白(しろ)と空(くぅ)ですが、なにか? (リュウコウ)
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1 蜘蛛娘[(姫色)]・上層家荘・地龍娘[(美麗)]の卵

ライトノベルと違い
管理者D[姫色]から名前:[白織]をもらっている

管理者Dから、白と空はスキル〈叡智〉をもらう
空[美麗]の固有スキル「地竜」ではなく
「神へと至る龍」

人族側
地竜:名前[フェイ]だけど転生者ではない。

ソフィアの従者は執事ではなく、戦闘メイド

スキル〈鑑定Lv 1〉と〈念話Lv 1〉取得に
本当に必要なスキルポイント1つ300です

人形蜘蛛の名前は、ライトノベルと違います
命名・白

ソフィアとセラスとマリアのステータスは、
アリエルと白と空と一緒に同行してからのを
書いています



~~~プロローグ~~~

 

勇者と魔王の戦いが幾度となく繰り返された世界があった。その中で放たれた時空の大魔法は、日本のとある高校の教師で炸裂した。教室内にいた全ての存在は魔法の直撃を受け、あっけなく命を落とした。彼らの魂は、異なる世界で飛散し、それぞれが、新しい命として生まれ変わる。

 

~~~*******・**~~~

 

うぐおがー!

 

叫び声をあげたつもりだったんだけど、うめき声も出やしない。それだけ今の私の体がやばい状態なのか?OK、落ち着け私。体の痛みはない。古文の授業中に、いきなりものすごい激痛に襲われたところまでは覚えてる。多分それで気を失ってたんだと思うんだけど、今はどこも痛まない。けど、目を見開いても真っ暗でここがどこだかもわからない。といあか、まるで体を何かに覆われているみたいな感じで動かせない。感じというか、実際に、何やら微妙に弾力のある、けど硬い謎物質でできた何かに包まれてるっぽい。外からは、カサカサという音が微かに聞こえる。え、何この状況?拉致?イヤイヤ。

私は、自分でいうのもアレだが.....可愛い!

贔屓目に見ても学年1.2を争うレベルである。

もう1人は、ライバル、美麗だ。

だから、敢えて学校では、目立たないように

前髪を垂らして目を覆い、ねくらを装っている。ピシッという音が響いた。体に力を入れて踏ん張ってみたら、私を覆っている何かが壊れはじめた。このまま壊していざ脱出!さらに力を込めると、パカッと開いた。頭から這い出す。これで私は自由だー!

 

目の前に蜘蛛がウヨウヨしてた。

 

思わず後ずさる。足に何かがあたって振り向く。うん?これは、あれか?私がさっき這い出してきたものか?なーんか、蜘蛛軍団の卵に似てるというか、そのものじゃないかな?

改めて自分の姿を見直す。首が動かない。けど、視界の端に私の足らしきものが映った。......蜘蛛の足が。

イヤイヤイヤ!

違うよね?違うと言ってくれ!

もう一度チラッと横を見る。周りにワサワサいる蜘蛛と同じ、細い針金のような足があった。意識して足を動かしてみる。私の思い通りに動いた。うむ。ここは潔く認めなければならない。どうやら私は、蜘蛛に転生してしまったらしい。

 

 

ないわー。

だが、途方にくれている間もなく、ボリボリッという音が聞こえてきた。何やら不穏な音だ。私の目の前にはおそらく私の兄弟姉妹と思われる蜘蛛軍団がいる。そーっと視線を前に戻す。

そこには、ボリボリッと仲間を食う蜘蛛がいた。私の目の前では、兄弟姉妹たちによる血で血を洗う生存競争が始まっていた。

こんな戦場にいたんじゃ、いたいけな女子高生であった私はあっという間に男たちか?女性たちの毒牙にかかってしまう!百合ってしまう!戦う?ムリムリ。

ここは、身の安全を優先して、撤退を試みる。その時、ズンッという地響きが起こる。音と振動は背後から。後ろを振り向いたら、そこには見上げるほど巨大な大蜘蛛がいた。

その大蜘蛛が小蜘蛛を爪の先でぶっ刺して

食っている。おつまみを食べる感覚で。

私もここに居ては、いつかは食われてしまう。なら、今はここから逃げ出して生き残る!全力で逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げてやった。

 

 

知りたいことは山ほどあるけど、知るすべがない。

 

《現在所持スキルポイントは200です。

スキル〈鑑定Lv 1〉と〈念話Lv 1〉をスキルポイント200使用して取得しますか?》

 

答えはもちろんYES!

 

《〈鑑定Lv 1〉と〈念話Lv 1〉を取得しました。残りスキルポイント0です》

 

鑑定はもちろん、念話はいるよね♪今の私、喋れないから。って言っても、相手に知性が無いと、意味が無いが取ってて損はないと思っている。目の前に転がっている石を〈鑑定〉してみる。

 

 

ま...まあ、調べなくても石は石だよね。分かる。

今度は壁に向かって鑑定してみよう。

 

 

......。もう、何も言うまい。

ついでに自分のことを鑑定してみる。

 

蜘蛛:名前なし

 

まっ、〈鑑定Lv 1〉だしね!

来た道とは逆方向に歩いていく。道が枝分かれしているので道の先を岩陰から、覗き込んで鑑定を試みる。

 

鹿鹿鹿鹿鹿

蝙蝠蝙蝠蝙蝠蝙蝠蝙蝠

 

頭が痛いのを我慢すれば、Lvが上がるであろうから。常時使用!生まれたての私があの中に行けば、死。

なら、脇道を進んでいく。どんどん進んでいく。枝分かれを繰り返し、10を越えた所に人の足跡がくっきりと残っている。

人がいるのは感動だが、私の体は、人の足跡よりもはるかに大きかった。あの巨大蜘蛛を見た時から薄々そんな気はしていた。今の私はモンスターであります!

あの巨大蜘蛛、私のサイズから予想すると、体長30メートルくらいあるんだけどね...。となると、あの子供ってことだよね。もしかしなくても、私、人に会ったら殺されるね!ありえるわー。

ふと、足跡の横に何かが転がっているのが見えた。なんだろう?

そこには解体された兄弟姉妹の死骸。

これは私と同じ種類の蜘蛛だよねー。人間に見つかったら確実に殺されるね!死骸に蜘蛛糸をぐるぐる巻きにして、運んでいく。

 

 

私が、今、居るところはあの足跡から奥の奥の奥に言った先にあった丁字路(テイジロ)。ここに巣を作ることにした。まず、蜘蛛糸網を作り3方向の通路を塞いでいく。見事な蜘蛛の巣が完成した。

私が抜けられる緊急避難通路は確保している。私の拠点を作るのに必死で体力が空っぽになりかけていた。仕方がないので持ってきた、兄弟姉妹の死骸を頂くことにした。ガブッ......うわ、めっちゃ不味い。苦い。けど我慢して食べる。これで兄弟姉妹は報われるであろう。ふぅ。ごちそうさまでした。

 

《条件を満たしました。称号〈血縁喰ライ〉を獲得しました》

《称号〈血縁喰ライ〉の効果により、スキル〈禁忌Lv 1〉〈外道魔法Lv 1〉を獲得しました》

 

〈血縁喰ライ〉は仕方がない。私が生きていくために、犠牲になってくれた兄弟姉妹!感謝。

 

 

気を取り直して、未だ振動している糸に意識を向ける。糸の先は、私から見て左の通路の下の網に続いている。初の獲物だ。慎重に近づいていく。網を目視できるところまで近づくと虹色斑模様をした何かが網に絡まっていた。

 

 

これは、本当に蛙の形だ。

魔物の鑑定は、自分以外では、初だ。

その時の私は油断をしていた。蛙は網にかかっているからと、近づいていく。蛙から苦し紛れの反撃にあった。口からなんか毒々しい色の液体を私に向かって吐いてきやがった!その液体をモロにかぶってしまう。

ぎぃやぁぁぁ!?痛い、痛いよ!毒か?毒なのか!?液体がかかったところが滅茶苦茶痛い!?

第2射が来た!?相手は待ってくれるわけもなく!?ギャー!?

また当たった!?痛い、シャレにならん痛さだ!撤退!撤退!足を動かして、蛙の射程外に避難。

左の目にもいくらか入ったのか、視界の一部しか欠けていない?あ!もしかして、私って蜘蛛だから目がたくさんあるのか?っと、痛みがなかなか引いてくれない。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈酸耐性Lv 1〉を獲得しました》

 

なぬ?心なしか苦痛が和らぐ。耐性を獲得したおかげで、痛みが大分マシになったね♪あの蛙に対して怒りが沸々と湧いてくる。たかだかご飯の分際で、私に喧嘩を売ってきやがった!許せん!奴を意地でも倒して喰ってやる!奴は罠にかかった哀れな獲物に過ぎないのだ!蛙に突撃する。喰らえ、私の牙!ガブッ!ただの噛みつきではない!私の牙には毒があるのだよ!毒に蝕まれて息絶えるがいい!

と、思ったらペッ、と毒液をぶっかけられた。痛い痛い!?耐性があっても痛い!

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒耐性Lv 2〉になりました》

 

蛙に一度ならず二度、三度、私は毒液をぶっかけられた。この野郎がーーー!怒りに任せて再度噛みつき攻撃。蛙が苦しみ悶えはじめる。ふははは!苦しめ!もっと苦しめ!調子に乗って何度も噛みついてやる!ジタバタもがいていた蛙も、その動きが弱々しくなり、力尽きていく。ふぅ。殺ってやった!初の獲物がこれじゃあ、先が思いやられる。蛙は鶏肉に似ているというので、早速実喰!ムシャムシャ。ズリュズリュ。うむぅ。苦い、痛い。苦いのは毒かな?痛いのは多分酸の成分が?けど、美味しくないね!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈酸耐性Lv 2〉になりました》

 

味は美味しくないが、こいつは記念すべきマイホーム初の獲物。蜘蛛糸が十分、魔物相手に通用することを教えてくれた。このくらいの魔物だったら糸からの脱出は不可能のようだね♪ただし、感謝はするが唾をぶっかけられた恨みは忘れんよ。

 

 

卵?を持った冒険者?がかかっていた。

 

 

Zzzz。ふあぁーー。よく寝たね。久しぶりに周りを気にせず眠れたから、だるいくらいだ。

寝起きの頭で考えていると、糸に反応が。お腹は減っていないが、取れる時に取っておくのが自然界の礼儀である。せっかくのチャンスでも見逃していたら次に取れるのがいつになるかわからない。ということで、何がかかっているのかなーと。

に、人間がかかっていた!?

なんか丸いものを抱えた男が糸に絡め捕られて暴れていた。

あ、なんか取り出した。うおっ!?燃やし始めた!?取り出した何かを地面に叩きつけて、すごい勢いで火が吹き出した。火だるまになりながら。火が糸に燃え移り、網が燃え尽きる。男は地面を転がって火を消している。男は全身酷い火傷に包まれている。男は最後の力を振り絞り走り去っていく。残ったのは丸い卵。ここに居たら、卵を取り返しに来るかも知れないので、マイホームを違う場所に移す。

 

 

前の丁字路のマイホームから、迷宮の奥の奥にある丁字路にマイホームを作って寛いでいる。

自分の鑑定をしてみる。

 

蜘蛛娘(チチュジョウ):[白織(姫色(ヒイロ))]・Lv 2

種族:蜘蛛姫(チチュキ)

性別:(メス)

HP 36/36(緑)

MP 36/36(青)

SP 36/36(黄)

SP 34/34(赤)

スキルポイント 0

スキル

「鑑定Lv 4」「念話Lv 3」「酸耐性Lv 2」「毒耐性Lv 2」「外道魔法Lv 1」「禁忌Lv 1」「韋駄天Lv 5」「n%I=W」

 

私、名前があったんだね♪

次に卵を鑑定。

 

地龍娘(チリュウジョウ):[空丹(美麗(ミレイ))]の卵

種族:地龍姫(チリュウキ)

性別:(メス)

HP 18/18(緑)

MP 18/18(青)

SP 18/18(黄)

SP 17/17(赤)

スキルポイント 99400

スキル

「鑑定Lv 1」「念話Lv 1」「神へと至る龍」「n%I=W」

 

な......なんだって~~~!?

み...美麗って...あの美麗......だよね?

 

〈貴女、漆原(シノハラ) 美麗(ミレイ)なの?〉

《貴女こそ、誰なのよ!》

〈私、蜘蛛に転生した。若葉(ワカバ) 姫色(ヒイロ)

《貴女、姫色!?蜘蛛に転生?私は?》

〈貴女は、上位種・地龍に転生している〉

《そうなんだね。私も転生したんだ》

〈でも、卵から孵るには、時間がかかるよ〉

《私が、孵るまで。守ってくれる?》

〈友達だらね♪あと、鑑定のLv上げといて〉

《わかったわ。姫色♪苛めてごめんね》

〈いいよ♪私が守るから!〉

《孵ったら、もう一度、謝るね》

〈待っているよ♪〉

 

~~~紹介~~~

 

七大罪(シチタイザイ)

第1大罪[傲慢(プライド)][傲慢の支配者(ルシファー)] (シロ)

第2大罪[嫉妬(エンヴィー)][嫉妬の支配者(レヴィアタン)] (クゥ)

第3大罪[憤怒(ラース)][憤怒の支配者(サタン)]ラース

第4大罪[怠惰(スロウス)][怠惰の支配者(ベルフェゴール)] (シロ)

第5大罪[強欲(グリード)][強欲の支配者(マモン)] ユーゴー

第6大罪[暴食(グラトニー)][暴食の支配者(ベルゼバブ)] アリエル

第7大罪[色欲(ラスト)][色欲の支配者(アスモデウス)] ソフィア

異端

[虚飾(ベイルグローリー)][虚飾の支配者(ベリアル)]

[憂鬱(メランコリー)][憂鬱の支配者(アスタロト)]

 

 

七美徳(シチビトク)

第1美徳[忠義(フェイス)][忠義の支配者(ミカエル)] ソフィアとセラス

第2美徳[忍耐(ペイシャンス)][忍耐の支配者(ウリエル)] (シロ)とマリア

第3美徳[慈悲(カインドネス)][慈悲の支配者(サリエル)] (クゥ)とシュン

第4美徳[勤勉(ディリジェント)][勤勉の支配者(サンダルフォン)] ポティマス

第5美徳[博愛(チャリティー)][博愛の支配者(メタトロン)] (シロ)とフィリメス

第6美徳[節制(テンパランス)][節制の支配者(ラファエル)] ダスティン六十一世

第7美徳[純潔(チャスタイティー)][純潔の支配者(ガブリエル)] カティア

 

 

傲慢(ごうまん)ゆえの、忠義(ちゅうぎ)

嫉妬(しっと)するからこそ、忍耐(にんたい)

憤怒(ふんぬ)からの、慈悲(じひ)

怠惰(たいだ)だからこそ、勤勉(きんべん)

強欲(ごうよく)こその、博愛(はくあい)

暴食(ぼうしょく)するから、節制(せっせい)

色欲(しきよく)だけど、純潔(じゅんけつ)

 

名前:魔王(マオウ)アリエル

種族:始祖(シソ)蜘蛛姫(チチュキ)

性別:(メス)

呼び方

蜘蛛姫:(ヒー)(姫色から姫)ちゃんor白ちゃん

神龍姫:(ミー)(美麗から美)ちゃんor空ちゃん

ソフィア:ソフィアちゃん

ラース:ラースちゃん

セラス:セラスちゃん

マリア:マリアちゃん

タカ:タカちゃん

フェルミナ:フェルちゃん

ヤイチ:ヤイチちゃん

スキル

暴食(グラトニー)

称号

「人族殺し」「人族の殺戮者」「人族の天災」「魔族殺し」「魔族の殺戮者」「魔族の天災」「妖精殺し」「妖精の殺戮者」「竜殺し」「竜の殺戮者」「竜の天災」「龍殺し」「龍の殺戮者」「無慈悲」「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「毒術師」「糸使い」「人形使い」「率いるもの」「覇者」「王」「(イニシエ)の神獣」「暴食の支配者(ベルゼバブ)」「魔王」

 

人形蜘蛛4姉妹(命名・白)

長女:アル(ライトノベルのアエル)

種族:蜘蛛

性別:(メス)

 

次女:リル(ライトノベルのサエル)

種族:蜘蛛

性別:(メス)

 

三女:エル(ライトノベルのリエル)

種族:蜘蛛

性別:(メス)

 

四女:ルル(ライトノベルのフィエル)

種族:蜘蛛

性別:(メス)

 

名前:(シロ)ちゃん[真名(マナ)白織(シラオリ)]・Lv 1

種族:蜘蛛姫(チチュキ)(ゾア・エレ)

所属:魔王軍第十軍・団長

守護幻獣(シュゴゲンジュウ)[闇獣(アンジュウ)]:アビススパイダー→TG-99

性別:(メス)

前世:若葉(ワカバ) 姫色(ヒイロ)

蜘蛛だった前世に、姫色の情報を入れられ蜘蛛に転生

今世では、転生者相手に姫色として生きていく

武器:魄鎌(ハクレン)

魄鎌喰爪(ハクレンクウソウ)(カマ)(タマシイ)を剥ぎ取り、(ツメ)(クラウ)

スキル

「念話Lv 10」「糸の才能Lv 3」「万能糸Lv 1」「操糸Lv 8」「猛毒攻撃Lv 3」「毒合成Lv 7」「毒魔法Lv 3」「影魔法Lv 3」「深淵(シンエン)魔法Lv 10」「破壊耐性Lv 1」「打撃耐性Lv 2」「斬撃耐性Lv 3」「火耐性Lv 4」「闇耐性Lv 2」「猛毒耐性Lv 2」「酸耐性Lv 4」「麻痺(マヒ)耐性Lv 4」「腐蝕(フショク)耐性Lv 4」「石化耐性Lv 5」「恐怖耐性Lv 7」「気絶耐性Lv 3」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 7」「隠密Lv 7」「予見Lv 3」「剛力Lv 4」「堅牢Lv 4」「身命Lv 1」「回避Lv 7」「持久Lv 9」「瞬発Lv 9」「過食Lv 8」「視覚強化Lv 10」「望遠Lv 1」「暗視Lv 10」「視覚領域拡張Lv 3」「神性領域拡張Lv 2」「聴覚強化Lv 8」「嗅覚強化Lv 7」「味覚強化Lv 7」「触覚強化Lv 7」「集中Lv 9」「命中Lv 7」「投擲Lv 8」「演算処理Lv 9」「高速演算Lv 1」「並列思考Lv 9」「予測Lv 8」「立体機動Lv 5」「HP自動回復Lv 6」「SP回復速度Lv 3」「SP消費緩和Lv 3」「破壊強化Lv 2」「斬撃強化Lv 2」「毒強化Lv 4」「気闘法Lv 2」「気力付与Lv 2」「魔導の極み」「星魔」「外道魔法Lv 3」「外道無効」「断罪」「奈落(ナラク)」「禁忌Lv 8」「韋駄天Lv 3」「傲慢(プライド)」「怠惰(スロウス)」「忍耐(ペイシャンス)」「博愛(チャリティー)」「叡智」「n%I=W」

称号

「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「魔物殺し」「毒術師」「糸使い」「無慈悲」「魔物の殺戮者」「傲慢の支配者(ルシファー)」「怠惰の支配者(ベルフェゴール)」「忍耐の支配者(ウリエル)」「博愛の支配者(メタトロン)」「叡智の支配者」

 

名前:(クゥ)ちゃん[希少種(キショウシュ)真名(マナ)空丹(クゥタン)]・Lv 1

種族:地龍姫(チリュウキ)(体格 小型)→風龍姫(フウリュウキ)(体格 中型)→水龍姫(スイリュウキ)(体格 大型)→雷龍姫(ライリュウキ)(体格 中型)→光龍姫(コウリュウキ)(体格 小型)→聖龍姫(セイリュウキ)(体格 小型)→神龍姫(シンリュウキ)(体格 小型)

所属:魔王軍第十軍・副団長

守護幻獣(シュゴゲンジュウ)[光獣(コウジュウ)]:シャインホエール→ティアナ

性別:(メス)

前世:漆原(シノハラ) 美麗(ミレイ)

武器:喰爪(クウソウ)

魄鎌喰爪(ハクレンクウソウ)

スキル

「伝心」「地龍(チリュウ)Lv 10」「風龍(フウリュウ)Lv 10」「水龍(スイリュウ)Lv 10」「雷龍(ライリュウ)Lv 10」「光龍(コウリュウ)Lv 10」「龍牙Lv 10」「火魔法Lv 10」「灼炎魔法法Lv 10」「土魔法Lv 10」「大地魔法Lv 10」「風魔法Lv 10」「旋風魔法Lv 10」「水魔法Lv 10」「水流魔法Lv 10」「氷魔法Lv 10」「氷雪魔法Lv 10」「雷魔法Lv 10」「雷鳴魔法Lv 10」「光魔法Lv 10」「閃光魔法Lv 10」「闇魔法Lv 10」「闇黒魔法Lv 10」「治癒魔法Lv 10」「深淵(シンエン)魔法Lv 10」「土・風・水・雷・光・複合魔法」「火・炎・氷・雪・闇・消滅魔法」「火強化Lv 10」「土強化Lv 10」「風強化Lv 10」「水強化Lv 10」「雷強化Lv 10」「光強化Lv 10」「闇強化Lv 10」「火耐性Lv 10」「土耐性Lv 10」「風耐性Lv 10」「水耐性Lv 10」「氷耐性Lv 10」「雷耐性Lv 10」「「光耐性Lv 10」「闇耐性Lv 10」「破壊耐性Lv 10」「打撃耐性Lv 10」「斬撃耐性Lv 10」「毒耐性Lv 10」「猛毒耐性Lv 10」「酸耐性Lv 10」「麻痺耐性Lv 10」「腐蝕耐性Lv 10」「恐怖耐性Lv 10」「気絶耐性Lv 10」「苦痛無効」「痛覚無効」「危険感知Lv 10」「気配感知Lv 10」「隠密Lv 10」「集中Lv 10」「思考加速Lv 10」「天命Lv 10」「天魔Lv 10」「天動Lv 10」「富天Lv 10」「剛穀Lv 10」「城塞Lv 10」「天道Lv 10」「天守Lv 10」「韋駄天Lv 10」「回避Lv 10」「過食Lv 10」「暗視Lv 10」「夜目(ヨメ)Lv 10」「龍眼(リュウゲン)Lv 10」「龍瞳(リュウドウ)Lv 1」「視覚強化Lv 10」「望遠Lv 1」「視覚領域拡張Lv 10」「神性領域拡張Lv 10」「空間認識Lv 10」「空間座標把握」「聴覚強化Lv 10」「「嗅覚強化Lv 10」「味覚強化Lv 10」「触覚強化Lv 10」「龍翼Lv 10」「龍鱗Lv 10」「逆鱗Lv 10」「天鱗Lv 10」「演算処理Lv 10」「予見Lv 8」「神速Lv 10」「神聖」「星魔」「治癒付与Lv 2」「HP自動回復Lv 10」「魔導の極み」「操体(ソウタイ)の極み」「破壊強化Lv 10」「龍結界(リュウケッカイ)Lv 10」「神龍結界(シンリュウケッカイ)Lv 10」「空間魔法Lv 5」「外道魔法Lv 10」「外道耐性Lv 10」「奈落(ナラク)」「風速Lv 10」「水速Lv 10」「雷速Lv 10」「禁忌Lv 7」「人化(ジンカ)」「神へと至る龍」「嫉妬(エンヴィー)」「慈悲(カインドネス)」「n%I=W」

称号

「悪食」「魔物殺し」「無慈悲」「魔物の殺戮者」「守護神」「悪夢の守護神」「龍」「龍神」「血縁喰ライ」「悪逆無道」「嫉妬の支配者(レヴィアタン)」「慈悲の支配者(サリエル)」「伝心の支配者」

〈地龍Lv 1:岩球(ロックスフィア)、Lv 2:地纏(ツチマトイ)、Lv 3:、Lv 4:ウェルダネス〉

〈風龍Lv 1:嵐球(ストームスフィア)、Lv 2:風纏(カゼマトイ)、Lv 3:、Lv 4:タービランス、〉

〈水龍Lv 1:流球(フロウスフィア)、Lv 2:水纏(ミズマトイ)、Lv 3:、Lv 4:イヌンダション、〉

〈雷龍Lv 1:霆球(サンダースフィア)、Lv 2:雷纏(カミナリマトイ)、Lv 3:、Lv 4:ステップリーダー〉

〈光龍Lv 1:閃球(フラッシュスフィア)、Lv 2:光纏(ヒカリマトイ)、Lv 3:、Lv 4:ラディウス〉

 

 

 

 

 

名前:ソフィア[ソフィア(章子)ケレン(根岸)]

種族:人族[吸血姫(キュウケツキ)]

所属:魔王軍第十軍・[白の部下]

性別:女性

呼び方

アリエル:アリエルさん

白:ご主人様

空:(クゥ)さん

セラス:お母様

マリア:マリア

ラース:ラース

タカ:タカ

フェルミナ:フェルミナ

ヤイチ:ヤイチorあんたorちょっと

専用武器 1

竜殺剣(リュウサツケン) グラム[近距離]・(ケン)

専用武器 2

氷魔剣(ヒョウマケン) クラレント[近距離]・(ケン)

氷魔刃(ヒョウマジン) エリミネイター[近距離]・短刀(タントウ)

氷魔杖(ヒョウマジョウ) エクスシース[遠距離]・(ツエ)

氷魔書(ヒョウマショ) アヴァロンエピック[遠距離]・魔導具(マドウグ)

前世:根岸(ネギシ) 章子(ショウコ)

スキル

「鑑定Lv 10」「念話Lv 10」「隠密Lv 10」「氷魔法Lv 10」「氷雪魔法Lv 10」「氷耐性Lv 10」「氷雪耐性Lv 10」「治癒魔法Lv 10」「HP自動回復Lv 10」「HP超自動回復Lv 10」「MP自動回復Lv 10」「MP超自動回復Lv 10」「吸血鬼Lv 1」「忠義(フェイス)」「色欲(ラスト)」「n%I=W」

称号

「吸血鬼」「真祖」「忠義の支配者(ミカエル)」「色欲の支配者(アスモデウス)」「氷の支配者(フィンブル)」「氷雪の支配者(ジエロネーヴェ)

 

名前:セラス・ケレン

種族:人族→[吸血鬼(キュウケツキ)]

所属:魔王軍第四軍・副団長

性別:女性[ソフィアの母親]

身分:元伯爵夫人

ソフィアをエルフから守り死亡する直前に、ソフィアに噛まれて吸血鬼に。

セラスの家系:女性は「氷魔法・氷雪魔法」特化

成人(15歳)するまで「氷の支配者」

成人してからは「氷雪の支配者」が称号に追加

呼び方

アリエル:神獣様

白:神獣さま

空:龍神さま

ソフィア:ソフィちゃん

マリア:マリア

ラース:鬼人さま

タカ:タカちゃん

フェルミナ:フェルちゃん

ヤイチ:ヤイチちゃん

専用武器

氷雪杖(ヒョウセツジョウ) ニブルヘイム[遠距離]・(ツエ)

スキル

「鑑定Lv 10」「念話Lv 10」「氷魔法Lv 10」「氷雪魔法Lv 10」「氷耐性Lv 10」「氷雪耐性Lv 10」「治癒魔法Lv 10」「HP自動回復Lv 10」「HP超自動回復Lv 10」「MP自動回復Lv 10」「MP超自動回復Lv 10」「忠義(フェイス)

称号

忠義の支配者(ミカエル)」「氷の支配者(フィンブル)」「氷雪の支配者(ジエロネーヴェ)

 

名前:マリア

種族:魔族[六大(ロクダイ)貴族(キゾク)水帝(アクエリアス)]→[吸血鬼(キュウケツキ)]

貴族:炎帝(イグニス)雷帝(トニトルス)光帝(ルクス)風帝(ベントゥス)水帝(アクエリアス)闇帝(アビス)

所属:魔王軍第四軍・団長

守護幻獣(シュゴゲンジュウ)[水獣(スイジュウ)]:アクアシャーク→マリー

性別:女性(前世は男性だが、心体は完全に女性)

職業:戦闘使用人(メイド)諜報(チョウホウ)

オウツ国からの帰り道、盗賊に斬られるまでは優秀な使用人(メイド)。斬られたのがキッカケで前世での能力が目覚める。そこで、白が盗賊を退治。白が治癒魔法をかける。

奥様にお嬢様を託されたがエルフに殺られて死亡する直前に、ソフィアに噛まれて吸血鬼に。

呼び方

アリエル:アリエルさん

白:白さん

空:空さん

ソフィア:お嬢様

セラス:奥様

ラース:ラース様

タカ:タカ様orタカ

フェルミナ:フェルミナ

ヤイチ:ヤイチ

専用武器

翠流剣(スイリュウケン) ヒュドルクシフォス[近距離]・(ケン)

「フォトンゲイザー」「(テン)焦がす(コガス)滅亡(メツボウ)(ヒカリ)

(トキ)咆哮(ホウコウ)」「亜空切断(アクウセツダン)

「メテオドライブ」「サンシャインスマッシャー」

「シャドーレイ」「ムーンライトブラスター」

スキル[今世]

「鑑定Lv 10」「念話Lv 10」「先読(サキヨミ)Lv 10」「歩法(ホホウ)Lv 10」「剣法(ケンポウ)Lv 10」「剣技(ケンギ)Lv 10」「剣士(ケンシ)Lv 10」「剣闘士(ケントウシ)Lv 10」「剣聖(ケンセイ)Lv 10」「気配遮断Lv 10」「気配感知Lv 10」「時空操作Lv 10」「時空支配Lv 10」「空間操作Lv 10」「空間支配Lv 10」「炎魔法Lv 10」「灼炎魔法Lv 10」「炎耐性Lv 10」 「灼炎耐性Lv 10」「水魔法Lv 10」「水流魔法Lv 10」「水耐性Lv 10」「水流耐性Lv 10」「氷魔法Lv 10」「氷雪魔法Lv 10」「氷耐性Lv 10」「氷雪耐性Lv 10」「雷魔法Lv 10」「雷鳴魔法Lv 10」「雷耐性Lv 10」「雷鳴耐性Lv 10」「風魔法Lv 10」「旋風魔法Lv 10」「光魔法Lv 10」「閃光魔法Lv 10」「光耐性Lv 10」「閃光耐性Lv 10」「闇魔法Lv 10」「闇黒魔法Lv 10」「闇耐性Lv 10」「闇黒耐性Lv 10」「治癒魔法Lv 10」「HP自動回復Lv 10」「HP超自動回復Lv 10」「MP自動回復Lv 10」「MP超自動回復Lv 10」「忍耐(ペイシャンス)

称号

忍耐の支配者(ウリエル)」「時空の支配者(ディアルガ)」「空間の支配者(パルキア)」「剣聖」

前世:オブライト

職業:騎士[最強の黒騎士(クロキシ)]

スキル[前世]

「歩法」「先読」「剣技」「剣士」「剣闘士」「剣聖」「気配遮断」「気配感知」「時空操作」「時空支配」「空間操作」「空間支配」「炎魔法」「灼炎魔法」「氷魔法」「氷雪魔法」「雷魔法」「雷鳴魔法」「風魔法」「旋風魔法」「光魔法」「閃光魔法」

称号

時空の支配者(ディアルガ)」「空間の支配者(パルキア)」「剣聖」

 

名前:アヤメ[彩愛(アヤメ)]

種族:銀蒼姫(ギンソウキ)[鬼族(オニゾク)]

所属:魔王軍第八軍・団長

性別:女性

通り名(トオリナ)麗鬼(レイキ)

鬼技(オニワザ)蒼炎(ソウエン)

鬼技(オニワザ)銀煌一閃(ギンコウイッセン)

鬼技(オニワザ)幽幻夜叉(ユウゲンヤシャ)

 

名前:ラース

種族:ゴブリン→オーガ→鬼人(キジン)

所属:魔王軍第八軍・副団長

性別:男性(高校に通っている時に、姫色に告白して、1度振られている)

前世:笹島(ササジマ) 京也(キョウヤ)

呼び方

アリエル:アリエルさん

白:白(たまに姫色)さん

空:空さん

ソフィア:ソフィア

セラス:セラスさん

マリア:マリアさん

タカ:タカ

フェルミナ:フェルミナ

ヤイチ:ヤイチ

専用武器 1

雷鳴刀(ライメイトウ) 雷霆(ライテイ)

炎熱刀(エンネツトウ) 炎帝(エンテイ)

専用武器 2 [カラミティ シリーズ]

幻災剣(ゲンサイケン) カラミティ ブレイド[近距離]・(ケン)

幻災刃(ゲンサイジン) カラミティ リッパー[近距離]・短刀(タントウ)

幻災鉾(ゲンサイボウ) カラミティ サリッサ[近・中距離]・(ヤリ)

幻災斧(ゲンサイフ) カラミティ アックス[近・中距離]・(オノ)

幻災塊(ゲンサイカイ) カラミティ マレット[近・中距離]・ハンマー

幻災杖(ゲンサイジョウ) カラミティ スタッフ[遠距離]・(ツエ)

幻災砲(ゲンサイホウ) カラミティ キャノン[遠距離]・(ジュウ)

幻災弩(ゲンサイド) カラミティ クォレル[遠距離]・(ユミ)

幻災杯(ゲンサイハイ) カラミティ チャリス[遠距離]・魔導具(マドウグ)

スキル

「鑑定Lv 10」「念話Lv 10」「拳鬼Lv 10」「治癒魔法Lv 10」「HP自動回復Lv10」「HP超自動回復Lv 10」「MP自動回復Lv 10」「MP超自動回復Lv 10」「武器錬成」「憤怒(ラース)」「n%I=W」

称号

憤怒の支配者(サタン)

 

 

名前:タカ[鷹風(タカ)]

種族:魔族[六大(ロクダイ)貴族(キゾク)東の風帝(シロッコ)]→吸血鬼(キュウケツキ)

貴族:[東の風帝(シロッコ)][西の風帝(ゼフィロス)][南の風帝(ミストラル)][北の風帝(ラファーガ)]

[風帝]は4つの派閥に解れ。東>西>南>北

所属:魔王軍第四軍

守護幻獣(シュゴゲンジュウ)[風獣(フウジュウ)]:ストームレオ→シャット

性別:男性

父方:風使い

母方:水使い

呼び

アリエル:アリエルさん

白:白様

空:空様

ソフィア:ソフィア様

セラス:セラス様

マリア:マリア

ラース:ラース様

フェルミナ:フェルミナ

ヤイチ:ヤイチ

 

スキル

 

称号

「水使い」「風使い」「風神」「風帝」

 

名前:フェルミナ

種族:魔族[六大(ロクダイ)貴族(キゾク)北の風帝(ラファーガ)]→吸血鬼(キュウケツキ)

貴族:[東の風帝(シロッコ)][西の風帝(ゼフィロス)][南の風帝(ミストラル)][北の風帝(ラファーガ)]

[風帝]は4つの派閥に解れ。東>西>南>北

所属:魔王軍第十軍・[白の部下]

性別:女性(元雷帝の婚約者)

(学園を不当に退学させられていた所を白と空に助けられ、それから、白織様・空丹様を敬愛)

呼び方

アリエル:アリエル様

白:白織様

空:空丹様

ソフィア:ソフィア

セラス:セラス様

マリア:マリアさん

ラース:ラース様

タカ:タカ様

ヤイチ:ヤイチ様orヤイチ

スキル

「鑑定Lv 10」「風魔法Lv 10」「旋風魔法Lv 10」「風耐性Lv 10」「旋風耐性Lv 10」「治癒魔法Lv 10」「HP自動回復Lv 10」「HP超自動回復Lv 10」「MP自動回復Lv 10」「MP超自動回復Lv 10」

称号

「風使い」

 

名前:ヤイチ[夜一(ヤイチ)]

種族:魔族[六大(ロクダイ)貴族(キゾク)雷帝(トニトルス)]→吸血鬼(キュウケツキ)

貴族:炎帝(イグニス)雷帝(トニトルス)光帝(ルクス)風帝(ベントゥス)水帝(アクエリアス)闇帝(アビス)

所属:魔王軍第十軍・[白の部下]

守護幻獣(シュゴゲンジュウ)[雷獣(ライジュウ)]:ライトニングベア→チェンシー

守護幻獣(シュゴゲンジュウ)[炎獣(エンジュウ)]:フレアファルコン→アメリア

性別:男性(ソフィアを敬愛と親愛)

父方:雷使い

母方:炎使い

呼び方

アリエル:アリエルさん

白:白様

空:空様

ソフィア:ソフィア様

セラス:セラス様

マリア:マリア様

ラース:ラース様

タカ:タカ

フェルミナ:フェルミナ

フレイム()フィスト()」「ブレイズ()フィスト()

プラズマ()フィスト()」「ブラスト()フィスト()

スキル

「鑑定Lv 10」「拳法(ケンポウ)Lv 10」「拳技(ケンギ)Lv 10」「拳士(ケンシ)Lv 10」「拳闘士(ケントウシ)Lv 10」「拳聖(ケンセイ)Lv 10」「炎魔法Lv 10」「雷魔法Lv 10」「雷鳴魔法Lv 10」「雷耐性Lv 10」「雷鳴耐性Lv 10」「治癒魔法Lv 10」「HP自動回復Lv 10」「HP超自動回復Lv 10」「MP自動回復Lv 10」「MP超自動回復Lv 10」

称号

「炎使い」「雷使い」「雷神」「雷帝」「拳聖」

 

~~~人族側~~~

 

名前:シュン[シュレイン(俊輔)・ザガン・アナレイト(山田)]

種族:人族

性別:男性

固有:「天の加護」

あらゆる状況で望む結果が得られる

前世:山田(ヤマダ) 俊輔(シュンスケ)

スキル

慈悲(カインドネス)」「n%I=W」

称号

慈悲の支配者(サリエル)

 

名前:カティア[アルナティア(叶多)・セリ・アナバルド(大島)]

種族:人族

性別:女性

固有:「転換」

スキルをポイントに還元

前世:大島(オオシマ) 叶多(カナタ)

スキル

純潔(チャスタイティー)」「n%I=W」

称号

純潔の支配者(ガブリエル)

 

名前:スーレシア

種族:人族

性別:女性

スキル

異世界語(イセカイゴ)(日本語)Lv 7」

 

名前:フェイルーン(フェイ)

種族:地竜(チリュウ)

性別:(メス)

スキル

 

 

名前:アナ

種族:ハーフエルフ

性別:女性

 

~~~エルフ~~~

 

名前:フィリメス(香奈美)ハァイフェナス(岡崎)

種族:エルフ

性別:女性

固有:「生徒名簿」

転生者(生徒)の過去,現在,未来の状況が簡易的に

前世:岡崎(オカザキ) 香奈美(カナミ)

スキル

博愛(チャリティー)」「n%I=W」

称号

博愛の支配者(メタトロン)

 

~~~レングザンド帝国~~~

 

名前:ユーゴー(健吾)・バン・レングザンド(夏目)

種族:人族

性別:男性

固有:「帝王」

威圧による外道魔法(恐怖)の効果を与える

前世:夏目(ナツメ) 健吾(ケンゴ)

スキル

強欲(グリード)」「n%I=W」

称号

強欲の支配者(マモン)

 

 

~~~聖アレイウス教国(キョウコク)~~~

 

名前:ユーリーン(結花)ウレン(長谷部)

種族:人族[神言教(シンゴンキョウ)]

性別:女性

固有:「夢見る乙女」

寝ていたときに見た夢を小規模異空間ダンジョンとして

前世:長谷部(ハセベ) 結花(ユイカ)

 

名前:サジン(草間忍)

種族:人族[聖アレイウス教国・暗部(アンブ)]

性別:男性

固有:「忍者」

特殊な忍術が使用可能

前世:草間(クサマ) (シノブ)

 

名前:ウギオ(荻原健一)

種族:人族

性別:男性

固有:「無限通話」

念話の上位互換

前世:荻原(オギワラ) 健一(ケンイチ)

 

~~~教師1人+生徒25人~~~

 

魔王軍 4人(2人)

名前:若葉 姫色(システム(ガイ))

名前:漆原 美麗((シン)なる(リュウ))

名前:根岸 章子

名前:笹島 京也

 

学園 5人

名前:山田 俊輔

名前:大島 叶多

名前:岡崎 香奈美

名前:夏目 健吾

名前:長谷部 結花

 

聖アレイウス教国 暗部 1人

名前:草間 忍

 

エルフの里

保護(ホゴ)という名の拉致(ラチ)軟禁(ナンキン)

11人+2人

名前:工藤(クドウ) 沙智(サチ)

固有:「先導者」

リーダーシップを発揮

 

名前:荻原 健一

 

名前:(マキ) 将羽登(シュウト)

固有:「反抗」

受けたダメージの一部を相手に跳ね返す

 

名前:相川(アイカワ) (レン)

固有:「本が恋人」

 

 

名前:津島(ツシマ) (マサル)

固有:「早熟」

スキルレベルが低いほど熟練度がたまる

 

名前:瀬川(セガワ) 柊子(トウコ)

固有:「スイーツ女子」

有機物を砂糖に変換

 

名前:古田(フルタ) 美央(ミオ)

固有:「好感弩」

自分に対する他人の好感度が感覚でわかり、一定値以上の好感度を持つ相手と手を繋ぐと、強力な魔法の矢を放つ

 

名前:七瀬(ナナセ) 千恵(チエ)

固有:「バブみ」

腕で抱いた相手に睡眠の状態異常を与える

 

名前:手鞠川(テマリカワ) (サキ)

固有:「ケモナー」

魔物と心を通わせる

 

名前:飯島(イイジマ) 愛子(アイコ)

固有:「歌姫」

歌を歌うことで様々な効果を発揮

 

名前:外岡(トノオカ) 久美子(クミコ)

固有:「流行」

自らが流行を作り出す

 

名前:田川(タガワ) 邦彦(クニヒコ)

固有:「冒険者」

冒険者にとって有利な効果を発揮

 

名前:櫛谷(クシタニ) 麻香(アサカ)

固有:「ものぐさ効率厨」

スキル全般の熟練度の上昇値がわずかに上がる

 

死亡 4人(姫色は神化してシステム外)3人

名前:若葉 姫色(システム外)

 

名前:桜崎(サクラザキ) 一成(イッセイ)

固有:「迷宮創造」

MPを消費してダンジョンを作成、拡張、魔物の創造

 

名前:小暮(コグレ) 直史(ナオフミ)

固有:「涙の数だけ」

流した涙が結晶になり、その結晶を使い様々な効果を発揮

 

名前:(ハヤシ) 康太(コウタ)

