最強の能力者? なにそれおいしいの? 僕は無能力者ですけど? (暇です)
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今日も普通の一日 (表)

駄文です 処女作です


 この世界には超能力と呼ばれるものが存在する。

 

 超能力はEからSランクに振り分けられている。Eランクでは些細な現象しか起こせないが、ランクが上がっていくにつれてその能力が持つ力も大きくなっていく。

 

 しかしこの能力とは誰でも持っているというわけではない。

 一番下のEランクでさえも10人に一人の確率であり、当然ランクが上がっていくに連れて希少性は高くなっていく。もはやSランクともなれば一国に一人いるか程度の少なさである。

 

 それと同時に希少な能力者は国に重宝されることになる。

 

 斎藤武《さいとうたける》ーーどう考えてもそこら辺のモブにいそうな名前、それが僕の名前だ。

 恐らく一番最初にゾンビに噛まれるような役にいそうだなと思っている。

 

 特にこれといった特徴があるわけでもなく、ただの高校生。

 黒髪に黒い目、170cmぐらいの身長、どこをとっても普通

 

 ーーのはずなのだが、昔から僕の周りではなぜだか物騒なことがよく起こる。

 

 とはいっても直接的にかかわることは少なく、よく火事だとか銀行強盗などの事件を直接よく見かけることが多いだけだ。

 

 今回も同じように目の前でひったくりが起こっていた。

 

 見た感じ30代ぐらいの男がおばあさんが持っているカバンに手をかけ奪い取り、こちらに向けてかなりの速度で走ってきた。

 

「どけ!そこのガキ!」

 

 相手は手慣れているのか焦ったような様子はなく、こちらを睨んできている。

 

 正直言ってこのよう現場に慣れているとはいえ、ただの高校生である僕に男をどうにかする勇気はない。

 少し動揺しながらもすっと身を端に寄せ、男が通るスペースを作る。

 そして男が通り過ぎて行く……と思ったのだが。

 

バタン!!

 

「がっ!」

 

 男が僕の足元に転がり、苦悶の表情を浮かべる。

 

 転んだのか? そのうえ当たり所が悪かったようで起き上がれずにいる。

 ここまでおぜん立てされてしまえば何もしないわけにはいかない。

 男の手からかばんをとり返す。そしてそれを追いかけてきたおばあさんに渡し、警察がすぐに到着し、男を連れて行く。

 一件落着したようで良かった。

 

「ありがとう、助かったわ」

 

 おばあさんが安堵したような表情でお礼を言ってくるが、あいにくと僕は何もしていない。

 

「いえ、僕は何もしてません」と言うが

 

「謙遜することないのよ」

 

と返されてしまった。

 

 その後はおばあさんと別れ家に帰っていたが、ふと足元に10円玉が落ちていらことに気がついた。

 十円玉を見つけると同時に僕は目にもとまらぬ速さで10円玉を拾った。

 当然だ。いつも少ないお小遣いで工面しているのからこそ10円たりとも見逃すことはできない。思わぬ報酬に笑みを浮かべてしまう。

 だが……頭を下げた瞬間に頭の上を何かが通り過ぎていったような気がしたのだが、気のせいだろうか?

 

 そのあとは何かがあるわけでもなく帰路に就いた、今日も普通な一日だったなあ。

 

 いや普通……か?




良さそうだったら続く


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今日も普通の一日 (裏)

side〜ひったくり犯〜

 

 俺は常習のひったくり犯だ。

 

 今まで幾度となく犯罪を犯してきたが捕まったことは一度もない。もはや手際はプロの域と言っていいだろう。

 今回も同じように年老いたババアから鞄をひったくる。

 ババアはいきなりの出来事に狼狽してオロオロしている。

 

 (へ、楽勝だな)

 

と思った矢先、すぐ目の前に学生と思われるガキがいた。

 

 「どけ!そこのガキ!」

 

 と俺が叫ぶと抵抗する様子もなく道を開ける。

 妙に落ち着いてたことに少し違和感を感じながら、そいつの横を通り過ぎる瞬間ーー

 

 「がっ!」

 

 そのガキの足が俺の足と触れた瞬間に、足がもつれ俺はバランスを崩した。挙げ句の果てには頭から地面に落ちる。

 

 (馬鹿な!俺がこんな初歩的なミスを?)

 

 まるでこうなることを知っていたかのように俺の鞄を奪い返す、まさかコイツ……

 狙ってやったのか⁉︎

 

 そんな疑問が解ける間も無く俺は警察に連行されていった。

 

side〜???〜

 

 「ふぅ、こんなこと私がやるまでもないというのに」

 

 私は今ある依頼を受け、そのための準備をしている。その依頼の内容とはある男を暗殺することである

 

 「斎藤 武… 歳は16で無能力者、清光学園に通っており両親は既に他界しているーーか。」

 

 どれだけ調べようとも碌な情報が出てこない、コイツを殺す必要性も私に依頼するほどの重要性も見当たらない。

 

 「まぁいいか、私はただーー殺すだけだ」

 

 そんな事情だのは私が知る必要はない、ただ殺すだけだ。

 しかし準備は徹底的に行う。どんな任務だろうと全力を尽くす、それがプロだ。

 

 そんなことを考えていたら、ターゲットが見えてきた。

 私の能力はBランク[全てを見通す者] だ。

 

 まぁこの名前は大袈裟で視力が大幅に強化されるというだけの能力だが。

 しかしこの能力は暗殺にはうってつけで今まで一度も失敗したことはない。そして、今回もそうなるだろう。

 

 早速ターゲットの背後3km手前から後頭部に狙いを定める

 そしてを当たると毒が回り、死に至る微小の特性弾ターゲットに向けてーーー

 

 発射した。その私が油断していた瞬間ーー

 

 目にも留まらぬ早さでターゲットがしゃがみ込み特製弾を避けた。

 

 (馬鹿な!完全に不意打ちだったはず、銃声すらもしていないんだぞ!)

 

 私が動揺している間にターゲットが曲がり道に入ろうとしている。

 

 (追わなければ……っ!)

 

 その瞬間彼女には彼の表情が見えた、否見えてしまった。

 

 (笑っている?)

 

 まるで可笑しくてたまらないように、楽しそうに彼は笑っていた。

 

 その顔に彼女は恐怖した、命の危険があったはずなのに、なぜ笑っているのかわからなかった。

 

 実際は十円玉を拾っただけでニヤニヤしているだけなのだが、しかし、そんなことは彼女にはわからない。

 

 反射的にそこから彼女は逃げ出していた、まるで死神から逃れるかのように。

 

 この事件がきっかけで彼はこれから気づかないうちに色々な事件に巻き込まれていくことになる。

 




いろいろ試して行かなければ…


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僕は無能力者です (表)

評価、感想よろしくお願いします



 今日は雲一つない青空が広がっている。

 太陽が地面を照りつけ、心地良い暖かさが僕を包んでいた。

 

 が、そんな天気とは裏腹に僕の心は困惑でいっぱいだった。

 原因は朝届いた書類だ。

 

「能力者育成学校:聖内学園へのご案内…?」

 

 書類では僕が能力者育成学校に入学することになっていた。

 能力者育成学校とは、能力者は能力者専用の学校に通わなければならず、その専門の学校というのが能力者育成学校だ。

 

 しかも今回僕が入学することになっていた聖内学園は、その中でも最低Cランク以上のうえ、超難関の試験に合格しなければいけない超エリート校だ。

 一応、超能力に関わらず何かしらの実績や推薦があれば入れるらしい

が……

これは余談だが、日本には他国と比べて多くのSランク能力者が存在しており、それらは全員聖内学園に所属している。

 

 意味がわからない。僕は検査の結果、無能力者ということが判明している。

 今まで能力が使えるようになりそうな予兆も感じたことがないし、そんな話も聞いたことがない。

 しかも、もう今は6月で本来入学する時期は過ぎている。特例として僕はそこに編入することになっているみたいだ。

 

そんな時、ふと僕の目にある一文が止まる。

 

『聖内学園 学園長による推薦』

 

「??????」

 

 ますます意味がわからなくなってきた。

 なぜか僕は学園長から推薦されて入学することになっているらしい。

 いやそんな知り合いは僕にはいない、というか友達もろくにいないのだが。

 そうすると、僕は知りもしない誰かから推薦されているということになる。

 最初は間違いなく人違いだと思ったけれど、その書類には僕のありとあらゆる本当の個人情報が載っていた。

 

「そんな間違いするかな?」

 

というかそんなことを希望したことも、了承した覚えもない。

 

「とにかく、これは間違いか何かによるものであることは確実だろうから、断らないといけないんだけど…」

 

というか、これ断れるのか? どこに電話すれば良いのかわからないし、いつの間にかほとんどの手続きが完了しているんだが……

 

「とりあえず、3日後に学園に行かなければいけないらしいし、その時に聞いてみるしかないか」

 

$ $ $ $ $

 

 気分転換にと散歩をすることになって、外に出てきてみたが……

 最近、妙に視線を感じるようになったのだ。

 

 別にどっかの漫画の人みたいに気配だの、殺気だのを感じ取れるわけではないのだが、どうにも見られているような気がする。

 

 周りを見渡してもとかに誰かが僕を見ているようなわけでもない。

 

「自意識過剰なのかなぁ」

 

 そしてーー

 

 チッ!

 

 なぜかこんな物音がよくするようになった。

 そしてやはり、周りを見渡しても何もいない。

 

「能力者育成学校のこともあるし、憂鬱だなぁ」

 



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僕は無能力者です (裏)

思っていたより多くの人に見てもらえて嬉しいです


side〜学園長〜

 

「学園長!これはいったいどういうことですか!」

 

目の前で一人の教員が叫んでいる

まったく、騒がしい…

 

「どうもこうも…見ての通りですよ」

 

「無能力者を我が校に入れるなど正気ですか!」

 

「これはもう決まったことです、貴方がなにを言おうと関係はありません、下がりなさい」

 

「くっ…失礼しました」

 

そう言い残して、彼女は学園長室から出ていく。

 

「全く、能力は優秀なんだけどねぇ」

 

彼女は無能力者や低ランクの能力者に対して差別的な考えを持っている節がある。

まぁ気持ちはわからなくはない、低ランク能力者どころか無能力者の異例の編入なのだから、不満が出るのは仕方ない。

 

ふと、手元にある資料に目を向ける。

 

「斎藤 武 無能力者ねぇ」

 

そこには、ついさっき話していた人物についての情報が載っていた。

彼は、確実に自分の能力を隠している。どうやって検査を逃れたのかは不明だが、つい最近でもその力の片鱗を見せている。

 

ほとんどの人に気づかれないようにひったくり犯を取り押さえたり、精鋭の暗殺者からの攻撃をいとも簡単に避ける…

 

少なくともBランク以上であることは確実だろう。

力を隠しているとはいえ、バレるリスクを負いながらその力を人を助ける為に使っていることから、悪人ではないだろう。

 

「母の件で恩もあるし…」

 

彼が倒したひったくり犯の被害者は私の母だったのだ。

 

いくら衰えたとはいえ、彼が脚を使って転ばせたことに気付き、お礼を言ったのだが、彼はまるで本当になにもしていないかのように振る舞い、そのまま去っていったのだという。

 

そこから監視を始めたのだが、彼はほとんど能力を使う気配を見せなかった。

だが、彼が暗殺者になぜか狙われているということが分かった。彼は素知らぬ顔で避けているらしいが、保護はしなければならないだろう。

そんなこともあって、私が彼を聖内学園に入れたのだ。

 

彼の何らかの事情と能力を持っている証拠がないことから無能力者ということで処理したが…

やはり不満などは出てしまうだろう、彼が面倒ごとに巻き込まれなければ良いのだが。

 

side〜暗殺者〜

 

あの、レッドアイが暗殺に失敗したらしい。

そんな噂を聞きつけ、そのことについて調べてみたところ、レッドアイが狙っていたのは無能力者のただのガキだということが分かった。

 

「レッドアイも堕ちたもんだな」

 

そんなことを言いながら、ターゲットに狙いを定める

あのレッドアイがやり逃した獲物を殺せば、俺にも箔が付くってもんだ。

 

「だが、あいつは何があったにせよレッドアイが流した獲物だ、油断は出来ねぇな」

 

そう言った後、俺は全神経を集中させる。

 

ドンッ!

 

弾が発射されあいつに当たるーー

 

と思った瞬間あいつは首を傾げ、いとも簡単に弾を避けた。

 

そんなはずはない。

そう思って何度も何度もあいつに向けて撃ったが、しゃがんだり、急に走り出したりと何回やっても当たらない。

そのうちあいつは家にたどり着き、入っていった。

 

「そういうことかよっ…!」

 

俺はそのままあいつをやることを諦めた。

俺と同じような奴らがこぞってあいつを殺ろうとしたらしいが、誰一人として成功せず、諦めたという。

 

そんなあいつのことはまたたくまに暗殺業界に広まり、噂に尾ひれがついたりとしたせいで、あいつの存在はタブーとなり、斎藤武お断りなんていうところも増えたらなんてこともして、暗殺業界の中で伝説となっていくのだが、それはまだ少し先のお話。

 

 

 

 

 



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聖内学園への入学 (表)

主人公が高校生じゃないと色々めんどくさいことに気づいた


 目の前には僕の何倍もある、高級そうな門が立っている。

 今日僕は、学園長に呼ばれて聖内学園に来ている。

 この学校の説明や、案内、入学手続き等をするらしいが…

 どうすればいいんだろうか。門は閉まっているけど、ここ以外から入れそうな所もないし……

 

 そんなことを僕が考えていると、こちらに向けて誰かが歩いてきた。

 長い白髪に、整った顔立ち。見ていると引き込まれそうになる雰囲気を纏っており、一瞬見惚れてしまった。

 

「斎藤武様ですか?」

 

「 は、はいそうです」

 

「フフッ、そんな畏まらなくても大丈夫ですよ」

 

「分かりました」

 

「では、案内するのでついてきてください」

 

 そう言いながら、彼女はいつの間にか空いていた門を通り、学校の中に入っていく。そこに僕もついていき門を通る。

 

 やはり、中は広く校舎以外にも様々な施設が散在している。

 こんなところに僕は通うかもしれないのか…

 そのまま校舎の中に入り「学園長室」という看板が下げられた部屋の前まで連れて来られた。

 

「では、私はこれで」

 

「あ、はい。ありがとうございました」

 

彼女に別れを告げる。この中に入れば良いのかな?

 

コン コン

 

「失礼します」

 

ノックをして中に入ると、学園長と思わしき人が椅子に座っていた。

 

「よく来てくれたわね、斎藤くん…で良いかな?」

 

「あ、はい、そうです」

 

「まぁ、時間もないことだし、さっさと本題に入っちゃうわね、編入の件についてはーー」

 

「そのことについてなんですが、僕無能力者ですよ? 他にも大した特技はありませんし、何かの間違いだと思います」

 

「そのことについてはこちらも了解してるわ、ここの学校に在籍する以外は貴方は普通の高校生と同じ生活をしてもらっても構わないわ」

 

「そ、そうなんですか?」

 本当に間違いじゃなかったのか? ならなんのために?

 

「えぇ、もう話は通っているから、異能力が必要な授業や戦闘訓練に関しては免除してもらうし、寮の用意も完了してるわ」

 

「至れり尽くせりじゃないですか…」

 

 それなら、事情はわからないけれど無理して断る必要はないのでは?

 寮に住めば、交通費の問題もないし、この高校を卒業したという実績だけが手に入るし……

 

「分かりました、問題ないです」

 

「じゃあ、この学校のことについて説明させてもらうわね、この学校は生徒が科ごとに分けられているんだけど、約7割が戦闘科に属しているの」

 

「多すぎません?」

いくつ科があるのかは知らないが、7割は多すぎやしないだろうか

 

「誤差はあるけど、どこも大体こんなものよーー

で、貴方には戦闘科に入ってもらうわ、これはやむを得ない事情があってね、しょうがないのよ」

 

「変えられないんだったら仕方ないですか…」

思うところはあるが、そこまで関係はないだろう

 

「クラスに関しては、後々決まるんだけど、貴方は寮で暮らしてもらって、そのクラスで受けられる授業を受けて貰えばあとはどこで何をしてもらっても構わないわ」

 

「分かりました」

 

「じゃあ説明はそのぐらいかしら…、あっ、大事なことを忘れていたわ、この学校にはレート制というものが存在するの」

 

「レート制、ですか?」

 なんだそれは、名前から察するによさそうなものではなさそうだな。

 

「決闘という生徒同士の戦いを申し込めて、その結果に応じてポイントが変動し、月ごとにランキングが出るとだけ覚えておけば良いわ、決闘は断れるし、配布された端末で全部拒否を押せば良いだけよ」

 

「まぁ、そんなものに興味はないですし、あまり関係なさそうですね」

というかやったら負ける自信しかない、徒競走万年5位の身体能力を舐めるな

 

「じゃあもう今日は帰って良いわよ」

 

「もうですか?」

 

「今日は実際に貴方を見てみたかっただけだしね」

 

 そう言われたのでそのまま帰路についた。

 両親がいない僕を引き取ってくれた叔父さんに話を通すとあっさり了承してくれたし、取り敢えずどうにかなったのかな?

 

 




評価、感想よろしく(`・ω・́)ゝ


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聖内学園への入学 (裏)

感想、評価宜しくお願いします(/・ω・)/


side~学園長~

 

静寂に包まれた部屋に一人の女性がたたずんでいる。

そして部屋にノックの音が響き、ドアが開く。

 

「失礼します」

 

一見すると何の変哲もない一人の少年が部屋に入ってくる。

 

「よく来てくれたわね、斎藤君…でいいかな?」

 

「あ、はい、そうです」

 

一見するとただの一般人に見えてしまうが、十中八九この態度は演技だろう。

この十何年の間自分の力を隠し通してきたのだからこの程度のこと朝飯前だろう。

 

「まあ、時間もないことだし、さっさと本題に入っちゃうわね、編入の件についてはーーー」

 

「そのことについてなんですが、僕無能力者ですよ?他にも大した特技はありませんし、何かの間違いだと思います」

 

(こうやって力を隠そうとしてくるのは、想定済みだし、こちらとしても構わないわね)

 

 

「そのことについてはこちらも了解してるわ、ここの学校に在籍する以外は貴方は普通の高校生と同じ生活をしてもらっても構わないわ」

 

とりあえずその旨を伝えておく。

 

 

「そ、そうなんですか?」

 

「えぇ、もう話は通っているから、異能力が必要な授業や戦闘訓練に関しては免除してもらうし、寮の用意も完了してるわ」

 

「至れり尽くせりじゃないですか…」

 

これならおそらく断ったりはしないと思うけど…

 

「分かりました、問題ないです」

 

よし、とりあえず大丈夫なようね。

 

その後はこの学校の説明をした後すぐ帰ってもらった。

 

「とりあえず、これで心配事が一つ減ったわね」

 

まぁ、無能力者の入学となったらどちらにせよ一波乱あるんでしょうけど…

 

side〜???〜

 

暗い部屋で二人の男が話し合っている。

片方は大きく、ガッチリとした体つきをしているがもう片方はひょろひょろで背も低く今にも倒れそうだ。

 

「斎藤武ねぇ…、どうせ噂だけだろ」

 

「そ、そうだよ。ど、どうせ偶然が重なったからで…、本人は大したことないよ。ヒヒッ」

 

「まぁ、俺たちはどんな相手だろうと念入りに準備を重ねる、油断は禁物だ」

 

「う、うん。そうだね、ヒヒヒッ」

 

「ハハハッ」

 

部屋中に二人の笑い声が響く。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

一方その頃、武は引っ越しを終えて聖内学園の寮でくつろいでいた。

 

「ヘクチっ、…風邪かな?」

 

「寮って言っても想像より豪華だったなぁ、さすが名門」

 

寮となると一部屋に何人がいるのを想像するがそんなことは特になく。

普通のアパートぐらいの部屋に一人で住むらしい。

 

「ついに明日から学校か〜、馴染めるかな?」

 

この学校は調べたところ、実力主義なところがあり、バリバリ戦闘をするらしく、重傷者や死者が出ることもあるとかないとか。

 

「まぁ流石に嘘だよね、嘘だよね?」

 

(まぁ俺は無能力者だし、戦闘訓練とやらもレート制やらも関係ないだろう)

 

そんな武の想いはすぐに裏切られることになる。

 

 

 

 




そろそろ本格的に勘違いを始めるかな〜


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レート戦なんて僕には関係ないよね (表)

評価、感想よろしくお願いします(。・ω・。)


今僕は廊下でただ一人佇んでいる。

 

(緊張するなぁ…)

 

これから先生に呼ばれたら教室の中に入り、自己紹介をする。

だが僕にとってはめちゃくちゃ難易度が高い行動である。

しかも僕はただ一人の無能力者だし…

 

(あぁ、胃が痛い)

 

「では斎藤武くん、入ってきてくれ」

 

(来た!)

 

「は、はい!」

 

ドアを開け、中に入り黒板の真ん中まで進む。

うぅ、視線が痛い。

 

「では自己紹介をしてくれるかな」

 

「えっと、斎藤武、16歳です。訳あって無能力者ですがこの学校に転校してきました、趣味はゲームと釣りです。これから1年間よろしくお願いします」

 

(…………)

 

無反応とか辛い!

 

「で、では君の席は窓側のあそこだ」

 

「わ、分かりました」

 

そう言われて大人しく席に着く、するとーーー

 

「武っていうのか、俺は隣の席の山田 春人って言うんだ、よろしくな!」

 

隣の席の人が話しかけてくれた、良かった…入学早々ぼっちかと思ったよ。

そしてめちゃくちゃ明るい、眩しい…

 

「うん、改めていうと僕は斎藤武って言うんだ、よろしくね春人くん」

 

「おう、よろしくな!」

 

そう言ったところでチャイムがなり、先生が入ってきて授業が始まった。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

特に授業の内容については高度でスピードも速かったが、もともと成績が良かったこともあり、ついて行くことはできた。

だがそれよりも問題なのはーーー

 

休み時間になっても誰一人して話しかけてこないということだ。

その代わり、好奇心からだったり、懐疑からくる視線はなんとなく感じる。

 

(やっぱり転校生でしかも無能力者だからだよなぁ)

 

特に何が起こるわけでもなく、授業は終わり放課後となった。

 

「どうだ?授業はついていけたか?」

 

「うん、とりあえず大丈夫そうだよ」

 

「そうか、何か困ったことがあったらすぐ言ってくれよな」

 

優しい…

 

「うん、ありがとう」

 

そんなことを話しているとーー

 

「おい、お前。俺と勝負しろ!」

 

いきなり決闘、通称レート戦を挑まれた。

配布された端末に 『承認/拒否』 と表示されるーー

 

もちろん速攻で拒否した、勝負になるわけない。

 

「なっ、お前逃げるのか!」

 

「嫌だよ、勝負にすらならない」

 

無能力者になんで挑んでくるんだよ…

 

「はぁ、舐めてんじゃねえぞ!」

 

なんでキレるんだそこで。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

その後もいろんな奴らに勝負を挑まれたが全部拒否した、皆血気盛んすぎるだろう…

 

「貴方、私と勝負しなさい!」

 

はいはい、わかったわかった。

端末に表示された、『拒否』を押す。

 

『決闘が承認されました』

 

うん?、えっ、ちょっと待て僕は拒否を押したはず、、、

見ると何故かさっきまで『承認/拒否』だったのが、『拒否/承認』になっていた。

 

(……………………)

 

ミスったあああああぁぁぁぁ!!!!!!

なんでいきなり逆になるんだ!陰湿すぎないか!?くそっ、やばい!

 

「あら、なかなか度胸があるじゃない、この私との決闘を受けるなんて」

 

ざわざわ… ざわざわ…

 

「あいつ、あの「不可視の弾丸」との決闘を受けるなんて」

 

「雑魚に興味はねえってことか」

 

なんかやばそうな相手なんですが!?勝てるわけがないよぉ!

 

「よし、いくわよ」

 

もう何も考えないようにしよう。

 

 

 

その子に連れられてきたのは決闘場、特に障害物になるようなものもなく、ただの広い部屋。

本来色々な舞台があるみたいだが今日はここしか空いてなかったみたいだ、まぁ僕にはどこだろうと関係ないけど…

幸い最新鋭の技術で致命傷の傷を受けても気絶して外に放り出されるだけみたいて、怪我の類も決闘が終わった瞬間に治るみたいだし…

 

制服を脱ぎ、決闘専用の服に着替える。

 

「さあ、始めましょうか。ハンデとしてそこに用意されてる武器は使って良いわよ」

 

横を見るとありとあらゆる種類の武器が揃っていた

まぁどうやって使うのかすらわからない武器ばっかだし、持ってもどうせ負けるだろう

 

「良いよ、武器なんて使うまでもない」

 

「っ!、良いわ叩きのめしてあげる」

 

そしてカウントダウンが始まる 3・2・1 スタート!

 

(あぁ、もうヤケクソだ)

 

離れた相手に向かって全速力で走る、せめて一発ぐらい…

とその瞬間ーーー

 

「ヘッ?」

 

思いっきり転んだ、前に倒れている中、あぁ終わったななんて思っていたら、勢いがついたせいでそのまま前に一回転し、体育の時どんなに頑張っても成功しなかった前宙が成功した。

 

そして二本足で着地する。

 

(痛ったぁ!)

 

前宙する時何かが足のかかとに当たったみたいで、その衝撃でめちゃくちゃ足が痛い、まるで骨折したような痛みだ。

 

って、今決闘の最中だった!相手は…?

 

『勝者 斎藤武』

 

アナウンスが鳴り響く、見ると相手が気絶して外で倒れている。

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 



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レート戦なんて僕には関係ないよね (裏)

気づいたらルーキー日間のランキングに乗っててうれしいですΣ(・ω・ノ)ノ!


side~如月 灯~

 

今噂となっている転校生、斎藤 武。

聖内学園初の異例の無能力者の入学、明らかに何かしら裏があるだろう。

今ある噂だけでも、親のコネだとか本当は高ランク能力者であるだとか無能力者だが実は多大な力を持っているだとか、どれも眉唾物だ。

 

(私が化けの皮を剝いでやるんだから…)

 

何となく自分が必死に努力して入ってきて、誇りを持っている学園に何の変哲もなさそうな無能力者が入ってきたことが気に食わなかったのだ。

 

そうしているとと今噂の転校生が見えてきた。

 

(あれが斎藤武…)

 

どう見ても彼はどこにでもいる学生にしか見えず、噂のような人物には見えなかった。

やはりコネか何かしらで入ってきたのかと思うと、いつの間にか口が出ていた。

 

「貴方、私と勝負しなさい!」

 

そして端末で相手に勝負を申し込む、するとすぐに承認された。

 

「あらなかなか度胸があるじゃない、この私との決闘を受けるなんて」

 

不可視の弾丸と呼ばれている私との勝負を迷いなく受けるなんて、それともただ私のことすら知らない愚か者なのかしら?

 

 

 

 

そして今ちょうど空いていた決闘場に移動する。

そして勝負が始まるーーー

前に無能力者とのバトルなのだからハンデぐらいはくれてやるべきだろう。

 

「さあ、始めましょうか、ハンデとしてそこに用意されてる武器は使っても良いわよ」

 

無能力者なのだし、素直に受け取るとも思っていたーーー

が、相手はそれを取るそぶりも見せず

 

「いいよ、武器なんて使うまでもない」

 

あろうことかハンデを受け取らず、自分に勝つことを宣言までしてきたのだ。

少し頭に来た灯は改めて相手を完膚なきまでに叩きのめすことを決める。

 

「っ!、良いわ叩きのめしてあげる」

 

カウントダウンが始まる 3・2・1 スタート!

 

灯の能力は不可視の弾丸という名前そのままで見えない弾丸を手のひらから発射することができるというものだ、本物の弾丸と比べればいささか殺傷能力は劣るがそれでも一撃で成人男性を鎮めるのには十分な威力を持っていた。

 

開始直後相手は全速力でこちらに走ってくる、間合いを取られると不利な能力なことから戦法としては必ず間違っているわけではないが、隙だらけであり相手の速度も遅く、当ててくださいと言っているようなものである。

 

(はあ、やはりただの無能力者でしたか…)

 

相手の身体能力や無策さを見て、相手がやはりコネか何かで入ってきたのだろうと確信し、落胆する。

しかし勝負は勝負だ。気を引き締めなおし相手の顔面に向かって一発弾丸を発射する。

 

ここで油断せずにもう一発撃っておけば結果変わっていたかもしれない

しかし相手の様子を見て「ただの無能力者」というレッテルを貼ってしまった今、それは不可能なことだったのだろう

 

灯が銃弾を打つ瞬間相手は走りながら急に前宙をした

 

(なっっ!)

 

見えないはずの弾丸を前宙の勢いで踵で蹴り返し、あろうことかその弾丸は自分の頭に向けて一直線で飛んできた。

 

聖内学園の生徒なら避けられないほどのスピードではない、だか不意をつかれた上に、見えない弾丸であり蹴り返されたと気づくまでにも時間がかかった今、それを避けることはできなかった。

 

「がっ!」

 

一撃で意識を落とされ外に放り出される。

 

『勝者 斎藤武』

 

勝者を伝えるアナウンスが鳴り響く。

 

 

$ $ $ $ $

 

この勝負の行方は瞬く間に広まり、さらに噂に尾ひれがつくことになる。

それが武に牙を剥くことになっていく。

 

 

 

 



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素人の銃捌き (表)

評価、感想よろしくお願いします(´∀`)
なんとなく2話投稿


何度も言うようだが僕、斎藤武は無能力者だ。

 

しかし今何故かその事実が疑われている、というかもはや意味のわからない憶測まで飛び交っている。

 

原因は御察しの通り、先の一戦だ。

偶然に偶然が重なり、体調でも悪かったのか倒れてしまった相手を僕が倒したことになっているのだ。

よりにもよってその相手がBランクの能力者で、かなり強い部類の人だったので、その人を僕が完封?してしまい、憶測が飛び交っているのだ。

 

曰く、無能力者ではなくAランク以上の能力の持ち主。

曰く、無能力者だが人並外れた反射神経と身体能力を持っている。

曰く、能力を隠しており能力を使わずにBランク能力者を倒した。

 

何一つとして正しくない事実がまるで真実であるかのように語られている。

 

(どうすりゃいいんだ…)

 

一回弁明をしてみたが実力を隠してる説が有力になっただけで意味がなかった。

 

そんなことを考えているとーー

 

「よ!何悩んでんだ?」

 

隣の席の春人くんが話しかけてくれた。

 

「いやちょっと、僕の噂についてね」

 

「おぉ!そういえばお前すごいやつだったんだな、あの「不可視の弾丸」を倒すなんて」

 

「いやそれは…、いやなんでもない」

 

下手に弁明しても逆効果だろう、ここは何も言わないでおこう。

 

「そういや今日の5限は射撃練習だけどお前は出るのか?一応能力を使わないんなら任意で出られるって聞いたんだけど」

 

「いや僕はいいかな……、待てよ?」

 

「どうした?」

 

(口で言ってもこの勘違いは鎮まらないだろう、なら本当の初心者の射撃をみんなに見せ続ければ……)

 

「あいつ、本当に初心者みたいじゃないか?」

 

「あんなずっと初心者の演技なんてできるかな?」

 

「あいつ本当は…」

 

みたいな感じになるんじゃないか?)

