NieR:Automata It might to [BE] (ヤマグティ)
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君に最も近くて、永遠のように遠かったあの場所。
Prorogue. [to be or not to [B]e]


マジの初投稿です。

ニーア3週目が題材の話です。

End of yorha とか Eルートというワードを知らない人はネタバレなので推奨しません。 

多分知らない状態で見ても面白くないです。

だからといって知ってたら面白いという保証もないです。



 

 

 

Prorogue [to be or not to [B]e]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの人に触れ合った時の事は忘れない。

この恋が永遠であるという確信。

 

 

あの人の側にいても、あの人の気持ちを判らず。

苦しくて、苦しくて。

 

 

あの人の近くにいれば、あの人を傷つける。

あの人から離れても、あの人を傷つける。

 

 

・・・・・・ようやく、私の場所を見つけた。

あの人に最も近くて、永遠のように遠いこの場所を。

                  

                  黒の血盟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽△

 

バンカー内部の窓際で、一人の女性が外を眺めている。

窓際によりたって外を眺めるその姿は悠然としているようにも見えるし、どこか憂鬱そうにも見える。

ただ分かっている事として、その窓からは青く美しい地球が見えるのだが、彼女はただ暗くて、黒い宇宙を、ずっと眺めているのだ。その表情は読めない。目は黒い布で覆われているし、口角はピクリとも動かないからだ。

 

やがて暫くすると歩きだし。[9S]と表示された部屋に入っていった。

 

 

 

 

 

__________________________________________

 

 

 

 

「あぁ、待ってたよ2B…これを渡しておく。」

 

そういって9Sが私に物資を渡した。

 

次の作戦に備えたものだ。

 

エイリアンはすでに滅んでいた。さらにアダムとイヴを失った機械生命体達は今混乱状態にある、これは機械生命体達を倒す絶好のチャンスなのだ。そして私達B型は主戦力として前線で戦うので、これはそのための物資。

 

 

 

私が9Sの部屋に訪れたのはこれを受け取るため。

ただそれだけだ

 

「2B…」

 

ふと9Sが何かを言おうとする。何か伝えなければならないと言わんばかりの挙動だ。

 

「いや…なんでもない…気を付けて…。」

 

結局9Sは何も言わなかった。

 

❬予定されていた準備行動を完了。最終確認:自室に配備された装備❭

 

ポッドが割りいるように話す。

私はそれに従い自室に戻る。

 

……ただそれだけ。それだけだ。

 

私には9Sが何を言おうとしたか、わからなかった。

 

そう私にはわからなかったのだ、

9sが何を言いたかったのかなんて。

そしてそれを知りたがる必要もない。

だから…だから私は自室に戻る。

そして作戦へ向けた準備をする。

ただそれだけ。それだけなんだ。

私は何も気付かなかったし、

気付くような、詮索するようなことも何もない。

 

何も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、イヴと戦い、倒した時の事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

君は汚染されてしまっていて。

 

君をまた殺してしまって。

 

悲しみに暮れていた時

 

君の声がした。

 

先程までのやり取りなんて嘘だと言うように何気なく私に語りかける君。

 

 

 

 

 

初めて私が君を殺さずに済んだ日だった。

 

 

 

 

 

初めて君が君のまま戻って来た日だった。

 

 

 

 

嬉しくて、ただ嬉しくて。あの日程喜びに満ちた日なんてなかった。

 

 

 

だけど。

 

なんで、それがずっと続くなんて思っていたんだろう。

 

私にそんな資格なんてないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…またか…。結局…いつも通りだ…。




皆さんは もしもの話 を考えるのが好きですか?

僕はそれが大好きで漫画やアニメを見るとすぐ「もしかしたらこんな展開にもなりえたかも」とか「ここでこうしなかったら未来はどうなってたのかな」とかを考えます。

特に一番多いのがいわゆる「逆だったかも知れねぇ…」ってやつです。

察しがいい人はなんとなく僕が何を言いたいかわかったでしょうか?

あとどうでもいいけど僕はクールな女の子とか荒んでる女の子が大好きです。


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Episode.1 [私ハ知ッテイル。]

ゲーム本編の2Bの内心描写が少なすぎてほとんど自分の考察で書かなきゃいけないから初投稿です。


 

 

 

私はいつまで戦い続けるのだろう。

この血塗られた、戦場の渦の中。

 

 

 

私はいつまで守り続けるのだろう。

終わる事のない、無限の戦争の中で。

 

 

 

私はいつまで信じ続けるのだろう。

欺瞞と虚飾に満ちた、この世界を。

 

 

 

私はいつまで嘘をつき続けるのだろう。

その暗い未来に、絶望し続けながら

 

                白の契約

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に戻った後。私は支給されていた特殊装甲を着た。

 

最終奪還作戦。

 

これが成功すればおそらく地球は人類の手に戻るだろう。9000年にわたる悲願の達成は目の前にあり、アンドロイド達も奮起している。

 

けれでも…私の気分はいつもとそう変わらない。

淡々とした感情が高ぶることも沈む事もなく一つの直線になっている。

 

暫くしてバンカー全体に司令官の声が響く。

 

最終奪還作戦が、もう始まる。

 

「思い返せ!故郷を奪われた苦しみを!」

 

 

「我々は諦めはしない!」

 

 

「海を、空を、大地を…」

 

 

「おぞましき機械生命体に奪われた地球を我々は取り返す!」

 

 

「本作戦の成功をもって」

 

 

「今ここで、この戦争を終わらせるのだ!」

 

 

 

「人類に栄光あれ!」

 

 

 

あの言葉だ、私はヘルメットを被る。耳を塞ぐように。

 

 

 

 

 

 

「「「人類に栄光あれ!!」」」

 

 

 

 

 

 

けれでも隊員たちの返事の声は、鮮明に響いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は知っている。こんなの茶番だって。

 

 

 

 

 

 

△△△

 

 

 

ゴオオオオオオオオオオオ……

 

 

青空。地上にむかって火球が分散する。

いや、遠目から見れば火球に見えるあれは飛行ユニットだ。

後続のヨルハ隊員たちが先行部隊に続いて地球への着陸を目指している。

私は、今そこにいる。

 

 

向かってくる機械生命体達を撃ち落としながら飛行ユニットで地上の合流地点へ向かう。

9Sもいるスキャナーモデルの先行部隊の妨害のおかげがあって奴らの数はそう多くない。

 

まだ合流地点に着くまで少し時間がある。考える余裕ができたので、自分の任務を再確認しよう。

 

 

 

今の私の目標は先行し、妨害している機械生命体の無力化任務を終えた9Sと合流する事。そしてその後9Sから現地での任務を確認し、最終奪還作戦に参加する。

私は後続だから、おそらく任務は先行部隊の援護だろう。

 

オペレーター6Oに座標を送ってもらったので今やるべき事は撃墜されずに指定の合流場所に向かうだけ。

 

いまのところはそれだけか…。

 

 

 

 

 

 

▪▫,..'''''''..,,,,..''~,,ーーー------・,,

 

 

 

 

 

廃ビルの屋上。

 

 

 

「う゛あぁ゛…!」

 

傷だらけになった一体のヨルハが倒れる。

 

 

「22B!!」

 

22Bと呼ばれたその機体は、もう動かない。

 

「クソォ!クソォォォォ!!」

 

残された片割れが怒りを込めて私達に刃を振るう。

 

私は後ろにいる君がなるべく戦闘に参加しなくていいように、向かってくる彼女の刃を的確に受け流し、隙をつき、胴体を斬りつける。B型の動きは一撃が強いし重いが、個体差あれど大体は単調だ。慣れた手つきで追い詰める。追い詰めれば追い詰める程相手の動きは鈍くなり、楽になる。

 

君は…対アンドロイド戦なんて初めてだからハッキングを構える手がまだ震えている。

 

 

 

 

ビッッ

 

 

斬りつけた場所からケーブルの切れたような鈍い音が小さく鳴った。

 

 

刃が深くまで入ったのだろう。

 

 

 

「あぁ゛…ぐ…うぅ…」

 

当たり所が悪い所に当てたから、すぐに彼女は体勢を崩した。致命傷だろう。

 

「隊…長…」

 

その内彼女も動かなくなった。

 

 

後ろに視線を向ける。

「相手が裏切り者といえど何故隊員同士で戦わなければならないのか」とばかりに君の顔は沈んでいる。

 

 

…君は私をどう思っただろうか?

 

ただ淡々と彼女らを斬り倒した私をどう思っただろうか?

 

恐れただろうか?嫌悪しただろうか?

 

 

……

 

いいや、私は知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

君は私を嫌ってなどくれない。

 

 

 

 

 

 

 

「これは、一体…。22B …?64B…?」

新たなヨルハ隊員が現れた。恐らく彼女らの仲間だろう。

「お前達が…やったのか…?」

 

信じられないもの見るような顔で私達を見る。

 

「お願い!抵抗しないで下さい!」

戦わなくて済むように、君が必死に訴える。

 

 

 

だが、仲間を殺された恨みなんてそんなものでは治まらない。

 

「うるさい!なにも…」

 

「なにも知らない癖にっ!!」

 

その言葉が、深く刺さる。

 

 

 

____――――――_△--●ー,,〘''''ー―__△△▽▽

 

 

 

 

 

 

ああ…。

 

考える余裕ができると、いつも嫌な事を思い出してしまう。

 

 

辛かった事。悲しかった事。どうしようもできない事。

 

 

忘れてしまいたいような記憶が私の頭の奥底に満ち溢れている。

 

 

でもそれらは、本当は…消してしまおうと思えば幾らでも消せるんだ。

 

皆だってそうしている。

 

それなのに、どうして私はこんな物をいつまでも持ち続けるのだろう。

 

罪悪感?

 

自分への戒め?

 

それとも…それとも…

 

 

その記憶の中に…いつだって君がいるから?

 

 

 

[感情をもつことは禁止されている。]

 

 

これができれば、これさえできれば、どれだけ楽だったろう。

 

 

感情さえ、心さえ…無かったのなら。

 

 

 

ツ―――――

 

そんな感情を追いやるように一つの通信が入ってきた。

 

 

 

『月面人類会議より地上で奮闘しているアンドロイド諸君に告げる。』

 

酷く無機質な男の声だ。まるでポッドのよう。

 

『我らが誇る精鋭ヨルハ部隊が、敵ネットワークユニット、アダムとイヴを撃墜した。』

 

アダムとイヴ…アンドロイドのような彼らは…結局何がしたかったのだろうか。確かアダムは人類についてよく知りたがっていた。憎悪がどうとか、生と死がどうとか。自分からネットワークを切ったのには驚いた。それだけ死を実感したかったらしい。

 

ふと、アダムの腹を切り裂いた時の感覚を思い出す。

 

 

憎いと思った相手を殺しきったあの感覚。

 

 

あの胸に沸き上がる快か……。

 

 

いや、どうでもいい。

 

 

『この勝利は地球奪還にむけての大きな一歩となるだろう。』

 

そういえばアダムは…エイリアン達は自らの手で滅ぼしたと言っていた。

 

『我々月面の人類も喜びの声に満ちている。』

 

 

つまらない存在だと

 

 

『今後の更なる諸君らの健闘に期待している』

 

 

 

私達アンドロイドも、いずれそうしていたのだろうか。

 

 

 

『人類に栄光あれ。』

 

 

 

 

 

 

人類が既に滅んでいなかったのなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

指定された場所が見えてきた。地表に9Sが小さく見える。

私は飛行ユニットから飛び降り、着地する。最終戦の為に着込んだ無機質なヘルメットの目が緑色に光る。

 

 

「2B!」

 

 

9Sと合流した。

すぐに頭を任務遂行に切り替える。

 

私は2B。ヨルハ2号機B型、通称2B。よし。

 

『状況は?』

 

ヘルメットを被ってくぐもっていてもわかる冷静な声で確認する。

 

「作戦は開始。先行部隊は既に交戦中。僕たちの役割は、先行部隊の状況にあわせて援護する遊撃部隊。」

 

「先行部隊が交戦している場所をマップに転送しました。援護に向かいましょう。」

 

『了解』

 

任務開始だ。

 




2Bの心情考察をひたすら執筆する回が続きそう。でも僕は楽しいから許して。


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Episode.2 [不吉ナ予感]

ただただ本編通りの内容を書き起こすだけの回があと1~2話続くので初投稿です。


マップに示された先行部隊の交戦場所へ向かう。すると早速通信が入ってきた。

 

『こちら4B 。先行攻撃部隊アルファ。隊長。』

 

 

 

 

4B

 

 

 

 

___-..___------- ''-=----____---'--……--…▫▫▪

「そうかっ…!お前っ…!!そういうことか…!ガフッ……ゴホッゴホッ……クソッ!!仲間だと…思ってたのにっ……!!」

---'''''▫__▫~▪'▪▪▫______________-____...__,

 

 

 

 

 

忘れろ。今はそんなことを気にしてる場合じゃない。私は私のやるべき事をする。

 

『敵の攻撃に手を焼いている。至急援護を頼む。』

 

『こちら2B。遊撃部隊。今からそちらの援護に向かう。』

 

 

『了解。感謝する。』

 

 

ビル群を越え、4Bのいる場所へ合流する。

 

なるほど確かに苦戦しているようだ。

ネットワークを失った機械生命体達が暴走のような状態に陥っているので、いつもとは違う対処を求められているのだろう。

 

「ギギ…アンド…ロイド…コロ

 

ギンッ

 

鉄をたち切った鈍い音。まん丸な機械生命体の頭がコロコロと転がる。

 

機械生命体の一体がこちらに攻撃を仕掛けてきたので、その首をはねたのだ。

どうということはない。

 

エンゲルス

遊園地の歌姫

超大型機械生命体

アダム

イヴ

あと他に色々…

 

最近はずっと強敵ばかりを相手にしてきた。

こんな奴ら、戦い慣れている。

 

9Sのハッキングの援護もあって機械生命体達は次々と倒されていった。一通り壊滅させると4B部隊が援護に同行、交戦場所への援護に向かうたび同行者が増えていった。

 

だが楽にはならない。

機械生命体もその数を増やしてきているのだ。

 

 

「どうしてイヴのネットワークが破壊されたのに、どうして奴らは暴走状態に陥っているでしょうか…」

 

ふと、9Sが私も思っていた疑問を口にする。

9Sの言うとおりなんだか妙だ。

でも…そんなこと考えても私にはわからない。

 

『…私達は戦うだけ。』

 

現状、戦うこと意外にできることはない。

 

オペレーター6Oから新たな援護目標を指定される。

 

敵の数が多く思ったより苦戦しているらしい、急がないと。

 

 

 

…なんだろう、何か嫌な予感がする。

 

 

 

―――――ーーーーーーーーー――――――

 

 

 

 

指定された場所に向かい、部隊オメガの援護にあたっているときだった。

 

ビィーーーーーーーーーー……

 

周囲に異音が響きわたり始める

 

『何だ…この音…』

 

周辺の同行部隊もざわつき始める。

何の音?何処から?

そう思った次の瞬間だった、周囲の機械生命体がまるでビックリ箱のように首から脊椎のような部品を射出して________

 

 

バッチィ

 

『ああぁっ……!?』

 

機械生命体達が突如光を発すると共に、体が硬直し、機能不全になった。

 

しまっ…た…EMP攻…撃をっ…受けた…まず…い、周…りの同行者たち…も…同じ状態に…陥っている…9…

 

「2B!?大丈夫!?」

 

心配そうな声の9Sの通信が入った。

 

…そうだ…EMP攻撃の影響で頭がパニックなっていたが…ついさっき9Sには付近の増援の確認をさせていて…近くにはいないんだった、よかった…。

 

『油断……した…至近距離からのEMP…攻撃が…』

『再起動…しないと…』

 

再起動をするため、一旦機能を全てオフにした。

 

 

 

 

 

「援護するっ!!」

 

2B達がEMP攻撃を受けた。急いで援護しないとっ!!

 

ビルから飛び降り武器を構える。そして標準を合わせ槍を振り投げようと瞬間、

 

「…!?…し、視覚迷彩…!?」

 

奴らの姿にモザイクのようなものがかかった。先程の攻撃の影響が残ってたのか?

これでは相手の動きがよくわからない。

 

「一体、何がどうなっているんだ!」

 

何がどうなっている?訳がわからない。2Bといろんな死線をくぐり抜けてきたがこんな事態は始めてだ。

 

「くそっ…次から次へと…!早く倒して2Bを助けないと!」

 

そうだ、早く2Bを助けなければ。こんな小細工を気にしてる暇なんてない。

 

大丈夫だ、大雑把な敵の位置はわかる。

冷静になり、もう一度槍を構え、振り投げる。

 

ズドンッ

 

「ギッ……」

 

手応えあり。2Bと共に繰り広げてきた戦闘の経験が役にたっている。

 

ズドンッ!

 

 

ズドンッ!!

 

 

ズドンッ!!!

 

……静かになった。

 

敵は殆ど片付けただろう。急いで2Bのもとに向かう。

 

「大丈夫!?」

 

2Bはゆっくりとふらつきながら立ち上がる。再起動に成功したのだろう。

 

息苦しいのか、ヘルメットを外した。

 

だが安心したのもつかの間

 

『う、うぁぁぁあ…!』

 

周囲からうめき声があがる。

 

「これは…広域ウイルス…!?」 

 

論理ウィルス?受けたのはEMP攻撃だけじゃないのか?

 

「うぁぁぁ…!」

 

程なくして2Bにも同じ症状が現れた。

 

「2B!!」 

 

「ウイルス汚染…さっきのEMP攻撃がトリガー!?なんとかしないとっ…!」

 

急いで2Bのもとに駆け寄りハッキングをかける。

 

 

大丈夫だこれぐらいなら直ぐに治せる。

 

集中し、かつ迅速にウイルス原を排除する。

 

「2B …大丈夫…?」

「あ……ああ……」

ハッキングに成功し、2Bの意識が安定してきた。

良かった…。いやまだだ。すぐに他のヨルハ隊員たちの汚染も取り除かないと_______

 

『ウフッ、フフフフ…』

 

…?

 

 

『フフフフ…』

『フフフフフフ…』

 

「…なんだ?」

2Bも懐疑そうに周りを見渡す。

汚染されているヨルハ隊員たちが、不適な笑みを浮かべている。

まさか…論理汚染…?

 

 

 

 

 

『フフフフ…アハハハハハ!!』

 

 

 

 

ヨルハ隊員たちの目が真っ赤に染まった。

 




本編でナインズ君が対アンドロイド特化の2B型数十体を一人で倒しきってたのホント強い。その槍投げ封印しろ。


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Episode.3 [ワタシハソノ刃ヲ誰ニデモ向ケラレル]

Ps5が買えないから初投稿です。まーだif展開までかかりそう(猛省)


体がまだふらついている…状況がよくわからない…確か…私はEMP攻撃を受けて…だから再起動をして…それから9Sにハッキングでウィルスを除去してもらった…。そうだそこまでは分かっている。わからないのは私達以外の隊員の事だ。

 

「…なんだ?」

 

『ウフフ…アハハハ!』

 

周囲の隊員たちの目が赤く染まっている。

 

これは…論理汚染…?

 

そう思っている間に隊員達が一斉に剣を振りかざしてきた。

 

「!?」

 

キィン

 

咄嗟に回避し刀で受け止める。

 

 

「汚染されて…乗っ取られてる…!?」

 

9Sの言葉で瞬時に状況を理解した。

 

「そんな……っ!」

 

通常の論理汚染はただ自我を失い暴走するだけのはず…。

…そういえば、確か論理ウィルスはワクチンに対抗するようにワクチンの精度に合わせて成長しているなんて話を聞いた事がある。これはその一環?だとしてもこれ程まで成長しているなんて…

 

いいやそんなこと今はいい、今やるべき事は一つだ。

応戦し、突破する。

9Sのハッキングで解除してあげたいが、数が多すぎて対処できないだろう。リスクが大きすぎる。

 

だが、応戦するとなれば…そうすれば、きっと何人か手にかけることになるだろう。

 

 

…大丈夫、私ならできる。

 

 

覚悟を決め強く握りしめた刀を目の前に迫る隊員に振りかざす。

だが切っ先があたる直前で私の腕が止まった。

 

「なっ!?」

 

その隙をついて隊員が剣を横凪ぎに振る。

 

ガキァン

 

また受け身をとって後ろに仰け反る。

 

なぜ動かなかった?受け身は取れた、機能不全が続いているなんて事はないはず。

だとすれば

 

「攻撃機能が動かない!」

 

なぜ攻撃機能が停止した?9Sはちゃんとハッキングしたはずなのに。

 

一瞬の疑問。だがすぐに思い出した。

 

「ヨルハ部隊の識別信号だ!」

 

9Sが叫ぶ。そうだ、識別信号。ヨルハ隊員は味方への反逆・誤射を防ぐ為に基礎機能として違反行為のない通常のヨルハ機体を味方は攻撃できないようにできている。

 

そう、違反行為のない通常のヨルハ機体を…。

 

 

……

 

 

あぁ…すっかり…忘れていたな…

 

 

 

 

 

キィィィィィィン

 

剣と刀が交わり火花が散る。

 

すぐに意識を戻す。

感傷に浸っている暇なんてない。

このままではジリ貧だ。

 

「僕がハッキングして識別回路を焼き切る!」

 

9Sが咄嗟に判断する。

 

「お願い!」

 

ハッキングが始まった。といってもそう思った頃には既に終わっている。今何かが頭の中で焼けた感覚がしたので上手くいったのだろう。

 

再び刀を強く握りしめ。意識を集中させる。

 

『フフフッ!アハハハ!!』

 

後ろに一体いる。振り返ると同時に切りつける。

 

『ぎゃァッ!?』

 

汚染された隊員の腕が飛ぶ。

 

そしてそのまま振り返った勢いで9Sに襲いかかる隊員に刀を投げつける。

 

『イィギッ』

 

頭に直撃したので一撃で落ちたようだ。

 

 

_____ッ!!背後からの不意討ちッ!

 

咄嗟に刀を手に転送し戻し、逆手に持ちかえ後ろを向いたまま飛び込み刺す。

 

『アアアッ…!!』

 

「…っ!」

 

この声は…4Bだろうか…

 

 

いいや、気にするだけ無駄だ。

 

刀を抜き体勢を立て直し、辺りを見回す。

…どうやらポッド達がある程度無力化してくれたらしい。今のうちだ。

 

「ポッド!指令部に通信、状況確認!」

 

隊員達から距離をとり。バンカーとの連携を試みる。

 

❬不可能。機械生命体による妨害電波を感知。❭

 

「くそっ!」

 

思うとおりにいかない状況に思わず悪態をついてしまう。

 

「2B!妨害電波を出している個体をマークした!」

 

 

「!! わかった!」

 

 

戦場を離脱しマップにマークされた場所に向かう。すると中型の個体が見えてきた。

 

「あのデカイのから妨害電波が出ているようです!」

 

 

「ギギギギギ!」

 

中型機械生命体が持ち前の剛腕を振り下ろす。

 

ズシィィィン…

 

直前で回避し、その腕を駆け上がり、

 

ギィィン

 

その首を跳ねる。

 

ズシャァァァ…

 

頭部を失った鉄塊が力なく倒れる

 

「これでジャミングは解除された筈!」

 

 

「指令部に通信!状況報告と救援要請!」

 

なりふり構っていられず落下しながらポッドに命令する。背中から落ちゴロゴロと少し転がる。

 

 

 

……

 

 

 

2秒程の沈黙。

 

「ポッド!!」

 

耐えきれず少し声が荒くなる。

 

❬通信ロスト。指令部に通信できず。❭

 

「くそっ!まだジャミングが

 

❬否定。通信環境は良好。通信ロストは接続認証の失敗によるもの。❭

 

❬現在。指令部の通信機能は完全に沈黙。❭

 

「バンカーが…一体何が!?」

バンカーに異常?どういう事?わからない…こんな事態経験したことがない。どうすればいい?

 

『フフフフ…』

 

あの不穏な笑い声が聞こえる。立ち上がり戦闘体勢に入る。隊員達が、追い付いてきた。いや、この数…

まずい…さっきよりも増えてる…!

 

「駄目だ…キリがない…!」

依然として追い詰められた状況が続く。

 

「2B!僕に考えがある!」

 

9Sが何か思い付いたようだ。

 

「バンカーには非常用のバックドアがあるからそこから僕と2Bのパーソナルデータを全部アップロードして、その後、ここをブラックボックス反応で吹き飛ばす!」

 

 

成る程確かにそうすれば…!

 

「……わかった!」

 

 

9Sがデータのアップロードを始める。

 

私は襲いかかる隊員たちを少しでも足止めする。

 

「データをアップロード…30%完了!

 

50%完了!

 

70%越えた!」

 

「9S!まだ!?」

 

私でも…この数を一斉に相手は出来ない…!

 

「もう少し!92%!2B!ブラックボックスを!」

 

「ログデータをアップロード完了!」

 

9Sが自分のブラックボックスをもって2Bに向かって走る。

それ妨害するように汚染された隊員たちが9Sに乗り掛かる

 

「うわっ ぐっ うっ!」

重圧に耐えられず地面に倒れる9S

 

「9S!」

 

『アアア!』

 

「ッ!!」

捌ききれなくなった事で私も押しきられ地に伏してしまう。

 

「……ッ!!」

「ぐぅぅぅッ!」

 

互いにブラックボックスのもつ手を伸ばす。

少しでも…少しでも触れればいい。

もう少し…!もう少ッ…!

 

ドサッドサッドササ

 

のしかかる隊員たちに埋もれ、やがて二人は見えなくなってしまっ

 

 

 

       ピカァッッッ

 

 

 

 

周囲が閃光に包まれ、そして辺り一帯が、消滅した。




書き起こしてみるとナインズ君ホント優秀ですね。


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Episode.4 [染ミ付イタ思イ出。ソシテ涙。]

もっと上手く話をまとめれば早いテンポでここまで持ってこれた気がするので初投稿です。


データバックアップ中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バックアップ完了』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハッ!…」

 

目が覚めるとそこはよく見知った天井。

 

ブラックボックスで消し飛ばす作戦は上手くいったようだ。

 

「ハァ…ハァ…」

 

記憶を完璧に転送したので隊員達に囲まれていた先程までの焦りがまだ残っている。

 

大丈夫だ。上手くいった、落ち着こう。

 

だが、安心に浸るには早い。急いで指令部に向かわなければ。

 

急いで部屋を出る。

 

「2B!」

 

9Sも無事だ。

 

「急いで指令部に報告を!」

 

駆け足で指令室に向かう。

報告だけじゃない。安否も確認しなければならない。通信機能が停止してるなんてただ事ではないだろう。長い廊下を駆け抜け、二重のドアを抜け、指令室に入る。

 

そこには…

 

「これは……」

 

そこには何の変哲もなく、いつも通りの静かな指令室がそこにあった。

 

無事…らしい…?

 

急いで司令官のもとに駆け寄る。

 

「司令官!」

 

「2B…9Sも!?ここで何をしているんだ?」

 

司令官が本来此処にいるべきでない私達の存在に驚嘆の声をあげる。

 

「地上のヨルハ部隊がウィルスによって乗っ取られたんです!僕達は暴走したヨルハ隊員をブラックボックス反応で…

 

9Sが起きた事を端的に伝えようとするが

 

「ウイルス…?何を言っているんだ。地上からはそんな報告上がってないぞ?」

 

やはりというべきか情報は届いていないらしい。

 

「あれは偽装です!現在バンカーの通信は封鎖されていて…  

 

9Sが伝えようとするが

 

 

「……そもそも、命令もなく戦場から何故戻った?」

疑われている。

…確かにそうだろう。通信ロストなんて経験に無いことだ。だが危機感と焦りからどうしても冷静なっていられず、

 

「だから!ヨルハ部隊が暴走して…!

 

つい少し怒りがこもった声になってしまった。

 

「……。いや…汚染されているのはお前達じゃないのか?」

 

しまった。疑いが深くなった。

 

「違うんですっ!」

 

9Sが必死に訴える、だが

 

 

「2B、9S。貴様たちをウイルス汚染の疑いで拘束する。」

司令官がナイフを構え、そう告げる。

 

ザッザッ

 

司令官の周りの護衛たちが武器を構え、近づいてくる。

 

「待ってくださいっ!!」

 

9Sが叫んだ次の瞬間。

 

『うっ、あぁぁ!?』

 

『くっ!?』

 

『あああっ!』

 

護衛たちが、呻き始めた。

 

護衛だけじゃない。オペレーターたちも同じ症状が出ている。これはっ…

 

『ふふふ…せいか~い♪』

 

護衛たちの、オペレーターたちの目が赤く染まる。

 

「汚染!?」

 

予想外の事態。一瞬頭がフリーズするが

 

『アアアッ!!』

 

「なんだっ!?」

 

「ッ!! 司令官!!」

 

咄嗟に司令官を後ろに押しとばし護衛の攻撃から守る。

 

襲いかかってきた護衛を蹴りとばし、隙をつくる。

 

「司令官ッ!退避します!」

 

兎に角今は無事な司令官だけでも連れてここから逃げなければならない。

 

「くそっ…扉が…!」

 

9Sが扉が封鎖されている事に気づいた。

 

「バンカー内部までウイルスが入っているのか!?」

 

『それも、せいか~い♪』

 

あのふざけた口調でオペレーターの一人が返事をする。

 

「オペレーターさん!?」

 

「違う…9S…あれは…」

 

恐らく乗っ取られた事による影響だ。となれば…

 

 

 

 

『私達は、機械生命体。』

 

 

 

 

 

低音、高音の混ざった不気味な声が再び返事をした。

 

『ネットワークとウイルスを通じ ハ ナ シかけ ている。」

 

「そんな、そんな事が!?」

 

前列のない事態に司令官が動揺している。

 

﹃随分と 楽しませて もらったけど~ドドト゛ッもう、この基地は終わりリだダダダね。ダネッ♪『

 

『うふふっ…あっははははあはははは!!』

 

﹃アハはあはあはは!ハハハアハハ!ハハああは!!﹄

 

不気味な笑い声をあげ護衛たち、そしてオペレーターたちもが私達に襲いかかってくる。

 

 

「…ッ!!」

 

攻撃を受け流し

 

かわし

 

押し戻す

 

けれでもその数の多さに、私一人では傷つけないで済むようになんて対応はしきれない。

 

どうすればいい?

