とある女学生の混沌とした日常 (きりきりばい)
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番外編
とある作者の混沌とした設定集


裏話と現時点の最新話で判明してる情報を自分自身での整理も兼ねて書き連ねました。つまらないものですけどユルシテ……


裏話1

GX後からAXZ前、つまりは夏休み中ってほとんど言及されてないしどうせならそこに色々やっちまえ

 

という雑な思案から

 

じゃあ書くなら日常風が良いよね

最近リアルの方で訳分からん会話とかあったし入れるか⬇

ビッキーとかキャラ崩壊させるのはなんかねぇなぁ…

オリ主を電波にしよう(!?)

そういえば昔の友人が未だにクトゥルフTRPG勧めてくるな。要素入れるか(第5話 とある女学生の混沌とした過去前編 にて)

出来た

 

とかいう訳の分からない経緯を経て生まれたこのキメラ小説。

 

オリジナル主人公兼、リアルのカオス思考回路をぶち込まれる事になった足立朱里ちゃん。

実は名前に関しては殆ど考えていない。

 

色んなアニメで足立って名前付いてると大抵裏側の事多いな、なんでか知らんけど。じゃあ苗字これで(?)

何か明るめの文字入れたいな……でもシンフォギア装者大抵音に関連する単語入ってるから逆に入らない様にしたいな……うーん……

朱里 だ(突然の閃き)

 

という、本当に何も考えてない経緯を経たこの名前。最初の内はなんか裏側に精通してそうなミステリアス少女程度で終わらせるつもりだったが、気付いたら連載にした方が良いレベルで書き始めてしまって割とバックストーリーを頑張って考えるハメになった。

ちなみに過去編で出てきた朱里の本名『風鳴琴音』についてだが、琴音に関しては他の小説の没案からそのまま持ってきている。苗字についてはバックストーリーを考えた結果、風鳴でしか作れなくなったのでこうなった。

 

 

裏話2

口調・内容については作品に合わせた形で装飾・修正しているが、話の飛び方・言い回しに関しては殆どリアルでの会話内容をそのまま持ってきている。

俗に言う天才である友人Aとの会話の中で起きた混沌をなんとか理解出来る範囲にまで落として会話させているのだが、本家をそのまま持ってくると聞いてる側が訳の分からない新言語が誕生する為、結果としてあんまりカオス感のない普通の会話になっている。

ちなみにもう1人怪物級の天才友人Bが居るが、こちらは会話内で飛ばしてくるネタがあまりに不謹慎ネタが多い為ほぼ没。ただネタとしての完成度は本当に高いので頑張って無い知能でセーフラインに落とし込みたい所ではある。

普通の友人達との会話もあるが、所謂身内ネタが多過ぎるのでコチラはほぼ採用していない。

 

 

裏話3

書き始めた最初の内はヨグソトースとナイアルラトホテップの詳細を一部逆に覚えていた。

いざ過去編を書こうとした所で虚空からの声みたく『貴方、そこの情報間違えてるわよ』と聞こえた気がしたのでクトゥルフ厨の友人に聞いた所、覚え間違いが発覚。結果、組んだバックストーリーの一部が崩壊し、挙句の果てにそもそもの存在論に置いて解釈違いがある事が更に発覚。絶望してどうしようか迷った結果、『聖書の解釈違い』ぐらいの勢いでミスだけ直してゴリ押す事に決定。結果今に至る。

 

 

 

 

現在の朱里の設定(作者の情報整理も兼ねて)

第16話「とある女学生の混沌とした決闘王」時点で判明してるのは以下の通り

 

・足立朱里 は偽名であり、本名は 風鳴琴音

 

・両親からの遺品として 【ペンダント】(バルザイの偃月刀)を貰っている。あと体内に【聖遺物?】(トラペゾヘドロン)を埋め込まれている。

バルザイの力で擬似的な未来予知・異常な量の知識の獲得が可能。トラペゾヘドロンの力で自身の見た目を変えたり、周囲へ溶け込む・目立たせる事が出来る。

 

・バルザイ、トラペゾヘドロンに由来しない能力として【YourChronicle】を所持。これによって全平行世界の自分と経験・知識を共有する事が出来る。

 

・既にヨグソトース(全時空、平行世界を任意に移動出来る神話生物)に目を付けられてる。

 

・ガングニール と 銀の鍵 のダブルコンダクター?

 

・ガングニールが近くにあるだけで勝手に起動しそう

 

・人類が出せないフォニックゲインが出せる?

 

・響とガングニールの組み合わせでないと反応しない?キャロルとガングニールでは無反応だった。

 

 

 

 

意外と出てこない服装問題

 

基本は原作組は全員GX時の服装。朱里も一応考えはしたが殆ど描写出来てない。

上半身:赤色のフード付きパーカー

下半身:青の色褪せ始めているジーンズ

靴:ランダムなツートンカラーのスニーカー

 

かなりダボッとしたパーカーにラインがしっかり出るジーンズを組み合わせており、服装の時点でカオス。尚本人のプロポーションは何故か翼やマリアといったモデル級であり、なった経緯を聞いた9割が殺意を抱くそうな。

 

 

 



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設定集

随時更新予定なので取り敢えずポン置きしときます。
気付いたら2週間近く経ってたんだけど……マジでハーメルンから離れてた……ワロエナイ……


立花響

 

原作とほぼ変わらず。

朱里との関係性は【未来以下その他以上】。 親友である事に間違い無いが夫婦レベルの重さでは無い。定期的にゲーム勝負を朱里に仕掛けてはボコられ、未来に慰められている。

 

 

「なんで朱里ちゃんにどのゲームも勝てないのぉ!?」

「勉強とかで勝負したら?朱里数学苦手でしょ?」

「それだっ!」

(なお辛勝)

 

 

小日向未来

 

原作と少し変化あり。朱里との関係性が【クリスとほぼ同等】の為、少し原作より世話焼き気味。

朱里に毒されたせいか響が少しカオスに染まり始めており、頭痛薬のお世話になる可能性に眉をひそめている。

 

 

「朱里の考えてる事があんまり分かんない……」

「結構以心伝心出来てない?」

「なんか細かい所違ってそうなんだよね……」

 

 

風鳴翼

 

原作とほぼ変わらず。ライブ事件で現れた謎の存在=朱里(の姿の1つ) を追い続けている。

朱里との関係性は【戦友の友人】。恐ろしい程のカオス発言で所構わず場を狂わせる朱里を最初に見た時は距離を取ろうとしていた。結局響と朱里の魔の手により、なんだかんだ仲裁役ぐらいに収まっている。

 

 

「今日も足立はゲームセンターに篭っているのか……」

「もう一度翼さん連れて遊んで回りたいって言ってましたよ?」

「ゲーム以外もしたいのだが……結局流されてるのだろうな……」

 

 

天羽奏

 

原作乖離勢その1 ライブ事件で突如現れ、自分に高性能Linkerを託し去っていった謎の存在=朱里(の姿の1つ) を追い続けている。

朱里との関係性は【響の友人】。カオスの権化な朱里が他を弄り倒しているのを見てゲラるのが最近の楽しみらしく、よく翼に白い目をされている。そしてそのまま翼も朱里の餌食になる。

 

 

「アイツ今何してんだ?またゲームしてんのか?」

「今日はキャロルと遊ぶって暁が言っていたけど……」

「クッソ録画させときゃ良かったッ……!」

 

 

雪音クリス

 

原作と変化あり。朱里に色々吹き込まれた結果、学生兼装者兼配信者という大混線状態になっている。

朱里との関係性は【学校の後輩】。後輩なのに敬いがない所か問答無用でイジリ倒してくる為、切歌と調を見て後輩の認識のズレを直している。

 

 

「クリスせんぱ〜い。今日も夜A〇exやりましょ〜」

「お前昨日徹夜でAp〇xやるって言ってなかったか?」

「人生はゲームって習いませんでした?」

「習ってねぇし何言ってんのか意味分かんねぇよバカ!」

 

 

暁切歌

 

原作と変わらず。

朱里との関係性は【学校の先輩】。表記出来てないが定期的に朱里が何を血迷ってか色々な物を送っており、その中身も相俟って、調と共に一喜一憂が激しい日常生活を送っている。

 

「しらべ〜!今日のおゆはんは何デスか!?」

「朱里先輩から大量に貰った牛ひき肉でハンバーグだよ切ちゃん」

「やったデス!──およ?牛肉なんていつ貰ったデスか?」

「さっき冷蔵で1kgも送られてきた……」

 

 

月読調

 

原作と変わらず。

朱里との関係性は【学校の先輩】。最近何故か朱里にロックオンされてよく監視されている。余裕で気付いているが向こうも何もしてこないので少し怯えながら生活している。

 

 

「また見られてる……響さん、なんで朱里さんが私をよく追ってるかとか知ってます?」

「調ちゃんの黒髪を見ていたいとか言ってたよ?」

「……えっ」

「ちゃんと言って見れば良いのにね〜」

「………えっ、いや、そういう問題じゃないと思います………」

 

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

セレナが生きている為原作より重度のシスコン化。セレナが絡むと大体の人間からウザいと言わせる程。

朱里との関係性は【ツヴァイウィングの知り合い】。実はたまに朱里に翼を隠し撮りしてコレクションとして送らせている。

 

 

「今日の分はどうかしら?」

「コチラに……」

「へぇ……これからもよろしくね」

「御意……」

 

「……何してるの朱里ちゃん……」

 

 

セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

 

筆記出来ていなかったがセレナはIFの様に大人状態。子供のままである理由が作れなかった。

朱里との関係性は【姉の友人】。明らかに姉がよろしくない事を頼んでいる事に勘づいているが、何故か朱里も満足気な顔をしているので諦めている。

 

 

「マリア姉さんは出かけちゃったし、翼さんと奏さんも出かけてるしどうしようかな……」

「セレナさん!暇ならちょっと特訓に付き合ってください!」

「響さん……ええ、良いですよ」

 

 

 

 

 

足立朱里(風鳴琴音)

 

オリ主人公。リディアンに通っている一般女学生。装者の事もS.O.N.Gの内情も全く知らない(フリをしている。むしろめっちゃ詳しい)。

元風鳴家上がり。ただ足立朱里に改名時に悉く存在していた証拠を(両親が)抹消した為、現在風鳴家に居た頃を詳しく知るのは風鳴訃堂1人となっている。

 

一般人の生活をしつつも、隙あらば能力で風鳴機関の研究所に転移、ペンダントが齎す知恵を基に(安全な方向へ)研究を発展させる事で、訃堂から協力費を貰っている。

最近の悩みは平行世界の自分と、何故か別世界で共に戦った人外が電話を掛けてくる事。平行世界の自分はともかく、もう片方は何故電話が繋がるのか全く分からず戦慄中。当人曰く『愛』だとか。

 

 

「……また電話か。はい、どちら様で?」

『私のコート、気に入ってくれた?』

「だから、なんで私の電話に掛けれるんですか。世界違うんですけど」

『愛 よ』

「あい……あい……?」



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とある番外編のメタメタしい日常

タイトル通り、ただのメタ話祭りです

10月6日 感想でのアンケート収集がガイドライン違反との事で、活動報告での返信方式に変更


※キャラに会話方式でやらせてるだけで会話内容メタメタです。ストーリーにも関係無いので受け付けない方はブラウザバックを推奨します。

※【見てみたい会話・日常】の投票を私の活動報告のコメント欄にてやります。R-18以外なら何話でも、どんな内容でも構いませんのでお気軽にどうぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうも」

「誰?」

 

 

 

作者「作者こと きりきりばい です。あと初挑戦で全員のカッコ外に名前付けてみます」

朱里「何を言ってるんだお前は……ホントに付いてるし」

作者「誰喋ってるか口調とか順序を考えなくても分かりやすいんだけど、正直めんどくさいっすねコレ」

朱里「あと作者自体がこのタイプを勝手に嫌ってるのもあるかもな」

作者「勝手な思想なんですけどこうやって名前付いてると見る度に『第三者の読者観点に引き戻される』様な気がして、こう、なんというか、アレなんですよね」

朱里「語彙力の無さが顕著に出ている瞬間」

作者「シャンフロとか七つ魔みたいな文章力が欲しい……」

朱里「言っちゃったよ」

 

 

朱里「で、今回は何故にこんな話書いたのさ」

作者「良くぞ聞いてくれました。実はネタ切れです」

朱里「は?」

作者「いやですね、公開する情報の量と順番とかはもう頭ン中で決めてるんですよ。でもね、そこに繋がるまでの話が……」

朱里「要は『キャラ達を日常生活させる上でのネタが尽きた』って事でOK?」

作者「OK!(ズドン)」

朱里「雑にコマンドーすんな。で、それとこの話の何の関係がある訳よ」

 

作者「ちょっと読者の皆様が見てみたいと思う話でも頑張って書いてみようかと」

朱里「出たよ聞こえのいい全投げ」

作者「おいやめろ。結構俺も本気でこれやろうか迷ったんだぞ」

朱里「やってる時点で負け」

作者「言い返せなくて草も生えませんねぇ(震え声)」

 

朱里「で、実際どうすんの。話題貰った所でお前XDやってたりApexやってたりで進捗速度ナメクジじゃん」

作者「話の話題が浮かばないとマジで筆進まないんだから仕方ないじゃん!」

朱里「まぁ確かにこの間休日で3時間ぐらいベッドの上で唸りながら話の進め方悩んで、結局1文字もその日進まなかったもんな」

作者「やめろ実体験を出すのを」

朱里「結局その後XDオート周回させながらApexで1人虚しくソロランしてたもんな」

作者「ヤメロォ!」

 

 

※主はID:361701696 IDN:きりきりばい でXDUNLIMITEDやってます。良かったらよろしくお願いします。

 

 

朱里「シレッとIDを貼るな。で、募集するとしても要項とかどうすんの」

作者「今から貼らせてイタダキヤス……」

 

 

【お話の話題募集コーナー】

・私のユーザーページの 活動報告 からお願いします

・1人何話分でもOKです

・朱里 が絡める内容でお願いします(S.O.N.G内のみで完結する話はNG)

・ラスボス化、敵対等《現在の世界線で書くと本筋への復帰が難しい内容》は【平行世界で起きた出来事】として夢オチさせます。ご了承ください。

・R-18の内容は御遠慮ください

・この話の投稿日から1週間を期限とします。

 

 

作者「2話分取る予定です。貰ったお話全部をルーレットアプリにぶち込んでランダムに選ぶ予定なので、皆さんの欲望を是非是非ぶつけてみてください!」

朱里「言った所で投げてくれる人要るの?」

作者「やめて。そういう悲しい事言うのやめて。泣きそうになる」

 

 

作者「信号機組を呼んできたよ」

朱里「ゴメンどういう事?」

響「呼ばれてきました!」

翼「足立が居ると聞いて」

クリス「バカ三銃士が完成したと聞いて」

朱里「明らかにおかしいのが居ない?」

 

 

作者「実はこの話作った理由もう1つあるんだよね」

朱里「2つ以上思考して作ってたとか作者にしてはやるじゃん。で、なんで?」

作者「シレッとDisってない?で、作った理由は最終更新日時検索で上めに居たいからですね」

クリス「欲望ダダ漏れじゃねぇか。ちなみになんで居たいんだ?」

作者「大体更新日時で調べてずっと上の方居たら気になって少しは読まない?俺は読む。ていうかそれ関連で全く元ネタ知らない作品とコラボしてるのも読む。そして分からん」

朱里「お前が読むんだったらそうなんだろう。お前ん中ではな」

作者「その通り過ぎる。まぁ多くの人の目に止まったら嬉しいかなーっていう自己承認欲求モンスターの悲しい欲ですね」

響「でも感想貰って自己承認欲求満たしてもそんなに話書くスピード上がってなく無いですか?」

 

作者「キ-ボ-ウ-ノ-ハナ-」

朱里「アイツは死んだ!もう居ない!」

翼「せめて苦しまずに葬ってやる……」

響「翼さん、もうこの人死んでます……」

クリス「どいつもこいつも軽いな!?」

 

 

作者「まぁそんな訳で、しばらくは作者の脳内設定を整理するのも兼ねて設定集的なのを書いたり、裏話を放り投げたりする枠を番外編として設ける予定です」

朱里「このバカ作者の悪い癖としてスグ放り投げるから、生温い目で見てやってください」

響「私作者さんの推し?っていうらしいけど、クリスちゃん知ってる?」

クリス「このバカが推しとかお前マジか?」

作者「Androidのキーボード背景はビッキーです」

クリス「……………」

作者「時間が出来たら携帯カバー ver.シンフォギアも自作しようと思ってます。勿論響成分多めで」

クリス「限界オタクじゃねぇか」

作者「正直たまたまTwitterで軽く見かけたビッキーの絵からここまでハマると思ってなかった」

響「なんかよく分からないけど、私の事が……えーっと……好きって事なのかな?」

作者「然り!然り!然り!」

朱里「それは違う作品だし対象も違うんだよバカがよぉ!」

 

翼「なんか暗転し始めてないか?」

作者「本日のメタ話はここまで!それでは、また後日〜」

朱里「おいバカ作者!締め方雑過ぎんだろうが!もっとなんかあっt──」

 

 

 

 

 

 

続くらしい



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本編
とある女学生の混沌とした日常


6月30日 誤字報告を頂いたので修正 報告ありがとうございます


※リアルの友人とたまに発生する、脳ミソが千ノ落涙に貫かれた後が如く穴だらけになっている会話を修飾しつつ(百合らせつつ)シンフォギアキャラにやらせてみただけです。

 

※オリ主といいますか、原作キャラを当てはめて話させるとキャラ崩壊し過ぎてコレジャナイ感が凄かったので電波担当を生やしただけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リディアン音楽院

某所にある音楽を学ぶ事を志す女学生が通う学院であり、裏の顔として新たなるシンフォギア装者の検査・選定も行っている。

 

某日、放課後と一般的に呼ばれる時間、その学院の廊下にて…………

 

 

「お腹空いたぁ!ふらわーに最短で!最速で!真っ直ぐに、一直線にぃ!」

「待って響!そんなに走ったら!?」

 

 

響と呼ばれた、著しく空腹なのであろう全力疾走している女学生と、それをゆったりと、しかし早めのペースで追いかける女学生。

確かに人は殆ど居なくなっており、廊下も別に濡れてはいない為滑りやすいという訳でも無い。ただしそれが人とぶつからない事を、また滑らないという事を保証してくれる訳でもなく…………

 

 

「大丈夫だよ未来!──うわっ!?」

「響!?」

 

 

なんとも因果(いつものオチ)というか、フローリングである床の一部が奇跡的に(因果律的に)滑りやすくなっており、見事に彼女は足を滑らせてお尻を床にしたたかに打ち付けかけて────

 

 

「よっ、と」

「あっ────えへへ」

「ハァ……」

 

 

すぐ横の教室からたまたま(ご都合主義で)出てきた1人の女学生が、どう見ても異常な速度(OTONAの特権)で彼女の足元と腰の下に手を入れて、お姫様抱っこと呼ばれる形で抱えあげた。

抱えあげた人間の顔を見てからにへらと笑う彼女に────

 

 

「コケるなら前からの方が理性がマシだから、そうやってコケて?」

「…………えぇ…………?」

 

 

彼女を抱えあげた『足立(あだち)朱里(あかり)』は、どう考えても雰囲気ぶち壊しの言葉を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふらわー という、1人の老婆が経営しているお好み焼き屋がある。

今そこにはブラックホールが如くお好み焼きを口に放り込んでいる(消し去っている)響と呼ばれた学生──『立花響』と、あまり食べずに響の顔をずっとニコニコ見ている未来と呼ばれていた学生──『小日向未来』、そして何故かお好み焼きをヘラで微塵切りにしてから食べている『足立朱里』の3人が、一つのテーブルを囲んでいた。

 

 

「……朱里?なんで微塵切りにしてるの?」

 

 

そんな彼女に至極真っ当な質問をする未来。それに対する朱里の返答は……

 

 

「え、噛みたくないからだけど」

「おばあちゃんか何かなの?」

「歯茎と歯と筋肉があるからおばあちゃんじゃないよ」

「おばあちゃんに対する熱い風評被害を感じた気が……」

なんか言ったかい!?

「いえ何も」

 

 

理由になってない理由だった。それを聞いても呆れ顔で終わっている辺り、コレがいつも通りである事が伺える。まぁ店主はその限りでは無いようだが。

 

 

「にしても朱里ちゃんって変だよねぇ」

「ぶっ飛ばすわよ響。誰が変人だって?」

 

 

どう聞いても勘違いされる言葉回しをした響。朱里は声こそドスの効いたモノになっているものの、顔は笑っている。目も、その顔の端正さに釣り合わない優しいモノであり、これもいつも通りである事が伺える。

 

 

「全く勉強してないのに国語と英語出来てるし、すっごい発言急にし出すし……どんな頭の構造してるの?」

「ディスられてるの私?」

「ち、違うよ!単純に羨ましいなぁって思っただけだってば!」

「まぁ確かに響って勉強出来ないし」

「うっ」

「授業時間の半分以上ほぼ寝てるし」

「うぐっ」

「目離したら課題終わってないのにすぐどこかに遊びに行くし」

「うぅっ……」

 

 

ディスられてると取られてもあまり強く言えない発言をした響に割と容赦無く事実を叩きつけていく朱里。

しかし

 

 

「でも、貴方はとことん優しい。あの時も私を救ってくれた」

「えっ……あぁ、あの時?」

「そう。貴方の大好きな人助けに、私は救われた。その眩しさは本当に羨ましい。私は響のそういう所、本当に凄いと思う」

 

 

急に真面目に響の顔を見据える朱里の目は、真珠の様に美しい黒色をしていた。

 

 

「でも、それにしても響って危なっかしいよね」

「シリアスな雰囲気だったのになんでそれを直ぐに叩き壊すかな……?」

「だってお好み焼き美味しくなくなるじゃん」

「始めたのは朱里だけどね?」

「何の事だか分かんないなぁ。ほら響、早く食べないと冷めるよ?」

「雰囲気ぶっ壊れなのにぬぐぐぐ……確かに食べないと冷める……」

「ねぇ未来?なんであんな風に悩みながら食べる速度変わってないの?物理法則おかしくない?」

「響だから大丈夫だよ」

「それもそっか」

ほれってほういうほと(それってどういう事)!?」

「口に物入れながら喋らない!フンッ!」

「あいたぁ!?」

 

 

シリアスな雰囲気が一瞬でぶっ壊れたが、なんだかんだ3人は楽しそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるゲームセンターにて

足立朱里、立花響、小日向未来、そして……

 

 

「ふむ、これが『えくば』という物なのだな?」

「そうですけど……また雪音先輩ですか?」

「ああ。最近このゲームを雪音がだな……」

 

 

特徴的な髪型、透き通った青色の髪、端正に整った顔。どう見ても世界的に有名なアーティストである『風鳴翼』が、一般学生3人の中に混ざっているという異様な光景が出来ていた。

ちなみにやっているのはガ〇〇ムエク〇〇ームバーサスである。なんでそんな筐体置いてるゲーセンに女学生3人が押しかけてるのかとかは、突っ込んではいけない。あとクリスちゃんがやってるのも突っ込んではいけない。

 

 

「にしても意外だよね、クリスちゃんがこういうのやるなんて」

「雪音先輩色んなゲームやってるらしいよ?1番お気に入りなのは銃使うゲームらしいけど、こういうのも好きなんだってさ」

「やはり雪音は銃を使う事に関しては一流だからな。私も誇らしい」

「なんでアンタが誇ってんだよ」

「雪音は私が育てた」

「義理の関係すらねぇだろ何言ってんだコイツ……」

 

 

世界的アーティストである翼にガンガンツッコミを入れる朱里。これがただの上下関係程度なら大問題に発展しそうな物だが、雰囲気が緩くなってきている辺り割といつもの事だと言うのが伺える。

 

 

「にしても朱里ちゃん……上手くない?」

「さっきから普通に会話しながらやってるけど、相手の攻撃全く当たってないね……」

「まぁこの系統のゲームは慣れたからね。普通のプレイヤーぐらいだったら軽くあしらえるよ」

「え、でも朱里ちゃんこのゲーム初めてじゃないの?引き継ぎカードとか、そういうの持ってなかったよね?」

「3万ぐらい溶かしたのがあったけど失くした」

「あっ…………」

 

 

かなり手馴れたプレイを見せる朱里であったが、どうやらこのゲームに元々沼っていただけの様だった。3万円溶かしたカードを無くしている辺り、案外その辺の管理は甘いのかもしれない。

 

「それにしてもこの……ヘビーアームズ?っていうガンダムすっごいクリスちゃんそっくりだよね」

「雪音先輩と……?雪音先輩髪は銀だし、どこら辺似てるの?」

「えっ、えっと……滅茶苦茶銃撃つとことか?」

「雪音先輩普段何してんの……?」

「えーっと……クレー射撃?」

「オリンピック選手目指してたのかぁ先輩……えっ初耳なんだけど。しかもそれだったらなんで音楽院来てるの雪音先輩」

「色々と込み入った事情があるらしいよ?」

「込み入り過ぎでは……?」

「立花、発言に気を付けろ。彼女は何も知らないんだぞ」

「すっ、すいません翼さん……」

「まーたコソコソと何かを……ゲーセンうるさ過ぎて聞き取れないし。いやまぁいいけど」

 

 

機密事項(シンフォギア)をうっかり漏らしかけた響は、凄まじく無理のある言い訳でなんとかこの場を乗り切った。しかしそれで疑念が晴れる訳もなく……

 

 

「ねえ響」

「なに?朱里ちゃん」

「貴方、デカい問題隠してたりしない?」

「特に何にも無いよ?」

「今の返答分かりやす過ぎでしょ。だいぶデカいのあるって分かったよ?」

「いやいや、無いって」

「ふーん…………」

 

 

平然とゲームをしながらも色々と聞いていく朱里。場合によっては機密事項に触れかねない問答ではあるが……

 

 

「……まぁ、人間誰しも隠し事はあるか。これ以上は突っ込まないようにしとく」

「……ありがとう」

「貴方が謝ってどうすんの響。どっちかというと無作法に踏み込んだ私の方の問題なんだから」

「本当に、ごめん」

 

 

なんとか引き際を見つけて引いた朱里であったが、響の様子を見てどうやらムシャクシャしたらしく……

 

 

「……響」

「な、なに?」

アンタバカァ!?