 

少しずつ勘違いを解いていくことは可能だろう、そうと決まれば早速!

 

「僕、やっぱり射撃練習出るよ、先生に言ってくる」

 

「お!そうか、一緒に頑張ろうぜ」

 

 

 

$ $ $ $ $

 

 

先生にはあっさりokをもらえたから、授業に参加することができた。

射撃場にきているのだが、とても広く、めちゃくちゃ色々な銃が置いてある。

 

「じゃあ、練習始め!」

 

先生の合図とともにみんなが一斉に銃を持って練習を始める。

どうやら射撃練習は個人練のようだ。

さて僕はどうするか……

 

ふと見ると小さく、反動がなさそうな銃が置いてある。

素人目じゃどんな銃かわからないけどここにあるのは、殺傷能力はなくした銃らしいし、弾もゴム弾だ。

玉はこれかな?セットしてと……

 

「よし、撃つか」

 

 

「お、あの噂の転校生が撃つらしいぞ」

 

「銃も使えるのか、と言うかあの銃…」

 

 

よしうまいこと注目も集まっているし、ここで素人の銃捌きを見せつければ…!

 

(僕自身初心者なんだから、的当て感覚で普通に打てばいいはず)

 

とりあえず何発か連射すれば十分素人だと言うことは伝わるだろう。

かなり距離が離れた人型の的に向けて狙いを定める。

引き金を持つ手に力を込め、何発か連射する。

 

バン! バン! バン! バン!

 

(うお!思ったより反動あるし音もでかいな)

 

と一応人型の的を狙って撃ったんだが外れてるだろうな。

的の方を見ていたがそもそもゴム弾で見てなかったからどこに当たったのか外れたのかわからないし、ゴム弾が遠くで散らばっていることぐらいしかわからない。

 

「まぁ、全然ダメだな」

 

おそらく一発も当たっていなかっただろう。

そういえば、さっきまで見ていた人達はどうなったかな?

少しでも勘違いが解ければいいんだけど……

ちらっと、その人達の方を見てみると、

 

 

「あいつ、やべえな、あの銃であんな芸当をするなんて…」

 

「銃の扱いもやべえのかよ、Aランクの能力者にも勝てるんじゃねえのか?」

 

ざわざわ… ざわざわ…

 

 

 

(………………………え?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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素人の銃捌き (裏)

評価、感想よろしくお願いします(*´꒳`*)


side〜山田 春人〜

 

今日は5限の射撃練習をしに射撃場まで来ている。

戦闘科ならある程度銃は扱えるようになっておかなければならないため必修科目だ。

 

今回は隣の席兼噂の転校生の武も参加するらしい。

どうやらあの1戦じゃ銃は使わずに倒したらしいが銃も使えるのか?

 

正直俺自身は噂の大半に対して半信半疑だ、武と関わってみてもどうもそんな噂のような実力を持っているようには見えないのだ。

 

まぁ、Bランク能力者を完封したのは事実らしいが…

 

そんなことを考えながら練習しているとどうやら武が武器を選んでいるのが見えた。

 

(何を選ぶんだろうか…?)

 

そのうち武がある一つの武器に手を伸ばし、そのままそれを持って練習場の方へと歩いていく。

 

(え、まさかあれって…!)

 

あれは一見殺傷能力もゼロ、弾丸もゴム弾で反動も少なさそうな銃で、初心者にも使いやすそうに見えるーーー

 

だが、あれの真実は無駄に反動も大きく、発射速度も遅く、真っ直ぐに飛んでいかず、狙いを定めるのが難しいため扱いづらい。

 

少し銃の持ち方を変えると全く違った方向にとんで行くので、今までろくに当てられた人がいないためあの銃は一種のタブーとなっているのだ。

 

(あんな銃で何するつもりだ…?ただ単に興味本位で取っただけか?)

 

そんなことを考えているといつの間にか武は引き金に指をかけ、発射準備が整っていた。

周りを見ると10人程の生徒が様子を見守っている。

 

引き金が引かれ、四発の銃弾が発射される。

 

バン! バン! バン! バン!

 

発射された四発の銃弾はーーー

 

頭、心臓、右足、左足を寸分の狂いもなく打ち抜いた。

 

(なっ!)

 

あの銃であんな芸当を…

 

 

「あいつ、やべえな、あの銃であんな芸当をするなんて…」

 

「銃の扱いもやべえのかよ、Aランクの能力者にも勝てるんじゃねえのか?」

 

周りの奴らもざわついている、が…

 

(あいつらは気づいていない…)

 

あいつが一発目の弾丸を放った瞬間目を瞑っていたことを。

角度の問題で武の後ろの方にいたあいつらは見えなかったんだろうが…

初めは反動と射撃音に驚いて目を瞑っちまっただけかと思っていたが、どうやら違ったみたいだ。

 

(とすると噂も本当なんだろうな)

 

あれだけ銃に精通しているってことはただものではないだろう。

 

「俺も負けていられないな」

 

 

 

この時、唯一勘違いが解けそうだった一人がむしろより深い勘違いをしてしまったことを武は知るよしもない。

 

 

$ $ $ $ $

 

side〜???〜

 

「ここが聖内学園か…」

 

「斎藤武もここにいるみたいだよ、で、でも他の生徒達が面倒だね、あらかじめやっておく?ヒヒッ」

 

「学生のひよっこ達なんて相手にならんだろう、放っておけばいい」

 

武に迫る影が二つ…

 

 

 

 



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凶悪犯罪者が現れた! (表)

今日も2話投稿


今僕は二人の能力者と対峙している

 

ん?またレート戦にでもなったのかって?違うな、どちらかいえばその方がマシだったかな…

 

「へん、余裕そうじゃねえか、さすがは噂の無能力様だなぁ」

 

「ふん、い、今のはまぐれさ、次で終わらせるよ」

 

今僕は訳のわからない二人組に襲われているーーー

 

 

 

きっかけは僕が学校の敷地内を散歩している時だった

天気は快晴という言葉がふさわしい雲ひとつない晴天だ

 

「はぁ、また勘違いが深まっちゃったなあ」

 

こんなんじゃいつか面倒なことになるよなぁ

なんてことを思っていると、僕の頭のすぐ横をビームが通り過ぎていった

 

(はい?)

 

すぐさま背後を振り向くと

 

「ちっ、外したか」

 

二人組の男が立っていたというわけだ

 

 

とりあえず現状を整理しよう、おそらく二人は不法侵入者で僕のことを狙っている

一人は何故か柱の上に立っているが…なんでそんなとこに立ってるんだ?

で、ここまでのことをしてまだ誰も来たりしていないことから能力が働いていると考えられる

そして、さっきのビーム、聖内学園に侵入してくることからそれなりに実力があることがわかる

 

(あれ、やばくね?詰んでないかこれ?)

 

助けが来ないということは僕一人でこの状況をなんとかしないといけないということだ

その上僕は武器らしい武器も持っていない

 

とにかくなんか話して時間を稼がないと…

 

「へぇ、僕を狙いに来たのかい?」

 

「そうさ、あんたの首には多大な賞金がかかっている、正直言ってこんな一人のガキにかけるとか正気の沙汰とは思えないが…あんたにも心当たりぐらいあるだろう?」

 

「ふ、ないわけじゃないがな」

 

ねぇよ!いつの間に僕は賞金首になったんだ?誰だよそんなことしたの?

 

「まぁ、おしゃべりはここまでだ、俺はあんたを殺して名を上げさせてもらう」

 

(やばいやばいやばいやばい!)

 

逃げよう!早く…、って体が動かない!

あのヒヒヒヒ笑ってる奴の能力か!?なんて小癪な…

 

太陽を雲が隠し、あたりが影に包まれる

 

とにかく!とにかく時間を稼ごう!

どうやら僕の秘技を見せるしかないようだな…

 

「お前、気づいてないのか…愚かな奴め」

 

「なんだと…?」

 

秘技1 意味深な発言!

 

それっぽい発言をして深読みをさせる!

頼む!バレるな!深読みしろ!

 

「ど、どうせでまかせだよ!こんな奴!」

 

バレたぁぁぁぁ!普通にバレた!黙っとけこのチビ!

 

「少しは骨がありそうだと期待してたんだがな、所詮は噂か」

 

やばいやばいやばいやばい!

 

雲が空一面を覆い雨粒がポタポタと降り始める

 

「言っておくが助けは来ないぞ、こいつの能力の上に雨が降り始めたせいで視界も悪い、救援が来る確率は絶望的だ」

 

ふざけんな!さっきまでめちゃくちゃ晴れてただろ!なんで急に降り始めんだよ!僕天気にまで嫌われてんの?

 

「では、さらばだ」

 

男はビームを溜め始める、いかにも威力のありそうな見た目だ

 

あぁもう!とりあえずなんか言っとけ!

 

「そんなところに立っていて大丈夫か?」

 

「最後の最後まででまかせを…消え去れ!」

 

(あ、終わった…)

その瞬間ーーー

 

 

ビシャアアアン!

 

 

ちょうど二人の頭上に二つの雷が落ちてきた、そしてそれは見事に二人に命中し、

 

「な、なんだ…と…」 バタっ

 

「う、嘘でしょ」 バタっ

 

二人とも倒れてしまった

その後起き上がる気配はない、完全に気絶しているようだ

 

「助かったのか…?」

 

 

$ $ $ $ $

 

その後、二人の不法侵入者は後から来た職員達によって連れて行かれた

どうやらあの二人はBランク能力者とAランク能力者の凶悪犯罪者だったらしい

さらにBランク能力者の方は複合能力者で二つの能力を持っていたらしい

ちなみに複合能力者とは複数の能力を持っている能力者のことを言う

 

その後は学園長や職員から謝罪をされ、今日は一旦寮に帰った

 

「はぁ、運良く生き残れてよかったぁ」

 

まぁ、今回の件で色々お礼をしてくれるらしいし、さっきお詫びとして高級食材貰っちゃったし怪我の功名かな?

 

「ん?なんか大事なことを忘れているような…、気のせいかな?」

 

 

もちろんこの出来事は、武がAランク能力者とBランク能力者の極悪犯罪者を倒したという内容で尾ひれはひれがついて瞬く間に広まることとなるのだが…

 

 

 



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凶悪犯罪者が現れた! (裏)

感想、評価よろしくお願いしますヽ(*^ω^*)ノ


side〜凶悪犯罪者〜

 

「さて、斎藤武はどこだ?」

 

もう一人の能力「隠密」を使って潜入をした聖内学園内で斎藤武を探し始める

隠れながら見つけるのには多少手こずるかと思っていたが、柱の上からあたりを見回してみると、案外早くターゲットを見つけることができた

 

どうやらこちらには気づいてないみたいだ

 

「とりあえず、小手調べだ」

 

そう言ってターゲットに向けてビームを打つ、だが予想外なことに相手はビームを避け、こちらを向く

 

「ちっ、外したか」

 

明らかな犯罪者が目の前に二人もいて、ビームを撃ってきたというのに、相手には焦る様子は微塵も見られない

 

「へん、余裕そうじゃねえか、さすがは噂の無能力様だなぁ」

 

「ふん、い、今のはまぐれさ、次で終わらせるよ」

 

まぁいい、俺たちの計画はここからだ

 

まず、もう一人の別の能力、「固定」を使い、相手の能力を止める

そしてすぐさま結界を起動させる

 

この結界は最近闇ルートに流れ始めた高額な代物で、これ一つを張るだけで、人払いもでき、監視カメラにも映らなくなる

 

「隠密」の強化版とも言えるだろう

 

「へぇ、僕を狙いに来たのかい?」

 

「そうさ、あんたの首には多大な賞金がかかっている、正直言ってこんな一人のガキにかけるとか正気の沙汰とは思えないが…あんたにも心当たりぐらいあるだろう?」

 

「ふ、ないわけじゃないがな」

 

相手は依然として余裕な態度を崩さない

 

「まぁ、おしゃべりはここまでだ、俺はあんたを殺して名を上げさせてもらう」

 

さっさと終わらせることにしよう

 

「お前、気づいてないのか…愚かな奴め」

 

「なんだと…?」

 

相手が不穏な発言をする、ブラフか?

 

「ど、どうせでまかせだよ!こんな奴!」

 

まぁ、ブラフだろう。こいつのいう通りだ

 

「少しは骨がありそうだと期待してたんだがな、所詮は噂か」

 

ポツポツと雨が降り始めた

これは…好都合だな

 

「言っておくが助けは来ないぞ、こいつの能力の上に雨が降り始めたせいで視界も悪い、救援が来る確率は絶望的だ」

 

「では、さらばだ」

 

そう言ってビームを溜め始める

 

「そんなところに立っていて大丈夫か?」

 

懲りずに相手はブラフを言ってくる

だがその瞬間嫌な汗が背中をつたる

 

「最後の最後まででまかせを…消え去れ!」

 

勝ったーーーその瞬間、

 

ビシャアアアン!

 

急に雷が落ちてきて、俺たち二人に命中した

 

「な、なんだ…と…」 バタっ

 

「う、嘘でしょ」 バタっ

 

いくら能力者といっても雷が直撃して耐えられるわけではない

 

(くそっ、これを狙っていたのか)

 

柱の上に乗っていた俺にならまだしも、普通に地上にいるあいつにも当たるなんて偶然はないだろう、おそらく…

 

そこで、俺たちの意識は闇に落ちた

 

 

side〜学園長〜

 

あの騒動の翌日、私は監視カメラの映像を見ていた

当時は、犯罪者達の闇市場の道具により映らなかったみたいだが、それが壊れて、効果がなくなっていたせいか、録画されていた映像には映っていた

 

見てみると相手に能力を使われ動けない状況の武くんが能力を使って相手に雷を直撃させていた

 

「武くんの能力は気象を操る能力?でもそれじゃ…」

 

それだけじゃ説明つかないことが多々ある

この力はただの副産物なのか、武くんが持っている能力のうちの一つなのか…

 

これは想定のレベルを引き上げたほうが良さそうね

少なくともAランク、おそらくSランクだと考えられるわね

 

「これからさらにこういう事件は増えるだろうから、警備を強化しないと…」

 

まぁ、あの子なら大抵のことは大丈夫だとは思うけど

 

 



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生徒会長との邂逅 (表)

今見たらルーキー日間1位でした!ありがとうございます\( 'ω')/


「はぁ、最近物騒なことに巻き込まれてばっかりだなぁ」

 

前の犯罪者騒動では本当に危なかった、普通だったら死んでいただろう

前から物騒なことには巻き込まれやすかったけどここまでの事態じゃなかったからなぁ

 

僕も青春したいよ、出来れば美少女と

 

ふと視線を上げると、ベンチに絶世の美女といえるくらいの美しさを持った女性が座っていた

 

よくみると、顔も雰囲気も髪も入学する前に学園長のところまで来た時にあった少女と似ている

まぁ、ところどころ違う所はあるが

 

その少女が僕を一瞥した後立ち上がり、僕の方に歩いてきた

 

(ん?なんだ?)

 

「急に失礼します、斎藤武さんですか?」

 

「あぁ、はい、そうですけど、僕に何か用ですか?」

 

「私、この学校で生徒会長を務めている 藤桜 鈴と申します、斎藤さんの噂は私の耳にも届いていたので、話しかけさせていただいたんですが…、迷惑でしたか?」

 

「生徒会長⁉︎あ、いえ迷惑なんてとんでもないです!」

 

「そうですか、それなら良かったです」

 

この学校の生徒会長って確かSランク能力者だよな?

確かSランクと呼べるほどの能力は持っていないらしいけど、なんと生徒会長は複合能力者で9つの能力を持っているとか

 

2つでさえめちゃくちゃ珍しいのに9つってなんだよとか思ってたけど

こんな所で会うなんて…

 

というか最近感覚が麻痺してきたけどCランクですらそう簡単には会えすらしないレベルで珍しいのだ、周りにうじゃうじゃいるせいで麻痺してたけど…

 

Sランクなんて絶対に怒らせないようにしないと

 

「それと、この前は大変だったみたいですね、生徒会長としても謝罪させてもらいます」

 

「い、い、いえ!全然大丈夫です!」

 

Sランク能力者兼生徒会長に頭を下げさせるのは色々とやばい!

 

「それなら、これから改めてよろしくお願いします」

 

といって彼女は手を差し出してきたので、僕は美少女の手を触ることに死ぬほど緊張しながら、彼女の手を握った

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「つっ!」

 

「ど、どうしましたか?」

 

やっぱり気持ち悪かったのだろうか…傷つく…

 

「いえ、なんでもないです、それじゃあ生徒会の仕事があるので、私は行きますね」

 

「あ、はい、わかりました」

 

「では」

 

そう言って彼女は去っていった

 

「なんか焦ってたけど、どうしたんだろう?」

 

 

$ $ $ $ $

 

 

その後寮に帰った後に、生徒会長について詳しく調べてみたが…

出てくるのは輝かしい実績ばかり、完璧超人そのものだった

 

「Sランク能力者、成績優秀、品行方正、身体能力抜群、容姿端麗…欠点が見つからないな」

 

後はよく似たAランク能力者な妹がいて、この学園に所属しているらしい、おそらくあの時会ったのは妹の方だったのだろう

 

「ここまで、完璧だと逆に裏がありそうなもんだけどなぁ…」

 

 

意外にもその予想は当たっていた

 



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生徒会長との邂逅 (裏)

感想、評価よろしくお願いします(´∀`*)


聖内学園の生徒会長 藤桜 鈴は生徒会の仕事がひと段落し、ベンチで一休みしていた

 

(あら、あれは…)

 

すると、偶然噂の転校生の斎藤武を見かけたため話しかけに行った

 

「急に失礼します、斎藤武さんですか?」

 

「あぁ、はい、そうですけど、僕に何か用ですか?」

 

「私、この学校で生徒会長を務めている 藤桜 鈴と申します、斎藤さんの噂は私の耳にも届いていたので、話しかけさせていただいたんですが…、迷惑でしたか?」

 

「生徒会長⁉︎あ、いえ迷惑なんてとんでもないです!」

 

「そうですか、それなら良かったです」

 

「それと、この前は大変だったみたいですね、生徒会長としても謝罪させてもらいます」

 

「い、い、いえ!全然大丈夫です!」

 

「それなら、これから改めてよろしくお願いします」

 

そうして、自然な流れで手を出し、握手を求める

一見それは、友好の証としての握手に見えるだろう

しかし、それは違う

彼女はある目的のため握手をするよう自然に誘導したのだ

 

 

$ $ $ $ $

 

彼女、藤桜 鈴は世にも珍しいSランク能力者で9つの能力を持つ複合能力者ーーーではない

 

彼女は誰にも自分の本当の能力を見せたことがない、見た、もしくは使った相手は全員既にこの世にいないからだ

 

彼女の本当の能力は「能力を奪う」能力だ

 

条件は相手の体に触れること、奪った能力は相手は使えなくなり、自分はその能力を使えるようになる

奪って使うことが出来る能力は10個までだが、奪った能力を捨て、空きを作り、新しい能力を奪うこともできる

 

彼女の恐ろしい所はこれを隠しきっている所だ、ただでさえSランク能力者の力を持ってるのに、完全な初見殺しの能力をバレずに持っている

 

彼女と闘い、体を触れられずに倒すことが出来る人などこの世にほとんど居ないのにも関わらず、知らないとなれば尚更だ

 

武と握手したのは能力を奪い、もし今持っているものより強力だった場合は自分のものとするためだ

 

武という不穏分子を排除することもできるので彼女としても好都合だった

 

 

$ $ $ $ $

 

 

「はい、よろしくお願いします」

 

相手が自分の手を取る、相手の体に自分が触れた瞬間能力を発動させる

だがーーー

 

「つっ!」

 

(能力が使えない…!?)

 

当たり前なことに能力なんて持っていない武には能力は使えない

予想外のことに驚きを隠しきれず、声に出てしまう

 

「ど、どうしましたか?」

 

その声には他の感情は含まれておらず、純粋に自分のことを心配していた

 

「いえ、なんでもないです、それじゃあ生徒会の仕事があるので、私は行きますね」

 

「あ、はい、わかりました」

 

「では」

 

表情を取り繕い、焦りながらもこの場を去る

 

 

誰もいない、静寂が包む生徒会室の中に入り、自分の席に座り込む

 

(どういうこと…?)

 

能力を持っている限りは絶対に防げないバズなのに…

「能力を無効化する」能力でも持っているの?いや、彼には能力自体は聞くことは確認されている

もし、任意で発動するんだとしたら彼は私の能力を知っているか勘づいた事になる

 

(まさか無能力者…?いやそんなことは関係ない)

 

彼女藤桜 鈴は全ての人間のことを見下している

幼少期、名門の生まれではあったが周りには媚びる人間や親の威光で偉そうにしている人間しかいなかった為、天才的な頭脳を持っていた彼女は無意識のうちに人を見下すようになった

 

彼女が誰よりも早く「能力を奪う」能力を持っていることを自覚し、その強力さを知ったことがそれに拍車をかけた

 

誰も自分に敵わない、その事実がよりその考えを強固なものとした

そして、彼女は誰にもそのことを気づかせなかった

 

そんな彼女にとって今回の出来事は自分の価値観を揺るがすのに十分な衝撃を与えた

 

初めての正面から戦っても勝てるかわからない相手、初めて自分と対等以上の相手を見つけたのと同時に、彼女は他人に興味を持った

 

「へぇ彼、面白そうじゃない、フフッ」

 

初めて他人に興味を抱いた彼女が何をするのかーー

 

「フフフッ、アハハハハッ!」

 

辺りに狂ったような笑い声が響く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 




筆者がヤンデレ好きなのでヤンデレになるかもしれません
ヤンデレって需要あるんかな…?


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しょ、初級薬品ですよ?本当です (表)

アンケートの結果とりあえずは出来次第投稿していきます


戦闘科とは名前の通り戦闘について学ぶ科である

約7割の生徒が聖内学園では所属しているがもちろん別の科もある

 

未知の物質を研究したり、既存の薬品よりはるかに優れた薬品を作ったりもする

 

どちらかというとむしろそっちの方が一般人の助けになっていることが多かったりする

 

そんな中の一つの「生産科」文字通り新たなものを「生産」する科のエリアに僕はきている

 

なぜ僕がそんなところに来ているのかというと学園長に

 

「武くんは無能力者ということもあるから装備を念のため作っておいた方がいいんじゃない?」

 

と言われ、費用も出してくれるらしく、腕の良い人物まで紹介してくれるということだ

 

まぁ一応決闘用の服もかなり丈夫なものではあるのだが、ぶっちゃけあれはバンバン戦うぜ!みたいな服なので自分専用の装備は持っといた方がいいだろう

 

生産科の研究所の中を歩いていると結構な視線に晒される

逃げるように移動しながらある部屋の扉の前まで辿り着く

 

「305号室…ここか」

 

ここに、その人がいるらしい、なんでも装備の開発と薬品の開発の腕前がすごいらしい。もうすでに革新的な薬品を何個も作っているとか

 

ノックをする

 

「はーい、どーぞー」

 

返事が返ってきたのでドアを開け中に入る

すると黄色の液体と赤色の液体を混ぜ合わせている最中の、ピンク髪の女の子がいた

そして何故か近くにはカル○スの空き瓶が大量に転がっていて、今もコップに入れて飲んでいる

 

「あー、あなたが武さんですか?」

 

「はい、斎藤武です」

 

「じゃあこっちにきてください、採寸するんでー」

 

「わかりました」

 

そして、あらかた採寸が終わると紙を渡された

 

「そこに、希望を書いてください、それに沿った装備作るんで」

 

「あぁ、なるほど」

 

といってもどうしようか…

まぁ、出来るだけ逃げることに徹する感じがいいかなー

ぶっちゃけあまり丈夫にしても捕まったら意味ないし…

とにかく逃げる機能をいっぱい付けてもらおう

 

「こんな感じで」

 

「あー、了解しました、今日はこれで終わりですね」

 

もう終わりなのか、どうしよう?帰ろうかな

 

「せっかくだし、薬品製作でもしてみます?」

 

薬品製作か、面白そうだな

 

「良いんですか?じゃあやってみたいです」

 

「なら、これがレシピです、この通りに作れば初級薬品が出来ます。材料はあそこの棚の上から2番目の赤い薬品とあれとあれと…」

 

「分かりました」

 

「じゃあ、ちょっと用事あるから出かけてくるね」

 

「え?はい、わかりました」

 

こんな初心者に全部任せちゃって大丈夫なのか?

 

彼女が出ていった後早速初級薬品を作り始める

レシピはほとんど混ぜるだけで難しそうな所はない、これなら簡単に作れそうだ

 

えっとまずはこの薬品とあの薬品をビーカーに入れて混ぜてと…

 

ジョバッ

 

あ、やべ、いれすぎた、まぁまだ大丈夫大丈夫

 

次はこの薬品を入れて…うん?あ、これ隣の薬品だ…

………まぁ、なんとかなるだろう

 

次はこれを入れる…、え?潰して入れるの?

…………………まぁ、そんな関係ないだろ

 

次は出来たこれを熱する…ん?100℃なの?200℃にしちゃったけど…

………………………………………もう、いいや

 

 

$ $ $ $ $

 

よし完成!見た目が完全にカル○スだけど…匂いもそうだし

試しにグラスに入れて置いてあった本物の隣に置いて比べてみてもそっくりだ

 

初級薬品って緑色になるはずなんだけど…大丈夫かなこれ?

 

ガチャ

 

そんなことを考えているとドアを開けて誰かが入ってきた

見ると、車椅子に乗っている女性がいた

 

「あれ?貴方は?」

 

「あ、僕は斎藤武と言います、ここに装備の製作を頼みにきてて」

 

「あぁ、そうなの、ならあの子はいないのね」

 

と言って、僕が作った薬品と大量のカル○スを見た後、

 

「またあの子こればっかり飲んで…、そんなに美味しいのかしら?」

 

と言ってグラスに入っていた僕のカル…じゃない初級薬品を飲んでしまった

 

(え、いやちょっ!)

 

そして僕の薬品をしっかりと飲み干した後

 

「美味しいとは思うけど…こんなに飲んだら病気になっちゃうわ」

 

(え、バレてないん?)

 

どうやら奇跡的にバレてないようだ、でもあの人が帰ってきたりしていたバレるかわからない、さっさとこの場を去ろう

 

「あ、じゃあ僕そろそろ帰りますね!」

 

「そうなの、じゃあさようなら」

 

「はい!さようなら!」

 

急いでその部屋から出て、この場を去る

 

(焦ったぁ…、大丈夫かな、あれ)

 

あの薬品を飲んで何も起こらないか心配しつつ、僕はその場を去るのであった

 

(そういや、あの人の名前聞いてなかったな)

 



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しょ、初級薬品ですよ?本当です (裏)

side〜小林 蓮見〜

 

「ハァ、今回もダメだなー」

 

私は今装備の発注を頼みにきた斎藤武に、ざつよ…じゃない、薬品製作体験をさせ、外出していた

 

そして今ある薬品を作る為に試行錯誤してる最中だ

そのある薬品とは私の親友である車椅子の彼女の足を治すための薬だ

 

だが、今までそのレベルの薬品は開発されたことがなく、都市伝説レベルである

今も、薬品を製作したが全く別の効果の薬品が出来てしまった

 

「とりあえず、今日はこれぐらいにして帰るかー」

 

仕方がないので自分の部屋に帰ることにした

そしてドアを開けると私の親友である福井 倉が座っていた

 

「あ、お帰りなさい」

 

「ただいまー、あれ?斎藤武は?」

 

「あぁ、彼ならもう帰ったわよ」

 

「へー…」

 

となると、彼が作った初級薬品はどこだ?

見ると誰かに飲み干された出した覚えのないグラスがあった

うん?彼自分で初級薬品を飲んだのか?初級薬品て味はイマイチなんだけどなぁ

 

そんなことを考えていると急に倉が言った

 

「足が…」

 

「ん?どうしたの?」

 

急にそんなことを言ったので、ふと後ろを振り返ると

倉が驚きを隠しきれないと言った様子で立っていたーー

そう、立っていたのだ

 

「ねぇ蓮見、足がぁ…っ!」

 

そう言って私に抱きつき、そのまま泣き始めてしまった

まだ、頭が混乱していたけど、そんな親友につられて私も泣いてしまった

 

 

$ $ $ $ $

 

 

ひとしきり泣いて、落ち着いた後

 

「で、なんで急に立てるようになったのー?」

 

「うーん、分からないわ、なんか足に違和感があるなって思ってたら立てるようになったの」

 

「心当たりとかないの?」

 

「特には…でもそこのグラスに入っていたカル○スは飲んだわね

 

「え?私そんなの入れてないよ?そのグラスに入ってるのは斎藤武が作った初級薬品のはずだけど…」

 

「え?味も色も全然違ったけど…」

 

まさか彼が作ったのか?いや、彼とは初対面だし倉のことは知らないはずだし…

 

「まさか…装備製作のお礼で作っといたとか?でも、お金はもらってるんだけどなー」

 

「まぁとにかく私を助けてくれたことには変わりないわよ、お礼はしないとね」

 

確かにそうだ、私の親友を助けてくれたことには変わりない

 

「よーし、気合いを入れて装備を作るとするかー!」

 

side〜学園長〜

 

最近、武くんが何やら車椅子の子の足を治す薬品を作ったともっぱら噂になっている

実際に今まで車椅子だった子が二本足で自由に歩いているのを見かけた

 

「彼は自分の力を隠したいのか見せびらかしたいのかどっちなのかしら…」

 

そんなレベルの薬品を作れるなんて…、これでまた彼狙われるんじゃないかしら?

 

 

 

一方その頃…

 

「斎藤武!お前は他のものとは比べ物にならないレベルの薬品を作れるらしいな、その技術は私がいただく!」

 

「知らねえぇよおおおぉ!誰か助けてえぇぇ!」

 

 



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ダークリオン?あぁ知ってる知ってる (表)

最近、よく考えてみると友達が少ないことに気づいた

山田くんしか友達と呼べる人がいないのでは?

 

このままではボッチまっしぐらじゃないか…?

 

放課後そんなことを考えているとちょうど黒髪の女の子が話しかけてくれた

 

「斎藤武…、お前に話があるついてこい」

 

よくみると彼女はいつも隅でポツンと一人でいる子だ、彼女も友達がいないから僕に話しかけきたのかな?人と話すのが苦手そうだし

 

とりあえずついていってみると、人の気配が少ない公園のような場所に連れてこられた

とりあえず近くのベンチに腰を下ろすと彼女が話を始める

 

「お前はダークリオンというものを知っているか?

まぁいわゆるテロ組織というものだ、だが一枚岩ではなく、テロのみをしているわけではないようだが…」

 

そう言われた瞬間僕はあることに気づいた

(この子…、中二病なのか!)

なるほど、だから友達がいないのか…

ここは話を合わせておくか!中二病のとこさえなんとかすれば普通に友達になれるかもしれないし

 

「あぁ、知っているよボスと7人の幹部から構成されている組織だろ?

ここ最近急に勢力を伸ばしてきて、違法で高性能な道具を大量に生産しているんだろう?」

 

「そんなことまで知っていたのか…」

 

「それで?それがどうかしたのかい?」

 

「どうやら近々奴らがこの学園に攻めてくるとの噂でな、貴様と対策を取りたい」

 

あぁそういうことね、自分で創った組織が攻めてくるという設定か…

これは思ったよりも重症だな、それとなく中二病だということを伝えてみるか?