 

今9Sはハッキングを仕掛け、扉の解錠を試みている。だがバンカーそのものを乗っ取ったウィルス相手では9Sがドアを開けるまで、まだ時間がかかるだろう。

 

それを待ってこのまま攻撃の手を緩めたままでいれば、司令官を…そして9Sも守りきれない。

 

 

 

だとすれば…だとすれば、私がやるべき事は一つ…。

 

 

 

________…覚悟を決めろ

 

 

 

……大丈夫…私ならできる……ッ!!!

 

ギリッ。と何かを堪えるように歯を鳴らし

 

 

「『アアアアア!!』」

 

「うああああああ!!」

 

向かいかかってくる護衛に

 

オペレーターに

 

刃を突き刺し

 

切り裂き

 

叩き斬る

 

 

『アアアッ…!』

 

「ヴあぁァ…ッ!!」

 

悲鳴が耳をつんざいた。

 

…気にするな

 

気にするな…ッ!!

 

 

「開いたよ!2B!!」

9Sがハッキングを成功させ扉を開ける。

 

司令官を連れ、急いで向かう。 

 

『緊急放送。現在バンカー内部の…

 

今頃になって警報が鳴り響き始めた。

 

何人…何体かを倒し、追っ手が少し減ったおかげで扉までの移動に苦はなかった。

 

扉を抜け安全な場所を探す。

 

〘ジジ…人類に……栄光..ァァァ…れレ…」

 

扉を抜けた先の廊下にも、汚染された機体達がいる。

 

「ヨル…ハ部隊…全…キ…発進…』

 

何かを喋っている。先程までと事なり、その言葉には敵意を感じない。

 

そうか

 

「まだ…意識が…」

 

隊員達は乗っ取られただけで…人格・意識そのものは別でまだ残っているんだ。

 

「2B!油断しないで!」

 

9Sの言葉で我に帰る。

 

目の前に切っ先が向けられている。

 

「ッ!!」

 

ギンッ 

 

咄嗟に刀で振り払う。そして

 

ザンッ ビシュ

 

迎撃する。

 

[あ゛あ゛っ…!!』

 

見知った顔の仲間たちを切り捨て、ただ走り抜ける。

 

ふと通信が入った。こんな状況で一体誰から

 

 

『ツービーさん、ワワ私……オペレーター6Oゥ。]

 

…6O!!

 

[オハナをありがとうゴ、ゴゴ…ザイマス…﹃

 

お花…?そうだ…

 

〙砂漠のバラハはキデスネ……ア アア リガトウアリガ…いつか…私……﹄

 

以前6Oに、その花の写真を送ってあげた事があった。彼女はオペレーターで、地上には行けないから。

 

どうして今その事を?ウィルスエラーを起こしているから?

 

いや違う、自分の死期が近いと…悟ったのだろう。

 

通信が切れた。向こうから接続を切ったようだ。

 

「……ッ!!」

 

「司令官!この基地はもう駄目です!一旦退避しましょう!」

 

もうこのバンカーに安全な場所などない。

 

「どうして、お前たち二人は汚染されていないんだ?」

 

司令官が疑問を口にする。

 

「わかりません!」

 

そういえば、どうしてだろう。余裕がなくて気にしてなかった。

 

9Sが口を開いた。

 

「いえ……恐らく、僕がデータ同期を保留していたからです。以前、バンカーのサーバーデータにノイズがあったから、それが気になって……」

 

あぁそういう…いや、サーバーへのデータ同期は全ヨルハ隊員の義務。保留したのなら…なんでそれを私に言ってくれなかったの?

 

 

出撃前のやり取りを思いだす。

 

…..__△__△△△,ーー-,,,,ー,,▽▷◁-

 

「2B…」

 

「いや…なんでもない…気を付けて…。」

 

….…▽…▷._…▽」.,◁◁」」 ーーー-ーー---

 

 

 

「…そうか。」

 

司令官が何かを悟ったように不甲斐なさそうな声を漏らす。

サーバーデータにノイズ。多分この時既に、侵入されていたんだろう。

 

「アクセスユニットは汚染されています。

格納庫まで行って飛行ユニットを奪いましょう!」

 

9Sの判断の下、格納庫に続くエレベーターに向かう。

 

「司令官!格納庫から飛行ユニットで脱出します!」

 

エレベーターをおりる、幸い格納庫にはまだ汚染された機体が誰も来ていないようだ。

 

急いで飛行ユニットに向かう______

 

 

 

ふと司令官の足が止まった。

 

 

 

 

「司令官!早く!」

 

 

 

「…私は…行けない…。」

 

 

 

ヴヴン

 

 

 

司令官の目が赤く染まっている。

 

 

「あぁ…司令官…」

 

そんな。

 

「私も…サーバーとデータ同期をしていたからな…」

 

「でも…それなら9Sが…!」

 

ハッキングで直せると言おうとするが

 

「そんな時間はないッ!!」

 

その通りだ。その通りだけど…っ!

 

「お前たち二人は…最後のヨルハ部隊なんだ!生き残る義務がある!」

 

「司令官…」

 

9Sが悔しそうな声を漏らす。

私達が…最後の…ヨルハ部隊…。

 

「それに私は、この基地の司令官だ。」

「せめて最期まで上官らしく、いさせてくれ…」

 

司令官が堪えるような声で言う。もう汚染が深くまで侵食してきているのだろう。

 

 

そんな。嫌だ。多くの仲間たちを失い、その上司令官まで…

 

「ッ!! 2B!!もう基地が…!!」

 

何かに気づいた9Sが急いで私を飛行ユニットの方へ引っ張る。

 

「司令ッ!!」

 

司令官に向かって叫ぶ。だが

 

「行けぇッ!!2Bィ!!」

 

「ッ!!!」

 

ガシャン

 

司令官と私達を隔てるようにドアが閉まる。

 

「うぁぁ…ッ!」

 

振り返り飛行ユニットに向かって走る。

 

そして乗り込み基地を出た_______

 

その直後だった。

 

 

ドンッ ボンッ ドカンッ

 

後ろから爆音。咄嗟に振りかえる。

 

基地のあちらこちらから爆発がおき連鎖しているのだ。さっき9Sは…きっとこれを感知したのだろう。

 

バンカーが火を上げ、崩れていく。

 

もうバンカーには、あの日々には戻れない。

 

あのいつも通りは戻らない。

 

もう、消えてしまったから

 

私達のバンカーが…仲間たちと、6Oと、司令と…9Sとすごした、あの場所が…

 

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 

悔しくて、悲しくて、叫ばずにはいられなかった。

 

ただひたすら叫び、叫んで、

 

地球に向かってひたすら逃げた。

 

飛行ユニットが大気圏に突入する。

 

「う…ぐぅ……!」

 

大気圏突入の摩擦熱で全体が熱くなる。

 

ヨルハ機体も飛行ユニットもこれぐらいは耐えられる。

 

耐えられるが、

 

ゴーグルに染み付いていた涙は、一瞬で蒸発してしまった。

 




これまだ何のif展開もない原作そのままなんだよね。なんでヨコオはこんな酷い事するの?


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Episode.5 [スベテハ君ガ為。]

運命なんてどうとでも分岐するので初投稿です。


❬二機の飛行ユニットは大気圏を抜け、地球上空に飛来、バンカーを失った事で搭乗している観測対象のアンドロイド二体、❬2B❭ ❬9S❭の顔は酷く落ち込んでいる。❭…っと。

 

う~ん、このデジャブよ。

…あれ?デジャブってこの使い方で合ってるっけ?なんか違うような気もするけど。ん~…まぁいいや。

 

 

 

 

 

それにしても退屈だなぁ…。もう何回目だろうか。C,D,Eルートの観測なんて…。ミリも変わらない風景、変わった所で結局同じ最後に帰結するミリしか変わらない状況…

 

いい加減に飽きてきたな…いや前からずっと飽きてるけど…。

 

もういいかな~…このまま適当に前の資料からコピペして残りを埋めてまた別の分岐行って最初から…

 

 

 

ハァ~あ…自分でいうのもあれだけど…

私、観測者の仕事に向いてない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

____________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォォォォォォォッ

 

 

 

 

地球上空。

バンカーから逃げのびた私達は兎に角安全に着陸できる地上を探していた。

 

「司令官ッ…」

 

司令官が死んでしまったことがまだ受け入れられない。

 

いや司令官だけじゃない。私達以外のヨルハ隊員達もそうだ。

 

ヨルハ部隊は、実質的に壊滅した。

 

私達は…これからどうすればいい…?

 

どうして…こんなことに___________

 

 

❬警告:追尾反応多数。❭

 

ポッドが警告をする。

 

「敵!?」

 

もう見つかったの…?付近に機械生命体の反応なんてなかったのに…いや、待て。追尾…?

飛行ユニットを遠隔から発見・追尾なんてことができるのは…

 

嫌な予感が頭をよぎる。

 

「いや違う…!この反応は……!」

 

9Sが言いきる前に答え合わせになった。

 

ヒュンッ

 

 

私達の下を4つの影が追い抜いた。

 

一瞬だったが、ハッキリとみた。

 

嫌な予感があたった。あれは…

 

 

「ヨルハ部隊!!」

 

地上にいた汚染ヨルハ部隊が私達と同じように飛行ユニットに乗って追いかけてきたのだ。汚染個体は機械生命体ネットワークで繋がっている。私達がバンカーから脱出した時点で追尾命令がきていたのだろう。

 

くそっ…!気が動転していてステルス機能をONにしていなかった…!

 

ヨルハ隊員の…敵の数は、4体。

 

まずい…機械生命体相手ならまだしも飛行ユニットを多勢相手にするのは明らかに分が悪い。

 

逃げるしかない。減速し、距離をとり方角を変える。

だが飛行ユニットの性能に優劣はない。同じ性能をしているので、すぐに追い付かれる。

 

「…くッ!」

 

技量をもって撒くしかない。9Sに合図し、ステルス機能をONにしビル群のある都市に入る。

右折。左折。直進。急降下……複雑な動きを繰り返しなんとか撒こうとするが…駄目だ目視で捕捉されている以上振り切る事ができない。

 

となると…残っているのは応戦。

 

だがさっき思ったように4機に対してこちら2機では分が悪い…そもそも対飛行ユニット戦自体が初めてだ。

 

駄目だ。勝機が見えない。

 

「このままじゃ…」

 

 

いいや諦めるな…!

 

 

考えろ、考えろ…!!

 

 

このままじゃ…このままじゃ全部失う!

 

 

託された希望を!

 

 

意思を!

 

 

 

願いを!

 

 

 

9Sまでも……失ってしまう…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そうだ、9S。

 

 

 

先程までの希望だの願いだのの思考が頭の隅に追いやられる。

 

 

 

9Sだけなら、君だけならここから逃がせるかもしれない。

 

 

 

今私の飛行ユニットには、隊長権限がある。

 

9Sの飛行制御をこちらに移さして、この戦線から離脱させるように9Sの飛行ユニットを動かせば…

 

けれど、9Sが「君だけは逃がす。」なんて提案を到底受け入れる訳がない。そんなこと考えればすぐわかる。  

 

どうやって飛行制御を移させればいい?

 

私は9Sと違って機転なんて利かない。うまく丸めこむ事なんて出来ない。

 

どうすれば…どうすれば…

 

 

 

 

 

 

 

 

…いいや、

 

 

 

 

何も心配なんていらないでしょ…?

 

 

 

だって私はずっと9Sを騙し続けてきたんだから。

 

 

 

今更何を躊躇っているの?

 

 

いつも通りにやればいい。ただ冷静さの皮をかぶって、語りかければいい。

 

 

ずっとそうしてきたんだから。

 

 

でも…。だけど…この嘘だけは今までとは違う。

 

 

君を救う為の…最初で最後の、君の為の嘘。

 

 

 

 

「9S。飛行制御を____

 

 

 

 

…ごめん…9S。最期まで私は君を…欺いてしまう。

それでも…それでも君だけは絶対に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の乗っている飛行ユニットの左翼に穴があいている。

 

「…えッ!?…なっ!?」

 

 

撃ち抜かれた左翼が機能を低下させ少しずつ機体がバランスを失い下降し左へと戦線から反れていく。

 

 

 

なんで?

 

 

なんで??

 

 

どういうこと?

 

 

どうなってるの?

 

 

焦りが、動揺が募る。

 

攻撃を避けられなかった?

 

そんな筈ない。あるものか。

 

敵の位置も射線も把握してる。

 

気付かないわけがない。

 

今飛んできた攻撃の位置に敵はいない。いないのだ。確実に。

 

いや、何もいないという訳ではない。

 

そういう訳ではないが、でも、そんな訳ない。

 

そんな訳ないに決まってる。

 

だって、

 

先程の攻撃の先にいるのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……9…S………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして

 

 

 

どうして?

 

 

 

どうしてなの?

 

 

 

誤射?

 

 

それとも9Sまでもがウィルスに?

 

 

そんなことって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや。

 

いや、違う……。

 

 

 

違う…………。

 

 

 

違う……!

 

 

違う…!!

 

これは…!!!

 

まさか…!まさか9S…!

 

急いで9Sへの通信を試みる。

 

「9S!!返事をして!」

 

「………」

 

 

返事がない。通信を切っている。やはりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       私を逃がす気だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「9S…!9S!!お願い返事をして!!どうして!?どうしてなの!!?」

 

遠ざかっていく9Sに必死に叫ぶ。

 

君の事だ。私と全く同じ事を考えていたのだろう。

 

でもそんなの駄目。駄目に決まってる。

 

だってもうバンカーは無くなってしまった。

 

今のが最後の義体なんだ。それが死んだらもう生き返ることなんてできない。

 

なんとか機体を制御し戻ろうとする。

 

駄目だ。噴出口に関連したパーツがピンポイントで壊されている。

 

どんどん9Sの姿が遠く、見えなくなっていく。

 

そんな。待って、待って9S。こんなこと。こんなことって。

 

必死に君の名前を叫ぶ。

 

「9S!!9Sッ!!!9sうあぁっ!!?_________

 

必死なあまり地表が目の前だということに気付かなかった。

 

 

ズシャァアアア

 

 

 

飛行ユニットが砂浜にパラグライダーのように不時着する。

 

 

「あっ  がっ……!!」

 

 

飛行ユニットから投げ出されゴロゴロと10~2m程砂浜を転がる。

 

 

「あっ…  ぐっ…    うぅ…」

 

 

柔らかい砂浜に比較的ゆっくり落ちたとはいえ衝撃が小さいわけじゃない。体中にダメージがある。

 

意識が朦朧とし、上手く立てない。

 

❬警……く:高速で…落……た影…に……り機能… 般が…非常…不安…。❭

 

❬…ん在の状……の再…は不可……うと予…く。❭

 

 

ポッドが何か警告している。頭が朦朧し耳がキーンとしてよく聞こえない。

 

だが状態からして…今からの再起は難しいと言っているのだろう。

 

だけど…だけど9Sが…

 

よろめきながらも歩こうとするが、バランスを崩し、近くにあったコンクリートの壁に寄りかかってしまう。

 

「ハァッ……!ハァ…ッ!」

 

呼吸が荒い

 

全身の所々が痛い

 

視界がゴチャゴチャしている。

 

 

❬警こ…:現在…態での……は…不……能…と…測。❭

❬…奨:強制シャ……………ウン及…び再起…で…能を復旧…を……き。❭

 

 

 

「9……S……」

 

体が悲鳴をあげていても、

這いつくばってでも、動こうとする。

 

 

……………9…………s…

 

 

❬活……う……続に関わ…る危…な状……と判断…強制……止。❭

 

 

 

ザザ゙ッ

 

 

急激に意識が落ちていく。

 

 

 

 

 

あぁ_____っ

 

 

意識が___途絶え__これは_____強制_停___

 

 

 

 

まっ_____て_____9____が___________

 

 

 

 

 

どうし_て_____こんな___こん__なっ____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まって___……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____まってよ…___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイン…______________. .. .

 

 



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Episode.6 [最期ニマタ君ニ]

9Sも2Bも、互いを■■したいと思っていたのだと、僕はそう信じているので初投稿です。


なんであんな事をしたんだろうか。

 

僕は4機の敵ヨルハからの攻撃を避ける事に集中しなければならないにも関わらず、

頭の中が先程の自分の行動への疑問で満ちていた。

 

先程僕は、2Bをこの戦線から逃がすため、彼女の飛行ユニットを意図的に撃墜した。

 

あの先は確か浜辺だった筈だから、きっと2Bなら上手く不時着できただろう。

 

敵ヨルハ達は僕の狙い通りに先程の行動を仲間割れと判断し、落ちていった2Bには見向きもせずに僕に猛攻撃を仕掛けてきた。

 

…2B。怒ってるだろうな。次会った時、なんて怒られるかと思うと既に憂鬱だ。

 

 

 

[警告:機体ダメージ甚大]

 

 

 

 

まぁ次また会える保証なんてないんだけど。 

 

もう既に僕の飛行ユニットは攻撃を受けすぎてボロボロの危機的状況だ。それなのに、おかしな事に僕の頭の中はさっきの行動への疑問で一杯なのである。

 

 

 

変な感覚だった。さっき2Bが僕に飛行制御を渡すように言ってきたときに、頭の中に一瞬知らない誰かの記憶がよぎったのだ。

 

 

 

それは2Bが誰かに殺されている場面だった。2Bの目は汚染されていて赤く光っていて、いや、そこはどうでもいい、何者かが2Bの体を刀で貫き殺していたのだ。誰かまではぼんやりとしていてわからなかったが。

 

 

 

 

本当に一瞬ボンヤリと感じただけの、知らない記憶。僕だけど僕じゃない、別の自分のような感覚だった。

 

……いや、もしかしたらあれは危機的状況にあったことでの危機感から生まれたネガティブに考えすぎてしまった最悪の想定、つまり只の僕の不確かな予測・妄想に過ぎないものだったかも知れない。

 

だが仮にそうだとしても、あの光景はあまりにも僕の心を揺さぶるに十分だった。

 

彼女だけには生きていて欲しい。死んで欲しくない。そう思った頃には既に行動に移していた。

 

はっきり言ってしまえば、愚行だったろう。

感情に身を任せた行動だったと思う。

「砂浜のある浜辺だと知ってたから不時着するならそこがいい。」ただそれだけの理由であの方向に逃がした。砂浜だからって不時着に成功する保証なんてないし、逃がした先の浜辺が安全とも限らない、それに絶対に敵四機には勝てないという証拠がある訳でもなかった。

 

けれども。時間が戻ってまたあの場面になったとしても。僕は同じ判断を下したと思う。

 

 

 

[警告:反応炉温度上昇]

 

ポッドの警告が僕の思考を現状分析に戻す。

まずいな、これはもう…

 

[警告:FFCS , NFCSともに反応なし。]

 

[報告:攻撃手段を全て喪失。]

 

ただでさえ分が悪いのに、遂に攻撃手段まで無くしてしまった。

 

「くそっ…!」

 

持てる限りの最大限の出力で逃げに徹する。

 

 

もう助からないかもしれない。こんなことならあの時通信を切らずに2Bに何か言い残しとけばよかった。

 

そう思い、飛行ユニットの録音機能をONにした。

 

「こちらヨルハ部隊所属9S……

 

 

 

 

_____________……

 

 

 

録音が終わったちょうどその時、飛行ユニットが火を吹き始めた。

 

最期の覚悟こそすれど、僕は決して諦めた訳じゃない。

 

僕はなんとか遠目にみえた地上を目指す。だが、ギリギリの距離で先に飛行ユニットに限界が来てしまった。

 

ボカンッ

 

飛行ユニットが小さく爆発し、僕はその衝撃で投げ出される。

 

だがその勢いのおかげでギリギリで地上に落下した。

 

 

「あぁ……ぐ……」

 

高所から高スピードで落下し叩きつけられた衝撃で唸り声をあげる。戦闘向きの体じゃないからバキッ。だの、ブチッ。だの身体中から嫌な音がした。

 

 

なんとか力をいれて立ち上がる。大丈夫だ。所々壊れているが、動けない訳じゃない。

 

[敵反応多数確認。]

 

気がつけば機械生命体に囲まれている。

 

「助かって良かった。」なんてお気楽な事考えてる余裕はないみたいだ。

 

……まぁそうだよね。ここは最終奪還作戦にあたってた地域だから。

 

ポッドが僕の剣をもってくる。黒の血盟だ。

 

それを受け取り。構える。

 

機械生命体の一体が僕に向かってきた。咄嗟に剣を振るう。

 

機械生命体は弾き飛ばされるが、少し傷がついた程度で、すぐ起き上がる。

 

元々戦闘が得意じゃないS型モデルでしかも所々重症の体にこの大剣は重いのだ。

 

手を構え、ハッキングを仕掛けようとする。

 

そして気付いた。

 

 

ハッキングができない。

 

 

どうしてだろうか。

 

少し考え。結論に至る。

 

多分、飛行ユニットの爆発か、地上に落下した衝撃のどちらかでハッキング機能を司る部分が故障してしまったんだろう。

 

「…逃げるしか…ない…」

 

どれだけハッキングで無類の強さを誇っても、物理的にその機能が壊れてしまえば何の意味もない。

今の僕は戦闘もハッキングもできない役立たずだ。

 

2Bを逃がして良かったと心から思った。

あの人は「足手まといだからここにおいて逃げて」なんて絶対聞かないから。

 

 

よろめきながらも走る。後ろから機械生命体の弾幕攻撃があたる。

 

傷つきながらも、足に力をいれて走り続ける。

 

重症でも、生きていたのだ。再び彼女に会えないかと走る。まぁ…多分尋常じゃないくらい怒られると思うけど…。でも、それもいいなと思う。

 

だが、そんな願いを嘲笑うかのような事実が、僕の耳に入る。

 

[警告:ウイルス汚染を探知。]

 

[推奨:早急なワクチン投与。]

 

 

.…先程の攻撃に混ざってたのだろうか。

 

僕はワクチンなんて常備してない。

だって今まで感染したらその場でハッキングでウイルス源ごと破壊してきたから。あの日イヴに物理汚染された時以外は。

 

それが出来なくなった今、ウイルス感染が何を意味するのか嫌でもわかる。

 

多分、もう助からない。

 

このまま他の汚染ヨルハ隊員達のようになって、ゾンビのように他のアンドロイド達を襲うのだ。

 

「……うっ…ぐっ……」

 

汚染の苦しみと、自分の末路への悲しさから、涙声が漏れる。

 

「他の…アンドロイドに汚染を広げないように……しなきゃ……ポッド……アンドロイドの反応が…少ない地点を…」

 

最期まで自分にできる最善を尽くさないと…、ヨルハ隊員として…。

 

[…検索。商業施設の廃屋付近が該当。]

 

[警告:ウイルスを除去しなければヨルハ隊員9Sに深刻なダメージ。]

 

ポッドがウイルスを除去するように提言する。

 

…僕の身を案じてくれているのか?

でももう無理だよ…ポッドにだってわかるだろう…。ウイルスは自己アルゴリズムで進化し続けているんだ。その結果が乗っ取られたあのヨルハ隊員たち。仮に再起動したってウイルス除去はできない。

 

廃屋付近を目指して、重くなっていく体に鞭をいれて向かい続ける。

 

途中で何度も機械生命体達に攻撃される。

 

それでも、歩き続ける。

 

誰もいない場所へ…行かなきゃ…

 

………もう2Bには会えないだろう。

 

この先、汚染されきって、暴走して、ズタボロになった身体が壊れて一人で死ぬのだ。

そう思うと涙がじわじわと滲んでくる。

 

視界が霞んできた。涙じゃない。汚染の影響が視覚にまでにも及んできたんだ。

 

[視覚処理システムに異常を検知。]

 

それでもひたすらに歩き続ける。

 

ふと通信が入る。 

 

[月面人類会議より地上で奮戦している……に告げる。]

 

[今日は諸君らに吉報を ブツン

 

通信が途中で切れる。

 

[FFCS回路に異常を検知。]

 

もう汚染はシステムの芯まで入りこんでいるようだ。もう気にするだけ無駄だろう。

 

[システム保護領域に侵入。]

 

 

商業施設に繋がる橋がみえてきた。

 

[警告:中枢神経系に異常な発熱を感知。内部爆発の危険性あり。]

 

 

ドカンッ

 

 

「ごぁあっ………」

 

視界が一瞬落ちる。

[報告:視界センサーに異常を検知。]

すぐに視覚がもどってきたが、口からは煙が出てる。内部爆発を起こしたみたいだ。

 

[警告:ブラ…クボック…変質。]

 

[警告:データバック…ップシス…ム破損。]

 

[当該…………………………ップに…………………難。]

 

もうポッドがなんて言っているかも分からない、聴覚も駄目になったのだろう。

 

多分バックアップ出来なくなったと言っているんだ。でももうバンカーはない。新しい体もない、バックアップなんて意味がないんだ。

 

橋を越えたさきで突然汚染されたヨルハ隊員達が現れ、攻撃してきた。もうこの体じゃ逃げ切ることさえできない。

 

もう…ここまで…だろう……

 

「2………b…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィン ギィイイン

 

 

目の前の汚染隊員達が倒れている。そして誰かが僕の前に立っている。

 

「2…B……?」

 

その姿を見て、一瞬2Bと誤解してしまった。

 

その誰かの顔は2Bとそっくりを通り越して、そのものだから。

 

僕はこの人のことをよく覚えている。顔が2Bそのものなのが気になっていたから。

 

 

 

 

 

 

 

「A…………2………」

 

A2。裏切りの元ヨルハ隊員。

 

以前、出くわして戦ったことがある。

とても強くて、謎に満ちていた人だった。

初めて見たときはその2Bとの顔そのものに本当に驚いた。ホクロの位置までもが同じなんだから。

 

彼女は汚染隊員たちをあらかた片付けると、何もせず、ただこちらに目を向けている。僕が敵になるかどうか考えているのだろうか。

 

どうして彼女がここにいるのかは分からない、だが今ここで会ったことに何か運命のようなものを感じた僕は、ゴーグルを外して、自らも感染体だと示した。

 

「ここまで……かな……」

 

そして僕は剣をつきたて、彼女に語りかける。

 

「……これは…僕の記憶………です……」

 

もう上手く喋れないが、それでも最期の力を振り絞って意思を伝える。

 

「残された…皆を……2Bを………お願い…」

 

敵だった彼女に頼むなんて変だ。けれども、もう頼めるのは彼女しかいなかった。

 

…A2は、静かに僕の剣を手に取った。

 

 

「2……Bに…会ったら……こう…伝えて…。」

 

最期まで気がかりなのは2Bのことだ。僕が死んでしまったら、あの人は一人になってしまう。

 

もし、逆の立場だったら、きっと僕は壊れてしまうだろう。だけど2Bには……

 

 

「優しい……貴女のままで……いてほしい……って…」

 

 

だってあの人は、いつも冷静さを取り繕っているけど、本当は少し不器用で、繊細で、優しい人だから。

 

 

 

そう言い終わると、A2が僕の剣で僕を刺す。汚染されていく僕を介錯してくれたのだろう。

 

「あり………が…………とう…」

 

 

 

 

 

意識が……薄れていく…

 

 

僕は……もう死ぬの………だろ……う

 

 

 

 

 

2…B……君は……本当は…僕を…ずっと……

 

 

 

 

それでも……それで……も…最期に……また……君に……………会いた………かった…な……2……B…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナインズッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くから、たしかに僕をその名前で呼ぶ、貴女の声がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……2B………やっと……そう..呼んで………くれた..... .. .. ね. . .」

 

 

 

 

 

 

霞み暗くなっていく視界の中で、僕は最期に2Bの姿をみた_____________... ... . . .. .

