どけ、ワタシはヤンウマだぞ。 (クロクロ33)
しおりを挟む

あなたはマスター?お兄さま?

 


 あなたの夢は誰でしょうか。私の夢はサトノダイヤモンドとキタサンブラックです。おかげでキャラとして登場するまでの期間ですがガチャが禁じられることとなりました。そんな愚かである私に、私にどうか彼女を、ミホノブルボンをください。






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふう…よし、休憩おしまい。早く帰ってメニュー終わらせなくっちゃ。」

 

 ……そう遠くないだろう過去の記憶を思い出す。

 今でもはっきりと覚えている…。

 駅前から学園へと戻る途中に見つけてしまった紛うことなき本物、逸材を。

 小柄な身体に目を向ければしっかりと鍛えられ引き締まった足が素人目からでもわかるほどに研ぎ澄まされており、纏う覇気は年相応のものではない。綺麗なフォームから発せられた彼女自身に向けての声援は、どことなく高く透き通っており、その奮起している彼女がウマ娘だという事を一目見て分かったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 そして、そんな彼女に向けた第一印象は兎に角『運が悪い』だった。

 

 

 

 恐るべき頻度で捕まる赤信号の数は十を超え、やっとこさ学園に戻ってきた頃には、辺りに聞こえる虫達のコンサートが夜の部へと変わり始めていた。こんなこともあるんだな、と何気なく思っていたが、まあ…特に気にすることもないか、と気持ちを切り替えて校門前へと歩いていく。

 そんな時だ。耳を傾ければ背後からタッタッタッと小さいながらもしっかりと地面を蹴る音が聞こえてくる。後ろを振り向けば先程の彼女が、漆黒の髪を靡かせて足を学園へと運んでいた。これは別段不思議なことではない。学園に在籍しているであろう事は服装から見ても当然の事であったからだ。しかしながらどうも様子がおかしい。何故か困惑した表情と、漂う負のオーラを醸し出しながら、こちらへと歩みを近づけているのだ。どこか獲物を見つけたかの如く一歩、また一歩と詰め寄って…目線が若干下向きになる距離まで来た時、彼女から発せられた第一声が「ごめんなさい」だったのは驚愕の一文字しか表せないだろう。

 

 なんでも、自分が近くに居たからこうなってしまったんです!…なんて涙目で言われたら誰だってそうなる。一体どんな思考回路なんだ、と正常な人間ならば考えてしまうだろう。一方的に謝られて去っていってしまったのは流石にどうも腑に落ちなかった為に、せめて気にしていない事を伝えようと後を追って見た光景はまさに見事なものだった。先程までの慌てふためく彼女は何処へ行ってしまったのか…必死に何かを思いながらもトレーニングを続けていた小さな背中に釘付けになっていたその気持ちを抑え、邪魔をするわけにもいかない、と勝手に理由をつけて去ったあの時から運命とやらは見逃してはくれなかったようだ。いや、仮にそうだとして本当に運命とやらがここから始まったのか?

 

 泣きじゃくっていた彼女を慰めながら自然とスカウトしたあの時だろうか?

 

 初めて大荷物を抱えてトレーニング場へと来た張り切った彼女を何処か心配しながらも、不運が訪れる事もなく日が暮れるまで没頭してトレーニングを行った時だろうか?

 

 それともその後に、お互い腹がパンパンになるまでラーメンを食べあった時?

 

 ドタバタしながらも努力が実ったデビュー戦の時?お兄さまと呼ばれた瞬間?

 

 はたまた、しあわせの青いバラの舞台を2人で見に行った時?

 

 海でびしょ濡れになりながらも…いやそれ以前に初めて目に写ってしまった時だったのかもしれない。

 

 そんな彼女、ライスシャワーと送る日々は意外にも退屈を感じていなかった。トレーナーとして出来るだけのことをしようと奮闘した。

 

 偶には自分も走ってみようと河川敷でランニングをするようになった。それがバレた時には言い訳に苦労をしたものだ。研究の一環だ、と言うことでなんとか収まったがその後はライスも共に走るようになり、時折無邪気に笑いながらも引っ張って先導されることがあった。

 

 またある時、練習を休みにしてお互いに似顔絵を描いたりして息抜きをしたり、ゲーセンに行けばクレーンゲームをした。その帰りに寄った神社では必勝祈願をしたりおみくじを引いて運勢を占ったものだ。

 

 激しいトレーニングを行ってしまい無茶をさせた時には、お互いに謝罪の嵐が巻き起こって苦笑し合った。

 

 初めて強力なライバルとも呼ぶべき相手、ミホノブルボンと戦って惨敗した時は、涙を流しながらも前へ進むと決めて…リベンジを果たすことを心に誓い、慣れない山籠りを共にしつつも特訓を共にした。

 

 お兄さま、と呼ばれることに違和感も無くなった頃にはいつしか家族のように接し始めて、それでも慕ってくる彼女に期待を込めて、一番になって幸せになれ、と願った。どうだ!自慢の家族だ!ここまでやる子なんだ!幸せにするって夢を叶えられる子なんだ!凄いだろ!と、証明したくて…その熱意に応じて彼女も結果を果たすようになっていった。そして成し遂げた完璧なる勝利は圧巻そのもの。あのミホノブルボンから見事に一位を捥ぎ取り、みんなを幸せにするという夢を背負い完璧な仕上がりへと成長を遂げ…彼女が見事優勝を果たした時…精神が肉体を越えて逸脱し、結果が実った時に映った光景は悲惨だった。

 

 称賛の声もあったかもしれない。ライバルであった子達は総じて強さを体感したであろう。多かれ少なかれ、彼女の強さの全てではないが把握ぐらいはしていただろう。だからこそ拍手を贈ったものは自然と居た。しかし他者、特に彼女をよく知らないものにはどう映るだろうか。

 

 夢を与えると言う事は其れすなわち、他者の夢をも奪う事。

 

 悪役。

 求められていた夢がたった一つの試合で崩れ去った音が聞こえた。ぶつかるであろう壁を甘くみていた。理解力も人一倍ある彼女のことだ。優しいライスシャワーにぶつけられたものは決して柔なものでは無いことなど彼女自身が知ってしまった。返ってきた言葉の多くは…罵声であった。

 

 不器用ながらも必死に慰めようとした。トレーナーとしてあるまじき失態を犯してしまった罪は償わなければならない。そう思ってもありきたりな言葉しか頭からは出てこない。口に出そうとしても出てこないことに、もどかしさが俺を襲う。ましてや挫折してしまった、だから夢は諦めろ…なんてとてもじゃないが言えない事は最もだが、それ以前に俺自身が諦めたくない。彼女の夢を叶えるために俺自身が出来ることをするという役目を果たさずして何がトレーナーと言えるのだろうか。だが、それにはどうしても他者を振り向かせるほどの力が必要になる…しかし大切な夢を叶えるためのメンタルがここでポッキリ、と折れてしまったであろう今…どうする事もできなかった。

 

 彼女の顔をまっすぐ見ることが出来ないまま無言で居座ってしまう俺が情けない。勝つことにのみ拘った結果がこれか…これではトレーナーと呼べるのか?俺は彼女からお兄さま、と呼ばれる資格があるのか?

 

 

 

 あの日、本当に俺が彼女のトレーナーとなって良かったのだろうか?

 

 

 

 葛藤が続く。…その日を境に彼女自身の調整も上手くいかず有馬記念で負けたことも重なり、GⅡに出場しながらどうにかこうにか調整も兼ねて様子を見ていたそんな頃である。

 

 

 

 「お兄さま、これ…何?」

 

 

 

 しとしとと降る雨音を遮るように自室の扉を開けてきたライスシャワー。しかしどことなく声色が低くなっている普段からは考えられないような彼女を見るに何があったのか、と声をかける。そんなことはお構いなし、と言わんばかりにコツ、コツと音を鳴らし、バッと唐突に突きつけられた彼女自身のスマホに映るのはアプリの…ウマ娘用の公式垢のようだ。アカウントからしてミホノブルボンからのもので『ご報告』、とだけ書かれた一文と画像…それだけでここまで憤怒の表情になるものなのか、と疑問に思いつつも確認のために覗き見る。

 

 

 

 『【ご報告】

 

 私、ミホノブルボンは菊花賞の後に発覚した故障を治癒するために無期限の休養を取る事となりました。ですが、私の夢であった三冠を取ることを諦めたわけではありません。あの場では叶いませんでしたが必ず戻ります。』

 

 

 

 まさかあのブルボンが故障を…。実に残念だ、と思うや否や何故かライスの表情はどこかサイボーグのような笑みを浮かべてこちらを見ている。

 

 「最後まで読んで、お兄さま。」

 

 どうやら続きがあるようで、言われるがままに下へと目を通していく…というかそうしなければならない雰囲気だ。紛うことなき黒いオーラを放つ彼女を前に成す術もなくスクロールしていく。

 

 

 

 『余談ではありますが、菊花賞にて私を破ったライスシャワーとは良いライバル関係であり、尚且つ現時点での彼女を支えているトレーナーは、私の夢である三冠を叶えるきっかけを作って頂いた元マスターとも呼ぶべき存在であり、私にとってとても大切な恩人であると同時に…私自身の走る意味でもありました。彼と彼の育てあげた彼女と共に走ったあの激闘の3分を私は光栄に思います。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お兄さま…説明。」

 

 

 

 

 

 

 一先ず置いてあったコーヒーを一口含ませる。どうしてだか、とてつもなく苦く感じたのは気の所為であると信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


 やべ、マックイーンどう入れりゃいいんだこれ。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あれは誰だ、誰だ、誰だ。あれは…

 


 育成が、終わらねえ‼︎






 

 

 

 「お兄さま…それで、ブルボンさんとはどういう関係なの?」

 