「──へ?」

 

 

──彼女は、弾けた。

 

 

「大体何よそのクヨクヨした様子は!正直言って気持ち悪ィ!」

「え、えぇっ!?」

「アンタはバカ街道一直線なんだからその方面で振り切りなさいよなんでクヨクヨしてんのよアンタは!」

「ちょっと待ってすっごいディスられてない!?」

「知らん!そんな物は私の管轄外だ!」

「言ってるの朱里ちゃんじゃん管轄してよ!?」

「響、世の中にはこんな言葉があるわ」

「……どんな?」

「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ……」

「当事者にモロバレしてるけど?」

「………帰る」

「あぁ待って朱里ちゃん!まだそのゲーム終わってな──ちょっ、荷物片付けるの早いって!待って!しかもゲーム放置しないで!?」

「袖掴むな伸びる!HA☆NA☆SE!私は帰るんだ!」

「袖掴んでるのは悪いけど離さない!ていうか全部朱里ちゃんの自爆じゃん!?」

「………………」

「無言で力むの止めて!?」

 

 

なんかやいやい言い合いながらも唐突に萎えてゲームを放置して本当に帰ろうとする朱里と、それを必死に引き止める響。鍛え上げている響に叶うハズも無いのだが、必死に朱里は帰ろうとしていた。

 

 

「……翼さん、私達どうします?」

「ふむ……好きな様にさせれば良いのではないか?」

「あのままだと朱里の服の袖が千切れそうなんですけど」

「……待て、何故立花が強めに引いていて彼女はその場から動かない?」

「朱里も鍛えているからじゃないでしょうか?」

「生半可な鍛え方では拮抗出来ないと思うのだが……」

「ゲームして身体ほぐしてご飯食べて寝ると、あんな風になるらしいですよ?」

「……叔父様や立花と同じタイプか」

 

 

置いてけぼりになっていた2人は地味に朱里の真理に近付きつつあった。

ちなみにせっかく圧勝していたのにそんな事していたのでエクバは負けた。野良の仲間の人に散々言われていたが、朱里は涼し気な顔をしていた。何やってんだコイツ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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とある女学生の混沌とした配信

これしか今の所書くモチベ出ないのでしばらくこれ書きます。モチベ帰ってきたら止まってる2作品進めます……


ある休日の朝6時、足立朱里は既に起きていた。

とある一軒家。巨大ではあるが1階建てで見た目は古く、言うなれば昔あった長屋の壁をぶち抜いて1つの家とした様な、そんな家。中も彼女の私物が適度に散乱してパッと見は汚いが、部屋の壁や床そのものは新品の物になっており清潔さを保っていた。その家の彼女の寝室にて……

 

 

「……雪音先輩まだかな」

 

 

彼女は待ち人を待っていた。

そんな想いが届いたのか、彼女の携帯が鳴った。床に寝転がっていた彼女は弾き出されるかのごとく携帯を手に取り、かかってきた電話に出た。

 

 

「はいモスィモスィィィイイ?」

『……掛け間違えた』

「待って、待ってください先輩。そりゃないです」

『あたしが知ってる足立朱里ってのはもう少しマトモな脳ミソを持ってたハズなんだが』

「その足立朱里で合ってます。私です私」

『オレオレ詐欺の派生系に出会っちまったなあたし』

「いつまでやるつもりですかコレ」

『お前が過ちを認めるまでだが?』

「……すいません」

 

 

随分とマトモな話し出しが出来ないらしい彼女は、なんとか落ち着いてから本題を切り出した。

 

 

「……それで、今日もやるんですか?」

『あ、ああ。なんか予定とかあったか?』

「先輩の為に予定空けたんですよ?無いに決まってるじゃないですか」

『ほ、ホントか?じゃあ、12時からで良いか?』

「全然良いですけど……なんか理由でもあるんですか?」

『いや、どうせならキリ良くしたいなぁって』

「すっごい分かりますソレ。じゃあ12時からでよろしくお願いします」

 

 

12時に何かの約束を取り付けた2人は、電話を切って、何の因果か2人ともそれぞれのベッドに寝転がって、殆ど同じ事を呟いた。

 

 

「「頑張るか……配信」のアシスト」

 

 

何が始まろうとしているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の正午。とある動画配信サイト、その生放送欄に1つの配信があった。

非公式配信ではあるが、その同時接続数は脅威の15000人超え。異常とも言える量であった。では、その内容は何なのか?少し覗いて見るとしよう。

 

 

「おいココに敵居んぞ!」

「もう1人ダウンさせましたよセンP」

「センPってなんだよ新しい略称か!?」

「点Pの進化系でセンパイも略せないかなって」

「何言ってんのか訳わかんねぇよ!よしダウン!」

 

 

……なんと足立朱里と、その友人でありリディアンにおける先輩でもある『雪音クリス』が偽名を使ってFPSゲームの配信をしていた。

そう、2人が取り付けた約束は配信、そのゲスト参加であった。朱里は最近知った事なのだがクリスはどうやらゲーム配信をしているそうだ。ヘンテコな言い回しとカワボ、異様な銃系ゲームの実力等から彼女は一瞬にしてネットで話題となり、中堅配信者の1人となった。

だが彼女には1つ欠点があった。そう、性格だ。独特な言い回しとその口の悪さを自覚していて自己完結するその性格から、彼女はこれまでずっと他の有名配信者とコラボの誘いは来た事はあるものの断り続けていた。そこに目を付けたのが朱里だった。

 

《これ、上手い事やれば私有名になれるのでは?》

そんな私欲丸出しの理由をよりにもよってクリス本人に堂々と話しながら、ある日朱里はクリスの配信への参加を持ちかけた。クリス本人もそのド直球度合いに辟易しつつも実際そういう相手を求めていた事から了承した。

――それが、全ての始まりだった。

これまでのクリスの配信は多くて同接5000人。充分多いのだが……その日は違った。脅威の同接10000人超え。

何があったのか?それは全てこの朱里のせいであった。その時の配信を振り返ろうと思う。

 

 

「よう、スノウだ。今日も配信やってくぜ」

 

 

彼女、雪音クリスはネット上では『スノウ』と名乗っている。”雪”音クリスだからスノウ。成程、随分と人に言えないぐらいには直球らしい。

 

 

「だが今日は特別だ。1人ゲストを呼んでいる」

 

 

現時点で同接1700人程。ゲスト という言葉にコメント欄が一気に盛り上がる。何故か?スノウ自身がコラボはやる気が無いと宣言していたからだ。

誰だ?〇〇か?△△も有り得そうだな 等と様々な有名配信者の名で盛り上がる中、彼女はゲストの正体を語った。

 

 

「予想してもらってる所悪いが、ゲストはあたしのリア友でヤベー奴筆頭だ。本人に自己紹介してもらおう。おい、頼むぞ」

「………へ?あっ、すいませんジュース飲み終わるまで待ってください」

「マイペースかお前は!?ジュースなんて後からでも飲めるだろ!」

「へーい……あっ、名前決めてなかった」

「はぁ!?」

 

 

異様とも言える滑り出しで始まった彼女の配信は、中盤に差し掛かる頃には同接10000人という異常な数値を叩き出していた。いったい何が起きたのか?それは……

 

 

「相変わらずこのバトロワゲー難しいですね……なんでそんな遠距離カービンでガンガン当ててるんですか?」

「やってたら慣れたんだよ。ていうかお前はさっきからどんだけチャーライでちょっかい掛けてんだよ?」

「いや、アーマー育てるの楽しくて……ほい、赤アーマー完成。センパイその白アーマーください」

「ほらよ。……お前今何ダメージ出してんだ?」

「1500辺りですね。まだ中盤だけどもうハンマー出そうです」

「……コイツ、上手くね?」

「センパイが近距離しっかり抑えてくれるからですよ」

「あたしがダウンした時にセンチネルでクイショして1人吹っ飛ばした奴が何言ってんだ……?」

 

 

そう、朱里が異常な実力を発揮していた。

最近話題のAp〇xをやっていた2人。今回はゲスト有りの為、初の試みである視聴者を入れずにデュオをしていたのだが……このゲーマー、異常な程にプレイが上手い。まさかのスナイパー2本という、このゲームに置いては異常を通り越して変人呼ばわりされる武器構成でA〇exではまぁまぁ上手い方と呼ばれるクリスをドン引きさせていた。

ちなみにネット名を呼ばず普通にセンパイ呼ばわりされているのもドン引きを加速させている。諦めてクリスは名前考えるの面倒くさがった朱里をコウハイと呼ぶ事にした。

 

ちなみにこんな事をしているせいか、コメント欄は中々に阿鼻叫喚であった。

 

『なんだこの変人』

『2000ハンマーなんで2ラウンド開始時点で取れそうなんですかねぇ』

『チャーライ嫌いだけどここまで完璧に当てられたら笑うしかねぇわ』

『なんでこの子スナイパー以外持ってないの?』

『スナイパーと手を溶接したんでしょ』

『後輩の手は金属製だった…?』

 

などなど、実力に関してロクな褒め方をされていなかった。だがただ上手いだけならそこまで伸び切らない。伸びた理由はもう1つ、その掛け合いにあった。

 

 

「……あそこ2パやり合ってますね。突っ込みます?」

「そうすっか。コウハイ、ウルトは?」

「63%」

「……もうラウンド2だぞ?遅くないか?」

「スイマセン!スイマセン!もう溜まってますから!」

「なんで嘘ついてんだよお前!?」

「ウルトが使えるのは63%なんですよ?知りませんでした?」

「初めて聞いたわそんなの!お前の世界は数字どうやって数えてんだよ!?」

 

「うおぉぇぇぇぇえ!?なんだコイツ!?」

「急に叫ぶな!ていうかお前いつの間にどんだけ離れてんだよ!?」

「ちょっと物資欲しくて……はいクイショでヘッショ、アイツはハンショ」

「急にラップみたいにしてんじゃねぇよ案外余裕だなお前!?」

 

 

無駄に上手いそのプレイとクリス……スノウ弄りの上手さ、大量に生産される迷言等様々な点から望み通り彼女は有名プレイヤーの1人となり、スノウも有名配信者の1人となった。これが彼女達が有名プレイヤーとなった馴れ初めである。

そして今日は……

 

 

「スパチャありが……1ダメージ×10円!?」

「出た富豪の遊び……えっ、2人の合算?ガチの富豪じゃんこの人怖…」

「……チャーライ持つ?」

「センパイは近距離専門では?それともランパートでも使います?」

「話の繋がり全く分かんねぇぞ……ガスおじするわ」

「じゃあワットソンちゃん使いますね」

「なんで籠城セットなんだよ」

「育てたアーマーで着替え量産しようかなって」

「そういう事考える脳ミソあったんだな」

「久しぶりに泣きますよ?」

 

 

今日もいつも通りであった。

 



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とある女学生の混沌とした補習

また脳死で書き上げました。というか主軸として出した物を大して触れずに放置してる節があります。どうしよ


「……なんだこれ」

 

 

ある日、足立朱里は自宅を出て直ぐに奇妙な拾い物をした。

 

 

「……これはlooks like(見た感じは)アークルなのでは?しかも玩具の材質じゃなくない?マジwhat is this(なんすかコレ)?」

 

 

訂正、ヤバい拾い物をした。なんでこんなモノが落ちてんだ。しかもルー語を独り言で平然と話すようなヤベー奴の家の玄関先に。

ちなみにこの世界では仮面ライダーは普通に放映されている。なんなら1号から何十年も。なのでクウガも勿論放映済である。

 

 

「……腰に押し当てたら体内に取り込まれんのかな、コレ。実験したいけどなぁ……学校行かないとだしなぁ……うーん」

 

 

そう、本来は今日は学校は休みなのだが、彼女は訳アリで学校に行かなければならない。通学しようと家を出た瞬間にコレである。学生服を着たままウンウン唸っていた彼女だが、唐突に1つの名案が浮かぶ。

 

 

「家に置く……玄関先にこんなん置いてたらマジで怖ぇな。かといって持ち歩く訳にもなぁ……ひび、きはヤバいからOUTか。未来にでも預けて帰りに取りに行こう」

 

 

こういうヘンテコ物質に関する専門家の集まりであるS.O.N.Gの事も、名前を挙げた2人がどちらもその関係者、1人はモロ実働部隊な事も知らない彼女だが結果的にその判断は大正解であった。彼女は進路をリディアン寮へと変え、信頼する親友に電話をかけた。ワンコールで出た相手に安堵しつつ、彼女は要件を伝えていく。

 

 

「あ、未来?今ちょっといい?」

『珍しいね、どうしたの?』

「ちょっと変な拾い物してさ……危険物じゃないのは分かるんだけど、持ち歩くにもいかない物で……預かっててくれない?」

『なんでそんな物拾ったの……?』

「いや、それがさ……私の知ってる玩具が本物になった、みたいな?」

『……うーん?』

「取り敢えず危険物じゃないから預かって!バッグに入らないから手持ちしてるせいで今道行く人に凄い顔されてるの!」

『ま、まぁ朱里がそこまで言うなら……でもなんで私に預けようとしてるの?わざわざ私の所に来る理由が……』

「今日私補習あるの!」

『……えっ?』

 

 

そう、朱里が学校に行かなくてはならない理由とは補習であった。国語と英語に関しては全く勉強をしなくても学年上位を維持出来ている彼女だが、全ての学業が完璧という訳では無い。むしろ数学に限って言えば彼女は響よりも頭が悪かった。それこそ、この夏休みに補習をねじ込まれるぐらいには。

そんな訳で彼女は補習の為に学校に向かっているのであった。

 

 

『……ま、まぁ、それなら預かっておくよ、うん、えぇ、それがいい』

「すっごい口調崩れてない?どうしたの?」

『いや、朱里 も 今日補習なんだぁ、って』

「……まさか」

『そう、そのまさか』

「……もう胃が痛い」

『が、頑張って?』

 

 

言い方から察しただろうが、相手に選ばれなかったもう1人はどうやら朱里と同じ事情を抱えているようであった。何故2人きりになる事にこれ程に胃を痛めているのかはともかく、特に大きな問題もなく彼女はアークル(?)を未来に預けて学校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「せんせ〜来ました〜」

「足立さん遅いですよ!何をしてたんですか!」

「いや、ちょっと落し物を交番に」

「立花さんみたいな事を貴方も……まぁいいです、そこに座りなさい」

「へーい」

 

 

完全に魂が抜けてるかのようなテンションで教師に応答する朱里。そんな彼女が胃を痛める存在が、よりにもよってこのタイミングでやってきた。

 

 

「先生この課題終わ――朱里ちゃんも来てたんだ!」

「ゴボッ……」

「えぇっ!?」「足立さん!?」

 

 

丁度終わった課題を提出しに来た響。朱里を視認した瞬間に、居ないものだろうと彼女の中では確定していたので予想外の人物にあった様な反応をしたのだが、帰ってきたのは吐血だった。

Q.なんで血吐いたのん?

 

 

「ど、どうしたの?身体の調子悪いの?」

「アンタに学校の補習見られたとか死にたい……!」

「えぇ…?一緒に頑張ろうよ!」

「なんで補習を頑張る必要があんのよゲームしたかったのに!」

「貴方がゲームに費やした時間で数学を頑張っていれば良かった話でしょう足立さん」

「いやホント全くもって仰る通りでございます」

「認めるんだ……」

 

 

A.補習になってるのバレて死にたいから

逆になんでそれだけの理由で意図的に血吐けるんだ、とか突っ込んではいけない。そういう人間だから。

ちなみに未来がこの事を知っていた理由だが、小学校の頃から朱里は数字関連がダメダメであった為何度か補習を喰らっている。響も勿論別教科で喰らっている為受けているのだが難癖を付けて意図的に響が終わる辺りまで遅れ、響が出るタイミングでゲームで学んだ隠蔽技術で誰にもバレずに学校入りして補習を終わらせていた為である。今回もそれをしなかったのはブツ(アークル)をよりにもよって未来(響の嫁)に預ける時に事情を話してしまった以上、未来経由でバレるから諦めたからである。響が補習を終わらせるタイミングが張り付いても居ないのに分かってる時点で朱里も充分重症だが気にしてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、S.O.N.G仮設本部では……

 

 

「ふむ、コレが……」

「朱里が帰ってくるまでの間なので……約2時間でしょうか、その間に軽くで良いので調査をお願いしたくて」

「これは朱里という人物の所有物なのか?少々、いや相当特殊な物だが」

「いえ、拾って直ぐですけど大事そうに抱えていたので」

「……そ、そうか」

 

 

小日向未来と、S.O.N.Gの総司令であり『憲法に抵触している』とまで言われた武力の化け物である『風鳴弦十郎』がアークルを挟んで会話していた。

朱里が持ってきたアークルを見て直ぐに聖遺物関連の匂いを感じ取った未来により、即座にS.O.N.Gに持ち込まれた次第であった。

 

 

「にしてもその口ぶり……何かコレについて知っているんですか?」

「あぁ……少しばかり特殊なモノなのだが知ってはいる」

「朱里も玩具が本物になった、とか言っていましたが……」

「響くんには見せたのだが『仮面ライダー』という物に登場するアイテムでな……」

「名前は聞いた事ありますけど……どんな物なんですか?」

「簡単に言えば、作品内では腰に押し当てて適合した人間はヒーロー兼怪物となった」

「えっ!?」

 

 

シレッととんでもない発言をしているがあながち間違いでも無い。霊石アマダムが致死毒を受けた適合者を意図的に心肺停止状態にした後、解毒してから自力で復活させている時点で充分人間を超越している。

ちなみにコレが本物だった場合の事を考えているのか、珍しく弦十郎の目線は対話相手でなくアークルに結構吸われていた。

 

 

「取り敢えずこちらで調べてみる。2時間以内に終わりそうにない場合は連絡した後、返却しよう」

「それでお願いします。あ、それとシミュレータールームを借りて良いですか?」

「む?構わないが……未来くんは何か武術でもしているのか?」

「いえ、朱里に教えてもらった技を練習しようかと」

 

 

珍しくシミュレータールームを借りようとする未来。ちなみに彼女は装者ではない、本当にただの一般人である。

 

 

「ほう?ちなみにどんな技なんだ?」

「見てのお楽しみ、ではダメですか?」

「成程、ではそうさせてもらおう」

 

 

実際 朱里 技 という単語を出しただけでかなり食い気味だった為、完全に釣った形である。弦十郎としてはずっとやっていた書類仕事が後回しになった為願ったり叶ったりである。

 

という事でシミュレータールームにて……未来は自然体で立っていた。ちなみにホログラムのノイズを利用するらしく、エルフナインと……

 

 

「ふん、何故オレが同席せねばならん」

「まぁまぁ……かなり特殊な技だそうですよ?もしかしたら」

「錬金術をやる上で参考になる可能性があると?バカバカしい……」

 

 

キャロル!?キャロルなのか!?生きていたのか!自力で脱出を!?(無言の腹パン)

が居た。不機嫌そうな顔で文句をつらつら述べているが、目線は完全に未来の方に吸われていた。なんだかんだ一般人がホログラムのノイズを利用した技を使う事に興味津々の様である。

で、件の未来さんだが……先程からずっと右腕をくねらせている。何をする気なのだろうか。

 

 

「未来くん、どのような技なのか俺には予想がつかんのだが……ホログラムとはいえ、ノイズに対する有効打となるのか?」

「この技が上手く使えれば攻守両方に使えるとか言ってましたよ?聞いた感じ遠距離攻撃でしたし」

「成程……では見せてもらおうか!」

「ノイズ、出現させます!」

 

 

その声の後、ホログラムのノイズがまずは1体。二者間の距離は5m。ごく一般的な二足歩行で手先がアイロンみたいな事になっているタイプ。それに対して未来が起こした行動は……

 

 

響を傷付ける相手は赦さない……ハァッ!」

 

 

なんか危ない愛を呟きつつ、右手で空気を圧縮するかのように掴んで一瞬腕を捻り、風を切る音が聞こえる速度で前に突き出して閉じた手を広げた。

その結果……

 

 

「衝撃波、だとぉ!?」

「倒すには至らなくてもノイズを吹き飛ばす程の衝撃波をあんな一瞬で!?」

「おいアレはどうなっている。風元素の下級錬金術の必要性が薄くなるぞ」

 

 

倒すには至らなかったが、中型ノイズが一撃で数m吹き飛ぶ程には強烈な衝撃波が発生した。ちなみに予備動作から打ち出すまでわずかコンマ4秒。成程完全な遠距離でコレが放てるのなら確かにアルカノイズから逃げやすくなるだろう。

 

 

「あれ、朱里ちゃんの技より全然威力も範囲も弱い……聞いただけじゃ、こんな感じかな」

 

 

放った本人だけは驚きもせず、なんなら萎えていた。というか聞いただけで再現しないでください。

 

ちなみにアークルだがこんな事をやっている間に鑑定結果が出た。霊石アマダムが入ってる本物だった為、個人管理させる訳もなく即座に封印が決定された。補習から帰ってきた朱里にS.O.N.G関連の事を可能な限り隠しつつアークルが封印された事を話す未来が親友3人組の中で1番胃が痛かったとか。




アークルくん封印しないとこのオリ主マジで装着して人間辞めそうだもん……仕方ないね


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とある女学生の混沌とした困難

一人暮らし始めました。久しぶりに書きました。
ご飯炊く時手めっちゃ冷たいんですけど393良くあんな量炊いてますよね……すげぇと思うけどグラビティレズ要素のせいでプラス部分全部帳消しに……


今日は足立朱里はとあるスーパーに居た。

タイムセールが行われる日付であり、一部の人が恐ろしい程鋭い眼光を一部の商品にぶつけている中、朱里は鼻歌を唄いつつ冷蔵うどんをカゴに入れていた。7袋ほど。そのまま刻みネギやすりおろし生姜などもカゴに放り込みつつレジに向かっていた。

 

 

「1200円になりまーす」

「P〇yp〇yでお願いします」

 

 

恐らく現在最も有名であろう電子マネーで決済を行った後、持ってきたエコバッグにとんでもない量のうどんとその他諸々をぶち込んでいざ帰ろうとした所で、朱里はある知り合いと出会った。

 

 

「あ、朱里さんデス!」

「どうも」

「切歌ちゃんと調ちゃん?こんちゃ、お買い物?」

 

 

これは、(非)常識人とおさんどん神との出会いの物語。

 

 

「そうなんですけど、なんでそんなにうどんだらけなんですか……?」

「響」

「あぁ……」

 

 

ではなく、ただの井戸端会議である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の発端は3時間前にまで遡る。朝の9時、朱里の家の玄関には家主の朱里以外に2人の親友……響と未来が居た。

 

「いやぁいつ見ても朱里ちゃんの家は大きいなぁ!」

「ボロの家屋買い取って内装フルリフォームしたからね。めっちゃ疲れた」

「そりゃ疲れ──ん?疲れた?」

「あ、朱里?リフォーム業者に頼んだだけで疲れたの?」

「は?何言ってんの?自分でやったに決まってんじゃん」

「「…………え?」」

 

 

しれっととんでもない事をカミングアウトしつつ、2人を家に上げて応接間に通す朱里。()()()()()()完全な和に統一された家の内装に、響と未来は興味深そうに見渡しつつも畳の上に敷かれたクッションに腰を下ろした。

 

 

「で?今日来た理由は?」

「メールでも言ったけど……勉強教えてください!」

「ごめんね?英語なら朱里が教えるのが1番早いかと思って」

「ふーん……具体的にどこ?」

「ここなんだけど……」

 

 

どうやら2人は勉強を教えて貰いに来たらしい。肩に掛けていたバッグから教材を畳の上に広げていき、朱里がそれをマジマジと見詰めている。見詰めている、のだが……

 

 

「……朱里?」

「どったの未来」

「その……座り方がはしたないよ?」

「ん、家だしいいじゃん胡座かくぐらい」

「またそんなズボラな……朱里は女の子なんだよ?羨ましいぐらいスタイルも顔も良いのに……

「最後の方何言ってるか分かんなかったけど、別に家だし良くない?」

ショートスカートだから問題なの!

「あっ、はい」

 

 

この(朱里)、膝丈より短いショートスカートなのにまさかの胡座をかいてクッションに座っているのである。ジジイか?未来に叱られるのも仕方ない。ちなみに食生活ガッタガタだしゲームニートなのにスタイルはお世辞抜きでモデル(風鳴翼)等に近いぐらい完璧である。天は二物を与えた結果がコレである。

そんなこんながありつつも、朱里は響に勉強を教え始めた。勿論姿勢は胡座かいたままで。

 

だが少し不穏な空気が……?

 

 

「英語は基本はvocabularyをrememberしてuseすれば大体行けるから、ほら覚えて」

「なんでルー〇柴みたいな事になってるの……?」

「知らないの?ルー語は世界共通語なんだよ?」

「初めて聞いたし全く分からないんだけど……」

「単語覚えて繰り返し使いなさい以上」

「最初からそう言ってよ!?」

 

 

とんでもない謎言語を繰り出す朱里。無駄に言い方を工夫するせいで響は混乱するわ、ちゃんとした事も言うからツッコミが入るわで、わずか2時間で響はある種の疲労の限界が訪れていた。

ちなみに未来は元から出来ていたのでやっていない。が、会話内容を聞いて脳内が?まみれになっていた。

 

そんな中、出されたのがこの言葉である。

 

 

「お腹すいたぁ」

「ヒェッ……」

「なんで朱里は怯えてるの……?」

「食費……食費……」

「昼ごはんここで食べて行って良いの?1回家に帰って──」

「客人を昼飯の為だけに返すのはなんか嫌なんで大丈夫」

「……冷蔵うどんはどう?安く多く作れるよ?」

「ナイスアイデア未来!ちょっとスーパー行ってくる!」

「ちょ、行動はやっ!?ていうか朱里!鍵!鍵落としてる!」

ナイス!あとで取りに行く!

「……ハァ」

 

 

冷蔵うどんを話題に出した瞬間にとんでもない速度で自身の寝室に駆けて行った朱里。うっかり持っていた家の鍵を落とした事にも気づかず未来が呼びかけた事でやっと気付いたが、戻らずそのまま準備をしに彼女の寝室へ駆けて行った。

さて、応接間に取り残された2人。そんな2人は鍵に付けられていたストラップに視線を釘付けにされていた。何故か?

 

「……このストラップの形」

()()()()()()()()()()()()()()()()()だよね……色も大きさも違うけど」

 

 

世間一般では全く見つからない特殊な形(ギアペンダント)をしたナニカが、鍵に付けられたリングにストラップとして付いていたからである。

色は群青色で、大きさは人の親指並。ギアペンダントとは似ても似つかない模造品の様な物だが、どうしても2人はこのストラップから目が離せずに居た。

 

そうやってじっと見続けていた結果……

 

 

「……それ気に入ったの?」

「うわっ!?」

「そんな驚かなくても……で?どうなの?」

 

 

見事にいつの間にか準備を終わらせていた持ち主に後方から強襲された。ちなみに件の持ち主は準備と言ってもショルダーバッグを掛けただけである。

さぁ、そんな朱里に対する言い訳とは……

 

 

「うん、とても綺麗だし、ちょっと欲しくなっちゃった」

「み、未来!?」

「そうなんだ……でもゴメン、これお母さんの贈り物なんだ」

「あぁ……何処で売ってるかとか、分かる?」

「お母さんが自作した物だからさ、同じデザインの様な物はどこかにあるかもだけど……」

「成程……ごめんね、変な事聞いて」

「いやいや、このペンダントも多分綺麗って言ってもらえて喜んでると思う」

 

 

咄嗟の機転でなんとか乗り切った未来。響がボロを出しかけたが、なんとか無事に会話も終わり、朱里は2人に留守を頼みつつ外に飛び出して行った。そこから最初の状況に巻き戻る。

 

 

 

 

 

 

「──それで、響さん達に昼ご飯を振舞おうと」

「そそ。多分1食で全部消し飛ぶけどね……」

「響さんってうどん5玉ぐらいはペロリと食べるデスからねぇ」

「…………え?切歌ちゃん、それマジ?」

「え?知らなかったんデスか?」

「…………あの子ご飯限定じゃなかったの?なぁんでぇ?ねぇ、なぁんでぇ?」

「あ、朱里さん?涙出てますよ?どうしました?」

「あの子の身体ちゃんと質量保存してるのぉ?嘘だと言ってよぉ……」

「えーっと、よしよし、デス?」

「切ちゃん、絶対なんか間違えてると思う」

「後輩の優しさが目に染みるぅ……」

 

 

米限定であの異常な食欲が発揮されてたのかと思いきや、しっかり麺類もコンプリートしているという事実に泣き始める朱里。

ちなみになんでそれを知らずに7袋も買ったのかというと……?

