メガテン新作ゲーム……? (せとり)
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目覚め
「メガテンの新作ゲーム……?」
ディスプレイに表示されたとある広告に目が留まり、気になった俺はそれをクリックした。
「オープンワールドのMMORPG? うお、グラフィックめっちゃ綺麗じゃん、すごい」
ゲームのホームページに飛ばされて情報を漁ると、ゲームの概要やゲーム内映像を見ることができた。
とんでもなく美麗でリアルなグラフィック。その迫力に圧倒される。
この映像のクオリティで、メガテンのオープンワールドMMORPG? めちゃくちゃ面白そうじゃないか。
一体いつの間にこんな凄いゲームが作られていたんだ。噂すら聞かなかったぞ。
「事前登録しとこっと。あ、キャラクリできるのか。しようしよう」
勢いで事前登録を行い、キャラメイク体験版をインストールして起動する。
作成するキャラの性別は女で。画面を見てゲームをする以上、見た目が華やかな方が楽しみが多い。
「ほー、デフォルトでもめっちゃ可愛いじゃん」
キャラクリの自由度はかなり高いみたいだが、プリセットを弄るだけでも手直しが不要なレベルで完成度が高い。
髪は銀色がいいな。髪型は……顎にかかるぐらいのショートボブで。
顔立ちはクールな感じで……ちょっと目つきが鋭いからそこは柔らかめに微調整。
身長は170㎝よりちょっと手前、肉付きは控えめにしてスレンダーな体つきに。
「うん、いいじゃん。俺の好みドンピシャだ」
出来上がった自分好みのキャラを眺めて、ぐへへとほくそ笑む。今の自分は気持ち悪い顔してるんだろうなと思った。
「で、サービス開始は何時なんだ?」
キャラクターを保存して、肝心のリリース時期を調べようとしていると、なんだか急に眠気が襲ってきた。
「なんか、めっちゃ、眠……」
睡魔に抗う事ができず、ガクリと首が下がる。俺は椅子にもたれながら意識を投げ出した。
「う……ここは……?」
次に目を覚ました時、そこは見知らぬ部屋だった。
窓のない石造りの小部屋だ。パソコンの置いてあるテーブルと、洗面台があるだけの簡素な内装。
「なんか声が変だぞ……? いや、それどころか体が……女になってる!?」
まず感じたのは声の違和感。自分の声はこんなに高くないし可愛くもない。
次いで起き上がった時、見下ろす体がいつもの自分のものではない事を理解した。
着た覚えのない白い貫頭衣を着ているのは、明らかに俺の元の体ではない。
僅かな胸の膨らみに、すらりと伸びた綺麗な脚。全体的に華奢になり、丸みを帯びて女らしさを感じさせる体つき。
洗面台の鏡を覗き込むと、銀髪ボブカットの美少女が驚いた顔をして映っていた。
その造形は、今しがた作成したキャラのものとそっくりだった。
「なんだこれ……? 何がどうなって……?」
愕然とした表情も、呆然と呟く口の動きも完全にリンクしている。それが自分であることは明白だった。
「ゲームのキャラに憑依した……? まさかそんなことが? だったらこの状況は……」
とにかく少しでも情報を得るために、部屋を探索しようと俺は動いた。
洗面台の蛇口を捻ってみると水が出た。匂いを嗅いで少し口に含んでみるが、新鮮な水という印象で特に気になる点は無い。
「普通に飲めそうだなこれ。とりあえず脱水で死ぬことはなさそうか……」
唯一の出入り口である扉を開けてみると、外には部屋と同じような石造りの通路が続いていた。
部屋は天井の照明で明るく照らされていたが、通路は薄暗く陰気な印象だ。まばらに天井から釣り下がるランタンが通路の輪郭を仄暗く浮かび上がらせていた。
地下迷宮。そんな単語が浮かぶような雰囲気に俺は気圧されて、そっと扉を閉じた。
パソコンの置いてあるテーブルに行くと、キーボードの上に乗せるようにして一枚の紙が置かれていた。何か書かれている。
「『これはチュートリアルです。迷宮の探索・戦闘を行いながら生存し、スコアを高めましょう。スコアに応じて特典が得られます』……?」
そんな内容が記されていた。
「チュートリアル……。やっぱゲームが関係あるのか」
迷宮に、探索と戦闘か。
この部屋の外はその迷宮とやらなのか。探索に戦闘……。メガテン作品系列なら悪魔とかうろついているんだろうか。怖いな。
「そしてスコアに特典か……現状では何とも言えないな」
行動に応じてスコアが加算されて、迷宮を攻略したり、死ぬか時間経過など、何らかの終了条件を満たすとチュートリアル終了。その最終的なスコアに応じて何かしらのボーナスを受けられる。紙面の内容から妄想するにそんなところだろうか。
情報が少なすぎて何とも言えないな。
パソコン本体の電源を押して見ると起動した。コードが繋がっていないが問題ないらしい。
……ワイヤレスも進歩したな(すっとぼけ)。
「何だ? 掲示板……?」
起動するとすぐに電子掲示板らしきページが表示された。
閉じることも別のページに行くこともできない。どうやらこのパソコンではこれしか観覧できないようだ。
【悲報】ゲームの中に囚われる(122)
ここどこ?誰か助けて!(18)
【朗報?】メガテン新作ゲームに釣られたら異世界転生していた件について(65)
【攻略】迷宮攻略スレ【情報交換】(72)
【TS】美少女になったやつ集まれ【R18】(69)
色々とスレッドが立っている。どれもレスの伸びはそれほどでもない。出来立てほやほやみたいだ。
「俺と同じ境遇の奴らが結構いるのか?」
確かめるため、目についたスレを覗いてみた。
転生者複数・掲示板ネタが書きたくなったのでちょっと書いてみた
TSは作者の趣味です(予防線)
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【悲報】ゲームの中に囚われる
1:名無しのプレイヤー
誰かいる?
2:名無しのプレイヤー
お、スレが立ってる
3:名無しのプレイヤー
メガテンの新しいオンラインゲームが出るって広告から飛んでキャラクリしたら、気がついたら謎の小部屋にいた。皆も同じか?
4:名無しのプレイヤー
同じだわ。キャラを作り終えたら急に眠くなってさ
目が覚めれば作ったキャラになってここよ
5:名無しのプレイヤー
ゲームキャラ憑依ってやつ? まじわけわからん
6:名無しのプレイヤー
可愛いキャラは眺めるものであって、自分がなりたいわけじゃないんだよなぁ……
7:名無しのプレイヤー
ほんとそれ
8:名無しのプレイヤー
そうか? (TSに喜びながら)
9:名無しのプレイヤー
ガチTS願望持ちはいても極少数だろ。誰もがお前みたいに拗らせた性癖してないんだよ
10:名無しのプレイヤー
男キャラにした俺勝ち組。イケメン過ぎて鏡を見ると思わずニヤけるぜw
11:名無しのプレイヤー
ごついおっさんキャラが好きだったんだけど、自分でなってみるとちょっと違和感あるわ。顔を濃くし過ぎた。髭剃りたい
11:名無しのプレイヤー
草
体毛濃そう
12:名無しのプレイヤー
お前らもう裸になった? 自分好みに作っただけあって凄いエロいぞ。めちゃシコだわ
13:名無しのプレイヤー
おっぱいは揉んだ。それ以上はなんか抵抗ある
14:名無しのプレイヤー
女の体は気持ちいいぜ! ぐへへへ
15:名無しのプレイヤー
もうオナってそうな変態がいるな……早すぎだろ
16:名無しのプレイヤー
変態共は別スレ行ってくれ。俺は真面目に情報交換がしたいんだ
20:名無しのプレイヤー
俺事前登録だけでキャラクリとかしてないんだけど。なんで巻き込まれてるわけ???
21:名無しのプレイヤー
それって容姿は元のままか?
22:名無しのプレイヤー
そうだよ元のまま。俺もイケメンキャラを作っておけばな……
23:名無しのプレイヤー
ふーん、登録だけでも強制参加か。それもやっぱり眠気があったのか?
24:名無しのプレイヤー
うん、ゲームページから離れたら急に眠くなった
25:名無しのプレイヤー
登録した時点で詰みとか極悪トラップじゃん
26:名無しのプレイヤー
しかもすげえクオリティ高そうなゲーム内映像を用意してさー。メガテン好きなら絶対引っかかるだろタチ悪いわ
27:名無しのプレイヤー
実写と見紛うグラフィックだったけど、マジで実写だった説あるな
28:名無しのプレイヤー
こうしてゲームの世界に入り込んだわけだしな。この世界のどこかの光景を映していたのかもしれない
33:名無しのプレイヤー
誰か迷宮とやらに行ってみた?
34:名無しのプレイヤー
ちょっと覗いてみたけど薄暗くて雰囲気ありすぎだろ。怖くて進めんわ
35:名無しのプレイヤー
絶対悪魔とかがうろついてるだろうしな。前情報なしで飛び込んでいける奴は頭おかしいだろ
36:名無しのプレイヤー
人柱になってくれる勇者はおらんものか
37:名無しのプレイヤー
つってもいつまでも部屋に引き籠ってるわけにもいかないんだよな。そもそもここが安全地帯とは限らないし、食べ物がないし
38:名無しのプレイヤー
それな。一応水はあるからしばらくは持つだろうが……
39:名無しのプレイヤー
普通に喉乾くし、多分空腹もあるんだろうな。その辺はリアルそのままだ
40:名無しのプレイヤー
仮に部屋が安全地帯だとしても、引きこもってるだけじゃジリ貧だよな。食料は探索で手に入れろって事だろうし
41:名無しのプレイヤー
それで悪魔に殺されたら本末転倒じゃね?
42:名無しのプレイヤー
普通に痛覚あるみたいだし、絶対痛いんだろうな……
43:名無しのプレイヤー
餓死も辛いぞ。水があれば1週間以上は生きれるだろうし、その間ずっと飢餓状態で飢えに苦しむんだ
44:名無しのプレイヤー
ひえっ
45:名無しのプレイヤー
どっちの死に方も嫌だああああ
46:名無しのプレイヤー
飢えて力がでなくなってから動くよりも、まだ元気なうちに行動した方がいいよな
47:名無しのプレイヤー
誰か迷宮の様子を見てきてくれーー
48:名無しのプレイヤー
お前が行け
49:名無しのプレイヤー
情けない、迷宮に挑まんという気概の持ち主はおらんのか!
50:名無しのプレイヤー
自分で行け定期
51:名無しのプレイヤー
皆迷宮に行くの嫌がってて草生える
52:名無しのプレイヤー
草生やしていられるのは今だけなんだよなぁ……そのうち空腹と恐怖で鬱っぽいレスが増殖するのが目に見えてる
60:名無しのプレイヤー
しかしゲームとは思えんよな
ホントにゲームの世界なのかここ?
61:名無しのプレイヤー
俺は異世界と言われた方がしっくりくるけど
62:名無しのプレイヤー
ここまで感覚がリアルなら、例えここが作り物の世界だとしても俺達にとっては現実そのものだろ
63:名無しのプレイヤー
そもそも俺らの意識や記憶が作り物の可能性もあるしな。俺らが現実と思ってる世界が実在するかも怪しい
64:名無しのプレイヤー
シミュレーテッドリアリティ? その辺考え始めたらキリがないだろ
65:名無しのプレイヤー
デカルトが言ってるだろ、『我思う、故に我あり』って。この世界を本物だと思ったり実在を疑ったりする俺らの精神は確実に存在してるんだから、俺らが認識している世界は確かに存在するんだよ
66:名無しのプレイヤー
哲学だな
67:名無しのプレイヤー
へー、それってそういう意味の言葉だったんだ
68:名無しのプレイヤー
神は死んだの人だっけ?
69:名無しのプレイヤー
それはニーチェ
72:名無しのプレイヤー
うおおお! 俺は行くぞ! 迷宮にな!
73:名無しのプレイヤー
おお? マジ?
74:名無しのプレイヤー
本気なら応援してる
75:名無しのプレイヤー
ちな武器になるものって部屋にないよな?
76:名無しのプレイヤー
ないな。机と椅子は床に固定されててPCも同様だし
77:名無しのプレイヤー
仮に持ち運べてもパソコンは武器にはしねーよ
78:名無しのプレイヤー
チュートリアルっていうならせめて初期装備くらいは欲しかった
79:名無しのプレイヤー
素手スタートは皆同じか。よし、行ってくる
80:名無しのプレイヤー
逝ってらー
81:名無しのプレイヤー
おいおい大丈夫か?
82:名無しのプレイヤー
ネタじゃなくて? マジ?
83:名無しのプレイヤー
まあ証拠を示しようがないから嘘松の可能性もあるんだけど
84:名無しのプレイヤー
命がかかってるし嘘でガセネタをばら撒くことだけはやめてほしいわな
85:名無しのプレイヤー
それが>>79を見た最後の姿だった……
86:名無しのプレイヤー
不謹慎なこというな
110:名無しのプレイヤー
なんじゃこりゃああ
111:名無しのプレイヤー
お、また新人が起きたか?
112:名無しのプレイヤー
ちょっと起きるのが早かった程度で古参ぶるな
113:名無しのプレイヤー
皆一斉に目を覚ます訳じゃなくて時間差があるんだな
114:名無しのプレイヤー
あの硬い床の上でよー眠れるわ
115:名無しのプレイヤー
寝坊してる人は鈍感か図太い性格してそうだ
116:名無しのプレイヤー
寝坊助に対する熱い風評被害w
レス番号とかはあんまり気にしないでください
レス順やIDに拘り始めたら労力がとんでもないことになるので、その辺は省エネでやっています
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探索
「だーれが鈍感だ」
とりあえず、一番伸びていたスレをざっと読んでみた。
どうも俺は起きるのが遅かった方のようだ。最後の方で馬鹿にされているようなレスを見かけて苛立ったが、悪態をつく程度でわざわざアンカーをつけて絡んだりはしない。
他に気になった攻略スレも覗いてみたが、怖くなってすぐ逃げ帰って来たという報告ばかりで役に立つ情報は少ない。
いや、中には有用そうな情報もあった。
通路に浮かぶ人魂のような敵を見た、もののけ姫に出てくる木霊のような敵を見た、という情報がいくつか寄せられている。
それぞれウィルオウィスプとポルターガイストではないか。そんなレスが見られた。
メガテン3とデビサバ2でどちらもLV1の出現悪魔だという。ステータスはそれと同じなのではないかとのだが……。
「は? ウィルオウィスプの方は物理耐性?」
他の弱点はガバガバのようだが、自分たちプレイヤーに属性攻撃をできるような異能に目覚めている者はいない。
一応ゲーム基準ならHPは低めのようだが、そもそも一般人である自分たちが悪魔とまともに戦えるのかという疑問がある。
いきなり物理耐性なんて持った強敵が徘徊していることが知られ、攻略スレはお通夜のような雰囲気になっていた。
「ふう……。俺も行ってみるか」
いつまでも掲示板に張り付いていたところで生の情報は得られない。
この状況を本気で何とかしたいのなら、自分から動いていくしかないだろう。
洗面台の水で軽く喉を潤してから、俺は意を決して部屋の外に出た。
裸足の裏から石畳の冷たい感触が伝わってくる。
薄暗い通路をなるべく音を立てないように、ひたひたと歩く。
迷宮という名称に相応しく、石造りの通路は迷路状に入り組んでいた。
同じ光景がひたすら続き、ともすれば現在位置を見失い、帰り道が分からなくなると不安に思うのも分からなくはない。
そこに迷路内を徘徊するだろう敵性存在、悪魔の存在がより強い恐怖心を与え、恐怖を来してすぐさま逃げ帰ってくる人が続出するのも仕方のないことだ。
俺としても、緊張で心臓が早鐘を打っている。
それでも足が前に向かっていくのは、別に人一倍勇気があるわけではなく、現状に対する強い危機感があるからだ。
迷宮の中に潜む曖昧な危険に対する恐怖心よりも、何もしないでいれば確実に飢えて死ぬという恐怖の方が強かった。
座して死を待つぐらいなら戦って死にたい。そういった意識があった。
――何かいる。
曲がり角の向こう側。中空に浮かぶ何かを目にした俺は、すぐさま顔を引っ込めて息を潜めた。
人魂というよりは人形っぽかったな……。ポルターガイストの方か?
どっちにしろ行動は決まっている。悪魔と戦って勝てると思うほど自惚れてはいないので、絶対に戦わない方針だ。
俺は来た道を引き返し、そそくさと逃げ出した。
迷宮に突入して1時間程度が過ぎただろうか。時計がないので正確な時間は分からなないが、体感時間はそれぐらいだ。
現在俺は、迷宮内になぜかあったトイレの中で休憩していた。
清潔感ある公衆トイレという感じだ。利用者がいないのか使用感が全く感じられない。
LEDの照明も付いていて、ウォシュレット付きの現代的なトイレだ。ここだけ雰囲気が違う。
後ろからやってきた悪魔に退路を断たれてしまい、仕方なく前に進むしかなくなり、通ってきた道順もよく分からなくなり――気づけばこんなところに辿り着いていた。
やってることはコソコソと悪魔から逃げ回っていただけだが、一応収穫もある。
これまた何故か道中に無造作に置いてあった宝箱。そこから手に入れた刃物だ。
全長は50~60㎝程だろうか。腕の長さほどもある山刀だ。鉈というには刀身が薄く軽い。黒くコーティングされた外観はスマートで格好よかった。
こういうタイプの刃物は何と言ったか。ゲームとかでも結構見かけた。割と有名なヤツだ。……そう確か、マチェットだったか。
「ま、名称なんてどうでもいいか。どうせ飾りだし」
刃物を持ったところで、自分は自分。ゲーム主人公のような超人ではない。戦闘力は大して上がっていない。
護身用の道具としてはそこそこ頼もしいが、基本的な方針は変わらない。命を大事に。悪魔とは戦わない、だ。
「そろそろ行くか……」
休憩を切り上げて、再び薄暗い石造りの迷宮へと足を踏み出した。
「はー……ようやく帰ってこれた」
何時間振りかにパソコンと洗面台のある部屋を見つけて、俺は安堵の息を吐いた。
両手に抱えた戦利品を床に転がすと、椅子に勢いよく腰かけて背もたれに寄りかかった。
「ふう……疲れた……歩きっぱなしで足いてえ」
死ななかったのは運が良かった。
一度ポルターガイストに見つかって、ブフらしき氷結魔法を撃たれながら追いかけられた時は本気で死を覚悟した。
トイレに逃げ込んだら中までは追ってこなくて助かったが、一歩間違えれば俺はこうして愚痴ることもできず、物言わぬ屍となっていただろう。
それでも成果はあった。
危険を冒してでも探索した甲斐があったと自信をもって言える。
この部屋から近い部分には殆ど宝箱はなかったが、迷宮の奥の方には比較的多くの宝箱が配置されていた。
そこで得た戦利品によって、俺はかなりの余裕を手にした。
まず最も求めていた食料。
カロリーメイトがダース単位で入手できた。1箱4本入りのケースが12箱だ。
節約すれば1週間以上、何も考えずに食べても3~4日は持つだろう。
早速食べてみたけど美味しかった。味もそれぞれ違うものが入っているし、食糧事情はかなり改善された。
持てる量が限られていた為、全てを持ち帰ることができなかったが、宝箱には他にも缶詰や乾パンなんかも入っていた。探索に出続ける限り、食料に困ることはなさそうだった。それが判明しただけでも大収穫だ。
そして装備品。
最初に見つけたマチェットと、その後に見つけた白いロングコート。
コートは発見した時から身に着けている。膝下までくる丈の長さで、頑丈そうな厚手の生地。守備力が少しだけ増した。
後はよく分からない小物が3つ。
傷薬と書かれた丸いプラスチックケースに入れられた青い軟膏。
ペインキラーと書かれた、メントスみたいに包装された大きな錠剤。
『武器に触れさせると……?』という意味深な事が書かれた紙片が同封されていた、ごつごつした触感の黄色の貴石。
言葉通りの効果を持つなら、傷薬が回復アイテムで、ペインキラーは痛み止めだろうか。
「黄色の宝石は……試してみるか」
きっと武器を強化してくれるようなアイテムだろう。流石に罠という事は無い筈。
「いや待て。先に掲示板を見るか」
早速マチェットに宝石を触れさせようとしたが、先に情報収集をしようと思い直した。
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【攻略】迷宮攻略スレ2【情報交換】
325:名無しのプレイヤー
奥の方に行くっつって帰ってくる人少なすぎてワロタ。ワロタ……
326:名無しのプレイヤー
死んだと決めつけるのは早い。まだ探索中なのかもしれない
327:名無しのプレイヤー
書き込みから2~3時間経ってる人もいるんですがそれは
328:名無しのプレイヤー
「30分で戻ってくる。1時間経って書き込みがなかったら死んだと思ってくれ」って書き込んだ奴もいるけど、1時間なんてもうとっくに過ぎてるからな
329:名無しのプレイヤー
帰還率低すぎて笑えない
330:名無しのプレイヤー
浅い所は比較的マシみたいだけどな
331:名無しのプレイヤー
悪魔の密度が低いし、見つかっても部屋に逃げこめばいいからな。どうもここは安全地帯みたいだし
332:名無しのプレイヤー
それだけは救いだわ>部屋が安全地帯
333:名無しのプレイヤー
マッピングの情報共有もできないんだっけ?
334:名無しのプレイヤー
そう。皆それぞれマップ構造は違うみたい。出現悪魔は同じでも、迷宮の形も宝箱の位置も全然違うみたいだ
335:名無しのプレイヤー
宝箱かー。中から武器とか出てくるみたいだけど戦えんのか?
336:名無しのプレイヤー
無理。拳銃を手に入れたって奴がポルターガイストに挑んだけど、返り討ちにされて大怪我して逃げ帰ってきた。
銃で無理なら近接武器で敵うわけがない
337:名無しのプレイヤー
大怪我って。その人無事なんか?
338:名無しのプレイヤー
その報告の後、書き込みがないから死んでる可能性大
339:名無しのプレイヤー
ひえ……南無
340:名無しのプレイヤー
おっそろしいわ、迷宮。いきたくねえ
341:名無しのプレイヤー
なお引きこもっていても待っているのは緩やかな死の模様
342:名無しのプレイヤー
>>340
同感だけど、じっとしてても腹は減るんだよな……。そろそろ俺らも動いた方がよさそうだな
343:名無しのプレイヤー
くっそー、せめて他の人と合流できればな
344:名無しのプレイヤー
掲示板では交流できるけど、迷宮はソロモードみたいだからな。自分の事は自分で面倒みないと
854:名無しのプレイヤー
宝箱から食い物見つけたわ。魚の缶詰だけどスプーンがついててありがてえ……
855:名無しのプレイヤー
俺も乾パン見つけて速攻帰ってきた。
856:名無しのプレイヤー
俺は手斧だったわ。クッソいらねええ!!!
857:名無しのプレイヤー
傷薬出たわ。ありがたいっちゃありがたいんだが、一番欲しいのは食料なんだよな……
858:名無しのプレイヤー
食べ物の出現確率は高いみたいなんだけどな。物欲センサーが働いてんのか?
859:名無しのプレイヤー
俺もさっさと食料見つけて引き籠りてー
860:名無しのプレイヤー
やる気ない奴多すぎだろ。引きこもりが目的とか目標低すぎて恥ずかしくないの?
861:名無しのプレイヤー
いや、俺死にたくないんで
862:名無しのプレイヤー
チャレンジ精神溢れるガッツに優れた人間は大半が真っ先に淘汰されちゃったんだよなぁ
863:名無しのプレイヤー
この状況で、スコア稼いで俺TUEEしてやるーとか言えるイキり人間は逆に尊敬するわ
864:名無しのプレイヤー
とにかく情報待ちだわ。宝箱とか部屋とトイレが安全地帯って情報とか待つことで手に入れたしな。
深層挑んでる人は頑張ってくれ。応援してる
865:名無しのプレイヤー
そういう態度、寄生されてるみたいでムカつくな。情報秘匿してやろうか
866:名無しのプレイヤー
やめてー
867:名無しのプレイヤー
まあまあ同じ境遇の者同士、いがみ合ってもいい事ないよ。協力し合っていこうよ
868:名無しのプレイヤー
一応浅層を漁ってくれる人の情報も無駄じゃないしな。
数が多いから宝箱から入手できるアイテム報告も多くて統計の役に立つし
869:名無しのプレイヤー
それな。ドロップ品リストの大半は非攻略組の報告のお陰だし
870:名無しのプレイヤー
攻略組の情報はありがたいけど、だからと言って威張るのは違うよな。俺らだって頑張ってる
871:名無しのプレイヤー
はいこの話終わり! 愚痴は他スレでどうぞ。攻略スレでは建設的な話を心がけよう!
【攻略】迷宮攻略スレ3【情報交換】
398:名無しのプレイヤー
ペインキラー食べてみた。完全にメントスだわこれwww
399:名無しのプレイヤー
>>398
効果は?
400:名無しのプレイヤー
>>399
まだよく分からん。食感は完全にミント味のソフトキャンディー。甘さは控えめだな
401:名無しのプレイヤー
ペインキラーって言うからには痛み止めの効果があるんだろ? なんか痛い事してみてよ
402:名無しのプレイヤー
>>401
体をつねってみた。確かにちょっと痛覚が鈍感になっている感じはあるかも。
つーか頭が冴えてきた気がする。それになんか気分が高揚する。もしかしてこれも薬の効果か?
403:名無しのプレイヤー
頭が冴えて気分が高揚するって……あっ(察し)
404:名無しのプレイヤー
もしかして:覚醒剤
405:名無しのプレイヤー
効果が完全に危ない薬で草
406:名無しのプレイヤー
うおー、目が冴えるーー。
神経が研ぎ澄まされてるのを感じるわ。今なら悪魔とも戦える気がする。
407:名無しのプレイヤー
おいおい大丈夫かよ
408:名無しのプレイヤー
待て早まるな。落ち着け!
409:名無しのプレイヤー
心配ないって。じゃちょっくら行ってくるわ!
410:名無しのプレイヤー
>>409ーー!?
411:名無しのプレイヤー
惜しい人を亡くしたな……
411:名無しのプレイヤー
>>409
RIP。安らかに眠れ
782:名無しのプレイヤー
>>398でペインキラーキメて部屋から飛び出した者です。何とか無事? 帰ってきたわ
783:名無しのプレイヤー
おお無事だったのか!? おかえり
784:名無しのプレイヤー
ペインキラーは結構やばい薬かもしれん。服用してすぐに目が冴えて気分が高揚してきた。
痛みに対して鈍感になってるみたいで、悪魔にやられて大怪我しても普通に動けた
785:名無しのプレイヤー
おいおい大怪我って。大丈夫か
786:名無しのプレイヤー
もしや死ぬ前にせめて情報を残そうと……!?
787:名無しのプレイヤー
いや、傷薬も手に入れたから、傷口に軟膏を塗りまくったら魔法みたいに治ったから無事よ
788:名無しのプレイヤー
へー怪我はどんな具合だったんだ?
789:名無しのプレイヤー
ウィルオウィスプの九十九針? にやられて箸みたいな太さの針が10本ぐらいぶっ刺さってた。
790:名無しのプレイヤー
箸のような太さの針……!?
791:名無しのプレイヤー
ひえっ想像するだけで寒気が……
792:名無しのプレイヤー
ペインキラーのお陰か痛みは殆ど無かったな。痛いと言うよりは痒かった。
いつの間にか刺さってた針は消えてたから、血が噴き出す傷口に傷薬塗り込んでたらあっという間に完治したわ
793:名無しのプレイヤー
わりとやべーな薬系
794:名無しのプレイヤー
傷薬ってそんな高性能だったんだな。擦り傷がすぐ治ったって報告は聞いてたけど
795:名無しのプレイヤー
大怪我した上で傷薬を持ってないと試せないからな……
というか傷に直接軟膏を塗るって痛み止めがないとかなりきつい気がする
796:名無しのプレイヤー
>>795
それは確かに。塗ってる最中は結構痒かった気がする
797:名無しのプレイヤー
ペインキラー中の痒み=痛みだとしたらめっちゃ染みてそうだな
798:名無しのプレイヤー
ペインキラー+傷薬が揃えば素人でも結構戦えそうだな
799:名無しのプレイヤー
つーか>>796は今素面なの? ペインキラーの効果時間はどんぐらい? 副作用はある?
800:名無しのプレイヤー
>>799
おう、もう効果は切れてるぞ。効果時間は大体30分ぐらいだと思う。
副作用は今んとこ感じられないかな。ちょっと怠いけど、多分これ普通に疲れてるだけだと思う
801:名無しのプレイヤー
ふーむ。副作用のない覚醒剤や向精神薬の類だと考えるとめちゃ有能だな、ペインキラー
802:名無しのプレイヤー
まだ副作用が表面化してないだけかもしれんぞ。
今はまだ短時間の利用なら副作用はなさそうというだけで、常習していけばどうなるか分からん
803:名無しのプレイヤー
まあな。あんまり使いすぎないようにするよ
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黄色の宝石
900:名無しのプレイヤー
今探索から帰って来たばかりで殆ど流れを追えてないので既出だったらすいません。
原石みたいなごつごつとした黄色い宝石が出たんですけど情報ってありますかね?
『武器に触れさせると……?』と書かれた紙片が一緒に入っていました。
901:名無しのプレイヤー
黄色の宝石って言うと、トパーズ?
902:名無しのプレイヤー
>>901
後はシトリン(黄水晶)、琥珀ってところかな
903:名無しのプレイヤー
悪魔会話で要求されるとか
904:名無しのプレイヤー
そもそも悪魔と会話できんの?
905:名無しのプレイヤー
無理。声をかけても不気味な叫びや笑い声が返ってくるだけ
906:名無しのプレイヤー
ジオストーンとか? いや、武器に触れさせるとってあるし違うか?
907:名無しのプレイヤー
ちょっと前に赤い宝石の発見報告があった気がする。
908:名無しのプレイヤー
>>907
それ俺だわ。原石みたいにごつごつした赤い宝石なら俺も持ってる。
紙にもおんなじことが書いてあった。なお武器がないので試せない模様
909:名無しのプレイヤー
>>900は武器持ってないの?
910:名無しのプレイヤー
一応宝箱から見つけたマチェットがあります。
自分で試す前にどうなるのか知っておきたかったのですが、情報はなさそうですね。大人しく自分で試してみます
911:名無しのプレイヤー
大丈夫だと思うけど気をつけてな。終わったら報告よろー
930:名無しのプレイヤー
>>910です。
マチェットに宝石を触れさせた所、宝石が吸い込まれるように消えてなくなりました。
マチェットの外見上に変化はありませんが、素振りをすると刀身がバチバチと帯電しました。雷属性の武器になったのかな?
931:名無しのプレイヤー
お、検証サンクス
932:名無しのプレイヤー
メガテンに武器の属性を変質させるようなアイテムってあったっけ?
933:名無しのプレイヤー
分からん。派生作品がかなりあるし、全ての作品を網羅してるわけじゃないからなー
934:名無しのプレイヤー
武器と悪魔を合体させて強力な武器を作るとかはあったけど、ダクソの変質強化みたいな、そういうのは無かったような。
935:名無しのプレイヤー
最初から属性やバステ付与効果のある装備はあったけど、後からつけられる仕組みなんてあったかなー?
936:名無しのプレイヤー
メガテンやペルソナの装備は基本買い替えで、強化して長く使うとかはなかった印象
937:名無しのプレイヤー
>>930
それ持ってて痺れないの?
938:名無しのプレイヤー
>>937
柄を握ってる分には何ともないです。帯電状態の刀身を壁に触れさせたら小規模な雷が起きました。壁に焦げ目がついてます
939:名無しのプレイヤー
こっわww
940:名無しのプレイヤー
石の壁に焦げ目をつけるとかどんだけの電圧よ
941:名無しのプレイヤー
取り扱いミスったら自爆しそう。俺だったら振り回したくねー
942:名無しのプレイヤー
雷属性ってことは悪魔の弱点つけるんじゃね? 試してきてくれん?
943:名無しのプレイヤー
>>942
無茶いうなw
944:名無しのプレイヤー
>>942
武器は護身用として持っていくつもりなので、もしかしたら試す機会もあるかもしれません。その時はまた報告します
945:名無しのプレイヤー
おっ、もしかして攻略組だったか? 頑張れー
945:名無しのプレイヤー
くっそー、俺も武器があればな。それかトレードができれば……。単体で持ってても意味ない奴じゃんこれ>赤の宝石
さて、どうしたものか。
掲示板上ではまるでこれからもバリバリ探索していくような態度を取ってしまったが、実のところそんなに行くつもりは無かった。
食料が尽きたら再び調達に出るつもりの為、完全な嘘ではないが。あまり積極的に危険を冒すつもりはない。
その点は引きこもり組と言われている面々と同じだ。
より強力な特典を貰う為にと、採点基準もよく分かっていないスコアを高めることに情熱を燃やし、積極的に探索を行う攻略組のようには成れない。
快適に暮らしたいからこそ、それを得るために富や権力を求めて自分を磨く努力をする。
特典とやらも力の一つだ。結局は『快適に暮らす』という目標の為の手段に過ぎない。
力を得るために死ぬような危険な目に遭うかもしない行為を行うのは、本末転倒な気がする。
「……転生先にもよるか? これから行く世界が崩壊後のメガテン世界とかの場合、力こそが正義で特典が生命線になる可能性も……」
そう考えると、今頑張るのも選択肢としてアリだと思えてきた。
うーん、難しい。
「せめてもうちょっとやる気になるような飴があればな……」
そうぼやきながら掲示板を見ていると、気になる書き込みを見つけた。
965:名無しのプレイヤー
深部の探索中にホテルみたいな部屋を見つけたわ。高級ホテルのシングルルームみたいな感じ?
トイレ・シャワー・風呂付き。もちろんベッドもある。パソコンもあって今はそこから書き込んでる
966:名無しのプレイヤー
マジで??
967:名無しのプレイヤー
ホントか?
968:名無しのプレイヤー
ID辿って過去レスを見ると、確かに攻略組っぽいな
969:名無しのプレイヤー
書き込むパソコンを変えたのにIDは変わらんのか? 何か疑わしいな
970:名無しのプレイヤー
>>969
その辺はよくわからん。俺も驚いてる
971:名無しのプレイヤー
まあ状況が状況だしな、電源が繋がってなくても動くPCだし、IDが変わらないこともあるかもしれん
972:名無しのプレイヤー
無理に信じろとは言わないけど、一応報告させてもらった。俺はこれから風呂入って寝る
973:名無しのプレイヤー
いいなー
974:名無しのプレイヤー
快適な一室は危険を冒して探索するプレイヤーへのご褒美なのかも。
そう考えると信憑性があるようなないような
975:名無しのプレイヤー
くっそ、めちゃくちゃ羨ましい。せめてトイレとベッドだけでも欲しいわー
976:名無しのプレイヤー
トイレは割と切実だよな。引きこもりは部屋のすぐ外が便所になってるもん。きたねーわ
977:名無しのプレイヤー
トイレはどうでもいいけどベッドは欲しい。硬い床で横になっても眠れねーよ
978:名無しのプレイヤー
シャワーも浴びたい。暖かいお風呂に入りたーい
「高級ホテルのシングルルーム……トイレ・風呂・シャワー付き……」
凄く羨ましいと思った。俺もその部屋を見つけたい、とも。
「行くか」
急にモチベが湧いてきた俺は、すくっと立ち上がって探索に向かう準備を始めた。
バッグを発見していないので、ハンズフリーで持っていけるのは、着ている白いコートのポケットに入る小物だけだ。
携帯食としてカロリーメイトを1袋。傷薬とペインキラーも忍ばせておく。
雷属性のエンチャントを施したマチェットを持ち、準備は完了だ。
俺はまともな住環境を手に入れる為、悪魔の徘徊する危険な迷宮に再び足を踏み入れた。
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ウィルオウィスプ
仄暗い迷宮内。
脇道からヌッと姿を現したモノを見て、俺は全身から血の気が引いた。
「あっ……」
『■■――!』
「やっべ……!」
それは通路の中空を浮かぶ、紫の人魂。迷宮内を徘徊する悪魔であるウィルオウィスプだった。
後ろに下がっても、しばらく一本道が続く。
相手の足が遅いわけではないし、遠距離攻撃手段も持っている。背を向けて逃げても、追いかけてきたウィルオウィスプに九十九針を射られ、非常に苦しい逃走劇となるだろう。
把握している安全地帯も遠い。ここはやるしかない。
しばしの逡巡。俺は覚悟を決めて、マチェットの柄を握りしめて咆哮した。
「う、うおおおお!!」
己の怯懦を払拭するように声を張り上げ、通路に浮かぶ人魂に向かって突貫する。
特攻じみた闇雲な突撃ではない。勝算はある。この雷の力を纏うマチェットを奴に当てれば、きっと弱点を突けるはずだ!
――本当に?
そう疑う気持ちもあったが、俺はそう信じた。信じたかった。
僅かに迷いが生じた所為か、それとも普通に速度で負けていたのか。先手を取ったのはウィルオウィスプだった。
ウィルオウィスプの周りに無数の針が生み出され、それが勢いよく飛来する。
「ぐっ……!」
着弾。衝撃はそれほどでもなかったが、全身から生じる激痛に思わず足が止まる。正確な被害状況をすぐさま知ることはできなかった。
激しい痛みの不協和音で、何本の針がどこに突き立っているのかもよく分からない。咄嗟に顔の前でクロスさせた腕にも、深々と針が突き刺さっている様が見て血の気が引いた。
――ここで止まったら駄目だ。動け!
痛みとショッキングな光景を目の当たりにして混乱した精神を、俺の中の冷静な部分が活を入れる。
こんな敵の真ん前で動きを止めれば、待っているのは死だけだ。
「ああああ!!」
恐怖で萎えそうになる気力を振り絞り、俺は不気味な人面の浮かぶ紫の人魂に向かって一歩を踏み出し、片手で振りかぶったマチェットを叩きつけた。
攻撃に呼応して、無数の雷光を纏う黒刃。ウィルオウィスプは空中でひらりと身を躱し、その直撃を回避した。
かろうじて先端が掠ったのか、微かに引っかかるような手応え。殆ど空振りと変わらない感触の無さに、俺は外したと絶望的な気持ちになった。
しかしその掠り傷は、ウィルオウィスプに対して劇的な効果を齎した。
『■■■ー!?』
僅かに触れたマチェットの穂先から、目も眩むような稲妻が放たれた。小規模な雷に打たれたウィルオウィスプは、感電したかのように体を硬直させていた。
(い、今だ!!)
このチャンスを逃すまいと、俺は雷光を纏うマチェットを振り回した。
空中で体を静止させるウィルオウィスプはただの的だった。渾身の力で何度もマチェットで切りつけると、やがてウィルオウィスプは力尽きたような呻きを残し、光の粒子をまき散らし空気に溶けるようにして消えていった。
「ぜえ、はあ……か、勝ったのか」
残された光の粒子が自分の体に纏わりつき、その肉体に吸収されていく様を、俺は呆然と見つめた。
【攻略】迷宮攻略スレ5【情報交換】
456:名無しのプレイヤー
以前雷属性のマチェットを作った者です。ウィルオウィスプを倒してきました。
やはり電撃は弱点だったようで、攻撃を当てると硬直したので楽に倒せました。
そしてウィルオウィスプを倒した際に、レベルアップのような現象を確認しました。
特殊能力が目覚めた自覚はありませんが、筋力や反応速度、体力といったフィジカル面がかなり増したようです。
457:名無しのプレイヤー
釣り……か?
458:名無しのプレイヤー
嘘っぽい偽報告も結構出てるからなー素直な目で見れない
459:名無しのプレイヤー
自称悪魔を倒した奴はもう10人ぐらいいるからな
460:名無しのプレイヤー
そんなに嘘松いるのかよ
461:名無しのプレイヤー
いや、そいつらが全部嘘つきって訳ではないと思うけど、ここじゃ証拠を提示できないからな。発言とログから真偽を判断するしかない
462:名無しのプレイヤー
草。人狼かよ
463:名無しのプレイヤー
とりあえず>>456、その時の状況を語ってくれ。真偽は見た者が勝手に判断する
464:名無しのプレイヤー
>>463
了解です。タイピングするのでちょっと待ってください
480:名無しのプレイヤー
という訳で、倒したウィルオウィスプが光の粒子になって消えると、その光が自分の体に吸収されるように纏わりついてきて、体が軽くなったように感じました。
九十九針を食らって結構な重傷を負っていましたが、レベルアップによって傷が回復するといった現象は確認できませんでした
怪我はその後、所持していた傷薬を用いて治療しました
481:名無しのプレイヤー
ふーむ、発言に特に矛盾は見当たらないな
482:名無しのプレイヤー
属性の弱点突いて倒した、怪我を負って危うく負けそうだった、って言うのも真実味があってホントっぽい
483:名無しのプレイヤー
それな。武器一本で無傷で倒したとか盛ってるとしか思えない話も多い
484:名無しのプレイヤー
無我夢中でよく覚えてない~とか誤魔化さずにできるだけ戦闘の詳細を語ったものグッド
485:名無しのプレイヤー
俺も>>456に対する心証は結構いいかも
486:名無しのプレイヤー
この人って色付き宝石の効果の第一発見者なんでしょ? 他にも宝石の効果を検証する人が現れればかなり話の信憑性が増すね
487:名無しのプレイヤー
つってもそれ自体嘘の可能性もあるからなー
488:名無しのプレイヤー
逆に他の自称悪魔討伐者が嘘が発覚しないために嘘を重ねることもありうるからな。
発言ログは要チェックだな
489:名無しのプレイヤー
俺は>>456をかなり白目で見てる。
書き込みは最低限だし自己顕示欲があるようには見えない。レスも丁寧だし義務感で報告してる感じ。
いつ探索に出てるんだってぐらい多弁な自称攻略組よりは今のところ信用してる
490:名無しのプレイヤー
皆節穴すぎだろ。
>>456の話なんて嘘に決まってるだろ?
491:名無しのプレイヤー
>>490
だったら根拠を示せよ、自称スキルが使える異能者くん?
492:名無しのプレイヤー
>>490
お前の話だとレベルアップすると体力が回復するしスキルを覚えるんだっけ?
あれれー? おかしいなー? どっちが嘘をついてるんだろうなー?
493:名無しのプレイヤー
マジで人狼みたいになってて草枯れる
494:名無しのプレイヤー
どうしてこんな余計なことに労力を使わなきゃならんのかね……ホント疲れるわ
495:名無しのプレイヤー
この緊急事態でなぜ普通に協力し合うことができないのか……マジで嘘つきは死ねよ
496:名無しのプレイヤー
自己顕示欲を拗らせてるのか、周囲を困らせたり不幸にしたい捻くれ者か。
なんにせよまともな人格はしてないだろうな
497:名無しのプレイヤー
俺は割と好きだな。こんな状況でも足を引っ張ろうとする人とか、それに苛立つ人とか、真面目に振る舞う人とか……書き込みから色んな人間模様が垣間見えて面白い
498:名無しのプレイヤー
>>497
これを腹を空かせた引きこもりが強がってレスしてると思うと、確かに面白いな
499:名無しのプレイヤー
ギスギスしてきたな……
500:名無しのプレイヤー
??「深淵を覗き込む時、深淵を覗いているのだ……」
501:名無しのプレイヤー
>>500
……ん???
502:名無しのプレイヤー
>>500
byニーチェ
503:名無しのプレイヤー
>>502
ニーチェ「えっ!?」
504:名無しのプレイヤー
>>503
デカルト「我思う、故に我思う」
ソクラテス「生きる為に食べよ。生きる為に食べるな」
アリストテレス「垣根は相手がつくっているのではなく、相手がつくっている」
プラトン「目は心の目である」
カント「存在するとは、存在することである」
ヘーゲル「天才を知る者は天才である」
マルクス「豊かな人間とは、自身が富であるような人間のことであって、富を持つ人間のことである」
505:名無しのプレイヤー
草
506:名無しのプレイヤー
やめろww
507:名無しのプレイヤー
名言詳しいなおいw
508:名無しのプレイヤー
錚々たる面子が適当な事言っててワロタ
509:名無しのプレイヤー
一人改変されてないのが混じってて耐えられなかった
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巻き
【攻略】迷宮攻略スレ24【5日目】
200:名無しのプレイヤー
大分勢い落ちたな……
201:名無しのプレイヤー
まあな。かなり人が減った。
202:名無しのプレイヤー
あれだけ賑わってたのに皆死んじまったのか……
203:名無しのプレイヤー
悲しいなぁ……
204:名無しのプレイヤー
3日目のあれはヤバかったね
205:名無しのプレイヤー
禁止区域指定か……いきなりバトロワみたいな安置縮小が始まったからな。
初期部屋に残っていた人の大半がガスに飲まれて死んじまった
206:名無しのプレイヤー
1時間前に知らされるっていう唐突さだったからな。
最初から次のセーフルームを確保してた人じゃなきゃ無理だろあんなの
207:名無しのプレイヤー
一応ガスに追われながらも深層に飛び込んで、生き延びてセーフルームを見つけたっていう豪運の持ち主もそこそこいるけどな
208:名無しのプレイヤー
また次もあるのかねぇ……奥は更に敵のレベルが上がってるんでしょ? 厳しすぎる
209:名無しのプレイヤー
ピクシー、カブソ、コダマ。どれもLV2~LV3相当と目されてるな
210:名無しのプレイヤー
次のセーフルームはロイヤルスイートの豪華仕様だぞ!!
211:名無しのプレイヤー
なお手に入るアイテムの質は変わってない模様
212:名無しのプレイヤー
(´・ω・`)
213:名無しのプレイヤー
敵からのドロップ率は上がってるから……(震え声)
214:名無しのプレイヤー
傷薬とペインキラーな。もうすっかり薬漬けの体だよ
215:名無しのプレイヤー
薬2種はマジで生命線だよなぁ。この二つがなきゃ戦うどころじゃなかったぜ
216:名無しのプレイヤー
ふへへ……ペインキラーがないと俺はもうだめだ……効果が切れると体が震えてくるんだ……
217:名無しのプレイヤー
……大丈夫かこいつ
218:名無しのプレイヤー
副作用はないっぽいんだけどな。俺もかなり常用してるけど体調は何ともないし
219:名無しのプレイヤー
ペインキラーには精神高揚の効果もあるし、鬱を薬でどうにかしてる状態なのかもな。それで薬が切れると不安になると
220:名無しのプレイヤー
気持ちは分かるなぁ……。自分もこの先不安でしかたがないです。まだ悪魔を1体も倒せてないし……
221:名無しのプレイヤー
あらら。それはまずい
222:名無しのプレイヤー
>>220がこの先生きのこるには
223:名無しのプレイヤー
>>220
1:まず頑張って悪魔と遭遇しないようにしながら宝箱を漁り
最低限の装備(何らかの武器、傷薬、ペインキラー)を手に入れましょう。
2:ペインキラーをキメてウィルオウィスプに戦いを挑みましょう。
ウィルオウィスプは物理耐性持ちですが、その代わりHPが低いため、実質的な耐久力はポルターガイストと大差はありません。
3:ポルターガイストのブフと違い、ウィルオウィスプの使う九十九針は物理技でHPを(多分)消費し、状態異常もありません。
一発一発の攻撃は弱いため、どうにか急所だけは避けながら、気合で殴り続けて倒しましょう。
宝石を手に入れることができれば、ウィルオウィスプは弱点が多いため、より楽に倒すことができます。
224:名無しのプレイヤー
>>223
テンプレ乙
225:名無しのプレイヤー
>>223
これが出来れば苦労しないんだよなあ……
226:名無しのプレイヤー
最後は結局気合だもんな。やり直しがきくゲームならともかく、負ければ死の一発勝負で勝てる気がしない
227:名無しのプレイヤー
属性攻撃出来ればかなり楽になるって聞いて宝箱漁ってるけど、中々宝石でないし
228:名無しのプレイヤー
もうすぐ6日目だな。禁止区域指定、また来るのかな
229:名無しのプレイヤー
準備は全くできてないぜ!
230:名無しのプレイヤー
俺も。次来たら確実に死ぬわ
231:名無しのプレイヤー
ここに辿り着くだけでも死に物狂いだったからな……更に先に進めとか言われたって無理無理
232:名無しのプレイヤー
多分次の安置縮小が来たら、生き残りの9割は死ぬでしょ
233:名無しのプレイヤー
悪魔倒せてない人が大多数だもんな
234:名無しのプレイヤー
テンプレ通りの最低限の装備を整えても、突破できた人は5人に1人程度しかいなかったもんな……それでみんな尻込みした
235:名無しのプレイヤー
今も足踏みしている俺らが5分の1以下の存在になれるとは思えないんだよなあ
236:名無しのプレイヤー
バリバリ悪魔を倒してレベリングとかしちゃってるトップ層が頭おかしいんだよ
窓のない豪華なホテルの一室。
俺は風呂上りのバスローブ姿で、柔らかなソファに体を預けてぼんやりと天井を見上げていた。
「はあ……チュートリアルって、いつになったら終わるんだよ……」
もう5日経ったぞ、5日。もう2~3時間で6日目に突入する。
終了に関するアナウンスは今のところ皆無だった。
3日目の直前に、運営(?)からの介入自体はあった。禁止区域の指定だ。
初期部屋とその周辺区域を禁止エリアに指定して、時間になったら毒ガスが充満する。
そんなことを迷宮全体に響き渡るような放送で、たった1時間前に知らされた。
既に先のエリアのセーフルームを拠点にしていた自分からしたら大して影響は無かったが、当時プレイヤーの多数派を占めていた初期のセーフルームに留まっている人にとっては大問題だ。
掲示板上は阿鼻叫喚だった。
助けを求める者、愚痴や怨嗟を叫ぶ者、スレは荒れに荒れた。
微かな希望を求める人は早々に行動へ移り、パソコンの前からいなくなっていたので、部屋に残ってPCに張り付いていたのは生存を諦めた者だけだ。
それも時間になると、書き込みはぱったりと止んだ。
そしてぽつぽつと、どうにかセーフルームを見つけて生存した者が現れ始めた。
しかし初期の頃の掲示板の賑わいは無くなっていた。恐らくもうプレイヤーの数は100人を切っているだろう。
いつの間にか自分は、プレイヤーの中ではかなり成功した部類となっていた。
ウィルオウィスプとポルターガイストが徘徊するエリアの更に奥、出現する悪魔が1段階強くなった場所。そこのセーフルームが、高級ホテルのロイヤルスイートを思わせるこの豪奢な部屋だった。
悪魔に怯えて逃げ回る側のはずだったが、いつの間にか立場は逆転した。
今の俺は悪魔を狩る側になって、レベルアップと思しき身体能力の向上も何度かしている。
掲示板では、自分のようなプレイヤーも何人かいて、他のプレイヤーからは実力のあるトップ層と目されているようだ。
その成果を、俺は全てが自らの実力で得たモノだとは思っていない。
どうして成功できたのかと言われたら、運が良かった。それに尽きる。
もちろん、自分の判断や行動が結果を左右する要因にもなっただろう。しかし結局の所は運だ。
最初の探索で悪魔と遭遇しながらも、安全地帯のトイレに逃げこめた幸運。
1度の探索で、武器・雷の貴石・傷薬・ペインキラー(使ってないけど)、必要なもの全てが揃った強運。
俺の行動の結果は、運に恵まれていた。
サイコロを振って、たまたま出た目が良かっただけ。同じことをやっても上手くいくかどうかは分からない。そう思っている。
これを己の実力だと勘違いして、慢心するようになったら、きっとろくでもない末路を辿るだろう。
勘違いしてはいけない。自分は凡人だ。主人公補正なんてない。ただこの世界を生きる1人の人間に過ぎない。
警句のように内心で呟く。
環境が激変し、その中でも上手くやれていることで、最近どうにも気が大きくなり始めている。
自信を持つことはいい事だが、行き過ぎれば毒だ。客観的な視点を決して失わないようにと、俺は時たまこうして自分に警告していた。
「くぁ……もうすぐ23時だな」
欠伸を噛み殺しながら時計を見る。
三日前と同じ時間。また禁止区域指定があるとしたら、同じ三日後の23時だろう。
「……」
しかし何も起きなかった。
掲示板を見れば、喜びの声に溢れていた。
来ると身構えていたモノが来なかったことに、釈然としない気持ちを抱く。しかしないなら良かった。
「寝るか」
そして俺はキングサイズのベッドに横になり、布団をかぶって目を閉じた。
割とどこでもすぐに眠れるのは、俺の密かな特技だったりする。
眠りに落ちた約1時間後。日付の変わる7日目の0時。
7日目の終了を以てチュートリアルが終わるという重大な連絡事項がアナウンスされて、掲示板はお祭りになっていたが、ぐっすり眠っていた俺は気が付かなかった。
それを知ったのはきっかり8時間後。午前7時の事だった
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天使
【祝】チュートリアル終了まであと24時間!【禁止区域指定なし】
1:名無しのプレイヤー
やったーーー!!
2:名無しのプレイヤー
ついに終わる! ここまで長かったぜ……
3:名無しのプレイヤー
いうてまだ6日しか経ってないんだよな。もっと長く感じた
4:名無しのプレイヤー
やることなく部屋に閉じこもってれば、そりゃ体感時間も長く感じるわな
5:名無しのプレイヤー
何にしてもめでたい。安置収縮もないようで一安心だよ
6:名無しのプレイヤー
戦々恐々としてたからなー、まじで
7:名無しのプレイヤー
しかしチュートリアル終了か。次は何が始まるんだろうな
8:名無しのプレイヤー
そら本編やろ
9:名無しのプレイヤー
どこで何をさせられるやら……一難去ってまた一難だな
10:名無しのプレイヤー
オープンワールドのMMORPGって話だったし、俺ら纏めてメガテン世界に放り込まれるんじゃ?
11:名無しのプレイヤー
一口にメガテンと言っても派生作品が色々あるけど
12:名無しのプレイヤー
崩壊は嫌だ崩壊は嫌だ崩壊は嫌だ
13:名無しのプレイヤー
メガテンと言えば東京は滅ぶ
14:名無しのプレイヤー
ゲーム内映像を見た限り、舞台は現代っぽかったけどな
15:名無しのプレイヤー
うむ、異界っぽい風景が多かったけど、現代の街並みが映ってた。荒廃してるようには見えなかった
16:名無しのプレイヤー
世紀末みたいな世界じゃなければ何でもいいわ。
表向き世界が平穏なら、裏で何が起こってようが気にしない
17:名無しのプレイヤー
その気になれば平穏に生きられる世界なら絶対悪魔関係には関わりたくねえ。
世界の危機とかあっても他の人に任せるわ
18:名無しのプレイヤー
引きこもりが許される寛容さが運営にあればいいけどね……(3日目の禁止区域指定を見ながら)
19:名無しのプレイヤー
2度目は無かったし、多少慈悲はあるはず(震え声)
20:名無しのプレイヤー
スコアに応じた特典が貰えるらしいけど、皆自分のスコアは意識してる?