 

「その心配はないさ、君が創った組織だろう?」

 

「何を言っているんだ?そんなわけないだろう?」

 

ふむ、しらを切っているのか、自覚していないのかどっちか分からないが、これ以上追求しても無駄だろう

大人しく話を合わせておくか…

 

「仮にそうだとしても、僕なら3日で壊滅させられる、問題ないさ」

 

「ッ!、へぇ…そうかい精々楽しみにしとくよ」

 

そう言い残して彼女は去っていった

 

ん?なんだか取り返しのつかないことをした気がするぞ?

 

 

$ $ $ $ $

 

 

そういえば聖内学園では夏休みの前に体育祭があるらしい

どうやら、能力使用okの競技とそうじゃない競技両方あるらしい

一応僕も能力を使わない競技のいくつかに出る予定だった。

 

そう、だったのだ

しかしここで問題が発生した

もう僕自身忘れていたレート制、あの1戦から1回もしてないから忘れていたがあの一戦でかなりレートが上がってしまったのだ

 

何やら初戦のボーナスや無能力者としてのボーナスの上に相手がそこそこ上位のレートだったために急にレートが上がったのだ

 

それの何が問題なのかというと体育祭ではレート上位64位までによるトーナメントが開催されるのだ

 

もう分かっただろ?そうだよ、64位以内に入っちゃったんだよ

もうこれからレートを下げても出ることは決定してるらしい

というかなんで?僕無能力者だよ?

 

どうしよう(泣)

 

 

 

 

 

 

 



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ダークリオン?あぁ知ってる知ってる (裏)

side〜ボス〜

 

ダークリオン、それは最近急に勢力を増してきたテロ組織だ

超能力協会、または特定の能力者に恨みがある奴らが集まってできている

 

そんなテロ組織を創った…、ボスが私だ

超能力協会に親を殺され復讐を誓い、着々と準備をと捉えているうちに同じ境遇の仲間と出会い、協力しあっているうちにいつのまにかテロ組織ができていた

 

ダークリオンには掟があり、無能力者、無実の能力者は殺さない、出来るだけ怪我も負わせないと言ったものだ。

もしこれで能力者を無差別に殺そうものなら私達もあいつらと同じになってしまうからだ

 

その掟に基づき、今回の聖内学園襲撃計画を立てた

まず幹部の一人の能力を使い数カ所に兵をばら撒く、鎮圧される前に設備等の破壊、特定の能力者への攻撃をする

 

そうすれば鎮圧される前に多少の被害を出すことができる、今回は被害の深刻さではなく被害が出たこと自体が大事なのだ

 

今回の体育祭での警備は超能力協会主導で行われている、そして今まで一度も破られたことはない、そこにテロ組織が侵入したとなれば超能力協会への信用は落ちる、それが狙いだ

 

その分侵入する手筈を整えるのは何よりも難しかった

特に問題となるのはSランク能力者の存在だ、彼らが対応すれば一瞬で鎮圧されてしまうだろう、なので上手く聖内学園から移動させそこで食い止めて時間を稼ぐという作戦だ

 

一人は今国外に、もう一人は戦闘向きの能力では無いので生徒会長一人抑えればなんとかなる

 

まぁSランク能力者に対して戦って食い止めるのは不可能だが転移等の能力を相手は持っていないので時間は稼げるだろう

 

そんなとこに来た不安要素が斎藤武だ、下手したらSランク能力者級の力を持っているらしい相手だ、下手したらろくな被害を出させずに鎮圧されてしまうかもしれない、対策はしないといけないだろう

 

とはいってもどうするか…

トーナメントに出るらしいから聖内学園から引き離すのは無理だろう

今から取れる対策といえば侵入させる場所を斎藤武から離すぐらいのものか…?

 

リスクはあるが本人に接触してみるか、相手にしない可能性もあるが、上手いことテロ組織が攻めてくるという情報を信じさせ仲間として誘導

することができれば成功率が上がる

 

斎藤武が周りに広め、警備が厳重になる可能性はあるがSランク能力者を野放しにするよりはマシだろう

こういうことは今までいくらでもやってきて自信がある、なんとかなるだろう

 

早速斎藤武に話しかけ、人気のない場所まで連れて行く

 

「お前はダークリオンというものを知っているか?

まぁいわゆるテロ組織というものだ、だが一枚岩ではなく、テロのみをしているわけではないようだが…」

 

「あぁ、知っているよボスと7人の幹部から構成されている組織だろ?

ここ最近急に勢力を伸ばしてきて、違法で高性能な道具を大量に生産しているんだろう?」

 

随分と詳しいことまで知っているんだな…、これなら信じる可能性は高まったか?

 

「そんなことまで知っていたのか…」

 

「それで?それがどうかしたのかい?」

 

「どうやら近々奴らがこの学園に攻めてくるとの噂でな、貴様と対策を取りたい」

 

まあどこでこの情報を手に入れたのか、本当なのかという疑問は出てくるだろうが、少しずつ証拠を見せながら話を偽造して騙し切ってやる

 

「その心配はないさ、君が創った組織だろう?」

 

「何を言っているんだ?そんなわけないだろう?」

 

(なっ!)

元からバレていたのか?くそ、これは流石に予想外だ、やはりリスクが高すぎたか…

そして衝撃的な発言をする

 

「仮にそうだとしても、僕なら3日で壊滅させられる、問題ないさ」

 

「ッ!、へぇ…そうかい精々楽しみにしとくよ」

 

舐めやがって…予定変更だ、侵入させる奴らの中に幹部級の力を持ったやつを紛れ込ませておこう、いくらあいつが強いとしても十分に食い止められる

 

お手並み拝見といこうじゃないか

 

 




ちょっと無理あったかな?(´・ω・`)

後この子も戦闘向きではありませんが能力持ちです


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体育祭の始まり

今回は勘違い要素薄めです


いつの間にか月日はたち、あっという間に体育祭当日となってしまった

 

「しょうがない、覚悟を決めるか」

 

もうトーナメントは素直に出て、素直に負けることに決めた

大勢の観客の前で負ければ僕に対しての勘違いも解けることだろう

 

そういえば頼んでた装備もやっと来ていた

とても軽く身動きがしやすく走るスピードも上がっていたので想像以上に良かった、他にも色々仕掛けがついていたけど使えこなさそうだったからとりあえず置いておいた

 

今も念のためとこれからトーナメントがあるため着ているが、常に着ていても気にならないくらい快適だ

 

ふと時計を見るとトーナメントの開始の1時間前だった、そろそろ選手は会場の中に行かないといけない

 

「よし!行くぞ!」

 

もしかしたら善戦ぐらい出来るかもしれないし頑張るぞ!

するとブツブツと誰かの声が聞こえてきた

見ると僕の初戦の対戦相手だ、奇遇だなぁなんて思っていると

 

「斎藤武、あいつはぶっ殺す。無能力者のくせに調子に乗りやがって

じっくりいたぶって二度と誰かの前に出られないようにしてやる

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…」

 

よし!逃げよう!

いや無理無理無理!もう外聞とか気にしてられないわ!

あんな殺意マックスな相手とか聞いてない!

 

すぐさま駆け出してとにかく逃げた、走って走って走って会場からかなり離れた人気のなさそうな場所にたどり着いた

 

見てみるともうトーナメント開始30分前だ、今頃僕のことを探し回ってるんじゃ?となると能力を使われたら秒で見つかるんじゃない?

 

(ん?やばくね?)

 

このままだと僕は直前に逃げだし、捕まって無理矢理出されて挙げ句の果てにはボコボコにされるという未来が待っている

 

なんとかしないと…

 

とりあえずもっと逃げよう!と走り出した瞬間ーーー

 

50mほど離れたところで時空の歪みのようなものが発生した

そこからなんと完全武装した何人かの人間とその2倍はあろうかと思える図体をした大男が立っていた

 

「え?まじ?」

 

大男はこっちを見ると

 

「お前が斎藤武か…ここにいるのはこの転移を読んでいたからか?

まぁ丁度いい、一度お前とはやり合いたいと思っていたんだ」

 

(どうしてこうなるんだよおおおぉぉ!!)

 

 

side〜大男〜

 

転移してすぐ近くに斎藤武がいるのを見つけた

 

(転移の場所を予測したのか?一番早く察知してたどり着き、戦いになる可能性は考えていたが…アイツの予測不可能な転移の場所を当てるとは…)

 

これは面白くなりそうだ

 

 

 

 

 

 



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vsテロ組織 (表)

「まずは俺たちが相手だ!」

 

武装した人達が僕に向かってそう言う

彼等は銃まで持っていて明らかに強そうだ

 

まずはって何?能力関係なく僕は武装した人には勝てないよ?

 

「これでもくらえ!」

 

やばい!なんか来る!?

 

ーーーと思った瞬間、僕は空中にいた

地面からはかなり離れていて落ちたらタダでは済まなそうだ

 

(いや、ちょ!)

 

おそらく転移系の能力によるものだろう、だがそんなことが分かっても現状が変わるわけではない、地面に向けて僕はもがきながら落下して行く

 

(そうだ!あれがあった!)

 

確か今着ている装備には確か飛行機能があったはずだ、確か胸元のボタンを押せばよかったはず

 

急いで胸元のボタンを押すと、風が勢いよく靴の足裏から吹き始めた

 

だが問題があった、本来靴裏は地面に向いていて上に向かって飛ぶはずなのだろう、しかし僕は落ちてる最中にもがいていたせいで靴裏が斜め上に向いてた

 

(やばいやばい!誰か助けて!)

 

案の定僕はさらに猛スピードで斜めに落下して行く

そのまま僕は地面に突撃した

 

 

 

「痛っっった!」

 

一瞬意識が飛びかけていたがなんとか立ち上がる

奇跡的に助かったのか?

周りを見ると武装した人達全員が散らばって倒れている

 

まさかこの人達を下敷きにして助かったのか?

悪いことしたな…

まぁ自業自得か、って!そういえばあの男は?

 

「へぇ、なかなかやるな。面白くなってきたじゃねえか」

 

とそんなことを言い、こちらに向けてパンチを放ってきた

 

だがアイツと僕の距離はかなり離れていたので何しているんだと思ったが、落下した時の衝撃による痛みで膝をついてしまう

 

(痛っ!)

 

そしてその僕の頭の上を何かが貫き、そしてそのまま背後にあった木を折り、円状にえぐっていった

 

…はい?

 

「ちっ、初見で避けやがったか、御察しの通り俺の能力は打撃を飛ばす能力だよ」

 

今のパンチなの?ってことはあれを連発できるってこと?強すぎない?

 

「まぁいい、今のは小手調べだ本番いくぜ!」

 

そう言って相手は連続でパンチを放つ、一つ一つがさっきと同じような威力を持っていた

 

僕は焦ってもがいているとに手袋あったボタンが押され、盾が出てくる

とにかく何かしようと打撃に向かって盾を振り回し防ごうとする

 

すると打撃は盾に上手いことあたり打撃は弾かれ横に逸れていく

そしてなんとか打撃を防ぎ切ることが出来た

 

この盾すげぇ!あんな打撃を防げるのか…

 

「ちっ!今のも防ぐのか…もう一回行くぞ!」

 

いや早い早い!もう一回は流石にきつい!

 

咄嗟に手に持っていた盾を相手に向かって思いっきり投げる

それが相手の頭に直撃、なんてことはなく手が滑って盾は相手より上方へと飛んでいく

 

そしてあろうことか体勢を崩して転んでしまう

 

(な!立ち上がらないと!)

 

だが体をあげた瞬間、前に転んで胸のボタンが押されたせいで靴裏から猛風が吹き始める

 

そしてそのまま僕の体は前に猛スピードで飛んでいく

 

(あああああぁぁぁ!!誰かぁぁ!)

 

ドォン!

 

なんとか壁にぶつかって止まったがそのまま僕の意識は闇に落ちた

 

 

 



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vsテロ組織 (裏)

改善点、リクエスト等あったら感想欄に書いてくれたらやります


side〜武装兵〜

 

「まずは俺たちが相手だ!」

 

転移すると、場所を予測したと思われる斎藤武がすぐ近くにいた

おそらく俺たちじゃ相手にもならないだろう

 

(だけど…やれるだけやってやる!)

 

少しでも相手の情報を引き出したり、ダメージを与えることはできるかもしれない

 

まずは…

「これでもくらえ!」

 

相手に向かって転移の能力を使い上空に飛ばす、落ちたらただでは済まないだろう

 

まぁこの程度は簡単に凌ぐだろうが能力を使うだろうから少しでも情報を得ることができる

もしかしたら隙ができるかもしれない

 

だが…、相手は能力を使う様子もなく落下していると思っていたら急にこちらに向けて突進してきた

 

(避けられない!!)

 

そのまま奴は全員に体当たりし吹き飛ばした

 

奴がこちらを哀れみの目で見て立ち上がったことを見た瞬間、俺は気絶した

 

 

side〜大男〜

 

「へぇ、なかなかやるな。面白くなってきたじゃねえか」

 

奴が無傷で立ち上がったことを確認すると、思わず声に出てしまった

能力持ちの武装集団を能力を使わずに無傷で倒すとは…

 

(噂以上だな…)

 

先手必勝だ、相手に能力がバレてないうちに相手に向かって打撃を放つ

だがそれは相手がしゃがんだことによってあっさり避けられてしまった

 

(不意打ちのはずだったが…、これで能力もバレたか)

 

「ちっ、初見で避けやがったか、御察しの通り俺の能力は打撃を飛ばす能力だよ」

 

「まぁいい、今のは小手調べだ本番いくぜ!」

 

相手に向けて全力のパンチを連続で放つ、一発一発が掠りもすれば一撃で致命傷を負うレベルだ

 

だが相手はいきなり何処からか盾を出してきた

 

正直言ってその盾は一撃でもまともに当たれば砕けてしまうようなものだ

しかし奴はそれを自分にあたる打撃のみを絶妙な角度で逸らし、防ぎ切った

 

(何だと…!)

 

流石に能力を使わずに盾一つだけで防ぎ切るのは予想外だった

 

「ちっ!今のも防ぐのか…もう一回行くぞ!」

 

もう一回連撃を放とうとするがーーー

 

相手が手に持った盾を投げてきた

しかし明らかに盾の軌道は俺に当たらない…何をする気だ?

 

その瞬間俺はあることに気づき後ろを見ようとした

 

ガン!

 

しかし遅すぎた、相手の持っていた盾はブーメランのように戻ってきて俺の後頭部に直撃した

 

(がっ!)

 

こんな仕掛けがあったとは…!

 

だが何とか耐え、前を見た瞬間さっきと同じように奴がこちらに向けて突進してきていた

 

本来なら避けられないスピードではないが今の俺にそんな力はない

正面から体当たりを喰らい、吹き飛ばされて倒れ、気絶した

 

 

$ $ $ $ $

 

 

意識が朦朧としていたがおぼつかない足取りで何とか寮に帰ることができた

 

時間を見るとあまり時間は経っていなく、気絶していた時間は案外短かったことだけが分かった

 

トーナメント、テロ組織、体育祭、色々と考えなければいけないことが頭に浮かんだがとりあえず無視して眠りについた

 

 

 

 

 

 

 



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師匠と弟子? (表)

体育祭が終わってはや1週間、そろそろ夏休みに入るかという時期だ

 

あの後どうやらテロ組織が侵入してあちこちで暴れていたようで体育祭は中止になった

 

けれど特に人的被害は出ていないらしく、周りにいた生徒、教職員等が取り押さえたという

 

そして警備を担当していた超能力協会には批判が相次いだと言う

この学園にはどちらかと言うと擁護や同情の声が多かったらしい

 

それでも事後処理は大変そうで学園長は仕事に追われているみたいだが

 

テロ組織と聞いてあの子が言っていたのは本当だったのか?と思い、もう一度話を聞こうとしたが何故か既に転校していた

 

 

そんなことより問題は、僕がトーナメントから逃げてたまたまテロ組織に会ったことを

 

「いち早くテロ組織が来ることを察知し、転移場所を予測し応戦した」

 

と言う情報になっていることだ

なんかだんだんひどくなってないか?少しずつ噂に尾ひれがついてるんだが…

 

結局あの大男はどうなったんだろう?壁にぶつかってからの記憶がないんだよなぁ

 

 

$ $ $ $ $

 

「私を弟子にしてください!」

 

ちょっと待て、何だこの状況

 

「えっとー、如月さんだよね?いきなりどうしたの?」

 

「無礼なのは分かってます、一度はあなたの実力を疑い勝負を挑みましたが、その後貴方の数々の偉業を聞き、考えを改めました」

 

いや改めなくていいよ?

 

「私に修行をつけてください!」

 

「えぇっと…、僕に教えられることはないんだけど…」

 

「貴方のいつもの生活を見させてもらえるだけでもいいです!その中に強さの秘密があると思いますので」

 

いや、ないよ?そんな漫画みたいな生活は送ってないけど…

 

でもこのまま断ると絵面がやばい、美少女に土下座させてるとかどんな噂になるか分かったもんじゃない

まぁ普通に暮らすだけならいいかな…

 

「分かったよ、僕はいつも通りにするだけだからね」

 

「ありがとうございます!」

 

$ $ $ $ $

 

 

今僕は訓練場に来ている

何故かって?

 

自分の身を守るためさ、最近奇跡的に助かってるとはいえ物騒なことにばかり巻き込まれているからその備えのために最近始めたんだ

 

まだ装備もわからないことが多かったから、色々試してみたんだけど…実用性がありそう、使いこなせそうなのは盾ぐらいのものだった

 

飛行機能も練習すれば便利そうなのか…?

 

じ〜〜〜

 

というか、すごく視線を感じる

まぁ気にしても仕方ないし練習始めるか

 

 

とりあえず盾を投げてみる

しかし結構狙ったのにも関わらず盾はあれよあれよと違う方向に飛んでいきかすりもしない

 

「はぁ…」

 

そのまま後ろを振り向くと彼女が俺をキラキラしていた目で見つめていた、どうしたんだろう?

 

 

 

その後少し装備装備の確認をした後、散歩に学園の外へ出かけていた

 

ヒュッ! チッ! チュン!

 

最近は変な物音がなかったが今日は久しぶりに変な音がした

ちょくちょく歩くのをやめ、周りを見ても何もない、本当に何なんだろう?

 

はぁ、ゴクゴク

最近買った水筒で水を飲む、騒動に巻き込まれても壊れないように耐久性に長けているものにした、なかなかの値段がしたから大事にしたい

 

「あっ」

 

カンッ! コロコロコロ…

 

仕舞おうとしたら早速道路に向けて落としてしまったーーー

 

ブーブロロー… ガシャン!

 

その瞬間自動車が高速で僕の水筒を轢いていった

 

(僕の水筒ぉぉぉぉ!!)

 

それだけではなく硬い水筒を轢いた自動車は当たり前の如くトリップ

ガードレールに激突した

 

(僕の人生ぃぃぃぃ!!)

 

終わったな…

みんな…今までありがとう…

 

 

$ $ $ $ $

 

 

そんなこんなで今僕は寮で何事もなく夕飯を食べている

 

これには色々と理由がある

 

まず、自動車が無人だったので人的被害がなかったらしい

それと、近くにいた如月さんが弁解をしてくれた

 

普通に考えて何を言っても無駄だと思うのだが何をしたのだろうか…

もしかしたら今流れてる噂に助けられたのかもしれない

 

どうやら補修費用まで払ってくれたらしく帰り際に

 

「ありがとうございました、とても勉強になりました」

 

とお礼を言われたが完全に僕が言うべきだろう

彼女がいなければ今頃僕は退学になっているはずだ

 

何かしらの形でお礼をしないとな…

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ主人公を任務とかに行かせたい


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師匠と弟子? (裏)

side〜如月 灯〜

 

「私を弟子にしてください!」

 

武さんに向けて土下座をする

 

「えっとー、如月さんだよね?いきなりどうしたの?」

 

「無礼なのは分かってます、一度はあなたの実力を疑い勝負を挑みましたが、その後貴方の数々の偉業を聞き、考えを改めました」

 

「私に修行をつけてください!」

 

「えぇっと…、僕に教えられることはないんだけど…」

 

しかしやはりいい顔はされず、渋られる

 

「貴方のいつもの生活を見させてもらえるだけでもいいです!その中に強さの秘密があると思いますので」

 

これでなんとか…!

 

「分かったよ、僕はいつも通りにするだけだからね」

 

よし!許可を取れた!

 

「ありがとうございます!」

 

 

$ $ $ $ $

 

 

武さんを観察しに付いていっていると武さんは訓練場に足を運んだ

 

そこで的の前に立ち、何処からか取り出した盾のようなものを投げる

しかし、明らかに盾の軌道は的に向かっていない

 

(何をする気なの…?)

 

すると盾が飛んでいる最中なのにも関わらず、後ろを振り向きこちらを見る

 

するとーーー、盾がまるでブーメランのように戻ってきて見事的に命中した

 

(すごいわね…、おそらくブーメラン自体は盾の仕掛けによるものだろうけど、それを調整して当てるなんて…そういう能力を持ってるのかしら?)

 

 

 

武さんは訓練場を後にし、散歩に出かけたーーー

と思っていたのだが

 

武さんの周りには多くの弾丸が飛び交っていた

 

暗殺者によるものなのか?

周りを見渡してみるとそれらしい人影をなんとか見つけられた

 

それにしても数が異常だし、撃ってくる弾丸もありとあらゆる種類が揃っている

 

全てが目で追えたわけではないが、それでもアホみたいな数と種類である

 

そして何よりもやばいのは武さんだ

それをまるでただ散歩してるかのようにスレスレでかわし続けている

 

おそらく実力を隠しながら、暗殺者を諦めさせる方法なのだろうが…

逆にそんなことをしてしまえば、噂によってその実力が広まってしまうと思うのだが

 

すると、武さんが水筒を飲み始めた

まぁ、そりゃ武さんも人間だ水くらい飲むだろうなんて思っていると

 

道路を猛スピードでおそらく無人である自動車が走っていた

そして、横断歩道を渡っている子供に向けて突進していく

 

(止めないと!)

 

だがここで躊躇してしまう

どうやって?能力だと発動が間に合うか分からないし、あのスピードでは外してしまう可能性がある

だからといって今から取れる方法もない

 

能力を発動して車を止めようとするがーーー

 

(間に合わない!)

 

カンッ! コロコロコロ…

 

その時、武さんが持っていた水筒がまるで狙いすましたかのように自動車のタイヤの下に転がる

 

ブーブロロー… ガシャン!

 

当然自動車は水筒を轢き、スリップして子供から逸れてガードレールにぶつかる

 

「良かったあ…」

 

 

 

その後は取り調べを受けたが、私が弁解し、他の人の証言や実際に車に人がいなかったこともありお咎めは無しに

聖内学園の生徒ということや私が能力者であることも功を奏したようだ

 

補修費用は払う必要はないのだが、自分の戒めとして払っておいた

 

武さんにはお礼を言っておいた、今回分かったことがある

武さんは能力の力に頼りきりではなく、まず素の能力が高い、その上で能力を使いこなし実力を発揮しているのだ

 

思えば私はとにかく能力を磨くことばかり考え、身体能力や判断力を二の次にしていた

そして能力の使い方も視野が狭すぎたと思う

もし、武さんが私と同じ能力だったとしても武さんはもっと能力を使いこなせていたのではないだろうか?

 

(もっと強くならなければ…)

 

 

$ $ $ $ $

 

 

あの出来事から3日後…

 

僕に関するある噂が流れていた

 

曰く、「斎藤武は能力だけでなく素の身体能力、判断力が高い」

 

というものらしい、しかも噂の発生源は如月さんだという

 

 

 

………………なんでこうなるの?

 

 

 

 

 

 



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藤桜姉妹 (表)

聖内学園では明日から夏休みに入る

 

学内は浮かれた空気に包まれ、皆がうずうずした様子だ。

あちこちから今年は海に行くだとか、北海道に行くだとか話している声が聞こえる。

 

え? 僕はどうなのかだって? よてい? なにそれおいしいの?

 

まぁそんなことは僕には無関係なのでスルーする。

 

 

 

浮かれた空気に耐えられなくなり、学園内を散歩していると偶然生徒会長と出会った。

 

相変わらず見てると引き込まれそうになる雰囲気を纏っており、その美貌は一切衰えるどころかさらに美しさが増している。

 

「お久しぶりです、武さん」

 

「あ、お久しぶりです奇遇ですね」

 

「ふふっそうですね、ところで少しお願いがあるのですが…」

 

お願い?生徒会長が僕なんかにお願いすることがあるのだろうか。

 

「お願いですか?」

 

「はい、実は夏休み中の予定をある期間の間空けておいて欲しいのです」

 

その瞬間僕の頭はフル回転した。

これは…まさか夏休み中のお誘いなのでは?

いや落ち着け、生徒会長とは大した接点がない、ただの事務的なものだろう。

 

「そのぐらいなら大丈夫ですが…何故ですか?」

 

「少し貴方と一緒にお出かけに行きたいなと思いまして」

 

キタコレ!!これはデートじゃないか!

 

「わ、わかりました!空けておきます」

 

「ありがとうございます、ではこれで」

 

「あ、さようなら」

 

よし、これで夏休み中は美少女とデートだ!

 

 

ヘックション!

うん?なんだか急に寒気がする…

 

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 

さて、僕は今どこで何をしているでしょう?

 

ヒントはいつもどおりやばい状況だということでーす。

 

 

答えは

路地裏で美少女を人質に取っている犯罪者も向かい合っているでしたー。

 

ふざけんな!!おかしいだろ!!

 

いつも通り散歩してたら迷子になって路地裏に入ったらこの状況ですよ。

 

運悪すぎません?

 

「おい!なんとか言えよガキ!」

 

おそらく生徒会長の妹ーー藤桜 凛を人質に取っている男が焦った様子で僕に向かって叫ぶ。

 

対して僕は何も言わないただ無言で見つめ返すだけだ。

実際はビビって声がうまく出ないだけだが。

 

「何か怪しい真似をしたらこいつがどうなるか分かってんだろうなぁ!」

 

路地裏は薄暗く、人がなんとか二人立っている程度の幅しかない。

そして人質を取られている。

 

…こんな状況で何をしろと?

 

そうするとーー

 

ガタガタっ ガタガタっ ガタガタガタガタ!

 

急に地面が揺れ始め、建物が軋む。

男も驚いた表情をしている。

 

対して僕は、

 

(ちょっ!揺れてる揺れてる!怖い怖い怖い!)

 

ポーカーフェイスを貫いているが内心はめちゃくちゃビビっていた。

 

「ガキ!何もするなと言っただろう!」

 

いやなんで!?どう考えても地震だろ!こんな現象起こせるわけねーだろ!

 

「くそ!さっさとーーガッ!」

 

上から不安定な位置においてあった花瓶が落ちてきて相手の頭に命中した。

 

そのまま男は一瞬堪えたが、やがて倒れ気を失った。

 

(あっぶねぇ…ってそうだ!)

 

「大丈夫だった君?」

 

「はい、大丈夫です。あ、あの!ありがとうございました!」

 

「いや、僕は何もしてないけど…それで事情を教えてくれるかな?」

 

「えっと、道を歩いていたら急に攻撃されて、応戦しようとしたんですが間に合わず気絶してしまって…恐らくもう一人高ランクの隠密の能力がいたんだと思います。それで気絶したらここに連れてこられていて、意識を取り戻してすぐ貴方がここに来たんです」

 

「そうだったんだ、災難だったね、そう言えば君、僕を案内してくれた子だよね」

 

「あぁ、はいそうです。お久しぶりです」

 

「まぁとりあえず今日はもう帰ろうか」

 

$ $ $ $ $

 

その翌日、ついに夏休みに入った。

昨日会った凛さんとも予定を取り付けることもできた。

 

案外いい夏休みになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勘違いもの書くのって難しい


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藤桜姉妹 (裏)

side〜藤桜 鈴〜

 

暗い部屋で無数の画面が思わず目を押さえたくなるほど輝いている

それを見つめる一人の人影

 

それはある一点だけを何かに取り憑かれたように、食い入るように見ている

 

初めは、彼に関する周知の情報を片っ端から集めた

次は、一部の人しか知らないような戸籍や住所、経歴等の情報を集めた

 

しかし「興味」はそれだけでは収まらなかった

 

彼女は彼を観察し始めた、自分の能力や監視カメラを使い彼の動向をほぼ全てチェックした

 

「興味」は誰も知らない彼の情報を知りたがった

 

怒ったら、悲しんだらどんな顔をするのか

どんな価値観を持っているのか

 

はたまた…、どんな能力を持っているのか

何故隠しているのか

 

彼のことを知りたいと考えているうちに初めからそうだったのか分からないが、「興味」は恋、もしくは依存へと変化していた

 

彼女は周りにろくな人間がいなかったせいで心を許せる人がいなかった

その寂しさをあいつらと自分は違う存在なんだ、仕方ないと片付けて耐えてきたのである

 

その歪んだ価値観にフィットし、対等と呼べる存在ーーそれも異性が現れた

それで彼女が恋、依存してしまうのも仕方がないのだろう

 

そしてついに彼女はある行動に出た

 

「お久しぶりです、武さん

 

自分の能力を使い、彼の位置を把握し偶然を装って彼に会う

 

「あ、お久しぶりです奇遇ですね」

 

「ふふっそうですね、ところで少しお願いがあるのですが…」

 

「お願いですか?」

 

「はい、実は夏休み中の予定をある期間の間空けておいて欲しいのです」

 

「そのぐらいなら大丈夫ですが…何故ですか?」

 

「少し貴方と一緒にお出かけに行きたいなと思いまして」

 

お出かけ、まぁ言葉通りの意味である

しかし彼女は目的がズレている

 

たしかに好きな人と出かけたいという気持ちもある、だがその恋は「興味」から来たものなので、当然彼のことを知りたいという欲は強く残っている

 

しかし、その恋がある程度「興味」にブレーキをかけている

彼を傷つけるような真似はしたくない、悲しませたくないと

それが無かったら今頃言い表せないような状況になっているだろう

 

まぁ、彼以外のことではブレーキが効かないのだが

 

それで出た結論が「お出かけ」である

質問や一緒に行動することにより穏便に彼の情報を得ることができる

多少のハプニングを起こせば間近で彼の貴重な情報を得ることができる

 

「わ、わかりました!空けておきます」

 

「ありがとうございます、ではこれで」

 

「あ、さようなら」

 

その場から去った後、彼女は感情を抑えられず笑みをこぼし、口を弧の字に曲げてしまう

 

「ふふっ、やった…」

 

歪んだ笑みを浮かべながら彼女はそう言った

 

side〜藤桜 凛〜

 

「んっ、うん…?」

 

暗い闇の中から意識が目覚める

 

「おや、お目覚めかい?」

 

目を開けると目の前に不審者がおり、自分の手は縄で縛られている

 

「っ!お前は…」

 

「言っとくが暴れないほうがいいぜ、能力を使うと爆発する爆弾をオレの能力で仕掛けておいた、後オレに危害を加えようとするか妙な真似をしようとすれば爆発させる」

 

すぐに能力を使おうとするが男の言葉によって中断する

 

「くっ!…」

 

「それじゃあ大人しく着いてきてもらおうか…ーーお前は何だ」

 

前を見ると男の目の前に恐らく高校生それも聖内学園のと思われる人物が立っていた

 

「おい!なんとか言えよガキ!」

 

そんな男に対して彼は何も言わないただ無言で見つめ返すだけだ

 

「何か怪しい真似をしたらこいつがどうなるか分かってんだろうなぁ!」

 

(くっ!情けない…)

 

そうするとーー

 

ガタガタっ ガタガタっ ガタガタガタガタ!