固有:「刹那の見切り」

思考加速、集中、回避、視覚強化、速度アップ系の複合

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




蜘蛛娘:[白織]・Lv 1
種族:蜘蛛姫(スモールレッサータラテクト)
性別:雌
スキルポイント:0

地龍娘:[空丹]・Lv 1
種族:地龍姫
性別:雌
スキルポイント:99400


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2 蜘蛛娘・上層下降

~~~蜘蛛娘と地龍娘のマイホーム~~~

 

マイホームで相変わらず糸の操作をしている。伸ばしたり縮めたり、粘着性の糸を出したりしていると、

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈操糸Lv 1〉と〈粘糸Lv 1〉を獲得しました》

 

スキルを獲得したのと同時に、記念すべき2匹目の獲物がかかったみたい。ちょうどお腹も減ってきたところだし、タイミングバッチリだね♪

 

〈美麗さん。今から、獲物を狩ってくるから、待っていてね♪〉

《姫色さん。気を付けてね。その間、私は大丈夫なの?》

〈大丈夫だよ。粘着性の罠を張り巡らしてあるから、美麗には指一本触れさせないから!〉

《ありがとう、姫色♪》

〈それじゃあ、行ってくる〉

 

スキップ混じりに獲物の所に向かう。

......我ながら、蜘蛛のスキップってすごいシュール。

前回は油断して、思わぬ反撃を喰らってしまったので、今回は慎重に近づく。

さて、どんな獲物がかかっているのかなー?

 

〈エルローフロッグ〉

 

蛙だった。またお前かい!なんでやねん!このダンジョン、もっといっぱい他の魔物もいたやん!2回同じ魔物がかかるとかどんな確率やねん!

ハーッ!ハーッ!

思わずエセ関西弁が出ちゃったじゃないか。まったく、どえしてくれる......ベチャッ!Noooooooo!?

バカな1人漫才をやっていたら蛙の唾液(ダエキ)攻撃を食らった。2度目の人生にして初めて明かされる驚愕(キョウガク)の事実!私、アホだわ!

あーうん。

痛みのせいでちょっと冷静になれたわ。今回は耐性のレベルアップはなかった。熟練度が足りないっぽい。まあ、それはいいや。

蛙を抵抗ができないように糸でぐるぐる巻きにする。その上からひと噛み(カミ)、ガブー。

前回ひと噛みじゃ死ななかったし、この蛙も多分耐性持ってるんでしょ。

それでも、身動きできなくしてひと噛みしとけば弱体化するはず。

素早く梱包(コンポウ)して蛙をマイホームの奥に持っていく。その後すぐに引き返して、壊れた網を作り直す。

前回は蛙がかかった網をそのままにして、その場で食べてしまったけど、考えてみたらその間全くの無防備だったんだよね。

あの時に他の魔物なり人間なりが来てたら、網がなくなった状態で襲われることになっていた。

だから今回からはまず蛙の身動きを封じて、網の修復をして、万全の態勢を整えてからゆっくり止め(トドメ)を刺して、食事をしようと思って。

蛙のところに戻ると、ぐるぐる巻きになった状態でも、なんとか脱出しようともがいていた。

うーん。

ひと噛みじゃそんなに効いてないっぽいなー。

ガブッ!噛み付く。

噛み付いた(キバ)から毒を注入し続ければいいんだから。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒牙(ドクガ)Lv 2〉になりました》

 

お!スキルのレベルアップキタコレ!初めて聞いたスキルだ。

と、スキルのレベルアップと同時に、さっきまでもがいていた蛙が、ビクンッと痙攣(ケイレン)して動きを止めた。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールレッサータラテクトがLv 2になりました》

 

ん?んん?あ、なんか体が変!?うえ?何これ!?皮が剥がれていく(ハガレテイク)!?

脱皮?脱皮なのか!?

 

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒耐性Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈蜘蛛糸(クモイト)Lv 4になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

んんん!?ちょっと落ち着いて思いだそう。レベルアップって言ってなかった?いきなり始まった脱皮のせいでよく聞き取れなかった!

これはつまり、レベルアップの影響で、体が一新されたから?

未だにくっついたままの古い皮を剥がす。うわ、背中の部分とか結構傷ついてんじゃん。これ、蛙の唾液食らったところじゃん。見えなかったけど、結構ひどい怪我だったんだ。

ん?

そういえば、潰れた(ツブレタ)視界の一部も元に戻ってる!

とりあえず、蛙を食べよう。

魔物を倒して経験値を得て、スキルの熟練度を上げ、レベルアップでボーナスポイントとスキルポイントが得られる。と、言うことは、

 

(クゥ)ちゃん、空ちゃん〉

《どうしたの、その空ちゃんって?》

〈私が美麗を鑑定した時、名前が空丹ってなってたから、空ちゃん〉

《姫色の名前は?》

〈私?私には白織ってなっていた〉

《じゃあ、姫色は白ちゃんね♪》

〈私のスキルポイントは0だけど、空ちゃんのスキルポイントは100000もあったから、使えそうなスキルをスキルポイントを使って取得しておいて〉

《そうだね、このまま孵っても戦えなかったら、すぐに殺られちゃうからね。分かったわ。白ちゃん》

 

私は空ちゃんを鑑定してみる。

 

 

地龍娘:[空丹]

種族:地龍姫

性別:雌

HP:18/18(緑)

MP:18/18(青)

SP:18/18(黄)

SP:17/17(赤)

スキルポイント:96400

スキル

「鑑定Lv 2」「念話Lv 2」「土魔法Lv 1」「風魔法Lv 1」「水魔法Lv 1」「雷魔法Lv 1」「光魔法Lv 1」「土耐性Lv 1」「風耐性Lv 1」「水耐性Lv 1」「雷耐性Lv 1」「光耐性Lv 1」「n%I=W」

 

 

卵(美麗)を守るためにも、生き残るためにも強くならなきゃいけない。

相手が魔物にしろ人間にしろ、殺されるなんて真っ平ごめんだ。

卵の親がこのあたりをうろついていないという保証もない。

私の蜘蛛の体は運動能力が結構高い。

私の最大の武器は、糸と毒牙だ。糸で拘束して、毒牙で止めを刺す。

というよりも私たち蜘蛛の魔物にとって、糸と毒牙は重要な武器なのだ。

そう判断し、以後は糸で拘束をガッチリして、相手に反撃の余地をなくしてから止めを刺すようにした。

そうやって3匹目の蛙を無傷で仕留め、食べ終わった時、天の声(仮)が聞こえた。

 

《条件を満たしました。称号〈悪食(カクジキ)〉を獲得しました》

《称号〈悪食〉の効果により、スキル〈毒耐性Lv 1〉〈腐蝕(フショク)耐性Lv 1〉を獲得しました》

《〈毒耐性Lv 1〉が〈毒耐性Lv 3〉に統合されました》

 

新しい称号を獲得した。

悪食って、仕方ないじゃん!

魔物しか食うものないんだもんよ!

スキルが伸びればその分私も強くなる、はず。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈蜘蛛糸Lv 6〉になりました》

 

糸を使って修業をしてたらスキルレベルが上がった。

蜘蛛糸もスキルだとわかったので、熟練度を稼ぐためにいろいろとやりまくった。

いやー、レベルが上がるまでめっちゃ苦労したわ。

おかげでマイホームの中が真っ白になったくらい。

ここ何日間かでだいぶ様変わり(サマガワリ)した。

まず張ってある網の量が増えた。

前までは丁字路の交差点から、各通路に1つずつ網を張っていただけだけど、今だは通路の先の分かれ道まで、いくつも網を張ってある。

これでマイホームの安全度は一気に上がった。

この壁紙糸は、張ってある網と連動して、網に獲物がかかると、自動で壁から離れて相手を包む。自慢のトラップ。

壁紙糸張り付け始めた頃に、スキルレベル1上がった。

壁紙糸を全て張り終えたあた、最後に目に見えないほどの極細の糸をマイホームの中に張り巡らせる(ハリメグラセル)ことだった。

この糸には粘着性はなく、索敵のためのものだ。糸が触れたものは、それがどんなものなのか、私に伝わるようになっている。

ゆくゆくはこれを遠隔操作できるようにして、マイホームの外の探りをしたい。

ここまでやっちゃうと、流石にやることがなくなって、糸をただ無駄に溜め込む(タメコム)作業をしているところで、ついにスキルレベルが6に上がった。と同時に地龍の卵が孵る。

 

地龍娘:[空丹]・Lv 1

 

空ちゃんのスキルは省略。

念願の卵から孵った地龍娘:空ちゃん。

 

〈おはよー、空ちゃん〉

《おはよう、白ちゃん。貴女本当に蜘蛛なのね》

〈私もビックリ、転生して暗い殻の中、そして、卵から孵ったら周りは蜘蛛だらけ〉

《そこから、どうやって逃げてきたの?》

〈周りの蜘蛛たちが兄弟姉妹の血で血を洗う生存競争が始まり、このままじゃ、私も毒牙にかかってしまう。スキル〈韋駄天〉を持っていたから、逃げまくった〉

《そうなんだね、白ちゃん。ご飯ってどうするの?》

 

その時、獲物がかかった合図が。

壁紙糸が剥がれ獲物に向かっていく。

かかっていたのは、

 

〈エルローフロッグLv 2〉

 

いつものように私が蜘蛛糸で拘束、狩るのは空ちゃんのお仕事。ガブッ、と蛙の首筋をひと噛み。蛙は絶命したので、美味しく最後まで完食。

 

《〈龍牙Lv 1〉を獲得しました》

《〈毒耐性Lv 1〉を獲得しました》

 

空ちゃんが新しいスキルを獲得してから数分後、網に引っかかった哀れな獲物さんたちは残さずいただきました。ここらへんにいる魔物はみんな毒持ちらしく、毒牙(ドクガ)でもなかなか死んでくれない。

まあ、どっちにしろ巣にかかってくれれば後はやりたい放題なんだけどね。

おかげで毒牙のスキルは4に、毒耐性のスキルレベルは5にまで上がった。

私がこれまで倒した魔物は、〈エルローランダネル〉が3匹、〈エルローペカトット〉〈エルローバジリスク〉〈フィンジゴアットが各1匹ずつだ。

空ちゃんが倒した魔物は、私が拘束した〈エルローランダネル〉が4匹、〈エルローバジリスク〉が3匹。

〈フィンジゴアット〉5匹、1匹ずつ魔法を使って倒していく。

 

《熟練度が一定に達しました。〈龍牙Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈土魔法Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈風魔法Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈水魔法Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈雷魔法Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈光魔法Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈毒耐性Lv 3〉になりました》

 

エルローランダネルは小型の恐竜みたいな魔物。

エルローペカトットはペンギンとペリカンを合わせたような胴体に、猿みたいな腕を持った奇妙な魔物。

フィンジゴアットは蜂みたいな魔物で、異様な程大きく、3メートルくらいあるこの通路を埋め尽くすくらいの巨体だった。

1番やばかったのはエルローバジリスクだ。

でかい蜥蜴(トカゲ)みたいな外見の魔物。

 

あ、サラっと私レベルアップしました。しかも3つ。今はレベル5です。

スキルは「毒牙Lv 4」「蜘蛛糸(クモイト)Lv 6」「鑑定Lv 4」「念話Lv 4」「禁忌Lv 1」「外道魔法Lv 1」「韋駄天Lv 6」「毒耐性Lv 5」「酸耐性Lv 3」「腐食耐性Lv 1」「石化耐性Lv 1」だ。

レベルが3も上がったのに、スキルレベルはそこまで上がっていない。

思ったよりレベルアップによる熟練度ボーナスは少ないみたいだ。

あと、スキルポイントもだいぶ少ないみたいだ。

私が思っている以上に、スキル関連の制約は厳しいようだった。

 

今日も今日とて怠惰を貪る(ムサボル)。あー、マイホーム様様だわー。

日課になりつつある糸だしをしながら、ゴロゴロとくつろぐ。あー、幸せ。

空ちゃんは、魔法耐性を上げるため、自分に魔法を喰らわす。「土魔法」から「風魔法」、「水魔法」、「雷魔法」、「光魔法」と、

 

《経験値が一定に達しました。地龍がLv 5になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。〈土耐性Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈風耐性Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈水耐性Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈雷耐性Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈光耐性Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈毒耐性Lv 5〉になりました》

 

いつかはこのマイホームを離れなきゃいけないだろうなと思う。

不測の事態、環境の変化、巣を破ってくるような強敵の出現。

人間や強力な魔物ががくる、とか。

いつになるかはわからないけど、その時はやってくると思う。

変わらないものなんてない。

だから、その時が来るという覚悟はしておこう。

 

そう決意したけど、はやすぎるよ!覚悟できていないよ!

慌てふためく私と空ちゃん視界の先には、炎上するマイホームの入口の1つがある。

ウトウトと眠りについていたところに、急に火の手が上がった。

私が作り上げたマイホームは、空ちゃんの〈土魔法〉で此方まで拡がらないように土壁を発動させて、防いでいる間に、複雑に張られた蜘蛛の巣を、私たちは器用に通り抜けていく。

最後の網。そこを越えればもう二度とこの場所には帰ってこられない。

そこを越えればもう安全なんてどこにもない。

それでも私たちは迷わずに最後の網を潜る。

振り返りたい衝動にかられたけど、そんなことはしない。

今は少しでも遠くに逃げることを考える。

こうして私たちは、マイホームを追われることになった。

 

余談だが、マイホームに火を放った冒険者たちは、その後、マイホームの中央に放置されていた、大量の私の糸玉を発見したらしい。

そこまでは運良く火の手まわらず、彼らはそれを回収。

その糸を使った服がとんでもない高額で取引されたという。

中にはどこぞの国の王様までそれを購入したそうで、一時期話題になったのだとか。

私がその事実を知ることになるのは、もっとずっと後のことだった。

 

 

とぼとぼ。私たちの足取りは重い。

全速力で走りまくったせいで疲れてるってのもあるけど、それ以上にショックが大きい。

愛しのマイホームがうしなわれてしまった。

私は蜘蛛。空ちゃんは地龍。ゲテモノを食べても動じなかった私たち(ハガネ)のハートに、ポッカリと空洞ができてしまった。

せめてレベル10くらいになるまでは、マイホームをキープしていたかった。

ううう、ううううう、うううううううー、うがーっ!

よし、うじうじするのは終了。気持ちを切り替えていこう。

 

 

マイホームは素敵だ。

マイホームで安全な狩りばっかりしていたから、不測の事態が起きた時に対処できない、木偶(デク)(ボウ)になってしまう。

今回のことでそれを自覚した。

今のままでは、蜘蛛の巣を突破できるような相手には、私たちは逃げる選択肢しかとれない。それじゃダメだ。

対策を立てるにも、自分と空ちゃんを鑑定しないと。

 

蜘蛛娘:スモールレッサータラテクト:[白織]・Lv 5

 

地龍娘:[空丹]・Lv 5

 

実戦相手として適当な魔物を探して迷宮内を徘徊(ハイカイ)する。いた。2匹。

 

〈エルローフロッグ Lv 3〉

〈エルローフロッグ Lv 3〉

 

私と空ちゃんが身を隠した先の通路には、因縁深い(インネンブカイ)蛙の姿。

せっかくだから蛙の詳細を鑑定してみる。

 

〈エルローフロッグ:エルロー大迷宮に生息する魔物〉

ん?ちょっと待って。魔物の説明文に無視できない単語があるぞ。

 

〈エルロー大迷宮:ダズトルディア大陸とカサナガラ大陸を地下で繋ぐ(ツナグ)世界最大の迷宮〉

 

思わぬところから現在位置判明。

私たちのいるこのダンジョンはエルロー大迷宮。

ていうか、世界最大の迷宮っすか。どうりで広いはずだよ。ていうか、大陸を地下で繋ぐってどういうことよ?つまりこのダンジョンの上って、海ってこと?

うえー。マジかー。そりゃ、広いわ。

ついでに2つ出てきた大陸の名前も鑑定。

 

〈ダズトルディア大陸:人族国家が数多く存在する〉

〈カサナガラ大陸:世界最大の大陸〉

 

ふーん。もし私たちが脱出するとしたら、人族が幅をきかせてそうなダズトルディア大陸は避けたいとこだけど、そんなの選んでる余裕がなさそうだしなー。

と、鑑定に夢中になっていて放置していた蛙をどうにかしよう。

私と空ちゃんは、1人1匹倒すことにした。

 

まず、私がキシャー、と威嚇する。その後ろで、空ちゃんがもう1匹と戦っている。

ペッ!

おわ!?

間髪(カンハツ)容れずにいきなり唾液をぶっぱなしてきた。危うくくらうところだったじゃないか!

ペッ!ペッ!ペッ!

連続で吐いてくるなー!!!

うわ、うわ、おうふ!?避けきれるかんなもん!痛い痛い!

耐性があるおかげで初めてくらった時に比べればだいぶ楽だけど、それでも痛いのには変わりはないんだけどね!

というかお前、糸で拘束されてなかったらこんなに元気なの!?

ペッ!ペッ!ペッ!

待った待った!ピギャー!?また1個避けきれなかった!

まずい、このままじゃ一方的にやられてしまう!

かくなる上は、特攻あるのみ!

ペッ!ペッ!ペッ!

そう何度も同じ手を食うか!!

こんだけやられれば、お前が1度に吐ける唾液は3つが限界だってわかるんだよ!

韋駄天と呼ばれたゲーマーの観察眼と、避けテクを甘く見るな!唾液を回避!

そのまま蛙に爪を振り下ろす!

クッ、流石に避けられるか、って、ジャンプして舌を打ち付けてきた!

ビタンッ!イッター!

しかも舌にも酸が付いているのか、打ち付けられたたけじゃない、ジュウジュウした痛みがある。

おおう。これは重傷ですわ。

体力ゲージがあったのが、真っ赤な危険ゾーンに突入しているわ。

あと1発でも何かを食らったら、やばい。

けど、そうはならない。もう勝敗は決した。

蛙が飛んだ先には、私の糸が張り巡らされているのだから。

仕掛けは単純。私はどうにも移動中、無意識のうちに糸を地面に垂らす癖があるっぽい。この癖は治さないと恥ずかしい。

今回はそれを利用した。

無意識に垂れ流していた糸に、粘着性を持たせる。

あとは蛙をその場所に誘導するだけ。

そして、止め(トドメ)の毒牙!

蛙は私の毒牙を受け、息絶えた。

 

《熟練度が一定に達しました。〈酸耐性Lv 3〉になりました》

 

スキルレベルがアップした。

これで次に戦う時はもう少し楽になるはず。

私が激痛に襲われていると、

 

《熟練度が一定に達しました。〈苦痛耐性Lv 1〉を獲得しました》

 

新しいスキルを獲得した時、後ろから、空ちゃんが蛙を倒し、スキルアップと新しいスキルを手に入れていた。

 

《熟練度が一定に達しました。〈毒耐性Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈酸耐性Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。〈苦痛耐性Lv 1〉を獲得しました》

 

空ちゃんも、酸耐性と苦痛耐性を新しく獲得していた。向こうも苦戦していたみたいだ。

私たちがこの先、生き残り続ければ自然にスキルレベルも上がっていくだろうし、お世話になります。

あー。とりあえず、せっかく苦労して仕留めた獲物なんだし、いただきます。

うん。改めて初めての戦闘を経験してみてわかったことがある。

私たちYOEEEEE!

これは私たち個人が弱い。私はスモールレッサータラテクト種で劣化種。攻撃力も貧弱、防御力も脆い(モロイ)。唯一スピードだけはそれなりのものが出せるけど、それも初見の唾液連打は避けきれないレベル。基礎能力値ではレベルの低い蛙にさえ劣る。

空ちゃんもレベルアップし、進化をしないとダメみたいだ。

ただ生きるだけなら新しいマイホーム作ればそれで事足りる。

けど、今はとりあえずやすませてー。

この怪我、全治どのくらいだろう?というか治るのか?

とにかく寝よう

 

今日は色々あって疲れた。体を回復させるためにも寝て英気を養うんだ。

というわけで、おやすみなさい。

 

 

zzz。ううん?おはようございます。

体はまだ痛い。そりゃあんな大怪我ひと晩で治るはずもない。

ちょんちょん。ん?

なんか糸から振動が、って、うわ、簡易ホームの巣に魔物が引っかかっている。

 

〈エルローバジリスク 4〉

 

石化蜥蜴(トカゲ)が2匹。また、厄介な奴が引っかかったものだ。

せっかく引っかかった獲物を逃がすのもなー。

キョロ。

あ、やべ、目が合った。

んげ!足の先が石化してきた!ああ、もう!こうなったら仕方ない。

ガブッ!

石化耐性を持っているおかげで石化する速度はかなり遅い。

けと、無事な前足が使えなくなるのは非常にまずい。下手すると歩行も困難になりかねない。

頼むから倒れてくれ!

私の祈りが届いたのかどうか、足が半分石化したところでバジリスクは力尽きた。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールレッサータラテクトがLv 6になりました》

 

お?おお!神タイミングキター!

 

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒牙Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈石化耐性Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

OKOK。スキルが2個レベルアップしたのは嬉しい。

けど、今はそれ以上に嬉しいことがある!

レベルアップの恩恵の1つ、脱皮による全回復!

空ちゃんの戦いを見てみる。

 

空ちゃんは〈土魔法〉で壁がせり上がる前に石化が始まる。前の片足が石化する。空ちゃんの戦いは、壁を作ってからが本領発揮。

次に〈水魔法 砲水(ホウスイ)〉でバジリスクに水を纏わし、その後に〈雷魔法 砲雷(ホウライ)〉を喰らわして、最後に〈龍牙〉で止めをさして倒した。

 

《経験値が一定に達しました。地龍Lv 6〉になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。〈龍牙Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈土魔法Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈水魔法Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈雷魔法Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈石化耐性Lv 2〉になりました》

 

空ちゃんは脱皮がないけど、完全回復している。

イヤッハー!バジリスクよ、ありがとう!そしていただきます!

狙ってやったわけじゃないけど、私はこうして傷の完全回復に成功した。

これで、また迷宮探索をすることができる!

 

 

 

蛙にやられた傷がレベルアップで回復したので、探索再開。

と、本日の第一獲物発見。うむ、見たことない魔物が2匹。

とりあえず鑑定っと。

 

〈エルローフェレクト ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

ん?失敗?あー、レベルが載っていない。

蛙の時は気付かれたけど、ゲジは私のことに気付いていない。

これは、バックアタックのチャンス!

音を立てないように、それでいて素早く、相手の背後に迫る。

ススススス。こんにちは、死ね!

奇襲はあっさり成功した。

空ちゃんの方を見てみると、空ちゃんも気付かれていないのか、私と同じようにバックアタックへ!

〈光魔法 咆光(ホウコウ)〉を喰らわし、跡形(アトカタ)もなく消え去った。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈鑑定Lv 4〉になりました》

 

お、やっと鑑定のレベルが上がった。

さて、レベルが上がって今度は何が増えるかなー?

 

〈蜘蛛娘:スモールレッサータラテクト:[白織]・Lv 6〉

 

あれ?変化なくね?

と思ったら、種族名の下のあたりになんか色のついた棒線が何本かあった。

上から順に緑色、青色、黄色と赤色で、黄色と赤色の線は上下でくっついていて1本の太い線みたいになっている。

何、これ?

 

〈HPバー〉

〈MPバー〉

〈SPバー〉

 

鑑定してみたらどうやらこの線はそれぞれ生命力を表すヒットポイントと、魔力を表すマジックポイントであることが判明した。

けど、最後のSPというのがなんなのかよくわからない。

鑑定結果は、スタミナポイントと出た。

空ちゃんのスキルが、

 

《熟練度が一定に達しました。〈鑑定Lv 4〉になりました》

 

これはいよいよ鑑定はやっぱりチートスキルだったフラグが立ってきたかな?

さて、気を取り直して探検探検。お、魔物発見。

 

〈エルローフェレクト Lv 2 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

とりあえず発見した魔物、コソコソっと壁を這い上がる。蜘蛛の体ってこういう時便利。空ちゃんには、私が奇襲する前に逃げ道を塞いでもらう。

私がゲジの真上に着くと、

 

(クゥ)ちゃん!空ちゃん!こちら、白!どうぞ!〉

《こちら、空!どうぞ》

〈作戦通りに頼みます。どうぞ!〉

《こちら、空!ラジャー!》

 

空ちゃんが、〈土魔法〉で壁がせり上がり、ゲジを囲う。そこに、私がとうっ、中空(チュウクウ)に落ちながら、ゲジの上に。糸でグルグル巻いていく。それを2回して私たちは、獲物を頂きます。

ガブッ!パクッ!

 

私と空ちゃんの新しいスキルが手に入る。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈麻痺(マヒ)耐性Lv 1〉を獲得しました》

 

お、おお!ゲジ、お前麻痺なんて持っていたのか!

もしかしてこいつ、奇襲で倒せなかったら結構ヤバゲーだった?

次からはちょっと気をつけよう。

私たちのスタミナポイント(赤)がちょっとずつ回復している?

私たちはゲジを美味しくはないがいただいて、移動を開始。

 

ススススス。バサッ!グールグール。ガブッ!

いただきます。

もう1匹は、空ちゃんが止めをさして。ガブッ!

私は蜘蛛糸で獲物を巻いただけなので、私に経験値は入ってこない。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールレッサータラテクトがLv 7になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

レベルアップきたねー。

私が喜んでいると、

 

《経験値が一定に達しました。地龍Lv 7になりました》

 

空ちゃんもレベルアップしていた。

お、2匹の獲物発見。

ススススス。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈隠密Lv 1〉を獲得しました》

 

バサッ!グールグール。ガブッ!

いつも通り、もう1匹は空ちゃん。

うん?スキル?隠密?あ、2匹と獲物発見。

ススススス。バサッ!グールグール。バサッ。

 

《条件を満たしました。称号〈暗殺者〉を獲得しました》

《称号〈暗殺者〉の効果により、スキル〈隠密Lv 1〉〈影魔法Lv 1〉を獲得しました》

《〈隠密Lv 1〉が〈隠密Lv 1〉に統合されました》

 

いつも通り、1匹は空ちゃん。

暗殺者!いいね!

おっと、2匹の獲物発見。

ススススス。バサッ!グールグール。ガブッ!

 

《条件を満たしました。称号〈魔物殺し〉を獲得しました》

《称号〈魔物殺し〉の効果により、〈強力Lv 1〉〈堅固Lv 1〉を獲得しました》

 

私と空ちゃんがこの獲物をいただいたら、

魔物殺しの称号がが手に入った。が、このダンジョンの中でお腹を満たすには魔物を狩るしかない。

そもそも、魔物しかいないのだから。

ふあ!?また2匹の獲物発見!

ススススス。バサッ!グールグール。ガブッ!

空ちゃんも。ガブッ!

いただきます。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 1〉を獲得しました》

 

また?今日は称号とスキルの大盤振る舞い(オオバンブルマイ)

 

レベルアップにスキル有難い。

隠密いいね!暗殺者いいよ!

私と空ちゃんが手に入れた魔物殺し...ね?

気を取り直して、迷宮探索再開。

あまりにも上手くいきすぎて怖いくらい。

ここら辺のゲジがとてもいい経験値の足しになるのだ。

ゲジという食料が豊富にいてくれたから実験が捗る。

ゲジを食べ続けたおかげで麻痺耐性はスキルレベル3上がった。

お?道が途切れて....ないね。

この迷路、とんでもなく広い上に、行き止まりというものがない。

その道を進んでいると、目の前の道の途切れは、どうやら(ガケ)っぽくなってるっぽい。

途切れた道の奥に、広い空間が見える。

となると、次はどんなところだろう?

チラッと崖の(フチ)に立って下を覗き(ノゾキ)込んでみる。

 

〈エルローフェレクト Lv 2 ステータスの鑑定に失敗したした〉

〈エルローフェレクト Lv 2 ステータスの鑑定に失敗したした〉

〈エルローフェレクト Lv 2 ステータスの鑑定に失敗したした〉

〈エルローフェレクト Lv 2 ステータスの鑑定に失敗したした〉

〈エルローフェレクト Lv 2 ステータスの鑑定に失敗したした〉

〈エルローフェレクト Lv 2 ステータスの鑑定に失敗したした〉×いっぱい。

《熟練度が一定が一定に達しました。スキル〈鑑定Lv 5〉になりました》

 

この鑑定で、私たちの鑑定レベルがアップ!

鑑定の情報がドバっと流れ込んできて、一瞬意識が飛びかけた。危ない危ない。

1度にやりすぎると、情報量が多すぎて頭が痛くなるんだった。

気を失ないかけるとか相当だよね。

.....、気を失ないかけるほどの、情報量。

ソローっと崖下(ガケシタ)を見る。

崖下って言っても1メートルくらいしかない。

ゲジがそこを埋め尽くすように、溢れ(アフレ)かえっていた。

ガサっ...ガサガサガサガサガサガサ!!!

ひぃぃぃぃぃ!?追いかけてきたー!?

 

追い付かれないように、空ちゃんが〈風魔法〉と〈雷魔法〉の融合魔法〈暴風霹靂(ボウフウヘキレキ)〉!

ゲジ集団は阻まれている。

 

《熟練度が一定に達しました。〈風魔法Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。〈雷魔法Lv 4〉になりました》

 

 

 

はー。ゲジ怖い。マジで何なのあれ?数の暴力の恐ろしさ。身に染みて(シミテ)感じたわー。

あー、疲れた。

しかもあいつらは麻痺持ち。1回噛まれ(カマレ)たら、麻痺の餌食になるだろうね。

 

〈蜘蛛娘:スモールレッサータラテクト:[白織]・Lv 7〉

〈地龍娘:[空丹]・Lv 7〉

 

はー、疲れたし寝よ。

 

おはようございます。

白ちゃんと空ちゃんです。

簡易ホームにさらに更に追加していく。

 

〈エルローバラドラード Lv 9 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

でかい蛇が2匹。

2匹の戦闘区域は、離れている。

私と空ちゃんは、その状況を隅々まで確認する。2匹のでかい蛇は、網に絡まっている。

私はのたうち回る蛇に取り付く。

すぐさま噛み付くと同時に追加の糸を吐き出し続ける。

硬い(ウロコ)をなんとか突破して、その体に毒牙を打ち込む!

蛇は毒を打ち込まれる苦しさに動きが激しくなる。

糸に拘束されてもなおも激しく暴れまわる。

私は無心で噛み付き続け、糸を吐き出し続けた。

スタミナゲージ(黄)がなくなると、スタミナゲージ(赤)が残り1割を切った頃、蛇はついに動かなくなった。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールレッサータラテクトがLv 8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールレッサータラテクトがLv 9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒牙Lv 6〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈暗視Lv 10〉から〈視覚領域拡張Lv 1〉が派生しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

私が一気に2つもレベル上がった頃、空ちゃんが、もう1匹のでかい蛇を倒して。

 

《経験値が一定に達しました。地龍娘がLv 8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。〈苦痛耐性Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《熟練度が一定に達しました。地龍娘がLv 9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍牙Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍眼Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈龍眼Lv 10〉から〈視覚領域拡張Lv 1〉が派生しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

私たちはレベルアップした後、簡易ホームに戻り、念入りに補強改善していく。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈蜘蛛糸Lv 7〉になりました》

 

いいことは重なるらしい。

迷宮での獲物は貴重なので、いただきます。

めっちゃ苦い。毒の味だよね?

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒耐性Lv 6〉になりました》

 

私たちが、でかい蛇を喰して、スキルレベルが上昇した。

 

 

蛇を倒してから何日かたった。ダンジョンの中にいると、日付の感覚がわからないからどのくらいたっているのか正確にはわからないけどね。

ここ何日かで仕留めた獲物の山。

私が知ってる中で、おそらく1番強いであろう巨大蜘蛛(グモ)がもしLv 1でも、私が勝てるわけがない。

ここも、簡易ホームのつもりだったのに、滞在期間が延びたせいで前のホームと同じくらいの規模になりつつあるし。

と思っていたら、左右の糸から伝わる振動。

私と空ちゃんは、左右に分かれて引っかかった獲物のところに行く。

 

〈エルローランダネル Lv 3 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 3 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 4 ステータスの鑑定に失敗したした〉

 

私のところに3匹の魔物。後から聞くと、空ちゃんのところにもこの魔物が3匹。

網ごと魔物を3匹抱えて、歩きだす。前に、新しい網を設置し直して、魔物を抱えて簡易ホームの中心に戻る。

空ちゃんは、魔物がかかっていた網のところで倒したと言うので、私は網を直しに向かう。

 

《経験値が一定に達しました。地龍娘がLv 10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。地龍娘が進化可能です》

《風龍娘に進化しますか?YES/NO》

 

もちろん、YESで!

 

《進化が完了しました》

《風龍娘になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈念話Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈土魔法Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈風魔法Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈水魔法Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈雷魔法Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈光魔法Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈強力Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。スキル〈龍翼Lv 1〉を取得しました》

《種族:風龍姫(フウリュウキ)になり、スキル〈風速(フウソク)Lv 1〉を取得しました》

 

私が網の補強から帰ってくると、空ちゃんが進化していた。地龍娘から風龍娘へと。

私も、自分を鑑定。

 

〈風龍娘:[空丹]・Lv 1〉

 

進化にエネルギーを使ったので、獲物をいただきます。

 

《熟練度が一定に達しました。〈毒耐性Lv 7〉になりました》

 

〈空ちゃん!空ちゃん!風龍娘になったんだね♪おめでとう〉

《ありがとう、(シロ)ちゃん》

 

というわけで、ガブッ、ガブッ、ガブッ!

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールレッサータラテクトがLv 10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。個体、スモールレッサータラテクトが進化可能です》

 

......?

レベルアップと同時に進化、だって?それはつまりあれか?某ポケットなモンスターを育てるあのゲームみたいな感じか?

 

《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。

・レッサータラテクト YES/NO

・スモールタラテクト YES/NO》

 

よく考えよう。

レッサータラテクトの方は、多分成体になるってことだと思う。

逆に、スモールタラテクトの方は、レッサーがなくなっているから、劣化種族から上位種族になるってことかな?

スモールタラテクト1択でしょ。

成体になってしまうと、後戻りできないだろうし。それに、そっち方面に進化していくと、あれになるんでしょ?あの、巨大蜘蛛マザーに。それに、この迷宮の中で巨大になるなんて移動制限かかるしね。

スモールタラテクトに進化します!

 

《個体スモールレッサータラテクトがスモールタラテクトに進化します》

 

 

 

 

《進化が完了しました》

《スモールタラテクトになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈外道魔法Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈腐食耐性Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

よし!自分を鑑定。

 

〈蜘蛛娘:スモールタラテクト:[白織]・Lv 1〉

 

進化にエネルギーを使ったので、いただきます。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒耐性Lv 7〉になりました》

 

幸いなことに、今ホームの中には魔物の死骸が山になっている。

獲物を仕留めたら、お残しはしないのが、私たちの誓い。だから、残さずいただきます。

食べる。食べる。食べる。食べる。食べる。

ひたすら食べる。

今は何も考えず、無心で食べ続ける!

食べる。食べる。食べる。食べる。食べる。

 

《条件を満たしました。称号〈悪食〉を獲得しました》

《称号〈悪食〉の効果により、〈毒耐性Lv 1〉〈腐蝕耐性Lv 1〉を獲得しました》

《〈毒耐性Lv 1〉が〈毒耐性Lv 7〉に統合されました》

 

このホームでのやり残しはない。

蛇様!ありがとう!

というわけで、お世話になったこのホームをそのままに私たちは当てのない旅に出発。

さらばだ!

私たちは、ダンジョンの出口を求めて歩きだす。

 

 

 

 

 

出口に行くどころか、今、私たちは縦穴を自由落下をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




蜘蛛娘:[白織]・Lv 1
種族:蜘蛛姫(スモールタラテクト)
性別:雌
スキルポイント:0

風龍娘:[空丹]・Lv 1
種族:地龍姫→風龍姫
性別:雌
スキルポイント:96400




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3 蜘蛛娘・下層探索と物語・シュン 1と幕間

レベルアップで入手できるスキルポイントは、
オリジナルです。




HPの残りを確認する。

緑色のバーが絶望的なまでに短くなっている様が見える。

かろうじて生きている。かろうじて生きているだけ。

ここからどうやって生き残ればいいのか。

わからない。

どうしてこうなった?

 

 

進化しても私は相変わらず奇襲だよりの戦いをしていた。

レベル1からレベル2へは比較的すぐに上がった。

どうやらレベルアップに必要な経験値は累計ではないらしい。

私のスキルポイントはいつの間にか200も貯まっていたようで、2つのスキルを取得できた。

1つは「操糸」。

その名のとおり糸を操るスキルだ。

2つ目、奇襲だよりな私にとって、索敵は重要な意味を持つ。だから、手に入れた「探知」というスキル。

発動させると

とんでもない頭痛に襲われた。この状況、私が初めて鑑定を使った時と同じ。情報量に耐えられないのだ。

 

空ちゃんは転生ボーナスでスキルポイントは、100000あった。今は、96600。

 

《熟練度が一定に達しました。〈鑑定Lv 6〉になりました》

 

私と空ちゃんの鑑定が上がった。

ドキドキしながら自分の鑑定をする。

 

〈蜘蛛娘:スモールタラテクト:[白織]・Lv 2

ステータス

HP:36/36(緑)

MP:36/36(青)

SP:36/36(黄)

SP:34/36(赤)

平均攻撃能力:19

平均防御能力:19

平均魔法能力:18

平均抵抗能力:18

平均速度能力:348

 

.....な....ん....だ.....と....!?

え?ええ?えええ!?

貴様誰だ!?私の知っている鑑定さんではないな!?私の後に、空ちゃんが鑑定をし始める。

 

〈風龍娘:[空丹]・Lv 2

ステータス

HP:150/150(緑)

MP:150/150(青)

SP:150/150(黄)

SP:150/150(赤)

平均攻撃能力:250(雷龍娘)

平均防御能力:700(地龍娘)

平均魔法能力:250(光龍娘)

平均抵抗能力:250(水龍娘)

平均速度能力:900(風龍娘)

 

空ちゃんの鑑定さんもいつもの鑑定さんではないらしい。

私たちの知っている鑑定さんはもっと残念感溢れる(アフレル)ちょっとダメな娘だったはずだ!

断じて貴様のようないかにも仕事ができそうなクールビューティーではない!

本物の鑑定さんはどこに行った!?こうなってくると、他の魔物と比較したくなってくるね。

そうして魔物を探して、ようやく鼠っぽい魔物を2匹発見。よし、早速鑑定。

 

〈エルローグレイム Lv 2 ステータスの鑑定に失敗したした〉

 

私がいつも通り、ススススス。バサッ!グールグール。2匹を捕獲。

私と空ちゃんで頂きます。ガブッ!ガブッ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒牙Lv 7〉になりました》

 

おおう。毒牙キタコレー!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍牙Lv 7〉になりました》

 

空ちゃんのスキルも上がったみたいだ。

そろそろ今日の探索は打ち切っておこう。

その場で簡易ホームを製作。

獲物は寝起きに食べる。

というわけで、今日は後寝るだけ。空ちゃんは毎朝警戒してくれているので、先にお休み。私はというと、

にょろーん。うねうね。にゅーん。操糸の練習。

操糸の練習をしてみてわかった。Lvが低い分、戦闘には役に立ちそうにない。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈操糸Lv 2〉になりました》

 

言ってるそばからレベルアップキタコレー!

にょろろーん。うねうねうね。にゅーううん。

レベルが上がってちょっと動きが良くなった。

MPもまだまだ余裕があるし、ギリギリまで熟練度稼ぎをしよう。

 

 

ふあー。あー、よく寝た。

結局昨日はMPが切れる寸前まで粘って、操糸のレベルを3まで引き上げた。

ひと晩寝てMPは完全回復している。

起きて早々操糸の練習を行う。MPが切れそうになるギリギリの時。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈操糸Lv 4〉になりました》

 

よしよし。順調順調。

まだ戦闘では流石に使えないけど、簡易ホームの中で、防護服を作っている。

私が操糸を鍛えてる間に、空ちゃんはスキルを上げていっていた。耳を澄ませて聞いていると、

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈土魔法Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈土耐性Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈風魔法Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈風耐性Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈水魔法Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈水耐性Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈雷魔法Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈雷耐性Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈光魔法Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈光耐性Lv 9〉になりました》

 

属性魔法とその耐性がLv 9になり、あと1上がると、カウンターストップする。

今日の朝ご飯は、昨日捕まえた鼠。

 

「「いただきます」」ガブッ!!

 

........まずい。

気分を切り替えて、私たちは迷宮探索。

調子良く迷宮を進んでいると、嫌な予感がする。

 

(白ちゃん!私、今、寒気が走ったの)

(私も今、寒気が走った。空ちゃん)

(私たちの後ろの方から、近づいてくる。振り返っていい?白ちゃん)

(空ちゃん。一緒に振り返ろうか)

 

いっせーのーでー。

私たちが振り返ると、

真っ直ぐに伸びた道、その先から、冒険者風の格好をした男たちが追ってきていた。

やばい。人間だ!

しかも、私たちのことをロックオンしている!

 

〈ゴルドー Lv 29 人族 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈バードン Lv 27 人族 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈オンジン Lv 24 人族 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈ジョリア・ジュストー Lv 27 人族 ステータスの鑑定に失敗したした〉

〈ガイクン Lv 22 人族 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈レキン Lv 23 人族 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

やれるか、ボケー!?

なんだレベル29って!?

走る!

あ、分かれ道。

右と、左。ここは右に進、も、うん?

チラッと左の通路の先を見る。

 

〈エルローバラドラード Lv 5 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

この前の蛇よりレベル低いけど、巣を張っていない遭遇戦で勝てるわけないでしょ!?

前方にいる2匹の蛇、後方の人間!?

しかも両方とも私たちのことを見ている。確実にロックオンされているー!?

逃げる!

右の通路に逃げる!

しかもなんでこのタイミングで2匹の蛇と人間が追っかけてきているのさ!?

あわわわわわ!!

後ろからすんごい追いかけてきている音がするー!?

逃げる!!なんで私たちのスピードについてこられるのよー!?私たちのスピード300越えよ!?

それについてくるってどんだけよ!?

ゲッ!?前方に別の魔物!?

 

〈エルローランダネル Lv 5 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 5 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 4 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 4 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 3 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 3 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

えええ!?こんな時によりにもよって1対3に持ち込むため、6匹連れだって!?

私は走るスピードをこのままに、壁を登る!

ぬおおおおぉぉぉぉ!やった!やってやった!

壁走り成功!

3匹の魔物を越える!

空ちゃんは防御力と速度が人間と魔物を寄せ付けない弾丸の如く、その空間を越える!

背後でものすごい音が聞こえる!魔物に阻まれた人間!人間に阻まれた魔物!あなたたちのことは忘れないよ。

ふはははは!

6匹の魔物が生け贄なってくれている。

せめて冥福(メイフク)を祈っ......あれ?

先の道が、ない?

わわわ!まずいまずい!私はスピードがつきすぎて急に止まれない!

あ、あ、ちょ、あー!?

落ちるー!?と、思いきや、空ちゃんが私を掴んで免れたと思った。が、結局は落下していく。

ゆっくりと、落ちている!

私たちが自由落下している中、不穏な音が!?

 

〈フィンジゴアット Lv 4 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈フィンジゴアット Lv 4 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈フィンジゴアット Lv 5 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈フィンジゴアット Lv 5 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

蜂だった。

1度だけ見たことがある、巨大な蜂の魔物。

空ちゃんの〈風魔法 包風(ホウフウ)〉を使い、風で包んで〈雷魔法 包雷(ホウライ)〉で私たちの周りを雷で包み自由落下していく。

私たちは包風が雷を護ってくれているので、痺れることはない。

その間、巨大蜂が襲ってくるが、次々に痺れて落ちていく。

 

 

 

私たちの自由落下が終了。

私たちが周りを見渡すと巨大蜂が沢山。

自由落下中に攻撃してきた巨大蜂を頂く。

ガブッ!ムシャムシャ!モグモグ!ゴクン!

この場所から移動しようと振り返ると、

 

〈エルローバラドラード Lv 5 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

蛇が何かに気づいたのか、近寄ってくる。が、向こうは私たちがいる場所はわからないみたいなので、壁側により息を殺して、過ぎ去るのを待っていると

凄まじい(スサマジイ)速度で何かが蛇の体を引き裂いた。

あの蛇が、まるで紙切れのように、簡単に細切れにされていた。

頑健な(ウロコ)に守られた、あの蛇が。反応さえ許されずに。

 

〈地龍アラバ Lv 31 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

それは、悠然とそこにいた。

龍という名前とは裏腹に、そのフォルムは狼に近い。大地を踏みしめる四肢。

長く伸びた尾。

翼はない。

そこには、威風堂々たる龍の姿があった。

私たちは、目を覆い現実逃避していた。

地龍アラバは、バラバラになった蛇を1つづつ咀嚼(ソシャク)していく。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈隠密Lv 2〉になりました》

 

地龍は蛇を咀嚼し終わると、蜂には目もくれずに立ち去っていった。

 

(白ちゃん!白ちゃん!)

(空ちゃん、どうしたの?)

(この縦穴に住み着いている蜂を倒してもいいかな?)

(今の私が、蜂を倒せるイメージがわかないから、空ちゃんが倒してもいいよ)

(ありがとう。白ちゃん)

 

私もいつまでも、白ちゃんのお荷物ではいられないから、この縦穴に巣食う蜂の大群を相手にする。

私がどのように攻撃するかを考えていると、蜂の1小隊から攻撃を受けた。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 3〉になりました》

 

あの蜂は、白ちゃんを警戒している。私なんて眼中にないみたい。それを私に向けさせる。

まず、〈水魔法 包水(ホウスイ)を放っていく。シャボン玉に似せたそれが蜂を包んで、そこへ〈雷魔法 細雷(サイライ)〉を放つと、シャボン玉に包まれた偵察にきていた蜂が地面に落ちてくる。その異変に気づいた偵察隊のリーダーが知らせにはしる。

次の部隊が来るまでに地面に倒れている蜂たちを頂いて待っていよう。

ムシャムシャムシャムシャムシャ♪

 

《経験値が一定に達しました。風龍娘がLv 3になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈恐怖耐性Lv 1〉を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。風龍娘がLv 4になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍鱗Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈瞬発Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈持久Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈命中Lv 1〉を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。風龍娘がLv 5になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈HP自動回復Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈魔量Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈気絶耐性Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈生命Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍鱗Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

地面に倒れている蜂たちを食べ終わる頃に、大量の蜂たちが群がってきた。

私は白ちゃんに被害が及ばないように空中へと飛び立つ。

白ちゃんに攻撃が及ばないかを確認するために、下を覗いていると、蜂の1中隊から攻撃をされた。

〈光魔法 散光(サンコウ)〉を開始の合図にして、戦いが荒れていく。

私の体は地龍娘の時は、孵化したてだからか、進化するまで名の通り地面に前足と後ろ足は地につけていた。

進化をして風龍娘になり、その体は日本でいう四神(シシン)青龍(セイリュウ)になっていた。属性は風。次の属性は水かな?

次に口を開き〈雷魔法 咆雷(ホウライ)〉を迸らせる(ホトバシラセル)

邪魔な蜂たちを撃ち落として、縦穴を昇っていく。

撃ち落とされて虫の息の蜂を〈土魔法 針土(シンド)〉で止めをさす。

 

《経験値が一定に達しました。風龍娘がLv 6〉になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈強力Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈堅固Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍鱗Lv 4〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。風龍娘がLv 7になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈念話Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍牙Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 1〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈視覚領域拡張Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍翼Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍鱗Lv 6〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。風龍娘がLv 8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈土魔法Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈土魔法〉からスキル〈大地魔法Lv 1〉が派生しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈土耐性Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈風魔法Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈風魔法〉からスキル〈旋風魔法Lv 1〉が派生しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈風耐性Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈水魔法Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈水魔法〉からスキル〈水流魔法Lv 1〉が派生しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈水耐性Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈雷魔法Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈雷魔法〉からスキル〈雷鳴魔法Lv 1〉が派生しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈雷耐性Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈光魔法Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈光魔法〉からスキル〈閃光魔法Lv 1〉が派生しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈光耐性Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍鱗Lv 7〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。風龍娘がLv 9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈恐怖耐性Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈瞬発Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈隠密Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈持久Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍鱗Lv 9〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

昇っていくにつれて、蜂の巣が巨大だとわかる。

その巣から女王蜂が配下を周りに従わせて、堂々としたご登場。と同時に配下が迫ってきた。

その配下を軽くあしらって、口を開いて止めに特大の〈光魔法 咆光(ホウコウ)〉を解き放つ。

蜂の巣の破壊に成功。撃ち倒した女王蜂を筆頭に配下の蜂たちも地面に落ちていく。

 

《経験値が一定に達しました。風龍娘がLv 10〉になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 9〉が〈苦痛無効〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈苦痛無効〉からスキル〈痛覚軽減Lv 1〉が派生しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈HP自動回復Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈魔量Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈生命Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍鱗Lv 10〉になりました》

《スキルポイントを使い、スキル〈炎魔法Lv 1〉を獲得しました》

《スキルポイントを使い、スキル〈炎耐性Lv 1〉を獲得しました》

《スキルポイントを使い、スキル〈闇魔法Lv 1〉を獲得しました》

《スキルポイントを使い、スキル〈闇耐性Lv 1〉を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《条件を満たしました。称号〈無慈悲〉を獲得しました》

《称号〈無慈悲〉の効果により、スキル〈外道魔法Lv 1〉〈外道耐性Lv 1〉を獲得しました》

 

私は、白ちゃんが待っている地面に降りる。そして、女王蜂を初め配下の蜂たちを頂いていく。

蜂たちを食べ終わる頃に。

 

《条件を満たしました。称号〈魔物の殺戮者(サツリクシャ)を獲得しました》

《称号〈魔物の殺戮者〉の効果により、スキル〈剛力Lv 1〉〈堅牢(ケンロウ)Lv 1〉を獲得しました》

《〈強力Lv 3〉が〈剛力Lv 1〉に統合されました》

《〈堅固Lv 6〉が〈堅牢Lv 1〉に統合されました》

《条件を満たしました。水龍娘に進化可能です》

《水龍娘に進化しますか?YES/NO》

 

もちろん、YES。

 

《進化が完了しました》

《水龍娘になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

《種族:水龍姫(スイリュウキ)になり、スキル〈水速(スイソク)Lv 1〉を取得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

私が進化から解放されると、その姿は日本にいた頃に読んでいた本にある四神の青龍だった。

 

 

私は、空ちゃんの進化を見届けて、一緒にこの場から去ることにした。

地龍アラバが去っていった方向とは逆の通路に向かっていく。私と空ちゃん。

 

 

 

私と空ちゃんは、地龍アラバから逃れるように、あの縦穴から離れて数週間はたっただろうか。

恐怖を覚えたあの縦穴に戻ってくると、そこには、また、蜂の集団が縄張りにしていた。

問題は、このあとどうするかだ。

正直、地龍アラバと違う通路を数週間さ迷って、今は、元の縦穴に戻ってきた。

あの地龍みたいな化物が、他にもいるかもしれないと考えると、どうあっても私の生き残る目はない。

戦っても勝ち目がない。逃げることもできない。

本当に、目をつけられたらその時点でどうしようもなくなる。

空ちゃんが進化したのだから、次は、私の番だね。

方針が決まったところで、出し惜しみなしで。この場所に第3のマイホームをここに作る。

そして、できれば蜂とかの弱い魔物を引き寄せて仕留めていきたい。

 

初日は必要最低限の巣を作って寝た。

水龍娘・空ちゃんに警戒してもらい、蜂を倒す拠点を構築していく。

 

2日目は巣の拡張に1日を費やした。

何回も蜂が近くまで来るが、空ちゃんが威嚇してくれたので、作業は捗る(ハカドル)

食事は大事なので、合間(アイマ)合間(アイマ)に蜂を捕獲しつつ、食べてスタミナが切れないように。

縦穴に落ちて空ちゃんが守る前に、蜂の攻撃を受けていたらしい。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛耐性Lv 7〉になりました》

 

1日が終わる頃には〈苦痛耐性Lv 8〉まで上がっていた。

 

3日目。

あの蜂たちは、6匹で1つの隊を形成しているらしい。その隊にはリーダーがある。

 

〈ハイフィンジゴアット Lv 1 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

フィンジゴアットの上位種、進化した個体。

進化したら隊のリーダーになれるのだろう。

まあ、それでも私の網を突破できるとは思わない。

隊は一塊(ヒトカタマリ)になって行動しているみたいだ。

私は蜂の様子をじっと観察し続けた。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈苦痛無効〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈苦痛無効〉からスキル〈痛覚軽減Lv 1〉が派生しました》

 

〈苦痛耐性〉がいつの間にかLv 9になっていて、ついには、カウンターストップして、〈痛覚軽減〉に派生した。

空ちゃんも〈苦痛耐性〉がカウンターストップして、〈痛覚軽減〉を手に入れていた。

私と空ちゃんは、これにておやすみ。

 

 

 

4日目。

空ちゃんは進化しているので、今日は私1人でこの蜂の巣と蜂の大群を相手にする。

狙うのははぐれの蜂だ。隊を狙うのはリスクが高い。

相手が複数だと、思わぬ事態が起きることもあり得なくはない。

その点、はぐれはやり易い。

昨日観察し続けたとこら、隊では絶対に入っていかないような、狭い横穴に突っ込んでいる個体もいた。

もっとも、あの個体が私が張っている巣の近くまで飛んでくる。

私は昨考えついた新兵器を取り出す。

玉のように固めた粘着糸を先端に取り付けた糸、名付けてクモーニングスター!

ふふふ。これを腕力プラス操糸の力で空中に居る蜂にぶつけるのだ。

十中八九当たらない。

けど、それでいい。

向こうに私が敵だと認識させるのが目的。

あとは向こうの方から勝手に突っ込んできてくれる。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈痛覚軽減Lv 3〉になりました》

 

待っている最中に痛覚軽減のスキルレベルが上がった。

そしてチャンスが訪れた。はぐれの1匹がこっちに向かってくる。

クモーニングスターをブンブン振り回す。

集中集中。よーく狙って、そこだ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈集中Lv 1〉を獲得しました》

 

当たるとは思わなかった。ぶん投げたクモーニングスターは、見事、蜂の体を捕らえた。

すかさず操糸で蜂の体に糸が巻き付いていく。

そのまま暴れる蜂を空ちゃんが待っている巣の中にご案内。毒牙(ドクガ)の餌食にする。

この巣は、空ちゃんの〈龍鱗Lv10〉が護ってくれている。

 

 

 

今は、もうすぐ蜂の主領域に侵入手前。

ここからは、領空侵犯。

今のところ、この縦穴の底には蜂以外の魔物は入ってきていない。

1番初めの蛇と地龍。

 

 

まずは、反対側の岩と壁の間を糸で塞ぐ(フサグ)

そして、此方の岩の頂点から反対側の壁に向かって、主領域にかからないよう、斜め上に糸を取り付ける。

その糸を中心に岩と壁を繋げて(ツナゲテ)いく。

蜂を食べてスタミナ回復させつつ、作業を進めていき、残りの蜂を食べきった時点でこの日の作業を中断し眠りにつく。

空ちゃんは、地龍がいた層を警戒しながら寝ていた。

 

 

 

5日目。

今までも苦痛無効のおかげで動くのには問題はなかったけど、やっぱり気分的に痛みがあるのとないのじゃ大違い。

気分的にもだいぶ上向きに、作業は順調。

その途中で、はぐれが近くまで来た。

はぐれにちょっかいをかけて、隊が反応するかどうか。

隊が反応しても、空ちゃんの〈龍鱗〉が護ってくれている。

反応しなかったら、そのままゴー。

クモーニングスターを振り回す。

よーく狙いを定めて、ここだ!

あ、当たった。

隊は、いたいた。ふむ。動きなし。はぐれを襲っても逆襲に来ることはない。

捕らえた蜂をホクホク顔で回収。毒牙で止め(トドメ)を刺した。

もう何匹目かにはぐれを狩った時、

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLv 3になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈強力Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈堅固Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

待ちに待ったレベルアップの瞬間。

背中に開いた大穴が、なんとも表現できないような感覚で塞がっていく。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈HP自動回復Lv 1〉を獲得しました》

 

え?マジで?

おおう。これは予想外だわ。

はぐれ狩りは順調。

クモーニングスターの遠距離攻撃は、百発百中。

それに、今回のレベルアップでもスキルが3つも上がった。

蜘蛛糸Lv 8。操糸Lv 5。

痛覚軽減Lv 5まで上がった。

 

おかげでLv 5だから、痛みが和らぐ。

 

〈蜘蛛娘:スモールタラテクト:[白織]・Lv 3〉

ステータス

HP:38/38(緑)

MP:38/38(青)

SP:38/38(黄)

SP:38/38(赤)

平均攻撃能力:21

平均防御能力:21

平均魔法能力:19

平均抵抗能力:19

平均速度能力:369

 

念願のレベルアップで全回復。

これからは適当にはぐれを狩って、スタミナを確保しつつ巣をドンドン伸ばしていこう。

上に上にと伸ばしていく巣。どうしても上に行けば行くほど作るのが難しくなっていく。

いつまた地龍がフラッとやってくるかわかったもんじゃない。

そうならないように、今は巣作りを頑張ろう。

 

 

ついにこの時が来た!

 

〈フィンジゴアット Lv 6 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈フィンジゴアット Lv 4 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈フィンジゴアット Lv 5 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈フィンジゴアット Lv 5 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈ハイフィンジゴアット Lv 1 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

私の目の前の上空には蜂の小隊の1つが飛んでいる。とはいえ、まだ1隊。

空ちゃんは、

クモーニングスターを構える。

網目状に作られた巣。その隙間からクモーニングスターで蜂の小隊を狙える。

クモーニングスターを振り回す。投げる。的中。

網玉(アミタマ)解放!小隊を一網打尽!

巣の中へと回収。毒牙。ガブッ!いただきます。

 

 

その後も、5つもの蜂の小隊をクモーニングスターで、捕獲、そして回収、毒牙、ガブッ!いただきます。

おかげで過食Lv 3に上がっちゃった。

あんまりここでモタモタしていられない。

いつあの地龍がフラッと来るかわからない。

不意にとんでもない悪寒が走った。

 

(白ちゃん!白ちゃん!こちら、空。どうぞ)

(こちら、白。空ちゃんどうしたの?)

(とんでもない化物が現れた!どうぞ)

(この時が来てしまいましたか!地龍)

 

〈地龍アラバ Lv 31 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

恐れていた奴が、来た。

地龍がその口を開く。

轟音(ゴウオン)が響いた。

爆風が舞い上がった。

空ちゃんからの念話のおかげで、空ちゃんが避難している場所まで逃げる。

その後に、私の巣は一撃で半分以上が吹き飛んだ。

私と空ちゃんは、恐怖で震える体を押さえつける。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈恐怖耐性Lv 1〉を獲得しました》

 

震えが若干収まった。

それでも怖い。

体は正直だ。震える。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈隠密Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈恐怖耐性Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈隠密Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈恐怖耐性Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈HP自動回復Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈恐怖耐性Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈隠密Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈恐怖耐性Lv 5〉になりました》

 

どのくらいジッと身を隠していたのかはわからない。そこに、地龍はもういなかった。

私たちは、助かった。

 

 

 

生き残った。

そのことに喜びを噛み締める(カミシメル)。生きている。なんて素晴らしいことなんだ。

これからどうしよう?

空ちゃんの〈龍鱗〉で護られた巣は壊された。それはもう完膚(カンプ)なきまでに。

ブレスと思われる攻撃跡地を見る。

壁に巨大なクレーターが出来上がっていた。

はは。

なんでクレーターが壁にできるかな?

垂直の壁に、どうしてそんなもんができるかな?

本当に、これからどうしよう。

今回は運良く生き残れた。

地龍の動きは明らかに巣のことを煩わしいものとして認識していたと思う。

そうなると、巣は作れない。

もう私たちの心はボッキリ折られている。

地龍の逆鱗(ゲキリン)に触れるようなことを、したくない。

たとえそれが勘違いで大した意味もなく空ちゃんの〈龍鱗〉で護られた私の巣を壊しただけだったとしても。

か弱い私たち。もし相手にしなくてはならないとしても、今の私たちのレベルでは、瞬殺される。

私たちは、レベルアップが必須。

私たちは、決意を固める。

 

 

私たちが決意を新たに地龍とは反対側の道を進んでいる。

蟷螂が縦横無尽に動き回れる広さがある。

 

〈エルローグレシガード Lv 7 ステータスの鑑定に失敗〉

 

もう一度、私たちは鑑定を試みる。

 

〈エルロー大迷宮下層に生息する蟷螂型の魔物〉

 

あ、蜂の1匹が鎌に両断された。

もう一度、鑑定を試みる。

 

〈エルロー大迷宮:エルロー大迷宮の中層と最下層の間に位置するエリア。強力な魔物が多数生息〉

 

(白ちゃん!白ちゃん!下層だって)

(空ちゃん、強力な魔物が多数。そして、この下層より、下があるって)

(これは、一刻も早くこの下層を抜け出さないとね。白ちゃん)

 

ここは、世界最大の迷宮の下層。

で、私たちがいる下層(ココ)より更に下層は、私たちが入ってはいけないエリア。

 

(白ちゃん、あれだね。私たちが出会ったエリア)

(私が冒険者から、美麗を助けたエリアね)

(彼処(アソコ)が上層だったんだね♪)

(その冒険者は、下位の地竜の卵も持っていたんだ)

(その中から、私を助けてくれてありがとう)

 

その時、

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈念話Lv 7〉になりました》

 

私の〈念話〉が上がった。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈鑑定Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈念話Lv 8〉になりました》

 

空ちゃんの〈鑑定〉と〈念話〉が上がった。

ダンジョンといえば下に行けば行くほど敵が強くなるものだし、今いる下層が強力な魔物が多い場所なら、想像もつく。

私たちが元いたエリアは上層だったんだね。

人間が踏み込んでくるようなエリアだし、地上に繋がっていたんでしょうね。出口も案外近くにあったかも知れないが、私たちは襲われないように、奥へ奥へと逃げていたし、通路が複雑だから私たちだけで出口に向かうこともできない。

下層から中層、そして上層へといかないといけない。

3匹の蜂を両断した蟷螂を、突如現れた巨大な蜘蛛の牙に、その体を噛みちぎられた。

 

〈グレータータラテクト Lv 18 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

おお。私の超進化形態だー。

 

〈グレータータラテクト:蜘蛛型の魔物タラテクト種の進化形態〉

 

おおう。私、進化し続けたらああなるのか。

生きていくの大変そう。

蟷螂が小さく見える。

とりあえず見つかる前にコソコソーっと、退散。あんなもん、勝てるわけないでしょーに。

この下層もヤバイ。

マジで私たちの生命線が隠密だより。

じっくりと獲物を見定めて行動しよう。

下手なことをして地龍クラスのヤバイやつ引き寄せるのも嫌だしね。

 

 

 

コソコソ移動。

他の魔物の乱闘を観戦しながら、巻き込まれないように逃げる。下層ヤバい。

巨大蜘蛛に、翼の生えたライオン、蛇の進化系と思われる大蛇。モンスターの宝庫。

ないわー。

私たちはそんな連中に見つからないように隠れながら移動、今のところ発見もされずになんとかやり過ごす。

簡易ホームを作って目立ってしまうので、空ちゃんの〈逆鱗〉で護ってもらい私たちは寝る。

この異世界は弱肉強食。

弱い魔物は何を食べているのか?

1つは、自分よりも弱い魔物。といっても、皆、毒持ちの魔物たち。

それが、平べったい黒い虫。

 

〈エルローゲーレイシュー Lv 3 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

そのタニシ虫は、下層にいっぱいいる。

私たちはスタミナが減っていたから、いっぱいいるタニシ虫をいただきます。

 

 

いくらスタミナが減っているからって、口にするのは最終手段。あれは、ありえないくらい不味かった(マズカッタ)

何故か腐食耐性が上がっていた。

気を取り直して移動再開。

この下層は上層と違って一本道。

迷わなくてすむけど、この道が最下層に繋がっていないと、信じたい。

きっと中層に繋がっている。

さてさて、周囲に危険種なし!

私の前に3匹、背中合わせで空ちゃん。空ちゃんの前にも3匹。

 

〈エルローランダネル Lv 8 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 7 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 7 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

空ちゃんの前にも、

 

〈エルローランダネル Lv 9 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 8 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈エルローランダネル Lv 8 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

さすが下層レベルが高い。

そしてこれが新兵器「ランチャーレテーレ」

これを魔物に投げる、そして、逃げられるより早く網状に変化して捕まえる。

え?それって、投網(トアミ)というのではと?その名前まんまだと私のネーミングセンスが問われる。誰も問わない?感心がないって?そんな事いうと、私、泣くよ泣いちゃうよ?そうなったら、空ちゃんに慰めてもらうんだからね♪

 

早速、魔物を捕まえる。そして、毒牙でガブッ。

 

《条件を満たしました。称号〈毒術師〉を獲得しました》

《称号〈毒術師〉の効果により、スキル〈毒合成Lv 1〉〈毒魔法Lv 1〉を獲得しました》

 

称号ゲットキター!毒っすか!毒っすよね!

それに、毒合成に毒魔法。

残りの2匹も、毒牙でガブッ!ガブッ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒牙Lv 8〉になりました》

 

お?おお?今日は毒日和ですか。

食べながら〈毒合成〉のことを考えていた。

使い方がわからないから、念じてみる。

 

〈毒合成メニュー〉〈弱毒〉〈蜘蛛毒Lv 8〉

〈毒合成メニュー:毒を合成する〉

〈弱毒:非常に弱い毒〉

〈蜘蛛毒Lv 8:蜘蛛が分泌する致死性の毒。Lv 8は非常に強力〉

 

ふむ。蜘蛛毒は元々の私の毒か。

で、多分だけど、毒合成Lv 1で作られるようになるのが、弱毒なのかな?

 

試しに弱毒を選択。

私の目の前に、毒々しい色をした水の玉が浮かび、落っこちて地面に水たまりを作った。一応鑑定。

 

〈弱毒の水たまり〉

 

うん。ちゃんと弱毒らしい。

使い方によっては、役に立つかも知れない。

うーん。ノーコストならいいのだが、MPが減っている。一気に微妙になってきた。

 

~~~転生前~~~

 

その日は、何の変哲もない日だった。学校に行って、友達と駄弁って、授業を受けて、家に帰ったらゲームして、飯食って風呂入って寝る。そんな、在り来たりな日になるはずだった。

 

俺はその日、眠い目をこすって学校に向かっていた。

前の日に夜遅くまでオンラインゲームで遊んでいたツケが来ていたのだ。

学校につき、欠伸を噛み殺しつつ教室に入る。

 

「はよー」

「おはよう」

「オッス。......どした?すんげー眠そうだけど」

 

笹島(ササジマ) 京也(キョウヤ)大島(オオシマ) 叶多(カナタ)に挨拶をする。

 

「おう、聞いて驚け。昨日ハゲさんと野良パーティー組んだ」

「マジで!?」

「おう、マジマジ。おかげでほぼ徹ゲーしちまった」

「うわー。マジかー。あれか?俺が落ちた後か?」

 

叶多は途中まで俺と一緒に遊んでいた。

 

「チクショウ。それならもうちょい粘っておけばよかった!」

 

叶多が抜けたからハゲさんと一緒になることができた。

 

「で、で。間近で見たハゲさんってどうだった?」

 

京也に聞かれて、

 

「あれは人間業じゃないわ。ベスベルウィッチの魔法を、前進しながら避けるとか信じられるか?」

「さすがハゲさん。韋駄天の二つ名は伊達じゃないね」

「いや、いくら素早さガン振りでも、腕がなきゃそんな芸当できねーだろ。やっぱ最後にものを言うのはこれだよ」

 

叶多が腕を叩きながら言う。

 

「あー。ゲームの世界に生まれ変わりてー」

「それいいな。今日終わったらレベル上げやるか?」

「いいよー」

「俺も賛成。なるべくキツイとこでトレーニングしようぜ!」

 

話がまとまったちょうどその時、チャイムが鳴った。

 

 

そして、古文の授業の時に、それは来た。

 

 

「はいはーい。注目ですよぉー?教科書37ページ1行目からぁー、そうですねぇー。授業中にスマホ覗いている漆原(シノハラ)ちゃんに訳してもらいましょう!」

「うえっ!?」

 

指名された漆原美麗(ミレイ)が素っ頓狂な声を上げつつスマホを隠そうとする。隣では夏目(ナツメ) 健吾(ケンゴ)が笑いを噛み殺し、さりげなく自分もスマホをいじっていた。

 

「他人事じゃないですよぉー、夏目くん。漆原ちゃんが答えられなかったら次は夏目くんの番ですからねぇー?」

 

夏目の手元にも気付いていた岡ちゃんこと岡崎(オカザキ) 香奈美(カナミ)先生の指摘に、控えめな笑いが起こり、笑われた夏目は顔を赤くしていた。

 

「はいはーい。静粛にぃー。漆原ちゃん答えをどうぞぉー」

 

結局指名された漆原さんも、次に指名された夏目も答えられずに、教室に笑いが起こった。

そこには、それはあった。それは、亀裂。

ちょうど教室の真ん中、その頭上で、何もないはずの空間に、今にも割れそうになる亀裂。

亀裂が盛大に割れる。それと同時に感じる凄まじい激痛。

そして、俺は、俺たちは、死んだ。

 

~~~シュン~~~

 

アナレイト王国にシュレイン・ザガン・アナレイトという名前の少年がいる。

その名前からもわかるように、王族だ。

側室の子供で、第4王子として生を受けた。

その少年には前世の記憶があった。

前世での名前は山田(ヤマダ) 俊輔(シュンスケ)

国王の呼びかけに応じて、

俺は言われた通りに、鑑定石に手を乗せる。

俺のステータスが表示された。

 

〈シュレイン・ザガン・アナレイト Lv 1 人族

ステータス

HP:35/35(緑)

MP:348/348(青)

SP:35/35(黄)

SP:35/35(赤)

平均攻撃能力:20

平均防御能力:20

平均魔法能力:314

平均抵抗能力:299

平均速度能力:20

スキル スキルポイント:100000 称号なし

「魔力感知Lv 8」「魔力操作Lv 8」「魔闘法Lv 6」「魔力付与Lv 5」「魔力撃Lv 3」「MP回復速度Lv 7」「MP消費緩和Lv 2」「剣の才能Lv 3」「「破壊強化Lv 2」「気闘法Lv2」「気力付与Lv 1」「集中Lv5」「命中Lv 1」「回避Lv 1」「視覚強化Lv 4」「聴覚強化Lv 7」「嗅覚強化Lv 2」「味覚強化Lv 1」「触覚強化Lv 1」「生命Lv 5」「「度量Lv 8」「瞬発Lv 5」「持久Lv 5」 「強力Lv 5」「強固Lv 5」「術師Lv 8」「護法Lv 7」「疾走Lv 5」「天の加護」「n%I=W」

ステータス鑑定の後、何かの卵を授かった。

その後、パーティー会場で貴族の方々との挨拶が執り行われた。

 

 

「お初にお目にかかります。アナバルド公爵家が長女、アルナティア・セリ・アナバルドと申します」

 

真っ赤に燃えるような髪に、気の強そうな顔が印象的な美少女だった。

俺の魔力感知が彼女の膨大な魔力を見抜いていた。

俺やスーとほぼ互角の量だった。

 

「初めまして。シュレイン・ザガン・アナレイトです。『よろしく』」

 

俺は確信を持って、最後の言葉を日本語で言った。

公爵令嬢の目が一瞬見開かれたあと、スッと細くなる。

 

「父上。この娘とお話ししてきていいですか?」

「うん?」

「ダメですか?」

「ううむ」

 

国王は俺と公爵とその後ろに控える貴族たちを見比べてから、口を開いた。

 

「構わん。あまり長い時間離れるでないぞ。少ししたら戻ってきなさい」

「はい。ありがとう!ございます」

 

商談などの仕事の話をすることもあるので、こういう個室が会場のすぐ近くに作られていた。

ここなら防音もしっかりしてるし、扉の前には衛兵が立っているので安全だ。

 

「ふう。ここならいいね」

 

俺は隠すことなく日本語でしゃべる。

 

「まさかとは思ったけど、本当に王子様が転生者だとはね」

 

そして、公爵令嬢も日本語で話す。

 

「あー、やべえ、自分以外の口から日本語聞くなんて超久しぶりだわ。ちょっと感動した」

 

この令嬢、結構口調(クチョウ)が軽い。

 

「で、聞きたいんだけど、平進(ヘイシン)高校ってとこに覚えは?」

「めっちゃある。やっぱ同じ高校からこっちの世界に転生してきたお仲間か」

 

この令嬢は俺と同じように、あの教室の謎の亀裂に巻き込まれてこっちの世界に転生した、元クラスメイトだったらしい。

 

「俺は山田 俊輔。そっちは?」

「ぶはっ!?ぶはははははは!ひっ、ふははは!おま、お前、俊かよ!俊が王子とか、くく、似合わねー!」

 

爆笑する令嬢。

 

「ま、まさか、お前、叶多か?」

「おう」

 

元男友達で、ゲーム仲間の叶多がまさかの令嬢。つい、口をついて、言葉が漏れた。

 

「か...可愛い...俺と付き合ってください!」

 

元男友達の令嬢が、

 

「お...お前、本気か?」

「ああ」

 

 

俺が元男友達・カティアに告白して、数日後。

俺とスーはそれをジッと見つめていた。

俺たちの視線の先には、1つの大きな卵があった。

1メートルくらいもある大きな卵だ。

そして、この卵は今まさに孵化の瞬間を迎えようとしていた。

 

「頑張れ」

 

スーがポツリと呟く(ツブヤク)

卵は薄くひび割れ、中の生物が必死になって殻を割ろうとしている。

ひびが入ったのが2日も前だから、ものすごい長期戦だ。

アナによると手を貸してはいけないらしい。自力で孵化しないと、丈夫な子にならないそうだ。

 

「あ!」

 

殻の1部が大きく割れ、中から手のようなものが飛び出す。

その手が振り回され、煩わしそうに殻を剥がして(ハガシテ)いく。

そして卵の中から現れたのは、黒い蜥蜴(トカゲ)のような魔物だった。

 

「可愛...くない」

「そう?俺は結構愛嬌(アイキョウ)があると思うけどな」

「おめでとうございます。やはり、地竜(チリュウ)の子供ですね」

アナが蜥蜴を見て告げる。

 

「スーがいらないならこの子は俺が世話するけど、いい?」

「兄様が欲しいものは全て兄様のものです」

 

蜥蜴をだきあげて、頭を撫で(ナデ)てみると、嬉しそうに体をこすりつけてきた。

 

「名前を決めないとな」

「よろしいでしょうか?」

 

アナが俺の手から蜥蜴を受け取る。

下半身の部分をまさぐる。すごい嫌そうに蜥蜴が身をよじるけど、がっちりホールドされていて逃げ出せないようだ。

 

「メスですね」

 

アナがそれを確認して俺に蜥蜴を返してくる。

 

「メスか。どんな名前がいいかな?」

メスなら綺麗(キレイ)な名前にしたい。

 

「よし、決めた」

 

いくつか候補入りうち、最後に残ったものにした。

 

「お前の名前はフェイルーン。フェイだ」

 

俺が前世で遊んでいたオンラインゲームで出てくる、フィールドの名前だ。

どこまでも続く砂漠のフィールド。

夜の砂漠は、ゲーム屈指の幻想スポット。

特に夜の景色は、砂漠の中にひっそりと存在する楽園。黒い外見はその夜をイメージさせ、地竜に名付けるにはちょうどいい気がした。

 

「よろしく、フェイ」

 

フェイは嬉しそうに。

 

「キュウ」

 

と鳴いた

 

 

 

あの告白から数日後。

カティア公爵令嬢からの返事が聞けると、応接室でそわそわしていた。

扉がノックされ、緊張した声で。

 

「ひゃいっ!?ど...どうぞ」

 

俺の返事のあとに、カティアが入ってくる。後ろには、スーがなぜかいる。

 

俺の向かい側のソファーにカティアとスーが座る。

それを見て、俺も座る。

 

「スーは、なぜここにいるの?」

 

と問いただす。

 

「兄様がカティアと2人っきりになるのを防ぐためです。私の兄様を誑かして」

「わたくしは、誑かしてなどいないですわ」

「本気で言っているのですか?その豊満なお胸をしておいて?兄様、私の胸だけでは、満足できませんか?」

「「どうですのよ」」

 

カティアとスーに問いただされている様子を見上げるフェイ。

俺は2人の責めを逃れるために、カティアとスーにキスをしてフェイだけしないのもおかしいのでキスをする。

カティアとスーは、顔を真っ赤にして大人しくなる。

俺は、カティアとスーと付き合うことになり、いつも寄り添っているフェイともなぜか付き合うことになった。

この世界では、複数の女性と付き合うのは、おかしな事ではないらしい。

 

今日、カティアが本来の目的。

カティアによると、スキルをたくさん持っていた方がいいらしい。

 

 

 

俺は、カティアとスーとフェイと一緒に4人でスキルレベル上げている。

 

 

次の日、ユリウス兄様と修行を楽しむ。

 

~~~待合室~~~

 

数日後、父上に呼び出された。

俺とカティアとスーとフェイの4人。

 

「もしかしてですけど、私たちの婚約のお話しじゃないでしょうか?」

「私は、その申し出をお受けしますよ♪兄様」

「わたくしも、その申し出受けますわ♪シュン」

「キュウキュウウウウ、キュキュウウウ♪キュウ」

 

フェイも負けじと、鳴いている。

待合室に1人の男性と、もう1人、小さな女の子が入室してきた。

 

「お初にお目にかかる。この度、エルフの親善大使としてこの国に厄介になることになった、ポティマス・ハァイフェナスという。2人を呼びつけたのは私だ。後の1人と1匹は呼んでいないのですがね?」

 

スーとフェイが俺たちの後ろに隠れる。

 

「ふむ。持っているな」

 

何か、居心地の悪い感覚とともに、ポティマスは目を細める。

 

「オカ、この2人は持っている。あとは君の領分だ」

「はいはーい。わかりましたよぉー」

「では私はこれで失礼する」

「ごくろうさまですぅー」残された俺とカティアとスーとフェイは呆然(ボウゼン)とするしかできない。

どうしたらいいのかわからずに、のこった小さな女の子に視線を向ける。

 

「ふむふむぅー。では自己紹介いたしますぅー。今の名前はフィリメス・ハァイフェナスですぅー。以後よろしくですぅー」

 

カティアと2人、顔を見合わせる。スーとフェイは関係ないらしい。

 

「先生自己紹介されたら自分も名乗るのが礼儀だと思うのですよぉー。そこらへんどうなんですぅー?」

「失礼しました。この国の第4王子、シュレイン・ザガン・アナレイトと申します」

「アナバルド公爵家が長女、アルナティア・セリ・アナバルドと申します」

 

女の子に促されて慌てて自己紹介をする。

 

「うんうん。王子様と公爵様ですかぁー。いいわぁー。萌える(モエル)ぅー」

 

俺はその言葉に固まる。

妙に癖のある喋り(シャベリ)方といい、その言動といい、知っている人物とかぶる。

 

「まさか、岡ちゃん!?」

「先生にちゃん付けはいけませんよぉー?けど正解ですぅー。なぜ、関係ない1人と1匹を連れてきたのですか?」

「誰ですか、兄様?」

「キュウウウ、キュウウウウウウ?」

「俺の彼女たちですから」

「か...彼女...たちですか」

「で?先生はなんでこの国に?」

「それは2人がいるって知ったからですよぉー。結構話題になっているのですよぉー?とんでもない天才がアナレイトに複数生まれたってぇー」

「わざわざ俺たちに合いに?」

「そうですよぉー」

 

スーとフェイには、小さい頃から、日本語を教えていたので、何となく、わかっている。

 

「まあ、それだけが目的じゃありませんけどねぇー

先生これでも先生でさからぁー。やっぱり生徒の安否くらいは確認しとくべきだって思うんですよぉー」

 

その志は立派だと思う。

 

「この世界は日本と違って危険ですからねぇ。保護できるなら早くしたほうがいいのですよぉー」

「それじゃあ、先生早く俺たちを保護しに?」

「いえいえー。2人は立場的にそうホイホイ連れて行っていいわけじゃありませんからねぇー。本人本人が希望する場合のみエルフの里にて保護してますぅー」

「ということは、もう何人かみつけているのですか?」

「はいー。エルフの里に11人。接触が成功したその他の生徒3人を合わせて6人ですぅー。あと2人ほどは所在の確認もできてますので、後で会いにいきますぅー」

「先生、俺たちのために、そこまでしてくださっていたんですね」

「先生としての務めですぅー。それに大体の生徒は人族としてみつかってますからぁー。言うほど大変ではありませんでしたねぇー」

「そうなんですね」

「まあー!積もる話もありますけどぉー、先生ももうすぐこの国の学校に入学しますぅー。その時に詳しい話をしまそょうー」

 

俺とスーカティアももうすぐその学校に通うことになる。

ペットの持ち込みも一応可能なので、フェイも連れていく予定だ。

新しい生活は、すぐそこまで迫っていた。

 

~~~幕間~~~

 

僕たち冒険者チームは迷宮で狩りをしていた。

冒険者が迷宮にこもる理由の大半はレベル上げのためだ。

特に、ここほどの大きな迷宮には固有種も多く、そんな魔物の素材は高値で取引されたりする。

レベルアップとそうした素材の回収、それが冒険者が潜る理由だ。

 

「おい。巣だ」

 

仲間の言葉に、俺は視線の先を確認する。

等間隔に並んだ幾何学模様を描いた糸が、蜘蛛の巣だ。

 

「巣を作っている個体がいるのか」

「ああ。焼き払うぞ」

 

タラテクトという魔物は弱い。

時たま巣を張る個体が存在する。この巣が危険極まりないのだ。

巣は簡単に炎上し、しばらく燃え続けていた。

 

「おいおい。奥の方まで燃えているぞ」

「相当でかい巣だな。まさかとは思うが、進化しているんじゃないだろうな?」

 

仲間のその言葉に、俺は嫌な予感を覚える。

タラテクト種は進化前なら雑魚だが、進化してしまうと最悪手がつけられなくなることもある。ましてや、巣を張る個体ならなおさらだ。

火が消え、巣の跡地となった場所を探索する。

 

「おいおい」

「まじかよ」

 

仲間たちの呻く(ウメク)ような声に、俺も思わず天を仰ぎ見る。天井しか見えない。

そこには、巨大な蛇の骨と、その(ウロコ)が散乱していた。

他にも大量の魔物の骨が。

 

「この巣の主の死体は?」

「いや、ないな」

「こっちにしおり糸と土魔法の痕跡がある。どうやら巣を出て行ったようだな」

「どうする?」

「追うぞ」

 

こいつを野放しにしておくと、やばい。

進化しているとしたら勝てないかもしれないが、その時は全力で逃げてこのことを外に報告だ。

 

 

しおり糸を辿って(タドッテ)いたら、魔物たちとの戦闘になった。

 

「クソッ!?」

 

立ち塞がった(タチフサガッタ)エルローバラドラードとエルローランダネルを始末する。

目的のタラテクトを見つけたと思ったら、とんだ邪魔が入った。あともう1匹魔物を見つけた。

 

「どうする?」

「どうするもなにも、これ以上の追跡は無理だ。引き上げるしかない」

「そうだな。帰って冒険者ギルドに報告だな」

 

仲間の言葉に頷く(ウナズク)

肝心のタラテクトともう1匹の魔物には逃げられてしまった。

 

 

あのサイズならまだ幼体のはずだ。もう1匹の魔物も幼体のはずだ。

だというのに、とんでもない素早さで俺たちを撒いて(マイテ)見せた。2体の魔物。

 

 

~~~幕間・執務室~~~

 

「どうぞ。ブーディエ地方の地酒です」

「おお。それは飲んだことがないな。どんな味がするのか、楽しみだ」

「父上、仕事は大丈夫なんですか?」

「何、問題ない。問題があればその分寝る時間を削ればいいだけの話だ」

 

父の返答に苦笑するしかない。

 

「それに、サイリスの仕事ぶりも板についてきたからな。万が一私に何かあったとしても、国は安泰だろうよ」

「父上、兄上が優秀なのは認めますが、まだまだこの国には父上が必要です。そういう不吉なことは言わないでください」

 

すまんすまんと、軽く謝る父上。

父上は隠し置いてあるグラスを2つ持ってきて、それぞれにお酒を注いでいく。

 

「ふむ。独特な香りだな」

「ええ。僕もその香りが気に入って購入しました。きっとお気に召しますよ」

「うむ。のどごしが柔らかいな。これならいくらでも飲めそうだ」

「地元では女性にも人気なのだとか。果物等と、一緒に飲むとより風味が増すようです。そういうわけで、これもどうぞ」

 

用意しておいた果物を差し出す。それを口に運び。

 

「うまい。普段強い酒ばかり飲んでいるが、たまにはこういうのも悪くないな」

「でしょう?」

 

ふと、昼のことを思い出して口元が緩んだ。

 

「どうした?」

「いえ、昼にシュンとスーの様子を見てきたのですけどね。その時のことを思い出していました」

 

勇者である僕ですら呆れる(アキレル)ほどの才能を見せつける2人。弟と妹。

 

「ふむ。ユリウスの目から見て、あの2人はどうだ?」

恐ろしい程の才能の持ち主ですよ。特にシュンの方は。もう少し早く生まれていれば、勇者の称号を持ったのは僕じゃなくシュンの方だったかもしれません」

「何を1人でうんうん言っておるのだ?」

「いえね、兄の威厳を保つのも簡単じゃないなと」

 

シュンもスーに対して兄であり、彼氏でもあるから、威厳を保つのは、俺以上に大変だろう。

 

「父上。僕は勇者であることに誇りを持っています。大体からして、僕から勇者であることをとったら何も残らないじゃないですか」

「そんなことはないぞ」

「いえいえ。兄上のように政治に関われるような教養もないし、レストンのように己の我を突き通すような信念もありませんし、姉上のようによそに嫁ぐこともできません。僕にできることといえば、勇者として民のため、人族のために剣を振るしかできません。だから、父上が気にすることではありませんよ。僕は僕のために、僕にできることを精一杯しているだけですから」

「レストンはあれはただ好き勝手に生きているだけとも言うがな」

「違いないですね」

 

父上と2人、笑みを漏らす。

父上、僕から見ればあなたは十分偉大です。

だから、その父上の助けになるためにも、僕は勇者として働き続けます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




蜘蛛娘:[白織]・Lv 3
種族:蜘蛛姫(スモールタラテクト)
性別:雌
スキルポイント:5000

水龍娘:[空丹]・Lv 1
種族:地龍姫→風龍姫→水龍姫
性別:雌
スキルポイント:98000


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4 蜘蛛娘・下層悲走と中層入口と終幕

夜目、龍眼、龍翼、龍鱗、逆鱗、
龍結界、神龍結界、の解釈はライトノベルと違います

ステータス
HP・MP・SPと平均攻撃能力・平均防御能力・
平均魔法能力・平均抵抗能力・平均速度能力のUPと
あと、MEWスキルだけ書きます

傲慢を獲得する順番と
スキルポイント1000を支払い
スキル〈火耐性〉を取得でき
ライトノベルと違います




下層の危険な一本道を進み続けて、ようやく、ようやくたどりつきました!分かれ道!道?