 

 

「あれ?知らなかったのならなんで7袋も買ってるんデスか?」

「私も5玉は食べたい人なんだよぉ……」

「なるほ──え?朱里さんそんな食べるの……?」

 

 

どうやら朱里も大食漢……婦?な様であった。

 

 

「ま、まぁ、えっと……取り敢えず私達はタイムセールがあるので……」

「あ、そんな時間か……ごめんね、引き止めちゃって」

「いえいえ、止めたのは私達の方なので」

「早く行くデスよ調!タイムセールは戦争なのデース!」

「行こうか切ちゃん。では」

「いってらっしゃーい」

 

 

タイムセール(戦争)へ出向して行った2人。それを見送りつつ、朱里は鍵に付いたストラップを取り外して右手で握り込み、独り言を呟きつつ彼女の家へ帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、響。未来。調ちゃん。切歌ちゃん。コレについてだけは話せない」

 

()()()()()()()()()()()()()()




最後がシリアスになりました
死亡キャラ生存させる為のバックストーリー練ってたのも遅れた理由です(言い訳)



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特別編:とある女学生と混沌とした誕生祝い

翼さんの誕生日と聞いて筆走らずに居られようかッ!(???????)となり、久しぶりにハーメルンに舞い戻ってきました。
思いっきり遅刻してるわ、小説書いたのが久しぶり過ぎて語彙がヘンテコになってたりしてますが、生暖かい目で見て頂けると有難いです。

過去後編はしっかり書いてます、えぇ、ハイ。4000字目ぐらいで何故か挫折してますけど……


「今日は翼さんの誕生日です。いぇーい……」

「朱里ちゃんテンション低くない……?」

「何を血迷ったかケーキ手作りしてたら、なんか三徹してました」

「……足立。その、とても嬉しいのだが、寝たらどうだ?隈が凄い事になっているぞ……」

「翼さんが誕生日だってのに、1ファンとしてテンションダダ下がりどころか寝てられるかこのスットコドッコイ!Foooo!!!!」

「……小日向、やはり足立は寝かせておいた方が良いのではないか?」

「多分、パーティーが終わるまでは無理かと……」

 

 

風鳴翼、誕生日。

S.O.N.Gの潜水艦内は一般人の足立朱里が居る為使用不能。彼女の誕生日を祝う人間の多くが共通点を持つ場所を装者達は考え、結局大して浮かばなかった彼女達が選んだのは風鳴家の一室を借りるという物だった。勿論彼女の父:八紘はそれを快諾、風鳴家にて誕生日パーティーが行われる運びとなった。

装者8()()に協力者1人、ツヴァイウィング関係者に、家族という事でやってきたOTONA3人に完全な一般人1人という異質なメンバーで、彼女の誕生日パーティーは始まった。

 

風鳴家で作られた豪華絢爛な食事が並び、更に個々人が持ち込んだ料理やプレゼント等がテーブルの上に所狭しと並べられていた。

その中でも異様な雰囲気を放つ物が1つ。足立朱里が自作したというソレは、高さが1m近くもあるケーキであった。しかも何のこだわりなのか知らないがチョコとショートのミックスでワンホール。そこいらのパティシエに予約を入れても1〜2週は待たないと出てこない様な巨大ケーキがそこにはあった。

ちなみにこのケーキを見た雪音クリスの第一声は『ウェディングケーキ作ってんじゃねぇよ!』であった。

 

「ということで」

「という事で、じゃないだろ!なんだよこのゾウもビックリのデケェケーキを自作したってのは!?」

「ちょっと何言ってるか分からない……」

「なんで分かんねぇんだよ!?」

「クリス?朱里の奇想天外さは知ってるでしょ?」

「なんでバカの付き添いが諦めてんだよ!おい、バカはどう思ってるんだよ!?」

「バカって酷いッ!?でもいや、そう言われましても、朱里ちゃんだしなぁ……」

「コイツは免罪符付かナニカか!?」

「知ってました?思考停止は世界を救うんですよ?」

「知るかこのバカ2号!」

 

「クリス先輩のツッコミが大暴走してるデース……」

「あんな激しいツッコミしてる先輩、殆ど見た事ない」

「アハハ!やっぱアイツはバカだし面白ぇな!なぁ翼?」

「えっ?えっ、うん、そうだね……?」

「落ち着きなさい奏。フリが雑過ぎて翼が困ってるわよ」

「おいそりゃ無理な相談だぜマリア。アタシはいつもこんな感じだからな!」

「……ホント、成人済みなのにどうしてこうなのかしら」

「まぁまぁ……節度は弁えてますし、ね?」

「えぇそうね……全く、始まる前からこうとか先が思いやられるわ……」

 

「……翼は壮健な様で何よりだ」

「えぇ。奏さんとツヴァイウィングを結成し、ライブ会場の悲劇以降思い詰めた様な精神状態ではありましたが……どうやら憑き物が落ちた様でなによりです」

「後は風鳴機関、か……あそこを何とかせねばな」

「それはそれ、これはこれ、です。今は、娘さんの誕生日を祝うのが宜しいのでは?」

「……それもそうか」

 

 

まだ始まってすらいないのにこのやかましさである。まぁうるさい理由はほぼ10割バカ2号(足立朱里)のせいなのだが。

そんなこんながありつつも主役によって開始の音頭が取られ、パーティーは順風満帆に進んだ。

 

 

「おいこのケーキ切り分けんの難過ぎんだろ!?」

「クリス先輩そこからナイフ入れたらマズイっすよ!?」

「お前口調どうなって──やばい崩れる!?」

「先輩ナイフパス!」

「ほらよッ!」

「見えた!せェいッ!」

「刃の腹でケーキを支えている、だとッ!?」

「驚いてないで助けてくださいよセンパイ!?」

「クリスパイセン、ちょっとヤバいっす」

「ヤバいって何がだよ?」

「う、腕が……」

「バカ!直すまで持ちこたえろ!そうしないと地獄だぞ!?」

「そんな先輩方の危機に」

「後輩、参上デース!」

 

 

順風満帆、に

 

 

「ハァ……なんで私は独身なのかしら……良い男との出会いなんて、エージェントの私には……うっ、ヒグッ、えぅぅ……」

「マリア姉さんが泣き上戸に!?」

「おいどんだけ飲んで──酒くさッ!?」

「……ビールの空き缶が5本ほどここにあるのだが、全てマリアか?」

「緒川さんと八紘さんは……日本酒ですねアレ。弦十郎さんはそもそもお酒飲んでないですし、多分全部マリア姉さんですね」

 

 

じゅ、順風満帆、に

 

 

「……マリアくんは、どういった人物なのかね?」

「率直に言いますと、少しナーバスになる事の多い女性、ですかね。普段はとてもしっかりとされている方です」

「……カウンセラーを雇うといい」

「…………場合によっては」

 

 

……どうやら 順風満帆 と 混迷 を間違えたらしい。今確かに、この誕生日パーティーは混迷を極めていた。誰のせいだよマジで。

結局、大量の料理と巨大ケーキの大多数は響・切歌・朱里の3人組によって綺麗に消滅し、それぞれが用意したプレゼントも問題無く翼に手渡され、パーティーは終わりを迎えた。

 

 

「うぅ……」

「ま、マリア姉さんは背負って帰りますから……」

「部屋をあてがうから寝かせてはどうだ……?」

「翼の好意に甘えとけって!な?」

「えーっと……」

「私の心配をしてるなら大丈夫だぞ」

「じ、じゃあ、お世話になります」

 

酔い潰れた1名が結局翼の家に泊まる事になったり

 

「じゃあ私は、かえって、ね、む……zzz」

「……えっ?朱里ちゃん?」

「立ちながら寝てんぞコイツ……どんだけ無茶したんだ?で、コイツどうすんだよ?」

「うーん……私が背負って帰る?」

「何処で降ろすんだよ……」

「私の家?」

「おかしいだろそれは!コイツの家知らねぇのか!?」

「いや、知ってるには知ってるんだけど…あ、鍵あった」

「待て、どっからその鍵出てきた?」

「え?私のバッグからだけど

「なんでバカ1号がバカ2号の家の鍵持ってんだよ!」

「友達だから?」

「理由になってねぇよ!」

 

立ちながら爆睡し始めた寝不足女傑を家に返す算段を立てたり

 

「セェイッ!」

「フッ!」

「……司令が人間か怪しいのは知ってたけど」

「緒川さんも大概なのデース……」

 

食後の運動 と称して手合わせを始めた2人のOTONAを見てドン引きする人間が居たり

 

結局パーティーは最初から最後までロクな事が無かった。

それでも彼・彼女達の顔には笑みが浮かんでいた。きっと守りたかった平和の形とは、こういった物なのだろう。確かに彼女達は、一時の平穏を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つばしゃ、しゃん……zzz」

「……鼻血出そう」

「コイツどんな夢見てんだ……?」

「ホント、起きてる時は破天荒なのに寝てる時は天使だよねぇ……」

「言いながらなんで頬つんつんしてんだよ……」

 

「せんぱーい!」

「待って欲しいデース!」

 

「お、後輩どもか」

「切歌ちゃんと調ちゃんパーティー終わった後見かけなかったけど、どこ行ってたの?」

「司令と緒川さんの手合わせを見てたデース!」

「……あの化け物2人、そんな事してたのか」

「私も師匠みたいに頑張らなくっちゃ!」

「おいバカ人背負いながら張り切んな!そんな事したら!?」

「大丈夫だってクリスちゃ──あっ」

 

 

「「「「「朱里(ちゃん)(先輩)!?」」」」」

 

 

 

「………ひぃぃびぃぃぃきいぃぃぃぃ!!!!!」

「ヒィィィ!?」

 

 

 

 

…………背負われていた人間が見事にお尻をコンクリートに打ち付ける事態もなんかあったが、結局、響の頭に巨大たんこぶが出来る程度でこの日は終わった。

 

ちなみに酔い潰れていた彼女は記憶があったらしく、翌日泣きながら目覚めた。パーティー後も結局面倒事だらけであった。

 




多分こんな事を昔の自分なら書くだろうな〜と、責任を過去に押し付けながら書いてみました。後先考えないって楽しいね(?)


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とある女学生の混沌とした過去 前編

全くモチベ湧かなかったんですけどやっと書き上げました。湧いたら一瞬で4000字ぐらい湧くんですけどね……湧かないと1字も進まない……


むかしむかし、ある所に、平和に暮らしている一家がありました。

 

3人暮らしで父は聖遺物研究者、母は生物学研究者、その間に産まれた子は琴音と名付けられました。

 

聖遺物と生物学、この2つの学問の専門家の親からありとあらゆる英才教育を受けた子は、年長の頃には親の同年代の研究者とも並ぶ程の知識を得ました。

 

そんな子がとある高校に進学するとなった時、子は親からとある真実を伝えられました。

 

私達は────足立家は、5000年余も前から秘匿され続けている縺。繧?≧縺ヲ縺?@繧の役割を担った一族だ。────と

 

当然、神童とまで呼ばれていた当時の琴音の頭脳を持ってしても、言われている事は全くもって分かりませんでした。

────ですが、ある物を親から譲り受け、嫌という程に理解してしまいました。

 

 

 

 

『これを、お前に託す』

 

『私達は役目を終えた。次は貴方の時代よ』

 

『この力は足立朱里、必ずお前のやる事を助けてくれる』

 

『貴方は、神に近しい存在になるのよ』

 

 

 

 

それだけを言い残し、2人の親は莫大な資産と、ペンダントを家に残してどこかへ行ってしまいました。

 

 

()()()()()()()()()()()()()、紺色のペンダント。託されたそれを握り締めたその時、

 

 

琴音は、足立朱里 となりました。

 

 

 

 

 

 

 

今の時間軸から7年前、アメリカのF.I.Sという研究所で1つの事件があった。

ネフィリム と呼称される聖遺物。それを起動させようとする実験の最中、件の聖遺物が暴走。多数の犠牲者が出た。

 

 

──そう、上層部には報告されている。

 

 

 

『やめて……やめて……!』

『ごめんなさい、姉さん。でも私がやらないと』

『やらなくていいの!今スグここから逃げましょう!こんな中で──』

『でも、私しか止められないんでしょ?』

『──()()()ッ!』

 

 

 

1人の少女が悲壮な決意を固め、暴れ狂うネフィリムと対峙する。

図体が目測5mを超えている怪物相手に殴り合いが出来るのか?勿論この少女はそれが出来るだけの(シンフォギア)があるからこそ、この戦いを引き受けたのだった。

 

 

『Seilien coffin airget-lamh tron──』

 

 

シンフォギアの起動。アガートラームの力によってネフィリムに少しずつ被害を与えていく。

しかし……如何せん相手が悪過ぎた。片手剣で少しずつ体表に傷をつけていくが、その都度ネフィリムが再生していく。

端的に言えば、彼女は現在火力不足の状態にあった。

 

孤立無援。

火力不足。

相手の体力は無尽蔵。

 

そんな状況だからこそ、彼女は──唄った。

 

 

『Gatrandis babel ziggurat edenal──』

『ッ!?セレナッ!』

 

 

知っていたからこそ彼女の姉も叫ぶ。

絶唱。文字通り生命を燃やして歌う、シンフォギアの最終攻撃手段。生半可な方法ではやり過ごせない、強力な攻撃や能力が発揮出来る切り札。それを彼女は切った。

 

 

『──fine el zizzl……』

 

 

最後の詞が紡がれ、アガートラームの絶唱特性である ベクトル変換 が発揮される。彼女──セレナが思い付いた方法、それはベクトル変換によってネフィリム自体のエネルギー方向を変更し、内部のエネルギーを発散させ切る事で休眠状態へ戻す事だった。

 

無事に成功したのか、ネフィリムが鎮静化し起動前の白石にまで戻る。

その状況に驚きつつも、燃え盛る研究所に立ち続ける妹の元へ駆ける姉──マリア。呼び掛けに応じてゆっくりと振り向いた妹は──顔の穴という穴全てから血を出していた。

 

 

それと同時に天井が崩落。セレナの元へ巨大な欠片が降り注ぐ。

 

 

 

『セレナアアアアアアア!!!』

 

 

 

目の前で失われようとしている妹の命を救おうと飛び出したマリア。

 

──そんな彼女達に、ある種の救いが訪れた。

 

 

 

『…………え?』

『……生き、てる?』

 

 

 

次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()、気付けば何故か五体満足で座り込んでいたマリアとセレナ。既に研究所は崩落しているものの鎮火が始まっており、どういう状況か分からず互いの顔を見合わせた後、降ってきたハズの瓦礫はどうなったのかと周囲を見渡すと

 

 

『……お父さんとお母さんはどこ?』

『ヒッ!?』

 

 

顔どころか身体中、血管が通っていて赤いハズの場所が全て黒く染まり、白眼と黒目のオッドアイでコチラを無感情に見つめる1人の少女(足立朱里)が居た。

 

 

『──あ、あれ?』

『姉さん?どうしたの?』

『さ、さっきそこに子供が!』

『子供?でも、姉さんの見てた方向は()()()()()()()()

『──え?』

 

 

……だが、見えたのはマリアだけであるらしい。妹であるセレナには瓦礫しか見えておらず、確かに少女が居たハズの方向にはもう人っ子一人居ない。

なんとか気を落ち着かせた後、研究者達と合流する事に成功し大喜びされる事になるのだが、どれだけ確認してもマリアの見た子供は見つからなかった。

 

更に奇妙な事に、あれだけの大事故でありながらも死亡者はネフィリムの暴走に直接巻き込まれた数人だけであり、行方不明になっていた研究者達も全員が()()()()()()()()()()()で発見された。

全員が証言した中で『オッドアイの不気味な子供が自身の父と母の居場所を聞いてきた』という事だけが唯一、マリアと全く同じ事を指していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから時は進み五年後、日本の某所にて……

 

 

『なんだぁ?緊張してるのか翼?』

『うわっ!?か、奏……ビックリした』

『アッハッハ!そんな固くなってちゃダメだぞ〜?』

 

 

ツヴァイウィングと呼ばれる2人組が、ライブ会場の舞台裏で会話していた。風鳴翼と天羽奏の二名で構成されるこのユニットは、現在日本で最も有名とも言える程の知名度を得ていた。

今回のライブも数万人が収容出来る超巨大会場にも関わらずとんでもない程の応募が集まり、その当選倍率は数十倍を超えたとかなんとか。

 

 

そして、その厳正な抽選を勝ち残った人の1人として……

 

 

『……ココなら、見つかるというの?』

 

 

足立朱里も居た。

5年前と異なり2()0()()となった彼女はその年齢相応に肉体が成長しており、その美貌も相まって周囲の目線を集めまくっていた。

肝心の本人はライブチケットを片手に受付に並んではいるが……心ここに在らず、といった感じであった。取り敢えず会場内に入った朱里は、自分の指定された座席にまで向かいライブの開始まで待つ事にした。

 

 

『凄まじい人の量ね……それだけ有名という事かしら』

 

『あれ程小さな子まで……本当に凄いわね』

 

 

止まない独り言を呟きつつ周囲を見渡していたが、突如会場の照明が消えて観客達の話し声も消える。どうやら、開始の時間の様であった。

 

 

『これが……ツヴァイウィング』

 

『これが……()()()()()()()

 

 

他の観客がペンライトを振って盛り上がる中、朱里だけは独り言を呟きつつ視線を完全にツヴァイウィングから離して観客側に振っていた。

 

 

『このまま2曲目行くぞー!』

『まだまだ行きますよ!』

 

 

朱里が別方向に視線を向けている間に1曲目が終わり、2曲目が始まろうとした瞬間────

 

 

『ノイズだぁぁぁぁあ!!!!』

 

 

会場の一角が大爆発。それと同時に多数のノイズが出現し、観客達を容赦無く炭化させていく。

ありとあらゆる障害物を薙ぎ倒して我先にと出口に全ての人間が駆け出す中

 

 

『……()()()()()()()、か』

 

 

朱里だけはその場で棒立ちしつつ、またも独り言を呟いていた。当然、ノイズがそれを見逃すハズもなく──

 

『おいそこのアンタ!危ない!?』

 

いつの間にかシンフォギアを纏った天羽奏に呼び掛けられているにも関わらず棒立ちでいる朱里に、背後からクロールタイプが十数体もロケットの様な速度で襲いかかる。

ゆったりとした速度で振り向いて迫り来るノイズを視認した朱里は──

 

 

『────はっ?』

『……つまらない、()()()()()

 

 

平然と全てを必要最低限の動きでかわしきり、あまつさえ小言を漏らす始末。かわしきった後、ゆっくりと奏の方を振り向いた朱里は、何かを悔やむ様な顔をしつつもある物を奏へ放り投げた。

 

 

『おい!いきなり物を投げつけ──これは……!?』

L()i()n()k()e()r()……知ってるでしょ?』

『なんでアンタみたいな一般人がコレを持ってる!?』

『どうでもいい。そんな事より早くしないと犠牲者が増えるよ』

『チッ……クソッ!』

 

 

問い詰めようとする奏であったが、朱里の述べた事もまた真実。急いでLINKERを自身に投与して戦闘を再開した奏を見送った朱里だったが、その場にもう1人。

 

 

『……貴方は、一体何者ですか』

 

 

風鳴翼。シンフォギアを纏った状態の彼女は、周囲のノイズを蹴散らしつつも朱里へ問い掛けていた。

しかし、朱里は何も答えず背を向けてその場を去ろうとする。急いで朱里を引き留めようと朱里の方へ駆け出す翼。あと少しで肩を掴めるといった所で朱里はゆっくりと翼の方へと振り返り──

 

 

『貴方はまだ稚拙過ぎる』

 

 

そう言い切った瞬間、翼は()()()()()()()()()()()。おかしい、さっきまで自分は()()()()()()()()()()()()ハズだと。

さっきまで自分が見ていたのは幻だったのか?いや、確かに奏が受け取ったLinkerを自分に投与していたのは見たし、実際今の奏の戦闘を見た感じ、適合係数の低下は見られない。むしろ絶好調なぐらいだ。

ならば何故私はライブ会場内を瞬間移動しているのか?

 

その長考が仇になった。

 

 

『翼ッ!』

『え──ッ!?』

 

 

意識外にあった大型ノイズからの射撃。普段の翼なら何の問題もなく躱せるが、現在の翼は完全に呆けてしまっており今から全力で躱しても身体のどこか一部位に直撃するのは間違いなかった。

そこに飛び込んできたのが奏だった。急いで自身の持つ槍を弾に向けて差し込み、無効化か受け流そうと試みる。

しかし、その膨大な質量から撃ち出される轟速の弾は咄嗟の一撃で防ぎ切れる訳もなく──

 

 

『ぐ……クソッ!』

『ごッ!?ゲホッ、ゲホッ!』

『翼ッ──しまった!?』

 

 

まさかの槍が破砕。弾を防ぎきれず翼も刀での受け流しに失敗し、威力が減衰しているとはいえ胸部に直撃を貰ってしまう。

それだけでなく、欠けた槍の破片がまさかの避難が遅れた一般人の少女(立花 響)の胸に刺さってしまう始末。急いで奏は一般人の少女の元へ駆け寄り介抱を始める。

 

 

『おいッ!おいッ!しっかりしろ!頼む、目を開けてくれッ!』

 

『生きるのを諦めるなッ!』

 

 

必死の呼び掛けによりなんとか意識を取り戻した少女。その様態を見て一息ついた奏は、とある決心をする。

 

 

『……フゥ。今日はこれだけの観客がアタシの歌を聞きに来てくれてるんだ。こっちも、全力で応えてやらないとな』

『──奏、まさかッ!?』

『──絶唱

『いけないッ、それは!』

 

 

絶唱。シンフォギア装者が生命を燃やし唄う、最期の歌。

相方の制止は意味を成さず、彼女の絶唱は完遂された。莫大なエネルギーの暴風によりノイズは全て消滅。歌った張本人は、ライブ会場の中央で倒れていた。

 

 

『奏ッ!奏!』

『……翼、アタシはやってやったぞ』

『なんで、なんで!?』

 

『こうでもしなきゃ、そこの子供が救えなかったろ……ハハッ』

『奏……奏!』

 

 

ライブ会場を襲った悲劇の翌日。直ぐにこの大事件は新聞となった。

死傷者4()5()6()9()人、負傷者10437人。天羽奏は今回の事件の影響により()()、風鳴翼がソロ活動する運びとなった事が、そこには書いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「──あァッ!?」

 

「……ハッ、ハッ、ハァッ……」

 

「……夢、か……見たくもない過去を……」

 

「何が神に近しいよ……何がやる事を助けてくれるよ……」

 

 

 

「こんな物、()()()()()()()()()()()()()じゃない……」

 

「終わらせないと……こんな最悪の連鎖」




なんかもう色々読みにくかったと思います。というか無理くりバックストーリー組み上げたんですけどそもそもこれ要ります?(本末転倒)


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とある女学生の混沌とした過去 後編

やっと書き終わりました。難産でしたね……(ゲームのプレイ記録を見ながら)

今回は前編であった2事件の朱里視点+ちょっと裏話+設定の軽い表現
後書きに裏設定全部の簡単説明+ちょっとしたモノを書いてます。
では、駄文をどうぞ……




……このペンダントを託された時、私は何も知らなかった。

握り締めて変わった事と云えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()事と、私が()()()()()()って事ぐらい。

だけど私はそんな事よりも、それを知って()()()()()()()()私自身が怖かった。

 

でも、それで良かったのかも知れない。

 

私は、重大な転換点にて中立で無ければならない。例え永い時を共に過ごした友であろうと、必要であれば殺す

 

私は、《調停者》なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

調停者 になって特別何か変わる なんて事は無かった。

いやごめん、ちょっと変わった。当時の私はまぁ、その……所謂マザコンだった。急に何処かへ行ってしまったお母さんを探して、私は昔から《脳内に響いてくる声》を頼りに世界中を歩き回った。

 

この《声》は本当に便利だ。軽くエコーが掛かってる事以外は普通の声だから、学校で聞こえた時に返事しちゃって1回幻聴聞こえてるんじゃないかと同級生に言われたけど……ともかくこの声は存在し得た未来を教えてくれる。どうやら両親が居なくなる未来はとっくに存在していたみたいで、教えられたのはFISというアメリカの研究施設だった。そこに行けば見つかるかもしれない、と。

 

このペンダントが教えてくれた知識のおかげで研究所に潜入するのは簡単だった。直ぐにデータベースにハッキングを仕掛けて研究者達を調べたが、両親の名前は見つからなかった。まぁ見つからないなら特に用は無いからさっさと日本に帰ろうと思ったんだけど、どういう訳か爆発音が聞こえてきた。何が起きたのか直ぐに見に行った所、完全聖遺物に見事に()()()()()()らしい。まぁほっといて帰ろうとしたんだけど、すぐに私は踵を返す事になった。

だって《声》がこの事件に干渉する事で親が見つかりやすくなるって言ったからね。あまり事件に干渉して有り得た可能性を壊すのは好きじゃないんだけど、親が見つけられるなら別にどうだっていい。まぁなんせ……

 

《能力》を全力で行使すればそこいらの暴れてる()()()()()()()瞬殺出来るからね。別に世界が総力上げて私を殺しに来ようが、たったこれだけの技術と物量じゃ1つも殺せる未来は存在していない。いや、まぁ、こうやって余裕ぶってる本人が存在していなかった新しい未来作っちゃってる訳だから色々おかしいんだけども……というわけで、ココで暴れても大した転換点にならないのは能力で()()()()()ので介入。

この暴れている聖遺物…名前は【ネフィリム】と言うらしい。知ってる形となんか違うんだけど…しかも無限再生なんて事が出来るらしい。なんてめんどくさい奴なんだコイツ。

さっさと次元界でも弄って吹き飛ばそうと思っていた所、なんかコイツと戦っている子供が居た。

 

これが初めてのシンフォギア装者との邂逅だった。いや、邂逅って言ってるけど向こうコッチに気付いて無いし、私もバレるとめんどくさいから一方的に見てただけなんだけども。

取り敢えず《声》の言う通り待ってると、装者が本当に《絶唱》を唄ってネフィリムを無力化してしまった。その後に瓦礫が降ってきて逝っちゃうらしいので、ここで介入。

 

 

《能力》限定解放。《亜空間》を強引にこじ開けて、そこにシンフォギア装者となんか飛び込んできた姉を格納。時空を強引に減速させて知覚時間を1秒も感じない様にしたらお仕事開始。

燃え盛ってる《炎》と《瓦礫》を指定。また強引に別の亜空間をこじ開けてそこに炎と瓦礫を放り込む。そうしたらあら不思議、崩落した研究所の完成。

後は適当な地面の上に亜空間を展開し直して装者と姉をボッシュート。で、コミュニケーション開始。シンフォギア装者の方と会話するとマズイとかなんか《声》が叫びやがるので、《虚空》の展開準備。

 

 

「……お父さんとお母さんはどこ?」

「ヒッ!?」

 

 

やっべコミュ障出た。しかもシンフォギア装者がコッチ向いたので致し方なく《虚空》展開。別次元に瞬間的に跳んでなんとか危機脱出。

おーおーアセアセしながら指さしてる。確かに私居るよ。なんならマリアちゃん、君の目の前よ。知覚出来ないんですけどね、別次元に私居るから。

 

結局落ち着いた後に合流しに行って色々と所属者一覧みたいなのも虚空からシレッと盗み見したけどやっぱりお父さんとお母さんの名前は無かった。

 

《声》の嘘つき!バナナ!お母さん!とか訳分からん事言ってたら今度は4年待てって言われた。え、何?そんな待たないとダメなの?って聞いたら無視された。

ホント、一方的に投げかけてくるだけなんだよなぁ……まぁ助かってるんだけども。

 

 

 

 

 

 

結局4年間本当に待った。割とどうやって生きていこうか迷ってたんだけども、アメリカから帰って2日ぐらいしたらなんかすっごい壮健なお爺さんが黒服大量に引連れて家に来た。なんだっけ、()()()()?とか言ってたな。

なんでも足立家の事は知ってるっぽくて『今代の()()()を見に来た』とか言ってた。コレめっちゃ私が砕いただけで実際の物言い死ぬ程イラッと来たから、こっちも『今無職で就活するのダルいんで職ください』ってド直球で言ったら、本当に職もらっちゃったよね。

まぁ助かったのは事実だからあんまりいびるつもりは無いけど、取り敢えず『その膨大な知識を借りたい』とか言って齢15も行ってない子供を研究室に放り込むのはおかしいと思うのよ私。賃金凄かったから断れなかったけど……普通に仕事するだけで同室にドン引かれた私の身にもなって欲しい。

 

まぁそんな訳で研究所で渡された研究テーマを適当にババーッとやって、お賃金貰って、晩酌して、そんな感じの堕落生活をしてた。仕方ないよね。調停者って名前カッコイイけど、やる事は本当に必要な【世界の転換点を監視・介入する】だけで、普段は一般人だし………

 

 

まぁそんな訳で4年後。ツヴァイウィングのライブが行われる会場で大惨事が起きるらしく、そこが大きな《転換点》になるのだとか。実際ペンダントが当日めっちゃ光ってたし間違いない。ついでに天羽奏を助けると両親が見つけやすくなるとかなんとか。という事で助けます。

ホントこの《声》は未来見えてるならもっと明確にこう、色々と教えて欲しい。というか私の両親はプロの陰の者かナニカですか?未来の可能性手繰っても全く見つからないんですけど。

 

取り敢えず浮かんだ奏さん救出パターンは2つ。1つは大量に湧くらしいノイズを私が抹殺。即却下した。空間弄れば倒せるのは事実なんだけど風鳴機関に報告する時にこれ偽装するのが面倒くさ過ぎる。そもそも時空弄り倒して知覚時間消し飛ばした後、本当の意味で秒殺してやろうかとも思ったけど、それはそれでダメらしい。

プランB、Linkerとかいうお薬を作ってコレを奏さんにポイ。機関への報告も楽だし、やる事はLinker生成して投げ渡すだけだから余裕でコッチ選んだ。身バレ対策は流石にするけど、詰められたらジジイになんとかさせよう。うん。

 

 

ライブ当日、初めて聞いたツヴァイウィングの曲はマジで良かった。声良いね。後、見た目も凄い良い。翼ちゃんファンになっちゃうわこんなの。でも翼ちゃん聞いた感じだとすんごいポンコツらしいんだよな……いやそれも可愛いな、最高か?おっといかん涎が……何考えてんだ私。

そんなアホな事考えながらも、2曲目入った瞬間にノイズ大量に湧いてきた。許さんぞフィーネ。気が向いて()()()()()()()()()()決行した挙句、可愛い翼ちゃんのライブを──いかんいかん、主旨がブレる所だった。

まずは会場のカメラのレンズ前方の空間光量を捻じ曲げて、カメラに映らない様にする。次にLinkerをカバンの中から取り出して放り投げ準備。はい私の準備完了。

 

という訳で投げ渡すタイミングを………た、タイミングを………見つからねぇ!やっべ、2人はもうシンフォギア展開して戦い始めてるし観客は逃げてるけど、私どうやってこのLinker投げ渡せば良いの!?ヤバいコミュ障がこんな所にまで弊害及ぼしてる!あ、ノイズがなんか知らないけどコッチ狙ってる。丁度いいし使わせてもーらお。

という事で今回も《能力》使用。なんて呼ぼうかなコレ……未来視?取り敢えずコレを使えばノイズがどうやって来るかの可能性が全部見え──―全員一直線じゃねぇかお前ん家ィ!なんだこの回避余裕な脳ミソ猿は……いやそもそも脳ミソ無かったわコイツら。なんかごめん。

 

 

「おいそこのアンタ!危ない!?」

 

 

よし、注目げっちゅ。取り敢えず予測線の順番は……ほうほう、つまりこうやって避けりゃ完璧という訳じゃな!じゃあ限界まで回避量削っていこうかぁ。無駄な体力使いたくないからね!