 ピリッと何処か殺気と間違えるようなこの空気は尋常ではない。まるでかつて行われていた拷問…石抱のような塊が重くのしかかってくる。ただひとつだけ確かなのは…そもそもの話、

 

 

 

 俺自身ブルボンと契約を結んだことは無くマスターと呼ばれるようなことをした覚えもない。

 

 

 

 一体どういうことなのだろうか。まずブルボンと知り合うようになったのはライスを通じてのことだし、山籠りだのなんだの育成のことしか頭に入っていない俺と彼女の接点がまるで無い。

 

 「いや、俺も心当たりがないんだが…。」

 

 詰まり気味ではあるがどうにか答えを出す。どうにもならない雰囲気ではあるが、こういう時こそしっかりと目を合わせ嘘偽りない言葉を出さなければトレーナーとの関係がガラガラ、と崩れてしまいそうだからだ。本当に嘘では無いことはよくよく考えればライス自身も分かることではあるが、ライスが今は脆い。なるべくダメージを負わないようにしなければ。

 

 とは言いつつも仮にだが、俺がブルボンに対し特別だと思わせる何かがあるとしよう。まず第一に今俺はライスのトレーナーであり、彼女のトレーナーは別にいる。その状況下で他人同士で会う時間があったとしてもほんの偶然、長くて数分ぐらいだろう。お互い多忙な身でもある。

 ミホノブルボンが言うように、俺自身が何かしてあげたのか?、と思い返してみたものの…トレセン学園にて世間話をすることすらあっただろうか?確かにレース後、ライスと共に少しばかり話したことはあるかもだが…まあ確かに休養を取る前に怪我のお見舞いに行ったことはあるにはあるが、これといってこれも何かした覚えはない。ただ果物を持っていったくらいのことだし…ライス普通に隣に居たし仲良く談笑していたところを邪魔するわけにもいかなかったから退散したくらいだからなぁ…ふぅむ。

 

 第二、俺自身がブルボンのトレーナーであった場合。これはまずあり得ない。彼女は元々中距離を走れていたし、三冠を叶えるきっかけなんて作った覚えも無い。つまるところ破綻している。

 

 果たしてどういう理論がそこにあったのだろうか。前提からして崩れている方程式をあろうことかあのサイボーグがミスるとは…いやはやほんと、ブルボンよ。どうした急に。

 

 「お兄さまが嘘をついているようには見えない…。殆ど練習とかに付きっきりなのに…ブルボンさんがおかしい?…まさか。でも、でもでも…。」

 

 やはり、というべきか。ライス自身も困惑している様子だ。

 何か変なものでも食べたか、彼女のデータベースにウイルスでも侵入したのだろう。別段、おかしなことでは無い。ブルボンって時々変なところに拘りがあるというか…そういえば42m先とか教えないと行けないほど最初はわからなかったからな。うん、やはりブルボンが怪我のせいで少しばかり混乱しただけだろう。ウマ娘にとって怪我は致命傷だ。選手生命は愚か様々なものを失う。無期限という形を取っているあたり…精神的に参ってしまったのだろうか。俺たちでも何か出来ることがあれば良いが…こればかりはどうしようも無い。ブルボンのことはブルボンを信じるしか無い。俺は俺を信じ、ライスを信じるだけだ。今はライスのトレーナーなんだから…。そう考えた方が良い。そうに決まってる、うん。

 

 「ライス、とりあえずその事は一旦置いておこう。今は…目の前にある大事なことに目を向けるべきだ。コンディションは別段おかしいところもないし調整もうまくいっている。偶々、変にストレスを与えてしまったのは申し訳ないけれど、天皇賞…春に出場するであろうマックイーン…彼女が一番厄介だ。しこたま鍛えて俺たちに立ち向かってくるはず…。それと、こんな時に申し訳ないと本当に思うが…菊花賞の時、本当にすまなかった。有馬記念でもライス、君にとって一番やってはいけないことをしたまま走らせてしまった。本当…ごめん。」

 

 長らく取っていなかった会話が出来た。だが、言いたいことを言えたきっかけがまさか…こんな不意打ちから来た混沌としたものから来ることなど本当に失礼極まりない事だけど、今だけは君に感謝しよう。ありがとう、ミホノブルボン。

 

 「え?その事なら全然平気だよ?お兄さま。」

 

 そうか、平気か…ん?平気?

 

 「へ、平気って…?」

 

 「もしかしてライスに対する罵声とかの事なら全然気にしてないから大丈夫だよ、お兄さま。有馬記念でミスしたのはライスの方だし…マックイーンさんとテイオーさんにちょっと…ね。」

 

 「…テ、テイオーやマックイーンと…その…何かあったのか?言い難いこととかでは無いよな?大丈夫なのか?」

 

 「え?あ、いや、えっと、その…大丈夫だよ?何もされていないし、寧ろ何も出来ないよ。マックイーンさんもテイオーさんも。」

 

 そ、そうか。なんて漫画で良くあるような変な返事をしてしまった。

 気のせいだろうか?聞こえて来た文脈自体変なような…まあ今日は色々とありすぎた。少しばかり俺も疲れているのだろう。それにしても…テイオーとライスって不仲だっけ?ん?マックイーンとは仲良しなはずだし…え?急にこんな…触れづらい事ある?テイオーも別段そんな陰湿な子には見えないからなぁ。時々考え無しなところがあるだけで。マックイーンも…うん、野球バカとか太りやすいから減量ですわよぉ‼︎とかそういうイメージしかない。

 

 

 

 うん、大丈夫だ、大丈夫。大方変なものでも食べたんだろう。あいつらならあり得る…全く仕方のない子達だ。ブルボン、彼女らにありったけの野菜を送るんだ。あ、怪我してるんだった。不謹慎すぎるわ、俺。完全に頭イカれますわ。笑えない。

 

 

 

 「んんっ!まあ、兎に角変に色々な事があったし…そうだな。今日は久しぶりにラーメンでもパーっと行くか?トッピング増し増しで良いぞ?」

 

 「本当?ありがとうお兄さま!んー…でも少しだけ…ゆっくりしたいかな。それと、ライスこそごめんなさい。お兄さまと距離を取って。」

 

 「いや、本当こちらこそごめんな。いよし、今日の雨もあと1時間もしないうちに止むとか言われていたし大丈夫だろ。その間はゆっくりしよう。そうだ…お疲れ様、ライス。菊花賞、一位おめでとう。天皇賞…絶対勝つぞ。」

 

 「ありがとうお兄さま、大丈夫だよ。絶対勝てるから。」

 

 

 

 「あと、お兄さま。さっきマックイーンさんとテイオーさんの事…考えてなかった?ブルボンさんの事は話を振ったのがライスだから仕方ないけど。」

 

 「鋭いな。差しでトドメを指すみたいな…そういうのは俺に行うでない。別に考えていたっていっても…くだらない事だぞ?あいつら変なもの食いそうだなってくらいで。」

 

 「…凄い偏見だね、それ。ふふっ。」

 

 

 

 可愛い。おっと、いかんいかん笑顔で危うく天へと昇りそうだった。

 一先ず、飯だ飯。腹が減っては戦はできぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにその日食べたラーメンはお察しの通りである。給料の半分近くが軽く吹っ飛んだ。

 良かったわ、貯めておいて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今後の予定を踏まえてスケジュールを確認しつつ練習メニューを組み終えた。ようやく寝れるな、と思った時ふと頭に過った何か…胸に突っかかっていたような事を思い出す。

 そういえば、と。

 ミホノブルボン、メジロマックイーン、トウカイテイオー…名だたるウマ娘達だ。そんなウマ娘と俺とが接点があった、なんて事は別段無い。認識としては優秀なウマ娘であると同時に強力なライバル、としか思う事がない。

 

 それがああもあんな変な…偏見とも呼べるような事をトレーナーである俺が…?しかも何故知りもしない秘密事までさも知っているかのように考えられたのだろうか。タキオンの薬を飲んだわけでもあるまいに。ビワハヤヒデが確か試したそうだけど俺自身そこまで堕ちてはいない。いや、幾分かマシなのか?ルドルフのギャグを聞く方が恐ろしい片鱗を味わうとか思ってないからね?誓って、本当に。普通にタキオンの薬の方が怖いからねえ。

 

 …寝よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢の中

 瞬間、俺自身に溢れ出る

 

 

 

 

 

 

 「また子供だと思ったでしょ!むぅ〜、いい加減子供扱いするのやめてよ!これからも活躍するぞって意気込んでいるのにぃ!…その、今日は…ありがとね!」

 

 「なんで!こうも!あなたとは!スイーツばかり!い、いえ!決して嫌なわけではありませんけれども…。あ、もう!困ったら野球観戦で手を打とうとしないでください!」

 

 「マスター、父がまた是非家に来い…との事でした。それと、送った野菜は美味しいか?とも。無論、私が調理を行い、マスターの好みに着実に近づけていることが随時確認済みな為、私の方で返せる返事は返しましたが…。」

 

 「お兄さま!見てみて!お兄さまとライスが描いた絵本がまた売れてるって!こ、こんな事…ううん。ライスとお兄さまが一緒だから出来た…そうだよね、お兄さま!………続編にレース…ど、どうしようお兄さま!」

 

 「皇帝という……てで…………を………………う。」

 

 「出来たぞモル…………効………ぁ………ぐいっと………。」

 

 「待て………く質………論………。」

 

 「………あた…………」

 

 「ここにき…………………景………」

 

 「…………食…………」

 

 「…………うわ………せい………。」

 

 「………」

 

 「……」

 

 「…」

 

 「「「ニガサナイ」」」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()記憶。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マスター…いえ、あなたとの出会いは…1番重要なデータとして、しっかりとメモリに残してあります…永久に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これからも…うんん。ずっとよろしくねトレーナー!無敵のテイオー伝説には、絶対にキミが…キミじゃないと成し遂げられないんだからっ!そう、キミじゃないと!…いけないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自己管理すら出来ていなかった…未熟者だった私を懸命に支えてくれたのはあなただけでした。あなたに出会えて本当に…。退屈なんてものは、私だけで十分です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの時よりもライス、お兄さまと一緒に成長…しているかな?お兄さまと…ずっと…一緒に。永遠に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 喧しい目覚ましが鳴る。本当に五月蝿いから俺は勢いよく止めた。

 朝が来た。気持ちの良い朝が。

 …ふぅむ。随分と夢見が悪かったような…思い出せない。

 寝汗が酷い。

 ………着替えるとするか。

 

 

 

 よし、今日も一日頑張りますか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


 さて…どこへ行こうか?