うん。

私の目の前にはだだっ広い空間が広がっている。

あれた、これは道が分かれているっていうか、道が広がっているっていうか、道がなくなったっていうか。

どのくらい広いかというと、暗視で暗闇なんてものともしないはずの私たちの目が、先を見通せないくらい、かな。

えー。これどこに進めばいいわけ?

今までの一本道なら迷いようがないけれど、こわな何もない広い空間、困る。

たとえて言うなら道のない砂漠に突っ込んでいくような感じ?

どこに向かえばいいかもわかんないっていうのが、なかなかに恐ろしいよね。

こう、確か風景がかわりばえしないところをずっと歩き続けていると、無意識のうちに大きく弧を描いて(エガイテ)進んじゃって、最終的に元の場所に戻ってきちゃうって言うよね。

流石に蜘蛛と龍の身でそれはないと思うけれど、本当にどっちに進むべきかも全くわからない。

目印になりそうなものといえば、ところどこらにたっている岩の柱くらい。

あと、タニシ虫はそこらじゅうにいるから、最悪の場合でも飢えることはなさそうだけれど、迷っても迷ったことに気づけなさそう。

まあ、ここは迷宮攻略の基本に立ち返って、壁伝いに進んでいきましょう。

今までどおり、右の壁伝いに進む。

しかし、広いね。横の広がりがすごい。それに縦にも広い。

岩の柱に支えられた天井は、高さ100メートルくらいはありそうだ。

見上げるような高さ。

おかげでダンジョン内だというのに、閉塞感(ヘイソクカン)というものがない、

なんというか、岩だらけだっていうのに、大自然の雄大さがある。

 

(シロ)ちゃん白ちゃん、この雄大さに癒されているところ悪いんだけれど、嫌なものを見つけてしまったの」

 

(クゥ)ちゃんが言うように、私もこの先を目を凝らして(コラシテ)視てみる。

 

〈バグラグラッチ Lv 14 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

その巨大な魔物がのっそりと現れる。

なんだろう、全体的な雰囲気(フンイキ)はナマケモノっぽい感じの、ちょっと鈍そうな感じなのに、その口がその雰囲気をぶち壊している。

ギザギザの牙が無数に飛び出した、(ワニ)みたいな巨大な口だ。

猿っぽい胴体にそんな凶悪な口が付いていると、非常にアンバランスかつ、凶悪に見える。

癒されねー。

そうね。ここダンジョン。大自然と違う。ここは危険。

というわけで、見つからないように気配を殺しつつ逃走開始。

 

 

 

なんとか見つからずに済んだ。

でさあ、このだだっ広いエリア、まさか最下層じゃないよね?

一本道は真っ直ぐで、あんまり下がってるって感覚はなかったけれど、もしかしたら気がつかないくらいの緩やかな傾斜だったのかもしれない。

そう考えると、ねえ?

 

「白ちゃん、ここがどこか考える前に、この先から、嫌な気配を感じるの」

「この先から?」

 

なんだ、これは。

 

〈バグラグラッチ Lv 8 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈バグラグラッチ Lv 4 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈バグラグラッチ Lv 11 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

こんなのがいるのが中層なわけなくね?

私たちは無に、なる。

私たちはとりあえず、気配を消すのだ。そのままコソっと抜けるのだー。

十分距離を取ってから、魔物の鑑定を忘れていたので、してみる。

 

〈バグラグラッチ:巨大な(アゴ)を持つ奇形の魔物。群れで行動し、集団で獲物に襲いかかる〉

 

あーはー。

 

(クゥ)ちゃん、あいつの鑑定してみたかな?」

「したした。(シロ)ちゃんもした?アレは反則だよね。あんなに強そうなのに群れで行動とか」

「それね。あと、集団で獲物に襲いかかるって。なんなのよ、この層。ないわー」

 

ここが中層説はなかったことにしよう。こんなん中層っていう難易度じゃねーよ!

はあ、本当に最下層じゃないことを祈るばっかりだわ。

 

 

 

壁際をコソコソ移動。

この前、1人3匹の魔物を食べてからというもの、また赤のスタミナゲージが減らなくなった。

うーん?確かにちょっと量は多かったから、1匹目を食べ終わった時点でほぼマックスまで回復してたけれど......。

考えられる原因は、過食のスキルとか?

食べ過ぎた分、余分にストックできるとか?

確かにこの現象、過食のスキルを取ったあとから起きているんだよねー。

そう考えると、あながち的外れな想像じゃなさそう。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈鑑定Lv 7〉になりました》

 

お?おお?おおお!?鑑定キタ!鑑定さんキタ!これで勝つ!

前回の躍進ぶりを考えるとすごい期待したゃうよ?

いいの?これでやっぱりがっかりー、とか許されないよ?

私のこの上げに上げたハードルを、ちゃんと飛び越えてくれるの?

くぐっちゃダメだからね?

さあ、鑑定結果は如何に(イカニ)!?

 

〈蜘蛛娘:スモールタラテクト:[白織]・Lv 3

ステータス

HP:38/38(緑)

MP:38/38(青)

SP:38/38(黄)

SP:38/38(赤)

平均攻撃能力:21

平均防御能力:21

平均魔法能力:19

平均抵抗能力:19

平均速度能力:369

スキル

「鑑定Lv 7」「念話Lv 10」「毒牙Lv 8」「蜘蛛糸Lv 8」「外道魔法Lv 2」「隠密Lv 5」「暗視Lv 10」「操糸Lv 6」「粘糸Lv 6」「探知Lv 3」「毒合成Lv 2」「影魔法Lv 2」「毒魔法Lv 2」「毒耐性Lv 8」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 6」「酸耐性Lv 4」「麻痺耐性Lv 4」「腐蝕耐性Lv 4」「石化耐性Lv 3」「恐怖耐性Lv 7」「外道耐性Lv 2」「強力Lv 3」「堅固Lv 3」「過食Lv 3」「禁忌Lv 2」「視覚領域拡張Lv 3」「HP自動回復Lv 4」「韋駄天Lv 6」「n%I=W」

 

え?マジで?本当に?見間違いじゃない?

 

(クゥ)ちゃんも、鑑定してみて」

「やってみるよ、(シロ)ちゃん」

 

〈水龍娘:[空丹]・Lv 1

ステータス

HP:2340/2340(緑)

MP:2550/2550(青)

SP:2930/2930(黄)

SP:3210/3210(赤)

平均攻撃能力:3840(雷龍娘)

平均防御能力:4500(地龍娘)

平均魔法能力:3690(光龍娘)

平均抵抗能力:4530(水龍娘)

平均速度能力:4980(風龍娘)

スキル

「鑑定Lv 7」「念話Lv 10」「龍牙Lv 10」「炎魔法Lv 2」「土魔法Lv 10」「大地魔法Lv 4」「風魔法Lv 10」「旋風魔法Lv 6」「水魔法Lv 10」「水流魔法Lv 4」「雷魔法Lv 10」「雷鳴魔法Lv 2」「光魔法Lv 10」「閃光魔法Lv 2」「闇魔法Lv 1」「土・風・水・雷・光・複合魔法」「炎耐性Lv 3」「土耐性Lv 10」「風耐性Lv 10」「水耐性Lv 10」「雷耐性Lv 10」「光耐性Lv 10」「闇耐性Lv 3」「毒耐性Lv 7」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 3」「酸耐性Lv 4」「麻痺耐性Lv 4」「腐蝕耐性Lv 4」「恐怖耐性Lv 10」「気絶耐性Lv 2」「隠密Lv 5」「集中Lv 5」「剛力Lv 4」「堅牢Lv 4」「生命Lv 2」「回避Lv 2」「持久Lv 2」「瞬発Lv 2」「過食Lv 4」「暗視Lv 10」「夜目Lv 10」「龍眼Lv 10」「視覚領域拡張Lv 3」「龍翼Lv 5」「龍鱗Lv 10」「逆鱗Lv 10」「魔量Lv 6」「HP自動回復Lv 5」「龍結界Lv 10」「神龍結界Lv 10」「外道魔法Lv 4」「外道耐性Lv 4」「神へと至る龍」「n%I=W」

 

お、おお、うおおお!?すっごいことになってる。

 

(シロ)ちゃん、スキルが見えるようになってるよ♪」

「うんうん。(クゥ)ちゃん。鑑定さん頑張ってくれたね♪」

 

マジで鑑定さんグッジョブすぎる!ホントに上がったハードルを超えてきおった!

ひゃっふう!我等(ワレラ)が世の春がキター!

鑑定さん、あんたマジスゲーよ。ありがとう。マジありがとう!

これで、これでようやく効果がわからなかったスキルも、二重鑑定で概要がわかる!

 

「ま、ず、は、ど、れ、に、し、よ、う、か、なー?(クゥ)ちゃん、どれから鑑定しようか?」

「うんとね♪まずはさっき考えていた過食からいってみようよ♪」

 

〈過食:食事を限界を超えて摂取可能になる。また、その分のスタミナを余剰分としてストックすることができる、ただし、その分太る。レベルの上昇によってストックできる量が増える〉

 

「お、おおー。ほほう。ほぼ予想通りだったのねー。(シロ)ちゃん」

「そうだね、(クゥ)ちゃん。つまり、余計に食べた分だけスタミナが減らなくなるスキルだったのね」

 

しかし、太るのか。私たち、そんなに太ってる?向かい合って、私たちは見回す。じろじろ見たことが初めてだったので、恥ずかしくなった。

 

(シロ)ちゃん。改めて見回して、姫色(ヒイロ)って本当に蜘蛛に転生していたのね。今さらだけれど」

(クゥ)ちゃん!怒るよっ♥それを言ったら、美麗(ミレイ)が孵った時、名前の通り土色だったんだから♪それが、今は、四神(シシン)青龍(セイリュウ)のように綺麗な蒼色(アオイロ)だよっ♪」

 

次は、これにするかな。

 

〈強力:スキルレベル分平均攻撃能力にプラス補正が掛かる〉

 

へー。そういうことか。つまり単純なステータス強化のスキルか。

 

「あ、(クゥ)ちゃんも〈強力〉っていうスキル持っているの?」

「私は、そのスキルがカウンターストップして、上位の〈剛力〉っていうスキルを持っているよ。(シロ)ちゃん」

「そうなんだ。私も頑張らないとね♪そして、〈剛力〉っていうスキルを手に入れないとね♪」

 

強化の効果がこれということは。

 

〈堅固:スキルレベル分平均防御能力にプラス補正が掛かる〉

 

やっぱり、このスキルは強力の防御力版ってことね。

 

(クゥ)ちゃんは、スキル〈堅固〉の上位も持っているのよね?」

「持っているよ、(シロ)ちゃん」

「やっぱり、種族の違いかな?私、頑張る♪」

 

次は、初めて見るな。

 

〈韋駄天:スキルレベル×100分平均速度能力にプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル×10分成長補正が掛かる〉

 

は?あ、え、は?

 

「ねぇねぇ、(クゥ)ちゃん。スキルに〈韋駄天〉ってのがあるのだけれど、持っている?」

「私は持っていないスキルだね。(シロ)ちゃん。私が持っているのは〈(カミ)へと至る(イタル)(リュウ)〉なら持っているかな」

「それって、もしかして〈韋駄天〉は私、固有スキルってこと?じゃあ、(クゥ)ちゃんのそのスキルも?」

「多分ね。〈神へと至る龍〉は私、固有スキルだね。(シロ)ちゃん」

 

じゃあ、このもう1つの見たことないスキルはなんだろう?

 

〈n%I=W:鑑定不能〉

 

ん?鑑定不能?なんで?

 

「ねぇねぇ、(クゥ)ちゃん。鑑定不能ってスキルがあるのだけれど、〈n%I=W〉って.....」

「そのスキルなら、私も持っているよ、(シロ)ちゃん。つまり、これは、転生特典ってことだよね、これ」

 

気を取り直して次の鑑定いってみよう。

 

〈禁忌:禁忌を犯した者が得る(エル)スキル。決して上げることなかれ〉

 

うわ、いらねー。上げるなって言ってもいつの間にか2レベルになっているんですけれど......。

マジかー。

 

〈HP自動回復:HPが時間経過とともに徐々に回復する。自然回復しないような怪我でも回復可能〉

〈毒牙:牙による攻撃に毒属性が付与される〉

〈毒合成:MPを消費して毒を精製、カスタマイズする。合成できる毒はレベルによって異なる。Lv 1:弱毒〉

〈蜘蛛糸:蜘蛛型生物が有する特殊スキル。カスタマイズ可能な糸を出す。カスタマイズ項目:粘性、伸縮性、弾力性、質感、強度、サイズ〉

〈操糸:糸を自在に操ることができる〉

〈鑑定:ものの情報を読み取る〉

〈探知:感知系全てを複合したスキル。概要:魔力感知、術式感知、物質感知、気配感知、危険感知、動体感知、熱感知、反応感知、空間感知〉

〈隠密:気配を隠す〉

〈暗視:光源がなくとも視覚が働くようになる〉

〈視覚領域拡張:可視光域を広げる〉

〈毒耐性:毒属性に対しての防御能力が増加する〉

〈麻痺耐性:麻痺属性に対しての防御能力が増加さる〉

〈石化耐性:石化属性に対しての防御能力が増加する〉

〈酸耐性:酸属性に対しての防御能力が増加する〉

〈腐蝕耐性:腐蝕属性に対しての防御能力が増加する〉

〈恐怖耐性:恐怖を覚えにくくなる〉

〈苦痛無効:苦痛による身体(シンタイ)及び精神に対する能力制限を無効化する〉

〈痛覚軽減:痛覚を低減する。その際危険信号は継続される〉

 

(クゥ)ちゃんの鑑定結果を聞かないといけないから、残りのスキルも一通り鑑定しよう。

 

〈腐蝕属性:死の崩壊を司る属性〉

 

お.....おぅ、こわい。鑑定さん、お願いします!

 

〈外道魔法:魂を直接犯す魔法。使用可能な魔法はレベルによって異なる。Lv 1:不快、Lv 2:幻痛〉

〈影魔法:影を操る下位の闇魔法。使用可能な魔法はレベルによって異なる。Lv 1:濃影〉

〈毒魔法:毒を操る魔法。使用可能な魔法はレベルによって異なる。Lv 1:毒触〉

 

お?お.....おうん?うーん。

確認は、(クゥ)ちゃんの鑑定が終わってから。

 

〈魔法:魔力をスキルで変化させ、現象として確立させたもの〉

 

うん、ダメだこりゃ。うーあ、魔法はまだまだ使いこなせない。

くそう。魔法少女マジカル蜘蛛娘(クモムスメ)を名乗る日はまだまだ遠そう。

 

〈不快:魂に直接不快感を植え付ける〉

〈幻痛:魂に直接幻の痛みを植え付ける〉

〈濃影:影が濃くなる〉

〈毒触:触れた対象に毒属性の攻撃を加える〉

 

うーん。もっとレベルを上げないと使い道がなさそう。

(クゥ)ちゃんの鑑定が終わってから、この先を進もう。

 

剛力(ゴウリキ):スキル〈強力〉の上位互換。スキルレベル分平均攻撃能力にプラス補正が掛かる〉

堅牢(ケンロウ):スキル〈堅固〉の上位互換。スキルレベル分平均防御能力にプラス補正が掛かる〉

夜目(ヨメ):スキル〈暗視〉よりも視覚が働くようになる〉

龍眼(リュウガン):獲物の動きがスローモーションのように見える〉

龍翼(リュウヨク):スキルレベルが上がるごとに人化(ジンカ)の際に自由自在に翼が生える。龍状態では、宝の持ち腐れ〉

龍鱗(リュウリン):スキルレベルが上がるごとに脱皮し、新しい鱗になる。カウンターストップすると立派な鱗が生え揃っている〉

逆鱗(ゲキリン):スキルレベルが上がるごとに攻撃をしてきた相手にカウンターを加える〉

龍結界(リュウケッカイ):自分自身の戦闘空域内では、仲間以外は魔法やスキルを阻害する〉

神龍結界(シンリュウケッカイ):龍結界より広範囲の戦闘空域内では魔法やスキルを阻害する〉

(カミ)へと至る(イタル)(リュウ):龍の神となり、この世界の管理者権限を得て(エテ)、システム(ガイ)になる〉

 

(シロ)ちゃん、鑑定が終わったよ♪」

「ではでは、この先に進むとしますか。(クゥ)ちゃん」

 

私たちは岩陰に潜んで獲物の鑑定。

 

〈エルローダズナッチ Lv 23

ステータス

HP:786/818(緑)

MP:335/335(青)

SP:779/779(黄)

SP:723/781(赤)

ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

私たちのいる岩からちょっと離れたところわ、そいつはゆっくり進んでいく、

 

「あれは、なんだろう?|空(クゥ)ちゃん。でっかい魚に手足が生えたのかな?」

「私、あいつを倒してくるよ。(シロ)ちゃん」

「危ないよ、(クゥ)ちゃん!」

「でも、私は(シロ)ちゃんを護るために、強くならないといけないから」

「なんで、危ない目にあうってわかっているのに、そこまでしてくれるのよ。美麗(ミレイ)!!」

「これは、私に与えられた使命なんだよ。姫色(ヒイロ)。だから、ね♪そんな顔をして見送られたら、私も弱気になっちゃうよ。笑顔で送り出してよね♪」

「わ....わかったわ。美麗。あんな奴、蹴散らしちゃえっ♪」

「ラジャー、姫色!」

 

私の見送りと同時に岩陰から飛び出し、奴へと向かう。

相手は鈍足(ドンソク)。ウチの美麗はスピードで翻弄している。

奴は、美麗を捕らえられていない。しかし、暗視、夜目、龍眼を持つ美麗は、最後に正面から奴に向かって行きながら、口を開き、すれ違い様に奴より巨大な炎魔法撃ち込んだ。

 

奴は、巨大な炎球(エンキュウ)を食らい、丸焼きになった。

美麗ちゃんは、奴を食べ終わると、私のところへと帰って来た。

 

《経験値が一定に達しました。水龍娘Lv 5になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈炎魔法Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈剛力Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈堅牢Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈龍翼Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈魔量Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈神速Lv 1〉を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

「ただいま、姫色(ヒイロ)♪」

「お帰りなさい。美麗(ミレイ)♥大丈夫?怪我してない?」

「大丈夫よ、姫色♪」

 

空ちゃんがあの魔物を倒した場所から進んだ先に、私の相手としてちょうどいい魔物がいた。

 

コソコソ。右、ヨシ!左、ヨシ!前方、標的ヨシ!

 

〈エルローコホコロ Lv 7

ステータス

HP:67/89(緑)

MP:21/21(青)

SP:79/79(黄)

SP:54/85(赤)

ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

前方ちはでっかいダンゴムシみたいな魔物。

体はダンゴムシなのに、頭はネズミっぽい。

私は、スキル〈操糸〉で糸玉(イトタマ)を作成。投網(トアミ)バージョン完成。スタンバイ。OK?

標的、ダンゴムシ。ロックオン!

てりゃー!ダンゴムシにヒット!ここで、展開。獲物捕縛(ホバク)。完了!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈投擲Lv 1〉を獲得しました》

《条件を満たしました。称号〈糸使い〉を獲得しました》

《称号〈糸使い〉の効果により、スキル〈操糸Lv 1〉〈斬糸Lv 1〉を獲得しました》

《〈操糸Lv 1〉が〈操糸Lv 6〉に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈操糸Lv 7〉になりました》

 

お?おお?称号ゲットキター!

糸使いとな?あの厨二病心(チュウニビョウゴコロ)をくすぐる糸使いとな?

ちょっとダンゴムシ、お前に構っている暇がなくなったから手早く済ますよ?

いいね?ダメ?ダメじゃなーい。

というわけで毒牙毒牙。岩陰に運び込んで、と。

さて、では早速今回ゲットした称号について検証してみましょう。

糸使い、獲得条件は、やっぱり糸を使いまくるってことかな?

いや、まあ、操糸は日に日に重要度が増していってるし、レベルが上がるのは非常に嬉しい。

これだけでもこの称号の価値はあったってもんよ。

斬糸。

もうね、聞くからに厨二病心をくすぐる単語だと思わない?

これ要はあれでしょ?

糸で敵をスパッとかできるあれでしょ?

ば、馬鹿な!見えない斬擊だと!?なんだ!?

何に切られているんだ!?く、こ、これは、糸だと!?

こんな展開もできるってことでしょ?

うは。いいわー。これいいわー。

それがようやく、もう1つ攻撃手段が増えるってことだもん。

それも、私のメインウエポンたる糸が、その武器になるって言うからもうね。

まずは鑑定っと。

 

〈斬糸:糸に斬属性を付与する〉

 

うむ。名前の通りの効果やね。

まずは蜘蛛糸を出す。

最初は強度マックスにして、粘着性ゼロにする。

ダンゴムシの死骸(シガイ)に向けて糸を振りつつ、斬糸と念じる。

お、感覚的にちゃんと発動したっぽいな。

糸はダンゴムシの体に弾かれる。

むう。やっぱりレベル1だとそんなに威力は出ないか。

次は糸に粘着性を持たせてみる。

さっきと同じようにダンゴムシを攻撃。

まあ、傷は付かないよね。

蜘蛛糸はいろいろ実験して、カスタマイズできる項目にも限度があるってことがわかってた。

これはスキルレベルをとっとと上げるべきだね。

そういうわけでダンゴムシくん。

既に死んでしまった君に更に鞭打つようだけど、スキルレベル上げに付き合ってくれたまえ。

 

(シロ)ちゃん、スキルの検証をしている間に、この先の空間に陣取っている地龍を倒しに行ってくるね?」

「え?この先に.....地龍が、居座っているの?その.....地龍って、地龍アラバでは、ないよね?」

「鑑定をしたところ、地龍ガイア。地龍アラバよりは劣る。だが、殺るから(ヤルカラ)には、油断はしない!」

 

地龍(チリュウ)ガイア Lv 27

ステータス

HP:3663/3663(緑)

MP:3076/3076(青)

SP:3570/3570(黄)

SP:3569/3569(赤)

平均攻撃能力:3610

平均防御能力:3569

平均魔法能力:3022

平均抵抗能力:3138

平均速度能力:3555

「地龍Lv 2」「天鱗(テンリン)Lv 1」「HP高速回復Lv 6」「MP高速回復Lv 3」「MP消費大緩和Lv 3」「魔力感知Lv 8」「SP高速回復Lv 5」「SP消費大緩和Lv 5」「魔闘法Lv 7」「闘神法Lv 2」「大地攻撃Lv 8」「大地強化Lv 8」「空間機動Lv 6」「隠密Lv8」「迷彩Lv 2」「命中Lv8」「回避Lv 8」「危険感知Lv 8」「土魔法Lv 10」「大地魔法Lv 8」「影魔法Lv 8」「「大地無効」「火耐性Lv 4」「雷耐性Lv 6」「水耐性Lv 3」「風耐性Lv 4」「状態異常大耐性Lv 5」「腐蝕耐性Lv 4」「苦痛無効」「視覚強化Lv 8」「暗視Lv 8」「聴覚強化Lv 8」「嗅覚強化Lv 5」「触覚強化Lv 5」「天命(テンメイ)Lv 2」「天魔(テンマ)Lv 1」「天動(テンドウ)Lv 2」「富天(フテン)Lv 2」「剛穀(ゴウコク)Lv 2」「城塞(ジョウサイ)Lv 2」「天道(テンドウ)Lv 1」「天守(テンシュ)Lv 1」「韋駄天(イダテン)Lv 2」

スキルポイント:35800

称号

「魔物殺し」「龍」「暗殺者」

 

「じゃあ、行ってくるね♪(シロ)ちゃん♥」

「気を付けてね。(クゥ)ちゃん♥」

 

私は、白ちゃんに見送られながら、地龍ガイアが居る空間へと、進んでいく。

 

 

今の私のステータスでは、どうひっくり返っても正面から戦えば、負けるのは確実。スキルを駆使して、奇策(キサク)秘策(ヒサク)を画策して、殺らない(ヤラナイ)と、姫色(ヒイロ)を護ることができない!

前世で酷いことをしていた私が、卵から孵るまで護りながら生きてきた姫色(ヒイロ)虐め(イジメ)の主犯であった私を見捨てても良かったものの、見捨てずにいてくれた。

だから、私は、地龍ガイアを倒す。

気合いを入れた私は、地龍ガイアが居る空間へと、踏み込んだ。

 

 

私は、踏み込んで、すぐ、水魔法〈針水(シンスイ)〉を放ち、続けて土魔法〈針土(シンド)〉を放ち、私は上昇していき、光魔法〈砲光(ホウコウ)〉を放った。

地龍ガイアは、不意打ちの針水は喰らったが、そのあとの、針土は間一髪かわし、私が放った砲光に向かって、影魔法で迎え撃つが、砲光の威力が上がっていて、地龍ガイアに直撃をした。

 

 

不意打ちの針水が思いの外(オモイノホカ)、深くまで傷付けたみたいだったので、地龍ガイアと戦う前に大地魔法と旋風魔法と水流魔法がカウンターストップしていたので、旋風魔法で動きを止め、大地魔法で地龍ガイアを包み、水流魔法を流し込み、窒息死に追い込んだ。

 

 

遂に、地龍ガイアを倒すことができた。

が。私は、満身創痍(マンシンソウイ)

(シロ)ちゃんに見習い、命を奪ったものとして、残さず食した。

《条件を満たしました。称号〈悪逆無道(アクギャクムドウ)を獲得しました》

《称号〈悪逆無道〉の効果により、スキル〈闇黒魔法Lv 1〉を獲得しました》

《条件を満たしました。称号〈血縁喰ライ〉を取得しました》

《称号〈血縁喰ライ〉の効果により、スキル〈禁忌Lv 1〉を獲得しました》

《経験値が一定に達しました。水龍娘Lv 10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈炎魔法Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈剛力Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スカル〈堅牢Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈魔量Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 1〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。雷龍娘に進化可能です》

《雷龍娘に進化しますか?YES/NO》

 

もちろん、YES。

 

《進化が完了しました》

《雷龍娘になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

《種族:雷龍姫(ライリュウキ)になり、スキル〈雷速(ライソク)Lv 1〉を取得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

私は、進化を完了したのを確認して、白ちゃんの元へと帰ろうとすると、ピロンッと音がなったので、確認する。

 

嫉妬(エンヴィー)(必要ポイント100):神へと至らんとするn%の力。取得する経験値と熟練度が大幅に上昇し、各能力成長値が上昇する。また、Wのシステムを凌駕(リョウガ)し、MA領域への干渉権を得る〉

 

嫉妬?....これって、前世で私が好きだった先輩が姫色(ヒイロ)のことが好きになってしまったから、私は姫色に嫉妬していた?から、私の前にこのスキルが現れてしまったの....か。

 

《現在所持スキルポイントは99000です。スキル〈嫉妬〉をスキルポイント100使用して取得可能です。取得しますか?》

 

う~ん、う~ん.....よし。

悩んだよ、スッゴく悩んだ。決めました。お願いします。

 

《〈嫉妬〉を取得しました。残り98900です》

 

よし。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv 4〉になりました》

 

やってしまった。

 

《条件を満たしました。称号〈嫉妬の支配者(レヴィアタン)〉を獲得しました》

《称号〈嫉妬の支配者〉の効果により、〈深淵(シンエン)魔法Lv 10〉〈奈落(ナラク)〉を獲得しました》

 

やってくれましたね。

 

お、おう。

この事は、(シロ)ちゃんには言えないね。私が姫色(ヒイロ)の事を元の世界の時から、美しいと思っていることが、バレたら、恥ずかしくて死にそう。

 

 

 

「ただいま。満身創痍だけど、地龍ガイアを倒せたよ♪(シロ)ちゃん♥」

「おかえり。お疲れ様♪(クゥ)ちゃん♥空ちゃんが地龍を倒しに行っている間に、〈斬糸〉のレベルが3にまで上がったよ♪これでも、大して傷を付けられないけれどね」

 

ふと、何者かの気配を感じて振り返った。

 

〈アノグラッチ Lv 8 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

初めて見る魔物だった。2メートルくらいの猿みたいな魔物だ。

猿が駆け出す。真っ直ぐ此方(コッチ)に突っ込んでくるスピードはかなり速い。

慌てて迎撃の蜘蛛糸を飛ばす。それを、猿は横にステップしてかわす。

呆気(アッケ)にとられた隙に猿が距離を詰めてくる。

再度蜘蛛糸を出すも、同じように軽やかにかわされる。

目前に迫った猿が腕を大きく振りかぶる。

お尻についた蜘蛛糸を素早く切り離し、迫り来る猿の腕を避ける。

その細腕からは想像もできないほどの、ブオンという大きな風切り音が目の前で起きた。

猿は一撃目が避けられても、諦めずに腕をがむしゃらに振り回してくる。

動きは不格好で洗練されていないけれど、一撃必殺の威力がある攻撃が連続で飛んでくるというのは恐怖以外の何者でもない。

この魔物を今の(クゥ)ちゃんに向かわせるわけにはいかない!だから、私がこの魔物を倒さないといけない!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 1〉を獲得しました》

 

必死に避けていたら、新たなスキルをゲットした、

同時に、いつまでたっても攻撃が当たらないことに(ゴウ)煮やした(ニヤシタ)のか、猿がそれまで以上の大ぶりの攻撃をしてきた。

チャンス!

猿の大ぶりのパンチをかわし、振り切って硬直したその腕に蜘蛛糸をくっつける。

フハハハ!こうなっては貴様ももうおしまいだ!どうだ、悔しいか!?

ひょ?

スポーンと、私の体が宙に舞い上がる。

ウゲッ!?

猿が腕に引っ付いた蜘蛛糸ごと私をぶん投げていた。

やばい!

すぐに蜘蛛糸を体から切り離す。予想通り、猿は蜘蛛糸を地面に叩きつけた。

切り離していなかったら、私の体は地面に叩きつけられていた。

けど、危機一髪それを回避。

しかも、蜘蛛糸が地面に引っ付いたことにより、猿はそれ以上の身動きができなくなっていた。

私は、蜘蛛糸に絡まっている猿に追い討ちの毒牙で止めを刺す。

最後に猿が尋常ではない目付きで睨んできて、雄叫びを上げたけれど、それ以上の抵抗はなく、息絶えた。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLv 4になりました》

《各種基礎能力が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈集中Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈投擲Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈命中Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

猿を倒したことでレベルが上がり、一気に3つもスキルが上がった。

レベルが上がっても相変わらず速度以外のステータスが低かった。

韋駄天(イダテン)がなかったら速度も低かったってことだし、その場合、私の取り柄が糸しかなくなる。

韋駄天、様様だね。

糸を出すのにも走るにもスタミナを消費する。

だから、スタミナを余分にストックできるこのスキルは、私との相性がいい。

それにしても、この猿は強かった。

この頃は奇襲とかに頼りっきりだったから、こんなガチ戦闘は久しぶりだわ。

やっぱり下層の魔物は怖い。猿はその中でもステータス的には弱いほうなんだろうけれど、それでもこんなギリギリの勝負になるんだから。

さて、猿も食べ終わったし、とっとと移動しよう。

 

 

あー、眠い。そろそろ眠気が結構やばい。

 

(シロ)ちゃん。少しだけ、休憩してから、この先に進もうよ?」

「お願いしていいかな、(クゥ)ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

空ちゃんのお陰で、小一時間(コイチジカン)の休憩を経て、この先へと進んでいく。

 

 

 

私は、簡易ホームを作るため、壁をずっと登った先の天井に。

うひょー。たけー。こえー。これでもう少し安眠を取ることにした。

私が寝ている間、空ちゃんが護ってくれている。

 

まあ、命綱があるし落ちることはないと思うけれど、それでも剥き出し(ムキダシ)のまま作業するっていうのは怖いもんがあるね。恐怖耐性仕事しろし。

 

うーん。けれど、これは外から丸見えだよね?

空ちゃんは、宙を飛んでいる。

 

一旦、地上に降りていく。岩を見る。うーん。このままだとでかい。

かんとか加工しないといけない。斬糸でちょっと試してみる。

岩に糸を伸ばし、斬糸を発動。

糸鋸(イトノコ)のように動かしていく。ちょっとずつだけれど切れている?

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈斬糸Lv 4〉になりました》

 

スキルレベルが途中で上がったおかげで、作業効率が上がった。

よし

薄めに切った岩ができあがる。

これを、巣の表面に張り付けて、カモフラージュに使おう。

岩にしっかり糸をくったける。

その上で地上100メートルの巣まで糸を持って登る。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈強力Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈瞬発Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈持久Lv 1〉を獲得しました》

 

かんかスキルを獲得した。けれど、今はそれを確認している余裕がない!

そーれ、引け!

ぜー、ぜー。はー。

持ち上げた岩を蜘蛛糸を接着剤代わりに使って、簡易ホームに張っていく。

この作業を繰り返して、完成!

 

空ちゃんは、宙を飛びながら、警戒をしてくれている。

寝る前に新しく手に入ったスキルの効果の確認をそとかないと。

 

〈瞬発:スキルレベル分SPにプラス補正が掛かる〉

〈持久:スキルレベル分SPにプラス補正が掛かる〉

 

あー、強力とか堅固のSPバージョンだ。

よし、スキルの確認もできたし、寝よう!

 

 

 

あー、寝た。

けれど、なんだろう?

んー?なんか全身に突き刺さる殺気(サッキ)

岩からチョロっと顔を出して下を覗き込む。

 

〈アノグラッチ Lv 6 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈アノグラッチ Lv 3 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈アノグラッチ Lv 8

ステータス

HP:165/168(緑)

MP:38/38(青)

SP:127/127(黄)

SP:109/118(赤)

ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈アノグラッチ Lv 5 ステータスの鑑定にしました〉

 

猿の群れが眼下に布陣していた。ざっと数えて50匹くらいいる。

え?嘘でしょ?あいつら、確実に此方(コッチ)を認識している。

 

((クゥ)ちゃん空ちゃん。地龍ガイアを倒して、進化をしたんだよね?)

(そう。進化して雷龍娘(ライリュウジョウ)になったよ♪)

(私も、空ちゃんに追い付かないといけないから、あの猿の群れを私、1人で倒したいの。ダメ?)

 

私は、後ろに顔を向ける。

そのちょこんと首を傾げて、(ヒトミ)潤ませて(ウルマセテ)、私にお願いだなんて、こんなの、可愛いに決まっているじゃないですか♪こんなに愛おしい(イトオシイ)姫色(ヒイロ)を私はなぜ、元の世界で虐めていたのだろう。

 

((クゥ)ちゃん?美麗(ミレイ)?どうかしたの?)

(い.....いや、大丈夫。私のことを気にかけてくれている姫色(ヒイロ)、可愛い❤️わかったわ(シロ)ちゃん)

(あの猿たち、見た目通りに狂暴(キョウボウ)だから、気を付けてね。(シロ)ちゃん)

(わかったよ、(クゥ)ちゃん♪気を付けるね)

 

岩でカモフラージュをしているのに、確実に此方(コッチ)を認識している。

考えられるのは、この前倒した同種の猿のせい。

あいつがなにかしていたのか?特殊な匂いとか?わからない。

けれど、現実に猿どもはこうして私のことを待ち構えている。

今にも壁を登ってこようとしているのかのようだ。というか、登り始めた。

流石に垂直の壁を登るのは猿といえども苦戦するらしい、登る速度はかなり遅い。

逃げたいのは、山々だが、天井の色が途中から変わっているのだけれど?

うわ、あいつら、下位の猿に石を集めさせ始めた。

何?....ガンッ!うえっ、!?私のすぐ隣の壁に投げつけてきた。あ.....危ない!?

うわ、また投げてきた!?

慌てて岩の内側に退避する。遅れて私が先ほどいた場所に石が当たる。

流石に地上からここまで遠投されてきた石は、そんなにいりょくはなさそう。

けれど、垂直に張り付いた状態で当てられたら、多分、落とされる。

私がいた場所に正確に当てているところを見ると、投擲か命中か、あるいはその両方のスキルを持っていそう。

ヒヤリと、嫌な感覚がした。

これは、逃げられない。なら、どうする?迎撃するしかない。

幸い、簡易とはあえここにホームはある。

あの猿が到達する前に、できる限りここを強化して迎え撃つしかない。

足場兼要塞(ヨウサイ)として使えるから地の利は此方(コッチ)にある。

やるしかない。(クゥ)ちゃんに追い付くためにも。

 

まずは糸をばらまく。それを操糸で壁に付けていく。

単純だけれど、これで壁を登るのが難しくなるはず。

投げつけられる石を避けながらだから、作業がなかなか進まない。

そうこうしているうちに、登ってきている猿の第一陣は壁の半分くらいまで来てしまっていた。

まずい。予想より猿の壁を登るスピードが速い。

今ばらまいていた糸の量じゃ、猿全部を足止めするのはムリだ。

どうする?

ああ、此方(コッチ)からも向こうを攻撃できるような何かがないかな?

投擲と命中はある、何か投げつけられるものでもあればいいんだけれど......。

あ、投げるわけじゃないけれど、落とせるものならある!

岩から顔出して毒合成わ発動させる。

もちろん出すのは弱毒じゃない。私がこれまでの蜘蛛(セイ)で鍛え上げられた、強力な毒、蜘蛛毒だ。

私の目の前に出現した蜘蛛毒の玉は、重力に引かれてそのまま落下していく。壁を登っている猿にこれを避けることはできない。

見事顔面に命中し、猿は苦しそうに悶え(モダエ)ながら落下していく。

これは、いける!

素早く消費MPを確認する。消費MPは、1。最大で40発も撃てるわけだ。操糸で使う分と合わせて考えれば、25発くらい。

全部命中させることができれば、約半数の猿を脱落させることができる!

すぐに2発目を落とす。これも命中し、猿が落下していく。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒合成Lv 2〉になりました》

 

スキルレベルが上がったけれど、確認するのは後回し。

どうせ追加された毒よりも蜘蛛毒の方が強い。

結構な数の猿を落とすことに成功したけれど、猿の方も対応してきた。

巣の真下付近を避け、横の方に移動を開始した。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈命中Lv 3〉になりました》

 

よしよし。面白いように猿が落下していく。

けど、だいぶ横に移動された。

もう毒落としは使えそうもない。

横に移動した猿の進行方向に糸を出す。

まだまだ、この戦いは始まったばかりだ。

猿が壁を登ってくる。

操糸を駆使して猿の進行方向の壁に粘着糸を張り付けていく。

まずいな。MPの残りご心もとない。毒生成で使いすぎたかもしれない。

けれど、いざとなれば操糸なしで粘るしかないか。

石が飛んできたのでサッと岩の陰に隠れる。地上に残った猿がひっきりなしに投石してくる。

猿の先頭が私の粘着糸ゾーンに突入した。

もちろん猿どもは引っ付いて動きを止める。

これで先頭が動けなくなれば、後続がつっかえてしばらく時間が稼げ、げっ!?

あいつら、味方の体を足場にしてさらに登ってきやがる!

クソッ!もう出し惜しみをしている場合じゃない。

猿の特に固まっている一団に向けて、投網(トアミ)を放つ。

投網に捕まった猿たちはそのまま放置。

もがけばもがくだけ粘着糸が絡まり、余計に身動きができなくなる。

そんな猿の塊が進路上にあれば、障害物として役に立ってくれる。

糸に捕らわれた猿は放置。

猿のステータスから、あいつらでは糸から逃れることはできないと踏んだからだ。

今回は斬糸を使わない。

とにかく、確実な方法として、粘着糸ですべての猿を行動不能に陥れる(オトシイレル)

倒すのはそのあとゆっくりやればいい。

投網の第二弾を放つ。また猿の何匹かがその中に収まる。

第三弾を撃とうとしたところで、投石が私を襲う。慌てて避ける。

しかも、猿どもは私の投網を警戒したのか、さらに左右に分散してかたまらないように行動し始めた。

こいつら、今までの魔物と違って、頭がいい!

頭がいいなら獲物として私は割に合わないって気付けよ!

もしかして、この前、倒した猿の敵討ち.....とか?ないない.....のか?奴らは、群れで行動するとでていた。

私が倒した猿は、斥候(セッコウ)部隊の1匹だった?だから、断末魔(ダンマツマ)雄叫び(オタケビ)を聞き、こんなちっちゃな蜘蛛に固執(コシツ)していると。

 

なんで私が簡易ホームに隠りながら(コモリナガラ)戦って(タタカッテ)?いや、これは戦闘だから、闘って(タタカッテ)いるかというと、それはここが地上100メートルだからだからだ。

私の糸は確かに強力だけれど、無敵ではない。火に弱いし、地龍(アラバ)には簡単に吹き飛ばされた。

高い防御力を誇るけれど、それを上回る力が加われば、突破される。

猿にそれができるとは思えない。

地上だったら私は間違いなく籠城(ロウジョウ)を選択しないし、ましてや、1匹では、闘いを挑まない。(クゥ)ちゃんにも手伝ってもらう。

 

先ほどから、猿の数が減らない。

なぜ?......その時、(クゥ)ちゃんから、念話が入る。

 

(シロ)ちゃん白ちゃん。此方(コチラ)(クゥ)ちゃん。猿たちの増援が此方に集まって来ているの」

「やっぱり、そうなのね。空ちゃん」

「私も、加勢しようか?」

「それは、最終手段なの。空ちゃんに護られて(マモラレテ)ばかりじゃ、ダメだと思うの」

「わかったわ、姫色(ヒイロ)。私は、見守っている」

「ありがとう、美麗(ミレイ)♪」

 

MPどころか赤のスタミナも心もとなくなってきた。

スタミナが尽きたら終わる。糸が出せなくなる。

それに、見守ってくれている美麗(ミレイ)に申し訳ない。

クモーニングスターを構える。狙いは一番ここから近い位置にいる猿。

ぶん投げる。当たる。

よし、そのまま粘着力に物を言わせて強引に引っ張り上げる。

暴れようとする猿を素早く糸で拘束。毒牙(ドクガ)を打ち込む。

その最中に投石をぶち当てられた。

痛っ!けど、HPは5しか減っていない。

痛いけれど、痛覚軽減と苦痛無効の力で強引に無視する。

毒牙の力で猿の息の根を止める。

そのまま食べる!

この作業は素早さが勝負だ。早く終わらせて戦線に復帰しないと。

まだ猿どもは粘着糸に苦戦している。だいぶ糸にくっついて再起不能になっているけれど、その分、くっついた猿の体っていう道が完成しつつある。着実に私の元まで近付いて来ている。

スタミナ回復もできてもう一回、けれど、これが最後だと思っておいたほうがいい。

だから、早く、それでいて残さず食べきって余すところなく私の(カテ)にする!

心なしか猿どもの殺る気が上がった気がする。やっぱり、この猿は殺られたら(ヤラレタラ)、敵が小さくても大きくてもお構い無しに集団で敵討ち(カリ)にくる。

だか、食うのは私のほうだ!貴様らなんぞに食われてたまるか!

 

 

がむしゃらに糸をばら撒く(マク)

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈集中Lv 3〉になりました》

 

相当集中していたおかげか、スキルレベルが上がった。

眼下では猿どもが折り重なるようにして糸まみれになっている。

それでも猿の数は減らない。むしろどんどん増えている。

行動不能の猿の数も増えているけれど、それ以上に増援の数が多い。

まるでこのエリアに居る猿が全部集まってきているかのようだ。

MPはもうあと2しかない。

これ以上MPを使うことはできない。操糸が完全に使えなくなった。

けれど、今のところその影響は少ない。

なぜなら、もう猿の先頭は目と鼻の先にまで迫っていたから。

操糸を使うまでもない距離にまで、敵が迫っていた。

糸を出す。また1匹、猿がからめ捕られる。

しかし、やつは信じられない行動をとった。

飛び降りたのだ。

鈍い音がして猿が地面に叩きつけられる。この高さだと、流石に魔物といえど助からない。

猿どもは、自分が死ぬのと、進行方向で動けなくなって仲間の妨げ(サマタゲ)になるのを天秤(テンビン)にかけ、死ぬほうを選んだのだ。

ありえない。

迎撃を続けていれば、そのうち猿も諦めると思っていた、が、そんな淡い(アワイ)期待を持っていたけれど、そこまでして、斥候の1匹(ナカマ)の敵討ちを殺さないと気が済まないみたいだ。

 

投石が私を襲う。けれど、私はもう避けない。避けている暇がない。

石が体に当たる。HPが減る。それでも、痛覚軽減と苦痛無効の力で無視する。

減ったHPは自動回復に任せる。

石が当たったその瞬間も、糸を撒き続けている。

そうでもしなきゃ、この難局は乗り切れない。

どこかで私は猿どもを侮っていた(アナドッテイタ)地龍(アラバ)に比べたらどうってことはないと。

確かに、あれに比べたら大抵の相手は大したことはない。

けれど、それで侮っていいわけじゃなかった。

馬鹿か私は。私自身の弱さを忘れたのか?弱い私に比べれば、周りは全部強敵と言っていいはずなのに。何を雑魚(ザコ)を相手にしている気でいたんだ?

しかも、相手は遥か(ハルカ)格下の私を相手に、死ぬことすら厭わない(イトワナイ)ときたもんだ。

格上の魔物が命をとしてかかってきているのに、私がヘラヘラして乗り切れる道理なんてなかった。

こうなった私も、覚悟を決めて挑まなきゃならない。

また投石が私の体に当たる。

一瞬。本当に一瞬、私は衝撃で怯んだ(ヒルンダ)

その隙に、ついに猿の1匹が私の足を掴んだ(ツカンダ)

体の半分以上を糸に捕らわれながら、残った自由になる右腕を伸ばして。

ギチギチという、あまり気分の良くない音が足から響く。

今にも握りつぶされそうな痛みを我慢しながら、足を掴む手に毒牙を突き刺す。

猿が力尽きるのと、足が半ば(ナカバ)から引きちぎられたのは、ほぼ同時だった。

痛い。ものすごく痛い。痛覚軽減越しでも痛い。

部位欠損、HP自動回復でどうにかなるかな?あるいはレベルアップで回復してくれれば。

けれど、今は失った足の心配をしている場合じゃない。

今のでだいぶ時間を稼がれた(カセガレタ)

すぐに別の猿が登ってくる。

糸を出す。焦りが出る。残りのスタミナがまた少なくなってきた。

糸を受け止めた猿が、そのまま虚空(コクウ)に飛び出す。

その行く末を見守ることなく、次の糸を出す。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLv 5になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈集中Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈命中Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈堅固Lv 3〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

その声を聞いた瞬間、素早く簡易ホームに退避する。

グッドタイミングだけれど、バッドでもある。

脱皮だ。

もどかしげに古い皮を脱ぐ。ちぎられた足も問題なく回復していた。古い皮を脱ぎ捨て、すぐさま戦線に復帰する。脱皮の僅かな(ワズカナ)時間ですらこの状況だと命取りだ。

予想通り、簡易ホームに猿が取り付いていた、

ついに、最終防衛ラインまで猿の脅威(キョウイ)が迫っていた。

レベルアップで尽きかけていたMPとSPは両方とも回復している。

けれど、それでどうにかなる段階をもうとっくに通り過ぎたかもしれない。

いや。まだ手はある。

簡易ホームの端から足を伸ばす。

その足を猿に掴まれるが、知ったことか!

私はばら撒きまくって今や1つの巨大な塊となった糸に触れる。

ありったけの力を込めて操糸を発動する。徐々に私の力が糸の中に浸透していく。

スキルレベルが上がって、操糸できる糸の数もかなり増えていた。

流石にこの塊全部となるどムリだけれど、それでもいい。

量が量だけに、回復したMPがものすごい勢いでまた減っていく。

そして、掴まれた足がまた嫌な音を立てる。

それと同時に体全体も簡易ホームの外に引っ張られる。

外から猿の腕が伸びてくる。

なんとか頭を掴まれるのは回避する。けれど、胴体を掴まれた。

猿は容赦なく私の胴体を握りつぶそうと、力を込める。

HPが急速に減っていき、激痛が走る。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈生命Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈魔量Lv 1〉を獲得しました》

 

天の声(仮)と同時に、糸の準備ができた。

私は残った力を振り絞って、糸を操作する。私の指示に従って、糸は壁から剥がれ落ちる。

当然そこに引っ付いた猿共々。

轟音(ゴウオン)とともに、もう1つの壁とも言える様相(ヨウソウ)になった糸の塊と猿の群れが、地上に残っていた猿の群れに向かって倒れていく。

 

《経験値が一定な達しました。個体、スモールタラテクトがLv 6になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈操糸Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 4〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLv 7になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈痛覚軽減Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈隠密Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

大量の猿を一気に屠る(ホフル)ことに成功した。

 

 

レベルアップの脱皮のおかげで、掴まれていた胴体と足が猿の手から離れる。

猿の手には古い皮が2枚重ねで握られている。

糸の大崩落で大半の猿は地上に叩き落とすことができたけれど、簡易ホームに取り付いた猿は未だに健在だ。

とはいえ、その体は既に簡易ホームに捕まっている。

身動きができないように、糸を巻き付け、毒牙で止めを刺す。

最後の1匹に止めを刺したところで、ホッと一息吐く(ツク)

が、全滅するまでは気を緩めてはいけない。

簡易ホームから大崩落さした、糸に捕らわれ、身動きを取れない猿!その光景を見て、殺気を放ちながら、此方(コチラ)を見上げる猿たち!

そして、その中には、いてはいけないものがいた。

 

〈バグラグラッチ Lv 3 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈バグラグラッチ Lv 4 ステータスの鑑定に失敗しました〉

〈バグラグラッチ Lv 6 ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

巨大な(ワニ)のような口。その口から、(ノコギリ)のような凶悪な牙が無数に見えた。今までの猿の倍くらいはありそうな体長(カラダ)。横にも太い。奇形な巨猿がそこにいた。

私が、その巨猿が3体。

そこで、念話が入る。誰からかと言うと、愛しの美麗からだ。

 

((シロ)ちゃん。一際、でかい猿が3体いるのだけれど、あれって)

(アレだよ、(クゥ)ちゃん。この広いエリアで初めて会った猿だよ)

(だよね)

 

群れの中にいると言うことは、やはり。今までの猿たちの進化系。

私は巨猿に注意を払いつつ、殺気だっている猿たちに向かって糸を追加していく。

が、それを避け、左右に分かれて壁を登り始めた。

猿たちは投石はもうしてこないようだ。

投石は捨てて、壁登りに専念するみたいだ。そっちのほうが私としてはありがたい。あれは地味に効いた。HPは削られるし、動きは邪魔されるし。

と、巨猿に動きがあった。

おもむろに岩を持ち上げる。って、岩!?

今。軽く持ち上げたけれど、あの岩って、この簡易ホームに貼りつけている(ハリツケテイル)岩の元だよね!?

え、その岩どうするの?ちょっと待って、何を振りかぶっているのよ?まさか!?

慌てて簡易ホームから退避する。巻き(マキ)上がる粉煙(フンエン)が晴れたそこには、簡易ホームが見事に岩に押しつぶされていた。

嘘でしょ?

なんてパワーなのよ。あんなもの食らったら、一発でお陀仏(オダブツ)確定じゃないの。

幸い、巨猿の周りにはもう手頃な岩はない。

けれど、最終防衛ラインたる簡易ホームがあっさり壊されてしまった。

ここから先、私は簡易ホームなしで闘わないといけない。

それはまずい。

足場のない私は、今、防御を捨てた特攻隊の気分だ。

一応、空ちゃんに念話をしてみる。

 

((クゥ)ちゃん空ちゃん、此方(コチラ)白。どうぞ)

(どうしたの、(シロ)ちゃん?どうぞ)

(一応、聞きたいのだけれど、空ちゃんって、仲間に付与(フヨ)ってできるかな?)

(付与か。う~んう~ん.....あっ!こういうのならできるかもしれないよ)

(体を動かしているのは、(ノウ)からの電気信号(デンキシンゴウ)だから、雷魔法を付与して上げると......)

(上げると...、どうなるの?)

(白ちゃんのスキル〈韋駄天(イダテン)〉の効果を上げられるかもしれない)

(.....?それって、新しいスキル?)

 

私は、白ちゃんからの念話が入ってくる前の話をしてくれた。

空ちゃんは、私が蜘蛛糸を操糸で壁から剥がし、その糸が猿たちを押しつぶしている時に、レベルが上がった鑑定さんで鑑定をしていたみたいだ。

 

少し前に遡る(サカノボル)

 

((シロ)ちゃんの戦闘は、もうすぐ、2回戦に突入かな?)

(あ、巨猿が移動を始めた。おっと、観戦をする前に、新しいスキルの鑑定をしないと♪)

 

(風速(フウソク)(カゼ)(ヨロイ)纏い(マトイ)、風の抵抗を受けない。あと、このスキルは仲間に付与(フヨ)ができる〉)

(水速(スイソク)(ミズ)流れ(ナガレ)掴み(ツカミ)抵抗もなく、水中を進める。あと、このスキルは仲間に付与(フヨ)ができる〉)

(雷速(ライソク)(カミナリ)電気信号(デンキシンゴウ)変換(ヘンカン)して、身体(シンタイ)活性化(カッセイカ)させる。あと、このスキルは仲間に付与(フヨ)ができる〉)

 

そして、今に至る(イタル)

 

((クゥ)ちゃん。そのスキル〈風速〉と〈雷速〉を私に掛けてくれないかな?お願い)

(わかったわ。(シロ)ちゃん♪)

(ありがとう♪)

 

私が、空ちゃんに頼んだあと、すぐ、体に変化があった。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈風速Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈雷速Lv 2〉になりました》

 

そして私は、スキルを掛けてもらって、すぐ、巨猿2体を残し、巨猿1体の口に毒合成で蜘蛛毒を放ち、猿たちを一瞬で葬って(ホウムッテ)

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLv 8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈視覚領域拡張Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈酸耐性Lv 4〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

レベルが上がったことで、巨猿が力尽きたことをわかった。

残り2体の巨猿が動きだしたのは風の流れでわかった。

 

私は、蜘蛛糸をクモーニングスターに成形して、これを、1体の巨猿へ向けて放ち、操糸を駆使して拘束し、大口を開けるように固定する。

そこに毒合成で蜘蛛毒を合成し、飲み込ませていく。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLv 9〉になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈HP自動回復Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈生命Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈瞬発Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈持久Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

私は、2体目の巨猿を倒して、気を抜いてしまっていたのか、その隙を残り1体の巨猿に狙われた。

足場のない虚空(コクウ)に身を踊らせた(オドラセタ)私に向かって、その巨大な口を閉じられた。

私の右側の足が全部と、胴体の一部が噛み砕かれる(カミクダカレル)

HPが一気に減る。

とんでもない痛みとともに、意識が明滅(メイメツ)していく。

けれど、ここで気を失ったらもう二度と目覚めることはない。

空中で急いで糸を飛ばす。

壁についた糸が、私の落下を防ぐ。

けれど、反動で壁に叩き(タタキ)つけられ、一瞬意識が遠のきかけた。

牙を食いしばって飛びそうになる意識を繋ぎ(ツナギ)止める。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈気絶耐性Lv 1〉を獲得しました》

 

新しいスキルの影響か、なんとか意識を保つことに成功。

反撃のクモーニングスターを3体目に向かって放ち、巨猿に触れた瞬間に操糸を発動。拘束する。

さらに追加で糸を巻き付けていく。

動けなくなった巨猿に止めの毒牙。

 

《条件を満たしました。称号〈無慈悲〉を獲得しました》

《称号〈無慈悲〉の効果により、スキル〈外道魔法Lv 1〉〈外道耐性Lv 1〉を獲得しました》

《〈外道魔法Lv 3〉に統合されました》

《〈外道耐性Lv 3〉に統合されました》

 

なんか称号をもらった。また物騒な感じのやつだ。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLv 10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒合成Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈投擲Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈魔量Lv 2〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。個体、スモールタラテクトが進化可能です》

 

猿を機械的に始末している最中(サイチュウ)に、レベルが上がった。

そうかー。もうレベル10か。早くない!?

確かに闘っている最中ガンガン上がっていたけれど、もう、次の進化できるの!?

 

《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。

・タラテクト

・スモールポイズンタラテクト》

 

ん?

スモール

名前から取れたタラテクトはまあ予想通りだけれど、スモールポイズンタラテクト?

ポイズンて付くくらいだから毒特化?

