよ。」

 

 

「じゃあわたしもすぷりんたー?」

 

 

「あぁ、もちろん。それにもしかしたらもっとすごいステイヤーになれるかもしれないぞぉ。」

 

 

「じゃあわたしもすていやーになる! ……でもおねーちゃんはとってもすごいのにすていやーじゃないの?」

 

 

「はは、私はちょっと無理かなぁ。スぺにはまだ距離の違いなんてあんまわかんないだろうし、たぶんどっちを見てもすっごくながい! で終わると思うぞ。」

 

 

「む~! わたしわかるもん!」

 

 

「ははは、怒んなって。それに今度見に来るんだろ? 中央と違って地方はそんなにデカくはないけれどここと違っていろんなウマ娘たちとも会えるし、でっかいレース場もある。ま、楽しみにしてるといいさ。」

 

 

 

そう言いながら栗毛の女性は小さい私の頭を撫でた。

 

 

 

……なぜだろう。"見たことのない"記憶のはずなのに私はこれを知っている。

夢という形で思い出そうとしている。

 

でもなぜかこれ以上近づくと駄目な気がする。

 

私はこの先を、自分がなくしてしまったものを知りたいはずなのに"私"はそれを強引に止めようとしている。

 

 

 

 

気が付けば体が前に進もうとしていた私をこちらにとどめるように"小さい私"が泣きながら私の服を引っ張っている。この先にあるものを恐怖しているのだろうか。必死に私の服を持ち、行かせまいと引っ張り続ける。

 

 

目の前には私の姉がいた。

 

 

触れることのできない私たちが、感じることのできなかった暖かさがゆっくりと私を包み込む。

 

 

「無理に思い出す必要はないよ。」

 

 

いつも私を導いてくれる声を聴きながら私の意思に反して、私の目は閉じていく。

 

 

 

イヤだ、もっとここに居たい! お姉ちゃんの暖かさをもっと感じたい!

 

 

 

「さ、もう起きる時間だ。スぺは"今"を生きている。無理に過去を知る必要はない。……ただ、つらくなったらいつでもこっちに来ていいんだからね。」

 

 

目が閉じ意識が暗転しようとしている。

 

 

 

イヤだ! 忘れてしまうなんて! もっとここに居させてほしい!

 

 

 

目の前にいる人の顔がかすみ、誰だか解らなくなっていく。

 

 

ゆっくりと世界が閉じ、まっくろになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

 

勢いよく体を起き上がらせる。ここは……

 

 

(お、スぺ。よく寝たみたいだね。……ん、どうしたの? なんか変な夢でも見たの?)

 

 

そっか、今はいつものトレセンじゃなくてアメリカに合宿に来てるんだっけ。

 

 

「ふわぁ~、おはよう。うん、なんかすごくいい夢を見た気がする。どんなのだったかは覚えてないけど……」

 

 

(ま、夢なんてそんなもんでしょ。さ、今日は朝からセクさんとの秘密特訓にスズカ先輩と併走の約束もあるんでしょ。わざわざお願いしてるのに遅れちゃったらダメですし、横で寝てるスズカ先輩を起こさないように準備していきましょう! あ、スズカ先輩にちゃんと書置きしておくんですよ。)

 

 

「は~い。」

 

 

アメリカに来てからわざわざ同室にしてもらったスズカ先輩を起こさないように静かに動き始め、日本とは違ってすっごく大きい部屋に戸惑いながらも用意を進める。

 

 

 

にしてもすっごく幸せな夢を見ていた気がするんだけどなぁ……。

 

どんな内容だったんだろ。

 

 

 

(ミス、スぺ! ハリーハリー! 時間迫ってますタイ!)

 

 

「え! ほんとだ! 急がないと!」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

【サイレンススズカ視点】

 

 

海外という舞台は思っていたよりも広くて、大変だった。

 

みんなに見送られて一人でやってきたアメリカ。

 

シービー先輩やアメリカでできた友人たちのおかげで寂しくはなかったけどどこか物足りなかった。

 

 

 

やっぱりスピカ、隣にスぺちゃんがいなかったせいだろうか。

彼女が入学してからほとんどの間、一緒に毎日練習していたせいか、隣に彼女が走っていないと違和感があった。

 

スぺちゃんと一緒に走っている今だからこそ理解できる。

 

 

 

自分では普段通りに走っていたとしてもどこか抜けている。

 

シービー先輩のトレーナーさんにそのことを指摘されたとき、その理由をわからずに進んでしまった私はアメリカで最初に走った復帰レースで4着だった。復帰明けで体があの時の速さに到達できていなかったということもある。だけど一番の理由は私が集中できていなかったということだ。

 

 

自身を奮い立たせる、負けたくないという気持ち。私の新しい走る意味を与えてくれたスぺちゃんが近くにいないことで、これほどまでに力が出せないとは思わなかった。情けなかった。

 

 

本当なら復帰レースに出たということはすぐにでもスぺちゃんに知らせるべきだった。

 

でも私の惨めな姿を見られたくなくて言うことができなかった。

彼女に電話することができなかった。情けなかった。

 

 

そんなうじうじしていた私を見かねたのか、シービー先輩は私を引っ張って寮内のテレビまで連れて行ってくれた。そこにはスぺちゃんが皐月賞に出走している映像が流れていた。

 

 

 

強かった。すごかった。

 

 

 

一緒に走っていた時と比べて格段に強くなっていた。中盤からのごぼう抜き。

 

止まっていた私を後ろから思いっきり前へ押し出してくれたような衝撃だった。

 

 

 

 

私が止まっていたらスぺちゃんはすぐに私に追いついてしまう。

追いついた時、そこで私が今のように立ち止まっていたらスぺちゃんはどう思うのか。

考えずにはいられなかった。

 

 

次の日から私はいつもよりも練習に気が入っていたと思う。

あの天皇賞で辿り着いたその先をもう一度見ることができるように、見続けることができるように。

 

何よりもスぺちゃんの前を走り続けることができるように。

 

止まっている暇はなかった。もっと私も頑張らないとね。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「ふわぁ~! やっぱりスズカ先輩は速いですね! ケガする前よりも速くなってませんか!?」

 

 

「ふふふ、ありがと。スぺちゃん。でもどうかしらね。自分ではあの時の出せていた速度よりはやっぱり遅いかな、と思っているの。もっと頑張らないとね。」

 

 

「うわぁ~! やっぱりスズカ先輩はすごいや、私も頑張らないと!」

 

 

「それにしても、スぺちゃんも私がこっちに来る前よりすごく速くなっててびっくりしちゃった。」

 

 

「えへへ、褒められちゃった。」

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさいね。復帰レースのことを言わなくて。」

 

 

「もう! スズカ先輩ったらそのことはもう大丈夫だって言ったじゃないですか。私もセクさんに負けちゃったからおんなじです! それに負けちゃったからあの約束はなし、ってことにはなりませんからね! ……ですよね?」

 

 

「……ふふ、そうね。来年の秋の天皇賞。楽しみにしておくわ。」

 

 

「はい! 私も今から楽しみです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、"トレーナーさん"からスズカ先輩に逃げのコツを聞いておくように、って言われてたんでした! いいですか、スズカ先輩?」

 

 

「えぇ、いいですよ。」

 

 

スピカで逃げ策をするのは私ぐらいだし、スぺちゃんの中盤からの追い上げで、後半ではほとんど逃げみたいになるからその理由は解るのだけれど。

 

何故かトレーナーさんのところに違和感を感じた。

 

 

……まぁ、いいかな。ちょっと嚙んじゃっただけかもしれないし。

 

 

 

 

 




"走者"からの指示

(ゲートの支配者復活出来たら菊花賞で使うのは確定だろうけど、そうなるとスぺちゃん以外が思いっきり出遅れするみたいな感じになりますので、作戦は差しでも先行にしても逃げみたいになっちゃいます。なのでここは長距離だけどスキルと有り余るスタミナを信じて逃げ策で行ってしまおうかなぁ、と思ってます。もちろんレース中に変更することはあると思いますが逃げの練習や知識を高めておくことは無駄にならないでしょう。と、いうわけでスズカ先輩に色々教えてもらっておいてね、スぺちゃん。)


スぺちゃん

「は~い!」









いつも誤字報告、はちみつ(感想評価お気に入り登録)ありがとうございます。
むちゃくちゃ励みになります。


本当はもう少し先に出そうと思ってたんですけど早めました。
大丈夫だったでしょうか?


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PART66

【ミスターシービー視点】

 

 

「なぁ、スズカ。あそこにいるちっこいルドルフみたいなのがトウカイテイオーでその横にいる葦毛がメジロマックイーンで合ってるよな?」

 

 

「えぇ、そうです。」

 

 

「そっか。……ん? スズカ。未来の三冠ウマ娘さんが呼んでるみたいだぞ、急に呼び止めて悪かったな。」

 

 

「いえいえ、大丈夫です。スぺちゃ~ん、そんなに呼ばなくても聞こえてるわよ~!」

 

 

 

そう言いながらスズカはスペシャルウィークのところへ向かっていった。

 

 

にしてもあれがテイオーとマックイーン、ね。確かにルドルフが目をつけるのもわかる子だし、メジロ家の最高傑作なんて噂されるのも解る。でも……

 

 

 

視線をテイオーとマックイーンからスズカとスぺの方に変える。

 

スズカに逃げのコツを教えてもらっているらしい彼女。

 

確かに皐月とダービーを勝ち、三冠に王手を掛けているだけはある。軽く見ただけだが、すでに完成しているといってもいい成長度の上にまだ底が見えていない恐ろしさもある。まだ日本にいたときに初めてルドルフを見たときの感覚と似ているが、それ以上かもしれない。そんな恐ろしさすら感じる奴だ。

 

 

 

私らのような三冠ウマ娘が出た年はそれ以外に目が行きにくくなる、っていうので『三冠が出た年はそこまで強い娘はいなかった』なんて抜かす奴は一定数いるが、今年はそんな奴らも押し黙るだろう。

 

 

世代が違えば三冠、無理だとしても最低一冠は取れる奴らがごろごろいる。はっきり言って異常だともいえるこの世代、そこの頂点に立ち続け、他と比べれば頭一つとびぬけているスペシャルウィーク。

 

 

ほんと、なんでこんなことになってんだろうね。

 

 

 

 

 

そして、わざわざ海外にまで来て練習しているあそこの二人。

 

トウカイテイオーは皐月、ダービー共に2着。今最もスペシャルウィークに対抗できると思われているウマ娘。しかしながら長距離のレースの出走経験が乏しく、長距離レースとなる菊花賞ではどうなるかわからない。

 

メジロマックイーンはクラシック三冠路線での出走はないものの、長距離重賞への出走経験が多く、そのすべてのレースで素晴らしい成績を収めている。メジロ家特有の天皇賞への思いは彼女にも受け継がれているようで、特に春の天皇賞に向けた調整をしているように見受けられる。経験値稼ぎとして神戸新聞杯からの菊花賞のルートをとるようである。

 

 

レース前のスペシャルウィークを映像でしか知らないのもあるが、どうもスペシャルウィークは調子に乗っている、いや気が抜けてきているというべきか。彼女が出走したレースすべてで圧勝しているのもあるだろうが、自身が負けるわけがないという自信を超えた何かがあるように感じられた。少なくとも私やルドルフとは違い、何をしてでも三冠を掴み取ってやる、という感じではなく、三冠など通過点と言っているかのような……。

 

 

まぁ直前に整えるタイプなのかもしれないが、今考える限りあの二人がひっくり返せるとすればそこの油断をついて、彼女が動揺しているうちにゴールしてしまうというのが道だろう。

 

 

それを成功させるために必要な実力を手に入れるために、ライバルと言える競い合える仲間と共に頑張っているのだろうが……。

 

 

 

「ッ!」

 

 

スパートを掛けるときに明らかにテイオーの左足がブレている。踏み込みの時に力を込めすぎているせいか、その力に足が耐えきれていない。合宿中に何度も見たが、彼女の関節の柔らかさは異様なほど。それは十分強みになるが今ではケガを誘発する原因になりかねない。今すぐにでもやめさせ、安静にさせておかなくては。

 

 

 

 

テイオーに向かって走り出そうとした時、彼女の瞳に目を奪われた。

 

 

決意と共にどんな手を使ったとしても目標を達成しようとする戦士の目。

 

 

私が戦って勝ってきたライバルたちと同じ目、執念の意思。

 

 

 

 

 

 

あぁ、こいつは駄目だ。私が言ったら逆効果になる。

 

 

GⅠ以外の重賞にしか勝てていない奴と三冠、そんな奴が今の彼女に声をかけてしまえばさらに追い詰めてしまうかもしれない。彼女の顔つきを見るにケガの可能性を把握していないのであろう、そんなときに横から急に出てきた奴が自身の思い当たらない不安を言ったとしても、それは効果がない。逆に舐められていると感じさらに厳しいトレーニングをし始めてしまうかもしれない。

 

 

やるならば違う方法で、少なくとも今のスパートを何度もやらせるとテイオーは壊れる。

 

 

私は手短に自分の感じたことをスピカトレーナーにメールで送った後、彼女たちのもとに向かうことにした。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「よ、お二人さん。調子はどうだい?」

 

 

「「シービーさん!」」

 

 

「よせやい、さん付けなんて。普通に呼び捨てでいいよ。」

 

 

テイオーさんとのレース形式での練習後、息を整えながら水分補給などを行っていた時にやってきたのはミスターシービーさんでした。日本のレース界でたった五人しかいない三冠ウマ娘、その三人目。現在アメリカで活躍しているということは知ってはいましたが私たちがお世話になるここに滞在しているとは知りませんでした。

 

一緒に練習できると知り、少しでも彼女の技術を盗んで帰ろうと思っていましたが向こうから話しかけてくれるとは驚きです。いったい何の御用でしょうか?

 

 

 

「いや~、二人の練習を見てたら昔を思い出しちゃってね、熱くなってきちゃった。それでさ、トレーナーにはこっちのサマードリームも終わったしあんまりハードな練習はしないように言われてたんだけど、二人と本気で走ってみたくなってね。どう、やる?」

 

 

 

私達の目指すべき先輩、その方からのお誘いです。それに二人で今度色々と教えてもらいに行こうと話していたところですからちょうどいいですわ。それに、断る理由が思いつきませんもの。

 

 

「ぜひ! こちらからお願いしたいくらいですわ。」

 

 

「うんうん! ボクたちから教えてもらいに行こうとしてたからありがたいよね!」

 

 

「よし! じゃあ早速走りに……、あ、お前らさっきまで全力で走ってて休憩中だったよな。う~ん。……そうだ。休んでた時に全力で走らせたらオーバーワークになってしまうよな。だからちょっと趣向を変えてやってみるか。……お前らの目標は打倒スペシャルウィークだろ?」

 

 

 

その名前を出されたとき、隣にいるテイオーの雰囲気が明らかに変わった。そういう私も彼女に及ばないながらも心のどこかでスイッチが入った音がする。

 

 

 

「お! いいねぇその感じ。あいつのやり方は先行もできるが基本は差し。ここにいる私も追い込みで二人とも後半にかけてレースをひっくり返すやり口だ。そんでこれから後ろから追い抜かされた時にどういった行動をとるべきか、という感じでやってみようか。どっちかというと思考メインの練習だから追い抜かされた時にスパートを掛けてついてくる必要はない。ただ頭を使ってどの道が最適なのかを探る。」

 

 

なるほど、思考メイン。後方からくる驚異にどのように対処するべきかを考える練習ですか。

 

 

「どうだ、こちとら三冠馬。こっちじゃ成績は振るわなくてもクラシックの若造に劣るなんてことはないぜ。……やるか?」

 

 

 

相手は三冠、そしてアメリカで戦い抜いてきた猛者。思考メインというわけですから追い込み、差しの作戦をとったときどのように動かれれば厄介か、そこも教えていただけるのでしょう。

 

 

 

こたえは勿論、YESですわ。

 

あなたももちろんそうでしょう、テイオー。

 





マックイーンがパクパクお嬢様のイメージしか出てこなくなっていたので起用。テイオーの詳しい描写は菊花賞前ぐらいになるかな?
シービーさんはアメリカでジャパニーズドラゴンガールと呼ばれるぐらいには有名で成績もいいはずなのですが、他のやべー奴らに囲まれているせいで自己評価が低めです。ちなみに日本ウマ娘は基本そう。
なんで海外魔境になってんの? という質問に対しては日本も70年代から00年代までのやべー奴らが集まってんだぞ、海外も同じことになってるのは明白じゃろうがい! と返答させていただきます。またせん馬が存在しようがないので史実よりも暴れ回ったウマ娘がいるとか……、まあ描写できるかは解りませんけど。


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PART67

シンデレラグレイ、ようやく買えました。
続きが早く読みたい……


日本 トレセン学園 生徒会室

 

 

 

「すまないグルーヴ、少し一人にしてくれないか。」

 

 

 

書類を持ってきてくれたグルーヴに席を外してもらい、目の前に置かれている紙にもう一度目を通す。

 

 

 

来年度より開催される国内ドリームシリーズの知らせだ。

 

 

 

現在日本ではドリームシリーズは開催されていなかった。

 

私が生まれる前になるが、本来ならトゥインクルシリーズが始まったと同時に開催される予定だったドリームシリーズは、それまで行われていたレース関連の利権をまとめるために予算を使い切ってしまい、その開催は後送りとなってしまったという歴史がある。

 

その後、ジャパンカップなどの新規レースの開催や海外枠規制の緩和、クラシック登録におけるオグリキャップ騒動の解決などに手が追われていたらしいが、ついに開催できるようだ。

 

今までは国内のトゥインクルシリーズの登録を破棄し、海外のドリームレースに出走するか、登録を残したまま学園に居座るかのどちらかしかなかった。国外に出ず、学園の広告塔、もしくは学園の運営に携わるために残っている私やマルゼンには朗報ともいえるだろう。

 

 

初めての海外遠征でケガをし、そのまま国内に止まる道を選んだ私は、ケガが癒えた後も残っている。

 

日本の誇るスターを国内にとどめておきたいというURAの意向と学園をより良い物にしたいという私の思いが重なったゆえの決定だったが、シービーたちが海外に挑むのを見送るたび、もう一度挑戦したいという気持ちを抑えるので必死だった。

 

 

ドリームシリーズはトゥインクルシリーズと比べ海外ウマ娘に対する規制も甘く、様々な強者が集まってくるのは明白、今から競い合えるのが楽しみでならない。

 

 

 

 

 

 

 

そう、これだけならそうだった。

 

問題はもう一枚の紙。

 

 

 

「現在、トゥインクルシリーズに登録されている方々の中ではシニア級で一定以上の活躍をなされた方は自主的に出走を取りやめる、という風潮がありますが、今年及び来年のシニア級レースにおいてはそれを無視していただいても結構です。ドリームシリーズに上がってしまえばトゥインクルシリーズのレースに出走することはできませんのでよく考えて出走登録をよろしくお願いいたします。しかしながら優先権はシニア級三年目未満の方々にあるということをご留意ください。奮ってご参加ください。」

 

 

あぁ、なぜこんなことを書くのだろうか。

 

 

理由は解る、初めて開催されるドリームシリーズ。

どれほどまでに人気を集められるかわからない。

 

人気を集められなければ、いくら我々が求めたとしても資金面で限界が来てしまう。

 

 

 

それを回避するための策だ。トゥインクルシリーズで活躍したウマ娘をドリームシリーズに上げることでファンたちの興味を引かせる。そのための起爆剤。

 

 

 

本来なら私は出走しない。

 

権利はあってもほとんど引退したようなもの。

 

このまま生徒会長として年を越し、来年のドリームシリーズに備える。

 

それが"正しい"道なのだろう。

 

 

 

 

 

だが、頭にあの時の敗北が浮かんできて、さっきから何をしても離れようとしない。

 

 

クラシックの時、初めて負けたあの光景。シニア級でシービーと競い合っていた満たされる時間の中になぜかある不満。世界に出て肌で感じた壁の高さ。

 

 

そして

 

 

セクレタリアトとのあのレース。

 

 

 

あれからずっと心の火は燃え続けている。

 

 

 

ジャパンカップ、どうしようもなくレースに出たい。

 

 

 

 

今を走る子たちの場を奪ってしまう。

 

絶対に間違った選択、決して褒られることではない。

 

 

 

しかしながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば私の手は電話に伸びており、URAに繋いでいた。

 

 

 

 

「はい、シンボリルドルフです。……はい、その件でして……。」

 

 

 

「今年のジャパンカップへの出走登録は可能でしょうか?」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

えーと、セクさんと一緒に練習してるから一つ目の目標はいいとして、二つ目の目標の海外芝に慣れるってのはチームで練習するから問題なし。三つめは一応シービーさんとも会えたから大丈夫ってことにしておこう。

 

 

今のままが一番いいもん。わざわざ変えたくない。

 

せっかく手に入れたチャンス。自分から手放すなんてしないし、それ以前に一緒にいる時間が減るのは嫌。

 

負けてしまった時のことを考えてのことだろうけど、そもそも私にその後はない。考えてもいない。

 

私の大本、走る理由、レースに出る理由はその一つ。

 

 

 

 

「スぺちゃーん、ご飯行きましょう~。」

 

 

「は~い、今行きまーす!」

 

 

 

いや、終わってしまった時のことは考えても意味がないよね。

 

私達が一緒にいる限り負けることなんてありえないんだもん。

 

 

 

 

 

えぇ~と、あとの目標は太らないようにする、か。

 

 

……できるかな?

 

太ったらまた怒られちゃう。

 

と、とりあえずは今日のご飯は少なめに……

 

 

 

 

 

「今日のメニューには私のお気に入りの料理が出るらしいの。スぺちゃんも気に入ると思うわ。」

 

 

「ほんとですか! 楽しみだなぁ~。」

 




ルドルフ会長はジャパンカップにスぺちゃんが出走しようとしていることは知りません。
たぶん今シニア勢で頑張ってる子たちと海外からやってくるヤベー奴らが遊びに来るかなぁ、よっしゃ、トゥインクル最後やし海外のやべー奴討伐しに行くぞ、ついてこいブロリー! としか思ってません。

だって有馬にクラシック級の子たちが出てくるのは解るけどジャパンカップだよ? 海外のやべーのが遊びに来るんだぜ? んなもんクラシックの子たちが遊びに来るわけないじゃん。しかも3冠最後の菊花からそんなに時間空いてないし……。普通回避して有馬に向けて調整するよね? 大丈夫会長有馬には出ないから!

でもうちのルドルフ会長はジャパンカップで海外ウマ娘に勝つことにこだわってる感じなので知ってても出走してたかなぁ、って私思うの。


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PART68

 

「ふぅ、こんなものかしら? 私がどんな風に思いながら走ってるか、まで言っちゃったけどためになったかしら?」

 

 

「もちろんです! すっごくためになりました!」

 

 

「そう、それならよかったわ。……でもなんで逃げの練習をしたの? 色々やってみたからわかるだろうけどスぺちゃんに逃げ策は向いてないわよ。確かにこういった他の作戦に対する理解を深めておく、ってのは大事だと思うけど本番で使えるまで練習する必要はあったのかしら?」

 

 

「えへへ、最初はスズカ先輩みたいに先頭で走ってみたい! と思って少し練習してたんです。それですぐに私には向いてないなぁ、って解ったんですけど次に出走する菊花賞でもしかしたら使うかもしれない、っておね、"トレーナー"さんに言われまして。それでスズカ先輩に教えてもらおうと思ったんです。」

 

 

「う~ん、トレーナーさんがスぺちゃんに逃げかぁ。何を考えているのかしら?」

 

 

「そ、それよりももう一度走ってもらってもいいですか? 今度は私、差しで走りますね!」

 

 

「……そうね、走りましょうか。でも作戦はさっきと同じように逃げで行きましょう。レースで使うんだったらちょっとでもうまくなっとかないとね。」

 

 

「はい、よろしくお願いしますね、スズカ先輩!」

 

 

 

(練習終わり、夕食前ぐらいにでもトレーナーさんに聞きに行きましょうか。スぺちゃんに合わない作戦を練習させて、普段なら私に何か言ってきそうなのに何もないのはちょっと不思議。……まぁ理由は聞いてみればわかる。今は練習に集中しましょう。)

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

どもども、皆さんお久しぶりでございます、投稿者ですぜ。

 

なーんかそんなに時間空いてるはずないのにすっごく久しぶりな感じですしお寿司。ナンデじゃろ?

 

 

 

ま、私の時間間隔が狂っちゃったのは置いておくとして、今日も今日とてスぺちゃんをアルティメットにしていきますよ~! バリバリ~!

 

現在スぺちゃんは次走の菊花賞のために逃げの練習中です。実際最後まで逃げ切るのか、それとも途中でスピードを落として先行、差しの位置まで下がるのかは、その時のレース次第ですがまぁ練習しといて損はありません。元々のスぺちゃんの逃げ適正は全く持ってないGでございましたがせめて二段階、Eぐらいまでは上げておきたいですよね。普通ならCぐらいまでは無理をしてでも欲しい! って感じですがわざわざ一つのレースのためだけにもそれをするぐらいなら他のステータスやスキルを伸ばした方がウマ味なのでそうするつもりです。ウマだけに。

 

 

ちなみにこういった距離適性の成長はDまでは結構すくすくと育ちます。今回みたいにその作戦のスペシャリストやトレーナーに師事を仰いで一月くらい練習していればDぐらいすぐです。しかしそれ以上となると結構時間がかかりますのでわざわざ時間を使って練習する意味がなくなってくるんですよね……。やっぱりこういった本来の作戦をどうにかするためにはアプリ版と同じように継承で何とかしないといけません。

 

 

ということでスぺちゃんにそろそろ逃げの練習をやめるように指示を出しましたが……、スズカ先輩に阻まれてしまったようですね。完全に御好意での提案ですので断るわけにはいきません。ここは逆にこちらからお願いしてやってもらいましょう。ではそのように、スぺちゃん。

 

 

 

(はーい。)

 

 

 

あ、それとスぺちゃん、そろそろ私のこと"トレーナーさん"呼びするのやめちくり。こちとら免許持ってないヤブトレーナーなのでさすがにそう名乗ってると思われるのは恥ずかしいタイ! しかもスズカ先輩たぶんスピカトレーナーさんと私のことごっちゃになってますよ。変に誤解されて迷惑かかっちゃうかもしれませんしそう呼ぶのはやめておきましょうか。

 

 

 

(わかった! ……でもそれなら何て呼べばいいのかな?)

 

 

 

あ~、そうですね。今まで無理に呼ばないようにしてもらってましたけどそろそろ面倒になってきましたもんね。どうしましょ、ここは単純に投稿者で行くか、それともコメントで頂いてる走者で行くか、……というか私RTAしてないので走者じゃない気がするんですけどなんでいつもこう呼ばれてるの???

 

 

 

(ん~、なら走者って呼びたい!)

 

 

 

おっとスぺちゃんもそちら側だったか……、私の味方どこ……、ここ?

 

 

 

(あれ、だめだった? 私たちずっと一緒に走ってるし、そっちの方がいいかなって思ったんだけど……。)

 

 

 

……よし! これからわたくし走者で行きましょう! 動画初めの挨拶もそっちにする! RTAじゃないけど!

 

今日から私は、富士山だ! お米食べろ!

 

 

改めてこれからもよろしくね、スぺ。

 

 

 

(はい! こちらこそよろしくお願いします! "走者"さん! ……ちなみにお米食べろってことはもっと食べていいの? 食事制限解放? ほんとに? たくさん食べていいの!?)

 

 

 

そ、それはやめてもらえると助かります、はい。

 

 

で、では皆さんお元気で~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

録画終了、っと。

 

 

 

……スぺ、フリじゃないからね。食べ過ぎたらだめだからね。

ただでさえこっちの食事のせいで体重増えてきてるんだから、節制しないとだめだからね。解ってる?

 

 

 

 

 

(も~、解ってるよ。"お姉ちゃん"。)

 




オースミキャンディ

史実とは違い、地方トレセンに入学。実力としては中央に進めるものであったが幼かったスペシャルウィークのことも考え地元のトレセンに進学。短距離、マイルで華々しい成績を治め、いざ来年から中央のレースに殴り込みをかけようとしたところでトレセン寮で起きた火災により命を落としてしまう。


彼女についての話は色々あるが、またいずれ。


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PART69

 

 

 

『よし! じゃあやるよ、スぺ!』

 

 

『はい!』

 

 

 

まずはゲート全体に意識を集中させる。

自分の位置、全体の把握。

 

今はセクさんしかいないけどダービーの時を思い出しながら、

 

ゲート全体にプレッシャーを掛けて押し込める!

 

 

……よし、できた!

 

 

 

あとはセクさんが返してくるプレッシャーを

 

 

「ッ!」

 

 

耐えて!

 

 

 ガコン

 

 

走り出す!

 

 

 

 

 

 

……できてる? 使えるようになってる?

 

 

『セクさん! 私、できてましたか!?』

 

 

『できてたできてた! おめでとう、スぺ!』

 

 

 

 

 

 

うんうんよきかなよきかな。仲良しなのは美しきかな。

 

 

 

あ、どうも。改めまして走者です。今日もよろしくお願いします。

ん~、なんか最初の挨拶で投稿者って名乗らないと違和感ありますね。まぁ両方使っていきましょう。

 

 

んでご覧になってもらったので理解していただけると思うのですが、無事【ゲートの支配者】の復活に成功いたしました。これで安心して菊花賞に出走できるね! 非常に荒れそうで色々大変そうですけど楽しみですタイ!

 

 

 

>スピード:B

 スタミナ:B+

 パワー :A

 根性  :B

 賢さ  :B

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.3

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.2

 【空駆ける英雄】    Lv.2

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.2

 

 【ゲートの支配者:改】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 【プレッシャー耐性〇】

 (【末脚】)

 (【率いるもの】)

 

 

と、こんな感じて使用不可の文字も消え、支配者君もなんか進化しとるし、セクさんのプレッシャーを毎朝強烈に受け続けたおかげかプレッシャーに対する耐性まで手に入れちゃいました。スぺちゃんよう頑張った。

 

というわけでなんか進化しとったスキル説明をば、なんか後ろに"改"みたいなのが付いて超異次元サッカーのアニメみたいになってますが、単純にこれ、強化されたみたいです。何でも一度使えなくなったスキルが厳しい練習を重ねることで進化して帰ってきた! ということらしいです。なんかスポコンみたいだな。

 

と、言ってもお前ほんとに中学生? の髪型で妹トラックに引かれてブチぎれたンゴ、な炎のストライカーの代名詞なシュートみたいにそれほんとに強化されてる? ということはないらしく結構大幅につよなってるみたいです。これはおいしいですねぇ!

 

またこちらの【プレッシャー耐性〇】というのは検証班の方々によるとデバフスキル、アプリ版での赤色スキルを食らいまくるとたまに入手できるスキルだそうです。効果はそこまで高くないようですがマスクデータであるらしいプレッシャー関連のデバフスキルすべてに対応できるみたいでとっても汎用性が高い良スキルみたいですね。

 

そういえばアメリカ合宿のおかげで色々とステータスも上がってきていたことをお伝えするのも完全に忘れていましたね。ご報告をば……、特筆すべき面はスピードがやっとBまで上がったことでしょうか? 元々【太り気味】を連発していたおかげでスピードが伸びないというやばたにえん、な状態でしたが何とかBまで。これで最高速度が足りなくて追いつけない!なんてことは少なくなるかなぁ、と思います。

 

欲を言ってしまえばスピード、スタミナを今年中にAまで引き上げたいなぁ、なんて思ってましたけどたぶん両方は無理かなぁ……。でもまぁ直近の問題である菊花賞は大丈夫でしょうね。アメリカ合宿の練習効率が結構高めなのはスぺちゃんのステータスの上りからも解りますし(上昇率が控えめに見えるのはステータスをあげれば上げるほどランクアップが難しくなるからですね)、テイオーとマックイーン、後ネイチャあたりも気を付けた方がよさそうですがそれでもライバル枠じゃないですしそこまで警戒しなくてもいいのかなぁ。

 

でもまぁどんなに頑張ってもC+までが菊花賞時点での他キャラクターの限界でもあります。シニア級に入るともっと急激に上げてくるお化けもいるにはいますが今回は気にしなくてもいいですし安心していきましょう。

 

 

ちゃんとした作戦もありますし、ね。

 

 

ま、とにかくセクさんありがとナス!

 

 

 

『ううん、いいのいいの。原因はもともとアタシだし、頑張ったのはあなただもんね。……にしても思ってたよりも早く終わっちゃったけど、明日からどうする? 私の時間は空いてるし、もしよかったら練習に付き合うけど?』

?』

 

 

 

おっと~!? これはウマすぎなイベントかなぁ!? 

 

どうやら思っていたよりもセクさんの好感度が高かったみたいですね。普段の 昼頃の練習を見ている感じ基本的にカノープスの手伝いをしていたので、スぺちゃんの練習に付き合ってくれてたのは謝罪の意味合いが強いのかなぁ? と思っていましたがそうではなかったようですね。断る理由もないですしやってもらいましょう!

 

練習内容は……そうですね、菊花賞後はジャパンカップや有馬にも殴り込みをかけますから、その時のことも考えてスキル系統の練習を手伝ってもらいましょう。

 

 

 

というわけでセクさんどうかな?

 

 

 

『なるほど、差し系のスキルの習熟ね、いいわよ。ん~そうね、結構いい時間だしご飯でも食べながら話しましょうか。私のお気に入りの店がこの近くにあるし、連れてってあげる。』

 

 

 

え、ちょっとそれは嫌な予感が……

 

 

 

『はい! 行きたいです! 私お腹すきました!』

 

 

 

うん、だよね。知ってた。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『お待たせいたしました! 当店自慢のストラスバーガーです。』

 

 

 

う、うわぁ……、なにこれ。え、これを朝から食べるの? え?

 

 

 

『どう、スぺ? 結構いい感じでしょ。シービーとかに紹介したときは何故か引かれたけど大きくておいしそうでしょ。実際美味しいし、たまにこれ食べるのがいいんだよね。』

 

 

 

い、いやそれはそうなんですが、ちょっとこれはいかがなものかと……。ちょっと片手間に調べましたけどこれ色々とヤバいですわよ。人用で重さ1.3kgの1万kcalの脂肪分700gの化け物ハンバーガーみたいなのですが、ウマ娘用ってことで色々とサイズとか重さとか上がってません、これ……、え、ほんとにこれ朝から食べるつもりなの?

 

 

いや、アメリカウマ娘と日本ウマ娘じゃ食生活の違いというか、何というかこっちの食事にうまく対応できなくて太っちゃうじゃないですか。スぺちゃんも今現在そうですし、アメリカ代表みたいなセクさんがペロリだったとしてもスぺちゃんには……たぶんペロリか。で、でもカロリーの吸収率とか色々ヤバそうですし……

 

 

と、とりあえずスぺちゃんここはセクさんには悪いけど撤退した方が

 

 

 

『うわぁ! おいしそう! いただきます!』

 

 

 

あ(即死)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お気に召したようでなにより、にしても食べながら話すつもりだったけど今は食事に集中してるみたいだし後でいっか。今後の練習とか日本のニューダートクイーンとかの話聞きたかったんだけどね。……ま、私も食べますか。』

 

 

 

(にしても桜の女王、ハルウララ、ね。いったいどんな子なんだろ?)

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

『今、この大井に桜吹雪が巻き上がる! 他を寄せ付けず今一着でゴール!』

 

 

『確定しました、一着にハルウララ。二着と大差をつけての勝利となります。二着には……』

 

 

『いやぁ、素晴らしい走りでしたね。一番人気で一位。後半にかけての後方集団からのごぼう抜きは目を見張るものがありました。日本のダートは芝に比べてそこまで知名度がないですが、彼女のおかげで活気がうなぎ上り。そんな感じがしますね。』

 

 

『他の子も例年なら充分一位である可能性があったのですがね、彼女の強さにはかなわなかったようです。芝のスペシャルウィーク、ダートのハルウララ。今年のクラシック戦線はどちらもいかに一強を倒すか、というものになりそうです。』

 

 

 

 

「うわぁ! すごいすごい! ねぇ見てよトレーナー! みんな私のことすごいって言ってくれてるよ! と~っても頑張ったおかげかな?」

 

 

 

泊まっていたホテルのテレビで、自分のことを話してくれてた番組を見て、思わず後ろを振り返る。

 

 

「あ、そうか。トレーナーさんはお買い物に行ってるんだったね。う~んどうしよう、すっごく見てほしいんだけどなぁ。あ、そうだ! キングちゃんに聞いてみよう!」

 

 

おんなじお部屋のキングちゃんに今見てたテレビを今一緒にいないトレーナーさんにも見せてあげたい、って送るとすぐに返信が来た。ネットに上がってるかもしれないから探してみたら、もしくは録画、だって。それとトレーナーさんと一緒にいないことをすごく心配されたよ。

 

 

「買い物に行ってるみたいだからお留守番中、だ、い、じょ、う、ぶ、っと。これでいいね! ……それにしてもなんで目覚まし時計買いに行くんだろう? もしかしてトレーナーって寝ぼ助さん!? 今度お寝坊してたら起こしてあげなくちゃ!」

 

 

ハルウララは自身がそこまで朝に強くないことを完全に忘れてそんなことを考えていた。

 

 






め ざ ま し ど け い



活動報告にていただいたラダーマン様のアイデアを勝手に使わせていただきました。(ストラスバーガー)

感想欄で頂いたアイデアとかも結構使わせていただきますし、わざわざメールで送ってくださる方もいらっしゃって、本当にありがたいです、いつもありがとうございます。


まあそれはそれとしてはちみつください(強欲)


もうちょっとでアメリカ合宿編は終了かな?
そこから1,2話ほど挟んで菊花賞に参ります。

にしてもどっちが本当のプレイヤー何でしょうね。


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PART70

あ、どうも。投稿者です。

 

今日も一日頑張って行きましょうね~。あ、きょうもいちにちがんばるZОI!

 

 

 

と、言うわけで起きろスぺ! もう朝日上がってんぞ! 起床ラッパぷっぷくぷ~!

 

 

「ふぇ! ……お、おはようございます。」

 

 

うむ、おはよう。さぁ、とっとと顔洗って準備整えてきなぁ!

 

 

「はーい。」

 

 

 

んじゃ、スぺちゃんの朝の用意が終わるまで、ちょっとだけお話。先日何故かコメント欄でお前紫色のまな板じゃね? というお言葉を頂きました。正直、お前さんブチころがされてぇのか? と思いましたけど私は冷静だったのでその場は我慢できました。

 

ですが、ね。私宛に荷物が届きまして、例の紫さんのそれどんな服? という下着なんかシャツなんかよく解らん紫の服とウサギさんパーカー、あと紫の女性用カツラを頂きました。

 

 

うん、ひとこと言わせて。

 

 

 

いったい私にどうしろと?

 

 

 

 

いや、ね。わたくしスぺちゃんに比べれば確かにないですよ、えぇ。確かにスぺちゃんよりもないです。でもまな板呼びはどうかと思うんですよ私。オラ、しっかりと見ろよこっちを! つつましいながらにちゃんとあるんだよこちとら! 誰が逆Aカップじゃ! むしろそれ抉れてるじゃねぇか! アニメ制作時に注意書きでB70、大きくし過ぎないでください、なんて書かれない側なんだよ! わたしゃあ、スズカとは違うんだよ! 確かに同じ栗毛だけどなぁ! ある方ミーで、ない方スズカ。ARE YOU OK?

 

 

 

ふぅ、失礼。ちょっと私の逆鱗に触れてしまったようで、騒いでしまいました。謝罪いたします。あ、あと私をまな板呼ばわりしたやつは後で校舎裏に来ること。

 

んじゃまぁ、一応頂き物ですので例の紫コスに着替えまして……、うん。サイズピッタリなのが変に腹が立つ。おっと、スぺちゃんも朝練に行ける服に着替え終わったようですね。

 

 

あ、そうだスぺちゃん。今全身に加重トレーニング用のおもり付けてるでしょ。そのおもり抜いといて。

 

 

「え、うん。わかった。(今日は使わないのかな?)」

 

 

あぁ一応使うのでなんか袋にでも入れておいてください。んじゃ場所移動しまして。

 

 

 

 

 

 

 

ほい、ここ洗面所ですね。スぺちゃんこれに乗ってください。

 

 

「え………」

 

 

はい、体重計です。自分を知るというのは大切ですしね、というわけでつべこべ言わずに乗れ。

 

 

「いや、でも最近頑張ってレンシュウシテルカラ……」

 

 

 

乗れ。

 

 

 

 

震える影がゆっくりと機械に覆いかぶさっていく。そういえば移動の途中で靴下脱いどいて、って言われたのはこのためであったかと思いながら自身の両足を体重計の金属部分に合わせるスペシャルウィーク。

 

口では言い訳をしていたが、自分でも思い当たる節はあったのだろう。その顔はまるで有罪判決を今から受けようとする被告人の顔。あぁ、神は死んだのか。

 

 

両足を乗せ終わり、瞬きの間。死刑判決にも等しい悪魔の電子音が鳴り響き、数字が浮き上がる。この時ばかりはウマ娘特有の動体視力を恨んだスペシャルウィークであった。

 

そこに表示されていたのは自身の適性体重よりも大幅に増加している数。体重:増、である。

口が裂けても微増などとは言えない数字。むしろ"増"では収まらないかもしれない。

 

彼女はそれを見なかったことにし、機械の誤作動だということを神に祈りながらもう一度先ほどと同じ行動を繰り返した。

 

 

結果はわざわざ書き記さなくてもいいだろう。

 

そう、思いっきり太っていたのである。

 

 

 

 

 

>スペシャルウィークは【太りすぎ】を取得していた!

 

 

 

 

 

スペシャルウィークは友に教えてもらった曲のプロモーションビデオを思い出していた。

 

 

「どうして。」

 

 

 

 

 

 

 

(いや、そりゃあれだけ食べれば太るに決まってるでしょう。日本じゃいっぱい練習したから大丈夫! で何とかなっていたかもしれませんけど、いや何とかなっていなかったか? まぁ日本とアメリカの食事、特にカロリーの桁が違ってくるものをあれだけ暴飲暴食してたらそうなりますやん。)

 

 

「うぅ、だって……。」

 

 

(だってじゃありませんよ。朝にカロリーお化けバーガーをセクさんのおごりで食べたと思えば、お昼にまた食堂でたらふく食べて。夕食に急に現れたゴルシちゃんに連れられて、スピカメンバーで一緒に食べに行ったステーキハウスでも意味わからんほど食べてたでしょあんさん。)

 

 

「う~~、美味しかったし……。」

 

 

(はぁ、こっちで多少太ることは覚悟してましたけどこれ菊花賞までに元に戻せるかなこれ? ……まぁ止められなかった私に責がないとは言えないし、頑張っていきましょうね。)

 

 

「はい…………。」

 

 

(ほらしょんぼりしない! 胸張って、お腹は引っ込めて、頑張っていきましょう!)