 

急に地面が揺れ始め、建物が軋む

男も驚いた表情をしている

 

対して彼は無表情を変えずそこに佇んでいる

 

「ガキ!何もするなと言っただろう!」

 

男が焦った声で叫ぶ

 

「くそ!さっさとーーガッ!」

 

上から落ちてきた花瓶が相手の頭に命中した

そのまま相手は倒れ気絶する

 

「大丈夫だった君?」

 

「はい、大丈夫です。あ、あの!ありがとうございました!」

 

「いや、僕は何もしてないけど…それで事情を教えてくれるかな?」

 

 

その後事情を説明し、家へと帰った

どうやら彼は前案内した斎藤武さんという人だった

 

それまでは焦っていたのと薄暗く顔がよく見えず誰が分からなかった

 

となると天候を操る能力を持っていると聞いたこともあるし、あの地震も彼の力によるものなのだろうか?

 

大きな力を持っている人は姉を見てきたせいで全員あんな人なのかと思っていたが、思いのほか優しそうだった

 

後々お礼をしないといけないな

 



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腐ってるよ…(表)

夏休みの間も聖内学園は開いていて、多くの生徒が活動している

 

だからなのか分からないが、廊下にこんなものが落ちていた

それは一冊の漫画のネームのようなもので興味本位で開いてみると…

 

中身は僕と山田くんのBL本だった

山田くんとは僕の隣の席の男子で、隣ということもありそこそこ仲良くさせてもらってる

 

まず、この相手が山田くんなのは僕が関わったことのある男子が彼ぐらいだからだろう

 

でも何で僕?別にイケメンでも何でもないよ?山田くんはイケメンだけど…

 

とにかくこれは由々しき事態だ、今すぐこの波を止めないと…

何より山田くんに申し訳ない

 

 

$ $ $ $ $

 

 

その後ネームを元の場所に戻しひたすら取りに来るのを待った

小1時間ほどした後恐らく作者本人と思われる人物がやってきた

 

やはり女子だ…こいつめ…

 

その後彼女を取り押さえ、とにかく質問攻めにして情報を聞き出した

 

噂の転校生に興味が出てつい書いてしまったこと

まだネームを書いてみただけで本格的に作るつもりはなかったということ

流石に本人に許可を取らずに作ったのは申し訳なかったということ

 

その中に衝撃的な情報があった

 

このネームは 山 田 く ん 公 認で書いたこと

この話を聞いた時は目が飛び出るかと思った

 

ここで一つの仮説が生まれる、普通に考えて一般人ならこんなことは許可しないだろうつまり山田くんは普通じゃなかった…

 

つまりホモなんじゃね?ということである

 

この女子生徒が嘘をついてる可能性はあるだろう

しかし言われてみれば正直心当たりは色々ある

思い出せば思い出すほど疑いは強まるばかりだ

 

いやなんか妙にマニアックな質問からテンプレの質問まで幅広く色々してくるなぁとは思っていたけど…まさかあれも

 

いや、憶測で話をするのはやめよう

とりあえず彼に直接聞いてみよう

 

ちなみにあのネームは燃やしておいた

 

 

$ $ $ $ $

 

「山田くん、君って僕のこと狙ってない?」

 

単刀直入に聞いてみる

 

「っ!狙ってる?何のことだ?確かにお前に興味は持っているけど狙っているとはどういうことだよ?」

 

やはり心当たりがあるのか…興味はあるけど実行には移そうとしていないということか?

 

「じゃあBLという言葉に覚えがあるかな?」

 

「ッ!!いや…知らないな」

 

これはもう…確定だな

彼はあのBL本に許可を出したのだろう

 

「いや、僕もそれを咎めるつもりはない、けれど君の希望には答えられないんだ、できればこれからは健全な関係を築いていけると嬉しい」

 

「分かった、そうするよ」

 

ふぅ、これで何とかなったか

まぁ油断はできないけど

 

 




感想、評価よろしくお願いします(*゚∀゚*)


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腐ってるよ… (裏)

side〜山田 春人〜

 

「はぁ憂鬱だ」

 

 そう言って一つため息をつく。空は雲に覆われ澱んでいて今にも雨が降りそうな天気だ。

 悩みの種は隣の席である斎藤についての事だ。

 

 本当に最近のことだがある組織ーーいやある人から斎藤武の監視を依頼されているのだ。曰く、新しい大きな力を持った能力者の危険性を調べないといけないらしい。

 これが面倒で、いいやつそうだから大丈夫! で済めば良いのだが危険性がないと言う確固たる証拠、もしくは物証がいるらしい。俺はまだそのような物証と言えるものは手に入れられてないのが現状だ。

 

 その上、その事実を隠しているのに相手と接するのが罪悪感を感じて仕方ない。そのせいで最近はなんとなく気分がすぐれずにいる

 

「山田くん、君って僕のこと狙ってない?」

 

 突然、そんなことを夏休みなのにも関わらず教室にいた武に聞かれた。

 

「っ!狙ってる?何のことだ?確かにお前に興味は持っているけど狙っているとはどういうことだよ?」

 

 動揺しながらもバレるわけにはいかないので当たり障りない答えを返しておく。

 

「じゃあBLという言葉に覚えがあるかな?」

 

「ッ!!いや…知らないな」

 

 なっ……、B Lというのは俺に依頼をしてきた人の二つ名だ。これは完全にバレてしまっているのか…

 

 「いや、僕もそれを咎めるつもりはない、けれど君の希望には答えられないんだ、できればこれからは健全な関係を築いていけると嬉しい」

 

 武は確信を持ったような目をしつつ俺に向かってそう言ってくる。特に制裁のようなものがないことに安堵しつつ、ほとんどボロを出さなかったのにも関わらず、気づいた武の洞察力に感心する。

 

「分かった、そうするよ」

 

  

 

 ちなみに山田がBL本に許可を出したというのは女子生徒が咄嗟についた真っ赤な嘘である。それどころか山田は今までBLという文化にすら触れたことがなく、存在すら知らないのだが……

 

 

$ $ $ $ $

 

 さっき偶然またまた鈴さんに会った。そして「Sランク能力者ってすごいですね!」みたいなことを言うと、他のSランク能力者についての話になった。

 

 何となく帰ってから気になったので詳しく調べてみたところ、一人は今国外にいて「身体能力を強化する能力」を持っているらしい。もう一人は戦闘向きではなくどうやら回復系の能力らしいがとにかく出力がどちらも桁違いで、死者蘇生すらも出来ると言われている

 

 しかし死者蘇生はおろか重症を治す程度の能力すらもあまり使わず、反感を持たれているみたいだ。

 基本的には外には顔を出さず、ずっと自分の屋敷にこもっていることが大半らしい。

 

(まあ、Sランク能力者にこれ以上関わるとさらに面倒なことになりそうだし、関わらないに越したことはないけど)

 

 

 

 

 

 

 




試しに地の文に句点をつけて段落ごとに一マス空けてみました。
ちなみに基本スマホで書いてます。


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登場人物紹介

メインからモブまで登場人物の設定を紹介


 

 斎藤 武…この物語の主人公。16歳の高校生で無能力者だが周りからはあらゆるところを勘違いされている。

 何とか勘違いを解こうとするもうまくいったことはない。

 物騒なことには慣れているものの騒動の最中はずっと心の中でびびっている。

 性格は結構適当で年相応

 勘違いが解ける日は来るのか…

 

 如月 灯…主人公に喧嘩を売って完敗した女の子。能力は「不可視の弾丸」で結構強いのだが相手が悪すぎた。

 性格は強気でどこか向こう見ずだが、正義感が強く誇りを持っている。主人公の生活から学び能力以外のところを磨きはじめた将来有望な子である。

 

 藤桜 鈴…聖内学園の生徒会長、幼少期に固まってしまった価値観から人を見下し続けていたが、主人公という対等と呼べる存在と出会い依存した。比較的まだ無害だがあくまで主人公がストッパーとなっているからであり、それがないと暴れ出す。

 主人公と出かけることが決まりご機嫌。

 

 藤桜 凛…姉と違いとにかくまっすぐな性格を持つ。

 助けられたことから主人公には好感を抱いている。

 まだ能力は明かされていないが強力な能力を有しているが姉には及ばない。

 

 山田 春人…明るく、いわゆる陽キャと呼ばれるタイプ

 主人公には一目置いており、友達として接していきたいと思っている

 ただ主人公からはホモと思われている不憫な子。

 

 学園長…何やかんやで主人公を影からこっそりと手助けしている。

 母を助けられたこともあり、あまり主人公を危険な目に合わせたくなく、申し訳なく思っている

 いざという時には助けになってくれるだろう。一応能力持ち。

 

 ひったくり犯…モブその1。能力は持っていないがスリを続けているうちに手際が良くなっていた。主人公により(?)捕まってしまった

 

 レッドアイ…相手が主人公じゃなけりゃ大抵の人は暗殺できる。

 主人公にトラウマを植え付けられてしまう。

 もしかしたら再登場の可能性あり。

 

 凶悪犯罪者達…モブその2。レーザーを撃つ方は1話で退場したが普通にめちゃくちゃ強い。雑魚じゃないけど雑魚。

 

 小林 蓮見…凄腕の生産者。親友の足を治してもらった為大恩を感じている。主人公の装備を作った

 

 ボス…テロ組織「ダークリオン」を作った。主人公と敵対しておりこれから先も主人公を狙ってくること間違いなし

 

 武装兵…モブその3。能力持ちだが秒殺、でも一般人じゃ絶対勝てない。

 

 大男…強者と戦うのが好きな熱い男。主人公と正面から戦って負けたので悔いなく捕まった

 

 暗殺者達…モブその4。主人公を暗殺しようとして散っていった

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価はモチベになりますo(`ω´ )o


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凛さんとのお出かけ? (表)

 朝、ベットから起き上がり体を伸ばしながら目を開ける。外を見てみるとちょうど磨いた銅のような太陽が輝いていた。

 ふわふわとした気持ちで着替え朝食を取る。鼻歌でも歌いたい気分だ。

 

 どうしてこんなに機嫌がいいのかって? 

 

 そりゃあ今日は凛さんと出かけに行く日だからだよ。この前のお礼も兼ねてらしいが、美少女とデートとなれば誰だって浮き足立つだろう。

 

 準備を済ませ家を出る。電車に乗り数分歩いた所で待ち合わせ場所に着くと、既に凛さんがそこにいた。

 

「あ、ごめん待たせた?」

 

「いえ、大丈夫です。私も今来たところですから」

 

「そっか、じゃあ行こう」

 

 今回の行き先は特に決めているわけではない、とりあえずあたりを歩いて面白そうなところに入ろうという予定だ。

 まずはデパートに行き買い物をした。凛さんお礼としてに何か買いますと言われたが申し訳ないので断っておいた。

 

 そしてカフェで一息ついた所でーー

 

「武さんは今まで色々なトラブル、戦いに巻き込まれて来たと思います」

 

「まぁ、うん。そうだね」

 

「でもその度にあなたは同じ行動をしてきました。それは何故ですか?」

 

同じ行動?僕が今までに戦いに巻き込まれたことで取った行動は……逃げる、ビビる、突っ込む、時間稼ぎくらいかな。

 

 なんか自分でも悲しくなってきたよ…でも何故かって言われるとそりゃあ

 

「(自分の命を)守るためかな」

 

「やはり…そうですか」

 

「だって僕にしかできないからね」

 

「それは…凄いことですね」

 

 そういうと、彼女は何も言わず考え込んで黙り込んでしまった。

 アイスティーを飲み終わりカフェを出てからは普通に話してくれるようにはなったが、どこか落ち着かない様子だった。

 

 その後国内有数の本屋に行くことになった。

 

 やはり国内有数と謳うだけあり建物は2階建てにも関わらずデパート以上に広く、本の種類もありとあらゆるものが揃っており、面白そうな本を見つけることができた。

 

 だが問題は僕がトイレに行っている時に起きた。

 凛さんには本を見ておくように言っておき、何故か一つしかない2階のトイレに行っていた。

 

 その時ーー

 

『この店は俺が占拠した、この子供を殺されたくなければ藤桜 凛を連れてこい!』

 

 館内放送で荒々しい声が流れた。

 またかよ! 何で僕が行く先々ではこういうのがいるんだ!

 今日はオフなんだよ、帰れ! オフじゃなくても帰れ!

 

 (かくなる上は…)

 

 逃げるか、凛さんも自分の命を守ることは大事って言ってたしな!

 そうそう、どうせ何もできないんだし

 

 すぐに出口に向かって走り出す、ここを右に曲がると前に出口が…

 あれぇ?

 曲がった先はどこにもつながっていない行き止まり、無機質な壁がただ立っているだけだった。

 

 迷った。そこからあたりを走り回りなんとか目星をつけた道に入ってみるとーー

 

 人質に取られた子供と犯人と向かい合っている凛さんがいた。

 

(嘘だろ!)

 

「武さん!?」

 

「なんだお前…、何者だ?」

 

 はい詰んだー、もう終わりでーす。装備も着てないし僕じゃどうしようもない。

 あまりの驚きにさっき買ったものが入っている袋を手から離してしまう、すると手の勢いで犯人に向かって飛んでいった。

 

(ちょっ!)

 

「くっ、なんだ!」

 

 犯人の意識が完全に凛さんから逸れ、隙ができた瞬間に凛さんが能力を使うと犯人が何かに押しつぶされるように倒れ、地面にめり込む。

 そして凛さんが子供を救出した。

 

$ $ $ $ $

 

 その後犯人を警察に引き取ってもらい僕達は帰路についていた。

 

「また助けられてしまいましたね」

 

「気にすることないよ」

 

 まぁ犯人のところに行ったのは迷子になったからだし、袋をぶん投げたのも手が滑ったからだけど結果オーライだからOKだよな!

 

「では、私はこれで」

 

「うん、今日はありがとう」

 

 そういって凛さんと別れ寮に帰る。

 そういやお姉さんのことも聞いとけばよかったかな?

 

 




この子はヤンデレにはならない予定です


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凛さんとのお出かけ? (裏)

感想、評価等くれるとモチベになります


side〜藤桜 凛〜

 今日はこの前のお礼も兼ねて武さんと出かける日だ。

 ちょうど今日は雲一つない晴天で、海の青色のような色をした空が広がっている。

 

 待ち合わせ場所に行き、武さんを待っているとやがて武さんがやってくる。

 

「あ、ごめん待たせた?」

 

「いえ、大丈夫です。私も今来たところですから」

 

「そっか、じゃあ行こう」

 

 そんなたわいもない会話をして、向かった場所はデパートだ。お礼として何か買って差し上げようと思ったのだが、どうしてもと断られてしまった。

 

 そしてカフェで一息ついたところで前から気になったことを聞いてみた。

 

「武さんはこれまでいろいろなトラブル、戦いに巻きこまれてきたと思います」

 

「まあ、うん。そうだね」

 

「でもその度に、あなたは同じ行動をしてきました。それは何故ですか?」

 

 それが気になっていた。武さんは巻き込まれるだけでなく自分から首を突っ込みに行くことも多々あった。

 でも武さんは自分の力をできるだけ隠したいと思っているのにもかかわらず、自分の力を使って撃退してきた。

 

「(みんなのことを)守るためさ」

 

「やはり…そうですか」

 

「だって僕にしかできないからね」

 

「それは…凄いことですね」

 

 ここ最近、武さんと触れ合って分かったことは彼はその身に宿している力と比べて案外普通の性格をしているということだ。いくら大きな力を持っているとはいえその力を他人に向け、屈強な悪人に立ち向かうことはかなりの勇気がいるだろう。

 

 私には武さんの顔が何か悟ったような、覚悟したような目をしているように見えた。

 

 今日は平穏な1日になるかと思ったのだが…思いがけずも事件は起きた。

 

『この店は俺が占拠した、この子供を殺されたくなければ藤桜 凛を連れてこい!』

 

 急にそんな館内放送が流れる。声は荒々しく、低い男の声である。

 私の名前が呼ばれるが、正直いって心当たりは無数にある。

 

 生徒会長兼Sランク能力者の妹、希少なAランク能力者である上に個人的な恨みも買っている。

 

 恐らく放送室の方だろう、焦りながら走り出す。武さんは今はトイレに行っているから一人だが後々来てくれるだろう。

 

 放送室に隣した部屋にたどり着くとそこに銃を子供の頭に向け、こちらを睨みつけている男がいた。

 体は鍛え上げられており、武装している。

 

「来たか…武器を捨てて手を上げろ」

 

「分かったわ。でもその子には何もしないで」

 

 大人しく命令に従い手をあげる。

 

「よし次は…」

 

 そこで言葉が途切れる。視線は横に向くがまだ意識は子供から逸らさずにいる。これではまだ助けることはできない

 

 つい私も横を見てみると武さんがこちらに向けて走っていた。

 

「武さん!?」

 

 驚きのあまり声を出してしまう。

 

「なんだお前…、何者だ?」

 

 子供から意識が逸れかけている、もう少し…!

 

 すると武さんが手に持っていた買い物袋を投げる、どうやら中身が入っているようでそれなりに重そうだ。

 

「くっ、なんだ!」

 

 犯人の意識が完全に私と子供から武さんに行く。

 その隙をつき私は犯人に「重力操作」能力を使う。体が急に重くなり自分の重さに耐えられず犯人は倒れ地面にめり込み、気絶した。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 その後犯人を警察に引き取ってもらい帰路についていたが、気持ちは安堵感に包まれ、思わずため息を漏らしてしまう

 

「また助けられてしまいましたね」

 

 お礼をするつもりがまた借りを増やしてしまった。

 

「気にすることないよ」

 

 そういった彼はまるで夜空に浮かぶ星のように輝いて見えた。あの時武さんには一切の迷いがなかった。私が同じ状況で同じことができるだろうか…

 私の心に奥底に眠る「何か」が刺激される

 

「では、私はこれで」

 

「うん、今日はありがとう」

 

それを振り払うかのように別れを告げ、武さんとは別の方向へと歩いて行った。

 

 



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鈴さんとのお出かけ? (表)

 

 今朝、鈴さんから出かける日程が決まったと連絡が来た。ちょうど明日予定が空いたらしい。

 美少女との2回目のデートに胸を小躍りさせながらベットに入ったが、なかなか眠りにつくことは出来なかった。

 

 

 朝、時計を見るとちょうど八時半。余裕を持って起きれたようだ。

 歯を磨きながら自分の顔を見ると薄いクマができていた。どうやら楽しみにしすぎたようだ。身支度をし、家を出る。

 

 待ち合わせ場所に着くと鈴さんが居た。姿形が凛さんと似ていることもありなんとなく既視感を覚えるがそんな考えは彼女の服装を見て吹き飛んだ。

 

 彼女はいつも制服を着ていてどこかお堅い雰囲気を纏っていたが、今は白いスカート、可愛らしい帽子まで被っている。

 印象がまるで違う。包み込むような可愛さを醸し出し、後ろに天使の翼がついているような幻覚まで見えた。

 

「お、おはようございます。鈴さん」

 

「えぇ、おはようございます」

 

 彼女は柔らかい笑みを浮かべながらそう言う。周りの視線が鈴さんと主に嫉妬の視線が僕に降り注ぐ。まあ、僕も思わず顔を赤くしてしまっているのだが。

 

「武さん、どうしましたか?」

 

 僕がフリーズしてしまっているのを不思議に思ったのだろう、鈴さんはそんなことを聞いてくる

 

「い、いえ。なんでもないです」

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

 

 その後、一体どこに行くのかと思っていたらありとあらゆる場所に連れて行かれた。ゲームセンター、ボーリング場、デパート、公園…とにかく多くの場所へ行った。

 

 あらかた回って一息つくと、すでにあたりは暗くなっていた。

 

 今僕は一人で少し不穏な空気が漂う暗闇の中淡々と輝く星を見ていた。風が吹き木の枝が揺れガサガサと物音が鳴る。風も肌寒い。

 

 ここで僕の厨二心がくすぐられる。僕が昔妄想していたシチュエーションとかなり似ている状況で思わず心が揺さぶられる。

 

そしてついにーー

 

「そこにいるのは分かってるぞ」

 

 小声で声に出してしまう。

 

(決まった!)

 

………改めて考えると恥ずかしいよな。誰に聞かれてなかったよな?

ふと横を見ると鈴さんがいた。あまりの驚きに体がのけぞってしまう。

 

「ど、どうしましたか?」

 

「い、いえ。何でもないです」

 

 き、聞かれてないよな?聞かれてたら僕死ぬんだけど…

 

 ふと、ポケットに何が入っていることに気がついた。取り出してみると昔作った「超絶魔王最終形態ハマラーノ」の缶バッジだった。缶バッジというには大きく、不恰好だったが。

 

 思わず僕はその缶バッジを遠くへ思い切りぶん投げる。全力で投げた結果装備により強化された僕の力で凄い速度で缶バッジが飛んでいく。

 

 隣の鈴さんは驚いた顔をしていたが特にその後触れることもなくスルーしてくれた。

 

 その後寮に帰ったが、思い出してしまった忌まわしい記憶に苦しめられ眠りにつくことはなかった。

 

 

 




感想、評価よろしくお願いします


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鈴さんとのお出かけ? (裏)

side〜藤桜 鈴〜

 

 今日は武さんとお出かけに行く日だ。生徒会長なこともあり夏休み中もなかなか忙しかったのだが、半ば強引に時間を作った。

 

 待ち合わせ場所に着くと、有象無象から不快な視線が送られてくる。

 確かに学校にいる時と違い私は私服、それも多少オシャレをしているからこうなることは分かっていたが… 気持ち悪い

 

 そんなことを考えていると武さんがこちらへ向かい手を振りながら歩いてきた。

 

た。

 

「お、おはようございます。鈴さん」

 

「えぇ、おはようございます」

 

 そういって挨拶をすると彼は顔を若干赤くし、フリーズする。

 

(ふふっ、可愛い)

 

「武さん、どうしましたか?」

 

「い、いえ。なんでもないです」

 

 私に話しかけられるとなんとか表情を取り繕い、反応する。

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

 今回はとにかく細かい情報を多く知るため、多種多様な場所に行くことにしている。

 

 何かしら不満や希望が出るかもと思ったが、武さんは素直に私がいきたい所に素直に着いてきてくれた。

 

 でも武さんにちょくちょく弾丸が飛んできていた。武さんは素知らぬ顔で避けてスルーしていたが… 私の武さんを狙うなんて、後で始末しておきましょう。

 

 

 

 予定していた場所を周り終わった頃、一旦武さんと私は別行動をとっていた。今回は最初だから少しのトラブルしか起こさないように決めていた。

 

 まず、武さんの周りに監視を置いて、武さんがどう対応するか観察してみる。もちろん武さんが座っているベンチには盗聴器をつけている。

 

「そこにいるのは分かってるぞ」

 

 すぐに武さんがそんなことを言った。この短時間で監視に気づいたのだろう。そして警告をした。

 

 だが今はそんなことはどうでもよかった。いつも大人しい言葉しか言わない武さんがそんなことを言うギャップに心を撃ち抜かれてしまった。顔をが赤くなり、心臓の鼓動が速くなる。

 

 だが、そんな気持ちを必死に抑え平静を保ちながら武さんのそばに近づくと、私を見て武さんが驚いてのけぞる。私のことを警戒してなかったから、驚いたのかな? 意外と抜けてるところとあるのか…

 

「ど、どうしましたか?」

 

「い、いえ。何でもないです」

 

 そして次が今日の最後で最大のトラブルだ。

 

 隠れた暗殺者に私を狙わせ、武さんがどう動くのかを観察する。恐らく今までの武さんからして私のことを助けてくれると思う。

 

 その上情報も得れると言う一石二鳥の話だ。

 

 早速暗殺者に私を狙わせる。勿論私も対策をしているから怪我を負うことはないだろう。

 

 だが暗殺者が私を狙った瞬間ーー

 

 武さんが何かを暗殺者に向けて中々のスピードで投げていた。反応速度の速さに驚きつつ、私を助けてくれた事実をじっくりと噛み締める。

 

 浮かれたまま武さんと別れ、今日得た情報、動画、音声、物品をまとめ、武さんを眺めながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 




これからは1日1話更新になりそうです


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面倒事 (表)

今回は長め


 熱い日差しが僕のことを照りつける。僕の額をつたい汗が地面に落ちるが、それすらもすぐに日光が乾かしてしまう。

 

 周りを見渡しても人は一切見当たらず、ちょうどカフェの中で涼んでいる人が見える。

 

 散歩でもするかと外に出てみた僕だがここまで熱いとは考えていなかった。もう今日は家に帰るかなんて思い、ベンチから立ち上がった。すると、右の方に一つの人影が見えた。そして左にももう一つの人影が見えた。

 

 よく目を凝らしてみると鈴さんと凛さんだった。すごい偶然だなと思いつつ僕のそばに来た二人に話しかける。

 

「おはようございます、凛さんと鈴さん」

 

 二人を見ると汗をかいておらず、少し前まで涼しい所にいたことが伺える。

こんな猛暑の中でも二人の美しさは衰えることなく輝いて見える。

 

「ええ、おはようございます武さん。……と凛」

 

「おはようございます武さん。……と姉さん」

 

 二人は互いに挨拶したがどうもぎこちなく見える。表情もどこか微妙だ。姉妹仲があまり良くないのだろうか?

 

「それで武さんと凛はどんな関係で?」

 

 不意にそんなことを聞かれた。

 そう改めて言われると難しいな…まぁ普通に友達ってとこでいいかな。

 

「友達ですよ」

 

「へぇ、そう。友達ですか…」

 

 何やら深みのある言い方をする鈴さん。妹に悪い虫でもつかないように警戒しているのか? 鈴さんの顔を見ても薄い笑みを浮かべているだけで判断することは出来なかった。

 

「そっちこそ、姉さんと武さんはどんな関係なんですか?」

 

「いや、友達だけど…」

 

「そうですか。友達ですか…」

 

 こちらも含みがある言い方をする凛さん。同じように警戒しているのだろうか。

 それよりも暑い中じっとしていたせいでさらに汗が流れ出す。袖で拭ってもさらに汗がじわっと出てくる。

 

「じゃあ僕はここら辺で…」

 

 そう切り出してここを去ることにする。何やら二人は互いに見つめ合って動いていない。

 

 家のドアを開けるとカイロのように熱を発している体を冷たい空気が包み込む。プールにでも入ったような感覚を感じ、思わず体の力が抜けてしまう。

 

 テレビをつけるとテロ組織の活動が活発になっていることが報道されていた。

 

「物騒な世の中だなぁ」

 

 僕がこの前巻き込まれたテロ組織と同じものなのかな? 頭の中にそんな疑問が浮かんだが、報道されているニュースでは『ダークリオン』と言う名前は上がっていなかった。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 今日はいつもと比べて多少マシな気温だ。汗ばみはするが耐えれないほどではない。

 すると曲がり角から少女が飛び出してきた。

 

「大丈夫?」

 

 咄嗟に避けることができず、曲がり角から飛び出してきた少女とぶつかってしまった。背丈は中学生ぐらいで、夏なのに全身をローブで覆うような格好をしている。僕から距離をとりながら小さく体を丸めながら僕のことを見ている。怯えられているみたいだ。

 

「だ、大丈夫。」

 

「そう。なら良かった」

 

 うーんなんかおかしいな。ここまで怯えられるか普通? まあ何かしら事情があるんだろうけど… 関わらないでいいかな。

 

 そうして歩き出そうとしたら足元にバナナの皮があった。

 漫画のように思いっきり転び、体が宙に浮いた。

 地面と垂直になりながら少女を手で押してしまう。押されて後ろにのけぞり転びそうなる少女が見えた。

 

 次の瞬間ーー

 

 ドンッ

 

 銃声のような音ともに体の胸のあたりが急に熱くなった。

 そのまま地面に落下する。心臓の音がうるさい。体が生暖かい液体に浸かり、意識がぼやけていく。少女が何か言って僕の体を揺さぶっている…

 

「………し…いで」

 

そこで僕の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

 目を開け、だるい体を無理矢理おこす。辺りを見回すと僕は近くのベンチの上にいた。

 

 僕はどうしてたんだっけ…… 

 

そうだ! 確か少女とぶつかって、その後転んだら撃ち抜かれて気絶して、そこからの記憶はないな。

 

 まだドクドク心臓の鼓動がなっている。体も熱を帯びていた。

 

 胸のところを確認しても怪我どころか跡すらもない。あの子が治療してくれたのか…? 結構重症だったと思うけど……?

 

 十中八九能力によるものなんだろうけど、だとしたらかなりの高ランクなのかな? まあなんにせよ助けてくれたのは事実か。

 

 でもあの弾丸はあの子を狙ったものだったような… 僕があの子を押してなければあの子に当たってたと思うんだけどなあ。

 

 なんかまた面倒ごとの匂いがするな……

 

 急に地面に影がさす。僕が影を疑問に思うのとほぼ同時に上から「何か」が落ちて来た。

 

 ドオン!

 

 ものすごい衝撃とともに砂煙が辺りに立ち込める地面のコンクリートはひび割れ、その衝撃の強さを物語る。

 

 上を見ると人間ではない怪物とでも呼ぶべき「何か」がいた。

 顔は溶けたように限界をとどめておらず。腕からは鋭利なツノのようなものが生え、3つの目がこちらを覗き込むように見つめている。足や腕は図体に応じた以上の大きさ、太さを持っていた。

 

(なんか今日色々ありすぎじゃない?)

 

 僕は半ば現実逃避していた。足がすくんで動かない。「何か」がツノがついた腕を振り上げる。

 

 頭をフル回転させる。盾? だめだ、流石にあれは防げない上に投げても効かないだろう。

 なら飛行機能? 今からじゃ間に合わないし制御すらできない状況じゃ意味がない。 

 

 なら? なら?

 

 半分ヤケクソで相手の腹に向かって拳を繰り出す、やけくそながら全力の力を込めたパンチだ。しかし通用するわけがないと思った瞬間。

 

 ドン!