とっとと猿を全部始末しなければ。

 

《条件を満たしました。称号〈魔物の殺戮者(サツリクシャ)〉を獲得しました》

《称号〈魔物の殺戮者〉の効果により、スキル〈剛力Lv 1〉〈堅牢Lv 1〉を獲得しました》

《〈強力Lv 3〉が〈剛力Lv 1〉に統合されました》

《〈堅固Lv 3〉が〈堅牢Lv 1〉に統合されました》

 

んん?また称号?

これまた物騒な名前だこと。

魔物殺しの上位版?

強力と堅固が違うスキルに統合された。

これって、空ちゃんが持っていた称号にスキルだよね?

 

「ねぇねぇ、私も(クゥ)ちゃんが持っている称号を手に入ったのだけれど」

「それって、〈魔物の殺戮者〉だよね♪」

「うんうん。それっ♪」

 

そのあとは淡々と猿を処分する作業だった。

毒牙、毒牙、また食事して。

その場から、私と空ちゃん以外の命が全て潰えた。

勝った。

今度こそ、本当に終わった。

一気に体から力が抜ける。けれど、疲労以上に沸々と沸き上がってくるものがある。

ざまあみろ!私たちは生きている!生きているぞ!

上層でマイホームを追われた時の誓い。

誇り高く生きる。

私たちはそれを今までずっと破ってきた。

誇りもなにもなく、ただ生きるために逃げ続けてきた。

その判断に間違いはないと思う。でなければ今頃は生きていない。

けれど、間違っていなくてもほこりを捨てて逃げ続けたことは事実。

逃げて逃げて逃げて、怖くて怖くて怖くて、悔しくて悔しくて悔しくて。

そんな中で、私たちは今、このエルロー大迷宮を生き抜いてみせる。

この下層に来て、私は巨猿と猿たちを倒し、(クゥ)ちゃんは地龍(チリュウ)ガイアを倒して、勝利した。

嬉しい。

今なら何が来ても勝てそうな気さえしてくる。

ははは!

勇者でも魔王でもかかってこいって言うもんよ!

あ、でも地龍アラバは勘弁ね。

もう一度、私たちは喜びを噛み締める(カミシメル)

私たちは生きているぞー!

 

 

 

 

今更だけれど、私たちってばかなり運が悪い。

姫色(ヒイロ)は、美麗()と友達2人の3人で虐められて(イジメラレテ)いた、被害者で。

私、美麗(ミレイ)は、姫色(ヒイロ)虐めて(イジメテ)いた、加害者だ。

だから、私の運が悪いのはわかる。

 

神様に嫌われているのかな?

 

そもそも、訳もわからずいきなり気がついたら、私は蜘蛛の魔物。

美麗(ミレイ)は上位種でも龍の魔物。

 

普通の人だったら発狂していてもおかしくないでしょ。

しかも、生まれた場所はエルロー大迷宮なんて名前の、この異世界最大のダンジョン。

周りに生息している魔物はどいつもこいつも格上ばかり。

そんな連中を倒して食べないと、食べ物すらろくにないっていう劣悪な環境。

蜘蛛の特性を活かしてマイホームたる巣を作ってどうにかしてきたけれど、それもいきなり襲撃してきた人間たちに燃やされた。

それからは迷宮の中を彷徨い(サマヨイ)歩き、うっかりそれまでいた上層より難易度の高い下層に落っこち。

地龍(チリュウ)アラバ。化物に襲われ、命からがら逃げ出し。

戦ったら確実に殺されるっていう強力な魔物がわんさかいる中を必死こいて進んできた。

極めつけは。

私は、猿軍団。

(クゥ)は、地龍(チリュウ)ガイア。

 

私たちの目の前には、真っ赤に煮えたぎるマグマの海が広がっていた。

 

 

 

ちょっと時間を遡って(サカノボッテ)、私が猿を全滅させた後、私たちはあることに気がついた。

ちょっと暑い。

私が猿戦に熱中しすぎて体温が上がっているのかと思っていたけれど、そういうわけじゃなさそう。

今までまったく感じなかった気温の変化如実に表れているって方が問題なわけ。

特に危険は感じない。周りを見回してみてもあるのは猿の死骸(シガイ)ばっかりで、他の魔物の姿は見えない。

地龍に続いて火龍(カリュウ)登場、とかはないっぽい。

じゃあ、なんで暑いの?

と疑問に思う私たちの視界に、それが映った。

上り坂である。

そう、上り坂である。もう一度言う、上り坂である!

上層から落っこちて、現在の位置は下層。

その下層から登る道がある。

それはつまり、下層を抜け出して、中層へと登る道であるということ!

ひゃっほい!これで超危険地帯から脱出できるぜ!

て、思ってテンション上げ上げで登った坂の上、そこに広がる広大な赤い空間。

そして現在に至る。

 

 

 

えええええぇぇぇ!?

なぁにこれー?私たちわかんなーい。

イヤイヤ。これあかんでしょう!

なにマグマって?

なんで地下にこんなマグマが溢れて(アフレテ)んのさ。

イヤ、地下でダンジョンだから間違ってないのか?

ないわー。

ていうか、あまりの暑さにHP減っているし。

もはや暑い(アツイ)っていうか熱い(アツイ)ってレベルじゃん。

ん?なんかお尻(オシリ)が本気で熱い。

うわ!?お尻から出てる糸が燃えている!?

消火!消火!ジュウゥゥゥ!

(クゥ)ちゃんが消火してくれた。

私って無意識のうちにお尻から糸を出しっぱにしているっぽいけれど、それが燃えるとか、ここどんだけ熱いのさ!

一応エリア全部マグマに覆われているわけじゃなくて、歩けるような陸地もあるけれど、入口でこれなんだからちょっとムリじゃね?

うん?なんか、マグマの中に魔物がいる。

タツノオトシゴに手足が生えたようなのがマグマの中を泳いでいるよ。ありえん。

ちょっと見るの怖いけれど、鑑定結果プリーズ。

 

〈エルローゲネラッシュ Lv 7

ステータス

HP:167/167(緑)

MP:145/158(青)

SP:155/155(黄)

SP:156/165(赤)

ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

お、一発でステータスを見れた。ラッキー。

ふむふむ。この数値ならそこまで強くはないね。て言っても、私たちよりは十分強いんだけれどな!

さて、二重鑑定でさらに調べてみますか。

 

〈エルローゲネラッシュ:エルロー大迷宮中層に生息する下位竜に属する魔物。炎を操り、炎に守られる〉

 

キタコレ!エルロー大迷宮中層!やっぱりここが中層なんだ!

 

〈エルロー大迷宮中層:エルロー大迷宮の上層と下層の間に位置するエリア。エリア全体がマグマの流れる灼熱(シャクネツ)の地形となり、炎に耐性を持つ魔物が多数生息している〉

 

.....マジで?

うーわー、ないわー。

中層全体がこれなの?

上層にはこれ抜けないといけないの?

ムリじゃね?

いるだけでダメージを受ける地形。落ちたら一発アウトなマグマの川と池。

そこに住んでいる魔物も、炎に耐性を持つってつまり炎を使ってきてもおかしくないわけじゃん?

私の蜘蛛糸の弱点なんだかわかるかい?さっきも燃えたからわかるよね?

炎だよ!!

どうしよう、マジどうしよう。

糸のない私とか、それって納豆菌のない納豆みたいなもんじゃん。

そんなもんもはや納豆でも何でもない、ただの腐った豆じゃん!

でも、そのくらい糸が使えないっていうのはやばい。

今までこの糸があったからこそ、私は生きてこられたって言っても過言じゃないし。

蜘蛛の巣たるマイホームも作れない、敵を拘束することもできない、なーんもできない

あ、考え事をしていたらタツノオトシゴに見つかった。バッチリ目が合っちゃったよ。

まあ、まだ距離があるし、大丈夫.....じゃねえ!?

タツノオトシゴが息を吸い込んで、なんか吐き出してきた!?

火の玉だ。

それに、反応して、空ちゃんが水の玉を吐き出した!

 

おおう、火の玉と水の玉が衝突して、水蒸気が発生した。

 

こう、ファンタジー的な攻撃を見ていると、空ちゃん凄く強くなったね♪

流石に地龍のブレスみたいにとんでもない威力はない。

マグマの中から遠距離攻撃をされては、私には不利だ。

試しに、蜘蛛糸を出して投げつけてみる。

投げた瞬間から空中で発火した。

あ、ダメだこれ。慌てて糸を切り離す。

そんなことをしている隙に、タツノオトシゴの第二射が来た。

(クゥ)ちゃんが竜巻を起こして防ぐが、熱風だけが私たちの所まで来る。

 

((クゥ)ちゃん、ここは逃げるよ)

(わかった、(シロ)ちゃん)

 

タツノオトシゴが第三射が放たれた。

此方(コチラ)(クゥ)ちゃんは水の玉で防ぎ、水蒸気で視界を奪われている間に、さっき登ってきた坂道を下る。

猿の死骸がいっぱい放置してある場所まで退避。

ふう、ここまで来れば(クレバ)熱さでHPが減ることもない。

HP自動回復のスキルもあることだし、休んでいればそのうち回復するはず。

 

ステータス的には勝てない相手じゃなかった。

今まで私は、巣を張って格上相手に優位に闘いを進めることはあっても、格上に地の利を取られて劣勢に回されることはなかった。

 

(シロ)ちゃん、どうしよう」

「そうだね、(クゥ)ちゃん。上層に行くためにはあの中層を攻略しないといけない」

 

 

 

とりあえず、今後のことは棚上げして、まずは進化を試みてみることにする。

猿を倒したおかげで大量の経験値を獲得し、一気にレベルが上がったからね。

危険な魔物が多い下層で、強制的に意識を失っちゃう進化をしなければならないが、そこは、空ちゃんが警戒していてくれるので、中層攻略をする前に、進化をしておく。

 

ひとまず二重鑑定してみる。

 

〈進化可能:タラテクト or スモールポイズンタラテクト〉

 

ふぉ!?鑑定さん、あんたマジか!?

すごいすごい!

これで進化先の種族の鑑定もできる!

この頃、鑑定さんが優秀すぎて怖いくらいだわ。

早速鑑定。

 

〈タラテクト:タラテクト種と呼ばれる蜘蛛型の魔物の標準的な成体。肉食で牙に毒を持つ〉

〈スモールポイズンタラテクト:タラテクト種と呼ばれる蜘蛛型の魔物の希少種(キショウシュ)の幼体。非常に強力な毒を持つ〉

 

うん。決めました。ポイズンの方で。

だって稀少種だよ?レアですよ、レア。

 

(クゥ)ちゃん。進化先が2つあって、標準か希少種なのね」

「そうなんだ、(シロ)ちゃん。だったら、希少種一択だね♪」

「だよねだよね♪美麗(ミレイ)なら、分かってくれると思った♪」

「私の進化ツリーは、一本道で泣けてくると思ったら、凄い事が分かったの、姫色(ヒイロ)♪」

「なになに、凄い事って?」

「私。二重鑑定してみたら、生まれた時から稀少種だったのよ。ステータスをみてね♪」

 

〈雷龍娘:[希少種(キショウシュ)真名(マナ)空丹(クゥタン)]・Lv 1

ステータス

HP:5240/5240(緑)[2900UP]

MP:5550/5550(青)[3000UP]

SP:5830/5830(黄)[2900UP]

SP:6110/6110(赤)[2900UP]

平均攻撃能力:6740(雷龍娘)[2900UP]

平均防御能力:7400(地龍娘)[2900UP]

平均魔法能力:6690(光龍娘)[3000UP]

平均抵抗能力:7530(水龍娘)[3000UP]

平均速度能力:7880(風龍娘)[2900UP]

スキル

「鑑定Lv 8」「念話Lv 10」「龍牙Lv 10」「火炎魔法Lv 8」「土魔法Lv 10」「大地魔法Lv 10」「風魔法Lv 10」「旋風魔法Lv 10」「水魔法Lv 10」「水流魔法Lv 10」「雷魔法Lv 10」「雷鳴魔法Lv 6」「光魔法Lv 10」「閃光魔法Lv 4」「闇魔法Lv 4」「闇黒魔法Lv 1」「深淵(シンエン)魔法Lv 10[NEW]」「土・風・水・雷・光・複合魔法」「炎耐性Lv 3」「土耐性Lv 10」「風魔法Lv 10」「水耐性Lv 10」「雷耐性Lv 10」「光耐性Lv 10」「闇耐性Lv 10」「毒耐性Lv 7」「酸耐性Lv 4」「麻痺耐性Lv 4」「腐蝕耐性Lv 4」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 3」「探知Lv 4[NEW]」「隠密Lv 10」「集中Lv 7」「剛力Lv 6」「堅牢Lv 6」「生命Lv 2」「回避Lv 2」「持久Lv 2」「瞬発Lv 2」「過食Lv 6」「暗視Lv 10」「夜目Lv 10」「龍眼Lv 10」「視覚領域拡張Lv 7」「龍翼Lv 7」「龍鱗Lv 10」「逆鱗Lv 10」「天鱗Lv 1[NEW]」「魔量Lv 8」「HP自動回復Lv 5」「龍結界Lv 10」「神龍結界Lv 10」「外道魔法Lv 4」「外道耐性Lv 4」「奈落(ナラク)[NEW]」「風速Lv 1」「水速Lv 1」「雷速Lv 1」「禁忌Lv 4」「神へと至る龍」「嫉妬(エンヴィー)[NEW]」「n%I=W」

スキルポイント:98900〉

 

「私のステータスは進化してからね。その間の警戒を

よろしく♪」

「分かったわ、警戒しておく♪(シロ)ちゃん♥」

「ありがとう、(クゥ)ちゃん♥」

 

私が、進化を進めようとしていると、ピロンッと音が聞こえたので確認する。

 

《現在所持スキルポイントは10000です。〈傲慢〉をスキルポイント100使用して取得可能です。取得しますか?》

 

はい。

 

《〈傲慢(プライド)〉を取得しました。残りスキルポイントは9900です》

 

よし。

やってやったぜ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv 4〉になりました》

 

やっちまったぜ!

 

《条件を満たしました。称号〈傲慢の支配者(ルシファー)〉を取得しました》

《称号〈傲慢の支配者〉の効果により、スキル〈深淵(シンエン)魔法Lv 10〉〈奈落(ナラク)〉を獲得しました》

 

やってくれたぜ!

 

では、改めて、進化

 

〈蜘蛛娘:スモールポイズンタラテクト[白織(シラオリ)]・Lv 1

ステータス

HP:56/56(緑)[2UP]

MP:1/156(青)[102UP]

SP:56/56(黄)[2UP]

SP:1/56(赤)[2UP]

平均攻撃能力:38[2UP]

平均防御能力:38[2UP]

平均魔法能力:127[101UP]

平均抵抗能力:127[101UP]

平均速度能力:537[21UP]

スキル

「鑑定Lv 8」「念話Lv 10」「蜘蛛糸Lv 8」「操糸Lv 8」「粘糸Lv 6」「斬糸Lv 4」「毒攻撃Lv 9[NEW]」「毒合成Lv 3」「毒魔法Lv 2」「影魔法Lv 2」「深淵(シンエン)魔法Lv 10[NEW]」「毒耐性Lv 8」「酸耐性Lv 4」「麻痺耐性Lv 4」「腐蝕耐性Lv 4」「石化耐性Lv 3」「恐怖耐性Lv 7」「気絶耐性Lv 1」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 7」「探知Lv 4」「隠密Lv 6」「剛力Lv 1」「堅牢Lv 1」「生命Lv 2」「回避Lv 2」「持久Lv 2」「瞬発Lv 2」「過食Lv 4」「暗視Lv 10」「視覚領域拡大Lv 3」「集中Lv 4」「命中Lv 4」「投擲Lv 3」「魔量Lv 2」「HP自動回復Lv 4」「外道魔法Lv 3」「外道耐性Lv 3」「奈落(ナラク)[NEW]「禁忌Lv 4」「韋駄天Lv 6」「傲慢(プライド)[NEW]」「n%I=W」

スキルポイント:9900〉

 

やったね♪ステータスが上がったよ。

鑑定様のおかげで、食べながらステータスをチェックしていく。

 

〈毒攻撃:攻撃に毒属性を付与する。あと、このスキルは仲間

の攻撃にも付与ができる〉

 

(クゥ)ちゃん。私も付与できるようになったよ♪」

「なになに、(シロ)ちゃん♪」

「毒、こ・う・げ・き・っ♪あと、分からない、スキルがあるの。七大罪(シチタイザイ)の1つ〈傲慢(プライド)〉が手に入っていたの(ハイッテイタノ)。私って、傲慢なのかな?」

「それを言ったら、七大罪(シチタイザイ)の1つ〈嫉妬(エンヴィー)〉が手に入っていたのよ(ハイッテイタノヨ)

「「えっ!?」」

「..........」

「..........」

「あのね、白ちゃん。いや、姫色(ヒイロ)。このスキルが手に入っていたのには、なんとなく、理解しているのよ。それは....ね」

「そ....それは」

「高校に通っていた時に....ね。私が好きな先輩は、姫色の事が好きだったのよ」

「え....えっ、それって、美麗(ミレイ)

「私もね。姫色がとても可愛らしく綺麗な女の子なのは、知っていたの」

「........」

「私も綺麗なのに、先輩は姫色の事しか好きになれないって。だから、〈嫉妬〉のんてスキルが手に入ったのだと思うのよ」

「それを言ったら、私も....だよ。美麗」

「えっ.....えぇぇぇ。....?」

「私もね。高校に通っていた時に、私は休み時間に小説を読んでいて、クラスメイトとの接触を避け、意味のないことを喋っているのを見下していたんだよ。ごめんなさい!」

「私も、ごめんなさい!」

 

私たちは、元の世界のことは、水に流し。これからは、支えあっていこうと。仲直りをした。

 

私たちは、中層の熱さでダメージを食らわないようにする。

あと、確実な遠距離攻撃を身に付ける。

その2つをクリアして、中層攻略に乗り出そう。

 

 

 

 

私たちは、七大罪(シチタイザイ)のスキルに気を取られていたので、もう一度、ステータスを確認したら、MP、平均魔法能力、平均抵抗能力の3つだけ、アップ数値が100ずつ違う。

 

「あのね、(クゥ)ちゃん。私の目の錯覚かな?」

「錯覚じゃないよ、(シロ)ちゃん」

「だよね」

 

私たちは、もう、気にしない。

さあ、気を取り直して、鑑定鑑定。

 

〈深淵魔法:深淵の闇を操る最上級闇魔法。使用可能な魔法はレベルによって異なる。Lv 1:地獄門(ジゴクモン)、Lv 2:無信(ムシン)地獄、Lv 3:邪淫(ジャイン)地獄、Lv 4:美食(ビショク)地獄、Lv 5:貪婪(ドンラン)地獄、Lv 6:憤怒(フンド)地獄、Lv 7:異端(イタン)地獄、Lv 8:暴虐(ボウギャク)地獄、Lv 9:欺瞞(ギマン)地獄、Lv 10:反逆(ハンギャク)地獄〉

〈奈落:奈落(ナラク)顕現(ケンゲン)させる〉

 

え、えー。なんて言えばいいのだろう?

物騒極まりないわー。

何この地獄シリーズ?奈落を顕現とかあからさまにやばそうなんですけどー。

 

〈地獄門:始まりの門〉

〈無信地獄:無信(ムシン)無心(ムシン)なるものの地獄〉

〈邪淫地獄:邪淫(ジャイン)に染まりしものの地獄〉

〈美食地獄:美食(ビショク)謳歌(オウカ)せしものの地獄〉

〈貪婪地獄:貪婪(ドンラン)腐心(フシン)せしものの地獄〉

〈憤怒地獄:憤怒(フンド)侵され(オカサレ)しものの地獄〉

〈異端地獄:異端(イタン)傾倒(ケイトウ)せしものの地獄〉

〈暴虐地獄:暴虐(ボウギャク)尽くせ(ツクセ)しものの地獄〉

〈欺瞞地獄:欺瞞(ギマン)囁き(ササヤキ)しものの地獄〉

〈反逆地獄:反逆(ハンギャク)決起(ケッキ)せしものの地獄〉

 

しかも何、この鑑定結果?

いや、魔法の効果関係ないじゃん。誰がこの鑑定結果を作ったやつは。

 

 

あー。やっちまった感が半端(ハンパ)ないわー。

こんなとんでもないスキル、どんな落とし穴が潜んでいる(ヒソンデイル)ことやら。

しかも明らかにやばい称号。

禁忌(キンキ)は上げることなかれって意味ありげに鑑定も言っていることだし。

 

 

 

 

周りにも魔物の姿はないし、(マレ)に見る静かさだ。

これは、やっぱり猿のせいかな?

まあ、あれだけの大群が大移動したら、他の魔物は逃げ出しているが、多分、そういうことだと思う。

が、私たちは油断をしない!

(ワタシ)が進化している間、警戒していた(ミレイ)

交代で、(ワタシ)が警戒しながら、スキルの確認。その間、(ミレイ)が寝ている。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予測Lv 1〉を獲得しました》

 

ん?スキルゲット?

どれどれ。

 

〈予測:予測をする際、思考能力にプラス補正が掛かる〉

 

ふうん。まあ、あって困ることはないけれど、なくても別にスキルではあるよね。

しかし本当に魔物の1匹もいないね。

目を凝らしてグルッと辺りを見回しても、なんにもいない。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈視覚強化Lv 1〉を獲得しました》

 

お?またスキルゲット?

どれどれ。

 

〈視覚強化:視覚を強化する〉

 

まんまやね♪

五感を強化するスキル。

今、視覚強化が手に入った条件が目を凝らす。ってことだったのなら、他の五感もそれぞれ意識をしていれば熟練度が上がりますかね?

というわけで、早速(サッソク)やってみう。

まずは耳から。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈嗅覚(キュウカク)強化Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈触覚(ショッカク)強化Lv 1〉を獲得しました》

 

簡単ににスキルが手に入るのかー。

確かに、蜘蛛の五感は優れているっぽいから、今までそんなに意識をしてこなかったしなー。

やっぱり意識して集中していないと、熟練度が上がらないのかな?

で、なければもうとっくの昔に取れているだろうしねー。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予測Lv 2〉になりました》

 

早っ(ハヤッ)!?ついさっき取得したばっかだよね!?

いや、まあ、いいのだけれどね。上がる分には全然。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈並列思考Lv 1〉を獲得しました》

 

え!?また!?

しかもこれ、探知をどうにかできるかもしれないって考えていたスキルだよね!

 

〈並列思考:複数の事柄を同時に思考可能になる〉

 

やったね!これで頭の処理能力が上がったんじゃない?

別に私が複数のことを考えていたわけではないんだけれど?

あ、鑑定様。

私が獲得できたということは、(クゥ)も持っているのかな?持っていたら、私に教えてくれているし、それがないということは、持っていないね。

私がスキル傲慢(プライド)を持っているから、獲得できる熟練度が大幅に増えている。

具体的な数値がわからないから何とも言えないけれど、相当増えていそう。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予測Lv 3〉になりました》

 

ほらね。

 

 

さて、せっかく探知を使いこなせるかもしれない新スキルを獲得したことだし、早速試してみようじゃあーりませんか?おっと、気分がのってしまい、関西で有名なあの新喜劇ののりが。

 

 

では、改めまして、スー、ハー。よし。

探知。

グホアッ!ムリムリ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈並列思考Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈探知Lv 5〉になりました》

 

ゼー、ハー。頭痛った(イッタ)

今までのスキルからして、レベル1なんて期待していいものじゃないよね。

一応今ので並列思考のスキルレベルも上がったけれど、同時に探知の方も上がったよね。

傲慢(プライド)の効果でさらに成長が早くなっているね。

 

 

 

スキルリストを確認してみる。

探知を使えるようになるのに、有効そうなスキルは、と。

 

〈演算処理:思考の演算を強化する〉

〈記憶:記憶力が上昇する〉

 

このくらいかな?

スキルポイント大量に持っているから、ポイントを使って、獲得してもいいのだけれど、(クゥ)に念話をして聞いてみる。

 

(もしもし、(クゥ)ちゃん空ちゃん)

((シロ)ちゃん?どうしたの。もう、起きる時間?)

(ちょっとね、聞きたいことがあるのだけれど)

(いいよ。何かな、何かな?)

(スキル〈演算処理〉って、持っているかな?)

(いま、寝ている間に使っているよ。頭、が、痛いけどね)

 

空ちゃんも頑張っているから、私も頑張らないとね♪

じゃあ、2のn(ジョウ)でもずっと計算していきますか。

2、4、8、16、32、64.......。

.......8192、16384、えーと、32768かな?

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈演算処理Lv 1〉を獲得しました》

 

お!よしよし。

うーん。一応一回試してみる?

スー、ハー。よし。

探知。

グベラバッ!ムリムリ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈演算処理Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈並列思考Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈探知Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈外道耐性Lv 4〉になりました》

 

ゼー、ハー。頭痛ってー。

これはムリっしょ。ムリムリ。

あー、ないわー。

ていうか、痛覚軽減どうしたの?どうしたのかな?どうしたのよ、もうっ!

はぁはぁはぁ、ふぅ.....、よし。

外道耐性が上がるということは、探知さんあんたの攻撃は外道属性だと?耐性が上がるから、外道攻撃?

外道属性って、確か魂を直接攻撃するとかそんな感じの属性だったよね?

もしかして、頭痛の半分って魂から出ている?

うわっ、怖い!

これを続けていたら魂が磨耗していくとかないよね?気がついたら私たち廃人とかはやめてよ?

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予測Lv 4〉になりました》

 

あ、はい。よかった、予測の効果が正解を当てるものじゃなくて!

セーフ。まだ予測だからセーフ。

うーん。そうなると魂に関連したスキルもあれば、探知に耐えられるかな?

でも、魂関連のスキルってリストに載っていないしなー。

外道耐性上げとく?どうやったら上がるのよ?

 

(確か、(クゥ)ちゃんは、産卵のスキル持ってないし、それに持っていても、産み落とせるのは1つって、言っていたから、並列思考は獲得してないって)

(演算処理のスキル上げは、空ちゃんと一緒で、私は、追加で並列思考のスキルを上げていくことにしよう)

(空ちゃんも()ながら考えている。探知発動して両方とものスキルレベルが上がったってことは、何かしらが働いているってことだしね。それまで封印しておく?)

(だが、空ちゃんには、探知を使ってもらっている)

(だから、私は頭が痛くなるからって、弱音を吐かない)

 

探知は、私たちが交互に使うということで。

火耐性をどうするか?

スキルポイントは沢山ある。さて、どうする。

私が中層対策を考え始めた丁度(チョウド)その時、空ちゃんがお目覚めになった。

 

「おはよう、(シロ)ちゃんが今、考えていた火耐性のことなんだけれど、スキルポイントを1000支払って獲得できるよね♪」

「そのことを(クゥ)ちゃんと相談したかったの♪どうしよう?スキルポイントは敵を倒しても手に入るから、支払う?」

 

私たちは、スキルポイントの確認をしてから、私が持っているスキルポイントが9900。空ちゃんは98900。

 

(シロ)さんはスキルポイントを1000支払い、スキル〈火耐性Lv 1〉を取得しました》

(クゥ)さんは、スキル〈炎耐性〉を入手済みの為、下位スキル〈火耐性Lv 10〉を本人の許可を経て、獲得しました》

 

新スキル〈火耐性〉を取得した事を告げるベルがなった。

私のスキルポイントが8900にちゃんと下がっていた。

空ちゃんは、上位スキル〈炎耐性〉を取得済みだったので、下位スキル〈火耐性〉はカウンターストップしている。あと、スキルポイントを支払わなくてよかったみたい。

HP自動回復は、中層を散歩して、熟練度を上げていく。寝る前に他のスキルのレベル上げをする。

探知対策で並列思考と演算処理を。

あとはステータスアップ系のスキルを伸ばしていこうかな。

特に韋駄天と剛力と堅牢は上げれば上げるだけ成長補正が増えるから、優先して上げていきたい。

私自身が火に弱いから、火耐性が手に入りにくくなっているんだと思う。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予測Lv 5〉になりました》

 

あ、はい。

だから、スキルポイントを支払って、手に入れた訳ですよ。

スキルポイントは、空ちゃんには及ばないけれど、10000近く持っている。あるなら、使わないとね♪計画的に。

私たちは、今、過食の効果でスタミナが減らないけれど、いつかは何か食べたいといけなくなる。

そのためにも、少し周辺を見回って、狩りの下準備をしておかないといけない。

 

 

 

今日は、HP自動回復を上げるために、1回目の中層散歩を結構いたします。

はい。私の〈火耐性〉はレベル1。だから、すぐに下層へ退避。

 

 

 

 

私たちは、のんびりと中層攻略の対策を考えながら、今日も今日とて、散歩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~エルロー大迷宮~~~

 

「ではゴイエフさん、案内よろしくお願いします」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。勇者ユリウス様」

 

僕の挨拶に、迷宮案内人であるゴイエフさんが丁寧なお辞儀で返してくる。

迷宮案内人はその名のとおり、余りにも広いエルロー大迷宮の中を案内する人のことだ。

ゴイエフさんはその中でもベテランの迷宮案内人。

勇者である僕を案内するため、腕利きの案内人であるゴイエフさんが今回指名された。

 

「それで、勇者様の今回の迷宮入りは、魔物の討伐でしたかな?」

「ええ。なんでも特殊なタラテクトと謎の魔物が発生したとか。その討伐です」

 

冒険者が目撃した蜘蛛型の魔物、タラテクトの特異個体。と、得体のしれない謎の魔物。

それを討伐するため、勇者である僕が呼ばれた。

 

「さあ、それじゃあ、行こうか」

 

仲間とゴイエフさんに向けて宣言し、僕は広大なエルロー大迷宮の入口に一歩踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




蜘蛛娘:[白織]・Lv 2
種族:蜘蛛姫(スモールタラテクト)
性別:雌
スキルポイント:5000

水龍娘:[空丹]・Lv 1
種族:地龍姫→風龍姫→水龍姫
性別:雌
スキルポイント:98000


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5 物語・ユリウスとシュン 2と幕間

15年後の世界では、
白(姫色)はシステム外
空(美麗)は神なる龍なので、

フィリメス(岡ちゃん)には、
感知できない

お嬢様言葉が難しくて
耳障りが悪いかもしれません




~~~15年後・ユリウス 1~~~

 

迷宮案内人であるゴイエフさんを先頭に、僕らはエルロー大迷宮を進んでいた。今回僕らがこの迷宮を訪れた理由は、タラテクトと呼ばれる蜘蛛型の魔物、その変異種とみられる個体が発見されたからだ。

その討伐が僕らの仕事になる。のだけど...。

 

「ヤーナ、いい加減離してくれないかな?」

「い、嫌です!ユリウスも知っているでしょ!?私が大の虫嫌いだって!」

 

僕の服をガッチリ掴んだ聖女のヤーナ。完全に腰が引けている。

ヤーナは昔から虫が大嫌いで、虫型の魔物が相手だといつもこうだった。

そして、今いるエルロー大迷宮という場所は、虫型の魔物が多く生息する場所でもある。

加えて、ヤーナは暗い所も苦手。はっきり言って、ヤーナにとってこの場所は鬼門だ。

 

「まったく。だから足でまといになるから残れって言ったんだ」

「ハイリンス。それはできないって言ったじゃありませんか。聖女はいついかなる時も勇者と共にあれ。新言教(シンゴンキョウ)の決まりに背くわけにはいきません」

 

呆れたようにヤーナを見つめるハイリンス。

わざとらしく大きく肩をすくめ、その手に持った大きな盾を揺らした。

ハイリンスは僕の幼馴染(オサナナジミ)だ。

僕の生まれ故郷であるアナレイト王国の、クオート公爵家の次男として生まれている。

王族ではあるけど側室の子供で第二王子の僕と、公爵家ではあるけど次男のハイリンス。

 

「まあ、ヤーナ嬢ちゃんに限らず、このメンツでこういうジメジメしたところが得意なのは、俺とホーキンくらいのものだろう」

「旦那、イメージ的にそう見られても仕方ないかもっすけど、ワイもこういうのはダメでっせ?」

 

ジスカンとホーキンがそんな掛け合いをする。

 

「そうなのか?」

「そうでやす。元々ワイは人相手専門の盗賊でやすから。裏家業的な匂いには敏感でやすが、こういう自然の暗さっていうのは専門外なんでさあ」

 

ホーキンは元盗賊で捕まって奴隷にされていたところをジスカンに拾われてきたという経歴がある。

この5人が僕らのパーティーで今回はそこに迷宮案内人のゴイエフさんを加えた6人で討伐に向かう。

 

 

 

エルロー大迷宮は魔物が厄介なのもあるけれど、それ以上に広すぎるという問題がある。

迷宮案内人がいなければ、地図を持っていても迷って出てこれなくなると言われている。

 

「皆さん、注意してください。魔物です」

 

僕たちは迷宮案内人のゴイエフさんの警告の度に、戦闘を繰り返して、目的地に向けて歩み続けた。

エルローモワジシス危険度Cを鋭利な刃物のような角を持つ魔物。

 

 

 

 

~~~15年後・シュン 1~~~

 

この国には学園というものがある。

元の世界では学校に通うのが当たり前だったけど、この世界ではむしろ、学校に通うことのほうが少ない。学校に通えるのは、貴族などの特権階級か、1部の裕福な平民、もしくはよほど才能に恵まれた人間か。

俺の場合王族であるため、学園に通うのは問題ない。

スーもそれは同じで、公爵令嬢であるカティアも条件はクリアしている。

俺たち3人は揃って学園に入学することに決まっていた。

学園では元の世界の学校のように、一般的な勉強を教える。

それと同時に、戦うための授業も受けることになる。

むしろそっちのほうがメインだ。

このダズトルディア大陸は人族の領域となってるけど、他の大陸だと未だに魔族や魔物との戦いが激しい。

ダズトルディア大陸にも魔物は生息しているし、戦える人材はいくらいても足りないくらいだ。

なので、学園では戦いについて学ぶことが多い。

俺とスー、カティアの3人は学園の入学式が行われる会場にいた。

フェイは俺のペット、というか使い魔扱いなのでこの場には連れてきていない。

授業には連れて行くこともできるようだけど、流石にこういう行事には参加させられなかった。

周りを見回せば今年入学する同年代の生徒たちが席に座って式が始まるのを待っている。

この学園は近隣では最大の規模を誇るので、他国からも大勢の子供が入学しに来る。

そんな生徒たちを見回すと、サッと視線をそらされたり、逆にジッと見つめられたりする。

時々チラチラと視線を感じるし、ヒソヒソと噂をする声が聞こえてくる。

 

「あそこにいるのが、この国の王子だってよ」

「天才って言われてるらしいが、パッと見そんな強そうには見えないな」

「どうにかしてお近づきになれないかな?」

 

色々と言われてるけど、聴覚強化のせいで全部まる聞こえなんだよな。

ものすごく居心地が悪い。

 

「おはようございますぅー」

 

その空気をぶち破って、のほほんとした声が俺の耳に届く。

振り向いた先には予想通り岡ちゃんこと、エルフのフィリメスがそこにいた。

 

「おはようございます。先生が生徒ってなんか変な感じですね」

「先生はもう1回青春を味わうみたいでワクワクしますよぉー」

 

先生はそのまま俺の横に腰を下ろす。

反対側に座っていたスーが「ガルルル」と睨みつけて唸りを上げて先生に視線を送る。

 

兄様(ニイサマ)を貴女にはやりませんから」

「狙ってはいけないのですか?貴女は妹なのに?」

「私は、いいのです。妹で彼女なのですから!」

 

スーとフィリメスが俺を取り合って、言い争っている。その光景をカティアは眺めていた。

俺は元の世界でモテたことはない。カティアは、大勢の前では公爵令嬢として振る舞っているので、俺に抱きついてこない。

 

「カティア、この前も思っていたのですが。あの待合室で会った時から、エルフだから兄様を狙っている狩人(カリウド)?それとも、兄様を狙う女狐(メギツネ)かしら?鋭い眼光で隙あらば兄様を拐っていく泥棒虎(ドロボウドラ)かしら?」

「安心しなさい。大好きな兄様を取られない為に私たちが彼女と言うことを後で、発表すると昨日、彼女会議(スー、カティア、フェイ)を開きましたでしょ」

 

小声でそんなやりとりをしているが、聞こえているからな?

 

 

 

入学式は問題なく終了した。

この後はそれぞれ解散となり、たいていの生徒は新しく暮らすことになる寮に戻るか、学園の見学に乗り出すことが多い。

この学園は全寮制となる。

それは俺も例外ではなく、この学園に通う間は寮に住まなければならない。

学園の敷地から外に出ることは、よっぽどのことがない限り、長期の休暇以外ではなくなる。

 

「このあとはどういたします?」

 

カティアがお嬢様モードで話しかけてくる。

俺たちはもう寮の準備は全てできている。

できれば学校の敷地の方を見ておきたいところだけど、その場合フェイを放っておくと嫌われるので、結局は寮に

1度戻ってからにする。

 

「先生会っておきたい人がいるのでぇー、皆さんも一緒に行きますぅー?」

 

俺が1度寮戻ろうと思っていると、先生がそう提案してきた。

 

「会っておきたい人ですか?」

「はいぃー。未来の聖女さんと剣帝さんですぅー。会って損はないと思いますよぉー」

 

聖女と剣帝。

聖女といえば、隣国の聖アレイウス教国の象徴的存在だ。

聖女は家柄たどを抜きにした、完全実力だけで選ばれる。

そして剣帝とは、カサナガラ大陸の人族最大国家、レングザンド帝国の国王その人のことを言う。

代々の国王は初代国王の異名をそのままに、剣帝と呼ばれることになったという。

つまり、この学園に現剣帝の息子が在籍しているということか。

聖女の方は素質のある候補の中から、剣帝の方は完全に血筋。

 

「ああ、レングザンド帝国の王太子ですわね。噂は聞き及んでおります。確か今年私たちと同じようにこの学園に入学するそうですわね。なんでも初代を彷彿とさせるような剣の天才だとか」

 

え、カティア知ってるの?

 

「シュン、あなたはもう少し世情(セジョウ)というものを知りなさい」

 

俺の顔で何かを察したのか、カティアは呆れた顔でそう言ってくる。ぐ、反論できない。それに反論したのはスーだった。

 

「兄様は、そんな世間のことより、私のことを考えていてくれれば、いいのです」

 

スーとカティアの言い争いは、気にせずに先生が話しを進める。

 

「そのおふたりは.....、ここまで言えば、(シュン)くんと叶多(カナタ)ちゃんはわかりますよねぇー」

 

俺と叶多は、顔を見合わせて、頷く(ウナヅク)

 

「さあ、シュン()、行きますわよ」

「ああ、カティア(叶多)。行こうスー。俺の手を握っていれば大丈夫だからね♪」

「はい♪兄様♥」

 

話が纏まったので、早速、移動すると、こちらに歩いてくる少年と少女がいた。

 

「あ、こっちから出向く必要はなくなったみたいですぅー」

 

少年の方は黒に近い茶髪(チャハツ)に同じ色の(ヒトミ)を持つ、精悍(セイカン)な顔立ちをしていた。

少女の方は波打つ金髪(キンハツ)碧瞳(ヘキドウ)の、どこか神秘的な可憐(カレン)さがあった。

 

「よお。そのちっこいエルフが岡ちゃん?」

夏目(ナツメ)くん。先生に対して失礼だよ。お久しぶりです先生」

 

少年と少女は日本語で話しかけてきた。

この2人。

 

「お久しぶりですぅー。夏目くんも長谷部(ハセベ)さんも元気そうでよかったですぅー」

 

先生の言葉でこの2人の元の名前がわかる。

少年の元の名前は夏目(ナツメ) 健吾(ケンゴ)、俺はこの夏目があまり好きではなかった。

スーもこの少年が嫌なのか、俺の背中に顔を埋めている。

 

「はは!岡ちゃん元々ちっちゃかったけど、なおさら縮んでんじゃん!ウケる!」

「夏目くん」

 

夏目をたしなめるのは元隣の席だった長谷部(ハセベ) 結花(ユイカ)だ。

 

「エルフだからちっちゃいのは仕方ないんですよぉー。それにぃー、今は夏目くんも大差ないじゃないですかぁー」

「俺はこれからガンガン伸びてくからいいんだよ。でよ、そこにいるの、この国の王子だろ?中身誰よ?」

 

夏目の視線が俺に向く。その目は獲物を見据えるような、獰猛(ドウモウ)な光が宿っている。

 

山田(ヤマダ) 俊輔(シュンスケ)だ」

大島(オオシマ) 叶多(カナタ)ですわ。お久しぶり」

 

手短に答える俺と、自分をアピールするようにわざとらしく前に出るカティア。スーは俺の背中で聞いていた。

 

「え?大島くん?」

「そうそう。俺、大島。びっくりだろ?生まれ変わって女になり、今は、(シュン)の彼女♥」

「山田くんの背中に隠れている娘は、誰かな?」

「ああ、シュンの妹で彼女♪」

「ええぇぇぇ?山田くん、二股してるの」

 

カティアがスーを俺の背中から、前に出して挨拶をさせる。

 

「ア...ウゥゥ....」

「スー。このお姉さんは怖くないよ♪あっちの夏目は怖いけどね。挨拶できるかな?」

 

夏目が腫れ物扱いされて、叫んでいた。

 

「はぁぁ....ふぅぅ....。ワ....ワタシハ、ニイサマのイモウトでスーレシアです」

「スーレシアちゃんは、お兄ちゃんになんて呼ばれているのかな?」

「スーとヨバレテイマス」

「そっかぁー、私もスーって呼んでもいいかな?」

「ハ...ハイ」

「スーちゃん。可愛い♥」

 

長谷部さんとスーが仲良くなってよかった。

なんにしても、夏目、今の名前はユーゴー・バン・レングザンドとは、あまり関わりたくないな。

 

 

 

 

~~~15年後・幕間(マクアイ) 1~~~

 

「先生、そろそろ学園なんかに通う理由を教えてくれてもいいんじゃないか?」

「もちろんもう一度学生として青春を謳歌(オウカ)するためですよぉー」

「先生、こっちは真面目に聞いてるんですけど」

「冗談ですぅー。まあ、一言で言うと身分が高くて保護できなかったあなたたちのような転生者の監視ですぅー」

「やっぱりそういうことかよ」

「おやぁ?想像できましたぁー?」

「これだけ不自然なくらい転生者が固まってくればある程度はな。どうやったのかしらないけど、エルフが交渉して転生者をこの学園に一箇所に纏めたんでしょう?」

「夏目くんに関してはそうですがぁー、長谷部さんに関しては本当に偶然なんですけどねぇー」

「半分は否定しないんだな」

「察しのいいカティアちゃんにごまかしは通用しませんからぁー」

「じゃあ、その察しのいい(ワタクシ)からよろしいでしょうか。残り7人ってお話(オハナシ)でしたけれど、その方々(カタガタ)、生きていますの?」

「......5人の死亡は確認しました。残り2人も、居場所は判明していますが、現状手が出せない状態です」

「そうですか。やはりそうでしょうね」

「すいません」

「先生が謝ることではないでしょう。聞いてよろしいでしょうか?死んでしまった方々のお名前を」

(ハヤシ) 康太(コウタ)くん、若葉(ワカバ) 姫色(ヒイロ)さん(システム(ガイ))、漆原(シノハラ) 美麗(ミレイ)さん((カミ)なる(リュウ))、小暮(コグレ) 直史(ナオフミ)くん、桜崎(サクラザキ) 一成(イッセイ)くん。その5人です」

「.....そうですか。けれど、それならば先生が学園に通うなんて悠長なことを言っているのにも納得ですし。もう、探す必要はないってことなんでしょうね」

「残りの2人も一応は保護活動を続けますけどねぇー」

「その2人というのは、どのような状況で、誰なのか教えてくださる?」

「秘密ですぅー」

「先生、(ワタクシ)は真面目なお話をしているのですよ」

「これは大真面目に秘密にしておくべきことなんですぅー」

「それは、保護されたという方々と会ってはいけないというのと関係ありますか?」

「うーん。そことはまた別件なんでぇー、あんまり関係はないんですがぁー」

「そうですか。ちなみに、保護されている方々はお元気ですか?」

「元気ですよぉー」

「保護されている方々のお名前は」

「それは言えませんー」

「どうしてもですの?」

「いずれは知ることになるかもしれませんが、今は知る時ではないと思っています」

「それだけでは、訳がわからないですわ」

「すいません。けど、必要なことです。必要ついでに忠告です」

「なんですの?」

「スキルはあまり鍛えないでください」

「どうしてですの?」

「言えません」

「先生は外の世界で何を見てきたのか、(ワタクシ)には想像することしかできません。けれど、シュンのお兄様が勇者だと知っているでしょ?(ワタクシ)はシュンからその勇者様の活躍を聞かされていますわ。魔物の群れから単身村を守ったとか、魔族の策略で毒を飲まされながらも撃退したとか」

「それが何かぁー?」

「この世界には危険が溢れていますわ。勇者とまではいかなくても、(ワタクシ)もシュンも立場のある人間です。そのうち戦場に立た状況になることだってあり得ますわ。(ワタクシ)は女性ですからその可能性はまだ低いけれど、シュンは王族でしかも跡取りではない。十分あり得ますわ。そんな(ワタクシ)たちに、スキルを鍛えるなというの、将来死ねと仰って(オッシャッテ)いるようなものじゃないですの?」

「違います!」

「でしょうね。先生がそんなことを言う方ではないことくらい、(ワタクシ)だってわかっていますわ。わかっていますけれど、理由の説明もなくはいそうですかと、(ワタクシ)には言えません」

「そう、ですね」

「すいません、きつく言いすぎましたわ」

「いえ、いいです。隠し事をしているのはこっちですから」

「なんでこんなにも隠し事が多いのか....も、言えませんの?」

「すいません」

「それは、エルフと関係がありますの?」

「はい?」

「不思議なんですよ。なんでエルフが転生者の保護を手伝ってくれていますの?先生はエルフに事情をご説明している感じなのですけれど、エルフは信用できますの?もしかして、先生はエルフになにか変な要求を飲まされて、強要されているんじゃありませんの?」

「そんなことないですよぉー。それは先生を信じてくださいとしか言えないですねぇー」

「こんなにも隠し事が多いですのに?」

「そこも含めてですぅー」

「そのような、軽い感じでのらりくらり言われても困りますわ」

「この話し方わぁー、先生になる前からの、()なので、そんなことを言われてもぉー、困りますねぇー♪」

「はぁー。(ワタクシ)はシュンみたいに人を直感で信じきることはできませんの。先生のことは信じたいですけれど、先生が隠し事をし続ける限り、(ワタクシ)は先生のことを心の底から信用しきることはできませんわ」

「この話し方にしても、それがむしろ正しいと思いますけどねぇー。シュンくんは真っ直ぐ過ぎるんですよねぇー」

「そのへんは同感ですわね。あの方は(ワタクシ)がいなきゃダメなのではないかと思う時がありますわね」

「おやおやおやー?身体(カラダ)だけではなくてぇー、心も女性になっているみたいですねぇー。そうなったらぁー......」

「もう、(ワタクシ)とシュンの(スーレシア)ペット(フェイルーン)の3人は、シュン()の彼女ですから、気にしませんわ♪あと、転生前の性別の男性から女性に生まれ変わってから、公爵令嬢としての立ち居(タチイ)振る舞いをしてきましたので」

 

シュンが(ワタクシ)の前に立ち、先生に吠えた(ホエタ)

 

「俺の彼女との、話は終わりましたよね。なので、これにて失礼します」

「あ....あ、はい。話は終わりました」

 

 

 

 

~~~15年後・ユリウス 2~~~

 

エルロー大迷宮に入ってから数日、僕らはタラテクトの変異種と(ドラゴン)ではなく、顔は竜、胴体は蛇のように長く、その胴体から前足と後ろ足、尻尾がある見たこともない魔物と遭遇したという地点に到着した。

ここからはゴイエフさんの案内のもと、周辺を探索して討伐対象を発見する作業となる。

 

「お気をつけください。この近辺は道幅が広く、地竜などの大型の魔物も出現します」

 

地竜か。竜種は総じて強い。

下位の竜種ならそこらへんにいる魔物と大差ないけれど、上位の竜種ともなれば、その危険度は跳ね上がる。

それこそ、ステータスだけなら勇者である僕と互角が、それ以上になるくらいに。

 

「静かすぎるな」

 

ジスカンの呟きに、僕は無言で頷き返す。

探索は始めたのはいいけれど、魔物の一匹にも遭遇しなかった。

この魔物の巣窟(ソウクツ)とでも言うべき、エルロー大迷宮で、だ。

明らかな異常。

そして、肌を突き刺すような感覚。

僕は油断なく剣を構える。

ハイリンスが盾を構え、ヤーナがいつでも魔法を使えるように集中した。

ジスカンとホーキンが周りを警戒。

ゴイエフさんも、その顔にタラリと冷や汗を流した。

 

『勇者、来た』

『来ちゃったね、勇者』

 

そして、頭に直接響く声。

音としてではなく、思念として伝わって来る声。

振り向く。

 

「グ、グレータータラテクト」

 

ゴイエフさんの呻く(ウメク)ような呟き。

グレータータラテクトは上位竜相当の強力な魔物。

それが、目の前に3体も現れていた。

けれど、僕の目はそんな巨大な魔物を素通りして、1匹の小さな魔物とそれを護る1匹の大きな魔物を捉えて(トラエテ)離さなかった。

グレータータラテクトの巨体に隠れるかのように、ひっそりと佇む(タタズム)白い体。それを護るようにとぐろを巻いている蛇のような魔物。

 

「で、出た!こいつらが今回の討伐対象!悪夢(アクム)残滓(ザンシ)悪夢(アクム)守護神(シュゴシン)!こいつらは、〈迷宮の悪夢〉が残したと言われる魔物です!」

 

迷宮の悪夢。その存在は、10数年前に突如現れた魔物達だ。

悪夢と呼称するにふさわしい、理不尽なまでの強さ。

人をまるで虫けらのように蹴散らして(ケチラシテ)いく、蜘蛛の魔物と蛇のような魔物。

その時、頭に何かが流れてくる。

 

『失礼するわ!私は、この世界の竜種より上位に存在する龍よ!』

「り、龍.....だと」

 

僕の声が漏れていたらしく、ハイリンスが話しかけてきた。

 

「どうした、ユリウス」

「すまない、ちょっと動揺した。あの悪夢の残滓をとぐろ状に護っている蛇のような魔物の名が頭に流れてきた」

 

それを聞いて、ヤーナが近寄ってきて、ジスカンとホーキンはゴイエフさんを守りつつ、聞いている。

 

「それで、名はなんて?」

「この世界の竜種より上位に存在する龍....と」

「龍とは、何だ?」

「竜種とどう違うのかな?あと、この世界って?」

「わからない!違う世界があるとでも」

 

ハイリンスが混乱しているユリウスを殴る。

 

「今は、わからない龍より、この状況を何とかしないと」

「すまない、ハイリンス」

 

そして、僕に敗北の苦さを教えた、最初の存在。

その悪夢が残したとも言われる、タラテクトの変異種である悪夢の残滓が上位種すら超えた龍に護られている奇妙な魔物が2匹。

こいつらは冒険者グループを襲い、半壊させたために、僕らに討伐依頼が出された。

 

『勇者、死ね』

『勇者は、排除』

 

悪夢の残滓と悪夢の守護神の姿が掻き(カキ)消える。

消えたと、そう錯覚すらほどの高速移動。

咄嗟に、隣にいたヤーナを抱えて、横に飛ぶ。

直後、僕が元いた場所を、鎌が横切ったその後に爆風が吹き荒れる。

8本あるうちの、鎌状になった2本の前足、それが(クウ)を切っていった。その後、龍と名乗った魔物が口を開き、魔法が放たれ、僕が元いた場所が爆発する。

ヤーナを抱えながら地面を転がり、受け身を取る。

転がった勢いをそのままに起き上がり、そのままヤーナを立たせる。

 

「ヤーナ、魔法での支援を。攻撃は、当てられないと見たほうがいい」

「わかりました!」

 

あのスピードだ。よほど魔法の命中精度がない限り、攻撃は当たらないだろう。

師匠なら当てられるだろうけど、それと同じ成果をヤーナに期待するのは酷だ。

あの人は色々と規格外だから。

僕の指示と同時に仲間が動き出し、それに呼応するかのようにグレータータラテクト3体も動き出す。

グレータータラテクトは平均ステータス2000前後の強力な魔物だ。

けれど、この場で最も危険な魔物は、それを従える悪夢の残滓と悪夢の守護神に他ならない。

 

「グレータータラテクトは僕が何とかする!みんなはその間悪夢の残滓と悪夢の守護神を抑えていてくれ!」

 

指示を出しつつ、迫り来るグレータータラテクトに向けて駆け出す。ジスカンが鎖鎌を悪夢の残滓に向けて放つ。

それを、悪夢の守護神が不思議な魔法かスキルを使い、悪夢の残滓を護った。

 

「おい、ユリウス。3体のグレータータラテクト早く倒して、此方(コッチ)の加勢にきてくれ!」

「悪夢の残滓のスピードは衰えなしっすか。悪夢の守護神の名は伊達じゃないっす」

 

グレータータラテクトは肉薄する僕に対して、糸を吹き付けて足を止めよう(トメヨウ)としてきた。

けれど、光り輝く剣がその糸を切り飛ばし、消滅させていく。

蜘蛛型の魔物の厄介な糸であろうと、僕の聖光をからめ捕ることはできない。

そのまま先頭のグレータータラテクトに斬りかかる。

グレータータラテクトは前足でガードをする仕草をしたけれど、その前足ごと頭部を真っ二つにした。

体液を零れ(コボレ)落としながら倒れるグレータータラテクト。

その巨体を飛び越えるかのように、2体目のグレータータラテクトが僕に襲いかかる。

それを、準備していた魔法で撃ち落とす。

聖光球(セイコウキュウ)。浮遊する小さな玉が、グレータータラテクトの体を吹き飛ばす。

吹き飛ばされたグレータータラテクトの体は、衝撃に耐え切れずに破裂しながら墜落していった。

残り1匹。

そうこうするうちにヤーナの魔法が僕たちにかかる。

各種ステータスを向上させる魔法に、毒の耐性を高める魔法。

蜘蛛型の魔物を相手にした時、警戒すべき毒と、糸!

チラリと後ろを振り返れば、天井から糸が仲間たち目掛けて降り注いでいた。

ジスカンが炎を纏った(マトッタ)鎖鎌を振り回してなぎ払う、がその糸は火をものともせずに、仲間たちに襲いかかり、切り刻んでいく。

僕は、切り刻まれた仲間たちを見て、動揺したのを感じた、残り1匹のグレータータラテクト猛毒を孕んだ(ハランダ)巨大な牙が僕めがけて迫って来る。

グレータータラテクトの牙は、僕の目の前で光の壁に遮られていた(サエギラレテイタ)

光魔法の光壁(コウヘキ)

動きの止まったグレータータラテクトに聖光球が炸裂した。

僕は急いで(キビス)を返す。悪夢の残滓と悪夢の守護神は、僕の方を見ていない。

チャンスだと思い、背後から斬りかかる。

悪夢の残滓と悪夢の守護神はその斬撃を、まるで後ろに目があるんじゃないかというくらいの反応で、余裕でかわしてみせた。

けど、想定内だ。

後ろに飛ぶ悪夢の残滓目掛けて、雷の魔法を放つ。

雷の魔法は光の魔法より劣るが最速で放てる。

いくら悪夢の残滓のスピードが速かろうと、避けきれるものではない。

直撃を確信して放った魔法は、何かに防がれて、あらぬ方向へと屈折して、続けて放った光の魔法を悪夢の残滓が放った闇の魔法に相殺(ソウサイ)された。

これは、悪夢の守護神が悪夢の残滓を護ったのか。

 

「くっ!?」

 

思わず声が漏れてしまった。

魔法を使うこと自体は驚く程のことじゃない。

人語(ジンゴ)を解している時点で、相当高い知性があるのはわかっていた。

それならば、魔法を使っても不思議じゃない。

けど、僕の、勇者の放った魔法を屈折させ相殺するなんて、しかも、続けて放った光の魔法に咄嗟に放ったであろう魔法で、だ。

これは、ステータスは上位の竜種、下手をすればその先の龍種にすら届いているかもしれない。

しかも、悪夢の守護神は龍と言っていた。

嫌な汗が滲んで(ニジンデ)くる。

ホーキンの投げナイフを悪夢の守護神が防ぎ、背後をとっていたジスカンが炎を纏った剣を振り下ろす。

ジスカンは複数の武器を、その場の状況に応じて使い分けることができる。

普段よく使うのは威力のある大斧(オオオノ)だけど、今回は相手のスピードに合わせて剣を選択したようだ。

が、悪夢の守護神の防御力を壊せず、怯んでいる隙に、悪夢の残滓はすれ違いざまに鎌でジスカンの体を切り裂いて行った。

 

「ぐっ!」

 

短いうめき声とともにその場に膝をつくジスカン。

追撃をしようと反転してきた悪夢の残滓の前に、ハイリンスが立ちふさがる。

 

「ヤーナ!」

「はい!」

 

ハイリンスの叫びに、ヤーナが答える。

すぐさまジスカンの元に行き、魔法で治療を施す。

ハイリンスが悪夢の残滓の攻撃を受け止めた瞬間を狙って、僕は魔法を放つ。

が、またしても、悪夢の守護神の邪魔が入り、悪夢の残滓に魔法は当てられなかった。

 

「くそがっ!!」

 

つい、言葉に品がなかった。

 

「んっ!?」

 

今、一瞬、悪夢の残滓の様子が変わる。

悪夢の残滓を見て、悪夢の守護神の様子も変わっていく。

なにかに、怯えている?

何はともあれ、チャンスには違いはない。

ジスカンが硬直して動かない悪夢の残滓と悪夢の守護神を、鎖鎌で拘束する。

思い出したように動き出し、拘束から抜け出そうと暴れる悪夢の残滓と悪夢の守護神。

そこに、ホーキンの投げナイフが突き刺さる。

麻痺の効果を付与したナイフだ。

悪夢の残滓と悪夢の守護神は体を痙攣させ、動きを止める。

そこに、僕は準備を済ませた魔法、聖光線を放った。

 

 

「お疲れ様でした」

 

ゴイエフさんの労いの言葉がどこか遠くに聞こえる。

周りを見回してみてま、僕ら以外の姿はない。

悪夢の残滓と悪夢の守護神が動きを止めたのは、一体何だったんだろうか?

あれがかければ、負けていたのは僕らの方だったかもしれない。

 

「ユリウス、気になるかもしれんが、俺たちの勝ちだ。今はそういうことにしておけ」

 

ハイリンスの言葉に頷く(ウナヅク)

そうだね。わからないことを気にしてもしょうがない。

なぜ、悪夢の残滓と悪夢の守護神は勇者である僕を狙ったのか。

なぜ、奴らは動きを止めたのか。

なぜ、勝ったのにこんなにも不安なのか。

わからないのだから、気にしても仕方がない。この先何が来ようと、何が起ころうと、僕は勇者として戦い続けるしかないのだから。

 

「とりあえず、早くこんなところから抜け出しましょう」

「あ、後ろに蜘蛛」

「ええ!?どこ、どこですか!?」

「すまん。見間違いだ」

 

ハイリンスにからかわれたヤーナが頬を膨らませる。

それをジスカンが呆れたように見つめ、ホーキンが苦笑(クショウ)しながら眺めている。

いつもの風景。

うん。スッキリはしないけど、これでよかったんだ。

あの悪夢の残滓と悪夢の守護神による被害はこれでなくなる。

人々の安全を守るのが勇者としての使命。

なら、それを達成することができたことを素直に喜ぼう。

僕らはその後、

何の問題もなくエルロー大迷宮を抜け出すことに成功した。

 

 

 

「いかがなさいましたか?」

「んー?イヤー、フライングしちゃったのがいたらしくて、その処理をねー」

「はあ」

「ああ、大丈夫大丈夫。君には関係ないことだから。気にしなくていいよ」

「それならばいいのですが」

「そんなことよりも、自分の仕事を進めてくれた方が私は嬉しいかなー」

「仰せのままに、魔王様」

「下がっていいよ。それと(シロ)ちゃんと(クゥ)ちゃんを呼んでくれるかな」

 

 

10分後

 

 

私と空は、魔王アリエルがお茶をしているテラスへと呼ばれた。

 

「白ちゃんと空ちゃん、そんな所に突っ立ってなくて、此方(コチラ)に座って、私とお茶を楽しもうよ♪」

 

私たちはアリエルに言われるがままに、可愛らしい丸いテーブルにつく。

 

「貴女たちがエルロー大迷宮に置いてきた、子供が勇者に接触したのね?まだ、その時ではないの?わかるかな?うん?」

「「.......」」

 

(魔王に追われていた時に、産み落とした卵かな?空?)