21:名無しのプレイヤー
全くしてない。というかほぼ引きこもってるだけだし、加点される要素がない気がする
22:名無しのプレイヤー
加点要素を推測するとしたら
探索(迷宮踏破率、入手アイテム)、戦闘(レベル。悪魔を倒した数)とかか?
23:名無しのプレイヤー
簡単なルール説明の紙には、生存してスコアを高めようって書いてあったし、多分生存時間でもスコアは入ると思う
24:名無しのプレイヤー
生存時間に応じてスコア加算?
それって意味あるんか? 皆7日生存じゃん
25:名無しのプレイヤー
チュートリアルで死んだ人も生き返るなら意味があるんじゃない?
チュートリアルで死亡してそのままって言うのもゲームとしてどうかと思うし
26:名無しのプレイヤー
どうかな。デスゲームだったらその位シビアでもおかしくない
27:名無しのプレイヤー
つーか現実に帰れるならともかく、またゲームの駒にされるぐらいなら死んでた方がマシな気がする
28:名無しのプレイヤー
それな。せめて本人の意思ぐらい確認して欲しいね。
俺だったら死んだ後にもまたこんな苦労するのはごめんだよ
29:名無しのプレイヤー
現実かぁ……俺ら、元の世界に戻れんのかね……
30:名無しのプレイヤー
ゲームならクリアすればワンチャン?
31:名無しのプレイヤー
もしかしたらこれはデスゲームでも何でもない普通のゲームで、ゲームオーバーになったら解放されるという可能性も微レ存
32:名無しのプレイヤー
この世界は何なのか。誰が何の目的でこんなことをしているのか。俺達は死んだらどうなるのか。いつになったら解放されるのか。
その辺全てが不明だからな。なーんも分からない。マジで俺達ゲームの駒だなって思うよ
33:名無しのプレイヤー
命を弄びやがって。俺達だって生きてるんだぞ、くそ
34:名無しのプレイヤー
そういえば運営に対する恨み言や罵詈雑言ってあんま見ないよな。なんでだろ?
35:名無しのプレイヤー
>>34
いやだって見られてるかもしれないと思うと後が怖いし
36:名無しのプレイヤー
いるかもしれない神に唾吐くような真似、正気じゃできん
37:名無しのプレイヤー
名前を言ってはいけないあの人かな?
38:名無しのプレイヤー
そこまで極端ではないけど、何が起こるか分からないし極力触れたくない気持ちはある
39:名無しのプレイヤー
ところで皆今日はどうする予定? 24時間後には終わるわけだけど
40:名無しのプレイヤー
食料調達の必要もないし、部屋に引き籠る
41:名無しのプレイヤー
同じく
42:名無しのプレイヤー
俺も
43:名無しのプレイヤー
スコアの上乗せを狙って狩りしようと思ってる。
レベルやアイテムは引き継がれるかもしれないし、稼いどいて損はないっしょ
44:名無しのプレイヤー
トップ連中はいいよな、楽しそうで
45:名無しのプレイヤー
ゲーム感覚で迷宮探索して悪魔狩ってるみたいだもんな。
ほんとに同じ難易度でプレイしてるのか疑うレベル
46:名無しのプレイヤー
まあ成功者ってのは傍から見ればそんなもんだ
47:名無しのプレイヤー
MMOって話だし、強いプレイヤーがいるのは心強いけどな。
攻略組が勝手に全てを終わらせてくれるならそれに越したことはない
48:名無しのプレイヤー
スコア、スコアかー。終わりが見えてくるとやっぱちょっと気になるな。
どういうのが貰えるんだろうな、特典って。
49:名無しのプレイヤー
いきなりこんな所に放り込まれるわけだし、ユーザーフレンドリーって訳じゃなさそう。そこまで期待しない方がいいと思う
50:名無しのプレイヤー
まあ流石にバランス崩壊級のチート能力は与えられんわな
51:名無しのプレイヤー
レベルアップしてもスキルは覚えてないみたいだし、その辺のテコ入れが入るんじゃないか?
52:名無しのプレイヤー
スキル配ったりとか? まあありそうだな
53:名無しのプレイヤー
他にはステータスが増加したり、アイテムを貰えたりとか、その辺の細かいボーナスな気がする
54:名無しのプレイヤー
ゲームと違って俺らは生きてる訳だし、生活基盤に関する特典とかもあるかもな
55:名無しのプレイヤー
あー確かに。何の後ろ盾もなく見知らぬ世界に転移させられても困るし
56:名無しのプレイヤー
本命:ステ補正やアイテム、スキル。
対抗:生活基盤の用意。
大穴:チート能力プレゼント。
って感じか
57:名無しのプレイヤー
その中だったら生活基盤が欲しいな。メガテン世界でサバイバルとか勘弁してくれ
58:名無しのプレイヤー
QOLの低下で苦しめられた身としては、俺も選べるなら生活基盤かな。
戦闘能力が向上したところで普通に生きる分にはあまり意味がない
59:名無しのプレイヤー
現代なら比較的マシではあるけど、社会的身分がないとまともな職に就けないしな
60:名無しのプレイヤー
そこで裏社会の出番ですよ
61:名無しのプレイヤー
戸籍もなく無一文で悪魔が裏側に潜む現代日本へ。
ホームレスをしながら職を探すも見つからず。このままでは野垂れ死にだ。
生きる為に仕方なく、彼/彼女は危険を承知で裏の世界へと足を踏み入れるのだった……。
62:名無しのプレイヤー
ありそうだから困る
63:名無しのプレイヤー
実際、無戸籍無一文で放り出されたらどうすりゃいいんだ?
64:名無しのプレイヤー
都市サバイバルだな。まあ最悪保護してもらえば、基本的人権が保障される国なら死ぬことは無い筈
65:名無しのプレイヤー
自分でどうにかできない状況になって意地を張っても死ぬだけだからな。そういう時は大人しく周囲に助けを求めよう
66:名無しのプレイヤー
>>64 >>65
それで助けてもらえなければどうすればいんですかね……?
67:名無しのプレイヤー
頑張って生きろ。このチュートリアルを生き残った君ならなんとかなるはずだ!
68:名無しのプレイヤー
無責任で草
69:名無しのプレイヤー
なんだかんだ言って俺達はこの7日間の試練を生き抜いた訳だし、自信をもっていいと思うよ
70:名無しのプレイヤー
まあな。ここまで生き残っているってだけでも、プレイヤーの中では上澄みにいる訳だし
71:名無しのプレイヤー
そうそう。きっと何とかなるって
チュートリアル7日目、23:59。
前日にチュートリアルが終わると宣言されてから、丸一日。ついにその時間がやってきた。
俺は何が起きてもいいように装備を整え、パソコンの前に座ってとあるスレでのカウントダウンを眺めていた。
こんな時に迷宮に赴いている者はいない。生き残っている全てのプレイヤーがPCに向き合っているだろう。
ようやくチュートリアルが終わり、この迷宮から解放される達成感。その後の期待と不安に揺れる書き込みで、掲示板ではお祭り騒ぎだ。
チュートリアル最終日を無駄に過ごすまいと、俺は今日一日、みっちりと悪魔を狩ってレベル上げを行った。
悪魔と戦いの難易度は、最初がピークだった。
経験を積み、装備やアイテムが整い、レベルが上がって余裕ができて。安全マージンを取れるようになると、悪魔との戦闘のリスクはぐっと減った。
スコア加算による特典向上という、通常の狩りよりも明確なメリットのある、言ってみればお得な状況がこのチュートリアル期間だ。
これがリアルだから尻込みする者が多いだけで、本当にゲームならこの美味しいイベントを逃すまいと、皆競って狩りをしている事だろう。
どうせこの先、悪魔と戦わされる可能性が高いのだ。
チュートリアルでの狩りと、それが終わった後での狩り。
同じ労力でも得られるものには差が生じるだろう。
今苦労することで幸先の良いスタートが切れるなら、ここが踏ん張りどころだろう。
そう思って狩りに励んだ。
レベルアップの影響か体力が増してタフになっているとはいえ、流石に丸一日ぶっ続けは疲れた。
適度に休憩を取りながらではあったが、回復する体力よりも蓄積する疲労の方が多かった。
今のコンディションはかなり悪い。
もしもこっから戦闘イベントみたいなのが始まった場合、俺は非常に困ることになる。
しかし流石にそれは無いだろうと思っていた。
「……ないよね?」
今更ながら少し不安になってきた。
アイテムが引き継げるとは限らないからと、手持ちのペインキラーを使いまくって疲労を飛ばして戦っていたのはやり過ぎだったかもしれない。
その時はハイテンションになっていたので「いけるいける」という気持ちだったが、振り返ってみれば危ない橋を渡ったものだ。
「ま、やっちゃったもんは仕方ないか」
とりあえず、やらかした甲斐もあってスコアには自信がある。
自分の判断を信じようじゃないか。
やや楽観的な気持ちで、俺は時計の秒数を眺めていた。
57、58、59、00……。
ブツン、と備え付けられていた大型テレビに電源が入った音がした。
パソコンとは違い電源が入らず、置物状態だった筈のテレビ。それが突然映像を映し出したことに、俺は驚くと共に、ある種の納得を得た。
大画面の液晶モニターに映し出されたのは、一人の少女の姿。
長い金髪と白いローブをゆったりと漂わせた、あどけないながらも思わず見惚れそうになるほどに整った顔立ち。
頭上には天使のような光輪を冠し、背中からは三対六枚の純白の翼が画面に見切れながらも広がっている。
『天使』
その形容以外の言葉が浮かばない。圧倒的な存在感を持つ美少女だった。
『ごきげんよう、プレイヤーの皆さん。こうして顔見せするのは初めてですね。しかし名乗るほどの者ではありません。どうぞお気軽に『天使』とでもお呼びくださいませ』
二コリ、と天使の少女は穏やかに微笑み、心地よい響きの優し気な声でそう口にした。
可憐な容姿と優美な振る舞いに思わず好感を抱きそうになるが、しかし俺は頭を振って警戒心を強めた。
少し展開に迷っているので、アンケートを取ってみる
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特典
メガテンの天使。
もうそのフレーズだけで信用できない。天使面していたところで、結局は『悪魔』に過ぎないのだ。
ようやく見えた黒幕と思しき存在。
それがどんなことを話すのかと、俺は固唾を呑んで見守った。
『まずはチュートリアル、お疲れ様でした。これよりスコアの算出、及び特典の付与、その後に転生を行います。戦闘は無いので、どうぞ肩の力を抜いてお聞きください』
慈母のような笑みを浮かべて天使がそんなことを言っているが、いまいち信用ならない。
他のプレイヤーの反応はどうだろうかとパソコンの画面をちらりと見る。
「ん……? 書き込みが止まってる?」
しかし見ていたスレッドは、0時前の時点で書き込みが止まっていた。
試しにレスをしてみたが、エラーが出て書き込むことができなかった。他のスレも確認してみたが同様だ。どうも掲示板全体が凍結されているらしい。
相談が封じられた?
『プレイヤーの皆様には独力でキャラクター作成を行って欲しいと考え、掲示板の機能を一時停止しております。ご了承くださいませ』
こちらの動向を見ていた訳ではないだろうが、ちょうど天使から説明があった。
『今しがた生き返り、状況を理解しておられない方々は大勢いらっしゃると思われますが、途中で死んでしまった方々の為の説明に時間を割くつもりはないのであしからず』
チュートリアルで死んだ人が生き返っているのか?
というかやっぱ性格悪いなこの天使。自分で蘇生しておいて話についてこれない奴は見捨てるって酷すぎるだろう。
やはり天使の皮を被った悪魔……。
『では転生先の設定を決めていきましょう。お手元にあるパソコンの画面をご覧ください』
促されてPCモニターを見ると、どこかで見たようなフォーマットのステータス画面のようなものが表示されていた。
いや、これはキャラクターシートか?
『なにをどうすればいいのか、ゲーマーの皆様には細かい説明は不要でしょう。締め切りは1時間後です。では私はこれにて失礼いたします。プレイヤーの皆様のご武運をお祈りしています』
その言葉を最後に、テレビから天使の姿は消えた。
テレビモニターの電源は切れ、ただ真っ暗の画面だけが映っている。
「……え? それで終わり?」
説明らしき説明もないまま終わってしまった。
肝心の事は何も言っていない。不完全燃焼であった。あの天使は一体何だったのか。疑問だけが深まった。
「はあ……」
やっぱりクソ天使じゃないか。
固まっていても仕方がないので、キャラクターシートに目を通していく。
スコア:1042(評価:S)
覚醒能力特典:ガチャを引いてください。スコアボーナス『SR確定』
住居:ガチャを引いてください。スコアボーナス『SR確定』
所持金:ガチャを引いてください。スコアボーナス『SR確定』
ステータス:ボーナスポイントを割り振ってください。余剰10P。
「ふむ……?」
大半はガチャで決めるらしい。
だが俺はスコアボーナスとやらで全てSR確定のようだ。どれも一発勝負のようなので、最低保証はありがたい。
ステータスは……力・速・魔・体・運のメガテン風ステータスに、ボーナスポイントとして与えられた10Pを自由に割り振れるようだ。
レベルは初期化されるのだろうか、ステータスに表示されているレベルは1で、各ステータスもALL1だった。
「ステ上限はいくつなんだろうな。40なら10Pは大きいけど、99だと微妙、999だと……うん」
まあ初期ステータスが1なので、そこまでインフレはしないと思うが……。
「とりあえずガチャ引いてみるか」
他の要素を決めれば、ステータスの優先度も見えてくるだろう。
まずは特典ガチャだ。
クリックすると、ソシャゲだったら落第だろう、何一つ購買意欲をそそらないシンプルなガチャ画面が表示された。
『覚醒能力特典』
レベルが上がるほど、より特典元の力に近づいていく。特典元のキャラになりきることで、覚醒効率アップ。
書いてあることがピンとこない。
覚醒者や転生者として前世の悪魔をガチャで決めるのか?
しかしキャラになりきるとかなんのこっちゃ。
まあ試してみれば分かるか?
『1回(SR確定)』と書かれたボタンをクリックする。
「おー、虹演出だ」
一応演出はあるらしい。光が収まると、物凄く見覚えのあるキャラクターの立ち絵が出てきた。
「んん???」
予想していなかった人物の姿。目頭を揉んでから二度見するが、見間違いではないらしい。
長い黒髪を後ろで縛り、紫と黒の石畳模様の着物姿。6つ目を持った異貌の侍。
近年、社会現象となるほどに流行した漫画の登場人物。敵勢力の最高幹部。その名は……。
『黒死牟(鬼滅の刃)』
特典名には、しっかりと名前から出典まで記されていた。
「なんで鬼滅のキャラが……? メガテン関係なくね?」
もしかしてプレイヤーに与えられる能力は、全て他作品から輸入しているのだろうか。
レベルが上がるほど、特典となるそのキャラ本来の力に目覚めていくという事か……?
黒死牟のスペックを思い出してみる。
鬼滅の刃の世界では、ラスボスとバグ、2人の例外を除けば最高峰の実力者だ。
全集中の呼吸を修め、痣や透き通る世界に至るほど剣士として完成された腕前。鬼の身体能力に回復力、そして理不尽な間合いを持つ血鬼術。
弱点などを含めてどこまで再現されるのか分からないけど、普通に強そうだ。
当たりの部類じゃないか、これは? さすが確定SR。
他のラインアップはどんな感じなんだろうな。
成長することで能力が解放されていくのなら、これは潜在能力みたいなものか。
ランクが高いほどスケールし、ランクが低いと伸びしろも少ない感じだろうか。それだとかなり残酷だな。シビアなソシャゲみたいに高レアじゃないと使い物にならず、人権がないみたいなことにならなければいいが。
後は……なりきりってつまりコスプレだよな。
黒死牟の衣装は、和服だけどまあ奇抜ってほどではないし、成長を早めるという実利があるなら普段着にしても全然いけるな。
向こうの世界に原作があるとは限らないし、キャラの特徴はしっかりと覚えておこう。
時間制限もあることだし、他のガチャもサクッと済ませていく。
で、結果がこうだ。
住居:関東。分譲マンション。
所持金:283万円。
「えっ、分譲マンションが貰えんの?」
それに所持金300万近くも。滅茶苦茶太っ腹だ。
関東。分譲マンション。283万円。ワード的に、世界観も現代日本っぽいな。
「まさかローン付きだったりするのか。いやでも所持金をこれだけくれるなら、1000万ぐらいの部屋ならポンとくれてもおかしくないか……?」
そうであれば結構な資産だ。余計なものがついてこなければいいが。
ボーナスポイントの割り振りはどうするかな。
リアルとゲームとでは勝手が違うだろう。
各ステータスがどう作用するのか分からない部分もあるが、特典能力を考慮すれば、戦士タイプのビルドが合うだろう。
「無難に力体速に3ずつ振って……余りの1Pは幸運に振っとくか」
ゲームでは運なんか上げるよりも、攻撃力の力・魔、防御力の体、素早さの速を上げた方が手っ取り早く強かったが、色んな要素が複雑に絡んでくるリアルなら、運も重要になるかもしれない。
まあ、ゲン担ぎだ。1Pぐらいいいだろう。
「結構いい感じに見えるな」
ガチャは全てSR確定だったからな。
やはり固定値は正義。スコア稼ぎしておいて本当に良かった。
前話のアンケートにご協力いただきありがとうございました。
お陰で主人公の性格が大体固まりました。
>他作品からの能力輸入
つ『能力クロス』タグ
本当は異能者やサマナー、ペルソナ使いやデビルシフターなどメガテンっぽさを出したかったのですが、ビルドを考えるのが面倒くさ(げふんげふん)
メガテン系列縛りでキャラを選ぶにも数が限られますし
その点既存キャラを持ってくれば、種類は豊富で考えることも減るし特徴付けも簡単にできる。
二次創作って素晴らしい。数多の原作者様に感謝です。
>兄上の理由。
単純に鬼滅が好きだったので
縁壱は強すぎるし無惨様は……うん
兄上のコスプレして戦う銀髪美少女。かっこいい……かっこよくない?
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転生
曇った眼で世界を見る。
物心ついた頃から、自分というものがなかった。
情動を感じられない無機質な性格。
自発的に何かをすることもなく。何があっても表情を変えないその様から、生きる屍と影口を叩かれたのも一度や二度ではない。
しかしそれに対して何かを思う事は無かった。
周囲に言われるがまま、ただ生きているだけ。
まさに人形のようだった。
頭の中は、常にぼうっとしていた。
何か大切なことを忘れている気がした。
俺は……、私は……? 誰だっけ?
そんな疑問も、時間が経てばすぐに忘れてしまう。
流されていく。
何かに決められたレールの上を、無抵抗なまま歩かされていく。
そんな気がした。
両親が事故で死んだ。
その報せを警察から聞かされても、何の感情も湧かなかった。
ただ『引っ越さなければならない』と思った。
生家を売り払い、両親の遺産を使って、縁もゆかりもない地の分譲マンションを一括払いで購入した。
そうしなければならない気がした。
なぜそう思ったのかは、分からない。
それに対しておかしいと、疑問に思う事もない。
親の遺産を食いつぶしながら、自我のない人形が漠然と生きるだけの日々。
そんな日常に、ある日突然変化が齎された。
「あ、ああ……?!」
唐突に、頭にかかっていた分厚い靄が晴れた。
意識が覚醒していく。
そして思い出した。自分が何者であったのかを。
そうだ。俺は転生したんだ。
メガテンの新作ゲームに釣られ、チュートリアルの迷宮に閉じ込められ、胡散臭い天使が出てきてキャラクターシートを完成させて――。
「そして転生した……。でも、何だこの記憶は。まるでこの世界で生きてきたかのような――」
主観的には、俺は直前までは迷宮のセーフルームにいた筈だ。
しかし頭の中には、この世界で生きてきた記憶が薄っすらと残っている。
まるで長い夢でも見ていたようだ。
この世界での俺は、記憶と意識を封印された抜け殻のようだった。
別人という感覚はまるでしない。
容姿は、迷宮で7日間を過ごした姿と変わっていなかった。
艶やかな銀髪に、色素の抜け落ちたような白い肌。スカイブルーの瞳。
日本人離れした容貌だが、両親はどちらも日本人らしい。アルビノとでも思われていたのだろうか。
自我が希薄過ぎたのか、当事者の癖にその辺はよく覚えていない。
この世界で辿った経歴を思い起こしてみる。
2002年生まれ。現18歳。
現在2020年11月11日。
現実の時間軸とは、数か月ズレているようだ。
生まれた直後の記憶は流石に無い。
言葉を話すのは相当遅かったようで、両親が心配したのか、幼い頃に病院に連れていかれたような記憶が薄っすらと残っている。
無気力、無感情、自発的な行動が殆ど見られない様から、発達障害、自閉症だと診断されたようだ。
それでも一応言われたことをこなす程度の知性はあり、日常生活に支障はなかったみたいだ。
一応最終学歴は高卒のようだ。大学には通っていない。
小中高と普通に学校に通っていたらしいが、その頃の記憶はまともに残っていない。
というか毎日顔を合わせていたはずの両親の顔すら思い出せない。とても18年間も生きていたとは思えないほど、脳内アルバムはスカスカだった。
調べ物がしたいなら自分で1から調べて、記憶は当てにしない方がいいだろう。
「殆ど役に立たないな、この記憶」
とりあえず、この世界が現代日本っぽい事は間違いない。
両親が亡くなった事で身寄りは無くなり、何かしらの助けになりそうな友人知人の存在も無し。
記憶も曖昧で役に立たない。
しかしこの世界で生まれ育った事は確かなので、戸籍や住民票など、しっかりとした身分がある。
そして特典であった分譲マンションと、283万円の預金通帳も確かに存在した。
「すごい作為を感じる……。気味が悪いな」
全ては舞台を整える為の黒幕の仕業か。
全てのプレイヤーに同様の処置を行っているのだとしたら、大変な手間だ。
プレイヤーにこの世界で生きた背景を与える為だけに、これほど大掛かりな事をできるとは。黒幕は自分が思っていたよりも強大な存在なのかもしれない。
記憶に残る天使の笑みが、ますます胡散臭く感じられた。
スコア評価F(最低)の奴wwww(191)
1:名無しのプレイヤー
俺です
2:名無しのプレイヤー
スコア評価F! ガチャは全部N! あああああああ!!!(ブリブリブリブリュリュリュ!)
3:名無しのプレイヤー
ガチャは悪い文明! 破壊する!
4:名無しのプレイヤー
どうも無職・無一文・家無しさん! 仲間だね!(やけくそ)
5:名無しのプレイヤー
チュートリアル1日目で死亡したワイ、スコアは悲惨でガチャも爆死。
早くも2度目の死を覚悟する模様
6:名無しのプレイヤー
ああやっぱり死んだ人も生き返ってたんだ。死んだら即終わりじゃないっぽくて、その辺はよかったかな
7:名無しのプレイヤー
>>6
何がいいんだ? 生き地獄が続くだけでは?
8:名無しのプレイヤー
そうかもしれないけど、ほら、もしも仮にこのゲームをクリアしたら元の世界に戻れるとして、生き残っている人だけじゃなく死んだ者も含めて全員元に戻れるとしたら?
こうして復活した事実があれば希望が持てるじゃん。死んで次に目を覚ます時はもしかしたら現実かもしれないって
9:名無しのプレイヤー
なるほど? そう考えたら確かに……?
10:名無しのプレイヤー
希望的観測過ぎるだろ。宗教じみた考えでなんか嫌だ
11:名無しのプレイヤー
そんなことはどうでもいいから誰か俺を救ってくれー!
12:名無しのプレイヤー
天使にでも祈る?
13:名無しのプレイヤー
??「>>11よ……神を崇めるのです……さすれば救われるでしょう……」
14:名無しのプレイヤー
ペ天使はNGで
15:名無しのプレイヤー
顔出しだけして消えたよな。あいつ何だったんだマジで
16:名無しのプレイヤー
持ち物はスマホだけだけど携帯料金払ってないのかネットが繋がらない。けどこの掲示板だけは例外みたいだね。
17:名無しのプレイヤー
何かしら超常的な力が働いてるんだろうな
18:名無しのプレイヤー
こうして皆と話ができてよかったよ。一人だったらどうなってたことか……
19:名無しのプレイヤー
確かにな。今も混乱してるけど、ここがなかったら焦りは今の比じゃないだろうな
20:名無しのプレイヤー
だからって天使には感謝しないけど。むしろ罵倒したい
21:名無しのプレイヤー
あの天使は何だったんだろうな……突然現れたと思ったらすぐ消えて
22:名無しのプレイヤー
あ、やっぱり皆あれは見たんだ
23:名無しのプレイヤー
ようやくネタバラシが来るかと思ったら、目の前の事すら碌に説明せずに帰っちまったな……
24:名無しのプレイヤー
ご武運をとか言ってたけど絶対心が籠ってないだろ
25:名無しのプレイヤー
優しそうな感じがしたけど気のせいだった
26:名無しのプレイヤー
見た目はどちゃくそ好みだった
27:名無しのプレイヤー
ちくちょう! 可愛い声と顔しやがって! あぁ^~惑わされる^~
28:名無しのプレイヤー
翼が6枚あったし熾天使なのか? あの天使が全ての黒幕なのかね?
29:名無しのプレイヤー
さあな。天使という事は裏には神がいるのかもしれない。
30:名無しのプレイヤー
神かー……。そのうち神と戦うこともあるのかね
31:名無しのプレイヤー
だとしても立ち位置は絶対ラスボスでしょ。大多数の俺らにとっては関係なさそう
32:名無しのプレイヤー
LV1の悪魔に対しても悪戦苦闘してるのに、その戦いに参加できるレベルになれるとは思えないな
33:名無しのプレイヤー
それ以前にそこまで生存できてるか不安だ
34:名無しのプレイヤー
しかしメガテン天使にしては見た目が人間そっくりだったな
35:名無しのプレイヤー
閣下の例もあるし、ま、多少はね?
36:名無しのプレイヤー
つーかこんな大それたことまでしておいて、今さら姿が変わったくらいじゃ驚くにも値しない。
ガチャの内訳はこんな感じです
なお能力に関しては分類が難しくガバガバになることもありえるので、あくまでも目安ということでお願いします。
覚醒能力特典
N :ちょっと特殊な力を持った一般人。
N+:日常や戦闘で利用できなくもない、それなりの能力。
R :日常や戦闘で有効利用できる、優れた能力。
R+:日常や戦闘で、極めて有用な優れた能力。
SR:バトル作品でも最強格。
住居
N :なし。ホームレス
N+:安アパート(3か月分支払い済み)
R :それなりのマンションやアパート(6か月分支払い済み)
R+:いい所のマンションやアパート(12か月分支払い済み)
SR:分譲マンション(一括購入)
所持金
N :0円
N+:10面*2ダイス(万円)
R :30面*3ダイス(万円)
R+:50面*4ダイス(万円)
SR:100面*5ダイス(万円)
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スコア評価F(最低)の奴wwww
40:名無しのプレイヤー
能力:クソゴミ! 住居:なし! 所持金:なし! ステータス:ALL1!
なにこの罰ゲーム。頼むリセットさせてくれ
41:名無しのプレイヤー
金がないのは首がないのと同じ
チュートリアルの時とはまた違った絶望だ
42:名無しのプレイヤー
誰か余裕のある人助けてくれんか?
43:名無しのプレイヤー
マジレスすると、ここで助けを求めるよりも公的機関に助けを求めた方がいい。
俺達一応日本国籍があるみたいだから、不審者扱いはされんやろ
44:名無しのプレイヤー
それな。見たところ国は機能していて治安も良さそうだし、最悪の想定よりはずっといい状況だよ。
45:名無しのプレイヤー
生ポ受けろって事? なんか嫌だな……
46:名無しのプレイヤー
どうせ身寄りも知り合いもいないんだし、恥ずかしがる必要はないだろ
47:名無しのプレイヤー
生存は立派な権利だ。最低限の生活は憲法でも保証されてる
自助でどうにかならないなら公助を受けた方がいいよ
48:名無しのプレイヤー
それでも生活保護か……なんか抵抗ある
若いんだから働けって追い返されたりしない?
49:名無しのプレイヤー
追い返しは違法だからw録音して証拠を取っとけば炎上させられるぞ
50:名無しのプレイヤー
自助努力でどうにかしようとするのは立派だけど、人である以上は弱者に回る時は来るからな。
若く健康でいられる時間は短い。子供の時、老化、怪我、病気、災害。そういう時に助け合うのが共助・公助だよ。
一時的に生活保護を受けたとしても、これから働いて助ける側に回ればいい。
51:名無しのプレイヤー
そうか、そうだな。ちょっと考えてみる。
でも生活保護受けるとしてもどうすればいいんだ?
52:名無しのプレイヤー
自治体の福祉課を探すとか?
53:名無しのプレイヤー
まず携帯が止まっててネットが繋がらん……
54:名無しのプレイヤー
あーじゃあ先にフリーWi-Fi探しか? んで役所や支援団体に連絡を取ってみると
55:名無しのプレイヤー
そうだな。ここで聞くよりもそういう所に相談した方がずっと建設的だと思う。
56:名無しのプレイヤー
どうせここに専門家なんていないだろうからな
57:名無しのプレイヤー
カフェやコンビニ、公共交通機関や自治体なんかにある筈>無料Wi-Fi
58:名無しのプレイヤー
皆あったけえ……お陰でどうにかなりそうな気がしてきたよ。ありがとう
59:名無しのプレイヤー
大丈夫、困った時はお互い様だ!(所持金0円)
60:名無しのプレイヤー
お互い大変だと思うけど頑張って生きようぜ
61:名無しのプレイヤー
そうだな、生きていればいいこともあるさ
70:名無しのプレイヤー
皆この世界で生きた記憶が多少あるんだよな? やっぱ人形みたいな性格だった?
71:名無しのプレイヤー
機械染みた性格してたみたいだね。殆ど覚えてないから何とも言えんけど
72:名無しのプレイヤー
機械というより虫だな。
記憶力悪すぎ。22年以上生きてるのにこの世界の事を全く知らないとかどうかしてる
73:名無しのプレイヤー
年齢にはばらつきがあるのか? 俺は19歳だった。ちな高卒
74:名無しのプレイヤー
俺は18。俺も高校は出てるっぽい
75:名無しのプレイヤー
私は二十代前半。高卒ニートです
76:名無しのプレイヤー
30歳無職童貞ホームレスです。……職と財産と学歴を失った分現実より悪化したんだが??
『年齢カミングアウトが続く』
95:名無しのプレイヤー
見事にバラバラだな
96:名無しのプレイヤー
18歳未満はいない。若年層が多い。高校は皆出てる。無職ばっか。後なんかある?
97:名無しのプレイヤー
そうだなぁ、キャラの外見年齢に引っ張られてるっぽい?
ちょっと大人風にキャラクリしたら年齢もそれ相応になってる
98:名無しのプレイヤー
その理論でいくとやはり年齢の下限は18かな?
小学生にも見えるロリだけどこれでも18歳らしい
99:名無しのプレイヤー
合法ロリか……ごくり
100:名無しのプレイヤー
そもそもキャラメイクしてない奴は容姿も年齢もそのままみたいだ。
職も家も貯金も失って得たものが一つもない。つっら
101:名無しのプレイヤー
>>100
(´;ω;`)ブワッ
102:名無しのプレイヤー
>>100
強く生きろ……
103:名無しのプレイヤー
>>100に比べたら、若さと容姿があるだけ俺はマシっぽいな……
102:名無しのプレイヤー
合法ロリがいればショタもいそうだな……
105:名無しのプレイヤー
プレイヤーなら美男美女ばっかだろうしな
……ちょっとプレイヤーがいそうな場所にいってみるか
106:名無しのプレイヤー
お巡りさんこっちです
……いやマジで。冗談でもそういう事言うのやめて??? 怖いから
106:名無しのプレイヤー
殆ど一般人と変わらないし、身を守る術がないからな
実際襲おうとすれば成功率はかなり高いだろう
冗談になってない冗談はやめて欲しい
108:名無しのプレイヤー
つーか遺伝子どうなってんの? ピンク髪が地毛とかウケるんだけど
109:名無しのプレイヤー
俺も緑髪が地毛だぜ!
110:名無しのプレイヤー
ハーフでも何でもないのに金髪外人イケメンが生まれたんですけど両親は疑問に思わなかったんですかね……
111:名無しのプレイヤー
え、親いんの?
112:名無しのプレイヤー
>>111
それな
113:名無しのプレイヤー
え? どゆこと? 普通にいたみたいだけど。
記憶を取り戻す前に死んじゃったみたいだけどさ。皆そうなんじゃないの?
114:名無しのプレイヤー
いや、俺の場合は孤児だったが
115:名無しのプレイヤー
俺も
116:名無しのプレイヤー
自分も施設育ち
117:名無しのプレイヤー
親の顔とか全然記憶にないわ
てっきり皆、捨て子を装って天使に作られたのかと
118:名無しのプレイヤー
えええ??
130:名無しのプレイヤー
なるほど、俺らの大半は孤児なんだな。けど親がいた例外もいると
131:名無しのプレイヤー
何かしら遺産を残してるみたいだし、住居や所持金ガチャで高レア引いたんだろうな
132:名無しのプレイヤー
うらやま
133:名無しのプレイヤー
けどなんか怖いな。特典の為にだけ存在した親なんて……
134:名無しのプレイヤー
その人らも不憫だわ。生まれた子供は人形みたいに無機質で実は転生者。
それでも世話して育て上げて、遺産を残して死ぬ。ゲームのNPCみたいな雑な扱いだあ……
135:名無しのプレイヤー
なんかの怪談でありそう。背筋がゾッとする話だ。
136:名無しのプレイヤー
可哀そうに。宝くじが当たるとかのご都合主義でつじつま合わせはどうにかならなかったんだろうか
137:名無しのプレイヤー
資産・所持金N+で、安アパート借りて手持ちに10万円ほどあるけど、これは普通に働いて得た金みたいだぞ。親がいた記憶はない
138:名無しのプレイヤー
自分も両方Rだけど、親はいないぞ。
高校卒業して普通に就職して働いてたみたい
なお記憶が戻る前に仕事はやめてるので現在職無し
139:名無しのプレイヤー
俺も所持金Rで50万持ってるけど、施設育ちでバイトして稼いだみたい。>>138と同じく今は働いてない
140:名無しのプレイヤー
ふむ、よほど高レアじゃないと親無しは共通してるのか
141:名無しのプレイヤー
よくあの人形状態で働けたな
142:名無しのプレイヤー
学校に通えてたみたいだし、物静かで受動的すぎるだけでやらかしはしないんだろう。多分
143:名無しのプレイヤー
見張っておかないと余計なことして仕事を増やすタイプのアレな人よりはマシなのか……?
144:名無しのプレイヤー
親がいたって言ってた>>110はガチャ結果はどうだったの?
145:名無しのプレイヤー
まあ推測はできるわな。IDはずっと変わらなくてチュートリアルでのログも全部見れるし。
>>110は7日生存してて悪魔もかなり狩ってるトップ層。スコア補正も相当高そうだ
146:名無しのプレイヤー
あー、正直に話すとスコアA評価で住居R+、所持金SRだったよ
147:名無しのプレイヤー
やっぱりそうだったか
148:名無しのプレイヤー
できれば詳細希望
149:名無しのプレイヤー
いやー、個人情報に関わりそうだからあんま喋りたくない……すまん
150:名無しのプレイヤー
これは相当持ってそうですね……
151:名無しのプレイヤー
SRってことはもしかしたら1000万ぐらいある?
152:名無しのプレイヤー
いや、1億って可能性も
153:名無しのプレイヤー
ずるいな
154:名無しのプレイヤー
そんだけあればちょっとぐらい出せよな……
155:名無しのプレイヤー
なんか誤解されそうだからやっぱ情報公開します。
月20万ぐらいの賃貸マンションと350万です。以上
156:名無しのプレイヤー
思ったほどではないが、それでも羨ましいぐらい貰ってるな
157:名無しのプレイヤー
これで覚醒能力の方もかなりいいキャラなんだろ? マジ羨ましい
158:名無しのプレイヤー
資産そんなにあるのか、いいなぁ
159:名無しのプレイヤー
持てる者と持たざる者との差が激しいな……
160:名無しのプレイヤー
>>155
お、赤色宝石ニキみっけ。Aか、残念やったな。
今ランカーに声かけて回ってるんや。赤石ニキもくる?
161:名無しのプレイヤー
>>160
あーーーー、お願いします
162:名無しのプレイヤー
なんだ?
163:名無しのプレイヤー
おっけ、ここに入っといてな【Discordの招待URL】
ユーザー名はこっちで教えて
164:名無しのプレイヤー
はい、とりあえずユーザー名は『金髪赤石』にしました。
そのうち変えることもあると思うのであしからず
165:名無しのプレイヤー
ランカーが外部ツール使って仲間を集めてるのか
166:名無しのプレイヤー
まあここ、名前弄れない、ID変わらない以外は5chみたいなもんだし、最近のSNSと比べたら正直不便だもんな……
ネットが繋がるならそっちの方がいいか
167:名無しのプレイヤー
これは上位層が結託してギルドを作ろうとしてるのか? 格差拡大が加速しそうですねぇ……
168:名無しのプレイヤー
ゲーテッドコミュニティかな?
169:名無しのプレイヤー
そいつらが俺らを助けてくれればいいんだけど
170:名無しのプレイヤー
いや無理でしょ。宿無し無一文の俺らがどれだけいるとでも?
171:名無しのプレイヤー
まあ人数多すぎるし全部は面倒見切れんわな
172:名無しのプレイヤー
俺らも対抗して互助コミュニティでも作る?
173:名無しのプレイヤー
>>172
絶対烏合の衆になる
174:名無しのプレイヤー
近場同士で助け合うのはありかもしれんけど、全国規模のは無理やろうな
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困っている人が大勢いる。助けますか?
それが今の自分の名前らしい。
完全に黒死牟の本名から取っている。他の人も似たような感じなのだろうか。
俺の場合は日本人名だったからまだマシだったが、外国系やコードネームとかで呼ばれる名前ですらないキャラの人は一体どうなっているのやら。
「今のところ、兄上要素はゼロだな」
鏡を覗き込めば、銀髪ボブヘアの美少女が見える。
額や首元に揺らめく炎のような痣が出たり、瞳に文字が刻まれていたり、ましてや目が六つになっていたりすることはない。
「……そういえば太陽も平気そうだな」
窓から射し込む陽光が俺の体を照らしているが、痛みもなければ不快感もない。お日様の下に出ても特に問題は無さげだ。
「能力はまだ発現してない感じか」
月の呼吸が使える気もしなければ、体が透き通って見えたり気配が鋭くなっていることもない。
体中に力が満ちていて身体能力は上がっている気がするが、これは割り振ったステータスボーナスのお陰な気がする。迷宮でレベルアップした時もこんな感じだった。
「かなり良い所に住んでんな、俺」
貰った物件を探索してみると、間取りは3LDKのようだ。
広々としたリビングとキッチンに、個室として十分な広さの部屋が3つ。一人で暮らすには過剰な大空間。家族向けの物件だろう。
何をどうしたのかは覚えてないが、家具は一通り揃っていた。
それでいて生活感は殆ど無い。まるで家具・インテリア展示用のモデルルームのようだった。
「これ、家具の購入や掃除なんかは自分でやってたのか?」
記憶を探ってみるが覚えていない。その不自然さになんだか空恐ろしいものを感じた。
スマホとデスクトップパソコンを見つけた。ネットも繋がっているようだ。
というか端末からデバイス、ルーターまでかなり良い物が揃っている。ざっと見てもそれらの電子機器だけでも数十万は下らない。
俺が目利きができないだけで、他の家具も同じぐらいの品質の物なんだろうか。
どれぐらいの金額をかけてこの調度品を揃えたのか疑問が生じる。総額は知りたいようで知りたくない。
「これ、もっと家賃が安い所に引っ越して、この部屋は貸すか売るなりした方がいいんじゃあ……?」
一通り部屋を見て回り、そんな考えが頭に浮かんだ。
手放すのは惜しいけど一考の余地はある。金に困った時の為、金策の手段の一つとして覚えておこう。
スマホもパソコンも新品同然のシンプルなホーム画面だったが、掲示板を模したアイコンがあった。
開くとチュートリアルで見慣れた掲示板が現れる。
「プレイヤー専用掲示板……こっちでも使えるんだな」
チュートリアル中に死亡したプレイヤーが生き返ったというのは本当だったのか、プレイヤー数が減少する以前のようにスレッドが乱立してレスも伸びている。
スコア評価F(最低)の奴wwww(191)
【現代転生】ガチャで爆死したやつ集まれ(174)
路上生活の知恵を出し合うスレ(130)
生き返ってもまた地獄(42)
さっき死んだけど質問ある?(115)
【特典】覚醒能力検証スレ【チート?】(58)
【考察】世界設定考察スレ(71)
「……分かっていたけど、俺ってかなり恵まれてるみたいだな」
どうやら生き返った人の大半は評価が低く大した特典を貰えていないようで、かなりの苦境に陥っているようだ。
家がなくて今日寝る場所がない。一文無しで食べる当てもない。そんな人が掲示板上には溢れていた。
自分との境遇にあまりにも格差があって、いささか申し訳なく感じる。
スコアを伸ばせばガチャの内容も良くなったのだから、自業自得と言えばそれまでだが、今まさに貧困に陥り、窮状を訴えている人にかける言葉としては不適切だろう。
彼らに手を差し伸べるべきか、少し迷う。
あまりにも困っている人が多すぎる。皆よりも余裕があるとはいえ、だからと言って誰も彼もを救えるほど懐は暖かくない。
助けられるとしても、10~20人ぐらいが精々といったところだ。しかもそれは一時的な手助けにすぎない。下手をすればミイラ取りがミイラになって仲良く貧困に陥る可能性もある。
世界は今のところ平穏だ。行政が崩壊している様子もない。
だったら放っておいても死ぬことはないだろう。冷たいようだが、見なかったことにするのも合理的な判断と言える。
「うーん、でも何もしないのは流石に良心が……。それに後々恨まれそうだよな」
自分たちが苦労していたにもかかわらず、何の援助もしないで悠々自適に暮らす金持ちプレイヤーとか絶対怨まれる。
晒しスレでもできたらそのうち特定されて、血も涙もない冷酷鬼畜プレイヤーとして晒されるかもしれない。
「よし決めた。無理のない範囲で手助けしよう」
どっちにしろ文句を言う人はいるだろうけど、表立って支援に動けばその声も小さくなるだろう。
私財を投げ打つつもりは全くない。程々にやろう、程々に。
具体的にはどうするかな。
金だけ渡すのが最も後腐れがない方法だが、問題はどうやって渡すかだ。
振込が一番簡単だけど、果たして家も所持金もない人が銀行口座を持っているのだろうか?
……なさそうだなぁ。
だとしたらどうする。手渡しで渡す?
自分が移動するのは面倒だし、相手に来てもらうにしても負担がかかる。
というか直接会うなら宿くらい提供して上げろという話にもなる。生活費の内、宿代は馬鹿にならない。切り詰めることも可能と言えば可能だが、それは言外に風呂に入るな、野宿しろと言っているに等しい。
「どうせ施しをするなら自分の利益にも繋げたいよな」
となると金だけ渡してハイサヨナラよりも、少数でもいいから手厚く面倒を見て恩を売った方が良さそうだ。
『上げる』ではなく『貸す』で方向で行こう。
一時支援というよりは、ちょっとした人材投資をする心持ちだ。
プレイヤーであるからには何かしら特別な潜在能力を秘めているのだろうし、初動で何人か囲っておくのは悪くない。
戦闘関係では使い物にならなくても、バイトでもさせて家賃や食事代の名目で月々幾らか徴収すればそのうち回収できるだろう。
最低でもプレイヤーに対する慈善アピールという面は達成できるはずだ。
「1部屋は俺が確保するとして、リビングと残り2部屋で雑魚寝させても10人程度が限度かな? 1人当たりの生活費は……初月は何かと入用だろうから10万として、10人いれば100万か。その後のランニングコストは……切り詰めて月20万ぐらい?」
全員が生産性0って訳ではないだろうし、まあ何とか養えそうだ。
「とりあえずの予算は120万ってことで。それをオーバーするまでは俺も我慢するか」
主目的は金儲けではなく人助けだ。
多少利子をつけて返してくれれば、返済にどれだけかかってもいい。そういうスタンスでいよう。
なあに、残り153万とこの部屋の所有権もある。
金で信用が買えるなら安い物だ。
方針が決まったので早速行動に移そう。
掲示板を開いてスレ立てをして……。
「いや待てよ、俺って今どこに住んでるんだ?」
住所がよく分からない。関東のどこかであるのは間違いないが、詳細は……思い出せん。
本当に役に立たないなこの記憶。
家探しをすると住民票が見つかった。
「へー、ここって群馬なのか。んで前橋市と……県庁所在地だな」
住所をグーグルマップに入力して調べてみると、駅のすぐ近くにある高層マンションがクローズアップされた。
コンビニやデパートといった各種施設も近いし、利便性はよさそうだ。
「スレタイどうするかな……」
捻る必要はないな、シンプルに行こう。
【群馬県】近くにいる人をできるだけ助けます【前橋市】
うん、これでいいな。
「えーと、当方スコア1000オーバー、S評価です。宿・お金貸します。家無し・金なしの困ってる度が高い人優先。上限:10人ぐらいまで……と」
私財を投げ打つ勢いで助ける。L+++ 14 / 2%
無理のない範囲で手助けする。L+ 403 / 63%
見なかった振りをする。 C+ 111 / 17%
助けた後で見返りを要求する。C+++ 115 / 18%
前回取ったアンケートがこうだったので、主人公の思考の割合もそんな感じでした。
アライメント合計は、
ロウ :445 / 49.4%
カオス:456 / 50.6%
となり、ほぼ拮抗。
若干カオスに傾いているニュートラルという感じになります
良識はあるけど打算もある。まあ普通の人ですね!
後、感想返しを頑張ろうと思ったんですけど、やっぱり全てに返信するのは楽しいんですけど地味に大変なので、サボらせてください。すみません
勿論頂いた感想は全て目を通しています。
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【群馬県】近くにいる人をできるだけ助けます【前橋市】 前
1:名無しのプレイヤー
当方スコア1000オーバー、S評価です。宿・お金貸します。
家無し・金なしの困ってる度が高い人優先。上限:10人ぐらいまで
2:名無しのプレイヤー
お? なんだなんだ
3:名無しのプレイヤー
近くにいる人限定なのか?
4:名無しのプレイヤー
そうですね。
振り込みができれば遠隔地でも送金できるんですけど、家も金もない人たちが振込先の口座を持っているのか疑問だったので、そうさせて頂きました
5:名無しのプレイヤー
なるほど、確かに持ってないわ
6:名無しのプレイヤー
じゃあ何かしら送金の手段を見つければ支援してくれんですか?
7:名無しのプレイヤー
>>6
そうなると対象者が膨大になって自分の手に負えなくなると予想されるので、まずは対面で支援しようかと思っています
8:名無しのプレイヤー
そっか……残念。
歩いていくには群馬は遠すぎる……。
9:名無しのプレイヤー
申し訳ないです
10:名無しのプレイヤー
誰かと思えば黄色宝石ニキやん、群馬在住なんか。割と近いな
11:名無しのプレイヤー
>>10
おやどうも、金髪幼女さん。お久しぶり(昨日ぶり)です
12:名無しのプレイヤー
おう昨日ぶり。ワイもスコア1000超えてたわ。同じSランク同士、後で組まん?
13:名無しのプレイヤー
>>12
いいですよ。むしろこちらからお願いしたいです。ただ暫くは忙しくなりそうなので詳しい話は後でもいいですか?
14:名無しのプレイヤー
ええで。今はSやAを取ったトップ連中を探して声かけて回ってるんや。
とりま連絡しやすいようにここ入っといてな【Discordの招待URL】
15:名無しのプレイヤー
了解です。とりあえず黄色宝石で登録させて頂きました
16:名無しのプレイヤー
>>15
おっけ、なんかあったらあっちで連絡するわ。黄石ニキもランカー見かけたら誘導よろしくな。ほな
17:名無しのプレイヤー
>>16
はい、了解です
18:名無しのプレイヤー
おいおい、早速ランカー同士で結託かよ
19:名無しのプレイヤー
>>16も>>1を見習って貧困プレイヤーを助けようとは思わないのか?
20:名無しのプレイヤー
>>19
ないわー。どうしてワイがそんな面倒なことせなあかんねん
21:名無しのプレイヤー
ひもじい思いをしている同朋がいるんだぞ?
チュートリアルと違って助け合いもできるんだ。なら少しくらい手を差し伸べてくれてもいいじゃないか
22:名無しのプレイヤー
底辺連中とか自業自得やん。事前に宣告されてたのにスコア稼げなかった無能共やろ?
そんな奴らをどうしてワイが助けなあかんの
23:名無しのプレイヤー
でも>>1は助けようとしてるじゃん
24:名無しのプレイヤー
そらイッチが特別優しいだけやろ。ワイは別に進んで人助けがしたいなんて思わんで
25:名無しのプレイヤー
人でなしめ
26:名無しのプレイヤー
>>24
どうせランカーになれたのも実力じゃなくて運だろ。ちょっと成功した程度でイキってんのきめーわ
27:名無しのプレイヤー
あ? 殺すぞお前ら
28:名無しのプレイヤー
あの……皆さん落ち着いてください。幼女さんもこれ以上はスレチなので、ね?
29:名無しのプレイヤー
>>1は>>27の肩を持つのか?
30:名無しのプレイヤー
>>1もこんな奴とつるもうとするなよ。一気に信用なくなったわ
31:名無しのプレイヤー
それな。品性下劣の>>27と組もうとする奴が「人助けします」なんてどの口で言ってるんだよ
32:名無しのプレイヤー
人助けをしたいという気持ちは本物です。信じてください
33:名無しのプレイヤー
じゃあ>>27と手を切ってそれを証明してくれる?
34:名無しのプレイヤー
そうだな。口だけなら何とでも言える
35:名無しのプレイヤー
あの……その二択はちょっとずるいかと
36:名無しのプレイヤー
は?
37:名無しのプレイヤー
あーあ、やっぱ>>1もそっち側だったか。期待して損した
38:名無しのプレイヤー
はい解散
39:名無しのプレイヤー
待って、説明させてください。
強い人達と組みたいという打算はもちろんあります。
でも人助けをしたいという気持ちは、正真正銘良心から湧いて出たものです。
どちらも自分の正直な気持ちな訳で、片方だけを取れと言うのは違うと思います。両立したっていいじゃないですか。
40:名無しのプレイヤー
言い訳だけはいっちょ前だな
41:名無しのプレイヤー
ここまで言い訳して人助けしたいとか、なんか裏でもあるんじゃねーの?
42:名無しのプレイヤー
怪しいわー
43:名無しのプレイヤー
めっちゃ胡散臭くて草。もしかしてメシアンの方ですか?
44:名無しのプレイヤー
こいつはくせえッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッ!!
45:名無しのプレイヤー
そこまで人助けがしたいなら>>27との関係をきっぱり絶てばいいだけじゃん
なんでそれができないの?
46:名無しのプレイヤー
それな
それができないってことはやっぱ何かあるんだろ?
47:名無しのプレイヤー
心まで完全に聖人でないと、人助けをしてはいけないんですか?
48:名無しのプレイヤー
そこまで言ってねーよ。単に>>27と組むのをやめろってだけだろ
49:名無しのプレイヤー
そうそう。なに大袈裟に語ってるんだか
50:名無しのプレイヤー
打算と良心、どっちが大切かって話で>>1は打算を優先するんだろ? ならそんな奴信用ならんわ
51:名無しのプレイヤー
えーと、どうやら自分と皆さんとでは認識に大きな隔たりがあるようなので説明させてください。
皆さんは>>27さん(チュートリアルでは金髪幼女さんと呼ばれていました。以後その名で呼ばせて頂きます)と組む・組まないという判断を軽く考えているようですが、その重みは恐らく皆さんが感じている以上の物です。
Aランク以上を取れるだろうプレイヤーは恐らく数十人程度しかいません。
金髪幼女さんはチュートリアルでも積極的にコミュニケーションを取っていて顔が広く、特にトップ層とは殆ど知人です。
実際ディスコードにも既に知っている名前が結構ありました。
そんな人のお誘いを断るということは実質的に今後トップ層と関わりを持つなという事で、影響が大きすぎます
52:名無しのプレイヤー
なげーよ
53:名無しのプレイヤー
3行で頼む
54:名無しのプレイヤー
>>53
金髪幼女さんはランカー界の大物。
金髪幼女さんと縁を切れはランカー達とも縁を切れと言うのと殆ど変わらない。
>>1にもしがらみはあるけど人助けがしたいです
55:名無しのプレイヤー
さんきゅ
56:名無しのプレイヤー
あんな奴がランカーの顔役なのか(困惑)
57:名無しのプレイヤー
アライメントがあったら絶対カオスだろ金髪幼女。ガイアに所属してもめっちゃ生き生きしてそう
58:名無しのプレイヤー
ふむ……? まあ事情はなんとなく分かったわ。
59:名無しのプレイヤー
そこまで言う程かって気持ちはまだあるけど、まあ>>1の考えてることもなんとなく伝わった。
要するに、仕事を辞めて慈善活動をするほど気合は入ってないけど、仕事や学校に行きながら無理なくボランティアしたいとかそんな感じか
まあやろうとしていることの規模はもうちょいでかいけど
つーかそこまでして>>1は大丈夫なのか? 収入の当てがないのは同じだろ?
60:名無しのプレイヤー
>>59
例えとしてはちょっと違うかもしれませんが、まあそんな感じです>ボランティア
収入の当てがないのは皆同じです。
その中でも余裕のある自分が何もしないのは、人としてどうかと思いまして
61:名無しのプレイヤー
割と誠実な人柄は伝わってくるな。
それが>>27なんかとどうしてつるもうとするのか謎だったけど、まあ説明聞いて少しは理解できた。
62:名無しのプレイヤー
そうか? 俺はまだ全然怪しいと思ってるが
63:名無しのプレイヤー
これが演技だったら大したもんだわ
64:名無しのプレイヤー
騙すとしても>>1にどんなメリットが……?