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お兄さマーーーーン!

 


 ごぉぉぉめぇぇんなぁさぁいぃぃの愛馬がっ!と言ったところで全てのトレーナーに恵まれましたここ、ウマ娘ss競馬場。今宵も注目される全ての怪文書の頂点を決める場としては絶好の晴天日和となりました。バ場状態は良。多くのトレーナーに見守られ本日も実にうまぴょい、と言ったところでしょうか。各ウマ娘はこの表情。なんとも言えない表情ですがどういった心境なのでしょうか、果たしてどう進行していくのでしょうか、実に楽しみであります。

 あなたの夢は誰でしょうか。

 あなたの想いは届くのでしょうか。

 そんな心境を秘め、このレースを制するのは一体誰なのでしょうか。緊張の一瞬であります。あなたの文を、幾千ものssを、沢山の夢を乗せて今各文、ゲート入りが完了致しました。







 

 

 

 今日も今日とて河川敷へ。日々毎日の確認作業…体調は良好。気温は朝の3月にしては高め。トレーナーとしての調子も普通から好調の間、と言ったところか?とはいうものの、こうしてライスが来るまでの時間から少しだけ早めに来てはこうして1人でふける事が多くなった気がする。

 立ちっぱなしもアレだし座りながらではあるが…ここ最近の話題となると他のトレーナー達の間では、やれ天皇賞がどうのURAファイナルがどうたらこうたら、となってはいる…が、正直今はそれどころではない。日経賞で1位を獲得してはいるが今度の天皇賞春は3200m…。天皇賞春を二連覇獲得、徹底した長距離育成に食らいつき完璧に成し遂げた化け物…今季最大の強敵であるメジロマックイーン。確かにライスの調子はあの菊花賞からの中では、ここのところ好調を維持してはいるものの…どうしてもあと一歩が足りない。スタミナは申し分ないし寧ろマックイーンと並ぶものすらあるだろうが…徹底したマーク戦法やミホノブルボンにも通用した山籠りを使うにしても…今回はそれを使ってもどっこいどっこいが良いところ。くそっ、どうしたものか…。

 

 「おはよう、お兄さま!えへへ、ちょっとだけライスも早めに来たんだ。きょ、今日も早朝トレーニングよろしくお願いします!」

 

 無茶をさせるには身体がまだ追いつかない。限界ギリギリまで追い込むことはリスクが大きすぎる。そもそも新人である俺自身がそんな無茶をして、ライスの競技人生を崩しかねないものを俺が背負えるのか?背に腹はかえられぬ、とは言うが何を犠牲にしろと言えば良いのか。さらに厄介なのはあの坂だ。あそこで抑えたりしたものならまず最後の末脚でも追いつけない。

 

 「お、お兄さま?…うぅぁ…む、無視されるとライス、傷ついちゃうぞ〜?」

 

 その他マチカネタンホイザ、イクノディクタス、メジロパーマーetc…特にマチカネタンホイザとメジロパーマーは仕上がり具合も格段に上げてくるはずだ。メジロパーマーの逃げは注視すればするほどペースが乱れ、マチカネタンホイザの差しとしての能力は一品。…有馬での結果を、ライスは俺のせいでは無い、とは言ってはいたものの…やはりトレーナーとしては悔しいに尽きる。願わくばURAにも出場させたい気持ちは俺にもある。さて、どうするべきか…。このトレーニング方法で仕上げて良いものなのだろうか…あまり良い予感がしない。

 

 「う、うぉぉ〜〜い!お・に・い・さ・ま‼︎…これでもダメなの?…うぅ…エットタシカ…ハァァ……スゥゥゥゥゥ…ヨシッ………オニイサマ?」

 

 「へ?どぅぉああおあああああああああ‼︎」

 

 気が付けば左耳の近くから囁き声。振り返ればライスが俺の肩に手をつきながら…少しばかり大胆とも言える行為だぞ。心臓に悪い。

 

 「えへへ、おはよう!お兄さま。ひょっとして次のレースのことについて考えてたの?」

 

 「あ、ああ。ごめんな?ちょっと考え事をして…やりすぎた。」

 

 「ううん。ライスは大丈夫だよ?お兄さま、ライスのためにいっぱい悩んでくれたから。でもびっくりしちゃった。大きな声を出しても聞こえていなかったんだもん。お兄さま、考え事をするのは良いけど考えすぎるのは悪手だって前にも教えてくれたよ?」

 

 将棋とかの例えなんて話したっけ?まあいいか。

 

 「そ、そうだったか?ンンッよし、ではぼちぼち始めますか!」

 

 「うん!…それとね?お兄さま、後でお話したいことがあるの。トレーニングが終わった後に良い…かな?」

 

 「いいけど…何か体調が悪いとか?」

 

 「体調面でも精神面でも無いから大丈夫だよ。それより、今日は何をするのお兄さま?」

 

 「慌てない慌てない。まずは身体をいつも通りほぐしてから…」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 「お兄さま、今日の夕方からなんだけど…また誰もいないところで特訓したいんだ。ダメ…かな。」

 

 早朝トレーニングとはいっても本当に軽めに動かす程度のものだ。レース本番も朝っぱらからやるときはあるけれど、実際に走る時間は午後3時半過ぎ。本番を想定して考えなければ調子も狂う。実のところこれは建前で、人間である俺とウマ娘である彼女の軽めの運動というのは天と地の差があるだけなのだが。

 で、なんだって?特訓?

 

 「はぁ…ぜぇ…ちょっと待って。…すうぅ…特訓場所を変えたいって…はぁ…授業とかは…ふぅ、どうするんだ?…前は、偶々休みが、重なっていたが。」

 

 「それについては大丈夫…だよ?成績はこの前テストで1番を取っているし、高等部でこの先出る授業内容も…もう勉強し尽くしちゃった。って、わわ。」

 

 ええ…。何この子。頭良くて強くてさらに要領が良いとは。思わず頭を撫でてしま…はっ、いけないいけない。

 

 「す、すまんつい。確かにそれならば問題はないかもしれないが…俺自身も悩んでいてな?」

 

 「あぅ…。…そ、それってやっぱり天皇賞に向けて…だよね。ごめんね?ライス、強いウマ娘じゃなくて。」

 

 やばい、垂れてる。耳が垂れている。危険信号だ。

 こうも頭が良すぎるというのも問題なのだろうか?やはり敏感に物事を適切に処理しやすいのか?いや、違うな。寧ろこれは確実に勝つ自信がない…ってところか。メンタル面がやはり大きいな。

 ライス自身、勝てるとは思っているが相手がメジロマックイーンっていう事が恐らく引き金だろう。ならば、

 

 「いやポテンシャルや能力面では勝っている部分はある。スタミナは恐らく今回出るウマ娘の中では1番は間違いない。ただ問題なのが…。」

 

 「坂で力まないように耐える精神力と、最後の抜いてからの粘りの走り…そうだよね?」

 

 「…現状はそうなる。足がいくら速くてもそれを支えるための筋力、最後の粘りにはどうしても精神力が肝となるからな。確かに山籠りは…筋力も上がるし俺も考えてはいたんだが…。」

 

 「…お兄さま?」

 

 正直俺の方がメンタル面がやばい。垂れ耳を超えた絶不調。正直こればっかりはどうしようも無い事…トレーナーとして覚悟しなければならない。こんな事を言ってしまえれば、自ずと俺の下から離れてしまう可能性は高いが…承知の上で話すしか無い!

 

 「実は迷っているんだ。トレーナーとして危険なことはさせたく無いし怪我のリスクも考えればトレセン学園から離れた場所で何があった場合、対応が遅れてしまう。それに…俺がその訓練内容をだな?正しく扱えるかどうかも分からない。正直、勝たせるための最善を尽くせるかが…不安でな。」

 

 不甲斐ない姿を見せてしまう…やはりトレーナーとして俺はどこか舐めていた部分があったのかもしれない。もしくは絶対的な自信が何処かに潜んでいて慢心していたかもしれない。ライスに見せたくない自分の弱さが、脆さが、絶望感が一気に襲って来る。くっ、やはり新人な俺では立派に育て上げる事ができないのか?

 

 

 

 ここまでなのか…?

 彼女の夢を支えるんだ、と誓った俺の夢は…ここで終わるのか?