(それしかないね、白。私の子供は白の子供達を護る為に動いていると思うけど)

 

「貴女たち?そこで、こそこそ話してないで、アリエルちゃんにも聞こえるように、話してくれないかな?い・い・か・な?」

「「あ....は、はい!」」

「うん♪いい返事だね♪それで、説明はないのかな?」

「その子供達は、魔王様に追われていた時に産み落とした卵から孵った(カエッタ)内の1体.....かと」

「そっかぁー。まあ、私が睨みを利かせた(キカセタ)から、いいけどさぁー。子供達の躾はちゃんとしないとね♪育児放棄はだ・め・だ・よっ♪」

「「はいっ!」」

「じゃあ、お茶会をしようかっ♪魔族領で1番のケーキ屋さんのを取り寄せたのっ♪あと、紅茶も色々、取り揃えたからね♪これからの事を楽しくお話しようね♪」

 

 

 

 

~~~15年後・シュン 2~~~

 

今日の授業は魔法の実践(ジッセン)だった。

ある程度の座学を取り入れた俺たちは、実際に魔法を使うための授業を受けられるようになった。

 

「それでは、これから魔法を使うための(ツエ)を配ります。今日は安全に配慮して、水の魔法が込められた杖にしました」

 

若干やる気がなさそうな声で、魔法担当の教師であるオリザ先生が杖を配り始める。

集まった生徒たちは我先にと杖を受け取っていく。

 

「皆さん、魔力感知と魔力操作は持っていますね?持っていない人はこの授業は受けられませんからね?持っていなかったら素直に名乗り出てください」

 

魔力感知と魔力操作を持っていない生徒はいない。

というか、この前の授業でオリザ先生が教えたところじゃないか。

 

「では、魔力を集中させてください」

 

オリザ先生の言葉に従い、魔力を集中させていく。

 

「集中したら、杖に魔力を流し込んでみましょう。あとは杖に込められた魔法が勝手に発動します」

 

え?それだけ?

 

「込められた魔法は水魔法レベル1の水球(ミズタマ)です。(ミズ)(タマ)を飛ばすという簡単な魔法ですが、絶対に人に向けて出さないようにしてください。的はありますから」

 

オリザ先生が指さした先に、いくつかの的が設置してあった。

生徒たちは思い思いに的に向けて魔法を放ち始める。

大抵は魔力が足りなかったり、魔法が不完全になっていたりして、的にたどり着く前に消えてしまっている。

 

「この時間いっぱいは好きに魔法を使って構いませんから。たくさん使えばスキルとして水魔法を獲得することもできます。ただし、自分の魔力の残量にだけは注意してください。危ないかなと思ったらそこで一旦中断してくださいね。無理して倒れても知りませんから」

 

なんて無責任な。

けど、多分毎年倒れる生徒がいるんだろうな。

はしゃぎすぎて自分の限界以上に魔法を使ってしまっても仕方がない。

 

「ミズマホウねー。どうせだったらツチマホウのホウがヨカッタノニ」

 

肩に乗ったフェイがそんな愚痴を漏らす。

フェイは地竜だから、適性的に水よりも土の魔法が得意なはずだ。

俺が得意な適性属性は光が最も高く、次いで(ツイデ)水が高かった。

 

(ワタクシ)、水は苦手ですの。逆に火が得意なようですけれど」

 

カティアも愚痴っていた。自分の得意な属性ではなかったから。そんな会話が聞こえたのか、離れた場所からユーゴーがオリザ先生やみんなに聞こえるように叫ぶ。

 

「水より、俺は火が得意なんだけどな!」

 

それに反応した、オリザ先生が答える。

 

「ユーゴー君。皆がみんな、得意魔法をしていたら、収集がつかなくなるので、今日の魔法の実践は水なのです。次の実践の前には、投票で決めた魔法をしましょう」

 

ユーゴーがオリザ先生の返答に納得したのか、的に向かい、水魔法を放っている。が、ユーゴーの口がにやついている。

ユーゴーは、的に次々、水の弾を当てていく。

長谷部ことユーリは一心不乱に的に向けて魔法を発動しまくっている。

ちなみに、岡先生はこの場にいない。

先生は授業に出たり出なかったりを繰り返している。

授業に出ていない時に何をしているのか、それは教えてくれない。俺たちは、これから、先生を信じてもいいのだろうか?

あとは、スーなのだが、ずっと俺の背後にいて魔法を使おうとしていない。

 

「スー、魔法の練習をしなくていいのか?」

「兄様よりも先に私がやるわけにはいきません。兄様の完璧な魔法をその他の有象無象(ウゾウムゾウ)に見せつけ、憧憬(ドウケイ)を一身に受けている間にこっそり練習します」

 

あ、うん。ありがとう。ハードルが上がって、お兄ちゃんは物凄くやりにくいんだよね。

スー()の....いや、スーレシア(彼女)に誇れる俺であろうと気合いが入る。

そうこうするうちに何人かの生徒が魔力切れのため一時中断し、休憩を始めた。

的が空いてきたし、俺も魔法を使ってみるか。

今まではアナに止められて(トメラレテ)、魔力の制御練習はしてきたけど、魔法を使ったことはなかったからな。

ちょっとワクワクしてきた。

 

同時に背後からかかる(彼女)のプレッシャーに緊張してきたけど。格好の悪い姿を見せられない。

ユーゴーの方に目をやると、その手に持った杖を離し、魔力を高める。

次の瞬間、発動したのは火の魔法。あいつ、既にスキルとして火魔法を取得していたのか!

横に並んだ的、その全てが火に飲み込まれる。

圧倒的な破壊力。

的に当てることさえできていなかった生徒たちには、その力がどれほどなのかよくわかっただろう。

自分の力を見せつけるにはいいタイミングだ。ユーゴーはそれを見越して、自分の力を見せつけるためにわざとこんなことをしでかしたんだろう。

けど、やりすぎだ!

的があった場所には炎が渦巻いている。

下手をすれば炎がそのまま広がって、この辺一帯が火事になりかねない。

俺は手に持った杖にありったけの魔力を注ぎ込み、炎に向けて解き放つ。

俺の魔力を吸った、杖の中に仕込まれた水の魔法が発動し、水球(ミズタマ)を撃ち出す。

炎に直撃した水球(ミズタマ)は、そのままそこで爆散(バクサン)し、水柱(ミズハシラ)を上げた。

.....我ながら、とんでもない威力だ。

炎は完全にその水柱に飲み込まれ、消え失せていた。

《熟練度が一定に達しました。スキル〈水魔法Lv 1〉を獲得しました》

水魔法のスキルを獲得した。

一度の発動で獲得できたのは、よほど俺の適性が高かったからなのか。

 

「流石は兄様です!レベル1の水魔法で、レベル5の火魔法を打ち消してしまわれるなんて!」」

 

俺を現実逃避から引き戻すかのように、スーがことさら大きな声で俺のことを賞賛する。

そうか、あれはレベル5の火魔法だったのか。

案の定、俺に見せ場を奪われた形になったユーゴーが睨んでくる。

けれど、何かをする前にその背後に、オリザ先生が立っていた。

 

「ユーゴー君、あれ程、水の魔法が込められた杖での、魔力操作の実践だと言っていたのに、貴方という人は、ちょっと話を聴こうか?」

「俺がなんであんたの言う通りに、水魔法をしないといけないんだ!俺はあんたと話をしなきゃならないんだ?」

「いいから、ちょっと来なさい」

 

有無を言わせずにユーゴーを連れて行くオリザ先生。

後には、破壊し尽くされた的と、どうしていいかわからずに呆然とする生徒たちだけが残された。

 

『アノカタは、ナニがシタカッタのデショウネ』

 

フェイの片言の日本語が、虚しく俺の耳に残った。

視界の端に、ざわつく生徒たちを宥めているカティアの姿が映る。いつもスマン!

この日を境に、俺はユーゴーに目をつけられ、目の敵にされ始めた。

 

 

 

~~~15年後・幕間 2~~~

 

「カティア、どうして兄様の活躍の興奮を鎮めてしまったの?」

「スー、あなたあれをシュンが望んでいるとでも?」

「思わない、けど。.....カティアと兄様の関係は何?」

「何って、スーと一緒で、シュンの彼女ですわよ?だからこそ、シュンの望んでいないことは控えないとね♪」

「....はい。私とカティアは、兄様の彼女ですよ♪これからは、兄様の望まないことはやめます。が、剣帝は興味がないのでいいとして、センセイとかいうエルフと聖女候補とか。あなたたちは一体何なの(ナンナノ)?」

「あなたとフェイは、日本語(イセカイゴ)を習いましたわよね?」

「.....兄様から教えていただきました。あれが関係しているのですか?じゃあ、イセカイからいつから来ていたのですか?」

「いつから、というか生まれた時からです。(ワタクシ)たちは、多分、元の世界で?元の教室で死んだんだと思います」

「そ、それは、どういう....こと、です....か?」

「元の世界には、ライトノベル(創作書)がありまして、そのお話の傾向には、元の年齢のまま異世界に呼ばれるお話と、元の世界で死んでしまってから記憶はそのままで異世界で生まれ変わるお話がありますの」

「.....そう、兄様たちは生まれ変わり、......元の世界では死んだんですね.....」

「センセイというエルフは....」

「元の世界で、(ワタクシ)たちの先生ですわ」

「先生ですか。お話をしている時の兄様の目は先生を見ている目ではなくて、一人の女性を見る目をして、お話をしています」

(シュン)は、元の世界で先生に淡い恋心を持っていました。が、年齢という壁がありましたから、それを心の奥底に押し殺していたのでしょうね♪今は、その垣根がなくなったので、あの様になってしても仕方がないですわ」

「私とカティアとフェイの中に入ると?」

フィリメス(センセイ)が嘘や隠し事をしている内は、そんなことはあり得ないでしょうけれどね♪だから、私もスーもフェイも警戒をしなくてはなりませんわ」

「そのセンセイは、元の世界の時から、その様な性格なのですか?」

「それはないですわ。だから、疑っているのですわ。その情報を無理やりエルフたちに利用されているかも」

 

 

 

~~~15年後・シュン 3~~~

 

そろそろフェイのレベル上げをしなければならない。というのも、フェイは地竜の幼体。

魔物の一種である彼女は、レベルを上げて進化しないと、幼体のまましんでしまう。

成長するためには魔物を倒してレベルを上げる必要がある。

フェイはそろそろ進化しないと危ない時期にさしかかっていた。

ただ、俺は学園から出ることができない。

そこで、侍女(ジジョ)のアナに話を通し、彼女にフェイのレベル上げを手伝ってもらうことにした。

 

「それでは行ってまいります。シュレイン様♪チュッ♥」

 

フェイを抱えて学園を去っていくアナ。去り際に頬へのキスを残していく。この後は、スーとカティアにキスをされる俺。

随伴(ズイハン)の兵士と思われる男が数人いるけれど、アナもハーフエルフで見た目通りの年齢ではない。

魔法使いとしての腕前は王国の中でも上から数えたほうが早い。

きっとフェイのことを無事に進化させて戻ってきてくれるだろう。

 

フェイを送り出してから数日後、なんの問題もなく進化して帰ってきた。

レベルを上げるということは、魔物と戦うということ。

命の危険があるので、少し心配していたのだか、杞憂に終わったようだ。

そこは良かったのだが、帰ってきたフェイの姿にこそ問題があった。

 

「でかくなってるな」

『ワタシ、セ...セイチョウキ、ですのヨ♪』

 

帰ってきたフェイの体は、相当でかくなっていた。

元は俺の肩や頭の上に乗るくらいの、大きさだったのに対して、今は、尻尾(シッポ)の長さまで入れれば、俺の身長と大差ないかもしれない。

手乗りサイズが、いきなり大型犬くらいにまでなってしまった。

 

『これでもまだ、チイサイほうよ?もうイチダンカイ、シンカしたらもっとオオキクなりますよ』

「そうなったら、もう室内にはいられないな」

『それは、コマルわね』

 

魔物と言っても、(女の子)なので、外で寝起きさせるのは、させたくない。

 

『まあ、このスガタにまでシンカすればジュミョウはソウトウ、ノビテルはずよ。アセルことはないわよ。シュレイン♪』

「フェイ!?俺の名前を呼べるように、なったのか?」

『まだ、シュレインに教えてもらった、ニホンゴは、まだ、カタコトですけど、ネ♪』

 

俺が教えた日本語をスーは直ぐに理解してくれた。が、魔物のフェイは、片言でも、日本語を喋れるまでになった。

あと、進化して帰ってきたので、ステータスを確認したいと、本人に了承を得て(エテ)鑑定してみた。

結果、俺よりも強かった。

 

『魔物だとステータスのノビは人間よりもイイシネ!それに....ね♪ワタシは女の子なのよ!ツヨクなるくらいなら、カワイクなりたいわ』

 

だからって、進化前よりも変わりすぎじゃないか?

 

「あー、そりゃ、そうだな。女の子だから、可愛くなるんだったら、嬉しいよね♪」

『そういうことヨ。ヒツヨウだからツヨクなるけど、タタカイタクないし、ワタシのスキル、カショク』

 

知ってる。過食というのは、食えば食うだけSPが貯蓄されるというスキルだ。

 

『それをモッテルせいでアナが魔物の肉タベサセテクル。強い魔物の肉は食べればステータスが上がりやすくなるからと、ダケドね。ワタシのペースでタベサセテクレナイ』

 

なんというか、御愁傷様(ゴシュウショウサマ)

しかし、こうして改めて見てみると、魔物のステータスは高いな。

フェイの平均ステータスは700前後。

しかも、まだまだフェイはこれでも下位竜。

それに、たった数日のレベル上げでこうなるのだ。

 

 

 

 

~~~15年後・幕間 3~~~

 

「大きくなりましたわね」

『そうなのよー。....話は変わりますが、貴女とシュレイン様は異世界から来たのですね?他にも、居てるのですか?それと、貴女は異世界では男性だったとシュレイン様が?』

「はい。(ワタクシ)は元の世界では、男性でした。ですが、こちらの世界で女性として生まれ変わってからは、心も女性ですわよ。ですから、(ワタクシ)たち3人はシュレインの彼女になれたのですわよ♪」

『そうだったわね♪カティア』

「貴女、日本語が上手になりましたね。フェイ♪」

『私が卵から孵ってから、シュレイン様に日本語を教えていただきましたから、スーレシアさんと一緒に♪でも、人族と竜族では、声帯が違いましたから、いままで、片言で申し訳ありませんでした』

「構いませんわ♪フェイ」

 

 

 

~~~15年後・シュン 4~~~

 

学園生活は順調だ。

授業の内容はもう既に学び終わっていたものがほとんどだったので、

ユーリに関して仕入れた情報をおさらいしていこう。

長谷部の今の名前が、ユーリーン・ウレンという。

苗字(ミョウジ)のウレンというのは、孤児院代わりの教会の名前だそうだ。

長谷部(ユーリーン)は捨て子だったそうだ。

この世界では捨て子が多い。

前世の世界ですら捨て子はいたが、文明が発達していない上に魔物が跋扈(バッコ)しているこの世界では、尚更(ナオサラ)その数は多い。

赤ん坊の頃に捨てられ、物心ついた時には教会でくらしていたなんてことは、ありふれている。

けど、ユーリーンはそんなありふれた孤児たは事情が違う。

生まれて間もない頃から前世の記憶を持ち、しっかりとした自意識があった。

自分が気がついたらいきなり赤ん坊になっていた。

俺も経験したけど、これはかなりショックだ。

混乱するし、何より不安になる。

この先自分がどうなるのか。前の自分は死んでしまったのか。

それなら、前の人生はどうなってしまったのか。

俺がそうだったように、不安は尽きなかったはずだ。

ましてや、ユーリーンはそんな状態で捨てられた。ショックは俺の比じゃなかっただろう。

正直、俺なはその時のユーリーンの気持ちを想像することはできない。

ユーリーンはその極大な不安の中あるものにすがった。

それが、神言教(シンゴンキョウ)

ユーリーンを拾った教会が信仰する宗教であり、その教義(キョウギ)は人族全体に深く浸透している。

大雑把に訳すると、「神言を聞くためにスキルを伸ばしていきましょう」というものだ。

神言。これがなんなのか、俺にはわからない。

ゲーム的に言うならシステムメッセージみたいなものなんだろうけど、この世界ではされが聞こえるのが当たり前だった。

この声が聞こえるのは違和感を覚えるのは、俺たち転生者だけだろう。だから、聞こえて当たり前。スキルがあるのも当然。それがこの世界の常識だ。

そして、俺と同じ感覚を持つはずのユーリーンもまた、この宗教にドップリとはまっていた。

 

「シュン君はスキルをいっぱい上げてるんだね。素晴らしいことだと思うよ。これからもドンドンスキルを上げて、神様の声をいっぱい聞こう」

「シュン君はレベルは上げてないの?ダメだよ!レベルを上げると神様の声が聞けるんだよ?神様の声を聞くためにもレベルを上げなきゃ」

「シュン君は鑑定が使えるんだよね?じゃあ言っておくけど、禁忌(キンキ)という名前のスキルがある人がいたら教えて。神様が禁忌と定めるようなスキルを持っているなんて、許されないことだからね。絶対に許しちゃいけないの。絶対にね。神様さえ忌避(キヒ)するような禁じられた行為をしたってことなんだから。生きてる価値もないんだよ。殺さなきゃ。だから、絶対に教えてね?約束だよ?」

「シュン君、今日スキルが上がって神様の声が聞けたの!ああ、神様の神々しい(コウゴウシイ)声が聞けた。今日はきっと幸せに過ごせるわ」

 

引いた。ドン引きだった。

神様のことを話しているユーリーンの目が濁って見えてしまっても仕方ないと思う。

けど、ユーリーンはもともとこんな子じゃなかったはずだ。

どこにでもいる、普通の女子高生だったはずだ。

それをここまで変えてしまったのは、きっと彼女の環境なのだ。

転生してしまった恐怖。親に捨てられた絶望。

異世界で暮らしていかなければならない不安。

そんなところに懐かしい日本語で聞こえてくる神言は、彼女の心の支えになってもおかしくない。

しかも周りはその神言を崇め奉る人間ばかり。

そんな状況で、ユーリーンが神言教の教えに傾倒してしまったのも、仕方ないのかもしれない。

まあ、それで傾倒しすぎて聖女候補にまで上り詰めてしまえのはどうかと思うがな。

毎回挨拶(アイサツ)がわりに「神言教に入る気になった?」と聞いてくるのだ。

悪いけど、俺は

無宗教派なんだよ。

やんわり断ってはいるものの、ユーリーンが諦める様子はない。

それどころかグイグイ攻めてくる。

その度にスーが半ギレしてユーリーンに襲い掛かり、カティアが仲裁に入る光景がお約束になりつつある。

 

相変わらず、ユーゴーは俺のことを嫌っているし、ユーリーンは勧誘が激しくて、考えないといけない。

それに、先生も相変わらず謎だ。

授業にも出ないでどこかに行ったかと思いきや、ひょっこり現れて授業を受けたりする。

会った時にいろいろ質問してみても、のらりくらりとかわされることが多い。

特に、京也(キョウヤ)の所在の話になると、その傾向が強い気がする。

けど、先生はその所在をなかなか教えてくれない。

どうにもある程度は把握しているっぽいけど、保護はしていないようだ。

今京也がどこでどうしているのか、気になるが、先生がこの調子じゃ教えてもらうことはできそうにない。

 

 

 

~~~15年後・幕間 4~~~

 

「大島くん、結構、胸があるのね?何カップくらいあるの?D...その大きさでそれはないわね。じゃあ、Eかな?それとも、F?」

「俺?ていうか、転生してから女性として生きてきたけど、自分の胸が何カップか、どうやって測るか、教えて欲しいなー。長谷部さん。いや、ユーリーン」

「女としては先輩だから、胸の測り方を教えてあげる。まず、姿見(スガタミ)を横に、メジャーでトップバストとアンダーバストを測って、その差でわかるのよ♪」

「ありがとう、ユーリーン♪」

 

 

 

 

~~~15年後・シュン 5~~~

 

今日は課外活動が行われる日だ。

課外活動の探索は学園からほど近い山で行われる。

班の内訳はくじで決められ、あまりにも偏った編成にならない限りは交換などはしない。

スー、カティア、ユーリーンとは別々の班になってしまった。

そして、俺はユーゴーと同じ班になってしまった。

班の編成は、俺、ユーゴー、岡先生ことフィリメス、騎士の息子のパルトンの4人に魔法系の教師であるオリザ先生を加えた5人だ。

 

「では、一旦解散としたす。各々(オノオノ)昼食を食べたあと、班ごとに分かれて行動してください」

 

まとめ役の教師がそう宣言し、説明会が終わった。

 

「兄様、しばしお別れです。寂しいです」

「スー、1日くらいで、カティアと仲良く」

「1日だけでも大問題です。あのフィリメス()が兄様の班には居てるのですよ!」

「だ....大丈夫だと思うから。スーも気をつけて。安全は確認されているから、滅多なことなんか起きないよ」

「シュン、ユーゴーにはくれぐれも注意してくださいね?あの方、こちらの世界に来て完全に頭の制御が出来ていませんわ!岡崎(オカザキ)先生に確認した死亡者の中に夏目(ナツメ)くんの暴走を止めていた桜崎(サクラザキ)が本当に死亡しているのだとしたら、もう、あの方は今、以上に暴走しますわ」

「そうだな、気をつけておくよ♪チュッ♥」

「あぁぁぁぁっ!カティアにだけ、キスをして、兄様!私にもしてください!」

 

スーが頬っぺたを俺に向けて、待っていた。

 

「はい♪どうぞ♪」

「いくよ、スー♪チュッ♥」

「えへへへ、好きですよ、兄様♥」

 

別れ際のカティアとのやり取りが、嘘のように、探索は順調に進んでいった。

魔物に出会うこともなく、無事に野営を予定していたエリアに到着した。

 

「シュレイン様、ここが野営ポイントですか?」

「そうだね。予定より早く着いたみたいだ」

男の子たちは体力がありますからねぇー。女の子の先生は付いて行くのが大変でしたよぉー」

「下らねぇ。岡ちゃんのステータスも結構高いんだろ?このくらいで根を上げる訳がねーだろ」

「それを知ってても知らないふりして気遣う言葉をかけられるのがぁー、いい男の条件だと思うのですよぉー」

「いちいち女の顔色見るような男になる気はねーな」

「あぁー、俺様系もありっちゃありですねぇー」

 

ユーゴーと先生がそんなやりとりをする中、俺とパルトンが野営の準備を始める。

オリザ先生はそんな俺たちを無言で眺めるだけだ。

 

野営の準備が整ったあと、予定より早く到着したことまあって、少し時間が余った。周りを軽く確認することにした。

そして俺は1人、山の中にいた。

そこに、剣戟(ケンゲキ)の音が響き渡った。

それは、近くで探索していたはずのパルトンのところが聞こえてくる。

俺は急いでパルトンのところに駆け出そうとして、目の前に立ちはだかる人物にそれを阻止された。

ユーゴーだ。

 

「よお」

「何のつもりだ?ユーゴー、いや、夏目」

 

気さくに話しかけてくるユーゴーに、俺は緊張した声を返す。

 

「いやな、ここらへんでお前には退場してもらおうと思ってな」

 

信じられないことを平然と言うユーゴー。

 

「冗談だろ?」

「冗談に見えるか?目障りなんだよ、お前」

 

その瞬間、ヘラヘラ笑っていたユーゴーの顔から笑みが消える。

 

「この世界は俺のための世界なんだよ。俺が最強になって俺が君臨するための世界。それなのに俺と同じかそれ以上の奴がいちゃ、締まらないだろ?」

「何トチ狂ったこと言ってるんだ?この世界は誰のものでもない。正気に戻れよ」

「正気さ。スキルさえあれば何でもできる夢みたいな世界だぜ?まさに俺のためだけにあるような世界じゃねーか。けどな、その世界にお前みたいな奴はいらねーんだ。だから死ね」

 

ユーゴーが剣を抜く。俺も剣を抜かざるを得ない。

この演習中に何か問題が起こるかもとは思っていたが、殺しに来るなんて。冗談ではないことくらい、わかる。

混乱し、焦る内心を押し殺して、ユーゴーのステータスを見る。

 

〈ユーゴー・バン・レングザンド Lv31 人族

ステータス

HP:628/628(緑)

MP:566/566(青)

SP:609/609(黄)

SP:502/611(赤)

平均攻撃能力:608

平均防御能力:599

平均魔法能力:546

平均抵抗能力:522

平均速度能力:583

スキル

「HP自動回復Lv 4」「MP回復速度Lv 4」「MP消費緩和Lv 4」「SP回復速度Lv 8」「SP消費緩和Lv 8」「破壊強化Lv 7」「斬撃強化Lv 7」「打撃強化Lv 4」「火炎強化Lv 4」「魔力感知Lv 8」「魔力操作Lv 5」「魔闘法Lv 5」「魔力付与Lv 4」「魔力撃Lv 2」「気闘法Lv 7」「気力付与Lv 7」「気力撃Lv 7」「火炎攻撃Lv 3」「麻痺攻撃Lv 2」「剣の才能Lv 6」「投擲Lv 5」「立体機動Lv 6」「命中Lv 8」「回避Lv 8」「隠密Lv 5」「無音Lv 1」「帝王」「集中Lv 9」「予測Lv 3」「演算処理Lv 3」「火魔法Lv 5」「破壊耐性Lv 2」「打撃耐性Lv 2」「斬撃耐性Lv 3」「火耐性Lv 3」「毒耐性Lv 2」「麻痺耐性Lv 1」「苦痛耐性Lv 1」「視覚強化Lv 10」「望遠Lv 1」「聴覚強化Lv 10」「聴覚領域拡張Lv 1」「嗅覚強化Lv 8」「味覚強化Lv 7」「触覚強化Lv 8」「身命Lv 5」「魔蔵Lv 4」「瞬身Lv 5」「耐久Lv 5」「剛力Lv 5」「堅牢Lv 5」「道士Lv 4」「護符Lv 3」「縮地Lv 5」「n%I=W」

スキルポイント:350

称号

「魔物殺し」

 

強い。俺とは逆にやや物理寄りのステータスながら、安定した強さだ。

何よりも厄介なのが、帝王のスキルだ。

 

〈帝王:スキルの効果を高める。また、威圧により相手に外道属性(ゲドウゾクセイ)(恐怖)の効果を与える〉

 

威圧による恐怖は一応レジストできている。

けど、スキルの効果を高めるなんて、反則的な効果だ。

ユーゴーが剣を振りかぶってくる。

俺の剣がそれを迎え撃つ。

くっ、重い!

 

「ふ、知ってるぞ?お前、ろくにスキルポイント使ってスキル取ってないんだろ?それにレベル上げてない。ポイントっていうのはな、使ってこそのものなんだよ!こういうふうにな!」

 

ユーゴーの剣から火炎が迸る(ホトバシル)

俺はそれを間一髪で避ける。

 

「あんまり派手にやりすぎると、他の班の連中に気付かれるかもしれないからな。とっととくたばれ」

「お前、こんなことしてただで済むと思うのか?」

「大丈夫大丈夫。俺は未来のこの世界の(ヌシ)だぜ?何しても許されるに決まってんだろ?それに、ちゃんと工作は出来てるんだよ。俺の手下が今頃他の連中を始末してるはずだ。お前を始末したあと連れてきた魔物を解き放つ。ここでは発生しないような強力なやつだ。哀れ生徒と教師は突如発生した魔物に食い殺されました。とさ。俺はその魔物を打倒し、生還を果たすってシナリオだ」

「そんな杜撰(ズサン)な計画で、告発されないとでも思ってるのか?」

「誰が?誰をだ?お前、ここは日本じゃねーんだよ。俺は未来の剣帝だぜ?ちょっとくらい不自然でも、誰が俺に意見を言える?それで国際問題になってもいいのか?いいわけねーよな。そういうことなんだよ。日本みたいに犯罪は全て(オオヤケ)にされるとはおもわねーことだ」

 

唖然(アゼン)とした。ユーコンがあまりにも、日本人離れした発想をしていることに。

 

「じゃあな。一応お前のことは記憶の片隅に憶えておいてやるよ」

 

巨大な火炎を纏いながら振り下ろされた剣。

しかし、それが俺に届くことはなかった。

 

「夏目くん。君はやりすぎた」

 

いつもの間延びした声とは違う、ゾッとするような冷淡な口調。

小さなエルフの姿に似合わない、圧倒的な存在感。

そこに、岡先生が現れていた。

 

「君の計画はもう潰れたよ(ツブレタヨ)。君の部下はすべて拘束させてもらった。あと、連れてきた魔物は処分しておいたから」

「な、なん!?」

「シュンくんばかりに気にしていたみたいだけど、私のことを甘く見すぎみたいだね、悪いけど、君の暴走をこれ以上見過ごすわけにはいかない」

 

先生が倒れたユーゴーに歩み寄る。

ユーゴーは近づく先生に奇襲を仕掛けようとして、

 

「グハッ!?」

 

不可視の何かに地面に叩きつけられた。

おそらく、風系の魔法だと思われる。

先生の手がユーゴーの頭を掴む。そこに魔力の流れを感知した。

何かの魔法にかけられたもうだ。

 

「支配者権限を発動。支配者の要請により、支配者専用スキル発動。発動の合意を」

「合意します」

 

ユーゴーの口から、あいつらしくない平坦な声が出る。

さっきの魔法、おれはまさか、禁断と言われる外道魔法による催眠か!?

俺の驚きはそこで終わらない。むしろ、さらなる驚きが俺を襲う。

鑑定に表示されたユーゴーのステータスが、みるみる下がっていく。

さらに、スキルがどんどん消えていく。

あっという間に、ユーゴーのスキルは、謎の文字化けスキルだけとなった。

 

「ッ!?俺に何をした!?」

 

ようやく正気に戻ったユーゴーが叫ぶ。

 

「ステータスを低くし、スキルを剥奪(ハクダツ)しました」

「な!?そんなことできるはずが!」

「シュンくん、鑑定結果は?」

「.....先生の言うとおり、お前のステータスは全部30まで下がってる。おまけに、スキルも残ってない」

「な、な......」

「この世界は君のものじゃありません。これを機に反省して、これからは普通の人として生きることをお勧めします。スキルなんて取って強くなっても、いいことなんてありませんから.....」

 

茫然自失(ボウゼンジシツ)となるユーゴー。混乱する俺。

その後、探索授業は中断された。

パルトンやオリザ先生は無事だった。

危ないところだったそうだが、先生が助けに入ったおかげで、大した傷もなかった。彼らを襲ったユーゴーの手下は全て捕らえられた。

俺は、いや、俺に限らずほとんどの人がこの時ユーゴーのことばかり気にしていた。

たから、その魔物がひっそりと解き放たれ、俺たちの後をつけてきていたことに、誰も気付かなかった。

 

 

 

 

~~~15年後・シュン 6~~~

 

それは、俺たちが学園にたどり着いた直後に、唐突に姿を現した。

いや、正確なはずっと俺たちの背後からついてきていたに違いない。

 

「な、あ.....」

 

誰かの呻き声が聞こえた。

地竜。

本来ならばこんな場所に出現するはずのない、高位の魔物。

 

「夏目くん!あれも君な仕業ですか!?」

 

岡先生がユーゴーに問い詰める。

 

「し、知らねえ!あんなもん用意してるなんて、俺は聞いてないぞ!?」

 

「おい、お前ら、あれはなんだ!?」

 

ユーゴーがたまらずといった感じで、捕縛されていた今回の事件の犯行グループに問いかける。

 

「あれは、今回の計画で使われるはずだった切り札です」

「お前らが用意したのか!?」

「はい。召喚師が使役しておりました。しかし、現在はその使役を解除している様子です」

「その召喚師はどいつだ!?」

「私です。が、制御は不可能です。元より私の実力で制御できる魔物ではございません。捕らえた時は気性が大人しく、こちらの契約にも素直に応じたのですが、今は私の言うことを全聞いてくれません!」

 

ユーゴーの質問にペラペラと答える犯人たち。

自分の実力以上の魔物を使役するなるて、正気の沙汰(サタ)じゃない。

俺もフェイと過ごしているうちに、召喚師に必要なスキルである調教を獲得していた。

格上の魔物でも、合意の上ならば契約を結ぶことはできる。

 

「すごいことになっているわね!」

 

俺を出迎えるために来ていたフェイが、地竜を見て焦燥した念話を発する。

 

「このままじゃ全滅だ俺も加勢する!」

「待ちなさい!そんなこと許しません!危険すぎます!」

 

岡先生が俺のことを引き止める。が、俺は先生の制止を振り切り、地竜に向けて駆け出す。

 

「仕方ありませんわね!」

「兄様が行くのなら!」

「回復は任せて!」

 

俺の後ろにカティア、スー、ユーリーンが続く。

俺は走りながら魔法の準備をする。この間授業で覚えた、水魔法を。

発射。地竜めがけて水の弾が高速で迫る。

が、水の弾は地竜に命中する直前、霧散するように消える。

 

「逆鱗か!」

 

竜種が持つ特殊スキル、龍鱗の上位スキル逆鱗。

 

「生徒は下がれ!」

 

教師の1人が叫ぶが、無視だ!

 

「スー!合わせてくれ!」

「はい!」

 

俺はスーと同時に再度水魔法を放つ。

空中で1つになる俺とスーの魔法。

俺と同じく、スーも水魔法に適性を持っている。

それを重ねて威力を上げれば!

水の弾は、霧散せずに地竜の体に突き刺さった。

地竜がわずかに苦しげな唸り声を上げる。

いかる!ダメージはごくわずかだが、防御を貫通できないわけじゃない!

カティアもオリザ先生と組んで火魔法を地竜に浴びせている。

魔法で怯んだところに、近接メインの人間が切り込む。

ダメージは少ない。けど、0じゃない。

一筋の希望が見えた、次の瞬間、地竜が鎌首をまたげる。

それは、ブレスの予備動作。

 

「退避!」

 

誰かが叫ぶ。が、間に合わない!

俺は逆に一歩踏み出した。魔闘法と気闘法を全力で発動。

さらにスキルポイントを使って、光攻撃を取得。

剣に光を纏わせ、地竜の放ったブレスと、真っ向からぶつかり合う。

 

「ぐ、うおおおおお!」

『まったく、危ないことはしないでください!』

 

フェイの声ご聞こえた気がした。

同時に、ブレスが途切れる。

俺はそのまま地竜目掛けて剣を振り抜き、ポッカリと鱗がなくなったその首を切り落とした。

 

 

「ずぐ治療するから、動かないでね」

 

レベルアップを告げを神言(シンゴン)を聞きながら、ユーリーンに回復魔法で体を治してもらう。

特に腕の怪我が酷く、後一歩でもブレスが途切れるのが遅かったら、俺の腕は消し飛んでいたかもしれない。

そう思うと、今更のように体が震えだした。

スーやカティアは、俺のそんな様子を見て声をかけてこようとしていたが、それよりも他の怪我人の看病をしてくれと頼んで、追い払ってしまった。

こんな情けない姿、できればあまり見て欲しくない。

戦っている時は無我夢中だった。

けれど、こうして落ち着いた瞬間に、死んでいたかもしれないという恐怖がこみ上げてくる。

同時に、ガッチリと固まってしまったかのように、握り締めたまま離せなくなってしまった剣が、ひどく恐ろしいものに見えた。

地竜の首を切り飛ばした時の感覚が、生々しく残っている。

これが、命を奪うということで、これこそが、本物の戦いというもの。

俺は、ステータスの高さとスキルの多さで、戦える気になっていた。

実際に俺は戦えていたはずだ。

けど、戦いが終わってから思い知る。

俺は、戦うということを、全くわかっていなかった。

戦うということは、こんなにも怖いことだったのか。

殺すということは、こんなにも怖いことだったのか。

ゆっくりと、剣から手を離していく。

ユーリーンによって回復が完了する頃に、ようやく俺の指が剣から離れてくれた。

もうだからと言って、ユーリーンを他の負傷者の治療に向かわせる。

怪我はもう大丈夫だ。問題なのは、俺のメンタルだけで。

我ながら情けない。

確かに、初の戦闘でこんな大物と戦うことになるとは思っていなかったけど、それにしたってビビりすぎだ。

それも、戦いが終わった後に。

ユリウス兄様は日常的にこんな戦いを繰り返しているんだ。

どうして兄様は、いや、この世界の住人はこんな恐ろしいことを平然とできるんだ?

どうして、ユーゴーは俺のことを殺そうとなんてできたんだ?

倒さなければならない魔物でさえ、こんなにも怖いのに、人を殺してしまったら、俺は正気でいられる自信がない。

ユーゴーの称号には魔物殺しがあった。

魔物殺しは魔物を数多く仕留めると得られる称号だ。

だとすれば、ユーゴーは魔物を多く殺していることになる。

こんなことを、繰り返しているということだ。

大きく深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。

ふと、視界に倒れた地竜を見つめるフェイの姿が映る。

俺を救ってくれたのは、フェイだ。

フェイはあの瞬間、地竜の首に噛み付き、ブレスを止めてくれたのだ。

それがなければ、俺は死んでいたかもしれない。

 

「フェイ、助かった。ありがとう」

『うん。どういたしまして』

 

俺がお礼を言うと、フェイはどこか心ここにあらずといった様子で、死んだ地竜を眺めている。

 

「どうかしたか?」

『私のステータスを鑑定してみてくださる』

 

フェイのどことなく沈んだ様子に内心首を傾げながら、言われた通りに鑑定してみる。

 

〈血縁喰ライ〉

 

そして、称号にそれはあった。

その名のとおり、血縁者を食ったものに贈られるという、おぞましい称号が。

 

「まさ、か」

『その、まさかじゃないかしら。私は卵から孵ってから、人族の中で暮らしてきたから、人族の言葉がわかるのね』

 

フェイはあの地竜の首を食いちぎっている。

もし、そうなのであれば、フェイがこの称号を獲得していることも納得ができる。

 

『あの竜、もしかして、私のことを、探しに来てたのかな?』

 

ありえなくは、ない。

フェイが卵の時にいたのは、エルロー大迷宮という、ここからはだいぶ離れた位置にあるダンジョンだ。あの地竜がフェイの親なのだとしたら、そんな離れたところからわざわざここまで来る理由が、他に思い浮かばない。

俺たちは、攫われた(サラワレタ)我が子を探しに来た親を、その子の手で殺させてしまったのかもしれない。

そう考えると、俺は、その子の目の前で、親の首をはねたことに.....。

 

「うっ、おぇ!」

 

吐いた。

俺の初めての実践は、ひたすらに苦い記憶となって、俺の心に残り続けることになった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~15年後・幕間 5~~~

 

「クソが!このままで終われるかよ!この世界は俺のもんだ!俺の、俺だけの、俺のためだけの世界だ!こんな終わり方は認めねえ!認めねえぞ!全部をこの手に入れるまで、終われるかよ!」

《熟練度が一定に達しました。スキル〈欲求Lv 1〉を獲得しました》

「あのクソエルフが!絶対に復讐してやる!許さねえ!」

《熟練度が一定に達しました。スキル〈怒Lv 1〉を獲得しました》

「いつかあいつのものをすべて奪ってやる!俺が奪われたのと同じようにな!」

《熟練度が一定に達しました。スキル〈奪取Lv 1〉を獲得しました》

「待っていろよ!あいつが大切にしてるもの、全部ぶっ壊してやる!その上で泣き叫ぶあのクソエルフ(アノアマ)を笑いながらグチャグチャに犯してやる!」

《熟練度が一定に達しました。スキル〈淫技(インギ)Lv 1〉を獲得しました》

「待っていろよ!俺はこの世界を取り戻してやる!」

 

 

 

 

~~~15年後・幕間 6~~~

 

「フェイ、大丈夫ですか?」

『大丈夫よ。ちょっとビックリしたけど、あれが私の親でも、初対面の赤の他人ですのに』

「そうか。このこと、ユーリーンには知られないようにしてくださいね?」

『そうね。わかっていますわ。あの方に禁忌があるなんてこと知られたら、私が殺されますわ』

「ん?何かあたしの名前呼んだ?」

『うっ!?えっ、呼んでない呼んでないですわ!』

「いきなり現れないでください。心臓に悪いわ」

「え?あたし普通に歩いてきただけなんですけど?」

『ビックリして縮んだ分の寿命の慰謝料を請求するわ』

「ええ!?なんで!?」

「ああ、そうでした、シュンへの布教活動は今日はしなくていいのですか?」

「あ、さっきしてきた」

『してきたのね......」

「神様の偉大さを伝えるのに、諦めるということは存在しないんだよ、今は理解されなくても、いつかきっとみんな神様の偉大さを理解してくれる時が来るの!」

「ガンバッテ!」

『ああ、なんかこの盲信具合ってあの兄妹(キョウダイ)と似ているかもね♪私もだけどね♥』

「ああ。そうですね(ワタクシ)もわかりますわ。シュンはユリウスさん信者だし、スーはシュン信者だし、(ワタクシ)はシュンにメロメロですし♥」

「そうそう!人のことを信仰馬鹿みたいに言うけど、自分も勇者様馬鹿だって気づいてないんだよ、酷いとおもわない!?.....今、聞き逃すところだったけど、カティアとフェイはシュンにメロメロなのですか?」

『私とカティアさん、スーレシアもシュンさんにメロメロですよ♪彼女ですもの♪あと、あなたには言われたくないのでわ』

「まあ、気持ちはわからなくもありませんが、ユリウスさんのお話になるとシュン(あの方)は止まらなくなりますから」

『私も、勇者様の武勇伝は聞かされているわ私はシュン()にしか、興味がありませんのに』

「貧しくて魔物退治にお金を出せない村を無償で救った話とか」

『勇者様の管轄である教会としては、そういうのはどうですの?』

「本当は駄目なんだけどね。今代の勇者様はそういうのを自分で肩代わりして教会に寄付してるから、上層部も強く批判できないの」

『流石は王族。お金をお持ちなのですね』

「この国のバックアップがあるからできることですわ。平民出身の勇者だったらただの戦力扱いで、戦場とか危険な魔物退治とかに駆り出されているところですけど、ユリウスさんの場合はあんまり無茶させると、国がきょうかの敵になりかねないですからね」

『難しいわね』

尤も(モットモ)、ユリウスさんは自ら望んでそういう危険な任務に率先して向かっていくんだけどね」

「ザ、ヒーローだね!」

(ワタクシ)は実際に会ったことがあるけれど、あの人聖人だからね。存在そのものが奇跡だよね」

『そんな兄にいたら、弟はひねくれるか崇拝するかのどっちかですよね』

「ひねくれなかっただけいいのかな?」

「いいんじゃなくて?実際ユリウスさんの背中を追うのは男の子として間違ってはいないのだけれど」

『シュンから聞いたのだけれど、カティアは元男なのですね?説得力はありますが』

「フェイ。やっとシュンに聞けたのか?」

『はい♪スーレシアと一緒に聞きました』

「生まれ変わって15年!女性としての喜び、シュン()を好きになりましたわ。(ワタクシ)とスーレシアとフェイの3人ですけれどね♪」

「あなたたち、そういう仲なのね。それにしても、ユリウス様かー。あたし会ったことないんだよね」

「聖女候補でも勇者様には会えないの?」

「あくまで候補だからね。今代の聖女のヤーナ様がご存命の限り、候補はいつまでたっても候補。候補であら限りは勇者様とは関係ないからね。新しい聖女が誕生するのは、聖女が亡くなられるか、勇者様が亡くなられるかのどっちか」

『勇者がしでも、聖女が生きてても代替わりしますの?』

「うん。1人の聖女が仕えるのはその代の勇者様だけ。だから、ユリウス様が亡くなられたら、ヤーナ様が生きていても次の聖女が決まるの。って、不謹慎だったね」

「シュンはユリウスさんのこと盲信しているけど、あの人も無敵ではないからね。実際、魔族の罠にはまって毒を盛られて窮地に陥ったこともある。魔族との戦いが本格化してくれば、ユリウスさんだって生き残れる保証はどこにもありませんわ」

『そうね。シュンの前ではこんな話できないけど、実際魔族との戦いは厳しいらしいし』

「ずっと沈黙を保っていた魔王が動き出したんだものね」

「あそのことね。噂によると、(ワタクシ)たちが赤ん坊くらいの時に代替わりしたんでしたわよね?確か」

『その頃は、いろいろあるのよね。神言教(シンゴンキョウ)女神教(メガミキョウ)の宗教戦争とか、迷宮の悪夢とそれを護っている龍がそう迷宮の守護神!!の、出現』

「女神教は邪教!」

あー、いましたね。迷宮の悪夢と迷宮の守護神。ユリウスさんが唯一敗北を喫した、蜘蛛の魔物と龍の魔物ですわね」

『その話をしていた時、ちょうど私、シュンと一緒に聞いていたんだけど、蜘蛛の魔物はまるで魔王みたいな存在だった。そして、龍の魔物はまるで私のような竜の上位種から下位種、龍の上位種から下位種を超越した神、龍神だったって言ってました』

「案外その方が魔王だったり」

『なんで蜘蛛が魔族の王になるのよ。魔族って人型(ヒトカタ)でしょう』

「そうね、そこはフェイが目指している人化(ジンカ)でもしてさ」

『言っておきます。人化なんてスキルないからね?』

「ないのですか』

『ないのよ。もしかしたら似たようなことができるスキルはあるかもしれないけれど』

「まあ、魔族って姿だけなら人族と全く変わらないって言うから、もしかしたらそういう人化した魔物とかが混じっていてもおかしくないけどね」

『紛らわしいわよね。魔族言うのですから角の一本でも生やしてくれればいいのに』

「それは魔族っていうよりかはまんま悪魔ですよ』

『魔族なんて呼ばれているのがトップなんですし、あながち間違いでもないんじゃないの?』

「んー。ねえ、ふと思ったんだけど、魔王が代替わりしたのかもって時期と、わたしたちが生まれ変わった時期って似てない?もしかして、魔王って転生者の誰かだったりして」

「おい、冗談でもそれはないだろ。あら、驚きすぎて、転生前の男性が表に出て来てしまいましたわ♪うぅん♪大体からしてそれでは、赤ちゃんの頃、魔王になったことになりますわ」

「う、ごめん」

『私は転生者では、ありませんからわかりませんが。赤ちゃんの頃から動き回ってレベル上げをするとなると、その転生者は人族(ヒトゾク)ではなくて、魔物(マモノ)に転生してしまった、という、考えに至るのですけれど』

「「......えぇぇぇぇぇ!!」」

「じゃあ、この学園に居てる(ワタクシ)たちの他のクラスメイトってことになりますわね?」

「どうします?このことは、まだ、憶測(オクソク)の域だから、ここの3人だけの秘密にする?」

 

(ワタクシ)とユーリーンとフェイで顔を見合せ頷く。秘密ということに決まった。

 

 

 

 

 

 

~~~15年後・幕間 7~~~

 

長い廊下を歩く。俺の斜め前には小柄な背中。俺よりも頭2つ分ほど低い。

そのせいで歩く速度は俺に比べるとかなり遅い。

おかげで俺は普段よりもゆっくりとした動きをしなければならない。

難儀だが、だからと言って追い抜かすわけにもいかない。

なぜなら、目の前を歩く少女こそ、今代(コンダイ)の魔王なのだから。

長い廊下を時間をかけて進み、たどり着いたのは1つの扉の前。

そこで魔王様は歩みを止める。

正直に言うと、この扉を開けたくない。開けたくないが、開けないわけにもいかない。

俺は溜め息(タメイキ)を飲み込み、扉を開け放つ。

そして、魔王様に道を譲り、恭しく(ウヤウヤシク)(コウベ)を垂れる。

魔王様はそれが当たり前であるかのように、室内に踏み込んでいった。

魔王様が室内に入っていったのを確認し、俺もその後に続く。

音が鳴らないようにそっと扉を閉める。

振り返った室内は、いわゆる会議室たった。

魔王様が座るべき上座(カミザ)の席を中心に、円形のテーブルが部屋の中心にある。

その円形のテーブルには、合わせて10人の男女が席についていて、(シロ)とかいう、新参者の後ろに、副団長の(クゥ)が立っていた。

この2人は、全身が真っ白で、違うところは、(シロ)には紅い(アカイ)10の()があり、(クゥ)には蒼い(アオイ)()がある。

魔王様の入室に合わせて起立したのはその中の半数。

残り半数はそのまま席に座っている。

この中でも、特別視されている(シロ)は、起立しなくても魔王様は怒らないだろう。

問題は、その席に座ったままの奴らの中に、我が(ワガ)弟も含まれていることだ。

魔王様の椅子を引き、着席を促す(ウナガス)

やはり、優雅さの欠片(カケラ)もない無造作(ムゾウサ)な仕草でどかりと椅子に座った。

()並んだ面々の何人か顔をしかめるのを見逃さない。

多分魔王様も見逃していないだろう。その反応を見て楽しんでいるのだから当然だ。

 

「それでは、会議を始める。バルト」

「は」

 

魔王様の開催の合図。それに短く答える俺。

会議の進行も、実務も全て俺が進めている。というか、俺に押し付けている。

 

「では、まず各方面の報告から聞こう。第一軍から順に報告を」

 

この会議のいつもの流れで、それぞれ各地に展開されている軍の活動報告を聞く。

俺の言葉に席を立ったのは、先々(センセン)代の魔王の頃から将軍を務めるという、アーグナー第一軍団長。

 

「第一軍はレングザンド帝国の正面、クソリオン砦への進行準備が整いました。兵站(ヘイタン)も配備が完了しましたので、お声がかかればいつでも進軍可能です。以上となります」

 

余計な報告も挟まず、端的に済ませるアーグナー殿。

 

「第二軍も同様です。ですが、もう少しお時間を頂ければ、裏工作が実を結ぶかもしれません」

 

アーグナー殿の次に席を立ったのは、妖艶(ヨウエン)な美女だ。

第二軍団長サーナトリア。彼女はサキュバス族だ。

 

「どれだけの時間が掛かる?」

「早ければ2、3日中にでも」

「進軍に支障がなければ進めてよし」

「ありがとうございます」

 

艶美(エンビ)微笑(ビショウ)を浮かべ、サーナトリアは席に着く。

しかし、サーナトリアが席に着いても、次の第三軍団長はなかなか腰を上げない。

 

「コゴウ第三軍団長」

「あう。やっぱり、戦争になるだか?」

 

俺の呼びかけに、巨体のコゴウがその体を縮めるようにして言った。

 

「どうしても、戦争は避けられないだか?」

「避けられんな。避けられるならそうしている」

「あう。どうしてもだか?」

 

なおも言い募る(ツノル)コゴウに、俺がくどいと答えようとした時、それを遮る(サエギル)ように違う言葉が室内に響き渡った。

 

「どうしてもだ。しかしコゴウ第三軍団長、君がどうしても戦争を避けたいというのであれば、方法がないこともないぞ?」

 

魔王様だ。

 

「な、なんだか?」

「簡単なことだよ。第三軍全員で世界の(イシズエ)になればいい。これは、(タダ)の、戦争ではないのだよ!」

 

魔王様の言葉にコゴウが固まる。

 

「どうした?お前のわがままで世界は救えないのだが」

「す、すんません。もう言わないだす。だから、勘弁してくだせえ」

「コゴウ、これに懲りたら余計な口を出さないことだ。報告はあるか?」

 

魔王様がコゴウを追い詰めないように、俺はすかさず割って入る。

 

「全て順調だす」

「よろしい。次」

 

魔王様は少し不満げな表情をしているが、これでいい。

第四軍、第五軍、第六軍と問題なく報告が済んでいく。

次の第七軍団長の番になる。

しかし、その第七軍団長、俺の弟でもあるブロウは一向に席を立つ気配がなかった。

 

「ブロウ」

「兄貴、やっぱり俺は納得いかねえ」

 

腕を組み、ふんぞり返りながらブロウは苦々しく告げる。

 

「なんで今まで魔族を取り(トリ)纏めて(マトメテ)仕切ってきた兄貴じゃなく、そこのポッと出の女が魔王なんだ?おかしいだろうが!?」

「ブロウ」

「兄貴も兄貴だ!どうしてそんな女にいいようにされてやがる!?そいつに兄貴が忠誠を誓うような器があるようには見えねえ!それに、その隣の新参者の白いのなんか、会議だというのに、副団長を連れてくるなんて」

 

(えっ!?今、私に話が振られた?(クゥ)ちゃん?)

(そうだよ、(シロ)ちゃん。私にも話を振られたみたい)

(これは、アリエルに相談だね♪もしもし、アリエル!聞こえる?)

(どうしたの、(シロ)ちゃん?)

(今、あのブ、ブロ)

(アレの名前を呼びたくないのね♪今だけ我慢してね♪それで、どうしたの?)

(ブロウにいちゃもんをつけられてるの、どうしたらいい?殺っても(ヤッテモ)いい?そしたら、その空いた(アイタ)席に(クゥ)ちゃんが座れるんだけど?)

(殺ってもいいけど、どうするの?)

(その話、ちょっと待って、(シロ)ちゃん)

(どうしたの、(クゥ)ちゃん?)

(私は...ね。姫色(ヒイロ)への償いも兼ねて、あんたの副官に居てるのよ)

(......美麗(ミレイ)!)

 

「そこの紅い(アカイ)()を10個も持つ、気持ち悪いお前だよ!白いの!」

 

アァン!?今、あいつ、何て言った?この麗しい(ウルワシイ)()を気持ち悪い.....だと?これは、もう、半殺しにしても、大丈夫だよね♪

私は、気持ち悪いと言った、そいつに向かって。

 

邪眼(ジャガン)!発動!」

 

邪眼を食らったブロウが盛大に血を吐いた。ざまぁー♪

いきなり血を吐いたブロウのところへ、バルトが向かう。

 

「魔王様!ブロウに何をしました」

「私は何もしてないよ♪」

 

魔王様は、クスクスと笑っておられる、が、何もしていないと言う。では、誰が?今、ブロウが話をしていたのは、魔王様の左隣に座っている(シロ)だ。

 

「お前か、(シロ)!!弟に何てことを」

「私と(クゥ)ちゃんが喧嘩(ケンカ)を売られたから、アリエルに許可を貰えたので、買ったわけだが?」

「魔王様をアリエルだと?呼び捨てに、新参者がおこがましい!」

「アリエルー!あいつも、半殺しにしても、いいかな?」

 

アリエル頷いた(ウナヅイタ)ので。

 

邪眼(ジャガン)!発動!」

 

すると、バルトも盛大に血を吐いた。

この光景を、第四軍団長、マリア。

第八軍団長、笹島(ササジマ) 京也(キョウヤ)ことラースは、静観していた。

 

魔王様が口を開く。

 

「わかったかな。私に逆らうとこうなるの♪(シロ)ちゃん、もう、いいよ」

 

負傷させられたバルトの代わりに、私が進行することになった。ちくせう!

私は、頬を叩き、気合いを入れ、()を開き、始める。

 

「次、第八軍ラースちゃん、報告してくれる」

「何も問題ないよ。アリエル、(シロ)(クゥ)

 

次は、ギュリギュリだね。名前を隠さないといけなかったよね♪

 

「第九軍団長、黒」

「第九軍も問題なく進軍可能だ」

 

ギュリギュリも問題なし、と。

次は、私か。

 

「第十軍も問題ないよ、アリエル♪」

「うんうん。順調だね♪」

 

魔王様は、ご機嫌そうに頷く(ウナヅク)

俺たち、兄弟は負傷しているのに。

これが、魔王様の右腕、(シロ)(クゥ)の力。

(クゥ)の威圧からは逃れられなかった。

 

「じゃあ、戦争を始めようか」

 

そして、その言葉で、魔と人の、最悪とも言える大戦争が、静かに幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

~~~15年後・ユリウス 3~~~

 

魔族軍に動きあり。

僕がその報告を耳にしたのは、つい今朝のことだ。

魔族領に潜入していた密偵からもたらされた報告だ。

 

「ついに来ましたか」

「そうだね。来ないほうが僕としては良かったんだけど」

「ユリウス、そういうわけにもいかねーだろ。お前が戦いを好まないのはよく知ってるが、人族と魔族は宿敵同士。いつかこうなることはわかってただろ?」

「そっすな。先代の勇者様が亡くなってから、魔族は活発になってましたし、ワイはむしろ良く持った方だって思いやすがね」

 

仲間たちが言うように、先代勇者様が亡くなってから今まで、魔族は活発に活動していた。

それが大規模な戦争に発展することもなく、今まで小競り合いだけで済んでいたのは、むしろ良く持った方なのかもしれない。

 

「それで、魔族軍はいつごろここに?」

「今ハイリンスが確認に行っています。もうそろそろ、あ、戻ってきました」

 

ヤーナの言葉に振り向けば、そこには小さい頃から付き合いのある幼馴染にして、クオート公爵の次男であるハイリンス。

 

「ハイリンス。どうだって?」

「ああ、進軍速度からして、明日にはこの砦に到着すると予測されてる」

「そうか。いよいよか」

 

戦争。

 

僕は、この戦争を生き残って、2人にまた会うことができるだろうか?

いや、会うんだ。

こんなところで、死ぬわけにはいかない。

 

「この戦争で生き残れば報奨金もガッポリっすな」

「そうだな。この前の迷宮の悪夢と迷宮の守護神との戦いでは、割に合わない報酬だったし、ユリウスが奴の死体を木っ端微塵(ミジン)にしちまったからな」

 

ホーキンに合わせるようにジンカスも同意する。

 

「私は蜘蛛の死体なんて持ち帰るのは嫌です。龍の鱗だったら、綺麗な装飾品にしたいですけど」

 

ちょっとズレた感想を漏らすヤーナに、自然と笑みが浮かんだ。

 

「けど、あれぼどの魔物から取れる素材はいい値段に。糸とかは服にすれば結構防御力になりそうじゃない?」

 

僕が何気なく言った一言に、ジンカスが首を振る。

 

「いや、タラテクト種の糸はスキルで生成されているらしく、胴体を解体しても手に入らない」

「え?そうだったんだ」

 

知らなかった。

 

「ああ、タラテクトの糸。もう10年以上前のことでやすが、一度だけ冒険者が粘性のない完品と何かの鱗を持ち帰ったことがあるそうっますよ」

「それは俺も知っている。俺がまだ冒険者駆け出しのガキだった頃の話だが、タラテクトの巣を焼き払った後に、ご丁寧にも手玉にしていくつも残っていて、その近くには何かの鱗がこれもいくつも残っていたんだと。しかも、その糸と鱗がとんでもない魔力伝導性と耐久力を兼ね備えてるって言うんで、かなりの高値で取引されたそうだ。あと、それは噂でしかないんだが、その時同時に竜の卵も回収されたとか。竜の卵といえば、売るだけで、一生遊んで暮らせるようになる希少品。同じ冒険者としてその幸運を掴んだ連中に嫉妬したもんだ」

「その後、同じ糸を求めてタラテクトを捕獲するのが流行ったそうっすなー。結局その糸を生み出せる個体と鱗を持つ何かは捕まえられなかったらしいっすけど」

 

首巻きを握ったまま固まった。

それを見て、ハイリンスが呆れたように言った。

 

「ユリウス、お前知らなかったのか?自分がいつも身につけてるのがどれだけの値打ちものか」

「知らなかった」

 

ぎこちなく答える。

 

「?どういうことです?」

 

僕らのやり取りを聞いて、ヤーナが疑問符を浮かべる。

 

「こいつがいつもしてるこの首巻き、その噂の糸と何かの鱗で作られた一品だ」

 

ハイリンスが言った途端、僕のしている首巻きにみんなの視線が集まる。

 

「ほっほー。これが」

「俺も実物を見るのは初めてだ。どこぞの王族にまで売られたって話は聞いていたが、まさかユリウスのところだったとはな」

「いつも身につけているから何かとは思っていましたけど、そんな貴重品だったんですね」

「あ、いや、いつも身につけているのはこれがお母様(オカアサマ)の形見だからで......」

「え?あ、ごめんなさい.....」

「いいよ」

 

お母様はシュンを産んでしばらくして、体調を崩して還らぬ人になった。

この首巻きは、シュンが生まれる少し前にお母様が僕に編んでくれたとのだ。

タラテクトの糸と何かの鱗を糸状に紡ぎ(ツムギ)、それを使ったものだというのは知っていたけど、まさかそれがそんな希少な素材だとは知らなかった。

 

「ヤーナ、気にする必要はないぞ。ユリウスはただのマザコンだからな」

「ハイリンス...さん、本当ですか?」

 

ヤーナが聞いてきたことに、ハイリンスが頷いた。

 

「....あ、あの、ユリウスさんは年上の女性がお好きなのですか?」

「年上?どうしてそんなことを?」

「い、いえ、そのハイリンスの言うとおりなら、年下はお好きではないのか.....と、思いまして......」

「それって、もしかして、ヤーナ。俺のこ.....」

「や....やっぱり、今のは、聞かなかったことにしてください」

 

俺の言葉を遮って、砦の中へ走っていく。なぜか、俺もそのあとを追っていた。

砦内をあちこち、探し回って、やっとのことでヤーナが隠れていたところにたどり着いた。

 

「ヤーナ、なんで逃げたんだ?俺の返事も待たずに?」

「え、えっと、あそこまで言っていて、変に思われたかもしれませんが、返事を聞くのが怖くなってしまい、まして」

「俺は、ヤーナのことが好きだ。大好きだ!愛している。だから、こっちを向いてくれ」

 

ヤーナがゆっくりとこちらに振り返る。

 

「もう一度言う!俺....いや、僕はヤーナのことが好きだ。結婚してください」

「はい。こちらこそ、不束者(フツツカモノ)ですが、よろしくお願いします」

 

俺はヤーナを抱き寄せて、キスを交わす。

 

「ちゅっ......ちゅちゅちゅう.....れろっ.....ちゅちゅう....ちゅちゅちゅう....れろっれろれろれろ......ちゅうぅぅぅ♪.....ユリウスっ....がっつきすぎ......だよっ♪」

「すまない。これから、戦争だというのに、緊張感がなかったね♪」

 

俺とヤーナは、キスを終えて、先ほどいた場所へと戻る。

確かに、僕は幼い頃にお母様を亡くしたこともあって、人より母親に対する想いというものが強いかもしれない。

 

【ユリウス、今回の魔族の動き、どうにも妙だ】

【何がなんだい?】

【敵は戦力を分散させて、人族領域に一気に攻め込んでくるようだ。だが、戦力を分散させる意味がわからない】

【何か思惑があると?】

【ああ。一点集中の方がはるかにいいはずなのに、わざわざ戦力を分散させるんだ。何かあると思っておいたほうがいい】

【その何かに心当たりは?】

【さてな。流石にそれは俺にもわからん、だが、油断はしないほうが良さそうだ】

【わかった。ありがとう】

 

僕はザワザワとした嫌な予感がした。

まるでいつの間にか巨大な罠に嵌まって(ハマッテ)いたかのような。

そう、蜘蛛の糸に絡め捕られるかのような。あの、龍に睨まれて動けなくなった魔物のような。

悪夢の残滓(ザンシ)と悪夢の守護神(シュゴシン)との戦いが思い出される。あの時と同じような、漠然とした不安。

けれど、勇者として、ここで逃げることは許されない。

蜘蛛の糸と何かの鱗を紡いで作られた首巻きをもう一度握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~10数年後・シュン 7~~~

 

「それでは、今日は(ドラゴン)(リュウ)についての授業を行います」

 

オリザ先生がいつものように若干やる気がなさそうに授業を始める。

竜、か。

竜というと、どうしてもあの事件のことを思い出してしまう。

あの事件から数年が経った。

ユーゴーによる俺の暗殺未遂と。地竜による襲撃。

だが、ユーゴーに具体的な罰が与えられることはなかった。

その前に学園から忽然(コツゼン)と姿を消したからだ。

同時に岡先生の姿も学園から消えていた。

思えば、岡先生は地竜と戦っている時も、参戦していなかった。

ユーゴーを簡単にねじ伏せる力を持っていたのにだ。

あの事件で変わったことは、なにもそれだけじゃない。

フェイは何を思ったのか、それまで乗り気ではなかったレベル上げに積極的に取り組むようになった。

あれだけ嫌がっていた進化もあっさりとしてしまい、今では外暮らしをしている。

俺も、あの事件を機に、考え方が少し変わった。

ただただユリウス兄様に憧れを抱いているだけだった。

今でも俺の脳裏には恐怖がこびりついて離れない。

俺が転生者だから余計にそう感じるだけなのかもしれないが、殺すのも、殺されるのも、怖い。

兄様の隣を歩むためには、その恐怖を乗り越えなければならない。

あの事件の後も、俺は演習に参加して魔物と戦う機会があった。

地竜に比べればなんてことない、俺の剣の一太刀で呆気なく倒れてしまうような、弱い魔物だ。

それでも、殺したという重みは、地竜と同じ。

俺は、命を奪うという覚悟を決めて、その恐怖を乗り越えた上で戦わなければならない。

俺はとんでもなく甘いのかもしれない。

平和ボケしていてもいいから、命の重さを理解する。

その上で、守るべきものと、奪わなければならない命とを天秤にかけ、戦うことを選択する。

そうして、俺の周りはささやかな変化がありつつも、大きな事件もなく平穏に過ぎ去っていった。

 

《条件を満たしました。称号〈勇者〉を獲得しました》

《称号〈勇者〉の効果により、〈勇者Lv 1〉〈聖光魔法Lv 1〉を獲得しました》

 

その平穏を打ち破る声。

 

「え?」

 

授業中だったこともあり、俺の戸惑いの声は予想以上に教室の中で響いた。

 

「シュレインさん、どうしましたか?何かわからない点でも?」

 

オリザ先生が俺に聞いてくる。

その先生の声も、混乱した俺には素通りしてしまう。

 

「シュレインさん?シュレインさん!?どうしました!?」

 

多分、この時の俺の顔色は、相当悪くなっていたのだろう。

だって、おかしいじゃないか。

世界に勇者の称号を持つ人間はただ1人。

そして、俺の知る勇者もまたただ1人。

称号というものは、一度手に入れると手放すことはできない。

勇者の称号も、手放すことはできない。

生きているうちは。

そういうことになってしまう。

信じられない。信じたくない。

けど、その称号は、確かに俺のステータスに記載されてしまっている。

嘘た。

嘘だ、嘘だろ?

あの兄様が、そんなことがあるはずがない!

それでも、その称号は無情に事実のみを告げていた。

この日、1人の勇者が死んだ。

そして、1人の勇者が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

~~~10数年後・幕間 8~~~

 

魔王はその手に龍の鱗を糸状に紡いで白い糸と織られた布切れを持ち、興味深そうに眺めていた。

その手に握られたものは、つい先程まで勇者が身にがつけていた首巻き。

 

「白ちゃん、空ちゃん、見て見て。これ龍の緑色の(ウロコ)を糸状に紡いで蜘蛛糸と織られてできた首巻きだよ♪」

 

白と呼ばれた魔族軍第十軍団長と空と呼ばれた魔族軍第十軍副団長は、その顔を魔王の持つ首巻きに向けた。

見てと言われた白の(ヒトミ)は、片方が5つの瞳孔(ドウコウ)があり、4つは蜘蛛の時の瞳で1つはアラクネに進化した時の、人としての瞳が輝いていた。

魔王が持っている首巻きを見た、空は目をそらした。

 

「人族の間で高値で取引されたっていうのは知ってたけど、まさか勇者が身につけてるとはねー」

 

ないわー、と皮肉げに呟く(ツブヤク)魔王。

私と空は、魔王アリエルに聞こえないように、話す。

 

(空、アレって、エルロー大迷宮(あの時)、人間に追われて、上層の拠点に置いていった、蜘蛛糸玉と龍の鱗だよね?)