 

 

 

 

 

 

その日からスペシャルウィークの食事は前日よりも明らかに減っており(しかしながら一般的ウマ娘からしたら多め)みんなに心配されましたが、スぺの「減量中です……。」の悲しそうな一言によって、そりゃあれだけ食べればそうなるな、と思われたとさ。

 

スズカ先輩は「減量中でも私より食べる量多いのはどうゆうこと???」と頭の中でハテナマークが乱立していたが顔には出なかった。

 

めでたしめでたし。

 

 





もう70話なのにまだクラシック級なんて遅すぎるンゴ。
予定ではもう完結しててもおかしくなかったんだけどなぁ……。
ま、自分のペースで頑張りますかね。

というわけで(どういうわけ?)

はちみつください。



ちなみに"走者"は今まで部屋着みたいなのを着ていましたが、今回から収録用衣装としてゆかりさんの衣装を手に入れました。紫のカツラも手に入れたみたいだし、実質こいつ結月ゆかりだな!


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PART71

もう慣れてしまった病院内を歩き、姉上のいる病室へと歩く。

 

結局あのレース後、私は中央への切符を手に入れていたのにも関わらず地方に残った。

 

 

結果的に私のことが心配だったからという理由で地方に残った姉と同じ道を選ぶことになったが、私は後悔していない。離れた北の地にいてもいやでも聞こえてくるあいつの名声、スペシャルウィークの覇道。

 

当時は原型を保てないまでに心を折られてしまったゆえの決定だったが、それでよかったのかもしれない。あれから私もいくらか成長したとはいえ、アレに勝てる気は全く持ってない。

 

 

あぁ、もう着いたみたいだ。姉上はどうしているだろうか。

 

 

「失礼します。」

 

 

「ん? あぁフロート。もうそんな時期なのね、いらっしゃい。」

 

 

 

定期的に姉上の見舞いに来ているが、今日もいつも通り。ベッドに寝かされた姉上がこちらを見る。

 

 

 

「今日は調子がよさそうですね。安心いたしました。」

 

 

「えぇ、あなたも、あの妹ちゃんも頑張ってるみたいだし、私も頑張らないとね。たとえもう走れないとしてもできることはたくさんあるし、こんなところで寝てるだけなんて性に合わないわ。」

 

 

「……えぇ、姉上の復帰を心よりお待ちしております。」

 

 

 

こんな会話を何度しただろうか。姉上は例の火事でケガをすることはなかったが、施設が古く、木造であったこともあり、一酸化炭素中毒で今も寝たきりである。医者からはもう姉上が立てる可能性はほとんどないと言われている、生きてともに話ができるだけでありがたいが何故私の姉上はこうなってしまったのか。そんな思いに頭の中が支配されていく。

 

なぜ、私の姉上はこうなってしまったのか。なぜ大好きだったターフで走る姉上の空に靡く青い髪がもう見られないのか。

 

 

 

「……ほら、そんな悲しい顔しないの。せっかく救ってもらった命ですもの。ちゃんと歩けるぐらいにならないと彼女に申し訳ないわ。だから大丈夫よ、すぐに良くなる。……ほら、せっかく来てもらったんですもの。今のトレセンのお話をしてくれるかしら、フロート?」

 

 

 

あぁ、そうだ。こんな顔を見せるために来たわけじゃなかった。

 

 

 

「はい、申し訳ありません。では新しく建てられた校舎がようやく完成したという話を……。」

 

 

「あぁ! やっとできたのね! ふふ、ボロボロだったあの校舎と比べて新造だからキレイでしょうね。それとちゃんと彼女の像はできてるのかしら?」

 

 

「えぇ、キャンディさんの像も完成していました。こちらに来る前にも少し見ましたが、かなり多くの花が供えられていましたよ。」

 

 

「それは良かったわ。私達の命の恩人ですもの。像を建てるのは彼女は恥ずかしがって嫌がりそうだけどそれぐらいさせてもらわないとね。ちょっとだけだけどお金出したし、気になっていたのよ。」

 

 

 

オースミキャンディ、姉上たちの命の恩人。私の家族を救ってくれた人物。

 

その命と引き換えに、寮内にいたすべての人たちを救い出してくれた私たちの恩人。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、今でも彼女がもういないなんて信じられないわ。………でもあいつのことだから霊にでもなってそこらへんほっつき歩いてるかもしれないわね。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ふぃ~~、ただいまぁ~~。」

 

 

「ふふ、今日もハードだったわね。」

 

 

「ほんとですよぉ! いつもよりご飯食べられないから腹ペコで、すっごく疲れちゃいました!」

 

 

「いや、スぺちゃん十分食べていると思うわよ……。」

 

 

「えぇ~、そうですかぁ?」

 

 

 

お姉ちゃんから言われた減量プラン。菊花賞に向けて何とか体重を落とすために初めて食事制限。今まではみないふりしてたけどさすがに私もやばいと思ったので、すっごくイヤだが従っている。一応日本に帰ったら好きなだけ食べてもいいチートデイっていうのを用意してくれるみたいだからそれまで何とか頑張らないと……。

 

 

「やっぱり食べ過ぎだと思うわよ、うん。……それにしてもスぺちゃん逃げも結構できるようになってきたわね。あとはスぺちゃんなりの走り方を見つけていく感じかしらね。」

 

 

「う~ん、色々教えてもらったんですけどやっぱり私はそこまで得意になれないかなぁ、って。スズカ先輩みたいに最初から最後まで全力で逃げてるのに、最終直線でまた加速するなんて私出来ないですもん。」

 

 

 

スズカ先輩と話しながらお姉ちゃんが置いて行ったメモを見る。

 

練習の途中から調べものがあるって言ってこの学校の図書館に向かったみたいだけど、まだ時間がかかるみたい。「寝る時間までには帰ってくるし、心配しないように。あと夕食は食べ過ぎないこと!」って書いてある。

 

むぅ、言われなくてもわかってるもん。

いつも私のために色々調べてくれてるのは知ってるけど、何度も言わなくてもいいのにね!

 

 

 

「ふふふ、まぁそんなにすぐ出来たら私何してたんだ? って話になっちゃうもんね。スぺちゃんが今後どんな走り方をするのかはわからないけど知っておくだけでもためになると思うわ。」

 

 

「まぁそうなんですけどね。」

 

 

 

そんな風にスズカ先輩と話していると……

 

 

 コンコン

 

 

「あら、誰か来たみたいね。空いてるわ、どうぞ!」

 

 

 

そこにいたのはこちらの合宿で一緒に練習することになったカノープスのターボさんとネイチャさん。その後ろにはテイオーさんとマックイーンさんもいた。

 

 

「おぉ~~! スぺもスズカもいるな! こんな部屋になってるんだ!」

 

 

「ターボ、スズカさんは先輩なんだから……。」

 

 

「ふふ、気にしなくていいのよ。それでみんなどうしたのかしら?」

 

 

「はい、何でもセクさんの予定が変わったみたいで、最終日にする予定だったキャンプファイヤーを今日やるみたいなんです。それで呼びに来たんですよ。テイオーとマックイーンはそこで会いまして、一緒に行こうってなったんです。……まぁターボが逸ってもう火を付けちゃったんですが……。」

 

 

「間違えちゃった!」

 

 

 

キャンプファイヤーかぁ、そういえば見たことないなぁ。

 

 

 

「あら、そうなのね。わざわざ呼びに来てくれてありがとう。スぺちゃん、行きましょうか。」

 

 

 

なんでだろ。なんだか行ったらいけないような気がするんだけど……

でも、みんな誘ってくれてるし、行った方がいいよね。

 

 

 

「はい。行きましょう!」

 

 

 

 

「まだ明るいうちに見せてもらった時には、大きいものを用意してくださっていたようで見ごたえがありましたわ。もう暗くなってきていますので、さらにキレイに見えるでしょうね。」

 

 

「へー、そうなんだ! にしても、なんでターボは火を付けるタイミングを間違っちゃったの? もしかしてボクたちがいないうちに独り占めしようとした?」

 

 

「む~! そんなことターボしないもん!」

 

 

「いや~、単に間違えちゃったみたいで。これで火を付けるんだよ、ってセクさんが説明してる時に『こうするのか?』って火を付けちゃったんですよね~。」

 

 

「そうなの。でも大きいものはちゃんと火が付くまで時間がかかるっていうし、ちょうどよかったかもね。」

 

 

 

 

そんなことをみんなが話しているのを聞きながら一緒に歩いていく。

 

どうしてだろう、何故かさっきから悪寒が止まらない。

 

こんな時、不安になったときにいつも横にいてくれる姉はいない。

 

 

 

ううん、私だって子供のままじゃない。自分で何とかしなくちゃ!

 

たぶん今感じているのも気のせいだよね!

 

 

 

 

 

 

 

「お、見えてきたよ!」

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか下を向いていた顔を、その声に反応させて前に向ける。

目の前に写ったものは、炎だった。

 

 

 

 

「おぉ、壮観ですなぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い赤い、真っ赤な火。

 

全てを奪い去っていく火。

 

 

パチパチと何かが弾ける音が私の記憶を呼び覚ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悲鳴、怒号、皆のせき込む音。

 

真っ暗な夜に嫌なほど真っ赤に照らす燃え上がる校舎。

 

 

 

あぁ、今学校の一部が崩れ落ちた。

 

誰かのうるさい泣き声が聞こえる。

 

 

 

知らない男の人たちがホースを持って水を掛けている。

 

結果は何も変わらないのに。

 

 

 

小さい私は燃え盛る火の中に走り出そうとしていて、

 

それを止めようと知らない誰かが必死になっている。

 

 

 

今にも崩れ落ちそうで、真っ黒に燃えている校舎に人影が見える。

 

栗毛の女性に抱きかかえられながら、気を失っている青い髪の女性が出てきた。

 

 

 

栗毛の女性は青い髪の女性を近くの誰かに預けると、ゆっくり、ゆっくりと幼き私に向かって歩を進める。

 

そして、私の前にたどり着く前に倒れてしまった。

 

 

 

抑えられていた私は、無理やりそこから抜け出し、姉に向かって走り出す。

 

 

 

 

あぁ、お願いだから泣かないでほしい。

 

 

 

 

こけそうになりながらもなんとか姉の前に辿りつけた私。

 

 

幼い私はその場に蹲り、姉に向かって泣き叫ぶ、必死の声をかける。

 

 

 

 

お願いだから静かにしてほしい。

 

 

 

 

震える姉の手が私の頭に向かう。

 

 

自然と、幼い私の泣き声はなくなっていた。

 

 

 

大好きな姉の手は真っ黒になっていて、いつもは力強い手が凄く弱弱しく見えた。

 

そんな手が私の頭にのせられて

 

 

「ごめんね、スぺ。駄目なお姉ちゃんで。」

 

 

 

私の頭に置かれていた姉の手は、そのまま地面に落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お前ら遅せえじゃねえか!ゴルシちゃん待ちくたびれ……、おい、スぺ!」

 

 

 

 

「ぁ、あぁ……………、何で、何で、何で、何で!」

 

 

 

 

 

 

 

"何か"を封じていた枷が壊された気がする。

 

 

 

 

気が付けば私の世界は真っ暗になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

スぺが倒れた後、パニックになりかけた周りを何とか宥めながら保健室まで連れてくることができたが……、まるでお通夜だな、これは。

 

 

 

「おいおい、おまいら。そんなに落ち込まないでいいんだぜ。誰にでも苦手なもんはあるし、今回は運悪くあたっちまったようなもんだって。ほら保険医の人もじきに目を覚ますって言ってたじゃねーか。」

 

 

「でも、スぺちゃんのあの感じ、ただ事じゃないような。何か触れてはいけないようなものに……」

 

 

「でももかかしもないって。スズカもそんなに考え込むなっての。……ほら、多分減量中で疲れがたまってたんだって。」

 

 

「でも!」

 

 

 

スズカの口を手で無理やりふさぎ、椅子に座らせる。これ以上喋らせたらどんどん悪い方向に進んでいってしまうからな。ちょっとばかし荒くなってすまねぇな、またこんど何かで謝らせてくれや。

 

 

 

「さ、今夜はもう遅いし、自分の部屋に帰ってさっさと寝た方がいいぜ。スぺのことは私ら見とくし、目を覚ましたらちゃんとメールかなんかで連絡するしな。」

 

 

 

雰囲気に吞まれそうだった中等部の奴らをまとめて保健室から連れ出す、さっき連絡して飛んできたスピカとカノープスのトレーナーと、火の処理をし終わったセクが、ちょうど部屋の前に到着しているようだし、こいつらのことは任せよう。

 

 

 

 

 

 

 

私は、スズカの方を何とかするか。

 

たぶんスズカは自分のせいでスぺの何らかのトラウマを再発させてしまった、って考えてるんだろうな。

 

 

 

スズカの隣に椅子を運び、腰かける。

 

なにか声をかけてやるかより、隣に誰かいた方がいいはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ………ぁ、あ………。」

 

 

 

「「スぺちゃん!」」

 

 

 

「あ、あれ……ここは保健室? なんで? さっきまで練習してたははずじゃ……。」

 

 

 

 

……ん? 視線がこっちに?

 

 

あぁ、なるほどな、まったく損な役回りだぜ、こんど何かおごれよな。

 

 

 

 

「おう、スぺ~! 練習中に倒れてしまうとは、勇者として恥ずかしいとは思わんかね、うん? 無理な食事制限が祟って倒れてしまったのであろう。」

 

 

「ふぇ? そうなんですか?」

 

 

「うむうむ。まぁ疲れもたまってるだろうし、今日はこのままここで寝といたらいいんじゃねえの? 手続きは私がしといてやるよ。んじゃ、おやすみ~。」

 

 

「あ、おやすみなさい! ゴルシさん! スズカさんもおやすみなさい!」

 

 

 

「………えぇ、おやすみなさい。また明日ね。」

 

 

 

 

 

 

スズカを連れて退室する。

 

 

 

パタンという音と共にドアが閉まる。

 

 

 

 

 

 

「ゴールドシップさん、今のは……。」

 

 

「たぶんあいつにも時間がいるんだろう。まったくなれない嘘つきやがって……。まぁスぺの中で整理が付くか、納得が出来れば私たちに話してくれるだろ。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「ありがとうございます、二人とも。」

 

 

 

あぁ、何で今まで忘れてたんだろ。

 

 

まだちょっと記憶に穴があるけど大体は思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

「私のせい、だよね……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ううん、悩んでる場合じゃなかった。

 

最近気が緩んできていたのは確かだし、女神さまからのおしかりだよね、きっと。

 

私に負けられる選択肢は最初から存在してないんだ。

 

 

 

 

私のためにも、お姉ちゃんのためにも、もっと前に進み続けないと。

 




最初に出てきたお二人、オリキャラでして、姉の方がツバキプリンセス、妹の方がツバキフロートです。ウイポで冠名"ツバキ"でやってるうちに出てきた姉妹を使わせてもらっています。同名の競走馬はいなかったはずなので大丈夫なはず……。いつかお姉ちゃん編もやるつもりなのでその時に登場するかもしれませぬ。



スぺの幼少期、動画が始まる以前の彼女の記憶ですが、感想欄であった通り部分的に記憶喪失になっています。オースミキャンディの顔を見て、自身の姉だということは解るのですが、姉についての記憶が部分的になくなっているという感じですね。スぺ自身は幼い時の記憶なので、穴抜けになってしまっていること自体には疑問になっていません。またスぺの実家は例の火災のあと、スぺが火に対してトラウマになっているのが発覚したためIHに変更しており、お母ちゃんも無理にその話題を出すことはありませんでした。その後、何度か火を見ることはありましたが、その火の大きさは小さい物でしたし、お姉ちゃんが横にいたため記憶を呼び起こすことはありませんでした。

今後の進行に必要とはいえ、スぺちゃんには少しつらい道を歩いていただきます。


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PART72

 

 

 

おいっス~、投稿者ですよ~。今日も頑張っていきましょうねぇ!

 

 

今日は時間が飛びに飛びまして日本に帰る日になっちゃったので現状の確認の空いてしまったところのご説明をしていこうと思います。え、何で飛んでるかだって? いや~申し訳ないのですが、録画自体はできてたんですけど私のテンションがだだ下がりの状態だったのでお蔵入りになっちゃいました。すまぬ、すまぬ。

 

と、いうのも私が資料整理や育成方法を色々調べて目を離してるうちにスぺちゃんが倒れちゃったみたいでして……、なんでも疲労がたまり過ぎてたとか。おそらく急に初めたダイエットとかそういったものが負担につながったのかなぁ、と思います。

 

滅茶苦茶反省しましたね。スぺちゃんの体の丈夫さを過信しすぎた結果でしょう。

 

 

 

その後、スぺちゃんには太りにくく、また筋肉が付くような食事を沢山とるように、まぁ減量作戦の方針転換ですね、そのように指示をいたしました。体重の落ちる速度は緩やかになり、おそらく菊花賞までに適性体重に戻すことは叶わないでしょうが、こちらに変えさせていただきました。

 

また、これは初めてだったのでかなり驚いたのですが、最初の内は無理やりにでも今までの減量を続けようとしていたので、録画を回している途中でしたが、ちょっと本気で怒って辞めさせました。

 

基本的にこちらの指示を聞いてくれてましたし、食事に関しては止めても無理やりたくさん食べてたので彼女の中で何らかの変化があったのでしょうが、一度倒れるまで疲弊してしまうメニューを続けさせるほど私は愚かではありませんので、やめさせたわけですね。

 

 

 

ま、そんな感じですかね。

 

あ! それとこのお蔵入り期間中に不思議なことがあったんですが……

 

 

〇スぺちゃんの食事メニューとかこういうのを食べてください、っていう指示はスぺちゃんが受け取った後にスぺちゃんが自分でそのメニューを出してくれる店を探したり食堂の人に頼んだりしてるのですが(私がお店を調べることもあります)、なんか基本的に皆さん、スピカ+カノープスメンバー+セクさんが妙にやさしかったんですよね。こういうのが食べたいんだけどお店知ってる? ってセクさんに聞きに行ったらほとんど何でも連れて行ってくれました。あと皆さんスぺちゃんに妙に気遣っているというかやさしさに溢れているというか……、何故なんでしょうね?

 

〇今合宿の最期にキャンプファイヤーをやる予定だったみたいなんですけど、いつの間にかなくなってるんですよね。何故だか皆さん忘れているのか話題にも上げないですし……、確か予定表が配られたときは楽しみにしてそうな子が何人もいた気がするんですけど、皆さんサッパリなんですよね。まぁ私としてもそういうのは苦手だったんで助かりますが。

 

 

ってな二点、あるんだけどスぺちゃん理由わかる?

 

 

 

(………ううん、わかんない。)

 

 

 

う~ん、スぺが解らないんだったらどうしようもないし! この件は置いておくとしましょう。

 

ちなみにステータスはこんな感じです。

 

 

>スピード:B

 スタミナ:B+

 パワー :A+

 根性  :B

 賢さ  :B

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.3

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.2

 【空駆ける英雄】    Lv.2

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.2

 

 【ゲートの支配者:改】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 【プレッシャー耐性〇】

 【末脚】

 (【率いるもの】)

 

 

 

スタミナが一段階上がりましてB+に、あとセクさんとの朝練(【ゲートの支配者】再習得後)で【末脚】を無事アクティブ化できました。アクティブ化が結構手厚く教えてくれたので、【末脚】の次の段階、【全身全霊】への熟練度が溜まって予定より早く習得できそうでありがたいですねぇ!

 

 

 

と、まぁ今回はこんな感じでしょうか。

 

次回はまたまた飛びますが、何かイベントを拾わない限りは菊花賞まで時間を飛ばしていこうかなと思ってます。

 

んじゃ、また。次の動画でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「スぺちゃん、ほら! ロイヤルはちみー! こっちでも展開してるみたいだからみんなの分買ってきてよ! もちろんスぺちゃんの分は特大だよ!」

 

 

「……大丈夫です。お気持ちだけありがたくいただきますね。」

 

 

 

「スぺさん? ほら、いかがでしょう? 最近あまり休みが取れてないようですし、一緒にスイーツバイキングでも行きませんか? この近くで行われる無料チケットを家の方から送られてきたので、ぜひ。」

 

 

「……すいません、練習があるので。また、感想教えてくださいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ最近、ずっとあんな感じね。……本当にどうすればいいのか……。」

 

 

 

テイオーやマックイーンに誘われてもすべて拒否しているスぺちゃんを遠めに見ながらゴルシと解決策の見えない会話を続ける。あの日から、確実にスぺちゃんはおかしくなってしまった。

 

 

 

「ほらほら、スズカ。お前まで暗くなっちまってどうすんだよ。スぺだけじゃなくてスズカも慰めに行かないといけなくなったら、さすがのゴルシちゃんでも過労死しちまうぜ?」

 

 

「……そうね。私まで沈んでちゃだめよね。」

 

 

「うむ、それでよし。……にしても顔は笑ってても言葉に覇気がなくて、雰囲気も暗い。食事量もちょっとずつだけど確実に減っていってる。明らかに無理してるのを必死に隠そうとしている、って感じかな。」

 

 

「元々いつも明るい子だったから、周りも異変に気が付いて何かしようとしてくれてるみたいだけど……。」

 

 

「無理そう、なんだよな。スズカは同室だけどなんか進展はあったのか?」

 

 

 

私は首を横に振る。一緒の部屋だからその分私とスぺちゃんの会話は多い、だけどスぺちゃんの異変を解決できそうな手がかりを得ることはできなかった。

 

 

 

「気分転換になりそうなものに誘ってみても全部断って練習しようとしてるもんな、かといっていつもみたいに無理やり連れていく訳にもいかないし。」

 

(やっぱり家族の問題にアタシらが口出しするといいことないんかね。にしてもウチのトレーナーがスぺの親御さんに連絡して色々知ることができたのはいいんだけど、ちょっと重すぎるんだよ。本当は私達まで知る必要はなかったんだろうけど、下の奴らが心配の方が勝って突撃して聞き出しちまったせいで空気も重いし……。)

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

(スぺ、本当にどうしたの? あれからずっとおかしいよ。)

 

 

「……そう、かな? いつも通りだと思うけど。」

 

 

(練習時はずっと真剣だけど、いつもみたいに楽しくやってないし、何かに追われるように、食らいつくようにやってる。食事だってもうやめたのに無理な減量をしてるし、友達から誘われた遊びも全部断って練習、練習。どこがいつも通り?)

 

 

「……大丈夫だって。それにお姉ちゃんもわかってるでしょ。次はクラシック三冠最後の菊花賞、絶対に負けられないってことは。」

 

 

(解ってるんだけどねぇ。……お姉ちゃん心配だよ? そりゃお姉ちゃんスぺみたいにGⅠ走ってないし、三冠まであと一歩のプレッシャーなんてわからない。でも日常生活を犠牲にして、今までのもの全部投げ捨ててまで取りに行くもんじゃないでしょ。)

 

 

「でも!」

 

 

(でももかかしもないない! スぺが焦らなくてもこのお姉ちゃんがしっかり考えておりますので大丈夫だって。スぺは難しいことなんも考えずに前に楽しく進めばいいのです! ……あ、イヤなこととか自分でやりたいこととかあったらちゃんと言うのよ。)

 

 

「……うん。ありがとう、お姉ちゃん。」

 

 

(よっしゃ、ならいいぞい。あ、それとテイオーちゃんとかマックイーンちゃん、あとスズカ先輩とかゴルシちゃんにごめんなさいしてきなさいね。スぺちゃん結構そっけなく返してたから心配してると思うよ。)

 

 

「そうなんだ……、解った。行ってきます。」

 

 

(お、ならさっそく行ってきたまえよ、若人。それと、お口がひん曲がってますよ、ほら笑って笑って!)

 

 

 

お姉ちゃんの手が私の口に触れる。感じるはずの、感じたいものの、姉の指の暖かさと感触はいつまで待ってもやってこない。

 

私の目には姉の指が間違いなく私の口に触れているのにも関わらず。

 

 

私は姉のために無理やり笑顔を作った。

どう、ちゃんと笑えてる?

 

 

 

(うむ! いい笑顔! んじゃ、いってらっしゃい!)

 

 

「うん、行ってきます。」

 

 

 

そうだよね、みんなを、お姉ちゃんを心配させたら元も子もないよね。出来るだけ、出来るだけいつも通りにしないといけない。

 

出来るだけ笑って、出来るだけ明るく。

 

うん、出来る。

 

 

 

 

……レースに絶対はないんだ。

どれだけ私が頑張ったとしても、お姉ちゃんが付いていてくれるとしても、絶対に勝てるとは言えない。

 

お姉ちゃんの言う通り菊花賞は勝てるかもしれない、でもその次は?

 

私はできるだけたくさんGⅠで勝たないといけない、それも無敗で。ジャパンカップや有馬記念はシニア級の人たちも出走してくる。

 

私の有利性は菊花賞まで、そこからさらに勝ち進むには無理をしてでも前に進まないといけない。

 

 

 

……お姉ちゃんが私と離れる時間帯は解ってる。それに私が一人になりたいって言ったら絶対に一人にしてくれる。

 

 

その間に練習しよう。

 

 

絶対に負けられないんだ。

 

 



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PART73

 

 

ほい! 日本に帰ってきた投稿者ですよ~。

 

 

うむ。スズカ先輩と別れの際に、再会と再戦の誓いを胸に、我が故郷に帰ってきたわたくしたちですがね、ちょっとイベントが起きたみたいなんで録画回してます。

 

 

今現在はスぺちゃんが菊花賞に向けての減量と調整中。(ちなみに菊花賞は体重:微増で臨むことになりそう。スぺちゃん勝負服の後ろちゃんと閉まる?)同じスピカメンバーではテイオーとマックイーンが菊花賞トライアルや出走条件を満たすために賞金稼ぎのために重賞を出走。他黄金世代メンバーも同じ感じみたいですね。

 

あと特筆することと言えば、ゴルシちゃんが凱旋門賞に出走登録していたことが発覚したことですか。

 

 

 

 

……何やってんだオメー。

 

 

 

 

スぺちゃんからの又聞きでタイムワープして凱旋門賞が何とか、って聞いてましたがマジで出るとは思わんかったぞ……。さすがに凱旋門賞ということでいつもは将棋とか麻雀とかを練習中にしているゴルシちゃんですが、最近はかなり真面目に練習してるのでいつか空から隕石でも落ちてきそうで毎日震えております。

 

 

まぁ、それはおいていて、なんで録画回し始めたかというと、マックイーンの出走するトライアル、神戸新聞杯の応援に来た時、何故かライスシャワーも出走していたんですよね。

 

 

入学以降全く音沙汰のなかった、というかスぺちゃんが関連するレースに出走していなかったので空気になっちゃってた彼女ですが、ここで登場です。

 

ま、それだけならふぇ~、そうなんだ~。で終わりなんですが

 

 

 

なんか目に青い火灯ってるんですよねぇ……。

 

んで完全にパドックでスぺちゃんのことずっと見てるんですよねぇ……。

 

 

個人的にお目々こわたんなんでこっち見ないで欲しいのですが、よく見るとアニメの時のマックイーン天皇賞春三連覇のレース時よりも火の大きさが小さいように思えます。まだ発展途上で、成熟しきってないということですかね?

 

 

んでさ、スぺちゃん?

最近お外走ってる時、誰かが後ろからついてきてることとかあった?

 

 

 

(ん~、考え事しながら走ってることが多いからよく解んないけど、後ろからマスクとサングラスをした人が走ってくることはあったよ。)

 

 

 

あ~、なるほど?

 

なんか"ついていく"認定されてたようです。

 

全く持って原因がわからん! ライスとスぺ全く接点なかったんだけど!

 

 

 

レースの結果としてはマックイーン一着でライスちゃんは4着でした。レース中は多分ついていく対象がいなかったので火が灯ることはなかったのでしょうが、今後どうなってくるかわからない感じですね。トライアルには負けてしまったため、彼女が菊花賞に出てくることはないでしょうが、来年の天皇賞春では立ち向かってくるかもしれませんし、注意しておくと致しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、話は変わりますがスぺ。わざわざ関西まで我々はやってきたわけです。

 

しかも同志マックイーンが走ったのはあの、神戸新聞杯、聖書デイリースポーツ発行元が提供。

 

もう、おわかりですね?

 

 

 

「???」

 

 

 

なんと! まだわからないのですか!

 

同志マックイーンのカバンをご覧になって!

明らかにレースに必要のない黄色いメガホンと背番号6のユニ、キャップが入っているのですよ!

 

 

もう、おわかりですね?

 

 

最近絶好調でここ最近全く見れてなかったリーグ首位をキープしてくれているあのチーム。

その聖地、甲子園が近くにあるのですよ!

 

しかもなんと今日はホーム!

 

 

 

私も同志マックイーンと同じように、抜かりはありません。

スぺちゃんのおかばんの中にメガホンとユニ、キャップを放り込んでおきました。

準備いいでしょ?

 

 

 

「……うわ、ほんとに入ってる。」

 

 

 

最近ちゃんとしたお休み取ってないですし、行きましょ?

 

 

 

「……自分が行きたいだけなん」

 

 

「あら! あらあらあらあら!! スぺさん! そのメガホンにユニフォームは! あなたもファンでしたのね!」

 

 

 

背後にはいつの間にか、制服の上からユニフォームとはっぴに身を包んだマックイーンさんが立っていた。あれ、さっきまでウイニングライブしてたはずじゃ……?

 

 

 

「マ、マックイーンさん、これは……」

 

 

「えぇ、解りますとも、解りますとも! スぺさんの出身は北海道、その地で阪神を応援するのは大変でしょう! でももうご安心ください! なにしろわたくしもれっきとした虎女ですわ! そして今日は聖地甲子園でのゲーム! さぁ参りましょう参りましょう!」

 

 

 

その後、半ば強引に甲子園球場に連れていかれた私は姉とマックイーンさんの大声の応援を隣で聞きながら観戦した。

 

確かに面白かったし、お休みにもなったけど、なして???

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

【トウカイテイオー視点】

 

 

 

最近、何か動いてないと不安に押しつぶされそうになる。

 

ボクがなりたかった会長みたいな絶対。

 

最強のウマ娘になりたい、って夢はスぺちゃんのせいで……、ううん。ボクが弱かったせいで成し遂げられなかった。

 

 

スぺちゃんと会った時、そうなることは予感していたけどそれが目の前に迫ってくると何とも言えない気持ちになる。

 

 

気が付けばスぺちゃんはボクがなりたかった会長とおんなじ、無敗三冠に手が届きそうになっていて、ボクがなりたかったものになろうとしている。

 

でもボクはなんだ?

 

勝てたのはせいぜいGⅡGⅢの重賞。ボクの目指していたものなんかじゃない。

 

 

世間で言われているシルバーコレクターにボクはなりたかったわけじゃない。

 

勝ちたい、勝ちたいんだ。

 

 

 

 

 

……でも。

 

 

前に比べてボクは格段に速くなった、強くなった。新しい技も身に着けたし、ボクが目指していた、思い描いていたものにたどり着こうとしている。

 

 

でもスぺちゃんは元からボクよりも強くて、ボクよりもずっと速く成長して、ずっと強く成長して、ボクよりも多くの技を持っている。ボクよりもどんどん先に行っている。

 

 

とても追いつけるビジョンが浮かない。

 

 

 

 

 

 

ボクは絶対でも、無敗でも、最強でもない

 

 

 

 

一体ボクは何なんだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ううん、悩んでる場合じゃないね。

 

今のボクは何でもないかもしれないけど、これから先はどうなるかわからない。スぺちゃんもまだ三冠じゃない。菊花賞が残ってるんだ。

 

今のボクがすることはどうにかしてスぺちゃんの三冠を阻止すること。

 

レースでボクがスぺちゃんよりも速くなったことを証明すること。

 

 

うん、考えてたら悩んでる場合じゃなかった、無理やりにでも前に進まないと……。

 

 

 

「……大丈夫ですか、テイオー? 急に立ち止まって何か考えていたようですが。」

 

 

「ん、マックイーンか。……ううん大丈夫だよ。よし、早速練習に行こうか。」



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PART74

菊花賞は前後編です。
また後日、後編を投稿いたしいます。


 

 

 

菊花賞、前日

 

 

 

ただがむしゃらに薙刀を振るう。

 

トレーナーさんからは必要以上に体力を減らさないように言われたが、居ても立っても居られなくなり学園内の道場を借りて薙刀を振り回している。

 

 

本当はこのように感情に任して振るうものではない、精神を落ち着かせて型の動きの通りになぞっていくものだ。

 

しかしながら今日は自身の感情をどうにかして落ち着けるために、研ぎ澄まさせるために振るう。

 

 

 

「スぺちゃんは私達のことを全く見ていないっ!」

 

 

 

思い返せばスぺちゃんと一緒に走ったレース、彼女の強さにばかり目が行き、それに追いつこうと我武者羅に進んできた。そのせいで気が付かなかったが、この夏を挟んで自分と周り、過去を見返す時間を取ることができたおかげでようやく気が付いた。

 

 

スぺちゃんはレース、勝負の時に私たちのことを全く持って敵と認識していない。ただ簡単に超えることのできる障害程度にしか見られていない。

 

そのことを考えてしまってから私の感情は治まることを知らなかった。

 

 

 

過去のレースを見返し、彼女との日常生活を過ごし、そしてトレーナーさんたちの御好意で行われたスピカとの合同練習の時に理解してしまった。

 

 

 

スぺちゃんにとって私など有象無象の一人にすぎないということ。

 

いやそれ以前に誰かと競い合う気すらないということ。

 

 

彼女にとって何かしらのレースに出走する理由はあるのだろうが、どう考えても彼女は自分と戦っている。誰かと高め合うということをしていないように思える、そう感じる。

 

併走でも手加減されていることもその理由だろう。全身に無理やりおもりを付け、キングさんによると全身の動きを制限するトレーニングスーツを着て練習している。あぁ、手加減されている。たかが練習だと思われている。

 

 

 

私の心の内を支配する感情は怒りだ。

 

 

スぺちゃんが私を見てくれないことに対してではない、自分が有象無象にしかなれないことに対してだ。

 

どうしようもなく悔しい、そして自分が恨めしい、悔しい。なぜ私が彼女に追いつけないほど、気にしてもらえないほど弱いのか。

 

そのことを考えるとどうしようもない怒りが心を支配する。

 

 

しかもこのことに気が付いたのは最近。菊花賞までまったく時間がない。

スぺちゃんに追いつこうにも強くなる時間が足りない。

 

自分の愚かさに狂いそうになる、なんでもっと早くから死に物狂いで追いかけなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

ただ無言で薙刀を振り続ける。

 

自身の感情を整え、その向きを一つに向けるために。

 

無駄な感情を切り落とし、ただ私のことを見てもらうために。

 

 

 

肉体はまだ完成していない、ならばせめて精神だけでも一つに整える。

 

 

その後、深夜までグラスワンダーはその獲物を振り続けた。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

ヤハロ~! どもども、投稿者ですぜ。

 

今日はやっとこさ菊花賞ですな。スぺちゃんの大事な三冠が掛かったレースですが、実はそこまで心配していないんですよね。ステータス的にも色々他のこにも勝ってますし、スキルも豊富です。ちなみにただいまこんな感じですタイ!

 

 

>スピード:B

 スタミナ:B+

 パワー :A+

 根性  :B+

 賢さ  :B

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.3

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.3

 【空駆ける英雄】    Lv.2

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.2

 

 【ゲートの支配者:改】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 【プレッシャー耐性〇】

 【末脚】

 (【率いるもの】)

 

 

 

ステータスは前発表した時よりもそこまで増えてませんが、ルドルフ会長のスキルが2から3に成長しました。……今回の作戦的に最中直線に加速する【空駆ける英雄】をあげたかったんですが間に合いませんでした。ま、今後役立つしいいでしょ。

 

にしても未だにアクティブ化されてない【率いるもの】ってなんのスキル何でしょうね? 実はwikiとか検証班の方に聞いてみたんですけど結局わからなかったんですよね。名前的に何かのバフスキル何でしょうが、全くわかりません。

 

……ま、今回のレースには関係ないでしょうし置いとくとしますか。

 

 

さ、それでは今回のレースの作戦をお話していきましょう! スぺちゃんにはもうお伝えしましたが、復習のつもりでちゃんと聞いといてください。

 

 

「はーい!」

 

 

では早速。

 

まず最初のゲートで【ゲートの支配者:改】を使いまして、全員ゲートを失敗させます。そしてスぺちゃんは悠々とスタート。いつもならそこから速度を下げて差しの位置に下がるのですが、今回ばかりは爆逃げ致しましょう。本来のスぺちゃんは逃げなんてできませんが、スズカ先輩のおかげで何とかレースに使えるぐらいになりました。適性値としてはDですかね。んで、そのままスぺちゃんの多めスタミナを頼りに逃げまくりまして、最後のコーナーあたりで疑似的二の矢を行いまして、そこからはいつも通りです。

 

ま、こんな感じですけど何か質問ありますかい?

 

 

「ないよ~。」

 

 

うむ、よろしい! あ、あとレース展開、スキルの利きが悪かったり、思ったより他の子が付いてきた場合は、どんどん後ろに下がって先行や差し策に移していくつもりなのでよろしく。んじゃ、やっていきましょうか。イクゾー!

 

 

「おー!」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

『さぁ今年もクラシック三冠レース、最後の大一番、菊花賞が始まろうとしています! なんと言っても注目はクラシック三冠を無敗で王手をかけているスペシャルウィーク! どのような走りを見せてくれるか楽しみですね。』

 

 

『彼女にとっては無敗三冠を掛けた非常に大事な一戦となりますが、彼女が今まで出走したレースはどれも中距離レース。菊花賞の3000mにどこまで対応できるかが勝敗を決めそうですね。』

 

 

『他出走者としては皐月、ダービー共に二着となったトウカイテイオーやステイヤーとして名高いメジロマックイーンが出走しており、スペシャルウィークに初の黒星を付けてやろうと狙っています。』

 

 

『確かに二人ともよい仕上がりですが、私としてはグラスワンダーにも注目ですね。パドックでの気合の入り方が非常によく、好走が期待できそうでした。あとはエルコンドルパサーあたりでしょうか、これまではそこまで成績は振るいませんでしたが、彼女自体高レベルで纏まった力を持っています。夏を経て一皮むけたようですし、期待ですね。』

 

 

 

後はキングの距離適性的不安が話され、またスぺちゃんの話に戻っていった。

 

 

よし! 全く注目されてない。

 

いままで私は無理に大逃げをして、そのことをみんなの目に焼き付けた。

菊花賞に出走するために出たレースでも大逃げで無理やり勝てたという風に走った。

 

 

周りはみんな私が大逃げしかできないと思っているはずだ。レース展開としてはどうせ私が大逃げするからそれに引きずられないように無視する、後方で待機するという方針を取ってくるはずだ。

 

まぁ、もちろん大逃げはするけどね、ただし途中でしっかり休ませてもらいますけど。

 

 

 

このために全部のレースで周りに刷り込ませた、全部ここで勝つために。

 

スぺちゃんに比べて単純な力じゃ太刀打ちできない、だからこその策。

 

 

 

 

………いける、いけるはずだ。

 

前評判では全く気にされてなかったし、みんなの評判も良くなかった。日常生活でも『せっかくクラシック登録してGⅠ出れるぐらいは勝たせてもらった。どうせ勝てないだろうけどまぁ出ておこう』みたいな雰囲気で過ごせた。誰からも私が本気でスぺちゃんを止めようと思っていないはず。

 

 

そうだ、バレてないはず、バレてないはずだ。それなのに………

 

 

 

 

 

 

さっきからどうやっても止まらないこの体の震えは何なんだ。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

『現在順調にゲート入りが進んでいます。例年ではどのレースでも何人か嫌がる子も出てくるんですが、今年のクラシック三冠レースでは特にそのような子は出ていませんね。』

 

 

 

(吸って、吐いて、吸って、吐く。……よし、余計なことは考えるな。ボクは走れる。調子もいいはず。)

 

 

(初のGⅠですがこれほどまでにゲートが緊張するとは……、いえ、どのような結果となろうともメジロ家に恥じない走りを。そして多くの学びを得れるように走りましょう。勝てるならば勝ちたいですがいまだ私は成長途上、春の天皇賞のためにも学びを得れることに集中しましょう。)

 

 

(ダービーで折れてしまった私、それを救ってくれたのはスぺちゃん。うん、今日は恩返しだ。誰からも逃げないで、誰にも負けない。私ができる全力でスぺちゃんに勝つ! それが私のできる恩返しだ! 目指すはスぺちゃんよりも前!)

 

 

(距離適性、えぇそうでしょう。確かに私は長距離に向かない。……ですがそれが諦める理由にはならない! 私だって何もしないでここに立ってるわけじゃない! 今日こそ私がキングであることを証明して見せる!)

 

 

 

皆さんやはり素晴らしき面構え。この一戦を戦い抜くにふさわしいライバルたち。

 

しかしながらこの私もここにいる誰よりも精神を研ぎ澄ませてきたという自負がある。

 

絶対にスぺちゃんを追い抜き、追い越すという意思がある。

 

 

ですが……

 

 

 

 

 

なぜ、そのような顔をしているのですか、スぺちゃん!

 

 

 

『さぁ全員ゲートに収まりました! ……今、スタートです!』

 

 

 

 

 

ゲートが開いたその瞬間、私のすべてが何かに食い殺された。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

私は、この技があまり好きではない。

 

お姉ちゃんのいう【ゲートの支配者:改】はこれまでのゲートが開く前から私のプレッシャーをゲート全体にゆっくりと充満させて、プレッシャーに満ちたゲートによってスタートを遅らせるというものではなく、ゲートが開いた瞬間にプレッシャーをゲート全体に向かって解き放つという技だ。

 

これまでのものがゆっくりと充満させていくものに対して、新しいものはゲートが開いたその瞬間に私の持てるプレッシャーをすべて叩きつけるというもの。非常に攻撃的な技。

 

 

正直に言うとできるならば使いたくない。ずっと封印してもいいぐらいだった。

私がしたいのはこんなことせずに、正々堂々と一緒に走りたいということだった。

 

 

でも、勝つためには使わないといけない。

 

 

 

言うなればこの菊花賞は次のジャパンカップ、有馬記念に向けた練習。シニア級の人たちに万全に使えるように同じ大舞台で練習しないといけない。

 

 

 

「だから」

 

 

こんなことしないと、絶対に勝てないという自分の力のなさに

 

こんな技に頼らないと勝てない、と思ってしまう私の弱さに

 

 

 

「ごめんなさい。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『ど、どうした! スペシャルウィーク以外ゲートから出てきません!』

 

 

 

(か、体が……)

 

 

(マズいマズいマズいマズい! 動け動け動け動け!)