何も持ってない俺らから奪うものなんてないし、何かやらかすにしても逃げられれば警察沙汰だしリスク高すぎだろ
65:名無しのプレイヤー
わからないぞ。可能性だけならいくらでもある。
66:名無しのプレイヤー
Sクラスってことは高級マンションに住んでて所持金も数百万はあるんだろ?
じゃあ10人とかみみっちいこと言ってないでもっと助けろよ
67:名無しのプレイヤー
それな。助ける気があるならもっとパーッと金使ってくれよ
68:名無しのプレイヤー
>>66
まず誤解があるようなので訂正させてください。
貰った住居は3LDKのマンションの1室です。3~4人家族向けという感じで、そこまで広くないです。キャパは精々10人程。
所持金も、自分はガチャ運が悪かったのか200万少々しか貰えませんでした。
現状では収入もない状態ですし、多少余裕があるだけで先行きが不透明なのは皆さんと同じです。
責任を持って手助けできるのは10人が限界だろうと判断しています
69:名無しのプレイヤー
じゃあその200万全部使えよ。1人10万で20人、1人5万なら40人に配れるんだぞ?
もっと大勢を助けようとは思わないのか?
70:名無しのプレイヤー
>>69
助けるつもりはあります。しかし善意には限度があるというだけで。そこまですると自分の生活が成り立たなってしまいます。
71:名無しのプレイヤー
結局は自分が大事なんだろ? 偽善者が
72:名無しのプレイヤー
自分が大事なのは当然では……?
それで助かる人がいるなら偽善でもいいじゃないですか。0か1かで話をしないでください
73:名無しのプレイヤー
イッチもぶれないなwそこは嘘でも適当に綺麗ごと並べておけばいいのに。馬鹿正直というかなんというか
74:名無しのプレイヤー
>>72
嘘は好きではないんです
75:名無しのプレイヤー
そういう性格、俺は割と好きだよ。応援しかできないけど。支援、頑張ってな
76:名無しのプレイヤー
>>75
ありがとうございます。お気持ちだけでも嬉しいです
77:名無しのプレイヤー
つーかよく見たら金は『貸し』なんだな。つまり借金だ。
無職に借金させてどうするつもりなんだ? 絶対阿漕な事するつもりだろ
78:名無しのプレイヤー
一緒に暮らせば生活費を抑えられるので、バイト等をしてもらって家賃と食費といった生活費を負担してもらいつつ、余裕があれば少しずつ返して貰えればそれでいいですよ
79:名無しのプレイヤー
嘘だ。絶対奴隷にするつもりだろ。
お前Sランカーだもんな。俺達より強いんだろ?
暴力と恐怖で縛って搾取しようとしてるんだろ?
お前の考えなんてお見通しだぞ。
皆、聞こえのいい言葉に騙されるなよ。襤褸雑巾みたいに絞りつくされるぞ
80:名無しのプレイヤー
>>79
そんなことしませんよ……。どうしてそこまで疑うんですか? 悲しいです
81:名無しのプレイヤー
>>79
落ち着けよ。流石にちょっと妄想が過ぎないか?
82:名無しのプレイヤー
わざわざ家に集めて借金させるとか怪しすぎるに決まってるだろ。
裏が無いって言うんだったら普通に金だけ配れよ。もちろん借金じゃなくて給付な
83:名無しのプレイヤー
(こいつ、もしかしてやばい人なのでは?)
84:名無しのプレイヤー
クレクレマン VS 趣味で人助けがしたいイッチ。
レディ……ファイッ!
85:名無しのプレイヤー
ここまで>>1に助けを求める人、未だ0人。
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【群馬県】近くにいる人をできるだけ助けます【前橋市】 後
82:名無しのプレイヤー
わざわざ家に集めて借金させるとか怪しすぎるに決まってるだろ。
裏が無いって言うんだったら普通に金だけ配れよ。もちろん借金じゃなくて給付な
86:名無しのプレイヤー
>>82
裏って……。
自分に極度の負担をかけないように人助けがしたいと思ったから、自宅の提供、給付ではなく貸付、人数制限と色々制限を加えただけですよ。
そんな大それた思惑なんてありません
87:名無しのプレイヤー
>>86
だったら給付しろ。はよ
88:名無しのプレイヤー
いや給付は>>1の負担が大きすぎるのでは?
89:名無しのプレイヤー
流石に何の対価もなしに金くれは引くぞ
90:名無しのプレイヤー
こういう寄生根性丸出しの奴を弾くために貸付ってことになってるんだろうしな
91:名無しのプレイヤー
おーとこれはクレクレマン、形勢が悪いか?
92:名無しのプレイヤー
正直ただで金くれるなら欲しいわ(小声)
93:名無しのプレイヤー
もーーー、荒れてばかりで支援を求める人は全然こないし……。
そこまで言うならこの話は無かったことにしますよ。それで満足ですか?
94:名無しのプレイヤー
えっ!?
95:名無しのプレイヤー
>>1!?
96:名無しのプレイヤー
おっとー!? これは>>1選手、突然背を向けた!? これは逃走の構えか!?
97:名無しのプレイヤー
>>93
ほら。馬脚を現したな! 人でなし!
98:名無しのプレイヤー
>>97
めっちゃウキウキしてそうで草
99:名無しのプレイヤー
>>97
もうそれでいいですよ……(泣)
人助けがしたかっただけなのに、ここまで疑われるとは思いませんでした。
申し訳ありませんがこの話は無かったことに。皆さん頑張ってください
100:名無しのプレイヤー
おや、ホントにやめるのか
101:名無しのプレイヤー
あらら、>>97の所為であるかもしれなかった支援が完全になくなっちゃったな
102:名無しのプレイヤー
つーか最悪ナマポに頼ればいいからな。
実際に受給できるようになるまでは時間がかかるけど食い物ぐらいはくれる
事情を話せばもっとなんかしてくれるかもしれない
わざわざ何されるか分からない個人に頼るぐらいなら国を頼った方が良くね?
103:名無しのプレイヤー
それはある
実績のある組織と実績のない個人。どっちを頼るかと言ったら……ね?
104:名無しのプレイヤー
>>1の支援に皆が殺到しないのはそういう事だな
顔も知らない>>1よりも、当然国やその他支援団体の方が信用が高い
貧困ビジネスの対象になったとしても、命までは取られんし
105:名無しのプレイヤー
ナマポ頼りもどうかと思うけどな。人におんぶにだっこで恥ずかしくねーの?
106:名無しのプレイヤー
だってそうしないと生きれないんだから仕方ないじゃん。それとも盗みでも働けと?
107:名無しのプレイヤー
どうしてそこで犯罪に走るんだよ。普通に働け
108:名無しのプレイヤー
住所不定無職所持金無しがどうやって職を探せと???
ハロワ行ったら住み込みの仕事がすぐあると思ってる? お前世の中舐め過ぎだよ
109:名無しのプレイヤー
いや日雇いでもしてネカフェとかに泊まればいいじゃん。
そうして自力で暮らしてるネカフェ難民やホームレスの人も大勢いるんだぞ?
すぐ人に頼って恥ずかしくないのか?
110:名無しのプレイヤー
恥ずかしがるのは個人の自由だが、それを他人に強制するのはどうかと思うぞ。
そうしている人たちだって、何かそうしなければならない理由があるのかもしれない
繋がれる支援があるならそれに頼ったって恥ずかしがることは何もない
111:名無しのプレイヤー
つーか>>109ってイッチに噛みついてクレクレ言ってた奴やん。
人に無償の支援を求める癖にナマポは否定するのか……(困惑)
112:名無しのプレイヤー
>>111
俺は>>1に騙されて不幸になる人を救おうとしただけだ。別に金が欲しかったわけじゃない
113:名無しのプレイヤー
(あ、これ筋金入りの奴だ。関わらんでおこ)
114:名無しのプレイヤー
騙されて不幸になる人を救おうとしただけだ(キリッ)wwwww
実際には妄想で>>1を悪人だと断定した上で、善良かもしれない上位プレイヤーの支援の芽を摘んだだけなんだよなぁ……
115:名無しのプレイヤー
こりゃ上位と下位で分断が加速しそうだな。
早くもランカー達は外部ツールで繋がり始めてるみたいだし。
こんなことを繰り返してると自分の首を絞めるだけだぞ
116:名無しのプレイヤー
>>1を頼るメリットとしては、Sランカーである>>1とお近づきになれてお零れが貰えるかもしれない程度か?
117:名無しのプレイヤー
>>116
そう考えると、割と選択肢としてはありかもしれないな
118:名無しのプレイヤー
まあ、もう遅いんだけど
119:名無しのプレイヤー
誰かさんがイッチの堪忍袋の緒を切っちまったからな……
120:名無しのプレイヤー
>>1さんまってください!!!
121:名無しのプレイヤー
あ、はい?
122:名無しのプレイヤー
おおイッチ、まだいたんか
123:名無しのプレイヤー
その支援受けたいです。私も前橋にいます。助けてくださいお願いします
124:名無しのプレイヤー
もちろんお金は返します。家事とかも頑張りますから、どうか助けてください。家がなくて所持金0です
125:名無しのプレイヤー
>>124
ん? 今何でもするって(言ってない)
126:名無しのプレイヤー
お~、ようやく第一志願者が
127:名無しのプレイヤー
>>124
もちろんいいですよ! 前橋ですか、めっちゃ近いですね。駅周辺には来れますか?
128:名無しのプレイヤー
はい、今前橋駅にいます
129:名無しのプレイヤー
おお、なら今から迎えに行きますね。家が近くなので
130:名無しのプレイヤー
ありがとうございます、お願いします!
131:名無しのプレイヤー
とんとん拍子だな。お前ら近すぎだろw
132:名無しのプレイヤー
オフ会0人は回避したか
133:名無しのプレイヤー
おいおい、俺の話聞いてたか? この>>1を信じるとか正気か? 食い物にされたいマゾなのか?
134:名無しのプレイヤー
>>133
私には、>>1さんよりも>>133さんの方が悪意ある人のように見えます。あなたが言う程>>1さんが悪い人とは思えないです
135:名無しのプレイヤー
はあ??
136:名無しのプレイヤー
>>134さん……。ありがとう!
137:名無しのプレイヤー
ここまで説明してんのに、こいつに裏があるのが分かんねーの?? 頭湧いてんのかアホ
138:名無しのプレイヤー
>>137
私を疑うのは構わないのですが、他の人に当たるのはやめてください
139:名無しのプレイヤー
顔の見えない相手を不審に思う懸念はわからなくもないが、言葉が強すぎだし被害妄想が過ぎる。
>>137とかもう単なる罵倒だしな。どう見てもアレな人だし、>>1さんも構わないでNGした方がいいですよ。
140:名無しのプレイヤー
こいつに根気強く対応し続ける精神は尊敬するよ
141:名無しのプレイヤー
>>139
できれば言葉を尽くして分かり合いたかったのですが……
そうですね。これ以上荒れた発言をするようならそうします
142:名無しのプレイヤー
群馬かー……隣県なんだけど移動手段がな。無賃乗車する訳にもいかんし。歩くか……?
143:名無しのプレイヤー
>>142
えっと、暫くは様子見していただけますか?
近場から優先して回収していこうと思っているので、今日の……そうだなぁ、18時までに人数が埋まらなかったら迎えに行きますよ!
144:名無しのプレイヤー
>>143
分かりました、待ってます。けど10人か……。枠残ってるかなぁ
145:名無しのプレイヤー
今のペースなら残りそうではあるが、果たして……?
146:名無しのプレイヤー
>>134さん、もうすぐ駅に着くよ。どの辺にいるかな?
147:名無しのプレイヤー
早いですね!? 今駅前に出ます。
特徴は、黒髪の十代後半ぐらいの女です。ベージュのコートを着ています。
148:名無しのプレイヤー
了解! そっち行くね。
自分は銀髪で外人っぽい女です。それっぽいのがいたら手を振ってくれる?
149:名無しのプレイヤー
分かりました!
150:名無しのプレイヤー
イッチ女だったのか
151:名無しのプレイヤー
元の性別は分からんけどな
159:名無しのプレイヤー
無事合流しました。>>147さんも手伝ってくれるそうなのでありがたい
160:名無しのプレイヤー
自分も支援を受けたいです。男なんですけど大丈夫ですかね? 今は高崎駅にいます。
161:名無しのプレイヤー
>>160
もちろんOKですよ! 迎えに行くのでそこで待っていてください
162:名無しのプレイヤー
了解です! ありがとうございます! 感謝します!
163:名無しのプレイヤー
同じく高崎市です。自分もお願いしてもいいですかね……?
住居所持金NNで何も持ってません
164:名無しのプレイヤー
>>163
もちろんです。>>162さんと一緒に迎えにいきますね
165:名無しのプレイヤー
>>163
高崎って言っても広いぞ? どこにいるんだ。やっぱ駅?
166:名無しのプレイヤー
そうです。高崎駅に居ます
167:名無しのプレイヤー
>>166
ならすぐ近くにいるのかな? 先に合流しておきません?
168:名無しのプレイヤー
>>167
もしかしてお互い見える範囲にいたりするんですかね……?
169:名無しのプレイヤー
>>168
あれ? もしかして今立ち上がってきょろきょろしてるのはもしかして……?
170:名無しのプレイヤー
>>169
!?
171:名無しのプレイヤー
一瞬で合流出来てて草
172:名無しのプレイヤー
どうもホームレスのプレイヤーの初期位置は共通して駅みたいだな
173:名無しのプレイヤー
田舎駅の人はご愁傷さまだが……
174:名無しのプレイヤー
今のところそんな悲惨な声は聞こえてこないし、皆それなりに大きな駅みたいけど
175:名無しのプレイヤー
詳しい駅名は居場所が特定されちゃうから言い難いけど、他の人と合流するならカミングアウトしないとな
176:名無しのプレイヤー
ここみたいにスレタイに場所を書けば周辺プレイヤーを集めやすいだろうな
177:名無しのプレイヤー
>>176
そういうスレはもうちょくちょく立ってる
178:名無しのプレイヤー
>>177
ほんとだ。
俺はどうすっかなー……思った以上に平和な世界に飛ばされて困惑してる
悪魔と関わらずにのほほんと暮らすなら、国を頼ってまっとうな職に就く一択なんだが……
179:名無しのプレイヤー
すみません、>>1さんはいますか?
伊勢崎なんですけど、所持金は8万持ってます。僕は駄目ですか?
180:名無しのプレイヤー
>>179
ごめんなさい、まずはNNの何も持っていない人を優先させてください。
181:名無しのプレイヤー
>>180
そうですよね、分かりました。無理いってすみません
182:名無しのプレイヤー
俺も伊勢崎だわ。狭いワンルームでも良ければうち来るか? ちな性別は男ね
183:名無しのプレイヤー
>>182
……お邪魔してもいいですか? やっぱり宿代は馬鹿にならなくて……
184:名無しのプレイヤー
支援の輪が広がっている……!?
185:名無しのプレイヤー
群馬いいなー。俺の近くでも>>1みたいな人が出てこないかな
186:名無しのプレイヤー
待ってるだけじゃ助けは訪れないよ。
自分でスレ立てするなり生活保護の窓口に行ってみるなり行動しなきゃ
187:名無しのプレイヤー
そうだな……。いい加減俺も動いてみるか。
また受け身でいたらチュートリアルみたいなことになりそうだし……
188:名無しのプレイヤー
>>187
チュートリアル!? うっ(吐血)
189:名無しのプレイヤー
>>188
嫌な……事件だったね……
あまりネタバレするのはどうかと思い、先の展開を語るつもりは無かったのですが、今の展開に困惑している方が多くいらっしゃるようですし、中には作者のメンタルを心配するような感想もありました(評価が下がって多少落ち込みはしているものの、特段凹んでいる訳ではないのでご安心ください)
このまま黙っているのも悪いな思いまして、先のアンケートの意図や今後の展開などを軽く説明……した方がいいんですかね?
もう5~6話後にはある程度区切りがつくと思うので、その時に各ルートではどうなっていたかとかをチョロっと語ろうと思っていたのですが、今やった方がいいのかな……?
正直自分では判断ができません。
という訳でアンケートを取らせてください。
とりあえず主人公は考え無しにこんな行動をしている訳ではないです。
主人公なりの思惑と成算があって動いているのは確かです。胸糞展開にするつもりもご都合主義にするつもりもありません(どう評価されるかは分からないけど)
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翡翠 前
「どうしよう……」
黒髪の若い女が駅構内のベンチに座り、絶望に打ちひしがれるように俯いていた。
名は、
同名のキャラクターの覚醒能力特典を貰った、一人のプレイヤーだった。
翡翠はプレイヤーの中でも底辺だ。
チュートリアルでは、部屋から一歩も出ずに引きこもっていた。
迷宮内に足を踏み入れる勇気が湧かなかったから。
あの薄暗い通路と相対すると、まるで得体の知れない怪物の口の中を進んでいくような錯覚を覚えて、恐怖が体を支配して動けなくなった。
自然の成り行きとして食料は入手できず、お腹を空かせながら狭い部屋の中でひたすらじっとしていた。
硬い石の床ではリラックスすることもできず、なによりいくら安全地帯とはわかっていても、外を悪魔が徘徊するという事実が不安を煽り、いつ悪魔が襲ってきても不思議ではないと気が気ではなかった。
そんな状況では当然、眠ることは殆どできない。
気絶するように眠りに落ちて、悪魔に襲われる夢を見て飛び起きてからは、眠ることすら恐怖になった。
椅子の上で蹲り、不安を紛らわせるように掲示板に入り浸って時間を潰す。
空腹と寝不足で、翡翠は日を追うごとに衰弱していった。
3日も経つ頃には動き回る元気すら残っておらず、今さら探索に出ることもできない、完全に詰みの状態になっていた。
――私、このまま死ぬのかな……。
漠然と死は覚悟していた。
苦痛が続くようなら、いっそ一思いに……。そう思ったが、自殺する勇気もなかった。
後ろ向きではあれど、自殺するのにも強い意思が必要になる。まして楽に死ぬための道具が何もない状況では尚更だ。
石の壁に頭を打ちつける? 断水する? 迷宮に行って悪魔に殺される?
どれも想像するだけで背筋が凍った。自分で命を絶つのは絶対無理だと思った。
空腹は、ある一定を超えると苦痛ではなくなるらしい。
頭がぼうっとして体がだるい。けれどひもじさはそこまで感じなかった。
このまま緩やかに死ねるなら、それはそれでいいかもしれない……。
死ぬのは怖かったが、より強い苦痛と恐怖に苛まれて死ぬよりはいいと、自分を納得させた。
そして3日目のあの日。死は唐突に訪れた。
――禁止区域指定……? あと1時間で、ここが安全ではなくなる……?
PCの画面に表示された運営からの報せ。
その意味を、翡翠は暫く理解できなかった。理解したくなかった。
それはまるで、自分の死刑宣告を読み上げるようなものだったから。
――怖い……。怖いよ……。お父さん、お母さん……。誰か助けて……!
今さら警告された所で動くことはできず、その後の1時間を翡翠は恐怖に震えながら部屋で過ごした。
そして禁止区域指定が出てから、きっかり1時間後。
足元の扉の隙間から、毒々しい緑の煙が静かに音を立てず室内に流れ込んできた。
毒ガスだ。翡翠は直感的にそう思った。
足元に滞留しつつ、徐々に嵩が増していく毒煙に翡翠は恐慌を起こしたが、部屋の外の迷宮内も同じ状況で、最早どうすることもできなかった。
パソコンの電源も落ちていて、他の人と会話を交わして恐怖を紛らわせることもできない。
やがて煙の高さは口元にまで達した。
始めは吸い込むまいと手で鼻と口を塞いで息を止めていたが、すぐに限界は訪れる。恐る恐る息を吸ったが、恐れていた苦痛は感じなかった。息苦しさも感じない。
色がついていなければそれがあると分からないような、無味無臭の煙。
しかしそれは確かに毒だった。
完全に室内がガスで満ちて5分ほどした頃だろうか。唐突に、翡翠は吐血した。
――え?
口に含んだ水を吐き出すみたいな自然さだった。手のひらが真っ赤に染まり、口の中が鉄の味に染まったことから、自分が血を吐いたのだと遅れて理解した。
その後も数分おきに吐血を繰り返した。
痛みは無かった。しかしその度に自分の命が削られていくことに、翡翠は気が付いていた。
3回吐血した頃には、もう翡翠は立ち上がることすらできなくなっていた。
今際の際には何を思っていただろうか。
ただ毒々しい緑と、吐き出した血の赤とのコントラストが、今も脳裏に焼き付いている。
――やっと終われる……。
ああ、そうだ。
少しだけ安堵したような気がする。
ようやくこの生き地獄から逃れることができるのだと。
――え……? 生きてる……?
そして、石造りの狭い部屋。その床の上で目を覚ました。
迷宮内の初期セーフエリア。翡翠が3日間を過ごした場所だった。
先の出来事がまるで夢であったかのように、毒ガスは引いていた。
――夢……? じゃ、ない……?
しかし手や床に付着した血の汚れはくっきりと残っていた。
自分はガスにまかれて死んだはず。でも生きている。なら夢だった? しかし吐血の跡がある。
惨劇を物語る確たる証拠に、翡翠は何が何だか分からなくなった。
『ごきげんよう、プレイヤーの皆さん。――どうぞお気軽に『天使』とでもお呼びくださいませ』
混乱した翡翠に回答を示すように、パソコンの画面が勝手に切り替わり、美しい天使の姿が映し出された。
始めはお迎えが来て、天国にでも連れて行ってくれるのかと思った。
しかし話を聞いているうちに、そんな幻想は打ち砕かれた。
この地獄は続いていくのだと、翡翠は悟り、呆然となった。
スコアは0。評価F。
何の保証もない1発ガチャ。
運を天に任せて引いてみたが、2つは最低レアと思しきレア度N。
唯一覚醒能力だけN+が出たが、それも大したことはなさそうだった。
能力は、物静かそうな赤髪の美少女メイド、『翡翠(月姫)』。
原作はよく分からない。Fate繋がりでなんとなく知っているだけで詳しく知らないけれど、戦っているイメージは無かった。
作品的には特殊な力があってもおかしくはなさそうだけど、潜在能力には期待できそうにない。
住居は無い。所持金もない。
――これでどうしろというの……。
無い無い尽くしに途方に暮れる。
じんわりと涙が浮かび、視界が歪んで画面がよく見えなかった。
そして、今に至る。
捨て子として施設で育ち、漠然と生きた、18年間の虚無の日々。
突然駅のホームで、前世の記憶と意識が浮上した。
所持金0円。帰るあてもない。
唯一の持ち物だったスマホも、携帯料金を支払っていないのかネットに繋がらなかった。
駅なら探せばフリーWI-FIが飛んでいる場所もあるかもしれない。
そんなことにすら思い至らないほどに翡翠の混乱は酷く、思考は鈍っていた。
「これからどうすれば……」
駅構内のベンチに腰を掛けた翡翠は、淀んだ気持ちを吐き出すように深いため息をついた。
昼間から黄昏てベンチに座る、暗い雰囲気を漂わせた若い女の姿に、チラチラと視線を向けてくる人はいたが、心配そうに声をかけてくる人はいない。
人と人との繋がりが薄れた冷たい現代社会の風を感じて、翡翠はますます憂鬱になった。
(あれ、このアイコン……あっ、掲示板は見れるんだ……)
未練がましくスマホを弄っていた翡翠は、ようやくその事に気が付いた。
一縷の望みをかけて掲示板を覗く。
自分と同じ境遇の人が大勢いるようで、不謹慎だが少し安心してしまった。
窮乏しているのは自分だけではないのだと。
他人の不幸を喜ぶなんて最低だ。そんな自分に嫌気が差す。
いろんな感情がない交ぜになったのか、なぜか涙が滲んできた。
目元を拭って小さく鼻を啜り、半分泣きだしつつも翡翠はスマホの画面をスクロールしていく。
色んな書き込みに目を通していると、なんとなく展望も見えてきた。
(そっか。現代日本なら保護を頼めばいいんだ……)
そんな単純な事にも気づかなかったのは、1人ぼっちで誰にも頼れず餓死しそうになった苦い経験の所為だろうか。
今の状況は、翡翠が思っていた程に絶望的な状況ではないらしい。
少なくともあの悪夢のチュートリアルと比べれば、ずっと優しい状況だ。
希望の光が見えた――。
しかしその光を遮るようにして思い出されるのは、毒ガスに満ちた狭い部屋。そこで孤独に死んだ記憶。
国を頼り、保護を受けて。その先はどうする?
安穏として生きていて、果たして大丈夫なのだろうか? また不意打ちのようにああいった事が起きないだろうか?
胸を掻き毟りたくなるほどの不安に襲われる。
しかし自分で戦うこともできない。どうすれば……。
あの時の死の恐怖を思い出して、翡翠は体が震えだすほどの寒気に襲われた。動悸が激しくなって呼吸が浅くなり、手が痺れだす。
そんな時に、ある一つのスレッドが目についた。
【群馬県】近くにいる人をできるだけ助けます【前橋市】
(群馬県、前橋市……?)
既視感を感じた翡翠は、周囲を見回して駅名を探した。
(前橋駅……。私が今いる場所だ……)
その偶然の繋がりに、翡翠は導かれるようにスレッドを開いた。
(スコア評価S……!? すごい、トップランカーだ……)
少し疑って書き込みのログを辿ってみたが、それは事実だろうとすぐに判明した。
あのチュートリアルを7日間も生き抜いた上で、悪魔も沢山倒している、正真正銘の攻略組。その最上位層に位置する人物だった。
少なくとも7日目まで書き込みを行い、実際に体験しなければ知り得ない、様々な情報を齎していることは確かであった。
初期セーフルームから一歩も出ることなく閉じこもっていた翡翠とは雲泥の差がある。
そんな凄い人が、周囲にいる困窮プレイヤーを助けようとしている。
宿を提供してくれて、お金を貸してくれる。
おあつらえ向き過ぎて疑いそうになるほどに、その条件は翡翠の願望とマッチしていた。
――この人についていけば、何かあっても守って貰えるかもしれない。
期待に胸が高鳴る。気が付けば体の震えは収まっていた。
(この人に頼ってみようかな……?)
正直に言えば不安もあった。
流石にスレで不信をまき散らしている人ほどではなかったが、若い女が人の家に泊まり込むなら、“そういう事”も考えられた。
しかしそのやり取りを見ているうちに、覚悟も決まった。
(そんなに悪い人には見えない……よね?)
先行きが不安なのは変わらないのに、自分の事だけを優先せず、他人にも手を差し伸べる。
きっといい人だ。
そう信じてコンタクトを取った。
最後までスレッドを追って更新した瞬間、直前に支援をやめるという書き込みがあった時にはものすごく焦ったが……。
(ほっ、返信があってよかった……。もうこの人いい加減にしてよね。本当にやめちゃってたら誰も得しないじゃない……)
怒りに任せてそのIDをブロックする。
(えっ、もう着く? 早いっ)
不安と期待でドキドキしながらスマホを眺めていると、もうすぐ駅に着くというレスがついた。
待たせてはいけないと焦り、翡翠は慌てて返信をすると駅の建物内から飛び出した。
アンケートにお答えいただきありがとうございます。
ネタバレはいらないという意見が多いようなので、とりあえずこのまま進行していきます
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翡翠 中
晴れてはいるが、柔らかな日差しは冬を感じさせる。外気は少し肌寒かった。
チュートリアルの時とは違い、服装はちゃんとしている。コートを着た冬服姿で、人に見られても恥ずかしくない恰好だ。
構内にいる時はそれなりに温かくはあったが、外は冷たい風が吹いていて思った以上に冷えた。
行き交う人や車をぼうっと眺めていると、不意にある事に気が付いてハッとした。弾かれるようにして口元を手で覆う。
(私、マスクしてないや……)
駅まで来てノーマスクとか。今のご時世、それは致命的だ。
感染リスクによる物理的な命の危険もそうだが、何より社会的に死ぬ。
今の状況でそんなことを気にしている場合かとも思ったが、ここ1年以上で身についた習慣故か、人混みでマスクをつけていないことに不安を感じた。
(あれ……? でも、皆マスクをしてないような……?)
周囲を見回し道行く人の顔を見るが、多くの人がマスクをしていなかった。
口元に何も覆わず、それが当然のような態度で歩いている。
(どういうことなんだろう……? ひょっとしてこの世界ではコロナが流行ってないのかな? ……んっ、あれは)
そんなことを考えていると、白い頭の人物が遠くに見えたので、思考を中断して注意を向ける。
しゃんとした姿勢に細身ながらも女性らしさを感じさせる体つき。服のセンスも若者らしい。老人ではなく若い女性のようだった。
しかもマスクをしている。ひょっとしてあの人がそうだろうか?
(ど、どうしよう。私から手を振るべき……だよね?)
間違っていたらと思うと少し恥ずかしかったが、思い切って手を上げて、小さく左右に振ってみた。
(あ、こっちに来た!)
やはり待ち人で間違っていなかったのか、銀髪の女性は軽く手を振り返すと、翡翠の方に向かって歩いてくる。
柔らかな陽光を受けて煌めく滑らかな銀髪は、顎程の高さで切り揃えられている。
マスクで顔の下半分が覆い隠されているにもかかわらず、醸し出ている美少女オーラ。
目元だけでも整った顔立ちをしているのが伝わってくる。
身長は170センチ近いだろうか。翡翠よりも目線がおでこ1つ分ほど高かった。
目元だけでニコリと笑ったその人が、初対面を感じさせない気さくな様子で声をかけてくる。
「こんにちは。君が掲示板に書き込んでくれた人かな?」
「あ……はい。そうです。わざわざ迎えに来てくれてありがとうございますっ」
「急いで来たわけじゃないから気にしないでよ。本当に家が近かったんだ」
言葉にした勢いのまま頭を下げると、銀髪の人は苦笑したように肩をすくめた。
「まずは自己紹介でもしようか。僕は
「あ、はい、えっと……」
本名と現在の名前。どちらを口にしたものかと少し迷って口籠る。
そんな迷いを察したのか、三千桂は再び口を開いた。
「ちなみにこれはこの世界での名前ね。本名は……今となっては名乗る意味がないかな。それとも知りたい?」
「い、いえ。大丈夫です。えっと、私は翡翠です。
不思議と、その名を名乗ることに違和感がない。
記憶が薄いとはいえ、20年近くもこの名で呼ばれていたからだろうか。
「その、よろしくお願いしますっ」
「うん、こちらこそよろしくお願いするね、巫浄さん」
自分がお辞儀をすると、三千桂も改まって頭を下げてきて、翡翠は恐縮した。
「じゃあうちに案内するよ。10分くらい歩くから付いてきて」
「は、はい。お願いします」
ややあって、二人は連れ立って歩き出した。
歩き出してすぐに、三千桂が碧色の瞳をちらりとこちらに向けて口を開く。
「ところで巫浄さんって、月姫の?」
「あ、はいそうです。私はあんまり知らないんですけど……あの赤髪のメイドさんですよね?」
「そうそう、無口っぽい方の」
「確かにそんな感じでしたけど……」
無口っぽい方? そういえば姉妹キャラだったんだっけ?
考えても月姫に詳しくない翡翠にはよく分からなかった。
「そっかー、翡翠かー。それってランクは何だったの?」
「ランクは……」
一瞬言い淀む。自分の弱みをさらけ出すようで少し抵抗があったから。
「……N+です。多分、最低ランクより一つ上の」
「そっかー。けど悪くないように思うよ、翡翠は。戦闘はできな……くもないかもしれないけど、能力はサポート系だから」
三千桂さんはこのキャラについて色々知っていそうだ。
詳しい話を聞こうとしたが、先に三千桂が「あっ」と上げた声に遮られた。
「……ごめん。今のは名前を呼び捨てにした訳じゃなくてね?」
「わ、わかります。大丈夫ですよ。むしろ呼び捨てでも何でも好きに呼んでもらって構わないというか……」
「そう? じゃあ名前で呼ばせてもらうね。よろしく翡翠ちゃん。僕の事も自由に呼んでくれて構わないからね」
「あ、はい。わかりました……」
なんだかコミュ強というか、大人な感じがする。三千桂さんの実年齢は結構高いんだろうか。
聞いてみる? いや、そんなことよりも名前について気になった。
『つぎくに みちか』って、『継国 みちか』だよね?
それに凄くよく似た名前を、翡翠は知っていた。
「継国さんのお名前は……もしかして巌勝――鬼滅の刃の黒死牟から取られたものなんですか?」
「そうそう、正解。詳しいね? 鬼滅好きだったの?」
「はい、アニメとか漫画が趣味だったので……」
「なるほど、気が合いそうだね!」
黒死牟――。鬼滅ではかなりの実力者だ。
Sランカーというのは伊達ではない。
やっぱりこの人についていけば何とかなるかも……。そう翡翠は思った。
「ちなみにさ、黒死牟の一人称って覚えてる?」
「え? えっと、確か“私”だったと思いますけど……」
「ふむ、ならそっちに寄せようかな。この身体になってちょっと一人称に迷ってたんだよね」
まるで性別が変わったかのような物言いで、少し……いや、大いに気になった。
デリケートな話かもしれないけど、隠しているような素振りもないし、大丈夫だよね?
恐る恐る質問する。
「その、答え辛いなら答えなくてもいいんですけど……。もしかして三千桂さんって、男の人だったんですか……?」
「そうだよ」
あっさりと三千桂は肯定した。
「困っちゃうよね。単にゲームで女キャラを使いたかっただけなのにさ」
ははは、と笑う三千桂の横顔はどこか哀愁を帯びていた。
「そういう翡翠ちゃんはどうだったの?」
「私は……性別は変わってないです」
「そっかー。なら色々教わることもあるかもしれないね! その時はよろしく」
「は、はい。もちろんです」
色々ってなんだろう。
結構恥ずかしい話のはずなのに、銀髪の少女はあっけらかんとしている。
性別が変わった事、実は大して気にしていないんじゃないかと翡翠は思った。
先導するように斜め前を歩く三千桂を追って、しばらく無言で歩く。
ある程度打ち解けたことで緊張が解れて、人付き合いが苦手な翡翠もそれなりに口が軽くなっていた。
不意に思った疑問を言葉にする。
「特典の黒死牟さんって、やっぱり最高レアだったんですか……?」
「ん-、多分そうだと思うよ。とりあえずSRではあったね」
「すごい……。その、ステータスのボーナスポイントはどれくらい貰ったんですか……?」
「そっちは10ポイントだったね。まあレベルリセットされて初期ステはALL1だったから、総合的な強さは迷宮の時と大して変わってないよ。いや、武器やアイテムが無くなった分弱体化してるか」
「10ポイント……すごい、ですね……」
もうそれしか言えなかった。
やっぱり自分なんかとは全く違う。
最底辺と、最高峰。
比べたら惨めになるほどの強さを持った人だった。
翡翠は話題を変えるように言葉を続けた。
「その、日光とかは大丈夫なんですか?」
「ん? ああ、別にその辺は何ともないよ。今のところ恩恵もなければ弊害もないみたい。そっちもそんな感じでしょ?」
「そうですね、特に何か変わった気はしないです」
鬼滅の刃の黒死牟と言えば、日光が弱点の人食い鬼でもある。
もしかして人肉を欲するためにプレイヤーを集めるつもりなのではと邪推してしまったが、だとしたら名前は隠すだろう。正直に告げて警戒させる必要はない。それらのデメリットは無いようで一安心だ。
特典のキャラの名前を聞いてドキッとしたが、杞憂で良かった。
「ところで、私の特典元の能力が何か知ってますか? 顔だけはなんとなく知ってたんですけど、詳しい事は分からなくて……」
「ん、翡翠の能力? あ、あー、確か『感応能力』だったかな? 自分の体力や生命力を他者に分け与える的な」
「なるほど、確かにサポート系ですね」
「後は……メイドをしてたし家事は得意なんじゃ? ああ、でも凄いメシマズって設定もあったか」
「え、メシマズ?」
「うん、味覚がおかしくて料理は全くできなかったはず。格ゲーの派生作品では料理が爆発してたような……」
「ば、爆発ですか」
「そう、爆発。もしかしたらその能力も引き出すことになるかもしれないから、厨房に立つときは気を付けてね」
「は、はい……分かりました」
なんだかすごいことを聞いてしまった。
料理が爆発するって何?
これから料理をするのが怖くなる翡翠だった。
※メルブラなどの派生設定は含んでいないので、料理は爆発しません
所詮はレア度N+なので……
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翡翠 後
そうこうしているうちに三千桂の自宅へと到着した。
駅からほど近い場所にある高層マンション。その低階層にある一室に案内される。
広くて家具は揃っていて、掃除も行き届いている、どこか生活感のない小奇麗な部屋だった。
これで所持金も200万以上あるという。能力もそうだが、住居・所持金共に、上位プレイヤーの優遇っぷりが尋常ではない。
自分たち底辺プレイヤーとのあまりにも大きな格差に翡翠は愕然とする思いだった。
やはりランカーの人達は恵まれている。
となれば強さの面でも自分たちとはかけ離れたものになるのだろう。
やはりついてきて正解だった。そんな凄い人の庇護下に入れるなら安心だ。
「どうぞ、自分の家だと思って寛いでね」
「は、はい……ありがとうございます」
そう言われて、本当に他人の家で寛げる人は中々いないだろう。ただの社交辞令だ。
翡翠はおそるおそる、三千桂が座る対面のソファに浅く腰かけた。自然と手を膝の上に置き、背筋がピンと伸びる。
こうして面と向かうと、口元のマスクが気になった。
外では皆していなかったとはいえ、この人は前の世界の常識を持っている訳で、エチケット的に自分もするべきでは……?
「あの、マスク……私もした方がいいですか?」
「ん、ああこれ?」
自らがつけたままのマスクを指差して三千桂は笑う。
「気にしなくていいよ。習慣って怖いよね。部屋にマスクがなくってさ、私が外に出て真っ先にしたことはコンビニでこれを買う事だったよ」
「わ、分かります。私もマスクをしてないって気づいた時は慌てました……」
「そうだよね! まあ結果的には必要なかったみたいだけど。外を出歩く人は殆どマスクを付けてなかったし」
「こちらの世界では、コロナは流行っていないんでしょうか……?」
「どうなんだろうね」
おもむろにスマホを取り出した三千桂は、何やら検索し始めた。
「あーやっぱりだ。コロナって検索しても感染症の類はあんまり出てこない。パンデミック関係の情報もないし、この世界ではコロナ禍なんて影も形もないみたいだ」
「そうなんですね……。だったらオリンピックとか、普通に開催できたんでしょうか」
「オリンピック? ……おー、どうやら予定通り開催したみたいだね。今年……つまり2020年の夏に終わってる」
「そっか……いいですね、なんだか」
あの大変だった騒ぎが無かったことになっている。
その時の苦労を思い出してしみじみとした気持ちになるが、口をついたのはそんな言葉だった。
もう少しまともな表現は無かったものか。口下手で嫌になる。
「そうだね、平和なのはいいことだ。……このマスク、無駄になったな」
三千桂は無造作にマスクを外した。作り物のように整った素顔が露わになる。
キャラクタークリエイトによって作られた外見であるので、その表現もあながち間違いではない。
自分も元の姿とはかけ離れた端正な顔立ちとなっているため、翡翠もあまり人の事は言えないが。
「つけなくても大丈夫だと分かっても、外をノーマスクで歩くって、なんか違和感を感じない?」
「わかります。さっき歩いていた時も、なんだかムズムズする感じがして居心地が悪かったです」
「コロナが流行してから1年以上が経ってたもんね。完全に習慣化しちゃったなぁ。まあ衛生意識が増すのは悪い事じゃないんだけど」
「確かに、そうですね」
手洗いうがいを徹底したり、マスクや消毒液を使う習慣は、コロナだけではなくその他の感染症の予防にもなる。
毎年のように流行していたインフルエンザがコロナ禍では激減したりと、その効果は確かなものだった。
前の世界では当たり前のようにしていた大衆の行動が、この世界では当たり前ではない。
「なんだか、異世界に迷い込んだんだって実感が湧いてきます……」
「え? マスクの有無で?」
「は、はい。あっちでは当たり前だったことを、こっちでは皆していないので……。そこにギャップを感じるというか……」
「あはは! そっか、マスクで感じる異世界ギャップ! 面白いこと言うね、翡翠ちゃん!」
なにやらツボったのか、三千桂は手を叩いて爆笑していた。
クールそうな印象だったけど、意外とお茶目な人なのかもしれない。
優しそうな人だし、これからも上手くやっていけそうだ。
勇気を出して掲示板に書き込んで良かった。
翡翠は自らの決断が誤りではなかったと感じ、ほっと胸を撫で下ろした。
「――ところでさ。翡翠ちゃんはどうして私を頼ろうと思ったの?」
「え?」
急に笑いを引っ込めて放たれた質問に、翡翠は面食らった顔をした。
「自分で言うのもなんだけど、怪しくなかった? あの人も散々裏があるって指摘してたでしょ? 他に頼る手段もあったはず。それでも結局、頼ったのは私だった。どうして?」
「それ、は……」
真っすぐな瞳に見つめられて、翡翠は思わず視線を俯かせた。
本当の事を言ったら軽蔑されるかもしれない。
そう思った翡翠が言葉に窮していると、三千桂は穏やかな声音で言葉を続けた。
「ああ、ごめんね? 怖がらせるつもりは無かったんだ。ただ参考までに聞かせて欲しいな。私を頼ったのは、どうして?」
「あ、う、その……お、怒ったりしませんか……?」
「もちろん! どんな理由でも怒ったりしないよ。なんだったら私はここ10年ぐらい人を怒鳴った事はないから安心して」
「そ、そうなんですか?」
「うん。人に怒りをぶつけた所で自分がすっきりする以外何の得にもならないからね。知ってる? 暴言ってのはさ、直接言われた人はもちろん、それを見ただけの人ですら仕事の効率が物凄く落ちるんだよ。とても非効率なことだと思わない?」
「そ、そうですね……」
やはりこうした支援活動をしようとするだけあって、とてもしっかりとした考えを持った人のようだった。
少し怖いけど、やっぱり正直に話そう。この人ならきっと怒らないはずだ。
「その……三千桂さんがSランカーで、とても強い人なんだと知って……。私、怖くて。この先チュートリアルみたいなことがあったらと思うと、どうしていいかわからなくって。だから……三千桂さんを頼れば、守ってくれるかも、って……」
話しているうちにその時の感情を思い出して、きゅっと心臓が縮まり目の前が遠くなる。
自分でも何を話しているのか分からなくなりつつも、何とか言葉を続けた。
ちらりと三千桂の方を見ると、ふむふむと頷きながら静かに話を聞いていた。
いたたまれなくなって、翡翠は思わず謝罪した。
「その、ごめんなさい……」
「どうして謝るの?」
「だって、こんな打算的な考えで……」
「それの何がいけないの?」
本当に何とも思っていないような声だった。
恐る恐る顔を上げると、三千桂は穏やかに微笑みながら、優しい目で翡翠を見つめていた。
「打算的という言葉は、合理的で思慮深いとも言い換えることができる。私が見た所、翡翠ちゃんはとても頭が良くて賢い女の子だよ。もっと自信をもってご覧?」
「あ……ありがとうございます」
自分の内面をこれほど褒められたのは初めてだった。
○○って根暗だよね。ちょっと冷たいよね。そう言われて傷ついたことはある。
やっぱり三千桂さんは、他の人とは何かが違う。すごくいい人だ。翡翠は感動に胸を震わせながらそう思った。
「翡翠ちゃんが正直に話してくれたから、私もこうして人助けをしようとした動機を話すよ。と言ってもつまらない話だし長くなるけど……聞きたい?」
「はい、聞きたいです」
できる人という雰囲気がする三千桂の考えは、翡翠としても凄く興味があった。
期待の籠った眼差しを向けて翡翠が頷くと、三千桂は嬉しそうに口元を緩めた。
「おっけ。じゃあ話すけど……翡翠ちゃんは弱肉強食が間違いだって話は知ってる?」
「い、いえ……よくわからないです。ごめんなさい」
「うん、気にしないで。その辺も軽く解説していくね」
そう言って、三千桂は指を立てて説明する。
「まず弱肉強食というのは、弱者が強者の餌食になって弱者の犠牲の上に強者が栄える……。そんな概念だね。それが自然界の法則だと未だに多くの人が勘違いしがちだけど、科学的には古い概念なんだよね」
「そ、そうなんですか?」
「そう。弱いからといって一方的に食われる訳ではないし、強いからといって一方的に食える訳でもない。最終的には全ての個体は死んで食われて土に還る。繁殖して次世代に遺伝子を残した者こそが真の勝者と言えるわけだ。実際の所の自然界の掟は、『適者生存』『共存共栄』。より環境に適応した者が生き残り、多種多様なそれらが共存し合い、複雑な食物連鎖を構築している訳だ」
「な、なるほど……?」
「そんな自然界には、種族ごとに異なる生存戦略が無数に存在する。そして私たち人間が今も続けている生存戦略は『社会性』。効率的な社会を作り助け合って生きていくことで、本来であれば生存が困難な弱者を生き延びさせて、個体数や可能性を増やし種を繁栄させる……そういう戦略だね」
三千桂は一度言葉を切り、ローテーブルに置かれたコップの水で口を潤した。
「つまり何が言いたいかというと、人は一人では生きられないということ。気づいていないかもしれないけど、国、地域、会社、家族……皆何かしらの共同体に属して生きているんだ。社会を取り上げられて孤立してしまった人間は酷く脆い。大自然に1人放置されて生き延びられる現代人なんて殆どいないようにね」
「それは……なんとなく分かります。私も、チュートリアルではなにもできなくて……」
「恥じることは無いよ。それは当たり前の事だから。私もやけくそ気味に飛び出して運良く成功を収めていなかったら、翡翠ちゃんと同じ立場にいただろうしね」
「そ、そんなことは……。三千桂さんはこんなに頭が良いんだから、きっと……」
「あはは、ありがとう。けどね、どんなに強い人間であっても1人では生きられないんだ。猿やチンパンジーだって群れを作っているし、ほら、ポストアポカリプス系の作品でも、文明が崩壊してヒャッハーしてるような人達だってグループを作ってるでしょ? あれも一種の共同体でさ。すべてを自分一人で完結させて、過酷な環境を生き延びるなんて不可能なんだよ」
そこで三千桂は表情を曇らせた。
「本当はプレイヤー同士でがっちり協力し合った方が合理的で上手くいくと思うんだけど……残念ながら私みたいな考え方の人は少数派みたいでね。相対的な弱者を放置して、一部の者が力をつけて先鋭化するよりも、全体的な底上げをして、ピラミッド全体を大きくした方が理に適っている。もちろんリソースを集中させる必要があるならするべきだけど、それだって母体は大きいほど有利だ。……そうは思わないかい?」
「お、思います。三千桂さんのおっしゃる通りだと思います」
問われて、翡翠は即座に頷いた。
三千桂の説明は分かりやすく、また納得できるものだ。翡翠はその講説に深い感銘を受けていた。
「おお、ありがとう! 賛同してくれて嬉しいよ。やっぱり翡翠ちゃんはとても良い子で賢いね!」
「あ、ありがとうございます」
尊敬の念を抱き始めた人物にストレートに褒められて、翡翠は満更でもなく頬を紅潮させる。
「私の理念としてはそんな感じ。とはいえ一足飛びにそんな大きな事はできないから、今は地に足つけて周囲にいるプレイヤーを助けようとしている訳だね」
「すごく……立派な考えだと思います」
そう素直な言葉を口にすると、三千桂は面映ゆそうにして頬を指先で掻いた。
「そう言ってくれて嬉しいよ。これは私一人では到底実現できないことで、皆の協力が必要なんだ。どうかな、翡翠ちゃんも力を貸してくれないかい?」
「も、もちろんですっ。私なんかで良ければ喜んで!」
「おお! 本当に!? ありがとう翡翠ちゃん! 君が協力してくれてとっても嬉しいよ!」
翡翠が快諾すると、三千桂は満面の笑みを浮かべて飛び跳ねるような勢いで立ち上がり、翡翠の手を両手で握ってブンブンと振った。
そのあまりの喜びっぷりに翡翠も嬉しい気持ちになり、釣られて笑みが浮かんだ。
「これから忙しくて大変だろうけど、力を合わせて頑張っていこうね!」
「は、はい! 頑張ります!」
翡翠が勢いよく答えると、三千桂はご機嫌な様子で笑みを深めるのだった。
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支配 前
なんだかんだで、上限にしていた10人の枠は埋まっていた。
正直言って応募者が10人を超えるのは意外だった。
自分でもかなり怪しいことを言っているという自覚があったし、実際『あの場では言えない裏』は存在した。
それでもこれだけの数が応募してくれたのは、私の人徳の為せる業かな? ……冗談だ。
不審を上回るほどの強い不安があったのだろう。
それぞれに応募動機を一通り聞いた所、「Sランカーで頼りになりそうだったから」というのが最も多い理由だった。次に「信用できるように見えたから」と続く。
掲示板を見た他のプレイヤーも、似たような感想を抱いてくれることだろう。ある程度のPRは成功しているようで一安心だ。
これで私の事を「真っ先に人助けに動く善良なプレイヤー」だと印象付ける事ができただろう。
消したい過去が消せないのと同じように、こうした実績もまた一生に渡って世に残り続けるものだ。
もちろん失敗すればそれ以上の汚名が残ってしまう為、これから先も慎重に舵を取っていく必要がある。
応募者の選定は、住居財産の自己申告とチュートリアルの推定死亡日数で判断した。
何も持っていない、できるだけ困窮度の高そうな人を優先したが、ちらほらと能力ガチャで上振れした人も混じっていて嬉しい誤算だった。
低レアとはいえ、特殊技能の潜在能力を持った人間を囲えるのは悪くない。
忙しい合間にも各個人のプロフィールは収集済みだ。
前世の職業・経歴・技能、特典の詳細等。
一通り面接を行った印象としては、皆それなりに常識を弁えていそうな普通の人ばかりだった。
応募者が強盗に変わるかもしれない。
私はそういったリスクもきちんと認識した上で、他のプレイヤーを受け入れた。
しかし彼ら・彼女らは皆、元は現代日本で普通に暮らしていた一般人だ。
それも本人の過失によって財産を失い路頭に迷っている訳ではなく、半ば不可抗力のような形で全てを失った人達だ。
チュートリアルで苦労したにしても、まだこの世界に来てからは1日も経ってない。何か月も路上生活を経験した後ならともかく、今はそこまで元の性格からの変化はない筈だ。
助けた人に、そこまでの悪人が混じっているとは考え難い。
スラム街の住民やその辺のホームレスを家に招き入れるのとは訳が違う。
どちらかと言えば、突然の災害で家を失って困窮している人々を家に招く、というのが近いだろうか。
まあそれだって大概危険な行為だが、それは招く側が一般人の場合だ。
今の私の身体能力なら、ステータスに何のボーナスも受けていないプレイヤー程度、仮に襲ってきた所で返り討ちにできる。
7日間のチュートリアルによって鍛えられた私の戦闘能力は、7日前とは比べ物にならないほど増していた。
1対1なら、何の力も持たない一般人になど負ける気がしない。
集団で襲われれば分からないかもしれないが、そんな状況は作らなければいい。
普通の日本人であれば、助けられれば恩を感じて借りを返そうとするだろう。
その借りが何年にも渡って返済が必要な、数百万から数千万円といった莫大な借金とかならともかく、たった十数万円の借金だ。
何かしらの挫折があって途中で投げ出すことはあるかもしれないが、とりあえず最初は返済しようとする筈だ。
恩で縛り、力でも逆らえない。そして逃げ出す場所もない。
私はこの小集団に対して絶大な権力を握ることになる。
彼らは全員面識のない人々の集まりだ。連帯を持った10人の集団ではなく、個人が10人集まっているだけの寄り合い世帯。横の繋がりなど全く無い。
自分はその1人1人を分断しつつ、ゆっくりと自らの勢力に取り込んで行けばいい。
仮に私を追い出してこの家を乗っ取ろうとするなら、当然抵抗する私と対決することになるため、それを打倒する戦力が必要だ。
クーデターを成功させるためには仲間の存在が不可欠だが……この状況ではヒトラーだって扇動は無理だろう。そんな事を口にしたところで戯言として扱われて孤立し、追い出されるだけだ。
突発的に訳の分からない犯行を起こしたり、外部と繋がって脅威を引き入れるという可能性も0ではないが、そんな低すぎる可能性を真面目に警戒していたら何もできなくなる。
その辺のリスクを呑み込めるぐらいには、私は自らのマネジメント能力に自信があった。
悪魔相手の切った張ったと違って、こちらは本職と言える。10人程度なら問題なく管理できるはずだ。
人間というのは、複雑なようでいて単純だ。
考える頭と自由意思を持った存在というのは支配しにくいように見えても、要点さえ押さえてしまえば人を服従させるのは意外と簡単なのだ。
“この人に従った方が得だ”“逆らったら損をする”そう自分の頭で考えさせて、その人の自由意思によって服従させれば良い。
その為の手法は、長い人類の歴史の中には多くの参考例が存在する。
私自身、人を管理するという経験もある程度は積んできた。
彼らを私のシンパとするまでの道筋は見えている。後は状況を注視しつつ、細かな対応を行っていけばいい。
人間同士の不毛なマウントの取り合い。
ああ、なんて平和なんだろう。人間社会に帰ってきた、という実感が湧いてくる。
この和やかな日常がいつまでも続いていけばいいのだが……期待はできないだろう。
だから、備えないと。
与えられたリソースを余すところなく活用し、自身の持つ力を拡大させる。
元より世界が崩壊して秩序が破壊されるようなことがあれば、住居も金も意味がなくなるものだ。使えるうちに使っておいた方がいい。
とはいえ意味もなく平和な世界に送られたとは思えない。暫くはこの状況が続くと踏んで、回収が中長期に渡る投資を実行する賭けに出た。
この判断が吉と出るか凶と出るかはまだ分からない。
しかし状況に大きな変化が無ければ、きっと成功させてみせる。
私は密かに決意した。
多くの人の生活音が折り重なって、ざわめくリビングルーム。
こうして11人が集まると、広かった空間も狭苦しく感じる。
今はどうにか全ての希望者を回収して、最低限生活に必要な物資の買い出しを行い、ついでに買ってきた弁当をそれぞれが食べている所だった。
自炊して節約したいところだが、何の体制も整っていない段階でいきなりは難しい。
この後銭湯に行かせる必要もあるし、やることが目白押しだ。
遠隔地のプレイヤーの迎え、荷物持ち等、先に回収した人に仕事を振ることである程度負担は軽減できたが、それでも中々大変な作業だった。