(やっぱり、あれって、私の鱗と白の蜘蛛糸だったよね?あの人間が地竜の卵と一緒にあったから、持って帰ったんだね?)

 

魔王は手の中で首巻きを弄び(モテアソビ)、ふとその手を止める。

その顔は、いいことを思いついたという無邪気さに彩られて(イロドラレテ)いた。

 

「勇者の弟って、転生者だったよね?じゃあ、返してあげよう」

 

そう言って、手に持った首巻きに魔力を注ぎ込む。

 

「うんうん。勇者の弟に魔王の加護のこもったプレゼント。(イキ)だと思わない?」

 

同意を求められた白と空は無言。

 

「これを受け取った時、山田くんはどんな顔するかなー?」

 

その時のことを想像して、蜘蛛の魔王は悪趣味な笑みを浮かべた。

 

(白、山田が王族って、それに兄貴が死んで勇者を継承したんだよ?)

(ありえないよね、フツメンの山田が、ね?びっくりだよね?空?)

 

 

 

 

~~~終幕~~~

 

どうやら、あの蜘蛛ちゃんと龍ちゃん、叡智(エイチ)を気に入ってくれたみたいだね♪

こちらとしてもプレゼントした甲斐(カイ)があったというものです。

あそこまで劇的な反応をしてくれると、嬉しくなりますね。

蜘蛛ちゃんがお尻(オシリ)に火がついて慌てふためいている姿と龍ちゃんが寝起きに慌てる蜘蛛ちゃんに水魔法を浴びせる姿は永久保存しておきましょう。

あの蜘蛛と龍ならば、叡智もきっと使いこなしてくれるでしょう。

蜘蛛ちゃんは思考を分裂させても、あれだけ平然としていられるんですら。

傲慢(ゴウマン)、忍耐と、支配者スキルを持っているなら、もう1つくらい追加してもなんとかなるでしょう。

龍ちゃんには、7つの大罪と7つの美徳ではなく、私が新しく創った称号を授けよう♪

蜘蛛ちゃんを守って?護ってもらうから、称号[守護神(シュッツガイスト)]を使ってね♪

そして、いつか私の存在まで着いてくださいね。

期待していますから。

きっとあなたたちなら、もっと楽しませてくれると。

管理者にして、邪神であるこの私を。

さあ、次は私に何を見せてくれるんでしょうか?

このあと世界とどう関わっていくんでしょうか?

このあと世界をどう変えていくんでしょうか?

とても楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




蜘蛛娘:[白織]・Lv 1
種族:蜘蛛姫(スモールポイズンタラテクト)
性別:雌
スキルポイント:8900

雷龍娘:[空丹]・Lv 1
種族:地龍姫→風龍姫→水龍姫→雷龍姫
性別:雌
スキルポイント:98900


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6 蜘蛛娘・中層激走

空が地龍ゲエレと地龍カグナを倒す。

空が覚えるスキル「伝心」は管理者Dによって
構築された。オリジナルです。
白には、「叡智」が与えられるから、
「伝心」は構築されない。
伝心の支配者の取得スキルはオリジナルです。

嫉妬の支配者と慈悲の支配者の取得スキルと効果は、
ライトノベルと違うかもしれません





やってきました中層!イエーイ!

今日これから中層攻略開始するぜ!イエーイ!

遠距離攻撃も熱さ対策も万全じゃないけど、行くぜ!イエーイ!

ハァ.......。テンション上げてないとやってらんないわー。

初めて中層を発見してから早数日。

私たちはその間スキルを鍛えまくって、かなり強くなった。

今のステータスはこんな感じ。

先ずは(マズハ)(クゥ)のステータス。

 

〈雷龍娘:[希少種(キショウシュ)真名(マナ)空丹(クゥタン)]・Lv 5

ステータス

HP:6690/6690(緑)[1450UP]

MP:7050/7050(青)[1500UP]

SP:7280/7280(黄)[1450UP]

SP:7560/7560(赤)[1450UP]

平均攻撃能力:8190(雷龍娘)[1450UP]

平均防御能力:8840(地龍娘)[1450UP]

平均魔法能力:8190(光龍娘)[1500UP]

平均抵抗能力:9030(水龍娘)[1500UP]

平均速度能力:9330(風龍娘)[1450UP]

スキル

「鑑定Lv 10」「念話Lv 10」「地龍(チリュウ)Lv 10」「風龍(フウリュウ)Lv 10」「水龍(スイリュウ)Lv 10」「雷龍(ライリュウ)Lv 5」「龍牙Lv 10」「火魔法Lv 10」「土魔法Lv 10」「大地魔法Lv 10」「風魔法Lv 10」「旋風魔法Lv 10」「水魔法Lv 10」「水流魔法Lv 10」「雷魔法Lv 10」「雷鳴魔法Lv 10」「光魔法Lv 10」「閃光魔法Lv 7」「闇魔法Lv 7」「闇黒魔法Lv 4」「深淵魔法Lv 10」「土・風・水・雷・光・複合魔法」「火耐性Lv 10」「土耐性Lv 10」「風耐性Lv 10」「水耐性Lv 10」「雷耐性Lv 10」「光耐性Lv 10」「闇耐性Lv 3」「破壊耐性Lv 1」「打撃耐性Lv 2」「斬撃耐性Lv 3」「毒耐性Lv 9」「酸耐性Lv 6」「麻痺耐性Lv 6」「腐蝕耐性Lv 6」「恐怖耐性Lv 10」「気絶耐性Lv 10」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 5」「探知Lv 6」「隠密Lv 10」「集中Lv 7」「剛力Lv 8」「堅牢Lv 6」「生命Lv 2」「回避Lv 2」「持久Lv 2」「瞬発Lv 4」「過食Lv 8」「暗視Lv 10」「夜目Lv 10」「龍眼Lv 10」「視覚領域拡張Lv 8」「空間認識Lv 5」「龍翼Lv 8」「龍鱗Lv 10」「逆鱗Lv 10」「天鱗Lv 5」「演算処理Lv 6」「予測Lv 8」「神速Lv 8」「護法Lv 3」「魔量Lv 10」「HP自動回復Lv 8」「破壊強化Lv 5」「龍結界Lv 10」「神龍結界Lv 10」「外道魔法Lv 7」「外道耐性Lv 8」「奈落」「風速Lv 5」「水速Lv 5」「雷速Lv 5」「禁忌Lv 4」「神へと至る龍」「嫉妬」「n%I=W」

スキルポイント:99300〉

 

下層から中層への出入り口で(シロ)と別れて、下層で見つけた地龍ゲエレと地龍カグナを倒しに下層へ、

 

~~~雷龍娘・地龍ゲエレと地龍カグナを討伐~~~

 

地龍ゲエレと地龍カグナには、目印を付けているので、レベルが低かった地龍ゲエレを目指して翔る。

 

翔て、数10分後、地龍ゲエレを発見した。

私は、地龍ゲエレのステータスを確認する。

 

〈地龍ゲエレ・Lv 36

ステータス

HP:5756/5756(緑)

MP:5191/5191(青)

SP:6267/6267(黄)

SP:6045/6045(赤)

平均攻撃能力:5633(詳細)

平均防御能力:6074(詳細)

平均魔法能力:3543(詳細)

平均抵抗能力:5596(詳細)

平均速度能力:6322(詳細)

スキル

「地龍Lv 4」「逆鱗Lv 8」「堅甲殻Lv 4」「鋼体Lv 4」「HP高速回復Lv 5」「MP回復速度Lv 3」「MP消費緩和Lv 3」「魔力感知Lv5」「魔力操作Lv 5」「SP高速回復Lv 5」「SP消費大緩和Lv 5」「大地強化Lv 10」「破壊強化Lv 10」「斬撃大強化Lv 10」「貫通大強化Lv 6」「打撃大強化Lv 10」「魔力撃Lv 3」「大地攻撃Lv 10」「空間機動Lv 7」「命中Lv 10」「回避Lv 10」「確率補正Lv 9」「危険感知Lv 10」「気配感知Lv 10」「熱感知Lv 9」「動体感知Lv 10」「土魔法Lv 4」「破壊耐性Lv 6」「斬撃耐性Lv 10」「貫通耐性Lv 10」「打撃耐性Lv 10」「衝撃耐性Lv 7」「大地無効」「雷耐性Lv 5」「状態異常大耐性Lv 5」腐蝕耐性Lv 3」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 9」「視覚強化Lv 9」「暗視Lv 10」「視覚領域拡張Lv 7」「聴覚強化Lv 7」「嗅覚強化Lv 6」「触覚強化Lv 5」「身命Lv 10」「魔蔵Lv 3」「天動Lv 4」「富天Lv 3」「剛力Lv 10」「堅牢Lv 10」「道士Lv 3]「護符Lv 10」「韋駄天Lv 5」

スキルポイント:53000

称号

「魔物殺し」「魔物の殺戮者》「龍」「覇者」

 

空間機動持ちでスピードタイプのゲエレだから、〈龍眼〉で確認しているゲエレの急所の足を素早く攻撃し、機動力を裂き、地龍ゲエレの喉元を喰い千切った!

 

地龍ゲエレを倒したので、ステータスを確認する。

 

〈雷龍娘:[希少種(キショウシュ)真名(マナ)空丹(クゥタン)]・Lv 7

ステータス

HP:6980/6980(緑)[290UP]

MP:7350/7350(青)[300UP]

SP:7570/7570(黄)[290UP]

SP:7850/7850(赤)+3594[290UP]

平均攻撃能力:8490(雷龍娘)[290UP]

平均防御能力:9130(地龍娘)[290UP]

平均魔法能力:8490(光龍娘)[300UP]

平均抵抗能力:9330(水龍娘)[300UP]

平均速度能力:9620(風龍娘)[290UP]

スキル

「鑑定Lv 10」「念話Lv 10」「地龍Lv 10」「風龍Lv 10」「水龍Lv 10」「雷龍Lv 7」「龍牙Lv 10」「火魔法Lv 10」「土魔法Lv 10」「大地魔法Lv 10」「風魔法Lv 10」「旋風魔法Lv 10」「水魔法Lv 10」「水流魔法Lv 10」「雷魔法Lv 10」「雷鳴魔法Lv 10」「光魔法Lv 6」「閃光魔法Lv 8」「闇魔法Lv 8」「闇黒魔法Lv 10」「深淵魔法Lv 10」「土・風・水・雷・光・複合魔法」 「火耐性Lv 10」「土耐性Lv 10」「風耐性Lv 10」「水耐性Lv 10」「雷耐性Lv 10」「光耐性Lv 10」「闇耐性Lv 10」「破壊耐性Lv 1」「打撃耐性Lv 2」「斬撃耐性Lv 3」「毒耐性Lv 10」「酸耐性Lv 10」「麻痺耐性Lv 10」「腐蝕耐性Lv 10」「恐怖耐性Lv 10」「気絶耐性Lv 10」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 6」「危険感知Lv 7」「気配感知Lv 7」「探知Lv 7」「隠密Lv 10」「集中Lv 9」「剛力Lv 8」「堅牢Lv 6」「生命Lv 4」「回避Lv 4」「持久Lv 4」「瞬発Lv 8」「過食Lv 10」「暗視Lv 10」「夜目Lv 10」「龍眼Lv 10」「視覚領域拡張Lv 10」「空間認識Lv 7」「龍翼Lv 10」「龍鱗Lv 10」「逆鱗Lv 10」「天鱗Lv 8」「演算処理Lv 9」「予見Lv 1」「神速Lv 10」「護法Lv 3」「魔量Lv 10」「HP自動回復Lv 8」「破壊強化Lv 5」「龍結界Lv 10」「神龍結界Lv 10」「外道魔法Lv 5」「外道耐性Lv 5」「奈落」「風速Lv 6」「水速Lv 6」「雷速Lv 6」「禁忌Lv 4」「神へと至る龍」「嫉妬」「n%I=W」

スキルポイント:99700〉

称号

「悪食」「魔物殺し」「無慈悲」「魔物の殺戮者」「守護神」「龍」「血縁喰ライ」「悪逆無道」「嫉妬の支配者」

 

ちょ.......ちょっと、待って。ひとまず、深呼吸をして、考える。

この調子で、地龍カグナを倒していいのかな?

........まぁ、私がチートになってしまったら、白に相談しよう。

さぁ、地龍カグナの反応が近づいてきている。なら、こちらに罠を張って、あの移動要塞みたいな防御特化のカグナには。

そうと決まれば、早速、スキルをフル活用して、地龍カグナが現れるまで、待つ。

 

~~~30分後~~~

 

地龍カグナのステータスが確認できた。

 

〈地龍カグナ・Lv 40

ステータス

HP:7498/7498(緑)

MP:6954/6954(青)

SP:6098/6098(黄)

SP:6412/6412(赤)

平均攻撃能力:7238(詳細)

平均防御能力:7633(詳細)

平均魔法能力:5137(詳細)

平均抵抗能力:7305(詳細)

平均速度能力:4525(詳細)

スキル

「地龍Lv 4」「逆鱗Lv 10」「堅甲殻Lv 10」「鋼体Lv 10」「HP高速回復Lv 8」「MP高速回復Lv 4」「MP消費緩和Lv 4」「魔力感知Lv 5」「魔力操作Lv 5」「SP回復速度Lv 3」「SP消費緩和Lv 3」「大地強化Lv 10」「破壊強化Lv 10」「貫通強化Lv 8」「打撃大強化Lv 7」「魔力撃Lv 3」「大地攻撃Lv 10」「命中Lv 5」「危険感知Lv 10」「熱感知Lv 8」「土魔法Lv 4」「破壊耐性Lv 10」「斬撃大耐性Lv 4」「貫通大耐性Lv 5」「打撃大耐性Lv 6」「衝撃大耐性Lv 6」「大地無効」「火耐性Lv 5」「雷耐性Lv 9」「水耐性Lv 5」「風耐性Lv 7」「重大性Lv 4」「状態異常大耐性Lv 10」「腐蝕耐性Lv 5」「苦痛無効」「痛覚大軽減Lv 5」「視覚強化Lv 5」「暗視Lv 10」 視覚領域拡張Lv 6」「聴覚強化Lv 3」「天命Lv 4」「魔蔵Lv 5」「瞬身Lv 3」「耐久Lv 3」「剛力Lv 10」「城塞Lv 4」「道士Lv 4」「天守Lv 3」「縮地Lv 3」

スキルポイント53400

称号

「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「龍」「覇者」

 

何、このヤバい地龍。スキルの防御が完璧すぎる。

これ、動く城塞だね。

私も大概偏ったステータスだけど、あいつはスキルまでガッツリ防御寄りに特化しているからなー。

龍のデフォルトスキル、逆鱗による高い防御力と魔法妨害能力。

そこに、さらに防御力上乗せさせる堅甲殻と鋼体のスキル。

どっちも常時発動型のスキルで、単純に防御力を上乗せさせるっていうものだ。

このスキルのせいで、ただでさえ高い防御力に磨きが掛かっている。

そこにさらに各種耐性系のスキル。

防御力を越えるダメージを与えないと、倒せないということだ。

特に耐性で厄介なのが、状態異常大耐性。

火龍(カリュウ)も持ってたスキル状態異常耐性の進化したスキル。

私は、状態異常攻撃が主力攻撃ではないから、それがレベル8あっても、意味をなさない。

では、どのように彼の(アノ)城塞を打ち崩すかを考えなければならない。

 

 

 

15分の考慮の末、地龍ゲエレを倒したように、地龍カグナ(アイツ)の防御力を越えるを閃いた!

 

「『火・炎・氷・雪・闇・消滅魔法』が頭に浮かんだ」

 

移動速度は、私の方が地龍カグナ(コイツ)より優れているので、背中に移動する。

 

「喰らえ、カグナ!」

 

 

地龍カグナを跡形もなく、葬り去った。

と同時に、レベルアップの音が鳴った。

 

ピロンッ。

《経験値が一定に達しました。個体、雷龍姫(ライリュウキ)が20になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈光魔法Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈閃光魔法Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈闇魔法Lv 10〉になりました》

《スキル〈火・炎・氷・雪・闇・消滅魔法〉を取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈闇耐性Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈危険感知Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈探知Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈剛力Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈剛穀Lv 1〉に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈剛穀Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈堅牢Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈城塞Lv 1〉に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈城塞Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈生命Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈身命Lv 1〉に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈身命Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈天命Lv 1〉に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈天命Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈持久Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈天動Lv 1〉に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈天動Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈瞬発Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈韋駄天Lv 1〉に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈韋駄天Lv 3〉になりました》

《スキル〈MP回復速度Lv 1〉を取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈MP回復速度Lv 10〉になりました》

《スキル〈MP消費緩和Lv 1)を取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈MP消費緩和Lv 10〉になりました》

《スキル〈SP回復速度Lv 1〉を取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈SP回復速度Lv 10〉になりました》

《スキル〈SP消費緩和Lv 1〉を取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈SP消費緩和Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈視覚強化Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈視覚強化Lv 10〉からスキル〈望遠Lv 1〉が派生しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈神性領域拡張Lv 1〉を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈空間認識Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈空間座標把握〉を取得しました》

《スキル〈人化(ジンカ)〉を取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈破壊強化Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈外道魔法Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈外道耐性Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈風速Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈水速Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈雷速Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈過食Lv 10〉から〈飽食Lv 1〉に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈飽食Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。個体雷龍姫が進化可能です》

《進化先は、光龍姫です》

《個体雷龍姫が光龍姫に進化します》

 

はい。

 

 

そして、おはようございます。

今回も無事に目覚めました。ステータスを確認しましょうか。

 

〈光龍娘:[希少種(キショウシュ)真名(マナ)空丹(クゥタン)]・Lv 1

ステータス

HP:13140/13140(緑)[6160UP]

MP:13550/13550(青)[6200UP]

SP:13730/13730(黄)[6160UP]

SP:14010/14010(赤)+3594[6160UP]

平均攻撃能力:14650(雷龍娘)[6160UP]

平均防御能力:15290(地龍娘)[6160UP]

平均魔法能力:14690(光龍娘)[6200UP]

平均抵抗能力:15530(水龍娘)[6200UP]

平均速度能力:15780(風龍娘)[6160UP]

スキル

「鑑定Lv 10」「念話Lv 10」「地龍Lv 10」「風龍Lv 10」「水龍Lv 10」「雷龍Lv 10」「光龍Lv 2」「龍牙Lv 10」「火魔法Lv 10」「灼炎魔法Lv 10」「土魔法Lv 10」「大地魔法Lv 10」「風魔法Lv 10」「旋風魔法Lv 10」水魔法Lv 10」「水流魔法Lv 10」雷魔法Lv 10」「雷鳴魔法Lv 10」「光魔法Lv 10」「閃光魔法Lv 10」「闇魔法Lv 10」「闇黒魔法Lv 10」「深淵魔法Lv 10」「土・風・水・雷・光・複合魔法」「火・炎・氷・雪・闇・消滅魔法」「火強化Lv 10」「土強化Lv 10」「風強化Lv 10」「水強化Lv 10」「雷強化Lv 10」「光強化Lv 10」「闇強化Lv 10」「火耐性Lv 10」「土耐性Lv 10」「風耐性Lv 10」「氷耐性Lv 10」「雷耐性Lv 10」「光耐性Lv 10」「闇耐性Lv 10」「破壊耐性Lv 2」「打撃耐性Lv 2」「斬撃耐性Lv 3」「毒耐性Lv 10」「酸耐性Lv 10」「麻痺耐性Lv 10」「腐蝕耐性Lv 10」「恐怖耐性Lv 10」「気絶耐性Lv 10」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 8」「危険感知Lv 10」「気配感知Lv 10」「探知Lv 10」「隠密Lv 10」「集中Lv 10」「思考加速Lv 1」「天命Lv 3」「天魔Lv 3」「天動Lv 3」「富天Lv 3」「剛穀Lv 3」「城塞Lv 3」「天道Lv 3」「天守Lv 3」「韋駄天Lv 3」「回避Lv 7」「過食Lv 10」「飽食Lv 10」「暗視Lv 10」「夜目Lv 10」「龍眼Lv 10」「龍瞳(リュウドウ)Lv 1」「視覚強化Lv 10」「望遠Lv 1」「視覚領域拡張Lv 10」「神性領域拡張Lv 1」「空間認識Lv 10」「空間座標把握」「聴覚強化Lv 10」「嗅覚強化Lv 10」「味覚強化Lv 10」「触覚強化Lv 10」「龍翼Lv 10」「龍鱗Lv 10」「龍鱗Lv 10」「逆鱗Lv 10」「天鱗Lv 10」「演算処理Lv 10」「予見Lv 3」「神速Lv 10」「護法Lv 4」「魔量Lv 10」「HP自動回復Lv 10」「MP回復速度Lv 10」「MP消費緩和Lv 10」「SP回復速度Lv 10」「SP消費緩和Lv 10」「破壊強化Lv 7」「龍結界Lv 10」「神龍結界Lv 10」「外道魔法Lv 8」「外道耐性Lv 8」「奈落」「風速Lv 8」「水速Lv 8」「雷速Lv 8」「禁忌Lv 5」「人化」「神へと至る龍」「覇者」「嫉妬」「n%I=W」

スキルポイント:101000

称号

「悪食」「魔物殺し」「無慈悲」「魔物の殺戮者」「守護神」「龍」「龍神」「血縁喰ライ」「悪逆無道」「嫉妬の支配者」

 

おいおい、あったよ。嫉妬に似た、壊れスキルと私たちが1番欲しいスキルがあった。

 

〈慈悲(500):神へと至らんとするn%の力。自身の持つ神性領域を拡張する。敵対勢力のHP1まで吸収する。また、Wのシステムを凌駕(リョウガ)し、MA領域への干渉権を得る〉

〈空間魔法(500):空間を操る魔法〉

 

これこれ。空間魔法といえばチートの定番。

この空間魔法があれば、スキル「龍眼」を併用して、白が今いる場所まで移動できるからね♪

 

《現在所持スキルポイントは101000です。スキル〈慈悲〉と〈空間魔法Lv 1〉をスキルポイント1000を使用して取得可能です。取得しますか?》

 

はーい。

 

《〈慈悲〉と〈空間魔法Lv 1〉を取得しました。残り100000です》

 

さあ禁忌だろうがなんだろうがかかってこいや!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv 7〉になりました》

《〈空間魔法Lv 1〉を取得しました》

 

ごめんなさい。やっぱり来てくれないほうが良かったです。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈演算処理Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈演算処理Lv 10〉がスキル〈高速演算Lv 1〉に進化しました》

《条件を満たしました。スキル〈視覚強化Lv 10〉からスキル〈望遠Lv 1〉が派生しました》

《条件を満たしました。スキル〈龍瞳Lv 1〉を取得しました》

《条件を満たしました。称号〈慈悲の支配者〉を獲得しました》

《称号〈慈悲の支配者〉の効果により、スキル〈外道無効〉を獲得しました》

《〈外道耐性Lv 8〉が〈外道無効〉に統合されました》

 

あー、予想通り禁忌が上がったね。今回も2つ。ま、しゃーない。

レベルが上がると何かが起きそうだけど、対策もないしね。

それよりも、大事なのは称号の方だ。

早速手に入れた称号の確認だね!

 

〈慈悲の支配者:取得スキル「外道無効」:取得条件:「慈悲」の獲得:効果:攻撃、魔法、速度の各能力上昇。邪瞳(ジャドウ)系スキル解禁。耐性系スキルの熟練度に+補正。支配者階級特権を獲得:説明:慈悲を支配せしものに与えられる称号〉

 

ああ。やっぱりだね。やっぱりチート級の称号だったね。

攻撃と魔法と速度が増えたよ!

両方とも100増えて、攻撃14790、魔法14790、速度15880に上がった。

もう、なんなのよこれ?ちょっと、耐性系のスキルの熟練者が上がりやすくなったっていうのも大きい。

 

〈嫉妬の支配者:取得スキル「深淵魔法Lv 1」「奈落」:取得条件:「嫉妬」の獲得:効果:HP、SP、防御の各能力上昇。精神系スキルの熟練度に+補正。支配者階級特権を獲得:説明:嫉妬を支配せしものに贈られる称号〉

 

 

 

 

大分(ダイブン)前から、念話がカウンターストップしているけれど、進化とか派生はしないのかなー。

ショックだねー。

..........本当にないのね?

 

《ザ、........ザー、.....ザ、ザー、........》

 

.......何、このテレビの砂嵐みたいな音?

 

《ザー、要請、ザー、......上位管理者権限かく、ザー、......》

 

え?何、何?

 

《ザー、.......理者サリ.......ザー、.......却下、ザー》

 

なんかヤバい。

 

《ザー、ピン!》

 

それまで聞こえていた音に対して、やたら明瞭(メイリョウ)に聞こえたそのピンという音に、私は思わずビクッと体を震わせた。

 

《要請を上位管理者Dが受諾しました》

《スキル〈伝心〉を構築中です》

《構築が完了しました》

《条件を満たしました。スキル〈伝心〉を獲得しました》

《〈鑑定Lv 10〉が〈伝心〉に統合されました》

《〈念話Lv 10〉が〈伝心〉に統合されました》

《〈探知Lv 10〉が〈伝心〉に統合されました》

《条件を満たしました。スキル〈魔導の極み〉を獲得しました》

《条件を満たしました。スキル〈星魔〉を獲得しました》

《熟練者が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈神性領域拡張Lv 1〉を獲得しました》

《条件を満たしました。称号〈伝心の支配者〉を獲得しました》

《称号〈伝心の支配者〉の効果により、スキル〈操体(ソウタイ)の極み〉〈神聖〉を獲得しました》

《〈SP回復速度Lv 10〉が〈操体の極み〉に統合されました》

《〈SP消費緩和Lv 10〉が〈操体の極み〉に統合されました》

《〈魔量Lv 10〉が〈神聖〉に統合されました》

《〈護法Lv 4〉が〈神聖〉に統合されました》

〈伝心:神へと至らんとするn%の力。自身の領域範囲内に存在する仲間との情報の共有を可能にする。また、Wのシステムを凌駕(リョウガ)し、MA領域への干渉権を得る〉

〈伝心の支配者:取得スキル「操体の極み」「神聖」:取得条件:「伝心」の獲得:効果:各種ステータス上昇:支配者階級特権を獲得:説明:伝心を支配せしものに贈られる称号〉

〈操体の極み:SPの超回復〉

〈神聖:n%の力が最大になり、Wのシステムを凌駕し、上位者に匹敵する〉

〈神性領域拡張:神域領域を拡張する〉

 

説明のまんまなのね。

鑑定様!二重鑑定をお願いします!

 

〈神域領域:生命が持つ魂の深層領域。全ての生命の根源であり、自己の最終依存領域でもある〉

 

んん?よく分からないから、(シロ)ちゃんにあった時にでも、聞いてみよう♪

 

あと、称号〈慈悲の支配者〉を手に入れて、スキル〈外道無効〉が手に入ったから、探知を常時発動したいけれど、探知は

念話と一緒にスキル〈伝心〉に統合されたから、スキル〈伝心〉を常時発動しておこう。

 

〈魔導の極み:システム内における魔力制御補助、及び術式展開各種能力値が最大となる。また、MP回復速度が最速となり、消費が最低となる〉

〈星魔:MP、魔法、抵抗の各種ステータスに1000のプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時に100の成長補正が掛かる〉

 

.......え....えっと、魔導の極みって。今までも、ちょこちょこ魔法を使えていたのは、制御仕切れなかった余波だったっていうの!

今、魔導の極み(コレ)が手に入ったということは、今までよりも、精密で繊細な魔力操作が出来るってことだね♪

 

これは、悠長なことをしている暇はないね♪

どうしよう。早く白と合流しないとね。

その前に、邪瞳系スキルの確認をしてみよう。

 

〈呪いの邪瞳(50000):呪い属性のダメージを視界に入った任意の部位に与える〉

 

邪瞳系スキルって、この1種類しかないのか。.......まあ、沢山ある中から、1つを選べって言われても、()の瞳は、2つしかないし、その1つにスキル〈望遠〉が入っているしね♪

 

ということで、呪いの邪瞳を取ります♪

 

〈呪いの邪瞳:呪いの邪眼(ジャガン)と違い、各種能力値、HP、MP、SPに一瞬でダメージを与え、死に至らしめる〉

 

せ......制限無しって、さすが、50000ものスキルポイントが必要なだけあって、ぶっ壊れている!

望遠からの、呪いの邪瞳を放つのって、漫画やアニメみたいで良いよね♪厨二(チュウニ)病っぽいけれど。

 

~~~~~~~~~

 

私は、(クゥ)を見送ってから、自分のステータスを確認する。

 

〈蜘蛛娘:スモールポイズンタラテクト[白織]・Lv 5

ステータス

HP:57/83(緑)

MP:281/281(青)

SP:51/82(黄)

SP:82/82(赤)

平均攻撃能力:92

平均防御能力:92

平均魔法能力:235

平均抵抗能力:268

平均速度能力:830

スキル

「鑑定Lv 8」「念話Lv 10」「糸の才能Lv 3」「蜘蛛糸Lv 9」「操糸Lv 8」「粘糸Lv 8」「斬糸Lv 6」「猛毒攻撃Lv 3」「毒合成Lv 7」「毒魔法Lv 2」「影魔法Lv 2」「深淵魔法Lv 10」「破壊耐性Lv 1」「打撃耐性Lv 2」「斬撃耐性Lv 3」「火耐性Lv 1」「闇耐性Lv 1」「猛毒耐性Lv 2」「酸耐性Lv 4」「麻痺耐性Lv 4」「腐蝕耐性Lv 4」「石化耐性Lv 3」「恐怖耐性Lv 7」「気絶耐性Lv 2」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 7」「探知Lv 6」「隠密Lv 7」「予測Lv 8」「剛力Lv 3」「堅牢Lv 3」「生命Lv 7」「回避Lv 3」「持久Lv 8」「瞬発Lv 8」「過食Lv 7」「視覚強化Lv 8」「暗視Lv 10」「視覚領域拡張Lv 3」「聴覚強化Lv 7」「嗅覚強化Lv 7」「味覚強化Lv 4」「触覚強化Lv 6」「集中Lv 9」「命中Lv 7」「投擲Lv 6」「演算処理Lv 6」「並列思考Lv 4」「予測Lv 8」「立体機動Lv 3」「魔量Lv 8」「HP自動回復Lv 5」「MP回復速度Lv 3」「MP消費緩和Lv 2」「SP回復速度Lv 2」「SP消費緩和Lv 3」「破壊強化Lv 1」「斬撃強化Lv 1」「毒強化Lv 2」「気闘法Lv 1」「気力付与Lv 2」「外道魔法Lv 3」「外道耐性Lv 4」「奈落」「禁忌Lv 4」「護法Lv 3」「韋駄天Lv 3」「傲慢」「n%I=W」

スキルポイント:9900〉

 

イヤ、強くなったものだ。

新しく増えたスキルも結構ある。

鑑定様が未取得のスキルを表示してくれるようになったので、良さそうなスキルに狙いを定めて、そのスキルに関係がありそうな行動をして熟練度を稼いでスキル取得していった。

おかげで前々から気になっていたスキルも含めて、だいぶスキルが増えてくれたね。

まあ、ここまで一気に増えたのは、傲慢の効果が大きいんだろうけれどね。

MPSPは全部関連スキルを揃えてみた。

回復速度は文字通り、自動回復する速度が上がるスキルで、消費緩和は使う量を減らしてくれる便利なスキル。

特にSPの消費緩和は、赤と黄両方に作用してるっぽい。

具体的には、赤の総スタミナが減りにくくなったし、走ってる間の黄のスタミナの減りも少なくなった。

立体機動なんてスキルも新しく勝手に生えた。

(クゥ)が居てる時から天井近くにホームを作っていたせいか、上り下りしているうちにいつの間にか獲得していたわけ。

効果は飛んだり跳ねたりできるようになるようだ。

あとのスキルはおいおい説明していこうと思う。

ここ数日でわかったことだけど、スキルだけじゃなく、ステータスも鍛えればレベルアップ以外で上がることがわかった。

韋駄天のスキルレベルを上げるために走り込みをしていたおかげで、ステータスが上がって気づくことができたってわけで。

傲慢の効果で私の成長速度が上がっているからなのか。

私たちは常に鑑定を発動させているので、(クゥ)も一緒だとは思うけれど、UPの表示があるということは、その直前にスキルやステータスが上昇してたってこと。

この表示は私が確認してからしばらくすると、自動的に消えちゃう。

死にそうな目にとかいっぱいあったけれど、最終的に生き残っているし運はいい、はず。

あれ?けど、そもそも運のいいやつは死にそうな目に何度もあわないか?

んん?

.......ダメだ。これ以上それを考えちゃダメだ。

ホント、紙一重だった。

今まで、(クゥ)が一緒にいたから、それほど危ない目には会わなかった。

それは、空の守護神の効果範囲にいたからで。

私だけなのに運がいい。まだまだ捨てたもんじゃない。

そういうことにしておこう。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予測Lv 9〉になりました》

 

何だそのバッチリすぎるタイミング!

 

 

さて、とりあえず現状を確認しよう。

只今(タダイマ)マグマの煮えたぎるど真ん中。陸地とマグマの比率はだいたい同じくらい。

勢いでここまで来ちゃったけど、

まあ、どっちにしろ合ってるかなんてわからないし、適当に進むしかないんだけれどね。

中層と下層を行ったり来たりして火耐性を獲得することはできたけれど、レベルは1。

現状だと、火耐性レベル1と、HP自動回復レベル5で、熱さによるダメージは相殺できるようになった。

なったはいいけど、同時に1度減ると回復が難しいということでもある。

回復にはレベルアップによる全回復か、HP自動回復か火耐性のスキルレベルが上がって、回復とダメージの均衡が崩れるかしないと。

とはいえ、マグマがすぐ近くにあるわけだし、最悪ダメージの方が大きくなることもあるかもしれない。

なるべくならそういうさらに熱い場所は避けていきたいところだけれど、どうなることやら。

今までの上層とか下層の感じから言って、この中層も相当広いと思っておいたほうがいい。

なんせ世界最大の迷宮だしね。

大陸と大陸を繋ぐ(ツナグ)くらいなわけだし、中層を抜けるには何日も掛かるのを覚悟しなきゃならない。

先は長いのに、出だしで挫いたゃった(クジイチャッタ)からなー。幸先が悪い。

よし、それでは行ってみよう。

うむ。しかし熱い。

蜘蛛(クモ)に生まれ変わってからというもの、暑くも寒くもない快適な気温の中、生活してきたからねー。

こうも急激に環境が変わると怠い(ダルイ)

一応火耐性のスキルレベルを上げるのにちょいちょい来てはいたから、耐え切れないってことはないけれどね。

それでも中層を抜けるまではずっとこの状態が続くのかと思うと、やっぱりうんざりする訳よ。

特に足ね。

そりゃ、マグマがすぐ近くを流れてるような場所よ?

地面も熱々に決まってんじゃん。

もうね、夏の陽に当てられたアスファルトの比じゃないわ。

もう熱いっていうかそれ通り越して痛い。

痛覚軽減とHP自動回復がなかったらやってられないわ。

お、魔物発見。

 

 

 

〈エルローゲネラッシュ・Lv 5

ステータス

HP:159/159(緑)

MP:145/145(青)

SP:145/145(黄)

SP:116/145(赤)

平均攻撃能力:83

平均防御能力:81

平均魔法能力:79

平均抵抗能力:77

平均速度能力:88

ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

ふっふっふっ、鑑定様のレベルが上がり、攻撃力とかも見破ってくれるようになりましたー!

キャー、素敵!

まあ、成功率はそこまで高くはないけれどね。

あれは中層に到着してから初めて見た魔物やね。

タツノオトシゴみたいなやつだ。

初日と同じようにマグマの中、悠然と泳いでいる。ないわー。

こっちに気づいている様子はないし、このままスルーしたいところだけれど、進行方向にあいつがいるんだよねー。

どうしたもんか。んー。

なんて悩んでいたら、向こうのほうがこっちに気づいた。

この前と同じように、タツノオトシゴはマグマの中から火の玉を吐き出してきた。

そおい!避ける。

うん。そのくらいのスピードじゃ、私には当たらないよ。

昔は蛙の唾液(ダエキ)攻撃も避けられなかったけれど、今じゃ速度増し増し、回避スキル持ちと、あの時の比じゃないくらい強くなっているからね。

今じゃ、ゲームのキャラにも引けを取らない神回避力を備えているのだ!

一発喰らえば消し炭の紙装甲だろうけれど、当たらなければどうということはないのだ!

しかし、これ、あかんわ。

どっちも決め手がない。

向こうの火の玉は私に当たらない。

けれど、私も糸が使えない以上、あいつに対して取れる攻撃手段がない。

どっちも手詰まり

あ、いや、あいつのMPがもう少しで尽きるな。あの火の玉、MPを使ってるっぽい。

ということは、MPがなくなれば火の玉は飛んでこなくなるわけだ。

やっぱり鑑定様チートですわ。戦いながら相手の情報がわかるんですものね。

よし、最後の火球(カキュウ)を避ける。これであいつのMPはもうない。

次のあいつの行動で、この勝負の行方が変わるけれど、いかに?

あ、マグマから這い(ハイ)出してきた。

そのまま突進してくる。

バカだなー。私だったらMPが尽きた時点で戦略的撤退をするのに。

私から見るとおっそい突進を余裕で避ける。

(クゥ)がいても、同じことを思うだろう。

そのままタツノオトシゴの背中に取り付き、爪に毒攻撃を乗せて突き刺す。

というか、コイツの体熱い!HPがちょっと減ったじゃん!貴重なHPが!

とりあえず、猛毒に侵されたタツノオトシゴはコロッと息絶えた。

うむ。初戦はなんとか突破。

火の玉が線を描いて背後に抜けて行く。

2つ。まあ、2つだろうと今の私なら避けるのは簡単。

チラッと視線を向けた先には、タツノオトシゴが2匹。

どうやらここらへんはタツノオトシゴがいっぱいいるらしく、そこらじゅうにウヨウヨしてる。

群れているわけではなくて、各々(オノオノ)好き勝手にブラブラしているだけっぽいけれど、こうやってたまたままた飛んできた火の玉を避ける。

普段個別に生活しているせいか、連携はあんまり良くない。個別で好きに火の玉を出している感じ。

でなければ苦戦していたかもしれない。

いくらあたらなければいいと言っても、逆に言えば当たればどうにかなるってこと。

それに、単純に避けるだけならいいけれど、ここはマグマが溢れ(アフレ)かえる灼熱フィールド。

うっかりマグマに落ちでもしたら、私の体は燃えるどころか溶けて消えてしまうに違いない。

それだけは、避けなければいけない。私は、帰りを待っていると(クゥ)に約束をしたのだから!

火の玉を避けるにしても、足元の確認は怠らない。

まるで残機なしの弾幕シューティングをやらされているかのようだ。

しかも、賭けて(カケテ)いるのは私な命。

こっちから攻撃ができないのも辛い。

糸は出してもすぐ燃えてしまって意味がないし、マグマに近づくなんて論外。

相手は攻撃し放題なのに対して、こっちは避けるしかできないというジレンマ。

まあ、それもタツノオトシゴのMPが切れるまでの辛抱だけど。

タツノオトシゴはMPが切れると(オカ)に上がってくる。

わざわざ自分から有利な立場を捨てて、相手と同じフィールドに来てくれるのだ。

紳士である。バカである。脳筋である。

今もMPの切れた1匹目のタツノオトシゴがノコノコと(オカ)に上がってきた。

さっさと毒を纏った(マトッタ)爪で始末する。

修行中に新たに獲得した破壊強化と斬撃強化で威力も増している。

破壊強化はその名前のとおり、破壊力を強化する。それだけ言うと大雑把な印象だけれど、要は攻撃力が全体的に上乗せされるスキルだと思っておけばいい。

斬撃強化も同じようなもの。ただしこっちは斬撃限定だけど。

タイミングよく2匹目もマグマから這い上がってきたので、同じように止めを刺す。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールポイズンタラテクトがLv 6になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈毒強化Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 4〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

お!レベルアーップ!

地味にHPも減っていたしありがたいね。脱皮して減っていたHPが回復した。

タツノオトシゴは割と簡単に勝てるんだけど、体に触れるとこっちにダメージが来る。

1匹くらいなら大したことはないんだけど、それも何匹分も積み重なると結構バカにできないくらいのダメージになる。

回復手段がレベルアップによる全回復しかない現状、少しのダメージもできれば受けたくない。

(クゥ)が居た時は、守護神のスキルで護っていてくれたから、ダメージのことを考えていなくても大丈夫だった。

が、今は、(クゥ)もレベルアップの為に、遭遇して強すぎるから見逃してきた、2匹の地龍[ゲエレ]と[カグナ]の討伐という名の、踏み台になってもらっている。

ちなみに、食べる時はちょっと時間を置けば冷めてくるから、冷ましてから食べている。

今回のレベルアップで火耐性かHP自動回復のどっちかが上がってくれればよかったのだけれど、世の中そんなに甘くない。

火耐性はレベル1のまま上がってくれないし、HP自動回復もそのままだ。

火耐性が上がらないのは仕方がない。どうにも私は種族的に火に弱いっぽいし、それを克服するのも一朝一夕ではできないってことでしゃうね。

HP自動回復ってゲームとかだと終盤に手に入るようなスキルだろうけれど、この世界では、序盤も序盤だけれど、私たちは手にいれているのだ。

それをスキルポイントも使わずに、自然にゲットできただけでも十分だし、そこからさらに成長を早くしてって望のは、流石に欲張りでしょう。

持っているだけでも儲けもの(モウケモノ)って思わないと。

実際、HP自動回復がなかったら、(クゥ)が居ない状態でこの中層を突破しようなんて思わなかっただろうしね。

だってムリなんだもん。(クゥ)が居ないと。今、守護神様は、下層でレベルアップ中。

私が中層を抜け、上層で出逢えるのを楽しみに中層攻略を頑張りますよ♪

自動回復なしで常時ダメージを受け続けるエリアに突入なんて、自殺をしに行くようなもの。目先の出逢いがなければ。

自殺をする趣味はないし、その場合、縦穴探しに下層を彷徨っていた(サマヨッテイタ)でしょうねー。

あの地龍アラバがいる下層を。ないわー。軽く死ねる。

地龍ゲエレと地龍カグナは、(クゥ)が討伐するとしても。

 

 

 

中層攻略はそれなりに順調。

タツノオトシゴ以外にも数種類の魔物に出会ったけれど、どれも大したことはなかった。

地形の不利さえなければ、負けることはなさそう。

ただ、その地形の不利っていうのが問題なのよねー。

まずマグマ。これがきつい。

相手の魔物がマグマの中にいると、こっちからは石を投げるくらいしかできることがない。

せっかく投擲(トウテキ)のスキルがあるんだしと思って、猿の真似して石を投げてみたけれど、大したダメージにはならなかった。

結局相手が岸に上がってきてくれないと、こっちは何もできないのと大差がないのよ。

タツノオトシゴみたいにMP切れたらノコノコ上がってくるならいいんだけれど、中にはそのままマグマの中に留まったり、逃げ出したりする魔物もいるから厄介。

逆に、魔物は陸地にいて、追い詰められるとマグマの中に逃げ込むやつとかね。

糸が使えないのもきつい。

糸の才能なんて、糸関係の攻撃力を上げてくれるスキルもゲットしたっていうのに.........。

石を拾って投げるくらいなら大丈夫だけど、出しっぱなしにしていると陸地にいても火が出たりする。

困ったのは普段私が無意識のうちに出している糸だ。

私は移動する際、無意識に糸を出しているんだけれど、それがここだと燃える。

燃えたのが導火線みたいに伝わってきて、お尻(オシリ)が熱くなる。

最初に比喩(ヒユ)でもなんでもなくマジに、お尻に火が付いた時は慌てたわ。

HPがそれで結構減っていた。消火に毒合成を使ったからそれでさらにHPが減った。

だってそれしか手元に火を消せるようなものがなかぅたんだよねー。

仕方がないから、無意識のうちに出している糸はこまめに切るようにはした。

寝床も問題だ。

こんな状態で巣を作ろうものなら、巣ごと燃えるのが目に見えている。

仕方がないのでそこは諦める(アキラメル)として、岩場の陰で寝ることにした。

まあ、寝れるわけがないよね。

常にダメージを受けるような灼熱(シャクネツ)地獄で、魔物の気配に怯え(オビエ)ながら寝る。

いくら私の神経が図太いって言ってもさ、限度ってものがあるでしょう。

それでも寝なきゃいけない。

仕方がないからほとんど寝てないに等しいけれど、適当な岩場を見つけたら寝るようにしている。

まあ、そんなこんなである意味下層よりも劣悪な環境なんだけれど、唯一助かっているのが、魔物が弱いってことだ。

ここの魔物は強さで言ったら上層の魔物と大差がない。

蛇みたいに、そのエリアにしたら強い魔物もいるかもしれなけれど、今のところは出会う魔物はみんな弱めだ。

上層の魔物との1番の違いはやっぱり地形を利用しているか否か。

これのせいで大して強くない魔物が厄介な存在になる。

回復手段が少ない以上、一発攻撃を食らっただけでピンチになりかねないしね。

それに、今のところ魔物が弱くて何とかなってはいるけれど、中には下層クラスの大物もいるかもしれない。

地形だけでこれだけ苦労しているのだから、そんな相手が現れたら........。

できるだけ、そんなのがいないことを祈ろう。

魔法さえ使うには、地形さんと同等かそれ以上の何敵である探知を攻略しなきゃならない。

どっちにしても、一朝一夕でどうにかなるものじゃないよね。

あー、魔法が使いたいー。

 

 

 

 

 

なーんか嫌な予感はしていたのよねー。

タツノオトシゴが竜っていうからさ。

 

〈竜:(リュウ)の下位種族と言われる魔物の1種。下位ではあるものの、中には龍種に匹敵するものも存在する〉

 

うん。あの地龍の下位に属する魔物。

で、(クゥ)は、神龍姫(シンリュウキ)へと至る超上位種。

系統的には火竜(カリュウ)になるのかな?

地龍(チリュウ)がいるってことは、火龍(カリュウ)もいるんだろうなー。

まさかこの中層にいないよね?

いないことを祈ろう。

ちょっと思考が現実逃避気味にそれたけれど、目の前の問題をどうしようか真面目に考えよう。

 

〈エルローゲネセブン・Lv 7

ステータス

HP:461/461(緑)

MP:223/223(青)

SP:218/218(黄)

SP:451/466(赤)

平均攻撃能力:368

平均防御能力:311

平均魔法能力:161

平均抵抗能力:158

平均速度能力:155

ステータスの鑑定に失敗しました〉

 

〈エルローゲネセブン:エルロー大迷宮中層に生息する下位竜に属する魔物。雑食性でその大口により何でも飲み込む〉

 

その魔物はマグマの中をゆっくりと泳いでいる。

下位竜という割には、その姿はどっちかって言うとナマズっぽい。

それに、セブンっていう名前が似合わない。

この世界の命名に文句を言っても仕方がないんだけれどさ。

特徴的なのはやっぱりナマズみたいな大きな口だ。

あれで飲み込まれたら、やだわー、私のサイズだとスッポリ飲み込まれそう。

ステータスの鑑定に成功したのは大きい。

ステータスの鑑定が成功する確率は、大体3回に1回。

ここでその1回を当てられたのは幸運だ。

ナマズの正確なステータスもわからずに突っ込むのは、流石に危険すぎる。

中層では弱めの魔物ばっかりだったけれど、このナマズはその中でダントツの強さだ。

できればスルーしたい。

けれど、ナマズが泳いでいるところはちょうど私が通る道のすぐ近くだ。

今までの傾向を考えると、襲いかかってくる確率大。

うーん。どうしたものかなー。

いや、逃げようと思えば私のスピードであれば逃げ切れるとは思うんだけれど、あいつのやたら高い赤ゲージでずっと追いかけられたら厄介だよねー。

黄ゲージも少ないとはいえ、それでも私の倍以上あるわけだし。

何より、スキルまでは見れないからなー。

もし、ナマズがSP消費緩和とかを高レベルで取得していたら、最悪逃げ切れないかもしれない。

まあ、ないとは思うけれどねー。

戦うにはちょっと強い。

ならやっぱりここは逃げるべきかな?

うん。ムリをしていい場面ではないよね。

最近上り調子だけど、こういう時に調子に乗ると痛い目を見るんだよ。

私もね、学習したのですよ。調子に乗ってはいけない。

慎ましやかにいかなきゃならんのてますよ。

ということで、そろーりと行動開始。

見つかったら全力で逃避するってことで。

そこで、すぐ近くのマグマから、別のナマズが浮き出てきた。

は?うおい!?話が違いませんか!?

私調子乗ってないのにピンチだぞ!?

ナマズが私と目を合わせて、一瞬キョトンとした後、その大口を開けた。

バックステップ!

私がいたところにナマズの大口が閉じられる。

そのままノッソリと陸地に上がってくるナマズ。

こいつ、マグマの中にいる時は気づかなかったけれど、手足がある。

しかも、竜らしい(ウロコ)が全身を覆っている。

いかにも防御力が高そう。

うん。逃げよう。

ゲッ!?

逃げようと進行方向を見れば、さっきのナマズが陸地に這い(ハイ)上がってきていた。

位置的に挟み撃ちだから逃げられないよね......これ!?

どうしよう!?

えーい、こうなったら目の前のナマズを速攻倒すしかない!

毒糸をナマズの体に巻きつける。

毒攻撃によって糸にも毒を付与できるようになったのは修行中に確認済み。

ここでは燃えちゃうから使い道はほとんどないけれどね!

すぐに燃えちゃうんだろうけれど、少しでも毒が入れば!

案の定すぐに燃える糸。

毒の効果を確認するために、ナマズのHPを見る。

ちょっと減っている。毒は有効っぽい。

なら、なんとか毒を盛れれば。

ナマズがパカッと口を開ける。

そのまま突進してくる。

ぬおー!こえー!

 

けれど、あえてギリギリまで引き付ける!

そのまま目の前まで大口が迫ったところで、毒合成発動!

紙一重で離脱!

ナマズは私の代わりに蜘蛛(クモ)猛毒をその口にパックリと飲み込む。

私の毒攻撃は、修行中にスキルレベルが10になり、そのまま上位のスキルである猛毒攻撃に進化した。

元々巨猿さえ葬るほどの強力な毒だった蜘蛛毒が、蜘蛛猛毒に進化したのです。

ナマズが蜘蛛猛毒を飲み込んだ瞬間、物凄い(モノスゴイ)勢いでHPが減少し始める。

減りの速度が半端じゃない。

それに呼応するかのようにナマズが苦しげにのたうち回る。

おう、私の毒、こんな強力になっていたのか......。

強いだろうとは思っていたけれど、我ながら恐ろしい威力だわ。

て、もう1匹は!?

視線を向けると、もう1匹のナマズは、仲間の惨状にちょっとビビって引いていた。

お、おう。そりゃな、仲間がこんなに苦しんでいるの見たらやべえって思うよね。

竜に逃走はないのかと思っていたけれど、タツノオトシゴがそうだっただけなのか。

そのまま元気なナマズは(キビス)を返して逃げていった。

マジかー。最初は私が逃げようかと思っていたんだけれどなー。

まさか向こうが逃げるのかー。

これ、ちょっと調子に乗っても良くない?

私結構強くない?

とりあえず、苦しんでいるナマズに止めを刺す。

ビタンビタン跳ねるナマズの顔に向かって毒合成。

ビクンと痙攣(ケイレン)してナマズは動きを動きを止めた。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールポイズンタラテクトがLv 7になりました》《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈集中Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈集中Lv 10〉からスキル〈思考加速Lv 1〉が派生しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈生命Lv 8〉になりました》

スキルポイントを入手しました》

 

ん?レベルアップと同時に、集中がどうやらカウンターストップしたようだ。

ちょっと期待していた集中がカウンターストップした。

集中は地味だけど、その効果は見えないところで私を支え続けてくれていた。

そこから補正したスキルにも、期待が持てるってもんよ。

改めて手に入れた派生スキルの思考加速を鑑定してみよう。

 

〈思考加速:思考を加速させ、知覚できる時間を引き延ばす〉

 

.......すごいスキルだ。

いや、真面目にこれすごくない?

これつまりあれでしょ?

時間の流れが遅く感じるようになるってことでしょ?

あの一流スポーツ選手が時々体験する、ボールがゆっくりになって見える現象でしょ?

それを任意で発動できるってこと?

ヤバくない?

早速発動。

うむ。発動自体は問題なくできたね。

で、どんな感じよ?

んー?ちょっとだけマグマの動きが遅い?

あと、何か違和感が。

体のいろいろな感覚が、早いような遅いような、何とも言えない奇妙な感覚だね。

試しに体を動かしてみる。

なんか、水中にいる時みたいな妙な重さがある。

こう、思ったように動かせないもどかしさみたいな。

これが思考加速した状態のデフォルトなのか。

この(ゴロ)自分のスピードに振り回されることもあったから、トップスピードを出す時は発動させるべきかもしれない。

あれ?でもこれ、何も消費していないぞ?

MPもSPもさっきから減っていない。

ということは、このスキル常時発動型のパッシブスキルってこと?

オンとオフは切り替えられるっぽいけれど、オンにしっぱなしでもデメリットがない?

え、凄くね(スゴクネ)?私、てっきりMPとか消費するもんだと思っていたんだけれど。

MP消費して数秒間だけ発動とか、そんな感じで。

いつでもどこでも消費なし?

これ、とんでもないスキルじゃない?

デメリットは特になし。

敢えて言うならこの感覚になれるまでちょっと違和感があることくらい。

これは、とんだチートスキルをゲットしてしまったかもしれない!

まぁ、(クゥ)も持っているだろう♪

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予測Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈予測Lv 10〉が〈予見Lv 1〉になりました》

 

あ、予測さんちーっす。

そういえばこれもカウンターストップ一歩手前だったね。

まあ、あってないようなスキルだったけれど、進化して少しは使えるようになったかな?

 

〈予見:予測効果が高まる。それにより未来の可能性が僅かに見えるようになる〉

 

ん?未来の可能性?え、どういうこと?

とりあえず発動。

うん。これも問題なく発動できるね。

けれど、何も変わっていないような?

あ、いや、なんかマグマの動きがちょっと変。

ところどころがボヤける?

いや、これ重なって見えているんだ。

この重なって見える部分が未来の可能性とかいうやつ?

それって要は未来視ってこと?

まあ、可能性だから鵜呑みにはできないけれど、このスキルも鍛えればかなり役立つかもしれない。

今は重なるマグマも少ないし、あんまり役にたちそうには見えないけれどね。

あれ?ちょっと待ってよ?これも何も消費していないぞ?

え、これもパッシブスキル?

........すごいスキルだ。

まさか、いらない子だった予測からこんな掘り出し物が出てくるのは。

ごめんよ、予測。ダメな子でも頑張れば一端(イッパシ)になれるんだね。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈鑑定Lv 9〉になりました》

 

元ダメな子筆頭キター!

鑑定様!今度のレベルアップはいかがでございましょうか!?

早速拝見させていただきまする!

 

〈蜘蛛娘:スモールポイズンタラテクト[白織]・Lv 7

ステータス

HP:88/88(緑)

MP:285/285(青)

SP:88/88(黄)

SP:88/88(赤)+612

平均攻撃能力:109

平均防御能力:108

平均魔法能力:239

平均抵抗能力:273

平均速度能力:956

スキル

「鑑定Lv 8」「念話Lv 10」「糸の才能Lv 3」「蜘蛛糸Lv 9」「操糸Lv 8」「粘糸Lv 8」「斬糸Lv 8」「猛毒攻撃Lv 3」「毒合成Lv 7」「毒魔法Lv 2」「影魔法Lv 2」「深淵魔法Lv 10」「破壊耐性Lv 1」「打撃耐性Lv 2」「斬撃耐性Lv 3」「火耐性Lv 1」「闇耐性Lv 1」「猛毒耐性Lv 2」「酸耐性Lv 4」「麻痺耐性Lv 4」腐蝕耐性Lv 4」「石化耐性Lv 3」「恐怖耐性Lv 7」「気絶耐性Lv 2」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 7」「探知Lv 6」「隠密Lv 7」「剛力Lv 3」「堅牢Lv 3」「生命Lv 8」「回避Lv 5」「持久Lv 8」「瞬発Lv 8」「過食Lv 7」「視覚強化Lv 8」「暗視Lv 10」「視覚領域拡張Lv 2」「聴覚強化Lv 8」「嗅覚強化Lv 7」「味覚強化Lv 5」「触覚強化Lv 6」「集中Lv 10」「命中Lv 8」「投擲Lv 7」「演算処理Lv 6」「並列思考Lv 4」「予見Lv 1」「立体機動Lv 4」「魔量Lv 8」「HP自動回復Lv 5」「MP回復速度Lv 3」「MP消費緩和Lv 2」「SP回復速度Lv 2」「SP消費緩和Lv 3」「破壊強化Lv 1」「斬撃強化Lv 1」「毒強化Lv 3」「気闘法Lv 1」「気力付与Lv 2」「外道魔法Lv 3」「外道耐性Lv 4」「奈落」「禁忌Lv 4」「護法Lv 3」「韋駄天Lv 3」「傲慢」「n%I=W」

スキルポイント:10220

称号

「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「魔物殺し」「毒術師」「糸使い」「無慈悲」「魔物の殺戮者」「傲慢の支配者」

 

お、おお!称号が増えている!

これ地味に気になっていたんだよねー。

あと、この赤ゲージの横に見える数字は、もしかしなくても過食のストック分?

こんなにストックされているのか。

そりゃ、どんだけたっても減らないわけだよ。

さて、では早速称号を鑑定してみましょうか。

 

鑑定様の力で称号も閲覧できるようになったから、早速詳細を鑑定してみた。

 

〈称号:特定の条件を満たすことによって得られる強化コード。入手時にスキル2つ取得することができる。称号の中には特殊な効果を持つものや、ステータスを上げるものも存在する〉

 

へー。称号って、ただスキル2つ手に入るだけじゃなかったんだね。

てっきりそれだけのもんだと思っていた。

てことは、私の称号も気付いていなかっただけで何かしらの特殊効果があったかもしれないんだ。

これは、ますます鑑定するのが楽しみになってきた。

ということで、レッツゴー!