 

 

(全身が鉛のように重い! 体が何かに縛られているように硬い! 動けない!)

 

 

 

 

『何か問題が起こったのでしょうか! あ、今走り出しました!』

 

 

『トウカイテイオー、メジロマックイーンが大きく遅れましたが何とかスタート、それにつられてエルコンドルパサー、セイウンスカイ、キングヘイロー、グラスワンダーと順にスタート。それ以外の子はまだ出てきません!』

 

 

『現時点、後続と非常に大きく離れまして先頭はスペシャルウィーク。独走状態です。』

 

 

 

(だいぶ前に一度食らってたから何とか動けたけど、それ以上にこれはマズい! 前よりも威力が上がってて一瞬気がなくなってた!)

 

 

(アメリカ合宿でスズカ先輩に逃げを教わっていたのはこのためでしたか! 見たところ差は10馬身以上、どうにかして差を縮めないと勝負にすらなりません!)

 

 

 

『おっと、ここでセイウンスカイが大きく加速した! 先頭に追い付くために大逃げを開始です!』

 

 

 

(先に出た子がいたから何とかつられて動けたけど、どうしたらいい!? どうすれば最適だ!? 今まで考えていた作戦は全部壊された! どうすれば勝てる、どうすれば抜かせる! 考えろ! 考えるんだ私!)

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

観客席、ここには菊花賞で出走するメンバーのトレーナーの一部が集まっていた。

 

年長者であるキングのトレーナー、赤田が情報共有と観戦を提案し集まった形になる。

 

ここにいるのはスピカトレーナー、担当はスペシャルウィーク、トウカイテイオー、メジロマックイーン。リギルトレーナー、東条。担当はエルコンドルパサーとグラスワンダー。それにセイウンスカイを担当する緑川だ。

 

 

 

 

 

正直言って雰囲気は最悪だった。レースが始まる前までは同業として、ライバルとして色々談笑をするぐらいだったのだが、あのスタートのせいで崩壊した。

 

 

「ブラフ、だと思ってたんだけどなぁ……、一本取られたねぇ。」

 

 

俺は確かに『逃げができることはブラフだ。』と言った。そう考えて行動した、しかしながら奴さんはこっちよりも賢いようであえて苦手な作戦であろう逃げを使ってきた。

 

一流、その一部が使用するプレッシャーを使った技術。デバフなんて言われる技術で確かルドルフがレース中に使っていたことを記憶している。

 

今回俺たちが見せられたのはそのゲート版だろう。見た感じゲートが開いた瞬間に合わせてプレッシャーを掛けることで出遅れを発生させる技。元々身体的能力の差が大きいスペシャルウィークとそれ以外に対して凶悪な効果を発揮したといえる。

 

しかも俺が担当しているお嬢はスタミナは何とかあるが長距離にはどうしても向いていない。何とか人並みに届かせることはできたが、生まれ持った才能が長距離には向いていなかった。……いや、それ以上にあの子は短い距離の方が向いているといえる。

 

 

 

まぁ完全に読みで負けた俺なんかよりも悲愴な顔をしているのが緑川だ。おそらくだが今までの無理な大逃げはこの菊花賞のためのブラフだったんだろう。そのために努力してきたものが全部ひとりにつぶされちまったと言うのは、な。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

『いまだスペシャルウィークの独走状態! 強烈な逃げと共に後続と大きく差を離しています! まさに一人旅!』

 

 

お、一人旅って言われてますねぇ。聞いた話によると実況でとあるワードで自身が紹介されることがスキルの入手に繋がったりもするみたいですが、まぁ今回入手できたとしても逃げスキルでしょうし、スぺちゃんにはそこまで関係ないですね。

 

 

んじゃ、ちょっと後ろを見てみますか。あ、スぺちゃんはこのペースで走り続けてくださいね。ちょっとばかしハイペースでキツめですが頑張ってクレメンス。

 

 

(コクコク!)

 

 

え~とですね。現在後続と7馬身程離れまして二番手にセイちゃん。その後ろ3馬身程離れて団子になってトウカイテイオー、メジロマックイーン、残りの黄金世代のみんなという感じでしょうか。その後ろはちょっと離れすぎててどんな感じか解りません。

 

皆さん大逃げ中のスぺちゃんに追いつくためか、かなり無理して追い上げてきてますね。思ったよりゲートスキルが凶悪だったせいでみんな出遅れしてしまったのが原因でしょうが、こちらの思うつぼというか作戦通りになりそうです。

 

ざっと見た感じ皆さんのステータスもよくてC+といったところ。平均してみるとCぐらいなので何かこちらの知らないスキルなんかをぶつけられもしない限り負けることはなさそうですし安心ですねぇ!

 

 

ん~、どうしましょう。スぺちゃんスタミナの方はどうですか? このまま逃げたままゴール出来そうですか? 無理そうならここから速度を落として一度抜かせてから抜き返すこともできますけども……

 

 

(大丈夫っ!)

 

 

お、いいお返事! なら最後まで逃げ切りますよぉ~! バクシンバクシンー!

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

一歩前に進むごとに差が縮まってるのか、それとも離れていってしまっているのか全く分からない。普段よりも長い距離、そしてスぺちゃんのスタート。思っていたよりも精神にかかる負担がキツイ。

 

あぁ、駄目だ。周りをよく見て考えないと。こんなところでへばってたら何者でもなくなってしまう。

 

 

スぺちゃんは依然先頭、ボクとの差は8,9バ身ぐらい、2番手のセイウンスカイがそこから6バ身程後ろ。ボクたちのところはマックイーン、エルコンドルパサー、ボク、キングヘイロー、グラスワンダーが順に固まってる。全体的にスぺちゃんに追いつこうとして速度をあげてるからハイペース。

 

意識を集中させてよく見てみると差は少しずつ縮まってる。良かった。

 

 

 

……でも間に合うのか? ちょうど今スぺちゃんが2000m過ぎたぐらい、残り1000m。これで間に合うのか? スぺちゃんの真骨頂は最後の直線での爆発的な伸び、たとえ逃げをしていたとしてもあのスぺちゃんだ。絶対に直線で伸びる。

 

 

駄目だ、絶対に間に合わない。

 

ここは無理をしてでも前に出ないと勝てない、その可能性すら消される。

 

また大差負けしてしまう。

 

 

 

普段は最後の直線辺りからしか使わないけど、やるしかない。

距離が長くなりすぎるとボクの脚が持たなくなる可能性があるからできなかった。

 

 

でもやるしかない。勝つためにはやる。

 

ボクが、絶対になるために、会長みたいになるために!

 

 

>『絶対は、ボクだ!』

 

>『究極テイオーステップ!』

 

 

無理やりだけど、やるしかない!

 

 

 

『あっっと! ここでトウカイテイオーが上がってきた! 上がってきた! のこり1000m付近でトウカイテイオーが加速です! エルコンドルパサー、メジロマックイーンを抜いて3番手に躍り出た!』

 

 

 

よし、よし、まずは二人を抜かせた! 行ける! このまま前に!

 

 

 

『トウカイテイオー、前に上がっていきます! 今セイウンスカイも抜かし、先頭のスペシャルウィークに食らいつく!』

 

 

いける! いける! いつもよりも調子がいい! このままいけるんだ! 抜かせるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カクン

 

 

 

 

 

 

「え…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『トウカイテイオー減速! トウカイテイオー減速! 故障発生か!』

 

 

 

 

(あっ………)

 

 

(ん? どうしたのお姉ちゃん?)

 

 

(……いや、今は気にしないで。ただ前を見てゴールまで走り抜けて。)

 

 

(……、わかった。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菊花賞 レース結果

 

一着 スペシャルウィーク

二着 グラスワンダー

三着 エルコンドルパサー

四着 メジロマックイーン

五着 セイウンスカイ

 

六着 キングヘイロー

 

 

 

競争中止 トウカイテイオー

 

 

 

 

今レースは非常に珍しく、また難しく、悲しいものとなった。

スペシャルウィーク以外の非常に大きな出遅れ。それまで先行、差しを中心に走ってきたスペシャルウィークの大逃げ。またスペシャルウィークのシンボリルドルフに続く無敗三冠の達成。そして、それまでシルバーコレクターであった皐月賞、ダービー二着だったトウカイテイオーの左足首骨折による競争中止が起きたレースであった。

 

国内ドリームシリーズの開催が発表されたこともあり、トゥインクルシリーズを牽引する新たな三冠ウマ娘が誕生したのは喜ばしいことだが、その好敵手になり得たトウカイテイオーの故障が発生してしまうのは悲しい限りである。彼女のいち早い復帰を祈る。

 

また、これまでレース後のアピールとして指を皐月賞では1本、ダービーでは2本としていたスペシャルウィークは三冠達成時に三本の指を立てるアピールをするものだと思われていたが、トウカイテイオーの事故のためにそれを自粛したと思われる。

 



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PART75

 

 

 

 

「……お姉ちゃん。」

 

 

(ん……? あぁ、テイオーちゃんね、左足首の骨折みたい。ちゃんと見てないからわからないけどたぶん元通りに走れるようになるまでに3か月ぐらい……、多分次に戦えるようになるのは大阪杯ぐらいになるかな?)

 

 

「そうなんだ……。」

 

 

(……そうだ! こんどお見舞いに行きましょう! ほら、この前はちみー頂きましたしお返しにはちみー+αでみんな誘っていきましょう。)

 

 

「……ううん、やめとく。何となくだけど私が会いに行ったら駄目だと思うし、トレーナーさんに頼んでなにか持って行ってもらうことにする。なに送ったらいいかわからないからお姉ちゃんに頼んでいい?」

 

 

(そう……ですか。んじゃこのお姉ちゃんが選んどいてあげまさぁ! あとちゃんとメッセージカードぐらいは自分で書くんですよ。)

 

 

「うん。…………お姉ちゃん、次はジャパンカップだけど何かしないといけないことはある?」

 

 

(ん~、早速? まだ菊花賞終わってすぐだし、少しぐらい休んでも)

 

 

「お姉ちゃん。」

 

 

(…………んじゃ、ケガに気をつけてやりましょうか。次は元通り差し策に戻すんでそのつもりで。あと練習はスキル関係の強化と最大速度を上げるためにスピード練習を重点的にやっておきましょう。)

 

 

「わかった。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「セイちゃん!」

 

 

 

ん、あぁ。トレーナーさんか。全然気が付かなかったや。

 

 

……そうだ、ちゃんとしないと。

 

 

 

「アハ、アハハ~、ゴメンね、トレーナー。セイちゃん全く歯が立たなかったよ、一緒に考えた作戦も、積み重ねた準備も、何もかも全部ダメだったや。ホントに、ホントに……」

 

 

あぁ、どうしよう。笑おうとしてるのに、頑張ってるのに、どうしようもないや。

 

 

私がうまく走れるように、出走するレースの子たちの情報全部そろえてもらって、その子たちに勝てる作戦用意してもらって、それでその作戦が失敗しても勝てるだけの能力を得られように指導してくれて、全部整えてもらったのに、何も返せなかった。

 

目標にして、それに向かって全部整えてた菊花賞ですら勝てなかった、届かなかった。

 

 

「ホントに私、ダメな子だよね。こんなに用意してもらって、場を整えてもらって、いっぱい時間かけてもらって、それでもちゃんとスタートすらできないで、しかも結果はギリギリ掲示板。もうこんなダメな」

 

 

「セイちゃん、いいんだよ。」

 

 

顔が、保てなくて、どうしても顔に笑顔にできなくて、心配かけたくなくて、でもどうしようもなく泣きたくて、どうにもならないようなぐちゃぐちゃな顔。

 

そんな顔を見かねたのか、トレーナーが私を引き寄せて抱きしめてくれた。

私の顔はトレーナーさんの胸の中。

 

もう見られる心配はない。

 

 

 

「泣いても、いいんだよ。 心配しなくて、いいんだよ。」

 

 

 

 

それから先はトレーナーの胸の中でひたすら泣きじゃくったことしか覚えてない。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「……お嬢、大丈夫か?」

 

 

「えぇ、悔しいですがピンピンしてますとも!」

 

 

 

今、私はどうしようもなく腹が立っていた。あの自身の身を削るようなトウカイテイオーの走りではなく、それを見た自分自身にだ。そもそもなぜ、あの時スタートを失敗してしまったのか、あの程度、とはとても言えないようなプレッシャーだったが、あのような出遅れを防ぐ術はあったはずだ、何故その対策を取れていなかったのか。なぜトウカイテイオーのような自分の体を削ってまで勝ちに行くような精神がないのか、なぜ自分にはそんな身を削ってまで前に行くような技術がないのか、それをできるだけの素質がないのか、そしてなぜ私は距離が長くなればなるほど弱くなってしまうのか。なぜ長い距離が走れないのか。

 

母は走れた、長距離なんて軽く走れた。なのになんで私は短くないと走れないのか。

 

母は勝てた、GⅠに勝利し名を挙げた。なのになんで私は何をしても勝てないのか。

 

 

 

恥ずかしい。

 

優れた母に恵まれ、育てられたのに結果を出せない私が。

 

優れた師に恵まれながらも、その恩を返せない私が。

 

そして同室のウララさんに合わせる顔がない。

 

 

 

優れた成績を出しながらも、全く振るわない私のことを気にかけてくれていた彼女に申しわけない。

 

 

あぁ、本当に、本当に!

 

 

 

 

「キングヘイロー!」

 

 

「ッ!」

 

 

「とりあえずお前さんは落ち着くべきだ、ほれ深呼吸。」

 

 

 

……確かに少し気が逸っていたかもしれない、言われたとおりに深呼吸を始める。

 

 

 

「よし、とりあえずは俺の話が終わるまでは深呼吸し続けてくれ。お嬢はちょっとばかし滾りすぎてたようだしな。最初に俺から言えることは、本当にすまなかった。スペシャルウィークの逃げはブラフだというように決めつけて対処することができなかった。」

 

 

思わず、私が負けたのは私自身のせいだ、と口にしそうになるのを目でやさしく止められる。

 

まだトレーナーの話は続くようだ、聞かなければ。

 

 

「……今回勝てなかった理由は上げようと思えばいくつかあるが、そのすべてが俺の指導不足によるものだった。お前さんの時間を無駄にしてしまったことは、本当に申し訳ない。」

 

 

「だから、次の勝負までに今回のレースで思いつく限りの対策をお嬢に指導したい。だから、これからもお嬢のトレーナーをやらせてくれるか?」

 

 

 

……トレーナーにそこまで言わせてしまった。

 

いや、でもトレーナーのおかげで落ち着いた。私は私のあるがままに。

 

それ以外できないのだから。

 

 

 

「えぇ、もちろんですわ! こちらからお願いしたいぐらいですとも!」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「エル!」

 

 

「あ、おハナさんですカ。オ~、そんな心配そうな顔しないでも大丈夫ですヨ。ちょっと落ち込んでますけど前みたいにどうしようもなくなっちゃったわけではありませんカラ!」

 

 

「……そうか、私じゃ頼りないかもしれんが何かあったら何でも言ってくれ。」

 

 

「ハイ! それとおハナさんは全然頼りなくないですヨ! あと、私なんかよりもグラスのことを気にかけてあげてください。私が話しかけても気が付けないぐらい思いつめていたようでしたから。…………あ、それとちょっとマスクが濡れちゃったので取り換えてきますね!」

 

 

「そう、か。ではまた後でな。」

 

 

 

ダービーの後、何とか立ち直れたエルだが、今回の敗戦でも少なからずダメージを受けてしまっているようだ。だが、前回の時よりも回復はできている、エルの目は前を見ることができていた。

 

とりあえずはエルのことは大丈夫そうだ。だが彼女も言っていたようにグラスの様子がおかしいらしい。おそらくだが彼女の控室にいるのだろう、急がなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のレース。私は2着だった。一着のスぺちゃんとは5馬身差。

 

これまでの結果を考えるに差は縮まってきているように思える。

 

 

 

 

そう、思えるだけだ。

 

 

 

 

 

もっとよく考えてみろ、私。スぺちゃんの選んだ作戦はなんだ、あのゲートでやられた凶悪なプレッシャーのことを忘れたのか、そもそも彼女は私を見てくれていたのか、一人の敵として見ていてくれていたのか!

 

 

否、彼女の目には私なんか映っていなかった。それ以前に出走した面々が個人として見られていたかも怪しい、ただの有象無象としてしか見られていなかった。

 

そもそもスぺちゃんが今回取った作戦は逃げだ。今までのレース、そして本人から聞いたことがあるから解る。彼女が一番得意とするのは差しだ。つまりこの菊花賞では本気を出されていない。私があのプレッシャーの中から抜け出せたのも先に誰かが出てくれたおかげで、それにつられてスタートできたに過ぎない。

 

 

 

何もかも、何もかもスぺちゃんに私を意識させるには、何もかも足りない。

 

力が足りない、速度が足りない、技が足りない、心が足りない。

 

 

 

 

 

 

……いえ、これはスぺちゃんが教えてくれたのね。

 

私に何もかも足りていないことを教えてくれたのね。

 

 

えぇ、えぇ、それならば、彼女がそう思っていなくても私は彼女が求めるまでに上り詰めないといけない。彼女と戦い、競い合えるまで自身を鍛え上げないといけない。

 

まだ、私には甘えがあった。それを教えてくれたのね、スぺちゃん。

 

 

 

全身に力が入る、何かが燃える音がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、東条トレーナーが見たグラスワンダーは、強く握締め過ぎた手のひらが血で真っ赤に染まり、全身に青い燃えるようなオーラを醸し出しながら静かに笑っていた。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「失礼しますわ、テイオー。」

 

 

 

あの後、テイオーはレースを中断し、そのまま病院に運ばれた。スぺさんや私のウイニングライブがあったため一緒についていくことはできなかったが、トレーナーさんがついていってくださったようだ。

 

 

 

「ん? あぁマックイーンか、いらっしゃい。何もないけどゆっくりしてってよ。」

 

 

「あら、大嫌いな病院にいるのに思ったより元気そうですわね。」

 

 

「アハハ、まぁ入院するのは半月程度って話だしそれまで我慢するよ。 マックイーンみたいにお見舞いに来てくれる人が多いし、なんやかんやでやることあるから退屈はしそうにないしね。」

 

 

 

解っている、テイオーが無理していることぐらい。でも私が心配しているところを見せつけられることは彼女は望んでいない。私達はいつも通り、軽口を言い合えるぐらいの関係でいいのだ。

 

 

 

「……全治三か月だって。リハビリも考えたら大阪杯出れるか出れないか、ってところ。」

 

 

「そう、ですか。」

 

 

「また、離されちゃうよね。せっかく追いつきそうになってたのに………。あ! そういえばさ、マックイーンはどうだったの? ボクは早く使いすぎて足やっちゃたけど、マックイーンはいつも通り最終直線で使ったんでしょ?」

 

 

「あのね、テイオー。それ私以外に言うのはやめてくださいまし。何にも言えなくなってしまいますわ。」

 

 

「えへへ~、ごめんごめん。」

 

 

「もう! ……あなたと同じように私も自身の中にある二つ目を引き出し、それをレース中に同時に使うということはかなり前にできるようになっていました。ただ、その負担の大きさからあなたとの練習ぐらいでしか使っていませんでしたが……、やはり負担が大きすぎますわね。レース後、軽い痛みを感じたため当家の主治医に相談したのですが、やはり長時間の使用、そして多用は避けるべきだと言われました。」

 

 

「やっぱりそうなんだね。」

 

 

「えぇ、ですが効果。その加速力の大きさは絶大。いまだ使いこなせませんがこれを完全に使いこなせるようになれば必ずスぺさんを追い抜くことができる、そう確信できるものでした。菊花賞で使ってみて、再確認できたと言えます。」

 

 

「……そっか。ではではそんなマックイーンにプレゼント! ボクがレース中に何回か使ってみてたのは知ってたでしょ。その時の感触とか、ボクなりの考えとかをノートにまとめてみました!」

 

 

 

テイオーからノートが手渡される。

 

これは、なんというか……

 

 

「ボクが諦めてマックイーンに後を託した、そう思ってるでしょ。も~、違うんだからね! ほら、ちゃんと中身見てみて!」

 

 

 

そう言われてノートを開く。彼女の字で所狭しと書きこまれているが、それはノートの見開き片側だけ。もう片方は白紙だ。

 

 

 

「左側はボクの。右側はマックイーンね。それでさ、ボクが書いた疑問とか、思いついた改善点とかも書いてるからマックイーンがやってみてその感想を右側に書いてよ。それで、開いちゃった三か月をこれで巻き返す。マックイーンもボクのデータや考えた知識が手に入るし、同じようなことしてるからwin-winだよね。」

 

 

「……ふふ、そうですわね。ぜひ、やらせていただきますわ。しかしながらこんなドッキリみたいなのはやめてくれませんこと? わたくしったらテイオーが腑抜けたことしだしたと思ってひっぱたきそうでしたわ!」

 

 

「えぇ~、ひどいなマックイーン!」

 

 

 

 

そう言いながら私たちは笑いあった。やはり、私達はこれぐらいの方がいい。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、忘れていましたわ。こちらスぺさんからのお見舞いの品です。詳しくは知りませんが地元のお菓子みたいですよ?」

 

 

「へ~、まぁスぺちゃんジャパンカップに有馬記念の連戦コースみたいだし忙しいのは解るけど、ね。……あ、なんかメッセージカードみたいなのが付いてる。なになに~」

 

 

 

 

 

 

待ってます。

 

 

 

 

 

 

 

「……………へぇ。」

 

 

 

 

これはなおさら早く治さないと、ね。

 

 

 

 

 

 







というわけでやっと菊花賞終わりです。
やっとスぺちゃんも無敗三冠ウマ娘ですね!

あれ……、なんだか雰囲気悪い……?



次回からは
〇黄金世代の次走について
〇ゴルシちゃんのフランス旅行
〇目覚める皇帝

という感じになりそうです。
あとスぺちゃんは今年中には元に戻るので安心してくださいね。


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PART76

 

 

 

「それで、お嬢。次はどうする?」

 

 

菊花賞での敗戦の翌日。私は練習の前にトレーナーさんからとわれた。

 

 

「お前さんも解ってるとは思うが今年残ったGⅠはジャパンC、マイルCS、有馬の三つ。ドリームシリーズの件で上から狙ってくる奴はいるだろうが、お嬢ならどれでも出走自体はできる。……だが、俺としてはどれか一つに絞って欲しいってのが本音だ。ただでさえオーバーワーク気味なんだ、これ以上の負荷はお嬢の今後を考えれば許可しにくい。」

 

 

深く、頷く。私はスぺさんのように体が異様に丈夫、というわけではない。トレーナーが言う通り、今の練習量を続けたまま二つのレースに出走するのは不可能なんだろう。

 

 

「お嬢のことだ、マイルには出ないんだろ?」

 

 

「はい。」

 

 

今年の成績、GⅠでの成績は負け続けだった。しかしながらそれが理由で皆との勝負を避けるのはキングのすることではない。

 

 

「と、なるとジャパンCか、有馬になってくるが……。俺としては有馬を推したい。このままのペースで行くと菊花賞の疲れが抜けきっていないままの勝負になる可能性が高い、距離は多少長くなるが出来るだけ完全な形で挑んだ方がいいと思っての話だ。」

 

 

……確かにこのままジャパンCに出走するのは難しい。準備期間が少なく、疲れを残したまま、そして成長できないまま挑むのは避けたい。

 

 

 

「……はい。それでお願いします。今度こそ、勝利を!」

 

 

 

今度こそ、今年最後の大舞台で。

 

私を思ってくれた人のためにも、私自身のためにも。

 

スぺさんに勝利する!

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「大丈夫、切り替えられる。まだ策はある。」

 

 

 

そう、自分に言い聞かせる。

 

全部を掛けた菊花賞。ダメだったけど、まだ何とかなる。ダメだったことが次につながる。

 

 

「幸い、まだ私の策はバレてない。もう一度見直したけど私の大逃げはいつものまま。バレてない、評判でもそういわれている。」

 

 

そうだ、あの時はとにかく前に進もうとしていたが、世間にはそれが私が“見せて”いた私と何ら変わらない。まだ私には道が残っている。

 

 

「……と、なると最大の問題はスぺちゃんのプレッシャー。ゲートが開く瞬間に叩きつけるあの暴力ともいえる技。どうにかしてあれを耐え切って先頭を維持し続けないといけない。」

 

 

と、なると今の私に必要なのはあのプレッシャーを気にせずスタートできる強靭な精神力とスぺちゃんの大逃げよりもさらに前で逃げ続け、スぺちゃんが後ろに下がらざるを得ないほどのスピード、それを維持するスタミナ。

 

 

「改めて上げてみると、やること多くてやんなっちゃうね、あはは…………、遠いなぁ。」

 

 

考えるとどうしても時間が足りない、けど私にとって時間は敵だ。

 

 

「どう考えても私じゃおいてかれる。どうしても伸びしろ、ううん成長の早さが足りない。」

 

 

私が単純な力量だけで勝負しない理由、それは自身とスぺちゃんとの力の差もあるけど一番の理由は成長速度の差だ。

 

私が一歩前に進むとすでに他のみんな、特にエルやグラスがさらにもう一歩前に進んでる。スぺちゃんはもともとの差が大きすぎてわからないけど、エルちゃんたちとの差が離れてないところを見るに速度は同じかそれ以上。

 

歩幅や速度が違う相手に挑み、勝つには策を用いるしか方法はなかった。

 

 

「トレーナーさんから渡されたデータ。これがホントになぁ……。」

 

 

データと作戦に重きを置いている私のトレーナーさんが用意してくれたもの。それは私達同世代、特に有力ウマ娘の現在の力量と成長速度についてまとめられたものだ。もちろん私のデータもある。

 

これを見ていると嫌でも思い知らされる。

 

これからさらに差が広がることを。

 

 

スぺ、エル、グラスの三人の成長速度が徐々に上がっていること、そして私とキングが遅れ始めていること。そして自分だからわかるどうやっても超えれそうにない壁の存在がもうすでに見えかけていること。またこの三人にそれが全く持って見えていないこと。

 

 

そうだ、私が置いて行かれるのはすでに“決まって”いる。

来年、シニアに入る頃じゃもう追いつけない、私は本当に有象無象に成り下がる。

 

 

 

私が求める基準に何とか辿り着きそうで、今までの策がピッタリ嵌ったときにだけ勝利を手に入れられるギリギリのラインが年末の有馬記念。そこが私のタイムリミット。

 

 

 

 

「やるしか、ないよね。」

 

 

 

まずは菊花賞で使い切ってしまった体力の回復、その回復の間に、他の強化を考えれば時間的に精神を鍛えておかないと間に合いそうにない。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「二人ともジャパンカップへの出走登録、か……。」

 

 

「ハイ! グラスは一人にしてほしいみたいなのでワタシがまとめて言いに来ましタ!」

 

 

「……そうか。」

 

 

「ワタシもグラスも今の目標はスぺちゃんですが、いつかは世界に飛び立ちたいと思ってまス。なので世界からの色々な強い方が集まるジャパンカップは挑戦しがいがあります。スぺちゃんは有馬も出るみたいですガ、ワタシたちが全力で勝負できそうなのはどちらか一つだけ。なのでこっちにしましタ!」

 

 

「だが、いいのか? 知ってるとは思うがドリームシリーズの件で、ルドルフの出走が決まっている。」

 

 

「モチロン知ってます! でもそれが逃げる理由にはなりませんシ、会長さんと戦えるのはうれしいし、楽しみデス!」

 

 

「……了解した。エルの方の出走登録はこちらで進めておこう。だが……。」

 

 

「……グラスは多分。ワタシの時より難しいと思います。たくさん気にかけてくれたから何か返したいですけど、多分ワタシじゃ駄目なんだと思うんです。」

 

 

「……解決のカギになりそうなスペシャルウィークの方もスピカの奴に聞いたが、精神状態がいいとは言えないそうだ。おそらく今無理に合わせると、すれ違い爆発する。……とりあえずこちらでできる限りのことをしてみる。エルも無理をしないで欲しい。」

 

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スぺが取り返しのつかないところに行きかけているのは解っている。

 

だけど私にはそれを回避させる術はない。

 

 

 

私の契約とスぺの契約は別物。

 

私の契約はスぺの疑似トレーナーになることだけ。

 

それ以外の物は求められなかった。

 

 

 

スぺの目標や契約はスぺにしかわからない。

 

私の内容は伝えることができたが、スぺの契約は違う。

 

その内容を私は知らない。

 

私にできることはない。

 

 

 

私には縛りが多い。

 

出来ることはトレーナーとしてのことだけ。

 

それもすごく限定的。

 

なんとか例外も見つけるこができたがほんの少し。

 

 

 

私はほとんど見ていることしかできない。

 

私はあなたに触れられない。

 

 

 

 

 

出来ることは、

 

せめて、気づかせてくれる人のところに連れていくぐらい。

 

 

 

他人に任せることしかできない私を許して。

 

 

 





読んでくださりありがとうございました。
感想、評価、誤字報告、お気に入り登録いつもありがとうございます。
励みになります。


次回はゴルシちゃんとスぺちゃんの回です。


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PART77

 

『ゴールドシップ、凱旋門挑戦。』

 

 

世間ではスペシャルウィークの無敗三冠が注目されていたが、国内の目は外にも、海外にも向けられていた。ダービーは落としてしまったがクラシック二冠ウマ娘。また史上初の宝塚記念三連覇をなすなど国内でも有数のウマ娘である彼女が凱旋門に挑戦しようとしていた。

 

彼女の普段の行い、またはレースでのハプニングなど、稀代の癖ウマ娘として名高く、熱狂的なファンが数多くいる彼女にしては珍しく練習の時から全力で準備し始めたこのレース。

 

彼女のファンたちはこう言った。

 

 

『今回のゴルシはマジだ。』

 

 

 

 

とまぁ、色々言われてるみたいだよな、ゴルシちゃん。

 

正直真面目にやるのは久しぶりだったからきつかったけど仕上がった。

今回ばかりはアイツのためにもガチでやる。

 

このレースがアイツに響くかどうかは解らねぇけどやるだけやる。

たとえ負けたとしてもバトンは渡せる。

 

 

うし、覚悟完了! やっるぞ~!

 

 

 

『君が、ゴールドシップか?』

 

 

お、考えているうちにあっちから来てくれたんだな。

 

 

『おうおう、そうだぜ! ゴルシちゃんって呼んでくれよな、ブロワイエ。』

 

 

何の因果か私が知る元々とかなり違うこいつ。

 

こっちじゃ欧州三冠達成済み、芝の欧州最強、ブロワイエ。

凱旋門二連覇をかけてのレース。

 

あっちも本気の本気、仕上がりが半端ねぇ、な。

 

 

『わざわざ日本からフランスに来てくれてありがとう。良いレースにしよう。』

 

 

 

…………へぇ~。 わざわざ来てくれてありがとう、ねぇ。

 

 

 

 

スぺ、悪いけど台詞もらうぞ。

 

 

 

 

『うんうん、そうだな。一緒に頑張ろうな! ……それと最後に。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調子乗んな。(La victoire est à moi)

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『レースは終盤最後の直線!』

 

 

『先頭はブロワイエ! すでに全部差し切って先頭! 欧州最強は伊達じゃない!』

 

 

『……あっと! ゴルシワープ! ゴルシワープだ! ぽっかり空いた穴に差し込んで二番手に躍り出た! そのままブロワイエを猛追!』

 

 

『並んだ! 並んだ! ゴールドシップ、ブロワイエ並んだ! 日欧最強決定戦!』

 

 

『どっちだ! どっちだ! どっちだ! 今並んだままゴールイン! 掲示板はまだか!』

 

 

『…………! 今出ました! ブロワイエ一着! ハナ差でゴールドシップ! ゴールドシップあと一歩のところですが届きませんでした!』

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、見ろよこれ。すっげぇ惜しいだろ。」

 

 

「え……? 何でいるの??? だってこのレース1時間前の?????」

 

 

「そりゃ、ゴルシちゃんだからワープぐらいするよな、うんうん。にしてもスぺ、もう結構遅い時間なのになんで走ってんの?」

 

 

「それは……。」

 

 

「ま、それはいいけどな。ふぁ~~~、にしても『調子乗んな!』って言って負けちまったし、直前のインタビューで『ゴルシちゃんの赤は日の丸の赤だ! ま、かる~く勝って来るゼ!』ていって負け負け、う~ん世知辛いぜ!」

 

 

「そう、ですか……。」

 

 

「んでさ、ほれ。凱旋門で出走してたやつらと来年度出走しそうな奴らのデータ。あとそれ以外の欧州で目ぼしい奴のデータ、ロンシャン競バ場とアスコット競バ場データと走ってみた感想な。」

 

 

「…………。」

 

 

「お~? なんで、って顔してんなぁ。……来年走りに行くんだろ、KGVI & QESと凱旋門賞。」

 

 

「ッ! ……誰にもまだ言ってないのに。どうして知ってるんですか。」

 

 

「そりゃ、ゴルシちゃんだし、うむ。後輩が来年春秋計6冠プラスこれを取りに行こうとしてるんだったらそりゃあ手助けするわな。ホントは海外なんて行く気なかったのをわざわざ変えて調べてきたんだぜ。」

 

 

「それで……」

 

 

「ま、思ったより楽しかったし、これからフランス観光してくるからそこらへんは気にすんな。…………それでさ、最近色々ため込んでんだろ? 私は他の奴らと違ってトゥインクルシリーズにはもう出ないし、喋ってもいんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

完全に思い出したのは最近。だけどずっと同じことを考えてた。

 

忘れていたのは最初の大きなきっかけ、別に忘れていたとしても考えればすぐわかる。

 

 

 

いつの間にか、ため込みすぎていたのかもしれない。

 

 

私のことを考えてくれていたゴルシ先輩に言われたせいか、もう我慢できなくなっていたせいか、

 

少しでも吐き出してしまいたかったのかもしれない。

 

 

 

学園近くの深夜の公園で、二人でベンチに座りながら、口からあふれ出るものをそのまま吐き出す。

 

 

 

「私が走る初めてのきっかけはお姉ちゃんでした。」

 

 

 

ゴルシ先輩は横で静かに聞いていてくれている。

 

 

 

「お姉ちゃんが走っていたのはもうだいぶ前、私が小学生になる前くらいでした。地方の小さな学校でしたけどお姉ちゃんはその学校のエースで、ずっと一番だったんです。」

 

 

「小さかった私は、お姉ちゃんのことが大好きで、憧れてて、一緒に走りたい、ずっと一緒にいたい、そう思ってたんです。」

 

 

「それで、あの日………。幼かった私はそう思ったんです。お姉ちゃんの住む学園、そこはどんなとこなんだろう、って。それで、それで姉に無理を言って一日だけ体験入学させてもらえることになったんです。すごい姉の妹だから、人の少ないあの学園では入ってくる人の量も限られてましたから、期待されて、大きくなったらあの学園に入って欲しい、て。」

 

 

「いま思えば、あの時行かなければ何か変わっていたのかもしれません。……でも、行った方がまだよかったのかもしれない。…………その体験入学した日、姉の過ごしてる寮がどんなところか知りたかった私は、姉と同じ部屋に泊まらせてもらうことになりました。」

 

 

「それで、その時、その時……… か、火事になったんです。ぜんぶ、ぜんぶ燃えてしまって……」

 

 

 

あの光景が頭に浮かび始める。震えが止まらなくなる。

 

震えで口が動かなくなる。

 

 

「あ……」

 

 

私の背にゴルシ先輩の手が添えられる。

 

 

 

「あ、ありがとうございます。……それで、私とお姉ちゃんがいた寮が燃えてしまって、全部なくなってしまったんです。」

 

 

「姉は、私と同室の方を外に出して、他の人を助けるために寮へ戻りました。火事の中、火の中に飛び込んで……。すごいですよね、そのまま他の人全部救っちゃうんですもん……、ひどいことを言っている自覚はありますが、出来れば他の人のことなんて気にしないで自分が助かる道を選んでほしかった。……姉は、お姉ちゃんは寮にいた最後の人を助けて、私の目の前で倒れて、そのまま息を引き取りました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのあと、なにも考えられなくなって。世界から色が消えたみたいだった時に。信じてもらえないかもしれないけど女神にあったんです。」

 

 

 

「……信じるよ。」

 

 

 

「ありがとうございます……。それで、それが何なのかもわからず、ただ救われたい、姉と一緒にいたい、そう願ったんです。」

 

 

「そしたら、無敗の三冠ウマ娘になることを対価に、姉がそばにいてくれるという契約を持ち掛けてきたんです。私は、それで姉が生き返ると思って、その難しさのことも解らなかったので飛びつきました。」

 

 

「それで、私の目の前現れたのは死んで霊になった姉。その時考えていた生き返った姉ではなく、ただ目を閉じて何もしゃべらない姉でした。その時女神が言っていたのは『成果の前貸し状態であるので色々と制限をつけさせてもらう』。私が成長するのに必要、練習の指示、所謂トレーナーさんみたいなことを私に対してする時だけ目が覚め、私に話しかけてくれるというものでした。」

 

 

「私が求めていたのはそんなものじゃなかった。ちゃんと生きた姉と触れ合いたかった、話し合いたかった、一緒に走ってほしかった…………。そう伝えると、さらに条件を付けくわえられました。『姉を生き返らせたければ生涯無敗であること、そしてシニア級春秋六冠、そして凱旋門に勝利すること』というものです。その時の私はレースのことなんて何も知らなかった、どんなに難しいかなんて知らなかった。ただ、ただお姉ちゃんと一緒にいたかっただけなのに…………。」

 

 

「それで、何とか今までやれてきました。お姉ちゃんのおかげで手に入れられた無敗三冠の称号、やっと一つ前に進めた気がしました。」

 

 

「……でも、でもですね。すごい不安なんです。今私がどれだけ頑張っても届かないことがあるかもしれない、何かのケガで走れなくなるかもしれない、それに今が私の上限でこれ以上速くなれないかもしれない。セクさんと走って思い知らされました、世界の話を聞いてどうしようもなく不安になりました。…………でも、それ以上にあの女神が信用できないんです。」

 

 

「私が契約してしまった女神と違って、何故か姉は他の女神との親交があるみたいで、その女神のおかげで姉と会話できる制限もすごく軽くなったんです。……でも私と会ったあの神は信じられない。なんでそもそも私の目の前に現れたのか、なぜ私の願いを聞き入れたのか。考えれば考えるほど怪しく思えるんです。」

 

 

「姉から聞いたんです。『トレーナーに必要な知識やそれ以外の知識を色々教えられた』って。なんでそんなことする必要があるんでしょうか……、私にはなにか私が原因で、あの女神の思惑で姉が、私の目の前で殺されて、そこの弱ったところをうまく懐柔しようとした。そうとしか思えないんです。」

 

 

「私が原因でお姉ちゃんが殺された。そう、考えてしまうと……」

 

 

 

「そう、か……。あまり思いつめるなよ、スぺ。」

 

 

 

 

「……はい。それで、姉を通じて私を育てさせる、その意味を考えているとたぶん、あの女神は私にレースで倒させたい相手がいるのではないか、って。それで、出来るだけ早くあいつが提示した条件をクリアして、あいつが倒させたい相手をレースで倒して、それで、認めさせるつもりだったんです。言い逃れできないよう、ちゃんと姉を生き返らせるように約束させるつもりでした。」

 

 

「相手は本当に神かどうかわからないけど力はあるはず、力関係であっちが上な限り、本当に姉を生き返らせてくれるか信用できなかったのでそうするつもりだったんです。……姉の立てた予定では凱旋門はシニア級の二年目だったんですけどね……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、すみませんゴルシ先輩。纏まってない上にずっと話し続けちゃって。」

 

 

「ん、そのことは全然かまわないゼ。……ま、またなんかあったら話聞かせてくれよな。相談にも乗るし、私もちょっと気になったことあるから色々調べてみるわ。」

 

 

「えへへ、ありがとうございます。……なんだか色々聞いてもらえたおかげかちょっとすっきりしました!」

 

 

「お、そりゃあいい! でももう結構いい時間だから早く寮に戻って寝な。ゴルシちゃんはまたワープしてフランスに荷物取りに行くから。」

 

 

「はい! じゃあおやすみなさい! 日本に帰ったときのお土産期待してますね!」

 

 

「おう! じゃあの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に、ありがとうございます、私じゃ何もできなくて。

 

 

「気にすんなって。ま、ホントに気にするんだったら生き返ったときにでもラーメンおごってくれや。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつもはちみつありがとうございます。

そろそろ耐え切れなくなってきたので放出。
私の考えた設定を見てくれ!の編。
ネタバレ、とは言わないけどこのSSについて今発表できるものを書いたつもりです。


そう言うのが嫌いな人は申し訳ないけど避けて下せぇ。









そういえば今更だけど私は最初からタイトルで【実況プレイ"風"動画】って言ってましたよ?