 

 拳は体を貫通し大きな穴が空く。振り上げられた腕は止まり、体がいくらかピクピクと細かく痙攣した後ーー

 

 ズウン…

 

 そのまま後ろに倒れて動かなくなった。どうやら倒したらしい。

 もはやツッコミどころしかないがもはや思考をすることをやめ何も考えずその場を後にした。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 その様子は監視カメラに映っていたので学園長から事情聴取を受けた。具体的にはあの生物の様子や強さ、力についてだ。

 

 後から詳しく聞くとあの生物は対能力者用生物兵器だったらしく、ニュースでも報道されていた。あの後超能力者協会に引き取られたらしい。僕個人を狙ったのかテロ行為なのかは分からなかなった。

 

 僕のおかげで被害が出なかったと言われたが、恐らくあれは僕の力ではないので否定しておいた。機密情報という観点でも報道されることはないと謝られたがぶっちゃけ僕はその方が好都合だ。

 

今日は騒がしい1日だったなあ……

 

 



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面倒事 (裏)

side〜藤桜 凛〜

 

「あれ、あれは…」

 

 偶然、武さんがベンチに座ってるのが見えた。挨拶がてらに話しかけようとベンチに歩いていくと向こう側に私の姉ーー藤桜 鈴がいた。

 何故ここに?偶然なのか? そんな疑問を抱えつつ武さんのそばで止まると姉さんも同じように止まった。

 

「おはようございます、凛さんと鈴さん」

 

そんなふうに武さんが私と姉さんに挨拶をした。やはり武さんと姉さんは知り合いなのだろう。

 

「ええ、おはようございます武さん。……と凛」

 

「おはようございます武さん。……と姉さん」

 

 互いに牽制をしながら挨拶をする。姉さんも表情は薄い笑みで隠してはいるが、仮面が取れればどんな表情が出てくるのか。

 

「それで武さんと凛はどんな関係で?」

 

 不意に姉さんがそんなことを武さんに聞く。やはりおかしい、姉さんは基本的に他人に興味を持たず見下している。その姉さんがこんな執着するような行動をするなんて…

 

「友達ですよ」

 

「へぇ、そう。友達ですか…」

 

 武さんも「友達」という的確で当たり障りのない答えを返した。

 

「そっちこそ、姉さんと武さんはどんな関係なんですか?」

 

 こちらからも姉さんとの関係を聞かせてもらう。

 

「いや、友達だけど…」

 

「そうですか。友達ですか…」

 

 なんの変哲もない回答に見えるが、相手が姉さんだというのが問題だ。あの姉さんが友達なんてものを作るのか?

 

「じゃあ僕はここら辺で…」

 

 そう話を切り上げ、武さんがここから去っていく。必然的にこの場には二人だけが残る。

 

「姉さ「凛、彼に手を出すのはやめてくれない?」

 

「なっ…そんな勝手な」

 

「彼は私が見つけたのよ。そして私は彼のものだし彼は私のもの。分かるでしょ? 私の妹だもの」

 

 その刺すような冷たい声とこの世のものとは思えない歪んだ表情に背中に嫌な汗が垂れる。やはり姉は尋常じゃなく彼に執着している。

 

 今まで私は姉に一度も何かで勝てたことがない。勉強、能力、性格、評判……全てだ。無意識にもその事実は私の中で劣等感を感じさせた。 裏の性格に気付いてしまったことも拍車をかけ、姉に逆らうことなく生きて来た。

 

 ……だけど、これだけは譲れない。姉さんと武さんは真逆とも言える存在だ。他人に興味を持たず助けるという考えすら持たない人と自分を犠牲にしてでも誰かを必ず助けようとする人、私が嫌悪している人と尊敬している人。二人はどこまでも真逆だ。

 

 仮に私でなくたってもいい。でも、姉さんと結ばれる、一緒に生きていくことだけはダメだ。

 

「嫌です。あなたが手を引いてください」

 

 はっきりと拒絶をすると、姉さんは驚いたような表情を浮かべた後、こちらを見つめながら殺気を向けて来た。

 

 辺りが闇に包まれたような錯覚を覚える。足がすくみ、冷や汗が止まらない。

 すると急に殺気が霧散した。

 

「へぇ、貴方が私に逆らうなんて… 面白いじゃない」

 

 そう言って姉さんは私に背を向け去っていった。

 

「はぁ……!」

 

 体から力が抜けその場にへたり込みそうになる。まだ心臓の鼓動が速く、息が荒い。姉に逆らうということはこういうことだ。

 

 でも…、それでも。

 もう覚悟は決めた、あとは進むだけだ。

 

side〜???〜

 

 少女は優しい心を持つ人間だった。大人しかったが、困ってる人がいれば見過ごせないような不器用な子供だ。

 

 能力が発現したのも傷ついた小鳥を助けようとしたためだった。もし彼女の能力が怪我を治す程度の能力ならばそのまま人々を癒しながら幸せに生きていただろう。

 

 だが能力検査で明らかになったのはその異常なまでの出力だった。骨折どころか重症、致命傷、果ては死者蘇生すらもできるような出力を持っていた。

 すぐにSランク能力者認定された。もちろん彼女もその力を世のために使おうと少しずつではあるが重症者を治療し始めていた。

 

 このまま全てがうまくいくと思った矢先、その悲劇は起きた。

 彼女の近くでテロが起き、多大な被害が出た。もちろん少女は必死に能力を使った。しかし死者蘇生ができるという噂を聞きつけた誰かが家族を生き返らせてくれるように懇願したのだ。

 

 少女はそれを断った。理由は今は亡き母との約束だ。

 

 検査を受ける前に少女は死んだ小鳥を生き返らせたことがある。善意からくるものだったが、それを見た母は見たことのない表情でそれを叱った。今まで一度も怒ったことがないような母がだ。

 

 『いい? 確かに貴方が助けてあげたいという思いでその鳥を助けてあげたのは分かるわ。でも死というものは絶対に曲げちゃいけないものなの、終わりがあるから今を生きようともがき、輝く。だからもうその力で誰かを生き返らせるのはダメよ。』

 

 子供の頃は完璧には理解できなかったが、その言葉を胸に刻んだ。

 その後すぐに母は亡くなってしまったから、今ではその言葉が遺言のようなものだ。

 

 しかし断った少女をその男は弾劾し、大きな声で叫んだ。

 

 『何故助けられるのに助けない。この人殺し!』

 

 悪意は感染する。周りの誰かを亡くした人々もこぞって少女を責めた。少女の味方をするものはーーいなかった。

 

 少女は心を閉ざし、能力をあまり使わなくなり家に引きこもるようになった。

 

 だから今日外に出たのは本当に気まぐれだ。ずっと家にいるのがなんとなく嫌だったからだ。

 

 久しぶりの外の世界に少し興奮しながら歩き回っていると高校生ぐらいの男の子とぶつかってしまった。

 

「大丈夫?」

 

 私を心配して聞いてくれるが、どうしても他人との交流には怯えてしまい声が詰まってしまう。

 

「だ、大丈夫。」

 

「そう。なら良かった」

 

 安心したような表情を浮かべた彼が通り過ぎるかと思うと

 

 ーー彼が私のことを手で押し飛ばした。勢いに耐えれず座り込んでしまう。何をするんだと思って前を見ると、彼の胸が赤く染まっていた。

 

 撃たれた。その事実を認識するまでに時間はかからなかった。すぐさま能力で相手の場所を察知し、過剰な回復を送り暗殺者を倒した。

 

 その後すぐに全力で能力を使って治療をした。とにかく焦っていた、動揺していた。

 彼は私を助けるために命をかけ、重傷を負い命が危ない状況にいる。

 先の一件とは違い正真正銘私のせいで傷つき、命を落とそうとしていたからだ。

 

 なんとか治療が間に合い、後も残らないレベルで治療できた。しかし、彼に合わせる顔がなく、ベンチに彼を寝かせそのままそこを去った。

 

side〜開発者〜

 

 やっと、やっと完成したぞ! 史上最高の生物兵器が!

 

 なんといってもこれの長所は耐久力だ。Aランク能力者の攻撃ですらほぼ受け付けないほどだ。少しスピードと攻撃力は劣るが…それを埋めてあまりある性能だ。

 

 だがまずこの性能を世間に知らしめなくてはならないが……何かちょうどいい相手はいないものか。

 

 そういえばちょうど暗殺を依頼されていたそこそこ実力がありそうな奴がいたなそいつにするか。

 

 

$ $ $ $ $

 

 ドオン!

 

 斎藤武の前に生物兵器を降り立たせる。相手が動揺しているうちに手を振り上げ攻撃しようとする。それに対して何故か斎藤武は腹に向けてパンチを繰り出した。そういう能力を持っているという情報はなかったはずだが、やけを起こしたか?

 

「ふふっ、パンチなど効くはずもないだろう。仮にAランク能力者だとしてもほぼ効かないさ」

 

 ドン!

 

「へ?」

 

 斎藤武のパンチは豆腐を殴るようにいとも簡単に腹を貫通した。

 

 ズウン…

 

 簡単に最高傑作の生物兵器が倒されてしまった。

 

 「へ? へへ、僕の最高傑作は? あれ? ちが、え?…」

 

 その後彼は生物兵器を研究することはやめ、世のため人のためにその頭脳を役立てたとさ。めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 




主人公以外全員シリアス(´-ω-`)


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僕は2位になる! (表)

 主人公が2位になりたい話です


 いつでもチラシや広告は出回っているものだ。

 ふと、偶然目にしただけだった。内容は夏休みにはよくあるような能力者同士の大会でバトロワ形式という本来僕が絶対に興味を持たないようなものである。

 

 しかし、今回はわけが違った。僕は昔から追っかけているアニメがある。グッズも欠かさず収集して大切に保管していた。

 僕が喉から手が出るほど欲しい、そのアニメの限定版フィギュアが大会の商品一覧にあったのだ。

 

 欲しい。とにかく欲しい。だが僕が大会なんて勝てるわけがないしそもそも無能力者だから出場なんてできるのか…?

 一応端っこに『能力の有無、ランクは問いません』と書いているから大丈夫だろう。後はうちの学校と同じ方式だから怪我も心配ない。

 

 今更気づいたがかなり規模の大きい大会みたいだ。ということは記念受験的なノリで参加する人もいるんじゃないか…? 出てみるだけ出てみようかな。

 

 制限時間は1時間でバトロワ形式。基本的により長い間生き残っていた人に時間に応じてポイントが与えられる。それだけではなく他の人を倒したり、配置されたロボットを倒すなどすることによって獲得できるらしい。

 

 限定フィギュアは2位の副賞なのか……無理ゲーな気がする。でも参加申し込みだけでもしとくか。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 いきなり時間は飛んで大会当日。

 無能力者でも参加できたようだ。受付ですごい驚かれたけど。

 

 今、僕は選手控え室にいる。そこそこの広さがありびっしりと人が入っている状況だ。

 周りを見渡すと屈強な男たちやそれに比べると華奢でとても戦いが強いように見えない女の子、隅っこでぶつぶつ言っている人もいる。

 というか何人いるんだこれ…まだこれで全員じゃなく一部のはずなんだけど……

 

 一人ずつフィールドの所定の位置に案内されていく。僕の番もきたようで声をかけられ、森の中へと連れてこられた。

 同時に地図を渡されポイントをゲットできる場所など情報がかなり乗っていた。まず大半が僕には無理そうなものだが。

 

 3! 2! 1! 

 

 スタート!

 

 急にカウントダウンが始まる。どうやら大会がスタートしたようだ。

 僕ができることは目立たないように移動しながら少しでも多くのポイントをゲットして長く生き残るだけだ。

 

 まず『パズルを解くとポイントをゲット』という場所に向けて移動することにする。他の人がいたら基本的には撤退するけど。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 はーい。迷子になりましたー。詰みましたー。

 

 何でこんなことになるんだろう毎回……別に僕方向音痴じゃないんだけどな……

 

 今は石の壁沿いにひたすら歩いている。現在地は全く分からないけど。

 

 すると他に何か触れる。見てみるとにボタンがついている石盤?のようなものがあった。ボタンには0〜9までの数字が振ってあり押せそうだ。おそらくパスワードのようなものだろう。

 

 (………………押してみるか?)

 

 どうせ迷子なんだし思い出に残ることでもしたほうがいいだろう。そう開き直り指をボタンに向ける。

 

 そしてボタンを連打しまくる。20回ほど押したところでやめてみるともちろん何も起こらない。

 

 (まぁそりゃそうか…ペナルティでもあるよりはマシか……ってえ?)

 

 ゴゴゴ……

 

 急に石の壁に割れ目が入ったと思うと扉が現れる。扉は重々しい音を立てながら開き、中には道が続いていた。

 

 (入ってみるか)

 

 中に入ってみるとひんやりと冷たい空気が肌に触れる。道をある程度進んでみると開けた場所にでた。

ポツンと台の上に透き通った緑の玉が置いてある。大きさはビー玉ぐらいだ。ポイントと交換できるアイテムかな? 少しは2位に近づいただろう。

 

 玉を取ったらすぐに外に出るとーー

 

 「ニンゲン、ハッケン。 ハイジョ、ハイジョ。」

 

 配置されたロボットがいた。おそらく一番弱いタイプのロボットだ。

 

 (逃げるか? いや……)

 

 戦ってみよう。装備をしている僕ならなんとか勝てるレベルの敵だ。

 

 確かにポイント的には大したものが得られるわけじゃない、でも少しは確実に目標に近づくことができる。それにいつも僕は逃げてばかりだ。命の危険があるからしょうがないとはいえ、こんな時ぐらいは立ち向かわかないと。

 

 盾を出して構え、相手を見据える。

 

 戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 あの後辛勝ながらなんとかロボットに勝つことができた。さらに追加で少し強めのロボットと盾一発でやられためちゃくちゃ弱いロボットも倒し、最後まで生き残った。

 

 ぶっちゃけ生き残れたのは運が良かっただけだ。あまり見つかることもなく、見つかったら逃げ回っていたらなんとかなった。

 

 そしてついに順位発表だ。

 

 2位はまず無理だろう。でも自分なりに全力を尽くして少しは近づけたと信じたい。何かの間違いで10位以内とかに入ってないかなぁ。

 

 どんどん順位が発表されていく、10位に入っても僕の名前は呼ばれることはない。ついに2位の発表となった。

 

「2位の発表です! 第2位は 315ptの 上崎 光さんです!」

 

「ダメだったか……まぁしょうがないか」

 

 そんなことを言いながら虚しいような悔しいような気持ちが溢れ出してしまう。表彰者が壇上に上がり賞品を受け取るのを無言で見つめ、唇を強く噛む。

 

 そして1位の発表となる。

 

 「ついに1位の発表です! 第1位はーー 10204ptの 斎藤 武さんです!」

 

 

 

 

「はい?」

 

 

 




シリアスをしたかった主人公。出来ませんでした。


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僕は2位になる! (裏)

感想、評価よろしくお願いします(*´ω`*)


side〜主催者〜

 

「さて、誰が優勝するかな?」

 

 そんなことを言いながら目の前に無数にあるモニターを見つめる。モニターには大会のフィールドが映っており無数の参加者たちが目まぐるしく動いている。

 

 そのうちの一つのモニターに目をやる。誰もおらず、岩しかない精悍な風景の場所が映っている。

 

「流石に意地悪しすぎたかもなあ」

 

 一つの隠し要素としてここに隠し扉を設定したのだがあまりに難しくしすぎたかもしれない。

 

 まずこの扉の場所を知るために設置された謎解きをする必要がある。

そんなことは知らされてないため偶然ポイント目的で解くことになるだろう。

 

 すると扉の場所に加えてある4つの場所を知ることができる。一つの場所につき一体ロボットが設置されてある。強さについてはBランク能力者なら倒せるレベルだ。そして倒すことにより5桁のパスワードが手に入るのでそれを組み合わせる。

 パスワードを入力して扉の中に入り無事10000ポイントと交換できるアイテムをゲット!

 

 ……今思っても何故そんなものを作ったのか分からない、酔っていた時に考えたからだろうか。こういう遊びというか隠し要素を入れるのはいいのだがもう少し難易度を考えた方が明らかに良かった。

 

 何かある可能性は高いがポイントが貰えるという保証も無いわけだしやる人などほぼいないだろう。

 

 今更そんなことを考えても仕方ない、大人しく見守るとしよう。

 

 するとモニターにある一人の少年が映り込む。そして隠し扉の目の前でパスワードを入力する装置を見つめている。

 

 まあ隠し扉を見つけた所でどうしようもないのだが。そう心の中で笑っていると急に少年がボタンを押し始めた。

 

 少年は正解通りにパスワードを入力していき、20桁全てを打ち終えた。

 

(なんだと! どこからか漏れたのか? そんな筈は……)

 

 あれよあれよと少年は扉の中に入りアイテムを入手してしまった。これで優勝は確定だろう。

 

(どうする? ルールは曲げられない。認めるしかないのか)

 

 すぐにその少年の経歴を確認する。引き出しの奥底にしまわれていた資料を取り出し確認する。

 

そこには異例の聖内学園入学、輝かしい実績の数々が載っていた。一人の経歴とは思えない数だ。

 

(斎藤武……何者だ?)

 

 

side〜上崎 光〜

 

「ふっ、余裕だな」

 

 目の前にいるロボットの胴体に蹴りを入れ、一撃で粉砕しながら呟く。蹴られたロボットはピクリとも動くことなく横たわっている。

 

 上崎光はBランク能力者である。「自分の速度を上げる」能力を持っており、その汎用性と強力さからAランク能力者にも届き得るポテンシャルを持つと言われている。

 

 出てくるロボットなどからの敵ではない、片っ端からロボットを狩っていく、がーー

 

 ガキッ!

 

「防がれた…!?」

 

 今まで一撃で倒していたのにも関わらずロボットは両腕でしっかりと彼の攻撃を難なく耐え切ったのである。

 

 体勢を直した瞬間にロボットが彼の背後に回り込み、腕の銃器で彼を攻撃した。

 

 身を翻しなんとか避ける。そのままロボットに向けて突進しパンチを繰り出す。しかし今度は難なく避けられてしまう。

 

 その後もこちらの攻撃は一切効かず、あちらは確実にダメージを与えてくる。

 

 分が悪いと思い一度引く、特に追ってくるような様子もない。

 

「くそっ! いきなり強くなりすぎだろ」

 

 物陰からロボットを視認しながら呟く。一応弱点らしきものはわかった。首だ。首の装甲だけ極端に柔くなっている。しかし、そこを攻撃することができないから倒せないのだが。

 

「まあいい次に行くか」

 

 と思ったのだが、あのロボットに別の参加者が向かってきた。どうらや戦うつもりらしい。

 もしかしたら漁夫の利を得られるかもしれないな…… そう考えて観察を続ける。

 

 ゴガッ!

 

 あっさり終わった。俺を苦しめたロボットはいとも簡単に倒された。

ただ手に持っていた盾のようなものを投げただけ。ロボットは避けたがブーメランのように返ってきた盾に首を刈り取られ一瞬で終わった。

 

「あいつはダメだ…… ヤバすぎる」

 

 いくらなんでもあいつを狙う気は起きない。あんな神業を何気なしにやるやつに挑むべきではない。そう思い、俺はそこを去った。

 

 

$ $ $ $ $

 

 ポイントの内訳を聞くと

 

 僕が必死に倒した一番弱いロボット 1ポイント

 ちょっと強めのロボット      3ポイント

 盾で一撃だったロボット     100ポイント

 最後まで生き残ったボーナス   100ポイント

 あの宝石?みたいなアイテム  10000ポイント だった。

 

 理不尽じゃないか?あんだけ必死になったロボットが1ポイントと3ポイントって…… 10000ポイントってなんだよ、それだけで2位の人の何十倍あると思ったんだ。

 

 賞品として何やらすごいナイフをもらったがものすごくいらない。限定版のフィギュアを寄越せ。使わないんだよこんなもの。

 

 はあ、そろそろ夏休みも終わりだしなあ。

 

 

 




感想、評価よろしくお願いします(=´∀`)人(´∀`=)


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あ、壊れちゃった (表)

感想、評価ください
ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘


 夏休みも明け、学校が始まった。今僕は装備の調整と使い心地について伝えるために生産科に来ている。

 

 生産科ではみんなが忙しなく動き、意味不明な言葉が飛び交っている。が、個人的には好きな雰囲気だ。

 

 目の前には小林さんがおり、何やら僕の装備を改造している。すると誰かが小林さんに近づいてきた。

 

 紫色の髪が短めに切り揃えられてあり、そのくせ前髪は長く顔がよく見えない。なんだかおどおどとしている様子だ。

 

「小林……、今何してる……」

 

 小林さんに話しかけてきたがいかんせん声が小さい。近くにいる僕でも聞き逃してしまうほどだ。

 

「今? 装備の調整だよー」

 

 だが、慣れているのか小林さんは特に気にする様子もなく返す。

 

「あ、紹介するねー。この子は天野 可憐。プログラマーであの配布されてる端末を作ったりと結構すごい子なんだよ」

 

「あ、僕は一年の斎藤 武 無能力者です。よろしくお願いします」

 

「天野……、可憐……。よろしく……」

 

 天野さんか。というかあの端末を作ったって…… かなり前のことだが承認/拒否のボタンが逆になったのってこの子の仕業だったんじゃ?

 

 こんな子があんな陰湿な仕掛けを施すなんて。人は見かけによらないな……

 

『緊急事態! 緊急事態! 学園のサイバーが何者かに攻撃されています!』

 

「つっ!」

 

 急にそんなアナウンスが流れた。攻撃……? ハッキングをされているってことか?

 

 いつのまにか天野さんはパソコンの前に座っており、キーボードを叩いて何かを打ち込んでいる。

 

「多分……、能力者による仕業……」

 

 詳しいことはよくわからないがハッカーの攻撃を防いでいるんだろう。自分の端末を見てみるとよくわからない画面が表示され、雑音が鳴っている。

 何故かタップしても反応しない、手当たり次第タップしまくってみると謎の暗号が表示された。

 

「なんだこれ? 暗号?」

 

 わからないのでとにかく叩いたり、電源ボタンを連打したり、画面をタップしてみる。するとバグったのかまた訳のわからない画像や文字列が出てきた。

 

 急に error error と表示されーー

 

 ボンッ!

 

 端末が爆発した。

 

 端末は原型をとどめておらず画面は粉々になり、バッテリーのようなものが露出している。見るも悲惨な姿になってしまった。

 

 周りを見るとみんなが僕のことを見ている。そりゃそうか……

 

 だけどいつの間にかハッカーの攻撃は防げたようだ。先程までの騒がしさや緊張感がなくなっていた。天野さんがなんとかしてくれたのかな? とりあえず良かった……

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 あの端末は後から無料で再給付された。結構高価そうなのに…… 僕のミスで壊れたのにも関わらず無料なのか。太っ腹だなあ。

 

 なんかまた噂が流れているけど無視しよう。

 

 

 



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あ、壊れちゃった (裏)

side〜ハッカー〜

 

『情報』

 

 時には何よりも大事な値千金の価値が情報にはあるものである。だが当然、価値が高いほど入手する難易度は上がっていくこととなる。

 

 現代で価値が高い情報の一つとなるものが能力者に関する情報だ。能力自体は高ランクであるほど公になっているが、細かな情報までは分からない。さらに隠蔽されている能力者もいたりする。

 

 それらの情報が大量にある場所、それが聖内学園だ。

 

 だから俺はターゲットを聖内学園に定めた。しかし、警備は尋常じゃないレベルで頑丈だ。もともと難攻不落と言えるセキュリティの上、常に高度な技量を持った誰かしらがいる。

 今まで幾度となく試みたものはいたが誰一人として成功したものはいない。

 

 だが今回はただでさえ希少な機械系の能力者が二人いる。別々に攻撃することにより、一人が時間稼ぎを一人が情報を盗むことができる。

 

 もうすでに一人がセキュリティに侵入し、応戦されている。まあ互角、もしくはあちら側が少し上といった所だろう。

 

 「早速やるか」

 

 それと同時に俺もセキュリティの中に侵入する。あちら側に気を取られているうちに入り込み情報を盗んでやろう。

 だが思ったよりもあっちが押され始めている、これは手早く済まさないとな。

 

「何だ?」

 

 急にどこからか攻撃されたようだ。すぐに応戦し、発生元を調べてみると…… なっ! ただの一端末から攻撃されているだと!

 

 あの端末などハッキングはおろかスペックすらも大して高いものではない、あれで逆にこちらにハッキングを仕掛けるなど不可能だ。

 

 こちら側も必死に応戦する。しかしあちら側は少しずつ、しかし確実にダメージを与えてくる。

 

 だがこちらも負けてはいられない、何とか相手の端末の自爆装置を起動させ爆発させる。

 

「はあ、これでとりあえず何とかなったか」

 

 だがこれ以上は危険だ。時間稼ぎもすでに限界だろう、ここは素直に諦めるしかない。

 

「こいつ…… 何者だ?」

 

 一端末から攻撃を仕掛けてくるなんてあり得ない……、いったいどれほどの腕を持っているんだ。

 

 

side〜天野 可憐〜

 

 昔からパソコンが好きだった。うまく喋れなかったり自分を主張できない中で、パソコンだけはキーボードを正解通り打ち込めば結果が出た。

 唯一、一生懸命に打ちこめるものだった。

 

 それでも最初の方は私をみる目は変わらず、色々な罵詈雑言を投げかけられた。

 

「オタク」 「キモい」 「ボッチ」

 

 だけどそれでも自分の好きなものを貫き通した。

 するといずれ友達もできて、いろんな人から褒められるようになった。

 パソコンは自分の誇りと言えるものである。

 

 だから、目の前のこいつには負けられない。

 

 聖内学園にハッキングを仕掛けてきたこいつ。聖内学園を守るという意味でも自分の誇りに賭けても負けるわけにはいかなかった。

 

 「っ……、もう一人いる……」

 

 一人だけなら何とかなるが、恐らく仲間と思われる誰かがもう一人侵入してきた。

 一人に時間を取られてるうちにセキュリティを破ろうとしている。こいつとはほぼ互角、もう一人にかける余力はない……。

 

 すると急に仲間の攻撃が止まった、どうやら誰かに攻撃され応戦しているようだ。誰だ? 今は私以外にはいない筈。

 

 何となく後ろを振りむくと、友達の恩人である斎藤武が何かを端末に打ち込んでいた。

 

「まさか……、あれで……」

 

 あんなものでハッキングを防ぐなど聞いたこともない、だが実際に相手は止まっている。

 

 ……いや、とにかく今はこいつに勝たなければ。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 あの後一人のハッカーを撃退すると、もう一人もこれ以上は無理と判断したのか去っていった。

 

 途中で斎藤武の端末が爆発したのは、遠隔で相手が自爆装置を起動させたのだろう。

 ということはやはり斎藤武はあの端末で応戦していたということだ。

 

 まさか機械系の能力まで持っているとは思わなかった……

 まだまだ力の底が一切見えない。

 

$ $ $ $ $

 

 なんかさらに噂が大きくなってる。

 曰く、「斎藤武は機械系のスキルまで持っており、その力はトップクラスである」

 

 ……ねえよそんなスキル。それどころか無能力者だよ。

 

 すると急に僕の目の前に黒いフードを被った長身の誰かが降り立つ。

 

 「お前のそのただの一端末でプロのハッカーを撃退する技術……俺が貰い受ける!」

 

 「うるせえぇぇぇ!知らねえよおぉぉぉ!」

 

 

 

 

 

 




細いところは気にしないで下さい((((;゚Д゚)))))))


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え? みんな強くね? (表)

感想、評価よろしくお願いします(*゚∀゚*)


「敵は何人だ?」

 

「多分……10人以上いるわね」

 

「了解」

 

 目の前の銃を片手に持った春人くんと凛さんは、壁に身を隠して部屋の様子を覗き込んでいる。

 二人とも真剣な目つきをしており集中力を極限まで高めている。今なら蚊1匹とて見逃さないだろう

 

 いや絶対僕必要ないでしょ? 何でこんなことに……

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 始まりは突然だった。

 急に学園長室に呼び出され、中に入ると凛さんと春人くんがいた。それれから、学園長に「おつかい」とやらに行ってこいと言われた。

 

 何かの買い出しかな? なんてお気楽なことを考えていると僕達を乗せた車はみるみる治安が悪そうな場所へ。

 何かおかしいな、と思ったが時すでに遅く。あたりから銃声がなり始め、急いで車から降りて逃げ去った。

 

 そこで「おつかい」とは何かの隠語だと初めて気がついた。

 内容はテロ組織の支部が企んでいる計画とやらを阻止すること。

 

 ぶっちゃけこの時点でめちゃくちゃ逃げ出したい…… けれどこの計画を阻止しなければ民間人に多大な被害が出てしまう。

 罪悪感と良心のせいで逃げたくても逃げられない。

 

 その後見るからにボロボロで怪しい廃ビルに入って、今の状況というわけだ。

 

$ $ $ $ $

 

「私の能力で一気に片付けます」

 

 そう言って凛さんが相手に向かって手を向ける。

 すると全員が何かに押しつぶされるように倒れ込む。抵抗する間も無く全員が気絶し、そのまま起き上がることはない。

 

 強すぎない? あんなのどうやって防ぐの? 

 あまりの強力さに僕がいらないと思ってしまいかけ……いやいらないだろ。

 

 すると部屋の奥の方から足音が鳴り響く。

 

 コツン コツン コツン

 

 足音はどんどん近づいてくる。二人は銃を構えながら警戒体制を取る。いや貴方達は銃いらないでしょ。

 一応僕も警戒して銃を構えておくが……この銃殺傷能力ゼロなんだよな

 

「侵入者か……なかなかやるようだが、ここで仕留めさせてもらう」

 

「お前がこのアジトのボスか?」

 

「ああ、そうだ。悪いが神のためにこの計画を止めるわけにはいかないのだよ」

 

「いや、止めさせてもらうわ!」

 

 凛さんが同じように能力を使おうとする、しかしーー

 

「ぐっ!?」

 

「大丈夫!? 凛さん!」

 

 何故か急に凛さんの方が能力を受けたように倒れ込んでしまう。装備のおかげで気絶は免れたが、ダメージを受けて立ち上がれずにいる。

 

「だ、大丈夫です。でも……」

 

「あいつの能力……まさか能力の反射か?」

 

 ええ……なにそれチートじゃん。無効化の上位互換みたいなもんじゃん。

 

「ご名答だよ。さて、どうする?」

 

「能力が使えないってんなら……殴り合いと行こうじゃないか!」

 

 そう言って春人くんは相手に突っ込んでいく。無鉄砲すぎません? 

 相手に蹴りを叩き込むが、相手は身をのけぞりスレスレで避ける。その勢いでさらに、相手の顔面に拳を向ける。

 しかし、相手は手首を掴んで防ぎ、カウンターとして横腹を蹴る。

 

 ギリギリで手首を振り解き、蹴りを避けた。

 そして一旦戦線を離脱しこちらに引いてくる。

 

 いやすごすぎない? あまりにも鮮やかな戦いに状況も忘れて僕は熱中してしまっていた。まだ興奮がおさまらない。

 

「あいつ、肉弾戦もかなり強えぞ。多分俺じゃ勝てねえ……悔しいが武、頼んだ」

 

「武さん、申し訳ないですが……私からもお願いします」

 

「ああ、うんうん。了解」

 

 …………あれ? 僕今なに言った?

 え、嘘でしょ。何で僕に任せるの? 勝てるわけないけど。

 

「次は貴様が相手か……噂の力見せてもらおうか」

 

 終わったぜ! また噂が足を引っ張ってきたよ! 

 無能力者だから能力を反射するとやらは関係ないからマシではあるだろう。……が肉弾戦でもボコボコにされる未来しか見えない。

 

「来ないのか? ならばこちらから行くぞ」

 

 行きたくもねえ! そして来るな!

 何もできないことに関わらず、体が生きようと、とにかく動く。だがそんなことをしても何かが変わるわけもなく。

 

 相手がこちらに向かってくる、その瞬間ーー

 

「がっ! バカな……。 ぐっ!?」

 

 急に相手が苦しみだし、体から血が流れ始める。そしてもう一回呻き声をあげて倒れる。

 そのまま起き上がることはない。

 

「助かった……のか?」

 

 僕はこういう時は妙に運がいい。悪運もその分強いけど。

 

「すげえな武! どうやって反射を破ったんだ?」

 

 え? 何のこと?