 

〈悪食:取得スキル「毒耐性Lv 1」「腐蝕耐性Lv 1」:取得条件:一定期間毒物やそれに準ずるものを大量に摂取する:効果:胃腸が強くなる:説明:毒すらも食物とするものに贈られる称号〉

 

あ、はい。そうですよね、私はともかく、(クゥ)も生まれてこれまで毒物ばっか食ってましたしね。

 

〈血縁喰ライ:取得スキル「禁忌Lv 1」「外道魔法Lv 1」:取得条件:肉親を喰らう:効果:なし:説明:肉親を喰らったものに贈られる称号〉

 

効果なし。

この称号って、取った意味あったのかな?

どう考えてもマイナス効果のスキル禁忌がある時点で、これとっちゃいけない称号だったんじゃない?

私が生まれて周りには、マザーから産み落とされた兄弟姉妹。そして、弱肉強食の共喰いだったから、血縁喰ライがあるのはわかるんだよね。

その血縁喰ライの称号が(クゥ)にもあるんだよね。これって、地龍ガイアを倒して、手に入れたみたいだからもしかしたら......。

考えるのは、空と再会してから。

 

〈暗殺者:取得スキル「隠密Lv 1」「影魔法Lv 1」:取得条件:不意打ちによる暗殺成功回数が一定に達する:効果:不意打ちの一撃にダメージボーナス:説明:暗殺を繰り返したものに贈られる称号〉

 

おー。取得したスキルもそうだったけれど、効果の方もなかなかにそれっぽい。

 

〈魔物殺し:取得スキル「強力Lv 1」「堅固Lv 1」:取得条件:魔物を一定数撃破:効果:魔物相手に与ダメージが微増:説明:数多くの魔物を倒したものに贈られる称号〉

 

ああ。やっぱり魔物を殺した数が関係していたのかー。

 

〈毒術師:取得スキ「毒合成Lv 1」「毒魔法Lv 1」:取得条件:毒を一定量使用する:効果:毒属性を強化:説明:毒を使いしものに贈られる称号〉

 

滅茶苦茶(メチャクチャ)役立った称号その1。

毒合成にはお世話になっております。

生まれてからずっと毒使い続けていたのに、なかなかこの称号手にはいらなかったのはそのせいかも。

 

糸使い:取得スキル「操糸Lv 1」「斬糸Lv 1」:取得条件:糸による攻撃を一定回数行使する:効果:糸による攻撃力を増加:説明:糸を武器とするものに贈られる称号〉

 

滅茶苦茶役立った称号その2。

私のメインウェポン糸を超強化してくれた称号だね。

この中層では、あんまり見せ場はないけれどね!

 

取得条件さえもう少し早くわかれば、もうちょっと楽ができていたかもねー。

 

〈無慈悲:取得スキル「外道魔法Lv 1」「外道耐性Lv 1」:取得条件:無慈悲な行動をする:効果:罪悪感を覚えなくなる:説明:無慈悲なるものに贈られる称号〉

 

全体的にアバウト。もうちょっと説明を凝らしたりしようよ。

んー、効果も微妙だし、全体的に微妙だよね。

 

《も......もしも......し、もしもし.....(シロ)ちゃ....ん、聞こえるかな?》

〈どうしたの(クゥ)ちゃん〉

《白ちゃんも「○○の支配者」を持っていた.....よね。私も....持っているのよ》

〈持っているよ。空ちゃんも手に入れたの〉

《うん。.....この.....続きは、再会.....してからね》

〈わかったよ、空ちゃん♪〉

 

空ちゃんも支配者を手に入れたんだ.....。

 

〈魔物の殺戮者:取得スキル「剛力Lv 1」「堅牢Lv 1」:取得条件:魔物を一定数撃破:効果:魔物相手に与ダメージが増:説明:膨大な数の魔物を倒したものに贈られる称号〉

 

うん。これは魔物殺しの称号の上位互換だね。

多分、魔物殺しより多くの魔物を倒すと、この称号になるんでしょうね。

 

〈傲慢の支配者:取得スキル「深淵魔法Lv 1」「奈落」:取得条件:「傲慢」の獲得:効果:MP、魔法、抵抗の各能力上昇。精神系スキルの熟練度に+補正。支配者階級特権を取得:説明:傲慢を支配せしものに贈られる称号〉

 

待て。いろいろ待ってよ。

なんだその効果は?

いきなりステータスが跳ね上がったのはお前のせいか!?

というか、それだけではなくて熟練度にさらにプラス補正ですと!?

傲慢の効果で既にプラスされているのに?

だから予測とかやたら上がるのが早かったんかい!

ていうか、支配者階級特権って何?

 

〈支配者階級特権:支配者に与えられる世界の1部を管理する権限〉

 

え?何それ?私も......いや、先ほどの(クゥ)ちゃんからの連絡で、空ちゃんも支配者を持っているみたいだったから、空ちゃんも支配者階級特権を持っているね。

 

《傲慢の支配者より特権の行使要請を受けました。現在傲慢の支配者が行使可能な権限はありません》

 

ねーのかよ!?

もー、マジでなんなのよこれ?

傲慢のスキルが謎すぎる。

まあ、称号についていろいろわかった。

やっぱり鑑定様は頼りになるわね。ダメな子って、ボロクソ言っていた(ワタクシ)めを御許しください。

 

 

鑑定様の結果に満足したので、冷ましていたナマズを食べる。

中層にいる魔物はこうやって時間を置かないと食べられないのがネックだよねー。

時間を置いても冷めたのは表面だけで、中はまだまだ熱々だったりするし。

下手したらHPが減るし、食べるのに神経を使うとか嫌になるわー。

あ、ナマズ美味しい。

マジで!

(クゥ)ちゃんにも、食べさせてやりたいけれど、今は居ないしね。空ちゃんは空ちゃんで地龍2体を食べているだろうしね♪

この蜘蛛(クモ)生の中で初めて美味いと思える食材に出会えたよ私!

やべえ。もう1匹逃がすんじゃなかったね。

あいつ、速度はかなり遅かったし、今からでも追いつけないかな?

ああ、でもマグマの中に逃げられたらどうしようもないか。

とりあえずこのナマズは味わって食べよう。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈味覚強化Lv 6〉になりました》

 

美味しいよー。私、生まれてきてよかったー。マジうめえ。

 

美味しいもの食べたいんだよ。

より。ナマズを狩ろう。

ナマズがちょっと強いからって気にする必要はない。

この欲求を満たすためなら、命を掛けても(カケテモ)いい。それだけの価値がある。

さあ、待っていろよナマズ。絶滅するまで食い尽くしてやる。

ナーマーズー!ナーマーズー!ナーマーズーはどーこーだー!

ナマズを求めて迷宮内を徘徊(ハイカイ)する。

いない。

いて欲しくない時はポッと出てくるくせに、いて欲しい時に限って出てきやしない。

早く出てこい。出てきて私に食わせろ。

こういう時に限って別の(ヤツ)が出てくるのよ。

 

〈エルローゲネラッシュ・Lv 8

ステータス

HP:170/170(緑)

MP:161/161(青)

SP:158/158(黄)

SP:156/167(赤)

平均攻撃能力:87

平均防御能力:84

平均魔法能力:84

平均抵抗能力:81

平均速度能力:91

スキル

火竜(カリュウ)Lv 1」「命中Lv 4」「遊泳Lv 4」「炎熱無効」

 

現れたタツノオトシゴ3匹。

その中のステータスに、今までなかったものが追加されていた。

おお、そうだった!

鑑定様のレベルが上がっていたから相手のスキルもわかるようになったんだ。

うは!いよいよ鑑定様がチートじみてきた!

しかしタツノオトシゴよ、お前スキル少なすぎやしないか?4つって。

どうりでステータス以上に弱く感じるはずだよ。

しかも炎熱無効っていう、明らかに火耐性のカウンターストップしているスキル以外は、みんなレベルが低いし。

とりあえず、初めて見たスキルを鑑定しておこう。

 

火竜(カリュウ):火竜種が有する特殊スキル。レベルにより特殊な効果を発揮する。Lv 1:火球(カキュウ)ブレス〉

〈遊泳:泳ぐ動作にプラス補正が働く〉

 

ふむ。火竜は予想通り、火竜種のみに存在する特殊なスキルっぽいね。

 

(ということは、(クゥ)ちゃんと別れた時は、雷龍娘だったから、初めの地龍娘の時にスキル「地龍」を持っていて、風龍娘、水龍娘、雷龍娘だった。スキル「風龍」「水龍」「雷龍」を持っているって事だよね。それで今は、雷龍娘の次に成っていると思う)

 

私の蜘蛛糸みたいなものか。

レベル1だと火の玉を飛ばすのしかできないっぽいね。

というか、本人のレベルが8なのに、火竜のスキルはレベル1なのね。

で、遊泳は泳ぐのが上手くなるスキルと。

うん。スキルを見て確信したわ。こいつには負けようがない。

というわけで、サクッと、はいかないんだよねーこれが。

だってこいつらマグマの中にいるんだもん。私の蜘蛛猛毒は、接触ダメージと摂取ダメージの2種類がある。

接触ダメージは毒が皮膚とかについていると発生するダメージで、摂取ダメージは相手の体内に毒が侵入すると発生するダメージだ。

そういうわけで、MPが切れてノコノコ(オカ)に上がってきたタツノオトシゴに毒を順にまぶしていく。こいつらの場合、口が小さくて狙いにくいから体にぶっかけるしかないんだよねー。

 

ナーマーズー!会いたかったぞナマズー!ようやく見つけたぞナマズー!

さあその肉をよこせ!今すぐよこせ!

選択肢は、ころしてでもうばいとる1択だ。ねんがんのなまずをみつけだぞ!

やつはマグマの中を悠々と泳いでいる。

まずはマグマの中から引きずり出さないといけないわ

ちなみに、ナマズのスキルの鑑定も成功した、

ステータスは前のやつと大差がない。

ナマズが持っているスキルは「火竜Lv 2」「龍鱗(リュウリン)Lv 1」「命中Lv 7」「遊泳Lv 6」「炎熱無効」「過食Lv 2」だった。

火竜レベル2で使えるようになるのは、熱纏(ネツマトイ)という技で、しの名前の通り熱を体に纏うというものらしい。

防御系の技なのかと思いきや、鑑定様の説明を見る限り、1番重要なのは運動能力が技が発動中は上昇するということっぽい。

けれど、自分の体を熱するわけだから、火耐性を持っていないと逆に自分の体にダメージがいきそうだ。ナマズは炎熱無効を持っているから関係ないけれどね。

龍鱗は特殊な(ウロコ)が全身に生えるスキル。

どう特殊なのかというと、防御力が高いのはもちろん、ある程度魔法の力を阻害するのだそうだ。

しかし、ふと思ったんだけれどこのナマズ、もしかしてタツノオトシゴの進化系なのかな?

同じ火竜種(カリュウシュ)だし、持っているスキルもタツノオトシゴの上位互換だしね。

種族とかスキル構成とかを見ているとありえそう。

でもそうなると、進化してこんなに姿が変わるのかー。

ま、こんなことどうでもいいよねー。

私の感心はお肉にしかないんだけどね。

というわけで、先制攻撃、毒石いってみよー!

私が投げた毒石がナマズの背に当たる。

うん。やっぱりHPはほとんど減らないね。

ここはやっぱり前と同じで、突進してきたところに毒合成を当てる作戦で行こう。

と、思ったら、ナマズのやつ、マグマの中から火球(カキュウ)ブレスをしてきやがった。

マジかー。タツノオトシゴの火球よりでかいし速い。

まあ、それでも当たらないけれどさー。ヒョイと飛んできた火球を避ける。

思考加速は今のところ少しだけ体感時間を延ばす程度だけれど、それでも普通の状態に比べると世界全体の動きが遅く感じる。

私自身はべらぼうに高い速度のおかげで、そのゆっくりと進む時間の中でも、比較的普通に動くことができる。

まあ、思考加速のスキルレベルが上がると、このゆっくり具合がさらになるのだろうから、その時どうなっているかはわからないけれどね。

今は1秒が1.1秒くらいに延びた感じかな?

体感だからそんなに正確なところはわからないけれど、だいたいそのくらいじゃないかなーと思う。

ナマズはそのまま第2射を放ってくる。

こいつ、タツノオトシゴと同じことをしやがって。

やっぱりナマズはタツノオトシゴの進化系っぽいなー。

この前のナマズはたまたましょっぱなに陸地に上がっただけで、本来ならタツノオトシゴと戦略は一緒なのかな?

あ、でも熱纏とかいう技も増えているんだし、その場その場で対応を変えているのかも。

前はひょっこり顔を出したら目の前になんかいたからとりあえず襲っとこう、的な感じだったのかもしれない。

ナマズの火球は避ける。

そろそろMPが切れる頃だけれど、ナマズはどう出てくるかな?

タツノオトシゴはMPが切れたらノコノコ陸地に上がってきたけれど、ナマズはどうだろう?

陸地に上がってきてくれないとこっちが困るんだけれど、前のあの逃走を見る限り、身の危険を感じたら逃げそうなんだよね。

そんなことは許さんよ?ナマズが火球を吐くのをやめる。

うん?MPはまだ若干残っているけれど?

あ、今減った。これは熱纏を使ったかな?

こういうことがわかるってすごいよねー。相手の情報がまるわかり、鑑定様やっぱチートっす。

うん?ナマズが大口を開けたぞ?

何をするつもりだ?

限界いっぱいまで開けたナマズの口から、ゴゴゴゴゴとでも言うべき効果音が聞こえてくる。

え?なにしているの?

呆気(アッケ)にとられている私の体が、風を感じる。

これ、ナマズの口に吸い込まれている?

星の(アノ)ピンクの悪魔か貴様は!?

まずい、このままでは吸い込まれてマグマに引きずりこまれ、ないな。

うん、効果音はすごいし、実際突風が発生してはいるけれど、私の体が動くほどではないしなー。

それを察知したのか、ナマズが吸い込みを止める(ヤメル)

そのまま私と目が合う。

何、この微妙な空気.........。

妙にビビりなところは、前世のままなのかな?

ナマズがいそいそとマグマの中から這い(ハイ)出してくる。その仕草といったら、コイツは中層の癒し系か、無駄に可愛いし。

そのまま大口を開けてこっちに突っ込んでくる。

あ、それは可愛くないわ。しかーし、それを待っていたのだよ!

十分に引きつけて、毒合成。

それと同時に私はサッと回避する。

猛毒を飲み込みながら直進するナマズ。

私はその様子を眺めて、あ、ナマズがコケた。

ビクンビクンしてるわ。

蜘蛛(クモ)の猛毒、本当にすごい効き目だわ。

ただの毒じゃここまでの効果はないだろうし、生まれ持った蜘蛛毒と合わせると、毒合成の威力が跳ね上がるよね。

ホント、このスキルと私の相性はいい。

さて、苦しんでいるナマズに追加の毒を浴びせる。

最後に大きく痙攣(ケイレン)して息絶えるナマズ。

あとは、熱纏とかマグマの影響とかで熱くなっていたのを、冷めるまで待つだけ。

ご飯、ご飯。

今までは倒した魔物は義務的に食べていただけだけれど、今回は違う!

美味しく(オイシク)味わって食べられる。

ああ、なんて素晴らしいんだ!

早く冷めないかなー。

食べるのが今から楽しみだわ。

 

 

 

ナマズは美味しく(オイシク)いただきました。大変美味でした。

その際味覚強化がレベル7に上がった。

どんだけ集中して食べてるんだって。

それは仕方がないじゃないか!

今まで不味い(マズイ)ものばっか食ってたんだもん!

美味しいものは味わって食べたいじゃないか!

ついでに過食もレベル8に上がった。

今でも十分ストックは足りているけれど、レベルが上がればその分ストックできる総量も増えるはずだし、上がっても損はない。

そろそろレベル10も見えてきたことだし、過食の派生、もしくは進化スキルも気になる。

これだけ便利なスキルだし、かなり期待が持てそう。

それに、ちょっと気になることもあるし。

気になること、それは傲慢(ゴウマン)のスキルのことだ。

あと、(クゥ)ちゃんが持っている、嫉妬(シット)のスキル。

嫉妬と傲慢と言えば、七大罪(シチタイザイ)

そして、七大罪のうちの1つに暴食というものがある。

私と(クゥ)ちゃんが持っている過食がどうしても、暴食の下位互換なのだ。

過食と暴食。言葉の響きも意味も似ているからだ。

もしかすると、過食の進化先が暴食?

いや、しかし、私と(クゥ)ちゃんの2人ともが、過食を持っていて、2人が暴食になることって、あるのだろうか?

.......過食と暴食の関係は、(クゥ)ちゃんに会ってからだね♪

傲慢の効果が破格すぎるくらいだし、同じシリーズで同じスキルって2人で持てるのかな?

まあ、私の過食レベルは8だし、気にするにはまだ早い。が、(クゥ)ちゃんはどうだろう?

それに、どうせスキルのレベルは勝手に上がっていっちゃうんだから、気にしても仕方がないね。

さて、それじゃあ、次のナマズを探して探索再開と。

ナーマーズー!

ナマズを求めて中層を徘徊(ハイカイ)する。

けれど、ナマズの姿は発見できない。

むう。そもそもマグマの中に潜られていると見つけられないしなー。

最初に遭遇した時も、マグマの中からひょっこりだったしなー。

普段はマグマの中に潜っているんだとしたら、発見は難しくなる。

思うに、(クゥ)もそうだけど、私のスキルに頼らない素の索敵能力って相当高いのよねー。

そんな自覚はなかったけれど、思い返してみたらちょっと勘がいいで済ませていいレベルじゃないと思うのよ。

上層とか下層にいた頃から奇襲を受けたことは1回もないし、身の危険を感じると、だいたい当たっているしねー。

空気の流れで感知しているのかな?なら、マグマの中にいられると感知の仕様がない。

水中とか土の中とか、そこらへんからの奇襲はわからないのかも。(クゥ)ちゃんがいたら、安心だけれどね♪

となると、マグマの近くは危険ってわけだ。

いきなり飛びかかられてそのままマグマの中に引きずり込まれたら、お陀仏(オダブツ)確定だね。

それでなくてもマグマに近づくのは危険だから、なるべく距離を置くようにしていたけれど。

これからはいきなりマグマの中から、魔物が現れてもいいように身構えておかないと。

こんなふうにね。

マグマの中から飛び出し、私の目の前に現れたのは一言で言うと、(ウナギ)

うん。(ウロコ)と手足の生えた鰻みたいな魔物だ。

 

〈エルローゲネレイブ・Lv 2

HP:1001/1001(緑)

MP:511/511(青)

SP:899/899(黄)

SP:971/971(赤)+57

ステータス

平均攻撃能力:893

平均防御能力:821

平均魔法能力:454

平均抵抗能力:433

平均速度能力:582

スキル

「火竜Lv 4」「龍鱗(リュウリン)Lv 5」「火強化Lv 1」「命中Lv 10」「回避Lv 1」「確率補正Lv 1」「高速遊泳Lv 2」「炎熱無効」「生命Lv 3」「瞬発Lv 1」「持久Lv 3」「強力Lv :1」「堅固Lv 1」「過食Lv 5」

 

やばい。この鰻、めっちゃ強い。

 

エルローゲネレイブ:エルロー大迷宮中層に生息する中位竜に属する魔物。雑食性だが他の魔物を好んで食べる習性がある〉

 

この強さで中位なのか。というか、スキルの構成を見る限り、この鰻もナマズの進化系なのかな?

て、今はそんなことを気にしている余裕はないね。

鰻との距離はざっと15メートルほど。

向こうはこっちに気づいてロックオンしている。

速度ではこちらのほうが高いけれど、その他のステータスは絶望的なまでに劣っている。

特にやばいのが、総スタミナを司る赤ゲージが過食分込みで負けていることだ。

逃げたとしても、スタミナ切れで追いつかれる可能性が高い。

そうなる前に諦めて(アキラメテ)くれればいいのだけれど......。

それでなくても私は私は黄のスタミナが低くて、トップスピードを維持していられる時間が短い。

最悪、瞬発力を表す黄のゲージが尽きた時点で、息切れして捕まる可能性もある。

逃げきれるか?

そう考えていると鰻が二重にブレる。

これは、予見が発動している。

そして、ブレて見える方の鰻は何かを吐き出すような動作をしている。

そのすぐ後、ブレた映像同様に鰻が火球を吐き出してきた。

やっぱり基本戦術は同じなのね。

けれど、タツノオトシゴやナマズとは比べ物にならないほどその火球は大きくて速い!

慌てて回避する。

思考加速が働いているけれど、その恩恵を感じないほどの速度で火球が飛んでくる。

火球は私が元いた場所に爆発を伴って直撃した。

もう少し余裕で回避できると思っていたのに、どういうこと?

 

〈確率補正:確率が関与するスキルの力にプラス補正が働く〉

 

このスキルのせいか。このスキルのせいで命中率が上がっているのかもしれない。

そうなると、私の回避をもってしても避け続けるのは難しいかもしれない。

これは、本格的にやばいかも。

鰻の吐き出す火球を避ける。

避けた先から次の火球が飛んでくる。

これじゃあ、逃げるどころの話じゃない。

爆発の余波でHPが少し削られる。

トップスピードなら避けられないことはないけれど、黄のゲージの減りが早い。

常に最速を出していると、あっという間に黄のゲージが底をついて息切れしちゃう。

そうなったらアウトだ。

予見と思考加速の力で火球の軌道を予測して、先回りしてかしていく。

けれど、鰻の方も私が先回りして来るのを読んで、軌道を修正してくる。

どっちが相手の裏をかくのか。裏の裏まで読むような緊張感。

けれど、あっちはそれが外れても大した影響はないけれど、こっちはそれが1回でも外れればしんでしまうという、大きな違いがある。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈思考加速Lv 2〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予見Lv 2〉になりました》

 

このタイミングでのスキルレベルアップは非常にありがたい。

飛んでくる火球の動きが少しだけゆっくりに感じられるようになる。

その分こっちの動けるスピードも体感的に遅くなるから、そこだけは注意しないといけない。

すると、予見に鰻の今までとは違った動きが見えた。

ブレスの動作には違いないけれど、今までよりタメが大きい。

私は温存していたトップスピードを解禁する。

景色を置き去りにするようなスピードで駆け抜ける。

その背後を、激しい炎が焼き尽くしていた。

 

〈火炎ブレス:広範囲を焼く火炎の吐息を吐く〉

 

火竜のスキルレベル4で使えるようになる技だ。

直撃は受けていないはずだけれど、余熱だけで背中が熱い。

HPもジリジリと減ってきている。

このままだとジリ貧だし、1発でも直撃を受ければ命はない。

(クゥ)ちゃんと逢わないといけないのに、折角、前世のわだかまりもなくなり、仲良くなったのに。

かと言って、有効な打開策も見当たらない。

ジワジワと命を削られていくような焦燥感がある。

また火球が飛んでくる。

鰻の命中レベル10のスキルと、確率補正のスキルのせいで、その狙いはとんでもなく正確だ。

私も回避と思考加速、予見のスキルのコンボがなかったら避けきれていたかどうかも怪しい。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈回避Lv 6〉になりました》

 

よし!状況を逆転できるほどではないけれど、今は少しでもプラス要素が欲しい。

火球を避けつつ鰻の残りMPを確認する。

大分減ったけれど、それでもまだ半分以上残っている。

火炎ブレスは広範囲技だけあって、火球よりもMP消費が激しいっぽい。

乱発ができないならそれでいいんだけれど、できればこのまま温存していてほしいところ。

予見が必ずしも発動するとは限らないし、そうなると、避け切れる自信がない。

できうる限り鰻の様子をよく確認していないと。

そう思った矢先に鰻が火炎ブレスを吐く姿を、予見が捉えた(トラエタ)

もう1度トップスピードで駆け抜ける。

けれど、鰻も今度はブレスを真っ直ぐなは吐かず、首を横に振るようにして、横薙ぎ(ヨコナギ)に吐いてきた!

ただでさえ広い火炎ブレスの攻撃範囲が、それで余計に広がる。

ぐっ!ちょっとかすった。

かすった程度なのに、HPが10も減る。

かすったのは背中の1部と後ろ足が1本。

後ろ足は少し痛みがあるけれど、動かす分には問題はなさそう。

とはいえ、スピードに若干の遅れは出るかもしれない。まずいな。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈火耐性Lv 2〉になりました》

 

ここに来て、ずっと上がらなかった火耐性がようやく上がった。

いいタイミングだ。

火耐性が上がってくれれば、自動回復が地形ダメージの分を上回ってくれるはず。

回復量は微々たるものだろうけれど、あるのとないのとじゃ、雲泥の差がある。

鰻のMPを見る。

よし。半分を切った

MPの消費は、火球がだいたい10、火炎ブレスが50くらい。

半分を切ったとはいえ、鰻はやろうと思えばあと4回は火炎ブレスを吐き出せる計算になる。

それはいただけない。

鰻と距離を取るように移動する。

そうはさせじと鰻は火球を吐きながら後を追ってくる。

狙い通り。

移動しながらじゃ、流石にあの火炎ブレスは吐けないと思う。

あとは、できるだけ逃げながら、火球を吐き出させ続けられれば、いつかMP切れを起こす。

それさえ乗り越えれば、チャンスもある。はず。

今はひたすら避ける。

なるべく後ろに下がりつつ、けれど、避けるのを第1にして行動する。

マグマの端に追い詰められないように、慎重に逃走ルートを選んでいく。

1歩間違えれば命はない。

綱渡りのような感覚。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈HP自動回復Lv 6〉になりました》

 

よしよし!

実績はやっぱりこれ以上ないくらい集中するためか、スキルのレベルが上がるのが早くなる。

火耐性と並んでレベルが上がるのを待っていたスキルが、このタイミングで上がった。

浮かれたのは一瞬。けれど、その一瞬が命取り。

鰻の首がブレスの動作をする。

完全に予想外。予見も発動しなかった。

これは、避けきれない。

鰻の口からブレスが迸る(ホトバシル)

私はその直後、地面を思いっきり蹴り(ケリ)付け、空中に飛び上がる。

私の足をブレスがかすめていく。

痛みを堪えながら、気力付与で強化した糸を天井に向かって伸ばす。

気力付与は赤のSPを消費して、物を強化するというスキル。

このスキルを使えば、中層の熱にも短時間なら耐えられる糸を出すことができる。

それでも、あくまで少ししか耐えられないので、急いで糸を引き寄せ、天井に着地する。

燃える前に糸を切り離す。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈立体機動Lv 5〉になりました》

 

天井から鰻を見下ろす私。

天井に逃れるのはいいたして、この状況はあまりにもよろしくない。

天井に張り付いた状態は地上にいる時よりもどうしても動きが遅くなる。

早々(ソウソウ)に地上に戻らないと、狙い撃ちされて終わりだ。

とはいえ、(ウナギ)の方も余裕があるとは言い難い。

鰻のMPはかなり減っている。

残りから換算すれば、火炎ブレスが3回、火球なら16発。

最初に比べれば、かなり減らした。

けれど、天井にいる私を撃ち落とすくらいの余力はある。

私が地上に戻るのが先か、鰻が私を撃ち落とすのが先か。

ここは、出し惜しみをしている場合じゃないね。

気闘法、発動!

気闘法ひ赤のSPを消費して、物理系のステータスを一時的に向上させるスキルだ。

赤のスタミナは私にとって生命線だし、できれば消費したくなかったので今まで発動させることはなかった。けれど、このピンチにそんなことも言っていられない。

すぐに移動を開始する。目指すは1番近い壁。

すれど、鰻もそれは見越していたっぽい。

正確に動きを阻害するように、火球を放ってくる。

天井に張り付いた状態だと避けるのが難しい。

ここは黄のゲージがどうのと言っていられない。

出せる限りの速度で迫る火球を回避する。

気闘法による底上げと、SP消費緩和とSP回復速度に頼ってゴリ押しするしかない。

黄のゲージが切れる前に、何としてでも壁際まで退避しないと。

迫る火球をなんとか回避していく。

けれど、そのせいで壁になかなかたどり着けない。

そうこうしているうちに黄のゲージが減っていく。

まずい。黄のゲージがなくなったら、天井に張り付いているのすら難しくなる。

それだけは何としてでも回避しないといけない。

そうは思うものの、絶妙な火球の狙撃のせいで、思うように先に進めない。

そしてついに、黄のゲージが尽きた。

途端に体を襲う疲労感。そこに容赦なく迫る火球。

くっ!私は避けきれないと判断して、自ら天井から虚空に身を躍らせる。

すぐ近くで火球が爆ぜ(ハゼ)、爆風が私の体を撫でる(ナデル)

錐揉み(キリモミ)しそうになる体をなんとか制御し、気力付与した糸を飛ばす。

壁に張り付いた糸をすぐさま引き寄せる。

さっきまで私のいた空間を、火球が通り過ぎていく。

私の体は振り子のように振られ、ギリギリマグマに落ちることもなく地上に着地することに成功する。

そこに容赦なく飛んでくる火球。

着地の勢いをそのままに、転がるように火球を避ける。

苦しい。黄ゲージが尽きても動き続けた代償に、私はひどい息苦しさと、身体中を襲う倦怠感(ケンタイカン)と痛みとを味わっていた。

苦痛無効と痛覚軽減の力で無理矢理それを無視する。

なぜなら、鰻の口から再びの火炎ブレスが放たれようとしていたのだから。

震える体に鞭打って(ムチウッテ)、全速力で駆ける。

視界の端が炎で真っ赤に染まる。背後から熱が迫る。

それを振り切るように走る。

そして私は火炎ブレスを避け切った。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル(回避Lv 7〉になりました》

 

火炎ブレスを避け切った私は、溜まっていた(タマッテイタ)息を吐き出す。

黄のゲージが回復し始める。

火球はもう飛んでこない。

つに、鰻のMPが切れた。

遠距離からの攻撃手段を失った鰻が、滑るような動作で陸地にその姿を現す。

鰻に見えるのは、顔の部分だけだった。

そこにいたのは、東洋の(タツ)彷彿(ホウフツ)とさせる、長い体躯(タイク)を持った竜だった。

MPが切れても、その目には相変わらず私の姿が捉えられている。

どうにも、私は完全に敵として認定されてしまったようだ。

最初はちょっと目障りだから潰しておこう(ツブシテオコウ)という感じだったのかもしれないけれど、途中から火球の攻撃に本気の度合いが混じり始めた。

火炎ブレスを吐いたくらいだから完全に本気だった。どうやら、私が攻撃を避け続けたのが、お気に召さなかったらしい。

このまま逃げても、見逃してもらえるとは到底思えない。

MPが切れたといっても、SPの方はまだまだ健在だ。

対して、私のSPは結構削られている。

黄のゲージが尽きても行動し続けた代償で、赤のゲージのスタミナも無視できないくらいの量が減っていた。

まだ過食のプラス分があるから、即行動不能ということには全然ならないけれど、体力勝負を鰻とした場合、負けるのは確実にこっちだ。

だったら選択肢は1つ。戦って勝つしかない。ステータスの数値だけを見ると、私に勝ち目はない。

けれど、数値だけが全てじゃない。

戦っていれば嫌でもわかるけれど、この世界ではスキルこそが最も重要な要素だ。

そもそも、これだけの数値の差があって、未だに私が生きていられるのは、(クゥ)ちゃんのお陰もあるけれど、奇跡に近い。

その奇跡を引き起こしているのは、紛れもなく(クゥ)ちゃんとスキルの恩恵のおかげだ。

スキルの力を最大限に発揮して、ステータスの差を埋めたおかげで、こうして同じ土俵まで引きずり出すことに成功した。

ステータスの差は確かに大きな差だけれど、絶対の差ではない。

スキルによって十分覆る(クツガエル)差だ。

そして、鰻のスキルはすべて看破した。

MPが切れた今、警戒すべきスキルは命中と回避、確率補正のコンボ。

そして、龍鱗(リュウリン)による防御力。火竜の最後のレベル3の技。

あとはその巨体から繰り広げられる単純な物理能力。

これだけ見てもかなりの強敵だ。

けれど、こっちにもまだ切り札はある。私の最強の攻撃手段、猛毒攻撃が。

この攻撃の前には相手の防御力はあんまり関係がない。

(ウロコ)の防御すら侵食して、その身を蝕む(ムシバム)猛毒。最後まで、私の頼れるのはスキルしかない。

スキルでしか上回れる要素がない。

けれどそれは、上回る可能性があるということでもある。

お互いに防御力はあってないようなもの。

攻撃が決まれば勝ちが決まる、一撃必殺の勝負。

なら、勝負の決め手になるのは......。

そうして、地上での第2ラウンドが合図もなく開始された。

 

 

鰻かその長い体をくねらせる

これまでの攻防で、鰻は私のことをかなり警戒しているようだ。

猿ほどではないけれど、この鰻も他の魔物に比べると頭がいい。

それだけこっちはやりにくいけれどね。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈思考加速Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予見Lv 3〉になりました》

 

その天の声(仮)に合わせるように、鰻が動いた。

体をくねらせ、その尻尾(シッポ)叩き(タタキ)つけてくる。

もちろん回避。けれど、鰻の攻撃はそれだけで終わらない。

すぐさま尻尾の横薙ぎ(ヨコナギ)が私に襲いかかる。

さらに後ろに下がってそれを回避。

今度は尻尾と反転するように、頭がこっちに向かってくる。

私が待っていたのは、それだ。

思考加速で若干ゆっくりとなった世界の中、迫る鰻の口を凝視する。

避けられると判断するギリギリのところで、毒合成を発動。

すぐに退避する。

ナマズと全く同じ戦法。けれど、その効果は絶大。

鰻は私の予定通りに、その猛毒を口にすることになった。

鰻のHPが急速に減っていく。苦しみもがく鰻が、その体をデタラメに暴れさせる。

私はその暴れる範囲から離脱する。

結局のところ、攻撃力が両方とも同じ一撃必殺の力を持つなら、先に攻撃を当てたほうが勝つ。

それなら、どうやって攻撃を当てるのか、その作戦が優れたほうが勝つに決まっている。

さらに言えば、私の回避力は、鰻の命中力を上回る。

命中レベル10と確率補正の力をもってしても、私の回避、思考加速、予見のコンボには届かなかった。

だから、地上に鰻

引きずり出した時点で、私の勝率はグッと上がっていたのだ。

けれど、まだ終わりじゃない。

一撃必殺の威力とはいったものの、恐らく鰻はあの一撃では死なない。

ナマズでも一撃では殺しきれなかったし、その上位種である鰻がそれで死ぬとは思えない。

それに、鰻にはまだあのスキルの力がある。

私の見ている目の前で、鰻のHPが急速に回復していく。

 

〈生命変還:SPを消費してHPを回復する〉

 

火竜のスキル、そのレベル3の技だ。

SPが消費され、HPがその分回復していく。

SPの量的に全回復はムリだけれど、それでも猛毒に耐えるだけのHPは確保できる。

さらに、私が見る鰻の鑑定結果に、新しく〈毒耐性Lv 1〉と〈HP自動回復Lv 1〉が追加される。

それでも体内の毒は鰻のHPを少しずつ削っているけれど、ダメージのピークは過ぎた。

まあ、私がむざむざ鰻が復活するのを黙って見ているわけがないんだけれどね。

鰻の体に、できる限り頑丈に作った糸を巻き付ける。

すぐに燃え尽きちゃうだろうけれど、構わない。

一瞬だけでも鰻の動きを止めてくれればいい。

狙い通り、一瞬だけ動きを止めることに成功する。

その瞬間、私は鰻の顔めがけて毒合成を連発する。

猛毒の水玉が鰻の顔にいくつも当たる。

鰻が糸を引きちぎって暴れまわる。

口や目から侵入した毒は、容赦なく鰻のHPを減らしていく。

その速度はついさっき取得したばかりの自動回復でどうにかなるレベルじゃない。

その威力はついさっき取得したばかりの毒耐性で凌げる(シノゲル)レベルじゃない。

私がこの蜘蛛(クモ)としての生で研ぎ澄ませてきた武器は、そんな即席で作った盾で防げるほど生易しいものじゃない。

もはや回復するためのSPも残っていない鰻に、この攻撃を耐え切ることはできなかった。

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールポイズンタラテクトがLv 8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈平行思考Lv 5〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈SP回復速度Lv 3〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールポイズンタラテクトがLv 9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈瞬発Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈持久Lv 9〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、スモールポイズンタラテクトがLv 10〉になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈演算処理Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈視覚強化Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈生命Lv 9〉になりました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。個体、スモールポイズンタラテクトが進化可能です》

《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。

・ポイズンタラテクト

・ゾア・エレ》

 

ああ、進化ねー。

進化!?早くない!?猿の時も思ったけれど、今回も早くない!?

まあ、進化は後ででいいや。

今は兎にも角にも(トニモカクニモ)、この感動を味わっていたい。

勝ったどー!!!

ひゃっふーい!勝った、(クゥ)ちゃんの援護なしに、勝ったよー♪いぇーい♪あんだけ強かった(ウナギ)に勝っちゃったよー!

すごくない!?私めっちゃ強くない!?

えへ、うへへ。糸もほとんど使わないで、真正面から勝ったんだよ?

もはや弱いとは言わせねーよ?私は強ーい!

ひゃっほーい!

だが、浮かれていては、足をすくわれる。

......鰻は強敵だった。うん、このことは自覚しなくてはならない。

け・れ・ど、勝ったのはこの私だ!

うえっへへへへ。

 

 

 

 

ぜーはー。

興奮しすぎて、息切れが。強敵を倒せてはじゃぎすぎた。

ふう。さて、ひしゃぐのもここらへんにして、このあとどうするか考えようか。

まずは、レベルが一気に上がったね。

流石(ウナギ)。竜種は伊達(ダテ)じゃないってね。

ステータスだけ見れば圧倒的に格上だったし、傲慢(ゴウマン)の効果もあるし、一気にレベルアップも納得ってもんよ。

スキルもこの1戦で相当上がったし、経験値的には相当美味しかったね(オイシカッタネ)

とはいえ、正直勝てるかどうかは運任せなところはあった。

実際、1歩でも間違えれば、今頃私は消し炭になっていたはず。

鰻はそれだけ強敵だった。

というか、純粋なステータスだけ見たら、私が勝てる要素なんかなさそうなくらいだもんね。

猿の時といい、私ギリギリの戦いしすぎじゃない?

スキルで1番うれしいのは、HP自動回復と火耐性が上がったことかな。

今まで熱の地形ダメージと相殺になっていた自動回復が、レベルアップで少しダメージを上回るようになったはず。

今はレベルアップの影響で全回復しているから確認できないけれどね。

これで、多少のダメージなら、時間経過で回復してくれるようになった。

ここまで極力ダメージは受けちゃいけないっていう、結構シビアな条件つけられていたけれど、ここからは少し楽ができそう。

まあ、それでも攻撃が直撃したら一発昇天は変わらないだろうけれどね。

で、10になったわけだ。

10になったということは、進化ができるというわけだ。

けど、どうなんだろう?ここで進化しちゃっていいもんかな?

というのも、進化にはそれ相応の危険が伴うからだ。

今までは、進化中に護ってくれる(クゥ)ちゃんがいたから、心配はなかったんだよね。

とりあえず、進化先候補がまた複数あるっぽいし、鑑定でちょっと調べてみますか。

というわけで鑑定様よろしくお願いいたします。

 

〈進化可能:ポイズンタラテクト or ゾア・エレ〉

 

ん?ポイズンタラテクトはいいとして、なにこのゾア・エレって?

タラテクトですらないんだけれど?

 

〈ゾア・エレ:進化条件:一定以上のステータスを持つ小型蜘蛛(クモ)型モンスター、「暗殺者」の称号:不吉の象徴とも言われ恐れられる、小型の蜘蛛型の魔物。高い戦闘能力と隠密性を持つ〉

 

おお、鑑定様!

進化条件なんてもんが追加されているじゃありませんか!

ふむ。つまり、私のステータスが条件以上になっていたから進化可能になったと。

ていえか、進化に称号って関係あったのか。

もしかして、私がポイズンに進化できたのも、毒術師の称号を持っていたからなのかな?

可能性はありそうだねー。

 

〈ポイズンタラテクト:進化条件:スモールポイズンタラテクトLv 10:タラテクト種と呼ばれる蜘蛛型の魔物の希少種の成体。非常の強力な毒を持つ〉

 

ポイズンタラテクトの方も一応鑑定しておく。

けれど、進化するのならもう一方の方だろうねー。

ゾア・エレ。進化するには結構厳しい条件がつくし、何より鑑定様のおっしゃるには、高い戦闘能力を持っているらしいからねー。

小型っていうのもポイント高い。

名前と説明文から察するに、タラテクト種とは別系統の進化になるっぽいのが不安っちゃ不安かな?

タラテクト種として進化していければ、強くかるのは確実。

だってその進化形態をこの目で目撃しているわけだし。

マイマザーたる超巨大蜘蛛。下層で目撃したグレータータラテクト。

今までの私の弱さからは想像もできないけれど、進化し続ければあの領域にたどりつくだろうことはわかる。

わかるんだけれど、その進化しちゃうと、でかくなるんだよねー。

大は小を兼ねるって言うけれどさ、最先端はやっぱり小型化こそが主流だと思うのですよ。

小型でも高性能で、私たちはそれを目指す!

(クゥ)ちゃんも、最初、地龍の小型から風龍の中型、そして、水龍の大型になり、雷龍の中型へと体格を変えてきた。

でかくなると身動き取れなくなるんだよね。

(クゥ)ちゃんがそうだったから。水龍の時は大変だった。

マイマザーなんかあれ、まともに活動できる範囲どんだけよ?

今まで問題なく通れた通路が、いきなり通行止めとか勘弁して欲しい。

というかね。このマグマだらけの中層でサイズでかくなってみ?

細い通路とかでうっかり足踏み外す様が目に浮かぶんですよ!

池ぽちゃならぬマグマぽちゃですよ!死ぬわ!

成体になってどんだけでかくなるのかわかんないけどさー、私の場合でかくなるとデメリットが大きいんだよね。

通路が通れなくなるだけじゃなく、戦闘的な意味でもね。

だって私、回避特化だし。でかいとそれだけ(マト)もでかくなんのよ。

回避特化なら小さくてなんぼでしょ。

それに、でかくなるってことは体重が増えるってことでもある。

重けりゃそれだけ動きは鈍くなる。

スピード命の私に遅くなれと?ないない。

そういうわけで、私はタラテクト系での進化を選ばないのです。

タラテクト種の進化先が強いのは確実だけれど、ゾア・エレの進化先が強いとは限らない。

最悪、ゾア・エレだけで進化が打ち止めってパターンもある。

まあ、そうなったらそうなったで仕方がないよねー。

ステータスはレベルアップで伸ばせるし、それ以外でも鍛えれば伸ばせるしね。

弱い魔物だって愛情込めて育てればきっといつかは強くなってくれるさ。私みたいに。

ということで、ゾア・エレに進化しよう。

問題は、どうやって安全に進化するかってことなんだけれど、その対策は考えた。

確実に安全かと言われると不安があるけれど、ないよりマシなはず。

というわけで、カモン、鰻の死骸(シガイ)さん!

本日の3分セッティング。

用意いたしますのは鰻の死骸。特上でございます。

まずはこれを伸ばします。

次に、尻尾(シッポ)の方から丸めていきます。

綺麗(キレイ)にとぐろが巻けるように気をつけましょう。

この時、中央にある程度のスペースを残しておくのがポイントです。

円を描くことができたら鰻の体を重ねるようにして、その上にまたとぐろを巻かせます。

外からではなく、とぐろの内側から作業を致しましょう。

これを繰り返していき、最後に頭を中央に乗せれば完成です。

鰻シェルターの完成です。

えわー、すごくいい出来ですねー!

よし、龍鱗(リュウリン)持ちでめっちゃ硬いはず。

ちょっとやそっとじゃ傷つかないだろうし、巣ほどじゃないけれど防御力は期待できる。

ここなら進化しても問題ない、はず。

覚悟を決めていってみよう。

 

《個体スモールポイズンタラテクトがゾア・エレに進化します》

 

はい。そして、ふっと意識が遠くなった。

 

おはようございます。

朝かどうかはわからないけれど。

今回も無事に目覚めました。良かったー。

今回の進化、危険度で言えば過去最高だっただろうしね。

気がついたら天国とかにならなくてよかったわー。

さて、とりあえずいつものごとくステータスを鑑定、といきたいところだけれど、まずは安全確認からしておきたい。

鰻シェルターに変化はなさそうだけれど、周りを魔物に囲まれているという状況もあり得る(エル)しね。

それでは、そーっと外を覗いてみましょう。

うん。特に何もなし。よしよし。

じゃあ、鰻を食べながら、あ、ダメだ。

蛇の時もそうだったけれど、鰻の鱗をまずは引っぺがさないと食べられないわ。

くそう、まあいいか。

とりあえず活動できないほどの空腹は感じてはいないし、過食がいい仕事をしてくれたのかな?

鱗剥がしをしながらステータスを確認しようか。

 

〈蜘蛛娘:ゾア・エレ[白織]・Lv 1

ステータス

HP:195/195(緑)

MP:1/391(青)

SP:195/195(黄)

SP:195(赤)+43

平均攻撃能力:251

平均防御能力:251

平均魔法能力:345

平均抵抗能力:380

平均速度能力:1272

スキル

「鑑定Lv 8」「念話Lv 10」「糸の才能Lv 3」「万能糸Lv 1[NEW]」「操糸Lv 8」「猛毒攻撃Lv 3」「腐蝕攻撃Lv 1[NEW]」「毒合成Lv 8」「毒魔法Lv 3」「影魔法Lv 3」「深淵魔法Lv 10」「破壊耐性Lv 2」「打撃耐性Lv 2」「斬撃耐性Lv 3」「火耐性Lv 2」「闇耐性Lv 2」「猛毒耐性Lv 2」「酸耐性Lv 4」「麻痺耐性Lv 5」「腐蝕耐性Lv 5」「石化耐性Lv 3」「恐怖耐性Lv 7」「気絶耐性Lv 3」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv 7」「探知Lv 6」「隠密Lv 7」「無音Lv 1[NEW]」「剛力Lv 4」「堅牢Lv 4」「生命Lv 9」「回避Lv 7」「持久Lv 9」「瞬発Lv 9」「過食Lv 8」「視覚強化Lv 9」「暗視Lv 10」「視覚領域拡張Lv 2」「聴覚強化Lv 8」「嗅覚強化Lv7」「味覚強化Lv 7」「触覚強化Lv 7」「集中Lv 10」「命中Lv 8」「投擲Lv 7」「演算処理Lv 7」「並列思考Lv 5」「予見Lv 3」「立体機動Lv 5」「魔量Lv 8」「HP自動回復Lv 6」「MP回復速度Lv 5」「MP消費緩和Lv 3」「SP回復速度Lv 3」「SP消費緩和Lv 3」「破壊強化Lv 2」「斬撃強化Lv 2」「毒強化Lv 4」「気闘法Lv 2」「気力付与Lv 2」「外道魔法Lv 3」「外道耐性Lv 3」「奈落」「禁忌Lv 5」「護法Lv 4」「韋駄天Lv 3」「傲慢」「n%I=W」

スキルポイント:11000

称号

「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「魔物殺し」「毒術師」「糸使い」「無慈悲」「魔物の殺戮者」「傲慢の支配者」

 

は?んん?待て待て。

ステータスの数値をよく見直した。

すんごい増えている。すんごい増えているんですけれど!?

ちょっと、これ本当にいいの?

こんなに強くなっちゃっていいよ?

今まで攻撃を喰らうイコール死亡状態だったからね。

これ、ステータス的にはタツノオトシゴ超えているし、猿あたりも超えたんじゃね?

スキルのレベルもだいぶ上がっているね。いい感じいい感じ。

って、禁忌上がっている!?

おおい!?レベル5!?

てことは、カウンターストップまであと半分!?

これ私の予想が正しければ、レベル10になると何かが起きるんじゃないかと思っているんだけれど。

やばい。

まあ、まだ半分だ。まだ大丈夫、なはず。......、(クゥ)ちゃんも同じ状況だったり.....、それは、逢ってから考えるとして。

あとは、見慣れないスキルが増えている。

腐蝕攻撃って、マジで?

腐蝕って、あの腐蝕でしょ?

鑑定をしたら予想よりヤバげだったあの腐蝕でしょ?

それを使えるのかー。スゲーな私。

もう1つの見慣れないスキルは、無音ねー。

なんとなく効果の予想はできているけれど、一応ね、鑑定をしておきますか。

 

〈無音:音の発生を抑える〉

 

うん。予想通り。

やったね!忍者度がアップしたよ!

あと、とても気になっているスキルがある。

蜘蛛糸と斬糸が消えて、万能糸なるスキルが新しく追加されている。

多分蜘蛛糸の進化系なんだろうけれど、斬糸はどこにいった?

 

〈万能糸:カスタマイズ可能な糸を生成する。カスタマイズ項目:粘性、伸縮性、弾力性、質感、強度、サイズ、属性付与「斬」「打」「衝」他、耐性付与〉

 

蜘蛛糸からさらに属性付与なるものが増えた。

どうやらこれ、斬がそのまま斬糸と同じ効果で、打が打撃属性、衝が衝撃属性を付与できるらしい。

打は普通にひっぱたく感じ。

衝の方はどうも一瞬だけ糸に衝撃波みたいなものを発生させられるっぽい。

その状態で糸に触れていると、衝撃を食らってダメージを受けるようだ。

これ、中層じゃなかったらめちゃくちゃ役に立つのに!

くう、早く中層抜けて使いたいね。

ステータスを確認していたら鱗剥がしが終わった。

よし、それでは鰻の実食行ってみましょう。

いただきます。

......美味い。

ナマズとはまた違った味わい。

もう1度言う。美味い。

今回の進化ではSPがなくならなかった。

代わりに過食のストック分がごっそり減っている。

過食がいい仕事をした証拠だね。

これなら、進化のたびに食料を溜め込まなくても、過食にストックしておけばよさそう。

そういうわけで、モリモリ食べて、ストックをいっぱい増やそう。

前の数値から逆算して、スキルレベルかける100くらいまではストックできそうだし、今なら800くらいまでストックできそうだし。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈過食Lv 9〉になりました》

 

言っているそばからレベルアップきた。

これでさらにストック量が増えた。

 

 

(ウナギ)(ウロコ)剥がしている(ハガシテイル)時から気づいていたんだけれど、私の体の形状が若干変わっている。

鋭い爪状だった前足の2本が、細い鎌みたいな形状になっている。

しかもこの鎌、ものすごく斬れ味がいい。

蛇の時はあんだけ苦労した鱗剥ぎ(ウロコハギ)が、短時間で終わったくらいに。

鱗自体は切れないけれど、鱗と皮膚の間はスッと切れた。

これは、攻撃力が上がったからなのか、そ!ともこの鎌が鋭いからなのか。

他にも体色(タイショク)が黒くなった。前から黒っぽかったけれど、今は完全な黒だ。

光を一切反射しない黒。黒だよ、真っ黒!名前は白織(シラオリ)なのに、これいかに?

全身は鏡がないから確認はできないけれど、(クゥ)ちゃんがいれば確認できるのだけれど、大きな変化はそれくらいかな?

大きさも変わったようには感じないし。

けれど、多分自覚がないだけで、細かいところはいろいろと変わっていそう。

今までは同じタラテクト種ということで、進化をしても全く姿が変わらなかった。

けれど、今回の進化では種族が変わっている。

見比べてみれば、きっと所々違うんだと思う。

まあ、動いてみた感じ、違和感とかは今のところはない。

全体的なパーツはそこまで変化はしていなさそうだし、それなら今までどおりの動きができそう。

しかし、この鎌は結構変わっているよね。

ていうかこの鎌って、どう考えても死神のイメージしているよね。

説明文に不吉の象徴とかあったし、腐蝕(フショク)攻撃持っているし、そういうことなんだろうねー。

忍者スタイルは変わらないけれど、極まってくると音も無く背後に忍びより、相手の命を狩る死神スタイルになってしまう。

体色(タイショク)も真っ黒になり、死神感が半端ないけれど、今は置いておこう。

次に、レベルアップしたスキルの方も確認しておこう。

剛力と堅牢がアップしたのは嬉しいな。

これでまた成長補正がアップする。

ステータスは大分強くなったけれど、それでもまだ鰻レベルが相手だと相手だと随分下だしね。

他は、毒合成と毒魔法、影魔法がレベルアップしているよね。

魔法の方は使えないからいいとして、毒合成の方は何がプラスされているのか見ておこう。

 

〈属性付与:「麻痺(マヒ)」:麻痺属性を追加する〉

 

なぬ?こ、こここ、これは!?

と、とんでもない物を手に入れてしまったかもしれないぞ!?

中層に来てからというもの大活躍だった、毒合成が、さらなる進化を遂げてしまった!

うわ。これは早速試さなきゃならない。

ということで、蜘蛛猛毒(クモモウドク)に麻痺耐性を追加してみた。

どれだけの効果があるのかは次の機会にじっくりと試してみよう。

ここは弱毒にも麻痺耐性を加えておいてと、うんオッケー。

次の相手にはまずこの麻痺耐性をプラスした弱毒をぶち当ててみよう。

あー、楽しみだわー。

魔法の方は、どうでもいいかな。どうせ使えないし。

あれ?けどちょっと待てよ?私って本当に魔法使えないのかな?

並列思考も演算処理も大分レベルが上がってきている。

そろそろ、鑑定様と探知を使ってみようかな?

久しぶりに、試してみようかな。

スー、ハー。よし!

鑑定様♪探知オン!

グッ.....グハッ!ん?こ....この感じは、.....(クゥ)ちゃんの気配!んぐぐぐぐぐぐ!....くっ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈演算処理Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈並列思考Lv 6〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈探知Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈外道耐性Lv 4〉になりました》

 

オフ!

ふー。きつかったー。でも、鑑定様と探知を使っていたから、(クゥ)ちゃんが地龍2体、ゲエレとカグナを倒した後に、進化した後のステータスが確認できた。雷龍姫から光龍姫になっていた。

けれど、前よりも耐えられるようになった。

耐えて(クゥ)ちゃんのステータスの確認だけで精一杯だけれど、1歩前進はした、

まだまだ使いこなすのはムリそうだけれど、少し希望が見えてきたかな?

 

中層をブラブラ探索中。

鰻を食べてお腹もいっぱいになったことだし、心配していた空腹で倒れるっていうのはなさそう。

この分なら積極的に狩りをする必要もなさそうだし、のんびり進めるね。

気分もいいし、中層の熱さも今なら許せるわ。

あ、でもやっぱりこの熱さはヤダ。

周りに魔物の姿もいないし、気になっていたスキルポイントの確認でもしようかな。

探知以外のスキルはみんな大当たりを引いているし、この流れでいいスキルがゲットできれだいいな。

傲慢(ゴウマン)もなんだかんだ今のところ禁忌のレベルが上がった以外はデメリットもないしね。

禁忌も今すぐどうこうなるようなもんじゃなさそうだし、そう考えると実質デメリットなし?

(クゥ)ちゃんのスキルに七大罪(シチタイザイ)の嫉妬の他に、七美徳(シチビトク)の慈悲を持っていた♪

これって、私も七美徳を持っていても、大丈夫だよね♪

出てきたリストを眺めていく。

うーん。迷う。

おいおい、あったよ。傲慢と似た、壊れスキル。

これは、(クゥ)ちゃんが持っていた七美徳の1つだよね♪

 

〈忍耐(500):神へと至らんとするn%の力。自身の持つ神性領域を拡張する。MPの続く限りどんなダメージを受けてもHP1で生き残る。また、Wのシステムを凌駕(リョウガ)し、MA領域への干渉権を得る〉

 

また謎言語満載の謎スキルがあったよ......。

そして冗談みたいな性能も健在だよ。

これ、MP消費して食いしばり発動?

MPの消費がどんなもんなのかはわからないけれど、残りが続く限りゾンビアタックができるってこと?

意味がわからない。何そのえげつない性能。......でも。

でもね。今回は迷いません。(クゥ)ちゃんも持っているしね♪七美徳♪ポチッとな。

 

《現在所持スキルポイントは11000です。スキル〈忍耐〉をスキルポイント500使用して取得可能です。取得しますか?》

 

はーい。

 

《〈忍耐〉を取得しました。残り10500です》

 

七大罪の内、傲慢をとってしまった私と、嫉妬を持っている(クゥ)ちゃんには、もはや撤退の二文字はない!

忍耐は七美徳だから、そんなにぶっ壊れてはいないはず。

なので、この手のスキルは取っていこう!

さあ禁忌だろうがなんだろうがかかってこいや!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv 7〉になりました》

 

ごめんなさい。やっぱり来ないほうが良かったです。

 

《条件を満たしました。称号〈忍耐の支配者〉を獲得しました》

《称号〈忍耐の支配者〉の効果により、スキル〈外道無効〉〈断罪〉を獲得しました》

《〈外道耐性Lv 4〉が〈外道無効〉に統合されました》

 

あー、予想通り禁忌が上がったよ。今回も弍2つ。ま、しゃーない。

レベルが上がると何かが起きそうだけれど、対策もないし。(クゥ)ちゃんも禁忌が上がっていたしね♪

何が起きるかわからないのよりも、大事なのは称号の方だ。

 

〈忍耐の支配者:取得スキル「外道無効」「断罪」の獲得:効果:防御、抵抗、の各能力上昇。邪眼系スキル解禁。耐性系スキルの熟練度に+補正。支配者階級特権を獲得:説明:忍耐を支配せしものに贈られる称号〉

 

ああ。やっぱりだよ。やっぱりチート級の称号だったよ。

防御と抵抗が増えよった!

両方とも100増えて、351、抵抗480にまで上がった。

もうね、なんなのこれ?ちょっとチートすぎやしませんかね?

耐性系のスキルの熟練度が上がりやすくなったっていうのも大きい。

私って回避特化だから、攻撃を食らう機会がなかなかなくて耐性系のスキルがあんまり上がっていないからね。

弱い所を補ってくれるし、かなり嬉しい。

修行で増えた耐性はどうやって熟練度を稼いだのかって?

どうも耐性って自分の持っている耐性に関しては、レベルアップした時にでも熟練度が入っているっぽいんだよねー。

私、何もしていないのに闇耐性がレベルアップして手に入ったから、その推測は当たっていると思う。

うん。深淵(シンエン)魔法を持っているしね。

その他の耐性は、糸を使ったりして自傷していてスキルが取れた。

自分に鞭打つ(ムチウツ)だけでスキルが取れるのなら、誰だってそうする。私だってそうした。

あと気になるのは邪眼系スキルの解禁。

これ欲しいわー。

なんかの邪眼とか取ったら「くっ、右目が疼く(ウズク)!」とか、「これがモノを殺すということだ」とか言えるわけじゃん?

もうね、厨二(チュウニ)心をくすぐるワードじゃん。

あとは、追加された外道無効と断罪のスキルか。

外道無効は、外道耐性の最上位スキルっぽい。

外道耐性が魂を直接侵す攻撃に対して防御力を増加させるっていう効果だったのに対して、外道無効はそれを完全に無効化するっていうものだ。

これで敵に外道魔法とかそれに近い攻撃をしてくる奴がきても、安心ってわけだね。

 

〈断罪:魂にシステム内罪科を貯めたものに対し、罪科の累計値に比例した抵抗不可のダメージを与える〉

 

わお。つまり罪を犯したやつほどダメージがでかくなる攻撃と。抵抗不可っていうのが怖いね。

ん?これって、禁忌のレベルが高いと危ないんじゃないのかな?

まあ、今のところ、断罪が使えたとしても、禁忌を持っているのって、私と(クゥ)ちゃんしか知らないしね♪

 

 

あ、外道耐性が外道無効になったってことは、探知で頭が痛くならなくなったんじゃないかな?

あれって外道属性の攻撃でしょ?攻撃って言っちゃっているけれど、いいよね?

あの痛覚軽減も貫通してくる痛みって、ただの頭痛じゃないわけじゃない?

探知に含まれている外道属性の攻撃が無効化されるなら、それもなくなるんじゃない?

物は試しだね。

スー、ハー。よし!

探知オン!

.......わあ。すげえわ。マジですげえわ。

今まで頭痛を我慢するのでそれどころじゃなかったけれど、頭痛がないとこんなすごいことになっていたのか。

探知を発動させても頭痛はなかった。

いや、正確にはちょっとはあるんだけれど、痛覚軽減のおかげで無視できるレベルだ。

この頭痛はきっと探知がもたらす情報量が莫大(バクダイ)だったという話だ。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈演算処理Lv 9〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈並列思考Lv 7〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈探知Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈神性領域拡張Lv 1〉を獲得しました》

 

なんかスキルが増えたっぽいけれど、確認は後でいいや。

今はちょっとこの感動に浸っていたい。

探知が成功したのも嬉しい。

けれど、それ以上に私は探知がもたらすものに圧倒されていた。

私の認識できる空間、そのすべての情報が集まっているかのようだった。

魔力の流れ、物質のあり方、空気の流れ、さまざまな情報が私の頭の中に流れ込んでくる。

これは、軽く全能感すら湧き上がりそうだわ。

周りの全てが把握てまきる。

普通だったら把握できなさそうなそれらの情報を、スキルの力を使ってある程度までなら理解できる。

そのある程度ですら、宇宙の真理を垣間見たかのような、そんな圧倒的な情報の海だった。

私の認識するこのちっぽけな空間ですらこれだ。

改めて、世界の広さと偉大さがよくわかる。

やばい、意味もわからずに泣きそう。蜘蛛(クモ)の目に涙が出るかは知らんけど。

ちょっと一旦(イッタン)探知を切ろう。

ふう。すごかった。なんだろう、この訳もわからない感動は。

たとえるなら、満天の星を眺めて感動したみたいな。それに近いような感じ。

ああ、もう少し感動に浸っていたいけれど、気持ちを切り替えていこう。

探知は成功した。

それなら今後は探知も常時発動させておくべきかな?