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

持て余していたのは、システムで制御されているはずの思考だった。「●●」と呼ばれるそれに、いつだって僕達は振り回されていた。

 

 

全てを知り尽くしたいという衝動。割り当てられた性能以上の好奇心は、人間が言うところの恋にも愛にも似ていた。

 

 

そう、その命令の実行はエラーなんかじゃなかった。大丈夫、僕は解っているから、キミは泣かなくていいんだ。

 

 

だって、プログラム通りの予定調和を、二人に下された悲しい運命と呼ぶことなんてできないんだから。

 

                 黒の誓約

 



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Episode.7 [私ノ守リタカッタモノ。]

願いとはあっけなく打ち砕くことができてしまい、またあっけなく打ち砕かれてしまうものなので初投稿です。




 

 

 

 

[ヨルハ機体2B. 再起動。]

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 

 

視界があけた。急いで立ち上がる。まだ少し体が痛む。

 

 

「私はどれ位の間機能停止を!!?」

 

周囲の確認もせずポッドに聞く。

 

 

[随行支援対象2Bは、13分前に機体損傷の治癒の為その機能の全てを一時的に停止。ポッド042が随行支援対象2Bの自己修復機能を限界まで稼働させた為、現在再起動が完了している。]

 

「9Sは何処!?無事なの!?」

 

[既に検索・マーク済み。現在9Sは商業施設跡に向かって進行中。移動スピードがマーク開始時から低下しており、現在9Sは危険な状態にあるのではないかと推測。]

 

「ッ!!」

 

急いで9Sの元に向かう為走り出す。体がまだ痛むのなんて関係ない。今出せる全力で走る。

 

気分が落ち着かない。落ち着く訳がない。9Sの事で頭が一杯になっていく。

 

なんであんなことしたの。なんで私を逃がして一人で戦おうとしたの。

 

僕は戦闘が得意じゃないって、自分で言ってたくせに。

 

いつも君はそうだ。いつも君は私の願った通りには動いてくれない。

 

その度に私がどれだけ自らを、世界を呪ったかを君は知らないだろう。

 

いつもそう、いつだってそうだった。

 

それが私のいつも通り。

 

でも、私はそんな「いつも通り」が辛くても、苦しくても、でも…それでも守りたくて、ずっと戦ってきた。

 

それなのに…どうして、どうしてこうなってしまったの…?

 

バンカーも。ヨルハも。司令官も。皆失ってしまった。

 

私は最善を尽くしてきたつもりだったのに。

 

立ち塞がる敵を。命を乞う敵を。裏切り者たちを。もう助からないとわかった仲間たちを。

 

皆、皆この手で斬り伏せてきたのに。

 

それがいつか救いに繋がると少しでも信じてきたのに。

 

それなのに今私は君までも失おうとしてる。

 

いつも通りがいつか終わって欲しいと願っていた。

 

解放されたいと願っていた。

 

でも私はいつか罰を受けなければならない。

 

そんなことはわかっていた。

 

だけど、こんな。こんな形でなんて。

 

 

嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。そんなの嫌だ。それだけは嫌だ。絶対に認めない。受け入れない。これが私のやってきた事への罰だなんて。

 

 

 

ただひたすらに走り、走って、風景が見知ったものになっていくにつれて目に映る機械生命体の数が増えていった。

 

 

 

「アンドロイド、発見…コロス…コワス…」

 

[ポッド042より、2Bへ。このルートを通るのは危険と

 

「このまま突破する!!」

 

この道以外最短で9Sの元へいける道はない。

 

だったら他に考えることなんてない。

 

 

「コロス!コワス!」

 

「うるさいっ!!」

 

向かってくる機械生命体たちを次々に斬り倒す。

 

その度に直りきってない腕がビシビシと痛む。

 

でもそんなことに構っていられない。ただひたすらに倒し。走る。

 

もうすぐで9Sのいる場所にたどり着く。

 

走り続ける足が痛む。もうとっくに限界なんだろう。

 

構わない。私の事なんて構うものか。

 

9Sの元へと繋がる橋がみえてきた。

 

「9S……!! 9S!!」

 

必死に君の名前を叫ぶ。

 

「9S!!9s___あぐっ!!」

 

急に地面が揺れ足をつまずかせ転んでしまう。

 

[警告:大型の振動を関知。地下の構造が不安定になっている模様。大規模地震の可能性を示唆。]

 

[推奨:早急な離脱]

 

 

「離脱なんてするわけないでしょ…ッ!!」

 

再び立ち上がろうとしても上手くいかない。

 

一旦止まってしまったことで限界の体が言うことを聞かないのだ。

 

もう少し、もう少しだから………ッ!!

 

必死に立ち上がって。

 

また走り出す。

 

 

橋を渡りながら、君の名を必死に叫ぶ。

 

「9S………!!」

 

「9S………!!!」

 

 

 

 

「9S!!……9S!!」

 

 

 

 

 

 

「ハァッ…!ハァッ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナインズ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

限界の私の頭が、その名前を口に出させた。

 

ナインズ。

 

もう二度と、その名前で呼ぶつもりなんてなかった。

 

親しくなれば辛いだけだし、そう呼ぶ資格なんて私にはないから。

 

でももうなりふり構ってられなかった。

 

もうバンカーはない。バックアップをとっても意味がない。今君が死んでしまったらもう君は、もう君は二度と戻ってこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……「「■__.....:.[[[❬'''_______……____

 

「大丈夫…ですよ……2B………そんなに…泣かないで下さい……」

 

「確かに……次に会う僕は……今の僕じゃないけど……」

 

「きっと……きっとまた会えますから……」

 

____''_::『ー-----ーーーーーー›‘’___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナインズの隣に居たい。

 

その望みすら叶わなくなってしまう。

 

 

 

 

橋を渡っている途中で、ナインズの姿が遠くからでも確かに見えた。

 

ナインズの姿が見えた事に一瞬安堵してしまい立ち止まって、ナインズに向かって叫んだ。

 

 

 

「ナインズ!!大丈夫__________

 

 

 

そう言いかけて

 

目に映る光景をハッキリと見て、体が固まった。

 

 

 

ナインズが目を赤く光らせ、体を刀でA2に貫かれている。

 

 

 

 

 

 

 

私に気づいたのか振り返り、霞む声で何かを語りかけた。

 

 

「あぁ……2B………やっと……そう..呼んで………くれた..... .. .. ね. . .」

 

 

 

けれでも、私と彼との距離は遠すぎて、何て言ったのかはわからなかった。

 

 

そうして、ナインズが力なく倒れた。

 

もうナインズはピクリとも動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭がフリーズする。

 

 

頭が理解を拒む。

 

 

嘘だ。こんな、こんなことって。

 

 

「……あ、あぁ………」

 

「そんな…………そんな………………ナインズ……」

 

 

 

体が震えだす。

 

直視を拒むように手が顔をおおう。

 

理解できない、理解したくない。

 

 

 

それだけは認めたくない。

 

 

それだけは耐えられない。

 

 

 

これが私への罰だなんて。

 

 

嫌だ。

 

 

こんなの嫌だ。

 

 

ナインズが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナインズが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ナインズが殺されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  もう、ナインズは二度と戻ってこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、理解してしまったその時、

 

私の中で、何かが壊れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああぁぁぁあアアアアア!!!Aェェェェェ2ゥゥゥゥゥウウウウ!!!!」

 

ナインズを殺した者を憎む声が辺りに響き、聞こえてきた。

 

いや、違う。これは私の声だ。私がそう叫んでいる。

 

これが自分の喉から出た声なのかと疑う。

 

こんな叫び声。今まで出したことがあっただろ

うか。

 

今までこれだけの憎悪を感じたことがあっただろうか。

 

「殺す……!」

 

 

「殺してやるッ!!!」

 

 

 

溢れだす憎悪を抑えられず、私はA2を殺すべく刀を構え走り向かおうとした。

 

 

 

その時だった。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ…………

 

ドオオッ

 

 

「あああっ!?」

 

 

地面が大きく揺れ、橋が突如として崩壊し、私は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ちていく。

 

 

 

 

 

どこまでも、

 

 

 

 

どこまでも、落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崩れていった、砕け散っていった

 

 

橋の残骸と

 

 

 

 

 

 

 

私が大切にしてきたものたちの欠片と共に。

 

 

 

 

 

その欠片を少しでも再び掴もうと手を伸ばしても

 

 

 

 

地面に叩きつけられた衝撃で、私の意識は遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地面から突如として現れた白いタワー状の建造物。

 

地面を鳴らし、上にあったものを破壊しながら、触手のように伸びて、その全容を明らかにしていく。

 

やがて建造物はその動きが停止したのち、暫くして、そのタワーのてっぺんから3つの光が飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NieR:Automata

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

It might to [BE]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        [BE]

ありえた世界の彼女の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは呪いか。それとも罰か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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二人の二号 1/2
Episode.8 [生キル意味。]


学校が始業し投稿ペースに支障が出ると思うので初投稿です。


 

 

 

空に見放された気がした。

太陽は容赦なく、血に濡れた体を照らす。

今はただ、降り止まない雨に焦がれている。

 

 

 

鳥に蔑まれた気がした。

それでもこの双脚は、大地を駆け続ける。

行きたい場所なんて、どこにもないのに。

 

 

 

花に笑われた気がした。

何も考えずに済むように、ただ命令を処理する。

恥じ入る必要も、権利も、選択も感情もないのだから。

 

 

 

 

君に呼ばれた気がした。

許されるなら、願わせてほしい。彼の幸せを。

これが、私の■期ー_:記-_______

 

……?

              白の契約

 

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❬2週間後…❭

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無機質な女性の声が暗闇に響く。

 

[ヨルハ機体、9Sのブラックボックス信号は途絶。死亡を確認。]

 

[情報を共有する。]

 

 

次に聞こえてきたのは無機質な男の声。

 

[ヨルハ機体、2Bは本日、レジスタンスキャンプ所属の協力者の支援あって破損部分の修復が完了。現在再起動可能状態にある。]

 

その返答の対になるような返事がまた無機質な女の声で響く。

 

[ヨルハ機体A2も再起動予定。]

 

[……]

 

[提案。ライトの点灯。]

 

カチリ

 

この世界の何処かの部屋に、小さく明かりがつく。

 

その明かりに照らしだされたのは2B、9Sと行動を共にしていた2機のポッドだった。

 

 

[確認:ヨルハ機体、2Bの安全の確保。]

 

黒い方の、ポッド153がもう片方の白い方に聞く。

 

[問題ない。]

 

白い方、ポッド042が答える。

 

[ならば、残りの課題は一つ。]

 

[我々はヨルハ支援システム。A2および2Bが稼働するなら随行支援する義務が存在する。]

 

ポッド153が問いかけるように聞く。

 

[同意。]

 

ポッド042がポッド153の言いたい事を肯定するように言う。

 

 

[引き続きポッド042はヨルハ機体2Bの随行支援を行う。]

 

[推奨:2Bの精神状態の定期的チェック。]

 

[了解した。]

 

___________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………う…」

 

意識が、戻ってくるのがわかった。

 

先程までの記憶も、戻ってくる。

 

 

………。

 

 

このままずっと目を閉じていたかったが、

 

ゆっくりと、目を開ける。

 

「あ、気が付いたみたいよ、デボル。」

 

「おはよう。よく寝たな、2B。」

 

 

ゴーグルがない。いや今はどうでもいいか。

 

周りを見る。

 

ここは……

 

 

廃ビルに囲まれ、空から日が差し込んでいるこの場所を、私はよく知っている。

 

私はゆっくりと体を起こし、近くに置いてあったゴーグルを着けてこちらに話かけてきた二人の方を向く。

 

この特徴的な二人がいるということは、やはりここは。

 

「レジスタンス…キャンプ…。」

 

あの後…どうやら私は助かったらしい。

 

「貴方。二週間も眠りっぱなしだったのよ?」

 

おとなしそうな方。ポポルが心配そうに私に話かける。

 

「見つけてきた私に感謝しろよ?」

 

気の強そうな方。デボルがそう言う。

 

…………周りを見渡す。私の他にも負傷し、手当てされたようなレジスタンスのアンドロイドがちらほらいる。

 

だけど、その中に、彼の姿は見当たらない。

 

「ナインズは…?」

 

二人に聞く。彼の安否を。

 

 

…。

…本当は、分かってる。

でも、無意味でも願ってしまう。

 

 

「ナインズ…? …ッ……。」

 

ポポルが聞き慣れない名前に疑問を口にする。そして理解すると、顔を暗くした。

 

次に口を開けたのはデボルだった。

 

「……9Sの事なら…お前の方が…よく知ってるだろ?」

 

「…ブラックボックス信号も…切れている。」

 

普段は勝ち気な態度の彼女も、その声に影がさしている。

 

 

「……そう。」

 

 

あれから頭が落ち着いて、いつものように冷静になっているからか、あの時のように動揺はせず。すんなりとその事実を受け入れられた。

 

 

 

 

[デボル・ポポルタイプのアンドロイドは治療・メンテナンスに特化した稀少なモデル。]

 

[バンカーが破壊された今、彼女たちが居なければ今後の2Bの修理・補修は厳しいと予測。]

 

[推奨:感謝の言葉。]

 

ポッドが突然喋りだし私にそう促す。

 

あぁ、お礼を言うのが、ナインズのことですっかり頭の隅に行って忘れていた。

 

 

「……ありがとう。デボル。ポポル。」

 

 

彼女達に礼を言うのはこれで二回目だったろう。以前もアダムに捕らえられたナインズを探す為に彼女らの力を借りた事がある。

 

デボル。ポポル。

 

双子型であることと、赤い髪の毛が特徴的なアンドロイド。

 

以前はおおぜい同じタイプがいて、大規模システムの管理を任されていたらしいが、昔そのうちの一組が暴走して事故を起こしたらしく、それ以降その殆んどが廃棄され現在残っているのは彼女達だけなのだそうだ。

 

今はこのレジスタンスキャンプで、昔同型が起こした事故の罪滅ぼしとしてレジスタンスに協力しているらしい。

 

そんな話を以前に二人から聞いた事も思い出した。

 

「……あまり無理をしないでね。2B。」

 

立ち上がる私にポポルが心配そうな声をかけた。

 

 

 

 

それから少し歩いて、レジスタンスキャンプの外に出ようとする。

 

だが、特別行き先があるわけではない。

 

ゆっくりと歩きながら、これからの事を考える。

 

 

 

 

…生きる目的が、無くなってしまった。

 

 

 

バンカーが無くなり、もう命令されて動く事はない。もう誰かに目的を与えられることはないだろう。

 

自由になったと考えればそうかもしれないが…。

自由になったところで、もう…ナインズがいない…。

 

彼がいなければ何の意味もないんだ、こんな世界。

 

だってナインズとの日々は私にとっての…決して日のあたる所で胸を張って生きるなどできない私にとっての光のような物だった。

 

なのに、

 

それなのに、もう君はいない。

 

私をずっと照らし続けてくれた君はもういない。

 

暗いビルの間を抜け、レジスタンスキャンプの外に出る。

 

再び先程目覚めたときのように日の光があたるが、そこに何も感じない。

 

…?

 

ふと視界の前方に違和感を感じ、ずっと下を向けていた視線を前に向ける。

 

「……これは………一体……。」

 

 

視界に映ったのは、巨大な白い建造物。

下から生えてきたかのような独特な形をしている。まるで木のようだ。

 

前まではこんなものなかったのに。

 

[地下空間から出現した構造物。機械生命体に由来するものと考えられるが、詳細は不明。]

 

ポッドが私の考えてることを読んだのかように答える。

地下から…。あの時の揺れの原因はこれか。

 

[巨大構造物中央部から地上に伸びている区間に移動構造物を検知。]

 

「……エレベーター?」

 

[肯定。]

 

何の目的も無くなった私は、初めて見るその巨大建造物に何となく興味をもち、それを目指して歩いていった。

 

暫くして、巨大構造物の根本に辿り着く。

 

入り口になにやらロックのようなものが掛かっているようだ。

 

「ポッド。ハッキングして。」

 

[了解。]

 

ポッドが構造物の入り口に向かって疑似ハッキングを仕掛けるが、弾かれる。

 

「どうしたの?」

 

[アクセス拒否を検知。]

 

どうして?と聞こうとしたとき、突然声が響く。

 

『こんにちは![塔]システムサービスです。』

 

軽やかな女性の声。

 

『大変申し訳ありません。[塔]メインユニットにアクセスするにはサブユニットのロック解除が必要です。』

 

『大変お手数ですが、よろしくお願いします。』

 

ご丁寧な事だ。周りを見渡しサブユニットとやらを探す。

 

あの突起物のようなものだろうか。

 

[疑問。機械生命体がこのようなアナウンスを行う理由。]

 

ポッドがそんな疑問を口にする。

 

「……機械生命体のやる事なんかに意味なんてない。」

 

ナインズがよく口にしていた言葉が私の口からも出る。

 

でも私の口から出たそれは八つ当たりのような、嫌味のような言い方になっている。

 

サブユニットに近づき、もう一度ポッドにハッキングを仕掛けさせる。

 

が、またポッドが弾かれる。

 

またか。と少し苛つく。

 

そして、またあのアナウンスが響く。

 

『こんにちは![塔]システムサービスです。』

 

『[塔]サブユニットのアクセスには[アクセス認証キー]が必要です。申し訳ありませんがアクセスを許可することは出来ません。』

 

だったら最初のときにそう言えば良いだろう。

と、些細な事に苛立ちが募る。

 

駄目だ。感情が上手く制御できていない。

 

一旦落ち着こう。

 

そう思い、入れないなら別にそれで構わないとここを後にしようとするが、まだあのアナウンスが続いて響いている。

 

『その代わりとしまして。今回は初回アクセスをされた方に特別なサービスとして、「資源回収ユニット」へのツアーにご招待します!』

 

アナウンスがそう言うと、私の頭に突然ノイズが走った。

 

「……ッ!?」

 

突然のことで一瞬動揺し、体勢を崩す。

 

『またのご来場、心よりお待ち申し上げております。』

 

そう言い終わると、もうアナウンスは聞こえて来なかった。

 

「……何…今の……?」

 

先程のノイズを気にする。

 

[敵システムからの強制通信。「資源回収ユニット」と称する場所を通知。]

 

資源回収ユニット…さっきもアナウンスがそう言っていたが一体なんだろうかそれは。

 

だが、機械生命体が私にそんな場所を通達して来るように誘うなんて怪しいに決まってる。どうせ碌な事じゃない。

 

「かかってこいよ。殺してやる。」そう言いたいのか?何がツアーにご招待だ。

 

小馬鹿にされた気分になる。

 

そう考えてみると、入り口・サブユニットにアクセスした時のアナウンスも、此方をおちょくる意図があったように感じてきた。

 

「……ふざけるな…。」

 

自然と荒い口調で言葉が出てきた。

 

考えれば、考えるほど怒りが募っていく、そもそもこいつら機械生命体が悪いんだ。

 

アイツらがバンカーを破壊しなければ、ヨルハ部隊を壊滅させなければ、ヨルハ隊員を乗っ取らなければ、少しでも違えば、ナインズは死ななかったかもしれないのに。

 

機械生命体への怒りが、憎しみが募る。

 

その影響から手を力強く握りしめる。力が入りすぎたからか、腕が小さくブルブルと震えている。

 

「ポッド。さっき言ってた資源回収ユニットの位置をマークして。」

 

[……目的の提示。]

 

ポッドが私に質問する。気のせいか、あまり乗り気じゃないように聞こえた。

 

「機械生命体の殲滅。」

 

それ以外の理由なんてない。

あの挑発には敢えて乗ってやろう。返り討ちにしてやる。

 

[ヨルハ部隊基地バンカーが破壊された現在、各部隊員に対する命令は留保されていると判断。]

 

[推奨:レジスタンス部隊との合流と、命令系統の再確認。]

 

ポッドが私に戦闘を控えるよう提言する。だが、私は断る。もう決めたのだ。

 

「…命令だからやるんじゃない。私が…そう決めた。」

 

ポッドに決意を伝える。

 

[………]

 

するとポッドが何か取り出した。

 

[……今後戦闘を継続するのならこれが必要と判断。]

 

ポッドが取り出したそれを見て驚く。

 

 

 

 

 

「これって……黒の…誓約……。」

 

 

 

 

 

ナインズが最期に持っていた武器の、小型剣のほうだ。

 

私の持っている白の契約と、白と黒とで対になっている。

 

[今後戦闘するような事がある際、少しでも戦闘手段は多い方が有利と判断した為、捜索・回収しておいた。]

 

「…ナインズ……ッ……!」

 

ギュッと握りしめる。

 

これが…ナインズの最期の形見だ。

 

 

両手に刀を構え、慣らすため手でクルクルと数回動かした後、納刀し、再び歩きだす。

 

誓約。その言葉に則り。誓う。

 

「機械生命体は殲滅する。」

 

自分にも言い聞かせるようにポッドにこれからの目的を伝える。

 

「それから……」

 

 

少し迷い。

 

それから考えて、自分の欲求に従い決意し、言葉にだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「A2を、殺す。」

 

 




本編と差別化するため、A2は大剣。2Bは二刀流にしました。

嘘です。僕の趣味です。


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Episode.9 [矛盾デ作ラレタ世界ト私]

投稿し終わっても編集し直してばっかの馬っ鹿なので初投稿です。



今、私は資源回収ユニットとやらがある場所の一つの森林地帯に向かっている。

 

どうやら資源ユニットというのは3つあるようで、ポッド曰く私が落ちたすぐ後にあの塔から射出されたものらしい。

 

森林地帯に近づいてきた。

 

森林地帯か…。

 

森の王の城を突破してた時の事を思い出す。

 

 

 

 

…「「] _______ /:____』『)……//[[[……_____

 

「敵の攻撃に気をつけましょう2B。」

 

君が突然話しかけてきた。

 

え。あ。

 

「わかった。ナインェズ」

 

君がいきなり脈絡なく話しかけてくるものだから、咄嗟の返事になって何か変な感じになってしまった。

 

「え!?今なんて言いました?」

 

君が呼び方のイントネーションに過敏に反応する。うぅ…困ったな。うっかりしてた。

 

「わかった。9S。」

 

ナインェズの所だけしっかり訂正する。

 

君は知らないだろうが結構大変なんだぞ。

意識せずに普通に9Sって呼ぶのは。

 

「へ?違いますよね?もっとこう「ナインズ」的な発音でしたよね?」

 

嬉しそうな声でしつこく聞いてくる。

 

「黙って敵を倒す。」

 

そう言って無理矢理この話を打ち切る。

 

「んもー!」

 

君の不服そうな、でも楽しそうな声が城に響いた。

 

 

 

 

 

 

ナインズ。

 

君と親しい人が君をそう呼ぶあだ名のようなもの。

 

…らしいが、実際に呼んでいるという親しい誰かを私は今まで見たことがない。

 

だからその呼び方を知っているのは、現状私が知る限りは君と私だけ。

 

 

 

私と君との間だけのもの。

 

 

 

……次会話をするときは、ナインズとまた呼んでみようかな。

 

 

 

……いや、止めとこう。

 

後になって辛いだけだから。

 

 

 

]」[❬❬’‘‘ーー____・[・_‘_______’'’‘'ーー______

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

手を強く握りしめる。

 

後悔だけが募っていく。

 

 

森林地帯に入ると、恐らく資源回収ユニットと思わしきものが近くに見えてきた。

 

パイプが剥き出しで所々が継ぎ接ぎ。なんというか即席といった感じだ。あの塔と比べると随分と見劣りする。

 

「霧が…。」

 

資源回収ユニットに近づくにつれて霧が濃くなっていく。私の記憶が正しければここに霧なんてなかったと思うが…

 

 

「報告:敵大型ユニットから大量の蒸気発生を確認。」

 

「蒸気…一体何の為に……。」

 

[不明。]

 

近づいて入り口を探そうとすると、あちらもこっちに気づいたらしい。

 

またあの声が聞こえてきた。

 

『こんにちは!資源回収ユニットです。防衛体勢に入ります!』

 

資源回収ユニットの壁が ギギギ…と動く。

 

呼んでおいて防衛か。ふざけてる。

 

入り口を見つけ入ろうとすると、何か扉の上に文字が書いてあるのが見える。

 

「何だこの文字…何て書いてあるの…?」

 

見たことのない文字だ。

 

[「天使文字」と呼ばれる旧時代に用いられた特殊な文字。]

 

[肉の箱。という文章。]

 

「……何だそれ…。」

 

意味不明な文章に疑問しか出なかった。

 

この建物には先程の塔のようなロックは無いらしい。中に入るとすぐにエレベーターで、扉が閉じて上がっていった。

 

暫くすると止まり、出口が開いた。

 

それから機械で出来た床のスロープのような螺旋状の坂を登り上を目指す。

 

「……この建物、内部まで機械で出来てるのか。」

 

[報告:機械の機能とは関係ない無意味な部品を多数確認。そうした部品が使用されている理由は不明。]

 

無意味な部品…。先程の蒸気といい。天使文字といい、相変わらず連中のやることは訳が分からない。いや、そんなことはどうでもいいか。大して重要じゃない。

それに、

 

「機械生命体のやる事に意味なんてない。」

 

ナインズだってそう言っていた。

 

ひとしきり登りきると、広間にでた。

 

「この森は、我ラの森……」

「オササ…王……サマ…」

「フクシュ……復シュウウ……」

 

奴らの声が聞こえてくる。手厚い歓迎だな。

 

私は早速二本の刀を両手に構え、向かってくる奴らを斬り捌いていく。

 

今まで二刀流は慣れないからと思い少ししかやった事がなかったが、案外すぐ馴染むものだな。

 

「復……シュウ……復讐……。」

 

体下半分を切り捨てられてもまだ生きている個体が嘆いている。

 

復讐か。誤解も甚だしいな。あの王様とやらを殺したのは私じゃない。A2だ。復讐するなら彼女だろう。怒りの矛先が違う。

 

……。

 

ふと、ナインズが殺されてしまった場面が浮かぶ。

 

ナインズの目は赤く光っていた。

 

…………ギリッ。

 

「復……シュッ

 

グシャァ

 

しつこく嘆く機械生命体の頭を踏み潰す。

 

しつこく踏み潰し、すり潰す。

 

 

そして次のエレベーターに向かう。

 

エレベーターが上がる。次の階に着くまでの時間にまたあの光景が浮かぶ。

 

 

……。

 

………わかってる。

 

わかってるんだ。私のA2への復讐心はおかしい物だって。

 

彼女はただ自分の脅威になりそうな汚染機体を破壊しただけだ。

 

それに仮に私が彼女より早く着いていても、あの汚染じゃもう私では助けられない。

 

そのときは…私がナインズを殺さなければいけなかった。彼の本当に本当の最期を私の手で下さなければいけなかった。

 

私はナインズを最後に殺さずに済んだんだ。

 

それなのに、何故これほどまでにA2が憎いんだろう。

 

訳が分からない。自分の事ですら。

 

 

______________________________

 

 

 

次の階に着く。

 

また広間だ。

 

機械生命体たちもまた大勢いる。

 

頭を戦闘に切り替え。先程と同じように、斬り捨てていく。

 

「痛い…痛イ……」

 

「苦しい……苦シイ……苦し……」

 

「ネェ………死ぬの……嫌……」

 

先程とは違って随分と弱気な奴らだ。そしておかしな事も言っている。苦しいって?

 

苦しいならなんで私に向かってくる?

 

死ぬのが嫌なら何故戦いにくる?

 

「殺さないで……。殺さナイデ……ギッ……

 

慈悲なんてかけず、ただただ切り刻む。

 

だって

 

 

「機械が苦しいわけないでしょ…?」

 

 

 

 

 

 

それは誰に向かって言ったのだろうか。

 

 

 

 

どうでもいい。

 

ただ切り刻み、斬り捨て続ける。

 

「痛い!!イタイ!!」

 

「コロサナイデ!!……コロサナイデ!」

 

悲鳴が耳をつんざく。

 

「イタイ!!イタイよ!!」

 

「ごめんなさイ!!ゴメンナサイ!」

 

 

 

 

「コロサナイデ!!!コロサナイデ!!!」

 

 

 

「うるさい…」

 

「……うるさい……!うるさいなっ!!!」

 

ギンッと、最後の個体を両断する。

 

誰もいなくなった部屋に私の声だけがうるさく響いた。……次の階層に向かう。

 

 

 

______________________

 

 

 

 

エレベーターが上がった先はもう屋上のようだ。

 

中央で何か光っているのが見える。

 

それと、屋上の周りで何か浮かんでいる。

 

「機械生命体の部品が…。」

 

機械生命体のパーツがフワフワと上に向かって昇っている。

 

[推測:構造物自体の資材。もしくは、武器を生産するための資材。]

 

「武器…。」

 

つまり現地の機械生命体を解体して武器等に再利用してるってこと?資源回収ユニットの回収してる資源は機械生命体ということか。

 

目の前に甲冑を着た機械生命体たちが現れる。王を慕っていたもの達だろう。

 

てっきりコイツらもさっきの奴らもユニットへ配備されてた兵士なのかと思っていたが、どうやらただ資材として回収されてただけのようだ。

 

 

 

用済みという事だろうか。なんだか哀れだな。

 

 

 

数の差なんてものともせず、突き刺し、切り刻み、叩き斬る。

 

残ったのは鉄屑だけ。もうそんな物に興味はない。

 

中央にある光っているものに向かう。

 

これは何だろうか。装置に保管されているのか接続されているのか、丸くて光る球体が重要そうに真ん中の装置と共にある。正体不明な物体だ。ナインズなら興味を示しただろうか。

 

『助けて…怖い……助けて……助けて……』

 

喋っている。じゃあコイツも機械生命体なのか?