 ここで…

 

 

 

 

 

 

 俺が終わらせて良いのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そんな事ないよ、お兄さま。」

 

 「え?」

 

 

 

 

 

 

 有馬記念で8位を取ると見る事ができるお兄さまのイベント。

 ごめんね、ライスの方こそ嘘ついてて。本心から出てる悩みなんだって、ライス…知ってるよ?でも、もうその話は何度も聞いているんだ。

 

 「大丈夫だよ、お兄さま。」

 

 ライス…知ってるよ?初めてお兄さまと出会って一緒に特訓しあって…そんな中で初めて打ち明けた弱音だったよね?毎日毎日夜遅くまで念入りに予定を組んで、不器用なりにお互い探りながらも頑張って成し遂げてきた。だから菊花賞で一位も取れたし天皇賞でも、有馬記念でも、URAでも最後まで勝ってきたんだよ?そんな中でライスが見せてた涙を何度も…何度も、何度も何度も何度も何度も。その度にお兄さまも涙を流して喜んでいたけど…

 

 

 

 お兄さまに泣いてる姿を見せてきたライスに…初めて見せてくれたお兄さまの涙は格別なんだ。

 

 

 

 目の前でライス以上にネガティブな姿は…いつ見ても美しい…!これ以上の芸術品は存在し得ないよお兄さま…ハァハァ…あああぁぁ、お兄さまが泣いている!お兄さまお兄さまお兄さまお兄さま!その涙を本当は一滴一滴集めたい!けれど、そんなことをしたらお兄さまが困惑しちゃう…でもでもそんなお兄さまを見てるとライス…いけない気持ちになっちゃうよぉ…(愉悦)

 

 初めてライスの事で悩んで泣いてくれたお兄さま。レースの時に故障して、もう一生走れなくなった時とか…絵本が初めて売れた時とか、塩と砂糖を間違えて料理した時とか…家族になった時とか…涙を見せることはあったけど、そんな涙なんかよりもよっぽど価値がある涙をライスに見せてくれるのはこの場面だけなの。

 

 だからごめんね、お兄さま。お兄さまには今、この場で泣いてもらわないとライスが困るの。

 

 「今までお兄さまとライス、2人でやってきた。確かに色々な事があったし嬉しくないこともあったけれど…ライスはそれでも、お兄さまと出会ってからずっと幸せなんだよ?」

 

 本心で話しているのに、何故かドキドキが止まらない。

 ライス、やっぱりおかしいのかな?何度も見ているのに…でも、でもでも…そんなライスについてきたお兄さまも…おかしいと思うよ?

 お兄さまがおかしい?…そっか。

 

 

 

 なら、良いよね。おかしいもの同士お揃いになっちゃえばいいんだよ。

 

 

 

 お兄さまもおかしいんだもん。

 

 

 

 お兄さまがライスについて来たんだから。

 

 

 

 ついてけって言ったのはお兄さまなんだから。

 

 

 

 この一時だけは、絶対に逃がさないようにって言ってるようなものだから。

 

 

 

 教えてくれたのはお兄さまだから。

 

 

 

 ライスについてきたお兄さまが悪い。(賢さSS+)

 

 

 

 お兄さまだって咲けるんだってところを見たい。

 お兄さまがライスの1番なんだってところを見せたい。

 お兄さまが逃げずにライスを咲かすために力を出すところを間近で見たい。

 お兄さまと一緒に2人っきりで過ごしたい。(願望)

 

 「お兄さまだからライス、頑張って来れたんだよ?ライス、どんな事でも頑張る…から。死んでも良いとか思わないけれど、死ぬ気で勝つために…ライスに、トレーニングを付けてください!お兄さま‼︎」

 

 

 

 「…そうだな。トレーナーの俺が勝手に諦めてどうするんだよ…覚悟を決めろ俺…よしっわかった。何かあったら…責任は俺が全部背負う。ライス…準備が出来たらすぐ向かおう。ビシバシ特訓していくからな!」

 

 

 

 はぁぁああああああああああああ!!!!!!!!!!

 お兄さま!お兄さまお兄さまお兄さま!かっこいいよお…お兄さまあああああああああああああああああああああ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡

 

 

 

 脳内メモリにスクショしなきゃ…ああぁあ⁉︎メモリがお兄さまの記憶で一杯だなんて…バカ‼︎バカバカ‼︎ライスのバカァ‼︎この前も記憶増量キャンペーンに全額振り込んだのに…。本当…また8位を取らなきゃいけないのかなぁ…。そうだよ、こんな表情をするお兄さまがいけないんだよ。ねえ、お兄さま?

 

 

 

 あ、ちょっと待って、本当に、そこから好きなシーンがっっ

 

 

 

 「ごめんっ。…ありがとな、ライス。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 はぁぁああああんっっっっっっ‼︎(未獲得)

 

 

 

 (追い上げ)(集中力)(勝利の鼓動)(汝、トレーナーの涙を見よ)(ウマ娘ためらい)(差し切り耐性)(独占力)(束縛)……

 

 

 

 いい、それで良い。それで良いんだよお兄さま。そうやってライスにだけ頑張っている姿を見せれば良いんだよ?(鼻血ドバーっ

 

 

 

 いけない、いけない。お兄さま愛好会No.0のライスに抜かりはないよ!(ティッシュ&止血(0.01秒))

 

 

 

 

 

 

 

 …正直もうトレーニングなんてしなくても、悪役をも超えて完璧に仕上げたライスに敵は居ないんだけど。他のみんなはお兄さまと契約をしなければ今のライスみたいなステータスは得られないもんね。お兄さまがライスを選択している間、ずぅぅぅぅぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ……とライスのターン…だからね(ニッコリ)

 

 ブルボンさん達もそれを知っているからヤケになっているんだろうけど…ごめんなさい。ライス、お兄さまルートを辞める気はありません。ライス、悪い子なんです。ライス、悪い子になっちゃったんです。

 

 

 

 お兄さまも、ごめんね。でもね、お兄さま。ライス、本当に幸せだよ‼︎

 

 

 

 「「「……チッ」」」

 

 

 

 …橋の下付近にテイオーさん。木の向こう側にマックイーンさん。近くのダンボールの中にブルボンさん。学園の屋上からカイチョーさん。小型ドローンからタキオンさん。変装姿で歩いているネイチャさん…と張り込みながら食べているのはオグリキャップさんとタマモクロスさんも…かな?クリークさんは…人形相手に色々としてるっぽい…。他にもゾロゾロと…。

 

 「クゥ…マダトレセンガクエンニニュウガクシテナイカラゴウダツシヨウニモデキナイィ…」「フフ…オトウサマモオカアサマモネラウナラコレダッテトキマデマチナサイッテ、イッテイタケド…モウマテナイヨオトウサマ、オカアサマ」「エイエイムンッエイエイ…ムン!」

 

 

 

 

 

 

 お兄さま、これからも一緒に成長していこうね!

 

 

 

 

 

 

 育成トレーナーイベント

 

 新人トレーナーの苦悩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スピード これ以上上がりません

 スタミナ これ以上上がりません

 パワー  これ以上上がりません

 根性   これ以上上がりません

 賢さ   これ以上上がりません

 

 絶好調を維持している。

 

 トレ…お兄さまは絶好調になった。

 

 お兄さまの『愛の鞭』のスキルヒントが3上がった。

 

 お兄さまと『秘密の特訓』が出来るようになった。

 

 ライスシャワーの体力が無限に回復した。

 

 他のウマ娘達は…もう言葉は要らないのか⁉︎

 

 おっと、トレーナーにピッタリと不気味についている…これと決めた時のライスシャワーは強いぞ。さあ、最終コーナーを抜けて差しに来たのはライスシャワーです!ペースをさらに上げている、ゆっくり行こうよ、とは決して言わせないぞライスシャワー!いつだってトレーナーとはスタミナ勝負!トレーナーを、お兄さまを逃さないと言わんばかりであります。もう一度だけトレーナー!もう一度だけ頑張ってほしいトレーナー!しかし差したのはライスシャワー!襲いかかってきたライスシャワーにお兄さまの心が開いていく!数多のウマ娘を阻んで前へ出たライスシャワーが先頭!ライスだ!ライスだライスだ!やっぱり怖かったライスシャワー!やはりこのウマ娘は強いのか!圧倒的!圧倒的な強さを見せつけ今、ゴールインっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トレーナーと他のウマ娘達との絆はこれ以上上がらない!

 

 トレーナーとライスシャワーの絆はこれ以上上がらない!

 

 ウマ娘達との卑が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


 原作勢(両方)怒りそう…にわかがバレるぅ…ゆ、許してくださいお願いしますなんでもしまs

 (違う、違うんだサ○ゲ!俺はただ、ただただ可愛いウマ娘達を書こうとして、指を動かしただけなのに。俺は、いつの間にかトレーナーを曇らせてやろうとして…作戦を続行させたんだ…。それはただの快楽に身を任せた結果ではあるが…俺はうまぴょいをさせたかった!ライスをこれでもか、と可愛く見せようとしたかった。ウマ娘のみんなの魅力を表現したかった…。

 この怪文書が出来たのは…時代や環境のせいじゃなくて…

 俺が悪いんだよ…。

 可愛いウマ娘達がじゃじゃウマ娘、ガビガビライスなんて呼ばれる理由は俺のせいだ!

 もう嫌なんだ、自分が…もう…ガビ山ライスなんて呼ばせたくない…俺を止めてくれ…。)





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いってらっしゃい、トレーナーさん

 


 なんか…凄い(小並感

 この土日にここまで…日間とか本当にありがとうございます。なんだろう…正直、恐怖を感じていたんだよね。何せ急に伸びたので…。怪文書って怖いわ。

 ただ、なんて言っていいのかわからないけれど…ありがとう。(大事な事なので二回書きました)

 読者の皆様に…ここまで急に伸びたので話の展開とかどうしようかなって少しばかり迷いました。でも、ごめんなさい。当初、考えていたことと、半ば通り越したノリで今まで通りになりますが…書きたいこと、やってみたらバイブス高くね?あげあげ超あげっしょ!ウェイウェイ!的な事を優先して書いていくので…下手っぴだしそれで色々と下がるのは結果として仕方のない事だろうけど、これからも書き続けますのでウマ娘を今後ともよろしくお願いします。

 あとこの場にて。
 現実での『大阪杯』豪雨+重馬場の中お疲れ様でした。高松宮も雨で危なかったし今度は晴れると良いね。






 

 

 

 恥ずかしい…ただただ恥ずかしい。トレーナーともあろう者が朝っぱらから泣くなんて…。しかも大の大人が、だ。…死にたい。もう嫌だ。誰か殺してくれ、俺を殺してくれ。

 