 

 

 




ネタがねえよおおぉぉ! 文章力も構成力も上がらねえよおぉぉ! 
助けてえぇぇ!_| ̄|○


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え? みんな強くね? (裏)

side〜???〜

 

「侵入者か……、なかなかやるようだが、ここで仕留めさせてもらう」

 

 計画は順調に進んでいると思っていたのだが、どこからか漏れてしまっていたようだな。

 抵抗する間も無く私の部下が全員やられたのか。敵は強力な能力の持ち主なのだろう。

 だがこの私には関係ない。

 

「お前がこのアジトのボスか?」

 

「ああ、そうだ。悪いが神のためにこの計画を止めるわけにはいかないのだよ」

 

「いや、止めさせてもらうわ!」

 

 どうやら一人の少女が能力を使ってきたらしい。おそらく重力操作といったところだろう。だが……

 

「ぐっ!?」

 

「大丈夫!? 凛さん!」

 

 そのまま能力を反射して相手にダメージを与える。重症ではないがしばらくはまともに戦えないだろう……後二人か。

 

「だ、大丈夫です。でも……」

 

「あいつの能力……まさか能力の反射か?」

 

 まあ今のを見たら当然バレることは承知済みだ。バレたところで支障はないからな。

 

「ご名答だよ。さて、どうする?」

 

「能力が使えないってんなら……殴り合いと行こうじゃないか!」

 

 そう言って少年が私に突っ込んで来る。

 ほう……なかなかやるな。だが私には及ばないだろう。

 

「あいつ、肉弾戦もかなり強えぞ。多分俺じゃ勝てねえ……悔しいが武、頼んだ」

 

「武さん、申し訳ないですが……私からもお願いします」

 

「ああ、うんうん。了解」

 

 どうやらもう一人の少年にバトンを渡すようだ……、確か最近妙に噂になっていた少年だな。だがそれも能力ありきだろう、肉弾戦は大したものではない筈だ。

 

「次は貴様が相手か……噂の力見せてもらおうか」

 

 だが相手は一向に動く気配がない。どころかこちらに意識すら向けていないようだ。ついに痺れを切らし、こちらから行くことにする。

 

「来ないのか? ならばこちらから行くぞ」

 

 少年に向かって行く瞬間ーー

 

 私の肩を弾丸が撃ち抜いた。そしてもう一発の弾丸が腹を撃ち抜く。

 

「がっ! バカな……。 ぐっ!?」

 

 なんだと! 能力が関与していればなんであれ、私に能力による攻撃は効かない筈だ。

 相手が銃を撃った様子もない、まさか初めから手配でもしていたのか!?

 

 (何て……奴だ)

 

 そこで私の意識は闇に落ちた。

 

 

side〜暗殺者〜

 

 

 「本当に……何でこんな事しないといけないんだか」

 

 急に暗殺の依頼が来たと思ったら期限が今日までとか。

 その上今日に限って複数人で車に乗り、妙な場所へ出かけるとか。

 運が悪すぎないか?

 

 安全に暗殺するチャンスを伺っていると、廃ビルに入っていった。

 そしてまるで狙ったかのように、私が潜伏していた場所に背を向けて立つ。

 ちょうどここから撃てるようになっている。

 

 いくらか都合が良すぎることを不審に思いながらも少年に向けて狙いを定める。だが、今まで油断した暗殺者がこの任務に失敗していると聞く。

 だから私は二発撃った。絶対に逃さないように。

 そして目を瞑る。耳が良い私には銃弾が当たり、血が流れ出す音が聞こえる。

 パーフェクトだ。やはり、大したことはなかったな。

 

 

 後々、上からきついお叱りを受けることになるのだが、今はそんなことを知る由もない。

 



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人違いです (表)

 9月。夏は過ぎたものの、まだ蒸し暑い日もある季節だ。けれど、今日はちょうど肌寒いくらいの気温であった。

 天気予報を見ても雨が降る様子はない。

 

 いつのまにか散歩が習慣になっていたので、今日も散歩に行こうと準備をする。

 いつまで経っても散歩中変な音が鳴り止まないので、最初の方は鬱陶しく思っていたが、慣れというものは怖いものである。最近は気に止めることすらなくなってしまった。

 

 ちょうど出かけようとした瞬間ーー

 

「お久しぶりです。斎藤武様」

 

 急にリビングの中に、僕と同じ高校生ほどの子が現れた。その子は、その風貌に比べて妙に大人びた雰囲気と冷たい目をしていた。

 

 驚き、思わず目を見開いてしまう。

 え? なんで人がいるの? 鍵は閉まってたよね。いくらこの学校の生徒といえども寮に入ってくることは不可能な筈なんだけど……

 

 勿論そんなものは能力の使用を度外視したものである。この学校の生徒の大半は能力を使えば寮のセキュリティを突破するのは容易いだろう。

 

 その上、今斎藤武「様」って言ったよね。お久しぶりです、とも。

 僕はこの子とは一切面識がない筈なのに……

 

 この子の目的がわからない。僕の個人情報はどうとでも知ることができるだろうが、直接この部屋に来る理由は?

 

「えっと……、どちら様ですか?」

 

「ああ、ご挨拶を忘れていました。私は福井 アリア、貴方様の忠実なしもべで御座います。微力ながら、貴方様の野望を叶えるために、力をお貸し致します」

 

 かなりやばい奴だった。思わず顔が青ざめてしまう。福井さんということは分かった、この学校の生徒ではあるのだろう。

 そして野望ってなに? 僕は何も企んでないけど。

 

 それに「しもべ」ってなんだ。

 そんなものを作った覚えは一切ない。僕の流れている噂に騙された頭のおかしい狂信者だろうか。

 

 となると、僕がただの無能と知られればやばいかもしれない。

 

 何にせよ怖い、お帰りいただかないと。

 

「えっと、とりあえずは帰ってもらえるかな」

 

「了解いたしました。申し付けたいことがあればすぐに仰ってください。」

 

 そう言って、彼女はフッと消えていった。

 あ、素直に帰ってくれるのね。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 それから翌日、ポストを見てみると手紙が入っていた。

 

 恐る恐る手紙を開けてみると、やはり福井さんからのものだった。手紙の中には、彼女の電話番号や個人情報が載っていた。

 これ見せて大丈夫なものなのか?

 そして何より気になったのは冒頭の部分だ。

 

『災討 武様へ』

 

 誰だよ。災討なんて人知らねーよ。

 確かに読みはさいとうって読めるけど。そんな禍々しい名前じゃないわ。

 

 ……ちょっと待てよ。これ、やらかしたんじゃね?

 



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人違いです (裏)

調子に乗って2話目投稿


side〜福井 アリア〜

 

 私、福井アリアはただの人間ではない。

 といっても、吸血鬼や幽霊などの人外というわけではない。私にはこの世界とは別の前世の記憶がある。

 

 前世では、強力な力と頭脳を持つ災討 武様の元で、右腕 兼 しもべとして働いた。

 

 武様は強力な力を持ちながらも、無知なただの人を装い、裏社会を確実に支配して行く。その支配はやがて表社会にも及び、後一歩で世界征服というところまで来ることに成功した。

 

 しかし、後一歩のところで裏切りにより力尽きてしまった。そこで私も同じように力尽き、目が覚めるとこの世界に転生していた。

 

 前の世界でも能力があったため、初めは別の世界とは気づかなかった。しかし、次第に矛盾や齟齬が生じていることが分かり、別の世界だと気づかされた。

 

 私が最初にしたことは武様を探すことだった。私がこの世界に転生したということは、武様もこの世界にいる可能性が高いからだ。

 

 ありとあらゆる手段で強大な力を持つものを探したが、見つかることはなかった。よく考えると、武様はもともと力を見せびらかすタイプではない。その上今はより慎重になっていることから、誰にも力を見せていない可能性がある。

 

 それに気づいてからは、とにかく情報を集めながら待ちに徹した。そしてふと斎藤武という名を耳にした、そしてその力も。

 

 別に読みが同じ名前ぐらいならこの日本にもそこそこいるだろう。それに、今は別の世界なのだから名前が変わっているのが普通だ。それだけを根拠とするには乏しい情報だ。

 

 しかし何故か私の中には確信めいたものがあった。ある程度情報を集め、さらに信憑性が高くなったところで直接寮の部屋に行ってみることにした。

 

「お久しぶりです。斎藤武様」

 

 私の能力は侵入するのには不向きなのでツテを使って部屋に入った。武様は私のことを見てとても驚いた顔をする。

 私はこの人が災討武様の生まれ変わりだと確信した。なぜなら雰囲気、反応どれもが武様が装っていた一般人そっくりだったからだ。

 

「えっと……、どちら様ですか?」

 

「ああ、ご挨拶を忘れていました。私は福井 アリア、貴方様の忠実なしもべで御座います。微力ながら、貴方様の野望を叶えるために、力をお貸し致します」

 

 おそらく武様は前世の野望ーー世界征服をこの世界でも目論んでいる筈。

 そうなるとテロ組織と争い、聖内学園に急に編入したことも納得がいく。

 

 力を隠しながら、ある程度この世界の情報を集め、時が来たら力を隠すのをやめる。

 

 この世界で世界征服の妨げとなるのは主に超能力協会とテロ組織だ。

 

 まず超能力協会の内側に入り込み、力を借りながら世界中に偏在するテロ組織を壊滅させる。それにより信用を得た後、超能力協会を内部から支配して行く。

 一石二鳥の完璧な作戦だ。

 

「えっと、とりあえずは帰ってもらえるかな」

 

「了解いたしました。申し付けたいことがあればすぐに仰ってください。」

 

 やはりこの反応からも間違いないだろう。

 本来こんなことが起きたら応戦するか、通報するかの2択だ。間違っても「とりあえず」「帰ってもらう」などとは言わない

 

 武様は今は力を借りることはない、まだ下準備の最中だということだろう。

 

 とりあえずその時が来るまで力を蓄えておくとしよう。

 

 




忠実なしもべ(笑)(狂)の誕生


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テスト? なにそれおいしいの? (表)

 いつも通り学校に登校していたある日、先生からこんなことを言われた。

 

「皆もそろそろ総合テストがあることはわかっているよな? 今のうちから勉強に取り組んでおくんだぞ」

 

 え? ちょっと待て。総合テストとは何だ。

 

「山田くん? 総合テストって何?」

 

「知らないのか? その名の通り総合力を計るテストだよ。実技はないけど、英数理社ではなくどの判断が正解かみたいなのが出されるぞ」

 

 そんなのあるの? 全くそういう系統の事わからないんだけど……

 

 いや逆にチャンスなのでは? ここでひどい点数を取れば僕の噂も訂正することが、……出来ないな。 うん、多分逆効果な気がする。

 

 となると、あらゆる意味で一番良いのは僕が平均点ぐらいを取る事だな。少しは勉強しておくか。

 

 

$ $ $ $ $

 

 家に帰って勉強するぞと決めたはいいんだけど、何すればいいの?

 唯一配られた教材と思われるものはペラッペラで、当たり前のことしか書いてないし。

 

 なんだよ、『無策で正面から突撃して行かない』って。もっと他に書くことあっただろ。

 

 ここで僕はある一つの答えに辿り着いた。

 というかそもそもこれ……勉強してどうにかなる物じゃないのでは? なんかそんな気がしてきた。予習とか意味ないのでは。

 

 まあいいや、なるようになるだろ。

 

$ $ $ $ $

 

 今日はついにテストの日だ。何で告知からテストが3日後なんだ。「そろそろ」じゃないだろ。

 とか、色々と突っ込みたいところはあるがスルーしよう。

 

 時計の針が9時を指した瞬間にチャイムが鳴り響いた。

 

「では、始め!」

 

 みんなが一斉に冊子を開き問題を読み始める。僕も同じようにテストの問題を開いて読み始める。

 

 そこには地図が載っていた。地図の上に大量の赤の点や青の点が置いてあり、どうやら青が味方で赤が敵らしい。

 

 もう1ページ開くと、補足情報がびっしりと一面に書いてあった。軽く最後まで見た所、全部この形式らしい。

 

『問題1 もし貴方がこの戦場を指揮、もしくは現場にいる時どう動くのが最善か答えなさい。』

 

 ……知らねーよ。

 赤と青がごちゃごちゃしててどうすればいいのか分からない。

 適当に矢印でも書いとくか……

 

 

$ $ $ $ $

 

 テストが終わった、色んな意味で。

 

 なんか最後の方の問題とか、全員が正面から突撃してたような気がする。あのペラペラの冊子に書いてあることすら守れてなかった。

 

 その上、何故かテストの点数の順位表に僕の名前がどこにもなかったんだけど、これってやばいのかな?

 

 誰かしらに頭でも下げて教えてもらったほうが良かったのかな?

 

 

 



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テスト? なにそれおいしいの? (裏)

side〜採点者〜

 

 積み上げられた冊子の山に目を向けて、思わずため息をつく。私は今、総合テストの採点をしている最中だ。

 かれこれ数時間はぶっ通しで採点をしているが、終わる気配が全くない。

 

 正直言って、分量的にはそこまで多いというわけではない。一人につき冊子1冊だけだからだ。それも問題は全部同じ形式、普通に考えるとそこまで時間はかからなそうなものだ。

 

 問題はその内容にある。内容はさまざまな状況の戦場で、どんな判断をするのが適切か示すというものだ。これは選択肢ではなく各々が自由に記述して行く問題だ。

 つまり、模範解答が存在しない。ありとあらゆる作戦の意図を読み取り、点数をつける。時には簡単には意図を読み取れないような作戦もある。

 

 そのおかげで一人あたりの採点時間がえげつないほどかかるのだ。

 

「はあ。何とかならないのかしら」

 

 そんなことをぼやきながら、冊子の山に手を伸ばす。一番上に積み上げられていた冊子をとり、見てみると斎藤武の物だった。

 

 今や聖内学園内では知らない者がいないレベルまで有名になり、さまざまな噂が流れている。が、指揮能力や判断能力に関する噂は耳にしたことがない。

 

「どんな物なのか、見ものね」

 

 ページを開き、最初の問題に目を通す。そこにはどこまでも基本に忠実で模範的な回答が載っていた。この分ならこの問題は満点、完璧だろう。

 

「やっぱり、なかなかやるわね」

 

 2問目を見てみると、今度はさっきとは違い奇襲を主にした作戦だった。悪く言えば姑息とも言える作戦だが、これも理にかなっている作戦であった。この問題は満点。

 

 3問目を見てみると、今度は打って変わって好戦的な作戦だった。とはいえ、しっかりと無茶はしないようになっているのでこれも満点。

 

 その辺りから、採点を続けるにつれて違和感を感じ始めた。

 

 確かに状況によっては作戦の方向性というものは同じ人物でも変わる。だが、それでも同じ人が書いた作戦ならば何か通じている点はあるのだ。

 

 しかし、この作戦にはそれが全くない。まるで別人が書いているかのような解答なのである。

 

「まさか……、わざと?」

 

 もしかして、簡単だったからこそ遊び心で全く違う作戦を考えたのだろうか。私としても、そこまでの能力を持つとは考えていなかった。

 

 最後のページを開き、問題を見る。そこには、考えなんて何もない、ただ敵に向かって全員が突っ込んでいく作戦が書かれていた。

 

 思わず鳥肌が立ってしまう。

 これはまさか……、俺には作戦なんて必要ない。そんな物なくても勝利を収めることができるという自信の現れ?

 

 思わずそこで採点の手が止まってしまう。これはどんな点数をつければいいのだろう。作戦としては全く相応しくない解答だ。しかし、ここまで全て完璧な回答をしつつ、それでも底が見えない能力を持っている。

 

「これは……、私には判断できないわね」

 

 学園長に聞いてみるとしよう。

 

 

 その後、結局学園長でも判断ができず点数が付けられなかったため、斎藤武の名前は順位表自体に乗らないことになってしまった。

 

 




勘違いものの供給が足りねえ…… _:(´ཀ`」 ∠):_


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えっ、俺の意見は? (表)

3000文字書いたら過労死しました。


 

 ここ、聖内学園では常に何かしらの大会が開かれていた。そこまでこの学校は人数が多いわけではないが、それでも3学年の人数を合わせればかなりの数となる。

 そして、開かれる大会には大小様々なものがあり、狭いコミュニティの中で行われる数人しか参加者がいないものから、生徒の大半が参加するようなものまである。

 

 けれど強制的に参加させられるようなものは殆どないので、僕には全く関係ないものだと思っていた。

 しかしーー

 

「武さん? 私と一緒に大会に参加してもらえますよね?」

 

 放課後に、またまた「偶然」鈴さんに出会った。

 そして、急に鈴さんにそんなことを言われた。なんで、まるで僕が了承することが当たり前のような言い方なのだろうか。

 

「いや、それはm」

 

「もらえますよね?」

 

「あっ、はい」

 

 ものすごい威圧感を放たれ、強制的に了承させられた。いつも天使の翼が生えている鈴さんの後ろに悪魔の翼が生えているように見えた。

 大会に出るのはこれが初めてじゃないし、怪我をする心配もないからまあいいか。

 

「というか、大会ってどんなのですか?」

 

「これです」

 

 そう言って一枚のパンフレットを渡された。どれどれ・・・・・・大会としてはそこそこ大きめの部類に入るものなんじゃないか?

 それよりも、

 

「これ三人で一チームみたいですけど、あと一人はどうするんですか?」

 

「武さんが決めてください」

 

「はい?」

 

 え、なんで? 生徒会長なら人脈なんていくらでも持ってるだろうに、なんで僕なんだ。確か山田くんは忙しいらしいし、じゃあ凛さんだな。

 

「あと、凛以外でお願いします」

 

 最後の選択肢を秒で潰されたんだが・・・・・・なんでだめなんだ、姉妹だろ。

 

「では決めておいてください」

 

 そう言い残して鈴さんはさっさと去っていった。

 どうしよ……あいにくと大会に参加できそうな知り合いなんて僕にはほとんどいない。

 

 歩きながら、ひたすら頭の中を探ってみるが、あいにくと心当たりは浮かぶこともない。

 

 実際には如月 灯などが一応いるのだが、もはや武はその存在すらも忘れ去っていた。

 

 すると、見知った顔の人が道に立っているのが見えた。おそらく、あの日曲がり角でぶつかった少女だろう。あの時のお礼も言いたいし、話しかけみるか。

 

「久しぶり、前会った子だよね?」

 

「あっ、う、うん」

 

 やはり話し方がたどたどしい。緊張してるのかな?

 

「この前はありがとう。君が助けてくれたんだよね?」

 

「う、うん。でも、あれは私のせいだから……」

 

 やはりこの子は狙われているのか? 高ランク能力者だろうし、そのせいだろうか。面倒ごとに巻き込まれる可能性はあるが、それでも助けてくれたこともある、事情ぐらいは知っておきたい。

 

「君は何者? あそこで何をしてたの?」

 

「うっ、えっと」

 

 少しこの聞き方はまずかったか? もう少し優しく聞かないと。

 

「ああ、ごめん。責めたりしてるわけじゃないんだ。とりあえず……君は何歳?」

 

「16歳」

 

 えっ、まじ? 本当に16歳なのか……とても背格好や雰囲気から僕と同じ高校生には見えなかった。

 

「じゃ、じゃあ学校は?」

 

「聖内学園」

 

 まじですか。同じ高校だったのか……、それにしては一回も見かけたことないし、登校してるのか?

 

「えーと、じゃあ能力は?」

 

「人を治癒する能力。Sランク」

 

 ……何言ってんだこいつ。そんな重要なこと大した関係があるわけでもないやつに教えちゃダメだろ。

 確か事前調べた情報だと、ずっと自分の屋敷に引きこもってるんじゃなかっけ? たまたま出かけてたのかな。

 

 よくよく考えたらこの子も大会に出られるんじゃ? 実力も申し分ないから、ダメ元で誘ってみるか。

 

「ちょっといいかな? 今大会に出るために、後一人生徒を集めてるんだけど……一緒に大会に出ない?」

 

 まあ流石に無理だろう。ほぼ初対面みたいなものだし。

 

「出る」

 

 即答された。随分とフットワークが軽いなまだ内容すら聞いてないのに、まぁ本人がいいって言ってるんだし大丈夫だろう。

 

「えっとじゃあ9月○日の×時に○○に集合ね。これパンフレット」

 

「分かった」

 

 その後軽い説明をして、彼女とは別れた。

 …………やべえ名前聞いてなかった。

 

$ $ $ $ $

 

 名前は調べたらすぐに出てきたから申し込み自体はどうにでもなった。それよりも問題なのは……

 

「……」

 

「……」

 

 何故か鈴さんと彼女、平野 愛が顔を合わせてから睨み合っているのだ。おかげで場がギスギスしている。

 

 これから大会だっていうのに、この雰囲気はまずいんじゃないのか。

そんな思いも虚しく、開始時間が来てしまう。案内を受け、会場へと移動していると、ある部屋に連れてこられた。疑問に思いながらも中に入ると……

 

 シュン!

 

 急に周りの景色が一変し、どこかに転移した。

 ここは……ジャングルか? 木が一面に生い茂っていて見通しが悪い。

 鈴さんと平野さんはおらず、僕一人だけみたいだ。

 

 しばらくするとアナウンスが鳴り響いた。

 

「では、バトルロワイヤルを始めます」

 

 ……ちょっと待て。聞いてない。そこまで注意深く読んでなかったけど、バトルロワイヤルってチームじゃなく一人一人別れてたたかうの? チーム組ませた意味は?

 

「はっ、てめえが斎藤武だな。もらった!」

 

「うおっ!」

 

 いきなりthe 熱血みたいな奴が炎を出して攻撃してきた。何とか間一髪で避けたが、髪が焦げた。

 

 周りを見ると、二十数名程が僕の正面におり、僕のことを見ていた。おそらく、この会場にいる半分ほどの人数と思われる。そして、ほぼ全員が僕に向かって銃を構えていたり、能力を発動しようとしている。

 

 よし! 逃げよう!

 

 全速力で後ろを向いて逃げる、僕の横をありとあらゆる攻撃が飛んでいくのが見える。殺意高すぎないか……

 

 がむしゃらに全速力で走りまわる。少しは撒いたかと思って後ろを見ると……人数がさっきの倍に増えていた。この会場にいる全員が集まっていた。

 

 戦えよ! お前ら! バトルロワイヤルなんだろ、これはただのいじめだわ!

 

 奇跡的に逃げ切れていたが

 

「やばい、行き止まりだ」

 

 袋小路に追い詰められてしまった。後ろを見ると、少し離れてはいるが依然減る様子もない集団が僕の方に向かってきている。

 

「これでとどめだ!」

 

 そのうちの一人がめちゃくちゃでかい岩をこちらに向けて放ってくる。ああ、もうどうにでもなれ! 

 岩に向かってパンチを繰り出す

 

 ドゴオ!

 

 どこか既視感を覚えるような音がして、岩が砕け散った。そして、そのまま衝撃波と岩の破片が、後ろにいる奴ら全員を吹き飛ばした。

 

「……僕すごくね?」

 

$ $ $ $ $

 

 そのあと僕たちは優勝した。やはりSランク能力者だけあって二人とも余裕で勝ったらしい。

 

  鈴さんなんかは特に「飛行」「瞬間移動」「千里眼」「念能力」のみで勝ったらしい。9つのうち4つのみ。僕からしたら全部チートにしか見えないのだが、鈴さんが持っている中では全て弱い能力だとか。

 

 Sランク能力者って怖い……

 

 平野さんは開始数秒で決着が着いたなんてことを言っていた。いくら何でも早すぎないか。

 

 あの一件の後、僕には特別な能力があるんじゃないかと思いはじめた。試しに木を殴ってみるとーー

 

 

 

 すごく痛かったです。特別な力なんてものはありませんでした。おかしいな……

 いや、まだ希望を捨てちゃダメだ。ピンチになったら発揮される力なのかもしれない。

 

 ちょっと待てよ? そうだとしても、僕自身は大して成長せず。Sランク能力者二人と知り合いになり、大会に優勝したという事実が広まってしまったわけだ。必然的に僕はSランク能力者と同等の力を持っていると思われるだろう。

 

 何か自分で自分の首を絞めてないか?

 

 

 




 自分の力を勘違いし始める主人公。そっちじゃない。

 3000文字なので二つ勘違い要素入れときました。


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えっ、俺の意見は? (裏)

side~毒能力者~

 

 物陰に隠れながら、今回のターゲットの斉藤武に視線を向ける。どうやら尾行はバレていないようだ。

 もうすでに仕掛けは終わっているのでここにいる必要はなく、さっさと逃げるべきなのかもしれないが、何かしらの体制があり殺しそこねる可能性もある。そのときにとどめを刺すため、観察する必要がある。

 

 仕掛けとは能力によるものである。私が持っている能力は発動するまでが異常に面倒くさいが、一度発動すればほぼ死を免れることはできない代物だ。

 まず能力で作り出した毒を相手に摂取させる。その毒自体は大したものではなくほぼ殺傷性はない。しかし、それから二十四時間以内に相手に触れることにより、毒を進化させることができる。

 進化した毒は、ちょうど一時間後に相手を死に至らしめる。それまではなんの予兆もないため、事前に察知するのも不可能に近く、並大抵の治療では解毒することはできない。

 

 噂に比べて斉藤武のセキュリティはガバガバだった。いともかんたんに水筒に毒を入れることもできたし、目の前でモノを落とすと、何も警戒することもなく落としたものを拾ってきた。そのときに相手に触れることもできた。

 

「そろそろ一時間だが・・・・・・」

 

 もう一度、斉藤武を見ると何者かの少女と話しているのが見えた。多少話している様子だったが、特に他に何かをする様子もなく別れたので特に気にすることもないか。

 

 それからしばらくして、異変に気がついた。一時間経ったのにも関わらず一切斉藤武に変化がないのだ。いくら耐性があったとしても、何かしらの反応は見せるはずだ。

 

 

「バカな・・・・・・」

 

 確実にあの水筒を飲んだはずで、しっかりとこの手で触れた。絶対にだ。解毒したのか? どのタイミングで? そもそも気づいていたのなら水筒を飲んだりしないだろう。治癒系の能力まで持っているのか・・・・・・。

 

 不明なことが多すぎる。これ以上の攻撃は無理だ。

 

 

 

 

 実際はあの一件から警戒していた平野が、異変にすぐさま気づき何も言わず解毒したというのが事の真相だ。

 

 しかし、そこで誰も予測しなかった出来事が起こる。

 

 平野は戦闘向きの能力ではないが、傷を負ってない相手に対して過剰な回復を、悪意をもってすることにより相手を攻撃することができる。

 悪意を持って与えられたエネルギーは心体を破壊する。では、悪意を持っていなかったら?

 

 平野は少し武が自分のせいで死にかけたこともあり、武の怪我について過敏になっている。そのせいで今回も、武に対して毒を治癒するには過剰な回復をしてしまったのだ。

 この場合の善意から与えられたエネルギーは、武に有り余る力を与えた。武が能力を持っていた場合は能力が強化されただろうが、武は無能力者だ。

 なので、そのまま身体能力が格段に跳ね上がったというわけだ。

 

 これが勘違いをさらに強固にしていくことになる。

 

 

side〜熱血野郎〜

 

 俺は今、バトルロワイヤルに参加している。しかしバトルロワイヤルとは名ばかりで、今はこの場にいる全員が協力して斎藤武を倒そうとしていた。

 まあこの場には最高でもBランク能力者までしかいない。先にSランク能力者に匹敵する力を持つ(と思われる)斎藤武を団結して倒さなければ、優勝することはほぼ不可能だろう。

 とは言っても、この状況はいくらなんでも卑怯なのではないかと少し罪悪感を感じる。

 

 それにしても奴は応戦することもなくただ逃げるばかりだ。何かおかしいような……、しかし攻撃は神がかった動きで全て避けている。まるで未来を予測しているような動きだ。

 こちらも色々と手は打っているのだが、全て事前に抑えられている。

 

 しかししばらく経つと、ついに斎藤武を袋小路に追い込むことに成功した。道は一本しかなく、前は行き止まり、後ろは俺らが塞いでいる。

 

 みんなが一斉に攻撃しようとして、一足先に一人の能力者が岩を斎藤武に向かって放った。その瞬間ーー

 

 ドゴオ!

 

 なにが起こったのかすら分からなかった。確かなことは俺たちは全員地に伏せ、斎藤武ただ一人が立っているといくことだ。

 

(まさか! 俺たちを誘導していたのか!)

 

 能力はあり得ないほどの威力を持ち、頭まで回る。

 別に勝てるとは思ってはいなかった。でも、せめて一矢報いることぐらいはできると思ってたんだがな、こんなの、勝てるわけないだろ……

 

 




色々忙しくて更新が遅れました。


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ギャンブルなんてやるべきじゃない (表)

 聖内学園では、行事やイベントがかなりの数ある。けど、そのどれもが任意であり、強制的に参加させられるものはかなり少ない。

 

 その数少ないうちの一つが文化祭である。

 

 どうせこの学校のことだから、文化祭もやばいんだろ。なんて思っていたが、案外文化祭は普通のようだ。

 去年の出し物を見ても、お化け屋敷やカフェなど一般校でやっていることとなにも変わらない。

 けれど、その代わりクオリティーがアホみたいに高い。能力と資金を使い、どれも本物顔負けの出来となっている。

 

 今はちょうどなにを出すか決めている真っ最中だ。

 

「はい! お化け屋敷はどうでしょうか?」

 

「僕はケラケラソリーがいいと思います」

 

 みんながそれぞれやりたい物を提案していく。黒板には、ベタなものから、見たことがないようなものまで並んでいる。

 というか、ケラケラソリーってなんだ。それは出し物なのか?

 

「はい! 私はカジノがいいと思います」

 

 また誰かが手を挙げ、発言する。

 

 カジノか……僕は正直言ってギャンブルには反対派だ。あんな物、胴元が勝つようにできているんだからやるだけ無駄だ。上手いことルールの穴をついて、多少なら儲けることは出来るらしいが、その労力を別のことに使えばもっと稼げたのではないのだろうか。

 

 と、愚痴はここまでにしよう。僕の考えとは裏腹に、クラスではカジノが推されている様子だ。多分このままカジノに決まるだろう。

 

 まあ、胴元側をやるのは初めての経験だし、この学校のことだからただのカジノではないのだろう。少し楽しみだ。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 ……僕は少しこの学園のことを、舐めていたのかもしれない。

 

 文化祭まで後数日、準備も差し支えなく終わったところなのだが。もはや、教室の原型は存在していなかった。壁と床は改装され、天井にはミラーボールが吊るしてあり、そこら中に本格的なギャンブルの装置が置いてある。

 

 他のところも全部こうなんだろうか、恐ろしい……

 

 それよりも、いつの間にかシフト表が決まっていた。まあ、別にいつでも良かったからいいか。シフトは生徒のみで行われる初日みたいだ。

役目も基本裏方の仕事みたいだし、気が楽でいいな。

 

 

 

 ーーなんて思っていた頃もあったよ。

 文化祭当日、蓋を開けてみれば思いっきり表舞台で働いている。どうやら「クラスの生徒に勝てれば景品が!」みたいなイベントらしいが、何故僕を選ぶんだ。もっと強い人を選べ。

 

 その上、僕が担当するギャンブルはどれも僕が知らない物ばかり、せめて選ばせてくれ。まあ、景品も大した物じゃないしむしろ勝ちやすい方がいいのか? なら、適当にやれば大丈夫だろう。

 

 最初の競技は麻雀か。そりゃあ見たことはあるけど……ルールは知らない。とにかくこの手牌? を揃えてロンだのツモだのすればいいらしい。まあ、ひたすら周りが上がるのを待ってればいいか。

 

 早速1戦目が始まった。

 周りは凄腕そうな人が集まっている、いかにもギャンブルやってます! みたいな生徒たちだ。

 

 ガシャン!