 

なら破壊する。

 

「ポッド。エネルギー収束。近接射撃モード。出力最大。」

 

[2B]

 

「発射。」

 

ドオオオォォォォォォォォォォォォオオオオ

 

 

先程の光球は跡形もなく消し飛んだ。

 

何かポッドが言おうとしてた気がするが、まぁいいか。

 

〘アクセスキーを取得。〙

 

あ。

 

求めていたものが予想外の形で手に入った。

 

もう他にやるべき事はここには何もなく、帰ろうとする。

 

さっきまでは殺しの感覚を鬱陶しく感じていたが、いざ壊し尽くしてみると。なんだか満足した。

 

 

 

 

 

「コロセ………コロセッ………!!」

 

声が聞こえてきた。ふと声がした方を見る。

 

「コロセ……!オレヲコロセ……!!」

 

先程の甲冑機械生命体の一体がまだ生きていたみたいだ。

 

「コロセ…!俺を殺せ…!」

 

さっきの奴らが殺さないで。と言ったかと思えば今度は殺せだ。

 

「……オレヲ殺せ!……」

 

 

殺せ。か…。

 

刀を構えようとするが、止まる。

 

どういうわけか先程とは違い、この機械生命体を殺そうという気持ちが湧いてこない。何故だろうか。

 

先程との違いを考えてみて、気付いた。

 

快感がないのだ。コイツを殺しても。

 

殺せと懇願する相手を殺したら、それはその相手の望み通りになってしまう。

 

それでは、私の気持ちが満たされない。

 

そう気づいたので、帰ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺せ……!コノ卑怯者ガッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

卑怯者という言葉に足が止まる。

 

言い掛かりだと思い腹を立てたわけじゃない。

 

…その言葉は今の思考にも、過去の事にも、思いあたる節が多すぎた。

 

「…っ!…あああああっ!!」

 

ザンッ とソイツの頭部を刺す。

 

ソイツが望んだ通り、すぐにソイツは動かなくなった。

 

 

 

 

思っていた通り、私の手には何の快感もなかった。

 

 

 




用済みで哀れ。(特大ブーメラン)




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Episode.10 [2153]

命にふさわしいという基準が僕にはハードルが高すぎるので初投稿です。



」))(ー::〘〘_______「……」」]_

 

 

「それじゃあ……それじゃあ指令部は………!?」

 

 

「行って二号!ここは私がっ」

 

 

 

「だめっ!!四号______________

 

 

「]:: _____''''〙〘_______ 』’‘‘‘/・❬▽」____

 

  

 

 

 

 

「ハッ……」

 

意識が明瞭になった。

 

確か私は……。

 

そうだ、あの時逃げようとしたが崩落してきた何かの欠片が頭に直撃して……。

 

 

[識別番号A2の起動を確認。]

 

 

突然無機質な女の声が聞こえてきた。

 

機械生命体か?体を起こし、まわりを確認するが、それらしい姿はない。代わりに見つけたのは

 

[おはようございます。A2。]

 

黒い箱のような浮遊物。

 

「何だ……お前……?」

 

どこかみたような気がする。ええと、なんだっけなコイツ……。

 

[私は随行支援ユニット、「ポッド153。」]

 

[ヨルハ機体A2の射撃支援を担当。]

 

射撃支援?なんだそれ。

 

「そんな事…頼んでない。」

 

[肯定:A2からの依頼は受けていない。]

 

[この行動は前随行支援対象機体9Sからの最終命令として記録されている。]

 

9S…。そうだ思い出した、コイツはあのガキの周りを飛んでた奴だ。チマチマ撃ってくる鬱陶しいあれ。確か白いのもいたな。

 

「必要ない。」

 

私はあんなものには頼らないし頼る必要もない。

 

[ヨルハ機体A2にその判断をする権限はない。]

 

ないのかよ。じゃあ余計いらないなコイツ。

 

斬ってやろうかと思ったが、もうあの時と違ってコイツは敵じゃないから倒す理由がない。

 

かといってあのガキの命令となると、こういうタイプの機械は多分口でヤメロといっても命令だからと言って聞かないんだろう。

 

「勝手にしろ…。」

 

めんどくさくなった。無害そうだからほっときゃいいか。

 

あれからどれくらい経ったんだろうか。

 

ふと、髪の毛を弄る。手向けのつもりで首もと位までバッサリと切ってやった髪の毛が、少し伸びているように感じる。2週間ぐらいか…?

 

随分とダウンしてたみたいだが、その間機械生命体に襲われなかったのか私は?

 

このハコのお陰か?

 

と、横を向いて気付いた。

 

巨大な白い塔のような建物が見えた。

前まではなかったよな…どっから出てきた?地下か?……地下。もしかしてあの揺れはあれが原因か?

 

「一体、何なんだ、あのデカイのは…」

 

[不明。]

 

「役に立たないハコだな。」

 

まぁ、大して興味ないが。

 

それから私は修繕されてるあの崩落してた橋

を渡り、ようやくあの時行きたがってた橋の先にたどり着いた。

 

ホントにあの日は驚きの連続だったな。何でかヨルハ隊員達が暴走してるし、空見たら多分バンカーが爆発してるし、あのガキが何か託してくるし、多分2B(だったっけ?)に恨まれるしで、本当に…色々大変だった。

私はただ散歩してただけなのに…。

 

いやホント、バンカーは何があったんだ?空に見えたあの破片確かにバンカーのだったよな…?

 

……いいや。何でヨルハの事なんか気にしてるんだ私は。

 

私は…。私達はあいつらに捨てられ____

 

[要請:ヨルハ機体A2の行動目的の開示。]

 

……。

 

 

突然話しかけてきた。

 

「なんでいちいちそんなこと…。」

 

[支援する上で必要な情報と判断。]

 

「教える理由はない。」

 

そう言って歩きだす。

 

暫くして、

 

[要請:ヨルハ機体A2の行動目的の開示。]

 

また聞いてきやがった。

 

「教えないって言っただろ!」

 

今さっき言ったばかりだろう。もう忘れたのか。あのガキみたいだな。そうだアイツいつも会うたびに私の事___

 

[随行支援ユニットは対象支援機体の行動目的が開示されない場合、要請プロセスが30秒に一度、自動的に実行される事になっている。]

 

「はぁ!?」

 

なんだよそれ!?

 

[推奨:速やかな行動目的の開示。]

 

[不必要に会話を繰り返すのは無駄なエネルギーを消費すると判断。]

 

「お前が勝手にやっているんだろう!」

 

何なんだコイツは。話が通じないやつだ。30秒に一度だって?まさかずっとこんな感じで

 

 

 

 

[30秒経過。]

 

[要請:ヨルハ機体A2の行動目的の開示。]

 

「クソッ!」

 

コイツ……本当にこんな感じなのか…!

 

「目的は機械生命体をぶっ壊すことだ。」

 

「わかったか!」

 

[了解。]

 

わかったらしい。

 

すんなりと言うので罵った気がしない。本当に何だコイツ。

 

[付近の機械生命体のスキャン及び、マーク完了。]

 

[砂漠地帯に大型の機械生命体を関知。]

 

[推奨:大型機械生命体の破壊。]

 

「私に命令するな。」

 

[否定:これは命令ではない。]

 

[ヨルハ機体A2に対する支援情報である。]

 

[推奨:情報に不満のある場合、行動目的の更新。]

 

「う る さ い 黙 れ 。」

 

[否定。]

 

秒で否定された。少しぐらい言うこと聞けよ。

 

[本支援ユニットはヨルハ機体9Sの最終命令によって行動中。]

 

[ヨルハ機体A2に命令権限は存在しない。]

 

「勝手にしろ。邪魔するな。」

 

[了解。]

 

なんだか相手するのに疲れてきたので、もう放っておこう。

 

……コイツとは絶対に馬が合わない気がする。

 

「あのガキ…いつもこんなのと一緒にいたのか…?」

 

[肯定。]

 

だからもう喋るなお前。調子狂うから。

 

[それと、]

 

なんだ…?まだあるのか?

 

[「あのガキ。」ではない。前随行支援対象には9Sという名称が存在している。]

 

「はぁ?それぐらいわかって…」

 

[要請:先程の呼び方の訂正、または取消。]

 

「はぁ!?あのガキの事どう呼ぼうが私の勝手だろ!」

 

[要請:先程、そして今の呼び方の訂正、または取消。]

 

「……ッ!」

 

駄目だコイツ恐らくもう同じ事しか喋らないぞ。

 

[要請:先程の呼び方の訂正、または取消。]

 

ほらな。

 

[要請:先程の呼び方の訂正、または取消。]

 

「…………。」

 

なんだか私も意固地になってきた。このままマークされた砂漠地帯に向かうことにする。

 

くそっ……何なんだ…何なんだコイツっ。意地でも直さないからな……。

 

 

 

 

 

[要請:先程の呼び方の訂正、または取消。]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[要請:先程の呼び方の訂正、または取消。]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[要請:先程の呼び方の訂正、または取消。]

 

「わかったよ!9Sだな!?な!い!ん!え!す!もう黙れお前!!」

 

[訂正を確認。了解。沈黙する。]

 

コイツがずっと付いてくると思うと、憂鬱になってきた。

 

 

 




なんでか分からないけどポッド153はポッド042よりA2と仲良くできなさそうな確信がある


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Episode.11 [微カナ変化]

受け継いだ記憶が実際どこまで影響をもたらすのか具体的には分からないので初投稿です。


砂漠を滑り進んでいると、早速デカイ機械生命体3体が見えてきた。

 

私はあのガ……9Sから渡された方の大太刀とは別の、私が元から持っていた大剣を構え、滑ってきた勢いでジャンプし、頭に大剣を叩きつける。

 

ズバンッ

 

機械生命体の頭がぱっくりと割れる。

 

「…………ギ

       ギ……………」 

 

そしてそのまま剣と共に頭をぶっこ抜き、その頭を掴み、残りの二体に見せつけ、言う。

 

「力の差は歴然だ。」

 

二体は怒り狂い私に向かってくる。

 

あとはもう簡単だ。怒り狂ってる敵の動きは単純だから、手際よく捌いていく。

 

「……フゥ…。」

 

まぁ、ざっとこんなものか。

 

「大型っていうからどんな敵かと思ったら、大したことないな。」

 

こんなのではいつも相手してるのと大差ない。わざわざ砂漠にまで足を運んできて損したな。

 

そう思ったとき

 

[否定:敵機械生命体反応健在。]

 

……なんだって?

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

地面の砂が揺れる。まさか砂の中にいるのか!?

 

 

ドバァァアン

 

「なんだ……あれは……!?」

 

砂中から丸い球体で体の繋がった巨大なムカデのような機械生命体が現れる。

 

[砂漠地帯用に進化した機械生命体と推測。]

 

[推奨:敵機械生命体の破壊。]

 

「言われなくても!」

 

奴は飛び出した後、上空で滞空し弾幕を撃ってきた。

 

撃ってくる弾幕を回避しながらポッドに射撃させ、撃ち落とそうとする。

 

くそっ。このハコにいきなり頼る事になるなんて…

 

[ヨルハ機体A2のような旧型アタッカーモデルには射撃機能はない。]

 

あ?

 

[推奨:遠距離攻撃手段を持つ本随行支援ユニットに対する感謝の提示。]

 

このハコめ……

 

「恩着せがましい…。」

 

 

ある程度撃っていると、急に体を球体ごとに分裂させ、地上に落ちてきてた。

 

「うおっ!?」

 

ゴロゴロと転がってくる。

 

「……ッ!」

 

ギィンっと大剣で弾く。ボールのようにゴロゴロと転がる。

 

……っ。…重い。それに…

 

「くそっ…固いな…。」

 

力一杯に刃をぶつけた筈だが、傷がついた程度で手応えがない。

 

仕方ない…。

 

 

 

「B(バーサーカー)モードで倒すか……。」

 

 

 

Bモード。それは…

 

[警告:核融合ユニットの出力を増大させるBモードは危険。]

 

[攻撃力は増大するが防御力は低下し、メンテナンスコストも増大する。]

 

おい今私が説明しようとしただろ。邪魔すんな。

 

[その証として、最新型のモデルからは機能削除されている。]

 

っ!! コイツ……さっきといい今のといい、いちいち旧型だの最新型だの言いやがって。

 

「悪かったな旧型で!」

 

そこ結構気にしてるんだぞ!!

 

 

あぁーもう腹立ってきた!危険だろうがなんだろうがBモード使ってやる!

 

「ううぅ……ああぁああ!!」

 

[は?]

 

体が熱くなり、その苦しさでうめき声をあがる。だが同時に、体中に力がみなぎってくる。

 

Bモード起動。蹴散らしてやる。

 

ん?まて、今このハコ は? って言ったか?それもすごいキレ気味で。

 

「!!」 ビィィィィィ

 

いやどうでもいい。今はこっちだ。

 

球体たちが私の変化に気付いたようでビームを放ってくる。

 

ビームは直線状なので死角に入り、一直線に向かう。

 

そして、

 

ギイイィン!!

 

また大剣で弾き飛ばす。また先程のようにボールのようにゴロゴロと転がる。

 

先程とは違い、転がる距離は長く、傷も深い。

 

いいぞ。手応えあり。切り尽くしてやる。

 

さらに追い討ちをかけようとする。

 

また奴に向かい、武器を構え、切りつけようとする。

 

そのときだ。ふと、転がるであろう先に、もう一球いるのが見えた。

 

 

 

 

 

 

………そうだ。

 

私は大剣を切りつける直前で、くるりと大剣の刃と峰を入れかえて、Bモードの出せる力いっぱいで振り、剣の峰をぶつける。

 

 

ゴンッ!!

 

敵の体に切り込みは入らない。当然だ。刃ではなく、峰を当てたのだから。

 

だがそのかわり。

 

 

ゴオォォオ!!

 

 

そいつはまるで野球ボールのように弾き飛ばされた。カキィンと効果音が入りそうだ。

 

そして、

 

 

ゴシャァア!!

 

 

先にいたもう一球に勢いよく直撃し、互いに潰れた。

 

やっぱりな。同じ硬さをしてるんだ。勢いよくぶつかりあえばただじゃ済まないだろう。

 

一瞬であの固いのを二体倒した快感に味を占めた私は次々と同じ方法で倒していく。

 

アイツらはデカイし結構トロイので、案外適当に打っても当たった。

 

ふふふ。いいぞ、これ結構楽しいな。

 

 

 

だが、アイツら奇数だったから最後に一体残ってしまった。

 

まったく…。キリよく終わりたかったのに…。

 

最後の一体に向かって走る。まぁ、一体だけで楽になったし、適当に切りつけ続ければいいか。

 

つまらないな……ん?

 

ふと、気付いた。

 

つまらない?私って今まであんな工夫した戦い方好んでやってきたか…?

 

いやむしろ適当に切りつけたりするのが楽しいと思ってた筈だ。

 

んん…。まぁいいか。戦闘に集中。

 

最後の一球に向かって斬りかかろうとして__

 

[警告:敵にEMP攻撃を関知。]

 

「何!?」

 

咄嗟に止まろうとするが、もうすでに光っているのが見えてしまった。

 

駄目だ。間に合わない_______

 

ビカァァァァァァア

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に真っ白な地面と暗い宇宙のような空間が広がる。

 

「ここは……。」

 

なんだここ。

 

[EMP攻撃の衝撃によってA2の記憶領域にハッキング被害が生じた模様。]

 

無機質な女の、あのハコの声が聞こえてきた。端的かつ分かりやすい説明ですぐさま状況を理解する。

 

「じゃあここは私の記憶領域か…。」

 

記憶領域。あるのが知ってはいたが、実際に見るのは初めてだ。こうなってたのか。変な所だな。

 

…ん?

 

「てか、なんでお前がここにいるんだ。」

 

[随行支援ユニットは支援対象機に不具合があった場合。内部モニタリングの義務がある為。]

 

また端的かつ分かりやすく伝えられる。

 

「勝手に人の頭の中に入ってくるな…。」

 

さて、私はここでどうすればいいんだ?

 

ハッキングされたって事は、原因が何処かにいるんだろう。

 

とりあえず、記憶領域内を歩き回って探してみることにした。

 

突然、ノイズが走る。

 

「クッ……。」

 

無機質な機械生命体の声がノイズ混じりで辺りから響いてきた。

 

「……私は………砂漠……試作機……人類を………殲滅するため………製作サレ……。」

 

 

「なんだ…?これは…?」

 

[敵機体からのハッキングにより敵のメモリ空間との強制融合が為されている。]

 

強制融合。なんだかわからないが言葉の響きからしてそれってまずそうな気がする。

 

「何とかできないのか!?このままだと私はどうなる!?」

 

[この強制融合は無意味な行動。危険性はない。]

 

「……。」

 

……そういうの早く言って欲しいな……。

 

またしばらく歩き回っていると、こんどは少年のような声が聞こえてきた。

 

この声は

 

「機械生………を殲滅したら、僕た……士は

やる事が無くな……ます。」

 

「そうした……平和に暮らす……が……っとくるは……でザザザッ …Bにお似合いのT………ツを買っ………ザザザザッ ……約束………からね?」

 

所々ノイズまみれだが、なんとなく楽しそうな声をしてるのが分かる。

 

[本データは9Sの記憶データの断片。]

 

[2Bとの会話の記憶と推測。]

 

なんで9Sのが? ってあぁそうだ。今持ってる武器に記憶がどうこうって言ってたな。

 

あの日9Sから武器を受け取ったときも、少しだがアイツの記憶が頭に流れ込んできたな。

 

いや武器に記憶ってどんな技術だよそれ。

 

もうヨルハ部隊の技術はよくわかんなくなってるな_______

 

 

「………は違うよ……二号……私達はみんな、自分で……選ん……ここま………んだ……。うううっ……。」

 

!?この声は…!!

 

「生きる意味を与えてくれて………ありが……と」

 

……!!

 

嫌でもあの日の光景が浮かぶ。

 

「やめろっ!!!」

 

[当該データはヨルハ機体A2の記憶と認定。]

 

「うるさいっ!さっさと接続を切れ!」

 

ポッドが接続を切る。

 

 

 

 

……。

 

気分が急に重くなる。クソッ…。さっさと元凶を見つけて取り除いてやる。

 

しばらく進むと一本道の先に、黒いモヤのようなものが見えてきた。その異物感に、一目でコイツだろうと分かる。

 

武器(なんでこの空間でも剣があるんだ?)を構える。人の嫌な記憶思い出させやがって。

 

「ママ………ママ……。」

 

何か嘆いている。ママ…。確か母親とかを指す言葉だ。

 

「ママ……。ママ…。」

 

…抵抗しないのか?コイツ……。

 

抵抗しない相手への攻撃を一瞬躊躇うが、このままでいるわけにもいかない。

 

ザンッ

 

と切り捨てた。叫び声のようなものはなく、静かにソイツは消滅した。

 

一通り終わると体がだるくなり、ガクッと座り込む。

 

「ハァ……ハァ…。」

 

多分Bモードの反動だ。体がぐったりとして気分が悪い。

 

先程の記憶がまだ残っており、そこに合わさって不快感が増えていく。

 

………四号。……皆……。

 

 

突然後ろに気配を感じる。

 

敵意は感じない。ゆっくりと向く。後ろにいるのは……あのガキ……の幻覚、か…?

 

 

「あなたはいつもそうやって苦しんでいる。」

 

何だと?いきなり出てきて何が言いたい。

 

「誰にも頼れなくて、ずっと一人で抱えこみ、泣き叫けんでい

 

 

…っ!!

 

 

「うるさいっ!」

 

生意気な事をいうアイツに向かって剣を投げる。

 

 

 

トスッ

 

 

 

気がつくと、視界は砂漠に戻っていた。投げた剣は何もない砂にただ刺さっている。

 

「…うるさい……。」

 

あの残ってた最後の一体の球体は何処かへいったのか、ここにはもう居ない。

 

 

あのハコも何も喋らないので、酷く静かだった。

 

 




本編で出てきた2Bの幻覚何がしたいのか全然わかんなかったから幻覚ナインズ君も何しに出させたのか全然わかんねぇ…。


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Episode.12 [弔イノ花]

この話も一応入れときたかったので初投稿です。
今入れとかないともう入れる機会が多分無い。


[ポッド042へ。情報共有を開始する。]

 

この世界の何処かの部屋。小さな照明の明かりに照らされている二機のポッド達が話し込んでいる。

 

[了解。圧縮会話モードを起動。]

 

 

[ ▽❬・/::ーー/’〙〘 〘'''❭〘▷▶▧/:@@<<,-'/:©©¥¥¦§¨©▨▷►▲£®®▶△△〙 ]

 

[ ﹃◆◁■.›『『(_‘゛~』)「…:▽▽〘 ’ー・❬❬〙▷▧▧&;@@://'-,<<<¥¦¦§©££」﹄ ]

 

 

早送り且つ暗号的な文章でやり取りをしている。第三者からみれば何を言っているかは微塵もわからない。

 

[圧縮会話モード終了。理解した。A2の記憶空間内にある9SデータがA2の自我に及ぼす影響について、今後の報告を待つ。]

 

[了解した。支援活動の参考情報としてアップデートする。]

 

少し間をあけてポッド042が口を開く。

 

[…それと、2Bに随行している当機ポッドにはポッド153とA2の関係性の改善への助言は出来ない。]

 

先程の圧縮会話モードで一体どんな会話をしていたのだろうか。

 

[質問:A2に対してポッド153が持っている好感度が著しく低い理由。]

 

 

[回答:随行支援対象A2の短絡的思考且つ行動は少々目に余るものがある為である。]

 

[随行支援対象A2には9Sの記憶データを継いでいることに自覚をもってもらいたい。以上。]

 

 

[……了解。]

 

 

数秒ほどして、

 

[2Bが資源回収ユニットのコアを1つ破壊。]

 

[その際機械生命体の[アクセス用認証キー]を入手した。]

 

[だが、心理状態の悪化が心配だ。なるべくA2との接触は避けなければならない。]

 

[了解した。こちらも2Bとの接触に注意する。]

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資源回収ユニットの一つを潰した私は、次の資源回収ユニットに向かおうとしていた。

 

ポッドの考察によるとあの光球は資源回収ユニットのコアのようなものらしい。恐らく次のアクセスキーもそこにあるだろう。

 

[警告:2Bのバイタルに異常を検知。]

 

[推奨:早急なデータオーバーホール。]

 

こんなときに…。

 

「…早く認証キーを集めて塔を破壊しないと…。」

 

塔。なんなのかはわからないが、あれは機械生命体が関わっているものだ。何の目的で作ったか知らないが絶対に破壊する。

 

[警告:バイタルに異常を抱えたままの戦闘の継続は危険。]

 

すぐにでも次のユニットに向かいたいのにもどかしいなと感じる。

 

………だが、

 

「……わかった。一旦レジスタンスキャンプに戻る。」

 

急ぐ気持ちもあるが、万全な方がいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レジスタンスキャンプにある個室のベッドから起き上がる。

 

データオーバーホールは終わったらしい。案外早かったな。

 

……。

 

バイタルに異常と言っていたからここまで戻ってきたのに…。オーバーホールをする前とあまり変わってないような気がする。

 

まぁポッドが言うからには何か異常があったんだろう。

 

個室から出て、次の資源ユニットに向かおうとする。

 

ふと、暗い顔をしたレジスタンスのアンドロイドが目に止まった。

 

「…どうかしたの?」

 

黒いコートを着たレジスタンスがうつむいたまま口を開く。

 

「…あんたキャンプの外に暫くいたんだろ?すまないが、こいつらを見たことないか。」

 

数枚の写真を見せられる。知らないアンドロイドの顔写真。

 

「…申し訳ないけど、知らない。」

 

「そうか…。同じ部隊にいた仲間たちなんだが、調査に行ったっきり消息がわからなくてな。……もし、もしも……死んでいるなら、弔うくらいはしてやりたくて。」

 

「…自分で探しに行かないの?」

 

「行きたいのは山々だが、前の戦いで駆動部分がイカれちまってね。」

 

そういって、足の付け根をみせる。

 

「だが……やはりどうしても気になって、な。」

 

大切な仲間の安否に不安そうな顔にあの日の私の姿が重なった。

 

「…わかった。私が探してくる。」

 

「…いいのか?」

 

「最後に連絡が取れた場所を教えて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……地面に倒れているアンドロイドの顔を覗きこむ。

 

駄目か…もう死んでいる。

 

遺品だけでも回収する。遺品のドッグタグが束になっている。

 

これでもう三人目…。

 

あと一人か…。

 

[報告:残存する通信記録に緊急支援要請を確認。]

 

「時間は?」

 

[今から12分前。]

 

12分前。ついさっきだ。

 

「まだ生きているかも…。助けに行こう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

砂漠地帯。倒れているレジスタンスを見つけた。

 

[確認:捜索を依頼されていたレジスタンス。]

 

[生体反応なし。死亡を確認。]

 

遅かった。間に合わなかったという思いがあの光景を思い浮かばせる。

 

「……っ!!」

 

あの光景と重なり、助けられなかった悔しさで拳を強く握りしめる

 

[報告:以上で捜索を依頼されていた全てのレジスタンスの死亡を確認した。]

 

「……せめて遺品だけでも届けよう。」

 

 

 

 

 

 

「その顔をみると…。駄目だったんだな、仲間達は…。」

 

レジスタンスの声が暗くなっていく。

 

「残念だけど…皆、死んでいた…。」

 

私の声も自然と暗くなる。

 

「そうか…。」

 

頼まれていた遺品を渡す。

 

「ありがとう。……この花でも添えてやるかな…。」

 

「…花を?」

 

何故。と思った。

 

「あぁ…いや。真似事だよ。人類には死んだ者を弔う風習があったらしい。だから何だという話だが…。安らかに魂が眠ってほしいという願いを花に込めてな…。」

 

安らかに…魂が…。

 

「今回はありがとう。世話になったな。」

 

「……」

 

「……俺は…怪我をして戦場に行かない事でどこか安心してたんだ………。」

 

「……安心して………逃げてたんだ…。」

 

最後に、自戒のような、後悔のような事を小声でそう呟いていた。

 

____________________

 

 

 

「弔う……風習…。」

 

先程レジスタンスから聞いた話がずっと頭に残っている。

 

私には、弔いという事がどんなものかはわからない。

 

だけど、安らかに眠っていて欲しいという願いは良く分かる気がする。

 

「……ナインズ…。」

 

……決めた。あの場所に向かおう。

 

あそこが、一番ふさわしいから。

 

 

 

 

 

商業施設跡の扉の先のエレベーターを下り、ある部屋に入る。

 

その部屋は洞窟のようになっていて、そしてその地面には沢山の白い花が咲いている。

 

月の涙。それがここに咲いている花の名前。

 

白くて美しい、綺麗な花。

 

ここには沢山の月の涙が薄暗い洞窟を照らすように微かに光を放って咲いている。

 

ここには、ナインズと訳あって一度来た事があった。

 

なんて美しい場所だろうと、初めて来たときにそう思った。

 

花に弔いの意味があるのなら、ここが一番ふさわしいだろう。

 

「ナインズ。」

 

語りかけるように、君の名を口にする。

 

「私には、弔うということがどういう事なのか良くわからない。けど、もし私達に魂があるのなら…ここで…。」

 

私は黒の誓約を模して作った木刀を地面に突き刺す。

 

「私も…すぐに行く。」

 

淡い光に囲まれながら、君との思い出に浸る。

 

じわりと、涙がゴーグルに滲んだ気がした。

 

……もう行こう。私にはやらなければならない事があるから。

 

そうして此処を後にしようとして歩きだし、一旦止まる。

 

 

 

 

 

……墓標には振り返らず、願った。

 

 

 

 

 

 

「おやすみナインズ。良い夢を。」

 

 

 

 

 

 

 



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Episode.13 [姿重ネル]

友達に自分の中にある2Bの心理考察を熱弁したら「お前の中での2B観一体どうなってんだよ。」というごもっともな言葉を頂いたので初投稿です。


水没都市。

 

次のユニットが霧の中からうっすらと見えてきた。

 

『こんにちは!資源回収ユニットです。防衛体勢に入ります!』

 

またあの声で、前とまったく同じセリフを言って資源回収ユニットがギギギと壁を動かす。

 

こちらもいつでも攻撃できるようにと意識を集中させる。

 

 

すると、ふと視界の端に、資源回収ユニットの近くの水辺から霧とは違う黒い煙がうっすら見えた気がした。

 

なんだろうかと思い、資源ユニットに入るのを後にしそちらに向かう。

 

あったのは墜落して、ボロボロになった恐らくは飛行ユニット。そこからプスプスと煙が小さく出ていたのだ。

 

ポッドがその残骸に向かって行き、暫く調べて口を開いた。

 

[報告:当機体より9SのIDを確認。]

 

「ナインズの機体……。」

 

ここに機体があるならナインズもここの近くに落ちてた事になる。

 

…こんな遠くに落ちてたの?ここからあの場所まで歩いて?