 そう思いながら目に映る、少しばかり短めの桜色の道を通る。学園前の桜のトンネルは、この時期ならではのもので実に2度目の光景だ。1度目は勿論トレセン学園に入ったばかりの頃である…。あの頃は不安だらけだったが今の俺に恐るものは何も無い。俺には進まなければならない理由がある。何かを捨てなければ何も変えることなんて出来ない。そうだ…涙がどうした。もう…何も怖くない。ここが、ここからが第一歩なんだ。俺の夢への始まりの道だ。そう思う俺を祝福するかの如く、チラチラと舞う花びらが風と共に揺れて俺の心を癒してくれる事に感謝をしつつ、速やかにライスに栄養を補給させるために急ぎ足でトレセン学園へと戻る最中である。上着を着て身体を冷やさせない、あんな黒歴史があった後でもストレッチを省かないなどなど…未熟者ではあるが俺とてトレーナーの1人。せめてもの最低限の行いを怠るわけにはいかないのだ。数十分前の出来事が余計にそうさせる要因なのかもしれない。

 

 俺は今、やる気に満ちている。やるんだ、やってやるんだ。俺がライスシャワーの進んでいく道を支える橋となるのだ。祝福の雨を降らせてやるのだ。雨乞いだ、雨乞いだ。そして俺とライスシャワーでそれぞれの夢を叶えるのだ。そう心に誓って…見よ、満開の桜と明るくなってきた青空が俺たちを歓迎しているぞ。

 

 さて、戻る前に少しばかりの贅沢な一時を与えなければならない。何せ、この後に控えている山籠り自体過酷なものになる。俺とライスだけの2人きりという閉鎖的な空間で、尚且つ過酷な訓練が控えているためだ。よって贅沢ができるのはレースを終えた日を入れなければ今日この日だけとなる…だからこそ。

 

 「ライス、勝利祈願と称してはちみつジュースでも飲んでいかないか?これから先は甘いものといえば大体りんごとかニンジンになってしまうだろうし、俺も今日は1番質のいいやつを一緒に飲みたい気分なんだ。」

 

 「え?ホント?本当に…いいの?」

 

 「ああ、遠慮することはない。いっちばんとびっきり高いやつを飲もう‼︎」

 

 「やったぁ‼︎ありがとう…お兄さま‼︎」

 

 ふっふっふ…。思う存分飲むと良い!俺はライスシャワーのトレーナーなんだぞ。ライスシャワーの誇るべきお兄さまだぞ!こんなところで挫けるタマでどうする。俺よ、下を向いている暇なんて無いのだ、行くぞ!かちんこちんになった鋼の意志が変わらぬうちに!

 

 

 

 「いらっしゃいませ!」

 

 「はちみつ硬め濃いめ多めスペシャルを二つお願いします。」

 

 「はい、はちみつ硬め濃いめ多めスペシャル二つですね、合計3000円になります‼︎」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 

 

 「フニュー…美味しかったあ…。」

 

 「ああ、そうだな…景気付けには持ってこいだ。」

 

 

 

 本当に…甘すぎ多すぎ硬すぎ高すぎ財布がカラカラだ、やれやれだぜ。気分って怖い。

 

 

 

 「お兄さま、今日の特訓…朝から行っても、良いと…思うんだけど、ダメ…かな?」

 

 「いや、流石に準備がまだ完全には出来てないんだ。それに…ライスも授業があるだろ?だから夕方にライスと待ち合わせを…そうだな、三女神像の前に待ち合わせでどうだ?」

 

 「うん…わかった。」

 

 「そんじゃ、俺は戻るわ。ライス、また後で。」

 

 「うん…またね、お兄さま。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はちみーはちみーはちみー、はちみーを舐めーるとぉ…。

 

 さて、トレセン学園のトレーナー寮に無事辿り着いた。自分の部屋へと戻りシャワーを浴び着替えを済ませる。ライス達学生らも、まだ授業までは時間がある分、のんびりとしているだろうがこちらにその余裕は無い。彼女達ウマ娘が授業を受けている間、トレーナー達はそれぞれ練習メニューを組んだり偵察をしたりビデオで試合を確認したり、とこれまた中々に忙しい毎日を送っている。その為に必要な精神力が意外にも想像以上だということに気付かされていた。

 

 ウマ娘を勝たせること…それ以前に彼女達を壊してはいけない事も前提ではあるが…多くのトレーナーが抱える問題の要因の一つとして、あまりにも若すぎることが含まれるだろう。流石に10代になったばかりの子供に対し、厳しい練習を積ませ…絶対に明るい未来が確証されていないウマ娘としての人生に夢を与えて見させなければならない。加えて我々トレーナーは指導者として成功しなければ解雇される。それでもこれが俺たち、トレーナーとしての仕事なのだ。だからこそトレーナーという存在は、その並外れた選球眼を身に覚えさせ、一生分の脳みそをフルに回転させる。新人の場合は尚更だろう。ベテラントレーナーとかよくもまあ病まないな、何あの鋼メンタル。それより人事部も頭おかしいからね。最も、こんな学園に入ってくるウマ娘も大概おかし…いや、なんでもない。俺も入っている身。さらに言えば学園の上側からお金を貰っている立場上…悪口は良くないよな。やはりお金には勝てなかったよ。お金、ダイスキ。マニー…うっ頭が。

 

 話が逸れてしまったな。

 兎も角、今の時点で天皇賞に関係のないことを深く考えるのも良くは無い。油断は禁物だが心配性になるのも沼に落ちる要因…大丈夫、大丈夫だ。よし…さてさて、あらかじめ用意はしておいたキャンプ用品…だが足りないものもチラホラあるな。それに、数日分の食料を買いに行かなければならないことや、これから先の天候のチェック、念の為ではあるが万が一ということも踏まえて応急処置用の小道具の最終整理、各ウマ娘達のデータ漏れがないかどうかの確認作業をもう一度行わなければならない。常に見直しは大事なのだ。

 だが、まずは腹ごしらえを済ませよう。確か昨日の残りが……ちょうど量が2人分か。弁当にするかそれとも…むむむ…いや、弁当はいいか。お昼ご飯は食べないで今のうちにまとめて食べよう。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 

 

 確認作業もある程度終わり買い物も済ませ、帰ってきたのは12時過ぎ。学園はちょうど休み時間のようで、多くのウマ娘達が騒いでいる。良いねえ…素晴らしい…眼福ですなぁ…鍛え抜かれた筋肉が実に素晴らし…おっといけない。これ以上触れれば蹴られてしまう。加えてよりにもよって三女神像の前で…偉大な歴史の前で、邪とも呼べるような考えをしてはいかん。

 

 始祖の三大女神像…か。ふぅむ…確かこの学園には始祖の女神像が願いを叶えてくれる、なんてものがあるとか。像の前を通る時に何かしらが起きる…それがいつ起こるかは不明であり確証もないのだが、生徒たちの間では試合前によく行われているそうで…伝統行事とも呼ばれているらしい。実際わからんでもないとは思う。必勝祈願とかするものに近い事なのだろう。それに、始祖の元となった彼女達が偉大な存在であったことは間違いない事は確かだ。

 

 っとと、いかんいかん。寮へと戻りますかねえ。俺はこれから準備があるんでね。トレーナーが女神像に祈るってのもおかしな話だし…そういえば山籠りなんて危険なことを、よくもまあ許可してくれたよ…理事長、会長、副会長、たづなさん、葵さん…誰かに助けられてばかりで本当に頭が上がらない。

 

 …?あれ、そういえば最近会ったっけ。

 

 まあ良いか。そうそう、そうだった。ヒシアマゾンさんにもライスを少しばかり預かりますって言っておかないとな。府中とはいえまだ春になったばかり…夜は冷えるし、もし風邪なんて引いてしまったら…その実、俺のトレーナー生活の道は死を意味するだろう。ストレスも普段よりかかる。何より1番気がかりなのはライスの過剰ともいえる程のトレーニング馬鹿なところだ。あの子、見かけによらず脳筋だからな…。ここを如何に制御するか、これが問題となるだろう。さて、どうしたものやら…。

 

 

 

 

 

 

 「ん?あ、おーい!トレーナー!トレーナーじゃん!やっほー無敵のテイオー様だぞぉ?会いたかったぜこのこのぉ…久しぶりだね、元気してた?」

 

 「こんにちは、マスター。」

 

 「あら?お久しぶりですわ。トレーナーさん。」

 

 「は?」

 

 突如耳に入った明らかにこちらに向けられたであろう声。が、周りにそれらしきトレーナーの影がない…少なからず3人いるはずだ。だと言うのに何故か周りには誰もいない。気が付けば先程まで居たであろうウマ娘達も見当たらない。噴水の音だけがこの場を支配している。

 

 振り向いてはいけない。何処か心の中で理性によって保たれていたであろうもの…頭の中で鳴り響く警告音。だが、好奇心というものは常々その恐怖に打ち勝ち進んでいくものである。というのは建前でそもそも、

 

 

 

 身体が言うことを聞かない。

 

 

 「誰だ?」

 

 

 口が勝手に動く。声からしてわかるのに何故そう聞くんだ。やめろ、振り向くな、振り向いてはいけない。

 分かってはいるのに…恐る恐るではあるが勝手に動いていく身体が、時間にして僅か5秒も無いであろうその時間が、あまりにも長く感じてしまったのは気のせいではない。のしかかる重圧も凄まじいためか、はたまた面倒臭いと思ってしまった為か…最後の方には、自らの意思で身体を後ろへと向いたその時点で…俺は詰んでいたのであろう。そんなことを数秒前までの俺が知る由もない。

 

 

 

 俺自身の目に映った…紛れもなくウマ娘の子達がそこに居た。それぞれトウカイテイオー、ミホノブルボン、メジロマックイーンというまあなんとも贅沢…な…子………た…ち…g……さ、サングラかけてマスクまでして完全に不審者の格好じゃねえか。な、何しているんだ?こいつr

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ブルボンさん、テイオー。やっておしまいなさい!」

 

 「命令を受理しました。リミッター、解除。」

 

 「まっかせて〜!奇跡は起こすもの、だからねっ!」

 

 

 

 「な、名前を言ったらますます意味が、おまえら!何をするk  おい、はなs  あぁ 、あ   あ?」

 

 

 

 

 

 

 突如視界から陽の光が失われた。暗闇の中に放り出されたポツンと1人、トレーナーの俺。

 その時を待ってました!、と言っているかのように包み込んで来る光の粒子が束となり…道標と化す。

 暗闇の中で一筋の光が俺に当たると、そこから目の前に広がるのは三本の光の柱がみるみる枝分かれになって…光の柱の方へと無理矢理引っ張られていく。

 身体中の穴という穴から漏れ出る嫌な汗。

 頭をハンマーで殴られたかのような痛みに伴って起きる混乱に処理が追いつかず映っているもの全てがみるみる歪んでいく。光の柱から枝分かれしたものが俺の身体を次々と突き刺していき、全身に通る神経伝達物質が知らせる痛みのサイレンが臨界点を超え、最早何も感じなくなった身体に入り込んでくる何かが、何が、おこ、…聞こえ てく  る。空、耳?いや、ち   がう…こ れは?