ようやく落ち着けて人心地が付いた……。この部屋にいる大半の人はそう思っているだろうが、私にとってはここからが本番だ。
まずは彼らを管理する為の組織を早急に作らなくてはならない。
無秩序のままでは早晩崩壊する。この集団を維持していく為には、ルールという名の秩序が必要なのだ。
自由放任。それぞれの良識に期待する。それらは言葉の響きこそ良いものの、その結果何が起きるのか想像できていない。無責任な態度そのものだ。
こうして人を集めた以上、私は彼らに対して責任を負っている。まともな生活を提供して自立を手助けするためにも、そこら辺は曖昧にはしておけない。
「あちゃあ、駅のホームで飛び降り自殺があったみたい。可哀そうに……もしかしてお仲間かな」
「――え?」
全員初対面ながらも今日一日でそれなりに打ち解け合い、歓談しながら食事をしている所に、私は爆弾を放り込んだ。10対の視線がこちらへと向き、空気がピシリと凍り付いた。
「今日の宿が見つけられなくて野宿の人もちらほらいるみたい。外は寒いのに、大変だぁ……」
まず彼らには、今自分が置かれている状況は恵まれているのだと錯覚してもらう。
人は自らよりも下の人間を見ると安心する生き物だ。
彼らよりも更に下。今日1日を無駄にしてしまった底辺の悲惨な現状を知らせる事で、自分たちはまだマシなのだと認識させる。
現状に一定の満足心を持たせて、今の暮らしが無くなることを恐れさせ、思考を保守的にさせる。
自分たちが放り出される原因になるかもしれない、家主である私に対して失礼を働く者や、秩序を乱す者を排斥するように仕向けるのだ。
その為に合間合間に収集していた、運の悪いプレイヤーの不幸エピソードを語っていく。
影響は軽微かもしれないが、確実に楔は打ち込まれるだろう。
「あらら、この人は生活保護の窓口に行ったんだけど追い返されて野宿確定だって……。今日1日何も食べてないみたいだし……大丈夫かな、心配だ」
「それって……違法ですよね? その職員、とんでもなく酷い人ですね」
美男美女の集団にいて若干浮いている、平凡な顔立ちの中年男性が口を開いた。
名前は
「そうだね。中にはそういう酷い職員や自治体もあるんだろうね……。申請を受け取って貰えなくて、体よく追い返された人も中にはいるみたいだけど、食料やアルミシートくらいは貰えたみたいだから。その人は運が悪かったんだろう」
酷い、可哀そう。そういった声がちらほらと上がる。
「そう考えると、三千桂さんに拾われた僕達ってかなり恵まれてる方ですね……なんだか他の人に申し訳ない気持ちです」
「私としても、こうして掲示板越しに見ている事しかできないのは心苦しいかな」
「そんなことないですよ! 三千桂さんは私たちを助けてくれたんですから!」
今度は豊満な体形のピンク髪の美女が声を上げた。
ちなみに私と同じくTSしているらしい。
「そうそう。俺らも三千桂さんに助けて貰えなきゃ今頃どうなっていたことか。ホント感謝です!」
「そうですよ! やれることはやってるんですから、負い目を感じる必要なんて一つもないです!」
「拾ってくれてありがとうございます、三千桂さん」
「そうだね、ありがとうございます!」
誰かが感謝の言葉を口にしたのを皮切りに、彼らは口々にお礼の言葉を言い始めた。
助けられて感謝する。一見和やかな光景にも見えるが、10人全員の行動が統一されるのも少し異様だろう。
“ここで黙っていたら恩を感じていないように思われるかもしれない”そういう場の雰囲気が、彼らの発言を後押ししていた。
暇を見て私の思想を語ることで、軽く洗脳――げふんげふん、説得したことにより、意志が弱そうな人から良い感じにイエスマンも湧いている。
この雰囲気の中で反対意見を言い出すのは、なかなか難しいだろう。
「ありがとう皆。私もささやかながらこうして皆を手助けできてよかったよ」
これは本心だ。
自分が手を差し伸べなかったら、もしかしたらこの人達の中から先ほど挙げたような不幸な状況に陥る者や、ともすれば自殺者すら出ていたかもしれない。
それを未然に防ぐことができて本当に良かった。
たった10人とはいえ、確かに私は気の毒な目に遭うかもしれない人々を救ったのだ。その点は誇らしく感じる。
「これから先も大変だろうけど、皆で協力し合って生活して行きましょう!」
おおー! と若い男女の声が唱和する。
見た感じ、私の言葉に否定的な人間はいなさそうだった。程度の差はあれど、皆この集団に馴染もうと努めているようだ。
いい傾向だ。
やはり元は普通の日本人だけあって、扱いやすそうな人が多いようで何よりだ。
掲示板上では言葉の強い人は印象に残りやすく、実数以上に多く見えるが、実際のところああいった人物は本当に少数だ。特にリアルでも掲示板上のような振る舞いをする社会不適合者は殆どいないだろう。
(これは案外穏便に済みそうかな)
考え無しに動くような輩が混じっていることも織り込み済みではあった。その際のプランについてもある程度決めてある。
手荒な手段を使うことになるため、あまり使いたくはなかったが……どうやら出番はなさそうでホッとする。
「さて、これから共同生活を送るにあたって、いくつかルールを決めようと思います。とはいえ細かい決め事は後々作っていくとして、まずは大まかな枠組みです」
一呼吸置いて全員に言葉の意味が浸透するのを待つ。皆が神妙な顔つきになったのを確認して、再び口を開く。
「まず大前提として、公序良俗に反する行為……つまり『常識的に考えて駄目だと思う事』はしないでください。もし何か問題が発覚した場合は、全員を集めて事情を聴いた上で、多数決を取って『問題を起こした人物を追い出すかどうか』を決めたいと思っています。この件について、何か疑問や意見のある方はいらっしゃいますか?」
「いや、特には……」
「まあ、問題を起こすなって当たり前の話だしね……」
「あの、少し質問よろしいですか?」
そう言って、見た目では最年長の次郎が手を上げた。私はにこりと笑って発言を促した。
「ええもちろんです。どうぞ」
「その、細かい質問で恐縮なのですが、問題の提起はどのように行われるのでしょうか……? もしかして、そのぉ、に、臭い等で嫌われて追い出される可能性も……?」
「ぷっ」
誰かが笑って噴き出す音がした。
「ご、ごめんなさい……なんでもないですっ。失礼しました」
「い、いえ。こちらこそ変なことを言ってすいません……」
その人はすぐに謝罪し、次郎もそれを受け入れたが、結構心に来ている様子だった。
私は何とか表情を動かさずに堪えた。危なかった。仕事モードでなければ笑っていたかもしれない。
前世では子供がいたと言っていたし、もしかしたら年頃の娘さんに『パパ臭い』とか言われた経験があるのかもしれない。そう考えると色々と不憫で笑えない話だ。
「次郎さんが懸念する事は伝わりました。つまり多数派に嫌われてしまった場合、悪いことをしていないにも拘らず追い出される人が出るかもしれないと危惧している訳ですね?」
「そ、その通りです」
「ご安心ください。そうした細かな諍いは話し合いで解決したいと思っています。追放決議は最終手段です。会議を開くかどうかも私が決めます。下らないことで追い出すような真似は絶対にしませんので、どうぞご安心を」
「わ、わかりました……」
「まあ三千桂さんに任せておけば大丈夫でしょ」
「うん、そうだね」
それぞれに1票の権利を与えた上で、自身は堂々と最高権力を主張しておく。
異論は出なかった。
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支配 後
「そしてお金の話ですが……掲示板上でも説明したように、皆さんの生活費にかかった費用は借金として計上いたします。とはいえ実費で計算しようとすると大変なので、申し訳ありませんが一律決まった額で計算させてください。色々と買い揃える物が多い今月は10万円、来月以降は月々5万円。その中からお小遣いとして週に1度5000円を支給する予定です」
多分足が出るだろうが、気前の良さで恩を売るのも大事だ。
ケチくさいだけのリーダーに人はついてこない。もちろん単に銭勘定に疎くて気前が良いだけのリーダーも駄目だが。
単にお金を得る事だけが目的なら、もっと欲張ってもいいだろう。しかしその場合は住民たちからの好感度は間違いなく低下する。
私は彼らを味方につけて、将来的には自分の手駒にするつもりでもある。これは必要な投資と言えた。
何ならもっと持ち出しを多くしてもいいぐらいだが、いきなり甘やかしすぎると効果は薄いか逆効果になる場合もある。こういうことは段階を踏まなくてはいけない。
「おー、小遣いくれるんだ」
「ウィークリーボーナスだ」
「その金額で家賃や食費、水道光熱費とか全部込々なら安いような」
「経費の範囲は具体的にはどれぐらいなんでしょう?」
感想を呟いたり、周囲と意見を交わしたりしている面々。その中から上がってきた質問に私は答える。
「最低限の衣食住はこちらで面倒を見ます。食費はもちろん、今日買ってきた敷布団などの寝具、着替えの衣類などは全て経費ですね。他に生活に必要そうなものがあれば相談してください。全ては無理ですができるだけ対応したいと思っています。その他の個人が必要とする細々とした物は、支給するお小遣いでそれぞれが用立ててください」
「はーい」
「わかりました!」
「あの、それで借金の利子とか返済についてはどうすればいいんでしょうか……?」
おっと、その話を忘れていた。
「利子はそうですね。単利で年率2%でいいですよ。この借金も生活が安定してから徐々に返済してくれれば結構です。まずは皆さんの自立が先なので、とりあえず借金の事は気にしなくて大丈夫です。このタコ部屋同然の集団生活を続けながら、働いて返せなどという鬼畜な事は言わないのでご安心を」
「年利2%? 安っ」
「さすが三千桂さん、太っ腹だ!」
正直言って金銭面で儲けるつもりは殆ど無い。これで返ってきたお金も再投資に充てるつもりだし。
「まずはこの暮らしを改善していくべく、皆で力を合わせて頑張っていきましょうね」
“皆で”“力を合わせて”そう言ったワードを強調することで、全体主義的な意識を持たせて集団の輪から外れることを厭わせる雰囲気を作り出す。
一回だけでは効果は無くとも、何度も繰り返すことで、そうした意識は確実に刷り込まれていくだろう。
「では次に部屋割りを決めます。この家の間取りは3部屋とリビングですが……自分だけ楽をするようで心苦しいのですが、鍵の掛けられる書斎の部屋は私に使わせてください」
「まあ家主だしね……当然でしょ」
「うん、むしろ追いやるような形になって申し訳ないかな……」
部屋の中をざっと見渡すが、不満そうな表情を浮かべた人は、少なくとも表面上は見当たらない。
「ありがとうございます。貴重品などはこの部屋で管理するので、皆さんも自分で持っているのが不安な貴重品などありましたら私に預けてください。責任を持ってお預かりします。皆さんを信用していない訳ではありませんが、どうしても人である以上、魔が差すこともあるでしょう。誘惑の対象がすぐ近くにあるのは良くありません。不和の種を事前に取り除く意味でも、私に預けるなり、ご自身で肌身離さず持っているなり、貴重品の管理は厳重にお願いしますね」
はーい、とそれぞれの返事が返ってくる。
身近な隣人に盗人が混じっているかもしれないと伝えて各々の防犯意識を高めることで、さりげなく分断を煽っていく。
「残り2部屋とリビングを、それぞれの性別毎に分けようと思います。男性、女性、女性(元男)といった具合に」
「性別で……ですか?」
茶髪の少女が不安そうに声を上げた。
彼女の名前は、
顔立ちから体格から声質まで、華奢で可愛らしい女の子にしか見えないのだが、その実は男。
女→男のTSで男の娘という、複雑な性別の持ち主だった。
「ああ、千尋さんは……千尋さんさえ良ければ私と同室しましょうか? もしくは女性陣の同意を得られれば彼女たちと。あるいは男性陣と、という選択も……」
「え、えっと……男部屋はちょっと……」
「ふむ。では私の部屋に来ますか?」
「え、えっと、そのぉ……」
歯切れが悪そうに千尋は女性たちの方をチラチラと見ていた。
なるほど、できればそっち側に行きたいらしい。
住民同士ではまだ詳細なプロフィールを共有できていない状況だ。
何人か察している人もいたが、大半の人は私たちの不思議なやり取りを見て首を傾げていた。
「千尋さん。皆さんに説明してもよろしいですか?」
「あ、はい……。黙っていてもいずれバレる事ですし……」
「わかりました。……実は彼女はこう見えて生物学的には男性です。しかし元の性別は女性であり、色々と複雑な事情があるのです」
「その……黙っていてすいません。話すタイミングが見つからなくって……。できれば同性だった方達と同じ部屋になれればなって、思っているんですけど……」
「そこの所はどうでしょうか、お二方?」
そう言って私は、元から女性で性別の変わっていない二人へと話を振る。
「わ、私は全然気にしませんよ! 歓迎します」
「えっと……私も大丈夫です」
真っ先に翡翠が声を上げ、続くようにもう一人の女性も受け入れる姿勢を示した。
「あ、ありがとうございます!」
「では千尋さんは元々女性だった組に入るという事で。これで男4:女3:TS3となりましたので、一番大きなリビングを男性陣が、残り二部屋をそれぞれの女性陣が使うということにしましょうか。タコ部屋みたいな状況ですが、ほんの1~2か月の辛抱です。働いて給料が出て、気の合う者同士でカンパを出し合えば、アパートの1つぐらいは借りて移り住むこともできるでしょう。個人で貯める場合でも、2~3か月あれば20万程は貯まるでしょうし、そうすれば1人暮らしも可能になる筈です」
先の展望を示し、どれだけの期間を我慢すればいいのか明確化する。
このままずっとこの暮らしとなれば暴動も起きるだろうが、はっきりとした指針を定めておけばそれに向かって努力してくれるだろう。
「まだ先の話ですが、別のアパートに移り住む人がいればこちらの部屋も広く使うことができます。お金を出してここを出ていく人が損をして、残った人が得をするという不公平な構図にならないように、自分から引っ越していく人には、残る側がお祝い金を出すことにしましょうか。具体的な金額は……そうですね、1人1万円ほどでしょうか?」
「いいと思います!」
「色々考えてるなぁ……すごい」
矢継ぎ早に方針を決めていくことで、頼りになる指導者としてアピールしていく。
こうして権威を高めていくことで、そのうち彼らは思考停止で私の言葉に従うようになり、私に逆らうものはいなくなるだろう。
「それと、各部屋にはそれぞれの班を纏めるリーダー、つまりは班長を決めたいと思います。――翡翠さん、ルーシーさん、次郎さん。お願いできますか?」
黒髪美少女の翡翠。桃髪巨乳のルーシー。中年男性の次郎。これはと思っていた人達の名前を挙げる。
「え!?」
「わ、私がですか?」
いきなりの話で、指名された面々は驚いた様子だった。
「その、班長とは何をすればいいんでしょうか?」
社会人歴の長い年長者らしく、冷静に次郎がそう尋ねてくる。
「私もやりたいことがあるので、常に皆さんに目を配って監督できる訳ではありません。なのでお三方にはその代わりをして頂きたいと思っています。それとお金の管理ですね。それぞれに収入ができるまで、自由になるお金は私からのお小遣いだけでしょう。無駄遣いを無くすように使い道をチェックしたり、もしも窃盗が発生した場合に誰が盗んだのか明確になるように、それぞれの班長に一元管理をして貰いたいのです」
分断して統治せよ。
少数が多数を支配する際に、最も有効だと思われる統治法だ。
1人で10人を支配することは、可能と言えば可能だ。
しかし私もメガテンらしいことがしたいので、彼らを統治する事だけにかまけている訳にはいかない。
それ故の班長だ。
各班の統率をそれぞれの班長に任せることで、私はある程度のフリーハンドを得ることができる。
「え、えっと……そんな責任重大な事、私に務まるでしょうか……?」
「そ、そうだね。あんまり自信がないかもです……」
責任の重さに怖気づいたのか、翡翠とルーシーは及び腰な態度を見せる。
「もちろんその責任と負担は他の方よりも大きなものになるでしょう。ですので班長を引き受けていただけた場合は対価をお支払いします。もちろんこれは借金として計上しない、私からの純粋な報酬です」
「具体的な金額をお聞きしても?」
そう次郎が聞いてくる。
「支給するお小遣いを倍にします。つまり合計すると週1万円、月だと4万円になりますね」
周囲から「おー」と、小さなどよめきが上がる。
元の金額が小さくとも、倍になるというのは結構なインパクトだ。
指名された3人の反応も悪くない。引き受けるかどうか、迷いが生じた顔になっている。
「選考基準はどうなっているんでしょうか? その、指名した理由を聞かせてくれませんと、他の人も納得できないのではないかと……」
次郎は他二人と比べたら前向きのようで、そんなことを質問してくる。
条件には惹かれているけど、このままでは周囲からのやっかみが怖いとかそんなところだろう。
私も適当に選んだわけではない。1人1人理由を説明していく。
「翡翠さんはまだ大学生だったそうですが、一番最初に合流して様々な事を手伝ってくれました。しっかり者という印象なので任せても問題ないでしょう」
それに私と接していた時間が最も長いので、人となりもよく分かっている。
かなり私の事を信頼してくれているようなので、仕事を振れば期待を裏切るまいと頑張ってくれるだろう。
「ルーシーさんも早めに合流して手伝いを積極的にしてくれて、頼りがいのある方という印象でした。社会人経験もあるそうなので安心してお任せできます」
正直ここは消去法だ。
他の元男組は合流が遅かったのもあり、人柄がいまいち把握できていない。
「次郎さんは社会人経験が長いようですし、管理職経験もあるそうなので最も適任だと思っています」
見た目こそ冴えないが、仕事が出来そうな雰囲気は漂っている。
先ほどから質問の半分以上はこの人がしているぐらいだし、ここは鉄板だろう。
それぞれの指名理由を聞いた周囲の反応は、特に異論を唱える者もなく、納得したようなムードだった。
「どうでしょうお三方。引き受けていただけませんか?」
「そういうことでしたら、わかりました。班長の役目、僭越ながらお引き受けいたします」
まず初めに、やはりというべきが次郎が承諾した。そしてその後に二人も続く。
「なら自分も……ぜひお引き受けさせてください」
「わ、私も……三千桂さんがそこまで推してくれるなら頑張りたいです」
「ありがとうございます! ではお三方がそれぞれの班の班長ということで。詳しい話は後程、私の部屋で話しましょう」
殆どが計画通りに進んでいる。私は黒い内心を隠しながらほくそ笑んだ。
班長と班員。それぞれの扱いに差をつけることで、不満の矛先を双方に向けさせる仕組みだ。
班長にある程度の権力を持たせることで、班のメンバーを管理させる。
そして不慣れな集団生活で生じる不満を、直接の支配者である私ではなく、身近な支配者である班長へと向けさせるのだ。
班長としても、班員の管理に煩わされてストレスを感じることになる。その苛立ちが向かう先も私ではなくより身近な班員になるだろう。
更に報酬を与えて特権を付与することで、その地位を守りたいと思わせる。
客観的に見れば固執するほどのではない地位とはいえ、閉鎖的な環境、余裕のない状況では視野も狭くなる。自らを客観視するのは意外と難しい。切羽詰まった状況なら尚更だ。
自分の班から問題が起これば、それは班長の責任にもなる。
立場の喪失を恐れて、張り切って統率してくれるだろう。
何の訓練も積んでいない一般人がこんな状況に置かれたら、絶対に諍いが起きるはずだ。
私はその兆候を見逃さず、誰に対しても味方面をして仲裁すればいい。そのための余剰リソースも確保してある。
『頼りになるリーダー』を演出する。そうする事でますます私の権威を高めることができる。
ちょっとしたマッチポンプだ。
(はあ、いつから私の心はこんなにも黒く染まってしまったんだろう……)
たまに自分が分からなくなる。
多少演技は混じっているが、善人面した部分が私の素のはずである。
子供の頃はもっと純粋で真っ白だった。けれど、いつの間にか社会の闇に揉まれて自分も黒く染まっていた。
綺麗ごとだけでは世の中やっていけない。
どんなに崇高な理想を語っても、実現できる力が伴わなければ意味がない。
そう。人を従わせるには力が必要なのだ。
見知らぬ10人の人間を自宅へと招き入れる。
ここまで大胆な行動ができたのも、今の自分に力があるからだ。
ゲームで言えばまだ序盤も序盤。しかしあの7日間は確かに私を強くしていた。
7日前の私であれば、ここまで思い切った行動はできていなかっただろう。
大きすぎるリスクに躊躇して、色んな物を切り捨てて、小さく纏まって少しの満足と後悔を抱えて生きていたはずだ。
もっと大きなことがしてみたかった。
でも自分には無理だと諦めていた。私は特別なんかじゃない。努力をしたところでどうにもならないことは沢山あると、今までの人生において散々実感してきた。
しかし強くなれば選択肢は増える。
金、権力、知性、暴力。強さの質は何でもいい。
世界は力あるものが動かしている。
力さえあれば……世の中は変えられるのだ。
(今日は楽しかったな……。それなりに予想外もあったけど、大筋は予定通りにできた)
小さいながらも確実に、この界隈に影響を及ぼしたという実感がある。
今の世の中の、利己的な行動を是とするような風潮は、正直言って嫌いだ。
利他主義に振り切って生きろとまでは言わない。だがもう少し、人は助け合いの精神を持つべきだ。
行き過ぎた利己主義・自己責任論は格差を生み、階級を固定化し、不平不満によって共同体を破壊してしまう。
そんな世界を正したい、と思わないと言えば嘘になる。だが流石に世界に革命を起こしたいと思うほど、大それた野望は抱えていない。
私の手の届く範囲だけでもいい。せめてそれぐらいには、理想とする社会を実現したい。
その為には、もっと強くなる必要がある。
以前の世界なら、いくら個人戦力を鍛えたところで意味はなかった。
しかし、この世界でなら……。
(もっともっと……強くなりたい)
胸の内から沸々と湧き上がる、力への渇望を感じる。
現金なものだ。チュートリアルではあれだけ戦いを渋っていたというのに。変わり身の早さに我ながら笑ってしまう。
私もまた、自身が嫌う欲深な人間に過ぎない。それをよくよく忘れないようにしなければ。
という訳で、主人公もかなりやべー奴というオチでした
他のルートの構想はこんな感じでした
C+ルート
今よりもっと冷たい性格に。
ランカー達と積極的に関わりに行って下は放置。
自分と身内さえ良ければ他はどうでもいいというスタンス。
上級国民ルート。
C+++ルート
基本は↑と同じだけど、更なる力を求める。
人助けをする振りをして人を文字通り食い物にする。
似たような人外系や悪人系の特典を得たプレイヤーとつるんではっちゃけたり。
兄上完全ロールプレイルート。
L+++ルート
もっと大規模に人助けを行おうとする。
賛同者や支援者を募ったり説得したり。ルートの中では一番行動的かもしれない。
とんでもない苦労をすることになり、今よりもっと独善的になって目がイってる。
頭メシアンルート。
執筆が追い付かないので以降は更新が不定期になります
毎日更新はやめて、纏まった分量を投下できればなと思います
週2で1話8000文字ぐらいの更新ペースを維持したいところ(できるかなぁ?)
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【考察】世界設定考察スレ
80:名無しのプレイヤー
というわけで、この世界にコロナ禍はなかったんだよ!!
81:名無しのプレイヤー
な、なんだってー!
82:名無しのプレイヤー
コロナとマスクの話題はもういいから。もっと別の事調べようぜ
83:名無しのプレイヤー
100レス近くこの話題一色だしな
84:名無しのプレイヤー
他になんか話題ないの?
85:名無しのプレイヤー
つってもなー、ネットに繋がってる人はあんまいないし。情報を足で稼ぐのは無理がある
86:名無しのプレイヤー
駅にはWI-Fiスポットがあるからそれ使えば……いや、駅スタートの人はそんなことしてる暇ないか
87:名無しのプレイヤー
そもそも過疎ってるしな。普通はまず衣食住の確保が優先だし、大半はこんな生活に役立たなそうなスレは見に来ない
88:名無しのプレイヤー
まあそのうち落ち着いてくればここの住民も増えるだろ
89:名無しのプレイヤー
住居か所持金がN+以上ならネットもできるとはいえ、ある程度余裕がないと情報を深堀してる暇なんてないわな
90:名無しのプレイヤー
だから表面的に気が付きやすいマスクの情報が大量に寄せられた訳だな……
91:名無しのプレイヤー
コロナが流行ってないってのはセンセーショナルな話題だしな
92:名無しのプレイヤー
そういう君たちは自分から調べようとは思わないの?
93:名無しのプレイヤー
や、自分ネット繋がってないNNなんで……
94:名無しのプレイヤー
>>92
なにから手を付けていいのか分からなくって……(受み身体質)
95:名無しのプレイヤー
>>93はこんなところで書き込んでる場合じゃないぞw今日中に宿を見つけないと野宿確定だぞ
96:名無しのプレイヤー
そうなんですけど……現実逃避というか、なんというか……
97:名無しのプレイヤー
気持ちは分かるがとにかく動いた方がいい。この世界では今11月で冬が近い。夜は絶対冷えるぞ
98:名無しのプレイヤー
プレイヤーらしき人が凍死したとか、野垂れ死んだとか……そういうニュースは俺見たくないよ……
99:名無しのプレイヤー
駅のホームで飛び降り自殺とか、もうすでにいくつか起きていそうではある。怖くてそういうニュースは調べられないけど
100:名無しのプレイヤー
確かにな。絶望するには十分な状況だ
101:名無しのプレイヤー
そういえば、どっかで事故があって電車が止まったとかいう書き込みを見たな
102:名無しのプレイヤー
まさか……
103:名無しのプレイヤー
あちゃー
104:名無しのプレイヤー
>>93はさっさとWI-Fiスポットを見つけて最寄りの支援窓口に駆け込むんだ!
105:名無しのプレイヤー
流石にそろそろスレチなので、世界観考察に関係のない雑談は他所でお願いします。
宿無しプレイヤーの方々も、大変でしょうが何とか生きましょう。とにかく一番大事なのは命ですからね
106:名無しのプレイヤー
そうそう。手段を選ばなければなんとかなるって。
最悪(本当に最悪の手段だけど)万引きでもして警察のお世話になってもいい。
いのちをだいじに!
113:名無しのプレイヤー
そういえばさ、皆もう買い物はした?
114:名無しのプレイヤー
まだしてないです
115:名無しのプレイヤー
したけど、何? 特に変わったことはなかったが
116:名無しのプレイヤー
いや、なんかさ? 値段が高く感じない?
117:名無しのプレイヤー
そうなの?
118:名無しのプレイヤー
あー、確かにちょっと割高気味に感じたかも
119:名無しのプレイヤー
そういえば消費税の表記もなかったな。元から税込み価格だったのか?
120:名無しのプレイヤー
税込表示が早くも義務化されてるのか……?
121:名無しのプレイヤー
それにしても高かったような。まるで消費税が20%ぐらいかかってる感じ
122:名無しのプレイヤー
上がりすぎぃ!
123:名無しのプレイヤー
確かにな。でも俺はそんなに割高には感じなかったけど。
値段は上がったけど同じぐらい商品の質も増してる気がする。
今おにぎり買って食べたけど、コンビニのおにぎりってこんなにデカかったっけって思ったもん
124:名無しのプレイヤー
値段が高くなった分増量されてるってこと?
125:名無しのプレイヤー
なんでそんなことが?
126:名無しのプレイヤー
さあ……?
127:名無しのプレイヤー
もしかしてインフレか? 円の価値が下がってる……?
いや、そうなると増量に説明がつかないか。
128:名無しのプレイヤー
いや、全部割り増しって訳ではなかったし、それなりに安いのもあった
体感では1円の価値は大して変わってないかな。
129:名無しのプレイヤー
駄目だ、素人じゃいくら考えても分からん
130:名無しのプレイヤー
ちょっと通販サイトとか眺めてみるか
131:名無しのプレイヤー
為替レートとか経済指標とか見た方が、もっと正確な事が分かるのでは?
132:名無しのプレイヤー
>>131
言い出しっぺの法則
133:名無しのプレイヤー
いや自分そういうのは疎いので……
134:名無しのプレイヤー
まあこんだけプレイヤーがいたら株とかFXとかやってて経済詳しい人もいるだろうし、その人ならきっとこの現象の理由を解明くれるやろ!(ハナホジー
135:名無しのプレイヤー
そんな都合のいい人材がこのスレを見ているとは限りませんけどね(白目)
136:名無しのプレイヤー
深刻な人材不足。早く有能な人来てくれー
137:名無しのプレイヤー
表面上は現代日本と同じように見えるけど、どうも俺らの知ってる世界とはかなり違った部分があるみたいだな
138:名無しのプレイヤー
コロナ禍の消滅。物価の上昇と商品の品質向上。
これらの変化が意味するところとは……? これは何かの伏線なのか……? 天使の思惑とは一体……。
139:名無しのプレイヤー
……つまりどういうことだってばよ?
140:名無しのプレイヤー
もしかして:考えすぎ
141:名無しのプレイヤー
まあ考察スレってそういうところだから
190:名無しのプレイヤー
気づいたんだけどさ、なんか電柱と電線が街から消えてね?
191:名無しのプレイヤー
え? 都心だからとかじゃなくて?
192:名無しのプレイヤー
いや、普通に地方の田舎町
193:名無しのプレイヤー
あ、あー!? 言われてみれば確かに電柱がない!
194:名無しのプレイヤー
おおー? 言われてみれば確かに
195:名無しのプレイヤー
……ホントだ! 無いわ、電柱。気づかんかった
196:名無しのプレイヤー
いや俺も実は気づいてたんだよね。
ただ都会に来るのが初めてで、これが普通なのかと思ってた。なんかおかしいのこれ?
197:名無しのプレイヤー
都心の一部ならおかしくもないけど、否定の報告がなくて、全国的にとなると結構な異常事態だな
198:名無しのプレイヤー
俺も勿論気づいてたぞ! ただ外に出るのが久しぶりで普通に発展したんだなって思ったわ
199:名無しのプレイヤー
リアル引き籠りがいますね……
200:名無しのプレイヤー
んん? じゃあどこに行ったんだ電線
201:名無しのプレイヤー
地中でしょ。無電柱化ってやつ
202:名無しのプレイヤー
よく見たらかなり道が綺麗で歩道も整備されてるな……駅周辺ってみんなこんなもんだったか?
203:名無しのプレイヤー
その辺は地方と都心で結構差があると思うけど
204:名無しのプレイヤー
無電柱化で調べてみたら、日本の主要都市の無電柱化率が100%になってるんだけどwww
確か前の世界では東京でも10%いってなかったよな?
205:名無しのプレイヤー
え? マジ!?
206:名無しのプレイヤー
うそーん
207:名無しのプレイヤー
100倍以上じゃん
208:名無しのプレイヤー
>>207
驚きすぎて桁がおかしくなってるぞw
209:名無しのプレイヤー
つまり無電柱化率1000%!? すげええ!
210:名無しのプレイヤー
もうつっこまないぞ
211:名無しのプレイヤー
海外の無電柱化はかなり進んでたのは覚えてる。
確かロンドン、パリ、シンガポールとか100%だったろ。日本はどの都市も一桁台だったはず
212:名無しのプレイヤー
都道県別だと2%を切ってる県が殆どだった覚えがある。全国平均は2%以下?
213:名無しのプレイヤー
海外は日本と違って地震が殆どないからな……。
車両荷重だけ考慮して直接地面に埋められるから普及が早い。日本だと地震に耐えうる強度と余裕を持たせないとだからな
214:名無しのプレイヤー
つーか無電柱化っていいことあるの? 景観が良くなる以外で
215:名無しのプレイヤー
災害に強くなる。
地震や台風で電柱が倒れてきたり電線が断線したりしなくなるから、道路が寸断されたり停電するリスクが低くなる
216:名無しのプレイヤー
え? 地面の中で断線とかせんの?
217:名無しのプレイヤー
頑丈な管に守られてるからな。仮に地層がズレて引っ張られてもある程度電線の長さに余裕を持たせてそう簡単に断線しないように対策してたりする(高コストの敷設の場合)
218:名無しのプレイヤー
へー
219:名無しのプレイヤー
災害現場はめっちゃ電柱とか倒れてるイメージだけど、そうか、あれが無くなるのか
220:名無しのプレイヤー
そういう障害がなくなることで、迅速な復旧にも繋がるわけだな
221:名無しのプレイヤー
後単純に邪魔な電柱がなくなるから、道が広くなって通行しやすくなる。
他にも細かいのが色々。詳しくは自分で調べて
222:名無しのプレイヤー
なるほどなあ……それで、デメリットは?
223:名無しのプレイヤー
単純にコストが高い
224:名無しのプレイヤー
地中に新しく管路を張り巡らせることになるからな……。
場合によってはガス管や上下水道とか配管を設計し直して入れ替える必要もあるし、各家庭にも繋がなきゃならないから考えることが多い
225:名無しのプレイヤー
仮に断線したらどうすんだ? メンテナンスがすごく大変じゃね?
226:名無しのプレイヤー
共同溝に纏めちゃえばそっちの方がメンテナンスは簡単だよ。
地中で作業できるから道路とか止めなくていいし高所作業車も持ってこなくていいし
227:名無しのプレイヤー
共同溝?
228:名無しのプレイヤー
ライフラインを全部まとめた地下トンネルみたいなもん
229:名無しのプレイヤー
ほーん? そんな夢のある技術ならなんで普及してなかったんや
230:名無しのプレイヤー
基本的にはメリットの方が多い。あちこちに整備するにはとにかく金がかかると言うだけで
231:名無しのプレイヤー
日本には金がなかったからね……
232:名無しのプレイヤー
実際にはやろうと思えばできるけど、デフレなのにインフレ対策をしてる国だからね……
財政規律に縛られて積極的な投資ができてない
供給能力は十分にあるし、金も自分で発行できるのに、なぜか金が無い増税する積極財政すればハイパーインフレになって財政破綻するって言ってるんだぞ
233:名無しのプレイヤー
じゃあなんでこの世界の日本はできてるんだ?
234:名無しのプレイヤー
さあ?
235:名無しのプレイヤー
失われた30年が無ければワンチャン
236:名無しのプレイヤー
バブル崩壊がなくて経済成長が続いてるってか?
237:名無しのプレイヤー
プラザ合意が無かった世界線?
238:名無しのプレイヤー
ラッキード事件が無かった世界線。中田榮角が捕まらず列島改造論が今も主流とか
239:名無しのプレイヤー
大渕首相が急死せず、積極財政路線が継続できた
240:名無しのプレイヤー
消費税増税がなかった
241:名無しのプレイヤー
アヤベノミクスが完遂できた
242:名無しのプレイヤー
財務省に高橋是清や村下修みたいなネームドがいる
243:名無しのプレイヤー
どれもありそうであり得なさそうだ……w
244:名無しのプレイヤー
何かしら政治模様が大きく変わっているのは確かだろうが
245:名無しのプレイヤー
ちょっと待て、国家予算調べようとしてGDP見たらおかしなことになってるんだが
246:名無しのプレイヤー
えー?
247:名無しのプレイヤー
ん……? 俺の目がおかしくなったのか? 1位アメリカで2位日本、3位中国……!?
248:名無しのプレイヤー
どういうこっちゃ。確か10年ぐらい前に中国にはGDPで抜かれたよな?
249:名無しのプレイヤー
そう。んでその10年間でさらに引き離された。
250:名無しのプレイヤー
トリプルスコア近かったよな
251:名無しのプレイヤー
2020年時点でアメリカ20兆ドル、中国14兆ドル、日本5兆ドルぐらいだったはず。
252:名無しのプレイヤー
データが間違いじゃなければ日本は16兆ドルって表示されてますね……!?
253:名無しのプレイヤー
アメリカと中国はほぼ変わらんな
254:名無しのプレイヤー
日本のGDPが3倍ぐらいになってる!?
255:名無しのプレイヤー
ふぁーwww
256:名無しのプレイヤー
どういうこっちゃ
257:名無しのプレイヤー
???? ちょっと待って。国名がおかしい
258:名無しのプレイヤー
ん?
259:名無しのプレイヤー
あれ? 日本……『帝国』……!?
272:名無しのプレイヤー
おい!! 日本の地図見ろ!!!
273:名無しのプレイヤー
え?
274:名無しのプレイヤー
まさか……!?
275:名無しのプレイヤー
……別にいつもと変わらなくね?
276:名無しのプレイヤー
『日本 地図』で検索して色付きの地図で見て!
277:名無しのプレイヤー
地図がどうした……ってこれは!?
278:名無しのプレイヤー
ん? ん??????
279:名無しのプレイヤー
あ、あれ? 戦前領土みたいな地図しか出てこないんだけど……?
280:名無しのプレイヤー
なんだこれwwwwwめっちゃ領土拡大してるwwww
281:名無しのプレイヤー
台湾、半島、樺太が日本領に編入されてるじゃんwww
282:名無しのプレイヤー
戦前みたいな地図で草
283:名無しのプレイヤー
大日本帝国かな?
284:名無しのプレイヤー
南洋諸島も地味に日本領みたいだな
285:名無しのプレイヤー
流石に大陸租借地や満州国はないみたいだけど
286:名無しのプレイヤー
史実では南半分だったはずだけど、樺太は全島支配してるみたいだな
287:名無しのプレイヤー
どうなってんのこれ??
288:名無しのプレイヤー
こりゃ歴史を一通り調べないとわけわからんな
289:名無しのプレイヤー
半島にいるとか台湾にいるとか言ってた人、ネタじゃなくてマジだったのか
290:名無しのプレイヤー
>>289
平壌にいるとか絶対嘘だと思うじゃん
291:名無しのプレイヤー
国名も『日本帝国』だしさ。こんなん笑うわ
292:名無しのプレイヤー
日帝健在で草
293:名無しのプレイヤー
領土は残ってるのに大の字は消えたのかw
294:名無しのプレイヤー
もしかして帝国とか皇国って名称が現役で使われてるのか……?
295:名無しのプレイヤー
街を歩いた感じ和服で出歩いてる人とか殆ど見てないし、文化風習は元と大して変わらんっぽいけど
296:名無しのプレイヤー
どうしてこうなったのか歴史が超気になるんだが。とりあえず戦前~戦後の年表だけでも見てくるか
297:名無しのプレイヤー
国名は日本帝国のままで領土も戦前とほぼ同じ。
それでいて暮らし向きは現代日本と変わらず、経済規模は3倍以上。なにがどうしたらこうなるんだ?
298:名無しのプレイヤー
人口も2億人超えてるな
299:名無しのプレイヤー
日本が中国・アメリカと並ぶ超大国ってマジ?
300:名無しのプレイヤー
軍は国防省で、帝国陸軍・海軍・空軍みたいだ。自衛隊の名前は影も形もないな
301:名無しのプレイヤー
もしかして二次大戦で負けてないのか……?
302:名無しのプレイヤー
右翼大歓喜の国じゃん
303:名無しのプレイヤー
ってことは9条とかもないのか?
304:名無しのプレイヤー
戦争に負けてないという前提なら、下手したらまだ大日本帝国憲法を使ってる可能性も
305:名無しのプレイヤー
それは勘弁して欲しい
306:名無しのプレイヤー
明治憲法は前時代すぎるだろww
307:名無しのプレイヤー
天皇主権! 人権は法律次第で制限可能! 兵役の義務!
嫌すぎるわそんな国
308:名無しのプレイヤー
まあ流石にどっかで憲法は改正してるやろ。
21世紀にもなってそんな古臭い憲法使ってたら笑うわ
309:名無しのプレイヤー
ん? ちょっと待て。皆『悪魔』で検索してみて!?!?
310:名無しのプレイヤー
なんだなんだ? またなんかあったのか?
311:名無しのプレイヤー
流石に日本が超大国化していた以上の衝撃はないやろ
312:名無しのプレイヤー
なんか……悪魔が実在する前提みたいなトーンの記事やサイトが多いな??
これは一体……!?
313:名無しのプレイヤー
悪魔による被害とか、普通に悪魔の事が報じられてて草生えるんだけど
314:名無しのプレイヤー
ざっとニュースサイトを眺めただけでも、悪魔関連の項目が普通にあるし、異界とかGPとかの単語が目に入ってくる
315:名無しのプレイヤー
マ?
316:名無しのプレイヤー
マジだよ
317:名無しのプレイヤー
ちょwwwいやまてww『退魔省』ってなんだよwww
318:名無しのプレイヤー
>>317
ものすごく立派なホームページをお持ちですね……
319:名無しのプレイヤー
>>317
流石にネタかと思ったらホントにあって草。ガチの国家機関やん
320:名無しのプレイヤー
>>317
Twitterにも公式アカウントがあったけどフォロワー300万超えてて笑うんだが
321:名無しのプレイヤー
は? まてまてまて。情報量が多い
322:名無しのプレイヤー
まさかこれ、悪魔の存在が一般にも知られてるのか?
323:名無しのプレイヤー
どういうことなの……!?
324:名無しのプレイヤー
wikiに気合の入った悪魔の記事があった。概要から歴史までめっちゃページ長い
325:名無しのプレイヤー
ざっと見ただけでマグネタイトとか異界とか魔界とか、既視感ある単語が大量に出てくるな……
326:名無しのプレイヤー
悪魔関係は裏社会でも何でもないのか(困惑)
327:名無しのプレイヤー
完全に表側の存在っぽいな
328:名無しのプレイヤー
え? なにこれは? え? ……え?
329:名無しのプレイヤー
現代日本かと思ったら全然違う異世界に迷い込んでいたでござる
350:名無しのプレイヤー
色々気になったところを抜粋してみた。
>悪魔とは有史以前から存在するとされる異界の生命体で、地球上の生物とは起源を異にする存在。人類とは有史以前からかかわりを持つが、依然としてその生態は多くの謎に包まれている。
>悪魔たちは地球とは異なる次元にある異世界、通称『魔界』に住むとされているが、実際に魔界を見てきた人間はいない。異なる次元をどうやって行き来しているのかも不明。
>マグネタイトをエネルギー源として活動しており、人類のそれとは比べ物にならないほど、異能・超常の力を使いこなしている。
>悪魔は基本、実体を持たない霊的な存在であり、霊的・異能の力に未覚醒の人間は霊体化した悪魔に触れるどころか、認識することすらできない。
>存在を認識できず、こちらから触れられなくても、悪魔の側からは自由に物体に干渉することができる。
>悪魔には物理的な攻撃は無意味である。人間が悪魔にダメージを与えるには、霊力に目覚めて覚醒し、同じステージに立つ必要がある。
351:名無しのプレイヤー
悪魔に対抗できるのは異能者だけって感じだね。
352:名無しのプレイヤー
一般人は愚者(LV0)って事か?
353:名無しのプレイヤー
俺達は最低でもLV1。一応覚醒はしてるのか?
354:名無しのプレイヤー
まだ分からないぞ。LV1が最低レベルで愚者かもしれない。
355:名無しのプレイヤー
チュートリアルでは普通に悪魔は見えたし触れられただろ? 俺は勝てなかったけど
356:名無しのプレイヤー
チュートリアルが特別だったという可能性
357:名無しのプレイヤー
霊力? とやらに目覚めてる自覚はまるでないんだけど
358:名無しのプレイヤー
でもまあステータスが上がってると、体の内側から力が湧くというか、調子が良くなってる感はあるな
359:名無しのプレイヤー
見た目に変化がないのに身体能力が上がってるのはよく考えるとおかしいし、その不思議パワーが霊力とやらなのか?
360:名無しのプレイヤー
魔力に振ってると、体から湧き出るモヤみたいな、それっぽい力は感じるぞ。
なお物理的な干渉力はない模様。体に纏わせてパワーアップとかもない。
どうやって魔法を使うのか分からなくて宝のもち腐れ状態。
361:名無しのプレイヤー
つーか他の説明だと霊力の他に、「気」とか「魔力」とか表記ゆれが結構あるな。
ただの表記ゆれなのか、それぞれ別の力なのか。いまいちわかんねぇ
362:名無しのプレイヤー
色々情報を読んでみて、地道に知識を仕入れていくしかないな……
363:名無しのプレイヤー
これやばくね?
>ゲートパワー(GP)とは、空間のマグネタイト濃度を測定し数値化したもの。異界の発生や、出現する悪魔の強さに影響する。
>GPが大きいほど、より強力な悪魔が現世に出現することが可能となる。
>一説には、GPは悪魔の故郷とされる魔界と現世の繋がりの強さを表しているともされる。
>有史上、地球全体でのGPは常に下降傾向にあったと分析されており、近世に入ってからはほぼ横ばいとなっていた。
>しかし近年、GPは徐々に上昇しつつあり、世界各地で異界発生が活発となり、悪魔被害が増加している
>「GPの上昇は一過性のものですぐに下がる」「GPは上昇傾向に転じた。これからは悪魔の時代になる」など、専門家の間でも意見が分かれている。
364:名無しのプレイヤー
GPがだんだん上がっている……!?
365:名無しのプレイヤー
アカン
アカン(迫真)
366:名無しのプレイヤー
どうせすぐに下がる(下がらない)
367:名無しのプレイヤー
GPが上昇……来るぞ遊馬!
368:名無しのプレイヤー
いや来ないでくれ
369:名無しのプレイヤー
これは大破壊が起きるね間違いない。俺はメガテンに詳しいんだ
370:名無しのプレイヤー
放火に備えろー!
371:名無しのプレイヤー
間違った。崩壊。
372:名無しのプレイヤー
あながち誤字でもないかな……
373:名無しのプレイヤー
話は聞かせてもらった。人類は滅亡する!
374:名無しのプレイヤー
な、なんだってー!?
375:名無しのプレイヤー
これはMMRじゃなくてもその結論に至るかもしれない
376:名無しのプレイヤー
そのうちどこかに核でも落とされんのか?
377:名無しのプレイヤー
メガテンのセオリーで言えば東京か?
378:名無しのプレイヤー
悪魔と核戦争の二重苦は勘弁して欲しいけど
379:名無しのプレイヤー
世界情勢からは目が離せないな……
395:名無しのプレイヤー
悪魔は基本、異界から湧いてくるものらしいな。
んで放置してると異界の規模が増して出現悪魔も強くなるし、周辺のGPも上がって異界も増殖していくと
396:名無しのプレイヤー
放置しすぎるとそのうち手が付けられなくなるのか
397:名無しのプレイヤー
最終的には地球が完全に異界化するってこと? やばくね?
398:名無しのプレイヤー
よく人類滅びてないな
399:名無しのプレイヤー
流石に上限はあるみたいだけどね。
世界全体のGPが低いから、局所的にGPが高くなっても周囲に拡散してそのうち希釈されていくみたい。
400:名無しのプレイヤー
なるほどな
401:名無しのプレイヤー
ただ最近は世界全体のGPが徐々に上がっていっているみたいですけどね……
402:名無しのプレイヤー
……ヤバくね?
403:名無しのプレイヤー
この世界の住人の反応はどんな感じなんだろう
404:名無しのプレイヤー
ネット記事とかコメントとか見た感じ、世論的には楽観論が優勢って感じがする。
このままGPが上がっていって神話の時代に逆行する! とか警鐘を鳴らしてる記事もあったけど、冷笑コメが目立ってたし、肯定的なコメントもネタ的なものが多い
405:名無しのプレイヤー
まあこれから世界が崩壊するとか言われても実感湧かんよな。俺だってまだ半信半疑だし
406:名無しのプレイヤー
実際根拠はないもんな
メガテン風の世界でGP上昇の情報があるから怪しんでるだけで、本当に大破壊が起きるかは分からない
407:名無しのプレイヤー
来るなと願いつつも、備えるのが賢い選択か
419:名無しのプレイヤー
異界の封鎖や悪魔退治なんかは普通に国がやってるみたいだな。
420:名無しのプレイヤー
ああ、悪魔省だっけ? そんな国家機関があるんだっけ
421:名無しのプレイヤー
退魔省ね
422:名無しのプレイヤー
かなり規模の大きい組織みたいだな。総員30万超えてるっぽい
423:名無しのプレイヤー
多っ
424:名無しのプレイヤー
前の世界の自衛隊とか警察を超えてるじゃん
425:名無しのプレイヤー
それ全部異能者なんか?
426:名無しのプレイヤー
さあ?
普通に考えて全員戦えるとは思えないし、結構な割合で後方要員がいると思うけど
427:名無しのプレイヤー
これだけ規模の大きな国家機関の対悪魔組織があるなら、他の異能者組織とか息してないんじゃないか?
428:名無しのプレイヤー
ガイア教とかメシア教とかファントムソサエティとか、色んなメガテンの組織名を検索してるけどそれっぽい団体は出てこないな。
つーかゲームのメガテンの情報がヒットするんだけどwこの世界にもアトラスがあって女神転生とかペルソナを作ってるみたいwwww
429:名無しのプレイヤー
悪魔が実在しててその存在が知られてる世界でもあんなゲーム作っちゃうのか(困惑)
430:名無しのプレイヤー
ゲームの内容とかも全部そのままなの?
431:名無しのプレイヤー
ざっと見た感じは変わりはないっぽい
432:名無しのプレイヤー
はえーすっごい(思考停止)
433:名無しのプレイヤー
つーかメガテンに限らず、他の創作関係も前世であった作品は色々とこっちにあるっぽいな。全てかは分からんけど。
特典能力考察スレでそういう情報があった
434:名無しのプレイヤー
へー、ということは能力のキャラの情報をこっちで調べることができるのか
良く知らんキャラだったから助かるわ
435:名無しのプレイヤー
作品の内容は完全にそのままなのか?
436:名無しのプレイヤー
さあ? そこまでは何とも
437:名無しのプレイヤー
すげー作為を感じるな。これも天使の仕業かね
438:名無しのプレイヤー
まあこの件に関してはプレイヤー目線で見たらありがたいけど
439:名無しのプレイヤー
それな。俺ら全員根無し草にならないように転生させてくれたわけだし、実はあの天使ちゃんは悪い子ではなかったのでは?(錯乱)
440:名無しのプレイヤー
こんな不穏な世界に放り込んでおいてそれはない
441:名無しのプレイヤー
ですよねー
442:名無しのプレイヤー
あれ? じゃあコスプレとかしてたら知ってる人が見れば何のキャラかモロバレなのか。
……はっず!!
443:名無しのプレイヤー
キャラクリしてるなら皆イケメン・美女ばっかだし様になるだろうけど……。
口調とかのロールプレイ込みだとしたら……うん、どう見ても痛い奴だな
444:名無しのプレイヤー
メンタルが鍛えられるな(白目)
445:名無しのプレイヤー
それなりに有名キャラならコスプレ衣装が市販してるって利点もあるから……
446:名無しのプレイヤー
着るかどうかはともかく……ポチっとくか
447:名無しのプレイヤー
有名キャラ持ちはいいな……
マイナーキャラだとそもそも情報がネット上に転がってないw原作見て自分で調べるしかないっぽいな
448:名無しのプレイヤー
原作が分かってるだけまだマシでしょ。
キャラ名も原作も長くて覚えきれなくて、その上作品自体もマイナーなのか検索しても全然ヒットせず、泣いてる自分みたいな奴もいるんですよ!
449:名無しのプレイヤー
草
450:名無しのプレイヤー
知恵袋とかで聞いてみたら? 誰か答えてくれるかも
466:名無しのプレイヤー
異界が出来て悪魔が湧いてそれを潰して、と終わらないモグラ叩きをしてる状況なのか
467:名無しのプレイヤー
なんかダンジョンモノっぽいな
468:名無しのプレイヤー
定期的な間引きが必要で放っておくと勢力が拡大するって、どことなくマブラヴのハイブっぽさを感じる
469:名無しのプレイヤー
マブラヴ?
470:名無しのプレイヤー
若い子はマブラヴを知ってるのか?
471:名無しのプレイヤー
それを言うならメガテンだって怪しいもの。ペルソナならともかく
472:名無しのプレイヤー
メガテン知ってる若い人ならマブラヴも知ってるだろ(適当)
473:名無しのプレイヤー
俺らってメガテンの広告に釣られたんだし、やっぱ年齢層高めなんかね
474:名無しのプレイヤー
ちらほらとリアル十代もいるみたいだけど
475:名無しのプレイヤー
少なくとも平均年齢は20代以上だろうな。30代でもおかしくない
476:名無しのプレイヤー
い、今の肉体年齢は若いから(震え声)
477:名無しのプレイヤー
異界もいきなりできる訳じゃなくて、GPの高まりとかの予兆があるとか
普通に悪魔が出没するといっても、悪魔対策がしっかりしてる国の治安は結構いいみたいだな
478:名無しのプレイヤー
政情不安の国だと異界を封じ込めできずに街中に悪魔が出没して治安崩壊しつつある国もあるみたいですけどね……
479:名無しのプレイヤー
戦争とか内戦になると、人間と戦いつつ悪魔とも戦わなきゃいかんのか。よー戦争とかするわ
480:名無しのプレイヤー
悪魔っていう明確な外敵がいるのに、人同士の争いは変わらないのか
481:名無しのプレイヤー
まあ実際、前世で悪魔とか出現したとして、人類が一致団結できるかというと……ね?
482:名無しのプレイヤー
平時なら抑え込みも十分可能みたいだしね。そこまで脅威に感じてないんでしょ
483:名無しのプレイヤー
一般人には見えない、対処できない猛獣がその辺にいるかもしれないと考えると、滅茶苦茶怖いけどな
484:名無しのプレイヤー
異界ってどこにでも発生すんのかね……? 山の中に異界が出来て気づかれずに成長しちゃったとかないんだろうか
485:名無しのプレイヤー
無いと思いたいな。そのための退魔組織だろう、多分
486:名無しのプレイヤー
そう考えると国土が広い国は大変そうだな。大国とかはともかく人口希薄地帯とかどうすればいいんだ?
487:名無しのプレイヤー
あー、どうも異界の発生は人口密度の高い都市部が多いみたいだ
大量の人間が暮らすことで生体マグネタイトが溜まってうんちゃらって記事見つけた
488:名無しのプレイヤー
へー。マグネタイトの濃度=GPだっけ?
……もしかして最近GPが上がってるのって人間が増えすぎたからなのでは……?
489:名無しのプレイヤー
詳しい原因は不明だけど、そういう説もあるらしい。
490:名無しのプレイヤー
よし! 人間を間引こう!