 

ナインズは汚染されていき、ボロボロになって、その中で最期に何を思っていたのだろう。

 

 

 

もう私にはわからない。知る由もない。

 

そう思っていた時。

 

[飛行ユニットのメモリー内に未送信メッセージを確認。]

 

「……。」

 

いつの物だろう。私を逃がしたすぐ後?録音する暇があるならその時しかない。

 

…だとすれば、これは遺言だろう。

 

まだ聞いてもないのに、そんな確信がある。

 

だって君の事だ。録音機能のある場所で自分が少しでも死ぬ可能性があると分かれば事前に録音をする筈だ。

 

……聞きたい気持ちと、聞きたくない気持ちが交差する。 

 

「……再生して…。」

 

『こちらヨルハ部隊所属9S。この録音を聞いた人がいるなら、ヨルハ部隊所属2Bに会ったときにこう伝えて下さい。』

 

『単独行動が主な任務である僕らS型モデルにとって……。」

 

『…いや。』

 

『僕にとって、あなたと共に過ごした日々は…例え少しの間だけのものだったとしても…僕の大切な、大切な宝物でした。』

 

『本当はもっと話したい事。聞きたい事、一緒にしたかったことがもっと……もっと沢山あったけど………。』

 

 

 

『……君との時間をありがとう。2B。』

 

 

 

プツン

 

[メッセージ終了。]

 

あの日聞いたとき以来の君の声。

 

そして内容に感情が込み上げてくる。

 

「…ナインズ…っ…!」

 

落ちていた飛行ユニットの欠片の一つを拾い上げ、握りしめる。

 

あぁ…ここで…最期を迎えたくなってしまったな。

 

その思いから君の刀に目を向ける。

 

…駄目だ。この刀はその為に使うものじゃない。

 

全て…全て終わらせると…私はこの刀に誓ったんだ。

 

今にも滲んできそうな涙を堪え、再び資源回収ユニットに向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

次の資源回収ユニットの入り口に立つ。

 

「また…何か書いてある。」

 

これもまた前と同じように扉の上に天使文字で何かが書かれている。

 

[魂の箱。と記載。]

 

「魂…。」

 

魂。ここに来る以前、ナインズを弔ったときにもその言葉を意識していた。

 

…ナインズは安らかに眠れただろうか。

 

扉の先のエレベーターに入り、上を目指す。

 

エレベーターが止まり、塔の中を進んでいく。

 

ここも構造は前と変わっていないのだろうか。

 

金属の坂をみてそう感じる。

 

だが違いはあるようだ。広間に出たとき、前とは明らかに違う点があった。

 

「敵が…いない…。」

 

あの無機質な声も、あの機械の体が動く音も、何も聞こえない。

 

だが、部屋の真ん中に何か置いてあるのが見えた。

 

「これって…。」

 

ロックのかけられた箱のような物がある。

 

確かこれは…ハッキングで開けられたものだ。

 

ナインズが見つけては開けていたのを思い出す。

 

「ポッド。」

 

[了解。]

 

ポッドにハッキングさせ、開けさせる。

 

中には何もない。だが、箱を開けた直後に次の階に続くエレベーターが下りてきた。

 

「…そういうことか。」

 

ここではハッキングでシステムプロテクトを解除しなければならないのだろう。

 

次の階に向かうと、やはりまた幾つか箱があるのが見えた。

 

「あ。待って。」

 

ポッドにハッキングを仕掛けるの止めさせる。

 

「ポッド。私にハッキングさせて。」

 

確かポッドの疑似ハッキングの権限を私に移す事ができた筈だ。

 

[疑問:2Bがハッキングを行う理由。」

 

ポッドが当然の疑問を口にする。

 

「いいから。」

 

[了解。]

 

ポッドからハッキングの権限を貰い、ポッドを介してハッキングを仕掛けた。

 

 

 

 

 

「……君はいつもこんな大変な事を…。」

 

ハッキングが終わり、意識が元に戻ると自然と口からその言葉が出た。

 

それからは箱にハッキングを仕掛けては開け、仕掛けては開ける。

 

……ハッキングは何というか、非常に面倒で難しい。

 

何度も失敗しては弾かれた。

 

でも。

 

何度もハッキングに失敗して手こずっていた筈だが、不思議とそこに不快感はなかった。

 

その代わりにナインズがいつもしていた事を自分もしているという感覚が、私の気持ちを満たしている。

 

幾つか箱をあけていると、何か情報のようなものが手に入った。

 

塔システムについての情報だ。

 

目を通すと、何となくあの塔が何かの射出を目的とした事がわかった。

 

「射出……?あの塔は砲台なの?まさか…人類の月面サーバを狙って?」

 

[情報不足の為、否定も肯定も不可能。」

 

「…砲台なら、尚更破壊しないと…。月面サーバが……。」

 

そう言いかけて、ふと自分が月面サーバを守ろうとしている事に気付いた。

 

……私は、人類がとっくに滅んでいることを知っている。

 

月面サーバには人類の遺伝子情報があるにはあるらしいが…果たして再生が可能かどうかはわからない。

 

そして何より…、ヨルハ部隊は壊滅した。

 

それでも尚私は月面サーバを守ろうと思っている。

 

……どうやら…私はまだヨルハ隊員らしい。

 

だが…はっきりと言ってしまえばヨルハ隊員が、ヨルハ部隊という組織が素晴らしいものだったとは言い難い。

 

むしろ、戦争意欲の維持の為だけに作られた茶番のような、虚構のような存在だった。

 

それでも…。

 

それでも…ヨルハ部隊で過ごした日々は本物だった。

 

司令官。6O。21O。他にも沢山の仲間達。

 

そして…ナインズ。

 

皆と過ごした日々は。

 

ナインズと過ごした日々は。

 

共に戦った仲間たちは本物だった筈だろう。

 

そうだ、ヨルハの為に、死んでいった仲間達の為に、そしてナインズの為に、私は戦い続ける。戦い続けなければならないんだ。

 

 

失ってしまった全てに…報いる為に。

 

 

そう、改めて決意した。

 

 

 

 

 

 

 

…が、そんな思いも次に手にいれた情報への感情で上塗りにされてしまった。

 

 

次に手に入れたのはブラックボックスに関する情報だった。

 

それを見て、固まった。

 

「どういう事…。私は…、私はこんな情報知らない…。」

 

﹝機密事項SS﹞と書かれ、司令官ですら知り得ないとされているその情報は、ブラックボックスが機械生命体のコアで作られたことが記載されていた。

 

なんでこんな機密事項の情報が機械生命体の手に?

 

いや、それよりも

 

そんなことよりも

 

私達が機械生命体と同じもので作られている?

 

それじゃあ…つまりそれって……。

 

「そんな…そんな筈ない……。」

 

私が…あれほど憎んだ機械生命体と、倒すべき敵と同じだっていうの……?

 

そんな事ない。そんなのあり得ない。

 

私は、私達はアイツらとは違う。

 

だって私達には心がある。感情がある。

 

仲間と共に過ごし、泣いて。笑って。怒って。ときには憎んで。

 

平和を望んだり、孤独に寂しさを感じたり、

 

見えないなにかを信じてみたり、

 

人類に憧れたり、

 

家族や兄弟に憧れてみたりして…。

 

それから…それから……。

 

 

 

 

…あぁ…でも、それって……。

 

 

 

 

…いや、違う。

 

違う!違う違う…!!

 

私達と違って機械生命体のやることに意味なんてない。

 

そうだったでしょ。

 

そう言ってたでしょう。

 

ねぇそうなんでしょナイン__________

 

 

 

 

 

ふと、音が聞こえてきたことでハッとする。

 

どうやら上に向かうエレベーターが下りてきたようだ。

 

私は…まだ整理できない頭のまま、エレベーターで上り、屋上に出た。

 

屋上に出ると、またあの光球。コアのようなものがあるのが見えた。

 

またあの時のように破壊しても良かった筈なのだが、頭が整理できてないからなのか、それともナインズとの追憶を求める意思からか、無意識のうちにハッキングを仕掛けていた。

 

 




次回。例のCM回。


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Episode.14 [アノ日壊レタ何カ]



徹底的に壊れていく君の姿は美しいので初投稿です。


 

 

 

「あれ……ここは…。」

 

一直線の白い道。宇宙のように広がっている空間。

 

私はハッキングを仕掛けた筈なのだが、そこに広がる光景は今まで見てきたハッキングの画面と少し違った。

 

私は…ここを知っているような気がする。

 

一直線の道を歩き続けていると、なにか奥にある広い空間に、沢山の。いや膨大な量の画面のようなものがあるのが遠目に見えた。

 

「これって…。」

 

近づいていくにつれて見えてきたその正体に、ようやく気付いた。

 

 

「私の…記憶…。」

 

 

ここは私の記憶領域だ。私の記憶が、思い出が詰まった場所。

 

何故ここにいるのだろう。辺りを見回す。

 

見えるのは私の記憶が写しだされた沢山の画面。

 

その画面の一枚一枚に写しだされているのは私とナインズとの記憶ばかり。

 

 

沢山ある記憶に目を向ける。

 

その一つ一つを、ナインズたちを。私は今でも鮮明に思い出せる。

 

 

君と工場で初めて会ったときの記憶。

 

遊園地の歌姫と共に戦ったときの記憶。

 

アダムと戦ったときの記憶。

 

君を抱きかかえているときの記憶。

 

 

イヴと共に戦ったときの記憶。

 

 

君の首を絞めるときの記憶。

 

 

君の手の上で君を見ているときの記憶。

 

 

 

砂漠で君を必死に運ぼうとしているときの記憶。

 

 

 

 

洞窟で共に雨上がりを待っていたときの記憶。

 

 

 

 

海で溺れかけた君を助けたときの記憶。

 

 

 

 

一緒に世界中を旅して回ろうと約束したときの記憶。

 

 

 

 

 

君の胸に刃を突き刺しているときの記憶。

 

 

 

 

 

 

 

君の喉を刈っ切ったときの記憶。

 

 

 

 

 

 

君とバンカーで初めて会ったときの記憶。

 

 

 

 

君と草原で初めて会ったときの記憶。

 

 

 

 

君と海岸で初めて会ったときの記憶。

 

 

 

 

君と初めて会ったときの記憶。

 

 

 

 

君と初めて会ったときの記憶。

 

 

 

 

 

君と初めて会ったときの記憶。

 

 

 

 

 

 

君と初めて会ったときの記憶。

 

 

 

 

 

 

君と…………________

 

 

 

 

数えきれない程の、膨大な量の記憶。

 

そしてその沢山ある記憶の中心に、その記憶たちに取り囲まれているかのように、ナインズの形があった。

 

幻覚か、いや違う。私の記憶が生み出した立体モニターのようなものだろう。

 

もう二度とこの目で見ることが叶わないと思っていたナインズの姿に私は思わず手を伸ばし向かって行く。

 

「たとえ…これが私の記憶でも……私は……。」

 

 

 

 

 

 

ザザッ

 

周囲に異音が走る。

 

咄嗟に辺りを見回す。

 

そして周りで起きている状況に気付き、理性が吹き飛びそうになった。

 

記憶の一枚一枚が、何者かによって干渉されて黒い靄に取り込まれていっている。

 

忘れていたが今ここにいる場所は私の記憶領域、つまり私の中だ。

 

ハッキングを仕掛けた筈なのに私の中にいるということは、逆にハッキングされたことを意味している。

 

私にハッキングを仕掛けてきた何者かが私の記憶を取り込もうとしている。

 

ザザッ

 

ザザザザッ

 

次々と私の記憶に黒い靄がかかって取り込まれていく。

 

ナインズの姿にも、黒い靄がかかり、それを核にするように靄が集まっていく。

 

「やめろ」

 

この状況にとてつもない不快感が込み上げてきた。

 

尋常じゃない程の、A2に向けていたあの憎悪に似たものが湧いてくる。

 

「やめろ。」

 

それでも、靄の侵食は止まらない。

 

ナインズの姿を核にした靄は形作り、黒い人型のようになる。

 

 

「やめろ!!」

 

 

次々と取り込まれていくその光景が、まるで記憶を奪われているように感じた。

 

そう思ってしまったことで、感情がついに爆発する。

 

 

「やめろッッッ!!!」

 

「私の記憶に……ッ!!勝手に入ってくるなぁ!!!」

 

 

武器を構え、すぐにでもこの場に居るべきでない異物を排除しようと刃を突き刺す。

 

ドスッ。

 

その勢いで黒い人型は倒れる。

 

私もその勢いでソイツに馬乗りになって、また刃を抜いて突き刺す。

 

ドスッ

 

そして何度も、何度も何度も突き刺した。

 

ドスッ

 

ドスッ

 

それほどまでにコイツが憎たらしい。

 

「これはっ!!この記憶は……ッ!!全部っ!!……全部、全部!!」

 

「私だけのものなんだッ!!触るなぁァっ!!!」

 

 

爆発した感情が、考えるよりも先に言葉を出させる。何を言っているのか自分でも良くわからない。

 

何度も何度も何度も突き刺す。とにかく突き刺し続ける。

 

コイツが記憶に触れてきたという事実が私に尋常じゃない不快感を感じさせる。

 

その不快感からとにかくコイツをこの場から排除しようと必死に突き刺し続ける。

 

とにかくコイツのやった事が気に入らない。

 

いやそれ以前にコイツがここに居ることが堪らなく許せない。

 

だってこの場所は私とナインズだけの場所なんだ。他の誰かが居ていい場所じゃない。

 

それなのに。それなのに。

 

私だけの記憶なのにコイツは勝手に触れたんだ。

 

私だけの物なのに。

 

私だけが持っている物なのに。

 

私だけのナインズなのに。

 

私だけの。私のだけのモノなのに。

 

 

「私の…記憶を…ッ…!!」

 

 

ドスッ

 

何度も刃を突き刺す。感情に任せて。

 

ドスッ

 

何度も。何度も。何度も。

 

ドスッ

 

ドスッ

 

ドスッ

 

ドスッ

 

 

 

 

 

 

 

ザクッ

 

ふと、手応えが、よく知っている感覚になった気がした。

 

ザクッ

 

いつの間にか、あの黒い靄は消え、ナインズに戻っている。

 

 

ザクッ

 

私は何度も、何度もナインズに刃を突き刺す。

 

いや、何をしてるんだ。すぐにでもやめないと。

 

ザクッ

 

ザクッ

 

それなのに私の体はナインズを刺し続ける。

 

ザクッ

 

ザクッ

 

ザクッ

 

 

びちゃびちゃと赤い潤滑油が飛び散っているあのよく見知った光景が私の目に映る。

 

 

ザクッ

 

 

やめろ

 

やめろ。

 

もう終わった。やめるんだ。

 

 

ザクッ

 

 

ザクッ

 

 

ザクッ

 

 

やめろ。なんで、何でまた私はナインズを殺そうとしてるんだ。

 

ザクッ

 

 

ザクッ

 

 

もうやめろ。もうナインズを殺す必要はないから。やめろ。やめて。

 

 

 

ザクッ

 

 

やめて。もうやめて。やめてよ。

 

 

ザクッ

 

 

嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

 

ザクッ

 

 

こんなの嫌。もう嫌。嫌なのに。

 

 

ザクッ

 

 

なんで、なんで止まらないの。

 

 

ザクッ

 

 

止まって。もう止まってよ。

 

 

なんで私はナインズを殺しているの。

 

 

殺したくない。

 

 

 

もう殺したくない。

 

 

 

殺したくないのに。

 

 

 

 

なのに。

 

 

なのに。

 

 

 

 

 

 

 

なんで。

 

 

 

 

なんで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで今まで私はずっと__________

 

 

「あああああああああああああああ!!!」

 

 

ギンッっ

 

私の声と、ガラスを貫いたような音が辺りに響く。

 

「ハァ………ッ………ハァ……ッ…………」

 

気がつけば、視界はユニットの屋上にもどっていた。

 

私の振るい続けていた刀は、コアの深くまで突き刺さり、コアを破壊していた。

 

〘アクセスキーを取得。〙

 

コアを破壊した事で、目標が達成された。

 

けど、そんな事を気にしているような余裕は無かった。

 

あの手に残る感覚が疎ましくて、コアに刺さっている刀を抜かずに柄から手を離してしまう。

 

それでも…まだあの感覚が手に残っている。ナインズの体を刺した時の、あの鈍くて不快な感覚。

 

いつも私を苦しめてきたあの感覚が。

 

もう、この感覚は二度と感じなくていいんだと心の何処かでそう思っていたのに。

 

どうして……どうして。

 

何で…私はまた……ナインズを……_______

 

 

 

 

「フフッ……」

 

突然私の口から笑い声が漏れはじめた。

 

「フフフフ…ハハハ……」

 

「アハハ…」

 

一度漏れ始めると、そこに続いて声が出てくる。

 

なにが可笑しいんだろう。私はまたナインズを殺したのに。

 

「アッハハハハ……!!」

 

それでも、それでも笑い声が収まらない。

 

訳がわからない。何故か今私は嬉しくてたまらない。

 

どうして

 

どうしてなの。私はナインズを殺したのに、なのに、私の心が満たされていく。

 

嬉しさが、満足感が、悲しみと同じくらいに、いやそれ以上に私の中から溢れてきている。

 

おかしい。こんなのおかしい。おかしいのに。満たされていく心が嬉しくて、心地よくて、抑えることができない。

 

「アハハハハ…アッハハハハハハ!!」

 

訳も分からず、ただただ喜びに任せて笑い続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして笑い続けている内に、ふと気付いた。

 

あの日私の中で壊れた何かが、再び形を取り戻そうとしている事に。

 

 

 




ナインズ君は記憶消されてたから2Bといつも一緒は不可抗力だけど、2Bは…実際どうなんでしょうね?


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関係ナイ話
Episode.?? 命名。It might to [BE]



おまけというか、なんというか。という回なので初投稿です。
アコールの事詳しく知らないとかなり「?」となります。あとおまけなのにクソ長いです。ぶっちゃけ読まなくても良いです。


 

 

 

暗い廃ビルの中、苔が生え、所々ひび割れた薄暗い部屋に風変わりなライトの光の下で何かを執筆する一人の女性がいた。

 

小声でなにか呟きながら、紙に文字を書き続けている。

 

 

 

「□□時△△分◆◆秒、上空にて明確なルート分岐が観測された。今まで確認されてきたC,D,E,その他,のルートに繋がっていたルートとは明らかに違った状況になっており。現在調査を継続中。」

 

「新たに分岐したルートは、今までのルートと違い9Sが2Bの搭乗していた飛行ユニットを意図的に撃墜し、彼女を逃がした所から始まったらしい、興味深いことにその後9Sは既存のルートの2Bと酷似した状況、状態で死亡。さらに2Bまでもが既存ルートの9Sのような状況・状態に陥っているというのだ。いや、状況・状態だけでない。言動、行動までもが報告の記録には酷似して存在していた。」

 

「この観測報告を受けたときは本当に驚いた。そして同時にこの分岐は非常に興味深いとも思った。」

 

「今まで観測されてきた分岐とは、[全くもって結末が異なるルート]と[過程に多少の差異があれど結末は収束するルート]の二つに分けられていた。恐らく今回のルートは後者にあたるだろう。しかし、❬過程に多少の差異❭といえど❬観測対象の立ち位置そのものが入れ替わる❭などというのは前列がなく、恐らくこれが初めてである。そのため私はこのルートを率先して担当し、要監視・調査することに決めた。」

 

「現在分岐の中心的存在とされる観測対象2Bは意識不明の状態をレジスタンス軍所属のアンドロイドに保護され、治療を行っており……____

 

 

________

 

 

「…ふぅ。ここら辺で一端休憩にしましょう。」

 

暫くして、ひとしきり書き終えると、彼女はそう言いメガネをあげ、目を抑える動作をした。

 

彼女の周りには沢山の紙が山になって置いてある。

 

「少し書きすぎてしまいましたね。添削しましょう。」

 

そう言い、紙を手に取り読み進めていく。

 

「………この情報はいらないですね……あとここも……これもそうですね……。」

 

「……随分薄くなっちゃいましたね…。でも重要な情報を簡潔かつ無駄なく伝えるにはこれぐらいがちょうどいい……やっぱりレジスタンス一人一人の傾向報告はいりませんでしたね……反省です。重要な情報だけまとめて書き直しましょう。」

 

そう言い、再び白紙の紙に書き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

私はアコール。観測者だ。

 

 

観測者というのは、私達の役割の呼称。

 

世界を大崩落(フォールダウン)から救うべく、世界を観測し、調査し、あるときは導く者として作られた存在。

 

私はここでこの世界。「母体」が襲来してから10000年近く経ったこの地球という星で、とあるアンドロイド達の観測をするのが主な仕事だ。

 

私はこの観測者という役割が好きだ。

 

人間模様、世界観、ドラマ、戦い、あらゆるものへの観測が私の知的好奇心を満たしてくれるから。

 

そして特にこの時代の地球が大好きだ。多分私はsfチックなものが好きなんだろう。

 

だから私はいつもこの世界の観測をしている。と言ってもこの世界は大きく分けて2つの結末にしか帰結しないのだが。

 

だが私は何度この世界の分岐世界の観測を担当し、何度同じ結末を観測しても飽きない。それほどまでにこの世界が好きだ。

 

そして今回。私はこの分岐世界で新たな分岐が発見されたと報告を受けた。

 

細かくわけても26個の結末の観測が限界だったこの世界に、あらたな結末がありえるかもしれないという事だ。

 

その時私は別の分岐世界の観測を担当していたのだが、それを聞いて急いでこちらの担当を申し出た。

 

なんと新たな分岐は観測対象の立ち位置が入れ替わったという今まで観測してきた中でも異例の事態だった。まだ本格的な観測は始まってもないのに、もう既に私の心はワクワクとしている。どれくらいワクワクしているかというと、例えどんな結末になったとしても私は満足して受け入れられるだろうという確信がある程にワクワクしている。あぁでもこの目で分岐の瞬間を見れなかったのだけが凄く残念だ。前の分岐世界に長居しすぎだったのは本当に反省すべき点だろう。なにせCルートは本当に彼女の生き様が素晴らしいから………__________以下割愛。

 

………。

 

「…今日で分岐発見から9日目…。そろそろ彼女も合流してきてもいい頃なんですけどね…。」

 

調査記録を書きながらそんな事を私は呟いた。

 

この分岐世界を最初に担当していたのは私ではない。また別の担当が最初この分岐世界にいたのだ。

 

「まぁ…。彼女なら正直居ても居なくても大して変わらないんですが……。」

 

そんな失礼な独り言を言っていたちょうどその時、扉の向こうからノックが鳴った。

 

「入ってどうぞ。」

 

ガチャリ。

 

扉が開き、カツカツと一人の女性が入ってくる。メガネをかけた黒髪の女性。ヒールを鳴らすその歩き方は足を横から前に出すという非常に不自然なもので、見る者は不気味に感じるかもしれない。

 

 

 

と言ってもこれが私達の普通の歩き方だが。

 

 

 

「すいませ~ん。遅れちゃいました。」

 

間延びした声が部屋に響く。

 

彼女はアコール。いや、彼女もアコール。この分岐世界を最初に担当していたアコールだ。

 

「何をしていたんです?随分と遅かったですが。」

 

「あ~。ちょっと釣りしてました。楽しかったもんで数日ほど長引いちゃいました。」

 

 

……このやる気の無さそうなアコールが、この分岐の発見者だ。

 

彼女は私…いや、数多いる私達アコールという観測者の中でも少し変わったアコールだ。

 

「……報告が初観測の数日後ってのはどういう事です?」

 

「いや~どうすればいいか必死に…あ。いや初めての事で頭の整理が追い付かなくて…。て、てへへ…?」

 

「……?……ハァ…。」

 

 

とまぁこんな感じで、彼女は自分の職務に対する責任感が非常に薄い。

 

いや、それだけならいいが…彼女たびたび職務放棄もおこすのだ。

 

適当にコピペして報告してくることもあれば、飽きたからといって途中で観測を止めて次の観測に行くこともたびたび。

 

私がこの分岐への担当変更許可が下りたのも、多分彼女が信頼されてないからだろう。

 

だが、彼女がそうやってコロコロと分岐世界を渡り歩いていなかったらこの分岐世界が見つかってなかったと思うと、それはそれで感慨深くもあるなと感じる。

 

 

 

「……あれ?貴女ケースは何処です?」

 

ふと彼女が私達アコールの観測道具の詰まったケースを持っていない事に気づいた。

 

「あ~あれ重いじゃないですか?だから」

 

「…どこかに置いてきたんですか?」

 

「いえ、頼んできました。多分もうすぐ来るんじゃないですかね。」

 

「……?」

 

ブロロロロ……

 

ふと、遠くからエンジン音が響いてきた。

 

そして、

 

ドバンっ

 

っとドア突き開けて、顔のついたバイクが部屋に入ってこようとして扉の縁で引っ掛かかった。

 

「こんにちはー!頼まれていた荷物です!

ってやや!?アコールさんが二人!?」

 

「アコールさんって双子だったんですか!?」

 

少年のような声をした顔つきバイクが驚きの声をあげる。

 

「あ~…まぁそんなとこですね。あちらは私のお姉ちゃんです。」

 

「へーお姉さんですか!初めまして!」

 

「初めまして。」

 

違和感ないように、私は平然と挨拶する。

 

「そっかお姉さんか……。お姉さん…。」

 

「?どしたの?」

 

「あ、いえ何でもありません。ハイこちら頼まれていた荷物です!では僕はこれで!」

 

そういってアコールが顔つきバイクからあのケースを受けとる。

 

「エミール宅配サービスをご利用頂きありがとうございましたーー!!」

 

「エミール君ありがとね~!」

 

ブロロロロ……

 

そう言って、エミールはエンジンを鳴らして帰っていった。

 

…あの巨体で、どうやってこのビルのこの階にまで入ってきたのだろうか。

 

いや、それよりも。

 

「………ハァァァ。」 

 

頭を抱え、長いため息をつく。

 

「……なんですぐそうやって必要以上の干渉をするんですかね貴女は。」

 

「てへへ。」

 

「てへへじゃありませんよもう…。」

 

基本的に私達観測者は観測する世界の住民への必要以上の接触を禁じられているのだが。

 

……のだが。……はぁ…。

 

「あなたはホントに観測者に向いてないですね。」

 

「む…。個性的と言って欲しいですね。いいでしょう私達見た目も声と全く同じなんですから。少しぐらい特徴的な方が。」

 

「少しとは……。」

 

彼女は本当に自由奔放だ。以前共に観測をしたことがあるが、その時からソリが会わない。

 

イノシシにちょっかいかけて一日中追いかけ回されてたり、荷物を崖の村に忘れて一緒に消滅させられて咽び泣いていたりと、別になにか迷惑をかけられた訳ではないが、彼女を見ていると…ホントこう…疲れる。

 

「はぁ……もういいですよ。さっさと資料まとめるの手伝って下さい。」

 

「は~い。」

 

なんとなく改善の余地が見込めない確信があるため話を切り上げて手伝わせる。

 

こんな彼女だが、特殊な分岐だからという事があってか、今回は珍しく自分から私を手伝うと申し出てきたのだ。

 

その私と共通する特殊分岐への関心に免じて今回は彼女にしっかりと手伝って貰おうと思う。少々不安だが。

 

「それで、貴女はどちらを担当します?」

 

資料を整理しながら、彼女に質問する。

 

「…はい?」

 

ピンときてないようなので分かりやすく質問する。

 

「いや、ですから、2BとA2。どちらの観測をしたいんですかって聞いてるんです。」

 

「あ。じゃあA2で。」

 

その即答ぶりに、キョトンとする。

 

だってこの分岐で一番変化があるのはおそらく2Bだ。

 

ここが一番気になる筈なのに。

 

いや確かに私が2Bの観測をしたいと思っていたけど。いいの?