 

 

 

 「ああ  あ  あがっ な  いが き、ごえ    っぇ⁈」

 

 

 

 なん、だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、

 

 

 

 

 

 

 脳内に溢れ出る

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()記憶

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「トレーナー…トレーナー?あっ居た!トレーナー見ぃつけた!トレーナー!ねえねえ、トレーナーってば!どうどう?この前のボク、めちゃくちゃかっこよかったでしょ!…そうでしょ、そうでしょ!ふふんっ、もっともっと褒めるが良いぞよ〜?ボクは奇跡を起こすテイオー様なんだから!…だからさ、他の子を見るのは、さ。…もう、やめてよ。ボクだけのトレーナーなんだから…。ボクだけを見ないとどうなるか、身体が覚えているよね?」

 

 「マスター、あなたと居ると…不思議と心が『安定』します。よって、これから先もあなたの隣にずっと居たい、と私は…思うだけではダメだということを理解しました。私のデータベースからマスターを監禁することで『安定』の供給が永久に可能となり…1番の近道だと認識。よって行動に移します、マスター…諦めてください。」

 

 「トレーナーさん、今度の休日には是非メジロ家へ来てくださることを推奨致しますわ。メジロ家たるもの…いつ来ても良いようにトレーナーさんの部屋や服に至るまでご用意していますの。私とあなたで、これからの歴史を作っていければ、と…。」

 

 「ごめんなさい…お兄さま。ライスね…お兄さまに、1番してはいけない事をしちゃったの。でもね、ライス…いっぱいお金を持ってるんだ。これからも…お金、沢山…入るし。だから…お兄さまはもう何もしなくて良いんだよ?ただ…側にいて欲しいだけ、なの。ずぅっと…ライスの近くに、いるだけで良いの…。ライスがお兄さまを…幸せにしてあげるから。」

 

 

 

 

 「トレーナー!」

 

 「マスター!」

 

 「トレーナーさん!」

 

 「お兄さま!」

 

 「…ナー君!」

 

 「モルモッ…」

 

 「トレー…ん」

 

 「…レ…」

 

 「バックシ…」

 

 「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 目覚ましが鳴る。壊そうと何度叩きつけても壊れない目覚ましが鳴っている。電池も入れていない目覚まし時計が鳴り続ける。

 なんで、なんで…なんで!なんでなんでなんで!

 何故こうも繰り返す。どの選択をしても繰り返される…俺が一体全体彼女達に何をしたって言うんだ!いつになったらトレセン学園から解放されるんだ!なんで俺が担当した子達はみんな…あんな…うぅ。

 

 吐いても吐いても出てくるのは声だけ。身体は絶好調のように感じるのに全身に襲いかかる圧と残っている幻肢痛のような痛み…。胃液すら出てこないもどかしさは尋常じゃない。いっその事、吐いてしまった方が楽なのに吐くことすら出来ない。…なんなんだこれは。

 

 最初は夢なのだろうと思っていた…。だと言うのに永遠と若かりし頃の俺に戻ってくる。どの子を担当しても、どの子を勝たしても負かしても自分以外の全てがウマ娘に囲まれて…延々とトレーナーとして彷徨い続けている。義務を果たしても…果たせなくてもだ。負けなしの戦いをしても、3位ばかり取っても、不可能チャレンジを成功させても、怪我をさせても、自分で死を選んでも…俺がかつて住んでいた部屋に戻ってくる。もう累計何年になるのだろうか…いい加減、俺をトレーナーから解放してくれ…もう嫌なんだ、あの子達からもう…。繰り返していくことを実感していくうちにその頻度も、タイミングも…多くそして早くなっている気がする…。監禁されていないだけマシに思えているのも、俺の頭がとうにイカれてしまった証拠なのだろうか。

 

 

 

 <トレーナー!トレーナー!トレーナー!トレーナー!トレーナー!トレーナー!

 

 

 

 ああ、まただ。この着信でまた…身体が勝手に動き出す。もう…抵抗することさえ諦めた。トレセン学園に入りトレーナーとして活躍する…かつて俺が夢を見て目指していた何か。憎たらしいコールが以前は…だいぶ昔の俺には元気を与えてくれていたことが、最早狂気の沙汰である。今ではもう…何も感じなくなりたいほどに…このスマホから聞こえて来るであろう絶望を与える原因の2文字の言葉が合図となって、この感情も消えてしまうのだろう。どうせ…口が勝手に動き出すのだろう。慣れとは実に怖いものだ。抗っても抗っても無駄なのだと、この身に嫌というほど教え込まれた。臨機応変に立ち振る舞うことが最適解なのだと、そう感じるほどに。

 

 

 

 

 

 

 「はい、もしもし。」

 

 『おはようございます。トレセン学園のものでございます。この度はおめでとうございます。あなたをトレーナーとして認定することが【決定】されました。よって、階級は新人から、とはなりますが採用となりましたので…今年度から是非とも我がトレセン学園で腕を奮っていただきたいのですが…。』

 

 「はい、こちらこそよろしくお願いします。」

 

 『良いお返事をありがとうございます。手続きの方はこちらの方で済ませますので…そうですね。4月に行われる入学式の前日あたりに…日程が…そうですね。今メールアドレスの方にアンケートを送らさせていただきました。届いているかどうかの確認をお願いしたいのですが…。」

 

 「…はい。確認出来ています。」

 

 『ありがとうございます。そちらに書いてある日のどれかをお選びしてください。後日、スケジュール予定を含めた規定書などが届くと思います。その中に学園を案内する日時が書かれた書類も入っていますので…。当日からスカウトなども可能となっておりますが、慌てず自分のペースで行ってください。』

 

 「わかりました。本当に…ありがとうございます。」

 

 『こちらこそ、感謝の言葉もありません。では、失礼します。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ…やったぜ!

 ん?周りがいつもよりも散らかっている?どうしてなのかは知らないが何故か腹の奥底が煮えたぎるように感じている…。一体何に苛立っていたのだろうか。…いや、今気にすることは目の前の事だ。さあ、いよいよだ。夢見るウマ娘の舞台へと…俺は握り拳を作って思いっきり、目覚まし時計を叩く。叩く。叩く前にもう鳴り止んでいたというのに、叩いて、叩いて叩いて叩き潰そうとして…叩くのをやめた。時計の針は動いていないのに、針の音だけが聞こえている。壊れているであろう時計を何故か手放せないでいる俺を観察するかの如く、植木鉢に生えていた青い薔薇がじっと俺を見つめているような気がした。もう、ここには帰ってこれないのかもしれないのに、この花だけはこのままここに置いておかなければならない気がして…窓を開けた。気持ちのいい朝だ。そうは思わないかい?

 

 

 

 

 

 

 『他の娘との卑が上がりすぎて、継承がうまくいかなかったようですね。交流を疎かにしないように心がけしましょう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ートレセン学園。ウマ娘の殆どが憧れを抱きながら通る茨の道であり、求める勝利を目指して少女達が奮闘し、仲間たちと共に鍛えていくための場でもある。

 

 

 

 そこで、遂に願いを叶えるための…念願のトレーナーとしての日々が今、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花びらが舞い散る中、三女神像は今日もにこやかに笑っている。

 

 

 

 




 


 ルドルフの設定ってちょっと怖いよね、戦績とかの話ではないよ?



