○○○○ボール (なめなめろ)
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○○○○ボール
朝。
目覚めが良かろうと、悪かろうと、朝になったら起きなければならない。
「うう……朝かぁ……だるいなぁ」
いつもの様に自分の部屋で目覚める。今日から4月つだというのに、オレの朝一番に言うことは変わらない。
「顔……洗うか……」
ベッドから立ち上がり、洗面所へ……ん?
「あれ? 気のせいか、何だか身体のバランスが悪いような……」
いや、これはバランスの問題ではない! 明らかにオレの身体はおかしい!! まるで何かが足りないような……
「まさか……」
おそるおそるパンツのに中を入れる……
「足りない! いや、ない!? ないぞ!?
オレの○○○ンボールがない!?」
何度まさぐってもない! 見つからない!!
「どこに行ったんだ……オレの○○○ンボール……」
こうしてオレは、たった、2つしかない○○○ンボールを探す旅へ旅立ったのであった……。
数ヶ月後……オレはとある山奥に尾を生やした子供が『変わったボールを持っている』という情報を頼りに現地へ向かった。
右も左も分からぬ険しい山道を……という様なこともなく、ただの山道を抜けると、そこには話に出てきた通りの尾を生やした子供が実在した。
オレはその子供になんとかボールを譲ってもらおうと、あの手この手でお願いをしてみた。
最初はオレのことを「怪しいヤツめ!」「オメェ、妖術使いか!?」と疑っていたが、話している内に誤解は解け、快くボールを譲ってもらえた。
『何事も誠心誠意を持って、話せば何とかなる』
オレはその子供から、そんな当たり前のことを教わった気がした。
気がしたのだ。あの時は……
現在とある場所で、謎の赤い軍隊と遭遇中である。
不幸にもオレは、ちょっとした油断からそいつ等にボールを奪われてしまったのだ!
「へっへへへ、コイツはオレ達がいただくぜぇ!」
「いや、それは……返してくださ……」
「ああん!?」
「ひっ!」
ダ、ダメだ! 言葉が通じても、話しが通じない!
それにしても、えらくガラが悪いな。
コイツ等本当に軍人か? 軍服を着てなかったらチンピラにしか見えんぞ。
「だははは! どうやら、このボールはオレ達のもので文句がないみたいだな……ん? これは?」
ボールを持った男の表情が突然曇る。
「おい、お前!」
「は、はい!」
何だ? 今度は金でも要求するのか?
それとも命?
もしくは両方!?
「このボールに『星』が入ってなかったか?」
「星……?」
何のことだろう? オレのボールに、そんなキラキラした刺青なんてないはずだぞ?
「ニセモノか……」
「え? ニセモノ?」
どうやらヤツ等の探しているボールとオレの探しているボールは別らしい。
そのおかげで「こんなもんいらん!」と、アッサリと返された。
正直これは、めちゃめちゃ運が良かったと思う。
その後に聞いた話によると、この軍隊は『たった1人の尾を生やした子供に壊滅させられた』という噂があったが……まさかな。
さらに数年後……残りひとつのボールを探すため、オレは宇宙のとある惑星にいた。
因みにここまでの道のりは、あまりにも筆舌し難いがために割愛することにする。
さて、オレがわざわざこんな宇宙の辺境の星にやって来た目的は、もちろんボールだ。
長年の調査で、この星にボールが存在するという確信を得たのだ。
しかし、2ヶ月程前からボールを捜索しているが、一向に見つけることができない。
それどころか、ここ最近の星の様子がおかしい。
現に今、空は荒れ狂い、大地が激しく揺れている!!
まるで、この星が爆発する前兆の様な気がしてならない……
どうする? ボールを諦めるか? 幸い右のボール1個はあるんだ。これだけあれば何とかやっていけるが……
頭の中では、そんな打算的な考えが巡る。
いや、ダメだ! ここで諦めたら全てが無駄になる!
それに、オレがここにいるのはオレだけの力じゃない! 支えてくれたみんなの力があったからこそ、オレはここに立っていられるんだ!!
「そうだ! 絶対に諦めないぞ!!」
覚悟を決めたオレはボールを探し続ける。すると……ピピッ!
「レーダーに反応が!? あの岩の下か!?」
これであろうと思う岩に当たりをつけ、気合いを込める!!
「ふぬーーー!!」
ズ、ズズズ……
徐々に動く岩。そして……あった!
ボールがあったぞーーーーーー!!!
「やったああああああああああああああ!!!」
ドオォォォォォォォォォォン!!
勝利の雄叫びと同時に爆発が起きる!!
「くっ! ここも危険だ!」
喜びを噛み締める間もなく脱出の準備を急ぐ!
素早く自作の宇宙船に乗り込むと、地球への帰還コースをセットする。
「これで良し! 後は……」
不意に窓の外を見ると、この星の最後とばかりにあちこちで爆発がおこっていた。
そしてその中で、あるもの……人物を発見する! 見間違いと思われる程の一瞬だったが、その人物は金色に輝く髪の青年だった。
オレはその姿が昔会った、尾の生えた子供に重なって見えた気がした……。
ドガァーーーン!!!
爆発!? 宇宙船の近くだ!
急ぎ離陸のボタンを押して、その場から飛び立つ!
ドォォォォォォォン! ズガァァァァァァン!!
次々の襲いかかる爆風に操縦が乱れる!
「くそ! 諦めるか!!」
オレはブースターの出力を最大限まで上げる!
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇーーーー!!!」
飛び立った瞬間、星の爆発が見えた。
この瞬間、宇宙でひとつの惑星の命が消えた……
「帰ろう……」
数々の困難を乗り越えたオレは今、地球への帰路に着く……
股間にある2つのボールと共に……
ー終わりー
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