 

「え。いいんですか?」

 

「いいですよ。貴女の方が情報纏めるの得意ですし。」

 

まさか貴女。もしかして私に気を使って…?貴女って人は…。

 

「私2Bの事何考えてるか解んなくてあんま好きじゃないんですよね。」

 

……まぁそんな事だろうと思いましたよ。貴女の事ですし。

いや、じゃあなんで貴女わざわざ手伝うとか名乗り出たんですか。本当によく解りませんねこの人。

 

「…わかりました。では私は2Bの観測を担当しましょう。」

 

「お願いしま~す。」

 

「ではA2の観測はよろしくお願いしますね。特にポッドとの関係性は特に注視してくださいね。私の予測が正しければ、このルートで彼女に付き従うのはポッド153ですから。」

 

「ほ~い。ポッドとのやり取り大事っと。メモメモ…あ、そうだ。」

 

「なんです?」

 

「このルートの名前ってどうなるんですかね?だってもうAからZまで埋まっちゃったんでしょう?」

 

「ルート名を今からですか?……あーでも…。そういえばそうですね…。」

 

ルート名。それはそのルートで起きたこと・そのルートを表すにふさわしいことを英文で書き、そこからアルファベットを一文字撰ぶことで決めている。

 

to be or not to [B]e

 

The [E]nd of yorha

 

といった感じで。

 

だが、通常大体Eまでで全部埋まるのに対し、この世界の観測対象の三名はたまに奇行を起こすせいで予期せぬ分岐を作ってきのだ。

 

aji wo [K]utta

 

mission [F]aild

 

deb[U]nked

 

fa[T]al error

 

……

 

そのせいでAからZまで全部埋まってしまったのだ。まぁ私は観測していて楽しかったから別に気にしてないですけど。

 

「どうするんです?ダブりが出ちゃうと何か気持ち悪いですし…。」

 

「……そうですね…。」

 

ルート名を決めるのはそのルートを担当しているアコールだ。彼女に任せようかと思ったが、少なくとも私の方が彼女よりいい名前考えられるとは思うので頭をフル回転させる。

 

…よし。我ながら良いのができた。

 

「…では、こんなのはどうです?」

 

「お?」

 

「もしかしたらあり得た話。という意味合いを込めて…すこし文法的には変ですが、It might to be というのはどうでしょう。」

 

「はぁ…。その場合だとアルファベットはどうなるんです?」

 

英文には大して興味がないようだ。まぁいいでしょう。アルファベットの方に自信があるので。

 

 

 

「[BE]」

 

 

 

少し間をおいて、言った。

 

「…[B]?それじゃダブって」

 

「違います。[BE]です。bとeで書かれる、命令形とか助動詞とかに使われてるあれです。」

 

「あ~…それが…?」

 

まだピンとこないようだ。

 

「[B]と[E]、彼女にぴったりの2文字でしょう?」

 

「…あ~!確かにそうですね!」

 

自信があったとはいえ、珍しく彼女が感心そうな声を挙げたので何だか少し誇らしくなった。

 

「…いやでもやっぱ[BE]って変じゃないですか?2文字って……。変ですね。やっぱ変ですよ。」

 

と思っていたらあっさり否定してきた。彼女にはもう少し思考が行動と同じくらい単調であってほしい。

 

「[!]とか[?]とかの方が良くないですか?」

 

「英文どうするんですかそれ……。」

 

「え~でも良さそうじゃないですか? [!?]とかも面白そうでしょう。そうだ私にも考えさせて下さいよ!きっと面白い名前考えますよ!文法的にもちゃんと合うようにしますから!」

 

「却下です。[BE]でいきます。」

 

彼女の言う面白いはなんとなく嫌な予感がするので即却下する。

 

「え~~~~。」

 

彼女の今日一番の間延びした声が部屋に響いた。

 

 

 

 

 



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Episode.?? 知ル権利

皆さんには知る権利があるので初投稿です。


 

 

 

 

 

 

❬二機の飛行ユニットは大気圏を抜け、地球上空に飛来、バンカーを失った事で搭乗している観測対象のアンドロイド二体、❬2B❭ ❬9S❭の顔は酷く落ち込んでいる。❭…っと。

 

 

 

う~ん、このデジャブよ。

 

…あれ?デジャブってこの使い方で合ってるっけ?なんか違うような気もするけど。ん~…まぁいいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても退屈だなぁ…。もう何回目だろうか。C,D,Eルートの観測なんて…。ミリも変わらない風景、変わった所で結局同じ最後に帰結するミリしか変わらない状況…

 

 

 

いい加減に飽きてきたな…いや前からずっと飽きてるけど…。

 

 

 

もういいかな~…このまま適当に前の資料からコピペして残りを埋めてまた別の分岐行って最初から…

 

 

 

 

 

 

 

 

ハァ~あ…自分でいうのもあれだけど…

 

私、観測者の仕事に向いてない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃ビルの屋上。双眼鏡であの二人を眺めながら私はそんな事を考えていた。

 

 

 

私はアコール。一応はアコール。

 

この世界で分岐や結末の観測が仕事…なんだけれど。

 

世界っていうのはいつも大体同じ結末にしかならないから、ずっと続けててもう飽きてきてるんだよね。

 

同じ様な事を永遠と書き続けるのって結構な労力がいるんですよ。これが。

 

それに…私はこの先の観測があんまり好きじゃないんですよね。というのも、観測対象9S。いや。ナインズ君の事を私は気に入っているんですが…この先の展開は彼が結構酷い目に逢うので。

 

何回みても痛ましくて…ちょっと彼に厳しくないですかねこの世界?

 

「ハァ~あ……。」

 

やる気がごっそり抜けていく。

 

「何か面白いこと起きませんかね~…。」

 

そうすればまた頑張れる気がします。多分。

 

「……あっ。そうだ。」

 

そういってケースを開けてゴソゴソ何かを取り出す。出てきたのは水鉄砲のようなもの。

 

「…ふふふ。このリスキーさが私の退屈を埋めてくれる。」

 

企み顔をしながらその鉄砲にカートリッジのようなものを差し込み、

 

そして遠目に見える二人に向けて撃つ動作をする。

 

「ばーん!……っと。」

 

その鉄砲は撃っても音がしないため、口で擬音をつける。意味なんてないですけど。

 

「……ん~リスキ~。」

 

けのびをしながらなんの緊張感もない間延びした声でいう。

 

今何をしたかというと、この先起きる展開の適当な記憶を適当にどっちかに向けて撃ってみたのだ。

 

何の為に?と聞かれると正直返答に困ってしまう。

 

なんかそれでナインズ君の運命が変わってくれないかな~という期待もあるし、ただリスキーな事をしてヒヤヒヤしてみたいだけでもある。

 

まぁこれやっても何も起きないんですけどね。ヒヤヒヤも大してしない。だって何回も似たような事やったけど、何も起きませんでしたから。

 

というかそれで慣れてしまったからこそ平気でこういう事できるので、そもそも端から何か起きて欲しいなんて思ってませんが。

 

「ふぁ…。観測しよ…。」

 

メガネを上げて、眠くなってきた目を擦りながら再び双眼鏡をつけてあの二人を観測する。

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

視界に映ってる違和感に気づく。

 

もう一度目を擦る。眠いからではなく、目に映った光景が見違えではないかと思って。

 

もう一度、双眼鏡をつける。

 

「……。」

 

あれ~……?2Bの飛行ユニットが先に落ちてませんか……?

 

なんでナインズ君が残ってるんですかね……。

 

ここは確か2Bがナインズ君を逃がしてた筈で……。

 

……あ。まさか………?

 

 

何かに気づく。いや、気づいてしまった。

 

が、それは非常にマズい事なので、記憶の捏造を始める。

 

「いや、でも今までもこんな感じだったかも知れませんね。うん。私の勘違いかも知れません。」

 

そう言って双眼鏡で観測を続ける。

 

うんうん。きっとそう。こんな感じだったね。うん。

 

そうして記憶を捏造して必死に抵抗をするが、何回も見てきた光景を捏造などできるわけがない。

 

そっと爽やかな顔で双眼鏡を外す。

 

そして、頭を抱えこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………やっちまった……。」

 

汗腺が大崩落(フォールダウン)した。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「……どうしよ。」

 

海辺でボーっと釣りをしながらこれからどうすべきかを考える。

 

数日間報告するかどうか迷い。結局隠し通せると思えず、報告してしまった。

 

勿論私が原因ですなんて馬鹿正直には報告してないが。

 

私はただでさえ問題行動が多いのだ。これがバレれば最悪首がとぶ。それも物理的に。

 

 

 

いや、まぁバレはしないと思いますけどね。

 

というのも、多分あの「ばーん」って撃った影響を受けたの多分ナインズ君だ。

 

そして、ナインズ君。悲しい事に多分それが影響で死んでしまった。

 

 

よって、証拠がない。

 

よかったね!

 

全然よくない。

 

だって私はナインズ君が少しでもいい方向にいけば良いなと思ってやったんです。

 

それなのにナインズ君死んじゃったよ…。

 

どうして……。そんなつもりじゃ……。

 

 

 

 

…まぁ。兎に角。バレなさそうではあるんですよね。はい。

 

それに、もう私この分岐の事は放っておいても良さそうなんですよね。

 

 

というのも、私は問題児で大して信用されてないお陰か、この分岐の観測には「あのアコール」があてがわれる事になった。

 

あのアコール…彼女とは前に仕事をした事があるが、いたって真面目で優秀なアコールだった。

 

イノシシに追いかけ回されてる所を助けてくれなかったのはちょっと酷かったけど。

 

 

まぁとにかく、彼女が真面目且つ優秀なので、全部彼女に任せてしまおうかと思ったのだ。

 

多分彼女なら一人で観測の仕事・報告を全部片付けてしまうだろうから。

 

私が時間かけてやってボロが出てしまうより全然そうした方がいいはずでしょう。

 

 

 

…よし。このままさりげなく別の分岐に行って私は関係してなかった事にしましょう。

 

そう思って立ち上がる。

 

 

 

 

…が、何でか歩き出せない。

 

 

 

……はぁ。

 

どうやら…一応こんな私でも多少の責任感ぐらいはあるみたいだ。

 

さすがにここまでやっておいて逃げるのはあれなんでしょう。

 

でも正直に話してバレるのは嫌だしなぁ~……。

 

 

「……観測作業の手伝いぐらいはしてあげますか…。」

 

そう言うと、私はケースからケータイを取り出しあのアコールに自分も手伝うとメールを送った。

 

 

 

 

まぁ最悪全部バレたら…うん。全力で謝って逃げよう。

 




ちなみにIt might to be が英文的に拙いのにはこのssが拙い二次創作という意味合いを込めてます。


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二人の二号 2/2
Episode.15 [私トノ違イハ何カ]


A2回は平和で楽しいので初投稿です。


[……2Bがそんな状態に……。]

 

ポット153が不安そうになっている。

 

[2Bの精神状態はもう危険な状態に達しつつある。早急な対処が必要だ。]

 

[……だが、データオーバーホールは行ったが、異常は治らなかった。システム上の問題ではないと推測。]

 

ポッド042は淡々と起きた事を分析・報告しているが、どこか彼も不安そうだ。

 

[…システム上の問題ではないのなら随行支援ユニットの機能では対処できないのでは?]

 

[………肯定。]

 

無機質な筈の二機の声は、心なしか悔しそうに聞こえた。

 

 

 

 

 

 

………っと。う~ん。ポッドたちの会話にも多少の違いが出てますね。これは面白い。

 

要記録。要記録っと。

 

おっと、そろそろA2が再起動しますね。準備準備。

 

2Bの方はどうなってるのかなぁ。まぁ多分ナインズ君みたいな感じになってるんだろうけど…。

 

ちょっと気になるなぁ。

 

…気になるけど……。

 

あの人の報告記録凄い文字量だから読むの時間かかるんだよなぁ…。

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

[どうやらA2の記憶領域に9Sのデータが混在しているようだ。]

 

[どのような影響が表れるか、このまま経過を観察しようと思う。]

 

[了解。ネットワークが破壊された機械生命体だが、継続して暴走している個体も多い。警戒するように。]

 

[了解。]

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ウッ……。」

 

意識が戻ってくるのを感じる。

 

どうやらあの後、私は倒れこんでしまったらしい。

 

体がダルい……。起き上がりたくないな…。

 

だが、このままでいる訳にもいかないから起き上がる。

 

[おはようございます。A2。]

 

何があったんだっけな。えっと……。

 

「……一体…。」

 

[ヨルハ機体A2は5分42秒前に再起動された。]

 

[原因:大型機械生命体との戦闘による過負荷によるもの。]

 

あぁ。そうだ。あの丸いのと戦ってたんだったな。ハッキングかけられて、それで疲れて倒れこんだのか。

 

[推測:疲労の原因の大部分はBモードの使用にあると思われる。その為、今後の使用は控えるべきである。]

 

「私の勝手だろう…。そんなの……。」

 

[使用を控えるべきである。]

 

「うるさいな…。」

 

ダルい体を動かして砂漠から帰ろうとするが、砂に足を取られて動きづらい。

 

「くそっ……。砂だらけで鬱陶しいな…。」

 

[報告:燃料用ろ過フィルターが劣化。砂漠での戦闘時に、内部に微細な粒子が入り込んだ模様。]

 

[推奨:早急な当該部品の交換。]

 

「交換って言われてもな…。」

 

私には部品を作る技術なんてないし、部品を作れる知り合いもいない。

 

[レジスタンスキャンプで使用された記録を発見。]

 

「レジスタンスキャンプ…。」

 

あまり他のアンドロイドと関わったりしたくないが…他にあてがない。

 

それに…レジスタンスキャンプ…。私が9Sの記憶を受け継いだ時に一瞬見たあれが正しいのなら……。

 

行くしかないか。

 

[それと今後はBモードの使用は控えるべきである。]

 

「しつこいなお前。」

 

いつの間にかマークされているレジスタンスキャンプを目指して歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

暫くすると砂漠をぬけ、体力も少し戻り足取りも軽くなってきた。

 

[今後のBモードの]

 

「そればっかりうるさいなお前。」

 

このハコは相変わらずこんな感じだ。何回目だよそれ。

 

このハコよっぽど9Sの事が大事だったらしい。

 

さっきなんて

 

[質問:砂漠での戦闘で9Sの武器を使用しなかった理由。]

 

とか聞いてきた。使い慣れ以外にあるか。

 

無機質な声と口調してるから淡々とした奴だと思っていたが、とんでもなく面倒な奴だ。

 

そもそもとして別に私は9Sの意志を継いでやろうと思ってる訳じゃない。

 

あの日のあれはアイツがたまたま私の前で汚染されかけてたから放っておけなかっただけだ。

 

あのまま汚染されて敵になられても迷惑だし、介錯してやる情けぐらいはあったから。

 

ただそれだけだ。

 

というかそもそもあのガキ自体そんな好きじゃないんだよ私。

 

 

生意気だし、ハッキングは小賢しいし、

 

それにいつも私に会うたび私の事忘れてやがるんだアイツ。

 

 

あの時はさすがに短期間の再開だから覚えてたみたいだが…何なんだアイツ本当に。

 

いつも会うたびに同じ事聞いてくる。

 

「どうしてヨルハを裏切ったんですか!?」ってな。

 

前にそれ答えたろ。ってはっきり言ってやった時の顔はいまだによく覚えてる。

 

(何を言ってるんですかねこの全裸…。)

 

みたいな顔してやがった。

 

ふざけんな。なんで私があんな可哀想な物見る目をされなきゃいけなかったんだ。

 

その顔する資格あるの私だろうが。

 

お前も何か言ってやれよと2Bの方を見てもアイツは目をそらすだけだから、結局私だけが頭おかしい奴みたいな扱いになってしまった。

 

そして次会ったときにはもう忘れてた。今でも腹が立つ。殺すぞ。

 

 

というか殺してきた。

 

 

最初こそハッキングに苦戦したが、一度対処の仕方を覚えてしまえばどうとでも対応できるからな。

 

私が対9Sの経験を積んでくの対し、あっちはいつも私とは初戦だから、そのうち只の一方的な暴力になってた。

 

毎回同型の別人に会っているのかとも考えたが、今まで何回も仲良くセットでぶっ壊してきてやった2Bが私の事覚えているような挙動をしている辺りそうではなさそうだ。

 

となると、アイツ深刻な健忘症でも抱えてたのか?

 

それとも事あるごとにデータバックアップする間もなく死んでんのか?

 

あるいは………あぁもうなんでアイツのこと詮索してるんだ私は。どうでもいいだろうそんな事。

 

 

 

……最近の私は何か変だ。

 

自慢じゃないが私は腕が利くから大抵の事は力で解決できた。考えるという動作にはあまり頼ったことがないし、必要もない。

 

砂漠での戦闘もそうだ。工夫すればいいとかなんて、急に頭が冴えた事はない。

 

9Sの記憶とやらを取り込んでから…なんかおかしくなってないか私。

 

あぁーもう止めだ。9Sの事なんて考えるな。自分が自分でなくなりそうだ。やめだやめ。

 

 

考えるなら2Bの方にしよう。

 

怖かったなぁアイツ。あんな声だせたのか。

 

基本何も喋んないから凄い意外だったな。

 

というかアイツ初めて会ったときは一人だったし違う名前を名乗ってた気がするが……。確か処刑モデルだっけ?

 

まぁ初めて会った時以外は大体9Sと一緒にいて2Bと呼ばれていたから多分部隊異動でもしたんだろう。

 

あの感じだと恨まれてるよな。9Sの事なんて散々ぶっ壊してる筈なんだがな……。なんで今回だけ…。

 

あぁ…そうかバンカーがもう無いからか。

 

9Sから遺言を聞いてるが正直会いたくないな…。

 

 

…優しい貴女のままでいてほしい。…か。

 

 

普段は優しい奴だったんだろうな。

 

ふと、9Sの記憶を介して2Bの姿が浮かぶ。あんまり気にしてこなかったが、顔そのものだよなアイツと私。

 

まぁ多分アイツは私のデータが流用されて同じベースで作られてるんだから、それはそうなんだが。

 

そうだ顔だけじゃなくて昔は私もアイツみたいな髪型してた。ゴーグル付けて、カチューシャみたいの付けて。

 

ゴーグルはあの日自分で捨てたが…結構便利だったなと感じることもあったな。

 

あと今でこそ全裸で素地もまるみえの体だが、服もあんな感じの好んで着てたっけ。懐かしいなぁ…。

 

…ん?

 

2Bの姿と昔の私の姿を思い浮かべる。

 

あれ……。アイツって私じゃないか?

 

そう考えてみた瞬間。途端に親近感のようなものが湧いてきた。

 

変な話だ。恨んできてる相手に親近感なんて。

 

…ふと、ビルの濁ったガラスに写った自分を見る。

 

髪を切って短髪になってることで、余計にアイツを意識させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

マークされていた地点が見えてきた。

 

さて、どうやってレジスタンスに話しかけようか。そう思っていた時だった。

 

「ひゃあぁぁ!」

 

女のような叫び声がした。

 

 

 

 

私は目を疑った。

 

機械生命体に襲われている機械生命体が居たのだ。

 

 




2BとA2のパーソナルデータって同じらしいけど、それって一体どこまでの同一性があるんでしょうね。


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Episode.16 [変化スルモノ。シナイモノ。]

ジョジョのディアボロが幻想郷で最高最善の帝王を目指すとかいう情報量の多い夢を見たので初投稿です。


 

 

「ひいいい!助けて下さい!」

 

機械生命体に襲われている機械生命体が私を見つけるや否や助けを求めてきた。

 

「機械生命体同士の争い…?」

 

今まで暴走した個体が互いを殺し合うのは何度か見た事があるが、一方的に襲われているというのは初めてみた。

 

何がなんだかよくわからないまま助けを求められた条件反射でその機械生命体を襲っていた機械生命体を蹴散らした。

 

 

 

「大変ありがとうございました。」

 

ペコリと。その機械生命体が律儀にお辞儀をする。

 

「貴様も機械生命体だろう…。」

 

条件反射でつい助けてしまったが、コイツは

私の憎むべき相手、機械生命体だ。こいつらに皆仲間を殺された。

 

「いいえ!私は貴方と戦うつもりはありません。私の名前はパスカル。戦いを嫌う機械生命体です。」

 

戦いを嫌うだと?珍しいやつだ。

 

だが

 

「……だから何だ。機械生命体に魂なんかない。ただの殺戮機械だ。」

 

機械生命体が私の仲間達を殺した事を私は一度たりとも忘れた事はない。私は死んでしまった仲間達に報いるために、ずっと戦ってきたんだ。

 

「私の仲間を何人も殺した罪を…償ってもらおう…。」

 

そう言って武器を構えようとする。

 

「…そうですか。仕方ありませんね。それで貴方が……救われるのなら。」

 

そいつは抵抗しなかった。どうやら本当に争う意思はないようだ。

 

だが関係ない。大剣を手に取る。

 

…手に取る……が、そこから体が動かない。

 

「……殺さないのですか?」

 

いつまで経っても剣を構えたままの私にソイツが疑問そうになる。

 

「……ハァ…。」

 

どうやら本当に私はおかしくなったみたいだ。

 

コイツに本当に敵意はないと、争いを嫌うというのがわかった事でコイツに対して興味が湧いてきてしまった。

 

何せ初めて見るのだ。戦わない機械生命体なんて。

 

無抵抗な奴がいたとしてもそれは大体追い詰められたのが原因だ。

 

平常から戦おうとしない奴なんて私は知らない。

 

「……もういい。気が変わらない内にどっかいけ…。」

 

コイツがいるせいで機械生命体を殺すという信念にコイツに対する好奇心がごっちゃになってしまった。

 

その好奇心のせいで殺すに殺せない、せめて何処かに消えてくれ。

 

「……おや?その後ろに連れてるポッドは……。」

 

「いえ、何でもありません。ありがとうございました。」

 

最後にソイツは礼を言うと、シュゴオオオオと上空に飛んでいった。

 

はぁ…。パスカルか…。争いを嫌う機械生命体だと……?何なんだ一体それは……。

 

いやまて。飛べるなら最初からそれで逃げれば良かったんじゃないか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一悶着あってようやくレジスタンスキャンプについた。

 

アイツのせいでどうやってレジスタンスに話かけようか考えるのを忘れた。

 

クソッ…。はっきり言うが私はコミュニケーションが得意じゃない。出来れば他のアンドロイドとは関わりたくなかった。

 

だが、濾過フィルターもそうだが、それ以外にも私個人としてもここに来たい理由が一応はあった。

 

そう思いながらキャンプを見回す。

 

きっとここにアイツがいるはずだ。9Sの記憶を受け継いだ時に…9Sの記憶の中に、あの名前を確かに一瞬見たんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は、二号…生きてたのか。」

 

「久しぶりだな。アネモネ。」

 

 

 

 

 

 

アネモネ。かつて共に戦った仲間達の一人。

 

「そうか、生きてたか。良かった。」

 

アネモネは顔こそ平然としているが、声が少し涙ぐんでいるように聞こえた。

 

「…………あの時、一緒に戦ったやつらは皆死んだよ。」

 

……私もそれはわかっているが。それでも、聞くと少し辛くなる。

 

「……二十一号は、私がこの手で……。」

 

「………」

 

アネモネが生きてるのなら、もしかして。なんて思ったが……そうか…。

 

「……すまなかったな…。」

 

……互いに死んでいたと思っていた者同士の再開なのに、暗くなってしまった。

 

「いや……そうだ!二号。君にそっくりな2Bってヨルハが居たんだよ。」

 

「そいつは本当に君にそっくりそのものなんだ。初めて彼女がここに来たときはうっかり君と勘違いしてしまってね。」

 

「どうだ?たまに2Bはこのキャンプに来るから一緒に話でも…。」

 

アネモネが話題を出すが。

 

「……いい。」

 

「…どうしてだ?」

 

「アイツと一緒に9Sってヨルハの少年が居ただろ。」

 

「あぁ、そうだが。いや、なんでお前がそれを」

 

「ソイツは私が殺した。」

 

「え?」

 

「論理ウィルスに汚染されていたんだ。」

 

「…………そうか…。」

 

私が2Bに会わない。いや会えない理由を大体察したようで、また暗くなってしまう。

 

「このキャンプは自由に使ってくれ。施設の説明は……」

 

「必要ない。9Sの記憶は…この刀に残っている。」

 

そういって背中に携えている大太刀をちらりとみる。

 

このレジスタンスキャンプに来てから感じていたが、なんとなくここの風景を知っている気がしたのだ。多分それも9Sの記憶なんだろう。

 

「……わかった。うちの施設は自由に使ってくれ。私がここのリーダーをやっているんだ。皆にはあらかじめ君の事を説明しとく。」

 

アネモネがここのリーダーか……。なんとなく思っていたが、私と同じようにアネモネも変わったようだ。

 

「あぁ、そうだ。アネモネ。聞きたいことがあるんだが。濾過フィルターを分けてくれないか?燃料用のやつだ。」

 

「燃料用濾過フィルター……最近在庫を切らしているんだ。」

 

「パスカルが生産してるから、よかったら直接取りに行ってくれ。」

 

「ってあぁそうだ。パスカルっていうのは」

 

パスカル。その名前はまだ記憶に新しすぎた。

 

「パスカルって……」

 

「あぁ。知ってるのか?」

 

「機械生命体と取り引きしてるのか?敵じゃないか!?」

 

アネモネも変わったとはいえ、機械生命体と取り引きしてるなんて私には考えられなかった。だって私達の仲間は皆アイツらが殺したんだ。

 

「アイツの村は特別だ。我々に危害は加えない。」

 

「そんな……でも……。」

 

アネモネだって機械生命体の事が憎い筈だろう。

 

だが、アネモネは冷静に私に話し続ける。

 

「我々は同盟を結び、必要に応じて資材の交換を行っているんだ。」

 

「目的の為なら、手段を選んでる場合じゃない。それに……。」

 

 

 

 

「白旗を上げている奴らを殺す程、私達は終わってない。」

 

 

 

 

アネモネは大人びた口調でそう言った。

 

「……」

 

そう言われて私は黙りこんでしまった。

 

アネモネは…私なんかよりもずっと変わっていたらしい。

 

 

_____

 

 

[警告:濾過フィルターが破損すると燃料供給に深刻な問題が発生。]

 

[推奨:燃料用濾過フィルターの早期交換。]

 

ポッドがまだパスカルの所に行くかどうか迷っている私に急かすように言う。

 

「……………わかってるよ。」

 

[機械生命体パスカルを中心とするコロニーの座標を確認。マップにマーク完了した。]

 

早くいけってか。

 

「うるさいな…。」

 

いい加減決意して、立ち上がりキャンプを後にしようとする。

 

その時だった。

 

ガシャン。

 

何かが落ちた音。なんだ?と思って音がした方を見る。するとそこには赤い髪をしたアンドロイドがいた。どうやら手に持っていた荷物を落としたらし_______

 

 

 

 

「その体はどうしたの2B!?」

 

 

 

 

 

「デボル大変!2Bが!!」

 

「どうしたポポル?ってうお!?お前2Bか!?何があったんだ!!いやいい、事情はあとで聞く。ホラこっちこい!!」

 

そう言って後からやってきたこれまた赤い髪をしたアンドロイドに手を引っ張られる。

 

「いや、まて。私は…」

 

「無理しないでって言ったのに…!」

 

抵抗しようとした片腕も最初にいたもう一人

に掴まれる。

 

「オイ!離せ!なんだお前らっ!?」

 

「ポポルが無理をするなって言ってただろう2B!!お前が死んだら9Sがどう思うか考えろ!!」

 

「おいハコ!説明してやれ!」

 

[…]

 

「ハコォォォォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局誤解が解けたのは、ひとしきり体のメンテナンスをされた後だった。

 

誤解が解けた後も体を洗浄された。所々汚いからだそうだ。ほっとけ。

 

 

 




ちなみにA2は本編で9Sの事あのガキなんて一言も言ったことありません。


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Episode.17 [平和ナ彼ラ]

A2の平和な休憩回も多分ここまでなので初投稿です。



パスカル村ってのはあれだろうか。

 

無理矢理メンテナンスされてすっかり調子の良くなった体でマークされた場所に向かっていくと、巨大な木を取り囲むように建設された住居群が見えてきた。

 

村の少し手前まできて止まる。

 

足がいきなり動かなくなった訳ではない。なんなら好調だ。

 

あの二人に濾過フィルターも直して欲しかったが、やはりないものはないので直せない。

 

 

……機械生命体の村というのにまだ少し抵抗があるようだ。

 

[ヨルハ機体A2のパスカル村への訪問に対する抵抗感を関知。]

 

[現在ヨルハ機体A2はクリーニングを施された清潔な状態であるため、人目を心配するような抵抗感を感じる必要はない。]

 

「そういうことじゃない。」

 

このハコ本当に失礼だな。

 

ふと、クリーニングされた体を見る。

 

さすがに塗装剥げやパーツ剥げまでは直せないが、汚れや自然治癒で治りにくかった小さな傷などがパッと見てわかるくらいキレイになっている。あとなんかいい匂いもする。

 

デボルとポポル。双子型っていうのもそうだが、メンテナンス技術やこんな技術をもっているなんて珍しいアンドロイドだった。

 

こんど礼になんかしてやろう。

 

…それにしても、アネモネもそう言っていたが、私と2Bが似てるのは客観的に見てもそうらしい。

 

A[2]。 [2]B。

 

私と2Bは同じ二号型だ。

 

恐らく私と2Bは顔だけじゃなく同じベースの義体が使われてる。

 

だって元々私は…私達はデータ取りの為だけに作られたヨルハだったんだ。取ったデータが今のヨルハ部隊で流用されてる筈なんだ。

 

待てよ?そうなると、もしかして2Bは私の……姉妹機みたいなものか?