 

 やべっ! 手を滑らせて手牌を全て倒してしまった。急いで戻そうとする。

 

「て、天和だと……」

 

 てんほー? なにそれ? こういうミスのことを天和って言うのかな?

 そんなことを考えていると、牌が回収されてしまった。あ、僕のせいでやり直しになっちゃったのかな? 申し訳ない……

 

 まあ、気を取り直して次だ次!

 

 

$ $ $ $ $

 

 はい、死にたいです。あの後、意味が分からないぐらいに連続で手牌を倒し、愛想を尽かされたのか嫌そうな顔をしながら追い出されました。

 

 次に配属されたのはポーカーだ。裏方をやらせろ! しかもポーカーもルール知らねーよ! 知ってることはチップを賭けて強い役だった人が勝つってことだけだ。

 

 今回は一応勝負は出来てるみたいだが、チップは減るばかりだ。

 ついに、チップがなくなってしまう。負けか……。すると、急に一対一で勝負していた相手が笑い出した。

 

「くくっ! お前はもう俺の能力の掌の上だ。チップがなくなった今、お前の賭けれるものは自分の寿命と能力だけだ! そして俺はチップを全て賭ける!」

 

 ……何だこの人。ジョ○ョとか好きなのかな? せっかくだし乗ってあげるか。

 

「そうか、なら僕も全ての寿命……魂と能力を賭けよう」

 

 まあ僕は能力なんて持ってないんだけど。

 

「なっ、何だと! いきなり全て賭けるというのか!」

 

「ただし、ここまで賭けたんだ。お前もそれ相応の物をかけてもらうぜ」

 

「まさか、俺の命か?」

 

 この人もノリがいいな。まあ今、僕の手が良いのかすら分かっていないのだが。

 

 手札は❤️のK、♠️の8、♣️の4、♦️の2、❤️の5だ。これって良いのか?

 

 相手は迫真の演技で狼狽えている。

 

「くっ、くそ! 降りる、俺は降りるぞ!」

 

 そう言ってからは逃げ出して行ってしまった。最後まで演技うまかったな……

 

 何気なしに、相手の手札をめくってみると♠️のA、♠️のK、♠️のQ、♠️のJ、♠️の10だった。なんか揃ってるけどこれは強いのか? 

 

 一切なにも判ることなく、ポーカーは終わってしまった。

 

 

$ $ $ $ $

 

 初日は散々だったな……。まあ切り替えて、2日目から客として楽しむか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




文化祭はまだ続きます


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ギャンブルなんてやるべきじゃない (裏)

side〜麻雀打ち〜

 

(まあ、こんなものか)

 

 そう思いながらあたりを見渡す。

 俺は誰にも言ったことはないが、麻雀が唯一の趣味である。あまり褒められた趣味とは言えないので公言することはないが、実力にはそれなりに自信を持っている。

 ちょうど文化祭でカジノが開かれると聞きつけ、やってきたのだ。結果としては想像以上に設備は整っていた。周りの腕前も初めて打ったとは思えないほど高く、満足していた。

 

(ん? なんだ?)

 

 『クラスの生徒に勝ったら景品プレゼント』か……。どうせだしやって行くか、俺なら勝てるだろう。

 

 指定された台に座る。他の二人は客でもう一人が生徒らしい。よくその生徒を見ると、なんと斎藤武だった。

 

(なっ!)

 

 ここでこんな有名人が出てくるとは思わなかったな。麻雀打てるのか? まあここにいる以上は打てるんだろうが。

 

 悪いが俺も負けるわけにはいかない。相手が何だろうがぶっ潰してやる。

 

 親が牌を配った後、手牌を見る。まあ……まずまずと言ったところか。

 

 ガシャン!

 

 (なんだ?)

 

 見ると斎藤武が手牌を倒していた。一瞬ただのミスかと思ったが、違う。斎藤武の手牌は役が完成していた。

 

「て、天和だと……」

 

 天和とは親の配牌の時点で役が完成している、上がれる状態にあることを言う。滅多に起こる事ではないが、長く麻雀を指しているものなら一度くらい遭遇することもある。

 

(いきなり天和なんて、運がいいな)

 

 まあ、まだ一回上がられただけだ。まだまだ巻き返せる。

 

 しかしーー

 

 ガシャン!

 

(な、また……!)

 

 また天和だ。いくらなんでも2回目はおかしい。

 その後も

 

 ガシャン! ガシャン! ガシャン!

 

 何回やっても天和で上がってくる。もはや勝負にすらなってない。イカサマを疑ったが、牌を俺が配っても天和だった。能力を使ったとしても牌配の時点でどうにかするのは難しいだろう。

 

 そもそも、こんな麻雀ごときでイカサマをするのか? しかもこんなあからさまな方法で。それはない、明らかにデメリットの方が大きい。そもそも能力者にとって麻雀が上手い必要はないのだ。

 

 となると、無意識で発動しているのか……? 自分にとって都合のいいことが無条件に起こる能力なのか。そうだとしたら強いなんてもんじゃない、誰も勝てないだろう。

 

 そして試合はそのまま斎藤武の一人勝ちで終了した。

 

 この出来事は誰一人として景品をゲットできなかったことで噂になるのだが……

 

 

side〜ギャンブル能力者〜

 

(これは千載一遇のチャンスだ……ものにしなくては)

 

 この世の能力のランクはなにが基準で決められるのか、それは汎用性と強力さだ。いくら強力であろうと、使い所が少ない能力は必然的に低ランクに位置付けられる。

 

 まさに俺はそう言う能力を持っている。強力ではあるが使い勝手が悪すぎる。

 『ギャンブル中に相手のチップがなくなった時、代わりに魂や能力を賭けさせることができる』能力だ。

 条件が厳しくて複雑すぎる。一度使った相手には2度と使えないのもネックだ。

 発動しても普通に負けてチップがなくなると能力が解けてしまう。勝負がつくまで逃げられないようにはなっているのだが。

 

 そして今はその能力を使いながら斎藤武とポーカーをしている。なんとか能力を使っていることがバレずにゲームを有利に進めることが出来ている。チップを全回収したところで能力を明かせば、まず余裕で勝てるだろう。

 

 ついに相手のチップを全て奪い切ることに成功した。ここで能力を明かす。

 

 

「くくっ! お前はもう俺の能力の掌の上だ。チップがなくなった今、お前の賭けれるものは自分の寿命と能力だけだ! そして俺はチップを全て賭ける!」

 

 しかも手札はあろうことか♠️のロイヤルストレートフラッシュ、絶対に負けることのない最強の手だ。

 

「そうか、なら僕も全ての寿命……魂と能力を賭けよう」

 

 いきなり全BETだと、バカな……!

 

「なっ、何だと! いきなり全て賭けるというのか!」

 

「ただし、ここまで賭けたんだ。お前もそれ相応の物をかけてもらうぜ」

 

「まさか、俺の命か?」

 

 いや、ただのハッタリだな。仮に強い手が入ったのだとしても俺はロイヤルストレートフラッシュだ。負けることはない。

 

 ふと、壁に貼り付けられてある紙に目が行く。そこにはポーカーの説明が書いてあり、ロイヤルストレートフラッシュの上にファイブカードなるものが書かれていた。

 

(なんだと……!)

 

 このトランプにはジョーカーが入っていることに初めて気がついた。このカジノは本格的だったからノーマークだったが、たしかに同じ数字の4枚プラスジョーカーで出来ないことはない。

 

 まさか……可能性は低いがファイブカードなのか? そう考えれば、この一切揺らぎがない態度も納得出来る。

 

 とてもじゃないが命をかけて勝負は出来ない。

 

「くっ、くそ! 降りる、俺は降りるぞ!」

 

 そう言って俺はゲームを降りた。くそ……高ランク能力者は運まで持ってるのか!?

 

 

 

 

 




一番武の正体に近づいた気がする


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修羅場やん…… (表)

 

 今日は文化祭の2日目。外部からもお客さんがやってくる日だ。昨日は一日中シフトが入っていて、ろくに遊べなかったからな。

 

 今日は楽しむぞ!

 

 しかし、大きな問題が一つある。一緒にまわる相手がいないのだ。よくよく考えたらぼくはぼっちなのだ。今こうして、教室で仮の朝礼をしているのだが、周りを見ても知ってる人がほとんどいない。僕の交友関係狭くないか?

 

 でも、ここで悩んでいても仕方ない。勇気を持って話しかけてみよう。

 ……山田くんに。

 

「山田くん。今日空いてる? 一緒に文化祭回らない?」

 

「おう。今日は空いてるからいいぜ」

 

 しゃああああ! ないす! ぼっち回避!

 これで今日は安心だな。

 

「では、これで朝礼を終わる」

 

 最後に礼をして朝礼が終わる。ついに2日目の始まりだ。

 

「じゃあ、行くか」

 

「うん、分かった」

 

 そうして、文化祭を回りにいく。外部から人が来たこともあり、昨日よりも廊下はやや混んでいる。でも特に、廊下を進むのに支障はないレベルだ。

 

 文化祭は戦闘科の校舎で行われる。校舎は3階建てで、今僕らは1階にいる。一階は基本僕達一年生の出し物だけど、どこから行こうか?

 

「まずはどこに行く? 山田くん」

 

「うーん……、とりあえず端から回って行くか」

 

 まず、端の教室に向かい、扉を開け中に入る。ちょうど並んでる人がいなかったのですぐ入ることができた。

 そして入った瞬間ーー

 

 

 部屋中の視線が僕に集まった。やめて、注目しないで。中はモグラ叩きをやっていたのだが、全員手が止まり、もぐらだけがピョコピョコ穴から出たり入ったりしている。

 

 やがて、みんなが動き出すが。相変わらず視線は僕から外れていない。ちょっとそこの君、前を見なさい。君が叩いているのは先生の頭だ。僕から視線を外しなさい。

 

「やっぱ……ここはやめとこう」

 

「お、おう」

 

 その後も、めげずに色々な出し物に行ってみるが結果は全て同じ。無惨な結果に終わった。

 

「ん、あれは……」

 

 偶然、歩いていると鈴さんのことを見かけた。鈴さんも生徒会長だし忙しいのかな。すると、鈴さんも僕達のことを見つけたようで近づいてきた。

 

「お久しぶりです、武さん」

 

「久しぶり、鈴さん」

 

「武さん、そちらの方は……お友達ですか?」

 

「うん、クラスで隣の席なんだ」

 

「あ、俺は山田春人。よろしくな! お前……、生徒会長だよな?」

 

 初対面の人に対してもコミュ力高いな。流石陽キャ……でも先輩には敬語使いなさい。

 

「山田君ですか、よろしくお願いします。おっしゃる通り私は生徒会長の藤桜鈴です」

 

「つっ……」

 

 何故か急に山田くんの顔が青ざめた。どうしたんだろう? 体調でも悪いのかな?

 

「わ、悪い武。俺用事思い出したから行くわ」

 

「え? あ、うん」

 

 そういって山田くんは走り去って行った。どうしたんだろう? なんか焦ってた様子だったけど。

 というか、これでまたぼっちじゃん。

 

「お友達は行ってしまったのですか? なら……私と一緒に回りませんか? もちろん武さんがよろしければですけど」

 

 救いの神が現れた。やはり天使か。

 

「う、うん。もちろん」

 

 あれ、これまたデートしてるようなもんじゃない? 山田くんナイス!

 

「じゃあ、行こうか」

 

 そう言ってまた歩き出す。やはり視線が痛い。ただでさえ噂のせいで注目を集めるのに、その隣にはSランク能力者と来た。そりゃあ目立つわな……分かってはいたけど。

 

 ふと、誰かに袖を掴まれていることに気がついた。見ると高校生しかいない中では背丈の低い少女ーー平野 愛がいた。

 

 平野さんとはまだ2回しか会ったことはないが仲良くさせてもらっている。Sランク能力者ではあるが、もはやこの際一緒に回れたらいいな。

 

「ああ、平野さん久しぶり」

 

「久しぶり」

 

「武さん? その女は誰ですか?」

 

 なんか言い方に棘がない? 「その女」って。鈴さんを見るとなんだか顔が引き攣っている。やっぱり仲が悪いのかな、前も喧嘩してたし。

 

「いや、平野さんだけど……」

 

「悪いですが、武さんは今わたしと回っているので、引っ込んでてもらえませんかね?」

 

 いや、3人で回ればいいでしょ。なんで二人で回ろうとするの?

 

「だめ……。武さんは私と回る」

 

「へえ……いい度胸じゃない」

 

「ok。3人で回ろうか」

 

 君たちなにを始めるつもりなんだ。やめなさい。

 

「「チッ」」

 

 舌打ちしない!

 

 

$ $ $ $ $

 

 はあ、無事文化祭も終わったか……。あの後、2日目は鈴さんと平野さんに連れまわされたけど、3日目は凛さんとゆっくり回れて良かった。途中でこの前の不法侵入者の福井さんに「主さま」とか呼ばれたせいで引かれたけど。

 

 

 まあ、今回は比較的穏やかな日常だったな。




感想、評価よろしくおねがいしますε=ε=(ノ*・∀・)ノ


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修羅場やん…… (裏)

side〜山田春人〜

 

「山田くん。今日空いてる? 一緒に文化祭回らない?」

 

 文化祭の2日目、武に一緒に回らないかと誘われた。今日はちょうど相手がおらず、これから誰か探そうとしていたのでちょうどいい。

 

「おう。今日は空いてるからいいぜ」

 

「では、これで朝礼を終わる」

 

「じゃあ、行くか」

 

「うん、分かった」

 

「まずはどこに行く? 山田くん」

 

「うーん……、とりあえず端から回って行くか」

 

 そう言って、武は端の教室へと向かいなかに入る。俺も後ろからついて行く。しかし、入った瞬間に明らかに視線が隣の武に集まった。やはり武のことは全校内に知れ渡っているのか……

 

「やっぱ……ここはやめとこう」

 

「お、おう」

 

 武はあまりその視線を快く思わなかったようで、他の教室へと向かう。けれど、やはりどの教室に行っても結果は同じ。そりゃそうか。

 

「ん、あれは……」

 

 突然武が立ち止まり、前の方を見つめる。視線の先にはちょうど一人の女子がいた。というか、あれは……

 

「お久しぶりです、武さん」

 

「久しぶり、鈴さん」

 

 鈴ってやっぱり藤桜鈴か? あの生徒会長の。武はあまりクラスで他人と関わっているところを見たことがないが、やはり人脈は広いみたいだな。

 

「武さん、そちらの方は……お友達ですか?」

 

「うん、クラスで隣の席なんだ」

 

「あ、俺は山田春人。よろしくな! お前……、生徒会長だよな?」

 

「山田君ですか、よろしくお願いします。おっしゃる通り私は生徒会長の藤桜鈴です」

 

 やはりそうか……。まあ武もSランク能力者級の実力は持ってそうだし、同じ生徒会長と関わりを持つことになるのも当然か。Sランク能力者なんてヤバい奴しかいないと思っていたけれど、想像よりまともそうだなーーっ!?

 

 その瞬間、その場を殺気が支配した。体が動かない。なんとか首を動かして周りを見るが、離れているひともほぼ全員が顔を青くし、ふらついている人までいる。

 

「つっ……」

 

 試されているのか? Sランク能力者と関わるにはこの程度難なく乗り切れということか。やっぱりヤバい奴じゃねえか……。

 それよりも、この殺気を意にも介してない様子の武は何なんだ。殺気に耐えれているとかいう次元じゃない。それがまるで日常かのように変化がない、この状況は珍しいことじゃないのか?

 

 能力、技術だけじゃなく精神力まで一品級かよ……。ほんとバケモンだな。

 

「わ、悪い武。俺用事思い出したから行くわ」

 

「え? あ、うん」

 

 けれど、悪いが俺はこの殺気に耐えれそうもない。ここでお暇するとしよう。

 

 

side〜藤桜 鈴〜

 

「お久しぶりです、武さん」

 

「久しぶり、鈴さん」

 

 文化祭の途中、偶然(必然)武さんと出会いました。けれど今回は一人ではないみたいですね。

 

「武さん、そちらの方は……お友達ですか?」

 

「うん、クラスで隣の席なんだ」

 

「あ、俺は山田春人。よろしくな! お前……、生徒会長だよな?」

 

「山田君ですか、よろしくお願いします。おっしゃる通り私は生徒会長の藤桜鈴です」

 

 山田、山田くんですか。どこかで聞いたことがあるような……。確か風の噂で同性愛者だということを聞いたような気がしますね。

 まさか、私の武さんを狙うつもりでしょうか……

 

「つっ……」

 

 おっと、うっかり殺界が漏れ出てしまったようですね。彼も顔を青くしています。

 

「わ、悪い武。俺用事思い出したから行くわ」

 

「え? あ、うん」

 

 まあ武さんのお友達(邪魔者)も去り(排除)、都合よく武さんが一人になりましたね。

 

「お友達は行ってしまったのですか? なら……私と一緒に回りませんか? もちろん武さんがよろしければですけど」

 

「う、うん。もちろん

 

「じゃあ、行こうか」

 

 2回目のデートですね。まずはどこに行きましょうか……。

 そこで武さんの袖を誰かが掴んでいることに気が付きました。

 

「ああ、平野さん久しぶり」

 

「久しぶり」

 

「武さん? その女は誰ですか?」

 

 見ると、この前のバトルロワイヤルで一緒にチームを組んでいた平野さんでした。まさかまた浮気ですか?

 

「いや平野さんだけど……」

 

「悪いですが、武さんは今わたしと回っているので、引っ込んでてもらえませんかね?」

 

「だめ……。武さんは私と回る」

 

「へえ……いい度胸じゃない」

 

 こいつ……。コロス。

 

「ok。3人で回ろうか」

 

「「チッ」」

 

 そこで何とか正気を取り戻すことが出来ました。危ない……流石に武さんの目の前はまずいですね。とは言っても強力な回復能力を持っているのでそう簡単に殺すことはできないでしょうね。

 

 まあそれはおいおい考えるとして、今は文化祭を楽しみますか。

 

 




今更だけど初めて書く小説を勘違い物にしたのチョイスミスった気がする。今回ちゃんと勘違いできてたかな……?


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流石です! (表)

 ある日、先生から近いうち僕に誰か来訪があると言われた。詳しく聞いてみるとどうやらお相手は超能力者協会のお偉い方さんらしい。

 え? もう僕の噂ってそんなレベルになってるの? そこまでの心当たりは……あるな、すごく。

 

 超能力者協会とは今世界で1番の権力を持っていると言っても過言ではない組織だ。超能力者は成人した後、大半が超能力者協会に所属することとなる、そうすると協会お抱えの能力者もなれる訳だ。とは言ってもEランクやDランクで所属するのはかなり厳しい、なので協会に所属している能力者はいわゆるエリートと言われている。

 

 恐らく、聖内学園に入れるような人は大体が所属できるだろう。そして待遇もいいので大抵所属する人が多い。

 例外として、飛び抜けた実力を持っている能力者は成人せずとも能力者になれるとか。

 

 まあぶっちゃけ僕には関係のないことだと思っていたけど……こんな形で関わることになるとは。超能力者協会のお偉いさんなんかどれだけの権力を持っているんだか。くれぐれも粗相のないようにしないと。

 

 そういえば具体的に何の話なんだろうか? 僕が無能力者とされていたのに(勘違いで)能力者だったことについてかな。あちらからすれば、僕が能力を隠してたということになる。めんどくさいな……どうせ言っても勘違いは解けないんだろうし。

 

 

$ $ $ $ $

 

 先生から言われていた期日になり、先生に応接室へと呼ばれた。応接室の扉は存外豪華な作りとなっており、少し緊張してしまう。

 

「よりによっても幹部なのか……、何かしたら即終わりだな」

 

 お偉いさんと言われても幹部とは思わなかった。まさか幹部が一生徒に会いに来るなんて思わなかったのだ。確か幹部って20人いないんじゃないんだっけ? 実質No.2ってことだよな。

 

 恐る恐る扉を開ける。中にいたのは豊満な肉体をして年季を感じさせる顔をした男だった。身長は160くらいだろうか? 妙に身なりが良く、僕でも知っているブランド品を身につけていた。

 まあ要は典型的なデブでハゲでチビのおっさんだ。

 何となく表情もニチャニチャしていて気持ち悪い。お世辞にも顔は良いとは言えず、ぶっちゃけ全体的に悪印象だ。

 

 いや、人を見た目で判断しちゃいけない。大事なのは中身だ。いくら顔が気持ち悪く、この世の汚物を混ぜ合わせたような容姿で、明らかに気取っていてもいい人の可能性はある。やっぱり表情気持ち悪っ!

 

「ああ、お前が斎藤武か」

 

「あ、はい。そうです」

 

「お前などにするのは癪だが一応自己紹介をしておこう。超能力者協会の幹部 心根 醜伊《こころねみにくい》だ。お前などとは住んでる世界が違う人間なのだ」

 

「は、はい……」

 

 随分と高圧的な奴だな……やっぱりこういう奴は心まで醜いのか

 

「我が超能力者協会の検査システムは絶対なのだ。お前が無能力者なのは確定なのにも関わらず、どんな手を使ったんだ? どうせ姑息な真似をして他人の手柄を横取りしたんだろう」

 

 こ、この人…………

 

 

 

 

 やっぱりいい人だ! 根も歯もない情報や噂に騙されず、しっかりと僕のことを判断してくれている。さすが幹部は一味違う。

 

「はい、そうなんですよ! 僕は無能力者なのに勝手に周りから持ち上げられちゃって、いつの間にこんなことに……」

 

「なに?」

 

「やはり幹部は一味違う。周りの情報や根拠など一切気にせず、自分の勘のみで相手を判断する。システムをそこまで信じ切ることなんてそう簡単にできませんよ。流石ですね!」

 

「なっ! お前……」

 

「いや、見た時はデブでハゲてるおっさんだなとか思いましたが、実際はこんなに聡明な方だとは! このまま超能力者協会や他の人にそのことを訴えてもらって勘違いを正してもらえると助かります。期待してますよ!」

 

 ん? なんか口が滑ったような気がするけど……まあいっか。

 

「なるほど……お前の言いたいことはよくわかった。ここまで私をコケにしたんだ。覚悟しとけよ」

 

 バタン!

 

 勢いよく扉を閉めておっさんは出て行く。応接室を静寂が包む。

 

 

 …………あれ?

 

 




超能力者協会とテロ組織、両方敵にまわしていくスタイル。

感想、評価よろしくお願いします(/・ω・)/チョウダイチョウダイ


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流石です! (裏)

side〜心根 醜伊〜

 

「斎藤武はまだか?」

 

「まもなく参ります」

 

 近くにいた男の職員が私の質問に答える。まったく……私が来るのだから10分前に来るぐらいの心意気はないのか。

 

 そもそも、私のような超能力者協会の幹部が、なぜ一生徒に会いに来なければならないのだ。検査システムにより無能力者と判断された者が実は能力者など嘘に決まっている。

 

 現在超能力者協会は、『噂や情報は全部ハッタリで、斎藤武は無能力者だ』と『斎藤武は強大な力を持った能力者である』の2つの意見に分かれている。

 たしかに、斎藤武の実績や成果だけを聞くととても無能力者とは思えない。だが、そのうちのほとんどが斎藤武が成し遂げたという証拠がなく、何よりも斎藤武が能力を使ったという物的証拠を、私は見たことがなかった。

 何やら、ハッキングやテロ組織の襲撃により破壊されたなどと言っているが、嘘に決まっている。

 

 まあ、万が一にもあり得ないが強力な能力者だった場合と無能力者だった場合組織ぐるみで偽装してる可能性があるため、私が直接来たという訳だ。

 

 コンコン

 

 ドアがノックされる。やがて扉が開き一人の少年が入ってくる。

 

「ああ、お前が斎藤武か」

 

「あ、はい。そうです」

 

「お前などにするのは癪だが、一応自己紹介をしておこう。超能力者協会の幹部 心根 醜伊《こころねみにくい》だ。お前などとは住んでる世界が違う人間なのだ」

 

「は、はい……」

 

「我が超能力者協会の検査システムは絶対だ。お前が無能力者なのは確定なのにも関わらず、どんな手を使ったんだ? どうせ姑息な真似をして他人の手柄を横取りしたんだろう」

 

 そう告げると、斎藤武は黙り込んでしまう。やはり図星か。だが個人でこのレベルの偽装は難しいだろう。何らかの組織による協力があるはずだな。

 

「はい、そうなんですよ! 僕は無能力者なのに勝手に周りから持ち上げられちゃって、いつの間にこんなことに……」

 

「なに?」

 

 こんなにあっさり認めるとは思わなかったな。しらを切って周りに責任を押し付けようとしているのか? 姑息な奴め。

 

「やはり幹部は一味違う。周りの情報や根拠など一切気にせず、自分の勘のみで相手を判断する。システムをそこまで信じ切ることなんてそう簡単にできませんよ。流石ですね!」

 

 なっ、こいつ! 俺が無鉄砲な人間とでも言いたいのか? 盲信的で疑うことのできない馬鹿だとでも。

 

「なっ! お前……」

 

「いや、見た時はデブでハゲてるおっさんだなとか思いましたが、実際はこんなに聡明な方だとは! このまま超能力者協会や他の人にそのことを訴えてもらって勘違いを正してもらえると助かります。期待してますよ!」

 

 こいつ! 私が気にしてることをストレートに! しかも無能力者であることを証明することなんて不可能だという皮肉も混ぜてきやがった。

 

「なるほど……お前の言いたいことはよくわかった。ここまで私をコケにしたんだ。覚悟しとけよ」

 

 決めた、何がなんでも私の権力を使ってこいつを潰してやる。ついでにこいつが無能力者であることも証明してやろう。

 

 バタン!

 

 そうして私は斎藤武を潰すために動き出した

 

 




宿題が終わらねえ!( ᐛ )パァ


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おい、しっかりしろ! おっさん! (表)

 「いやー、良い感じだな」

 

 何故かお偉いさんを怒らせてしまってから数日、僕は久しぶりに上機嫌だった。

 何故かって? それは…… ようやく勘違いが解けそうだからだよ!あれから何故か、僕は実は無能力者で、今までに起こしたことは偶然やハッタリで全部嘘だという噂が流れ始めた。そして能力を抜きにしたらなんの力も持っていないということも。

 

 ようやく、ようやく正しい情報が流れ始めたよ。ありがとう、おっさん。

 やはり怒らせたとしても、彼は僕を見捨てなかったのだろう。そしてちゃんと勘違いを正そうとしてくれている。

 後ついでに、僕を退学にさせようと圧力がかかっていると学園長から聞いた。まあ、どうせ勘違いが解けたら退学になるんだし、いつでも退学ぐらいなってもいいか。

 

 いやー、いつかおっさんに礼を言わないとダメだな。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 あれからさらに数日経った。急転直下、僕には暗雲が立ち込めていた。

 全然噂が広まっていかないし、まったく信じられていないのだ。おかしい、前の時は秒で広まってみんな信じ切っていただろう。いきなり冷静さを取り戻すなよ。

 

 その上、僕を退学にするためかけてきた圧力だが、ただでさえ学園長が反対していたのに、Sランク能力者が2人加わり、まったく意味が無くなってしまった。

 

 いつも友達として接しているから忘れていたが、よく考えるとSランク能力者ってエグいくらいの権力持ってるんだった。まだ他の人だったらそいつも潰すみたいに出来ただろうがSランク能力者は無理だ。幹部の数よりSランク能力者の方が少ないんじゃないっけ?

 

 もう……負ける気がしないな ハハッ。

 

 もう僕の周りに勘違いを解いてくれる味方はいないのか。もう信じられるのはおっさんだけだな……、何とか頑張ってほしい。

 

「やば、そろそろ帰らないと」

 

 こんな教室で物思いにふけってしまった。こんなところを見られたら変な奴だと思われてしまう。

 

「本当に何とかならないかなあ」

 

 誰もいない静まりかえった廊下を歩きながらポツリと呟く。廊下は夕焼けの赤で染まっていて、何となく神秘的に見える。

 

 ふと、誰かの手が僕の背中に触れていることに気がついた。

 

「ん? 誰……」

 

「お休みなさい」

 

 後ろを振り向こうとしたが、そんな声とともに意識が遠くなって行く。眠い……視界がぼやけて、足の力が抜けてくる。

 

 だけれど偶然、装備についていた一つの青いボタンを僕の手が押した。

 

 ビリビリビリビリ!

 

 体に電量が流れる。呻き声を出しながら体を振動して、目は思いっきり見開いてしまう。

 数秒の後ようやく電流が止まった。体はまだ痺れている。おかげですっかり目が覚めてしまった。

 

 改めて後ろを振り向くと、驚いた表情をした女の子が立っていた。髪は鮮やかな青色で目がぱっちりとしている。服装も可愛らしいスカートを履いていて、どこからどう見ても何の変哲もない女の子なのだが……人は見た目で判断してはいけないと僕は学んだ。

 

「ねえ、君ーー」

 

 話しかけようとしたその瞬間、目の前から女の子が瞬時に消えた。え? 転移能力か? いや、違うな。説明はできないけど、転移能力とは何かが違った気がする。

 

 というか、何だったんだ?

 

 

$ $ $ $ $

 

 先の一件もあって、何となく心根醜伊について調べてみることにした。

 

「心根 醜伊……と。お、出てきたかな」

 

 試しに出てきたウェブサイトを開いてみると、『心根醜伊特集!』という記事が載っていた。内容はとにかく心根醜いをべた褒めしている。他のウェブサイトを見てみても、同じような内容ばかりで流石に違和感を感じる。

 

「ん? 本まで出してるのか」

 

 広告から『心根醜伊の覇道〜いかにして幹部まで至ったのか〜』という本を見つけた。試しにレビューを見てみるとほぼ全部が星5だ。

 

『 最高の一冊です! 星5 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 

 

 かなり期待して買ったのですが、

 値段に対してクオリティがとても高かったです!