491:名無しのプレイヤー
なお、人が死亡した際にも多量のマグネタイトが放出されるらしい
自然死では大した影響はないけど、大量死が起きるとそれはそれで周辺のGPが上がるんだとか
昔から戦争後とか災害後は人が減るわ悪魔が活性化するわで大変らしいよ
492:名無しのプレイヤー
駄目じゃん
493:名無しのプレイヤー
なんかもう不穏な情報だらけで怖すぎる。現地世界人はこんな世界でよく平気な顔して暮らせるな
494:名無しのプレイヤー
それが当たり前の世界だからな。そこで生まれ育てば感覚も麻痺するんじゃないか
495:名無しのプレイヤー
世界が違うんだから常識も違ってるのは当たり前ですね
496:名無しのプレイヤー
つーかマグネタイトて何? 霊力や魔力とは何が違うの?
497:名無しのプレイヤー
酸化鉱物の一種。化学組成はFeFe3+2O4(四酸化三鉄)
498:名無しのプレイヤー
それは磁鉄鉱
499:名無しのプレイヤー
正しくは生体マグネタイト(生体磁気)
生物が生み出す精気のことを指す、らしい。喜び、悲しみ、怒り、恐怖等、様々な感情によって生じるエネルギーだとか
悪魔の体を構成する物質でもあり、悪魔の活動に必要なエネルギー。
保有するマグネタイトの量が多いほど生物としての格が上がり、異能の力に目覚めたり、身体能力が増幅されたりといった、ゲームのレベルアップのような現象が起きる
霊力や気、魔力などと言われている力は、結局はその人が持つ精気でマグネタイトの一種だとかなんとか
500:名無しのプレイヤー
つまりマグネタイトとは経験値でもありMPでもありHPでもあるのか?
……なるほどよく分からん
501:名無しのプレイヤー
……ダクソのソウルみたいなもんかな?
502:名無しのプレイヤー
とりあえずゲーム知識だけでもなんとかなるかな?
詳しく知ろうと思ったら論文を読む必要がありそう。知的好奇心が疼くとかでもない限りさわりだけ知ってればいいか
503:名無しのプレイヤー
保有マグの量だけでレベルが上がるなら、意外とレベル上げって簡単なのか?
マグを渡すだけで異能者の量産とかレベリングとかできんのかね
504:名無しのプレイヤー
それぞれに保有できるマグのキャパがあるみたい。魂の器的な感じ?
それを修行や荒行によって増やしていくと。マグだけあっても意味はないみたい
505:名無しのプレイヤー
さすがにそう簡単にはいかんのか
506:名無しのプレイヤー
霊視できる程度の異能者(LV1?)ですら、100人に1人もいないみたいだな
507:名無しのプレイヤー
それどこ情報?
508:名無しのプレイヤー
『異能者 割合』で検索してみたら出てきた。国の統計データみたい
509:名無しのプレイヤー
なるほど
悪魔対策に異能者が必要不可欠なら、そんな存在が自国にどれだけいるか調べないはずがないか
510:名無しのプレイヤー
100人に1人って、1億人いればそのうち100万人は異能者がいるって計算になるけど。そんなにいるんか
511:名無しのプレイヤー
年齢や強さの質とかもあるし全員が戦える訳ではないだろうが、それでも多いな
512:名無しのプレイヤー
俺ら、特別でもなんでもなさそうだな
513:名無しのプレイヤー
か、覚醒能力特典があるから(震え声)
514:名無しのプレイヤー
これだけ異能者がいれば防衛戦力はかなりありそうだな
徐々にGPが上がっていくだけならしばらくは持ちそうか?
515:名無しのプレイヤー
先進国の中でも日本の対悪魔戦力はトップクラスみたいだね。そういう記事が複数あった
516:名無しのプレイヤー
ほう。どうやら我が国は安泰のようですな、ガハハ
517:名無しのプレイヤー
でも悪魔討伐隊の求人は常に出てるみたいだし、内実はどうなっていることやら
518:名無しのプレイヤー
>救世主求ム! いまこそあなたが輝くとき! 日本の未来を守るのは君だ!
>異能者大募集! 学歴・職歴不問! 未経験歓迎! 給与50万円~
怪しすぎて草
519:名無しのプレイヤー
徴兵制じゃなくて志願制みたいだしな
いくら給料が高くても死亡率が激高な仕事には就きたくないだろ
520:名無しのプレイヤー
そんな死亡率高いの?
521:名無しのプレイヤー
毎年戦死者は100人以上出ていたみたい
GPが上がるにつれて戦死者の数もどんどん増しているようだ
最近の戦死者数は公開されてないけど、そこまでずっと右肩上がりだった
522:名無しのプレイヤー
ひええ……
523:名無しのプレイヤー
>戦死者数は公開されてない
あっ(察し)
524:名無しのプレイヤー
異能者はいても兵士の成り手がいないんだろうなぁ
人材集めに必死そうなのが広告の力の入れ具合からも見て取れる
525:名無しのプレイヤー
前の日本と違って好景気が続いてるみたいで、毎年経済成長してるからな
失業率はほぼ0%、完全雇用を達成してると言っていい状況。働けば働くほど給料が増える
高度成長期やバブル期みたいなもんや
給料も俺ら基準で言えば高いけど、この世界基準で言えばそこまで高くはない可能性もある
526:名無しのプレイヤー
そら普通に働くだけで豊かな暮らしが満喫できるなら、命を懸けて戦う必要はないわな
527:名無しのプレイヤー
底力はあっても実力を出し切れていない訳か。豊かで平和すぎるって言うのも考え物だな
528:名無しのプレイヤー
まだ変身を残していると言い換えればかっこいいかもしれない
529:名無しのプレイヤー
多分異能者である俺らにはお誂え向きの就職先じゃないか?
530:名無しのプレイヤー
いやー、いくら給料が良くても危険すぎる職場はちょっと……
531:名無しのプレイヤー
俺、ちょっと応募してみようかな
532:名無しのプレイヤー
いや待て
『異能者給付金』で調べて見ろ。すごいぞこれ
533:名無しのプレイヤー
ん?
534:名無しのプレイヤー
異能者給付金……?
535:名無しのプレイヤー
なにこれ??? 異能者は登録すれば毎月給付金が貰える? 最低10万円?
536:名無しのプレイヤー
は? うそやん
537:名無しのプレイヤー
そんなうまい話があるわけ……ファーwwwwマジじゃんwww
538:名無しのプレイヤー
レベルに応じて更に貰えるとか書いてあるな
539:名無しのプレイヤー
レベルってなに? アナライズとかで計測できんの?
540:名無しのプレイヤー
ぽいな。レベル毎に+1万円貰えるらしい
541:名無しのプレイヤー
ボロすぎてワロタ
542:名無しのプレイヤー
俺、ニートになります
543:名無しのプレイヤー
まあ裏もあるみたいだけどな
『地域で悪魔が出没した際には協力を要請する場合があります』とか
一応拒否権はあるみたいだけど、毎月10万円以上貰ってていざという時に協力しなかったらバッシングがすごそう
544:名無しのプレイヤー
協力ってどの程度の事をさせられるんだろう
545:名無しのプレイヤー
どうも後方のパトロールや万が一の予備兵力的な扱いっぽい?
少なくとも前線に出されてバリバリ戦わされることはないみたい。遭遇戦はたまにあるみたいだけど
546:名無しのプレイヤー
>遭遇戦はたまにあるみたいだけど
絶対安全って訳でなさそうですね(白目)
547:名無しのプレイヤー
給付だけ受け取って要請は断る! これが賢い選択か
548:名無しのプレイヤー
その場合の批判はどの程度受けるんだろう
549:名無しのプレイヤー
さすがに個人情報は守られてるやろ(震え声)
550:名無しのプレイヤー
そういうバッシングがないか調べてみたら、協力を断った異能者を特定するサイトみたいなのがあって草
どうも要請を断るとどこからか情報が漏れて特定班に晒しあげられてネットリンチを受けるみたいだ
551:名無しのプレイヤー
こっわ
552:名無しのプレイヤー
さすが村社会の日本
553:名無しのプレイヤー
うわあ、リアルで嫌がらせを受け続けて自殺にまで至ったケースもあるみたい
554:名無しのプレイヤー
要請に応じなかったら、国民感情的には不正受給者で非国民って扱いか
……なんか戦前味を感じるなw
555:名無しのプレイヤー
ひえー
556:名無しのプレイヤー
この制度ってかなり古いんだな。金額は同じじゃないけど昭和後期頃から始まってる
557:名無しのプレイヤー
じゃあ貰わない方がいいのか……?
558:名無しのプレイヤー
うーん、どうなんだろ。
どうも給付金を貰ってなくても異能者ってだけで悪魔に対峙することを求められてる風潮があるっぽい。
異能者だけど給付金は受け取ってなかった人が、悪魔が出て普通に避難したら、その後地域で嫌がらせを受けまくって引っ越しを余儀なくされた人なんかもいるみたい
559:名無しのプレイヤー
民度低すぎぃ!
560:名無しのプレイヤー
地獄でワロタ
561:名無しのプレイヤー
戦わなければどうせ責められるなら、貰えるもんは貰っといた方がお得だな
562:名無しのプレイヤー
同じ思考かはわからんけど、実際日本の異能者のほとんどは給付を受けてるっぽい。
給付金目当てに異能者になろうと修行する人も大勢いるみたいで、この政策のお陰……かは知らんけど日本の人口当たりの異能者数は世界1位らしい
563:名無しのプレイヤー
やるやん!
564:名無しのプレイヤー
なお皆金が欲しいだけで、命がけで悪魔とは戦いたくはない模様
565:名無しのプレイヤー
駄目じゃん
566:名無しのプレイヤー
国民も強かだけど、政府も強かだな。要するにこれは首輪だろう
給付金という餌で釣って、異能者を増やし、その所在を把握しておくことで、いざとなれば徴兵まで考えてるかもしれない
567:名無しのプレイヤー
異能の力を使った犯罪を抑止する面もあるのかもな。問題を起こせば当然給付は貰えなくなるだろうし
568:名無しのプレイヤー
どうやら日本の国防は安心みたいですね!!!(思考停止)
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【考察】世界設定考察スレ2
20:名無しのプレイヤー
現代に至るまでの歴史は結構違うな。特に日本の近現代史
21:名無しのプレイヤー
つっても戦前までは大体同じか?
22:名無しのプレイヤー
昔っから悪魔がいて異界とかあった割に、歴史の流れは殆ど変わってないよな。不思議だ
23:名無しのプレイヤー
まあそういうものなんだろう。気にするな。あまり気にするとハゲるぞ
24:名無しのプレイヤー
ふっ。今のワイにはその言葉は刺さらない。若いって最高!
25:名無しのプレイヤー
有史以前から悪魔はいたらしいけど、よく人類絶滅しなかったな。GPは昔の方が高かったんだろ?
26:名無しのプレイヤー
洞窟壁画で動物の絵に混じって悪魔の絵があるの、なんかコラみたいで笑っちまう
27:名無しのプレイヤー
>>25
その分人間も強かった可能性
28:名無しのプレイヤー
それか狩られるだけじゃなくて飼われてたとか
29:名無しのプレイヤー
どのみち大昔のことなんて関係なくね
30:名無しのプレイヤー
GPは原始の時代からどんどん下がっていって、古代~中世の頃にはもうGPは一桁前半で、強力な悪魔は出現しなくなってたみたいからな。
歴史への影響としては悪魔よりも異能者の方が大きそう
31:名無しのプレイヤー
近代以前、火器が発達するまでは強力な異能者はまさに一騎当千だったみたいだね
32:名無しのプレイヤー
そんな超人みたいな奴ら、火縄銃やマスケット程度で止められるのか?
33:名無しのプレイヤー
悪魔と違って人間は生身だから、数を揃えれば割と有効だったみたい。
とはいえそれで止められるのはレベル一桁とかの異能者ぐらいで、レベル20くらいの英雄クラスはまだまだ無双できたとか。
そのレベルを一般兵が仕留めるには重機関銃の登場を待つ必要がある
34:名無しのプレイヤー
レベル20でトップクラスなのか。思ったより低いな
35:名無しのプレイヤー
今はGPも上がって、レベル30ぐらいが最高レベルみたいだけど
36:名無しのプレイヤー
日露ぐらいまでは割と活躍してたみたいだけどね、異能者部隊。
塹壕や要塞に対する突撃で突破口を開いたり、シベリアでゲリラ戦を仕掛けて鉄道を爆破したり
37:名無しのプレイヤー
相手に同じことはされなかったのか?
38:名無しのプレイヤー
なんか地味に昔から日本は異能者の質が高かったみたいで、異能者同士の対決でも競り勝ったっぽい
39:名無しのプレイヤー
大名クラスになるとそうでもないみたいだけど、昔は武士=異能者みたいな風潮があったらしい。
自領に湧く悪魔を退治して領民を守るのも武士の仕事だったとか。
特に下級武士とか百姓なんかは手っ取り早く身を立てたいなら、武芸を磨いて異能に目覚めるのが近道だったみたい
40:名無しのプレイヤー
なるほどな
41:名無しのプレイヤー
海外も似たような状況だったけど、識字率の高さでも分かるように江戸時代の日本人の教育熱はかなり高かったようで、異能を教える道場なんかも寺子屋並みにあちこちにあったらしい。
人口も割と多い方だし、そういう積み重ねもあって異能者戦力に関しては列強にも匹敵、一部凌駕している部分もあったとか
42:名無しのプレイヤー
他の産業分野は史実通り。つまり列強最弱だけどな!
43:名無しのプレイヤー
へー、すごいじゃん(貧弱な工業力からは目を逸らしながら)
44:名無しのプレイヤー
それで日露戦争では史実よりも有利な条件で講和したのか
45:名無しのプレイヤー
つっても樺太半分が全島になっただけで、賠償金は1ルーブルもとれてないけどな
46:名無しのプレイヤー
まあ異能者が活躍するのはギリギリ20世紀前半までだね。
大戦以降となると流石に消耗戦に耐え切れなくなって、よほど重要な戦い以外では戦場に投入されることはなくなったみたいだ
47:名無しのプレイヤー
育成するのはパイロット以上に大変そうだし、異能者が全滅したら悪魔に対処できなくなるしまあ当然か
48:名無しのプレイヤー
現代でも特殊部隊的な扱いはされてるみたいだけどね
49:名無しのプレイヤー
それよか戦前、昭和初期の頃の年表見てると笑っちゃうんだけど。なんかヤタガラスが軍部と結託してクーデター起こしてて草
50:名無しのプレイヤー
え? どゆこと?
51:名無しのプレイヤー
つーかヤタガラスあったのか
52:名無しのプレイヤー
ヤタガラスは今の退魔省の前身らしい。
明治維新後に各地の土着異能組織を統合して作られた対悪魔機関だとか。
その頃は内務省の外局だったみたいだね
53:名無しのプレイヤー
へー、歴史はそこまで古くないんだ
54:名無しのプレイヤー
統合される前の各組織の歴史はかなり古いのもあるみたいだけどね
55:名無しのプレイヤー
どうしてそれがクーデターなんかするんだ
56:名無しのプレイヤー
なんか戦後恐慌~世界恐慌の大不況時代に軍縮でヤタガラスの予算も減らされそうになって、それでぶち切れたみたい
57:名無しのプレイヤー
ヤタガラスさーん!?
58:名無しのプレイヤー
しょうもない動機で草生える
59:名無しのプレイヤー
いやでも実際予算は大事だぞ。予算が無いと組織は維持できないからな。安全保障関係の予算をケチると碌な事にはならない
60:名無しのプレイヤー
予算を減らされれば組織は確実に弱体化するからな。特に人材。無くすのは一瞬でも回復には時間がかかる
61:名無しのプレイヤー
戦争する予定が無いので軍縮します! ならまだ分かるけど、否が応でも襲ってくる悪魔対策予算を減らすのは意味不明だな。それ絶対削っちゃいけない予算だろ
62:名無しのプレイヤー
ちなみに当時の対悪魔事情は万全とは程遠いもので、把握できるだけでも毎年1万人以上は悪魔による死者・行方不明者が出ていたみたい
63:名無しのプレイヤー
ええ……(ドン引き)
64:名無しのプレイヤー
全盛期? の交通事故の死亡者並みだな
65:名無しのプレイヤー
現代日本の年間自殺者数よりは低いな! ヨシ!
66:名無しのプレイヤー
いやよくないだろw
67:名無しのプレイヤー
その状況でヤタガラスの予算を減らそうとするのは流石に政府が無能すぎる
68:名無しのプレイヤー
なにを考えてそんな判断をしたのか
69:名無しのプレイヤー
財政が破綻するー借金がーっていう現代でも見たパターン
70:名無しのプレイヤー
政府首脳とか悪魔の脅威とは無縁そうだし、実感がなかったんだろうな
71:名無しのプレイヤー
それ+どうせ死ぬのは庶民やろー、って感じの上級国民ムーブもありそう
72:名無しのプレイヤー
さらに付け加えるなら、当時は現代以上の超格差社会で大不況。
近代化が進んでいる地域なんて限られていて、大半の農山村漁村は江戸時代と殆ど変わらない生活を送ってた。
しかも農民の大半は土地を持たない小作農。毎年決められた小作料を地主に支払わないといけないから、不作や豊作で小作料が払えなくなると困窮して、学校に弁当を持っていけない欠食児童や、娘の身売りが続出、一家心中も多発したみたい
73:名無しのプレイヤー
改めて聞くとホント酷い
74:名無しのプレイヤー
こういうの見ると現代日本に生まれてよかったと思う
75:名無しのプレイヤー
豊作なのに貧乏になるの?
76:名無しのプレイヤー
皆米作ってるから、豊作すぎると米の価格が暴落して逆に貧乏になる
77:名無しのプレイヤー
あー、物納で良かった昔と違って、米→金に変えなきゃいけないからそういう事も起きるのか
78:名無しのプレイヤー
貧しいのは農村だけじゃなくて、都市部にも貧民街はあるよ
口減らしで都心に出てきたものの思うような仕事にありつけず、まっとうな暮らしができない貧民は激増してた
79:名無しのプレイヤー
どうもヤタガラスの現場の人は各地を回る仕事柄、そういった農山漁村の悲惨な現状をよく目にしたようで、その光景に心を痛めて青年将校らの思想に影響されていったみたい
80:名無しのプレイヤー
青年将校の思想……って君臣の奸がーって奴?
81:名無しのプレイヤー
>農村地域で広範にわたる貧困をもたらしている原因は、「特権階級」が人々を搾取し、天皇を欺いて権力を奪っているためであり、それが日本を弱体化させていると考えた
>「君側の奸」を倒すことで、再び天皇を中心とする政治に立ち返らせる。その後、天皇陛下が、西洋的な考え方と、人々を搾取する特権階層を一掃し、国家の繁栄を回復させるだろうという考え方
らしい。(WIKI引用。二・二六事件。背景:青年将校の政治化、から)
82:名無しのプレイヤー
その後のグダグダからの敗戦の歴史を考えると、割と考え方自体は間違ってない気がする
83:名無しのプレイヤー
要するにGHQのやった財閥解体や農村解放を目指してたんか?
84:名無しのプレイヤー
そう聞くと手段はともかく、やろうとしていることはまともに聞こえる
85:名無しのプレイヤー
手段が暴力的すぎるんだよなぁ……
86:名無しのプレイヤー
まあ実際、そうでもしないといきなり政治を変えるなんて不可能だしね。
政治活動をして選挙で政権を勝ち取り、合法的な手段で国を変えようとするとか、当時だとクーデター以上の無理ゲーだと思うよ
87:名無しのプレイヤー
なんで?
88:名無しのプレイヤー
当時は与党側が権力を使って選挙で不正するとか当たり前だったし、金が無いと票を集められない。
言論の自由もないからちょっと過激な思想を語ると特高にしょっ引かれて“尋問”されて自白させられる。どさくさに紛れて獄中で殺されることもある
89:名無しのプレイヤー
おっかねー
90:名無しのプレイヤー
……中国かな?
91:名無しのプレイヤー
マジでこの頃の日本は後進国だからな。国力的にも人権的にも
92:名無しのプレイヤー
そんで青年将校たちと一緒になって、ヤタガラスの若手もクーデターに参加したみたい
93:名無しのプレイヤー
それがこの世界の2・26事件か
94:名無しのプレイヤー
あれ? 2・26って31年の出来事だっけ?
95:名無しのプレイヤー
いや、確か36年だったはず。5年早まってるのか?
96:名無しのプレイヤー
紛らわしいなw
97:名無しのプレイヤー
濱口さん、暗殺されそうになるわクーデターされるわで踏んだり蹴ったりだな
98:名無しのプレイヤー
どん底だった日本経済に金解禁で更に追い打ちをかけてたしな……政治家としてブレないのはいいんだけど、色々敵に回し過ぎて残当としか
99:名無しのプレイヤー
なんでそんな政策を実行しようって人が首相になれたんや
100:名無しのプレイヤー
当時は選挙で首相を決めてたわけじゃなくて、大命降下と言って天皇が首相を指名する形式を取ってた。もちろん与党から選ぶのは慣例ではあったけど。
今回の場合は張作霖爆殺事件で前政権が信用を無くして、野党の総裁で国際協調派の濱口に白羽の矢が立った
101:名無しのプレイヤー
田中「国際的な信用を保つため、容疑者を厳罰に処すべし!」
天皇「おう頑張ってや」
陸軍「あ? そんなことしたらどうなるか分かってんだろうなオルァ!?」
田中「やっぱり関東軍は事件と無関係でした」
天皇「最初と言ってることちゃうやん……」
田中「内閣総辞職します」
西園寺「後任は濱口君がいいと思います」
天皇「よきにはからえ」
濱口「5時間で組閣した。金解禁! 緊縮! 軍縮! 協調外交! がんばるぞい!」
結果、日本は深刻なデフレとなり大不況に。平和路線の幣原外交は欧米ウケは良かったものの中国に舐められ排日運動が激化。貧困と弱腰外交に国民大不満、+軍縮で軍人大激怒
そんな流れ
102:名無しのプレイヤー
何一つとして上手くいってなくて草
103:名無しのプレイヤー
そもそも取るべき手段が間違ってるからな
緊縮じゃなくて積極財政で仕事と生産性を増やして景気を良くして国力を高めるべきだし、外交だって協調と言えば聞こえはいいけど結局は欧米諸国に遠慮して譲歩してるだけだし。
そして内政と外交に失敗した結果、排日事件に怒り、不況に苦しむ国民世論は陸軍の対中強硬策を支持したっていうのが史実の流れ
104:名無しのプレイヤー
ちなみにこの時点での国力は史実と変わらないんだよね?
105:名無しのプレイヤー
そうだね。アメリカとは国力比で10倍以上の開きがあるよ
106:名無しのプレイヤー
正直10倍どころの差ではないと思うけどね
107:名無しのプレイヤー
そこからどうやってこの日帝大勝利の未来に繋がるんですかね……?
108:名無しのプレイヤー
そんな情勢の中、帝都で陸軍が1000人規模で蜂起。首尾よく政府閣僚を拘束して無血クーデターになったみたいだ
109:名無しのプレイヤー
無血!? どうやって!?
110:名無しのプレイヤー
クーデターをするような血気盛んな将兵たちが一人も殺さないなんて
111:名無しのプレイヤー
政府閣僚の護衛についてたヤタガラスの人間がクーデター側に加わったのが一番大きかったみたいね。部隊の蜂起と同時に首脳陣を一瞬で拘束したと
112:名無しのプレイヤー
致命的すぎて大草原
113:名無しのプレイヤー
始まる前から終わってるやんw
114:名無しのプレイヤー
んで帝都を掌握した反乱軍は天皇に直訴する。
理性的なクーデターに陛下もそこまで怒ってなくて、とりあえず話を聞こうと思ったみたい。
クーデター首謀者達から聞かされた国民の窮状に陛下共感。天皇親政には頷かなかったものの、二度とこうしたことが起きないように、国民生活を第一にして貧困を撲滅するとことを、新たに組閣した閣僚達に厳命したらしい
115:名無しのプレイヤー
おおー? やるやん
116:名無しのプレイヤー
んで犬養内閣誕生か
117:名無しのプレイヤー
サラッと前政権が吹っ飛んでて草
118:名無しのプレイヤー
あれ? クーデターの首謀者達はどうなったの?
119:名無しのプレイヤー
被害者はいなかったし一般兵と同じく無罪放免になったらしい。陛下も厳罰は望まなかったみたいだから
120:名無しのプレイヤー
まあその後予備役に回されたり左遷されたりしたみたいだけどね
121:名無しのプレイヤー
陸軍ではそれで皇道派が非主流に追いやられて、統制派が完全に主流になった
122:名無しのプレイヤー
武力蜂起したんだし、まあ残当
123:名無しのプレイヤー
むしろそれで済んじゃうのかw
124:名無しのプレイヤー
結局クーデターは成功したの? 失敗したの?
125:名無しのプレイヤー
皇道派が目指していた『君臣の奸を排除して天皇親政による国家改造』は実現しなかったけど、国民生活を最優先しろっていう陛下の勅命が下されたことで歴史の流れは大きく変わったみたい
126:名無しのプレイヤー
高橋是清が生きてて大蔵大臣やってるのもでかいよな。
金輸出禁止、日銀引き受けによる政府支出(国債発行)の増額、公共事業の拡大で、見事日本経済をデフレから脱却させた
127:名無しのプレイヤー
ケインズ政策!
128:名無しのプレイヤー
でもそれって史実でも同じことやってないか?
129:名無しのプレイヤー
史実ではこの後軍縮しようとして2・26が起きてダルマさん殺されるんですよね……
130:名無しのプレイヤー
史実よりも大規模に行われたっぽい。史実では10億円を3年間ぐらいだったはずだけど、この世界では五カ年計画で80億、その後も更に規模を増して継続されたみたい
131:名無しのプレイヤー
ひえー。そんなに財政支出してインフレは大丈夫だったのか?
132:名無しのプレイヤー
一時は10%台にまで上がったみたいだけど、好景気に湧いて生産設備が拡張されていくにつれ、物資・サービスの供給も増して徐々に落ち着いていったみたい。
名目GDPは毎年30-40%成長し、実質GDPは前年比15%くらいで成長、5年後には国力は2倍近くになってた。1人当たりのGDPもほぼ倍増したらしい
133:名無しのプレイヤー
すげー
134:名無しのプレイヤー
所得倍増計画やん
135:名無しのプレイヤー
内政に尽力してたから大陸侵略はしなかったのか
136:名無しのプレイヤー
満州事件は起きなかったみたいね
137:名無しのプレイヤー
1941年には10年前と比べて実質GPDは4倍になっていたと。勿論積極財政路線は継続
138:名無しのプレイヤー
そして志那事変もなかったのか
139:名無しのプレイヤー
あれ? これアメリカと戦争する理由なくね?
140:名無しのプレイヤー
でも太平洋戦争はあったみたい
141:名無しのプレイヤー
どうして!?
142:名無しのプレイヤー
どうも日本ではなくアメリカが戦争をしたがったみたいだ
143:名無しのプレイヤー
アメリカさーん!?
144:名無しのプレイヤー
この世界の戦前日本はアメリカとまともに戦って勝てるのか?
145:名無しのプレイヤー
無理。史実よりは善戦するかもしれないけど、総力戦体制になったアメリカには絶対勝てない。国力が違いすぎる
146:名無しのプレイヤー
元が元だし、4倍程度じゃね……
147:名無しのプレイヤー
二次大戦中にアメリカはGDPの2倍にあたる巨額の財政支出をしてるけどインフレ率は最大でも10%程度だからな。戦時下で男手が取られまくっててもこれ。根本の生産力からして違いすぎる
148:名無しのプレイヤー
流石米帝。リアルチート国家だ
149:名無しのプレイヤー
なお経済学の主流派である古典派経済学からしたら赤字財政垂れ流しで国債発行なんて狂気の沙汰なので、戦争でもしない限りは不況から脱せない模様
150:名無しのプレイヤー
実際借金は返さなきゃ駄目でしょ? 気持ちは分かる
151:名無しのプレイヤー
国と個人を混同しちゃ駄目だぞ。自国建て通貨を発行できる国なら、国債なんて中央銀行に引き受けさせて国が亡びるまで永遠に借り換え続ければいい。
俺らは個人で通貨発行権なんて持ってないから借りた金は返さなきゃいけないけど、国は子分の銀行から無限に金を借り続けることができるんだ
152:名無しのプレイヤー
理論上はマジで無限にできる
ただやりすぎるとインフレ率が上がりすぎて国民生活に支障を来すから、現代の国ならインフレ率2%とかを上限に定めてる
153:名無しのプレイヤー
へー。デフレじゃ駄目なんだ
154:名無しのプレイヤー
需要が供給を上回る=インフレ。供給が需要を上回る=デフレだから。
消費や投資が活発になって経済成長するのはどっち? と聞かれたらそりゃね?
155:名無しのプレイヤー
俺らは長期デフレに苦しむ現代日本に暮らしてて感覚が麻痺してるけど、基本的にデフレは絶対悪と言ってもいい。20年以上デフレが続く先進国なんて日本以外に存在しないからな。
デフレで恩恵を被るのは、安定した収入や一定の資産を持つ一部の人達だけ。通貨供給が絞られれば経済は縮小していき、大多数の国民は失業と貧困に喘ぐことになる。
投資するより金をため込んだ方が得だから成長もできず、最終的には自国で財やサービスを生産できなくなって輸入に頼るようになり、自国通貨は価値を失い、衰退の末に外圧か内圧で国は亡びるだろうね
156:名無しのプレイヤー
お、おう……
157:名無しのプレイヤー
この人、前の世界で色々溜まってるものがありそうだな
158:名無しのプレイヤー
詳しく知るにつれて、この世界の日本は前と比べて悪くなさそうだもんな。むしろ良い
159:名無しのプレイヤー
求人ありまくりで簡単なバイトですら時給2000円とかザラだからな。前と比べて物価もそこまで高いって程ではないし。正直悪魔のことが無ければこっちに永住したいぐらい
160:名無しのプレイヤー
悪魔さえ……悪魔さえいなければ……
161:名無しのプレイヤー
ほんそれ。適当に働いてお気楽に生きて行ければなー
162:名無しのプレイヤー
ただ人権意識とかセクシャルマイノリティに対する意識とかは前世と大して変わってないみたいなんだよな。
レズって女の子と結婚とかしたいけど社会的な風当たりは強そうだ
163:名無しのプレイヤー
企業も終身雇用、年功序列の日本的経営が主流みたいだからな
164:名無しのプレイヤー
まるで昭和だな
165:名無しのプレイヤー
まあ評価の項目に勤続年数があるだけで、実力が評価されないって訳ではないみたいだから
166:名無しのプレイヤー
史実日本以上に男尊女卑が強いって訳でもなさそうだし、その辺は大日本帝国ベースにしてはよくやってる方かも
167:名無しのプレイヤー
太平洋戦争に話を戻すと、ニューディール政策だけでは需要喚起が上手くいかず(正確に言えば景気は回復過程に入ったんだけど、財政・金融引き締めで再度後退した)、長引く不況にアメリカは苦しんでいた。
中華市場に対する進出もあまり上手くいかず、順調に経済を回復させて国力を成長させている日本にヘイトを募らせていったみたい。
168:名無しのプレイヤー
何もしてないのにヘイトが!? なんで?
169:名無しのプレイヤー
むしろ何もしてないからでは?
170:名無しのプレイヤー
アメリカからしてみたら日本は中国に進出するにあたって邪魔になる厄介な国だからね。
自分から進んで番犬になるならともかく、いっちょ前に縄張りを主張されると目障りなんだろう
171:名無しのプレイヤー
景気回復の為に戦争がしたい。叩き潰すには手頃な相手。倒して子分にすればアジアの覇権を握れる。そういう思考かな
172:名無しのプレイヤー
ザ・帝国主義時代!
173:名無しのプレイヤー
史実通りヨーロッパで戦争が始まってレンドリースで多少景気は持ち直したものの、より大規模な軍拡がしたいし、連合国も負けそうでアメリカは参戦したがってた
174:名無しのプレイヤー
あれ? もしかして日本って防共協定に参加してるの?
175:名無しのプレイヤー
してるぞ。陸軍の仮想敵は常にロシア・ソ連だし
176:名無しのプレイヤー
満州事変は起きてないのに!?
177:名無しのプレイヤー
国際連盟は脱退せずに防共協定を締結したみたい
178:名無しのプレイヤー
ついでに言えば中華民国も防共協定に加わってる
179:名無しのプレイヤー
日独伊中の4国協定なのか
180:名無しのプレイヤー
色々と草
181:名無しのプレイヤー
あちゃー枢軸陣営に入っちゃってるのか
182:名無しのプレイヤー
まさか防共で手を組んだドイツがフランス・イギリスとまで戦争するとは思うまい
183:名無しのプレイヤー
ヨーロッパで戦争が始まってからは、枢軸・連合の両陣営から参戦の誘いがあったみたいだけど、とりあえず中立で様子見をしたみたい
184:名無しのプレイヤー
まあそれが正解だよね。戦争は当事者になるよりも傍観しながら物資を売った方が儲かる
185:名無しのプレイヤー
日中戦争はなく、東南アジアへの侵略もせず、当然真珠湾攻撃もなく。
ヨーロッパの大戦を尻目にぬくぬく内政をしてたところ、大西洋でアメリカの船舶が撃沈される。アメリカ側はそれをドイツの潜水艦による攻撃だと断定。日独伊に対して宣戦を布告する
186:名無しのプレイヤー
>日独伊に対して宣戦布告
!?
187:名無しのプレイヤー
え? 何で日本にも宣戦布告? 別に日本は関係ないよな? 防共協定に対する宣戦布告なら中国はどうした?
188:名無しのプレイヤー
その辺は全部スルー。というか今では船の沈没がドイツの攻撃によるものということすら怪しいらしい
189:名無しのプレイヤー
まさかアメリカお得意の自作自演からの宣戦布告!?
190:名無しのプレイヤー
色々突っ込みどころが多すぎるw
191:名無しのプレイヤー
実際当時の人も同じ心境だったみたい。チャーチルはアメリカ参戦の知らせを受けて「これで勝った!」と喜んだみたいだけど、その後に日本にも宣戦布告したと聞いて真顔になったとか
192:名無しのプレイヤー
日本としても寝耳に水で滅茶苦茶混乱してたみたい
193:名無しのプレイヤー
世界最大の大国に突然戦争を吹っ掛けられたら、そらそうよ
194:名無しのプレイヤー
前から締め上げもあったみたいだし、いう程突然ではなかったみたいだけどね
195:名無しのプレイヤー
それだっていきなり宣戦布告はビビる
196:名無しのプレイヤー
まあ奇襲攻撃とかはなかったみたいだけどね。
国力差があるからアメリカ側からすれば待ってるだけで戦力比で有利になって、最終的には圧殺できる。
むしろ焦ったのは日本側。戦力差がそこまでない今のうちに勝っておかないと後がない。
そう判断したのか日本側から打って出た。そしてハワイ沖海戦。
197:名無しのプレイヤー
……ごくり
198:名無しのプレイヤー
めっちゃ気になる所で切るやん
199:名無しのプレイヤー
結果は?
200:名無しのプレイヤー
ハワイ沖海戦、日本海軍がまさかまさかの大勝利。殆ど一方的に米太平洋艦隊を壊滅させてしまう
201:名無しのプレイヤー
うそーん
202:名無しのプレイヤー
大本営発表ですか?
203:名無しのプレイヤー
え? 奇襲でもなく正面から戦ったんだよね? どうやって!?
204:名無しのプレイヤー
勝因は異能者戦力の活用の差だった模様。
もちろん近代海戦では異能者の直接戦闘力なんて意味のないものだけど、日本海軍は千里眼とか念話なんかの特異な力を持った異能者を鍛えて軍艦に乗せて戦力化していたみたい
205:名無しのプレイヤー
レーダーや無線の代わりに使ってたのか?
206:名無しのプレイヤー
ちなみに電子技術は史実通り列強には随分と後れを取っていた
207:名無しのプレイヤー
人力レーダーは草
208:名無しのプレイヤー
卓越した異能者の観測員は、調子が良ければ現代のレーダーに匹敵するほどの探知距離と精度を持っていたとかなんとか
209:名無しのプレイヤー
強すぎだろw
210:名無しのプレイヤー
そんなんチートやん!
211:名無しのプレイヤー
そこまで超越した人は流石に1人しかいなかったみたいだけどね。
他の平均的な異能観測員は、当時最新鋭のレーダーよりもちょっと性能がいい程度でしかなかった
212:名無しのプレイヤー
それでもまあ、凄い方なのか?
213:名無しのプレイヤー
よし! そいつらを量産して各軍艦に2~3人乗せるんや!
214:名無しのプレイヤー
ただし実戦レベルで使える特殊な異能の持ち主は超貴重で、1つの艦隊にローテーションで24時間カバーできるぐらいの人員を乗せるのが限界だった。
1人を育成するのにも素質あるものから選りすぐって、10年とか20年とかかけて育てられる為、戦死したりすると補充できないという欠点もあった
215:名無しのプレイヤー
全然ダメじゃん
216:名無しのプレイヤー
なるほど、ただの職人芸だったか……
217:名無しのプレイヤー
電子技術が発達してくると不要になる存在だけど、その時代では猛威を振るったみたい。
敵艦隊を先に発見して空母艦載機で先制攻撃、やってくる敵の偵察機や攻撃隊を補足して迎撃、夜戦で水雷戦隊や戦艦部隊が大暴れ。
敵方の主力・随伴艦を多数撃沈した上で、味方の損害は駆逐艦や軽巡が数隻沈んだだけで、後は突っ込んだ前衛艦隊が多少損傷したぐらい。
その後ハワイに艦砲射撃や空襲をして帰ってきたみたい
218:名無しのプレイヤー
ほぼパーフェクトゲームやん
219:名無しのプレイヤー
大本営発表だったとかはないのか?
220:名無しのプレイヤー
いやガチだよ。まあ多少戦果を誤認して盛ってはいたみたいだけど
221:名無しのプレイヤー
そのままハワイ占領とかはしなかったの?
222:名無しのプレイヤー
勢いのままハワイも占領しようみたいな案も出たらしいけど、占領部隊は連れて来てないし、その後に南方作戦が控えてたから見送りになったみたいだね
223:名無しのプレイヤー
南方作戦? あれ? 戦争してるのは今のところアメリカだけだったよね?
224:名無しのプレイヤー
フィリピンでも占領するんじゃね
225:名無しのプレイヤー
いや、南方の資源を求めて連合国に宣戦布告、フィリピン、マレー、ジャワ、インドネシア等に攻め込んだよ。ほぼ史実通りの南方作戦だと思う
226:名無しのプレイヤー
展開も史実通りの快進撃か
227:名無しのプレイヤー
一応植民地解放戦争と定義していて、占領地は資源や権益を得た後はさっさと現地政府を作って独立させたみたい
228:名無しのプレイヤー
草。イギリス、オランダ、フランスとばっちりやん
229:名無しのプレイヤー
こうなったら仕方ないとドイツと本格的に手を組み始めて、インド洋の通商破壊とかインドの独立を支援して嫌がらせしたみたい
230:名無しのプレイヤー
ブリカスさん可哀そうで草
231:名無しのプレイヤー
別にこの世界では日本とか放っておいてもよかったのにな。なぜかアメリカから宣戦布告してヨーロッパ諸国がアジアの植民地を失って被害に遭うのは笑う
232:名無しのプレイヤー
まあ快進撃も序盤だけだね。2~3年後にはアメリカが艦隊を再建させて戦力比では逆転して、日本は劣勢に立たされることになる
233:名無しのプレイヤー
米帝の生産力はリアルチートだからな……
234:名無しのプレイヤー
日刊駆逐艦とか月間空母とか頭おかしいもん
235:名無しのプレイヤー
史実より国力が増しているだけあって、日本もかなり粘ったようだ。
ヨーロッパ方面よりはかなり控えめだけど、太平洋でも結構な消耗戦になったみたい
236:名無しのプレイヤー
稼いだ時間で島嶼の要塞化ができたのも大きかったみたいだね
237:名無しのプレイヤー
まあ欧州方面は史実通りイタリアが陥落して、ドイツが東西に半分こにされて終わって、最後は日本だ……とはいかず、アメリカの国民世論は厭戦ムードが蔓延したみたい
238:名無しのプレイヤー
おっ?
239:名無しのプレイヤー
なんで?
240:名無しのプレイヤー
あー、真珠湾がないからか?
241:名無しのプレイヤー
そう。それにまだ太平洋中部で手こずってて、日本を陥落させるにはあと1~2年はかかると予想されて、しかし死傷者もかなりの量が出る。
こんな戦争を続けてたまるか! って反戦デモやサボタージュとかストライキが頻発したらしい
242:名無しのプレイヤー
開戦の動機がかなり怪しいものだし、そうなっても仕方ないのか
243:名無しのプレイヤー
アメリカ国民的にはドイツを倒してハイ終わりって感じだったのか
244:名無しのプレイヤー
ついでに言うとそんな訳の分からない戦争で勝っている訳でもなく、ちっぽけな島の1つを占領するのに多大な犠牲を払ってたりしてたからね
245:名無しのプレイヤー
本土に直接原爆を投下する手段もなくて、一か八かで島嶼に原爆を落としてみるけど要塞化された対象には効果が薄く、仕方なく和平するかとなったみたい
ソ連もチラ見してたしね
246:名無しのプレイヤー
原爆は落とされたのか
247:名無しのプレイヤー
うわあ……放射能被害とかやばそう
248:名無しのプレイヤー
日本はなんとか粘り勝ったわけか
249:名無しのプレイヤー
民主主義国だから、最強国のアメリカも世論には勝てない
250:名無しのプレイヤー
つっても講和条約ではアメリカは超強気だな。ほぼ戦勝国みたいな面してるやん
251:名無しのプレイヤー
まあ実際、これ以上戦争を継続しても日本はどうしようもないし。逆にアメリカは戦えば勝てる
252:名無しのプレイヤー
アメリカの要求はこんな感じか。
天皇の独裁をやめて民主化。
前時代的な憲法の改正。
大陸利権の放棄。
海外領土の放棄→住民投票で独立か帰属かを選択。植民地化されて長い所は殆ど残る。
賠償金は双方求めず。
その他、自由貿易とか門戸開放とか細かいのが色々。
253:名無しのプレイヤー
まあ……国力差で考えれば十分勝ったといえるんじゃないか? この条件なら
254:名無しのプレイヤー
かなりアメリカ側も譲歩してる気がする
255:名無しのプレイヤー
ファシストの独裁国家だった日本に正義のアメリカが自由と平等と民主化を齎したのだ! って感じで戦争の正統性をアピールしたかったみたいだね
256:名無しのプレイヤー
とりあえず戦後に体裁を整えていくスタイル、嫌いじゃない
257:名無しのプレイヤー
ファシスト? 独裁国家? そうなの?
258:名無しのプレイヤー
実際は違うけど憲法とか組織図だけ見ればそれっぽくも見える。まあ言ってるだけだね
259:名無しのプレイヤー
それで今の史実現代日本っぽい日帝に繋がる訳か
260:名無しのプレイヤー
自分たちでは中々体制は変えられないだろうしな。むかつくけどその点はグッジョブ……なのか?
261:名無しのプレイヤー
そして現在の日本。
90年前から続く、富国強兵、経世済民のスローガンを元に経済成長を続けているみたい。
新自由主義の影響はあまり受けていないみたいだね。大きな公営企業が民営化されずに結構残ってる。
消費税はなくて、社会保障費も安く、国民負担率は2割弱。公共投資とかも活発で、高度成長期さながらの2億総中流社会が続いてるっぽい
262:名無しのプレイヤー
>消費税無し。国民負担率は2割弱
なんだこれ。夢の国か?
263:名無しのプレイヤー
2公8民やん。前は4公6民か下手すれば5公5民だったよな?
264:名無しのプレイヤー
実はその辺、史実の昭和後期の時代と変わらないんだけどな
ソ連崩壊して赤化とか気にしなくてよくなって、新自由主義が台頭し始めてから色々おかしくなり始めた
265:名無しのプレイヤー
すげー羨ましい。こんな国で俺も生まれたかった(ロスジェネ世代並感)
266:名無しのプレイヤー
結局、物価の上昇とかはどういうことだったの
267:名無しのプレイヤー
インフレじゃない?
268:名無しのプレイヤー
本土は空襲の被害が無く生産設備が破壊されてないから、戦後のハイパーインフレとかはない。まあ戦中は軍拡で結構インフレしてたみたいだけど。
その後も積極財政が継続して行われて、そこそこ高率のインフレが続き、今に至っている感じ
269:名無しのプレイヤー
今もマイルドインフレが続いてるみたいだね。銀行預金でも結構な利息が付くみたいだし、タンス預金は止めといた方がいい
270:名無しのプレイヤー
ふむふむ。じゃあ前の世界と1円の価値が大して変わらないのは偶然ってこと? 商品の質が増してた件は?
271:名無しのプレイヤー
商品の質云々は普通に競争の結果じゃない? 生産力が上がってそうだからその分安くできるのもあるかもしれない
272:名無しのプレイヤー
>>270
そうなるね。それか運営側の配慮かもしれない
273:名無しのプレイヤー
流石に偶然であって欲しいけど、何らかの介入の結果という線も捨てきれないんだよね。こういうおかしな歴史を日本が辿ってると
310:名無しのプレイヤー
つーか政党名がやばいな。与党は和魂党、最大野党が友愛党ってwww
311:名無しのプレイヤー
和魂は草
312:名無しのプレイヤー
ワコンって読むのか? 漢方みたいな名前だな
313:名無しのプレイヤー
友愛党は割としっくりくるかも。なんか怖く感じるけど
314:名無しのプレイヤー
和魂党www
これって前の世界でも与党が2009年の選挙で惨敗した時に改名案で上がってなかったか?w
315:名無しのプレイヤー
あったなー。批判が殺到して取りやめになったみたいだけど
316:名無しのプレイヤー
何で改名しようと思ったんだ?
317:名無しのプレイヤー
政党名が嫌われ過ぎて話を聞いてもらえないって時があったらしい
318:名無しのプレイヤー
草
319:名無しのプレイヤー
他の野党もかなりやばいけどな。透明党、皇国共産党、尊王攘夷の会、とか
320:名無しのプレイヤー
皇国共産党!?!?
321:名無しのプレイヤー
社会主義なのに皇国を冠するのか(困惑)
322:名無しのプレイヤー
天皇制共産主義ってこと?w
323:名無しのプレイヤー
まあ天皇制を廃止する意思がないのは伝わってくる
324:名無しのプレイヤー
尊王攘夷の会も結構やばくないかw
325:名無しのプレイヤー
幕末にありそう
326:名無しのプレイヤー
極右なんだろうなっていうのが党名から伝わってくる
327:名無しのプレイヤー
それをいうなら和魂党も大概だけどなw
328:名無しのプレイヤー
全部イロモノっぽくて大草原
427:名無しのプレイヤー
どうやってレベル上げすればいいんだ? 異界は管理されてるんでしょ? 勝手に入る訳にもいかないし
428:名無しのプレイヤー
その辺は悪魔が裏の存在だったとしても同じじゃね。異界とかは何かしらの組織に管理されてたはず
429:名無しのプレイヤー
別に平和的な修行や訓練でもレベルは上がるみたいだけどね
430:名無しのプレイヤー
効率は物凄く悪いみたいだけどな
431:名無しのプレイヤー
調べて見ると、異能を鍛える道場や教室があちこちにあるみたい。
ちょっと気になるな。どういうこと教えてるんだろ
432:名無しのプレイヤー
見た感じ普通の武術系の道場や教室とかと大した違いはなさそうに見えるな。
教えてる側は異能者らしいけど、異能者って言ってもピンキリだろうし。
433:名無しのプレイヤー
魔法関係のはかなり興味あるけど、そういうところに通えるほどの金の余裕はないかな。当面はyoutubeで異能関係の動画を漁るか
434:名無しのプレイヤー
本来金払わないと知れないような事でも、無料で手軽に見れるのはマジでありがたい。この時代で良かった
435:名無しのプレイヤー
現地のネット情報では、わざわざ道場とかに通うのは馬鹿のやることだって声もあるみたいだけど。
436:名無しのプレイヤー
この世界では、単なる修行では覚醒するのに10年かかるとかザラみたいだからな。
しかも時間と労力を費やしたところで自分が覚醒できるかどうかは分からない。その間月謝を払い続けて覚醒できなかったら丸損だろうし
437:名無しのプレイヤー
やる気があるなら月謝を払ってでも先達に教えを請うた方が効率的だろうけど、そこまでモチベが高くないなら無駄に終わりそうではある
438:名無しのプレイヤー
まあ才能ある人は生まれつきの異能者だったり、普通に暮らしているうちに自然と覚醒しているらしいからな……
439:名無しのプレイヤー
才能の格差はやっぱあるのか
440:名無しのプレイヤー
俺らにはキャラの『なりきり』があるから(震え声)
覚醒効率アップって事は経験値増加みたいなもんでしょ? 普通の人よりはレベルが上がるのも早い、と思いたいが
441:名無しのプレイヤー
だといいですね……
442:名無しのプレイヤー
俺らの才能(特典のレアリティ)の格差もやべーからな
443:名無しのプレイヤー
スキルっぽい異能は訓練次第で習得可能みたいだから、努力次第では低レアの人も戦うことはできるんだろうけど、強キャラ持ちの人と比べたらどうしても成長に差はでるだろうなー
444:名無しのプレイヤー
やっぱり悪魔と直接対峙して戦った方がレベルが上がるのは早いみたいだし、そういう意味でも元から強くてスケールも優秀なランカーは有利だな
445:名無しのプレイヤー
悪魔と戦うには対悪魔部隊に入るしかないのかね。軍隊っぽくて嫌なんだけど
446:名無しのプレイヤー
個人でいきなり異界に挑むよりはマシだけど、訓練とかめっちゃ厳しそうだよな
447:名無しのプレイヤー
訓練を耐えることさえできれば一端のデビルバスターになれそうではある
448:名無しのプレイヤー
つーか見た目はまんま軍の特殊部隊だよな。銃がメインウェポンみたいだし
449:名無しのプレイヤー
魔法とか使える人は希少みたいだからな。誰でも使えて威力と射程が揃ってる銃が主力になるのは当然と言える
450:名無しのプレイヤー
一般人が現代兵器を使っても悪魔にはダメージを与えられないけど(そもそも見えない)、異能者が使えばダメージは与えられるみたいだからな。
誰だって悪魔を相手に近接武器と遠隔武器、どっちを選ぶ? って聞かれたらそら銃を選ぶわ
451:名無しのプレイヤー
まあ遠距離武器って体から離れる分、霊力の浸透が薄くて悪魔に対する威力はあまり高くないみたいだけど
452:名無しのプレイヤー
それでも近づいてぶっ叩けと言われるよりはマシ
453:名無しのプレイヤー
低レベルの悪魔なら、囲んで銃で撃つが一番簡単に制圧できそうだもんな
454:名無しのプレイヤー
ただし物理無効は勘弁な!
455:名無しのプレイヤー
これだけ国が悪魔対策に本気だと、属性弾とか魔法ストーンとか工業的に作って大量生産してたりするんかね?
456:名無しのプレイヤー
どうだろう。そういった消耗品が使いたい放題で悪魔に対してガンメタ張れるなら、もっと被害も少なくて楽勝ムードの気がするけど
457:名無しのプレイヤー
確かに
458:名無しのプレイヤー
まあこの世界の日本なら間違いなくそういった試みはしているだろうなという安心感がある
459:名無しのプレイヤー
現状でも上手くやってそうだし正直プレイヤーとかいらなくね? って思うんだが俺だけか?
460:名無しのプレイヤー
むしろこの調子で頑張って欲しい。一市民として生きられるなら万々歳だわ
461:名無しのプレイヤー
無能よりは100倍マシ
462:名無しのプレイヤー
味方組織が優秀過ぎると主人公の活躍の場がなくなるってヤツだな
463:名無しのプレイヤー
そういう二次元の優秀な組織や味方って、よく敵のカマセになったりしますよね
464:名無しのプレイヤー
こ、ここは現実だから……(震え声)
465:名無しのプレイヤー
ゲームという触れ込みで連れて来られて、この不思議な掲示板の名前欄にはプレイヤーと表示されている。これで何事もなく終わるとは思えんけどね
466:名無しのプレイヤー
崩壊に備えなきゃ(必死)
467:名無しのプレイヤー
備えるためにもレベル上げたいんだけどさ、戦う場所がなー。
どっかに管理されてない初心者用の異界が転がってないかな
468:名無しのプレイヤー
そんな危ない橋を渡らなくても、民間人でも利用可能な訓練用異界はあるみたいだけど
469:名無しのプレイヤー
マジで!?
470:名無しのプレイヤー
退魔省管轄の悪魔討伐隊……通称『ヤタガラス』が、管理している異界を民間にも開放してるらしい
471:名無しのプレイヤー
おお? ヤタガラスの名前は消えてないのか
472:名無しのプレイヤー
内務省から独立して退魔省に格上げされて組織名も改めたみたいだけど、今でも普通にヤタガラスって呼ばれてるみたいだね
473:名無しのプレイヤー
へー
474:名無しのプレイヤー
まあそっちの方がしっくりくるかもしれない
475:名無しのプレイヤー
そういえばライドウとかは居るんかな?
476:名無しのプレイヤー
調べた限りではいないっぽいけど
477:名無しのプレイヤー
秘匿されてる可能性がワンチャン……
478:名無しのプレイヤー
いて欲しいけど望み薄だろうなー。仮にいたとしても常識の範囲内の強さしかなさそう。そんな心強い味方が用意されてるとは思えない
479:名無しのプレイヤー
確かにな
480:名無しのプレイヤー
すみません。異界の話、もうちょい詳しくお願いしてもいいでしょうか?
481:名無しのプレイヤー
ググれって言いたいけどまあいいか。まず利用するには異能者登録は必須らしい。
んで能力検定を受けてある程度戦えるのが確認できたら、相応の異界を紹介してくれるみたい。
後は簡単な講習を受けて同意書にサインして終わり。入場料とかは必要なくて、装備は無料で貸してくれるらしい。
詳しい事は自分で調べてくれ。異界に行ってきた系の動画とかも結構あるから見てみるといいかも
482:名無しのプレイヤー
なるほど、ありがとうございます
483:名無しのプレイヤー
ほー、そういう動画があるのか。俺も見てこよう
484:名無しのプレイヤー
異能者登録って住民票が必要なんだよね?