 

…「姉妹」か。もしかしたら2Bに感じているこの親近感はそれが理由かもしれないな。

 

 

 

 

 

 

…いい加減村に入ろう。またハコに急かされそうだ。

 

 

 

村に入ると、機械生命体達が談笑したり、じゃれあっていたりするのが見えた。

 

「機械生命体だらけ…」

 

[ここは、パスカルの管理する平和的な機械生命体のコロニー。機械生命体が多数存在するのは予測の範囲内。]

 

[疑問:ヨルハ機体A2の予測能力。]

 

「そのうち、ぶっ壊す……。」

 

さっきのもそうだったがコイツ絶対私の事煽ってきてるよな。キレそう。

 

敵意を感じない機械生命体達を横目に、村の中に進んでいくと、あの機械生命体。パスカルがいた。

 

「ああ!あの時の!」

 

私が話しかけようとすると、向こうが先に口を開いた。

 

「助けて頂き、本当にありがとうございました。」

 

あの時の礼をまた言われる。

 

「…」

 

燃料用濾過フィルターが欲しいと言いたいが、機械生命体にものを頼むということへの抵抗感から何も喋れない。

 

「…それで、何の御用でしょうか?」

 

「……………」

 

「あの…。」

 

パスカルは私が何がしたいのかわからないので困惑気味になっている。

 

[説明:ヨルハ機体A2の燃料用濾過フィルターに不具合。]

 

[経過:レジスタンスキャンプリーダーのアネモネより情報を入手。]

 

[目的:当地区のフィルターを入手するために来訪。]

 

[要求:燃料用濾過フィルター。]

 

「全部説明するな。」

 

[報告:A2の発言不足よるコミュニケーション不足によるもの。]

 

「うるさい。」

 

これにいたっては悔しいが何も言い返せない。

 

「あぁ、成る程。そういうことですか。」

 

「でしたら、少し待ってて下さい。今から作ってきますので。」

 

そう言うと、シュゴオオオオとパスカルが飛んでいった。

 

「飛んだ……。」

 

と思ったら戻ってきた。

 

[パスカルの帰還を確認。]

 

見ればわかる。

 

「ハイ、どうぞ。」

 

燃料用濾過フィルターを渡された。本当に作ってきたようで、見てわかる程に新品だ。

 

「……………」

 

……作るの早いな。

 

 

「……おや?まだ何か御用ですか?」

 

濾過フィルターを貰っても此処を後にしない私にパスカルが疑問そうに聞く。

 

「……フィルターをタダで貰ったからな。」

 

「借りを返さないと気が済まない。」

 

私だって礼くらいは出来るつもりだ。

 

「なんと、それは律儀な。」

 

「そうですか。でしたら……………

 

 

 

 

 

 

その後私は、広間に現れた暴れん坊の退治をして、村の子供達の遊具を作らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「平和的な機械生命体か…。」

 

シャーーー。

 

作らされた遊具、滑り台を滑りながらそんな事をふと口にする。

 

なんというか、争いを捨てた機械生命体というのが私の思っていたのと違った。

 

ここの村人は本当に争いが嫌いなようで、話し方は無機質な筈なのにどこか物腰が柔らかく感じる。

 

村の子供達(殆ど見た目同じなのに子供って何だよ)は無邪気なやつらで、私の事気軽にお姉ちゃんとか呼んできて生意気だが、遊具を作ってやるととても喜んでいた。お礼にどんぐりを貰った。

 

村人も頼み方に少々厚かましい所があるような気もするが、頼まれた分の報酬もキッチリと分けてくれる。

 

此処は文字通り平和を望む機械生命体達で構成されているらしい。

 

 

[推測:パスカル達と友好関係を結ぶことで更なる資材入手が可能。]

 

[推奨:今後のパスカル村との交易。]

 

ポッドが私にそう提言する。

 

コイツは此処との交易することになんら抵抗がないらしい。

 

淡々とした奴とはいえ、9Sが死ぬ理由になった機械生命体の肩を持つような奴には見えないが……。

 

…いや待てよ。

 

以前パスカルを助けたときにパスカルがコイツを見たことあるような反応をしてた気がする。

 

あぁ、そうか。多分コイツは9Sと共に此処に来たことがあるんだろうな。

 

此処の連中は大丈夫だって事を前から知っていたってわけだ。

 

9Sの記憶もこういう記憶を見せてくれれば便利なのにな。

 

 

…平和的な機械生命体と交易か。

 

 

 

 

 

「……ふん。」

 

まぁ平和な機械生命体ってのは面白そうだし、考えてやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[……]

 

「どうした?まじまじと私を見て?」

 

[……]

 

「……?変な奴だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村の子供達にまざって律儀に滑り台の順番を待っているA2の姿は、ポッドの目には非常にシュールに映っていた。

 

 




でも実際生まれて初めて滑り台やったら面白くて何回もやっちゃうと思う。


あと、今までの話の解釈違いとかがあった部分を今ある程度直してます。(2021年4月時点。)暇があったら読み返してみて下さい。


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Episode.18 [崩壊ヘノホコロビ]


皆さん「あっあっあっ…。」ってなってると思う回なので初投稿です……。


 

 

 

 

 

 

 

 

豊かな自然に囲まれた森の機械生命体コロニー。

 

その村長である私は今日も感情や哲学への勉強に励んでいた。

 

今日読んでいるのはこのニーチェという昔存在していた人間の哲学書。

 

 

「ふむ……「国家が終わるところではじめて余計者ではない人間が始まる」か。」

 

「うーむ。どうもこのニーチェという人間の考えは深いですね。」

 

「深すぎて、私にはまだ変人にしか見えませんが。」

 

人間というのは色々な思考を持っていたようです。哲学というのはその中でも取り分け知的で興味深く、また理解が難しい。

 

在りし日の彼らは哲学という物を考え、この不条理だらけの世界に何を感じていたのでしょうか。

 

 

「さて…本だけでなく。私もこの世界を見て回らないといけませんね。」

 

哲学書をキリのいい所まで読んだ私は書を閉じ、部屋から出て今日も村の見回りに向かう。

 

「ねぇねぇ!パスカルおジちゃん!あそんデー!」

 

「「あそんでー!」」

 

部屋から出ると、ちょうど私の所に遊びにきた子供達がいた。

 

「おやおや。随分と言葉が上手になりましたね。」

 

「でもまだ、勉強が終わってないじゃないですか。」

 

遊んであげたいのも山々ですが、甘やかしすぎてもいけない。

 

「今日は植物の図鑑を呼んで覚えるって約束でしたよね?」

 

我々機械生命体は本当はそんな事しなくてもデータをインストールすれば大体の事は覚えられますが、大切なのは自分の意思をもって学びに励む事です。

 

「ジゃあ、勉強が終わっタら。遊んでクレルー?」

 

「「アソんでクレルー?」」

 

「もちろん遊びますよ。パスカルおじちゃんは、ウソをつきませんからね。」

 

「ウソをつく子は悪い機械生命体になっちゃいますよー?」

 

そう言ってちょっと脅かしてみる。

 

「キャー!」

 

「「キャー!」」

 

子供達が楽しそうに悲鳴をあげた。

 

ふふ。今日は勉強が終わったら何して遊んであげましょうかね。

 

 

ズズン……

 

ふと、村から聞き慣れない音がしてきた。

 

「……ん?なんでしょうか……。」

 

こんな騒がしい音をこの村で聞くのは初めてですね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

「よし、あとはこれをパスカルの所に持ってけばいいんだな。」

 

私はパスカル村の住民から、パスカルに哲学書をあげたいという頼みを聞いていた(正確には聞かされた)為、レジスタンスキャンプのアネモネから哲学書と、そのついでに以前パスカルがアネモネに頼んでいたらしい素材を貰って届けようとしていた。

 

 

哲学書。気になって少しパラパラと読んでみたが、なんというか…難しいな。暇があったら読んでみたいが、完全に理解できる自信はない。

 

 

 

ピピッ

 

ふと、通信が入る。

 

『……聞こえますか!?A2さん!』

 

パスカルからみたいだ。ジャストタイミング。

 

「あぁ。丁度よかった。頼まれていた素材が今…」

 

『A2さんっ!村が…大変なんです!』

 

聞こえてきたのはパスカルの必死な声。

 

『村人たちが……ああっ……!!』

 

パスカルが悲鳴をあげた同時に通信が切れた。

 

「おい!パスカル!どうした!?」

 

「一体…何が……。」

 

[推測:貴重な情報源であふパスカルに問題が発生。]

 

あのパスカルがあんなにもなっているなんてただ事じゃないだろう。

 

[推奨:パスカルの村の状況調査。]

 

「言われなくても……!」

 

初めてコイツと同じ事を考えた気がした。

 

 

 

 

 

駆け足でキャンプから村に向かう。

 

村のある森に入ると、火の手が上がっているのが見えた。これはまさか…襲撃か!?

 

だが、村に入ると、それよりもとんでもない事になっていると思い知らされた。

 

「ギャアアア!!」

 

「痛イ!イタい!!」

 

 

「なんだこれ……機械生命体同士が共食いしてる……!?」

 

機械生命体たちが村人の機械生命体を共食いしている。

 

いやまて、あの共食いしてる奴らも村人だった奴らじゃないか!?

 

 

「パスカルは…!?」

 

まさかアイツも喰われたなんて事ないだろうな!?

 

[通信不能の為、確認できず。]

 

「クソッ…。」

 

村は危険な状態だが、パスカルを探すべく村に入る。

 

すると何処からかパスカルが私に気づいて駆け寄ってきた。

 

「ああっ!A2さん…!」

 

「どうしたんだ!?」

 

「わかりません…いきなり一部の村人たちが暴走して…仲間を襲い始めたのです。」

 

やっぱりアイツら村人だったのか…。

 

「子供達だけは別の場所に逃がしたのですが、他の村人は……」

 

パスカルは子供達を早く逃がすためとはいえ、一度村に取り残してきた他の村人の事を救いたいとここに戻ってきたのだろう。

 

だが、

 

「このままだと、お前も喰われるぞ!」

 

「ここはなんとかするから、先に逃げろっ!」

 

「A2さんは!?」

 

「こんな雑魚どもにやられる訳ないだろう!さっさと行け!!」

 

「は、はい!」

 

そう言ってパスカルはもと来た道を戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、全部か…」

 

刃がオイルに濡れた大剣を納刀し、辺りを見渡す。

 

辺りには暴走した村人と、喰われた機械生命体の残骸が転がっている。

 

暴走した村人はこれで全て片付けた筈だ。

 

「生き残っている機械生命体は?」

 

[存在しない。全て機能停止している。]

 

「そうか……。」

 

駄目だったか……。

 

パスカルに通信する。酷だが伝えなければならない。

 

「パスカル。聞こえるか?」

 

『ああっ…A2さん。村は…村の皆はどうなりましたか!?』

 

「すまない……。ダメだった…。」

 

『そんな…。』

 

パスカルの声が暗くなっていく。

 

「子供達は、大丈夫か?」

 

『…廃工場跡地に避難させています。』

 

「わかった。ひとまずそっちに行く。」

 

通信を切り。工場跡地に向かう。

 

一体…一体アイツらに何が起きたんだ?アイツら今までは普通だったんだろう、なんで突然に…。

 

 

 

 

 

 

 

パスカルの反応がある工場跡地の建物の中に入る。

 

「大丈夫か!?パスカル!」

 

「ああっ…A2さん…。」

 

パスカル。子供達もいる。良かった。無事みたいだ。

 

「一体何があったんだ…。」

 

さっきに比べれば冷静になっているパスカルに再び何があったのかを尋ねる。

 

「わかりません…。いきなり一部の村人達が同じ仲間を食べ始めたのです……。」

 

「A2さんが来て下さらなかったら…私達もきっと……。ありがとうございました。」

 

パスカルからもう何度目かの礼を言われる。

 

[疑問:機械生命体は素材さえあれば再生できるのではないか。]

 

ふとポッドが疑問を口にする。確かに考えてみればそうだ。

 

だが、

 

「いえ……実は私達には『コア』と呼ばれるユニットがあります。」

 

「このコアは自我データを形成するなんですが、それを破壊されてしまうと元に戻ることは出来ません……。」

 

「コアは普段は安全な場所に格納しておくのですが…今回犠牲なった村人達はコアごと破壊されてしまっているので……。」

 

「……そうか。」

 

コアか…。私達でいうブラックボックスみたいな物が機械生命体にもあったのか。

 

「この工場は安全なのか?」

 

「以前、暴走した機械生命体が住んでいたのですが、2Bさんが撃退してくれて。今は安全なんです。」

 

2B…。9Sがそうなら当然だが、2Bもパスカルと面識があったのか。

 

「ここしばらくは、私達が資材置き場として使っていました。」

 

「わかった。……ここで籠城するにも、もう少し情報が必要だな…。」

 

[推奨:パスカル達の早急な安全確保。]

 

「そんなに急がせるな……。」

 

[各地のポッドネットワークから情報を入手。]

 

……ポッドネットワーク?複数機いるのか?

 

「お前達に仲間がいるのか?」

 

[肯定。]

 

[本工場廃墟に、大型機械生命体が接近しているとの報告あり。]

 

「何だって!?」

 

その事実を肯定するかのように、床が小さく揺れ始めた。

 

ズシン……ズシン…。と部屋の外からも音が聞こえてくる。

 

「ひぃ!コワイ!コワイ!」

 

「「コワイ!!」」

 

子供達が地響きに怯えだす。

 

遠くからでも足音が聞こえてくるなんてそんなにデカイ奴が…!?

 

「……ここを攻撃される前に、叩き潰す…!」

 

どんな奴だろうが倒すしかない。私は部屋の外に出ようとする。

 

「わ、私も援護します!」

 

「あいつらを叩き潰してぶっ殺します!!」

 

パスカルも着いてこようとする。あのパスカルがこんな事を言うなんて、どうやら本気らしい。

 

だが、

 

 

 

 

 

 

「……いいや、ダメだ!お前はここに残れパスカル!」

 

 

 

 

 

 

 

「…!?どうしてです!私も戦えます!」

 

パスカルが食い下がる。

 

確かに今近づいてきてる奴は未知の敵だ。加勢はあった方がいい。

 

たしかにそう思ったが、やはりダメだ。

 

「村人が突然暴走した以上。子供達だって暴走する可能性があり得る!」

 

「もしそうなった時、止められる奴が必要だ!」

 

その可能性に咄嗟に気づいたのだ。

 

「……!!でも、それじゃあA2さんは…!」

 

「安心しろ、私はアンドロイドだ。お前たち機械生命体よりもずっと強い。今までも何体もぶっ壊してきたんだ。」

 

「……私を信じろ。」

 

「……わかりました…。どうか……ご無事で…。」

 

そうして、私は部屋の外に出た。

 

 

 

ズシン……ズシン……。

 

両手にカッターを携えた巨大な機械生命体が、海を歩いてもう目の前にまで来ている。

 

「……こんなにデカイのか……!」

 

その圧巻ぶりに思わず後ずさる。

 

[警告:ヨルハ機体単身で敵機械生命体の破壊は危険。]

 

[推奨:工場内部へ後退。]

 

ポッドが私に戦うのを止めるように言う。

 

「………どのみち追い詰められるだけだ!ここで戦って倒す!!」

 

分析力のあるお前にだって分かってるだろう。

 

[……9Sはこうではなかった。]

 

「ハッ!!それは残念だったな!覚悟決めろ!」

 

 

 

ゴオオッ

 

もう工場の目の前までやってきた機械生命体が自前のカッターを此方に振るってきた。

 

 

 

 

 

 

「行くぞ、ポッド!!」

 

[了解。]

 





二次創作とは本来こういうものだから初投稿です。


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Episode.19 [全テヲ破壊スル赤キ巨人]

正直こんなのNieRではありませんが、これぐらいしないとここのA2パートは本当に本編と変化がないので初投稿です。

ちなみにA2の持っている武器は黒の血盟と四〇式斬機刀です。


 

 

 

 

 

 

 

ドオン!!

 

 

……ドオンッ!!

 

 

部屋の外から巨大な何かが叩きつけられる音がずっと鳴り響いてくる。

 

その音が鳴る度に、天井が、床が、部屋そのものが揺れる。

 

 

「ヒイイッ!」

 

「コワイ!コワイ!」

 

「村に帰りたイよお……」

 

子供達は外で何が起きているのかに怯え、震えている。

 

「大丈夫です、落ち着いて…!」

 

怯えている子供達を抱きよせてなだめる。

 

「A2お姉ちゃんがきっと悪い機械生命体をやっつけてくれますから!」

 

「A2お姉チャンが……本当ニ…?」

 

「ええ本当ですとも、A2お姉ちゃんはとっても強いんですから!パスカルおじちゃんは嘘をつきませんよ!」

 

そう言って外に繋がる扉の方を向く。

 

音がずっと続いてるということはまだA2さんは生きて戦っている筈。

 

でも…本当は私も不安で仕方ない。子供達の事も、A2さんの事も。

 

「A2さん…どうか……どうかご無事で…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴオオッ

 

ドオンッ!!

 

 

超大型機械生命体の腕に付いた巨大なカッターが振り下ろされ、私に向かって叩きつけてくる。

 

「………ッ!!」

 

振るってくるスピードは早くはないから、距離をとって避けられるが、それでもカッターの叩きつけてきた衝撃に吹き飛ばされる。

 

「……ッあッ!」

 

吹き飛ばされゴロゴロと転がる。

 

咄嗟に立ち上がり、上を見る。もう既にもう一本の腕を振ってきている。

 

また避けて、吹き飛ばされる。

 

さっきからずっとこれの繰り返しだ。

 

 

アイツから見れば私は小さすぎる的だから、中々当てられない。

 

だが、私からすればアイツは大きすぎるから

攻撃しようにもどうすればいいか分からない。

 

ポッドにアイツの頭目掛けて射撃させてるが、あのデカイのは腕のリーチの長さを活かしてて胴体が離れた所にいるから、そもそも届いてるかどうかすら怪しい。

 

 

わかっていたが、分が悪いなんてもんじゃない。

 

このままでは私が先にへばって叩き潰されるのがオチだ。

 

こんなことならパスカルにも付いてきてもらった方が良かったかもしれない。が、もうここまで接近されたら呼びに戻れない。

 

 

どうすればいい。

 

 

 

 

﹝’❬❬❬■〇/'ーー~ー'____

 

 

[……9Sはこうではなかった。]

 

 

「「』-@;'ー~~ーー''_____

 

 

 

そうだ。9Sならどう戦ったんだ。

 

何か。何かないのか9S。

 

お前の記憶の中に、少しでも何か有用なものは……。

 

 

 

’゛‘‘››.■■❬❬『:((_ー~・/…』)]_____

 

 

 

「僕の事をよく知る親しい人は僕の事を「ナインズ」って呼ぶんですけど…」

 

「そろそろ2Bもどうですか?」

 

 

 

 

「そうだ。平和になったら一緒に買い物に行きましょうよ。2Bにお似合いのTシャツとか買ってあげます。」

 

 

 

 

「さっさと倒して、お風呂に入りましょう2B!」

 

 

 

 

ーー~~・・❬『:::■❬[’﹝‘››‘[________

 

 

くそっ!2Bとの記憶しかないじゃないかアイツ!!

 

 

[A2。]

 

ポッドの呼ぶ声でハッとする。もうカッターが振り下ろされてきている。

 

ドオオッ

 

後ろに仰け反って避ける。

 

後ろに仰け反った時に、近くの鉄塔が一瞬目に映った。

 

____そうだ。

 

その一瞬で咄嗟になんとかプランを思い付いた。

 

ポッドに命令する。

 

「ポッド!お前はアイツの所まで行って、私が合図したらハッキングしろ!」

 

[要求:作戦内容の具体的な提示。]

 

「説明してる暇なんてないっ!」

 

ポッドが不服そうにアイツの頭に向かっていく。

 

私は奴が2本とも腕を振り下ろしたのを確認すると急いで鉄塔に向かい、鉄塔に入ると上を目指して駆け上がった。

 

 

ゴオオッ

 

ふとみると、もう奴が腕を鉄塔に向かって振るってきた。

 

ドオオオッ

 

そして私が登っていた鉄塔の根元を破壊し、私は破壊された勢いで空中に投げ出される。

 

 

よし。かかったな。

 

 

「ポッド!!」

 

[了解。ハッキング開始。」

 

 

 

「……っ!?」

 

ハッキングを掛けられ、大型機械生命体の動きが止まる。

 

私はそれを確認すると、空中で必死に海やカッター部分に落ちないように調節して、ソイツの振るってきた腕に着地し、その腕から胴体目指して駆け抜ける。

 

 

「…………!!」

 

[敵性体によるハッキング強制解除。]

 

ギギギッっと再び腕が動き始めた。

 

私を振り落とすつもりなんだろうが、デカイ図体故に初速はスピードがつかず、私を振り落とし切れない。

 

「……っ!!」ボボボボボッ

 

 

このままでは振り落とすより先に私が胴体に到達すると悟ったのか、撃ち落とそうと弾幕を飛ばしてきた。

 

だが、それも想定内だ。

 

「ポッド、撃ち落とせ!!」

 

[了解。] ズガガガガガガガッ

 

私の元に戻ってきたポッドの射撃で弾幕を相殺する。

 

そしてそのまま駆け抜け、腕の付け根近くまで到達した後足に力を精一杯こめて飛び上がり、奴の肩にある鉄柵らしき部分を掴んで、甲板部分に乗りあがった。

 

よし、ここまできたな。

 

奴の頭の真上にあたる位置を探し、そこを目指して走りだす。

 

 

ガシャン。ガシャン。

 

甲板に機械生命体が現れ、こちらに向かって走ってきている。

 

…っ!!もう乗ってきた私を迎撃する駒を送ってきたのか!

 

「ポッド!!足止めしろ!」

 

[了解。] ズガガガッ

 

コイツらに構ってる暇なんてない。あいつらはポッドに任せて私は奴の首目掛けてせっかく登ってきた甲板を飛び立つ。

 

下を向くと、見上げてきたヤツと目があった。

 

 

「……!!!」 ゴオオッ

 

私が何をする気か気づいたようで、急いで腕を向けてこようとする。

 

だが、長い腕が、リーチが逆に仇になって私にはまだ到底届かない位置にある。

 

 

 

 

私は大剣、大太刀を両手に構え、その首目掛けて落下していき、そのまま勢いに任せて

 

 

「っっらぁぁぁぁぁああああああああ!!」

 

 

ズバンっ!!

 

 

 

その巨大な頭を叩き切った。

 

 

バキンッ!!

 

 

右手の大剣が、四〇式斬機刀が砕け折れる。

 

無茶な使い方をしたからな。当然だろう。

 

だがそれよりも大型機械生命体の方を先に確認する。

 

頭を失った胴体がズズゥン……と力なく座り込んだ。

 

やった。やったぞ。倒した。倒してやった。

 

 

あの巨体を倒しきった事で安心し、頭が冷静になった。

 

そして気づいた。

 

 

……あっ。これ私どうしよう。

 

 

私はヒュゥゥゥゥと海に向かって既に目に光を失った奴の首と仲良く落下していく。

 

しまった。倒す事に注視しすぎてその後を考えてなかった。

 

もう海面が眼前まで来ている。思わず目をつぶった。

 

 

 

ザバァァン

 

 

 

おそらく首が海に落下した音。

 

いやまて。なんで私はその音が聞こえた?

 

それに身体に水の感触が、水に叩きつけられた感触がないことにも気づく。

 

恐る恐る目をあけると、海面すれすれで私は止まっていた。

 

どういうことだ?

 

グイッと左足から上に向かって引っ張られる感覚がした。

 

咄嗟に左足の方をみると。

 

「……ポッド!」

 

ポッドが私の左足に従属化の光の輪をつけて私を持ち上げている。

 

 

 

 

 

 

[推奨:感謝の]

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

[……]

 

…なんだ急に黙りこんで。私だって礼くらい言えるぞ。全く……。

 

プラプラと逆さまのままで私は海から工場まで運ばれていく。

 

逆さ吊りの状態で視界が逆さまだが、パスカル達が私に向かって手を振っているのが見えた。

 

 

…随分と不恰好なヒーローの帰還だな。

 

まぁいいか。

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

どっさりと貰ったお礼をどうやってしまうか考えながら、工場を後にする。

 

振り向くとまだパスカルが頭を下げている。

 

感謝される事をしてやった自覚はあるが、なんだか逆に謙遜してしまう。

 

パスカル達はまだ暫くはここで籠城するようだ。まぁ村よりは安全な方だろう。

 

「……」

 

ふと片手に折れた大剣をもつ。

 

もとはヨルハの追撃部隊から奪ったものだが、長く使っていたからな。

 

そう思って、カッターを何度も叩きつけられてズタズタになって軟らかくなっている工場の鉄の地面に折れた大剣を突き刺した。

 

日の光を反射しているその刀身は、折れてひび割れていても、何となく誇らしく感じた。

 

_______

 

 

 

 

 

「それにしても……なんで機械生命体が、同じ種族の筈のパスカル達を襲ったんだ?」

 

工場を後にしすっかり緊張感が抜けて、ポリポリと子供達から貰ったどんぐりを食べながらそんな事を聞く。

 

[不明。それとその木の実は食用ではないと推測。]

 

[推奨:機械生命体の現状について更なる情報収集……]

 

 

 

 

『こんにちは![塔]システムサービスです!』

 

 

 

 

「なっ!?」

 

突然大音量であの塔から声が聞こえてきた。

 

『本日は皆様に耳寄りな情報があります。』

 

『いよいよ、塔サブユニットのロック解除があと一つとなりました。』

 

『つきましては、日頃のご愛顧に感謝し…』

 

『最後のサブユニットを解除された方には「ファイナルワン賞」として、豪華な景品をプレゼントさせて頂きます!』

 

『皆様の挑戦をお待ちしています!』

 

そう言って、アナウンスが終わる。

 

 

「一体…」

 

塔。今まで全然気にしてなかったが、思えばあれは機械生命体由来のものだ。

 

パスカル村の異変もあれが現れてからだったろう。

 

[東の方角に、機械生命体の大型ユニットの起動を確認。]

 

「大型ユニット?一体…何が起こっているだ…」

 

[不明。]

 

塔も大型ユニットもファイナルワン賞も全然わからないが、大型ユニットとやらが機械生命体由来のものである以上はそこに何か情報があるかもしれない。

 

 

 

 

「その大型ユニットって所にいくぞ。」

 



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Episode.20 [繰リ返サレタ祈リノ結末]

ヨコオは5回くらい死んだ方がいいと思うので初投稿です。


 

この世界の何処かの……いや、もういいだろう。

 

2機のポッドがいつものように情報を共有する。

 

 

 

 

[A2に随行していて気付いたのだが、敵性機械生命体間で情報が共有されはじめているようだ。]

 

 

[それは調査が必要だ。]

 

 

[データを共有するので、そちら側でも注意してほしい。]

 

 

[了解した。……別件だが、2Bについて報告がある。]

 

 

[なんだ?]