(まぁ実際最初期そんなこと考えてなかったし、いいのが思いつかないからこれでごまかしたのが本当なんだけど、言ったもん勝ちなとこあるし、なんかうまくはまったから言っとこ……。)








<契約>

要望:もっとお姉ちゃんと一緒にいたい

契約者の姉はすでに他界済み、そのため契約者の守護霊とする

対価:無敗三冠の達成

現状のままでは不可能なため守護霊とした姉をトレーナーとする



提案:さらに良い成績を収めれば、より多くの願いを叶えられる

女神側の目的達成のための提案

要望:お姉ちゃんを生き返らせて

霊のまま、そして成果の前借状態なので制約が厳しい。自由じゃないからヤダ

対価:無敗であり続けること+α若しくは女神側の目標を達成できた時

女神側の目標は明かした場合の影響が解らないため提示しない



了承:成果の前借状態のため制約が厳しいまま育成開始

制約としては必要以上(トレーニングに関係ないこと)でのふれあいの禁止など。




〇女神側の思惑
目標として倒したいものがいる。
そのための駒としてスペシャルウィークを起用。姉であるオースミキャンディはその釣り餌にすぎない。
このSSの設定として三女神は力、知、技の女神がいる。

●力の女神
目標達成が第一、それ以外は正直どうでもい。また非常に強い力を好む。スペシャルウィークの起用はこの女神の発案。契約しに行ったのはこいつだけどなんか勘違いされてる。

●知の女神
目標達成は大事だが、自身の欲望を満たすのも大事。契約内容の細かいところや制約を考えたのはこの女神。サディストなので誰かが悩み、苦しんでいるのを見るために色々とやらかした。ちなみにお姉ちゃんの死は運命(史実)なのでこいつら女神のせいじゃない。

●技の女神
目標達成はどうでもいい。自身の欲望を満たすのが第一。しかしながら誰かが苦しんだりしているのは大嫌い。みんな仲良くハッピーエンド大好き。制約を緩めたり抜け道を用意したり、オースミキャンディに必要のないアニメなどの知識を与えたのはこいつ。
オースミキャンディが実況動画風に記録を残しているのはこいつの要望。自分が楽しむためと、オースミキャンディの趣味になったらいいな、としてやらせている。
オースミキャンディとこいつの絡みは過去編でやれたらなぁと思っている。


参考にしているのはゼルダのハイリア三女神とギリシャ系女神をミックスしてウマ娘の世界の三女神に落とし込んだ。ギリシャ系の方の配分が多いのはお察し。


〇スぺちゃんの思惑
詳しくは過去編でできたらいいな、と思っている。
契約を結んだ時期はこのSSが始まった時期の少し前、つまり小学生になっていない時。
また姉を目の前で亡くしたため精神状態が非常に不安定であり、幼いため正常な判断は難しい。
知の女神の提案によりこの時に契約が結ばれた。実際に結んだのは力の女神。

その時のスぺは『姉ともっと一緒にいたかった』という願いと『姉を生き返らせてほしい』という願いを求めた。その対価として求められたのがこのSSでお姉ちゃんが紹介していた実況動画の称号の入手、所謂無敗のままクラシック三冠及びシニア春秋完全制覇+凱旋門での勝利。
女神側としてはこれだけの絶対的強さを持っていれば”アイツ”にぶつけても勝てると思っていたためこれを要求した。

スぺちゃんはまだこのレースがどれほどなのか理解できていなかったので姉が生き返れると知り、契約することになった。またこの時霊体の姉が近くにいたが意識を消されている状態だったので止めさせるとこが出来ず、女神側としても途中でやめさせられると困るのでスぺ側から知らすこと禁止する、ということを制約の一つとされている。

また、この契約後すぐに技の女神によって姉を失った時の記憶の一部を封じられている。この時点でスぺの精神は姉の死によって限界であり、この契約の話よって唯一の希望を得た。真実というか難易度を知って、元々疲弊していた心が絶望し壊れないようやさしさで封じたがそれがよかったのかどうかは誰も解らない。

そしてある程度成長したスぺは結んだ契約の制約の多さや理不尽さ、難易度の高さなどを理解したが身近にいる人(姉や母)に相談することができず、これらのことを無理やり忘れようとしていたということもあり、アメリカ合宿のキャンプファイヤーの時まではあやふやになっていた。


思い出したスぺちゃんが考えた結果、女神側が自分を育成して倒させたい相手がいることを把握。またトレセンに存在していた歴史書や神話を見る限り、契約がなされない可能性、うやむやにされる可能性もないわけではないと思ったので有無を言わせないほどの成果を出さなければならないと焦っている。

また、女神に対して強い懐疑心を抱いており、そんなわけではないのだが、女神側の思惑で姉が殺されたのではないかと思っている。目の前で死んでしまったこともそれに拍車をかけている。

スぺちゃんが立てた目標はクラシック期に無敗三冠+ジャパンC+有馬。シニア期に春秋シニア三冠、計六冠の達成+KGVI & QES、凱旋門賞の制覇。二度目の有馬に勝利した時に契約がなされたことを訴え、姉を復活させるつもりだった。


今回ゴルシに打ち分けたのは、すでに一人きりで抱えるのがスぺ自身耐えられなくなってきており、ゴルシが何故か気が付いて手を差し伸べてくれたからその手を取った。相談できる人が出来たのでかなり精神的に助かったが完全ではない。あともう一押し必要そうだ。



〇女神が倒したい奴
■■■の■■■■■



〇ゴルシ
ゴルシ

こいつはこいつで設定があるが今後色々変わりそうなので明かさない。
たぶん明かそうとしたら口を物理的にふさがれると思う。

「お、察しがいいなトレーナー! 口封じしないですんだぜ!」

……お口チャック。





ネタ・ギャグ、またその次元にいるときのゴルシ >>>(超えられない壁)>>> 女神 >>> 契約 >>> キャラクターの意思

そもそもこのSS自体自転車操業なのでプロットなどはあってないようなもの。
最後までどうなるかは投稿者でも解りません。

不都合とか色々出てくるでしょうし、何かあれば感想欄か活動報告の方にあるご意見箱の方にお願いします。



………そういえばあいつの参戦表記してなかったな。
次回にしよう、そうしよう。


ゴルシちゃんのセリフでルビ振り忘れてたことに今更気がついたので変えました。申し訳ない。2021/07/09 00:46


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PART78

要望があったのと、単純に回収し忘れたのがあったのでちょっと時間を巻き戻して凱旋門賞です。
ちょっとダイジェスト気味なのはご容赦を。



『さぁ、トゥインクルシリーズの大舞台、世界に誇る芝レース。2400という長くも、短くもある旅路がここ、フランスのロンシャン競バ場にて始まろうとしております。』

 

 

『今回の最有力ウマ娘、一番人気は欧州の覇者、ブロワイエ。欧州三冠をなしとげた彼女が二度目の制覇を狙っています。パドックでのパフォーマンスでもこのレースに対して非常に集中していた様子でした。』

 

 

『この競バ場に来ているほとんどの方が彼女の勝利を見に来た、といっても過言ではないでしょう。我々日本人サポーターからすれば完全なアウェイですね。』

 

 

『そうですね、そして二番人気に推されていますのは我らがゴールドシップ。ブロワイエ以外にも素晴らしい成績を残しているウマ娘はいるのですが、彼女の前では少しばかり霞んでしまう。彼女が出走しなければ我々わざわざフランスに来てまで実況できませんでしたし、ぜひ勝ってほしいですね。』

 

 

『レース前の意気込みでも普段彼女が言わないような『私の赤は日の丸の赤、みんなの思いを背負って走ります。』と発言していたぐらいですし、このレースに対して非常に強い思いを抱いて挑んでいると言えますね。なんでも聞くところによれば凱旋門のために真面目に練習していたとのこと。』

 

 

『それは……、次の日槍が降ってきても驚きませんね。と、言っても彼女の思い入れは私達にも解ります。いままでこの凱旋門にはスピードシンボリやメジロムサシ、シリウスシンボリなどの強者たちが挑みますが結果はよくありませんでした。今回こそ、今回こそ良い成績を掴み取って欲しいといったところですね。』

 

 

『現在、ゲートへの移動が始まったようです。』

 

 

『日本のサポーターからの声援が凄いですね、まぁゴルシちゃんですし納得です。私も解説の仕事がなかったらあそこにいましたし。』

 

 

『わかる。』

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「頑張って~!」

「ゴルシ! ゴルシ!」

「お前ならいけるぞ~!」

 

 

 

 

パドックからゲートまでの移動、わざわざ日本からフランスに来てくれた奴らの声援にこたえるため軽く手を振る。まぁいつもならぎりぎりまで近づいて簡単なパフォーマンスぐらいはするんだが今日はなし。

 

 

ま、『調子乗んな』って言った手前ガチでやらんとな。

言わなくても本気でするつもりだったけど。

 

 

 

『さぁ、ゲートインが始まっております。』

 

 

 

誘導に従ってゲートインが始まる。前評判ではほとんどブロワイエの二連覇ムードだったが、ここに集まってる奴ら全員がそれを食い止めよう、食い破ろうとしている。

 

 

ゲートの雰囲気、張り詰める思い。

誰が発したのかはわからないがいくつものプレッシャーがゲートにまき散らされる。

 

 

 

 

へへ、燃えてきた。

 

 

 

やろうぜ、『世界』

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

レース展開としては序盤、中盤は特筆すべきものはなかった。

 

一番人気に押された欧州覇者、ブロワイエの作戦は差し、対抗ウマ娘として挙げられたゴールドシップの作戦は追込。両者ともに後半戦で勝負を仕掛けてくる作戦だ。

 

周りもそれを理解していたため逃げ、先行策を取った他のものもペースを落とし、最後のギリギリまで体力を残す方針で進んだ。

 

このレースにセイウンスカイのような策を巡らすタイプの逃げ策を扱うものがいれば展開も変わってきていたのかもしれないが、今年の出走者の中にはいなかった。

 

全員が自身の力量に誇りを持ち、全力で、最速でゴールを駆け抜けようとしていた。

 

 

 

レースが大きく動き出すのは1200m付近。

 

最後尾でこれでもかと体力を温存していた不沈艦が動き出す。

 

 

 

 

>【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.6 を発動!

 

 

 

 

 

大地を踏み鳴らす、巨人がごとき足音と共に。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

おっしゃイクゾー!

 

 

 

 

『来た来た来たぁ! 不沈艦抜錨! 最後尾ゴールドシップが折り返し地点を過ぎたあたりで大爆発! スパートを開始! いつもの大まくりだ!』

 

 

 

 

ありゃ? ありゃりゃ?

 

 

あ~、こいつはちょっと難しいか? 前言撤回しちゃいましょ。

 

こっちが速度上げた瞬間にブロワイエの奴も加速し始めてる。それにつられて全体のペースが上がりやがった。まったくいったいどんな察知能力してんだか。

 

 

これに出走してる全員がブロワイエの動向に注目している。逃げも、先行も、差しも、追込も。そのせいであいつがペースを上げれば周りも上げる。

 

あちらさんがこっちを見てくれてんのは光栄だがちっとばかしこのままペース上げられるとどうなる解らない。本当ならここらへんで全部抜き去って先頭に出たいところだが……、パスだな。

 

追いかける側の爆発力と、そもそもゴルシちゃんが追いかけられるのいやってことでここはまだキープ!

 

 

と、言うことでゴルシちゃんこれ以上スピード、あげません!

 

 

 

 

 

『おっと。ここでゴルシにつられたかブロワイエも加速開始! 先頭向かって発進です!』

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

……? 来ないな。

 

 

二番人気にも推され、わざわざ私に勝利宣言までしてきたのだ。

確か、ゴールドシップ。少しぐらいは気にしていたのだが……、まぁその程度だったか。

 

 

追い込みということで警戒はしていたのだが、仕掛けたであろう瞬間に合わせてこちらもペースを上げたのだが上がってくる気配がない。

 

作戦という可能性もあるが、まぁその時はその時だ。全力を持ってそれを叩き潰す。それだけのこと。

 

 

 

 

 

 

さぁ、万物よご覧あれ。これが私の走りだ。

 

 

 

 

 

 

『ブロワイエ速い! ブロワイエ速い! これが欧州覇者のスピードか! 前に位置していたすべてを抜き去りました! 先頭だ、先頭に躍り出た! ここで最終コーナー! 現在彼女の独擅場!』

 

 

 

よし、パターンが決まった。現在先頭で後続とのスピード差は大きい。

後はコーナーを曲がり切った後で、残りの直線を走り抜けるだけだ。

 

 

 

そんな時、先頭に立ち安心したせいで集中が少しとけてしまったからであろうか。

 

 

声が、聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「こ、こ、だ!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『レースは終盤最後の直線!』

 

 

『先頭はブロワイエ! すでに全部差し切って先頭! 欧州最強は伊達じゃない!』

 

 

『……あっと! ゴルシワープ! ゴルシワープだ! ぽっかり空いた穴に差し込んで二番手に躍り出た! そのままブロワイエを猛追!』

 

 

『並んだ! 並んだ! ゴールドシップ、ブロワイエ並んだ! 日欧最強決定戦!』

 

 

『どっちだ! どっちだ! どっちだ! 今並んだままゴールイン! 掲示板はまだか!』

 

 

『…………! 今出ました! ブロワイエ一着! ハナ差でゴールドシップ! ゴールドシップあと一歩のところですが届きませんでした!』

 

 

 

 

 

 

 

 

私はただ、掲示板を見上げていた。

 

危うかった。

 

 

油断していたのももちろんあるだろうが、このレースがもう少し長ければ。例えば3000ほどであれば私は完全に負けていたかもしれない。

 

そう思えるほどの追い上げだった。

 

 

 

 

 

 

しかしながら結果は結果、何とか勝てた。これを糧にして新しい一歩を進むとしよう。

 

さて、いい勝負ができた礼でも彼女に……

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁん、ま”け”た”ま”け”た”、く”や”し”い”~~~~っ!」

 

 

 

…………えぇ、なにこれ。

いや、さっきまですごく真面目そうな顔で走ってたよね、君。

すっごく好戦的なお目々してたよね!

 

なんで芝の上の転がって暴れながら号泣してんの!

 

 

 

え、これ私だけ幻覚見てるとか……、あ、よかった周りも引いてる。

 

 

 

 

「…………ふぅ、スッとしたぜぇ。お、すまんなブロワイエ。ゴルシちゃんこうやって泣きわめくことで頭を冷静にすることにしてんだ。今決めたけど。」

 

 

「そ、そうか。それはなによりだ? ……私は君に謝らないといけない。正直に言ってしまうと君とここまでよい勝負ができると思っていなかった、侮っていたよ。」

 

 

「ん? あぁ、それぐらい別にいいぜ。あたしゃ挑戦者ですもんし仕方ねぇしな。それにいいレースできたからゴルシちゃん大満足。」

 

 

「そうか……、ありがとう。」

 

 

「それに私なんてまだまだ、日本にはもっと強い奴とかいるぜ。ルドルフ会長とか。」

 

 

「ふふ、私とギリギリの勝負をした君がそこまで言うとはよっぽどなんだな、君のおかげで日本について興味がわいてきたが、俄然そうなった。……まぁそれはさておき、いいレースだった、ありがとう。」

 

 

「おう! こちらこそだ! また走ろうぜ!」

 

 

 

 

 

 

日本、か。

 

……確か来月末にジャパンカップがあったな。

 

 

面白そうだ。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「………はい、そうですか。………いえ、わざわざありがとうございます。それでは。」

 

 

 

「会長、どなたからの電話でしたか?」

 

 

「あぁ、グルーヴ。URAからだよ。……あのブロワイエがジャパンカップに出走するらしい。わざわざそのことを連絡してくれたわけだ。」

 

 

「あのブロワイエが! ……今年のジャパンカップは大変なことになりそうですね。」

 

 

 

新旧無敗三冠に欧州三冠。

 

 

 

「ふふ、ふふふふふ。あぁ、本当に、本当に楽しみだよ。」

 

 

 

 

 





たぶん最後の会長、闘志燃やしすぎて固有スキルの雷が漏れ出てバチバチしてそう


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PART79

 

 

 

(なにこれぇ。……は? マジでどういうこと???)

 

 

ゴルシ先輩から手渡されたデータをお姉ちゃんに渡した後日。私が次に出走するジャパンカップについて特集を組んでいたレース情報誌が発売されているようなので買ってきた。

 

お姉ちゃんに頼まれたもので一緒に見てたんだけど、そこにはシンボリルドルフ会長と私の無敗三冠対決、それに先日の凱旋門でゴルシ先輩に勝ったブロワイエさんが出走登録をしたということが書いている。

 

雑誌では夢の三冠対決だ! って書いてあるけど……

 

 

(なして????? いや、まぁ仕方ないのかもしれんせんけどね。なんで? う~んどうしよう???)

 

 

まぁ自慢の姉は思いっきり錯乱しているが、いつも通りちょっとおふざけが入っているのも解るから大丈夫なんだろう。私たちが合わされば負けるレースなんてない。お姉ちゃんが言ってることは全部正しかったし、これからもそうなんだ。あとは私がお姉ちゃんの考えてくれているレベルまで早く辿りつくだけ。

 

 

「それで、お姉ちゃん。なにか練習とか変えた方がいいのかな?」

 

 

(う~んどうしましょう。やっぱりスぺは今年の有馬も走りたいんだよね?)

 

 

「うん、必要だと思うし、走っておきたいかな。」

 

 

(りょ。なら……、そうですね。有馬との連戦になるときつめのトレーニングやりすぎると故障の原因になり得ますし今やってるトレーニングのままでいいですよ。スキルレベルの経験値をうまく稼いでいきましょう!)

 

 

「うん、わかった!」

 

 

 

(ん~、なら私は普通にブロワイエの研究でも始めますかねぇ。スぺちゃんのメニューは出来上がってますしこちらを進めておいた方がいいでしょう。にしてもなんでブロワイエのデータだけ念入りに用意されてると思ったらこれが理由だったんか……。マジでゴルシって何者なんだ???)

 

 

 

「……あ、そういえば今日トレーナーさんに呼ばれてたんでした! お姉ちゃんちょっと席外すね。」

 

 

(ほ~い、いってらっしゃ~い。)

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「それで、何の御用ですか、トレーナーさん?」

 

 

「急に呼び出して悪いな。んでなんで呼び出したかっていうとスぺの今後についてちょいとばかし気になることがあってな。それの確認だ。」

 

 

「確認ですか?」

 

 

「おう。スぺの次走はジャパンカップ。その次に有馬記念、だよな。」

 

 

「はい、その予定です。」

 

 

「それでシニア級に入ってからは大阪杯、天皇賞春、宝塚記念の春シニア三冠。夏の間にKGVI & QES、凱旋門賞を挟んで、秋シニア三冠の天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念に挑む、ってのでいいんだよな。」

 

 

「はい、この前ゴルシ先輩に言われて出した資料にもそう書いてあったと思うんですけど……、あ! もしかして私何か間違えてましたか?」

 

 

「いや、もらったもんはちゃんと書けてたんだがそれ以外に気になることがあってな。……このままの予定で行くと全く休みがなくなるだろ? そいつがちょっと気になってな。わざわざ書いて出してくれたからそのことは理解してると思うんだが……」

 

 

「はい、理解の上です。」

 

 

「まぁそれならいいんだが……、ま、そんなお休みが少ないスぺには大き目の休みを取ってもらおうと思ってな。有馬のあと大阪杯まで三か月近く間が開くだろ。なんで来年の正月にはスぺの実家に帰ってもらうことにしました! 拍手~!」

 

 

「え? えぇ……」

 

 

「ちなみに学校側の許可と、スぺの親御さんにも来年の正月は帰らせますって連絡してあるから変更はなしだぞ! ま、最近頑張ってるしゆっくりしてくるといい!」

 

 

「は、はぁ。わかりました。」

(なんだかすごいハイテンションだなぁ……。久しぶりだし、あっちでも走れるからまぁいっか。)

 

 

「んじゃ、連絡も終わったしもう帰ってもいいぞ。あ、あと最近オーバーワーク気味だからしっかり休んどけよ~。」

 

(明らかに最近のスぺはオーバーワーク気味。初めてのシニア級との戦いだから焦るのも仕方ないが、ケガだけには気を付けないと……、出来るだけ練習時に横にいるようにしなければ。……にしても急いで用意した帰郷計画だったが、思ったより何もなく受け入れられてよかった。最近のスぺを見ていると受け入れずに無理やりトレセンで練習しそうなもんだが、なにか心境の変化があったのか? ……まぁいい、とりあえずスぺの親御さんにできるだけ地元にいるときは練習させずに休ませるようにってことと、あとスぺのもう一人のトレーナーにも手紙書いておこうか。たぶんスぺに渡しておけばちゃんと届くだろうしな。)

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「では、お願いしますね、東条トレーナー。」

 

 

「あぁ、解った。ジャパンカップの出走登録はこちらでやっておこう。」

 

 

「あぁ、やっと一緒に走れるのですね! 今度こそ、今度こそはあなたの隣に! あなたの前に! ふふ、ふふふふふ。」

 

 

「……あの、なんだ。な、何かあればすぐに言うんだぞ。」

 

 

「えぇ! えぇ! 解っていますとも! それでは失礼いたしますね、私はもっと速くあらねばなりませんので。」

 

 

 

あぁ、レースが楽しみで、楽しみで仕方ない。どうにかなってしまいそうだ。

 

やっと、やっと私があなたの隣を走れる存在だと証明できる!

自分の体へのダメージなんか、痛みなんかもう感じない。

 

ただ、あなたの先に。アナタノマエニワタシガハシルトコロヲ

 

 

 

 

だから、待っててね。

 

 

 

スぺちゃん。

 

 

 






お、トレーナー! 手紙持ってんじゃん! ちょうどゴルシちゃん暇だから届けてきてやるよ!

あ! 後、次ジャパンパップみたいだぜ!


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PART80

こにゃにゃちわ~! 投稿者ですよ~! スぺちゃんに走者呼ばわりされたのがいまだに受け入れられてなくて名乗りが変わらない愚か者ですタイ!

 

だって僕ちんRTA走者じゃないのに……。ま、そんなことは置いといて今日も元気にイクゾー!

 

 

 

んで、今日は何からといいますと、皆さまお待たせいたしましたのジャパンカップですね。個人的な思い入れも結構あるのでなんとしてでも、まぁ実況の目標的にも勝っていきたいレースです。

 

 

しかしながらちょいとばかし難しいレースになってくるのも事実。

 

今までスぺちゃんが走ってきたレースはどれもジュニア級、クラシック級と同じ世代同士で戦うものでしたが、このレースからは自分よりも上の世代とも戦わなければならなくなっていきます。今までスぺちゃんが【鉄人】からくる他の人よりも長く練習できた時間や小学生から積み上げてきた時間というアドバンテージが通用しなくなってきますし、単純にレース経験の多さからくるスキルの充実具合も危うい時があります。

 

 

でもまぁそんじょそこらのウマ娘では我らのスぺちゃんにはかなわないんですけど……、今回はちょっと話が変わってきまして……。

 

 

 主な出走者紹介!

現在無敗記録更新中! 世代No.1の無敗三冠ウマ娘! スペシャルウィーク!

 

未だ続く伝説のロード! 無敗三冠にして七冠ウマ娘! シンボリルドルフ!

 

欧州三冠、凱旋門連覇! 芝の本場、欧州の最強ウマ娘! ブロワイエ!

 

不退転、不死鳥! あとなんか最近雰囲気ヤベー! グラスワンダー!

 

史実ではレート国内最強の134! ここからの爆発力未知数! エルコンドルパサー!

 

 

 

 

…………なんじゃこのクソゲー???

 

こんなん勝てるわけないだろ! いい加減にしろ運営!

 

 

 

 

まぁそれでも勝たなければならないのがこのレース、頑張るのはスぺちゃんですがわたくしも微力ながら全力で、作戦もちゃんと考えてきたのでバッチし応援していきましょー! イクゾー!

 

 

「お~!」

 

 

 

ん、そろそろパドックへの移動みたいですね。んじゃ行きますよスぺちゃん。

 

 

「はーい。」

 

 

あ、それと怖い物みたさ、かもしれませんがスぺちゃん含めて先ほど挙げた方々のステータスを見ときましょうか。まぁ今見てもできること作戦の手直しぐらいしかできないんですけど単純に気になるので……、それではホイ!

 

 

【スペシャルウィーク】(絶好調)

 

>スピード:B+

 スタミナ:A

 パワー :A+

 根性  :B+

 賢さ  :B

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.4

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.3

 【空駆ける英雄】    Lv.3

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.3

 

 【ゲートの支配者:改】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 【プレッシャー耐性〇】

 【末脚】

 【率いるもの】

 

 

現在のスぺちゃんはこんな感じ、スキル系統はそこまで伸ばすことができませんでしたが、スピードはB+にできてます。まぁ一月しかなかったので仕方ないですね。あとなんか昨日まで色が薄くなってた【率いるもの】がアクティブ化されてますね。なんででしょ?

 

 

【ブロワイエ】(不調)

 

>スピード:S

 スタミナ:S+

 パワー :S+

 根性  :S

 賢さ  :S+

 

>スキル

 【Je suis les circonstances】Lv.6

 

 【コーナー回復】 

 【ハヤテ一文字】

 【一陣の風】

 【全身全霊】

 【差しのコツ◎】

 【プレッシャー耐性◎】

 

 

 

【シンボリルドルフ】(絶好調)

 

>スピード:A+

 スタミナ:S

 パワー :A+

 根性  :A+

 賢さ  :S

 

>スキル

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.6

 

 【弧線のプロフェッサー】 

 【独占力】

 【好位追走】

 【先行コーナー】

 【逃げけん制】

 【先行けん制】

 【差しけん制】

 【追込けん制】

 【プレッシャー耐性◎】

 【神聖皇帝軍】

 

 

【グラスワンダー】(■■■)

 

>スピード:A

 スタミナ:B+

 パワー :A

 根性  :B+

 賢さ  :B+

 

>スキル

 【精神一到何事か成らざらん】Lv.3

 【■■■■■■■■■】

 

 【乗り換え上手】 

 【位置取り押し上げ】

 【独占力】

 【差し焦り】

 【末脚】

 【対スペシャルウィーク○】

 

 

【エルコンドルパサー】(好調)

 

>スピード:A+

 スタミナ:B

 パワー :A

 根性  :B

 賢さ  :B

 

>スキル

 【プランチャ☆ガナドール】Lv.3

 

 【直線巧者】

 【千里眼】 

 【スタミナキープ】

 【テンポアップ】

 【先行直線〇】

 【対スペシャルウィーク◎】

 

 

 

 

……………んんんんんん???????????

 

 

 

なにこれぇ?

 

 

 

 

 

 

と、とりあえず上から整理していきましょう。

 

まずブロワイエ。ステータスの方は欧州覇者というだけあって、それ相応のS乱立。スキルの方も金色スキルばっかですし、固有もLv.6。それにプラスしてプレッシャー耐性まで持っていらっしゃる。見た感じ作戦は前評判と同じように差しで、最終直線辺りでブッ飛ばしてくる感じですね、ハイ。唯一希望が持てそうなのは調子が不調気味ってところくらいでしょうか。

 

次にルドルフ会長。ステータスがS多めのお化け。最強に近い固有スキルもMAX。スキル君もいいところ持ってますし、それよりも特筆すべきなのはデバフ系スキルの多さ。全範囲に対してデバフ掛けてくるとか君ホントに皇帝?

 

それともっと意味不なのは同世代のグラスちゃんとエルちゃん。……君らいつの間にそんなに強くなったの? 菊花賞の時君らよくてB届くか届かないかぐらいだったよね?? なして???

あとスキルとしてスぺちゃん対抗用スキルがなんか知らないうちに生えてますし、あとグラスちゃんの調子のとこ塗りつぶされてますし、なんじゃこのレース!

 

 

と、とりあえずなんで同世代組がつよなってるか調べなければ、多分なんかのスキルが発動してるんだと思うんですけど……

 

 

 

 

! これですな。ルドルフ会長の【神聖皇帝軍】。効果の方は……

 

 

>【神聖皇帝軍】

自身の出走するレースにおいて、レースに他国籍の選手が出走しており、その選手の実力が自身より大きい、もしくは同程度の時に、自身を含めた自身の所属する国家に属する対象を大幅に強化する。【率いるもの】の完全上位互換。効果は効果が及んだ人数の分だけ増加される。

またこの効果は【率いるもの】系統のスキルを持っている者には効果が及ばない。一軍に二将もいらず。

 

 

 

 

……あ~、なるほど。グラスちゃんやエルちゃんが超強化されてる理由はこれみたいですね。会長のスキルで日本所属のウマ娘を底上げしてみんなでブロワイエやっつけるぞ~! っていうスキルみたいです。効果読む感じ会長も強化されてるみたいですね。と、いうことはブロワイエさんあのステータスが素なのね……。

 

 

まぁそんなことよりももっと面倒なのが【率いるもの】のせいでスぺちゃんにバフが掛かってないことですね。テキストとステータス見た感じ、おそらく【率いるもの】も自国出走者の数だけバフがかかるものみたいなんですけど会長に全部取られた上に、スぺちゃんはスぺちゃんで資格持ってるからバフの対象外といったところでしょうか。

 

おそらく、受け取れる対象が二人、この場合は会長とスぺちゃんがいて、バフの条件となる人はどちらかにしか所属できないという制限の中でスキルの格が上の【神聖皇帝軍】に全部持ってかれたという感じでしょうか。

 

今後スぺちゃんが成長すれば【日本総大将】みたいな感じで会長とも対抗できたんでしょうけど……、今は話しても仕方ないことですね。

 

 

 

 

ま、今まで壁みたいな壁がなかったですし、このぐらいの難易度の方が動画的にもありがたいよね! 多分ルナティックとかインフェルノみたいな感じだろうけど、私のスぺちゃんが負けるはずないんだ! わたくしの考えた作戦とスぺちゃんしかない固有スキル系統の多さで勝利してやる!

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

パドック入り。いつもと違ってお姉ちゃんはさっきからずっとぶつぶつ言っている。内容はこのレースでの私の動き方、作戦。

 

私が弱かったからお姉ちゃんに迷惑をかけてる。私が強くないからお姉ちゃんに本当は考えなくてもよかったことを考えさせてしまっている。

 

もっと、もっと死に物狂いで練習すればよかった。前に進めばよかった。

 

ゴルシ先輩に勝ったブロワイエさん、みんなが憧れているルドルフ会長、この二人を全く寄せ付けないぐらい私が強くならないといけなかった。

 

 

……今思い悩んでも何も変わらない。体の調子はいいんだ、あとはもっと集中すること。お姉ちゃんの指示を十全にこなせるようにしないといけない。ゲートに入る直前までには整えないと。

 

 

 

 

「すまない、少しいいだろうか。」

 

 

「! ルドルフ会長! ……どうしました?」

 

 

「いや、少しばかり君が入れ込み過ぎている気がしたのでな、声を掛けさせてもらった。あぁ、集中していたのならすまないことをした。」

 

 

「い、いえ。大丈夫です!」

 

 

「そうか、ならよかった。……多くは語るまい。悔いのない、いいレースにしよう。全力で行かせてもらう。」

 

 

「はい、私も全力で。」

 

 

「……ふふ。いやすまない、うれしくてね。欧州の覇者であるブロワイエと競い合えるのも楽しみだが、君と競い合えるのも非常に楽しみだ。……それとすまないが彼女、グラスワンダーに声をかけてやってくれるか?」

 

 

「グラスちゃん、ですか?」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

ふふふ、ふふふふふ。あぁ、あぁスぺちゃん。

 

いつからこの時を待っていたのか、もうわかりませんね。

 

 

 

でも、そんなことはどうでもいいのです。

 

ただ、私と本気で走って欲しいだけ。

 

ただ、私のことをちゃんと見てほしいだけ。

 

 

ちゃんと私、強くなりましたよ。

 

ちゃんと私、あなたに届きますよ。

 

 

それに私、今日はとっても調子がいいの。まるで羽が生えたみたいに体が軽いの。

 

 

 

だからスぺチャン

 

 

モットワタシノコトヲミテ……

 

 

 

「グラス、ちゃん?」

 

 

 

「! ……スぺちゃん! あぁ、すみません。私としたことが気が付かないで……」

 

 

「ううん、いいよ。……それよりも大丈夫?」

 

 

「えぇ! えぇ! 大丈夫ですとも、心配させたようで申し訳ありません。……スぺちゃん?」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「今日は、全力で、私と戦ってくれますか?」

 

 

「? うん、もちろん。一緒に頑張ろうね!」

 

 

 

 

……笑顔を持って返礼として、その場から立ち去る。

 

 

やっぱり見てくれてない。

 

 

スぺちゃんの目にはルドルフ会長とブロワイエさんしか映ってない。

 

ワタシなんて他の有象無象といっしょなんだ。

 

ワタシなんかスぺちゃんの視界に入らないんだ。

 

 

 

 

あぁ、あぁ。

 

 

本当に、タノシミデス。

 

イッショニガンバリマショウネ、スぺチャン?

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

『さぁ、ついに、ついに始まろうとしております! 今年のジャパンカップはヤバイ! この一言でこの東京競馬場に集まったのはなんと22万人! 限界までパンパンに人が集まっております! 指定席の方は法外な値段が付いてしまったようで、URA方も対応で色々と大変だったようです。まぁそんなどうでもいいことはおいておきまして、レースの方に注目いたしましょう!』

 

 

『一番人気に押されましたのはやっぱりこのウマ娘! 皇帝、シンボリルドルフ! 夢の七冠馬が今日、ジャパンカップのためだけにここ、東京競馬場に降り立ちます! 皇帝の伝説はまだ続きます、さぁ、次の八冠目へ!』

 

 

『二番人気は欧州覇者、ブロワイエ! 日本ということで一番人気を皇帝に奪われてしまいましたが、その実力は肩書以上です! 欧州三冠・凱旋門連覇! 彼女の新しい勝利の杯はジャパンカップでしょうか!?』

 

 

『三番人気に押されましたのはスペシャルウィーク! メイクデビュー、ホープフルS、クラシック三冠とここまで無敗記録を更新中の彼女。一番人気のシンボリルドルフと夢の無敗三冠勝負となりましたが未だ彼女はクラシック級。シニア級の二人と比べるとやはり不利に思われてこの人気となりました。』

 

 

『さぁ本当にどうなってしまうのでしょうか、新旧無敗三冠ウマ娘に欧州三冠ウマ娘、三冠だらけのレジェンドレース! もう実況なんてしてる場合じゃないかもしれません! さぁどうなる! 正直誰が勝ったとしても納得できるぞ!』

 

 

『さぁ、ゲートインが粛々と進んでおります!』

 

 

 

 

(……よし、決めた。勝負のしどころは中盤からの最終直線。一番注意すべきはルドルフ会長。ブロワイエは不調であることでの実質的ステータスの低下を考えれば会長よりは注目度を下げていいはず。)

 

 

「大丈夫、お姉ちゃん?」

 

 

(お!? 心配させてしまいましたか? 大丈夫ですって。んじゃ、作戦発表! 最初にゲートでプレッシャーかけまして、そのまま後方で差し位置でキープ。中盤過ぎたあたりからゴルシちゃんのスキルで加速しまして、最後の直線でドン! といういつも通りの真っ向勝負で行きましょう! 多分ここで練習してない小技に頼ったら負けます。タイマン勝負デイ! けっぱるべ~!)

 

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃんが決めた作戦は私ができる最適解。私が持てるすべての技を出し切れる作戦になった。

 

大丈夫、大丈夫だ。私は勝てる、勝たなくちゃいけない。

 

 

 

(スぺ、【ゲート】はスタートを遅らせるんじゃなくてスタミナや精神力を削るために。)

 

 

 

ゆっくりと頷く。

 

 

ルドルフ会長やブロワイエさんは明らかに私より強い、出来ることは全部しないと。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『今、ゲートが開きました!』

 

 

 

私と一緒にスタートしたのは会長にブロワイエさんにグラスちゃん。ちょっと遅れてエルちゃん。あとは他のシニア級の人たち。本来ならゲートが開く瞬間に全力でやるけど、今日はゲートの瞬間じゃなくて、ゲートが開く少し前からプレッシャーを掛けて精神力を削る方法にしたせいか、スタート自体は前の菊花賞より普通になった。

 

 

ルドルフ会長とブロワイエさんに対応されたのは仕方ないかもしれないけどグラスちゃんにすでに対応されたのは驚いた。お姉ちゃんがグラスちゃんの様子がおかしいって言ってたのはこのことだったのかもしれない。エルちゃんも菊花賞の時よりも効いてないということは、やり方を変えたからといっても次はもう通用しないかもしれない。次は……、いや次のことは今考えるべきじゃない、今はレースに集中しないと。

 

 

ルドルフ会長とエルちゃんは先行、グラスちゃんとブロワイエさんは差し。私も全力を出すために差しの位置に下がる。後はこの位置を保ちながら折り返し地点まで体力を残しておかないといけないんだけど……

 

 

「ッ……」

 

 

アメリカ合宿でセクさんと練習したおかげかそこまできつくはないけどプレッシャーを掛けられた。出所は……たぶんルドルフ会長。軽く周りの顔色を窺うと全体的に速度が下がっている。影響を受けてないのはブロワイエさんくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『現在シンボリルドルフは集団の中央より少し前といったところ、ブロワイエ、スペシャルウィークは後方で機を窺っている感じでしょうか。』

 

 

『今日は先行策のシンボリルドルフですが、これまで先行策を使ったレースでの彼女と見比べると若干位置が後ろ目ですね。これまでは自分でレースを引っ張る代わりに多くスタミナを使ってしまうという感じでしたが、これはスタミナをうまく残していますね。強敵であるブロワイエやスペシャルウィークを意識してのことでしょうか?』

 

 

『さぁ、レースは進みまして現在先頭が折り返し地点にに差し掛かりました。ペースは若干速めといったところ。そろそろ仕掛け始める子がいてもおかしくない状態です。』

 

 

 

そろそろ私も折り返し地点に到着する。

 

スピード上げても大丈夫だよね、お姉ちゃん?

 

 

 

 

>【不沈艦、抜錨ォッ!】Lv.3 を発動!

>【逢魔時】を発動!

 

 

 

 

ゴルシ先輩に教えてもらった加速をしながら【ゲート】の時と同じように周りにプレッシャーを掛けて前に進む。

 

 

 

 

 

『おぉっとここでスペシャルウィーク加速だぁ!』

 

 

 

 

 

あとはこのまま先頭まで走り抜けて、誰も追いつけないまで離してしまえばいい。

 

お二人がどれだけ強くてもここで全力を尽くして距離を稼げば抜かれない! 勝てるんだ!

 

 

 

ルドルフ会長を抜かして、前へ、さらに前へ!

 

 

 

 

『現在先頭変わりましてスペシャルウィーク! そしてそのまま最終コーナーへ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、また差が離れてしまいましたね。

 

 

 

ふふ、もう離しませんよ。

 

>【精神一到何事か成らざらん】Lv.3

 

>【独占力】を発動!

>【■■■■■■■■■】を試行!

 

>成功!

 

>【あなた(ワタシ)のためだけに】を発動!

>【独占力】の効果がスペシャルウィークに集中!

 

 

 

 

「なっ!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

様子見、まぁ正確にはブロワイエと勝負のために速度を落としてあえて後ろに下がったが……、すごいことになっているな。同じチームに所属しているとはいってもグラスワンダーのことを詳しく知っているというわけでもないし、彼女、スペシャルウィークとグラスワンダーの関係性もよく知らないが……

 

私とシービーのような関係なのだろうか? 明らかにグラスワンダーはスペシャルウィークにだけ勝とうとしている。しかしながらスペシャルウィークの方は気にかけてはいるが注目しているのは私やブロワイエ、といったところか。プレッシャー系統の技でスペシャルウィークの速度を落とし、その分だけグラスワンダーが加速する。

 

 

 

……いや、思うところがないと言えば嘘になるが今はこのレースに集中しなければ。

 

 

 

 

 

 

! この視線、ブロワイエか!

 

 

 

 

 

感じた視線の元に目を向けると欧州覇者がこちらを見つめていた。これは、挑まれている? いやこちらが挑む側か。まぁどちらにせよ勝負を仕掛けられているのは違いあるまい。

 

 

受けて立たせていただく!

 

 

 

 

 

>【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.6 が発動!

 

 

 

>【Je suis les circonstances】Lv.6 が発動!

 

 

 

 

 

「『さぁ、競い合おうか!』」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『現在先頭のスペシャルウィークが減速……、あっと! ここで速度を落として後ろに下がっていたシンボリルドルフとブロワイエが始動! そしてその前にはグラスワンダー! 三人が一斉に加速して先頭に食らいつきます! ここでスペシャルウィークが最終直線に入ったぁ!』

 

 

 

まずいまずいまずいまずい! 体が重い!

 

後ろから射殺すような視線! 体に絡みつくようなプレッシャー!

 

だめだ、ここで減速したら間に合わなくなる!

 

背後から加速してくる足音がもう聞こえるんだ! どうにかして逃げないと!

 

 

 

こうなったら無理やりにでも……!

 

 

 

 

>【シューティングスター】Lv.4 を発動!

>【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.3 を発動!

>【空駆ける英雄】    Lv.3 を発動!

 

 

 

『ここでスペシャルウィークも加速しますが……、後から追ってきた方が速い!速い! 四者今並びました!』

 

 

 

思ったより速度がでない! いや違う、私が遅いんだ! 周りが速いんだ!

 

 

 

『ここで先頭は入れ替わってシンボリルドルフ! ほぼ同位置にブロワイエ、グラスワンダー!』

 

 

 

 

どうすればいい! どうすればいいんだ!

 

もう私に残ってる技はない! 速度も最大限出てる!

 

なのに差が縮まらない!

 

 

 

 

『さぁ現在三名のデッドヒート! 優勝は誰の手に!』

 

 

 

 

 

…………………終わる? ここで終わるの?

 

こんなところで私は終わるの?

 

 

こんな、ところで…………

 

 

 

 

 

 

 

私はまた失うの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い、赤い炎が燃え盛る。

もう二度と見たくない、けど見ないといけない。

 

 

最後の、瞬間。

 

 

 

泣きじゃくる私の頭に大好きな姉の

 

 

燃えて、真っ黒になって、もう思い出せない暖かさを、力強さを

 

 

 

『ごめんね、スぺ。駄目なお姉ちゃんで。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやだ」

 

 

「いやだ」

 

 

「まだ終われないんだ」

 

 

「まだ速くなれるんだ」

 

 

 

 

 

 

頭にのせられていた手は、ゆっくりと地面に落ちる。

 

 

 

 

 

「う゛わ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血のように真っ赤なサルビアはとうのむかしに灰だらけ。

火種は一体何なのか、

 

 

私は何をなせますか?