住居持ってない人でも直前まで住んでたっぽい自治体に照会すれば出てくるんだろうか
485:名無しのプレイヤー
試してみないと何とも言えないけど、多分それで大丈夫のはず。みんな身元はしっかりしてるみたいだし
486:名無しのプレイヤー
悪魔を倒すと結晶化したマグネタイトが入手できてそれの買取をしてくれるとか、なんかマジでダンジョンモノっぽい
487:名無しのプレイヤー
ファンタジーでよくある魔石かな?
488:名無しのプレイヤー
チュートリアルで入手できた傷薬とか痛み止めなんかも、異界で入手できる素材を使って実際に作ってるみたいだね
489:名無しのプレイヤー
マジか。性能は同じなんか? ああいった超常的な薬があるとすげー心強いけど
490:名無しのプレイヤー
どうも同じっぽい?
491:名無しのプレイヤー
おおー、それは朗報だ
492:名無しのプレイヤー
属性宝石も希少なモノみたいだけど異界で産出するみたいだね
493:名無しのプレイヤー
はえー。あれってチュートリアル固有のものじゃなかったのか
494:名無しのプレイヤー
ところで悪魔召喚プログラムとかは無さげなの?
495:名無しのプレイヤー
無いな
496:名無しのプレイヤー
悪魔召喚自体は特殊な技法として一応存在するみたい。
ただ習得するには特別な才能や訓練が必要で、使役できる悪魔は1体や2体が限界で自分よりも弱い必要があって、ゲームみたいにお手軽に強いって訳にはいかないみたいだけど
497:名無しのプレイヤー
そっかー、残念
600:名無しのプレイヤー
ヤタガラスって相当権力を持ってるみたいだな。
異能者給付金を始めとした各種異能者優遇政策って全部ヤタガラス発案みたい
601:名無しのプレイヤー
ヤタガラスは異能者が多いみたいだし、それって利益誘導では?
602:名無しのプレイヤー
ご、護国の為に異能者の質と量を増やすべく頑張ってるんだよ! きっと!
603:名無しのプレイヤー
まあ民主的な手続きに則っているなら、直接的な買収でもない限り、利益誘導自体は違法でもなんでもないしな
604:名無しのプレイヤー
というか地元や業界の有利になるような公約を掲げて当選してそれを実行するのは立派な政治でしょ
605:名無しのプレイヤー
クーデターの前例もあるし、権力者は相当ビビってそうだけど
606:名無しのプレイヤー
この世界の2・26は昭和維新なんて言われて肯定的に見られてるみたいだからな。
明治維新と昭和維新、2度も成功体験がある所為でクーに対する抵抗感は薄いみたいだし、下手な政治をしたらクーデターされるんじゃないかって恐怖がありそう
607:名無しのプレイヤー
実際凄い歴史の転換点になってるしね。首謀者が今では英雄扱いされてるのも納得できる
608:名無しのプレイヤー
霊的守護に熱心なヤタガラスが強い政治力を持っていること自体は悪い事じゃないな。
むしろ頼もしくないか? 少なくとも無能な政権が権力を握ってるよりはずっとマシ
609:名無しのプレイヤー
それはある
610:名無しのプレイヤー
頼むぞヤタガラス! 日本を守ってくれ! 俺は自宅を守る!
611:名無しのプレイヤー
このまま何とかならんかなって期待は自分もある
612:名無しのプレイヤー
ホント頑張って欲しい。できる限り協力もする。でも徴兵は勘弁な!
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初心者
この世界に来て、早くも1週間が経つ。
目まぐるしい日々で内容も濃く、時間はあっという間に感じられた。
この世界の一般常識については大体把握して、集団生活も安定してきた。
集団に馴染めていない人は今のところいないし、班長らもよく班員を纏めてくれる為、自分がいなくても大体回るようになっている。
収入の目途が付いたので金銭的に締め付ける必要性が薄れ、何かにつけて甘い顔をできるようになったのも大きいだろう。
大抵の不満はお金を渡すことで抑え込める。現ナマは正義だ。
昼間の家はガランとしている。
住民の殆どが出払っているからだ。
ハロワに行って求人を探したり、バイトの面接に行ったり等、皆それぞれが職探し中だった。
中には既にバイトを始めている人もそれなりにいる。
もう1週間も経つ頃には、皆何かしらの収入源を得ている事だろう。
そう仕向けている面もあるとはいえ、皆勤勉なようで何よりだ。
霊的災害――悪魔に対抗するために不可欠な異能者を育てる為、政府が行っている政策の1つ。異能者給付金。
霊視ができるだけの最低レベルの異能者ですら、月々10万円。レベルが上がれば更に額が増していくという、異能者にとって破格ともいえる制度だった。
異能者限定ではあるが、ベーシックインカムのようなものだ。
プレイヤーは全員LV1。霊視能力も有しており、この世界では異能者の端くれと言えるようで、受給資格を有していた。
各種手続きや申請が必要な為、すぐに受け取れるものではないが、それでも将来的には毎月無条件に纏まった額の金が貰えると思うと気が楽になる。
家の住民がストレスの多い集団生活でも明るい雰囲気を保てているのは、その影響もあるだろう。
皆が職探しを頑張っている中、私としても遊んでいた訳ではない。
住民の中で唯一身分証が手元にあったので、一足先に異能者登録を受けに行ってみたのが数日前だ。
まず悪魔討伐隊――通称ヤタガラスの支部に行き、異能者登録を行って登録証を貰ってくる必要があるらしい。
試験もあると言うので少し緊張していたが、やってみれば拍子抜けするほど簡単だった。
ヤタガラスの支部は普通の役所とはかなり違った。
大きなグラウンドと体育館が併設されており、何も知らなければ総合運動場と勘違いするような外観だった。
部隊の駐屯地はまた別にあるようで、ここは民間に向けて開かれた施設らしい。軍隊の基地のような堅苦しい雰囲気は感じなかった。
受付に行って用件を伝えると、まず赤外線体温計みたいな装置を体に向けられて、レベルを測定された。
簡易的なアナライズの装置らしい。レベルだけしか測れないようだが、覚醒しているかどうかを判別するだけならそれで十分のようだ。
更に霊視能力がなければ見えないという光で出来た電光板を見せられて、表示された数字を答えていった。
それで異能者であるかどうかの確認は終わりらしい。
その後、特別な能力の有無を聞かれたので、身体能力が普通よりも高いと話すと、体育館に移動してスポーツテストで受けるような体力測定をすることになった。
握力、上体起こし、腕立て伏せ、懸垂、立ち幅跳び、シャトルラン、ハンドボール投げ、全身反応時間測定の8種目だ。
自分の身体能力を測るいい機会でもあり全力でやってみると、驚きの結果が出た。
前の世界であれば男性基準の10点満点を軽々と上回る記録を連発した。化け物みたいな身体能力に自分でも驚いた。
この世界では異能者という例外が一般にも知れ渡っている為、職員にはそこまで引かれなかったもののやっぱり驚かれた。私の出した記録は、LV10のフィジカル系異能者が出す記録とほぼ同じだったらしい。
とてもLV1が出していい数字ではなかったようで、レベル計測に間違いがあったのではないかと疑われた。
装置を変えて何度計測してもレベル1なのは変わらなかったので、最終的には身体能力を増幅するような異能の持ち主なんだろうと判断されたのだが。
飛び切りの才能の持ち主だと思われたのか、悪魔討伐隊への勧誘を熱心にされてしまった。
選択肢の一つとしてはありだと思っていたので、今はまだ何とも言えないと断りつつも、とりあえずチラシと担当者の連絡先だけは受け取っておいた。
そして異能者登録を行って証明書を貰い、それを持って役所に行き、給付金の申請をする。
手続きとしてはそんな感じだった。
受理されると、毎月15日に振り込みが行われるらしい。
申請日がその2日前だったので、今月は間に合うかどうか微妙だったが、初月は受理したその日に満額を振り込んでくれるらしい。太っ腹で助かる。
今の私は、ヤタガラスの管理する異界にやってきていた。
民間にも開放されている低レベルの異界だ。
場所は、先日もお世話になったヤタガラスの支部。その敷地内にある、窓のない頑丈そうな造りの高層ビル。そこが目的の異界だった。
厳密にはビルの2階以上が低レベルの異界となっている。
1階部分には受付、無料で貸し出してくれる装備の置き場や更衣室などがあり、天井一枚隔てた先には悪魔がいるとは思えない落ち着いた雰囲気だ。
異界は結界で隔離されている上に、入り口には常に複数人の警備のデビルバスターが常駐しているので、万が一は起こらないという安心感があるのだろう。
「おや、継国さん。今日も悪魔狩りですか? 精が出ますね」
入場登録を貰いに受付へ行くと、黒い制服を着た受付嬢が笑顔で話しかけてくる。
私も愛想笑いを浮かべて答えた。
「どうも。今日もお世話になります」
「ふふ、私としてはどうでもいいんですけど、継国さんが来ると悪魔が一掃されちゃうから補充が大変だーって主任が嘆いていましたよ」
言われた言葉に驚いた。
一応初めてここを利用する際に簡単な講習を受けているが、そんなことは一度も言われなかった。
倒していい悪魔の数には制限が無かったので、ここ3日間は毎日来てはビル内の全ての悪魔を倒して帰っていた。
特に何も言われないし、翌日には悪魔も復活していたので気にしていなかったが……実は釣り堀のように悪魔は人の手によって補充されていたらしい。
どうやら私の知らないところで苦労を掛けていたらしい。思わず謝罪する。
「ええ? すみません。もしかして自分、かなりマナーの悪いことをしていましたか?」
「いえ、別にそんな規則はないので謝ってもらう必要はないですよ。ただ初心者用の異界は卒業するように勧めてくれって主任に頼まれただけです」
「なるほど、そうでしたか」
実は隣にはもう一棟、同じような訓練用の異界ビルがある。
こっちがLV1-LV3程度の悪魔が出現する初心者用。向こうはLV4-LV6の悪魔が出現する、ある程度慣れた人向けの異界だ。
私としても本当は向こうの異界に行きたかったのだが、どうやら立ち入りにはレベル制限があるようで、ソロの場合はLV8以上でないと入れないと断られてしまったのだ。
「しかし私はまだレベル4になったばかりですけど」
「ん-、でも継国さんってプラス10レベル分ぐらいの強さがあるんでしょう? 警備の人がレベル詐欺の子がいるって噂してましたよ」
噂されてたのか。しかも変なあだ名までつけられてる。今更ながら背中がこそばゆくなってきた。
「警備の人も継国さんならあっちの異界でも大丈夫だろうと言っていたので、あちらに話は通しておきました。継国さんのご都合が良ければ向こうの異界に挑戦してもいいんですよ?」
これ、遠回しに向こうの異界に行けって言われてるよな。
施設は全て無料で使わせてくれるどころか、悪魔を倒してマグネタイトを持ってくれば結構な額で買取もしてくれる。
行政の持ち出しで美味しい思いをさせてもらっているのだから、その職員になるべく面倒はかけたくない。素直に従おう。それに私としてももう少し手応えのある悪魔と戦いたかったので、断る理由がない。
「わかりました。ではそうします。わざわざありがとうございました」
私が踵を返そうとすると、受付嬢は申し訳なさそうな顔を浮かべて声をかけてきた。
「ごめんなさいね。あまり早いペースで異界内の悪魔を殲滅されてしまうと、補充が追い付かなくて他の利用者の迷惑にもなってしまうから……」
「こちらこそ申し訳ないです。恥ずかしながらそこまで考えが及びませんでした」
汗顔の至りだった。
ゲームやチュートリアル感覚で目につく悪魔を殺しまくってたからな。人の管理する異界だという事が抜け落ちていた。
そうだよな。冷静に考えれば、放っておけば手頃な悪魔が無限に湧き続ける都合のいい異界なんてないよな。初心者に適したこの環境は、恐らくは職員達の丁寧な管理の賜物なのだろう。
あくまでもこちらは使わせてもらうという立場だ。敬意もって利用しないと失礼だ。
それに悪魔も自然の一部とも言えるかもしれない。
大自然の恵みを頂くような感謝の気持ちを持って悪魔を狩る……必要はないか、別に。あいつらは積極的に人を襲ってくるし、お互い様だ。
「向こうの悪魔はここと比べて手強くなっているので注意してくださいね」
「はい、気を付けます」
軽く頭を下げて感謝を示し、ビルを出て隣の棟に行く。
受付にレベルの記された異能者カードを見せるが、少し確認されただけで入場許可を貰うことができた。本当に話は通っていたようだ。
貸出装備の置かれているスペースに行くが、その質は向こうのビルと変化はなかった。
更衣室で、防刃繊維で作られた上下の服に着替える。
黒のコンバットシャツにパンツは、スマートなデザインで中々かっこいい。
これは悪魔討伐隊でも正式採用されている本格的な戦闘服だという。
足回りには頑丈なコンバットブーツを履き、軍用ヘルメットを頭にかぶり、防弾バイザーを装着。
ウエストポーチに自販機で買った飲料水などを入れて、完全装備の出来上がりだ。
本格的な防弾プレートの入ったボディーアーマーも借りることができるのだが、そこまでの重防御は必要ない。
ある程度身軽な方が動きやすいからだ。
あくまでも防具は保険に過ぎない。今までの戦闘でも敵からの攻撃は一度も受けていないし、回避力にはそこそこの自信があった。
バットのようにスタンドに立てかけられた無数の刀剣の中から、無造作に一振りの刀を手に取る。
生産性を重視したのか荒研ぎされただけの刀だ。芸術品のような美しさこそないが、切れ味は鋭く実用には何の問題もない。
それら、自分で揃えようと思えば数十万は下らないだろう装備を無料で貸し出してくれるのだから、本当に気前がいい。異能者育成に国がどれだけ力を注いでいるのかが窺い知れた。
「……よし、準備完了」
装備チェックを終えて、いよいよ異界へと向かう。
異界へと続く2階の階段の前には警備員が二人立っており、横には詰所がある。中には更に数人の警備員が常駐していた。
アサルトライフルをスリングで肩にかけ、戦闘用ヘルメットにボディアーマーの完全武装。どこかの特殊部隊みたいな物々しい恰好の彼らは、悪魔討伐隊の一員でもある。
警備員というよりも、警備兵というべきかもしれない。
「……入場許可を」
「はい」
階段の前で片方の警備兵に呼び止められる。
あらかじめ手に持っていた許可証を見せると、その人は大して確認することもなく頷いた。
「よし、通っていいぞ。一人か?」
「はい、そうです」
「そうか、気をつけてな。おい
「了解です!」
ビシッと敬礼してもう一人の警備兵が答える。若そうな男の声だ。
「んじゃ、後ろから見守ってるからよろしくね」
「はい、もしもの時はお願いします」
「おう、任せとけ」
佐上と言われた兵士は、どこか軽い調子で言葉を交わしながら私の後ろに回り、付き添ってくる。
一応異界内では何があっても自己責任ですよ的な、色んな免責事項の書かれた同意書にサインしているのだが、それでも責任のある国家機関。管理下の異界で人が死ぬのはまずいようで、こうして異界に挑む際は必ず1人の警備兵が付いて来てくれるのだった。
それぞれレベル10以上はあるそうなので、彼らが初心者用の異界で手こずることもない。
基本は見守っているだけだが、後ろから見てアドバイスをしてくれたり、危なくなったら助けてくれる。怪我をしても応急手当をしてくれるし、医務室も近くにある。本当に至れり尽くせりな異界だった。
重々しい防護扉を開けて2階に上がると、ビル内の雰囲気はがらりと変わる。
剥き出しのコンクリートの内装に、どこか重苦しさを感じるような淀んだ空気。
建物には窓が無く自然の採光は一切無いが、LEDの人工的な白い光が室内を明るく照らしていた。
低位の異界は局所的にGPが高くなっているだけで、環境は現実と同じだ。
内部空間が拡張したり、入り組んだり、はたまた全く別の異世界に迷い込んだかのような不思議空間になるのは、より上位の異界からだった。
早速悪魔がいた。
細い手足にぽっこりと膨らんだ腹。深い紫の黒に近い体色をした小人。恐らくはガキだ。
『■■? ■■ー!』
あちらも私たちに気づいたのか、薄気味悪い笑みを浮かべながら戦意を昂らせているようだ。
私は鞘に納められたままの刀を腰だめに構えた。居合の姿勢だ。
「すう、ほおお……」
大きく吸い込んだ呼吸によって、取り込んだ酸素を血中に取り込み、体の隅々にまで行き渡らせるイメージ。
血の巡りによって徐々に体が熱くなり、身体機能が向上するのを感じる。
レベルが上がったことで、自然と使えるようになっていた技法。全集中の呼吸の力だ。
足に溜めた力を解放し、ガキに向かって私は音もなく踏み込んだ。
風になったと錯覚するような速さ。間合いを詰めるのは一瞬だった。
――月の呼吸
抜刀。目にも止まらぬ速さで振りぬかれた居合の一閃は、何の抵抗も受けることなくガキの胴体を両断していた。
流麗な剣技のそれは、傍から見ていたら刀の軌道に沿って三日月のようなエフェクトが幻視できたかもしれない。
「ふう……」
なにが起きたのか分かっていないような顔をして消えていくガキの体を確認して、私は残心しながら納刀した。
堂に入った振る舞いだ。とても刀を握って数日の人間とは思えない振る舞いだろう。
たった数日でこれほどの剣技を身に着けることができるほど、私が剣の才能に優れていたという訳ではない。レベルアップによって、特典能力である『黒死牟』の技量が徐々に引き出されているのだ。
呼吸の常中ができるほどではないが、血鬼術抜きの型なら一通りできる。
恐らく今の私の呼吸の剣士としての技量は、最終選別に挑んで合格できた一般隊士ぐらいはあるんじゃないだろうか。
それに加えてステータスで強化された肉体があるので、今の状態でもこのレベル帯なら無双する事ができた。
光の粒子となって消える悪魔の体。幻想的な光が私に纏わりつくように吸収されていくのを尻目に、床に落ちた結晶化したマグネタイトを拾い上げる。
赤いような青いような、不思議な色合いをした鉱石のような物質だ。
マグネタイトは本来有形物質ではないのだが、悪魔を討伐するとまるでドロップアイテムのように、結晶化したそれが残されるのだった。
マグネタイトには様々な利用法があるようで、国が結構な値段で買い取ってくれる。優秀な換金アイテムだった。
「おおー、お見事」
ポンポンと、くぐもったような何かを叩く音。
後ろを振り向くと、佐上と呼ばれていた警備兵がグローブに包まれた手で拍手をしていた。
「凄いね君。何歳? 異能者になって結構長いの?」
「え? ……確か18です。異能者になったのは……最近ですね」
「マジで? 剣術の方は昔からやってたの? 凄い綺麗な居合だったけど」
「えっと……そうですね。子供の頃から習ってました」
私ではなく、黒死牟さんの幼少期の話だが。
あまり正直に話し過ぎても嘘だと思われそうだし、それっぽく言っておいた方がいいだろう。
「そっか、下積みがしっかりしてるタイプか。やるね、若いし将来有望だ」
「ありがとうございます」
そこで一区切りかと思って歩き出したが、まだ話しかけてくる。
今までの警備兵は必要な事しか話さない寡黙な人ばかりだったので、意外な行動に少し戸惑う。
「18歳って事は高校生か大学生?」
「いえ、高校は卒業して今は何もしていません」
「なるほど、デビルバスター志望かな?」
「……そうですね、そうなります」
ニートをしていることに関しては特に何もないらしい。
まだこの世界に来て日が浅いが、悪魔討伐隊が優遇されているのはハッキリと感じていた。
他の選択肢が思いつかない程に待遇はよさそうだし、本格的に入り方やその後の詳細な待遇を後で調べよう。
2体の悪魔と遭遇し、何かさせる間もなく切り捨てる。
敵の攻撃力も侮れないが、行動を許すことなく殲滅できれば問題はない。それをできるだけの能力差があった。
「あー、もしかして君が噂のレベル詐欺の子? ここ数日、初心者用の異界を荒し回ったっていう」
戦闘ともいえない蹂躙の様子を眺めていた佐上が、そんなことを聞いてくる。
事実とはいえ名乗り出たくなくなる悪評めいた表現だ。私は微妙な顔をして答えた。
「……恐らく、それは私のことだと思います」
「そうか、なるほどね。向こうの奴らが噂してたよ。すげー奴が現れたって。覚醒したばかりのLV1なのに身体能力は俺らに匹敵するとか言ってたけど……今何レベルなの?」
「レベル4です」
「……マジで?」
正直に答えるが佐上は半信半疑という反応だったので、ポーチからレベルの書かれた異能者カードを取り出して証拠を見せる。
バイザー越しにじっと食い入るようにカードを見つめること数秒。やがて佐上は驚きを吐き出すように大きく溜息をついた。
「はあー、マジだ。やべーなこれ。本物の天才って奴だ。俺らなんてあっという間に追い抜かれそうだって話をしてたけど、いやー、間違いなさそうだ。つーか俺はもう既に負けてそうだな。ハハハ!」
そして彼はテンション高めに笑い出した。
(……一応ここ、悪魔の出る異界なんですけど)
大丈夫かこの人。
目の前の警備兵のあまりの緊張感の無さに、私は呆れを通り越して心配になった。この調子でデビルバスターとしてやっていけるのだろうか。
話し声を聞いてやって来たのか、新手の悪魔が3体、姿を見せる。
黒い肌の小人、赤い肌色の小妖精、壺から顔を出した青い悪魔――。それぞれガキ、カハク、アガシオンだろう。
どいつも既に臨戦態勢で、今すぐにでも攻撃を仕掛けてきそうな雰囲気だった。
私は悪魔達の機先を制するように、呼吸を使って集団の中へと飛び込んだ。
――
前衛にいたガキの脇を素早く駆け抜け、今にも魔法を放とうとしていたアガシオンを素早く横薙ぎにして壺ごと一刀両断する。
「■ッ!? ■■!」
私の素早い接近に驚いたのか、カハクは焦った様子を見せつつも、それでも正確に照準を合わせて魔法を放ってくる。
カハクの翳した両手から魔力が迸り、それが強力な熱量を伴う火球へと変換される。魔法によって生み出された炎の玉が、私に向かって勢いよく迫ってくる。
私は冷静に射線を見切ると、退くことなくカハクとの対角線上に向かってさらに前へと足を踏み出した。
アギと思われる炎の玉は追尾してくるように進路を変えて私へと飛翔してくるものの、ホーミング性能が足りずにすれ違うように背後へと流れ、意味もなくコンクリートの壁を焦がすだけに終わった。
――
カハクに接近した私は、正面へと切り上げるような3連撃を放ち、空中に浮かぶ妖精の小さな体を切り裂いた。
「■■――!」」
最後に残されたガキが背後から襲って来ようとするが、それは予測済みだ。
刃物のような切れ味の爪から繰り出される鋭い攻撃を、後ろ向きの状態でひらりと躱し、体を反転させて構えを取る。
一瞬、ガキと目と目が合う。攻撃を外して焦りを浮かべる表情だ。私は少し得意げな気分になって頬を緩ませた。
(お返しだ)
――
左右交互に断ち切る2連撃。
腕がぶれるような速さで行われたそれは、互い違いに噛み合った2つの三日月が幻視できる程に流麗な太刀筋だった。
「うわあ……すっご。あの数の悪魔を無傷で瞬殺か。これでレベル4? レベル詐欺って言われるのも納得だ」
一応何かあったら介入しようと思っていたのか、突撃銃に手をかけていた佐上が感心したように呟いた。
この程度の悪魔は脅威に感じていないらしい。相変わらずの調子で話しかけてくる。
神経が太いというかなんというか。戦士向きの性格ではあるのかもしれない。
その後も雑談を交わしながら悪魔を狩っていく。
といっても殆どは佐上が一方的に喋り、私は時折相槌を打って疑問に思った事を聞き返す程度だったが、戦闘以外で会話が途切れることは無かった。
彼の私生活についてはともかく、悪魔討伐隊の仕事内容については私としても興味のあることだ。
そこら辺を重点的に聞いていると、次第に悪魔討伐隊の給料について話がシフトしていった。
「三千桂ちゃんも知ってると思うけど、討伐隊は命の危険もあるけど給料と福利厚生は滅茶苦茶いいよ。何より腕っぷしさえあればのし上がっていけるからな。俺みたいな脳筋には最高の職場さ」
若い頃はやんちゃをしていて高校中退、その後異能者となり悪魔討伐隊に入隊。それから数年を勤めて、今では同級生の中でも1番の高給取りだと、佐上は自慢げな様子で語る。
「入ったばかりの頃は訓練漬けの日々だったけど、それでも月50万は貰ってたな。2年目以降からは実戦にも出るようになって、給料もどんどん上がってさ。LV10未満の新米の頃でも年収1000万以上は余裕で貰ってたね。それに加えてボーナスとかもあったし、休みもかなりあってブラックでもなかったし」
「わー、まるで大企業みたいですね」
中卒で十代のうちから年収1000万とか凄まじい。異能者は本当に稼げるんだな。
「もっと上に行くと普通に就職するのが馬鹿らしくなるぐらい貰ってるぞ。今の俺はLV14で中堅ぐらいだけど、もう年収3000万を超えてるからな。もうちょい上の先輩だと4000万とか5000万とか普通に貰ってるよ」
「はえー、凄いですね」
凄まじい給料のインフレっぷりだ。トップ層になると億を超えてそうな勢いだ。
「LV20を超えてくると給料も青天井でさ。そのレベルになると平気で何億とか何十億って額を貰ってて、トップクラスにもなると100億を超えてるらしいぜ。すげーよな。憧れるよ」
「ひゃ、100億ですか」
もう公務員というよりも、メジャースポーツのトッププロ選手みたいな年俸だった。
「……それ、全部国庫から出てるんですよね?」
「? そうじゃないか? 当然っしょ」
「……ですよね」
なんかもうカルチャーギャップが凄まじい。前の世界では考えられない大盤振る舞いだった。
積極財政に舵を切れば色んな事が出来るようになるのは確かだが……異能者に対する金の掛け方が尋常ではない。
それだけ悪魔が脅威というのもあるだろうが、ヤタガラスの政治力の強さも関係していそうだ。
「しかもさ、悪魔と戦ってる俺らは税金を払わなくていいんだぜ。凄いだろ?」
「……え? どういうことですか?」
「あれ、知らない? 命懸けで国防に貢献した人は課税が免除されるみたいな法律があってさ、実戦に参加するとその年の給料は全部非課税になるんだよ。年がら年中悪魔と戦ってる俺らは常に税金を払わなくていいってわけ」
「そ、そうだったんですか? 始めて知りました」
つまり所得税の最高税率が適用される高額所得でも、その年に実戦を経験していれば引かれることなく丸っと貰えると……?
めちゃくちゃ美味しいじゃん。
節税とか言うレベルじゃない。合法的な脱税だ。
動揺しすぎて、遭遇した悪魔の攻撃を食らいそうになった。危ない。
作業のように悪魔を片付けて、会話を再開する。
「悪魔討伐隊にはどうすれば入隊できるんでしょうか?」
「お、興味出てきた? まあ三千桂ちゃんならテストを受ければ速攻で採用されると思うよ。……一応聞くけど日本国籍は持ってるよね?」
「はい、日本生まれの日本育ちです」
「なら大丈夫だよ。討伐隊は即戦力を放っておかないから。むしろ何もしなければそのうち向こうからスカウトが来るかもね」
「スカウトですか?」
「ああ、強力な異能の持ち主には裏方が直接勧誘しに行くこともあるらしい」
「なるほど……」
「その場合は結構金を貰えるらしいぞ。小遣いとかくれたり、家族や親戚に金を配って外堀を埋めにかかったりとか。……まあ噂だけどな、噂」
そういう裏金? もあるのか。もしかしたら合法的な接待かもしれないけど。
これだけ羽振りがいいのに、どうして討伐隊は人集めに必死になっているんだろう。勝手に志願者が集まりそうなものだが……それほどまでに人気がないのか?
そう言った事を聞いてみると、佐上は苦笑いを浮かべて口を開いた。
「いや、人気は結構あるぞ? 子供のなりたい職業ランキングでも常に上位にランクインしてるしな。ただ、やっぱ死傷者数がな……。平和な世の中で討伐隊だけ戦時中みたいなもんだからな。志願する奴は中々いないし、半端な気持ちや実力で志願してもすぐに辞めるか、死んじまうのが現実だよ」
「……討伐隊の戦力事情ってそんなに酷いんですか?」
「あー、まあ、普段は暇なぐらいなんだけどな。現場戦力で対応するのが難しい規模の修羅場があると、そん時はバタバタ人が死ぬんだよ。国民の盾になるべき俺らが逃げる訳にもいかないからな」
「なるほど……大変ですね」
「そうなんだよ。……ちくしょう、石巻異界さえなければ戦力配置にも余裕ができて、多少は楽になんだろうけどな」
……石巻異界? また初耳のワードだ。
正直に聞いてみると、バイザー越しに「え? 知らないの? 俺より馬鹿じゃねこいつ?」みたいな顔をされたが、名誉と引き換えに情報を得る事はできた。
佐上の話によると、現在の戦力不足は10年前の東日本大震災が大本の原因となっているらしい。
あの時の地震と津波の被害によって、被災地のGPが急上昇。
大量の異界が発生し、中でも最も被害が大きかった石巻市には高位異界が出現。
対応に当たる討伐隊の被害は続出し、震災復興もなかなか進まず、当時は日本が終わるんじゃないかという不安が国中に漂っていたという。
それでもどうにか大半の異界を潰し終え、後は石巻異界だけとなり、満を持して攻略作戦を実行。そして……。
「え! 失敗したんですか!?」
「そう、主力を集めた攻略作戦はものの見事に失敗。多数の精鋭を失う大惨事になったらしい。当時は凄いニュースとかで騒がれてたけど、覚えてない?」
「えーと、よく覚えてないです……」
「そうか、もう10年近く前のことだしな。三千桂ちゃんぐらいの年代だとあんま印象に残ってないのかもな」
「……そうかもしれないです」
10年前と言えばそれなりに最近の出来事だ。そこで主力が壊滅したって? 大事件じゃないか。
そんな石巻異界は未だ現存中。
封鎖と間引きの為に討伐隊の主力を張りつけていて、少なくない出血を強要されているとか。
「高レベル連中はそっちに集められてるからさ。他の所で突発的に中位以上の異界が発生しちゃうと、俺らみたいな中堅じゃ手に余るんで、命懸けで封鎖して応援が来るまで時間を稼ぐデスマーチが始まるってわけ」
「凄まじいですね……。佐上さんも経験されたことが?」
「いや、俺はまだないよ。5年ぐらい前に群馬でもあったみたいだけど、その時は俺はまだ入隊してなかったから」
「そうなんですか」
今までの話は全て先輩から伝え聞いた話だったらしい。
「まあ最近はなんだかんだで戦力は回復してきてるみたいだし、来年には石巻異界の攻略も予定されてるから。その問題が片付けば一気に楽になる筈さ」
佐上はそう言って気楽そうに笑った。
国は随分と頼りになりそうだが、悪魔もまた一筋縄ではいかないようだ。
メタ視点で情勢を眺めると、言葉では言い表せない不穏な気配が漂っているように感じる。
事が起こるのはまだ先だと思っていたが、意外とその時期は早いのかもしれない。
いつ事態が急変してもいいように、しっかりと準備していこう。
悪魔対策部隊→悪魔討伐隊
に修正しました
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掲示板とコスプレ
【ヤタガラス】悪魔討伐隊【入隊希望】
510:名無しのプレイヤー
討伐隊の給料たっっっか
511:名無しのプレイヤー
最低600万、LV10で1500万、LV15で3000万、LV20で1億。LV30で100億。
強さや異能によって個人差はあるけど、大体の目安としてはこんな感じらしいです
512:名無しのプレイヤー
LV20からのインフレっぷりがやばい
513:名無しのプレイヤー
公務員がメジャースポーツのトッププロ並みに貰ってるのは草生える
514:名無しのプレイヤー
しかも非課税って頭おかしい
515:名無しのプレイヤー
この世界の民間の新卒年収平均が500万ぐらいだから、訓練期間中はそこまで高給取りではないみたいだけど
516:名無しのプレイヤー
新卒で500万貰えるってマ? 月給40万以上じゃん
517:名無しのプレイヤー
厚労省のデータに間違いが無ければ本当
518:名無しのプレイヤー
バイト募集もいっぱいあるし時給も高いからなー。フルタイムで働けばそのぐらい行くか
519:名無しのプレイヤー
>>514
流石に討伐隊の仕事で得た所得限定のようですけどね。その他の資産運用などで得た利益は普通に課税されるみたいです
520:名無しのプレイヤー
全部非課税なら脱税し放題だもんね
521:名無しのプレイヤー
それと、どうも高レベル異能者の給料の高さは世界共通のようです。
海外に引き抜かれない為にも好待遇を保証する必要があるのだとか。小国の異能者戦力が金で他国に引き抜かれるのも度々問題になっているそうです
522:名無しのプレイヤー
へー
523:名無しのプレイヤー
異能者の引き抜きで国際問題か。悪魔関係が表沙汰になってるとこういう事も起きるんだな
524:名無しのプレイヤー
討伐隊員は銃刀法の縛りが緩いらしいって話、知ってるか?
銃は流石に持ち出せないけど、近接武器なら携帯してても罪には問われないとか。流石にむき出しのまま持ってたりすると職質されて注意を受けるみたいだけど
525:名無しのプレイヤー
武器持ち歩きたい放題ってマジか
526:名無しのプレイヤー
非課税に武装権……。
これって特権階級では? ヤタガラスは上級国民の集まりだった?
527:名無しのプレイヤー
色んな特権がある代わりに、異能者の犯罪行為に対する罰はめちゃくちゃ重いみたいだよ
有罪判決を食らったら即実刑だし、一般人と比べて刑はかなり重くなる。特に傷害罪で捕まったら終身刑免れないってさ
528:名無しのプレイヤー
こわい
529:名無しのプレイヤー
異能者は売られた喧嘩は買っちゃ駄目ってことか
530:名無しのプレイヤー
正当防衛はOKだけどやりすぎは駄目ってことでしょ
襲い掛かられたら抵抗してもいいけど、悪魔退治のノリで攻撃を加えれば過剰防衛だろうし
531:名無しのプレイヤー
LV1の異能者は一般人と大差ないしあんま関係ない。レベルが上がってくるとステータスの暴力が凄いからな。
全身凶器みたいなもんだし。ついカッとなって殴りかかったらうっかり殺しかねない
532:名無しのプレイヤー
多少の怪我なら示談でなんとかなるかもだけど、大怪我や殺人は終わりだろうね
533:名無しのプレイヤー
よく言われるじゃん、運転手は強者としての自覚を持てって。それと同じような事でしょ
534:名無しのプレイヤー
普段から安全運転を心がけていれば何の問題もないな
535:名無しのプレイヤー
そういえばどっかで似たようなのを見たな
社会正義の原則に則って、強者は弱者を助けるという意識を心がけよう! みたいな異能者の心得だったかな
536:名無しのプレイヤー
これかな?
>討伐官の心構え
>1 使命の自覚
>(1) 祖先より受けつぎ、これを充実発展せしめて次の世代に伝える日本の国、その国民と国土を外部の侵略から守る。
>(2) 自由と責任の上に築かれる国民生活の平和と秩序を守る。
他にも色々書いてある『http://www.xxxxxx』
537:名無しのプレイヤー
いいこと書いてあるやん
538:名無しのプレイヤー
これ、『自衛官の心構え』とほぼ一緒しゃね?
539:名無しのプレイヤー
へー、そうなの? それが分かるってもしかして元自衛官?
540:名無しのプレイヤー
いやただの一般人。ちょっと軍事に興味があって見た事があっただけ
541:名無しのプレイヤー
なるほど
542:名無しのプレイヤー
これ全部体現してる人なんているのか? 完璧超人過ぎるだろ
543:名無しのプレイヤー
理想とか理念ってそういうものだから
544:名無しのプレイヤー
こうして調べてみると、討伐隊ってマジで軍隊だな。体育会系のノリとかあったら怠いから勘弁してほしい
545:名無しのプレイヤー
別に交戦相手は悪魔だけに限ってるわけじゃないみたいだしね。対人は想定してないようだから戦争の矢面に立つことはないだろうけど
546:名無しのプレイヤー
>>544
良かったな。営内に住むのは強制じゃないっぽいぞ
547:名無しのプレイヤー
ほんとか? 相部屋で寮生活とか苦手だから助かる
548:名無しのプレイヤー
ただ新入隊員は教育隊で半年間の訓練を受けるみたい。もちろん全寮制
549:名無しのプレイヤー
うわー厳しそう
550:名無しのプレイヤー
実際厳しいらしいね
けど戦闘力が一定の基準に達すると卒業できるみたいで、みんな早く脱出しようと訓練に励むとか。早い人は1-2か月で抜けていくってさ
551:名無しのプレイヤー
はっや
552:名無しのプレイヤー
半年間とは一体……
553:名無しのプレイヤー
平均的には4-5か月らしい。6か月をオーバーしても基準に満たなければ続行だってさ
1年経っても駄目なら強制除隊されるけど
554:名無しのプレイヤー
その期間も給料は貰えるんだよね?
555:名無しのプレイヤー
もちろん。訓練期間中でも最低50万、レベルが上がれば昇給もするらしい
556:名無しのプレイヤー
それはいいな。訓練するモチベになる
557:名無しのプレイヤー
ちなみに教育隊の卒業基準は『LV10相当の戦闘力』って話で、初めからその基準を満たしていれば教育隊に行く必要はないらしい。そのまま部隊に配属されて悪魔退治の仕事だってさ
558:名無しのプレイヤー
そんなんでいいのか?
559:名無しのプレイヤー
討伐隊がなによりも重視しているのは『その人が実戦で使えるかどうか』。
教育隊でも座学とかは殆どなくて、とにかく体を動かす訓練ばかりだとか。悪魔が殺せるならそれでいいって感じらしい。
自力でLV10まで上げられるような人は即戦力ってことで喜ばれるそうな
560:名無しのプレイヤー
初心者用異界って防具は正規品を貸してくれるけど銃は貸してくれないからな
原始的な武器で戦うしかないから度胸はつく
561:名無しのプレイヤー
自前のスキルや魔法なんかの異能を持ってる人はすぐにレベルが上がるけど、そういう特別な力がない人はかなりしんどいみたいだね
悪魔は普通にスキルを持ってるから、どんなにレベルを上げても同レベル帯だと戦力差は開く一方だって
562:名無しのプレイヤー
序盤の攻撃スキル1つ持ってるだけで相当な脅威なのに、これでスキルが揃ってきたらまさに悪夢だろ
563:名無しのプレイヤー
悪魔だけズルくね? なんであいつら普通にスキル使えてるんだよ。人間もレベルアップでスキルを覚えるようにしてくれ
564:名無しのプレイヤー
LV20を超えて上級者の仲間入りをするには何かしらスキルは使える必要があるっぽいな。何の能力もないと中堅で限界だとか
565:名無しのプレイヤー
訓練で覚えられるって話だけど一朝一夕には身につかないみたいだし。ほんと厳しー
566:名無しのプレイヤー
いうてそこまで行ければ十分な気がする。年収数千万だろ? 頑張ればワンチャン億プレイヤーになれるかもって考えると夢があるし
567:名無しのプレイヤー
ホームレス無一文で行政に頼ったんだけど、異能者というのが判明した途端、職員が討伐隊を猛プッシュしてきてビビったわ
待遇良さそうだし行くつもりではあるんだけど、それだけ余裕がないんだろうか。不安だ
568:名無しのプレイヤー
>>567
俺もだw
異能者登録とか給付金申請の相談に乗って貰ってたら何かにつけて討伐隊を勧められるようになったw
569:名無しのプレイヤー
>>567と>>568はLV1か?
それで熱心に勧誘されるって相当だな
570:名無しのプレイヤー
そう。ただのLV1
生活保護を受けるぐらいなら討伐隊に行けって言わんばかりのプレッシャーを感じる
571:名無しのプレイヤー
仕事を紹介してもらえるだけ、若いんだから働けで追い返されるよりはマシかもしれない
572:名無しのプレイヤー
石巻異界だっけ?
あそこの大規模異界に日本の高レベル戦力が集結してるから、全国的な戦力配置がかなり偏ってるらしい。
それでも中堅層が厚いから日常業務は楽勝なんだけど、たまに中上位の異界ができると現地部隊の対処能力を超えて死傷者が続出するとか
573:名無しのプレイヤー
身を挺して市民を守る盾になる。そういうシチュエーションが毎年数回は日本のどこかで起きてるらしいね
574:名無しのプレイヤー
恐ろしいわ
575:名無しのプレイヤー
>>573
創作の設定なら熱い展開だけど、当事者になるのは嫌すぎる
576:名無しのプレイヤー
原発事故はなかったみたいだけど、変わりに異界が大量発生か。東北も大変だ
577:名無しのプレイヤー
まあ放射能と悪魔のダブルパンチじゃなかっただけマシだろう
578:名無しのプレイヤー
その石巻異界も来年攻略を予定しているとのことだし、頑張って欲しい
579:名無しのプレイヤー
プレイヤーからその作戦に参加する人もでるかな?
580:名無しのプレイヤー
どうだろ。チュートリアル上位勢ならもしかしたら、って感じじゃないか?
1年経っても俺らの大半はまだ下っ端かよくて中堅でしょ
581:名無しのプレイヤー
ランカー達はなぁ……もうLV10になった人とかいて、特典の能力もどんどん使いこなしてるんだろ?
それに加えてステータスボーナスもある。同じプレイヤーと言ってもモノが全然違うよ
582:名無しのプレイヤー
上位陣にはもう追いつける気がしない。チュートリアルの比重が大きすぎる。もう一回ガチャ引かせてほしいわ
583:名無しのプレイヤー
とはいえ俺らも一般人からすれば結構な才能の持ち主なんだよな。
低レアとはいえ特別な技能を持ってるし、コスプレで経験値バフもできる
584:名無しのプレイヤー
言動もなりきれば更に効率アップだぞ!
585:名無しのプレイヤー
本当に効果あるのそれ?
586:名無しのプレイヤー
>>585
かなりでかい。ロールプレイだけでも体感1.5倍ぐらい差がある感じ。
一緒に狩りをしてた人はなりきりをしてなくて、俺はしてたんだけど、レベルアップ速度に明確な差が出た。周りから変な目で見られてもやる価値はあるぞ
587:名無しのプレイヤー
マジ?
588:名無しのプレイヤー
コスプレ込みだともっと効率いいよ。なりきりの完成度が上がると更に増幅されると考えると完全にやり得でしょ
589:名無しのプレイヤー
トップ層でもなりきり勢かそうでないかでかなり差が出てるからな。
なりきり勢は既にLV10越えがちらほらといるみたいだけど、何もしてない人はLV6-LV8あたりで、LV10に届いてる人は一人もいないとか
590:名無しのプレイヤー
マジか。えらい差だな
591:名無しのプレイヤー
それでもイベントでもない場所でコスプレはちょっとハードル高いっす……
592:名無しのプレイヤー
やってみれば案外平気だよ! ちょっと試してみようぜ?
593:名無しのプレイヤー
俺らでコスプレしながら悪魔を狩るという流行を作れば恥ずかしくなくなるかもしれないな!
594:名無しのプレイヤー
確かに。みんなやり始めたら言い訳も立つかも
595:名無しのプレイヤー
防御力が不安過ぎるだろそれ
596:名無しのプレイヤー
ちなみに悪魔を狩る時だけじゃなくて、日常的にやってないとあまり効果がないみたい
597:名無しのプレイヤー
どゆこと?
598:名無しのプレイヤー
コスプレ自体が経験値増加装備という訳ではなくて、コスプレしてると完成度や時間に応じてなりきりスタックみたいなのが溜まっていって、経験値を得る際にはそれが消費されてブーストがかかる感じ
599:名無しのプレイヤー
逆に言えば日常的になりきってれば戦闘中はガチ装備に着替えてもある程度の成長倍率はかかる訳か
600:名無しのプレイヤー
あーなるほど。そういうことね
601:名無しのプレイヤー
ふむ……痛々しい見た目や言動のプレイヤーが増えそうだな。リアルで見かけてもそっとしておいてあげよう
602:名無しのプレイヤー
大人しいキャラ付けの特典はアタリだったか
603:名無しのプレイヤー
なお、討伐隊に入ったら勤務中にコスプレはできなくなる模様
604:名無しのプレイヤー
仕事中にコスプレは他の業種でもアウトじゃないか?
605:名無しのプレイヤー
自由な社風で私服OKの所ならワンチャン……!
606:名無しのプレイヤー
他のコスプレイヤーは趣味かもしれないけど、俺らには実利があるんだぞ!
経験値増加っていうとんでもないご利益が!
607:名無しのプレイヤー
その理屈で説得できるのは俺らだけだな。他の人は絶対納得しないw
608:名無しのプレイヤー
討伐隊には服装規定が普通にあるみたいだね
609:名無しのプレイヤー
クソ! 頭の固い組織め! コスプレして悪魔を狩るぐらい認めてくれたっていいじゃないか!
610:名無しのプレイヤー
絶対ふざけてるって思われるでしょww
611:名無しのプレイヤー
そういえばパワーレベリングとかはできない感じなのかな?
管理異界でも引率の兵士は距離を取って傍観してるだけだし。手伝ったらなんか弊害があるんだろうか
612:名無しのプレイヤー
そういえばそうだな
613:名無しのプレイヤー
レベルアップってこの世界では、魂の昇華とか霊格を高めるとか表現されてるように、どうも求道的なものらしい。
荒行とか神秘体験で魂の位階を上げるってのもまさにそれ。異界に赴いたり、悪魔と戦うのは強烈な神秘体験になるとか。
悪魔を倒すときに出る経験値的なアレも、実際はただの拡散したマグネタイトで、取り込んだところで魂が拡張されないことには何も起こらないんだとか。
外的要因でレベルアップしているように見えて、実は内的な変化こそが重要……って元討伐隊らしいyoutuberが解説してるの見た
614:名無しのプレイヤー
はえー
615:名無しのプレイヤー
あれが経験値じゃないってマジか。一緒に狩りに行った相方と吸収した量が多い少ないでちょっと喧嘩になりかけたんだけど、意味のない言い争いだったんだな……
616:名無しのプレイヤー
草。まあ気持ちは分かる。あれは誰だって経験値だと思う
617:名無しのプレイヤー
マグが足りな過ぎても問題だけどね。霊格を上げるためには必要な要素みたいだから
618:名無しのプレイヤー
つまり筋肉とタンパク質だな。筋トレしないでタンパク質をとりまくっても意味がないけど、筋トレした後に筋肉を成長させるにはタンパク質が必要と
619:名無しのプレイヤー
そんな感じだね。成長には負荷が必要
アシスト付きで筋トレの数をこなしても負荷がかかって無ければ意味がないのと同じで、人に手伝ってもらって悪魔を倒しても糧にはなりにくい
620:名無しのプレイヤー
じゃあバフデバフとかの支援や、攻撃して弱らせてもらってお膳立てしたりは?
621:名無しのプレイヤー
それはありかもしれないけど、大規模にやってないってことは効率が悪いんだと思う
622:名無しのプレイヤー
地道に身の程にあった敵を狩るのが一番か
623:名無しのプレイヤー
苦戦してもそれが糧になるって思うと、効率ばかり考えなくてもいいし気が楽かも
【考察】世界設定考察スレ6
120:名無しのプレイヤー
災害等で大量の人死が発生すると大規模な異界ができるって話だけど、海外だともっとヤバイ被害を出した災害もあるだろ。そっちは大丈夫だったのかな
121:名無しのプレイヤー
大規模な災害が起きた時は、各国が高レベル異能者の精鋭部隊を派遣し合って国際的に協力して潰すのがデフォみたい。
123:名無しのプレイヤー
なるほど、一国では攻略不可能な異界でも地球規模で協力し合えばなんとかなると。
124:名無しのプレイヤー
……あれ? じゃあどうして日本は1国で対処してるんだ? 石巻異界ってヤバイ異界じゃないの?
125:名無しのプレイヤー
大国としての意地らしい。日本が他国からの救援を拒んだ
126:名無しのプレイヤー
ええ……(困惑)
127:名無しのプレイヤー
いやそこは普通に救援を請おうよ!?
128:名無しのプレイヤー
国威の為に国民を犠牲にする……これは頭大日本帝国ですね
129:名無しのプレイヤー
別に上層部の頭が固いとかじゃなくて、民意としてそうらしい。
震災後の選挙では、最大野党の友愛党が与党の異界対応の不手際を指摘して、海外に救援を請うって公約を掲げたんだけど、多少議席は伸ばしたみたいだけど過半数は取れなかった
130:名無しのプレイヤー
それは草
131:名無しのプレイヤー
国民様も大日本帝国脳だったか
132:名無しのプレイヤー
アメリカも自国の問題は独力で対処してるし、対抗心があったみたいだね
自分たちは助ける側であって助けられる側じゃねえ! っていう強者としての自負が。
133:名無しのプレイヤー
大国としてのプライドか。自虐史観に染まるのも良くないけど、ナショナリズムが強すぎるのも考え物だな
134:名無しのプレイヤー
日本人極端スギィ!
135:名無しのプレイヤー
>異界の封じ込めには成功しており民間には被害が出ていない。1度の攻略失敗を国民は致命的な敗北であると考えなかった。
>石巻異界攻略失敗は、戦前から与党として日本を繁栄に導いてきた和魂党に対する信頼感。その牙城を崩すほどの衝撃とはならなかったようだ。
って事らしい。当時の選挙の分析記事に書いてあった
136:名無しのプレイヤー
和魂党って戦前からあったのか
137:名無しのプレイヤー
クーデター後に「国民を豊かにせよ」という天皇の詔を実行する! って感じでヤタガラスが手を回して作った政党みたい
クーデターの実行者とかも合流して、昭和維新の立役者ということで国民人気も高くてあっという間に与党に躍進したとか
138:名無しのプレイヤー
すげーな。1世紀近く政権を担ってるのか
139:名無しのプレイヤー
しかも経済は常に好調で大した失政はないみたいだし……。そら選挙で勝てんわ
140:名無しのプレイヤー
石巻異界攻略失敗で戦後最低の支持率を記録したみたいだけど、それでも30%を切ってないみたいだからな
141:名無しのプレイヤー
直近ではインド西部地震、スマトラ沖地震、四川大地震、ミャンマーサイクロン、ハイチ地震なんかで救援に行って、大規模異界攻略に多大な貢献を果たし、アジアの盟主面して国威発揚してたみたいだし。
中国も経済を発展させていて弱みは見せたくなかったんだろう。そして今更助けてとは言えないし、言う気もないと
142:名無しのプレイヤー
攻略失敗で面子ズタボロになってるじゃん
143:名無しのプレイヤー
というか失敗の原因って海外派遣で疲弊してたからじゃ……?