ほいっ、ほいっ、ほい……あーつまんね!なんだこの作業!いや苦行は嫌だけどこれなんかイキってる様でホントやだ!はよ!ノイズくんはよ全員突っ込んできて!

 

やっとおーわり。という事でLinkerポイっとな。

おーおー焦っとる焦っとる。全部私のせいなんですけどね!……いや、うん、ごめんなさい。なのでお願いしますLinkerの出処深掘りしないでください。フィーネとかいうあの面倒臭い拗らせ女見たくないんです。

お、そうそう。そうやってノイズを葬ってくれれば良いんですよ。

 

 

「……貴方は、一体何者ですか?」

 

 

ヤバい、最推しに話しかけられてる。戦場でキリッとしてる翼ちゃんもええぞ!ええぞ!でもあんまり色々やるとウチの機関のジジイが後処理で胃痛起こすからNGな!

という事で大変申し訳無いんだけども!申し訳無いんですけども!事実を述べながら翼ちゃんを会場中央にボッシュートです!私はそのまま帰ります!放置で大丈夫だそうなんで!

 

その日の夜にはもうそれはそれは大々的に事件の内容が報道されてた。1万人ちょっと死んだらしいけど、そもそも私観客の人助けるつもりなんて無かったし、奏さんが頑張った分救われた人が居るだろうしいいんじゃないですかね?誰に言ってんだろコレ……

風鳴のジジイにはしっかり報告してきた。『本州を護る剣に助力してきた』なんて言ったら、もうホクホクでしたよあのおじいちゃん。100歳超えてるし身体ムッキムキだからホクホク顔なんて色々とすっごいけど。

という訳でライブ会場の惨劇も無事終わり、またいつも通りの生活をする事になった。

 

 

そんなことは無かった。

惨劇から半年後、とんでもない事を《声》が言い出した。

『視覚認識をズラしてリディアンに潜入しろ』だとかなんとか。簡単に噛み砕けば【高校生に成りすましてリディアンに生徒として入ってね♡】って事。バカじゃないの?

なんでも、リディアンに入って学生生活を送るだけで怪しまれずに《転換点》を超至近距離で観察出来るとかなんとか。

 

何?リディアン音楽院は知ってたけど、あそこそんな大量に事故か何かでも起こすの?なんかシンフォギアをあそこの地下で云々してるらしいのはだいぶ昔に《声》に聞いたけどさ。

でも《転換点》を監視する時に身バレ問題を発生させにくく……さ、させにく…………あれ?むしろ学生なんだからバレたらもっとめんどくね?大丈夫なの?

という訳でジジイに聞いてみた所、まさかの風鳴機関がリディアンと接点あった事が判明。というかそこの地下に特務機関があってそこの前司令だったらしい。何してんの?

 

取り敢えず色々と理由は誤魔化してリディアンに侵入するとジジイに言ったら教職側で放り込まれかけた。ちゃいますねん。私生徒側で行きたいんですねん。

そう言った時のジジイの顔は傑作だった。死ぬ程嘲る様な顔してやがったなアイツ。《転換点》お前もいずれ関わるの知ってるから、世界の害と判断した瞬間即〇してやるから覚悟しとけよこの虫野郎!!!

 

 

 

と、いうわけで。

なんやかんやありまして、〖ライブ会場の惨劇で行っていた学校で悲惨な事があり、親の意向で転校〗とかいう滅茶苦茶な理由で私はリディアンに送られましたとさ。親族なんて勿論居ないので風鳴機関の手が回されてる分家の1つがそのまま私の親族扱いになります。風鳴家の分家の1つらしいけど、正直言ってアンタ誰?

 

あ、ちなみに翼ちゃんとは滅茶苦茶遠いけど親族関係として登録されたらしいです。やったぜ。

 

 

リディアンでライブ会場事故の事をダシに一生虐められてますけど、私は元気です。というか君何処からそのマジックペン出した?あ、買ってきたの?イジメの為だけに買ってくるとか暇だね君………

 

 

まぁそんなこんなで楽しくやってますよ

『盗撮者』さん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

『………どうやって私の存在を感知した?』

 

『……完全なる第六感のみ?それとも、()()()()()()()()()()()()()?』

 

『いや、理由なんてどうでもいいか』

 

 

 

『面白い、面白いよキミは』

 

()()()()()()()()キミは必ず何かしらの偉業を成し遂げてきた』

 

『そんなキミがバルザイの偃月刀に加えて、トラペゾヘドロンも手に入れたんだ。まぁ、手に入る様に仕向けたのはボクだけど』

 

『キミはアヌンナキなんてちっぽけな存在を超えて、いずれ《最極の虚空》に辿り着く』

 

『でもまぁ、辿り着かなくても既に面白過ぎる状況だから良いけどね』

 

 

『因果律を操作した甲斐があったよ』

 

『さあ、アヌンナキなんて似非の神なんざ超えてもっと面白いモノを見せてくれよ、足立朱里』

 

 

『……いや、こう呼んだ方がいいかな』

 

 

()()()()()()()()()()()()、風鳴琴音』

 

 

『さぁ、キミの物語(Your Chronicle)を見せてくれ』






裏設定紹介コーナー

足立朱里 本名:風鳴琴音

翼さんを見てたら急に浮かんだのが本名の方。でも風鳴家上がりでやらせてもジジイシバキ倒すぐらいしかネタが思いつかなかった。そこにクトゥルフ神話を読んでたら謎知識がインストールされてカオス化してなんかこうなった(困惑)

《持っている力一覧》

・親から貰ったペンダント
《バルザイの偃月刀》を一部砕いてペンダント内に押し込まれた、いわばギアペンダントに似たナニカ。バルザイの偃月刀の詳しい情報についてはクトゥルフ神話参照。
簡単に言えばヨグソトースというヤバい神話生物を召喚出来る。このペンダントのおかげで知識がバグってる。攻撃予測もこの力だが、次元操作とかやってる《能力》は別の力。でも朱里ちゃん内ではどちらも同じとして扱ってる。

・《能力》
名称は《YourChronicle(貴方の紡ぐ物語)》。同名の育成ゲームがあって今回の能力の設定を考える上で1番役立った。
簡単に言えば『平行世界全ての自分が生きてきた中で得た経験・知識を引き継げる』。OTONA超えちゃった世界線の自分も、櫻井理論完全に理解しちゃった世界線の自分も、全部経験と知識は彼女のモノ。《盗撮者》を感知したのも、一生話しかけてきてる《声》もコレ。
何処かの世界線で平行世界を直接触れる聖遺物を見つけちゃった朱里ちゃんが更に要らん事をした結果、発現。
ちなみに発言や行動原理がバグってる最大の要因はコレ。《全世界線の自分》と《全ての経験》を共有する為、同期した瞬間精神力が弱い世界線の彼女は発狂したり人格を喪っている。地味どころか普通にヤバい。
あとゲームすればする程強くなるという謎設定の理由でもある。『ゲームで2次元でしか出来ない様な神業を見る』▶『別世界線の人外化した自分にこの情報をインストール、実現させる』▶『実現した経験、知識を自身にフィードバック』という3工程を通じて順調に人外化して行っている。393が平然と技の1つを真似していたのは気にしてはいけない。

・トラペゾヘドロン
1番空気薄い。けど結構大事な仕事してる。具体的には認識異常を無意識に引き起こして身バレ防止に役立ってる。
コレもクトゥルフ神話参照。簡単に言えば 無貌の神・ナイアルラトホテップを召喚する神具。何処にあんの?と言われると、体内
両親は生物学者聖遺物学者。かつ、子に(因果律操られてたとはいえ)力を投げ渡す程度には無責任。そして風鳴家。
まぁ、はい、そういう事だと思ってください。


《出てきた謎言語、状況》
・調停者
ヨグ様が朱里ちゃんが普通に暴れて面白くない事にならない様付けた足枷の様な物。アダムが暴れるタイミングで私怨で神の力消し去ったり出来なくしてる。要は無双で被害者0人を邪神が見たくないだけ。
でも平行世界の朱里ちゃんが干渉して暴れまくるせいで中々上手くいかない。

・前編で救ってた研究者どうやってん
平行世界の朱里ちゃんが勝手に認識弄って同じ顔・体型になった後に救った。この朱里ちゃんはヨグ様の領域1歩手前まで来てる人外状態。

・次元界とか虚空操作とか
平行世界の研究してたら深淵覗いちゃった世界線の朱里ちゃんの知識の結晶。A〇exのレ〇スみたいなのと思っとけばいいんじゃないですかね?(丸投げ)

足立家
バルザイの偃月刀を朱里ちゃんに渡す為にヨグ様が用意したバックストーリー。時間も空間も自由自在に行き来出来るから5000年前に因果律操作で仕込まれた。というかコレが無いと《調停者》という制約が無くなる。ネフィリムとか瞬殺されちゃって邪神様楽しくない!

・フィーネへの軽い嫌がらせ
《声》にこれまでのフィーネの所業を吹き込まれて、翼ちゃんLoveの朱里ちゃんがキレた結果。具体的には屋敷の周りの空間操作しまくって冒涜的な空間を3日間見せ続けた。フィーネは単純に脳内が混乱してクリスちゃんは発狂しかけた。ただの被害者なクリスちゃんはキレていい。

・ボッシュートされた翼さん
空間操作で会場中央に位相指定されてテレポートさせられた。ノイズと同じ様な事を地味にさせられていたけど勿論彼女の知る所では無い。



働かない頭で取り敢えず書いた小説に適当に生やした裏設定がこうなりました。なんかまだまだ説明とか裏とか色々抜けてる気がしますけどまたそれは別の機会で。

次にですね、私

コラボしたいんですよ(唐突)

1回誰かとコラボしてみたいんですよ私。という訳で
コラボしてくださる方 を募集します。いいよ って方居ましたら感想・メールでご連絡ください。


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とある女学生の混沌とした別世界 1話

忘れそうなんで先に書いておきます

今回、御簾(ID:187478)氏の執筆小説『歌を響かせ、紫雲の彼方へ羽ばたいて』とコラボさせていただく運びとなりました。両者完全初コラボでかなりグダつきましたが、なんとかここまで進捗させる事が出来ました。

で、私の方なのですが……少しばかり注意点があります。

・本作の過去編『とある女学生の混沌とした過去 前・後編』読了済を前提とした設定
・御簾氏執筆『歌を響かせ、紫雲の彼方へ羽ばたいて』のコラボ話と一部異なる展開
・同上 の読了済を前提としたごく一部の会話

なんというか、御簾氏の小説の裏話的な書き方になってしまいました。全能的状態の朱里ちゃんが何を思いながらこのコラボを乗り切るのか、良ければご覧ください。


「それで未来がさ、『姫は渡さない!』とか劇で死ぬほど迫真の演技しててさ」

「やめて…それは掘り返さないで…」

「良いじゃん。よっ、響姫に守護騎士未来」

「本当に恥ずかしいから…」

 

私服で大通りを歩いている響、未来、朱里。夏休みの真っ最中で暇を持て余した三人は、取り敢えずリディアンの近くにある大通りで様々な店を冷やかしていた。

 

「どうよこのアクセサリー」

「それは女の子より男の子の方が似合うんじゃないかな…?」

「えぇ?」

「ぶーたれない。朱里のセンスは独特過ぎるの」

「ちょっと未来さんや、それはド直球過ぎやしませんかい?」

「もうこの会話だけでも独特のセンス出てるの分かってる?」

「…ふぁい」

 

「ねぇ響。この蟹、どう思う?」

「すごく…美味しそう」

「素材の時点で旨味感じちゃうかぁ…じゃなくて、実はこれめっちゃ殻が柔らかい奴でさ。ほら押してみ」

「こんな見た目してるのに?…うわ、本当だ」

「海鮮って面白いよねー」

「…ん?終わり?」

「だって普通の市場なんだから面白い魚売ってる訳無いじゃん。うんちくの出しどころも無いよ」

「そ、そっか」

 

そんな他愛の無い会話をしつつも様々な店を冷やかしていた3人だが、朱里だけが急にとある路地裏の前で急停止した。

 

「……ん?朱里?どうしたの?」

「…なんでだろう、呼ばれている様な気がする」

「助けを誰かが求めてるの!?」

「ちょっと静かにしてて人助け狂い」

「えっ、ちょっと今の酷くない!?」

 

そんな風な会話をしつつも怪訝な顔をして路地裏を進んでいく朱里と、それを追う2人。しばらく歩いていた所

 

 

「────しまった罠かッ!?」

「えっ──何この大穴!?」

「急にッ──キャアアアア!?」

 

 

3人を軽々と飲み込む程の巨大な大穴が出現。

数秒もすれば、そこに居たはずの3人はもう居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「──あだッ」

「いたっ」

「よッ、と……」

 

とある公園。空から3人の少女が降ってきた。

盛大に尻餅をついた朱里、三点着地に成功したものの少し手を痛めた未来、平然と着地に成功した響の3人であった。

大穴に落ちたハズの3人は、見知らぬ公園へと転送されていた。取り敢えず何処かも分からない場所に空中から着地するというファンタジーもビックリな超展開。そんな展開真っ只中に放り込まれた三人は

 

「取り敢えず歩きまわってみようよ!」

「携帯で場所特定出来るだろうしここに留まるのはどうでござんしょ?」

「周りの人に聞いたら…?」

 

三意見に分かれ、混迷を極めていた。

一生言い合ってても何も進まない事は全員百も承知なので、まずは最も手早く済む未来の意見から聞く事に。だが……

 

「人……居なくない?」

「一人も居ないね……」

「お昼時だし絶対一人ぐらい座って呆けてるおじおば居るでしょ…」

「シレっとすごいおじいちゃんおばあちゃんディスらなかった?」

「気の所為気の所為」

 

まさかの公園内に見える範囲で人っ子一人居ないという大問題。ということで次は朱里の意見が試される事に。だが……

 

「……圏外ってマジ?」

「私の携帯もつながってないね……電波が悪いのかな?」

「公園出てすぐとかどう見ても普通の街だし電波通ってない方がおかしいと思うんだけどなぁ……」

 

どうやら電波が一切無い模様。これにより響の意見が試される事となった。

 

「うーん……下手に歩き回って大丈夫だろうか」

「こういう時こそ歩き回って情報を集めなきゃ!」

「遭難した時真っ先に死んでそう」

「ド直球過ぎない!?」

 

思いっきり響の事をディスったりしながら歩いていた三人。だが、十分ぐらい公園内を歩き回っても全く人っ子一人居ない。結局疲れ果てたのがここに一名。

 

「…だぁー!無人都市かココは!」

「確かに一人もさっきから見かけてないね…」

「……未来と響さ、二人で向こう探してきてくれない?後で追いつくから」

「えっ?良いけど…朱里は?」

「足がちょっと…」

 

疲労困憊で歩けなくなった朱里。響と未来の二人に捜索を任せて彼女は近くのベンチで休む事に。

遠くからでも分かるピンク色の空間を展開しながら歩いていく二人を眺めながら、彼女は決して手放した事の無いペンダントを手で弄んで独り言を呟いていた。

 

 

「特にペンダントに反応は無し。ただし《声》も無反応……《転換点》じゃない?そもそもこんな事象は確認した未来には()()()()()()()……どういう事なの?」

 

 

独り言を呟きつつも、足の調子が治ったのかベンチから立ち上がって小走りで朱里は二人を追いかけていった。

 

 

 

 

 

「未来さんや、お待たせしまし──えっ、天羽奏?マジ?」

「おっ、私のファンか?」

「サインください」

 

 

 

追いかけた先で響と未来は何故か天羽奏、()()()

 

 

 

「やっぱり奏はファンが多いわね…」

 

 

少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がその傍にいた。さあそんな女性に彼女達の第一反応は?

 

 

「「えっと……どちら様ですか?」」

「誰?」

 

言い方の齟齬はあれど、完全一致であった。

それに対しての彼女達の返答は、予想の斜め上を行く物であった。

 

「は?シウに決まってんじゃんか。……あっ、さては雰囲気変わり過ぎて分かんなくなっちったかー?」

「えっと……()()()()()()()()?」

「……おい響?」

「は、はい?」

()()()()()()()()()?」

「……え?」

「そういう事かよッ!」

 

響の一言と共に急に場が緊密状態となる。天羽奏?は即座のバックステップと共に臨戦態勢に入り、響はオロオロ、未来は大困惑。

そんな中普通に会話を交わすのは「シウ」と呼ばれた女性と、朱里だった。

 

 

「……なんか面倒そうな事になってるこれ」

「そうね……何処かで話し合わない?」

「良いっすねそれ。ていうかこのバチバチ状態なんとかしません?」

「まずはそっちね……私に任せてもらって良いかしら?」

「面倒そうですし、一番槍どうぞ」

 

 

争いの場を収める一番槍をシウに譲った朱里。譲られた彼女はそのまま緊張状態の三人組の元へ歩いていき……

 

 

「──ん?なんだよs──」

 

 

フラッ、と突然天羽奏?が倒れる。丁寧にお姫様抱っこでそんな彼女を抱き抱えたシウは「着いてきて」とだけ言い放って街の方へと歩いていった。

 

 

「……え?あの人、今何したの?」

「分からないけど……手刀じゃないかな?」

「恐ろしく早い手刀……私じゃなきゃ見逃しちゃうね」

「朱里ちゃんそんな事言ってる場合じゃないよ!早く追いかけよう!」

「あーはいはい……」

 

いつもの三人組も直ぐにその後を追った。

 

 

 

「少なくとも元の世界の装者を遥かに超える力量が二人……特に シウ と呼ばれてる方の攻撃は恐らく()()()()()()()()()()()()……邪なナニカは感じ取れない、だけど、()()()()()()……魂が混在している?いや、それなら人格の混同が…あーもう!」

 

「今はあなたの存在を信じるけど……二人に被害を出そうものなら、私も全力で相手させてもらうよ。シウ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

公園からしばらく離れた街のおそらく中心部付近、その一角にある高層ホテルの最上階部屋を難なく抑えたシウによって会談の場は設けられた。

いつの間にか目を覚ました天羽奏?も加えて始まった情報交換、その口火を切ったのは朱里。

 

「取り敢えず部屋を抑えてもらったのは感謝します。だけど私達は貴方達の事を知らない。特に問題なのは奏さん、貴方だ」

「あ?」

「貴方、明らかに()()()()()()()()()様な振る舞いしましたよね?私と貴方は深い交流が無いから除外。そうなると親密に話しかけられるのはこの二人のどちらか、または両方。確かにこの二人はいろんな方向に交流があるのは認めるけど、最大の問題点は奏さんと交流を持っているなら、奏さんと付き合いの長そうなそこのシウという女性、そちらを二人が知らないのは異常だ」

 

「ハッキリ言う。貴方達は何者だ?」

 

初動から珍しいかなり強めの語意で攻める朱里。それに対する二人の反応は、何処か納得した様な雰囲気だった。

 

「朱里ちゃん……だったかしら」

「私の事であれば。というか私貴方のちゃんとした名前知らないんですけど?」

「それは失礼したわね……風鳴紫羽、それが私の名前よ」

「ーーかざ、なり?」

「ええそうよ。何か問題でも?」

「……いえ、何も」

「じゃあコチラも貴方の名前を教えてもらえるかしら?」

「…足立。足立朱里」

「取り敢えず情報交換としゃれ込みたいのだけれど……」

 

そう言いながら紫羽は朱里の肩を抱き寄せてひそひそ話を始めた。完全に置いてけぼりの三人は顔を見合わせていた。一名何故か「私のだぞォ!!」とか軽く怒っていたが。

 

「少し四人の共通点が特殊だから席を外してもらっていいかしら?」

「……あぁ、なんかその手の奴ですか…まぁいいですけど」

「助かるわ。財布貸したげるから好きなだけなんか買ってきなさい」

「ーー好きなだけ、だと?」

「えぇ」

 

二人にしか聞こえない密談を終わらせた後、朱里は紫羽の財布を受け取ってサムズアップしつつ部屋を出ていった。ちなみに後の響曰く「滅多に見ない笑顔だった」そうな。

さて、朱里が居なくなったこの部屋。そんな中、紫羽は胸元からペンダントを取り出して見せた。それにより響と未来の顔が一気に引き締まる。

 

「それって……」

「二人とも恐らく知ってるんじゃないかしら?」

「シンフォギアのペンダント…」

「私の勝手な予測だけど、恐らく私達と貴方達は別世界の存在なんじゃないかしら。私の知ってる響と未来はもっと違った反応するはずだし」

「な、なるほど…」

「ま、彼女は一般人なんでしょう?」

「え、いつそれを……」

「奏に一般人だから誤魔化してとか言ってたの丸聞こえよ。取り敢えずココには機密を知ってる組しか居ないわ。安心して話しましょう」

 

そうして四人は一般人には到底聞かせれない機密を交換していった。

一方その頃朱里はというと……珍しくコンビニで軽く買い物をした後、また公園に足を運んでいた。

 

 

 

 

 

「明らかに紫羽はシンフォギア絡み、もしくは装者。更に風鳴、か……親戚関係の名簿は全部確認したつもりだったけど記憶に無い……隠し子か?それなら何故あのジジイは言わなかった?シンフォギア装者で風鳴の性なんて、ジジイは必ず国防の剣の一振りとして私にも通達するハズ。完全なる極秘部隊か?いや、それにわざわざシンフォギアは使わないか……分からない事が多すぎる」

 

「しかも最悪だ……()()()()()()()()()()()?いつもより情報の同期が遅い……致命傷にならなければいいけど」

 

「そろそろ時間掛けすぎたか…これ以上黄昏れてると怪しまれかねないし……ホテル戻るか」

 

 

 

 





中々文構成が決まらず、筆も進まない状態で強引に進めた様な気がして仕方有りません。なんだこのきったねぇし読みにくい文…(遠目)

コラボ相手である御簾氏執筆『歌を響かせ、紫雲の彼方へ羽ばたいて』のリンクは以下となります。読みやすく、カオスでシリアスなミックスを楽しみたい方へはぶっ刺さると思いますのでぜひぜひ。

↓↓↓
https://syosetu.org/novel/251317/


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とある女学生の混沌とした別世界 2話

人体錬成を行った所、右腕を喪失しました。


嘘です。リアルの方で少しばかり激しい事故がありまして、右腕が7割ばかり炎上して軽く通院生活してました。ようやく右腕が痛むものの、ちゃんと動かせる様になったのでバッと書いた次第です。

あと前中後で終わらせられる気がしなくなったのでタイトル変えました


公園から帰ってきた朱里。そんな彼女が部屋に入って見たのは

 

 

「凄い!奏さん凄いです!」

「そう!これが愛の力だ!」

 

「………んん?」

 

 

まるで勝利を宣告するが如く片足をベッドの上に乗せてガッツポーズをする奏。それをキラキラして目で見る響。そんな響をニコニコ見ている未来に、呆れ返った様な顔をしながら朱里の元へやってくる紫羽という理解不能な光景だった。

 

「なんだこの光景……あっ、財布ありがとうございました」

「良いのよ。………あれ?そんなに使ってない?」

「えっ、だいぶ使っちゃったと思ってたんですけど」

「もっと贅沢に使えば良いのに。こんぐらい痛くも痒くも無いわよ」

「……なん、だとッ……?」

 

圧倒的富豪の力を見せつけられて撃沈する朱里と『俺、なんかやっちゃいました?』的な顔をしながら財布を持つ紫羽もその光景に加わった。

そんな魑魅魍魎もビックリの謎光景が生まれてから1分。全員平静を取り戻して1つの机を囲んでいた。

 

「えーっと、コンビニ行ってる間に話はついたって事でOK?」

「うん!ねぇ聞いてよ朱里ちゃん!奏さんが!」

「あーはいはい後でね。で、御二方も満足いく結果でした?」

「えぇちょっとぉ!?」

「えぇ、問題無いわ」

「こっちは大丈夫だぜ。アンタだけハブっちまって悪いな」

「いやいや、おかげで()()買えたんで大丈夫です」

 

 

コレ と言いつつ中々に膨れ上がったビニール袋から取り出したのは2Lペットボトル5本。よりにもよって全部サイダー。

 

 

「なぁ、なんで全部サイダーなんだ?」

「皆さんは2本あれば多分分けきれますよね」

「……ん?どういう事かしら?」

 

「あの、奏さん」

「なんだ響」

「朱里ちゃん多分1人で6L飲む気です

「ハァ!?」

 

驚きの声が出たのも束の間、朱里は何の戸惑いも無く1本開けて豪快にラッパ飲み開始。あまりの飲みっぷりに奏唖然、紫羽困惑。

わずか十数秒で2Lを飲み干してしまった朱里の顔は、何処か満足気であった。

だが……

 

「あ゛〜美味しか……っ……ヤバッ」

「ちょっ、朱里ちゃん!?抑えて!」

「流石にこの状況ではマズイから!?」

「は?………まさか」

「はしたない事になりそうね……」

 

炭酸飲料を飲む者の運命を見事に受け入れかけている朱里。思いっきり口を手で抑えて喉も力を入れているが確実に出る3秒前である。

流石に羞恥心があるのか顔が青くなるレベルで抑えているが、2Lも一気飲みしていて抑えられるハズもなく……

 

 

 

―しばらくお待ちください―

 

 

 

 

スッキリした顔の朱里、死んだ魚の目をしている響と未来、顔が引きつっている奏に、呆れ返った顔をしている紫羽という、事情(ゲップ発射)を知らなければ理解不能な光景がそこにはまたも広がっていた。

 

「……満足したかしら?」

「何故、これほど溜め込んだ物を解放するというのは気持ちが良いんだろうか」

「朱里、ちょっとOHANASIしようね?」

「えっ?ちょっと未来さん?なんで首を鷲掴みにするんですか?ちょっとどこ行くんですかこれ?なんだろう、答えてもらっていいですか?