 

 

 

>【灰かぶりのサルビア】 発動。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

その炎は思い返してみると、私が纏っていた青く、私の心の黒さを表したような黒く、深い青ではなかった。

 

 

私の物よりも黒く、本来の赤い炎のように赤く、誰に向けられたのかはわからないけどもっとドス黒い炎だった。

 

 

 

私の、ただ自制の心がなかったゆえに飲まれてしまった狂気は、

 

 

 

スぺちゃんの纏ったその炎への恐怖でかき消された。

 

 

レースが終わった後にかけてくれた言葉はすごくうれしかったけど、

 

 

 

あの恐怖は忘れられそうにない。

 

 

ただ、ただただこわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……来た! 来た! スペシャルウィークが来た!』

 

 

 

あの走りは圧巻だった。私たち、シンボリルドルフ会長、ブロワイエさん、私が塊になって後方から先頭を走っていたスぺちゃんを抜かしたはずだった。あの時の私は、当時の私では出せないくらいの力が出ていたし、あの時に出走していたルドルフ会長は過去最高の仕上がりだったと聞いている。

 

そのまま、私たちはゴールになだれ込むと思っていた。

 

 

抜き去って、もう過ぎ去ったこととして油断していた、私は単にスぺちゃんの前を走れたことに歓喜していて油断していた私たちをまとめて抜き去ったのはスぺちゃんだった。

 

 

狂気に包まれていた私、プレッシャーに耐性を持っていたはずのお二人をまとめて引きずり落とすような死の恐怖。レースで死んでしまうなんて、あの状況を、あのジャパンカップの映像を見ている限りは考えられないんですけど確かに、私はそれを感じました。

 

 

 

『スペシャルウィークが来た! スペシャルウィークが来た! まとめて引っこ抜いて今ゴールイン!』

 

 

 

気が付いたら私たちみんなが抜かされていて、気が付いたら私たちもゴールしていて、その場すぐには何が起こったのか、その場にいた人は誰も解らなかったんです。私も、あの後色々このレースを見返して、スぺちゃん本人から聞いて、やっとわかったことなんです。

 

あの時感じた死の恐怖がスぺちゃんが私たちの前にいて、もう一着が決まっているという事実が私たちの前にあって、もう何が何だかわからなくなった。脳が恐怖のせいでそのことを記憶に残したくない、そう思ったのかもしれません。

 

 

気が付けば、レースが終わった後にはスぺちゃんが肩代わりしてくれたのか、私の狂気はなくなっていて、あのお二人もただ結果を受け入れて、『いいレースだった』というんです。

 

疑問に感じさせない、ただ負の感情をもっと大きな負の感情によって焼き尽くされたせいで、正の気持ち、いい気分しか残らなかったというべきでしょうか。言葉に表してしまえばとても不思議なことですが……

 

 

 

終わったあの瞬間は、何故か心は晴れやかでした。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『決まった! 決まりました! 勝者はスペシャルウィーク! 七冠ウマ娘の皇帝シンボリルドルフでもなく、欧州三冠にして凱旋門覇者のブロワイエでもなく、日本のクラシック級のスペシャルウィーク! 新時代の到来だァ!』

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

 

何、今の……、いやそれ以上に体が痛い。たぶん今のはこれ以上使ったら壊れる、もう使っちゃダメなやつ。

 

あぁ、それ以上に体がだるい。ここで寝転がってゆっくり寝たいぐらい。

 

 

 

……でもまだパフォーマンスもライブも残ってるんだ。もうちょっとだけ頑張らないと。

 

 

と、とりあえず応援に来てくれた人たちにお礼しとかないと……

 

 

 

 

 

 

「スペシャルウィーク。」

 

 

「あ、ルドルフ会長。」

 

 

「あぁ、本当にいいレースだった。負けてしまったが全力を出せたせいか意外とすっきりした心持だ。ありがとう、楽しかったよ。」

 

 

「あはは……、こちらこそです。ありがとうございました。」

 

 

「む、レース直後にすまない。まだ色々話したいことはあるがまた今度にしよう。私としたことが君のことを考えずに私のことを優先してしまった、では。」

 

 

 

 

会長は……、ブロワイエさんに話に行ったのか。

あの人もこっちに来そうだったけど、フランス語解らないから助かるや。

 

 

 

あとは……

 

 

 

 

「グラスちゃん?」

 

 

「! スぺちゃん! わ、わたしは……」

 

 

「ううん、大丈夫だから。私、楽しかったよ。グラスちゃんと走れてうれしかった。」

 

 

「スぺちゃん……!」

 

 

「だから、さ。また一緒に走りたいって思ってもいい?」

 

 

「えぇ、えぇ! ぜひ! 私もスぺちゃんと走りたいです!」

 

 

「あぁ、よかった。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

(スぺ! スぺ! 大丈夫!)

 

 

 

「…………あっ、お姉ちゃん? ごめん聞こえてなかった。……あれ? ここどこ?」

 

 

(控室ですよ。ホントに大丈夫? さっきから話しかけてもずっとボーってしてて、心配したんだよ!)

 

 

「アハハ、ごめんごめん。ちょっと疲れちゃって……。ごめんお姉ちゃん、ライブまでまだ時間あるよね? ちょっとだけでいいから寝てもいいかな?」

 

 

(そんなに疲れてるんだら休ませてもらう? 有馬もあるしお休みさせてもらってもいいんだよ?)

 

 

「ううん、大丈夫。ちょっとだけ疲れただけだから。それにライブ見に来てくれてるお客さんもいるから休めないよ。」

 

 

(……ホントに無理しないでね。よっしゃ、気にしないで寝ていいよ。時間になったらちゃんと起こすから。)

 

 

「うん……、ありがと……。」

 

 

 

 




サルビアの花言葉:「尊敬」「知恵」「良い家庭」「家族愛」



正直滅茶苦茶難産でした。
また感想とかでご意見いただいた後に変更するところもあると思います。
その時はまたご連絡しますね。

それとジャパンカップは前後編の予定なのでまだもうちょっとだけ続きます。
まあ実質後日談というか後始末というかそんなもんですが。


……にしてもグラスちゃんとの宝塚記念とかブロワイエ参戦したせいで開いてしまった来年のジャパンカップとか一体全体どうなるんでしょうね?
プロットすらもう使い切ったので先のことは作者である私ですら解りません。

ま、それ以前に有馬ですが。


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PART81

 

あれ……、ここは……

 

気が付くと真っ白で何もない空間にいた。さっきまで控室で寝ていたはずなのに……

 

 

嫌な予感がする。

 

 

 

「やほやほー、スぺちゃん起きましたかぁ?」

 

 

 

確信に変わった。

 

こんなこと、私の意識をよく解らない空間に連れてこれそうなのは私が知ってる限り女神ぐらいしかいない。

 

 

 

「お~、怖い顔。かわいいのにもったいないよ~?」

 

 

私が見たことのない顔。たぶん私が過去に会った三女神とは別の奴だろう。

正直もう顔も見たくなかったが、あっちが呼んできたのなら私にそれを防ぐ術はない。

とりあえず余計な言質を取られないように気を付けないと。

 

 

「ん~! むちゃ警戒されとりますなぁ、致し方なし。……んじゃ自己紹介。私は技の女神ね、一応名前もあるけど覚える気もないようだし役職名と顔だけ覚えといて。あ、ちなみに過去に君と契約した奴は力の女神。あいつ堅苦しい奴だったから色々と大変だったでしょ?」

 

 

「…………。」

 

 

「おうだんまり! じゃ、私のことお呼びじゃないみたいだし、さっさとやること済まして元に戻しましょうねぇ! ではでは~~、契約更改のお時間です!」

 

 

「契約更改?」

 

 

「お、初めてのお言葉頂きました! そう、契約更改! スぺちゃんは力の奴と最初に契約した内容は覚えてる? そう! お姉ちゃんと一緒にいるために無敗三冠を対価として契約したよね? それを達成できたから色々と再契約しに来たって寸法。ま、知の奴が色々とうるさくて時間掛かっちゃったのは申し訳ない。あ、それとジャパンカップ優勝おめでとね。」

 

 

「は、はぁ。どうも。」

 

 

「んじゃ、内容ね。とりあえずはスぺちゃんとお姉ちゃんの間に課されていたいろいろな制約を全部撤廃いたしま~す! トレーニングに関することにしか会話できないとかそんなの全部ね。いままでは”動画撮影”という名目で契約の上から契約することで撮影中だけは色々とお話しできるようにしてたけどそれも全部気にしなくてよし! ビバ自由!」

 

 

「………自由。」

 

 

「そう、自由! あ、あと知の奴がまた猛反対してたけど無視した案件がもう一つ! スぺちゃんに朗報です! シニア級にてスぺちゃんが走ろうとしていたレース! 春秋計六冠とKGVI & QES、凱旋門賞! こちらに勝てばなんと~~、お姉ちゃんの復活! オースミキャンディの生き返りを確約いたしま~す!」

 

 

「本当! 本当なの!」

 

 

「本当ですよ~! あ、それともしこの条件で失敗したとしてもスぺちゃんのお姉ちゃんが消えてなくなるなんてことはありませ~ん! そっちの契約は無敗三冠の方で対価はもらったしね! …………それで、スぺちゃん。契約、しなおしますか?」

 

 

 

どうする、どうする。提示された条件は驚くほどいい。私にとって喉から手が出るほど欲しいものだ。だけど、あからさまに私にとって利が大きすぎる。そもそも前の契約自体なぜ私に契約しに来たのかすら意図がつかめない。

 

 

…………いや、考えても仕方ない。どうせ私の望みを叶えられそうなのはこんな手しかないんだ。

 

 

 

「契約、しなおします。」

 

 

「そ~れは良かった、うむうむ。んじゃここにいる意味もないし帰ってもよいですよ。目を閉じれば元の世界に戻るのでそれでオナシャス。……あ、それと心優しい女神サマからスぺちゃんにご注意一つ。」

 

 

 

 

「君がジャパンカップで使った最後の技。知の奴は【灰かぶりのサルビア】なんて洒落た名前にしたみたいだけど、何度も使うのはやめた方がいいよ。あれは代償に君の大事なものを奪っていく。」

 

 

「今回は契約更改が遅れたことのお詫びとして代償を肩代わりしてあげたけど今度はそうはいかない。ゆめゆめ、気を付けることだね。……じゃ、おやすみ。君の旅路に幸あらんことを。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 ぺちぺち

 

 

 

 

あれ……冷たい……

 

 

 

「お~い、スぺ~。時間ですよ~。」

 

 

 

「…………お姉ちゃん!」

 

 

 

手が、お姉ちゃんの手が私の頬に触れてる。

ちゃんと触れられた感触がある。

 

凍てつくほど冷たいけれど、ちゃんと触れられてる。

 

 

 

「……ほら、泣かないの。もうすぐライブの時間なんだから、ね。」

 

 

 

震えながら、頬を触れる姉の手に自身の手を重ねる。

 

 

ちゃんと、触れる。

 

 

 

「…………ぅ……ぅう、やっと、やっと触れた、やっと、やっと。」

 

 

「うん、うん、スぺのおかげだよ。………ありがとね、スぺ。」

 

 

 

 

 

 

………目が、熱いや。

 

 

笑いたいけど、涙があふれていく。

 

 

 

 

 

「ほら、昔みたいにおいで。冷たいけど、ね。」

 

 

「ううん、あったかい、あったかいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……落ち着いた?」

 

 

「……うん。ありがとう、お姉ちゃん。」

 

 

「いや~、にしてもいろんな制約外れてよかったよ。動画回してなくても自由に話せるようになったし、これから開いちゃった8年、ちゃんと取り戻してこうね。」

 

 

「うん!」

 

 

「ま、まだ動画は取るけど。……お、そういえばライブもうすぐ始まるみたいだし、行ってきな。私も観客席から見てるし、楽しんでおいで。色々なことは後で、ね。」

 

 

 

そういえばライブ前だったけ、時間も……、ちょっと急がないと間に合わないかも。

 

 

 

「わかった、……ちゃんと見ててね! 行ってきます!」

 

 

 

抱き着いて泣きじゃくっていた目を拭って跳ね起き、控室から飛び出る。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「む、来たか。」

 

 

「すみません、ルドルフ会長! 遅れちゃいました!」

 

 

 

ライブ前のステージ裏、そこにはルドルフ会長が待っていた。

 

 

 

「あれ、他の皆さんは?」

 

 

「あぁ、グラスワンダーは足に不調を感じたため欠席、ブロワイエの方も調子がよくないらしく欠席だ。まぁ奴はこっちのライブ形式をよく知らないだろうから仕方ないのかもしれないが。」

 

 

そういえばブロワイエさん来日してからほんの数日なんだっけ? レース前は気にしてる暇がなかったけどそういえばブロワイエさんの体調がそこまで整ってなかった気がする。

 

 

「そんなわけで君と私のツートップだ。急な変更だが大丈夫か?」

 

 

「……あんまりライブの練習してなかったので不安です。」

 

 

「ふふ、ライブは苦手か。……スペシャルウィーク、君は考えていないかもしれないが、私に勝ち、そして私がトゥインクルから引退する以上、皆は君が次の象徴と見るだろう。もっとしっかりせねばな。」

 

 

「象徴、ですか。」

 

 

「あぁ、私と違って君の周りにはたくさんの者がいる。彼女らと共に進めるよう精進するといい。」

 

 

 

象徴、まわりのみんな……。

 

 

 

「あぁ、それと。」

 

 

そう言いながら会長は自身の勝負服にある勲章の飾りを外した。

 

 

「君が背負う星のように、GⅠに勝つたびにその重りを忘れぬように付け始めた勲章だが、このジャパンカップの勲章の持ち主は君が相応しい。……まぁ、なんだ。ドリームシリーズに君が上がってくるまで預かっておいて欲しい。その時に取り返させていただく。」

 

 

 

そう言いながら私の胸にジャパンカップの勲章が付けられた。

 

 

 

「解りました、お預かりしますね。……でも、一生返してあげませんから!」

 

 

「……ふふ、そうでなくては、な。」

 

 

 

 

 




お待たせいたしました。最近忙しくて全然手が付けられませんで……

次回はグラスちゃんとお話しして一つ二つ挟んで有馬記念です。


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PART82

 

 

 

一着 スペシャルウィーク

二着 シンボリルドルフ

三着 グラスワンダー

四着 ブロワイエ

五着 エルコンドルパサー

 

 

 

「イヤ~、にしてもみんなすごいですネ! ワタシだってタイムだけならコースレコードだったんですヨ? 会長やブロワイエさんならまだ納得できるんですけド、スぺちゃんやグラスにまだ追いつけないのはちょっと思うところありマス!」

 

 

「病室で騒がないの、エル。」

 

 

「グラスだけの1人部屋ですし、両隣に誰もいないことは確認済みデース!」

 

 

「でも、ですよ。……しかし私みたいに走るのはやめておいた方がいいです。ダービー以前のあなたよりもひどかったですから。」

 

 

「ケ? ひどかった自覚はあったのですネ。てっきりお口を三日月にしながら頭の中スぺちゃんだけだと思ってました。色々とひどかったデスよ。」

 

 

「……思い返すと少し恥ずかしいので言わないでください。……でも、あの時スぺちゃんが抜いてくれずに、そのままゴールまで行ってしまっていたと考えると、絶対にあのままでしたでしょうし感謝しないといけませんね。」

 

 

「二人ともスぺちゃんに貸一つ、って言ったところでしょうか。」

 

 

「エルも私もすごく大きな一つですけどね。」

 

 

「……ま、その借りはスぺちゃんより先にゴールを駆け抜けて返すデース! ワタシが先に返しちゃうのでグラスはここでハンカチでも嚙みながら見てるといいデース!」

 

 

「あら、なら宝塚記念には出れそうですし、そこで私も返してもらいましょうか。」

 

 

 

笑い声が病室の中で響く。

あんまり騒ぐと迷惑をかけてしまうが、今はこの時間が愛おしい。

 

 

 

「ま、二人ともシニア期から海外遠征のプランはつぶれてしまいましたけど、グラスはどうします? ワタシはスぺちゃんが前言ってた欧州遠征についていくつもりでしたけど。」

 

 

「あら、そうなのですか。てっきり時期をずらすものだと……。」

 

 

「それでもよかったんデスけどね。どうせならあっちのライブを私達で占拠したいじゃないですか。面白そうデショ? 欧州最高峰のライブで日本の私たちがスリートップを飾るってのも。」

 

 

「…………いいですね、乗りました。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「それで、なんで行くの? スぺ。」

 

 

「なんで、ってそれはグラスちゃんがケガしたからお見舞いに……。」

 

 

「テイオーちゃんの時は行かなかったでしょ? それなのに何でグラスちゃんの時は行くの?」

 

 

「? 次の有馬記念にはシニア級の人もたくさん出走するけどジャパンカップみたいに会長とかブロワイエさんとかの警戒しないといけない相手もいないし、時間的にも余裕があるからかな? それにグラスちゃん友達だし。」

 

 

「ならテイオーちゃんの方にもお見舞いに行ったら?」

 

 

「あ、それもそっか。じゃあそうする!」

 

 

 

……これ気が付いてないな。私のため、っていうスぺにとってキツイ目標のせいで多分、学ぶべきだったものを結構取りこぼしてしまっている気がする。

 

レースでの結果を追い求めているせいか、自分が周りに与える影響、どう思われているか。そしてどう対応するべきか。それ以前にちゃんとした友達との付き合い方さえ……

 

これも全部私のせいか。「死人に囚われ続けるべきじゃない」っていってもスぺはそれをひっくり返そうとしてるし、言ったとしても私の死を受け入れてないスぺにとって、私からこの言葉を言うのはどんな影響を与えてしまうかわからない。

 

 

今まで通りスぺの目標を手伝う上にスぺに友達との付き合い方を学んでもらう、とりあえずそれが私のするべきことだね。過去に区切りをつけて、もっと今を見るべきってことをどうにかして伝えないと。

 

 

 

「んじゃ、早速行きましょうか! このわたくし、スぺちゃんのおかげでこれまで以上に物を触れるようになったので、スぺちゃんのパソコンで近場のお菓子屋さんでお見舞い用のものを購入しておきました! それを取りに行ってから向かいましょう!」

 

 

「お~、ありがとう! ……あれ、お姉ちゃんいま動画取ってるの?」

 

 

「……八年近く動画用の喋り方してたからしみついてますね、コレワァ。撮影するときとし終わるときはちゃんと言いますのでご安心を。」

 

 

「治ってないよ?」

 

 

「…………善処します。」

 

 

 

 

生き返れたときのために口調の改善もやることリストに入れときましょう。せめて区別だけでもしないと。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

「失礼します。」

 

 

「……あら、スぺちゃん。いらっしゃい、そんなにかしこまらないでもいいのに。」

 

 

「あはは、そうだね。……それで、ケガの具合はどう? 大丈夫なの?」

 

 

「えぇ、レース後に痛みを覚えまして検査してもらったところ右足の方にひびが入ってしまったようで、そこまでひどくなかったのですが、復帰できるのは4月を過ぎてから、多分スぺちゃんと戦えるのは宝塚記念になるでしょう。」

 

 

「そっか、……あ、お見舞いにお菓子買ってきたんだ。気に入るか分からないけど、どうぞ。」

 

 

「あぁ、ありがとうございます。今度のお茶菓子にしますね。」

 

 

 

 

会話が、途切れる。

 

白い病室はこの前の真っ白な部屋、女神とあった部屋を思い出してしまうせいか好きではない。

 

それ以前にこの沈黙が痛い。なにか話せるような話題……

 

 

 

 

「スぺちゃん、話を。話を聞いてもらってもいいですか? どうしても自分の中で区切りを付けたいのです。」

 

 

「……うん、いいよ。」

 

 

「ありがとうございます。……私があのジャパンカップのレース前からおかしくなっていたこと、それについて聞いてもらいたいのです。普通ならスぺちゃんに聞いてもらうような話ではないのでしょうが……、いえ、話させてください。」

 

 

「私はただ、スぺちゃんに認めてほしかった。一人のウマ娘として、レースを走るものとして、ライバルとして。……だけど圧倒的に私の力が足りなかった。どんなに頑張ってもあなたの背中、その先へいけるイメージがわいてこなかった。」

 

 

「スぺちゃんに勝つには、狂気に身を任せるしかなかった。……いえ、それは違いますね。私の心の弱さが招いたこと。これは違います。自身の身を顧みずに進んだ私が愚かだったのです。……ですが、死に物狂いで追いかけるというのは間違ってはいませんでした。」

 

 

「あの時、あのレースの中でスぺちゃんを追い抜けたとき、やっとあなたに見せつけられた。私は他の有象無象とは違うんだって。……終わってみれば差し返され、三着。これまでの無理が祟りケガにつながる。」

 

 

「一時的とは言え、走れなくなるのはつらい。何もできなくなったこの時間でさらに離されるのが怖い。……ですが私がスぺちゃんに聞きたいのは一つだけ。」

 

 

 

「なあに?」

 

 

 

「……私は本当にあなたのライバルになれていますか? 私は他の方々と一緒に一纏めにされてないですか? スぺちゃんは本当に私のことを見てくれていますか?」

 

 

 

「…………うん、ちゃんと見てるよ。グラスちゃんのこと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、それならよかったです。ふふふ、すみませんこんな変な話しちゃって。」

 

 

「ううん、いいよ。私でよかったら何でも聞くよ。」

 

 

「ありがとう、スぺちゃん。……そういえば持ってきてくださったお菓子、もう一箱ありましたよね? まだ行くところがあるのですか?」

 

 

「あ、うん。テイオーさんのところにも行こうと思ってて。」

 

 

「あら、そうなのですね。それなのに長く話してしまってごめんなさい。もう時間も遅いですし面会時間を過ぎてしまうといけないですから私にかまわずどうぞ。」

 

 

「ホントだ、もう結構遅いや。ごめんねなんか急に帰っちゃうみたいで。」

 

 

「いえいえ。」

 

 

 

荷物をまとめだすスぺちゃんを眺める。

 

 

「じゃあ、また。今度時間できたら来るね。」

 

 

「えぇ。スぺちゃんも有馬記念に向けて頑張ってくださいね。」

 

 

「うん、ありがとう!」

 

 

 

スぺちゃんが部屋から出ていく。

引き戸が開かれ、手を振り見送る。

 

そしてゆっくりと閉じた。

 

 

 

 

 

「………見てくれてなかった、のですね。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

他の人と一纏め。有象無象。私を見ている。

 

 

グラスちゃんだけを見てほしい、ってことなのかな?

 

 

たぶん友達として、じゃなくてレースでのライバルとして、ってこと?

 

 

 

 

 

…………ちょっとよく解んないや。

 

 

 

 

 

 

ま、いっか。

 

後はテイオーさんのところお見舞いに行くだけだし、帰りはちょっと走っていこっと。

 

有馬記念に出走する人で注意しないといけない人はいないみたいだし、来年から本格的に始まるシニアに向けて少しでも成長しておかないと。それに来年の夏には欧州遠征も控えてるし、頑張らないと!

 

 

……でもお姉ちゃんと普通にお話しできるようになったし、そこまで急がなくても、いいかな?

 

 

 

「今日は何話そっかな~♪ あ、そういえばお見舞いのお菓子どんなのか知らないや。帰りに私の分買って帰ろっと!」

 

 

 

 

 

 




スぺちゃんが有馬記念に向かってアップを始めなかったようです。
さぁ有馬記念。出走を表明しているのはキングとスカイぐらい。

お二人の描写を入れてから有馬記念に向かいましょう。


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PART83

 

【スペシャルウィーク】

 

>スピード:A

 スタミナ:A

 パワー :A+

 根性  :B+

 賢さ  :B

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.4

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.4

 【空駆ける英雄】    Lv.3

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.3

 

 【ゲートの支配者:改】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 【プレッシャー耐性〇】

 【全身全霊】

 【率いるもの】

 

 

 

 

アホーイ! 投稿者ですよ~! 今日も頑張っていきまショータイム!

 

さて、先ほど見ていただいたのはスぺちゃんの今現在のステータスです。時期としてはクラシック級。ジャパンカップ開けたのちの有馬記念に向けて最後の調整中と言ったところでしょうか。

 

ありがたいことにスぺちゃん最近調子がいいらしく、練習への頑張りがいい感じですねぇ!

ジャパンカップ後の変化といたしましてはまずは会長の固有スキルのレベルが上がったこと、それと【末脚】が【全身全霊】に、あと【率いるもの】が完全にアクティブ化したようです。

 

……なんか強くなりすぎてない? まぁいいことですけど。あとスピードも念願のAに今日の練習でなりましたしこれは安泰ですねぇ! 強くなりすぎて鼻水出ちゃう。

 

 

んで、スぺちゃん。さっきから勝負服に何してるの?

 

 

 

「ルドルフ会長からもらった勲章を付けてるの。ジャパンカップのライブ前にもらったんだ!」

 

 

 

ほへ~、そんなイベントあるんですねぇ。勝負服の胸のところに勲章が輝いてカッコいいですな。

テイオーちゃんにマントあげたみたいに、ジャパンカップで勝利したご褒美に勲章もらったみたいです。これが原因で会長の固有スキル上がったんですかねぇ?

 

ま、速くなるならなんでもいいタイ!

 

 

 

んじゃ、そろそろスぺちゃんの出走予定である有馬記念についてご説明していきましょう。

皆様ご存じの通りこの有馬記念、出走するにはファン投票である程度の成績を収めないといけないんですけど、こちらの方はもう大丈夫。あの魔境と化していたジャパンカップで勝てちゃいましたから人気投票えらいことなってます。二位の方と大きく差が開いて堂々一位での出走ができます。やったねスぺちゃん、有馬に出れるよ!

 

ま、出走できること自体は三冠取れた時点で確信していたのですが、出走表明をしている方々にちょっと問題があります。

 

先ほどスぺちゃんのパソコンを使って調べたのですがルドルフ会長をはじめとした警戒すべきシニア級の方々は出走表明をしていないんですよね。会長も「トゥインクルからはすでに引退したような身だ。あのジャパンカップは例外みたいなもの。」と発言してますし、なんか静かなんですよねぇ?

 

クラシック級の面々もテイオーちゃんがケガで無理。マックちゃんも他のレースに出るからパス。グラスちゃんもケガでエルちゃんも見送り。ってな感じで人少ないんですよね。出走するって言っているのがセイちゃんことセイウンスカイとキングちゃんことキングヘイローの二人ぐらい。

 

最近見なくなったネイチャやターボも出走しようとすればできそうですけどまだ公式に何も発表してないですし、ホントに人少ないんですよねぇ。

 

これがスぺちゃんに恐れをなしてネームド君たち情報収集のために避けた! ぐらいならいいんですけどクラシック級での勝負を捨ててシニア級で倒してやるぜ! とかされたら嫌なんで心配です。

 

 

まぁあんまり言いたかないんですけど、正直この時期のキングちゃんとセイちゃんはそこまで警戒しなくてもいい相手なんですよね。やってての感覚なのですがそのウマ娘のモチーフとなった史実馬の能力に彼女たちウマ娘も結構引っ張られているところがあるみたいで、その史実馬が活躍したレース、時期ではかなり強くなるけど、それが終わってしまえば成長率が下がると言いますか、まぁぶっちゃけ警戒度が下がります。

 

マックイーンやライスの天皇賞とかになると最大限の注意を払う必要が出てくるんですが、セイウンスカイの活躍した時期はもうそろそろ終わりを迎え始めますし、キングヘイローも距離という壁があります。

 

 

まぁてなわけで今回の有馬はそこまで気を張らなくてもいいレースになるかなぁ、と。

 

ま、ガバとか怖いですし、全力でやるのはやりますけどね。

 

 

 

「お姉ちゃ~ん、そろそろご飯食べてくるね~!」

 

 

あ、は~い。あんまり食べすぎるんじゃないよ~。

 

 

 

 

 

 

 

……ちょっと私情入れ過ぎて喋ってる気がするな、撮り直そ。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……クッ!!」

 

 

バランスを崩し、前に倒れ込んでしまう。

暑い体に冷たいターフが気持ちいいが休んでる場合じゃない。

 

 

「お嬢! 大丈夫か!」

 

 

トレーナーさんが走り寄ってくる。

急いで立ち上がらないと。

 

 

「ッ! ……えぇ、大丈夫ですとも。これぐらいで終わってしまうほど、やわでは、ありません。」

 

 

「もうオーバーワークなんか通り過ぎている! そろそろ休め、お嬢!」

 

 

「大、丈夫です。私の体のことは私が一番解ってます。まだ、行けます。」

 

 

 

 

そうだ、解っている。これが、最後だってこと。

 

スペシャルウィーク、グラスワンダー、エルコンドルパサー。

 

彼女たちに付いていけるのは、同じ距離で勝負できるのは今年が限界だって。

 

 

 

既に差は開ききっている。

あのジャパンカップで嫌というほど見せつけられた。

 

私にはどんな好条件がそろったとしても、どんなに調子がよかったとしても。

 

 

5着だったエルさんにすら、絶対追いつけない。

 

 

 

 

 

努力で才能は覆せる、なんて幻想だ。才能の持ち主も、私みたいな凡才も同じように努力するんだから。

そのくせ相手は凡才が必死に追いつこうとしているときに、私達よりも多く努力している。

 

スタート位置が同じでない上に進む速度すら違う。追いつけないのは道理だ。

 

 

だけど、諦めたくない。

 

私だって才能は有るはずだ、私だって死ぬほど努力したはずだ。

 

決して届かないとしても、こんなところで諦められるはずがない。

 

 

 

それに……

 

 

 

「最後、何でしょ。私の有馬記念。」

 

 

トレーナーさんの驚いた顔が目に入る。いつも厳格なあなたがそんな顔もできるんですね。

 

イヤでも解ってしまう。ここ最近、ずっと同じ資料を持っていれば。

マンツーマンで指導してもらっているのだ。その内容ぐらい目に入ってしまう。

 

私の、短距離への移行計画。トレーナーが『私にGⅠを勝利してほしい』その一心で考えてくれた計画。

 

 

 

トレーナーさんが席を外した時、今の現状を変えたかったのか、逃げ出したかったのか、見てはいけないと解っていながら手が伸びてしまった。綿密に描かれた計画。見た瞬間解ってしまった、私にはこれしかない、って。

 

元々解っていた。私に長い距離を走る才能なんかないことだって。

しかもマイルですら万全じゃない。短距離しか走れないのだって。

 

 

でも無理やり指導してもらった。私が私であるために。偉大な母の子であることを証明するためだけに。私に向いてないと知りながらも指導してくれた、中距離、長距離で食らいつけるようにしてくれた。

 

 

 

「自分でも、イヤなほど解っています。このまま続けても何も残せない、ただ置いて行かれるだけだってことは。…………だから、最後です。私が長い距離、短距離以外を走るのはこれが最後。」

 

 

 

 

「私の、最後の、有馬記念。」

 

 

 

「これが終われば、私は短距離に移行します。」

 

 

 

「だから、だから。」

 

 

 

 

 

 

「どうか、走らせて、もらえませんか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せめて、この一戦だけは。

 

 

私の、訣別のために。ただ、全力で。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「……………これもダメ。やり直し。」

 

 

 

 

ここのところ。セイウンスカイ、セイちゃんはずっとあの映像を見ている。

 

 

自身の実力を底上げするため、最大速度を上げるため、あのゴール板を最初に通過するための練習。その合間の休憩や移動中。暇があるときはずっとあの映像を見ている。

 

 

スペシャルウィークやシンボリルドルフ、ブロワイエなどが走ったあのジャパンカップ。

私もトレーナー業。いや彼女たちの世代を担当していなければ、新しい伝説が幕を開けたことを単純に喜べただろう。私達は歴史の生き証人になれるんだ、って。

 

 

 

セイちゃんはずっとあの瞬間。スペシャルウィークが最後の直線で差し返した時の映像を繰り返し見ている。

 

どこかに、突破口はないか。どこかに、彼女が勝てる道はないか。

 

 

私も、最初のころは必死になって探した。

セイちゃんが勝てる方法を模索した。

 

 

 

 

正直に言ってしまえば考えない方が幸せだったかもしれない。

 

結論として、不可能。

 

 

どう考えても、無理だった。

相手は走るたびにレコードを塗り替える化け物。

 

ただ、才能があるだけのウマ娘が勝てるわけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、セイちゃんは諦めてない。

 

私が半ばあきらめかけているのを知りながらも彼女はまだ方法を探している。

 

 

 

 

 

 

……指導する側が、先にあきらめちゃ、ダメだよね。

 

思いっきり顔を叩く、よし!

 

 

 

「私も頑張らないと、ね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これだけ…………かな? 成功率は限りなく0に近いし、スぺちゃんが使ってこないっていう希望的観測に基づいたものだけど、これならいけるかもしれない。」

 

 

 

 

 

 

「…………いや、やるんだ。」

 

 

 

 

 

 

選んだのは一番最初に考えていたプラン。

菊花賞で破綻したプラン。

 

 

 

 

まだ、空は青い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

夜、トレセン学園 食堂

 

 

練習終わりのウマ娘たちが集まるこの時間帯。騒がしいほどに活気があるこの場所。

 

スズカから頼まれてほぼ習慣となったスペシャルウィークとの食事。

何度も見たはずなのだが、やはりこいつの食事には慣れない。

 

 

既に皿が何枚も重ねられ、食堂の方がひっきりなしに新しい料理を運んできてくださる。

効率のためスペシャルウィークの隣にオグリキャップもいるせいで皿の山はどんどん積み上がる。

以前オグリのトレーナーが「二人そろってサイヤ人じゃん」などと言っていたがすでに笑えん。

 

 

「ふぃ~、やっぱりスぺちゃんもオグリちゃんもよく食べるねぇ。おかわりここに置いとくよ。」

 

 

「ふぁ、ふぁふぁがとうごふぁいまふ!」

 

「ふぁりがふぁう。」

 

 

「はぁ~、お前ら少しぐらいは飲み込んでから言え、口がハムスターだぞ。」

 

 

「い~え、いいのよ、これぐらい元気じゃないと。主任も燃えてたし私も頑張らないとねぇ。あ、これグルーヴちゃんのね。」

 

 

「す、すみませんわざわざ。」

 

 

「い~のい~の、二人のついでだからね~。」

 

 

 

そう言いながら職員の方が厨房に戻っていく。いつも、というかこいつらと食事してるとご厚意で私の分まで持ってきてくださるのはありがたいが、なんだか申し訳ない。

 

 

ふと前を見ると運ばれてきたはずの料理が4分の1ほど消失していた。お前らちゃんと噛んで食べてるのか?

 

 

「はぁ、それにしても片方が過去の会長と同着。もう片方が今の会長に勝利。まったくもってどうなってるんだ? 憧れの会長に勝った奴らが目の前でハムスターしてると……、ハァ。」

 

 

なんかもう、疲れた。

 

 

 んぐ。

 

「む、どうしたエアグルーヴ。ため息が出ると幸せが逃げてしまうらしいぞ?」

 

 ごっくん。

 

「あれ、どうかしましたか、グルーヴ先輩?」

 

 

 

「……いや、何でもない。あと自分から話す時は飲み込むのだな……。」

 

 

 

最近の会長は「目標ができた!」とウキウキしてらっしゃったし、オグリキャップはオグリキャップで「会長が頑張ってるから私もやる」といって頑張り食事量を爆増させ、スペシャルウィークはよいことでもあったのか最近ニコニコしながら食事量を上げた。

 

 

私はなんか、疲れたなぁ……。

 

 

「ハァ……、とりあえず私も食べるか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばオグリ先輩は有馬記念出ないんですか?」

 

 

「ん? あぁ、私は去年出たしな。ファン投票でかなりの人に入れてもらったが有馬記念には出ない。今はドリームシリーズに向けて調整中ということもあるが……どうしてだ?」

 

 

「いえ! 単に気になっただけです!」

 

 

「そうか。まぁスペがドリームに上がったときは勝負しよう。………この唐揚げおいしいな。」

 

 

「…………ですね!」

 

 

 





エンゲル係数爆上がり
いつかエアグルーヴに「たわけが!」とか言われながら蹴り飛ばされる気がする。

有馬記念出走者(ネームド)
 キングヘイロー
 セイウンスカイ


次回、有馬記念


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PART84

 

「おぉ! すごい人だね、トレーナー!」

 

 

「だね。みんな彼女を見に来ているのかな?」

 

 

 

最近はずっと地方のレースに出てもらっていたせいか、ウララの中央に対して持っている情報は少ない。せいぜいテレビで見たぐらいだろう。彼女がこのままダートで走るか、それとも芝でも走るのかは彼女の意思次第なので解らないが、絶対にこのレースは彼女の糧になるだろう。

 

 

 

「やっぱりみんなスぺちゃんを応援してるのかな? ウララはみんなに勝ってほしいけど、誰か一人を選ばないといけないとすれば……、やっぱりキングちゃんかな?」

 

 

「同室でお世話になってるからかい?」

 

 

「うん! 大事な友達なの!」

 

 

 

地方で走ってもらっていたせいで大事な友人たちとの時間が少なくなってしまったことは完全に私が悪い。最初はレース間隔をつかむために地方で走ってもらっていたが、途中から目的が変わってしまっていた気がする。来年からは長く中央に残れるようなプランを組もう。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

「ふ、ふん、ふん、ふ~♪」

 

 

 

 

んじゃ、今回もなんかご機嫌なスぺちゃんと一緒に有馬記念走ってきましょう! ステータスは前回お見せしたものとそこまで変わらず、のままなので今回省きましたが周りと比べて頭二つ分以上実力差がある感じです。また今回出走してるのもネームドの中からだとキングヘイロー、セイウンスカイのみと同じ世代の子ぐらいしか注意しないといけない子がいないので比較的安心していけるでしょう。

 

 

あ、申し遅れました、投稿者です。今回もよろしくお願いしますね。

 

 

さて、同世代、それもライバル枠のお二人が相手となってきますが、正直そこまで気にしなくてもいいです。まぁなぜかと言うといくらライバル枠の補正が掛かっていたとしても史実、という名の補正にはかなわず、時間が進むごとに彼女たちの成長率はやっぱり少なくなっていきます。

 

セイウンスカイ、キングヘイローともに菊花賞あたりから怪しくなってきまして、シニア級になると全くついていけなくなってしまいます。まぁキングには短距離があるんですが、セイちゃんは正直どうなるか解りません。史実では皐月、菊花と二冠馬でしたが、今回はスぺちゃんが取っちゃったのでマジでどうなるんでしょう。

 

まぁ勝負の世界ですし、こればっかりはわたくしにできることはないです。正直スぺちゃんの方から接触したとしてもいい方向に転ばないのは明らかでしょうから、こればっかりは神頼み、ですね。

 

 

 

「むぅ~。」

 

 

 

おっと。スぺちゃんの嫌いワードが出てしまいました。すまぬすまぬ、この部分カットしておくゾイ!

 

 

さ、それでは有馬記念に向かいましょうか! 作戦としては王道の差しで行きましょう! いつも通り後方で待機しておいて、中盤辺りから全部抜いて引き離す! これ、鉄板!

 

あ、あと今回のレースはセイちゃんがいますので、彼女が変に逃げてもペースは崩さないように一定を保ちましょう。結果的に先行位置になってしまうかもしれませんが、そんときゃそん時です。

 

現状のセイちゃんでは有馬を全速力で逃げ切る、みたいなスズカ先輩みたいなことはできませんし、必ずどこかで息を整えてきます。そこを突く感じですね。

 

キングちゃんは同じ差しの戦法を取ってくるので実力差で勝負していきましょう。

 

ま、ステータス二人ともよくてB、平均してC+ぐらいなので問題なし!

 

 

んじゃ、レッツ、有馬記念! ゴー!

 

 

 

「お~!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『年末の大一番。あなたの夢、私の夢は叶うのか。……という私たち実況の決まり文句を吐いたところではありますが、実質ここに訪れた大半が彼女のことを見に来た、と言っても過言ではないでしょう。実況の身でありながら避けるべき発言だと思いますが、私もそうです。』

 

 

『実際彼女の実力は頭一つ以上飛び出ていますからね。今年度は来年度から始めるドリームシリーズのためか、ファン投票で上位に入りながらも出走を回避したウマ娘が多くいます。優秀な成績を収めた子たちばかりですが、少しながら荷が重い、と言ったところでしょうか。』

 

 

『さぁ、満を持しまして、お待たせいたしました! 一番人気の登場です! もちろんこのウマ娘、スペシャルウィーク! 無敗三冠に合わせましてホープフルSとジャパンカップ、合わせて五つの星を背負い、六つ目の星を手に入れに行きます!』

 

 

 

 

 

「………。」

 

 

 

菊花賞の時は単に注目されてなかったことを喜んでいたけど、二度も続いて、それ以上にレース場全体がスぺちゃんの勝利を望んでるみたいなすごい状況だと、ちょっと思うことがあるよね。

 

 

私もここにいるんだぞ~!、ってさ。

 

 

ま、そんなことしても負け犬の遠吠え、何も変わんないだろうからやらないけど。

 

実力差が離れているのは理解してる。ついていくことが出来なくなりかけているのも理解してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

けどね、もう負けたくないんだ。

 

 

ねぇ、スぺちゃん。いっぱい勝ったでしょ? たくさん星背負ったでしょ?

 

無敗三冠になったでしょ? シンボリルドルフ会長に勝ったでしょ?

 

時代の頂点って呼ばれるようになったよね?

 

 

 

ねぇ、もう十分じゃない?

 

もうたくさん、勝ちすぎるほど勝ったよね?

 

そろそろ期待が重くなってきたんじゃないの?

 

 

今年最後。一つぐらい、私に譲らせてあげるよ。

 

 

 

 

だからさ、その重みってやつを私に体験させてくれるよね?

 

 

 

 

 

 

ねぇ、そこで鼻歌歌いながら、自分の勝利を疑ってない、スぺ(傲慢)ちゃん?

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

私を担当してくださっているトレーナー、赤田さん。

 

彼、縁のウマ娘として一番初めに挙げられるのがあのシンザン、伝説だ。

 

 

シンボリルドルフという今の英雄、そしてスペシャルウィークさんでさえあの方には届かないと言われるほどの伝説、化け物と言ってもいい。そんな方が私の先輩にあたる。

 

赤田さんが担当なされたウマ娘は彼女を筆頭にして誰もが輝かしい成績を収めた。

 

誰もがGⅠを勝利していた。

 

そんな、素晴らしい、先達たち。

 

 

 

 

 

 

だが、私はなんだ?

 

どんなに頑張っても掲示板が精いっぱい。

 

他重賞は勝てても、GⅠはどうしても勝てない。

 

 

 

出来ることは全部やった、教えられたことはすべて糧にできたはずだ。

 

だけど、スペシャルウィーク。スぺさんに勝てるイメージが全くわかない。

 

彼女の前に出ることがどうしても考えられない。

 

 

 

自分の適性を無視し、自分の才能のなさを無視し、

 

 

 

私はあの母の血を引いてるんだ! あのトレーナーに師事を仰いでるんだ!

 

そうやって自分を無理やり鼓舞しながらここまで来た。

 

 

 

それも、今日で終わり。

 

こんなことは口が裂けても言えないが、私はどこか、この現状につらさを感じていたのかもしれない。

 

トレーナーさんが私の短距離への移行を考えていると知ったとき、初めて心に抱いたものは、

 

 

 

 安心

 

 

だった。

 

 

裏切られた、見捨てられた。やっぱり私はそっちなんだという納得。

 

そんなもの全部打ち捨てられていた。

 

 

 

ただ、安心してしまった。

 

これ以上あそこで戦わなくていいんだ。自分の身を削りながら戦わなくていいんだ。

 

もう超えられない壁に挑まなくてもいいんだ。

 

 

 

そう、安心したのだ、このキングが。

 

自ら敗北を受け入れたのだ。どうせ何をしても勝ってこない。それならば挑まない方がいい。

 

 

諦めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……諦めた?