 乗り気ではなかった嫁も満足です。

 無能力者がどれだけ無価値なのかも伝わってきました。

 だまされたと思って買ってみてくだい!            』

 

『 思わず唸ってしまう作品 星5 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

 

 ダメなこと、すべきことがはっきりとわかりました。

 マズい状況から抜け出せそうです

 レール通りに生きるのはやめにします。

 ハラハラする人生を送りたいです。

 ゲーム感覚で楽しんで読める本でした!            』

 

 全てのレビューで絶賛されているな……、値段もそこまでじゃないし、買ってみようかな。

 

「よし、注文完了。ちょっとだけ楽しみだな」

 

 

$ $ $ $ $

 

「おいしょっと。届いた、届いた。」

 

 注文してから翌日にもう配達されてきてビックリしたが、そこも含めてあの評価なのだろう。

 

 持ち上げてリビングまで運ぼうとするが、

 

「重っ!」

 

 想像以上の重さに驚いてしまう。だが、何とか運んでリビングまで持って行く。

 

 早速箱を開けて中身を見てみる。すると……

 

「分厚つっっ!!」

 

 六法全書以上に分厚いんじゃないかと思えるほどだ。片手で持ってると、これだけで筋トレになるんじゃないかと感じた。

 

 試しに1ページ目を開いてみるとおっさんの顔面ドアップが載っていた。さらに読む気が失せる。

 

「ま、また今度にしようかな」

 

 そう言って、読むのをやめて本をベットに放り投げる。

 

 その瞬間ーー

 

 バリン!

 

 外から飛んできた「何か」によって、窓が割れた。そしてその「何か」は僕の方に飛んでくる。

 

 ドコン!

 

 そして、「何か」はそのまま僕に当たる……

 

 

 

 ことはなく、ちょうど開かれていた本の1ページ目ーーおっさんの顔面ドアップに的中した。

 

「おっさあぁぁぁん!!」

 

 そんな僕の叫びも虚しく、本、もといおっさんの顔面は粉々に砕け散った。

 

「誰だ! 誰がこんなことを! よくもおっさん(顔面)を!」

 

 誰もいないはずなのだが、どこからか「お前だよ!」というツッコミが聞こえた気がした。

 

 改めてあたりを見渡すと、粉々になった本に、割れた窓ガラス。

 

「そんなことより、この状況どうしよう? 」

 

 

 





次回 おっさん死す

デュエルスタンバイ!


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おい、しっかりしろ! おっさん! (裏)

side〜刺客〜

 

「いたわね……」

 

 そう言って、廊下を歩いている男についていきながら男をじっと見つめる。一見隙だらけであり、どこにでもいる一般人に見える。

 

 今回の依頼は超能力者協会の幹部から依頼されたものだ。正直言って報酬は割りに合わないものではあるが、幹部とのパイプを作れるとなれば、有り余るメリットがあると言っていい。

 

 しかし、何と言っても相手はあの斎藤武だ。依頼主は噂は全部嘘で斎藤武は無能力者などと言っていたが、多少誇張されることはあっても、流石にそれはないだろう。

 

 だが、噂によると斎藤武は殺されかけても、相手を殺そうとしないと言われている。最悪失敗しても、死ぬことはないはずだ。

 

 少し歩くスピードを速め、気配を消しながら斎藤武に近づき、そっと手を相手の背中に当てて、能力を発動する。

 

 すると自分から出たエネルギーが相手の体に入って行く感覚がする。

 

(よし! 成功した!)

 

 もし、耐性や能力等で防御された場合エネルギーが弾かれる感覚がするのだが、今回は違うーーつまり成功したということだ。

 

「ん? 誰……」

 

「お休みなさい」

 

 そう告げたと同時に、相手の目が虚になって行く。そしてそのまま足の力も抜け、眠る瞬間ーー

 

 相手の体が急に痙攣し出した。そして数秒経つと止まり、ゆっくりとこちらを振り向く。もはや相手の顔からは一切の眠気も感じられず、完全に能力が塞がれてしまったことを悟った。

 

 (まずっ!)

 

 やはり一人では無理じゃないか。せめてもう一人攻撃役を用意し、一瞬能力が効いた瞬間を利用して攻撃するとかすればよかっただろうに。

 

 依頼主を恨み始めるが、そんなことをしても状況は変わらない。だが、噂からすると命までは取られないはず。

 

 プチュ

 

 ーーそんな音と共に私の意識は途絶えた。

 

side〜心根 醜伊〜

 

「くそっ!」

 

 叫びながら、机を思いっきり蹴り飛ばす。机は棚へと飛んでいき、音を立てながらぶつかる。

 

「はあ、はあ。落ち着け、そもそもあんな噂が流れていたら、狙われるのは確実。なのに生きているということは、そういう事に対する対策はしているという事だ。」

 

 そう言って、自分を落ち着かせる。なら、次は念入りにやればいい事。もう生捕りなどという贅沢はいわず、金も惜しまないようにしよう。

 

「次だ……! 次で最後だ、斎藤武!」

 

 

side〜呪術師〜

 

 この世には超能力が存在する。これはもう確立された、一切疑いようの無い事実だ。ではこうも考えれないのだろうか、そんな非科学的な超常現象が存在するなら、他にも存在するのではないか、と。

 

 例えばそう、呪術とか……。

 

「眼には眼を、歯には歯を、超常には超常を。相手が能力者って言うんなら、呪術で対抗すればいい話だ」

 

 呪術を使える人間、通常呪術師は能力者と比べて数も少なく、その存在も公になっていない。

 だからこそ、対策を練ることが出来ない。だから呪術師はそこらの能力者と比べれば無類の強さを誇る。

 

 基本的に呪術は暗殺の方法として使われる。まあ、呪術といっても色々あるが、俺が主に使用しているのは呪物を直接相手に打ち込むものだ。この方法のメリットは、相手の近くに呪物を打てば自動で呪物が移動し、相手に当ててくれる事だ。

 これは全ての呪術に共通する事だがそもそも防ぐ対策が出来ず、食らった時の治療法もない。

 

「まあ、そんな簡単に行くとは思っていないが……」

 

 とりあえず案ずるより産むが易しだ。斎藤武をスコープ越しに覗き、銃口を向け標準を合わせる。特に、異常がある様子もなく手に「何か」を持って立っている。

 

 そして引き金を引くーー

 

 のと同時に、斎藤武が手を動かし手に持っていた、「何か」を投げる動作を見せた。

 

 ドコン!

 

「防がれたか……!」

 

 発射された呪物は斎藤武が投げた「何か」に阻まれた。

 もしかしたら、彼はその「何か」の正体を知らない方が幸せだったのかもしれない。

 

 仮に何かで防いだとしても、呪いを憑けるまで呪物は止まらないはずである。しかし、もうその呪物は動く気配を見せなかった。

 

「どういう事だ……?」

 

 斎藤武が防ぐために使用した「何か」、動かない呪物、スコープ越しに一瞬だけ見えたもの。

 

 ピースが繋がった。彼の背中を冷や汗がつたう。

 

 恐らく、あいつが防ぐために投げた「何か」は本だ。そして、スコープ越しに絵か写真のようなものが見えた。恐らく、それは斎藤武が投げた本に載っていたものであろう。ということは、本はページが開かれた状態で投げられた可能性が高い。

 

 では何故、本を選んだのか。偶然手に持っていたから? まあ、納得できなくはない、読んでいる最中だったからページも開いている状態であった。では何故、呪物は動かない?

 

 呪物が動かなくなる可能性はただ一つ、呪いを完了したのだ。誰に対して? ……本に載っていた人物に対して。

 別に、呪いというものは直接ではなくても効果を発揮する。というか、本来はそっちの方が主流だ。直接弾が当たったため、斎藤武よりも優先されたのだろう。

 

 恐らく、その人物に対して呪いを押し付けたのだろう。じゃあ誰に?決まっている。自分を殺そうとした人物、要は依頼主だ。

 幸い、俺の呪物の威力は低めだ。当たったのも髪や爪じゃなく写真だ。死にはしないだろうが……

 

「これは、報告しないといけないのか」

 

 十中八九怒りを買うだろう。しかし、このこと伝えないのはあまりに不義理というものだ。そのことだけ伝えて行方をくらました方が良さそうだが。

 

side〜心根 醜伊〜

 

「ゴホッ、ゴホッ! く、くそ……斎藤武め!」

 

 そう叫んだ反動でまた頭が痛くなる。私は今風邪、といってもかなり重い症状のものを患ってあり、自宅で療養していた。ようやく、マシになってきたが、一時期は死を覚悟したほどだ。

 

 くそ、これも全部斎藤武のせいだ。大体あいつも、失敗するどころか利用されて私に呪いをかけるとは。

 

 コンコン

 

 ドアをノックした音が聞こえた。誰か来たのか?

 

「入れ」

 

「失礼いたします」

 

 そう言って私の世話係が入ってきた。もちろん年齢は20代の美女だ。

 

「心根様、お手紙でございます」

 

「はあ?」

 

 私が今風邪をひいているんだぞ? それなのに手紙? 何かそこまで重要なものなのだろうか。

 

「では失礼します」

 

 ドアを閉めて世話係が出て行く。今、部屋には私一人だけ。読んでも盗み見されることはないだろう。

 

「何だ……?」

 すぐに手紙を開き読み始める。

 そこにはーー

 

『心根醜伊様へ

 

 いかがお過ごしでしょうか。

 まあ、少なくともご健康ではいらっしゃらないと思います。

 どうも、最近は風邪をこじらせる人が多いようです。

そんなことは分かっていらっしゃるとは思いますが。

 なぜか周りの人達が協力してくれ、手紙を送ることが出来ました。

 気持ちを強く持ち、どうかゆっくり休んでください 斎藤武より』

 

 正直言ってお前のせいだよとは言いたくなったが、書いてる内容自体は悪いものではない。

 ……ある一点を除けばだが。

 

「今どんな気持ちだと……! ふざけるな、ふざけるなよおぉ! 斎藤武うぅ!」

 

 屋敷を怒号が包む。その声には怒り、悔しさ、みじめさ、あらゆる感情がこもっていた。

 

 

 




 まさかのおっさん生存。
 何でこの縦読みは気づいたんだ。


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オークション (表)

 祝! 10万UA突破!
 いつも読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

 ということで今日はちょっと多めです。






 ここ、東京では半年に一回大規模なオークションが開かれる。そんじょそこらのものとは、取引の額も人数も品物も格が違う。名前は決まっていないのだが、東京オークションだのビックオークションと呼ばれている。

 オークションと聞けば、ダイヤや金塊、名画などが競りにかけられるのをイメージするかもしれないがこのオークションでは全く違う。

 

 別に禁止されているわけではないのだが、競りにかけられるのはほとんど超能力社会になってから出てくるようになった、未知の鉱物や不思議な力を持った武器、一つ先の時代をいく技術が使われた装置などだ。

 

 基本的にそういう代物が買えるのはここぐらいだ。だからこそ皆こぞってオークションに参加する。

 

 だが、やはり相応の品物には相応の値段がつくものであり、値段も桁が違う。億なんでザラで、噂では兆まで行ったとか。

 

 だが、オークションには誰でも参加できるというわけではない。参加券が必要だが、異常なくらい高額だ。もしくは、強力なパイプを持っているなら関係者から貰うこともできる。

 

 要は金持ちか実力や実績がある奴しか来るなというわけだ。そりゃあそのくらい出来ないと品物を競り落とすなんて不可能だから、当然ではある。

 

 つまり実力も金も無い僕には一切関係ないということだ。 

 

 

 

 ーーなんて思っていましたよ。あの時までは。

 

 確かに僕は実力も金もない、けど無駄に積み上がった実績だけはあるのを忘れていた。ついでに強力なパイプもある。Sランク能力者二人と学園長とか極太パイプにも程があるわ。

 

 何なら直接運営側からチケットが来たんだけど……ついでに学園長から既にもらっちゃったせいで2枚になってしまった。

 

 どうするべきか……行ってもどうせ何も買えないだろうし誰かに譲るべきか? いやこんな事は人生で2度と無いし、言ってみた方がいい経験になるかもしれない。

 

 というか僕には譲るような相手がいないし、そもそも無理だ。

 よし、行こう。もうこの際誰でもいいから一人誘おう。

 

「知人全員当たれば一人ぐらい、何とかなるか」

 

$ $ $ $ $

 

 

「何でこういう時に限って誰もいないんだよ!」

 

 いくら何でも全員はないだろ。神様が僕をいじめてくる……

 もう当てはないしどうするか……

 

「何かお困りですか? 武様」

 

「うおっ!」

 

 何で急に現れたんだこの子は。というか誰だっけ? ……確か福井アリアさんかな? 文化祭から一度も会ったないからど忘れしていた。

 

 それよりも、いつまで武様って呼んでくるんだろう? その度に白い目で見られるの困るんだけど……

 

 もうこの際、この子でいいか。

 

「えっと、10月○日開催のオークションに行く予定なんだけど、一緒に来「ご一緒させていただきます」……即答すぎない?」

 

 びっくりするぐらいの反射神経だ。そんなに食い気味で答えなくても。

 

「もちろんです。貴方の野望の一端についていけるなど、これほど名誉な事はありません」

 

 だから野望って何だよ。そう思いつつも口には出さない、言っても無駄だと知っているからだ。

 

「後、オークションって言っても僕は何か買うつもりはないし、特別買いたいものがある時以外はお金は持ってこなくて大丈夫だよ」

 

「了解しました。そういえば武様、事前に登録せずとも当日に物品を持って行き、競りにかけられる場所もあるそうです。値段がややつきにくいなど多少のデメリットはありますが、何かしら品物を持って行くのもいいかもしれません」

 

「へえ、そんなのあるんだ。知らなかったよ、だったら何か持って行ってもいいかな」

 

「では、私はこれで」

 

「うん。じゃあ○日の✖️時に△△に集合ね」

 

 彼女は僕の言葉を聞いて頷いた後、この場から消えた。

 毎回どうやって消えてるんだろ、転移系の能力なのかな?

 

$ $ $ $ $

 

「やっちゃったなあ……」

 

 浮いている、明らかに浮いている。

 

 別に僕もそこまで変な格好ではない。僕が来ている装備は外見は一見普通の服と変わらないレベルのものだ。だけど周りの格好がすごすぎる。全身を金やダイヤで覆っている人かめちゃくちゃイケメンな男の人や美女しかいない。

 

 後ろを振り向き、僕から1メートルほど離れてついてきている福井さんを見てみるが、彼女も私服ではあるのだがいかんせんスタイルと顔がいいせいで何も違和感がない。

 

 彼女が今出しているツンケンとした雰囲気もまるで威圧感のように感じ、拍車をかけている。

 

 いくらか好奇や嘲笑するような視線に晒されるが、もうその程度では動じない、耐性がついているのだ。5分ほど歩きようやく目的地に着く。

 

 当日出品限定のオークション会場だ。

 

 流石に何もせず帰るのもアレかと思い、家から物を持ってきて出品することに決めた。

 けれど、本場のオークションよりはかなり緩いのだが、出品するには品物の審査がある。一定の水準を変えないと出品できないのだ。

 

 では一般(?)男子高校生の部屋にそんな物があるかといえばもちろんない。だからぶっちゃけこの出品は記念だ。どうせ審査で落とされるだろうが何か思い出としてやって、当たって砕けようという話だ。

 

「福井さんは何か出品しないの?」

 

 まあ出品はできないだろうけど。

 

「いえ、今回はしません。家に1、2千万するものはありますが、武様が出すものと比べて見劣りしてしまいますし、ある必要もありませんから」

 

 ……なんか別世界の話が聞こえてきたな。まあ、気のせいだろう。

 

 そうして出品するための手続きをする受付に向かって行く。そこで僕はあることに気がついた。

 

「皆めちゃくちゃ厳重に保管してる……」

 

 皆、箱だけでも高いんじゃないかと思えるようなものに入れたりして、付き人に運ばせている。それは審査する側も同様だ。徹底的に消毒し、手袋をして慎重な手つきでじっくりと品物を吟味する。

 

 僕? ビニール袋だけど? 何か悪い?

 うるさいうるさい。そうだよ僕はアホだよ。こんなに高レベル駄々は思わなかったんだよ。

 

 さっさと受付に行き、用紙に自分の名前や住所等の情報を書き、招待状と引き換えに入り口でもらった会員証を提示する。

 

 ……視線が痛い。僕の格好も手に持っているのものも全部がおかしいため、前の前にいる受付の人にめちゃくちゃ訝しがられている。「お前何してんの?」とでも言っているかのような疑いの視線が突き刺さる。

表情もとても嫌そうだ。

 

 ーーしかし、会員証を見せた瞬間相手の表情は一変した。嫌そうな表情から驚きに満ちた顔に変わる。

 

 「申し訳ございません。すぐにご案内いたします」

 

 何故か焦ったような声だ。え? どこに? そんな僕の疑問が解けるわけもない。僕が戸惑っている間に、すぐさま受付の奥にある豪華な部屋に案内された。

 

「何だここ……」

 

 扉を開けた瞬間別世界だった。まるで貴族が住むような部屋で、真ん中に机と椅子がポツンと置いてある。何だあれ? 滝か? 何で部屋に滝があるんだよ。

 

 なんかすごーく嫌な予感がする。この状況……

 

 ガチャ

 

 扉が開く。まるで、架空の世界にいる貴族のような身なりをしたおじさんが入って来た。白髭もが生えていて、なんか被っている帽子もそれっぽい。

 

 そしておもむろに僕の前に座り、僕に向かって話し始めた。

 

「ようこそ斎藤武様。私、このオークションの主催者である金成 望と申します」

 

 へ? 主催者……? なにそれおいしいの?

 主催者ってこのオークションのトップってことだよな。やばい人が来ちゃったよ。そして……

 

「我がオークションに品物を出品して下さるということで。失礼ですが……お品物を拝見させていただけますか」

 

 ほら、やっぱり来たよ。もう詰んだじゃん。

 

 ここで、僕が今日吟味を重ねて持って来た品物を紹介しよう。

 

 エントリーNo.1!

 

 『バトロワ大会の賞品でもらったナイフ!』

 

 基本的に自炊が切って食う、切って炒めて食うの2択である男子高校生の雑な調理に大活躍!

 思ったよりも切れ味が良くてリンゴも肉も野菜もスパスパ切れる! 

 台所に常に常備しているが、いつのまにか僕のポケットに入っている時がある不思議な一品!

 

 鑑定に持っていくとまさかの値段は300円! しょぼい!

 

 続いてお次は……

 エントリーNo.2!

 

 『平野さんからもらった石!』

 

 石! 石って何だよ! 僕だってたまには傷つくんだぞ! 

 何故か2個目をもらって、前のは微妙だから捨てていいよと言われたけどなにが違うのか全くわからない、いじめかな?

 ちなみに2個目を貰うまでは何回捨てても戻って来たぜ!

 

 そこら辺に転がってたからノリと勢いで入れておいたぜ!

 

 これで紹介するのは最後だ。

 エントリーNo.3!

 

 『小学生の時に拾った本!』

 

 日本語じゃない! 読めない! 何語かすらわからない!

 本の表紙には30¥とかいた値札が貼ってある!

 見てると頭が痛くなって、頭の中に声が響き始める、怖い!

 

 ちなみに、まだ家に8冊同じような本が残ってるぜ!

 

 その他etc……まあ他はもうちょいマシなのだけど。

 

 はあ、はあ。

 こんな品物をトップの前で見せろと言われたせいで、焦ってテンションがおかしくなった。

 

 もうゴリ押しでこの場を去ってやる。

 

「品物はこれだ。確認してくれ、僕はもう行く」

 

 そう言って机に品物が入ったビニール袋を置く。

 

「はい? いやそれは……」

 

 そのまま引き留めようとする金成さんを無視して、その場を去る。

 

 ごめんなさい! でも、こうするしかないんだよ。これで品物を目の前で見られて、ドン引きされたら僕の羞恥心がもたない。

 どっちにしても、あの品物を見たら怒られるだろうけど。目の前で見られるよりはマシだ。

 

 そして、そのまま受付の所で待っていてくれた福井さんと合流し、オークション自体を後にする。

 

 その日は家に帰ったあと、ずっとベットで今日の出来事を思い出して悶えていた。

 

$ $ $ $ $

 

 やばい、金欠だ。最近無駄遣いしたせいで、支給された金が尽きそうだ。このままだとやばいけど、だからと言って誰かに借りるのもなあ……

 

 とりあえず聖内学園にある銀行で自分の口座をチェックし、預金額を確認しに行く。

 

「どんぐらい残ってるかなあ……、1万ぐらい残ってればなんとかなるんだけど」

 

 目を細めながら、ゆっくり手に持っている通帳を開く。

 

「預金額は……え?」

 

 目を大きく見開く。

 

「見間違いかな……?」

 

 ゴシゴシ

 

 目を擦り、もう一回通帳を見直す。だが、何度見ても通帳に書いてある数字は変わらない。

 

「……よし、見なかったことにしよう」

 

 通帳をカバンの中にしまい、銀行を出る。空では太陽が変わらない煌めきを持って、輝いている。

 

「今日もいい天気だな!」

 

 




武くんもついに金欠ですか、大変ですね〜()


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オークション (裏)

side〜金成 望〜

 

 はあっ、はあ。

 

 急いで道を足早に駆ける。少し息を切らしながらも、心の中では何とか焦る気持ちを落ち着かせる。

 急いでいる理由は、当日オークション会場に斎藤武が出品をしに来たからだ。

 

「まさか、本当に斎藤武が来るとは……」

 

 招待状は一応送ったものの、あくまで建前のものであった。来る確率はかなり低いと見ていたのだが、これは予想外だった。

 しばらく歩くとようやく目的の部屋までたどり着いた。慎重かつ丁寧な動作で扉を開け中に入る。

 

「ようこそ斎藤武様。私、このオークションの主催者である金成 望と申します」

 

 相手からの返事はない。続けて手短に要件を話すことにした。

 

「我がオークションに品物を出品して下さるということで。失礼ですが……お品物を拝見させていただけますか」

 

「品物はこれだ。確認してくれ、僕はもう行く」

 

 そうして、机に品物が入ったビニール袋が置かれる。

 

「はい? いやそれは……」

 

 いきなりのことで戸惑ってしまい、うまく言葉が出てこない。別に問題があるわけではないのだが、商品だけ置いて帰る人など見たことがない。

 しかし、私が狼狽してる間に彼はもう部屋から去ってしまった。

 

「何か用事でもあったのだろうか……」

 

 それよりも、持って来た品物をチェックしなければ。まず、何故ビニール袋の中に入れているんだ? 意味がわからない。

 

 普通、それなりの品なら専用の箱に入れて保管する物である。何か理由があるのだろうか?

 手袋をつけ、慎重に中身を取り出す。ビニール袋の見た目からも何個か入っているだろう。

 まず一つ目は、ハサミ……か?

 どこからどう見ても、ただのハサミだ。何か素材や装飾品に特徴があるわけでもない。

 というかこれは……。いや、そんなはずはない。だがこれはどう見ても100均のハサミだ。

 

 ビニール袋の中を覗いてみても中身は同じような物ばかり。まさか冷やかしか? そんな思考が頭をよぎった瞬間一つの物が目に入る。

 

 それはナイフだ。無造作に入れられている品物の中に怪しく光る一本のナイフが入っていた。

 

 これも同じように、これと言った特徴はない。けれど、何か自分惹きつけてやまない何かがあった。

 

 その勘を根拠にナイフを鑑定に回し、徹底的に調べ上げる。すると、衝撃の真実が発覚した。ナイフには能力が付与されていたのだ、それもかなり強力な。

 

 おそらくその強力さから、死の間際全ての力を使い果たしこのナイフに能力を込めたのだと考えられる。

 付与されている能力は斬撃が飛ぶようになるという物だ。他にも能力が付与されているのか、切れ味もかなりの物だった。

 

 しかもこのナイフ、頑丈さが桁違いだ。いくら負荷をかけても、壊れるどころか変化すら起きない。

 

 他にも自動で所有者を治癒し続ける石。失われたとされていた呪いの古文書も存在していた。これを個人で保持していて大丈夫だったのだろうか……まず間違いなく、常人ならば呪いがかかるか、何かに憑かれるかして気が狂ってしまうだろう。

 

 めぼしいのはこの3品のみだった。他は全部何の変哲もないただのガラクタ。まさか、ビニール袋にガラクタに紛れて入れていたのは、私達を試すためだったのかもしれない。

 

 とにかく、この三品はこのまま出品される。正直言ってどれくらいの値段がつくのか想像もつかない。

 

 だが、間違いなく言える。このオークションは伝説となり、これから語り継がれていくだろう。

 

 

$ $ $ $ $

 

「困った、とても困った」

 

 どう考えても預金額がおかしい。あんな桁初めて見たぞ。

 

 ん? 何故困ってるのかって? まあ普通の人なら喜びはしても、悲しんだりなどとはしないだろう。しかし僕の場合は違う。

 

 どう考えても悪運が強い僕ではこんな金を持っていたら絶対面倒ごとに巻き込まれる。というかそもそも、この額は個人で持っていていい物じゃないだろう。

 

 なら使えばいいと思うかもしれないが、この額をそう簡単に使い切ることなど出来はしない。その間に絶対何か起こる。

 

 何かしらに全額寄付するのが一番適切かなあ……それでも嫌な予感はするけど。

 

「毎回、毎回どうしてこうなるんだ……」

 

 

 




感想、評価よろしくお願いします(/ ´▽`)ノチョーダイ


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こんなにお金はいらないです (表)

新作書いてたら投稿が遅れました。
新作も見てね(宣伝)


 お金。お金とはあんなただの紙切れにも関わらず、みんなが欲しくたまらないものである。

 まあそりゃそうだ。お金があれば大抵のことは何でもできる。と言うか、お金とは生きていく上で必須の存在だ。出来ることなら、あるだけあった方がいい。

 

 ーーなんて思ってたよ、つい最近までは。

 改めて考えると、お金を手にしても使うものがほとんどない。そりゃあ生活費は使うが、それは元から支給された額で足りるのだ。

 僕には趣味らしい趣味もないため、使う事がなく減ることもない。まあ多少使ったところでほとんど減りもしないのだが。

 

「おーい、聞こえてるか武ー」

 

 そんな声で、頭の世界から引き戻される。横を向くと山田くんがこちらを向いて僕を見つめていた。

 

「あぁ、ごめんごめん。ボーッとしてたよ」

 

 そうありきたりな返事をする。

 

「大丈夫か? 何かあったのか?」

 

 どうやら僕のことを心配してくれてるみたいだ。優しいな、たまにこの人がホモだと言うことを忘れそうになる。

 

「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」

 

 そう言うと、もう山田くんにそれ以上聞かれることはなかった。

 

「山田くん。ちょっと良い?」

 

「ん、なんだ?」

 

「もし自分が億万長者になったとして、もしそのお金を使い切らないといけないとしたら、何に使う?」

 

「おぉ、なかなか難しい問題だな。まぁ……寄付とかじゃないか?」

 

「まぁ……やっぱりそうだよね」

 山田くんは優しいし、それに自分のために使ってお金を使い切るのはかなり難しいだろう。山田くんの答えは当然のことだ。

 

 

 

 「ハァ、何とかしないとなあ」

 

 放課後の帰り道、そんなことを呟きながら歩く。さっさと使わないといつ面倒ごとが起きるかわからない。

 やはり、一番寄付が現実的なのだろう。長々と考えて出た答えは結局それだけ。

 確か配布された端末から直接寄付出来るらしいし、もうしちゃおうかな。

 

「いや、ちょっと待てよ」

 

 いくらなんでも一つの団体にあの額をぶち込むのはやばいだろう。絶対何らかの形で広まって勘違いされる。やるとしたら少しずつ均等にだな。

 

 まず、メジャーな寄付の団体へ少額だが寄付していく。すると、メジャーな知ってる団体がなくなって来たので、マイナーな団体にも寄付していく。けれども、金は全然減らないのにも関わらず、寄付する宛だけはどんどん少なくなっていく。

 

 次第にはもう手当たり次第に寄付をしていた。意味の分からない団体から難病で苦しんでいる娘を救いたいと言う個人の寄付まで。

 

 金をほぼ全て使い切った時にはとっくに家に着き、窓から外を見るとすっかり暗くなっていた。

 

「何時間寄付し続けてたんだ……?」

 

 無我夢中でそんなに時がたっているとは気が付かなかった。だな、その甲斐もあって預金額を見ると、残高が元に戻っていた。

 

 まあ、念のため少し残しておいたのだが。これくらいは良いだろう。

 

「まあ、きっかけはどうあれ良いことしたなぁ」

 

 こんだけの善行をすれば、神様も僕の味方をしてくれるだろう。

 

 

$ $ $ $ $

 

 翌朝、何となくテレビをつけるとニュースがやっていた。そしてニュースで僕のことが報道されていた。

 僕の名前とついでに僕の過去の実績(嘘)がさらに過大評価されて、報道されていた。

 

 ……………おい、神様。何してんだ。

 

 




神様も武の味方をしてくれたみたいです()


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こんなにお金はいらないです (裏)

side〜難病の少女〜

 

 超能力社会になって良くなった事はいくつもある。より文明は進歩したし、景気も良くなった。だが、実はそれ以上にデメリットも多い。

 例えば、無能力者への差別、能力による犯罪の増加、あとは……新種の難病の出現とか。

 

 病室のベットから青く晴れている空を眺める。私の憂鬱とした気持ちとは不釣り合いな天気だ。

 そう、私は超能力発言によって起きた新種の病気なのだ。治療法は、ない。超能力と言っても万能ではないのだ、直せない病気は存在する。

 今、治療法が研究されている最中なのだ。しかし、この病気の数は少ない上に費用もかかるため後回しにされている。

 そもそもこの病気の原因は能力の不具合による物である。自分自身の能力で自分を傷つけているのだ。

 

「なんかもう、疲れたなぁ」

 

 両親はとっくのとうに見舞いに来なくなった。もはや諦めており、顔も見たくないのだろう。

 

 ネットで寄付を募ってみたが、そんなマイナーな病気のため寄付するような物好きはいない。画面に映った0が私の心を抉って仕方ない。

 

 ポロン

 

「ん? なんだろ」

 

 そんな時に、急にスマホに通知が来た。

 内容を見ると、なんと寄付が来たらしい。私はその瞬間、喜びに包まれた。寄付された人数は1人だけ、それで何かになるというわけでもないだろう。けれど、長らく人の善意に触れてこなかった私にとってはそれでも十分だったのだ。

 

 額など関係ないが、一応寄付された内容を見に行く。誰に寄付されたか気になったからだ。

 

「えーっと、これかな? ……えっ」

 

 だが、内容を見た瞬間私はその人生で一度も感じたことかない衝撃を受ける。

 寄付してきた人は匿名だ。別にそれ自体はおかしな事ではない、けれど額が明らかにおかしかったのだ。とても個人で所有し、こんなところに寄付して良い金額では無いほどに。

 

 これだけのお金があれば、研究も完成させる事ができるだろう。早速研究施設にその旨を連絡して、その資金を渡した。あとは時間さえあれば大丈夫だろう。

 

「何か、恩返しはできないのかしら」

 

 こんな事をしてもらって、何も礼をしないというのは失礼すぎる。だからと言って私に返せるものなんて……

 

 そこである一つの考えに辿り着く。この人の名前を調べ、その功績とともにタレコミを入れるのはどうだろう。

 そうすれば、名声や名誉を礼としてあげられるのではないか。

 

 本人としては名声を得たくてやったわけではないのだろうが、こんな事をできる人間は賞賛されるべきだと思う。

 

 私は早速考えを実行に移すため、行動を始めた。

 

 

$ $ $ $ $

 

 何故か僕が寄付したことがどんどんバレている。なんで? 匿名の意味は?

 

 この混乱に乗じて有る事無い事いろんな噂がばら撒かれている。聞いた話では僕が寄付した人達によって新しい組織が造られているとか。

 

 ……これ使わない方がマシだったんじゃ?

 



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