 

部屋の外から明らかに女性が出してはいけない声が聞こえた気がしたが、それを聞かなかった事にして3人で向かい合った所で奏が急に大声を出した。

 

あっ

「えっ」

「何?」

「私達の世界でもそっちの世界でも無いなら、ここは何処だ?」

 

「……ホントだ」

「完全に忘れてたわね……」

 

「よし、手分けして探すぞ」

「どう分けるつもり?」

「そうだな……あの二人居ないし、ハッキリ言っていいか?響」

「えっ?はい……」

「朱里って奴。アイツ、紫羽に任せていいか?」

「……理由は?」

「アイツは完全な一般人だ。何か危険な状態に陥った時、ヴィマーナで強引に逃走も図れる紫羽なら問題無いと思ってな」

「それを言うなら未来ちゃんもだけど?」

「私と響でなんとかする。だが私達が守れるのは良くて1人だ。それならいつもの組み合わせの方が私はまだやりやすい」

「だ、そうよ。響はそれでいいかしら?」

「は、はいッ!」

 

明らかに一番重要そうな一般人抜きで会議は進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして時は進みPM8:00。会議通り5人は紫羽・朱里ペアと奏・響・未来トリオの2組に分かれて、この街の情報収集を行っていた。

まずは異色の二人組。彼女達は夜の繁華街へと繰り出していた。明らかにヤの付く自由業の人並の服装をしているスレンダー女性、会話しながらその横を平然と歩くパーカーを着崩してる高校生という異様な組み合わせに周囲の人間も思わず2歩後退。そんな彼女達は……

 

 

「ツヴァイウィングのマネージャーをされてるんでしたっけ」

「ええそうよ。何か気になる事でも?」

「翼さんのご尊顔を写真に撮って百枚ぐらい頂けないかなって」

「……えっ?」

「ジョークですよ、ジョーク」

「なんだ、ジョークね」

「九割九分ぐらい」

「残りの1%は?」

「本心です」

「包み隠さず言ったわね…」

 

 

割と高校生側の方がヤバさで圧倒している状態であった。一応どちらも会話しつつ周囲に視線を向けて様々な情報を得てはいるため目的は達しているのだが、如何せん会話内容が酷すぎるせいで紫羽がドン引きする展開が続いている。

 

 

「それにしても紫羽さんってスタイル良いですよね」

「そういう貴方もね。何かやってたりしたのかしら?」

「一生ゲームしてた記憶しか無いですね」

「……食事制限とかはしたのかしら?」

「ゲームしてて食事忘れて、結局そのまま断食した事ならありますね」

「……なんでかしら、急に殺意が湧いてきたのだけど」

 

 

「そういえば未来ちゃんが貴方は生粋のゲーマーって言っていたのだけれど、どれぐらいやってるのかしら?」

「どれぐらい…どれぐらい?答え方に困りますねそれ……」

「どういう事かしら?」

「いや、ゲームは人生の道標ですし」

「……ああ、成程、これは重症ね……」

 

 

「紫羽さん」

「何よ急に」

「あそこにエク○があります」

「片手で筐体を指差しながらもう片方の手でお金を要求しない。というか無駄に貴方指の動きスムーズね。はい500円」

「色々言いながらもお金くれる紫羽お姉さんが私は大好きです」

「現金な子ね……」

 

 

ただの夜遊び化しており、()()()()()()()()()()()()()()()という事以外は、大した情報は無かった。

 

 

 

 

 

 

一方、トリオの方はというと……

 

「ほ、本当にこんな場所にあるんですか……?」

「あったりまえだろ!ヤバそうな情報の探索と言ったらこうでなくっちゃな!」

「……だからと言ってこんな」

 

 

「裏路地だけ歩く必要あります?」

 

 

「……あーその、なんだ」

「何も考えて無いんですね」

「……うん」

 

ただひたすら裏路地と一般的に呼称できる場所を歩いていた。約30分、ひたすら雑談しながら歩き続けてはいるが、見つけられるのは裏路地特有の居酒屋やバー、シャッターの閉まった店ばかり。

そろそろ時間の無駄かと位置を移そうとした所で、ソレは起きた。

 

 

『キャアアアアアァァ!!!!』

「……奏さん」

「あぁ。先に行かせてもらうぞ!」

「は、速ッ!?急ごう響!」

「うんっ!」

 

 

かなり遠いが、ハッキリと聞こえた女性の悲鳴。ロケットの様に奏が飛び出し、それを追従する様に響と未来が駆け出す。

まずは現場に先着した奏。コチラは最悪な光景を目にしていた。

 

 

【~/k#^-([[@!@!?】

「……おい、なんだこのバケモンはよ。しかも……クソッ!」

 

 

腐肉が人の形をした、としか言えない醜悪な怪物。それも3匹。その傍には若い女性 だったモノが転がっていた。咄嗟に近くの店の近くに野晒で置かれていたブルーシートを振るって死体に被せ、その後、周りに誰も居ない事を確認してからギアを展開して怪物と対峙する。

そこで響と未来が到着。醜悪な怪物を見、そこに漂う死臭に顔を顰めつつも響がギアを即座に起動。二振りの撃槍が怪物を迎え撃つ────

 

「ぶっ飛べオラァ!」

「……うっそぉ」

 

──なんて事は無かった。開幕奏が全力で放った突きの一撃で怪物の1匹の腹に大穴開通、そのまま即死。更にその余波で残りの怪物も怯み、その隙を見逃さずに放たれた横薙ぎの一振りで残りの2匹も首と胴体が永遠の別れを告げた。

この間わずか数秒。奏は神妙な顔をして怪物の死亡確認をしているが、響としてはたまったものではない。完全に『怪物はこっちでは?』という目で奏を見ていた。あと未来は響のギアを触っていた。割とヤバい顔で。

しかしここで未来、割と大事な事に気付く。

 

「……あの、奏さん、この状況マズくないですか?」

「は?……あー、確かにヤベェな」

「えっ?えっ?」

「警察に見つかりゃどうなるか分かったモンじゃねぇ。下手すりゃ捕まるかもな」

「ええっ!?じゃあどうするんですか!?」

 

「未来、少し揺れるぞ」

「いやあの、奏さん?」

「響、しっかり着いてこいよ?」

「ちょ、ちょっと奏さん?置いてかないで!?」

 

状況的にマズイ物を感じた彼女達は、奏が未来を抱えあげて摩天楼を全力疾走、その後ろを響が追いかける形で現場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

5人の泊まるホテルの部屋、そこで遊んできた2人と重大な事故に巻き込まれた3人は取り敢えず休息を取った後、それぞれ得た情報を報告し合う事になっていた。

2人組はあまり重大でも無い情報だったのでさっさと流されたが、3人組の方が大問題であった。

取り敢えず流れる様にまたも朱里を夜の街に放り出して会談を始めた4人。またもお金を貰った朱里は、夜の街を1人ほっつき歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……天羽奏。彼女から僅か、本当にごく僅かだけど……()()()()()()()。それもまだこびり付いてない、言うなれば新鮮な……」

 

「無闇矢鱈に殺るタイプでも無いでしょあの人……だとしたら、殺す必要のある存在が居た?もしくは現場に巻き込まれた?目撃?いや、目撃だけで匂いが残るレベルで血が掛かる訳が無いし、そもそも血がかかる距離でバレない訳が無い……2択か」

 

「問題は響と未来も呼ばれてる事……安全最優先を謳ったあの人が独断で見に行った訳が無い。2人も巻き込まれたか?でも血の匂いがしなかった……」

 

「ほんっと、分かんない事だらけ……あーあ、なんか面白い筐体でも……おじさーん!なんか面白いアケゲー無いですか?えっ、ゼ〇ウス?なんであるんすか?やります」

 

 

色々と悩みつつも、結局ゲームに取り憑かれて脳みそが溶けていた朱里はハブられているが幸せそうであった。




4000文字ぐらいが最近の限界ですねぇ……錬金術の野望とか毎話10000字近くを一日で書いてたんですけど、あの時どんな脳内してたんですかね?自分でも分かりません。


コラボ相手である御簾氏の『歌を響かせ、紫雲の彼方へ羽ばたいて』は以下のリンクより飛べます。シリアルな小説が読みたい方にぶっ刺さりますので、宜しければどうぞ

⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎
https://syosetu.org/novel/251317/


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とある女学生の混沌とした別世界 3話

ぬわああああん全然筆が進まないもおぉぉぉおん!!!
いやほんとにね、コラボ話って勝手にギャーギャーやる訳に行かないと思うんですよ。そうするとね、10秒に1回ぐらいコラボ相手の方の話を見てですね……(言い訳)

第3話、どうぞ

2020/7/8 すっごい気になったのでタイトル修正


「うん…うん…あっ、そう。分かった。じゃ」

 

携帯で誰かと通話していた朱里。通話を終えた携帯をパーカーのポケットに放り込み、筐体の前から立ち上がった彼女は夜の街へ再び繰り出していった。

 

「あぁ、やっぱこういう所なら()()はあると思った。コレください」

「お嬢ちゃん、何に使う気だい?」

「まぁ、ちょっと周りが物騒なモノでして」

 

ある物 を購入した朱里は、そのままパーカー内に隠してホテルへ帰った。

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。ベッドからゆっくり身体を起こした朱里が見たのは、奏1人であった。

 

 

「……んぇ?あれ、響と未来は……」

「あぁ、アイツらならランニングしに行ったぞ」

「ランニングゥ?……あぁ、そう言えば体鍛えてるとかうんたらかんたら……でも、紫羽さんも居なくないっすか?」

「紫羽が引きずってったんだよ。――お、噂をすりゃ帰ってきたんじゃないか?」

 

 

確かに奏の言う通り、言い終わると同時に部屋の外から近付いてくる足音が聞こえてきた。だが、朱里の様子が少しおかしい。顔を顰めに顰めており、流石の奏も気になって理由を聞く事に。

 

 

「……あん?どうした?」

「奏さん、どう聞いても()()()4()()()()()()()

「は?」

 

 

ゲームで鍛え上げた彼女の聴力が、どうしても外に居る人間が4人だと脳に理解させる。外に出て行ったのは紫羽、響、未来の3人。ならば、今此処に近付きつつある4人組は一体誰なのか。

嫌な予感が収まらない奏は臨戦態勢に、朱里は()()()を懐に仕込んで待つ事数十秒。ドアがノックされ――

 

 

「ルームサービスでございます」

 

 

そんな声が聞こえてきて、超小声で「4人で来るか普通?」「ボディーマッサージでもしてくれんじゃないですか?」「アホか」とやり取りした後、更に警戒する2人。無言で視線を合わせた2人はアイコンタクトで押し付け合いをし、取り敢えず奏がこのノックに応える事になった。

扉を開けて彼女が見たのは

 

 

「「「「御命、頂戴」」」」

 

全身を黒ローブで覆い隠した4人組が一斉にナイフで襲いかかってくる光景であった。

驚異的な反射神経と運動神経で飛び退いて一撃目を避けた奏だったが、尚も4人はジリジリと迫り寄ってくる。後方には完全な一般人の朱里が居る為、無闇矢鱈に動き回れない。取り敢えず朱里を保護して廊下にでも飛び出そうかと考え――

 

「朱里!ちょっとコッチへ――」

「持ってて良かったスタンガァン!」

「――は?」

 

いつの間にか自身の真横を一瞬で通り抜けて、襲撃者の1人をスタンガンで気絶させている朱里が目の前に居た。

 

「流石にこの状況は訳わかんなすぎてヤバいっすね。ゲームですか?」

「アホな事言ってる場合か!後ろ見ろ後ろ!?」

「「「御命、頂戴」」」

「うわっあっぶな!?ガチナイフじゃんコイツら!」

「お前コイツらが玩具振り回してる訳ねぇだろアホか!」

 

そのまま油断していたせいで思いっきり背中を斬られかけ、間一髪で回避した朱里。一気にそこから飛び退いて奏の横に立った彼女は、そのまま余裕綽々の表情でスタンガンを構え直した。

 

「取り敢えず、どうしますコレ?」

「出処は後で聞く。一旦それ貸してくれ」

「はいどうぞ。で、全員寝かせます?」

「出口塞がれちまったし、そうするしかねぇな…出来る限り後ろに居てくれ」

「了解っす。存分にどうぞ?」

 

一瞬でスタンガンを奏に手渡し、自身は後方のベッドに跳躍して事が終わるまで待つ事にした朱里。任せ切りにする訳にもいかずどうやってこの状況を()便()()突破しようか悩んでいた所で

 

 

「ウチの奏に、何してるのかしら?」

 

 

朱里は、荒れ狂う獅子を幻視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

約1分後、目の前には気絶させられた黒ローブが4つ。生気が感じられない状態だが、一応脈はあるので生きてる。

そんな大惨事を引き起こした本人(紫羽)は、椅子にふんぞり返って悠々とコーヒーを飲んでいる。ランニングについて行った2人は汗だくだったので取り敢えずシャワーを浴びに。なんかシャワー浴びてるだけじゃ聞こえないナニカが聞こえてくるけど何も聞かなかった事にしている奏は、自分のベッドに腰掛けて黒ローブを尋問中。大してやる事の無い朱里はたまに視線を紫羽に向けては怯えて下を向いて携帯をいじっている。

『温厚な人間程怒った時は怖い』とは誰が言ったのか、中々に悲惨な光景がそこにはあった。

 

さすがに耐え切れくなった朱里がここで一言。

 

 

「あ、あの……カラオケ、行きません?」

 

 

コーヒーを飲んでいた紫羽、尋問中の奏、シャワー上がりでほんのり紅潮している響と未来の首が一斉に朱里の方を向く。流石に恐怖だったのか軽く最後の方は上ずっていた。

 

 

「……気分転換にはいいわね」

「少しばかり歌うのも、乙ってもんか」

「また朱里ちゃんの独特な選曲センスが炸裂しちゃう…!」

「頼むからちゃんとしたのを歌って……!」

 

 

反応は完全にOKであった。2名ほど戦慄しているが、恐らく問題無いだろう。黒ローブは結局拷問に近いレベルで奏が蹴飛ばしたりしていたが一切口を割らなかった為、諦めて身ぐるみを剥いで中身は不法投棄、フロントに紫羽が鬼電して問い詰めたあと、大した情報を得られず諦めて5人でカラオケへ向かった。

 

 

 

 

 

 

「フリータイムで取ったし、今日は歌いまくるわよ」

「紫羽さんが元気いっぱいな所悪いですけど一番槍行きマース。じゃあまずはORBITAL BEATから」

「じゃ、あたしがデュエットするか」

「なんと豪華な。本人とデュエットとか死んでもいいや」

「朱里ちゃんがちゃんとした曲を……!?」

「逆に朱里ちゃんは普段何歌ってるのよ」

「多分1時間もしたら化けの皮が剥がれると思います」

「シバくわよ響」

 

 

「普通の曲飽きたな。取り敢えずL.L.L.でも歌うか」

「ほぉらやっぱりぃ!」

「初めて名前聞くんだけど、これってどんな歌なんだ?」

「マゾっ気持ちで滅茶苦茶愛が重い人の歌です」

「えっ」

 

 

「あ〜気持ちよかった」

「無茶苦茶英語の滑舌良いし上手い……ハズなんだけどなぁ」

「なんというか、歌ってる時の顔がヤバいわね。マジで愛重い人が歌ってるみたいになってるわよ」

「F〇〇kとか無駄にネイティブに寄せたのダメな感じですか?」

「話聞いてたか?ていうかなんでお前歌ってる時に完全に感情移入してるレベルでヤバい顔して――お前まさか作曲者か?」

「……さぁ?」

「なんで濁した!?」

「はいはい、取り敢えず次は私が行くわよ」

 

 

「いや、やっぱりすげぇな紫羽は」

「めっちゃ歌上手くて笑うしか無いんですけど」

「紫羽さん……凄い……」

「とっても声綺麗……」

「未来も充分声綺麗な方だと思うけどね」

「おっ、天然か?」

「奏さんはちょっと黙っててください」

 

 

結局この後街の散策等を行ったが、得られた情報は無かった。

 

 

 

2日目。

またランニングに向かって死にかけの状態で帰ってきた響と未来を朱里が介抱しつつ、今日は一昨日通りの2チームに分けて散策することに。

 

まずはヤベーイデュオ。

 

「あ゛あ゛あ゛!強すぎい゛い゛ぃ゛!?」

「フフン、私に格ゲーで勝とうなんて100年早いわよ」

「2フレームの隙を見てから突かないでもらえます?」

「トレーニングしてれば出来る様になるわよ」

「なん……だと……?」

 

「紫羽さん、これ良くないですか」

「……なぜファービー?」

「分解しがいがありそうだなぁって」

「!?」

 

「大将、この近辺でヤバそうな噂あったりします?」

「裏路地にオカルトチックな教団が何個かあるぐらいだが、嬢ちゃんそういうのが好きなのかい?」

「そういうとこってヤバそうな反面、めっちゃロマン感じません?」

「良いねぇお嬢ちゃん、麺大盛りをサービスしてやろう」

「わーい」

「貴方ここ初来店よね?」

「勢いですよ、勢い」

 

情報収集ではなくただのお出かけである。一応裏路地にオカルト教団が居を構えている事は分かったが、昨日の黒ローブがオカルト教団の面々とまだ確定している訳では無い為大した意味は無く、殆ど情報を得られぬままゲームをしていた。働け

 

 

 

 

一方、仲良し3人組。

 

「すいませーん、この顔知ってますか?」

「うーん……そこの建物に入り浸ってた気がするよ?」

「成程、ありがとうございました!」

「いえいえ。ところで君、ショゴス教団に興味があったり――」

「お時間ありがとうございましたッ!」

 

「ちょっといいか?この顔に見覚えはあったりするか?」

「ありますねぇ!こ↑こ↓の建物に入り浸っていたのが、見える見える……」

「……お、おう?」

 

「すいません、人探しをしてるんですけど」

「ふむ……すまない、サメ以外は分からなくてな」

「お時間取らせてしまってすいませ――え?サメ以外?」

『おい!サメが運ばれてきたぞ!』

「サメだ!殴れェェエエェ!」

「…………え?」

 

 

身ぐるみを剥いだ黒ローブの中身の顔写真を撮り、人探しと称して裏路地で元気に聞き込みをしていた。話しかける相手が例外無く何かしら問題を運び込んできたが、どうやらある裏路地を中心に集まっている様であった。

有用な情報を手に入れた3人組は問題児2人組の明らかな情報収集のしてなさに呆れ返っていたが、それはまた別の話。

 

 

さぁいざ帰らんと3人が裏路地から踵を返した時

 

 

「御命、頂戴」

 

 

黒ローブ(本日の犠牲者)、登場。しかもやけに数が多い。3人が軽く見渡しただけでも壁上・前方・後方・側道……パッと見渡しただけで15人以上。速攻で周囲を見渡した奏は包囲網が甘い場所を一瞬で見付けて、2人の手を取って逃げる事に。

だが……

 

「クソッ!数が多過ぎる!」

「奏さんこれ何処向かってるんですか!?」

「私達のホテルだ!中に入っちまえば向こうも大々的には手出し出来ねぇだろ!」

「そ、そうですね!」

 

マトモにやり合える理由も無いので裏路地を全力疾走する3人組。定期的に後方から投げ付けられるナイフを避けつつもホテルへ向かって駆け抜けていく。

 

そこへ

 

「そぉぉぉぉおい!」

「うわあぁぁぁあ!?」

 

空から、紫羽が朱里を抱えて()()()()()。朱里を下ろして構えを取った彼女は

 

 

「掛かってきなさいな、軟弱者共」

 

 

黒ローブを煽り、たった1人で、いつの間にか30人近くに増えた襲撃者を相手取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分程経っただろうか、そこには愚かにも紫羽と敵対した者達の骸が転がっていた。

 

「し、死んでる……」

「私は殺ってないわよ。気絶させただけのハズなんだけど、自決されたみたいね」

「どんだけ情報洩らしたく無いんですかねぇ……割とガチでヤバい所に目付けられてません?」

「本当、面倒ね……悪趣味な」

 

自殺していった黒ローブ、その胸元に付けられていた冒涜的な銀のブローチを踏み潰しつつ、彼女達はホテルへと戻った。




あと2話か3話ぐらいで終わらせたいですねぇ……(遠目)

コラボ相手 御簾 氏の執筆小説『歌を響かせ、紫雲の彼方へ羽ばたいて』はコチラから!
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とある女学生の混沌とした別世界 4話

やっと出来ました……(困惑)

何故かね、定期的に書く気力が消滅しちゃうんですよね。
え、別作品書いてただろお前 って?スイマセン……




奏・響・未来トリオが謎の怪物に襲われてから今日で3日目。

 

 

「ねっむぃ……み〜く〜」

「抱っこしないから。ほら、自分の足で歩いて」

「ふぁい……すぃやせん……」

 

「なぁ、朱里って奴あんなんだったか?」

「なんか色々な条件が重なるとあんな風になってた気がします!」

「ふにゃふにゃじゃないあの子……6時間は寝てたハズよね?」

「多分慣れない事が多くて身体がビックリしてるんじゃないですかね?」

「ま、呑気な様相はしてるけど完全な一般人だしなぁ……2人が居るからなんとかなってんのか?」

 

 

割としっかり寝ていたハズなのに今にも立ちながら寝そうな朱里、そんな朱里とまるでリハビリ担当の介護士の様に連れ添う未来、そのちょっと後ろを歩く3人という、周辺から浮きまくっている5人は朝からゆったりと大通りを歩いていた。

結局化物に会ってから3日。手に入れた情報と言えば【裏路地にカルト教団が多い】【黒ローブは大抵カルト教団と絡みがある】ぐらいで、ハッキリ言えば

 

【襲われる理由が分からない】のである。

 

『変に分散するよりは5人で固まって動いてもいいんじゃないか?』とは、奏の言。10時なのに眠い眠いとベッドから出たがらない朱里を部屋から引きずり出し、5人は冷やかしを楽しんでいた。

 

 

 

事件は起きず、日が落ちて時刻はPM11:00。裏路地を見て回れど回れど黒ローブは居らず、ホテルへの帰路に着いた5人。帰路でも何も起きずホテルに着き、何も無い素晴らしい一日を堪能した。

ふと、誰かがベランダに出ようとドアを開けた。

 

 

 

「「「御命、頂戴」」」

 

 

 

ふざけんな

 

誰かがそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分後、死屍累々と言った感じで並ぶ気絶した黒ローブ×5。またも紫羽と奏の2人が大暴れして瞬殺したが、部屋は清潔なまま。どうやって部屋に被害を出さずに5人を瞬殺したのかと訝しみ続ける朱里を傍目に、紫羽は黒ローブを拷問。響と未来はソレを見なかった事にして没入している朱里を揺するが、生憎彼女の集中は深い様である。奏はサッパリとした顔をしながらシャワーを浴びに行った。

 

いつも通り大した情報が得られなかったのか、不満気な紫羽。黒ローブが共通して付けている銀のブローチを朱里にブン投げ廃棄処分を促す中、朱里はどうしてもそれに視線を吸われていた。

 

 

「……ふぅン……?」

「どうしたの朱里?何かあった?」

「銀のブローチに刻印。書いてるのは、ええっと……?」

 

 

 

 

 

その瞬間の朱里の眼は、ココでは無い何処かを見ている様だった。

 

 

 

 

最極の虚空を見よ

時空を超えた者よ

全にして一となれ

 

汝、其の命を捧げ

 

 

 

 

 

 

「──ハァッ!?」

「朱里ちゃん!?」

「ハッ、ハッ、ハァッ……ふざけんな……

「朱里!大丈夫!?」

「……うん、大丈夫。それより、紫羽さんに──」

「呼んだかしら?」

「ヒュッ」

「朱里ちゃん!?」

 

 

NINJAの様に現れた紫羽に朱里が心停止しかけるといったトラブルがあったものの、なんとか落ち着いた朱里は、得た情報を話す事に。

 

 

「紫羽さん、コイツらの所属が分かりました」

「へぇ?」

「まぁその前に、〖クトゥルフ神話〗って知ってます?」

「……名前と一部の概要は。貴方、随分と冒涜的な趣味を持ってるのね」

「それ程でも」

「褒めてないわよ」

「それよりも」

「無理矢理行ったわね」

 

「コイツらの所属は、《星の智慧派》。外神……まぁ、世間一般的には受け入れられない様な神を崇めてる集団ですね」

「ふーん……具体的には、どんな神を崇めてるのかしら?」

「〖ただ1つの原型にして永遠〗、〖口にするのもはばかられる神聖存在〗……まぁ、様々な呼び方がされてます」

「私は 何の神を信仰しているか って言ったのよ。聞いてた?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それでもですか?」

「…………ならいいわ」

「ま、ヒトに真名は言えないんですけどね。人体構造的に」

「……この際、貴方が明らかに訳アリなのは突っ込まない様にするわ。この黒ローブと、そのバックの情報をありったけ」

「出しますとも。まずは……」

 

 

そこからは朱里の独壇場であった。

まず、《星の智慧派》なるカルト教団グループにこの銀のブローチを付けているローブ集団は所属している事。

《星の智慧派》は〖口にするのもはばかられる神聖存在〗を信仰している事。

そして何よりも……

 

 

「この神聖存在……面倒臭いし、ヨグ って呼びましょう」

「は、はぁ……?」

「ヨグなんですけど……一般的には時空間を掌握しているとも言われています。もしこの力を意図的に利用する事が出来れば」

「……元の世界に帰れるとでも?」

「その通りです。まぁ〖異界渡りの術〗って所ですかね。で、この為に必要な術式は記憶してますんで、後は儀式を執り行える場所が必要ですね」

「シレッととんでもない事言わないで頂戴。それより、その場所ってのは?」

「薄々勘づいてませんか?」

「……まさか」

 

 

 

 

 

 

「神を信仰する教団の本拠には、信仰する神と交信、または降霊を執り行える様な、その様な場所があっても何らおかしくはない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまるところ、奴らの本拠地です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

襲撃者の素性が分かった翌日。

朱里の言った〖異界渡りの術〗以外に元の世界へ帰る方法は4人とも浮かばず、結局5人で、正確には3チームに分かれて《星の智慧派》の本拠地を探し出す事になった。

 

1チーム目、奏・朱里組。

 

 

「うぅん……なんでこんな聞き込みしてて拠点が全部バラけるんですか?おかしくないっすか?」

「それよりも私はお前がちゃんと仕事してる事にビックリだ」

「ゲーセン篭ってるだけが私の仕事じゃないんですー。サッサと終わらせてゲームしたいんですー」

「結局ゲームじゃねぇか……」

 

 

 

2チーム目、響・未来(?)チーム

 

「ふむ……中々馴染むな。愉悦である」

「み、未来が、未来がっ、おかしくなっちゃった!?」

「我を揺さぶるな!遺憾である!」

「こんなの未来じゃないよ!?」

「えぇい前日に話はしただろう!我が()()()()()()()()()()()()と!その方が安全であるとも!」

「だって、安全の為とはいえもう未来じゃないもん!」

「当たり前であろう何を言っている!?」

 

 

……この様な事になっていた理由は、前日の深夜に遡る。

 

 

 

 

『なぁ、2チームで何処にあるかも分からない本拠地探すって、キツ過ぎないか?』

 

とは、奏の言。

 

『だからって、私は1人でも良いけど、残りの4人を2チームに分けて安全である保証は?響ちゃん達3人を固めるのは私はNGよ?』

 

とは、紫羽の言。

 

『ならば、我がこの娘の身体を借りて明日は動けば良かろう』

 

とは、小日向──

 

 

『『『誰!?』』』

 

 

……誰?

 

 

『フン、我の名は──』

『駄女神よ』

『なぁッ!?』

『そもそも人の身体勝手に使わない。戻って来なさいアホ女神』

『小生の様な語彙で我の権威を貶めるな!クッ、全く……仕方ない────あれ?私……』

『未来!未来ッ!?』

『うぇっ!?ひ、響?どうしたの?』

『記憶無い系かぁ……』

『ちょっと朱里?それどういう事?』

 

 

どうやら、勝手に未来の身体を乗っ取れる何者かが居るらしい。挙句ソレが紫羽とどうやら既知の関係。奏も知らなかったらしく、全員の白い目が紫羽に突き刺さる。

 

 

『紫羽さん、今のなんすか』

『……ハァ。私も、あまり分かってないのよ』

『ハ?人の身体勝手に乗っ取れるみたいなヤベー奴だったじゃないですか。しかも紫羽さんと友達っぽいし』

『あんな駄女神友人には居ないわ。というか、この世界に来てしばらくしてから、急に脳内でギャーギャー言い始めたから私も分からないのよ』

『はぁ……?紫羽さんって実は頭がおh──』

オイ、なんか紫羽に言ったか?

『…………いえ、なんでもございません…………』

『よし』

『よし、じゃないわよ奏』

 

 

「鬼神を幻視した」という朱里を放っておいて駄女神……シェムたん と呼ばれているらしいソレは、どうやら自衛の心得があるらしい。ソレを未来の身体に入れる事によって、戦えない(?)一般人を1人に減らそう、という紫羽の提案。

未来本人の承諾あればこその提案であったが、どうやら未来はそれで良いらしく、散策時はシェムたんが未来の身体を使う事となった。

 

尚その話を聞いていたハズなのに何故響がテンパっているのか、等は気にしてはいけない。

 

 

 

問題の3チーム(?)目

 

「さて、片っ端から探し回りますか」

 

 

まさかの紫羽単騎。

 

 

 

異様過ぎる3チームで、《星の智慧派》本拠地捜索は始まった。




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とある女学生の混沌とした別世界 5話

5話で最終話としておきながら終わらなかった、だと……?これも全て、乾巧って奴の仕業なんだ……
後少しです!後少しなんです!何故ストーリーが終わらないのかァ!何故きりきりばいの執筆速度が遅いのかァ!ヤメロ-!それ以上言うんじゃない!