144:名無しのプレイヤー
それも要因の1つではあるようだね。WIKIとか見た限り、「このぐらいの規模の異界なら何度も攻略してるし大丈夫だろう」という慢心。想定以上に強力だった異界の主。度重なる海外救援での消耗。それらが重なった結果みたい
145:名無しのプレイヤー
慢心、想定外、疲弊。やっちゃいけない事のオンパレードで草生える
146:名無しのプレイヤー
これは黒歴史ですわ
147:名無しのプレイヤー
特に震災1年前のハイチ地震では、アメリカのお膝元ということもあって、日本は対抗心を燃やして張り切ったみたいで相当疲弊したらしい。
148:名無しのプレイヤー
あちゃあ
149:名無しのプレイヤー
四川大地震(2008)、ミャンマーサイクロン(2008)、ハイチ地震(2010)ってハードスケジュール過ぎるだろ。そら消耗もするわ
150:名無しのプレイヤー
これは必然の敗北だったかもしれないですね
151:名無しのプレイヤー
というか中国は共産党支配の中華人民共和国なんだな。日中戦争なかったのに国民党は負けたのか
152:名無しのプレイヤー
国民党の腐敗が酷すぎて普通に内戦で負けたっぽい。
その後は大躍進とか文革とか色々ありつつも、改革開放と日本を参考にした積極財政で飛躍的に国力を成長させて、日本に迫る世界第3位の経済大国になっていると
153:名無しのプレイヤー
そして日本とアジアの盟主の座を巡って争ってるのか
154:名無しのプレイヤー
大躍進とか文革の影響で悪魔被害も相当あったみたいだけどそれでも立て直せるのは流石だわ
155:名無しのプレイヤー
石巻異界攻略失敗で中国アメリカは高笑いだったんだろうな
156:名無しのプレイヤー
これは意固地になりますね……
157:名無しのプレイヤー
大躍進とかで思い出したけど、昔って戦争とかで今よりもっと人が死んでたと思うんだけど、悪魔被害は大丈夫だったんだろうか
158:名無しのプレイヤー
GPが上がり始めたのはここ2-30年の事で、以前はもっと異界はできにくかったし悪魔のレベルも低かったみたいだから何とかなったんでしょ
159:名無しのプレイヤー
昔は人間にとってのボーナスタイムだったってことか
160:名無しのプレイヤー
後世の人間から見たら、今の時代もボーナスタイムなのかもしれないけどな
160:名無しのプレイヤー
平和に甘えることなく準備している者なら、混沌の世が訪れたとしても生き残ることができるだろう
161:名無しのプレイヤー
『事前準備が一番大事』って一流の人なら皆言ってることだしな
162:名無しのプレイヤー
当たり前なんだけど中々できる事じゃない。それができるなら一流の仲間入りしてる
163:名無しのプレイヤー
わかっていても準備を怠っちゃうのが凡人なんでね……
164:名無しのプレイヤー
今を生きるのが精いっぱいで、先を見据えて行動するのは本当に難しいよ
現代社会において己を証明する身分証というのは非常に重要だ。
新しく何かを始めようとする際には殆どの場合で必要になってくる。
しかも身分証を得るためには身分証が必要だったりと、一度全てを失うと取り戻すのには大変な手間がかかる。
この世界に来た時、そんな重要アイテムを持っていなかったのが住居を与えられなかったプレイヤーだ。
しかし彼らにとって幸いな事に、そんなプレイヤーであっても突然この世界に湧いてきたのではなく、この世界の日本で生まれ育ったという確かな過去があった。
それも長い間ホームレスをしていた訳でもなく、特典の状況を整えるように突発的に財産などを処分して、駅に佇んでいたというシチュエーションだ。
最近失踪したばかりなので、住民票の職権削除もまだ行われていない。
元々住んでいた本籍や住民票の在りそうな役所に相談すれば、意外に何とかなるようだ。
本人証明書類を1つも持っていなくても、自分の事に関するクイズ大会が始まって覚えている限りで答えていたら、なんとか本人だと認めてもらえて、写しを貰えたという人も掲示板にはいた。
役所によって対応も違うのだろうが、最初から無理だと諦めないで役所に突撃してみれば光明も見えてくるようだった。
素人がネットで拾った知識であれこれ考えるよりは、専門家に相談した方が話は早いし正確だ。
自分の過去を思い出して覚えていることをメモらせたり、以前暮らしていた自治体の役所に連絡することを勧めよう。
とにかく1つでも公的な身分証明書が手に入れば、後は簡単だ。閉ざされていた道が全て拓かれ、一気にフリーパスになる。
異能者登録を行い、国民健康保険や国民年金に加入して、手頃な身分証として小型二輪免許でも取ればバッチリだろう。
普通に就職するにせよ、異能者として己を鍛える道を選ぶとしても、どちらにしても身分証は必須だ。
この国で暮らす殆どの人間が、当たり前のように持っているモノを取り戻して。それでようやくスタート地点に立つことができる。
掲示板を見る限り、他の人達もなんとかやっていけているようだった。
金が無い、身分証がないと愚痴っている人はいても、衣食住がないと絶望している人はもう見かけない。
皆、何かしらの支援を得てひとまず生活は安定し、それぞれの方法で身を立てようと努力しているようだ。
私の今後としては、悪魔討伐隊に所属しようと考えている。
ランカーディスコの方でも、大半の人がその道を選んだようだった。やはり討伐隊の待遇の良さは魅力的なのだろう。
腹が決まって募集窓口に相談してみた所、軽く面接を受けてとんとん拍子に話が進み、体験入隊が早速決まった。
教育隊を経由せずに正規部隊に加われるかどうかをテストする為に、後日、より上位の管理異界がある討伐隊の駐屯地に来てくれとのことだった。
受付と交代して対応してくれた職員は終始腰が低く、揉み手をするようにへりくだった態度だった。
応対にあたってくれたのはピシッとしたスーツを着た中年男性で、恐らくは係長や課長クラスのようだった。
そんな人が出てきて一回り以上も年の離れた小娘相手におもねってくるのだから、あちら側としては才能ある人材の確保はそれほどまでに重要度の高い案件らしい。
奥の高級そうな応接室に案内されるし、お茶やお菓子を出してくれたりと、下にも置かない扱いを受けた。
職員から、絶対に逃がさないという強い意思を感じるようだった。
身辺調査とかはいいんだろうか。
帰り際には交通費とか言って、少し厚みのある茶封筒を渡された。なんと中には1万円札が20枚も入っていた。
討伐隊という組織が金満なのか、それとも戦力になるなら何でもいいという必死さの表れなのか。いまいち判断がつかない。
いささか不気味ではあるものの、貰える物はありがたく頂いておこう。思わぬ臨時収入があってホクホクだ。
住民たちにも、今後の進路希望を聞いてみた。
ぼちぼちバイトで働いている人も増えて、生活については目途が立った。
ゲームのことはひとまず忘れて、この世界で一般人として生きて行くのか。
あるいは不測の事態に備え、異能者として鍛えていく道か。
最終的には本人の意思を尊重するとはいえ、早いうちに決めておいた方がいい。
私としては、先行き不透明で不穏な情勢だし、一般人として生きるにしてもある程度は鍛えていくことを推奨した。
討伐隊に入隊して悪魔を狩りまくるガチ勢になれとは言わないが、普段は働きつつも休日に初心者用の異界に行ったり、興味のある異能教室に通ってみたりして、少しでも己を磨いて欲しい所だ。
何も起こらなかったとしても、自分を鍛える事自体は無駄にはならない。
幸いにもチュートリアルの悪夢を経験した事で、また何かあるかも、という危機感は共有できていた。
討伐隊入りに前向きな人は少なかったが、それでも無理しない程度に力をつけるという方針には全員が合意してくれた。
良かった良かった。
流石に完全にやる気のない人に構っている余裕は無いからな。そういう人がいたら捨て置くしかなかった。
少しでもやる気があるのなら、モチベーターとしてやりようがある。
ただ何となく頑張れではモチベが続かないため、目標とそれを達成する明確なビジョンが必要だ。
最終的な目標は『有事の際に自分の身を守れるようにする』ことだが、それでは大雑把すぎて何をすればいいのか明確ではない。
さしあたりのゴール設定は『自分の特典の能力を最大限引き出す』ことにした。
私みたいなレア度の高い特典だと、全ての力を引き出す為の要求レベルは高そうだが、レア度の低い特典ならLV10程度で達成できるだろうと睨んでいる。
当面の目標としては手頃だろう。
魔石売却や給付金、交通費など、色々と臨時収入も入ったことだし、皆に対する投資を強化する。
まずそれぞれの詳しい能力を知ろうと、原作や設定資料集などを取り寄せてみた。
ネットで調べるにしても、無料で得られる情報には限りがあるし、手元に資料があった方が何かと便利だ。
皆でアニメを観賞したり、漫画を読んだりゲームをしたり。いいレクリエーションにもなった。
皆の特典の力を大体把握してまず感じたことは、同じレア度でも結構な差があることだ。
ガチャなのだからアタリハズレがあるのは当然かもしれないが、住民の間でもかなりの格差がある。
Nでハズレだと本当にただの一般人だが、アタリだと設定上特殊能力は持っていなくとも、現実には絶対いないだろと思うような身体能力や戦闘技能、特殊技術の持ち主だったりする。
Nでも戦闘力の高そうな2人がいる。
作品は違うが、二人とも派手なガンアクションを繰り広げる原作出身だ。
どちらも生身の人間としては考えられない程の戦闘能力を有しており、単純な戦闘力という面では、N+である翡翠を超えているだろう。
戦闘力という面では2人に劣るが、特殊技術を持っている人も多い。
高橋
そしてN以上を引き当てた2人。
以上10人が私の部屋で暮らす住人だ。こうして見ると結構粒が揃っている。
異能者登録をしなければ初心者用の異界には入れない。
なのでまずは、なりきりでの経験値ブーストを試みる事にした。
戦っている最中にコスプレをしていなくても、日常的にしていればレベルアップ効率が良くなるのは確かなようだ。
最大2倍近くも効率が違うとなれば、やらない訳にもいかなかった。
という訳で、まずは形から入ろうと、皆のキャラのコスプレ衣装や小道具の購入をすることにした。
完全に趣味の品で需要もそれほどないだろうから結構いい値段がしたが、それでも探せば色んなキャラのコスプレグッズが売られているのだから、現代って凄い。
経験値バフが付くというのは大きいのか、意外に皆乗り気で、宅配で荷物が届くと積極的にコスプレを披露していた。
やはり元の外見が整っているので何を着てもお洒落に見える。普通とは違ったデザインの服も違和感無く着こなしていた。
唯一容姿を弄っていない次郎も、特典は特徴のない普通のキャラなので、言われなければ仮装している事すら分からない。目につく変化は髪型が変わったぐらいだろうか。
コスプレすること自体は全員共通でも、その熱意はそれぞれ異なる。
とりあえずそれっぽいコスプレをして満足する人もいれば、口調までがらりと変えたり、染髪やウィッグ、カラコンの購入を検討して相談に来る人もいた。中には日焼けサロンに行って肌を焼きたいと言う人も。
やる気があるのはいい事だ。
その前進する意欲に水を差したくなかったので、私は快諾して予算を出して上げた。
続く者も何人かいたが、そこまでするのは及び腰という人も多い。
私としてもそこまでせずともよいかな、という感じだ。
黒死牟の痣や目を再現したタトゥーシールもあったけど買ってないし、髪もなぁ……。
黒く染めたところで長さが足りないし、やるならウィッグだろうが、今の自分の容姿は気に入っているのであまり弄りたくなかった。
プレイヤーの現在の外見は、自分でキャラクリをして自分好みに作っている訳で、あまり大胆に姿を変えたくないと思うのは当然の事かもしれない。
紫と黒の石畳模様の着物に、黒い袴と白い腰帯。
自画自賛になるが、手足が長くすらりとした体つき相まって中々似合っている。刀を持てば更に雰囲気は増すだろう。
このままでも十分ではないかという気がしていた。
現代日本を舞台にした作品出身のキャラが殆どで、住民の中でも私の恰好は浮いている方だった。
ここから更に寄せていくと奇抜さに拍車がかかってしまう。
これから日常的にコスプレしていくと考えると、今ぐらいが妥協点のように思う。
毎日メイクしたりシールを張ったり髪を整えたりといった、手間のかかりそう事は気が進まなかった。
それに、どうせそのうち痣は出てくるだろう。
あれからレベルが上がって呼吸の常中ができるようになった。
全集中の常中とは、全集中の呼吸を常時行うことで身体機能を活性化させ、増大した肺活量や血流に肉体が適応して身体能力が向上し続ける技法だ。
作中では、最高位の剣士の称号である「柱になる為の第一歩」であり、「会得には相応の努力が必要だが初歩的な技術」とも言われている。
血鬼術込みの呼吸の型や、再生等の鬼特有の力は未だに使える気配はないが、身体能力は増大し続けており、技量の方もますます冴えわたっていた。
このペースだとLV15-LV20ぐらいには、黒死牟がまだ人間だった頃、柱時代の
透き通る世界や痣にも目覚めているはずだ。
行く行くは鬼としての能力にも目覚めていくのだろう。
日光や食人といったデメリットがどういう扱いになるのかよく分かっていないのが怖い所だが、今のところ特典元のデメリットを引き継いだという情報は出ていないし、恐らくは心配せずともよいだろう。
皆の異能者登録が完了したら、希望者を異界に連れて行く予定だ。
パワーレベリングはできなくとも、後ろから見守ることで事故を防止したり、コーチングもできる。
私も大した経験はないが、それでも完全初心者の彼らよりは悪魔との戦いのノウハウを持っている。難しい事は教えられないが、基礎の基礎である戦いの心構えや考え方ぐらいは指南することができるだろう。
まず優先すべきは特典に戦闘技能がある人からだ。
討伐隊に入隊すれば忙しくなるだろうから、全員の面倒は見られない。
戦闘技能の潜在持ちの人のレベル上げを手伝って、最低限戦えるようにする。
そして彼らに他の人のレベル上げをアシストして貰い、住民全体のレベルを底上げしていきたい。
いずれは支援の対象を他のプレイヤーにも広げて互助組織を作っていきたいところだが、大規模にやるには先立つものがない。
今は自分の稼ぎを大きくするのに専念した方がいいだろう。
将来的にはシェアハウスや寮を借りて、そこにプレイヤーを住まわせて生活を支援し、代わりに出来る範囲でレベルを上げて覚醒した能力で協力して貰う。
そういうことができればいいな。
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試験
前橋駅からバスに揺られること1時間ほど。
都市部から大分離れた山の方。赤城山の麓にある悪魔討伐隊 柏倉駐屯地へとやってきた。
討伐隊で即戦力としてやっていけるかどうかのテストを受ける為だ。
基地前にはバス停があったので、移動手段に悩む必要は無かった。
周囲には畑と森と、僅かな民家が点在するような辺鄙な土地だ。
敷地は鉄柵で囲まれており、入り口の門の前には、銃を肩から提げた守衛が数人立っていた。
守衛に要件を伝えて、事前に貰っていた書類や入場許可証、異能者登録証を見せると、守衛は通信を行い、迎えが来るので暫く待つようにと伝えられた。
言われた通りに待つこと数分、基地内から駆け足で討伐隊員がやってきた。
戦闘服を着ているが、防具も銃も装備しておらず、隣に立つ守衛と比べたらかなりラフな格好だ。
私と歳はそう離れていないだろう。黒髪を後ろで纏めた、愛嬌のある顔立ちをした若い女性だった。
左の胸元に付けられた名札と思われるワッペンには、『
「おはようございます!」
「おはようございます」
「ごめんなさい、お待たせしました!」
私の姿を見つけて更に足を速めてやってきた女性は、初めに元気よく挨拶をすると、走ってきた勢いのままに頭を下げた。
唐突な謝罪に驚く。かなり責任感のある人のようだ。
「いえ、全然待ってないですよ。そもそも予定より早く来てしまった私が悪いんですし……」
バスの都合上、遅れるよりは早い方がいいだろうと予定よりかなり早く来てしまっていた。
時間を潰すような場所が近くになかったとはいえ、スマホでも眺めて遅らせればよかったか。少し反省する。
平謝りする女性をどうにか宥めて、駐屯地内へと案内して貰う。
連れて行かれたのは隊員たちが寝泊まりする寮と思われる建物で、ホテルのラウンジのような場所だった。
全体的に高級感のある内装だ。無数のソファやテーブルが置かれ、非番や休憩中と思われる私服の人達が、寛いだり談笑したり、作業でもしているのかノートパソコンに向かっている人もいた。
ここだけ見ると、まるで普通の寮のラウンジのようだった。
集団生活で大半が顔見知りなのか、見知らぬ顔を見つけたとばかりに周囲から物珍し気な視線を感じる。
「あそこにしましょうか」
ざっと室内を見渡して、周囲に人が少ない隅のテーブルを見つけた女性はそちらへと歩き出した。
そして私たちは向かい合って席に着いた。
「予定にはまだ時間があるので、ここで少し時間を潰しましょう。何か飲みたい物はありますか?」
「いえ、お構いなく」
これは遠慮ではなく本心だ。飲み物は持参して来ているので、あまり必要ではなかった。
「遠慮しないでください。何でもいいならカフェラテでも買ってきますけど、それでいいでしょうか?」
ここまで言われたら断るのも失礼だろうか。
「そうですね、なら普通のお茶でお願いします」
「了解です。お腹は空いてますか?」
「いえ。出る前に食べてきたので大丈夫です」
「分かりました。すぐに買ってきますね」
彼女は席を立って、自販機の並ぶスペースに向かう。そして二つの容器を持って帰ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
渡されたのは普通のペットボトルのお茶だ。礼を言って受け取り、キャップを空けて軽く一口飲んだ。
「この後の詳しい予定を聞いてもいいですか? テストを受けるとは聞いたのですが、具体的に何をするのかは知らないんです」
「そうだったんですか? ……えっと、この後15時から基地にある異界で素材採取と間引きの任務があります。継国さんにはその任務を行う小隊に同行していただくことになりますね」
「あれ? 結構時間が空くんですね」
15時と言えば午後3時だ。今から2時間近く先だった。というか指定時間よりも1時間遅い。
「その前に継国さんがどれだけ戦えるのかを確認したり、ブリーフィングで色々と説明させていただく予定なので」
「なるほど、そういうことでしたか」
得心したと私は小さく頷いた。
「あっ! 申し遅れました。私はC級の桜田 綾と申します。本日は継国さんの案内を頼まれました。よろしくお願いします」
自分が名乗っていないことに気づいたのか、慌てた様子で自己紹介する女性隊員――桜田。
「ご丁寧にありがとうございます。継国 三千桂です。こちらこそ今日はお世話になります」
無難な挨拶を交わす。
ところでさっき、気になる単語があったな。“しーきゅう”って何のことだろう。C級? 階級みたいなものなんだろうか。
「すみません、C級ってどういう意味でしょうか」
分からない事は直球で聞いてみる。
「ああ、それはですね――」
桜田の説明によると、討伐隊の隊員は強さによってランク分けされているのだという。
基本的にはこのランクが高いほど強く、昇進も早いし多くの給料を貰っているのだとか。
D級:新隊員教育隊に所属する訓練生。
C級:LV13前後。約6万名。実力的には中堅と言われるが、数の上での主力はこの層らしい。
B級:LV20前後。約400名。精鋭。中隊や大隊の隊長格。
A級:LV26前後。約30名。最精鋭。一般兵(C級)からしたら雲の上の存在だとか。
S級:LV32前後。現在2名。切り札的存在。
という感じらしい。
「なんだか……C級とそれ以上の人の数が随分と違いますね?」
思った事を尋ねると、桜田は少しだけ表情を曇らせて答えた。
「はい。それが……才能の差ですね。レベルが同じでも、スキルと異能の有無で実際の戦闘力には大きな差が生じてくるんです。“持っていない”私達みたいな凡人では同レベル帯の悪魔ですら強敵で、それを打倒するには装備の質と仲間の数に頼るしかないんです」
なんでも討伐隊は基本、小隊(30名)か分隊(10名)単位で運用されて、集団戦で少数の悪魔を圧倒することを旨とするらしい。
兵数が多い方が有利という当たり前の法則だ。基本を忠実に守り、安全マージンを取って消耗を抑制しているという。
しかし安全の代償として、経験値効率は極度に低下するようだ。
レベルアップとは苦難によって齎される、魂の研鑽だ。
現代技術の粋を集めた最新装備で武装して、頼りになる大勢の仲間と共に悪魔を狩る。
それは大して刺激のない作業で、続けていれば成長は鈍化していくことになる。
かといって、敢えて身を危険に晒すのはリスクが大きく。またリターンも釣り合わない。
レベルが上がったところでステータスが若干増加するだけで、ゲームのようにスキルを覚えるわけではない。
レベルアップは確かに人を強くする。しかし劇的な成長を約束するモノではなかった。
より上を目指すのなら強力な異能の習得が不可欠だが、そう簡単に身につくものではないようで、中々難しい問題のようだ。
有用な異能を初めから持っていたり、スキルを覚えるのが早い才能ある人は、個人戦力でも同レベル帯の悪魔に引けを取らず、少数でも戦える。エース級の存在だ。
戦場において非常に頼りになる存在で、活躍度合いも他の隊員と比べて抜きん出ている為、自然とレベルアップ速度も早まるらしい。
そういった人材が、将来B級やA級になれる逸材だという。
そうした才覚を持った人物であると、私は期待されているようだ。
ちなみにA級とS級の大半は例の石巻異界に張り付いているらしい。
10年前はもう少し上位の層が厚かったようだが……。
「それだけの戦力があっても攻略できなかったんですか。石巻異界の悪魔はそんなに強いんですか?」
「出現悪魔の平均レベルは20ぐらい、異界の主のレベルは30以上だったようです。C級以下は戦力外ですし、異界内部は広く、ボスの取り巻きにも苦労したそうで……。私は直接行った事はありませんが、伝え聞く話ではかなり大変みたいです」
平均レベル20って結構やばいな。
今の私が行っても普通に死にそうなレベルだ。
「……来年には攻略が予定されているんですよね? 大丈夫なんですか?」
「もちろんです。10年前の失敗であれやこれやと言われる事はありますけど、我々も無能ではありませんから」
精鋭戦力は10年前の水準に回復しつつあり、異界のマッピングや出現悪魔の耐性、スキル構成など、相手の情報を事細かに調べ上げて入念に対策と準備をしているそうで、討伐隊としては確かな成算の下、実行される作戦のようだ。
「そうなんですか。安心しました」
ちゃんと成功しそうで良かった。
失敗を払拭する為に無理攻めを強行することなく、戦力を立て直す為に10年もの間、耐え忍ぶという選択を取れるだけの理性もあったわけだし、これは期待できそうだ。
そんなことを話していると、私たちに近づいてくる人がいた。
討伐隊の戦闘服を着た壮年の男だ。
服の上からでもはっきりと見て取れる、鍛え抜かれた筋肉の厚み。
重心にブレのない綺麗な歩き方は、何らかの武術を修めていることを感じ取れた。
歴戦の猛者を思わせる風格だ。
カミソリのように鋭い眼差しを向けられて、私は思わずソファから腰を浮かせた。
「中隊長!? どうしてこちらに?」
私の向かいにいた桜田は、その人物を視界に入れるなり慌てて立ち上がると、直立の姿勢を取って困惑したように声を上げた。
中隊長というと、この人が討伐隊でも数少ないB級隊員の精鋭か。
確かに、その辺にいる隊員よりも強い圧を感じる。
胸元の名札には『
「ああ、急に来てすまんな。楽にしてくれ」
「は、はあ……」
そう言われても、という困った顔を桜田は浮かべた。
武槍がソファに腰を下ろす様子は無く、立ったままの上司の手前座り直すこともできず、桜田はぎこちないながらも休めの姿勢になった。
「彼女が噂の逸材か?」
「はい、その通りです。名前は継国 三千桂さん。日本生まれの日本育ちで、今年19歳になるそうです」
「ご紹介に預かりました、継国 三千桂です。よろしくお願いします」
もしかしたらこれから私の上司になるかもしれない人だ。失礼がない方がいいだろう。
流れに乗って自己紹介して頭を下げる。
「ほう、中々可愛らしいお嬢さんだな。だが……」
突然、武槍の体から闘気が膨れ上がった。こちらに仕掛けてくるような動きを見せられて、私は咄嗟に反応して応戦の構えを取る。
予想した通りそれはただのフェイントで、それ以上何かをしてくる事はなかった。
武鎗は私の動きを見てニヤリと口角を上げると、ふっと圧を霧散させた。
「いい反応だ。なるほど、前情報に偽りはなさそうだ」
嬉しそうな様子で厳めしい顔を緩めて、武槍は右手を差し出してくる。
私もその手を握り返して軽く握手した。武人を思わせるゴツゴツした掌だった。
「突然失礼した。驚かせてすまんな。俺は
「ありがとうございます。ご期待に添えるよう努力いたします」
ひとしきり挨拶を交わすと、武槍は桜田の方に向き直った。
「彼女の実力テストはまだ終えていないよな?」
「はい、予定ではこの後……」
「では俺が相手をしよう。グラウンドで待つ。準備を済ませたら連れて来てくれ」
「え! 中隊長!?」
それだけを告げると武槍はラウンジを後にしていった。桜田の困惑の声にも振り返ることすらしなかった。
「えっと……私はどうすれば?」
このままあの人の後をついていけばいいんだろうか。それとも何かしら準備が必要なのか?
そうした疑問を籠めて桜田に問いかけると、彼女は口元に手を当てて少し考え込んでから言葉を発した。
「……まずは戦闘服に着替えましょうか。付いて来てください」
「了解です」
上官を待たせることになった焦りからか、足早に動き出した桜田の背を私は追いかけた。
完全装備なのは防具だけ。武装は木刀で、これから行われるのが模擬戦である事を示していた。
なにが始まるのかと、遠巻きに眺める観客もちらほらといる。
その中には、落ち着かない様子でこちらを眺める桜田の姿もあった。
正面。数メートルの距離を開いて対峙するのは、こちらもまた討伐隊の防具を身に纏い、先端にクッションが巻かれた訓練用の槍を持った武槍だ。
少し腰を落として槍を構える姿は隙が無い。
レベルアップによって手にした単純な力だけではなく、優れた武術の使い手であることが伝わってくる。
「いつでもいいぞ。好きなタイミングで仕掛けてくれ」
くぐもった声で武槍が言う。
両者共に、面頬のようなフェイスガードに厳つい防弾ゴーグルを装着しているので、表情は窺えない。
先手は譲ってくれるようだ。
「……行きます」
一応宣言してから動き出す。
まずは様子見から始めよう。
大丈夫だと思うが、いきなり全力でやって、万が一にも反応できずに怪我でもさせたら大変だ。
相手の力量を確かめてからでないと、こちらとしても安心して本気は出せない。
呼吸の型は使わず、素の状態で出せる全力で踏み込んだ。
一息の内に距離を詰める。常人ではまともに反応することは不可能な素早い突撃だ。
しかし武槍は、私の動きに遅れることなく対応していた。
剣と槍では、槍の方がリーチは長い。
中段に構えられ、突き出された穂先は前に進むのに邪魔だった。
強引に道を開かせるべく、穂先に向かって横から木刀を木槍に叩きつける。
硬い木と木がぶつかり合う甲高い音が、広々としたグラウンドに響き渡る。
跳ね上がる槍だが、しかし手応えは薄かった。恐らくは力に逆らわず、わざと槍を振り上げたのだろう。
ゴーグル越しに一瞬視線が交わり、その予想は確信へと変わった。
「ぬうん!」
「っ!」
間髪をいれずに振り下ろされる槍を、横に飛び退いて回避する。
距離を開けて仕切り直しとはいかず、瞬く間に追撃が繰り出される。
どうやら譲るのは先手だけだったらしい。
地面から掬い上げるように高速で迫りくる穂先。私は冷静に軌道を見切り、半身になって避けた。
「やるな! ならば速度を上げるぞ!」
どこか楽し気に武槍は叫ぶ。言葉の通り、攻撃の手は激しさを増した。
息つく間もなく繰り出される連続突き。
強化された私の動体視力をもってしても霞む速度のそれを、勘を頼りに木刀を振るって穂先を弾き、軌道を逸らして対処する。
隙を見て前進したいところだが、槍を突いて引くという動作がとんでもなく素早く精練されており、まるで付け入る隙が無い。
無理やり突っ込んでいけば痛手を負うことは明白だった。
こうなると先手を譲られたにもかかわらず、それを活かしきれずに間合いから追い出されてしまった事が悔やまれる。
完全に攻撃のターンがあちらに移ってしまった。
模擬戦とはいえ、負けるのは悔しい。
どうにかここから反撃したいところだが……。
猛攻を凌ぎながら逆襲の糸口を探す私をよそに、このまま決め切ろうという心算だろうか、武槍の身体に更なる闘気が満ちる。まるで相手が一回り大きくなったかのようなプレッシャーを感じた。
「おおおおッ!」
「ッ!?」
裂帛の気合が武槍の口から洩れる。
何か大技が来る。考える間もなく本能的に飛び退り、とにかく距離を取ろうとした。
果たしてその判断は正しかった。
地を震わすような踏みつけからの、前方範囲全てを打ち払うが如く大振りの一閃。
空間が薙ぎ払われる。そう錯覚するほどの一撃だった。
振るわれた槍を完全に躱せる位置にいたにも拘わらず身の危険を感じた私は、咄嗟に木刀を正面に翳して防御の体勢をとった。
その後起きた出来事に、私は目を見開いて驚いた。
指向性のある衝撃波が木刀を叩き、私の体を大きく弾き飛ばす。
飛ぶ斬撃。そう形容するしかない現象だった。
「くっ」
衝撃に押されて大地から足が離れ、宙に浮いた体だが、しっかりと地面を踏みしめて着地する。
少しばかり押し流されたが、びっくりしただけで負傷はない。それ以上の追撃もなく、距離を開けて仕切り直す形になった。状況的には悪くない。
(今のは一体……)
明らかに物理法則を逸脱した超常的な現象だった。
何かの異能か、それとも修練によって身に着けたスキルによるものか。
どちらにせよ驚いた。どうやら私は相手を過小評価していたらしい。
身体能力はほぼ同等。槍を操る技量は達人の域に達しているだろう。その上で何らかの力を持っている。
なるほど、これが討伐隊の精鋭。B級の実力か。数が少ない理由も分かる。
こんな熟練者、育てようと思って育てられるようなものでは無いのだろう。むしろこの領域に至っている現役の人間が、日本に400人以上いることの方が驚きだった。
「いい動きだ。目が良くて勘も鋭い。A級……ともすればS級の器かもしれん。今のでも十分合格だが……全力の動きが見たくもある。継国、次は本気で向かってこい。手加減は不要だ」
「……はい」
どうやら初めに手を抜いた事は見抜かれていたらしい。
なら、希望通り見せてやろう。
私が今できる全力の動きを。
「ほおおぉ……」
深く深く呼吸する。
取り込んだ酸素を血流に乗せて、体の隅々にまで行き渡らせる。
筋肉の筋から血管の1本1本に至るまで意識を巡らせて、肉体を掌握する。
私から只ならぬ気配を感じ取ったのか、相対する武槍に緊張が走ったのを感じた。
受けの姿勢は万全のようだ。生半可な攻撃では防がれ、カウンターを食らうだろう。
だが小細工は必要ない。正面から食い破ってやるという強い気持ちを持って、相手を見据えた。
――
足元が爆発したかのようなロケットスタート。
瞬きよりも速く、数メートルの距離を0にする。
私が仕掛け、相手が受ける。
最初の構図と同じだが、その速さは前回を大きく上回っていた。
「ぬッ!?」
身構えていても意表を突かれたのか、武槍の反応は僅かに遅い。
前回と同じように、突き出された槍をへし折る勢いで横合いから木刀を振りぬいた。
今回は手応えがあった。受けきれなかったのか、槍が跳ね飛ばされて体が泳ぐ。
相手は後ずさりながら急いで槍を引き戻そうとしている。だが私の方が一手早い。
――
三日月が煌めく様が幻視されるような、目にも止まらぬ速さで繰り出される2連撃。
一撃目で槍を保持する腕を叩こうとして、直前で察知したのか武槍は槍から手を放して引っ込めた。
手傷は避けたが、しかし無手になってしまった武槍。
空いた胴目掛けて木刀を振るい――急制動をかけて、打つ直前に寸止めする。
「ぐっ……」
勢いを完全に止める事は出来なかったが、攻撃を受けた武槍は軽く呻いただけで、痛手を受けた様子には見えなかった。怪我はないだろう。
カランと地面に槍が落ちる。
私が勝つとは思っていなかったのか、周囲のギャラリーがざわめているのが聞こえてきた。
しばしの沈黙の後、フェイスマスクを外した武槍は潔く負けを認めて礼をした。
「まいった」
「ありがとうございました」
内心でよし! とガッツポーズしたくなる達成感があるが、そんな喜びの感情を表に出さないようにしながら、私は礼を返した。
「素晴らしい腕前だ。感服したよ」
「ありがとうございます。武鎗さんこそ見事な技前でした。特にあの薙ぎ払いは本当にびっくりしました。あれはスキルですか?」
「そうだな。そのまま『なぎ払い』と呼ばれているスキルだ」
「なるほど……」
ああいう分かりやすい物理系のスキルは初めて見た。九十九針とかの射撃系スキルは例外として。
多分ひっかきとか突撃とかも使われた事があるんだけど、近接スキルだと普通の攻撃といまいち見分けがつかないんだよな。
「お前も何か使っていたのか? 最後の動きのキレは凄まじかったが」
「はい。スキルというか、技みたいなものを」
「なるほどな……。素の技量も非常に優れていた。剣はどこで学んだ? 流派を聞いてもいいか?」
「あー、えっとそれは……我流、のようなものです」
「我流だと?」
語気が強めの問い返しに若干心が揺さぶられるが、堂々と真実と嘘を織り交ぜた作り話を口にする。
「色々と参考になる動画を見たりしましたが、直接誰かに師事したという事はありません。強いて師匠を上げるなら架空の人物になるかもしれません」
「……架空の人物?」
「はい、鬼滅の刃って知ってますか? 私、あれに凄いはまっちゃって。全集中の呼吸とかできないかなーって試してたらなんかできちゃって! 特に黒死牟ってキャラが強くて好きでマジリスペクトで。月の呼吸って型を使うんですけどそれを頑張って再現して――」
「そ、そうか。なるほどな。わかったからもういい」
「――はい、好きな事の話になるとつい口が軽くなって。失礼しました」
若干引き気味に話しを止められる。
つまり天才タイプか。そう武槍がぼそりと呟いたのが小さく聞こえてきた。勢いで誤魔化す作戦は成功したようだ。
「君は実戦に耐えうるかどうかを測るためにここに来ていたんだったか?」
「はい、そのように聞いています」
「そうか。予定ではこの後、異界探索に向かう小隊に君を伴わせて適性を見る手筈だったそうだが、そんなことをするまでもなく合格を言い渡させる強さだ。どうする? このまま帰るか?」
「え? それでいいんですか?」
「ああ。これでも一応中隊長だからな。君からしたら頼りないかもしれんが、俺も討伐隊ではそれなりの実力者でな。それぐらいの権限はある」
「いえ、頼りないだなんて、そんな事は……」
冗談のような物言いだったが、どう反応したものかと困っていると、唐突に武槍は厳めしい顔をほころばせて笑った。
「ははは、冗談だ。そう畏まらんでいい。悪魔との最前線に立つ討伐隊では強さこそが尊ばれる。実力的にも階級的にも、君はすぐに俺より上に行くだろう。もっと堂々とするといい」
「は、はあ……」
「それでどうする? 今日はこのまま帰るか?」
そう問われて、虚空を見上げて私は思案する。
さっさと帰ってもいいが、討伐隊の仕事を体験したくもある。比重で言えば圧倒的に後者が上だ。
あまり迷う事もなくお願いする。
「ご迷惑でなければ、ぜひ任務に同行したいです」
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体験入隊
深く暗い森の中。
静寂を切り裂くように、腹に響くようなエンジン音を轟かせて、装輪装甲車が列を成して走っている。
まるで軍隊の行軍だ。
周りにいるのは私を含め、ガチガチの戦闘装備に身を包んだ兵士たち。
私は装甲車の中、小さくも分厚い車窓からぼんやりと外の様子を眺めていた。
ここは基地内にある異界の中だ。
夜のように暗いが、実際に夜になるまで時間が経過した訳ではない。
辺りが暗いのは異界の特異な環境によるものだ。この異界内の時間は常に夜で固定されているという。
異界の外はまだまだ明るい時間帯だった。異界内に一歩足を踏み入れた瞬間、辺りが暗くなった時は大層驚いたものだ。
しかし意外に夜目が利いたので、その環境にあまり不都合は感じなかった。
異能者はレベルが上がると単純なステータスだけではなく、生物的なあれこれも強化されるらしい。目が良くなり夜目が利くようになるのもその恩恵だとか。
とはいえ流石に昼間のように暗闇を見通すとまではいかないので、車両や個人装備の強力なライトが複数存在して辺りを照らしているし、あまり前に出ることが無いという狙撃手の人は暗視装置を装備している。
複眼タイプで暗視スコープが扇状についており、どことなくロボっぽさがあってカッコいい。
1度試しに付けさせてもらったけど、かなり遠くすら細部まで見通せてすごかった。
ただ身に着けるとどうしても邪魔になるので、前衛が付ける装備ではなそうだった。
もはや国内には残っていないだろう、原始を思わせる太く巨大な木々で構成された鬱蒼とした深い森。夜空には巨大な月が浮かび、自己主張の激しい無数の星々が好き勝手に煌めいていた。
現実から切り離された別世界。まさに異界という表現が相応しい場所だったが、幻想的なのは景色だけで、入ってみれば案外ただの普通の森だった。
未開の森を切り開く作業は先人たちがやってくれていた。
既に異界内はマッピング済みで、その地形は隅々に至るまで把握している。
さらには車が通れる道まで整備済みだ。流石に舗装はされてないが、不整地に比べれば砂利道でも十分快適だった。
聞けば異界の主も封印して管理下に置いているという。この異界は完全に討伐隊によって実効支配されているようだ。
なんか思っていたのと違う。
実質的に領土化してないかこれ。異界植民地だ。
異界のランクはそれなりに高く、出現する悪魔の平均レベルは10前後。
このレベルだと一般に開放するには危険すぎるので、駐屯地を併設して厳重に管理しているらしい。
潰さないのには理由がある。
異界は悪魔が湧いて危険だが、リスクだけの存在ではなく、リターンもまた存在するのだ。
異界は霊的存在に満ちている。魂を磨く修行の場として最適だし、魔界化が進行した異界では、環境の変化によって魔化された産物を得られるようになり、人間にとっても有益な物質があちこちに転がる宝の山でもあった。
この暗い森の異界では、主に医薬品、傷薬や痛み止めなどの原料である薬草が豊富に入手できるらしい。
装甲車が群を成して移動していればさすがの悪魔も手を出してこないようで、殆ど戦闘は無かった。
たまに近くに見えた悪魔も、銃座の機関銃や擲弾銃をぶっ放したり、装甲車の銃眼から発砲することで追い散らされている。
銃を持たない近接装備の自分では、今のところ何かする必要はない。
降車するまで出番はなさそうだし、降車してからも活躍する機会があるかは疑問だった。
ブリーフィングでの説明によると、異界内にある有望な採取地を巡り、その後は森に逃げた悪魔を追いかけて、ある程度間引いてから帰還するそうだ。
私の仕事は、素材採取を行う隊員の護衛と、間引きの際の前衛役だ。
ちなみに戦力としては、1個小隊約30名が、乗員10名の装甲車6両にそれぞれ分乗している。
車両は大型サイズの上に定員を大きく割っている為、車内はかなり広々としていた。
装甲車は、まるで砲塔のない戦車に装輪が付いたようなゴツい見た目をしている。
車体を覆う分厚い複合装甲によって、全周に渡って20ミリ徹甲弾に対して抗堪性を持つという頼もしさ。
悪魔が跋扈する異界内部でここまで安心できるのも、装甲車に守られているお陰だった。
そこまでするならもういっそ戦車で戦えばいいじゃんと思うのだが、どうもそうは問屋が卸さないらしい。
霊力の籠っていない攻撃は悪魔に対して有効打にならない為、高度に機械化された砲や機銃、ロケット弾や大量破壊兵器では悪魔を倒せないのだ
異能者が直接、手動で装填、照準して発砲することで戦力化できる兵器もあるが、そういった大型兵器は小回りが利きづらい。攻撃目標の小ささと機動性、そして費用対効果が問題になってくる。
討伐隊の機械化を進めて部隊の戦闘力を高め、隊員の損耗を減らすという計画もあるようだが、実現には様々な技術的問題があり、結局は歩兵戦力が一番効率的という結論になるらしい。
とはいえ異界ごと悪魔を消し飛ばすような大火力兵器の需要は当然ある。政府は多額の予算を付けて、そうした兵器の開発も継続しているそうだ。
『そろそろ採取ポイントAに到着する。降車の用意を』
ヘッドセット越しに小隊長から無線による指示が聞こえてきた。
「聞いたな? 総員降車準備。止まったら降りるぞ」
「了解」
班長が指示を出し、車内が若干慌ただしくなる。
「継国は……そうだな。前衛に出番はないだろうから桜田と一緒に後ろからついてこい。任せたぞ桜田」
「はっ、了解しました」
隣に座っていた桜田が頷く。
正規部隊だけでもこの異界内で活動する十分な戦力があるので、私の事は完全にお客様扱いだった。
桜田の手引きに従って、討伐隊のキビキビとした動きを特等席から見学する。
居残り組と採取組、隊を2つに分けると、道から外れて森の中へと入っていく。
少し進むと、足元に黄色の花や、白い花がまばらに咲いているのが見えた。
あれが目的の薬草だと、隣を歩く桜田が小声で教えてくれた。
黄色の花が傷薬となり、白い花が痛み止めの原料となるようだ。
黄色の方は葉物野菜のように葉っぱが大きいが、白い方は葉っぱは鋭くギザギザしていてどことなく大麻っぽさを感じる。
処理をしないと危険だから白い花の植物は絶対に口にしないようにと注意されているので、多分その想像は間違っていない。麻薬みたいな成分があるんだろう。
さらに進むと、巨大な木々の根元で咲き誇る小規模な花畑が現れた。薬草の群生地だ。
花の匂いなのか、どこか甘い香りが漂ってくる。
「C班は薬草の採取を。A班とB班はその護衛だ」
「了解」
小隊長の指示によって、花畑を囲むようにA班B班の面々が分散して陣形を組んで警戒にあたる。
私たちの班は薬草採取が命じられた。
採取道具が入っていたのだろう、一人だけ違う荷物を持っていた隊員がバッグを広げて中身を配り始めた。
渡されたのは、草刈り用の手鎌と半透明のポリ袋。
「これでどうすればいいんですか?」
具体的な採取の仕方を教わるために横にいた桜田に尋ねると、彼女はさっそく実演を交えて説明してくれた。
花畑の端でしゃがみ込むと、地面から生えた薬草を無造作に束ね持ち、手にした鎌で収穫する。
「こういう風に根元から少し上の所を刈って、根っこは残してください。土はできるだけ払ってあまり地面に触れさせないように。後は種類別に分けて袋に入れてください」
「わかりました。見えてる花は全部収穫していいんでしょうか?」
「そうですね。こうして根を残しておけばまた生えてくるので。手当たり次第に刈ってしまって大丈夫です」
「了解です」
大して気を付けるべき点もない単純作業のようだった。
まるで庭の草刈りのように、黙々と手を動かして薬草を回収していく。
同じ花同士で密生しているので、いちいち選別する必要もなくて楽な作業だった。本当に草を刈ってポリ袋にしまうだけ。
周囲に護衛がいるので、悪魔の邪魔も入らない。
遠目に悪魔を見つけて威嚇でもしているのか、散発的に射撃の音が聞こえてくるだけで本格的な戦闘は起きていないようだ。
数人の大人の手にかかれば、小規模な花畑はほんの10分程度で狩りつくされた。
「よし、こんなものでいい。撤収するぞ。袋を閉じろ」
「了解」
密集して生えていた薬草はあらかた収穫し終え、残りは疎らに生えた花だけとなった。青臭い匂いが鼻孔を抜けていく。
これ以上は効率が悪いのか、次の収穫地に向かう為にもさっさと撤収するようだ。
草刈り鎌を返還し、たんまりと薬草が入った袋の口を閉じ、2つの袋を両手に持つ。
全ての班員が撤収準備を完了させたのを見た班長が、周囲の警戒に当たる小隊長へと報告する。
「小隊長! 薬草の収穫完了しました!」
「了解。装甲車に帰還する! 警戒組は荷物を持ったA班を陣形の内側に入れて援護しろ」
「了解!」
荷物と言ってもただの草の塊だ。大した重量はなく、鍛えられた異能者にとっては重さすら感じない。
その後も大したトラブルは無く、あっさりと装甲車へと帰還する。
そして次の収穫地へと移動して、3回ほど同じことを繰り返す。
薬草の詰まった袋の荷物で何台かの車内が狭苦しくなった頃、ようやく採取が終わった。
一度基地に帰還して荷物を降ろした後、再び暗い異界にとんぼ返りする。
そして異界内の悪魔の間引きが始まった。
自然湧きする悪魔を適度に間引かないと、数が増えて単純に危険だし、GPが上昇して異界がさらに拡張されてしまうことも起こりかねない。
経験値稼ぎとマグネタイト回収も兼ねて、それなりの頻度で定期的に行っているらしい。
異界内のマグネタイト量を調整する事で、悪魔の出現をある程度コントロールすることも可能なようだが、マグを減らせば異界が縮小していってしまうし、外部からマグを加えて湧きを早めても、悪魔を倒して回収できるマグにはロスが発生するので養殖も成り立たない。
異界管理もなかなか大変なようだ。
あまり人数が多いと悪魔が逃げてしまうとのことで、10人の分隊ごとに分かれてそれぞれの担当のエリアへと向かう。
そこでもまた隊を分けるようだ。
森に入る班と、道に停めた装甲車で待機する班。
森侵入組が悪魔を探して戦闘に入り、倒せるようならそのまま倒す、厳しそうなら無理せず装甲車の元へと下がり、待機組に加勢してもらうという戦法のようだ。
戦闘の機会が多いのは、断然森へと入る班だろう。
できればそちらに加わりたいと私が志願すると、希望通り森侵入組へと振り分けてもらえた。
ようやくまともな戦闘を経験できそうだ。気を引き締めよう。
少数のメンバーと共に森に入っていく。
道からそれなりに離れると、後ろを振り返っても同じような木々が立ち並ぶ光景しか見えなくなる。
レーダーマップや通信などの電子機器が無ければ方向を見失いそうなほど深い森だった。
ヘッドライトや、銃に取り付けられたフラッシュライトで周囲を照らしながら先に進む。
それなりに夜目が利くとは言え、光源があった方が見やすいからだ。
強力な光で周囲を照らす様は遠くからでもよく目立ち、悪魔を引き寄せる事にもなるが、交戦が目的のこちらとしても、それは望むところだった。
横から悪魔の気配を感じて視線を向けるのと同時、同じ方向を向いていた班員の一人が叫んだ。
「右手に悪魔を確認! 警戒を!」
声に従い、班員が一斉に右手側を警戒する。
複数のフラッシュライトに照らされて、遠くの茂みから複数の悪魔の影が見えた。
獲物目掛けて走り出す獣のような速さで、立ち並ぶ木々の間をすり抜けるようにしてこちらへと近づいて来ている。
「敵悪魔は5体のようです!」
「応戦しながら退くぞ! フォーカス合わせ、手前からだ!」
「了解!」
一斉にアサルトライフルを構えた4人の隊員。4つの銃口が火を噴き、先頭を走る一体の悪魔に無数の弾丸が雨霰と降り注ぐ。
5-6発に1発の割合で曳光弾が混じっているのか、夜闇に赤い線が浮かび上がって銃弾の軌道が分かりやすい。それぞれの狙っている対象を軌跡によって示すことで、隊員同士の連携を取りやすくしているようだ。
4人のフォーカスを一身に受け、銃撃の嵐に晒されて無数の手傷を負った先頭の悪魔は、堪らず身を翻して後方へと逃れていった。
銃撃も追いすがるが、悪魔はジグザグに走って木の裏へと隠れてしまい、仕留めきる事ができなかったようだ。
「次! 同じく手前から!」
逃げた悪魔に拘泥することなく、班長は即座にターゲット変更の指示を下す。
乱れることなく班員たちも追従し、狙いは即座に別の対象へと移される。
(すごい。良い連携だ)
よく訓練された兵士たちだと、私は感心して彼らの戦いぶりを眺めていた。
自分も戦いに加わりたいところだったが、不用意に切り込んでも邪魔になるだけだ。
近接装備の前衛がやるべきことは、事前にレクチャーを受けていた。
前衛が正面から悪魔を受け止めフロントラインを形成。そして左右に展開した後衛が十字砲火を浴びせる。
それが討伐隊の基本戦法だ。
突撃してくる悪魔達を受け止めて、自分にフォーカスを集めて後衛たちをフリーにする。
それが私に期待される役割だろう。
前衛が自分1人という訳ではなく、銃剣装備の班員が他に2人いる。彼らと共に前線を構築する感じだ。
「敵魔法攻撃来ます!」
「散開! 遮蔽に隠れろ!」
相手もやられるばかりではなく、銃撃に負けじと魔法を放って牽制してくる。
強力な衝撃を伴う突風に、稲妻の如き電撃が、咄嗟に大木の裏に隠れた隊員たちを襲う。
木々が薙ぎ倒され、地面が焦げ付くが、隊員に大きな被害はなさそうだ。
魔法と銃弾が交わされる中、果敢にも2体の悪魔が突撃してくる。
一見すると毛むくじゃらの黒い犬だ。しかしその体躯は雄ライオンをも上回る巨大さだ。
まさに魔獣と呼ぶにふさわしい外見。それはヘアリージャックだった。
(物理型の悪魔で素早さが高い。物理・氷結耐性。電撃弱点。……だったかな)
この異界で出現する悪魔の情報は、ブリーフィングで教えられていた。
物理耐性持ちだが、その為の対処法も勿論用意されていた。
腰のベルトに固定されたホルダーには、3本の刀が吊るされている。
それぞれ物理、電撃、火炎の属性を持つ。弱点攻撃用にと渡された魔晶武器だ。
その他にも、精神耐性を付与するアミュレットや、呪殺や破魔などを防いでくれる護符、傷薬やペインキラーの入った救急キットなど、様々な装備が与えられている。
それは私だけではなく、隊員全員に等しく与えられた物だ。
潤沢な物資に、丸裸な敵情報。頼りになる大勢の味方。これだけの好条件が揃っていて負ける気がしなかった。
ちなみに銃にエンチャントを施さないのは、銃に属性を付与しても直接殴ることでしか効果は発揮されず、銃撃した弾には効果が及ばないからだという。
射撃に属性を付与したいのなら、弾丸自体に貴重な魔晶を使って加工する必要がある。
しかし1つの魔晶で加工できるのは、精々マガジン1つ分で、しかも飛んでいった弾を回収することはできないので使い捨てることになる。
それでも属性弾は有用であるため、それなりに生産されていて備蓄もそこそこあるようだ。
しかしそれはいざという時の為に用意しているとっておきの物資であるので、こうした平凡な任務では絶対に使用しないらしい。
「継国! 一体を任せていいか!?」
「はい、任せてください」
「無理はするなよ! こっちを終わらせたらすぐ加勢する!」
近くにやってきていた前衛の2人は、急いで突撃銃の先端に電撃属性の銃剣を取り付けていた。
私が1体を受け持ち、他2人がもう1体を相手にする形のようだ。
無理をするなと言われたが、別にささっと倒して私があちらに加勢しても構わないだろう。
電属性の刀を抜いて、ヘアリージャックを迎え撃つ。
人の身の丈程の体高がある獣が牙を剥いて猛スピードで迫ってくる様は、中々迫力がある。
しかしどんなに体が大きくとも、それは私よりも弱い。
何も考えず、全速力で飛び掛かってくる巨大な獣はいい的だった。
――
『■■■ッ!?』
逆袈裟による3連撃。闇夜の中で三日月が踊る。
雷光を纏う刀で深々と体を切り裂かれ、弱点を突かれたのも相まってヘアリージャックは断末魔の悲鳴を上げて消えていく。
返す刀で、他の隊員が相手をしていたもう1体のヘアリージャックの背後を襲う。
後ろに振り向かせる間もなく刀を振るい、突撃してきた2体の悪魔は何もできずに消滅していった。
残りは、後衛と魔法を撃ち合っている2体と、負傷した悪魔が1体。
いや、負傷していたはずの悪魔の傷が癒えている。どうやら自身か仲間の魔法によって治癒したようだ。
(キキーモラにハイピクシー、イナバシロウサギか。それぞれ衝撃、銃撃、火炎が弱点だったな)
自分が有利に戦えるのは火弱点のイナバシロウサギだろう。
銃弱点のハイピクシーは他の隊員に任せればいいし、キキーモラも後で囲んで叩けばいい。
瞬間的にこの戦闘の畳み方を考えて、私は味方に向けて声をかけた。
「班長! 兎は私に任せてください!」
「……いいだろう! ただしあまり前に出過ぎるなよ!」
「はい!」
「各員は兎以外の悪魔に向けて制圧射撃! その場に釘付けにしろ!」
「了解!」
班員たちの援護によって、2体の悪魔は木の影から出てこれないようだ。
意図的に作り出された1対1の状況を活かすため、私はイナバシロウサギの下に走り出した。
相手もそれなりに反応が良い。私が駆け出した次の瞬間には、奴もまた背を向けて逃げ出していた。
だが追いつけない速さではなかった。
――
爆発的な脚力で距離を縮め、追いつきざまに一閃。
もちろん使用したのはイナバシロウサギの弱点である火属性の刀だ。
イナバシロウサギの体は両断されると共に燃え上がり、マグネタイト結晶を残して消滅した。
何の被害もなく3体の悪魔を殺して、戦闘の趨勢は決した。その後はもう作業だ。
班員の援護を受けながらキキーモラを倒し、逃げ出そうとしたのか木の影から飛び出たハイピクシーを班長が撃ち抜いて、墜落したそいつは銃撃の雨を浴びて消滅していった。
「継国、よくやった。流石だな。中隊長から一本取った実力は本物のようだな」
「ありがとうございます。しかしあれは模擬戦でしたし、あちらも手加減していましたから……」
「はは、そういう事にしておくか。怪我や疲労はしていないか?」
「はい、何の問題もありません」
「よし、ではその調子で次も頼んだぞ」
話の終わりに、班長は優しく私の肩を叩いて離れていった。
べた褒めをされて面映ゆい気持ちになる。
「お前のお陰で今日は楽が出来そうだ。頼りにしているぞ」
「任せてください」
隊員の練度が高く、援護が的確で楽ができたのは私も同じだった。
仮に先の集団を一人で相手にしていたら大変苦労していた事だろう。やっぱり仲間って大切だ。
その後も続けて悪魔の集団を狩り、何度か繰り返したところ、携行していた弾薬が心もとないとの事で、装甲車の下に帰還した。
補給を済ませ、班の役割を入れ替えて再出撃。
怪我はしていないし疲れてもいなかったので、私は再度出撃組に同伴させてもらった。
その後も獅子奮迅の働きを見せて、結局全ての出撃に参加した。
分隊での合計討伐数は100の大台を超えて、うち私が止めを刺したのはその半数以上にも上る。
普段では考えられないペースだそうで、実際合流した他の分隊の記録はそれよりも大分低かった。
目立った怪我人もいなかった。他の隊ではそれなりに回復薬を消費、装備の破損もあったそうなので、そういった面でも優れた成果だ。
飛びぬけた実力の者がいれば効率が段違いになるというのは確かなようだった。
私も今日だけでレベルが2つ上がり、ようやく二桁レベルに達することができた。
危険は少なく足も用意されて、私としても美味しい狩りだった。
夜の森で戦闘を続けていたので時間感覚が狂いかけていたが、外に出るとまだ夕方だった。
借りた装備を返して私服に着替え、帰路につく。
世間的にもそろそろ帰宅時間だろう。どうやら基地も同じようだ。
町から通っている人が多いのか、駐屯地から車が出て行ったり、私と同じようにバス停で待つ人もそこそこいた。
バス停で待っている間、何とはなしにバッグのある部分に手が伸びた。
そこには長方形のブロック状の、確かな膨らみが存在した。
「ふふ……」
帰り際に基地の偉そうな人から、『手間賃』として渡された物が入っていた。
滅多に経験できない札束の厚みに、自然と顔がにやけてしまう。
後日、詳細な契約条件を決めて本格的に討伐隊に入ることになる。
先ほどざっくりと条件を提示されたが、驚くほどの好条件だった。