うーん。ただ、あれ、高性能すぎて逆に不便かもしれない。

わかりすぎてしまうから、戦闘中なんかは探知を切っておこうかな。それ以外は、常時発動で♪

まずはさっき獲得したスキルから確認しておこうか。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈並列思考Lv 8〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈神性領域拡張Lv 2〉になりました》

 

と、思ったら(クダン)のスキルレベルが上がった。

なんだろうこのスキル?

忍耐の説明にもそういえば神性領域とかあったな。

忍耐も確か拡張するとかいっていたよね?これも拡張?

てことは私の神性領域とやらはガバガバに拡張されまくっているってこと?

兎にも(トニモ)角にも(カクニモ)鑑定をしてみよう。

 

〈神性領域拡張:神性領域を拡張する〉

 

説明まんまかい。まあいいや。

ここで頼りになるのが鑑定様!さあ、二重鑑定おねがいしゃす。

 

〈神性領域:生命が持つ魂の深層領域。全ての生命の根源であり、自己の最終依存領域でもある〉

 

んん?よくわからない。

まあ、魂の大事な部分ってことはなんとなくわかるんだけれど、そこ拡張して何かあるの?

増えるってことはいいことなんだろうけれど、自覚症状が何もないからなー。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈演算処理Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈演算処理Lv 10〉がスキル〈高速演算Lv 1〉に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈探知Lv 9〉になりました》

 

スキルレベル上がるの相変わらず早!?

もつ演算処理がカウンターストップっすか。

進化して高速演算ね。これは完全に上位互換っぽいね。

さて、探知に私が求めていた性能は元々索敵のためだったんだよねー。

けれど、私自身の索敵能力の高さもあって、今まで探知なしでも割といけていた。(クゥ)ちゃんもいたしね♪

それが探知の力も相まって、完璧(カンペキ)になったと言わざるを得ない。

もはや私たちに不意打ちは不可能といってもいいでしょう!アンブッシュは許されんのだよ!

んでもって、次に求めたのが魔力感知。

私の予想が正しければ、これと魔力操作というスキルを組み合わせれば、念願の魔法を使えるようになる、はず。

これで今まで死蔵されていた深淵(シンエン)魔法とか外道魔法とかが使えるぜ!

スキルポイントは沢山あるから邪眼に使ってもいいのだけれど、今はおいておこう。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈探知Lv 10〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈並列思考Lv 9〉になりました》

 

え?マジで?探知さんもうカウンターストップ?

あれ?けれど追加スキルとか進化とかないの?

えー。それはちょっとあんまりじゃない?

探知さんにはかんだけ苦労させられたんだしさー。確かにリターンもでかかったけ!ど、欲を言えばもっとかんか欲しいわけですよー。

地龍(チリュウ)に勝てるようになるのはムリにしても、せめて逃げ切れるくらい強くなりたいわけですよー。

ホントに何もないのー。

 

《ザ.......ザー、.......》

 

ん?何、今の?

.......気のせいかな?

まあ、ないものねだりをしても仕方がないかー。

これからも慢心せずに強くなれば、ああいう規格外から逃げられるくらいにはなれるかもしれない。そうと決まれば強くなる為の努力をしよう。

まずはレベルアップ。

これからは積極的に魔物を狩るようにしよう。

次にスキル。

スキルのレベル上げは移動中でもずっとやっているようなもんだ。

鑑定様然り、探知然り、予見と思考加速もそうだね。

探知はカウンターストップしたけれど、付随して上がるスキルも多い。

そのまま全部のスキルがカウンターストップするまで、探知はずっと発動しっぱなしで行こう。

それと並行して、他の移動中でも上げられそうなスキルのレベル上げに着手しよう。

1番無難なのは五感強化系。

これなら移動しながら目を凝らしたり、ちょっと匂いを嗅ぎ(カギ)ながら歩けば上がるしね。

もうそろそろカウンターストップしそうなスキルもあるし、そこから始めてみよう。

あともう1つ。

これは移動中じゃなくて、ちゃんとどこかに止まって、じっくりやってみたい。

それは、魔力操作の練習。

考えてみれば、スキルって熟練度さえ貯めればスキルポイント支払わなくてもゲットできるんだよね。

それなら、どうやって熟練度を上げるのかさっぱりな邪眼にポイント使って、魔力操作は自力で何とかしてみようかなと。

探知さんのおかげで魔力感知は問題なくできる。

そこに意識を集中させれば、魔力の流れが把握できる。

あとはその魔力を、どうにかして操作することができれば、あるいは操作しようと努力すれば、熟練度が貯まってスキルを得ることができる、はず。

スキルが手に入ったら、そのあとは念願の魔法の練習だ。

ただ、忘れちゃいけないのは、私の目的はこの中層を抜けて、上層に戻ることだ。

スキル上げとレベル上げはその過程でやるだけにすぎない。

だから、わざわざ足を止めてまでやることじゃない。

あくまで移動中にできればの話。

この中層は通り過ぎるだけの場所で、居を構える場所じゃない。

そこは忘れちゃいけない。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈思考加速Lv 4〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈予見Lv 4〉になりました》

 

よしよし。傲慢(ゴウマン)の支配者の称号のおかげで、精神系のスキルの上がりは早くなっている。

このままどんどんスキルを上げていこう。

同じく忍耐の支配者の称号のおかげで、耐性系のスキルの上がりもよくなっているはずだけれど、こればっかりは進んで上げられるもんじゃないしね。

一応、猛毒耐性と麻痺耐性は毒合成で、斬撃耐性と打撃耐性と破壊耐性と腐蝕耐性、それに、おそらくあるだろう衝撃耐性は万能糸で、それぞれ上げられるけれど、それはどこかに居を構えてからにすべきでしょ。

回復の遅い上に、満足に休みも取れないこの中層でやることじゃないわ。

ステータス強化系のスキルは、できれば早めに上げたいのはやまやまだけれど、これも居を構えてじっくり上げたい。

戦闘中に上がってくれればいいんだけれど、それ以外で上げるとなると、筋トレとかしなきゃならないし。

そんな時間と体力があるなら、少しでも先に進んだほうがいい。

差し当たってやっぱり移動中でも上げられるスキル、五感系を上げていこう。

特に視覚強化はレベル9でカウンターストップ間近だし、優先して上げよう。

進化して中層攻略を開始してから少したった。

目に付いた魔物を片っ端から片付けていった結果、レベルが上がった。

イヤ、もうね。ステータスの伸びがすごい。

流石戦闘能力が高いと言われるだけあって、各種ステータスが。

傲慢の効果で成長値が上がった分と、各種ステータス底上げスキルのおかげで、ステータスの伸びが良くなっているのを差し引いてもすごい。

レベルはそんな感じだけど、スキルの方もかなり上がっている。

なかなか視覚強化のスキルは上がらない。

レベル9ともなると、レベルを上げるのも苦労する。

その他のスキルは結構上がったけれどね!

まず無音がレベル3になった。

あと思考加速と予見がそれぞれレベル5になって、回避率アップ!

火耐性も1上がってレベル3にようやくなった。

忍耐のおかげで取得できる早さは上がっているはずだけれど、それでもかなり時間がかかった。

どんだけ火に弱いんだ私。というか、種族が変わっても火に弱いのか。

まあ、元が防御力なんてあってないようなもんだったから、耐性が多少変わったところであんまし変わんなかっただろうけれどねー。

防御力も増えたことだし、耐性のことも知っておいたほうがいいかもしれない。

火以外にも弱い属性とかあるかもしれないからね。それを調べる方法はないけれど.......。

で、最後に並列思考。

これがレベル10になって進化した。

その名も並列意思!

これがものすごく便利で使えるのよ。

その名前のとおり、私の意思が増える。

並列思考では同じ意思で複数のことを同時になんとなく考える感じだったけれど、この並列意思は完全に意思が分かれる。擬似二重人格みたいな。

両方とも私ではあるんだけれど、別個の意思としてそれぞれが思考することができる。

それも、それまでの並列思考を備えたままに。

単純に思考能力が2倍になったようなもんだね。超便利。

それまでたった1人で負担していたことを、2分割できるんだから超楽。

レベルが上がると並列する意思の数も増えるのかもしれない。

おういうわけで、私は片方が体担当、もう片方が鑑定様や探知さんなんかの情報整理を担当することにした。

実際に武道とかをやっている人ならわかるかもしれないけれど、戦闘中って視野がめっちゃ狭くなるのよね。

けれど、情報担当として意思の1個をこうして切り離した今、その視野狭窄(シヤキョウサク)もなくなるのだ。

私はそうやって情報を拾い、体担当に丸投げすればいいのだ。

ということで、任せたぞ体担当!

 

【任された情報担当!】

 

てな具合で1人会話も可能なのだ。

一応どっちも私のため、情報共有もばっちりだ。

この意思にメインもサブもない。どっちも私である。

いろいろと情報担当が考えている間に、いつの間にか体担当が魔物を倒していた。

グッジョブ私。

 

【それほどでもねーぜ私】

 

今回は新しく増えた腐蝕攻撃を試してみたんだけれど、それ、使えないわー。

いや、攻撃力自体はすごいものがあるんだけれどね。

レベル1のくせにやたらすごいんだけれどね。

すごすぎるんだわ。だって、魔物が一撃で(チリ)になってるんだぜ?おかしくね?

腐蝕ってそういう意味だったっけ?腐るとかそんな感じじゃなかったの?

腐る通り越して風化しているんですよ。死の崩壊を司る属性、やばすぎる。

レベル1ですでにオーバーキル。

これでレベルが上がったら一体どうなることやら。

んで、使えないって言った理由なけれど、2つある。

まず1つ、魔物の死骸(シガイ)が残らない。つまりご飯が残らない。

これを使うと経験値を貯めるっていうのと双璧(ソウヘキ)をなす、私の魔物狩りの半分の理由が達成できないくなる。

それはいただけない。二重の意味でいただけない。

で、もう1つの方がむしろ大問題だったりする。

これ、私にもダメージ入っている。

腐蝕攻撃を纏った(マトッタ)鎌を見る。鎌の刃がボロボロになっていた。HPも減っている。自爆攻撃だこれー!?

というわけで、威力は高いけれど反動もでかい。

全力を尽くさないとまずいような激戦なら機見て使うけれど、それ以外の雑魚(ザコ)戦だと使わないほうが良さそう。

特に中層にいる間は、自動回復も遅くなっていることだしね。

あー、この鎌どのくらいで治るんだろう?

まあ、鎌がなくなっても私には毒合成があるし、(ウナギ)みたいな強敵じゃない限りそこまでの影響はないけれどね。

そもそも、最近は鎌も使い始めたけれど、この中層でのメインウェポンは毒合成なんだよねー。だって中層の魔物を触っただけでダメージ来るし。

使うと斬撃強化とかのスキルは上げられるけれど、地味にダメージもらっちゃうんだよねー。

それに、鎌で切ると中身がこぼれちゃって食べにくいし。

というわけで体担当、次の魔物は毒合成で仕留めようぜ、

 

【おう、がってん承知だ情報担当】

 

いやー、ホント便利だわ並列意思。

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈視覚強化Lv 9〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈視覚強化Lv 10〉からスキル〈望遠Lv 1〉が派生しました》

 

よっし!ようやく視覚強化のスキルレベルがカウンターストップした。

視覚強化のカウンターストップ報酬は、新しいスキルの派生か。

早速鑑定して効果を調べてみよう。

 

〈望遠:遠くの景色を拡大して見ることができるようになる〉

 

あー、言葉通りの効果かー。

うーん。微妙。

五感強化系は地味にプラスだけれど、派生するスキルも地味やね。

とりあえず発動してみようかな。

というわけで体担当、望遠発動だ!

 

【要請を承認した、望遠発動!】

 

お?おお?おおお!?

あ、これすごいわ。地味なんて言ってごめん。

私の視界には望遠で拡大された映像と、元の映像、その2つが同時に展開されている。

今はスキルレベルが低いせいか拡大できる倍率も、射程距離も短いけれど、レベルが上がれば結構便利かも。

例えば探知で敵が潜んでいるところを発見して、そこを望遠で凝視しつつ普通の視界も確保とか。

うんうん。このスキルもパッシブスキルっぽくて、MPとかの消費はない。

結構使い道が多そうだし、望遠も常時発動してスキルレベルを上げるようにしよう。

 

【盛り上がっているところ悪いんだけれど情報担当】

 

何さ体担当?

 

【望遠で見た景色に獲物発見】

 

おう、早速役に立つとは、愛い(ウイ)やつめ。

 

【さくっとやっちゃう?】

 

言わずもがなでしょ。

 

【あいあいさー】

というわけでスススっと接敵。

鎌は前回腐蝕攻撃の自爆で使えなくなっているから、毒合成で蜘蛛猛毒を浴びせる。

一瞬で魔物のHPが尽きる。相変わらず恐ろしい威力だわ。

 

《経験値が一定に達しました。個体、ゾア・エレがLv 3になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈視覚領域拡張Lv 3〉になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈生命Lv 10〉になりました》

《条件を満たしました。スキル〈生命Lv 10〉が〈身命Lv 1〉に進化しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

お、ちょうどレベルアップキタ。

脱皮して鎌も回復した。

それと、ついにステータスアップ系のスキルの1つが進化したねー。

鑑定行ってみよう。

 

〈身命:スキルレベル×10分HPにプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる〉

 

やっぱりというかべきか、剛力とかと同じ系統だね。

ということは、残りのステータス強化系スキルも進化すれば成長補正が乗るようになるのか。

できれは早めに上げたいところだけれど、やっぱり中層を抜けるまでは我慢かなー。

早く安全なところに行きたいわ。

スキルポイントは10600あり、欲しいスキルを選び放題。

だが、何時、スキルポイントが必要になるか、わからないから。必要なスキルだけを、選別していく。

さーて、噂の邪眼系スキルとやらは追加されているのかなー?

 

〈呪いの邪眼(100):呪い属性のダメージを視界に入ったものに与える〉

〈死滅の邪眼(100):腐蝕(フショク)属性のダメージを視界に入ったものに与える〉

麻痺(マヒ)の邪眼(100):麻痺属性のダメージを視界に入ったものに与える〉

〈石化の邪眼(100):石化属性のダメージを視界に入ったものに与える〉

〈不快の邪眼(100):外道属性「不快」の効果を視界に入ったものに与える〉

〈幻痛の邪眼(100):外道属性「幻痛」の効果を視界に入ったものに与える〉

〈狂気の邪眼(100):外道属性「狂気」の効果を視界に入ったものに与える〉

〈魅了の邪眼(100):外道属性「魅了」の効果を視界に入ったものに与える〉

〈催眠の邪眼(100):外道属性「催眠」の効果を視界に入ったものに与える〉

〈恐怖の邪眼(100):外道属性「恐怖」の効果を視界に入ったものに与える〉

 

うわ。ホントに追加されているよ。前までこんなスキルはリストになかったはずなのに。

ていうか種類が多いな。この中から1つを選ぶのかー。悩むね。

 

【情報担当や】

 

なんだね体担当?

 

【もういっそのこと複数取らない?】

 

え、どういうこと?

 

【知っているか?私って、目が8個あるんだぜ?】

 

それがどうしたのよ?

 

【つまり、最大8個同時に邪眼発動できるんじゃない?】

 

!?お前、天才か!?

 

【ふふふ。そう、私って天才だったのだよ】

 

マジか。私って天才だったのか!天才だったら何しても許されるよね!

 

【そうそう。邪眼8個同時展開とかすごくない?】

 

やべー。それやべーよ。夢が広がるわー。

 

【望遠で1個使っちゃっているから残り7個だけどね】

 

普通の視界も確保しなきゃならないことを考えると、残り6個か。

 

【そうやね。今回はどれか1個選んで、残り5個は順次取るってことでOK?】

 

OKOK。で、体担当的にどの邪眼がいいと思う?

 

【ここは持っていない属性の呪いか石化がいいと思う。外道系は魔物相手っていうか。対人っぽい感じだし】

 

だよねー。私としては呪いの方かなー。石化は上層にいた石化蜥蜴(トカゲ)で体験しているけれど、あれ効果が出るまで時間がかかるし。

 

【その分かかった時の威力も高いけれどねー。やっぱりここは無難に呪いでしょ】

 

流石私。わかっているね。

というわけで呪いの邪眼を取ろう。

 

〈呪い:各種能力値を弱体化させ、HP、MP、SPにダメージを与える〉

 

呪いの邪眼Lv 1をゲットしましたー。わーい。

せっかくゲットしたんだし、ここは実験台になってくれる魔物を探さなけれど。

というわけで、探知さんの情報の中からそれらしきものを探しましょう。

む。むむむ。あっちになんかいるっぽいねー。

まだ距離があるから正確な情報は掴めない(ツカメナイ)けれど、どうにも陸地に上がってるっぽい。

ちょうどいいし、こいつに実験台になってもらおう。

あ、蛙の進化系だ。

こいつは今は懐かしの蛙の進化した姿だと思われる。

あんまり強くなかったようには感じないけれど、この中層エリアの環境に適応する進化をしたんだとは思う。炎熱無効あるしね。

あと、マグマで一面明るいのに暗視持っているやつは、多分だけど上層からの進化組なんじゃないかなーと思う。

上層と下層は真っ暗だからね。

上層から迷い込んだかなんかして、必要に駆られて進化した的な。

下層から中層に上がってくるようなのは、いないといいなー。

そんなのが中層の環境に適応する進化していたら恐ろしいわ。

あとこの蛙のスキル見て気づいたんだけれど、私が唾液(ダエキ)だと思っていた攻撃、どうやら私と同じ毒合成だったっぽい。

それを射出のスキルで飛ばしているらしい。いいなーそのスキル。私もそれ欲しい。

そしたらこの蛙とは比べ物にならない強力な毒弾丸が出来上がるのに。

お尻から糸を勢いよく出したりしていたら熟練度貯まらないかなー?

 

【情報担当がくだらないことを考えている間に、麻痺毒を合成して蛙を麻痺させておいた】

 

あ、体担当グッジョブ。

これで心置きなく呪いの邪眼の実験ができるね。

よし、では邪眼発動!

うん。発動は問題なくできたね。

どんな感じよ?お、おー。

蛙のHPとSPがゆっくり減っていく。

やっぱりレベル1だとダメージの入り方もゆっくりだね。

SPは黄の方も赤の方も減らしているけれど、黄の方は回復の方が早くて効果はないねー。

レベルが上がれば回復よりダメージが高くなるかも?

そしたら常時息切れ状態にすることができるのかー。エグいわー。

あ、けどその前にHPが尽きて死ぬか。

HPとSPてだいたい同じくらいの数値だしねー。

お、ステータスの方も下がっている。

数値の横に低下中っていう文字が追加されている。

あと、現在の数値の横にカッコがついた最大値も表示されているね。

ほほう。ステータスを低下させるような攻撃を食らうと、こういう表記になるのかー。

これを見ればなんか食らったって一発でわかるね。

流石鑑定様、全てにおいて抜かりなし。

で、流石にこの邪眼は消費なしのパッシブスキルではないね。MPが減っている。

けれど、その減り方もそんなに早くない。だいたい10秒間に1減るくらい。

蛙のダメージが5秒くらいに1だから、効率としては悪くない、のか?

私のMPから考えると、50分以上発動させることもできるし、そう考えると費用対効果は良さそう。

レベルが上がればダメージの入るスピードも上がるだろうしね。

と、思ったら体担当がもう1回毒合成を追加した。流石私。素早い対応だ。

んー。HPとかは順調に減り続けているけれど、ステータスの減りがイマイチになってきた。

各ステータス半分位まではHPとかと同じ速度で下がっていたけれど、それ以降ほとんど下がらなくなっている。

ステータスは下がる限界値があるのかー。

まあ、考えてみればそりゃそうだよねー。

下がり続けるのなら、下手すれば防御力0とかになりかねないしねー。

けれど、半分まで下がるんならかなり大きい。

蛙みたいな雑魚ならあんま影響はないけれど、鰻とかの強い魔物のステータスが半減されたら........。

魔物はスキルよりもステータスに頼った戦いが多いから、ステータスの弱体化はそのままそいつの大幅な弱体化を意味する。

鰻もステータスが半分になったらナマズと大差がなくなる。

これは、対強力な魔物の切り札になり得るね。

今後優先的にスキルのレベルを上げていかないと。

ん?あれ?蛙が死んだ!?

あんれー?まだHPが残っていたはずなんだけれどなー?

なんかHPが急速に減ったけれど、なして?

あ、HPが減る前に、赤のSPがなくなっている。

あー、それでかー。赤のSPがなくなるとHPが急速に減り始めると。

怖いね、これ!?

うわ。進化直後とかすんごい危なかったんじゃん。

過食のおかげでそうそう赤のSPがなくなることはないけれど、今後気をつけよう。

何はともあれ、呪いの邪眼はなかなか使えそうだ。

MPに余裕がある時は発動させといて熟練度を稼がないとねー。

うん。何かあった時のために、MPは最低半分残すということで、それ以外のMPを邪眼に割り当てよう。

邪眼なら移動中でも発動できるしね。

しかし、この邪眼って、どう考えても魔法だよね?

だって、MPが減っているし、明らかに物理法則を無視した不思議現象を起こしているし。

まあ、それ言ったら他のスキルもそうだけれどさー。

魔法とその他のスキルの違いって何よ?

あれか?見た目か?

確かに邪眼って効果が鑑定様ないと目に見えないし地味だよね。

ま、いっか♪

呪いの邪眼は便利だけれど、魔法の連撃とか出来れば最強じゃね?

うむ。やっぱり魔法を覚えるのも引き続き目指していこう。

 

 

我輩(ワガハイ)は体担当である。

名前はまだない。今回はちょっと情報担当に対する愚痴に付き合って欲しい。

あいつアホやねん。

この間なんか射出覚えるために、「糸をお尻から発射しようぜー!」って言い出してな、試してみたら予想以上に勢いよく糸が飛び出して、そのままマグマにポチャン。

危なくこっちにまで引火しかけたわ。

私が咄嗟に糸を切り離さなかったら火達磨(ヒダルマ)になるとこだったわ。

とまあ、こんなふうに事あるごとに下らないこと提案してきて、結果録でもない目に遭うわけよ。

あいつの提案に乗って成功した試しがない。

まあ、毎回ノリノリでそれを実行しちゃう私も私なんだけれどさー。

もう少しまともな提案はできないのかと。ちょっと考えればアカンってわかるっしょ?

なんで頭脳担当のはずなのにそこらへん熟考しないの?

アホなの?

アホなんだよなー。

だから体担当の私がしっかりしなきゃならないわけよ。

なんせ私の行動がそのまま私の生死に繋がる(ツナガル)わけだしね。

 

 

体担当体担当。

 

【何だ情報担当?】

 

望遠に邪眼乗せられないかな?

 

【!?お前、天才か!?】

 

ふふふ。そう私ってば天才だったのだよ。

 

【マジか。私ってば天才だったのか!天才だったら何しても許されるよね!】

 

そうそう。望遠で遠距離から邪眼発動とかヤバくね?

 

【やべー。それやべーよ。夢が広がるわー】

 

そういうわけで獲物を探すぞ!

 

【ヒャッハー!】

 

 

我輩は情報担当である。

名前はまだない。

望遠と邪眼の同時発動はうまくいかなかった。むう。

流石にそこまでできちゃうとチート臭いから仕方がないかなー。

望遠は常時発動させているおかげかレベル5にまでなった。

これに邪眼が乗れば、かなりの長距離攻撃ができそうだったんだけれど、残念。

しかしこの邪眼はかなり使える。

MPが余裕あるうちは使い続けているから、今ではレベル3にまで上がった。

レベルの上がりは遅め。

けれど、中層攻略中はMPも余り気味だったし、ちょうどいい。

邪眼で気づいたことがあるのだけれど、どうやら邪眼発動中でも視界に変化はないっぽい。

望遠との同時発動はできなかったけれど、その他の視覚強化だとかはきっちり適用されたままだ。

発動中もしっかり視界が確保できるなら、わざわざ邪眼を発動させない目を残す必要もない。

これは、夢の邪眼同時8個展開も見えてきた。

あと、邪眼に各種属性追加スキルは乗せられないっぽい。

毒攻撃で試してみたんだけれど、効果はなかった。残念。

まあ、これも望遠と同じで、できちゃったら相当チート臭いから仕方がない。

今野私の猛毒がもし邪眼に乗ったら、見ただけで相手が死ぬっていうどこぞの死が見える魔眼も真っ青な性能になるからね。

見ただけでダメージプラス弱体化の今ですらチートじみているんだから、これ以上何かを望むのは流石に欲張りでしょ。

で、じゃあ邪眼単体を8個の目で同時展開とかできないかなーと思ったんだけれど、これはできたりする。

ただし、効果は変わらず。

8個同時なんだから8倍にしてもいいじゃんと思うけれど、そううまい話はなかった。

で、話は変わるんだけれど、体担当のことだ。

あいつアホやねん。

この間なんか私が射出のスキル手に入れられないかと思って、糸をお尻から発射してみようって提案してみたらさー、「いいねー、それいいわー。早速やろうぜ!」って言いながら糸を発射したわけよ。マグマに向かって。

曰く(イワク)「予想以上に飛びすぎた」とか言っているけれど、何もマグマがある方向にぶっぱなさくてもいいじゃん。

もちろん発射した糸はマグマポチャしましたとも。

もうね、せっかく私が天才的な提案をしても、実行役の体担当が無能だとどうしようもないわけですよ。

ちょっと考えればアカンってわかるっしょ?

アホなの?アホなんだよなー。

だから情報担当の私がしっかりしなきゃならないわけよ。

なんせ私の指示がそのまま私の生死に繋がるわけだしね。

 

 

【情報担当情報担当】

 

何だ体担当?

 

【望遠で遊んでいたら魔物発見したわ】

 

マジか。探知圏内にはまだ引っかかってないぞ。

 

【くくく。情報担当、貴様の存在意義が薄くなっているのではないか?】

 

抜かせ体担当。私を超える情報を提供しようと思ったら、100個くらい目がないと追いつかぬぞ?

 

【ふはは、そう言っていられるのも今のうちよ

!せいぜい首を洗って待つが良い!】

 

フ、その時が来るはずもなからうが、良いだろう。上ってきてみせよ、この遥かな(ハルカナ)頂きに!

 

【ふふふ】

 

くくく。

 

【で、どうするよ?】

 

そりゃもちろん狩るっしょ。

 

【あいあいさー。さあ野郎ども!戦闘準備だ!】

 

ヒャッハー!

 

 

今日も今日とて中層を徘徊(ハイカイ)する。

うーむ。中層に来てから大分経つけれど、未だに終わりが見えない。

流石世界最大の迷宮。

これ、人間が攻略しようとしたら、一生を捧げる(ササゲル)覚悟を決めなきゃならないレベルじゃね?

まあ私は順調に攻略できているけれどな!

(クゥ)ちゃんも下層の地龍2体を攻略中だからね♪

流石、私たちだぜ!

進化してステータスも上がったし、スキルも充実してきているし。

中層ではもはや敵なしなんじゃね?

中層でこれなら、上層に戻ったら無双できちゃうんじゃね?

ふふふ。今まで生きることだけで必死だったけれど、いけるじゃん!

簡単には死なないってわかれば、この世界ゲームみたいでちょっと楽しいし。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈鑑定Lv 10〉になりました》

 

お?おお?おおお!?

ついに。ついに鑑定様がカウンターストップしたー!

うわ超嬉しい!

1番初めに取って、苦楽を共にした鑑定様が、ついに、ついに完全体になった!

最初はどうしようもないくらい使い物にならなかった鑑定。

そして、誰もが認める鑑定様に。

ようやくだよ。よくやってくれたよ。感動した!

ありがとう鑑定様!これからもよろしく鑑定様!

けれど、進化とか派生はなしかー。

いや、いいんだけれどね、

鑑定様がカウンターストップしただけでもすごいことなんだけれどね。

こう、叡智(エイチ)を司る者的な進化を少し期待してはいたんだよねー。

ないのかー。鑑定様ならあるいはって思っていたけれど、ないのかー。

ショックだわー。

........本当にないの?

 

《ザ、...,..ザー、......ザ、ザー、ザー、......》

 

.....何!?

 

《ザー、要請、ザー、...,.上位管理者権限かく、ザー、.......》

 

え?何、何?

 

《ザー、.......理者サリ.........ザー、.......却下、ザー》

 

なんかやばい。

 

《ザー、ピン!》

 

《要請を上位管理者Dが受諾しました》

《スキル〈叡智〉を構築中です》

《構築が完了しました》

《条件を満たしました。スキル〈叡智〉を獲得しました》

《〈鑑定Lv 10〉が〈叡智〉に統合されました》

《〈探知Lv 10〉が〈叡智〉に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。スキル〈禁忌Lv パチパチ〉になりました》

《条件を満たしました。称号〈叡智の支配者〉を獲得しました》

《《称号〈叡智の支配者〉の効果により、スキル〈魔導の極み〉〈星魔〉を獲得しました》

《〈MP回復速度Lv 4〉が〈魔導の極み〉に統合されました》

《〈MP消費緩和Lv 3〉が〈魔導の極み〉に統合されました》

《〈魔量Lv 9〉が〈星魔〉に統合されました》

《〈護法Lv 4〉が〈星魔〉に統合されました》

 

は?はあ?はああああああ?

イヤイヤ。おかしい。これは流石にいろいろおかしい。

どうなっている?どうしてこうなった?どうすればいい?

落ち着こう。体担当、まずは深呼吸だ。

ひ、ひ、ふうー。

よし。順番に整理していこう。

日本だったらスキルがあることのほうが異常なんだよ。

そんな当たり前のことを、この世界はそういう世界、なんて安直な考えで受け入れて良かったのか?

さっきまでは良かった。けれど、今は違う。

さっき確かに聞こえた天の声(仮)はこう言っていた。

 

《要請を上位管理者Dが受諾しました》

《スキル〈叡智〉を構築中です》

《構築が完了しました》

 

この言葉、まるで誰かが私たちのことを監視していて、私の愚痴に合わせてスキルを作ったかのようじゃないか。

(クゥ)ちゃんの所でも、同じ事が起こっているのかな!?

もし本当にそうなら、犯人は管理者Dなる人物だ。

さして、上位という言葉が表すことを考えれば、管理者という存在は、このDだけではないはずだ。

じゃあ、管理者とは、一体何をしておるんだ?

決まっている。スキルだ。

この流れで考えるのなら、それしか考えられない。

要は、この世界のスキルとは、管理者を名乗る連中に、与えられたものだったんだ。

わからないけれど、これだけは言える。

この世界は何かが、おかしい。

背筋に冷たいものが走る。

地龍(チリュウ)に遭遇した時とは違う、別種の恐怖が私のことをジワジワと侵食する。

(クゥ)ちゃんも、同じ気持ちだろう!

管理者とやらは、こんな慌てふためく私たちの姿を見て、ほくそ笑んでいるんだろうか?

怖い。

今まで頼ってきたスキルが、今は理解しがたい異形の何かのように思える。

だってそうじゃないか。

このスキルというものが管理者によって与えられたものなら、私たちはそいつらの手のひらの上で転がされていることになる。

今までスキルを頼りに生きていたんだから。

ゲームみたいでちょっと楽しい?バカか私たちは。

管理者とならにそれがそういうふうに作られたとも知らずに、何を呑気なことを言っていたんだ。

管理者が本当にスキルを管理しているのならば、そいつらはこの世界の営みをゲーム感覚で観察しているってことなんじゃないか?

だとすれば、さしずめ私たちはそのゲームの登場人物1人、1人ってこと?

私たちは、このあと、どうすればいいんだろう?

どうすればいい?

(クゥ)ちゃん?

 

 

〈叡智:神へと至らんとするn%の力。自身の知覚範囲内に存在するものすべての観覧レベル1までの情報を取得可能にする。また、Wのシステムを凌駕(リョウガ)し、MA領域への干渉権を得る〉

〈叡智の支配者:取得スキル「魔導の極み」「星魔」:取得条件:「叡智」の獲得:効果:MP、魔法、抵抗の各種能力上昇。魔法系スキルの熟練度に+補正。支配者階級特権を獲得:叡智を支配せしたものに贈られる称号〉

〈魔導の極み:システム内における魔力制御補助、及び術式展開各種能力値が最大となる。また、MPの回復速度が最速となり、消費が最低となる〉

〈星魔:MP、魔法、抵抗の各種ステータスに1000のプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時に100の成長補正が掛かる〉

 

.......ちょっと前だったらスゲーって叫びたくなるとこなんたまけどなー。

いや、今も実際スゲーって思っているんだけれど、素直に喜べない。

これは、(クゥ)ちゃんと連絡をとって、相談をしないとね。

 

「も...し....もし、....く....(クゥ)ちゃん、聞こえるかな?私、(シロ)

『もし.....もし、どうしたのじろじろちゃん?もう、上層に着いたの?』

「いや、それはまだなんだけれどね?鑑定様がカウンターストップして進化も派生もしないから愚痴っていたら、今、上位管理者からスキル「叡智」を貰ったんだよ」

『ああ。それなら、私も愚痴っていたら上位管理者からスキル「伝心」を貰ったよ』

「えっ?空ちゃんも愚痴っていたんだね。って言っている場合じゃないんだよ?この世界、その上位管理者たちに監視されてるのかな?」

『そうだね、ごめんね。今、あの地龍2体を倒してどうしようか迷っていたから、そっちに行くね♪』

「わかったよ、空ちゃん」

 

~~~エルロー大迷宮・下層~~~

 

......こ....この、気配......は、白ちゃん.....の気配?.....今までの、白ちゃんの気配と違えけれど、もしかして.....白ちゃん、進化したのかな♪

 

「白ちゃんの気配を感じ取れたから、今から、空間転移をするからね♪」

『うん。待ってる♪』

 

~~~エルロー大迷宮・中層~~~

 

「ジ.......ジ、ジジジ.......ジジ、ガ,......ガ」

 

な.....何が、起こるの?

 

「......し....白ちゃん.......だよね?姿が違うから、新しい魔物かと思ったよ♪」

「どうしよう空ちゃん。これから?」

「落ち着いて白ちゃん!卵から孵ってなかった私を護ってくれていた白ちゃんはどこにいったの?姫色(ヒイロ)!」

「ごめんね、美麗(ミレイ)。......うん、ありがとう。落ち着いたよ」

「これからのことだけれど、今まで通り、このエルロー大迷宮からの脱出は変わらないよ!」

「うんうん、そうだね。美麗」

「それで、今の状況を確認するわね。今の私は、光龍姫(コウリュウキ)なの♪で、姫色は?」

「私は、ゾア・エレまで進化したよ♪」

「上位管理者のことなんだけれどね?今はどうこうできる状況ではないから、後回しね。今の、優先順位は、1にエルロー大迷宮の脱出、2に地龍アラバの討伐」

「白と私に恐怖を与えた地龍アラバを白ちゃん1匹で討伐してもらう」

「えっ?あの地龍アラバを私1匹で?ムリムリ」

「地龍アラバの討伐までには、もう1度進化できるから、大丈夫ね♪」

「わ......わかったよ、空ちゃん♪」

 

 

 

私たちの、これからの方針が決まった。

 

【情報担当ー!】

 

なんだ体担当?

 

【燃えてる!】

 

おう、今私たちは燃え盛っているぜ!

 

【違う!物理的に燃えてる!】

 

は??

 

【糸、糸!】

 

え、あ、ああ!?

 

呆然(ボウゼン)としていたから切り忘れて引火した!】

 

何してんの!?私に報告してる暇があったらけそうよ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈火耐性Lv 4〉になりました》

 

熱い!?熱いよ!?毒合成して!早く!

 

【わかった、弱毒カモーン!】

 

うげ!?痺れた(シビレタ)!?

 

【しまったー!今の弱毒に麻痺追加してた!ていうか、なんで空ちゃんがいてるのに、助けを頼まないの?】

 

それは無理!私より空ちゃんが強くなっているから。あと、何してんのよー!?

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈麻痺耐性Lv 5〉になりました》

 

熱い!痺れる!

 

【その粋やよし!って言ってる場合じゃなかった!あばばばばばばばば!HPがやばい!】

 

死ぬ!冗談抜きで死ぬ!

 

【あ、HPが0になった】

 

ちょっ!?

 

【忍耐発動!MPを生け贄(イケニエ)捧げ(ササゲ)、HP1で復活!】

 

おお!

 

【けれど消ささないとすぐにHPがまた尽きる!麻痺まだ解けないの!?】

 

もうちょい、解けた!

 

【今度こそ麻痺抜きの弱毒合成!ついでに合成量も最大に設定!】

 

おわ!?毒の水の塊か降ってきた!?

 

【痛い。潰されて(ツブサレテ)またHPが減ったやん】

 

あー、けれどおかげで火は消えたわ。

 

【あー、うん。忍耐の効果の確認できたし結果オーライ?】

 

全然オーライじゃなくね?

 

気にしたら負けだ】

 

ていうか、初のHP0がこれって、どうなの?意地を張らずに、空ちゃんに助けてもらったほうが良かったね♪

 

【だね♪でも、気にしたら負けだ】

 

そ.....そうね。私も空ちゃんみたいに強くならないといけないからね!

 

【そうそう。あと、今のでMPを半分くらいまで減ったわ】

 

叡智取ってなかったら死んでたやん。

 

【持ってて良かったね、叡智】

 

まあ、原因を作ったのは叡智だけれどね。

 

【気にしたら負けだ】

 

スキルはやっぱり便利ね。

 

【そうやね】

 

 

さて、叡智のスキルの性能は、鑑定様と探知さんを足してちょこっと強化した感じっぽい。

その時点で様付けしなきゃならんレベル確定ですわ。叡智様ですな。

まず強化された項目だけれど、ステータスの鑑定結果に詳細なるものが追加された。

この詳細を二重鑑定すると、そのステータスのさらに詳細な情報がオープンされるという、素敵機能だ。

攻撃と防御はそれぞれ体の各部位の詳細な数値。

それによると、私は鎌部分の攻撃力が1番強くて、防御力はほぼ均一であることがわかった。

若干胴体部分の防御力が低めだけれど、そもそも私は回避特化だから、そこに被弾するようなヘマをしなければいいのよ。

速度も同じような感じなんだけれど、反射速度とか瞬発速度とか持久速度なんかにさらに内訳が細分化されている。

割と平均的なんだけれど、瞬発速度がちょっと他に比べて高めらしい。

で、魔法だこれね、もうね。

魔法攻撃力とか術式展開速度だとか、術式安定度などなど、いろいろな項目があるんだけれど、攻撃力以外の数値がカウンターストップしていた。

99999だそうだ。全然平均的じゃないじゃん!

(クゥ)ちゃんのも、叡智様で確認させてもらった。

こういうのは、礼儀が大事だから、勝手に鑑定をしてはならないのだよ!

もちろん、空ちゃんには、ちゃんと許可をもらっている♪

空ちゃんのステータスもカウンターストップしていたよ♪

これは、私たちが魔導の極みのスキルのおかげだと思われる。

術式関連が最大値になるとかなんとか書いてあったし、その影響だとは思う。

これは、空ちゃんだけが使えていた魔法が私にも使えって言っているようなもんだよね?

ふへへ。ついに私も魔法が使えるのか!

空ちゃんが放つ魔法を避け目に、羨ましかったんだよね♪

やべえ。超楽しみ。

まあ、今は叡智様の効果を再確認するのが先決だ。

慌ててはいけない。

最後に抵抗なんだけれど、これが詳細の中で1番重要だった。

私の属性の耐性が全部載っていた。これで私が苦手な属性が判明した。

1番苦手なのはやっぱり火だった。火耐性のスキルを持っているのにそれでも1番低め。

ちなみに、(クゥ)ちゃんに苦手属性はほぼなかった!土から風、水に雷、光ときて、火に氷、闇。

他の耐性も全部カウンターストップしていたよ♪

私も頑張らないとね♪

火以外で弱いのは水、氷、光なんかも低め。

特に氷は火耐性と並んで低い。

中層にいる限り氷属性なんて食らうことはないだろうけれど、頭の片隅に覚えておいたほうが良さそう。

逆に、1番高いのは外道属性。まあ、外道無効を持っているしね。

これも数値がカウンターストップして99999。

その次に高いのが、毒耐性。

と、こんなふうに私の、私たちの得意不得意な耐性が判明したわけなんだけれど、これ、おそらく攻撃にも言えるんじゃないのかなーと思う。

例えば私が苦手な火耐性の魔法を使っても、効果は低くなるんじゃないかなと思う。

逆に、得意な外道属性とか闇属性なんかは高くなりそう。

ステータスの詳細はこんな感じなんだけれど、スキルの詳細も見られるようになった。

具体的には熟練度の数値が見えるようになった。

次のレベルまでに必要な熟練度の数値も一緒に表示されるので、より1層効率のいいレベル上げができそうだ。

ちなみに、まだ取得していないスキル熟練度も見られる。

なんと、スキルポイントがなくても、スキルの一覧が表示されるのだ。

これにはビックリした。しかも、全スキルが解禁された状態で。

これを眺めているだけで1日潰せそうな勢いだわ。中にはこれ絶対取らせる気がないだろ、っていうバカみたいにスキルポイントが高いスキルもあったりする。

その分性能は確かなんだろうけれど、私にはスキルポイントは余っている♪

天の声(仮)に冗談で問い合わせて、本当にあった「不死」のスキル、取るのに必要なポイントが1億だった。

私が持っているスキルポイント10500では、引っくり返っても取れないね!

空ちゃんも同じようだ。

ないわー絶対取らせる気がないでしょ。

使えそうなスキルをあとでピックアップしておこうと思う。

しばらく邪眼にポイント使っちゃうけれど、それが終わって余裕ができたら、よさげなスキルを取っていこう。

で、探知さんの強化なんだけれど、探知で拾った情報も鑑定できるようになっていた。

ただ、探知さんが拾ってくる情報はそれだけで結構高密度だったりするから、わざわざ鑑定する必要があんまりないっていう。

今のところ有効な使い道があんまり思い浮かばないんだけれど、あって損はないしいつか使い道があるかもしれない。

最後に、これが1番重要かことなんだけれど、なんとオートマッピング機能が追加されました!

わーい。

この機能は、(クゥ)ちゃんも手に入れている♪

しかもこれ、叡智様を手に入れる前、私たちが生まれていてから今までに通った範囲全部のマップが閲覧可能なのです!

それも、私と空ちゃんのオートマッピング機能の共有ができるのですよ♪

だから、私が下層で立ち寄っていない空間もバッチリわかる♪

これはすごい。マジですごい。

今まであてもなく彷徨っていた(サマヨッテイタ)このエルロー大迷宮、その一端が、1匹と1体のオートマッピングのおかげで、明らかになりました!

エルロー大迷宮広すぎ......。

元私たちがいた上層のマップとそこから落下した下層のマップ、さらに、今進んでいる中層のマップ。

それらを連結して全体像の1部を予想してみたんだけれど、それだけで軽く北海道と同じくらいの大きさになった。1部でだよ?

そして、中層から上層までの距離を予想すると、まだまだ長そうだということがわかった。

最後に、今まで鑑定不能だった言語の鑑定は、やっぱり鑑定不能のままだった。

 

 

しっかし、さっきは死ぬかとおもったわー。てかHP的には死んだわ。

忍耐がなかったらマジで死んでいた。こんなアホな死に方したら華々しく散るどころじゃねーわ。

 

「こんなことで、死なないでよ。白」

「ごめんね、空♪」

「「気を取り直して、中層攻略へと行きますか!」」

 

管理者さん、さっきの見てたんならログから抹消しておいてください。お願いします。

それはそうと、意図せずして忍耐の効果が確認できた。

HPがなくなっても復活する、というよりかは、HPが0になってもMPを代替にしてそのまま行動可能って感じかな。

さっきの火が付いた状態のMPの減り方からして、多分だけれどMPをHPに一時的に見立ててるんだと思う。

実質HPとMPがくっついたようなもんだよね。

だから、オーバーキルするような攻撃を食らうと、MPも一気に減ってやられかねないと。

けれど、MPは本来の用途でも使うから、保険くらいの気持ちで見ておいたほうが良さそう。

で、星魔のおかげでやたら魔法系のステータスが伸びたんだけれど、このステータス、使わないと損だよね?

そこで登場、魔導の極みー、わーい。

なんとこのスキル、私が欲しがっていた魔力操作、その最終発展系とも言えるスキルなのです!

 

「「すごーい!」」

 

さらにさらに、MP関連の便利スキルもセットになってお買い得です!

 

「「ワンダホー!」」

 

今ならお値段はなんと、叡智様(エイチサマ)のおかげなのでタダです!

 

「な、なんだってー!?」

「すごいね、白♪すごいね、叡智様」

 

既にお買い求め済みですのでご安心ください!

 

「コングラッチュレーション、白!」

「いやいや、どうもどうも♪押さないでー♪」

 

さて、この魔導の極み。マジで凄い(スゴイ)スキルだわ。

なんせ実質、「魔力操作」「MP回復速度」「MP消費緩和」をレベルマックスで取得したようなもんだもん。

さっき死にかけて半分くらいまで減ったMPがもう全回復している。

何それ、MP使いたい放題じゃん。

しかも消費緩和の効果もあるから、消費量も忍耐以外なら少なくなっているはず。

下手しなくても使いたい放題。

邪眼なんか常時発動していても消費無しと変わらないっていうね。

早速常時発動に切り替えよう。

で、ここまでお膳立て(オゼンダテ)されたら使ってみたいよね、魔法。

けれど使い方がわからない。

というのも今は昔!私はついに魔法の使い方を覚えたぞー!

というのも、叡智様の新機能、検索によって判明しました。

スキルシステム関係のワードを調べると、その説明が表示されるのだ。

私が求めてやまなかった取扱い説明書機能がついに実装されたのだ。

そういうわけで、魔法の使い方も検索しました。

まずは魔力の認識。これはいわゆる魔力感知に相当する。

(クゥ)ちゃんは、初めから使えていた。

まあ、卵の時から、地龍(チリュウ)ってなっていたから、土魔法が使えるよね♪それに、土耐性と、魔法の使い方はお手のもの。

その点、私は素人(シロウト)だけれど、叡智様の効果で魔力感知はバッチリだ。

次に、魔力の操作。

私の中にある魔力のイメージは、トロミのある液体だ。この液体を自分の意志で動かす。

これが魔力操作となる。速く動かしたり、複雑な動かし方ができればなおいい。

普通は鍛練を積んで徐々に動かせるようになっていくんだろうけれど、私は魔導の極みのおかげで自由自在に動かすことができる。

そして、術式の構築。

各種魔法スキルがこれに当たり、該当する術を選択することによって自動で構築される。

構築された術式のイメージは、パイプ、だろうか?

この構築される速度もステータスによって変動してくる。

私は術式構築速度はカウンターストップしているので、選択した瞬間発動可能になるというチートっぷりを発揮する。

最後に、構築された術式に魔力を流し込めれば魔法は完成する。

パイプに液体を流す感じだ。

パイプの終点に液体が到達すると、初めて魔法として現世に影響を及ぼす現象となる。

この時、パイプの中に流す液体の量が増えれば、魔法の攻撃力が高くなり、流す速さを速くすれば発動までの時間が短縮される。

ただし、その分余計な負荷がかかってしまう。

パイプの太さによっては流せる量に限界があるし、頑丈にできていなければ水圧で破裂してしまう。

その負荷に耐えられずに術式が不発に終わったり、最悪暴発してしまうこともある。

高位の魔法ほど複雑かつ長い術式を持つので、その傾向は強くなる。

術式を安定させるためには、より大きく頑丈なパイプを造る必要があるわけだ。

これについても私は魔導の極みのおかげで問題ない。

(クゥ)ちゃんは、魔導の極みを獲得してからは、より精度のいい高位の魔法をも、放てるようになった♪

私も、その領域にまで、到達して、空ちゃんに魅せるん(ミセルン)だからね♪

だから、魔法1つ発動するだけでもこれほどの過程を経ないと(ヘナイト)いけない。

しかーし!魔導の極みを持つ私は、(クゥ)ほど、上手くまだ扱えないけれど、そこは頑張るよ♪

魔力操作は体を動かすのと同じ感覚で出来るみたいだし、術式構築も魔法を選択した瞬間、一瞬で最適のものが完成する。

この、発動の速さに慣れていかないとね!

と、いうわけで、今は周りに魔物がいないので、効果がひと目でわかるものを発動させてみよう。

ここはやっぱり毒魔法レベル2の魔法、毒弾(ポイズンバレット)がいいかな。読み方♪

外道魔法は発動しても相手がいないんじゃ意味がないし、影魔法はぶっちゃけ成功しても感動がなさそうだしね。

深淵(シンエン)魔法は、うん、ちょっといきなり使うのはハードルが高そう。

よし!術式展開!魔力充填(ジュウテン)完了!毒弾(ポイズンバレット)発動!

ほぼ構えてからノータイムで私の目の前に何か黒くて丸いものが出現し、勢いよく飛んでいく。

お、おお!

なんかかなり呆気(アッケ)なく成功しちゃったけれど、魔法だ。

スゲー。ちょっと感動した。

(クゥ)ちゃんも、初めての魔法は感動したって、言っていたしね♪

けれどこの毒弾(ポイズンバレット)、威力はあんまりない。

かぜならこの毒は、蜘蛛猛毒ではないから。

毒魔法で使える毒弾(ポイズンバレット)は、自前の毒を発射する魔法じゃなくて、毒を発射するという1つの魔法らしい。

なので、毒魔法の毒弾は、そのままの呼び方で「毒弾(ドクダン)」だ!

格好いい呼び方では、名前負けしてしまう。しくしく。

そして、私の魔法攻撃力をもってしても、蜘蛛猛毒の威力には及ばないのだ。

一応魔力を多く消費すれば威力も上げられるけれど、それなら素直に毒合成をしたほうがいい。

せっかく習得できた魔法だけれど、使う機会はそこまで多くないかも......。

さて、毒魔法の毒弾(ドクダン)に続き、毒魔法レベル1の毒触も一応試してみた。

触れた相手に毒ダメージを与えるという魔法だったはずなんだけれど、やっぱりというか落とし穴があった。

レベル1で覚えられるにしては随分いい性能していると思ったけれど、この魔法、自分も食らう。

いわゆる自爆技だった。というか、私自爆系の技多くないか?

耐性をわざと上げるのには向いているかもしれないけれど、普通だったら使えない魔法だ。

ああ、けれど、レベル3の毒耐と合わせれば使えないこともないが。

毒耐は一時的に毒耐性を高める魔法だけれど、これと合わせれば毒触も使えるかもそれない。

まあ、私は毒合成があるし、わざわざ使う必要はないけれどね。

何が悲しくて威力も低い自爆技をわざわざ使わないといけないのよ。

威力低いから熟練度の足しにもあんまりならないし。

毒弾はまだ使い道はありそうだけれど、毒触を私が使うことはないだろうなー。

影魔法も一応試してみた。

結果は、うん、地味だったから省略。影遊びくらいはできそうとだけ言っておく。

外道魔法は相手がいないと効果の確認ができないし、次に魔物に遭遇した時にでも試してみようと思う。

まあ、精神攻撃の類だから見た目で効いているのかどうか、わからんかもしれんけれどねー。

そして、最後に待ち構えるラスボス。深淵魔法。

これを試すのはかなりドキドキする。いろんな意味で。

どう考えてもこの魔法やばいしねー。

叡智様に進化してから念のためもう1度鑑定を実行してみたけれど、説明文は変わらず。

結局魔法の効果だとかはわからず。

明らかに上位の闇魔法だってことはわかるんだけれど、それ以上のことが一切わからん。

使えればとんでもない戦力になるかもしれないけれど、何が飛び出してくるかわからないっていうのは心臓に悪い。魔導の極みがあるから失敗するってことはないだろうけれど、それでもドキドキですわ。

(クゥ)ちゃんは、下層で試してきたみたいだけれど。

けれど、私が持っている魔法スキルの中で、これが1番魔法らしい魔法なんじゃないかなーと思う。

闇の魔法とか超それっぽいじゃん。

厨二(チュウニ)っぽくてすんごいテンション上がる!

では、まずはレベル1の地獄門から試してみましょう。

よし!術式構築!

.......あれ?

ちょ、ちょっと待て!?魔導の極みを持っている私が制御できねえだと!?

なにこの構築のアホみたいな難しさ!?くっ、ダメだ。

構築途中の術式は、あっさりと私の制御を離れ、脆く(モロク)も崩れ去った。

そんなバカなと言いたい。

(クゥ)ちゃんも、同じく崩れ去っていたみたいだ!

私たちが持つ魔導の極みは、魔導系のスキル最上位に位置しているはずなのだ。

そのスキルを持っているのにこの結果。

これでダメなら世界の誰も深淵魔法を使いこなすことはできないんじゃないか?

というか、ここまで構築すらままならないって、どういうことよ?

レベル10の反逆地獄なんか発動させたら、世界が終わるとかそういう感じ?

ハハハ、まさかー。ないよね?ホントにないよね?

しかし、レベル1でこれじゃ、どっちにしろ使えないか。

いや、諦めふのはまだ早い。確かに難しかった。

けれど、私はついさっき魔法を使えるようになったばかりの初心者。

魔法玄人(クロウト)(クゥ)ちゃんでも、成功していないのだから、それほど難しいのだ!

おのれ、深淵魔法!

だから、簡単な魔法ならスキルのおかげで使えるけれど、上位の魔法になると私自身が未熟なせいで使えない。そういうことだと思う。

ならば答えは1つ。練習あるのみ!

というわけで体担当。

 

【まあ、言いたいのとはわかるが情報担当】

 

わかってくれるか?

 

【うー。けれどその場合情報はどうするよ?】

 

ある程度体担当でカバーできない?

 

【できるっちゃできるけれど、やっぱり2人でやってたのを1人でやるわけだから、効率はガタッと落ちるだろうね】

 

むう。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル〈並列意思Lv 2〉になりました》

 

グッドタイミング!

ハロー、第3の私。

 

〔ハロー。話へ聞かせてもらった。私が来たからにはもう大丈夫だ!〕

 

よし!それでは3号。君には魔法担当になってもらう!

 

〔OKOK任されたぜい〕

 

ということで、並列意思がレベルアップして、同時に存在できる意思の数が増えた。

情報担当と体担当はこれまでどおり。

新しく生まれた魔法担当は、移動中に深淵魔法を中心に魔法の練習をしてもらおう。

叡智の支配者の称号の効果で魔法系の熟練度の上がりが良くなっているはずだし、他の毒魔法と影魔法も上げていれば、将来役に立つはずだ。

それに、戦闘面でも魔法担当は独自に魔法攻撃を加えられる。

毒魔法の毒弾も、単体で使うなら微妙だけれど、体担当と連携して使えばその利用価値は爆発的に上がる。

牽制(ケンセイ)や不意の一撃、状況に合わせていろいろできそうだ。

その状況を見極める情報担当もやっぱり重要な役割を持つ。

まさに三位一体。

改めて考えるとスゲーな私。

これは、(クゥ)ちゃんも、できない!

ステータスも急激に伸びて、体を駆使した戦い方と同時に魔法が飛んでくる。

これだけ聞くと敵に回したくねー。

あれ?私って、.......私たちって強くね?

 

「私たちって、強いよね、(クゥ)ちゃん?」

「強いよ、私たち♪(シロ)ちゃん♪」

 

 

 

 

 

いろいろあったけれど中層攻略は順調。

魔物を倒しまくってレベルも上がり、スキルのレベルも結構伸びた。

そんな中、ついに過食がレベル10になった。

暴食来るか?って、身構えたんだけれど、進化したスキルの名前は「飽食Lv 1」だっ。

 

〈飽食:食事を限界を超えて摂取可能になる。その際HP、MP、SPが回復する。また、余剰分をストックすることができる。余剰分は純粋なエネルギーとしてストックされるため、太らない。レベルの上昇によってストックできる量が増える〉

 

暴食が来ないのは、(クゥ)ちゃんから聞いていて、知っていたが、もしかしたら、まぐれであるかもって思った。それでもすごい性能だ。

要はこれ、今までSPにだけ適用されていた効果が、HPとMPにも適用されるってことだもん。

ストックされている余剰分の量はSPに比べると低めみたいだけれど、それでもすごいことに変わりはない。

素だと低めのHPが水増しされただけでも嬉しい。

それに、忍耐の効果もあるし、HPとMPが増えればそれだけ私の生存率は高くなる。

 

MPは元々余り気味だったけれど、ストックできるなら無駄が減っていい。

ただ、太らなくなるという効果に関しては、私たちには恩恵がなかった。

そうそう。過食のストック分は、レベルが上がる前に限界値までいってしまっていた。

レベル×100が限界値だったっぽくて、900で止まっていた。

飽食に進化したおかげでもう少し上限は増えたけれど、多分1000でまた止まると思う。

これ以上ストックできないとなると、消費しなくちゃもったいないと思ってしまうのが、日本人のもったいない精神。

そういうわけで、(クゥ)ちゃんはまた、下層に転移してレベルを上げに行った♪

私は普段の移動の時からなるべく多めにSPを消費するように心がけた。

具体的には跳んだり走ったりしながら進んだ。

こうすることによって、韋駄天(イダテン)とかのスキル熟練度を稼いだのだ。

おかげで韋駄天を始めとしたスキルがレベルアップした。

瞬発と持久もレベルアップして、ついにカウンターストップ。進化した。

それぞれ瞬身と耐久というスキルに進化し、成長補正がわかるようになった。

それで私はレベルアップ時にすべてのステータスにプラス補正が乗ることになった。

まあ、叡智様のおかげで魔法系の上がりが異常に高いのと、もともと持っていた韋駄天のおかげで、速度が高いけれどね。

うーん。私、もともと高機動型の物理タイプだったはずなのに、ステータスだけ見ると高機動型の魔法タイプになっている。

ここまでガラッと様変わりした原因は叡智様にあるわけだけれど、実際私は魔法型に変わったのかというと、微妙。

一応魔法系各種のレベルも上がっている。

上がってはいるのだけれど、どうしても蜘蛛猛毒には及ばない。

結局、本気で戦うとなったら蜘蛛猛毒を切り札に、魔法はサポート程度になってしまうわけよ。

まあ、仕方がないっちゃ仕方がないことだけれどね。

今まで蜘蛛糸と蜘蛛猛毒、この2本でやってきたわけなんだから。

ぽっと出の魔法にあっさり抜かれちゃ、今までの苦労はなんだったんだってちょっと複雑な気分になりそうだし。

あー、蜘蛛糸早く使いてー。中層早く出てー。

上層にたどり着いたら真っ先に私たちの巣を作って、しばらくそこでじっくりとスキル研究に時間をかけてやる。

そのあとは、正直どうしようか迷っている。

気にしないとは言ったものの、やっぱり全く気にならないわけじゃない。

管理者。スキル。

それを知るためには、やっぱり誰か知っている人間に聞かなきゃならない。

(クゥ)ちゃんにでも、聞いてみようか?

けれど、そもそもこの世界の人間は管理者のことをどう思っているんだろう?わからん。

考えてみれば、私ってこの世界で(クゥ)ちゃんとしかコミュニケーションをとっていないんだよねー。

 

【私がいるぞー!】

〔私もいるぞー!〕

 

オメーらも私に変わりはねーだろ!(クゥ)ちゃん。下層で用事を終わらせて、早く私の元に帰ってきてね♪

と、そうそうコミュニケーションの話ね。

前世でもコミュニケーションなんかほとんどとっていなかったけれど、インターネットさえあれば情報は入手できた。

けれど今は違う。(クゥ)ちゃんも居てくれるし、叡智様の検索はあくまでスキルに関する1部のことだけ。

これに、調べたとしても肝心のところは伏せられたまま。

管理者に繋がる(ツナガル)ような情報はすべて鑑定不能。

思えば、私たちって大局的に見ると生まれてこなかた外に出たことがないヒッキーなのよね。

エルロー大迷宮から出たことがないし。

情報源がない状態でヒッキーしていたらそりゃ世界情勢に疎くなっても仕方がないよねー。

管理者について知ろうと思えば、エルロー大迷宮から外に出て、この世界の人間と対話をしなければならない。

けれど、私たちって喋れない(シャベレナイ)し、魔物だから普通に会話とか厳しい気がする。

(クゥ)ちゃんとは、念話でか話せないしね♪てへっ♥

そして、とある魔物に進化すること。

叡智様によって追加された機能、進化ツリー。

これを見れば、私が今後どんな魔物に進化できるのか、ひと目でわかる。

今まで進化はその時にできるやつを選択してきたわけなんだけれど、どうやら私は相当いい感じに進化していたっぽい。

進化ツリーを見てみると、ポイズン系とか相当レアだったことがわかる。今のゾア・エレも。

まあ、それは今はいい。

問題は、進化ツリーに表示された進化先に存在する、とある魔物の情報だ。

アラクネ。蜘蛛の下半身に、人間の上半身を持つ魔物。

前世の日本でもよく知られた魔物だ。

(クゥ)ちゃんは、そろそろ「人化(ジンカ)」できるらしい。

この変化にも、慣れが必要みたいで、下層で練習とレベル上げをしている。そのために、今、中層に居ない。

この魔物に、私は進化しようと思えば、道のりは多少遠いけれどできる。

人間の上半身を持っているなら喋ることもできるでしょ。

まあ、それ抜きにしても半分だけとはいえ人間になれるっていうのはすごく大きい。

蜘蛛の体に慣れてきたとはいえ、健全な元女子高生がこのままの姿で一生を終えるってどうなのよ?

 

「ねぇ、美麗(ミレイ)♪」

『そうだね、姫色(ヒイロ)♪」

 

普通イヤでしょ。

人型(ヒトガタ)になれるんだったらそれを目指すっしょ。

まあ、今考えても仕方がない。

進化するにせよよないにせよ、まだまだ先の話し合いだし。

そもそも中層を抜けないことには外に出ることもできないし。

考えるのは、また跡でいいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




蜘蛛娘:[白織]・Lv 1
種族:蜘蛛姫(ゾア・エレ)
性別:雌
スキルポイント:10500

光龍娘:[空丹]・Lv 10
種族:地龍姫→風龍姫→水龍姫→雷龍姫→光龍姫
性別:雌
スキルポイント:55000





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