〖星の知恵派〗本拠地捜索開始1日目。

 

紫羽、奏・朱里チーム、響・未来(inシェムたん)チーム、全員アタリを見付けられず。

紫羽に至ってはシンフォギアを堂々と使って何ヶ所か襲撃をかけるという暴挙に出たが、結局どのポイントもハズレ。

 

2日目の朝。既に3人ほど意気消沈状態であった。

 

 

「本拠地……何処……ココ?あっやべミスっ──ツッ、スゥ〜……」

 

「朱里ちゃんがおかしくなっちゃった……」

「真面目に1日だけでも仕事してたのが嘘みてぇだな……ていうかなんであんな顔しながら携帯高速で弄ってんだ朱里は」

「……触らないといけないような気がしたから?」

「何の義務だよ……」

 

 

携帯を弄り倒している(どう見ても音ゲーしてる)朱里はともかく、紫羽は目が明らかに死に始めており、奏は初日よりもテンションが目に見えて落ちていて、スイートルーム内は地獄の様相を呈していた。

 

「奏さん、ゲーセン行きましょう」

「もう何も隠さなくなったなお前」

「気分転換、って奴です。それに意外とゲーセンが本拠地かもしれないですよ?」

「取って付けたような理由を足すな。ハァ、ったく……」

 

言葉と振る舞いの割には嬉しそうな表情で、奏は朱里と共に外に出かけて行き

 

「未来っ!今日も頑張ろう!」

「うん!シェムたんさんも、よろしくお願いします!────フン、馴れ馴れしい依代だ……」

「うっ、やっぱり慣れない……」

「立花響、貴様も依代の資質があるのだがな」

「うぇえっ!?」

「それ程驚嘆する様な内容を発言したか我は……?」

 

響と未来は今日も献身的に本拠地捜索に乗り出し

 

「……ホント、どこにあるのかしらね、本拠地」

 

嫌々ながらも紫羽も本拠地捜索に乗り出して行った。

 

 

 

 

3日目。

 

「「「見つからないッ!」」」

 

2日かけて本拠地候補を全て回りきった5人(内2人ほぼ何もせず)であったが、何処も彼処も全てハズレ。3日前から襲撃が起きていないのは救いだが、オカルティックな教会やアブナイ店だらけで精神をすり減らした捜索組3人は、朝からベッドに突っ伏していた。

 

 

「紫羽、朱里がこの街の格ゲーチャンプになりそうなんだ」

「紫雨さん以外全員勝ちました」

「誇らしげに語ってんじゃないよ仕事放棄」

「その通り」

「ア〇ック25始まりそうな声だなオイ。何処から出した?」

「録音済です」

「用途が限定的過ぎる……」

 

「候補は全部回ったのに……」

「何処も違ったね……シェムたんも困ってるみたい」

「うーん……ていうか、さん付け消えてない?」

「精神だけでなんとなく会話してるんだけど、意外と仲良くなっちゃった」

「神様とも仲良くなるなんて、やっぱり未来は凄いよ!」

「実はシェムたんって意外とお──ええい色々言いふらそうとするな!」

 

「………なんだかんだ楽しそうね、皆」

 

 

中々に変な状況であったが、ここで紫羽が諦めて鶴の一声

 

「今日見つからなかったら、一旦捜索は打ち切りましょう」

 

流石に全員やる気を出して捜索する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

結局またもゲーセンに向かっていた朱里と奏。他愛も無い会話をしながら歩いていた彼女達だが

 

「──おい朱里、背負ってやるから行くぞ」

 

奏の顔が一気に引き締まって臨戦態勢に。これには思わず朱里も困惑。

 

「えっ。そんな焦る事ありますか?」

「紫羽がピンチだ。ほら乗れ」

「はい?連絡も何も来てないですけど。てかお背中失礼して宜しいんですか?」

「早くしろ」

 

紫羽に危機が訪れると急かす奏。世界最強格の化け物(朱里観点)に危機が訪れているとか何の冗談だと思いつつ

 

「……わーかりましたよ。ちなみになんでそう思うんですか?」

 

何故気づいたのかと問えば

 

 

「愛の力だ」

 

 

 

「愛とは……?」

「スゲェ物だ」

「小学生みたいな言い方止めてもらって良いですか?」

 

愛とは一体何なのか。朱里はその謎を解明すべく紫羽の元(アマゾンの奥地)へと向かった。

 

 

 

「ていうか何処向かってんすかコレ」

「あの丘上の住宅地だ」

「わぁぉ高級そぅ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オアアァ!?速スギィ!」

「ジェットコースターの新種と思って諦めろ!」

「じゃあそうします。イィヤァッホォー!!!」

「順応はっや」

 

その日、何かを叫びながら住宅街を駆け抜けて行く朱い軌跡が多くの人の目に映ったとか、映らなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし到着」

「………フゥ」

「なんだ、疲れたのか?」

「私ジェットコースター無理なんですよ……」

「はっ?」

 

轟速でとある一軒家の前に辿り着いた2人は、そのまま家内へ侵入。強引にこじ開けられたと思われる隠し扉を見つけ、その中へ飛び込んでいく。

そこには

 

「ほんっと、面倒ね……」

 

服の右腕部分がボロボロになっている紫羽と

 

「うわっ、朱里ちゃんが奏さんの背中に!?」

「どうしてそうなったの……?」

 

凄まじい程怪訝そうな顔で2人を見る響と未来が居た。

 

「急ぐから乗れって言われて……」

「いや、そうはならないでしょ」

「なってるからどうしようも無くない?」

「それはそうなんだけど……」

 

軽い状況説明を行いつつも、先に進んでいく紫羽を追いかける4人。

やがて辿り着いた、1つの部屋。

地面に描かれた魔法陣を視界に入れた朱里は

 

次の瞬間、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

『………ココは』

『気が付いたみたいだね』

『………誰?』

『ヒドイなぁいきなり……事実なんだけど』

 

 

朱里が目を覚ました場所。そこは全てが狂っていた。

目の前には()()()()()()()()()程の美形を持った青年が1人。今立っているのは見えない足場の上で、360度何処を見渡しても形が歪んだ蒼い球とヘドロの様な黒ずんだ空ばかり。

狂った空間がそうさせているのか、理論を超越したナニカを通して、球体が何なのか、という事を否が応でもそこに居る存在に理解させる。

 

 

『……これは、()?』

『正確には()()、かな』

『……1つ潰せば、並行世界が1つ消えるとでも?』

『試してみるかい?』

『……やめとく』

 

 

恐ろしい事を平然と言う青年に否定の意を示しつつ、その場にドカッと座り込む朱里。青年も呆れ返った様な顔をしつつもその対面に胡座をかき、彼は話し始めた。

 

 

『まず、自分の状況が分かるかい?』

『魔法陣を見た瞬間意識が飛び──いや、()()()()()()の方が近いのか?』

『そう。君は体内のトラペゾヘドロンに潜んでいた外神、ナイアルラが巧妙に仕組んだ罠によって身体のコントロールを奪われた。このまま行けば君は直にナイアルラの新たな寄生体となるだろう』

『ヤダよ気持ち悪い……』

 

『でも、もう君はどうする事も出来ない。ナイアルラが相当念入りに君の力を阻害する様仕組んだっぽいからね』

『ふぅん……』

『君の親友の2人は、ハッキリ言ってナイアルラには勝てないだろう。そもそも君でも全力を出してやっと同格ぐらいの相手、ただの人間2人にはどうしようも無い。イレギュラーなあの2人も、人類の中では異常な力を持っているが、どうやっても──』

 

その瞬間の朱里の表情は、まるで修羅であった。

 

 

『………私の親友を侮辱するなよ』

『侮辱等していない。ただ事実を述べただけさ』

『それが侮辱だと言っているんだ。ただの人間、事実、だと?』

『何が違う?シンフォギアを持とうが、神殺しの哲学兵装を持とうが、ただの人間に変わりは無い。そして

ただの人間が外神に打ち勝つ等有り得ない。それはその力を行使する君にも分かっているハズだ』

 

『………確かに、旧支配者達の力は脅威だ。たった1柱、全力で暴れるだけで、今の人類は呆気なく滅び得るだろう』

『分かっているならば、何故』

『それでも、私の親友は……立花響は、不可能を可能にする人だッ!

『ただの人間に、旧支配者を葬れるとでも?』

『旧支配者を人間が倒せないなら……同じ旧支配者をぶつければ良い!』

『ヒトと旧支配者が同等であるモノか!唯一の可能性であるクトゥグアも、儀式も無しに詠唱するだけでは呼び出せはしない!そもそもその立花響も発狂している今、何が出来るッ!』

 

 

 

だとしてもッ!

 

『彼女には居る……ピンチになった時、困った時、折れそうになった時、それを支えてくれる仲間がッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱里の叫びが終わるのと、狂った世界が光に包まれたのは殆ど同時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

「……んぅ?」

「目が覚めた様ね」

「……紫羽さん、ですか。それに、ココは……成程、すみませんね、なんというか」

「貴方も随分、訳アリって事ね」

「ただ、クトゥルフ神話が好きってだけです」

「素直じゃない子ね、全く……」

 

次に朱里が目を覚ました場所は、これまた理外の場所であった。まるで宇宙空間にそのまま放り出されたかのような幻想的な場所で、紫羽に肩に手を添えられていた彼女は、何かを言いたげな紫羽の話を聞いてみる事に。

 

「えーと…ナイアルラ?って言うのを、クトゥグア?が焼き払って、そうしたら貴方が正気に戻ったんだけど、ここまではOK?」

「だいぶ理解不能ですけど、理解しました」

「助かるわ。その上で聞きたいんだけど」

 

 

そう言いながら紫羽が上を指す。

 

「アレ、何?」

 

そこには、黒色の炎が渦巻いていた。

 

「……何ですかね?アレ」

「クォラァ駄女神ィ!」

「えぇ………?」

 

謎にシェムたんにキレ出した紫羽に若干の呆れ目を向けつつも、黒い炎の正体に凡そのアタリを付け、その正体を告げる。

 

「……失礼したわね。それで、アレは?」

「ヤマンソですね」

「何よそれ。ヤマイモ?」

「ヤマンソです。あんな禍々しい山芋とか食べたくありません、じゃなくて」

 

ヤマンソ。その正体と危険性とは

 

「ほっといたらこの空間焼失しますよ」

「はっ?」

「アイツ、全部焼き払おうとするんですよ。存在まで含めて」

「……マジ?」

「マジマジ」

「……しょうがない、か」

 

 

その場にある物全てを焼き払おうとする獄炎。その危険性を知った紫羽の顔は、何かの覚悟を決めた顔であった。

 

 

「まさか、やるつもりですか?流石に無理ですって」

「自分の不始末ぐらい、自分で付けないとね」

 

 

危険性を理解した上で、これ以上4人に負荷は掛けられないと判断し、自身の力を行使しようとした朱里。

 

 

「ごめんね、朱里ちゃん」

「へ?一体何を」

 

 

そう思った次の瞬間には、彼女の意識はまたも刈り取られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

『何度でも狙おう』

 

『何度でも甦ろう』

 

『必ず、その身体を貰い受ける』

 

『私の野望の為に』

 

 

 

眠る朱里は、何処かで幼い女児の恨み言を聞いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

「──おはよう、眠り姫さん」

「……おはようございます。少し、良いですか」

「……えぇ、どうぞ?」

「どうも。ッスゥ………」

 

 

もう一度意識を取り戻した朱里。何処かに行っていた響・未来・奏もいつの間にか帰ってきていて、全てが終わったのだと理解した朱里は、何かの承諾を紫羽に取る。

許可された朱里は、何の因果かナイアルラが居た方角を向き──

 

 

 

「トラペゾヘドロンに籠っとけやアホォ!」

「うわっ、うるさ……」

「何のフラストレーション溜めてたのよ彼女は……」

 

 

ただ思い願った事を、叫んだ。

 

 

 

 

 

 






第6話というか本当の最終話、マジで急ぎます……でもワクチンぶっ刺してダウンしてる時ってホント筆進まないよね。
え、『お前元気でも筆進んでねぇだろ』だって?HAHAHA、何の事やら

コラボ相手 御簾 氏の執筆小説『歌を響かせ、紫雲の彼方へ羽ばたいて』はコチラから!
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https://syosetu.org/novel/251317/


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とある女学生の混沌とした別世界 最終話

ワクチン副作用が打って2日ぐらいしてから強烈なのが来ました。ずっと熱は引かないし腕痛いし頭痛し出すし散々でしたねホント……うわ、私の身体の免疫力無さすぎ……?(多分違う)

3000字以内で終わるかなーって適当に概算して、書き終わったら4000字近くあるんですけどなんでですか


とある一軒家の古びた部屋。そこに光が5つ生まれ、その中から飛び出してきたのは

 

「いよっ、とっ、とっとォ!?」

「バランス感覚無さ過ぎるよ朱里ちゃん……」

「わざわざ言わなくていいでしょひびッ、ガっ、あったっタァ!?」

「あぁ朱里ちゃん!?」

 

「なんであの子軽くつまづいただけであんなに事故起こしてるの?」

「アレが朱里なので……」

「天性のドジか……」

 

謎の世界へ飛ばされていた5人だった。飛び出してきて早々凄まじい音を立てて壁に衝突した朱里とそれを介抱している響を他所に、残りの3人は部屋の中を精査していた。

そうして見つかった、3つの物品。

 

「何ですかこの儀礼剣」

「貴方がそれ使って魔法陣描いてたのよ」

「えっ何それは……」

 

「燃え尽きたナニカ……?」

「私がクトゥグアをこの紙に書いてた呪文で呼び出したんだけど……」

「見事に何も分からないですね。ていうか紙だったんですか」

 

「これが魔法陣、ですか……アレ?ナイアルラ呼び出す術式になんかアレンジ入ってる……」

「なんで知ってるのか、はもう聞かないわよ」

 

 

燃え尽きた紙切れだったモノ、少し先が欠けた儀礼剣、完成しているがそれだけの、落書きの様な魔法陣。

しばらく確認を続けていると

 

 

「……あれっ?こんな所に手紙ありましたっけ?」

「まるで『今降ってきました』ぐらいのタイミングね。明らかに周りの物よりも綺麗過ぎるし」

「……開けます?」

「開けてみないと始まらないだろ」

「罠の可能性考えてください奏さん」

 

 

周りの静止も聞かず封を開けて手紙を読み始めた奏。特に罠もなかった為、全員がホッとしつつ内容を聞いてみる事に。

 

 

「で、奏さん。それ何が書いてます?」

「……これは、地図か。マークが入ってる……来いって事か?」

「まるで意味が分からんぞ!」

「これは『理解する気が無い』って意思表示です」

「ごめんなさい。お願いします未来さんその説明だけは……」

「……ホント楽しそうね貴方達」

 

 

手紙に描かれていたのはこの街の物と思われる地図。その中で一つだけ赤で丸を付けられている場所は、偶然にも5人が最初に出会った公園を指していた。

 

全てが終わったと信じ、5人は直ぐにでも最初の公園へ向かった。家内に侵入するまではまだ日も天高く昇っていたというのに、気付けば既に日は沈んで現在19時18分。

いつの間にかパーカーが消失した朱里が寒い寒いと言うので紫羽が貸したジャケットを羽織り、何故かサングラスまで借りてアブナイ見た目になった朱里は「エ〇バ…」とか呟きながら先陣を切って公園に着いた。

 

「……何も無い?」

「茂みに潜んでる……って訳でも無さそうだな」

「最初、ココで会ったのを懐かしく感じるんだけど……」

「もうココで会ってから1週間近く経ってますもんね……時間の流れってのは早いもんです」

「朱里ちゃん、年配者みたいな事言ってない?」

「自分で言っててホントにそれは思った」

 

最初に5人が出会った公園でそれぞれの、短くも濃密だった想い出を語り合う中、誰かが空を見上げた。

 

「わぁっ……!」

「中々珍しい……」

「凄い偶然ね」

「綺麗なモンだな……」

 

降り注ぐ流星群。満天の星空。19時18分。

朱里には、ある物に思考を結び付けるには充分過ぎる程に要素が揃い続けていた。

 

 

 

「……ああ、成程、そういう事かぁ……」

 

 

 

脳細胞を総動員して術式と呪文を思い出す。

必要な呪具(バルザイの偃月刀)は既にこの手の中に。

後は地に術式を刻み付け、呪文を確実に紡いでいく。

 

いつしか彼女の意識は失われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

『……またか』

『うん、またなんだよ。君のせいだけどね』

『いやまぁそうなんだけどね、()()助』

『ヨグ助、ってどんな呼び方なんだ……』

 

 

ついさっきまで居た、歪んだ世界に朱里は再び居た。

ヘドロの様な黒ずんだ空と、数えるのも億劫になる膨大な量の球体(世界)。またも朱里はその辺にドカッと座り込み、ヨグ助と呼ばれた青年も呆れ返りながら対面に座り込む。

 

 

『で?なんでまた私は呼ばれてるんですか』

『君が()()()()を書いたからだろう』

『違う。あの召喚術式はアンタの()()()()1()()()()()()()()()()()()だけに過ぎない。精神をヨグの元に飛ばすなんて術式、私は知らない』

『チッ、バレてたか……』

『知識を放り込んだのはアンタだぞ』

 

どうやらこの世界に再び朱里が訪れたのはイレギュラーな事態であるらしい。

怪訝そうな顔を青年に向ける朱里にヘラヘラしつつ、青年は真相を語り出した。

 

 

『実はね、僕も1枚噛んでたんだよ』

『……ヘぇ?()()()()()()私を消す為に?』

『いんや?ナイアルラに痛い目合わせてやる為に、さ』

『ハ?まるで意味が分かりませんけど?』

 

『そもそもナイアルラは神出鬼没過ぎて本体どころか分身体すら殆ど捕捉出来ない、っていうのは』

『知ってますよ──あ、そういう……』

『どういう訳か、奴はキミの身体を乗っ取る、という作戦の為に僕の分身体にコンタクトを取ってきた。向こうも分身体の1つとはいえ、上手く利用すれば力を削いでやれる……と思ってね』

『つまり私達は、アンタらの勢力争いに利用されたと』

『人聞きが悪いな。ナイアルラの脅威は君も知っているハズだ』

『ハイハイ、そういう事にしておきます』

『面倒くさがりなモノだ。話はしっかり聞いておかないと損するぞ?』

『あーあー耳がいたーい』

『……何故この世界線のキミはこれ程まで適当なんだ』

『知りませんよそんなの。むしろ別世界線の私はいい子ちゃんな事にビックリです』

 

 

旧支配者達の勢力争いに巻き込まれた事を知った朱里。不機嫌な顔ではあるものの、ナイアルラの脅威を()()()()()からこそ、青年に対して大きくは出れなかった。

 

 

『……で、結局私をここに呼んだ理由が分かりませんけど』

『僕なりの謝罪さ。もう1回旧支配者の身体を見せて皆を発狂させるのはダメだろう?』

『……もしかして今、私の身体乗っ取ってます?』

『術式を介して今ちょっと、ね。にしてもあの召喚術式はまだしも、効力を発するタイミングは凄い抽象的な言い方だったからね。キミの事だから忘れてるものかと』

『失礼な。必要な情報はしっかり覚えてますよ。それ以外は全く覚えてないってだけで』

『物忘れが激しいと言うべきか、記憶の要領が良いと言うべきか』

『聞こえのいい風に言うべきですよ、神サマ?』

『しっかり心に刻んでおくとしよう』

『心もクソも無い癖に冗談だけは上手いっすね』

『キミ、僕の()()()1()()()()()()()()の分かって言っているかい?』

 

『だって自分しかその叡智を理解出来る存在が居ないって、虚し過ぎませんか?』

『……ほう?』

『孤独ってのは虚しいモノだ。せめて、1つでいいから、理解が欲しい。そういうモノを何処かに全ての存在は秘めている』

『………ハハハ!冗談も休み休み言えよ人間。旧支配者の力の一片を託された事で思い上がらない事だ』

『その反応がそうでしょう。理解されない、その時が永過ぎた。耐えれず破滅するならまだしも、()()()()()()()()()ら、次は《理解の否定》を始める。孤独の王であると、言い聞かせて。タチが悪いのは、本当にアンタは王であった事だ。未だどの存在も理解出来ない、叡智を持ってしまった』

『……ならば、どうすると言うんだい?』

 

『私が、アンタの理解者になってみせる』

 

 

ヨグ=ソトース(全知全能の神)に対する挑戦。その意を表明した朱里に対して

 

 

『………なら、楽しみにしていよう。キミが、僕の領域に辿り着くのを』

 

 

青年の顔は、狂気に満ちた笑みで応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

「………ん、んぅ……あり?」

 

 

目を覚ました朱里。何処かも分からない公園のベンチに寝転がっていた彼女は、ゆっくりと身体を起こして周りを見渡す。

数少ない休日だからか、遊びに来ている家族。日課なのか、散歩に来ている老人。自分よりも若い学生が楽しそうに遊んでいる光景。

いつも通りの日常の風景を見て、いつの間にか張り詰めていた自分を落ち着かせる様に息を吐いた朱里は、ある事に気付いた。

 

「……サングラスとジャケット、持って来ちゃったよ」

 

きっと誰かの物であっただろう、自分の持っていないサングラスとジャケット。それを身につけていた朱里は、フッと笑いつつも携帯電話を手に取り、ある事を伝えた。

 

 

()()()()()()。お礼の手紙、あの人に送っておいてくれないかな」

 

 

その手紙が、あの人 と言う人の元へ届いたかどうかは、また別の話である。

 

「朱里ちゃーん!」

「ん……響、あんな遠くから叫んでも意味無いでしょうに……周りの目線めっちゃ集めてるし」

 

「朱里ちゃん、起きたんだね!」

「起きたって……私倒れたの?」

「そうだよ!急にそこの大通りで倒れてホントにビックリしたんだから!」

「アハハ……ゴメンゴメン。もう私は大丈夫だからさ、何処か遊びに行こうか?」

「良いね!何処に行く!?」

「ゲーセンで」

「朱里ちゃんゲーセン好き過ぎない?」

「良く言われる。んじゃ、未来が来たら行くとしますか!」

「そうだね!」

 

 

これは2世界の、有り得たかもしれない、有り得ない狂った1つの物語。




これにてようやくコラボ話、私の方でも完結となります。異常なまでの私のコラボ話の書く速度の遅さに絶対辟易した人も居るでしょうが、ここまでお付き合い頂いた読者の皆様、ありがとうございます。

次話からは何を書きましょうか……過去編のシリアスな感じも書きたいんですけど、リアルの方でまた別次元に脳ミソが飛んで行った会話が出たので、それも話に起こしてみたいんですよね……まぁゆったりと進めます。

あともしかしたら『錬金術師の野望』を色々改変して1からやり直すかもしれません()


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とある女学生の混沌とした映画館

ダラダラと引き伸ばし続けるのもキツいと感じたので、あと数話ネタ混ぜながら情報出して、完結編みたいなの出して締めようと思います。ていうかモチベが落ちて小説書くのキツくなってきたんで、これ完結次第ROMるかもしれません

今回小文字多用してるんで読みにくかったらすいません


「……ステーキ食べたい」

「昨日餃子食べたんじゃなかったの?」

「肉毎日食べないと死んでしまいます」

「太るよ?」

「いや〜ワタクシ何食べてもあんまり太らn」

太るよ?

「…………我慢させていただきます」

「よろしい」

 

 

夏休み。いつも通り3人で遊びに行こうとしていたが、響はレポート提出を理由に学校へ。どうしたものかと考えた朱里は未来を引き連れ、ショッピングモールのフードコートに来ていた。

ステーキが食べたいと嘆く朱里に、それを咎める未来。いつも通りの日常会話が繰り広げられる中、新たなメンバーが遠くからやってきた。

 

 

「……ん?おっ、バカの連れじゃないか」

「あ、クリス。クリスも何か買い物で?」

「まぁ、そんな所だな」

 

 

どうやら1人で買い物に来ていたらしいクリス。遠くから2人を見つけたクリスは、シレッと問題児を放置して軽い挨拶をしていた。

 

「私放置するのやめてもろて」

「お前が会話に入ってくると会話にならねぇだろうが!」

「……確かに」

「認めちゃうの!?」

 

流石に寂しかったのかシレッと会話に参入しようとするものの、クリスに盛大に一刀両断。挙句の果てに本人も認めて周囲が暗く見えるレベルで落ち込み始めた為、流石にヤバいと判断した未来は2人をいい感じに連れ出す方法を模索する事に。

 

だが無い。この2人をくっ付けて自分も着いて行った場合ロクな事になる未来が見えない。

カラオケ?朱里が暴走するわクリスは恥ずかしがるわで意味不明になる為、行く事に問題は無いのだが正直勘弁願いたい。

買い物?服屋かアクセサリーショップに行った瞬間地獄のショー(主に朱里の壊滅的なセンス)により、自分とクリスの精神が持たないので却下。

ゲームセンター……朱里がこの街のゲーセン全制覇したとか言っていた気がするから却下。

どうしたものかと困惑し続けていた所、落ち込んでいた本人から何かある様で

 

 

「……こんな時は映画見に行こう、うん。泣きに行こう」

「何を言ってるんだお前は……」

 

 

「それだ!」

「……ん?」「ハァ?」

 

 

 

 

 

 

という事でやってきたのはモール内にある映画館。しかし完全に無計画な為、どの映画を見ようかと意見を出し合い始めるとさぁ大変。

 

「感動系映画でも見て涙枯らしに行こう」

「普通にコメディでいいんじゃねぇのか?」

「敢えてのホラーとか」

「!?」

 

いつもの破天荒さは何処へ行ったのか、感動系映画をやたら勧める朱里。

3人の良いぐらいのラインが分からない為、無難なラインを踏みたいクリス。

自分以外の2人の反応を楽しもうと、私欲全開でホラー映画を勧める未来。

 

「ほ、ホラー映画はこ、ここここ、ここで見る必要あるのか?」

「クリス落ち着いて。震え過ぎて何言ってるかあんまり分かんないよ」

「び、ビビってなんかねぇ!見てやろうじゃねぇか!」

「待ってください私の意見無視ですか。ねぇ、ちょっと」

 

誰の意見を取ろうかと悩んでいた所、クリスが盛大に自爆。どういう流れか良く分からないまま本当にホラー映画を見る事に。ササッと券売機で20分後の物を3席連席で取り、上映開始まで劇場内で待つ事に。

ポップコーンとコーラを買いに行った朱里の顔は、何も知らない一般人から見ても「自殺未遂2回はやってる」と言わせる死に目だったそうな。

 

 

 

 

※ここからはダイジェストでお楽しみください

 

 

「ヒッ!?なっ、なんだ、床が軋んだだけか……

床軋むだけで中々の反応、ゴチです。後の声抑えたのは偉い

朱里、誰に向かって話してるの?

 

 

「ヒギャアアアアア!?」

ブフッ!?

ちょっと朱里!

 

 

……ねぇ未来。あの右前方に居る赤ワイシャツの人、体格エグすぎ無い?

誰の事言って──えっ、弦十郎さん!?

あぁ?オッサン居んのかよ!?

知り合いかと思ったらオッサン呼ばわり……?

 

 

おぉ、天井裏からコンニチハ。こりゃクリスパイセンもビック……ん?静か過ぎん?

クリス。クリス?ク〜リ〜ス〜?

し、死んでるッ……!

いや、どう見ても気絶してるだけだから

 

 

 

 

 

約1時間半、上映終了。

 

「いやぁ〜泣きたい気分だったんだけど、まぁ楽しめたね」

「意外と朱里ホラー強かったんだね……」

「…………スゥ……………」

 

無事、クリス気絶。どうしようもないので朱里が背負って現在移動中。クリスの胸部の凶器が揺れ動いて背中に当たる度にどう見ても朱里の顔に青筋が立っているが、それを見なかった事にしながら未来はドンドン進んでいく。

取り敢えず見付けたベンチにクリスを座らせ、何故か気絶してるクリスにアテレコをし始めた朱里を放っておいて彼女は飲み物を買いに向かった。

 

買いに向かったその先で………

 

「む……ああ、未来くんか」

「はぁーい未来ちゃん♪映画館では楽しそうだったけど、今日は3人でデート?」

「ちゃ、茶化さないでください!そういうお2人はどうなんですか!」

「そこを突かれると痛いモノだな」

「私達はお買い物よん♪弦十郎クンが久しぶりに激務から解放されたからね〜」

 

 

風鳴弦十郎、そして()()()()が服屋から出てきたのを目撃。何故かいつも通り赤ワイシャツと、まさかの白衣で出掛けている2人を見てヤバい何かを感じ取ったのか、何事も無かったかのようにスルーしようと思ったが、向こう側に声を掛けられてはどうしようも無い。サッと会話を流そうとしているのを気取られたのか、向こうもそこまで引き延ばそうとはせずに別れようとした所で……

 

「未来ちゃん未来ちゃん、ちょっといい?」

「はい?なんですか了子さん?」

 

どうやら何か櫻井了子から言いたい事がある様で、スっと顔を近付けて何を言うのかと思えば

 

「……貴方の友人、足立朱里と言ったかしら。彼女、ちょっと1回私の所に連れて来てくれない?」

 

まさかの発言に未来の顔が強張り、どうしたんだと問う弦十郎を了子が追い払いつつも、聞かなければならない事はしっかりと聞こうと決意した未来。

 

「……それは、どういう意味合いでですか?1人の友人としてですか?それとも……シンフォギア関連ですか?」

 

彼女も裏の世界を覗いてしまった人間。どうしても気になるモノは気になる。ましてやそれを頼んできた人間がかなり特殊なタイプ故、更に慎重を期すのは当たり前と言えば当たり前であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたし様は燃え尽きたんだよ、真っ白にな……ん?あぁ、お帰り未来。何買いに行ってたの?」

「なんとなんと……じゃーん!ミルクフラペチーノ3つ!」

「うーん贅沢ゥ!あ、クリスパイセンは全く目覚ます気配無──」

「お前がクソはずかしい事を堂々と言い続けるから起きるに起きれなかったんだよバカ!」

ウォアァァアアびっくりしたぁ!?