 

 

 

 

 

 

 

 

……ふざけるな。

 

 

 

 

 

ふざけるなよ、私!

 

 

何のためにお前は走っている!

 

 

母に自分を認めさせるためか? トレーナーの名誉を傷つけないためか?

 

 

 

 

違うだろ、違うだろ私!

 

私が、私であるために。

 

 

私が、『キング』であることを証明するために!

 

 

絶対に諦めずに、そこに到達するために!

 

 

母やトレーナーはそのおまけにしか過ぎない!

 

 

 

 

全部が全部、私のため、私のために彼女に勝ちたい!

 

絶対にスペシャルウィークに勝つことを諦めない!

 

 

 

 

 

自分が周りより劣っていることも、成長速度が劣ってきたことも、スペシャルウィークとの実力差がかけ離れていることも、全部全部知っている。そんなこと百も承知だ!

 

 

だけどそれが私が諦める理由にならない!

 

 

私に『諦め』なんて文字必要ない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心を研ぎ澄ませ、私。

 

王者をここに証明するんだ。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

え~と、セイちゃんは大逃げするけどスタミナ調節のために一息入れるからそのタイミングで、キングちゃんは私と同じ作戦らしいからそこまで気を付けなくてもいい、だよね。

 

たぶんセイちゃんが今までしていた無理な大逃げはブラフで、どこかのタイミングで大逃げに見せかけてゆっくり休憩するつもりだった、ってことかな?

 

お姉ちゃんが言うことだから正しいんだけど、セイちゃんがそんな策士さんだなんて知らなかったや! 確かに何で大逃げするのかなぁ? と思ってたけどそういう理由だったんだねぇ。

 

 

 

ま、どうでもいいかな?

 

 

じゃ、頑張って勝つぞ~!

 

 

 

 

 

『さぁ、各ウマ娘順にゲートに入っていきます。』

 

 

 

 

あ、そういえば前の菊花賞のときも、今回の有馬記念の前も同じこと言われたよね。何度もお姉ちゃんが注意してくれる、ってことは結構大事なのかな? 

 

 

 

『各ウマ娘、ゲートに収まりました!』

 

 

 

スズカ先輩やターボさんも逃げだし、今後セイちゃんみたいな戦い方をする人がいるから注意してくれたのかなぁ? それとも世界? ……このレースで対応の仕方覚えておきましょう、ってことかなぁ?

 

 

 

『今、スタートです!』

 

 

 

 

 

 

…………あ、プレッシャー掛けるの忘れてた。

 

 





ウララのトレーナーは今日もT字ヘッドです。
試験的に有馬は三話構成、今までのレース描写を分割いたしますのでよろしくお願いいたします。




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PART85

 

 

 

『スペシャルウィークが少し遅れてスタート、それ以外はきれいなスタートとなりました!』

 

 

『彼女がスタートを遅らせるのは珍しいですね。得意なイメージがあったんですが……、まぁ彼女は差し策なのでこれぐらいの遅れはそこまで問題にならないでしょう。』

 

 

『さて、先頭は勢いよく飛び出しまして、セイウンスカイ。今回も彼女は大逃げで行くようです。』

 

 

 

 

 

よし、よし! 来なかった! 来てたらそこで終わってた!

 

どんだけ練習しても、誰にお願いしてもあのゲートのプレッシャーをすり抜けられる確証が持てなかった!

 

あのプレッシャーを再現してもらうことができなかった、あの状況を作り上げることができなかった!

 

対策のしようがなかった!

 

 

 

それが来なかった!

 

 

 

完全に舐められているのに思うところがないと言えば嘘になる、でも!

 

こっちはそれを前提に考えてた! いける、いけるぞ!

 

 

 

普通ならレース前に気が入ってなければ声かけてた! もっと本気になって欲しいっていうと思う! ケド!

 

今のスぺちゃんは別、何が何でも勝利を掴み取る!

 

 

 

 

 

『ああっと! セイウンスカイさらに加速!』

 

 

『これまでのレースよりペースが速い感じですね。彼女のレースを見る限り大逃げのさらに先、後半に入るまでにできるだけ後続と差を開けておきたいというわけでしょうか?』

 

 

『これに合わせてか、後続はそろってペースを下げていますね。』

 

 

『彼女についていけば潰れてしまう、その判断でしょう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あ、すごい。ホントになった。」

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「…………あ、すごい。ホントになった。」

 

 

 

 

 

…………どういうこと?

 

出所はスぺさん。今回は“アレ”も来ず、逆に彼女が出遅れたが………、もしや何かの作戦?

 

 

いつも、普段のスぺさんはどこか天然さを感じる方だがレースでは完全な別人。

 

菊花賞のプレッシャー、大逃げで嫌というほど解らされた。考えているのが本人ではない可能性もあるが、それを実行できている時点で普段の彼女ではない。

 

 

そのこと自体は理解していたつもりだったけど、今の一言は何?

 

 

 

出遅れを引き起こしたせいで彼女は私より後方。見て確認したわけではないがおそらく差し位置の最後方、追込位置に入るか入らないかと言ったところだろう。

 

さすがに彼女がレース中に話しかけてきて周りを惑わす、というのはしないはずだ。と、なると口から零れ落ちた、うっかり出てしまった言葉になる。

 

『ホントになった』ということは……、このレース展開のこと? セイさんの大逃げのこと?

 

 

 

 

…………もしかして彼女の大逃げはブラフ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのことを理解した瞬間、私の横を、外側に

 

 

 

 

風が吹き荒れた。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

よし、よし! 後ろに何も来てない!

 

みんなついてきてない! もちろんスぺちゃんも!

 

 

 

後はここでできる限り休んで、後ろから来そうになったらもう一度加速。そのタイミングさえミスらなければ勝てる! ここが正念場! 頼む、頼むから気づかないでくれ!

 

 

このまま私はペースを落とすんだ! 休むんだ!

 

最大速度じゃかなわない、スタミナでも叶わない!

 

だから何としてでもこの距離というアドバンテージを離したくない、離しちゃいけないんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ド、ド、ド、ド

 

 

 

 

…………なんで。

 

 

 

 

 

 ド、ド、ド、ド、ド

 

 

 

 

 

 

何でもう、足音が、

 

 

 

 

 

 

 

 ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド

 

 

 

 

 

 

何でもう、真後ろにいるんだよ! スぺちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

へ~、こんな感じになるんだ。

 

 

確かに、このまま周りのペースに合わせてゆっくり走ってたら結構ぎりぎりだったかも。

 

でもお姉ちゃんに教えてもらってるし、スタートで思いっきり失敗しちゃったからこれ以上やらかしちゃうのはいけないよね。ちょっとだけ速いかもしれないけど中盤に入る前に位置を押し上げておこうかな?

 

 

よい、しょっと!

 

 

 

 

『ここでスペシャルウィークが加速します!』

 

 

『現在セイウンスカイが先頭でかなりの差が離れていますし、それを嫌ったのかもしれませんね。』

 

 

 

 

キングちゃんが何か考えている、そんな顔を横目で見ながら速度を上げる。

 

 

あ、でも私が前に行こうとしてるの見たら速度上げたのかな? 加速した音が聞こえるや。

 

 

 

 

 

 

え~、と先頭のセイちゃんとは大体何バ身ぐらいだろ? 結構離れてる。

 

 

でも、ちょうどセイちゃんが中盤過ぎたぐらいだし、このまま私もいつもの加速したらいけるね。

 

……ん? それなら別に追いかけなくても良かったの?

 

 

 

 

『現在先頭にセイウンスカイ、大きく離れて加速し始めたスペシャルウィーク、その後ろにキングヘイローと続いています。』

 

 

 

あ、でもバ群に呑まれて前に進めないかもしれなかったからこの状態の方が良かったのかも。

 

 

 

さ、そろそろ中盤だ。

 

 

 

 

>【不沈艦、抜錨ォッ!】Lv.3 発動!

 

>【逢魔時】 発動!

 

 

 

 

始めるよ、お姉ちゃん。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『おっと、スペシャルウィークさらに加速ぅ!』

 

 

 

 

 

ダメだ、もう後ろに足音が! 真後ろにスぺちゃんが!

 

 

ナンデ! なんでもう後ろにいるの!

 

 

休んでいる暇なんてない! 全速力で逃げないと追いつかれる!

 

私にスぺちゃんを差し返す能力なんてない!

 

 

抜かれたらそこで終わりなんだ!

 

 

 

 

私はまだ何も残せてない!

 

まだ、終われないんだ!

 

 

 

 

『セイウンスカイ逃げる! セイウンスカイ逃げる! その後ろからスペシャルウィーク、スペシャルウィークだ! スペシャルウィーク猛追! 差がどんどん縮まっているぞ! そのまま最終コーナーになだれ込む!』

 

 

 

 

コーナー! 駄目だ!

 

減速しないと曲がれない! でも減速したら絶対に追い抜かれる!

 

 

曲がれ、曲がるんだ、このままの速度で、そのままの勢いで!

 

 

 

減速せず、無理やり重心を内側にずらす。

足首に痛みを感じるけど、気にしてる場合じゃない。

 

 

 

 

>【アングリング×スキーミング】Lv.3 発動!

 

 

 

 

 

 

 

 

「負"け"る"か"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………。」

 

 

 

 

 

 

>【シューティングスター】Lv.4 発動!

 

>【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.4 発動!

 

>【空駆ける英雄】    Lv.3 発動!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『スペシャルウィーク! スペシャルウィークだ! セイウンスカイを抜かし、先頭に躍り出る!』

 

 

 

『スペシャルウィーク! そのまま後続を突き放す!』

 

 

 

『スペシャルウィーク独走か、スペシャルウィーク独走か!』

 

 

 

『後ろからは何にも来ない! 後ろからは何にも来ない! 後ろからは何にも来ない!』

 

 

 

『ようやくキングヘイローが上がってきたか!』

 

 

 

『スペシャルウィーク、これは強い! これは強い!』

 

 

 

『今、一着でゴールイン!』

 

 

 

『スペシャルウィーク、圧勝です!! これで六冠目! 今年度無敗を貫きました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有馬記念

 

一着 スペシャルウィーク

二着 キングヘイロー

三着 セイウンスカイ

 



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PART86

 

「アハ、アハハ……、はぁ。」

 

 

なんだかもう、乾いた笑い声しか出ない。

 

 

鳴りやまない鼓動。無理した足首からの痛み。

 

 

そんなもの全部気にならない。

 

 

ただ、もう笑うしかできない。

 

 

 

 

 

 

大歓声の中、観客に向かって手を振っている彼女を横目にターフに寝転がる。

 

 

 

「疲れた、なぁ……。」

 

 

 

肉体的にも、精神的にも、もう疲れちゃった。

 

 

 

 

 

 

あのままじゃ追いつけないことが解ってて、どんなに頑張っても追いつけないのが解ってて、

 

 

彼女に勝つためにあれだけ時間をかけて、しんどい思いをして、周りに迷惑かけまくって、

 

 

それでも、これならいけるかも、って思ったものでも単なる実力差で壊される。

 

 

 

 

ホントなんだろね。こんな最悪な現実。

 

 

アレが才能って奴なら私はソレを恨むよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイさん、肩。貸しましょうか?」

 

 

「…………あぁ、キングか。ありがと。……ごめんね、立てるけどその気にならんの、引き起こしてくんない?」

 

 

 

そう言うと、すぐに私の手を握り立ち上がらせてくれた。

 

……ホント、自分もつらいはずなのに、よく私なんかのこと気にかけてくれるよね。

 

私が足首痛めてるのを知って、わざわざ肩貸してくれるもん。

 

 

 

 

 

 

彼女に体重を預けながら、色褪せたターフから去る。

 

当分、見たくないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「届きません、でしたね。」

 

 

「…………だねぇ。」

 

 

 

 

 

ただ、歩を進める。

 

足首の痛みはもう引いてる。

 

でも、まだ自分で歩く気には、前に進む気力は出てこない。

 

 

 

 

「このまま、ずーっと勝てないのかなぁ。どんなに努力しても、どんなに頑張って作戦を考えても、どんなに、どんなにやったとしても、…………やっぱり届かないのかなぁ。」

 

 

「………。」

 

 

「もう、私たち。このまま置いて行かれるのかなぁ……。何やっても勝てなくて、勝負にならないで、どうしようもなくて、でも勝ちたくて。」

 

 

「こんな、こんな思いするなら、……………もう最初から走らない方が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙りなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ、そんな口を利くならさっさと黙りなさい! えぇ、そうでしょうとも! 何やっても私たちは届きませんでした! 多くの方々に迷惑をかけ、時間を使い、出来る限りのことをして挑んだ! でも負けた! 誰の目から見ても完敗です! 影すら踏ませてもらえませんでした!」

 

 

 

「でも、でも! これぐらいどうでもよいこと! えぇ、どうでもいいんです! どんな負け方をしても、どんなに周りに迷惑をかけたとしても、私たちは走った! 必死に挑んだ! あなたはそれすらも否定するのですか!」

 

 

 

「どんなに弱音を吐いても、どんなにつらい思いをしても、どんなに失敗し、負けたとしても、それがすべてを諦める理由にはなりません! そうでしょう!」

 

 

 

「なのに、なのにあなたはもうあきらめるのですか! あの程度の負けが何だというのです!」

 

 

 

「思っていましたとも! 私たちに勝ち目なんか最初からないんだって! でもね、それでも立ち向かうあなたのその有様はかっこよかった! 無理難題に立ち向かうため、全部の可能性を考えるあなたを見ていた! ほとんどゼロに近い可能性に掛けて、全力を出せるあなたに憧れていた! 私にはそんなことは怖くてできない! ただ、愚直に前に進むしかできない私の憧れだった!」

 

 

 

 

 

「それを! それを何ですかあなたは! もう諦めるのですか! もうおしまいなんですか!」

 

 

 

「ただの軽口なら許します。ですが! その言葉の続き、本心からのものだったとしたら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………もういい。もういいよ、キング。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「アハハ~、あらキングちゃん? もしかして信じちゃいましたかぁ~?」

 

 

 

 

貸していた肩を振りほどき、軽く飛んだセイさんが目の前で笑いかけてくる。

 

少々、無理やりな笑顔だがさっきまでの見ていられないような顔ではない。

 

 

 

 

「……ハァ、もしかしてまた何かのドッキリですか? だとしたらかなり恥ずかしいのだけれど。」

 

 

「二シシ~、カメラが回ってなかったことに感謝するのですな。」

 

 

 

 

ま、そういうことにしておきましょう。

 

本心を言いすぎて恥ずかしかったのは事実ですし。

 

 

 

「それにしても足首の方は大丈夫なのですか? 痛めたようにしていましたが?」

 

 

「ん~、さっきから痛くないし、大丈夫じゃない?」

 

 

「いつから?」

 

 

「肩貸してもらってからぐらい?」

 

 

「最初からじゃないですか!」

 

 

 

 

少し、大げさに怒ってみると「わ~いキングちゃんの怒りんぼ~」なんて言いながら逃げていくセイさん。

 

 

ふふ、まぁ私たちはこれぐらいの方がいいのかもね。

 

 

 

 

 

「さて、私も控室に戻りますか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、でも結構きてるのは確かなんだけどね。」

 

 

 

キングのおかげで少しは持ち直したけど、やっぱりねぇ。

 

ちょっとスぺちゃんと戦いたくはない、かな。

 

 

 

「正直今の段階で勝てる方法なんて全くないし、負ける前提で挑むのはイヤ。かといって今の私にできることなんてないしなぁ……。」

 

 

 

控室に移動しながら色々と考えてみる。私はキングみたいに短距離はできないし、マイルもできるちゃあできるけどそこまで得意じゃない。中長距離適性の私は国内にいる限り絶対にスぺちゃんとぶち当たる。

 

 

 

「これから私もシニア級だし、上の先輩たちと得意じゃないマイルで勝負するのも無理ですしなぁ……。」

 

 

 

出来るなら私の得意な距離で勝負したいけど、スぺちゃんと勝負するのは私が勝利を確信できるまで当分したくない。と、なればどうするのが正解なのか。

 

そんなことを考えていたらもう控室の目の前に来ていた。

 

 

 

「キングに諦めるのやめま~す。って言ったようなもんだしもう一度ダメになっちゃうまではやるのは決定。でも何をやるか、考えませんとねぇ~。」

 

 

 

モチロン、続けるなら彼女に勝つのを諦めたなりなんかしない。だってあのキングの憧れ、セイちゃんですもの。

 

 

そんなことを考えながら控室に入る。

 

 

 

普段なら「ただいま~!」なんか叫びながら入るだろうが、そこまで元気じゃない。一応この後ライブあるし、おいてあるドリンク呑んでちょっと休憩しとかないと持たないよねぇ。

 

ま、ズタボロのセイちゃんですけども有馬に出れるぐらい応援してもらってるし、ライブぐらいはきれいにこなしませんとねぇ。うむうむ。

 

 

 

「あれ、なんだこの封筒。」

 

 

ドリンクの隣に結構大き目の封筒が置いてある。

 

中身は……、私のパスポートと香港スチュワーズカップの出走登録受付完了されている書類。ちゃんと私用に翻訳もされている。

 

 

 

「確か、マイルだけど……香港三冠のはじめ。」

 

 

 

 

香港三冠。私にとったら全部ちょっと短いけど、海外GⅠ、取れたらスぺちゃんと同じ三冠。

 

 

 

 

 

 

「………二シシ、いいねぇトレーナー! 最高だよ! これ全部取って、スぺちゃんに負けないぐらい成長して! それで全部が全部、これまでのことまとめて返してやる!」

 

 

 

 

さぁ、スぺちゃん、首ちゃんと洗って待っててよ。

次の秋シーズン、ちゃんとお返ししてあげるからねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、ライブすごかったなぁ、ウララ! この前のジャパンカップはブロワイエやグラスワンダーが出れなくて残念だったが、今回の有馬はすごかった!」

 

 

 

「……うん、そうだね、トレーナー。」

 

 

 

「……? どうかしたのか、ウララ?」

 

 

 

 

 

「ねぇ、トレーナー。私って来年の有馬記念で走れるかな?」

 

 

「有馬記念かぁ、ウララが来年もっと活躍できればファンの方がもっと増えて投票してくれるんじゃないかな? そしたら出走自体はできるだろうけど……、芝と長距離。ちょっとウララには厳しくないか?」

 

 

 

 

「…………そっか! ううん、大丈夫! ウララやれるよ! 」

 

 

 

「お~、そうか。なら今年は芝、長距離の練習を含めたメニューにしような。」

 

 

 

「うん!」

 

 

 






一応有馬記念はこれで終わりです。
次回はキングのちょっとしたこととスぺちゃんの帰郷ですかね。

よろしくお願いいたします。


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PART87


キングのセイウンスカイの呼び名を『スカイさん』に統一いたします。
教えてくださった方ありがとうございました。
また、間違っていたら教えてくださればありがたいです。


 

 

有馬記念、ライブあと

 

 

 

「二人とも、ライブお疲れ様! 今日はいつもより楽しく踊れた気がするよ!」

 

 

「お~、それはようござんしたなぁ、スぺ殿。……そういえばこの前有馬終わってすぐに帰郷するとか言ってなかったけ? そっちの準備は大丈夫なの?」

 

 

「…………あ、忘れてたぁ! ヤバイヤバイ、そういえば飛行機のチケットもう買ってもらってたんだった! ご、ごめん二人とも! 私もう帰るね!」

 

 

 

そう言って、慌てながらスぺさんは控室に戻っていった。

レース時の彼女と普段の彼女の差を解らされる天然というかおっちょこちょいというか、まぁどこか抜けている。それを見せられた。

 

 

「それで? わざわざスぺさんを帰らせて、何か言いたいことでもあったのですか、スカイさん?」

 

 

「ん~? 何のことかなぁ、キング~。私はただスぺちゃんに教えてあげただけだよぉ。」

 

 

 

……つれませんわね。まぁ普段の彼女らしいふるまいですし、もう心配する必要はないと遠回しに言っているのでしょうけど。まったくややこしいですわね、スカイさんは。

 

 

 

「あ、そうだ。キングにだけは言っておこうかな。」

 

 

「? なんですの?」

 

 

 

ライブ衣装のまま、こちらにスカイさんが顔を向ける。

先ほどまでのどこかふざけたような表情は消え去っている。

 

 

 

 

 

「私、日本を離れるんだ。」

 

 

「行先は、香港。トレーナーが気を利かせてくれたのか、香港三冠の道を用意してくれた。私はソレを取りに行く。三冠を、取りに行くんだ。」

 

 

「そうしたら、やっと少しだけ、スぺちゃんに並べる。」

 

 

「あっちで、いろんな人と勝負して、経験を積んで、新しい世界を知って、今よりも何倍も強くなる。必ず強くなって帰ってくる。………それで、スぺちゃんともう一度勝負して、必ず勝つ。」

 

 

「キングにだけ言うのは、お礼と、誓い。キングが私のこと励ましてくれなかったら私は行かなかった。この国に留まって、何もできずに、ただそこにいるだけ。何も為せなかった。それを、止めてくれたお礼。それと必ず三冠ウマ娘になって帰ってくるっていう誓い。」

 

 

 

 

正面から見るのは、初めてかもしれない。彼女の真剣な顔。

 

そう、ですか。あなたは世界に飛び立つのですね。

 

 

 

「……なるほど。そうやって、このキングの前で勝利宣言というわけですか。自分は香港に行って強くなって帰ってきた後にしっかりとスぺさんにリベンジを果たしにくる。だからこのキングは短距離、国内で小さくまとまっておけばいい、そう言いたいのですね、あなたは。」

 

 

 

彼女は大きな目標を持ち、そしてまだ勝利を諦めてない。

 

そのきっかけが私だったとしても。いや私だからこそ、そのきっかけを作った私自身が諦めるわけにはいかない。

 

 

トレーナーのためにGⅠを勝利する、世代の頂点にいるスペシャルウィークに勝利する、

 

 

 

そして、彼女と同じように世界に挑戦する。全部やらなくちゃいけないのがキングのつらい所よね。

 

 

 

 

 

 

ま、望むところですが!

 

 

「いいでしょう! あなたが世界に飛び立つというのに私が国内で止まってしまうのはキングの名に恥じる! あなたが香港三冠というのなら私はグローバルSCをいただきましょう! バクシンオー先輩が達成した偉業! 同じ王なら、このキングができないはずはない! そして、あなたよりも速く、キングらしい戦い方、勝ち方でスぺさんにリベンジを果たしましょう!」

 

 

 

「……あは、あははは! そう! そうだよね! キングならそうでなくちゃ!」

 

 

 

 

 

 

「じゃ、どっちが速くスぺちゃんに勝つか、『勝負』、だね。」

 

 

「えぇ! 望むところです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけでトレーナー! 出走登録と飛行機の用意をお願い致します!」

 

 

「おいおい、急だなぁ。……ま、負けてうじうじしてるよりもよっぽどいいけどな。おっしゃ! そうと決まれば早速用意するぞ、短距離の公式レースこなしながら世界の強豪たちに野良の中長距離勝負を仕掛けて成長する! これほど面白そうな話はない! トレーナー冥利に尽きるってやつだ! ついでに春秋スプリントももらっていくぞ!」

 

 

「では!」

 

 

「あぁ! 初戦はオーストラリアだ! 早く荷物纏めてきな! 今日の便であっちについて早めに練習の予約取り付けるぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

「ふぃ~、何とか間に合ったぁ~。」

 

 

 

いや~、ごめんね。出来るだけ早く帰れた方がいいかなって思ってギリギリの時間で予約取っちゃって。

 

 

 

「ううん、いいの。とってもらってたこと忘れてた私が悪いんだし。」

 

 

 

うむ、確かに全く用意してなかったとは知らなんだ。ライブ終わった後全速力で帰っていくもんだから周りの人ビックリしてたもんねぇ。寮長のフジキセキさんとか、『さっき帰ってきたばかりなのにもう行くの!?』って顔してたよ。

 

 

「あは、あはは……。」

 

 

ちゃんとお土産買って帰りましょうね。もちろんいつもお世話になってるみんなの分も、だよ。

 

 

「は~い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、後は私がどれだけできるか、だね。

 

 

 

 

 

 




と、いうわけでスぺちゃんのクラシック期はこれでおしまいです。スぺちゃんがお姉ちゃん&お母ちゃん病院に無自覚の間に隔離されているときにキングとスカイは世界に飛び立ちます。

次回からはまたゆっくりとですがシニア期に移っていきます。クラシック期がスぺちゃんの異常なほどの強さを見せつける時期だったと考えれば、次のシニア期はその異常さに追いついてきた同世代と前の世代を形作り、スぺの異常さを見せつけられその対策をしてきた先輩方との対戦になります。簡単に言ってしまえば異次元VS異次元です。超能力バトルといってもいいかもしれません。たぶん常人が見たら「なにこれぇ?」としか言えないようなレースになると思います。やっぱりこの世界モブに厳しすぎるンゴ


そんなわけで今回皆様のご意見を頂きたいことがございまして、誰をどのレースに出走させるかということです。
今現在確定しているのは


大阪杯 【トウカイテイオー】【エルコンドルパサー】

天皇賞春 【メジロマックイーン】【ライスシャワー】

宝塚記念 【グラスワンダー】


KGVI & QES 【???】

凱旋門賞 【???】【???】


天皇賞秋 【サイレンススズカ】

ジャパンカップ 

有馬記念 【ALL STAR】



という感じですが、まだどのレースに出走させるか決まってないターボやネイチャ。海外に行ったまままだ帰ってきてないブルボン。作者に存在を完全に忘れ去られているオペラオーにドトウ。ちょっとだけしか出てないマヤノといった同世代組。

名前出したけどレースさせてないアイネスフウジンにエアグルーヴ、マチカネフクキタル、あとオグリキャップ(ドリーム行き、でも確定ではない)などもいます。


他にも作者が忘れてしまっている方が多くいるかもしれません。


ので、皆様にこのレースにこの子だして! という形で希望を教えていただきたく、投票企画を勝手に開催いたします。

投票方法といたしましては新しくご用意いたします活動報告の方に

【出してほしいキャラ・出した方がいいキャラ】【レース名】

を書いてコメントしてください。もちろん上に一度書いたキャラを他のレースに出してほしい! ってのもありです。【トウカイテイオー】を【天皇賞春】にもう一度! とかもありなわけですね。あと一人に付き何人まで、何レースまでとかもないです。好きなだけ書き込んでください。よろしければ一レースに付き18人選んでもらっても大丈夫です。

勿論ですがすべてのご意見を採用できないのもご理解ください。増えすぎると作者が死にますし、時代背景(あってないようなもの)や物語の進行上出てこないキャラを出されても対応できないのであしからず。


では、たくさんのご意見お待ちしておりますね。締め切り、というのは特にありませんができるだけ早めにいただければありがたいです。


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PART88

 

一面の銀世界。雪だらけの地元。地平線まで続く、真っ白な世界。

 

 

 

 

 

「うわぁ~~、なんかすっごい久しぶりな気がする! けど……」

 

 

……いやね、うん。まぁこの雪まみれの時期にわざわざ帰省するのか、ていうね。

 

 

「……だよね。レースがあって雪が降る時期を避けられなかった、って言うのは解るけど。なんでわざわざこの時期なのかっていう。」

 

 

まぁ実際見たことないとしゃあないのはあると思いますけどね。トレーナーさんもご厚意で言ってくださったからあんまり文句言っちゃだめですよ。

 

 

「は~い。」

 

 

にしても、どうしましょ? 飛行機と電車が止まらなかったのはいいですけど、駅からどうやって帰りましょうか。実家結構奥地ですし、タクシーでも拾います?

 

 

「ううん、お母ちゃんが迎えに来てくれるみたいだから大丈夫だと思う、さっきメール来てた。」

 

 

ま、そりゃそうか。んじゃあの軽トラでしょうから荷物どう運ぶか気にする心配もなし、気長に待ちましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、あれ家の車じゃない?

 

 

「あ、ホントだ。お母ちゃん~~! こっちこっち~~!」

 

 

んじゃ、スぺ。私はいつも通り静かにしてるから……、私のことは最後まで言っちゃだめだからね。

 

 

 

 

「…………うん。」

 

 

 

 

 

 

 

一瞬、顔が曇りそうになる。

 

でもせっかくの帰郷、久しぶりのお母ちゃんとの再会なんだ。

 

私が失敗してしまった時のことも考えて、変な期待をさせてしまうわけにはいけない。

 

 

 

大丈夫、6年間出来たんだ。今回はそれよりももっと短い。いつも通り、無邪気なままで。

 

 

 

 

 

車が止まり、窓が開く。

 

 

「おぉ!? そこにいるのは今朝のテレビに出てたスペシャルウィークさんじゃありませんか? どうです、オンボロですけど乗っていきますかい?」

 

 

「もぉ~~! なにそれ、お母ちゃん!」

 

 

「あはは! 冗談、冗談! 変に辛気臭い顔してたからついね! ほら、もうちょっとしたらまた降り始めるみたいだし、さっさと乗っちゃいな!」

 

 

「は~い!」

 

 

 

いつの間にか荷台に乗り込んでるお姉ちゃんの横に自身の荷物を置き、助手席のドアを開ける。

 

そういえば昔はお姉ちゃんの膝の上にのせてもらってたっけ。

 

 

 

「それじゃ、出発しま~す! …………それと、スぺ。」

 

 

「ん? なあに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい。よく、頑張ったね。」

 

 

 

 

「………うん、ただいま、お母ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「お母ちゃん~~! 屋根の雪かきしてくるね~~~!」

 

 

 

「は~い! 落ちないように気を付けるんだよ~~!」

 

 

 

 

 

 

 

スぺが帰ってきた。

 

 

彼女のトレーナーさんから頂いたお手紙、何故かこの前スぺと遊びに来てた葦毛の子が届けに来てくれたがその内容はスぺを休ませることだった。

 

何でもレースで結果を出すために、ケガをしないギリギリの練習をし続けているみたいで、いくら体の丈夫なスぺでもこれ以上続ければ体を壊してしまう可能性があったらしい。

 

来年、今はもう今年だが、スぺの意向に乗っ取った出走をする場合休みを取れる期間があまりにも少ないらしく、彼女の意向をくむためにも、この期間にできるだけ体を休ませてほしい、とのことだ。

 

今スぺがしに行った雪かきも、私が昨日一度やってしまったし、昨日の夜もそこまで雪は降らなかったので大した量ではない。変に体を動かさないのもスぺにとってストレスになるだろうから行かせた。

 

 

 

………正直、もっと我儘言って無理にでも走ろうとするんじゃないかって思ってた。小さいころから変に自分を追い込む子だったからてっきり家に着いたらすぐに走り出すかと思ってた。

 

そのためにスぺを家に縛り付けておくための紐も用意しておいたんだけど……、変に聞き分けがいい。『レースと練習続きで疲れてるだろうし、家にいる間は走らずにゆっくりしてな』、そういうと元気な返事一つ。それからずっと走りに行ってない。止めているはずの私が不安になるくらい、家でじっとしている。

 

 

 

 

 

それで、もっと心配なのは、スぺがずっと昔の写真を、アルバムを見ていること。

 

 

私もだけど、まだあの時間に縛り付けられている。

 

 

この家に、もう一人いた時間から誰も、決別できてない。

 

 

 

 

 

 

彼女が事故で私たちの前から消えてしまった時、スぺは狂う直前までいった、

 

いやもう狂ってしまっているのかもしれない。

 

 

昔から、お姉ちゃんっこだった。唯一の血がつながった家族だったからかもしれない。

 

年が離れていたこともあって、もう一人の母親として見ていたのもあるのだろう。

 

 

それが、自分の目の前で死んでしまったのだ。狂うのも、仕方のなかったことなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

その時、私が彼女を抱きしめられれば良かった、まだ私が隣にいることをちゃんと教えて上げられれば良かった。

 

私に頼ってくれ、私にその苦しみ、その悲しみを分けてくれ、そう言えればよかった。

 

 

 

 

 

でも、出来なかった。

 

 

あいつから託された二人、スぺが生まれたとき、キャンディは小さいながらも大人びていた。

 

 

私が母親として失敗してしまった時、すぐに私に寄り添ってくれた。

 

私が不安に押しつぶされそうなとき、横に彼女がいた。

 

私が困ったときに、すぐに私を助けようとしてくれたのが、キャンディだった。

 

 

 

あいつをなくしてしまった私は、無自覚の内に彼女を新しい拠り所にしてしまっていたのかもしれない。

 

母親として、早く一人前になるべきだったのに。

 

 

 

 

そのせいで、頼れる人を二度も失ってしまった私は、余裕がなかった。

 

スぺのことを気にすることもできず、ただ自分が壊れないようにするのに精いっぱいだった。

 

 

 

 

 

そのせいで、気づいた時にはもう遅かった。

 

キャンディのお葬式が終わり、何とか一息付けたとき、自分にやっと余裕ができた時。

 

 

 

愚かにも私は、やっとスぺの顔をちゃんと見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……何もなかった。

 

 

スぺの顔には、何もなかった。

 

これまで見せてくれていた、小さい時からずっと見せてくれていた感情。そのすべてがスぺの顔から抜け落ちていた。 ……何も、なかった。

 

 

 

私は愚かだった。

 

 

その時、私は、自分のしでかしてしまったことに後悔した、錯乱した、してしまった。

 

 

とりあえず、何とか母親として取り繕ろうとした。

 

体が覚えている動作に身を任せてしまった。

何か動いていれば余計なことは考えずにすむ。イヤなことからは目を背けられる。

 

 

 

背けて、しまった。

 

 

 

 

その日、私が用意してしまった夕食は三人分。

 

 

私と、スぺと。 あともう一人。

 

 

今は、もう、必要がなくなってしまったもの。

 

 

 

 

 

 

 

あの時、食卓に並んだものを見たスぺの顔。

 

気が付いた時にはもう遅かった。

 

 

 

 

 

あの時、あの表情。

 

スぺが、それを見てした顔が、忘れたくても忘れられない。

 

 

 

残ってしまったもう一人の食事は、すべて、スぺが食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スぺの過食が始まったのは、その時からだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、もう8年にもなる。

私たちはまだ、過去に縛られている。

 

スぺがどう思っているかは解らない。でも私がこの状況から変化できないのは単に怖いから。

 

今、狂わずにいられているスぺに、変化をもたらしてしまえばどうなるかわからない。

 

 

 

 

それが、どうしようもなく、怖い。

 

 

 

 

 

この家には過去を思い返すものしかない。

 

スぺはまだ、姉の死を、受け入れてない。

 

 

 

 

 

 

けど、今になってそれが起きようとしている。

 

 

私の目線はスぺがこの家に帰ってくる前日に届いた荷物に移る。

 

宛名は、『オースミキャンディ』

 

 

 

なぜ、今になって彼女宛に荷物が届くのか。

 

 

怖くなって、私がその荷物を開けることはできなかった。

 

 

何か、全部を壊してしまう気がして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

トレセン学園 服飾課

 

 

 

 

言わずと知れたトレセン学園縁の下の力持ち、勝負服は勿論生徒の制服や体操服、ジャージなどの販売、制作を取り扱う場所だが……、今日はいつもより煩そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふふふふ、出来た! 出来たぞ~~~~!!!」

 

 

 

 

 

 

「……ねぇねぇ、さっきから先輩笑い続けてますけど、アレ、大丈夫なんですか?」

 

 

「あぁ、アレね。うんたぶん大丈夫。ほら、あのスペシャルウィークちゃんの勝負服の申請来てたでしょ。あいつ担当してたんだからできたんじゃない?」

 

 

「いや、まぁそうなんでしょうけどあの人確か三日前から帰ってなくないですか? もしかして、三徹?」

 

 

 

 

 

 

さっきからなんか同僚が言ってる気がするが、そんなもの細事ィ! この私、一世一代の大仕事、スペシャルウィークちゃんの勝負服改造が終わった後にはそんなものどうでもよいのだ!

 

 

正直眠いのでさっさと寝たいのだがそうはいかない。こいつをあのクソッタレなURAに送って勝負服申請し直さないといけない。ホントにあいつらアタシらの創作意欲をぶっ壊しやがって! なんで勝負服にウエディングドレスや水着がいけないんだ! 絶対かわいいだろJK!

 

 

 

 

「………さっさとしますか。」

 

 

 

 

脳内で思いっきり叫んでたことを深夜テンション、いや徹夜しすぎておかしくなっていたと断定し作業を進める。有馬後に資料として送ってもらってたやつはそのまま洗って帰すとして、わざわざ一から作り直したこいつはURAに申請届と一緒に提出。

 

あ、そういえば確か北海道の実家に送って欲しい、って申請書に書いてあったよね。前回は本人が届け出を出しに来てたけど、今回は何故かカウンターに置いてあっただけらしい……、担当の奴が席外してたんかな?

 

んで、うちらの申請書には……、北海道の日高に、宛名は……オースミキャンディ? って書けばいいのか? 親族なんかね? まぁ申請書に書いてありますし、URAの認可が下りた後はそのままそっちに送ってもらえるように配慮しておきますか。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

スぺが雪かきした後の屋根に寝転がり、空を見つめる。

真昼間のキレイな空。前からこれが好きだった。

 

 

スぺには届いているであろう荷物をお母ちゃんと開けるように言いつけている。

 

中身はお母ちゃんには手紙、スぺにはちょっとしたプレゼント。

 

 

開封の時に横にいるのもちょっと恥ずかしいし、スぺの雪かきが終わった後、彼女を家の中に戻して、今は屋根に私一人だけ。

 

「ま、いつも通り褒められたことじゃないだろうけど、そろそろ、ね。」

 

 

「最終的にどうなるかなんて誰も解らないんだ。やるなら自由に動ける今のうち。…………それに、いつまでも自分に縛られている家族を見るのって、結構しんどいんだよ、お母ちゃん。」

 

 

「今はきついだろうけど、その先はきっといいはずだから。」

 

 

「だからちゃんと、スぺを受け入れてあげてね。」

 

 

 

 

スぺと私のお休みは一週間。

 

特別な一週間《スペシャルウィーク》。ちょっと変かもしれないけど、まぁ私ですし。

 

いいものにしないとね、スぺ。

 

 



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PART89


スぺちゃ一家!

スぺ→姉
 とっても頼りになるお姉ちゃん! 心の支え
スぺ→母
 やさしいお母ちゃん! 支えてくれる人で安心できる場所を作ってくれる。だから私も頑張らないと

姉→スぺ
 もっと自由にしてほしい、あとそろそろ周りをよく見てもろて
姉→母
 私のことに区切り付けてほしい、大樹のような優しい母

母→スぺ
 姉の亡霊に憑りつかれている(事実)、私がもっとしっかりしないと
母→姉
 スぺたちの生みの母が死んでからの心の支えだった、もっと母親らしく出来ていたはずなのに


スぺ
「荷物届いてるの! 中身なんだろ?」(ずっと姉といたせいで宛名が姉になってることを疑問に思わない)

「プレゼントとお手紙用意しました!」(死んでからもずっと家族のそばにいるため自分の異常性を忘れていた)

「(錯乱中)」(死んだはずのキャンディに荷物が届いた、怖くて開けられない)



 

「えっと、確か荷物届いてるからそれをお母ちゃんと一緒に開けるんだよね。」

 

 

朝、昨日の夜少しだけ屋根に積もった雪を下すのを口実にお姉ちゃんとおしゃべり。あ、もちろん仕事はちゃんとした。それで、雪かき終わった後に「あ、スぺ。たぶんもう荷物届いているだろうからお母ちゃんと開けておいで」と言われたので道具とかを元のところに戻して家の中に戻る。

 

 

「にしてもやっぱり外は寒いなぁ……、えっと。」

 

 

居間の端の方に置いてある大き目の段ボール箱、宛名はオースミキャンディで……、送ってきたのはURA? 中身なんだろ。

 

あ、そうだお母ちゃんと開けないと。今はちょうど……、あれ? 私のこと見てる。

 

 

 

 

「…………スぺ、それ…………。」

 

 

「あ、お母ちゃん! これ開けていい?」

 

 

「……………いいの?」

 

 

「? うん。」

 

 

 

 

なぜか、不安そうな顔をしているお母ちゃんを不思議に思いながら机の上までダンボールを運ぶ。思っていたよりもちょとだけ重め。封をしているガムテープをはがし、中身を開ける。

 

 

 

 

中身は一通の手紙と私の勝負服だった。

 

 

 

「手紙は……、お母ちゃん宛だね! はい、お母ちゃん!」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

震える手で、何とか受け取った手紙。

 

宛名は私に、裏面を見て、差出人はオースミキャンディ。

 

 

 

何の特徴もない真っ白な封筒があの子を送り出した時の面布を思い出させる。

 

動揺し、ひどい顔になっているであろう私の顔は箱に入っていた勝負服の方に目を取られているスぺには気が付かれていない。

 

私は出来る限り心を保とうとしながら封を、開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 『お母ちゃんへ

 

スぺのおかげで私の意思である程度動けるようになったので手紙を送ります。

 

最初にこんなことを書いてしまうのはあまりよくないと思いますが、

 

親より先に死んでしまってごめんなさい。

 

二人を置いて行ってしまって本当にごめんなさい。

 

今、私はスぺの守護霊のようなものになっています。

 

スぺのそばに居始めたのは彼女が7歳ぐらいのころですが

 

こんな状態にした方々との契約のせいで私の意思で何かすることができず

 

連絡が遅れてしまいごめんなさい。

 

 

    ………

 

 

 

筆跡は、彼女のものだった。

 

私が知らない他人の文字じゃない。スぺの文字でもない。

 

 

「スぺ、これ……」

 

 

「わぁ! お母ちゃん見て見て! これ新しい勝負服!」

 

 

 

 

 

……そっか。

 

 

昔から、キャンディが亡くなってから虚空に向かって話すことが増えたスぺ。そのことを聞いても絶対に口を利かなかった、他の話題を持ってきて話を変えようとする。今も、私から何かを隠すために勝負服の話を持ち出そうとしている。

 

 

……解るんだよ、スぺ。いくら私があなたの肉親じゃないとしても、あなたが自分で立ち上がるのをずっと横で見てた。私が何とか平静を保つのに必死で、ホントならあなたのそばに居てあげないといけなかったのに。それでもあなたは一人で立ち直った。いなくなってしまったキャンディの穴を埋めるように、自分一人で二人を表すように、……私を励ますために。

 

 

解るんだ。無理をしてるって。

 

 

 

「……スぺ。こっちにおいで。」

 

 

「? どうしたのお母ちゃん?」

 

 

 

首をかしげるスぺを抱き寄せ、体温を分けあう。

 

 

 

 

「今まで、よく頑張ったね。……もう、一人で抱え込まなくていいんだよ。私もついてる。」

 

 

「………うん。」

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

スぺが眠った後の深夜。

 

 

 

「本っ当に! 私がどれだけ心配したか!」

 

『いや、本当に申し訳ないです。』

 

 

 

ぼんやりとしたあかりの中に、虚空に向かって話す女性と、意思を持って動くボールペンがあった。

 

 

 

『にしてもお母ちゃん、あんまり飲み過ぎたらだめだよ。今の私じゃこれみたいなものには触れるけど人にはスぺ以外無理なんだから。』

 

 

「変な制約課してくれたもんだねぇ、えぇ! あと祝い酒みたいなもんだよ! 元々そんなに飲まないんだし今日ぐらいいいだろ。」

 

 

『ま、そうだね。にしてもわざわざ私の分注がなくていいんだよ。』

 

 

「ばか、アイツとキャンディの分。注がなくてどうするの! もう二十歳超えてんだから怒られないし大丈夫、大丈夫!」

 

 

 

聞こえないはずの二人目の笑い声が静かに響く。

 

 

 

 

 

 

 

「……アイツがスぺを生んだ後、死んでしまった時。キャンディはまだ小さいのに私のこと支えてくれたよね。」

 

 

 

唯一無二と言ってもいい親友を失ってしまった私。友の子を育てないといけない不安。子育てなんてしたことが無かったし、アイツから任された子は二人。まだ赤ん坊だったスぺに、小学生になったばかりのキャンディ。

 

 

不安だった。

 

 

自分がこの子たちの可能性を狭めてしまうんじゃないか。

 

この子たちの成長を私が止めてしまうんじゃないか。

 

スぺは自分の本当の親を知らない。キャンディはまだ小さいのに親を失ってしまう。

 

 

私が彼女たちの母と親しかったとしても私は他人。

 

母代わりになれるか心配だった。

 

 

 

「キャンディは……、泣かなかったよね。」

 

 

『……薄情な娘だと思いました?』

 

 

「ううん、強い子だなぁ、って。私なんか必要ないぐらいに。」

 

 

 

 

アイツの葬式の時、キャンディは泣いてなかった。

 

歯を食いしばり、手を握りしめ。涙を流さないようにしていた。

 

……自分がこれから姉になること。新しい生活を始めないといけないこと。

 

それを理解していた。

 

 

「私、ずっ~と助けてもらってたよね。……キャンディはワガママ言わないし、仕事も自分から手伝ってくれたし、スぺのことでどうしたらいいか解らなかった私を支えてくれた。ホントダメな母親だよ……、スぺのことも私は解ってたのに助けてやれなかった……、スぺがキャンディの代わりになろうとしてると、一人で二人分のことをしようとしていると思うと……、それを指摘してしまえばスぺが壊れてしまうような気がして……、怖かった。」

 

 

『……お母ちゃんがいなければ、私たち二人ともここまで来れてないよ。スぺが私という亡霊に憑りつかれても、まだ普通でいられたのはお母ちゃんのおかげ。繋ぎとめてくれたのはお母ちゃんだよ。』

 

 

「……ありがとう。」

 

 

 

 

 

なぁ、親友。私はちゃんと母親やれてるかい?