 次回…スカウトが多い+学校の準備があるから少し時間がかかる、しばし待て。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

会長…何をやっているんだよ、会長ォ⁉︎

 


 ボク、カイチョーもブルボンもマックイーンも…というかキャラあんまし持ってないんだ。ってわけで独自解釈入ります。だからミスってたら…ごめん。

 そうだ…俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらないかぎり怪文書は増えていく。

 ぐっ(更新、更新、更新…)ぐぅっ!うおぉぉぉ‼︎はぁはぁはぁ…(読書中)ウマ娘ss…なんだよ、結構増えてるじゃねえか。これくれぇ…なんて事はねえ!怪文書を書き、そして読むのが俺たちの役目だ。皆、やっと分かったんだ。俺たちにはたどりつく場所なんていらねぇ。ただ進み続けるだけでいい。止まんねぇかぎり、怪文書は増えていく。

 俺は止まんねぇからよ…お前らが止まらねぇかぎり…その先に俺はいるぞ!…だからよ…止まるんじゃねぇぞ…。

 (1番時間がかかったのが前書きと後書き)






 

 

 

 Eclipse first, the rest nowhere…

 

 トレセン学園のモットーとして相応しいエクリプスの言葉は、今も尚語り継がれて…かれこれ150年は過ぎている。

 

 今、俺は案内役と共に学園を歩いている。俺は学園を歩いている。俺は正規雇用として初めて来た学園を歩いているのだが…。ここに訪れたのは試験や見学に来た時を含まなければ初めての筈だ。そこに間違いはない…筈なのである。だというのに…まるで実家にでも帰ってきたかのような既視感に、ある種不気味な何かが俺を不安にさせている。とはいうものの…憧れのトレセン学園に来ていること自体に事実として違いはない。そうだ、きっと妄想か夢などの類…或いは見学に立ち寄った際に焼き付いた光景が離れられずにいるのだろう。そうでなければならない気がして、足を進める。俺はトレーナーとして初めてここに来たのだから、と。…にしても、やはり不思議な事は付き物だ。まさか案内役として買って出たのが、

 

 

 

 「……となっている。そしてトレセン学園は全国にあるウマ娘トレーニング施設の中でも、最大規模、十全十美のカリキュラムで、優美高妙なウマ娘と切磋琢磨し、己の研鑽に粉骨砕身の努力と共に身に宿した才を…っと私ばかり話してしまった。どうも、私は会話が一方通行気味になる事が多々あってね。つい長々と語ってしまう…すまない。」

 

 「いや、大丈夫大丈夫。説明は大事よ?そんな気にしなさんな。」

 

 「そ、そうか?…では、そうだな。何か気になることがあれば、遠慮することなく言ってくれると私としても嬉しいよ。」

 

 「気になること…ねえ……。」

 

 

 

 そう、俺の隣に今居るのが現生徒会長にして最強のウマ娘の一角として絶対に名を外せない1人、『永遠なる皇帝』の異名を持つに相応しい、と皆が注目しているあのシンボリルドルフだとは誰も思うまい。

 

 おい、仕事はどうした。エアグルーヴやナリタブライアンを置き去りにしてここに来たわけじゃないだろうな?駄洒落ばかり言って撃沈させて来たのではあるまいな?…無いとは思うがサボりたかったから、だとかではないだろうな。

 

 …何がどうなっている?俺と彼女は初対面であると同時に、彼女は理想的な模範生徒としても話を聞くことが多い。そんな彼女が…寒っい駄洒落を言い、さらにその影響で生徒会室に氷河期が到来したとか…俺も変な想像を…そんな事実は無いというのに次から次へと溢れ出す偏見が、この子の隣にいればいるだけ何故か余計な彼女のイメージが止まらない。意外と悔し泣きしそうな事、気を許した相手には遠慮が無くなるタイプ…頭が良い分、変に周りと噛み合わない…調子を崩す理由が理解出来ない…やっぱりアドリブはよく無いと思うよカイチョー…などなど。いやいやまさかそんな…馬鹿だな、俺はハハハ。

 

 「なに、今日の実務は既に終わらせてきている。トレーナー君がそんな顔をしてまで心配することは無いさ。」

 

 こうして時折、鋭い矢が刺さることも無ければ…の話だがな。嫌というわけでは無いのだがね?矢だけに…。とはいえ気兼ねなく話が続く分には良いのだが、こちらの心配など不要とするような微笑みとは裏腹に…どこか無理をしているような雰囲気がどうにも気になってしまう。少しばかり崩すか、この状況を。…()()けてみるとしよう。俺の勘が当たっていれば良いのだが…ええい、どうにでもなれ。

 

 「あー…も()()しなくても顔に出てた?」

 

 「ああ、随分とわかりやすい顔をしていたよ。まあ、その…四苦八苦する要因が私であることは目に見えていたからね。気を遣わせてしまったようだな。」

 

 「まあ、そりゃあ…謝るほどでは無いだろうが、かの生徒会長様が新人トレーナーである俺を案内すること自体イレギュラーな時点で身構えるよ。それに、お忙しい身であることは容易に想像出来るからなぁ。た『しか』学園に来たばかりなのに生徒会長になったとか聞いたこともあるし…尚更ね。」

 

 「ふふ、君はなんというか…そんなことを思いつつも自然体で居てくれるのだな。」

 

 「ん?いやいや、結構ガクブルよ?俺の足、見るか?生まれたての子鹿のようなものよ。」

 

 「……!ならばその足をしかと確認したいものだな。」

 

 

 

 〜未だかつてない戦いがここ、トレセン学園にて行われています!今日の勝利の女神は果たして誰にチュウをするのか、果たして誰にギュッとするのか、見物であります!

 さあ、盛り上がってまいりました!皇帝と若武者の対決となって繰り広げられています! 第4コーナー回った! ここからが真骨頂であります!先に先頭へと出たのはルドルフだ!ルドルフが出た!ルドルフ先頭だ!

 おっと、トレーナーが来ている! トレーナーが来た! トレーナーが仕掛けた!ナリタブライアンとエアグルーヴのコンディションは最悪だがどう出るか!残るは、待ちに待った2強の対決ですっ!接戦が見られるか!最後の直線! トレーナーが踏ん張る!

 やはり、駄洒落のルドルフ強し!3バ身4バ身と離していく!轟け、とでも言わんばかりであります!

 ここでトレーナーを離す! ルドルフ圧勝するのか⁈〜

 

 

 

 「確かめるのか、鹿だけに?『しか』と『たしか』を組み合わせたようだが…まあ君ならその行為もしかねないか。」

 

 「…!しっかりと見たいものだね。こればっかりは仕方がないよ。」

 

 

 

 〜さあルドルフか、トレーナーか!ルドルフか!トレーナーか! ルドルフが依然出ている!ルドルフだ!ルドルフだ!皇帝始動!こっからが強い!こっからが強いぞ、ルドルフ!実にいい競バです!いいギャグ戦争です!〜

 

 

 

 「これしかないと決めた時の会長は強いという噂は確かだったようだ。果たして俺が、かの会長様のお目にかなう資格があるのだろうか?今のは目、視覚、資格で合計5コンボ。」

 

 「やるね、トレーナー君…だが、私とて死角はない。皇帝の名に相応しい私に不可能は無いのだと証明して見せよう。君だけにしか見せない姿を…見せようではないか。しかと受け止めよ。」

 

 

 

 〜トレーナーの追い上げ!シンボリルドルフ!初めて苦しい戦線を乗り越えました! しかし依然として話しております!楽しそうに話しております!日本から世界の最強へと飛躍するために、 その第一関門を突破しようと奮闘しております!目が離せません!〜

 

 

 

 「随分とまた威勢がいいものだな。しかし、俺とてトレーナーの身。足掻きたいどころではあるか…こいつはちと長くなりそうだな。お互いにここで手を引こう。そうだな…斯くしておしまい、という形で…ちゃんちゃん.、ということで。」

 

 「斯斯然然に繋げたか、成程。…にしても、まさかこんな仕掛けをしてくるとは…ん?仕掛け…ふふっ此処にも潜んでいたとは…驚いたよ、トレーナー君。」

 

 

 

 〜物凄い回転だ!物凄い攻めだ! 来たぞ来たぞ来たぞ!シンボリ来た!シンボリ来た!

 しかし外からトレーナーだ! 外からトレーナー!外から仕掛けてきたトレーナーが!よぉおし!意図を見破ったぞ!シンボリが先頭に立った!

 シンボリが先頭に立った! 大歓声だ!大歓声だ‼︎トレセン生徒会室は凍えている!

 凍った赤い大輪が氷点下を下回ったトレセン学園に大きく咲いた!! ここまで無敗の皇帝が!トレセン学園史上、不滅の大記録が達成されました!!これこそ、皇帝だ!皇帝シンボリルドルフ‼︎〜

 

 

 

 なんだこれは・・・。たまげたなぁ。

 バレるのが早い…本当に頭の回転が速いというか、天才というか。その分、変に頑なになる癖が無ければこんなにも年相応の子になるというのに…。ちょっとムキになるところとかそれっぽいし。駄洒落は意外だったが…ふむ。耳の状態を見るに、ようやく落ち着けたようだ。良かった。

 

 「なんか…その、な?少しばかり無理してそうだったから、お互いに緊張しているってことを前提に考慮して…こういう時にはジョークの一つや二つ覚えておいても良いだろうと思っていたから、つい試したんだ。いやはやここまで盛り上がるとは…馬鹿には出来ないものだったよ。」

 

 「流石、と言いたいところだが…一ついいかなトレーナー君。」

 

 「何?」

 

 「少しばかりと馬鹿には出来ない…これは故意かどうか、聞いてもいいかな?」

 

 「…あ。」

 

 「くっ…くくっぷっハハハハ‼︎あ、い、いや悪い。プッまさか…ふふふっ…素で…こんなプフゥ…ダメだ、トレーナー君。わ、笑いが止まらない、どうしてくれる!…フフフ。」

 

 

 

 〜撃沈んんっ‼︎ナリタブライアンッ!エアグルーヴッ!トレーナーとルドルフのやりとりを影から見ていますが、これは彼女達の性質に合っているのかっ!これから先の展開が怪しくなってきました!〜

 

 

 

 「あー実に愉快だ。久方ぶりだよ、こんなにも充実した楽しい会話は。…そうだ、トレーナー君。実は来月に選抜レースがあってね。そこに私も出ることになっているのだが…良ければ見に来てはくれないだろうか。」

 

 「それは構わないが…良いのか?」

 

 「こうして話しているのも何かの縁だろう。案内役として志願はしたが、君と過ごす時間はどうしてだか、とても心地が良い。…願わくば、君個人から私に志願してくれる事を期待しているよ。勿論、私の走りを見てからで構わない。急にこんな事を言って申し訳ないのだが、是非。」

 

 「は?いや待て…あの、生徒会長様?」

 

 「ん?」

 