「……フフッ、アハハハ!」

「ちょ、なんで笑うのさ未来……」

「だって、朱里いつも落ち着き払ってて全く驚かないもん……新鮮で……フフッ」

「う、ぐっ、くぅぅぅ……はっずかしいなコレ……!」

「顔真っ赤にして、可愛いなぁ朱里は」

「キィィィィ……!!」

「意味分かんねぇ鳴き声出すなよ……虫か?」

「虫……虫!?ヒィッ!?ど、何処!?何処に!?」

「「………え?」」

「怖いよぉ……虫怖いよぉ……ヒッグ……」

「……クリス」

「あぁ。コレは……」

「「良いネタが出来た……!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未来が朱里と再合流する数分前、未来と了子は極限の緊張状態にあった。

 

 

「シンフォギア関連でもあるし、貴方関連でもある」

「……内容によります」

「聖遺物保管庫、その中の2つの聖遺物とかなり高いレベルで適合してる可能性があるのよその子は。所謂ダブルコンダクターってヤツね。更に、適合してるのがだいぶ訳アリでね……」

「……話が見えてこないんですけど」

「1つは『銀の鍵』。ちょっと大きな鍵なんだけど、コレの元となる神話がかなりの曰く付きなの。でも、こっちはそこまで大きな問題じゃない」

「……全く分かりません。もう1つの聖遺物に問題があるんですか?」

「問題あるなんてモノじゃないわよ」

 

()()()()()()との適合率が異常に高いの。それこそ、響ちゃんを超えかねない程に」

「……えっ?ていうかそもそも、朱里は適合するかどうかなんて検査してない気が……」

「当たり前じゃない。なんで()()()()()()()()()()()()()()()のに分かると思う?」

「……全く分からないです」

 

「響ちゃんのギアペンダントが、朱里ちゃんと一緒に居る時に勝手に励起……つまりは起動しかけてるの」

「えっ?それってつまり……歌う必要が無いって事ですか?」

「……そうなら、良かったんだけどね。悪いけど貴方達がカラオケに行っていた時、色々根回しして勝手にフォニックゲインを測定させて貰ったわ」

「そんな事を……」

 

「結果は、異常過ぎた。これまで観測してきた中で、()()()()()()()()()()()()()()()が確認された」

「……えっ?」

「シンフォギア関連ではあるけど、貴方の為にもなる話よ。ハッキリ言って、足立朱里は未知数の存在であり危険過ぎる。だからこそ検査をして、しっかりとした情報を手に入れる必要がある。なんとしても、彼女を連れて来てくれない?」

 

 

最後の方には、櫻井了子の眼は金色に。いわゆる、フィーネとしての警告をした彼女に対して、小日向未来の返答は、否定的な物であった。

 

 

「……朱里は、確かに色々と怖くなる事もあります」

「ならば、尚更では無いのか?」

「でも、私は待ちます。ずっとおちゃらけた様にしてるけど、カッコイイ時も、ダラけきってる時も、色々と時間は掛かりましたけど、朱里は私達に見せてくれました。だから、私は朱里を信じたい。いつかきっと、今は隠してる事も全部見せてくれると信じて」

 

 

ずっと張り詰めていた空間も、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。最後の方にはずっと目が金色になっていた櫻井了子も普通の黒目にやっと戻り、溜息を吐きつつも柔らかい笑顔をしていた。

 

 

「………フゥ、これは無理か。時間を取らせちゃったわね」

「いえ、その様な事は……」

「まぁまぁ。ところで、未来ちゃんは何処に向かってたのかしら?」

「えっと、飲み物を買いに」

「じゃあこの私が飲み物を奢ってあげるわぁ!迷惑掛けたし欲しい物をドーンと言いなさいな!」

「えっと……じゃあミルクフラペチーノを3つ欲しいです」

「……結構甘党?」

「どっちかというとブラックコーヒー派です」

「……苦労人ねぇ」

 

 

 

 

 

 




なんでミルクフラペチーノかって?リア友の1人がそれしか飲まないからだよ。金食い虫だよホント。


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特別編:とある女学生の混沌とした響祝い

死ぬ程遅刻しながら頑張って響を愛でたら小説が生えました
XDくんはまさかのみくクリで映画見に行くメモリアが来ててビックリしましたねホント……応援上映という発想は無かった

皆もひびみくクリを崇めろ(謎の半強制)


「スゥ…………スゥ…………」

「うへへ…………うへへぇ……」

 

「……あのバカ2号(朱里)の醜態はなんだ?なんで寝てるバカ1号()の背中に抱き着いてハァハァしてんだよ気持ちわりぃ……」

「ココ最近のバイトが激務で響成分が足りてないとかなんとか」

「……知りたくない一面を知ってしまった。ていうかアイツバイトしてたのな」

「何処で仕事してるのか教えてくれないんだよね……給料は凄いらしいけど」

「……それ、大丈夫な所か?」

「……多分」

 

 

9月13日。それは立花響の誕生日である。平日な為にもちろん学校はある。しかし昼休みに昼食を食べるだけ食べて響、無事爆睡。その背中に抱き着いて危険な声を出しながらスリスリしてる朱里がそこには居た。流石に他の女学生もドン引いてる様で、中庭の一部分にはいつものメンバー以外が全く寄り付いていない。

 

 

「……朱里先輩って、いつもこんなんでしたっけ?」

「たまにおかしくなるだけだから」

「……たまに?」

「それ以上はやめたげて。朱里の名誉の為にも」

 

「急に見た事も聞いた事も無い神話の話とかして凄い先輩だとは思うんデスけどねぇ……」

「ホント、朱里の名誉の為にもそれ以上はやめたげて……」

「流石にこれは駄目デスよ、朱里先輩」

「やめたげてよぉ!?」

 

 

後輩2人から滅多打ちにされる朱里。当の本人は無我夢中で響に抱き着いてる為どうでも良さそうだが、付き人の胃は直前の昼食と相まって破壊寸前であった。

 

「……ところでこれ、いつ終わるの?」

「よし、成分補給完了」

「終わったんだ」

「調ちゃんと切歌ちゃん、後で屋上ね」

「しっかり聞かれてたデス!?」

「お、自覚有りか?」

「切ちゃん嵌められてる……」

「デデデ!?私を嵌めたデスか!?」

「わっかりやっす。あまりの反応の良さに朱里さんビックリ!」

「声の割に顔死んでるよ朱里」

「だぁってぇ〜!バイトしんどいもおぉぉぉん!」

「そ、そんなに?」

「給料ちょっとでも下がったら絶対辞めて未来に養ってもらう」

「お願いだから働いて?」

「ヤダ!」

 

「…………(無言の右拳構え)」

「待って、待って。冗談だから、ね?未来さん?あの、ジョークはやはり笑い飛ばs──ゲフォオ!?」

「「朱里先輩!?」」

「……後輩の前で言う事じゃないでしょ」

「ハイ、ええ、ソウデスネ。申し訳ナッシング」

「本当に反省してるのかなぁ……」

 

 

頭部に見事なタンコブを作り上げた朱里は、痛む頭を擦りながらも流し目で響を見る。抱き着かれて奇声をあげられていたにも関わらずグッスリと眠り続けている様子は、余程疲れているのだという事を見る者に感じさせる。

 

と、ここで朱里。何かを思いついた様子。

 

「いい誕生日プレゼントを思いついたんだが……」

「絶対ロクでも無いでしょ」

「ちょっと未来さん?今日辛辣過ぎません?」

「普段の朱里が悪いんだよ?響を想う気持ちは分かるけど……

「言い返せねぇ……ん、なんか言った?」

「何も言ってないっ」

「えっ……えっ……めっちゃ冷たい…………」

「朱里先輩涙出てますよ!?」

「うん、調ちゃんハンカチありがとう……グスッ

「え、えぇ……?」

「未来さんは困ってるデスよ……?」

 

明らかに警戒される朱里のプレゼント。一体何を送り付けるつもりなのだろうか。

 

 

「……スゥ…………スゥ…………」

 

 

それは、眠り続ける響には預かり知らぬ事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────―

 

 

「「「「「「「「お誕生日、おめでとう!」」」」」」」」

「わあっ……!皆ありがとうっ!」

 

夜の7時。誕生日パーティが始まり、会場として使われる事となった朱里の自宅には計8人が集合。

この場に居るのは朱里、響、未来、切歌、調に響の父、母、祖母。マリア、セレナ、翼、奏はチャリティーライブで海外に向かっているらしく、残念ながら欠席。

 

 

「さぁ喰らえこの12人前油淋鶏をォ!」

「なんで?」

「いただきまぁす!」

「なんで?」

 

 

苦労人未来、ここでも気苦労が絶えない様であった。

 

 

「ねぇ、なんで朱里は12人前用意してるの?」

「え?前のメンバーが集まるんだったら12人前かな〜って」

「前って……ああ、翼さんの時?でもあの時って1、2……14人じゃない?」

「うん」

「え?ん、ん?なんで12人前なの?」

「まずツヴァイウィングの2人とマリアさん姉妹は今チャリティーライブしてるから来れないじゃん?」

「うん」

「となると、ツヴァイウィングのマネージャーも来ないじゃん?」

「うん」

「マネージャーと一緒に呑んでたあの人は内閣官房の1人だし、そもそもなんで来てたのあの人?」

「風鳴、八紘さんだからでしょ?」

「あ、ホントだ。で」

「で じゃないんだけど。誕生日パーティーに居た人の名前覚えてないってどうなの」

「今はそこはあんまり重要じゃない。で」

「もういいや。で?」

「弦十郎さんだっけ、あの人も翼さんの家族だから来ないじゃん。で、今回響の誕生日なんだから響の家族が来るかもしれないじゃん?」

「うん」

「そういう事よ」

「ー7の+3だからどう計算しても10人だけど」

「響が3人前ぐらいペロリと食べるかなって」

「うーん……一理ある」

「でしょ?」

 

 

「響さん!そんなに急いで食べたらむせますよ!?」

らいひょうふ(だいじょうぶ)ゆっふりふぁから(ゆっくりだから)!」

「ホントに大丈夫なんデスかね?あとこれでゆっくりってマジデスか……?」

 

 

「響は良い友人を持ったな……特に、朱里と未来、と言ったか」

「彼女、ホントに色々手伝ってくれてるみたいだし、今日の料理も彼女が殆ど自作したらしいし……頭が上がらないわね」

「助かるわねぇ」

 

 

それぞれが思い思いの時間を過ごす中、自然と始まったのはプレゼント送りの時間。各々が考えに考え抜いたプレゼントを渡して行く。

 

 

「響さん。私からはコレを」

「わっ、ネックレス……ハートが付いてる!ありがとう!」

「響先輩!私からはコレデース!」

「お、お米……ありがとう!」

「響、お誕生日おめでとう。コレが良いかなって、思ったんだけど……」

「わあっ、私の欲しかった眼鏡!」

「「眼鏡!?」」

「こうやって掛けて……どう!?」

「美人捜査官みたい……」

「び、美人なんてそんな……///」

 

「……あれ、そう言えば朱里ちゃんは?」

「朱里先輩、『プレゼント取ってくる』って言った限りで帰ってこないデスね……」

「あ、帰ってきた」

 

 

 

パーティー用も兼ねた広々とした応接間。そこに襖を音を立てながら大きく開いてやってきた朱里は──どう見ても直径1m超えの謎の球体を転がしてきた。

 

 

「うん…………うん?朱里ちゃん?」

「さぁこれが私のプレゼントだァ!」

「朱里ちゃん!?」

 

 

叫びながら球体にまさかの全力パンチ。殴り付けた部分にヒビが入り、そこから球体が少しずつ割れていく。ヒビからは謎の閃光も溢れ出し、たまらず皆が目を閉じる。

 

「えっ、えっ!?」

「何が起きてるの!?」

「何の光!?」

「目がァァアアデスゥゥ!? 」

 

徐々にヒビ割れが増えていき、遂に球体の中身が解き放たれる──

 

 

 

 

 

 

 

「……ナニコレ?」

「カードです」

「カード……?」

「まぁまぁ、持ってみて」

「うん」

 

 

出てきたのは、全面が青白く染まった、手で持てるほどの大きさの何も描かれていない板。朱里曰く『カード』らしく、それを響に持つように促す。

 

 

「持ったよ──うわ、なんか絵柄が出てきてる!?」

「『心を映し出す』……それが私の考えたプレゼント。そのカードは響、貴方の隠し通している物も含めた本心を見透かす……!」

「えっ、ええっ!?」

 

 

手に取った瞬間、橙色に変色したカードは少しずつ絵柄が映し出されていく。

しばらく経ち、そこに描かれていたのは……

 

 

「……皆の集合写真?」

「後ろにはとんでもない量のお米があるデスよ」

「未来さんと響さんが占める範囲、意外と小さいですね」

「そりゃこんだけ居たらねぇ……いや多過ぎない?」

「だ、だってぇ……」

「だって?」

 

「皆と手を繋げた事が、嬉しくて……」

「………………」

「ちょっ、ちょっと朱里ちゃん?無言で手を繋いできてどうしたの?あとこんなに力弱かったっけ?」

 

 

響が映し出された風景の意味を恥ずかしげに言った瞬間、朱里が無言で両手を包み込む。その力は異様に弱々しかった。

 

 

 

「……響……決して、手を繋ぐ事を諦めないで」

「えっ……う、うん!」

「……なら良し!さぁ呑むぞォ!酒持ってこい酒ェ!」

「朱里ちゃん未成年じゃん!?」

「じゃあジュースでも飲む?今家にあるのお酢だけなんだけど良い?」

「ジュースって言ったのにお酢?お酢飲むの!?」

「お酢は飲み物じゃなかったの……?」

「朱里ちゃん今度病院行こ?私もついてくから」

「ヤダ!ゲーム出来ないのヤダ!」

「拒否する理由そこ!?」

 

 

少しばかり暗い雰囲気になったのも束の間、即座に未成年飲酒を行おうとしつつも無理矢理雰囲気を戻した朱里は、後々作り過ぎて皆が食べ切れなかった料理に苦悶したとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ未来。私のプレゼント、良かったでしょ?」

「……なんで、()()()()()()()()()()()()の?」

「それでいいんだよ、それで。何も間違った事はないない」

「……本心を映し出すんじゃなかったの?響の中には朱里は居ないって言いたいの!?」

「落ち着いて未来。別に人の本心を勝手に推測してやってる訳じゃないんだから」

「じゃあなんで!」

()()()()()()()()()からかな」

「……それってどういう意味?」

「今はまだまだ。数ヶ月もすりゃ分かる分かる」

「……その時になったら、教えてもらうから」

「もっちろん。だからその時まで待っててね、お姫様?」

「…………からかってるの?」

「騎士サマの方が良かっ──グッヘェ!?」

「ばかっ、そういうことじゃないよ!」

「手が出るのが大変早い、ようで……」



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とある女学生の混沌とした決闘王

ワイ「何故かワクチン副作用の時並に腕痛くて草。助けて医師サン!」
医師「筋肉疲労やで。整体行くか腕ゆっくり休ませーや」
ワイ「分かった!FPSすりゅ!」
は?「医師」

ワイ「腕いってえぇぇぇぇ」
医師「ネット回線断つのも辞さない」
ワイ「アンタは俺の親か」

こんなアホな事をしてたら10月になってました。正直医師には大変申し訳無いと思っている。反省はしているが後悔はしていない。


「ふむ……こっちか?いやこれも良いな……これか?いや、合わないなぁ……」

 

 

自室である物を手に持って、これかあれかと色々呟きつつは放り投げ、時には拾い直し、朱里は苦悶の表情を浮かべていた。

 

その時だった。来客を知らせるインターホンが鳴った。直ぐに玄関に駆け出し、ドアを開け放つ。

その先に居たのは

 

 

「来たぞ。再戦だ……!」

「すいませんウチのキャロルが……」

 

 

キャロルと呼ばれた、低身長の子供……と、その付き人である同身長の子供(エルフナイン)であった。

 

「おい、何か失礼な事を考えなかったか?」

「今日もキャロルちゃんは器も身長もちっさいなぁ〜って」

「あぁそんな事言ったら!?」

 

「……殺してやるぞ足立朱里ィ!」

「おおこっわ。()()で決める前に殺り合っちゃう?肝心の決闘は私の勝ち越しになるけどね!」

「チィッ…………!」

「なんで朱里さんはそんなにキャロルを毎回煽るんですか!?」

「いんや、悪い癖が治らんのよコレが」

「……矯正用の道具でも作ってあげましょうか?」

「何その人格へし曲がりそうな道具、絶対やだよ。取り敢えず2人とも上がりなさいな」

 

 

朝の9時頃であるが、あんまりにも玄関先で剣呑な空気にして居心地が悪くなったのか、ササッと2人を広い応接間……では無く、珍しく彼女の寝室に通す朱里。一体何が始まろうとしているのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

「よく飽きませんね2人共……」

 

まさかのカードゲーム(遊☆戯☆王)であった。

 

 

「あ、朱里さん。飲み物が欲しいんですけど」

「いつも通り勝手に冷蔵庫から取ってきちゃっていいよ〜ん」

「じゃあそうさせてもらいますね」

 

「朱里さんこの抹茶ラテって飲んじゃっても──」

ネクロ効果でデーモンss効果でガンサーチ発動ネクロデーモンでI:Pマスカレーナssガン効果でデーモンネクロssデーモン効果で──

「……聞いて無さそうだし、終わらないだろうから飲んじゃえ」

 

「……終わったか?」

「うん。いい満足だった……

「コッチが何も出来ないぐらい封殺するなら壁とやってろォ!

「まさにその通り──あれ、エルフナインちゃん抹茶ラテ飲んでんじゃん!?」

「あ、ダメでしたか?」

「いや、仕入れさせるから良いけどさぁ……一言欲しかった」

「ちゃんと聞きましたよ?朱里さんが魂抜けてただけで。あと仕入れさせるってなんですか……?」

「そのままの意味だけど」

「えっ」

 

「よし、デッキを変えろ」

「正直これは1戦で疲れたし良いよ。どれがいい?」

「……どれもパッと見何のデッキか分からん。特になんだこの禍々しい色したケースに入ってるのは」

「あぁそれね、相手をキレさせる為の全妨害デッキ」

「……仕舞え。今すぐ」

 

 

約3時間後……

 

 

「負けたんだけどマジか……?」

「総合戦績はオレの勝ち越しだな」

「なんでこんなにデッキあるんだろ……?」

「デッキは拾った」

「落とさないで」

 

 

30戦ぶっ通しでやり続け、まさかの負け越し(13勝1分16敗)に絶望してベッドに突っ伏している朱里がそこには居た。

 

「フン、これでオレの勝ち越しという事になるな、うん?」

「負けっぱなしで居られるかぁ!再戦じゃコラァ!」

「朱里さん、もうお昼時です……」

「マ?………ホンマや」

「なんで急に関西弁……?」

 

なんだかんだ負けず嫌いである朱里はやる気全開で再戦を申し込んだが、どうやら既に昼食を取るには良いぐらいの時間であったようで。

 

「よし。昼飯作るのめんどいから食いに行こう」

「事情は知らんが、食事を摂るのには賛成だな」

「ふむ……何処に食べに行きます?僕も同行します」

エルフナ院……じゃない、エルフナ……めんどいからエルちゃんでいい?」

「その訳し方大丈夫なんでしょうか……ボクは良いですけど。ていうか話が進んでません」

定☆食☆屋なんてどうよ!」

「……言い方に違和感を感じたが、オレは構わん」

「キャロルが良いなら、何処でも」

「お、ここでイチャイチャとか良い度胸してるね。どつくぞ

「響さんと未来さん相手にイチャついてる張本人が言わないでください」

ゴフゥ!?

「……自滅してるが、コイツはアホなのか?」

「……どうなんだろう?」

 

定期的に自爆しながらも2人を連れて近所の定食屋へと向かう朱里。周辺が完全に朱里の事を「妹2人を連れて歩く姉」として見ていたが、問題の妹2人が色々ぶっ込むせいで朱里、大量吐血。

姉から苦労人に周辺評価がランクアップしたそうな。

 

 

 

 

 

みょうじょうにしはともる、か……」

「……今なにか言ったか?」

「ん?いんや、何も」

 

 

 

 

 

 

色々ありつつも、なんとか無事定食屋に到着。

 

「どうよこの店。私の大好きなカツ丼の定食特盛が1000円以内!安上がりでいっぱい食べられるゾ!」

「響さんと切歌さんもですけど、朱里さんも大概ですよね?」

「たっぷり食べればいっぱい満足じゃん!イイじゃんスゲーじゃん!」

「急に語彙力が消え……いや、元からか」

「ちょっと待ってキャロルちゃん。それどういう事?」

「そのままの意味だが?」

「うーん、萎えそう……」

「その結構本気で落ち込むのをやめろ。オレの罪悪感が凄い」

「もっと罪悪感感じて?」

「急に殺意の方が湧き上がって来たな……」

 

着きはしたが、注文を頼んだ後が酷い。四人掛けの席で1人で凄まじい落ち込み方をしては急に立ち直り、その度その度ふざけるので今度はキャロルが撃沈直前。店員は朱里の態度は見慣れてる様で殆ど目もくれていないが、客の方はその限りでは無く……

 

「先輩、なんですかあのロリっ子2人とヤベー奴」

「ロリっ子はともかく、知らねぇのか?ヤベー奴はここの超が付くほどの常連だぞ?」

「あんなガワだけ美人初めて見ましたよ……あと先輩、俺ここ初です」

「そうじゃねぇか……」

「おばちゃん親子丼もちょーだーい!あ、特盛で〜!」

「……ん?あのヤベー奴カツ丼定食も頼んでませんでしたか?」

「よくある事だ、よくある………そういうモノなんだ、アレは」

 

 

人知れずどう考えても化け物を相手にしているかの様な発言をされている当人は、いつも通りと言わんばかりに追加注文。2つのメニューの合算カロリーを流し目で見てしまったエルフナインは、一般女性には過剰過ぎるその量に困惑していたそうな。

 

 

「にしても……なんでココなんだ。お前、もっと金があるハズだろう」

「いやぁ〜ゲームに課金してたら無くなっちゃって!」

「嘘をつくな。意外と倹約家の節があるのは知ってるし、そもそもお前はそこまで課金する様なタイプでも無いだろう。限界まで身銭を切らずに骨の髄まで楽しむ様な人間だお前は」

「……キャロルちゃん、もしかして怒ってる?」

「事実を言っているだけに過ぎんだろう馬鹿者……」

「ねぇねぇ、怒ってるの?ねぇねぇ」

「……お前、楽しんでないか?」

「なぁにを言ってるか分かりませんねぇ」

「フンッ!」

「グヘァ!?」

「……楽しそうですね、2人共」

「「これが楽しそうに見えるか」馬鹿者!?」

「……仲も良さそうですね」

 

 

ちょっとした会話から一瞬でヒートアップしていく2人。火薬庫に点火しかけた2人だが、ここで朱里、異常な気配を感知。感じた方向をチラリと見れば、青筋を立てた老婆の店主がそこにはいた。

流石に逆らえないのか焦った様子でキャロルの肩をつつきながら、人差し指を立てて唇の前に持っていく。何事かと朱里が流し目で見ていた方向を確認したキャロルからは、少しずつ冷や汗が出始めていた。

後のキャロル曰く

『アレはダメだ。本当に、ダメだ。こう、分かるだろう?ダメなんだ』

語彙力が消滅して冷や汗をかきながら語る辺り、本当に恐ろしかったのだろうとその様子を見た者は感じたらしい。

 

「あ、定食あざす────で、これ食べた後どーする?」

「オレはやる事があるからな。荷物を取りに帰ったらそのまま帰宅する」

「ありゃ、そりゃ残念。エルちゃんは?」

「ボクもキャロルと一緒に──」

「いやエルフナイン、お前はコイツと遊んでろ」

「えっ、ちょっとキャロル?」

「どうせ1人で終わる程度の量だ。それにオレはコイツとカードゲーム以外でロクな事になった想い出が無いからな」

「えぇ〜?あのゴスロリ服とか可愛かったのに……」

「オレはお前の着せ替え人形じゃない!」

「違うの?」

「違うわ!」

 

 

結局、昼食を食べ終わった3人は1度朱里の家に帰宅。キャロルのみ荷物を持って家(という名のS.O.N.G本部)へ帰り、エルフナインは朱里に引き摺られて出掛ける事となった。

 

 

「ねぇ、エルちゃんやけにこのゲーム上手くない?」

「ス〇リートファ〇ターは一時期ハマってたので!」

「ハマってたで済まされる実力じゃないんだけどなんだよ全ステパーフェクトって。あぁ豪鬼相手にもう1本取っちゃってる……」

「ハマったらこれぐらいになりませんか……?」

「ハマるだけでなる訳ねぇだろばぁか!なってたまるか!廃人じゃねぇか!」

「えっ、そうなんですか……?」

「そうなんだよォ!」

 

 

ゲームセンターにてまさかの実力を見せたエルフナインに絶望したゲーム厨が、そこにはいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ふむ、予想外だったな」

 

「ガングニールのギアペンダントを持って出掛けてみたが……機材に反応は無し。全くの励起状態にならず、か……」

 

「立花響とガングニールの組み合わせ……いや、()()()()()()()()()とガングニール、か?」

 

「特定の条件下でのみ、遠隔でも励起状態化させる程の高適合率を持つと思われる足立朱里……だが、オレがギアペンダントを持って近付けても、反応は起きなかった。という事は適合率では無いのか?だがそれ以外なら……何がガングニールを励起させている?何が奴とガングニールを関連付けている?」

 

「奴が異常な程に固執している物……クトゥルフ神話、だったか。ただの空想物語だとタカをくくっていたが……1度、調べ上げてみるべきか」

 

 

 

 

 

 

 

「朱里さん?何を書いてるんですか?」

「あぁコレ?日記みたいなモンよ」

「日記、ですか……見せてもらってもいいですか?」

「おんおん、ええよええよ。ホレ」

 

 

 

『繧ャ繝ウ繧ー繝九?繝ォ縺ョ蜿榊ソ懊→螟也・槭?髢「菫よ?ァ』

 

 

 

「………何を、書いてるんですか、コレ」

「私がその日その日重要だと思った事を書いてるんだ。自分に関係無い事だと忘れちゃうしね〜」

「……ボクには、読めないんですけど」

「プライベートな事は知られたくないんだよ私だって。まぁ暗号みたいなモンだと思って許して?」

「なら、そういう事にしておきます……」

 

 

 

 

 

「知られちゃいかんよねぇ……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「絶対キャロルちゃんは調べ始めてるだろうし……久しぶりに訃堂ジジイ利用すっか」




久しぶりに遊☆戯☆王を見かけまして、そこから広がった話になります。呪文唱えてるのは昔の名残です(元エセ満足民)

あと1話か2話頑張って完結編手つけましょうかね……というか自分にメリハリ付ける為にも挙げる日固定しようかな


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朱里、京都へ往く 前半戦

はい。めっちゃ遅れました。内職的なのをしながらXDを放置周回させて小説を書こうとするんですけど……筆が全く進まなくてですね……

今回は前やったアンケ企画の1つ目です。ひまうさ 氏の『そうだ、京都へ行こう』になります。

書いてたら何故か前後半になりました。なんで?


「そうだ、京都へ旅行に行こう」

「どういう流れ……?」

「響も強制連行です」

「えッ!?」

 

 

暇を見つけては家に遊びに来ていた響の髪を弄りながらも唐突に放ったこの一言が、またもカオスを生む事になろうとはこの時の朱里は知る由も無かった。

 

 

「ふむ……京都か。いつ向かう?私も同行しよう」

「……何故?」

 

「翼が行くと聞いてあたしも来た。チャリティーライブも終わったしな!」

「ライブお疲れ様です。あれ、ちょっと待って話滅茶苦茶デカくなってない?」

 

「折角の休みッ!翼と奏は京都へ行くッ!ならば、私も着いて行って何が悪いッ!」

「何も悪くないですマリアさん。なんか被害妄想みたいなの入ってませんかソレ」

「あ、朱里さんどうも。私も同伴して良いですか?」

「勿論ですよセレナさん。待って、やっぱり話デカくなり過ぎてない?」

 

「ちょっと響。やけに京都行くメンバー増えてない?」

「いやぁ、えっと、バイト先で軽く話したらこういう事に……」

「なぁんで軽く話したらとんでもなく豪華な参加者が激増してんのよおかしいでしょ!?」

「ハイ、ソウデスネ……」

 

 

 

そんなこんなで旅行出発日の正午。東京駅には壮大なメンバーが揃っていた。

 

うむ。久しぶりの京都故、楽しみだな!