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ! じめじめ終わり! もう夜も遅いし、ウチの大食らいが控えてるんだ! さっさと寝て朝ごはん作るために頑張らないとね!」

 

 

『アハハ……、もうちょっと抑えてくれればいいんだけどね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理しすぎないようにちゃんと見張ってるんだよ。」

 

 

『うん。』

 

 

「私は、もう大丈夫だから。……背負わせて、くれるかい?」

 

 

『うん。……ありがと。』

 

 

 





お久しぶりです。

本日から隔日で三話投降します。

お付き合いくださいませ。

次話は12日の正午に投稿いたします。


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PART90

 

 

うん、お母ちゃんもスぺも寝てるね。

 

 

……今のうちにやっときますか。

 

 

 

 

そんなことを思いながら家の壁を通り抜けて外に出る私。死んでから色々面倒なこと、まぁ死んだから仕方ないんだけど色々あった。スぺのおかげでジャパンC勝ったあたりからちょっとものに干渉できるようにはなったんだけどね。まだまだできないことが多い。

 

 

「まぁわざわざ玄関通らずに外に出たり、このさっむい景色を見ても体は全く冷えないのはいいことかもしれんねぇ……。」

 

 

東京みたいに私たち人間がそこにいることを表す光は全くない、光源は空に上がる星々のみ。満天の空、星のシャワーとはこういうのを言うのかな。昔はこの空に何も思わなかったけど、府中で夜空を見上げても見える星がほとんどないことに驚いたなぁ。そのせいでさらにきれいに見えるや。

 

 

「そういえばあの時はまだ意思疎通するのにも“動画撮影”って名目がなきゃできなかったんだっけ。」

 

 

ほっんと。余計なことしてるよねぇ、女神サマ方は。

 

 

「……ま、こちとら思いっきり楽しませてやるからせめてスぺの幸せぐらいはちゃんと約束してくれよな。」

 

 

 

 

 

 

 

さ、休憩はこのぐらいにして、私も仕事始めますか!

 

 

一回全部見返して、私たちが進むべき道を見直す。何にも残してあげられなかったんだから死んだあとぐらいしゃかりきで働かねば、ね!

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

みなさま~~~!!!!(天上天下唯我独尊)

 

 

 

 

おぃーす! ウマ娘実況プレイ投稿者のぽもですよー! ま、今まで名乗ったこと全くありませんけどね! つまりわたくし名無しのプレーヤーでごぜぇます。今後とも良しなに。

 

さてさて! この動画シリーズも結構長くなっちゃいましたし。なんだか無茶苦茶皆様ともお久しぃ気がするので、ここらへんでいったん最初から見返すと言いますか、復習タイムといたしましょうか! でも録画した日にちと今の日付見比べても全然差がないんですけどなんでこんなにお久な気が住んでしょ? コレガワカラナイ。

 

ま、そんなことは置いといて復習回です。わたくしこちらの据え置き版ウマ娘をやりこんだ猛者と自負しておりますが、まぁスぺちゃんが上振れといますか、こちらの思っていないレベルまで育ってしまったような気がいたしますし。個人的にもちゃんと見直してチャートを組みなおすことがこれからの育成に役立つと判断したからなんですよね~。

 

ま、面倒な方だったり、ちょうどさっきまでこの実況を最初から見直していた、見ていてくださった方々は飛ばしてくだシャイン!

 

 

んじゃま! 早速PART1からPART89(よく見たら今回で90と区切りヨシですね。とりあえず100まで頑張りましょう)。内容がないよう、な回は飛ばしたりするんでつまみつまみとなりますけどそこらへんはよろしゅうおねげぇしますだ。べ、別に私のために今から全部見直してくれてもいいんだからね!

 

 

〇幼年期、トレセン入学まで

 

PART1はいわゆるリセマラ回。本動画の目的とか継承とか、その他もろもろを決めた回ですねぇ。ちなみに忘れた方用に乗せておくと、スぺちゃんの因子はシンボリルドルフとディープインパクトから頂いたものになってます。あ、もちろん厳選済みですよ?

 

んで、目標の方は<称号:無敵の総大将>を目指すものとなっております。結構コメントで勘違いしてる方が多かったんですけど別に偉大なる始祖に倣ってRTAしてるわけじゃ、ないです。称号目指して最強のスぺちゃんを作ってしまおう! という感じですねぇ。

 

ちな、達成すべき目標は『凱旋門賞を含めた公式レースすべてにおいて敗北しないこと』というモノになっております。一応アプリ版でも存在していた称号、<称号:日本の総大将>の獲得条件を満たしたうえで芝の最高峰レース、凱旋門賞を勝つことが目標なんですけどまぁ些細なことなんで無視しちゃいますねぇ。

 

 

そしてここはリセマラの場面。ちょうどここでわたくしが死んだ目しながらリセットを繰り返しているところですねぇ……。

 

 

277回目

個性:[愛嬌][練習好き][鉄人][大食漢]

 

 

ま、この個性にも色々あるんですけどまぁ単語だけで色々解るんで説明は省きますね。しかし[大食漢]だけは許しません。スぺちゃんのお腹をキョダイマックスにした罪は重い! 打ち首にしてしまえぇ!

 

そんなこんなで色々決まり、実況スタートとなるわけです。ここでロリロリしたスぺちゃんに脳殺された方も結構いらっしゃると思いますが私は尊死で済みました。

 

小学一年生から始まったわけですけど……、まぁ最初の方は睡魔との戦いでしたね。彼女の個性の関係上たくさん食べてしまいますし、今後のことを考えると小さい時から練習するのは必須でした。そのため晩御飯の後ぐらいの時刻になると、疲れて眠いわ、お腹いっぱいで眠いわの大騒ぎ。まぁ騒ぐ前に寝てしまうんで意味がないんですけど……。この感じは学年が上がるまで続きまして学外での勉強ができないという感じでした。

 

まぁそれも高学年になってくると体力もつき始め、トレーニングのために始めていたお家のお手伝いで疲れることも少なくなり、勉強がはかどるようになります。そしてありがたいことに学校の先生が参考書をくださりました。これのおかげで勉強道具が教科書だけだったスぺちゃんがトレセンの入学試験に受かりやすくなったんですねぇ。ほんとウマウマでっす。

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 

 

すらすらと言葉が出てくる。誰を楽しませるものでもないのに口から音が漏れていく。

 

 

解ってるんだ。全部私のせいだったことぐらい。

 

あの時そもそも私が死ななければスぺがおかしくなることなんてなかった。運命に抗っていれば、あの場私だけが生き残っていれば問題にはならなかった。スぺがおかしくなることなんてなかったんだ。

 

 

……でも私はそれが出来なかった。女神すらどうすることもできない運命に人間が抗ったところでどうにかなるとは思わない。そう思って全部引き受けてしまった。せめて私以外は生き残れるように、と。

 

あの日。私たちが過ごしていた日高のトレセン学園。

 

 

たしか寮の電気系統の故障が原因で発火、そこにいた全員が焼死するのが定められた運命だった。

 

それを変えてしまったのがいけなかったのかもしれない。

 

 

運命の強さ、強制力は関係性によって変わるらしい。後に日本を背負って戦うことになったスぺ。彼女の出生にはドラマがあった。彼女が生まれてから一週間しか生きられなかった母親。彼女が幼き頃に火災で死んでしまう姉。それを乗り越えて前に走り続ける。まるで物語の主人公のような存在。

 

 

だからこそ、私があの場で死ぬという運命は誰よりも強固で、覆すことができない決定事項。主人公のドラマを華やかにするための脇役。

 

別に、それがどうかしたわけじゃない。スぺのためならなんだってできる。命なんか惜しくない。私を生んでくれた母がそのすべてを託した妹なんだ。スぺの物語を彩るために死ねるのならこれほど素晴らしいことはない。そう思っていた。

 

 

あの時は地方のトレセンで同じ時間を過ごした同じ寮に住む仲間たちを死なせるのはイヤだったから。私たちの仲で一番死の運命が濃かったのが私だったから、それを全部引き受けて燃え盛る寮と一緒に消えるはずだった。

 

 

 

 

 

だけど、運命はよほど悲劇がお好きらしい。

 

 

 

 

 

私が死んでしまうその瞬間にまだ幼いスぺを居合わせるのはさすがにダメだ。そう思っていたはずなのに……、スぺは私の肌が『今日だ』と訴える日に来てしまった。

 

家に私がいないのが寂しくて、母に内緒で来てしまったのだ。

 

母に怒られないかと心配しながらも私に会えたことを喜ぶスぺ。あの時私はちゃんと笑いながら彼女の頭を撫でてやれただろうか。引きつっていなかっただろうか。

 

 

 

 

運命は彼女がそこにいることを望んだ。私がどんな手を使っても、スぺを家に帰すことはできなかった。無理だった。不可能だった。自身の手が無力だということにあれほどまで憎んだことはないだろう。

 

自身の不調に気が付いたスぺが私を心配して顔を覗き込んだ時、私はうまくごまかせたのだろうか。最後の時間、私はスぺに愛をあげることが出来たのだろうか。

 

 

 

 

 

時間はもう、巻き戻せない。

 

 

 

 

 

夜、同じ布団に入った私とスぺ。運命がただそこで焼け死ねと言っているようにあの場にいた全員が金縛りに遭う。しかし、スぺだけは違う。こんなところで死ぬべきじゃない。

 

あの時私が運命に抗えたのか、それともスぺが持つ生き残る運命がそうさせたのかは解らない。でも私が金縛りから抜け出したことは確かだった。

 

スぺを起こさないように片手で抱きかかえ、目が覚めながらも身動きが取れない同室の子をもう片方の腕で抱える。火が徐々に回り始めた校舎を何とか抜け出し、未だ夢の中にいるスぺに額にお別れのキス。校舎から抜け出したことがトリガーとなったのか何とか動けるようになった同室に妹を頼み、もう一度校舎へ。

 

 

 

 

それから、何とか全部の部屋を回り、全員を今にも焼け落ちそうな校舎から運び出すことが出来た。

 

最後の一人となってしまったあの子の肩を担ぎながらなんとか外へ出る。

 

 

 

……あとはすべてを引き受けて死ぬだけ。

 

 

 

そう、思った時。

 

 

 

 

 

スぺと、目が合ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引き返し、校舎と共に沈むぐらいはできたはずの体力が掻き消える。鳴り響いていたはずの心臓の音が聞こえなくなる。掠れ、倒れ逝く視界には泣きながら私の元に駆け寄るスぺ。

 

 

 

 

 

『ごめんね、スぺ。駄目なお姉ちゃんで。』

 

 

 

 

 

本当にごめんね、スぺ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私の魂は回収され、スぺの守護霊として傍にいることになる。ややこしいのは私が契約した女神とスぺが契約した女神が違うことだ。

 

 

ただスぺが笑って人生を歩めるように願ったのは私、契約したのは技の女神と呼ばれる存在。

 

 

おそらく私を生き返らせようと願ったスぺが契約した存在は力の女神と呼ばれるもの。

 

 

 

 

技が要求したのは彼女が楽しむこと。私が動画を撮るように命じられているのも彼女を楽しませるため。

 

 

力が要求したのはただ勝ち続けること。クラシック三冠、春秋シニア計六冠、凱旋門を含めた海外芝レースで二勝。そこに敗北は許されない。そしてもし負けたのなら私の存在は魂ごと消えてなくなる。

 

 

 

私がもっとスぺの心のために話しかけてあげることが出来ればよかったんだけど、力の方の契約のせいでまともに話すことができなかった。同格の技の方との契約のおかげで何とか動画を撮影するという体で会話を図るしかなかった。

 

 

 

 

 

ゆえに偏ってしまった。一人にしてしまった。

 

 

 

 

 

最初はまだよかった。スぺにとって他人には見えない私の存在を隠しながら生活することは普通だった。それが日常と化していた。

 

でもレースが始まってしまっては違う。一つ一つ勝利を重ねるごとに現実が見えてくる。勝てたけどまだ勝たないといけない。次も絶対に負けられない。元々取り繕うのがうまかったスぺだ。傍から見たらいつも通りだが心にどれだけの負担になっていたのかは考えられない。

 

最初の内は友人たちを気に掛けることもできた。不調に気が付いてスぺの元々の優しさが出ることもあった。でも皐月賞、ダービー、菊花賞。三冠をとってしまったことで心にさらなるおもりが増える。

 

次は何と戦って勝たなければいけないのか。元々心のうちにある負担に加え、周囲からの期待すら伸し掛かってくる。私自身同じ立場になったことはない、けれどその重圧は想像に難くない。

 

 

壊れそうなはずの心を私にすら隠して、いや私を心配させたくないからこそ隠して前に進む。

 

何かが崩れる音を耳にしながら。

 

 

 

そこに、ジャパンカップ。

 

 

 

スぺは一度敗北を幻視した。ゆえに本来彼女が持つべきではない血まみれの煤けた花、私が持っていた花が、彼女が持つべきではなかった花が咲いてしまう。

 

 

私が見せてしまったあの光景。

 

 

もう、限界だった。

 

 

 

三女神、といっても私と契約した技の方だが彼女もそう思ったらしい。『力の奴は昔から厳しすぎる、自分たちのせいで壊れるのは見たくない』と無理やり契約を一部変更。

 

私の体が物に、人に触れられるようになり。たとえスぺが負けたとしても私が消えてなくなることが無くなった。会話に自由が宿った。

 

壊れた心に甘い蜜。それしかなかったとはいえスぺにとって劇薬でしかなかった。

 

冷たいとはいえ私に触れることができる、自由に話すことができる。私がスぺの目の前で死んでしまったその瞬間からずっとこうしたかったと徐々に瞳の光がなくなっていくスぺの話、私はただそれを受け入れることしかできなかった。

 

 

使うべきではない手を使ったとしてもそれまで最強だった会長に勝ち、これまで渇望していたものの一部が手に入った妹は徐々におかしくなってしまったのかもしれない。

 

それまで何とか気に掛けることが出来ていた友の不調に気が付かず、開いた時間はすべて私との交流に。同室のスズカがいないことがそれに拍車をかけてしまった。

 

 

かといって、私はスぺを突き放すことはできない。

 

 

今のスぺは壊れた心を無理やり固めているだけの状態。もし私が突き放してしまったのならどうなるか解らない。

 

スぺは現状を望み、私は変化を恐れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、このままじゃ駄目なんだ。

 

スぺが走り切った後に何も残らない。

 

 

私が望むのは妹が立ち止まり、後ろを振り返ったときに誰かがいること。

 

決して背後に焼け野原は相応しくない。

 

 

 

 

 

お母ちゃんにも託された。

 

スぺの心を元に戻す。

 

 

 





次話は14日の正午に投稿いたします。

追記:申し訳ありません、正午に投稿が難しそうです。14日中には投稿いたします。


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PART91


遅れて申し訳ありません、お待たせいたしました。




 

 

 

 

「? どうしたのお姉ちゃん。今日は一日お休みにするってこの前言ってた気がするんだけど……?」

 

 

「いや、ちょっとやりたいことが出来てね、スぺ。」

 

 

 

昨日、雪が降っていたせいか辺り一面の銀世界。二人にとっては見慣れた白の世界。

 

帰省する時にはこの休みの間はまるっきりお休みにしてゆっくりすると予定していた。

 

 

 

(ほんとは隠れて練習するつもりだったけど……、うん! お姉ちゃんが見てくれるならそっちの方が何倍もいいや! えへへ、何をするのかなぁ?)

 

 

 

そんなことを思いながら体をほぐすスぺ。雪上用の蹄鉄に履き替え、いつでもトレーニングできるよう準備を整えながら姉の次の言葉を待つ。

 

 

「まぁ今も降ってたらお休みにする予定だったんだけどね? キレイに晴れてここまでキレイに積もったわけだからそりゃやるでしょ、ってわけで。」

 

 

「なるほど~。」

 

 

「それに目の前に真っ白なキャンパスがあったら自分色に染め上げたいでしょ? 昔やったみたいに飛び込んだりかまくら作ったりしよう! ……あ、それとも『雪だるまつくろぉ?』かい?」

 

 

「???」

 

 

 

最初の方はニコニコ顔だったスぺだったが、姉にネタを振られた時には首をかしげてきょとん顔。自分からそういったものに手を出していた姉とは違いスぺの時間はすべて自己と姉のために使われていた。それを理解しているはずの姉が伝わらない話題を出す。本調子、ではないのだろう。

 

 

 

「ありゃ、伝わらんか。……ま! 遊ぶ前にちょっとしたレースでもしようか。」

 

 

「レース?」

 

 

「そ! ココからあそこの木まで、タッチして先に帰ってきた方が勝ち。……久しぶりにかけっこしよう。」

 

 

そう言いながら踵でスタートの線を引くお姉ちゃん。

 

 

 

 

 

……え? 今レース? レースって言った!? お姉ちゃんと!?

 

 

 

「ほ! ほんと! ほんとにお姉ちゃんと一緒に!?」

 

 

「うむうむ。昔みたいにね~。」

 

 

「ホントにホント! ………ぅ、いやったッ~~!!!」

 

 

 

小さいころ一緒に走ったときと同じように! お姉ちゃんとまた走れるんだ! あのおっきくてやさしい背中をもう一度追いかけてもいいんだ! やった! やった!

 

 

 

「ほらほら、はしゃがない。走る前にジャージ汚れるぞ~。」

 

 

 

飛び跳ねて幼子のように喜びを顕わにするスぺ、それをたしなめる姉。脳裏に10年近く前の記憶、まだ自分が生きていた時の記憶、まだ小さかったスぺが同じように飛び跳ねていたのを思い出す。

 

 

(……解って、くれるだろうか。)

 

 

 

「んじゃ、待ちきれないみたいだし早速やるか! あ、もちろん全力勝負だぞ?」

 

 

「うん!」

 

 

「いいお返事。スタートは……、これでいいか。」

 

 

 

降り積もった雪の中に一つだけ突き出た木の枝。それを根本からぽきんと折る姉。昔ならできなかったこと、生きていたのならば簡単にできること。それが目の前でしてくれていることが酷くうれしい。

 

 

「この木の棒が落ちた時にスタートでいい、スぺ?」

 

 

「うん、大丈夫!」

 

 

「よし……、じゃあ並んだ並んだ!」

 

 

「はーい!」

 

 

喜びのせいか足が軽い、スキップしてるみたいになっちゃう。

 

 

いけないいけない。全力勝負、って言われたしちゃんとやらないと。

 

 

顔を振って、やる気を入れなおす。

 

 

 

私のことを見ていたらしい隣のお姉ちゃんから少し笑ったような気配、そしてすぐに空に投げられる棒。アレが地面に接した瞬間がスタートだ。

 

 

おちる少し前、ここ。

 

 

 

>【ゲートの支配者:改】発動。

 

 

 

ゲート全体に与えるプレッシャーを横にいるお姉ちゃんに。その分いつものレースと比べて一人に掛かる重圧は重いけど……、まぁ昔私がどれだけ頑張っても追いつけなかったお姉ちゃんだ。この技術を教えてくれたのもお姉ちゃんだしたぶん効かない。枝が落ちた瞬間に全力でとびださないと負けちゃう。

 

 

 

「…………ッ!」

 

 

 

ん? なにか聞こえた? でもッ!

 

 

枝が地面に落ちた瞬間、思い切り地面を蹴る。

 

 

目の前には…………、だれもいない。

 

 

 

「え……?」

 

 

 

思わず後ろを振り返る、そこには何故かお姉ちゃんの苦し気な顔。お姉ちゃんが私のプレッシャーになんか負けるはずがない。思わず姉の最期の瞬間が過って今にも地面に倒れそうな体を支えるため引き返そうと足を……

 

 

「……止まるなッ!!」

 

 

「で、でも!」

 

 

姉と目が合う、その顔は小さいころよく私の頭をなでながら笑いかけてくれた顔、最後の時に私にやさしく微笑んでくれた顔。そこには私が姉に抱ていたものとは微笑みのイメージと違い、初めて見たかもしれない憤怒の顔があった。

 

 

「スペシャルウィークが止まるなッ! お前はレースの途中に止まるのか! 横にいるのが私ってだけでお前は止まるのか! 違うだろッ!」

 

 

「……で、でも」

 

 

「走れッ!!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

私に怒られたせいか、後ろ髪を引かれるようにこちらを窺いながら走り出すスぺ。

 

 

そう、それでいい。

 

 

 

レースにはレースだけのこと。そこに私の復活だとかそういう余計なことは考える必要なんかない。必要なのは走ることへの楽しさ、他出走者との競い合い、そんな簡単なことだけでいい。

 

レース結果に、スぺの人生に、すでに終わった部外者が関わっていい理由にはならない。

 

 

 

震える足を何とか動かしながら私もやっと歩を進める。

 

 

 

 

あぁ、そうだ。スぺの中で多分昔小さいころに走ったときの結果と、ずっと私が彼女のトレーナー代わりをしていたせいで私自身の存在が変に大きくなっている。私がスぺのプレッシャーに耐えられなくて足が動かなかったのを理解できてない顔をしていたのもそのせい。

 

本格化が始まるどころかまだかなり幼い当時のスぺと、地方だけど学園に入った当時の私、速いのは勿論私だ。私が生きていたのならばどこかのタイミングで追い抜かれていただろうけどそれがなかったせいで、プラスして彼女を導いたせいで、スぺが追い付けないほど私が速いって勘違いしてるんだろう。

 

 

私なんか中央に行けたとしても一勝できるか怪しいもんだし、スぺのプレッシャーに耐えられなくてスタートすらまともにできない負け組みたいなもんだ。ただ姉ってだけで三冠馬に勝てるなんて、ね。

 

 

 

でも、意地はある。

 

 

私でもスペシャルウィークのお姉ちゃんなんだ。

 

 

妹のプレッシャーにつぶされて座り込むしかできないとかカッコ悪いことはできない。

 

 

 

私がスぺに今できるのはレースに必要のない感情や目的を持ち込まないこと、死んだ私の事なんか気にしなくてもいいこと、彼女が大きいと思っている私なんか大したことが無いことの三つを教えてあげるぐらい。そこから先はスぺが自分で気が付いて、友達たちとの関係をどうにかしていくしかない。

 

 

そして、最後に……

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

折り返し地点の木の下まで辿り着く、足は雪の上で走ったという理由だけじゃ収まらないほどに重い。でも走らないといけない。

 

 

聞こえる足音はすごく遠い。

 

 

 

心の中には不安で一杯。

 

 

小さいころ、あんなに速かったお姉ちゃん。あの時からずっと、それ以前も一緒にいてくれたお姉ちゃん。私が私であり続けることが出来たのも、ここまでこれたのも全部お姉ちゃんのおかげ。

 

 

 

でも、私の中でとっても大きい存在であるお姉ちゃんがなんで、なんで……。

 

 

 

 

酷く、冷静な私が語り掛ける。

 

 

 

最後に一緒に走ってもらった時からどれだけ時間が経ったと思っている。

 

あの時まだ自分は本格化どころかまだ未成熟だった。

 

いくら当時の姉が地方で強かったとしても今の私はなんだ?

 

三冠馬で、最強だったルドルフ会長にも勝って、これからの頂点を担う存在だろう?

 

昔どれだけ速かったとしてもすでにもう追い越している。

 

 

 

、と。

 

 

 

今だけは姉に褒められた自分の頭が憎らしい。こんなこと思い至るぐらいなら何も知らないバカなままでよかった。

 

 

自分自身の存在が、あれだけ大きかった姉の存在を否定しているようで、気が狂いそうになる。

 

 

もう、走りたくない。姉と今の自分の差を認めたくなくて足が止まりそうになる。

 

 

でも、お姉ちゃんは走ることを、最後まで戦い抜くことを求めてる。

 

 

 

 

……やらないといけない。

 

 

 

 

イヤな考えを振り払うためにはたき落とすように気を叩きつけ、スタート地点に向かって走り出す。視線は自然と姉の方向へ。位置は行きの半分をようやく超えられたぐらい。

 

 

あと、もう数秒すればお姉ちゃんとすれ違う。

 

 

少し離れたここからわかる程にお姉ちゃんは全力で走ってる。

 

 

全力で走ってるけど私より遅い。

 

 

 

イヤだ。

 

 

 

 

 

 

すれ違う瞬間、現実から逃げるために、目を瞑って、下を向いて、何も考えないようにして。

 

 

走るために、勝つために。結果を決めなければならないから、もう一度足を踏み出そうとした時。

 

 

 

足の感触が変わる。

 

 

雪上から、芝の感触に。

 

 

 

「え……」

 

 

 

思わず目を開ける、目線は足元。そこにあるのはさっきまであったはずの雪じゃなくて芝生。それにここは……

 

 

「『領域』の時の丘……」

 

 

レースの時、集中して自分の中に入り込む時。その時に行き着く場所に私はいた。

 

 

空を見上げれば真っ暗で、故郷の夜空がそこにある。

 

後ろを振り向けば丘のてっぺんに立つ大きな木。

 

隣にいたはずのお姉ちゃんはそこにおらず、私だけ真っ黒な世界に一人。

 

 

 

「スぺ。」

 

 

「…………お姉ちゃん。」

 

 

後ろから声が聞こえて、振り返ればお姉ちゃんがそこにいた。

 

走れって私を起こったときの顔や苦しそうな顔じゃなくていつものお姉ちゃん。微笑んでる顔。

 

 

 

「おいで?」

 

 

「……うん。」

 

 

 

姉の手が広げられ、私はそこに収まる。

やさしく背中に手が当てられて、抱きしめてくれた。

 

 

 

「私、弱いでしょ?」

 

 

「……ううん。」

 

 

「ほ~んとは全く強くもないのにスぺにあれこれ言ってたの。失望した?」

 

 

「……してないよ。」

 

 

「……やさしいね。」

 

 

「やさしくない……。」

 

 

「はは、ワガママさんだなぁ……。」

 

 

 

 

離れてほしくなくて、私もぎゅっと抱き締める。ちょっとだけの静寂。

 

 

 

 

「スぺにはね? 何もイヤなこと考えないで走って欲しんだ。死んだ私の事なんか気にしないで、今を生きてる友達とか先輩と一緒に楽しく生きてほしい。スぺはあんまり関わりを持たなかったけどこれから後輩もたくさんできるし、頼れる先輩としても生きてほしい。」

 

 

「……やだ。」

 

 

「私や、私たちを生んでくれたお母ちゃんも終わった存在。死んじゃった存在。スぺはそれを覆そうとしてくれてるけど……、私がそれをホントに望んでるわけじゃないのはわかる?」

 

 

「……うん。」

 

 

 

少し、姉が笑いながら頭をなでてくれる。生まれて物心ついた時には私の生みのお母ちゃんはいなかった。血の繋がった人はお姉ちゃんだけだった。育てのお母ちゃんもとっても良くしてくれたし、私のお母ちゃんだけど、何故か姉に母のぬくもりを求めていた。

 

 

 

「私も生んでくれたお母ちゃんとしっかりお話したわけじゃないからちゃんとしたことは解らないけどたぶん同じこと言うと思うよ? 私だってズルして一緒にいてるけど乗り越えてほしかったことだった。スぺが頑張ってくれたおかげで、こうやって抱きしめてあげることができるようになったけど……」

 

 

「……うん。」

 

 

「もし私が生き返れたとしてもスぺの周りに友達も誰もいないとか、スぺがずっと独りぼっちだとか、そういうのは駄目なの。」

 

 

「…………。」

 

 

「私のことを考えてくれるのは嬉しいけど、周りのみんな、心配してくれる人、たくさんいる。みんなスぺの事考えてくれてる。……お返しとごめんなさい、しないとね?」

 

 

「……うん。」

 

 

「いいお返事。……さ! じゃあ最後にスぺにはいらないもの引き受けないとね!」

 

 

 

お姉ちゃんがそういった瞬間、私の背後に何かが浮き出てくる。

 

 

足元を茂っていた芝はすべて血を思いださせるほど真っ赤なサルビアに変わり、空からは灰が落ちている。さっきまで大きな木があったところにはあの時焼け落ちたお姉ちゃんたちが暮らしていた寮がそこにあった。

 

 

「この灰と炎にまみれた世界はスぺにはふさわしくない。」

 

 

「それに元々サルビアは私のもの。」

 

 

「赤い血は相応しくない。」

 

 

 

抱き締められていた腕が離される。

 

 

焼け落ちる景色を私に見せないように前に立つお姉ちゃん。

 

 

 

「せっかくいつも一緒に居るんだ。」

 

 

「嫌な記憶、嫌な思い、全部私に任せてスぺは前を向く。」

 

 

あの時、最後にしてくれたみたいに額に唇を合わせて、スぺを前に向かせる。背中合わせだ。

 

 

「スぺ! 目標は!」

 

 

 

 

私を生き返らせることから、もっと前の目標へ。

 

 

それは母の最期の願いでもある。

 

 

同じように死した人への願いだけれども。

 

 

それは私たちの誓い。

 

 

故郷を飛び出た時に宣言した誓い。

 

 

 

 

「日本一の……、ううん! 世界一のウマ娘になること!」

 

 

 

 

流れ星が、背後に落ちる。

 

輝くのは彼女だけでいい。

 

 

私はこの景色を、炎を全部引き受けて。

 

燃える赤いサルビアから、私の愛を込めた白のサルビアへ。

 

 

 

さぁ、私を超えていけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>【シューティングスター】Lv.4→Lv.5

 

>【灰かぶりサルビア】→【あなたのための白いサルビア】

 

>条件を満たしたためスキルが変化します。

 

>【シューティングスター】Lv.5+【あなたのための白いサルビア】

 

 

>【Re:流星に捧ぐサルビア】Lv.6 発動。

 

 

 

 

いつも感じていた流星の力に、姉が与えてくれたサルビアの花びらが視界一杯に舞い散る。

 

 

 

 

 

気が付けば自分の視界は元の世界へと戻り、姉の引いたスタートラインを今まで感じたことのない速度で駆け抜けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがと、お姉ちゃん、私頑張る。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あとがき

隔日投稿(遅れましたが)で三話ほど投下させていただきました。お察しの事かと思いますが続きは全く書けておりません。せめて月に一話ほど、今回三回に分けたものを一つにまとめたぐらいのものを投稿できれば、と考えておりますが……、まぁ気長にお待ちいただければと思っております。

次話は……、スぺちゃんにある程度の区切りがつきましたし、彼女と同じ時間を生きる世代の皆さんの描写をしていこうかなと思っております。もちろんその上も、下も。



それと、復帰時に考えをまとめるために書いたものをこちらに置かせていただきます。



お姉ちゃんを生き返らすためによくある愉悦系三女神様の一人と取引したスぺちゃん。本家スぺと似かよっている部分が多いがどこまで行っても価値判断にはお姉ちゃんがいる。目の前で実の姉を失っているせいかそれが顕著。だれも寄せ付けない実力と引き換えに姉と自分で完結する世界を作りかけている。

最初期、学園に入ったばかりのころはまだ正気を保てていた。彼女にとっては自分以外には見えない姉が傍におり、それを隠すのは日常だったからだ。ただし、それを保てるのもレースが始まるまで。一つ一つ勝利を重ねるごとに現実が見えてくる。勝てたけどまだ勝たないといけない。次も絶対に負けられない。元々取り繕うのがうまかった彼女だ。傍から見たらいつも通りだがもう心はボロボロである。

それが顕著になったのがジャパンカップ。彼女は一度敗北を幻視した。ゆえに本来彼女が持つべきではない血まみれの煤けた花が咲いてしまう。砕け散ってしまった彼女の心を何とか保っているのは姉の存在のみ。

さすがにヤバいと感じた三女神の一人(スぺちゃんと契約したのは力の女神、お姉ちゃんと契約したのは技の女神。余りは知の女神)の技の方がお姉ちゃんの契約の方を一部強制的に変更。もし今後スぺちゃんが負けたとしてもお姉ちゃんが消えることが無いということ、そしてそれまで幽体だったお姉ちゃんに反実体(モノや人に触れられるように)なった。

そのおかげで何とか持ち直したスぺちゃん。しかしながらここでため込んだものが爆発。6歳あたりからずっと触れ合いたいと思っていた死別した姉がいくらその手が氷のように冷たかったとしても触れれるのだ。もう周りの目なんて気にしている暇なんてなかった。ジャパンカップで最強格の会長に勝ってしまったのもあるだろう。彼女の心に慢心と甘えが生まれる。

これを何とかするためにお姉ちゃんが少々荒療治的なことを踏み切ったことになります。姉自身スぺが自分に依存していることを理解しながらそれを改善することががスぺが壊れることにつながるのではないかと恐怖しかありませんでしたが、育ての母に背中を押してもらえたこと、共依存になる可能性があることなどを危険視し、踏み切った形になります。心のどこかでスぺなら何とか乗り越えてくれるという想いがあったことも理由かもしれません。




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Re:PART1 「目標」

 

 

 

「というわけでスぺ、これからチャートの組み直し……。もといちゃんとした計画を立てていく予定ですが、ユーは何するか解ってる?」

 

「うん! 全部勝つ!」

 

「違います。」

 

 

相変わらず、というかやっぱりそういうつもりだったかと思いながらため息一つ。ついでに手をグーにしてスぺの頭をぐりぐりしながら『お仕置きー!』もしておく。いくらちゃんと物や人に触れられるようになったとしてもそこまで強く圧力はかけられない。そのせいでお仕置きがお仕置きになっておらず、スぺから帰ってきたのは楽しそうな「やめてよ~!」の声。こいつめ……!