実力的には十分討伐隊でやっていけそうだし、金払いもいい。
レベルを上げつつ大金も稼げる。今の私にとっての天職だ。定職に就くこともできて一安心だった。
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年末
「もうすぐクリスマスか……」
時が経つのは早い。
朝。カーテンの隙間から漏れる光で自然に目を覚ました私は、スマホに表示された日付を見てそう独り言ちた。
私が討伐隊に入隊してから、早くも一か月が過ぎ去ろうとしていた。
この世界にやって来た当初は11月上旬で、まだ秋を感じさせる季節だった。
だが今はもう12月下旬。外はすっかり冬の訪れを感じさせる寒さになっている。
「今日は……非番だっけ」
出勤日でもないことを確認して、2度寝するか迷う。
眠気は無いし肉体的な疲労は感じないが、何だか若干の気だるさを覚えていた。
精神的な疲れだろう。ここの所、精力的に働き過ぎているのかもしれない。
ぽすんと頭を枕に預け直し、起こしかけていた体を横にする。
仕事で疲れている訳ではない。
討伐隊の勤務体制はホワイトそのものだった。
政府は(収入を減らすことなく)週休3日・1日6時間労働を目標に掲げており、国家機関や国営企業はその範を示すべく、率先して実施に努めている。
国家機関である討伐隊もその例に漏れず、必死に採用活動を行い人員を増やすことで、そのホワイト環境を実現していた。
労働時間が短くて休みは多く、そのくせ給料は滅茶苦茶良い。
夢のような労働環境だった。
私はあのまま地元の部隊に所属することになり、自宅から駐屯地に通っている。
基本的な仕事内容は非常に単純で、異界発生の兆候があればすぐさま駆け付けられるようにと、ひたすら待機が続く。
とはいえ急な出撃はそこまでないので、基地内にいれば何をしていようと割と自由だ。
勿論仕事中であるという事を弁えた上での行動なら、の話だが。流石に遊んだり酒を飲んでいたら懲戒ものである。
基本的には、自主訓練を行ったり、昇進の為の勉強をしたりが殆どだ。たまに仲間を誘って許可を貰い、異界に悪魔を狩りに行くこともある。
まあ楽な事ばかりではなく、それなりに苦労もあるのだが。
職務上、討伐隊は24時間体制で警戒していなければいけないので、シフトによってはかなり不規則な生活になるし、異界が発生すれば休日だろうと容赦なく呼び出されて現場に急行させられる。
いつでも通信できるように、討伐隊貸与のスマホは常に電源を入れて携帯していなければならないし、お呼びがかかったらすぐに戦えるように、遠出をする際は自宅に保管してある最低限の装備を持っていかなくてはならない。
貴重な備品は基地内から持ち出せないが、防具や刀なんかの最低限戦える装備は貸与されて自宅にも置かれているのだ。
国民を悪魔から守るための仕事だし、緊急出撃の際には様々な手当が貰えるので、そういった意味ではやりがいを感じるのだが、常に即応体制を維持する必要があるのは結構しんどいものがある。
とはいえ疲れているのはそれだけが原因ではない。
ホワイト労働のお陰で出来た余暇を使って、プレイヤーの共同体を作るという目的の、趣味の活動を張り切っていた所為だ。
その甲斐あって、それなりの規模のプレイヤー組織を作ることができた。
組織名は、『プレイヤー共済連盟』。
その名の通り、プレイヤー同士で助け合い、互いに力を貸し合って何かをする事を目的にした組織だ。
私たちの暮らしを脅かす様々なリスクに対して、協力し合って力を蓄え、万が一に備えようという、私の理念を具現化したような趣旨だった。
設立にはかなりの苦労があった。
色んな人に話を持ち掛けて、利を説き、説得して……。
初めから耳を貸してくれない人もいれば、時には罵倒してくる人もいて。中々に大変だった。
それでも今までの活動が知られていたので、信用はそれなりにあったのか、話を聞いてくれる人も多かった。
少なくとも声を上げても完全にスルーされるという事はなかった。
私の言葉に大いに賛同して力を貸してくれた人もいたお陰で、どうにか設立にこぎつけることができた。
協力してくれた人、加盟してくれた全ての人には感謝の念に堪えない。
大目標は自身やその他プレイヤーの生存。その為の手段としてプレイヤー全体の戦力増強だ。
前からやりたかったことでもある、より大規模なプレイヤーへの生活支援も始めている。
賃貸寮を1棟丸ごと借りて、連盟員を優先して部屋を割り振っている。
首都圏にある、鉄筋コンクリート造の7階建て、バストイレ別のワンルームが80室ほどだ。
駅やスーパー、コンビニなども徒歩10分圏内にあり、賃料は月々350万円。
景気が良くて住宅需要も多いこの世界の相場的には、まあまあ安いほうだった。
敷金礼金込みで1000万を超えるが、出せない額ではなかった。
なんだかんだ言って、プレイヤーは小金持ちだ。特に私みたいなランカーは討伐隊による好待遇のお陰で、1か月目にして一般的な感覚では割と引くほど貰っている。その上で税金も気にしなくていいというバブル状態だ。気前が良くなっている人も多い。
数人の有志がまとまった額を負担してくれるだけで、あっという間に大きな拠点を構えることができた。
掲示板上で入居者を募集した所、思いのほか盛況で、部屋は現在満室だ。二号棟を借りるのも検討する程だった。
ランカーと比べたらそこまでだが、一般プレイヤーの金回りもそこそこ良い。なんせ異能者給付金によって何もしなくとも毎月10万円以上が懐に入ってくる。
時期も良かった。
ぼちぼちと面倒な手続きが終わって異能者登録を行い、給付金が入ってきて新生活を始めるぞ! というタイミングのプレイヤーが結構いたのだ。
どうせ新天地で働き始めるなら、同じ境遇の仲間が大勢いる場所で暮らしたい、という心理が働いたのだろう。
定職を得てからの引っ越しは中々難しいものがあるし、ある種の新生活需要を掴んだと言える。
家賃として、寮の賃料を住民に頭割りにして徴収しているが、それ以上の負担はさせていない。
水道光熱費や共益費なんかはこちらで負担している。
その他にも、住民から人を雇って食堂を稼働させて格安で食事を提供したり、洗濯や掃除などの家事代行サービスをやらせたりと、寮での暮らしを良くするべく色々やっている。
お陰で住民からは好評を得ている。口コミで宣伝されて、連盟加入者は日々増加していた。
ちなみに今のところ連盟に加入しただけでは、大きなメリットもなければデメリットもない。
一定額の共済金を徴収したいところだが、いきなりお金を払う必要があるのでは抵抗も大きい。今言い出せば反発もあるだろうし時期尚早だ。
現在の運営費は私の持ち出しや、有志の寄付金によって賄っている。
今は利益を与えて、共同体としての形を整えていくのが先だ。
自分達からこの共同体を崩したくない、連盟を維持したいと思わせて、その為の力になりたい、お金を払いたいという声を上げさせるのが理想だった。
そういった空気を作ることができれば、では皆から毎月運営費を徴収します、という言葉も言いやすいし受け入れやすい。
レベルが上がり覚醒が進んだことで、非凡なプログラミング技術を発揮し始めた千尋に、連盟のホームページを作ってもらった。
さすが超高校生級プログラマーの潜在能力の持ち主。あっという間にハイクオリティで仕上げてくれた。
今はレベル上げに苦労しているようだが、そのうち悪魔召喚プログラムとか作ってくれるんじゃないかという期待すらある。
各々のプレイヤーが何かやりたいことがあれば、クラウドファンディング形式で資金を募って支援できるような仕組みも作ってもらった。
色んな才能の持ち主がいるし、堅実なプロジェクトもあれば奇抜なプロジェクトもある。なかなかの活況だった。
他にも、ネットで評判のよさげな道場や教室の先生をお呼びして、連盟員向けの無料講座を開いたりしている。
武術や魔法に興味はあるけど、選択肢が多すぎて何から始めればよく分からない、という人の背中を少しでも後押し出来ればと始めた事だったが、さすがプロというべきか、教えてくれる事が実践的で分かりやすく面白いとかなり好評で、今後も定期的に開催する予定だ。
後はプレイヤー掲示板のまとめとか、プレイヤー目線でこの世界の情報を纏めたキュレーションサイトなんかも、管理する人を雇って運営させている。
こういうサイトは先駆者が有利だ。あまりにもクオリティが低かったり、よほどのヘマをしない限り、最初に居ついたサイトをユーザーは利用し続ける。
こうした情報サイトを握っておくのは、プレイヤーという小さい界隈限定だが、世論形勢に有利に働く。
テレビや新聞などの大手メディアと比べたらショボすぎるが、小さいながらも
掲示板上で分かりやすく情報を纏めてくれていた人をスカウトしたり、人材募集した際に、前世はまとめサイト運営で生計を立てていました、という管理人経験者を採用できたので、サイト自体の質はかなり良い。
働き始めて掲示板を見て回る時間が無いけど情報は集めたい、という需要にマッチしたのか、アクセス数はどんどん伸びている。
プレイヤー全体が、それら連盟の息が掛かったサイトの利用者になってくれる日も近いだろう。
私自身もYouTuberよろしく顔出ししてパワーポイントで資料を作って連盟の目的や私のやりたいことなどを説明した動画をプレイヤーに向けて限定公開している。
他にも記事を書いたりと、共済の思想を広めるべく努力している。
ちなみにそうしたサイトは、検索エンジンからはたどり着けないように隠してもらっている。
別に後ろめたいことをしている訳ではないが、プレイヤーでもなんでもない部外者に入ってこられると困るからだ。
そうした活動が実を結んだのか、ちらほらと期待通り連盟員から「運営費を貰わなくて大丈夫ですか?」という声が届いている。
それとなく誘導してそうした声を強めていき、資金を得ることで更なるサービスの充実を図り、新規加入者を増やし、共同体としての繋がりをより強固にしていく、というのが今後の方針だ。
(こっちの仕事は誰かに任せたいんだけど……残念ながら全てを丸投げできるような腹心はいないんだよな)
そうした人材は目下育成中で、むしろ教育するために負担は増している。
今は私がトップダウンで様々な指示をする必要があり、労働時間が短いとはいえ討伐隊との二足の草鞋は中々しんどかった。
ちらりと時計を見ると、私が起きてから30分ほどの時間が経っていた。
ベッドに横になってぼうっとしながら考えを巡らせているうちに、それだけの時間を無駄にしてしまったようだ。
(いかんいかん。ぼうっとしてる暇があったら少しでも何かしないと)
じっとしていても元気は出ない。
カーテンを閉め切った部屋で寝ているぐらいなら、熱いシャワーを浴びて体を温めたり、日光を浴びて散歩でもした方がまだ建設的だった。
気持ちを切り替えて飛び起きると、手早く着替えて寝室を出る。
以前は賑やかだったマンションの自宅も、最近はめっきりと静かになった。
理由は単純。ここで暮らす人の数が減ったからだ。
共済連盟の寮に移ったり、自分で部屋を見つけて移り住んだり、討伐隊に入って教育隊に行っていたりと、その身の振り方は様々だが、ほとんどの住人が家を出ていた。
起き出してきた私を見て、唯一残った住人である赤髪のメイドが声をかけてくる。
「おはようございます、三千桂様」
「おはよう、翡翠」
「すぐお食事になさいますか?」
「うん、お願い」
「かしこまりました」
まるで本職を思わせるような楚々とした振る舞いで、テキパキと朝食の支度を始める翡翠。
もはや誰もコスプレとは思わないだろう、堂々としたメイド姿だった。
出会った当初のオドオドした様子と比べたら、見違えるようだ。
例え初めは真似事でも、1か月間休むことなく毎日続けていれば、確実に本物に近づいていく。
完成度の高さは本人の努力の賜物だろう。髪を染めてカラコンまでする気合の入ったコスプレイヤーだ。
かくいう私も、普段から和装でいることに違和感を感じなくなっていた。
私の身の回りの世話をさせて欲しいと言い、次々と巣立っていく住民の中で、ただ一人残留したのが翡翠だった。
私としても、彼女が残ってくれたのは助かった。
一人暮らしには慣れているとはいえ、何かと忙しい日々を送っていたので、家事をこなしてくれるのは純粋にありがたい。
留守中の電話やメールの一次対応をしてくれたりと、メイドだけではなく秘書のような役割もこなしてくれているので、今では無くてはならない人材だ。
本人は自分から頼み込んだことなので、無給でいいし給料なんていただけないと断っていたが、気持ちはどうあれ雇う形になる以上、当然賃金は支払っている。
ちなみにレベルを上げても味覚に変化はないそうで、料理を任せてもメシマズなご飯は出てこない。
普通に美味しい食事を作れているし、やっぱりデメリットは発現しないようだ。
なんにしても、やりたいことが多すぎる。
財政の許す限り色々と手を広げた結果、資金繰りはカツカツだった。
もっと収入を増やす必要がある。
とはいえ他人の財布はあまり当てにできないので、自分の給料を増やすのが最も手堅い資金調達の手段と言える。
討伐隊において一番手っ取り早い昇給の方法は、レベルを上げて強くなることだ。
レベルが高いほど基本給は上がっていき、更にC級、B級といった戦闘能力のランクによって倍率がかかってくる。
そこに階級・勤続・休日・深夜・残業・危険といった様々な手当や、活躍に応じたボーナスなどが付与されることになる。
とりあえず実技しかないA級認定試験はパスできたけど、階級の昇格試験は筆記もあるので付け焼刃では厳しいものがある。
筆記試験に加えて小論文や口述試験まであるそうなので、軽く教本を読んだ程度では到底太刀打ちできないだろう。地道な勉強が必要だった。
中隊長以上になるには陸軍大学校に行って、指揮課程を修了する必要があるみたいだし。
そっち方面での昇給は、単純に強くなるのとはまた別の難しさがある。
(S級は流石にまだ厳しいしな……)
レベル上げと並行して勉強も頑張らないといけないし、趣味の活動にも力を入れたい。
やるべきことを列挙していくと、分身したくなるぐらいに多忙だった。
最近は睡眠時間もあまり取れていなかった。異能者になって体が強くなっていなければ過労死していたかもしれない。
ほどなくして、トレーに料理を並べて翡翠か朝食を運んでくる。
事前に用意していた食事を温め直してきたのだろう、早い支度だった。
食欲をそそる香ばしい匂いがふわりと漂ってくる。
ご飯に味噌汁、焼き魚に卵焼き、そして野菜の和え物と漬物。朝の和食に相応しい献立だ。
いつもながら手間がかかっている。一人暮らしだったら料理の手間を惜しんで弁当や惣菜ばかりを口にしていただろう。
「いただきます」
合掌して小さくお辞儀。箸をとって食べ始める。
「うん、おいしい。本当にいつも助かるよ。ありがとうね」
「いえ、仕事ですので……」
「そうは言っても毎日やるのは大変でしょ? いつも言ってるけど手を抜いたりサボったりしてもいいからね? 別に週に2-3日ぐらいは何もせずに遊び呆けていても文句は言わないから」
そこまで高い報酬を支払っている訳ではないので、毎日休むことなく働いている姿を見ると気が引ける。
しかし翡翠は何でもなさそうに微笑を浮かべると、首を横に振った。
「いえ、好きでやっている事ですから。それに適度に休んでいるので大丈夫です」
ここまできっぱりと断られると、もう何も言えない。
「そっか、無理しないでね」
「はい、ご心配ありがとうございます」
それからは会話もなく、黙々と食事を終える。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
そして翡翠は使い終わった食器を下げると、食後のお茶を用意して戻ってきた。
「今日はお休みでしたよね? どこかへ向かわれますか?」
「特に人に会う用事もないから家にいるよ。あ、昼飯と夕飯は作らなくていいよ。外食したい気分だから何か食べに行こう」
「わかりました」
自分が休みの日まで相手を働かせるのは心苦しいものがある。
外食したいは方便だった。私が休みの日はせめて炊事の手間ぐらいからは解放してあげたい。
彼女はこうでもしないと休んでくれない。真面目なのはいい事だが、無理をしていないか心配だった。
「あ」
不意に私は、ある重大事項を伝え忘れていたことに気が付いた。
「……そういえば、異動を命じられたって話、してないよね?」
「はい、存じません」
「だよね。私も昨日、突然司令から言われたんだ。“石巻に行け”って」
まあ司令としても急な話だったのか、戦力を引き抜かれて不服という顔をしていたけど。
「石巻ですか?」
「そう、宮城県の、例の大規模異界がある所の基地だね」
「そうなんですか……いつ頃ですか?」
「年末に連休をやるから、年初にはあっちに移れってさ」
「年初にはって……すごく急ですね」
「うん、私も驚いてる」
A級認定試験を合格した際にそれとなく匂わされてはいたけれど、まさかこんなに早いとは。
ちょっと予定が狂う。
よりレベルの高い悪魔と戦えるようになるのは個人戦力増強という面で見ればメリットだが、東北に転勤して連盟の組織運営をやりにくくなるのはデメリットだ。
リモートワークで仕事ができる世の中とはいえ、人と人との繋がりは対面時よりもどうしても薄くなる。
まだ未熟な組織の地盤を固めるには、色んな人と直接顔を突き合わせて信頼関係を築き上げていくのも大事な作業だった。
(新年会もできないかもしれないな、これ)
プレイヤー同士の親睦を深めるために、立食パーティーなどをやりたいと考えていた。
忘年会でやるには準備期間が足りなさ過ぎた。12月中にやるなら、せめて11月ぐらいには予定を決めて会場を抑えておきたい。
少人数ならともかく、大規模なものは無理だ。寮でやることも考えたが、騒がしいのが嫌いな人にとっては迷惑だろうし。
やるなら新年会かと思っていたのだが……。
来月開催に向けて今から準備しようと思っていたところにこれだ。異動直後は忙しくなるだろうし、幹事はできる気がしない。
(……もう花見までお預けでもいいかもな)
こういった機会でも作らないと、各地に散っているプレイヤーが一堂に会する事はまずないので、出来ればやってみたかったが、もうこれは縁が無かったと考えてひとまず諦めた方がいいかもしれない。
「……もしかして単身赴任でしょうか? 私はお供できませんか?」
不安げな表情を浮かべて翡翠が聞いてくる。
「どうだろう。避難命令でゴーストタウン化した町を国が丸ごと買い取って基地に流用してるそうで、向こうでは一軒家が与えられるみたいだから住む場所は問題ないだろうけど……流石に同伴オッケーかは聞いてないや」
あちらとしても成人前の独身者に家族同伴か単身赴任かを聞いてくることは無かった。
「その辺は明日聞いてくるよ」
「お願いします」
【PL共済連盟雑談スレpart13】
273:名無しのプレイヤー
「速報」姉上会長、東北に飛ばされる
274:名無しのプレイヤー
マ?
275:名無しのプレイヤー
マジ。ランカーディスコの方で話してた。年初から石巻基地に異動だってさ。
276:名無しのプレイヤー
入隊して1か月足らずで最精鋭の仲間入りか。やっぱ凄いな
277:名無しのプレイヤー
年初って猶予は2週間ぐらいしかないじゃん。急だな
278:名無しのプレイヤー
いきなり転勤か。大変だ
279:名無しのプレイヤー
お労しや姉上
280:名無しのプレイヤー
まあランカーの人達もちらほら異動の声がかかってるみたいで、プチオフ会だーって盛り上がってるけど
281:名無しのプレイヤー
草
282:名無しのプレイヤー
まあ俺らって全国に散らばってて、普通に暮らしてたら中々会う機会はないからな
283:名無しのプレイヤー
姉上って会食好きだよな。政治家みたい
284:名無しのプレイヤー
直接会って話をするのが一番手っ取り早く人と仲良くなれる方法だからな。接待はどこもやってることだよ
285:名無しのプレイヤー
接待とか会食に悪いイメージを持ってる人もいるけど、悪いのはその場で裏取引とか賄賂を交わす人間であって、会食自体は別に悪い物でもなんでもない
286:名無しのプレイヤー
実際政治力は高いよな。まだこの世界に来てから2か月も経ってないのに100人規模の組織を作ってる訳だし
287:名無しのプレイヤー
動画見たけど喋り上手いよね。話してることも尤もだし頭良さそう
288:名無しのプレイヤー
ああいう人が引っ張ってくれると頼もしいわ
289:名無しのプレイヤー
強くて賢くて心が綺麗でコミュ力も高くて可愛い。姉上最強か?
290:名無しのプレイヤー
マジで有能だよな。前世は何してた人なのか気になるわ
291:名無しのプレイヤー
最近ここ見始めたばかりなんだけど、なんで皆会長のこと姉上って呼んでるんですか?
292:名無しのプレイヤー
特典繋がりだね。会長の能力特典が原作っていうかファンの間では兄上と呼ばれてた。
そして会長の性別は女。後は分かるな?
293:名無しのプレイヤー
なるほど。ありがとう
294:名無しのプレイヤー
ついでに言うと会長っていうのも俺らが勝手に呼んでるだけで、実は正式な役職ではなかったりする
295:名無しのプレイヤー
え、そうなの?
296:名無しのプレイヤー
嘘だー
297:名無しのプレイヤー
いやマジだよ。連盟にはまだちゃんとした規約が作られてないし。暫定であれこれ決めてはいるけど、実はすべてが曖昧だったりする
298:名無しのプレイヤー
それは組織として大丈夫なのか?
299:名無しのプレイヤー
あんまり大丈夫ではないな
300:名無しのプレイヤー
まあ金を出してるのは会長とランカーの一部だし。出資者が納得しているうちは問題にはならんでしょ
301:名無しのプレイヤー
定款は今作ってる最中らしいな
302:名無しのプレイヤー
へー
303:名無しのプレイヤー
定款ってなんですか(小声)
304:名無しのプレイヤー
一言で言えば、会社の憲法かな。会社を運営していく上での規則を明文化したものだよ
305:名無しのプレイヤー
今のところ連盟は法人じゃなくて任意団体だから普通に規約でいい
306:名無しのプレイヤー
あー、関係者しか読まなそうなめっちゃ長いやつか。それ作るって大変そうだね
307:名無しのプレイヤー
参考例は結構あるけど、きちんとしたのを作るとなると、まあ難しいわな
308:名無しのプレイヤー
そのうち法人化するんかね?
309:名無しのプレイヤー
一般社団法人か? あんまメリットはなさそうだけど
310:名無しのプレイヤー
法人化のメリットは団体の社会的信用が上がって団体名義でも色々契約できるぐらいだし、プレイヤー同士で纏まるだけなら任意団体のままでいいと思う
311:名無しのプレイヤー
ほーん。じゃあ今のままでいいのか
312:名無しのプレイヤー
俺はそれでいいと思う
313:名無しのプレイヤー
どうだろうな。任意団体のままだと、何かしようとしても団体名義で契約できないから、個人名義で契約することになる。
例えば寮なんかは会長名義で借りてるだろうから、会長が死んだりすると色々と面倒なことになる。運営資金とかも個人口座で管理することになるし。
平和に暮らしてる人の集まりならそれでいいかもしれないけど、会長は命の危険がある職に就いてる訳だしな。色々と考える必要はあるかもしれん
314:名無しのプレイヤー
なるほどなー
315:名無しのプレイヤー
会長が死んだら後を継ぐ人もいないだろうし、連盟は自然消滅するんじゃないか?
316:名無しのプレイヤー
……確かに!
会長の代わりができそうな人は現状いないな
317:名無しのプレイヤー
姉上には早いところ鬼の力を発現して欲しいな。鬼の再生能力があれば安心できる
318:名無しのプレイヤー
今の姉上のレベルっていくつなの?
319:名無しのプレイヤー
前の近況報告動画では、確かLV18になったって言ってたはず。その気になれば痣も出せるしスケスケもできるとか。まだ鬼の力は引き出せてないみたい
320:名無しのプレイヤー
姉上と会うと全身を隅々まで透視されるってマジですか?
321:名無しのプレイヤー
透視メガネを自前で持ってるなんてエッチだなぁ
322:名無しのプレイヤー
銀髪美女に透視される……我々の業界ではご褒美です
323:名無しのプレイヤー
見えるのはエロじゃなくてグロなんだよなぁ
324:名無しのプレイヤー
俺らが思ってる透視:服が透けて見える! えちち!
実際の透き通る世界:人体模型(リアル100%)
325:名無しのプレイヤー
まあやり方次第では服だけ透かして見るとかできるのかもしれないけどね
326:名無しのプレイヤー
姉上はそういうのに興味なさそう
327:名無しのプレイヤー
仕事人間っぽいしな
328:名無しのプレイヤー
会長も忙しい人だよな。討伐隊で働きながら組織運営とかよーやるわ
329:名無しのプレイヤー
ちょくちょく寮に来てヒアリングとかしてたけど、これからはそれも難しくなりそうね
330:名無しのプレイヤー
東北行ったらこっちに関わってる暇はなさそうだよなー
331:名無しのプレイヤー
全国に新幹線網が出来てるし、列島横断で早くもリニア新幹線が完成してる。仙台から東京まで1時間かからないみたいだよ
332:名無しのプレイヤー
往復2時間か。それぐらいならまあ来れる距離ではある
333:名無しのプレイヤー
よし、なら日帰りも余裕だな!
334:名無しのプレイヤー
当たり前のように働かせようとすんなw
335:名無しのプレイヤー
いつ休んでるのか分からないぐらいずっと働いてるみたいだからな。体には気を付けて欲しいわ
336:名無しのプレイヤー
それな。現在最高位の異界の抑えに赴任する訳だし。慣れるまで本職に専念して欲しい。万が一という事がある
337:名無しのプレイヤー
万が一か……。こっちにはリカームとか地反しの玉とかないんかね?
338:名無しのプレイヤー
わからん。それっぽい噂はあるけど、少なくとも表には出回ってない物だな
339:名無しのプレイヤー
仮にあったとしても超貴重なんだろうな。
効果の程にもよるけど、死からの蘇生とかとんでもない奇跡だし。大量生産できない限りは絶対秘匿するでしょ
340:名無しのプレイヤー
民間にも腐るほど需要がありそうだしな。そんな貴重なモノを一部で独占してますとか暴動ものだろうし。あったとしても隠すしおいそれとは使えないか
341:名無しのプレイヤー
傷薬とかペインキラーも医療分野での需要が大きすぎて民間では常に品薄らしいな
342:名無しのプレイヤー
効果も即効性もやべーもん。そらそうなる
343:名無しのプレイヤー
普通の傷薬だと流石に欠損した手足とかは生えてこないみたいだけど、精製して効果を高めたやつなら欠損すら治癒するみたいだからな。欲しがらない奴なんていないよ
344:名無しのプレイヤー
マグの用途も色々あるみたいだし、それらを採集するために必要な異能者が重要過ぎる。
異能者をここまで優遇してるのも、背景知識を得た今だと当然だと納得した。むしろもっと育成に力を入れた方がいいんじゃないかとすら思うよ
345:名無しのプレイヤー
異界が貴重な資源を齎すダンジョンなら、採掘効率を高めるために投資するのは当たり前じゃね?
346:名無しのプレイヤー
その当たり前ができない国もあるからな……。この世界の日本はそれができる国でよかったよ
347:名無しのプレイヤー
>当たり前ができない国。
もしかして俺らの祖国をディスってます?
348:名無しのプレイヤー
そんな! 元の日本のままだったら今よりもっと酷いことになっていただろうなんて思っていませんよ!
349:名無しのプレイヤー
完全に思ってて草
350:名無しのプレイヤー
まあその世界線だと討伐隊の規模はもっと小さかっただろうな
351:名無しのプレイヤー
国家や国民を守ると言うやりがいの元、命の危険には見合わない賃金で搾取されてそう
352:名無しのプレイヤー
そして有能な人材は海外に流出していくんですね、わかります
353:名無しのプレイヤー
討伐隊では業務を遂行できなくなって民間委託とか始めたりして
354:名無しのプレイヤー
普通に暮らしてて悪魔被害に遭っても危機管理が足りてないとか自己責任とか言われそう
355:名無しのプレイヤー
緊縮日本の悪口を言うのはやめるんだ!
356:名無しのプレイヤー
緊縮日本も大概悪口な気がするw
357:名無しのプレイヤー
いちいち前の世界の日本だの書くのは面倒だからな。わかりやすくていいけど
358:名無しのプレイヤー
コロナ日本とか小日本とかよりはマシな気がする
359:名無しのプレイヤー
どれも酷いw単純に前日本とか元日本とかじゃ駄目なのか
360:名無しのプレイヤー
駄目じゃないけど、帝国・皇国・日帝・大日本とかと比べてパンチが弱い
361:名無しのプレイヤー
こっちのイケイケな日本を見てると、前世の日本はどうしてああなってしまったんだ感が強い
362:名無しのプレイヤー
正直政治とか興味なかったけど、コロナのグダグダで政治家って大事なんだなって思いました。まる。
363:名無しのプレイヤー
その点、リーダーに相応しい有能なプレイヤーがいてよかったわ。
364:名無しのプレイヤー
カリスマがやばいわ姉上は。あの人についていけば大丈夫って安心感が凄い
365:名無しのプレイヤー
俺が率いてやるって感じの対抗馬も特にいないし、これからプレイヤー勢力は連盟一色になりそうかな
366:名無しのプレイヤー
転生直後に話題になってたランカーグループは結局どうなったの?
367:名無しのプレイヤー
そういえば影薄いよなあそこ
368:名無しのプレイヤー
今はレベル上げに忙しいんだろ。大半は討伐隊に入ってる訳だし。仕事の傍ら全く違う事をしてる姉上が異常なんだ
369:名無しのプレイヤー
というかランカーディスコって、底辺連中の僻み妬みを嫌ったチュートリアル上位者が情報交換の場として作ったに過ぎないし。
最初に声掛けした人も組織化しようとかあまり考えてなかったと思うよ
370:名無しのプレイヤー
ランカー達は会長が説得したみたいだね。
高額の寄付金まで出す積極的賛成の人は少ないけど、総論としては、とりあえず傍観して上手くいきそうなら合流させてっていう消極的賛成に持ってったみたい
371:名無しのプレイヤー
あちこち飛び回って直接説得し回ったって話だな。後寄付金集め
372:名無しのプレイヤー
すげえ……
373:名無しのプレイヤー
流石です姉上
374:名無しのプレイヤー
さすあねは笑う
375:名無しのプレイヤー
ふむ。このまま順調に行けば連盟ももっと大きな組織になっていくのだろうか
376:名無しのプレイヤー
そういえばうちって資金面は大丈夫なんかね?
色々サービスを提供してるけど、会費も取らずにやっていけるんだろうか
377:名無しのプレイヤー
一応寮の賃料は住民負担(それでもめっちゃお得)だけど、他の事は全部会長の持ち出しと寄付金で賄ってるらしいからな……これ以上の拡大となると収入面を強化しないと難しそうだ
378:名無しのプレイヤー
世話になってる分、俺らも寄付するべきなんだろうか
379:名無しのプレイヤー
今のところ小口の寄付は受け付けていなかったはず。
380:名無しのプレイヤー
なんで?
381:名無しのプレイヤー
会長の意向。無理して寄付するぐらいならまず自分の生活に役立ててくれって事をどこかで言ってた
382:名無しのプレイヤー
優しい……
383:名無しのプレイヤー
これは身も心も清らかな天使ですわ
384:名無しのプレイヤー
お前ら知らないのか?
姉上はな、まだこの世界に来たばかりの誰もが手探りの状態の中で、家も所持金もなくて困ってる文無しホームレスプレイヤー10人を自分の家に招いてる聖人だぞ
385:名無しのプレイヤー
これはさすあね
386:名無しのプレイヤー
聖人すぎて逆にちょっと不安になるわ。そんなに優しくて組織運営とか大丈夫か?
387:名無しのプレイヤー
会長宅で暮らしてた人に聞いた話だけど、会長は底抜けに優しい人ではあるけど、締めるべきところは締められる人だってさ。
指示は的確で物腰は柔らかくて話もよく聞いてくれる最高の上司だってその人は絶賛してたよ
388:名無しのプレイヤー
へー、厳しい一面もあるのか
389:名無しのプレイヤー
そういえば単純に忘れてたのか確信犯なのか金を使い込んじゃったらしくて寮で家賃滞納した奴がいたけど、会長と1対1で話をした後は怯えるみたいに身を縮こまらせてたわ
390:名無しのプレイヤー
なにがあったんですかねぇ……
391:名無しのプレイヤー
「お話」かな
392:名無しのプレイヤー
甘いだけの人じゃないみたいで安心したわ
393:名無しのプレイヤー
とはいえこのままおんぶにだっこじゃいけないと思うんだよな
394:名無しのプレイヤー
じゃあどうする?
395:名無しのプレイヤー
寄付金集めのクラウドファンディングでもする?
396:名無しのプレイヤー
それもいいかもだけど、やっぱり定期収入は作っとくべきだと思うんだよね。
具体的には会費。1人月5000円でもあるとないとじゃ全然違うと思う
397:名無しのプレイヤー
寮暮らしなら、浮いてる水道光熱費分だと思えばそのぐらい安いな
398:名無しのプレイヤー
給付金で月10万以上貰ってるし、もっと取ってもいいと思うけどな
399:名無しのプレイヤー
月1万とか?
400:名無しのプレイヤー
一律だと寮暮らしとそれ以外が不公平だし、寮住みなら1万、それ以外なら5000円とか分けた方がいいんじゃないかな
401:名無しのプレイヤー
確かに
402:名無しのプレイヤー
ちょっと高い気がするけどな。あんまり高いと新規が入ってこないだろ
403:名無しのプレイヤー
まあ細かい額は置いといて、連盟を維持するためにとにかく少額でもいいから会費は取るべきだと思う。署名でも集めようかと思うんだけど、どうかな?
404:名無しのプレイヤー
いい考えだと思うよ
405:名無しのプレイヤー
俺も賛成。財政基盤の強化は大事だ
406:名無しのプレイヤー
いいね! やろう!
407:名無しのプレイヤー
よーし、ならオンライン署名でやってみるか
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退魔省
澄んだ空気の寒々しい冬の空。
薄い青空に、貧相な白い雲がたなびいていた。
地上には林立する摩天楼が広がっている。
コンクリートジャングルの間を行き交う無数の人々や車。
地球上でも一二を争うメガシティ。日本帝国の首都、東京だ。
帝都の一等地、首都中枢に聳え立つ退魔省の高層ビル。その会議室。
暗い色調の木目を基調とした内装に、ふわりとした踏み心地のカーペット。片側の横壁には壁一面を覆う程の巨大なモニターが設置されていた。
広々とした室内には巨大な口の字型の円卓が配置され、それを取り囲むように並べられているのはグレードの高いオフィスチェア。
そんな高級感溢れる高官用の会議室には、省内上層部の人間が集まっていた。
居並ぶ面々の顔をよく見ると、白髪や顔の皴が目立つような年配の者が少なかった。
40-50代の者が多いだろうか。年齢層の高い一般的な重役会議と比べれば顔ぶれが若々しい。
討伐隊という組織の風通しが良く、若い人材が上に立っている……という訳ではない。
単に年齢と比べて若く見えるというだけで、実年齢で言えば大半が老人だ。会議室の平均年齢は60歳を超えているだろう。
見た目の若さは、異能者特有の現象だ。
レベルが高くなるほど老化が遅くなり、寿命が延びるのはこの世界では誰もが知っている事象だった。
異能者の平均寿命は、未覚醒の者と比べて10歳以上の差があると言われているが、それは少し古いデータで、国策として異能者を増やしている現在ではその差は徐々に縮まってきている。
低レベルでは気休め程度の老化予防でしかないのだ。
しかしLV10やLV20といった中堅~高レベルになってくると、一般人と比べて老け具合は目に見えて違ってくる。
未覚醒の者とLV20異能者であれば同じ60歳でも、片や老人で片や中年と、まるで世代が違って見えるほどだ。
俗説ではあるが、異能者はレベル×年程度の老化を抑えることができるとも言われている。
彼ら彼女らは、現役時代は討伐隊のエース格である高レベル異能者が殆どだった。
組織において出世の基準は、その者がどれだけ組織に貢献したか・するかだ。
年間を通して悪魔と戦っている討伐隊では、本人が挙げた戦果は組織貢献の大きな指標となっている。
異能者組織で出世するには、異能者としての実力が大いに影響した。
貢献に報いるために報酬を渡し、出世を約束する。
現場で活躍した異能者が、いずれ組織の幹部となる。
そうやって回っているのが退魔省であり、ヤタガラスの時代から続く伝統であった。
実戦を知らない人間が上に立つなど言語道断。自分よりも弱い、実績のない者の指示になど命は預けられない。
実際に悪魔と戦っている自分達こそが、悪魔対策のプロフェッショナルであり、真に国を守護している護国の剣。後方でふんぞり返るだけのお偉方に指図される謂れはない。
そうした尚武の気風が強いのだ。
もちろん戦うだけしか能がない脳筋では、どこかで昇進は頭打ちになる。
高官になれるのは、文武両道の一部のエリートだけだ。
退魔省にも異能者ではない職員はいる。むしろ割合で言えばそちらの方が多数派だ。
しかし幹部を占める割合では、異能者が圧倒的に多かった。
非異能者が出世できない訳ではなかったが、相当頭が良くないと無理だ。
例え有名大学出身でも、討伐隊からのたたき上げではない文官は戦場素人と目され、組織内では低く見られがちだった。
会議は滞りなく進行していく。
議題は、『1年間の総括と来年のビジョン形成』だ。
「今年は有望な新隊員の加入が多く、極めて豊作の年でした。A級・B級の認定合格者は前年の10倍以上であり、また教育隊からも優秀者の数が増えているとの報告を受けております。戦力増強はすこぶる順調であります」
「これは凄い。一気にA級とB級の数が増えたぞ」
「しかしあまりにも突然だ。何が起きたんだ?」
「異能者の裾野を広げ、優秀な人材を発掘して育て上げる。我々の政策が効いてきたのでしょう」
「きっとそうだろう。素晴らしい成果だ」
喜ばしい報告を聞いて、会議室の面々は口々に感嘆の声を上げた。
細かい数字の書かれた報告書に目を落としながら、ある者が発言する。
「今年だけでB級相当の実力を持つ人間を40名もスカウトし、そのうち10名がA級に昇級したと。……にわかには信じがたい数字です」
「ですが、事実です」
「そういえば噂はあったな。今年はとんでもなく豊作だと」
「最近はあちこちでB級の新人を見つけただの、A級に昇級した者が出たという話を聞きましたからな」
「彼らが配属された部隊では例年より成果が増しており、死傷者も減っています。こうした情報からも、何かの間違いという事は考えにくいかと」
出席者の中でも年若い報告者の男は、そこで言葉を切り、分かりやすく資料を提示することにした。
「……少々お待ちください。今1人1人のプロフィールを表示します」
ノートパソコンを操作して、会議室のモニターに目当ての情報を表示させる。
大きな画面にデカデカと、それぞれの調査書がゆっくりと順々に公開されていく。
「ふむ……皆若いな」
「垢抜けているというかなんというか……顔立ちが整っている者が多いな」
「しかし、奇抜な髪色が多い。最近の流行りなのか?」
「名前も……かなり個性的だ」
「日本人的な顔立ちの者が少ないが……大丈夫なのかね?」
「はい。国籍が日本であることは確認済みです」
「ならばいいのだが」
「むしろ気になるのは、そうした有望株の入隊日が11月12月に偏っている事ですね」
その言葉に、幾人かが同意して声を上げる。
「確かに。いささか奇妙な偏り方だ」
「これほどまでに才能のある者たちが今まで埋もれていたのか? スカウトは何をしていた?」
度重なる質問に疲弊しているのか、額に浮かんだ汗をハンカチで拭いながら、生真面目そうな官僚が答える。
「その点は経歴を見ていただければわかる通り、皆つい最近覚醒した者ばかりです。異能者登録を行い、初心者用異界を利用し始めた時点で広報官が粉をかけ、大半の勧誘に成功しているので、むしろよくやった方かと思われます」
「なるほどな」
「……しかし不思議だな。これほどの才能の持ち主たちが、まるで示し合わせたかのように時期を同じくして覚醒するか。偶然にしては出来過ぎのような気もするが」
「偶々だろう。100年に1度や1000年に1度起こるような稀な出来事が今起きたというだけのこと。そう難しく考えずともいいだろう」
「しかしだな、この者たちの容姿、経歴、家族構成、才能、覚醒時期……。どうにも奇妙な点が多すぎる。何かの作為を感じないか?」
その言葉に、会議室は一瞬、シンと静まり返る。
普通と違うというのは、誰もが薄々は感じている事ではあった。
「……何かとは何だ。まさか神とは言うまいな」
しかしだからといって、その理由を超常存在に求めたりはしない。常識で考えれば、それらは只の偶然でしかありえないからだ。
「いや、それは……」
「これほどの才能を秘めた異能者を秘密裏に他国へ送り込むなど、地球上のどの勢力にも不可能だ。大体仕込みに何年かかるんだ」
「しかりしかり。仮にこの者たちが我が国に送り込まれた手の者だったとして、それを我々が見抜けないはずがない。日本で生まれ育っていることは間違いないのだろう?」
「一体誰が、どんな方法で、何のためにこんなことをする必要がある」
「……いや、失礼。戯言だった」
口々に否定の言葉が投げかけられて、発端となった言葉を発した男はばつが悪そうに謝罪した。
そう、普通に考えれば、これが何者かの仕業だというのはありえない。
どんなに引っかかりがあろうと、論理的に説明できないのであれば妄想に過ぎなかった。
これが得体の知れない何かの仕業であると解釈するには、非現実的な仮定を幾つも重ねる必要がある。
その中に正解に近い発想が混じっていたとしても、正気であれば信じる者はまずいない。
「大いに戦力が増したのだ。素直に喜べばいい」
「そうだな。若い世代が育つのは良い事だ」
「物資の備蓄も順調だ。来年の攻略は確実に成功するだろう」
「10年前の雪辱を果たす日は、もう目前ですな」
「石巻異界。あそこさえ潰してしまえば、集中させている最精鋭たちを全国に散らばらせることが可能だ。そうなれば帝国の守りは万全となる」
「世界に冠たる我が国の姿を世界中に知らしめる日は近いでしょう」
「ああ、もうアメリカにも中国にも大きな顔はさせん」
「圧倒的な勝利を飾れば支持率も鰻上りだろう。広報に関する準備も抜かりはないな?」
「ええ、既に関係各所に話はついています。後は実際に勝利した絵を撮るだけです」
「うむ、まったくもって順調だ」
「かねてからの計画通り、いやそれ以上の進捗だ。失敗する事はないだろう。後はどれだけ損害を減らし、勝利を有効活用できるかの段階にある」
10年前の作戦失敗の衝撃と、以降の屈辱はこの場の全ての人間の心に刻まれているものだった。
あの敗北によって、この国を牛耳っていたと言っても過言ではなかった退魔省の勢力は、大きく後退した。
それでも主導権を手放すことは無かったものの、代償として幾つもの妥協を強いられ、非常に歯がゆい思いをしていた。
「この計画が成功すれば、政府に今まで以上の影響力を発揮できる。予算増額も思いのままだ」
「あのふざけた法律……異能者特別法も廃止させたいところだが」
異能者特別法とは、簡単に説明すれば、異能者が犯罪を行えば一般人よりも罪が重くなるという法律だ。
日本の異能者勢力の大本である退魔省が、そんな自らを縛る法律に賛成するわけがない。
一般人には察知しにくく防ぎようのない異能者による犯罪行為は昔から問題視されており、罰則を強めて抑止効果を高めようという声は常にあった。
しかしそれに反対の立場をとってきた退魔省は、そうした声を封殺してきた。
だが勢力が弱まり手綱が緩んだ隙をつかれ、味方だったはずの与党内からも裏切りがあり、法案を通過させられてしまったのだ。
肝心の捜査能力は大して進歩が無い為あまり効果があったとは言えないが、異能者からすれば存在するだけで鬱陶しい法律だった。
多少なりとも後ろ暗いことを抱えた者にとっては尚更である。
「国防貢献による免税特権の条件も緩和させよう。前線だけではなく、後方にも適用できるようにしたいものだ」
「そうですな、非課税になるのは国からの給与だけなどとケチ臭い事は言わず、全ての収入を免税にしたいですな」
「ははは、それはいい。後方勤務の者も喜ぶでしょうて」
「そこまでは難しくとも、その場合は給与増額でも求めれば良いでしょう」
「いやぁ、来年が待ち遠しいものです」
ハッハッハ、と会場内に笑い声が木霊する。
日本の政治におけるパワーバランスにおいて、退魔省は最も影響力のある勢力だった。
政官財民の上に立つ、この国の支配者と言っても決して大げさな表現ではない。
日本の異能者を束ねる圧倒的な力は、ただそこにあるだけでも存在感を放っている。
生身の人間では対応できない、強力かつ種類も豊富な様々な異能を有しているのが退魔省だ。
それが大人しくしているのは、理性の力によるところが大きかった。
自分たちで権力を握り、自分たちに有利な政策を行うことができる環境にあるからこそ、その力を周囲に向けることはない。
だが、その権力を失い、追い落とされるようなことがあったらどうなるだろう。
我を忘れるような事があれば、なりふり構っているだろうか。暴れ始めたら手が付けられないだろう。
彼らを怒らせてしまい、非合法な手段に出られたらどうしようもないという怖さがある。
自衛手段を持たない人には、退魔省に喧嘩を売るのは非常に勇気のいる行為だった。
恐怖だけでは人心は離れていくばかり。それを繋ぎとめる役割を果たしているのが、現実世界では入手不可能な、異界から得られる希少素材だ。
異界の対処は退魔省の管轄であり、そこから得られる産物もまた、退魔省の独占下にある。
どこに素材を流すかは退魔省の胸先三寸であり、当然、それによって作られる製品の流通にも影響力を有していた。
どんな怪我でも治す回復薬や、万病に効く万能薬、若返り効果すらある霊薬など、欲のある人間であれば喉から手が出るほど欲しい品々を、従順に従う権力者に優先的に回すことで、退魔省は絶大な権勢を維持していた。
その権力の源泉である高レベル異能者を多数失い、高位異界でしか手に入らない希少資源の供給も先細りしてしまい、強権政治に反感を持っていた勢力に反抗を許してしまったのが10年前の出来事だった。
おおよそ議題を消化して、雑談交じりの悪だくみを始めていた面々だったが、突如として会議室の扉が空けられたことで静まり返る。
全員の視線が集まる先には、慌てた様子で入室してきた職員の姿があった。
「君、今は重要な会議中で……」
「いや、それを知らずにここに来ることはないだろう。どうした? 急を要する報告か?」
「は、はい。緊急事態です! 中国武漢にてGPが急上昇! 高位異界が出現し、大規模な
「なに!?」
ざわめく会議室。
行動が素早い人間は、電源を切っていた端末を起動して何か報告が届いていないかと調べ始めた。
「中国か。国内ではないんだな?」
「はい」
「ふむ、ならばそう慌てる必要はなさそうだな」
「そうですな。何が起きたか知りませんが、中国のことなら彼奴らが自分達で何とかするでしょう」
「いっそうまい具合に弱ってくれたら嬉しいのですがな」
「はっはっは、まあ、お手並み拝見と行きますか」
悪魔災害と聞いて身構えたものの、発生場所が友好国でもない国外だと分かり、一気に緊張感は和らいだ。
姿勢を正していた者も背もたれに体を預け直したりと、会議室にはどこか弛緩した空気が流れていた。
「それで、規模は?」
「中心地のGPは25を超えています。それに影響を受け周辺のGPも上昇中。各地で小中規模の異界が発生している模様です」
「GP25? 石巻並みじゃないか」
「おかしいな。それほど高位の異界ができる際は何かしら予兆があるはずだが……何も聞いてないぞ?」
「そうだな。中国で災害があったともGPが上昇しているとも、そんな報告は無かったぞ」
「はい、予兆はありませんでした。30分ほど前に突然GPが上がり始め、急速に事態が進行したとの事です」
「何? ……異常事態ではないか」
観測史上でも上位に入る規模の最上位異界が、これほどまで急速に発生するなど前例のない事だった。
他人事でいた者たちも、徐々に事の重大さを理解し始めて、真剣な顔つきに戻りつつあった。
「武漢というと……湖北省、内陸か。台湾や半島に影響は?」
「今のところ、特に影響はありません」
「現地の様子は? 冷静に対処できているのか?」
「詳細な情報はまだ届いておりませんが、中国側にこの事態を事前に予想していた節はなく、大変混乱していることは間違いないかと」
「避難までの猶予は一切無かったのか?」
「初期のGPの異変を確認した時点で避難指示を行っていれば、或いは間に合っているかもしれません」
「最悪の場合、避難も封鎖も間に合っておらず、大量の民間人がいる都市に悪魔が溢れ出している可能性もある訳か」
「ふむ……中々難しそうな状況だな」
悪魔災害において、住民の避難と異界の封鎖は初動が命だ。
素早く異変を察知して、事前に住民の避難を完了させた上で部隊を展開させることができれば、異界のランクにもよるが余計な事を考える必要もなく、スムーズに対処できる。
しかし何らかの理由で初動が遅れてしまい、異界周辺の避難が完了しておらず、部隊の展開も間に合っていない場合、その代償は命によって購う事となる。
異界から離れて安全地帯に向かいたい民間人と、封鎖の為に現場に急行したい部隊とでは進行方向が正反対となる。
輸送路は限られている為、どちらかを通すならどちらかを待たせなければならない。
日本の場合は、人命優先で避難を最優先とするので、道路や交通機関は全て民間人の為に使われることになる。
討伐隊はヘリや垂直離着陸機を使い、空路にて現場に急行する。
装甲車も運んでいけるが、近くに降ろす場所が無ければ結局は現場に持っていくことができない。そういった場合は諦めて歩兵だけで異界周辺に直接降下し、封鎖に乗り出すことになる。
万全の状態で迎え撃てるわけではないので、当然通常と比べて被害は嵩むことになる。
それが人口1000万人以上の大都市で起こっていると考えると、その混乱ぶりは想像に難くない。
「異界発生の原因は分からないのか?」
「はい。これといった災害もなく、大事件が起きたとも聞いていません。今のところ全くの不明です。突発的にGPが跳ね上がった事しか把握しておりません」
「その辺は続報待ちか」
状況を咀嚼するように、静かに腕を組んで俯いたり、うなりを上げる面々の中、ふと気が付いたように誰かが声を上げた。
「そういえば現地に邦人はいるのかね?」
「あ……そうですね、細かい数は分かりませんが、武漢は大都市です。最低でも数百人、下手をすれば1000人を超える邦人がいるのではないかと思われます」
どこか他人事で高みの見物のつもりでいた面々だったが、その言葉によって一気に当事者意識が芽生えた。
そして状況の悪さに顔を顰める。
「……まずいな」
「放置する……訳にはいかんよな」
「ああ、それは論外だ。せめて形だけでも助ける素振りを見せなければ外聞が悪すぎる」
「全員帰国させるのか?」
「まあそうなるだろう」
「全く、手間のかかる……」
「どうしてそんな場所にそれほど日本人がいるんだ」
現状では国内だけで手いっぱいで、来年には大規模作戦も控えている。
本音で言えば何の手出しもせずに静観していたかったが、現地に自国民がいるとなればそうもいかない。
自分達から公開するつもりはないし、開示請求がかかっても不都合な箇所には黒塗りして提出するとはいえ、一応議事録は残るので誰も直接的な言葉は口にしなかったが、不機嫌そうな顔を見れば内心の感情は明らかだった。
「規模はどうあれ、何かしら部隊を派遣する必要があるな」
「と言ってもどこの部隊を送る。GPが25を超えているとなると、生半可な戦力では役に立たんぞ」
「激戦区に近寄らせなければいいのでは? 適当な部隊を送ってお茶を濁せばよろしいかと」
「うむ、そのあたりが無難か?」
そんな結論で話が纏まりかけた頃、おもむろに高官の一人が口を開いた。
「大した犠牲が出なければそれでいいかもしれんが、犠牲者が多くなった場合、おざなりな対応では国民からバッシングを受けるのではないか」
「ではどうする?」
「隙は無くした方がいい。最悪の場合が起きても、我々は最善を尽くしたが、しかし我々以外の誰かの所為で犠牲者が出てしまった。そう言い訳できる状況を作るべきだ」
「一理ある。しかし自国の安全を考えれば国内から戦力を割くことはできない。無理せず派遣できるのは出涸らしぐらいだ。具体的にどうやって最善を尽くすと言うんだね」
「そうだ。手の空いている精鋭などいないぞ」
平時の討伐隊は完全ホワイトであるため、素人目線では戦力に余裕があるように見えるが、当事者や専門家からすれはまだまだ不十分で万全とは程遠い。
そうした認識の差異は、両者の知識量の違いから生じる視点の差によって生まれる。
平時が基準で最悪を想定せず、外野から口出しするだけの素人と、常日頃から最悪を想定し、国を守るという責任感を持って仕事をしている本職の違いだ。
十分な戦力を抽出して有力な部隊を派遣する事は、できると言えばできる。
1人1人が多少忙しくなる程度で、業務を回すことはできるだろう。
しかしそれは“平時が続けば”の話だ。
万が一、有事が起きてしまった場合、常と比べて対応力は格段に下がってしまう。
平時で暇な時の討伐隊を殊更に大きく取り上げて、人員過剰で無駄な戦力だと批判する人もいるが、平時の無駄は有事の備えだ。
普段から忙しくしている組織が、更なる有事に対応できるはずもない。
楽観や慢心はタブーだ。それで失敗したのが10年前だった。
その記憶はまだ新しい。国内に大規模異界という爆弾を抱えているのもあって、慎重に成らざるを得ない。
精鋭の派遣には大多数が否定的だった。
「いや、いるではないか。最近大量に出てきた若い芽が」
「さっき話していた奴らか? 確かにぽっと出の戦力で配置転換しやすくはあるが……」
「確か石巻に送る予定だったな。B級A級を多数派遣したとなれば、言い訳は立つか」
「新人を送るのか? 経験の浅い者ではどうなる事か。1人でも失えば大損だぞ」
「ある程度補充可能な中堅ならともかく、最精鋭の卵を失うのはいかん」
「ならばベテランを引き抜いて、新人はその穴埋めに使うか?」
「それはそれで国内の防備が不安だ。やはり優先すべきは国内だろう」
暫く議論を重ねた末に、大まかな結論は出たようだった。
「では、邦人救出には新進気鋭の精鋭たち中心に、臨時部隊を編成するということで」
「うむ、それがいい」
「出し渋ればやる気がないと批判されるし、僅かな邦人の為に戦力を割きすぎれば、それはそれで顰蹙を買うだろうからな。そのあたりが妥当だろう」
「無理のない範囲で数と質を両立させた良いバランスだ」
異議なしという事か、特に反対意見は出てこない。
「派遣部隊の精鋭には自らの安全を第一に考えるように厳命しましょう。一兵たりとも損なってはならぬと」
「そうだな。矢面に立たせるならC級だ」
「邦人に犠牲者が出てしまったとしても、全ては悪魔と中国の所為ということにすればいい。我々はできる限りのことをしたとな」
「どうせなら部隊派遣をあちらから断って欲しい所だが……」
「確かにな。その段階で失敗すれば外務省の責任にできる。できるだけ高圧的に交渉させよう」
「報道陣に対する根回しも必要だな」
「救出部隊に記者を同伴させますか?」
「そうだな、御用記者を連れて行くのもいいだろう」
ある程度方針が定まったところで、各々がそれぞれの役割を受け持ち、会議は解散となった。
ここで決められた方針に沿って、内閣は動かされるだろう。
日本を牛耳る組織の方針は、政府の決定と同じ。
まさに影の政府そのものだった。
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