 

 

[データを共有するが、心理状態の悪化が既に深刻な状態にある。]

 

[こちらも…早急に対応が必要だ。]

 

 

[同意。]

 

 

 

[…………]

[…………]

 

 

 

数秒程の沈黙。

 

 

[…だが、対処法がわからない。]

 

[データオーバーホールは効果がなく、システムメンテナンスでは対処できない。]

 

[2Bは現在最後の資源回収ユニットに向かって進行している。]

 

[もう私にはどうすればいいかわからない。]

 

ポッド042の声は無機質な筈なのに、焦っているように聞こえる。

 

 

[……当機ポッドにも、対処は不可能。]

 

[……]

 

[……力になれず、すまない……。]

 

ポッド153が謝った。謝る事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こんにちは!資源回収ユニットです。防衛体勢に入ります!』

 

もう何度目かのこのアナウンス。

 

呼んでおいての防衛という矛盾した行動。

 

その中にある明らかな私への挑発という意図。

 

「何度も何度も……。」

 

繰り返されるアナウンスに苛立ちが募っていく。

 

いいや、アナウンスだけじゃない。

 

そもそもとして私に向かわせた回収ユニットのコアに塔への認証キーなんて物を配備している時点でおかしい。

 

明らかに集めさせられている。

 

何かの意図に利用されている。

 

相手の思うがままになっている。

 

それでも、それでも他に出来る事がない私はそうせざるおえない。

 

それが余計に私の怒りを掻き立てる。

 

ユニットの入り口に立つと、これもまた何度目かの天使文字。

 

[神の箱。と記載。]

 

「どうでもいい。」

 

もう天使文字への理解は諦めた。ユニットの中に進んでいく。

 

またエレベーターで登り、また機械で構成された鉄の床を歩いて上を目指す。

 

[警告:過度な戦闘行為は危険を有する。]

 

ポッドがそう私に警告する。

 

「黙ってて。」

 

もう何回も似たような事を聞いた。

 

ポッドの言う通りだろう。でも、それでも私は戦い続けると決めたんだ。

 

私は戦い続ける。戦い続けるんだ。ナインズの為に。

 

[…拒否:本支援ユニットはヨルハ機体2Bの随行支援機体。]

 

[対象ヨルハ機体の状態を危惧する権利を有する。]

 

ポッドが私の命令に背く。

 

「…ッ!…勝手にしろッ…!」

 

ポッドが命令に背くことは状況次第では普通にあり得ることだ。だが、今の私にそれを許容する余裕はなかった。

 

 

 

それからは迫り来る機械生命体を倒し、階層を上がり、倒し、また上がり、倒す。

 

それを繰り返し続けた。ただそれの繰り返し。

 

ただ繰り返し続ける。その感覚に無性に腹が立った。

 

そのせいで執拗に機械生命体を斬り続ける。

 

ボロボロになって、もう抵抗などできない機械生命体をとにかく斬り続ける。

 

繰り返し続けた事の結果への喪失感が、絶望が、私の憎しみを駆り立てていた。

 

 

 

 

 

次の階でようやく屋上に出た。

 

広い場所に出た解放感から辺りを見渡す。コアのようなものは見当たらない。ここは以前とは同じじゃないようだ。

 

 

 

 

スタッ

 

奥から人影が現れる。私は咄嗟に武器を構える。人影ということはアンドロイドだが、ここで会うということは汚染機体だ。

 

両手に刀を構え進んでいき、人影の姿を確認する。

 

そして、その正体に唖然とした。

 

 

 

 

 

「オペレーター21O……!?」

 

 

 

オペレーター21O。ヨルハ機体9Sの、専属オペレーター。

 

 

 

 

▫__......_-▫▫-_・.....►--…▫■

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の作戦から私、B型部隊に異動する事になりました。」

 

 

 

最終奪還作戦の数日前。普段は指令室いる筈の21Oが珍しく廊下にいたから声をかけると、私にそう言った。

 

「…オペレーターモデルの義体は戦闘には向かないんじゃないの?」

 

どうしてB型に?とは聞かなかった。理由は何となく分かっている。

 

多分9Sだろう。

 

9Sの側でずっと二人の会話を聞いていた身である私には、何となく彼女が9Sとの家族愛のようなものに憧れているのが分かっていた。

 

地上。彼の身近な場所に行きたいのだろう。

 

 

 

「……確かにO型には戦闘は不向きですが、それでも地上に直接行って、地球や人類の情報収集がしたいのです。」

 

「それと関係ありませんが、この事は9Sには黙っていて下さい。彼に知られると……色々と面倒なので。」

 

21Oは淡々とした口調で平然と言う。誤魔化したいようだ。

 

私も深く追求はしない。

 

「わかった。これから地上で会う事があったらよろしく、21O。」

 

「えぇ。2Bさん。」

 

 

 

 

 

これから地上で会う事、か。そのときは9Sと一緒に居た方がいいだろうか。

 

……なんだか、モヤモヤするな…。

 

 

....・・▫▫-----..____▫▫_..----____

 

 

 

 

 

「ガァァァァァア!!」

 

21Oがバグ音声のような呻き声を上げて襲いかかってくる。

 

ギンッ

 

振るってきた剣を受け止め、21Oを蹴り飛ばす。

 

「そんな……21O!!」

 

汚染されきった21Oは再び立ち上がり私に剣を振るい続ける。

 

「場所……座標データを……転送…」

 

「作戦…行動ニ関係ナイ発言……控えて下さい……」

 

「ハイは……一回で……イイデ……すっ……」

 

ナインズのオペレーターとしての会話を繰り返している。

 

まだ記憶が、自我が残っている。

 

「………21O……ッ…。」

 

攻撃しようとする手が緩む。仲間として、同じナインズとの記憶をもつ者として、殺すことができない。

 

「カ……家族……私も……ミンナと……」

 

「オネ……殺シテ………」

 

「私………本当ハ家族が欲しクテ……一人で寂シ……クて……」

 

「ヨルハ機体…9Sと……一緒ニ……イタクて……」

 

21Oの悲痛な叫びが、告白が、私の胸を締め付ける。

 

だが、「殺して。」その頼みが私になんとか刃を振るわせた。

 

わかった。わかった21O。

 

「私が、今殺すから……!!」

 

剣を片手の刀で受け止め。もう片方の手の刀で弾き飛ばす。

 

戦闘用スーツで補われているだけの戦闘力は、元がオペレーターとしての義体の戦闘力は、私には到底及ばない。

 

決着はあっさりと着いた。

 

剣を弾き飛ばされ一瞬手ぶらになった21Oの両腕を切り落とす。

 

21Oは痛みで地面に倒れ、立ち上がれずに悶えている。

 

やがて力を失うとうずくまり、止めを刺そうとする私に力を振り絞って聞いてきた。

 

 

 

「2……B……さん…。」

 

 

「教エ……て…9……Sは……無事………なノ……?」

 

 

 

 

「………ッ!!」

 

止めを刺そうとする手が止まる。答えるべきか、否か。

 

「………ナインズは…ッ…。」

 

言いかけて、止まってしまう

 

 

 

「……ッ!!………ああああっ!!」

 

 

ザスッ

 

 

知らない方が良いという思いからか、それとも事実を伝える事への罪悪感からか、21Oの頭を刺した。

 

一撃で止めを刺された21Oはすぐに動かなくなった。

 

[21Oのブラックボックス信号停止。]

 

[21Oの死亡を確認。]

 

ポッドが淡々と私に分かりきった事実を伝える。

 

「……ごめんなさい……ごめんなさい……。」

 

動かなくなった21Oにただ謝り続けていた。

 

 

 

 

スタッ

 

再び後ろから誰かが現れた音がする。

 

まだ汚染隊員が…。

 

そう思い、刀を強く再び握りしめ後ろを向く。

 

そして現れたその姿を目にして、固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「A2……。」

 

そこにいたのは、A2だった。

 




ウキウキしながらこのssを書いてる自分も同類だと気付くと、僕は絶望した。


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Episode.21 [カノ言葉カタルモノ]

パート分けようと思ったけど結局詰めこんじゃったので初投稿です。


 

「A2……。」

 

どうして此処にA2がいるのか。

 

すぐさま殺しにかかろうとするが、私の中にあるA2への憎悪への疑念がそれを何とか引き留める。

 

私はすぐにでもA2を殺すべく、私を思いとどまらせるA2への正体不明の憎悪を言語にしようとして必死に考える。

 

 

A2。アタッカー二号。

 

廃棄された筈の旧型のヨルハ機体であり、私のベースになった機体。

 

次期ヨルハ機体製造の為に、データ取りの為だけに壊される事を前提に作られた実験的部隊の一人。

 

 

だが彼女があの日、全機廃棄を前提とした真珠湾投下作戦を生き延びた事でその能力が評価され、私が作られる事になった。

 

 

そうだ。

 

彼女が生き延びた事こそが、彼女がここに存在する事こそが、私がこの汚れた世界で生まれる事になった理由であり。

 

私とナインズを引き合わせた根本的な原因であり。

 

私がナインズを殺し続ける運命を背負う事になった根源だった。

 

だから、

 

だから私はA2が憎いの?

 

だから殺そうと思ったの?

 

違う、そうじゃない。何かが違う。それなら今まで会った時にもそう感じた筈だから。

 

私の中にある歪なあれは、あの日壊れた何かはそれじゃない。

 

けれども、それが何なのかがわからない。

 

そもそもそれが本当に憎悪なのかすら。

 

A2への憎悪のような何かが解らない私は殺意があってもただ彼女をゴーグル越しに睨み続ける事しか出来ない。

 

体を動かすまでには至らせない。それが幸か不幸かも解らない。

 

A2も私を攻撃する意思がないようで、ただこちらを見つめている。

 

そのうち、A2が立ち去ろうとする。

 

「……あっ…!」

 

追おうとするが、それでも私の足が一歩前に出たきり動かなくなった。

 

本当に私はA2を殺したいのか?

 

そんな疑念が浮かび始める。

 

だが、その疑念は去り際のA2の言葉で確信に変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……9Sは……。」

 

「……ナインズは、君に優しいままでいてほしいと、言っていたぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ビキィィ

 

頭に血が登り、血管が浮かびあがる。

 

A2からの言葉を聞いた瞬間に、私は私の中にある物を理解した。いや、させられた。

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

 

 

 

大型ユニット。少しでも機械生命体側の情報を集めるべく私はその中を進んでいく。

 

ユニットの中を進んでいって、最初に目にとまったのは機械生命体の凄惨な残骸だった。

 

必要以上に斬られたであろうズタズタのパーツ群が、次の階にも、また次の階にも、そこら中に転がっていた。

 

ここにくる前に、ポッドがこの大型ユニットが起動されたと言っていた。

 

誰かが先にここに入っていた。

 

それも、この切り方は私と同じヨルハ機体の武器の物だ。

 

こんな事が出来るあの日を生き残ったヨルハ機体に、心当たりは一つしかなかった。

 

2Bだ。

 

このまま進むべきか迷う。

 

2Bは私を恨んでいる。もし2Bと出くわしたら最悪殺し合いになってもおかしくない。

 

……だが、私は9Sから遺言を聞いている。

 

はっきり言って私は9Sと2Bがどんな仲だったかは知らないし。興味もない。

 

けれども、あれほどまでに2Bを想っていた9Sの最期の言葉は、2Bには伝えられなければならない。そんな下らない義務感があった。

 

それに私は2Bに恨まれていても、それでも親近感のような物をもっていた。

 

それは2Bが姉妹機のようなものだからなのか、見た目以外にも共通点のようなものを感じているからなのかは分からない。

 

けれでも、確かに私の中にある2Bへの想いが、再び私を上へ目指して進ませていた。

 

 

 

屋上に出ると、やはり2Bがいた。

 

汚染機体を倒した後のようだった。

こちらに気づくと、武器を構えてこちらを見つめてきた。

 

ゴーグル越しのせいでどんな目を向けられているのかは解らない。

 

だが、それでも私を睨んでいるのがわかった。

 

そこには憎悪のようなものがあるように感じたが、何かが違う気もした。

 

私は9Sの遺言を伝えようとするが、持ち前の引っ込み思案のせいで上手く言葉が出てこない。

 

何か良い言い方はないかと考える。

 

せめて9Sを殺した事に対しての悪意はなかった事も伝えたい。

 

うーん……。

 

…そうだ。9Sは親しい人からナインズと呼ばれているという記憶を見た。

 

2Bが私を恨む程に9Sと親しかったのなら、きっと2Bもその呼び方を知っている筈だ。

 

というか、あの日橋からそう呼んでいた気がする。

 

私も同じ9Sとの記憶を(私の場合は本人の記憶そのものだが)もつ者だと示せば彼女も解ってくれるかもしれない。

 

 

私は去りながらも、彼女に伝える。

 

 

「……9Sは……。」

 

ナインズなんて呼び方に慣れていないので、普通に9Sと呼んでしまうが

 

「……ナインズは、君に優しいままでいてほしいと、言っていたぞ。」

 

すぐに直して、彼の遺言をしっかりと伝えた。

 

 

 

そう言ってから数秒の沈黙。

 

……2Bは何も言わない。

 

私は振り返らずに去ろうとする足を動かし続ける。

 

あの二人の関係に深く入り込むつもりはないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________

 

 

 

 

A2からナインズの遺言を聞かされた瞬間、私の中でドス黒いものが沸き立ってきた。

 

 

どうして貴女からその言葉を聞かなければならない?

 

なぜナインズを殺した貴女がナインズの言葉を口にする?

 

 

いや、それよりも

 

それよりも

 

 

 

 

何で貴女があの呼び方を知っているの?

 

 

 

 

貴女はナインズの事なんて何も知らない筈なのに。

 

一度か二度会っただけなのに。

 

それなのに、なんで、なんでその呼び方を知っているの?

 

その呼び方を知ってるのは、使っているのは私だけだと思っていたのに。

 

心の内から、底から、形容しがたい感情が頭の中に渦巻いていく。

 

 

ふと、去っていく彼女の背負っている大太刀が目に止まった。

 

あれは黒の血盟だ。ナインズが最期にもっていた大型剣の方。

 

そうだ。確かヨルハの武器には記憶の保存機能がついてた。

 

もしかしてナインズの記憶がその中にあるから、だからあの呼び方を知っていたの?

 

それなら整合性がとれる。

 

一瞬。渦巻いていた物がフッと消えた気がした。

 

けど、それも本当に一瞬だった。

 

何故彼女がそれを持っているのか。そこを考えてしまった。

 

だって武器を介して記憶が見れるってことは。

 

 

それってつまりは。

 

 

ナインズがA2に記憶を託したってことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ビキィィ

 

そこ気づいた瞬間。渦巻いていた感情が爆発的に溢れていき、頭に血を上らせた。

 

 

 

 

どうして。

 

どうして?

 

どうして??

 

どうして貴女なの??

 

だって貴女はナインズの事なんて何も知らないのに。

 

一緒に過ごした日々なんてないのに。

 

話したことなんてないのに。

 

触れあった事なんてないのに。

 

たまたま居合わせただけなのに。

 

どうして当然のようにナインズの武器を、記憶を、彼の思い出を持っているの。

 

どうして?どうして貴女なの?

 

どうしてナインズからその刀を貰ったのが貴女なの?

 

どうしてナインズから記憶を渡されたのが貴女なの?

 

どうしてあの日あそこにいたのが貴女なの?

 

どうして最期にナインズの隣にいたのが貴女なの?

 

どうしてナインズの最期の言葉を聞いたのが私じゃないの?

 

なんで?なんで私じゃないの?

 

 

いつもナインズの隣に居たのは私なのに。

 

 

ずっとナインズの隣に居たのは私なのに。

 

 

ずっと隣に居たのは私なのに。

 

ずっとずっと隣に居たはずなのに。

 

ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと

 

 

ずっとナインズの隣に居たのは私なのに。

 

 

 

私なのに。

 

 

 

 

私なのに。

 

 

 

 

私なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日ナインズを殺すのは、私だった筈なのに。

 

 

 

次の瞬間、遂に私の体はA2に向かって走り出す。

 

A2への憎悪が。いや。

 

「妬ましさ」が、ついに抑えられずに解き放たれてしまった。

 

だが、私は内にあるその莫大な感情を一切声には出さず、音にも立てず、A2の首を目掛けて刃を振るう。

 

確実にA2を殺す為に。

 

「っ!?」

 

ギィィイイン

 

だが、音もなく振るった筈の一撃はすんでの所で気づかれ、防がれてしまう。

 

「……なッ!?」

 

いつの間に自分の後ろに迫っていた私の存在にA2は驚愕している。

 

ギギギッ

 

刀が互いにせめぎ合い、擦れる音がし、火花が散る。

 

刃をすんでの所で止められたことでA2との顔の距離が近くなった。

 

意図せず顔を覗き込んでしまうと、あの私そのものの顔が、短くなっている髪型が、余計に私じゃない事への当て付けのようなものを感じさせた。

 

それが余計に妬ましさを煽る。

 

「……っ!!……ぐっ……!」

 

それでも同型だから、同じ力量をしているから、私と同じだから、どれだけ力を入れてもせめぎ合ったままになる。

 

 

やがて力を込めすぎたことで体が震え始め…

 

ゴゴゴゴゴッ

 

 

いや、震えているのは私じゃない。一体何が_______

 

 

ドゴォ!!

 

 

「なぁっ!?」

 

 

突如として地面が崩壊した。

 

 

またあのときのように。

 

 

あの橋のときのように。

 

 

また私は落ちていった。

 

 

 

 

_________

 

 

 

突然2Bの下の足場が崩れ、2Bが落ちていく。

 

私のいた足場は崩れなかった為、私は無事だった。

 

「…ハァ……ハァ……」

 

先程の一撃を防いだ時の焦りがまだ少し残っている。

 

2Bが後ろから迫ってきてる事に全然気づかなかった。

 

ギリギリで気配に気づけなかったら余裕で死んでいた。

 

何だ今の不意打ちは。何だあの声も音もない殺気。まるで暗殺者じゃ______

 

 

ガシャン

 

_______っ!!

 

また誰かが現れた。

 

再び背後を取られたが、音がしたので今度は余裕でわかる。

 

振り返ると、白い体の中型の機械生命体が居た。ソイツに腕はなく、その代わりに機械生命体の頭がついたコイン状の何かが鎖のように連なって腕を形成している。

 

「2Bは!?」

 

だがそれよりも気になるのは落ちていった2Bの方だ。ポッドに聞く。

 

[報告:ヨルハ機体2Bは現在も生存。]

 

[疑問:ヨルハ部隊を裏切ったA2が2Bの状態を確認する理由が存在しない。]

 

「うるさいっ!」

 

こんな時まで理論で言い詰めてくるな!怒るぞ!

 

 

 

 

ギギギッ ギュイン

 

「っ!!」

 

話の蚊帳の外にいた中型機械生命体が私に向かって、機械生命体の頭が埋め込まれたコイン状の腕を分離させて飛ばしてくる。

 

咄嗟に意識を集中させるがその動きの不規則さ、多さに対応しきれず直撃し弾き飛ばされる。

 

 

「ぐぁっ!!」

 

弾き飛ばされゴロゴロと転がるが、咄嗟に体勢を直す。重くはない。平気で耐えられる。

 

 

「ニイチャン!ニイチャン!」

 

突然声がし、周りを見渡すと、気がつけば私は辺りからバケツを頭に固定した小型の機械生命体達に囲まれている。

 

「邪魔だっ!!」

 

ズバァン

 

大太刀を振るい、薙ぎ払う。

 

小型達は一撃で吹き飛んだ。

 

どうやらコイツらは大して強くないようだ。

 

 

「その子達ニ!!オトウト達に手をダスナッ!!」

 

 

そう叫んで再び中型が腕を飛ばしてきた。

 

小型達を殺された事に怒り心頭のようで、先程よりも動きが速くなっている。

 

その動きはやはり不規則で多いが、一度見た技なら二回目は対応できる。

 

華麗にかわし、ソイツとの距離を詰めていく。

 

そして、ソイツに向かって叫ぶ。

 

「一体お前たちが何体のアンドロイドを殺してきたと思ってる……!?」

 

「そうやって命乞いをすれば……許されるとでも思ってるのか!?」

 

いつも命乞いを聞くたびに、その想いが私の中で募っていた。

 

襲ってきた機械生命体に容赦なんてしない。私はソイツの眼前まで走り抜け、勢いよく斬りつけた。

 

「ッ!!」

 

ズバァン!

 

「アアアッ…!!」

 

ボカンッ とコイン状の腕が吹き飛び、ソイツは地面に仰向けに倒れ伏した。

 

ソイツが傷口から火を吹き、そして動けなくなったのを確認すると、安心感からどっと疲れが出てきた。

 

「…ハァ…ハァ…」

 

だがまだコイツは死んでない。まだ目がチカチカと光っている。

 

止めを刺すべく近づいていく。

 

すると。

 

「ニイチャン!!兄ちゃン!!」

 

バケツを頭にくっつけたあの小型達が兄ちゃんと呼んだ中型の元にかけより、治療を始める。

 

私の前にも小型達が立ち塞がり、土下座をし始めた。

 

私に見逃して欲しいとでも言うのだろうか。

 

ふざけるな。お前ら機械生命体を許すわけないだろう。

 

私は大太刀を構えた。

 

 

 

 

 

 

白旗をあげている奴らを殺す程。私たちは終わっていない。

 

 

 

 

 

アネモネの言葉が頭をよぎる。

 

振るおうとする手が止まる。

 

だが、それでも、それでも私はっ。

 

 

「……っあああ!!」

 

ズバァン

 

中型の首をはね飛ばした。

 

ドカンっ

 

その衝撃で頭を失った胴体が爆発した。周りにいた小型も、治療に当たっていた小型も、皆巻き込まれて爆発し、死んだ。

 

ゴンッ

 

コロコロコロ……

 

はね飛ばした頭が転がり、やがて目の光を完全に失った。

 

奇しくも、転がった頭は私を見るような形で止まる。

 

丸くて寸分も動かせない筈のレンズ張りの目は、確かに私を睨んでいるように見えた。

 

 




ニーアとDodの事を詳しく調べれば調べるほど解釈違いを起こしてた事に気づかされてもうこのss書くのきつくなってきてる。なるべく頑張るけど突然更新止まったらそういうことだと思って欲しい。


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Episode.22 [大切ナモノダカラ。]

Ps5がやっっと買ぇそうので初投稿でででで


[ポッド042からポッド153へ]


[こちらポッド153。どうした?このプロトコルは会話をする為のインターフェイスではないが。]


[理解している。その上でポッド153に対して内密の通信がある。]


[了解:通信内容を開示せよ。]


[我々ポッド042と153の通信ネットワーク内で不自然なエラーを検知している。]



[推測:通信環境の悪化による断片的化されたデータの残骸。]




[そうかもしれない。が、そうではないかもしれない。]




[理解不能。具体的な会話の提示。]




[複数のポッド間による情報伝達を繰り返すうちに、我々の間に奇妙な傾向が見られるようになった。]

[随行支援対象2B、A2、9Sに対する過剰な保護意識だ。]

[この傾向は、我々の〘意思〙なのだろうか……。]





[……]

[…否定はできない。だが、そうだとしてもそれを肯定する事はできない。]

[我々には果たさなければならない任務があるからだ。]





[……]

[………………]

[…………いずれにせよ、随行支援を任せられている我々はこの顛末を見届ける義務がある。]






[〘義務〙………か。……そうかもしれないな。]






[………ポッド153。…死ぬなよ。]







[了解。ポッド042も、死ぬな。]




[…あぁ。]




 

[ボディユニットチェック完了。]

 

[メモリーユニットチェック完了。]

 

[メンテナンスモード終了。]

 

[ヨルハ機体2B、起動。]

 

 

「…ッ……うっ……。」

 

冷たく、砂利の感触のする地面に這いつくばった体を起こす。

 

[おはようございます。2B。]

 

ポッドの起床の挨拶。

 

そのフレーズが聞こえたということは私は再起動したという事か。

 

 

「私は……。」

 

なんで再起動を…。確か私は…。

 

 

曖昧な意識と記憶まま起き上がって、辺りを確認する。

 

ふと、後ろから遠く、歌が聞こえてきた。

 

この独特のテーマソング……。

 

聞き覚えのある曲がした方を振り向くと遊園地が見えた。

 

遊園地。そうだ。最後の資源回収ユニットがあった場所。

 

私は確かそこに向かっていた。そして、それから……

 

 

 

[敵大型ユニット内部での戦闘時にユニット構造物が崩落。]

 

[落下の衝撃によりダメージを受けたヨルハ機体2Bは緊急サスペンドモードに移行。]

 

[落下地点付近は危険と判断した為、現地点まで搬送。]

 

[現段階において、全ての項目のチェックが完了し再起動された。]

 

私の疑問に答えるようにポッドが私に再起動に至った顛末を説明する。

 

 

ユニット構造物の崩落。

 

そうだ、思い出した。私は最後の資源回収ユニットに入って、汚染されていた21Oを殺して、その後A2に会って。

 

A2を殺そうとして、それから……。

 

それから突然床が崩れて、私はまた落ちた。

 

そうだ、また落ちた。

 

あのときのようにA2を殺そうとしたら。

 

…おかしい。こんなのおかしい。どうしていきなり足場が崩れたりするんだ。

 

こんなの絶対におかしい。

 

 

一度ならず二度までも。その偶然に必然を感じてしまう。

 

 

まるで運命が私にA2を殺させまいとしている。

 

私を苦しめ続けてきた運命が、まだ私を苦しめようとしている。

 

 

私を呪い続けると。

 

 

私を罰し続けると。

 

 

 

感極まった苛立ちは、まるで見えない力が私の邪魔をしているとまで感じさせてしまう。

 

 

駄目だ。落ち着け。落ち着くんだ。

 

 

「…ポッド、現状報告。」

 

頭を冷静にするために一旦別の事を考える事にする。

 

[塔にアクセスするための認証キーを取得。]

 

[規定数のアクセスキーの入手を確認。]

 

[塔への調査が可能な状態。]

 

 

…?

 

ポッドが嘘をついたりしないのはよく知っているが、それでもポッドの報告に疑問を感じた。

 

アクセスキーを既に持っている?

 

ポッドに言われて確認すると確かに認証キー

があった。

 

いつの間に?

 

妙だ。コアを破壊した覚えはない。

 

今までの認証キーはコアに配備されてた筈なのに。

 

……21Oが持たされていた?

 

それとも私が気づかない内に、あるいは眠っていた間に持たされていた?

 

…。

 

そこまで考えて、やめる。

 

 

…いや、いいか。どうでもいい事だ。

 

どのみち、今までも意図的に回収させられていた事に変わりはないんだろう。これで確信に変わった。

 

「…わかった。」

 

だったら塔へ向かう。それ以外にするべき事はない。

 

集めたキーで塔に入る。

 

そして塔を破壊する。その為だけにキーを集めさせられるこの茶番に付き合ってきた。

 

塔だけは、いいや塔だけじゃない、機械生命体も。

 

絶対に破壊する。

 

破壊してやる。

 

殺してやる。

 

絶対に殺し尽くしてやる。

 

絶対に、絶対に…っ!!

 

 

 

 

 

 

 

ふと塔を目指して歩いていた足がぴたりと止まる。

 

今自分が物騒な思考をしていたことに気付いた。

 

いや、今だけじゃない。A2に対しての嫉妬を向けた時もそうだった。

 

 

 

あの日ナインズを殺すのは私だった筈なのに。

 

 

 

 

あの思考を思い出し、今になって悪寒が走る。

 

あれはまるで。

 

あの思考はまるで、私がナインズを殺したかったみたいな言い方だった。

 

 

 

そんなわけない。

 

 

ナインズを殺したいわけない。

 

 

殺したかった時なんて一度もない。

 

 

 

殺す度に、あの鈍い感覚が手に伝わる度に、心が苦しかった。

 

辛かった。

 

罪悪感で潰れてしまいそうだった。

 

 

ググッ……

 

それらの記憶を思い出すだけで2Bの手は自然と握りこぶしを作る。

 

 

その罪悪感から、むしろ自分がナインズに殺されてしまいたい位だった。

 

 

私が死んで、彼に解放されて欲しかった。

 

 

彼の為なら、ナインズの為なら。

 

あの日、あの時、あの場所で、私が彼の代わりに死んであげたかった。

 

 

それだけ私はナインズの事を想っていたはずなのに、あんな事を考えるなんて…。

 

だけど、だけれども、あの嫉妬の感情が私から生み出されたという感覚が確かに存在している。実感がある。

 

 

だけどそれは何かが思考を蝕んでいるから。そんな感覚も確かにあった。

 

私の思考を、私を蝕んでいく何か。

 

その何か。

 

 

 

…その何かに心当たりは、あった。

 

 

ポッドは気づいてなさそうだったからずっと伝えずにいたが……。

 

 

 

実は私は、論理ウィルスに汚染されている。

 

 

 

それはあの時、逆ハッキングを掛けられた時だった。

 

あの時に、記憶領域に侵食された時にハッキングでも直せない程の奥深くにごく少量の汚染を許してしまった。

 

汚染の侵食は少しずつだが、今までも、そして今もなお確実に私を蝕んできていた。

 

もうウィルスの影響が思考に現れつつある。

 

このままウィルスを放置すれば、いずれ私は体を乗っ取られるだろう。

 

だが、私はワクチンを持ってはいない。

 

作る技術はレジスタンスにも、私にもない。

 

直せる見込みは、ない。

 

 

 

 

……。

 

 

……いや、本当はある。この汚染を直せる方法が本当は一つだけある。

 

 

 

 

 

 

記憶の再フォーマット。

 

 

 

 

 

私の記憶の核になっている自我を、全ての記憶領域を全て消し去ってしまう方法。

 

ウィルスを媒体ごと消し去ってしまえばいいという、とても単純な方法。

 

 

だけど。

 

だけど、その方法だけは絶対にしない。

 

絶対に駄目。駄目なんだ。だから誰にも、ポッドにも言わなかった。

 

これが私が助かる見込みのある唯一の方法だとしとも。

 

 

だってそれをしてしまえば私の記憶は、ナインズとの記憶は、思い出は、全てなくなってしまうんだ。

 

今の私が。

 

今の私の思い出が。

 

彼の事が。

 

彼と過ごした日々が。

 

全て消えた新しい私になってしまう。

 

 

そんなのは絶対に駄目。絶対に駄目なんだ。

 

 

 

 

だってナインズとの記憶があるから。

 

 

彼と過ごしたあの日々があるから。

 

 

あの光のような思い出があるから。

 

 

私は私でいられるんだ。私は生きていられるんだ。

 

 

それを失うぐらいなら、それすら失うぐらいなら、私は汚染を受け入れる。

 

 

 

例えそれが私を狂った機械にするとしても。

 

 

 

たとえ自我が乗っ取られてしまう事になるとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たとえそれで、自分が死んでしまうとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び塔を目指して歩き始めた2Bの中には、その固く口を閉じた無機質な表情の中には、確かな決意と想いがあった。

 

彼女はふと顔を上げ、ゴーグル越しの目で上を見据える。

 

いつの間にか、もう塔が近くにまで見えてきていた。

 

 




二人の二号編はここまでです。

なんとか[2][2]話で終わりました。やったぜ。

尚21話で話を圧縮した模様。

暫くは今までの話の修正とかやります。


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