 

 

「もちろんレースには出るし、勝てるなら勝ちに行く。出走したくせにそこで手を抜くのは最大限の侮辱だからね、そういうのはしない。……でもそれが目標、ってわけじゃないの。」

 

「そうなの?」

 

「そうです。スぺ、貴方が為さないといけないことは……、お友達との仲直りよ。」

 

 

 

「……仲直り?」

 

 

思い当たる節がないように首をかしげる彼女。まぁ解っていたのならあんなことしないよね……、いや、しないというよりもするべきことがあったはず。普通なら気が付くような彼女たちの不調も、彼女にとっては気にするようなものではなかったのかもしれない。

 

この子、私の大事な妹であるスペシャルウィークは。

 

 

圧倒的に他人との関係性が薄い。

 

 

この子にとって自分の手の届く範囲は家族だけで、その手の中に友人が入るスペースはほぼなかったといってもいい。表面上は普通にやり取りができていても、楽しそうに会話することができても、傍から見たら友人と言えるような関係性でも、彼女にとってはどこまでいっても他人でしかない。

 

こうなってしまったのは、私のせい。

 

スぺが幼い時に私が死んでしまって、その光景を目の前で見てしまった彼女の心は砕け散った。そんな彼女の心を元に戻したのは幽霊のような存在となって戻ってきた私。そのタイミングも、小学校に上がる前。

 

同じような境遇の子は家族や周りの人たち、学友たちとの交友を経て少しずつその心を戻していくのだろう。もしくは精神科などに通院してちょっとずつ他人との繋がりを増やしながら回復していくのだろう。……だが、彼女にそれをできる機会は訪れなかった。私がつぶしてしまったといってもいい。

 

しかも私たちの育ての母である彼女も、私たちの生みの母という親友とその忘れ形見である私を失い精神的にかなり参っていた。なんとか普段通りの生活を送るのに精いっぱいで、誰かに頼るという選択肢は思い浮かばなかった。残された自分が頑張らなきゃ、スぺのためにも頑張らなきゃ。当時制限が多くスぺにすら簡単な意思を伝えることしかできなかった私は、母のその姿を見ることしかできなかった。

 

そんな不安定な状況でずっと下を向いていたスぺのところに、やって来たのはあの三女神だ。

 

大きくなったらレースにでて、それに全部勝ちなさい。そのためにあなたの姉をトレーナーとして付けてあげる。もし私たちの指定したレースに全て勝利を収めることができたのなら、“お前の姉を生き返らせてやろう”。

 

悪魔のようなささやき飛びついたスぺは、戻ってきた私とその声で無理やり心を固め直し、前へと進み始めた。その様子を見た母は、彼女の姿に励まされ前へと進もうとした。……スぺの世界には、彼女を含め三人しかいなかった。

 

 

「でもお姉ちゃん。私、誰ともケンカしてないよ?」

 

 

そうやって自身の世界を家族だけで完結させた彼女は、ただ強くなるために走り始める。すべてを犠牲にして。他人との交流も、必要最低限しかしない。スぺ自身、本来の性格が穏やかで、元気で、優しいものであったからそれに疑問を思う人はいなかった。小学生の頃は「ちょっと抜けている子」で通ってしまった。

 

子供の少ない過疎地域だ、小学校全体でも数は非常に少ない。本来なら遊びを通じて友人関係を構築すべきなのに、ウマ娘が彼女しかいなかったこと、無理な練習の疲れをその時間を睡眠に当てることで回復していたこと、そもそも彼女が友達を作る必要性を感じなかったこと。この理由からスぺは矯正の機会を全て棒に振った。

 

何か問題があっても、“私”に聞けば全て解決してしまうのだから。

 

 

「……確かに、喧嘩はしてないかもね。」

 

 

綻びが出始めたのは、トレセン学園に入ってから。

 

思えば、私も私でどこか安心してしまっていたのかもしれない。死んで魂だけの存在になってからスぺの元に戻るまで、女神の一人に『面白そうだから』という理由で私の存在しない世界の彼女を見た。アニメの、アプリの、画面越しの彼女を。トレセンに入るまでの時点で、私にはどうしようもないほどスぺの世界が完結してしまっていたことは理解していた。でも、あの世界の彼女を見てしまえば、彼女たちを見てしまえば。閉じた世界を広げてくれるだろうと、初めての友人ができるはずだと。

 

そう、思っていた。

 

私はスぺが不思議に思わない程度に距離を取った、彼女だけの時間。誰かと交友できる時間。外の世界に触れる時間を作るために。

 

そうやって、放置してしまったが故に。こうなってしまった。

 

 

「でもね、スぺ。たぶんだけどあなたは……、たくさんの人を傷つけてしまっている。」

 

 

強さ故の傲慢。

 

彼女たちにはそう見えているのだろうか。

 

 

「……傷、つけてる。」

 

 

スぺにとって勝利することは決まっていることだ。

 

だって勝てなければ姉は帰ってこないのだから。この時間も全てなかったことになってしまうのだから。

 

一着以外は、許されない。許せるわけがない。

 

傲慢である、という意識は彼女にないだろう。姉である私が教え、鍛えた。故に自分がまけることはありえない。

 

それが、彼女にとっての常識だったのだろう。

 

 

「そうだね……、黄金世代。いつも一緒にいたあの四人のこと。思い出してみて?」

 

「うん……。」

 

 

それが崩れたのが、ジャパンカップ。

 

あの、シンボリルドルフと対戦した時のことだ。

 

スぺが払ってはいけない代償を払い、勝利はした。結果として私はさらなる自由を得た。

 

今は、あの血と煤にまみれた『領域』も書き換えることができた。

 

だからこそ、さらにもう一歩踏み出そう。

 

 

「スぺの記憶の中にある彼女たちの顔は……、笑ってる?」

 

「…………ううん。」

 

 

エルコンドルパサー、グラスワンダー、セイウンスカイ、キングヘイロー。

 

何かと、一緒に集まっていた彼女たち。……今はもう違うけど。

 

 

「今の貴方の世界は、家族だけで完結してる。それじゃダメなの。……私が生き返ったとしても、いつか貴方は一人で生きていかないといけない。それにもう貴方はとても重い物を背負ってしまっている。」

 

 

史上二人目の無敗三冠に、同じ無敗三冠であるシンボリルドルフに勝利した。

 

“スペシャルウィーク”という名前は、とてつもなく重い。

 

今年の年度代表ウマ娘だって彼女だ、菊花賞からのジャパンC、有馬記念というローテで崩れた体調を整えるため、という理由で無理やり式典を休ませてもらっている。……言ってしまえばそういう無理も効くような立場になってしまった。彼女の背中には、それを望もうと望まないとこれからの日本が乗せられる。

 

……最終的にそれを背負い続けるか、振り落とすかはスぺが決めること。

 

だからこそ、もし選択を迫られた時に、ちゃんと選べるように。

 

私は、彼女の世界を広げなければ。

 

 

「……この休暇が終わったら、ちゃんとみんなと向き合いなさい。これまでお世話になった人、仲良くしてもらった人、勝負した人。そのすべてにちゃんと。本当に困ったときは助けてあげる、でもずっと私が傍にいてあげれるわけじゃない。……1人で。」

 

「……。」

 

「できそう、スぺ?」

 

「……頑張ってみる。」

 

 

この一年が、最後のチャンスだ。

 

 

「まずはエルコンドルパサー、エルちゃんと顔を合わせて話しなさい。……そこから、自分が周りにどう思われているのか、これからどうすればいいのか、考えていくのよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「よし! じゃあ次!」

 

 

スぺの了承を得たので次の話題に移る。

 

メインの目標を定めたから次はサブだ。まぁレースのことなんだけど……、レース全般のことをサブ目標にするのもある意味傲慢なのかなぁと思って見たり。ま、とりあえずやるからには勝ちにいきませんと。

 

 

「まず春のレースで大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念の春シニア三冠。その後海外遠征としてKGVI & QES。そこから夏季休養を挟んで、凱旋門賞。そこから秋シニア三冠の天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念。合計8レースにスぺは出走しないといけません。」

 

「はい!」

 

 

この出走目標を定めたのは私やスぺと契約した神々だ。それ以外に出走することもできるが、この8レースに出走しないことは許されない。一年に8レース、ゲームの世界ならよくある予定だが実際にやるとなるとかなりキツイ間隔。これ以上何かに出走することはスぺの負担を考えれば却下だ。

 

 

「春シニア、凱旋門から秋シニアは期間が短いから本格的な練習をするのは難しい、毎回本気を出すには調整をメインにしていかないといけない。となると冬から春の間と夏、この時期に頑張っていかないとね。」

 

 

つまりトレセンに戻ったらすぐに大阪杯に向けて練習し始めないといけない、ってこと。クラシックみたいな同年代だけが相手のレースとは違い、シニアには何年も走り続けている猛者たちがいる。シンボリルドルフ、っていう一番大きな敵は引退したけど彼女に劣らない相手がいてもおかしくない。

 

 

「練習メニューとかはいつも通り私が組む、スぺはその合間。休息日をうまく使ってさっき言ってたことを進めていくのよ? 前みたいに私の眼を盗んで練習とかはしちゃだめだからね。」

 

「……うん、解ってる。」

 

「もうお姉ちゃん覚悟決めたから。沖野トレーナーとかに隠さないからね? 沖野さんにお願いしてそっちでも見てもらうから。……嘘ついてたら私すっごく怒るよ?」

 

「わ、解ってるよ~。」

 

 

もう沖野さんには母経由でメールの方を送っている。スぺの性格的にあんまり管理するのはよくないけど、絶対この子私の眼を盗んでやるからね。それで体壊しでもしたら元も子もない。

 

 

「ならよし。じゃ、誰が出てきそうなのか、ってのも考えながら行きましょうか。」

 

 

まずは初戦、大阪杯。スぺにある程度交友関係があって、私も把握しているのは三人。エルコンドルパサー、トウカイテイオー、ミホノブルボンが主なライバルになってくると思う。

 

エルちゃんは国外レースに向けて準備するだろうからおそらく春はこの一本に絞ってくる。つまりここでスぺに勝って気持ちよく海外遠征に挑もうって寸法だ。ダービーで彼女が負けたときちょっと色々あったけど、それがあったおかげで彼女の精神はかなり安定している、いや成長したというべきか。まぁだからこそスぺの最初の相手を勝手に任せちゃうわけだけど。

 

次はトウカイテイオー。私たちウマ娘が馬だった世界線とは違い、菊花賞で骨折し長期休養に入った彼女。ちょっとネットニュースを見てみたけど、どうやら最近はメジロの敷地付近で目撃された情報があるみたい。アニメの世界のようにマックイーンとの交友を深めている彼女だ、メジロのバックアップを受けて大きくなって帰ってくるだろう。

 

最後にミホノブルボン。この子はスぺと直接的な関係はかなり薄い、でも少し調べてみたら解るんだけど明らかにスぺを意識した発言を多くしている。サクラバクシンオーの長期海外遠征に付いて行った彼女は各地で重賞を含めた多くのレースに参加して、その勝利者インタビューを確認すればすぐに出てきた。今年は国内で勝負するみたいだし、この子も要注意。

 

 

「実際に彼女たちを見てみないと詳細なステータス、ってのは解らないけど全員が固有……、『領域』に入っていて、総合力もクラシック期の彼女たちとは比べ物にならないはず。」

 

「……勝てるよね?」

 

「もちろん。まぁスぺが自主練しなきゃだけど。」

 

「うぅ! お姉ちゃん酷い!」

 

 

これ以上言い過ぎるとスぺが拗ねそうだからもう言わないようにする。まぁ口酸っぱく言っておかないとこの子絶対やるからさ、……前にゴルシに止められてなきゃどうなったことやら。

 

ま、実際。スぺの実力は去年クラシックだったとは思えないほど上位にある。後は春にどこまで成長できるか、差を維持し続けられるか、ってところか。

 

 

 

 

 

【スペシャルウィーク】

 

 

 

>スピード:A

 スタミナ:A

 パワー :A+

 根性  :B+

 賢さ  :B

 

>スキル

 

 【Re:流星に捧ぐサルビア】Lv.6

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.4

 【空駆ける英雄】    Lv.3

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.3

 

 【ゲートの支配者:改】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 【プレッシャー耐性〇】

 【全身全霊】

 【率いるもの】

 

 

 

さ、スぺ。心機一転頑張ろうか。

 

 

 

 

 






次回

ずっと一人だった彼女は初めて外に出る。


Re:PART2 「怪鳥」



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Re:PART2 「怪鳥」

 

 

 

私たちの朝は早い。

 

早く起きることはそこまで苦手ではないけれども、ずっと日が昇るような時間。今みたいな真っ暗な時間から起きて活動するってのはちょっとキツイなぁと思ってしまうこともある。

 

 

「ふぁぁ……、おはようです、グラス。」

 

「えぇ、おはようございます。エル。」

 

 

同室である彼女が朝の用意をしている物音で目が覚める、最近はずっとそんな感じだ。寮の大半がまだ寝ているような時間に、道場に行こうとする彼女を目を擦りながら見送る。私の、日常が始まった。

 

 

「今日も道場に行ってから朝練に合流します、遅れそうになったら連絡しますので。」

 

「は~い、了解デス。」

 

 

傍から見れば今のグラスは異常、いやストイックすぎると言った方が適切か。そんな生活を続ければすぐに体を壊してしまいそうなのに、ずっと続けているせいか私たちにとって日常となってしまった。まぁ一時期、スぺちゃんにとんでもない思いを抱えて全く会話ができない状態だったグラスを見ている私からすると……、会話が成立しているだけでありがたいって感じちゃうんですけど。

 

彼女の中で煮えたぎるような感情を御すために、力として昇華するために始めたらしい道場での鍛錬。疲れ果てるまで自身の獲物を振るい、後は朝練が始まるまでずっと座禅を組んで瞑想している。一度不安になって見に行ったことがあったが、その想いの強さに圧倒されていたことを覚えている。そこまで長い付き合い、というほどではないが同室で毎日顔を合わせていればグラスの性格ぐらい解る。対戦者として、ライバルとして自分のことを見てくれないどころか意識してくれないことが彼女にとってどれだけ大きいことなのか、そのレベルまで自身の力を高めることが出来ていないことが彼女にとってどれだけ大きい屈辱なのか。

 

言ってしまえば自分も同じ立場だ、その気持ちはよく理解できる。

 

 

「まったく、スぺちゃんは罪な女デスねぇ……。」

 

 

そんなことを言いながらのそのそと自分も寝台から抜け出す、折角早く起きたのだからその分みんなよりも早く、多く活動をする。でもまだペットのマンボも寝てるし、隣の部屋の人たちもまだ寝てるだろうから静かに行動しないと。

 

スぺちゃんはなんというか……、不思議な子だ。ただの友人として見るならば、ちょっと天然なところもある普通の優しい雰囲気の子。もう一歩足を進めれば、誰も入れない彼女だけの世界がある子。競技者として見るならば、私の世代の頂点に立つ子で、去年の年度代表ウマ娘。ただの観客として見れたのならこれほど心躍らせるウマ娘はいないんだろうなぁってことも解る。

 

そして、ライバルとして見るのなら……、多分だけど。勝つことしか意識してない子。

 

レースに関係せず、彼女にとって深入りしてほしくない距離に踏み込まなければ、普通の子だ。ただの友人として楽しく交友を深めることができる。だが、そこにレースが関わると彼女の態度は一変する。

 

スペシャルウィークにとって、敗北は許せないこと。いやむしろ敗北など自身にはありえないと考えているのだろう。

 

 

「まぁそのせいで色々とこじれちゃってるんデスケド。」

 

 

鏡を見ながら、肩をすくめて笑って見せる。一人の走る人間としてその態度に思うことがないと言えば嘘になる。だが、誰にも譲れないことがあるのも理解している。自分のキャラではないことは理解しているが……、要は付き合い方だ。

 

レースで見た勝利にしか興味がなく、どの出走者のことも単なる障害としか見ていないスペシャルウィークも。食堂でみんながあきれるほどに食事をかき込むスペシャルウィークも。会話の歯車が合わずとんでもない勘違いをしていたスペシャルウィークも。私にもう一度ともに走ろうと言ってくれた友人としてのスペシャルウィークも。

 

全て、彼女だ。

 

 

「多分レースとそれ以外の乖離が激しすぎるんですかネェ? そのせいで普段の行動を勘違いされちゃうって言うか。……まぁアレが演技ならもうエルは両手を上げて降参するしかないんデスケド。」

 

 

競技者としてのスペシャルウィークと、ただのウマ娘としてのスペシャルウィークの性格は驚くほど違う。強烈な二面性がある、と言ってもいいだろう。昔彼女とした会話の中に、『地元では他のウマ娘と触れ合う機会がなかった』という内容があったことを覚えている。他者をあまり自分の内側へと踏み込ませない彼女、小さいころからずっとそんな感じで、他のウマ娘とレースするような経験がないからこそ。そんな風になってしまったのかもしれない。……でもそれじゃあ彼女の強すぎる勝利への思いが何なのかわからないんですケド。

 

ダービーの後に彼女が私に見せた顔はウマ娘としてのスぺちゃん、レースでずっと後ろから見ていたのが競技者としての彼女。私はそう結論付けたけど……、それを誰かに話すことはできなかった。その強い勝利への思いを説明できないから、もし誰かに話してしまえば私の中にある不安がその子へも移り、より大きなものになってしまうから。

 

考えれば考えるほどに堕ちていく、幼少期に他のウマ娘がいない、故にレースできるのが楽しい。そう語る彼女の顔に嘘なんか見えなかった。だが何故そんな彼女が異様なまでに勝利への思いを宿すのか、ウマ娘として持つ『勝ちたい』という欲望よりも強い、『勝つ以外ありえない』という顔をするのは何故か。もしかすると私たちに見せている彼女の顔は全部“作り物”で、ターフにいるあの氷の様な彼女が本来の彼女なのでは、と。傍から、観客席から見れば愛想の良いウマ娘、だけど隣にいるからこそ見えてしまう一瞬の顔。何にも興味を持っていないような、ターフにいるすべてを無価値と思っているような、あのシンボリルドルフと同じレースに出たときも一瞥した後は他と同列として扱うような、暗く冷たい眼。

 

そしてライバルは誰かと問われた時の

 

 

『いえ、特には。』

 

 

と答えた彼女の顔。

 

 

 

「……ッ。目に入っちゃいました。変に考えすぎるのもダメですね。」

 

 

 

顔を洗い、水気をタオルでふき取る。

 

 

「そういえば、今日スぺちゃんが帰ってくるんでしたっケ。」

 

 

正直、この考えが当たっていようが当たっていまいが。どうでもいい。

確かに考えすぎであった方がいいし、いつか笑い話にできればこれほど素晴らしいことはないだろう。

 

でも、どっちみち私がやることは変わらない。そこに彼女の意思が入ることはない。

 

私は、私だ。

 

 

 

エルコンドルパサーだ。

 

 

 

確かに、クラシックでは一度も勝てなかった。

 

相手にされなかった。

 

ただの有象無象と一緒にされた。

 

そう思ってしまうぐらいに実力差があった。

 

そこに思うことはない、単に私が弱かっただけ。

 

 

 

「でも、決して手の届かない場所じゃない。」

 

 

 

マスクを顔に当て、強く縛る。

 

大阪杯、あそこで掲示板に入れれば海外挑戦に必要な賞金額は十分足りる。それに、今の実力と残された時間。私の成長量を考えればそこで勝負をかけるのは少し厳しいだろう。もちろんレースだから全力は出す、でもそれが限界ではない、ってだけ。

 

 

「楽しみデス、できればエルに負けるまでは誰にも負けてほしくはありませんが……。」

 

 

勝負は、海外遠征で。

 

今から大舞台でスぺちゃんを負かすのが楽しみデス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さすがにちょっと性格悪いですかね、マンボ。」

 

 

 

 

 

 

ま、まぁ多分大丈夫デス。タブン……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、こんなもんか。」

 

 

送られてきた資料のまとめ直し、所属しているチームメンバーたちの練習メニュー、各種マスコミに向けた対応。正月はさすがに休めと理事長に叩きだされたのはまぁちゃんと休めたのでよかったのだが、その分残っていた仕事が雪崩のようにやって来て……、今それがようやく終わった。

 

 

「っと、もうこんな時間か。」

 

 

時計を見てみればすでに深夜は過ぎ、もう少しで朝日が昇りそうなころ。ひと眠り、少しの仮眠ぐらいは取りたいところだが、今寝たら昼過ぎまで起きれなくなりそうだ。テイオーやマックイーンが朝練するだろうし、いくら最近かなり大人しくなったゴルシが面倒を見てくれるとしてもトレーナーが現場にいないのはマズい。カップに残っていたコーヒーを流し込み、腕を上に上げて大きく伸びをする。

 

 

「……にしても、お姉ちゃん。ねぇ。」

 

 

先日、というかちょうど今日の仕事を始めたくらいにスぺの母親からメールの方を頂いた。

 

内容はスペシャルウィークの姉、スぺが自身の指導者と言っていた彼女からのメッセージ。

 

 

「解らん。」

 

 

その内容にまったくおかしなところはない。

 

季節の挨拶に始まり、これまでちゃんと連絡できていなかったことに対する謝罪やこれからもあまり連絡が取れないことに対する謝罪。そこからこれまでスぺの指導をしてくれたことへの感謝が綴られている。

 

そして、その後にトレーナー同士がするような業務確認。スぺの今後の指導方針や出走するレースについて、休養日について、また彼女の精神の不安定さについて。姉としての視点と、指導する側からの視点の二つから求められたのであろうデータ、しかも幼少期からこのメールが送られる前日までの詳細なものが添付されて、送られてきている。

 

量が量であるし、緊急でしなくてはいけないこともあったのでそのメールを受け取った時はそこまで詳しく目を通していなかったが、見れば見るほどちゃんとしている。いやちゃんとしすぎているというべきか?

 

 

「どうしたもんかねぇ?」

 

 

それこそ、そのまま中央のトレーナーとしてやっていけそうなレベル。まぁもらった資料だけでそれが判別できるわけではないが、これまでスぺの練習はほとんど彼女が定めたものを繰り返してやっていたこと、ほとんど俺が名義貸し状態になっていたことを考えればかなり能力は高いのだろう。スぺの成績を見ればそれを否定することはできない。

 

 

「……だが、何故最初からそう言わなかった?」

 

 

姉から指導を受けているのであれば、最初からそういえばいいはずだ。だがスぺは『昔からお世話になってる人』という言い方をしていた。なぜ隠すような必要があったのか。……あまり地方への文化というかトレーナーのしきたりみたいなのは詳しくないし、もしかしたら北海道では親族がトレーナーとなることはあまり良いことではないのかもしれない。

 

まぁ確かに専属でない限りは個人への入れ込みが強くなってしまうだろうし避けた方がいいのかもしれないが……、まだ中学に上がったばっかりの様な子にそれが当てはまるか? 別に小学生相手の指導だったら家族が行ってもいいはずだ。実際スぺの同世代であるミホノブルボンとかは父親がトレーナーでその指導を受けていたって話だし……。

 

 

「家庭環境……。」

 

 

何か家庭環境に問題、例えばスぺの母親と姉が絶交していたとしてスぺの姉が隠れてスペシャルウィークを指導していたとする。姉の指導を受けていたと知れば母親が何か言うかもしれないとして俺にも黙っていた。……ありそうな話だが彼女の母親とお話しさせてもらった時にそんな雰囲気は感じなかった。いや確かにそう言った身内の話は初対面の野郎とかにするようなもんじゃないが……。

 

もしそうだとすれば去年のどこかで復縁して言えるようになった、とかだろうか。

 

 

「なんかこう、引っかかるんだよな。」

 

 

その上スぺからの説明を受けたとき、そこまで疑問に思わなかった。いや疑問を感じることはあったがそこまで気にするようなことではないかとそれまでにしていたような気がする。なにかこう、ずっと頭の中に靄があるような感覚……、言葉にしにくい感覚がずっと自身に付きまとっている。

 

 

「……さすがに、調べた方がいいよな。」

 

 

中央も地方も、免許を取ればURAのホームページやその地方ごとに名前が公表される。スぺの母親の名字の方は伺っているし、スぺの年齢から逆算して少し調べれば出てくるだろう。あれだけの細かい指示がスぺに出せる、ってことは免許取得者かもしくは自分で走っていたかのどちらか。……さすがに調べれば出てくるはずだ。

 

スペも、その親御さんも“お姉ちゃん”を信用しているみたいだし、渡されたものを見る限りそこに何か悪意があるわけじゃない。むしろスぺのことを強く想っているのが解る。だからこそこれは、答え合わせの様なものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よいしょ、っと。……ふぅ、なんかすごく久しぶりな感じ。」

 

 

誰もいない部屋に、重い荷物を置く。

 

スズカさんがアメリカ遠征に出ているせいでこの部屋には私しかいない。ちょっと散らかった私のスペースに、ずっと同じスズカさんのスペース。思い出したときに掃除はしてるけどやっぱり生活感というか、暖かさがない。……お姉ちゃんがいるときはあんまり感じないけど、一人だと昔を思い出してしまうから長居はしたくない、かな。

 

 

「……荷ほどきしないと。」

 

 

あっちを早い時間に出たけど結構いい時間だ。お姉ちゃんからは今日は休みでいい、って言われてるけど練習するな、とは言われていない。軽く走るぐらいならいいって言ってたし……、何より誰かいるべきはずの部屋に誰かがいない。そんな雰囲気があるこの部屋にあんまり一人でいたくない。お姉ちゃんは海外遠征とかのために調べものがあるって言って途中で別れちゃったし、それを邪魔したくはない。夕食の時間までちょっとだけ走りにいこう。

 

……お姉ちゃんからの宿題も、できるかもだし。

 

 

 

そう考えながら普段着からジャージへと着替えているときに、部屋のドアがノックされる。

 

 

「あ、はい! 今開けます!」

 

 

誰だろうか、と思いながら急いで着替え終わり扉の方まで向かう。お姉ちゃんならノックせずにそのまま通り抜けて入ってくるだろうし、あんまりこの部屋を訪れる人はいない。となると寮長のフジキセキさんとかだろうか。荷物が届いたとか?

 

 

「おいっすー、スぺちゃん今時間大丈夫?」

 

「ナイスネイチャさん。」

 

 

そこにいたのは、私と同じようにジャージ姿のナイスネイチャさん。カノープスの人。思ってもない人だったので驚きが顔に出てしまう。

 

 

「急にごめんね。あ、今から練習だった?」

 

「い、いえ。ちょっと晩御飯まで走りに行こうかと。練習とかじゃないです。」

 

「そう? ならよかったんだけど……。実は生徒会長さんから伝言預かっててね。生徒会室まで来てほしいって。」

 

 

……ルドルフさんが?

 

 

 

 

 









次回

先達からの教えと、友の言葉。


Re:PART3 「会話」


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Re:PART3 「会話」

 

「よく来たな、スペシャルウィーク。」

 

「あ、はい。どうも。」

 

 

ネイチャさんとちょっとした話、実家に帰っていたということは彼女も知っていたみたいで。お互いの家の話を少ししながら生徒会室まで歩いて来た。彼女も入るのかな、と思ってたけどそうではないみたいで。『じゃあアタシ他にも用事あるから。』と小走りで走って行っちゃった。

 

やっぱり、というか一人でここに入るのはちょっと緊張するなぁと思いながら扉を開けると、この部屋の主から声を掛けられる。

 

 

「む、もしや練習中だったかな? それならばすまないことをした。」

 

「あ、いえ。暇だったのでちょっと走ろうかなぁ、って思って着替えてただけなので別に大丈夫です。」

 

「そうか、ならいいが。……こちらが招いたのだ、好きな席に座ってくれ。」

 

 

そう言いながら指さされた方のソファへと腰を下ろす。会長はそれを見ながら『あまり自分で淹れたことがないからうまいかどうかわからないが……。』とカップを取り出しお茶を入れてくれる。私にはそれが紅茶、ということしか解らないけど優しい香りが漂ってくる。

 

 

「それで、何のご用……。」

 

「すこし、落ち着き給え、スペシャルウィーク。暇なのだろう? レースではもちろんだが、何事にもタイミングというものがある。急いては事を仕損じる、という言葉もあるだろう?」

 

 

言葉を、遮られる。生徒会長は多忙だから早く終わらせようとした……、ううん。あんまりここに長居したくない気持ちがちょっと漏れてたのかも。やっぱり負けそうになった相手とお話しするのはちょっとしんどい。会長はドリームシリーズに進むみたいだからもう気にしなくてもいいんだけど、やっぱり気にしてしまう。

 

そんなことを考えていれば、自身の目の前にカップが置かれる。会長の方を見れば、目線で『飲みたまえ』と。

 

澄んだ水面に私の顔が一瞬移り、それを手に取れば振動ですべてが消える。口に運べば熱が喉を通り抜け、茶葉の香りだけが口と鼻の中で残り続ける。

 

 

「紅茶は苦手かい? 砂糖とミルクならそこにある。好きなだけ入れるといい。」

 

「……ありがとうございます。」

 

 

香りは嫌いじゃないけど、それに味が付いてないとちょっと苦手かもしれない。これも顔に出てしまったのかすぐに会長に指摘されてしまう、すこし顔が熱くなっているのを自覚しながら砂糖とミルクを追加していく。お姉ちゃんに止められそうな量の半分くらいにしておいたから大丈夫……。あ、びっくりした顔。多かったみたい。

 

 

「ふっ、甘い方が好みか。」

 

「す、すみません……。」

 

「あぁ、いや。別に非難しているわけではない、ただ君の新しい面を見れたことが嬉しく……、いや面白いというべきかな?」

 

 

そう、楽しそうに笑う彼女。『レースでの君、特にジャパンCでの君が頭から離れなくてね。』と言葉を重ねる。確かにあの時はすごく必死だったけどそんなに変だったかなぁ? と思いながらもう一度紅茶を口に運ぶ。……うん、もうちょっと砂糖欲しいけど甘くておいしい。これなら飲めそう。

 

 

「……さて、あまり君の時間を奪うのも良くないだろう。本題に入ろう。スペシャルウィーク、突然ですまないが君が今年出走するレース、大まかな予定でも構わないが教えてくれないだろうか。あぁもちろん誰にも口外しないと誓おう。」

 

「は、はい。」

 

 

別に、秘密にするようなことではないのでお姉ちゃんが決めたルートをそのまま会長へと伝える。春の三冠と秋の三冠。そして海外遠征として芝の2つのレース。お姉ちゃんが決めたらのならここから増えるかもしれないけど、このレースのどれかを走らないってことはたとえお姉ちゃんが止めたとしても絶対に出る。そうじゃなきゃ私がここにいる意味がないのだから。

 

 

「なるほど……、時にスペシャルウィーク、君が世間からどのように見られているか気にしたことはあるかね?」

 

「世間……、ですか? いえ、全く。」

 

「ふむ、なら質問を付けたそう。テレビやネットで自身の評判を見たことはあるかい?」

 

「レース映像とかは見ますけど……、それ以外は見ないです。」

 

 

自分がどう思われているか、とかはそこまで興味がない。目の前で言われたら何か思うことがあるかもだけど、私の知らないところで何を言われようが特に気にしない。他人は他人だ。あとテレビを見ない、ってことで会長さんちょっと驚いていたけど見た方がいいのかな……? お姉ちゃんと話す時間が減るのは嫌だけど、見ておいた方が強くなれるとかだったら聞いておかなきゃ。

 

 

「そうか。……スペシャルウィーク、話は変わるが君は責任という言葉について深く考えたことはあるかい?」

 

「…………毎日ずっと考えています。」

 

「それはいい心がけだ、だがあまり思いつめないように、とも言っておこう。……すでに理解しているかもしれないが、少々君の立場、というものについて話した方がいいかと思ってね。今日はわざわざ来てもらった、少し面倒な話になるかもしれないが我慢して聞いてくれるとありがたい。」

 

 

さっきまでの柔らかい雰囲気を少し変化させながら、会長が言葉を続ける。

 

 

「7戦7勝。これまで五人しかいなかった三冠の六人目にして私と同じ無敗三冠、そして私を下したジャパンCに、シニアの強者たちをものともしなかった有馬記念。ホープフルを含めればGⅠ6勝だ、今はまだ私の方がGⅠの勝利数で勝っているが……、いずれ抜かされるだろう。」

 

 

君は最終的に何冠になるのだろうね? そう私に笑いかけながら彼女はそう問いかける。私はただ、そこに8を足すだけです。その過程に何が起きようと、誰がいようと、私はそれを成すだけ。

 

 

「無敗記録の長さ、そしてGⅠ勝利数の多さ、そして実際に相まみえたレース。その全てで君は私に勝った。……これが何を意味するか解るかい?」

 

「……わかりません。」

 

「君は、次の私になることを。簡単に言えば頂点に君臨することを望まれている。」

 

 

色んな感情を押し込めたようなシンボリルドルフが『もちろんすぐの話ではない、君のシニア期が終わってから、それ以降の話になる』と言葉を付けたし、さらに重ねる。

 

 

「いわば……、象徴だな。いずれ私は卒業する、そうなれば生徒のみならず世間は、社会は新たな道しるべを望むことだろう。トゥインクルシリーズにおける日本の頂点にして、象徴。それに最も近いのが、君だ。」

 

「もちろん“生徒会長”という形にこだわらなくてもいい、ソレに求められるのは道を示し続けることだけだ。その役目さえ果たせれば形は何だっていい。私は私の理想である『すべてのウマ娘を幸せにする』という言葉を胸にこの立場を求め、結果を出し、この場所に立っている。」

 

「力なきものはそこに立つ資格はない、結果を出せぬものは立つことすらできない。しかしながら力を示してしまったものは君がどう思おうと、ソコは君の場所になってしまう。今はまだ君の場所ではないが……、いずれそうなる可能性が高い。故に今日声を掛けさせてもらった。」

 

「あまり良い言い方ではないが、君が積み上げた勝利の責任が君に求められている。決して強制するわけではないが、いずれそうなるかもしれない。故に君自身の意思をあらかじめ聞いておきたくてね。」

 

「もちろん今すぐ回答を求めているわけではない、時間をおいてもいいし。やりたくないのであればそれで話は終わりだ。ただ、もし君に何かしたいことがあるのなら。どんな小さな事でもいい、もし君が日本のレースを背負うような存在になったとすればどんな未来を望むのか。それを、聞かせてほしいんだ、」

 

 

 

 

 

 

「問おう、スペシャルウィーク。キミは何を望む?」

 

 

 

 

皇帝が、私に。

 

 

そう、問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非常に、急な問いかけであったことは理解している。

 

だが、これ以上遅らせることができないほど事態はややこしくなっていた。

 

まだあのジャパンCで私が勝っていればここまでややこしいことにはなっていなかっただろうが……、いや別に彼女が勝ったことが好ましくないというわけではない。確かに敗戦に悔しさを感じることはあるが、それ以上に私を超えるようなウマ娘が現れてくれたこと、そして私が追う立場になったということは非常に好ましい。“皇帝”としても“シンボリルドルフ”としても。

 

だが、世間はそう簡単には収まらない。

 

私が負けたことでスペシャルウィークが次の皇帝として見られるような土壌が出来上がってしまった、世代交代、というべきだろうか。シニアに長くいた私がジャパンCを最後にドリームに移籍すること、そろそろ卒業の時が迫っていること、そしてスペシャルウィークよりもGⅠ勝利数が多いのが私だけになってしまったことから、彼女を次の皇帝に、という声が大きくなってしまった。

 

 

その気持ちは、痛いほど解る。観客は停滞を望まず、刺激を好む。それは競技者であっても同じ。

 

 

次をブライアンやグルーヴに頼もうにも、ブライアンはすでにドリームに移籍。グルーヴはまだシニアながらも少しGⅠ勝利数が足りない。そして二人とも高等部だ。GⅠ勝利数や学年だけでそれを決めるわけではないが、より多く若い方が有利になるのは確か。

 

そして部外者、つまりファンたちの間だけの話ならばよかったのだけれど、URA内部でも彼女を次の私にしようとする動きが高まっている。私やシンボリが介入できないほど強く、大きくなってしまっている。

 

私が生徒会長になった時はまだ良かった、当時のジャパンカップでの敗戦があり今ほど自身が大きく見られていなかった。それにシービーの様な他の三冠、マルゼンスキーの様な圧倒的な実力を持つウマ娘。私以外にもこの立場に収まる者がいた、幸いその時は彼女たちが譲ってくれたがゆえに問題は起きなかったが……。

 

 

スペシャルウィーク、彼女たちの時代では“彼女以外見当たらない”という事態が起きている。

 

 

確かに短距離マイル、そしてティアラ路線で活躍している者たちがいる。ダートで他と隔絶した実力をもつハルウララというウマ娘もいる。だが、日本というこの芝とクラシック距離に重きを置く国において。彼女の姿は大きすぎた。

 

私では止められないほどに、彼女を次の私に。いやそれ以上の存在として祭り上げようとする動きが起きている。そして彼女の実力と、未だなお衰えないその体のことを考えればシニア級でも勝ち星を重ねるのは目に見えている。勝てば勝つほどにこの動きは大きくなり、彼女が振り返った時にはもうどうにもならない状態に陥ってしまうだろう。

 

 

故に、問いかけた。

 

 

もしすでに彼女の中に明確な理想、私の様な理想が宿ってくれているのあればそれを支え、大きくしていけばいい。もしそれがなければ、支えていく方法も、上手く乗り越える方法も、用意していた。まだ形が見えない小さな理想でも、それを育むという準備は、出来ていた。

 

 

 

 

 

「何も。」

 

 

 

 

 

いつの間にか、私自身も。彼女が次の私に。いやそれ以上の存在になってくれることを期待してしまっていたのかもしれない。そいして、彼女なら受け入れてくれるだろうと、思い込んでしまっていたのだろう。年下の彼女が、自分に勝ったという事実に、いつの間にか飲み込まれていたのかもしれない。

 

明確に否定の意思が込められた彼女の言葉はひどく冷たく、暗かった。一瞬にして光が消えてしまった、彼女の瞳のように。

 

 

 

 

「何も、望みません。その立場には全く、興味がないです。」

 

「私は誰かの上に立つとか、そういうの嫌いです。強制されるとか、気が付いたらそういうことになってるのとかも、大嫌いです。」

 

「私は、私のために、私たちのためだけに走ります。レースに出て、勝ちます。そこには私たちだけの想いしかいりません。誰かが勝手に想いを乗せるのは構わないですけど、それを勝手に私の想いにはしてほしくないです。」

 

「誰かのためとか、そういうのが大事なのはわかります。とても大事なことだということも、解ります。……でも、会長のように私は『全てのウマ娘のために』みたいなことはできません。」

 

 

 

「私は、やりたくないです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふ~、なんかお菓子たくさんもらっちゃった!」

 

 

ルドルフ会長に多分『次の生徒会長にならない?』って聞かれて、『いやです!』って答えたらなんかたくさんお菓子貰っちゃった! 全然知らないのばっかりだけど多分全部高い奴~! お姉ちゃんが『高い菓子は大体うまい』って昔言ってたし! おいしい奴だ! お姉ちゃんが食べれないのは残念だけど……、ちょっと走るのやめてどこかで食べちゃおうかな?

 

元々今日は走らない、ってお姉ちゃんに言われてたしやり過ぎたら怒られちゃうし。でも貰ったお菓子を食べちゃダメ、とは言われてないもんね! お姉ちゃんに見せる分を置いておいて後は全部ここで食べちゃう? いや食べたい。晩御飯前だけどいいや!

 

そんなことを考えながら学園にある外のベンチに腰掛ける。寮の部屋に戻るのはお姉ちゃんがまだ帰って来てないから嫌だし、カフェテリアを使おうにもまだ閉まってる。まぁ一番近くの座れそうな場所がここだったというのが一番大きいけど。

 

 

「どれから食べよっかな~、クッキーの缶に焼き菓子の箱に~。」

 

「……ン? スぺちゃん?」

 

 

明日ぐらいに襲い掛かってくるカロリーを忘却して頂いたものを物色していると、声が聞こえた。

 

 

「あ、エルちゃん! 練習帰り?」

 

「そうデ~ス! スぺちゃんは……、全部買ってきたんですか、ソレ?」

 

 

多分だけどターフで走ってきた帰りなのだろう、肩からタオルを掛けたエルコンドルパサーがそこにいた。いやエルちゃん『もしかして全部今からそれ食べる気デスか?』って! 流石に全部は食べないよ~! ちゃんと2、3個は残して夜お腹空いたときに食べるよ! 

 

 

「……どっちみち今日中に食べる気なんですネ。なんというかスぺちゃんのお腹のこと忘れてマシタ。」

 

「それにこれ全部さっき会長さんからもらったの、……よかったらエルちゃんも食べる?」

 

「ケ! スぺちゃんが誰かにあげる!? あ、明日は槍どころかもっとヤバいものが降ってきそうデース!」

 

 

もっとヤバいもの、って何!? と突っ込みながら箱を開けていく。さすがに全部食べたらお姉ちゃんに怒られそうだったし、エルちゃんが来てくれてちょうどよかった。確か彼女も食べる方だったし……、とりあえず全部開けちゃおうか。

 

そう思いながら紙袋から箱を取り出し封を開けていく彼女、シンボリルドルフから詫びの意味を込めて贈られたそのお茶請けの菓子たちは徐々にベンチの隙間を埋め尽くしていく。そしてスペースがなくなっていくほどに『え、スぺちゃんこれ今日中に食べるつもりだったんですか? ヤバくない?』と顔色が悪くなるエルコンドルパサー。

 

だが、それでも菓子は菓子。うら若き乙女たちの目の前にそれが置かれれば起きることは一つだ。しかもトレセンの生徒会室に送られる、もしくは常備できるレベルの高級品。味は保障されている。二人とも目に付いたものの封を開け、口へ運んでいく。

 

 

「ん~、おいしいデスね! にしてもなんで会長さんからもらったんデスか?」

 

「なんか生徒会長にならないか、いや目指さないか? かな? そういうお話しだった。」

 

「……へぇ。」

 

「でもよくわかんないし断ったら『時間取らせたお詫び』ってもらったの。……あ、あと『賞味期限切れそう』って。」

 

「あぁ……、うん。すごく納得しました。」

 

 

学園の多くを取り仕切る生徒会であり、そしてそこに参加しているメンバーも強豪ぞろい。そうなれば自然と送られるものも多くなっていき、いずれ消費のスピードが追いつかなくなる。これまではオグリキャップが出張して回収していたが、今回は彼女の番だった、というわけだ。

 

 

「……ねぇ、エルちゃん。」

 

「ん? 何ですか。」

 

「聞きたいことがあるの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私のことって、どう思ってるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「どう、って……。」

 

 

正直、スぺちゃんからそういうことを言われるとは思ってなかった。受け入れはするが、一定のラインは超えさせない。自分から関係性を深めるようなことはしないような子だと。

 

 

「私さ、解らないんだ。みんなが私のことどう思ってるか。」

 

 

普段の彼女じゃない、私が見たことのないスペシャルウィークが顔を見せる。

 

 

「私ね、お姉ちゃんがいるの。実家に帰った時に色々話したら怒られちゃってね。『スぺは全然他の子のこと解ってないよ。だからちゃんと顔を合わせて話してみなさい。』って。……色々考えたけど、私には解らなかった。」

 

「だからさ、エルちゃん。……私はどう思われてるの。」

 

 

真剣な、顔。レースの時の様なほかを拒絶するような冷たさは感じられない。

 

 

「そりゃぁとっても強いウマ娘ですけど……、まぁそう言うのを求めてるわけじゃないですよね。」

 

 

深く、そして強く頷く彼女。初めて、自身の内側へと招き入れようとしているのか。彼女のことは深くは知らない、同期として、友人としてその表層を知っているだけ。踏み込むのは避けていた。でも、今日は違うみたい。多分、いや絶対本音をぶつけた方がいい。

 

 

「普段のあなたと、レースの時のあなた。その乖離がとても大きいウマ娘、ですかね。……私は、ダービーの時にスぺちゃんがかけてくれた言葉を覚えている。信じている。でも……、他の子は違う。」

 

「…………レースの時の私は、そんなにおかしいの。」

 

「おかしいわけじゃないです、けど冷たすぎるというか。……スぺちゃんには何か、絶対に勝たなきゃいけない理由があるんですか?」

 

 

その瞬間、一瞬にして彼女の雰囲気が変わる。レースの時の彼女だ。何物も寄せ付けず、自分以外の何かを全て障害として扱うかのような冷たい雰囲気。最初は気圧されていたが、今なら耐えられる。けどやっぱり顔には出てたみたいで、私の顔を見た彼女がすぐにその雰囲気を弛緩させていった。

 

 

「うん。私は、負けられない。」

 

「負けたくない、ではなく?」

 

「何があっても、私は勝たなくちゃいけない。……この、さっきの、私ですか。」

 

 

目の前で私の顔が歪んだことで、ようやく自身の纏う者が誰かを恐れさせるものだと理解してくれたのだろうか。別にそれを使うな、とは言わない。むしろレースで使ってくれなきゃ私たちへの侮辱だと思ってしまうだろう。だって私たちは、そんなあなたに背中を見せるためにここにいるのだから。

 

 

「普段のぽよぽよしながらお腹膨らませてるスぺちゃんと、さっきのスぺちゃん。みんな後者の方を本当のスぺちゃんと思ってるみたいですし、実際私も不安になってたんですけど……。」

 

 

動揺している、というべきだろうか。感情が顔に出ている彼女を見れば違っていて欲しいと願ったあの予想は間違っていたと確信できる。そも、目の前の彼女が演技であるのならばわざわざ私にこんな話を振るはずがない。

 

あぁ、ほんと。外れてくれてよかった。もし当たってたら人間不信になりますもん。

 

 

「そう、ですか。」

 

「ま、多分だけどその『勝たなくちゃいけない理由』ってのは聞かない方が良いんですよね? スぺちゃんあんま踏み込まれるの嫌いそうですし。」

 

「嫌い、ってわけじゃないですけど……。確かに聞かないでくれると嬉しいです。……全部終わったら、話せると思いますから。」

 

「じゃ、楽しみにしておきマース!」

 

 

触れてほしくないところには触れない、私にもそれがある。だから自分がされて嫌なことはしない。ま、『全部』が何か気になりますけど話してくれるのなら今は待つことにしましょう。

 

 

「ん~! 今日は長年の疑問も溶けましたし! トレーニングもうまく行ってますし! いい一日になりマシタ!」

 

「そうなの?」

 

「えぇ! おっと、言うの忘れるところでした! たとえスぺちゃんに負けられない理由があったとしても……、私たちはそれを気にせず全力であなたを叩き潰しに行きます。ターフではどっちが速いか、それしか関係ありません。だから! 変なこと考えて手を抜くとか、そういうの絶対やめてくださいネ! 私はその、冷たくて他の出走者なんてただの石ころにしか見えてないようなスぺちゃんをぶち抜くためにやってるんですから!」

 

「うん、私も全力でやるよ。……あ、あと私そんなに酷い顔してるんですか!?」

 

 

してマース! と言いながら思いっきり立ち上がる。大阪杯で、とか。次走で、とかは言わない。私の目標はもっと先だし、性格が悪いとか言われそうだけど、凱旋門賞とかでスぺちゃんを追い抜いたとき彼女の顔がどうなるのか見てみたい気持ちもある。だからこれからの私のことは秘密、現地で会いましょ。スぺちゃん。

 

……あぁ、後。これも、言っておかなきゃ。

 

 

「それとスぺちゃん、グラスには気を付けた方がいいと思いますよ。」

 

「……グラスちゃん?」

 

「セイちゃんとかキングには私みたいにちゃんと話せば伝わると思います。まぁ二人とも今海外ですけどね? 話すなら電話とかじゃなくてちゃんと顔を合わせてした方がいいんですけど……、多分グラスにそれをやると逆効果になると思います。」

 

 

彼女の心は彼女にしか解らない。グラスとスぺちゃんの関係は私のよりももっと複雑で、入り込む隙間はない。もし私が手を出してしまったらもっとひどくなってしまう。そんな気がする。私もずっとあんなグラスを見続けたいわけじゃない、だから手助けはするつもりだけど……。

 

 

「さっき言った冷たいスぺちゃんのことを本当のスぺちゃんだと思ってる、っての。多分グラスが一番感じてると思います。……だから今度。グラスが同じレースに出るときは彼女のことをよく見てあげてください、あの子はそれを強く望んでるはずですから。」

 

 

 









次回

止まった時間が動き出し。大阪杯が、やってくる。


Re:PART4 「邂逅」


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