 「…数多のベテラントレーナーから新人トレーナーまで篩に掛け、スカウトを断り続けたのに何故俺を?余計な一言かもしれないが…正直手に余ると感じるほどに君は強い。走りを見なくてもわかるほどに鍛えられた足は制服越しからでも分かる。立ち止まった時にかかる重心は均等に維持するように意識し、実行に移している。並大抵の筋肉量の維持に必要不可欠な食事もバランスが良いのだろう…筋肉が喜んでいるようだ。特にこれは…腹筋から太ももにかけては他の子達を凌駕している。もしかすると最後の直線までスタミナの減りが少なくなるのか?コーナーを耐えてそこから繰り出される加速は……凄まじいものだろうな…天賦の才能…応用も効く。加えて元々の体幹が素晴らしい…だが、例え体幹や筋肉量というものが生まれつき持った才だとしても、必ず人というのは無意識のうちに癖として残っている事が多い…それを意識したまま保つ精神力はこの歳では異常なほどだ。先程の会話の切り返しの反応速度からして頭の回転力も判断力もある…これだけでも既に逸品。…そんな君が新人で…才能も無い俺の何に目を付けたんだ?君は…強者だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 君の全てだよ、と言えない私は実に臆病だ。君の前では…素顔が出そうで…気が緩んでしまう。それが怖くもあり…嬉しくもある。ある種仲間とは違う…自然体な私で居られるのは…トレーナー君だけだった。そして、問われる立場となることに喜びを感じてしまう。前は私が問う側だったのだが、これはこれで悪く無い。

 

 「トレーナーとウマ娘との関係は良好であればあるほど、得をするのは目に見えていること。実はその…性格というか気質と言うべきか…威圧感があるというか、四角四面というか。残念ながら私の隣りで私の夢を共に叶えよう…いや、正確に言えば支えられそうな人に中々巡り会えなくてね。あとは…女の勘、とでも呼んでおこうか。」

 

 

 

 嘘だ。

 

 

 

 「そういうものなのか?あと女の勘って…意外だな。」

 

 「おっと…。皇帝らしからぬ…私らしくない発言だったかな?だが、私も1人のウマ娘…。こういう一面があってもおかしくは無いだろう?」

 

 「いや…そりゃあな。ってかそもそも10代だろ?そんな気を使う事ないって。そういうお年頃なのかもしれないとか思っていたが、随分とまあ…肩凝ってない?マッサージでもしてあげようか?…にしても夢、か。」

 

 「…意外か?」

 

 「いや、実に皇帝らしい望みなのかな…とね?」

 

 

 

 違うんだ。

 私は君の隣で君と一緒に、同じ速度で歩みたいだけだ。

 ただの我儘だ。君にだけ見せる私の我儘だ。

 こちらも必死なのだ。君という存在を手にするために…なりふり構っていられない。

 

 初めて会ったあの日を…私は、忘れることはないだろう。

 否、あの勝利から君との物語が始まったのだ。

 

 君は何故、私のところへ来たのか…これは君と初めて出会った時の対話だったね。

 トレーナー君。実はあの時…既に君の答えに関係なく…私は君に惹かれていたのかもしれない。私の前で示せ、などと…偉そうに述べていたが。何故私が君だけに近寄ってしまったのか…。それが答えと言わんばかりに、君は私の夢であった景色を即座に理解し、手伝いたいと述べた。同じ視座に立ちたいと…これが見たい未来だと。

 

 常にあらゆるウマ娘達が…幸福でいられる世界を実現する。

 

 その為に全力で挑んでいた時…ある時、君は初めて私に問うたな。

 

 『なあ…その夢とやらに君自身は入っているのか?いつまでも他のウマ娘の為にって…君自身の幸せはないのか?』

 

 『あくまで個人的な意見だが、時代によって…だがな?王とは孤高であり、孤独である共に…誰よりも我儘で強欲な存在だった。民草が自然と背中を追っていくような存在だった。なろうとして、ではなくそうなるが故になった存在だ。その、少しばかりは息抜きというか…そうした仕草を見せてもいいんじゃないか?そんなに俺は側近として…トレーナーとして頼りないか?』

 

 ガツンと頭を殴られたような気分を味わったよ。初めて心の底から負けた、と思ったよ。それこそ暴れ回りたいほどに。

 

 それから事あるごとに君にあたった時もあった。涙を流した日もあった。分からない…難しい、と泣きついた。正直、敗北した時より悔しかったよ。

 

 そんな私に君は…優しくて生真面目でとても良い子だが…いつもそれだと肩が凝るだろ、と優しく慈母のように言ってくれた。あの時の…グラスワンダーとマルゼンスキーの光景が過ぎる。それこそ…いつまでもこの時間が続いてほしいと願うほどに、贅沢な一時を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 君に『泣きついている時はもはやライオンだなはははっ』、と言われた事を忘れるわけがない。

 

 私は半端な自分が許せない。

 

 いつか見た青春恋愛映画を含め…あらゆる作品を借りに借りまくった。

 

 海の家で食べる焼きそばが何故か美味しく感じたのか、肝試しが何故あんなにも楽しめたのか…答えは明白だ。君が居たからだ。

 

 そして、半端な君も許せなかった。

 私たちの中で誰かが選ばれれば…君自身が選んでいればここまで私たちが狂う事は無かった。それを君は『俺はあくまでトレーナーだ。そういう目で見た事は一度もない』と断ったな。

 

 腹が立ったよ。私たち生徒を勝手に虜にして勝手に去っていく…レースで負けた時よりも悍ましい何かが、壊れてはならない何かが壊れてしまったんだよ…君のせいでね。

 

 

 

 私の求めていた私自身の幸せはこんなにも近くにあったのだな、と理解した時には時既に遅し。私の隣から君は消えていた。思い出から何もかも…全て、君は消していた。

 

 

 

 

 

 

 たった3度の敗北を語りたい、とかつて世間から言われた事がある。

 

 私は…そんな小さな敗北よりも大きなものを失っている。知っているかな、トレーナー君…私はね?特に負けた相手には人一倍執着心が働いてしまうことを。他の子達に目をかけているようだが…気付いているのか?

 

 

 【一度見た顔は絶対に忘れない】…それが君であれば尚更だ。

 繰り返す度に、出会う度に鼓動が高まる事を…君の事を勝手に、一方通行で好きになっていく私を愚かだと思うか?

 

 

 

 私にとっての本当の敗北は君だけなんだよ…トレーナー君。どんなに勝利を手にしても…君だけは手に入れる事ができなかった。手に入れたとしてもまた振り出しに戻る日々…。これでは負けっぱなしだ。私が負ける事を1番に嫌っている事は君も理解しているだろう…なあ、トレーナー君?何、忘れた?それこそ勝ち逃げというものではないだろうか。…ずるい。ずるいずるいずるいよトレーナー君。だから、許してくれ。こんな弱い私を許してくれ。強者では無い私を許してくれ。

 

 

 

 「まっ、それも含めて楽しみにしてるよ。選抜レース…頑張って。」

 

 「ありがとう…なんというか君は本当に付き合いがいいというか、楽で助かるよ。」

 

 「それは俺が大人として見られていない、という意味ではないよね?」

 

 「はははっ!あとマッサージの件、忘れないでくれたまへ。」

 

 「エッ」

 

 「何?まさか冗談だとは言わないでくれよ?皇帝の肩を揉める機会なんぞ、そうそう無いのだから…光栄に思うが良い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なあ…あのルドルフとあんな自然なやり取りができると思うか?」

 

 「出来るわけないじゃ無いですか。…そもそもルドルフが入学当時から凄いことは知っていましたが…あのトレーナーも大概です。正直、あそこまで有能なトレーナーが入ってくるとは思いませんでしたよ。彼女が、いえ彼女達が僕たちに目をつけないのも…単に実力不足ってだけなのかもしれませんね。」

 

 「ああ、酷く痛感する…。私の今までのトレーナー生活がなんだったのかって感じるほどだ。初対面であれだけの癖や素質を見抜き、尚且つメンタルを保ち楽に接する事ができる相手…こんな化け物をウマ娘達が知ってみろ。…今年は荒れるぞ。」

 

 

 

 聞こえてくる噂話…当然だ。何せ彼は…最高傑作である私たちが育て上げた… 百折不撓、協心戮力の末に生まれた最高のトレーナーなのだから。

 

 

 

 私たちの間に遠慮は無い。なればこそ、全力で奪ってこその皇帝、と言えるのだ。彼を求める理由に特別な理由は無い。ただのちっぽけな望みだけだ。

 

 さて…また誰が主導権を握るのかはわからんが…環境が再び変わった…調子は好調。私の想いは変わらない。…君の口から『ルナ』と再び呼んでもらえる事を信じて、君にだけ…私だけを見てほしいがために走る…君を手放す事など出来ない。ここにあるのは私の理想だけ。

 

 

 

 さて、共に行こうか…トレーナー君。今度こそ君だけは…絶対に手放さないようにしっかりと私が握ろう。

 

 もう、皆はとうの昔に限界を迎えている。

 

 

 

 




 


 ここからは…オマージュの時間だ。



 う   ま   さ   ん   ぽ



 カイチョー!!マックイーン!!

 なんですの?今暑くて何もする気が起きないですわぁ…

 スウゥ…トレーナーが逆ナンされてるぅ!!

 …!!!!!!!!!

 フォーメーション、Bで行こうか‼︎

 承知っ‼︎

 …。……。

 トレーナーァキュゥゥゥン!!

 は?グエエエエエアアアアア……

 何よ、その女ぁ!ボクの瞳に乾杯したあの夜を忘れたの!

 私と一緒にいる時が1番楽しいってあれは嘘だったんですのぉ!

 ア、アノー

 気安く触らないでもらえるかしらぁん…泥棒猫ちゃん達ぃ!

 エッ

 トレーナー君はこれから私と一緒にヴァイオリィンのお稽古なのよ。
 帰るわよ…トレーナー君。今日こそきらきら星をマスターしてもらうわぁん!ってトレーナー君は何処へ?

 あのぉ…駅が何処か聞いただけですので。それと…彼ならあなた達の勢いに耐えきれず吹っ飛んでいきましたけど…。

 エッ…。アラッ…。ナン…ダト…。





目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。