「今日の翼、なんかいつにも増しておかしくなってねぇか?」

「彼女なりにテンションが上がってるんでしょ?あと奏、貴方変装し無さ過ぎよ。周りの視線を見なさい」

「あ〜?変装なんざしなくてもいいだ……ろ……おいマリア?滅茶苦茶囲まれてないか?」

「あーもうっ!この槍、鈍いッ!」

「おい鈍いってどういう意味だよそりゃ!」

 

「……ナニアレ?」

「朱里ちゃんの目が死んでるんだけど……」

「そうなった原因は響じゃないかなぁ……?」

「ええっ私!?」

「そうだよォ!なんでこんな出発前から胃痛に悩まされなきゃならんのよ私はぁ!?」

「ヒィィごめんなさい!?」

 

凄まじい量の人に朝から囲まれるツヴァイウィングとカデンツァヴナ姉妹、それを離れた場所から呆れ目で見る朱里とその親友2人が居た。

だが朱里、ここで唐突に腕時計をチェック。針が指し示す時刻に身体中が冷えていく感覚を覚えた彼女は、取り囲まれている4人に向けて進軍していく。

 

「ちょ、ちょっと朱里ちゃん!?どうしたの!?」

「こんな所で油売ってる場合じゃない!時間ヤバイ!」

「えっ、そんなにヤバいの?」

「あと10分無い!」

「「えっ」」

 

後日、SNS上には世界中で有名な歌姫達を引っぱって走る女子高生の画像が多数載ったとか。

 

 

 

 

 

 

「あっぶな……間に合った……」

「まさかあんなに時間を取られていたとは……不覚」

「まぁまぁ、間に合ったし良いんじゃねぇの?」

「「原因が慰めてる場合かッ!」」

「うぇっ!?いや、ゴメンって、な?」

 

新幹線内、その一部分では7人の女性が駆け込んできた直後のごとく息を切らしていた。いや実際駆け込んだのだが。

最初の方こそしばらく言い合っていたが、5分もすれば各々がそれぞれの方法で時間を過ごし始めた。

 

「マリア姉さん、ココとかどう?」

「金閣寺……面白そうね」

 

歌姫とその妹は観光スポットを品定めし始め

 

「翼、京都に着いて駅で急にあたしらが歌い始めたら面白そうじゃね?」

「奏、多分また凄い量の人に囲まれるよ……?」

 

世界に羽ばたく双翼はサプライズイベントを計画し

 

「みく〜?何見てるの?」

「つい数日前に出た新刊だよ。丁度いいから今見てるの」

「成程……私何しようかな?」

「朱里に何かゲームでも借りたら?」

「そうしよう!」

 

親友を超えてほぼ夫婦の2人はなんだかんだ別の事をし始め

 

 

「朱里ちゃ──ん?」

 

カタカタと何かを打ち込む音。

 

「朱里ちゃん?パソコンで何してるの?──ってイヤホン刺してるから聞こえて無さそう……」

 

滅多に見ない真剣な顔。鼻歌を唄ってこそいるが、ノートパソコンの画面に向けられているその視線は、獲物を見定める狩人の様に鋭い。

 

 

(えっ、肩叩いて呼んでいいのコレ……?なんかタイミング良さそうな時まで待ってた方が良さそうじゃない……?)

 

 

いつもとは違い過ぎる親友の様子に、流石に声をかけるタイミングを見失った響。

 

 

(で、でも、画面を見るぐらいは良いよね……?)

 

 

しかし、脳内の悪魔の囁きには耐えられず、遂に画面をチラリ。

 

「…………何このグラフ……?」

「〜♪────んあ?響?」

 

丁度そこで気付いたらしい朱里。イヤホンを取って振り返った彼女の顔は、いつもの顔だった。

 

「朱里ちゃん?何このグラフ?」

「ああコレ?株だよ」

「カブ……?」

「食べ物の方じゃないからね」

「し、知ってたよ!」

「本当でござるかぁ……?」

 

画面右側の方に見えた何かの数字。4桁の前に付いていたマークはドルマークだと流石に彼女も知っていたらしい。シレッと画面左下に置かれていた為替レートを確認した響の顔は、理解を放棄したソレと同じであった。

 

「……え、朱里ちゃん、こんな事してたの……?」

「やはり、金の価値が変動していくのは最高や」

「えっ?そんなキャラだったっけ?」

「おっと、本性が」

「本性!?」

 

………理解を放棄したままの方がマシだったかも知れないとは、後の響の言であるが、些か気付くのが遅過ぎた。

 

「まー響さんや、せっかく2人席で私1人なのになんでアンタ立ってんのさ。座りなさんなま」

「なさんなま……?まぁそういうなら……」

「コーラ持ってきたけど飲む?」

「飲む!」

 

受け取ったコ〇コーラをちびちび飲む響を横目にパソコンに向き合う朱里。今度はグラフでは無く何かのアプリを立ち上げてとんでもない量の文章を英語で打ち込んでいく。

唐突だが、朱里は響にダル絡みされても笑って流せる部類である。タチが悪いのは響もそれを理解している事だ。暇を持て余していた響には絶好の機会だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ朱里ちゃん。この、えーっと……”ふどう”?って人に宛てたこの文、英語ばっかりで全く読めないんだけど何書いてるの?」

「お金ちょうだいって文章」

「えぇ……?」

 

 

 

 

 

無事京都に到着した朱里一行。ツヴァイウィングの知名度は圧巻で、おふざけで奏がゲリラショーをする前にもう取り囲まれる始末。マリアの手によって髪以外で判別出来ないぐらい変装させられた翼は、遠くからその様子を見ていた。だが助けを求めて駆け寄ってきた奏のせいで結局無意味になったそうな。

 

 

「わーいレンタカーだー」

「癖で右側を走りそうになるわ」

「マリア姉さん日本だと殆ど運転しないもんね……」

「そこのツヴァイウィングがバイクの免許しか持ってないのが悪い」

「ハァ?良いだろうがバイクだけでどうとでもなってんだから!」

「その通り過ぎて草が生えますわよ!」

「ちょっとうるさいわよそこの最年少お嬢様」

 

 

キャイキャイ叫びながらもホテルに1度到着した一行。2泊3日の旅行で彼女達は、それぞれ行きたい場所に一日掛けて行く事にしたらしい。

 

「はい、最初はだーれだ!」

「私達ツヴァイウィングの出番だ!」

「久しぶりに二寧坂に行きたくなってな」

「翼さん、あれ産寧坂とかありますけど何が違うんすか」

「身も蓋もない言い方をしてしまえば一本道を大きく3区切りして、それぞれに名前を付けているだけだな。ちゃんと意味もあるが」

「ほえ〜……あ、千枚漬けだ。後で買おっと」

「八ツ橋よりも千枚漬けの方に目が向くのか……やるな」

 

「あっ、この店知ってる!生八ツ橋専門店の本店だ!」

「珍しく朱里ちゃんのテンションが高い……ちょっと待って何個買ってるのそれ!?」

「いや〜詰め合わせセットは10箱は買わないと!」

「そんなに買ってどうするの……?」

「真面目な話すると配る相手が結構居るから8箱ぐらいは消えるよ〜。残りは自分用だけど」

「2箱も食べるの……?」

 

「ここが金閣寺……」

「マリアさんすっごい関心した様な顔してるんだけど、あれって金箔貼り付けてるd──うわなにをするやめア゛ア゛ア゛ァ゛!!?」

「朱里ちゃんは尊い犠牲になったのであった……未来の犠牲に」

「女性が出してはいけない声が聞こえた気が……」

「気の所為だよし行こうマリアこの先にある建物は──」

「……翼の押しの強さ、やたら強い様な気がするのだけど」

 

 

 

そんなこんながありつつも太陽は沈み、自然と全員はホテルへ足を向けていた。各々が自由に夕食や入浴を済ませ、ホテルの部屋にて……

 

「………んん……朝……?」

 

午前2時、所謂丑三つ時に響は珍しく目を覚ました。当たり前の様に横で寝ている未来を軽く見た響は2度寝しようとするも、どうも目が覚めて仕方ない。

朝がしんどくなるな、と思いつつもベッドから身体を出して窓際に向かう。カーテンを開ければ綺麗な満月が見えた。

 

しかし、響の目線は空とは違う場所に向けられていた。

 

 

 

「……あれっ……朱里ちゃん……?」

 

 

自分の良く知る人間のような、しかし黒1色の服のせいで見た目が良く分からないナニカがホテルから出て行くのを見つけた彼女は、その好奇心を抑える事が出来なかった。

今思い浮かべた親友からプレゼントととして貰ったグレーのパーカーをいそいそと羽織って、まずは思い浮かべた親友が泊まっている部屋をノックする。しかし反応が全く無い。少しばかりの疑念を抱きつつも響は親友の様な雰囲気を漂わせている何者かを追い掛けていく。

 

最初は100m程度離れた所にあるコンビニにでも行っているのかと思っていた。しかしどんどん謎の存在は進んでいく。時には路地にも入り、遂にはホテルからどれだけ離れているかも分からない、公園のような場所にまで来てしまっていた。

そこまで来た所で急に謎の人物が立ち止まった。見つかる訳にもいかないので響も急いで近くの遊具に隠れる。すぐに変化は訪れた。

 

 

「──―い。────経ったと──」

「ごめ────ここまで──」

 

 

聞こえてきた2つの声は、響にとっては衝撃的すぎた。

 

 

「……()()()()朱里ちゃんの声……?」

 

 

あまりに理解不能な光景に脳内がパンクしそうな響。遂に耐えられず、遊具から顔だけを出して状況を覗き見てしまった。

 

 

「──で、あのシス────どう──」

「いや、あれは────じゃない──」

 

 

15mは離れている為話し声は良く聞こえない。だが、照明の近くで会話しているのが功を奏して響には会話している2人の顔が良く見えた。

 

1人は自分が良く知る朱里が、上に黒いパーカーを羽織っていただけだった。自分の勘は間違っていなかったと思いつつももう1人の方に視線を向け、思わず息を飲みこんだ。

 

 

「顔も髪も色が薄いし、目も青い……アルビノ?でも顔は完全に朱里ちゃんと()()……?」

 

「ッ……なに、あの右目………()()()()()()

 

 

肌の色も髪の色も全体的に白く、目の中の虹彩部分がかなり青みがかってはいるものの、確かに彼女の良く知る朱里と全く同じ見た目の女性がそこには居た。

しかし、決定的な相違点が1つ。右目の虹彩部分が異常だった。不規則に虹彩の範囲が広がったり、狭まったり。真っ直ぐ前を見据えても右目だけが常に、まるで右目だけが別の生物のように流動していた。

 

「じゃあ、この────いじ────って!?」

「だからおち────からは────」

 

気付けば響の足は無意識に、2人の方へ向かっていた。残っていた理性を頼りに、途中にある遊具を上手く利用しながら少しずつ近付いて行く。

2人との距離、残りわずか8m。そこで響は、ある言葉を聞いた。

 

 

 

「お────、響達を見殺しにしたお前がッ!────を──」

 

 

 

感情が昂って大声になった、自分の知る朱里の声を聞いた響には、その言葉の意味は到底理解出来そうになかった。



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朱里、京都へ往く 後半戦

ずっと1000字ぐらいで止まってたけど、急に謎のスイッチ入って3000字ぐらい増えたよ。おかしいね。
次回はもう1つの方を……と言いたいんですがその前に1つ。

私きりきりばい、紆余曲折あってTwitterアカウント作りました。日常生活を呟いたり、小説の執筆状況を呟いたり、神絵師の絵を見たりします。1〜2日に1ツイートペースですが、宜しければフォローお願いします。

ツイッターID
@kirikiri3an


「……あっつい」

「なんで朱里はそんなに汗かいてるの……?」

 

京都旅行2日目。ホテルのバイキングにて、何故かブラウスとスカートというとんでもなく通気性のいいセットを着こなしながらも、かなり額に汗が浮かんでいる朱里を傍目に未来はもう片方の親友を流し見る。

 

「………Zzz………ハッ、美味しそうな匂い……!」

「コッチは寝てるのか起きてるのか分かんないし……」

 

コチラはバイキングに並べられた朝食から漂ってくる匂いを嗅いで一瞬覚醒しては、また直ぐに睡眠に入るという器用な事をしていた。当然倒れられては困るので、色々考えた結果直ぐに脇下に両手を突っ込んで上に跳ね上げる。

 

「うひゃあっ!?」

「こら、なんでそんなに眠そうなの?」

 

予想外の所から強烈な衝撃を受けた当人は盛大に飛び起き、見事に親友から説教を受ける羽目に。既に着席していた数名の友人から呆れ目で見られる2人はともかく、汗を垂れ流していた朱里は、あまりに状況が異様過ぎて直ぐに心配されていた。

 

「あっつ……いや、あっつ……なんで?」

「なんで貴方、そんなに汗かいてるのかしら……?」

「いやあの、マリアさん……これがですね、分からないんですよ」

「どうする?今日は朱里は休む?あと1日は余裕あるし、その時にでも……」

「あぁいや、行けるんで大丈夫っす」

「……そう。あまり危険そうなら無理矢理にでも送り返すわよ」

「うっす…… 」

 

調子が恐ろしい程に悪そうだが着いて行く事を決めた朱里。流石に汗を垂れ流しながら行く訳にも行かないのでその対策を色々考えた結果、何故か額にタオルを巻く事に。

ブラウスとスカートで可愛らしい衣装だったのに色々と台無しである。しかも現在、朱里は本当に調子が悪いのか顔がしかめっ面である。しかめっ面に額にタオル巻。この状況は……

 

 

「……ラーメン屋の店主?」

あ゛あ゛っ!?

「ごめんなさい!」

 

 

敢えて誰も触れてなかった部分に堂々と触れた響、見事にキレられる。それにしてもこの店主、キレる時は元気そうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁひんやりしてますなぁ〜」

「そこ、手水鉢に手を突っ込まない。ちゃんとしなさいとちゃんと」

「いやでもひんやりしてて気持ちいいですもん。やっぱり下鴨神社を……最高やな!」

「誰かこの無礼者引っ張り出しなさい。今すぐ」

「よし朱里、この近くにみたらし団子の美味しい店がだな──」

「行きましょう今すぐ行きましょう翼さん何処にあるんですかそこ──」

「………立花響だけに限らず、彼女も随分と食い意地が張ってるわね」

 

 

「…………うーん」

「どうしたの朱里?ずっと悩んでるけど……何かあったの?」

「ん、二条城は撮影不可だからさ……」

「うん、それで?」

「どうやって爪痕残してやろうかと」

「やっぱりいつもの朱里だった。待って、写真撮影OKなら逆に何してたの……?」

「あそこにカメラを持ったセレナさんが居るじゃん?」

「………えぇ………?」

 

 

「んぐ……ふー、ふー……はぐっ、ん〜美味し〜!」

「……さっきから行く先行く先、みたらし団子ばかり食べてないか、朱里」

「いんやぁ……美味いですねコレ。翼さんもどうです?無限に食べれますよ」

「遠慮しておこう。それよりも頬に餡蜜が付いているぞ……もう少し落ち着いて食べないか」

「私のお母さんですか貴方は……」

「お前の事を心配してるんだぞ私は?」

「やーいツンデレラ〜──ヒィッ!?」

今度そのような事を公然で言うと説教だ

「ウッス………」

 

 

「ね〜未来〜」

「どうしたの朱里」

「暑いんだけど」

「私には扇子扇ぐぐらいしか出来ないよ」

「脱いでいい?」

「絶対にダメ」

「下に1枚シャツ着てるからさ」

「ダメ」

「ねぇ、だめ?」

「上目遣いにしてもダメ」

「そっかぁ……」

 

 

「ここが清水寺……いやこわっ!何この高さ!」

「朱里ちゃん高い所は苦手なんだ?」

「ねぇなんで響は悪い笑顔してるの?」

「ねぇねぇ、あそこが清水の舞台だよ!」

「待って引っ張る力強い!強いって!ごめんなさい勘弁してください!ホントにダメなんだって!?ヒィィィイ!?」

 

「……………何を見せられてるのかしら」

「面白い事を知った」

「こら翼。悪い笑顔をしない」

「へぇ……」

「奏、貴方もよ」

 

 

 

 

結局様々な事がありつつも観光名所は一通り回れた彼女達。日が落ちてホテルに戻り次第、各々が自由な時間を過ごす中……

 

 

「……朱里ちゃん、一緒にお風呂入らない?」

「──ッ!?げっほ、ゲホッ!」

「あ、朱里ちゃん!?」

 

 

響は珍しく、未来を()()()に朱里に入浴の誘いをしていた。

唐突な誘いに噎せ返るも、困り顔ながら承諾した朱里は着替えを持ってホテル内の浴場に向かう。いつもなら必ず一緒に入っているであろうもう1人はどうしたのかと問う彼女は、響の返答で全てを察した。

 

 

「……昨日の夜、何してたのか気になって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ……いい湯だねぇ」

「あったかい……けど、聞きたい事は答えてくれるよね?」

「あーうん。ちょっと待って、整理するから」

「うん……」

 

 

湯船の端に2人並んで浸かった朱里と響。ナニカを見てしまったのであろう響の様子に困った朱里は、返答の内容に困っているのか表情が安定しない。

 

「ちょっと昔の友人に用があってさ、あの時間じゃないと友人とは会えなかったんだよ」

 

確実に尾けられていたと感じた朱里は、少しずつ内容に触れていく。だが、彼女の前にはそれは無意味という物か。

 

 

「……朱里ちゃんが、2人居た。それに、私達を見殺しにしたって……」

 

 

あちゃー、と言わんばかりの顔をする朱里。完全に尾けられるどころか、顔が見える距離まで寄られていたのかと後悔すると同時に、何故自分が気付けなかったのかと困惑しながらも朱里は遂に諦める事にした。

 

 

「……響はさ、ドッペルゲンガーって知ってる?」

「……聞いたことならあるよ」

「なら、説明からしようか」

 

「ドッペルゲンガーってのは、簡単に言うと自己像幻視。存在しないハズの()()1()()()()()がそこに居る、そんな風に見えてしまう……それを指してる」

「なら、私が見た朱里ちゃんはドッペルゲンガーって事?」

「……それなら、簡単な話だったんだけどねぇ」

「え?」

 

「何の因果か、私のドッペルゲンガーは、実像を持つ様になり始めた。それどころか、存在しないハズのアナザーまでも────」

「ストーップ!待って、分からないよ……」

「んん……もう1人の私、それが肉体を持った、って言えば分かりやすい?」

「えっ……そんな事が有り得るの?」

「有り得ちゃったんだよ……なんでか知らないけど。で、それが昔の私の友人って訳」

「じゃあ、私達を見殺しにしたって朱里ちゃんが叫んでたのは……?」

「あの幻影、別の世界線での記憶があるらしいんだよね。そこで響達を見捨てて生き延びたって言ってたから、まぁ久しぶりにカッと来ちゃって……」

「……うーん?」

「まぁ、うん、また分かりやすく何処かで話すよ」

「じゃあ、お願いするね?」

「任せんしゃい!」

 

 

明らかに浴場でする会話では無かったものの、人が1人も居なかったのもあって奇異な目で見られる事は無かった。しかし、この発言が後々、様々な問題を引き起こす事になる。

 

 

 

 

最終日。

寝起き1番に強烈な欠伸をした朱里は、ベッドからモゾモゾと這い出る。冷蔵庫に入れておいた水を1杯飲んでカーテンを全開。

 

「……まぶし」

 

即座にカーテンを閉め直し、着替えていく。まだ身体の火照りは治まらないので今日も薄い生地の物でも着ようと思ったが、生憎ブラウスの様な薄地は昨日の1着のみ。諦めていつものパーカーを着てジーンズを履いた朱里は、真下を見つつ今日も一言。

 

「……急におっきくならないかなぁ」

 

悲しい悩みであった。

 

 

 

「……あの、奏さん?」

「どうした、未来」

「……アレ、どういう状況ですか?」

「アレか?危ない思想に取り憑かれたヤツの末路だよ」

 

2人の視線の先には、凄まじい量の牛乳を飲み続ける朱里の姿があった。

 

「……なんで翼さんもその横で少しずつ牛乳飲んでるんですか?」

「……色々あるんだよ、色々」

 

翼も仲間な様であった。

 

「……うーん」

「響?どうしたの?」

「ベーコン無くなっちゃったぁ……」

「えっ」

 

言われてみれば、つい30分前まではバイキングのトレーに山盛り乗っていたハズのベーコンは既にその姿を消していた。

響のトレーの皿の上には大量の油が凄まじい跡を引いている。どれだけの油が使われた料理が載っていたのだろうか。皿と響の胸部と腹部を2度見した未来は一言。

 

「……私も」

 

牛乳を飲み続ける謎の集団が出来たそうな。

 

 

 

帰りの新幹線に乗る前にノルマと言わんばかりに囲まれたツヴァイウィングが居たりしたが、何とか乗車に成功した7名。結局行きと似たような事になった車内で1時間程、遂に東京に帰ってきた。

 

「うわわ!?どんだけ人居るんだよ!?」

「奏、ちょっ、変装……これ!」

「今更このサングラスと帽子だけでなんとかなんのかぁ!?」

 

その通りである。

ハイライトの消えた目でその状況を見守る朱里。奇しくも行きと似通った風景であった。締まらないのでまたも無理矢理2人を輪の中から引きずり出した朱里は、7人を輪の形に集めて駅内にて一言。

 

「はい、それじゃ今回の京都旅行」

 

「「「「「「「お疲れ様でした!」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夜なのに暑っついなぁ」

 

 

深夜2時。朱里はまたも外を歩いていた。

軸の定まらない、ふらついた足取りで少しずつ、街道を歩いていく。

 

「……同期のズレが、収まらない」

 

「……エネルギー量は問題無い。適合すれば、出力可能量も問題無く規定ラインに乗るはず。後は、私がこのズレを抑えるだけ」

 

「……響には随分と雑なウソ、ついちゃったなぁ。昔の私なら、どうしてたんだろ」

 

()()()()()()()()()()、全てを終わらせにいこう」

 

 

建物の裏路地。都市部とはいえ一切の光が差し込まないそこに入り込んだ朱里は、その瞬間、その場から()()()()

 

 

 

「随分と、特殊な方法で来たのね」

「数日前のアレ、やらかして尾けられてたみたいでね……ワープするしか無かった」

 

「適合率は?システムを問題無く作動させる為には──」

「うるっさいなぁ。ちゃんと今は70%を超えてる。あと数日もすれば完全に同期するよ」

「あのクソッタレを消し去って遮断するには生半可な力じゃ足りない。それを分かってるの?」

「分かってるのと理解するのは別なの、分かる?」

「ッ、アンタねぇ!」

「おーこわ。どんな世界線なら私はこんな風になるんだろうね?」

「私の様な存在を生まない為にはアレを消し去る必要がある!アンタ、このままだと()()()()()()()()()()()可能性があるの分かってるの!?」

 

「あのね、今私は京都旅行を楽しんでるの。今この瞬間を楽しんでる時にさ、()()()()()()とはいえ私に指図するの止めてくんない?」

「……もういいっ。5日以内に同期さえしてくれれば良い。私は一旦帰る」

「ありゃりゃ。んじゃ、そういう事で〜」

 

 

 

「……システムとの同期まで6日。()()まで4ヶ月。()()は……冬の始まり」

 

「シェム・ハが消え去るその時、私は始まり、私は………()()()

 

 

 

「……………怖いなぁ……」

 

 

「怖いよ……助けてよ……響……」



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短編集:とある女学生の混沌とした日常

正直言いますとお茶濁しです。
ストーリー何も関係無いです。デストーリー 氏とのコラボが2話目のルーレットで当たったんで進めようとしてるんですけど、何故か俺が全く向こう方に連絡取ってません。何してんの?


【勝ちを求めた結果】

 

「パイセン、そこの右の窪みめっちゃ良くないですか?」

「人1人ギリギリ入るぐらいだろ?何が良いんだよ」

「ここに野良の人も入れて3人全員でハイドしましょう」

「お前マジで最悪な事考えるな。そもそも視聴者もそんなの望んでな――おい、ちょっ、リスナー?なんで乗り気なんだよ」

「そりゃ、私達暴れ過ぎて今部隊キル数30近くあるんですよ?残り5部隊とかしか居ませんし……1回自重しとくべきですって」

「それとハイドするのは何も関係ねぇだろ!」

「(オープンVCON) あ、野良の方、ちょっとそこでハイド――あ、リスナー?OKです。あ、パイセンの合図で斉射お願いしますね」

「話聞けよ!」

 

 

 

 

【偏食家……?】

 

「………むぅ……」

「どうしたの朱里ちゃん、スマホ見ながら唸って」

「ん、ネット通販見てた」

「どれどれ……パスタかぁ、悩むよねぇ」

「色々味があるから迷っちゃって、コレっていうのが決められないんだよねぇ」

「分かる!あ、このボロネーゼとか食べた事あるけど美味しかったよ!」

「成程ねぇ……じゃあコレにしよっかな」

「お、やったぁ!――――待って、朱里ちゃん何箱頼んでるの!?」

「30」

「さんじゅう!?」

「1ヶ月分だから」

「1ヶ月分!?」

 

 

 

 

【ナマケモノ×2、世話役×1】

 

「お邪魔しますデース!」

「お邪魔します」

「いらっしゃあぁ……疲れた」

「えぇ………?」

「そんな、玄関でスライムになられても困るデス」

「ここに人をダメにするクッションがあってな?」

「あ^〜たまらんデスなぁ^〜」

「切ちゃん?切ちゃん?………ダメだ、溶けちゃった……」

「調ちゃんもどうよ」

「玄関でくつろぐをやめてください。ほら、行きますよ」

「あぁちょっと待ってクッションが……んな殺生な、ぐでぐでするの良いじゃん!」

「場所を考えてください。あ、朱里先輩また掃除サボってました?こことか埃落ちてますよ」

「調ちゃんオカン気質?」

何か言いました?

「イエ……ナニモ……」

「クッション気持ちいいデスなぁ^〜」

 

 

 

 

 

 

【配信会議】

 

「クリスパイセン、配信にゲストとか呼んだりしないんですか?」

「……考えた事はあるんだけどな」

「前軽く聞きましたけど、大手の人からもコラボしてみたいとか、有難いお言葉貰ってるじゃないですか」

「あたしはな、配信者として成功したいんじゃない。ただ楽しくやってその結果……」

「でもそれはコラボしない理由にはなりませんよね?」

「……あたしが気難しいんだよ、わりぃか」

「(悪くないとは思いますけど)何この人可愛過ぎて鼻血止まらん」

「急に何言ってんだお前!?ていうかオイ、鼻血出てきたぞ!」

「あぁ、これはお見苦しい物を………いやでも、それなら友人呼ぶのはどうなんです?」

「お前以外に今の所配信向いてる奴居るかぁ……?」

「響とかどうなんです?活発だし1人で暴走するから話題尽きないと思うんですけど」

「お前がアイツに思ってる事は分かるしあたしも似た様な考えなんだがな。アイツ、ネットリテラシーねぇだろ」

「…………あぁー、確かに。思いっきり本名出しそうですね」

「だろ?だから困ってんだよ」

「私はクリスパイセンと2人でも全然良いんですけど、リスナーは刺激が欲しいでしょうしねぇ……」

 

「「ハァ………」」

 

 

 

 

 

【胃袋強度最強決定戦】

 

「♪〜…………ん、響?」

「あ、朱里ちゃんだ!」

「偶然だね。……あれ、未来が居ないけど?」

「今日は未来は家に居るんだ」

「え、めっずらし……なんで?」

「ふっふーん、それはねぇ……この店に来たからだよ!」

「この店?……あ、この民家みたいな場所店なんだ。え、未来と一緒に来ないって何事?」

「私の事なんだと思ってるの?」

「夫婦じゃないの?」

「ちょっ!?み、未来と夫婦だなんてそんな……」

「店先でイヤンイヤンすんじゃないよ。で、結局この店は何の店なの?」

「……こ、ここはね、大食いをやってる店なんだ!」

「あぁ、成程……で、一人で来た理由は景品が未来向けだからとか?」

「えっ、なんで分かったの!?」

「響が1人でこういう店来る時って9割方そういうのだろうし。あと、後ろに居る切歌ちゃんは連れ?」

「えっ?」

「調の為に頑張るデスよ〜!」

「あぁ、同業者ね……」

「なら……朱里ちゃんもやろう!」

「は?」

「朱里ちゃんもいっぱい食べれるでしょ?」

「でしょ、じゃないが?ちょ、ひびきっ、強い!引く力強い!私にはゲーセンに行くという立派な使命が……!」

「じゃあその前に腹ごしらえだよ!」

「こんな時に無駄に頭回らんでいい!あっ、ちょっ、たすけっ、切歌ちゃ、ああああ!?」

 

「……何を見せられてるんデスかね、私」

 

 

 

 

【限界オタクの集い】

 

「………マリアさん」

「……えぇ、貴方の言いたい事は分かるわ、足立朱里」

「……この写真」

「「この翼さん(剣)、可愛過ぎるッ!」」

「えっ、なんですかこの恥じらい顔。萌え殺しに来てます?」

「こればかりはテレビ局に感謝ね。良いドレスを見繕ったわ」

「着てるだけならただの装束になりかねないのに、ちゃんと恥じらってるのがもうね、尊い……無理……」

「鼻血出てるわよ。はいティッシュ」

「ありがとうございます。……いやホント、破壊力がヤバい」

「もう少し語彙力を鍛えなさい。いやしかし、本当にいいタイミングね……」

「ちょっと今度このドレス買ってくるんで着せましょう、ホント」

「ここは大人に任せるモノよ」

「感謝します」

 

「………マリア姉さんも、朱里さんも、何してるんだろ……?」

 

 

 

 



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